衆議院

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第7号 平成17年3月17日(木曜日)

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平成十七年三月十七日(木曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      加藤 紘一君    岸田 文雄君

      近藤 基彦君    佐藤  勉君

      佐藤  錬君    下村 博文君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      西村 明宏君    西銘恒三郎君

      葉梨 康弘君    馳   浩君

      浜田 靖一君    古川 禎久君

      古屋 圭司君    保利 耕輔君

      宮下 一郎君    山際大志郎君

      青木  愛君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    古賀 一成君

      須藤  浩君    高井 美穂君

      武山百合子君    達増 拓也君

      長島 昭久君    肥田美代子君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      池坊 保子君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  林崎  理君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 岡本  保君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   松元  崇君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     佐藤  勉君

  加藤 勝信君     西銘恒三郎君

  鈴木 恒夫君     浜田 靖一君

  保利 耕輔君     宮下 一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     小渕 優子君

  西銘恒三郎君     加藤 勝信君

  浜田 靖一君     鈴木 恒夫君

  宮下 一郎君     古川 禎久君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 禎久君     保利 耕輔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官林崎理君、総務省大臣官房審議官岡本保君、財務省主計局次長松元崇君、文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君及びスポーツ・青少年局長素川富司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。達増拓也君。

達増委員 義務教育費国庫負担法改正でありますけれども、義務教育のあり方については、政府、中教審での議論があり、また内閣と地方六団体の間でも議論があるようでありますが、やはり究極的には、国会が議論して、そして国会が決めることだと思います。義務教育のあり方を最終的に決めるのは、これは国権の最高機関である国会、全国民の代表である国会議員が決めることでありますから、そういう意味では、義務教育のあり方についてこの国会できちっとした議論を十分やっていかなければならないと思います。

 そのためには、議員同士の議論も重要でありますけれども、広く参考人を招いて意見を聞くということも非常に重要でありますので、ぜひ義務教育に関する参考人質疑をこの委員会でやっていただくことを委員長にお願いしますが、いかがでしょうか。

斉藤委員長 理事会で今後協議させていただきます。

達増委員 ちなみに、田中康夫長野県知事でありますけれども、「なんとなく、クリスタル」という小説でベストセラーになって、そして世に出たわけでありますが、あの「なんとなく、クリスタル」という小説は、八〇年代冒頭、これから日本経済がどんどん大きくなって、世界の脅威と言われるようになり、それがバブルになって、バブル崩壊に至るんですけれども、その冒頭の時点で、ブランド品やいろいろなグルメ情報といったそういう分厚い脚注をつけたことで非常に話題になったわけです。

 そういう高度消費社会の矛盾、ゆがみということを鋭く、しかも経済が大きくなるその入り口の時点で予言していたわけでありまして、その後も田中康夫さんは、いわば消費者の達人としてさまざまな消費文化、グルメ情報、そういったことを本にしたり、雑誌に書いたり、そういった田中康夫さんが、長野県知事としては消費者の達人から納税者の達人、消費者として、この値段でこのサービスというのはあり得ないだろう、こんな店じゃだめだ、そういう同じ目線で、これだけ納税していてこの行政サービスというのはあり得ないだろう、こんな行政サービスじゃだめだ、そういう徹底した納税者の視点ということで地方行政の抜本改革を進めている。

 そういう視点から見たときに、地方行政また地方分権、そういう抜本改革はあらゆる抵抗を排してでも進めていかなければならないけれども、義務教育の財源についてはこれは国が責任を持つべきだ、そういう発言をしているということは、これは非常にインパクトがあることだと思います。

 どうも義務教育財源問題、知事会の中で三位一体推進派と言われている岩手の増田知事、宮城の浅野知事、そういった方々でも、実は義務教育は、野球で言えば八番バッター、九番バッター、順番、優先順位からすると後ろの方なんだと。まずは国土交通あるいは経済産業、県土整備であるとか、また産業振興であるとか、そういった補助金について地方で自由に使わせてもらう、そういう中で地域が自立して、活気が出てきて、そうすれば地方財源もふえていくでありましょう、そうした全体像の中に、最終的には福祉や教育についても地方でやれればいい、そういう位置づけだということを三位一体推進派と呼ばれる知事さんたちも言っているわけであります。

 そういう意味では、義務教育の方をまず先に国から地方に財源を移すということは、実はだれも望んでいないんじゃないかと。日本国民ほとんどの人が望んでいないようなことを国として決めてやってしまうという、非常に異常なことが今進んでいるのではないかと思います。

 そういった異常な中で、これは異常だと叫ぶ人は、最初は異常だと思われるわけですけれども、いわば裸の王様のお話の中で、王様は裸だと叫んだ少年、叫んだ瞬間には何をとんでもないことを言うんだ、おかしいんじゃないかと言われるわけですが、実はそれが真実をついている。我が国は、かつて第二次世界大戦突入という本質的には国民が望んでいなかったようなことをみんなで決めてやってしまった、そういう過去がありますので、特にこういう政治過程には気をつけていかなければならないと思います。

 そういう観点から質問いたしますけれども、今回の法改正、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う云々ということで、国の行財政改革の一環としてこういうことが行われると位置づけられているんだと思いますけれども、そもそも今教育が行財政改革の対象として喫緊の課題なのかどうか。行財政改革、行革ということは、結局、むだなところに公務員がたくさん張りついてむだな仕事をしている、そういうむだな仕事をなくしてそこの部分の人件費を削減すれば、行政経費を削減し、財政の健全化につながるということが行財政改革の本旨であると思うんですけれども、教育の現場が果たしてそうなっているのかどうか、大臣に伺いたいと思います。

中山国務大臣 質問を聞きながら全く同じことを考えていらっしゃるんだなと思いますけれども、大臣としての立場からお答えをさせていただきたいと思っております。

 今、政府一体となって行財政改革に取り組んでいるわけでございますが、これは、簡素で効率的な政府を構築する、目下の財政事情は非常に厳しいですから、この財政の立て直しに資するとともに、行財政運営の改善、透明化、そして国民生活の利便性の向上を図ることを目的として行財政改革が進められているわけでございます。このうち三位一体改革というのは、地方の権限と責任を拡大し、住民に必要な行財政サービスを地方がみずからの責任で追求できる、そういう幅を拡大する、それと同時に、国、地方を通じた簡素で効率的な行財政システムを構築することを図るものでございます。

 もちろん、教育分野におきましても、国民に対して効率的で質の高いサービスが提供されるように行財政改革を推進していくことが求められている、このように考えるわけでございます。

 しかし、私が何度も申し上げておりますが、今回の義務教育費国庫負担制度の改革につきましては、補助金改革といいますか、地方財政改革という観点から入ってきて、そして最終的に、義務教育の国の責任を放棄しよう、どうもこういうことまで考えているような、ねらっているような地方といいますか知事会側の考えということに対しましては、私は、そうではないんじゃないかということで激しく抵抗してきたわけでございます。教育というのは、すべての国民が、憲法によりまして、「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」ものとされておりまして、特にこの義務教育というのは、国民の権利であると同時に、国家社会の形成者としての人材育成という国家戦略に位置づけられるものではないか。

 そういう意味で、ある意味で教育と補助金改革、どっちが上か下かということを考えますと、私は、教育という観点をしっかり重視していかなければいけないんじゃないかな、こう思っておるわけでございまして、今後ともそういう方針を貫いてまいりたいと考えております。

達増委員 かつて、近衛文麿総理大臣のころに、新体制というスローガンのもとに、国家総動員体制でありますとか大政翼賛体制でありますとか、そういった本当の改革ではないようなことが推し進められてしまった。今、小泉内閣のもとでも、改革、改革の名のもとに、本当に我々が直面している課題の解決にはむしろ逆行するようなことが行われているのではないかという懸念を持っております。

 特に、教育が直面している課題は、行財政改革が進めようとしているコストの削減でありますとか、そういう意味での効率化、つまりむだ遣いをなくすといったことというよりは、むしろ、人や施設や予算が足りないがゆえに質の高いサービスを提供することができないでいるというところに問題の本質があるのではないかと思います。

 これは文部科学省調査でありますけれども、学校の教職員で精神性疾患による休職者、九二年、九三年、千人くらいだったのが、二〇〇二年には二千六百八十七人にふえている。二・五倍にふえているわけでありまして、学校が直面するさまざまな問題に追い詰められて、現場の教職員も非常に苦しんでいる。こういう学校の危機、それが教育が直面する課題の本質であって、そういった危機に直面する学校を助ける、支援していくことこそ今の国としてやるべきことではないかと考えますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 日本の国民性というのはどうしても大きく右に左にぶれやすいので、政治家としては、そういったことについてもしっかり気を配ってやっていかなければいかぬなということは常日ごろ考えているわけでございますが、今御指摘がありましたように施設とか人とか、要するに予算の不足ということが重要ではないか、こういうふうな御指摘でございました。

 まさにそのとおりの面もあるなと思うわけでございますが、現下の国家の財政事情を見ますと、なかなか厳しいわけでございまして、その中においていかに効率的に予算を配分していくか、そして国民といいますか教育現場の需要にこたえていくかということが非常に大事だろう、こう思うわけでございます。

 乏しい財源の中からやりくりいたしまして、本当に国の責任を果たすという意味において、真に必要な経費というものを何とか確保して、そして、初等中等教育を初めとして学校教育の充実に向けて必要な教育予算の確保ということに努めて、さらにその有効な活用に取り組んでいく、こういう決意を申し上げたいと思います。

達増委員 そういう意味では、この義務教育費国庫負担法改正も問題なんですけれども、そのほかの法改正もまた非常に問題なのではないでしょうか。

 まず、産業教育振興法改正でありますけれども、産業教育に関する実験実習、施設設備への補助を廃止してしまう。しかし、今我が国が直面する課題として、ニートの問題や若者の就職難ということが問題になっているわけであります。若者に職業教育、そういった機会をより広く提供して、一人でも多く手に職を得て、きちっと働いて税金を納めて、家庭を持って、そしてまた子供も産み育てていけるような、そういった社会を今目指さなければならないのではないかという危機感がふえているときに、こういう産業教育振興法改正というのは、むしろ、克服すべき課題ということから見て逆行しているんではないかと思いますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 私も、工業高校等を視察して回っているんですけれども、非常にいい教育をされているというふうに実は感じております。というのは、工業高校に入ってきまして、そこで旋盤を削ったり、デザインをしたり、設計図を引いたりした人たちが、さらに上級の大学とか、あるいは専門の学校を目指していく、要するに自分で目的を持って学校に行く、そういう意味では、今御指摘のようなニートとかフリーターではない、本当に人生に目的意識を持った人たちが工業高校等に進学しているんだな、昔とは全然違うんだなということも思うわけでございます。

 そういう意味におきまして、農業、工業、商業などの高等学校における産業教育というのは非常に大事だな、まさに今までも中堅技術者というものを育ててきたわけですけれども、それ以上の役割を今担っているんじゃないかな、こう思っているわけでございます。

 文部科学省におきましても、この産業教育を振興するために、いろいろ教育内容の改善とかあるいは教員の資質向上等に努めてきたところでございまして、ちょっと御披露申し上げますと、平成十五年度からは、先端技術や伝統技能の習得など特色ある取り組みを行う専門高校等への支援を行う目指せスペシャリスト事業を実施しているところでございまして、各学校におきまして高度な技術、技能の習得等を目指した取り組みを行っております。

 また、平成十六年度からは、専門高校等におきまして、企業実習と教育を組み合わせた実践的な人材育成システムである日本版のデュアルシステムの効果的な導入方法等について調査研究を行うモデル事業を実施しております。

 さらに、平成十六年十二月の文部科学大臣など関係五大臣の合意によります若者の自立・挑戦のためのアクションプラン、これに基づきまして専門高校等の取り組みを推進しているところでございまして、文部科学省といたしましても、今後とも産業教育の振興ということには努めてまいりたい、このように考えております。

達増委員 同様に、ニートや若者の就職難、そういった問題からすれば、高等学校の定時制教育及び通信教育振興法改正、これも問題ではないかと思います。全国九百十八の定時制高校、四十七の通信制高校、その設備への補助を廃止してしまうという内容でありますけれども、定時制高校は、最近もテレビドラマで全国に定時制高校を舞台にしたドラマが放映されて人気を博したと聞いていますけれども、それはやはり、そういった定時制高校に通いながら何とか手に職をつけ、また社会に出て働いていこうということに対する国民的共感というのがわくような時代に今なっているからだと思います。

 定時制、通信制高校そのものも大事ですし、また、その存在、そこで頑張っているんだということが全国民的な、そういうやる気や意欲やそういった感動の輪も国民全体にも広がるということが今目の前にあるときに、これもやはり逆でありまして、こうした定時制、通信制高校への支援も、むしろ国として今強化していかなければならないんじゃないでしょうか。

中山国務大臣 私もあのテレビをたまたま見たんですけれども、大変感動的でございました。

 高等学校の定時制それから通信制課程というのは、働きながら学ぼうとする青少年に対して高等学校教育を受ける機会を与えるということで、昭和二十三年に設けられた制度でございます。また、近年、この定時制、通信制課程では、従来のように働きながら学校に行くという勤労青少年に加えまして、全日制に入学できなかった者とかあるいは全日制から転校したり編入学する、そういった者など、多様な入学動機とかあるいは学習歴を持つ若者もふえているわけでございまして、これらの者に対する学習の機会を確保する上でも非常に重要な役割を担っていると思っているところでございます。

 文部科学省といたしましても、もちろんこの重要性ということについては十分認識しているわけでございまして、今年度からは、定時制、通信制高校の科目履修生制度を活用いたしまして、就業に必要な知識や技能を習得させる学びなおしの機会の提供事業というのを行っているところでございますし、さらに平成十七年度、来年度からは、定時制、通信制の柔軟な制度を最大限に活用して、多様なニーズに応じた特色ある教育を推進するための事業といたしまして、定時制・通信制ステップ・アップ事業というのを実施する予定としているわけでございます。

 今後とも、これらの施策の充実を通じまして、定時制、通信制に学ぶ若者たちの教育の一層の充実を図ってまいりたい、このように考えております。

達増委員 準要保護生徒児童への援助費補助金に関する一連の補助の廃止、この法改正もまた問題であります。

 今、格差社会化ということが言われておりまして、希望格差社会でありますとか意欲格差社会でありますとか、そういった指摘が特に教育関係の有識者から提起されています。

 こうした格差社会化というのが問題になっていて、経済的な格差がそのまま教育機会の格差になってしまい、結果として社会が大きく引き裂かれていく危険性が指摘されているときに、学用品や給食に関して予算人数にして全国四十万人のこの準要保護生徒児童に対する援助費補助金を国として今回やめてしまうという決断をする、これもまた逆行しているのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 この点につきましてはきのうも御質問があったところでございますが、学校教育法二十五条におきまして、経済的理由により就学困難な児童生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助、いわゆる就学援助でございますが、これを与えなければならないとされているわけでございまして、この就学援助を行う市町村に対して、国としても、義務教育の円滑な実施を図る観点から、就学援助法等に基づいて予算の範囲内で補助を行ってきたところでございます。

 今御指摘ありましたように、この補助金につきましても、三位一体の改革において、準要保護者は要保護者よりも困窮度が低い、また、その認定が各市町村の判断によるものであるということから、準要保護者に対する就学援助については、今後は地域の実情に応じた取り組みにゆだねることがより適切であるというふうに考えまして、国庫補助を廃止することとしているわけでございます。

 なお、このことにつきましては、学校教育法におきまして就学援助の実施義務は市町村に課せられているということ、それから、準要保護者の認定は従来より地方の実情に応じて市町村の判断で行っているということでございまして、私もびっくりいたしましたが、東京のある区では四百十七万円ぐらいが基準なんですね。そうすると、我がふるさと宮崎などはほとんどそれに入ってしまうんじゃないかなと。それで、地区、地区の実情が全然違うんだなということも感じたわけでございます。

 さらに、財源につきましては、所得譲与税として税源移譲されるということで、所要の事業費が地方財政計画に計上される、そして、地方交付税を算定する際の基準財政需要額に算入されるということになっているわけでございまして、今後とも市町村において適切に就学援助事業が実施されるものと考えているわけでございます。

 なお、文部科学省といたしましても、一般財源化後の市町村における就学援助の取り組み状況については、その取り組み状況をしっかり把握しながら、必要があれば指導していきたい、このように考えておるところでございます。

達増委員 この一連の「国の補助金等の整理及び合理化等」というかぎ括弧つきの改革が、教育の本質論抜きで、金目の話、そういった財政の論理から進んでいくことに対して非常に懸念を有するのでありますけれども、改めて憲法二十六条の解釈でありますが、憲法二十六条、「義務教育は、これを無償とする。」と明記しているこの第二十六条の趣旨、第一項には、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」とあるわけでありますが、憲法でこうした規定をしているということは、やはり国として教育を受ける権利というものを尊重するんだ、国民同士がそのことを約束し、そして「義務教育は、これを無償とする。」ということで、義務教育の財源については国の責任でこれが損なわれることのないようにするんだというこの憲法の趣旨、これについて政府の認識を改めて問いたいと思います。

中山国務大臣 御指摘のように、この義務教育、知育、体育、徳育の調和のとれた児童生徒を育成して、そして、国民として共通に身につけるべき基礎的資質を培うものということでございますが、国は、憲法第二十六条の要請によりまして、すべての国民に対して無償で一定水準の教育を提供する最終的な責任を負っている、このように考えております。

 このため、国におきましては、全国的な観点から教育の機会均等とかあるいは水準の維持向上を図るために、まず学習指導要領におきまして、すべての子供たちが共通に学習する全国的な教育内容の基準を定めますとともに、全国どこの地域の学校におきましても一定水準以上の条件のもとで教育を受けることができるように、教育水準の整備を図っていくことが必要である、このように考えているわけでございます。

 特に、義務教育の成否を握るのは教員であるという観点から、教育の機会均等とかあるいは教育水準の維持向上を図るというために、教育条件の中でも、全国すべての地域においてすぐれた教員を一定数確保していくことが不可欠であるという観点から、そのために必要な財源を確実に手当てする責務を担っておると考えて、これを制度的、財政的に担保したものが義務教育国庫負担制である、このように考えているわけでございまして、国と地方がそれぞれの役割に応じてこの義務教育をしっかりと担っていくということが大切であろうと考えております。

達増委員 民主党は今、創憲というテーマで、憲法調査会のもと、憲法に関する議論もしているところでありますけれども、その中で、二十一世紀は情報化社会、知識経済、情報、知識へのアクセス、またそれを交換するコミュニケーション、そういったことが今まで以上に重要になってくるので、この教育を受ける権利ということがいわば二十一世紀的権利として、十九世紀的自由権、二十世紀的経済社会権、そして二十一世紀にはこうした知識、情報をめぐる学習権と呼びましょうか、あるいは情報権と呼びましょうか、そうした権利というものが死活的に重要になってくる。十九世紀には自由権というものが死活的に重要、二十世紀に入って経済社会権というものが死活的に重要と認識されたように、二十一世紀においては、この二十六条の教育を受ける権利こそ実は基本的人権の核心、幸福追求権の中心になってくるんじゃないかという議論も出ております。

 そういう意味では、今、憲法の運用として、それに反するのではないかというような法案が提出されてしまったりしている状況でありますから、むしろ、そういうことを防ぐためにも、憲法の中でこの教育を受ける権利、学習権をきちっと明確にして、二度とこういうことのないように憲法を改正していかなければならないのではないかという憲法改正の必要性も感じる次第であります。

 また、教育基本法というものもあるわけでありますけれども、これも、国として教育に対して責任を負う、義務教育についても、教育の機会均等についても、そして、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備、確立ということについても国が責任を負う、そういう教育基本法もあるわけでありまして、今のままだと、教育基本法は要らない、各自治体が教育基本条例とでもいうようなものをつくってやればいいんだという、非常に逆立ちしたようなことが今起きつつあるのではないかということを強く懸念いたします。

 さて次に、今、教育が直面している具体的な課題として、学力低下、体力低下、そして不登校や校内暴力といった問題があると思います。

 これに関連して、前回私が質問に立ったときに、子供とテレビゲーム、コンピューターゲームとの関係について指摘いたしました。その後またいろいろ勉強した結果、本当に子供のゲームのし過ぎ、またテレビの見過ぎということが学力低下、体力低下、不登校や校内暴力ということに直接、しかも決定的に関連している、そういう認識を深めております。

 文科省などのさまざまな統計によりますと、子供の体力不足、学力不足、不登校、校内暴力といった問題が昭和六十年ごろから急増する、そういう傾向がある。この昭和六十年ごろというのが、あえて商品名を言いますが、あのファミコンというものが発売され、そして何百万本も売れるようなゲームソフトというものが出てきて、そしてレンタルビデオというものが普及し始める、それが昭和六十年から六十一年、六十二年、六十三年ごろにかけての状況でありました。

 こうした状況で、子供の睡眠時間がどんどん減っている。夜十時半以降まで起きている、そういう夜更かしする子供の割合というものも、昭和六十三年ごろには一五%くらいであったものが今では二〇%、三〇%くらいまでふえている、そういうデータもございます。

 一方で、これは広島県の基礎・基本調査の結果でありますけれども、睡眠時間と学力の関係、国語と算数のテストの成績、睡眠が七時間、八時間、九時間ぐらいの子供の成績がいいという結果が出ているんですね。四時間、五時間、六時間しか寝ていない子供というのは、それ以上寝ている子供たちより成績、結果が低い。また体力測定、これは平成十五年全国新体力テストの結果というものから分析してみましても、やはり八時間以上寝ている子供の方が八時間未満、まして六時間未満の子供よりも体力テストの結果がいいという統計がございます。

 こうしたテレビの見過ぎ、ゲームのし過ぎというものが学力低下、体力低下、不登校、校内暴力といった問題につながっていく。

 これはきのうの朝の新聞に出ていたのでありますけれども、高校でも、財団法人一ツ橋文芸教育振興会、日本青少年研究所の日、米、中国の高校生約三千六百人を対象に実施した調査によりますと、授業中によく居眠りしたり、ぼうっとしたりすると答えた日本の高校生は七割を超えているということであります。そして日本は、午前零時以降に就寝する割合が五〇%以上と突出している。高校生でもこういう問題がある。

 したがって、体力低下、学力低下、不登校、校内暴力に対していろいろな対策が主張されるわけでありますけれども、基本的な生活習慣の改善ということこそ実は決定的に重要なのではないか。その意味で、前回も指摘しましたが、このテレビの見過ぎ、特にゲームのし過ぎというのは、親も状況がよく把握できていない、世の中全体としても状況がよく把握できていない、その間に非常に深刻な問題になってきているのではないかと思いますので、改めて、政府による定期的な調査による徹底した現状把握ということが必要ではないか、それを伺いたいと思います。

中山国務大臣 幾つか御質問いただきましたけれども、教育がますます今後重要になってくるんじゃないか、こういう御指摘はまさにそのとおりだと思っておりまして、国際化、情報化の中で、世界を見渡しますと、国際的な知の大競争時代に入っているなということを本当に感じるわけでございます。

 特に日本の場合には、古くから、天然資源に乏しいから人材こそが資源だとずっと言われてきたんですけれども、戦後の経済成長がうまくいって、欲しいものは何でも手に入るようになる、そういう時代になりまして、この原点を忘れてしまったんじゃないかと時々思うことがあるぐらいでございます。

 まさに教育というものがどこの国も国家戦略として取り組んでいる状況の中では、我が国としても教育には一層取り組んでいかなければいけない、こういうことは感ずるわけでございます。今の憲法のあり方について、国会とか各党においていろいろ議論がなされているということは承知しておりますけれども、ぜひ、教育の重要性ということにつきましては、十分な議論をしていただきたいなということを私の方からもお願い申し上げたい、このように考えているところでございます。

 また、地方分権が進んでいって義務教育費国庫負担が地方に行けば、教育基本法は要らないんじゃないか、こういうふうな御指摘でございましたが、先ほど申し上げましたように、義務教育を初めとします初等中等教育におきましては、国と都道府県、市町村が連携協力しながらそれぞれの責任と役割を果たしていくということが大事であろう、こう考えているわけでございます。

 平成十五年の三月に出されました中教審の答申におきましても、新しい時代にふさわしい教育の基本となる理念を示していただいているわけでございますが、この答申におきましても、国と地方が適切に役割分担しながらそれぞれの責務を果たしていくことについても、このことを教育基本法にしっかり規定するべきだという提言をしていただいているところでございます。

 最後に、最近の子供をめぐる状況、特に、テレビとかゲームに浸っている時間が多いのではないか、これはきちっと政府の方でも実態を把握すべきではないか、このような御指摘がございましたが、全く同じ感じを持っていまして、現在、テレビとかゲームというのが子供の生活に大きな影響を与えているというふうに考えられるわけでございまして、子供のテレビ視聴やゲーム遊びについても現状把握に努めているところでございます。

 テレビ視聴の状況につきまして、文部科学省の助成事業として、社団法人日本PTA全国協議会が実態調査を行ったところによりますと、平成十五年度で、平日は小学生の三七%、中学生の三八%、休日は小学生の五七%、中学生の六八%が一日にテレビを三時間以上見る、こういうふうな結果が出ているわけでございまして、実は大変びっくりしているわけでございます。

 また、テレビやゲームが子供に与える影響につきまして、これも民間団体へ委託して実態調査を行っておるわけでございますが、平成十四年度の調査によりますと、テレビやゲームとの接触期間が長い子供ほど疲れやすい傾向が見られる、それから、就寝時間が遅く、朝気持ちよく起きられないなどの結果が出ているわけでございまして、今新聞を引いての御説明もありましたけれども、学校で七割以上の子供が居眠りをしている。実際私も、この前ある父兄から聞いたんですけれども、中学校に行かせようと思って学校の視察に行ったら、授業中、みんな子供たちは寝ているじゃないですか、びっくりして、これはいけないなと思ったということでございました。

 あるいは、五〇%以上が零時過ぎまで起きている。これはちょっと日本の子供の現状、今の実情というのは、親も、それぞれに個室とか与えているものですから、一体子供たちがどういうふうに過ごしているのかということについてはまず親がしっかり把握しなければいけないんじゃないか。御指摘ありましたように、やはり生活習慣といいますか、生活態度のいい子供ほど、学力ももちろんでございますが、当然のことながら体力もつくわけでございまして、ここのところは本当に学校とか我々も考えなければいけませんが、まずは保護者が自分の保護する子供たちの実態というのをしっかり把握した上でしっかりとした指導をしてもらいたい、こう思います。

 私どもとしましても、学習とかあるいは運動面におきます子供の実態と、テレビとゲームを見る時間等については調査していきたいし、また最近、ゲーム脳とか言われまして、ゲームばかり浸っていると少し脳に欠陥が生じるのではないか、このことが切れやすい子供とかそういったものを生んでいるんじゃないか、こういうふうな研究等もあるものですから、文部科学省としても、そういう専門家を呼んで今勉強しているところでございます。

達増委員 ゲームやテレビは日本の大人も好きでありまして、最近のIT技術の進展に伴ってそういった先端技術も利用したコンテンツの発展、日本のゲームやアニメは世界に通用する、いや、世界に冠たるものだということで、そういう日本のゲームやアニメに対する期待というものがあるわけでありますが、やはり光と影でありまして、あえて言えばゲームにせよ、アニメにせよ、これは現実逃避産業なんですね。現実逃避ビジネス。やはり、価値あるものではありましょうが、やり過ぎはよくないし、また依存症的になってしまうことは非常に危険なわけであります。子供たちがそういったことにはまって現実から離れていく、実は大人たちも同じような状況になっているんじゃないかと思います。

 あえて警鐘を鳴らす意味で紹介いたしますけれども、佐藤健志さんという評論家、「正論」の三月号に「「ハウルの動く城」が物語る戦後日本と「論理の死」」、そういう論文を書いているんですが、「ハウルの動く城」というのは宮崎駿監督のアニメで大ヒットしまして、宮崎アニメというのは日本が世界に誇る文化、外国で賞をとったりもしているんですけれども、実は、その「ハウルの動く城」という中身をよく見ると、ストーリーが破綻していて筋の通らぬ物語、物語の内容的破綻、論理のゆがみが見られる。これは原作から大分離れて、だれが悪いのかよくわからない、だれのせいでいろいろな戦争とかのろいとかが起こるのか結局よくわからなくて、いろいろ苦労はするけれども、何の問題の解決にもならないというようなストーリーになっている。これが、実は「ハウルの動く城」だけではなく、その前の「千と千尋の神隠し」とか、その前の「もののけ姫」とか、それらにも共通する問題。全体をまとめて要約すると、いろいろな戦争とか環境破壊とか、いろいろなトラブルを大人たちが起こして、その中で子供が苦労する、苦労はするけれども、結局、大人たちのそういう基本的な問題構造は変わらないまま何となく物語が終わって、よかった、よかったということになってしまう、そういうところが共通しているということなんですね。

 あたかも、上の世代の勝手な行動のせいで、どんな迷惑や被害を受けようと、下の世代は恨んだり反抗したりしてはいけないというようなメッセージが盛り込まれている。そういうメッセージが明確になってきた三つの作品、その途端に映画がけた違いにヒットし始めたということを指摘しています。日本社会全体が上の世代の勝手な行動で世の中論理も通らない、筋も通らない、めちゃくちゃなことになってきているけれども、下の世代はそれを恨むなよ、そういう作品を大人と子供が一緒になって楽しんで、まあこれでいいかという、それが今の日本社会だという指摘をしています。

 そういうアニメとかゲームとかは、それ自体現実逃避なわけですけれども、そのフィクションの中ですら、フィクションとしての論理も破綻して二重の現実逃避になっている。私は、今の日本は高度現実逃避社会になっているんじゃないかということを言いたいと思います。

 そもそも、小泉内閣が誕生して田中眞紀子外務大臣になったあの小泉・眞紀子内閣が誕生したとき、私は、これは本当に現実のことなのか、悪夢ではないかと思いました。非常にリアリティーのない内閣の誕生。その後の小泉・眞紀子内閣の一年余りの展開を見ますと、あたかも筒井康隆さんのはちゃめちゃ小説ですよね。まさに筒井康隆さんのはちゃめちゃ小説のような展開でありまして、しかし、そういったことがまた国民の高い支持を得てしまう、そういう異常事態がここ四年余りこの日本で起きているんじゃないかということを感じております。

 さて、そういったコンテンツと関連して、ハードでも、IT技術ということがあって、日本は携帯電話の普及率が高く、また携帯電話もどんどん性能がよくなっていて、IT技術で日本は非常に進んでいるという指摘もあるんですが、これも警鐘を鳴らすために紹介します。

 早稲田大学理工学部の木村忠正教授が指摘しているんですが、実は、携帯電話が普及と言っているけれども、本当はあれを使って、銀行の取引でありますとかそういった仕事関係に使う、またコミュニティーでの暮らしやそういった社会的なことに活用されることが期待されていたのに、実際に携帯のiモードサービスで主として利用されているのは、待ち受け画面配信とか着メロ配信とか、およそそういう遊びの、現実逃避型の使われ方ばかりである。そして、このiモードの電子メールが普及するにつれて、インターネットで普通のパソコンを使ったものよりも、こちらの携帯の電子メールを使って非常に簡単なやりとりをするだけのコミュニケーションの方が若い人たちの間に浸透している。そういう意味では、木村教授が指摘しているのは、情報コミュニケーション能力、情報リテラシーを育成するという観点からは、むしろこの携帯電話の普及というのは阻害要因になっているのではないかと指摘しています。

 コンテンツの中身については、これはそれぞれのクリエーターに任せるしかないんですが、このIT技術の活用という点については、文部科学省でも教育現場でさまざまな施策をやっているわけでありまして、このIT技術が、現実逃避に流れるのではなく、きちんと地に足のついた形で教育分野でも活用されていかなければならないと思うんですけれども、この点について伺いたいと思います。

中山国務大臣 私も、宮崎監督のアニメはやはり関心を持って見ていまして、「もののけ姫」から「千と千尋」、この前は「ハウルの動く城」も見てまいりまして、はっきり申し上げて何を言いたいのかよくわからないというのが正直なところでございましたけれども、今、佐藤先生ですか、そういうふうな分析をされていると。要するに、恨むなよという、上の世代が若い世代にメッセージしているんだ、こういう話でございましたが、そういう見方もあるのかなと。子供たちにこれを見せてどうかなというときに、きれいだねと、そういう意味ではおもしろいのかなと思っていましたけれども、そういうような深い意味があるとはちょっとわかりませんでしたけれども、もう一回考え直してみたいと思っています。

 今御指摘のように、今の日本社会というのが高度逃避社会になっている、こういう御指摘、ある意味では、そういう見方もあるのかなと。よくニートとか、あるいは、何といいますか、いろいろな決断を先送りしていく、そういうふうな全体の状況の中で、逃げられれば逃げたい、決断はできるだけおくらせたい、そういう傾向があるのも事実だろうと思っています。それに、このIT技術がそういった方に作用しているという面もあるかもしれませんが、私どもはもちろん、どちらかというとそれをむしろ主体的に活用して、そういう社会になっているわけですから、そして、生きていける、そういった技能といいますか能力を授ける教育をしなければいけない、こういう観点から情報教育を推進しているわけでございます。

 いわゆる情報活用能力を育成する、こういう観点でございますが、小学校段階では、まずコンピューターになれ親しむこととしておりまして、中学校、高等学校段階では、コンピューター等を積極的に活用することによりまして、必要な情報を主体的に収集し、判断し、そしてそれを伝達する能力というのを養うようにしているわけでございます。

 このコンピューター等を使いまして、子供たちがあるテーマについて調べて、まとめて、また的確に他者に伝える学習活動といったものを授業におきましてやっている。これはあくまで子供たちの思考力とか表現力を伸ばすという観点でやっているわけでございますが、果たしてそれが現実的にどのようにうまくやられているかということについては、これは実証していく必要があると思うんです。

 私の息子の嫁がある学校で教えておりますが、大学生ですけれども、テストにも、携帯電話のマークがありますよね、ハートマークとか。ああいうのがいっぱいついた答案用紙を書いている。しかも、主語と述語がめちゃくちゃで非常に文が短いとか、一体どうなっているんだろうかというようなこともこの前聞きまして、やはりちょっとその辺のところも十分考えなければいかぬなと。

 まさに今達増委員から御指摘いただきましたけれども、この情報リテラシー、コミュニケーション能力というものをもう少し考えていかないと、ああいう携帯メールとかああいったことで、記号的な言葉、そういったものでしか意思伝達ができないようなことになっては本当に困るな、そういう観点からの検討も十分やっていかなければいかぬなというふうに私は考えております。

達増委員 高度現実逃避社会から子供を守る努力をしていかなければならないと思います。高度現実逃避社会は、大人が先頭に立って現実から逃避して、そして子供たちをも現実から引きはがしてしまう。結果、子供たちは、テレビとかゲームとか、あるいは居眠りの世界に埋没してしまい、また引きこもってしまったりとかして現実からどんどん離れていく。

 現実から子供たちが引きはがされる、子供たちが現実世界を与えられないということの究極の形は、この世に生まれてこないということであります。

 これは、そもそも妊娠にすら至らないという形で今少子化が進んでいるというのは、本当であればこの世に生まれてこの現実の中で生きていけるはずのそういった子供たちが生まれてくる機会すら与えられなくなっているという、日本全体、社会全体、国を挙げてそういう高度現実逃避社会化を今進めているんだという自覚を持って教育現場でも対応していかなければならないと思います。

 そういう自覚を持って闘っている最先端にいる先生の一人に、尾道市立土堂小学校校長先生、陰山英男先生がいると思うんですけれども、百升計算というのを提唱して、計算ドリルによる脳力トレーニング、脳みその力のトレーニングですね、こういうことをやって、また紹介しているわけでありますが、これは単純な一けたの足し算や掛け算を集中的にやることで脳を活性化するわけでありまして、小学校五、六年生になっても一、二年で習うような足し算、掛け算をやるということになるんです。

 陰山先生は学校でそれをどんどんやってきているし、成果が上がっているんですが、それを取り入れようとした学校が幾つかあるわけです。その中で、小学校五、六年生なのに一、二年で習うような単純な足し算、掛け算をやるのは学習指導要領上問題があるのではないかと教育委員会に示唆されて、それを授業でどうもやりかねている、やれないでいる先生もいると聞いてるんですが、まさかこれが学習指導要領に反するなんということはあり得ないと思うんですけれども、そのことを確認したいと思います。

銭谷政府参考人 初めに、本日おくれましたことを心からおわびを申し上げたいと存じます。大変失礼いたしました。

 ただいま百升計算を例に引かれましてお尋ねがあったわけでございますけれども、学習指導要領はいわゆる教育内容の最低基準でございまして、子供たちの実態に応じて、学習指導要領に示されていない内容を加えて指導することができるわけでございます。

 このため、学習指導要領に示されている内容に加えて補充的な観点からの内容とか発展的な内容を指導することが可能でございまして、今お話がございましたように、例えば、小学校一、二年生レベルの計算問題について、学校が指導上の観点から必要と判断すれば、小学校五、六年生において指導するということは可能でございます。

達増委員 いいことが確認できたと思います。

 この計算ドリル、一部に誤解で、朝から晩まで計算ドリルをやらせていたのではかえってよくないんじゃないかという反論もあるらしいんですが、土堂小学校の例では、週に三日間、朝四十五分、その三日間、朝四十五分の十五分をこの計算ドリルに充て、また十五分は読書、そして残り十五分をその他のトレーニングに充てているということで、そのくらいしかやらないわけであります。

 そして、ほかに体験学習であるとか総合学習であるとか、そうした単純な訓練ではないような、世の中と直接かかわっていくような学習、それもきちっと時間をとってやっていく。もちろん、伝統的な教科の学習は教科の学習できちんとやっていく。そうしたパッケージの中でこの百升計算のような計算ドリルというのが非常に有効だと思いますので、そういったことが法制上の変な誤解で浸透しないことがないようにしていかなければならないと思います。

 さて、通告していた質問、幾つかはしょりまして、これはやはり確認しておかなければなりません。教科書検定、採択の問題であります。

 また教科書検定、採択のシーズンになってきて、それで文科大臣、また政務官の発言がマスコミに取り上げられたりしていますけれども、やはり教科書の検定、採択については、きちっとしたルールに基づいてその責任ある人たちが判断し、また、選んでいくということが重要だと思いまして、それぞれ信念とかあるいは好みといいますか、いろいろあるのかもしれませんが、そうした個人的なあるいは党派的なことからは離れて、文科大臣、副大臣、政務官の皆さんは、教科書検定、採択に関してはやはり厳正中立を、そういう立場を守るべきではないかと考えるんですが、大臣にこの点を伺いたいと思います。

中山国務大臣 教科書検定の時期が近づいてまいりまして、またいろいろかまびすしくなってきているわけでございますが、この教科書の検定というのは、既に御承知のように、学習指導要領とかあるいは検定基準に基づきまして、教科用図書検定調査審議会の専門的な審議を経て実施するものでございます。また、教科書の採択というのは、採択権者であります各教育委員会などの権限と責任におきまして、適正かつ公正に行われることが重要であると考えておりまして、私どもといたしましては、このような考えに立ちまして、教科書の検定とか採択が厳正に行われるように努めてまいりたいと考えております。

達増委員 次に、食育について伺いたいと思います。

 食育、これも大事なので、文科省でも家庭科教育あるいは給食といった教育の場を通じての食育推進ということを取り組んでいて、それは政府としてきちっとやってほしいと思いますが、食育について、国に総理大臣をトップにした食育推進会議を設け、すべての都道府県や市町村にもそれぞれ食育推進会議を設ける。あまつさえ、食育担当大臣なるものを設けて、私は諸外国にそういう、ミニスター・フォー・イーティングとでもいうんでしょうか、食べ物大臣、食べる大臣、そんな食育大臣というのはこの世に存在するのかは非常に疑問でありまして、これもまた筒井康隆さんの小説の非常に非現実的なリアリティーのなさを感じるんですが、それぞれ政府各機関、やるべきことをやっていけば政府としてはそれでいいと私は思っているんですが、この点、大臣、いかがでしょうか。

中山国務大臣 食育担当大臣、そんなものが設けられたらなってみたいなと思うぐらい、食というものは私は非常に大事なものである、こう考えていまして、これは子供の発育とか農業の振興、国全体として、食料自給率を高めるといったことを含めて、私はこの食育ということについては進めていかなければいけない、こう思って私自身も取り組んできているわけでございます。

 昨今のいろいろな情勢を見ますと、社会、環境が変化いたしまして、偏食とかあるいは朝御飯を食べてこない、そういう子供がふえているというようなことが指摘されまして、子供たちの食生活の乱れが見られているということから、食に関する正しい知識、あるいは望ましい食習慣を身につけるということがもう非常に大事になってきている、こう思うわけでございます。また、食を通じて地域等の理解とか、あるいは食文化の継承等の必要性も理解してもらえるんじゃないかと思うわけでございまして、学校において食育を推進することは極めて重要な課題であると考えておりまして、文部科学省といたしましても、これまでも家庭や地域との連携を図りながら、学校における食育の推進のための施策等に取り組んできているところでございます。

 また、特に本年四月からは、念願でございましたが、学校栄養教諭制度が開始されることになりまして、この学校栄養教諭制度を活用した学校での指導体制の整備に取り組んでいきたいと思っているわけでございますが、これらの取り組みを一層推進するとともに、この食育の推進ということにつきましては、やはり国、地方、関係機関、団体等の関係者が連携しながら全体として取り組んでいく課題である、そのことによってまた大きな効果が上がるんじゃないか、こう思っておるところでございまして、関係機関ともより連携しながら進めてまいりたいと考えております。

達増委員 義務教育に関しても、リアリティーのある取り組みということがなされることを期待して質問を終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 義務教育費国庫負担法の審議を続けてまいりましたが、この審議にかかわって一つ気になるデータがございまして、まずその点からただしたいと思います。

 私が参考人招致を要請しました東大大学院の教育研究創発機構研究者代表の苅谷教授のプロジェクトチームがまとめた義務教育職員人件費の推移というのがございます。それによりますと、公立小中学校の教職員の人件費が今後急増する、二〇〇七年度から二〇一七年度まで毎年度、現在よりも三千億円から四千億円上回るという試算なんですね。二〇一八年度までの累積額が四兆四千七百五十億円に上るというわけでございます。

 文部科学省として、こういう公表されている試算、どのように受けとめていらっしゃるでしょうか。伺います。

中山国務大臣 お答えいたします。

 東大の苅谷教授のこの試算、私どもも承知しております。今御指摘ありましたけれども、平成三十年度までの増加分累計は四兆四千七百五十二億円ということでございまして、この数字を私は知事会側にお見せしたいというふうな思いがあるわけですね。知事会は、八千五百億円という義務教育費国庫負担制度の一部をカットするということの考え方の中に、これからは義務教育費が減っていくという頭が私はあったんじゃないかなと。ですから、その部分はほかのところに使えるようになる、こういうお考えがあったんじゃないかと思うんですが、そうじゃございませんよ、この義務教育費もふえていくんですよ、こういうデータを見せられたときにどういう反応をされるのか。

 そういう意味で、こういった試算も参考としながら、今後とも義務教育の国の責任というものを果たしていくように努めてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 教職員の年齢構成が今中高年層に偏っています。将来的には退職手当、定期昇給額を押し上げていくわけですね。ですから、人件費が伸びていくということになるわけですね。

 苅谷教授はこの試算で、各都道府県ごとにデータを出しているんです。本年度の人件費を一〇〇としますと、二〇一八年度までの平均値が、高知県で一一一・五九、長野で一一〇・六八、岐阜で一一〇・六〇、東京で一〇二・七九等々あるんですけれども、支出額で見ますと、岐阜県の場合、二〇一八年度までの累積で千六百億円になるというんですね。

 こういうデータが具体的に示されているわけでして、私は、文部科学省としてこうした人件費にかかわる問題での独自な試算をされているのかどうかということについて伺いたい。どういう数字を持っていらっしゃるのかどうか、お聞きしたいと思います。

銭谷政府参考人 御説明申し上げます。

 今委員からお話がございましたように、教職員人件費の将来推計につきましては、東京大学の苅谷教授を研究代表者とするプロジェクトチームによりまして昨年十一月に取りまとめられたところでございます。文部科学省におきましても、この苅谷先生の将来推計を解析し、かつ御協力をいただきながら、別途把握をしているデータを織り込みながら、現在推計を行っているところでございます。

 現時点までの文部科学省の将来推計では、苅谷先生の将来推計と同様に、教職員の人件費、これは、給料と退職手当と共済の長期等々が入るわけでございますけれども、教職員の人件費は、平成二十六年度までは増加し、その後緩やかに減少していくということが見込まれております。私どもの結果は、まだ最終、今詰めているところでございますけれども、各年度の額につきましては苅谷先生の推計と多少の異同はございますけれども、全体的に、今申し上げましたようにしばらく増額傾向が続くということは確かでございます。

 それから、各都道府県ごとの状況ということも把握をしなければなりませんので、各都道府県ごとに教職員人件費が将来どのように推移するかということについても、現在データを踏まえながら将来推計を行っているところでございます。県によりましては非常に状況が違うということも明らかになりつつございます。

石井(郁)委員 文科省が苅谷教授のデータも参考にしながら、ある面では共同もしながら、取り組んでいらっしゃるということをお聞きいたしました。それは、いつごろどういう形で公表されますか。

銭谷政府参考人 現在、中央教育審議会の義務教育特別部会が開催されておりまして、今後の義務教育のあり方について御審議をいただいているわけでございますが、その義務教育特別部会において私どものデータを提供して、十分御議論いただきたいと思っております。ここ一、二カ月のうちに、データについては義務教育特別部会の方に御提供しながら御審議を賜りたいというふうに思っております。

石井(郁)委員 既に文科省自身が、税源移譲をした場合四十道府県で財源不足に陥るということも発表されていたところでございまして、それとあわせて考えますと、人件費の将来推計ということをきちんと行った場合には、重大な結果が生じると見なければいけないというふうに思うんですね。

 文科省は今取り組んでいらっしゃるということですから、ぜひそれをきちっとやっていただきたいと思いますけれども、苅谷教授が先んじておやりになったことについて言いますと、教授自身が、今回の推計も、私たちが行う前に本来行政が行い、情報公開すべき性質のものだ、データがなければ議論も始まらないと思い、私たちがやったんだ、また、教育政策を構築する際は、基本的データをもとにした将来予測が必要だというふうに述べていらっしゃるわけでして、私は、これはもっともなことですし、本来当委員会の審議もそしてまた教育問題を論じるときにも、やはり客観的なデータに基づいて議論をするということが出発になければいけないというふうに思います。

 きょうは審議の最後になってこういうことを言わなければいけないということもどうかと思うんですけれども、文科省として、この財源不足の試算とあわせて将来予測についても今進めておられるということですから、ぜひ早い機会に公表していただきたいというふうにお願いをいたします。

 もう一点、その場合の重要なデータとしてお示しいただきたいんですけれども、このまま一般財源化されたら教育界へのしわ寄せというのはもう目に見えているわけです。そして、特に地域間とか階層間の格差拡大に拍車がかかるだろうということが苅谷教授の主張の一つのポイントでもございます。一般財源化された場合、つまり全額移譲された場合、どれだけ地方に新たな負担が予想されるのか、こういう点での試算もきちんとされるということを、これはちょっと確認させていただきたい。

 やはり各県ごとの新たな負担増というのを明確にして、一般財源化なのかそれとも国庫負担堅持なのか、こういう形で論点をより一層浮き彫りにしていただきたいなと思うわけですが、この点は、大臣、いかがでしょうか。

中山国務大臣 一般財源化されれば、今まで国で支出した分がそのまま負担はもちろんふえるわけでございますし、今までも地方は地方でそれぞれプラスアルファして教育費用に充てていたわけですから、トータルしてどうなるのかということはわかりませんが、実際問題として、もちろん国庫負担金が減れば、その分は都道府県が負担すべきものとしてふえるということは当然だと思っています。

銭谷政府参考人 今お話ございましたように、仮に義務教育費国庫負担金が一般財源化されて相当額が税源移譲した場合に、各都道府県ごとにどういう状況になるのかということにつきましては、既に四十道府県で財源不足が生ずる見込みがあるというデータは私ども試算をしているわけでございます。今後、将来的にそれがどうなるのかということにつきましても、将来の教職員の人件費の推計というものを織り込みまして各都道府県での人件費の負担増や地域間格差の拡大ということを試算していく必要があると考えております。

 今後、そういった点を踏まえて、先ほど申し上げましたように、中央教育審議会での議論に当たりましては、各都道府県ごとに公立の義務教育諸学校の教職員人件費が将来どのように推移するかといったデータも踏まえながら、総合的に幅広く議論をしていきたい。それで、大臣からお話もございましたように、きちんとデータに基づく議論ということを心がけてまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 大臣と局長から御答弁いただきましたので、ぜひそういう姿勢で取り組んでいただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 さて、次の問題なんですけれども、中教審の審議と三位一体改革の関連というかその問題で聞きたいと思っています。

 中教審の教育条件整備に関する作業部会として、昨年五月二十五日、「義務教育費に係る経費負担の在り方」という中間報告が出されているわけですね。その作業部会の中間報告では、義務教育費の国庫負担金が一般財源化したらどうなるか、これまでの検討から導かれる結論として、義務教育費国庫負担を一般財源化した場合には重大な問題が生じるということで、六点挙げておられるわけですね。その六点はどういう内容でございますか、ちょっと御説明ください、短くで結構ですから。

銭谷政府参考人 御説明申し上げます。

 昨年五月の中央教育審議会の教育条件整備に関する作業部会の中間報告では、仮に義務教育費国庫負担制度が一般財源化された場合の問題点を六点示してございます。

 具体的に六点申し上げますと、第一が、義務教育に対する国の責任放棄になるということ、第二点が、義務教育無償の趣旨に反するということ、第三点が、学校に必要な教職員を確保できなくなるということ、第四点が、義務教育に地域間格差が生じること、第五点が、義務教育費の不安定化を招くということ、第六点が、地方財政自体の硬直化を招くということ、この六点を理由として挙げております。

 このことから、昨年五月の中教審の作業部会の報告書は、義務教育費国庫負担金は一般財源化すべきものでもなく、義務教育費国庫負担制度の根幹は今後とも堅持していく必要があると結論づけているところでございます。

石井(郁)委員 私は、改めて、そういう六点を導き出すための議論も重ねて、そして作業されて、整理されているという点で、中教審の議論というのはなかなかのものをそれなりにしているというふうに思うわけです。そういう六点を挙げて、義務教育費国庫負担金を一般財源化すべきではない、この国庫負担制度の根幹は今後とも堅持していく必要があるという結論を導き出しているわけでしょう。作業部会としてのそれは結論だというふうに発表しているわけですね。

 中間報告ではあるけれども、これは中教審としての立場なんですよ。中教審としての立場というのは、こういう点ではもう明確だったと思うんですね。しかし、本法案では暫定措置と言いながらも、義務教育費四千二百五十億円が特例交付金化されるということになっているわけですね。そうすると、中教審のこの検討というのは一体何だったのか。文科行政にこれはなぜ反映されないのか。中間報告というのはないがしろにされたんじゃないか、こう言ってもいいと思うんですね。いかがですか。

中山国務大臣 昨年秋のいわゆる三位一体の議論の中で、私といたしましては、経済財政諮問会議、あるいは官房長官及び総務、財務、経財担当大臣、四大臣との会合等におきまして、義務教育の意義とか基本的性格、国と地方の役割などについての考え方を示して主張したわけでございますが、このもとになったものが、まさに今お話しになりました中央教育審議会の中間報告でございまして、この中間報告の概要等を紹介しながら、義務教育費国庫負担制度の必要性を強く訴え続けてきたところでございます。その結果、私の主張も受け入れられて、あくまで暫定措置という形で政府・与党間の合意が図られたというふうに私は考えております。

石井(郁)委員 結局、いつも与党合意が先にありきで、中教審を踏まえて、大臣としての御努力もあったけれども、こういうことになっているという説明なのですけれども、やはりこういう事態というのは本当に、極めて異例だと思うのですね。

 ですから、鳥居会長が、これはある新聞のインタビューの中ですけれども、このように述べていらっしゃるわけですね。義務教育費について何度も中教審の議論を踏まえて検討するとの政府方針が出されている、これは政府方針だ、まさに中教審で検討している最中だ、その議論を全く飛ばした形で結論が出されようとしていることに異議を唱えたい、当然だと思うのですね。だから、中教審の委員は、私たちは何をしているのだろう、法律で定められた審議会とは何なのだろうかと感じている、財政問題が先にありきの三位一体改革が教育まで巻き込んで断行されるのは間違っている、これは鳥居会長が述べていらっしゃるわけです。私は、本当にその気持ちがわかるし、全く同感なのです。

 今まさに、秋に向けて、この中教審が審議をしていらっしゃるわけですが、そこで伺いたいのですね。では、再びその結論がないがしろにされるということはありませんか。大臣、いかがですか。

中山国務大臣 昨年十一月二十六日の政府・与党合意におきまして、中教審の結論を十分尊重するということが前提とされているわけでございまして、御懸念のように、中教審の結論に関係なく決められるものではない、このように考えております。

石井(郁)委員 二度あることが三度あるにならないように、本当にここはもう正念場だというふうに私は思います。大臣のそういう御決意でぜひ頑張っていただきたいということを申し上げたいと思います。

 地方移譲ありきというか、これが地方の声だというふうに聞こえますけれども、私は地方移譲が地方すべての声ではないと思うのですね。昨年の八月二十四日に、地方六団体の出された「国庫補助負担金等に関する改革案」に対しては、十三人の方が義務教育費国庫負担の廃止、一般財源化反対の趣旨で意見を付記していらっしゃるわけです。また、十三道府県からも、義務教育費国庫負担堅持の意見書、要望書が出されております。とりわけ市町村から大変強い声があるのじゃないかと思います。

 それで、市町村からは義務教育費国庫負担堅持の要望書、意見書というのはどのくらい出されているのでしょうか。

銭谷政府参考人 お尋ねの市町村議会からの意見書の件数でございますけれども、これまで二千二十六の市町村議会から制度の堅持を求める意見書が提出されております。

石井(郁)委員 二千二十六というのは大変な数ですよね。もう圧倒的だと言ってもいいぐらいだ、今は市町村合併、いろいろありますから、数も減っていますので。そういう市町村、自治体から堅持の意見書が出されている。私は、ここはやはり深く、重く受けとめなければいけないと思うのです。ずっとこの委員会でも議論されましたように、やはり市町村の権限、裁量ということがこれからますます重くなっていくわけでしょう、教育についていえば。だから、そういう点では、このような自治体の声というのを本当にどう受けとめているか、大臣にとっては応援だろうと思いますけれども、大臣はどう受けとめていらっしゃるか、一応伺いたいと思います。

中山国務大臣 今二千二十六の市町村議会から堅持の意見書が出されているというふうにお答えいたしましたが、さらに、実際に小中学校の運営に当たることとなります約九割の市町村教育委員会からも、国庫負担の必要性について意見が出されているわけでございます。また、平成十五年度におきましては、二十二都道府県議会から国庫負担制度堅持の意見書も出されているわけでございます。

 さらにいいますと、八月二十四日のことを今言われましたが、すべての知事が一般財源化を主張しているわけではありませんで、十三都県の知事は国庫負担の必要性を訴えているわけでございまして、ですから私も、小泉総理から地方の声を真摯に聞けと言われましたけれども、耳を傾ければ傾けるほど、堅持堅持という声の方が強く聞こえるのですよということも何度も申し上げたところでございます。

 一方では、そう言われる方々も、地方分権ということについてはこれまた一致しているわけでございまして、地方分権の流れというのが一方にある中で、義務教育費国庫負担制度をいかにして守っていくかということがこれから秋にかけての大きな勝負になるのではないかなと私は思っております。

石井(郁)委員 こうした声は地方の議会、教育委員会だけではないのですね。本当に広く国民的な声になりつつあるというふうに私は思っております。

 これは、昨年十月に、梅原猛さんとか小山内美江子さんとか黒柳徹子さん、それから建築家の黒川紀章さんら文化人が、もっともっといらっしゃいますけれども、共同で要請書を出されたと思います。「国は義務教育に責任を持て」というものなのですね。その中の一節にこのようにありました。「全国津々浦々、たとえ寒村に生れようと、」「国内のどの地域にも劣らない内容の教育を受けられるようにするためには、義務教育費について国が保障するというシステムが絶対に必要であると、私たちは考えている。」というものです。この要請書を大臣は受け取っていらっしゃいますか。

中山国務大臣 小柴先生、野依先生などのノーベル賞受賞者などから成る科学者グループによる「日本の将来を憂える緊急メッセージ」とか、あるいは鳥居、木村両氏、これは中央教育審議会の会長、副会長でございますが、「義務教育費国庫負担制度に関する緊急要請」、あるいは、今話がありましたが、黒柳徹子さんとか平山郁夫さん、三浦朱門さんなど文化人二十名からのメッセージと、いろいろ、義務教育やそれを支える国庫負担制度についての思いを込められた要請文とかメッセージとか、たくさんいただいております。

 それから、日本PTA全国協議会からは義務教育費国庫負担制度に関する要望、そして都道府県教育委員会連合会などの教育関係二十二団体からは「義務教育費国庫負担制度の堅持を求める緊急要請」等が出されているわけでございまして、私は、六団体の意見を聞くこともさることながら、住民を代表する地方議会の声とか、あるいは保護者を初めとする国民の声、それから現場を支える学校関係者とか教育委員会の声などを幅広く伺って、義務教育に係る国の責任というものをしっかり果たせるようその改革に努めてまいりたい、その堅持に努めてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 本当に各界各層からいろいろな形で、やはり国は義務教育に責任を持ってほしい、これが日本のこれまでの発展だったし、これからも発展の礎になるものだという強い思いが込められているというふうに思うんですね。

 とりわけ、ノーベル賞受賞者の皆さんがそろって、やはりこれは何としても守らなければいけないというふうに出されたことなどは、本当に重いものを持っていると私は思います。日本を代表する方ですから、そういう方々が「日本の将来を憂える緊急メッセージ」というのを出されている。大臣もお触れになったとおりであります。

 それで、これは調査室からいただいたものの中にちゃんと資料として収録されておりまして、その一節、私からもあえて申し上げたいんですけれども、このようにあるんですね。

  日本の教育、とりわけ義務教育の平均的な水準は国際的にも高いという評価を受けている。それは、長年にわたる関係者の弛まぬ努力とそれを支える諸制度によって築かれてきたものであり、特に、義務教育費国庫負担制度は、義務教育の機会均等と教育水準の維持のための制度として大きな役割を果たしてきたのはまぎれもない事実である。

  しかしながら、現在、三位一体の改革の中で、単なる財政論の観点から、義務教育を支えている義務教育費国庫負担制度の廃止が検討されており、極めて憂慮される事態となっている。

ということで、やはり現在のこういう政治、政府の動きに対して強い怒りも込めて発言をされていると思います。

 その中で、さらに、私たちが受けとめなければいけないのは、

  教育は国家百年の大計である。未来への投資として惜しむことなく投資すべきであり、その怠りは必然的に日本の衰退につながることとなる。

  残念なことに、諸外国と比較しても日本の教育への公財政支出は少ない。必要なことは、その増額を図ることである。

というふうに述べられているでしょう。

 私は、ノーベル賞を、日本の大学、研究機関の中でずっと長年研究されて世界で評価をされたこういう方々が、やはり国の財政的支援、しかし、日本の公教育への支出というのは本当に少ないんだ、その中で苦労されてきたからこそ、本当にここをふやしてほしい、そうしたら、もっともっと日本の科学水準も、研究水準もいろいろ上がっていくだろうという思いがあると思うんですよ。

 さて、それで、最新のOECDの「図表でみる教育」二〇〇四年というのが発表されたんですが、GDPに占める教育への公的支出の割合の調査結果というのはどういう結果だったでしょうか。

田中政府参考人 GDPに占めます公財政教育費の割合についてでございますけれども、OECDの調査によれば、二〇〇一年における我が国の学校教育に対する公財政支出費の対GDP比は三・五%でございまして、アメリカが五・一%、イギリスは四・七%、フランスは五・六%、ドイツは四・三%となっておるところでございます。

石井(郁)委員 日本がトルコと並んでいるんですよね、三・五%というのは。だから、教育費に対する支出というのは、実は日本は世界でも最低レベルなんです、OECDで見ますと。それで、デンマークでは六・八%だし、フランスが五・八%ありますし、平均が五・〇%ですから、日本の三・五%というのは、国際的に見て何とも情けない数字だと言わざるを得ないわけでしょう。

 だから、こういう大きく立ちおくれている国費の投入の予算状況というもの、こういう点で考えますと、やはり義務教育費を地方に移すかどうかということより先に、こうした予算をふやす、GDP比の割合でふやしていく、公財政支出をふやしていくということが私は先決だと思いますが、その点では今の政府のやり方は全く逆行していると言わざるを得ないと思いますが、大臣はいかがお考えですか。

中山国務大臣 OECDの数字を見ますと確かに日本は非常に低くなっているんですけれども、これはよく指摘されますけれども、そもそも、日本の公財政支出の割合が低い。要するに小さな政府であるということもございますし、学校制度も違います。これは私学が多いということでございますし、さらに子供の数が少ないとか、いろいろな要素がありまして、国によっていろいろな要素がありますので、日本が公財政支出に占める教育費の割合が少ないんだと一概には言えないと思います。

 しかし、やはり国がどういう状況にあるか、その中で日本の教育費の支出がどうなっているかということについては、十分これは注視していかなければいけませんし、私は時々言いますけれども、この義務教育費国庫負担制度、三割しか負担していないんだよと。大きな顔はできないと。もっとこれをふやすべきじゃないかとさえ思っているぐらいでございまして、特に義務教育に関する国としての責任というのは今後とも責任を持って果たしていかなければいけない、このように考えております。

石井(郁)委員 大体時間が参りましたが、私は、今やるべきことは、四千二百五十億円の削減、就学援助などの地方移譲ではなくて、やはり義務教育費の国庫負担制度を堅持するということだし、憲法と教育基本法に基づく教育無償の原則、教育の機会均等の原則や教育水準の維持向上を確保することだという点で、ぜひ、世界でもこうした立ちおくれている教育予算の大幅増額を本当に図っていく、そのために文科省、文科大臣として大いに頑張っていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

斉藤委員長 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 この法案も間もなく採決という運びとなっております。私は、義務教育費国庫負担制度そのものを崩壊しかねない、またその突破口になりかねないような法案が文科委員会で審議される、そして採決しなければならない、このことは非常に残念であると思っておりますし、それを通り越して不幸なことでさえある、このように私は思っているわけでございます。これは大臣も、恐らく文科省も、また本委員会の多くの委員の方々も同じ思いではなかろうかと思っております。

 とはいいながら、いよいよその採決をするわけですが、その大前提として、私は、先ほどからお話ございますように、制度の行く末に関しては多くの意見があるわけでございますので、さまざまな立場の方たちの意見を聞く、このことがやはり大前提であったと思うんですね。つまり、参考人の方々のいろいろな意見を聞くという場が必要であった。しかし、今回それが流れてしまったわけですね。この法案の責任者であります大臣としては、やはりそのような場が欲しかった、そのようにお思いでしょうね。

中山国務大臣 この義務教育国庫負担制度の問題というのは極めて重要な課題であると思っておりまして、そういう意味では、国民の議論も喚起したいし、また国民の声も聞きたい、こう思って、スクールミーティングとかいろいろなところに出かけているわけでございます。特に、国民の代表者であります国会で本当に真剣な議論がなされるということは一番大切なことである、このように考えておりますが、参考人招致につきましては、国会の運営に関することでございますから、私からの発言は差し控えたいと思っております。

横光委員 確かに国会の運営のことでございますが、法案の責任者としては、やはり今回そういった場がある意味では奪われてしまったんですが、これからまだまだこの問題は、中教審等、秋に向けて結論を出すわけですが、そういう意味でも、さらに国会でそういった場を持つべきだ、そういう必要性はお持ちでしょうか。

中山国務大臣 そのことについての発言も、私どもとしては差し控えさせていただきたいと思います。

横光委員 私は、責任者であれば堂々と、もっともっと、国会に意見を言うのもはばかるけれども、それでも責任者としてはいろいろな意見を聞く場をつくってほしかったということをやはり言ってほしかったと思いますね。私は、やはりそれぐらいの大きな法案だという気がしてなりません。

 また、そういった場が結局できなかったわけですが、これは、御案内のように、我々野党が推薦をいたしました長野県の田中康夫知事を自民党の方が招致することを拒否した。しかし、この理由がまた何とも理解しがたい。これは、恐らく拒否をした自民党の皆様方の中でも、真っ当な拒否の理由であると思っている方はいないんじゃないかと思うんです。

 要するに、いろいろな意見を聞く、その意見の中身のことで呼ぶ呼ばないを決めることもやってはいけないことですが、私は、それ以前の理由で今回招致を拒んだと。こういうことになりますと、結局、我々は、自分たちの意に沿わなければ意見を聞く必要がないというようなことを数の力でやってしまうことになれば、私は、議会制民主主義そのものを根底から崩しかねないなと。今、非常に危機的な状況に、この自民党の行動はそういった方向に向かいつつあるなという気がして、非常に心配でなりません。このことはもう御意見は聞きませんし、そういった意味で、委員長、本当に私は強く抗議を申し上げたい。

 そして、この法案は、きょう一応採決されますが、先ほど言いましたように、これから最終結論はまだまだ先でございますので、そういった意味でも、国会でやはりそういった場をぜひともつくっていただきたい、このことを委員長に強く申し上げておきます。いかがですか。

斉藤委員長 理事会で協議をさせていただきます。

横光委員 よろしくお願いをいたします。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 今回、文科省が、義務教育改革に国民の意見を反映させたい、そういったことで、全国的な調査を実施すると発表しております。もう実際始まっているんではなかろうかと思っているんですが、いろいろな立場、児童から生徒から、さらには教育委員会、そしてまた地方自治体の首長、相当の数の調査をするということを発表しております。

 もう実施はされておると思うんですが、この調査内容なんですが、ここに地方自治体の首長も調査対象となっておるわけでございますので、この方たちには義務教育改革の意見を聞くということでございますが、その中で、義務教育費国庫負担制度について、調査内容に盛り込まれておるのかどうか、お尋ねいたしたいと思います。

銭谷政府参考人 御説明申し上げます。

 お尋ねのございました義務教育に関する意識調査は、義務教育に関する国民の御意見を広く伺って、中央教育審議会などにおける審議等に資することを目的として実施をするものでございます。

 対象は、小学生、中学生、保護者、教員……(横光委員「いや、もういいんです。その調査内容に、首長の場合は、内容にそこが含まれているか」と呼ぶ)はい。それに加えて、首長、教育長を予定しているわけでございますが、首長に対する調査項目としては、義務教育費国庫負担制度そのものについての御意見というのは、今回は伺っていないところでございます。

横光委員 それはどうしてですかね。義務教育改革のことでの意見を聞くわけですので、その根底には、義務教育国庫負担制度というものが必ず結びつくわけですよ、密接に。そのことを聞くのに、何でその根底のところを、すべての人に聞けと言っておるんじゃないんです、せっかく調査するならば、教育委員会あるいは自治体首長の皆様方に、何で改めてこういった項目を調査対象にしなかったのかという気がしてならないんです。

 ちょうどタイミングからしてまさにいい時期なのに、そういった場をみずから逸してしまっているという気がしておるんですが、せっかく聞くのなら、このことについてはどう思いますかということを何で一言つけ加えなかったのかという気がしてならないわけでございます。いずれにしても、こういったことはこれから中教審等に反映されるということでございますが、私は、ある意味ではチャンスをちょっと逸してしまったのじゃないかという気がしてなりません。

 先ほどもお話がございましたが、現在、私たちの国は大変な少子化の時代に突入いたしました。つまり、子供が少ないわけですね。子供の数が減少すれば、当然のごとく先生の数も減る、そしてまたそれに対する財源もおのずと減る、こういうのが普通の考え方でございましょう。

 しかし、中教審の義務教育特別部会のメンバーであります東京大学の苅谷剛彦先生、ここがみずからの研究グループで調査しておりますね。結局、子供が減れば先生も減る、それでおのずと財源も減る、そういった見通しというのはごく当たり前の見通しであるけれども、実態はこれは違うんだ、子供は確かに減るけれども、教員の先生は足りなくなるだろう、あるいは、これから教職員給与等に係る費用は膨大にふえるであろうという予測をされたわけですね。非常に細かいデータでございます。

 第二次ベビーブームで生まれた子供たちが小学校に入学したころ、大量に先生が必要ということで採用されましたね。その方たちが、ちょうど今四十代から五十代初めになっている。この方たちがこれから、いわゆる十年後、十五年後に退職ということになれば、おのずと退職金、そしてまた給与もどんどん上がっていく、それにつれて、仮に一般財源とすれば、膨大な地方の財源が必要になってくるわけですね。こういった給与費の増大の見通し、教員需要の見通しというものを、文科省も予測調査は当然されていると思いますが、それでよろしいのでしょうか。

    〔委員長退席、河合委員長代理着席〕

銭谷政府参考人 教職員人件費の将来推計につきましては、今お話がございました苅谷東京大学教授を代表者とするプロジェクトチームによって、昨年十一月にその状況が取りまとめられたところでございます。文部科学省といたしましても、この苅谷先生の将来推計を解析した上で、別途私どもの方でも把握しているデータを織り込みながら、先生とも御協力しながら、さらに推計を行っているところでございます。

 現在までの状況では、苅谷先生の将来推計と同様に、教職員の人件費、これは退職手当、共済長期も含めた人件費でございますけれども、これは平成二十六年度までは増加をし、その後緩やかに減少していくということが見込まれているところでございます。

    〔河合委員長代理退席、委員長着席〕

横光委員 二十六年度がピークということでございますが、それでも相当な累積額になるということが書かれておるわけです。そういった将来推計も、苅谷グループと同じような見通しを文科省は持っておるということでございます。

 やはり、このデータは、先ほど質問もございましたけれども、これだけもう二、三年前から義教費の問題が論議の対象になっているわけですから、そういった意味では、私は、こういったデータを公表していればまた地方六団体の意見は変わってきたのではないかという気がしてならないわけでございます。現に、教職員の抑制方針を文科省も変えて、これから先生を増加しようという方針になったわけでしょう。まさに新規教職員の数は将来減るであろうという見通しに立っているわけでございます。そういった意味から、この増加する部分は、国であれ地方であれおのずと負担しなければならないわけですよね。

 私は、先ほど言いましたように、一番、地方六団体のまとめてきたお考えというものが、今六団体の皆様方は、こういったデータを示されたらぞっとするんじゃないかと思いますよ。一般財源といっても、自由度が高まるからというような思いで要求しておりますが、自由度が高まるどころかこのようなことが、文科省もそういう事態になるぞと推測されておるわけですので、自由度なんかもうなくなってしまうような状況になるわけですね。まさに地方の思いと全然逆の状況が、これから教育界の財源の問題では起こるということなんですから、私は、地方六団体としてはこんなはずではなかったということになりかねないという気がするわけでございます。

 そういった一般財源化の弊害というものを、この苅谷先生は究極的には指摘されておるわけでございます。

 ちょっと大臣にお尋ねするんですが、今のようなデータのもとでの、例えば一般財源化された場合は、地方六団体が、国庫負担金を廃止して税源移譲で支給するという要求を出している。その支給の仕方と現行の負担制度のもとでの支給とでは、将来の今言われたような状況のときに、どちらが確実に支給される担保があるとお考えでしょうか。

中山国務大臣 今、横光委員が御指摘になりましたように、実は私も、あの三位一体の議論のときには、教育費というのは将来減っていくから、だから地方の方がこれを要求してきているんだろうなと思ったわけでございまして、そういう意味ではもっと早く、そうじゃないよ、二十六年度まではずっと増加するんだよというデータが示されておれば、果たして六団体の方の考えがどうなったのか。もっとも、そんなことは言えないので、要するに、地方分権という流れの中でおれたちはやるんだということでございましたから、増加する増加しないということはおくびにも出さない、そういう議論だったわけでございます。

 こういうふうなことで、将来どんどんふえていきます、一体その場合、国が負担した方がいいのか、地方が負担した方がいいのか。これはもちろん、私は、国が負担した方がいい、国が責任を持ってやるべきだ、こう思っていますから主張してきたわけでございます。

 やはり地方によりましては、財政力の差といいますか、それは経済力の差による財政力の差、税収というものがあるわけですから、見ていきますと、大変なことだな、地方にとりましては大変な負担になっていくんだがなということを懸念しているわけでございまして、だからこそ、いわゆる機会均等という観点から、どうしても国が責任を持ってこの制度を維持していかなければいけない、責任を果たしていかなければいけない、こう考えておるところでございます。

横光委員 よくわかりました。私は同じ思いで、地方の改革案ということをまとめられておりますが、将来の状況、二十六年度状況、ピークのころのことを考えると、地方団体の皆様方はまさに、かつて一回、義務教育費国庫負担制度が廃止され、一般財源化され、さらにそれが再び国庫負担制度となったわけでございますが、この五十年前の同じ轍を踏む可能性があるのではないか。歴史は繰り返すと言われておりますが、本当に同じ轍を踏んではいけないと私もこの委員会で何回も言ってきたんですが、改めてこのデータを見るにつけ、そういった危険性があるなということ、これは地方の皆様方にお聞きしなければならないわけですが。

 そういった意味でも、またぶり返しますが、私は参考人が必要だったなという気がするわけですね。そういった場で地方の皆様方の意見を改めて聞くことができたわけですよ。そういう意味でも、参考人ができなかったのは残念でならないし、大変大きな委員会の損失だと私は思いますよ。こういったことを聞ける場を失ってしまったんですからね、こんな大事なこと。そういうことを申し上げたいと思います。

 また、地方改革案の末尾に付記意見というのがございます。知事会が付記意見をつけたということは、これは改革案を決定するに当たって、義教費負担制度について相当かなりの議論があったということが想定されるわけですね。でなければ、こんな付記なんかつける必要はないわけでございます。

 先ほど大臣もおっしゃいました、四十七都道府県のうち十三の知事はこの制度堅持の立場をとっている。私は大分県でございますが、大分県の広瀬知事は、やはりこの制度は必要であるということを訴えておられましたし、ある意味では、私からすれば大変良識のある知事だという思いを持っておるんですが、この四十七分の十三、三割弱でございますが、決して少ないとは言えないと思うんですね。大臣は、かねてから知事の重みというものを訴えておられますし、その知事の重みの中での三割弱の重みというのは決して軽くないという気が私はいたしておるわけでございます。

 また、それと同時に、これも先ほど質問がございましたが、まず知事会の中で結局三割弱の慎重意見があるということ、この事実、それから議会、地方議会、つまり都道府県あるいは市町村、さらには東京の区議会等含めて、先ほど二千二十六の議会から意見の採択が来ている、要請が来ているということでございますが、これもまたすごいなと。今三千ぐらい自治体があるとすると、そのうちの二千二十六の議会からこの制度の堅持を求める意見書が大臣に来ているわけですよ、各議長から。議会というのはまさに国民の声なんですよね。地方の声、国民の声、それが七割方の議会でそういった堅持の意見を提出されているということはすごい重い。知事の立場も重い、しかし一方、議会の立場も重い。知事の場合は、数は廃止の方が多い。しかし、議会の場合は、権限は知事より小さいかもしれぬけれども、圧倒的に数では堅持が多い。まさにねじれまくっているわけですね。これが一つ。

 さらには、この地方の改革案、制度を廃止して税源移譲してほしいという地方の改革案、一方、この地方議会の現行制度を堅持してほしいという要請、物すごい乖離があるという気がする。乖離があるという気がするんじゃなくて、乖離があるんですけれども。そういった意味では、地方改革案そのもののどこを信じていいのか、私はわからないんですね。

 地方改革案そのものについての今のような実態をかんがみて、大臣はどのように地方改革案についてお考えですか。

中山国務大臣 今、横光委員から、地方のいろいろな意見があるということの御指摘がございましたが、本当にそのとおりでございまして、十三都県の知事さんたちが反対といいますか、必要性を訴えておるわけですね。そのほかにも、やはり義務教育は大事だと思っていらっしゃっても、やはり知事会としてまとめなきゃいけない、そういった立場から賛成に回った方も大分いらっしゃる、こう思うわけでございます。

 実は、私対四大臣といいますか、あるいは経済財政諮問会議の場で随分議論をいたしました。私がほとんど一対四とかそういった中だったんですけれども、私は一生懸命主張していたわけでございまして、そのときに私が申し上げたのは、単なる財政論からばかりやってもらっては困るということで、一人、まずは中教審の鳥居会長の話も聞いてほしいということと、もう一つは、非常に言いにくかったんですが、こういうことを申し上げました。地方自治を預かる知事さんの中にも、やはり国家的な見地を考えた見識の高い知事さんがいらっしゃるから、ぜひそういった方も呼んで、財政諮問会議の場で話を聞いてほしい。この二つを実は私は要請したんです。そうしましたら、前者の方の鳥居会長は呼んでいただいたんですけれども、後者の方は実現できませんでしたが。

 私は、そういう意味で、本当に言いにくいこともよく言ったなという思いがあるわけですけれども、私の後ろには、今言われましたが、町村議長会、二千を超えるわけですね。町村議長会というのも六団体の一つなんですよ。それが二千を超えているのになぜ六団体として出てくるのか、私はわけがわからない。要するに、これは知事会が強引にまとめちゃったということで、本当に市町村とか議会の人たちはよく知らないということなんです。

 今でも私のところに聞こえてくるのは、市長さんとか町長さんは嫌だというんですね。知事と直接向かい合ってお金のことやらやらなければいかぬからもう息苦しい、それよりは国からの方がいいと。だったら、何で早くもっとはっきりと言ってくれなかったんだと私は申し上げているわけでございます。

 そういう意味で、やはり地方六団体と一くくりにいたしますけれども、中は区々でございますし、まして市町村段階になりますと、わかるんですね、財政事情とか、わかります。だからこそ、町村合併とかいろいろ本当に必死の思いで今皆さん方がやっていらっしゃるわけで、そういった中で将来のことを考えますと、これは本当に大変だなという気持ちがある。切々たる気持ちも伝わってくるわけで、ぜひ、そういう意味で、私はそういった声も中教審にも寄せていただきたいし、秋までにこの義務教育費国庫負担制度をどうなるか決めるときには、そういった方々がやはり勇気を持って発言していただきたい、声を寄せていただきたい、こう思っております。

横光委員 よくわかりました。まさに、地方六団体の改革案といっても、地方の議会の要請等を見ると、これがすべてそのままであるかどうか非常に疑問があるというような趣旨のお話でございました。

 まさにそうでしょう。まさにこれは財源論だけ、地方分権、地方分権といいながらも財源論だけで、六団体というより知事会が改革案をまとめた。強引にまとめざるを得なかった立場ではあったということはわかるんですけれども、それにしても強引過ぎたな。そして、今お話ございましたように、十三都県知事と言いましたけれども、実態は、本当にもっともっと堅持すべきだという知事さんは多かったと私は思うんですよ。言われたように、地方分権とかいう思いで六団体の意向に沿った知事さんたちもいるかと思いますが、それだけに、私はこれからの論議は重要であるという気がいたしております。

 いわゆる中教審、私は前回も申し上げましたが、本当に大臣が財政諮問会議の中でいろいろ意見を言われて、最後に中教審の結論を得ることをかち得たということは命綱が保たれたということを言ったんですが、その中教審がいよいよこれから審議が始まります。

 報道によりますと、地方の皆様方も初参加して論議が始まったようでございますが、ここでも非常に厳しい地方の意見が出ようかと思っております。早速、地方団体の代表抜きで審議を始めたことは地方軽視のあらわれであるというような意見とか、中教審の鳥居泰彦会長が同負担制度の堅持を前提に議論すると発言しているのは国と地方の信頼関係を著しく損なうと、もう激しい意見が出ております。

 いずれにしても、中教審の場というものは、これからの私たちの国の義務教育のまさに方向性を決めるという意味で非常に重要な審議の場であるわけで、そこにすべてゆだねていくわけでございますが、国会の方も、この法案がここで採決して終わるというのではなくて、先ほど言いましたように、多くの地方の皆様方の意見を聞かなければならないような必要性が改めて浮き彫りになったわけでございますので、ぜひともその点はやっていって、さらにこの問題の疑問点をあぶり出していかなければならない、そういう気がいたしております。

 どうもありがとうございました。終わります。

斉藤委員長 川内博史君。

川内委員 大臣、最後の質疑でございますので、よろしくお願いをさせていただきます。

 まず、昨日の私の質疑のときに、中山大臣は、石井岡山県知事のことを存じ上げないというふうにおっしゃられたわけでありまして、手続中だと御答弁されたかと思います。

 私もちょっとうっかりしていたんですが、けさの新聞を見ましたら、中央教育審議会の義務教育特別部会が昨日開かれた、石井岡山県知事も御出席になられたということで、昨日の質疑は午前中でございますから、昨日の質疑の段階では手続中であったということなのかもしれませんが、大臣、私は非常にしつこい性格なものですから、文科省の義務教育改革プロジェクトチームが中教審の義務教育部会を担当しているので、そこにちょっと電話を入れて確認したら、三月十日に地方六団体から三人の名簿の提示が事務局にあり、その日の午後、大臣の了解をいただいたと正直にお答えになられた。いわゆる大臣決裁、大臣が任命されるわけですから大臣決裁という意味においては、もう既に三月十日に石井知事を義務教育特別部会のメンバーに任命するということを大臣は御了解されているわけでございまして、忘れていらっしゃいましたか。

中山国務大臣 まず、石井知事のことはよく知らないと。本当によく知らないんです。話したことないという意味で知らないので、あの方が東大ですか、どこだったか大学を出て、建設省に行かれて、それから知事になられたということは知っています。そういう意味では知っているんですけれども、私の知っている、知らないというのは、あなたと私みたいによく知っているというのと違って、会って話したことのないという意味で知らないと。あなたがしつこい性格じゃないということもよく知っていますけれども。済みません、余談でございます。

 そういう意味で、時系列的に申し上げますと、十一日の金曜日に、事前準備のために全国知事会に第二回目の義務教育特別部会開会の案内を持っていった。事務方が持っていきました。それで、三月十日の正午ごろに全国知事会事務局から委員の提示がありまして、その日のうちに、午後、私は報告を受けまして、それで三名を任命することを私は了承いたしました。その後、事務手続を行いまして、きのうの十六日付ですね、きのう発令をしたということでございまして、午前中に質疑をいただきましたので、そのときにはまだ手続中であるということをお答えしたわけでございます。おわかりになりましたですか。

川内委員 それでは、言葉足らずであったというか、自分としては任命することを了解していたということですよね。

中山国務大臣 了承は一応しておりましたが、手続が手続中であったと……(川内委員「事務的なですね」と呼ぶ)はい、そういうことでございます。

川内委員 はい、わかりました。

 続いて、本法案の質疑でございます。

 昨年の質疑でも私はいろいろなことをお聞きしたんですが、先ほどから中山大臣の国庫負担堅持なんだという再三にわたる御答弁を聞いていると、この法案を提出されていらっしゃるということに関して、恐らく身を引き裂かれるような思いをしていらっしゃるのではないかなということで、内心をそんたくするわけでございます。国庫負担堅持だと盛んにおっしゃる大臣が、四千二百五十億を減額しなければならないという法案を提出されていらっしゃるわけですから、その心中や察して余りあるものがあるわけでございます。

 昨年、河村大臣のときに、やはり似たような法案が出て、「これ以上一般財源化することになりますと制度の根幹が維持できないという問題に直面しますから、この根幹を維持するということは、まさに委員御指摘の打ちどめである、このような考え方で臨んでおるところであります。」と河村大臣は、もうこれ以上はないでしょうねという私の質問に対してお答えになられました。

 文部科学省として、これ以上はないんだ、もうこれ以上削ることはできない、根幹が維持できなくなるというふうにお答えになられたわけですが、それでも、ことしこの法案を提出しなければならなかったということに関して、大臣の御見解をいただきたいと思います。

中山国務大臣 河村大臣が、どういうやりとりだったかわかりませんが、この根幹を維持するということは、まさに委員御指摘のとおりの打ちどめである、このような考え方で臨んでおると。臨んでおるということで、まあ臨んでいたのでございましょうが、今の法案みたいな形になったわけでございます。

 これはもう本当に、繰り返し繰り返しここでも御説明いたしましたけれども、文部科学省としては、義務教育国庫負担制度を堅持する、それで国の責任を全うするということが絶対大事だ、その根幹というのが教員の給与の二分の一である、こういう考え方のもとにずっとやってきたわけでございまして、そういう意味で、激しい論争があったということはいろいろお話があったところでございます。

 そういった中で、本当に苦しい立場でございましたが、今横光委員が話されましたけれども、まさに命綱ということでもあったと思いますけれども、中央教育審議会の議論を経るということをどうしても入れてくれ、単なる財政論からだけで義務教育を論じてもらいたくないと強い姿勢で臨んできた。

 そういう意味では、河村前大臣と同じようにそういう姿勢で臨んできたわけでございまして、そういう考え方といいますか、心構えはずっと変わっていないということを御理解いただきたいと思います。

川内委員 大臣、私は心構えをお聞きしたわけではなくて、「これ以上一般財源化することになりますと制度の根幹が維持できないという問題に直面しますから、」この根幹を維持するということは、まさに打ちどめだ、昨年で終わったんだ、終わりなんだということを文部科学大臣が国会の議事録に載る答弁の中でおっしゃられているわけであります。

 さらに、今回、四千二百五十億減額の法案を出されたということに対して、文部科学省として心構えは一緒なんだということだけではちょっと納得できないというか、なぜこんなことになってしまったのかということを、もうちょっと詳細に御説明をいただきたいと思います。

中山国務大臣 河村大臣が答えておりますように、維持できないという問題に直面するわけですね、そういう問題。まさに、この二分の一という根幹を堅持できるかできないかという問題に直面するので、そうならないように打ちどめだという考え方で臨んでいるということでございまして、まさに、そういう意味では問題に直面しているということでございまして、維持できないということではない、そういう問題に直面しておるわけですね。

 それで、まさに、十七年度というのは暫定的な措置ということで、そういう問題に直面している。直面した中で、我々としては十七年度は四千二百五十億を暫定的な措置として計上している、こういうことでございます。

川内委員 そういう問題に直面しているというのは、文部科学省としては、この法案によって制度の根幹が維持できないという問題に直面をするという理解だということでよろしいでしょうか。

中山国務大臣 ここにありますように、これ以上一般財源化することになりますと制度の根幹が維持できないという問題に直面すると。だから、まさに直面しているわけでございますが、そのことについて、今のところ、十七年度については暫定ということで計上していただいて、そして中央教育審議会の議論を待つという形で今対処しているということでございます。

川内委員 そうすると、暫定という言葉をお使いになられました。来年もその言いわけが通用するかどうか、非常に、ことし文科省の真価が本当の意味で問われるというふうに私は思うんですね。

 例えば、これまでたくさんの方が、国民の皆さんの大部分は、義務教育国庫負担制度堅持がいいんだ、望んでいるんだというふうにおっしゃるんですが、しかし、数を頼んでも、政府の中でやはり議論に負けているんじゃないかと思うんですね。やはり議論に勝たないと、この国庫負担制度は守れない、あるいは日本の教育が守れないということになっていくんだろうと思います。

 まず、そこに入る前に、そうは言いながら、一般財源化をしたとしても各県に対する財源の手当てはきちんとしたんだ、税源移譲予定特例交付金が各県に対してしっかりプラス・マイナス・ゼロになるように配分をされるんだということを、ちょっと確認させていただきたいと思います。

中山国務大臣 四千二百五十億削減されるわけですけれども、これについては、今御指摘がありましたように、税源移譲予定特例交付金で措置するということになっているわけでございまして、両方合算しますと、本来国庫負担すべき額に相当する額が国から都道府県に交付されるということになるわけでございます。

 文部科学省としては、それがきちんと都道府県の予算に計上されているかどうか、それがちゃんとそういう給与に使われているのかどうかということはきちっとチェックしていかなければいかぬ、こう思っております。

川内委員 それでは、平成十六年の十一月二十六日の政府・与党合意文書というものがございますが、平成十六年の十一月二十六日のこの文書は、私は、文科省にとっては非常にありがたい文書だというふうに思うんですね。

 それまでは、全額を一般財源化する、閣議決定では、「国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行う。」とか、一般財源化するとか、そういう表現が使われてきていたわけですけれども、この平成十六年十一月二十六日、昨年の年末の政府・与党合意文書では、義務教育費国庫負担金については八千五百億円程度の減額とされたということで、全額から八千五百億円に、随分配慮をしていただいている文書になっているわけです。

 なぜこれを閣議決定の文書にしなかったのかということを、きょうは内閣官房からも来ていただいておりますので、ちょっと御説明をいただきたいと思います。

林崎政府参考人 昨年の十一月二十六日の政府・与党協議会の合意文書、これをなぜ、その後直ちにその形で閣議決定をしなかったのかというお尋ねというふうに承りました。

 三位一体の改革につきまして、これも先生御承知かと思いますが、昨年のいわゆる骨太基本方針の二〇〇四におきまして、「三位一体の改革の全体像を平成十六年秋に明らかにし、年内に決定する。」、こういうふうにされておりました。この方針に沿いまして、今お話がございましたけれども、十一月二十六日の政府・与党協議会の合意によりまして、三位一体の改革の全体像、これを明らかにしたというところでございます。

 その後、十二月の三日になりますけれども、平成十七年度予算編成の基本方針というのが、こちらの方で、政府・与党の合意を踏まえて予算編成をするという旨を閣議決定いたしまして、さらにその後、これらを踏まえまして、平成十七年度予算の編成作業、それから税制改正作業が進められたところでございまして、平成十七年度におきます国庫補助負担金等の改革については、十六年の十二月二十四日に、平成十七年度予算案として閣議決定をされた、そういうプロセスの中で進んでいったものでございます。

川内委員 その十二月三日の基本方針、閣議決定文書の中で、義務教育国庫負担制度についてはどのように書かれているんですか。

林崎政府参考人 予算編成の基本方針の中で、今申し上げた部分につきまして読み上げさせていただきますと、包括的に、

  三位一体の改革については、「基本方針二〇〇四」に基づき、平成十八年度までの三位一体の改革の全体像に係る政府・与党協議会の合意(平成十六年十一月二十六日)を踏まえ、政府一丸となって以下に取り組み、その成果を平成十七年度予算に適切に反映する。

  国庫補助負担金改革については、平成十七年度及び平成十八年度予算において、三兆円程度の廃止・縮減等の改革を行う。

といったような部分がございまして、この中に入ってくるというふうに考えております。

川内委員 その「踏まえ、」というのは、三位一体改革の十六年十一月二十六日の文書を踏まえというのは、一〇〇%踏まえるということですか、それともおおよそ踏まえるということなのか、大体尊重するということなのか。その解釈をお示しいただきたいと思います。

林崎政府参考人 「踏まえ、」ということでございますので、一〇〇%というのをどう考えるかというのはございますけれども、基本的に、政府・与党の協議会の合意を、文字どおり踏まえまして、その後の予算編成を進めていく、こういったことを閣議決定したものでございます。

川内委員 いやいや、私は、政府が閣議決定した文書の意味を尋ねているわけでございまして、解釈を。

 政府・与党合意の文書がある、政府がつくった文書があって、その後に、十二月三日に閣議決定された文書があって、どちらも政府がつくっている文書ですよね。それなのに、一方は閣議決定で、一方は閣議決定でない。一方には、それを踏まえると書いてある。

 では、踏まえるというのは一体どういう意味なんだろうかということは、その文書を作成された政府としては、こういう意味なんだということの解釈をしっかりとこの場でお示しになられる必要があると私は思います。そんなあいまいなことを、政府の方針を決める最高の文書の中で書くんですか。それはちょっとどうにも理解しがたいですけれども。

 それでは、ちょっと聞き方を変えると、平成十六年の十一月二十六日の政府・与党合意文書と、十二月三日の予算編成の基本方針の閣議決定の文書と、どちらが重い文書ですか。

林崎政府参考人 今お話ありましたような三位一体の改革につきましての政府・与党協議会の合意、それから閣議決定、どちらが重いというものではないというふうに思いますけれども、先ほど申し上げたように、合意を踏まえまして決定をしたという内閣の閣議決定、内閣の方針というのは閣議決定によって示されるということになってございます。

川内委員 そうすると、平成十六年の十一月二十六日の政府・与党合意文書は政府の方針ではないということですか。

林崎政府参考人 十一月二十六日の合意、あれは、政府・与党の協議会の方でああいう合意をしたということでございます。そしてその後、先ほど申し上げたような形で、あちらの合意を踏まえて予算の編成を進めていく、その結果、最終的に政府としての予算案といったものを閣議決定した、こういうことでございます。

川内委員 だから、政府・与党の合意文書は政府の方針ではないということですね。政府・与党合意文書は政府の方針ではないということでよろしいですね。

林崎政府参考人 先ほど申し上げました、内閣の方針は閣議決定によって示されるということについては、これは内閣法という法律がございまして、こちらの六条におきまして、閣議にかけて決定した方針に基づいて、内閣総理大臣が行政各部を指揮監督するというのがありますので、そういう意味において政府の方針であるというふうに申し上げたわけでございますけれども、その前に申し上げたように、政府・与党の協議会における合意、政府・与党の合意、こういったものを踏まえて予算を編成するという方針、そしてそれを踏まえて編成をした、こういった形になっておるものでございます。

川内委員 もうちょっとわかりやすく説明していただきたいんですけれども、私が聞いているのは、政府・与党の合意文書というのは、内閣法で言う政府の閣議決定文書ではない、したがって政府の方針ではないということですよねということを聞いているんです。

 そうなのか、違うのか。だって、その閣議決定文書の中に、十一月二十六日の政府・与党合意文書を踏まえてと書いてあるわけだから、政府・与党合意文書は政府の方針では、その時点では正式な政府の方針ではありませんと答えることは、別に何ら問題ないでしょう。どうですか。

林崎政府参考人 今先生おっしゃられたとおり、十一月二十六日の段階では、これは政府・与党の協議会の合意でございますので、それ自体は閣議決定ではないということでございます。(川内委員「だから政府の方針ではないんでしょう」と呼ぶ)

 ですから、先ほど申し上げましたが、その内閣法で言う、法律上の、閣議にかけて決定した方針というものには、それは当たるものではございません。

川内委員 そうすると、やはり踏まえてが非常に大事だと。閣議決定、政府の方針として示された文書の中で、十六年十一月二十六日の政府・与党合意文書を踏まえてと書いてあるわけですから、その踏まえるがどのくらい踏まえるのかということの内閣の意思というものは、では大臣、これは政府見解として、この踏まえるは一〇〇%踏まえるんだ、政府・与党で決めたことなんですから、一〇〇%踏まえるんだという政府の御見解でよろしいでしょうか。

中山国務大臣 踏まえるという日本語ですね、踏まえるのは足で踏まえるわけですから、片足で踏まえるのか両足で踏まえるのかありますが、私はこれは両足で踏まえていると思っています。

川内委員 両足で踏まえているということは、政府・与党合意を、そのまま政府の方針として踏まえるということでよろしいですね。

中山国務大臣 両足でしっかり踏まえておるということでございます。

川内委員 何か最近、小泉さんのまねをする人がいっぱいいるんですけれども、私は正確にやりとりをしたいので、両足で踏まえるというのは、要するに、片足が五〇%で、もう五〇%で両足が一〇〇%ということでいいですね。違ったら違うと言ってください。

中山国務大臣 ですから、両足でしっかり踏まえるということでございます。

川内委員 何かはぐらかされているような気がするんですけれども……(中山国務大臣「そんなことないよ、これ以上何が言える」と呼ぶ)それは、僕は言葉に正確でいたいので、一〇〇%という意味でよろしいんでしょうかということを確認しているわけで、イエスなのか、いや、それは一〇〇%とは言えないと。

 だって、両足で踏まえるといっても、大臣、両足の力の入れぐあい、いろいろあるじゃないですか。ぎゅっと踏まえるのか、それとも軽く。片っ方、足をちょっと上げておくとか。

中山国務大臣 あなたも相当しつこいんだね、初めて知ったけれども。

 要するに、両足で体重計に乗ってごらんなさい、幾ら体重計の上で片足上げたって、必ず全部体重乗るんですよ。

川内委員 どうも、そこの辺が、大臣、これは言った方が勝ちなんですから。一〇〇%だと言えば、大臣が言えば政府見解になるんですよ。そうしたら文科省が勝ちなんですよ、ことしの秋。だから僕は聞いているんですからね。

中山国務大臣 文科省の味方をしていただいてありがたいと思うんですが、これは、私も言語学者ではないものですから、踏まえてといったら踏まえてだろうと。それは、両足で踏まえるということは全体重が乗るということじゃないかなと思っております。

川内委員 きのう、私は内閣法制局の方に聞いたんですよ、踏まえるというのはどういう意味があるんでしょうかと。そうすると、その内閣法制局の方は、一〇〇%踏まえるという踏まえるもあります、しかし、そうでない踏まえる、あるいは最大限尊重するとか、ただ単なる尊重するとか、それはその時々の文脈の中で判断をされることでしょうというふうに法制局の方は私に教えていただいたんです。そうすると、この踏まえるという言葉がどの程度踏まえるのかということは、非常に重要な言葉だと私は思うんですが、それは後でおいおい明らかになりますので。

 それでは、三位一体の改革について、この文教の分野で1、2という二つ項目が立ててあって、記述がされておりますが、この記述について、文科省がかかわられたかどうかということを教えていただきたいと思います。

中山国務大臣 その前に、その踏まえるという話。私が言ったのは、要するに、これは内閣法制局がきちっとした判断を出すだろうと思ったので、そういうことを、両足で乗っているということだと答えたので、法制局がそういうふうに答えたとすれば、それが政府見解ということになるんだろうと思います。

 今御指摘の、この合意については私は関与しておりません。

川内委員 そうすると、この政府・与党合意文書を作成したのはだれかということになるわけでございますが、それをちょっと内閣官房の方に教えていただけますか。

林崎政府参考人 三位一体の改革に関する政府・与党協議会の合意文書でございますけれども、内閣官房長官、総務大臣、財務大臣、経済財政政策担当大臣の四大臣と、それから与党政調の方々が議論を重ねまして原案を作成し、これを政府・与党協議会において政府・与党で合意をされたものでございます。ただいま申し上げましたその四大臣と与党政調の方々が中心になりまして議論を重ねたということでございます。

川内委員 そうすると、文教の1、2の部分を、記述のたたき台を書かれたのはどこのセクションの方々でしょうか。

林崎政府参考人 先ほど四大臣と申し上げましたけれども、その四大臣の会合というのも数を重ねまして、中山文科大臣にも御出席をいただくようなこともございまして、そういった中で議論を重ねて、そして原案ができてきた、こういうことでございます。

川内委員 いやいや、原案をつくるときには文科省はかかわっていないと先ほどおっしゃられたんですよ。今、原案ができる過程で文科省がかかわったとおっしゃったよ。

林崎政府参考人 繰り返しになりますけれども、先ほど申し上げた四大臣、それから与党政調の方々が中心となって議論を重ねていく、そういった議論を重ねていく中であの原案ができ上がっていったものでございます。

川内委員 まあいいや。いや、もっと突っ込むところがあるので。

 それでは、この政府・与党合意文書の別紙一の、「概ね三兆円規模の税源移譲のうち、その八割方について次のとおりとする。義務教育費国庫負担金(暫定)八千五百億円程度(平成十七年度分(暫定)四千二百五十億円)」、この暫定というのはいかなる意味か。義務教育費国庫負担金という制度そのものも暫定なのか、金額だけが暫定なのか。この暫定の意味を教えていただきたいと思います。大臣からお願いします。

中山国務大臣 政府・与党合意におきます、うち「十七年度分(暫定)四千二百五十億円」の暫定とは、平成十七年度一年限りの措置であるという趣旨でございます。

 また、八千五百億円程度の減額、これも暫定となっていますけれども、この暫定というのは、平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得るまでの間の暫定措置という趣旨であると認識しております。

川内委員 そうすると、義務教育費国庫負担金制度プラス八千五百億円、要するに、平成十七年秋までに議論をするのは金額だけなのか、それとも、制度全体を含めて金額も変わり得るのかという御質問をさせていただいているんですけれども。

中山国務大臣 この四千二百五十億円についての暫定というのは、この数字について平成十七年度一年限りだ、こういうことですね。

川内委員 私がお聞きしているのは、「義務教育費国庫負担金(暫定)八千五百億円程度」、ここの上の暫定と下の暫定は意味が違うと思うんですよ。上の暫定の意味をお聞きしているんです。

中山国務大臣 上の方の暫定、八千五百億は、だから、中教審で十七年の秋までに結論を得るまでの間の暫定ということですね。

川内委員 だから、私が聞いているのは、中教審で結論を得るまでの間の暫定というのは、金額だけが暫定なのか、それとも義務教育費国庫負担金制度という制度も含めて暫定なのかということをお聞きしているんです。

中山国務大臣 中教審において議論していただくわけでございますから、数字も制度も含めてということでございます。

川内委員 総務省も財務省も、その理解でよろしいんでしょうかね。

松元政府参考人 お答えいたします。

 文部科学大臣から御答弁したとおりと理解いたしております。

岡本政府参考人 私ども、同じ考え方でございます。

川内委員 答弁を訂正されるなら訂正していただいて構わないんですが、要するに、政府・与党合意文書でもそうだし、先ほどの閣議決定、十二月三日の基本方針で閣議決定された踏まえるもそうだし、閣議決定される前に、文科省はその踏まえるという言葉の――僕の言うことを後ろの人たちは全然聞いていないでしょう、ばたばたして。踏まえるという言葉の意味なんかをやはり厳密に、閣議にかける前に確認すべきだったというふうに思うんですね。

 あいまいな言葉遣いで、あいまいな意味不明のままずっとここまで来ているから、結局いろいろなことをやり込められてきているんじゃないのかなと私は思うわけでございまして、一々一々その言葉の意味をしっかりと確定させていくということによって、義務教育費国庫負担制度というものを守る、議論としての闘いをしていただきたいなというふうにお願いをしておきたいと思います。

 結局、大臣、平成十六年のこの十一月二十六日の文書では、先ほどから大臣は中教審、中教審とおっしゃるんですが、結局これは閣議決定された政府の方針ではないだけに、小泉総理は、うちの牧さんの質問に対して、中教審だけの結論ですかという問いかけに対して、いや、中教審だけではない、地方六団体との協議の場での協議も、ことしの秋の結論には勘案されるんだということを正式に御答弁されているわけでございますね。

 結局、政府・与党合意文書は地方六団体のことは書いていないわけですから、これを閣議決定すれば中教審だけの結論でよかったわけですけれども、そうはならなかったということだろうというふうに思うんです。

 それではさらに、私は文部科学委員会のメンバーとして、別に文科省のために仕事をするわけではないので、子供たちのために仕事をするわけで、政府は閣議決定の中で、全額一般財源化をする、検討するというふうにしているわけでございまして、その中で、もし一般財源化されたとしても、子供たちの教育にかかわる費用がしっかりと担保されなければならないと思うわけでございます。平成十五年の六月二十七日の閣議決定文書では、国庫負担金の対象事業は、義務的な事業については徹底的な効率化を図った上でその全額を移譲することということでありますけれども、この義務的な事業というのは、義務教育は義務的な事業に当たりますでしょうか。

松元政府参考人 義務教育費国庫負担金が、この義務的な事業に当たるかという御質問でございます。

 御指摘のとおり、基本方針、平成十五年六月二十七日におきましては、義務的な事業については、その所要の全額を移譲するとされておりまして、政府といたしましては、税源移譲の対象となりました各補助事業に係ります国庫補助負担金につきましては、人件費等の義務的性格の強い部分については原則として必要額の全額を税源移譲いたしまして、それ以外の部分については八割程度を目安として税源移譲するということといたしておるところでございます。

 義務教育費国庫負担金につきましても、都道府県が負担する教職員人件費の二分の一相当額を国が負担するという性格のものでございますので、この義務的な事業に係る経費に該当するものと考えております。

川内委員 総務省さんや財務省さんはそういう言い方で、心配ない、大丈夫だ、だから一般財源化してもいいんだという論陣をお張りになられるわけでありまして、もう一度文科省の立場に立ち戻ると、もうちょっとしっかり議論で頑張っていただきたいなというふうに思うわけでございます。例えば、平成十五年の六月二十七日の今申し上げました閣議決定文書と政府・与党合意の平成十六年の十一月二十六日の文書では、明らかに書きぶりが違うんですよね。

 この十五年六月二十七日の文書は、もう先ほど私が申し上げたとおり、「国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行う。」というふうになっているんですけれども、しかし、それが昨年の十一月二十六日の文書では、「国の責任を引き続き堅持する。」とか「費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、」とかいうことで、割と文科省寄りな文章になっているんですね。これを閣議決定しなかった文科省は、私は、ちょっと致命的なミスを犯されているのではないかなというふうに思うわけでございます。

 例えば、地方案を踏まえてという閣議決定の言葉があるんですが、この十一月二十六日では、「地方案を活かす」と、踏まえてから「活かす」に変わっているんですね。私は、これは重大な、文科省にとっては獲得をされている文章だというふうに思うんですけれども、これについてちょっと大臣の御評価をいただきたいと思うんです。

中山国務大臣 質問の趣旨を完全によくわかっているかどうかわかりませんが、骨太二〇〇三では、中教審において検討を行い、これも踏まえつつ、平成十八年度末までに国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行うということになっているわけですね。

 それで、十一月二十六日、去年の暮れの政府・与党の合意では、もうよく御承知のように、義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するという方針のもと、費用負担についての地方案を生かす方策と教育水準の維持向上を含む義務教育のあり方について幅広く検討し、平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得るということにされたわけでございまして、政府・与党合意においては、国庫負担金全額の一般財源化という文言はなくなったところでございます。

 いずれにしましても、義務教育国庫負担制度の今後の取り扱いについては、平成十八年度末ではなくて十七年秋までということで少し前にはなってきていますが、そういうことになっているというふうに理解しております。

川内委員 大臣、私がきょう申し上げたい趣旨は、文科省自体が国語力の向上とか言っているわけですから、一つ一つの言葉にこだわって政府の中で闘っていただきたいということを申し上げているわけです。

 閣議決定では地方案を踏まえて検討するとなっているものが、政府・与党合意文書では「地方案を活かす」、生かせばいいんですからね、別に踏まえなくていいわけですよ。地方案を生かせばいいという文章にせっかく変えていただいているのに、それをそれこそ生かし切れていないというのが私は今の文科省ではないのかなというふうに懸念をしているので、もうちょっと一つ一つの言葉にこだわって政府の中で交渉してくださいねということをきょうは御提言を申し上げているわけでございます。

 もう時間がないので、大臣がここで答弁されると聞きたいことがちょっと聞けなくなるので、これはもう意見ですから、川内がまた何かわけのわからぬことを言っておるということで聞いていただけばいいんですが、さらに……

斉藤委員長 川内委員、質疑時間が終局しておりますので、簡潔にお願いします。

川内委員 過去に義務教育費を一般財源化したらば大変な地方間のばらつきが出たということをよくおっしゃるんですが、これも、その当時は人確法も標準法もなかったわけですよね。今は人確法もあり標準法もあるという状況でございますから、この人確法、標準法についても、文科省としてもっと厳密な運用をしていただいて、指導力を発揮していただきたいというふうに思うんですけれども、人材確保法あるいは標準法について、文科省として今後どのように運用されていくおつもりなのかということをちょっとお尋ねをして、最後の質問にしたいと思います。

中山国務大臣 踏まえても「活かす方策」、私は、だからスタンス、重さの問題だと思いますけれども、いずれにしてもしっかりと中央教育審議会の議論を経てということになったということはよかったなと思っております。

 それから、標準法とか人確法でちゃんとやれるんじゃないかという御指摘もありますけれども、やろうと思っても、財政力が乏しい県では、ないそでは振れないということになる可能性があるということを懸念する一方で、私どもとしてはしっかりと標準法、そして人確法は守っていきたい、こう考えております。

川内委員 終わります。

斉藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。牧義夫君。

牧委員 民主党・無所属クラブを代表し、このたびの国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案につき、反対の立場から討論を行います。

 今回の改正案は本法に附則を加え、平成十七年度のみの暫定措置として当該国庫負担額から四千二百五十億円を減額するというもので、その分、税源移譲予定特例交付金という形で地方に別途配分されるということになっておりますが、そもそも義務教育における国と地方の役割分担のあり方、責任のあり方等についての議論を先送りする中で、いわゆる三位一体の改革に掲げる当座の数値目標を達成する目的のみにきゅうきゅうとし、地方団体の意見を尊重したと言いながらも、その地方案で提示された数字の裏づけは全く別の内容となっていることなどを見ても、今、いかなる必要に応じてこの暫定措置を講じなければならないのかといった趣旨については全く意味不明のものとなっております。

 当委員会における審議を通じ、私どもはこの意味の解明に努めてまいりましたが、大臣初め関係各位より納得のできる趣旨の説明はついぞ得られず、また、今後の義務教育のあり方に関しても何らの示唆も得られませんでした。

 また、私どもはこの審議の間、広く学識経験者や地方団体のしかるべき方々より意見を聴取することが、委員会における審議に少なからず資するものと確信し、また、この法案が今国会で重要広範議案扱いであることにかんがみ、参考人質疑の開会が必須であることを訴えてまいりましたが、たまたま私どもの推薦した参考人が、公選によって選ばれた公人であるにもかかわらず、何の理由も明かされないまま否定され、ひいては参考人質疑そのものが開催されるに至らなかったことは残念でなりません。

 厳しさを増す地方の財政事情の中で、憲法が要請する教育の機会均等、義務教育の無償が、今後、本当に引き続いて確保され得るのか。一昨年、昨年の法改正に続き、その財源を担保することなく一般財源化への道を進む今回の暫定措置により、その疑念は深まるばかりであります。

 以上、まだまだ理由はたくさんありますが、時間の都合でこの辺にしておいて、安易な数字のつじつま合わせのために将来に大きな禍根を残しかねないこの法改正への反対討論といたします。(拍手)

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 私は、日本共産党を代表して、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行います。

 義務教育費国庫負担制度はいわゆる三位一体改革で退職手当、児童手当などが一般財源化され、残るは教職員の給与、手当のみとなりました。今回、暫定措置ではありますが、これまで歴代の文部科学大臣が必ず守る根幹としていた教職員の給与、手当を削減するものであり、断じて容認できません。

 この間の審議でも明らかなように、既に一般財源化された教材費や旅費は基準財政需要額に対し八割台にとどまっており、県によっては三割台、四割台というところもあります。一般財源化となれば地方格差を拡大し、しかも教育水準を低下させることは火を見るより明らかであります。

 就学援助制度は、経済的理由によって就学困難な児童生徒の就学を確保するために市町村が行うものです。国の補助は憲法、教育基本法に定められた義務教育の無償化、教育の機会均等、教育条件の整備に対する国の役割を明確にするものです。

 今回の補助の削減は就学援助の九割を占める準要保護者百十三万人を対象としたもので、国の役割を大幅に縮小、後退させるものであり、認められません。不況の長期化、リストラなどで就学援助を受ける児童生徒は増加しており、補助金の大幅増額、制度の拡充こそ求められているものであります。

 産業教育設備、定時制・通信制設備補助の削減は、国がみずから基準に照らして不十分な施設整備の実態があるにもかかわらず、その責任を地方に押しつけることになり問題があります。

 いずれも、憲法、教育基本法で定められた教育の機会均等、教育条件の整備に負うべき国の責任を放棄するものであり認められないことを申し上げ、反対討論とします。(拍手)

斉藤委員長 横光克彦君。

横光委員 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。

 今回の法案の中心は、いわゆる三位一体改革の一環として義務教育費への国庫負担金を、十七年度分限りとはいえ四千二百五十億円削減するというものであります。この数字は、国から地方への補助金を三年間で四兆円削減するという三位一体改革の目標を達成するための単なる数字のつじつま合わせにすぎず、何の根拠もありません。

 義務教育費国庫負担制度は、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図る上で今なお重大な役割を果たしております。それを専ら国の財政改革の観点から削減するというのは、義務教育の根幹を崩すことにつながりかねず、断じて認めるわけにはまいりません。住んでいる地域による格差を許せば義務教育の衰退につながることは明白でございます。

 さらに、本法案は、就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律等の改正によって、要保護者等に限定し、あるいは補助の廃止が連なっております。いずれも財政の都合によって教育への支出を削減する内容を含んでおります。

 当初、国庫補助負担金の廃止と税財源の地方への移譲、地方交付税改革の三つの課題を一体的に進めるとされていた三位一体改革は、地方交付税の削減等による国の財政再建ばかりが先行し、本来の目標からすっかり外れてしまいました。小泉総理の進める三位一体改革は、政府、省庁の権限維持、地方への財政負担の押しつけ、課題の先送りと結論の先延ばしに終始し、まるで地方分権改革のていをなしておりません。

 本法案は、三位一体改革が数字合わせと妥協の産物であることを如実にあらわしております。財政的な裏づけのない地方分権で教育がよくなることはあり得ません。数字合わせ、帳じり合わせの改革ではなく、あるべき分権社会の姿を、あるべき日本の教育を真剣に議論することこそが求められております。そのためにも、今、義務教育費国庫負担制度を壊すべきではないということを強く訴えまして、本法案に対する反対の討論といたします。(拍手)

斉藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

斉藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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