衆議院

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第8号 平成17年4月6日(水曜日)

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平成十七年四月六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      上川 陽子君    木村 太郎君

      岸田 文雄君    小西  理君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      下村 博文君    菅原 一秀君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      寺田  稔君    葉梨 康弘君

      馳   浩君    古屋 圭司君

      保利 耕輔君    山際大志郎君

      青木  愛君    岡島 一正君

      加藤 尚彦君    城井  崇君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      田島 一成君    高井 美穂君

      武山百合子君    達増 拓也君

      西村智奈美君    肥田美代子君

      古本伸一郎君    松本 大輔君

      村井 宗明君    吉田  泉君

      笠  浩史君    和田 隆志君

      池坊 保子君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  幸秀君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 高博君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 吉田 英法君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    矢代 隆義君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 佐々木豊成君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 青山 幸恭君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   浜田 恵造君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局原子力安全監)  片山正一郎君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            坂田 東一君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (文化庁次長)      加茂川幸夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           黒川 達夫君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  梶谷 辰哉君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     小西  理君

  近藤 基彦君     上川 陽子君

  西村 明宏君     木村 太郎君

  葉梨 康弘君     寺田  稔君

  長島 昭久君     田島 一成君

  松本 大輔君     和田 隆志君

  笠  浩史君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     近藤 基彦君

  木村 太郎君     菅原 一秀君

  小西  理君     小渕 優子君

  寺田  稔君     葉梨 康弘君

  田島 一成君     村井 宗明君

  西村智奈美君     吉田  泉君

  和田 隆志君     松本 大輔君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     西村 明宏君

  村井 宗明君     古本伸一郎君

  吉田  泉君     岡島 一正君

同日

 辞任         補欠選任

  岡島 一正君     笠  浩史君

  古本伸一郎君     長島 昭久君

    ―――――――――――――

三月二十五日

 学費値上げストップ、大学予算増額に関する請願(横光克彦君紹介)(第四七七号)

 すべての子供たちへの行き届いた教育に関する請願(中津川博郷君紹介)(第四七八号)

 小・中・高三十人学級実現、私学助成の抜本的改善、障害児教育の充実等に関する請願(後藤茂之君紹介)(第四九七号)

 行き届いた教育を進め、心の通い合う学校に関する請願(山井和則君紹介)(第四九八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五四〇号)

 私学助成大幅増額、三十人以下学級実現に関する請願(安住淳君紹介)(第四九九号)

 国庫補助の堅持・拡大、父母負担の軽減、教育条件の改善、私学助成制度の大幅な拡充に関する請願(大畠章宏君紹介)(第五〇四号)

 教育への国の負担を減らさないことに関する請願(石井郁子君紹介)(第五三九号)

 どの子にも行き届いた教育を進め心の通う学校に関する請願(玄葉光一郎君紹介)(第五九二号)

 父母負担軽減、私立高校以下への国庫助成制度の維持と拡充に関する請願(古川元久君紹介)(第五九三号)

四月六日

 私立専修学校の教育・研究条件の改善と父母負担軽減に関する請願(泉健太君紹介)(第六八〇号)

 教育基本法に関する請願(荒井聰君紹介)(第六九四号)

 同(大出彰君紹介)(第六九五号)

 同(金田誠一君紹介)(第六九六号)

 同(小林千代美君紹介)(第六九七号)

 同(横路孝弘君紹介)(第六九八号)

 同(赤松広隆君紹介)(第七一五号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第七一六号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第七一七号)

 同(藤田一枝君紹介)(第七一八号)

 同(土井たか子君紹介)(第七二三号)

 同(山本喜代宏君紹介)(第七二七号)

 同(横光克彦君紹介)(第七二八号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第七七八号)

 行き届いた教育の実現に関する請願(筒井信隆君紹介)(第六九九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官林幸秀君、政策統括官柴田高博君、警察庁長官官房審議官吉田英法君、交通局長矢代隆義君、財務省大臣官房審議官佐々木豊成君、大臣官房審議官青山幸恭君、理財局次長浜田恵造君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長大島寛君、生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長石川明君、高等教育局私学部長金森越哉君、科学技術・学術政策局原子力安全監片山正一郎君、研究振興局長清水潔君、研究開発局長坂田東一君、スポーツ・青少年局長素川富司君、文化庁次長加茂川幸夫君、厚生労働省大臣官房審議官黒川達夫君、健康局長田中慶司君、雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君及び林野庁森林整備部長梶谷辰哉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山際大志郎君。

山際委員 皆さん、おはようございます。質問に先立ちまして、大臣、副大臣、本当にきょうはお越しいただきましてありがとうございました。

 ここに立たせていただきますと、本当に身の引き締まる思いがするのでございますけれども、昨年もこの文部科学委員会で御提案させていただいたことを、重ねてことしも御提案させていただきたいと思います。それは、国旗の掲揚でございます。

 日本の国会でございますから、これはもちろん本会議場には今国旗がありますけれども、この委員会室、どこにも国旗がないのですね。やはり、こういう一番大もとのところを大切にするというのが私は重要だと思います。ですから、前回は国旗を掲揚したらどうかという御提案をさせていただきましたが、どこからも何の御返答もございませんので、今回は、どこにどう言ったらいいかということもあわせて、皆さんにそれをお願いさせていただきたいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 三月に公立学校の耐震化についてのものが出ましたので、この公立学校の耐震化について、まず最初に御質問申し上げたいと思います。

 とかく、この三位一体の改革について、文部科学行政というと、義務教育費の国庫負担金を一般財源化して地方に移譲するということが大きな議論としていつもいつも取り上げられるわけでございますけれども、実は、その陰にといいましょうか、あわせて、この公立学校の施設の整備費と言われるものも一般財源化される危険性が非常に大きい。私は、あえてきょうは、その余り注目をされない公立学校の施設整備費に関して着目しまして、質問をさせていただきたいと思います。

 もう私が御説明申し上げることもありませんけれども、あの新潟の中越地震や、あるいは先般は福岡でも大きな地震がございました。こういう大きな地震があるときに、公共施設というものが避難場所として使われているわけでございますけれども、この耐震化が一体どうなっているのか、実は非常に悲惨な状況にあると私は思っております。

 昨年、あの中越の地震が起きたときに私も視察に現地に入りましたけれども、その際に、避難していらっしゃる方々が小学校の校庭で避難をしているんです。校庭にテントを張って、そこで避難生活をされている。横には立派に見える体育館がある、にもかかわらず体育館の中では避難生活をしないで校庭にいる。一体何でなのですかと聞くと、この体育館は耐震化されていないから、この中にいたら、いつ命を落とすかわからない、なので、仕方がないから寒空の中を校庭で避難するというような答えが返ってまいりました。

 かほどさように、本来耐震化されているはずの避難場所に指定されている公共施設ですから、この公共施設、学校の耐震化というものが進んでいないというのは非常にこれは憂慮するべきことだと私は思います。この耐震化を政府としてもあるいは文部科学省としても早急に急ぐべきではないかと私は思うんですが、御所見をお伺いしたいと思います。

塩谷副大臣 おはようございます。

 お答え申し上げます。今山際委員がおっしゃったことは、大変私どもも同じように感じているところでございまして、特に昨年からことしにかけて、中越あるいは福岡の地震が続いておりますので、この点については私ども十分に今後努力をして耐震化を進めていかなければならないと思っておるわけでございます。

 現在のところ耐震化につきましては、残念ながら半数以上の建物については耐震性が確保されていないという状況で、当然ながら十分とは言えないわけでございまして、この耐震関連予算の確保を最優先に取り組んでまいりたいと思っております。

 先ほどの報告書でございますが、有識者会議において三月末に、工事費にかかわる、建てかえ方式から、これから経済的に、耐震補強あるいは改修方式を重点的に行って、今後五年間で倒壊等の危険性の高い建物について優先的に耐震化を図るべきであることを内容としておりますので、この報告書に基づいて、さらに今後の耐震化について進めてまいりたいと思っております。

 いずれにしましても、今おっしゃいましたように避難所と指定されている場所でございますから、そういうところについては優先的にしっかりと予算も確保して努力をしてまいりたいと思っているところでございます。

山際委員 ありがとうございます。ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 この有識者の皆さんにつくっていただいた報告書によりますと、地方のばらつきというのは非常に大きいということが一目瞭然の表までついているんですね。ところが、前回の三位一体の改革の議論の中では、地方六団体の方から、これは税源移譲をするべきだというような対象としてこの整備費というものも扱われている部分がございます。

 今ですら、例えば一番耐震化が進んでいるのは私の地元であります神奈川県ですけれども、これでも七五、六%でしょうか。一番進んでいないところが香川県で、これは三〇%を切っております。先ほどお話しした新潟県でも三五、六%ということでございまして、これを仮に地方に投げてしまったときに、本当に耐震化というものが進んでいくのかと非常に不安になるデータだと思うんです。

 あの学校図書費のときのように、地方の間によってばらばらになるだけではなくて、予算が違う形で使われてしまうなんということが出てくる可能性も否定できない、このように私は思うわけでございますけれども、地方六団体の意見というものを取り入れて、税源移譲というものを地方に仮にしてしまった場合に、本当にこの耐震化というものは我々が思い描いているような形で進むのか、これをもう一度お答えいただきたいと思います。

塩谷副大臣 まさにお話のとおりだと我々も思っておりまして、公立学校の施設整備につきましては、義務教育を初めとする教育の機会均等と水準確保のためにも国が果たすべき役割だと思っておるわけでございます。有識者会議から出た報告につきましては、財源確保について安定的に保障することが必要であろうと思っております。

 特に先生の神奈川県、私の静岡県もおかげさまで耐震は進んでおるところでございますが、地域の格差というか、地震に対する意識の違いというか、まずは起こらないだろうというところは低いような感じがします。そういう福岡県で今回起こったわけでございまして、そういうことも考えると、この地域格差というのは、今後、国がしっかりと責任持ってできるだけ全体的に高めていくことが必要だと思っておりますので、この点をしっかりと踏まえて、この公立学校施設整備事業を推進してまいりたいと思っております。

 仮にこれが廃止された場合には、必要な財源が手当てされず、地域間格差が広がって、これが学校の安全の格差に広がるということで、大変支障が生じると思っておりますので、この点を大変懸念しているところでございます。

山際委員 どうもありがとうございます。

 先ほど副大臣の方からも少し触れられておりましたけれども、この報告書の中にもきれいなカラーの図でかかれておりまして、「他の公共施設に比べ耐震化が遅れている学校施設」という図が載っているわけですね。「他の」というのは、社会福祉施設であるとか公民館、社会体育館、診療施設というのが並べられていて、最後に一番上に学校施設が並んでいるわけです。これは見ていただいてわかるように、とにかく学校の施設の耐震化というのは一番おくれている。現状でももうおくれているわけですね、まだ半分以下しかされていないということでございますから。

 学校のことに関しては、ほかのものと違ってやはり文部科学省が主導して行っていただかなくては困ると私は思いますし、皆さんもそう思っていらっしゃるんじゃないかと思います。ですから、これはしっかりと文部科学省が責任を持って主導して行うということを、大臣から御所見を伺いたいと思います。

中山国務大臣 耐震化の重要性につきましては、各先生から御指摘いただいているところでございます。

 今、塩谷副大臣も申し上げましたが、財政力の差が学校の安全性の差になってはいけない。これは義務教育費国庫負担制度もそうでございますが、まさに財政力の差が学力の差になってはいけないということと同じでございまして、御承知のように、今、中央教育審議会におきまして、この負担についても御議論いただいていますし、施設整備についても御議論いただいているところでございます。

 とにかく、文部科学省としても、乏しい財源の中で力いっぱいこの獲得に努めているところでございますが、これからもそういう意味で最優先で頑張っていくべき課題である、このように認識しております。

山際委員 ありがとうございます。力強いお言葉をいただきました。私もできる範囲で全力でこれに取り組んでまいりたいと思います。

 次に、エネルギー教育というものについて少し御質問申し上げたいと思います。

 先般、京都議定書がロシアが入ったことによって発効いたしましたけれども、これで一気に国民の意識がエネルギー、省エネというものに対して、あるいは地球温暖化というものに対して向いてきた、私はこれは非常にいいことだと思っております。

 私は、私見といたしまして、地球温暖化というものが二酸化炭素が増加することによってのみ起こっているとはとても思えない、ほかの要因、地球規模的な環境の変化というものがむしろ大きいのではないかという個人的な意見は持っております。しかし、数億年かけて今まで太陽エネルギーというものを化石燃料という形でため込んできたものを、ここ数百年、人類というものが文明化して数百年の間に数億年の遺産というものを使い尽くしてしまうということは、やはり地球表面の環境というものを考えたときには大きくバランスを欠くものだろう。ですから、温暖化とは少し切り離してかもしれませんけれども、エネルギーに対して、省エネをどんどん進めていくということは、私は人類にとって必要なことであると思います。

 さらには、日本は資源の本当に少ない国でございまして、これも私が説明する必要もありませんけれども、特にエネルギー自給率につきましては数%しかないというような、非常に資源の足りない国でございます。ですから、我々こそ、世界じゅうの国の中で日本こそ、省エネルギーというものをリーダーシップをとって進めていかなければいけないし、さらには、二十一世紀の世界のあり方として、日本という国が循環型社会のモデル国家としてあるべきだ、私はこのように思う次第でございます。そんな観点からも、当然、学校でも環境教育あるいはエネルギー教育、省エネ教育というものが現在でも行われているというふうに認識をしております。

 そこで、川崎で少しおもしろい取り組みをやっていらっしゃる学校がありまして、そこからも私はヒアリングをしてまいりましたので、その点につきまして御質問申し上げます。

 まず、確認ですけれども、公立の学校というものは、電気代や水道代やガス代といった光熱費、これは一番コストが安くなるように契約する必要が当然あるわけですけれども、現状はどうなっているかということ、また、もし一番安いコストで契約をされていないという部分があるのであるならば、すぐにこれは変更すべきだと思いますが、その点について御説明していただければと思います。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 公立学校の電気料金等についてのお尋ねでございますけれども、まず公立学校の電気料金でございますが、これは、各学校の規模等に応じまして最も経済的な供給となりますように、市町村等の設置者におきまして、これを各電気事業者等と適宜交渉しながら適切な契約内容に努めている、こういう状況になっているわけでございます。

 例えて言いますと、具体的には、十八クラス程度の小中学校でございますれば、一般の中小ビルと同様のいわゆる業務用電力供給、こういった契約がありますし、六クラス以下の小規模の学校でございますと、これは小規模の工場と同様な低圧電力契約、こういったものを契約して採用するなど、各学校、規模に応じまして、それぞれの契約がなされているところでございます。

 また、電力に関して言いますと、現在、電力市場の自由化の範囲が拡大される、こういった動きもございまして、多様な電力契約方法が提供されている、こういう状況になってきております。

 文部科学省といたしましては、こういった電力を初めといたしまして、今後さらに学校において最適な契約が行われるよう、全国の教育委員会等を通じまして周知してまいりたい、かように考えております。

山際委員 今お話にもありましたけれども、電気市場の自由化というものが逐次進められておりますので、たしか平成十九年からは全部自由化になるというふうに説明しておりますが、これにおくれることなくきちっと主導していただきたいと思います。

 そこで、川崎市でどのような取り組みが行われたか、少し御紹介したいと思います。まず、これは省エネ委員会というのを学校でつくりまして、そして、電気代の節約というものをみんなで、学校の生徒を含めて努力いたしまして、それに成功したという事例でございます。

 まず、この学校では、川崎市立の小学校でございますけれども、一年間の電気代が六百万円を超えているという学校でございました。ここで、校長先生の主導によりまして、省エネ教育をしっかりやろう、省エネをやろうということになりまして、これは後でまた申し上げますけれども、省エネ共和国というものに実は登録しまして、省エネ委員会というものを学校の中に設置しました。

 そして、省エネナビという、今どれだけ電気を使っているかということがわかるパネルを学校の中に各階に設置いたしまして、それを毎日毎日生徒がチェックをしてグラフにつけるということをやりました。また、それにあわせて、休み時間や放課後、消灯や水道の蛇口の点検、見回り等々も、これは生徒が自発的に行いました。さらには、月一回の委員会では、もっと省エネをするためにはどうすればいいかというような話し合いも生徒たちが行ったということでございます。

 その中で、例えば、ポスターを掲示しようとか、標語をつくって張ろうとか、休み時間、放課後は教室の見回りを徹底して電気を消して回ろうとか、さらには、毎日省エネナビをチェックして、どれくらい節約できたか確認しよう、こんな試みをし、そして、これは本当にすばらしいことだと思うんですが、反省点や改善点を話し合って、これを新聞にして全校に呼びかけたということでございます。この結果、どういうことが起きたかというと、六百万円を超えていた電気代が何と百三十万円も節約することができたという事例がございます。

 これは非常にすばらしい、省エネ教育を地でいくような例だと思うんですけれども、その生徒たちが、では次の年にこれを申し送りするときに、どのようにさらに改善したらいいかというようなことも話し合っていまして、そこに三つほど書いてございます。

 まず、月ごとの電気代のグラフが全校のみんなが見られるとよいだろう、これはすぐ実現できると思います。さらには、省エネ週間をつくって一週間徹底的に取り組んでみるのもいいんじゃないかというようなものも、これも学校サイドでできると思うんですね。最後の一つが、これが非常に大変でございまして、頑張って節約した分でソーラーパネルを買えないか、これを校長先生に相談してみよう、これは小学校の生徒がこういうことを書いて、提案しているんですね。

 ところが、今公立学校の光熱費というものをどのような使い方をしてどのように払っているかというのは、これは使っているのは当然学校が使っているわけですけれども、払っているのはその学校を管理している地方自治体、県であったり市町村だったりするわけなんですね。ですから、予算権は校長先生にはないわけでございまして、川崎市では、残念なことに、六百万円から百三十万円も節約して次の年に何が起こったかというと、ただ単に予算を減らされただけなんです。

 もちろんこれは、省エネはするべきですから当然といえば当然、むだな部分は省くというのはそうかもしれませんけれども、一生懸命子供たちがやったことに対して何も得がないんですね。これだと本当にやる気が起きるかというと、まあやらなければいけないことだからやらなければいけないと言えばそれまでですけれども、やはりもう少し前向きに取り組むことができるような仕組みをつくるべきじゃないかと。

 例えば、省エネ教育を進めるために、省エネのことに取り組んで節約できたお金の幾ばくかを学校が自由に使えるような、そんな仕組みをつくることはできないか、これを御質問申し上げたいと思います。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、省エネに取り組みまして光熱水費を削減した学校にインセンティブを与える、これは各学校における省エネの推進にとって極めて有効な取り組みだろう、こう考えているところでございます。実は、先生の御指摘のような取り組みを行っている事例が幾つかございまして、それをちょっと御紹介したいと思います。

 一つは、札幌市でございますけれども、札幌市の公立の小中学校について、平成十五年から十七年度の試行期間といたしまして、過去二年間の実績平均額から省エネルギーによって削減された額の半額を学校の裁量で予算執行できる、こういうことをやっているような事例がございます。

 また、和歌山県におきましても、高校それから盲・聾・養護学校につきまして、平成十五、十六年度に、前年度からの削減額、これは三割ですが、三割を学校敷地内の植樹の費用に充てる、あるいはまた三割を学校の裁量で予算執行できる、こういったことを取り組んでいる例があることは承知してございます。

 私ども文部科学省といたしましても、このような省エネルギーの推進について、こういった先進的な取り組み、これらを行っている学校の事例等の情報を全国に紹介しながら、学校の省エネルギー対策の啓発に努めてまいりたいと存じます。

山際委員 本当にありがとうございます。

 今札幌と和歌山の例をお示しいただきましたけれども、全国の情報を持っているのは文部科学省しかないわけですね。ですから、ぜひ、こういういい例は川崎にもすぐに知らせていただきたいんです。

 しかも、こういういいアイデアですから、省エネ、本当にCO2を削減しようと今一生懸命頑張っているわけですから、全国に知らしめるということを文部科学省の主導でやっていただきたいと思います。

 実は、今回紹介しました省エネパネルあるいは省エネ共和国というもの、名前を出させていただきましたけれども、これは経済産業省が行っているものなんですね。その校長先生にお話を伺いましたら、一番最初にこのアイデアがあったときに文部科学省に持っていったんだ、ところが文部科学省にはけんもほろろに断られたと。これは私が言ってるんじゃないですよ、校長先生がそうおっしゃっている。それで、経済産業省は、ああやりましょうということですぐに乗ってきてくれた、学校に関して言えば経済産業省じゃなくて文部科学省でしょう、もうちょっとしっかり文部科学省にやってもらわなければ困るよというのが校長先生の御意見でございます。

 もちろん、この省エネ教育に関しては、これは何も文部科学省だけの問題ではございませんから、すべての省庁が協力してやるべきものだとは思いますけれども、事学校においては、やはりもう少し文部科学省が主導して積極的に取り組んでいただいた方がいいんじゃないか、このように私は考えるんですが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

中山国務大臣 経済産業省でいいと言われて、文部省に来たらだめだと言われたら、これは本当に問題だと思いますので、本当かどうか確かめたいと思いますけれども、こういうような問題というのは、やはり文部科学省が教育的な観点からも率先してやるべきじゃないかなと思います。

山際委員 ありがとうございます。そういう強い口調で多分言われたんじゃないと思いますけれども、もう少し積極的にやってもらいたいということでございましたので、お伝え申し上げました。

 次に、少子化社会の問題について少し御質問をさせていただきたいと思います。

 実は、これは私はいつもいつも申し上げているんですけれども、二十一世紀の日本における最大の問題、これは一体何だろうか、このようにいつもいつも有権者の皆さんとお話をするときに申し上げております。私は、これは間違いなく急激な少子化だと考えておりまして、急激に少子化が進むということによって、今日本で起きているさまざまな問題というのは大体根っこにその問題があるなということが説明がつくと思います。

 例えば経済が低迷しているということも、少子化、子供の数あるいは経済活動をする人間の数がどんどん減っているということがその大もとにはあると思いますし、社会保障、今大きな問題になっておりますが、これも根本的には支える側の人間が急激に減ってしまうということによって起きているアンバランスであろうと思います。かほどさようにこの少子化問題というものは、この二十一世紀の最初の四半世紀の日本を考える上では、我々は本当に国を挙げて取り組んでいかなくてはいけない課題だというふうに思います。

 それを受けまして、実は自民党の中でもさまざまな場所でこの少子化に対しての取り組みというのは行われております。それをまとめようという動きが今起きておりまして、私も、政務調査会長の直属、すぐ下に少子化対策プロジェクトチームというのをこの間つくりまして、そのメンバーの一員としてこの問題をメーンテーマとして取り組んでいるところでございます。

 この少子化問題ですけれども、これに取り組むのは人なわけですよね。ですから、少子化に対して真っ向から取り組んでいく人間を、人をつくらなければいけない。この人づくりの問題に関しては、一番責任を負っているのは、私はやはり文部科学省だろうと思うんです。この意識を大臣に御共有していただけるのかどうかということと、さらにはこの少子化問題、少子化に対しての対策を文部科学省がどのように行っているかということ、この二つを御質問申し上げたいと思います。

中山国務大臣 山際委員がまさに御指摘ありましたように、二十一世紀の少なくとも前半ぐらいは、少子化問題というのが日本にとりまして一番の課題ではないか、これを何とかしないとさまざまな難問が次々に押し寄せてくる、そういう認識があるわけでございます。

 昨年の十二月に少子化社会対策会議というのが開かれまして、子ども・子育て応援プランというのができたわけですけれども、この中に、文部科学省としてやるべきこととしまして、家庭教育手帳の作成、配付など家庭教育への支援、あるいは幼稚園における子育て支援、さらにキャリア教育の支援、あるいは教育に伴う経済的負担の軽減など、文部科学省の関連施策を積極的に取り込んでいるわけでございまして、鋭意そういう方向で頑張っているわけでございます。

 やはり子育て、子供を産み育てることの楽しみといいますかそういったものも味わえるような、そういう社会にしなければいけない、こう思うわけでございまして、ちょっと余談になりますが、文部省、率先して取り組むべきだと言われましたので、実は私は今文部科学省の中に業務改善推進委員会というものをつくって、これは副大臣がヘッドになっておりますが、なぜかといいますと、どうも残業が常態化していまして、毎日終電で帰るということでございます。それでは子づくりも子育てもできませんので、せめて週の二日ぐらいは明るいうちに役所から退出できるような、そういうことができないかなということを今検討させているわけでございます。まさに隗より始めよ、文部省から始めまして、各省庁もそういったことについても考えていってもらいたいな、こう思っているわけでございます。

 今後とも各省庁と連携をとりながら、この少子化対策については率先して取り組んでまいりたいと考えております。

山際委員 ありがとうございます。

 私も終電組の一人でございますので、深く反省をしなくてはいけないなと今思いました。

 昨年の十二月に出されました「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について」、通称子ども・子育て応援プランというものを今御説明いただきました。

 実は、この子ども・子育て応援プランというものを作成する議論には私も参加させていただきました。その際にも非常にいろいろな意見は出ておりましたし、これでは足りないのではないかということも随分と申し上げました。ただ、残念ながら、このプランをつくる前に政府の方から少子化社会対策大綱というものが出されておりまして、それの重点四分野についてということでこの子ども・子育て応援プランというものをつくれという話でございましたから、どうしてもその枠内でつくらざるを得ないという事情がございました。

 その枠内でという意味でいえば、私は最善を尽くしてこれはつくられたものだというふうに思っておりますが、しかし、なおまだ施策としてはさらにやり残したことも、突っ込んでやらなければいけないこともある、このように私自身も考えておりますし、そう考えている議員も多いと思いますので、少子化対策プロジェクトチームの方では、この枠というものを取り外して、少しとんがった骨太の案というものをことしの骨太には間に合うようにつくっていこうというようなことで今活動させていただいているわけでございます。

 この少子化の、通称子ども・子育て応援プランの中身というものを私読ませていただきまして、全部について御質問すると何時間もかかりますので、幾つか、特に少子化ということに絡めて、私が今問題意識を持っているものについて御質問を申し上げたいと思います。

 まず、これは「奨学金事業の充実」というものが書かれております。私も育英会の奨学金を貸与していただいて大学に通った身でございますので、奨学金を貸していただける、そのありがたさというものは身にしみてわかっている人間でございます。ただ、そのときには、奨学金を借りるというのがなかなか難しい状況もございました。

 仄聞するところによりますと、奨学金、随分と借りられるような仕組みになってきたというお話でございますので、現状がどうなっているかということをまず御説明いただきたいと思います。

石川政府参考人 奨学金の事業の現状についての御質問でございます。

 奨学金事業につきましては、学生のニーズ等を踏まえまして、年々充実を図ってきておるところでございます。特に、平成十一年度におきましては、有利子の奨学金につきまして、次代を担う学生が経済的に自立し、安心して学べるようにするため、奨学金を希望する学生ができるだけ幅広く貸与を受けられますように拡充を図るとともに、これまでもその充実に努めているところでございます。

 具体的に申し上げますと、一つには、例えば学力基準につきまして、従来、高校の成績が平均三・二以上というふうにしておりましたものを、勉学意欲のある学生というように緩和しております。

 また、家計基準につきましても、例えば、私立大学、四人世帯、給与所得者というようなケースにつきまして、従来、約千二百十二万円以下というふうにしておりましたものを、一〇%ほど緩和いたしまして約千三百四十二万円以下というふうにしているところでございます。

 また、貸与月額につきましても、選択制というようなものを導入いたしまして、三万円、五万円、八万円あるいは十万円という中から学生が選べる、こんなようなシステムにしておるところでございます。

 こういった形をとることによりまして、現在では、勉学意欲のある方につきましては、貸与基準を満たす希望者ほぼ全員を採用できている、こういう状況になっております。

山際委員 ありがとうございました。今の御説明を聞いてもわかるように、大概の方々は、やる気さえあれば、勉学をしたいと希望さえすれば奨学金を貸与していただけるというような仕組みになったというのは、今ので理解いたしました。

 しかし、私は、この少子化というものに真っ向から取り組もうと考えたときには、特に、大学に通おうかという若者が自立するということが実は一番大切なんだろうと思います。この応援プランの中の一ページ目のところにも、最初の最初、一丁目一番地にもこれは「若者の自立」と書いてあるんですね。本当にこれは大事なんだろうと思うんです。

 そういう観点からしますと、今回のことは多としても、奨学金そのものの組み立てが、子供の学費は親が出すものだというような論点というか立場に立ってつくられている。これは歴史的に仕方がない話でございますけれども、これからはそうではなくて、自分の学費は自分で払うというような観点に基づいて奨学金制度というものを組み直していくことが私は必要だと思うんです。

 そういう観点からすると、例えば、家計で、今一〇%アップして千三百四十二万円以下の家計なら大丈夫だというお話がございましたけれども、自分が自立して進学したいからお金を貸してくれというときに、自立という言葉を使うのであれば、その若者の家計、親御さんの収入が幾らかということは余り考えなくていいんだろうなというふうに思います。

 ですから、これそのものは改善されたのでよしとしますけれども、私はそこの発想の転換をやはりやるべきなんじゃないかと。そういう観点からいえば、一人で生活をしようとしたときには、この奨学金の貸与額ではまだまだ少ないと思います。もう少し充実をしていくべきじゃないかと思いますが、大臣、これはいかがお考えでしょうか。

中山国務大臣 委員も奨学金をもらって大学を出たという話でございましたが、私も、高校のときにおやじが急死しまして、高校、大学と奨学金をいただきまして学校を卒業することができました、もちろんアルバイトもやりましたが。三十九歳で完済できましたので、役所をやめて政治の世界に出た男でございますので、奨学金のありがたさというものはよくよくわかっているわけでございます。

 そういう意味で、経済的な理由だけじゃなくて、本当に学生が自立して、自分で勉強して自分の道を切り開いていくという意味では、もっともっと広く、奨学金を欲しい人が奨学金を借りられるようにするのも一つの考えだと思いますけれども、本当に自立するなら国に頼ることもないわけで、自分でアルバイトをするなり、あるいはどこか民間から借りてでもできるわけでございます。

 いろいろなことができると思うんですけれども、しかし、余りアルバイトばかりしていましても勉強ができなくなりますから、有為な人材にできるだけ勉学に専念してもらいたいという意味から、国としてこの奨学金制度というのを拡充していくべきだ、いけたらいいなと思います。一方で財政的な制約もあるものですから十分ではないかもしれませんが、この奨学金制度の重要性にかんがみまして、一層の充実に努めていかなければならないな、自分の経験からしてもそう考えているところでございます。

山際委員 大臣も私と同じ奨学生であったということを今お聞きさせていただきまして、意を得たりということでございますけれども、バランスをとるのは本当に大事なんですけれども、奨学金に関しては、まさに文部科学省が主導権を握って、これは拡充するように国にどんどんと働きかけていっていただきたい問題でございますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、子育てプランの中の大きな三番目に、「生命の大切さ、家庭の役割等についての理解」という項目がございます。

 実は、私も少子化対策プロジェクトチームの中で議論をしていく中で、高校生と中学生と小学生からもヒアリングをいたしました。あるいは大学生にもヒアリングをしました。その若者たちの中に、子供、赤ちゃんにさわったことがないという若者がたくさんいるんですよ。赤ん坊はうるさいから嫌いだというんですね。何で嫌いなのかというと、さわったことがないからなんですね。

 では、これはさわる機会を教育の過程の中でどこかで持てなかったんだろうかという疑問がわいてくるわけでございますけれども、ほかの少子化対策の問題に取り組んでいる研究者何人かにもお聞きしますと、若者が赤ちゃんにさわったことがないから子供嫌いになっているというケースはかなりの率でありますというふうにほかの皆さんもおっしゃっているところを見ると、恐らくそれは間違いないんだろう。

 それが原因だとするなら、子ども・子育て応援プランの中に「乳幼児とふれあう機会の拡大」というのが項目としてございます。これは本当にすばらしいことだと私は思います。保育所や児童館や保健センター等で中高生が「乳幼児と出会いふれあう機会を提供するための受入を推進する。」というふうに書いてあります。しかし、私は、これは非常にいいアイデアだと思うんですけれども、本来これをやるのは、ここだけじゃなくて、保育所とか児童館とか保健センターだけではなくて、学校でやるべきだと思うんですね。

 学校で、もしカリキュラムの中に、例えば総合学習の時間等々の中に、赤ちゃんと触れ合えるようなこういうカリキュラムを組み込むことができたならば、私は、長い目で見たときの少子化というものに対して効果があるんじゃないかな、このように思うわけでございますけれども、このアイデアに関しての御所見をお伺いしたいと思います。

塩谷副大臣 確かに赤ちゃんと触れ合う機会というのは最近余りないということで、我々の子供のころを考えると、家に兄弟がいたり近所にたくさん赤ちゃんがいて、自然とそういう体験ができたんですが、今あえてそういったことを考えていかなければならないと思っているところでございまして、知識として学ぶとともに、児童生徒の発達段階に応じて乳幼児との触れ合い体験を学校において行うことも大切だと思っております。

 学校教育については、中学校、高校において、家庭科でございますが、子供を産み育てることの意義、子供の健全な発達を支える親の役割と保育の重要性について指導しております。また、小学校の生活科を初め、家庭科、特別活動、総合的な学習時間を通じて、幼稚園や保育所等で乳幼児との触れ合いや交流の機会を持つようにすることなど、子育てについて実感の伴った理解ができるようにすることを目指しております。

 幾つかの学校で実際にやっていることもありますし、私の地元でも、やはり総合学習の中で実際に赤ちゃんに触れたりすることも盛んにやられていると思っておりますが、いずれにしましても、このような教育を推進するために、保育体験を推進するモデル事業の実施、そして、教師用の子育て理解教育指導資料の刊行などを行っているところでございまして、命のとうとさや子育て理解等に関する教育推進をこれからも行ってまいりたいと考えております。

山際委員 ぜひ一日も早い全国展開をお願いしたいと思います。

 まさに体験にまさるものはないわけでございまして、私も実は年がかなり離れている双子の妹を持っておりまして、親が子育てに手がかかるものですから、随分妹を背中にしょって子供のときに生活をしたのを思い出します。

 それと、この命の大切さというところの項目で、これはもちろん子育て等です、子ども・子育て応援プランですから入れることができなかったのはわかりますが、私は、命の大切さを子供たちに教えていく教育というので、私の専門分野でもあります動物介在教育というものは絶対避けては通れないと思っておりますし、また、一番重要な教育であるというふうにも思っているところでございます。

 この動物介在教育に関しては、先般も、実は群馬県で先進的な取り組みをやっている事例がございまして、群馬県の獣医師会が地域の学校と組んで学校で動物を飼う。今までのように校庭の隅っこに鳥小屋があるというような飼い方ではなくて、本当に学校の中で動物と人間が普通に触れることができるような教育というものを実践しているというものがございます。

 しかし、これは群馬県のような先進的な県はいいんですけれども、全国的に見たときには、この動物介在教育にはかなりおくれた点というか問題点がまだまだあるわけでございまして、それはまず教員の問題ですね。教員は何も動物を飼育するということのエキスパートではございませんから、当然、動物を飼う、適正に飼うということに対する知識も経験もそれほど多くは持っていない。これが、動物の福祉の観点に絡めて考えたときには、余りよろしいことではないということがございます。

 さらには、動物は生き物ですから、生き物である以上、これは健康を害することもありますし、最終的には命がなくなるということがあるわけでございますけれども、そのときに適正なアドバイスをする、処置をするために、どうしても専門家である獣医師というものがこの動物介在教育にはかかわっていく必要が絶対あります。

 これは、命の大切さというものが今認識できない世の中になっている、それを子供たちに対して認識してもらえるようにするために非常に重要な教育活動であると私は思いますので、こういった体制づくり、獣医師が公にかかわることができないか、あるいは学校の先生方が、これは指導書等々をつくっていただいて御指導いただいているということも知っておりますけれども、これをさらに先に進めるというようなことが積極的にできないかということを大臣にお尋ねしたいと思います。

塩谷副大臣 先生から、専門的な立場で貴重な御意見、ありがとうございます。

 やはり、児童の豊かな人間性をはぐくむためには、自然や生き物を通じて生命を尊重する心や心情を育てるということは大変重要だと思っております。学校教育においても、生活科や道徳において動物や植物を大切にすること等について指導しておりますし、地域や学校の実情に応じて動物を飼育して学習指導に役立てているところでございます。文部科学省におきましては、学校における動物飼育のあり方について参考になるようにと教師用手引を作成いたしまして、平成十五年四月に全国のすべての幼稚園、小学校、盲・聾・養護学校に送付したところでございまして、この作成に当たっては、社団法人日本獣医師会の協力を得ておりますし、学校と獣医師等との緊密な連携についても示されているところでございます。

 このような中で、より充実した学習指導が可能となるように、学校における動物指導について獣医師初め地域の方々の積極的な協力をいただいておる地域もありますので、今後とも、このような事例を参考として、獣医師の皆さん方との緊密な連携が図られるように努力をしてまいりたいと思っております。

山際委員 ぜひこれを推進していただきたいと思います。

 先生方に対して手引書をつくっていただく、これは大事なことなんですが、やはりさわらないとわからないんですね。動物は飼ってみないとわからないんです。飼ってみて初めて問題が出てくるわけです。そのときに専門家がすぐそこにいてアドバイスをしていただけるのと、手引書しかないのとでは、これはもうゼロと百ぐらい違うことでございまして、そういう観点からもこれは進めていただきたい、このように思う次第でございます。

 子ども・子育て応援プランに戻りまして、次に、キャリア教育について少し御質問をさせていただきたいと思います。

 私自身が政治に取り組むメーンテーマは、人づくりの仕組みをとにかくつくりたいというのが政治家をやっている一番の理由でございます。この観点から、昨年は若者にスポットを当てまして、フリーター対策というので一年間奔走いたしました。やはり同じように、自民党の政務調査会長の下に直属のフリーター対策研究会というのをつくりまして、そこでフリーターの施策というものを勉強し、実施してまいりました。

 その中の一つで、そこでアイデアが出てきた中に、トライやる・ウイークというものが出てまいりました。このトライやる・ウイーク、公立の中学校で全国展開されるという、本当にこれは日の目を見たわけでございまして、まことに感謝申し上げたいわけでございますけれども、具体的にはどう取り組むのかということを御説明いただきたい。また、小学校や中学校、高校とステージはありますが、これはトライやる・ウイークは中学校の話でございますので、小学校あるいは高校ではどのようなことになっているかということもあわせて御説明いただきたいと思います。

 大臣、ありがとうございました。お時間がないということでございまして、本当にありがとうございました。

 お答えいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 職場体験の学習活動についてのお尋ねでございます。

 今先生からお話ございましたように、兵庫県のトライやる・ウイークは、中学校二年生が五日間腰を据えて職業体験活動に取り組む事業でございまして、私どもとしても、勤労観、職業観の醸成につながる大変意義深い取り組みであるということで、これを十七年度から全国各地で展開していきたいというふうに考えているところでございます。

 具体的には、十七年度で予算措置をいたしまして、中学校を中心とした五日間以上の職場体験をキャリア・スタート・ウイークとして実施するということにいたしております。それを支えるための地域の協力体制を構築するために、キャリア教育実践プロジェクト、これを全国で新たに展開していきたいというふうに思っているところでございます。

 また、中学校だけじゃなくて、小学校、高等学校における職場体験の充実ということも課題でございまして、この点につきましては、昨年度から全国において、小中高等学校の各発達段階に応じた職業体験活動やキャリア教育に関する指導内容、方法等の開発に取り組むキャリア教育推進地域指定事業というものを実施いたしております。この中で、例えば、小学生であれば近くの職場に短時間ですけれども訪問をするとか、高等学校ではインターンシップを実施するとか、そういうことをそれぞれの地域において、小中高、体系的な職場体験学習ができるように今研究をしているところでございます。

 私ども、引き続き、小学校段階から子供たちの発達段階に応じた組織的、系統的なキャリア教育の推進に努めてまいりたいと思っております。

山際委員 内容は理解いたしました。ぜひこれは、全国展開するということですから、進めていただきたいと思います。

 ただ、このトライやる・ウイークを全国展開してもらいたいということを我々のフリーター対策研究会で議論をしたときに、これのよさというものは、一週間にわたってやることなんだということが示されました。実は、この間、武蔵野市長にお話を伺ったときにも、これとは別ですけれども、セカンドスクールというような形で、やはりこれも一週間行かせるんですね。汚い話ですけれども、二、三日だとトイレを我慢する子が出てくるんだなんという話まで出てまいりました。

 ですから、恐らく一日や二日の、職場体験という言葉を使うよりは職場見学に近いようなものであると、職業体験としてはインパクトが弱いし、余り効果もないんだろうと思うんです。

 そういう意味でいうと、今のお話の中では、小学校や高校においてはまだまだその整備というものが進んでいないということでございますので、ぜひこれは、小学校、中学校、高校とすべてのステージにおいて、できれば一週間と言わず二週間でもいいんですから、なるべく長い時間この職業体験、その発達段階に応じた職業体験ができないかというふうに私は思うんですが、これに関しては副大臣、どのような御所見をお持ちでしょうか。

塩谷副大臣 まさに先生がおっしゃったとおりだと思っております。

 中学校段階で、今お話がありました兵庫県でのトライやる・ウイークを参考に、今全国的に五日間ぐらいのキャリア教育ということを推進しておるわけでございますが、ただ見学だけではなくて、やはり実際に体験するためにはある程度の時間が必要だと思っておりますので、五日以上の職場体験、インターンシップの実施を進めてまいりたいと考えておりますので、この点は、具体的に、小学校段階から地域の協力あるいは系統的な中で実施ができるように、今後も努めてまいりたいと考えているところであります。

山際委員 実は、私が前職でありました獣医師をやっているときに、動物病院にも地域の小学生と中学生が職場体験と称して来ました。それを受け入れていましたが、一日、二日しかいないと、本当にお客さんなんですね。これが一週間、二週間いるとなれば、それは犬の散歩でもさせてみるかという話になるわけでございますので、ぜひここの部分は進めていっていただきたい、このように思います。

 次に、このキャリア教育という意味でいいますと、私このフリーター対策研究会で勉強しているときに、学校と実社会というものが今非常に接点がない、隔離されてしまっている、だから、学校で習ってきた知識というものが実社会ですぐには生かせないということが子供たちの失業率を上げている、どうしてもフリーターになってしまう原因の一つだということが指摘として上がってまいりました。

 そういう観点からいいますと、小中高ではなくて、最終的に社会に出る段階の大学生に対してのこのキャリア教育というものが必要なわけです。これに関してはどのような形で今進められているかというのを簡単に御説明いただけますでしょうか。

石川政府参考人 大学におけるキャリア教育についてのお尋ねでございます。

 これの代表的なものとして、インターンシップ活動があるわけでございますけれども、近年、各大学におきましても、こういったインターンシップ活動に積極的に取り組まれておるところでございまして、平成十四年度では、全大学のうちの四六・三%で実施されておりまして、約三万人の大学生が正規のカリキュラムの一環としてインターンシップを体験しているという状況でございます。

 文部科学省といたしましては、こういった大学における職業体験、インターンシップ活動を推進するということから、例えばインターンシップの普及啓発を図るための全国的なフォーラムの開催ですとか、あるいは各大学で特色のあるすぐれたインターンシップの取り組みに対する支援ですとか、そしてまた、これは平成十七年度の新規施策でございますけれども、インターンシップの高度化を推進するための産学連携によるモデル事業、こんなようなことも実施する予定にしてございます。

 今後とも、こういった大学における職業体験活動の重要性にかんがみまして、インターンシップなどのこういった活動を積極的に支援するための関連施策の充実に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

山際委員 ありがとうございます。このインターンシップ等々については、まだこれを始めてから日も浅いということもあるでしょうし、なかなか多岐にわたりますから、一つ一つやっていっていただかなければいけないなと思うんです。

 実は、私も一つこのインターンシップではアイデアを持っておりまして、この子育て支援というものの中に、女性が子供を持ち産休をとるといった場合に、その産休の穴埋めというわけじゃないんですけれども、その産休であいたところにインターンの学生さんを使ってみるのはどうかというのをこの間少子化研究会のところで議論いたしました。こういったアイデアも私はあるんだろうなと思います。学生さんですから、当然、産休が終わればもとの学校に戻る。あるいは、学生さんですから、一人でやらなくても何人かでそれを請け負って、インターンシップですからやるというフレキシビリティーを持っている人材だと私は思いますし、それこそ社会経験を持つという意味では非常に重要なのではないかな、こんなアイデアも持っているわけでございます。

 いずれにいたしましても、この大学というところは、本当に最初で最後に、若者が社会に出ていく上での最後のつなぎをやる非常に重要な機関でございますので、昨今、日本の経済というものが少し安定をしてきて、そして若年者、若者の失業率というものが徐々にですけれども下がりつつあるというデータが出ておりますが、しかし、これは企業側の要因の方が大きいと思うんですね。景気が少し安定してきたということの方が大きな要因だと思われます。大学の側から積極的に失業者対策をやったということではなくて、企業側の要因ではないかと思います。

 ですから、これからさらに若者をサポートするという意味からも、大学、文部科学省、積極的にこの職業体験というものを、社会との接点を持つということが必要だと思いますが、この御所見を副大臣に聞かせていただきたいと思います。

塩谷副大臣 大学と社会の関連というのは大変重要だと思っておりまして、研究開発等においては既に産学連携の取り組みがされてきておりますので、また、教育的な面においても、職業体験活動、インターンシップのこのシステムをこれから進めていくことが重要だと思っております。

 今、インターンシップにつきましては、政府参考人から話があったわけですが、期間としてはまだ短い、一週間程度というのが現実のところでありますので、今先生御提案になったような産休の補充をするようなことになりますと、もう少し長期間、一カ月程度も考えなければいけないのではないかなと思っておりますし、また、このインターンシップ制度が、それを経験したことによってどういう成果があるかとか、そういうことも今後しっかりと調査をしていく必要がある。実際にインターンシップへ行った企業へ就職するとかしないとか、そういったことも現実の問題としては生徒にとってあるいは企業にとっても重要なことだと思っております。

 このインターンシップ制度、そして職業意識の涵養や体験を積む上で非常に重要だと思っておりますので、ぜひこの点についても大いにこれから推進してまいりたいと思っております。

山際委員 時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきます。

 少子化問題、本当にこの二十一世紀の最初の四半世紀、日本にとっては大事な問題だと思います。これを文部科学省もしっかりと取り組んでいただける、大臣からのお言葉もいただきました。全力で取り組んでまいりたいと思います。

 本日は、ありがとうございました。

斉藤委員長 河合正智君。

河合委員 公明党の河合正智でございます。

 私は、本日は主に学校の耐震化につきまして、塩谷副大臣初め関係各位に御質問申し上げたいと思います。

 実は私は、公明党の災害対策本部、これは常設されておりますが、そこの事務局長もさせていただいておりますので、その立場から種々御質問させていただきたいと存じます。

 まず、三月二十三日に地震調査研究推進本部地震調査委員会が報告しました「全国を概観した地震動予測地図」の概要について、御説明をいただきたいと存じます。

坂田政府参考人 ただいま先生御指摘の「全国を概観した地震動予測地図」でございますけれども、これは、これまでに私ども実施してまいりました、全国の主要な九十八の断層帯で発生いたします地震でございますとか、あるいは海溝型地震などにつきまして、将来の発生規模あるいは発生の可能性についてまず評価をいたしまして、さらには、地震の発生時の強い揺れの予測手法の検討、こういったものの成果、これらも踏まえまして、我が国の各地域において将来の強い揺れに見舞われる可能性を示したものでございます。例えば、一例として具体的に申しますと、今後三十年以内に震度六弱以上の揺れに見舞われる確率、何%ぐらいであるか、そういったものを示した全国的な地図でございます。

 また、この地震動予測地図の報告書の公表にあわせまして、同じ地震調査研究推進本部に政策委員会というのがございますけれども、その中の成果を社会に活かす部会におきましては、この地震動予測地図に対します国民あるいは各地の防災機関などの関係者の理解を深めまして、地震防災対策への活用を図る際の手引になるということをねらいといたしまして、部会の報告書を取りまとめているところでございます。

河合委員 特に東海・東南海・南海地震及び首都直下型地震につきましてこの報告書ではどのようになっているか、お伺いさせていただきたいと思います。また、あわせまして、今回の福岡県の西方沖地震につきまして報告書ではどのようになっていたのか、お伺いさせていただきたいと思います。

 私の問題意識は、東海地震につきましては、マグニチュード八と言われておりますが、発生確率はこの三十年以内で八六%、東南海・南海地震、これはマグニチュード八強と言われておりますが、同じく三十年以内の発生確率が五〇%から六〇%、南関東での地震、これはマグニチュード七を想定されておりますが、同じく三十年以内の確率が七〇%という大変高い確率が予測されております。

 さらに、福岡県の西方沖地震につきましては、これは専門家もおっしゃっておりますけれども、いわゆる未知の断層と言われているところ、これは震源が海の中ですから、陸地と違いまして断層帯につきまして詳しく調査されていなかった。しかし、文科大臣が地震調査研究推進本部長を務められておりますこの地震防災対策特別措置法ができましたのは、そもそも平成七年の阪神・淡路大震災を契機にしまして、地震防災対策の強化を図ることを目的としてこの報告書になってきていると思われますけれども、例えば福岡県西方沖地震のようなものはある意味でノーマークだったのではないかという国民の不安に対して、お答えをいただきたいと存じます。

坂田政府参考人 ただいま先生から大変大事な御指摘をいただいたと存じております。

 まず、今回の報告書で、東海・東南海・南海地震、あるいは福岡県の西方沖の地震についてどのように記述をされているかということについて、まず申し上げたいと思います。

 東海・東南海・南海地震、大変国民の方々が御心配いただいている地震につきましては、評価の結果といたしまして、まず結果から申しますと、先生もおっしゃいましたとおり、今後三十年間の発生確率が大変高いということでございます。また、規模につきましても、おっしゃられましたとおり、マグニチュード八を超えるような大変大きなものと評価されております。

 したがいまして、今回の地震動予測地図におきましても、それらの影響を受けまして、太平洋側の地域一帯が総体的に強い揺れに見舞われる確率が高いということでございます。したがって、この地震動予測地図にも高い大きな震度がしっかりと表示されているということになっております。

 それからまた、首都圏の問題でございますけれども、近くの相模トラフでございますとか、それからまた東海地震、東南海地震等でございますけれども、こういった海溝型の地震、いわゆるプレートが沈み込んで起きるような地震、これにつきましては、先生も御指摘のとおりマグニチュード七とか八とか大変大きな地震が考えられますので、その影響を首都圏でも強く受けるのではないかというぐあいに評価されております。

 それから、特に御指摘ございました福岡県の西方沖の今回の地震、ノーマークだったのではないかということでございます。確かに、これまで福岡県の今回の西方沖の地震につきましては、あらかじめ活断層があるということはわかっておりませんでした。

 そういう活断層があらかじめわかっていないような地域の地震をどうやって評価するかということでございますが、今回の西方沖あたりの地震の評価につきましては、過去にいろいろと地震が発生しております。例えば、マグニチュード七という大変大きな地震は、実は一七〇〇年、三百年くらい前でございますが、そのときに一回あったということでございました。しかし、地震の評価をやるに当たりましては、大きな地震だけではなくて、例えばマグニチュード一とか二とか三とか五とか、そういった地震もこの西方沖近辺で過去に起こっておりますので、そういった地震の規模とか発生頻度もあわせて考慮いたしまして、今回の地震動予測地図におきましては一定の評価が出されております。

 実は、具体的に申しますと、この地域の将来の地震の発生確率、頻度ということにつきましては、マグニチュード五よりも大きいものが百年間に〇・〇二ないし〇・〇五回ぐらいであろうという評価を実は地震動予測地図でしております。

 一方、地震動予測地図で強調しておりますのは、いかに確率が低くても地震はいつでも起こる可能性があるのだ、したがって国民の皆様にはいつでもその備えをしっかりやっておかなければいけないということをあわせて強調しておりますので、私どもといたしましても、今後、いかに発生確率が数字の上で低いということがあっても、地震の備えは常日ごろからやらなければいけないということを国民の方々に普及啓蒙できるように努力していきたい、このように思っております。

河合委員 問題は、この報告書をどのように活用するかということでございますが、簡潔にお答えいただきたいと存じます。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今申しましたとおり、地震動予測地図、まずは国民の方々に地震防災意識の啓発ということにしっかり用いる大事な資料ではないかと思っておりますし、また、国あるいは地方公共団体などにおきまして具体的に地震防災対策を検討するに当たりましても、これは基礎的な資料になるというぐあいに思っております。さらには、今後の全国の地震にかかわる調査観測でございますけれども、それをいかに重点的に選定し、やっていくかというためにも大事な基礎資料だと思っております。当然ながら、いろいろな企業活動等をやるに当たりまして、どういった施設をどこにつくるのかといった判断のためにもお役に立てていただけるのではないか。そういったことを、今回の地震動予測地図につきましては大事な観点のものではないか、私どももそのように取り扱っていきたいと思っております。

河合委員 今御答弁いただきましたように、国や地方自治体等の地震防災対策の検討の基礎資料とすることという報告がなされております。学校の耐震化にもぜひとも基礎資料に使っていただきたいと思うものでございます。

 さて、ただいま御報告ありました東海・東南海・南海地震、三つの地震の脅威につきまして、梅田康弘京都大学防災研究所地震予知研究センターの教授はこのようにおっしゃっております。

 東海・東南海・南海地震、この三つの地震が連鎖的に起こることは考えられますかという質問に対しまして、考えられると。それは、一六〇五年の慶長地震、一七〇七年の宝永地震では、三つの地震が連動して発生している。一八五四年には安政東海地震と安政南海地震の二つの地震が連続して発生した。中央防災会議が公表しました被害想定では、三つの地震が同時に発生した場合には、マグニチュードは八・七程度で、神奈川県から宮崎県までの範囲で震度六弱以上、福島県あたりまでは震度五の揺れに見舞われます。高知県などには十メートルを超える大津波が押し寄せると言われています。被害想定は、最悪の場合、死者約二万四千七百人、九十六万棟の住宅が全壊、経済被害は約八十一兆円に達する、兵庫県南部地震の約八倍もの被害となるでしょうと。

 このときに起きる一番大きな問題として、教授はこのようにおっしゃっております。

 震度五以上になりますと、それぞれ災害対策本部を設置しなくてはいけませんから、よそへ応援に行かれません。だれも応援に来てくれないことを覚悟して対策を講じなければいけないとおっしゃっております。これはすさまじい御意見だとして、私も伺っております。

 そこで、学校についてこれからお伺いさせていただきますけれども、だれでもこれは否定することができない事実として、子供たちが一日の大半を過ごす場所である。そして、学校施設の八割は防災拠点に指定されている。新潟中越地震でも、私、翌々日に神崎代表と現地に参りましたけれども、地域コミュニティーにとりまして、最後の安心の守り手であったという事実がございます。そういう学校施設につきまして、大方の国民も、地震が起きて避難する場合は学校に避難しよう、このように考えていると思いますけれども、実は大問題がございます。防災拠点としての耐震化ができていないという事実でございます。

 そこで、お伺いさせていただきます。最近に発生しました大地震は、幸いなことに子供たちが学校にいない時間帯に発生しておりますので、いろいろな推計予測の中から過去のデータとしては使われていないわけでございますが、順次お伺いさせていただきたいと思いますが、最近の主な大規模地震による学校施設の被害状況について、特に学校施設が使用不能になったケースはどの程度あったのか、お伺いさせていただきます。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 最近の大規模地震による学校施設の被害状況でございますけれども、今先生御指摘の、まず昨年十月に発生した新潟県中越地震でございますが、新潟県など六県の国公私立の学校施設で合計四百二十四校に被害が出ております。また、ことし三月に発生しました福岡県西方沖地震では、現在のところ、福岡県など五県の学校施設で合計五百四十二校に被害が出ている状況でございます。被害の内容としては、校舎の柱や壁のひび割れ、あるいは体育館の天井材の一部落下、こういった内容でございます。

 このうち、先生御指摘の使用不能になったというケースでございますけれども、新潟県中越地震におきましては、特に被災の著しい小千谷市など四市町については、市の要請によりまして、文部科学省職員を現地に派遣しております。それで、学校施設など百四十三棟の応急危険度調査を実施してございます。その結果、一つは、建物の構造体への被害がございまして、使用を制限する必要がある、こういう施設、建物が二十棟ございました。それから、天井材あるいは照明器具の落下、こういった危険性がございまして建物の使用を制限する、こういう必要が生じた例が、建物が三十二棟、合わせますと五十二棟ありました。

 また、福岡県の西方沖地震でございますけれども、これにおきましては、福岡県の福岡市の教育委員会の方から報告を受けておりまして、屋根材の落下などの危険性あるいは安全点検のために建物の使用の制限をしていたものは、小中学校九校という報告がございます。

 以上でございます。

河合委員 では、通告に従いましてまとめてちょっとお伺いさせていただきますが、公立小中学校施設の築二十年以上の建物の老朽状況はどの程度あるのか。それから、公立小中学校施設の耐震性確保の現状についてお伺いさせていただきます。あわせて、昭和五十六年の新耐震基準以前の建物の耐震診断の実施状況について。三点、お伺いさせていただきます。

大島政府参考人 お答えいたします。

 まず、築二十年以上のものでございますけれども、文部科学省で毎年実施しております実態調査によりますと、公立小中学校のうち、建築後二十年以上経過した施設については七二・九%を占めているという状況にございます。

 それから次に、公立小中学校施設の耐震化の状況ということでございますけれども、現在、公立学校施設の耐震改修状況調査結果によりますと、耐震性が確認されている建物は全体の四九・一%にすぎないという状況になってございます。

 さらに、昭和五十六年、これは新耐震基準に変わった年でございますが、それ以前の建物の耐震診断の実施状況ということでございますけれども、これにつきましては、耐震診断を実施したものが四五・二%、対前年に比べて一〇%余り増加しておりますが、こういった状況になっているところでございます。

河合委員 ただいまの御報告によりますと、二校に一校は耐震化ができていない、こういうことではないかと思います。さらに、耐震性の確保どころか耐震診断すら満足にできていないという実態がございますが、どうしてこういうことになっているのか、その理由をお伺いさせていただきます。

大島政府参考人 お答えいたします。

 耐震診断を十分していない理由でございますけれども、本年の一月に都道府県の教育委員会を通じて実施した調査によりますと、耐震診断経費の予算措置が困難といった理由が一番主な理由として挙げられているところでございます。

河合委員 お金がないからできないというお答えでございました。さらに、これは後ほど質問させていただきますが、先ほど答弁をいただきました全国の地震動予測地図でございますが、これは皆さんごらんになっていると思いますけれども、改めてお示しさせていただきますと、私がさっき申し上げました東海・南海・東南海を中心とした太平洋沿岸は真っ赤に塗られております。これは一目瞭然でございます。

 しかし、もう一方の、耐震化の推進など今後の学校施設整備の在り方についてという今年三月に調査研究協力者会議が報告しておりますデータによりますと、例えば、学校施設への経費支出について大変な地域間格差がございます。これは不思議なことに、この真っ赤に塗られている地域に経費支出が非常におくれている、少ないという実態でございます。なお、福岡、熊本、鹿児島、これは大臣がおいでになったらぜひとも御認識いただきたいと思っていたんですが、全国平均が四五%という今発表がございましたが、実に約一〇%の耐震診断実施率でございます。

 それから、耐震化の実施率につきましては、これは、先ほど私が申し上げました四国の徳島とか山口県もこれに入っているわけでございまして、ちなみに、この調査研究協力者会議は、学校の耐震化に今後幾ら費用を要するというふうに試算されておりますか。また、その根拠についてお伺いさせていただきます。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 今後の耐震化に係る費用ということについてのお尋ねでございます。

 先生今御指摘の最終的な報告書が三月十八日に有識者会議から出たところでございますけれども、この中で、当面、緊急の対策として必要なものということで指摘されておりますのが、公立小中学校の耐震性が確認されていない建物約七千七百万平米のうちの、特に倒壊、大破の危険性が極めて高いと考えられる約三分の一の建物、約二千六百万平米に当たりますが、これについては、向こう五カ年間で優先的に耐震補強等を図っていくべきだ、こう指摘されているところでございまして、その事業費はおおむね三兆円、こう考えられているところでございます。

 三兆円の根拠でございますが、二千六百万平米、これをおおむね改修という手法によってコストを意識して進めるわけですが、そういった場合によりますと、おおむね平米十一万円強、十一万円程度ということが想定されておりまして、この推計により約三兆、こう算出しているところでございます。

河合委員 ただいまの会議の三月の報告書の中で、児童生徒の安全を早急に確保するために、耐震性能が十分でない校舎につきましては、従来基本方針としてきた、建てかえる改築よりも耐震補強を中心とした改修によって、より早く、より安く学校施設を耐震化するべきであるという提言を出しているところでございます。

 さらに、最近のことでございますけれども、従来工法よりも簡単な施工で耐震性能は従来構法の一・五倍を確保できる、工期は三割縮減できるとともにコスト削減が図れるという、いわゆるパラレル構法と称されるもの、建物の外側にPC鋼材を設置するアウトケーブル方式によりまして、補強体が建物と一体化されて高い耐震性を発揮できるといったものまで実現しているわけでございますが、これをもっと安くできる方法がどんどん開発されているという事実と、それから、そもそも施設整備費の使い方に問題があるのではないかということについてどのようにお考えでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御紹介いただいた新しい改修の手法ということでございますが、非常に有効な手法だろうと思って見ているところでございます。今先生からも御紹介いただいたように、これからは建てかえから補強、改修といったものへ移行すべきだという提言を受けているところでございます。その補強あるいは改修に際しましては、工事費が安価で工期が短い改修方法といったものが非常にとうとばれるわけでございまして、こういったすぐれた整備事例の普及、それから専門家による助言を行う相談窓口を充実する、こういったことについてさらに充実を図ってまいりたい、かように考えているところでございます。

 それから、施設整備費の使い方ということでどうなんだとの御指摘でございますけれども、文部科学省といたしましては、公立学校施設の耐震性能の強化ということは極めて重要な課題と認識しているところでございまして、これまで、公立学校施設整備費の執行に当たりましては十分留意してきたところでございます。特に、具体に申しますと、耐震化事業につきましては、補助に当たっては優先的、重点的に採択を行ってきた、そういった状況にあるところでございます。

河合委員 こういう現実を踏まえまして質問させていただきます。三月三十日に、東海・東南海・南海地震の地震防災戦略というものが中央防災会議で決定されております。そして、これは各省庁に具体的に数値目標を設定させて取り組ませているところでございますが、何と文科省はこの報告書で、学校の耐震化につきまして数値目標を設定しておりません。これは腰が引けているのではないか。いかがですか。

塩谷副大臣 三月三十日の防災会議の中で、減災目標ということで数値目標が示されたわけでございますが、学校施設につきましては、設置者である市町村等の取り組みに関する具体的な数値が検証されていないということで、数値目標設定が困難であったということでございます。

 今後、やはり定量的な把握等も含めて、例えば、学校だけではなくて病院等もそういう施設に対しても減災目標、数値を出すということで我々は取り組んでまいりたいと思っております。今後もまた指導をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

河合委員 今副大臣がおっしゃいましたことは非常に大事なことだと思います。病院と学校をこの国の政策の中から優先順位を低くしている、これはいかなることかと私は憂えます。

 だから、学校の耐震化という問題は文科省一省だけで取り組むべき問題ではないのではないか。第一に、子供という国の宝が学ぶ場所である。第二に、それは防災拠点、避難場所として最も国民が最後のよりどころとしているところである。さらに、よりどころということでいいますと、中越地震のときでも、地域、コミュニティーが崩壊するのをその二つによって防いでいる。これは国家の政策として取り組むべきではないかと思いますが、いかがでしょうか、柴田統括官。

柴田政府参考人 現在、東海地震、東南海・南海地震及び首都直下地震といった大規模地震の発生が非常に危惧されております。また、新潟の中越地震だとか福岡の西方沖地震のように、この日本列島、いつどこで大きな地震が起きても不思議でないという状況にございます。

 お尋ねの学校の耐震化についてでございますが、委員御指摘のとおり、子供は国の宝であります。災害によりこの宝物に傷がつくことは避けるということについては我々親の責務であると考えております。また学校は、御指摘のように、災害時には避難所の役割も果たすわけでございまして、非常に重要な施設でございます。この耐震化というのは地震防災対策の中でもとりわけ重要でございます。

 三月三十日の中央防災会議におきまして、東海地震等、大規模地震の被害を今後十年間で半減させる地震防災戦略というものを策定いたしました。学校の耐震化につきましては、御指摘のように、目標が定性的にとどまってございます。戦略の中でも、学校の耐震化等、重要な項目であって定性的な表現にとどまっている目標につきましては、今後、数値目標の設定に努めていくということを定めてございます。

 また、当日の会議におきまして、村田防災担当大臣から、この耐震化について速やかにその数値目標を掲げていただきたいということで、関係大臣にも強くお願いいたしております。また、総理からも、この耐震改修の促進に積極的に取り組むように御指示をいただいたところでございます。

 今後とも、関係省庁が連携いたしまして、学校施設の耐震化の促進に努めてまいります。

河合委員 私は、平成十六年十二月三日の平成十七年度予算編成の基本方針を改めて読み直してみましたけれども、重点四分野に効率的に配分するということでございますが、その四分野の中に今私たちが議論したことは欠落しております。

 重点四分野の一つ、第一、人間力の向上、教育となっておりますが、人間そのものを守るという視点がございません。なかんずく、未来の宝である子供の命を守るという視点は欠落しております。人間の存在そのものを欠落しておいて、その人間力、力を重点化するという哲学的な欠陥をここに私は感ずるわけでございます。

 さらに、四分野から除かれております「社会資本整備」のところでは「災害への対応にも十分配慮する。」しかし、「具体的には、」というところでは学校施設はすっかりと外れております。このことを申し上げまして、質問を終わります。

斉藤委員長 川内博史君。

川内委員 おはようございます。川内でございます。

 まず、けさの新聞あるいはテレビのニュースなどでは、教科書の検定についての話題が次々と報道されていたわけでございます。

 きょうは教科書検定のことについて若干まずお伺いをさせていただきたい。今大臣がいらっしゃらないので、大臣が戻ってこられるまでの間はちょっと事務的なことを幾つかお尋ねさせていただきたいというふうに思います。

 平成十八年度から使用される中学校の教科書の検定結果が昨日発表されたわけでありまして、私のところにも資料を届けていただきました。その中に、「平成十六年度教科書検定結果の概要」という一枚紙が入っておりましたが、これについて若干の御説明をいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 昨日公表いたしました「平成十六年度教科書検定結果の概要」につきまして御説明をさせていただきます。

 今回の検定は、ただいまお話がございましたように、平成十八年度から使用される中学校の教科書について検定をしたものでございます。検定の申請点数は百四点でございます。そのうち、合格が百三点でございます。なお、一点、一度不合格になりまして、再申請がございまして合格ということになっておりますので、百四と百三という数になってございます。

 検定の概要でございますけれども、教科用図書検定基準の改正等を踏まえまして、多くの中学校用図書で学習指導要領には示していないいわゆる「発展的な学習内容」が取り上げられております。

 図書のページ数につきましては、今回、中学校の教科書は現学習指導要領になりましてから二回目の検定でございますけれども、前回検定の供給本との比較では、図書のページ数は増加をしておりまして、特に数学や理科は二割ぐらい増加をしている状況にございます。

 私どもといたしましては、学習指導要領及び教科用図書検定基準に従いまして適切な検定を行ったというふうに考えているところでございます。

    〔委員長退席、河合委員長代理着席〕

川内委員 保健体育で一点不合格があったということでありますけれども、これは何で不合格になったんですか。

銭谷政府参考人 教科書の検定におきまして、ページ数当たりの修正点といいましょうか、間違いが百ページにつき八十以上あった場合には、これは不合格にするということになっておりまして、当該保健体育の教科書につきましては、百ページ当たり八十カ所以上の誤りがあったということで不合格にしたものでございます。

川内委員 検定基準に沿って合否の判定をされたということであろうと思います。

 さらに、昨日いただいた資料の中に「中学校歴史教科書の検定について」という紙もいただきました。この「中学校歴史教科書の検定について」というホッチキスでとめられた紙の中に、1、2、3の中の3のところに「特定の申請図書の検定状況」という報告があります。るる記述があるんですけれども、この「中学校歴史教科書の検定について」、「3 特定の申請図書の検定状況」ということをわざわざ御説明された、この内容についてわかりやすく御説明をいただきたいというふうに思います。

銭谷政府参考人 先生お尋ねの特定の申請図書の検定状況についてという部分でございますけれども、これは、前回平成十二年度の検定、つまり十三年の四月に検定結果を公表した検定に際しまして大変新聞等で話題になりました発行者の申請図書につきまして、今回どのような状況になっているのか、これを御説明した方が一つの情報提供として適切であろうと判断をしてお示しをしたものでございます。

 これは扶桑社の歴史の教科書でございますけれども、ここに、私どもといたしましては、今回、全体で百二十四カ所の検定意見を付し、修正が行われ、それで合格をしたということをお知らせしたものでございます。

    〔河合委員長代理退席、委員長着席〕

川内委員 さっき、保健体育で不合格になったものは八十ページで百カ所でしたか、百ページで八十カ所。それで、全体で百二十四カ所修正箇所があったと。扶桑社のこの歴史教科書というのは何ページの教科書ですか。

銭谷政府参考人 今、総ページ数がちょっとすぐ出てまいらないのでございますけれども、百ページに換算をいたしますと、扶桑社の申請図書は百ページ当たりの意見数は三十三カ所でございました。

川内委員 それでは、この特定の申請図書というのは扶桑社の前回話題になったものであるから、今回特に丁寧に説明をしたという理解でございますが、私は、この扶桑社の歴史教科書について、中身について立ち入ろうとは思っておりませんで、学習指導要領に沿って記述がなされているものであれば、それはいろいろな記述のされ方があるであろう、いろいろな書き方があるであろうというふうに思います。

 その実際の例として、この「中学校歴史教科書の検定について」という紙の中には、扶桑社の中学校歴史教科書の今回の検定事例といって、どういうふうに修正をしたかということまで御説明をいただいております。内容については、いろいろな歴史の解釈、考え方、あるいは主張というものがあるであろうと思います。

 しかし、教科書の検定というのは、検定の基準に沿って公正厳正に検定が行われなければなりませんし、公正厳正に行われていれば、それはそれでいろいろな形のいろいろな記述の教科書があっていいというふうに思います。

 しかし、一部には、これは私が言っているんじゃないですよ、一部には、この扶桑社の歴史教科書に文科省は大変甘いんじゃないか、あるいは後押しをしているんじゃないかというような意見もあるわけであります。(発言する者あり)だから一部だと言っているじゃないか。おれが言っているんじゃないと言っているじゃないか。

 だから、そんなことは絶対にない、公正厳正にやっている、検定の基準を公正厳正に適用して合否を判断したんだということを確認させていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 教科書の検定は、学習指導要領に基づいた記述であること、申請図書の内容に誤りや不正確な記述がないこと、特定の事項等に偏った扱いとなっていないこと、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること、児童生徒の発達段階に適応していることなど、歴史の教科書に係る以上のような検定基準に沿いまして、教科用図書検定調査審議会の議を経て公正に実施をしているものでございます。

川内委員 初中局長、今るる述べられたが、私は、平成十六年六月発行の教科書関係法令集、文部科学省初等中等教育局教科書課と書いてある冊子をきょうは持ってまいりましたが、今初中局長が述べられた言葉の中に、教科用図書検定規則、義務教育諸学校教科用図書検定基準、あるいは教科用図書検定規則実施細則などという言葉が一切出なかったけれども、この教科書関係法令集に載せているこれらの規則、実施細則、基準等にのっとって公正厳正に検定は行うんですよね。これを確認させてください。

銭谷政府参考人 失礼をいたしました。

 申すまでもなく、学習指導要領及び義務教育諸学校教科用図書検定基準、これに基づきまして検定は実施するものでございます。

川内委員 いや、検定基準だけじゃなくて、教科用図書検定規則実施細則あるいは教科用図書検定規則、これらにものっとるんですねということを確認しているんです。

銭谷政府参考人 重ねて失礼をいたしました。

 それらに基づいて実施をするものでございます。

川内委員 それでは、扶桑社のこの歴史教科書なるものが、内容ではなく、検定の申請手続の中で、今初中局長が述べられた、教科書関係法令集に定められているこれらの検定基準や教科用図書検定規則、あるいは教科用図書検定規則実施細則にきちんとのっとっていたかどうかということを確認させていただきたいと思うんですが、まず私は、幾つかこれはルール違反があったというふうに事実を御指摘申し上げたいと思うんです。

 まず、昨年十二月に、埼玉県の教育委員に、平成十二年度検定の扶桑社の「新しい歴史教科書」の監修者であった高橋さんという大学の先生が任命をされました。その際、高橋さんが教科書採択をする側の教育委員の立場になられたわけです。しかし、高橋さんというのは「新しい歴史教科書」の採択を求める教科書監修者の立場でもあったということが問題になったわけであります。

 初中局長、ちょっと高橋さんの具体的な事例を離れて、一般的な事例としてお答えいただきたいんですが、採択対象となる教科書の監修者、執筆者、編修者が教育委員などの立場で教科書採択に関与することについては、地教行法十三条五項に抵触するというふうに思われますが、文科省の見解をお示しいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 教科書採択の公正確保の観点から、教科書の編著作者等が採択に関与するということはやはり望ましくないわけでございまして、従来からそういう指導を行ってきております。

川内委員 望ましくないとか指導を行っているというふうにおっしゃるが、私が聞いたのは、地教行法十三条五項に、法令に違反するかと聞いているんです。望ましいとか望ましくないとか聞いているんじゃないですよ。

銭谷政府参考人 教科書の採択に当たります教育委員会において、教科書採択の公正確保の観点から判断すべきことだと思っております。

川内委員 公正確保の観点から判断すべきと。教科書を執筆あるいは監修あるいは編修した人が採択する側にいる、回った、回る、これは一般論ですよ、回るということが公正だと思うんですか。

銭谷政府参考人 今のお尋ねについて、私は公正でないと思っております。

 これまでも、教科書の編著作者が採択に関与することにつきましては、文部科学省でそれをしないように指導しているところでございますので、今お話しのように、教科書の編著作者が採択に関与するということはこれは公正ではないというふうに私は思います。

川内委員 大臣、今の初中局長の見解を御確認いただきたいと思います。

中山国務大臣 やはり一般的には好ましくないと思いますね。

川内委員 それでは、次の論点に移らせていただきたいと思います。

 扶桑社の第一のルール違反でありますけれども、昨年十二月二十二日付の産経新聞の「正論」の欄で、やはり平成十二年度検定の扶桑社の歴史教科書の執筆者のお一人でありました拓殖大学教授の藤岡信勝先生が、その「正論」の欄の中で、「高橋氏は、来年度採択される教科書には執筆者としても監修者としても全く関与していない」と書いておられます。

 高橋氏が執筆者であるとかないとか、あるいは監修者であるとかないとか、そういうことを言うことさえ私はルールに反すると思うわけでございますが、この件に関して、文科省は、やはり同じ思いを持たれたんでしょう、教科書検定の静ひつな環境を保つためにはこういう論文は好ましくないというふうに、文科省もやはり私と同じようにお思いになられたと思われます。扶桑社に対して厳重注意をこのときされたというふうに伺いました。

 この事実関係について確認をさせていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 お尋ねの件については、扶桑社に対して、好ましくないことであると言って指導しております。

川内委員 そうすると、好ましくないというのは、この教科書関係法令集にある検定規則あるいは検定規則実施細則のどの部分に反するというふうに、どの部分に該当するというふうに判断をされたのでしょうか。

銭谷政府参考人 教科用図書検定規則実施細則というのがございまして、その第五に、「申請図書の公開」という規定がございます。その第二項に、「申請者は、申請図書の検定審査が終了するまでは、当該申請図書並びに当該申請図書の審査に関し文部科学大臣に提出した文書及び文部科学大臣から通知された文書について、その内容が当該申請者以外の者の知るところとならないよう適切に管理しなければならない。」、この件が、ずばりかどうかは別にしまして、この趣旨に反するというふうに私どもは思っております。

川内委員 そこで、論文の中で藤岡先生は、高橋先生が、今回検定合格した扶桑社の教科書には執筆者としても監修者としても全く関与していないと言い切っておられるわけであります。

 この点について、若干の事実確認をさせていただきたいと思いますが、扶桑社から検定申請図書に添付して文部科学大臣あてに提出をされた著作編修関係者名簿が差しかえられた、あるいは一名その名簿から名前が削除されたと聞いておりますが、この事実関係についてお答えをいただきたいというふうに思います。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、教科書の検定におきましては、検定申請時に、申請書の添付書類として、申請図書の著作編修に関与したすべての者の氏名、職業などを記載いたしました著作編修関係者名簿というものを提出することとされております。

 この名簿は文部科学省が内容の審査を行う対象ではなく、検定審査中であっても申請者側からの届け出により名簿の内容が変更されるということはあり得るわけでございます。

 事実関係を申し上げますと、今回の教科書検定におきましては、扶桑社の申請図書につきましては、歴史的分野の申請図書に関する名簿の内容が変更されることはありませんでした。一方、公民的分野の申請図書に関する名簿につきましては、記載事項の変更届が提出されたところでございます。当該変更届は昨年十二月六日付で届け出がなされたものでございまして、その内容は、公民的分野の申請図書の監修者一名を削除するというものでございました。

川内委員 済みません。歴史は差しかえられていない、公民は一名差しかえられたと。差しかえられたのが六月六日ですか。十二月六日。ごめんなさい、十二月六日ですね、はい。

 削除されたのは、その公民の教科書の監修者としての高橋先生の名前ということでよろしいですか。

銭谷政府参考人 若干事情を説明させていただきたく存じますけれども、著作編修関係者名簿につきましては、中立公正な検定を行う観点から、検定審査に携わる教科用図書検定調査審議会の委員等が申請図書の編著作に関与していないことを確認するために申請者に提出をさせているものでありまして、これまでは、その目的を超えて積極的に公表するということはしていなかったわけでございます。

 ただ、文部科学省としては、教科書採択の公正確保の観点から、従来から教科書の編著作者等が採択に関与しないように指導を行ってきたわけでございますので、採択から編著作者等の排除を徹底するためには、著作編修関係者名簿を活用し、確認を行うことが有効であるというふうにも考えております。

 こうしたことから、今後は、教科書検定に際して提出された著作編修関係者名簿について、都道府県教育委員会に提供したいというふうに思っておりますが、現段階ではまだ提供しておりませんので、現段階で個人名を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。

川内委員 著作編修関係者名簿、それは、差しかえる前、あるいは差しかえた後、差しかえた場合は、その二通りの編修者名簿を都道府県教育委員会に提供するということでよろしいですね。

銭谷政府参考人 そのように考えております。

川内委員 別に私は、扶桑社とかあるいは高橋さんとか、そういう個別の方々をどうこうというふうに申し上げているわけでは当初からないわけであります。一定のルールに従って、公正厳正に行われなければならない、それが教科書検定のまず第一番の条件であろうというふうに思うわけであります。

 今、文部科学省の方から、検定が行われた後の教科書採択についても公正さが担保されるように、著作編修関係者名簿については、差しかえられた場合は、その差しかえられる前と後と二通り含めてすべて都道府県教委に提供するという新たな方針が示されたわけでありますが、大臣、この方針を御確認いただきたいというふうに思います。

中山国務大臣 そのとおりやりたいと思います。

川内委員 はい。

 ただ、それでも私は疑義があるのは、検定規則実施細則によると、先ほど初中局長が御答弁をいただいたように、この著作編修関係者名簿には、申請図書の著作編修に関与したすべての者の氏名、職業などを記載することになっているわけであります。著作編修関係者名簿には、申請図書の著作編修に関与したすべての者の氏名、職業などを記載することになっている。もし仮に、当初、著作編修関係者名簿に名前があった、しかし、それが申し出によって削除されたと。誤りで名前を載せたのか、それともわざと名前を隠したいから削除したのかという議論はそこに残るわけであります。

 実施細則には、すべての人の名前を書いてくださいねと書いてある。しかし、申請者側の何らかの意図でその名前が削除をされる。これはある意味、文部科学大臣あてに提出する正式な文書、あるいは公文書と言ってもいいかもしれませんが、大げさなことを言えば、公文書の偽造にも当たるようなことにもなるのではないかと思われますが、初中局長の御見解をまずちょっと確認させていただきたいというふうに思います。

銭谷政府参考人 お話のございました著作編修関係者名簿は、申請者が検定申請時に提出をするものでございまして、文部科学省が内容の審査を行う対象ではないわけでございまして、文部科学省は受理をするにとどまるものでございます。

 したがって、文部科学省において名簿やその変更届に虚偽の記載があるかどうかを判断することはできないわけでございまして、各申請者から適正に提出をされることが重要であるというふうに思っております。

川内委員 初中局長、この教科書関係法令集の五十三ページ、「添付書類 申請図書の著作編修に関与したすべての者の氏名」、何回も繰り返して読みますが、「などを記載した別紙様式一による「著作編修関係者名簿」一部を添付する。」と書いてあります。すべての者の氏名を提出しなさいというふうに細則は定めている。

 しかし、その名簿が差しかえられる。これは文部科学省が、私どもは文部科学省として、なぜ差しかえられるかを知り得る立場にはないというのは、これは言い逃れではないでしょうか。すべてのこの教科書にかかわった人の名前を提出してくださいねと文部科学省はこの法令集の中で定めているわけです。それに対して、名簿が差しかえられた、一名削除される、あるいは二名削除される、そういう場合に、なぜ削除するのかと。本来であるならば、もともと、すべての執筆者なり編修者なり監修者なりを書いて提出してくださいよという名簿です。それについて、私どもは知り得る立場にないというのは余りに無責任ではないでしょうか。

 さらに、例えば、もともと申請者側がその人の名前を隠したいと思ってこの名簿に最初から名前を載せていない、しかし、実態としてはその人がかかわっている、そういう場合も文部科学省は今後見逃すと。この名簿については拘束力はありません、別に申請者が自由に名前を差しかえていいですよ、都合が悪けりゃ名前を載せなくてもいいですよということを今初中局長はおっしゃられたんですよ。いいんですか、それで。それじゃいけないでしょう。すべての人の名前を本来は書いていただくものである、それがこの細則に定めてあることなんですから、それは、今の答弁はもうちょっと補足して、補強していただかないと国民の皆さんを納得させることはできないというふうに思いますが、どうでしょうか。

銭谷政府参考人 著作編修関係者名簿は、繰り返しになりますが、申請者が検定申請時に提出をしてくるものでございまして、文部科学省は受理をするにとどまるものでございます。したがって、申請者において適切に名簿を整理して、私どもに提出をしていただいていると思っております。

 なお、変更については、理由の提出は求めておりませんで、形式的要件を満たせば名簿の変更を受理しているところでございます。

川内委員 いや、初中局長、適切に取り扱われていると思っておりますじゃないんですよ。文部科学省は正式な政府の機関なんですから、思っておりますじゃだめなんですよ。教科書関係法令集にすべての編修、執筆、監修者の名前を書いて出してきなさいと書いてあるわけですから、すべての方の名前がこの名簿には載っていなければならない、それが文部科学省の立場でありますと。それが公文書偽造に当たるとかなんとか言うのは私が勝手に言っていることであって、そこまで文部科学省に見解を求めているわけではないわけですから、私が言っているのは、この教科書関係法令集にのっとって、この教科書に関係したすべての人の名前が提出されていなければならないというのが文部科学省の立場ですということを御答弁いただきたいんですけれども、どうですか。思っているじゃなくてですよ。

銭谷政府参考人 著作編修関係者名簿は、検定規則実施細則に基づいて、各申請者において適切に提出されなければならないものでございます。私どもは適切に提出されているものと思っております。

川内委員 今、適切に提出されなければならない、そして文部科学省はそう思っているというふうにお答えになられた。しかし、扶桑社は、公民の教科書について名簿を差しかえたという事実もある。なぜ名簿を差しかえたのかということについては、理由はお聞きにならないんですか。あるいは、いつ聞くという、もう日程まで決まっているのであれば教えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 著作編修関係者名簿の変更の理由については聞いておりません。

川内委員 聞くつもりもないということですか。

銭谷政府参考人 聞く考えはございません。

川内委員 それは先ほどおっしゃられた答弁と論理的に整合性を欠くという指摘をせざるを得ないですね。

 当初出されている名簿がその教科書に関係しているすべての人の名簿である、しかし何らかの理由で名簿が差しかえられる、それはなぜだろうというふうに思うのが普通の感覚ではないかなと思いますが、そこはちょっと議論しても水かけ論になるんでしょうから、次に移らせていただきますが、私は聞かれた方がいいと思いますよ。これは意見として申し上げておきます。

 扶桑社の教科書についてはもう一つ重大なルール違反というものを指摘せざるを得ないわけでありまして、いわゆる白表紙本と呼ばれるものの流出であります。

 検定規則あるいは検定規則実施細則のどの項目にこの白表紙本が流出したことが違反になるのかということを御説明いただきたいというふうに思います。

銭谷政府参考人 先ほども関連で御説明申し上げたところでございますが、教科用図書検定規則実施細則第五という規定がございまして、その第二項で、「申請者は、申請図書の検定審査が終了するまでは、」「その内容が当該申請者以外の者の知るところとならないよう適切に管理しなければならない。」ちょっと途中省略いたしましたけれども、その部分に当たるかと思います。

川内委員 扶桑社の教科書が、白表紙本が流出をした、検定期間中に世の中に出回ったということに関しては、検定規則実施細則第五条二項に違反をするという御見解、御説明をいただいたわけでありますが、大臣、この初中局長の説明を確認していただきたいと思います。

中山国務大臣 そのとおりでございます。

川内委員 今文科大臣からも、白表紙本の流出に関しては検定規則実施細則の第五条二項に違反するという確認の答弁をいただきました。

 私が昨日、この件についてるる担当の方に御説明をいただきました。検定期間中に、白表紙本の流出について、文科省は扶桑社に対してどのような指導をされたのかということをお伺いしたいというふうに思います。

銭谷政府参考人 今回の教科書検定におきまして、検定決定前に扶桑社の申請図書が流出をしたところでございまして、扶桑社に対しまして、申請図書の管理の徹底について指導をしてきたところでございます。

 具体的には、まず昨年の十月の二十七日でございますけれども、扶桑社が、申請図書に関する意見聴取のため、意見を聞くため、七月下旬以降申請図書を教員に配付していたことについて、その回収を指示するとともに管理の徹底を指導したところでございます。

 次に、本年の一月二十五日でございますけれども、昨年の十月の指導以降も申請図書を教員に貸与あるいは閲覧させていたということにつきまして、扶桑社に対し管理の徹底を指導したところでございます。

 さらに、ことしの三月十二日でございますけれども、扶桑社の申請図書が流出しているという旨の報道がございました。それを受けまして、三月の二十二日に扶桑社を指導したところでございます。

 以上でございます。

川内委員 白表紙本の流出について、三回扶桑社を指導したということでありますが、今回の検定期間中、白表紙本の流出について文科省から一回でも指導を受けた出版社が扶桑社以外にありましたか。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 文部科学省がお尋ねの件で指導した申請者は、ほかにはございません。

川内委員 ほかには一社もないと。非常に文科省というか扶桑社に対して同情的にお話をすれば、ほかの申請者のものは、それほどマスコミでも注目されていないから、白表紙本が出回っていたとしても、だれも話題に取り上げずにすっとそのまま見過ごしているのかもしれない、かもしれない。それはわかりません、私には。文科省にもその情報が上がらずに、結局現状に至っているのかもしれない。結果として、扶桑社だけが何回も、みんなの注目を集めているし、注意を受けているのかもしれない。

 しかし、事実としては、事実としては、扶桑社だけが三回指導を受けている。さらに、藤岡先生の産経新聞の「正論」欄における記述においての厳重注意というものもあった。この間、私の質疑の中で教科書関係法令集の中にある検定規則あるいは検定規則実施細則に反しているという指摘もさせていただき、それもお認めになられた。しかし、それでも検定に合格をされたわけであります。

 これは、扶桑社に対して、余り白表紙本の流出が話題になるようだと検定中止になることもあるよ、検定をもう即座にやめることになるかもしれませんよみたいな、警告みたいなことはされなかったんでしょうかね。

銭谷政府参考人 扶桑社に対しましては、文部科学省からは、検定規則実施細則の趣旨を説明し、回収を指示するとともに、申請図書の管理の徹底ということを促したわけでございます。

 特に、お尋ねのようなことについては、ちょっと直接のやりとりを今全部記憶しているわけではございませんけれども、何とも申し上げられないところでございます。

川内委員 初中局長、それから大臣、この質疑は国民の皆さん全員が、注目しているとまで言うと変かもしれない、まあ見ていらっしゃると思うんですね、議事録として永遠に残るわけですから。

 静ひつな環境を保つべき教科書検定において、白表紙本が流出し、三回指導を受け、一回厳重注意をし、しかし、それでも検定に合格したと。これは前例になりますよね。今後、教科書会社が検定中に白表紙本を流出させても、とにかく指導を受けて、はいはい、改めますと言っていればいいんだ、あるいは、教科書の執筆者が検定中にいろいろなところに何を書こうが、厳重注意を受けて、済みませんでしたとその場は言っておけばいいという前例になります。

 私は、それでいいとは文部科学省としては思っていらっしゃらないというふうに思うんですよ。いや、だから扶桑社だけは特別なんだ、えこひいきしたんだというのであれば、ほかの社には厳しくするといえば、それはそれでまた論理的には整合するんですが。

 繰り返して申し上げますけれども、厳重注意されても、三回指導されても、検定に合格する。ほかの教科用図書の申請者は、今後はそういうことでいいんだなというふうに思ってしまうわけです。それでは、私は、教科書検定のルールあるいは静ひつな環境というものは保てなくなってしまうと思うんですね。

 ですから、ことしのこの教科書検定は、昨日その合否が発表されたわけでありますけれども、今後の課題として、やはり、この実施細則とか検定規則とかあるいは検定基準、これらの教科書関係法令集に違反した場合には、断固たる措置をとる、あるいは、公正厳正に対処すると最初言われたわけですから、公正厳正に対処するという何か新たなルールをつくらないと、ただ指導だけしてその場ははいはいと言わせておいて、それで終わりましたということでは、ルールを守るというのは、これは教育のイロハのイじゃないですか。

 どうですか、初中局長。新たなやはり検定のルールをもう一つぐらいつけ加えないと、例えば、指導一回なら許すけれども、指導二回になったらもう検定中止よ、そのぐらいはっきりこの法令集の中に書かれたらどうかなというふうに思うんですが、ちょっと御見解を聞かせていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 まずお断りを申し上げたいのでございますけれども、私ども、教科書の検定に当たりましては、申請者に対しては公平な取り扱いということを基本に行っているわけでございます。また、内容的な面につきましては、先ほど申し上げましたように、学習指導要領あるいは教科書検定基準等に基づいて適切に行うようにしているところでございます。

 今回の件につきましては、検定決定前に申請図書が流出をしたと。回収はしていただきましたけれども、これは極めて遺憾であると考えております。

 従来から、申請図書の管理の徹底について私どもとしては厳しく指導してきたところでございますけれども、今後再びこういうことが生じることとならないように、申請図書の管理についてさらに厳しく指導していきたいというふうに思っております。

川内委員 いやいや、だから、公平に申請者を扱っているというのであれば、白表紙本が流出しても何回か指導を受ければそれでいいということでいいんですかと私は聞いているわけです。ほかには今回指導を受けた社はなかったわけですから。扶桑社だけが三回指導を受けて、一回厳重注意されて。そうすると、ほかの申請者も、三回ぐらい指導を受けても、とりあえず営業のために検定期間中だけれども、やはり、先生方これどうですかと見せた方がいいじゃないですか、それを許すんですかということですよ。

 この一時間の議論の中で、実施細則に違反している、反しているということもお認めになられたわけですから、そうすると、じゃ、今後どうするかということについては、やはり何らかの新たな措置を講じなければなりませんねというのが、これは当然でしょう。ただ厳重にやりますとか一生懸命頑張りますとか、そんな情緒的な言葉で、教科書検定というこれは文部科学省にとっての大事な事業ですよ、それを済まそうというのはだめですよ。

 先ほど、著作編修関係者名簿については、差しかえる前と差しかえた後とすべて教育委員会につまびらかにします、通知しますと。これは一つ評価します。それは、公平公正な採択を担保する上で大事なことですから、これは一つ評価します。しかし、では今回の一連の経緯を踏まえて、文科省としては、教育委員会にその二通りの名簿をきちんと通知すること以外に、ほかにどんな策を講じますかと聞いているわけです。それは今までと一緒ですということなのか、それとも新たな何らかの措置を考えますというのか、どっちですか。

銭谷政府参考人 申請図書の取り扱いにつきまして、その管理について遺憾な事態が今回生じたわけでございます。私ども、申請図書の管理の徹底について厳しく指導してきたところでございますけれども、今回の経緯もかんがみつつ、再びこういうことが生ずることとならないように、申請図書の管理の指導について、よく検討してまいりたいと思っております。

川内委員 申請図書の管理の指導について検討してまいりますというふうにお答えになられた。申請図書の管理の指導についてというのはよくわからぬですね。申請図書の管理について実施細則に検討を加えますとか、これで十分かどうか検討しますぐらいはこの場で言わないと、これはおさまりがつかないですよ。管理の指導をやっていきますでは、今までと一緒ですと言っているだけじゃないですか。もうちょっと正確に言葉を使ってくださいよ。

銭谷政府参考人 今後再びこういうことが生じないように、指導のあり方についてよく検討してまいります。

川内委員 指導のあり方って、指導というのは何なんですか。では、教科書関係法令集の中に、指導することの根拠がどこにあるか言ってくださいよ。

銭谷政府参考人 先ほど来申し上げております実施細則の第五の第二項で、申請図書につきましては、検定決定前は部外の人にふれてはならないということが決められているわけでございますので、それが十分担保できるようなあり方について指導していくということでございます。

川内委員 いや、だから、指導していくって、指導するのは、ではこの中のどこに根拠があるんですかということを聞いているわけよ。

 いいですか、初中局長。国語力の向上と言っているんだから、文部科学省は。それで、子供たちを教育していくときに、ルールを守るというのは大前提ですよ。そうじゃないですか。教科書関係法令集の中に、流出してはならない、適切に管理しなさいと書いてある。それに違反した、法令に違反しているんですよ。違法行為ですよ。それに対して、とりあえずそれは困りますよ、三回指導した、ほかの人はそんな指導はなかった、今後はそんなことが起こらないようにします、しますというのはわかるが、しかし、今後はそういうことが起こらないようにする担保をどうこの教科書関係法令集の中でしていくんですかということを聞いているわけです。

 だから、もしこの実施細則に違反した場合には指導を強化すると書き込むんだったら、書き込めばいいですよ。そういうふうに書き込みますと言えばいいですよ。ただ指導を強化しますというのは、何もしないと言っていることなんです。国というのは、すべて書かれた言葉で仕事をするわけでしょう。この皆さんがおつくりになられた教科書関係法令集の中に今後の教訓をどう生かしますかということを聞いているんです。

 そうすると、何回も何回も指導しなければいけないような状況では困ります。実施細則に違反した場合には、審議会を開いて、それは私が言うことじゃないかもしれないが、審議会を招集して審議会でどうするかを議論していただくようにしますとか、それはいろいろな言い方があるじゃないですか。いろいろな検討の仕方があると思いますよ。

 ただ、私が望んでいるのは、お言葉をいただきたいというふうに思っているのは、今回の一連の経緯を踏まえて、教科書関係法令集の中で今回の経緯が生かせるような何らかの措置を検討したいということですよ。指導を強化するというのは、今回と一緒ですと言っているわけですから。何らかの措置を検討したい、そのくらいはやはり言わないと、検定の静ひつな環境を保つのが文部科学省のまず第一の役目でしょう。それを担保するためにどうするかということを聞いているわけです。もう一回答弁してください。

銭谷政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、検定決定までの間、申請図書の内容が外部に漏れることがないように、平成十四年以降、教科用図書検定規則実施細則に基づいて、その管理を私ども指導してきたわけでございます。

 このような取り扱いを求めているのは、申請図書が検定決定前に流出した場合に、その内容についてさまざまな意見が出され、静ひつな環境のもとで円滑に審査を行うことに支障が生ずる、そのことを避けるためでございます。

 今回の件につきましては私ども遺憾であると考えておりますので、今後、この問題についてどういう対応をとっていくべきか、よく検討していきたいと思っております。

川内委員 若干不満は残りますが、よく検討するというふうにおっしゃられました。

 大臣、この初中局長の御説明を、大臣答弁として確認をしていただきたいというふうに思います。

中山国務大臣 やりとりを聞いておりまして、なかなか難しいなと思いました。

 なぜかというと、申請本が流出したという新聞記事を見たとき、だれが流出させたんだろう、この申請本を採択してほしくない人がわざと流出させているんじゃないか、私はそう思ったんですよ。それを流出することによって問題が起これば、逆に違反的なことになるかもしれないということで流したのかなと、私は最初そう思ったんですが、どうもそうじゃないということを後で聞いたんです。

 その辺非常に難しいのは、それでは、そういった人たちがどんどん流出させたら当該申請本がストップされるとかいうことになっても困るわけで、この問題は非常に難しいなとやりとりを聞いていたんですけれども、この細則にも、流出によって検定の審査に支障を生ずるときには一たん審査を停止することができるというようなこともあるわけですから、そういったことも踏まえて考えていかなければいかぬなと。

 なかなか難しいんですけれども、「適切に管理しなければならない。」と書いてあるわけですから、まさに川内委員が言われたように、教育に携わる方々がルール違反をするようなことは本当に問題なわけですから、そこをまずきちっとやるということは当然の前提なので、指導をされること自体が本当はおかしいというふうに、私はそういう意味で当事者の自覚をまちたいなと思っておりますし、文部科学省としてはそういうことにならぬように指導を徹底するということにさせていただいた、こう思っております。

川内委員 大臣、大変ありがたい御答弁をいただいて感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 今決められているいろいろなルールごとの中で、しかしそのルールが守られなかった、そのことに対して、私は、一回指導してそれでおさまれば別にそれはそれで、人間には間違いもあるし、勇み足もあるということでいいかもしれない。しかし、三回指導した、一回厳重注意したという今回の事例ですよね。それを一つの経験として踏まえて次の検定に生かしていくとすれば、大臣も今おっしゃられたように、「管理しなければならない。」と書いてある、それがルールだ、しかしそのルールが守られていないということに関しては、守れない場合はこうするよと。

 今大臣から、検定を中止する場合もあるというふうな御答弁もあったわけでございますが、しかし、いきなり中止ではこれまたいろいろな事情が、それこそ大臣がおっしゃられるように、いろいろな人たちのいろいろな思惑で流出することもあるでしょう。しかし、そういういろいろなことを考えた場合に、当初から、もし流出したりした場合にはこうなりますよ、あるいはこうしますよというようなことを書いておくべきではないかというふうに思うんです。

 だから、私はそう思うが、しかし文部科学省としてはそう思わないかもしれない。しかし、どちらにせよ、今回のこの教科書検定に当たっての一連の経緯を踏まえて、ただ指導を強化するだけではなくて、初中局長は何ができるか検討もしてみると。指導を強化するというのは、大臣、恐らくまた次も流出するだろうという前提があるわけじゃないですか。だから指導を強化するというわけでしょう。ところが、もう流出させない、適切に管理させるというためには何らかの措置を検討する、よく考えたいというふうに初中局長はおっしゃられたわけです。

 大臣も、私ごときに言われて、おまえに言われて検討するとは言いたくねえやと思われるかもしれないんですが、ぜひ、今回の一連の経緯をやはり一つ一つ踏まえて、よくこの実施細則、規則、検定基準を見直すことも一つ仕事として必要なのではないかというふうに思いますが、もう一度御答弁をいただきたいと思います。

中山国務大臣 あなたに言われたからどうこうと、そんなことは全く考えないで、もう本当にあなたの考えにそうだと言いたい気持ちなんですけれども、まだちょっと、この年になるといろいろなことを考え過ぎるのかもしれませんが、逆に、扶桑社が、何らかの手段でほかのところのを入手して、それを何度も何度も外に出したらどうしますか。そういうことも何かやはり考えるんですよね。だから難しいと私は言っているわけでございまして、だから、これも一義的にはやはり自覚にまつしかないんだろうと思うんです。そう言われるので、検討しないとは言いませんが、本当に難しいということは御理解いただいた上で、今局長も言いましたから、いろいろ対応は検討したいとは思っております。

川内委員 ありがとうございます。私も、難しいというのはよくわかっているんですよ。しかし、いろいろな出来事があって、それを契機としていろいろなことを考えてみる、議論してみるというのは無意味なことではないと信じておりますので、よくまた初中局長のもとで御検討いただいて、また御報告をいただければというふうに思います。

 それでは、あと十五分しか時間が残っておりませんけれども、著作権法について幾つかの質問をさせていただきたいと思います。

 まず、昨年もこの文部科学委員会で大議論になりました還流防止措置の著作権法の改正案について、一月一日から施行されておりますが、現在までの運用状況について御説明をいただきたいというふうに思います。

加茂川政府参考人 お答えを申し上げます。

 いわゆる還流防止措置に関し、これまで税関に、日本レコード協会会員あるいは準会員から申請が行われたケースが八件あると承知をいたしております。

 また、日本国外に所在するレコード会社からそういった申請があったことについては、そういった情報は得ていないところでございます。

川内委員 今文化庁次長から、外国人の権利者からの申請もないという御説明でありました。財務省にも来ていただいておりますのでちょっと御答弁をいただきたいんですが、この還流防止措置については、法律の条文とは全く別に、文化庁から通知が発出されて、この制度、この著作権法の改正案が法律改正の趣旨のとおりに運用されるような工夫というものがさまざまな場面で、文化庁さんの著作権課の御努力によってなされているわけであります。

 外国人の権利者から差しとめの申請が出された場合に、税関として、すぐそれに対応する体制がもうとられている、心配しないでくださいと。音楽ファンが見ておりますので、税関も、著作権法の改正案の趣旨を踏まえて仕事をしていきますということを、ちょっと確認の答弁をいただきたいと思います。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど文化庁次長の方からお答えがございましたように、ことしの一月一日以降、昨日までで調べましたけれども、音楽用のCDの著作隣接権に係ります輸入差しとめ申し立て、これは八件受理してございます。このうち一件でございますが、音楽用のCDと音楽用のカセットということでございました。

 今先生御指摘の点でございますけれども、今確かに文化庁の方が申し上げたように、差しとめ申立者は国内ということになってございます。税関と申しますと、内外問わず、そういうことに対しましてはきちっと対応できるということになってございますし、知的財産、この著作権あるいは著作隣接権を含めました知的財産につきましてもこのところ私ども増員措置等を図っておりますし、言葉につきましては正直言いまして全く不自由はないということでございますので、きちっと今後とも文化庁と相談しながらやろうと思っております。

 以上でございます。

川内委員 ありがとうございます。

 さらにもう一点、著作権法の改正案の運用状況についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 書籍、雑誌の貸与権についてなんですけれども、当事者間の交渉が難航していると聞いておりますが、今現在どういう状況になっているのか、あるいは、今後どういうふうになるのか。文化庁としての見通し、これはまあ民民の話し合いですから、基本的には文化庁は関係ない、勝手にやってくれという立場でしょうが、しかし、それにしても文化行政をつかさどる、著作権法をつかさどる官庁として、今後どのような見通しで、この貸与権のレンタルコミックの件について見通しを持っていらっしゃるのかということをちょっと御説明をしていただきたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のように、今関係当事者間で協議中でございまして、話し合いの結論がまだ出ていない状況でございます。ただ、利用者のことも考えますと、暫定的な取り扱いで今進んでおるところでございまして、私どもとしましては、当事者間の話し合いができるだけ速やかに決着することを注視しておるところでございます。

川内委員 私、加茂川次長にこの前大変お世話になりまして、三月一日に、新潟のジャズ喫茶スワンの経営者の方が横浜のジャズ喫茶の経営者の方と、文化庁長官あてに、社団法人日本音楽著作権協会、JASRACに関する請願署名簿を届けにお伺いをしましたときに、加茂川次長に大変丁寧な御対応をいただきました。本当にありがとうございます。感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 大臣、ジャズ喫茶とかあるいはライブハウスというのは、その町々のアマチュアのミュージシャンとかあるいはプロを目指すミュージシャンとか、音楽が好きな人たちが集まって、その町の音楽文化の発信基地になるわけです。

 ところが、JASRACという音楽著作権協会というところは、潜入捜査員をまず潜り込ませて、大体どんな曲を演奏しているとか、どんな曲をかけているとか、まるでCIAのようなことを一年か二年やった後、いきなりだあっと請求書を持ってくるわけですよ。十年分、例えば五百万払ってくださいとか。そうすると、みんなびっくりして、一体何なんだ、そんなお金は払えないと思って、払えませんと言うとしばらくほっておかれるわけですね。そうすると、今度は、払わないんだったら今度は六百万ですよと、だんだん値段がつり上がっていく。結構感情的にもこじれる。最後は裁判して、裁判すると著作権法で権利者の方がこれはもう当然の請求をしているわけですから、ある意味しようがないわけで、負けてしまうわけです。

 しかし、こういうJASRACのやり方というのは、文化の発展という著作権法の第一条、もって文化の発展に資することと書いてあるわけですね。ところが、町の音楽文化の発信基地であるライブハウスやジャズ喫茶をつぶすようなことを権利者団体がやっておったら、これはちょっとそれこそ法の趣旨にもとるのではないかというふうに思うわけでございます。(発言する者あり)そう思うでしょう。初めて中野先生と何か意見が一致しましたけれども、ありがとうございます。

 では、加茂川次長、JASRACの、過去にさかのぼって巨額の請求をしにやってくる、取り立てに来る、こういうあり方について、どういう御見解を持っていらっしゃるかということをまずお聞かせいただきたいと思います。

加茂川政府参考人 お尋ねは、JASRAC、日本音楽著作権協会の行う使用料の徴収事務についてでございます。同協会は、音楽著作権のいわゆる管理事業者として、権利者の立場に立って音楽の利用について全国的に使用料を徴収しておるわけでございます。

 具体的には、管理事業者として、利用者との契約に基づいて使用料を徴収するわけでございます。契約の必要性ですとか、使用料の額、先ほど額について少し法外な請求もあるかという例も御指摘になりましたけれども、使用料の合理的な額でありますとか、支払い方法等について十分丁寧に説明をした上で、管理事業者としての責務を果たすことが求められておるわけでございます。

 その際には、当然、十分丁寧に説明をした上で、しかも、もし調査が必要であれば相当な方法で行われるべきものと私どもも考えておるわけでございます。

川内委員 十分に丁寧にと。加茂川次長が十分に丁寧にと言うと、本当に十分に丁寧にやっているのかなとみんな思うかもしれないんですが、ところが、JASRACというのは本当に皆さん泣かされているわけですよ。

 著作権管理事業法によれば、ジャズ喫茶もライブハウスも、自分たちで利用者団体をつくってJASRACと交渉すればきちんとした交渉ができますよというような法の枠組みをおつくりいただいているわけですね。この前、加茂川次長に、ジャズ喫茶も利用者団体をつくって交渉されたらいかがですかという大変ありがたいアドバイスもいただいて、私どももそういうふうにしようと思いまして、今動いているところなんです。

 ところが、大臣、JASRACに、利用者団体、要するにお金を払う団体をつくるから、今JASRACさんで把握していらっしゃるジャズ喫茶、ライブハウスの店舗名を教えてください、今どういうところと交渉されていらっしゃるのか教えてくださいというふうに申し上げましたら、それは教えられないということなんですよ。

 やはり、それは多分、JASRACにしてみれば、団体で交渉するといろいろ知恵が出るじゃないですか、団体側も、利用者側も。そうすると、そんないろいろな知恵をつけられた団体と交渉するよりは、各個撃破で四百万払え、五百万払えと言って歩いた方がいいやということなんでしょうけれども、私は、これは日本の音楽文化の発展のためには、JASRACはよくない態度だというふうに思うんですね。

 今自分たちが持っている情報は、彼らは利用料を、使用料を徴収するためにジャズ喫茶、ライブハウスの情報を集めているわけですよね。我々はというか、ライブハウスの人やジャズ喫茶の人たちはお金を払うためにその情報を教えてくださいと言っているわけです。これは別に個人情報保護法にも何にも抵触しないですよね、お互いにその目的のためにその情報があるわけですから。

 大臣にこんな、JASRACに名簿を出せと言ってくださいと言うと失礼な話ですから、ぜひ次長、建設的な音楽文化の発展のためにジャズ喫茶あるいはライブハウスは利用者団体をつくりたいと言っているんです。

 大臣、今まで、ライブハウスとかジャズ喫茶は一応使用料規程を団体と結んでいるということになっているんですよ、JASRAC側の言い分は。しかし、今まで一回も、ジャズ喫茶あるいはライブハウスの代表者と話し合ったことはないんですからね。

 業種のくくりでいうと、喫茶店、ライブハウス、ジャズ喫茶というのが一つのくくりになっていて、喫茶店の代表者と話し合ってライブハウスとジャズ喫茶の使用料を決めているんですからね。喫茶店は使用料が年間六千円なんですよ。ところが、ライブハウスとジャズ喫茶になると月四万よこせ、月五万よこせという、これは喫茶店のおやじが決めたわけですからね。これはおかしいですよ。委員長もそう思うでしょう。だから、利用者団体をきちっとつくって正規の話し合いをしましょうよということを今持ちかけているわけであります。

 ぜひ次長、JASRACに対して、これは管理事業法によれば、最後は文化庁長官が裁定を下すという文化庁のかかわりもしっかり明記されているわけですから、その使用料規程を、しっかりとしたものをつくるために、JASRACに対して、利用者団体をつくりたいという方たちに名簿を提供すべきであるということを申し伝えていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 JASRACの管理事業者としての責務の果たし方について大変いろいろ難しい場面、課題もあるようでございまして、利用者もさまざま、事態もさまざまなようでございまして、協会においてもいろいろな努力を計らっていると私どもも聞いております。

 その中でも、委員御指摘のように、善良な利用者にきちんとした理解を得た上で利用料を払ってもらうという健全な契約関係の履行も大切でございますので、そういった紛争が生じないような努力もJASRACの方で図ってほしいということは、私どもも所管庁として鋭意申し述べているところでございます。

 今回のジャズ喫茶の陳情を契機としたわけでございますけれども、JASRACとしましても、できるだけ利用者の理解が得られるように、本年四月から、苦情相談を受け付けるいわゆるインフォメーションデスク、ヘルプデスクとでもいうんでしょうか、そういう窓口を設けまして丁寧に対応するということを形として示しておるわけでございます。また、パンフレット等の広報資料についても努力をしたいと言っておりますので、丁寧な対応については引き続き私どもも働きかけてまいりたいと思っております。(発言する者あり)

川内委員 中野先生という強力な援軍を得るとは私も思わなくて、きょうは大変うれしい思いをしております。

 この場で、次長、なかなかいろいろなことはおっしゃりにくいと思うんですが、しかし、次長も今、御説明の中で、心ならずも、形だけはという、形だけは整えておるようでございますというふうに、形だけはという言葉をお使いになられたように、JASRACに対しては、いろいろな人が、音楽の利用者が泣かされてきているという実態は次長も御存じだろうというふうに思います。

 それで、一つの事例として、私はこの前、自分がダンスをするものですから、ダンス団体とJASRACの間に入って使用料規程を今交渉して、もうすぐ多分決まると思うんですが、そうすると、今度は、ジャズ喫茶、ライブハウスの皆さん方が営業しやすいような使用料規程というものをつくってさしあげる必要があるということでお手伝いをしております。

 文化庁としても、個別のこうやります、ああやりますということはここではお答えになりにくいでしょうから、では、可能な限り協力をしますと。ジャズ喫茶やライブハウスの団体の皆さんに、可能な限り、文化庁としても、いい使用料規程を結んでいただけるような、可能な限りの御協力はいたしますということぐらいはちょっと色をつけて言ってくださいよ。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 繰り返しになりますけれども、JASRACは、著作権者の立場に立ってその権利を管理する団体、責務を持っておるわけでございますから、JASRACが本来の責務をきちんと実行するという前提のもとで、もしくは、利用者からの理解を得た円滑な利用料徴収ができるという前提のもとで、私ども、できるだけの働きかけをしてまいりたいと思っております。

川内委員 そろそろ、私の質疑があと二分ぐらいで終了するわけでありますが、まだあと十項目ほど質問がございまして、その中で、厚生労働省から要望の出ている著作権関係の要望事項について、一つ一つの説明は結構です、いろいろな書類で厚生労働省から出ている著作権法改正に関する要望、これは障害者の皆さん、例えば目の不自由な方とかあるいは耳の不自由な方々が著作物に触れやすい環境をつくってくださいという厚生労働省からの要望でありますが、これに対して、文化庁としてどのようにお取り組みになられるかということを最後にお聞かせいただきたいというふうに思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘の課題につきましては、現在、文化審議会の著作権分科会法制問題小委員会において検討を進めておる事柄の一つでございます。同小委員会におきましては、今後優先して対応すべき著作権法上の課題について、大局的、系統的な観点から問題を整理したばかりでございます。

 著作権法に関する今後の検討課題というものでございますが、この中に、委員御指摘の厚生労働省からの要望事項、すなわち、福祉関係の権利制限あるいは障害者福祉関係の権利制限についても課題の一つとして挙げられておるわけでございまして、同小委員会でこれから鋭意検討を進めてまいるところでございますが、つい先月の会議でも、厚生労働省の担当者に御出席いただきまして、要望事項について詳しく説明を受け、意見交換もしたところでございますので、検討結果を待っていただきたいと思っております。

川内委員 ありがとうございます。終わらせていただきます。

斉藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。須藤浩君。

須藤委員 民主党の須藤浩でございます。

 本日は、学校の安全対策に関する事項、それから宇宙開発に関する事項の質疑をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 最初に、学校安全対策についてですが、これはもう本当に毎日のようにマスコミ報道等で私たちの知るところですが、ますます学校自体がいわゆる危険なといいますか、犯罪が行われてしまうようなところになってしまっている、こういった現状があります。

 これまでは、学校の中で犯罪が起きたり、あるいは学校の中にそういった危険な場所があるというようなことは、まずほとんどなかったと言っていいくらい、それこそ、そういう事件があれば、これは一体どうしたことかとびっくりするような状態であったんですが、残念ながら今日では、いわゆる社会で起きるような犯罪が、しかも小さな子供たち目がけて行われてしまう。その意味では、非常に危険というものが学校の現場にも入り込んできている。この状況に関しまして、現在文科省の方で行われています対応あるいは対策について一つずつお伺いをしたいと思います。

 最初に、平成十一年十二月に日野小学校で、二年生の男子児童が侵入者により殺害をされるという大変痛ましい事件が起きました。

 そして、そこから翌年になって平成十二年の一月、これは文科省の方で、幼児児童生徒の安全確保及び安全管理についての点検項目ということで、当時は文部省でしたけれども、児童や生徒の安全確保を徹底させるために、都道府県の教育委員会等に対してこの安全対策の通知をされています。

 そして、平成十三年六月、これは御存じのように、大阪教育大学の教育学部附属池田小学校で、侵入者が児童八人を殺害して、そして教師も合わせて十五人が負傷するという大変な事件が起きました。

 引き続いて、平成十三年の八月には、文科省の方として、幼児児童生徒の安全確保及び安全管理についての点検項目の改定、平成十二年の一月に出されました点検項目をさらに改定いたしまして、より対応をすべく、その内容を通知されています。

 そして、平成十四年の四月、文科省で子ども安心プロジェクトというものを開始されています。これは、文科省で関係省庁や関係機関等と連携をして学校安全及び心のケアの充実に総合的に取り組むということで、さらにこういった事件に対しての対応がなされています。

 その後、これは平成十四年十二月に、学校への不審者侵入時の危機管理マニュアルを作成されています。文科省として、不審者侵入の際の参考として全国の学校関係機関、団体等に配付をされております。

 そして、平成十五年十二月に宇治小学校事件というのが起きました。これは、京都府の宇治市宇治小学校において、侵入者によって一年生の男子児童二人が負傷するという事件です。同じくこの年には、桜台小学校事件、兵庫県の伊丹市立桜台小学校において、侵入者により六年生の女子児童が負傷するという事件が引き続いて起きています。

 そして、平成十六年、昨年の一月に、文科省として学校安全緊急アピールというものを、子供の安全を確保するための方策を提示されています。

 平成十七年の一月、ことしの一月には、白里高校事件、千葉県立白里高等学校に包丁を持った男が侵入し、女子職員に重傷を負わせる、こういう事件が起きました。

 そして、この二月、平成十七年二月十四日に、大阪府の寝屋川市立中央小学校に十七歳の少年が侵入をして、包丁で教職員三名を刺して死傷させるという事件が起きました。

 こうして見ますと、表現はちょっと悪いですけれども、イタチごっこじゃないんですけれども、事件が起きる、対応する、対策をする、しかしその後にまた事件が起きる、こういったことがずっと繰り返されております。

 私は、今日の日本の社会状況がそれをそうさせているという側面もあろうかと思いますけれども、多分に、こういった事件を起こしてしまっている個人に大きな責任はあると思うんですが、それを学校であり地域でありあるいは社会というものが未然に防ぐような状況にはまだ至っていない、もしかしたら今後もこういう事件が起きてくる危険性は十分にあるだろうと推測をされます。

 そこで、これまで文科省が行われてきたその対策についてお伺いをしたいんですけれども、平成十三年の六月に大阪教育大学附属の池田小学校で起きた事件のときに通知を出されまして、その後、監視カメラやフェンス等を学校に整備していこう、つまり機械的な意味の防犯をしていこうじゃないかということで、財政支援を行うこととされておりますが、この財政支援をされて監視カメラを取りつけるということに関して、どういう状況があるか、財政支援がどれほどされているのか、あるいは、学校等あるいは都道府県教育委員会等に関係するでしょうけれども、そちらとのやりとり、そういったものがどういう状況にあるか、まずお伺いしたいと思います。

大島政府参考人 お答えを申し上げます。

 公立学校施設の防犯対策に関する工事に関しましては、児童生徒が安心して学べる環境づくりを推進するという趣旨で、一定規模以上の場合には、国庫補助の対象としているところでございます。

 今お尋ねの監視カメラ等の設置等につきましては、これについても、大規模な改修と同時に整備する防犯監視システム等の整備を図る場合には、事業費の三分の一を国庫補助の対象としているところでございます。

 さらに、通常の新増改築といったものを行う際にも、工事全体の中で安全対策を講ずる場合についても補助対象としているところでございます。

 以上でございます。

須藤委員 大規模改修時、これはよくあることなんですよね。結構、小中学校の義務教の施設に対する補助といいますか対策を行うときには、大規模改修時には補助金を出しますよというのは、これまでも数多く行われております。

 今回、こういった小中学校の防犯に関しても、大規模改修時には三分の一ですか、つけてあげますよということで、単独に防犯カメラあるいはモニターも含めて、そういったものをつけるというときにはどのぐらいの補助をされるんでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 施設の整備を伴わない、設備だけを整備するということにつきましては、文部科学省単独の補助というのはございませんで、十四年度から普通交付税措置によりまして、私ども要望させていただきまして、公立学校における学校安全対策費ということで、標準規模の学校当たり、これは幼稚園から小中高等学校等ございますけれども、三十三万円が措置されているということでございます。この額につきましては評価はいろいろあると思いますけれども、このような中でいろいろな設備等の対応をしていただくということになるのではないかと思っております。

須藤委員 私は、補助をしろとかそういうことを特に言っているわけじゃないんですけれども、単独の場合は今三十三万円ですか、これは、補助金ということではなくて交付税措置でその金額を市町村に交付するということですね。

 そうしますと、実は、こういった事件に関して文科省の考え方として、防犯対策にこういったカメラやモニター、そういった機械が必要である、あるいは、それが効果的な側面を持つから、補助をする、あるいは設置をするための環境を整えるということであろうと解釈していいのかどうか、伺います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生先ほどお話がございました平成十四年度から実施しておりますハード面、ソフト面の総合的な対策としての子ども安心プロジェクト、この中では、防犯教室の開催の支援でございますとか学校安全のための施設整備の支援、対応としては、メニューとしてはいろいろあるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、大規模改修の場合の整備の場合と、単独でカメラをつける、もしくは警備用の用具を整えるということで、財政需要、状況、いろいろあろうかと思います。

 私どもといたしましては、学校施設の整備に関連いたしますものにつきましては、先ほど答弁いたしましたように、あわせて対象としているところでございますけれども、それ以外の備品につきましては、各学校で設置者におきまして必要に応じて対応をしていただくことが必要ではないかというふうに考えているところでございます。

須藤委員 お伺いしていることは、つまり文科省の考え方を今お伺いしているわけですね。つまり、大規模改修のときには、そういった防犯のための監視カメラあるいはフェンスであるとか防犯用具ですか、そういったものも、恐らく会計上、一括で補助金の中に込みで支払うといいますか渡すことができるからやるのかなと。

 なぜこの監視カメラ等が必要なのかといえば、それは防犯上効果があるからということだと思うんですね。そうすると、単独でつけるときはそういうことはしませんよ、では、効果がなくなってしまうのか、それは地方自治体の問題だから関係ありませんよということなのか。効果がないのだとしたら、大改修のときに、どうしてそういったものを設置するときに国が補助金を出すのか。考え方がどうなっているのかなということをお聞きしたくて今この質問をしているんですが、いかがでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、防犯カメラにつきましては、設置することは効果があるということで、その地域の実情を踏まえてその整備等の御判断をいただきたいと言っているわけでございますけれども、やはり各自治体で交付税等で対応していただく場合と、大きな財政需要を伴うという場合には単独の補助制度を用意する場合と、それぞれあろうかと思います。

 先ほど申しました一校当たりの三十三万、これはすべての学校に積算されているわけでございますけれども、これにつきましては、その額についてはいろいろ評価はあろうと思いますけれども、私ども、学校安全を脅かす事件が起こりました後、十四年度からこのような交付税措置が必要であるということを要望いたしまして、このような対応を国としてさせていただいているところでございます。

 そういうようなことで、必ずしもすべての場合において単独の補助制度を設けるというようなことにはならないわけでございますけれども、交付税制度、補助制度それぞれ、それから私ども別途ソフトの財政支援というものもあるわけでございますけれども、そういうものの中から、多様な対応の中から設置者の方でその支援策を活用していただきたいというふうに考えているところでございます。

須藤委員 今の答弁、あるいは私の質疑を大臣はどう思われますか。補助金として出すか出さないかということよりも、私は、こういう防犯対策として文科省がどういう形でかかわるのか、その財源措置を、財源をどうするか。それは、地方が出すか、あるいは国が補助金を出して、有効な対策を打つために国がある意味で指導していくという観点が出てくるのかどうかわかりませんけれども、大臣はどう思われますでしょうか。

中山国務大臣 第一義的には、設置者である市町村等が考える話だろうということで、余り細かな補助金というのは予算がなかなか獲得できにくいという面もあるわけで、ある程度大きなものになってしまうということだろう、こう思っているわけでございます。

 そういう意味で、十分に行き渡らないという面もあることは非常に歯がゆい思いはしますけれども、しかし、そこはやはり設置者の方に責任を持ってやってもらいたいとお願いする立場でございます。

須藤委員 では、引き続き質問させていただきますが、平成十二年の一月に児童生徒の安全確保及び安全管理についての点検項目というものを出されまして、そしてその後、池田小学校事件が起きて、さらにその点検項目の改定をされております。

 この改定をされたということは、当然、最初に出された点検項目の内容が不十分であったということにかんがみて、この事件の後に点検項目を追加されたというふうに一般的には解釈されるんですけれども、それでよろしいんでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘のように、平成十二年の一月七日の通知におきまして、幼児児童生徒の安全確保及び学校の安全管理についての点検項目例ということで、各学校におきます点検の参考にしていただくための項目例をお出ししたわけでございます。

 そして、御指摘のように十三年の八月にはそれについて改定といいますか、見直しを行ったわけでございますけれども、これにつきましては、十三年の段階で都道府県の教育委員会等からの御意見もお伺いし、それらを参考にいたしまして、より使いやすいものとするという観点から改定をし、見直しを行ったということでございます。

須藤委員 この点検項目、すべてではなく例示なんでしょうけれども、見てみますと、ごくごくある意味で一般的というか、当たり前な点検項目になっているわけですね。

 例えば、学校への来訪者のための入り口や受付を明示して外部からの人の出入りを確認する、あるいは、始業前や放課後における安全確保のため、教職員の具体的な役割分担を定め、幼児などの状況を把握する、不審者の情報がある場合には幼児などの登下校の方法についてあらかじめ対応方針を定める、これに類するようなことが項目としてあります。

 それからさらに、改定をされた後の追加項目といいましょうか、それに関しても、危機管理マニュアルの作成など、校内体制の整備について具体的な項目をふやす。立て札等による案内、指示、入り口の限定、来訪者の名札等の着用、身元確認、来訪者の確認方法についてこれは具体的な項目をふやす。それから、授業中、昼休み等における安全確保体制の項目を追加したこと。教職員の対応体制の整備、避難訓練の実施など、不審者の立ち入り等の緊急時の体制の項目をふやしたこと。職員室の配置や通報機器等の整備など、学校施設面における安全確保についての具体的な項目をふやしたこと。ということで、最初の項目に関してさらに必要だと思われる項目が、これは二十項目ですか、加わっているわけですね。

 これは、その間に池田小学校の大きな事件があるわけですけれども、その小学校の事件があったからふえた、子細な、詳細な項目はちょっと私にはわかりませんけれども、事件があったからやらなきゃだめだよ、少なくともこれだけは点検してくださいよというような通知を出されているのか。それとも、その前の最初に出されている点検項目で対応できるといいますか、日常的にやっていれば十分なんだけれども、それが余り守られていないという言い方はおかしいんでしょうけれども、実行されていなかったから改めて強調する意味でこれを出したのか、その辺はいかがでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 十三年八月に見直した、改定したということからもおわかりになると思いますけれども、やはりその直前の附属池田小学校の事件、こういうものも踏まえまして、十二年一月七日付の通知においてお示しした点検項目例につきまして、都道府県教育委員会などからの参考意見を求めまして、それを踏まえまして、見直し、改定を行ったものでございます。

須藤委員 経緯はわかりました。

 では、続いて質問いたしますけれども、その後、平成十四年の四月に、子ども安心プロジェクトというものを文科省で開始されていますね。これについては、その中で、地域ぐるみの学校安全推進モデル事業、あるいは健康相談活動支援体制整備事業、こちらは終了したというようなことを伺っておりますけれども、こういった事業を行われております。

 これも当然、こういった事件が頻発している中での防犯体制をいかに整えるかということでの事業だと思いますが、この事業の内容について簡単な説明と、それから、その事業を行った結果、どういう成果、あるいは学校における大勢の反応といいますか、そういったものがあったかどうか、伺いたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先生から二つの事業について御指摘がございました。

 一つは、健康相談活動支援体制整備事業でございます。これは平成十三年度から平成十五年度まで実施した事業でございまして、都道府県教育委員会等に対する委嘱事業でありますけれども、学校への精神科医等の専門家の派遣を通じまして健康相談活動を支援するということを目的としたものでございます。

 具体的には、都道府県教育委員会に、教職員、専門医などから成る検討委員会を設置いたしまして、健康相談活動に対する支援体制のあり方について検討いただくとともに、精神科医等の専門家を学校へ派遣して指導助言等を行って、健康相談活動に関する支援を行うということでございます。

 この事業につきましては、専門家から指導助言を受けたことによりまして、各学校において児童生徒の心の健康問題について早期に適切な対応を行うことができたということとか、あと、研修会の開催などを通じまして養護教諭の資質の向上を図ることができたといった評価を受けたものと理解しております。

 なお、この事業は、十六年度からは、学校の要請によりまして、専門医の範囲を少し拡大いたしまして、各診療科の専門医の派遣を行う事業としての学校・地域保健連携推進事業として実施しているところでございます。

 それから、二つ目の地域ぐるみの学校安全推進モデル事業でございますけれども、これは平成十四年度から十六年度まで実施している事業でございますが、具体的には、小学校を中心とした地域を指定いたしまして、その地域において、学校と家庭、警察署等の関係機関、またPTA等の関係団体が連携いたしまして、地域社会全体で子供の安全を守るための各種の実践的な取り組みを推進するものでございます。

 その実践例を見ますと、例えば、学校と関係機関などとの連携によります防犯訓練の実施でございますとか、PTAなどが主体となった通学安全マップの作成、また地域のボランティアによります学校内外の巡回活動、こういった地域ぐるみでの子供の安全確保のための取り組みが実施されているところでございます。

 この事業の成果につきましては、教育委員会の担当者や学校の関係者を対象としたこの事業の連絡協議会などの場におきまして実践発表を行っていただくということで、全国に普及することに努めているところでございまして、地域ぐるみで子供を守ろうという意識は高まりつつあるのかなと思っているところでございます。

 なお、この事業につきましては、十七年度におきまして、地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業の中で、引き続き地域を指定いたしまして、地域全体で子供の安全確保に関する実践的な取り組みを引き続き行ってまいりたいと考えているところでございます。

須藤委員 事件が起きてから、その後に安全の確保を目指してこういった対策が行われてきたということを理解いたしました。

 そして、その後に、今度、平成十六年一月二十日、これはこの間に宇治小学校事件が京都府において起きていますね。男子児童二人が負傷するという事件が起きました。そして、平成十六年の一月に、学校安全緊急アピールというものが文科省から出されています。

 これについては、どのようなもので、そしてこのアピールをしたことによってどういう成果あるいは効果があらわれたのかを伺いたいと思います。

中山国務大臣 今お話がありましたように、学校安全緊急アピールというのは、宇治小学校の事件等を踏まえて、より具体的に学校の安全対策を推進しようということで、子供の安全確保のための具体的な留意事項や、学校、家庭、地域、関係機関の連携方策等についてまとめたものでございます。

 具体的には、実践的な防犯訓練等により学校独自のマニュアルを不断に検証、改善し、実効性の高いものにしていくこと、子供の安全確保のためには家庭や地域社会との連携協力による地域ぐるみの取り組みが不可欠であるということを特に強調しているところでございまして、この公表をした後、学校独自のマニュアルの作成とか、あるいは教職員や子供の防犯訓練、地域と連携した子供の安全確保の取り組みなど、各学校の安全対策は進んできている、このように考えておるところでございます。

 このような中、寝屋川市立中央小学校の事件が発生したわけでございまして、まことに残念なことでございました。文部科学省では、この事件を受けまして、省内にプロジェクトチームを設置いたしまして、学校安全のための方策の再点検など、安全、安心な学校づくりを行うための対応方策について検討してきたところでございまして、去る三月三十一日にこれまでの検討成果を第一次報告としてまとめて公表したところでございます。

須藤委員 大臣の方から、私の質問する先まで今答弁をされてしまっているんですけれども、今回こういったアピールを出されて、そして具体的な成果がどこまであったか、これは私も非常にそれを判断することは難しいかなというふうには思います。

 しかし、この後に、一月に出された後に、さらに千葉県の白里高校で包丁を持った男が侵入をする、これは小中学校ではなくて高校ですね。高校に侵入して女子職員に重傷を負わせるという事件が起きました。そして、つい最近は、ことしの二月十四日に大阪府の寝屋川事件が起きた。こうして今具体的に一つ一つ時系列で追ってみると、事件が起きました、そして文科省の方として緊急文を出したり、あるいは指導といいますか行政指導も含めて出されたり、あるいは補助金を交付してみたり、いろいろやっているんですけれども、次から次へとさまざまな事件が起きているわけですね。

 そうすると、一つ一つ成果はいかがでしたかと私は聞いているんですけれども、それをやったからといって事件が防げているということにはなっていない。では、やらなかったら事件がもっと起きたか、それもわからない。やって減ったかということも、それもわからない。現実は、やったけれども事件が次から次へと起きているという事実が今残っている状況だと私は思います。

 そこで、大阪の寝屋川事件が起きた後に、各都道府県の教育委員会教育長に対して通知を出されましたよね。それは、この事件とこれまでのこういった経緯に対して、単なる点検項目やあるいはこうした方がいいんじゃないですかという危機管理マニュアル等も含めて、そういう文書、文言でのことではなくて、これはもう緊急に何とか対策をしなければいかぬ、そういう思いが起きてきたのかな、つまりおしりに火がついたような状況になったのではないかなと私は想像するんですけれども、この教育委員会教育長等に対して通知をされた結果、これは新聞報道等によるんですが、さまざまなところでその反応が出てきていますよね。

 それは、例えば東京都では、民間警備会社に警備を委託して、そしてこの学校では保護者からその費用をいただくというような動きが出てきた。あるいは渋谷区の学校では、全区の中の小学校に警備員一人を配置する方針を表明した。それから大阪では、事件直後に地元の警察署にパトロール強化を要請した。さらに世田谷、杉並では、警察官OBによる安全パトロール隊を設置している。それから豊島区では、警備会社がボランティアで小中学校や幼稚園を巡回して警備している。群馬県では、県内すべての公立中学校で早朝あるいは夜間部活動を禁止した。さまざまな具体的な行動に出る反応が出ているということなんですね。

 これは今回、各都道府県の教育長に対して、恐らく通知というよりも私はかなり強い指導かあるいは、強制ということはできないでしょうから、そういったものが行われたのかなというようにお見受けするんですが、これはいかがでしょうか。

素川政府参考人 今先生が御紹介になりましたように、寝屋川の市立中央小学校の事件の後、各自治体におきまして非常に活発な対応が、取り組みが行われてきたわけでございます。

 私どもの事件直後の対応といたしましては、先生今御紹介いただきましたように、二月十四日に起こりましたその四日後の二月十八日に、都道府県の教育長あてに、「学校の安全確保のための施策等について」ということで、当面の対策といたしまして、学校における安全点検、それから三点ほどにつきまして個別に検討の依頼をしたところでございます。その後、省内にプロジェクトチームをつくりまして、学校安全の点検等につきまして検討を進めてまいったわけでございます。

 私どもとしましては、このような通知それからプロジェクトチームを立ち上げての検討ということで学校の安全確保の対策というものをとってまいったわけでございますけれども、地方自治体におかれましては、文部科学省における取り組み、動き、それにも増してその事件というものを各自治体におきまして非常に真剣に、深刻に受けとめられて対応が図られたのではないかというふうに思っているところでございます。

須藤委員 私は、こういった事件が起きるたびに、子供たちを守る力といいますか社会のそういった犯罪を防ぐ抑止力といったものが随分弱まってきてしまっているなというふうに感じております。私自身、個人としては、その意味では大変無力感ですね。例えば、一日学校に行って不審者が来るのを見張っているとか、そういうことでもしない限り、こういった事件を防ぐ一助にはなり得ないのかなと。ということは、逆に、現場にいる先生方やあるいは地域の方、教育委員会、警察の方、さまざまな方が連携しながら現場で協力をして防犯をするしかないだろうと思っております。

 そこで、じゃ、文科省の役割は何なんだ、あるいは地域にすれば都道府県教育委員会、市町村教育委員会の役割は何なんだと。特に、今回はさまざまな措置を含めて文科省も対応されておりますけれども、最後になってきて、これはもう本当に大変だという実感、子供たちがいつ命を奪われるかもしれないという危険な状況を日本の皆さんが感じて、あるいは行政で言えば国レベルで文科省が感じて、かなり強い指導あるいは通知を出されたのかなというふうに私は思います。

 逆に、この通知が出された後、こういう各小中学校の反応が起きたということは、じゃ、これまで一体どうされていたのかなという感がしないわけでない、いや、逆に言うと非常にするわけですね。先ほど平成十一年から六年間の経緯を述べてみたわけですけれども、恐らくその以前から、単発ではあると思いますけれどもさまざまな事件があったと思います。

 最後のここに来て、これからまだ起きるかもしれないということも含めて、各現場でこれは大変だということで、先般もテレビでやっていましたけれども、学校の先生がさすまたを持って、悪いやつが来たらそれで防ぐんだということで一生懸命やっていましたけれども、やはり最後は現場で直に任務に当たっている方々が、それこそ命を張ってでも子供を守らなければこれは守れないんじゃないかと私は思うんですね。

 そこで、各学校への指示に対して、これは単なる一例だと思うんですけれども、学校自体あるいは地域や警備会社、警察官などが入った上でのそういった対応について、いろいろな配備、配置をすると、先生に命を張れと言っていることになりそうなのでなかなかできないというような教育委員会もあったというように報告されているわけですね。

 これは、例えば警察官でしたら、目前に命の危険が生じているような事件が起きていたら、それは職務も含めて、あるいは人道上、しかも社会に住んでいる人間としてそれを防ごうとする。それは相手が凶暴でナイフを持って太刀打ちできないかもしれないけれども、そうしようという思いが、しかも職務を負っていればなおさらなことだと思います。

 学校現場では、本来であればそういった危険なことは起きないはずなんですが、現実にはそういうことがもう起きてしまっている、これからも起きるであろうという状況下では、これは先生が子供の命を守るというぐらいの気持ちはこれから常に持たないと、ちょっとやそっとではこれはなかなか防ぎ切れないかなというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

中山国務大臣 須藤委員の、ずっと過去のいろいろな、それこそイタチごっこと言われましたけれども、対策をやって間もなく事件が起こる、また対策をとってまた事件が起こるということで繰り返しだったわけですけれども、寝屋川の事件、先生が、職員がねらわれたということで、やはり大分変わってきたんじゃないかと思うんですね。先ほど御指摘ありました、通知を出した後、随分本当に真剣に考え出したなと思うんです。

 文部科学省もこれまでソフト面、ハード面にわたって継続的な取り組みもやってきたわけですけれども、やはり現場の先生方、父兄、そしてボランティアの方々、警察の関係の方々、こういう人たちがみんなで力を合わせてやらないと、だれかの責任だよ、警備員を雇ったからもう大丈夫だ、そんなものじゃないので、常にいつそういうような事件が起こるかわからないんだ、そういう緊張感を持って常時子供たちをそれこそ守るといいますか、先生方は自分も含めてですけれども、そういった緊張感がないといけない、そういう時代になっているのかな。

 そういう意味では、本当に大変な時代だと思いますけれども、このことにつきましては、まさに地域も学校も警察も、そして我々文部科学省も、今いろいろなモデルケースだとかマニュアルだとかつくると同時に、ハード面でもいろいろな支援をしながら、国全体で、地域全体で子供たちを守っていく、そういう決意が今こそ求められているんじゃないかな、そういうことを感じております。

須藤委員 今回こういった事件が起きまして、実は、先ほど大臣が言われた、「学校安全のための方策の再点検等について」ということで、プロジェクトチームの第一次報告書、これは私もいただきました。中をよく読ませていただきましたけれども、要するに、これまで指摘をされていた項目や、あるいは一般的に防犯になるであろうと考えられる、そういう意味では、常識的なことをとにかくしっかりとやっていくんだというようなことが書かれているわけですね。

 この中で、私は二点ほど指摘といいますか提案といいますか、話をさせていただきたいんですが、まず第一点は、先ほど最初に申し上げましたように、防犯カメラ、つまり施設ですね、機械、器具類等を含めたそういったものがやはり設置をされた方が、当然のことながら防犯対策に非常に効果があると。

 先般、都道府県の知事とお話をしたときに、何か事件が起きるときに文科省が一斉に指示を出して、全国の小中学校あるいはそういったところに教育委員会等を通してあれをやれ、これをやれと言うのが、果たしてそれ自体がいいのかどうかという問題。

 本来であれば、現場の教育委員会を含め地域の人たちが、ある意味の特定された地域の人たちの中で起きたものという解釈をすれば、そこでどれだけ自分たちが対応を迫ることができるかどうかという問題になるのかもしれない。そういうときに文科省が一斉に、データも含めて数値を上げろ、調査物をやれとかというようになってくると、これはいかがなものかというようなお話を伺いました。それも確かにそのとおりだな、すべてが一面だけでは語られない問題だと思いますけれども、確かにそうかなということも感じました。

 ただ、この警備に関しましては、私は、機械類における警備というのは、民間の会社であればある意味で当たり前のように行われて、今では個人の防犯対策でもインターホン初めすべてのところで行われております。ですから、こういった環境が整うような文科省における環境整備支援というものはあってもいいのかな、それが財政支援なのか何かということは具体的な方法で決めていくことになるんでしょうけれども、そういうことがあっていいだろうと。

 それともう一つは、地域の方々と協力をしてやっていくというときに、先ほど東京都の小中学校の反応といいますか例を出しましたが、警察のOBがその協力の中に入って一緒にやってくれる、あるいはボランティアでやってくれる、声をかけて旗振り役をやってくれるということがありました。中には、全児童の保護者から一律にそこにかかる警備費のお金をいただいて、それを充てるという学校もありますが、この警察OBの方々ができればボランティアでそういった中に入っていって、日ごろ鍛錬されているそういった経験を生かして活動するということが好ましいかなというふうに私は思っているんですが、きょうは警察庁の方も見えていると思いますので、その点に関してお伺いしたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 警察としましては、防犯対策を図る上で警察官退職者の活用を図ることは有効と考えており、交番機能を補完する交番相談員でありますとか、国民からの相談を受けるもの、あるいは学校等における非行防止や児童等の安全確保の分野に従事するスクールサポーターなどにOBが活用されており、今後も活用していくことが効果的であると考えております。

 また、警察退職者の中には、警視庁のシルバーポリスのように自主的に小学校や中学校の児童の登下校時におけるパトロールを実施しているなどの例も承知しているところでございます。

 このように、警察退職者については、学校の安全や地域の安全に大きく貢献できるものと考えており、その積極的な活用をさらに進めてまいりたいと考えております。

須藤委員 警察のOBということでは、もう既に退職をされて、そういう職制というか職務は担っていないわけですけれども、退職をされる前までの経験としては、中には当然防犯関係の仕事をされていた警察官もたくさんいらっしゃると思うんですね。そういう意味では、警察庁が音頭をとってといいますか、文科、文教関係の方々と協力をして、OBの方々の協力をどんどん願って、いいサポートチームといいますか状況をつくっていかれるということはできないものなんでしょうか。いかがでしょうか。

 本人のボランティアの気持ちであるとか本人のやるかどうかということだけに任せるのではなくて、とにかく今はこういう状況なんだ、学校の安全対策上必要なんだ、あるいは、事件の件数が少なくとも減っていく、減るであろうというところに達するぐらいまでは、OBの方々に協力を願って一緒にチームを編成していくような積極的な行動といいますか対応をしていくということはできないものなのかどうか、お伺いします。

中山国務大臣 その前に、カメラ等の設置、これが重要だとおっしゃいましたが、実際、犯人といいますか何か事を起こそうという者から見れば、カメラ等がありますと、これはちょっと見られているなということで抑止力にはなると思うんですね。だから、そういったハード面についてもやはり整備していかなければいけないと思うわけでございます。

 人的な面で、今お話がありました、警察官OB等の協力を得て何かできないかということにつきましては、これは平成十七年度におきまして、そういう事業を行おう、子ども安心プロジェクトというのを発展させてやろうとしているわけでございまして、具体的には、スクールガードリーダー、大体千二百人ぐらい警察官OB等の協力を得て委嘱いたしまして、そして担当エリア内の各学校を定期的に巡回して、警備のポイントとかあるいは改善すべき点等についていろいろ指導していただく。

 そのもとに、地域のいろいろなボランティアの方とかそういった方々を動員して、いわゆるスクールガードといいますかそういった方の養成、研修を通じて、地域ぐるみで子供たちを守る、学校を守る、そういう取り組みをしていきたい、このように考えまして、これは平成十七年度、約七億五千万円の予算を計上しているところでございます。

須藤委員 ぜひ、こういった痛ましい事件が起こらないように、全力を挙げて取り組んでいただきたいと思います。

 今、小学校の中には、子供が学校の往復で変な人に捕まっちゃいけないというようなことで、名札をつけないようにという指導をされているところもあるそうです。私たちの小さいころは、名札をとにかくつけなさいということで毎日学校に通っていたものですが、今は、それが危険だからやめなさいという指導がされているという、何と言っていいかわからないような状況がありますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 最後に、一つ科学技術の質問をしたいと思いましたが、時間がほとんどなくなってしまいました。

 先般、種子島でのH2Aロケットの発射に関しまして、私も現場でその一部始終を見させていただきました。当初、五時八分か九分ぐらいですかに発射するものが一時間ずれて、これはまた失敗なのかなと本当にはらはらしました。

 結果的には成功したんですけれども、結局、成功したがゆえに、一時間おくれてしまった、機械の故障があったわけですが、それが確認をされたのかどうか。されて私たちが知らないだけなのか、ちょっとわかりませんけれども、とにかく宇宙開発、このH2Aロケットの今後の成功というものも、日本の科学技術の力をつけるためにも、あるいは世界に伍していくためにも、相当な力を入れていかなければならないというふうに私は考えているわけですけれども、大臣に、今後の宇宙開発、H2Aロケットにかける思いというものを、時間が終わりましたけれども一言いただきたいと思います。

中山国務大臣 私も担当大臣として現地におりましたけれども、須藤委員の姿を見まして、ああ、熱心な方もいらっしゃるんだなと思って本当に感服した次第でございまして、本当に成功してよかったですね。よかったと思いましたけれども、あれで失敗していたらどうだったかなと思いますと、何といってもやはり成功を続けるということが一番大事だろう、こう思います。

 宇宙開発というのは、国の安全保障とかいろいろな面もありますが、何といってもやはり我々の夢を乗せて飛ぶものでございまして、国としても戦略的に取り組んでいくべき分野である、このように考えているわけでございまして、このH2Aロケットにつきましても、今後以降の打ち上げについて成功実績を積み重ねて、我が国の国際競争力をさらに強めてまいりたい、そのように考えております。

須藤委員 これで終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 加藤尚彦君。

加藤(尚)委員 民主党の加藤尚彦です。

 大臣、前の大臣にも聞いたんですけれども、これはニコレットそれからファイアーブレイクというんですけれども、知っていますか。前の大臣にも聞いたんですけれども、前の大臣は知らなかったね。ニコレット、ファイアーブレイクというガムたばこ、後でこれは質問するんですけれども、そのためにきょう、厚労省とか財務省とか警察庁にも来ていただいているんです。

 質問に入るんですけれども、せんだっての日曜日、「報道二〇〇一」で石原慎太郎都知事が出演していましたんですね。この方は国会議員を二十五年もやられた方で、人気のある、カリスマ的なリーダーシップもあるとは思っています。好き嫌いは別として、あると思っています。

 その知事が、都知事としてはやはり行動派知事として結構感心するようなことをやっているんですよね。治安問題もそうだけれども、あるいは学校でも、中高一貫教育とか都立のすべての学校敷地内禁煙とか、極めてリーダーシップを発揮されているんだけれども、その報道番組で、外務省のことはしょっちゅうばかだ、ばかだと言っている。今度は、せんだっての日曜日は、文科省までばかだと言い出したんですね。聞き捨てならぬなというふうに思いました。

 大臣初め皆さんもそうだけれども、我々もそうですけれども、子供の未来のために真剣勝負しているんです。ふだん、日ごろのプライベートのところだったらいいんですよ。でも、テレビだから、それは保護者も見ているし、場合によっては子供も見ているし、たくさんの人が見ている中で文科省はばかだと言われちゃうと、これは正直言うと、ほっておけないという気持ちになったんです。大臣、もしかしたら言いにくいかもしれないけれども、やはり反論してほしいと思いますね。

中山国務大臣 私、テレビを見ていませんでしたので、どういうシチュエーションでそういうことを言われたのかわかりませんが、やはりばかという言葉は使わぬ方がいいですね。

加藤(尚)委員 余りじゃなくて、絶対使わない方がいい、テレビでは。やはりその影響が大きいから、あの人の影響力が大きいからと思います。今度個人的に会ったときに、あれはまずいよということを、大臣、おっしゃっていただければというふうに思います。

 もう一つ、引き続きお聞きするんですけれども、午前中でもちょっと出ましたけれども、僕は、きょうの質問テーマは非行少年、非行防止なんです。これ一点に絞って、ですから、さっきたばこのガムのことについても触れたんです。

 これについて質疑をしていくんですけれども、その前に、午前中の質疑の中でも、いわゆるフリーター、四百二十万弱、これはふえる傾向にある。あるいはニート、これもどんどんふえていって、昨年では八十五万人とも聞いているわけですけれども、加えて、自殺者の問題もあるんです。去年一年間で三万五千人近いんですけれども、この多くは、病気でという人が多いんです。あるいは仕事の失敗とか、そういうこともあります。中でもちょっと注目しなければいけないのは、青年たちの自殺ですね。

 動向はともかくとして、きょうはその議論をするつもりはありませんけれども、このフリーターがどんどんふえている、ニートもふえている、それから青年の自殺者も非常に気になるということからすると、大臣の所見をちょっと聞かせてください。

中山国務大臣 フリーターはともかく、ニート、あるいはさらに、ネット自殺というんですけれども、何かネットで知り合った人たちがいとも簡単に一緒に死んでしまうなんという話を耳にしますと、一体どうなっているんだろうと。何といいますか、無気力といいますか、人生の意味というか生きることの意味を見出すことができなくて、ああいうふうなことになるのかなと思います。

 もう少し、若い人たちに、せっかくこの人生、生まれてきたんだから、もっと大事にしようじゃないか、精いっぱい生きようじゃないかと。そのためにはどうしたらいいんだ、小さいころから、学校を卒業したらちゃんとした仕事をしなければいけないんだよ、そういう動機づけといいますか、そういうことをしっかりやるような教育というものが今必要じゃないかな、私はそんな気がしております。

加藤(尚)委員 おっしゃられたとおりだと思うし、それにつけても、今の日本の社会は子供たちや青年たちにとって、他の国一つ一つは比較しませんけれども、余りいい国じゃない。いい社会でもないし、だから、ホープ、つまり希望が持てない、そういう方向性が現実的に非常に強い。

 ところが、そうはいっても、さすがこの日本は、文化、芸術もそうですけれども、教育度もそうだけれども、いずれにしても、町中へ行くと、先ほども議論されていましたけれども、ボランティアでたくさんの人たちがよい社会をつくろうということで努力しているんです。ですから、そのことは我々もよくよく承知しながら、では我々は一体何ができるんだということをオウム返しのように問いながら、これからも努力していきたいというふうに思っています。

 私の愛読書に、最近九十歳を超えたガルブレイスの本ですけれども、「よい世の中」とか、あるいは、マレーシアのマハティール首相がやめた後書いた本、いずれも、よい社会づくりということについては経済を前面に出していませんね。やはり教育を出していますね、ガルブレイスも、それからマレーシアのマハティールさんも。私も実はそう思います。

 文部省も、さきの委員会で、大臣答弁の中で、文部省も大がかりに世論調査をしてみよう、全校の、学校を初め保護者も先生もというお話がありました。校長先生も含めてということがありましたけれども、この実態調査の進みぐあいについてちょっとお答えをお願いします。

田中(壮)政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま、義務教育について、特に中央教育審議会におきまして、特別部会を設けまして基本的に調査をお願いしておるところでございます。それに資するためにスクールミーティング等も行っておるところでございますけれども、近々のうちに、保護者の方々、子供たち、それから先生方を対象に、教育に対する考え方あるいは子供たちの最近の変化、家庭での子供たちの様子、そういった調査をさせていただきたいと思って、今準備をしておるところでございます。

加藤(尚)委員 さきにスポーツ・青少年局の方にもお邪魔したんですけれども、その準備の調査の内容の中に、コミュニティ・スクールの実態調査というか、どういうふうに進捗しているのかとか、あるいは学校敷地内禁煙、学校敷地内というんですから、義務教育の中だけでもいいんですけれども、小中学校、後でまたその質疑をしますけれども、そんなことも調査の対象になっていますか。

田中(壮)政府参考人 今考えております調査につきましては、家庭の中でどんなしつけを行われておるかとか、子供たちの日常の生活をどういうふうにやっておるかとかそういうことを聞こうとは考えておりますけれども、喫煙等につきましては、別途スポーツ・青少年局の方で今調査をしようとしておりますので、スポーツ・青少年局長の方から答えさせていただきたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 児童喫煙に関して、私ども、喫煙の禁止状況につきまして実態調査をしたいと考えているところでございます。

 これは後ほど議題になるのかと思いますけれども、たばこ規制枠組み条約がこの二月に発効になりました。ということを受けまして、私どもといたしましては、これまでも児童喫煙を防止することは重要なことであるということで通知等で指導してきたわけでございますけれども、この状況を受けまして、都道府県教育委員会等を通じまして、学校の敷地内の禁煙とか分煙の取り組みの実態などの児童喫煙防止対策等の実施状況につきまして調査を行うべく、現在調査票の確定をやっているところでございます。

加藤(尚)委員 願ってもない調査の方向性を出してもらったんですけれども、せっかく文科省でやるんだから、僕も世論調査を結構個人的にはするんですよ。例えば、政令指定都市とか四十七都道府県とか、あるいはランダムに抜粋して、選挙調査みたいに三万を超える学校の中から幾つか抽出してとかやっているけれども、全部やるとえらいお金がかかる。そういう意味で、できれば、同じ方向性で一つでまとまるんだったら、一つでまとまる方向で調査されるといいと思うんです。

 加えて、大臣ほか、きょうは来ていませんけれども、近藤審議官も銭谷局長もそうですけれども、幹部の皆さんが学校回りをやっていると。三百校というふうにおっしゃっていたんですけれども、今段階ではどの程度回られたんですか。後で、大臣が何校回ったかお聞きしたいのでね。

田中(壮)政府参考人 それでは、全体の実績をまず御報告させていただきたいと思います。

 スクールミーティングに関しましては、本年一月から開始をしておるところでございまして、昨日までに百六十五校で実施したところでございます。ことしの夏までに三百校程度訪問することを目標といたしまして、地域的なバランスやその学校の規模等も考慮しながら、予定させていただきたいと考えておるところでございます。

中山国務大臣 全国で三万三千校近くあるそうなので、せめてその一%ぐらい、現場の学校に行って実態をまず見ることからしっかりとした教育改革をしたいということで、提案してやっているわけでございます。

 私自身もぜひ回りたいんですけれども、予算委員会がありました。そしてまた、終わったと思ったらちょうど春休みに入っていまして、行けないんですけれども、今までに五校回っておりまして、四月になりましたので、精力的にまた回りまして、現場の先生方の声、保護者の声そして子供たちの実態をこの目で確かめたい、そこから教育改革を始めたいと思っているところでございます。

加藤(尚)委員 中山大臣がそんな何百校なんというのはあり得ない、そんなお時間がないということはわかります。副大臣、政務官を含めて、幹部の皆さんがいろいろな場面で出張されるんです、全国に。その全国に出張されるときに必ず寄りなさいよと。つまり、大臣のリーダーシップ、これはもう一%と言わず、少しでも多く実態調査を学校回りの中でされると、意外なことが意外な結果として僕はわかってくるような気がするんです。

 手前みそですけれども、前回も申し上げたように、私も時間があれば全国を歩きます。教育長とも会います。学校訪問も突然の形にします。通りがかりだから、別に目的を持って、校長先生がいた場合、いない場合、教室に入れる、入れない、いろいろなことがあるんです。そんなの構わないんです。とにかくどこかに行ったときに、加えて学校訪問あるいは教育長訪問をしている最中で、その中でいろいろなことが学べているなというふうに思います。

 僕は、冒頭に申し上げましたように、後で警察庁に聞くんですけれども、子供の非行化というのはみんながたくさん努力しているのに全くとまらない、ふえる方向にある。これはゆゆしきことである。ましてや、少子時代ですから、一人も落ちこぼれがない方がいい、当たり前ですけれども。これはガルブレイスも言っていたけれども、落ちこぼれの子供を出さないということは永遠のテーマだ、僕もそう思っているんです。永遠のテーマだけれども、挑戦は、チャレンジはしなければいけないと思います。そのチャレンジの仕方は、何もきょうのテーマで喫煙のことだけ言うわけじゃなくて、たくさんあると思います。そのたくさんある中で、やれるところからやっていこうということでいいというふうに私は思っています。

 その意味で、文科省の今後の調査の中に、もちろんそれぞれの学校、それぞれの生徒、それぞれの先生方のリサーチに加えて、目的をきっちり持つ。どういう方向性で世論調査をするのかということを、大臣のリーダーシップで、まだ余りさっきの答弁では中身がわからないんだけれども、もう一回加えて、極めて高い理想と使命感を加えた世論調査をしてほしいという希望があるんですけれども、いかがですか。

中山国務大臣 今回、中央教育審議会で幅広く義務教育全体について議論していただきたいということをお願いしているわけでございますが、そのために、まず我々文部科学省の者たちが現場に行って、どういう実態になっているんだということを勉強して、それをまた参考資料として中教審にも出したい、こう思っているわけでございまして、それこそありとあらゆる面でいろいろな話を聞きたい、それこそタブーを設けずということを言っているわけでございます。

 特に、まず学校へ行ったら図書館の本がどれぐらい整備されているかということをまず見てくれということを私はいつも言っているわけでございまして、そのこともしっかり見てきてくれると思います。あと、授業時数はどうなんだろうかとか、あるいは総合的学習の時間はどのように有効に使われているんだろうかとか、先ほど言われました子供たちの非行の問題とか、先生方あるいは保護者の方々が何に悩んでいるんだとか、本当に幅広く、今の子供たちがどういう状況に置かれているのか、どうしたらいいのかという観点から見てこいというふうなことで、今指示して、それこそ精力的に回ってもらっているところでございます。

加藤(尚)委員 後ほど数字の結果が出ると思うんですけれども、物すごい大勢の子供たちが非行、補導を受けたり、また補導予備軍みたいな子供たちがたくさんいるということについて、おさまったり、あるいは減少傾向にあるならいいけれども、全くそうじゃないということをよくよく承知していますので、その意味で、それも含めたリサーチをしていただきたいというふうに思います。

 日本では、青少年の喫煙防止については、一九〇〇年、第二次山縣有朋内閣で決めたんですけれども、一九〇〇年、つまり百五年前ですね、これは物すごい異例だと思うんです。やはり江戸時代から続いてきた、我が国では、この社会では、日本の子供たちは大事にするということが根幹に流れているんです、百五年前に。

 ところが、今、戦後、後で数字が出るけれども、だんだんと悪くなっているというふうに思います。その意味で、やはり昔を思い起こしながら、子供の非行ということは、少子化の中でも最も身近で、かつその解決に私は近づく方向だと思っていますので、ぜひ引き続ききっちりとした調査をお願い申し上げたいと思います。

 ちなみに、いろいろ僕は僕なりに調べているんですけれども、政令指定都市あるいは東京都、これを少なくとも自分で歩きましたので、コミュニティ・スクール法の実行、実施についても、文部科学省からいただいた資料を持って、口酸っぱく説明しながら、文部科学省の職員のつもりでやっているんですけれども、一方で、敷地内禁煙のことについてもやっています。

 結構、平成十四年ぐらいから実行段階が上がってきました。特に、平成十六年四月とか十七年四月とか、一日を期して、敷地内禁煙がえらいふえています。特に、政令指定都市はもうほとんどと言っていいぐらいであります。東京都もほとんどと言っていいと思います。中には、分煙でまだしばらく、その次に敷地内禁煙と。

 もちろん、敷地内禁煙ということは、保護者の協力もいただく、あらゆる学校に来る人たちの協力をいただくということが前提になるんですけれども、問題は学校の先生なんです。

 学校の先生がやはり三分の一弱吸っているんです。いろいろなデータを見ても、成人の二九%から三〇%がまだ吸っているということですから、学校の先生、学校敷地内禁煙ということは、もうどこも吸う場所がないんです、敷地内ですから。隠れて吸うところもないんです。ですから、気の毒至極。その方々とも私はインタビューしましたけれども、本当につらそうですよ。ケアなんかもやっている学校もありますし、教育委員会もありますけれども。

 ちなみに、大ざっぱに計算すると、政令市、東京都をひっくるめると、禁煙対象になっている人たちが三万四千九百人いるんですよね。つまり、政令十三市と東京都を入れると、約三万五千人がたばこを吸えないということになっているんです。

 先生は犠牲になっている。それは、理由は健康保持のためじゃないんです。子供たちのためなんです。子供に自分が吸っている姿を見せない。先生が吸っていて、中学生、高校生ぐらいになると、当然吸うようになってしまう。親の背中を見てという言葉がありますけれども、先生があんなに苦労してやめているんだから、おれたちもやめなければいけない、そういう決心があるんですよ。決心を感じたんです。ですから、つらいけれどもやめる。でも、この機会にたばこをやめてしまおうという先生も、この政令市を初め東京都の例を見ると、ふえ出したというふうに思っています。

 そんな意味で、ちょっと脱線しちゃうけれども、そのとき、校長先生の話とか教育長の話で、名前は出しませんけれども、やはり文科省の人々も勤務中はやめてくださいよ、私たちはやめたんだから、こう言うんです、本当に申しわけないけれども。それで、国会議員もやめなさいよ、大体国会で吸っているのはおかしいということを言う先生もいるということです、やめた先生で。

 腹いせで言っているんじゃなくて、みんなで苦労しなければ、学校の先生だけが苦労すれば子供の非行化が防止になる、つまり、非行化の最大の理由は、やはりたばこから入って、前回も言いましたけれども、酒に入って、そして薬から入っていく。それがどういう求め方をするかについて後で警察庁にお答えをいただくわけですけれども、そういう実態、事実の中で先生は先生の思いがあるということを、ぜひ大臣、それから幹部の皆さんも知っておいていただきたいということを申し上げたいと思います。

 では、警察庁が来られていますので聞きますけれども、十六年は出ていないということですので、平成十四、十五年、補導件数、加えて中身、中身についても、補導の実態の中身というと十も二十もあるかもしれないけれども、主な中身について人数を教えてください。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まず、平成十四年中の不良行為少年の補導人員は約百十二万二千人であります。その内訳を見ますと、喫煙が四十八万一千人、深夜徘回が四十七万六千人、不良交友が三万六千人、飲酒が三万三千人などとなっております。

 次に、平成十五年中の不良行為少年の補導人員は約百二十九万九千人であります。その内訳は、深夜徘回が五十七万七千人、喫煙が五十四万二千人、不良交友が四万三千人、飲酒が三万六千人などとなっております。(発言する者あり)

加藤(尚)委員 筆頭理事がおっしゃるから、加えて質問いたしますけれども、今、平成十四、十五年と、やはり喫煙あるいは深夜徘回が一位、二位、順位をつければそういうことになるんだけれども、減っていないんだよね。減っていないことを知りたいということでお願いしたわけですよ。まだふえ続けている。平成十五年が喫煙は五十四万人、平成十六年は五十七万五千人ということだし、あるいは深夜徘回についても、五十七万七千が平成十五年、十六年となると六十六万九千とふえているわけですよね。

 とにかく、それぞれがいろいろな機会にいろいろな場所で努力していても、そして特に、神奈川県の例を出してはいけないかもしれないけれども、神奈川県警は本部長が特に熱心で、そして警察署も交番も含めて全員が、仕事を問わず、徘回の子供たちも含めて、喫煙の子供たちあるいはお酒を飲む子供たちを、捕まえろとは言っていないけれども、補導しろ、こういう指示が出ているものだから、数字がぼんと上がっているんです、一年前よりも。

 それは、熱心に取り締まると当然熱心の結果が出る。ということは、予備軍がいっぱいいるな。あるいは、交通違反のことで比較しちゃいかぬかもしらぬけれども、捕まっていない人が、補導を受けなくてすり抜けている人が相当な数字になるんじゃないかなと予測しているんですけれども、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 確かに、不良行為少年の補導で、件数を把握しているのは実態の一部であることは間違いないと思います。この不良行為少年の補導件数が伸びていますのは、やはりそういう犯罪、非行に走る前に、少年に適切な注意、助言をしようということで活動しているものであります。今後とも、進めてまいりたいと思います。

加藤(尚)委員 もう一つ、不良交友という言葉が、先ほど数字の上で、平成十四年が三万六千、平成十五年が四万二千、私のデータでは平成十六年が四万四千、これもふえているわけですよ。不良交友というのは、僕はある程度想像しているんだけれども、筆頭理事がわからないというから、ちょっとお答えください。

吉田政府参考人 正確に文書で表現するよりちょっと不正確かもしれませんけれども、大ざっぱに言いますと、例えば暴力団員とか暴力団関係者と交友があるとか、あるいは暴走族で交通違反等で捕まった者と交友があるとか、そういうような、社会的に望ましい行為をしない、要するに犯罪行為あるいはそれに近いことをする人との交友が中心でございます。

加藤(尚)委員 それでは、次に財務省にこの機会に聞くんですけれども、これは質問取りのときにも聞いていますから、財務省に直接お伺いするんですけれども、やはりたばこを子供がどうして買うんだろうということがありますよね。どこから手に入れるんだろう。明らかに中学生だ、高校生だとわかるのに、どうやったら手に入るんだろうということについては、リサーチしていますから、ある程度わかる。

 でも、その中で、もともとたばこというのは、親のお金をくすねる、それから友達から借りる、友達からゆする、あるいは万引きする、そういうふうにだんだんエスカレートしていくわけですね。それで、将来、本物の悪い人になっていくわけですけれども。ということで、たばこというのはやはり大きな意味があると思う。

 そのことで、数字を言えば、六〇%ぐらいの人が自販機で買っているというデータを教わっているわけですよ、警察庁の方から。六〇%前後の子供たちが、たばこをどこから求めるかというと、自販機である。それだけのお金を持っているということになるんだけれども、この自販機について、財務省、ここ一、二年の実態をちょっと教えてください。

浜田政府参考人 お答え申し上げます。

 たばこの自動販売機の設置台数につきましては、日本自動販売機工業会の調べによりますと、平成十四年末の約六十二万九千台をピークといたしまして、この二年間は、平成十五年末、約六十二万六千台、平成十六年末、約六十二万二千台と微減傾向で推移していると承知いたしております。

加藤(尚)委員 そういう推移が、微減というものだね、少しずつ、ほんの少し、パーセンテージでいっても数字で出すのが大変なぐらい、減っている。これは、ふえるより減った方が私はいいと思っています。

 去年もそうですけれども、自販機、お酒、たばこ、そうだけれども、お酒については物すごい勢いで激減している。これは、全国の酒販組合が物すごい熱心になっているんです。ですから、どんどん激減していって、今やたばこの自動販売機に比べると十分の一ぐらいになっているわけですけれども、たばこについてどうしてこの程度の微減になっているか、理由を言ってください。

浜田政府参考人 御指摘でございますけれども、たばこの自動販売機の問題につきましては、現在、未成年者の喫煙防止という観点からは、先生もよく御案内のとおり、社団法人日本たばこ協会等におきまして、主体的に、成人識別機能つきの自販機の平成二十年の全国一斉導入を目指して、昨年五月から、これは種子島において……(加藤(尚)委員「平成何年ですか」と呼ぶ)平成二十年の全国一斉導入でございます。昨年五月から種子島において導入実験を実施中でございます。

 私どもにおきましても、たばこ事業法に基づきまして、この許可に際しましては、自動販売機を店舗に併設するように、要するに目の届かないところに置かないように条件を付してございます。また、当該条件が付されず、自動販売機が店舗に併設されていない場合があります、平成元年六月以前の許可がそういう形になっておるわけでございますけれども、今後、これにつきまして文書指導を行い、また、その指導に従わない場合、こういった成人識別機能つき自動販売機の導入意思等も示さない者については、行政上の、法律上の条件を付していく、さらには、それに従わない場合には許可の取り消し等も検討していくという方針で臨んでおるところでございますので、御理解を賜れればと存じます。

加藤(尚)委員 たばこ税収というのは物すごく大きな数字ですから、財務省としては、売り上げれば売り上げるほど税収につながるわけですから、痛しかゆしということがあるけれども、やはり、先ほど申し上げましたように、青少年なんですよ、青少年。この子供たちが買えないようにする。しかも、子供たちの取得の最大の理由は自販機だと言っているんだから、これは明らかになっているわけですから。これについて、平成二十年もいいんだけれども、もうちょっと考えなくてはいけないんじゃないかというふうに思います。

 実態だけちょっと申し上げると、たばこ枠組み条約について後で触れますけれども、どんどん、やはり卒煙国家とか禁煙国家とかそういう方向に行くんです。ヨーロッパもそうだし、アメリカもそうだし、アジアの中でもマレーシアもタイ国もそうですから、なおさら、日本がそういう方向でイニシアチブをとるぐらいのことをせざるを得なくなるんです。ですから、税収のことは税収でまた別に考えればいいし、減った分はほかで節約すればいいしというふうに僕は思うんですけれども、いずれにしても、子供だけは何としてでも避けさせなくてはいかぬという意味でいえば、ちょっとかったるいというふうに僕は強く思います。

 ですから、この枠組み条約、後で申し上げますけれども、相当厳しいですよ。この枠組み条約というのは、僕は、法律を超えるものである、憲法は超えないまでも、超えるものだというぐらいに思っています。それを、国際法上の条約を遵守するという国家国民でなければ、国際社会の信頼、信用が得られるわけはないし、ましてや常任理事国になろうという国ですからなおさらのこと、国際条約というのを極めて重要視しなければいけないというふうに思っています。

 そこで、枠組み条約のことについて入りたいと思うんですけれども、これだけ分厚いものがあるんだけれども、大臣も目を通されたことはありますか、枠組み条約。この枠組み条約、この中でたくさん、とにかくすばらしいというか、これ以上のものはないぐらいのものが書かれております。これが、大臣はもちろんだけれども、文科省の方々を初めとして、少なくとも自治体の教育委員会の教育長とか教育委員会とか、あるいは学校長とか、そういう方々がみんな目に触れるといいんです。そうすると、意外な結果が出ますよ。

 これは、それでも五万部ぐらい刷れば間に合いそうだから、そんなにお金がかかるとは僕は思えないんです。民間からお金を集めてもいいんです。民間には青少年の喫煙防止に対して数限りないぐらい団体があります。それらに呼びかければお金も出してくれるでしょうし、これだけのものですから。

 ちなみに、僕は、これは京都議定書に匹敵するものだ、あるいはそれ以上のものだぐらいのことを思っている一人だけれども、前文をちょっと読ませていただくと、大臣、持ってないものね、持ってないからいいです。

 続けて、ちょっと参考までに申し上げると、「たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが世界的規模で健康、社会、経済及び環境に及ぼす破壊的な影響」と、「破壊的な影響」という表現がされているということにまず僕は注目いたしております。続けて、「たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こす」というふうに前文に明記されております。

 二ページのところでは、出生前、生まれる前ですね、たばこの煙にさらされることが児童の健康上及び発育上の条件に悪影響を及ぼすということは、科学的にもうとっくに証明されております、そのことも明記されております。あるいは、年少の女子その他女子による喫煙ということに対して規制するための戦略的な方策が必要だとも書いてあります。文科省の仕事だと僕は思います。

 そのためには、やはり、これから三年の間にいろいろな規制を日本は遵守しなくちゃいけない。もう大変な遵守をしなくちゃいけない。このことは、大概の人は喜ぶんです、大概の人は喜ぶけれども、財務省は喜ばないかもしらぬ。財務省の人も喜んでもらいたいと思うんだけれども、あらゆる形態の広告あるいは販売促進、そういうことに関して率先して規制するのは、僕は、厚労省よりも財務省、警察庁よりも財務省だと思っていますので、財務省、せっかく来られているから、お答えいただけますか。

浜田政府参考人 財務省におきましてのこの条約の関係の取り組みでございますけれども、財務省におきましては、条約締結のための国内措置の一環といたしまして、財政制度等審議会たばこ事業等分科会での審議を踏まえまして、一昨年の十一月にまずたばこ事業法施行規則の改正を行いまして、これに基づき、本年七月以降、すべてのたばこ製品について新たな注意文言が表示される予定でございます。先生よく御案内のとおり、パッケージの、いわゆるたばこの箱の面積の三割以上に非常にいろいろな文言を、注意文言を掲示することとなっております。

 また、昨年の三月には、たばこ事業法第四十条に基づきます製造たばこに係る広告を行う際の指針の改正を行っておりまして、これに基づき、公共の交通機関におきますたばこ広告の禁止等の措置を開始しているところでございます。

加藤(尚)委員 引き続いて、この枠組み条約というのは、ノルウェーの元首相のブラントラントさんが、WHOの事務局長で、五年がかりで、恐らくすべての人生をかけたと言ってもいいと思います。その一人の強烈なリーダーシップでこの枠組み条約を完成させたと思います。今でも国連のWHOでは、ブラントラントさんは神様扱いというか、あれだけの人がいたからこの枠組み条約が進んだんだと。今や六十カ国近い国が批准、そして発効しているんですけれども、そういう意味で、ブラントラントさんの強いリーダーシップ、これを実は、個人的に言えば、中山文科大臣に同じように私は求めているんです。

 ですから、中山大臣、この枠組み条約、多分読んでいても、読んでないと言っているのかな、やはり読んでいるかな。だから、これをやはり一通り目を通していただいて、これを文部科学省が一つ一つ検証する。それはあくまでも子供のためという前提で、非行化防止という前提で、青少年の喫煙を防止するんだという物すごい信念で一つ一つ検証すると、大変な、大きな結果が出ます。

 その意味で、我々の中では最高のリーダーであるのは文部大臣ですから、文部大臣の決意のほどを一言お願い申し上げたいと思います。

中山国務大臣 私は、財務省もそうですけれども、「花は霧島 たばこは国分」といいまして、私の宮崎県とそれから川内理事の鹿児島県、葉たばこの日本一の生産地でございまして、そういう話を聞くと生産農家の方々の顔が思い浮かぶわけでございまして、なかなかつらい面もあるわけです。

 御指摘ありましたように、確かに、青少年それから妊婦、健康に悪いということはもう明らかでございますし、特に、今先生御指摘のように非行化の入り口というとらえ方もあると思うわけでございまして、文部科学大臣としては、教育現場の方から、子供たち、未成年はたばこを吸ってはいけない、また、先生方もあるいはまた文科省の我々もたばこは吸わないということは率先してやるべきだ、こう思いますし、今御紹介ありましたこのたばこ規制枠組み条約、しっかり読ませていただいて、しかるべき対処をしていきたい、このように考えております。

加藤(尚)委員 本当にそうなんです。胸が痛むことがあるんです。やはりたばこ農家の皆さんのこととか、あるいは販売店でも、おじいちゃん、おばあちゃんで、それが頼りで生活している人もたくさん知っているんです。そういう意味で、実はこのたばこ問題というのは、子供の非行化防止ということから入って熱心にやっている一人なんだけれども、やはり近所のたばこ屋さんのおじいちゃん、おばあちゃんが僕のことをずっと応援してくれて、そして本当ににこにことしてくれているけれども、多分いつかの時代から変わるんじゃないかと思って心配しているんだけれども。

 心配しているんだけれども、それでも大臣、これは政策的に、例えばJTの方だって、四千人、いわば転職を求めたら、一気に五千何百人が応募したということで、もうJTの職員もわかっているんです。これはもう世の中の趨勢だなということがわかっているんです。ですから、国策的に、子供たちのたばこをやめようということは、勢いたばこ収入が少なくなるから財政に影響を与える。一方で、もっと大事なことは農家なんです、あるいは販売店なんです、そのことはやはり別な政治政策で対応しなくてはいけないということは、特に大臣から、いろいろな機会にお話をしていただきたいと思います。

 それから、同じく枠組み条約の中に「「たばこ製品」とは、」と書いてあるんです。「喫煙用、吸引用、かみ用又はかぎ用」ということになるんですけれども、それにこれが入るんですよね。このガムたばこが入るんです。

 ガムたばこ、これは財務省がどうしてすぐ許可しちゃったのかわからないんだけれども、ガムなんです。ガムなのに、財務省から出ている紙だと思うんだけれども、あるいは財務省じゃなくてたばこ業界で出したんだろうと思うけれども、「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう 喫煙マナーをまもりましょう」と。喫煙ということが書いてあるんです。だから、たばこなんですね。吸い過ぎということはないですね、ガムですから。吸ったらのどに入っちゃいますから。だから言葉がおかしい。これは財務省が許可する。

 このニコレットは、これは厚労省が医薬品として売っているんです。同じガムの大きさなんだけれども、ニコレットの方はたばこそのものが二ミリグラム入っているんです。ファイアーブレイクの方は一ミリグラムです。むしろたばこということからすれば、ニコレットの方がたばこのニコチン量がファイアーブレイクの二倍です。これが世界五十カ国ぐらいで売られているんですよ。

 日本が何番目で売られたかは別として、これの売れ行きが、テレビ宣伝もすごいから、ファイアーブレイクは余りテレビ宣伝を見たことはないですけれども、ニコレットはすごい。何たって武田薬品だから、すごい宣伝している。どこの薬屋さんでも売っているんです。一時とまったんです、看板とかそういうことが。去年僕が質問した後、減ったんですよ、看板が。余り前面に出なかったんです。ただ、一年もたったら、また薬屋さんの前面にニコレットと出だしたんですよ。

 よって、これは厚労省に聞いてもいいんだけれども、財務省に聞いた方がいいかもしれないけれども、これは去年幾ら、どれぐらい売れたんですか。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 ニコレットガムでございますけれども、これは、二〇〇四年の数字といたしまして、約四十七億円という数字が公表されております。

加藤(尚)委員 四十七億円という説明だけれども、だんだん伸びているんですよ。

 問題は、このガムを、これはたばこですよ、ガムじゃなくてたばこを、厚労省は医薬品と言っているんですよね。薬事法ですよ。要するに、医者のいわば説明が必要なんだけれども、今はもうなくなっちゃった。最初の売り出しのときには、六カ月間医者の指導を受けてと書いてあったけれども、今はもうなくなっちゃった。だんだんこれが楽々だれでも買えるようになっていってしまうということになると、問題は子供なんですよ。子供がこれをどれぐらい買っているかということはわかっていますか。

黒川政府参考人 この医薬品でありますニコレット、禁煙補助剤でございますが、先生御指摘のとおり、平成六年に、循環器病などをお持ちの方がお医者様から禁煙が必要ですというような御診断があったときに、その禁煙の補助を目的として、お医者様が処方される医療用薬品として承認されております。

 その後、平成十三年六月に、たばこをお吸いになっておられる方が禁煙をしたいというときに、いらいら感とかいろいろ出てこられるわけでありますけれども、それを緩和する一般用医薬品、つまり、薬局とか薬種商さん、そういったところで必要な情報、使い方を教えていただきながら使うということでこれは販売されております。

 それで、御指摘の未成年でございますけれども、これは医薬品でございまして、添付文書がついておりまして、二十未満の方は、それをお使いになるときは医師あるいは薬剤師に相談して使っていただきたいというようになっておりまして、一定の管理がなされていると思います。

 それから、ニコレットガムではございませんで、ニコレットが正確な商品名でございました。どうも失礼いたしました。

加藤(尚)委員 財務省の方に聞くんだけれども、このガムたばこ、これは「ガム・タバコ」、はっきりファイアーブレイクと書いているんですけれども、これはスウェーデンで製造されて、日本が発売場所として世界で最初の国なんです。その後、日本以外にこのファイアーブレイクが売られるところがありますか。あるいは、これを製造したスウェーデンでは販売されているんですか。ちょっと聞かせてください。

浜田政府参考人 御指摘のファイアーブレイクでございますが、私ども、輸入業者から確かめたところによりますと、現在、当該かみたばこにつきまして、スウェーデンを含む他の国において販売実績はございませんが、現在、スウェーデン及びデンマークにおいて申請しておりまして、本年度中に両国において販売開始予定と聞いております。

 なお、一般のかみたばこという形態のたばこでございますれば、アメリカなりインド等においても販売がされていると聞いております。

加藤(尚)委員 一等最初に日本が販売先として認めたということが、スウェーデンでも売られるように、日本でも買ってもらっているんだから、日本でも売れているんだからということで、製造したスウェーデンでやっと踏み切るという話みたいなんだけれども、日本の人たちがこれによってどういう弊害があるのか。

 つまり、口腔外科学会でいうと、このファイアーブレイクもこのニコレット・ミントも、口腔がん、舌がん、そういうおそれが、直接だから物すごく大きいんだ。その治験なんかを実際にして許可をおろしたのかどうか、治験をしておろしたのかどうかという口腔外科学会の要望がありますので、ちょっと聞かせてください。厚労省でもいいし。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 禁煙補助剤であるニコレットについては、先ほど申し上げましたとおり、平成六年に医療用薬品として承認されておりまして、そのとき、四百七十六例の調査で、副作用が百九十五例、四一%にあらわれております。具体的には、吐き気、それから、口腔内またはのど、咽頭の刺激が四十四例、そのほか口内炎、そういったようなものが報告されておりまして、いずれも軽微なものと考えております。

 また、一般用薬品として承認を取得いたしました平成十三年六月二十日から平成十六年二月十八日までの約二年八カ月の間に、市販されているニコレットを使用した三千十四例について調査しましたところ、三百十四例に副作用が発現しておりまして、その副作用率は一〇・四%となっております。件数は四百八十一件であります。

加藤(尚)委員 まだ微少かもしれないけれども、僕は非常に憂えています。なぜなら、専門家じゃないんだけれども、ニコチンそのものを口の中でかむわけですから、しかものどを通すわけですから、そういう意味で、口腔、舌、それから咽喉、それから食道、胃とつながっていくおそれが多分にある。だから、これはやはり検討に値すると思うんです。

 私は、個人的に心配で、いわゆる質問主意書も実は去年出しました。小泉総理から答弁書が来ています。木で鼻をくくったような答弁書なんだけれどもね。本当にわかっているのかなと思うような答弁書なんだけれども。実際は、今度の枠組み条約で、小泉総理が、僕は河野議長に出したものなんですけれども、小泉総理が河野議長に答えておるんですけれども、この答弁の一つ一つを見ていくと、どれもこれもみんな枠組み条約違反ですよ、この答弁は。これはきょうはしません、時間もないから。改めてやらせていただきたいと思います。この私にいただいた答弁書は、答えとしては、枠組み条約にそれぞれ重大な問題があるというふうに思います。これは改めて議論したいと思います。

 それから、禁煙については、枠組み条約は二月二十七日というお答えがありましたけれども、このことで世の中がぱっと明るくなっている話が結構新聞でも出ているんです。二十七日に発効になった翌日は、各社、いわゆる社説級でこの問題を大きく取り上げたわけであります。中でも、熱海の例でいえば、熱海市は路上でのたばことかあるいは海岸でのたばこ禁煙とか、そういうふうに条例をスタートさせています。これは千代田区もそうですけれども、全国、条約に基づいて条例がこれからどんどん広がります。ですから、卒煙ということか禁煙ということか、そういう方向性でこの国が動き出す。また、動き出さなければいけない。

 しかも、繰り返しますけれども、条約を結んでそれきりという傾向がなきにしもあらず。でも、少なくともたばこについては、この国が率先垂範すべきだ。繰り返しますけれども、大臣、たばこ農家の方とか販売店の方とか、それは別問題で手当てをする。JTの問題もしかりです、たくさんの人が働いているわけですから。それとは別に、そういう方向になる。それで各自治体が条例をどんどんつくっていくようになると思います。

 横浜の鶴見大学歯学部の病院長の瀬戸カン一(カンは日へんに完)という先生がいらっしゃるんですけれども、愛情卒煙という言葉を使っているんですよね、愛情卒煙。それはすばらしい言葉だと思います。その愛情卒煙のために、鶴見大学歯学部はことしの四月から、少なくとも歯学部、歯医者さんになる人たちですけれども、卒業するまでに必ず卒煙させるという物すごい決心がその病院長にある。それはすばらしいことだ。同時に、外来卒煙、そういった診療科目もつくったんです。これは、日本で多分初めてかもしれない。横浜にある鶴見大学歯学部。つまり、外来卒煙とか、あるいは少なくとも学生全員は卒業するときにはたばこさよなら、こういうことを言って、それでなければ卒業証書を出さないということは言わなかったけれども、それに近いぐらいのことを言っていました。

 そういう意味で、これからの私たちの国がどんどん禁煙の方向に進んでいくということ、そしてそのことは、学校の先生たちが犠牲になっているということ、犠牲という言葉は必ずしも当てはまらないかもしれないけれども、物すごい苦労をして禁煙に踏み切ったり、あるいは少なくとも勤務中は吸わないということ、だから当然、文科省も率先して、そして国会も率先してということになるのではないかというふうに思います。

 それで、あと時間がないから最後の質問に入るんですけれども、枠組み条約の第二十六条に「資金」という項目があります。問題はこの資金なんですけれども、青少年がたばこを吸う、その吸った数字なんですけれども、青少年、いわゆる違法ですね、違法で子供たちがたばこを吸った、それによって、税収ですけれども、これは鳥取大学の尾崎教授なんかは、三百五十億という数字を挙げている人もおります。物すごいまちまち。

 財務省に入っている、三百五十億と言う人もいるし、これは最低額だと思います。中には、これは専門誌ですけれども、禁煙ジャーナルで、未成年者の喫煙で財務省に二千億入っていると。要するに、たばこによる税収約二兆円のうちの一〇%という数字も出しています。少なくとも、違法で吸ったたばこの税金が財務省に入る。財務省は、そのお金を一般財源として使ってしまう。これに物すごい疑問を感じているんです。

 警察庁来られているから聞くんですけれども、例えば交通切符というのがありますね、スピード違反とか。あのお金は、結構大変なんだけれども、そのお金はどういうふうに動いていっているんですか。

矢代政府参考人 お答え申し上げます。

 道路交通法違反の交通反則金でございますが、これは国の収入とされました上で、国がその相当額を、交通安全対策の一環として、地方公共団体が行います信号機、歩道等の道路交通安全施設の設置及び管理に要する費用に充てるために、交通事故の発生件数等に応じまして、都道府県及び市町村に対し、交通安全対策特別交付金として交付しているところでございます。

加藤(尚)委員 交付金として、交通反則金についてはそういうふうに地方公共団体にということなんですけれども、このたばこなんですけれども、たばこについて、三百五十億、中には一千億、まちまちです。二千億というふうにきちっとした数字を出されているんですけれども、財務省の方、恐縮ですけれども、どういうふうに受けとめていますか、この数字について。

佐々木政府参考人 たばこの税収の件でございますけれども、委員御指摘のように、国と地方を合わせまして、たばこ税、たばこ特別税、都道府県たばこ税、市町村たばこ税、合わせまして二兆一千八百億でございます。そのうち国の会計に入りますものが一兆強、半分ということでございます。

 そういうたばこ税の関係のうち、未成年者が結局払っている税がどのくらいかという、先ほどいろいろな推計のお話ございましたが、たばこ税は、制度上、製造場から出るとき、あるいは保税、もう仕組みは御存じだと思います。その製造業者あるいは引き取り者に対して課税される。そこでもう課税が終わってしまいますものですから、後、だれか吸った方が負担しているということで、未成年者がどの程度負担しているかどうかという点については確たることは、確認はできないんだと思います。

加藤(尚)委員 確たる確定はできない、そのとおりだと思いますけれども、努力する、一生懸命本気で努力すると出てくるものだというふうに思います。

 三百五十億あるいは二千億、えらい数字の違いがありますけれども、少なくとも、今警察庁の方のお答えがあったように、どのくらいかなという想定でもいいから、それを子供の非行化防止のために、警察庁は、交番の人、署長さん、みんな全員挙げて努力しているし、あるいは文科省の人たちも教育委員会と相談して、そして青少年課と相談して、一生懸命非行化防止に努力されている。そういうところで、今までの予算とは別に、交付金として、反則金と同じように考えることが将来できるかどうか、ちょっとお答えください。

佐々木政府参考人 たばこ税の一部のいわば特定財源化というようなお話だと思いますが、たばこ税は基本的に、現在も国の一般会計の一般財源として使われておりまして、今のいろいろな八十二兆のうち四十四兆、約半分を辛うじて超える税収という状況、税収の貴重な一部をなして政策に充てられております。

 それを使用するということは、政策のいわば選択の問題という点が一つあると思いますし、特定財源、一般的に財政の硬直化とかあるいは非効率化とか、そういう問題が指摘されております。そういう点、いろいろな検討課題があろうかと存じます。

加藤(尚)委員 一言で終わります。

 大臣、やはり大臣の物すごいリーダーシップ、補導件数が百二十万ですから、毎年ふえているんです。依然としてとまらない。その中で、非行化に、例えばたばこを吸ってすぐ非行少年ではないんです。やはり興味本位というのもあるけれども、その多くの部分が非行化に入っている、それで、たばこになって薬になっていくということは間違いない、こういうふうに思います。

 その意味で、今後いろいろな調査をする段階で、あるいはいろいろな学校を訪問するさなかで、いろいろな人と意見交換しながら、非行化という、非行少年ということ、それは喫煙とかそういうことも含めて、大臣の強いリーダーシップを求めて、質問を終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。青木愛さん。

青木委員 民主党の青木です。文部科学委員会での質問はきょうが初めてとなります。よろしくお願いします。

 きょうは、これまで地元の方々、それからお会いしてきた方々のお声の中から、気になっていたことをこの際御質問させていただきたいと思います。非常に細かなことに及ぶかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、花粉症がもたらす教育への影響について、お伺いしたいと思います。

 花粉症は、今や国民病とも言える疾患となっております。厚生労働省の平成十五年保健福祉動向調査という資料に、年齢別アレルギー症状の有無というデータがあります。これによりますと、目鼻のアレルギー症状がある児童は、例えば十歳から十四歳では、大都市で三二・四%、郡部でも二六・六%となっています。これにはほかの原因によるものも含まれておりますけれども、ことしは、最大量の花粉が飛散しているそうなので、この数値はもっと高くなっているものと思われます。

 地元の親御さんから、子供が花粉症のせいで勉強に身が入らない、花粉対策の薬もたくさんありますけれども、体のことを考えると、小さいうちから薬を飲み続けるのは控えたいというお母さんの声がございます。また、治療よりも、むしろ杉の木自体、根本に手を加えなければ何ら解決策にならないのではないかといった訴えもございます。

 実際、文部科学省としては、この花粉症に対してどのような対策、施策をお持ちなのかをまずお伺いしたいと思います。この点につきましては、厚生労働省、また林野庁さんにもお伺いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 花粉症を含めた免疫アレルギー疾患の克服に向けて、疾患の仕組みの解明とか根本的な治療のための研究は非常に重要なことであるという認識を持っております。

 文部科学省として、平成十三年度には、理化学研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターを設立いたしました。花粉症を含めたアレルギー疾患の原因の解明や、根本的な治療に関する研究を総合的に進めているところでございます。

 特に花粉症についてでございますけれども、平成十七年度からは、基礎研究の成果を医療に応用するための研究チームを新規に設置し、新たなワクチンの開発を本格的に進めているところでございます。十八年、十九年は前臨床試験を、平成二十年にはフェーズ1、人での安全性、有効性確認のための研究開発を行うというふうな予定でございます。

 また、このことに関しましては、科研費等の競争的資金により、大学等における花粉症などの免疫アレルギー分野の基礎研究を推進しております。平成十六年度で百三十六課題の研究が取り組まれているというふうな状況でございます。

 以上申し上げましたように、今後とも、花粉症を含めた免疫アレルギー疾患の根本的な治療に向けて研究開発を積極的に進めていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

田中(慶)政府参考人 厚生労働省におきましては、花粉症対策として平成四年度から、病因、病態の解明とか、あるいは治療法の開発等の研究を進めているところでございまして、その研究成果に基づきまして適切な予防法、治療法の普及啓発に努めているところでございます。

 先生御指摘のとおり、今春は全国的に観測史上第一位、あるいは第二位を争うという多さの花粉が飛散するというふうに予測されておりますので、花粉の飛散の本格化する前から、緊急対策として、正しい情報に基づきます花粉症の予防あるいは早期治療のさらなる徹底を進めてきているところでございます。

 具体的には、国民の皆様方に対しまして、花粉症に関します正しい情報を提供するとともに、花粉にできるだけさらされないようにみずから予防し、必要があれば早目に医療機関を受診していただくように呼びかけているところでございます。また、医療従事者に対しましては、適切な治療がなされますように、診療ガイドラインの周知徹底等を行っております。

 私ども、今後とも、各地方自治体、関係省庁や関係団体とも連携しつつ、根治的治療法の開発も含めまして、花粉症の総合対策の充実に努めてまいりたいと存じております。

梶谷政府参考人 林野庁といたしましては、花粉の発生源の対策といたしまして二つのことを行ってきているところであります。

 一つ目は、花粉の少ない杉、それから花粉のできない杉、この開発普及に取り組んできているところであります。花粉の少ない杉につきましては、平成八年度からその開発を推進してきているところでありますけれども、これまでに、花粉の量が一%以下である百十二品種が開発されているところであります。平成十一年度からはこれらの苗木を供給いたしまして、十五年度までに二十四万本の苗木を供給しているという状況にあります。今後五年間に約六十万本を超える苗木を供給されるのではないかというふうに見込んでいるところであります。それから、本年一月には独立行政法人林木育種センターが花粉ができない杉というものを開発したところでありまして、花粉の少ない杉の品種とあわせまして、これらの普及に努めてまいる考えであります。

 それから、二つ目の取り組みでありますが、これは雄花の量の多い杉というものの抜き切りであります。これにつきましては、平成十四年度から、都市近郊におきまして雄花の量の多い杉を優先して抜き切りをするという実証事業に取り組んでいるところであります。こういう実証事業とあわせまして、雄花の多い杉林分に重点を置いた間伐も進めるなどいたしまして取り組みの強化を図っているところであります。

 今後とも、関係省庁と十分連携を図りながら、花粉症対策の推進に努めてまいりたいというふうに考えているところであります。

青木委員 今林野庁さんの方からお話がありまして、いろいろ研究開発されているということで、その花粉の少ない杉、またできない杉、それから雄花の多い杉を伐採するというようなことを今お伺いしましたけれども、これは、実際花粉症にかかっている人たちが大分楽になったなと実感できるのは大体いつごろと予測されるのでしょうか。

梶谷政府参考人 いつまでかという御質問ですけれども、先ほど申し上げました花粉の少ない杉でありますけれども、これは今後におきましては六十万本ということでありますけれども、実は、杉の面積全体で四百五十万ヘクタールぐらいありまして、その本数を推定してみますと五十億本なんですね。これを見ますと、到底、なかなか、全く杉の花粉が出なくなるということはそう緊急にはできないと思いますけれども、特に都市近郊においてこういう対策を積極的に進めることによりまして、人口の多い、特に花粉症の激しい地域について、これを軽減するように全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに考えているところであります。

青木委員 私も花粉症に苦しんでいるもので、今のお話を伺いますと、大分まだまだ先の話なのかなという気もいたしておりますが、根本に何とか手を加えなければというところで、伐採ということで、もっと早目に対処というのはできないものなのかなと、ちょっと何度も申しわけないんですけれども、よろしくお願いします。

梶谷政府参考人 先ほど申し上げましたように、四百五十万ヘクタールの杉、これを一挙に伐採して違う樹種を植えるということになりますと、資金的にも人的にも大変なものだというふうに思っています。

 そういう状況にありますので、我々といたしましては、いわゆる抜き切り、特に花粉の量の多いところを抜き切ってやるということによって花粉量全体を下げていく、こういう取り組みを推進しておりますので、これを積極的に続けることによって何とか軽減できるように努めてまいりたいというふうに思っております。

青木委員 済みません、重ねて申しわけありません。資金的に大体どのくらいかかるものなのですか。そういう試算は出していませんか。

梶谷政府参考人 特に計算したものはないんですが、一ヘクタールを切った後植林するということになりますと、一ヘクタール植えるだけで大体百万円ぐらいの経費がかかります。その後、下刈りあるいは保育をやっていきますと、さらにお金がかかります。こういう意味で、今は林業の事情も非常に悪いものですから、これを積極的にやるというのはなかなか難しいと思います。

 ただ、抜き切りで軽減を図るということは可能だというふうに思っております。

青木委員 ありがとうございます。

 それでは、文科省さんにもお伺いしたいんですけれども、教育問題として花粉症対策というのは、今までなかなかそれに特化した形で視野には入っていなかったようにお伺いしたんですけれども、この季節、新年度を迎えるスタートの時期でもありますし、子供たちにとりましては本当に大事な、期待と不安も抱えている時期で、花粉症で授業に身が入らないというのは決して小さな問題ではないと思うんです。

 この学力低下を防ぐという教育問題の見地からも、文部科学省さんとして、学びの環境整備の一つとして、花粉症対策、真剣に取り組まれてもいい時期ではないかと思うんですが、御意見をいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 本当にこの時期、花粉症でお悩みの方、子供さんを含めて、多いわけでございます。

 これから新学期が始まるわけでございますけれども、先ほど厚生労働省の方からも答弁がございましたけれども、学校としても、各家庭に対して花粉症についての正しい理解の促進を図りながら、子供たちの健康管理ということに十分留意をしていく必要があるというふうに思っております。また、子供たちが学習に集中できるように、指導上も、そういう花粉症の子供たちに配慮をしながら指導を行っていくということに心がけていきたいというふうに思っております。

青木委員 やはり大人ですら、夜眠れない、また集中力が落ちる、仕事に身が入らないといった状況にありまして、いずれこれは国力の低下にもつながりかねないという問題とも考えられるわけで、ぜひ各省庁の皆様、総力を挙げて、来年の今ごろには、去年よりは少しは楽になったねと言えるような状況にいち早くしていただけますように、よろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。

 では、これで花粉症の質問は終わらせていただきますので、厚生労働省さんと林野庁さん、ありがとうございました。

 続きまして、全然質問は変わるんですけれども、災害の共済給付制度の加入対象の範囲についてお伺いしたいと思います。

 これはある保育園の園長先生から以前伺いまして、小さい子供たちは、遊んでいてよくけがもしますし、脱臼をすることも多く、けがは絶えないわけですけれども、独立行政法人の日本スポーツ振興センターさんが実施しています災害共済給付の制度がございますが、まず、この制度の概要をお伺いします。

 この制度に対して、僻地保育所の子供たち、それから一時保育の子供たちはこの制度の対象外になっていると聞いておりまして、その辺の理由と今後の対応策をお聞かせいただきたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、独立行政法人日本スポーツ振興センターが行っております災害共済給付制度でございますけれども、これは、学校の管理下におきます児童生徒等の災害につきまして、その速やかな救済を図るということなどを目的としているものでございます。

 そして、日本スポーツ振興センターの行う災害共済給付につきましては、学校等の管理下におきます児童生徒等の災害につきまして、医療費、障害見舞金または死亡見舞金の支給を行うものでございます。学校種別に応じまして保護者でありますとかその設置者から掛金の負担をいただいておるということでございまして、当センターが設置者と年間契約を結びまして、その事業を行っているということでございます。

 対象施設についてのお話がございました。

 まず、その対象とする施設についての一つの考え方でございますけれども、この対象とする施設におきましては児童生徒等の活動について適切な管理が行われているということが前提でございまして、災害共済給付制度におきます関係者の掛金の公平な負担という観点からも、一定の基準を満たす必要があるだろうというふうなことでございまして、日本スポーツ振興センター、この前身でございます日本学校安全会の当時からでございますけれども、法律上、保育所につきましては都道府県や市町村が設置しているものでございますとか、また、それ以外のものにつきましては都道府県知事が認可したものに限って対象としているところでございます。

 それで、今お話のございました僻地保育所でございますけれども、これにつきましては、山間僻地等におきまして、設置基準といいますか、その最低基準に適合した保育所を設置、運営することが困難な場合に、公民館等を活用して常設の施設として保護を行うものであるというふうに承知しているところでございますけれども、この僻地保育所につきましては、市町村が設置主体とはなるものの、法律に基づいて知事の認可を受けた保育所とは異なっているというふうなことで、この対象にするということは困難であると考えているところでございます。

 さらに、一時保育につきましては、一時保育の施設一般は認可保育所を使うというふうにも聞いているわけでございますけれども、保育のあり方が断続的であるというようなことで通常の保育とは異なるということでございまして、年度契約によりまして年間を通じて災害給付の対象とし、またその共済掛金も年額を支払う、こういった災害共済給付の対象とするということはなかなか難しいのではないかということで、現在そのような対応になっているところでございます。

青木委員 認可、無認可で分かれている、大ざっぱに言うとそういうことなんですかね。

 この制度は、保育所にとりまして、たしか掛金が三百五十円と大変安くて、大抵は利用しているのではないかと思うんですけれども、この対象外の子供に対しての現状は、今、別途、親御さんが掛金の高いほかの民間の保険に加入してという、そういう手続をしなければならないわけなんですが、この僻地保育所というのは、無認可というわけではないですよね。ですので、その辺もできれば配慮していただいて、同じ子供でありますので、今後加入いただけるように御検討はいただけないでしょうか。

素川政府参考人 保育所を対象としている根拠規定でございますけれども、現在は、独立行政法人日本スポーツ振興センター法の附則の規定がございますが、これは、もともと、先ほど申しました日本学校安全会法の附則の規定から引き継いできているものでございますけれども、この規定によりますと、児童福祉法三十九条に規定する保育所をいうということで、保育所について一定の条件といいますか一定の規定の制約というものが書いてございます。

 これは、先ほど申しましたように、やはり施設等の最低基準といいますか、そういうことが確保されている、施設設備の面においての確保されている都道府県知事が認可したものについて、この学校共済給付の対象に保育所も入れるということの整理が行われたというふうに承知しておりますので、具体的に保育に関係する施設がどのように整理されていくかということは厚生労働省の問題であろうかと思います。

 いずれにいたしましても、学校等の設置者や保護者の掛金によって運営されている災害共済給付制度の趣旨にかんがみますと、一定水準の確保される範囲内ということで、その対象施設というものが一定の限定を設けられるということにつきましても、やむを得ないのではないかというふうに考えているところでございます。

青木委員 子育て支援対策ということで、できれば、今後、また御検討の中に加えていただきたいとお願いを申し上げまして、次の質問に移りたいと思います。

 学童保育、それから放課後の子供の居場所の確保についてお伺いをいたします。

 これは地元の小学校一年生の子供を持つお母さんからいただいた声なんです。放課後学童クラブに通っているそうなんですが、この学童クラブは、月一万三千円の父母会の自主運営で行われているそうで、最近、百二十万円のエアコンを父母会の負担でまた入れたそうなんですが、定員六十名で、人気が高いために四年生以上はなかなか入れないということで、都会の場合だと児童館などがあるんですけれども、四年生以降、放課後どのように過ごさせるか今から心配ですといったような声がございました。

 また、東京のある小学校の例ですと、放課後、校庭では、基本的に大人の付き添いがないと校庭で自由に遊ばせられないということになっているそうで、PTAの有志の方ですとか、教育委員会の方が雇って人を派遣したりして、昔の遊びをそこで子供たちに教えたりなんかして放課後を過ごしているそうなんです。

 それぞれにそれぞれの問題を抱えているんですけれども、以前でしたら、人を雇って遊びを子供に教えるというよりも、子供たちの中で遊びが生まれましたし、また、大人がいる中で、時間に制限の加えられた中でしか校庭で遊べないというすごく不自然と思われる状況があるわけなんです。今とにかく一人親がふえまして、また、共働きの家庭においては、放課後の子供の居場所の確保というのは本当に切実な問題であるわけなんです。

 子育て支援対策、それから少子化対策という点からも、国の政策として積極的に取り組むべき問題と考えるんですが、放課後の子供の居場所の確保について、中山大臣の所見をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 地元の声をお届けいただきまして、ありがとうございました。

 学校というのは、子供たちの教育の場でありますけれども、同時に、地域住民のさまざまな活動の拠点でもあるわけでございまして、その施設を積極的に開放しようということでやっているわけでございます。

 今、数字がありますが、平成十四年度で小学校が九六・九%、中学校が九三・四%開放しているということで、もうかなりのところが開放している、こう思っておるわけでございますが、今話がありましたように、開放しているだけでは、昔と違って子供たちだけで遊ぶわけにはいかないという、不自由というか不自然な形になっているのが残念でございます。

 文部科学省としましては、放課後とか休日に子供たちが安心して活動できるようにということで、今お話がありましたように、平成十六年度から子供の居場所づくりを推進するために、地域子ども教室推進事業に取り組んでいるところでございまして、平成十六年度におきましては、全国で五千四百カ所で実施されております。そのうちの約半数が小中学校を会場としているところでございます。

 また、平成十七年度は、さらにそれを推進するということで、全国で八千カ所において実施するということにしておるわけでございまして、今後ともこれにつきましては地域の、地元の方々の御協力を得なければいけませんが、子供の安全確保ということにも配慮しながら、開かれた学校づくりの推進に努めてまいりたいと考えております。

青木委員 ありがとうございます。ぜひ、前向きな対応をこれからもよろしくお願いいたします。

 続きまして、次の質問に移らせていただきます。

 教員の採用についてなんですが、地元の現場の先生方が望むのは、とにかく教員の数が足りないということです。平成十六年度における教員採用の状況をまずお伺いしたいと思います。

銭谷政府参考人 文部科学省の調査によりますと、平成十六年度の教員の採用者総数は、小中高等学校等合わせまして、二万三百十四人でございます。これは、前年度が一万八千八百一人でございましたので、増加をいたしております。

 内訳的には、小学校が一万四百八十三人、中学校が四千五百七十二人、高等学校が二千九百八十五人、盲・聾・養護学校が千五百二十五人、養護教諭が七百四十九人でございます。これは、高等学校を除きまして、前年より増加をいたしております。状況はそういうことでございます。

青木委員 「図表でみる教育 OECDインディケータ」というデータを見ましたところ、日本は、初等教育において、その調査国中教員の数が最低だというデータもありまして、きめ細やかな教育を確保するためにも、教員の数というのは大前提だと思っております。ただ、一方で、その数をふやせばいいという問題じゃないという側面もあるかとも思うんですが、今教員の質も問われているところでございます。

 今後、教員養成についてどのようにお考えなのか、また、社会人教職員の採用の制度が始まってまたしばらくたちますけれども、その成果の方はどのように把握されているか、お願いいたします。

中山国務大臣 現場を今視察しておりますけれども、現場は、回れば回るほど、学校教育の成否というのは、教員の資質、能力、そしてその熱意に負うところが多いなということを痛切に感じているわけでございます。

 御指摘ありましたように、すぐれた教員の養成確保というのは極めて重要な政策課題であると考えております。特に、小中学校というのは、児童生徒がその人生をいかに幸せに生きられるか、そのための基礎を培う時期でございまして、教員の果たす役割というのは極めて重要である、このように考えております。

 そういう意味で、文部科学省としましては、これまでも、大学の教員養成カリキュラムの改善を図るということと、それから、採用につきましては、面接とかあるいは実技試験の実施など、人物評価を重視するという方向で改善を進めるように、これは各都道府県教育委員会を指導しているところでございます。さらに、法定研修であります初任者研修とかあるいは十年経験者研修を初めといたしまして、その経験等に応じた研修や社会体験研修の充実等について、各教育委員会の取り組みを促しているところでございます。

 現在、大多数の教員というのは、使命感、そして指導力を持って子供の指導に当たっていると思いますけれども、一部の教員による不祥事とか、あるいは指導力不足の教員が増加しているというようなことを背景といたしまして、教員全体に対する社会の目というのは厳しくなっているなということを感じるわけでございまして、今後、信頼される学校づくりを進めていくためには、教員が尊敬され、そして信頼を得られる、そういう存在であることが不可欠であろう、こう思っているわけでございます。

 私も、昨年の十一月に、「甦れ、日本!」におきまして、教員の資質の向上ということを掲げたわけでございまして、今御指摘ありましたけれども、社会人とかそういった方々の活用も含めまして、現在、中央教育審議会におきまして、教員養成及び教員免許制度の改革、とりわけ教員養成の専門職大学院のあり方や教員免許更新制の導入等について、精力的に御検討いただいているところでございまして、今年中に答申をいただいた上で、速やかに所要の制度改正を行って、教員が尊敬され、高い評価を受ける、そういう存在になるように努めてまいりたいと考えております。

青木委員 ありがとうございます。

 このように、教員の数、質について考えたときに今懸念されるのは、団塊の世代の教員の先生方がこれから定年を迎えるということだと思うんです。大量に退職して教員数が減ります。一気にベテランの先生方が教育の現場からいなくなってしまうという事態が予測されるんです。世間では、とかく世代交代が、ただ世代交代することがいいことのようにまかり通っているような感があるかと私は感じているんですけれども、やはり経験の深い年長者の先生方に、若い先生方の指導やまた現場のサポートをしていただくことというのは必要なんじゃないかなと思っておるんです。

 これから退職されるベテランの教員の方々の再雇用についてはどのようにお考えでしょうか。

銭谷政府参考人 ただいま退職した先生の再雇用についてのお尋ねがございました。

 先生お話ございましたように、今後退職する教員の数が増加するということが見込まれております。私どもの推計では、平成十五年度末の退職者数が公立の小中学校で一万七千人でございましたけれども、二十年度末には約二万一千人が見込まれております。これに伴いまして、採用者数につきましても、先ほど申し上げましたように、平成十六年度は約一万五千人でございましたけれども、平成二十一年度には一万八千人程度見込まれるわけでございます。

 それで、ここしばらくは教員採用者数は増加ということがある中で、量及び質の両面からすぐれた教員を確保していくということが重要な課題になってくると思います。その意味で、先生お話がございましたように、すぐれた教育実践を行ってきたベテランの先生方を退職後も活用していくということは、一定の意義があるというふうに考えております。

 ただ、学校ごとに見た場合には、多様な教育活動を展開するためには、年齢や職務上の経験等の面でバランスのとれた教員の年齢構成であることがやはり望ましいわけでございますので、教員の任命権者でございます各都道府県の教育委員会において、各学校の教員の年齢構成が全体としてバランスのとれたものとなるよう配慮をいたしまして、新任の教員の採用それから退職者の再雇用について工夫をしていく必要があるというふうに考えております。

青木委員 ありがとうございます。ぜひその取り組みをお願いしたいと思うんですが、定年後の雇用の確保という視点からもぜひ必要な施策ではないかなと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。

 それでは、最後の質問になりますが、ぜひ中山大臣にお伺いしたいと思います。

 私が芸大で音楽教育科というところに在籍していましたときにまさにゆとり教育が導入されまして、その研究室には、大学の先生方と一緒に、現場の音楽科の先生方ですけれども研修に来ておられまして、みんなでゆとり教育に象徴される総合的学習にこれからどうやって取り組んでいったらいいのかということで四苦八苦していたのが記憶にあるんです。

 音楽科というとちょっと特殊な科目になるかもしれませんが、音楽科の場合は、例えば音楽と郷土研究を結びつけて伝統的な和楽器を取り入れてみたり、それから国語と音楽を合わせて、朗読と音楽、楽器を奏でたりとかしてちょっとした劇をつくってみたりとか、いろいろな取り組みをして、それはそれで意義があったかと思うんです。

 ただ、限られた授業数の中で、とかく軽視されがちな音楽科の基礎、基本、基本的な発声ですとかドレミの習得ですとか、そういう基礎、基本を教える時間がなくなってしまうのではないか、音楽科自体がなくなってしまうのではないかという不安を現場の先生方も皆さん抱いていました。

 先ほども少し触れましたけれども、今、放課後お金を払って遊びを教えていただいている。昔は、子供たちの中に餓鬼大将みたいな子がいて、リーダーの子がいて、暗黙のルールがあったり、上の子から下の子へ自然に遊びが伝えられたり、また遊びを通して道徳やら文化やら、そういうものも自然に受け継がれていったと思うんです。

 今子供たちは、一緒に集まっても共通の遊びをするのではなくて、それぞれが個々にそれぞれの遊びをしているという現象がありまして、子供同士のコミュニケーションも世代間のコミュニケーションも本当に希薄になっていまして、そういった点をはぐくむ必要性が強く感じられる中で、音楽という、共通の歌を持つ、一緒に歌うというこの連帯感、一体感というのは、ほかにはない貴重な体験ができる分野だと思っております。また、例えば童謡なども、おじいちゃん、おばあちゃんから子供に伝えられる本当に大切なメッセージがそこに含まれていると思うんです。

 中山大臣にお伺いしたいと思いますが、ゆとり教育、改めまして今後の方針についてお伺いしたいことと、それから、音楽教育、芸術教育の果たす役割について御所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。

中山国務大臣 青木委員は、保育士として保育園で活躍されておられたというふうにお見受けしておりまして、そういう経験から音楽の大切さを今訴えられたわけでございますが、私自身も音楽というのは非常に大事だと。子供の心の成長といいますか、豊かな心、感性を磨くためにも音楽というのは非常に大事だし、また、小さいころ音楽に親しむということは一生にわたって、やはり音楽とともに歩む人生という意味でも非常に大事なことだろうと私は考えております。

 特に、私、大臣になりましてちょっと見てみたんですけれども、音楽の教科書に日本古来の童謡とか童歌が少し少なくなっているなと。ちょっと残念で、もう少しそういったことをふやすことが、昔ながらの情緒とか、歌うだけでも何かそういった情景が浮かび上がってくるような、そういった歌というのをもっともっと入れてほしいな、そんなことも思うわけでございます。

 実は私、スクールミーティングで中央区の阪本小学校に行きましたときに、まさに総合的学習の時間に日本の伝統的なことだとかいろいろなものを子供たちに教えながら音楽をやっていらっしゃる、要するに、音楽の時間が減ったので何とか総合的な学習の時間を使わせてほしいという大変熱心な先生がいらっしゃって、そういうことをやっておられて、ああ、すばらしい取り組みをしているな、こう思ったわけでございます。

 こういった形で音楽の少なくなったのを補っているということもありますので、私は、ぜひ今後とも、音楽教育を初めとして、心豊かな人間性とかあるいは感性をはぐくむ教育というのは非常に大事だ、こう思っておりまして、そういう方向で、音楽の時間がなくなるようなことは絶対ないように、中央教育審議会におきましても議論していただきたいと思っております。

青木委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 昨日、来年度から使用の中学校教科書の検定結果が公表されました。きょうは、もう既に外交上の問題にもなっております扶桑社発行の「新しい歴史教科書」の問題を取り上げたいと思っております。

 ここに、その検定用の教科書、それから検定意見、修正表というのがこういうふうにございまして、それも持ってまいりました。だから、ここで、検定意見によってどのように変わったのかということなども確かめたいと思っております。

 質問に入る前に、一点申し上げたいことがございます。それは、今、この検定意見及びこうした修正表、修正文というのは事前に記者には配られているんです。ところが、きのうやっと私に届けられたのはその概要なんですよ。この概要というのは、ここにありますけれども、地理的分野、公民も入っていまして、歴史はその中の数枚しかない、本当に一部なんですね。きょうの質問のためにも、私はこの修正表をきちんと文科省からいただきたいということを秘書を通じて何度も言いましたけれども、出せないということなんですね。

 私、これではやはりまともな審議はできないというふうに思います。国権の最高機関である国会、また国会議員になぜ提出できないのか。これは到底納得できないわけですね。今後は、国会優先で、きちんとした資料、資料ですからやはり提出してほしい。もちろん、解禁の期日があれば、それの公表などを差し控えるのは当然のことですから、そういうルールは守ってやるわけですから、きちんと優先的に資料は提出してほしい、このことは要望としてきょうは申し上げておきます。やりとりすると、ちょっと立ち入るかもしれないということがありますので、きょうは最初に要望として申し上げておきます。

 さて、質問でございますけれども、まず、一九四一年十二月八日の真珠湾攻撃に始まる太平洋戦争、この問題でございます。

 この教科書にはこのように書いてあるんですね。「日本は米英に宣戦布告し、この戦争は「自存自衛」のための戦争であると宣言した。日本政府は、この戦争を大東亜戦争と命名した。」というふうにあるわけですね。このくだりには検定意見はついておりません。そこで伺いますが、文部科学省は同じ見解でしょうか。

銭谷政府参考人 太平洋戦争に至る経緯についてでございますけれども、現在、中学校の歴史の教科書は八冊あるわけでございますけれども、一般的な教科書の記述を申し上げますと、中国との戦争が長期化していた日本は、イギリスやフランスなどがヨーロッパ戦線に主力を注いでいる間に、東南アジア地域の資源を獲得するために進出をしたこと、日本は、アジアから欧米の勢力を追い出し、アジアの諸民族だけで栄えるとする大東亜共栄圏を唱えたこと、アメリカは、日本の侵略的な行動を強く警戒し、日本に対する軍需物資の輸出を制限し、石油の輸出も禁じたこと、日中戦争解決のための日米交渉もうまくいかなくなり、日本はアメリカとの戦争を決意したことなどの記述があるところでございます。

 お尋ねの扶桑社の中学校の歴史教科書では、太平洋戦争に至る経緯を記述する中で、日本の南方進出はもともと資源の獲得を目的としたものだったこと、日本は大東亜共栄圏の建設を戦争の名目に掲げたが、この考え方は日本の戦争やアジアの占領を正当化するために掲げられたと批判されたことなどの記述もあるところでございます。したがって、私どもとしては、そういう記述についてはこれを許容しているところでございます。

石井(郁)委員 私は、許容しているというのを聞いて驚いているんですけれども。

 もう一度はっきりさせていただきたいんですけれども、この教科書には、「この戦争は「自存自衛」のための戦争」だと書いているんですね。今、御答弁ではそこのところを外されましたけれども、こういう性格づけ、戦争の目的、これがいいのか、これでお認めになるのかということです。「「自存自衛」のための戦争」だ、「大東亜戦争と命名した。」こういうふうに言っている教科書はこの扶桑社の教科書だけじゃありませんか。もう一度お願いします。

銭谷政府参考人 その点につきましては、先ほど申し上げましたように、修正後は、日本の南方進出はもともと資源の獲得を目的としたものだったこと、日本は大東亜共栄圏の建設を戦争の名目に掲げたが、この考え方は日本の戦争やアジアの占領を正当化するために掲げられたと批判されたことというふうに修正、追加された記述になってございます。これらは申請図書の記述に対して検定意見を付した結果でございます。

石井(郁)委員 別のところの箇所のことを読み上げられても困るんですよね。

 私は、最初に読み上げた、本当に二行というか、「「自存自衛」のための戦争であると宣言した。日本政府は、この戦争を大東亜戦争と命名した。」このくだりには検定意見はなかったんですよ。だから、これを結局お認めになるということですよね、今の御答弁で。もう一度はっきりさせてください。これは認めるということですね。

銭谷政府参考人 自存自衛という部分につきましては、修正されて、なくなっております。

石井(郁)委員 本当ですか。私は、これは今白表紙の教科書で、最終的に検定を通った教科書はまだ見ていませんけれども、自存自衛という言葉はなくなった。間違いありませんね。ちょっとはっきりしてください。

銭谷政府参考人 間違いございません。

石井(郁)委員 何かちょっとわからないところもあるんですけれども、私どものこれまでの精査ではこのくだりに検定意見がつけられていなかったので御質問したんですけれども、この扶桑社の教科書は、これまで、この戦争については自存自衛のための戦争だというふうに前回書いてきましたので、大変問題にしたわけです。

 言うまでもなく、大東亜戦争、一九四一年十二月に出された宣戦の勅書、これによっているんですよね。「帝國ハ、今ヤ自存自衛ノ為、蹶然起ツテ、一切ノ障礙ヲ破碎スルノ外ナキナリ。」「東亜永遠ノ平和ヲ確立シ、以テ帝國ノ光榮ヲ保全セムコトヲ期ス。」ということから出ていますから、私は、自存自衛のやむを得ない戦争だったというんじゃなくて、やはりアジアに君臨する大東亜共栄圏をつくるというものだったわけで、これは当時の日本政府や軍部の見解そのものですよね。

 まさにこの戦争の推進者がこの戦争は聖戦だと称して行ったというものでありますから、これをやはり肯定する、このまま教科書に書くということはそれを肯定するということになるわけですから、それはできないでしょうということで伺ったわけですが、その点はいかがですか。

銭谷政府参考人 今回の検定後の修正では「日本の南方進出は、もともと資源の獲得を目的としたものだったが、」という記述が入りまして、先ほど申し上げましたように、先生お話しのような部分については修正が行われてございます。

石井(郁)委員 ここで大臣にお聞きをしたいと思いますけれども、改めてですけれども、アジア太平洋戦争というのは侵略戦争だったというふうにお考えでしょうか。

中山国務大臣 明治維新の前から太平洋戦争に至るまでの日本の歴史といいますか、それについてはいろいろ思うことはございますけれども、今御指摘ありましたけれども、太平洋戦争は日本による侵略戦争であったかと、こういう御質問でありますけれども、我が国が、過去の一時期に、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジアの諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたということは間違いないと認識しております。

石井(郁)委員 これは十年前に「戦後五十周年の終戦記念日にあたって」という村山内閣総理大臣の談話もございまして、今大臣もお述べになられたような趣旨で、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えたということがあるわけでございますが、私は、やはり政府としては、この立場をきちっと堅持していただかなくてはいけないというふうに思うわけですね。しかし、非常に心配なことがいろいろあるわけです。

 先ほど銭谷局長の方からのいろいろ御答弁もあるんですけれども、これの二百七ページにはこういう記述があるんですね。「アジアに広がる独立への希望」という見出しのもとに「日本の緒戦の勝利は、東南アジアやインドの人々に独立への夢と勇気を育んだ。東南アジアにおける日本軍の破竹の進撃は、現地の人々の協力があってこそ可能だった。」そして「アジアの人々を奮い立たせた日本の行動」、また「日本を解放軍としてむかえたインドネシアの人々」、そして「日本の南方進出は、もともと資源の獲得を目的としたものだったが、アジア諸国で始まっていた独立の動きを早める一つのきっかけともなった。」ここは検定後もこのようになっているかと思います。

 こうなりますと、この戦争の目的というのはアジアの解放のためのものだったということになりませんか。先ほど大臣は、アジアに多大な苦痛を与えたということがございましたけれども、文部大臣もいかがでございますか。

中山国務大臣 いろいろな見方があることも承知しておりますけれども、政府の考え方は、一九九五年の八月十五日の村山内閣総理大臣談話を基本としておりまして、我が国が過去の一時期に、植民地支配と侵略により、多くの人々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受けとめ、これらに対する深い反省とおわびの気持ちに立って、世界の平和と繁栄に向かって力を尽くしていくというものでございます。政府の一員であります私としても、このような考え方を踏まえて、関係諸国との信頼関係を一層強化していくとともに、責任ある国際社会の一員として国際協調を推進して、それを通じて平和の理念と民主主義を推進していくという立場に立っているところでございます。

銭谷政府参考人 大変恐縮でございますが、一カ所訂正をさせていただきます。

 自存自衛の部分でございますけれども、ちょっと私、二カ所出てくるものでございますので、場所を取り違えておりまして、大変失礼をいたしました。

 まず、「日本は米英に宣戦布告し、この戦争は「自存自衛」のための戦争であると宣言した。」という部分は残ってございます。大変失礼をいたしました。これは当時の日本の政府が宣言をした事実が記載をされているわけでございますので、検定意見はつけなかったということでございます。

 それから、私がちょっと誤解をしておりましたのは、申請本の中で、「日本の南方進出は、もともとは日本の「自存自衛」のためだったが、」という記述につきましては、「日本の戦争目的について、誤解するおそれのある表現である。」という検定意見をつけまして、「日本の南方進出は、もともと資源の獲得を目的としたものだったが、」ということに修正をされておりまして、そこでは自存自衛という文言は削除されているということを申し上げたかったわけでございます。大変失礼をいたしました。

石井(郁)委員 とても困るんですね。また振り出しに戻ってしまいますよ。こんな基本的な問題で、しかも、今新聞各社もこの問題について触れている中で、そしてまた、内外のというか、外交問題にもなっていると私最初に申し上げましたように、この戦争のまさに目的、性格、本質にかかわる問題で、そこをあなた方は見落としていたとかなんかなったら、これはどういうことになるんですか。私は、こんな文科省の姿勢でいいのかということを、本当に驚いているんです。

 この戦争を自存自衛の戦争だと言っているということは、これは侵略戦争ということと全く対立する概念じゃありませんか。だから問題なんですよ。それを文科省は認めたということですよね、はっきり言って。こういう教科書でよろしいということをお認めになったということを、再度私は確認させていただきます。

 その上でですけれども、しかし、これは当時の政府と軍部の見解でしょう。それはどうなんですか。はっきりしてください。

銭谷政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、「日本は米英に宣戦布告し、この戦争は「自存自衛」のための戦争であると宣言した。」というのは、当時の日本の考え方を、その事実を記載しているということで許容したということでございます。

石井(郁)委員 それは本当に重大な問題なんですよ。だって、当時のといったって、当時はそれを聖戦として推進したわけでしょう。だったら、この戦争は誤りだったと反省をするというのが日本の政府の立場じゃないですか。ここからは何の反省も出てきませんよ。この戦争は正しい戦争だったということを言っているに等しいんですよ。当時の人がそう言ったと。その当時の戦争が間違っていたんでしょう。それが重大問題じゃないんですか。大臣、本当にこれは重大問題ですよ。

 そして、大臣は村山談話をお引きになられましたけれども、これは村山談話とも反しているじゃないんですか。こういう記述の教科書が登場する、検定に通るという問題は、談話を幾ら言っても、この談話に反していますよ。そういう認識、ないんですか。

銭谷政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、これは当時の政府の認識を述べたわけでございますが、同時に、先ほど来大臣からもお話がございましたけれども、一九九五年の村山内閣総理大臣談話を基本として、我が国が植民地支配と侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受けとめ、これらに対する深い反省とおわびの気持ちに立って、世界の平和と繁栄に向かって力を尽くしていく、こういう考え方は私どもも当然持っているわけでございます。

 扶桑社の教科書におきましても、太平洋戦争におけるアジア諸国との関係については、別のところで、戦場になったアジア諸地域の人々に大きな損害と苦しみを与え、特に中国の兵士や民衆には、日本軍の侵攻により多数の犠牲者が出たこと、日本の占領地域では日本語教育や神社参拝を強いたことに対する反発もあり、抗日ゲリラ活動に日本軍は厳しく対処し、一般市民も含め多数の犠牲者が出たこと、朝鮮半島では日本式の姓名を名乗らせる創氏改名などが行われたこと、徴兵や徴用が朝鮮や台湾にも適用され、現地の人々にさまざまな犠牲や苦しみを強いたこと、多数の朝鮮人や中国人が日本の鉱山などに連れてこられ、厳しい条件のもとで働かされたことなどの記述もあるところでございます。

石井(郁)委員 今述べられたようなもろもろのそういう記述はあるでしょう。しかし、村山談話で重大なのは、我が国は遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んだと。それがどういう戦争だったか。これは侵略戦争だという問題ですよね。

 では、そのことと、過去のこの戦争は自存自衛のための戦争だといったことをただそのまま書くということでは、全然この戦争の本質というか誤りを述べたことになりませんよ。ならないでしょう。ただ過去、まさにそうでしょう、聖戦として戦争を推進したんですから。それをそのまま事実を書いたってだめじゃないですか。あの戦争が、(発言する者あり)いや、事実も書くけれども、その事実だけしか書かない、その事実しか書かないんですよ、この扶桑社の教科書は。それは全然間違った戦争認識、歴史認識を書いているということになりませんか。そこが問題なんですよ。

銭谷政府参考人 我が国の認識は、我が国が過去の植民地支配や侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたという認識でございます。先ほど申し上げました教科書の記述は、開戦時の日本国政府の認識を述べたわけでございまして、その後それを、村山談話などを初めとして、我が国はアジアの国に多大の損害と苦痛を与えたという認識をしているわけでございますので、扶桑社の教科書におきましても、先ほど申し上げましたように、アジアの人々に多大の損害を与えたということは記述をしておりますし、また別のところでは、「敗戦後になって、日本は、これらの国々」、つまりアジアの国々に「賠償を行った。そして、大東亜共栄圏の考え方も、日本の戦争やアジアの占領を正当化するためにかかげられたと批判された。」という記述がございます。

石井(郁)委員 いろいろお述べになっても、やはり出発のところでこれはもう決定的に間違っていますよ。だから、こういう記述で通したら、日本は村山談話にあるような反省もなしと見られるのは当然じゃないんでしょうか。

 実際、この扶桑社の教科書に基づいて指導書というのがあるんですね。これは驚くことに、こういうふうに書いています。この戦争の目的は何ですか、ノートに書きなさい、これは生徒に指示するわけです。生徒は、自存自衛とアジアを欧米の支配から解放した、大東亜共栄圏を建設すること、これはこういうふうに書かせるんですよ。全然、これは間違った歴史認識じゃないですか。間違った歴史認識ですよ。こんなことをさせたら、本当にとんでもない話だと思いますよ。

 だから、村山談話にのっとってとか踏まえてとか言いますが、この教科書は、村山談話は十年前ですから、今、検定を通ってこの時点でこういうものが再び出てくる、私は、政府そして文科省は全然談話の趣旨を踏まえていないと言わなければいけないと思うんですね。全然、反していますよ。これは政府見解に全く反した教科書じゃないですか。

 反していないと。それは幾つか日本がアジアに対して行ったことについて述べているということがあっても、この根本のところでこれを残しているということでは、全然談話を踏まえているということにならないと私は思いますよ。やはり、侵略ということを認めるのか認めないのか、そこの問題なんですよ。それが全然あいまいにされているじゃないですか。それはもうはっきりしていることですよ。

 それで、私は、こういう問題で、教科用の図書検定基準もありまして、近隣諸国条項は近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされているかどうかということで来ているわけですけれども、それにも反していると言わなければならないと思うんですね。

 ここで私は少し、ではアジアの教科書が実際この戦争をどんなふうに描いているのかということをちょっと御紹介したいと思うんですね。それは、今、この教科書のようなことが本当に通用しないということを言いたいと思うわけです。

 例えば、インドネシアの教科書なんです。これは小学校四年生、民族解放の歴史という中ではこう書いています。一九四二年に、日本軍はインドネシアにいたオランダ人に奇襲をかけて、オランダ人たちはインドネシアから逃げ出した、我が国はオランダ植民地支配から解放された、そのかわりに我が国は日本の植民地になった、すべての植民地政権は残酷で民衆を搾取する点においては同じだというふうに書いています。

 さらには、日本占領軍に対するインドネシア民衆の抵抗、日本占領期におけるインドネシア民衆の苦しみというようなことも書いています。少し長くもなるんですけれども、いかに日本軍がインドネシア民衆を非人道的に扱ったか云々等々、やはり具体的に書いていますよ。それで、至るところで抵抗運動も起きた、西ジャワ州シンガパルナの民衆も立ち上がった、全国各地方で、日本軍に反抗して老若男女を問わず全員が立ち上がった、それぞれの自分のやり方で抵抗運動を展開したということを書いているんですね。

 この扶桑社の教科書はアジアの解放という立場で書いているんですよ。これはアジアの解放でなくて、アジア侵略そのものじゃありませんか。だから、ただこういう事実で苦痛を与えた、幾つかの事実を挙げただけでは済まない、この戦争の根本問題がここで問われているんですよ。それをどう描くかということが、やはり戦争を見る本質ではないんでしょうか。

 扶桑社の教科書というのは全く逆のことを書いているんですよ。インドネシアの子供たちはこういうふうに学んでいる、小学四年生ですよ。これは、歴史教科書、全く逆のことを書いていませんか。大臣、いかがでしょうか。

中山国務大臣 日本は日本の教科書で学ぶべきで、何もインドネシアの教科書で学ぶ必要はないと思うんですけれども。

 先ほどから話を聞いていますと、自存自衛の戦いであったというふうに日本政府が発表した、これは事実ですよね。しかし、その後にいろいろ書いてあるわけでございます。御承知のように、日本の検定というのは、まず事実が間違っているかどうか、著しくバランスを欠いているかどうかという観点から検定を行っているわけでございまして、自存自衛の戦いだったというふうにその当時の政府が発表した、これは本当でございます。事実のことだろうと思いますし、それを検定で削るというのは、事実なのを削るというわけにもいかないんじゃないかと思いますし、その後の、今局長の説明をずっと聞いていまして、しかしこうだった、ああだった、批判があったとかいうふうなことで、結構バランスはとれているんじゃないかな、こう思うわけでございます。私は、今、インドネシアの教科書がこうだ、それに合わせる必要はない、日本は日本の教科書で日本の子供たちを教えるべきだと思っております。

石井(郁)委員 大臣からもまた大変重大な答弁がなされたと思いますけれども、ただそのときの政府がこう言ったという話でその教科書が全部つくられている、それでいいのかと言っているんですよ。それは、戦争の本質そのものをそんなふうに書いているから問題なんですよ。単なる経過の一つとして書いているのとは違うんですよ。それはもうこの戦争の性格、目的にかかわる問題だ、そういうふうにとらえられないというのは、私は大変重大な歴史認識だと思いますね。それは政府の見解とも全く違う。だから、これまでも中国からも韓国からも厳しい批判が出てきたんじゃないですか。今だって出ているじゃないですか。それは本質問題ですよ。単なる事実の経過の問題ではありません。

中山国務大臣 政府の見解は、先ほど申し上げましたように、アジアの諸国の多くの人々に多大の損害と苦痛を与えた、これが政府の見解でございます。

 我々のこの検定というのは結構幅広くて、その幅の中に入っていればいいわけで、それを一々、これは事実と違うじゃないかといってやるわけですけれども、そういうようなことを発表したということは事実ですから、その後、しかしということでずっとつながっているわけですから、バランスは結構とれていると私は思いますけれども。

銭谷政府参考人 繰り返しになるかもしれませんが、教科書の検定は、学習指導要領や検定基準等に基づきまして、教科用図書検定調査審議会の専門的な審議を経て実施をするものでございます。

 また、検定におきましては、記述内容を具体的に指示するものではなく、どのような記述とするかは申請図書の著作編修者の判断にゆだねられているものでございます。かつ、歴史の教科書の検定は、国が特定の歴史認識や歴史的事実を確定するという立場に立って行うものではございません。

 教科書検定はあくまでも、検定基準にのっとり、申請図書の具体の記述について、その時点における客観的な学問的成果や適切な資料に照らして欠陥を指摘することを基本として実施をしてきておりまして、今回の検定においてもこの考え方に基づいて実施をしてきたところでございます。

 なお、これも繰り返しになりますが、我が国の政府は、平成七年の内閣総理大臣談話におきまして、我が国の植民地支配と侵略によって多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受けとめ、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明しているわけでございますが、こうした認識は、私どももいささかも異なるものではございません。

石井(郁)委員 もっと結論的なこともだんだん言わなくてはいけないんですけれども、一方で、こういう談話があります、それにのっとりますといいながら、こういう教科書になってくると、しかし、本当にこれは戦争の反省をしているんですかと、これはもう各国から声が出てきますよ。それにちゃんと答えられるわけですね。

 私は、談話とこの教科書というのは相反するものだ、談話の精神に反すると。これは実際今、新しい、いろいろアジアの国から出ている反応で見ますと、これは私は後で言おうと思ったんですけれども、日韓共同宣言もあります。これは金大中大統領と小渕総理大臣との共同宣言なんですけれども、「過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫び」を小渕総理大臣は述べられたということなんですが、今、韓国の側からしますと、村山談話だとかあるいは日韓共同宣言だとか、こういうものをもう破棄されるんじゃないか、それはもう撤回されるのか、そういうことにつながっていくんですよ。そういう声が既に出ています。やはり私は、それほどの重大な内政、外交問題だということを本当に認識されているんだろうかとちょっときょうは思わざるを得ないわけですね。

 さて、それで、またさらにちょっと例を申し上げます。

 大臣は、インドネシアの教科書はインドネシアだ、こう言われました。確かにそうですが、しかし問題は、戦争をしたその事実の、日本と受け手の側の話ですから、歴史的な事実は一つですよね、歴史の事実としては。やはりその戦争をどう受けとめているのかという問題ですよ。そっちの教科書はそっちでいいんだということにはならないでしょう。

 実際、フィリピンではどう書いているかというと、これもフィリピンの小学校の教科書ですけれども、日本はフィリピンに軍政をしいた、日本統治時代のフィリピン人は非常な苦痛を味わったというふうなことがいろいろ書かれています。人々は職を失い、みんなが食料、医薬品の不足を経験した、大勢の人々が病気になった云々とありますけれども、やはり日本統治時代に、国内のほとんどの人々が物資の欠乏を経験した。これは歴史の事実でしょう。そして、みんな日本人の残虐さから自由になりたかった。フィリピン人の多くの人々が我が国の解放に手をかそうとしてゲリラ組織に参加して、いろいろ戦ってきたということですね。そして、日本人の手からフィリピンを解放するアメリカ軍が来て、みんな喜んだというのが歴史の記述になっているんです。だから、解放者というのは、日本軍ではなくて、ここではアメリカ軍だったということなんですね。

 私が最初に申し上げたのは、この教科書の中には、「アジアの人々を奮い立たせた日本の行動」ということで、諸国が日本を解放軍として迎えた、こういうふうに書いているから、その事実は違うでしょうということを言っているわけです。だから、この事実を見ますと、アジア諸国ではそういう独立の動きを早める一つのきっかけになんか到底なっていないということじゃありませんか。

 むしろ、フィリピンの場合でいいますと、アメリカはフィリピンを共和国の形で独立させようとしたときに第二次大戦が勃発した、アメリカの植民地として戦争に参加せざるを得なかった。だから、フィリピンの独立をおくらせたのが日本の侵略戦争ということになるわけで、最初に戻りますけれども、検定で書きかえたという記述はこうです。「日本の南方進出は、もともと資源の獲得を目的としたものだったが、アジア諸国で始まっていた独立の動きを早める一つのきっかけともなった。」と。

 だから、アジア諸国を助けたんだ、アジア諸国の独立を助けたんだ、こういう書き方でいいのか。(発言する者あり)全然事実じゃないです。これは不正確ではありませんか。いかがですか。

銭谷政府参考人 まず、お断りをしておきたいわけでございますが、歴史教科書について、具体的にどのような歴史的事象を取り上げ、それをどのように記述するかは、執筆者にゆだねられているわけでございます。

 日本の太平洋戦争について、村山談話にもありますように、アジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたという認識は持っているわけでございます。

 なお、今先生お話のございました部分に関連いたしましては、修正後の扶桑社の教科書の記述では、

  日本は、占領した東南アジアの各地では軍政をしいた。現地の独立運動の指導者たちは、欧米諸国からの独立を達成するため、日本の軍政に協力した。

  しかし、日本の占領地域では、日本語教育や神社参拝などをしいたことに対する反発もあった。連合軍と結んだ抗日ゲリラ活動もおこり、日本軍はこれにきびしく対処し、一般市民も含め多数の犠牲者が出た。また、戦争末期になり、日本にとって戦局が不利になると、食糧が欠乏したり、現地の人々が過酷な労働に従事させられる場合もしばしばおきた。

こういう記述が今先生お話しになった部分の前にあるわけでございます。

 さらに、注といたしまして、「このため、敗戦後になって、日本は、これらの国々に賠償を行った。そして、大東亜共栄圏の考え方も、日本の戦争やアジアの占領を正当化するためにかかげられたと批判された。」こういうことでございますので、修正文については、私どもは許容の範囲ということでこれを認めたものでございます。

石井(郁)委員 そういうアジアへの苦痛や被害を与えたという部分はこのように書いてあるからといって、最もこの戦争を規定する、戦争を性格づける重大問題のところで、こういう自存自衛のための戦争、あるいはアジアを解放したんだと。これは侵略戦争だったということを認めていないということじゃありませんか、全然これで反省したということにならないですよ、このことを申し上げて、ここのところは以上にしておきたいというふうに思います。

 次に、日韓併合問題も大変重大だと思いますので、韓国併合問題で検定意見がついていると思いますけれども、どのような検定意見がついて、どのように変えられたのか、御説明ください。

銭谷政府参考人 日韓併合についてでございますけれども、申請図書は、一九一〇年の韓国併合について、欧米列強は、アジアにおける「自国の植民地支配を日本が認めるのと引きかえに、日本の韓国併合を認めた。」との記述でございました。この点については、韓国併合に至る経緯について誤解するおそれがあるという検定意見を付して修正を求めたところでございます。

 この結果、韓国併合の前に、欧米列強が「日本が韓国を影響下におさめることに異議をとなえなかった。」との記述に修正をされてございます。また、その後に日本による韓国併合が行われたとする記述に修正をされているところでございます。

 なお、修正の過程で申請図書にございました「一部に併合を受け入れる声もあった」との記述は削除されてございます。

 以上でございます。

石井(郁)委員 やはり、「日本政府は、日本の安全と満州の権益を防衛するために、韓国の併合が必要であると考えた。」と日本の政府の側からのそういう説明だと思うんですけれども、「武力を背景に韓国内の反対をおさえて、併合を断行した。」という部分にそこら辺はなっていますね。それから、やはり植民地にするということがいかに犯罪的なことなのかという部分については、何か触れないというか、いかがですか。

銭谷政府参考人 修正後の検定決定をした記述を読み上げさせていただきます。「韓国併合」という部分でございますが、

  日露戦争後、日本は韓国に韓国統監府を置いて支配を強めていった。欧米列強は、イギリスのインド、アメリカのフィリピン、ロシアの外モンゴルなど、自国の植民地や勢力圏の支配を日本が認めることなどと引きかえに、日本が韓国を影響下におさめることに異議をとなえなかった。

  日本政府は、日本の安全と満州の権益を防衛するために、韓国の併合が必要であると考えた。一九一〇年、日本は、武力を背景に韓国内の反対をおさえて、併合を断行した。

  韓国の国内には、民族の独立を失うことへのはげしい抵抗がおこり、その後も、独立回復の運動が根強く行われた。

こういう記述でございます。

石井(郁)委員 ここでも、ある面ではそういう歴史の経過として書かれているのかもしれませんけれども、やはり他国の主権、独立を奪ったという重大な事実という問題があると思うんですね。

 その点での、これも教科書を見ますと、やはりいかにこれが韓国にとっては、韓国の人々にとってはつらいものであったかということが書かれています。

 私はここで、韓国の中学校の社会科の教科書なんですけれども、これを見ますと、ここでの日韓併合についての記述というのは、こういうふうになっているんですね。

 結局、日本帝国主義は軍隊や警察を全国各地で廃止して、我が民族の抵抗をあらかじめ遮断し、李完用という人なんですが、中心とした売国内閣といわゆる合邦条約を締結した。これにより、長い間独自の文化を創造しつつ発展してきた我が民族は国を奪われ、日本帝国主義の奴隷状態に陥ってしまった。これは、五千年の韓民族の歴史上最も悲劇的で恥辱的な事件であった。

 やはり、五千年の歴史上最も悲劇的あるいは恥辱的な事件だというふうに書いている。だから、侵略された側の国、民族にとってはそういうことなんだということをやはりきちんと受けとめないといけないんじゃないかと思うんですね。

 だから、ここは、あなた方が検定した結果の記述でも、日本政府にとっては必要だからこういうことをしたんだということで終わっている。それは、他国の領土に手を出すということはやむを得ないんだということにつながっているんですよ。そこが問題だと私は思うんですね。いかがですか。

銭谷政府参考人 先ほど来再三申し上げておりますが、歴史教科書は、学習指導要領の範囲内で具体的にどのような歴史的事象を取り上げ、それをどのように記述するかは、民間の執筆者等にゆだねられているものでございます。現在の学説等々に照らしまして、誤り等がある場合には修正意見を出すわけでございますが、このように記述しなさいといったような検定意見は、現在の検定制度ではとっていないということでございます。

 先ほど申し上げましたように、韓国併合につきましては、「韓国の国内には、民族の独立を失うことへのはげしい抵抗がおこり、その後も、独立回復の運動が根強く行われた。」ということについては記述があるわけでございます。

 また、申請本では、その後、「韓国併合のあと置かれた朝鮮総督府は、鉄道・灌漑の施設を整えるなどの開発を行い、土地調査を開始し、近代化に努めた。」というのが申請本の記述でございましたが、この点については、「植民地政策の一環であることが理解し難い表現である。」という検定意見をつけまして、最終的な検定決定は、「韓国併合のあと置かれた朝鮮総督府は植民地政策の一環として、鉄道・灌漑の施設を整えるなどの開発を行い、土地調査を開始した。」という記述に改められているところでございます。

石井(郁)委員 今の御答弁では、指導要領にのっとって、また執筆者それぞれが執筆するものだということがありましたけれども、私はやはり、歴史教科書というのは、次の世代に、どういう歴史認識のもとに、そしてアジアの中の一員として、友好関係を築いていくかという立場から、それぞれの国が最も重視をして記述をしているものだと思うんですね。

 そのときに、過去の戦争について、政府の談話でも繰り返し深く反省をし、そして戦争を二度と起こさないという立場で、日本が国際公約として憲法も持っている国として、その戦争をあいまいにするということは、私は許されないと思うんですよ。

 だから、過去のことをただ書いているんだということで済まない、今、子供たちに何を学んでもらうのか、どういう立場でこれからの未来に立ち向かっていくのか、アジアの中で生きていくのかということがやはり問われる問題だと思うんですね。

 その意味で、ただ、この歴史の教科書が子供たちに、植民地支配というのはどういうことであったのかということもきちんと伝えない、また侵略戦争というのはどういうことだったのかも伝えない、韓国併合が、いろいろあるけれども、やむを得なかったというような歴史認識を教えるというようなことになったら、これでいいんだろうか、それはだれでもそう思うんじゃないでしょうか。

 こういうことでは、日本と韓国、あるいは日本と朝鮮との関係や、日本とアジアとの関係がまた大きな亀裂を生むんじゃないのか。本当に、子供たちは、今、アジア諸国に出かけていっていろいろ交流もする、一緒にいろいろなことを取り組んでいく、そういう時代じゃないですか。

 とにかく、こういう第二次世界大戦という最大の惨禍、そして非人道的な戦争、こういうものがなぜ起こったのか、どうしたらそれが防げるのかということを考えさせるのが、やはり私は歴史の勉強じゃないのかというふうに思うんですが、その点でいいますと、全然それにつながっていない、むしろ逆に描いている、そこが問題だということを私は申し上げたいと思うんです。

 もう一例、韓国の問題で例を挙げたいと思うんですが、これも検定用の記述で私はびっくりしたんですが、どんな意見で、どのように改められたのか教えていただきたいと思うんですが、創氏改名の問題なんですね。

  朝鮮半島では、日中戦争開始後、日本式の姓名を名乗ることを認める創氏改名が行われ、朝鮮人を日本人化する政策が進められていた。戦争末期には、徴兵や徴用が、朝鮮や台湾にも適用され、多数の朝鮮人が、日本の鉱山などで、きびしい条件のもとで働かされた。

これは一定の事実もあると思うんですが、この記述、どんな意見がついて、どのように改められたんでしょうか。

銭谷政府参考人 創氏改名についての記述についてのお尋ねでございますが、申請図書についてはただいま先生がお読みをされたような記述でございました。

 それに対しまして、検定意見としては、「戦時下の植民地などの実態について、誤解するおそれのある表現である。」という意見をつけました。

 それに対して、修正が出てまいりまして、検定決定をした記述は以下のようでございます。

  朝鮮半島では、日中戦争開始後、日本式の姓名を名乗らせる創氏改名などが行われ、朝鮮人を日本人化する政策が強められていた。戦争末期には、徴兵や徴用が、朝鮮や台湾にも適用され、現地の人々にさまざまな犠牲や苦しみをしいることになった。また多数の朝鮮人や中国人が、日本の鉱山などに連れてこられ、きびしい条件のもとで働かされた。

こういう記述になってございます。

石井(郁)委員 この点も、韓国側がどういうふうに教科書で描いているかということでいいますと、本当に厳しいですよ。それはそうですよ。民族抹殺政策だと。日本の帝国主義は我が民族精神を根絶やしにするためにいわゆる日鮮同祖論を主張したと。内鮮一体や皇国臣民化などのスローガンを掲げて我が民族の民族精神をなくそうとした。これにより、韓国語の使用を禁じる、日本語だけを使うようにして、我が歴史の教育も禁じた。またハングルで刊行された新聞も廃刊にさせる、韓国語や歴史に対する研究も禁止した。さらに日本帝国主義は我々の名前までも日本式に変える創氏改名を強要した、各地に日本の神社を建てて参拝するようにさせた云々書いていますね。このような蛮行というのは世界史に類例がないというふうに書いています。

 こうしますと、私は今の検定についた意見の書き直しに大変注目するのは、だから最初の白表紙では、日本の姓を「名乗ることを認める創氏改名」、勝手に名乗ったんですよ、日本の姓名を。しかし、そうじゃないでしょう。姓名を名乗らせる、局長もそのようにちょっと強調されました。名乗らせたんですよ、この創氏改名は。

 それを全くあべこべに描こうとすることが出てきているわけですね。だから、それは韓国側から見ると、全然違うじゃないですかと。だから、余りにもこの扶桑社の歴史教科書というのは、韓国の歴史と乖離が甚だしいと言わなければなりません。

 こういうことで、今一方では日韓の友好ということがスポーツや文化等々で進んでいますよ、本当に真の日韓友好たり得るんだろうか、この日本の教科書で学んだ子供たちで本当に日韓友好できるんでしょうかということを言わなければいけませんが、これは大臣、いかがでございますか。

銭谷政府参考人 まず、ちょっと御説明を申し上げたいのは、中学校の学習指導要領にどう書いてあるかということでございますが、

  昭和初期から第二次世界大戦の終結までの我が国の政治・外交の動き、中国などアジア諸国との関係、欧米諸国の動きに着目させて、経済の混乱と社会問題の発生、軍部の台頭から戦争までの経過を理解させるとともに、戦時下の国民の生活に着目させる。また、大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたことを理解させる。

というのが指導要領の記述でございます。この指導要領の範囲内でどのような記述をするかというのは執筆者にゆだねられているわけでございます。

 検定に当たりましては、国が特定の歴史認識、歴史事実を確定するという立場に立って行うものではなく、検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として実施しているものでございます。

 このため、検定では、申請図書の内容に明らかな誤りや著しくバランスを欠いた記述などがある場合に検定意見を付しているところであり、執筆者の基本的な歴史認識やその意図するところについて、検定で修正したり、特定の歴史的事象を取り上げるよう求めたりすることはできないということになっております。このため、検定決定をしたことをもってその教科書の歴史認識や歴史観が政府の考え方と一致するものと解されるべきではないと考えております。

 なお、政府の歴史認識につきましては、平成七年の内閣総理大臣談話などに示されたとおりでございまして、この点については私ども、いささかも異なるところはございません。

石井(郁)委員 幾らそのように政府の談話と異ならないと言っても、私は、この教科書を見たら、全然談話に反していることが載っているじゃないかと言わなければいけません。

 きょうはもう時間が来ましたけれども、前にも問題にしましたが、従軍慰安婦のことがなくなったということは、各社そろってなくなったのはなぜなのかということもありますが、これはもう時間がなくなりました。

 あるいは日中戦争でも、この教科書では二百ページに、「目的不明の泥沼戦争」なんですね。だから、日中戦争、目的不明だった。これで本当にこの戦争のことは正しく認識できるのか、子供たちに教えることになるのかということを言わなければならないと思います。

 もう時間なんですが、既にこの教科書、白表紙の段階から大変外交的な問題になっています。これは盧武鉉韓国大統領は、侵略と支配の歴史を正当化する、再び覇権主義を貫徹しようとする意図を見過ごすことはできないと言っていますよ。断固是正を求める、今そういうことが出ているんじゃありませんか。これは談話、三月二十三日です。中国の武大偉外務次官も、中国政府と国民も韓国と同様強い関心を持っていると。今どんどんそういう声明や声が上げられていると思います。中国の動きもテレビではいろいろと大変、皆さんもごらんのとおりだと思います。

 こういう批判に対しては、これは文科省としてはどのように対応されるおつもりですか。

中山国務大臣 我々としては、先ほどもお話ありましたが、日韓友好、未来志向で進んでいくべきだと。政府の認識としては、先ほど申し上げましたように、一時期アジアの諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた、そういう深い反省に立って進めていくということに変わりはございません。

石井(郁)委員 私は、そういう立場を持っていらっしゃるならきちっとこの歴史教科書にもそれが反映されるようにしていただきたいということを強く申し上げたいと思います。今本当に憂慮すべき事態じゃないですか。これから、私は大変な問題になっていくだろうと思っています。

 改めて、侵略戦争と植民地支配についての歴史の真実を知る、そういう反省の上に平和と民主主義の憲法があるということを学ぶのがアジアと世界で生きる上で不可欠だ、これは日本の子供たちにとって不可欠なことだというふうに私は思うんですね。

 だから、歴史をゆがめるような、あるいは侵略戦争を正当化するような、そういう教科書が出てくることは、これは絶対に許すわけにいかないじゃありませんか。そういう戦争は正しいというふうに教えるような教科書を子供たちに押しつけるわけにいかないということを申し上げて、質問を終わります。

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十六分散会


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