衆議院

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第10号 平成17年4月20日(水曜日)

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平成十七年四月二十日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    下村 博文君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      西村 明宏君    葉梨 康弘君

      馳   浩君    古屋 圭司君

      保利 耕輔君    奥田  建君

      加藤 尚彦君    金田 誠一君

      今野  東君    須藤  浩君

      達増 拓也君    寺田  学君

      中村 哲治君    仲野 博子君

      長島 昭久君    長浜 博行君

      肥田美代子君    松本 大輔君

      村井 宗明君    池坊 保子君

      石井 郁子君    横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 金子 順一君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十日

 辞任         補欠選任

  青木  愛君     仲野 博子君

  古賀 一成君     中村 哲治君

  高井 美穂君     寺田  学君

  武山百合子君     金田 誠一君

  笠  浩史君     村井 宗明君

同日

 辞任         補欠選任

  金田 誠一君     奥田  建君

  寺田  学君     高井 美穂君

  中村 哲治君     古賀 一成君

  仲野 博子君     青木  愛君

  村井 宗明君     笠  浩史君

同日

 辞任         補欠選任

  奥田  建君     長浜 博行君

同日

 辞任         補欠選任

  長浜 博行君     今野  東君

同日

 辞任         補欠選任

  今野  東君     武山百合子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国立大学法人法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、大臣官房文教施設企画部長大島寛君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長石川明君、研究振興局長清水潔君、スポーツ・青少年局長素川富司君、厚生労働省大臣官房審議官岡島敦子君、大臣官房審議官中島正治君及び職業安定局高齢・障害者雇用対策部長金子順一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤基彦君。

近藤(基)委員 おはようございます。自由民主党の近藤基彦でございます。三十分という限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 今回の国立大学法人法の改正は、制定後初めての改正であります。その改正の概要と、特にそのねらいについて御説明を願いたいと思います。

中山国務大臣 おはようございます。よろしくお願いいたします。

 今回の国立大学法人法改正の概要とそのねらいという御質問でございます。

 今お話がありましたように、昨年四月に国立大学法人が発足いたしました。今回の改正はこの最初の改正になるわけでございます。国立大学の教育研究体制の整備充実を図るため、国立大学法人の統合による国立大学法人富山大学の設置や国立大学法人筑波技術短期大学の四年制化等の改正を行うものでございます。

 具体的に申し上げますと、第一に、富山県内に所在します富山大学、富山医科薬科大学、高岡短期大学につきまして、学問分野間の融合による教育研究の新たな展開を図るとともに、大学の経営基盤を強化するなどのため、これら三法人を統合し、国立大学法人富山大学を設置すること。

 第二に、視覚障害者、聴覚障害者のための高等教育機関であります国立大学法人筑波技術短期大学、三年制でございます、これにつきまして、科学技術や医療技術が著しく発展する状況の中で、これらの変化により、より柔軟に対応でき、実践的な能力を有する職業人の育成が可能となりますように、四年制の大学として国立大学法人筑波技術大学を設置すること。

 第三に、神奈川県横須賀市湘南国際村に主たる事務所として設置し、当地にキャンパスを整備予定でありました国立大学法人政策研究大学院大学につきまして、土地の基盤整備が困難となったことから、東京都六本木に別途キャンパス整備を進めていたところでございますが、このたび完成の見通しとなりましたので、東京都に事務所の所在地を変更すること。

 この三つを改正内容とするものでございます。これらの改正点を通じまして、国立大学が法人化のメリットを生かしつつ、教育研究活動を一層強化していくことが目指されているものでございます。

近藤(基)委員 今も御説明がありましたように、特に、筑波技術大学の設置は、視覚障害者及び聴覚障害者を対象とした唯一の高等教育機関と聞いております。障害者に対する高等教育の機会を保障するためにも、筑波技術大学への支援に力を注ぐべきだと考えますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 御指摘のように、障害を有する学生につきましては、教育課程の履修あるいは学生生活全般にわたりまして特別な配慮をする必要があるわけでございまして、専ら視覚障害者及び聴覚障害者を対象として、きめ細かい配慮のもとに短期大学レベルの高等教育を提供してまいりました筑波技術短期大学に対しましては、文部科学省としても、これまで必要な支援等を行ってきたところでございます。

 今回の四年制化によります筑波技術大学の新設につきましては、現有の施設と教員スタッフの有効活用を前提としておりまして、基本的には大幅な経費増は必要としませんが、障害者教育カリキュラム及び障害補償システムの開発研究に必要な経費を重点的に措置するなど、障害者の社会的自立、参画、貢献の促進と教育研究の高度化、専門化の重要性に配慮し、必要な対応を行ったところでございます。

 今後、筑波技術大学が障害者を対象とした唯一の高等教育機関としてその役割をしっかりと果たしていくことができますように、学生に対する教育の状況等を踏まえつつ必要な対応を図ってまいりたい、このように考えております。

近藤(基)委員 ぜひ力を注いでいただきたいと思います。

 東京大学が設置されたのが明治十年でありますが、それ以来、国立大学は国の機関として長く位置づけられてきました。しかし、昨年の四月に、国の機関から独立した国立大学法人という形になりました。百年に一度といってもよい昨年の大改革でありましたが、国立大学が個性ある教育や特色ある研究を積極的に展開することができるよう、経済界や地域関係者など学外の有識者も加わった学長を中心としたマネジメント体制を確立することや、財務会計など国の機関であることに伴う規制の撤廃などマネジメントの改革を行いました。

 これまで、国内旅費に計上された旅費は外国出張に使えない、ノーベル賞級の研究者を破格の待遇で迎えようとしても難しいといった国の機関であることに伴う細かな規制のもとで、教授会自治や親方日の丸といった閉鎖的な運営が行われていることが活性化の足かせとなっていたのではないかという指摘もありました。

 国立大学の法人化で仕組みが根本的に変わり、改革の意思と実行があれば、世界水準の学術を展開する大学、世界の大学のモデルになるような、しっかりと学生を鍛え上げるよう教育を行う大学、あるいは産業界や地域と密接に連携して社会貢献を積極的に行う大学などに大きく飛躍することが可能になったと思います。

 この四月で一年が経過いたしますが、これから成果がたくさんあらわれてくると思いますけれども、このような改革のねらいなどを踏まえて、今、国立大学の改革は全体としてどのような状況にあるのか。特に、学長のリーダーシップがどのように発揮されているのか。あるいは、戦略的な大学経営が行われているのか。あるいは、学外者の大学運営の参加状況はどうなのかなどの観点を含めて、現在の状況を説明していただきたいと思います。

塩谷副大臣 おはようございます。お答え申し上げます。

 今近藤委員御指摘のとおり、国立大学法人が設立されて一年になるわけでございまして、私の地元で考えると、地元の学長が何回も私のところへ来たりすること自体、今までになかったことでございまして、それだけでも大分変わったなという印象はあるわけでございますが、とにかく今、改革に向けてそれぞれの大学が教育研究活動に邁進しているところでございます。

 その中で、特に学長のリーダーシップのもとでの戦略的な大学経営、あるいは学外者の大学運営への参加、そして弾力的な人事システムの積極的な活用、さらには教育研究機能の強化、そして学生サービスの充実、そして地域連携や産学連携の促進といった点で各大学が今努力をしていただいているところでございます。

 具体的には、学内科研費の創設等、これは電気通信大学でやっていただいております。また、学外者の大学運営の参加につきましては、特に企業の幹部を採用している東京大学や埼玉大学、あるいはその他民間企業、地元の自治体、弁護士、公認会計士等から多様な人材を登用しているところでございます。そして、新規採用全教員に任期制を導入した北見工業大学、あるいは教員の一部に年俸制を導入している大阪大学、外国人を理事に登用している神戸大学、あるいは、先ほどお話があったノーベル賞級の研究者を特別な待遇により招聘している東北大学等、取り組んでいるところでございます。

 また、教育研究機能の強化につきましては、卒業生の就職先による教育効果の検証は山口大学、さらには、東京大学においては独自に金融研究センターを設置する、あるいは一橋大学が中国の北京に、あるいは京都大学がアメリカのシリコンバレーに独自に海外の事務所を設置したりしております。

 また、学生サービスにおきましては、大学独自の奨学金や授業料の免除制度などを導入している徳島大学や山口大学、あるいは人材関連会社と連携して就職支援を充実している千葉大学等があるわけでございます。

 また、地域連携、産学連携の促進につきましては、広島大学では、いわゆる県庁や企業の専門家を専任教員に招聘したり、あるいは地元企業の経営者を対象とした講座を開設したり、ベンチャー企業を対象とした経営相談を実施している小樽商科大学、そして、民間シンクタンクと包括的に連携して幅広く共同研究を実施している名古屋大学等、さまざまな取り組みがされておりまして、この改革がこれから成果を上げるものと期待をしているところでございまして、文部科学省としましては、魅力ある、特色ある教育研究活動に対して、今後必要な支援をしてまいりたいと思っているところでございます。

近藤(基)委員 ただいまお話がありましたように、いろいろな特色ある取り組みを行っているわけでありますが、我が県であります新潟県内の大学でいえば、新潟大学では今年度から、勉強しなくても単位が取れると酷評されていました我が国の汚名を返上すべく、大学教育を学部の壁を取り除いて大幅に見直し、各学部が開講するすべての授業科目を分野と水準で整理、体系化して、学生の卒業水準を明確化するベンチマークシステムを導入いたしております。

 学生が一つ一つの科目を履修することによって、最終的に到達すべき水準をみずから把握し、その水準に達するようにしっかり勉強させる仕組みは、全国に先駆けた画期的なものであります。

 また、就職支援についても、これまでの殿様商売ではなく、キャリアセンターを設置して機能を強化するとともに、私立大学の東海大学とも連携した上で、新潟県内で首都圏内の企業を呼んだ説明会を実施するなど、きめ細かいサービスの提供をし始めたところであります。

 また、新潟大学のような規模の大きな大学だけではなくて、上越教育大学は、学校現場のさまざまな現実的な課題に対応できる力量ある教員の養成のために、教員養成の過程に学校現場での指導経験が豊かな教員が参画して実践的な指導を行うことが大切だろうという考えのもとに、この四月から、新潟県内の現職の小学校教諭二名、指導主事一名の三名を、三年間の任期で学校教育総合研究センターの助教授に採用をし、教師の卵への指導や、どうすればわかる授業になるのか、実践的な研究に今取り組んでいるところであります。

 また、長岡技術科学大学も、これまでの全国的に有名だった五カ月間に及ぶ長期のインターンシップ、すなわち実務訓練でありますが、これを一層充実するとともに、ハノイ工科大学などベトナムにある五つの工学系の大学と連携して、国際的な視野を持った技術者の養成の取り組みをスタートさせたところであります。

 このように、法人化を契機に、いろいろな大学でいろいろな取り組みを行っておるわけでありますが、役割を十分に果たしていないと批判されてきた教育や社会貢献などについても、大きな取り組みがスタートし始めたわけであります。文部科学省としても、これらの改革の機運を逃さずに、各大学の活性化を一層促進するためにも、新潟大学のような努力をしている大学、汗をかいている大学をしっかり支援すべきだと思いますが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。

中山国務大臣 今、塩谷副大臣が申しましたけれども、この法人化以降、本当に各大学が学長のリーダーシップのもとに、それぞれ特色のある取り組みを積極的に進めているということでございまして、これは大変結構なことだ、こう思うわけでございます。

 今、近藤委員が、お話ありました地元の新潟大学、これはベンチマークシステムの導入ということで、本当に学生が勉強しなければいけないということを改めて思い出させたんじゃないかと思うんですけれども、これも一つの方向だと思いますし、また上越教育大学、これは現職の教諭を助教授に採用、これは、私どもが今考えています専門職の大学院、本当にすぐれた指導能力を持った教員を養成するためにそんなことを考えているんですけれども、これも先取りしているわけでございます。また、長岡技術科学大学の取り組み等を見ましても、それぞれの大学が本当に意欲的な取り組みをしておられるということについては、これは大変喜ばしいことだ、こう思っているわけでございます。

 こういった取り組みが促進されますように、文部科学省といたしましては、制度面からの支援に加えまして、各大学が着実に教育研究を展開し得るに必要な運営費交付金を措置するとともに、それぞれの国立大学の個性や特色を生かした教育研究上の意欲的な取り組みを幅広く支援するという意味で、運営費交付金に特別教育研究経費というのを設けまして、平成十七年度予算におきまして、対前年度四十五億円増の七百八十六億円を計上しているところでございます。

 引き続き、このような芽が出てきておりますから、そういった意欲をさらに高め、創意工夫に富んだ大学がどんどん出てくるように積極的に応援してまいりたいと考えております。

近藤(基)委員 一生懸命頑張っている大学には手厚く御支援をお願いしたいと思いますが、今、大臣の方から運営費交付金のお話が出ましたが、各大学でもいささか懸念をしている問題があります。

 それは、国立大学の財源の確保ということであります。今大臣からもお話があったように、主な財源は運営費交付金でありますが、この交付金が将来にわたって安定的に確保していけるのか。

 特に、施設整備に関しては独自の財源を持っていませんので、施設整備費補助金など、施設整備にかかわる財政基盤を国の方針に依存しなければならないわけであります。特に老朽施設の整備の立ちおくれが大変懸念されているところでありますが、今後の財源確保に対する文部科学省の取り組みについてお伺いをいたしたいと思います。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 運営費交付金、それから施設整備費補助金についてのお尋ねでございますけれども、国立大学法人が教育研究活動を安定的に推進していくためには、文部科学省といたしましても、国立大学法人への運営費交付金、それから施設整備費補助金等を将来にわたって確保することは重要なことであると考えているところでございます。

 そのうち、国立大学法人等の施設についてでございますが、第二期の科学技術基本計画を受けて策定いたしました国立大学等施設緊急整備五カ年計画、これに基づきまして、大学院施設、それから研究拠点の整備、また御指摘の老朽化した施設の改善整備等について現在取り組んでいるところでございまして、国の財政が極めて厳しい状況の中で、重点的、計画的な整備に努めてきたところでございます。

 最終年度となりますのは平成十七年でございますけれども、これにつきましては、対前年に比べまして、これは平成十六年の補正予算も合わせてということでございますけれども、百八十六億円増の一千二百六十億円を確保したというところでございます。この結果、本計画の整備状況全体といたしますと、目標の五百九十七万平米に対しまして四百二十一万平米、整備率七一%でございます。このうち、御指摘の老朽化した施設の改善整備につきましては、整備目標の三百八十八万平米に対しまして二百九万平米、五四%という状況となっているところでございます。引き続き今後の課題である、こういうふうに認識しているところでございます。

 文部科学省といたしましては、本計画終了後におきましても、引き続き、良好な教育研究基盤を形成するという観点から、老朽化した施設の改善整備も含めまして、重点的、計画的な施設整備の推進に向けて努力してまいりたいと存じます。

近藤(基)委員 ぜひ十分な財源確保をよろしくお願いしたいと思います。

 時間がないということで少々飛ばさせていただきますが、国立高等専門学校、これは北海道から沖縄まで全国に五十五カ所設置をされているわけでありますが、昨年の国立大学の法人化と時期を同じくして、四月から独立行政法人国立高等専門学校機構へと法人化をされたところであります。個々の大学が法人となった国立大学とはちょっといささか異にしますが、独立行政法人国立高等専門学校機構が五十五の国立高専を設置するという仕組みとなったわけでありますが、今後も社会を支える中堅技術者の養成は大変重要なことだと思っております。法人化を契機に国立高専はどのように活性化をしていっているのか、特にスケールメリットをどのように生かしているのか、御説明をいただきたいと思います。

塩谷副大臣 今、近藤委員御指摘のとおり、昨年、国立高等専門学校が、全国五十五校が統合されて独立行政法人国立高等専門学校機構となったわけでございます。

 もともと高専につきましては、昭和三十七年に創設されて以来、五年の一貫教育ということで、大変重要な役割を担って優秀な人材を送り出してきたわけでございまして、特に近年は物づくりということに対して、改めてその重要性が指摘されている中で今回の統合となったわけでございまして、法人としましては、今委員がおっしゃったようなスケールメリットを生かした運営、これを国立高等専門学校全体に一層の機能を強化していきたいということでございます。

 そして、一年余りがたつわけでございますが、特にこのスケールメリットを生かしたという点においては、予算や教職員定数についての弾力的な管理、配分をしております。また、二つ目については、各種の共通事務の一元化あるいは共通システムの導入によっていろいろな効率化を図っている。さらには、学校の枠組みを超えた教員の交流人事の実現をしているところでございまして、法人化によるスケールメリットを生かした取り組みを着実に進めているところでございます。

 今後とも、この全国高等専門学校機構がこうした取り組みをさらに充実していくことによって、全国の各高等学校が、地域とのつながりを一層強めていきながら、人材の育成あるいは地域貢献により大きな役割を果たしていくことを期待しているところでございまして、この点についても文部科学省としてもしっかりと支援をしてまいりたいと思っております。

近藤(基)委員 私は、この国立高専、大変大事な教育機関だと思っておりますので、ぜひまた充実強化をしていただければと思っております。

 公立の義務教育諸学校の教員給与については、昨年までは国立大学の附属学校の教員給与額に準じて定めていましたけれども、昨年の国立大学法人化により、すべて各自治体が個別に定めることになりました。義務教育は、子供たちが人生を幸せに生きていく、社会に出て国の社会経済の発展を支えていく、そういったことのための基礎的な人間力を養うものであり、このためには国が義務教育にしっかりと責任を持つことが必要であります。

 今、中教審でいろいろな議論が交わされているところでありますが、先日、参議院の文教科学委員会において、石井岡山県知事が参考人として意見陳述をなされました。そこで石井知事が御紹介された点において、ちょっと私の認識と異なる点がありましたので、その点を、私自身の認識を正すためにも教えていただきたいと思っております。

 石井知事は、義務教育は地方の自治事務であるからこそ、財源面においても地方の自由度を高めることが必要であり、義務教育費国庫負担金は廃止して税源移譲すべきと説明しておられました。私は、どうもその自治事務であることと財源の負担の問題は直接関係がないのではないかと考えておったのでありますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 私も、地方自治の方々がこういうことをしょっちゅう言われるんですけれども、いささか強弁ではないかなといつも訂正方を求めているんです。

 今御指摘がありましたけれども、平成十一年に地方分権一括法が成立いたしまして、小中学校の設置管理につきましては市町村の自治事務というふうに整理されたわけでございますが、これは今までの団体委任事務などの事務の概念とかあるいは名称を改めたものでございまして、戦後から一貫してこれは地方自治体の事務であったわけでございます。

 その間、義務教育費につきましては国庫負担制度によりまして財源を保障してきたところでございまして、自治事務として整理されたとしても、引き続き地方の事務であることには変わりがないわけでございまして、どっちみち一般財源化を主張する論拠にはならないと私は考えているところでございます。

 なお、御承知だと思いますけれども、地方分権推進委員会勧告を受けまして、平成十年の閣議決定でも、義務教育というのは生活保護と並んで真に国が義務的に負担を行うべき分野の代表例として位置づけられているわけでございまして、いずれにいたしましても、財源保障の問題と自治事務であるかどうかということは直接関係がない、このように考えております。

近藤(基)委員 私もそう考えておった一人でありましたので、ちょっと不思議に思った次第でありますが。

 時間がもう三分ほどになっておりますので、少し先を急がせていただきますが、昨年の政府・与党による合意によれば、義務教育費国庫負担制度のあり方については、本年秋の中教審の答申を得て、十八年度において恒常的措置を講ずるということになっております。そうすれば、平成十七年度はあくまでも一年限りの暫定措置ということでありますので、来年度予算の概算要求、これは当然減額された四千二百五十億円を減額しない従前の積算額で要求すべきと私は考えておるんですけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 十八年度予算につきましては、まだ何らか具体的なことを申し上げる段階ではない、このように考えております。

 いずれにいたしましても、この義務教育費国庫負担金の取り扱いにつきましては中央教育審議会の審議結果を待って決定されることになっておりまして、文部科学省といたしましては、義務教育にかかわる国の責任をしっかり果たしていけるように適切に対応してまいりたいと考えております。

 なお、私といたしましては、今年度におきます四千二百五十億円の減額措置はあくまで今年度限りの暫定措置でありますので、十八年度概算要求に当たっては二分の一負担という原則に戻って要求することが筋であろう、このように考えております。

近藤(基)委員 私もそのとおりだと思いますので、ぜひそういう形で要求を出していただければと思っております。

 これが最後になると思います。

 私としては、現在、先進諸国が義務教育に力を入れてその投資をふやしてきているということは、至極当然であると思います。しっかりとした財源保障があってこそ、学校現場において子供たちに合った教育の充実が図られるものと考えております。国家が義務教育投資を減額するということなどは、私自身は国益を損なうことと言わざるを得ないと思っております。義務教育政策はこれは国家戦略であり、義務教育費国庫負担金は国の義務的経費であり、私は全額国庫負担すべきであるという持論を持っている一人であります。そのことが決して地方分権に反するものではないと思っております。

 我が国の将来をしっかり見据えて、義務教育において今我々ができること、なすべきことは何なのかをしっかり考えて結論を出すべきだと思っておりますが、大臣のこれからの義務教育への御決意を伺って、質問を終わりたいと思います。

中山国務大臣 私も近藤委員の御意見と全く同じでございまして、やはり義務教育というのは国がまず責任を果たすべきだ、こう思っています。

 昨年のさまざまな協議におきましても、これはなくすんじゃなくて、全額国が持つのが当然じゃないか、それが世界の趨勢ではないか、特にこれから知の競争時代ということで大変国際競争も激しくなるわけですけれども、そういった中で、本当に国が義務教育の責任を放棄して全部地方に任せていいのか。むしろ、それぞれの地方でそういう工夫をしていただいて教育はしていただきますけれども、それにかかるお金というのは国が担保すべきじゃないか、こういうことを主張したわけでございます。この考えは今でも変わっておりませんので、今後ともまた、委員の皆さん方の御支援もよろしくお願い申し上げたいと思います。

近藤(基)委員 どうもありがとうございました。質問を終わります。

斉藤委員長 池坊保子さん。

池坊委員 おはようございます。公明党の池坊保子でございます。

 国立大学が法人化されまして一年がたちます。私も政務官時代にこの法律の審議にかかわってまいりました。さまざまな問題を抱えながらも、でもやはり各大学が独自の運営をすることができる、規制緩和もされる、いい面もたくさんあるのではないかと、懸念はございましたけれども、船出はよかったというふうに思っております。船出をいたしますときには、さまざまな危惧することがあるのはすべてのことにおいてあることですから、それは船出の途中でまた軌道修正をすることも必要なのではないかというふうに思っております。

 現在、一年たちまして、それぞれが、一%の運営交付金の削減を抱えながら、独自で収入を得られるそういう経済的基盤を積極的にしている大学もあれば、そうでない大学があります。それらの懸念を含めながら、今議題となっております国立大学法人法の一部改正について大臣に質問させていただきたいと思います。

 本年一月に、中教審で「我が国の高等教育の将来像」という答申がございました。その中で、中長期的に想定される高等教育の全体像と取り組むべき施策について提言していられます。

 この中では、国立大学に対し、「社会・経済的な観点からの需要は必ずしも多くはないが重要な学問分野の継承・発展、全国的な高等教育の機会均等の確保等について政策的に重要な役割を担うことが求められる。」というふうにされております。

 私は、「社会・経済的な観点からの需要は必ずしも多くはない」のでしょうか、これもちょっと疑問でございますし、「政策的に重要な役割を担う」というのはどういうことを言っているのかと。

 大体私は、中教審の答申というのは、専門家だけでなく一般の方にも読んでほしいと思っております。その割には文章が本当にお役人的で、文部科学省は国語、日本語を大切にする省でございますから、心に響くもうちょっとわかりやすい答申であってもいいのではないかというふうに思っております。本当にお役人は易しいことを難解におっしゃるのが好きだし、大切なことは、難しいことをいかに易しく説明し言葉にするかということを私は言われてまいりましてそのように心がけておりますので、中山大臣には今後とも、簡潔に、そしてわかりやすく、文章においてもそういう方針を出していただけたらと思います。

 この二十一世紀、国立大学というのはどのような役割をこれから求められていくとお考えになっていらっしゃるのか、どういう理想、希望を持っていらっしゃるかを大臣にお伺いしたいと存じます。

中山国務大臣 池坊委員におかれましては、政務官としてこの法人化の過程で御尽力いただいたとお聞きしているわけでございます。

 御指摘ありましたように、やはり物事というのは始める前は本当にいろいろ不安がありまして、ちゅうちょするわけでございますが、この国立大学の法人化に当たりましてもやはり同じだったと思うんですが、いざ法人化してこの一年間を見てみますと、先ほどの近藤委員の御質問にありましたけれども、本当に各大学が意欲的な取り組みをしておられるということで、これは本当に喜ばしいことだ、このように思っているわけでございます。

 そういった中で、一月の中教審の答申のお話がございました。私も全く同感でございまして、こういった答申とか国が作成します文章というのはやはり国民にわかりやすいものでなければいけないんじゃないか。私、役所に入りまして最初に鍛えられたのが、義務教育を終わった段階の人にわかるような、そういう文章を書けと厳しく指導されたことを今でも思い出すわけでございます。そういう意味で、今後、こういった文部省が関係します文章等については、できるだけ平易にわかりやすく、難しいこともわかるように書くということについてまた督励してまいりたい、このように考えているわけでございます。

 そういった中で、国立大学の果たすべき役割としては、先ほど御指摘ありましたけれども、いろいろ書いてあるわけでございまして、例えば、世界最高水準の研究・教育の実施から、あるいは全国的な高等教育の機会提供の確保とずっと並んでいるわけでございます。もちろん、こういった機能というのは国立大学だけに期待されるものではないわけです。

 しかし、国立大学というのは、従来から、我が国の学術研究と研究者養成の中核を担うということと、全国的に均衡のとれた配置によりまして地域の教育、文化、あるいは産業の基盤を支える、そして、学生の経済的な状況に左右されない、その中で高等教育の機会を提供するという極めて重要な役割を担ってきたものだ、私はこう思っているわけでございまして、こういった役割というのは法人化後も変わらないものであると思っておりまして、各大学が自主性、自律性を持って、この法人制度のメリットを生かして国立大学としての使命を一層果たしてもらいたい、このように考えているところでございます。

 文部科学省といたしましても、国立大学におきます教育研究が一層活性化されて、そして、国立大学が国民あるいは社会の期待に一層こたえていくことができますように必要な支援に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

池坊委員 今回の改正で、国立の短期大学はすべてなくなることになります。今の大臣の御答弁を受けて、それでは国立短期大学の役目はもう終わったということでございましょうか。

 私、五十八年、これが設立されましたときの議事録を読みました。地域の多様な要請に積極的にこたえる、広く地域社会に対して開かれた特色ある短期大学として創設していくと書いてございました。地域の要望は今でもまだあるのではないかと私は考えております。

 少子化を迎え、二年制の短期大学というのは、多くは四年制に移行しようとしておりますけれども、やはり二年の短期大学の存在価値、意義というのが私はあると思っておりますし、地域社会の中で二年制がいいんだと思っていらっしゃる方々もあるのではないかと思っておりますので、その辺についてお伺いしたいと存じます。

中山国務大臣 短期大学につきましては、今御指摘がありましたように、我が国の高等教育において大きな意義を果たしてきておるわけでございまして、今後とも、教養と実務を結合した専門的な職業教育とか、あるいは多様な生涯学習の場の提供とか、そして、今言われましたけれども、身近な高等教育機関として、地域と連携して積極的にその役割を担っていくということが期待されていると私は思っているわけでございます。

 今回のこの国立短期大学の四年制化というのは、大学の人材養成におきます役割の変化、あるいは社会の要請、そしてまた大学の意向等を踏まえたものでございまして、結果として、国立におきまして短期大学がなくなるということになったわけでございますけれども、文部科学省としては、短期大学が我が国の高等教育において果たす役割の重要性にかんがみまして、今後ともその一層の発展に向けた支援には努めてまいりたい、このように考えておるところでございます。

池坊委員 小さな短期大学を抱えております人間としては、やはり文部科学省は、四年制がいいんだよということではなくて、それぞれの特色ある小さな大学、学校も大切に支援をしていっていただきたいというふうに思っております。

 富山三大学の統合について伺いたいと思います。

 富山大学と今お話が出ました高岡短期大学のキャンパスは、大臣、どれぐらい離れているか御存じでしょうか。二十キロ離れているんですね。二十キロ離れていたら、学生の交流とかキャンパスをお互いに使うだとか、そういうことは可能なのか。ただ統合されただけであって、先生方の交流とかがないのではないかと私は懸念をいたしております。地域にとって、あるいは学生にとって、どういうようなメリットがあるのだろうか。そして、そのことに対して文科省はどのような支援をこれからしていらっしゃるかということを伺いたいと私は思っております。

 と申しますのは、今、例えば、企業も大企業に合併されております、それから自治体も、特例交付金を出してまでも合併を推進していくというような、道州制も進めたらいいんだという時の流れになっておりますが、私は、やはり、教育も企業も地域社会も、きめ細やかに、独自性を出しながら、そこに生きている人々が愛していくような、そういう地域社会とか学校だとか企業のあり方というのも必要ではないかというふうに思っておりますので、その辺についても御意見を伺いたいと思います。

中山国務大臣 この富山県の三大学の統合後のキャンパスにつきましては、本部を置きます五福キャンパスと杉谷キャンパス、そして高岡キャンパス、三つのキャンパスで構成されることになると聞いております。

 御指摘のように、例えば、現富山大学キャンパスと高岡キャンパスの間は二十数キロの距離にあるわけでございまして、二十数キロというのは、歩いていけば五時間ぐらいかかるのでございましょうけれども、車で行けば何分で行くのかな、ちょっと私、申しわけない、行かなかったものですからわかりませんが、車で行けば何分かで行くんだろうと思いますし、そういう意味で、何分では行きませんか……(発言する者あり)いや、そんなにかからないでしょう、二十キロ……(発言する者あり)ああ、そうですか、済みません。やはり行ってみなければいかぬものでございます。

 しかし、ある程度離れているというのは気分転換にもなるという面もあるのかなと思ったりしますけれども、御指摘のように、自分たちの大学、そういう身近なもの、自分たちの企業だ、そういうのはやはりあると思うので、何でもかんでも統合すればいいというものではない、私はそう思います。

 しかし、今回の統合については、教育面におきましては、全学共通科目は担当教員がそれぞれのキャンパスに出向いて講義を行う、そして、双方向講義システムというのを活用するなどいたしまして、学生の負担を考慮したカリキュラムを構築することにしておりますし、また、課外活動等の活動におきましても、学生交流が活発に行われますように、これらのキャンパス間のシャトルバスを運行するとかいったことで、支障を来さない配慮もなされているというふうに聞いておるわけでございます。

 また、管理運営面におきましては、それぞれのキャンパスに担当理事を配置するとともに、事務機能もネットワークで結ぶなど、統一的な組織運営ができるよう体制を構築することとしているわけでございます。

 このように、統合後のキャンパス間の有機的な連携を図ることによりまして、幅広い教育科目の開講によります教育の一層の充実、医薬、理工学分野を融合した新分野の開拓、あるいはスケールメリットを生かした効率的かつ戦略的な大学運営が展開できるというようなことが期待されているところでございます。

池坊委員 統合が目的ではなくて、統合した後、やはり大学がよくなった、あるいは、そこで学ぶ学生たちが生き生き、はつらつといい大学生活が送れますことのために、文部科学省はさまざまな力をかしてあげていただきたいというふうに思っております。

 統合後の富山大学でございますが、教育学部における教員養成学科の定員、現在百名でございますが、これが八十名に減ります。教員の就職率は四割でございますから、これでもいいのだというお考えなのかもしれませんけれども、今四十五歳前後の教員は、十数年したら退職していく。そうすると、加配等のこともございますから、大幅に教員が足りないと言われております。そのときになって考えたらいいんだよというお考えでこういうことになったのかな、私はなぜこういうふうに減らしたのかという疑問を持っております。減らしたけれども、免許を取っても取らなくてもいい、人数はちゃんと担保しているからということを伺って、私はがっかりしたんですね。

 と申しますのは、フィンランドの教育文化委員が本委員会を訪問したと思います。そのときにも、フィンランドでは、何になりたいかといったら、教員になりたいのだ、教員の質の向上に非常に力を注いでいき、それが国際学習到達度調査でも一位の読解力を得るまでになったのだというお話を私先回の委員会でもいたしましたけれども、今、日本の人たちが憂えているのは、日本の教師の質をもっともっと上げるべきではないかという議論がされております。そして、これは四年制じゃなくて修士修了までにしたらどうかというふうな意見もございます中にあって、取っても取らなくてもどっちでもいいんだというのは、ちょっと私、情けないなというような気がいたします。

 平成十三年度に出されました教員養成系の国立大学の縮小、再編の方針というのは、今も生きているのでしょうか。私は、国立大学において教員をきちんと養成することが国立大学の一つの使命ではないかというふうに思っておりますので、その点についてお伺いしたいと思います。

 それからまた、金沢大学というのがございますから、他の国立大学との連携とか再編というのは、教員養成に関してこれからも再編していこうというふうに考えていらっしゃるのか。ちょっと将来の像が見えないような気がいたしますので、もうちょっと中期、長期に立った計画というのが必要じゃないかと私は思っておりますので、その辺をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 教育、特に義務教育に関しては、いい先生を本当にちゃんと確保することが一番大事なことである、これはもう国民共通の認識になってきているのではないかと思うわけでございます。特にこれから、大量に定年を迎える教員がふえている中で、どのように確保していくかということでございまして、遅まきながら定員の確保、拡充ということについてハンドルを切ったものだ、私はこのように認識しているところでございます。

 この富山大学教育学部というのは、地域の学校教育を担うという面で大きな役割を果たしてきたと思うわけでございまして、今回、教育学部から人間発達科学部へ改組されるわけでございますけれども、このような教員養成の役割を果たしながら、福祉とかスポーツとか情報、環境など、幅広い分野での地域の教育機能全体を担う人材を養成するということを目的とするものでございます。

 すなわち、改組後の人間発達科学部におきましても、地域の教員需要に適切に対応できますように、教職課程としての認定を受けることによりまして、小学校教員を初めとする各種教員免許状の取得を可能とすることになっておりまして、今後の富山県の教員需要の増についても十分対応できるものである、このように考えております。

 なお、新しい学部が目指す幅広い人材の養成の中で、地域が求める、力量のある、力のある教員が養成されますように、これは富山大学だけではありませんが、各大学の取り組みに期待していきたい、このように考えております。

池坊委員 私は、教員を目指す人間は、大学に入って、ただ教職員の免許があるから取った、そして、なってみようかなというのではなくて、子供の教育に携わりたい、そういう理念や理想を持った人がきちんと四年間、あるいは今後プラス二年になるのかわかりませんけれども、そういう人を育ててほしいな、そういう人が教員になってほしいなという願いがございます。

 ですから、大臣がおっしゃるように、福祉、スポーツ、人間力、幅広い教養というのはもちろん大切でございますが、それはむしろ教員養成の中でこそやるべき教科なのではないかと思っておりますので、これは文科省としても一度どういうふうにしたらいいかということをお考えいただけたらというふうに思っております。

 次に、障害のある学生の受け入れ体制についてお伺いしたいんです。

 障害のある学生が快適な学校生活を送っていくためには、地域と学生のボランティアの支援というのが不可欠ではないかと思っております。平成十四年七月の中教審では、大学にボランティアセンターを設置し、学生のボランティア活動を支援することなどを求めております。また、政府の平成十五年版障害者白書では、「障害のある学生が快適な学生生活を送れるよう学習支援体制の充実・強化を図るため、ノートテイカーや手話通訳の配置等、教育上の特別の配慮を行っている。」ということが書かれてございます。

 私は、やはり大学内で行われる手話通訳やノートテークには専門的な講義内容が扱われ、一般の聴覚に障害のある人の通訳とは異なる特別なスキルが求められるのではないかと思っております。筑波技術短期大学では、職員が、教員が手話を学んでいる、あるいは地域のボランティアと連携して学生を支援しているというふうに聞いております。

 障害を持つ学生を受け入れるための体制づくりというのが求められているのではないかと思っておりますけれども、なかなか、そこまで設置をしております、そのような体制をつくっております私学というのは少ないかと思います。むしろ、国立大学よりも私学の方が積極的にそのような受け皿があるように、私はいろいろなところを見まして感じました。

 国立大学こそ先駆けてこういう体制づくりというのをしてほしいと思っておりますけれども、この国立大学の障害を持つ学生に対する支援というのは今後どのようにしていかれるのか、そしてこういう体制づくりを、私はぜひつくっていただきたいというふうに思っておりますが、そのことについての積極的な大臣の御答弁を伺いたいと思います。

中山国務大臣 先ほど、キャンパス間、何分と言いましたけれども、四十分ぐらいかかるそうでございますので、ちょっと遠いなと。そのことを十分踏まえた上で、統合のメリットといいますか、連携をしてもらうように要望したいと思っております。

 それから、先生の確保、教師の確保でございますが、やはり教師というのは、いろいろな能力もありますが、まず子供が好きであるということ、それから教える技術を持っていることと、もう一つは情熱だろう、こう思うわけでございます。我が国の教育を、特に義務教育を向上させていくためには、本当にすぐれた教師をいかに確保していくかということが一番大事だろう、このように考えております。

 今、障害を有する学生に対する支援の御質問がございましたけれども、御承知のように、他の一般の学生とは異なりまして、教育課程の履修、あるいは学生生活全般にわたりまして特別な配慮をする必要があるわけでございまして、文部科学省としましても、このような学生が円滑な学生生活を送れるように学習支援体制の整備を図ってきたところでございます。

 今、国立大学でどうしているかというような話がございましたが、国立大学におきましても、障害を有する学生が快適な学生生活を送れるように、学習支援体制の充実強化を図るための経費を含めて、この国立大学法人運営費交付金を措置するとともに、エレベーターとかあるいはスロープ等の施設面の整備についても補助しているところでございます。

 また、いろいろなボランティアといいますか、ボランティア活動を支援するための取り組みも進んでおる、このように認識しているわけでございます。ちょっと例を出しますと、ボランティア活動を取り入れた授業科目については、平成十二年度に国公私立合わせて百五十五大学だったんですけれども、三年後の平成十五年度には二百二十八校というふうに増加しているわけでございます。

 学生ボランティア活動というのは、学生にいろいろな能力とか、あるいは社会性を育成するということもありますけれども、そういった実践活動を通じまして、より社会とのつながり、そういった障害のある方との連携とか理解とか、そういったものにも私は寄与すると思うわけでございまして、こういったことについて一層の促進を図ってまいりたい、支援をしてまいりたい、このように考えております。

池坊委員 ハードもさることながら、やはりソフトの支援というのがなければ、快適な生活を心から、過ごすことはできないと思いますので、ぜひ、これは筑波技術短期大学だけでなくてほかの大学に、国立大学にもそのような働きかけをしていただきたいというふうに思っております。

 今度、先ほど申し上げました国立大学が法人化されて一年たちます。三月二十七日の朝日新聞のアンケートによりますと、十七年度予算が前年度より増加したと回答いたしましたのが四十校、これは学長に対するアンケートでございます。減少したとする回答が四十八校ございました。先ほども申し上げましたように、運営費交付金は一%平均的に削減されておりますから、増加したと回答した大学は、競争的資金とかあるいは自己収入の増額を見込んでいるんだと思います。

 ですけれども、片方では、やはり財政面でそういうことができない国立大学もあるのではないかと思います。これからますます私は二極化が進むのではないかと思っております。そういう中にあって、大学運営に財政的に支障の出る国立大学が出た場合に、文科省はどのような手当てをしていらっしゃるのでしょうか。

 それから、私は、これは大学は二極化されるだけでなくて、教育、学問分野においても、研究室でもこの二極化ができてくるのではないかと思って心配いたしております。

 例えば、産学官連携が進んでおります大学は寄附なども潤沢にあると思います。ですけれども、基礎科学で、すぐには産業界や医学界に貢献できないような、でも本当に国立大学というのはそういうものを手厚くするのが国立大学の存在価値ではないかと思っておりますときに、そういうところはやはり自己収入が少なくなっていく。研究室においてもそれが言われると思うんですね。

 一般的に日の目の当たるところはやはり研究費もたくさん来る。だけれども、十年後、あるいは三十年後、五十年後、そういうすぐには結果があらわれないかもしれないけれども、そういうことを大切にしなければ、二十一世紀の日本の科学技術というのは本当に下火になってしまうというふうに危惧いたしておりますので、この評価というのも私は大切だと思いますけれども、その点は文科はどういうふうに考えていらっしゃるかというのを、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 国立大学の重要性ということにつきましては、先ほど答弁したとおりでございます。

 この法人化によりまして、確かに御指摘のように、日の当たるところと当たらないところ、あるいは当たる分野、当たらない分野、いろいろあると思うんですけれども、やはり国全体としての教育とか研究水準を底上げするという意味では、いろいろな分野、いろいろな大学も私は必要である、このように考えておるわけでございます。

 法人化を契機といたしまして、産学連携とか、あるいは寄附の受け入れなど、これは促進される方向にあるわけですけれども、一方で、それらが困難な基礎的な研究とかあるいは学問分野につきましても、その重要性、今御指摘がありましたが、やはり五十年先まで見なければいかぬわけでございますから、そういった重要性にかんがみまして国としてしっかり支えていくことが必要である、このように考えております。

 このため、国の財政措置におきまして、これは一定の経営改善努力はもちろん求めるわけでございますけれども、教育研究の基盤を支えるのに必要な運営費交付金は措置しますとともに、その運営費交付金に特別教育研究経費を設けまして、基礎研究における各大学の特色ある取り組みを積極的に支援しているところでございまして、今後とも、基礎研究の推進において国立大学が十分その役割を果たせるように必要な支援をやってまいりたいと考えております。

池坊委員 運営が効率化されることは私は大賛成ではございますが、研究が余りにも効率化されてしまっては、やはり人文系だとか実利的でない基礎研究というのがおろそかになるのではないかと思っておりますので、これに対しての配慮というのは文科省がきっちりとしていただきたいというふうに思っております。

 あと、一年を迎えまして、この経営協議会等々についてもお伺いしたいと思いましたけれども、もう時間がやってまいりましたので、次回の一般質問のときに回したいと思います。ありがとうございました。

斉藤委員長 加藤尚彦君。

加藤(尚)委員 民主党の加藤尚彦です。よろしくお願いしたいと思います。

 きょうは大体この順序でということなんですけれども、大学統合問題、学長選考問題、あるいは非常勤講師の賃下げ、解雇問題、不払い残業問題、あるいは授業料問題、これには特に質疑を多くしたいと思っています。その他、施設整備費問題とか剰余金問題がありますけれども、これは時間があったらということにしたいと思います。

 その前に、今までのお話の中で、義務教育費の国庫負担全額ということについては、すばらしい発言だと思うし、私も同じ考えでありますということを申し上げておきたいと思います。

 申し上げました質疑の前に、ちょっと重要案件だと私は思っておりますので、質問をさせてもらいたいと思っております。

 それはたばこ問題なんですけれども、たびたびこの委員会でも発言してまいりました。WHOたばこ枠組み条約、ことしの二月二十七日に発効されたわけですけれども、当然、我が国も一丸となってこれを遵守しなくてはいけない。国を挙げて、地方を挙げてというふうに思っております。それで、この枠組み条約については個人的にも大変強く感じておりまして、この機を逃さずというふうに私は思っております。

 私の政治人生の中で、特に、少子化ですから、子供の非行化に当面焦点を絞っております。そのほか、アジア・アフリカ連合論というのもテーマにいたしておりますけれども、この委員会ではたばこという問題を取り上げてきたわけであります。

 私自身の調査といいますか、大げさな言い方かもしれませんけれども、都道府県、あるいは自治体、教育委員会、たくさん歩いています。そして、学校訪問についても既に七十校を超えております。そういう中で、何を私がきょう申し上げるかというと、例えば、この枠組み条約が結ばれた後、自治体でえらい大きな変化があるということを知ったからであります。

 特に申し上げますと、政令指定都市のほとんどですね。あるいは、東京二十三区を初めとして、東京都下の市町村ですね。あるいは、全国の自治体でも特に県庁所在地市ですね。これについて調査もいたしましたけれども、今のところ、その半分ぐらいは敷地内全面禁煙ということの結果を出しているわけですね。敷地内全面禁止と。

 例えば身近で、私自身の選挙区でありますけれども、横浜ですが、この十七年四月一日から実施をいたしておりますけれども、それに対象になる先生方は二千百人ぐらいだったと思いますけれども、私が想像したより随分低かったのです。つまり、たばこをやめられなくて、いまだに、三月三十一日時点で苦労していた人たちが二千人ちょっといたということであります。横浜市の教員数からいうと十数%であります。本当は、こんなものですかということを教育長に聞きましたら、いや、この十七年四月一日から実行するについて、一年半ぐらい苦労してきたんだ、大変な苦労をしてきたんだ、それぞれの学校で、教育委員会もと言っておりました。

 個人的な話だけれどもということで、横浜市の教育長も、文科省から出向されている伯井さんなんですけれども、四十本というヘビースモーカーだけれども、一昨年の五月から一大決心してやめたということを言っておりました。横浜市の教育委員会の場合は労務課が担当いたしております、教育委員会の中の労務課が。その労務課長も、たばここそ我が人生、たばこなくしては生きられないというほどの人なんだけれども、その方もやめましたと。つまり、先生に強いるから、自分がやめないと説得力にならないということですね。ですから、伯井教育長も労務課長もそういう決心をしたわけでありますね。

 そして、そういう結果は全国に広がり出したな、この枠組み条約を遵守するという空気が満ち満ちてきたなということを感じております。

 そこで、ちょっと一つ、理事会で許されていますのでお見せすると、行田市の教育委員会ですけれども、こういうしっかりとしたもので全校にこれが張られております。校長室だけではなくて学校敷地内に、そんなたくさんではありませんけれども張られております。例えば横浜市も、やはりこういうふうに手づくりのポスターをつくりまして、校長室、それから教職員室にこういった禁煙の、校地内全面禁煙ですよというポスターが張られております。これは行田市、横浜市だけではなくて、京都市もそうだったし、静岡市もそうだった。

 つまり、私の訪問先で、特に校地内全面禁止を積極的にやっているところについては、いろいろ工夫しているということであります。そして、校地内禁煙ということは、先生がやめるということだ。そういう意味でいえば、教育委員会だけじゃなくて、それぞれの自治体でもどんどん、いわゆる市庁舎内とか行政区内でやめていこうという空気があります。

 そして、それは、特にこの枠組み条約でいえば外務省、特に子供たちのことをいえば、しかも先生がやめている、やめ始めた、そしてそれが全国的に広がっているということからすれば、文科省ですね、厚労省も関係ありますけれども。文科省としての、枠組み条約遵守を契機に、つまり、子供の非行ということをたびたび申し上げておりますけれども、昨年一年間だけで百四十一万人の子供が補導されている、その補導の半分近い子供たちがたばこである、その子供たちのたばこの原因、たばこを買う場所はというと自動販売機である。ここまで広げちゃうとその議論で時間をとってしまいますからきょうは広げませんけれども、少なくとも、WHO枠組み条約、国を挙げてと。国を挙げての中に、外務省よりもむしろ文科省が率先垂範すべきだというふうに思います。その意味で、大臣の所見をまずお聞かせください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 本年二月、御指摘がありましたように、たばこ規制枠組み条約が発効いたしましたし、十五年の五月には、健康増進法におきまして、学校を初めとする多数の者が利用する施設を管理する者に対して利用者の受動喫煙防止に関する努力義務が規定されたわけでございます。

 文部科学省といたしましては、従前から、未成年者の喫煙は身体への悪影響が強くあらわれるというようなことから、喫煙防止教育等につきまして、各都道府県教育委員会等を通じまして、当然、国立学校も入っておるわけでございますけれども、私立も入っておるわけでございますけれども、各学校に対しまして、未成年者の喫煙防止対策について指導してまいったところでございます。学習指導要領における記述、それから児童生徒向けのパンフレットの作成、配付による啓蒙等々を具体的な手段として対応してまいったわけでございます。

 今後とも、未成年者の喫煙防止対策につきましては、先生御指摘のありました枠組み条約の発効というものを機会に、さらに一層進めてまいりたいと考えているところでございます。

加藤(尚)委員 健康のためということがどこの自治体でも一応表向きになっていますけれども、実際は、子供の非行化、つまり、少子時代でさらにそれが進む。しかも、去年一年間だけで百四十一万人が補導された。その半分近い子供たちがたばこであったわけですね。それで、これは前回も言いましたけれども、今後は言いませんけれども、やはり非行はたばこから始まる。まず親のたばこを盗む、そしてお金を盗む、友達から借りたり、ゆすったり、万引きしたりということになってくるということで、これは警察庁の、あるいは各警察本部の考え方ですけれども、たばこなんだと。だから、そうはいっても、各自治体でたばこというのを非行化ということで前面には出せないからということです。

 百四十一万人の補導と言いましたけれども、警察庁でも各県警本部でも、その数倍だと言っているわけですよ。補導しなくちゃならない子供たちはその二倍、三倍だと。百四十万の二倍、三倍というのは恐るべき数字になるわけです。それが非行予備軍として、あるいは不良青年の予備軍として、結果的に、何でニートがこんなにふえてきたんだろう、何でフリーターがふえてきたんだろう、こういったことも、そんな詳しい調査のデータは探したけれどもどこにもありませんから言えないんですけれども、でも、やはり非行防止ということを文科省としては率先垂範すべきである。つまり、健康増進以上に非行防止ということをやはり一つの大きなテーマにすべきだと私は思います。これは言いっ放しにします。

 この枠組み条約の中の十二条なんですけれども、「教育、情報の伝達、訓練及び啓発」という条項があるわけですけれども、この枠組み条約が発効されてから、全国でシンポジウムを始めております。いろいろなデータがメールで来ています。

 横浜でも、四月十日に、NPO法人のtEEというところが主催で、文科省のトップを務められた方が理事長をやっていらっしゃるNPO法人ですけれども、ここで、鳥取大学とかあるいは千葉大学とか、全国有数の人たちが集まってシンポジウムをやっています。中でも、地元の鶴見大学の歯学部の瀬戸カン一病院長(カンは日へんに完)が、自分の大学では卒煙外来という、全国でも珍しく、初めてだというふうに本人がおっしゃっていましたけれども私もそう思います、卒煙外来というものを設立したということであります。

 こういったことはむしろ、きょうの法案審議に関連するんですけれども、国立大学でも、このWHOたばこ枠組み条約というものを大学自体も承知の上で、そして、国立大学こそこれを率先垂範して遵守すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

石川政府参考人 お答えを申し上げます。

 たばこ問題に対する国立大学としての対応についてのお尋ねと存じます。

 委員お話しになりましたように、日本も締約国になっておりますたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約十二条では、たばこによる健康に対する危険についての教育のためのプログラムへの参加の機会の提供ですとか、あるいはたばこによる危険、たばこの中止による利益の啓発等々、そういった事柄を促進するための措置を実施すること等が規定されているわけでございます。

 大学におきまして、これらに直接関係するかどうか、そういった行動が行われているかどうかということについての詳細は、正直申し上げまして把握をしていないところでございますけれども、既に幾つかの大学におきまして、たばこと健康等に関する授業科目を設定するなど、そういった形で積極的に健康教育に取り組んだりしているところでございますし、喫煙が人体に及ぼす影響について専門的な研究を実施しているというような例も間々、あるいはたくさん見受けられるところでございます。

 文部科学省といたしましては、たばこと健康等に関する教育研究につきまして、各大学において自主的な取り組みが積極的に進められるというようなことを期待しているところでございます。

 なお、キャンパスの状況につきましては、キャンパスの中で全面禁煙化ですとか分煙化を推進しているという大学もかなり出てきておるというふうに聞いております。

加藤(尚)委員 国立、私学を問わず、若干そういう大学も出始めたというふうには伺っております。

 それで、十二条に沿って文部科学省として私は取り組むべきだと思います。そして、枠組み条約を教育も遵守すべきだと思っています。それには当然予算が伴うんです。この予算、来年度向けということになるんですけれども、予算要望をむしろ積極的にしていいんじゃないかと思いますけれども、これについてはいかがですか。簡単にお答えください。

中山国務大臣 たばこの害、健康に対する害と、加藤委員御指摘のように、本当に非行への入り口になりやすい、それがまた麻薬とかそっちの方にも発展していくわけでございますから、未成年のたばこについては本当に十分これは全体として取り組んでいくべきだ、このように考えておるわけでございます。

 文部科学省におきましても、学習指導要領においてきちっと盛り込んでおりますし、また、児童生徒向けのパンフレットをつくって配付するなどの啓発にも取り組んできたところでございます。また、現在、WHOのたばこ枠組み条約の批准を受けまして、たばこ対策関係省庁連絡会議、これは十四省庁でできているわけですけれども、これにおきまして、関係省庁とともに未成年者への喫煙防止対策について検討しているところでございます。

 いずれにいたしましても、この未成年者の喫煙防止対策というのは極めて重要な課題であると認識しているところでございまして、関係省庁との検討を踏まえて一層の推進に取り組んでまいりたい、このように考えているところでございますが、今御指摘になりましたような、そういう特別の予算ということにつきましては、これまた別途いろいろ慎重に検討することが必要ではないか、こう思っておりまして、現段階で明確な判断を申し上げることは差し控えさせていただきたい、このように考えております。

加藤(尚)委員 御丁寧にありがとうございました。

 この枠組み条約の中の第二十六条に「資金」という項目があります。これについて、過日、決算行政監視委員会で発言をしました。そして、財務省の方の答弁は、私の予想以上に前向きの答弁があったわけであります。

 私が例に出したのは交通反則金、大きなお金なんですけれども、これは一たん国庫に入りますけれども、交通安全ということを前提に戻されるわけであります。それと同じように、この資金の問題で、今予算要求することは差し控えるということでありましたけれども、この資金づくりで、大まかかもしれませんけれども、いわゆる未成年者がたばこを吸う、それは例えば自動販売機でいえば六箱に一箱は未成年者が買っているという事実のデータもあるぐらいでありますね。

 そして、いろいろな調査があるんですけれども、その中で、鳥取大学の医学部での調査では、大体国に入る税収の三百五十億円ぐらいだろうと言う人もいますけれども、他の団体では、専門に取り扱ってくる団体では、全体の税収の一一%。ということは、二千億ということになるわけですね。だから、違反による、未成年者はたばこを吸っちゃいけないわけですから、その吸っちゃいけないたばこを税収にしてそれを一般財源に使うのはおかしいじゃないか、交通反則金と同じように、未成年者の喫煙防止のために、これを資金として、あるいは交付金として出すべきじゃないかということを私が申し上げたところ、財務省は大変前向きな答弁をいただいたわけであります。

 その意味で、来年度予算要望の中に、文科省、あるいは関係する警察庁、厚労省等々、先ほど十四省庁ということでありましたけれども、この三省が中心となって、未成年者が吸ったことによる国家財政、そこから別枠で予算措置すべきだというふうに申し上げて前向きの答弁があったわけですから、その取り組み姿勢についてお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 財務省がそういう前向きな答弁をしたということを聞きますと、本当かなと。財務省というのは、大体そういう目的税化というのはもう絶対反対のはずでございまして、よっぽど加藤先生のお話がこたえたのかもしれませんが、もし本当にそういうことであれば、それはまた考える余地はあると思うんですけれども、まあ一般的には、未成年者が吸っているからその部分は喫煙防止対策の予算に回せ、そういうふうなことにはなかなかならないんじゃないかと思うんですけれども。

 いずれにいたしましても、本当に、未成年者がたばこを吸うということは絶対これはいけないことなんですね。本当に、児童生徒一人一人に、たばこを吸ってはいけないよ、これはあなたのためだぞ、あなたの健康を害するし将来にとって絶対悪いんだということの指導、教育を徹底することがまず大事だろう、私はこう思うわけでございまして、先ほど言いましたように、そのためのいろいろな指導、パンフレットをつくるとかいろいろなことについて金を惜しんではならない、こう思うわけでございます。

 もし財務省がそういうふうなことであるとすれば、そういった予算を今回要求することも考えられるな、こう思っていますが、ちょっと検討させていただきたいと思います。

加藤(尚)委員 やはり行政監視の委員会での発言への答えですから。例えば関係三省、僕は名指しで文科省をまず挙げまして、そして警察庁を挙げました。そして各自治体でも、特に都道府県の教育委員会とか、その取り締まりについて、未成年者のたばこだけじゃありませんけれども、悪本もそうですけれども、飲酒もそうですけれども、いろいろなことで取り組んでいる。それで、市内をめぐって歩いている、県内をめぐって歩いているという努力をしている。だけれども、予算もない、こういう話も聞いていましたので、どうしたらこれはこの予算を捻出できるかということで思いついた発想なんです。たまたまそういう発想の議論をしてきましたら、財務省で、では文科省と厚労省と警察庁、相寄って相談して予算要望してくださいよ、検討しますから、こういう返事だったものですから、ぜひ警察庁とも相談して進めていただきたいと思います。

 次に確認しておきたいのは、コミュニティ・スクールなんですが、これはきょうは質問しませんけれども、この地域学校づくりというのは、江戸時代の寺子屋じゃありませんけれども、やはり地域が一緒になって子供を守り育てるということです。

 それで、これも行田市なんだけれども、行田市へ行くと、こうやってこの帽子をかぶっている人が結構いるんですよ。農家をしながらとかあるいは町の商店とかこの帽子をかぶって、結構いるんです。何だろうなと思ってインタビューしたら、これをかぶっているということは子供を守るということなんだ。子供を守っているのが行田市内であちこちいると、子供に対する犯罪が少なくなるんだと言っていました。コミュニティ・スクール法、地域学校の一環なんだけれども、やはりそれぞれの地域で取り組んでいるという実例をきょうは報告だけしておきたいと思います。地域学校についてはまた別の機会に質問したいと思います。

 それでは、大学統合問題ですけれども、五点あります。簡潔で結構ですからお答えをいただきたいと思います。

 三大学、設立経緯と統合に至った経緯ということになると、これについては先ほども御答弁されたから結構です。私の方から申し上げたいのは、統合問題というのは、三大学で時間をかけて検討する、しかもそれは悩み苦しみという大変な思いがあるということをぜひ承知の上で、今後の運営について御努力をお願い申し上げたいと思います。

 統合問題の質問の一つには、富山大学、筑波もそうでありましたけれども、ほかに統合問題、具体的に進んでいるところがあるでしょうか。

石川政府参考人 他の大学において統合問題の検討状況はどうかというお尋ねかと存じますが、現時点で大学間の合意に至ったというようなものはございません。

 ただ、私どもが承知しておるところでは、現在、例えば大阪大学と大阪外国語大学の間で統合も念頭に置いて検討を行っているというようなことを聞いておるところでございまして、文部科学省といたしましては、教育研究の発展という観点から、国立大学法人間で自主的な検討がなされることが適当と考えておりまして、こういった各大学の取り組みに対して必要な支援を今後とも行ってまいりたい、このように考えております。

加藤(尚)委員 私が伺っているのは大阪大学と大阪外語大学ですね。これは大変な苦労をしながら、ことしの春までに十回にわたって両大学が統合に向かっていろいろな検討課題として挙げているということです。でも、やはり毎回毎回新しい議論の種が出てくるということで、苦労しているということですね。ですから、統合ということは大変なことだなと。でも、統合することによってより大きなメリットがあるということを統合される大学が確信を持てるような指導を今後も続けていただきたいと思います。

 それで、大学統合の基準なんですけれども、これをちょっと簡潔にお答えください。

中山国務大臣 別に基準というようなものがあるわけじゃございませんで、これは各大学の枠にとらわれず、それぞれの大学の限られた人的、物的資源を有効に活用することによりまして、学際領域の新しい分野の開拓とかあるいはスケールメリットを生かした経営基盤の強化を図るなど、教育研究上のパワーアップを目指すものであるということでございます。

 これまでの統合を見てみますと、例えば教育研究上のメリットを発揮できることが重要であること、あるいは地域の実情等に応じて個性と特色ある大学づくりを目指すことが肝要であること、地域の関係者等の意見を聞くことも重要であることなどを旨といたしまして、各大学の自主的な検討を尊重して進めてきたものでございます。

加藤(尚)委員 今国立大学が八十九ということですけれども、多い少ないについては、各国の比較とか、特に先進諸国等の比較とか、いろいろこれから議論をしていきたいと思います。きょうはこの程度にとめますけれども。

 ちょっとした発想で申し上げると、統合について基準がないということなんですけれども、私は同じ方向で、大きなテーマで、世界的なレベル、世界人類的なレベルで研究開発しているというところについては、統合という言葉が当てはまるかどうかは別として、極端なことを言うと、北海道大学と沖縄大学、これを沖縄北海道大学とか北海道沖縄大学とか、そういうことも、つまり同じ方向での研究開発が、いわばより大きく進むということであれば、当然そんなことも考えてもいいんじゃないかなというふうに思ったんですけれども、乱暴過ぎますか。

中山国務大臣 今答弁いたしましたように、あくまでこれは大学間の検討を尊重して進めてきたわけでございまして、これまでの統合というのは地域的な関係を一つの軸に進展してきたところでございます。

 もちろん、一定の距離が大学同士でありましても、大学の目的とかあるいは特性を踏まえて教育研究上のメリットがある、何か共通の研究をしているからとかそういったことでメリットのある場合などは統合も考えられるんじゃないかなと思うんですけれども。しかし、富山の場合、二十キロが遠いという話もありましたように、相互間の距離が著しく遠い場合には、やはり効果的な教育研究の実施とか、あるいは効率的な大学運営の面でさまざまな困難が予想されるんじゃないかな、こう思うわけでございます。

 一般的には、せっかくの御提案でございますが、適当じゃないんじゃないかな、こんな感じを持っております。

加藤(尚)委員 同じ国立大学として、統合は無理としても、いわゆるこの学科のこの学問とか、医学部でもそうですけれども、そういったことで、単位の問題で、どこでも単位を取れるよと。それは検討課題として議論されているみたいですので、今後に譲りたいと思います。

 次に、学長選考問題について質問したいと思います。

 文科省の方からいただいた資料でありますけれども、大臣、この資料をいただいて、よく何回も見ました。何回も見ましたけれども、なかなか大変だなというふうに思います。

 この学長選考問題で、例えば京都新聞、滋賀医科大が話題になっております、国立大学の中で。滋賀医科大学の決着について、このままおさまるかどうか、お聞かせください。

石川政府参考人 お答えを申し上げます。

 国立大学法人におきます学長の選考につきましては学長選考会議で選考を行うというような仕組みになっておるわけでございまして、その選考を行うに際しまして、さまざまな参考資料を参考にしたり、あるいは学内のメンバーの意向を聴取したりというようなことなども行われているわけでございます。

 滋賀医科大学のケースなどにつきましては、例えば学内の意向聴取の結果と異なるような選考を学長選考会議が実施したというようなケースがあると聞いておりますが、いずれにいたしましても、さまざまな情報、さまざまな意向、こういったものを踏まえまして、最終的には学長選考会議が学長を選考するという仕組みとしておるところでございまして、その基本的な線はしっかり維持されるべきものだと考えております。

加藤(尚)委員 滋賀医科大学では、二人の教授に絞られて、そして片方の教授が百三十一票、片方の教授が百八十八票、もう大差ですね。ところが、百三十一票の方が学長になられているわけです。これは大臣任命ですから、大臣も御承知だと思いますけれども。

 滋賀医科大学として、このままうまくおさまっているのかどうかを聞いているんです。こういう結果が出て、まだ相当学内では問題が広がっているようで、ちっとも落ちついていないと、私も電話で問い合わせたらそういう答えだったんですけれども、いかがでしょうか。簡単で結構です。

石川政府参考人 先ほども御説明申し上げましたとおり、この選考自体につきましては適切なやり方、適切な対応であったというふうに考えておりますけれども、お尋ねの点につきましては、現在、滋賀医科大学長の任命取り消し訴訟といったものが起こされているというふうに承知をしておるところでございまして、現段階では、こういった訴訟について、係争中でございまして、その内容あるいは見通し等については、私どもの方としてはコメントできないということで御理解いただきたいと存じます。

加藤(尚)委員 学長選考というのは、大きな問題だと思います、ましてや法人化になったということでありますし。

 文科省からいただいている「国立大学法人の仕組み」というところに、つまり学長のリーダーシップですね。これから独立経営ということであるのですけれども、つまりマネジメントがすぐれている学長がいいのか、あるいは学問の世界で卓越して、教授からも、そして学生からも信任、信頼されている人がいいか、そういう選考問題があると思います。悩ましい問題だというふうに思います。

 ですから、学長選考について、各大学でいろいろ違いがあるみたいですけれども、これは大臣にお答えいただきたいんですけれども、それぞれの大学の自由裁量ですからなかなか発言しにくいかもしれないけれども、望ましい学長選考についてのお考えがあったら、お聞かせください。

中山国務大臣 法人化後の国立大学につきましては、法人化によって裁量が拡大しているわけでございます。ですから、機動的、弾力的な大学運営もやれるわけでございます。しかし、その任に当たる方、学長が非常に大事でございまして、法人運営の最高責任者としての学長に広く適任者を得るような適切な選考を行っていくことが極めて大事である、このように考えているわけでございます。

 学長選考に当たりましては、教学と経営の双方、両方の側面から学内の意向を反映させるとともに、やはり学外者の意見も反映させることが必要ではないかということから、経営協議会の学外委員の代表者と教育研究評議会の代表者とが同数で構成する学長選考会議において選考を行う仕組みとしたところでございます。

 この制度に基づきまして、各法人の学長選考会議において具体的な選考の基準とか手続が定められて、その会議の責任のもとに適切な学長選挙が行われているもの、行ってほしいと考えているわけでございます。まだまだ、移行して間もなくでございますので、それもある意味では試行錯誤の段階かなと思うんですけれども、次第に意義といいますか目的というものが理解されるに従ってちゃんとした学長選挙が行われるようになるものだ、このように期待しておるところでございます。

加藤(尚)委員 大臣答弁で、私はそれが限界だろうということを承知の上でお尋ねしました。これは、むしろ申しわけないなというふうに思います。

 引き続き、非常勤講師の給料下げ、賃下げ、あるいは不払い残業の問題に入るわけです。どうしても、法人化になると経営ということがあります。そして、自由な学問をより発展させるという取り組みについては、先ほど新潟大学の話がありました。横浜国立大学もそうですけれども、これはすべてかどうかわかりませんけれども、多くの大学がこの機会に自由な発想で大学経営をしたい、そういう方向で努力されているようであります。

 私も何人かの学長にもお目にかかったし、たくさんの教授にもお目にかかって、やはりこの機会に、せっかくこういう制度になったんだから、本来はいわゆる法人化は望んでいないけれども、そうなっちゃったから、そのことをむしろ生かしたいということでありました。

 その意味で、そうなると、どうしても非常勤講師を少なくしてしまうとか、あるいは、例えば、どうしても予算的に、決められた残業を超えても払えないとか、そういう問題があちこち聞こえてきますので、これは法人格になったわけですから、当然労働法の遵守というか、つまり労働基準法の監督下に入るのかどうかわかりませんけれども、非常勤切り下げ、不払い残業の問題について、どうぞ政府委員の方、お願いします。

玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 国立大学法人におきます職員の残業、それと未払い問題というのが幾つか出ているわけでございますが、私どもとしては、国立大学法人の職員には、御案内のとおり、労働基準法の規定が既に適用されておるところでございまして、その意味において、使用者が労働者に時間外労働をさせた場合には、当然のこととして割り増し賃金を支払わねばならないということになっているわけでございまして、したがって、時間外労働にかかわる割り増し賃金については各国立大学法人が適切に支払うことが必要だというふうに考えているわけでございます。

 そのために、国立大学法人におきましては、職員の労働時間の管理につきまして、柔軟かつ機動的な組織編制だとか人員配置、あるいは多様な勤務形態の活用、それから教職員の意識改革を通じた運営の効率化等によりまして、各国立大学法人がみずからきちんと取り組んでいくべきではないか、かように考えておりまして、そういう観点から、私どもとしては、労働基準法等の法令の遵守や超過勤務の縮減について、いろいろな会議等の場を通じてこれまでも要請をしてきたところでございまして、今後ともそういう要請を続けてまいりたい、かように考えているわけでございます。

加藤(尚)委員 わかりました。

 非常勤講師なんだけれども、やはり幾つかの国立大学では、大変残念だけれども減らさざるを得ないなという声があります。それは、非常勤講師が、むしろ専任講師とかあるいは教授を刺激したり、別な発想、別な感覚で学生に当たってくれる、こういった思いがあって、でも経営上やむを得ないなという声がありましたことをお伝えしておきたいと思います。

 加えて、引き続きの質問なんですけれども、外国人教師の解雇問題で、これも告訴されまして、信州大学ベルギー人男性教員ということなんですけれども、外国人教師については一年限りという前提で雇用しているようでありますけれども、ちょっと異常に感じます。この外国人教師雇用について、文部省の見解をお聞かせください。

石川政府参考人 外国人教師制度についてのお尋ねでございます。

 御指摘の外国人教師制度につきましては、国立学校特別会計の制度のもとで、特に語学教育等の観点から、国家公務員という任用形態によらないで外国人教員の雇用を可能にしたという趣旨のものでございます。

 しかしながら、このたびの国立大学の法人化に伴いまして、従来の国の職制やあるいは定員管理等の国家公務員制度によらずに、各法人の判断により、外国人を含めまして、国内外からそれぞれの大学の教育研究の特色に応じて適任者を柔軟に雇用するということが可能になったわけでございまして、この制度につきましても廃止をするというようなことになっているところでございます。

加藤(尚)委員 信州大学ではまだ問題の解決がないんですけれども、一年限り問題についての質疑をしたわけですけれども、やはりアメリカでは、ヨーロッパでは、日本人の教授がたくさん活躍しているわけです。当然我が国でもというふうに思うわけですけれども、欧米に比べると少ないような気がいたします。

 つまり、新しい血じゃないけれども、新しい発想じゃないけれども、新しい国際感覚じゃないけれども、やはり伝統的な日本の国立大学の中で、違った発想での教師が必要だというふうに思いますが、大臣いかがでしょうか。

中山国務大臣 こういう国際化が進む中でございますし、日本の高等教育のレベルを上げていくという意味では、国の内外から、有能なそういった教師といいますか研究者といいますか、人材を幅広く採用してくる、その人たちに活躍してもらって、いろいろな違った観点から教育研究に携わってもらうということは大変いいことだ、望ましいことだと考えております。

加藤(尚)委員 東北大学と神戸大学ですか、外国人の理事がいることによって、これは両方訪ねたんですけれども、やはり理事会で我々と違う発言があって、大学の未来のためにも非常にいいということをおっしゃっておられました。これは御報告しておきたいと思います。

 次に、授業料問題に入りたいと思います。

 ちょっと時間がないから簡単に申し上げますと、十二月二十二日に、文科省の高等教育局の課長さんから各国立大学の方に送付された文面があります。これは、文科省の大臣以下皆さんの想像以上に、学長、教授、学生を震撼させたという文書であります。

 これについて、この四月一日から一万五千円上げたということになるわけですけれども、八十九の大学で、八十一の大学が遵守してそれを守ったということですね。八つの大学については、前期分は上げない、後期は上げるとか、あるいは、例外ですけれども、ことしは上げないという決心の大学もありました。

 しかし、それは、文科省というよりもむしろ財務省で、運営交付金を減らすというおどしが裏にあるんです。この通達には、言葉でなくても、裏にあるということを知っているから、よって、そのことを、学長、教授、学生が、法人化になって、少なくとも一年や二年は上げないだろうという期待もしながら臨んだにもかかわらず、十二月二十二日ですから、そして四月一日からですから、この時間のないさなかで、学長、教授、学生がどれだけ悩み苦しんだか、そんなことをしかと承知していなくてはいけないと思います。

 例えば東京外国語大学、東外大では、合格した子供と父兄に受験生及び保護者の皆さんへという文書を出しております。御入学おめでとう、だけれども、やむを得ない事情で授業料を上げる、これは上げた大学なんですけれども、上げるということを合格してから通知している。これはいささか公平性に欠けるし、少なくとも説得力としては非常にまずいやり方で、しかも東外大というのは、外務省にもたくさん入っていらっしゃるんですけれども、やはり名門大学の一つであります。その意味で、それは、一万五千円、聞いてないよという声がありながら、全員納めたそうでありますけれども、こういった異常な通達だったということです。

 これは文科省が承知して、率先してやったんじゃないと思うんです。財務省なんです。財務省が、いわば文科省に、悪い言葉で言えば相当強い調子で発言したというふうに思っていますけれども、これは、文科省で通達を出した、しかし裏に財務省があったんだというふうに私は思っていますけれども、そういうふうに思ってよろしいでしょうか。

石川政府参考人 今委員がお尋ねの件につきましては、恐らく昨年十二月の二十二日でしょうか、私どもの担当の課長の方から各法人に事務連絡が出されておりまして、授業料の標準額を改定する方針となったというようなことをお伝えしているその文書についてということであろうかと思っております。

 この事務連絡につきましては、予算案の内容に関連する事柄といたしまして、授業料の改定の方針が固まったということで、当該方針をできるだけ早くということで各国立大学法人に連絡をしたものでございまして、私どもとして、各法人が標準額の改定の方針を踏まえまして、具体的な授業料設定の検討を開始したり、あるいはその方向について学生や受験生あるいは保護者に周知することができるように、その便宜のために速やかに連絡を行ったものでございます。

加藤(尚)委員 授業料ですね。昭和五十年、私学は国立の五・一倍、逆に言うと国立大学は私学の五分の一ということですね。現在は一・六倍ということで、大変国立と私学の授業料差が少なくなっている。だから、国立大学という、存立の意義ということは議論しなくちゃいけないわけです。

 その議論は当然しなくちゃいけないんだけれども、きょうは先延ばしにしますけれども、避けますけれども、いずれにしても、確かに国家財政は厳しい、これはだれもが知っている。何で厳しくなったかという理由についてはごまんとあるわけです。納得できない理由もごまんとあるわけです、これは別なところで議論しようと思っていますけれども。

 少なくとも小泉総理が誕生したときに、いわゆる世の中の人が拍手した、国民が拍手した米百俵、要するに、食べるよりも教育だ、この意思、精神、これを小泉政治の方針にすると言ったわけですよ。にもかかわらず、文科省に焦点を合わせて、どんどん厳しくしているように思えてならないわけであります。今度の学費値上げもそういうふうに私はとっております。

 一体、小泉政権で教育が、例えば、この前も申し上げましたけれども、イギリスでも一に教育、二に教育と言っている。ブッシュ大統領も、余り言わないタイプの大統領だけれども、教育こそ我が国のという言葉を使っている。だけれども、それを実践している。そしてアジアでも、それぞれの国々が一に教育、二に教育ということをどの国でも言っています。アフリカ諸国でも、つまり貧しくて毎日十万人の人が死んでいる、あるいは毎日二百人の人が病気で死んでいる、そういう事実の中であっても、アフリカ諸国も、教育こそというそれぞれの国の目標がある。

 この国は、教育こそという、言葉であったとしても、言葉では躍っていても、実際面としてどんどん低下しているような気がしてならないのですけれども、それに対する大臣の所感をお願いします。

中山国務大臣 この授業料の値上げでございますが、私も大臣になりまして、実はちょっとびっくりしたわけでございます。五十万を超えているということで、私は昭和三十七年に入学したときには九千円でございました。それも、貧乏だったものですから、免除してもらったものですからよく覚えているんですけれども、五十万を超えているというのは、ちょっとあんまりじゃないかと実は思ったわけでありまして、しかも法人化してすぐでございましょう。だから、何とかならないのかということでちょっと財務省の方にも言ったんですけれども、そのときに加藤先生がおられたらもっと強力な援軍になったかな、こう思うわけでございます。

 いろいろ言われますが、私学との関係とか経済情勢等勘案して、大体二年ぐらいで上げていくんですけれども、しかし、やはり国立大学というのは学生の経済状況に左右されない進学の機会を提供するんだということを考えますと、この値上げということについては随分慎重でなければいかぬと私は思っております。

 小泉総理の米百俵の話をされましたが、総理の頭の中には、やはり教育が大事だということはわかっていらっしゃると思うので、私は時々参りまして、そのことを再認識させるべく努力しているわけでございます。国会の所信表明のときには、人材が基本であるとか、あるいは子供は社会の宝であるとか、こういうことをおっしゃっているというのは、教育は大事だということを忘れてはいないということだと思うわけでございます。

 大学の授業料につきましても、高いんですよということはいつか申し上げたこともあったわけでございますけれども、今後とも、やはりこの授業料ということにつきましては、値上げについては極力これは抑えるということがまずなければいけない、このように考えております。

加藤(尚)委員 僕は、義務教育費の国庫全額負担論者の一人なんですけれども、同時に高等教育もそうだと思っているんです、実は。それは、財政が厳しいとわかった上で言っているんです。でも、米百俵なんですよ。削るものはどんどん削ったって、教育は絶対削らない、そういう国が未来をつくると思うんです。

 今、未来が真っ暗だからニートとかフリーターがどんどんふえて、とどまることを知らないような、そういう傾向にあるというふうに思っております。未来が明るければ少子化問題も解決するというふうに思っている一人であります。その意味で、この国立大学の授業料、私は少なくとも、法人化して一年たって授業料を上げるなんか論外で、十年据え置いたよ、据え置くよという総理の決心があったら拍手喝采したところでありますけれども、そういう傾向が見えないということでとても残念だと思っています。

 いずれにしても、国立大学法人、財政論がどうしても伴ってくるから、非常勤講師の問題とか外国人教師の問題とか不払い残業の問題とかいろいろなことが起きるわけですけれども、例えば、イギリス、欧米先進国、これは日本の国立大学授業料の半分以下とか、イギリスなどは国庫全額負担とかという方向なんですけれども、日本はそれに逆行しているんです。とはいえ、アメリカの方では、州立大学は少ない、確かに日本の半分ぐらい、国立大学の半分ぐらい。だけれども、私立は二百二十万とか、二百万を超える授業料だけれども、アメリカの方は奨学金が日本とは比較にならないぐらい徹底している。それがいわゆるバイ・ドール法ですね。バイさんという上院議員、ドールさんという上院議員、この二人の上院議員がこの法案をつくったわけですね。

 それは、大学経営を助成する、あるいは中小企業を助成する、それについて、国家もそうですけれども、民間から、あるいはNPO法人とかそういうところから集めやすくする、集める、そういう目的を持ってバイ・ドール法というものを日本版も経産省の主導でやっているんですけれども、このバイ・ドール法こそ、文科省が生かすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、河合委員長代理着席〕

石川政府参考人 財政基盤の強化等々の観点からの、バイ・ドール法との関係のお尋ねでございます。

 今回の国立大学の法人化ということにつきましては、国立大学の役割をこれまで以上にしっかりと果たすということができるようにすることを目的といたしておりまして、知的財産戦略の一環として行われたというような性格のものではございません。

 バイ・ドール条項につきましては、産業活力再生特別措置法の中で、政府が資金供与をして行っている委託研究開発等に係る知的財産権について、委託された側の方に基本的に帰属をさせるというようなことと承知をいたしておりまして、国立大学の法人化は、こういった枠組みとは直接関係のない形で、国立大学としての役割をこれまで以上に果たすという観点から行われているものと私どもは考えているところでございます。

加藤(尚)委員 このバイ・ドール法というものは、文科省での取り組みについて、国立大学の経営者の方もそうですけれども、学生の方も、そういう門戸を開かれた、つまり、日本版という表現がありますけれども、アメリカ以上にこの法案を大きくするという方向で今後検討していただきたいと思います。

 大学病院の件について、収益性を追求するということで一言だけ申し上げておくと、やはり国立大学病院ならではという、いわゆる難病問題あるいは先端医療の問題、これについてやはり心配です。そのことについて、質問としてはまた次の機会に送りたいと思います。

 次に奨学金問題に入るんですけれども、ここでバイ・ドール法にも関係してくると考えていますし、その導入も考えながら質問するんですけれども、育英資金は政府貸付金と郵便貯金ということになっているんですけれども、郵政民営化の後、この事業は保証されるんですか。お答えください。

    〔河合委員長代理退席、委員長着席〕

石川政府参考人 奨学金事業と郵政民営化との関連についてのお尋ねかと存じます。

 従来、有利子奨学金事業の原資となっておりました財政投融資につきましては、平成十三年度の財政投融資改革におきまして、郵便貯金や年金積立金からの預託というものが廃止をされまして、各機関は財投機関債を発行して事業資金を自己調達するという仕組みが基本とされておるところでございます。

 しかしながら、機関単独では事業費に必要な資金を安定的に調達するということが困難な場合に対応するために、国が財投債を発行し市場から資金を調達して、必要な事業分野に融資をするという財政融資資金制度も整備されているところでございまして、現在、有利子奨学金につきましては、この制度によって融資を受けているところでございます。

 このように、財政融資資金は市場から資金を調達するという制度でございますので、郵政の民営化後におきましても、財政融資資金を有利子奨学金の原資として活用するというようなことは基本的に変わらずに可能である、このように考えております。

加藤(尚)委員 いわゆる日本学生支援機構なんですけれども、今もお答えが一部あったんですけれども、民間企業から、民間からということで、企業に限らず国民からでもいいと思うんですけれども、あるいはNPOというものを立ち上げるということもいい方法だと思います。

 いずれにしても、国立大学の経営は授業料を値上げせざるを得ないという方向に行きつつある。しかも、運営資金もどんどん下がる傾向にある。いずれなくなっちゃうんじゃないか。つまり、国立大学と私立と全く同じ方向に進んでいるような気がしてならない。つまり、国立大学の存立は、私は別に国立大学を出ているわけじゃないけれども、国立大学の役割、意味が歴史的にすごく大きいと思っています。評価しています。

 その意味で、私は、今後ともども文科省が、むしろアメリカのバイ・ドール法以上に日本版バイ・ドール法というのを展開しながら、つまり、文科省の教育債なんか考えていいんじゃないか、あるいは民間資金を導入する場合は税制の免除も考えていいんじゃないかというふうに思います。いずれにしても、文科省主導型で取り組んでほしいと思っています。

 完結に、最後に大臣のお答えをいただきまして、質問を終わりたいと思います。

中山国務大臣 国立大学法人の経営基盤を安定させて教育研究の振興を図るために、企業等との共同研究の拡大とか、あるいは多様な競争的資金の獲得など、各大学の取り組みを支援していきたいと思っていますし、また、税制面においても必要な措置を講じているところでございます。

 税制について具体的に申し上げますと、民間から国立大学法人に対して寄附を行った場合の税制措置につきましては、個人からの寄附金はその年の所得の三〇%を限度として所得控除する、法人からの寄附金は全額損金参入をできることとなっておりまして、国に対する寄附とほとんど同様、実質的には同様の優遇措置が受けられることになっているわけでございまして、今後とも、各大学が円滑な学校運営ができますように適切な支援に努めてまいりたいと考えております。

加藤(尚)委員 私も、研究調査してさらに努力したいと思います。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、村井宗明君。

村井(宗)委員 民主党の村井宗明です。

 私の地元は、ちょうど富山大学などがある富山市です。本来文部科学委員ではないんですが、地元の選出の国会議員に譲ってやろうという先輩方の皆さんの温かい御配慮をいただきまして、今から一時間の質問をさせていただきます。

 今月一日には、実は富山市は七つの市町村が合併して、四十二万人の大きな新富山市が誕生しました。面積はすごいんです。全国で四番目に広いというすごい大きな市が誕生しました。

 さて、私の持ち時間は一時間ですので、前半は富山三大学の統合についてという地元のローカルな話、それから後半で、国立大学法人化から一年経過した現状などをお伺いしたいと思うんですが、その前に、ここにおられる国会議員の皆さん、お子さんおられますでしょうか。お子さんが大学とかに行かれましたでしょうか、もしくは行く予定でしょうか。

 その中で、もちろん学費の問題も大事だと思うんです。学費が高い、安い、それからどうこうという話は後でまたさせてもらうんですけれども、本当に大学に行ったときにお金がかかるのは、学費よりももう一つありますよね。下宿代なんです。例えば富山の人が東京の大学に行った場合、それは学費ももちろんかかるんです、学費もかかるんですけれども、家賃だとか生活費とか仕送り代とか計算すれば、結局、教育にかかっているお金、学費よりも大きいのはやはりそういった下宿代なんかになる。私も富山の方から出て京都の大学に行っておったんですけれども、やはり学費よりも生活費の方がかかる。

 何を言いたいのか。実は、大学の立地の格差の話をしたいと思うんです。富山の場合は、富山県で大学に行く人全員が県内の大学に行ったところで、実は定員が全然足りないんですね。全員が行こうと思っても、四五%しか行けない。どう考えても、半分以上の人は県外に行かぬと大学に行けない。後で大学の収容率の問題、それから地域格差の問題を取り上げさせてもらうんですが、そういう話を御理解いただけたらと思うんです。

 東京の議員のお子さん方、多分これは東京の大学に行っていて、家から通ったりできると思うんですけれども、なかなか富山はそういうふうにいかぬ。大学の構造改革はもちろんわかるんです、必要です。だけれども、地域格差というものをきちんと埋めていかないと、学費以上にかかる教育コスト、それが結局、家の貧富と学歴の比例というものを生んでいく。そして、それがますます今の教育、なかなか大学に行けないという現状の原因になっているという話をさせていただきたいと思います。一時間ありますので、まず基本的な問題から入って、今の本論に入っていきたいと思います。

 さて、文部省がこれまで進めてこられた国立大学の再編統合の経過について確認させていただきたいと思います。

 平成九年度以降、これまでに十二組、二十四大学が統合されているわけですが、それぞれの大学における教育、学術研究及び各大学の管理運営面も含めて、どのような効果そして実績が上がっているとお考えでしょうか。また、大学現場の教職員、学生、そして所在地の地域の関係者の評価はどのように見ておられますでしょうか。文部科学大臣にお伺いいたします。

中山国務大臣 村井委員が、東京とそれから地方の格差についてお話ありましたが、私自身が田舎から出てまいりました、大学生活を送りました。子供は東京から通いましたので、本当に、御指摘にありましたように、学資だけじゃなくてその他の生活費の方がうんとかかるということは、私自身もよくよくわかっているところでございます。

 そこで、御質問ございましたが、国立大学の再編統合というのは、限られた人的、物的資源の有効活用によりまして、従来の各大学の枠内では困難でありました教育とか研究の抜本的な拡充とか、あるいは発展を図るために各大学が自主的な検討を踏まえて進めてきたものでございまして、これまでに十二組、二十四大学の統合が実現しているわけでございます。

 これまでに統合した大学については、それぞれの大学が既存の資源を有効に活用いたしまして、教育研究分野の幅の広がりを確保したり、あるいはスケールメリットを生かしたり、そして経営基盤の強化を図る、そして教育力、研究力の充実を図ってきたというふうに考えているわけでございます。

 具体的には、医学、農学、理学、工学等の分野の学際領域への展開、あるいは学問領域が拡大することによりまして、専門科目等も含めた教養教育の充実、それから多様な学問領域を有し、複合的な教育研究拠点となることによりまして、地域貢献や社会貢献機能の強化、そして、重複するポスト等を活用いたしまして、企画立案とかあるいは産学連携、学生サービス等の担当部門を増強することによりまして、経営マネジメントの強化といったことが図られております。これは教育研究面あるいは管理運営面において、パワーアップが図られていると思っているわけでございまして、このことはそれぞれの地域において評価されていると私は認識しているところでございます。

村井(宗)委員 さすが文部大臣、私と同じ、地域の出身で、宮崎県ということで、地方での大学進学というのがいかに難しいのか、結局下宿代にお金がかかっているという現状をよくわかっていただいていて、本当にすばらしい文部大臣だと思いました。

 さて、私は、今回の富山三大学の統合を考える場合、大都市圏にある大学を統合するケースと同列には決して論じられない点があるのではないかと思っています。東京などのように、国立、公立、私立の非常にたくさんの大学が集まっている大都市に所在する大学を統合する場合と、富山のような大学の数が少ない地域における統合では、その地域に与える影響がかなり違ってくるのではないかと思っています。

 現在、東京都内には百八十校を超える大学があります。一方、富山県内の大学は六校です。短大は四校で、合計十校です。御参考までに、中山大臣の御地元の宮崎県は、大学、短大合わせて十一校です。ところが、富山県の大学、短大への進学率は四八%を超えており、四十七都道府県の上から十二番目となっています。今回の法案では、県内の大学を六校から五校に、県内の短大を四校から三校にするものだということをしっかり確認しておく必要があると思います。また、この統合は、富山県内の大学生約一万一千五百人のうち、約八五%に当たる九千百五十人に関係する統合となります。富山県そして富山県民にとっては、県内の大学事情が大きくさま変わりしてしまうことになります。

 そこで、文部科学省にお伺いいたします。

 今回の富山大学、富山医科薬科大学、高岡短期大学の三校の再編統合を目指す過程において、地元や地域の意見や要望をどのように反映させていきますでしょうか。特に、地元の教育関係者、地元の高校生やその保護者、在校生や卒業生、統合に関係しない他の大学関係者など、いろいろな立場からの意見を聞く必要があったのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

石川政府参考人 今回の富山三大学の統合に向けて、地元の御意見、御要望等をどのように反映させてきたか、どのように聞いてきたかというようなお尋ねと思っております。

 富山三大学の統合に関しましては、もともと地元地域からの御提言を受けて、三大学間の検討が開始をされたという経緯があるところでございます。検討の過程におきまして、さまざまな形で地元関係者の意見を聞いたり、それを反映させたりしてきているというふうに私どもも承知をいたしております。

 具体的には、三大学の教職員で構成する新大学創設準備協議会を中心といたしまして、地元の自治体、経済団体、教育界など、関係者から意見を聞いたり、あるいは学長等と地域の関係者の意見交換会を開催するなどしてきたというふうに承知をしております。

 また、統合に合わせまして教育学部の改組あるいは芸術文化学部の設置が行われることとなっておりますけれども、これらにつきましても、地域の意見を踏まえて、このような構想になってきておるというふうに承知しているところでございます。

村井(宗)委員 次に、今回の三大学統合の効果(メリット)の話に移りたいと思います。

 三大学の統合が単なる看板のかけかえや国立大学の見せかけの上の数の削減ではなく、統合することによってさまざまなメリットを発揮するものでなければならないと考えています。地元関係者も、そして学生たちも、そこに大きな期待を寄せていることと思います。

 そこで、まず、大学の根幹ともいうべき教育と学術研究分野から伺います。

 今回の富山三大学の統合によって新たに誕生する新富山大学の大学教育と学術研究の面で、どのような効果が発揮されるとお考えでしょうか。また、統合による効果を発揮するためにどのような工夫や配慮がされていますでしょうか、お伺いいたします。

石川政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の富山三大学の統合による教育研究上のメリットについての御質問かと存じます。今回、三大学が統合するということによりまして、教育研究面においてはさまざまな効果、メリットが期待されるところでございます。

 具体的に申し上げれば、医薬、理工融合によります新たな学際領域の開拓、これは大学院改革等に関係するわけでございます。それから二つ目には、幅広く異なった専門領域の知的集団によります学際的な共同研究が推進をされる。そしてまた、例えば三つ目には、これらの教育研究面の充実によりまして、そういった充実を通じて地域産業との機能連携強化の一層の促進が図られる。あるいは四番目といたしましては、管理運営基盤が、統合ということをとることによりまして強化をされることになるわけでございまして、これによりまして戦略的な大学運営が期待されているというようなことでございます。

 また、教育研究組織面におきましては、高岡短期大学を母体といたします芸術文化学部を設置することにしておりますし、和漢薬研究所につきましては、和漢医薬学総合研究所に改組を予定しておりまして、教育研究組織のさらなる活性化を図るというようなことを考えているところでございます。

 また、こういったメリットを発揮する際の工夫について何かあるかというようなお尋ねもございました。

 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、三つのキャンパスは距離が離れたりしておりますけれども、さまざまな方法、工夫によりまして、その三つのキャンパスあるいはその教職員の連携を密にするなど、そういった工夫も予定されているところでございまして、こういったことを通じて、今申し上げたような教育研究効果をより高いものにしていきたい、このように考えているところでございます。

村井(宗)委員 今、ちょうど和漢薬研究所の話を答弁の中で出していただきました。

 皆さん、富山県と聞いて何を思いつくでしょうか。(発言する者あり)ありがとうございます。薬の富山ということで、富山県は大きく売り出しています。そういった薬のブランド、健康のブランド、それから自然のブランドというものをしっかり充実させて、今、富山県を大きく売り出していこう、そして新幹線導入後もしっかりと、ストロー効果がないように、逆に富山県も発展できるようにと、いろいろなことを考えています。

 その売りである薬について、統合される三校のうちの富山医科薬科大学についてお尋ねしたいと思います。

 富山医科薬科大学の薬学部には、全国でもただ一つの和漢薬研究所が置かれています。まさに薬の富山を代表する歴史と伝統ある大切な研究機関だと思います。もともとは、薬学部は昭和二十四年の設立当初から富山大学にありました。和漢薬研究所はこの富山大学薬学部に昭和三十八年につくられましたが、昭和五十年に富山医科薬科大学へ薬学部が移ったため、昭和五十三年、和漢薬研究所も富山医科薬科大学に移ったという経緯があります。日本国内はもちろん、海外からも研究者を多数受け入れており、和漢薬研究の世界の中心と言っても言い過ぎではない重要な研究所です。

 そこで、お伺いいたします。

 今現在、この和漢薬研究所は富山医科薬科大学に附属しているわけですが、三大学の統合に当たって、どのように位置づけられる予定でしょうか。文部科学省にお伺いいたします。

石川政府参考人 富山医科薬科大学に附属をしております和漢薬研究所についてのお尋ねでございました。

 ただいま村井委員からお話があった経緯等、それから現在の位置づけもそのとおりだということでございまして、私の方からそんなにたくさん多くつけ加えることもないわけでございますけれども。

 今回の統合によりまして、和漢薬研究所につきましては、医学、薬学に加えまして、理学、例えば工学分野との連携が図れるようになるとか、あるいはさらには人文系分野との共同研究も積極的に推進できるというようなことが考えられるところでございまして、和漢薬にかかわる総合研究を行う研究所として改組をすることとしておりまして、名称につきましても、和漢医薬学総合研究所、このような名称に変更することを予定しているところでございます。

 近年、アジア以外の国からも、東洋医学ですとか漢方、生薬への関心というのは大変強いものがございます。特にアメリカでは、西洋薬にかわる代替医療として和漢医薬学の研究に取り組むような傾向が大変強くなっております。この分野への世界的な注目が集まっております。和漢医薬学総合研究所が伝統医薬学研究のアジア及び世界の拠点としてさらなる発展をしていくことを期待しているところでございます。

村井(宗)委員 お答えありがとうございます。

 というわけで、和漢医薬学について、文部科学省の皆さんの方もますます御協力いただければ、そして御支援いただければとお願いを申し上げます。

 さて、次は、高岡短期大学についてお聞きいたします。

 高岡市は富山市に次ぐ県内第二の市で、富山市から西へ約二十キロ離れています。八世紀の中ごろ、あの大伴家持が越中守に任じられて都から赴任してきたころは高岡市の方が国府でした。もともとは富山大学の工学部が高岡市にありましたが、工学部が富山市へ移転した後、昭和五十八年に高岡短期大学として設置されたものです。今回の三大学の統合によって学校名から高岡という地名が消えてしまいますが、地元に密着した特色ある教育内容はしっかりと今後も継続していくべきだと考えています。

 そこで、お尋ねいたします。

 今回の三大学の統合によって、これまで高岡短期大学にあった産業造形学科、産業デザイン学科、地域ビジネス学科はどのような位置づけになるのでしょうか。地域の伝統工芸や伝統美術と連携した特色ある教育研究が統合以降も着実に継続、発展していくことを地元の関係者は願っているわけですが、いかがでしょうか。

石川政府参考人 お答えを申し上げます。

 高岡短期大学の三学科につきましては、今回の統合に合わせて、近年の地域産業の高度化による地元企業関係者等からのニーズでありますとか、あるいは学生側の教育ニーズ等にこたえることができますように、四年制の芸術文化学部へ改組、転換をするということといたしております。

 なお、芸術文化学部につきましては、一学科、芸術文化学科五コース制、コースは、造形芸術コース、デザイン工芸コース、文化マネジメントコース、デザイン情報コース、造形建築科学コースというような形をとることを考えておりまして、従来の高岡短期大学の三学科九コースの教育内容もほぼ継承するという形をとることとしております。そして、学士課程にふさわしい教育内容となりますよう学生の履修科目の選択の幅を確保して、より実践的な教育が展開できるカリキュラムを編成することとしているところでございます。

 また、高岡の伝統工芸関係の人材養成などの機能についてもちゃんと受け継がれるのかというようなお話もございました。ただいまの御説明にもその気持ちを込めたつもりでございますけれども、そういったこれまでの要素はしっかりと受け継いで教育研究が行われていくもの、このように考えております。

村井(宗)委員 今御答弁いただいたように、高岡の伝統工芸などについても十分な御配慮をお願いしたいと思います。

 次の質問に移ります。

 今回の富山三大学の統合のように三校を一度に再編統合する事例は初めてだと聞いております。大学の経営の効率化の観点から相当の効果が出てくるのではないかと思います。単純に考えても、これまで三大学がそれぞれに抱えていた事務管理部門はかなり簡素化できると考えます。

 そこで、文部科学省にお聞きいたします。

 今回の富山三大学の統合によって、大学の管理運営面でどのようなメリットが見込まれるのでしょうか。

石川政府参考人 今回の統合によります管理運営面におけるメリットについてのお尋ねでございます。

 今回の統合によりまして、管理運営面におきましては、スケールメリットを生かしました業務の簡素化、効率化が図られるということとともに、三大学の豊富な人的資源を有効活用するということによりまして、管理運営基盤を強化し、戦略的な大学運営を展開することが可能となるわけでございます。

 いま少し具体的に申し上げますと、学長を中心といたしました執行体制の明確化を確立するとともに、事務組織におきましては、統合により重複するポスト等、例えば事務局長ですとか総務課の職員、こういったものを活用することによりまして、別の部門、企画立案ですとか、施設管理、産学・地域連携、あるいは学生サービスなどの担当部門について強化充実を図るというようなことを考えているところでございまして、より効率的な事務機能の実現が期待されるところでございます。

 また、統合によりまして役員は削減をされるということになっておりますが、役員の削減に伴います予算につきましては、統合による学際領域分野の研究推進でありますとか、各キャンパス間におきます教育ネットワークシステム等の経費に活用したい、このように考えているところでございます。

村井(宗)委員 三大学が統合されると、事務管理部門だけでなく、授業の面でも教養課程の一般科目の講義が整理統合され、簡素化が可能になってくるのではないかと思います。

 ところが、今回の統合に当たっては、管理運営面で一つ気になります点があります。先ほど先輩方の方からも質問が何回か出てきましたが、富山大学と短期大学のキャンパスは約二十キロ離れているという点なんです。教職員や学生が移動するには、かなり不便があります。東京都内のように、地下鉄でキャンパスとキャンパスを頻繁に行き来するような公共交通は、残念ながら整備されておりません。したがって、例えば、統合される三大学を定期的に循環するバスを割安な料金で走行させるようなことなども考える必要が出てくるのではないかと考えます。

 そこで、文部科学省にお聞きいたします。

 今回の統合によって従来の三校のキャンパスは今後それぞれどのように利用されることになるのか、お伺いいたします。この問題は、学生だけではなくて、大学周辺で営業している小売店や飲食店、大学出入りの地元中小企業にも相当な影響を及ぼす問題だと思いますので、具体的に詳細な御説明をいただければと思います。

石川政府参考人 今回の三大学統合に伴いますキャンパスの利用といいましょうか、キャンパスの状況についてのお尋ねでございます。

 統合後のキャンパスにつきましては、本部を置く五福キャンパス、これは旧富山大学が所在しているわけでございますが、それから杉谷キャンパス、旧富山医科薬科大学が現在ございます。それから高岡キャンパス、これは高岡短期大学が現在所在しておりますが、この三つのキャンパスで構成をされるということになっているわけでございます。

 それぞれのキャンパスの教育研究組織につきましては、例えば五福キャンパスにつきましては、人文学部、人間発達科学部、これは教育学部を改組するというものでございますが、それから経済学部、理学部、工学部の五学部、それに人文科学研究科、教育学研究科それから経済学研究科、理工学研究科、この四研究科が置かれることになります。そして、二番目の杉谷キャンパスにつきましては、医学部、薬学部の二学部、それから医学系研究科、薬学研究科の二研究科が置かれる予定でございます。そして高岡キャンパスにつきましては、芸術文化学部の一学部が置かれるという形になるというふうに考えております。

 また、統合後につきましては、先ほど来話題が出ておりますけれども、複数のキャンパス運営を行うということになるわけでございまして、教育面におきましては、全学共通科目は、担当教員がそれぞれキャンパスに出向いて講義を行うとともに、双方向の講義システムを活用するなど、学生の負担を考慮したカリキュラムを構築することとしております。また、課外活動等の諸活動におきましても、学生交流が活発に行われますように、キャンパス間のシャトルバスを運行するというようなことなど、支障を来さないような配慮をすることとしているところでございます。

 なお、管理運営面におきましては、それぞれのキャンパスに担当理事を配置するとともに、事務機能もネットワークで結ぶなど、統一的な組織運営ができるような体制を構築する、このような形を考えているところでございます。

村井(宗)委員 今、お答えいただいたことの関連で、具体的には、シャトルバスというのはどのぐらいの頻度で、そして運賃などはどんな感じで進むのでしょうか、お尋ねいたします。

石川政府参考人 突然の具体的なお尋ねでございますが、ただいま係の者からも話を聞きましたところ、学生に負担にならないよう、そして学生のそういった行き来に支障のないような形で、現在、大学において鋭意検討中だということでございまして、もう少しお時間をいただきたいと存じます。

村井(宗)委員 済みません、通告していないことを関連で言ってしまいまして。

 というわけで、二十キロ離れているというデメリットを克服するような対策というものを十分にやっていっていただいて、例えば、今ちょっと言っていたシャトルバスなどを有効に利用して、学生たちが負担のないように移動してもらいたい。

 東京の議員さんたちはぱっとイメージがわかないかもしれないんですが、富山というのは非常に車社会なんですね。そして、電車を使おうと思っても、地方鉄道なんかは一時間に一本しかないというのが現状です。そういった中で、本当に移動というものをきちんとサポートしていかないと、せっかくの統合が非常に有効なものにならなくなってしまうというおそれを感じています。しっかりとその点、シャトルバスの運行に力を入れていただくよう、大臣にお願い申し上げます。

 さて、次に移ります。統合される富山三大学と地域社会との関係についてお聞きしたいと思います。

 もちろん大学は、主として学生たちが学び、研究する場所ではありますが、それ以外にも、地域社会とのさまざまな連携を強めています。生涯学習の拠点として社会人に講座を開放したり、産官学の共同研究を進めたり、大学発ベンチャーの拠点となったりというように、その地域への有形無形の貢献が着実に進展していると思います。とりわけ、大学そのものの数が少ない富山県内では、今回統合される富山三大学の役割は非常に大きなウエートを占めていると思います。

 そこで、文部科学省にお聞きいたします。

 今回の富山三大学の統合によって、大学の地域社会への貢献などの面でどのようなメリットが期待できるのかをお聞きいたします。今まで三大学が、それぞれの特色に応じて、異なった地域を拠点に社会との連携を進めてきましたが、統合後の取り組みについて、その考え方を御説明ください。

石川政府参考人 今回の統合と地域社会への貢献という観点についてのお尋ねでございます。

 今回の統合によりまして、地域貢献面におきましては、大学の経営機能の強化と教育研究機能の多様化、充実というようなことが期待できるわけでございまして、地域との一層の連携が強化、促進をされ、産学官連携ですとかあるいは生涯学習推進の拠点として、より柔軟、かつ多様な大学運営を展開することによりまして、高度な知的サービスを社会に提供することが可能になる、このように考えております。

 具体的に、もう少しつけ加えさせていただきますと、これまで各部局において進められてきておりました地域連携事業につきましては、全学的な拡充と有機的な連携を図るための企画立案、連絡調整を行う、これは一つの組織でございますが、地域連携推進機構といったようなものを設置することとしております。

 その役割といたしましては、地域産業の発展のための産学連携の共同研究ですとか、あるいは地域住民、職業人のための生涯学習機会の提供、また地域における文化活動の支援や、自治体支援の事業等を総括するための地域づくり等の支援、そして医療活動を通して地域住民の健康と福祉の向上を支援するための地域医療活動など、こういったものを幅広く実施することにしてございます。

 こういったことを通じまして、地域社会のさまざまなニーズを把握し、これに貢献していくということを目指しているものでございます。

村井(宗)委員 よく言われますように、大学の地域社会への貢献あるいは大学と地域社会との連携といったテーマは、これからの少子高齢化社会の中で、特に地方の地域振興や地域の活性化には欠かすことのできない大切な要素だと思います。大都市の主要な大学だけではなくて、むしろ大学が余りない地方都市にある中小の大学に対しても、地域社会からは大きな期待が寄せられていると思います。この点、文部科学省のきめ細かな配慮をよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、大学と地元の地域社会とのかかわりを考えるために、ここで、富山三大学の学生の入学と卒業の状況について見ていきたいと思います。

 まず、卒業後ですが、基本的な数字を押さえておきたいと思います。

 文部科学省にお聞きいたします。今回、合併の対象となる三大学のうち、富山大学と高岡短期大学の卒業生の進路について、就職率、そのうちで富山県内への就職率を御説明ください。

石川政府参考人 富山大学そして高岡短期大学の卒業生の進路、就職の状況についての御質問でございます。

 富山大学におきます平成十六年度卒業予定者の状況につきましては、千四百八十四名の卒業予定者のうち、進学希望者が三百二十九名いらっしゃいます。そして、就職希望者が千三十七名となっております。就職希望者のうち、就職内定者は九百三十一名ということで、就職率は、これを計算いたしますと八九・八%というような数字になるわけでございます。

 また、高岡短期大学におきます平成十六年度卒業予定者の状況でございますが、二百五名の卒業予定者のうち、進学希望者が五十八名、そして就職希望者は百二十九名でございまして、就職希望者のうち、就職内定者につきましては百二十七名ということでございまして、これは就職率にいたしますと九八・四%と大変高い数字でございます。

 そして、富山県内への就職状況のお尋ねがございました。

 県内への就職内定者につきましては、富山大学につきましては三百四十九名ということになっておりまして、これは、県内の就職率は三七・五%という数字になるわけでございます。また、高岡短期大学につきましては七十一名ということでございまして、県内への就職率は五五・九%、こういった状況になっているところでございます。

村井(宗)委員 それでは、次に、入学する学生です。

 文部科学省にお聞きいたします。合併する富山三大学には、地域的に見てどこから入学してくるのか、富山県内からの入学者はどのぐらいの割合なのか、お伺いいたします。

石川政府参考人 富山三大学に対する富山県内からの入学者についてでございます。

 平成十六年度の実績につきましては、それぞれ、富山大学における富山県内からの入学者は四百六十九名ということになっております。全入学者は千四百九十三名でございますので、県内からの入学者が占める割合は三一・四%という状況でございます。それから、富山医科薬科大学におきます富山県内からの入学者でございますが、これは六十四名でございまして、全入学者が二百五十九名でございますので、これに占める割合は二四・七%ということになるわけでございます。また、高岡短期大学につきましては、富山県内からの入学者は百二十二名でございます。全入学者は二百十八名でございますので、県内の入学者が占める割合は五六・〇%ということになっております。

 三大学を合計いたしますと、富山県内からの入学者は六百五十五名でございまして、全入学者、千九百七十名でございますが、これに占める割合は三三・二%という数字になっておるところでございます。

村井(宗)委員 ありがとうございます。大体三人に一人が、富山県民がそれぞれ富山三大学に行っているという地元の事情というのをお示しいただいたかと思います。

 さて、そろそろ本論に入っていきたいと思います。

 私がお訴えしたいことは、大学の地域格差の問題なんですね。本当に満遍なく、大学進学者数に応じた地域でそれぞれ大学が受け入れているかといえば、そうじゃない。東京にでかいと、たくさんある。ところが、地域にはそうじゃない。どうしても、お金のかかる下宿などをやっていかなければならない。それが学費以上に教育コストとしてなっている。だから、大学に進学したいけれどもなかなか行けないという事情の一つ、やはりそこにあると思うんです。

 今お示しいただいた数字、そして文部科学省の学校基本調査のデータなどを都道府県別に見たときの大学の立地の不均衡、都道府県別の格差、ひいては受験機会の不均衡についてこれからお聞きしていきたいと思います。冒頭でも申し上げましたが、大学が多数立地している大都市と、そうでない富山県などの地方都市では、大学をめぐる地域環境が大きく違うという点です。

 平成十三年に文部科学省が打ち出された「大学の構造改革の方針」によれば、一番目に、「国立大学の再編・統合を大胆に進める。」とあります。その具体策として、教員養成の縮小や地方移管、単科大学の統合、県域を越えた再編統合などを進めて、国立大学の数の大幅な削減を目指すとされています。

 この文部科学省の考えている大胆な大学のスクラップ・アンド・ビルドを進めるに当たって、東京から見た再編統合ではなく、地方の受験生や地方の県民から見た再編統合の問題点について考えてみたいと思います。

 県内進学率という数字があります。県内の大学の入学者に占めるその県内の出身者数の割合を示すものであります。先ほどお答えいただいた部分でもあるんですが、この数字が高ければ高いほど、県内の大学の入学者に占める県内出身者が多いということになります。全国で高いのはどこでしょうか。まず、やはりそれは沖縄県、八〇・六%、それから次、私の隣の仲野先生の地元でもある北海道、七三%、全国の平均は三九・五%です。中山文部科学大臣の御地元、宮崎県は三六・二%で、富山県とほぼ同じです。

 この県内進学率だけでは、問題の所在はまだ不明確です。この県内進学率だけを取り上げて大学の立地の不均衡を論じることはできません。

 そこで、次に、大学収容力指数という数字を見ていきたいと思います。これは、その県にある大学の入学者数を、その県の出身者で大学に入学した人数で割ったものです。つまり、その県の大学進学者が仮に全員県内の大学を希望した場合、どのぐらい収容できるかを示しています。平均では一〇〇になるはずなんです。ところが、文部科学省の学校基本調査から計算しますと、富山県は四五・八%、全国で三十八位と低い数字になっています。

 さらに、他県への大学の進学率を見てみます。これは、大学入学者のうち、県外の大学へ入学した者の割合を示しています。文部科学省の学校基本調査から計算しますと、富山県は八三・五%で全国八位です。

 これで、おおよそ私の言いたいことがおわかりいただけたかと思います。今申し上げた三つの数字は、互いに関連しています。富山県は、高校進学率が全国一位ですが、大学進学率は全国十二位と落ちてしまいます。大学への進学状況を見ると、県内進学率は全国平均に近いにもかかわらず、大学収容力指数が全国平均よりかなり低いため、その結果として、他県の大学へ進学する率が全国平均よりかなり高くなっているということが言えると思います。

 同じ北陸でも、隣の石川県と比較いたします。その違いがよくわかります。石川県の県内進学率は三三・四%で、富山県と余り変わりません。ところが、石川県の大学収容力指数は一〇〇・四%、富山県の倍以上あるんです。この結果、他県の大学へ進学する率は六六・五%で全国三十一位となり、富山県より一七%も低くなっています。

 なお、先ほど新潟の先生からも御質問ありましたけれども、隣の新潟県を見てみます。新潟県の県内進学率は五八%、全国平均を一九%近く上回っています。この結果、大学収容力指数は五八・〇%と余り高くないにもかかわらず、県外の大学へ進学する率は六九・七%で、富山県より一四%低くなっています。

 そこで、文部科学大臣にお伺いいたします。

 今、いろいろな数字を取り上げて申し上げました、都道府県別に見たときの大学の立地状況の不均衡、この格差をどのようにお考えでしょうか。どちらかというと、大臣の御地元である宮崎県も私の富山県と似たような状況だと思いますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 いろいろな数字を挙げられたものですから、頭の中がごちゃごちゃなっていまして、どういうふうに頭を整理すればいいのかわからぬときに、富山県と宮崎県はほぼ同じような傾向だと。なるほど、それならわかるなと思ったわけでございますが、ただ、宮崎と富山の違うのは、富山の場合には、学校を卒業しても、また地元に帰ってこられますよね。宮崎にはそういう就職口がないということですね。ここが私は決定的に違うな、こう思っているんです。

 今、いろいろな数字を挙げられた中で、やはり関東、これも南関東、あるいは近畿は一〇〇を大きく上回っておりますし、それ以外の地域は一〇〇を下回っているということでございます。

 そういった、地域間でアンバランスもあるということもよくわかるわけでございますし、地元の学校に行きたいのだけれども、なかなか行けないのでよそに行っているという人もいるでしょうし、いや、大学はやはりよそに行きたい、都会に行きたいという子供も多いわけでございますから、いろいろな選択肢があるということがまず望ましいのだろう、こう思うわけでございます。

 従来は、大学の設置認可に当たりましては、首都圏とか近畿圏あるいは中部圏における大学設置等については抑制方針をとってきたわけでございますけれども、総合規制改革会議の答申を受けまして、平成十四年の七月に工業等制限法が廃止された。これを踏まえまして、この方針は撤廃されているところでございまして、そういう意味で、政策的に大学、短大の配置を調整することは事実上できないという状況になっているところでございます。

 しかし、地方におきます高等教育機関というのは、先ほどから御答弁申し上げておりますが、地域社会の知識、文化の中核でございますし、また、次の世代に向けた地域活性化の拠点としての役割も担っているわけでございます。

 そういう意味で、文部科学省としては、地方における高等教育の支援とか、あるいは地域振興に資する観点から、国立大学運営費交付金とか、あるいは私学助成等の基盤的経費を確保するなど、地方の大学がそれぞれの個性、特色を十分に発揮できるように、さまざまな取り組みをやってきているということは御理解をいただきたいと思っております。

村井(宗)委員 ありがとうございます。

 確かに、細かい証拠を並べるためにでかいと数字を並べて、ややこしかったかもしれぬですが、お伝えしたかったことは、大臣の地元の宮崎県も私ら富山の者も、大学に行きたい場合、よその県に行かなければならぬ。どうしても物理的に定員数が足りていないのでそうなっているということなのです。

 大臣がおっしゃられたように、よその県へ行きたいという人は私はそれでも構わぬと思うのです。だけれども、地元でそのまま、家から通う方が教育コスト、特に下宿代なんかは非常に安いわけです。そして、大学へ進学したいという望みをかなえやすいわけです。今多くの人が大学へ行くという時代になりつつありますけれども、実際、家でそれほどお金がない。それは授業料の問題だけではなくて、よその県へ行ったらやはり下宿代がかかるというところだと思うのです。東京の人はまだいいです。ある程度学費分だけ出せれば、家から通って大学へ行くことができる。だけれども、私ら富山県人だとか、大臣を初めとする宮崎県人は、どうしても県外へ行かないと、そもそも定員が県内で半分もいかないという状況、私はこれは変えていくべきだと思うのです。

 大臣に、もう一言で結構ですので、そういった、例えば宮崎県で大学に行きたいと思うような人たち、今後はどうしていったらいいと思いますか。地域の大学の立地バランスの格差を埋めていくべきだと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。

中山国務大臣 これは、大学だけではなくて働く場ですね、工場だとかそういったものも含めて、日本全体としてバランスよく配置されていればいいな、こう思うのですね。宮崎で大学を出ても、地元に就職するところがほとんどない。ですから、大学は地元だけれども、県外に就職せざるを得ないという人もいるわけでございますから、そういう意味では、大学も企業等も含めて、やはり均衡ある国土の発展ということを言われましたけれども、そういった視点というのは、やはりずっと忘れてはならないものだ、こう思っているわけでございます。

 しかし、そうは言いましても、やはりそれぞれの大学が魅力ある大学になるように努力するということも大事でございます。そういった観点もあるだろうと思いますし、また一方では、大学全入時代がもう近づいているわけでございまして、その中で新たに大学をつくるということも、これはできないわけでございますから、どうするのだと。地方にもっと分散できないのか、してもらいたいと思いますけれども、一方では規制緩和という大きな流れもあるわけでございますから、なかなか難しい問題だということは思いますが、村井委員と私みたいに地方の選出の議員としては、やはりもう少し地方の方にいろいろなものが移ってきてほしいなということは、もう切実に考えているところでございます。

村井(宗)委員 ありがとうございます。

 そういう地域の格差ということを埋めていくべきだというお言葉をいただきたかったのです。本当にどうもありがとうございます。

 やはりここにお集まりの国会議員の皆さんも、多分、選挙のときに高校の名簿なんかを使ったと思うのですね。出身高校の名簿を見て、だあっといろいろ当たろうとするのだけれども、聞いたら、結構、県外に出ていってしもうたと思うのです。首都圏の議員さんは別として、地方の議員さんが出身高校の名簿を使っていろいろかけてみると、いやあ、息子は大学で東京へ出た、そのまま東京で就職した、うちの娘は大阪の大学へ行ってそのままそっちで就職したということが、よく国会議員だったらわかると思うのです。

 結局、それぞれの地域に大学などがないからよその県へ行く。そして、そのままそこへ住んで、どんどん地域が過疎化していっている部分もあるのではないかな。だから、今後はぜひ、大学の構造改革自身は私は賛成なのです、だけれども、地域の大学から削るのではなくて、しっかり地域の大学はより地域で拡充していく、そして、首都圏で多過ぎるところなどで構造改革していただいてもいいかとは思うのです。とりあえず、大学の立地バランスの格差を今後少なくしていくべきだということをお訴えさせていただきたいというふうに思っています。

 古い言葉になりますが、旧帝大あるいは旧国立一期校のあるところとそうでないところは、依然として大学立地の条件に大きな格差があります。これは、少なからず受験生の進路の決定や保護者の経済的負担にも影響を及ぼしているものと考えます。したがいまして、今後文部科学省が大学の構造改革を進める中で、都道府県の枠組みを越えた大学、学部間の再編統合を示していますが、文部科学省から見た再編統合からだけではなくて、その地域に立った見方も忘れてはならないと思います。

 そこで、大臣にもう一度お聞きしたいと思います。

 今後、文部科学省が大学の構造改革として、県域を越えて大胆な再編統合を実施していく場合、今申し上げました、その大学の所在している地域への配慮、大学の少ない地方への配慮を決してないがしろにできないと思いますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 各大学におきましては、文部科学省が平成十三年の六月に出しました「大学の構造改革の方針」を踏まえまして、教育研究の一層の発展等の観点から、再編統合について幅広く自主的な検討がなされておりまして、先ほどお話しになりましたけれども、これまで十二組、二十四大学の統合が実現しているところでございます。

 地方の国立大学というのは、これは大学教育の機会を提供するというほかに、地域の人材育成とか、あるいは地域社会へ貢献などの点で重要な役割を果たしておるわけでございまして、これらの大学の再編とか、あるいは統合を検討する場合も、このような役割の強化、発展という観点も重視しながら、大学間の自主的な検討を踏まえて進めてきたところでございます。

 教育とか研究の上で大きなメリットがあると考えられる場合には、県域を越えた再編統合ももちろんあり得ると考えておりますけれども、その場合におきましても、まさに今村井委員が御指摘のように、国立大学の地域的なバランスというものにも十分配慮しながら、そして地元関係者の意見も十分尊重しながら検討する必要がある、このように考えております。

村井(宗)委員 ありがとうございました。

 何度も繰り返した、大学の地域バランスの問題、今後も大臣に、地域の大臣としてしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 それでは、論点を変えたいと思います。国立大学が法人化されて一年が経過しました。まだ評価を云々するのは早いと思いますが、せっかくの機会ですので、文部大臣の見解をお聞きしたいと思います。

 国立大学が法人化されるに当たっては、大学の自由度が増し、民間的発想を取り入れた個性的な大学経営が期待されると言われておりました。今の時点で大臣はどんな御評価をお持ちでしょうか。御見解をお伺いいたします。

中山国務大臣 国立大学が昨年四月に法人化してちょうど一年を迎えたところでございまして、各国立法人におきましては、法人化を契機として、それぞれの特色に応じて教育研究活動のさまざまな改革に取り組んでいるということでございます。

 具体的に申し上げますと、学長裁量による学内の研究費やポストの戦略的、競争的な配分、学長補佐体制の充実強化など学長のリーダーシップのもとでの戦略的な大学運営、学外理事や運営協議会の委員に民間企業、地元自治体等から多様な人材を登用して、学外の意見を幅広く大学運営に反映させることなどに努めておりますし、また任用制の拡大、あるいは年俸制の導入、外国人の理事への採用、ノーベル賞級の研究者の教授への招聘など、弾力的な人事システムの積極的な活用を図っている。

 あるいは、厳格な成績評価による教育の質の向上とか、大学の自主判断によります特色ある研究組織の設置など、教育研究機能の強化を図っている。さらに、成績優秀者に対する大学独自の奨学金とかあるいは授業料免除制度の導入など、学生に対するサービスを充実させている。

 あるいはまた、地域貢献のための組織の設置によります自治体等との連携とか、あるいは地元ベンチャー企業等を対象とした経営相談の実施など地域貢献とか、あるいは産学連携の促進を図っているといった、いろいろと個性的な改革の枠組みを展開しているところでございます。

 これからも、こういった改革の取り組みにつきましては、これがさらに進みまして、個性と特色ある大学づくりにつながることを期待しているところでございます。

村井(宗)委員 特に、大学がそういった形になっていく中で、私はもともとは経済産業委員会に所属しています、きょうは、地元富山大学の合併の問題なので、富山市選出の国会議員の私に先輩方の皆さんが一時間もの間、時間を譲ってくださったわけですが、本業の経済産業委員会の中でLLPの法案について質問させていただきました。LLPということで、本当に産官学が連携した新しいビジネスモデルなどもできるはずだということを提言いたしました。その辺についての文部科学省としての御見解をお伺いいたします。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 大学の法人化によりまして、各大学の主体的な判断と戦略によりまして、積極的かつ柔軟な産学官の連携の推進、そして各大学の個性や特色の発揮というのは、私どもがまさに期待しておるところでございます。

 委員御指摘の有限責任事業組合契約に関する法律案は、現在審議中と伺っておりますけれども、これに基づく日本版LLPの制度は、出資者で負う責任を限定的なものとしつつ、かつ運営や利益の配分を柔軟にする、そういう意味での新しい仕組みと承知しております。

 この制度の創設によりまして、まさにおっしゃられましたように、大学が共同研究を実施する場合に、それぞれの得意分野を持つ企業が複数でLLPを創立して、円滑な契約の締結あるいは知的財産権の管理を行うといった、そういう共同研究の形、あるいは、研究成果をもとにベンチャーとしてLLPを設立する、そうして研究者に対して出資比率以上の利益を配分する、そういうふうな仕組みなどが可能になるものと承知しております。

 多様な形の産学官の連携が期待されるところであるというふうに承知しておるわけでございまして、私ども、この制度が創設を見た暁におきましては、各大学において、積極的にこういう仕組みを活用しながら、より一層の産学官の連携の促進ということを支援してまいりたいというふうに考えております。

村井(宗)委員 それでは、最後の質問に入りたいと思います。

 今、皆さんも御存じのように、中国、反日デモなどがどんどんと起こっています。それでもやはり、日中関係は非常に貴重な関係です。しっかりと友好、そして協力関係を今後も進めていかなければならないと私は確信しています。今後の経済を考えても、そして世界のバランスを考えても、地域の位置を考えても、日中関係は非常に重要です。

 今、日本の大学には、中国、韓国を初めアジア各国から多くの留学生が来日し、日本の大学生とともに学び、研究し、相互交流をしています。さっきから出ている、きょうのメーンである富山大学を見ますと、外国人留学生二百六十七人のうち、中国からの留学生が百八十七人です。比率でいうと七〇%という圧倒的多数を占めています。富山医科薬科大学でも、外国人留学生五十二人のうち、中国がトップで二十人です。

 この日中の学生の交流、これは日中間の将来を考えたときに、非常に重要な交流だと思っています。短期的な目の前の懸案事項とは切り離して、冷静に考えていかなければならないというふうに考えています。政治的な交渉、外交的な交渉と学生間の長期的な日中交流は別の次元で考えるものだと思いますが、いかがでしょうか。

 最後に、中山大臣にお聞きしたいと思うんですが、日本の大学における外国人留学生の受け入れの拡大と充実、そして学生同士の交流や共同開発研究の促進について、大臣の所見をお伺いいたします。

中山国務大臣 最近の日韓あるいは日中のいろいろなあつれきがあるわけでございますが、あれは誤解に基づくところが非常に大きいと思うわけでございます。

 そういう意味で、人的な交流が深まるということは本当にすばらしいことだと思うわけでございまして、ぜひ外国の方々、特に中国の方々に日本にいっぱい来ていただいて、日本人がいかに平和愛好といいますか、平和に徹する国民であるか、そして、中国に対して本当に、一時期悪いことをした、そういうふうなざんげの思いも持っているんだということをわかっていただくことが一番大事なことではないかな、私はそういうことも考えるわけでございます。

 こうした留学生を通じた国際交流というのは、友好関係の深まりにも役立ちますし、また人材養成への貢献、いろいろと交わる中で切磋琢磨もあるわけでございますし、また大学の国際化ということについても大きく寄与するものである、このように考えているわけでございます。

 留学生十万人計画というのを立てまして、一時期ずっと低迷しておりまして心配しておりましたが、最近はもう十二万人を超えているということでございます。そのことについて、数はもう本当にふえたなと思いますけれども、中身の問題、日本がそういった留学生に対してどのような処遇をしているかということも考えなければいかぬと思うわけでございまして、優秀な留学生は国費留学生として受け入れる、そして奨学金とか渡航費を給付する、あるいはまた、私費の留学生に対しましても、優秀な者には学習奨励費を支給するなど、留学生に対する支援の充実をさらに図っていかなければならない。そのことによりまして、いろいろな意味で日本が国際化し、また相互の理解が深まり、友好関係も深まっていく。私は、いろいろなメリットもあるのではないか、このように考えております。

村井(宗)委員 本日は、どうもありがとうございました。

 大臣がおっしゃられたような、外国人留学生の充実、これをどんどんもっと進める、オープンな国をつくっていかなければならないと思います。日本全国でそういうふうな動きにすること、そして、きょうの議題でありました富山大学においては、外国人留学生のほとんどが中国人です。今、この日中間の政治的、外交的な交渉がややこしいことにならないように、特に中国人の留学生の皆さんにも温かい御配慮を文部科学省にしていただきたいということで、そして、そういった御支援をいただきたいということで、私の発言を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

斉藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時七分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。須藤浩君。

須藤委員 民主党の須藤浩でございます。

 本日は、国立大学法人法の一部を改正する法律案ということで、内容的には三本の法案が出ておりますけれども、私の方からは筑波技術短期大学の四年制への移行と、そして政策研究大学院大学の二点についてお伺いをしたいと思います。

 最初に、筑波技術短期大学を四年制にするということで、これは先般、文科の委員の視察で私も現地に同行させていただきました。視覚障害あるいは聴覚障害を持たれている方のいわゆる高等教育機関としての整備あるいは拡充ということでの今回の法案の改正になったわけですが、私も常々、大学のいわゆる高等研究といいますか高等部門において、私たちいわゆる健常者としてそういったものを感じていることと、それから障害を持たれている方々がそういった大学等で学ぶときの感じ方というのは随分と隔たりがあるといいますか、そういうことがあろうかと思います。

 えてして、私たちは自分の感覚あるいは自分たちの意識といいますか、そういう観点から物事を考えがちですが、そうではなく、やはり相手の立場に立った、あるいはそれぞれの立場に立った物事の見方や考え方が非常に必要であるということを感じるところです。

 今回の筑波技術短期大学は、その意味では、視覚障害あるいは聴覚障害を持たれている方が大学という機関でさまざまな勉強をし、そして大学を卒業した折には社会に出て有用な人材として、社会の構成員として社会を支えていく、そういうことをするための場であるという本当に大きな意味を持っているところであろうかと思います。

 そこで、今回のこの法改正におきまして、まず最初に、四年制の大学への移行に伴う課題について、どのような課題があり、そしてその課題に対してどう対応されていくというように考えているのか、お伺いしたいと思います。

中山国務大臣 お答えいたします。

 筑波技術短期大学というのは、今お話がありましたように聴覚、視覚障害者に対して短期大学レベルの高等教育の内容を確実に履修させ、職業人として社会的に自立できる人材の養成という役割を果たしてきたわけでございますが、近年の科学技術やあるいは医療技術が著しく発展する中で、これらの変化に柔軟に対応して、より高度な実践的能力を有する職業人の養成が求められるようになってきたということが背景にあるわけでございます。

 この四年制大学化というのは、このような課題に対応するとともに、企業関係者、関係団体からの強い要望も踏まえつつ構想されてきたものでございまして、今回、筑波技術大学の設置という形で実現しようとするものでございます。

 具体的には、まず教育面におきまして、社会の変化に応じて細分化、専門化する専門教育を充実するとともに、学部・学科を超えた共通専門基礎科目を開設いたしまして、学生の履修科目の選択の幅とかあるいは自由度を確保することによりまして、より実践的な教育の展開と、学生側の教育ニーズにこたえることができるカリキュラム編成をすることにしているわけでございます。

 また、研究面におきましては、聴覚、視覚障害者の教育に関する研究成果を障害者高等教育研究支援センターを通じて関係教育機関等に還元するとともに、障害者の福祉の向上あるいは高齢者の生活支援に結びつく研究成果については、関連企業と連携して実用化することを目指すものでございます。

 このように、これまでの筑波技術短大の実績の上に、教育研究の専門化、高度化を図り、両障害者の社会的自立、参画、貢献の一層の推進を目指すものであります。

須藤委員 四年制大学に移行する、手続的には技術短期大学を廃止して新しい四年制の大学を設置するということなんでしょうけれども、中に入っている方々は、三年制から四年制に移行する、私たち一般もそういうふうに受けとめることかと思います。

 今お答えいただいたんですが、少し難しいというか観念的で、内容的にもう少し踏み込んでお伺いしたいと思います。

 筑波の技術短期大学、ここにいらっしゃる委員の皆さんも、あるいは傍聴されている方も、この技術短期大学、短期は別としても、技術大学というこの名称が恐らく、私も最初そう思ったんですが、理工系の大学の一つかなと。あるいは、その大学の中でどういうようなことが行われているかということに関しては、知識がなかったり、あるいは知らなかったという方が多くいらっしゃるのではないかと思います。そういうことも考えまして、実は、この技術短期大学というものがどういうものかということを、ちょっと私の方から説明をさせていただきたいと思います。

 これは先日現地を視察させていただいて、資料をいただいたのでそれを読ませていただきますけれども、こういった障害、視聴覚障害の大学は世界各地にあります。その世界各地にある大学の名称というのは、これは視聴覚障害というような名称、冠をつけて大学を設置しているということではなくて、例えばアメリカのギャロデット大学、これは創立が一八六四年ということで、最古のいわゆるアメリカの障害者の高等教育機関ということで、この名前もそういったことでは、障害者云々ということはつけていない。そういう意味では、一般の名前がついた大学である。ですから、最初それを聞いた人はどういう大学かということがわからないのかもしれませんけれども、アメリカでは、これはもうほとんどすべての人が知っているというくらいに有名な大学だそうです。

 そして、アメリカだけではなくて、そのほかにも幾つか、中国であるとかさまざまな各国、大学が設置をされているんですけれども、同じように、特にそういう障害者云々というような形での名前はつけられていない。ということで、日本の場合も、この筑波技術短期大学という名称が、私たちが余りにも知らないということだけであって、そういう意味では世界標準といいますか、世界と同じような形での名称がつけられている。

 そこで、ここに集う人たちが、大体各都道府県に設置されておりますいわゆる盲・聾学校、そういった方々が卒業されてこの筑波技術短期大学に入ってくる。あるいは、そういう盲・聾学校に通われていなくても、直接この大学を受けて入学をされる。ですから、入学される方は当然どういう大学であるかということを既に知っている、わかった上で入ってくるわけです。逆に、私たち、一般的には余り知られていないということであろうと思います。そこで、この筑波技術短期大学ということの名称がどうしてついたのかということは、今申し上げたことで、私も現地でそういうことを伺いました。

 この大学の名称はそういうことですが、その中で、今回、学部が名称変更、そして学科というものが再編をされました。その中で、例えば聴覚障害者関係の学科でいいますと、デザイン学科、機械工学科、そして建築工学科、電子情報学科という科がありますが、これが産業技術学部と学部制をとって、その中に産業情報学科及び総合デザイン学科という二つの学科が設置をされます。さらに、視覚障害者関係では、はり、きゅう、鍼灸学科と理学療法学科、そして情報処理学科という三つの科が保健科学部という部になりまして、保健学科と情報システム学科、このように変わるということです。

 ここにおいても、この名称は、例えば総合デザインであるとか産業情報であるとか、保健学科であるとか情報システムという名前そのものを聞きますと、普通、技術系あるいは理科系の大学にある同じような学部・学科であろうというふうに恐らく想像してしまうと思うわけですね。この辺については、やはりこの名称の決め方について、大学の名前を決めるときと同じような経緯で決められているのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。

石川政府参考人 筑波技術大学の内容、学部・学科構成等の名称についてのお尋ねでございます。

 ただいま須藤委員の方からお話ございましたように、聴覚関係の幾つかの学科がございます。これを産業技術学部の産業情報学科、あるいは総合デザイン学科にする。そして、視覚障害関係の鍼灸学科、理学療法学科等の学科を保健科学部の保健学科及び情報システム学科というような形に改組をすることを考えております。

 これらの改組につきましては、科学技術ですとかあるいは医療技術の発展、社会経済の変化等に対応いたしまして、より高度で専門的な知識、技術を身につけるというようなことを可能とするために行われるものでございまして、そういった観点から、その名称につきましても、より現在の科学技術ですとか医療の内容、水準にふさわしい、それを的確にあらわすような学科構成あるいは名称というようなことで、このような教育研究上の趣旨、目的にふさわしいものとする、こういう観点からこういった名称を採用しているところでございます。

須藤委員 今御説明にありましたように、新しい学部・学科ということで名称変更されたということですが、例えば、従前といいますか、今あります視覚障害者関係のはり、きゅう、鍼灸学科という名称があります。そして、これが保健学科というように名前が変わるわけですけれども、大学を卒業したときに、筑波技術短期大学の卒業生であるということで、その大学の中身がわかっている方々にはもうその一言で済むと思うんですけれども、そうでない場合は、この鍼灸、つまりはりやおきゅう、こういった学科ということの名称がついていて、専門といいますか、こういうことを学んだんですよということの説明の方が、ある意味でわかりやすいかなというような気持ちもあるんですけれども、この辺は率直なところ、どうなんでしょうか。

石川政府参考人 先ほど名称の点といいますか、組織がえにかかわる名称のお話を申し上げましたけれども、実際にもう少し鍼灸の学部について詳しく申し上げるといたしますと、例えば保健学科の中では鍼灸学専攻あるいは理学療法学専攻といったような専攻という形で、従来の内容は残すというような形にしておりますし、私ども、ここで行われております教育の趣旨、それから大学の特徴といったようなものはこれまでも評価をされてきているところでございますし、これからも積極的に大学が情報発信をしていくということを通じながら、ここで行われているすばらしい教育について広く皆様方に理解をしてもらえるような、こういった努力をまたしていきたい、このように考えております。

須藤委員 昨今、用語といいますか言葉の用い方で、当然のことですけれども差別用語を使わないように、私たちの社会をノーマライゼーションの社会によりよく近づけていくために、それぞれが気を使いながら、そしてお互いを思いやりながら、言葉一つ一つをとってもそういう気持ちを込めて使うということは、私は大変いいことだというふうに考えております。

 ただ、それが、普通に使われている言葉の中で、あえて余り意味を重くといいますか、重きを置き過ぎたがゆえにわからなくなってしまうというようなことも一つあるかなと。この鍼灸の言葉に関しましては、特にそういう意味では問題はないのかなというふうに私は考えますけれども、ただ、世界各国が同じように、大学名につける名前というものが普通のいわゆる言葉として用いられ、そしてその中にある学部や学科についても同じような考え方でつけられている。それを大学側がより力強く情報発信をしていくことによって、いわゆる世間といいますか一般社会でそれを認知するような実態というものをつくり上げることによって、筑波技術大学の例えば保健学科を卒業しましたよということは、こういう理学療法や鍼灸ということを一生懸命専門的に学んだんだよということがわかる、そういうところまで持っていく、そういう趣旨で今回つけられたということで理解をしてよろしいわけですね。――はい。

 それでは、引き続き質問に移ります。

 平成十七年度の大学に対する運営交付金、これが多少減額されております。平成十六年度が二十三億五千万ですか、そして平成十七年度予算額が二十三億二千万と若干減っておりますけれども、この減額の理由をまずお教えいただきたいと思います。

石川政府参考人 ただいま御指摘のとおり、平成十七年度の筑波技術大学に係る運営費交付金につきましては、前年度に比べまして約三千万円ほどの減、トータルの金額では二十三億二千万円を計上しているところでございます。

 その主な増減の内訳でございますけれども、一つは、算定ルールに基づきます業務の効率化等による減が約二千万円ほどございます。それから、平成十六年度に措置をしております教育特別設備が、十七年度にはそういった費用がなくなるということで、それに伴う減ですとか、あるいは退職手当所要の見込み額の減、こういったものを合わせて約三千六百万円ほどの減になってございます。

 その一方でまた、四年制化等に対応いたしまして、学部教育の充実を図るというような観点から、障害者の教育カリキュラム及び障害補償システムの開発研究に必要な経費といったものを重点的に措置することとしておりまして、必要な対応を図っておりまして、これにつきましては、金額にいたしますと約二千六百万円ほどの増額ということになります。

 先ほど申し上げました減額の要因とこれら増額の要因を合わせますと、冒頭に申し上げましたように約三千万円ほどの減額になっている、こういう状況でございます。

須藤委員 減額の理由が業務の効率化と、省けるところは省いて、必要なところには予算措置をされているということで、安心をしました。

 後でまた触れたいと思うんですが、この筑波技術短期大学に関しましては、私は実は予算措置はもっとつけていいのではないかというふうに実感をしております。

 現地に行って施設を拝見して、そして大学の運営の仕方あるいは整備状況というものを見させていただきました。ほかの大学に比べて、教員といいますか教授陣といいますか、スタッフも含めて、学生数に対する比率も大変多くて、そういう意味ではかなり手厚いといいますか、充実をした状況にはなっております。しかし、それは、視覚障害者あるいは聴覚障害者が大学で高等教育を受ける場合に、これはここまで必要なんだというものを施設の整備等を見ても私は実感をいたしまして、その意味では、現時点である予算措置が果たして適正なのかどうかということに関しまして、私はできることならもっとつけてもいいのかなという気はしております。

 単純に言ってしまいますと、例えば今の視覚障害者の方の施設と聴覚障害者用の施設が、校舎が別になっているわけですね。非常に離れております。バスで何分か移動するというような状況です。こういう高等教育機関でその教育の成果を上げようということであれば、当然、施設が一体化されているということが本来であれば望ましいわけですよね。

 当初、この大学を建てる経緯からして難しい問題があったのかもしれませんけれども、予算措置ができるというのであれば、今回のような四年制大学に移行する際に、新たに施設といいますか大学を統合された形でつくってもよかったのではないか。恐らくその方がさまざまな点でメリットが出てくるのではないかというようなことも感じました。

 そういうことについて予算措置をしていくという考え方については、どういうようなお考えをお持ちであるか、お聞きをしたいと思います。

石川政府参考人 須藤委員には月曜日に筑波技術短期大学をしっかりと御視察いただきまして、本当にありがとうございました。私もその場に随行させていただきましたけれども、確かにおっしゃるように、視覚障害の方々のキャンパスと聴覚障害の方々のキャンパスが離れていたりとか、今後とも効率化あるいはその連携を図っていくような、あるいは工夫をしていかなければいけないような、そういった余地はまだまだあろうかと思っております。

 当面、今回筑波技術大学という形で設置をするに際しましては、現在の人的な陣容あるいは予算といったようなことを前提にしまして、それを効率的に活用するということで対応する、進めていきたいというような考え方でございますけれども、新たな形でまた学生さんが入ってくるわけでございます。そういった学生さん方の状況、そういった新しい形での教育研究の姿といったようなものも十分に見きわめまして、これに伴ってどうしても必要なもの、あるいは措置した方がいいと思われるような事柄が出てくる場合には、それに応じて私どももその支援についてまた考えていきたい、このように考えております。

須藤委員 今のことについて大臣はどうお考えか、お伺いしたいと思います。

中山国務大臣 障害を有する学生につきましては、教育課程の履修とかあるいは学生生活全般にわたりまして特別な配慮を行う必要があるわけでございまして、そういう意味では、文部科学省もこれまできめ細かい支援をしてきた、このように考えておるわけでございます。

 今後、そういった方々を取り巻く環境、また期待されるものがいろいろと高度化してくるという中におきまして、必要とする措置をとっていきたい、このように考えておるところでございます。

須藤委員 では、続いて質問いたしますけれども、この四年制の大学移行に伴う影響について、影響といいますかさまざまな反応、対応があると思うんですが、その中で、大学受験の競争率についてお伺いをしたいと思うんです。

 全国各地からこの技術短大に入学をしたいと思う方がたくさんいらっしゃるわけですね。先ほど申し上げたように、盲・聾学校を卒業してからこの短大に来られる方と、それからいわゆる普通高校といいますか、一般の高校を出てこちらに来られる方もいらっしゃるわけです。そういった数としては、例えば平成十六年度は入学者定員が九十名に対して百九十八名の志願者数があります。この百九十八名という数字が、これは平成十六年度で約二倍強なんですが、果たして大きいか小さいかというふうな考え方をすると、例えば全国の大学の競争率が四倍、五倍とかという数値があるとすると、それと比べてみると競争率が低いということになろうかと思います。

 しかし、ここに入ってこられる方々のことを総合的に考えると、私は、この倍率というものは決して低い倍率ではない。しかし、この倍率がある以上、九十名からあふれてしまった方々は当然ここに入学できなくなる。どうするかというと、いわゆるその他大学に入る、入るといってもこれは非常に大変な、難関な試験になるわけであって、そういうことを克服して大学に入るということになります。

 高等教育機関で定員が決まっている中で、志願者が多い。当然のことながら、そこでは定員に至ったところで線を引くということは考えられることなんですけれども、この大学の持つ意味であるとか意義づけ、そういったことも含めて考えると、この競争率に対して定員が九十名であるということ、この競争率ということに関して、文科の方ではどのように考えておられるか、伺いたいと思います。

石川政府参考人 ただいま、志願者の状況ですとか競争率というお話がございました。大体今、筑波技術短期大学については、二倍程度の志願者、競争率になっておるわけでございます。

 これをもう少し拡大してはどうか、あるいは拡大すべきではないかというような意見あるいは考えも当然出てこようかと思います。二倍という数字をどうとるかということにもよろうかと思いますが、先ほど先生がおっしゃったように、この二倍はかなり実の、中身の濃い二倍だというふうに視察をした際の大学側の説明でもあったと私は記憶をしております。

 そういった意味で、この枠をこれからふやすということにつきましては、ここで障害者に対して大変きめ細かい配慮のされた教育環境、そしてそういった教育が行われているというようなことどもも考え合わせますと、できるだけ確実な教育成果が得られるという形でやはり大学を運営していく必要があろうかと思っておりまして、そういった観点から、現在の規模というのは適正な規模として設定をされている、このように考えているものでございます。

須藤委員 この辺が私は、非常に難しいといいますか、今後、政策的にも大学の運営としてもどう対応していくかということの一つの大きな課題であろうというふうに思っております。

 例えば、全国の盲学校卒業者、平成十六年度で卒業者総数は三百二名となっております。その中で、大学等進学した方が百三十一名です。百三十一名以外の百七十一名は就職その他ということになります。つまり、六割ぐらいの方々は大学等高等教育部門へ進まないという数字です。そして、聾学校の場合は、平成十六年度で五百四名が卒業者の総数、うち、大学進学が二百三十七、そして就職等が二百六十七名ということですから、これも六割強が就職等に回るということの数値です。そうすると、この技術短期大学は定員が九十名ですから、かなりの方がやはり大学に進みたいし、進もうと思って実際にいろいろな大学を受けるわけですけれども、それ以上に多くの方々は就職の方に回ってしまう。

 これはかなり厳しい現実がありまして、お話によるところとしますと、聴覚障害の場合は、症状というものが年数を経ても、例えば大学に入ってもそう変わってこないようですけれども、視覚障害の場合は、例えば四年間の大学に進んでいる間にもかなり症状が悪化したりしてしまって、そのまま卒業ができなかったり、あるいは一生懸命身につけたさまざまなものが生かされないままになってしまうというようなこともあるそうです。

 ですから、高校を卒業した時点で本当に大学に行って高等教育を受けたいと思いながらも、生きるということがやはり一番先に来て、すぐに就職の道を選ばなければならない。その意味では、私たち健常者にとってみれば想像もつかない大変さが私はあるだろう。

 そういったときに、学ぶということに関して、生涯学習というものはありますけれども、高等教育機関の中で、しかも日本のこの筑波の技術短期大学は、私の見たところ相当に設備も整っているし、世界的に見ても立派な大学であろうと思います。そして、唯一日本にはここにしかない大学であるということを考えますと、多くの行きたいと思っている方々が行けるような教育環境整備というものを政策的に考えていくべきではないかというように私は思います。

 当初、この技術短期大学が設置をされるときにも、東といいますか、一つではなくて大阪、関西の方にももう一つつくろうではないかという話があったそうです。しかし、予算の関係上一つしかできない、しかもその一つに関してもどこまで設備の充実を図るかということも非常に難しい、そういう状況であったということをお伺いしまして、そういう昔の大学を設置したときの状況と今日では、かなり考え方もそして環境も変わってきていると私は思います。

 この競争率にあらわれていますように、二倍という数値が決して低いものではなくて、日本全国入りたいと思っている方がたくさんいらっしゃるということを考えますと、私は、今された答弁でそのとおりかな、仕方ないかなというよりも、やはりその対策というものを文科省でも考えていった方がいいだろう。大学の方としても、そういう意味では前向きに学長さんも考えているというようなニュアンスを私は受け取りましたけれども、大臣、いかがでしょうか。

中山国務大臣 須藤委員がお話しのように、二倍という競争率はほかの大学の競争率とは比較はできないと思うんですね。ほかのところに行けない、ここしかないんだというふうな面もやはりあるんだろう、このように思うわけでございます。

 しかし、一方で、障害者に対する教育につきましては、すべての国立大学におきまして施設整備面も含めまして教育上の配慮などさまざまな支援体制をとりまして、障害者の高等教育を受ける機会は拡大しているという面も多々あるのかなと思うわけでございます。

 また、今局長が答えましたけれども、障害者を対象とした学校というのは、やはり設備とかそんなものを含めて、非常にきめ細かい教育体制を整えることが必要であり、また、個々の学生に応じた柔軟な組織編制とかあるいは専門的な教育体制が必要になるということもあるわけでございまして、これは、そういった学生のいろいろな要望等も当然聞いていかなければいかぬわけでございますが、まずは、今後のこの筑波技術大学としての実績とか成果を見きわめながら、そしてまた一方で、社会的な要請等も踏まえて検討していくべきものではないかな、このように考えておるところでございます。

須藤委員 私は、できれば政策的な考え方として、現状の推移のままに将来こうしよう、ああしようとか、できたらというよりも、やはり視覚障害者あるいは聴覚障害者の方々が高等教育を受けるということに関して、日本が、あるいは教育の現場がどうとらえていくか、どうするのだという観点からぜひ考えていただきたい、このように思います。

 続いて、質問を移りますけれども、この技術大学は、先ほどお話ししましたように、新しい学部・学科ができるわけですけれども、いわゆる視覚障害に関しては、盲学校でいわゆる高校生としての勉強をした後に、皆さん御存じのようにあんまとかマッサージとか、あるいははり、きゅう、そういったものを学ぶための専攻科を三年間勉強するわけですね。その三年間の勉強をした後に国家試験を受けて、資格が通れば社会で就業するという形になるんですが、この大学にもそういったことが当然置かれると思います。

 そこで、高等学校、盲学校の専攻科を経た人たちが大学に編入をする、大学ですから、今回四年制になって、一般教養課程的なものが終わった、そして専門のはり、きゅう、あんま、マッサージ等の専門教育を受けた高校生が、いわゆる専科ですが、この大学に編入をするというようなことが、先日のお話だと現状ではないということなんですが、そういうことが今後できるか、あるいはそういうことを考えられるのかどうか、考えているのか、この辺についてお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 大学への編入学を認めるためには、その者が修了した教育課程が当該課程に係る基準に照らしまして、学校教育法の体系上、高等教育の一部に相当する水準を有すると認められることが必要であります。現在、盲学校専攻科につきましては、その教育課程に係る基準が存在しておりませんので、その水準が不明であることなどから、大学への編入学は認められていない、今御指摘のとおりでございます。

 このため、大学への編入学が認められるためには、まず、盲学校を含めて初等中等教育機関における専攻科の基準をどう考えるか等について、今後、検討していく必要がある、このように考えているわけでございます。

 仮にこの盲学校専攻科について基準が設けられた場合には、同専攻科における教育の内容が大学教育に相当すると認められるべきかどうか、また大学への編入学が認められるべきかどうかについては、これは中央教育審議会の審議を経て検討してまいりたいと考えております。

須藤委員 ぜひこの点に関しては前向きにやっていただきたいと思います。全国にある盲・聾学校の生徒の皆さんにとっても、そういう方向になってくれれば、これは大変うれしい限りで、勉学の意欲はさらに生きる力にも当然なりますし、その意味で、整備をどんどん図っていただきたい、このように思います。

 筑波技術大学の基本理念として、視聴覚障害者の社会的自立、参画、貢献の促進を目標に、障害に適応し、率先して社会に貢献できる専門職業人を養成するため、個々の個性を生かして、社会の変化に対応できる能力を身につけさせるとともに、新しい社会づくりに貢献できる素養を育成することとしている。これは、大学が負っている使命ではありますけれども、その使命、理念を達成するためにも、そこにつながっている高等学校、盲・聾高等学校のこういった教育環境整備、あるいは資格の問題も含めて、やはり一体的に考える必要があると私は思います。今大臣が言われましたように、それを中教審に諮ってということであれば、力強くそれを推進していただきたい、このように思います。

 続いて、もう一点、質問いたします。

 この視覚障害に関しましては、今ありました専攻科を経て、あんまであるとか、はり、きゅうとかマッサージとかそういう仕事に携わるんですけれども、現在、無資格者との競合、これはどういうことかといいますと、そういう国家資格あるいは民間資格によって、資格を取って就業につくということがあります。しかし、そういう資格がなくてもできるような仕事もありまして、そういった部分で、視覚障害者の方々の就業の場というものがかなり今影響を受けているという現実があるそうです。

 つまり、高校を出る、あるいは今度大学もそうですが、出て、資格を取って生きるすべを身につけるわけですね。そして、社会に参画をしていく。しかし、その社会の場というものが、やはり障害を負っている方にとっては、私たちが考える以上に、生きることについては大変なその場において、無資格者における競合という問題が生じているということがあります。

 さらにもう一点、病院に勤務をしてマッサージをされる方もいらっしゃいます。病院勤務のマッサージ師としての行為というものに対して、現在、保険点数というものが保険診療の場合課されるわけですけれども、それが例えばマッサージをする場合に、一般の健常者としてのマッサージをする方と障害者としてマッサージをする、これは実は同じなんですが、こういったものに関して、その保険点数が果たして適切なのかどうかということ。

 それからもう一点、自分の家でマッサージ、はり、きゅう等、鍼灸を自営業でやっている方がたくさんいらっしゃいます。自営業として業を立たせるということは、これは私たちでも大変なことですが、視覚障害者の方々にとってはなおさら大変、そして、これは現実問題なんですけれども、なかなか外へ行くということができない場合、自分の家を改造して、そこを就業の場とするということが行われます。そういった場合に、在宅支援の一環としてこういうはり、きゅう、マッサージ師開業者の方々に対する公的な助成制度というものは考えられないものかどうか。

 この三点についてお考えをお聞きしたいと思います。

岡島政府参考人 まず、無資格者の関係につきましてお答え申し上げます。

 あんま、マッサージ、指圧、はりまたはきゅう、いわゆるあはきを業とする場合につきましては、あはき法に基づきまして、それぞれの免許を受けなければならないこととなっております。一方で、あはきと柔道整復以外の医業類似行為につきましては、あはき法第十二条で禁止されておりますが、ここで禁止されていますのは、人の健康に害を及ぼすおそれのある行為に限定されております。

 現在、私どもの担当課に寄せられました情報などを通じまして、無資格者が業として行っている疑いのある事例が少なからずあることを承知しているところでございます。こうしたあはき法で禁止されている行為が行われる場合には、各都道府県により衛生規制の観点から指導が行われ、また、警察による捜査、取り締まりの対象ともなっているところでございます。

 厚生労働省といたしましても、無資格者の疑い事例が多く存在することを踏まえまして、各都道府県に対しまして、医業類似行為に対する取り扱い等の通知の発出あるいは全国医政関係主管課長会議を通じまして、無資格者の取り締まり等につきまして周知徹底を図っているところでございまして、引き続きそのように対応してまいりたいと考えております。

須藤委員 この筑波技術短期大学、四年制ということで、単に大学の年限を変えるということではなくて、今回、この大学の場合については、社会的に有する意義が余りにも大きいと私は思います。その意味で、ここに携わる方々、あるいは教育環境というものをぜひ私はもっとすばらしくなるように、そして期待を寄せられる方が盲聾関係者でたくさんいらっしゃいます。その方たちの期待にこたえられるように進めてくださることをお願いして、時間がほとんどありませんが、もう一点別の、政策研究大学院大学についてお伺いしたいと思います。

 こちらは、時間がありませんから、経緯について、大学院大学の設置の経緯とそれから所在地変更の経緯ということはちょっと省きたいと思います。一点だけ、留学生の受け入れについて、今どういう状況にあるのか、これをお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 政策研究大学院大学というのは、政策研究の推進及び政策形成能力を備えた専門的指導者の養成を目的としているものでございます。

 このため、受け入れ学生二百四十二人は、国内外の中央省庁、地方自治体、政府関係機関の中堅職員を主な対象としておりまして、このうちの約六割、百四十一人は、東南アジアを中心とする外国人留学生、主に政府関係機関の職員となっているわけでございます。

 平成十二年度に学生受け入れを開始して以来、五百九十二名の修士の修了生を輩出しておりまして、このうち外国人留学生は三百七十三名を占めております。途上国や市場経済移行国の中核的人材の養成の観点から、アジア開発銀行、国際通貨基金、世界銀行等の国際機関との連携プログラムを取り入れて、実践的かつ学際的な分析方法を身につけ、帰国後は各国の政府機関等の幹部職員として活躍をしておりまして、国際的な知的貢献の面においても成果を上げているということでございます。

須藤委員 アジアからの留学生が大変多いと、私も現場の視察へ行ってきまして、資料をいただきました。その中で、台湾からの留学生受け入れが数値上ゼロなんですね。その理由がどこにあるかわからないし、実際に来ていないのかもしれませんけれども、ぜひ、アジア全域という意味では、各国からの留学生を受け入れて、そして、すばらしい大学院大学としての研究を進められるように要望いたしまして、質問を終わります。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 国立大学が法人化されてちょうど一年です。国立大学がどうなっているのかという点で、幾つかの点に絞って質問をさせていただきます。

 国立大学法人法審議のときには、衆参で大変熱心な、かつ真剣な審議が行われました。そして、衆議院では十項目、参議院では二十三項目に及ぶ附帯決議もつけられたわけでございます。しかし、その幾つかはもう既に破られているんですね。

 まず最初に、授業料の問題でお聞きします。

 この問題では、法人法審議の際に、当時の河村建夫副大臣がこのように述べておられました、デフレ経済のさなか、むしろ抑制ぎみに考えていかなきゃなりませんと。また、遠山大臣も、法人化によって授業料が高くなったり利用しにくくなったりということは絶対避けなくてはいけないと思っていると。これは二〇〇三年六月十日の参議院でございます。ところが、法人化一年もたたないうちに授業料標準額の引き上げを行ったわけであります。これはもう明白に答弁違反と言わなければなりません。

 さらに、ことしに入って、二十八日に中教審の答申が出されて、「我が国の高等教育の将来像」ですけれども、そこではこのように述べられています。現在では、国公私立を問わず学生納付金がかなり高額化しており、これ以上の家計負担となれば、個人の受益との見合いで高等教育を受ける機会を断念する場合が生じる、実質的に学習機会が保障されないおそれがあると。

 まず、今回の、つまり十七年度予算での授業料値上げというのは、この高等教育を受ける機会を奪うものになっているのではないか、それが一つ。そして、中教審答申にもこれは反しているし、反しているというか、中教審答申をも踏みにじっているものと言わなければなりませんが、この点での御見解を伺います。

中山国務大臣 前にも石井議員にはお答えしたと思うんですけれども、国立大学の授業料標準額につきましては、経済状況にかかわらず学生に進学機会を提供するという役割を踏まえまして、適正な水準を維持する必要がある、このように考えているわけでございます。従来から教育の機会均等という理念を踏まえながら、これはいつも言うことでございますが、大学教育を受ける者と受けない者との公平の観点とか、あるいは私立大学の授業料の水準など、社会経済情勢等を総合的に勘案して授業料改定は行ってきた、このように考えているところでございます。

 今回の授業料標準額の改定につきましても、従来同様、私立大学の授業料の水準等を勘案したものでございまして、そういう意味では、適正な水準の範囲内にあるもの、このように考えておるわけでございます。

 したがいまして、この学生納付金につきましては、経済状況によって学生の進学機会を奪うことにならないように、適正な金額とするように努めるという国会の附帯決議の趣旨に反するものでもない、このように考えております。

 また、二年ごとに改定というルールがあるわけではございません。そしてまた、私としては、これはやはりできるだけ上げないようにするという努力は常にしていくべきだ、こう思うわけでございまして、適正な水準の維持ということもありますけれども、そういった観点も踏まえて授業料標準額については考えていくべきだ、私はこのように考えております。

石井(郁)委員 附帯決議では、この件につきまして、「学生納付金については、経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならないよう、適正な金額とするよう努めること。」とありました。私も紹介しましたけれども、中教審の答申で、もう既に高額化している、これ以上の負担となれば、もう教育を受ける機会を断念する場合さえ生じるんだ、現状はここに来ている。そんな中での今回の値上げになっているわけで、私は、今大臣の御答弁ですけれども、今回の値上げも適正な範囲内だと言われたのには大変がっかりしております。文科大臣のそういう認識では、私は大変困ると思うんですね。

 法人になりまして、効率化係数とか病院改善係数というものを掛けられるようになりました。それで、大学の運営費交付金を減らすという中で、授業料標準額を上げていく、各大学もそれに倣って上げなくてはならない状況になっているということではないかと思うんですね。

 それで、もう一度確認しますけれども、大臣の御答弁にありましたけれども、今回の授業料値上げというのは、これは財務省筋からの話としてもあるんですけれども、今年度が授業料値上げの年だ、私学との格差がある、だから行うと。

 もう一度確認させてください。それは間違いありませんか。

中山国務大臣 ことしが値上げの年だとか、そういう何か決まったものではない、このように考えておるところでございますけれども、先ほど言いました私学との関係とか、あるいは社会経済情勢等を勘案して値上げということになったのではないか、このように考えております。

石井(郁)委員 でも、先ほど大臣はちょっと、授業料は二年に一度上げてきたので、そういう年に当たったかなということを何かおっしゃったように思うんですが。だから、大学法人の受けとめも、私たちもそういうふうに来たと思うんですが、本当に授業料と入学料と隔年で上げてきたんですよ、今まで。それで、これだけの今高額な授業料になっている。だって、授業料が五十三万五千八百円ですからね。だれでも聞いた人は驚くわけですね。

 そういう考え方でいくと、来年度が入学料と検定料の値上げの年になるということになって、再来年度はまた授業料の値上げの年になるということになるわけで、大臣、こういうことはお認めにならないわけですね、先ほどちょっとありましたが。

中山国務大臣 そういうことがルール化している、何か安易にそういうものなんだという前提で物事は考えるべきじゃないと私は考えております。

石井(郁)委員 それを信じたいと思いますけれども、ぜひ来年、入学料、検定料を上げないということや、それから、先ほど紹介しました国会での答弁とか附帯決議にのっとって、今後授業料の値上げは行わないということを大臣としてしっかり御答弁いただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

中山国務大臣 先のことまではわかりませんが、やはり気持ちとしては、何か年々ごとに上げていくとかそういうものではない、そういう先入観にとらわれないで私はやっていくべきだ、このように考えております。

石井(郁)委員 中教審の立場も、本当にこれ以上の値上げは大変な事態を引き起こすということですから、ぜひ大臣にはそういう立場で頑張っていただきたいというふうに思います。

 次の問題ですけれども、各大学法人への運営費交付金と教育研究条件なんですね。この点も、附帯決議の中でこのようにありました。

 運営費交付金の算定に当たっては、公正かつ透明性のある基準に従って行うとともに、法人化前の公費投入額を十分確保し、必要な運営費交付金を措置するよう努めること、これは衆議院でございます。法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額の確保に努めること、これは参議院でございます。

 この附帯決議は守られているというふうにお考えでしょうか。

石川政府参考人 お答えを申し上げます。

 国立大学法人の運営費交付金についてでございますけれども、今回は、平成十七年度の国立大学法人の運営費交付金につきましては、対前年度九十八億円減の一兆二千三百十七億円を計上しておるところでございます。

 その具体的な内容等について少し申し上げさせていただきますと、交付金算定ルールに基づく事業の効率化ですとか病院の経営改善などの経営努力の反映によりまして、トータルで百八十九億円ほどの減額要因があるところでございまして、それに対しまして、一方、特別教育研究費の増額を四十五億円ほど図りますなど、全体で九十一億円の増額を措置しているところでございまして、これが差し引きで九十八億円の減ということでございますが、この九十八億円の減の数字の中には、病院の経営改善分の九十二億円分、その減が含まれております。

 既に御案内と存じますけれども、病院の経営改善分につきましては、一般診療経費は病院の収入で賄うという考え方のもとに、運営費交付金の措置を、赤字の場合に措置をした場合に、収入の二%ずつ経営改善を図るということでルール化されているものでございまして、これがそのとおりに行われるというような考え方でいきますると、二%の運営費交付金が減になる分につきましては、それは自己収入に振りかわるといいますか、自己収入で措置をするというようなことになるわけでございまして、事業規模そのものが減るということではないわけでございます。

 この部分を除外して考えますと、運営費交付金につきましては、実質的に前年度とほぼ同額の水準を維持しているというふうに考えているところでございます。

石井(郁)委員 何かいろいろ説明いただきましたが、最初のところでは九十八億円前年度よりマイナスだといいながら、いろいろ説明したらそう違わないという話なんですが、ちょっとこれは、そのことを私は確かめるのはやめたいと思います。減っていることは間違いないんですよ。最初におっしゃったとおりですよ。

 それで、係数を掛けて計算しているところを今説明されたんですけれども、今それをちょっと置くことにしまして、もう一点伺いたいのは、では、対前年度比で、例えば今減額している大学はどのぐらいありますか。

石川政府参考人 各大学におきます十七年度の運営費交付金の状況でございますけれども、ただいまお尋ねがございました点について見てみますると、八十九大学のうち、増となった大学が二十九大学でございます。それから、減となった大学が六十大学、こういう状況でございます。

石井(郁)委員 では、明らかに減額しているじゃないですか。大阪大学の場合は二十一億円減額だということを聞いています。

 つまり、これも附帯決議では、法人化前の公費投入額は十分確保するということだったわけですが、この附帯決議、ここでももうほごにされていますよ。それは、運営費交付金とか病院の改善係数だとか、係数を掛けたことによってそういうことを生じた。係数を掛けるのも、法案通過後、一方的に行われてきたことじゃありませんか。本当にこのしわ寄せというのはさまざまな形で今あらわれているんですね。私は、今少しそこを具体的にお示ししたいと思います。

 これは島根大学から伺ったんです。生物資源科学部という学科がありまして、十六年度の研究費の平均というのは四十万六千円だった。十五年度が六十九万四千円ですから、約二十九万が削減になっている。ある教員は、大学院生三人、学部生四人を抱えて、四十万六千円では研究費はとても賄い切れないということなんですね。

 本当にこの点で附帯決議は、「従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保する」、従来以上に研究教育が進むようにということになっているのに、これほど大幅な減額になっているわけです。一年で二十九万円ですよ。驚くような数字だと思うんですね。

 その教員はこのようにも言っています。その方は基盤部分の研究をしていますから、競争政策的配分、これはよく文科省は言いますよね、競争政策的配分には含まれていないと。今そういうところのひずみが非常に大きいわけです。大学は外部資金でやってくれ、こういうふうに言いますけれども、本来の研究テーマから外れたら、それも当たってこない。だって、みんなが外部資金のテーマに手を挙げるわけにいかないわけですから。民間企業からの研究をそれぞれ請け負ってやっている。しかし、これも地方では、資金の調達相手や金額に限界があります。そのうち、外部資金調達も頭打ちになるのではという不安があります。

 ですから、文科省は、競争的配分とか政策的配分、こうやって競争させますけれども、基礎的な部分、基盤的な部分というのは、では大学では本当にどんどんと少なくなっていっていいのか、やらなくてもいいのか、あるいは外部資金を集められない研究室というのはもう仕方がないのか、その辺を本当にどう考えておられるんでしょうか。このままいきますと、地方大学の存続そのものがもう先が見えてくるような状況になっている、そう言わざるを得ないんですが、いかがですか。これは、ぜひ大臣の御見解を伺いたいと思います。

中山国務大臣 国立大学法人への移行に当たりましては、従来の教育研究基盤公費を含みます教育研究経費については、法人化以前と実質的に同水準の額を確保したところでございます。

 平成十七年度予算におきましても、このような考えのもとに、特別教育研究経費の増額四十五億円を図るなど、前年度と同水準の運営費交付金を措置して、地方大学も含めて、教育研究の活性化に努めておるところでございます。

 したがいまして、年間を通じて見ますと、教員個人やあるいは組織単位のものも含みまして、全体としての研究費は従来の水準が維持されておるもの、このように考えておりまして、御指摘のように地方大学において研究費が大幅に減少しているという実態があるとは承知しておりません。

石井(郁)委員 私は、やはり大臣にぜひその現実を見ていただきたいと思うんですね。実質的に前年度並みだとおっしゃいますが、先ほど数字を出されたでしょう。八十九大学のうち六十大学は減額ですと。減額です。これは教育研究にやはり直に来ているんじゃないんですか。大学の中では、どうやって研究費を捻出するかという点では、本当に涙ぐましい努力が始まっているんですね。

 この方は、環境ホルモン調査のためにメダカを飼育していると。その水槽が買えない、それで百円均一の店で購入した容器を使用する。また、アフリカツメガエルの飼育用にはプラスチック製の衣装ケースを使用する。それで、私、きょうこの写真をいただいてまいりました。家庭で使う衣装ケースです、カエルの飼育用水槽、こういうものが実験室に並んでいる状態です。こちら側は、百円均一でビーカーになるようなものをこうやって、買って、並べて、実験をしている。百円で買うのは悪くありませんけれども、本当にこういう努力をしなければいけないというところに追い込まれているということをやはりもっと見ないといけないと思うんですよ。それは本当に深刻だと思いますよ。

 私は、大学のこういう実験室は、法人化に当たりましては私も各大学を歩きましたし、どれほど狭く暗いところで、しかも本当に貧弱な実験器具で、実験器具そのものはいいものはあったとしても、用具自身は大変なものを使いながらやっているということも見てきました。法人化前から大学はそういう状態だったわけです。

 しかし、法人化後に、これはもっと深刻になるんじゃないかというのが私たちの懸念であり、国会の質疑でも苦慮したところです。だから附帯決議でも、そうなりません、ならないようにしますということが衆参でつけられたんじゃありませんか。審議の中でのそういう答弁だって、言ってあったと思います。ところが、ふたをあけて見ると、もう運営費交付金は下がる一方ですと。大体、効率化係数というのを掛けたんですから、この先これはどんどん下がっていくんですよ。よくなることはありません。

 こういうやり方で本当に教育や研究が維持されると思いますか。運営費交付金をやはり引き上げなければやっていけない、そういう認識に立つべきだと思いますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 十七年度の予算の状況においても答弁したとおりでございますが、この国立大学法人の運営費交付金につきましては、何といいましても、国民の理解を得ながら引き続き国費を投入していくためには、やはり目に見える形での一定の効率化、要するに経営努力というのが必要である、このように考えているわけでございまして、事業の効率化とか、あるいは病院の経営改善などの経営努力によって一定の減額を図る一方で、各大学の取り組みに応じた特別教育研究経費等については増額を図られる仕組みとなっているわけでございます。

 したがいまして、各大学の運営費交付金につきましては、効率化対象額の規模とか、あるいは特別教育研究経費の措置状況等、あるいは退職手当の所要額等によりまして、当然これは増減が生ずることになるわけでございます。

 文部科学省といたしましては、国立大学法人全体としては実質的に前年と同程度の運営費交付金を確保できたものと考えておりまして、これが直ちに教育研究水準の低下につながるとは考えていないところでございます。

石井(郁)委員 私は一地方大学の例を申し上げましたが、現実に研究費が減っている。では、この先生がうそをついているわけじゃないでしょう。全国を本当に調べてみるとこういう事例がいっぱい出てくると思いますよ。実際、現実はそういうところに来ているわけです。

 それでは、病院の経営努力ということにも触れられましたので、私、病院の問題について見たいと思うんですね。附属大学病院についてですけれども、法人化後、ここでも大変深刻な問題が出てきております。

 まず、看護師の超過勤務の実態というのがあるんですね。これは、全国大学高専教職員組合の病院協議会というところがありまして、昨年九月に調査をされたようです。そこにたくさんの声が載せられまして、少し紹介しますけれども、こういうのがありました。

 新任で入られた方が、八時間パートとして雇われているのに十二時間以上働いている、超勤もほとんどついていない、これは北大です。サービス残業が多過ぎる、給与明細を見て驚く、自分が申請した残業時間を勝手に操作されて少ない時間での金額であった、これは許されるだろうか、これは東大です。超過勤務が一日一時間しかつかないと言われた、しかし、もちろんそれ以上かかってやっている、三重大学。超勤時間を入力しても変更されてサービス残業となっている、早く帰るように言われるが、実際仕事が残るので帰れない、これは熊本大学です。このような事例がたくさん並んでいますけれども、これは労基法違反に当たるのではありませんか。御答弁ください。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 国立大学法人、法人化をいたしましたので、職員の勤務につきましては、各国立大学法人が労働基準法等の関係法令の規定にのっとってみずから適切に取り組まねばならない、こういう仕組みになっていることは御案内のとおりでございまして、したがって、問題があれば、労働基準監督署の調査の方も来ているということも承知はしているわけでございます。

 いずれにせよ、そこは、まず国立大学法人みずからが適正な管理運営に努めていかなければならない、かように思っておりますので、その御努力をお願い申し上げたいと思っております。

 ただ、文部科学省といたしましては、国立大学法人に対しまして、労働基準法等の法令の遵守や、あるいは超過勤務の縮減につきまして、従来から会議等の場を通じて要請してきているところでございまして、今後とも、適切に対応するように要請をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。

石井(郁)委員 文科省はそのように指導しているというのはわかりますが、今私が挙げたような実態は、明白に労基法違反ですね。それをちょっと御答弁ください。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 要は、労働基準法の規定が適用されるわけでございますが、したがって、使用者が労働者に時間外労働をさせた場合に割り増し賃金を支払わねばならないということがあるわけでございますので、それに照らしての判断になろうかと思います。

 それが本当に違反しているかどうかは、これは個々具体のものに照らしての判断ということになろうかと思っております。

石井(郁)委員 大学病院の職員の勤務実態というのは、本当に、ますますというか、いろいろ深刻になってきておりまして、これは御紹介したアンケートなんですけれども、三千九百五十三枚の回収ですから、それだけ全国的に寄せられたものです。

 その平均で見ますと、看護師ですけれども、休憩時間、つまり一時間以内、これは法令違反ですよね。四十五分以内しかとれないという人が六八%だというんですね。年休は、例えばゼロ、一日もとれていないという方が七%もいらっしゃる。五日だという方は四四%だ。これは本当に驚くような実態ですよ。それから夜勤ですけれども、看護師の夜勤回数が八回以上という方が六九%です。十回以上の方が二四%もいらっしゃる。

 だから、大学病院の中で、これは本当に法令違反の状態が今非常に広がっているということですよね。これは非常に悪化した状態ですよ。共通して、勤務時間内には仕事が終わらない、休めないということですから、やはり背景には人員不足というのはあるということです。

 これもちょっと例として申し上げますけれども、九州大学の病院ですけれども、十五年度に看護師の方百十四名がやめられた、十六年度には六十六名がやめられた、それで辞職願を出した看護師の方が百二十人もいらっしゃる、だからもう体がもたない。みんな使命感に燃えて仕事に取り組んでいるわけですけれども、やめざるを得ない状況になっているということですね。

 だから、このままいくと、本当に対患者さんの問題とか病院自身の、そうすると病院は経営改善と文科省は盛んに言われますけれども、経営改善する、まず人がこのような状況だったら、どうにもならないんじゃありませんか。私は、今、これがなぜ生まれたかと言えば、やはり法人化で、経営改善係数で、予算を削減して、結局それは人の分にしわ寄せが来ているということになっていると思うんですね。まず、こういう大学病院の実態はどういうように把握していらっしゃいますか。

石川政府参考人 ただいま大学病院におきますさまざまな職員の実態についてのお話がございました。また、これに経営改善係数等々、あるいは予算の例えば逼迫のようなことが大きく影響しているのではないかというような御懸念も示されたと考えております。

 先ほども申し上げましたけれども、大学病院におきます診療につきましては、予算上は一般診療に係る経費は診療の収入で賄うというようなことで、もしそれが賄えない場合には、運営費交付金を措置するということになっております。

 また、そういったところには経営改善の係数がかかるというようなことでございますけれども、そういうような状況がありますけれども、やはりそれぞれの大学は、そういった環境の中で、増収の努力あるいは健全な経営のための努力というのをそれなりの形でしておるところでございまして、少なくとも、経営改善係数が課せられるから、あるいは予算が逼迫しているから、予想されないようなさまざまな勤務形態がふえているというようなことではないんであろうと。特に経営改善係数につきましても、これは平成十七年度からの話でございますし、そういったことではないと考えております。

 いずれにしても、病院の勤務というのは、概して申し上げて楽な仕事ではないと私どもも思っておりますし、さまざまな勤務形態の工夫等によりまして、効率的な勤務、効率的な職場環境ができるような工夫が今後とも必要になってくるであろう、これはそのように考えております。

石井(郁)委員 局長、病院の仕事は楽なものではないなんということで済ませてはいけませんよ。八回以上夜勤が六九%もある、これはほっておくんですか。私はずっと以前に質問したことがありましたけれども、八回以内にするというのが政府の、これはもう当然やるべきことじゃありませんか。これはどんどん広がっていくわけですよ。

 それから、増収、増収ということを結局押しつけているというか、そこをさせているわけで、その結果、では、もう一つ例を申し上げましょう。だから、業務そのものが大変忙しくなってくるんですよ、つまり増収ということになりますから。

 では、どういうことが起こったかといいますと、これも九大病院ですけれども、昨年度から、一泊数万円の差額ベッドを置く。今までは一、二室でよかったんだけれども、これを一気に十一室にふやしたそうです。十一です。それぞれ増収になるでしょう、それは。では、その結果、受け持ち看護師はどうかといえば、日中でも夜でも一名だ、重症者がいれば日中に一名が増員される。この病室に入る患者は、診療科とか医師、容態もさまざまだ、重症者がいると看護師はその患者にかかり切りになってしまうということになるわけですね。

 そのほか、日帰り手術とか入院日数の短縮とともに空きベッドの稼働率も上がった。だから、ベッドの数はそのままでも患者が倍にふえた気がする、これはもう容易に想像がつくと思うんですね。だから、病院の増収とか経営改善ということがこんな形で今行われていると思いますよ。私は、今一つの病院しか挙げていません。ぜひ、本当に全部つぶさに見ていただきたい。

 これでは、本当に大学病院としての使命が果たせるのか。そして、何よりもそこで働いている人たちが、本当にいい医療のために献身していらっしゃると思いますけれども、そういうことが果たせるのかということがありますので、私は、経営改善係数のあり方そのものを見直すべきだし、やはり運営交付金として病院にもきちんと措置すべきですよ。そうしなければ、本当にこれは大変な事態になりますよ。大臣、いかがでしょうか。

中山国務大臣 いろいろ言われましたけれども、大学病院といえども、やはり行政改革という大きな網はかぶっているんだろうと思うわけでございまして、大学病院についてもこれは努力はしてもらいたい。業務改善あるいは経営努力によりまして、やはり国民の目に見える形で、ああ頑張っているなということがなければいけない、私はそう思うわけでございまして、文部科学省としては、そういった努力状況を見ながら、今御指摘のありましたようなしっかりとした支えはしていく、そういう姿勢はとり続けていきたい、このように考えておるところでございます。

石井(郁)委員 私は、努力をするのは当然のことだと思います。しかし、法令違反では困るでしょう、法令違反では。それは放置できないでしょう。(中山国務大臣「法令違反じゃない」と呼ぶ)

 では、申し上げます。全国の大学で労働基準監督署が残業代の未払い是正などを行っていることが報道されています。これは中国地方のある大学ですけれども、一日三時間を超える時間外労働が行われている。各職員の始業、終業時刻の確認や記録等々ですけれども、時間外労働や深夜労働に対する割り増し料金の支払い、昨年四月一日までさかのぼって時間数を調べて払うこと、一時間の休憩を与えることなどを労働基準監督署から改善指導されているんですね。改善指導が出ています。

 また、九州地方のある大学でも、昨年度三回も労働基準監督署の立入調査があった。主な内容は、各部署で時間外労働の上限が決められており、それを超える時間はサービス残業となるという問題、そのため職員は時間外労働を過少申告しているんだ。いずれも勤務時間管理者が認知しているというものです。七月には是正勧告書まで出されている。しかし、十二月になっても事態は変わっていない。大学側は監督署に呼ばれて、結果いかんによっては、大学の自主的な調査では済まないことはあると言われたと報道されているんですね。

 これはどうですか。こうした実情を把握しているんでしょうか。もし、把握しているんでしたら、労基署がいつ入って、どこの大学にどのような是正勧告が出されたのか、報告していただきたいと思います。

玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど既にお答え申し上げましたけれども、労働基準法の適用があるわけでございまして、そして、みずから適切に対応すべきことである、これが基本でございます。

 そして、その場合にどういう形になるか、これが本当に法令違反かどうかは、まさに個々具体の実情によることであるし、また、先ほどその御説明の中で、問題があれば労働基準監督署の調査もあるというふうにお答えを申し上げたわけでございまして、今ちょっと手元にあるものだけを申し上げますと、島根大学で十六年にそういう問題がありました。九州大学でもございます。広島大学にもございました。佐賀、それから滋賀医科大学というところを、私どもはそういうものがあるということは承知しているわけでございます。

 そこで、これも従来からお答えを申し上げておりますけれども、これは法人化をいたしまして大変柔軟な取り組みができるように、労基法の適用がございますけれども、一方、その管理運営については、大変柔軟な仕組みも可能になってきているわけでございます。

 したがいまして、私どもとしては、労働時間の管理につきましては、柔軟かつ機動的な組織編制あるいは人員配置、それから多様な勤務形態の活用や、また同時に教職員の意識改革、こういうものを通じた運営の効率化等によって、各国立大学みずからが適切に取り組んでいただきたい、かように思っておりますし、また、そういう観点からの会議等を通じての要請をしているわけでございます。

石井(郁)委員 私は、文科省がそういう姿勢だというのは何とも情けないというふうに思うんですね、率直に。

 つまり、残業代の未払いですよ。だれが好きこのんで、そんなやりますか。きちんと払いたいし、仕事だって時間内にぴったり終わりたいしするじゃありませんか。しかし、終わらない業務とかがあるからそういうことが起こるし、起こったときには残業代は払わなければいけないわけでしょう。それを、その法人の責任だ、法人がやっている話だと知らぬ顔はできないでしょう。

 しかも、なぜそういうことが起こるかといえば、やはり予算削減の中でそんなことが起こるんじゃないですか。としたら、それは国にはね返る問題じゃないですか。あなた方、そういう点では全然痛みも感じなければ、平然としておられるというのは、私は本当に驚く話なんですね。まあ内心はどうか知りませんけれども。

 さて、それではもう一点、これはもっと重大な問題なんですけれども、定員削減のことがあるんですね。

 定員削減というのは、やはり大学にとって、国家公務員定員削減がずっと押し寄せてきて、そして本当に大変な問題でした。そういう中で、この法人化になるという問題があったわけですね。当時の高等教育局長工藤智規氏ですけれども、こんなふうに述べていらっしゃったんですよ。

 国立大学が行政機関である以上、行政改革の対象に必ずなる、定員削減は免れない。一切聖域を設けないという行革の中で今まで九次にわたって定員が削減されてきたから、それが嫌だというなら行政機関から出ていくしかない。今のままでいっても予算は絞られる。定員は減らされる。それが法人化すれば、少なくとも定員削減という問題は片づくし、大学の自主性、自律性も拡大する。

 これはもう散々私たちは聞かされました。定員削減から外されるんだ、そして大学の自主性、自律性が拡大するんだ、法人化はいいものだ、こういう話を言ってきたわけでしょう。今述べられたのは、論座という雑誌に掲載されたインタビューなんですね。

 ところが、今どうですか。これも本当に私驚くんですが、国家公務員の定削の対象から外されたというのに、予算の上からして定員削減せざるを得ない状況だということを、私どもは聞いております。各大学が定員削減計画を立てているというんですよ。これは文科省は把握していますか。

石川政府参考人 各大学におきます定員削減の御質問でございますけれども、ただいま石井委員からお話ございましたように、法人化以前は、定員というような概念、あるいは公務員でございましたから、そういった形で整理をされておりましたけれども、法人化後の国立大学法人の教職員につきましては、行政機関の職員の定員に関する法律の適用対象外ということでございますので、国の定員という概念はなくなっております。このため、各国立大学法人におきましては、それぞれの中期目標、中期計画に掲げる事業遂行に応じて適切な人員管理を行っていく、こういった仕組みになるわけでございます。

 すなわち、各大学におきます内部組織ですとか、あるいは職員の配置等につきましては、教育研究分野に応じまして柔軟かつ機動的に編制することが可能となっている、こういうことでございまして、教育研究上の必要性ですとか、あるいは業務運営の効率化というような観点もあろうかと思います。こういったさまざまな観点から、各大学の判断によって対応がなされることになる、こういう形になっているわけでございます。

 なお、職員数の状況につきましては、年度計画あるいは年度報告等によって私どもとしても把握をすることが可能になるわけでございますけれども、平成十六年の五月一日現在の職員数につきましては、年度報告等が六月末に提出されることになっておりますので、現時点では、そういった職員数の状況については把握できていないところでございます。

石井(郁)委員 私は今の御答弁の中でも、ちょっとこれは重大だなと思うことはあるんですね。もう定員という概念はとらないんだという話ですが、それも私は改めて、これからきちんと対応しなければいけないなと思ったところなんですが、そこはちょっとおきます。

 実際、各大学が何かシミュレーションを出しているでしょう。もう御存じでしょう。これから先、何年か後に人件費がどうなるのかと。つまり、このままの予算の範囲で、予算は少なくなっていくわけだから、人件費はどうなるか、これはやはり削らざるを得ないというシミュレーションを出しているんですよ。

 私のところに寄せられたものでは、大阪のある大学ですけれども、十六年度で七十三億四千七百万円の人件費だ。それはちょっと省略して、ずっと減らしていきまして、これが平成二十一年度には六十九億八千九百万円と、ずっと減らされていく。三億数千万ぐらいは減額を予想しなければいけない。そういうことを見積もりますと、教員の数でいうと、平成十六年度は三百十三人でしたけれども、毎年十人前後ずっと減らしていかなければいけないということで、平成二十一年度になりますと一六%近くが削減される見通しになっている。それから、職員も同様にやはり減らされていく。平成十六年度は百六十四人いましたけれども、二十一年度には百五十四人と、十名ぐらいを削減しなければいけない。合計六十一名の削減だ。

 だから、大学は、今一例ですけれども、本当に人を減らすということで考えざるを得なくなっているんですよ。こんなことは、法人化になってこういう事態に直面するということは、恐らくどこも考えなかったんじゃないですか。だって、定削から外される、定員は守られるんだというふうに考えてきたわけですから。この点でも、文科省、やはり重大な、国会審議とまた附帯決議等々含めて、答弁違反じゃありませんか。

石川政府参考人 ただいま個別の大学の状況といいましょうか、御計画のような御紹介もございました。

 先ほども職員数、これを置きかえれば人件費ということになるかもしれません。これの基本的な考え方については申し上げましたけれども、運営費交付金は、もともと使途を予定しない渡し切りの経費として設定をされておりまして、人件費、物件費の区別なく、各大学の判断で使用できるわけでございます。

 そういった意味で、人件費について今後どのような割合でいこうか、あるいはどういうふうに維持しようか、そういったことも含めて、それぞれ各大学の御判断であるわけでございます。その意味からいたしますと、先生御紹介になったそういった大学につきましては、それぞれの大学で人件費についての何らかの計画を検討されているというような例であろうかと思います。

 いずれにいたしましても、そういった意味で、人件費あるいは職員数のあり方について、一律のルールあるいは計画でなければいけないということではないところでございまして、人件費を含めまして、運営費交付金の確保につきましては、私どももこれからも努力をしていきたい、このように考えているところでございます。

石井(郁)委員 この点でいいますと、私は本当に、今の局長の答弁では到底納得できないわけですが、国会審議を全く踏み破るものだというふうに思うんですね。

 これは先ほど御紹介した工藤局長と私とのやりとりだったんですけれども、私はあの法案審議のときにも、既に各大学がグランドデザインを策定しているんじゃないか、その中ではもう定員削減などを予定しているところもある、だから法人化されたら運営費交付金が毎年一〇%ずつ下がるんですよ、そういう文科省の指導があるので、もうそういう計画を立てているという話を耳にしたんですね。それで、私この委員会で出しました。文科省はそういうことをしているんですか、運営費交付金を削減するとか、あるいは人員を削減するというのは文科省の方針ですかとお尋ねしましたよ。そのときに、工藤局長は何とおっしゃったか。

 法人化いたしますと、いわゆる定員法の範囲外になりますので、定員削減計画の対象外となるのは当然の前提でございます。

  ただ、実際に運営費交付金がどういう形で確保されるか、これからさらに財政当局とも詰めながらシミュレーションしていかなきゃいけないわけでございまして、それを毎年十人ずつ減らすとかそういうことが決まっているわけでも何でもございませんので、いろいろな、どこかでシミュレーションしている中でそういうことの検討がされているのかなと今私どももちょっと唖然としたところでございます

唖然としたとおっしゃっているんです。これは私、ちゃんと議事録ですから。

 いずれにしても、国立大学の充実のために引き続き、あるいはこれまで以上に財政の充実が図れますように、私ども制度設計に万全を期してまいりたい

ここまでお述べになったんですよ。

 ところが、今違うじゃないですか、あなたの答弁でも。人員の管理はそれぞれの大学でやることだから、文科省はそれはもう関知しませんよ、勝手におやりください、減ったってそれはしようがないんです、言ってみればそういう答弁じゃないですか。本当にこれは、私の方が唖然としますね。これまで以上に財政の充実が図れるとはっきりおっしゃっていたんですよ。ところが、今現実には全然逆の方向へ行っているじゃないですか。いかがですか。

石川政府参考人 各大学におきます職員数あるいは人件費の取り扱い、それから将来の見通し、考え方については、各大学における御判断ということになりますということを先ほど私申し上げたところでございまして、減ったって構わないというようなことを国として、あるいは文部科学省として申し上げたことではございません。

 そういった意味で、これは、それぞれの大学が、その大学として要する人員数、人件費の規模をどう考えるかということによってくるわけでございます。そして、それを支えるといいましょうか、その人件費、物件費を合わせた運営費交付金につきましては、先ほども御答弁申し上げましたけれども、実質的に、全体として見れば、前年度と同額、同水準を確保していると私ども考えておりますし、そういった前提のもとに、これからも運営費交付金についてはしっかり確保していきたい、こういう気持ちを述べているつもりでございます。

石井(郁)委員 私、一大学の、大阪のと申しましたけれども、先ほど数字を紹介しましたけれども、ほかにもまだ数字をいただいているんですよ。もう時間がありませんから紹介しませんけれども。どこも本当に削減計画になっているんですよ。

 ぜひ、この定員の削減計画というのと、では、各大学がどんなふうに人員管理をしているのか、それを調べてください。把握してください。そして、国会にそれを報告すべきだと思いますが、もう時間ですから簡単に。いかがですか。

石川政府参考人 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、それぞれの職員数、各大学におきます職員数といったようなものにつきましては、六月末までに提出されることになっております年度報告等でその全容を把握できると考えております。そういった数字等も見ながら、その点についても考えさせていただきたいと思っております。

石井(郁)委員 私は、国会審議等を御紹介しましたけれども、法人化に当たって、要するに定員削減からは外れるんですよ、免れるんです、だから法人化したらいいんですと、専ら文科省、そう言ってきたじゃないですか。

 そうしたら、今度あなた方は、定員という概念が違います、こう言って、今、まあ言ってみれば考えを変えているわけです。当初文科省は、定員削減ありませんと言っていた、外れるんですと。しかし、現実にはふたをあけたら、もう予算の縛りで各大学はそういう人件費を削減せざるを得なくなっている。これは本当にいろいろなところに今ひずみも出ていますね。ポストを減らさなければいけないことになっているのもそうですし、残業代も払えなくなっているそうだし、非常勤講師をたくさん雇えなくなっているという問題もありますし、だから、人件費を削減するところにずっと向いているじゃないですか。

 私は、今回こういう経過を見ますと、やはり国会審議というのが本当に無視されているし、世間ではこういうやり方をまさにだまし討ちというんじゃないですか。文科省挙げて大学と国民をまさにだましてきた、私はそう言わなければいけないと思うんですね。あるいは二枚舌を使ってきましたよ。だって、言っていたことと全然違うんだから。国会の附帯決議にも、審議にも堂々と答弁しながら、全く違ったことをやっている。こういうことでいいのかなと。

 文科省といえば、それこそ子供の教育を管轄する省ですから、そして、今大臣もいろいろ道徳心とかそういうことも言われると思うんですけれども……(発言する者あり)そうでしょう。これは本当に文科省、うそをついたんですよ、この審議に当たって。いや、審議ではそういう答弁をしていたかもしれないけれども、結果としてこういううそをついていますよ。だから、大学と国民にうそをついたということを、私は、やはりきちんと責任をとってもらいたい。どういう責任になるのかあれですけれども、そういう問題だ。非常にこれは重大な問題だ。国会の審議が何だったのかということを問われるわけですよ、私たち国会にいる者としても。

 という点で、これは本当に今容易ならざる事態だと。一年後でこうなんですから、これだけの今の状態が生まれているんですから。これから先のことを考えますと、改めて制度設計見直しをするとか、それから、きちんとした運営費交付金を措置するとか、この点での文科省の姿勢が今本当に問われているというふうに思います。明確な御答弁をいただきたいと思います。

中山国務大臣 この文教委員会の審議がどういう状況だったか、私はつまびらかには存じませんが、国立法人化によりまして定員削減から免れるということ、これは要するに、国として一律の定削の中には入らない、その外に出るんだということだろうと思うんですね。そういう意味では外れるということだろうと思うんですけれども、この法人化によりまして、それこそ学長以下、病院経営をどうするか、私も幾つかの病院長ともいろいろ話をしておりますが、本当に頑張っておられますよ。売り上げをどうして伸ばすのか、あるいは業務の改善、運営改善をどうするのか真剣に考える中で、それでは少し人間が多いようだから少し減らそうかとか、そういったこともあるんじゃないかと思うわけでございます。

 まさに、これからは国立法人というのは自主性、自律性を持って運営していくんだということでございまして、我々文部科学省としては、この運営費交付金というのをしっかり支えて、そういった国立法人の努力というものを支えていくということではないか、こう思うわけでございます。

石井(郁)委員 本当に自律性、自主性を重んじて大学が運営されていく、それは私はそのとおりだと思います。しかし、予算がなければ運営はできません。そこははっきりしているわけでして、それを国としてどう確保するのか、きちんと支援をするのかということだと思うんですね。今のままでは本当に厳しい、危ない、こう言わなければならないと思います。

 さて、私、もう時間ですので、最後に一点ですけれども、老朽校舎の改修問題なんですね。地震の心配というのがありますけれども、法人化に当たってのもう一点の心配は、大学の校舎が大変老朽化している、これは本当に将来大丈夫かという問題があったと思います。

 これも、平成十三年三月の閣議決定で科学技術基本計画がありまして、ここでは特別に、「国は、施設の老朽化・狭隘化の改善を最重要の課題として位置付け、老朽化・狭隘化問題の解消に向けて特段の予算措置を講ずる。」というふうにあったと思うんです。

 それで、実際、五年間ということで、緊急に整備すべき施設を盛り込んだ施設整備計画というのを策定されたと思いますが、もうそれの達成年度に近づいていると思いますけれども、この計画と達成率、それぞれどうなっているか、お知らせください。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 国立大学等施設緊急整備五カ年計画の進捗についてのお尋ねでございますけれども、全体としての整備目標が五百九十七万平米でございました。そのうち、平成十七年、これは最終年度でございますが、これまでで四百二十一万平米ということで、七一%の達成、そういう状況になっているところでございます。

石井(郁)委員 七一%も達成しているというか、そうかなというふうにも思うんですけれども、残されている問題の解消というのには一体どのぐらいかかるというふうに見積もっていらっしゃるんですか。

大島政府参考人 お答えを申し上げます。

 今残った数値につきましては、一番多いものが、老朽化した施設の改善整備、これでございますが、これについて約百七十九万平米残っているという状況であります。これに要する費用としては、おおよそ二千億円、これが見込まれるところでございます。

石井(郁)委員 最後になりますけれども、しかし個別に大学を見ますと、なかなか改修予算がつかないということが言われていまして、雨漏りやひび割れが起きて、段差もできている。つまり、昭和五十五年以前の建物が残っているでしょう。改修が済んでいないという状況があるんですね。そういうところは本当に深刻だというふうに思います。

 これも、ある大学では、老朽校舎の解消予算、昨年八月の概算で二千百億円を要求したんだけれども、本予算では七十六億三千八百万円しか認められていない、要求額の三・六%ですと。つまり、法人化するとこれほど国は冷たいのかというようなことも聞いています。今一部には、もう老朽解消をあきらめるような声さえ出ているということも聞いているんですね。

 だから、先ほど私は人の問題を言いましたけれども、そういう校舎、大事な研究施設、そういう部分でも、法人化後で本当にどうなっていくんだろうかという声が相当強く上がっています。こういう点でも、法人化したらもう大学任せだ、どうも先ほどの答弁、そうなっているじゃないですか。どれもこれも、それぞれの法人で、大学でおやりになることですというようなことで、やはり大学任せになっていますよ。

 私は、何も国が口を出せということではなくて、国がやるべきことは、きちんと運営ができるように、研究教育ができるように、そういうやはり財政的な支援をきちんとすることだというふうに思いますので、その点では今本当に重大な局面だということを申し上げまして、きょうの質問を終わりにします。ありがとうございました。

斉藤委員長 次回は、来る二十二日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十一分散会


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