衆議院

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第15号 平成17年7月20日(水曜日)

会議録本文へ
平成十七年七月二十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      岸田 文雄君    佐藤  錬君

      下村 博文君    菅原 一秀君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      武田 良太君    西村 明宏君

      葉梨 康弘君    馳   浩君

      保利 耕輔君    山際大志郎君

      青木  愛君    岩國 哲人君

      大谷 信盛君    岡本 充功君

      加藤 尚彦君    城井  崇君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      武山百合子君    達増 拓也君

      中野  譲君    長島 昭久君

      肥田美代子君    松本 大輔君

      笠  浩史君    池坊 保子君

      石井 郁子君    高橋千鶴子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 和田 康敬君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久保 信保君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (文化庁次長)      加茂川幸夫君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十日

 辞任         補欠選任

  近藤 基彦君     菅原 一秀君

  古屋 圭司君     武田 良太君

  青木  愛君     岡本 充功君

  高井 美穂君     大谷 信盛君

  笠  浩史君     岩國 哲人君

  石井 郁子君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     近藤 基彦君

  武田 良太君     古屋 圭司君

  岩國 哲人君     中野  譲君

  大谷 信盛君     高井 美穂君

  岡本 充功君     青木  愛君

  高橋千鶴子君     石井 郁子君

同日

 辞任         補欠選任

  中野  譲君     笠  浩史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官和田康敬君、総務省自治行政局選挙部長久保信保君、文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、大臣官房文教施設企画部長大島寛君、生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君、スポーツ・青少年局長素川富司君及び文化庁次長加茂川幸夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤錬君。

佐藤(錬)委員 おはようございます。自民党の佐藤錬です。先輩議員の御配慮のおかげで、けさはトップバッターで六十分、よろしくお願いします。

 本日は日教組の定期大会が開かれているようであります。そこで、まず日教組の山梨県版であります山梨県教組問題を取り上げます。

 昨年十一月、山梨県教職員組合による組織的な教職員からの選挙資金集めが報道されて以来、およそ八カ月が過ぎました。この間、我が自由民主党は、参議院の文教科学委員会で有村治子議員、衆議院の文部科学委員会で、御列席の中野清議員、さきの予算委員会において西野あきら議員と宮路和明議員、そして決算行政監視委員会では私も本件問題を取り上げて議論をしてまいりました。

 かなりの月日が経過したので、ここで改めて主な問題点を要約して整理すると、一、教員の政治活動、選挙活動及び山梨県教組の組織的関与の実態。二、山梨県教組は、組織的、継続的な政治活動、選挙活動を行うことによって、県教育行政における政治的影響力を強固なものにしようとする意図の問題。三、教員の資金カンパはどのように行われていたのか、政治団体山梨県民主教育政治連盟、略して県政連と山梨県教組、そして輿石議員関連の政治団体の関係。カンパした金はどのように処理されたのか、政治資金規正法の問題であります。四、山梨県教組と県教委との間に癒着はなかったのか。組合活動に熱心な教員は人事において優遇されているとの声もあります。五、以上の問題に対して調査は迅速、的確に行われてきたと言えるのか。六、所管官庁として文科省は十分にその責任を果たしてきたと言えるのか。以上、これらの問題があります。

 問いの最初であります。文科省はこれまで山梨県教委の調査結果報告に対し疑義を持っていると言ってまいりましたが、県教委との見解の相違はその後も一向に改まっていません。これまで八カ月にわたり県教委とはどのような話し合いをしてきたのか、具体的に、いつだれとどこでどのような話をしてきたのか、まずは今日までの経緯をお尋ねしたい。そして、文科省は具体的にどう動いているのか、文科省の権限と責任をいかにとるのか、お尋ねをいたします。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 山梨県教組による選挙資金集め問題につきましては、文部科学省としては、報道のありました当初より再三にわたりまして、山梨県教育委員会に対し、事実関係をしっかりと確認の上、必要な措置をとるよう厳しく指導してきたところでございます。これまでの県教委の調査では事実関係の解明が必ずしも十分ではなく、また文書訓告等の措置についても、違法な行為に対して県教委が処分を行うのであれば、懲戒処分も含めもっと厳しいものであるべきではないかと考えているところでございます。

 具体的な対応でございますけれども、文部科学省としては、報道があって以降、県教育委員会の教育委員長、教育長、教育次長等の幹部を九回ほど文部省に呼びまして指導を行っているところでございます。

 具体的な指導の内容のポイントを三点ほどに絞って申し上げますと、第一が、事実確認について、その服務を監督すべき市町村教育委員会を通じ、すべての校長から各校長本人及び各教頭の状況について事情を聴取し、その全容を明らかにする必要があるということでございます。

 第二点は、資金カンパへの関与等の違法性の判断につきまして、これらの活動は教育公務員特例法による政治的行為の制限に違反するものと認められることから、違法性に関する認識を改める必要があるのではないかということでございます。

 第三点でございますが、山梨県教育委員会が行いました文書訓告等の措置についてでございますけれども、校長、教頭という管理職によってこれらの違法な行為が行われたことを考慮すれば、懲戒処分に相当すべきものではないか、また、仮に文書訓告等の措置が相当と認められたとしても、これらの措置は市町村教育委員会が行うべきものであって、このため、処分の程度やその手続の見直しを行う必要があるのではないか、この三点につきまして繰り返し指導しているところでございます。

 文部科学省といたしましては、今後とも粘り強く、山梨県教育委員会に対しまして本件政治的活動に対して厳正な対応を行うよう重ねて指導してまいりたいと思っております。

佐藤(錬)委員 そこで、文科省は、実態を正確に把握するために、みずから現地に乗り込んで調査、指導をするつもりはないのか。県教委の調査では現場教員の声が反映されていないのではないかという疑念があります。県教委の調査は、ほとんどの問題について事実確認ができなかったとしてこの問題を終わりにしようとしています。

 しかし、ここには重大なうそがあります。我が党の調査によれば、県教組の指示による政治的行為、選挙運動への疑問を感じたある教員が県教委へ実情を訴えたという事実があり、県教委はこうした事実について知らぬふりをしているからであります。このような県教委の不公正な対応にかんがみれば、県教委に公正な調査を期待することはできません。このように、県教委に公正な調査が期待できない状況であることを考えると、この際、文科省が一歩踏み込んで、現地に乗り込み、独自で真実の実態の解明に努めるべきではないのか、いかがでありましょうか。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の事案につきましては、私どもは、まずは当事者である山梨県教育委員会が襟を正し、事実関係を明らかにした上で毅然とした対応をとることが教育行政に対する信頼を確保するためにも重要であると考えております。このため、これまで再三にわたり県の教育委員会に対して指導を重ねてきたところでございます。

 県教委の昨年十二月の発表では、文書訓告となった一部の校長、教頭に係る事実についてのみ明らかにしているのにとどまっておりまして、事実関係の全体像はいまだ十分明らかにしているとは言いがたいと考えており、引き続き指導を行っているところでございます。

 文部科学省といたしましては、法令に違反するような事態が生じた場合には、繰り返しになりますけれども、まず学校の設置管理に責任を負う各教育委員会が、襟を正し、これに厳正に対処する必要があると考えておりまして、県教委に対して、事実確認のため再調査を行って、全容を明らかにするよう繰り返し指導しているところでございます。

 ただ、指導を繰り返しても適切な対応がなされない場合、国として、さらにどのような措置が可能か、今後、私どもとしても十分検討してまいりたいというふうに思っております。

佐藤(錬)委員 本件に関して、昨年末処分を受けた教頭が、新年度の人事において校長に昇任していることが明らかとなっています。また、県教組の出身者が相変わらず教育委員会の役職に就任しているという報道や、教職員の服務規律を審査する委員会のメンバーに県教組出身者が多く含まれているという報道もなされています。さらに、県教委は文科省が求めた処分のやり直しには応じない方針を確認したという報道も四月六日になされています。

 なぜ処分を受けた者を昇任させるのか、服務規律の審査委員に県教組出身者が多く含まれているということは事実かなど、こうした事柄について文科省は県教委に問い合わせ、実態の把握と責任ある指導をなされたのか、お尋ねをいたします。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 三点お尋ねがあったかと存じます。

 まず、第一点でございますが、処分を受けた教頭の校長への昇任の件でございます。

 御指摘のございました、処分を受けた教頭の校長への昇任の件につきまして、山梨県教育委員会から報告を求めたわけでございますけれども、昨年十二月に文書訓告等を受けた教頭十一名のうち厳重注意を受けた教頭会の代表者一名が、平成十七年四月に校長に昇任したものと承知をいたしております。

 山梨県教育委員会からの報告によりますと、当該教頭、校長に昇任をした教頭は、本件に係る資金集めが行われました平成十五年度当時には直接政治的活動にはかかわっていなかった模様でございますけれども、県教委が平成十六年十二月に文書訓告等を行った際に教頭会の代表者であったということから、その役職に着目して、厳重注意の措置を受けたというふうに聞いております。

 二点目の教員の服務規律を審査する委員会の構成の問題でございます。

 御指摘の山梨県の教職員の服務規律を審査する委員会としては、職員分限懲戒諮問委員会というものがあると承知をいたしております。これは、山梨県の教職員の分限、懲戒の事案に関しまして審議をするために置かれている組織でございます。これは八名の委員により構成をされております。委員八名中、一名が校長会の推薦、三名が教職員組合の推薦する者でございまして、委員のうち半数は教員により構成をされているというふうに承知をいたしております。

 このような審査会は、他県においても設置をしている例は多く見られるところでございますけれども、通例、教育委員会事務局職員のみで構成をされているところが多いわけでございます。一部の県におきまして、学識経験者等を含めている例もあると承知はいたしておりますが、山梨県のように、教職員組合の推薦などによる教員が構成員の半数を占めている例はほかには見られないところでございます。

 文部科学省としては、既に山梨県教育委員会の教育長に対しまして、御指摘の職員分限懲戒諮問委員会のあり方については不適切である旨を指導しているところでございまして、今後とも引き続き山梨県教育委員会に対して適切に対応するよう指導してまいりたいと考えております。

 長くなって恐縮でございますが、三点目の山梨県教組の幹部の教育委員会幹部への登用の問題でございます。

 山梨県教育委員会の報告によれば、教育委員会の職員のうち教員出身で山梨県教職員組合の幹部経験者については、本庁では、課長では教員ポストが四つあるわけでございますが、そのうちの一人、指導主事では教員ポストが三十七あるわけでございますが、そのうちの一人、管理主事が教員ポスト十のうち二人というふうになっていると承知をいたしております。なお、教育事務所長及び出先機関の長については教員ポスト七つございますが、山梨県教職員組合幹部の経験者はいないというふうに承知をいたしております。

 一般的に、教職員組合の構成員であった者が教育委員会職員となること自体は必ずしも禁止をされているものではないわけでございますが、それが教職員組合と教育委員会との関係について不適切ではないかとの疑惑を招くことがないようにすべきことは当然であるというふうに考えております。

佐藤(錬)委員 去る五月二十日に、山梨県教組の定期大会が開かれたようであります。報道によれば、秋山委員長は、今後も積極的に選挙活動に取り組む姿勢を見せ、政治活動の強化を表明したとされています。また、教員のカンパについても、明らかに違法だったとは認識していないと断言しているようであります。

 このように、昨年来あれだけマスコミや国会で問題にされてきた山梨県教組問題であるにもかかわらず、当事者は全く反省していないどころか、強気に居直っているありさまであります。それというのも、本件に対するしかとしたけじめがついていないからだと感じます。文科省として、山梨県教組委員長の発言をどのように受けとめているのか、また、文科省の責任についてどのように考えているのか、お答えいただきたいと存じます。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 新聞報道でございますけれども、山梨県の教職員組合の委員長が、五月二十日に開催をされました定期大会において、本件政治的活動につきまして、紛らわしい行為ではあったが明らかな違反ではなかったとしつつも、本件行為により各方面、県民に多大な御心配、迷惑をかけたとして陳謝し、さらに、教職員として今後も法令を遵守し、服務規律を守る旨を述べたものと承知をいたしております。

 文部科学省としては、山梨県教育委員会の調査結果を見る限り、今回の資金カンパは、紛らわしい行為ではなく明らかに違法なものである、こう考えておりまして、明らかな違反ではなかったとの山梨県教職員組合委員長の発言は、私どもとしては大変遺憾に存じております。

 なお、山梨県教育委員会においても、教育長から、県内各市町村教育委員会の教育長等に対しまして、教職員の政治的活動などの服務規律の確保になお一層の周知徹底を図るなどの指導を行っていると承知はいたしております。

 いずれにいたしましても、文部科学省としては、本件事案のような違法な政治的活動が今後絶対に行われることがないように、山梨県教育委員会に対して引き続き厳正な対応を行うよう指導してまいりたい、こう考えているところでございます。

佐藤(錬)委員 以上お聞きのように、本件が昨年十一月に報道されて以来、およそ八カ月が経過したにもかかわらず、事態は全く進展していないと言わざるを得ません。山梨県教組問題をいいかげんに処理すると、我が大分県や兵庫県、三重県や北海道などなど、全国の他県の教組も右へ倣えということになってしまいます。

 文科省として、事態打開のために具体的に何かとり得る手段や権限というものはあるのか、それとも、文科省の意向に沿う気のない県教委に対し、ただただ翻意を促すことしかできないのか、今後の文科省の方針を明確にお示しいただきたいと存じます。

中山国務大臣 お答えいたします。

 各都道府県で行われております教育行政につきましては、関係法令の規定にのっとりまして適正に行われるべきことは当然であります。仮にも法令に違反するような事態が生じた場合には、まずは学校の設置管理に責任を負う各教育委員会が襟を正し、これを厳正に対処する必要がある、このように考えております。

 その上で、これらの関係法令の規定に照らして、必要がある場合、国は地方公共団体に対しまして、教育に関する事務の適正な処理を図るため、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十八条等の規定に基づきまして、指導、助言、援助等を行うことができることとされているわけでございます。

 しかし、指導を繰り返しても適切な対応がなされない場合、国として現行法上どのような措置が可能なのか、今後十分に検討してまいりたいと考えております。

佐藤(錬)委員 ところで、山梨県教組問題は大きく分けて二つあります。

 すなわち、教育公務員特例法及び人事院規則一四―七の教員の政治的行為の制限違反の問題と教員の資金カンパの問題であります。特に資金カンパの問題は重大であります。

 現在、この問題は、県政連、いわゆる山梨県民主教育政治連盟の会計責任者等による政治資金収支報告書の虚偽記載という観点から刑事告発され、県警による捜査が行われております。しかし、我々が注目すべきは、教員らによる自由意思ではなく、強制的な資金カンパがどのように行われていたのか、そして、その金はどこへ行ったのか、その実態を解明することであります。

 我が党の調査によれば、教職員のカンパは、外向きには県政連が主体となって行ったことになっているが、実際は教職員の組合会議においてカンパが徴収されたり、県教組の各支部書記長が集めたりするなど、県教組が主体となってカンパを行っていたという情報を得ています。実際、カンパをした教員の中には、どこが主体となって金を集めているかを知らない者が多くいたと言います。なぜ、内向きには組合活動を装い、外向きには県政連の活動と使い分けたのでありましょうか。

 その理由は、第一に、団体献金の禁止を脱法するねらいがあったからではないのか。つまり、幾ら山教組が教職員からカンパを集めても、輿石議員もしくは輿石議員の政治団体に寄附することは規正法上できないので、県政連という政治団体が集めたことにしたのではないのかということであります。県政連ならば、政治団体間の寄附ということで合法的に献金ができるのであります。これを迂回献金と言うのであります。

 第二に、教育現場における政治活動の禁止を脱法するねらいがあったからではないのか。つまり、教職員の地位向上、待遇改善といった組合活動に名をかりて、その延長線上でカンパを集めれば集めやすいと考えたのではないのか。もし、カンパ集めに際し、県政連が主体だということを前面に出せば、人事院規則一四―七第六項第三号、すなわち「政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費又はその他の金品を求め若しくは受領し又はなんらの方法をもつてするを問わずこれらの行為に関与すること。」に抵触することになるので使い分けを行ったのではないのかということであります。

 さらに問題なのは、集めた金がどこに行ったのかという点であります。県教育委員会も調査結果報告の中で認めているとおり、県政連の所在地と県教組の所在地が電話番号も含めて同一であるにもかかわらず、当該所在地に県政連の実態がないのであります。入手した情報によれば、三百五十人ぐらいの教員からカンパの金を預かってそれを届けに行ったという教員によれば、県教組本部の会計担当の女性に渡したという話であります。一体、カンパされた金はどこの金庫に入ったのか。この問題は文科省としても調査を行う必要があるのではないのか。

 また、教員によってカンパされた金の流れに関する団体、例えば県教組、県政連、輿石議員関連の政治団体などをめぐっては、その役員がそれぞれ重複しているケースが多く、その実態について関心を払わずにはいられないという面もあるのではないか。文科省として、この資金カンパの問題をしっかり調査する考えはないのか、いかがでありましょうか。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま先生からもお話がございましたように、公立学校の教員については、法令によりまして、「政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費又はその他の金品を求め若しくは受領し又はなんらの方法をもつてするを問わずこれらの行為に関与すること。」が禁じられているわけでございます。したがって、公立学校の教員が選挙資金の資金カンパについて、援助、勧誘、仲介、あっせん等の関与をすることは法令に違反するものでございまして、集めた資金カンパを取りまとめて政治団体に届けるような行為もこれに当たるものと考えられるわけでございます。

 今回の事案につきましては、まず、当事者である山梨県教委が事実関係を明らかにした上で毅然とした対応をとることが教育行政に対する信頼を確保するためにも重要であると考え、文部科学省としては、これまで県教育委員会に対して指導を重ねてきたものでございます。

 御指摘の資金カンパに関する山梨県教育委員会による調査については、校長会関係者などから事情を聴取してはいるわけでございますけれども、市町村教育委員会を通じて、すべての校長から各校長本人及び各教頭の状況について事情を聞くことはしていないものでございます。このため、文部科学省としては、山梨県教育委員会において、教員の服務を監督すべき市町村教育委員会を通じて、すべての校長から各校長本人及び各教頭の状況について事情を聴取し、政治団体への資金カンパについてその全容をまずは明らかにすることが重要と考えて、これまで指導を行っているところでございます。

 さらに、その結果を踏まえまして、政治団体からの資金カンパの要請の伝達及びこれを届ける行為について、先ほど申し上げましたように、これが明らかに教育公務員特例法により禁止されている政治的活動に該当するものであって、それが違法であることについて、山梨県教育委員会として、従前の違法性に関する認識を十分改めた上で、資金カンパにかかわった者について、懲戒処分に相当する可能性も含めて、改めて適切な処分を行うことが必要であると考えております。

 文部科学省といたしましては、御指摘の資金カンパについて、山梨県教育委員会においてさらに十分な調査を行い、その全容を明らかにして、法令にのっとり毅然とした対応をとるよう引き続き指導を行ってまいりたいと考えております。

佐藤(錬)委員 ここで、総務省にお尋ねをいたします。

 本年二月七日、教育関係者によって、山梨県民主教育政治連盟、県政連の会計責任者が政治資金規正法違反、虚偽記載の容疑で東京地検及び山梨県警察本部に告発されている。また、三月一日には、県民の有志でつくる「山梨の教育を糺す有志の会」によって、同じく県警本部に告発されている。こうした動きの中で、二月十五日、県政連は告発事実に関する部分についての修正申告を行っております。すなわち、平成十五年度の県政連の寄附収入について、告発状が、定期的なカンパと臨時カンパを合わせて少なくとも一億円であるのに、個人からの寄附がゼロであった旨の記載がなされていたとしていることを受けて、個人の寄附金をゼロから一千二十一万円に修正したのであります。さらに、十六年度の収支報告書において、個人からの寄附を五千百四十二万四千百六十円と修正記載したのであります。

 そこで、お尋ねするが、修正申告に当たっては、選管に対して修正理由が添付されているはずだが、どのような理由だったのか。また、その理由が正当なものか否かについて選管は判断することができるか否かについて、総務省にお尋ねしたい。

久保政府参考人 山梨県民主教育政治連盟の平成十五年分の収支報告書につきまして山梨県選挙管理委員会に確認をいたしましたところ、平成十七年二月十五日に収支報告書修正願が提出され、訂正が行われたとの回答を得ております。

 当該修正願におきましては、修正理由として、平成十五年十二月にお願いした寄附について、同年同月中には入金を確認できなかったので、すべて平成十六年の収入であると認識していたが、今回改めて調査したところ、平成十五年十二月中に一部届けられて保管されていたことが確認されたので、該当金額を平成十五年の寄附収入として修正願を提出する旨の記載があるというふうに聞いております。

 そこで、政治資金規正法第三十一条に基づきまして、総務省と都道府県選挙管理委員会に与えられております権限、これは政治団体から提出をされた届け出書類あるいは収支報告書等の形式的な不備などに関します形式審査権に限られております。したがいまして、政治団体におきまして、収支報告書の内容が事実に反することが判明し、政治団体から訂正の申し出があった場合におきましては、総務省または都道府県選挙管理委員会は、形式審査を行った上で、申し出のあった収支報告書の訂正を認める取り扱いとしております。

佐藤(錬)委員 そこで、告発事実は政治資金収支報告書の虚偽記載だったわけですが、一般的には、これは先ほど申し上げた県政連の修正申告によって一件落着ということになるのであるかどうか、お答えください。

久保政府参考人 一般論として申し上げますと、政治資金規正法の違反につきましては、行為時の行為、これが法的に評価されるべきものでございまして、収支報告書の訂正をしたからといって、過去の事実関係は変わらないものと考えております。

佐藤(錬)委員 そうすると、本件のポイントは、県政連が平成十五年度の政治資金収支報告書を選管に提出した際、提出者が報告書が虚偽であることを知っていたか否かにかかってくることになります。形式的審査権しか有しない選管はそれを知ることができないのだから、犯罪の成否は捜査当局の捜査にかかっているということになります。

 ところで、法務省はこれまで捜査について、法と証拠に基づいて厳正に対処していくと答弁しているが、その答弁以降に、県政連に対するカンパの振り込み先の銀行口座など、振り込み受領書の存在によって明らかになっています。こうした新たな証拠の出現によって、これまで不透明であった県政連の金の流れの捜査も進展していることでありましょう。

 七月十二日の報道によると、山梨県教組の県内九支部ごとに、校長会、教頭会、一般教員、退職教員、教組幹部らを対象とした参考人聴取がかなり進んでいるようであります。徹底した捜査を行い、その実態を解明し、厳正な措置を講じることにより教育の信頼を回復するよう強く求めておきたいと思います。

 既に告発から五カ月以上が経過した今日、本件捜査もそろそろ立件に向けて大詰めを迎えているころだと思われますが、捜査の進捗状況や今後の展開について説明をいただければありがたいと思います。

和田政府参考人 お尋ねの事案でございますけれども、二月七日に山梨県警に対しまして政治資金規正法違反の告発がなされまして、山梨県警におきましてその告発を受けて、現在、捜査を進めておるところでございます。

 ただ、その捜査の具体的な状況につきましては、個別的な事案でございますので、答弁を差し控えさせていただきたい、このように思います。

佐藤(錬)委員 やむを得ませんので、最後に申し上げたいことは、告発人の方々は、直接的には県政連による政治資金収支報告書の虚偽記載を問題として告発しているのでありますが、本当にただしたいと考えていることは、県教委と県教組が一体となった教育行政の癒着とゆがみであり、教職員の違法な政治活動、選挙運動が行われている実態だということであります。

 昭和二十九年、教育公務員特例法の改正に際して、当時、政府は政治的行為の制限違反に対して罰則を科すことを提案していたのであるが、参議院において、教育界の内部、教育行政の手によって矯正すべきであるという趣旨から、罰則が削除され、行政処分のみとしたという経緯があったことは御存じのとおりです。しかし、本件において、教育界の内部、教育行政の手によって矯正することが困難ないしは不可能だということが明らかとなったのであります。

 今後、地方分権が進み、各自治体による教育の独自性が広く認められている中で、教育を受ける子供たちにとって利益となる方向で独自性が発揮されていくものであればいいわけですが、教組と教育委員会がおのれの利益を求めて保身に走り、そしてそれを文科省が厳正に対処できないという事態を我々はこのまま放置していくことはできないと考えます。

 そこで、山梨県のあしき前例が全国的に普及することを阻止するとともに、教育公務員の政治的中立性を担保し、教育公務に対する信頼をしっかりと確保するという見地から、教育公務員特例法を改正し、国家公務員並みの罰則を科すべきであると考えますが、お考えはいかがでありましょうか。

中山国務大臣 今、佐藤議員が御指摘になりましたように、公立学校の教員など教育公務員につきましては、昭和二十九年の教育公務員特例法の改正によりまして、政治的行為の制限は国家公務員の例によるものとされましたけれども、罰則があった政府案は修正されまして、罰則を設けないこととされた経緯があるわけでございます。

 これは、教育界で起こったことはできるだけ教育行政によって是正すべきである、外部の力によって強制するのは好ましくないという理由から、それ以前と同様、罰則規定を設けずに、懲戒処分にとどめるとの趣旨でございました。

 このような経緯も踏まえますと、罰則を適用する改正につきましては、地方公務員制度全体の動向も踏まえて十分に考えていく必要がある、このように思うわけでございます。

 しかし、教育公務員の違法行為につきましては、地方公務員法上の懲戒処分の対象となり得るものでありまして、処分権者であります教育委員会においてはこれに適切に対処する必要があると考えているわけでございまして、先ほど来お話がありますが、やはり教育界に起こったことは教育界できちっと是正すべきであるという考えを教育委員会も持っていただきまして、文部科学省としては、今回の件につきまして、山梨県教育委員会の適正な、厳正な対応を指導してまいりたい、このように考えておるところでございます。

佐藤(錬)委員 教育行政の地方分権の時代をかんがみて、やはりこれは文科省それから総務省、真剣に罰則規定、国家公務員並みということについて御検討を願いたい。我々も真剣にこの点については勉強し、議論していきたいと思っておるところであります。

 さて、るる申し上げてきましたが、ここで中山大臣の日教組に対する御見解を伺っておきたいと思います。

 敗戦直後の一九四七年に結成以来、戦後日本の教育界を支配し、左翼イデオロギーや反日自虐教育を掲げて、日本民族弱体化政策というGHQ支配体制の亡国教育を進めてきた日教組は、戦後六十年を経て、親、子、孫の三代にわたり、その目的とするゆがんだ洗脳教育を完成させようとしております。それは、大別すると、違法勤務と偏向教育であります。

 違法勤務とは、勤務時間中の組合活動、勤務評定の形骸化、公務員法違反の選挙運動と政治活動、校長権限のじゅうりんなど多数あります。その組合の政治力強化はすさまじいものがあります。人事、予算、教育内容への介入などであります。

 偏向教育を特徴づける教育の内容は、反日自虐教育を初め、共産主義、社会主義礼賛教育、ゆとり教育、ジェンダーフリー教育、異常な性教育、反自衛隊、反安保教育などであります。道徳の時間の中での人権学習と称する反日思想教育、中学、高校の歴史教科書は反日自虐教育を実践する道具でありまして、扶桑社の社会科教科書に猛反発しているのであります。ジェンダーフリー教育は、健全な家庭を破壊し、無秩序な社会をつくろうとしておるものであります。

 こういったあらゆる手段を使って、日本国民を分裂、自滅させようとしているように思われてなりません。大臣の御見解はいかがでありましょうか。

中山国務大臣 大変重い質問で、急な質問でございますので、言葉に気をつけながら答弁いたしたい、このように考えております。

 今、佐藤委員がお話しなさったようなことがあったということも事実だろう、このように思うわけでございまして、そのことが今日のさまざまな場面におけるいろいろな問題となって出てきていることもあるのではないか、このように考えているわけでございます。

 私はずっと前から、学校の先生というのはこれからの子供たち、日本を背負って立つ子供たちを教育するという非常に大事な大事な、崇高な使命を担っているんだと考えておりまして、ですから、確かにそれは労働者でもあるかもしれませんが、私はそれ以上に聖職者としての気持ちを忘れないでほしいな、このようにずっと考えてきたわけでございます。

 平成七年でございますか、日教組も運動方針を転換いたしまして、それからは参加、提言、改革ということを掲げまして、かなり現実路線といいますか、今私が申し上げましたように、これからの日本をしょって立つ子供たちを育てていくんだ、そういうふうな考え方が相当出てきているのじゃないかということについては評価しているところでございますが、やはり一部におきましてはまだまだ本当にひどい教育もなされているということを考えるわけでございます。日教組全体ではありませんが、一部に非常に過激な、本当に子供たちのためを考えてやっているのか、そうじゃなくて子供たちをだめにするための教育をしているのじゃないかという教師の一群がいるということは事実でございまして、この辺のところは深く反省していただきたいと考えております。

佐藤(錬)委員 ありがとうございました。

 去る四月の二十六日に、衆議院決算行政監視委員会分科会にて、私は中山文部科学大臣に質問をさせてもらいました。その中で、郷土の福沢諭吉に対する増田宗太郎の国を憂うる志から始めて、戦後還暦を迎えることし、愛国心や宗教心など日本人の魂や気概の支柱になるものを失っている私たち日本国民の危機とは、私たちの心の内なる戦後にあるのではないか。ゆがんだ戦後教育における獅子身中の虫は何だと考えられるかとお伺いをいたしました。

 顧みますと、我々は何としても戦没者各位の英霊の御遺志にこたえていかなければならないと信じます。東アジアの少資源の小さな島国である日本の将来は、教育が決するのであります。人口減少時代に入り、少ない子供をいかに育てるか。人材こそが宝であり、人材育成、すなわち教育こそが勝負であります。

 今日、教育の地方分権が言われ、官から民へという声が大きく叫ばれています。その中で、中山大臣は先日、私の質問に対し、教育というのは非権力行政であるから、現場主義で、権限もできるだけ現場におろし、上からこうしろああしろとは言わない、非権力的に指導、助言、援助などで地方の教育行政に関与していくと答弁をなされました。

 しかしながら、るる申し上げてまいりましたような山梨県教組を初め全国で展開されている現在の状況のままで、本当に義務教育は国が責任を持つということが言えるのでありましょうか。持てないのであれば、郵政民営化ではありませんが、学校教育も民営化、自由化、私学化を進めて、お互いに競わせた方がいい結果が出るのではないか。そして、生徒が教師や学校を選ぶようにするのであります。画一的教育は消えて、個性的私塾が全国に林立し、平成の松下村塾も生まれるかもしれません。税金に依存せず、自力の学校経営が進むでありましょう。

 大臣の御所見を承れればありがたいと存じます。

中山国務大臣 四月の二十六日ですか、委員会での質疑応答を思い出したところでございますが、あのときも、福沢諭吉翁のお言葉を使われまして教育について所見を述べられたわけでございます。私も本質的にはそのとおりだ、こう思っているわけでございます。

 文部科学省も、今、義務教育国庫負担制度の堅持ということを言っていますが、実際の教育はできるだけ現場に任せよう、現場の校長そして教育委員会がそれぞれの地方、地区の特色を生かしながら創意工夫を重ねて、どこの県にも、どこの地区にも負けない、自分たちの子供たちは自分たちで育てるんだ、家庭と学校と地域が一緒になって育てていくんだ、そういう方向でやりたい、このように考えているわけでございます。

 しかし、先ほど来質疑がございましたように、やはりそのためには教育委員会がしっかりしてもらわなければいかぬわけでございまして、その点について今いろいろ御指摘をいただいているということでございますが、先ほど来答弁しておりますように、やはり教育界で起こったことは教育界の中でしっかりと是正し、そして保護者のみならず、地域そして国の期待にこたえていくんだ、そういうしっかりとした自覚を持ってもらいたい、このように思うわけでございます。そして、その上に立って、それに必要なお金というのは、予算というのは国がしっかりと担保していくということが基本であろう、このように考えておるところでございます。

佐藤(錬)委員 おっしゃるとおりでございますが、文部科学省の官僚の皆さんは、やはり紳士というかおとなしいというか、もう少し覇気が欲しい。闘う文部科学省というか、目の色がきらきらと輝いて、常にチャレンジャーのような、挑戦的な、これは教育の危機ですから、そういった姿勢を余り感じません。ですから、どうぞ文科省挙げて、闘う文科省としての覇気を今後我々に見せていただきたいと期待をしております。

 最後に、今大臣がおっしゃいました中央教育審議会で議論されている義務教育費国庫負担制度について申し上げます。

 教育、特に義務教育は国の将来を支える根幹であり、その制度の維持について、国家として最も強い責任が求められるものであります。ただ一方、国庫負担金については、昭和六十年度以来、教材費、旅費から始まって、恩給費、共済費、退職手当などと一般財源化してきた歴史があります。現在は、本体の給与部分にのみ半額を国庫負担しているという状態であります。

 私は、政治家として県議時代から日教組と真っ正面から向かい合ってきましたが、その私が、教育委員会を文科省がきっちりと指導していく一つの手段として、国庫負担金制度を維持すべきであると主張してまいりました。一方で、日教組も教職員の身分保持のために国庫負担金制度を維持すべきであると主張しておりまして、ここは非常に悩ましいところであります。

 そこで、もう一度本質的なことを確認しておきたいのであります。

 今、給与部分についてのみ国庫負担制度を維持することによって、現実問題として、文科省は、どの程度全国の教育委員会をコントロールし、義務教育水準の維持を図り得ているのでありましょうか。財政制度審議会の答申を見れば、地方交付税にも厳しいし、国庫負担金制度にも厳しいのであります。とすれば、現行法制度を改正して、るる申し上げてきましたように、国家としてもっと教育委員会をコントロールできる仕組みをつくらなければならない、それさえできれば、この金の負担については、負担金であれ交付税であれ、それほど本質的な問題ではないのではないかとの考え方もあり得るのかどうか、大臣の御所見を賜りたいと思います。

中山国務大臣 義務教育の実施に当たりましては、ナショナルスタンダードを設定いたしまして、それが履行されるための諸条件を担保する観点から、国は、学校制度の基本的な枠組みの制定とか、あるいは教育内容に関する全国的な基準の設定を行いまして、その上で、地方は、それぞれの地方の実情に応じて主体的に教育の質を高め、ローカルオプティマムを実現することが必要であります。あわせて、国、都道府県、市町村それぞれが必要な財源措置を行っていくことが必要だ、このように考えているわけでございます。

 すなわち、国は、義務教育の根幹を維持するため、基本的な制度の枠組みや全国的な基準の設定を行うとともに、必要な財源を確実に手当てする責任を負っているというところでございます。この責任を制度的、財政的に担保する制度が義務教育費国庫負担制度でありまして、地方公共団体の財政力の差にかかわらず、全国のすべての地域におきまして教育水準を確実に維持するための制度でございまして、今御指摘にありましたけれども、地方をコントロールするための制度ではない、このように認識しております。

 なお、教育に関する事務の適正な処理を図るために、必要がある場合には、先ほど来お答えいたしておりますが、法律の規定に基づきまして、指導、助言、援助などを行っていくことは言うまでもない、このように考えております。

佐藤(錬)委員 ありがとうございました。

 以上、申し上げてまいりました。これだけの質問をさせていただきましたのも、我が地元大分県の教育がまことにひどい状態にあるからであります。きょうは横光さんもおられますが、公務員というものが、例えば今開かれている日教組の大会においても、公務員の立場で内閣総理大臣を批判したり、国の施策に反対を唱える、公式の場で。(発言する者あり)おかしいと思いますね、公務員は。

 そういうことを思いますと、本来公務員は公務員としてあるべき姿を示していかなければいかぬと思います。どうか一日も早くそういった法律をきちっと改正して、地方公務員、またこういう教員の労働組合が政治活動、選挙活動をせずに、そして、本来なすべき教育に専念してもらえるように、そんな日本を一日も早くつくっていかなければ将来の日本は危ない、そんな気がいたします。

 以上で終わります。どうぞ中山大臣には、戦後教育の立て直し、正常化に向けて、ひとつ中山文部科学大臣の教育改革にかける御英断を心から期待を申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 長島昭久君。

長島委員 民主党の長島昭久です。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、ことしがちょうど中学校の教科書の採択の年に当たりますので、これは八月の末で採択が終わりますので、ちょうどこの機会しかございませんので、教科書の問題について少し質問させていただきたいというふうに思います。

 皆さん御承知のとおり、八〇年代以降、我が国の教科書検定あるいは採択というものは、国の内外で大きな論争を巻き起こしてまいりました。時に行き過ぎた外圧があったり、あるいは偏った言論によって、まあ内圧といいますか、かなりの風圧にさらされたということは、委員の皆さん御案内のとおりだというふうに思います。

 そういう中で、毎年、小学校、中学校、高校の教科書の検定、採択そして生徒が使用するという、このサイクルがずっと続けられてきたわけなんですけれども、私は、一人の大人として、あるいは主権者、国民に直接選ばれた衆議院の文科委員会の委員として、子供たちにどのような教科書を提供していくか、こういうことを真摯に議論していく必要がある、そのことは私たちの大変重要な責務の一つだ、こういうふうに思っております。

 特に、昨今議論がかまびすしい歴史教科書については、大変重要な問題があるというふうに思っております。先輩方がつくり上げてきた日本の歴史でありますから、その歴史をどのように次世代に伝えていくかというのは大変重要なことだと思います。その歴史は、やはり人間が営むわけですから、光の部分もあれば影の部分もある、成功もあれば失敗もある。失敗の歴史にこそ教訓がたくさん詰められているというふうに思いますし、また、成功例から大いに刺激を受けて、みんなで頑張ろう、こういう子供たちをはぐくんでいくことは非常に重要だというふうに思うんですね。そういう総体として、我が国の歴史に愛着を感じて、あるいは国に誇りを持てるような、そういう歴史教育のガイドブックといったものを子供たちに提供していきたい、これは私の心からの願いであります。

 その意味で、私は以前から少し気になっていたことを冒頭にまず御質問させていただきたいというふうに思っているんですが、それは、検定基準に一九八二年につけ加えられましたいわゆる近隣諸国条項と言われるものであります。

 これはもう一度皆さんと記憶をたどっていきたいと思うので、八二年の六月に始まった出来事についてちょっと振り返ってみたいと思います。

 六月二十六日に、新聞が一斉に、検定によって歴史教科書の中の記述、とりわけ、これまで検定前は侵略というふうに言われていたものが進出という形に検定を通じて書き改められた、こういう報道を一斉にいたしまして、一月たってから、七月に、中国の政府を皮切りに、主に中国、韓国ですけれども、この二つの国から、教科書の記述を是正するように、こういう大きな批判の声、非難の声が上がったんですね。

 しかし、その後、これは七月の三十日でありますけれども、当時の鈴木初等中等教育局長が国会で答弁をしておりまして、実は五十六年度、つまり前年の八一年の検定の中において、日中の戦争に関して、検定の結果、「侵略」の表記が「進入」というふうに改まった例はあるけれども、「進出」というふうになった例はないんだ、つまり事実無根なんだと。万犬虚にほえるという言葉が当時はやったのを覚えておりますけれども、虚報だったということが明らかになったわけですけれども、しかし、一たん火がつきますと、外国からの、中韓からの批判はやまず、八月二十六日に当時の官房長官でありました宮沢元総理が歴史教科書についての官房長官談話というのを発表して、事態の収束を図ったんですね。

 ここには幾つか項目があるんですけれども、一つは、日韓共同コミュニケ、日中共同声明の認識は現在においてもいささかも変化がない、こういう点が確認をされて、そして、この二つのコミュニケ、声明の精神は我が国の学校教育、教科書の検定に当たっても当然尊重されるべきものであり、我が国教科書の記述についての韓国、中国等の批判に十分に耳を傾け、政府の責任において是正をする、こういうことが談話として発表され、そして九月十四日、当時の小川文部大臣から、教科用図書、つまり教科書の検定調査審議会に対して、「歴史教科書の記述に関する検定の在り方について」の諮問がなされて、そのときの指針によって、今後の検定において、韓国、中国を初めとするアジアの近隣諸国との友好、親善の精神が歴史教科書の記述においてより適切に反映されるための方策について審議を依頼した、こういうことであります。

 そして、十一月の十六日、二月後に、この審議会から文部大臣に対して「歴史教科書の記述に関する検定の在り方について」という答申が行われ、その結果、検定基準の中に次のような一項目が挿入されました。それは、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること。」こういう一項が挿入をされたわけであります。

 これをいわゆる近隣諸国条項というふうに呼んでいるわけですけれども、この近隣諸国条項がどの程度検定に実際に、八二年以降今日に至るまで影響を与えてきたか。一方の論者は非常に影響を与えてきたと言うし、そうでもないと言う人たちもいるわけですけれども、これが実際どのように影響を与えてきたかということについて、きょうは少し文部科学省から説明をしていただきたい、こういうふうに思うんです。

 当時の新聞を見ますと、これは読売新聞の八二年の十一月二日、いや、その前に十月の十六日、この十六日の読売新聞の朝刊によりますと、文部科学省は検定方針を大転換した、そして、中国侵略あるいは三・一独立運動、これなど十一項目についてはあえて検定の意見を控えるということを決めたというふうに報じられているんです。

 ちなみに十一項目の内容なんですが、中国関係では日中戦争の侵略あるいは南京事件、それから韓国関係では韓国に対する侵略行為、あるいは土地調査事業、三・一独立運動、神社参拝、日本語の使用、それから創氏改名、強制連行、その他東南アジアへの進出、沖縄戦、この十一項目が列挙されて、この点については近隣諸国との関係に配慮して教科書の執筆者の表記、表現をいわばノーチェックで通していく、こういうことが決められた。

 これはいろいろな方が批判をしておりますけれども、本当にこれでいいんだろうか。近隣諸国との善隣友好というのは大変重要なことだと思いますけれども、我が国の教育というのは我が国の主権の発露でありますから、この我が国の主権を一方的に外国に譲っていいんだろうかという意見があるわけなんです。

 文部科学省にお尋ねをしたいんですが、実際に八二年にこの宮沢官房長官談話が発表され、小川文部大臣から審議会に諮問がなされ、そして最終的に検定の基準が一つ加えられた。この過程の中で、その審議会で、今申し上げた十一項目について検定意見を特に付さない、こういう方針が実際に決められたのかどうか、この点についてお尋ねをしたいと思います。

銭谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生の方からお話がございましたように、昭和五十七年当時、教科用図書検定調査審議会におきましては、中国や韓国などアジアの近隣諸国との友好、親善の精神が歴史教科書の記述においてより適切に反映されるための方策について審議を行ったわけでございます。昭和五十七年の十一月十六日に、我が国と近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに当たっては、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていることとする旨を検定の基準として加える必要があること等の答申を行ったわけでございます。

 この答申を踏まえまして、教科用図書検定基準が改正をされ、いわゆる近隣諸国条項が追加されたわけでございますが、先生御指摘のような検定方針というものはございません。

 歴史教科書の検定は、あくまで学習指導要領と教科用図書検定基準に基づき、検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本とし、教科用図書検定調査審議会の専門的な審議を経て実施をしているところでございます。

長島委員 今の銭谷局長の答弁、私は全く異論ないんですけれども、ただ、昭和五十七年、八二年の十一月二十五日付の文部広報に、その二面に、当時答申に当たった社会科の担当の第二部会部会長の談話が掲載されているんですが、そこにこう書いてあるんですね。「この答申においては、我が国と近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに当たっては、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていることとする旨を検定の基準に加える必要がある」、「この基準の適用により、例えば、今後「侵略」の表記については、原則として検定意見を付さないことになろうかと思います。」こういう談話を発表しているんです。

 今の局長の御答弁とこの第二部会長の談話と食い違うんじゃないかと思うんですが、もう一度御説明いただけますか。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいまお話のございました当時の第二部会長のコメントは、当時、教科用図書検定調査審議会において、アジアの近隣諸国との友好、親善の精神が歴史教科書の記述においてより適切に反映されるための方策について審議をし、新たな基準を設けることなどを答申したことに付随いたしまして、今後の検定について予想したもの、こういうふうに考えられるわけでございます。

 先ほど申し上げましたように、十一項目云々といったような検定方針というものはないわけでございまして、歴史教科書の検定というのは、学習指導要領といわゆる近隣諸国条項も含めた教科用図書検定基準に基づいて、検定の時点における客観的な学問成果や適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として、厳正に実施をしております。

 なお、この第二部会長談話でも、最後の部分で、「教科書検定は、いうまでもなく教科書の記述が客観的で公正なものとなり、かつ、適切な教育的配慮が施されたものとなるようにとの見地から行われるべきであり、」というふうに部会長御自身もコメントをしているところでございます。

長島委員 では、少し角度を変えて質問させていただきますが、それでは、八二年以降今日までの検定の過程で、近隣諸国条項に基づいて検定意見が付された事実はありますか。あるとしたら教えていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 検定意見を付す場合には検定基準上の根拠を示すわけでございますけれども、過去の近隣諸国条項の適用例としては、例えば平成三年度検定の中学校社会科、公民的分野について、アジアの諸国の人々に第二次世界大戦で大きな被害を与えるなど「過去に迷惑をかけた歴史を持っていることを忘れてはならない」という記述に対しまして、「「迷惑をかけた」という記述では、近隣のアジア諸国との間の歴史事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされているとは言いがたい」という検定意見を付した例がございます。

 なお、今回の平成十六年度中の中学校用の教科書の検定においては、いわゆる近隣諸国条項そのものを適用したという例はございません。

 具体の検定意見は、従来から、それぞれの記述の欠陥の趣旨を最も的確かつ具体的に指摘でき、申請者による修正が最も適切に行われやすい条項を一つ選んで適用しているといったようなことから、ことしの検定においては近隣諸国条項の適用の事例はないということでございます。

長島委員 ちょっと大変あいまいな御答弁だったような気がするんですが。

 基本的に、この近隣諸国条項というのは私はいかがなものかと思うんですね。これは非常に微妙な問題だと思うんです。国際協調というのはすごく重要だし、さりとて、自分の国の歴史をどのように自分たちの子供たちに教えるかということは、押しなべてこれはその国の大人がしっかりと主体的に考えなければならない、こういうことだろうと思いますので、これをどうやってうまくバランスさせるかということで皆さん知恵を絞られたんだというふうに思うんですが、原点に返って考えると、この近隣諸国条項なるものが出てきた経緯というのは、まず最初に新聞、マスコミの大きな誤報から端を発しているということは、もう一度今日振り返る必要があるのじゃないか。

 先ほど銭谷局長もおっしゃっておられたように、検定というのは、もちろん検定基準も重要ですけれども、そもそも学習指導要領にのっとって行われるわけです。学習指導要領に書いてあるんですね、国際協調の精神を養うというのは。これは歴史的分野の目標の第三番目のところに、「歴史に見られる国際関係や文化交流のあらましを理解させ、我が国と諸外国の歴史や文化が相互に深くかかわっていることを考えさせるとともに、他民族の文化、生活などに関心をもたせ、国際協調の精神を養う。」と。

 ですから、余りこれまでも使われてこなかった、あるいは誤解を招いてきた近隣諸国条項なるものを、今後もそのまま維持しておくことにどれだけの意味があるのだろうかというふうに思うんですが、文部科学大臣、近隣諸国条項の扱い方も含めて、ぜひ大臣の御所見をお伺いしておきたいというふうに思います。

 いや、大臣。もう局長のおっしゃることはよくわかりましたので、大臣の所見だけ。

中山国務大臣 学校教育におきまして、国を愛する心や我が国の歴史に対する理解を深めるとともに、国際理解あるいは国際協調の精神を培うことは極めて大事である、このように考えているわけでございまして、中学校の学習指導要領の社会科、歴史的分野の目標におきましては、我が国と諸外国の歴史や文化が深くかかわっていることを考えさせるとともに、国際協調の精神を養うこととされているところでございます。

 今話が出ていますけれども、教科書検定におきましては、昭和五十七年に、特に我が国と近隣アジア諸国との相互理解、相互協調を一層進める上で、教科書の記述がより適切なものになりますように、近隣諸国との国際理解と国際協調の観点から配慮する旨の新たな検定基準を設けたところでございます。

 御指摘ありましたように、これはそもそもはマスコミの誤報から始まったんだという話もございました。また、近隣諸国条項に過度にあるいは反応したというような面もあったかもしれませんが、こういった精神というのは、私はずっと続けてあるべきだ、こう思っているわけでございまして、文部科学省といたしましては、今後とも、このような学習指導要領や検定基準に基づきまして適切に教科書の検定を行ってまいりたいと考えております。

長島委員 ありがとうございました。

 私も、歴史認識というのはなかなか共通化することは難しい、それぞれの国が歴史の認識を持っていて、それを国際協調の観点でうまく調整するのがまさに外交の役割だというふうに思いますので、歴史教科書にまで外交の役割を担わせるというのは私は少しやり過ぎじゃないだろうかと思います。思いは共有をさせていただいているというふうに理解をして、次の論点に進んでいきたいと思います。

 さて、検定ですけれども、昨年の四月から開始をされて、ことしの四月の五日に検定結果が一斉に発表されました。いよいよ今、全国の教育委員会で採択に向けた作業が進んでおります。八月三十一日がその期限とされておりますが、今、全国の教育委員会で進められている採択作業の進捗状況といいますか、現状報告を簡単にしていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 教科書の採択でございますけれども、それぞれの採択地区におきまして、ことしの八月の三十一日までにその採択地区としての使用する教科書について決定をするということになっております。

 現在、順次、各採択地区において協議会を開催して、採択事務が取り進められている状況でございまして、一部には、もう採択する教科書を決定した協議会もあるという状況でございます。

長島委員 そういう状況の中で、今文部科学省が最も心を砕いているポイントをお示しいただきたいと思います。今こういう採択のプロセスの中で、文部科学省は何に一番気を使っているか、心を砕いているか、御答弁いただきたいと思います。

銭谷政府参考人 教科書の採択につきましては、毎年、文部科学省として指導通知を出しているわけでございますけれども、そのポイントとするところは、採択をする採択権者がその権限と責任のもとに、教科書の内容について十分な調査研究を行い、適正な手続によって行われるべきであるということを徹底しているところでございます。

 すなわち、適正かつ公正な採択の確保ということが大変重要でございますので、今はそのための各採択権者の対応ということを強く求めているところでございます。

長島委員 今適正、公正というふうにお話がありましたけれども、その中でも非常に重要なのが、四月十二日付の局長名で出されている通知にもありますが、静ひつな採択環境を確保する、こういうことなんだろうというふうに思いますね。

 その点で、今栃木県の大田原市で起こっている出来事というのは、私はちょっと看過できないと思っておりますので、触れさせていただきたいと思います。

 七月の十三日に栃木県の大田原市で、論争を呼んでおります扶桑社が発行する歴史教科書、これが全国に先駆けて採択をされました。しかし、大田原市の教育委員会にはこれに反対する人たちから抗議の電話やファクスが殺到して、千通まで数えたけれどもそれ以上は数え切れないと言っていましたけれども、その十三日の採択の前日の十二日には、扶桑社教科書の採択をやめないと大田原市の子供を次々に殺す、こういう脅迫電話まで市の教育委員会に飛び込んできた。これは常軌を逸していると思うんですね。

 市内の子供たちを次々に殺すというのは、これはまさに脅迫以外の何物でもないわけですが、これが市の教育委員会では対応を県警に相談しているというふうに報道されておりますけれども、今、現状を文部科学省としてどのように把握されているか、お答えいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 大田原市の件についてお尋ねがございました。

 文部科学省から栃木県教育委員会に確認をいたしましたところ、七月十二日の朝、大田原市教育委員会に対して、男性から、扶桑社の教科書採択をやめなければ市内の子供を次々と殺す旨の電話があり、大田原市教育委員会では栃木県警に連絡をして対応している旨承知をしているところでございます。

 このほか、先生からお話がございましたけれども、大田原市教委に対してファクスやメールが送られてきているわけでございますけれども、ファクスやメールについては、支持する内容のもの、抗議する内容のもの、それぞれあるというふうに聞いておりまして、先週の木曜日、七月十四日までの状況では、約三千八百件ほどファクス、メールが来ているというふうに教育委員会を通じて把握をいたしているところでございます。

 なお、採択自体は、採択権者でございます大田原市教育委員会の権限と責任において適正、かつ公正に行われたものと考えております。

長島委員 子供たちの安全を確保する、あるいは教育委員を初め関係者の身辺の安全を確保するというのは大変重要なことだと思いますし、先ほどの通知にも、円滑な採択事務に支障を来すような事態が発生した場合や違法な働きかけがあった場合には、各採択権者が警察等の関係機関と連携を図りながら毅然とした対応をとることというふうになっております。

 きょうは警察庁にもお越しをいただいていると思いますが、現在の大田原市の状況、あるいは警備その他、子供たちや関係者の安全を確保するための施策について御答弁をいただきたいと思います。

和田政府参考人 お尋ねの脅迫電話につきましては、市の教育委員会の方から警察の方に通報がございまして、必要な捜査をしております。

 あわせて、子供たち、あるいは学校関係、あるいは教育関係の皆さんの安全につきまして、教育委員会あるいは学校と連携をしまして、必要な箇所、必要な時間帯における警戒を行っておりまして、違法行為の防止の万全を期してまいる所存でございます。

長島委員 大臣、これはリーディングケースになりますので、全国に先駆けて採択を発表してこういうことに遭っているわけですから、全国の教育委員の皆さんが注視をしておられると思うんですね。四年前も、杉並区の教育委員の自宅にかみそりの刃が送られてきたり、あるいは新しい歴史教科書をつくる会の事務局が過激派によって放火をされたり、こういうことが続発をしておりますので、ぜひ万全の警備体制といいますか、安全確保の施策を講じていただきたいというふうに思うんです。

 この採択を決める教育委員会の会合を外部の雑音や妨害からある意味で守るという手だては、文部科学省として、これは起こってしまってからでは遅いわけで、どのように考えておられるか、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。さっき、採択権者は毅然とした対応をというふうにおっしゃいましたけれども、毅然とした対応というのは限界があると私は思うんですね、個々の教育委員にとりましては。ですから、それをサポートするような何らかの施策が講じられるべきだと思うんですが、その点、いかがでしょう。

銭谷政府参考人 去る四月に発しました通知でも示しているわけでございますけれども、やはり採択というものが静ひつな環境のもとで行われる必要があるわけでございます。

 円滑な採択事務に支障を来すような事態が生じた場合や違法な働きかけがあった場合には、各採択権者が警察等の関係機関と連携を図りながら毅然とした対応をとっていただきたいということと、今お話のございました採択に係る教育委員会の会議を行うに当たりましては、適切な審議環境の確保等の観点から検討を行いまして、会議の公開、非公開を適切に判断するとともに、公開で行う場合には傍聴に関するルールを明確に定めておくなど、適切な採択環境の確保に努めることが重要で、そのような対応を求めているところでございます。

 なお、大田原市の事例で申し上げますと、十三日の教育委員会で当日の議事を非公開にすることを決定し、傍聴者に退席を求めた際に数名の傍聴者から抗議の声は上がったそうでございますが、退席は比較的スムーズに行われたというふうに承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、静ひつな採択環境の確保に努めるということが極めて重要でございますので、そういう観点から引き続き対応してまいりたいと考えております。

長島委員 確かに地域の主体性というか独自性というのは尊重しなければならないわけですけれども、しかし、こういう場合のルールづくりというのはやはり文部科学省としてももちろん考えていかなければならない。要するに、全部地方にお任せというのでは、なかなかこれは難しいんじゃないかというふうに思うんですね。

 次の論点に移りたいと思うんですが、これもまた関連していることなんですけれども、別の意味で混乱が起こっているんですね。昨日の産経新聞の朝刊の一面を飾ったニュースですけれども、茨城県の大洗町の教育委員会が共同採択地区の協議会の決定に反旗を翻した、こういうことなんですね。

 それはどういうことかというと、大洗町の教育委員会では、今月の六日に全会一致で、これまた扶桑社なんですけれども、扶桑社の歴史教科書の採択を決めていました。ところが、大洗町というのは、水戸市やひたちなか市などと五市八町一村で同じ教科書を選びなさいという第三採択地区を構成しているんですね。そこで、その地区協議会が八日に開かれました。そこで多数決で別の教科書、日本文教出版の教科書が選ばれた。このことに不服を申し立てて、改めて、十二日に自分たちの町に帰って教育委員会を開いて、その協議会の決定を否決した、こういうことなんです。このため、第三採択地区協議会では今週中にも、もう今やっているのかもしれませんが、異例の再協議を行うということが決まったそうであります。

 しかも、これはおまけがついておりまして、再協議でも大洗町の教育委員会の方針が退けられた場合には、あくまでも自分たちは扶桑社の歴史教科書を使いたいということで、国の教科書無償配付とは別に、町の予算で歴史教科書を購入していく措置をとる、こういう方針を決めているということなんですが、これも現状をどう把握しておられるのか、文部科学省の見解を承りたいと思います。これは政務官でしょう。

下村大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律におきまして、教科書採択の権限がその学校を設置する教育委員会にある、つまり、基本的には市町村にあるということを前提としておりますが、採択地区内の市町村教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科書を採択しなければならないということになっておりまして、つまり、このお話の中では第三地区ということになるわけでございます。

 平成十三年度の採択の際、採択権者である市町村教育委員会と採択地区との関係が明確でない、御指摘のようなことでございます。また、市町村教育委員会の意向が適切に反映されにくい、こういうことから、採択手続に関してさらなる改善を求める声が出され、それを受けて、平成十四年七月に教科用図書検定調査審議会に改善方策の取りまとめをしていただきました。

 その検討のまとめにおきまして、例えば、採択地区協議会等、他市町村の教育委員会との協議に臨む前に、それぞれの教育委員会としての採択の方針等をあらかじめ決めておくことや、協議が今回のように一度で調わない場合も想定して再協議が可能なスケジュールで採択事務を進めるとともに、再協議の場合の手続を定めておく、このように採択事務に関するルールをそれぞれの地区で定め、あらかじめ公表することによって、採択手続を明確にしておくなどの取り組みが考えられるということがこの検討会のまとめで出されました。また、市町村教育委員会間の協議が調わない場合においては、都道府県の教育委員会が適切な指導助言を行い、採択の適切な実施を図っていくことが必要であるというふうにされております。

 これを受けまして、平成十四年八月に文部科学省から各都道府県教育委員会に対して検討のまとめを添付して通知を配付しました。その中で、

 それぞれの採択地区において、市町村教育委員会間で採択事務に関するルールを定め、予め公表するなど、採択手続を明確にしておく取組を進めるよう市町村教育委員会に対する指導に努めること。また、市町村教育委員会間で行う同一の教科書を採択するための協議が整わない場合には、適切な指導・助言を行い、採択の適切な実施に努めること。

このように指導しております。

 文部科学省としましては、各教育委員会がそれぞれの権限と責任において、ただいま御説明を申し上げましたような取り組みを行い、採択地区内において同一の教科書を採択するための協議の方法等を含め、適切な採択事務を行うよう引き続き指導してまいりたいと思っております。

 今回のこの大洗町に関しては、基本的には、現段階においては第三地区の採択に従っていただきたい。しかし、それでもどうしてもということであれば、御指摘のように、副教材のような形で大洗町が独自に教材を購入していただいて使うということは可能であるというふうに考えております。

長島委員 最後のポイントは非常に重要だというふうに思います。副教材の可能性も否定しないという、これは御答弁としてすばらしいと思います。

 文部科学省として改善の努力をずっとこの間されていたのは今の説明のとおりなんですが、実は、四年前に今回と逆のケースが起こっているんですね、やはり混乱して。

 これは下都賀地区、これも共同採択地区でありますが、栃木県の小山市など二市八町でつくる下都賀地区の教科書採択協議会での混乱がありました。このときは、一たん、その共同採択地区で多数決で、これまた扶桑社なんですけれども、教科書が決まった。決まったんだけれども、その後、それぞれの単位教育委員会がそれぞれに帰ったところに、二週間の間に猛烈な抗議、こんな教科書を採択していいのかという抗議が、マスコミの取材、それから中国の大使館まで動員して、電話やファクスあるいは嫌がらせの電話、こういうことが続いて、全部これはひっくり返ってしまったんですね、各単位教育委員会の決定で。そして、もう一回集まって協議したところ、十市町のすべての教育委員会で採択協議会の決定が覆ってしまって、結局別の教科書に決まった。

 こういう事例があって、恐らくそういうことの反省に立って平成十四年の答申がなされたんだろうというふうに思うんですが、私は、今回この事例を検討してみて思ったんですが、やはり現行法に少し不備があるんじゃなかろうかと思うんですね。これは立法府ですから、一義的には我々の責任ですので、我々がこれは是正していかなければいけないと思うんです。

 まず一つは、教科書の採択権がどこにあるのかという問題なんですけれども、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、地教行法と呼ばれているそうですが、教科書採択の権限を教育委員会の職務だ、こういうふうに位置づけているんですね、これが二十三条の六号。つまりは、単位教育委員会に採択権の最終的な決定権があるというふうに読めるわけです。

 それと同時に、採択については、先ほど採択地区の話がありましたけれども、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律、これは無償措置法と呼ばれておりますけれども、隣接自治体による共同採択の場合は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない、これは十三条の四項、というふうに決められているんです。

 しかし、共同採択協議会でもし意見が通らなかった場合に、単位教育委員会の採択権がどう保障されるかということは、法律にはどこにも書いていないんですね。ですから、この二つの法律がいわば並列しているような形になっているので、ある地域では教育委員会の方の決定がある意味では優先され、ある地域では採択協議会の同一の教科書をとりなさいという多数決が優先され、この間で混乱が起こっている。その中で静ひつな環境が阻害されるような事件が続発している、こういうことで混乱に拍車がかかっている。

 では、それを調停するような機関が定められているかというと、この無償措置法には、いわば上部組織である都道府県の教育委員会が適切な指導、助言または援助をするというふうに書いてあるんですね。しかし、それはあくまでも適切な指導や助言にすぎないわけであって、両者を調停して、いや、今回はこっちだとか、今回はこっちの決定に従いなさいということまではやらないんです。書いてあることは、協議せよと書いてあるだけなんです。ですから、場合によっては、延々と集まって協議し、十市町村あった場合に、一つの町の教育委員会が、いや、我々はこの教科書に固執したいというのであれば協議がまとまらない、それで八月三十一日の期限切れを迎える、こういうことのケースが恐らくこれから起こってくる可能性があるんだろうと思うんですね。

 そのことを私は、法律によって是正するか、あるいは、さっき政務官がおっしゃったようにルールを明確化してやるか。今、文部科学省のお立場はルールを明確化しろということなんですけれども、しかし地方丸投げではなかなか、これは地域によって運用の仕方が違うわけですから、私はここは二つに一つ。一つは、今言った二つの法律をある意味で調整するような別の法律あるいは法律改正を行うか、もしくはルールをしっかりと文部科学省が決めて、これは別に中央集権とかいうことではないと思うんです、こういう採択のルールを文部科学省が決めて、そのルールに従って公正に、適切に手続を進めてほしい、あとの選択についてはそれぞれの地域に任せる。これは別に地方分権に逆行するような施策ではないと思うんですが、大臣の方から、ぜひこの改革案についての御所見を含めて、お伺いしたいと思います。

中山国務大臣 教科書採択につきまして、そのたびごとにこのような騒ぎが起こるというのは嘆かわしいことだ、こう思っております。教育委員会の委員の方々も本当に大変だなと思うわけですけれども、ぜひ公正、公平な立場から教科書採択をやっていただきたいし、また、反対だからといって、脅迫だとかそういったことは、もうこれはやめてもらいたいと本当に心から念じております。

 その中で、では、採択権者といいますか、範囲をどうするかということでございます。今まさに御指摘ありましたように、いろいろなケースがあるわけでございます。

 私どもとしては、いつも申し上げていますが、教育というものをできるだけ現場におろしたい、子供たちそして保護者の身近なところにおろしたい、こういう気持ちはございますので、採択の範囲というのをもう少し狭くできないのか、また、その上で、どうしてもこの教科書を使いたいというところがあれば、それが使えるようなことも考えて、今後どうしたら採択につきましてそういった混乱を防ぐことができるのか、そして、静ひつな、静かな環境のもとで、本当に子供たちのために、自分たちの地区の子供たちはこのように育てるんだ、そういう学校とか市町村、地区の方々の思いが通じるような、そういう採択の方法というものを考えていかなければいかぬな、このように考えておるところでございます。

長島委員 今大臣がおっしゃった、教育はなるべく現場におろしていきたいという考え方は私も尊重したいと思いますし、今おっしゃった採択の範囲というのを狭めていこう、つまりは単位教育委員会を基本にしてやっていこう、教育委員会同士の間でそごを来さないような、そういう環境をつくっていくというのは大変重要だと思います。

 やはり、全国の教育委員がいわば身の危険を感じながら今回の採択作業に当たっているということを、ぜひ私たちも肝に銘じて、そういう方たちが本当に静ひつな、安定した環境で公正な採択ができるような、そういうルールづくりをぜひこれからお互いに考えていきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

斉藤委員長 大谷信盛君。

大谷委員 大谷信盛でございます。

 きょうは、文化外交における文化庁の役割とはいかがなものなのかという観点から御質問をさせていただきたいと思っております。

 結果から言いますと、私は、非常に、今まで以上に大切な役割が文化庁にできたものというふうに考えております。

 今、例えば、総理の諮問機関であります文化外交の推進に関する懇談会報告書「「文化交流の平和国家」日本の創造を」というようなもの、また、知的財産推進計画二〇〇五の中でも、文化が大事だと四章の中に述べられておって、コンテンツ産業の育成なんかをしっかりやっていきましょうと。

 文化、文化ということが、非常に国内の生活を豊かにするということと、そして、ソフトパワーの拡大、いわゆる諸外国において日本の好感度イメージをさらに向上させていきましょうよ、そのために、やはり文化交流、文化の役割というのは大きいですねというふうに昨今多く言われておるんですが、国際環境が変わる、また国内の豊かさをさらに向上させていくためにおいて、文化庁がこれまでとは違ってきた取り組みをしていかなければいけないというふうに思うんですけれども、これまでとは違うような取り組みをしてきたのか、また、これから改めていこうとしているのか、そういう方向性、また意気込みについて中山大臣からまず最初にお答え、教えていただきたいというふうに思います。

中山国務大臣 お答えいたします。

 内閣総理大臣が有識者を集めて開催しておりました文化外交の推進に関する懇談会の報告書、これは平成十七年七月に公表されたものでございますが、この報告書におきまして、二十一世紀の文化外交のあり方として、まず、日本文化の魅力を生かした日本理解の促進と信頼獲得の重要性が指摘されているところでございます。また、知的財産推進計画二〇〇五の第四章におきましても、映画、アニメ、音楽等の日本の魅力あるコンテンツを戦略的に海外に発信することが求められております。

 このようなことから、文化庁といたしましては、文化芸術振興基本法や、それに基づき制定されました政府としての基本方針を踏まえまして、世界に誇れる芸術を創造するとともに、国、地方、民間などさまざまなレベルにおける、伝統文化から現代文化まで幅広い分野での国際文化交流を推進して、文化芸術創造立国の実現に努める役割が求められていると認識しているところでございます。

 今後、文化庁といたしましては、これらの報告の提言を踏まえまして、関係省庁や関係機関、団体と十分に連携しながら、日本文化の海外への総合的な発信に努めてまいりたい、このように決意を新たにしているところでございます。

大谷委員 大臣、ありがとうございます。

 文化が大事だという認識があることは理解しました。今後どのように変わろうとしているのかというのが私の質問の趣旨でございます。お願いいたします。

加茂川政府参考人 委員御指摘の文化外交の推進に関する懇談会等の報告におきましては、今大臣から答弁もございましたように、日本の魅力ある文化について積極的に海外展開を行うとともに、総合的に情報発信していくためのさまざまな提言がなされておるところでございます。

 文化庁といたしましては、従来より幾つかこれに沿った施策を展開してきておるわけでございまして、例えば、第一に、舞台芸術の海外公演、国際フェスティバルへの参加あるいは共同制作を支援する事業がまずございます。

 それに加えまして、すぐれた日本映画を世界に紹介するために海外映画祭等への参加を支援する事業でありますとか、さらに、我が国におきまして、世界的な芸術団体、芸術家の参加を得て開催する舞台芸術国際フェスティバルという事業も実施をしておるわけでございます。

 加えまして、文化に携わる我が国の専門家等を長期間海外に派遣いたしまして、世界の人々が日本の文化への理解を深める文化交流使という事業も行ってきておるわけでございまして、魅力ある日本の文化の海外への発信にこのような事業を通じて取り組んできたところでございます。

 さらに、十七年度におきましては、新規事業といたしまして、これらの事業に加えまして、アニメ、漫画等のメディア芸術分野で、諸外国の芸術家等とのワークショップでございますとかコンテンツの共同制作などを支援する事業を開始したところでございまして、これまでも、例えば文化外交の推進に関する懇談会の報告に沿った事業を行ってまいりましたけれども、大臣、決意を新たにと申されましたけれども、新規事業も含めまして、さらに充実を図っていきたいというのが基本的な考え方でございます。

大谷委員 ありがとうございます。大臣、後でもう一回質問しますので。

 それと、今、一生懸命日本の文化を海外に見せているということと人との交流をやっているということで言われました。よく文化交流使というのを聞くんですけれども、これは、使っているお金、平成十七年度ですと一億六百万円なんですよね。これは文化交流使、遣唐使、遣隋使にちなんでいるんだと思うんですけれども、非常に目玉的におっしゃるんですけれども、一体どれぐらいの方が向こうに出ていかれて、どれぐらいの方と交流されて、どれぐらいの方がこっちに来られたりしているんですか。人数ですよ。二十五という数字を役所の資料で見たんですけれども、二十五名の方が約四百万円ぐらいかけて海外に出ていって活動されたんですか。これは、どれぐらいの人数の方が関与されているんでしょうか。

加茂川政府参考人 文化交流使の事業についてお答えをいたします。

 この事業は十五年度から始まった事業でございまして、委員御指摘のように、まだ事業の歴史としては浅いものですから、展開している事業数、派遣者数の数もまだ十分に確保はできておりませんが、海外派遣型の文化交流使といたしましては、十六年度、十一名の文化交流使を派遣いたしておるところでございます。

 先般、その報告会を実施しましたところ、大変反響も多うございまして、歴史の浅い事業ではございますけれども、それぞれの交流使が派遣先の国で日本の文化について理解を得る成果が上がったことが報告されておりまして、私どもとしては、継続して、もちろん新規の事業でございますから反省すべき点もございますけれども、評価も正しくしながらこの事業を着実に進めてまいりたいと思っておるところでございます。

大谷委員 十一名ですか。わかりました。

 では、派遣された方々は何の専門で、どのような国に行かれて、どれぐらいの期間滞在してこられて、我が国の税金を使って交流をなされてきたわけですから、どのような成果を上げてきたと去年の事業の中で総括をなされておられるんでしょうか。僕自身は、もっとこれはふえた方がいいと思って質問しているので、前向きにお答えください。

加茂川政府参考人 先ほどお答えをいたしました十一名についてでございますが、派遣国としましては、欧米のみならず中東諸国、かなりのバラエティーに富んだ国に派遣をさせていただいておりますし、期間も一月、月単位のものから年単位のものまでございます。

 また、分野につきましては、例えば浪曲師の方、それからピアニスト、作家、映画評論家、落語家といったかなり多岐にわたる分野をカバーしておられる方々でございまして、それぞれの専門につきまして、現地において講演を行いましたり、もしくは講習を行ったり、ワークショップのような、現地の方々と共同したパフォーマンスをするといったさまざまな取り組みが、それぞれの御専門の分野を生かした形で行われております。

 先ほど申しましたように、この報告会も私は参加をして拝聴いたしましたけれども、かなり現地の方々の反響が大きかったと聞いておりますので、確かに評価の仕方はいろいろ課題があるかと思います。ただ、分野がかなり多岐にわたっておりますので、それぞれの分野に応じた貢献の仕方があろうかと思っておりまして、そういったことも心しながらこの事業の充実に努めてまいりたいと思っております。

大谷委員 文化交流というのはなかなか総括しにくくて、数値的に測定することができないので難しいんですけれども、ここにおいては、このようにお答えいただいたらよかったと思うんです。非常に相手国における評価が高かった、さらにこれを拡大していかなければいけないということだと僕は思っています。

 なかなか数値にあらわせないものですから、やはり三年、五年、拡大する傾向で継続していってそこで一定の評価が、その国においては、さあ日本国の好感イメージはどうなった云々かんぬんというようなことを出していかなければいけないと思うんですね。

 何が言いたいかというと、こういう事業にこそ戦略性が必要で、単発的に、どこへ行った、あっちへ行った、こっちへ行った、それも芸能文化を持っておられる方々も、急に古典だったのが現代になったりとか、ばらばらになってはいけないと思うんですね。継続的にある一定の場所にやっていく必要があると思うんですが、その辺はいかがお考えですか。

加茂川政府参考人 委員御指摘のように、この文化交流使の事業実績をより高めるためには、充実するためには、きちんとした統一的な派遣の方針でありますとか、活躍していただける場面の調整も必要かと思いますが、事業をまだ始まったばかりと答弁させていただきましたけれども、一応派遣国の要請、また関係団体の希望を聞いた形で、そうでないと高い成果がおぼつかないものですから、一応受け入れ国のニーズ、関係団体の状況も把握し、聞いた上で調整をいたしております。

 そのために、派遣すべき専門の方々の分野に統一性がないように見えるかもしれません。現時点では、そういったことを優先して派遣をしておるということでございます。

大谷委員 人道支援じゃないので、戦略性を持っていただいても結構だと私は思うので、積極的にここをやるというような意識をぜひとも文化庁には持っていただきたいと思っています。

 大臣、戻りますけれども、今聞いていただいて、大事な事業を文化庁はやられているんですけれども、これは額も少ないし、こうやって新しい事業が始まったばかりなんですね。文部科学省という全体の省庁の中で大変重要な仕事がたくさんありますけれども、この多様化する国際社会の中で、今までには想定していなかったような大きな役割を文化庁が担っていかなければいけないと私は認識しているんですね。

 その中で、この文化外交、もちろんこれは外交ですから、外務省が一番となってやっていくのはもちろんですけれども、それ以上に、文化という中身の面においては、文化庁がもっともっとリーダーシップを発揮していくべきだと思うんですけれども、大臣、御就任されていろいろと文化庁の中ものぞかれて、どのような感想と、どのようなリーダーシップを発揮なさっていこうとしているのか、一回意気込みをお聞かせいただけたらと思います。大臣、どうぞ。

中山国務大臣 先ほどお話ししました文化外交の推進に関する懇談会とか、あるいはコンテンツの問題だとかああいうことで、日本のすぐれた文化というものを海外に広めることによって、日本に対する理解、そして評価を高めよう、こういうふうなことで今政府が動き出しているわけでございます。その中にありまして、もちろん文化庁が一番中心になってその一翼を担っていかなければいけない、こう思っておりまして、文化庁の中でも、まさに今説明がありましたように、さまざまな取り組みを行うことによりまして、全体として日本の文化力というものを海外に広めていこう、そういうことをやっているわけでございます。

 文化といってもいろいろなものがございまして、芸術、芸能、音楽、さまざまございますし、また、最近海外に行きますと日本食ブームでございますが、これもやはり食文化ということで非常に大事なものであろうと思うわけですけれども、日本人じゃない、違う国の方々が日本食としてやっているとかそういうこともございますので、もう少し日本食というのはこんなものだというようなことももっとPRしてもいいんじゃないかな、そんなことを思うわけです。

 総体として、最初に申し上げましたように、日本の顔の見える、日本の文化の顔の見える、そういった外交を進めていく。もちろん、そのためには予算が伴うわけでございますから、非常に厳しい財政の中ではございますが、昨年も一千億を確保させていただきましたし、ことしも、予算要求そして年末の予算編成に向けまして、総力を挙げて頑張ってまいりたいと考えておるところでございます。

大谷委員 大臣が頑張って一千億とっておることには敬意を表します。

 ただ、文化、文化とみんな大事だと言うんですけれども、なかなか実行を伴わないことが多くて、そこはやはり理念、戦略みたいなものを出すことによって、重要性を国内の主要な省庁、また意思決定者に理解してもらえると思いますので、ぜひとも大臣におかれましては、そういうリーダーシップを発揮していただけたらなと思っております。

 そんな中、この文化外交で私自身が二つ力を入れていかなければいけないものを挙げるとするならば、文化財の保護、そしてもう一つが、さっき大臣がおっしゃいましたが、いわゆるアニメであったり映画であったり音楽であったりするような、いわゆるポップカルチャー、大衆カルチャーというものをしっかりと活用することによって、日本の好感度イメージを高めていきたいなと思っています。後先になりますけれども、例えば、世界じゅうで子供たちが見ているアニメ、漫画の六五%は日本製でございます。世界で、日本の音楽で一番売れていて一番印税の高いのが何とポケモンの主題歌でございます。

 こんなように、大衆文化が相当海外に発信されているんですけれども、そこにもう一つ、人との交流であったりとか日本の伝統文化というようなものが重なり合うことによって、本当の意味での日本の好感度イメージが高まっていくんだと思うんですね。

 そんな中、じゃ、どうやって日本の伝統というか重みというようなものを増していくのか。日本がODAで、ある国にお金をたくさん今まで援助してまいりました。しかしながら、その国の対日世論を見ますと、非常に悪いような状況にある。そこは、何か経済的、人道的ではなく、文化というか価値観というようなものをしっかり見せられていなかったんじゃないのかなと私は思うんですね。

 そんな中、文化財の保護をしていくというようなことは、文化財は相手国の歴史であり、まさに価値観であり、その人自身の祖先というかオリジンというものを理解したから援助するのであり、また理解しようとしているから援助するのであり、それが壊された、戦災によって壊された、自然災害によって壊された、それが復旧されるということはまさにお互い、特にさまざまの国、またさまざまの文化というものを一生懸命理解しようとしている姿勢というものを発揮できる大きな大きなチャンスだと思います。

 また、歴史的、文化的にも、遺産というものは人類の遺産であるというような考え方も成り立つわけで、非常にこれから日本が力を入れていく、文化庁が力を入れていく分野として、海外においては文化財の保護というものが考えられるというふうに思うんですが、大臣はその辺どのようにお考えか。

 先に言っておきますけれども、平成十七年度の予算では、これは一・五億円しかついていないんですね。キトラ古墳の額も含めて、大体、日本国内の文化財保護には三百二十八億円、三百三十億円ぐらいが使われておるんですけれども、海外物は始まったばかりということもありますけれども、一・五億円しか使われていない。

 外務省の方の文化財無償提供のODAの形で、多くの海外の文化財保護を、日本は修復したり、人材派遣、技術提供したり、機材提供しているわけなんですけれども、ここはやはり文化庁がこういう遺産のプロなんですから、こういうものがあるんだとか、こういうことをしなきゃいけないんだというようなリーダーシップを発揮すべきではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 海外における文化財の保護についてのお尋ねでございます。

 我が国がこれまで蓄積してまいりました高度な文化財の保存、修復技術を活用いたしまして、例えば武力紛争でございますとか、自然災害でございますとか、そういったことによって破壊されました、委員御指摘のいわば人類共通の貴重な財産であります他国の文化財について保護、協力していくことは、我が国が国際的な貢献を図っていく上で大変重要な課題であると認識をいたしております。

 文化庁におきましては、これまでもユネスコなどの国際機関あるいは他国政府との協力のもとに、無償による機材の供与等を行っております外務省、主にこういった責務を担当しております外務省、それと関係機関等と十分連携を図りながら、例えばアフガニスタンあるいはイラクなどにおきまして、専門家の派遣による保存、修復協力の実施でございますとか、保存、修復技術の研修など、現地専門家の人材育成など、人材貢献を主として取り組んできたところでございます。このため、私ども所管しております独立行政法人文化財研究所の予算も含めまして、他国の文化財保存、修復技術者の養成、我が国の専門家の派遣などに対して予算措置を講じてきたところでございます。

 委員御指摘のように、十分な予算ではないかという見方もあるわけでございますが、今申しましたように、文化庁、関係法人が担当しておりますのは人的貢献、専門家の派遣でございますとか研修事業でございますので、こういった額にとどまっておるわけでございます。

 ただ、冒頭申し上げましたように、我が国が国際的な貢献をきちんと果たしていく上でこの事業は大事でございますので、今後ともしっかり関係機関との連携を図りながら充実してまいりたいと思っております。

大谷委員 そうなんですよね。文化財保護ということでいえば、文化庁、何やっているんですかというと、一番自分の有利なところ、すなわち専門家とのネットワークが非常に強いという、人材的資源を使って一生懸命頑張っておるわけなんですけれども、一・五億円は明らかに僕は少ないと思います。

 そこで、ほかの大事な一千億の中から文化庁の予算をここに使ってというのは無理があるのだろうと思いますので、ここの分野の重要性というものをもっともっと文化庁が提唱した上で、具体的には財務省だけじゃないですけれども、重要性を認知した上で、役割をさらに広げていかなければいけないというふうに思うんです。人以上に文化庁が持っている財産というのは僕はあると思うんですよね。それは何かというと、知識だと思うんですね。その知識を上手に活用していない、すなわち、こういうものを直すのが必要なんだよということをみずから積極的に言ってこなかったような気がするんですが、その辺の総括はいかがお考えなのか。

 そして、それが重要と御認識なさるのであるならば、どんなやり方でこの重要性、知識というものを文化財保護に文化庁は使っていけるのかというようなことについてお伺いしたいんです。本当は大臣の方がいいんですけれども、次長、お願いします。

加茂川政府参考人 文化財修復についての専門家、知識の活用という委員からの御指摘がございました。

 私どもとしましては、これまでも、先ほども申し上げましたが、アフガニスタン等諸外国に存在する危機的な状況にある文化遺産の保存、修復に協力をしてまいったわけでございまして、これを一層、引き続き推進してまいりたいと思っておるわけでございます。

 新たな取り組みをという御指摘もあったようにお聞きいたしましたけれども、この文化財の国際協力等をさらに推進するために、私ども内部で関係の会議を設けまして、一番連携を図るべき外務省とも、この会議については共同で事務を所管いたしましたが、一応方向性を持った報告書をおまとめいただいております。

 一つは、関係機関の情報交換、人的交流を目的とした文化財国際協力コンソーシアム、推進協議会ということになろうかと思いますが、これを設置することについて、一点御提言がございました。

 それから、二点目は、委員御指摘のことと密接にかかわると思いますが、専門家の学術的、専門的な見識の一層の活用、どうやってそのニーズとマッチングするかといったことも、このコンソーシアムを使ってスピーディー、円滑に調整していこうではないかという問題意識、これが二点目の提案でございます。

 それから、各国の専門家の養成、能力開発の一層の推進、これまでも行っておりました研修事業の充実等が主な事柄になりますけれども、こういった主に三本の柱の提言を関係する推進会議からおまとめいただきましたので、具体にこれの実施に向けて、もちろん官だけではなくて、官民が適切な役割の分担のもとに進める必要があろうかと思いますが、具体的に今後取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

    〔委員長退席、河合委員長代理着席〕

大谷委員 いわゆる専門家の方々が、学者さんが集まって、修復に関するNGO、NPOもあると聞いておるんですけれども、そういう方が集まって、国内はもちろんのこと国外においても、こんなものを日本が直すようなことをしていったらどうだというような議論とかをしているような場を文化庁のイニシアチブでつくっているということですか。そういうことをやっていこうとしているんですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど申しました、これから課題になりますコンソーシアムの構築、確立の中では、委員御指摘のようなそれぞれの研究機関、または高等教育機関かもしれません、関係団体かもしれません、そういうところがどういうノウハウを持っているか、またはどういうマンパワーを持っているかという情報をまず整理させていただきまして、具体に支援要請があったときにそのマッチングを効率的に行えるような、もしくは関係団体、機関がより協力しながらその要請にこたえることができるような仕組みについても評価しようというねらいでございます。

大谷委員 やはり要請主義なんですね。非常に創造的な需要というやつですね。来たものを創造的に受けとめて発展させていくということですね。ぜひともそれ、大臣、リーダーシップで、こういうところを直したらどうだみたいな、前向きに、積極的にこっちから向こうに、ここをうちにやらせてくれ、うちにはこんな専門家、学者がいて、世論的にもこういうものが直したいんだと。

 例えば、シルクロードですと、こんなものは明らかにアジアにかかわらず、人類の遺産ですよね。この中で、例えばウズベキスタン、日本も頑張りましたけれども、二千五百の宗教的仏像、そして二千五百の遺跡的建築物があって、五千ぐらいあるんですけれども、一個二個直してみたところで全然おぼつかないんですよね。シルクロードを守るんだ、こういうものを積極的にやっていこうじゃないかというようなことを言っていくのは、僕は、やはりここは文化の中身を大事にしている文化庁だというふうに思うんですけれども、大臣、どうですかね。

中山国務大臣 今大谷委員からお話のありましたウズベキスタンの発掘現場、私も参りました。日本の学者の方が中心になって、本当に大変な現場でございましたけれども、頑張っておられる姿を見て感激したことを覚えておりますけれども、世界各国、依然として武力紛争とか災害等により保存、修復の必要性の高い文化財が見受けられるわけでございまして、文化庁といたしましては、外務省と関係省庁とも連携協力しながら、引き続き支援の必要性の高いところを目がけて、ある程度選択と集中でいかないと、もう予算もありませんので、一層の、専門家のいろいろな知恵もかりながらやはりやっていかなければいかぬな、こう考えておるところでございます。

大谷委員 選択と集中というものが戦略でございますので、ぜひとも戦略性を持ってリーダーシップを発揮していただけたらというふうに思います。

 また、この課題については適宜、定期的に御議論をさせていただきたいし、私は、今の取り組みの方向は正しいので、さらなる拡大を定期的にするためにも理念と戦略を持つという提言をさせていただいて、ともに頑張っていきたいというふうに思っております。

 この文化財保護に加えて、もう一つがいわゆるコンテンツ産業だと思うんですが、ここが私自身わからないところでございまして、いわゆるコンテンツ産業といって産業という名がついたら、これは経済産業省になるのかなというふうに思いますけれども、例えば音楽だったら、著作権というのは文化庁がお持ちですから、これは産業構造に踏み込んでいることになります。しかしながら、産業構造ではなく文化、国民生活を豊かにする文化を統括、管轄、拡大しようとしているのが文化庁であるということなんですけれども、コンテンツ産業における文化力を高めていくための役割分担みたいなものは一体どうなっているのか、少し交通整理をした説明をしていただけますでしょうか。教えていただけますでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 アニメ、映画あるいは音楽といった大衆文化についての、その振興についての文化庁のかかわりということでお答えをいたしたいと思います。

 こういったいわゆる大衆文化を初めとする芸術文化、文化芸術の振興は、文化庁を挙げて、我が国挙げて取り組むべき課題であると私ども常々認識をいたしておるわけでございます。文化芸術の振興の観点から文化力の向上を目指しまして、関係省庁の産業育成政策と連携を十分に図って、また関係業界、関係団体等々の主体性も尊重しながらさまざまな取り組みを進めてきておりますし、今後も進めたいと思うわけでございます。

 具体に申し上げますと、アニメ、映画に関係してまいりますけれども、「日本映画・映像」振興プランというものを文化庁は従来取り組んで、進めてきております。魅力ある日本映画・映像の創造についての支援、あるいは日本映画・映像の流通の促進支援、それから映画・映像人材の育成、普及等の支援でございます。加えまして、映画につきましては、日本映画フィルムの保存・継承についての施策も取り組んでおるところでございます。

 さらに、メディア芸術祭というものを私ども実施しておりますけれども、ここにおきましては、アニメ等、各分野のすぐれた作品あるいはすぐれた功績を上げたクリエーターに対する顕彰、いわば表彰でございますが、を行っておりますし、音楽について申しますと、毎年秋に芸術祭を行っておりますけれども、ここでディスクレコードも対象として、すぐれた成果を上げたものを顕彰するといったことも取り進めておるところでございまして、こういった振興策に従来努めてきたところでございます。

 映画についてもう一点加えさせていただきますと、日本経済団体連合会が設立いたしました映像産業の振興組織、いわゆるNPO法人でございますが、映像産業振興機構との連携にも十分意を用いておるところでございます。

 こういった幾つかの施策を講じながら、文化庁として、大衆文化の振興について、いわば産業育成の支援ということになるんだと思いますが、こういったことに取り組んでおるところでございます。

    〔河合委員長代理退席、委員長着席〕

大谷委員 保存だとか、余り民間ベースで採算とれないようなところで文化庁の役割があるんだということですよね。売れるものと売れないものがあったら、売れないものも文化なんだから、ここはしっかり文化庁が守っていかなければいけないとかというような役割分担なのかなというふうに思いつつ今聞いておったんですが。

 実際、例えば平成十六年、コンテンツ評価・ビジネスモデルに関する調査研究報告書という、調査研究会がやられたもの、これはUFJ総研がやっていますけれども、文化庁のお仕事ですよね。これなんかを読ませていただきますと、映像なんですけれども、映画をつくるのにどうやってお金を調達していくのかという、まさにビジネスモデルまで踏み込んで調査した報告書なんですね。僕はこれはいいことだと思っておるんです。

 質問の形を変えますと、こういう報告書がどのようにして活用されていくのかな、それによって新しい文化庁の役割というものが見えてくるのかなというふうに思っているんですけれども、その辺はどうですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘の研究会は、昨年度、委嘱研究事業で実施をいたしました研究会でございまして、コンテンツ評価・ビジネスモデルに関する調査研究会というのが正式名称でございます。ここでは、外部の制作資金、映画制作の制作資金でございますが、これを導入することを前提にして、映画等の映像コンテンツの制作、流通を促進するための課題について検討をしていただきました。シンクタンクに調査研究委嘱をしたわけでございますが、立派な報告書ができ上がっておると思っております。

 具体には、委員御指摘のように、何よりコンテンツに対する評価方法、これがいわば担保価値になって資金導入にかかわってくると思っておりますが、評価方法の確立が大事だという問題意識をこの研究会では持たれております。そして、その上で、ビジネスモデルのあり方、構築についても検討がなされたわけでございます。

 一部御紹介を申し上げますと、ビジネスモデルのあり方につきましては、資金調達スキームの構築、組合方式がいいのか、特別目的会社方式がいいのか、信託形式がいいのか、そういったことのモデルを示しながら検討が進められておりますし、情報開示についての課題、会計処理やリスク管理についての課題など、課題の整理が細やかにまたは構造的になされて成果が上がっておると思っております。私どもとしましては、この成果をまず普及することが大事だと思っております。

 七月十三日でございますが、コンテンツ流通促進シンポジウムを私ども開催いたしまして、この報告書を中心とした成果の紹介と、具体には、この研究会のメンバーとして検討に加わっていただきました方々のパネルディスカッションも実施をしたところでございます。

 このシンポジウムだけではなく、今後、この成果とシンポジウムの内容も含めまして、私どものホームページで紹介することによって普及を図っていきたいと思っております。一般の方々がホームページにアクセスできるわけでございますが、特に関係業界の方々におかれては、この成果を活用しまして具体的な取り組みが進むことを大きく、強く期待をしておるところでございます。

大谷委員 こういうふうに踏まえていいんでしょうか。例えば、アニメ産業にお働きの方、映画で上映されて記録的なヒットを飛ばすアニメの映画に従事されている方は生活できているんでしょうけれども、ほかのアニメの、例えばテレビ三十分、これはコストが大体一千三百万円かかるんですね。テレビ局には八百万円しか払ってもらえず、残りの四百から五百万円というお金は、いわゆるキャラクターグッズであったり、いろいろなほかの放送以外のところで、もうけないとあの三十分のテレビアニメの元は取れないんですね。

 そういう状況の中、何が発生しているかというと、絵をかくアニメの人がおられます。この方々がよく言われるのは、年収百五十万円ぐらいで、全く好きでやっているだけで、生活できていないような状況にある、いわゆる資本がクリエーター、アーティストの方に還元されていないじゃないかとよく言われるんですね。ですから、この資金調達というものを一つ突破口にして産業構造を変えていこう、そういうところも認識し、踏まえた上で文化庁なりの役割を担おうとしているがゆえに、このような調査研究が出ているというふうに考えてよろしいんでしょうか。

 一番言いたいことは、産業構造をいじるんじゃなくて、いわゆる文化ですから、文化はだれが発信するかというと、アーティスト、クリエーターということになりますよね。この方々のことを一番に考えてこういうことをやっているのか、それとも何か経済産業省とのおつき合いでこういうことをやったのかということなんですけれども、どこに重点を置いてこういうコンテンツの、中身づくりの育成を文化庁がされているのか、一番大事にしているところを知りたいというのが僕の質問の本意なんです。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 文化庁といたしましては、知的創造物の制作者であるクリエーターでありますとかアーティストの立場を最大限尊重した施策を充実してまいりたいというのは基本的な方針でございます。これは著作権にかかわらず、そういった方々の知的活動についていろいろな支援策を講じたいという気持ちが強いわけでございます。

 ただ、先ほど御説明を申し上げましたコンテンツ評価・ビジネスモデルに関する調査研究会の検討課題は、映像等の産業において、例えば大型のプロジェクトを実施する場合に必要な資金調達についてはどういったことがまず基礎として必要か、評価でありますとかいろいろなリスクマネジメントでありますとか、そういった課題の整理をしていただいたわけでございまして、一応課題が別の課題について調査研究をしていただいたものと整理をさせていただいております。

大谷委員 この調査研究は、映画をつくるのにお金がかかるので、音楽なんかと違って何千万、何億というお金がかかるので、それのための調達のものだというのはわかっているんですけれども、これにまで踏み込む、ビジネスモデルというか資金調達まで踏み込むということは、やはりクリエーターのことを考えているんですね、同様にアニメの分野であったり音楽の分野でも、クリエーターのことを一番考えてコンテンツ産業の育成に関与されているのが文化庁なんですねという確認がしたかったということでございます。

 今まで映像の話でしたけれども、次に音楽の話に行きますと、音楽をやっている人はみんなアーティストだ、CDを出していようが出してなかろうがアーティストだというのが、僕は本当の意味で文化立国の日本の音楽だというふうに思うんですね。ある学者、評論家からすると、日本は音楽の楽しみ方が一番上手だ。聞くだけじゃない、歌うと。ほとんどの人は、音楽といえば、聞いて楽しむのではなくて歌って楽しむものだと思っている。世界で一番音楽を楽しんでいるのは日本じゃないか、参加型の楽しみ方を持っていると。これはすばらしいことだなというふうに私は思っておるんです。

 アーティストの方々というのは、アニメもさっき言ったように百五十万円でなかなか食えていない、将来、Jポップ、大衆音楽の中で、ポップミュージックの中で飯が食えるようになる人もいるだろうけれども、ほとんどの人はなれない。好きで、参加型でやっているんだから食えなくたっていいんだという考え方もあるんですけれども、このミュージシャンというものを育てていこうというのも、当然ながら、今までの議論を踏まえると、お仕事ですよね。そうなると、もうかっている人の著作権でもって、クリエートした仕事に対する報酬、対価というものを守らなきゃいけない。

 今度は、こっち側の食えていない人たちの育成というものはどうなっているのかというのが知りたいんです。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 クリエーターやアーティストの育成のためには、生活の安定ですとかさまざまな支援が望ましいことは、委員御指摘のとおりでございます。

 ただ、文化庁として、必ずしも十分な対価を得られていない、そういったクリエーター、アーティストの方々にどういった支援関係の事業ができるかということになりますと、なかなか簡単にはいかないわけでございます。

 本来は、そういった知的創作物に対する対価が利用者から適正に支払われるということが一番望ましいかと思います。利用者は消費者になるわけでございますから、知的創造物に対する評価が適切になされて、公正な利用のもとに適正な対価がクリエーターのもとに届けられるというのが一番望ましいわけでございます。そういったことの円滑な仕組みについては、私ども間接的に支援をしてまいりたいと思うわけでございますが、個々の芸術家もしくは会社に属しておられる方々の報酬等については、それぞれの関係者もしくは関係の会社がまず自助努力をしていただくことが基本ではないか、こう思うわけでございます。

大谷委員 もちろんでございます。無形文化財となっている人間国宝の方々のように、直接、芸能技術を伝承するためにお金をどうぞというふうなことは言っていません。

 やはり、できることは発表する場をつくってあげるということだというふうに思いますので、いろんな人が、売れる売れない、食える食えないじゃなくて、それを飛び越えて発表できる、そういう人たちがたくさんいる日本、音楽を参加型で楽しんでいる、それはカラオケじゃなくて、演奏して楽しんでいるという方々がたくさん自分たちの技術を発表できる場をつくるような努力をぜひともしていただきたい、それは国内だけじゃなくて国外と連携してつくっていただきたい、そういうことを言ってほしくて、した質問でございます。

 最後にもう一つ、もうかっている方の著作権の側の議論なんですけれども、アメリカに比べると、クリエーターの権利の分類というものが違うからいわゆるお金の取り方も違うんだと。しかしながら、一言に一くくりにするならば、著作権だということで一緒だというふうに私は思うんです。

 今一番議論になっているのが、著作権法の三十条、いわゆる私的録音録画補償金制度という問題なんですけれども、これは来週あたりにもう一回小委員会をやって、それで議論の方向性が出てくるというふうに聞いておるんですけれども、六月の三十日に第五回目の議論がされたというふうに思っておるんです。文化審議会著作権分科会法制問題小委員会、五回目が六月三十日でした。

 それの各委員さんの議事録なんかを読ませていただきますと、もうほとんどの委員さんが拮抗していて、例えばいわゆる一番の問題でありますハードディスク内蔵型録音機器を三十条に照らし合わせて、ほかのMDのプレーヤーと同じようにして政令でもって組み込むか組み込まないか、これがいいか悪いかという議論がされているんですけれども、私なんかは読んでいて前田委員のおっしゃっていることが一番わかりやすく、いわゆる録音機器というのは今までのものとは違って、音楽も入るけれども日程も入るしビジネス情報も入れられる、これはコンピューターかもしれない、こっちから見たらやはり音楽の録音機器じゃないか、音楽をつくった人たちに大きくラフに著作権をお支払いしなきゃいけないじゃないかと。どっちから見ているかによって全然出てくる結論が違っちゃうというふうに思うんですよね。

 しかしながら、売られているのは、音楽を楽しみましょうということで売られているわけですから、私は、やはりこの辺、それなりに今までこの私的録音補償金制度がある限りにおいては入れるべきだと。しかしながら、デジタル化が進んでいく中、個別に曲に課金ができていくような技術進歩がどんどんしてきているわけですから、ただ単に入れるんじゃなくて、同時にそういう将来像も描いた中で、いわゆる著作権を、クリエーター、アーティストを守っていくようなことをしていかなければいけないというふうに思うんです。その辺は入れる入れないだけの議論じゃなくて、大きく考えると、どんなような考えで今この議論をリードされているのかということが一番知りたいところでございます。

加茂川政府参考人 御指摘のハードディスクを内蔵する携帯型の音楽プレーヤーの私的録音補償金制度との関係についての課題でございます。

 現在、文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会、委員御指摘のように、日程ももう何回か繰り返して議論をしておりますけれども、この小委員会において今検討がなされておるところでございます。

 この検討に先立ちまして、著作権法に関する今後の検討課題というのを整理していただきまして、その中の課題の一つとして、委員御指摘のハードディスク内蔵型録音機器等を補償金制度の対象機器に加えるかどうかという課題があるわけでございます。

 一部の方々が、権利者サイドを中心にして、当然対象に加えてしかるべきだ、クリエーターやアーティストの権利を守るべきだという意見が強いことも十分に承知をいたしておりますが、現在の法制問題小委員会での検討状況をお伝えいたしますと、私どもは、権利者のみならず製造者の代表にも出席をいただきまして双方から御説明を受け、各委員から意見交換、質疑応答等を行っていただいたわけでありますが、この件に限って申しますと、政令指定機器に加えるべきかどうかはさまざまな意見が出ておりまして、賛成意見のみならず慎重な意見も数多く出されておるというのが現状でございます。

 まだ結論が得られておりませんので、今後の小委員会での検討を待たなければなりませんけれども、私どもとしましては、法整備または法改正といった大きな課題に結びつくものですから、慎重な協議のもとに、やはり関係者の意見の一致する方向でまとめていきたいという基本線を持っておるわけでございます。

大谷委員 この制度ができた平成五年に比べていわゆる技術革新が進んで、私は制度自体が古くなってきたというふうに思っておりますから、川内委員なんかがいつもおっしゃっているように、クリエーター、この方が権利者でありまして、そして我々消費者というものとの距離が短くなればなるほどすばらしいわけでありまして、そのためのデジタル化のもとでの新しい枠組み、公平な著作権のビジネスモデルというものを議論しつつ、この制度がある限りは、やはり音楽を録音して聞くんですから、私は、入れるのが一番だれにでもわかる公平な法の解釈ではないのかなというふうに思っております。

 いずれにせよ、濶達な議論のもと、デジタル化していく中、この音楽の録音だけにかかわらず、ほかの分野でも似たようなことがいっぱい出てくると思いますので、その一つの先鞭をつけるような気持ちで、広い議論のもとに御判断をしていただきたいというふうに思います。

 最後に一つだけ、時間がないので大臣に申し述べさせていただいて、終わりたいと思いますが、今議論をしてきて、いわゆる文化の役割が高くなってきたと。

 総理の方の文化外交を推進する懇談会の中では、文化外交推進会議を政府の中に設置して、外務省や文部省や専門家や有識者というものを一緒にして戦略性を持って発信していこうということなんですけれども、やはりこうやって聞いていると、予算が少ない、それを拡大していかなければ、大きな役割を文化財保護であったりコンテンツの育成の中でできないということでございます。

 それを文部科学省や文化庁一個でもって予算を予算をと言ったって、なかなかとれるような甘い経済状況に我が国はないわけでありまして、やはりチームで一緒になって、それでもってこういうことをやる必要があるんだというものを、何個かの省庁、何個かの関係者、こういうチームをつくった上で要求していくことがやはり必要なんだというふうに思います。

 そんなときは、外務省はもちろんですけれども、この文化外交、文化とつけるときに、こういうことをやってほしい、こういうことをやらなければいけないという、持ってきた経験から生まれた知識を大いに使っていただいて、リーダーシップを発揮していただきたいということを申し述べまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 奥村展三君。

奥村委員 いよいよ夏休みが始まろうとしているわけでありますけれども、どうぞ事故が起こらないで、そしてびっくりするような事件が起こらないでほしいなというのは私一人ではないと思います。本当に最近はあらゆるところで青少年の事件が勃発をいたしております。唖然とするようなことばかりが起きているわけでありますが、これを最終的には教育が悪い、そういうようなことでまとめてしまって終わってしまうような論調もあるわけでありますけれども、本当にそういうことでいいんだろうかなと。社会全体が今、何か寂れて、心寒い思いをする日々であります。

 中山大臣、いろいろと学校現場に出向いていかれて、その思いを見てこられて、反映をしていこうということで施策にいろいろ取り組んでおられると思います。一番大事な教育という中で情熱を持っておやりをいただいているのに敬意を表したいと思いますが、しかしこれは、青少年問題一つを取り上げましても、文部科学省だけで事おさまる問題ではないわけですが。

 ここで、中山大臣、青少年育成といいますか、いろいろな問題も起きているわけですが、青少年に対する所見をまずお伺いいたしたいというように思います。

中山国務大臣 奥村委員が御指摘になりましたように、最近、青少年が巻き込まれる事件が多発しておりまして、心を痛めておるところでございます。子供は社会の宝、国の宝であると総理もおっしゃっているわけですけれども、未来に向けてみずから行動して、そして新しい時代を切り拓いていく心豊かでたくましい日本人の育成、これについて社会全体でやはり取り組んでいく必要があるんじゃないかな、そういう思いを日々強くしているところでございます。

 青少年の育成につきましては、まず、青少年の問題は大人の問題であるという視点に立って、大人自身の自覚と責任ある行動を果たすということが大事だろうと思いますし、また、家庭、学校、地域がそれぞれの役割と責任を果たしつつ、相互に連携しながら総合的に取り組んでいくということも必要だろうと思うわけでございます。

 そしてまた、教育、福祉、労働といったさまざまな分野、これが密接に連携して協力しながら取り組むことが重要である、このように考えるわけでございます。今委員が御指摘になりましたように、まさに全体として取り組む必要があるということで、政府におきましても平成十五年の六月に、内閣総理大臣を本部長といたしまして全大臣を構成員といたします青少年育成推進本部というのを設置いたしまして、十五年の十二月に、青少年の育成に係る政府の基本理念と中長期的な施策の方向性を示しました青少年育成施策大綱を作成したところでございます。

 文部科学省におきましては、この大綱を踏まえまして、関係省庁と密接な連携を図りながら、家庭と学校とそして地域を通じた青少年の健全育成を推進しているところでございまして、今後とも、青少年の健全育成施策の一層の充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。

奥村委員 命の大切さあるいは人間の尊厳、そういうもののことについてはやはり教育の現場でしっかりと小さなときから教えていく、そしてまた命の大切さあるいは人間としての尊厳を、しっかりと家庭内でもお互いに思いを持って教育をしていくというのが大事だと思うんです。

 最近はやはりいろいろ思うんですけれども、何か命がおろそかといいますか、簡単に少年が、もちろんしてはならない、両親を殺したり友人を殺したり、いろいろなことが起きているわけですね。そしてまた、事件そのものをこうして見ましても、本当にびっくりするような事件が起きているわけなんですが、そういうことを思いますと、やはり命の大切さというものをもっともっと教育の現場でも家庭でもしていかなければならないのではないかなというように思います。

 今大臣も、家庭、学校、地域とおっしゃいましたけれども、私は、もちろん地域の中に入りますけれども、職場というものもやはり大事であろうと思うんです。これは、お互いに子を持つ親として悩み事、いろいろなことがあるわけなんですけれども、そういうときにも、やはり職場でもそういう話題を持ちながらみんなとお互いに悩みをわずかでもなくしていく、そういうようなことも、もっともっとやはり企業の中でも心のつながりというものが大事になってくる。それがひいては生産や、あるいは会社としての形態の中に生まれてくるのではないかなというような思いをしているわけでございます。

 今大臣が推進本部、要するに平成十五年六月十日に内閣総理大臣を中心としてというお話をされました。いかがですか、この平成十五年六月十日から推進本部が設置をされたわけですが、きょうまで何回ぐらい開かれたでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 青少年育成推進本部、これは先ほど御答弁申し上げましたように、内閣総理大臣を本部長とし、閣僚がメンバーになっているものでございますけれども、設置以来、私どもが承知している限りでは二回でございます。

 そのほか、青少年育成推進本部の副本部長をもって、これも大臣級でございますけれども、構成する会議、副本部長会議がございますけれども、これは四回開かれているところでございます。

奥村委員 ありがとうございました。ちょっとびっくりしました。

 今国民の話題というか、どうなっているのと言われている郵政民営化。内閣総理大臣が本部長をしながら二回しか開かれていない。副本部長会議でわずか四回しか開かれていない。社会の中でいろいろな事犯が起き、不安な、そして夢を持っている青少年がいろいろなことを思いながら行動しているにもかかわらず、そういうことを置き去りにして、郵政民営化、十年や十五年先の話ばかりを今国会で論じていることすらが私は基本的に間違っている。

 本当に現実的なところに終始をして、何か事件が起きれば、総理が本部長ならば、この青少年はこういう事件を起こしたけれども、今後は二度とないようにあらゆる関係、総合的に力を合わせて措置していきます、あるいは善処していきますということを国民に訴えてほしいと思うんです。対策を述べてほしいと思うんです。

 もう相当前になると思いますが、アメリカで少年の猟銃事件がありました。そのときにブッシュ大統領はみずからがテレビで、こういう事件は起きたけれども、もう二度と起こらないように、周辺の皆さん、そして国民の皆さん、安心してくださいということを堂々とテレビで自分の思いを話されたことを私は覚えています。

 やはりそういう一つ一つのときの問題についても、国を挙げて対処をするべきだ、それこそ育成推進本部ができた、そこに私は意義もある、そしてそれを具体的に進めていくのが当然であるというように私は思うわけであります。

 ぜひ、中山文部科学大臣も副本部長としてその中におられるわけですし、そういうようなことで推し進めていただきたいと思いますが、いかがですか。

中山国務大臣 御指摘のように、この青少年育成というのはこれはもう国を挙げて取り組むべきでございますし、また郵政民営化も大事でございます。しかし、青少年育成も大事だ、こう思っています。

 やはり政治というのは、目の前のことだけではなくて、二十年、三十年後の先のことまで考えなければいけない、両方考えていかなければいけないところが政治の難しさであろう、こう思うわけでございますが、私もその一員でございます推進本部がもっと活性化するということは大切かもしれません。

 ただ、いつもいつも総理のもとでそういうことをやらなくても、各省庁がそれぞれ責任を持って自分の所掌分野をしっかりやっていくということも大事だろうと思うわけでございまして、時折集まりまして、どういうことをやっている、これからどうしなければいけないかということを協議しながらそれぞれが責任を持ってやっているというのが現状である、このように認識をしております。

奥村委員 ぜひそのようにお願いをしたいと思います。国が何もかも、あらゆる地域、あらゆる細かいところまで目が届くはずはありません。しかし、大綱というものができて、それが本当にしっかりと根づいていくようにしていただきたいというように思います。

 十四日の日だったでしょうか、警視庁と東京都が日比谷公会堂で二千人ぐらいを集められて、そして、やはり夏休み前、青少年の防犯について運動展開をなされたようです。そのときに、学生さんあるいはボランティアの皆さんとともに地域を挙げて、都を挙げて犯罪防止をやっていこうというキャンペーンをなされたようです。

 そういうことはそれぞれの都道府県でおやりだと思うんですが、国の方針として大綱がある以上、こういうことでしっかりとしたルートでおやりいただける、そういうことがやはり私は一番の基本であると思いますし、本部長である総理が、国の宝である青少年に、大きな夢を持っているそういう子供たちに、しっかりと方針あるいは思いを私は持ってほしいなと思います。郵政の民営化ばかりの話はもうやめていただきたいなというふうな思いをしているわけなんです。

 私もちょっと不勉強であれだったんですけれども、先ほどおっしゃった十五年十二月の九日に大綱ができたようでありますけれども、青少年をゼロ歳からおおむね三十歳未満までの者というのが定義にあるようで、これは僕全然知らなかった、おおむね三十歳のところまで、ああそうか、青年の話だなというようなことで思って、乳児期からずっとこうあるわけなんですけれども、不勉強を今さらちょっと反省したわけであります。

 いろいろこの中にあるわけなんですけれども、大綱の概要はずっとつくられているわけなんですけれども、やはり年齢ごとの基本的な方向といいますか、幼児期だとか学童期だとかいろいろなことがやはり必要になってくるんですけれども、こういうことを具体的に何か推し進められていることがありますか。あればお聞かせください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘いただきました青少年育成施策大綱、年齢期ごとの施策の基本的方向を出しているというのが一つの特徴であるわけでございます。

 お話しありましたように、乳幼児期、学童期、思春期、青年期、これはゼロ歳から三十歳未満というものを区分しているものであるわけでございます。

 乳幼児期につきましては、親や特定少数の人との深い愛情的きずなを形成することが基本であるということの前提に立ちまして施策を進めるべきだということでございます。文部科学省におきましては、これらを踏まえまして、家庭教育に関する手帳でございますとか学習の機会というようなものを提供しているということでございます。

 また、学童期につきましては、体力、運動能力を身につけ、多様な知識、経験を蓄積していく時代であるというふうに位置づけているわけでございます。この時期におきましては、やはり学力を定着させる、学力を習得するほか、また日常生活能力の習得や健康の確保、増進ということで、学校教育、社会教育を通じまして確実な成長のための準備をしていく、いろいろな体験活動というものの提供も重要なことであろうかと思います。

 そのようなことが一つの例でございますけれども、年齢期ごとの施策を踏まえた各省での対応ということを私どもの方もやっているところでございます。

奥村委員 ありがとうございます。

 確かにその年齢期によっていろいろと大切な時期でありますから、しっかりとした指導をしていただきたいと思います。しかし、今おっしゃったように、これはもう文部科学省だけでできるものではないんです。やはり総合的に物を考えていかなければなりません。ぜひ、先ほど大臣から御答弁いただきましたが、この大綱ができて、本部ができて、それは確かに総理はあらゆる分野で推し進められておりますから、これだけに注視するわけにいかないと思います。しかし、お聞きすると、この本部ができてわずか二回しか会議が開かれていない、あるいは副本部長会議でもわずか四回しか開かれていない。本当は開かない方がいいわけなんですけれども、しかしその都度その都度やはり対応していく、いろいろな事件が起き、いろいろな問題が起きたときにやっていくということが大事だと思うんです。

 私の経験なんですけれども、私が県会議員をさせてもらっているときに、就学前教育の連絡協議会というのがありまして、幼保のいろいろなあれがあったんですけれども、それの本部はどこにあるんやと聞いたら、実は総務部の中にありまして、副知事が本部長です、こう言われたもので、年何回ぐらいその会議はしておられるんですかと聞いたら、いや一回しか開いておりません、こう答弁があって、今とよく似た答弁なんです。それで一体就学前教育をしっかりできるんかなというような思いをして、がんがんやって、毎年もっと開いてくれということを言ったんです。

 やはり私は、三つ子の魂百までと言われますけれども、乳幼児期の保育所あるいは幼稚園に来ている子供たち、純真な、本当にこれから夢を持っていく子なんですが、そのときの保護者、お母さんやお父さん、御家庭の方もやはり大きな期待をしています。しかし、それが小学校あるいは中学校に行ったときに、いろいろな事件を起こす子がおります。それを考えますと、振り返ってみますと、やはりそのときの家庭環境が大きく物語ってくるというのは現実にあるわけなんですね。

 私もそれを現実に今日も体験しているんですが、小学校の先生やあるいは中学校の先生によく言うんです。一度でいいですから、保育所や幼稚園当時の担任の先生と、プライバシーの問題もありますよ、しかしそのときの話を一遍聞いたらどうですか、そのときの家庭環境はどうだったの、小学校のときはどうだったのというようなことで、やはりその子の指導の糧にしてあげていってほしいというようなことで、いろいろなところでお話しし、やはりそれを参考に指導しているという先生もおられます。

 ですから、今大事な青少年のこういうときですから、問題ですから、ぜひそういうようなことも私は取り入れてほしいなということで、就学前教育のそういう問題も聞いたことがあるんですが、今、私見で申し上げましたけれども、ぜひこの大綱に従って本部で御苦労いただくことをまずお願いしておきたいというように思います。

 さて、私も本院に当選させていただいて、来たときに、スポーツのいろいろなことをやってきたものですから、我が党で現在もスポーツ担当ということでいろいろお手伝いをさせてもらっているんですが、どうも、皆さんどう思われているかわかりませんが、文部科学省の組織の中にスポーツ・青少年局、一体これは何や、青少年というのは物すごく大事な、今申し上げたようなことがあるのに、スポーツとどこでひっつくんやろうなと。

 青少年の、国民の心と体の健やかな成長とかいうようなことが定義になっているようなんですが、これは省庁再編のときに、文部省も御多分に漏れず科学技術庁と仕事が一緒になられたわけなんです。このときに大臣官房及び七局になったわけなんですけれども、スポーツと青少年局、大事ないろいろな問題が起きている青少年局と何でこんなものが一緒になるんやろうな、これは私の個人的な思いかもわかりませんが。

 私はやはり青少年局、総合的に教育の中でやっていかなければならない。これは今申し上げたいろいろな議論をした中の、総合的にやっていかなければならないが、青少年の教育という一つのベースと考えますと、やはり独立してあるべきではないかなというように私は思うんです。

 そして、スポーツというものは、これは以前は体育局でしたけれども、やはり国民のスポーツ、競技スポーツではなくて国民の健康、学校保健だとかそういう国民全体の健康をしっかり保持する、それを増進していく、そういうものが体育局であったと私は思います。時代の流れでスポーツというものが使われているんだと思うんですけれども。

 やはりこれはこれとして、今、スポーツはスポーツで進めていかなければならないと思うんですけれども、そういうようなことを思いますと、私はどうもこのスポーツ・青少年局というのにこだわっているんですけれども、大臣、どう思われますか。私はこれにこだわり過ぎているんですけれども、何か御意見があったら聞かせてください。

玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 中央省庁再編に係る経緯にかかわりますので、ちょっと私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 十三年に省庁再編が行われたことはもう委員御案内のとおりでございますけれども、そのときに、青少年健全育成行政をどういうふうに持っていくかということが一つの課題になりまして、旧総務庁の中にそういう所掌もあったわけでございますが、そのときに、中央省庁再編にかかわりましては、青少年健全育成行政に関する総合調整、これは総務庁の事務の一部にもあったわけですが、それは内閣府に持っていこうということで、先ほどのような全体的な組織もやはりできてくるわけでございます。同時に、総務庁にありましたそれ以外の事務、健全育成に関する事務、つまり、青少年健全育成を推進する事務だとか体力づくり関係の事務があったわけです。これは新しくできます文部科学省が担うというような省庁再編を行ったわけでございます。

 したがって、これらの事務を含めて、新しい文部科学省がどのような組織になるべきかということを省として検討いたしまして、青少年の健全育成推進に当たりましては、やはり青少年の心身の基礎をつくる学校体育、健康教育、それとスポーツ活動を初めとする学校外の体験活動等が重要な役割を果たすという観点から、これらを一体的、効率的に推進していく観点に立って、御指摘のとおり旧文部省時代には体育局でございました、そこが所掌します学校体育等のスポーツ関係の事務に加えて、青少年教育というのは生涯局にございました、それを新しく持ってくる。それから同時に、先ほど申し上げました旧総務庁の事務、青少年健全育成推進、体力づくり関係事務、これらをあわせてスポーツ・青少年局というふうな形で設置をさせていただいたわけでございます。

奥村委員 そのようにお話をなされると思っていました。確かに、いろいろ過去の経過はあったと思います。省庁再編。しかし、今の社会と同じようにリストラで減らしていくことばかりがいいんだろうか。

 実際に、それぞれの部署で拡充して、逆にそれを拡大して充実させていくということも私は省庁再編の大きな意義があると思うんです。何もかもひっつけてスポーツと。それは確かに、健全育成の中に健康な体を入れなければならない、わかります。しかし、今のいろいろな青少年の問題がこれだけ勃発をしているときにスポーツと。そして、私はいつも素川さんがこの委員会で答弁をなさるときに、不思議なことやなと。スポーツの話を聞いたら、そのことについて答弁をされている。本当に大事な、社会問題になっている青少年のそんなことに、スポーツ・青少年局長って一体何やねんと。あんたが悪いと言っているのと違うんですよ。その組織は一体何やねんと。

 もっと国民から見ればしっかりとわかる、国を挙げて青少年の問題を心してやっているんだというようなことと、そして一方ではスポーツ、いろいろなことで国民の健康を維持するためにやってもらわなければなりませんし、今度、ナショナルスポーツセンターをおつくりいただくようです。オリンピックあるいは世界選手権や、いろいろな選手の養成も大事です。しかし一方では、地域のそういうスポーツ振興等を推し進めていただかなければならないというように思います。

 以前にも城井さんも質問なされましたし、私もしましたが、同じ所管の中にtoto、要するにスポーツ振興券も一緒に売っているわけですね、この中に。所管事務としてやっておられるわけですね。言葉は悪いんですが、ばくちをやっているところを所管されているのと、片方で青少年健全育成と言うてはるんですよ。ちょっと私は矛盾はせぬかなというような思いをするんですが、こういうことを考えますと、やはり省庁再編で縮小ばかりがいいのではなくて、しっかりともっと充実をしたそれぞれの部署をおつくりいただきたいというように私は願いを持っているんですが、最後に大臣の所見をお伺いして、終わりたいと思います。

中山国務大臣 青少年健全育成ということを考えましても、いろいろな切り口があるんだなと思うわけですね。やはり青少年が素直に育つためには、学力もつけなければいけませんし、健康、体力の増進も必要だし、また、悪いことをしないようにとか、いろいろなものがあるわけでございまして、どういうふうに切っていくのかというそういう切り口の問題かな、こう思うわけでございます。

 今事務方が答えましたように、スポーツとかあるいは生活体験、そういったものを通じて健全な青少年の育成をするんだ、そういうことからスポーツと青少年が一緒になっている、こう思うわけでございます。

 確かに別々にやればいいんでしょうが、別々にやってもまたどこかでまとめてやらなければいけない。先ほど言われましたように、総理大臣のもとになかなか集まらないんじゃないか、こういうのと同じで、大変難しい問題もございます。一方ではまた行革という大命題もあるわけでございまして、省庁再編のときにそういったことを総合的に考えて今のような体制になったんだろう、こう思うわけでございます。

 それがまた前提でございますから、私たちは、その中でいかにして青少年を健全に育成するか。文部科学省として、スポーツだけではございませんが、すべてひっくるめて、次代を担う青少年の健全な育成に総合的な力でもって取り組んでいきたい、このように考えておるところでございます。

奥村委員 ありがとうございました。

 ぜひ、今大臣からお述べをいただいたように、総合的に、スポーツも、あるいはもちろん青少年、一番大事なあれですから、そういうことも踏まえてですが、ぜひ、以前にも申し上げましたように、文部科学省が省庁の中で一番夢のある省庁だと私は思うんです。だから、職員さんも、全部、やはり意気揚々とした行動であすからもこれからも頑張っていただきたいことをお願いして、終わります。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 国会も終盤を迎え、十八年度の予算に進みつつあります。きょうは、そういう意味で、予算というのは大変大切だというふうに思いますので、私の意見と申しますよりは、公明党の文部科学部会でさまざまな検討、審議をしてまいりました、十八年度に向けてどういう教育政策であってほしいかをお話しし、大臣の御賛同を得たいというふうに思っております。

 お金がなくてはいい政策をすることはできませんから、予算を考えるということは政策を考えるということだと思います。

 中山大臣は、このごろタウンミーティングにたびたび御出席でございます。私は、それを大変いいことだなと思っております。私たち公明党は、まず現場をよく見ること、現状を把握し、そこに生きている人たちが何を望み、どういう政策を願っているのか、そういう視点から政策決定をするように、私はこのことをすごく大切にいたしております。

 時に机上の空論は、国民にとって必要ではない政策になってしまうこともあると思います。私たち政治家は国民の生命、生存、生活を担っておりますから、そういう意味では責任が重いと思っております。特に教育現場においては、二十一世紀を担う科学技術の進展はどうなのか、そこで研究している科学者の環境整備は果たしていいのだろうか、あるいはまた小学生、中学生が何を渇望し、何に失望し、そして何を求めているのか、そういうことを知ることによって初めていい教育政策が出てくるのではないかと思います。

 そういう意味で、私は、十八年度の骨太の方針にも入れていただきましたけれども、三つの体験、子供たちに体験活動をさせたいと願っております。一つは自然体験であり、一つは職業体験、一つは文化芸術体験でございます。それぞれに、局別に細かくそのことについてお伺いしたいと思います。

 まず自然体験です。

 私どもが武蔵野市の市長をお呼びいたしましたときに、武蔵野市では小学校五年、中学校一年生を一週間農村漁村に連れてきて合宿生活をしております。どうしてそうするようになったかというと、言うまでもなく、子供たちを取り巻く環境は決して良好ではございません。テレビゲームをする、あるいは人と人とのつながりが薄い。正義感とか生命の大切さ、そういうのは幾ら道徳で教えても身につかないのではないかと私は思っております。

 命が大切よといっても、私たちの周辺には命のあるものというのは少ないです。うろうろしているのはゴキブリだとかカラス、ゴキブリはつぶしちゃう、カラスは追い払っちゃう、その中で生命は大切ですよなんて言ったって、では、一体それはどういうことなのだろうかと、子供は体で感じることはできないと思うんです。私は、長女の子供がしておりますテレビゲームを一緒にいたしましたら、まあ、何とテレビゲームというのは殺すんですね。いち早く殺すことが勝ちなんです。こればかりをやっている子供たちが、殺すということに対して安易になっていくのは当たり前なんじゃないかというふうに感じました。

 一週間合宿することによって、体で寒いんだとか暑いんだとか、あるいはきらきら輝くお星様を感動を持って見詰める、あるいは、今の子供たちというのは一緒にお風呂に入るというのは抵抗がある、そういう合宿でけんかをしたりいじめに遭ったりしながら人と人とのつながりを持っていくんだと思います。

 こういうお話をいたしますと、教育委員会の方々は、とってもいいと思う、だけれども、事故が怖いんだとか、経費がかかり過ぎるじゃないかと。武蔵野市でも一週間行くと一人に七万円かかるのですが、初中局ではこの自然体験というのはどういうふうにしていらっしゃるのか、現状をちょっと伺いたいと思います。

銭谷政府参考人 自然体験活動についてのお尋ねがございました。

 子供たちが学校教育を通じて長期間の自然体験活動を行うということは、豊かな心を持つ子供を育成する上で極めて意義のあることだと考えております。お話のございました武蔵野市のセカンドスクールなども、子供たちに協調性や連帯意識を養うという意味で大変成果を上げていると承知をいたしております。

 実は、平成十三年に学校教育法の改正を行いまして、自然体験活動を含めた学校における体験活動の積極的な推進を図るということが定められたところでございます。現行の学習指導要領においても、総合的な学習の時間や特別活動において体験的な学習の充実を図っているところでございます。

 文部科学省におきましても、一つの事業といたしまして、平成十四年度から、豊かな体験活動推進事業というものの中で、長期宿泊体験推進校などを指定いたしまして、長期にわたる集団宿泊等の共同生活を通して自然体験を実施するなど、他校のモデルとなるような活動を充実させるための施策を推進しているところでございます。今後とも、これらの施策を通じまして、学校における長期間の自然体験活動の充実を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

池坊委員 今までやっていらっしゃるのは、私どもから見れば、もう本当に物足りないんですね。ただやっているということを見せておかなければというふうにしか感じられません。来年度に向けて、もっともっと予算をとって頑張ってほしいと思いますが、どうですか、局長。

銭谷政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、長期間の宿泊を伴う自然体験活動は教育的にも大変意義のあることだと思っておりますので、私ども、来年度に向けましてしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

池坊委員 私どもは体験活動を推進する議員連盟もございますので、局長はそれを踏まえて、今きっちりとやると言われましたから、この言葉を忘れないでいていただきたいと思います。(拍手)

 たくさんの拍手も今いただいておりますから、これも忘れないでください。

 それから、二つ目に、職場体験活動について伺いたいと思います。

 今、御承知のように、ニートというのが社会問題になってきております。昨年の労働経済白書では、フリーターの数が二百十七万人と推定されております。ここ十年で倍以上になっております。ニートというのは、雇用も教育も、それから訓練もされていない人たちだそうでございまして、本年三月の内閣府の調査では八十五万人と言われております。これは、自称家事手伝いの中には無業者が相当数含まれるということで、家事手伝いを含めて再集計いたしております。

 これは厚生労働省でも、ニート、特に若者のニートの数を減らすべくいろいろな政策を打ち出しておりますけれども、私は、これは教育が非常に大きくかかわってきているのではないかと思います。高等教育においてインターンシップなどをやっておりますが、高校になってから初めてやったのでは遅過ぎると私は思います。小学校、中学校から職場体験活動をすることによって、働くことの大変さ、難しさ、そしてとうとさ、それから、人間が生きていくために、社会とかかわっていくためには職業を持つということが必要なんだということをやはり体で覚えていかなければいけないと思います。

 兵庫県では、トライやる・ウイークという名称で既に導入されております。また、富山県でも十四歳の挑戦というタイトルで国公立の中学二年生が五日間職場体験をしております。そして、大変いい成果を上げておりますが、この職場体験活動について伺いたいと思います。

銭谷政府参考人 職場体験活動についてのお尋ねでございました。

 今、ニートやフリーターのお話もございましたけれども、子供たちが小中学校の段階から働くことの意義や目的、職業と職業生活などについてきっちり身につけていく、考えていくといういわゆるキャリア教育は、これからの教育を考える上で大変大切な内容であるというふうに私どもも思っております。しかも、そのキャリア教育を、いわば体験的な機会を活用して実践していくということが非常に重要だと思っております。

 今、先生からトライやる・ウイークのお話がございましたけれども、文部科学省としてもこういった職場体験活動を全国的に展開しようということで、本年度から、地域の協力体制を構築しながら、中学校を中心とした五日間以上の職場体験を行うキャリア・スタート・ウイーク事業を実施しているところでございます。私どもといたしましては、この事業を通じまして、今後、平成十九年度までに全国の公立中学校約一万校での取り組みを予定し、義務教育段階における職場体験の充実に努めてまいりたい、かように考えている次第でございます。

池坊委員 生涯学習政策局はいいですか、何にもないですか。私は、ぜひ職場体験活動をもっともっと推進していただきたいと思います。

 三つ目の柱は何かというと、文化芸術体験活動です。

 不登校児というのは、十四年度は十三万千二百五十二人でした。十五年度になって少し減りまして、十二万六千二百十二人になりました。また、公立小中高等学校の児童生徒の自殺数は、十四年度は百二十三人、平成十五年度は百三十七人になりました。

 私は、子供たちがいじめに遭って死にたい、そういうときに、本物のコンサートに行く、あるいはオペラを見る、あるいはバレエを見る、もしかしたら、ああ、もう一度生きてみようかな、そういう気持ちになるのではないかというふうに思うんです。感受性豊かなときに本物の芸術に触れるということは、子供をより豊かに成長させるだけでなくて、生きる気力をよみがえらせる力を持っているというふうに私は思っております。

 私も時間がある限りいろいろなミュージカルに行っておりまして、劇団四季の「夢から醒めた夢」を見に行きましたときも、修学旅行の学生たち、中学生が来ておりました。また、梅原猛さんの「ヤマトタケル」を見ましたら、やはり修学旅行が来ていて、私のことですから、どう思うと言ったら、すばらしいな、こんなの初めて見たと。装置も大変に感動的で、大装置なんですね。今まで見たことがない、それを見て、新たなる感動を子供たちは持っておりました。

 私は、修学旅行でディズニーランドに行くのもいいけれども、ミュージカルあるいはコンサート、オペラ、そういうものを、年に一回はやはり本物の芸術に触れさせたいというふうに思っておりますけれども、文化庁はどういう取り組みをしていらっしゃるかを伺いたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 文化芸術体験活動にかかわって、子供の生きる気力にも資するのではないかという委員の御指摘がございました。

 特に、義務教育段階におきます文化芸術体験活動を推進することは、私ども、とても重要な課題だと思っております。それは、文化芸術を愛する心を子供に育てる、涵養できるということのみならず、子供たち一人一人の感性を豊かにできること、さらには、豊かな情操を養う上で大変効果があると思うからでございます。

 文化庁としましては、こういった意義を踏まえて、特に小中学生を対象として幾つかの事業を実施しております。

 一つは、オーケストラあるいはバレエ等の本物の舞台芸術を学校の施設で巡回公演するなどの機会を確保する事業でございます。また二つ目には、茶道、華道、郷土芸能などの伝統文化あるいは地域の特色あるさまざまな文化芸術活動に継続的に触れ、体験できる機会の提供、これは学校外のいわゆる伝統文化子ども教室の事業でございます。そして、芸術家が学校に赴きまして、みずからのわざ、体験を披露したり指導したりしてもらう活動の推進でございます。

 こういった事業を通しまして、子供たちのいわゆる感性教育に資することができるのではないかと考えておりますし、特に、学校訪問の件数は必ずしも十分な数とは言えませんけれども、参加者からは、例えば、ふだんの授業の学習ではできない、すばらしい生きた体験ができたといった反響高い声、評価も寄せられておるわけでございます。

 このうち、十七年度の予算について申し上げますと、二番目に申し上げました伝統文化子ども教室の拡充を図るなど、私どもは子供の文化芸術体験活動を推進するための施策の充実に努めているところでございまして、今後ともこの方向で頑張っていきたいと思っております。

池坊委員 ぜひ、文部科学省は、十八年度はこの三つの柱を大切にしていただきたいというふうに思います。

 今、学力低下ということが言われておりますが、問題になっているのは学力低下ではなくて学ぶ意欲の低下なんだと私は思います。気力がないんだと思います。大臣は、この間、学力をもっともっと身につけさせなければいけない。私はもちろんそうだと思っておりますが、でも、総合学習時間の見直しというのは、時間の見直しではなくて内容の見直しだというふうに私は思っております。

 一体、学力というのは何なのか。学力の中には、ただ知育だけがあってもだめなんだと思います。それらの知識をもとにして、みずから問題提起し、問題解決する能力がなければ、知識を駆使できる能力がなければ、知識だけあっても何にもならないというふうに私はいつも思っているんです。学力は、余り国際平均から見たって、日本の子供たちが劣るとは思いません。劣っているのは何かといったら、それは気力なんだと私は思うんです。将来の夢がないとか、何のために勉強すればいいか、そういう動機づけがないとか、さまざまな無気力感を今子供は持っております。私は、学力の中には、社会に貢献するとか、教養とか、それから知識をもとにした人間性、そういうものがあって初めて学力じゃないかと思っております。

 ですから、そういう意味では、文部科学省は抜本的に、どうしたら子供たちが生き生きと生きられるのか、将来に向かって夢を持って勉強できるのか、そういう環境づくりをすることが文科省の果たすべき大きな役割というふうに私は思っておりますが、大臣の御所見、そして御決意をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 体験活動ということについて三つのことを提案されたわけですけれども、自然体験、職場体験、文化芸術体験。私、自分のことを思い出しますと、小さいころは、夏は川、冬は山、家に帰れば農家の手伝い、そういう意味では自然体験と職場体験をいっぱいしたんですけれども、文化芸術体験というのが、たまに来るサーカスを見るぐらいだったかなと思って、今言われましたように、もう少しオペラだとかそういったものを見る機会があれば、もっと違う人間になれたんじゃないかなと思うことがあるぐらいでございまして、やはり豊かな心を持つ子供を育成する上で、今言われました三つの体験、生活体験、本当に大事なことじゃないかな、こう思っております。

 それと、私、先ほど言われました武蔵野市の第二小学校というところに行ってきたんです。子供たちのセカンドスクールの体験等を聞かせていただきましたが、子供たちが集団で行動するときはチームワークが必要なんだ、あるいは地域のよさが理解できたとか、また保護者の方からは、セカンドスクールから帰ってきたら急に何かしっかりしてきたとか、そういった評価を聞いたりいたしまして、やはりこういうふうな体験活動というのは非常に大事なことだな、こう思ったところでございます。

 これを総合的な学習の時間でやっているわけですけれども、私も、今、池坊委員が言われましたように、学力だけを重視しているわけではありません。しかし、学力がなければすべてのことを学ぶことができない。学力といいますけれども、これは学ぶ力であり、学ぶ意欲ではないか、こう思うわけでございます。そういう意味で、いかに日本の子供たちに、もっと意欲を持っていろいろなことにみずから取り組んでいく、そういう意欲、やる気を持たせるにはどうしたらいいんだ、そういう観点から、私は、教育改革といいますか、そういうことを進めていかなければならないんじゃないかな、こう思っております。今御指摘がありましたように、今後とも自然体験、職場体験、文化芸術体験などさまざまな体験活動を推進いたしまして、命の大切さを理解し、そして豊かな心を持つ子供たちをはぐくんでまいりたい、このように考えております。

池坊委員 自然体験、職業体験をなさったから、今日の中山大臣の御存在がおありになるんだと思います。ですから、どうぞ、せっかく次世代を担う子供たちの教育行政の最大のトップにおなりになったのですから、どうぞ大臣のときにこの十八年度の予算をしっかりととっていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ちょっともう一回、しつこいようですが、お伺いしたいと思います。

中山国務大臣 後で出てまいります文化関係の予算等も含めまして、文部科学関係の予算獲得には全力で取り組んでまいりたいと考えております。

池坊委員 私たち公明党は、少人数教育システムというのを提唱いたしております。これについて大臣の御意見を伺いたいと思います。

 少子化が進む中、学級編制というのは、画一的ではなくて、学校現場の裁量に任せたらいいのではないかと思います。それぞれの学校が、生活指導を必要としているところ、あるいはそういうことはきちんと家庭の中でされている学校、さまざまな事情があるのではないかと思っております。第七次定数改善というのが終わりまして、来年は第八次定数改善に向けて進まなければならないと思います。さっきも申し上げましたように、不登校の子供の数が減りましたのは、あるいはきめ細やかな習熟度別授業、指導、少人数指導などがあるからではないかと思っておりますので、こういうことを踏まえまして、私は、学級編制は弾力的にその現場で決めるという少人数教育システムをよしといたしておりますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

中山国務大臣 次期の定数改善計画をどうするかにつきましては、五月十日の中教審の義務教育特別部会の審議におきまして、新しい改善計画を平成十八年度から間をあけずに実施するべしという意見があったことを踏まえまして、ただいま有識者によります専門的な調査研究を行っているところでございます。

 まさに今委員が御指摘ありましたように、画一的ではない、現場の実情に応じた定数配置が望ましいという点につきましては、私、常々、現場主義ということを申し上げているところでございまして、非常に大事なことだ、こう思っていますので、この点を十分踏まえて今後の検討を進めてまいりたいと考えております。

池坊委員 大臣の力強い御意見を伺いまして、現場主義というのは公明党がいつも言っておりますことと同じでございます。現場を大切にすることなくして政策というのは決められてはならないというふうに思っております。

 今、大変心強い御決意を伺いましたので、ちょっと文化庁予算についても。

 私ども公明党は、文化芸術振興基本法も全力で成立に尽力してまいりました。常にいつも国民一人一人が、子供たちもそれから地域社会の人たちも、さまざまな人たちが文化を享受できるような社会をつくっていきたいというふうに願っております。私たち、日本の文化庁予算というのは大変に少ないといつも憂えております。その文化に寄せる思いというのは国民の民度の問題ではないか、成熟度の問題だというふうに考えておりますので、十八年度予算についての文化庁予算の大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 文部科学省といたしましては、従来から、文化芸術につきまして、最高水準の活動の重点支援により頂点を高めるとともに、地域における活動の振興を図ってすそ野を広げることによりまして、その振興に努めてきたところでございます。さらに、これに加えまして、文化遺産の保存、活用、文化芸術の国際交流、美術館、博物館等の文化拠点の整備などを推進してきているところでございます。

 平成十七年度の文化庁予算につきましては、極めて厳しい財政状況のもとではありましたが、文化芸術振興基本法に基づきまして、心豊かで魅力ある社会を目指した文化力の向上を図るための施策を重点的に推進することといたしまして、対前年度一千二百万増の一千十六億五百万円を確保したところでございます。これにつきましては公明党さんの全面的な御支援をいただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。

 来年度、十八年度予算につきましても、厳しい財政状況のもとではありますけれども、文化芸術振興基本法を踏まえまして、文化芸術立国の実現に向けて必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えておりますので、委員各位の御支援をよろしくお願い申し上げたいと思います。

池坊委員 大臣を中心として、私たち公明党も頑張ってまいりたいと思っております。

 では、今、社会問題になっております学校施設におけるアスベストの使用の問題について最後に伺いたいと思っております。

 昭和五十年から六十年ごろは第二次ベビーブームと言われておりまして、児童生徒の急増が盛んになり、そして学校の新設が大変多かったというふうに聞いております。アスベストの使用の実態調査は、千三百校の学校でアスベストを使用されていることが確認されました。二十年たちまして、これは改造費補助事業によって大規模な改修工事がなされたと言われておりますけれども、まだ未改修のままの学校も残っている。新聞などによりますと、まだそういうのが放置されているというふうに書かれておりますけれども、心配している生徒並びに保護者も多いと思っております。いまだ未改修のままの学校があるのかどうか、実情をちょっとお知らせいただきたいと思います。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 学校施設におきますアスベスト対策ということについてのお尋ねでございますけれども、ただいま先生御指摘のように、昭和六十二年当時、この当時に、毒性が特に強いと言われた三種類の吹きつけアスベスト材につきまして、公立学校施設でどの程度使われているかという実態調査がまず行われております。それがただいま御指摘のありました一千三百三十七校という結果を得ております。これを踏まえまして、アスベストの除去などのための補助制度を設けまして対策工事等をやってきたということがまずあります。

 その後、またさらに昭和六十三年には、当時建設省が監修した指針がございまして、これで、さらに今の三種類の商品も含めた全部で二十三商品、これがまた示されております。こういったものも含めて適切な対策工事が行われるように、都道府県の教育委員会等に対して通知を行っております。

 それで、これらのアスベスト製品すべてにつきましては、先ほどの補助制度の対象ということで、優先的に採択をしてその対策工事を行った。その結果が、先ほど先生御指摘の一千一校という状況になっているわけでございます。

 その後、現時点において公立学校施設についての補助の申請というのは大分減ってきて、かなり激減という状況になっておりますので、相当程度進んでいるという認識はしておるわけですが、昨今、事業所等でのアスベスト対策の社会問題化というのがございます。

 こういったことにかんがみますと、子供たちの安全対策に万全を期するというためには、このたび改めて公立学校施設におけるアスベスト使用状況等の調査、これを行いたいというふうに考えているところでございます。全国の公立学校におきまして、子供たちが安心して学び、生活できる環境が確保されるよう、調査結果を踏まえて適切な対策を講じていきたい、かように考えているところでございます。

池坊委員 アスベストによる健康被害は発症までの潜伏期間が大変長くなっておりますので、現在成人となっている当時の児童生徒の人々にも発症が危惧されるのではないかと思います。文部科学省としては、学校にかかわるアスベストによる健康被害についてもきちんと把握する必要があると思います。

 それから、今、追跡調査を実施する方針だというふうに伺いましたけれども、これはやはり早急にする必要があるのではないかと思います。地方公共団体に対していつからこの追跡調査をなさるおつもりかをしっかりと伺いたいと思います。

大島政府参考人 御指摘の調査の時期につきましては、なるべく速やかにということで、今月、七月の下旬を目途として各教育委員会等に対して調査を出すということを考えているところでございます。

池坊委員 前々回でしたでしょうか、耐震について、やはり公明党の河合委員から、安心して学ぶことなくして何が学力かと。学力を身につける、もちろん必要です。でも、やはり安心して学べる場があってこそ初めて学力もついてくるのだと思います。それが、例えば地震があったら、自分たちが生きるの死ぬのという思いをしたならば、これは安心して勉強はできないと思います。アスベストに対してもそうではないかと思います。

 今まで教育行政に対しては割と力を注いできても、学校施設に対してはどうしても国民のみんなの了解は得られていないのではないかと思うんですね。これを説明いたしましたら皆様よくおわかりになると思いますので、どうぞ大臣、耐震がいかに大切であるか、それからアスベスト、こういう被害を生まないということが子供たち、次世代のためにも必要であるかということを、これからタウンミーティング等々を通じてそういうメッセージを送っていただきたいというふうに思っておりますが、いかがお考えでしょうか。

中山国務大臣 耐震といい、アスベスト対策といい、子供たちが安全で安心な環境の中で勉強ができるということが一番大事なことだと思っていますので、そういったところにつきましても広く国民の理解をいただきながら、その対策を進めてまいりたいと考えております。

池坊委員 大臣の御決意を伺って、終わらせていただきます。ありがとうございました。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 まず、アスベスト対策についてお聞きをいたします。

 ただいまも、改めて文部科学省として学校施設の全国実態調査を行うということが表明されておりますけれども、これは、私は、やはりすべての国公私立の、まず幼稚園、それから小中学校、高校、大学、つまり国立、私立、公立含めて必要だということと、それから全国の社会教育、文化施設も対象とすることが必要ではないかと考えますが、この点はいかがでしょうか。

中山国務大臣 文部科学省といたしましては、昨今事業所等でのアスベスト被害が社会問題化していることにかんがみまして、子供たちの安全対策に万全を期するために、このたび改めて学校施設等におけるアスベスト使用状況等の全国調査を実施することとしたところでございます。

 調査対象施設や実施方法については現在検討を進めておりまして、国公私立の幼稚園を含む学校及び公立社会教育施設等を対象施設として考えておるところでございます。調査方法が固まり次第速やかに調査を行い、その結果を踏まえて適切な措置をとりたいと考えております。

石井(郁)委員 昨今、アスベストの被害の実態という問題が次々と明るみに出ておりまして、本当に子供たちの安全な環境を確保するという点で、ぜひ今の御答弁のように早急にすべての施設を対象として行っていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に、三十人学級問題でお聞きいたします。

 今、中教審及び教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議というところで検討中と思いますけれども、その検討状況についてお聞かせください。

銭谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 ことしの五月の十日に開催をされました中央教育審議会義務教育特別部会の第九回の会合で、今後の教職員配置等のあり方について審議が行われました。その際、児童生徒へのきめ細やかな指導が必要であり、早急に次期定数改善計画を策定する必要があること、少人数教育を一層進める方策を検討する必要があること、学級編制等について学校現場の裁量により柔軟な運用が可能となる制度を検討することなど、さまざまな意見が出されたところでございます。

 これを受けまして、義務教育特別部会の鳥居部会長から、もっと柔軟で新しい次期改善計画を策定する必要があり、文部科学省において早急に具体的、専門的に検討し、その結果を義務教育特別部会に報告されたいとの意向が示されたところでございます。

 文部科学省では、この中央教育審議会における意見を踏まえまして、教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議を設置し、五月二十日の第一回会議以降八回にわたって、教職員配置等のあり方について現在具体的な検討を行っているところでございます。協力者会議では、少人数教育のあり方、学校現場の諸課題に応じた教職員配置のあり方、市町村や学校の裁量を生かす柔軟な教職員配置等につきまして現在検討を行っているところでございます。

石井(郁)委員 今御報告いただいたとおりかと思いますけれども、中教審でこの問題がかなり多面的というか、各方面から議論されているということですけれども、やはり少人数学級というのは、不登校の減少、学力の向上とか子供に落ち着きが生まれたという定性的な効果ということが言われていますし、学力結果を見ると、少人数学級の方が結果はよいというふうなことも言われているかと思います。

 今、柔軟でというようなことも言われているんですけれども、やはり鳥居会長自身が、これは参議院の文教科学委員会で、三十人学級を中心とした手厚い教育は日本に必要ということを述べられたかと思うんですね。中山大臣としては、この三十人学級の実施という問題についてはいかが思われているんでしょうか。

中山国務大臣 鳥居会長は、教育条件に関する一般論としてお考えをお述べになったのではないか、このように認識しております。

 学校におきます学習集団ということにつきましては、少人数学級において効果的な教育を行うという考えもありますけれども、一方では、児童生徒の習熟度などに応じまして、少人数指導や習熟度別の指導といったことで、個に応じたきめ細かな指導を行うことが効果的である場合も多いと考えられるわけでございまして、第七次の教職員定数改善計画では、教科の特性に応じた二十人程度の少人数指導等を行う学校の取り組みを支援するために教職員定数の改善を進めてきたところでございまして、平成十七年度にはこの計画を完成させたところでございます。

 今後はどうするかということにつきましては、今局長が答弁したとおりでございまして、今いろいろ議論がなされまして、そして検討がなされているということでございますけれども、こういった検討結果を踏まえまして、児童生徒一人一人のきめ細かな指導の充実のために適切な教職員配置に努めてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 もう来年度の概算要求の時期に差しかかっておりまして、そろそろ議論も煮詰めていくときではないかというふうに思われるわけですが、私はなぜ三十人学級ということである面でこだわっているかといいますと、四十人という編制基準で法律が来ている、これは一九八〇年ですからもう二十五年前なんですね。実質上少人数という形でかなり学級は編制されているとはいえ、やはり四十人というこの編制基準は厳としてあるわけですから、そういう点で、三十数人というクラスというのが依然として多数存在しているという問題は、世界的に見ても非常に問題ではないかということがあるんですね。

 そして、地方ではこの間ずっと三十人学級の実施という方向で進んで、もう四十五府県で、段階的ではありますけれども実施されているという状況で、やはり国がどういう方向を示すかということが今非常に注目されているし、中教審でもそのことが真剣な議論の対象となっているというふうに私は思うわけです。

 ですから、やはり三十人学級などの少人数学級ということを来年度からの第八次の計画の柱として文科省としてきちんと立てるべきではないのか、要求すべきではないのかというふうに考えておりますが、この点での大臣の御決意を伺いたいと思います。

中山国務大臣 スクールミーティング等を通じまして、現場の学校を見せていただいておりますけれども、やはり少なければいいというものでもないなということも感じるんですね。四十人学級だったら二十、二十ですけれども、これを三十人としますと十五、六人になってしまう。あるいはそれ以下になったときに果たしてどうかな。やはりクラスが閑散とするといいますか活気がなくなる、そういった面もありますし、また、私がいつも言っていますが、集団心理とかあるいは集団行動というものに関して子供たちが学ぶことがやはりあるのじゃないかと思うので、そういう意味で、一律に少人数学級ということではなくて、先ほど申し上げましたけれども、少人数指導だとか習熟度別の指導ということで、やはり個に応じたきめ細やかな指導ができるような、そういう柔軟性を持った学級編制というのが大事じゃないかなと今は考えております。

石井(郁)委員 大臣の今の御答弁を伺っていますと、ちょっと少し前にまた戻ったのじゃないかなという気がしてならないわけですけれども、私どもも、三十人にしたから機械的に十五、十五にする、全部そういう比率にするということじゃないとは思うんですよ。だから、クラスの集団として下限を決めるだとか、それは財政上の問題もあるでしょうから、その辺はそれこそ大いに現場と議論をしながら決めていいかと思うんですが、何か大臣、四十人だったら二十、二十、三十だったら十五と十六とか、少なくなるとかじゃなくて、そこら辺こそ柔軟にぜひ考えていただきたいと思います。

 これは今後のぜひ議論にまちたいわけですが、文科省として、私は姿勢をしっかり持っていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 さて、次の問題ですが、教育基本法の問題でございます。

 七月の七日に与党の教育基本法改正に関する協議会というのが開かれました。終了後、保利座長、今いらっしゃいませんけれども、保利座長の記者会見ということで、次のようなやりとりがなされたということを聞いているわけでありまして、その中からちょっと御紹介しますけれども、これは協議会ですから、中川国対委員長から、これだけの問題があるのだから、余りそそくさとやらないで時間をかけて検討してもらいたいという発言がございました、これは保利座長がそのように述べられたわけですね。それから、改正案の提出時期について話はあったのかという記者の問いに対して、保利座長は、急ぐことはない、じっくりやってくださいという意見があったのが唯一ですと述べられたということでございます。

 これからじっくりやるということは、今国会への教育基本法改正案の提出は断念したというふうに受けとめていいでしょうか。

中山国務大臣 教育基本法の改正につきましては、現在与党の教育基本法改正に関する検討会におきまして精力的に検討が行われておるところでございます。今後とも国民的な議論を深めつつ、中央教育審議会及び与党における議論を踏まえながら、教育基本法の速やかな改正を目指してしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 今国会はもう終盤というか八月十三日までということで言われておりますから、今国会についてはどうなのかと文科省としてのお考えをお尋ねしたわけでありまして、もう一度御答弁ください。

中山国務大臣 まだ会期はございますので、頑張ってまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 そういう答弁に終始するのかなと思いますけれども、これは事実上無理ではないかと思いますが、もうはっきり今国会は断念した、できないというふうにおっしゃった方がすっきりするのじゃないでしょうかと思いますが、ここで置いておきます。

 私は、今日本の、先ほど来学力の問題も議論になっておりますけれども、やはりすべての子供たちに、学力、体力、豊かな情操を育てていくということのためには何が必要なんだろうか、そういう議論と具体的な提案が本当に今求められているというふうに思うんですね。しかし、それは教育基本法の見直しではないと私は考えているところです。

 教育基本法というのはもう準憲法的な法律でありまして、その改正を与党だけがいわば密室で検討している。政府、文科省はその下請を担う、これは前回も私は質問いたしましたけれども、極めて不正常な形での教育基本法の見直し作業となっている。私はもうこの作業はやめるべきだというふうに主張したいと思います。このことを主張しまして、次の問題に移りたいと思います。

 そこで、また中山大臣にお尋ねですけれども、七月の十日に福岡市内で講演をされておりまして、従軍慰安婦という問題で、この言葉が戦時中はなかったということを強調する支援者からのメールを十分間にわたって読み上げられたということが報道に出ておりました。その講演で大臣は、私が歴史認識を話すとよからぬ誤解を招くといけないので、手紙を紹介する形で皆さんの御理解を得たいと前置きをされて、カナダの大学院で学ぶ二十代の日本女性から届いたというメールを紹介されたということでございます。報道では、メールは従軍慰安婦をめぐって、そんな言葉は当時ありません、一部の日本人が自虐的に戦後つくった言葉ですね、イメージの悪い言葉をつくって殊さら悪事のように騒ぐのはなぜでしょうかと述べていると。

 これはもう本当に断片、新聞の報道ですけれども、このような内容だったんでしょうか。

中山国務大臣 七月十日の講演で、今言われました六月のタウンミーティングに関しまして、カナダに在住の留学生からのメールを読み上げたのは事実でございまして、この問題についての文部科学大臣としての見解を申し述べたものではございませんが、メールの内容としては、今言われましたように、従軍慰安婦という言葉は当時なかったというごく当たり前の事実が問題になっていることに驚いた、あるいは、自分は将来外国に行くときは日本人であることを隠して過ごそうと思っていた、しかし、自分で大学のときに歴史を勉強してそうじゃなかったということがわかった、これからの日本を生きる子供たちに、自分たちの民族や歴史に誇りを持って生きていけるような教育をすることが大事ではないか、このようなことが含まれておりました。

 私としては、若い方々がやはり自分で勉強しなければいけないのではなくて、学校できちっとした教育をすることが大事なのじゃないかな、そういう思いを込めて紹介したところでございました。

石井(郁)委員 そうしますと、やはり大臣としてはそういう従軍慰安婦という言葉はなかった。なかったということをきちんと学校で教えるべきだという今のお話ですよね。そっちの方が大事だ、それが日本人としての誇りを持つ道だということでおっしゃったんですか。

中山国務大臣 日本人は戦前悪いことばかりしてきたんだ、悪い国民なんだ、そういうふうな自虐教育を自分は受けてきて、そういう意味で、本当に自信を失って、外国に出ても日本人であることを隠して過ごそうと思った、これは皆さん方、どうですか。私は本当に日本の子供たちが二十一世紀の国際化社会を生きていく上で、やはり日本人としての自信と誇りを持って堂々と歩んでもらいたい、世界の方々と伍して活躍してもらいたい、そういうための教育というのが大事なのじゃないかなということを申し上げたかったわけでございます。

石井(郁)委員 しかし、この報道に対しまして、もうおわかりのように、中国外務省、これは劉副報道官が、日本の内閣の一員が再び恥知らずな発言を繰り返したことに強い怒りと非難を表明するということがありました。また、韓国の外交通商省は、自身の発言を正当化し、慰安婦の名誉と尊厳を傷つける行為だ、深刻な憂慮と遺憾を表明する、こういう論評が出されております。論評は、教育行政の責任者のこうした認識と行動は、韓日間の信頼関係に大きな支障を招くとされているわけで、もちろん大臣はこういう反応が出てくることを承知の上で、今お話があるのかもしれませんけれども、大臣はこうした批判をまずどのように受けとめていらっしゃるんでしょうか。

中山国務大臣 ですから、こういう機会で本当に質問してもらいたくないし、いろいろなところで、タウンミーティング等でもそういう質問があればやはり誠実に答えなければならないし、非常につらい立場であることは御理解をいただきたいと思っていまして、本当はもうその質問に対してもお答えしたくないような思いでございますが、一部が、何といいますか、過大に取り上げられてしまうんですけれども、私の文部科学大臣としての考えというのは、戦前の一時期において、日本が近隣諸国に本当に多大の損害、迷惑をかけた、そのことについてはまことに申しわけない、そういう気持ちで私は今文部科学大臣を務めているところでございます。

石井(郁)委員 私も、残念ながらたびたび取り上げざるを得ないんですが、それは、この七月の十日のだけじゃなくて、先月、六月十一日にも静岡市のタウンミーティングでも、やはりこの問題で、そもそも従軍慰安婦という言葉はその当時なかった、なかった言葉が歴史の教科書に載ったんだと。それが、だんだんその言葉が教科書から削られてというか、なくなってよかったという評価をされたということで、これも大問題になりました。そして細田官房長官から、外交関係によく配慮して発言してほしいという注意をされたのじゃなかったでしょうか。

 このときはこういうふうに、もう内閣の問題となっているという中で、文科大臣としてこの発言を繰り返されるということなんですが、それはどのように考えて、受けとめていらっしゃるんでしょうか。

中山国務大臣 注意をされた覚えはございませんが、文部科学大臣としてこの問題についての見解を改めて述べたものではございません。

石井(郁)委員 私は、日本人としての誇り云々ということについては後でちょっと触れたいと思うんですが、今はっきりさせておかなくてはいけないのは、やはり歴史の教科書において、大臣がたびたび、そういう言葉がなかったんだ、なかった言葉を取り上げるのはいかがかということに終始していらっしゃいますので、その点で、はっきりさせておきたいというふうに思います。

 それは、例えば中学校の学習指導要領では、「大陸の文物や制度を積極的に取り入れながら国家の仕組みが整えられ、その後、天皇・貴族の政治が展開されたことを、聖徳太子の政治と大化の改新、律令国家の確立、摂関政治を通して理解させる。」というようなことがありまして、この聖徳太子、今では当たり前のように使っていますけれども、当時どのように呼ばれていたんでしょうか。また、大化の改新というのは当時どのように呼ばれていたんでしょうか。いつからこういう言葉が登場してきたんでしょうか。この点について、これは単純な話ですので、ちょっと大臣、伺ってみたいと思うんですが、いかがでしょう。

銭谷政府参考人 聖徳太子、それから大化の改新という言葉がいつから使われたか、当時はどう呼ばれていたかということにつきましてのお尋ねでございますけれども、聖徳太子は、よく厩戸皇子とかいうふうに言われていたとも聞いておりますけれども、いずれにしても、学問的にだんだん確立をされて、大化の改新などはそういう呼び方が通称として出てきたというふうに承知いたしておりますけれども、いつの時期かということについてはちょっと、大変恐縮ですが、即答できかねることをお許しいただきたいと存じます。

石井(郁)委員 何か歴史学論争みたいなことをする気は全然ないんですけれども、言いたいことは、聖徳太子は五七四年に生まれて六二二年没ということにされているわけですが、その時代を含む史書の、日本書紀の中には、今おっしゃられたような厩戸皇子とか、そのほか名前は云々というのはありますけれども、聖徳太子と当時呼ばれたなんということは一つもないんですよね。

 それで、その聖徳太子という名前が初めて出てくるのは、死後百年以上たった七五一年に成立した現在最古の漢詩集の懐風藻の序に出てくる。聖徳太子に及びて、爵を設け、官を分かち、初めて礼義を定めたまうという文に言われている。だから、太子信仰というものがあって、そういう中で聖徳太子というふうに呼ばれてきた。後の時代の話ですよ。

 大化の改新にしてもそうです。もう当たり前のようにして大化の改新ということが登場してきますけれども、これは明治二十一年、日本通鑑が最初だとされているわけでしょう。

 だから、当時はそんな言葉としては呼ばれないが、後の歴史家がそのようにそれを定義づけたり称したりするということは幾らでもあるわけですね。単純な話で縄文時代、土器に縄文の印がついているからということですけれども、例えば弥生文化についても、本郷弥生町で土器が発見されてからそう呼ぶとか、そういう命名というのはあるわけです。私が言いたいのは、当時そういう言葉がなかったとか、呼ばれていなかったから、それは歴史の教科書に登場させてはならないなんということにはならないでしょうという話なんですが、このことについてはいかがですか。

中山国務大臣 この女性のメールにもあるんですけれども、そういう言葉はなかった、そういう指摘するまでもない事実を、なぜわざわざイメージの悪い言葉をつくって殊さら悪事のように騒ぐのかわかりません、本当に不思議です、こう書いてあります。

石井(郁)委員 私はそのことで、大臣はおっしゃいますと、私はなお、やはりその問題は重大な問題をはらんでいると言わざるを得ないと思うんですよ。

 だって、従軍慰安婦というのは侵略戦争の過程で起きた問題ですよ。それは本当に非人間的で、そして疎ましい、なるべくそんな事実を挙げたくないかもしれないけれども、これは事実として、目をつぶるわけにいかないじゃないですか。

 だからこそ政府の見解としても、これは一九九三年に内閣官房長官の談話が出ているわけですね。それから一九九四年には村山総理談話にもちゃんと触れたじゃないですか。これは避けるわけにいかないんだということで触れているわけですよ。

 当時の軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題なんだということですよね。だから、従軍慰安婦として数多くの苦痛を体験されて、心身にわたりいやしがたい傷を負われたすべての方に心からおわびと反省を述べるということです。

 私は、文科大臣の今一連の御発言というのは、この官房長官談話にも総理大臣のにも、反しているどころかまさに否定するものじゃないんですか。そういうことはもうなかったんだ、触れることは日本人としての誇りを傷つけるんだということになるわけですから、この談話そのものをこれはもう否定する立場ですよ。そうは思いませんか。

中山国務大臣 そういう方々がいらっしゃったということは認めているわけですが、そういう言葉がなかったということを言っているわけですね。

 詳しく申し上げますと、この従軍慰安婦という言葉が最初に出てまいりましたのは、一九八三年に吉田清治さんという方が、私は済州島で従軍慰安婦狩りをしました、こういう本が出まして、これをある新聞が大キャンペーンしたわけでございまして、しかし、その後でこの吉田清治さんという方は、あれはうそだったと言って取り消されたんですけれども、既にそのときにはこの言葉はひとり歩きをしていた、こういうことでございます。

 この従軍慰安婦の問題につきましては、当時の軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけたものであり、これまで、従軍慰安婦として心身にわたりいやしがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを繰り返し申し述べているところでございまして、私としても、このような政府の認識と同様な立場でございます。

石井(郁)委員 どう考えても、大臣はこれと同様の立場とおっしゃいますけれども、実際に、今のように言葉はなかったということでおっしゃられますと、これは否定することにつながりますよ。

 それから、この事実を認めたら何か日本人としての誇りが傷つけられるという方がいらっしゃるんでしょう。でも、私は違うと思います。これは侵略戦争の事実を知ることなんですよ。今、やはり戦争のその残虐な事実を知らなくして、戦争の反省というのは出てこないじゃないですか。

 そして、私は実際、この問題である教師の方のお話を伺って大変感銘を受けました。それは、中学校で、この言葉と事実が教科書から削られたりなんだりしていくけれども、ある中学生の女子は、その動きについて作文を書いた、教科書に載せないということは反省していないということじゃないのか、過ちを繰り返さないためには正確に知る必要があると。そして、こう言っていました。知って、日本人として誇りを失うことはない、知らないでいることの方が恥ずかしい。

 私は、子供たちの方がはるかに健全だと思っています。何も私たちは自虐的にだとか日本人としての誇りを傷つけるために教えようとしているわけじゃありません。まさにこの子供が言うように、知らないでいることの方が恥ずかしいんですよ。

 そういう意味で、本当に侵略戦争の反省にきちんと立つ。特に教科書行政に携わる文科大臣としては、こういう発言を繰り返しされるというのは私は本当に内閣の一員として問題だというふうに思いますし、この発言をやはり撤回するということを、つまり言葉がなかったということは事実と違うわけですから、撤回するということを表明していただきたいと思いますが、最後に御答弁を求めます。

中山国務大臣 そういう存在がなかったとは言っていないので、そういう言葉がそのころはなかったということを言っているので、これは、本当のことを子供たちに教えるのは当然じゃないかと思うんですね。そういう存在、そういう方々がいらっしゃったということについて私は否定しているわけではありません。

 なお、改めて申し上げますけれども、従軍慰安婦の用語につきましては、歴史事典等においてその名称で定着しており、現在の学説状況に照らし、教科書にこの用語を用いて記載することも許容しているところでございます。

石井(郁)委員 時間が参りましたけれども、言葉がなかったということを言いましたら、先ほど申し上げましたように、では、聖徳太子も大化の改新も教えられないことになりますよ、それは。それで、歴史の教科書からそういうことがどんどん削られていくことになりますよ。変でしょう。だから、変だということを申し上げて、きょうの質問は終わりたいと思います。

 終わります。以上です。

斉藤委員長 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 私も、まず最初に、各委員が大変心配されてきょうも質問されましたアスベストの件についてちょっとお尋ねしたいんですが、本当に、御答弁にございましたように、大変社会的な問題になってしまいました。

 このアスベストによる健康被害が、今さまざまな分野で広がっております。きょうも、ちょうどお昼、NHKのニュースを見ていましたら、やはりそのことが報じられておりまして、どこかの県警の車庫に、そういった撤去の指導が出た後も、今日までしていなかったと。その理由は、解体したりあるいは改修したりするときにすればいいんだと受け取っていた、そういうふうに非常にそごが生じて、今なお多くのアスベストが残っておる。

 これは、先ほどから言われていますように、即発症するものじゃないということが非常に怖いんですね。そして、被害者が石綿製品の工場の労働者だけでなく、その家族やあるいは周辺の住民にまで、アスベストが原因と見られるがんの一種、中皮腫ですね、あるいは肺がんなどによる死亡や健康被害が広がっている。ある報道では、これはもう労災ではない、それを超えて公害であるというような報道もされております。非常に厳しい状況がこれからさらに私は発生するのではないかという気がするんです。

 このアスベストというのは、先ほどからお話ございましたように、吸い込んでから被害が発症するまで潜伏期間が十数年と非常に長いことから、静かなる時限爆弾とも言われております。昨年十一月に東京で開かれました世界アスベスト会議では、次のような報告がされたんです。日本では、二〇〇〇年から四十年間に男性だけで約十万人が中皮腫を発症する、そういう予測がされたんですね。これはあくまでも予測でございますが、世界のアスベスト会議、専門家が集まった中での報告でございます。

 つまり、それだけ潜伏期間が長い、それが二〇〇〇年から、これから四十年間、今からいえば三十五年間ですね、この間に十万人が、そういった病気の方が出てくるのじゃないか、それほどに恐ろしいアスベスト被害なんですが、これからしますと、ちょうど昭和四十五年代から五十年代に吸い込んだ人たちが発病する時期に今差しかかっていると言っても過言じゃないんですね。非常に問題は深刻化する一方でございます。これは、今からいえば、企業あるいは行政が必要な対策を講じなかった責任は非常に大きいものと言わざるを得ません。

 この問題は、文科省にとっても避けることのできない大変大きな問題である。つまり、学校というのは非常に多くのアスベスト建材がかつて使われておりました。そして、そこには子供たちが、家庭に次いで、学習の場、そして生活の場として長時間過ごす場なんですね。これは、子供たちのみならず、教職員も含めて、まさに学校現場の人たちの生命あるいは健康、安全、このことを考えますと、校舎等の不審者の侵入防止あるいは耐震性の問題、これらと同じようにこのアスベストの完全除去という問題は、安全という意味で今文科省に課せられている非常に大きな課題である、まずこのように思っているわけでございます。

 そこで、お尋ねをいたしますが、今回文科省はアスベスト処理を徹底するために再調査を行うという方針を固められたわけでございますが、再調査を実施するということは、除去作業がいまだ終了していないということなのか。先ほど答弁を聞いていると、もう一つはっきりわからない。ここのところを明確にしていただきたい。

 というのは、去る十二日の関係省庁会議では、学校内のアスベスト対策についてはおおむね完了したと報告をされておるんですね。おおむね完了したと。そのときには再調査のあれはないということを表明していながら、その三日後には再調査をすると。

 ここのところをちょっとはっきりしてほしいんですが、事は人の命、健康にかかわることなのでございます。特に保護者は、自分の子供の学校は大丈夫なのかと不安に駆られているわけでございますので、六十三年度以降一回やったけれども、なおいまだ除去作業はすべて完全ではないんだ、だから再調査をしてもう一回徹底を図るんだ、そういう趣旨でよろしいんでしょうか、お答えいただきたいと思います。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御説明いたしましたように、文部科学省におきましては、実態調査を行い、さらに通知等を発出しながらこれまでアスベストの対策を実施してきたというところでございます。

 しかしながら、現時点の詳細な実態については実は把握していないところでございますけれども、アスベスト対策事業、申請につきましては先ほど申し上げたように年々減少してきておりまして、そういった状況から、おおむね完了しているのではないか、こういうふうな見通しを言ったものでございます。

 しかしながら、昨今、事業所等でのアスベスト対策の社会問題化といったことにかんがみまして、子供たちの安全対策に万全を期するために、改めて学校施設におけるアスベスト使用状況等の全国実態調査を実施するということにしたところでございます。

横光委員 そこのところをちょっとはっきりしてほしいんですが、おおむねということがよくわからない。結局、いまだ除去していない学校が存在しているのかどうかを聞きたいんです。そこのところをお聞かせください。

大島政府参考人 現時点におきまして詳細な実態というものを把握しておりませんので、その点については、状況は不明でございます。

横光委員 再調査するということですから、完全に除去されているという認識はないんだと思うんですね。

 ですから、私はお聞きしたいのは、いまだアスベストを除去していない学校が存在しているということは、文科省が大規模改造補助事業を行いましたね、学校設置者である地方自治体に取り組んでほしいと。そういう補助事業のことを、六十二年以降ですよ、補助事業のことを地方自治体が知らなかったのか、あるいは知っていても無視していたのか、さらには、国から三分の一の補助があっても残りの三分の二を地方自治体が負担するわけですから、それが負担できなかったことが原因なのか、そのあたりをしっかり調査しなければ、なぜそういった指令が出た後、なおいまだ除去していない学校が存在するというようなニュアンスのことが答弁されているわけですけれども、それはどのような理由でそのような再調査をしなければならないような事態になっているかということをお聞かせいただきたいんです。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 各教育委員会等に対しましては、先ほど申し上げたような、その都度の法的な規制等々あるいは関係の通知等が関係省庁等から出た折には、その都度私どもからも通知しそれを周知する、さらに各種会議、研修等の場も通じてそれらを周知するというようなことをしてきておりましたので、必ずしも、先生御指摘のような形で、自治体がそれについて理解をしていなかったということはなかなか考えにくい状況というふうにはとらえております。

 一方で、それぞれのアスベストの現状というものを見たときには、比較的安定していた場合に、あるいはある対策が行われて凝固していた、あるいは囲い込みが行われていた、こういった状況の場合につきましては、必ずしも撤去するということが行われないケースもあるいは自治体においてはあるのではないかというふうにそこは見ておるところでございます。

横光委員 これから再調査されるというわけですから、そこのところをしっかり、結局、こういった改造費補助事業というものがありながら、それが十分活用されていなかったからそうなったのか、あるいは、負担が重過ぎるからそうなったのか、もし残っているとしたらいろいろな理由があると思うんですけれども、そのあたり、今度再調査で徹底して調査した上で対処していただきたい、このように思うんです。

 それで、私、先ほど、これは学校の問題だけではなくすべての分野に広がっておるんですが、これは企業や行政の責任が大きいと言いましたけれども、実は、九二年、今から十三年前ですね、当時の社会党の議員立法として提出されたんですね。世界の潮流でこういった問題が広がってきて、イタリアやフィンランドでは使用が全面禁止される流れになっておりました。そのときに、日本の場合も、やはりそういったことがあってはいかぬということで、そういった規制法を当時の社会党の議員立法として出したんですが、審議もされずに廃案となってしまいました。それが十三年前。そして、十五年前は、WHO、いわゆる世界保健機関でも非常にこのことが危惧されて、全世界では大きな問題になりつつあった。考えてみれば、非常に後手後手なんですね。

 それは非常に難しい問題ではあります、すぐ発症するわけじゃありませんからね。あるいは業界にとっても大きな問題ですし、いろいろな問題があって十三年前のこの規制法は廃案になってしまったんですが、こういうことを教訓にして、今やはり政府を挙げて私は取り組むべきであろうと。

 ところが、残念ながら、これはどうしても縦割りになっている。アスベストの使用を所管するのは厚労、輸入を管轄するのは経産、そういうふうにして所管が縦割りになっておるんですね。そして被害を受けるのは文科関係とかいろいろなところに被害を受ける。

 ですから、ここは大臣が、内閣に各省庁一体となって取り組む対策本部を設けていくべきだ、私はそれぐらいのことを提言した方がいいのじゃないかという気がいたしておるんですが、大臣、いかがですか。

中山国務大臣 アスベストの問題が社会問題化してきているわけでございます。

 関係各省庁、関係のあるところが必死になって今調査等始めておりますので、その状況を見ながら、全体としてやらなければいかぬという話になりましたらまたそのとき考えたいと思います。

横光委員 将来を担う子供たちの安全を、本当に責任ある立場の大臣から内閣に早急にこういった対策本部を設置すべきだと提言するということは、大変意味のあることだと思って、今私はお尋ねしたんですが、御努力のほどよろしくお願い申し上げたいと思います。

 次に、義務教育費国庫負担制度についてお尋ねをしたいんですが、昨日、中教審におきまして審議経過報告が公表されました。義務教育費国庫負担金の取り扱いにつきましては具体的な意見集約には至らなかったということから、引き続き議論を尽くすことになったようでございます。地方六団体が主張いたします自由度を高めるために一般財源化とすべきという意見、そしてまた、義教費制度、国庫負担制度を維持すべきであるという意見、これが平行線であったということでしょう。

 しかし、鳥居会長は二月の義務教育特別部会の初会合後の記者会見で、義務教育費国庫負担制度のあり方について、両論併記はなるべくやめたい、こう述べて部会の審議に入ったんですね。つまり、その時点では中教審としては明確な結論を出すという方針を明らかにしたわけでございますが、残念ながら、その審議の結果、中間報告、つまり審議経過報告の時点では両論併記になった。

 しかし、この秋までには意見集約して、当然どちらかにまとめて、両論ではなくて一つの意見にまとめて答申することになろうかと思うんですが、ならなければならないと思うんですが、そういったことは今の審議状況の中身を見ていますと可能なのかどうか。

 ちょっと大臣に伺いたいんですが、あくまでも両論併記になったらこれは何の意味もありませんので、これを一本、どちらにするにしても中教審で一つの意見にまとめるということになるんだということを大臣からお聞かせいただきたいんです。

銭谷政府参考人 私の方から経緯を含めて御説明をさせていただきたいと存じます。

 中央教育審議会は、ことしの二月に義務教育特別部会を設置して義務教育全般について審議を行ってまいっているところでございます。昨日、義務教育における費用負担のあり方を中心に、これまでの審議の状況をまとめた審議経過報告その二を総会に報告したところでございます。

 この審議経過報告その二は、これまでのところ、先生お話がございましたように、費用負担のあり方について具体的な意見の集約に至っていないことから、引き続き議論を尽くすために、これまでの議論で出された意見をできるだけ丁寧に紹介しているものでございます。

 審議経過報告では、まず、義務教育は国全体を通じての最重要事項であること、義務教育に必要な財源を確実に確保する必要があること、この二点を共通の理解である、こう示した上で、教育の質の向上、財源確保の確実性、予見可能性、地方の自由度の拡大、この三つの観点から義務教育国庫負担制度が検討されてきた状況を記してございます。具体的には、一般財源化すべきという地方六団体委員の意見に対しまして、義務教育費国庫負担制度を堅持すべきという多くの委員の意見が出されていることを記しているところでございます。

 今後、中央教育審議会義務教育特別部会といたしましては、この審議経過報告をもとに、一日中央教育審議会、関係団体のヒアリング、国民の意見募集などを通じて国民各界各層の幅広い意見を聞いた上で、本年秋の答申に向けてさらなる審議を尽くしていきたいということで取り組むことになろうかと思っております。

横光委員 今御説明あったように、やはり中教審の中での意見は義教費堅持という意見の方が非常に多かった、でも、やはり両論併記という形になった、そういうふうな受けとめ方をいたしました。

 となりますと、最終答申は恐らく義教費堅持という形に中教審としては当然私はなってほしいし、なるべきだと思うんですが、そうなっても、今度は、地方六団体は、義教費の負担金の取り扱いについては中央教育審議会よりも最終的には国と地方の協議の場において協議、決定することを主張しておる、こういうふうに言われておるんですね。

 麻生総務大臣も五日の閣議の後の会見で、義務教育費国庫負担金の見直しについて、中教審や地方六団体と政府との公式の場、いろいろな段階を踏まえて最終的に政府が決定する形になる、中教審の意見だけですべて決まるというわけにはいかないと思うと述べておるんですね。しかし、政府・与党合意では、あくまでも中教審の審議の結果、この秋までの答申を受けてこの問題は最終的な結論を下すということになっているわけでしょう。

 しかも、この中央教育審議会、ここは法令に基づいて設置されている審議会でございます。しかし、細田官房長官が座長をしている国と地方の協議の場は、これは法令に基づいて設置されているものでも何でもないんですね。しかも、そこには文科大臣も正規のメンバーとしては参加されておりません。教育の問題は中央教育審議会でということで、昨年そういった形がやっととられたにもかかわらず、なお今まだ最終結論の場がゆがめられようとしている。

 中教審が我が国の義務教育のまさに方向性を決定するという意味で、非常に重要な審議の場である。そこにすべてをゆだねているわけでしょう。となりますと、地方六団体や国と地方の協議の場が我が国の義務教育の方向性を決定するなんというのはおかしいわけで、この点は恐らく文科大臣も同じだと思うんですね。

 ですから文科大臣、この秋出ます中教審の重みというものをどのようにして地方六団体や正規のメンバーではない国と地方の協議の場に訴えていくのか、御所見を伺いたいと思うんです。大臣。

塩谷副大臣 今横光委員お話しのとおり、私どもも、中教審での結論をしっかりと踏まえて、今後この改革に進んでまいりたいと思っているところでございまして、昨年十一月の政府・与党合意に基づいて、義務教育費制度については、その根幹を維持して国の責任を引き続き堅持するというもとに、費用負担等について地方の案を生かすということでございまして、国と地方の協議の場で議論するというようなことも含めて中教審で私どもは今審議をしているという認識でおりまして、この点は、今後いろいろな政府での折衝の中で、大臣もしっかりと中教審の結論を踏まえて結論を出していく所存でございますので、また委員の皆さん方にもいろいろな御支援を賜りたいと思っているところでございます。

横光委員 中教審の方々に、私は、最後はそういった国と地方の協議の場にゆだねられるというようなことになってしまえば、何のために審議しているのか。恐らく、私は、日本の国の将来の義務教育のあり方を審議している中教審の委員の人たちは、全くやる気がなくなってしまうような気がしてならないんですね。その人たちの努力というものをこれからさらに重くする意味でも、やはり中教審の最終答申というものが義教費のあり方に即つながるんだという認識をしっかり持って、これからの残りの審議に臨んでいただきたい、このように思うわけでございます。

 また、地方六団体は、中教審の中で、一般財源化により地方の自由度が高まる教職員の配置が可能であるということを主張されているようでありますが、しかし、昨年度から、この義教費制度のもとで総額裁量制が導入されているんです。つまり、総額裁量制を工夫したり拡大することで十分に自由度が高まる教職員の配置が可能になるわけですよ。ただただ、地方六団体の意見というのは使い道に縛られない財源を求めている。そんな思いだけで、教育の将来ビジョンというのを果たして持っているのかというのが非常に危惧されるわけでございます。

 地方の自由度あるいは現場の実態を地方六団体が強調している割には、具体的に地方の自由度、現場の実態ということを示していないように見えるんですが、その点、文科大臣はどのようにお考えですか。

塩谷副大臣 まさに、私もたびたび中教審の審議に出席をしておりますが、その自由度というものがどういうものかというのは全く見えてこないようなところでございまして、審議時間ももう五十時間を過ぎて、中教審の委員の皆さん方には、今先生がおっしゃったように大変な御苦労をいただいておりますので、ここら辺も何とかしっかりと成果を出していきたいと思っております。

 地方六団体につきましては、一般財源化した場合に地方の裁量が拡大する例として、例えば、教職員の配置や学級編制、国の基準を満たした上で多種多様な取り組みが促進されるとか、教職員給与に限らず、教育効果の高い外部人材の活用や外部委託、教材の購入、開発、教育関係施設の整備等、さまざまな取り組みに財源、資源を効果的に配分できるというような意見をおっしゃっておりますが、これに対して多くの委員からは、教職員の配置や学級編制等は義務教育標準法によるものであり、義務教育国庫負担金の存廃とは関係がない、さらには、都道府県が教職員給与を削減し、その分を他の教育費に回して効果的に予算を組むことも現在では可能であると。

 さらに、地方が拘束性を感じているのは、国庫負担制度よりも、むしろ教育行政のさまざまな法令の規定、具体的にどの法的規制が問題であり、それは国庫負担制度と絡んだものではないかを整理すべきであるというような意見が出されて、すなわち地方の自由度というのは、義務教育国庫負担制度ではなくて、いわゆるほかの制度であるということでありまして、やはりいろいろな審議、五十時間にも及ぶ審議の中でさまざま六団体から意見が出されておりますが、その自由度については、総額裁量制等のいろいろな施策によって現在十分に可能だと思っておりますし、私どもも、地方六団体が主張する自由度の裁量の拡大という点では、この国庫負担制度が何ら阻害になっていないと思っておりますので、その考え方でこれからも議論を進めてまいりたいと思っております。

横光委員 よくわかりました。

 次に、三月十一日の委員会で、私、大臣に、標準法、人確法についてのこれからの対応についてお尋ねしたんですが、そのとき大臣は、標準法と人材確保法そして義務教育費国庫負担制度、この三つが相まって、すぐれた教員数を確保して、そして義務教育を推進していく、こういうことだろうと思っております、こう答弁されたわけでございます。もちろん今も同じお考えだと思うんです。

 しかし、この六月に、財務省の財政制度審議会、財政審で、何と「十八年度予算編成の基本的考え方について」という取りまとめを谷垣大臣に提出しておるんですが、その中には大変危惧をしている記述がございます。その箇所を読み上げますと、「義務教育費国庫負担制度については、教員に対して一般の地方公務員の給与水準をさらに上回る給与を確保する優遇措置や、少人数学級編制等のため教職員を増員することを教育水準の向上と同視するといった安易な発想は排し、関連法」、つまり人確法と標準法のことですが、「関連法の廃止も含めた抜本的な見直しに取り組む必要がある。」こういったことを財政審でまとめておるんですね。

 毎年暮れにはこういった意見は出ることは出るんですが、しかし、この時期に前倒し的に、こういったかなり明確な文言で人確法、標準法の廃止のことまで財政審としては財務大臣に報告している。私は、大変これは危機感を文科省としては持たなければならないときだと思います。

 文科大臣が私に答弁したことと全く逆行している状況が今財務省では進んでいるんですが、この財政審の考え方について、大臣のお考えをお聞かせください。

中山国務大臣 今お話がありました財政制度等審議会におきまして、人確法と標準法の抜本的な見直しについて提言があるということは承知しておりますけれども、義務教育における機会均等とその水準の維持向上のためには、人確法と標準法、さらにこの義務教育費国庫負担制度の三つが相まって機能することが不可欠である、こういう考えには変わりはございませんので、今後ともそういう方向を堅持してまいりたいと考えております。

横光委員 どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それから、先ほど佐藤委員、私と同じ大分県の委員が、いろいろ質問の中で、大分県も非常に教育現場が乱れているというようなお話もございましたが、決してそういうことはございませんで、あくまでも大分県教組は、教育委員会としっかり節度ある対応をとって、とにもかくにも未来ある子供たちのために日夜頑張っておるということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十分散会


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