衆議院

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第2号 平成17年10月19日(水曜日)

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平成十七年十月十九日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 小渕 優子君 理事 岸田 文雄君

   理事 西村 明宏君 理事 松浪健四郎君

   理事 平野 博文君 理事 牧  義夫君

   理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    秋葉 賢也君

      井脇ノブ子君    飯島 夕雁君

      小川 友一君    大前 繁雄君

      加藤 紘一君    川条 志嘉君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      下村 博文君    鈴木 俊一君

      鈴木 恒夫君    寺田  稔君

      永岡 桂子君    葉梨 康弘君

      馳   浩君    福田 峰之君

      馬渡 龍治君  やまぎわ大志郎君

      安井潤一郎君    渡部  篤君

      奥村 展三君    北橋 健治君

      末松 義規君    田中眞紀子君

      松本 大輔君    山口  壯君

      横山 北斗君    笠  浩史君

      谷口 和史君    石井 郁子君

      保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   文部科学副大臣      小島 敏男君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久保 信保君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 井上 正幸君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   参考人

   (独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長)   殿塚 猷一君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十九日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     安井潤一郎君

  近藤 基彦君     寺田  稔君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  稔君     近藤 基彦君

  安井潤一郎君     飯島 夕雁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長殿塚猷一君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として総務省自治行政局選挙部長久保信保君、自治財政局長瀧野欣彌君、文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、大臣官房文教施設企画部長大島寛君、生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長石川明君、高等教育局私学部長金森越哉君、研究振興局長清水潔君、研究開発局長森口泰孝君、スポーツ・青少年局長素川富司君、国際統括官井上正幸君及び厚生労働省大臣官房審議官岡島敦子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。自民党の馳浩です。

 義務教育費国庫補助負担制度に絡んで、そもそも義務教育のあり方についてどう考えるべきかということが国民を巻き込んで大きな議論になっているということは皆さん御承知のとおりであります。しかしながら、地方案と、それから中教審の答申、これは全体的な概要がきのう明らかになってまいりました。こんな中で、総理は、地方案に沿って改革案を提出すべきではないかというふうに、結城次官や中山大臣をわざわざお呼びになってそういうふうに御意見を申されたというふうにも報道されております。

 そんな中で、中山大臣としては、一つの政治的な決断であったり、また大臣としての義務教育に対する考え方というものが問われるときではないかなというふうに思っております。まずは大臣の所感をいただきたいと思います。

中山国務大臣 おはようございます。お答えいたします。

 この義務教育費国庫負担制度につきましては、昨年来いろいろな議論があるわけでございますが、昨年末の政府・与党合意におきまして、平成十七年秋まで、ことしの秋までに中教審において結論を得るというふうにされているわけでございまして、今御指摘がありましたように、昨日部会としての答申書が取りまとめられたところでございます。

 この答申案では、地方の意見を真摯に受けとめ、審議を行った結果、義務教育費国庫負担制度については、国と地方の負担により義務教育の教職員給与費の全額が保障されるという意味で、現行の負担率二分の一の国庫負担制度はすぐれた保障方法であり、今後も維持すべきであるというふうにされているところでございます。

 また、地方団体が目指します教育の地方分権に関する提案につきましては、学校とその設置者である市区町村の裁量権限と自由度の拡大を進めることにより実現されるものであり、義務教育費国庫負担金を通じ、国がその財源を担保することが重要である、このようにされているところでございます。

 今御指摘されましたように、別に官邸に呼ばれたわけではなくて私が行ったんですけれども、いろいろなことがちまたで報道されているわけでございますが、この答申案につきまして今後総会において審議されることになるわけでございます。

 いずれにいたしましても、文部科学省といたしましては、昨年末の政府・与党の合意に基づきまして、中央教育審議会の結論を踏まえまして、引き続き義務教育制度についての根幹を維持し、国としての責任をしっかり果たしていけるように今後とも対応してまいりたいと考えております。

馳委員 現時点ではそこまでの御答弁しかできないのかなということを思いながら、これから私の考え方としてちょっと述べさせていただきたいんですが、私は基本的に地方案に賛成の立場から申し上げたいと思います。

 この一年、二年、大変この問題が表に出てきて、ずっと思い続けているのは、義務教育の水準を維持する、機会均等を守る、無償制を守るということが教員の給与半分を国庫補助負担するという制度でのみ担保されるのかな、文部科学省の役割はそこにのみ固執してはならないのではないかという思いをずっと持ってまいりました。

 その上で、むしろ、国の役割として義務教育を提供する体制、これははっきり言えば、各都道府県ごとに教職員定数を義務標準に明示して財政措置をしっかりする、こういったところで担保をしながらも、むしろ国がやるべきことは何なのかということをずっと私は考えてまいりました。

 それは何かといえば、先生方によって、学習指導要領に基づいて各小学校、中学校で授業がなされ、生徒指導がなされるわけですが、その成果をこそしっかりと評価する、そういった姿勢をこそ国が持つべきではないのかと私は思い続けておりました。一つは、まさしく、私も現場におりましたからこう申し上げてなんですが、もっと教育現場は情報公開されてしかるべきではないか。

 そういう点から、学校評価、教員の評価、こういったことはしっかりされるべきであり、まさしく学習指導要領に基づいてしっかりと子供たちにその思いが伝えられているのかということは、学力調査、私は学力テストという言い方は余り好きじゃないんですよ。どのように授業を受けて、子供たちが学習する意欲、考える意欲、生きる力を身につけているか。これは何もテストによる評価ばかりではなく、学習に対する意欲、姿勢、そういったことを含めて、学力調査という形で国はこういったことに関与していかなければいけないのではないか。教育水準の維持を財源論にばかり求めるのは、ちょっと本筋から外れているではないかと私は思っております。

 そういう意味でいえば、地方案も中途半端だと私は思っているんですよ。なぜ中学校だけ最初に持ってくるのか。義務教育は九年間ですから、小中学校の教員、全部一般財源化するという方針を示せばよかったんです。まずは八千五百億、二期に小学校も含めて全額を一般財源化、そして足らざるところは交付税でお願いしますという、どうも数字合わせのちまちました案を出されてきたなというふうに、これに対して私は不満を持っております。

 また、地方としても、国と地方の役割を法律上明記してほしい、こういった言い方をしておりますから、それを踏まえても、国の役割というものを、もっと文部科学省としては、これは財源論ばかりではなくて、総合的な提供体制それから質の保証、こういったところにシフトしていくべきではないかということを表明させていただきたいと思います。

 その上で、これは銭谷局長にお伺いしたいんですが、私先ほど申しましたように、義務教育の提供の体制、教員の質の確保、あるいは学校評価、教育現場の情報公開という観点から、どのように国としての関与を位置づけていくべきなのかというお考えを持っておられるか、ここをお聞きしたいと思います。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま先生からお話がございましたように、義務教育は国民として共通に身につけるべき基礎的な資質を培うものでございますから、国はすべての国民に対して一定水準の教育を提供する最終的な責任を負っていると考えております。このため、国は、義務教育の質を確保するために、基準の設定、指導、助言、援助、あるいは財源保障などを通じまして、義務教育の質の維持向上に努める必要があると考えております。

 少し具体的に申し上げますと、教育活動についていえば、教育内容について全国的な教育課程の基準である学習指導要領を定めるとともに、教科書検定を行っております。また、教員の資質能力の向上につきましても、研修や指導資料などを通じまして指導、助言、援助を行うとともに、今先生からお話がございましたように、学習の結果、各学校の指導状況等についての検証をしっかりと行う責任があろうかと思っております。

 具体的には、今後、全国的な学力調査の実施それから学校評価のガイドラインの設定などを検討しておりまして、そういうことを通じまして、質の確保ということに努めていく必要があろうかと思っております。

 また、教育を支える人的な体制につきましても、直接教育を担う教職員にすぐれた人材を必要数確保する必要がございますので、国は、標準法により教職員配置の適正を図る観点から標準定数を定めるとともに、財源保障を、義務教育費国庫負担法により二分の一を負担することによってきちんとその財源を確保するということが必要でございますし、また、教職員そのものについても、免許制度を採用して質の確保を図りつつ、研修等についても基本的な枠組みを定めているということでございます。

 これからの義務教育のあり方を考えたときに、国は義務教育の基盤整備にしっかりと取り組んで、実施については、できるだけ子供たちに近い、学校や市町村、これが実施現場でございますが、そこにお任せをし、結果についてはきちんと検証していく、こういう姿勢で義務教育の最終的な責任を国として果たしていきたいというふうに考えているところでございます。

馳委員 この問題については、この後、我が党の新人議員も質問されますから、それを受けて答弁いただければいいと思うんですが、やはり財源論として二分の一の国庫補助負担の方にこだわる必要はないのではないかということは、私は先ほど申し上げたような意見として改めて申し上げたいと思います。

 と同時に、これはまた現場の声として感じておられるかもしれません。教員の情報公開という観点を一言だけちょっと申し上げさせていただきます。

 私の地元金沢市は来年度から中学校の学校選択制を行うようになります。大変紆余曲折がありましたが、基本的には通学区域のところに全員行けるんですが、ほかの、この学校にどうしても行きたいというときにはそこにも行けるようになる、そういう形の学校選択制、自由になるんですよ。

 これは一つ問題があるんですよ。親とすれば、どの学校の、それは校長の経営方針、教育方針、教職員の情報というものが入らなければ選びようがないんです。今現在は、こういった情報は口コミなんですよ。すべての中学校はホームページを開いておりますけれども、教職員についての情報というのは、これは情報公開法という意味ではなくて、基本的に、その教員がどんな研修を受けてきて、クラブ活動や授業の得意不得意についてどういう実績があって、また、本人みずからが私はこういう特性、アピールがありますよ、そういったことを情報公開を進めようとしてもすべからく日教組がストップをかけているんですよ。

 学校選択制というのは、小学校、中学校においてそれぞれ全国でも進んできておりますね。そんな中で、保護者や地域の方々が知りたいのは、どんな先生が、どのような授業、教育姿勢を持っているかということを知りたいわけなんです。そしてまた、教育現場のそういった情報が公開されることによって学校に対する評価が定まっていく。私は、それをねらいにして、学校運営協議会制度、こういったものもとられてきているのだろうと思いますから、この教員の情報公開について、今後もっと積極的に取り組むよう、都道府県や市町村の教育委員会を私は督励していただきたい、この問題についてはこのお願いを一つ申し上げて終わります。

 さて次ですが、先般、大臣は第三十三回ユネスコ総会に出席をいただきました。アンチドーピングの問題についてユネスコ総会で採択されまして、また、報道を見て大変うれしく思ったんですが、アフリカへの教育支援、万人のための教育支援、こういったことについても言及されました。

 まず、ユネスコ総会に出席された意義、そしてアンチドーピング問題、アフリカに向けた日本としての教育支援のあり方。

 また、それに引き続いて、小島副大臣は科学技術に関する閣僚級会合に出席をされました。この閣僚級会合に副大臣が出席することの意義は私は大変大きいと思い、昨年十二月にも主張させていただきましたが、出席された上での成果と意義をまず披瀝いただきたいと思います。

 また、先般この委員会の店開きのときに、小島副大臣はその出張でおられませんでしたから、新たに再任をされて、科学技術担当の副大臣としての抱負も含めてお話しいただきたいと思います。

 まず、大臣からお願いします。

中山国務大臣 十月の五日から八日までユネスコの総会に出席してまいりました。私自身としては、平成三年に文部政務次官のときに実は政府代表として出席したことがございますので、それこそ十四年ぶり、二度目の出場でございましたけれども、ユネスコ、その後も本当に今、松浦事務総長の指揮下で大きな活躍をしているなということを改めて認識して、非常に感慨深いものがございました。

 今お話がありましたアンチドーピング条約につきましても、十月七日の首席代表演説におきまして、本条約は、各国がドーピング防止に取り組むことを通じて、世界平和に寄与できるスポーツを将来ますます盛んにすることを目的とするものであり、本条約の採択を希望する旨発言したところでございます。

 この条約は、近々、きょうにもユネスコ総会の全体会合にかけられて採択される見込みであるというふうに聞いておるわけでございまして、我が国におきましても本条約をできるだけ早く締結したい、このように考えておりまして、国内のアンチドーピング体制及び活動のあり方を検討するとともに、関係省庁並びに関係団体等と調整を行いまして、国内法の整備を初め、必要な対応について検討してまいりたいと考えております。

 また、EFA、万人のための教育、これにつきましても各国政府が担うことになっておりまして、今次総会に合わせまして、各国の教育担当大臣が情報、意見交換を行うために円卓会合が開催されまして、私も出席いたしたところでございます。

 ユネスコにおきましては、このEFAは、現状のままでは当面の目標である二〇一五年までの達成は難しい、これまでの倍の努力が必要であるというふうに認識されております。特にアフリカへの取り組みの強化が必要である、このように言われているわけでございます。我が国は、対アフリカ協力政策の一つとして位置づけられました人間中心の開発の観点も踏まえまして、さらにアフリカへの教育支援を充実させる必要がある、このように考えております。

 そういうこともございまして、円卓会合におきまして、私は、アフリカに対する教育支援を強化するということについて提案したところでございまして、今後、ユネスコなど関係機関と連携しながら、我が国の教育経験といいますか、これを生かしまして、アフリカに対する教育支援の充実を図ってまいりたい、このように考えているところでございます

小島副大臣 おはようございます。

 ただいま馳委員から御質問があったわけでありますけれども、まず冒頭に、前回の委員会にユネスコの総会出席のために欠席したということでありまして、今後とも、委員長初め皆様方の御協力をいただきながら、職責を果たしてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 今、馳委員の質問の中で、円卓会合に大臣、副大臣がということは委員の前からの持論でありました。そういうことで、どうだったかということなんでありますけれども、ユネスコの場合には百九十一カ国加盟していまして、その中で総会に参加をされている各国があるわけでありますけれども、やはり大臣級の円卓会合ということになりますと、大臣、副大臣が行きますと、座る席が一番前ですね。前列に並んで、また発言をするのも各国の大臣級の人が最初に発言をするということでありまして、その辺の格差というのはありますし、政治がそこに深くかかわっているという姿を見せるにはやはりこちらから、そういう大臣級の方が参加をして発言をするということ、これは非常に重要なことだと私も思っています。

 それで、大臣が行った後に私が今度かわりに行ったわけでありますけれども、松浦事務局長はユネスコのトップでありますけれども、任期六年が終わって、今回また四年の任期ということで、中山文科大臣はそれをお願いに行ったわけでありますけれども、私が出席したときには、松浦事務局長が選ばれた次の日でありまして、心からの祝意をお話ししたわけであります。

 簡単にそのときの総会のことでありますけれども、基礎科学の振興については長期的な視野が必要であるということがまず一点であります。それから、我が国として問題解決に貢献できるものとしては、津波だとか地震だとか、防災関係、地球環境の問題等を非常に私どもが取り上げているということで、この辺について、ぜひ国際協力として貢献をしたいというようなことを発言させていただきました。それから、十四日には基礎科学の意義や国際協力の推進についてのコミュニケが採択されまして、大きな成果が得られたところでございます。この機会を利用いたしまして、米国のマーバーガー大統領補佐官等、各国の要人と話をする機会ができて、私としては大変に意義深い出席だったというふうに考えております。心から感謝しています。ありがとうございました。

馳委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間がございませんので、私から三名指名しますので、それぞれ御答弁をいただきたいと思います。

 まず、塩谷副大臣には、アンチドーピング、我が国としていつごろ批准を目指しているのか。二つ目は、国内法整備について、そのスケジュールも含めて、中身もちょっと伺いたいと思います。それはなぜかというと、ぜひプロスポーツを対象にすべきだという私の主張を申し上げておきます。

 それから次に、エデュケーション・フォー・オールの観点で井上国際統括官にお伺いしますが、我が国は、アジアに向けて、少数民族の識字率を上げるとか寺子屋推進とか給食活動の支援とか、物すごい貢献をしてきているんですね。これはアジアでは実績がございます。アフリカでやるには、やはりJICAとの連携協力体制が必ず必要になっていきます。ここをどう具体的にされるのか。

 最後に、素川スポーツ局長に、先般、私、質問いたしましたが、ナショナルトレーニングセンターがいよいよ完成に向けて着々と工事が進んでおりますが、この実質的な運営について、日本の競技団体を統括しているJOCが、予算においても人事においてもこの運営の主体的な役割を果たすべきと主張してまいりましたが、現状、どのようになっているのか、JOCの方々とちゃんと調整しているのか、この点を最後に素川さんにお伺いする。

 駆け足で済みませんが、三名に御答弁をいただいて、私の質問を終わります。

斉藤委員長 これから三名指名いたしますが、残り時間が少のうございますので、簡潔に答弁をお願いいたします。

塩谷副大臣 おはようございます。

 馳委員にはこのアンチドーピングに対して日ごろから御指導いただきまして、ありがとうございます。

 今回、ユネスコの方で採択された本条約につきましては、当然ながら非常に意義が大きいものと認識しておりまして、我が国としてもできるだけ早期に締結したいという考えがありますが、まずは国内整備をしていかなければならないと思っているところでございまして、この点については、締約国としての義務履行について、諸外国の対応あるいは関係省庁あるいは関係団体等の意見を聞きながら今検討を行う状況にあります。

 さらには、薬物にかかわる専門家等の協力を得ながら、国内のアンチドーピング体制及び活動のあり方を十分に検討を行ってまいりたいと思っているところでございまして、また、文部科学省としても、このアンチドーピング活動に対しまして国内のシンポジウムの開催などに要する経費を計上して、来年度におきましては、検査実施促進事業などアンチドーピング活動体制の強化の充実を図るために経費として新たに一億三千五百万円を要求しているところでありまして、今後とも、この問題についてしっかりと推進してまいりたいと考えております。(馳委員「プロスポーツは」と呼ぶ)今のところその点についてはまだ検討中でございまして、今後、しっかりとまた御指導いただきたいと思っております。(馳委員「ぜひとも入れてください」と呼ぶ)はい、ありがとうございます。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省としては、これまでJICAの専門家や現職教員の青年海外協力隊への派遣を通じまして、アフリカにおける教育支援を行ってきたところでございます。

 これに加え、現在、広島大学、筑波大学を中心に我が国の初等中等教育分野において蓄積されました経験を用いて教育協力のモデルを開発しているところでございますけれども、これを特にアフリカにおける教育支援にも対応させていきたいというふうに思っております。

 その成果はJICAあるいはNGOが実施する教育支援の推進に寄与するものであり、引き続きこれらの関係機関と密接に連携協力をして進めたいと思っているところでございます。

 以上でございます。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 ナショナルトレーニングセンターはトップレベルの競技者が強化活動を継続的、集中的に行う場でございます。我が国の競技力向上のための中核的な役割を担う施設だと認識しております。したがいまして、JOCなどと密接な連携をとるということが重要であると考えております。こうした観点から、文部科学省、JOCそれから独立行政法人の日本スポーツ振興センターの三者が十分な連携をとり、調整をする必要があると考えているところでございます

 このナショナルトレーニングセンターの中核拠点につきましては、文部科学省において施設を整備した後、日本スポーツ振興センターに出資されるという予定のものであるわけでございます。日本スポーツ振興センターにおきましては、その出資財産を適切かつ効率的に管理運営する責務があると考えているところでございます。

 他方で、このナショナルトレーニングセンターの機能でありますトップレベルの競技者の強化活動でありますとか専任コーチの配置、コーチアカデミー、エリートスクールなどの諸事業は、本来的にJOCと競技団体がこの施設において主体的に取り組むべき事業活動であると考えております。

 そういった観点から、このナショナルトレーニングセンターの管理運営につきましては、日本スポーツ振興センターとJOCや競技団体が十分連携協力して行っていくことが重要であると考えているところでございます。

馳委員 終わります。

斉藤委員長 阿部俊子さん。

阿部(俊)委員 先ほど御質問のございましたいわゆる義務教育の二分の一の国庫負担に関してでございますが、この二分の一の国庫負担は、私は教育は日本の国力にかかわるものだと考えております、国の責任としてやはり維持すべきではないかと考えます。

 先ほど銭谷局長の方から、教員の質の担保は行われるということがございました。やはり教員の質の担保を行うためには、情報開示と選択ということも必要だというふうに考えますが、この国庫負担の部分をやはりきちんと堅持しないといけないという点から、国庫負担を諸外国ではいわゆる移譲しているところがあるかどうかということを局長の方にお尋ねしたいと思います。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 義務教育諸学校の教職員の給与につきまして、各国がどのような経費負担をしているかというお尋ねでございますけれども、例えばフランス、それから韓国などは、全額国が負担をいたしております。それからイギリスは、二〇〇六年度から、教育交付金ということで教員給与費に限らず教育費につきまして国が全額交付をするという制度を採用する予定になってございます。また、ドイツは連邦国家でございますので、これは各州が負担をしているということでございます。今、我が国で議論をされているような議論があるという国は私は承知をいたしておりません。

阿部(俊)委員 続きまして、昨今社会的な問題となっております医療事故に関連して、医師、看護師等の医療従事者の教育に関してお伺いいたします。

 近年、医療の高度化、患者の重症化に伴いまして、医療現場の業務密度が非常に高まっております。そういう中で、来年度より薬剤師の教育が四年から六年へと延長されました。また、医師については平成十六年度より二年間の卒後臨床研修が制度化され、歯科医師についても来年度より実施の運びとなっています。

 これらからは、医学部や歯学部、薬学部卒業時に総合診療能力の育成が十分でないことから、教育年限を延長したり卒業後の初期の臨床研修を義務化したもので、一定の評価をするものではありますが、近年の若者の特性から、大学入学時の医師、歯科医師としての自覚、さらには人格形成、成熟度を考えると、今後は、医師、歯科医師の教育は、米国等におけるメディカルスクール、デンタルスクール、すなわち基礎教育を四年間行った後に医学教育、歯学教育を行うというものでございますが、それを我が国に導入することに対しての検討が必要ではないかという議論が医学部の中で行われているところでございます。これについては文部科学省でどのように検討されているのか、お伺いいたします。

中山国務大臣 お答えいたします。

 高齢化による疾病構造の変化とか、あるいは患者のニーズの多様化等を背景といたしまして、医師とか歯科医師の養成につきましては、専門的な知識のみならず、豊かな人間性あるいはコミュニケーション能力とかあるいは課題発見、解決能力といったものを身につけることが必要である、重要になってきていると思っているわけでございます。

 文部科学省といたしましては、平成十三年の三月の大学関係者による調査研究協力者会議の提言を踏まえまして、医学・歯学教育の改善充実の観点から、医学生、歯学生が最低限学ぶべき内容を示したモデル・コア・カリキュラムを踏まえたカリキュラム改革を行っております。それから、臨床実習開始前に学生が修得すべき内容を担保するための共用試験の実施を行っております。それから、診療参加型の臨床実習の実施を行っております。また、教育組織の機能開発と教員の教育業績評価システムの確立。さらに、学士編入学制度の有効活用、これは今、七十九医科大学の中で二十九大学、二百五人、二十七の歯科大学の中で八大学、四十五人の定員が認められているわけでございますが、このような形で各大学の実施を促進しているところでございます。

 米国等において導入されております、四年間の学部における幅広い教養教育をもとにさらに四年間の医療に関する専門的な学習を行う、いわゆるメディカルスクールあるいはデンタルスクール制度の導入につきましては、平成十七年の九月に取りまとめられました中央教育審議会大学院部会の医療系ワーキング報告におきまして、現在進められている医学、歯学の学部教育改革の状況、卒後臨床研修制度及び後期専門研修制度との関連、この制度の導入による基礎医学・歯学研究への影響などを十分に踏まえまして、多角的な検討と十分な議論を必要とするということから、今後、中期的な課題として専門家、関係者による十分な検討が必要である、このように指摘されておるところでございます。

 文部科学省といたしましては、我が国と米国等との学校制度の違いを念頭に置きながら、この報告書の指摘や、あるいは学士編入学生の追跡調査による評価を踏まえながら、引き続き慎重な検討を行っていくことが必要ではないか、このように考えているところでございます。

阿部(俊)委員 それと関連いたしまして、このように医療従事者の教育が充実する中で、看護師の教育に関しましては、昭和二十三年の保健師助産師看護師法が制定されて以来、五十年間変わらず、三年以上の教育ということで据え置かれております。

 教育養成機関におきましては、文部科学省のみならず厚生労働省の方の管轄でもございますが、このことに関しまして、やはり医療事故が非常にふえている中、教育期間の延長を検討するべきではないかという声が現場から上がってきておりますが、このことに関しまして厚生労働省の審議官に御質問をしたいというふうに思います。

岡島政府参考人 看護師の教育期間につきましてのお尋ねでございますが、先生おっしゃられたとおり、昭和二十三年に制定されました保健師助産師看護師法におきまして、看護師国家試験受験資格としまして、「文部科学大臣の指定した学校において三年以上看護師になるのに必要な学科を修めた者」、もしくは「厚生労働大臣の指定した看護師養成所を卒業した者」と定められておりまして、これを受けた保健師助産師看護師養成所指定規則におきまして、看護師学校養成所の指定基準としまして修業年限は三年以上とされていまして、以後改正は行われていないところでございます。

 看護師の教育期間の延長につきましては、平成十五年の厚生労働省の医療提供体制の改革のビジョンにおきまして、医療を担う人材の確保と資質の向上の観点から検討を行うとしているところでございますが、教育現場、医療現場等からさまざまな御意見があるところでございまして、具体的な検討につきましては今後状況を見ながら判断してまいりたいというふうに考えているところでございます。

阿部(俊)委員 続きまして、国立大学法人及び私立大学の国庫負担金について、大臣にお伺いしたいというふうに考えます。

 平成十六年四月から国立大学が独立行政法人化され、現在、国立大学には運営費交付金として年間一兆二千三百十七億二千万円、さらには私立大学には私立大学等の経常費補助といたしまして三千億計上されているところでございますが、これを学生一人当たりの国庫負担額にいたしますと、国立大学法人では学生一人当たり百九十六万二千円、これは補助割合が約六〇%となっております。さらには、私立大学は十六万六千円、補助割合が約一一%と国立と私学ではかなりの格差がございます。

 今後、少子高齢化に伴って、国立と私学ではかなりの格差がある中で、間もなく大学が全入時代に突入するという中で、質のよい教育を提供していく中で自然淘汰される時代に大学が入っていくというふうに考えられます。このように、国立大学法人に偏った国庫負担金では、必ずしも真に良質な教育を提供している大学が生き残ることができないというふうに考えています。教育の質の担保には、国立大学法人の絶対数の見直しと、さらには私学への支援が必要であると考えますが、これについてのお取り組みをどのように今後考えていらっしゃるか、お考えをお伺いしたいというふうに思います。

中山国務大臣 我が国の高等教育は、国公私立大学がそれぞれの設置形態のもとで、それぞれの特性を生かしながら研究教育水準の維持向上を図る中で、多様な発展を遂げてきたものでございます。

 その中で、国立大学は、我が国の学術研究の中核を担うとともに、全国的な高等教育の機会均等の確保とか、あるいは地域の教育、文化、産業の基盤を支えるなどの役割を果たすことが求められているわけでございまして、今お話しありましたように、昨年四月の国立大学の法人化後も、国立大学がこれらの役割を一層果たしていけるように、国としては必要な運営交付金を設置し、支援しているところでございます。

 また、国立大学におきましては、各大学の自主的な検討のもとに、教育研究基盤の強化とか、あるいは管理運営の効率化、大学の枠を超えた新たな学問分野の発展等を目指しまして再編統合を行ってきたところでございまして、平成十四年以降、十三組二十七大学が統合しまして、百一大学が八十七大学に減っておるわけでございます。また、その他の大学におきましても統合の検討が行われているところもあるというふうに承知しているところでございます。

 一方、私立大学につきましては、これは独自の建学の精神に基づく個性豊かな教育研究活動を主体的に展開することにその特色があるわけでございまして、今、在学生のうちの約七五%が私立大学に在学するなど、我が国の学校教育の質量両面にわたりまして、その発展に大きな役割を果たしてきているというところでございます。

 文部科学省といたしましては、従来から、このような私立大学の重要性にかんがみまして、私立学校振興助成法に基づきまして、教育研究条件の維持向上、学生や保護者の修学上の経済的負担の軽減等に資するために、私学への助成に努めているところでございまして、今後ともそのさらなる充実が必要である、このように考えております。

 さらに、これらの国立大学、私立大学に対する基盤的な経費に係る支援と同時に、競争的な環境のもとで各大学の教育研究の改善、活性化への取り組みを促進するための国公私立を通じた支援が必要である、このように考えておりまして、特色ある大学教育支援プログラム、あるいは二十一世紀COEプログラムなどの充実を図ってきておるところでございます。

 今御指摘ありましたように、これから大学全入の時代を迎えまして、大変厳しい環境の中にあるというふうに考えておりますが、文部科学省といたしましては、大学に対するこれらの種々の支援を通じまして高等教育の多様な発展を図ってまいりたい、このように考えております。

阿部(俊)委員 終わります。

斉藤委員長 飯島夕雁さん。

飯島委員 飯島夕雁でございます。本日は質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 早速ですが、限られた時間ですので、義務教育費国庫負担制度に絞って質問をさせていただきたいと思っています。さっきからの繰り返しの質問にもなるところがございますが、私としては、前職が東京都青ケ島村教育長という僻地、離島の教育現場をつぶさに見てきた者の一人として、特に山村僻地、離島など、現在であっても厳しい教育現場が存在しているということを踏まえての御回答をいただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

 早速質問に入らせていただきます。

 中山文部科学大臣は、先週の当委員会のあいさつの中で、「義務教育の費用負担については、昨年末の政府・与党合意に基づき、今後取りまとめられる中央教育審議会の答申を踏まえ、国の責任をしっかりと果たせるよう取り組んでまいります。」という強い意思をお述べになられました。私はこれを聞いておりまして、都市部に住んでいる子供も山村僻地の子供たちも、地域格差がなく、小中学校に必要な教職員が配置され、全国的に教育の機会均一と一定水準の教育の保障ができるという最終的な責任は国が負うべきものであると感じまして、強く同感いたしました。

 そこで、お尋ねいたしますが、全国知事会など地方六団体が取りまとめておられる改革案のとおり義務教育費国庫負担金を税源移譲した場合、憲法に定められている教育の機会均等、教育水準の確保等、こういったことの義務教育の本当の根幹の部分は守られるのかどうか、ぜひ御見解をお伺いいたします。

中山国務大臣 義務教育につきましては、国は、憲法の要請によりまして、すべての国民に対して無償で一定水準以上の教育を提供する責任を負っているということになっているわけでございます。

 今お話がありましたように、この義務教育費国庫負担制度を廃止して地方に移譲した場合には、まずその使途が限定されないことから、本当に義務教育費に充てられる保証があるのか、なくなるのではないかという懸念がございます。

 それから、地域間の税収格差によりまして、四十七都道府県のうち四十道府県におきまして教育費の財源不足に陥るおそれがあるわけでございます。その財源不足を地方交付税で調整するといたしましても、そもそも地方交付税自体が三位一体改革の中で総額が抑制されることはもう必至でございまして、その影響が教育費へ波及するおそれが非常に大きいということから、結果として、憲法の要請でございます義務教育の水準確保ということについて支障が出てくるのじゃないか、義務教育の根幹が維持できなくなるおそれがあるのじゃないか、このように考えているところでございます。

 文部科学省としては、やはり義務教育費国庫負担制度はきちっと堅持することによって憲法の要請にこたえてまいりたい、このように考えているところでございます。

飯島委員 改めて確認させていただきまして、ありがとうございます。

 引き続き、大臣にお伺いいたします。

 今の御発言もございましたが、文部科学省の中央教育審議会は今月末にも答申を予定されておられますが、中央教育審議会の義務教育特別部会のメンバーである石井岡山県知事さんは、義務教育費国庫負担金の堅持を求める答申が出た場合、国と地方の協議の場で決着を望みたいと発言されているというふうに伺っております。最初からこれは中央教育審議会を無視しているような発言のように私は受けとめました。どうも、地方六団体や国と地方の協議の場が我が国の義務教育の方向性を決定してしまうような懸念を感じております。方向性を決定するのは国であり、私たち国会議員であると思います。

 中山文部科学大臣は国と地方の協議の場の正規のメンバーではございませんが、中央教育審議会が義務教育費国庫負担金の堅持の答申を出した場合にどのような形で主張されていくのか、御見解をお伺いいたします。

中山国務大臣 義務教育費国庫負担制度のあり方につきましては、昨年末の政府・与党合意におきまして、平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得るということとされたことを受けまして、中央教育審議会でずっと議論してまいりました。昨日、部会として答申案が取りまとめられたところでございまして、この答申案では、現行の負担率二分の一はすぐれた保障方法である、今後も維持されるべきである、このように結論づけているわけでございます。

 この答申案につきましては、今後総会において審議いたしまして、答申として取りまとめられる予定になっているわけでございますが、私たちといたしましては、昨年末の政府・与党合意に基づきまして、中央教育審議会の結論を踏まえまして、引き続き義務教育制度の根幹を維持し、国としての責任をしっかり果たしていけるように、政府におきます検討の場において文部科学省の考え方を訴えて、理解を得られるように全力で取り組んでいきたいと考えております。

飯島委員 ありがとうございました。

 続きまして、総務省にお伺いしたいと思います。

 地方六団体は義務教育費国庫負担金の税源移譲を求めておられますが、税源移譲した場合、現在都道府県においても財政力格差があるということで先ほど文部科学大臣からお話がありましたが、文部科学省の推定によりますと、四十道府県で財源不足が生じるという試算になっております。平均的な県で約二割の教員が、また財政状況が厳しい県では約四割の教員が配置できない状況にありまして、この試算どおりであれば、最初に減額の対象となるのは僻地や離島の教職員の給与費、例えば僻地手当の休止ですとか、非常勤で幾つかの学校をかけ持ちしなければならないというような、結果として、僻地、離島に本来配置されるべき教員が配置されなくなるおそれを感じております。

 税源移譲した場合でも地域間の教育水準の格差が生じないとお考えでしょうか。また、格差が生じないと考えるのであれば、何を根拠にそう思われているかをお尋ねしたいと思います。具体的にお願いいたします。

瀧野政府参考人 お答えいたします。

 三位一体の改革におきましては、補助金を廃止いたしまして税源移譲を行うという場合には、それに伴います格差につきましては地方交付税によって調整するということとしておるわけでございまして、これによりまして、税源の少ない団体におきましても、義務教育についても所要の財源は確保されるというのが基本的な考えでございます。

 義務教育費国庫負担金が個人住民税の税源移譲に振りかわるということによりまして、ただいま御指摘がございましたように、文部省の方では四十県で財源不足が生じるというような試算をされているようでございますけれども、これは今申し上げました地方交付税による財政調整をしないということを前提とした試算であるというふうに考えられますので、こういった試算というのは、ある面では誤解を生みやすいものだというふうに私ども考えております。

 その場合に、交付税につきまして、今後先の見通しが不安定ではないかというお話がございましたが、義務教育の先生方につきましては、いわゆる標準法によりまして、どういう先生方を確保すべきか、どの数を確保すべきかということは法律で決められているわけでございまして、当然、地方団体はこれを遵守するわけでございます。仮に、地方団体の方がそれについて違反するような場合でも、国の方で是正の要求とか、あるいは勧告するとか、いろいろな法律上の制度もございます。

 こういった中におきまして、交付税の水準がいかようになりましても、こういった国が義務づけております行政につきましては交付税で必ず財源保障するという仕組みになっているわけでございまして、御心配の、税源移譲を行いまして地域間の教育水準に格差が生じるのではないかということについては、我々はそういうことはないというふうに考えております。

飯島委員 引き続き、総務省にお尋ねしたいと思います。

 義務教育費国庫負担金が税源移譲された場合、今心配がないということですが、現行制度と同水準の教職員給与費に充てられているものであるかどうかということを具体的にその後チェックしていくことは可能なのかどうか、御見解を伺いたいと思います。

瀧野政府参考人 実際に地方団体がどういうふうに支出するかということは、まず毎年度予算措置がされるわけでございますので、その段階でそれはオープンにされて明瞭に把握できますし、その後、実際にどういうふうに支出されたかということにつきましては、同じように決算が議会に提出されましてチェックされるわけでございますので、どういうふうに教育費に使われたかということはオープンな形で把握することができるというふうに考えております。

飯島委員 ありがとうございました。

 いろいろな形できちんと水準は保持されるという御見解をいただいたのですが、やはり自分の中ではいろいろな心配がぬぐえません。

 例えば、中学校費の方からひとつ手をつけていこうということで動きがあるようですが、例えば、中学校であれば教科担任制ですので、小規模校を二、三校かけ持ちして非常勤の教員が授業をこなすということで、授業時間を確保すること自体はできると思います。そういう意味で、授業時間の上では確保されますけれども、例えば山村僻地においては、学校というのは一つのコミュニティーを形成する大変重要なものでもあり、そこの学校に集うことによってその地域が形成されているという現実がございます。その中で、配置されている教員一人一人の責任やその地域での存在感も大変重たいものがございます。今、家庭、地域、教育現場、学校が一丸となって子供の教育に携わっていかなければいけないと言われている一方で、そういったことがないように、ぜひとも山村僻地まで心を配った教育行政の維持がなされるようにお願いをしたいと思っております。

 私自身は、義務教育に必要なお金がどこのお財布から出るかということについては、そんなに大きな問題ではないととらえているんです。重要なのは、やはりそのお金の出どころ、お金が出た後、確実に保障されるかどうかということではないかと思います。

 これまでの中教審の論議を拝聴する限り、また学校現場の声、関係者からの説明を聞く上で、また今までの自分の経験上、義務教育で国庫負担金制度というのは、やはり安定して財源を確保する上で大変適切な制度であったというふうに受けとめております。今後、中教審の答申が出されることになりますけれども、文部科学大臣には、ぜひ、この答申を受け、本当の意味での地方の声を吸い上げていただきまして、政府部内での調整に全力で取り組んでいただきたいということを切にお願いしまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 井脇ノブ子さん。

井脇委員 おはようございます。

 私は、学校と財団法人少年の船協会という、三十六年間教育一筋に、子供五万人に愛をかけ、目をかけ、心をかけ、現場で子供たちを三十六年間、ただひたすらに子供の教育をしてまいりましたので、そのことについて申し上げ、そして、その後に質問をさせていただきたいと思います。初めてでございますので、皆さん、ちょっとどうかなと思っておるんですけれども、言わせていただきます。

 学校教育と社会教育と家庭教育と教育には三本柱があります。それはフィフティー・フィフティー・フィフティーでなければならない教育だと思っておりますが、今や日本では、学校教育を中心として、社会教育は疎んぜられているような状況が現実にたくさん、夏休み、春休み、社会教育の体験というものが子供たちにありません。

 ボーイスカウト、ガールスカウト、海洋少年団、また少年の船、郵便友の会、文部省で社会教育の団体が六つほど財団としてございます。そういう社会教育の現実、ヨーロッパでは社会教育が非常に発展しております。日本の場合、何としても私は、社会教育の体験を子供たちに、体験教育からということで社会教育も必要である、こういうように大変思っておりますので、どうぞまた社会教育にも、教育活動の中で入れてほしい。

 同時に、子供に心の教育をということで、一つ、国の恩、一つ、親の恩、一つ、衆生の恩、一、誇りを持て、二、奉仕の心を持て、三、感謝の心を持て、四、協力の精神を持て、五、責任感を持て、六、勇気を持て、七、礼儀正しくあれ、八、思いやりの心を持て、九、根性を養え、十、積極的であれというのを子供の教育の中に取り入れて、昔は期待される人間像というのがありましたけれども、今は何もありません。道徳教育の教育の中でも、教科書もなく、現場の小中高の先生方は、どういう問題を取り上げて学校でやろうかという大変困った現状もたくさんございます。

 そしてまた、小中高で三万六千人の先生方がノイローゼになったり、わいせつ罪をしたり、学校の教員がたくさん苦労して、そしてそういう人になっていって、先生たちの人間的な目標、そういうものを決めるということは国家ではできないとは思いますけれども、私は私学でございましたので、五万人の子供たちに徹底してそのことを教育してまいりました。

 また、少年の船という船を、一万トンの船を買いまして、中国やグアム、サイパンや、また沖縄、北海道コース、日本一周コースというのをつくりまして、船に子供たちを五百五十人乗せて、班も編成して、充実して子供たちを体験教育させてきました。本当に子供は生き生きと、夏休み、春休みにそういう社会教育の体験をさせたわけであります。

 私は、きょうは、みんなは義務教育費のことやそういうことを徹底して言うと思いますので、別な面から、心の教育の方から言ってみたいなと思って立たせていただきましたので、御容赦願いたいと思います。

 このように、子供の教育の現場のあり方、現場の小中高校の先生方も、基本的な道徳教育の基本がありませんので、その教え方もとても困っておるというような状況で、皆それぞれがつくり出してやっておるんですけれども、昔のような、私たちのときのように、福沢諭吉を尊敬しているといったら、それの人間学を勉強したり、先生がそれを指導したり、そういうことが今なくなってきております。こういう現状から、心の教育を叫びたい。

 国会議員ではこういうことを、何か法律ばかりつくっているから言えないのかなと思って随分悩みましたけれども、私は、そのことについてすごく今まで思っていた三十六年間の思いを、きょうは初めてでございますのでピントが外れているかもしれないけれども、教育の根本たるや、心の教育がないからこそ今日多くの問題が起きておるのではないかというようなことも気になって仕方がないものですから、本当は三つほど、たくさんの質問もつくってきましたけれども、文部省にも出してつくってきたんですけれども、それよりもこのことを申し上げたいと思っております。

 また、文部大臣にお伺いしたいと思いますが、先生たちの、教員の質の向上として、何としても教員、教師が、やはり学校では現場の教員がとても大切だと思います。

 その中で、現場の先生、Aで合格した場合、二年間ぐらい海外協力隊やまたボランティア活動や会社に勤めさせて何か体験をさせて、そして教員の現場に入れたら、もっともっとすばらしい体験ができて、教員として勇気を持って堂々と子供に当たっていけるのではないかと思うことと、また、十年間ぐらいずつテストを受けたら六十歳までいくのではなくて、やはり免許制の見直しと、そしてまた研修、教員大学院みたいなのをつくってリフレッシュさせる、そういうシステムをつくっていって、教員をもう一度、悩むことない教育活動が現場でできるようになったならば大変すばらしいと思っております。

 文部大臣、教員の質の向上に対しまして、一言お願いをしたいと思っております。

中山国務大臣 井脇委員、その生涯を教育にささげてこられた委員の発言だけに、大変重みがあるというふうに感じておるところでございますし、社会体験の重要性とか心の問題、まさに御指摘のとおりでございまして、社会体験等を積むことによって、今問題になっておりますニートとかあるいはフリーター対策にもなるのじゃないかというようなこともありまして、今、文部省としても、キャリア教育ということで、年間五日間の職場体験といったものをやらせようとしているところでございます。

 それから、心についても、今、文部省で心のノートというのをつくりまして、すべての小中学生に配付しておるわけでございます。私も読んでみましたけれども、とてもよくできているな、文部省がつくったのにしてはこれは上できだ、こう思うぐらいすばらしいできだと思いますので、ぜひ小中学生のみならず保護者の皆さん方も読んでいただきたいな、こう思っているところでございます。

 さらに、教師の問題、今御指摘がありましたが、まさに教育は人なり、先生次第だということを、私も現場をずっと回っておりまして、つくづく感じさせていただいております。ですからこそ、先ほど来議論になっていますが、義務教育費国庫負担制度、やはりすぐれた先生方を必要な数確保する、そして、教育は現場、先生方に任せますけれども、その先生方が安心して教育に専念できるようにということで、国としてしっかりと給与については担保する、そういう制度というものは堅持していかなければいかぬ、このように考えておるところでございます。

 そしてまた、教員養成、それから採用、研修、三つの段階があると思うわけでございますが、この三つの段階を通じまして、教師の質の向上といいますか、すぐれた先生方を確保していくということが大事である、こう考えているわけでございます。

 まず、教員養成につきましては、教職の意義に関する科目の新設とかあるいは中学校の教育実習の充実、これを三単位から五単位にふやすなど、大学の教員養成カリキュラムの改善を図っているところでございます。

 採用につきましては、都道府県の教育委員会等に対しまして、面接とか実技試験の実施、あるいは、今言われましたけれども、社会体験を評価する、こういったことの人物評価を重視する方向で改善を促しているところでございます。

 そしてまた、採用後の研修につきましても、初任者研修とかあるいは十年経験者研修などの教職経験等に応じた研修の充実とか、あるいは社会体験の研修の充実などの改善に努めているところでございます。

 そしてまた、指導力不足の教員、これにつきましては、継続的な指導とかあるいは研修を行いますとともに、状況に応じましては免職等の分限処分とかあるいは他の職への転任等を行う、そういう人事管理システムの構築、運用について各教育委員会を指導しているところでございます。

 このような形で、信頼され、尊敬される先生、学校づくり、これが基本であるという認識のもとに、今後とも教育改革に取り組んでまいりたいと考えております。

井脇委員 文部大臣から、今、尊敬される、信頼されると、大変すばらしいことを聞きました。

 私たちは、教員がやはり尊敬される教員でなければいけない、そしてまた親からも子供からも信頼される教員でなければいけないと思います。また、教員は、子供を信頼し愛するということで、真剣に日夜努力して、国を興し、世を清め、社会に役立つ立派な人物づくりに日夜努力して子供たちを育ててほしい、こういうように思っております。

 もう一つお聞きしたいんですが、このごろ、日教組が、教職員組合の組織率低下がとても続いております。それに対しまして、学校現場において真に教育を担っていこうとする教員のモラルが特に低下しているんですけれども、これは日教組がということではありませんが、教員の組織率低下について文部大臣はどう思っておりますでしょうか。だれでも結構ですが、お答えください。

銭谷政府参考人 私の方から御説明をさせていただきます。

 日教組を含みます教職員組合に加盟をしております教職員の割合は、ここ数年、データ的に見ますと減少をいたしております。その背景といたしまして一つ考えられますのは、新規に採用される教職員の方が教職員組合に入るという割合が非常に最近低うございまして、全体として教職員組合の組織率は下がっているという状況がございます。

井脇委員 文部省は、先ほどもお願いをいたしましたけれども、学校教育と家庭教育と社会教育、社会教育課というのが文部省の中にありますけれども、社会教育についてはいつも公民館活動とかそういう老人の方の活動が多いんですが、青少年の、子供の社会教育活動というのが非常に立ちおくれておるし、私は今まで三十六年間文部省に何回も社会教育に行くんですけれども、余り力を入れていないというか、それは余り力は要らないのか何か知りませんけれども、いないのでありますが、何とか社会教育にももっと力を入れてほしいなと常々思っておる一人でございます。今後とも、社会教育の方策を、教育方策をぜひお願いしたい、こう思っております。

 私はこれをもって終わります。ありがとうございます。

斉藤委員長 池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 きょうは、義務教育費国庫負担制度はさきの国会でたくさん質問いたしましたので、触れないでおこうと思っておりましたけれども、地方の立場に立ってという御意見がありましたので、ちょっと一言だけ、私、自分の意見を言わせていただきたいと思います。

 大臣はごあいさつの中でも、「甦れ、日本!」、その五つの教育改革の中に、義務教育費国庫負担制度改革を挙げていらっしゃいました。私は、これは堅持されなかったら、よみがえれ教育日本ではなくて、沈没教育日本になるのではないかというふうに危惧いたしております。

 国がなすべき教育現場においての役割は、もちろん教育水準の確保にあると思います。そして、それは教員の質の向上や学力や、そして学習指導要領、教科書問題、教科書の内容等もありますが、財源も重要なファクターであると私は申し上げたいと思います。

 地方が独自で財源が確保できたら、私は別にそれで構わないと思っております。でも、これはできない。今、総務省の方がもうお帰りになってしまったのが残念なんですけれども、地方交付税を調整します。調整ですから、毎年毎年頼み込んでお金を出してもらったりいろいろ、つまり担保しないということなんですね。やはり人件費は担保されなければ、その時々で地方交付税で調整されたのではたまらないと私は思っております。担保できる一番いい方法が今の制度ではないかと思うんです。文科でやらないで、何で総務省で調整をしなければいけないのかということを私はやはり一人でも多くの方々にわかっていただきたいなというふうに思っております。

 大臣は、いつもぶれないで今の制度がいいと御主張なさっていらっしゃいますことを私は大変敬服いたしております。しっかりとした価値観と正しい判断力で、自分が正しいと思うことはぶれないで言い続けることが、特に政治家はそうでなければならないと思っておりますので、私は中山大臣を御信頼申し上げておりますので、この件に関して、ぶれないでずっと通していただきたいというふうに思っております。これはもう御決意を伺わなくてもよろしゅうございますね。

 割と卑近な問題でもう一つ大臣にお願いがございまして、私たち公明党の文部科学部会も大臣と同じように現場主義を重視しております。さまざまなところに視察に行っております。先日も、月曜日、先駆的な教育を行っております京都市の高倉小学校に行ってまいりました。子供たちがおおらかに、伸びやかに教育をしておりますことを大変うれしく思いましたが、行き交うときのあいさつが大変さわやかであり、そして授業中の姿勢も正しい。

 私は、二年九カ月の政務官の間に、町村大臣にぜひ子供たちにメッセージを送ってほしいと。そのメッセージの内容が、授業中姿勢を正しく、それからあいさつを大切にしましょう、本を読みましょうということだったんですね。ぜひ私は中山大臣にいろいろなメッセージを送っていただきたいのですが、テープで教育委員会を通して学校で見ることができる、そういうシステムがありますね。それをぜひ活用していただきたいと思うんです。

 私は、まず、子供たちはいろいろなものが足りないけれども、大きく足りないのは夢じゃないかと思います。夢を持ちましょう。アウシュビッツの収容所で生き延びることができたのは希望や夢を持っていた人です。ですから、夢を持ちましょう。そして、知恵を出しましょう。創意工夫だと思います。そして、元気に過ごしましょう。それをぜひ私は子供たちにメッセージとして送っていただきたい。子供たちはそれを忘れたように思いながらも、心に刻んでいくのではないかというふうに思っております。これはお願いでございます。

 きょうは、時間も限られておりますので、アスベストについてお伺いしたいと思っております。

 私は、日曜日の日に箕面の東小学校と高等学校を視察してまいりました。箕面は、文科のいろいろな調査なんかが出ております前から、懸命になって今工事中でございました。耐震もアスベスト対策も、これは私はお金の問題だなというふうに思うのです。

 内閣府の中に、アスベスト対策、関係省庁の対策本部が立ち上がりましたが、今アスベストは、除去いたしますと、一平方メートル二万円から六万円と言われておりまして、とても二万円ではできないと思います。ですから、何千万円かかるんですね。これはもう文科の予算じゃ私はできないのではないかと思うんですね。どうかこれを内閣府で、別枠でとるぐらいの意気込みでやっていただきたいというふうに思いますので、大臣のお考えをお伺いしたいと存じます。

中山国務大臣 学校現場まで出向いていただいて、アスベスト対策を考えていただいていることを本当に感謝申し上げたいと思います。

 何といいましても、学校は子供たちが一日の活動のうちほとんどを費やすわけでございますから、非常に大事な、大切な場所だ、こう思っていまして、保護者としても、子供たちが学校に行っていて本当に大丈夫なのかな、こういう不安に駆られてはいけない、そういう意味でアスベストの問題とか耐震構造の問題は早急に取り組むべき問題である、このように考えているところでございます。

 文部科学省といたしましては、アスベスト対策が必要であるということが判明いたしました学校につきましては、九月二十九日付の通知等によりまして、学校設置者に対して、直ちにアスベスト等の除去を行うなど法令に基づき適切な措置を講ずるように指導してきたところでございます。

 また、このような除去等の措置を学校設置者が講ずるに当たりまして、かなりの財政負担が生ずるわけでございまして、公立学校のアスベスト対策工事を円滑に進めるために、文部科学省といたしましては、現在追加支援策の検討を進めておるところでございます。十一月末にはアスベスト調査全体がまとまる予定でございますので、この調査結果等も踏まえながらアスベスト対策を確実に実施してまいりたい、このように考えております。

池坊委員 ぜひ、内閣府におけるそこの関係省庁のときにも、これは文科だけで処理できないほどの莫大なお金、費用がかかるということもきっちりと言っていただきたいと思います。

 それから、今もう進んで工事をしております各地の学校がございます。そういう学校は、財政的に豊かだからしているのではなくて、予備費とか前倒しをしてしているんですね。大体、予算のつけ方というのは、もう既にやっておりますものは、後から予算をつけるということはいたしませんね。だから、先にやったところが損になるわけです。私なんかは奨励費を出してもいいのじゃないかと思っておりますが、ほかのいろいろな施策に対しても、先駆けてやっておりますのには予算がつかないで、文科がやったことに対してその追従でやると予算がつくという予算のシステムもおかしいと思います。

 箕面なども先駆けてやっているから、財政的に豊かだからしているのではないのだから、ぜひこれは予算をいただきたいという主張がございました。これはもっともだと思いますので、それはいかがかをちょっと伺いたいと思います。

中山国務大臣 本当におっしゃるとおり、一生懸命やったところが損するようなことでは困るわけでございます。

 ただ、平成十七年度予算、もう既に補助金の早期執行の観点から交付は終わっている状況でございますので、ことしどうかするというのは現時点では困難でございますけれども、先ほど申し上げましたように、追加支援策の検討を進めておるところでございます。今御指摘いただきましたように、これは文部科学省だけじゃなくて政府全体として取り組むべき問題だと思っていますので、そういう方向で検討してまいりたいと考えております。

池坊委員 今明確な御答弁はいただけないと思いますけれども、ぜひこれは頭に入れていただきたいと思います。そうでなければ、各地域は一生懸命やっても損したという思いだけが残りますから、そういうところを奨励する文科であっていただきたいというふうに思っております。

 研究振興局の方に伺いたいんですけれども、今アスベストが何で心配かというと、早期発見ができない、発見されたときにはもう手おくれだと言われてしまうという不安が充満していると思うのですね。

 厚生労働省は新薬の発明に今一生懸命何か苦労しているというふうに新聞で読みましたけれども、これは、厚生労働省と連携をとりながら、文部科学省がこの早期発見できる研究のプロジェクトを立ち上げるべきだというふうに思っております。二千万円の予算をつけて今やっているというふうに伺っておりますので、それをちょっと伺いたいと思います。

清水政府参考人 先生御指摘いただきましたように、アスベスト起源の中皮腫については、現状では早期発見の方法が極めて難しく、また実際上、診断を受けた時点では、多くは手おくれとか、もう治療が困難であるというケースが多いというふうに承知しております。そういう意味では、まさに中皮腫の早期発見、診断というものを確立することが、その段階では比較的簡単な外科手術あるいは化学療法等による治療が可能になる、このような全体の認識でございます。

 このため、私どもとしても、アスベストにさらされてきた多数の方々の中から、早期かつ効率的に中皮腫を診断あるいは特定することが重要と認識して、そのための研究開発に着手したところでございます。

 具体的には、各研究開発法人等にその方向に向けての努力を促すと同時に、血液検査技術あるいはPETを用いた画像診断技術等による早期診断システムの確立を目指して、そのための研究計画について研究チームからの提案を受けて、科学研究費補助金を交付することといたしました。

 このような早期発見、診断ということのみならず、それとともに、まさにこれ自体も厚生労働省傘下のさまざまな臨床に当たる研究機関、病院等と連携協力が不可欠でございます。そして、治療面での、まさに医療機関等との連携も重要なことでございます。私どもとしては、こういう関連する研究開発への取り組みについて関連省庁等、とりわけ厚生労働省とよく連携をとりながら、積極的に進めてまいりたいというふうに考えております。

池坊委員 順天堂病院を初めとして、アスベストに対してのいろいろな治療だとか研究をしているところもあると思いますので、そことの連携ということが大切かと思いますので、ぜひそれはやっていただきたいと思っております。

 それから、空気濃度測定というのがございますね、空気で測定して、ここは危ないとか危なくないとか。あれは、WHOは十本で、箕面は一・五以上は危ないというふうに規定したと言っておりますけれども、あの規定の水準がないんですね。私は、やはり幼稚園とか小学校、小さな子供たちの方が受ける率、そして成長してからそれが出てくる率が高いと思います。これはやはり文科が、文科だけで決められないのかもしれませんけれども、子供たちを預かっている施設を有している文科ですから、しっかりとこの測定はどこまでという基準を設けるべきだと思いますが、これについてはいかがでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生が御指摘のように、室内についての基準というものが明確になっていない状況でございまして、この点につきましては、先ほどお触れになりました関係省庁の連絡会議、こういった場も通じまして、関係省庁にどういった形が望ましいかということの確認を行いながら、その基準値の設定というものについて検討を進めるということをしているところでございますので、今後とも関係省庁と密接に連絡をとりながら取り組んでまいりたい、かように存じます。

池坊委員 文部科学省がお出しになったアスベストの調査、分厚い調査票を拝見いたしましたけれども、あれを見るだけでも大変だなというふうに思って、あれはもうちょっと簡潔にできないのかと思いましたことと、調査というのは、御存じですか、教頭先生の仕事は調査を埋めることにあるんです。読みました後、では現場がどういうふうに対処していくかというと、今それをチェックする機関がまず少ないのです。大阪でも数軒しかございません。この東京にも数軒です。ですから、もう本当に、過疎地でしたらそういう人に当たるということが難しいんですね。頼みましても、二、三週間かかるんです。それが現状です。

 調査票を拝見しましたら、十一月中旬までにというふうに書いてありましたが、とてもこれは現場と乖離しているな、こんなことができるはずがないというふうに思うのですが、チェックできる、調査する機関の一覧もいただきましたが、これは教育委員会を通してそれぞれの小学校のもとにちゃんと配付しているのですか。やはりガイドラインというのをつくらないと、これは現場が非常に混乱しております。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘ございましたいわゆる分析機関、こういった業者の少なさという話でございますが、先ほどお話ございましたように、今の調査は十一月十五日期限で十一月末を目途に取りまとめるということで進めておりますが、御指摘ございましたように、地方自治体の中には技術者が必ずしもしっかりいなくて、学校の方はそういった業者に頼まないとできないということも結構あるわけでございまして、そういった場合に、その分析調査を実施できる専門業者の数が現実に少ないということは私どもも承知しているところでございます。

 ただ、そういう中で、その後、さまざまな機関、専門機関といったところに当たりながら、実施できる業者についての情報も収集して、これをしっかりとそれぞれの現場までお知らせできるようにということで、現在百五十業者を超えるような形の業者数について状況を把握しておりますので、こういったものについては速やかにそれぞれの現場の方に情報が着くようにということで取り組んでまいりたい、かように存じております。

池坊委員 一連の作業を見ておりますと、まず調査だ、それが回収されることが一つの仕事だという感じが文部科学省の中におありになるのではないかと思いますけれども、現実にそれをしなければならない小学校、中学校というのが大変対応に苦慮いたしておりますので、その辺は現場を一度ぜひ見てほしいというふうに思っております。

 それと、ですからさっきも申し上げましたように、情報公開はしているんですね。情報公開をぜひどんどんとしていただきたいということと、この問題は数年では終わらないと思うんですね。ずっと継続して問題化していくと思いますから、やはりチェックできる人を養成するということが必要なんだと思いますが、それは関係省庁との連絡の中でそういうこともしていらっしゃるのでしょうか。

大島政府参考人 お答えを申し上げます。

 関係省庁、さまざまな情報交換をしておりますが、そういった中で、先ほどの例えば分析業者のような機関の関係で申し上げれば、こういった機関が精度よく分析を行えるようにというような趣旨で、社団法人の日本作業環境測定協会、こういったものに委託して、全国八ブロックで講習会を開催した、こういう状況も聞いておりますし、そういった視点から、私どももいろいろな必要なことについては要請もし、あるいは情報も受け取りといったような形でそこは取り進めていくというふうに考えてございます。

 まさしく長期的に計画性を持って除去等に当たらなきゃならないという機関も出てくると考えられますので、そこはしっかりとした調査、それから対策がとれるようにということで対応をとってまいりたい、かように存じます。

池坊委員 しっかりとした情報を流しませんと、保護者はあれやこれやと必要以上に心配をいたしております。その心配を募らせることは決して好ましいことではないと思います。冷静に判断したら大丈夫だというところもたくさんございますので、いち早くそういうことがわかる人間をつくっていただきたいというふうに考えております。

 これは、中山大臣、文部科学省の省内にアスベスト対策本部というのがあるのでしょうか。私は、それをつくっていただいて、これを今後どういうふうに対処していくかというのをやはりきちんとすべきではないかというふうに思います。

大島政府参考人 ちょっと事務的な部分で御説明させていただきます。

 最初にこの問題が起きた段階で文部科学省内に対策チームを立ち上げてございます。近藤文部科学審議官を筆頭といたしまして、省内関係課一致協力して体制をとるという趣旨でやっておりまして、その中で、今のような調査あるいは対策について打ち出しをしていくというふうに取り組んでいるところでございます。

池坊委員 ぜひこれは、大臣はもうお忙しいでしょうけれども、副大臣、政務官がいらっしゃいますから、これは大切な問題で、保護者の方々も心配しておりますし、現場は大変に苦慮をいたしておりますので、副大臣か政務官がトップに立って率先してやっていただきたいというふうに思っております。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 平野博文君。

平野委員 民主党の平野博文でございます。

 久しぶりに文部科学の委員会に戻ってまいりました。中山大臣初め副大臣の先生方と、短い時間でありますが、ぜひ議論をしたいと思っております。

 今回は短い時間でありますから、二点に絞ってお聞きをしたいと思っております。まず一点は教育基本法の問題について。もう一点は、いろいろなところでの不祥事が出ておるわけでありまして、きょうは大変忙しい中でありますが、殿塚理事長にも御出席をいただきました。今まで理事長は出てくれと言ったときには出てくれなかったわけですが、私、忙しい中理事長が初めて出ていただいたことに心から敬意を表したいと思いますし、しっかり頑張っていただきたい。もうこれで私、質問は終わったようなものでありますが、そんな敬意を表しながら質問をしたいと思っております。

 まず一点目でございますが、過日の委員会で文部大臣あいさつという表現でのごあいさつをいただきましたけれども、私も初めてでございますし、今回の総選挙で新しい議員も誕生しているわけでありますから、やはりこれは大臣所信、こういう位置づけで質問しなきゃならないと思っておりますが、中山大臣、この大臣あいさつというのは所信と受けとめてよろしいでしょうか。簡潔にどうぞ。

中山国務大臣 十二日の委員会で私から発言を求めまして、今国会において各般の御審議をいただくに当たりまして、文部科学大臣としての考え方を申し上げたところでございます。特別会とか臨時会におきます文部科学大臣の発言につきましては、従来からあいさつとして申し上げてきたということでございまして、歴代の内閣発足時にも大臣があいさつを申し上げてきておるところでございます。

 もちろん、あいさつということではございますけれども、私としては、第三次小泉内閣の発足を受けまして、文部科学大臣としての考え方を申し述べたところでございます。

平野委員 では、所信という決意のもとにある中身を質疑したいと思います。

 そこで第一点。この三ページ目にあるんですが、「教育基本法の改正については、中央教育審議会の答申や与党における議論を踏まえ、国民的な議論を深めつつ、速やかな改正を目指し、しっかりと取り組んでまいります。」こういう二行が入っているんですが、私、一つはけしからぬと思いますのは、中央審議会の答申や与党における議論を踏まえという、これは、我々野党の立場でありますが、国会の議論を踏まえという言葉ではないんでしょうか。間違いではありませんか。

中山国務大臣 もちろん最終的には国会で御審議いただくわけでございますけれども、政府・与党としては、とりあえずまずその案をつくるという段階だ、このように考えておるわけでございます。最終的には国会で御審議いただくというのは当然のことだと思っております。

平野委員 さすれば、与党における議論というのは、これは密室の議論ですよ。政党の中の密室の議論で踏まえるというよりも、やはり開かれたところでしっかりと議論をするということが大事ですから、少なくとも大臣のごあいさつの中には国会の議論という言葉があってしかるべきだと思いますが、訂正する気はありませんか。

中山国務大臣 国会の議論は国会の議論としてやっていただくわけでございまして、まずその案をつくる前に、密室という言葉は、広場であれば密室でないのかどうかわかりませんけれども、部屋の中で議論しているわけでございます。あいさつの中にも申し上げましたが、国民的な議論も踏まえてということで、教育改革に関するタウンミーティングだとかいろいろなところを通じまして、さまざまな国民の意見も聞きながら今検討しているということでございます。

平野委員 それはちょっと、私も初めて大臣にあいさつする私のごあいさつとして申し上げただけでありますので。

 さて、教育基本法に関しての質疑に入るわけですが、昨今、いろいろ教育関係における問題、課題等が山積をしているわけであります。加えて、政府は平成十三年に中教審に諮問をしておりまして、十五年の三月にそれなりの答申を得ているわけであります。そういう流れの中で、大臣のお考えとしては、教育基本法の改正については改正すべきというお考えの言葉でもあったわけでありまして、その大きな理由は、大臣はどういう認識のもとに改正すべきとお考えなんでしょうか。

中山国務大臣 今、文部省を挙げて教育改革に取り組んでいるわけでございますけれども、その中で、学校現場、あるいは教育を通じたといいますか、その影響もあって、社会でもいろいろな事件や事故、さまざまなものがあるわけでございます。

 この教育基本法というのは、昭和二十二年に制定されて以来一度も改正されることなく半世紀以上が経過しているわけでございまして、その間に社会状況も大きく変わりました。教育についてもさまざまな課題が生じている中でございまして、教育改革を進めていくその仕上げとしては、やはり教育の根本にさかのぼった改革が求められているんじゃないか、こういう認識のもとに、今、教育改正について取り組んでおるところでございます。

平野委員 では、逆に質問しますが、教育基本法を変えればこの諸問題が解決をできる、こういうふうに認識をしておられるんですか。

中山国務大臣 ただいま申し上げましたように、我が国の教育をめぐりましてさまざまな問題、例えば学力低下の問題だとかいじめの問題だとか、いろいろ出てきているわけでございまして、そういったことにつきましては、迅速かつ的確にいろいろな具体的な施策を講じていくことが必要である、こういうふうに考えているわけですけれども、先ほど答弁しましたように、戦後半世紀を経て、我が国の社会を取り巻く環境、また世界的な状況等が大きく変わっているわけでございまして、そういう意味で、教育についても根本にさかのぼった見直しを行うということが重要なことではないかな、こう思っておるところでございます。

平野委員 私は、教育基本法というのは、やはりある意味では理念法だと思っています。その理念に沿って具体的に進めてきた具体的施策が間違っていたからこういう今の問題を起こしているのかな、こういう一面の理解をしていますし、大半がそうじゃないかと思っております。

 きょう、大臣、副大臣、お越しでございますが、少なくとも、きょうこの文科におられる委員の皆さん、教育基本法は読まれたことは当然ございますよね。大臣は当然熟読されている。副大臣、どうですか。承知しておりますか。一条わかりますか。――いやいや、いいです。

 私は、文部科学委員会で教育を論じようというときには、私もすべてを承知しておるわけではありませんが、教育にかかわる問題、いろいろな問題が出ているわけでありますから、きょう同僚議員の皆さん方も、少なくとも、教育基本法とはどういう法律であるか、このことについては知った上でやはり議論に臨まなきゃいけない、こう思っているんですね。

 私も、質問をするし、長い間文教にいましたからある意味では理解していますが、きのうつらつらと基本法を読んでみました。どこが問題だというふうに大臣は思いますか、この条文の中で。

中山国務大臣 教育基本法につきましては、私も何度も読み返しておりますが、大変立派な法律だと私は思っております。ただ、どこの国でも通用する教育基本法だと思っているんですね。その中で、やはり日本的なものというのがちょっと欠けているのかな、こういう感じがするわけでございます。

 ちょっと申し上げますと、教育基本法が制定されたときには教育勅語というのもございまして、この二つの法律が車の両輪となって日本の教育をやっていこうということでございましたが、GHQの指令によりましてこの教育勅語が廃止されたわけでありまして、戦後の日本の教育というのは、ある意味では片肺飛行でやってきた。そこで、先ほど井脇委員からもお話がありました心の問題だとか、いわゆる道徳だとか、公の心だとか、日本人としてどういう日本人を育てるんだという観点が抜けたそういう教育が戦後ずっと行われてきたんじゃないかな、そこにも今日的なさまざまな課題が生じているんじゃないかな、こう思っているわけでございます。そういう意味で、教育勅語を読んでみますと、本当にいいことが書いてあるなと私自身は思っております。

平野委員 教育勅語まで出てまいりますと、もっと本質的なところを詰めなきゃいかぬかもわかりません。

 私は、単純読みをいたしますと、この教育基本法の第一条「教育の目的」等々を考えますと、非常にいいことを実は言っているんですよ。目的は非常にいいことを言っている。では、そういう教育基本法にのっとって、理念にのっとって今日まで戦後進めてきた文部科学省の、政府の教育施策に大きな問題があったんじゃないか、こういうことを、私、非常に思うのであります。

 しかしながら、今大臣おっしゃったように、基本法をつくってもう戦後五十八年たっております。したがって、これは絶対に変えちゃいかぬ、こんな理屈に私は立つべきではないと思うのであります。そういうことも含めて、絶対にこの基本法については変えないという議論ではなくて、広く、大臣が所信でおっしゃっているように、国民の議論はやはりオープンに議論をしましょうよというお考えについて、私は大いに賛成なんですね。私どもも、党内には教育基本問題調査会というものを四年前に設置して、今日まで大いに党内議論を進めてまいりました。私、今回改めて、大臣がやはり改正すべきである、こういうお考えだということを前提に、強い決意だと思っておりますから、開かれた場というのは、やはりタウンミーティングは開かれた場ではありません、少なくとも国民の代表者たる国会の場でしっかりした議論をする、こんな場所をやはりつくっていくことが、私、非常に大事ではないかなと思っておるんです。

 大臣、国会で特別委員会でやるとか、私は、きょうは文部科学委員会でありますから、この委員会の中でその議論をする、こんな場をつくりたいと思っておりますが、大臣は多分、それは国会でお決めになることでしょうという答弁をされるでしょうが、個人的にはよろしいかなと僕は思うんですが、どうでしょうか。大臣の個人的見解で結構です。

中山国務大臣 やはり、教育基本法でございますから、広く国民のさまざまな意見を取り入れなきゃいかぬ、こういうことで、今言われましたように、タウンミーティングだとかさまざまな機会、また文部省のホームページ等を通じてさまざまな意見を今集めているところでございます。

 もちろん、その中で、国会におきましてもこれを御議論いただくというのはとてもいいことだと思っておりますが、今まさに平野委員が言われましたように、そういった委員会をつくるかどうかは、これは国会のお決めになることでございまして、私がとやかく言うことではないかな、こう思っていますが、ぜひそういう意味では、国会の場でも御議論いただけば大変ありがたいなと思っております。

平野委員 言いにくい答弁でしょうけれども、ぜひつくってほしいという声はありませんか。大臣としては言いにくいのかもわかりませんが、ぜひ国会でやってほしいと。

中山国務大臣 国会でお決めいただきたいと思います。

平野委員 どこに気遣いしているんですか。

中山国務大臣 いや、気遣いはしていません。国会に気遣いをしています。

平野委員 委員長、改めて提案をしたいと思います。

 これは、私は民主党を代表してお願いをしたいと思います。これは大きな問題ですから、国会の中の全体的な特別委員会とか云々という議論も私は要求をしたいと思っておりますけれども、きょうは委員会でありますから、委員長にぜひお願いでございますが、この委員会の中で、小委員会といいましょうか、そういう委員会をつくっていただいて、教育基本法に関しての専門的議論ができ得る場をぜひこの国会で設置をいただきたいと思いますが、ぜひ御検討いただきたいと思います。

斉藤委員長 平野理事の御提案につきましては、理事会でしっかりと協議をしていきたいと思います。

平野委員 この教育基本法の問題についても、今もう機が熟してきている、そういう状況でありますから、ぜひ、党派にこだわらず自民党の先生方におかれましても、野党の我々仲間も含めてしっかりとこれについては御賛同いただきたい、このようにお願いをしておきたいと思います。

 時間が押しておりますから、次のテーマに参りたいと思います。

 実は、十月一日で新しく機構改革ができ上がったわけであります。独立行政法人日本原子力研究開発機構ということが発足をいたしまして、きのう式典があり、私も参加をさせていただきました。きょう理事長にお忙しい中来ていただいたのは大変恐縮でありますが、実は、なぜこの質問をするかというと、非常に大事なことだと思っております。

 巷間言われておりますが、核燃サイクル開発機構においての、放射線業務に対しての業務手当という名のもとに不正受給をしていた、こういうことが発覚をし、発表されたわけであります。今月一日に新しい、統合した日本原子力研究所においても同じような事案がまた出てきました。この不正受給については、当然こんなことはあってはいかぬわけでありますが、過去三年さかのぼって一億三千万程度判明したので国に返還をする、こういうことを発表されたわけであります。

 こんなことがこの二法人にたまたま具体的に起こりましたけれども、この二法人に限らずこういう不正受給が行われているということは、やはり長い、継続した組織であれば、私、必ず出てくると思うのでありますが、そんなことを含めて、大臣、この問題についてはどのように受けとめておられますか。簡潔で結構でございます。

中山国務大臣 お答えいたします。

 旧核燃サイクル開発機構及び旧日本原子力研究所におきまして放射線業務手当等の不適切な支給が行われたということはまことに遺憾である、このように考えております。

 文部科学省といたしましては、この十月一日に両法人が統合して設立されました独立行政法人日本原子力研究開発機構におきまして、徹底した再発防止策を講じて厳正な業務運営が行われるように適切に対応してまいりたい、このように考えております。

平野委員 しかし、これは三年さかのぼってとかこういう理屈じゃなくて、この制度というのは、もう一九六七年、四十年近く前から制度としては手当制度はあるんですね。これは、この手当自身は悪い制度ではないと思っていますが、不正受給が発覚したのはこの三年で発覚したのではなくて、同じような傾向で四十年間これをやってきているのではないか。あるいは、四十年とは言いません、少なくとも十数年以上この制度で運用してきているのではないか。それを三年でとめ置きして返還をする、これでは国民の皆さんは納得しないんじゃないか。不正受給についての納得性と、この制度自身が、本当に何を根拠に制度としてはめているのかという制度自身の基準、理屈が納得性のない制度になっています。

 単純に、私調べてみましたら、一カ月のうちに九日危険な領域に入って勤務をすれば、九日だったら支給をしない、十日以上か十二日以上か忘れましたが、それを超えると手当として支給する。九日だったら危険がなくてよくて、十二日以上だったら危険になるから危険手当を出す、ではこの三日間どうしよう、では入ったことにしておこうという、こんな給付の仕組みで、本来こんな放射線業務手当というのがルールとしてなり得るのか、まず、この点はどうですか。

森口政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から何点か御質問あったと思いますけれども、まず一点の三年に限ったという点でございますけれども、旧核燃料サイクル開発機構あるいは日本原子力研究所におきましては、全事業所において放射線業務手当等を支給しているわけでございますが、これは必要な書類に基づいて手当を支給してございまして、その書類のいわゆる保存期間といいますか、それが三年ということでございますので、事実上、三年にさかのぼって調査をし、それに基づいて具体的な不正受給等について調査をした、そういう実情がございます。

 それから、その手当の性格でございますけれども、これは放射線のもとで労働するという勤務環境の特殊性とか、あるいは作業に伴いまして放射線被曝が避けられない、こういう状況、あるいは心理的負担、また作業の複雑困難性、あるいは作業に要する高度な技術、経験、施設の安全確保の責任、こういった観点から放射線業務手当というものが支払われているというふうに承知をしているところでございます。

平野委員 ただ、書類の保存期間が三年だからと言っていますが、私は、もっと別のツールを使えば三年のみならず五年ぐらいは少なくとも調査できる、こう思っております。したがって、三年という期間を限定することなく、より国民の皆さんに、こういうことを起こしません、過去にさかのぼれる限りさかのぼって対応しますという決意がなければ、書類の期間が三年だから事務的に三年間だけを決めてやるというのは、国民の皆さんに納得性が得られないと私は実は思うのであります。

 もう一点、これは多分もっと問題だと思うんですが、核燃、原燃だけの問題ではなくて、去年理研で、この手当について、理研では改正をしているんですよ。理研はなぜ去年これは問題だと思って改正をしているのかということを考えますと、核燃と原燃だけではなくて、ここに従事しておられるあらゆる関係のところも同じような事象で今日まであるのではないか。ここをしっかり私はまず調査をしていただきたい、このように思います。

 加えてもう一つは、こういうややこしいことではなくて、逆に言うとそれ以外に、みなし的に残業をしているとか、こういうところも逆にもっと言えば出てくるのではないか、こういうふうに思うんですね。したがって、実体的に、今言われたように三年だけの問題じゃなくて、改めて、こんな問題、四十年の長い制度でありますから、起こってきたわけですから、今回新しい機構ができて新理事長が誕生したわけでありますし、ここの理事長だけの問題ではなくて、理研も含めてそれ以外にこれにかかわるところ、みなし残業等々も含めて本当に大丈夫かどうかを、ぜひ大臣、これはきちっとチェックをしていただきたいと思いますが、その御決意をお願いしたいと思います。

中山国務大臣 今御指摘ありましたように、この放射線業務手当を支給している法人、この二つの法人以外にも、例えば理研とか放射線医学総合研究所、大学等が存在するわけでございまして、このような法人につきましては不適切な事案、事実があるということは承知しておりませんが、今回の調査の内容とかあるいは結果を踏まえまして、この放射線業務手当の支給の基準等の違い等もありますけれども、こういったことも勘案しながら必要に応じて確認していくことも検討していきたい、このように考えております。

平野委員 まあそういうことで、ぜひこういう不正が起こらないチェック機能と制度をおつくりいただきたいと思います。

 時間が来ましたから、最後に、きょうは理事長わざわざお越しをいただきました。旧組織の新しい統合体の新理事長でございますから、両方にかかわった立場でこういう不正が起こったということと、私は、この機構は非常に我が国にとって大事な仕事をしていただく機構だと思っておりますが、弁明は要りませんが、もうこれで二度と起こさないという決意と、新しい機構を発足させての御決意をお述べいただいたら結構かと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。

殿塚参考人 このたび十月一日に発足しました日本原子力研究開発機構の理事長を拝命しました殿塚でございますが、改めてこの新組織が原子力関係に関する我が国で唯一の総合的な研究開発機関であるということで、その任務としては、世界のCOE、センター・オブ・エクセレンスたる研究開発機関になってほしい、そういう御期待の中で生まれた組織でございますので、改めて、私もその責任者として責任の重大さを痛切に感じているところでございます。大切な国民の信頼というものを裏切ることのないように、今後とも適正な業務運営、経営をして国民の負託にこたえたい、こういうふうに考えております。よろしくどうぞ御指導いただきたいと思います。

平野委員 終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 牧義夫君。

牧委員 牧義夫でございます。

 この文科委員会において私も数多く質問の機会をいただいてまいりましたけれども、とりわけ、これまでの数人の大臣にも私なりにいろいろな質問をさせていただきましたけれども、特に中山大臣においては、誠実に、誠意を持って御答弁をいただいてまいったことに改めて感謝を申し上げたいと思います。小泉内閣は、新しい内閣発足もう間近ということでございます。私は、中山大臣は本当に重要な部分で私と認識を共有できる、そういう方だなという実感を抱きながらこれまで質問等をさせていただいてまいりましたけれども、そんな観点から、できれば十一月、新内閣発足で中山大臣が留任していただければいいなというような思いも込めながら、私は質問をさせていただきたいと思います。

 とりわけ、先ほど来お話に出ておりますけれども、義務教育費の国庫負担制度の問題、これまでさまざまな議論がなされてまいりました。特に、この一月から始まりました通常国会において、私も予算委員会やらあるいは当委員会において質問をさせていただいたわけでありますけれども、ここで本当に危惧を感じるのは、これまでの議論が一体何だったんだろうかというような事態に、新内閣発足後によもや陥るのではないかなというような危惧を私は持っております。

 文科省の中にもそういう危惧を抱いている方はたくさんいらっしゃるようでございまして、昨日も日本教育新聞を拝見いたしておりましたら、緊急投稿ということで、初中局の財務課長の藤原さんという方が「義務教育崩壊の危機」という見出しで投稿をされております。もっともなお話をここで開陳されているわけでありますけれども、小泉内閣のもとでいわゆる構造改革が進み、そして三位一体の地方分権の改革。これは、改革はいいんでしょうけれども、私はやはり教育というのは聖域だと思っております。そういう認識を多分中山大臣も共有していただいているだろうと思いますから、私はそういった前提でまず質問させていただきたいと思うんです。

 十七年度、四千二百五十億円の減額措置がございました。これはあくまでも暫定措置だったわけでありますけれども、ことし、選挙もあり、夏の間私もちょっとこの辺のところには目が届かなかったんですけれども、改めて選挙が終わって十八年度の概算要求を拝見すると、この減額分がまたもとに戻っているわけですね。これはやはり文科省としての一つの強い意思表示だと私は受けとめました。

 これはあくまでも暫定措置だからもとに戻すということで理解をしてよろしいんでしょうか。まずお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 義務教育費国庫負担金につきましては、昨年末の政府・与党合意におきまして、あくまでも暫定的に八千五百億円の減額を計上いたしました。その取り扱いにつきましては、「平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得る。」というふうにされたものと認識しているわけでございまして、今回の予算要求は、まさに暫定的に減額されたわけですから、もとに戻して要求したということでございます。

牧委員 ただ、通常国会においても、小泉総理にもこの文部科学委員会においでいただいて、改めて確認をしたわけですね。そういう中で、あくまでも地方案を尊重したいんだという答弁がございました。

 そういうことになると、このまま八千五百億の一般財源化ということが、その総理の言葉をとらえれば自然の流れになるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 先ほども言いましたように、本年秋までに中教審において結論を得るというふうなことになっているわけで、この合意に基づきまして中教審で精力的に御議論いただいてきたわけでございます。特に、昨日の会議におきまして、義務教育費国庫負担制度については、現行の負担率二分の一は今後も維持されるべきであるという答申案が部会決定されたところでございます。

 この答申案につきましては、今後総会において審議され、答申として取りまとめられることになるわけでございますが、いずれにいたしましても、文部科学省といたしましては、昨年末の政府・与党合意に基づきまして、中教審の結論を踏まえて、引き続き義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を果たしてまいりたい、このように考えておるところでございます。

牧委員 私は、今大臣がおっしゃるとおりだと思いますけれども、中教審の結論を踏まえてというその言葉そのものが全くほごにされちゃうんじゃないかなという懸念を抱いているからこそ、私は今質問させていただいているんです。

 では、例えば今回の概算要求で、総務省の方の反対側から見て予算要求はどういうふうになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

瀧野政府参考人 総務省の概算要求についてのお尋ねでございますが、三位一体改革の全体像に係ります政府・与党合意におきまして、義務教育費国庫負担金は暫定分とされておるわけでございますけれども、三兆円の税源移譲というのを目指しておるということでございますので、その一環として、十七年度同様、税源移譲予定特例交付金という形で八千五百億円を仮計上しているという状況でございます。最終的には、年末にかけて、三位一体の改革の決着の内容を踏まえて適切に対応していきたいというふうに考えております。

牧委員 そうすると、それぞれが仮計上ということで、今の内閣における見解というのは一致していないという理解でよろしいんでしょうか。

中山国務大臣 概算要求の段階では、文部科学省そして総務省として、それぞれの要求の枠組みの中で要求したものでございまして、先ほど答弁もありましたけれども、今後とも、政府・与党合意に基づきまして、予算編成の過程におきましてしっかりと取り組んで対応してまいりたい、このように考えております。

牧委員 そうすると、多分次の十一月の新内閣が発足すると、そこら辺で意見の一致を見るだろうということに私には理解できるんですけれども、中山大臣として、今後、これは留任されるのか、あるいは新大臣が誕生するのかわかりませんが、ぜひとも次の大臣に申し送りをしたいことがあればおっしゃっていただきたいと思いますけれども、何かありますか。

中山国務大臣 私が留任するのかどうか、全くそれはわかりませんが、義務教育費国庫負担制度の根幹を堅持する、そして国の責任を引き続き果たしていくということにつきましては、大臣がかわろうが、これはもうこの根幹だけはしっかり守っていかなければいかぬな、こう思っておりますので、後を継ぐ方にもそのことはしっかり申し送りしていきたい、このように考えております。

牧委員 義務教育の根幹が、もう給与本体まで及んでいるということで、揺らぐのではないか。文科省の課長クラスの方たちも本当に職を賭して頑張るんだというような決意まで述べられているわけで、もうかなりせっぱ詰まったところにまで来ていると私も思っております。

 これまでの質問にもありましたけれども、本当に財源が各地方自治体において確保されたから、担保されたから、教育の質そのものが担保されるということ、イコールにはならないという懸念が我々としてはあるわけですね。だから、先ほど来総務省からの説明で、財源は担保されるんだというお話がございましたけれども、それだけでは余りに無責任じゃないか、それだけでは私たちは心配だよということで、質問をあえてさせていただいているわけであります。

 これまでもこの議論の中でしばしば取り上げられてまいりましたけれども、例えば学校図書整備費について、これが交付金という形で自治体におろされたときに、果たして本当に本来の目的のためにこれが使われてきたのかどうなのかということはもう一目瞭然なわけで、事ほどさようにいろいろなことがこういった交付金化によって起こってくるんじゃないかという懸念があるわけです。

 そもそも、総務省の方にまずお聞かせいただきたいんですけれども、交付金の意味合いというか位置づけ、これが本当に、例えば教育目的、あるいはもっと限定した義務教育の質の維持ですとか、あるいは無償制、あるいはまた機会均等、これを担保するに足りるだけの用途にしっかり供されるのかどうなのか。そこを担保するものが法律的に、財政法なのかあるいは地方自治法なのかわかりませんが、法律的に担保されているのかどうなのか。そこをまず確認させていただきたいと思います。

瀧野政府参考人 義務教育の教職員の配置につきましては、先生御案内のとおり、義務教育の標準法におきまして学級編制なり教職員定数の標準が定められておるわけでございまして、地方公共団体は、国庫補助負担金の有無にかかわらず、これを遵守する義務は当然あるわけでございます。したがいまして、万一、学級の規模とかあるいは教職員の配置が不適正という状況になりますれば、文部科学大臣の方が適正化に向けまして指導なり助言等の関与、当然これは行えるわけでございます。

 また、財源の面で申し上げますと、我々の方で税源移譲した後、必要な経費は交付税の需要の中に全額算入するという形で財源保障する方向でございますけれども、仮にそういったものが適正に行われないということになりますと、地方交付税法におきまして、関係大臣が地方団体に対しまして勧告するとか、あるいは総務大臣に対して、交付税の減額、返還請求をしなさいというふうに言うとか、そういう権限がございまして、総務大臣はそれに従う義務があるわけでございます。

 いずれにいたしましても、そういうような法律上の手当てもある中で、きちんとした財源措置をし、義務教育に関します必要な財源が確保されるように我々も考えていきたいと思っております。

牧委員 指導助言やら勧告やら、あるいは返還の請求というお話はわかったんですけれども、例えば今私が申し上げた学校図書整備費等の用途が必ずしも適切でなかったということに関しては、ちょっとこれは質問通告にないんですけれども、何らかの指導助言あるいは勧告があったんでしょうか。

瀧野政府参考人 お尋ねの学校図書費というものを考えてみますと、先生方の人件費と違いまして、標準法というような法律上の枠組みがないわけでございます。交付税の中で必要な学校図書購入費というものを積算の根拠に入れて地方団体にそれを示しているという状況にございまして、最終的にはどういった額の学校図書費を予算計上するかということはそれぞれの地方公共団体がみずからの議会に諮って決めていくというものでございます。

 その点、人件費と学校図書費というのは法律上の裏づけがあるかどうかというところが大きく違っておるという面で、財政措置がされたということについて、特に学校図書費について法律上の裏づけがないものですから、交付税のとおりやっていないということについて指導するということはございません。

牧委員 それではちょっともう一つ、申しわけないんですけれども総務省にお答えいただきたいのは、その他もっと一般的に法律的な用途の指定があるものについて、これまで地方自治体から返還されたものというのはあるんでしょうか。

瀧野政府参考人 基本的には地方団体の方で法律を遵守して適正な法律執行をするということは当然の前提でありますので、今まで特にこういった地方交付税法の規定が発動されたというような事態になっていないということでございます。

牧委員 結局、今までそういった例はないわけですね。

 大臣に、改めて今のお話を受けて、財源が地方において担保されたから大丈夫なんだというふうにお思いになるのか、それとも、やはりこれまでの国庫負担制度そのものを維持するかどうかは別として、その精神を維持しなければこの辺の基礎から、基盤から揺らいでしまうんじゃないか、そういうお考え方なのか、はっきりちょっと大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 これは、税源移譲されますと、豊かな県とそうでない県で税収に大きな差が出てくるということが一つあるわけです。それを調整するものとして交付税があるわけですけれども、これまでも一般財源化されました、今牧委員が言われました図書購入費もそうでございます。これも地方によって物すごいアンバランスがございます。

 私ども、三百八十校の小中学校を視察してまいりましたが、現場に行ってみますと、本当に図書室もいいところもあれば悪いところもある、整備されているところもあればそうでないところもありますし、例えばファクスの用紙がないところとか、あるいは子供たちのためのプリントをつくろうと思っても用紙がないので一回使った用紙の裏を使っている学校があるとか、本当にどこの国の学校なんだろうと思わず叫びたくなるような、そういった学校もあるわけでございます。

 したがいまして、今後、本当に地方が全額自分たちでやると言われますけれども、それこそないそでは振れないということもありますし、教育に熱心な方もあれば福祉に熱心な知事さんもいらっしゃるわけで、それによって本当にアンバランスが生じてくるということになりますと、憲法の要請でございます、全国どこに生まれてもひとしく教育を受ける権利があるんだ、こういう憲法の要請にも反することになるのではないかということで、実は心配しているわけでございます。

 これからもすぐれた教師を必要な数確保していく、現場に任せて、先生方に本当に一生懸命やってもらいますが、そのかわり、先生方の身分保障といいますか、給与についてはしっかり国が面倒を見ますよ、そういう姿勢は絶対崩してはならない、こう思っております。

牧委員 私も基本的な考え方は全く大臣と変わらないんですけれども、ただ、今の情勢を見ておりますと、とにもかくにも三兆円の税源移譲、三位一体の改革なんだということで、初めに数字ありきというか、この形で、このままどうも押し切られそうな雰囲気なわけでございます。

 我が党としては、我が民主党としてのマニフェストにも地方分権を推進する中で税源移譲あるいは交付金化ということを進めていくという一定の方向には変わりはないんですけれども、そういう中で、義務教育の今の質の維持を図るために、きちっとその財源を確保するための法律案というものを次期通常国会にでも提出できるかなというところで今準備を進めているところでございますけれども、文科省として、このまま押し切られたときにどうするんだというような、そういった義務教育費の財源を担保するような方策というのは何かお考えがあるんでしょうか、ないんでしょうか。

中山国務大臣 これを全額移譲されても、標準法だとかいろいろな法律で、これだけは確保しろ、これだけはちゃんと教育に使えというふうなことで法律で縛ることが本当に地方分権なんだろうかと。私たちはまさに中央集権そのものじゃないかと思うんですね。ですから、今私どもが考えていますのは、教育の実施に当たりましてはできるだけ学校現場、校長先生、市町村に任せますよ、しかし、自由にやっていただくためにはやはり国がしっかりとした税源といいますか、財政的な担保が必要じゃないか、こう思っておるわけでございます。ですからこそ、二分の一は国が出しますよ、そのかわり二分の一は必ず地方で出してくださいよ、こういう今の制度によりまして、教師になる若者がいっぱい集まってくる、また集まってきてもらわないと、これから教員もたくさん採用しなきゃいけない時期になりましたから、このことだけは御理解いただきたいと私は思っております。

牧委員 ぜひ頑張っていただきたいし、また次の大臣にもしっかりと申し送りをしていただきたいと思います。

 それでは次の話題に入りたいと思うんですけれども、文科大臣、先日のこの特別国会におけるごあいさつをいただきました。そのごあいさつの冒頭、委員の皆さん、このたびは当選おめでとうございますといった言葉が大変印象に残っているわけで、やはり我々、どんなに崇高な理念を持っていてもここへ来なければそれが実践に移せないわけでございますし、またそれぞれ地域におけるいろいろな方の御支援をいただいて国会に上がってまいるわけでありますから、そういう人たちの期待にこたえる上でも、やはり皆さんそれぞれ同じ思いだと思いますけれども、まさに死に物狂いで選挙を戦って、ここに集まってこられたんだろうと思います。多分、そういう意味合いも込めて、大臣もその一人として心からの発言だったと思うわけであります。

 選挙というのはそういった意味で大変非情なものであり、また厳しいものであるという一面もあるわけで、そういった意味で、我々は同じルールにのっとって、選挙戦というものは公正に、本当に法にのっとって戦っていかなければいけないなという思いを改めて強くするところであります。

 そこで、週刊誌のネタをもとに私は質問したくないのでありますけれども、ほかならぬ塩谷副大臣の選挙におけるお話が出ておりました。本来、私、個人攻撃をするのは私の性分にも合いませんけれども、国対からの命令もございまして、一番この委員会でも温厚な私にやれということでありますから、そこら辺の配慮にもぜひ御理解をいただきたいと思うんです。

 皆様方のお手元に資料をお配りさせていただきました。資料1の方、「回覧しないで至急に直接、校長先生にお渡し願います」という静岡県の私学協会事務局長からの手紙が、皆様方、資料1として配られていると思いますけれども、このタイトルは「中山文部科学大臣、並びに塩谷立文部科学副大臣講演会への動員のお願い」というタイトルでございます。差出人は今申し上げました「静岡県私学協会 事務局長」、あて先が「西部地区私立中・高等学校 理事長様 校長様 PTA会長様」となっております。

 この内容は、九月一日、浜松市内のホテルにおいて大臣、副大臣を呼んでの講演会を開催しますから、これを「急な案内で恐縮ではありますが、衆議院選挙を控えての講演会に貴校から学校関係者と父母の会等をあわせて二十名の動員をくださいますようお願い申し上げます。 会場は、二百名の会議室です。」と書かれております。さらに、一番下の方をごらんいただけると、「報告いただいた名簿は、事前に塩谷事務所に渡し、当日の受付資料といたします。」、こういった文書でございます。

 この文書の日付、皆さんごらんになっておわかりのとおり八月二十六日であります。八月八日に衆議院が解散をいたしましたから、解散から公示のこの間であります。公示が八月三十日ということでありますので、この週刊誌でも指摘をしているのは、これは公示前のいわゆる事前運動に当たるんじゃないかというところをまず指摘しているわけであります。

 取り急ぎ、まず、形式的にこれが事前運動に当たるのかどうなのか。一般論としてで結構でございますけれども、政府参考人からお答えをいただきたいと思います。

久保政府参考人 個別の事案につきましては、私どもは具体の事実関係を承知する立場にございませんので、その点は御理解をいただきたいと存じます。

 それで、一般論として申し上げますと、御指摘にもございましたように、公職選挙法の第百二十九条というのがございまして、これは選挙運動を行える期間を定めております。

 百二十九条によりますと、立候補の届け出の日から選挙期日の前日までしか選挙運動はできない、こういう定めになってございまして、選挙運動というのは何なのかということになってまいりますけれども、最高裁の判例等定着したこれまでの考え方、解釈と申しますのは、特定の選挙につきまして特定の候補者の当選を得るといった目的で投票を得させようとする直接、間接にわたります必要かつ有利な行為、これを指すんだ、こういうことになっておりまして、具体の事案が百二十九条に抵触していわゆる事前運動に当たるかどうかということは、個別の事実に即して判断されるべきものであると考えております。

牧委員 事実に即しての判断だということでありますけれども、私なりの理解でいえば、これは委員の皆さんもごらんになればおわかりのとおり、事実に即してみると、「衆議院選挙を控えての講演会に」「二十名の動員をくださいますようお願い申し上げます。」ということでありますから、私はこれは事前運動以外の何物でもないと主観的には判断をするものであります。

 ちょっと前後しましたけれども、まずこの事実関係について塩谷副大臣からお答えをいただきたいと思います。この事実には間違いございませんね。

塩谷副大臣 この文章を直接見るのは初めてでございまして、この会合、こういう講演会を行ったことは事実でございます。

牧委員 会合を行ったのは事実であるということですね。この会合には大臣も出席をされたわけでございますよね。

中山国務大臣 選挙期間中、二十数人の候補者の応援に行きました。その中に塩谷候補がいたことも事実でございます。

 行きまして、何カ所か、二、三カ所集まりで話をしたことは記憶しておりますが、その中に学校関係の方がいらっしゃったんだろうなと思うぐらいの認識でございまして、確かに行って応援演説をしたことは事実でございます。

牧委員 ちょっと話が、僕、よくわからないんですけれども、私学協会の主催ですよね、これは。私学協会の主催の講演会に大臣、副大臣が参加をされたわけですから、もうこれは大臣、副大臣としての立場で御参加をされた、講演をされたということだと思うんです。

 では、このとき、これは選挙区としては副大臣の選挙区ということでありましょうけれども、これは地位を利用しての選挙活動だというような認識はお持ちになっていたんでしょうか。それとも、そういった意識は全くなかったんでしょうか。今の大臣の御答弁だとそういう意識は全くなかったようなふうに聞こえるんですけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 三カ所ぐらい回りましたけれども、いずれも塩谷後援会の方々が集まっているなということで私は話をさせていただきました。

牧委員 そうすると、大臣は、これは塩谷候補に対する応援ということで、塩谷後援会の皆さんが集まっているからそこに行ったんだという認識なわけですよね。

 ただ、これを見ると、これは全く趣旨が違うんですよね。大臣、副大臣をお招きして講演会を開くということで、大臣は何かだまされて連れていかれたような、そんな感じを今受けるんですけれども、副大臣は、じゃ、あれですか、だまして連れていったんですか。どういうことですか。

塩谷副大臣 その会合につきましては私学協会の方で大臣をお迎えするということで、そういう会合を持っていただいて、そして、大臣と私が、大臣は今何カ所かというお話がありましたけれども、その会合については、具体的には私学の状況とか、あるいは教育改革のお話をした会合だったと思います。

牧委員 細かいことをほじくるようで恐縮ですけれども、ちょっと皆さんもこの紙を見ていただきたいと思います。

 この本文の「平素より」というところから数えて三行目ですね。二行目から読み上げると、「中山文部科学大臣が浜松に見えることになり、この機会に私学の関係者に大臣と副大臣がいっしょになって、親しくご懇談の機会をお願いしたいとの要請がありました。」

 今、これは、確かに副大臣がおっしゃるとおり、この文書そのものは私学協会からの御案内ですけれども、今私が読み上げたところを見ると、要請があったから、要請があったからこの会を開くことになりましたということですね、どう読んでも。では、この要請をしたのはどなたなんでしょうか。副大臣、お答えいただきたいと思います。

塩谷副大臣 この文章を直接見たのはきょう初めてでございますが、要請があったからというのはちょっと私承知しておりませんで、私自身は、私学協会の方で会を持っていただいて、大臣と私が招かれたと承知しております。

牧委員 副大臣はそのように承知をしているのかもしれませんけれども、私学協会としては、懇談の機会をお願いしたいとの要請がありました、だから、皆さんに動員をお願いします、こういう文章を流しているんですね。

 では、この委員会で、私は、私学協会の方をぜひ別の機会にでも参考人としてお呼びしてお聞きをしたいと思うんですけれども、委員長、いかがでしょうか。

斉藤委員長 理事会で協議をさせていただきます。

牧委員 それではこれに関連して、そもそもこれは地位利用に当たるのかどうなのかということも、一般論としてお答えをいただけば、これは当たるのか当たらないのかという判断は多分この場ではできないということになるでしょうから、時間がもったいないので、その辺は割愛をさせていただいて、文科省にお尋ねをしたいと思います。

 これは、大臣、副大臣の出席を見て、そして私学協会あるいはその関係者の皆さんと一緒になった講演会を開くというのは公務に当たるんでしょうか、それとも公務じゃないんでしょうか。

玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のこの講演会の出席についてでございますけれども、私どもとしては、公務以外の活動として対応しているというふうに承知をしているわけであります。

牧委員 わかりました。

 それでは、例えばスクールミーティング、これは一月から七月にかけて、合計で三百八十七回ですか、開催をされておりますけれども、これは公務ですね。

田中政府参考人 スクールミーティングについてのお尋ねでございますけれども、スクールミーティングにつきましては、文部科学省の公式行事として行ったものでございまして、公務でございます。

牧委員 そのスクールミーティングについて、これは公務だということでありますけれども、全体で三百八十七回、非常に精力的に回っていただいたことに改めて敬意を表したいと思いますけれども、ついでで恐縮ですけれども、私が数えたところ、塩谷副大臣は全体で二十二回参加をされております。そのうち、六回が地元なんですね。

 スクールミーティングの開催地というのはどうやって決めてこられたんでしょうか。

田中政府参考人 スクールミーティングの実施校でございますけれども、スクールミーティングの実施校につきましては、ホームページ上で公募したわけでございまして、文部科学省のホームページを見たり、あるいは口コミ等で、公募を通じて応募された学校、ここはなるべくすべての学校に行くようにしたところでございます。

 それから、大臣、副大臣、政務官等の母校に帰ってみていただこうということで、母校でも開催させていただいたところでございますし、また、学校の規模や地理的なバランス等も考慮しながら、都道府県教育委員会等を通じまして選んでいただいた学校にも訪問させていただいたところでございます。

牧委員 確かに、母校でまず開催すると。中山大臣も一番最初、皮切りにはたしか母校に行かれたというふうに聞いておりますけれども、私は、これは今バランスと言いましたけれども、全体のバランスからすると、ちょっと不自然な数字だと思うんですよね、二十二回のうち六回が御自分の地元というのは。これは何らかの恣意的に、内心の部分を聞いて恐縮なんですけれども、塩谷副大臣、これはやはり選挙を意識した選定だったんでしょうか。

塩谷副大臣 スクールミーティングにつきましては、とにかく全国で三百以上という目標のもとに、今答弁あったように、いろいろな状況からそれぞれ訪問場所を決めたわけでございますが、実は、地元からもかなり当然要請があったことも事実でございまして、そういう中で、例えば、私、浜松市の教育委員会からは多分二十数校の予定を出していただいたわけでございまして、その中で全体のバランスを見て選んだと思っておりますので、今の選挙云々という話は全く意識しておりません。

牧委員 それ以上の御答弁を求めても仕方ないと思いますので、このことについてはここまでにとどめておきたいと思いますけれども、皆様方にお配りをしたもう一枚の資料をごらんいただきたいと思います。

 私は、例えば、これが直ちに違法であるとか、あるいは公務員の役職、地位を利用した行為であるとか、そういうことは直ちには申し上げられないと思うんですけれども、やはり一つの姿勢として、ぜひとも問いたださなければいけないなと思ったものですから、あえて古いこともあわせて、ちょっとほじくり出させていただいた次第であります。

 平成十二年、前々回の総選挙のときに、同じく塩谷副大臣を応援する手紙ですね、「PTA会員様」という手紙がございます。これもまた、私学協会、そしてまた私学父母の会連合会、この連名でPTAの父兄の皆さんにあてての手紙であります。これを厳密に読むと、投票依頼もございません。六月吉日の日付でありますから、たしかあれは六月二十五日が投票日でありましたから、これは選挙公示前。ただ、中を見ていただくと、前衆議院議員となっていますから、解散後、公示前の今回と同じようなタイミングじゃないかなと思います。

 塩谷議員を推薦していますからぜひよろしく、そういう意味合いの文言で、特段投票依頼もございませんけれども、ただ、ごらんいただければおわかりのように、このたびの第四十二回衆議院選挙に当たり、静岡第八区におきましては、前衆議院議員塩谷立氏を当協会並びに連合会として推薦をいたしましたという文言があって、下の方に、枠で囲って、「今回選挙より不在者投票が簡単にできるようになりました。場所は下記の通りです。」と。これはもう限りなく投票依頼に近い文書であると私は理解せざるを得ないんですけれども、塩谷副大臣、御記憶ございますか、この文書に。

塩谷副大臣 この文章もきょう初めてちょっと拝見したわけでございまして、その点については承知をいたしておりません。

牧委員 これは承知をいたしていないということでありますけれども、実は、これは、皆さんごらんいただいてわかるとおり、私学協会、父母の会連合会からPTA会員様となっていますね。これはどういう形で配られたかというと、私学協会から、つまりは私学を通してそれぞれの父兄の方にこれを配った。どういう配り方をするかというと、子供たちにこの紙を持たせて、お父さん、お母さんにこれを帰って届けなさいという形でこれは配られているんですね。こういう形の選挙というのは本当にあっていいのかと私は疑わざるを得ないわけであります。

 聖域なき構造改革、そういう言葉はありますけれども、これではまるで聖域なき選挙運動じゃないですか。教育の場というのはやはり神聖な場だと思います。そこに、この文部科学行政のトップにおられる方が、選挙ということで、そういうことまでこれを利用していいのかどうなのか、私は疑問を呈せざるわけにはいかないと思ったからこそ、きょう、この時間を使わせていただいて、問題提起をさせていただいたわけであります。

 今回の総選挙では与党の皆さんが圧勝をされて、三分の二以上の議席を確保するという中でありますから、なおのこと、一つのこれは私はおごりの裏返しだと思うんですよね。そういうところをきちっとみずから戒めていただかないと、これからますますこういうことがエスカレートしてしまうんじゃないかと強い危惧を抱きましたので、あえて、個人攻撃になって恐縮でございましたけれども、問題提起をさせていただいた次第であります。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

斉藤委員長 奥村展三君。

奥村委員 民主党の奥村展三でございます。

 先ほども池坊委員からアスベストの問題の御質問また御意見もありましたが、私は、まず小中学校、あるいはまた幼稚園におきます耐震化についての問題に触れてみたいというように思います。

 学校そのものが、災害やいろいろな地震等のときの避難場所にほとんどなっているのが現実だと思います。そしてまた、子供たち、生徒たちにとってみれば、当然学びやの場所でもありますし、あるいはまた一日の半分以上をそこで過ごす生活の場所であるわけであります。そういうことを考えますと、大変重要な役割を果たすところが学校でもあるわけであります。

 最近よく報道もなされておりますけれども、現在、耐震化が進んでいるのが五〇%足らずというような状況のようでございます。一年間でそれぞれの御努力をいただいているようでありますけれども、二%足らずしか進んでいないということも仄聞いたしているわけであります。この旧耐震化といいますか、五十六年以前に学校ができたところ、全国に約八万四千の学校があるようでございますけれども、そうした五十六年以前の学校の中で、二万六百ぐらいしか実はそれが施されていないというようにも聞いております。やはり耐震の実施もしっかりとしていかなければならない、先ほど大臣、いろいろ図書館の経費の話をなされていましたが、やはりこれは地域格差があると思うんですね。

 私がお聞きしたら、大体十万円ぐらいで、大規模の学校だったらもう少しかかるかもわからないんですが、普通十万ぐらいかければ耐震の診断ができるんだというように聞いているんです。その市町村にとってみれば、そこまで一生懸命今お金をつぎ込んでやるということはなかなかできないというようなことも聞いておりますが、そういうところにも格差が出てくるのかなというような思いをしていたんです。ぜひ、公立私立問わず、やはり小学校、中学校あるいは幼稚園、そういう文科省の視野の中でどのように推し進めてこられたのか、そして今後どのように取り組んでいこうとされておるのか、まずお伺いをいたしたいというように思います。

    〔委員長退席、池坊委員長代理着席〕

塩谷副大臣 耐震化及び耐震診断について十分に進んでいないということで、今回、都道府県教育委員会に対して、その設置者である市町村に対してアンケートを行ったわけでございますが、この進んでいない理由として第一に挙げられているのが財政上の理由でございまして、特に学校施設、数が多いということで、なかなか予算的に対応できない。それからもう一つは、統廃合の問題が各地であって、このために、その統廃合が計画されているところがまだ進んでいないということでございまして、そういった理由から、十八年度予算についても、厳しいシーリングの状況の中で何とか子供たちの安全確保をということで、公立学校施設の耐震化推進について、前年度比六十億、もうちょっと大幅にやりたいところでありますが、六十億増の一千三百八十七億の要求をしているところでございまして、また耐震診断につきましては、公立学校施設の耐震診断実施計画、これは平成十五年から十七年、三カ年で今計画しておりますが、この着実な達成に向けて引き続き努力をしてまいりたいと思っているところでございます。

    〔池坊委員長代理退席、委員長着席〕

奥村委員 先ほどの池坊委員の質問の中にアスベストの対策本部はあるような答弁がありましたけれども、この耐震の本部はあるんですか。

大島政府参考人 お答えを申し上げます。

 本部といったような形は特にとっておりません。関係各課、連絡を密にしながら取り組んでいるところでございます。

奥村委員 確かに、アスベスト問題は最近話題になって、いろいろとその手当てをしていただいていますが、先ほど冒頭に申し上げましたように、学びやであり、あるいはまた生活の場である子供たち、そして地域の防災、いろいろな拠点になって、学校がそういう施設になっていくわけですから、やはり文科省としても、当然、財政的な問題は、今塩谷副大臣がおっしゃいましたけれども、財政が大変だからできないんだというようなことだけで事は済まない。特に日本は災害が多いところですから、地震も多いところですから、そこはしっかりと取り組んでいただきたいというようにお願いをしておきたいと思います。

 そこで、大臣、いろいろとお取り組みをいただいてまいりましたが、国交省の方でいろいろと、まちづくり交付金なんかでやったり、耐震化促進法案をつくっていろいろと進めようとされておりますし、耐震の改修事業等々、やはり国交省との連携をとりながらうまくやっていただかないと、これは対応ができないと思うんですが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 この耐震化も進めていかなければならないと思いますし、また、私の地元、台風十四号で大変な水害、被害が出たんですけれども、避難場所の小学校がもう完全に水没しちゃったということで、そっちの災害に強い学校づくりというのもやはり考えなければいかぬな、こう思っておるわけでございます。

 今御指摘ありましたように、公立学校施設整備費負担金・補助金により、公立学校施設の耐震化を重点的に進めているところではございますが、これに加えまして、国土交通省におきまして、防災拠点となります公共施設の整備の観点から、住宅・建築物耐震改修等事業あるいはまちづくり交付金等によりまして公立学校施設の耐震化に対する支援もなされているところでございまして、これは、設置者であります地方公共団体が、さまざまな制度の特徴を生かしながら、喫緊の課題であります公立学校施設の耐震化を図ることは大変重要なことだ、このように考えているわけでございまして、文部科学省といたしましては、国土交通省等関係省庁と連絡しながら耐震化について進めていきたい、このように考えております。

奥村委員 ありがとうございました。

 これはもう、文科省だ、あるいは国交省だというようなことではなくて、やはり政府を挙げて、アスベストの問題、先ほどもありましたが、やはり耐震の問題、防災の問題、しっかりやっていかなければならないと思います。

 私も、今回は災害特の筆頭理事になりましたが、そういうことをしっかりと先日も理事会で申し上げて、何か起きればすぐ現場に行く、そしてその対応をしていく、やはり備えあれば憂いなしだということで、常にお金がかかろうと何しようと、やはり国民を守っていくんだということが基本だということも理事会で申し上げておりまして、ぜひそのようにお取り組みをいただきたいというようにお願いをしておきたいと思います。

 次に、totoについて、スポーツ振興くじについてお伺いをいたします。

 これは私も何回も質問させていただいているんですが、大臣もその都度お答えをいただいているんですけれども、これはだんだんだんだん、中へこういろいろなことを、財務諸表やら調べていきますと、おかしなことがどんどん出てきて、私、実はスポーツ振興じゃなくてほかのを振興しているのかなというような思いをしているんです。

 私、平成七年に参議院に当選させていただいたときに、当時説明を受けたのは、三千億売れるんだと。へえ、三千億もそのスポーツくじに、そんなに売れるんですかと言ったら、いや、民間のシンクタンクはそのぐらいの数字をはじき出しているということを聞きました。

 しかし、さあ、これを平成十年から進めようとしたときに一千六百億から二千二百億ぐらいだというようにまた縮小されて、本当にこれが始まるときには八百十二億まで縮小されたのは、経緯を私はずっと追ってきたんですけれども。そして、スタートしたら、以前にも申し上げましたが、六百四億しか売れていないわけですね、一番最初の年に。

 そして、鳴り物入りで助成金をどんどん出すんだというようなことをいってやられても、その当時だけで、十三年にスタートして、十四年に助成されると五十七億ぐらいしか助成されていない、こういうのが実態で、考えてみると、平成十七年度、何と百十二億しか売れていないんです。そして、交付金二億五千万なんです。こんな鳴り物入りでやったことが、これはどういうことなのか。

 当時は百六十万分の一だとか言われておりましたし、今、totoGOAL3ですか、何か手法を変えてやっておられましても、前回のこの委員会で石井委員等が質問なされておりましたけれども、そのときでも、百五万通りから四千通りあるんだというような答弁をされていました。

 だから、こんなことで本当に売り上げがどんどんどんどん減少して、まず、こういう実態になってどういうようにお思いになるか、もう一度また聞かせていただきたいと思います。

中山国務大臣 今御指摘のありましたように、このスポーツ振興くじの売り上げ、年度単位で申し上げますと、平成十三年度約六百四十三億円でありましたけれども、平成十六年度は約百五十七億円、十七年度はまたさらに下がっているというような話でございました。

 この売り上げ減少の原因につきましては、日本スポーツ振興センターが平成十六年にアンケート調査を行っておりまして、その結果を見ますと、購入しても当たらない、あるいは予想が難しいといった理由によりまして、継続購入者が減少していること、また、どこで売っているのかわからない、Jリーグのことがよくわからないので予想できないなどの理由により新規購入者の開拓が進まないことなど、幾つかの要点が絡み合っている、このように思っているわけでございます。

 この売り上げ減少によりまして我が国のスポーツ振興への貢献が小さくなっている現状、これは非常に残念だ、こう思っているわけでございまして、今後、購入者のニーズに対応して、くじの種類の多様化とか、あるいは販売方法の工夫など、さまざまな取り組みを進めまして、売り上げを回復させるということが喫緊の課題であるというふうに認識しております。

奥村委員 当時の有馬文部大臣にも私は質問したんですが、これは余りにも射幸性をあおって、十九歳以下の子供たちがスーパーやガソリンスタンドだとかそういうところへ行っても買えないようにしなければ、やはり子供たち、青少年健全育成からいったら絶対危ないですよと当時私は申し上げた。議事録も残っているんです。けれども、今もう既に、カードをつくってやっているようですけれども、スーパー、ガソリンスタンドやあらゆるところで今度は売って、もうなりふり構わず今度は売っていこうということなんですよね。やはり宝くじだとか競輪、競馬、まあばくちといえばばくちですけれども、そういうようなものとある意味では一緒のような雰囲気なんですよね。いろいろなPRも、そしていろいろなことをやらなければならないんですが。

 ここでなんですけれども、私はびっくりしたんですが、当時からわかっておったんですけれども、これは全部五年間りそな銀行に丸投げをしてしまった。そして、スポーツ振興センターは、運営もわからないし、資金管理もできない、業務の全般も管理等全然わからないから、もう丸投げで委託をしてしまっていますね。それで来ましたね。

 そして、結局、考えてみますと、私はこれは言葉がいいのか悪いのかわかりませんけれども、スポーツ振興よりも職員振興、理事長さん初め理事の方、監査の人で全部で七人の役員がおられるようです。そして、理事長さんが一千九百万もらっておられるんですよ。四人の理事さんが年間で六千四百万円。そして、監事は、一人は梅村学園の、中京大学関係の梅村学園の理事長さんが非常勤ですからあれですけれども、監事一人の方も一千四百六十万円。これはスポーツ振興くじだけやないんですよ、わかっています、ほかの事業も、給食のことだとか国立のいろいろな施設をやっておられますから、わかります。わかりますけれども、こういうような理事がおられて、いろいろやっておられる。これは文部省から三人天下りされているんですよね。

 そして、人件費は、何と全部で約四十八億円、一年間で。そして、先ほど申し上げましたように、本来、助成をしていかなければならないのが二億五千万円。こんなばかげたことをやって、本当にこれはスポーツ振興くじと言えるんだろうか。だから、私は、これはスポーツ振興じゃなくて職員振興しているようなもので、四百人職員さんがおられるんですよ。平均の給料を調べてみましたら七百五十四万八千円、これだけ給料を取っておられるんですよ。

 これは考えてみたら、本来の趣旨は、スポーツ振興しましょうと。そして、先ほども質問にありましたように、今度ナショナルセンターをつくって、チャンピオンスポーツのためにいろいろやっていこうと。そして一方では、これは地域スポーツのために地域の体協や総合クラブやいろいろなことをやっていこうということが趣旨だったはずなんです。しかし、この計算からいろいろな数字を見てみますと、全部これはもうその組織を守らんがためにやっているのと同じなんですよ。二億五千万を四十七都道府県のそんなものに分けたら、もう本当にポトンとも音もしませんよ、これ。こんなことでスポーツ振興だというようなことで一方でやっているということは、私は、絶対これは見直しをやって、この組織そのものを変えていかなければ大変なことになる、大変なことどころか、もう崩壊してしまっているんですよね、これ。

 ですから、そういう流れをまず見ていきますと、スポーツ振興センターがりそなに丸投げをして、りそなはそれをまた、日本スポーツくじ、totoに関係する会社が出資して、りそなもそうです、再委託しているんですよ。JSALという会社があるようです。これがまたそれを受けて、そしていろいろやっているわけですね。りそなはトンネルで、そしてまたこのJSALという会社が全部やって、全国のいろいろな、六千カ所ですか、何かたくさんのいろいろなところを窓口にしている、こういう実態をどのように本当に思っておられるのか、もう一度お聞かせをいただきたい。多分、素川さんが答えると思います、前も聞きましたけれども。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 その前に、センターの職員四百名、十七年度は三百六十六名になっておりますけれども、この職員の大半は、国立競技場の管理運営、学校の安全管理の共済の事業等々、従来からやっておる業務に携わっております。

 このtotoの関係の業務、正確にはちょっと数字は今手元にありませんけれども、ほんの少数の人数が携わっているということでございますので、この人件費につきまして、先生おっしゃいましたものがtotoから出ている、三百、四百名のものが出ているというふうなことでは決してございません。まず御理解をいただきたいと思います。

 それから、今、りそなへの委託と再委託のことでございますけれども、スポーツ振興くじの販売業務を行うに当たりましては、多くのお金を円滑かつ的確に処理できるという必要がございまして、スポーツ振興投票の実施等に関する法律の十八条におきましては、金融機関に業務委託できるという規定があるわけでございます。

 平成十二年に、旧大和銀行へのくじの販売業務の委託につきましても、立法の段階から金融機関への委託ということが想定されていたと理解しておるわけでございますけれども、そういうことを踏まえまして、この法令の規定に基づき委託されたところでございます。

 さらに、りそな銀行が日本スポーツ振興くじ株式会社いわゆるJSALに専門業務の再委託をしているわけでございますけれども、これにつきましても、スポーツ振興投票法の関係法令に基づいて手続がされたものと理解しているところでございます。

奥村委員 銭谷さんが座っておられますけれども、銭谷さんも当時はその担当をしておられたんですが、これは最初はりそなも逃げたんですよ、大和銀行も。これは大変やというようなことで、いろいろなことがあって、何か入札をしたようなことがありましたけれども、本当にその当時、銭谷さんも一生懸命私のところへ来て説明してくれて、いろいろなこと、こんなうまいこといきますかとその当時言っておったんですが、本当に確かにそれはそうです。

 このスポーツセンターは事業をたくさんやっておられますから、全部totoの経営にかかっているというのは、やはり総合的に物を考えて、収益を生むところでしっかりと生んでいって、そして負担をいろいろ公平にしていくというように変えていかなければならないんですけれども、それができていないということなんです。

 これは財務諸表の損益計算書を見まして、投票勘定のところだけ見ましても、スポーツ振興投票業務委託費、五十九億九千百万円あるんですよ。こんな委託費を出していて、絶対もうかるはずがありません。ぜひ、これはしっかりともう一度振興くじそのものも見てほしい。

 本来は、二〇〇二年、平成十四年にスタートしたときに、JOCに、オリンピックそのものに、頑張れといってその当時は三億六千万金が出たというんですよ。去年一千万でっせ。頑張れ頑張れといって、チャンピオンスポーツでみんな頑張れといっておいて、そして、当時はそんな三億六千万ぐらいではオリンピックの選手は養成はできませんけれども、やはりその一部を提供したのは、三億六千万あったんですよ、十四年に。十七年の決算をしてみたら、十六年であれは終わってしまって、一千万ですよ。それが現状なんです。そして頑張れ頑張れといってもなかなかできませんよ。

 今度スポーツセンターどうされるのか、ちょっと私もいろいろあれですが、それはともかくとして、もう一つ、局長さん、百五十億、新聞に載りましたね。隠したとばかり新聞には載りましたけれども、これは借金をりそなに七十億ずつ返していかなければならぬかった。五年間で三百五十、これは初期投資をするのにりそなから借り入れたお金ですわね。それを毎年七十億返していかなければならぬ。それが二年分あれになっておって、例の有名な中央青山の経理会計事務所にこれは出さなくてもいいと言われて、後で会計検査院から急遽言われてこれを出してきたというこの経過、ちょっと一遍教えてください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 スポーツ振興くじの運営費につきましては、毎年度の支出の上限額というのを省令等で定めておるわけでございますが、この日本スポーツ振興センターと受託金融機関との間で、この上限額を上回る部分につきましては後年度で支払うということにしてきたところでございます。

 今御指摘の平成十五年度の財務諸表では、この上限額を超えた額は平成十六年度以降に負担する債務というふうに整理いたしまして、当初から十六年度以降に支払うこととなっていた分と合わせまして二百三十三億円を重要な債務負担行為として注記で記載したものでございます。

 この記載方法につきましては、日本スポーツ振興センターが今後りそな銀行に支払うべき債務という形で明示されているものであり、一つの方法だったと考えられるわけでございますけれども、各年度ごとの財務状況の明瞭性の面ではより適切な方法があったということについては、会計検査院の御指摘のとおりだと考えております。

 このため、日本スポーツ振興センターにおきましては、平成十六年度の財務諸表の作成に当たりまして、各年度の運営費の上限を超える部分につきまして費用として計上いたしまして、財務状況がより明確になるよう財務諸表を作成し、提出したものでございます。

奥村委員 いろいろな見解の相違はあったと思いますが、やはりこれは独立行政法人としてしっかりとスタートしていったわけですから、その主導も文科省には責任があると思います。そこらを検査院の指摘どおり今後しっかりやっていただきたいし、今後五年間で、これでりそなとは縁が切れるわけですが、次の新たなスタートをしなければなりません。借金を持っていろいろと進めていかなければなりません。

 最後でございますが、大臣、先ほど申し上げたこういう状況の中でございますから、ぜひ所見をお伺いしておきたいというように思います。

中山国務大臣 このサッカーくじにつきましては、大変な困難の中できたわけで、また最初は大変な鳴り物入りみたいな形で始まったんですけれども、私自身としては、大丈夫かな、最初からそう懸念していた面もありましたが、現実に今のような状況になってきているわけでございまして、固定費といいますか人件費の部分というのはなかなか減りませんので、売り上げをふやしていくことしかないわけでございます。

 御指摘のように、スポーツ振興じゃなくて職員振興とかそんなことを言われないように、いかにしたら売り上げがふえていくかということについてもっともっと、みんなが関心を持って、買いたくなるような、また買いやすいような方策について今後真剣に考えていかなければいかぬ。既にそういった取り組みは始まっていますけれども、今後とも頑張っていきたいと思っております。

奥村委員 私も、今後皆さんと、しっかりとこのスポーツ振興のためにこういう制度を充実できるように頑張っていきたいと思います。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 この総選挙は官から民へ、あるいは小さな政府ということで言われたわけですけれども、中山大臣、これは教育の分野にも当てはまるということなんでしょうか。

中山国務大臣 官から民へ、教育関係で言えば国立から私立へ、こういうことだと思いますけれども、公立学校、私立学校、それぞれ建学といいますか、設立の目的とか精神はそれぞれですから、私は、官と民と協力し合いながらこれまでも我が国の教育水準の向上に貢献してまいりましたから、今後もそういった方向でそれぞれが独自性を発揮しながら教育水準の向上に努めてまいりたい、このように考えております。

山口(壯)委員 ということは、中山大臣は、官から民へ、小さな政府へということが教育にも当てはまる、こういう答えですね。もう一度お答えいただけますか。

中山国務大臣 小さな政府と教育がどういうふうに関係するのかわかりませんが、教育については、先ほど言いましたように、私立、私学もかなりのシェアを持っています。特に、大学等におきましては七五%が私学で勉強しているわけですから、必ずしも、その小さな政府というのが教育の世界においても当てはまるとは思っておりません。

山口(壯)委員 教育というものが国の大事な役割である。特に、例えば外交とか防衛とか、すべてほかのものがなくなってもそういう部分というのは必ず国の役割として残るわけですね。そういう意味では、大臣は今首をかしげられましたけれども、これは現実問題として、外交というのは国がせずに、現実に全部民間に行っていい、こういうふうにお考えじゃないんでしょう。

中山国務大臣 やはり外交とか防衛というのは、これは国が当然果たすべき役割だと私は思いますよ。

山口(壯)委員 そうなんですよ。そして、その中には教育も入ってくる、こういうことでしょうか。

中山国務大臣 教育も国が責任を持って果たすべき役割の一つであると考えております。

山口(壯)委員 現実に私学の、私立の小学校、中学校というものがふえているわけですね。小学校まで非常な勢いでふえている。数字を少し御紹介いただけますか。

中山国務大臣 お答えいたします。

 少子化により児童数が減少する中で、公立学校については近年その学校数が減少しているのに対しまして、私立小学校につきましてはその数が増加しております。

 数字を申し上げますと、公立は、平成十三年度二万三千七百十九校が十七年度には二万二千八百五十七校で、八百六十二校減しております。一方、私立の方は、十三年度が百七十二校、十七年度は百九十四校ということで、二十二校ふえておるということでございます。

山口(壯)委員 公立学校が減り、私立学校がふえている。しかも、一般の中で公立の環境というものよりも、要するにいろいろ荒れたりしている、私立に行こうという人がふえてしまっているわけですね。そういう意味で、国の役割というものは、むしろ公立の学校というものをまずきちっとして、そして、公立の学校のシステムを整えた上でなおかついろいろな多様性があっていいと思うんです。

 今、例えば文部科学省の予算が、小泉政権になってから四年間を見てみましょう。四年間ということであれば、今が十七年度ですから、十四年度以降の予算を紹介していただけますか。

中山国務大臣 過去五年間、一般会計で、平成十三年度……(山口(壯)委員「過去四年間、十四年度からで結構です」と呼ぶ)十四年度からですか。十四年度が六兆五千七百九十八億、それに対しまして、平成十七年度が五兆七千三百三十三億となっております。

山口(壯)委員 この四年間、十四年度が、今大臣おっしゃったとおり、六兆五千七百九十八億、そして十五年度が減って六兆三千二百二十億、そして十六年度はさらに減って六兆五百九十九億、そして十七年度がもっと減って五兆七千三百三十三億、こういう数字です。着実に文部科学省の予算は減っているわけですね。米百俵どころか、これではうそ八百ではないか、こう言わざるを得ないわけです。

 そういう中で公立学校をいかに整えていくか。これはこの数字を見る限り、今私立の学校ということから大臣は始められましたけれども、やはり文部科学省として、国の大事な役割として、教育の分野において国が果たすべき役割をきちっと果たしていく、そういうところをまず私はお聞きしたいと思うんです。大臣、いかがですか。

中山国務大臣 総理は、さきの所信表明演説におきましても、「子供は社会の宝、国の宝です。学校や家庭、地域など社会全体で、新しい時代を切り開く心豊かでたくましい人材を守り育てていかなければなりません。」ということで、教育の重要性について触れられているところでございます。

 今御指摘がありましたように、文部科学省予算は減ってきておりますが、これは三位一体の改革の一環といたしまして、義務教育費国庫負担金に係る一部の一般財源化、あるいは平成十七年におきます暫定措置としての減額、合わせまして九千三億円が主要な要因でございまして、実質的には教育予算は着実に措置されていると考えております。

山口(壯)委員 十四年度に六兆五千億、十七年度に五兆七千、一兆二千億減っていますね。九千では数字が合わないんです。(中山国務大臣「そのほかのものもあるでしょう」と呼ぶ)要するに、減っているということですね。ここが問題なんです。これをよしとする立場にはないんです、大臣。文部科学大臣として、こういうことはきちっとふやしていこうということをやはり大臣には思ってもらわないと、何だ、言っていることとやっていることがやはり違うではないか、米百俵と言いながら結局予算は減らしているのか、こういうことになるわけです。

 したがって、今、官から民へという中で私は一つ欠けていることがあると思う。それは、官がどういう役割を果たすのかということが完全に欠落してしまっている。その中の一つに、例えば教育もあるはずなんです。私は大臣のことを責めていないですよ、大臣がなられたのは最近なわけですから、そういう意味で最初からおられたわけじゃないので。

 しかし、ここは文部科学委員会として、そういう国の役割として大事な教育について、みんなで力を合わせて、要るものはとっていこうじゃないかということを今論じているわけですから、そういう意味では、ぜひ大臣、前向きの答弁をいただきたいと思います。

中山国務大臣 必要な経費はしっかりと確保しておるということを先ほど申し上げましたが、例えていいますと、児童生徒一人当たりの経費を見ますと、平成十年度が九十三万七千四百三十円、それに対しまして平成十四年度は九十九万四千三百二十五円ということで、一人当たりでいいますとずっとふえてきているわけでございまして、これは児童数が減っているということもありまして義務教育の予算も減っていますけれども、一人一人に関して言えばしっかりと確保している、このような認識でございます。

山口(壯)委員 OECDの国の中で、教育がGDPの中で占める割合、日本が一番低いということを大臣はよく御存じですね。

中山国務大臣 一番低いかどうか知りませんが、低いということは知っております。

 ただそれも、なぜかといえば、GDPの中身もございますし、ほかの国に比べて、日本の場合は子供たちの数が少ない、そういったことも影響しているのじゃないかと思っています。

山口(壯)委員 日本が三・五五%という数字がありますね。ドイツが四・三五、イギリスが四・七、そしてアメリカに至っては五・八、フランスが六・八。日本は一%、二%低い。GDPに直せば、五百兆円の一%は五兆円、二%は十兆円です。五兆円、十兆円余計に使ってやっと先進国並み。

 これに対して、大臣、一人当たりちゃんと使っているからいいじゃないかではなくて、むしろ、教育が国の役割として非常に大事だということを、まず認識を共有していただいて、そして、一人頭云々ではない、日本がこれから何によって生きていくのか。天然資源もない中で、唯一あるのは人材です。その人材に日本の予算のプライオリティーを置いてやらない限り、どうしましょう。

 そういう意味で、大臣、一人当たりしっかり使っているから今のままでいいというのが今の答弁でした。そうではない、これからふやしていこうというために与野党ともに頑張ろう、こういう気持ちをぜひ分かち合っていただきたいと思います。いかがでしょうか。

中山国務大臣 文部科学大臣としては少しでも多く教育予算が欲しいというのは、もうこれは本当の気持ちでございますが、先ほど言いましたように、GDPに対する公財政支出の割合、あるいは教育制度の相違、人口に占める子供の割合とか、国によってさまざま条件が違いますので、単純な比較は困難であるということを申し上げたわけでございます。

 御指摘のように、我が国の発展というのは、これはもう一に教育にかかっていると言っても過言ではないわけでございまして、ぜひ、今御指摘ありましたように、これは与野党を通じて教育関係の予算確保には御尽力、御協力いただければ大変ありがたいなと思っているところでございます。

山口(壯)委員 先ほど来、義務教育費の国庫負担の話も出ていました。そして大臣がもちろん頑張っておられるということも承知しております。

 他方、これは国の役割をどう考えるかということにも関係してくるわけですね。例えば外交が国から地方へという単純な図式に当てはまらない、防衛も当てはまらない、それと同様に、やはり教育というものも、国がどういう役割を果たすべきかという議論がまず抜けていると私は思うんです。

 そういう意味では、義務教育費の国庫負担制度を今から考えるに当たっては、先ほど来同僚議員からも、交付金という形の中でその使途を定めてはどうかというようなサジェスチョンがあったと思います。似たようなものかもしれませんけれども、高校生に対する奨学金、これは今、昔の育英会から県に所管が移っているわけですね。県に所管が移ってはいるものの、これについて、国としてどういうサポートをされているのか、これはいかがでしょうか。

中山国務大臣 御指摘のように、これまで旧日本育英会、日本学生支援機構が実施しておりました高校生等に対する奨学金事業につきましては、平成十七年度に高等学校等に入学する生徒から、順次、都道府県へ移管しているところでございます。この移管に伴います奨学金の貸付原資につきましては、平成十七年度以降、各都道府県が円滑に資金を調達、確保していけますように、従来どおりの日本育英会高等学校奨学資金の貸与水準が維持されるように、一定期間、これは平成十七年から十五年でございますけれども、にわたりまして、都道府県に対し、必要な資金として総額約二千億円を交付することとしておりまして、平成十七年度予算で一学年分として約九十一億円、措置しております。また、十八年度概算要求におきましては約百九十億円を計上しているところでございます。

 さらに、高等学校の奨学金事業が都道府県におきまして円滑に実施できますように、奨学金事業を実施するために必要な事務費等については地方交付税措置がなされておりますし、また、日本学生支援機構を通じまして、奨学金事業の実施に関する技術的なノウハウあるいは事務処理に関するモデルシステムの提供等を講じているところでございます。

 文部科学省といたしましては、これらの措置を通じまして、都道府県におきまして円滑な奨学金事業が実施されるものと考えておりまして、今後とも適切に対応してまいりたいと考えております。

山口(壯)委員 大臣、今のが交付金ということですね。そしてそれは、使途が高校生に対する奨学金ということで特定されているんでしょうか。

中山国務大臣 今申し上げました九十一億円あるいは百九十億円ということで、使途が指定されているということですね。

山口(壯)委員 これは技術的になるかもしれませんから、場合によっては局長に答えていただいても結構ですが、それが、もしも奨学金以外のことに使われるということはあり得るのかどうか、これはいかがでしょうか。

銭谷政府参考人 お答え申し上げます。

 この高校奨学金のための交付金でございますけれども、これはあくまでも高校奨学金に使途を限定した資金として都道府県に対して交付しているものでございまして、その他の目的で当該資金を用いるということは認めていない交付金でございます。交付要綱上もその旨きちんと明記しているところでございます。

山口(壯)委員 今の局長の答弁のとおりであるとすれば、奨学金以外には使われないわけですね。

 そうすると、先ほどの義務教育費の国庫負担制度の話に戻りますが、使途を特定して渡している交付金というものが現実に奨学金としてあるわけですね。

 局長に私は問いかけをもう一つしなければいけないのは、先ほど総務省の局長から義務標準法の話も出ていました。義務標準法という裏づけがあるから、したがってそれ以外のものに使う場合にはそれが是正される、そういう担保があるという話でした。この奨学金の話についてはそういう裏づけの法というものはあるんでしょうか。

銭谷政府参考人 まず、義務教育費国庫負担金をめぐる問題に関してのいわゆる地方交付税の問題につきましては、これは先ほど来お答えしておりますように、地方交付税は使途が限定をされていないわけでございまして、いわば計算をした上で各地方公共団体に交付をされる、そういう性格のものでございます。

 一方、高校生奨学金に関します交付金は、これは、先ほど申し上げましたように、交付要綱上使途を限定して、そのために使用していただく交付金ということで使途限定の交付金でございます。したがいまして、各都道府県においてこの交付金を原資に奨学事業を行うわけでございますけれども、それ以外の用途に使用した場合には交付要綱違反ということになりますので、私どもの方で指導措置をするということになります。(山口(壯)委員「何法違反ですか」と呼ぶ)交付要綱に対する違反ということになります。

山口(壯)委員 大臣、今、私自身は前向きの一つのアイデアを示そうとしているわけです。

 この義務教育費というものが、どうしても国庫負担が今の形でないようにする場合にも、しかし、国が何らかの担保、あるいは場合によっては枠組みとしてある程度確保された形はあり得ないものかということで先ほど来質問をさせてもらったわけです。

 そういう意味では、使途を特定した交付金という形も一つあり得るのかなと。先ほど同僚議員も同じことを聞いたわけですけれども、ぜひ一考に値すると思います。お願いします。

中山国務大臣 まさにそのとおりでございまして、九十一億円とか百九十億円というのは文部省が出しているんです。ですから、この義務教育費国庫負担制度に関して言えば、二分の一じゃなくて全額出しましょうということでございますから、いいお知恵を出していただいたなと思いますけれども、そういった意見も中教審の中であるわけですね。二分の一じゃなくて総額国が出したらいいのじゃないかという話もあるということです。

山口(壯)委員 前向きに考えていただくという御答弁として、今解釈させていただきました。ぜひお願いします。

 国の教育のシステムに関しては、まだいろいろあります。例えば、これから第八次の定数改善計画もされようとしています。第七次が終わり、第八次に入るわけですけれども、第七次あるいは第八次とも、結局加配が中心のシステムではないかと思うんですが、済みません、大臣、これは通告していないから、では、事務方でも結構ですし、もちろん大臣がお答えいただけるようであれば。

銭谷政府参考人 公立学校の義務教育諸学校の教職員定数の改善につきましては、平成十三年度から十七年度まで、今お話しの第七次定数改善計画を実施してまいりました。この計画におきましては、いわゆる少人数教育の充実等を柱とする加配定数を中心に措置してまいりました。

 平成十八年度からは第八次の公立義務教育諸学校教職員定数改善計画を策定し、平成十八年度の概算要求に盛り込んでいるところでございますけれども、この基本的な考え方も、学力向上のための少人数教育の充実を柱とする定数改善ということで、加配定数がかなりの部分を占めているということでございます。

山口(壯)委員 大臣、今答弁があったとおり、もちろん大臣も御存じのはずですが、加配という考え方が依然、次の計画でもあるわけですね。

 大臣は、いっとき、いろいろ学校を回ったその成果として、三百以上の学校を回られて、そして三十人なり三十五人なりということをどうかというふうにおっしゃっていました。なぜ私、これが目を引いたかというと、やはり私は、実は、大臣の前の前のときかもしれませんが、三十人以下学級法案というものを提出させてもらったわけです。そして、当時の文部省の出してきた法案との間でどちらがいいかということをやったわけです。そういう意味では、大臣の答弁あるいはその発言を聞いて、ああ、やっと近づいてきたなと思ったわけですけれども、今また加配の考え方に戻ってしまわれたのかなと。この辺はいかがでしょうか。

中山国務大臣 四十人学級ということでその実現に向けてやってきたわけでございますが、現実問題として、今の子供たちには大変手がかかるというふうな現場の意見等がございましたので、できるだけ少人数の学級がいいのじゃないか、こういう考えは持っておりました。

 現実に、学校現場をずっと見て回りまして、既に、加配とかそういったことによりまして、少人数学級だとかあるいは習熟度別のクラスとかいろいろな工夫がなされて、個々に目の届くような、そういう教育がもう既に始まっているということを目の当たりにいたしたわけでございまして、やはりこういう方向がいいのかなと。

 やはり余り小さくなりますと、いわゆる集団行動だとか集団の心理等について学ぶ機会がなくなるわけですから、あるときは大きく、しかしあるときは少ない人数で、そういうふうな形で学級編制といいますかそういったものは、やはり現場の校長先生なり市区町村に任せる方向がいいのじゃないかな、こういうふうなことで、今度の第八次の定数改善計画におきましてもそういう方向で予算要求をしているところでございます。

山口(壯)委員 今、大臣がおっしゃったのは、弾力的な編制という条項のことをおっしゃっているわけですけれども、我々が提出した法案でも、例えば三十人以下学級法案とはいいながら、三十一人になれば必ずしも十六、十五でなくてもいい、弾力的にそれは、三十一人であっても三十一人のままでいいということは書いていたわけです。

 そういう意味では、今大臣のおっしゃったことは、三十人なりの定数を定めたとしても、必ずしも三十一になったら十六、十五に分けなきゃいけないということはないわけですから、やはり大臣、今現場をお回りになってお感じになられたそのときの気持ちをぜひ大事にしていただきたいと思います。

 残り時間ももうわずかですから、せっかくお聞きしているので最後に一つだけ。

 有人宇宙飛行計画ですね。中国が成功したということで、私は本当にどきっとしている。米ロに次いで中国、そういう意味では、日本の有人宇宙飛行計画というものがえらくおくれているというふうに私は思っています。

 また先ほどの趣旨と共通するかもしれませんが、財政面で有人宇宙飛行計画について日本がしっかり手当てされているのかどうか。私は減っているのじゃないかと思うんですけれども、この点だけに絞って、いかがでしょうか。もしも大臣、あれだったら、事務方で結構です。

中山国務大臣 中国の有人宇宙計画の成功等を見ますと、本当に何とも言えない思いになるわけでございます。

 平成十六年の九月に総合科学技術会議において取りまとめられました基本戦略におきまして、「我が国としては、当面独自の有人宇宙計画は持たないが、長期的には独自の有人宇宙活動への着手を可能とすることを視野に入れ、基盤的な研究開発を推進する。」というふうにされているわけでございます。

 我が国といたしましては、まずは国際宇宙ステーション計画等の国際協力を通じまして、長期滞在による有人宇宙活動を行うことによりまして、有人宇宙活動のための必要な基盤技術を着実に蓄積するということでございまして、その一環として実施されました今回の野口宇宙飛行士のスペースシャトル搭乗は記憶に新しいところでございます。

 有人宇宙活動というのはかなりの、相当の投資を必要とする取り組みが必要だ、このように考えておりますが、今後、我が国の有人宇宙活動の進め方につきましては、広く国民の意見等を聞きながら、技術開発のあり方等も含めて将来の目標あるいはビジョンを検討していくことが必要である、このように考えておりまして、来年度からの科学技術の基本計画におきましても、国家基幹技術という考え方でそういったことにも力を入れていきたい、このように考えております。

山口(壯)委員 頑張ってください。

 終わります。

斉藤委員長 横山北斗君。

横山委員 横山北斗と言います。どうもよろしくお願いいたします。

 きょう私がお尋ねいたしたいことは、大学、大学院の設置基準、その事前、事後評価のあり方についてということです。

 大学はその設置基準で、何を学ぶ学部をつくるのか、それから学生募集をどうするのか、それに応じた教育カリキュラムをどうするのか、もちろんその資格要件を満たした教員を確保すること、さらには図書館の蔵書から教室、研究室までさまざまな要件があるわけですけれども、今日の大学教育が、とりわけ産業界からの要請、産業界のニーズに応じた教育カリキュラムの再編というようなことを要望され、各大学がそれに必死でこたえようとしている中で、これまでの評価システムがどう変わっているのか、その問題点は何かということについてお尋ねしたいと思います。

 まず、一九九一年の七月に省令が変わりまして、大学設置基準大綱化、これによって大学の果たす社会的役割というものが、長い伝統を持って形成されてきたものとは大きく変わってきた。それは学問の府であり社会的エリートの養成である大学から、より産業界の人材育成にこたえたものを求められるようになったということなわけですけれども、その際、したがって大学では、例えば私たち、今ここにおられる大卒の方は、皆恐らく教養科目とか専門科目とかそういうのを経験してきました。今、そういう枠組みがもう取り払われている。それから、大学の先生は、より詳細な授業計画書を提出して学生に示さなきゃならない、それを見て、今度学生は教員を採点する、教授を評価するようなシステムも導入されました。それから、第三者評価機関のような外部評価機関もできました。

 そういう流れが九一年、今から十四年前に出てきたわけですが、そもそも、なぜそういう流れになったのかなということが私一つ疑問があります。当時の大学経営が苦しくなってきたとか、あるいは文教予算の関係とか、あるいは諸外国のまねをしてみたとか、いろいろな理由、背景があったと思うんですけれども、その背景について、まずお尋ねしたいと思います。

石川政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま委員から、平成三年の大学設置基準の大綱化について、その背景等々についてのお尋ねがございました。

 お話ございましたように、平成三年の七月に大学設置基準、これは省令でございますけれども、これの改正、いわゆる大綱化、当時大学審議会というもので議論しておりましたけれども、この「大学教育の改善について」という答申でございますが、平成三年の二月に出されております。これを踏まえて行われたわけでございます。

 この答申では、近年における、その当時の近年でございますけれども、社会経済の変化ですとか我が国の国際的な役割の進展等に伴って、高等教育に対する社会や国民の期待と要請が極めて大きく、多様になってきている、こういった認識のもとに、こういった時代の大きな変化に対応していくためには大学はより開かれた柔軟なものになっていく必要がある、こういった考え方のもとに議論が行われまして、個々の大学がその教育理念ですとか、あるいは目的に基づいて、学術の進展ですとか、あるいは社会の要請に適切に対応しつつ、特色ある教育研究を展開し得るように制度の弾力化を図る、そして大学の水準の維持向上のための取り組みを促すというような趣旨でなされた、このように私ども承知をしておりますし、理解をしております。

 文部科学省、当時は文部省でございますが、この答申を受けまして、設置基準の大綱化のための改正手続を行いまして、同年の六月三日に改正の基準を公布したところでございます。その中身につきましては、先ほど先生が御紹介になったようなことが盛り込まれております。

横山委員 ありがとうございました。

 そういう省令改正に応じていろいろな大学が、今の話というのは、一言では時代の流れに応じたということにもなろうかと思うんですけれども、いろいろな大学が学部の再編、あるいは新設の大学ができてきました。

 そのときに、一つ私が問題になるなと思っていたことは、法学部とか経済学部とかそういう伝統的な学部であれば、大学の先生を、例えば資格要件を定める際に、戦後すぐにできた法学部をモデルに、八〇年代、九〇年代にできた法学部もそれが一つの設置の基準になると思うんですが、社会福祉学部とか、そういう新しいタイプの学部をつくったときに、そこに集まってくる先生というのは、福祉学部を卒業して、福祉学の大学院を出て、そこで博士号を取り、教授になっている人というのはまだ年齢的にもいないわけですね。

 そうすると、経済学部で厚生経済学を学んだ人とか、文学部で福祉の歴史を社会学科で学んできた人とか、史学科で学んできた人とかが集まって学部ができ上がるということになると、大学の先生を審査するための基準というのも伝統的な学部のそれとは違ったものを求められていたと思うんです。その点について、簡単に御説明願えればと思います。

石川政府参考人 大学の教員の資格、あるいはその審査についてのお尋ねでございます。

 御案内のように、大学の教員となることのできる者の資格につきましては、今お話もございましたが、大学設置基準におきまして、教授ですとかあるいは助教授等の職ごとに定められております。そして、その配置等につきましても、大学設置基準に規定をされているわけでございます。

 お話ございましたように、昨今といいますか平成三年以降、いろいろな新しい学部、新しい分野についての教育研究が展開されてきております。そういった場合には、直接的にその教育に携わる人、ぴったりとしたそういった教育研究の経験をお持ちの方がいらっしゃらないようなケースもございます。ただ、その中でもやはり、例えば社会福祉の分野で申し上げれば家族法ですとか、さまざまなそれに関係するような法律等がございます。例えばそうした法律上の科目を教授するということになれば、従前の法学部にいらした、そしてまたそういった民法等を十分に研究教育された方、そういった方が活躍できるものと思いますし、またそういった分野を展開していくにつれまして、そういった専門家も徐々に養成されていく、徐々に充実されていくもの、このように考えております。

横山委員 今、新しい学部ができた場合でも社会の変化に対応して柔軟に対応できる、そういう教員組織づくりを図っているということがわかりました。

 それで、私が一つ問題としたいのは、そのような事前チェック以外にも、事後のチェックも大変重要だと思います。現在の大学というのは、そのように事前に学部を立ち上げる上で必要な教員、それに学問業績のある教員を集めても、それが例えば新設大学、新設学部の場合には四年たてば、つまり大学が、完成年度というんですが、迎えてしまえば、その後の教員をそろえることに関してはそこの大学の教授会の自治に任せられるということをずっとやってまいりました。

 ですから、具体的にどこがとか、そういう悪いことは申せませんけれども、考えられることは、大学を立ち上げる際に、他大学から学問業績のある教授を引き抜いて、そして学部を立ち上げる、あるいは大学院を立ち上げる。それで、大学院、学部が完成年度を迎えた後はもうその先生方には去っていただいて、自分のところにいる、本来四年前、あるいは大学院であれば二年前には学問業績が十分でなかった教員を教授にして、これで資格要件を満たしているんだということが自分たちの大学の裁量でできたわけですね。私は、それは大学の質を保証するという観点から、ずっと問題があると思ってきました。

 それが、最近の文部科学省あるいは中教審の動きを見ますと、事後のチェックも相当しっかりやるということのようです。その事後チェックにつきまして、まだこれは大学の先生を含めて実際よくわかっていない部分というのがあります。これも少し簡潔に御説明願えればと思います。

石川政府参考人 教員の資質等についての事後チェックのお話でございます。

 先ほど御指摘ございましたように、事前の審査については、大学設置・学校法人審議会におきまして、教員候補者が大学の教員としてふさわしい資質を持っているかどうかといったような審査を行っているわけでございます。そして、一たんその審査を通りまして大学なり学部が設置をされた後のことにつきましては、既に完成年度に、今先生からお話ございましたけれども、完成年度に到達した大学ですとか、あるいは届け出で学部等をつくったような場合の教員評価については、基本的には大学設置基準等の趣旨を踏まえて行われる各大学における独自の内部審査、あるいは自己点検・評価など、それぞれの大学の自主性、自律性にゆだねられることとなっておるわけでございます。これも先生からお話があったとおりでございます。

 これは、完成年度に到達をした後は、各大学がみずからに課せられた社会的責任を十分に認識しながら、設置基準を遵守することはもちろんでございますけれども、その質の保証と向上にそれぞれみずから責任を持って不断に取り組んでいく、そういうふうなことであるべきだという考え方によるものでございます。

 また、こういった考え方を担保するといいましょうか裏づける制度としまして、大学の自主的、自律的な取り組みを促進するために、平成十一年度からは大学の自己点検・評価といったようなことが義務化をされております。

 そしてまた、先生からもちょっとお話ございましたけれども、平成十六年度からは認証評価制度、いわゆる文部科学大臣が認証いたしました第三者評価機関、これによる評価制度を導入しておるところでございまして、この評価で直接に教員個々人の業績とか内容を審査するわけではございませんけれども、この評価で、例えば自己点検評価の状況ですとか、ファカルティーディベロプメント、いわゆる組織的な教育能力の向上のための取り組み、そういったものの実施状況も含めまして、大学の教育研究活動を評価するという行為を通じて、各大学における教員の質の確保や向上のための自主的な努力といったようなものが大いに促されると思っておりますし、私どももそういった方向を支援してまいりたい、こんなふうに考えております。

横山委員 ありがとうございました。

 今、教員の個々の業績について特にとやかく言うものではないという趣旨の発言を聞いたんですけれども、私は、現実問題として、そういうこともしっかりとこれからは問うていく必要性を感じております。

 第三者評価機関というのは、何も事務的な組織だけではないと思います。図書館の蔵書の数が当初足りなかったから、それを四年以内に充足しなさいねとか、そういうことであれば、別にだれでも、だれでもというか訓練された人であればチェックできますが、きちんと学問業績それ自体を評価する、その分野のオーソリティーの人が集まって、大学というものが資格要件を満たした教授、助教授で構成されてできていくわけですから、完成年度の後もきちんともう一回、四年先、五年先に、運転免許の更新にしてもあるいは小中高の先生にしても、これから免許の更新というようなことがあるわけですね。ですから、大学の教壇に立つ人たちにも、より厳格な研究業績に関するチェック、それを満たさなかった場合の指導も含めて、徹底してやっていくべきであると思います。

 その一方で、最後にぜひ大臣にお聞きしたいことがございます。例えば、そういう事後評価システムの中で、非常に厳しいものもあるわけです。例えば、大学の定員が一・一%を超えるところは指導対象になるとか、場合によっては、そういう大学はもう今後認めないみたいな、そういうのもあります。既に定められているその事後評価システムの項目のすべてを、お忙しい大臣がすべて目を通してチェックするわけにはいかないわけですが、そういう常識で考えて無理があるなと思うようなシステムについての御指導はあってしかるべきではないかなというふうに私は思います。

 一・一%というのは、簡単に説明いたしますと、例えば二百人定員募集ということであれば、大体どこの大学でも、言葉は悪いですけれども、滑りどめと言われているような大学だと千人ぐらい合格者を出すわけですね。千人合格者を出しても、今までの経験から見事なほどに八百人ぐらい抜けて二百人ぐらい残るわけです。しかし、それでも、二百人といっても、実際には二百三十人残るときもあれば二百四十人残るときもあります。それを一・一%という非常に厳しい数字を当てはめるというのは、私はその事後評価の中にも無理なものが含まれているなというふうに思うわけです。

 ですから、今、教員の資格要件については比較的甘いと。それは、今までいいかげんにやってきたものは厳格に対処する必要があると思いますし、しかし、今のこの事後評価システムの中で、厳しいものについては緩和していく方向で検討されてもいいのじゃないかというふうに思うんです。

 そういった中で、私が最後に申し上げたいことは、今のこの教員評価システムの中で徹底してやっていけば、私の考えでは、最終的には大学というところが実務専門と学問専門、そういう特化された方向にしか残っていかないのじゃないかなという気が、今度の事前、事後評価システムのあり方を見ていると感じております。

 そこで、最後にぜひとも、平成十六年度からこういう新しい事前、事後の評価システムというものを導入したわけで、そういった大学をチェックするシステムが始動したことによる今後の大学の方向性、あるいはどういう方向に向かわせようとしているのか、あるいはその理想像、将来像みたいなものについて、この機会にぜひ大臣の、そもそも大学というものをどう考えて、これからどうなっていくべきだと思っていらっしゃるかというようなことについて、私はきょうが最初の質問ですから、そういう話を聞いて帰りたいと、まだ帰るわけにいきませんけれども、思っておりますので、お話をお聞かせ願えればと思います。

中山国務大臣 大学の現場で活躍してこられた横山委員のお話でございます。

 大学の質を高めて国民の負託にこたえられる、そういう大学にしなければいかぬわけでございまして、そういう意味で、今言われました事前、事後のチェックをしっかりとやることによりましてそれが実現されるのではないか、こう思っております。特に、今まで事前審査がちょっと甘過ぎたのではないか、こういうふうな指摘もされているわけでございまして、その辺のところはしっかりとやっていかなければいかぬな、こう思っております。

 一・一という数字、私ちょっと存じ上げませんので、何のことかわからなかったのですが、入学定員の話でございますか。(横山委員「定員です」と呼ぶ)そうですね。

 そういう意味で、大学に求められるもの、期待されるもの、教育と研究というのがあるわけです。今、余りに研究にばかりいそしみ過ぎまして、教育がおろそかになってはいけないな、こんなことも実は思っているわけでございますが、最近言われておりますのは、第三の使命といいますか、大学の中でいろいろな研究実績等があるわけでございますが、そういったものをもっと社会に還元すべきではないか、そういった社会の要請もあるわけでございます。あるいは国際協力とか公開講座とか、あるいは産学官連携等を通じて、より直接的な社会に対する貢献といったものも求められているということでございます。

 まさに大学全入の時代を迎えまして、これからの新しい高等教育をどうやっていくか、これは大学それぞれがそれぞれ考えていただきたい、こう思うわけでございますが、学校ごとの個性、特色の明確化を図りまして、そして多様な国民の期待にこたえられるような、そういう大学であってほしい、このように強く期待しているところでございます。

横山委員 まだ少し時間がありますので、しつこいようですが、一・一%という数字は、つまり二百人募集であれば二百二十人までしか認められないとかいうことですね。しかし、実際千人募集して何百人抜けるにしても、定員オーバーだとこれから大学を認めないみたいな、そういうシステムにこれからなっていくということについての、ほかにも幾つかそういうシステムがあるんですが、それが一たん事前、事後評価システムとしてできてしまったものであっても、変えていくような御用意はございますでしょうか。これは質問のあれになかったことで、申しわけないんですけれども、ちょっとお話を伺えればなと思います。

石川政府参考人 例えば、定員に対してオーバーしてとったり、今は厳しい時代でございますからなかなかそういったことは現実にはございませんけれども、そういうお話がございました。例えば私立大学等につきまして、定員を大幅に下回ったり、あるいは定員を大幅に上回ったりする場合に、助成についていわゆるペナルティーがかかるというようなことはございますけれども、例えば定員をオーバーしてとったからということで、それで大学が認められなくなるとか、そういったことは制度上はございません。

 ただ、お話ございましたように、これからの厳しい時代、それぞれがやはりそれぞれの大学の目的あるいはキャパシティーに応じて効率的な教育研究を展開していただく必要があると思っておりますので、そういった視点は十分に頭に置いて第三者評価機関がしっかりとその教育研究状況を評価していくということがこれから大切になる、このように考えております。

横山委員 結構です。どうもありがとうございました。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 まず、私も、義務教育費国庫負担の問題でお聞きをしたいと思います。

 昨日、中央教育審議会が「新しい時代の義務教育を創造する」という答申案をまとめられました。それを見ますと、「国は、その責務として、義務教育の根幹」、三つですね、機会均等、水準確保、無償制「を保障し、国家・社会の存立基盤がいささかも揺らぐことのないようにしなければならない。」とした上で、このようにありました。「義務教育の構造改革を推進すると同時に、義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するためには、国と地方の負担により義務教育の教職員給与費の全額が保障されるという意味で、現行の負担率二分の一の国庫負担制度は、」「優れた保障方法であり、今後も維持されるべきである。 その上で、地方の裁量を拡大するための総額裁量制の一層の改善を求めたい。」としているところがございました。ですから、国庫負担の二分の一と明記をした上で、その維持を求めているというものになっているわけでございます。

 これは月内に答申となるということでございますが、この答申が出されれば、これは政府の方針ということになりますか、大臣。

中山国務大臣 義務教育費国庫負担につきましては、昨年末の政府・与党合意におきまして、八千五百億円の減額を計上し、その取り扱いにつきましては、ことしの秋までに中教審の審議を経て結論を得るということにされたものと認識しているわけでございまして、今言われましたけれども、昨日の会議におきまして、国庫負担制度については、現行の負担率二分の一の国庫負担制度は今後も維持されるべきであるという答申案が部会決定されたところでございます。

 この答申案につきましては、今後、総会において審議され、答申として取りまとめられることになるわけでございますが、いずれにいたしましても、文部科学省といたしましては、昨年末の政府・与党合意に基づきまして、中央教育審議会の結論を踏まえて、引き続き義務教育制度の根幹を維持し、国の責任をしっかり果たしていくということで対応してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 大臣の御答弁でしたけれども、もう一度、確認の意味でございますけれども、与党合意、二項あって、中教審において結論を得る、それまでは暫定措置だと。だから、この中教審の結論をもって、やはり政府の方針というふうに与党合意そのものも読むことができるのではないか、その辺をはっきりとおっしゃれないものかどうかということでございますが、いかがですか。

中山国務大臣 三位一体の改革を進めるに当たりましては、昨年と同様、経済財政諮問会議、四大臣会合、国と地方の協議の場などにおきまして、関係大臣も加わって議論を行い、その結果を踏まえて、最終的には政府・与党で結論を出すことになるもの、このように考えております。

石井(郁)委員 今国会の所信表明演説で小泉首相が述べられたことでございますけれども、三位一体改革ですが、地方の意見を真摯に受けとめ、来年度までに確実に実現しますということでございますね。

 私、地方の意見ということでいいますと、市区町村議会から、やはり義務教育費国庫負担制度の堅持を求める意見書というのは随分と出されたというふうに思うんですが、平成十六年度、十七年度、それぞれどのぐらい出されましたか。パーセンテージでちょっとお示しいただきたいと思います。

中山国務大臣 総理からは、地方の声に真摯に耳を傾けろ、こういうふうに言われておりますので真摯に耳を傾けてまいりましたけれども、今のところ私のところに聞こえてくる地方の声というのは必ずしも地方六団体の主張とは一致しないわけでございまして、例えば、地方自治法に基づきます地方議会からの意見書、これは年度途中の十月十七日現在で千三十二件、全体の四六%が提出されておりまして、平成十六年度から通算いたしますと六四%に達しております。

 また、全国市区町村長のアンケート調査、これは日本の教育を考える十人委員会というところが調査したわけでございますけれども、これによりますと、市区町村長の八二・五%が堅持すべきと回答しているところでございます。

 また、保護者で組織されておりますPTAからは、全国六十一協議会の全部から義務教育費国庫負担制度の堅持の意見をいただいているというのが現状でございます。

石井(郁)委員 いろいろなデータをお示しいただきまして、ありがとうございます。

 ですから、今お示しいただいたように、地方、それぞれの団体のところでやはり義務教育費国庫負担堅持を求めるという声が多数を占めている、こう言っていいというふうに思うんですね。だから、地方意見を真摯に受けとめた、そういう結果として、さきの中教審もあのような答申をまとめられたというふうに私は思うわけでございます。

 それで、先ほども出ておりましたけれども、文部科学大臣が首相に呼ばれたのか出向いたのかあれですけれども、お話を伺ったということでございます。八千五百億円の税源移譲を求める地方案を真摯に受けとめる、政府方針を踏まえて対応するようにというような指示があったということを聞いておりますけれども。

 大臣として、本当にこれからが大変な事態を迎えると思いますけれども、二分の一の国庫負担を堅持するという今回の中教審を踏まえまして、やはり義務教育費国庫負担制度の堅持のためには大臣として全力を挙げる、そのことは当委員会で、ぜひ大臣の姿勢としてはっきりと披瀝をいただきたい。これはもう絶対譲ることができない問題だということで、明確な御見解を伺っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 きょうも、さまざまな御意見をいただいているところでございます。

 総理の方からは、地方の案を真摯に受けとめろ、こういうふうな御指示もいただいているわけでございます。しかし一方、地方の方からは、知事会はああいう意見でございますけれども、市町村あるいは議会は必ずしもそうでもないということもあるわけでございます。

 私も政府の一員でございますから、三位一体改革、これについてはもちろん協力していかなければならない。しかし、義務教育費国庫負担制度、これもまた我が国の教育の根幹を支えるものでございますから、これについてもしっかり堅持して、そして国としての責任を果たしていかなければならないということで、大変苦しい立場ではございますが、文部科学大臣といたしましては、この義務教育費国庫負担制度というものは大事なものであるということで、一生懸命頑張ってまいりたい、このように考えております。

石井(郁)委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。ありがとうございました。

 次の問題でございますけれども、来年度の概算要求の中に全国学力テストの実施というところがございました。全国的な学力調査を実施するということで、十八年度に問題作成などで四十二億六千七百万円かけて、事前調査等々準備が行われる、十九年度にその実施。小学六年生は国語、算数、中学三年生は国語と数学を対象にする、全児童、全生徒が参加できる規模で実施する予定だということが文部省の説明ですけれども、この学力調査というのは一体何を目的として実施されるものでしょうか、大臣。

中山国務大臣 今御指摘がありましたが、全国的な学力調査につきまして、平成十九年度から調査を実施するための必要な経費約四十三億円を平成十八年度概算要求に盛り込んだところでございます。

 この調査は、全国的な教育の機会均等や水準確保など、義務教育の根幹を担保する観点から、国際的な学力調査の動向等も十分考慮しながら、児童生徒の学習到達度、理解度を全国的に把握、検証するとともに、各学校がこの結果を活用して、教育指導や児童生徒の学習の改善充実に役立たせること等を目的としておるわけでございまして、各学校段階の最終学年であります小学校六年生、中学校三年生の全児童生徒が参加できる規模で実施することを想定しているところでございます。

石井(郁)委員 今の御説明にありましたけれども、学習到達度とか理解度の把握、あるいは結果によって指導の改善充実につなげていくというような説明は、これまでも小中学校の教育課程実施状況調査という形で文科省はされてきたと思うんですね。これはお聞きするところ大体八%ぐらいで実施してきた、調査対象で行ってきたということで、だから学力のある面で実態調査という点でもそれでできるのではないか、してきたのではないか。なぜそれが全児童対象になるのか。それはこれまでのとどこがどう違うんでしょうか。

中山国務大臣 要するに、言われましたように、八%の抽出ということでこれまで教育課程実施状況調査を行ってまいりましたが、学習指導要領の目標に照らした教育内容の全国的な定着状況を把握し、学習指導要領の改善のためのデータを得るというのが教育課程実施状況調査でございまして、今回の学力調査とはその趣旨、目的が異なるものである、このように考えております。

石井(郁)委員 それでは、八%の抽出調査もされる、そしてまたこういう全国的な規模も今後されていくと。四十三億円ですからね、相当な額になるわけでして、伺っているんですけれども。

 全国的な定着調査というふうに言いますけれども、結局全生徒を対象とするということになりますと、テストというのはやはり結果が出ますし、平均点だとか出てくるわけですから、学校、都道府県ごとのレベルだとかランクだとかということがやはり必然的に出てくると思うんですね。一人一人の生徒についてもそれが出されてくるという点で、本当にこれは私は慎重な検討を要する問題だというふうに考えておりますけれども、こういう形での調査をすると、今でも日本の教育は受験競争と言われていますけれども、一層競争は激化するのではありませんか。その懸念についてはどのようにお考えでしょうか。

中山国務大臣 今現在でも、三十九都道府県ですか、全体的な学力調査が行われているわけでございまして、これを全国に広げよう、こういうことでございます。子供たちの学習意欲の向上に向けた動機づけを与える観点等も考慮しながら、学校間の序列化とかあるいは過度な競争につながらない、これも大切なことである、こう考えておりまして、この点につきましては中央教育審議会におきましても御指摘がなされているわけでございまして、専門家の先生方の御意見等を伺いながら、さらに今後検討してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 今本当に大臣がおっしゃっていただいたように、既に全国で、お聞きしますと三十九都道府県ですか、行われているというんですよ。だから、ほとんどもう実施を見ていると見ていいと思うんです。だから、都道府県レベルでも行っている、さらに文科省が国を挙げて全国レベルでも行う、では、子供たちはもう幾重にも、やはりテスト、テストに追われるということになりませんか。

 だから、全国的な学習指導要領なり、あるいは理解度、水準等々の定着を見るというんだったら、今までも教育課程の実施調査で見てきたところですから、それで何ら困ったところがなかったんじゃないか、新たになぜこれほどまでのことをするのかということがまだ私は大変問題だというふうに思っています。

 そこで、もう少し立ち入って伺いますけれども、どうもこういう方向を出されたのは、昨年十一月、これは大臣が「甦れ、日本!」という文書を発表されました。そこで、競争していく環境づくりが重要だ、全国学力テストの実施に踏み切ることということがどうも明らかにされたようでございます。

 そしてまた、大臣は、ことしのある雑誌の中でも、これは「諸君!」の五月号なんですけれども、このように述べられています。「「競争」は世界の常識」だ。「日本だけが競争をさけてぬるま湯の中で子供たちをナアナアに育てていたら、二十一世紀を生きる子供たちに対してあまりにも無責任」だ。そして、「国同士」、国というのは中国とか東南アジア等々のことのようですけれども、「国同士が競争しているのですからね。」「競い合い切磋琢磨する雰囲気を高校、中学、小学校のレベルにも波及させたい」。一部分を私読み上げさせていただきましたけれども、こういう形で全国的な学力調査ということが必要だということが述べられているんですね。

 そこで、私も時間の関係もありますから、端的に伺いますけれども、本当に日本の教育が、ぬるま湯の中で日本の子供たちが育っているという御認識なんでしょうかということが一つと、日本は子どもの権利条約を批准していますね。この子どもの権利条約は五年ごとに国連が進捗状況というか定着状況を審査しておりまして、国連の子どもの権利委員会というのがあります。この国連の子どもの委員会からは、日本の教育について二度にわたって大変厳しい勧告を受けていたんじゃないでしょうか。私は、大臣に率直に伺いたいのは、この権利条約と勧告を踏まえてのこういう大臣の御発言なんでしょうか。

中山国務大臣 全国的な統一学力テストにつきましては、今話しましたように、三十九都道府県等において既にこれは実施されております、これを全国的に広めたいということでございます。三十九都道府県におきましても、それぞれ調査の結果をもとにしていろいろな工夫、改善がなされているわけでございますから、これを全国的なレベルで広げまして、そして学習到達度とかあるいは理解度の把握、検証をいたしまして、どうしたら工夫、改善ができるか、そういったこれからの教育のための資料にしたいということでございます。

 また、今度OECDのPISAの調査でもありますように、国際的、科学的な観点から、質の高い学力調査を推進する必要があるということですね。PISAの調査でもありましたが、読解力、これが日本の子供たちは非常に劣ってきているということも言われているわけでございます。

 こういったことも踏まえて、今後子供たちに、もっと生きていく上の力、先ほど来話がありますように大学全入の時代ですから、かつてのような受験戦争とかそういうことではない、私は、受験学力というよりは、むしろ人生を生きていく上での力といいますか、人生学力とでもいうべき、そういったものがこれから必要とされているのではないか、こう思うわけでございまして、そういったことにつきましては、習熟度別の授業とかそういった少人数指導を通じて、一人一人の個に応じた指導を充実する取り組みを一層進めていきたい、このように考えているわけでございます。

 また、生徒、親及び関連する非政府組織の意見を取り入れながらカリキュラムを見直すこと、こういったことが権利委員会からの御指摘にあるわけでございますが、カリキュラムの基準であります学習指導要領等の改正に当たりましては、学校関係者のみならず、幅広い意見を踏まえることは重要なことでございまして、これまでも広く国民一般の意見を聴取して改正してまいりました。

 特に、今回の義務教育改革に当たりましては、現場主義の観点から、本年一月以降、スクールミーティング等におきまして、三百八十七校ですかの学校の教員、保護者の方々、さらには子供たちから直接意見を伺ったところでございまして、今後、学習指導要領等につきましても、改正の際には各方面からの意見等を適切に踏まえて対処してまいりたい、このように考えております。

石井(郁)委員 本当にこれから本格的な議論を始めなきゃいけないところでもう時間なんですが、大臣、一点お答えいただいておりません。子どもの権利委員会からの勧告を踏まえてのこの調査だと。大臣は、勧告の中身、二度にわたる勧告は御存じでしょうか。それだけお聞かせください。

中山国務大臣 先ほど申し上げましたが、今回の全国的な学力調査というのは、児童生徒の学習到達度、理解度を全国的に把握、検証するとともに、この結果を各学校が活用して、そして教育指導や児童生徒の学習の改善充実に充てる、こういうことを目的としているものでございまして、子どもの権利委員会の勧告に反するものではないというふうに考えておりまして、このような趣旨、目的に照らして適切な調査を実施してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 大臣の御答弁ですけれども、子供の理解度を全国的に調査する、把握すると。これはこういう調査をしなくても、四十三億円もかけてしなくても、これはもう日々本当に学校現場の中から十分わかることじゃないんでしょうか。私は、全国テスト、こういうことがもたらす教育的な弊害、問題、これをぜひお考えいただきたい。

 権利委員会からの勧告は、日本の教育が既に高度に競争的な教育制度だ、異常な発達のゆがみを引き起こしている、二度にわたる勧告ですよ。来年の五月にまた政府は報告書を出さなければいけません。どうするんですか。

 ということで、私は、ようやく討論の入り口に入ったという感じがしておりますけれども、とてもですけれども、このままでは実施などはさせるわけにいかないということだけ申し上げて、質問を終わります。

斉藤委員長 保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 私は、昨年佐世保市で起きた小学校六年生の女児の同級生を殺してしまうという痛ましい事件、恐らく当委員会でも議論はあったと思いますけれども、私、国会に出てくる前に、ずっと子供の問題を子供たちが読んでいる雑誌に十数年、毎月、毎週書いているというようなジャーナリズムの仕事をしておりましたので、昨年行ってまいりました。

 実は、大臣に率直なところを伺いたいんですけれども、昨年、私は七月に行きまして、十一月に行きまして、ことしになって二月にも行きまして、いろいろな関係者の方に会ってきました。実は、この春はお子さんを亡くされた被害者のお父さんにもお会いをして、いろいろ話をさせていただきました。なぜああいう事件が起こったのか、真相は何なのか、このことを被害者のお父さんも当然究明したい、なぜなのか、この問いが離れなかったそうです。しかし、時間がたつにつれて、なぜということはなかなか究明しにくい。そして、加害児童は児童自立支援施設におるわけで、本人自身もなぜということに答えられるような状態ではないということだとすると、なぜということを問い続けるとともに、今子供たちが置かれている状況はどうだろうかと。そして、この種の事件がまた起きてくるようなことはないんだろうかということを、むしろそちらに焦点を当てて考えていきたいと、被害女児のお父さん、三時間ぐらいお話ししましたが、お話ししてくれました。

 そこでなんですが、この間、文部科学省でもこれらの事件、この事件だけじゃありませんけれども、心の教育、命の教育ということで、命の大切さを子供たちに教えていこうという取り組みをなさっていることと思います。

 そこで、率直なことなんですが、命を大切にする教育の中にいろいろあると思います。大臣に絞ってお聞きしますので、道徳の時間で先生がお話ししたり、板書したり、テキストを使ったり、あるいは作文を書かせたりという、いわゆる教室の中で命について語るという教育について、これだけでいいんだろうか、子供たちに本当に命という言葉の響きが届くんだろうか、届いていない場合があるんじゃないか、私はそう思うんですが、その辺について、大臣の率直な御感想というかお考えをまず聞きたいと思います。

中山国務大臣 昨年、長崎県佐世保市の小学校におきまして、六年生の女子児童が同級生に殺害されるという事件が起こりましたが、まことに痛ましい事件でございました。事件の重大さは十分重く受けとめておるところでございます。

 今、教室で単に講義形式の授業だけでは心の大切さというのはわからないんじゃないか、まさにそのとおりだと思うわけでございます。最近の子供たちというのは、おじいちゃん、おばあちゃんたちの死に直面することもございません。死というものを本当に自分の体験として、自分の体で感じるということがないわけでございますから、どのようにして命の大切さということを理解してもらうかということでございます。

 私はまず、この世に生を受けたありがたさに気がついて、命の大切さというものを自覚できるようにする、この心の教育は極めて重要でありますが、それは単に教室だけではできるものではないと思っているわけでございまして、今、工夫がいろいろ進められておりますが、例えば体験活動の実施とか、あるいは地域人材の活用、効率的、効果的な教材開発、こんなことが進められております。例えば、子供が病院を訪問するとか、お医者さんとか看護師に話を聞いたり直接新生児に触れる活動とか、あるいは外部の講師を招いて生死にかかわる体験を語っていただくなどのいろんな取り組みがなされているわけでございます。

保坂(展)委員 今大臣がおっしゃったように、そういった校外、学校の外に出て命と向き合うということは、子供にとってもとても大事な経験になると思います。ただ、私、教室で命をテーマにして論じたり作文を書いたりするのが効果がないとかということを申し上げたいわけではないんですね。ただ、すれ違ってはいないだろうか。

 例えば、こういう例があるんです。実は、何度か佐世保に行きながら、あの事件は六月一日に起こりました。昨年の十月三十日、やはり同じ長崎県の五島市というから、これは島ですね、そこで道徳の授業で命の大切さを学ぶための授業があったそうです。小学校五年生の女の子が、苦しいときに笑って生きるのはすばらしいと書いて、翌日、首をつって死んでしまったという痛ましい事件が起きているんですね。これはなかなか、命のことをテーマにして子供に考えさせるというのは非常に難しいし、どこまで届くんだという一つの例かと思いますけれども、お聞きになってどう感じられますか。

中山国務大臣 苦しいとき笑って過ごすのは楽しいという文面でしたか……(保坂(展)委員「すばらしい」と呼ぶ)すばらしい。どういう心境でその文章を書いたのか、それがなぜ翌日自殺することになったのか、ちょっとうかがい知ることはできません。子供たち一人一人の心の中というもの、どうなっているのか、本当にそういう意味では私ども理解する努力もしなきゃいけませんが、なかなか難しいな、こういう思いがしております。

 なぜ命が大切なのかということについて私もずっと考えてまいりまして、なぜ大切なのか、実は文部科学省にお坊さんを呼んで、なぜ命が大切なのかということを講演してもらったこともございました。それほど命の大切さ、なぜ大切なのかということを、私はみんなで考えなきゃいけない、こう思っているんです。要するに、今、私ども、そして委員がそこにおられること自体、これは本当に摩訶不思議な、奇跡的なことではないか。そういう意味で、非常にありがたい命を受け継いだわけですから、その命を大事にしていくということは本当に大事なことだということをどのようにして子供たちに教えるかということは、まず大人がどうして命が大切なのかということがわかる必要がある、こんなことも実は考えているところでございます。

保坂(展)委員 我々の命、その命を持つ者が、特に若い魂である子供たちが、あの無残な形で亡くなったりとか、事件を起こしたり、あるいは人の命を奪う側になってしまったりということに非常に心を痛め、痛めるだけでなく何とかしなければと思って論じているわけなんです。

 こうして佐世保に何度か通ったということで、長崎県の方からいろいろファクスをいただきまして、この間、恐らく長崎県だけじゃないと思います、日本全国、いろいろ同じような兆候はあるんだと思います。ちょっと御紹介しますと、ことし長崎市の公立中学校で、要するに子供が包丁を持って登校して、その包丁は使えなかったので大変よかったんですけれども、しかし、ちらっと見せたということが、やはり子供同士のグループの中におけるトラブルがあったようですが、この子は一応、銃刀法違反で書類送検されたそうです。これは事件ではありませんが、そういうことがありました。

 それから、六月十五日には、佐世保市の隣にある北松佐々町というところの小学校で、五年生の担任の先生が、何と学校でみずから命を絶たれていた、学校の校舎の中で。ですから、子供たちにとってはこれは大変なショックで、しかも学校の先生、まさに命を教える側がそこまで追い詰められている。同時にまた、後に佐世保市内でもやはり亡くなった先生が出ているそうです。

 それから、これは全国的に伝えられましたけれども、六月二十九日には、平戸市で中学一年の男子が六年生の妹をバットで大けが、重傷を負わせてしまう。これは、万引きを見つけられて、その書店に行かなかったということで、学校の教頭と担任が家庭訪問した直後だということですけれども。

 さらに、八月の終わり三十一日に二人連続で、そしてきょうに至るまで、長崎県内で、中高生だと思いますが、七人の子供たちが続々と命を絶っている、こういう知らせが次から次に寄せられまして、どうしてこういう異常事態が、とりわけ二年続けて駿ちゃんの事件があり、佐世保の事件があった長崎県で続いているのか、なぜなのか、こう思うんですが、何かお答えになれることはありますか。

中山国務大臣 子供の自殺、事件もあるわけでございますけれども、大人の世界も毎年三万人以上の方が自殺するということでございます。大人自身が命の大切さということがわかっていないんじゃないか、こういうこともあるんですね。やはり子供というのは、そのときそのときの社会の産物といいますか、反映じゃないか、こう思うわけでございまして、社会全体として命を軽んずる、そういう傾向があるのかなということも私たちは反省しなければいけないと思うんです。

 大人が、親が命は大切だということがわからないで、何で子供たちが命が大切だということがわかるんだろう、こう思うわけでございまして、まずは私たち、先ほど申し上げましたけれども、この世に生を受けたことのありがたさを本当に自覚することから始めなきゃいけない。自分の命というのは本当に奇跡的なものなんだ、そういう大切な命。自分の命も大切にするということは、同じように他人の命も大切にしなければならないんだ、こういう共通の認識といいますか、そういったものをやはり大人の世界から広げていって、それが子供にも反映するように、子供たちの心にも響くような、そういった手だてといいますか、そういったことを今後とも考えていかなきゃいけない、こう思っています。

保坂(展)委員 私、取材をして、中学生や小学生のお子さんを持つ家庭のお母さん方にお話を聞いたり、子供たちにもちょっと話を聞いたりいたしました。非常にまじめなんですね。まじめというか、とにかく一生懸命毎日やっている。

 その中に、実は今回の佐世保の小学校の事件の被害者も加害者も、ミニバスケットボール、女子バスケ部の部員でした。これは、私ども関東に住んでいますと、小学校の部活というと、いわゆる学校の放課後活動として学校の先生が見ているのかなと。ところが、そうではなくて、社会体育という形で、むしろ学校は場所を提供するんですね。親たちが監督やコーチの方をお願いして連れてきて、いわば親の自主運営の形で、社会人が地域の子供にスポーツを教えていく。そういう意味では、地域の教育参加、子育てへの参加という意味では大変すばらしい面を持っているわけです。

 ただ、ともすると対外試合、それからトーナメント制ということで、一生懸命やろうということが、その佐世保の場合じゃないんです、別の小学校で見聞きしたところだと、練習は毎日やるよ、夏休みも連日だよというようなところで、かなりヒートアップをしてしまう。それで、一生懸命やるというのはいいことなんですけれども、一生懸命やっていた部を加害児童は成績が下がったということでやめざるを得なくなったんですね、大臣。

 ここらを、ちょっと担当局長に来ていただいているので、社会体育における一種の、例えば長時間にわたって毎回練習するとか、なかなか私生活を犠牲にして監督の方は教えていらっしゃいますから、これはもうだれからも非難は来ないわけで、むしろ親から感謝されるわけですが、長期において子供の発達、成長というのを見たときにどうなのかという感想をちょっと持ったんですね。そのあたりについて何か、実情はどうなのかということを簡潔に述べていただけますか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 学校外で行われる地域のスポーツ活動、これは青少年の心身の発達のみならず、今先生おっしゃいましたように、仲間や指導者との交流を通じましたコミュニケーション能力の育成という観点からも意義があるものと考えておりますけれども、他方で、御指摘のように、体がまだ未発達な子供に対して過度の練習を課してしまうというようなことで、時折好ましくない傾向というものが出てきたりするわけでございます。やはり子供の発達段階に応じた適切な指導が行われるのが重要であると考えております。

 例えばスポーツ少年団におきましても、全国の指導者の研修会でございますとか、ガイドブックもありますけれども、その中にもやはり、ジュニア期のそれぞれの発達段階に応じた指導ということに関する記述もあるというところでございますので、その点十分に指導してまいりたいと思っております。

保坂(展)委員 大臣、もう時間が限られているので簡潔に御感想だけ伺いたいんですが、実は、加害児童を詳しく追っていきますと、やはりホームページなんか荒れ出すんですよね。どこで荒れ出したのかというと、彼女はやはりずっとバスケットをやりたかったんですよ。規模の小さいチームでそれなりに頑張っていたわけです。それで、成績が落ちたということで、一応やめなさいよということで一たん退部しているんですね。

 それからなんですが、昨年になってから、規模が小さい学校なものですから人数が足りない。選手としてまた呼ばれるんですね。そうすると、やはり張り切るわけですよ。一生懸命、対外試合で勝ったとかということをホームページに誇らしげに書いているんです。ところが、それはあくまでも一時登板であって、結局正式に迎えられたわけじゃなく、自分が入れたわけでもないというところから物すごく荒れ出していくわけなんですね。

 子供の心情としては、もうすべてをかけて一生懸命やっていたことができなくなるというのは、不安定になっていく一つの引き金だと思いますけれども、そういうところで、スポーツで頑張るということと、頑張れなくなったり、部を抜けたりするときにやはり心のケアみたいなものが本当に必要なんだというふうに私はこの取材をしながら考えたんですが、そこを感想をお願いいたしたいと思います。

中山国務大臣 大人でもそうですから、子供にとってはいろいろな挫折があるんだろうと思うんですね。そういった挫折の中で、それでもなおかつ生き延びていくんだ、そういう心の強さというものをもっと小さいころから育てなきゃいかぬのかな、あるいはまた、そういったことを子供が訴えたときに、助けを、手を伸ばすような、そういったものが必要なんじゃないかなということも思います。

 そういう強さと同時に、実は私、印象に残りましたが、NHKの朝のテレビで、「わかば」というあれでしたか、おばあちゃんが、生きてるだけでも丸もうけ、こういうふうなことを言われたんですけれども、余り深刻に考えなくても、生きているだけでもいいんだよ、そういったことも、子供たちにもっと気楽な気持ちで人生を生きていく、楽しいこともいっぱいあるんだよということを大人たちが教えていくことも大事かな、そんな感想を持ちました。

保坂(展)委員 最後になりますが、九七年だと思いますけれども、当時、小杉文部大臣の時代から、この文教委員会、当時文教委員会といいましたけれども、衆議院でイギリスのチャイルドラインというのを超党派の議員で委員会として見に行って、大変感銘を受けたということで、こういうものを日本に広げられたらということで、じわじわとですけれども、今、日本全国の中で五十カ所のチャイルドラインというのが広がっているんですね。

 それで、この加害少女がもしチャイルドラインがあったらこの事件がということは私言いませんけれども、しかし、彼女は学校まで歩いて一時間ぐらいかかる山の上に実はお住まいで、周りに友達にすぐ会いに行けるような状況になかったんですね。ですから、チャイルドライン、いつでもどこでも君の声を聞いてくれる電話というようなものを、文部科学省としてもぜひ、今までも応援していただいているんですが、より力を入れていただきたいということを最後にお聞きしたいと思います。

中山国務大臣 このチャイルドラインにつきましては、子供の心に寄り添い、悩みとかあるいは不安な気持ちを受けとめるというようなことで、心の居場所となる大変重要な意義を持つものである、このように考えておりまして、文部科学省といたしましても、子供たちの悩みにこたえる相談体制の整備が促進されるという意味で、このNPO法人チャイルドライン支援センターが行っておりますチャイルドライン全国キャンペーンに対しまして、その活動を奨励するために平成十二年度より毎年後援を行い、支援しているところでございます。このことをもっともっと広く周知することによりまして、子供たちやあるいは保護者によるこれらの相談機関の利用の促進を図ってまいりたい、このように考えております。

保坂(展)委員 ありがとうございました。ぜひ力を入れてください。

 終わります。

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十分散会


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