衆議院

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第2号 平成18年2月24日(金曜日)

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平成十八年二月二十四日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 遠藤 乙彦君

   理事 小渕 優子君 理事 大前 繁雄君

   理事 小島 敏男君 理事 西村 明宏君

   理事 松浪健四郎君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    秋葉 賢也君

      井脇ノブ子君    飯島 夕雁君

      小川 友一君    岡下 信子君

      加藤 紘一君    川条 志嘉君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      坂本 剛二君    鈴木 俊一君

      鈴木 恒夫君    永岡 桂子君

      並木 正芳君    西本 勝子君

      福田 峰之君    藤田 幹雄君

      馬渡 龍治君   山本ともひろ君

      吉野 正芳君    奥村 展三君

      北橋 健治君    末松 義規君

      田中眞紀子君    松本 大輔君

      山口  壯君    横山 北斗君

      笠  浩史君    西  博義君

      石井 郁子君    保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       小坂 憲次君

   文部科学副大臣      河本 三郎君

   文部科学副大臣      馳   浩君

   文部科学大臣政務官    吉野 正芳君

   文部科学大臣政務官    有村 治子君

   会計検査院事務総局第四局長            帆刈 信一君

   政府参考人

   (内閣府食育推進室長)  香川 弘明君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   鈴木 正規君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十四日

 辞任         補欠選任

  佐藤  錬君     並木 正芳君

同日

 辞任         補欠選任

  並木 正芳君     佐藤  錬君

    ―――――――――――――

二月二十一日

 教育諸条件改善の要求に関する請願(谷畑孝君紹介)(第三六一号)

 行き届いた教育を進めることに関する請願(松本文明君紹介)(第三六二号)

 同(松原仁君紹介)(第四一四号)

 同(保坂展人君紹介)(第四九八号)

 義務教育費国庫負担堅持と教育諸条件整備の拡充に関する請願(横光克彦君紹介)(第三六三号)

 同(永田寿康君紹介)(第四三六号)

 同(重野安正君紹介)(第四七四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四九四号)

 すべての子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(奥村展三君紹介)(第三六四号)

 同(細野豪志君紹介)(第三六五号)

 同(川端達夫君紹介)(第四六五号)

 同(三日月大造君紹介)(第四七六号)

 行き届いた教育に関する請願(奥村展三君紹介)(第三六六号)

 同(川端達夫君紹介)(第四六六号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(逢坂誠二君紹介)(第三六七号)

 同外一件(斉藤鉄夫君紹介)(第三六八号)

 同(寺田稔君紹介)(第三六九号)

 同(中山成彬君紹介)(第三七〇号)

 同(仲野博子君紹介)(第三七一号)

 同(西村智奈美君紹介)(第三七二号)

 同(三谷光男君紹介)(第三七三号)

 同(横光克彦君紹介)(第三七四号)

 同(松木謙公君紹介)(第三八一号)

 同(松本大輔君紹介)(第三八二号)

 同(高木陽介君紹介)(第四一二号)

 同(山口壯君紹介)(第四一三号)

 同(北橋健治君紹介)(第四二四号)

 同(牧義夫君紹介)(第四二五号)

 同(丸谷佳織君紹介)(第四二六号)

 同(岩國哲人君紹介)(第四三七号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第四三八号)

 同(亀井静香君紹介)(第四七七号)

 同(東順治君紹介)(第四七八号)

 同(保坂展人君紹介)(第四九七号)

 小中高三十人以下学級の早期実現と私学助成の抜本的拡充に関する請願(金田誠一君紹介)(第三七九号)

 すべての子供に行き届いた教育等に関する請願(金田誠一君紹介)(第三八〇号)

 行き届いた教育の実現に関する請願(菊田真紀子君紹介)(第四七二号)

 同(鷲尾英一郎君紹介)(第四七三号)

 同(漆原良夫君紹介)(第四九九号)

 国による三十人学級実現、私学助成大幅増額に関する請願(三原朝彦君紹介)(第四七五号)

 同(遠藤宣彦君紹介)(第四九六号)

 すべての子どもに行き届いた教育に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第四九五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

遠藤委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府食育推進室長香川弘明君、財務省主計局次長鈴木正規君、文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、大臣官房文教施設企画部長大島寛君、生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長石川明君、高等教育局私学部長金森越哉君及びスポーツ・青少年局長素川富司君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第四局長帆刈信一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浪健四郎君。

松浪(健四郎)委員 おはようございます。

 折しもトリノ冬季オリンピックが開催中でございまして、待てども待てども朗報がなくて、国民が失望に明け暮れておりましたけれども、きょう委員会があるということで、荒川静香選手が見事な金メダルをとってくれました。私たち国民は、これほどうれしいことはないし、日本人はすばらしい、こういう印象を持ちましたけれども、金メダルの感想をまず大臣にお伺いしたいと思います。

小坂国務大臣 おはようございます。

 ありがとうございます。本当に私も、きょうこの委員会へ出てくるまでに、どのようなことになるかと、何とかなってくれないかと期待しておりましたけれども、本当にすばらしい荒川静香選手の活躍ぶりでございました。八年間いろいろなことがあったと思いますけれども、必死に練習を重ね、その練習の成果を十分に発揮して、パーフェクトなスケーティングで金メダルを獲得した、これがまた、まず第一にうれしいことでございます。また、表彰台に立った荒川選手が、君が代を演奏されたときに、それをしっかり歌っていました。これまた私にとってはうれしいことでありました。

 そういうことで、やはり練習というもの、トレーニングの必要性、そういうものの積み上げの中から本当の自信の金が出てくるんだ、こういう大変すばらしいストーリーであったと思うわけでございまして、これを一つの弾みにしていただいて、残る三日間、残った競技の選手たちが全力を尽くしてくれて、さらなるメダル獲得へ向けてそれぞれの御努力をいただくことを期待しております。

松浪(健四郎)委員 きょうは、大臣の所信表明を聞かせていただいて、それに基づいて質問をさせていただくわけでございますけれども、スポーツの振興について大臣が述べられております。

 トリノ冬季オリンピック競技大会が開催されましたが、スポーツの振興は、活力に満ちた社会を形成する上で不可欠であります。世界的な大会における日本選手の活躍は、国のアイデンティティーを確立するとともに、国民全体の活力の源泉となるものであり、夏季冬季を通じ、競技力の強化、向上のためのトレーニング拠点施設の充実が急務であります。このため、ナショナルトレーニングセンター中核拠点施設の整備を推進するなど、世界のひのき舞台で活躍できるトップレベルの競技者の育成等に取り組む、こう述べられております。

 そこで、ここに出てまいりますナショナルトレーニングセンター中核拠点施設、これは一体どういうものなのか、局長にお尋ねしたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 このナショナルトレーニングセンターの中核拠点、東京都の北区西が丘に建設中でございます。北京オリンピック前の完成ということを目指して整備をしておりますけれども、やはり日本のトップレベルの競技者の競技力をさらに向上させる、そのためのトレーニング環境の整備ということを主たる目的にしているものでございまして、さらに、この施設の中におきましてJOCが考えておりますいろんな事業がございます、そういうものも展開できるようにするということでございます。

松浪(健四郎)委員 馳副大臣にお尋ねいたしますけれども、馳副大臣はオリンピック選手であられました。そういう施設はやはり役に立つのか立たないのか、そして本当に必要なのかどうなのか、経験からお話をいただきたいと思います。

馳副大臣 松浪委員は私の生涯の恩師でありまして、こうして委員会で質問いただくことを本当に感謝申し上げます。

 ナショナルトレーニングセンターは、我が国の競技力の向上と、また、昨今、企業スポーツ等が業績の悪化から廃部に追い込まれることが多いということから考えても、安定的にナショナルチームの運営をし、強化をしていくに当たっては、極めて重要な施設である、こういう認識を持っております。

松浪(健四郎)委員 二〇〇四年に開催されましたアテネ・オリンピック大会におきましては、日本は、金メダル十六個、銀メダル九個、銅メダル十二個と、我が国のオリンピック史上最多となる、合計三十七個のメダルを獲得するという記録をつくったのは、いまだ私たちの記憶に新しいところでありますけれども、この記録は、アメリカ、中国、ロシア、オーストラリアに次ぐ世界第五位の成績でありました。財団法人日本オリンピック委員会、JOCでは、この勢いをとめることなく、さらなる国際競技力向上を目指して、世界の三強に入るんだという新たな目標を立てた、こういうふうにお聞きしております。

 そこで、どうしてもこのナショナルトレーニングセンター、これを有効なものとして活用させていただきたい、こういうふうに言われておるわけでございますけれども、実はあの、今局長からお話がありました場所のお隣に、もう既に国立スポーツ科学センターというものがございます。それと同じような形で運営していくのか、あるいは管理していくのか、そのことについてお尋ねしたいと思います。

馳副大臣 現在ございます国立スポーツ科学センター、この管理は、一義的にはNAASH、日本スポーツ振興センターが管理運営をしているということになっておりますが、ナショナルトレーニングセンターの求められる役割から考えますと、今までのような管理や運営のあり方ではなく、主にJOCが事業展開いたしますので、JOCがやりやすいようなやり方で管理運営できるように。ところが、出資されるのは日本スポーツ振興センターということになりますから、いわゆるこのNAASHとJOCとが連携をしながら、よりよい管理運営がなされるべき施設と考えております。

松浪(健四郎)委員 私もかつてオリンピックを目指したスポーツマンでありましたけれども、私が現役時代、八田イズムというレスリング独特の強化システムが、あるいは方法が見られました。例えば、外国に遠征に行く、国際大会に出る、そういうようなときには、当然その国に着いて時差ぼけがあってはならないというようなことで、夜中に練習をする、そして入浴した後、食事をとる、こういうことはなかなか考えにくいわけですね。現地に着いたときに、もう時差ぼけは起こらない、そういうような形でトレーニングをしたり、いつどんな状況にあってもすぐに闘える、この訓練をしなきゃいけない。これはやはり国際大会等に出る選手にとりましては必要不可欠なことでございまして、既成の今までのトレーニングセンターでありますと、何時から何時まで使用していい、食事時間は何時ですというふうに決めつけられてしまいますと、国際的ないわゆる一流選手は、なかなか使用しづらくなる。こういうような形で今度のナショナルトレーニングセンターは利用することができるのか。そして、今、馳副大臣がおっしゃったJOCに云々という話がありましたけれども、どこまでJOCにゆだねるのか、そのことについてもう一度お尋ねしたいと思います。

馳副大臣 委員御指摘のとおりでありまして、強化ということを考えた場合には、トレーニング、栄養、休養、一体として考えなければいけないのは言うまでもありません。

 そして、国際スポーツ競技会で活躍するとなった場合には、どの国に出かけても、その状況の中で常に最大の力を発揮するということが求められるわけでありまして、当然、二十四時間、三百六十五日を通じて強化計画を立てているのがそれぞれの競技団体の方針であろうと思われます。

 したがって、JOCとしても、世界で活躍できるトップレベルの選手の強化のための管理運営のあり方、そのための栄養についてどうあるべきか、そのための休養についてどうあるべきか、総合的に考えて、ナショナルトレーニングセンターを使った事業展開を考えておられると思っております。その要望に対して、実際には、施設は国からNAASHの方に出資をされるという状況にありますので、一義的な責任を持つNAASHがJOCの要請に対してどこまでこたえられるのか。

 というのは、例えば、運営費、交付金ということを考えましても、その予算要求をするときの基準というものもございますから、こういったこともJOCと相談をしながら、どこまで事業展開をするJOCの思いに沿って管理運営がなされるのか、ここがポイントになってこようかというふうに考えております。

松浪(健四郎)委員 動いてみなければよくわからないんですけれども、独立行政法人日本スポーツ振興センター、いわゆるNAASH、いろいろなことをやられておりますけれども、私の心配しておることは、最近、空港をつくりましても港湾をつくりましても、採算性云々という議論が出てまいります。それで、国際競技力を向上させるということは、やはり国費が必要だ。JOCの努力ももちろん必要だ。ところが、このNAASHに運営、管理、監督をさせると、JOCに使わせればやはり赤字で、またはJOCの負担金もそれほどできなくて、うまく運営できないというようなことになりはしないか。

 そこで、大臣にはっきりお尋ねしておきたいんですけれども、国際競技力向上のために、今も国費はかなり支出されておりますけれども、今後とも今まで以上に国費を投入して、そして国民に夢や勇気、希望を与えようとするその姿勢は国としてお持ちであるのかないのか、お尋ねしたいと思います。

小坂国務大臣 今御指摘のように、また馳副大臣が答弁申し上げたように、競技力の強化のためには、向上を図るためには、JOC、各競技団体との密接な連携、そしてその意向を十分に酌み入れたナショナルトレーニングセンターの運営、また、料金設定においてもそういったことを反映した中でのもの、そしてそれを国がどのようにバックアップしていくか、こういうことが大切なことだと思っております。

 委員が御指摘されましたように、私も大臣の立場として、もちろん財務省等いろいろな制約はあるわけでございますけれども、大臣としての決意としては、これは国の支援力を強めて、そして競技力育成にもっと国の力を尽くしていくべきだ、このように考えて努力をいたしていきたい。その意味において、委員の長いその御経歴と御見識を生かして御支援を賜りたいし、また、委員長を初め委員の皆様方にも御理解を賜って、そのような環境育成にぜひとも努めたい、このように思っているところでございます。

松浪(健四郎)委員 大臣に立っていただいたついでにお尋ねします。このナショナルトレーニングセンターはまた後で触れるといたしまして、今回、国民はかなりな期待を寄せてこの冬季オリンピックを見ておりました。ところが、メダル候補、メダル候補と言われる選手が、悲しいかな、あの本番では活躍することができませんでした。

 これは選手の責任という面もありますけれども、振り返ってよく考えてみれば、この国の冬季オリンピックの強化のための施設が、悲しいかな、余りにも貧弱ではないのか。冬季オリンピックの強化のためにどのようなことをしなければいけないのか。私は、悲しいかな、冬季オリンピックのための強化の施設、これが余りにも貧弱過ぎる、こういう思いを持っているんですが、それらについて、これからどうしなければいけないなというふうに大臣が考えておられるのか、お尋ねしたいと思います。

小坂国務大臣 委員が御指摘されましたように、アテネ・オリンピックが三十七、長野冬季オリンピックは金五を含めて十のメダルが獲得できて、大変な盛り上がりを見せたわけですね。今回も、このオリンピックに対する国民の皆さんの注目の度合い、期待は非常に大きかったと思います。それに比して、メダルは、期待の方が大きくて、実績を十分に上げられなかったという面があるかもしれません。これは、おっしゃるとおり、やはり選手それぞれの努力はさることながら、やはりその育成の環境というものが非常に大きく作用していると私は思います。

 委員は、冬季のオリンピックの強化施設が貧弱だとおっしゃいましたけれども、貧弱な部分もありますが、実は立派な施設もたくさんあるんですね。ただ、立派な施設があっても使えないという状況にある。

 私は、長野冬季オリンピック以降の選手育成等を見ても、また、それに至るまでの、長野オリンピックまでの選手育成に関しても、いろいろな方から、この大臣につく前の仕事の中で、どこかスポンサーを探してくれ、何とか協力企業を仰いで、お願いを一緒に行ってくれないか、こういうことがしばしばございましたけれども、そこで感じたことは、やはり選手やその家族、周辺の方に大きな負担がかかっていて、そして、夏場に練習をするためには、冬季の選手はやはり南半球へ遠征をしなきゃいけない、その費用負担から何から考えると、大変な負担がかかっている、そして、成果だけを期待されてしまう、やはりここに大きな問題がある。

 例えば、四百メートルのリンクが長野にもあります。それから、札幌オリンピックの施設もあります。こういった冬季のいろいろな施設、東京にもアイスホッケーの施設や何かがございます。こういった施設を、やはりナショナルトレーニングセンターのような支援を考える中で、通年使えるようにしてあげること、これでどれだけ選手が育成できるかと考えますと、せっかくある施設、特にボブスレー、リュージュのような施設は、私ども長野で身近に見ておりますが、夏場はなすすべもありません。そして、冬季、氷を張るためには、長野市民の税金と、それから長野オリンピックの基金、余ったお金をつぎ込んで、かつかつで生きている。しかし、もうあと数年でこの基金も切れてしまって、あとは閉鎖という方向になっております。

 ですから、これをあるうちに救ってあげなければ、閉鎖してしまえば、それを復活するのは恐らく冷凍施設から何から膨大なお金がかかって、また新しく別につくった方がよくなってしまう。そういうことを考えると、やはりそういった施設をどのように使うかということはナショナルレベルで考えて、そして各競技団体の意見を十分に取り入れて、国としても光を当ててあげなきゃいけないんじゃないか、こんな気もいたします。

 ただ、私はたまたま出身地が長野でありますので、今の立場で余りこれ以上申し上げるわけにいきませんけれども、いずれにしても、ある施設を有効に活用しながら、できる範囲でまず手をつける。そして、足らないものについては新しく建設をして、そして新たな競技も出てきますから、そういった選手の育成に、国として、国を挙げてメダルをとりにいく。そういうことが国全体の元気につながる、そして経済の活性化にもつながる、そういった効果が出るのではないか。そういった意味で努力をしたい、このように考えております。

松浪(健四郎)委員 今大臣いみじくもおっしゃいましたけれども、長野の基金はもう枯渇しそうだ。これだけ国民が期待しておるし、そしてスピードスケートの短距離、これは日本人にも向いておるし、大きな外国人に伍して闘うことができる、そういう種目ですね。せっかくある施設を、そのうち閉鎖しなければならない。それがもう見えているわけですよ。今のうちに手を打っておかなければ、どうしようもない。

 夏のオリンピックの選手たちに対しては、今度はナショナルトレーニングセンターをつくってJOCに管理させて、そしてうまいこと活用しようという方向性が見えつつあるわけですけれども、この長野の施設につきましても、文部科学省としてあるいは政府として、本気に考えるべきではないのか。こういうふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

小坂国務大臣 委員御指摘のことにつきましては、十分に文部科学省としてそのことについて考え、また内閣としてどのような意思決定をしていくか、これから十分に検討させていただきたいと存じます。

松浪(健四郎)委員 いずれにいたしましても、四百メートルのスピードスケートのリンクというのは、この国に数えるほどしかないんですよ。それでいて、我々は成果を期待する。当然であるかもしれませんけれども。とにかく国が施設を管理するのに協力していかなきゃいけない、この姿勢を我々は持ち続けなければならないということを強く要望しておきたいと思います。

 それで、ナショナルトレーニングセンターの話に戻りますけれども、私は、かつてアメリカで留学しておりましたときにいろいろなスポーツ施設を使いましたけれども、一銭もお金を出したことがありません。むしろ施設によってはお金をくれるというところもあるぐらい、アメリカではアマチュアのスポーツを支援しておりました。

 さきのアテネ・オリンピックのメダル獲得数上位十カ国のナショナルトレーニングセンターの状況を調べてみますと、どこの国も、全部、国際的選手に対して、いわゆるナショナルメンバーに対しては無料にしているんですね。韓国に至りましては、そこでトレーニングすれば一日三千円程度の日当が支給される。それぐらい手厚く保護し、そして強化に本気になって取り組むんですよ。

 こいういう本気になって強化に取り組んでいる国々の中で、我が国は、貧弱な施設でありながら、立派な成績を上げることができました。そして、ナショナルトレーニングセンターができれば、これも総理がごほうびのつもりなんでしょう、前倒しして早くつくろうということになっておるわけでございますけれども、ここでナショナルトレーニングセンターができたらば、利用料金をどのようにしていくのか、これらのこともちょっと私は気になっております。これらのことについてもお尋ねしたいと思います。

馳副大臣 極めて重要な御指摘だと思います。

 さきのアテネ・オリンピックで上位メダル獲得十カ国、ほとんど、施設利用料、食費等は、宿泊費も含めて無料でありますし、中国や韓国に至っては日当まで出しておる。また、アメリカの場合には、運営費に関しましては、スポンサー料や、もちろん国費も含めて、いろんな形態で利用料を調達しております。

 そういった諸外国の例もかんがみながら、基本的にはナショナルチームの選手の負担がないように考えなければいけないでしょう。しかしながら、NAASHに出資をされる、そのNAASHが独立行政法人であるということを考えると、すべてを無料にするわけにもいかないという法律上の事情もありますから、この辺が一番知恵の出しどころであると考えております。

 とにかく、ナショナルチームの選手には負担がいかないように考えて、仕組みを構築するのが必要であろうと考えております。

松浪(健四郎)委員 ということは、国内の競技団体、いわゆるNFですが、これをまとめ上げておる、総括しているのはJOCであるわけですね。ということは、やはりJOCにおおむねいろんなことをゆだねるということが、ナショナルトレーニングセンターの運営、そしてこの存在を有効に生かすことができるのではないのか、こういうふうに考えるんですが、JOCをどういうふうな形で関与させるのか、もう一度お尋ねしたいと思います。

馳副大臣 お答えいたします。

 実際には、我が国のスポーツ振興基本計画を主導して事業計画を展開しているのはJOCというふうに認識をしております。

 その事業計画の中には、トップレベルの強化、ナショナルコーチアカデミー、一貫指導体制などをリードするエリートスクールの展開、また、スポーツ情報、医科学等の戦略、アンチドーピング、これらを一体的に把握しているのがJOCというふうに認識しております。

 また、マーケティング戦略も展開しておりますから、それらのJOCとしてのナショナルチームの強化育成に関する考えをしっかり聞きながら、実際には出資を受ける側のNAASHと腹を割ってしっかり話をいただいて、そしてどのようなベストな管理運営の方法があるのかを導いていくことが必要であろうと考えております。

松浪(健四郎)委員 なぜこんなにしつこくお尋ねするのかと申しますと、やはり独立行政法人が建物を持っておって、そしてそれを運営管理するというと、どうしてもお役所的になってしまう。そうしますと、意外性の追求というのがスポーツですから、何もかもそういう形でやっていくとしたならば、常識が通用しない、お役人さんの発想では出てこないというようなことが多々あります。そうしたときに、運営上、こういうルールがある、規則がある、だから困るんだというのでは、使い勝手が悪い。そこで、各競技団体を統括しているJOCにいろんな面でお任せした方がいいというのが私の考え方であります。

 それが、今馳副大臣の御答弁は、これからもいろいろ協議してやっていくというようなことでございますが、はっきりしたいのは、このナショナルトレーニングセンターで利潤を追求するとか、あるいは自分たちの、はっきり言えば文部科学省の天下り先にするとかというようなことはないと思うんですけれども、本当に国際競技力向上のためにナショナルトレーニングセンターをつくるんだという強い思いがあると思うんですが、その決意を聞かせていただきたいと思います。

小坂国務大臣 松浪委員の御指摘は全くそのとおりでありまして、私も民間の活力、そういったものがこの独立行政法人の中に一つの精神として息づくように、そして、JOC、競技団体、日本スポーツ振興センター、これらが一体となってナショナルトレーニングセンター管理運営委員会というものを構成いたします。

 その中において、営利目的とかそういうことではなくて、選手強化、そして選手の底辺拡大、そういった意味の一つの明確な目標を持って、その目標に向かって、そしてお役所仕事ではない、本当にスポーツ精神に根差した、競技力向上のための施設として運営されるように、私も注目をし、そういった意味で、人事についても、私もしっかりと見守ってまいりたい、このように思って、委員の御指摘のようなナショナルトレーニングセンターのあり方についてしっかりとやってまいりたい、このように決意をはっきり申し上げたいと思っております。

 また、御指摘のありました夏季、冬季のナショナルトレーニングセンター構想というものについて、特に冬の施設の強化ということについても、御指摘の点を十分に踏まえて取り組んでまいりたいと存じます。

松浪(健四郎)委員 東京都を初め幾つかの都市が、二〇一六年あるいは二〇二〇年の夏季オリンピック大会をやりたいと手を挙げておられます。それは、施設はあるけれども選手がいないというのでは、何のためにやるんだ。この国は、一九六四年の東京オリンピックで日本の選手が活躍をし、そしてこの国がここまで成長しましたということを世界に知らしめました。新幹線が完成した、東京都内の環状線も東名高速も、世界に日本が先進国の仲間入りをしたということを東京オリンピックを契機に世界じゅうに知らしめたということは御案内のとおりでありますけれども、新たに変わった日本がどんな国であるのか、これを広く世界に理解していただくためには、平和の祭典であるオリンピックの誘致は重要だと思います。そして、東京都を初め、オリンピックをやろう、そういう考え方があるわけですから、政府もそれを支え、そしてJOCを初め各競技団体も、日本でオリンピックを開催するんだ、そういう思いを持って取り組んでいただきたい。

 大臣に最後に、東京都を初め、オリンピックをやろうとしている都市に対してどのような印象をお持ちであるのかお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。

小坂国務大臣 まさに委員が御指摘をされましたように、東京を初めといたしました各都市は、それぞれに地域のスポーツを活性化させ、そして市民の健康づくりのためにもそれぞれに努力をしたいという強い意思を持っていらっしゃると思うんです。

 そういうものをしっかりと実現できるように一つの枠組みをつくって、その枠組みの中で国としてなすべきこと、地方自治体にやっていただくこと、そして、そこにおける市民の皆さんの参加意識と、それからまた、企業を初めとしたいろいろな皆さんたちの協力態勢、こういうものを糾合していくことが必要だと思いますから、そういった都市の皆さんに、都道府県の首長さんや、あるいは議会の皆さんにそういった点についての御理解を十分に持っていただくように、私どももそういった体制の整備に努力をしてまいりたい。委員のきょうの御質問の趣旨を十分に体して、これからスポーツの環境育成、そして競技力向上に努力をしたい、このように考えております。

松浪(健四郎)委員 どうもありがとうございました。終わります。

遠藤委員長 馬渡龍治君。

馬渡委員 自民党の馬渡龍治でございます。何分にも新人ですので、どうぞ大臣、そして関係各位の皆様、よろしくお願いします。

 まず初めに、小坂大臣は、所信の中で学力の向上の問題について述べておられました。その中を読み上げますと、「学力の問題については、国際的な調査結果等により明らかとなった読解力の低下、学習意欲や学習習慣が十分に身についていないこと等の課題を深刻に受けとめ、今後、基礎、基本をしっかり身につけさせるとともに、学ぶ意欲やみずから考え主体的に判断する力などの確かな学力をはぐくむため、学習指導要領全体の見直しや、習熟度別少人数指導の一層の推進、全国的な学力調査の実施、国語力の育成、理数教育、総合的な学習の時間の推進など、総合的な学力向上策に取り組みます。」と述べておられました。

 確かな学力をはぐくむために、どのように学習指導要領を見直していくのか、また、国語力を身につけるため、そして理数教育をさらに学力向上させていくために、具体的にその方策を教えていただけないものか、大臣お願いいたします。

小坂国務大臣 馬渡委員には、文部科学委員会に所属をしていただきまして文部科学行政について大変強い関心をお持ちいただき、また、十分に研究も進めていただいて、すばらしい質問をしていただいているところでございまして、御質問いただきました学習指導要領の見直しでございますけれども、既に委員が私の申し上げたことを引いていただきましてお話しをいただきました。具体策はどうするのか、読解力を育成するといっても、じゃ、具体的にどうやるのかということになりますと、じゃ、履修時間をふやすのかという問題が一つ出てまいります。私は、理数と読解力の向上のためには、若干の時間増もあるんだろうと思っております。

 現在、中央教育審議会の中の部会において学習指導要領の見直しを行っていただいておりまして、具体的なものは、指針としてはそちらからの提案を待ちたいと思っておりますけれども、私は、例えば小学校に入って一年、二年、日本語というものは、どの段階においてもその基礎を積むことによって、子供の頭というものの吸収力は非常に大きいですから、そこで培ったものはその先に十分に生かされると思っております。したがって、小学校の各学年における時間数を見直す中で、そこに読解力の向上に資するようなものがあるのではないか。

 また、理数の教育についても、これは理数という科目の中でだけ教えることではないんだと思うんです。総合的な学習の時間、あるいは国語の時間を例にとりましても、国語で読むものの中に、科学的な興味あるいは数学的な頭を使う、そういったものを織り込んで文章をつくったり、物語を読ませたり、あるいは伝記物の、偉人の話の中にそういったヒントを織り込んだり、そういうことは十分にできるわけで、過去においてもそのような教科書の文章というのはたくさんあったと思うんです。そういったものを十分に配慮しながら、理数に対する興味を増すとか、いわゆる好奇心を強くするような、そういった環境育成に努めていけば、こういったものの向上に資するだろうと思っておりますから、そういったものをあわせて検討したい。

 また、言葉や体験などの学習や生活の基礎づくり、これをやはり強化していきたい。また、学校教育の質の保証のための仕組みづくりをしていきたい、このように考えて、また、この答申もそのような方向でいただいてきておりますし、また、学習指導要領の見直しの中でも検討していただいております。そういうことから、質の保証という点については、どのようなプランを持つか、どのようなことを実施するか、そして、結果が出てきたら、それを検証する、検証したものを再度アクションにつなげていく、PDCAのサイクルをしっかりと確立して、そしてその充実に努めていく、こういったことも必要だと思っております。

 いずれにいたしましても、この指導要領の取りまとめにつきましては、この十八年度にスタートをいたしますが、十八年度のうちに答申をいただいて、そして学習指導要領の改訂を行うというところまで、スピード感を持って取り組むことも必要だ、このように考えているところでございます。

馬渡委員 大変いいアイデアを今お披瀝いただきました。ぜひその実現に向けて頑張っていただきたいと思います。

 たしか、昭和四十年の小学校六年生の児童と今の児童の国語の授業時間数を比較すると、年間で六十時間ぐらい少なくなっていると思います。今、英語を早く教えてあげようという機運がありますが、私は、やはりまずは国語をしっかりと力をつける、そういう教育をしていただきたい、それをぜひ要望するわけでありますので、時間数が多少ふえていくのかな、そういう必要性があるのかなと思います。

 ところで、今いろいろお聞かせいただいたほかに、もう一つ加えていただきたいことがあるんですが、これは教科別担任制ということなんです。

 実は、埼玉県のさいたま市に、市立のさいたま市立高砂小学校というのがありまして、ここでは、たしか平成十二年から二年間、そこに赴任してこられた校長先生がすごいリーダーシップを発揮して、国語、算数、理科、社会、これを教科別にその専門の先生に受け持ってもらって授業をやったそうなんです。そして、その授業を受けた子と受けていなかったその前の年の子、同じ中学校に通って、そこで高校受験をした。その結果が、教科別に授業を受けたお子さん方が大変すばらしい結果を残したそうなんです。国立の高校だとか難関校と呼ばれる高校に進んだ数が多くなったと。

 そこで、今後のヒントとして、これは小学生なんで、ちょっと問題がある部分はあるかもしれません。でも、これだけいい結果が出たので、この事例について、もう既に文部科学省は把握をされていると思います、しかしながら、それを今後どうやって取り組んでいくのか、これだけ有益な方法があるんですから、ぜひ御検討いただいて、また今度どういう形になっていくのか、そこのところをお聞かせいただければと思うんですが。これは別に大臣じゃなくても、銭谷さんでも、よろしくお願いします。

銭谷政府参考人 今先生からお話ございましたように、小学校では、学級担任が、原則としてすべての教科等を指導するとともに、学校生活全般にわたる指導も担当している、いわゆる学級担任制が一般的でございます。

 御指摘の事例は、学校の自主的な取り組みとして、五年生、六年生について、その学年の学級担任の間で、国語、社会、理科、図画工作など、それぞれの先生が得意分野を受け持って、指導を分担するということをやったというふうに承知をいたしております。小学校でも高学年を中心として、こういった教員の特性や専門性を生かして、子供たちに魅力ある授業を展開する専科指導あるいは交換授業というのが行われている例はあるわけでございます。

 私どもとしては、小学校においてはやはり学級担任制を基本とするわけでございますけれども、教員が専門性を発揮してより多くの子供たちの指導に当たるということは、教育の充実につながるものだと考えております。

 先ほど大臣の方からお話がございました中央教育審議会の教育課程部会の審議経過報告の中でも「小学校高学年における教科担任制について検討することが必要である。」こう指摘をされておりまして、確かな学力が身につくように、いろいろ指導方法があるわけでございますけれども、その一つとしてよく検討していきたいというふうに思っております。

馬渡委員 ぜひ、日本の国はもっともっと人材力を高めていただきたいので、それは画一的ではなくて、有用なことはどんどん取り入れて、やっていただきたいと希望いたします。

 さて、学力が向上していく。もう一つ、私は、障害を持つお子さんに対して、もっと伸び伸びと学習をしていただきたい、友達をいっぱいつくっていただきたい、そんな思いを持っているんです。ここ最近は、ノーマライゼーションとかバリアフリーとかユニバーサルデザインというのが随分理解されてくるようになりましたけれども、実際に、あなたは養護学校へ行きなさいと言われても、通常の学級に通っているお子さんは結構いるんです。今、二千数百というお子さんが全国で通っていると思うんですが、その中で、やはり地域の学校へ通っていれば地域の友達ができる、これはその子の人生にとって物すごい宝になると思うんですが、しかしながら、そういったバックアップしていくいろいろな気持ちの問題とか施設の問題がまだまだおくれていて、ここのところが、例えば親の付き添いを強要されたり学校の行事に参加を求められたりということで、結果的に盲とか聾とか養護学校にまた追い出されてしまうケースが結構あるそうなんです。ですから、養護学校に通っているお子さんたちというのは近所に友達がいないわけですから、随分寂しい思いをしているというお話を聞きます。

 そこで、昨年十二月に出されました中央教育審議会の答申で「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」というのがあります。この中で、特別支援教育の理念と基本的考え方が、盲・聾・養護学校の校長はもちろんのこと、普通の小学校、中学校の校長先生を初め、すべての教職員はもとより、国民一般に広く理解、共有されるようにすることが重要であると。

 そしてまた障害者基本法には、すべての障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される、また、すべての障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられる。中身は物すごくすばらしいこと。ぜひこれが実現できればいいと思うんですが、実は、その内容に反して現状は厳しいものがある。子供たちはいろいろ悩み苦しんでいるんです。

 こんな事例があります。千葉県のある小学校で、三年生の子なんですけれども、昨年十二月、本当に悲しいことが起きたんです。これは、インフルエンザ脳症で、その後遺症で車いす生活を強いられているお子さんが、最初、入学通知が来て、それで、身体の障害があるというので、あなたは養護学校へ行けと。でも、御本人の希望で通常の学級に行ったんですが、一人ではなかなか不自由がある。そんなときに、保護者会でそこの学校の教頭先生が、そのお子さんもいる前で、この子がいるために皆さんに迷惑をかけて申しわけないという言葉を発したそうなんですね。それを受けたそのお子さんの心の痛み、またその保護者の方の悲しい、何というか、察してもまだ余りあるものがあると思うんですが、後にこの教頭は謝罪をしたそうですが、学校や教育委員会は全くこのことに対して責任を感じていないそうなんです。

 だから、先ほど申し上げた中教審のその理念というのが、盲・聾・養護学校だけじゃなくて、一般の教員であれば、その理念というのはしっかり受け持って、ましてや、それだけ不自由している中で一生懸命頑張っているんだから、みんなでサポートしてやろうと言ってしかるべきなのに、何か、申しわけないと言われたら、その子がそこにいちゃいけないんじゃないかと、これ、大人になったときにすごいその傷が残るんじゃないかなと思うんですけれども。

 そこで、一方では、宮城県の仙台市とか千葉県の浦安市、そして埼玉県の東松山市なんかは、障害を持つお子さん、そして持たないお子さんがなるべく一緒に生活ができるように、学習ができるようにということで、随分進んでやっているそうなんです。

 そこで、学校教育法施行令では、実は分離教育が原則なんですね。就学前に、指導委員会というのがあって、そこでいろいろチェックリストがあって、本人の希望とは別に、あなたは養護学校、あなたは盲学校へ行きなさいと振り分けをされるそうなんです。今は、市町村の教育委員会が特別な事情があるとすると、例外的に普通の学校に通えると。でも、もうこういう時代になったので、この原則と例外をひっくり返して、どんなお子さんでも普通の学校に通えるようなバックアップ体制を今後つくっていただいて、そして、そこの保護者の方が、いや、うちの子は障害を持っていて、いつまでついていられるかわからないから、ちゃんとした養護学校で、今度名前が変わるんですけれども、そういったところで教育を受けさせたいという方はそちらの方に行ってもらって、そして、普通の学校で友達いっぱいつくりたいというお子さんは普通の学校で受けていただくようにできないものかな。これについて、これは別に大臣じゃなくてもお答えいただければ。

銭谷政府参考人 ただいま先生からお話のございました千葉県の小学校の事例のようなケースには、私どもも大変心を痛めているところでございます。

 今先生からお話ございましたように、現在、障害のある児童生徒のための学校として、盲・聾・養護学校がございます。また、小中学校には特殊学級が置かれております。一方、認定就学などによりまして、障害の比較的重い児童生徒も通常の学級に在籍をしているケースもございます。いずれの場合においても、障害のある児童生徒について、将来自立し社会参加するために必要な力を培うため、一人一人のニーズに応じた適切な教育を行うということが必要であると考えております。

 現実には、就学に際しまして、就学指導委員会等の専門家の方が、保護者の意見をよく聞きながら、総合的な観点からその就学先を判断しているという状況でございます。このことは、今後ともそういうことで進めていくということになろうかと思っております。

 また一方、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の交流とか共同学習ということの推進も私ども重要だと思っております。これまでも、ハンドブックの作成、講習会の開催などを通じまして交流活動、共同学習の推進を図ってきているところでございますが、こういうことは一層促進をして、障害を持つ方が地域の中で皆と共生していけるように、やはり努力していかなきゃいけないと思っております。

 なお、先生が引かれました、昨年十二月に中央教育審議会が取りまとめました「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」の答申におきましては、就学前及び就学後における教育的ニーズの一層の把握及び反映、児童生徒及び保護者に対する的確な説明と情報提供という観点から、就学指導のあり方について提言をいただいているところでございまして、これを踏まえまして、今後引き続きこの問題については検討を行っていきたいというふうに思っております。

小坂国務大臣 馬渡委員の御指摘の特別支援を必要とする児童に対するあり方という問題は、これは私は、先ほど教頭さんのお話が出ましたけれども、やはり絶対にあってはならないことを発言してしまう、そういったことを後で謝ってももう戻らないんですね、この傷は治らない。ですから、そういうことをしない人を育てるしかないんですが、それにはやはり、学校教育法施行令を変えるとかなんとかということよりも、世間一般の認識が、きれいごとで、そういうことはみんな一緒にやるべきだとか、健常者と同じように扱うべきだとかと、べき論を言うのではなくて、本当に心からそう信じて、そうしないと、信じていないとぽろっとそういう言葉が出てくる、それが大きな傷をつけることにつながってしまう、回復不能になる、そういうことを私も認識をすることが間々あります。

 そういう意味で、学校教育法施行令の原則分離を撤廃せよというお話は、まず、実態といいますか、環境がついてこないと。どちらが先かという問題は確かにありますよ。ただ、今ようやく一歩前へ踏み出しております。私はこれを、一歩を二歩、三歩と足早に進めさせていただいて、環境を早く整備して、そして委員が御指摘のような方向性を持って私も努力をしたい、このように思うところでございまして、通常の学校にみんなが通える、そしてその中で特別支援を必要とする人はその部分でそうして、それ以外の部分はみんなと一緒に行動する、そういう理想の形へ向けて努力をしたい、このように思っております。

馬渡委員 わざわざ大臣、ありがとうございます。ぜひそのように着実に一歩一歩前進をしていただきたいと思います。

 障害者のお子さんに対する環境、私は実は環境委員会に所属をしておりまして、この間、小池大臣に、国語、算数、理科、社会のほかにもう一個、環境という教科をつくっていただけないでしょうかという質問をしたことがあります。これは当然文部科学省の小坂大臣の御担当なので、ぜひ御検討いただきたいと思うんです。

 そこで、この間、今月十一日の日に、青少年オリンピックセンターで、秋篠宮、妃両殿下御臨席のもと、ビオトープ、正式な名称が全国学校ビオトープ・コンクール二〇〇五というのがあったんですね。これは財団法人日本生態系協会が主催されたんですけれども、実はそこに大臣の代理として吉野大臣政務官が御出席いただいたんです。

 私は同じ席でずっと吉野政務官を後ろから見ていたんですけれども、十校の小中高が、子供たちと先生と、それから周辺の地域の大人たちもまじって、本当に真剣に発表するんですね。自分たちのビオトープをつくったら課題が何十も出てきて、これでそれぞれが選んで研究したら、また次の課題が出てきて、どんどんのめり込んじゃってなんというのもありましたし、それから、実は田字草という、これが北九州で今随分なくなっていて、生息する地域がないんですって。そこが、ビオトープに畑をつくって、一時そこで、何というか、いっぱいつくっておいて、また土地ができたら戻してあげるなんという、聞いていて本当にほのぼのとして、すばらしい。そこを吉野政務官が本当に真剣にずっと聞いていらっしゃっていて、私はその姿を見て感動したんですけれども、環境の問題もお詳しいので、ぜひ政務官にお答えいただきたいなと思って質問を用意してまいりました。

 ビオトープというものがもし全部の小学校、中学校にできたとしたら、私は非行というものが相当減るんじゃないかな。なぜならば、単に自然に接する機会がふえるだけじゃなくて、仲間たちと共同して何かをしようとか、ある目標を持って一生懸命汗をかくというところが、たくましくて心優しい子供たちをはぐくんでくれるんじゃないかな、そんな観点に立って質問をさせていただきます。

 実は、今、設置基準にビオトープのことを盛り込んでいただけないかなと。例えば、持続可能な社会をつくっていくためには、もちろん環境教育は皆さん大事だとわかっていただくんですけれども、これは全国的にもそういうブームというか意識が高くなっているんです。そんな中で、都会の子供たちはなかなか接することができない。地方に行っても、今、開発が進んでいて、昔ながらの自然というのがなかなかないんですね。だから、こんなところで、持続可能な社会に向けた人づくりを重点的に進めて行くに当たり、エコスクール事業など個別の事業だけではなくて、小学校や中学校における施設の設置基準に学校ビオトープを新たに追加していただいて、全国の小中学校で学校ビオトープの実践を強力に進めていくことが必要だと思うんですけれども、これについていかがでしょうか。

吉野大臣政務官 お答えいたします。

 コンクールのあの模様、本当にすばらしいものだと思います。私も拝見をしていて、子供たちが自然とどう触れ合っていくか、と同時に、自然との触れ合いの中で命の大切さというものを最終的に学ぶ場、これが学校ビオトープなのかな、こう思いまして、委員と同じく、全国の学校にこのビオトープをどうやって進めていければいいのかなという思いをいたしました。

 委員は、設置基準に載せて、学校ビオトープを小中学校、全部の学校に設置をしたいという思いでありますけれども、設置基準というのは必要最小限なものを定めているものでありまして、いわゆる大枠を規定しているものでございます。御理解を賜りたいと思います。

 そのかわりと申しますか、学校施設整備指針というのがございます。この指針というのは、学校をつくる計画や設計上の留意事項を示したものでございまして、ここにビオトープが指針の中に載っております。

 そういう中で、この指針をもとに学校を整備する場合、学校ビオトープをつくっていくような、そんな形でアドバイスをしているところでございます。そして、つくるに当たっては、国庫補助、これもついておりますので、今後とも、学校ビオトープを広めていくために、一層努力をしてまいる所存でございます。

 以上です。

馬渡委員 これからぜひその方向にお願いいたします。

 設備、環境が整っても、そこで教える先生がしっかりしていなきゃいけないので、この環境の問題について、先生方にどのような研修を積んでおられるのか教えていただけないでしょうか。

吉野大臣政務官 やはり、教員の、先生方の資質、これが大事でございます。

 研修は、独立行政法人教員研修センターにおいて、まずリーダー研修、これをやっております。と同時に、環境省と連携をいたしまして、これから環境教育に取り組みたいという先生方を対象にした、いわゆる初心者研修と申しますか、この二つをやっているところでございます。そして、年に一回、全国環境学習フェアという全国大会、これを開催いたしまして、環境教育をしている先生方の意見の交換の場をとっているところでございます。

 また、課題でございますけれども、持続可能な開発のための教育の十年という国連の指針がございます。これを踏まえて、教育内容の研修、教育内容の一層の充実を図るために指導資料というものを作成しておりまして、これを各学校で活用してもらうように努力をしているところであります。環境教育の一層の推進に努めてまいる所存でございます。

 以上です。

馬渡委員 もう時間となりましたので、これは質問じゃありません、提言です。

 「信濃の国」という歌があって、それは小坂大臣はよく御存じで、県民全員が歌える県の歌というのは恐らく長野県の、これは昭和四十二年に県の歌になったそうですね。それまで師範学校の歌だったんですけれども、「信濃の国は十州に 境連ぬる国にして 聳ゆる山はいや高く 流るる川はいや遠し 松本伊那佐久善光寺 四つの平は肥沃の地」これを小学校のこんな小さな子が覚えるんです。その漢字、皆さん、「肥沃」という字書けますか。「聳ゆる」という字書けますか。これは、先ほど大臣がお答えいただいた中に、小さいとき、一年生、二年生の頭のやわらかいときに入れられるものはなるべく教えてあげると、後で……。

 だから、美しい日本語の中に、難しい日本語ですけれども、私は県人ではないですが、郷里の大自然が入っていて、郷土愛、すごいですよね。どこの地区行ったって、長野県人会は皆さんがっちりスクラム組んでやっておられる。これが何か今後の教育のヒントになるんじゃないかな、こう思います。ぜひ、これをお聞きとめいただきまして、また生かせていただければ。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

小坂国務大臣 「信濃の国」まで出していただけるとは思いませんで、ありがとうございます。

 私も、おっしゃったように、幼児の頭というのは柔軟だと思っております。漢字だって、平仮名で書くんじゃなくて、漢字にルビを振るという、それによって一つの形が意味を持ってくるわけですね。やはり、幼児の時期からそういうことも考えてもいいんじゃないか、こういうことを皆さんに考えていただきたいなという気持ちを持っていることをお伝えして、委員の御質問に感謝をして終わります。

馬渡委員 ありがとうございました。

遠藤委員長 西本勝子さん。

西本委員 大臣の所信表明について質問させていただきます。

 まず最初に、義務教育費の国庫負担制度についてでございます。

 今国会から文部科学委員会の所属となりました西本勝子でございます。保育園で申しますとひよこ組でございますので、大臣初め関係各位の皆様、どうかよろしくお願いいたします。

 私は、高知県日高村の村会議員として、地方教育行政を学校現場あるいは委員会の側面から見てきたところですが、昨年九月からは国会議員として、教育水準を保障している国の立場や中央教育審議会の動きなどを勉強させていただきました。

 今、地方分権が進み、構造改革が進む中、経済面では都市と地方の格差が問題となり、対応策が求められているわけでありますが、国の基本施策である教育においては、文部科学省を初め関係者の努力により、地域格差が生じないための制度が確立され、それが守られていることにいたく感心しているところであります。

 昨年の十一月、三位一体改革における義務教育費国庫補助負担については、大臣就任直後にもかかわらず、大きな判断から、御承知のとおり、小中学校の教員給与費を二分の一から三分の一に引き下げる結論に達したところであります。これは、地方六団体の意向、政府・与党の暫定案、中央教育審議会の結論、文科省の言い分と、それぞれの顔を立てた超軟着陸であったと思うわけですが、この案に決着したことについて、大臣の御所見をお伺いいたします。

小坂国務大臣 西本委員は、地方の議会、そして企業の経験、いろいろな幅広い経験の中から文部科学行政に携わっていただくことで、いろいろな示唆に富んだ御質問をいただいて、期待をいたしているところでございます。

 ただいまいただきました義務教育費国庫負担制度の取り扱いにつきましては、昨年の十月二十六日に中央教育審議会の答申をいただきました。その中で、「新しい時代の義務教育を創造する」という答申でございました。この答申の精神をしっかり踏まえた上で、小泉内閣の一員としての三位一体改革に対する取り組み、これも確実にやらなければいけない、そして、義務教育費の国庫負担制度の意義というものもしっかりこれを貫いていきたい、そんな思いの中で、それぞれの意見をお持ちの皆さんをずっと回りまして、真摯に耳を傾けさせていただいて、それぞれの御主張を十分に聞かせていただきました。

 その中で私が思いましたことは、現場の教員の皆さん、学校関係者の皆さんにこれ以上の不安を与えてはならない、迅速にこれは処理していかなければならないということで、十一月の末までにはこの結論を得なければいけないだろうという一つの自分なりの方針、目標を立てて、そして意見を聞かせていただきました。

 そこで、最終的には、ただいま委員から御説明を賜りましたように、割合は二分の一から三分の一にパーセンテージが落ちたけれども、下げることにはなったけれども、あくまでも義務教育費の国庫負担制度は堅持するのである、そして国と地方の負担によって義務教育の教職員給与費の全額を保障するという枠組みは維持するんだ、これを貫かせていただいて、両方の皆さんに何とか御理解をいただきたい。また、これまたそういった意味での御説明をして御理解を得る努力をしたところでございまして、言ってみれば苦渋の選択の中ではございましたけれども、何とか関係の皆さんの御理解をぎりぎりのところで得られたのではないかと。

 そして、この三分の一という一つの数字は、今後この形を維持していきたいという気持ちも貫いて表明をさせていただいたところでございまして、諸外国のあり方も含めて、与党におけるいろいろな検討等もこれからしっかり踏まえてこの問題に取り組んでまいりたいと存じます。

西本委員 大臣のこの結果に至るプロセスをお聞きいたしまして、本当に頭が下がる思いがいたします。どうかしっかりと頑張っていただきたいと思います。

 次に、義務教育費国庫補助制度は、大臣の御答弁であったように、義務教育の教育水準というものを全国いかなるところでも一定水準以上のレベルで守ることができたと思うわけでして、この制度は、現時点では守らなくてはならないし、当然必要であると考えているところであります。

 ところが、今後さらに地方分権が進み、構造改革特区や地域再生計画において地方への教育費の移譲の声が高まったり、また道州制を視野に入れての教育の分権型を求める動きがあった場合、仮定での質問で恐縮でございますが、大臣は、この義務教育費の国庫負担制度を変化させるおつもりがあるのかどうかについてお伺いいたしたいと思います。

小坂国務大臣 今御質問にありましたように、今後分権が進んでそれぞれの地域において特色のある教育というものがあってもいい、そのようには思うわけでございます。したがって、教育の内容については、それぞれの市町村、学校の裁量権、責任を拡大していく、そういうことの方向性は一つあると思っております。

 しかしながら、義務教育はどの地域にあっても、地方の財政力の差があっても、教職員を確保するための負担の制度というのはやはり国が保障していくべきだ、基本的なあり方というのは、その枠組みは国が規定していくべきだと思っておりまして、義務教育の機会均等と水準維持を図るために不可欠な基盤である、そう思っております。

 したがって、今後地方分権を進めるに当たっても、義務教育の機会均等と、そして水準維持を国の責任において行うということにおいて変わりなく、義務教育費国庫負担制度の財源保障機能といったものは今後とも必要である、このように認識をいたしておるところでございます。

西本委員 ありがとうございます。

 私は、国の基軸ともいうべき教育は国がきちんと守っていくべきであると思っていますので、大臣のお考えと一緒であるということを確認いたしまして、次に移らせていただきます。

 次に、就学前教育についてお伺いいたします。

 ある県で、現場の抱える不登校などの問題に教育改革という旗印を立てて対応してきたところ、数年が経過したところで、委員会も現場もいろいろな手を打ったがどうしても校内暴力や授業放棄、不登校などの問題が解決できない、すべて検証したが解明できない、どうも原因は小学校以前の時期にあるのではないかという発言があって、責任を投げかけられた保育現場は大層憤慨したことがありました。

 この県は保育王国と呼ばれるだけに、就学前児童の大多数は保育園通所者でありますが、保育所と小学校との連携はほとんどとれなくて、学校問題の根は保育園にあるかもしれないという発言が出てきたものと考えています。

 そこで、予算案を見てみますと、「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の本格実施」とありまして、概要を見てみますと、「就学前の子どもに関する教育及び保育並びに子育て支援事業の総合的な提供を行う幼稚園、保育所等の認定制度を設け、十八年度から本格実施する。」とあります。

 この総合施設は認定こども園として今後設置していくことになると思いますが、平成十七年度にはモデル事業を実施しています。このモデル事業での成果についてお伺いいたします。なお、平成十八年度十月から本格実施する予定でありますので、よい方向であったと思うわけですが、問題点もあったらお示しください。

有村大臣政務官 日ごろから教育問題や地域間格差の是正に取り組んでいらっしゃる西本勝子委員から御質問をいただきました。

 総合施設モデル事業は、本年度、全国三十五地域で実施されております。そのうち幼稚園で実施されたものは、ゼロ歳から二歳児の乳幼児が身近にいるという新しい環境ができたことに伴い、幼児教育の基盤としての乳幼児期の大切さを職員、先生方が実感できたという評価が報告されております。

 また、保育所で実施されたモデル事業については、従来の午前午後を通じた八時間程度の利用を行う子供たちに加えて、新たに午前中のみの利用をする子供たちを受け入れることに伴って、共通する時間の活動内容を組み立てることが必要になりました。これを通じて教育、保育の関係のあり方を再認識し、プラスになったという報告も受けております。

 また、地域に開かれた子育て支援事業については、親子の集いの場の提供や子育て相談などの事業が行われておりますけれども、保護者からは、同じ年齢の子供たちやほかの保護者と接することができるいい機会であり、生活にめり張りがついたなど、プラスのコメントが出てきております。しかし、実施回数をまだまだふやしてほしいという声が聞かれているのも事実でございます。

 問題ということですが、一方で、ゼロ歳から就学前までの発達の連続性に配慮した教育と保育のあり方、関係性や、幼稚園を活用したゼロ歳から二歳児の受け入れのあり方などについては、ノウハウの蓄積やあるいは安全面の徹底管理など、これからさらに充実していかなければならない課題があるというふうに認識をしております。

 こうした評価、プラスの面、マイナスの面、双方の結果を十分に踏まえて、制度化のために必要な準備を進めてまいりたいと考えております。

 以上です。

西本委員 有村先生からよい方向とそれから問題点をお示しいただきまして、ありがとうございました。私も、現場の先生のお声を聞いておりますと、そのとおりでございましたので、ぜひとも、よい方向であった点は十分伸ばしていただき、問題点はそれなりの対応を考えていっていただきたいと思います。

 この総合施設、認定こども園でありますが、たった一年の試行期間で次の年に本格実施というのでは余りにも簡単に事が運び過ぎて驚いているところですが、そもそも、総合施設の相手側、保育所の所管である厚生労働省とのすり合わせはどうなっているのでしょうか。また、認定こども園で認定基準を定める都道府県や利用手続にかかわってくる市町村への周知等はどうなっているのでしょうか。お尋ねいたします。

銭谷政府参考人 就学前の教育、保育を一体としてとらえた一貫した総合施設、認定こども園でございますけれども、この構想につきましては、平成十六年三月に閣議決定をされました規制改革・民間開放推進三カ年計画において定められております。

 平成十六年度中に基本的な考えを取りまとめた上で、平成十七年度に試行事業を実施し、平成十八年度から本格実施を行うということで、今回はこのスケジュールを踏まえて検討を進めてきたところでございます。

 厚生労働省との連携でございますけれども、文部科学省の中央教育審議会幼児教育部会と厚生労働省の社会保障審議会児童部会の合同の検討会議というものをつくりまして、そこにおいて制度のあり方を検討し、合同で平成十六年十二月に「審議のまとめ」を取りまとめるなど、密接に連携をとってきたところでございます。

 また、今回のモデル事業の実施に当たりましても、両省で一本の実施要綱を策定いたしまして、連携して実施に当たっているところでございます。本格実施に当たりましても、両省で共通の窓口を設置するなど、さらに連携を進めていきたいと考えております。

 また、地方自治体に対しましても、機会をとらえて制度化に向けた検討状況の説明に努めてきたところでございますが、本格実施に向けて十分な準備期間がとれるよう法案の策定において配慮するとともに、制度の施行までの期間において十分な情報提供を心がけてまいりたいと思っております。

西本委員 文部科学省と厚生労働省と一定協議をしているということ、また市町村に対しても十分な情報提供をしていくということでございますので、答弁を踏まえて次の質問に移らせていただきます。

 私は、この質問の前段に述べたように、保育所で申せば、就学前が厚生労働省、小学校に入ったら文部科学省で、現場で申しますと、就学前が市町村の福祉事務所か福祉課、小学校に入ったら教育委員会という流れに疑問を持っておりまして、この総合施設認定こども園の今後に注目しているところであります。

 この認定こども園の設立を契機に、就学前も就学後もできれば文部科学省が所管すればいいと考えていますが、それにはまず幼保の一元化が必要であります。

 私は、幼稚園と保育所の持っている機能を一体化することはそれほど苦労はないと考えています。なぜなら、保育所の保育目標は、年齢に応じた基本的生活習慣を身につけることであり、クラス単位の集団生活と学習をあわせて実施している保育所がほとんどで、幼稚園の学習要綱とも合わせやすいものと思うからであります。しかし、難しいのは、保育士、教師の資格、給与など身分問題と運営上の支弁費の問題などでありまして、財政面の問題を考えると容易ではないのかなと思うわけであります。

 しかし、いずれ完全一体化すべきであると考えますが、この場合、文部科学省と厚生労働省のどちらの方が主導権を持って取り組み、また、いつごろを目途に幼保の一元化を果たそうとお考えでしょうか。所信の一端をお聞かせください。

銭谷政府参考人 幼稚園と保育所は、目的、役割、それぞれ持っているわけでございます。ただ、幼稚園と保育所は、ともに就学前の幼児を対象としているところから、先ほど来申し上げておりますように、厚生労働省と文部科学省は、連携を密にして、幼稚園と保育所の連携を推進してきたところでございます。

 今、幼児を取り巻く状況を考えたときに、やはり人間形成の基礎が培われる幼児期の教育の重要性というものはますます高まっていると思っております。一方でまた、社会の変化に伴う保育の必要性ということ、これもまた要請をされているというふうに思うわけでございます。そういったことで、今回、就学前の子供の教育及び保育を一体としてとらえた新たなサービス提供の枠組み、そういう機能を持つものを総合施設ということで、その実現のための取り組みを今進めているわけでございます。幼児期の子供たちの教育、保育について、双方連携した一歩を踏み出すというふうに私ども、受けとめているわけでございます。

 今後とも、幼児教育の重要性、保育の必要性を踏まえまして、就学前の子供の教育、保育の充実が図られますように、文部科学省としては、厚生労働省と適切な連携を図って、まずはこの認定こども園という機能の充実に努めていきたいというふうに考えているところでございます。

西本委員 局長の御答弁のとおり、この問題は、長い間にわたった経過もあり、作業も多岐にわたることと思いますので、ぜひとも格段の御努力をお願いしたいと思います。

 平成十五年に少子化社会対策基本法が制定されました。私は、この法律の前文ほど立法の重みを訴えているものはないと思っています。ところが、どうもこの法律についてまだまだ執行の歩みが遅いのではないかと思い、あえて質問をいたします。

 この法律の前文では、我が国の急速な少子化の進展は、有史以来の未曾有の事態に直面しているとして、我々に残された時間は極めて少ないとあります。そして、第十一条の規定は、幼稚園と保育所の総合化を促しているところであります。

 法の趣旨に沿えば、もう少しスピード感を持って幼保の完全一元化に取り組むべきではないかと考えますが、大臣の御所見をお伺いいたします。

小坂国務大臣 委員が御指摘のように、幼稚園と保育所、それぞれのニーズに従ってその役割を果たしてきているわけでございますけれども、しかし、私どもが重視すべきは、子供の視点、そして多様化する、就学前の子供を抱えているその保護者の視点に、教育、保育のニーズに対応するということが必要でございまして、そのための適切、柔軟な対応ができるような枠組みをつくることが必要だ、このように考えております。

 今御指摘のように、スピード感を持って取り組むことが必要な時代でございます。新たな枠組みを制度化するための法案を今国会に提出を予定しておりますが、この整備に向けて、今後とも、厚生労働省と連携を強化し、そして、この施策を着実に推進する中で、就学前の子供の教育、保育のニーズに適切に、またスピード感を持ってこたえられるように努力をしてまいりたいと存じます。

西本委員 大臣の御答弁に子供の視点、保護者の視点ということがございましたが、どうかこれをベースに、強力なリーダーシップを持って法案提出に努めていただきたいと思います。

 私は、先ほど申し述べましたとおり、幼保の一元化を図り、幼児教育の一本化と申しますか、連続性が必要だと考えております。省内では、認定こども園とは別に幼稚園の義務化が論じられているとお聞きしますが、この問題はどのように進んでいるのでしょうか。お伺いいたします。

有村大臣政務官 人間形成の基礎が培われる幼児教育については、極めて重要だと実感を持って、痛感をしております。

 文部科学省としては、希望するすべての幼児に対して質の高い幼児教育の機会が提供されるよう努めているところでございます。また、就学前の子供やその保護者の多様化するニーズに対して適切かつ柔軟に対応ができるよう、厚生労働省と連携をし、幼稚園や保育所といった施設類型にかかわらず、適切な幼児教育、保育の機会等を提供するための新たな枠組みを制度化するための法案を本国会に提出することを予定しております。

 お尋ねを賜りました幼稚園の義務教育化につきましては、文部科学省としては、そうした方向で検討を行ったり方針を固めたりしている事実はございません。幼児教育のあり方については、学校教育制度の根幹にかかわるもので、国民の幅広い理解を必要とする問題であるという認識をしておりますため、国民的な議論を踏まえて考えていくものと感じております。

 以上です。

西本委員 どうも私の認識が誤っていたようで、申しわけございません。

 次に、青少年の健全育成についてお伺いします。

 次の世代を担う青少年の健全育成は、すべての国民の願いであり、自民党のマニフェストでも、青少年健全育成基本法の早期成立を掲げています。

 しかしながら、どうでしょう。青少年が育つ社会環境は、相当荒廃している状況も見受けられ、事によっては大人社会の責任として有害環境を取り除かなくてはなりません。

 予算案には有害情報対策モデル事業が計上されていますが、これはどのような事業でしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の有害情報対策モデル事業、これは平成十六年度より実施しているものでございますけれども、有害図書類の区分陳列でございますとか販売時の年齢確認徹底などを販売店に申し入れるということなど、地域の大人が子供を見守る取り組みでございますとか、インターネット上におきますコミュニケーションマナーなどにつきまして青少年とその保護者が学ぶ講座を提供するとか、また、地域での取り組みを推進する機運を醸成するためのフォーラム、シンポジウムの開催、こういったことを行うことによりまして有害環境から子供を守るための地域での推進体制を整備しようとするものでございます。

西本委員 ありがとうございました。

 済みません。時間がせっておりますので、急がせていただきます。

 今日の高度に進んだ情報化社会で、子供の有害環境を除去することは、物理的操作では難しいことであります。

 有害情報対策モデル事業での成果をもとに事業を拡大、展開していくことも大切であります。

 また、各都道府県では、青少年保護育成条例などにより、事件による罰則など、対応もとれる形になっておりますが、包括的な処理は無理と思われます。私は、どうしても有害環境を全面的に取り締まれる体系的な法整備が必要ではないかと考えます。

 大臣、今申し上げましたような視点を持って、青少年の健全育成に対する基本理念や方針を明確にした基本法の制定は、どうお考えでしょうか。

小坂国務大臣 西本委員の御指摘の考え方、そしてお気持ちは理解できるところでございます。

 このことにつきましては、まず、日本では表現の自由というのが常にこの議論の中に出てまいります。この表現の自由というものを尊重しつつ、しかしながら、有害環境の除去ということも同時に進めなければいけない。そのためには、やはり国民レベルの合意というものが形成されないと、なかなか実効が上がってまいりません。そういう意味で、国民的な合意の形成にさらに努めるとともに、立法府を含めた関係各方面の議論を踏まえて、政府全体で検討すべき事柄だと思っております。

 このことにつきましては、与党において平成十六年に議員立法の提出の動きがございましたけれども、現在、そのような具体的な形であらわれてきておりません。私ども政府の方としては、平成十五年十二月に青少年育成施策の大綱を策定いたしておりまして、文部科学省では、大綱に基づいて、地域及びPTAの取り組みの促進や関係業界への自主規制の要請など、有害環境対策に積極的に取り組んできたところでございまして、今後とも、議員立法として検討されているという動きも見ながら、健全育成の環境の充実に努力をしてまいりたいと存じます。

西本委員 予算案では、道徳教育の充実として、児童生徒の心に響く道徳教育推進事業が計上されておりますが、ぜひ広めていただきたいと考えるところでありまして、お聞きしたところによりますと、事業規模は各県一事業ということですが、今後さらに事業量をふやしていくお考えがないか、お尋ねいたします。

銭谷政府参考人 お話のございました児童生徒の心に響く道徳教育推進事業は、四十七都道府県で、すべての都道府県で実施をしていただいております。参加している学校は、延べで三百三十九校でございます。今後、この事業を、私ども非常に重要だと思っておりますので、このような事業につきましてはさらに推進を図っていきたいというふうに考えております。

西本委員 ありがとうございました。

 時間が迫りましたので、最後に大臣に質問させていただきます。

 健全な青少年を育成するには、責任を持った国家と、大人たちが責任を持った社会と、よりどころになる家庭の三位一体が不可欠であると考えます。

 この国が責任を持つ分野で、私はどうしても道徳教育の拡充が必要であると考えますが、平成十五年に出された中央教育審議会答申を見てみますと、教育基本法の改正には教育の根本までさかのぼった改革が必要としていることから、当然、遅くない時期に見直しが検討されることになると思うわけですが、こうなった場合、大臣はこの中で道徳教育についてどのようなお考えをお示しになるおつもりでしょうか。お伺いいたします。

小坂国務大臣 時間もないので、的確に、幾つかの御質問予定をまとめて答弁させていただきます。

 社会の形成者としての国民の育成のための教育という観点からしますと、規律ということ、それから人に優しい心を持つということ、そしてまた公徳心というものを持つこと、やはりこれは私は必要なことだと思っておりまして、今の教育の中で、決してこういった倫理、道徳教育をしていないわけではないわけでございますけれども、しかし、その結果が今日の社会の現象を招いているということにすれば、何らかの形でこういった道徳教育のあり方というものを見直していくことが必要だろう。それは、それを受けている子供たちがその必要性というものをみずから実感して、そしてこの社会の中でそういったものが必要なんだという認識をどう持ってもらえるか、この教え方といいますか、子供を取り巻く環境の中においてそれを認識させることが必要だ。その意味において、御指摘のように、家庭、地域社会、そして学校現場においてのそれぞれの教育、また取り組みというものが必要だと認識をいたしております。

 そういう意味で、今後さらに、公徳心の育成、また人に優しい心の涵養、こういった道徳全体の取り組みについて、私として学校の現場においてさらに努力をしていただけるように、いろいろな場を通じて訴え、また努力をして、また文部科学省としての取り組みを強化してまいりたい、このように思っております。

西本委員 大臣の御答弁が私の考えと全く同じであることに意を強くいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

遠藤委員長 池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 時間がございませんので、小坂大臣にすぐに質問に入らせていただきます。

 大臣は、さきの所信表明の中で、「基本的生活習慣の育成を支援するため、PTA等民間団体と連携して、「早寝早起き朝ごはん」運動を全国展開するとともに、地域における子供の居場所づくりをさらに推進するなど、家庭、地域の教育力の向上を図ります。」と述べていらっしゃいます。

 子供たちの学力向上の基本としての生活規範の重要性は、私も同感でございます。私、勉強会をしておりまして、陰山さんをお招きして、さきの委員会でも前大臣に生活規範が大切だということを申し上げてまいりました。

 参考までに申し上げるなら、日本小児保健協会の二〇〇一年の調査では、午後十時以降に就寝する幼児の割合は、一九九〇年度には三一%だったのが、二〇〇〇年度には五〇%に上昇しております。独立行政法人スポーツ振興センター二〇〇〇年の調査では、小学校の六人に一人、中学生の五人に一人が朝御飯を抜いております。また、国立教育政策研究所が、一昨年度に、小学五年生、中学二年生の児童四十五万人に五教科においてペーパーテストをいたしましたところ、平均点が朝食を食べてきた子供の方がはるかに高いということになっております。

 私は、いつも朝御飯を食べないので頭の回りが悪いのかな、それから太っちゃうのかなというふうに気にしておりますが、少子化対策担当大臣も、朝御飯抜きの子供をゼロにしようというふうに言っていらっしゃるようでございます。今度は国民運動として文科もこれを広めていくとのことで、一億三千万の予算をとっていらっしゃいますが、簡潔に、大臣はどのようなことをしていらっしゃるおつもりか、伺いたいと思います。

小坂国務大臣 池坊先生には文部科学省としての御経験もお持ちでございますから、全般にわたってもう既に御自身のお考えもお持ちだと思っておりますが、この「早寝早起き朝ごはん」、これは委員と同じように、私も早寝ということにおいては甚だ自信がないわけでございまして、夜更かしばかりしておって、いかぬと思っておるわけですが、朝御飯はなるべく食べるようにいたしております。

 御指摘のように、朝御飯をいつも食べる子、それから時々食べる子、全く食べない子、それぞれの学力の検査をいたしますと、明らかにそこに相関関係がある。また、食べない子供に食べてもらうようにすると、学力が上がる、こういった調査結果があることからも、この運動の推進が、やはり子供の規律を正しくし、また健康な体をつくり、そして食育という観点からも重要である、このように言われているところでございまして、「早寝早起き朝ごはん」運動を推進するための構想を取りまとめたところでございます。

 そういった中には、全国協議会というものをつくって、各界各層からの全国協議会への御参加をいただいて、運動のPR、あるいはイベントの実施、家庭教育月間の設定など、運動の推進母体として活躍していただこうと思っておりますが、その構成員たるそれぞれの団体の皆さんに御理解をいただいて推進してまいりたい、このように考えております。

池坊委員 私、このお話を伺いましたときに、全く同感で、賛成はいたしましたけれども、文科がせっかく国民運動として広めるなら、生活規範だけでは何か物足りないのではないか、もっと何か学力に結びつく、あるいは豊かな心の育成に結びつくようなものも一緒に入れていただきたい、それは読書じゃないかというふうに私は申し上げたんです。

 大臣は、所信の中に、読解力の低下を防ぐ、また、国語力の育成が大切である、確かな学力をとおっしゃいました。先ほども授業数をふやすということも考えているとおっしゃいましたが、問題なのは授業数ではないと思うんですね。生活習慣の中で本を読むような訓練ができておりましたら、これは授業の中で読解力と言わなくても、自然と読解力が私は向上していくのではないかというふうに思っております。

 私は、党の子供読書推進プロジェクトチームの座長をいたしておりまして、それこそ国民的な広がりの中で、今、朝の十分間の読書時間というのは何と二万一千二百校にふえております。また、六百三十の市区町村がブックスタートをいたしております。それからまた、読み聞かせ運動というのもいたしております。私は、これは読書というのも入れてちょうだいよというふうに文科に申し上げたんですけれども、縦割り行政、縦割りなのでそういう連携がなかったのか、ただ単に生活規範だけというのが大変に物足りないのですね。ぜひこれは読書も入れていただきたい。

 今問題になっておりますのは、英語を小学校からやることは大切であるけれども、まず基本になるのは、日本語をしっかりと、国語の能力がなければ英語を駆使することもできないのであって、表現科というのができているという時代でございます。この点について、大臣、どのようにお考えでいらっしゃいますか。

小坂国務大臣 まず、御指摘の「早寝早起き朝ごはん」運動の中での読書の取り組みでございますけれども、先ほど申し上げましたこの運動の全国協議会の発起人の中には、子どもの読書推進会議の皆様にも御参加をいただいておりますし、また、運動の具体的内容の中にも、読書団体が推奨しています感受性を高める朝の読書ということも盛り込んでいるところでございまして、委員の御指摘が反映してそのようなことも盛り込むようになっております。さらに、そういったものを現実にこれに取り組んでいただく皆さんへ御理解をしていただくように、団体の皆さんと一緒になって取り組んでまいりたいと存じます。

 また、読解力とそれから語学に関する問題でございますけれども、私は、幼児期に英語教育を受けるということは、英語に対する発音その他の意味で、後年に勉強する以上に効率よく、また的確な能力を身につけてもらうことが可能であろうと思っておりますし、子供の脳というのはそれほどに柔軟な、受容性の高い、能力の高いものだと思っております。

 ただ、それによって国語の能力が劣ってしまったら何もならないのではないか、こういう御指摘がございます。私は、海外子女の皆さんを見ておって思うことは、海外において、親が子供から英語を習ってしまうということがあって、子供に日本語を教えないで、むしろ子供の方が外地において英語の能力が早くキャッチアップしてしまうものですから、あなた、この単語は何て言うのというような形で子供から単語を逆にもらったり、発音はどういうふうに読むのと親が子供から教わって、逆に子供の日本語能力を育てる以上に子供の英語能力だけが高まってしまう、そこに問題があって、親が日本語教育にしっかり取り組んだ帰国子女の皆さんは両方ともちゃんとなさっていると思いますし、また、そのようなことを子供はちゃんと受け入れる能力を持っていると思います。

 ですから、やり方の問題だと思いますが、いずれにしても、そういった能力を高めるような取り組みをしてまいりたい、このように考えております。

池坊委員 先ほど大臣は各界との連携をとってとおっしゃいましたので、これは他省庁との連携もさることながら、私は経済界との連携も必要かと思っております。

 と申しますのは、やはり働き方が問題でございまして、お父さんの帰りが遅い、あるいはお母様が働いている場合に帰りが遅いというと、子供たちはどうしても早く寝ることができませんので、経済界との連携をぜひとっていただきたいと思っております。

 次に、スポーツ振興くじについて伺いたいと思います。

 大臣は、「スポーツ振興くじも活用し、国民のだれもが身近にスポーツに親しめる地域のスポーツ環境の整備に努めます。」とおっしゃっておられます。これは私も平成十年のスポーツ振興投票の実施等に関する法律案のときにも何回も質問させていただきました。サッカーくじはスポーツ振興に必要な財源確保のため平成十三年から販売しておりますけれども、当初の見込みを大幅に下回り、年々減少し、さまざまな事業に対する助成金が減っているのが現状でございます。

 日本スポーツ振興センターは、この減少を食いとめるために、平成十五年八月から、会員限定でコンビニエンスストアでのサッカーくじの販売を行っています。来月開幕のJリーグからコンビニエンスストアの一般販売を行うという報道を受けましたが、これは事実か事実じゃないかだけお答えいただきたいと思います。

小坂国務大臣 端的に申し上げれば、事実でございまして、販売を申し上げます。

池坊委員 当初の文教委員会で、スポーツ振興投票の実施等に関する法律案の審査の際に、附帯決議で、「スポーツ振興投票券の発売に当たっては、十九歳未満の者に対する購入等の禁止が徹底されるよう販売場所、販売方法等について青少年が入手し難い方策を講じるなど適切な配慮をすること。」とされております。附帯決議というのは法的な拘束力がございませんけれども、これは国会の報告もなされておりませんので、委員会における附帯決議というのはそんなにも軽いものかというふうに、ちょっと残念でございますが、大臣の御見解を、申しわけございません、時間がございませんので、ちょっと簡潔にお伺いしたいと思います。

小坂国務大臣 担当者から詳しく説明申し上げようかと思いましたが、端的にとおっしゃいますのでコンデンスして申し上げますと、今までのコンビニエンスストアにおける実施の実績から見て、年齢確認が的確に行われていること、また会員であっても、会員証の提示を求めるだけでなくて、見かけが確認が必要だと思われる方にはちゃんと年齢確認をしているという実績を上げているということから、一般販売をここで行っても大丈夫であろう、附帯決議の内容をしっかり守っていける、そのような意味からここに拡大したところでございます。

池坊委員 では、ちょっと事務局でいいです。

 十九歳未満の青少年が絶対購入できないという年齢確認の担保というのは、つまり年齢確認を確実に行われるシステムがあるかどうかをちょっと簡単におっしゃっていただきたいと思います。コンビニエンスストアでそういうことはできないと思うんですが、いかがでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 スポーツ振興くじを販売店で購入するに当たりましては、販売員が必要に応じて身分証明書の提示を求めるなど、対面での確認を行うということになっております。

 三月から開始するコンビニエンスストアにおきますスポーツ振興くじの一般販売の場合におきましても、レジでくじを対面で購入するということで、一般販売店と同様の方式をとるわけでございますが、コンビニエンスストアにおきましては、販売員による年齢確認の確実な実施を図るために、販売店の研修の実施や十九歳未満購入禁止に関するステッカーを店内に掲示したり、端末の画面にそれを表示するなど、その取り組みを実施することにより、十九歳未満の購入禁止のための措置をとっているところでございます。

池坊委員 御存じのように、コンビニはアルバイトの学生が店員になったりしておりますから、彼ら自体も高校生であったりするんですね。それが、買いますときに身分証明をといったって、うちの子供も身分証明を持っておりませんし、今はもう高校生といったらすごく体も大きいので、これは私は無理なのではないかと思うんです。

 このときの附帯決議の後に、当時の町村文部大臣は、「ただいまの御決議に関しましては、その趣旨に十分留意して対処してまいります。」とおっしゃったんですね。私は子供の、大臣もおっしゃっております豊かな心の育成と相反するのじゃないか。居場所づくりをつくりましたのも、コンビニなんかで深夜子供たちがたむろすることはよくない、放課後、子供たちの居場所をちゃんと確保したいということで、地域社会の連携をとりながら、居場所づくりには八十六億ですか、何かもう立てているわけです。ですから、おっしゃっていることとちょっと違うんじゃないかと思って、私は残念に思っているんですね。

 射幸性をあおる二百四十三分の一のminitoto二種類というのも出てくるんだそうでございます。としたならば、子供たちはやはりコンビニでどんどん買いたくなっていく。今、働かないで、いかにしてお金を得るかということに子供たちは関心を寄せている中で、文部科学省がこのようなことをしていいのかなという気持ちが私ございます。

 ちょっと一言、大臣、これについて、これはしっかりと取り組んでいただきたいと思いますので、お願いしたいと思います。

小坂国務大臣 委員御指摘の精神論は私も共有するものでございますけれども、しかし一方で、文部科学省としてはスポーツの振興ということも請け負っているわけでございまして、スポーツの振興を通じて、サッカーの少年チームの父兄の皆さん、そういった皆さんのいろいろ御意見を聞いていきますと、サッカーのチームに対しての補助をふやしてほしいし、そんな意味からtotoに取り組んでみんなで一緒になって買ってみた、しかし、買う場所が限られていて非常に買いにくい、もっとコンビニエンスストア等でも買えるような枠組みをつくってほしい、こういう要請も一方にありました。

 そしてまた、各方面の皆さんのいろいろな御意見を聞く中で、コンビニエンスストアといえども機械でその組み合わせをやった後にはレジへ来ていただくわけでございまして、そこでレジの方が、どういう方がそこに担当していても、会社としてしっかりと責任を持っていただけるように研修会の実施、また、そういったアルバイトの方が仮にレジにいらっしゃっても、しっかりと原則に従った取り組みをしていただけるように、そういったものを教育を通じてしっかり担保していただくようにお願いをしているところでございます。

 まずはこれを拡大した形の運用をさせていただきまして、そして先生のおっしゃっているような弊害というものに注目をしながら注意深く推進をさせていただきたい、このように考えるところでございまして、一方でスポーツ振興に、この基金の売り上げの中から振興、助成を図れるような、そういったものも推進していく、この役割もしっかりと果たしたい、このように考えているところでございます。

池坊委員 スポーツ振興にお金がかかるから、それを得るために、子供たちに多少の有害環境を与えてもそれはしようがないのだというお考えには、私はちょっとくみするものではありません。それとこれとは別だと思います。必要ならば、私は、スポーツ振興のために、先ほど松浪さんがおっしゃったように、ナショナルトレーニングセンターの強化などには大変に力を注ぐべきだと思います。それは、必要ならば国がやるべきことであって、子供たちがそのことのために害を受けて、でもここでは必要なんだからというお話はちょっと承服しかねるという気がいたしますので、ぜひこれについては、もう一度検討していただけたらと思います。

 次に、栄養教諭と食育についてお伺いしたいと思います。

 「食育基本法を踏まえ、家庭、地域と連携しつつ、栄養教諭制度の円滑な実施や学校給食における地場産物の活用の推進などにより、学校における食育を一層進めてまいります。」とおっしゃいました。百六十二回国会で議員立法で成立いたしました食育基本法は、小坂大臣も提出者のお一人でいらっしゃり、私は敬意を表しております。また、私が委員長をいたしておりました百五十九回国会で、学校教育法等の一部改正により栄養教諭が創設されました。

 まず大臣に、食育に対する現場での学校取り組みについてお伺いしたいと思います。

小坂国務大臣 食育運動において学校の果たす役割は非常に大きいと思っております。学校における食育を推進するために、栄養教諭制度を活用した指導体制の整備を図ることが重要であると考えておりますけれども、文部科学省では、平成十七年に、全都道府県において栄養教諭免許状取得のための講習会を開催するとともに、さまざまな機会をとらえて、栄養教諭の配置に向けた働きかけを進めてきたところでございます。

 現在、十七年度に配置されておりますものは、開始されたものが四都道府県、配置数三十四人でございますけれども、それ以外の多くの自治体で平成十八年度から栄養教諭を検討している、このように聞いておりますし、また、十八年度、十九年度を通じて、これを急速に拡大していっていただけるような働きかけも、あわせて行っているところでございます。

 文部科学省といたしましては、栄養教諭を配置する自治体において、栄養教諭を中核とした学校、家庭、地域の連携による食育推進事業を行っていただくための平成十八年度の予算を、一億一千九百八十九万円でございますが、確保し、委嘱をすることといたしておりまして、この事業を活用して、栄養教諭が積極的に食育を推進することを期待いたしているところでございます。

池坊委員 私、きょうこれを取り上げましたのは、大変いい法律もでき、栄養教諭という、身分も保障されるようになったにもかかわらず、現場においては本当にお粗末な状況で、まだまだ運用されていないということの指摘をし、そして、さらにこれを進めていただきたいなという気持ちで申し上げたんです。

 今、アレルギーを持っている子供たちがおりまして、現場においては、保護者の方々からもっとアレルギーに対する細やかな配慮をしていただきたいという要望も来ております。そのためには、やはり栄養教諭の運用というのが大切だと思いますが、今、大臣がおっしゃいましたように、栄養教諭を配置しているのは大阪、北海道、高知、それから福井、これは四十七都道府県の四つでしかないんですね。

 御存じのように、食育推進事業九十四地域、一億二千万の予算は出ているのですが、九十四地域だけで予定されているんです。たったの九十四地域です。そして人は、第八次定数改善計画が見送られたためだと思いますけれども、たったの四十七名だけなんですね。都道府県に一名ですよ。こういうことで現実にできるのかなというふうに思うんですけれども、これはまだまだ講習会、講習会はどれぐらい開いたのと言ったら、ちょっとわからないということで、では、ことしは全国的にどれぐらいの栄養教諭の配置をするのかと言ったら、それもわからないというような答えだったんですけれども、今後どのような展開をなさるおつもりなのか、計画はあるのかどうかを、ちょっと事務局の方からお願いします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 栄養教諭の配置促進、これは非常に重要なことでございまして、今お話がありましたように、円滑な学校栄養職員からの移行のための栄養教諭免許状の取得を全都道府県において十七年度から実施しているところでございます。

 十七年の十月末段階で調査したところによりますと、本年度の受講者数は七千人ということでございまして、本年度末までには所定の単位を修得いたしまして、免許状を取得する予定の者が約三千人ということでございます。こういうことを今後続けていきますとともに、その配置につきまして、都道府県教育委員会等に対して、栄養教諭制度の趣旨のさらなる理解を求めるなど、その対応を図ってまいりたいと考えているところでございます。

池坊委員 大切なことは、国がつくったら、それが現場でどういうふうに運用されているかまで見届けることであると私は思っております。つくりました法律は地域にちゃんと浸透していくようになっていただきたいと思いますので、そのための努力を、ぜひ陣頭指揮を大臣にとっていただきたいと思います。

 学校給食の義務化について、私は、これは大臣にお願いでございます。今は努力義務になっております。学校給食の実施は、学校給食法で、さっきも申し上げたように、努力義務になっております。現実には、平成十六年度の文科省の調査では、学校給食の実施状況を見ますと、小学校は九九・四%、中学校は八二・四%ですが、国立大学附属中学校では何と五九・七%で、まだまだ低いんです。国立大学附属中学ですから、本当は文科の直轄でいろいろないい施策ができるのではないかと思うのですが、それが何か見落とされているような気がいたします。「早寝早起き朝ごはん」の運動とともに、私は、みんなが同じ御飯を食べること、同じ時間に同じものを食べる、そういうことの連帯感というのは大切ではないかというふうに考えております。

 政府が国を挙げて食育を推進していくということであるならば、学校給食の実施をぜひ学校設置者に義務づけるような、そういう方針をとっていただきたい。それからまた、アレルギー対策に対して、全然今は配慮がされておりませんので、それもあわせてしていただきたいという、この二点を私はぜひ大臣にお願いしたいと思うのですが、大臣の御決意を伺いたいと思います。

小坂国務大臣 給食のあり方につきましては、昭和二十九年という時代でございました。当時、学校給食を実施するべきだという中で、それを義務化すべきかということについても議論されたと思っておりますが、努力義務という形で取り組んできたところでございまして、今御指摘の、学校によるばらつきはあるものの、小学校では九八・九%、中学校では七〇%の児童生徒が学校給食を受けているというのが今日の実情でございます。

 また、ただいま委員御自身が御指摘をいただきましたように、アレルギーへの対応とか、それから疾病等に対する対応とか、給食の内容に対する個別の取り組みというものが必要な時代になってまいりました。そういったものを充実しつつ、なおかつまたそれを拡大していくということにおいて、やはり父兄の御意見等も、保護者の御意見もいろいろございまして、一概に、義務化して、そして学校設置者がそのとおりにできるかというと、いろいろな御意見が出て、義務化ということにはなかなか踏み込めないというのが現状だと思っております。

 ですので、委員の御指摘の精神は生かしつつも、今日の努力義務という形の中で、努力をしてくださいということをお願いしながら、皆さんに理解を深めていただき、その実施率の向上に向けて努力をしたい、このように考えております。

池坊委員 精神論で申し上げているのではなくて、現実に設置することが必要ですということを申し上げているのです。

 それで、なぜ義務化できないのかなというのが私には腑に落ちませんで、まずは給食にする。その給食を基本にして、でも個別に子供たちはいろいろな体質を持っておりますから、その体質に合わせていろいろな細やかな栄養教諭の方々のアドバイスを受けるということが必要なのであって、まず基本は給食というものがあっても当然だと思うんですね。ですから、個別のいろいろな問題があるからということにはちょっとならないと思うんですけれども、これはいかがですか、大臣。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 学校給食につきましては、その意義はもう言うまでもないわけでございますけれども、二十九年当時、いろいろな議論があったと思いますが、努力義務になっている。当時の財政事情もあったと思いますが、それに加えまして、設置者、保護者、そういった関係者が学校給食の役割とか意義というものを理解して、その実施のために協力するということを重ねることによりまして学校給食が実施されていくということが、学校給食に関して保護者等々の中でいろいろな意見があった場合でも、非常に円滑に、スムーズに各自治体で実施されるのではないかという面もあろうかと思います。

 いずれにいたしましても、学校給食、もっともっと割合が高まっていくということについては、それを促進すべきであるということは疑いのない、論をまたないところでございます。

小坂国務大臣 今事務方の答弁がありましたけれども、私としては、義務化ということにいたしますと、法律ですべてを縛ってしまうという形になって、先ほどの地域の、地方分権、それから教育の分権ということにかんがみますと、やはり学校設置者、学校現場、そういったものの意思をかなり反映していくことが必要だと思っておりまして、そういった意味から、努力をお願いして、理解をしていただく努力を国としてはしていく。その中で、理解をしていただいて、現場で進めていただく、そのような方向性が今の時代にはむしろ合っていると私は考えておるわけでございまして、よろしく御理解のほどをお願い申し上げます。

池坊委員 給食のことばかり議論しておりますと時間がたちますけれども、国立大学附属中学校では五九・七%でございます。これは現場というよりは国立大学、文部科学省が関係している附属中学でございます。現場とは余り関係ないと思いますので、ぜひこれは一〇〇%になるように、努力義務でございますから、努力をしていただけたらというふうに思っております。

 今思ったんですけれども、例えば、国立大学附属中学校ではなぜ低いかというと、これは、国立大学附属中学校は、また国立大学は何課になるんですか、課が違うからなかなか浸透していかないんだなというふうに思いました。今度、中教審においても、学習指導要領の見直しということが言われております。私は、ぜひ大臣の指揮のもとに、部署が違うから、風穴がなくて、それぞれがそれぞれの法律をつくっている、連携がないということが随所にあらわれているのではないかと思います。

 私たちの視点はただ一つ、子供たちのために何がいいのか、何をなすべきか、そのことに焦点を当てて、連携をとりながらいい施策をしていっていただきたいと私は思います。ぜひ、その点についての大臣の御決意を伺って私の質問を終わらせていただきます。

小坂国務大臣 池坊先生は文部科学省の大臣政務官としても御経験でございますので、高等教育局あるいはスポーツ・青少年局のその二つの部局の違いによる差があるのではないかという御指摘だと思います。

 文部科学省の中で部局の違いにより施策の違いがあってはならないと思います。政策は一本化して、しっかりとどの部局にもその意思を徹底しなければいけない、このように考え、大臣としてそのように努めて、先生の御指摘をしっかり体して頑張っていきたいと思っておりますので、よろしく今後とも御指導のほどお願い申し上げます。

池坊委員 大臣、ありがとうございました。

遠藤委員長 末松義規君。

末松委員 民主党の末松義規でございます。文部科学委員会では初めて質問させていただきます。いろいろと無知なところも多いので、ぜひ御指導賜れればと思っております。

 まず最初に、今池坊先生からお話がございました食育の方から入らせていただきたいと思います。

 大臣の所信表明演説の中でも、「栄養教諭制度の円滑な実施や学校給食における地場産物の活用の推進などにより、学校における食育を一層進めてまいります。」という話がございました。いいことだと思っております。

 この食育という話ですけれども、私もいろいろと文部科学省からも資料をいただきまして、実は今、子供における肥満の状況とか、これは子供だけじゃなくて、社会全体が肥満あるいは成人病、そういった大きな問題を抱えております。例えば、子供の方でも、昭和五十七年と平成十六年を比べてみたら、小学校の六年生で、これは肥満児ですけれども、肥満傾向児ということで、昭和五十七年が七・一%だったのが、平成十六年で一〇・二%まで上がってきている。これは社会人に至っては、これも非常に大きな、顕著な傾向ですけれども、例えば、これは昭和五十八年と平成十五年のデータの比較をしてみると、肥満の状況ということで、男性で三十歳から三十九歳を比較すると、昭和五十八年が二〇・五%だったのが、平成十五年では三二・七%、約三分の一ぐらいが肥満になっていて、これが生活習慣病という非常に大きな社会的な危機にもなってきているということでございます。

 これは、ひいては医療保険を大赤字にさせている元凶というところもございますから、そこをしっかりと食育によってバランスのとれた食事の重要性に社会全体が早く気づいてやっていけば、医療保険の赤字問題も大きく変わっていくだろうという気がいたします。

 そこで、ここは大臣の御所見、これはもう個人的な御所見で結構ですけれども、私、特に危惧しておりますのは、ファストフード、ハンバーガーとか、ああいった外食産業の中で、あれがどういうふうな影響を持っているのかというのを研究してきたんですね。

 この前、去年でしたか、スーパーサイズ・ミーという映画がございまして、これは、マクドナルドのハンバーガーを一カ月間ずっと食べ続ける、しかも、注文するときに店員から言われるように食べる、これを条件としながら、一カ月間食べ続けたらどうなったか。二週間を超えるころから非常に危険的な状況があらわれて、一カ月やり終えたときには、もうドクターストップがかかって、そして体重は十キロ以上ふえて、非常に体としてドクターストップがかかるほどの状況だった。こういうこともしっかり見ていかなきゃいけないと思うんですが、その点について、大臣、御所見がございましたらお願い申し上げます。

小坂国務大臣 末松委員のその点についてというのは、スーパーサイズ・ミーについての部分かなという感じもするんですが、私ども、自身を振り返ってみて、ファストフードを食べるようになってから急に、食べ方も速くていけないのかもしれませんが、少しサイズがふえたような気がいたしますし、やはりバランスというものが大切だ。

 それから、現在の食生活の中で、先ほど別の委員の御質問にもありましたが、朝食を食べない子供たちの学力に与える影響とか、いろいろな意味で、今日、やはり食というものに対しての懸念というものが強まってきた。

 昔は、どのものを食べても、人間が食べるものに、そんな、害があるものはなかったはずなんですが、目に見えない害というものが、添加物、農薬あるいは保存料のようなもの、アレルギーの原発性のもの、いろいろなものが目に見えない。そこにまた、鳥インフルエンザだのBSE、いろいろなものが絡んでまいりまして、食の危険というもの、食に対する不安というものが出てきた。そういうこともやはりこの食育運動の背景でございます。

 そういった意味で、委員御指摘のような、食に対する関心をしっかり持っていただくように国民の皆さんの理解を深め、そして、健康増進のためにも役立ち、また、地域の農業の再生にも、地域の地場産の活用等を通じて貢献していただけるような、そういった幅広い運動としての食育運動の推進に努めてまいりたいと考えております。

末松委員 同じように、地産地消という話になりますと、日本の伝統食というものが非常に栄養的バランスの上ですぐれているという見解を私は持っております。そういった意味で、地産地消を進めていけば、そこは農業の自給率も含めて非常に改善していく話ではないかと思っております。食育を進めていけば、これは食料の自給率向上という面にもいいんだろうと思います。

 それから、最近感じたことなんですけれども、私は食育推進基本計画検討会の第五回の会合のこれをもらって読んでいるわけですけれども、そこに食への感謝という話もございます。

 最近、芝浦の牛の屠殺場、あれはBSEの関係で私も視察に行ったんですけれども、そこで感じましたのは、あそこは一日に三百五十頭ほど屠殺をするんですね。アメリカの大手は一日四千頭ぐらい、この施設で屠殺をするそうですが。牛を見ると、もうあっという間にどんどん殺されて、皮をはがれて、どんどんベルトコンベヤーみたいな形で並べられていく。私なんかは、肉は、店屋で四角く切った、そういったもののような感じがしていたんですけれども、ああいう、屠殺されている状況を見て初めて、本当に命を殺生して人間というのは生きているという。そこで、牛とか、動物、植物もそうですけれども、そういったものを殺生しなければ我々は生きていけないという自然の摂理を改めて感じて、牛に対して手を合わせる、こういう感謝が生まれてくるわけでございます。そういったことも食育でしっかりと教えていただきたいと思います。

 先ほど肉食について、BSE、豚コレラとか鳥インフルエンザとか大臣も御指摘になりましたけれども、肉食の過剰摂取、これが偏った形で我々の健康にまずい影響を与えているんじゃないか、生活習慣病の大きな原因になっているんじゃないかと思うんです。

 ちょっと、質問に入る前にもう一点だけ申し上げますと、私も実は、四十代を過ぎてから足にアトピーが急にでき始めたんですね。何でだろうと思って、それまで私は、肉じゃないとおかずじゃないような生活を続けてきたんですけれども、それが、私、マクロビオティックという食事療法を参考にしながら、自分なりに食生活を変えていったんです。そうしたら、二カ月ぐらいでさっとアトピーが消えていったんですよ。そういうふうなこと、自分で人体実験して、本当に動物性たんぱく質の過剰摂取はよくないなという体験を持っているわけなんです。

 そこを踏まえて御質問させていただきたいと思うんですが、食育教育、これを学校教育の中でどういうふうに実際に取り入れていっているのか、そこについてお伺いしたいと思います。

小坂国務大臣 委員みずからの御体験で、食が体に与える影響というものを実感されたということでございますけれども、教育の中で、子供たちにこの食育の教えたいことをしっかり身につけてもらうには、やはり実感をしてもらうということが必要だと思いますから、体験的な教育というもの、例えば、学校から外へ出て地域の田んぼを見たり、あるいは畑に行って、農作物がどのようにつくられているのか、そしてそこでは農薬がどのように使われているのか、そういったことを見て、そして勉強をする。

 また、栄養教諭が教室で、栄養のバランスというものについて、スナック菓子ばかり食べておなかいっぱいにしていると何が不足をするのか、どういう食物にはどういう栄養素が入っているのか、また、亜鉛のとり方とかカルシウムのとり方とか、そういったものが人間の体にどう影響を与えるのかということを、やはり教科として、総合教育やいろいろな場を通じてこれを教えていって、そして、いろいろな事例等を参考にしながら、こういうことってあったでしょう、最近いらいらすると思ったらカルシウムをもう少しとってごらんなさい、あるいは、寝つけないときにはこういうことをしてごらんなさいと、いろいろなことを教える、そういうことによって、栄養教諭を活用した学校の現場における教育の実施。

 そしてまた、地域の農家の皆さんに来ていただいて、そして地域の農業についてのお話を伺う。あるいは、おじいちゃん、おばあちゃんに来てもらって、昔の食というものについて、地域の伝統の食というものについて話をしてもらう。その地域にはなぜこの食が定着したのか、そういったことをお話ししていただく。そういったことも学校の中では取り組んでいただきたいことでございまして、こういったものを食育推進計画の中で、実施計画をまず国で定め、また、それぞれの都道府県そして市区町村に落としていく中でそういった地域性をそこに盛り込んで、そして取り組んでいただきたい、そのように考えているところでございます。

末松委員 そういったお考えの中で進めておられることは頼もしい限りでございます。

 体に対する影響だけじゃなくて、私が参考にさせていただいているマクロビオティック、これはもともと日本人が始めたものなんですけれども、今、世界で四百万人ぐらいの非常に大きな運動になっています、アメリカを中心になっているんですけれどもね。

 これは、精神的なものにも非常に影響があるということが書かれておりまして、例えば、子供がキレやすいという状況がございますけれども、あのキレやすいという中の一つの主要な理由として、清涼飲料水を飲み過ぎと。コーヒー缶とか、あるいはいろいろな清涼飲料水、たくさん砂糖が入っています。あれを摂取すると、一時期、血糖値がわあっと上がるので、そこは非常に、ユーフォリアといいますか、幸福感が広がるんですね。それがさあっと引いていくときに、気分が少し落ちていくんですね。そうすると、下がる、そしてまた清涼飲料水を飲むと上がって、こういう形でぎざぎざになっていく気分の中で、精神的ショック、例えば軽いショックでもぽんと与えると、ぱちっとキレてしまう。子供がキレやすいのには、そういうふうな事情があるんだというふうに説明されていたり。

 また、別の専門家の話ですが、今、女子中学生の方とか、コンビニで、べたっと座っちゃう方が非常に多い。あれは私たちの若いころは、ほとんどそういうことはなかった。あれはなぜかというと、牛の食べ過ぎだと。つまり、ハンバーガーとか牛乳とか、あるいは乳製品、ああいったものをどんどん食べていくと、食というのはみんな、私もこれは自分で信じているんですけれども、みんな波動を持っていると言われているんですね、そのものの波動がある。だから、肉食の中で、牛肉とかあるいはミルクとか、ああいったものを食べれば食べるほど牛の波動が出てきて、ああいう、べたっと座ってしまう、そういうふうに説明されている場合もあるんです。

 だから、そういう精神面における食育の研究もぜひしていただきたいと思うんですね。そこについて、ちょっと大臣、御所見いただきたいんですが。

小坂国務大臣 委員のおっしゃっていただいた、何といいますか、世界的に通用している一つの考え方とか、そういうものもあるということは認識をいたしますが、それを学校全体に教えろといったことではないと思いますが、いろいろな幅広い知見を求めて、そして食育に資するようなものを、いろいろ一つ一つ丁寧に集めて研究してみろ、そしてその中のいいものをみんなに伝えて、一緒になってやるような努力をしてほしい、こういう御指摘だと思いまして、そのような意味で、また今後とも委員にはそういった、体験に基づいたいろいろな話を、委員会外でもお聞かせいただいて、また勉強してまいりたいと存じます。よろしくお願いします。

末松委員 この食育推進計画検討委員会の五回のレポートで、ここで、栄養バランスがすぐれた日本型食生活の実践ということで、米を中心とした食生活、これがいいんだということで書いております。

 実際に給食の現場で、我々のときはパンだけで、これが、アメリカは余った小麦の輸出を給食によって日本にしたんだとよく言われたものですけれども、それが結構バランスが変わってきたという話もございますけれども、むしろ米が余って非常に困っている状況もある。そういった中で、学校給食は、米もふえてきたと思うんですけれども、日本の伝統食がバランスがとれてすぐれているというのであれば、米を中心とした食事を給食でもっともっとふやしていく、そういうお考えはありませんか。

小坂国務大臣 若干個人的な意見も入ってしまうかもしれませんが、オリンピックの選手が活躍をし、きょうは荒川選手が金メダルをとってくれました。オリンピックの選手が体調を維持するためには、伝統的な食、また日本の食、おにぎりを食べたり、おみそ汁を飲んだり、納豆を食べたり、こういうことが体調を整え元気を回復することに大きな役割を果たしている、このようにも認識しておりますので、そういう意味で、やはり日本人が元気を出そうというときは、おにぎりですよ。やはり我々は選挙で頑張ろうというときは、おにぎりを食っておるんです。

 ですから、そういう意味で、米飯の推進ということに関しては学校給食でも取り組んでいただいておりますが、やはりそのよさを多くの人に知っていただくように、そしてまた、最近はお米についても、いろいろな形のお米が出てきて、栄養素を残した形での精米の仕方、そういったようなものから、栄養バランスを考えたお米、いろいろなものが出ておりますので、学校現場でもいいものを取り入れて、そして取り組んでいただけるように、またそういった面の推進も図っていきたいと考えております。

末松委員 ぜひ、それで頑張っていただきたいと思います。

 マクロビオティックという食事療法の中に、アメリカ人はダイエットという観点から日本食を取り入れてきたということでございまして、ニューヨークの一番ファッショナブルな食べ物、穀物に、ブラウンライスというのがあるんですね。玄米ですよ。それが非常にはやっている、一番ファッショナブルな食べ物だということを聞いております。特にインテリが今好んで食べているという話なんですけれどもね。

 そういった日本の伝統食が非常にバランスがとれていいんだということは、世界の人たちが今度は注目をし始めているわけですから、本家本元の日本が、そこの辺がちょっとおくれているような考え方では困ると思うので、日本食の研究といいますか、世界の食事とも比較しながら、ぜひ、地産地消を含めた考え方を推進していただきたいということを申し上げて、このテーマについては終わらせていただきます。

 次にお聞きしたいのが、国費留学生の件でございます。

 国費留学生は、一九五四年から、ことし、約五十年やってきて、大体六万五千人が国費留学生で、日本で生活及び学習を体験したということでございます。

 これは、予算を見させていただいたんですけれども、大体二百三十億円ですね。そこで、大体二百億円から二百三十億円程度で、十年間で大体二千数百億円。五十年ですから、最初は余り大きな予算ではないでしょうから、それでも大体十年間で二千数百億円とすると、価値がそのまま続いたとして、五十年で大体一兆円近くの財源を使って、アジアを中心に、中国、韓国、インドネシア、タイ、ベトナム、バングラデシュ、フィリピン、モンゴル、マレーシア、ブラジルなど百四十八カ国、大体百六十カ国と言われていますけれども、そこの国費の留学生を日本に受け入れてきたんですね。

 これは、国として非常に重要なことだということはわかっておりますし、また、所信表明演説の中でも、世界から信頼される国に日本がなっていくために、また、日本の国際的な理解、こういうものを進めるために国費留学生がやられているということでございます。

 私が問題にしたいのは、国費留学生で日本に来て、そして研修を終えて帰って行かれた方々、そのフォローアップ体制がどうなっているんだ、そこを大臣、お聞きしたいんですが、答えてください。

小坂国務大臣 御指摘の、日本の国費で外国人の留学生を受け入れ、そしてまた母国に帰って、そして日本に対しての理解を深め、そしてその母国の発展のために尽くしていただく。こういうことが日本のためにも、またそれぞれの国のためにもなるということで、この事業は今後とも維持し推進をしていくべき事業だと考えておりまして、ただいま御指摘のように、平成十七年度予算で二百二十九億円を計上し、そして人数的に申し上げるならば、九千八百九十一人という状況にあるわけでございまして、受け入れ国は、千人台のところを申し上げれば、中国、韓国、インドネシアが六百人で、以下ずっと、二十番目にルーマニアが百四人、その他百二十八カ国あるというようなことでございます。

 そういう状況で、これは推進すべきものとして取り組んでいるが、しかし、では帰ってどうなっているんだ、こういうことでございます。

 帰国後の状況については、実は外務省を通じて把握しているというのが実情でございまして、私どもとして、それぞれの留学生の帰国後の実態を常にフォローアップして、見守っていくといいますか、監視するといいますか、レポートを求めるというようなことはしていないという実情にございます。

 しかし、その中で、把握していただいて、またその後のいろいろな立場になられてから、私は実は国費留学生で日本にはお世話になって今日の私がある、こう言っていただいている現在日本の大使の方もおられますし、また、各国の大臣、あるいは大学の総長だとか、あるいは国の美術館を初めとした機関の館長等の要職にあられる方、財界においての銀行や国営石油公社等そういったところの中核の取締役、頭取等になっている方々もおられるわけでございまして、この制度の有効さといいますか、実績として評価すべきものが多いと思っております。

 そういった意味で、一人一人その後の人生をどのように歩んだかというフォローアップまではちょっと難しいと思いますが、帰って一年たって、あるいは二年たってどのような気持ちを持っていらっしゃるか、こういったことは私も把握したらいいのではないかな、そういう気持ちを持っております。委員の御指摘を踏まえながら、外務省と連携をして、今後ともフォローアップ、把握に努力をしてまいりたいと存じます。

末松委員 そこなんですよ。大臣言われているので、方向性としてはそんなに反対はないと思うんですけれども。六万五千人ですよ。数十万人という話ではないんですね。外務省にフォローしてもらっているということは、つまり文科省としては把握していないということですよね。

 確かに有力者になっている方も多いんですよ、国費留学生。でも、そういった方々は、日本にとっての最大の理解者になり得る人ですよね。五十年間で約一兆円近く使って頑張ってきたんですよ。その財産をしっかりと日本のシンパとして、あるいは理解者として把握しなくて、ただやりっ放し、これは予算の使い方としておかしいんじゃないか。ちゃんとフォローアップをしてあげて、そして、どうですかと、これをやっていくのが日本の国の税金の使い方じゃないですかね。では、外務省知っていますかといったら、そんなの知らないですよ、外務省は、何の調査もしませんよ。まず調査をしっかりやるべきじゃないですか。そこをちょっと改めてお伺いしますよ。

小坂国務大臣 これは考え方だと思いますが、私は、仮に自分が奨学金をもらいたいと思って、今回奨学金をあなたに上げるけれども、今後あなたは国に帰っても、またいろいろな職についても、全部私にリポートをしなきゃいかぬよというようなことを課すわけにはいかぬということは御理解いただけると思います。

 私どもができることは、フルブライトの留学生のように、私はフルブライトに行って今日があるんだということをいろいろなところでしゃべってもらう、すなわち、いろいろな立場になったときに、実は私は日本の国費留学生で、日本に行ったことがある、それが今日の私のこの立場で大きく役立っている、そういうところで日本についてのいい印象を話していただく、そういうことが私どもとして期待するところでありまして、ひもつきでずっとその後まで、フォローアップといえども、ある程度の何らかの義務をいろいろ課してやっていくとかという形ではなくて、私は、その後どう過ごしていらっしゃいますかというお便りを出すとか、あるいは、同窓会を開くみたいな意味で、そういった国費留学生の皆さんに呼びかけて、一度集まってもらえるような、都合のつく人だけ、あるいは本当にそういう気持ちのある方だけ集まっていただいて、そこで今日の日本はこういうことを考えて、アジアのためにも頑張りたいと思っています、皆さんも一緒になってこの考え方を広めてください、こういうようなことをやるとか、そういう方向性はあるんだろうと思います。

 今委員の御指摘を聞いていますと、予算を使ったんだから、責任を持ってその後をフォローアップして、しっかり把握に努めろというと、やはり義務化をしないとそういうものがつかめない部分がふえてきちゃうんですね。ですから、そこはやはりかなり緩い枠組みの中で、国費留学をしていただいた方がみずから進んで、私は今こういうことをします、おかげでこういう仕事につきました、今社会でこういうふうな活動をしています、そういうことを手紙で送っていただけるような、そういうことで把握ができるような、ある意味で、これはやんわりとしたものかもしれませんが、私はその程度のフォローアップの仕方の方が、余り厳しくやってはいかぬのじゃないかと思うんですが、委員のお考えと一致できるかどうかわかりませんが、私はそう考えております。

末松委員 私も、これは留学じゃないんですが、外務省時代にアメリカのプリンストンという大学院に行っていたものですから、そこからいまだにいろいろ手紙をもらったり、寄附をお願いされたり、やっているわけですよ。それはそれなりにプリンストニアンという誇りの中でやってくださいという感じで彼らも来るわけですね。

 そういった意味で、プリンストンという大学のシンパを世界じゅうに持っていて、それもハーバードとか、それが彼らの大きな資産になっているわけでありますね。だから、例えば学長が日本に来るといったら、必ず御案内をいただく。そういった中で、ああ、そうなんだ、僕もプリンストンという大学のシンパなんだなというふうな気になるわけですよ。

 私は別に、義務を課せとか、絶対報告をさせろとか、そういうことを言っているわけではない。ただ、文部科学省としてそういったものを一切調査しないということはおかしいんじゃないかと言っているんですよ。やっていませんよね、調査は。やっていないと思いますが、やりましたか。そこは、イエスかノーか、答えてください。

石川政府参考人 帰国留学生のその後の状況等につきましては、日本の国内の受け入れた大学等で、その把握等にそれぞれのやり方で努めておったりいたしますけれども、国全体としての調査といった観点ではやっておらないところでございます。国全体としてといいますか、文部科学省としてのそういった全体的な調査というのはしておらないということでございます。

末松委員 大学等で努めているというのは、文科省で大学等にやれと言ったんですか、それとも、そういう指示も出していないんですか。どっちですか。

石川政府参考人 私の言葉が足りなかったとすればお許しをいただきますけれども、それぞれの大学では、受け入れた留学生のその後の状況等につきまして、可能な範囲で追跡調査とか、あるいは状況の把握といったようなことは行われておるわけでございまして、私としては、また文部科学省としては、いろいろな機会を通じて、できるだけそういった工夫とか努力はしてくださいといったようなお願いはしている、こういうことでございます。

末松委員 では、石川局長にお伺いしたいんですが、文科省は大学がそういうふうなことをやったということを把握しておられるということですね、実際に。その大学がそれぞれそういった調査、フォローアップの調査をやっているということを文科省でまとめて、報告を受けておられるということですか。それとも、それはそうじゃなくて、多分それぞれの大学がやっておられるんだろう、そういうことを風聞に聞いたことがある、そういう程度ですか。どっちですか。

石川政府参考人 それぞれの大学がやっておるということを、やっておる状況について正式に調査をしたということではございませんで、委員がおっしゃるとおりに、そういった大学で行われているということを適宜に把握しておるということでございます。

末松委員 だから、役人答弁的に、私も昔役人をやっていたから、もっともらしい言い方をするけれども、でも、それは実際にやっていないんですよ。だから、そのときはきちんと、それは大学はやっているかもしれませんねという程度の話なので、この答弁ではしっかりした答弁をしてくださいよ。

 だから、実際、文科省として行っていなかったんですよね。だから、そこは外交という立場から見ても、こういった財産をしっかり使うのであれば、それは日本の外交の強化に資する話だし、委員長も外交官出身ですから、外務省出身ですから、その辺については御理解いただけると思いますが、ぜひそういったことを一回調査をする。して、どうなっているのか。だから、別に、それは報告せよとかそういうことではありません。逆にそうしたら逃げてしまいます、そういった方々は重荷に感じて。

 ただ、そこはしっかりと、日本としてやったことの、今度はどこが悪かったか、どこがよかったか、こういったことも含めて、やはりフォローアップしていかないと、結局、単にやりっ放し、後はそういった方々がひょっとしたら反日になっているケースも結構あるかもしれない。それはどういうことなんだということを、やはり調査を継続していくことによってわかる事実というのはあると思うんですよ。それだけ日本は、もう五十年間投資をやってきたわけですよ。

 ですから、そこは外務省とか、そういったことにも協力を求めて、むしろこれは外務省が本当は気づいていかなきゃいけない話だと思いますし、外務省の方ではJICAで、受け入れた場合には、それのためのリユニオンとか同窓会とか、そういったことをやっていると聞いていますけれども、やはりこの国費留学生というのは一番大きな柱ですから、ぜひそこは、一回大きな調査をやれ、そういう指示を発して、そして、この制度のどういったところに改善点があるのかないのか、それも含めて、そしてどういった有力者がいて、日本にとって本当に大きな影響がある方がおられるわけですから、それをつぶさに話を聞いていく、そういうことをぜひこれからやっていただきたい。これはやるべきだということで私は要求させていただきたいと思いますけれども、大臣、ちょっとその御所見についてお伺いをします。

小坂国務大臣 委員の御指摘の、その点は私も理解できます。やはり調査のやり方をどうするかということはあります。ですから、アンケートのような形で、帰国前にアンケートを置いていってもらう。それから、アンケートを帰国で出してもらうもののほかに、帰国後一定期間を置いて、現在の気持ち等を書いて送ってくださいと。思想調査をするわけにいきませんから、反日になっているかどうかというのはわかりにくいですけれども、しかし、そういった意味ではなくて、どういう活躍をされているか、よかったら知らせてくださいというような働きかけをしてみるとか、そういう努力はやはり必要なんだと思いますし、大々的な調査とおっしゃいましたけれども、その後住所の把握できる人にアンケートを送ってみるぐらいの努力をしても私もいいと思いますので、検討させていただきたいと思います。

末松委員 石川局長にお伺いしますけれども、そもそも名簿は文科省で保管しているんですか、国費留学生の名簿は。

石川政府参考人 私どもの方で直接名簿を保管しているということではございません。そういった状況はございません。(末松委員「ない」と呼ぶ)はい。

 ただ、国費留学生の選考の事務を私どもの方でしておりますので、詳しい状況はちょっとまだ不分明でございますけれども、近年のものについては、どういった方々が来ているかということについては名簿を持っておるということでございます。

末松委員 我々は政治家で、名簿というのは極めて大切な話なんでありますけれども、持っていないという話であれば、私が要望というか要請している調査はどうやって行うんですか。

石川政府参考人 ただいま申し上げましたように、近年のものについては、私どもの方でも名簿という形で持っておりますけれども……(末松委員「どのくらいのスパンですか」と呼ぶ)数年のものならあると思います。ただ、古いものにつきましては、今も担当課長ともちょっと打ち合わせをしましたけれども、聞いてみましたけれども、古いものについては残っておりません。

 そんな意味で、先ほど大学のことを申し上げましたけれども、それぞれの大学を通じたようなフォローアップというのは可能ではないかな、こんなふうには考えております。

末松委員 適当に大学の方に責任を押しつけないでくださいね。名簿がないというのは、ここ数年しか名簿がないというのは、結局調査も行えないという、五十年間投資してきたのに、そこの刈り入れの果実を得られないという前提なんだよという話になっちゃうんですよ。そこは丁寧に、やはり日本の理解者となっていただいておると思われる方々なんですから、そこは大切にお扱いをさせていただくというぐらいの心じゃないと、もうそれは知らんぞ、一回受け入れたからいいじゃないかという話じゃないと思うんですね。

 そこを、ここ数年しかないというので、私はそれを聞いて、ちょっとショッキングな話なんでありますが、ぜひそういった名簿は、住所等を変わったら知らせてねと、これは我々政治家がよくやっていることですよね。そういったことを踏まえながら、しっかりと、大切に、本当に大切なゲストをお預かりして、そしてゲストがお帰りになられるというぐらいの気持ちでやらないと、日本に対する理解というのは、本当にふえない話でございます。

 ぜひそこは、まず大臣が検討される前提として、名簿についてどれだけできるのか、どうなるか、またぜひそこは私も教えていただきたい。そして、今簡単に大学に振りましたけれども、大学はそういったことをどの程度持っているのか、あるいはやってきたのかきていないのか、そこについてもぜひ報告していただきたいと思うんです。これはそんなに簡単に、この答弁だけで、検討してはい終わりですという話じゃないと思うんです。ぜひそういったきちんとした対応をとっていただきたいんです。

 会計検査院の方おられますか。今の話を聞いていて、このフォローアップ、私は、やりっ放しというのはおかしいと思うんですけれども、会計検査院でこの点について問題にしたことはありませんか。

帆刈会計検査院当局者 お答えをさせていただきます。

 委員御指摘のように、投入した予算がその効果を十分発揮するということは非常に重要であると私どもも考えてございます。指標として何を用いて効果をとらえるべきかという難しい面もあると思いますが、今後の検査に当たりましては、委員御指摘のような点も踏まえまして検査に当たってまいりたいと考えてございます。

末松委員 そこをしっかりやってくださいよ、会計検査院はそのためにあるんだから。日本の国際理解が進むということは、頭脳流入の大きな契機にもなっているわけですから、ぜひお願いしたい。

 そして、財務省いますか。財務省は今予算を、ずっとあなた方は、こういうことも検討せずに毎年同じように予算をつけてきたんですか。ちょっと答えてください。

鈴木政府参考人 若干繰り返しになる部分がございますが、国費外国留学生に関しましては、国内の修学生活を支援するという部分は文部科学省の経費で賄っておりますけれども、帰国後につきましても、日本とのきずなを強化するために、外務省の施策としてフォローアップ施策が講じられております。具体的には、例えば元留学生の集いの会を設けるとか、そういうふうな事業を行われているというふうに承知しております。

 こうしたことは、途上国の人材育成を支援するとともに、知日家とか親日家を育てるということで、両国にとりまして相互に重要なものだと認識しておりますけれども、ただいま委員御指摘のとおり、こうした施策が十分にその成果を発揮しているかどうか、そういうことを検証しながら施策を進めていくということは極めて重要なことと思っております。

 いずれにしましても、非常に限られた財源の中で最大限に効果を発揮できるよう、関係省庁とよく御相談しながら今後とも施策を進めていきたいと考えております。

末松委員 その外務省のフォローアップ事業の予算で、実績はどうなっていますか。

鈴木政府参考人 帰国留学生の支援のために、外務省に十八年度予算で五千三百万円の予算を計上しているところでございます。

末松委員 五千三百万円で何をやっているか、あなたは把握していますか。それは外務省じゃないとわかりませんか。五千三百万円ですよ。

鈴木政府参考人 詳細ということでは、また改めて外務省の方からお答えいただいた方がいいかと思いますけれども、私どもが承知しておりますのは、外務省におきましては、既定の予算の中で、事務費の中で、帰国留学生の名簿作成等について事務を行うとともに、こうした方々を対象に日本留学者会議、これは具体的には元留学生の集いということで、約四千万円の事業、それから、帰国留学生の活動支援ということで一千万円等々の経費が計上されているというふうに承知しております。

末松委員 本当に、私の方は、外交力の基盤強化という中で、これだけ大きなデータベースというものがありながら、それを活用されていないというのが私は大きな問題だと思います。

 外交の、本当に継続的な基盤強化、ここが、やはり、やったらやりっ放しという話であれば、それはもったいない。これだけ金をかけてきて、確かに、大学が受け入れということで、文科省がこの主管になっているのかもしれないけれども、そこをしっかりと連携をとりながら、お互いに国際交流を進めていくということが、今まで投資をしてきたそれの果実を、しっかりとまたそれを受けていこうということですから、その点について、そういった視点も踏まえながら、文科大臣、再度御決意をお願いしたいと思います。

小坂国務大臣 委員の御指摘もありまして、今、私も、ちょっと補助的な資料を見させていただく中で、外務省が行っている帰国留学生同窓会組織等に対する支援という、今の財務省のお答えにあった部分を見させていただいたんですが、各国・地域の留学生の名簿の作成、また帰国留学生の学生会の組織化と支援、それから元日本留学者が日本留学成果を発表する機会の提供、これはその国に帰ってからですね。それからまた帰国留学生の集会、そういう施設、集まる場所の、事務所の提供等、そういう核になる部分をつくる、学生会を支援するような、そういうような事業も行っているんですね。そしてまた、元日本留学者の会議とか日本留学生の集いというようなものも開催するようなことを、ASEAN各国の留学生が集まってやるような機会をつくったり、いろいろなことをやっているようでございます。

 私もちょっと勉強不足で、委員に御指摘をいただくまで、この内容についてはまだ十分知らなかったんですが、外務省とよく連携をしまして、今の委員がおっしゃったこと、どういうふうにしていったら実効が上がるか、私はもう少し把握に努めて、またこの次の委員の御質問に備えたいと思いますので、ちょっと時間をいただきたいと思います。

末松委員 本当に、今資料を見られること自体が、確かにそこが本来の問題なところなので、今大臣の力強いお言葉をいただきましたので、そこで私はまた再度質問をいたしますから、そこはきちんと、このデータベースができるような仕組みになっていれば、私は、これからの外交、力強くやっていきましょうよ、そういった意味で、ぜひお願いをしたいと思います。これはまた別途にさせていただきます。

 それから、もう時間が残り少ないので、させていただきますが、学級崩壊というのは、実は私、数年かけてずっと目撃をしたんですね。東京の某公立の、公立というか都立というか、高校で、特別授業をさせていただいたんですが、そこで目撃したことが余りにも衝撃的だったので、えっと思ったわけでございます。

 どういうことかというと、授業にならないんですよ。先生が、わあっと、いろいろと言っているんです。それは、この三、四十人ですかね、グループに別れて、あるグループは携帯で遊んでいるし、あるグループは何かゲームで遊んでいるんですよね。あるグループはもう大変おしゃべりだけに興じていて、これ、何か先生の言われるところによれば、公立の学校の中程度の学校だというような話をされていて、驚いたわけですよ。私も、ちょっと特別講義で、外交官のときの話なんかちょっと人目を引くような話題でしたからある程度は注目していただけたんですけれども、これは、ちょっと考えられなくて、恐ろしいなと思ったわけでございます。

 多分、これは、私が思うに、どうも原因としては、先生の権威も低下しているよなということと同時に、本当に魅力ある授業が行われているのかという点もありますし、またちょっと、何かストレスが皆さん強いんですかね、それに対して社会的に反抗している態度なのかなと思ったり、いろいろと思いがかすめるわけですよ。それで、文科委員会で一回質問してやろうということで、念願の文科委員になれて、きょうは質問させていただいているわけですけれども、その理由、あるいはその現象がどういうふうに認識されておられるのか、これは文科大臣の認識をお伺いします。

小坂国務大臣 私は、委員のように実際に今の学級崩壊の現場に行ってその状況に遭遇した経験がないものですから、自分もやってみたいなと。私は小学校には行ったことがあるんですが、中学、高校レベルの学級崩壊に直面しておりませんので、そういう意味では体験をしたいと実際に思っております。

 それで、本当は事務方から答弁させた方がよろしいかもしれませんが、私の認識として申し上げると、一つは、委員がおっしゃったように、担任の先生の指導力というものが、やはり以前に比べると劣ってきているんではないかということも一つ指摘がされます。その足りない部分を補うのは、やはり学校全体の取り組みなんですね。要するに、バックアップをしてくださる教頭先生を初めとした、ほかの担任の先生からのアドバイスとか、そういったもので、やはりそれぞれの教員の勉強したいところを補ってあげるということが体制としてあると、学級崩壊につながらないで、その初期で対策がとられたりすることがある。ところが、それが十分なされないと、それが起こってしまう。だから、学級担任の指導力の不足と、それから学校の対応の問題。

 それから子供の生活パターン、生活そのものが変化している。昔は、近所の子供と地域で遊んだり何かをして、そこで上下関係というものがあって、そして、先輩の子供に、おまえはおれの子分だなんて言われて、それについていったりして、そういうことが、やはり、リーダーに従うとか、長幼の序というものも自然と身につけてくる、そういうようなものの環境が変わったこと。

 それから、家庭の教育力の低下ですね。やはり、昔は、先生の言うことを聞きなさい、学校へ行ったら、おまえ何のために学校行っているか知っているか、将来世の中に出たときにしっかりした人間になるためだと。お父さんも頑張ったんだ、おまえも頑張れというような、そういう話が最近はなかなか家庭で行われないような環境になってきているんではないか。

 こういったことは複数の要因が積み重なってこれらの状況が生じているということで、いわゆる、新たな、学級崩壊なんという言葉ができちゃうというほどにあちこちに事例が見られるという状況が今日あるんだと思っております。

 このような状況に、それでは文部科学省としてどのように対応するかといえば、まず一つは、早期の実態把握と対応ということで、実態をまず把握しなきゃいかぬ。そういう実態が生じている学校に対して、その教育委員会がしっかり把握して、そしてそれに取り組める姿勢をとってもらうこと。それから、魅力ある学級づくりというものについての研究をしっかり進めてもらう。また、協力的な指導体制の確立、すなわち学校全体として、校内組織を活用した、そういった崩壊した学級の担任の先生をバックアップしてあげる、そして崩壊を静める努力をする。また、保護者等との緊密な連携と一体的な取り組みによって、保護者だって困るわけです、学校が困るだけじゃなくて、保護者も困るわけですから、保護者の皆さんと問題点を共有していただく。そして、教育委員会や関係機関との積極的な連携といった方法で教育委員会の指導力の強化を図っていく。

 また、小学校段階における児童の教育相談の充実を図るために、昨年度から子どもと親の相談員というものを設け、またさらに生徒の指導推進協力員というものを配置するような予算を本年度から新たにとったわけでございます。この予算が五億でございますけれども、この予算を活用して子どもと親の相談員、生徒指導推進協力員、こういうものを配置して、またさらに早い時点からの対策をとれるような、そして、進学していって、そういう子供は進学していくわけですから、そういう学級崩壊の防止につながるような、そういった取り組みも重ねてやっていく、こういうことだと考えております。

末松委員 ぜひ一回そういったところを視察してください。先ほど言われた、体感することが重要なので、ぜひそこをお願いします。

 と同時に、今いろいろと対策を言われました。そこは、私も感じるのは、多分先生だけの話じゃないですね。確かにここはもう学校だけの話でもなくて、そこの家庭もあわせて真剣に、頭を抱えて、どうしようかというところの話し合いが、多分いろいろなネットワークで今度は日本じゅうでできていって、そういった中でやっていく話だろうと思うし、ただ、僕は、学校だけの問題じゃなくて、家庭の中で非常にストレスを受けた子供たちが何らかの形で仕返しをしているというような現象の中でやっているのかもしれません。

 今秩序が崩壊しているのが、先ほどの質問の中で、モラルの崩壊と同じような現象が共通して見られる話だと思いますから、そこを、これは子供がおかしいということは、つまりそれは親がおかしいということですから、子供は親の鏡といいますから、そこの親のそういった理解が学校との間で本当に緊密になれるような方向でやっていく話なんだろうなということを、ちょっと私も問題が余りにも大き過ぎるので、ぜひそこのところを、システムを確立するというのは多分役所のできる最大限のことかもしれません。ただ、同時に、それを教えられる先生の資質ですよね。ある意味じゃ、物質的なことばかりじゃなくて、精神性が高いような資質、これがどこまで資質として教えられるものがあるんだということを、ぜひそこは重点として置いていただきたいと思います。

 最後になりましたので、地元の問題について一言申し上げたいと思います。

 今、私の地元の西東京市というところで、東大農場というのが数十年ずっと言われてきました。東大が柏の方に移転することになって、今度は田無農場という東大の農場が移転することになった。それについて、これはお願いなんですけれども、ばあっと民間に売り払われて、そしてまたマンションがどおっと立っていくということ、それを懸念するわけなんです。

 実は、あそこの東大農場というのは、非常に大きな緑の地域を形成していまして、都市生活には欠かせない緑になっている。だから、私は、一言申し上げたいのは、ぜひこの東大の方も、所有権移転させるということだけではなくて、地元の市やそれから東京都の意向を含めて、そういうことをしっかりと尊重していただけるような、そういう形で移転をしてくれと。東大農場としても、地元に大変お世話になってきたわけですから、そこはぜひ地元の意見を尊重してほしい、そこをお願いしたいんです。答弁をいただける方、お願いします。

石川政府参考人 お答えを申し上げます。

 東京大学の田無農場につきましては、ただいま委員からお話がありましたように、柏キャンパスの整備財源として処分をするということが東京大学の方では既に決定をされているところと聞いております。ただ、処分時期につきましては、田無農場のかわりとなる新しい農場の整備後ということが予定をされているところでございまして、現時点では跡地の利用計画等はまだ決まっておらないというふうに聞いております。

 田無農場の処分に当たりましては、所有者であります東京大学の判断が尊重されるというふうに思っておりますけれども、国から出資された財産であるということも念頭に置きまして、跡地利用に関しましては、西東京市と東京大学で十分な検討が行われ、まずは公用あるいは公共用といったような観点を優先的に考慮しつつ、適切に処分がなされるもの、このように考えておるところでございます。

末松委員 そういった意味で、一番の大もとは文部科学省になるわけでございますが、そういったときに、東大の方からも報告あるいは検討の段階で御相談があるかもしれません。そういった趣旨について、文部科学省の方としても、そういったことは国会でも議論になったということをそこでお伝えいただけるようにお願いしたいと思いますが、よろしいですか。

石川政府参考人 きょう委員からお話があった点については、東京大学の方にも伝えてまいりたいと思いますし、私どもとしても今後の動きについてはフォローしてまいりたい、このように考えております。

末松委員 ありがとうございます。

 もう時間になりましたので、私の方もこれで終わらせていただきたいと思いますが、先ほどの繰り返しになりますが、国費留学生の件は、本来であれば文部科学大臣というよりも、むしろ外務大臣と、それから、外務委員会で、しっかり言わなきゃいけない話だと私は思っています。ただ、予算が文部科学省がしっかりやってきたので、そこはそういった観点も踏まえてやっていただきたい、国として。そこをぜひ大学の関係者の方々にも、そこはそういった意識で、大学の何といいますかお友達をふやしていくというアメリカの、あのアングロサクソンのアメリカが、私も卒業して二十年ぐらいになるんですけれども、それでも執拗に毎年あるいは半年に一回送ってくる、そういう根性をぜひ見習っていただいて、日本の理解者、大学の理解者あるいは文科省の理解者をふやしていただきたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

遠藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

遠藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。牧義夫君。

牧委員 民主党の牧義夫でございます。

 いつものことながら、午後一番の委員会というのはギャラリーが少なくて少々やりづらい点もございますけれども、よろしくお願いいたします。

 大臣また委員長、このたびは御就任おめでとうございます。おくればせながら、改めてお喜びを申し上げる次第でございます。

 午前中、大臣の御答弁を拝聴しておりまして、なかなかしっかりした御答弁をされる大臣だなと、改めてほっとした次第でございます。と申しますのも、前回、委員会において大臣所信、所信表明というよりも、この所信の朗読といった感がございましたけれども、この文章、私も読ませていただいて、もうちょっと文科省の役人の方も、大臣に恥をかかせないような、しっかりした文章を書いていただければいいなと、私なりに思った次第でございまして、そういった意味で、きょうは大臣の直接の言葉をぜひお聞かせいただきたいな、この所信をもとに質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、この所信にも「はじめに」というところがございますけれども、この辺のところは本当の大臣の言葉で語っていただくべきではないかなと私なりに思ったものですから、まず、大臣就任の決意を含めて、この「はじめに」の部分に該当するようなお言葉をいただきたいと思います。

小坂国務大臣 牧委員には、就任に当たりましてのお祝いの言葉もいただき、また、今日私のここまでの発言に対しての評価のお言葉もいただきまして、ありがたく思うわけでございますが、委員も、文部科学大臣を経験された私の敬愛する先生の秘書も務められる中で、文科行政については十分な御認識をお持ちでありますので、今後とも、示唆に富んだ御質問等をいただきながら、御指導賜りますことをお願い申し上げておきたいと思います。

 その上で、「はじめに」というところに書いてあるのは、決して文部科学省が作文したのみではなくて、私の思っているところもそこに入っております。

 すなわち、教育というのは、国を支える人材を育成するその基盤でございますから、これは国家百年の大計の中での重要な課題として、取り組むものは真摯に、真剣に取り組んでいかなきゃいけないし、また、長期的な視野に立って人材育成というものは行われるものである。また、人材育成というのは、その人を取り巻くいろいろな環境の中で影響を与えているものですから、そういった環境についても、それを醸成するなどによってよい環境をつくることに努力をしなきゃいけない。教育というのは、そういったもののすべての総合的な中でなされるものであるという認識を持っているということが一つ。

 それから、義務教育というのは、おぎゃあと生まれて、この国のどこに生まれても、同じような水準のものを受けるというのが基本でありますけれども、それは必ずしも英才教育をどこでも均一に受けられるということではないと私は考えております。

 それはすなわち、社会に出るに当たって、人間として生活力をしっかり身につけ、そしてそういう生活力も含めた上での、人間力というような表現も使っておりますが、人間として生命をはぐくんで、そして社会人として貢献できるような、そういった基礎的な力をだれもが持てるような教育を施すこと、それが義務教育のあり方だろう、こう思っておりますし、また、初等中等、そして高等教育にまで、それぞれ国として責任を持って、その内容の充実、それから制度の確立について努めていかなきゃいかぬ。また、義務教育の無償制というものは、これをしっかり今後とも維持していかないかぬ。

 こういったことをもろもろ感じた中で、「はじめに」という中に、言葉は足りないかもしれませんが、そういった意味を盛り込んで言ったつもりでございます。

牧委員 大臣には、私の質問に先立って義務教育のことまで御答弁をいただいて、大変恐縮をいたしております。次に義務教育のことをお聞きするつもりでおりましたが、まさに今大臣おっしゃっていただいた部分のところが次の質問で聞きたかったところで。

 昨年のこの国会において、前中山大臣は「義務教育は、国家、社会の形成者たる国民の育成と、子供たち一人一人が、この世に生をうけたありがたさを実感し、一生を幸せにかつ有意義に生きることができる土台をつくるという二つの目的を持っていると考えます。」このような所信を述べられておりましたけれども、残念ながら、今回のこの大臣の所信の中では、この制度をどういうふうにこれからいじっていくんだという言葉はあるんですけれども、そもそも義務教育が果たすべき役割ですとか、そういった言葉が、文言がなかったものですから、私、次の質問でそれをお聞かせいただきたかったんですけれども、先に大臣に御答弁いただきましたので、本当に恐縮に存じます。

 したがって、また次の質問に移りたいと思うんですけれども、この義務教育、せっかく大臣お話をされましたので、少しこの部分について質問をさせていただきたいと思います。

 いずれにせよ、来週以降、法改正もございまして、また、法案の審議もこの委員会でございますから、細かい話はまた後日に譲るとしまして、まず基本的なところだけ聞かせていただきたいと思います。

 ここ数年来この委員会で、義務教育の国庫負担についてのさまざまな議論がございました。昨年の通常国会においても、ちょうど私が質問をさせていただきましたけれども、小泉総理にこの委員会にも来ていただいて、実にこの国の総理としては四十七年ぶりに文教委員会に来ていただいたということで、私なりに米百俵の精神の何たるやをお聞かせいただけるかと思ったら、どうもそんな内容ではなかったことが非常に残念な思い出として残っておりますけれども、そういった議論があって、今日のこの形を何とか役所の方でもつくり上げたのだと思います。

 ただ、我々としては、これらの議論を踏まえて、どういう形をつくっていくのかということを与野党一緒に模索してきたつもりなんですけれども、ところが、我々のあずかり知らないところで、政府・与党合意とは言いますけれども、何かさらっと「三分の一とすることとなりました。」と。所信の二ページ目にございますけれども、「なお、義務教育費国庫負担制度の取扱いについては、昨年末の政府・与党合意により、制度を堅持した上で国の負担割合を三分の一とすることとなりました。」と。

 もう実にさらっと書かれているんですけれども、この間のどういった議論があったのか、そこら辺のところをちょっと丁寧に説明していただけるとありがたいと思います。丁寧にといっても、簡潔にお願いしたいと思いますけれども。

小坂国務大臣 今の御質問の義務教育費国庫負担制度につきましては、お答えを申し上げますが、その前に、先ほど「はじめに」というところで、余りに教育に偏った話ばかりしてしまいまして、余り時間をとっては申しわけないという配慮が頭の中でめぐってしまいましたものですから、その部分に気持ちが行き過ぎまして、本来の文部科学行政という、文部大臣というよりは文部科学大臣としてお話を申し上げるべきだと思って、若干そこをつけ加えさせていただきたい。よろしいですか。

 文部科学大臣としては、教育だけでなく、やはり文化、芸術の振興ということがございます。私は、文化、芸術というのは、海外に生活をしてみたり、そして海外の人々と接する機会が多かった自分の前職等を振り返ってみて、やはり文化、芸術の果たす役割というのは、日本のアイデンティティーを強めて、海外において日本というものに対する正しい認識を持ってもらう上で大きな力を持っているものだと。そして、これは伝統文化だけでなくて、現代の新しい日本の文化、例えばいわゆるポップのミュージック、あるいはポップカルチャーと言われるような中でのゲームやアニメーションや、あるいはJファッションと言われるような若者のファッション、こういったものが世界から注目を集めている、こういうこともまた日本の国の海外における立場というものをしっかり確立する上での大きな力になっている。

 また、芸術の分野においても、伝統芸術、これは歌舞伎を初めとして、クラシック音楽、いろいろな分野で皆さん活躍をしておられます。あるいは三味線と世界のジャズとの共演、コラボレーションというものもあります。いろいろな意味でこういった文化の力が大きく伸びておりますので、これをしっかりと育成し、創造性豊かな中での新しい文化の創造、また伝統文化のさらに磨きをかける活動、こういったものを奨励してまいりたい、このように考えております。

 また、科学技術というのは、まさに日本の産業がこれから世界に飛躍する上での基本的な技術革新、イノベーションがなければ日本は生きていけません。資源のない国として、こういったことがしっかり、産業界に貢献できるような、イノベーションにつながる科学技術の創造、また基礎科学、あるは応用科学、先端科学、あらゆる分野でこれはしっかりと取り組んでいくことが必要だ、そういう認識を今持っているということをお伝えし、これ以上話していきますとお時間が若干なくなってしまいますので、質問に戻ります。

 昨年の三位一体改革の推進という小泉内閣の基本的な考え方、これはしっかりやっていかないかぬ。しかし、十月の二十六日に、新しい義務教育を創造するといって答申をいただいた中央教育審議会の答申というものの精神をしっかりまた踏まえなきゃいかぬ。そして、義務教育というものの性格からして、義務教育費の国庫負担制度というものはしっかり堅持をして、国と地方の負担によって義務教育の教職員の給与費は全額保障するというこの仕組みは絶対に維持をしなきゃいけないんだ、こういう多くの皆さんの、そして私どもの考えも組み入れた中で、ではどのようにするか、それを各方面にわたる皆さんの意見に真摯に耳を傾けながら、私としては、いろいろなアイデアを出して、そしてお話を聞いてまいりました。

 最終的に、三分の一という一つの方向性を持っていろいろな方の御意見を聞いてみました。いやいや、それは困るということもありましたけれども、しかし、制度を堅持してくれるならばやむを得ないか、あるいは、地方分権、地方自治というものを考えてもらえれば、やはり財源ももっと渡してほしいという気持ちはあるけれども、確かにあなたの立場もわかる、そういう中では、ぎりぎりのところで我々もそれをのむしかないのか、いろいろな御意見をいただく中で、私としては苦汁の選択ではありましたが、各方面の皆さんが何とかここなら御理解をいただけそうだということで、答申とは違う、二分の一から三分の一に引き下げるという、数字はいじらせていただきましたけれども、ただいま申し上げた、義務教育費の国庫負担制度という、この安定した財源保障制度は堅持するということを表明させていただき、この構造改革を推進する上で、このような中で結論を出させていただいた、それを端的な言葉で「はじめに」の中にまとめて申し上げたところでございまして、その辺のところをお酌み取りいただければ幸いでございます。

牧委員 その辺のところを酌み取りたいと思う気持ちはたくさんございます。大変御苦労をされたんだなと。苦肉の策という言葉もありましたけれども、それはよくわかるんです。

 ただ、大臣にちょっと確認をしておきたいんですけれども、基本的なそもそもの認識ですね。地方分権の一定の流れというのはわかるんですけれども、大臣の所信の言葉の中に、「国の責任を確実に果たしつつ、学校や地方の創意工夫を活かした教育が実現できるよう、構造改革を力強く進めてまいります。」という言葉がございますけれども、力強くうたう割には、二分の一が三分の一と。何か中身が寂しいじゃないかなという気が私はするんですね。

 いずれにせよ、教員の給与という、義務的な経費で、これでもって地方の裁量の枠がどれだけ広がるのかとか、そういうことを考えたときに、これが本当の構造改革なのかということを私は疑問に思わざるを得ないんですけれども、その辺のところの大臣のお考えをお聞かせください。

小坂国務大臣 義務教育の構造改革を推進するというのは、今の、制度として国が保障すべきものはしっかり保障するけれども、市町村、学校という現場の裁量、また責任を持って、裁量の幅を拡大して柔軟性を持たせていく、それぞれの地域に合った教育のあり方というものもその中に組み入れることができるような柔軟性を持たせる、そういうことを一方では導入する。

 しかしながら、本来国がなすべきものがしっかり実現しているかどうかという意味で、枠をつくるだけでなく、そこの運営をしていただく現場に対してゆだね、そしてその結果についてはやはりまた国がしっかり検証をする、そして検証をした上でまた必要なものについては新たにアクションをとるという意味で、プラン・ドゥー・C、そしてアクションというPDCAのサイクルをしっかり確立をしていく、そういう流れをつくるということもこの構造改革の中に入っているんですね。

 そういったことを総合して、今、力強く改革を推進してまいりますという言葉の中には、そういった具体的な施策も一つ一つ盛り込んだ上でということでございまして、それを全部一言では説明できないものですから、そのような表現を使わせていただきました。

牧委員 今の大臣のお言葉を聞いていると、いかにも力強く改革を推進しているかのように聞こえるんですけれども。であれば、そもそも国と地方の役割分担、これも簡単に国と地方の役割分担といいますけれども、事こういった教員の問題について言えば、国と人事権者、あるいは人事管理権者といいますか、都道府県、そしてまた学校設置者との、この三者の関係というのがあるわけですよね。そのあるべき姿について、大臣、どういうふうにお考えになっているんでしょうか。

銭谷政府参考人 義務教育における国と都道府県、市町村の役割のあるべき姿というお尋ねでございますけれども、国につきましては、教育制度の枠組みの設定、学習指導要領等の基準の制定、地方自治体に対する財源保障といった、いわゆる基盤整備について国は責任を負っていると考えております。また、都道府県は、教職員の給与を負担し、また教職員の人事を担当し、広域的な調整を行うという立場にあるわけでございます。また、市区町村は、小中学校の設置者といたしましてその管理運営に当たる、義務教育の直接の実施主体ということになろうかと思います。

 このように、国と都道府県、市町村が役割をしっかり分担いたしまして、その中で国がその責任を果たしていくということが今後大事だと考えております。

牧委員 ということは、せっかく銭谷さんに出てきていただいたので、ちょっとここだけ突っ込んで聞きたいんですけれども、国と都道府県と学校設置者とのこの三者の関係というのは、これがもう最終的な形だというふうに理解してよろしいんでしょうか。今回の法改正でもちょっとそこら辺をいじる話が出てきますけれども、ちょっとお聞かせください。

銭谷政府参考人 ただいま申し上げましたのは、基本的な国、都道府県、市町村の役割でございます。

 その中で、昨年の中央教育審議会の答申等で言われました事柄として、国、都道府県、市町村の中で、学校の設置者である市町村について、きちんとその権限を付与し、設置者としての責任を果たせるような、そういう改革を進めていく必要があるだろうということは言われているわけでございます。

 具体的には、教職員の人事につきまして、現在は、都道府県、それから、政令市が人事を実施しているわけでございますけれども、市区町村への人事権の移譲について、その方向で検討していくべきだということは言われていることがございます。これは、その場合、そうすると都道府県はどうなるのかといいますと、いわば義務教育につきまして広域の調整者という立場が非常に強くなろうかと思いますけれども、人事については、今後、市区町村の人事権の移譲をどういうふうに進めていくのか、私ども検討課題としてあるというふうに思っております。

牧委員 また詳しいところは、法案の審議の中で詰めていきたいと思います。

 そこで、再度確認だけしておきたいんですけれども、今回この形、大臣は先ほど来、制度堅持という言葉を数度繰り返して使われましたけれども、堅持ということが将来にわたって恒久的なものと理解していいのかどうなのか、そこら辺のところは確認をしておく必要があると思います。

 というのは、ここ数年間だけでも、共済費長期給付だとか公務災害補償基金負担金、さらには退職手当、児童手当と、なし崩し的と言ってもいいぐらいに順次削られてきて、いよいよ給与本体という段階で、それがまた今度二分の一から三分の一ということですから、これは一定の何か、一つの流れがあるというふうに見るのが私は普通だと思いますし、これでもって制度堅持と本当に言えるのかなと私は思うわけであります。

 二分の一から三分の一ということだけで、もう既に私はこの制度が崩れているんじゃないかなという考え方もできると思うんですけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

小坂国務大臣 一番ポイントは、国、地方がどういう割合でということは、それぞれの状況によっての変化があって今日に至っているわけでございますけれども、義務教育の教職員給与費の全額を保障するということが一番ポイントだと思うんですね。これは恒久的なものだということを私は認識し、そのような意味で書いておりますので、これは恒久的な措置だと申し上げます。

牧委員 義務教育の最低限の基準が担保されるための財源が確保されるということは恒久的だと。ただ、この制度が恒久的だとは言えないわけですか。どちらですか。ちょっともう一回、はっきり。

小坂国務大臣 今回のこういった措置をしたということが、恒久的な措置だということなんです。すなわち、今申し上げたように、教職員給与費の全額を保障することが恒久的な措置だということを申し上げたのであります。

牧委員 そうすると、二分の一が三分の一になって、それがまた例えばさらには四分の一になったり八分の一になっても、それは制度として堅持されている、全額が保障されればそれは堅持されているという意味にとらえてよろしいんですか。

小坂国務大臣 その割合がというより、残ったものがどこに残るかということもあるわけですね。なくなっちゃうんじゃ困るんですよ。ですから、今申し上げたように、全額を保障する仕組み、それは恒久的なものというふうに私は申し上げたのでございます。

牧委員 またちょっとこの辺については法案の審議のときにじっくりやりたいと思いますので、次に移らせていただきたいと思います。

 午前中から食育のお話、お二人の委員から出ておりました。私も、ちょっと別の観点から、ちょっとだけですけれども、食育のことについて触れさせていただきたいと思います。

 私の質問はもっと基本的な、根本的な話になると思うんですけれども、そもそも食育って一体何ですかというところからまずお聞かせいただきたいと思うんです。

 広辞苑を引いても食育なんという言葉は出てまいりませんし、これは基本法までつくって取り組みをされているということで、それなりの思い入れがおありになるということも理解はするんですけれども、まだ食育という言葉そのものが国民の間でも定着をしていないというのが実態でございます。

 去年の選挙で、私の対立候補が食育食育とよく言っていたものですから、私も改めて認識した次第でありますけれども、まず、その食育という言葉の意味、それから食育の意義についてお聞かせください。

小坂国務大臣 食育基本法の中で食育とはということを一言であらわせれば、一番わかりやすかったんだと思うんですが、この食育というものは大変幅の広い概念で、また、その運動自体も幅の広いものであると認識をしていただきたい。

 その一つは、食というものについて、本来私どもは、こんなものは教えてもらう必要はない、人間は本来基本的な欲求として持っているんだから、食べたいものを食べる、これについてああだこうだ言われたくない、これは基本的な問題だと思うんですね。

 ところが、今まで人間が食べたものに、有害なものというのは基本的にはない。もし毒があって、それで体を壊したり死ぬようなことがあれば、それは人類進化の中でちゃんとDNAにも刻み込まれ、また、口から口へ伝わって、そういうものは避けてきた。ですから、基本的にみんながいつも食べている伝統的な食や何かについて問題はなかったんですが、伝統的な食材であっても、最近は、いろんな生産過程においての農薬や保存料や、あるいは輸入食品のいろいろな問題点、あるいは病原性のものが含まれている、大腸菌を初めとして、O157あるいは鳥インフルエンザ、豚コレラあるいはBSE、コイヘルペス、いろんなものが出てきて、今まで食べていたものが必ずしも安全と言えなくなってきた。これについての知見を広めていかなきゃいかぬということが一つあります。

 それから、伝統的な食文化というのは地域文化をつくってきた、そして日本の伝統的な文化というものは食文化に根差しているものが多いということにかんがみますと、こういったものが喪失してくることによって、地域の活力というものが弱まってくる、あるいは、日本人として本来持っていた個性というもの、日本人としての特質というものが失われつつある、こういったものに思いをいたさなきゃいかぬ。

 また同時に、農業というものがだんだん自分たちの目の前から遠ざかっていく環境にある中で、その食物がどのように生産をされているかという生産過程を知らない。また、どういうふうな形でなっているかすらもわからない。したがって、トマトがジャガイモのようになるのか、ジャガイモが木の上になっているのか。そういったような意味で、ニンジンが木にぶら下がっていると思う人もいるし、いろいろな形が出てきてしまった。

 こういうことに対する正しい認識を広めていくことも必要である。そういうことを、じゃ、どの場でやるかということになりますと、昔は生活環境の、取り巻いている中に幾らでもあったんですが、それがなくなってきた。したがって、そういったものを家庭教育を通じて、学校教育を通じて、また地域の体験教育を通じて身につけてもらうことが必要になった。

 こういったことを総合的に見える中で、こういったものの喪失が、ある意味では公共心、公徳心の喪失、すなわち、昔は畑になっているものを泥棒するなんというのは大変なことでして、泥棒はしなかったんですよね、子供がいたずらでやるならともかくとして。今は、サクランボがごっそりなくなったりリンゴがなくなったり。道端になっているからと勝手に持っていっちゃう人がいる。これは犯罪として持っていく人がいる。そんないろいろなことの規範意識の大もとにもやはり影響する。

 そういう意味で、幅広いものを食育という活動を通じて一つ一つ正していこう。そういう総合的な取り組みの中から、栄養教諭という人をつくって、栄養バランスというものをしっかり学んでもらって、そしてジャンクフードばかり食べていると、骨が弱くなってしまったり、あるいはバランスを欠いてキレやすい子供になったりするので、そういう栄養バランスというものをしっかり食事の中では考えてほしい。朝飯を食べない人たちは学力にはっきりと差が出てくるという実証的なものもありますから、朝食はしっかりとりましょう、そして、早寝早起きというのは昔のよい習慣でしたけれども、社会生活の変化の中でそれがなかなかできなくなってきたけれども、こういったものも踏まえてやっていきましょう。

 これら総合的に食育という言葉で、知育、徳育、体育、いわゆる学校の中で教えてきた知識、体育、体を育成する、徳を養う、こういったものに加えて食育というものを推進することが必要な世の中になってきた。そういう認識で、この食育という言葉は昔あった言葉でございますけれども、再度その意味をブラッシュアップして、もう一回世に問い直している、こういうことだと思っております。

牧委員 今の大臣のお話でよくわかりました。おっしゃっていることはすべて間違いないと思います。これを学校においてあるいは家庭において、地域においてきちっと実践していけば、これはすばらしいことだなと私も思いますけれども。ただ、これは栄養教諭の制度だけで何とかなるものではないということもあわせてよくわかったわけで、本当に総合的なそういう教育ができる体制に今なっているのかどうなのか。そういうことこそやはりもう一度取り組んでいただきたいなと、今お話を聞いていて改めて思った次第です。

 例えばの話、この所信の中でも、食育推進というのは一つよく打ち出されていてわかるんですけれども、環境教育というのが後ろの方に幾つかの羅列の中にちらっと出てくるだけなんですね、九ページのところに。環境教育というのも、今大臣のまさに説明の中で、この食というものがどうやって最終的に我々の口にもたらされるのかということを考えたときにも、やはり一つの重要な観点だと私は思います。

 そういった意味で、ちょっと環境教育、我々はわざわざこれも議員立法で推進法を立法したわけですから、そこら辺のところをもうちょっときちっと取り上げていただきたいなと思うんですけれども、どうかお考えをお聞かせください。

銭谷政府参考人 環境教育についてお尋ねがあったわけでございますが、環境教育につきましては、社会科や理科など各教科等における環境にかかわる内容の学習を通じて、その充実を図っているところでございます。また、現行の学習指導要領のもとでは、総合的な学習の時間が設けられているわけでございますけれども、環境問題につきまして、教科横断的、総合的に学習が深められているというふうに認識をいたしております。

 総合的な学習の時間におきまして環境に関する学習を実施している学校は、例えば小学校では約七五%ぐらいの学校が環境というテーマで総合学習を展開いたしております。また、現在、学習指導要領の見直しを検討いたしております中央教育審議会の教育課程部会の報告におきましても、環境教育のさらなる充実ということが審議経過報告で言われておりまして、そういう観点からも、環境教育にはしっかり取り組んでいく必要があると思っております。

 今、持続可能な社会の構築が強く求められている状況にあるわけでございまして、総合的な学習の時間等における教育の改善、教員研修の充実など、各学校における環境教育の一層の充実を図っていきたいと思っております。

牧委員 まさにそういう環境教育の重要性は本当にあると思うんです。これは、一つ、頭で理解することと、やはり実際に体で体験すること、この二通りがあると思いますし、もう一つは、例えば、こういう食育ということをせっかく取り上げられるのであれば、そういうところにもしっかり環境教育とリンケージをさせていただかなければ何の意味もないと思うんですね。

 これは正確な数字じゃないかもしれません、いろいろな統計があると思うんですけれども、例えば、この地球上で今現在約八億人から十億人の人が日常的に飢餓状態にある。毎日毎日、二万四、五千人から三万人近くが餓死しているという実態が報告されているわけですよね。これは一年間に一千万人餓死しているという数字になるんでしょうけれども、食料自給率の極めて低いこの我が国で、毎日毎日一千万人分の生ごみが出ているという実態があるわけですね。我々が一日で捨てている食料があれば、世界じゅうの人が助かる。だから上げればいいという話じゃなくて、そういう実態があるということも、やはり子供たち一人一人にしっかり何らかの形で教えていく必要があると思います。

 となれば、例えば給食の時間に、これは栄養のバランスももちろん大事かもしれないけれども、こういったものが食べられるんだというありがたさを、まず子供たち一人一人がかみしめられるような教育をするところから始まるのが、私は食育のまず大前提だと思うんですけれども、大臣、いかがお考えになりますか。

小坂国務大臣 牧委員御指摘のとおりでございます。やはり食育教育のやり方、また根底にあるものは、幾つものものがございますけれども、その一つは、間違いなく委員が御指摘のように、食への感謝、そして環境に対する配慮、こういった自分を取り巻くものと食との関係について認識を高めていただくことでございます。

 ですから、そういう意味で、食育を通じて御指摘のような環境教育に資する部分もどんどん取り入れていきたい。それは体験的に地域の農家を視察といいますか、見に行って、お百姓さんの話を聞く、あるいは来ていただいて話を聞く、そういう中にもそういった話は入ってくると思いますし、また、そういったものをむしろ意識して取り込んでいくということを地域の食育基本計画または実行計画の中に取り込んでいく、そうして推進をしていくということをまたお願いしてまいりたいと思っております。

牧委員 今のお話に関連して、以前、私もこの委員会でもちらっと聞いた覚えがあるんですけれども、学校給食では、給食の時間に手を合わせて、「いただきます」と言うことをやめさせた学校が幾つかあるというお話を聞いたことがあるんですね、それは宗教的な行為だと。

 ただ、私が今申し上げたような意味で、そういった意味で、学校給食では、給食の時間にみんなが一緒に声をそろえて、そのありがたみをかみしめながら、「いただきます」と言う時間は、私はやはり絶対必要だと思うんですけれども、今、実際どうなんですか、実態は。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 給食の時間に「いただきます」と言うような、食材に関する感謝を表明するというのは非常に意義があることと思っております。小中学校の全国的な実態調査は実施しておりませんけれども、文部科学省におきましては、例えば学校給食指導の手引におきまして、食前食後のあいさつをすることなどを指導しているところでございまして、また、児童生徒用の食生活学習教材の中においても「いただきます」「ごちそうさま」といったあいさつをすることを取り上げているということでございます。

 そういうことを踏まえまして、各学校におきまして「いただきます」といった指導が行われている実態というのはかなりあるのではないか。正確な数字については調査はしておりませんけれども、そのように考えております。

牧委員 別にわざわざ調査していただかなくてもいいですけれども、大臣、ぜひこれは大臣の指導力で励行させるようにしていただきたいと思いますけれども、いかがですか。

小坂国務大臣 今、食に感謝をすること、それから、「いただきます」という言葉を口にして、そして手を合わせるという行為。手を合わせるという行為がそれでは宗教的な行為かというと、私どもは、お願いしますと言うときにも、思わず手を合わせたくなったとか、そういう表現も日本語にあるように、また手話でも、鼻のところから握りこぶしを出して、よろしくお願いしますといって片手で拝むとも見えるようなしぐさをするということも、意思の伝達には使われるわけでございます。そういう意味で、感謝の気持ちを形であらわすには、手を合わせるのは一つのしぐさとしてあり得る方法だと思います。また、はしを親指で挟んで「いただきます」と言う人もいますし、いろいろなやり方はあると思います。

 いずれにしても、「いただきます」というその気持ちを推奨するということは推薦をしているわけです、強制はしておりません。しかし、学校教育の中でそういうものを取り入れてくださいというふうにお願いをしておるところでございまして、それが理解されるように私としても努めてまいりたいと存じます。

牧委員 ありがとうございます。

 ちょっとついでですので、給食にまつわる話でもう一つ。

 実は、私の地元に名古屋市の中央卸売市場というのがあって、先日もそこの鮮魚の卸の社長さんとお話をしていて、ちょっと耳を疑うような話があったんです。

 最近は、パートのおばさんをたくさん雇わなきゃならない。何に使うんですかと言ったら、魚の骨を抜くんですと言うんですね。学校給食用の魚に骨があってはならない、それじゃ子供が食べない、だから学校給食に卸す魚についてはパートのおばさんを雇って骨を抜いているという実態があるそうです。

 これは全国の実態かどうかわかりませんけれども、やはり魚というのは骨があって、その骨をどけながら食べるということも当たり前の話なんでしょうけれども、まず、そういった実態があるのかないのか、ちょっと教えてください。

素川政府参考人 例えば、学校給食で魚の切り身を出すといったときに、骨を取って焼き魚等で出すというような事例があるということは承知しております。全国的な実態調査はしておりませんけれども、そのようなことでございます。

牧委員 承知していたわけですね。

 これは大臣、どう思われますか。こういうのはやめさせた方がいいんじゃないですか。それは確かにパートの雇用創出にはなるかもしれないけれども、私は子供にとっては別にいいことだと思わないんですけれども、いかがでしょうか。

小坂国務大臣 今日の世の中、ニッチとかいいながら、いろいろな商売のネタを探して、どういうふうにしたら売れる商品をつくれるか、みんなが頭をひねっておりますので、いろいろなアイデアが出てまいります。その中から、魚の骨を取ったらもっとたくさん売れるんじゃなかろうかと考える人がいても不思議はないわけでありますし、また、そういうものがあるなら買って使いたいという人がふえるのも、これもやむを得ないことかもしれません。

 ただ、基本的には、社会の実態として、委員が懸念されていることは私も同感ですよ。さっきの、野菜が、ニンジンが木になっていると思うのと同じように、魚というのは骨がないものなんだ、軟体動物なんだと思われても困るので、やはり脊椎があって骨がある、そういう魚があり、また骨が少ない魚もあり多い魚もある、そういう認識を魚の種類とともに本当は知ってもらいたい。コイというのは小骨が多い、また、タイというのは骨が刺さったらなかなかとれない、かたい骨だ、そういうことの性格も知ってもらう中で、自分の身を守る、そういう経験というものが積まれていくということも事実です。

 ですから、そういう意味では、余り極度に手を加えて、お母さんが全部骨を取ってからしか子供に上げないということになると、同じような弊害が出てくると思います。それは程度問題だと思います。ですから、きょうのお魚は骨がないから安心して食べなさい、安心と言うかどうかはともかくとして、きょうのは骨があるから注意して食べなさい、そういうものが交互に出てくるぐらいの環境の方がおっしゃるような意味ではいいのではないかと私も思います。

牧委員 実際に、小学校の子供たちに鶏の絵をかいてみなさいというと四本足の鶏をかいたり、そういう実態が多々あるそうです。そういった観点からも、せっかく食育というのであれば、ぜひもう少しそういった配慮もしていただけるようにお願いを申し上げたいと思います。

 次に、学校の安全対策について、この所信の三ページに触れられているんですけれども、ちょっと私、気になったので、お聞かせをいただきたいと思います。

 この「学校や通学路において大変痛ましい事件が続発していることを重く受けとめ、」というところから、同じページの中ごろですね、「保護者や地域の方々から信頼される安全、安心な学校づくりを進めます。」というところまでの文章なんですけれども、気になったところが、「政府一丸となって、」「取り組みを強力に進めます。」それからもう一つは「国土交通省と連携し、」というふうになっておりますけれども、そこら辺のところを、どういうふうに連携するのか、あるいはどうやって政府一丸となってやるのか、ちょっと私、具体的にイメージができませんので、簡潔に御説明をいただきたいと思います。

小坂国務大臣 簡潔にということですが、私の方から答えさせていただきます。

 政府一丸となってというのは、各省がそれぞれの施策を、同じ気持ちでそれを推進していくということでございまして、子供たちの安全な環境をつくる、通学路においても、学校においても、子供たちの遊び場においても、それぞれの場でそれを担当する省庁が力を合わせて安全な環境をつくり出すということが、一丸となって取り組みますという言葉に反映されております。

 また、国土交通省と連携してというのは、建物の耐震推進という形で国土交通省も予算を持っているわけでございます。国土交通大臣とお話しする中で、耐震診断というものは今の文部科学省の予算だとまだずっとかかっちゃう、何とかこれを単年度で済ませる方法はないだろうかということを話し合った結果、それじゃ十八年中に終わらせちゃいましょう、それは私どもも協力しますということで、文科省の予算だけでなく、国土交通省の建物耐震診断のそういう予算も提供していただいて、そして、学校現場、この設置者が都道府県あるいは市町村、こういうところへも、国土交通省の施策も使っていいというふうに国土交通省から言われていますよということも通知しまして、そしてそういうものも使いながら耐震診断を迅速に進める。

 こういうことも踏まえて、そういうものも含めた上で、もっとほかにもあるだろうということで各省と連携、また、そういう個別のものについても言及して国土交通省という名前を挙げさせていただきました。

牧委員 今の大臣のお話を聞いてちょっと安心したんですけれども。ちょっとこの文章がよくないですね、いかにも中央省庁だけでやるかのような文章だったものですから。今回の法改正でも、耐震補強やらあるいはアスベスト対策、補助金から交付金化への流れというのがあるわけで、当然地方の取り組みというのが一番重要になってくるんだと思います。そういった流れとこの政府一丸になってという話が、何かいかにも矛盾するかのように私には思えたものですから、あえて答弁を求めた次第でございます。

 ついでながら、現在のその耐震化の進捗率あるいはその耐震診断の進捗率も含めて、我々も今、民主党としての安全対策基本法をこしらえておりますけれども、進捗率については、きょう、あす来てもおかしくない災害ですから大変気になっているところではありますけれども、今、現状はどんなような数字になっていますでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十七年の調査、これによります結果を申し上げたいと思いますが、一つ初めに耐震診断の実施率でございますけれども、昭和五十六年以前の旧耐震基準で建てられた建物、これは全部で八万三千六百六十三棟あるわけでございます。このうち、耐震診断の実施済みの棟数は四万七千八十一棟。したがって、五六・三%の耐震診断実施率と相なります。

 もう一つ、耐震化の進捗状況ということでございますが、これは、全体の棟数が十三万棟余りあるわけですが、このうち耐震性がございますのは、耐震の補強等も進んだ結果で、六万七千七百五十二棟ございます。したがいまして、耐震化率で申し上げますと、五一・八%という状況でございます。

牧委員 私、これはやはり、予算の配分のプライオリティーの問題なんでしょうけれども、この五一・八%という数字は憂慮せざるを得ない数字だなと認識をいたしております。

 例えば、地元の小学校の耐震化工事、これは地域のある専門の方がごらんになって、ちょっと余計な工事までしているんじゃないかなというような事例も実際にあるわけです。我々からすれば、きょうにもあすにも来ないとも限らない大震災を目前にして、例えば、見てくれは悪いけれども、ちょっと突っかい棒をするような、そんな工事だけでも、とりあえず全国あまねく、優先的に、これは国が責任を持ってやってしまえばいいのになという素朴な疑問を抱いているんですけれども、そこら辺のところ、何とかならないものなんでしょうか。

小坂国務大臣 今担当の方から答弁させていただきますが、耐震化ということは、完璧な耐震化を、そして学校に通う側の皆さんからの要望としては、建てかえてくれ、そして完璧なものにしてくれというような要求がどうしても出てくるんですね。それで、一方、予算を持っている側からすれば、迅速に進めるためにはいわゆる耐震補強で対応してもらいたいという気持ちを持つわけです。

 ところが、予算を全部私どもが設置者にかわって支出して耐震化を促進するという建前になっておりませんで、やはり、設置者を通じてそれをやっていただく形になりますものですから、どうしても現場の意向としてはそういった建てかえというものを希望するようなものがふえる。

 また、委員が御指摘のように、簡易な方法で何かできないかといえば、いろいろあると思うんですが、一方では、突っかい棒に足をひっかけて転んでけがをすれば学校の責任になるということもありますので、やはり安全面もちゃんとやらないといけない、余分な部分もそこに加えたりすることも出てきてしまうんですね。我々の意思と若干少しずつ違った部分もありますが、しかし、耐震補強を優先してやって迅速にやってほしいという要請は私どももこれから出して、さらにそれを推進したいというふうに私も考えております。

 また、担当の方から答弁させます。

大島政府参考人 ただいま大臣からも御説明がございましたが、耐震化の推進に際して、従来ややもすると改築を主体とするという傾向があったことは事実でございまして、これに対して、私どももさまざま、耐震化の推進のために学識経験者等による有識者会議がございまして、これで協力者会議による検討も昨年進めてまいりました。

 その中におきましては、次のような提案が一つございます。いわゆる「建て替えから改修による再生整備への転換」、こういったものが提言されているところでございまして、より効率的に耐震化を進める、こういう趣旨から、工事費が安価でかつ工期の短い改修方式、こちらに転換すべきというような提言を受けております。

 こういった趣旨も踏まえて私どもも取り組んでまいりたい、かように考えているところでございます。

牧委員 もう一つ、ちょっとつけ加えてお聞きしたいと思います。

 幼稚園の建物の耐震診断あるいは耐震化工事、この辺についてはどういうふうになっているんでしょうか。

銭谷政府参考人 幼稚園の耐震化の状況でございますけれども、平成十六年十二月に行った調査では、耐震化を行った幼稚園は、公立で四五・五%、私立で五四・六%でございます。平成十四年度の調査と比べますと、公立は〇・三%、私立は四・八%伸びている状況でございます。

 それから、耐震診断が必要な建物のうち耐震診断を行った幼稚園は、公立が二六・八%、私立が二五・八%でございます。

 公立幼稚園が私立幼稚園より耐震化及び耐震診断率が低いのは、公立幼稚園が昭和五十六年以前に建てられた建物の占める割合が多いということが理由として上げられるわけでございますが、公私立幼稚園施設の耐震化及び耐震診断は、必ずしも進んでいないというふうに受け取らざるを得ないわけでございまして、私ども、耐震診断を未実施の幼稚園施設の設置者に努力を求めることを含め、今後とも幼稚園施設の耐震化が進みますように努めてまいりたいと思っております。

牧委員 先ほどの義務教育の場合もそうですけれども、幼稚園もそうです。

 例えば小中学校の場合、やはり、さっき大臣のお話にもあったように、設置者のいろいろな都合だとか希望だとかがあって、その部分で、もういずれ、例えば何年か後に建てかえだからとか、そういうことで進捗していない部分が多々あると思います。幼稚園の場合も、特に私立幼稚園なんかですと二十五年で建てかえの補助金が出るんですね。ちょうど、もう、じき、どのみち建てかえだというようなところもかなりの数あると聞いております。

 そういった先方の都合も、それはもちろん尊重しなきゃいけないんでしょうけれども、やはり、これは一番弱い人たちを守るという観点からも、そこら辺のところをきちっと国がもっと主導してやっていただきたいなと希望を申し述べさせていただきたいと思います。

 それからもう一つ、安全に関して言えば、やはりアスベストの問題というのは無視できないと思います。これの現状と、これからどういう行動をとっていくのか、まず概略をお聞かせいただきたいと思います。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 アスベストの対策についてでございますが、その前提としてのまず実態調査ということで、文部科学省におきましては、昨年の七月の末から吹きつけのアスベスト等の使用実態調査を実施したところでございます。十一月の末にその結果を公表してございます。

 調査対象の学校等は約十五万一千機関ございまして、このうち調査が完了した学校等は約十三万七千機関でございます。完了率でいいますと、九一%という状況になります。これら調査が完了した学校等のうち、損傷、劣化等による石綿等の粉じんの飛散によって暴露のおそれがある部屋等を有するもの、これが七百七十一機関という報告がございます。これらの機関につきましては、既に学校等の設置者におきまして使用禁止にするなどの適切な措置が講じられていることを確認してございます。

 文部科学省におきましては、これらの調査結果等を踏まえまして、平成十七年度の補正予算におきましてアスベスト対策として七百四十五億円を確保しました。これによりまして、暴露のおそれがある部屋などについて速やかに対策を行うこととしているところでございます。

牧委員 これまたゆっくりその時間をとってじっくり詰めていきたいと思いますけれども、アスベスト対策、これは簡単に言葉で言い尽くせるものじゃないと思います。その廃棄する場所ももう本当に限られているわけですし、実際に、例えばその表面を吹きつけでコーティングして密封してしまうといったやり方も非常に低廉なコストでできるという、しかも、自治体によってはそういう取り組みをしているというところも聞いております。そこら辺のところの情報を全国レベルで共有していただくのは、やはり中心になっていただくのは文部科学省ですから、またこの辺のお話も折を見てしたいと思いますけれども、そういったつもりで取り組んでいただきたいと思います。

 時間がございませんので、最後に、大臣の所信の中で私なりに個人的に気になった部分だけちょっとお聞かせをいただきたいと思うんですけれども、九ページ、「生涯学習の振興と若年者の人材育成や就業促進」というところに、「男女共同参画社会の形成を推進する教育、」という文言がございます。まあ、男女共同参画社会が形成されつつある現状だと思いますけれども、その形成を推進する教育というのは一体どういう教育のことを言うんでしょうか。私はちょっとイメージできませんし、下手にイメージをすると、最近よく行き過ぎたジェンダーフリー教育というのが取りざたをされますけれども、この文言を見ると、ややもするとそういったものを想像してしまうんですけれども、これはどういう意味で使われたんでしょうか。

田中政府参考人 男女共同参画社会の形成を推進する教育についてのお尋ねでございますけれども、御案内のように、男女共同参画社会の実現を目指しまして、男女共同参画社会基本法ができておりまして、そのもとで男女共同参画基本計画がつくられておるわけでございますけれども、私どもといたしましても、この基本計画に基づきまして、男女共同参画を推進し、多様な選択を可能にする教育、学習の充実等に努めておるところでございます。

 具体的には、例えば学校教育の中で、児童生徒の発達段階に応じて、男女の平等あるいは相互の理解、協力について、適切に指導を行う。あるいは、男女がともに、それぞれの生き方、能力、適性を考えて、固定的な性別役割分担にとらわれることのないように、主体的に進路を選択する能力や態度が身につけられるように進路指導や就職指導を充実するといったようなことを取り組んでおるところでございます。また、社会教育の分野におきましても、講座の開設あるいはその家庭教育手帳の配付等を通じまして、男女がともにその家庭教育に参加するための学習機会の充実等に取り組んでおるところでございます。

 以上でございます。

牧委員 ちょっと今の説明では全然具体的な中身というのがわからないんですけれども。非常に私、そういうわけのわからないことをやられると問題だなと危惧をしております。改めてまた時間をいただいて、その中身についてじっくりお聞かせをいただきたいと思います。

 時間が来ておりますので、最後に。

 大臣、この所信の中でも教育基本法の改正に向けてのお気持ちを表明されておりますけれども、こう言ったらあれですけれども、小泉内閣はこの九月までということで、その後も大臣が留任していただければ一番いいんですけれども、ひょっとすると、この通常国会だけということになってしまうと、この決意が実を結ばないということになってしまっても、私も残念でならないので、ぜひこの国会における基本法制定に向けての大臣のお考え、決意を改めてお聞かせいただきたいと思います。

小坂国務大臣 平成十五年三月に中央教育審議会の答申をいただきまして、そもそも昭和二十二年の教育基本法の制定以来改正がされておらない、そして、それにもかかわらず、社会の状況が大きく変化して、教育に対する要請もいろいろ変化しておる。

 そういうことを考えますと、委員御指摘のように、今通常国会というのは一つの大きな機会だと思っております。与党における教育基本法の検討ということが進んでおりまして、御党においてもそういったものが進んでおることと思います。そういった環境をしっかり私どもとして把握しながら、今国会に法案が提出できるような環境が整うことを望んでおります。

 そういう意味で、提出をされたならば、この成立に向けて全力を尽くしますが、委員におかれましても、御激励を賜りましたので、ぜひとも成立に御協力いただきますように今のうちからお願いを申し上げて、答弁にさせていただきます。

牧委員 ありがとうございました。

遠藤委員長 横山北斗君。

横山委員 横山北斗といいます。

 二月十七日、またきょうも大臣の所信表明で、天然資源に恵まれない我が国にあって、人材こそが国の宝である、こう述べられました。このような考え方に立って練られた政策文に対して、私は特別な異議を唱えるものではありません。しかし、幾つかの点について、大臣また政策形成にかかわってこられた方々にお尋ねしたいこと、また、私の考えもどうか聞いていただきたいという思いがありまして、本日、質問に立たせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

 最初の質問は、大臣の所信表明の中にもありました教職大学院の創設という点に関してです。教職大学院をつくる目的、これは一つには、四年間、教育学部で学び、教員になるための勉強をして、さらにその上でまた二年間大学院で研さんを積んでから現場で教えるという目的もあると思います。またもう一つは、現職教員の方で、もう一回大学院に入ってより実践的なことを研究し、学んで、そして再び教育現場に戻る、そういう意図もこの教職大学院の創設にはあるということも審議会の答申などを見ても書かれております。

 改めまして、大臣の方からこの教職大学院創設の意義をお伺いしたいんですが、その際、現に今教育学部の上には普通の教育学研究科という大学院があります。これも、大体九七、八年ぐらいに大学院教育の充実というようなことを掲げて、当時大学院のなかった国立大学の教育学部に、盛んに教員養成系大学が大学院をつくったという経緯があります。

 そうすると、そういう今まである大学院との関係をどうするのか。さらに、こちらの教職大学院制度の創設ということで文科省からいただいたペーパーには、教職大学院においては、給与、採用選考等の処遇についてなんという規定もあるんですね。ところが、前につくった大学院の方は、教育学研究科の方にはそういうものは特にないと記憶しております。

 そうしたら、単純に考えれば、前につくった大学院、これも国立大学の先生たちが一生懸命、無理してつくったようなところもあるんですね。法科大学院のときなんかにもありましたけれども、本当に自分の研究とはちょっと違う論文も書いて、それで研究業績を満たして資格教員として認められたり、そんな苦労をしながらつくった大学院でもあります。

 そういうものとの関係も含めて、教職大学院をつくる意義について御説明願えればと思います。

小坂国務大臣 委員の御指摘のように、既存の教育学部に大学院が存在するというところとの違いというのは、この名前からするとなかなかわかりにくい部分はありますが、一言で申し上げるならば、既存の教育学部に設置された大学院は、理論面での講義が中心になっております。それに対して、これから新たに設けようとしている教職員の大学院というのは、実践を重視するという点に大きな違いがございます。すなわち、全般的に申し上げると、既存の修士課程も含めた現在の教育養成課程においては理論面の講義が中心であるわけですけれども、学校現場での実践力の育成が不十分である等の問題が指摘されているということがございます。

 また、現在の学校におけるさまざまな課題を解決するためには、力のある、技量等のある新人教員の養成をする必要がある。養成に長い時間をかけるというよりも短期にしっかりとした実力をつけていただきたい。そういった要請もあることから、地域や学校において指導的な役割を果たし得る教員の養成が必要だ、このように考えて、こういった環境から、教職課程の改善のモデルとして、学校現場における実践を重視する、また各学校や地域におけるリーダーとしての専門的な知識、技能を有する教員を養成する、そういった仕組みとしての教職大学院というものを設置しよう、こういうことになったと了解をしております。

横山委員 ありがとうございます。

 私、お尋ねしたいのは、そういう教職大学院、専門的職業者を育成するものとして意識されているという理解でよろしいと思うんですが、そういった教職大学院の制度的な面について、では、例えば、もう既に発足している法科大学院とはどう違うのか。例えば法科大学院ですと、法学部のない大学にもつくることを認めていると思います。あるいは、大学と関係なくて、いきなり法科大学院大学というのをぽんとつくることができる。

 そうすると、教職大学院というのはそれとは違うものなんでしょうか。あるいは、この答申を見ると大体のイメージはわくんですが、教員免状がなくてもそういうところに入れるのかとか、そういうことを含めて御説明を願えればと思います。

石川政府参考人 今お話のありました法科大学院につきましても、いわゆる専門職大学院という新しく発足をいたしました大学院、高度専門職業人を養成するという目的を持った大学院の一つのジャンルでございます。そして、今先生がお話になっておられます教職大学院につきましても、この専門職大学院の一つということで、同じく高度な専門職業人を養成するという使命を持っているものでございます。

 そして、法科大学院につきましては、もちろん法学部を出た方というものも中心的な入学者として考えられておるわけでございますけれども、幅広い人材を得るというようなことで、一たん社会人になった方、あるいはほかの学部を出た方、そういった方の大勢の入学も予定して制度設計がされているということでございます。

 この教職大学院につきましても、教育系の学部を出た方のみということでは必ずしもございませんで、そういった意味では、幅広い人材を得ようというような意図を持っておるところでございます。

横山委員 そうすると、問題点となるかどうかわかりませんが、教育学部で四年間学ばなくとも、よその学部で学んだ人でも二年で教員免状が取れてしまうということになりますよね。そのあたりの、四年間教育学部で学んでいるのと、こういう制度ができれば二年で取れる人も出てくるという点の矛盾というか、教育課程でどう考えているのかなという思いは少しあります。しかし、それはいいです。

 それ以外に私が質問したいのは、実は文部科学省のホームページから資料をとって、本当はこういうものをコピーして皆様方にお配りするのが丁寧かと思ったんですが、今文部科学省の方に直接口頭でお答え願いたいんですが、ここ十年ぐらいの教員採用の合格者の推移、とりわけパーセンテージでわかりやすく示していただければいいかなと思うんですけれども、年度によって合格率に大きな差があるということを知りました。その点について御説明願いたいと思います。

小坂国務大臣 教職大学院では二年で免許が取れるかというと、必ずしもそうではないので、その点についても今答弁の中に含めさせていただきます。

石川政府参考人 先ほどあわせて御説明をするべきであったかとも思っておりますが、例えば、教職大学院の方にほかの学部を卒業してお入りになった方、そして免許状を取って教員になりたいという意欲を持っておられる方、こういったケースが、先ほど私も申し上げましたけれども、当然想定をされるわけでございます。

 この場合は、教職大学院の在学中に、大学院におきます所定の単位の修得に加えまして、本来学部段階で履修すべき一種免許状の取得に必要な所要の単位を修得するということがやはり必要になってくるわけでございます。

 したがいまして、例えば、教職大学院の科目の履修と並行いたしまして、一つには学部の教職科目を履修いたしますというような形態もありますし、また、教員免許の未取得者を対象にいたしまして教職科目を履修させるために大学が設置をしております一年間の課程、教職特別課程といったものがございますけれども、ここにおきまして所定の単位をあわせて履修するということで免許状取得に必要な単位を修得するというようなことも可能だと考えております。

 ただ、これらの単位すべてを二年間で取得するということは、これは事実上困難でございます。そんなことから、大学の判断によりまして、こういったケースにつきましては、例えば三年間の長期在学コースをあらかじめ設定する、こういうようなことによりましてこのような方々のニーズにおこたえをするというようなことなどが考えられるところでございます。

銭谷政府参考人 ここ十年間の公立の小中学校の教員採用者の合格率の推移というお尋ねをいただいたわけでございますが、手元にあります資料が競争率で用意しているものでございますので、いわば競争倍率でお答えすることをお許しいただきたく存じます。

 平成七年度以降の公立小中学校の教員採用者の競争率でございますが、まず、平成七年度は、小学校が六・二倍、中学校が八・八倍でございました。その後、平成十年度から十二年度の間は特に競争率が高くなりまして、ピークが平成十二年度でございますけれども、小学校が十二・五倍、中学校が十七・九倍ということになっております。その後、徐々に競争率が下がる、緩和の傾向にございます。ちなみに、平成十七年度では、小学校は四・五倍、中学校が十一・七倍という競争率でございます。

 なお、受験者数そのものは、平成七年度以降、年度により多少の増減はありますけれども、長期的には増加傾向にあるわけでございますので、採用者数の変動が非常にこの間大きかったということが言えるかと思います。

 ちなみに、採用者数について言いますと、平成七年度が、小学校が約六千七百人、中学校が五千四百人でございましたけれども、平成十年度から十二年度までの間、採用者数が減少いたしまして、平成十二年度は、小学校が約三千六百人、中学校が二千六百人ということで半分ぐらいになっている。現在はまた増加に転じておりまして、小学校が約一万一千五百人、中学校が五千人程度ということになっております。

横山委員 どうもありがとうございました。

 ということは、平成七年と比べて平成十二年だと倍近く違うわけですよね。さらにその二年後だとまた平成七年ぐらいの水準に戻るということであれば、また、十七年度が四・五倍という数字を今お聞きしました。そうすると、最高時の三分の一ですよね。

 つまり、この平成十一年、十二年にちょうど大学四年生で受験生だった人たちというのは、教員の採用を抑制する、そういう時期があったわけですね、少子社会の影響で。まさにそのあおりを受けて、つまり、四年早く生まれていればな、二年遅く生まれていればなという学生たちがいたわけですね。私は、それも運命だではなくて、せっかくこういう教職大学院制度のようなものをつくるわけですから、ぜひ生かして、もう一回チャンスが与えられればいいなというふうに思っております。

 私は青森県ですが、やはり地元の国立大学で、十五年ぐらい前だと、教員採用試験といえば教育学部卒業者のもう八〇%ぐらい合格していた。それが、二〇〇〇年の前後になると一五%とか、もう本当に学部をなくした方がいいんじゃないかというぐらいの危機的状況になっていたんですね。それは、要は合格者数が少ないというか、採る人を抑制したからなわけで、それによって教員の夢をあきらめざるを得なかった人、本当にあと二年遅く生まれていればよかったというような人たちに、この教職員制度を利用して、もう一回夢をあきらめないような方法が与えられたらいいなということを、私はこの制度ができるということを聞いたときに強く感じました。

 それは私の個人的な意見なんですが、その上で次の質問に移らせていただきます。

 今度、教職大学院で現役の先生を鍛え直すということをやるのはもちろん大いに結構なんですけれども、では、この教職大学院で教える先生たちが、そもそもそういう教えるだけの資質というか力が約束をされているのかどうか、それはどうやって判断するおつもりなのでしょうか、それについてお尋ねしたいんです。

石川政府参考人 私の方からお答えをさせていただきます。

 現在検討されております教職大学院は、学校現場が抱える諸課題に対応できる力量のある教員を養成するというような観点から、今お話しございましたように、理論と実践の融合を目指しましたような実践的なものとする、そして指導方法につきましても、ケーススタディーですとかフィールドワークなど実践力を育成する、そういったためにふさわしいものとする必要があるわけでございます。そういった観点から、教職大学院につきましては、学校の教員など、そういった実務経験を有するいわゆる実務家教員といった者を必要専任教員数の四割以上置くというようなことにする予定でございます。

 実務家教員といたしましては、例えばすぐれた指導力を有する教員ですとか、あるいは指導主事の方々、こういった教職経験者の方々が中心になるといったようなことが想定をされますけれども、このほかに、医療機関でありますとか、家庭裁判所あるいは福祉施設など、教育隣接分野の専門家なども幅広く考えられるところでございます。

 各大学におきましては、教育委員会それからこういった関係機関等との連携協力によりまして、学校現場等における専門的な識見や経験をもとに、大学院において適切な教育、教授をするということができる質の高い実務家教員の確保を図るということが可能であると思っておりますし、またそういった方向でそれぞれの大学で努力がなされる、このように考えております。

横山委員 よくわかりました。

 私が常々考えていることは、教職大学院にしてもあるいは普通の大学にしても、前の文部科学の委員会質問でも、私、同じことを質問したんですけれども、やはり事前にはきちんとチェックをして、その必要な大学、学部を立ち上げるための教員数の確保、土地面積、それから蔵書の数、論文数、さまざまにチェックが入る。しかし、四年たってしまえば、その四年目にもう一回見に来てきちんと指導したとおりやっているねということがわかれば、あとは、その後新しい先生を採用したりすることも、基本的には、今ようやくこの事後評価システムというものも始動し始めましたけれども、現状においては、つくるときにはうるさいけれども、できてしまった後にはそこの大学の裁量にほとんど任せるという傾向が非常に強いんです。

 ですから、結果的に、その大学は生き残りのために、やはりどうしてもいろいろな学生から興味がある試みをやらなければいけない。例えば、地方の大学であれば、地元のテレビに出ている芸能人で弁の立つ者を助教授や教授として雇い入れてみたり、そうすると、学問業績という点で当初の水準を維持できない大学になっているようなケースもあるのではないか、そういう懸念が十分にあります。また、うちの大学は、いろいろな、さまざまな国家試験がございます、そういう国家試験に合格するためにを売りにするような大学であれば、気がついてみれば専門学校のようになっている大学、そういうところが出てくる可能性も十分あるわけですね。

 そういう点で、教職大学院をつくるのはもちろん、そのために優秀な人材をそろえることは必要ですが、その人材が何年たってもきちんとそこで教えるにふさわしい資格を有しているというものが担保されていかなければいけないと思うんです。

 今お話しの中に、実務家教員、これを四割はそろえるということがありました。そうすると、実務家教員の種類はさまざまだと言いましたけれども、主に現場で教えていた先生を中心に採用するということになってこようかと私は思うんですけれども、ここで重要なことは、例えば、二十二歳で小学校、中学校の教壇に立って、非常におもしろい授業で学生にも人気があって、そういう方が三十歳ぐらいになったときにこういった教職大学院の助教授とかに採用されて大学の教壇に立つ。それからもう二十五年間、例えば五十歳になっても五十五歳になってもずっとそこで教え続けているということであれば、常識で考えればとうに現場感覚は麻痺してくるだろうと私は思うんです。

 実際、今現在の教育学部の大学院や教育学部の教員の中にも、現場で教えていて、教育学部で教職指導、学生に対して授業の教え方のそういうテクニックの方を教える先生がいますが、そういう人の中に、国民的な人気のドラマでいえば、もう二十五年ぐらい前に金八先生というのが大はやりしました。去年もテレビでやっていましたけれども、毎年のように、この中から未来の金八先生が出たらいい、出たらいいと言い続けている人だっているんですね。でも、そんな、金八ってだれというような学生だってその間にはいるんですよ。本当にそういう現場感覚を失っている。

 だから、実務家教員というのであれば、私はそれが非常に重要だと思うんですけれども、この点、大臣はどうお考えでしょうか。もう本当に、簡単で結構です。

小坂国務大臣 委員の御指摘のとおりで、横山委員は教授としての御経験もおありですから、何十年も同じノートをもとに教授を務めていらっしゃる方なんというのは、横で見ていらっしゃって、これではだめだということもあったんだと思います。

 おっしゃるとおり、現場の感覚を失ってしまうということは非常に恐ろしいことですね。政治家もそうであります。大臣になって中央にばかりおって地元のことを忘れると危なくなるわけでして、余計な話でございますが、やはりすべての職業はそうだということを言いたいんですね。

 やはり教授も同じでございます。実務家の教員を雇っても、それが現場感覚を失ってしまってはなりませんので、任期制というものをうまく生かして、そして、それも長い任期ではなくて、一定の任期がたったら現場へ戻って、現場感覚をまた持って、その経験をもとにさらに新たな教員養成に取り組んでいただく、そういうサイクルをつくるような、そういうことを考えていきたいと思っております。

横山委員 今大変いいお言葉をいただきました。私も、その任期制度について、これがもう何年か前にできて現実どれぐらい運用されているのかということも定かではありませんが、ぜひそれを利用すべきだと思います。

 今現在も、教職大学院はもちろんですが、教職大学院に限らず教育学部の教員の中にも、例えば、社会科教育、理科教育、国語教育、いろいろとございます。社会科教育であれば、社会科教育の中に歴史学の先生、地理学の先生、それから政治学の先生、法律学の先生、哲学の先生と、それぞれ高等学校の政治経済や現代社会、地理、歴史、それから倫理、そういった科目に対応して専門分野の先生がおられます。と同時に、地理や歴史をどういうふうに学生たちに伝授するかという授業方法論を教える教職教育の担当の先生がおられます。

 こういった先生方、特に教職教育担当の先生方が、授業実践で非常におもしろいことをやっているというので教育学部に採用されて、やはりそこで十年、二十年と過ごすうちに、いつの間にか自分の使命を果たせなくなっている人というのは大勢いるんですね。

 私は、ぜひ、今文部科学大臣のお口から出たとおり、その任期制度というものを利用するように、現段階ではそういう案はこちらの審議会の答申などを見ても出ておりません、早急に進めていただければ大変うれしいと思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 所信表明の中に私学振興というものがありました。私学振興というのは常に言われる話なんですが、これも青森県の話でちょっと恐縮なんですが、青森は長いことずっと、医師不足もそうですけれども、薬剤師不足とか弁護士過疎とかいうことが言われてきました。

 それで、その青森県に、弁護士がいない、薬剤師少ないという中で、医薬学部を持った大学もなければ、実は法学部もないんですね。しかし、市立の大学はつくりました。県立の大学もつくりました。県立の大学では、今流行している、いろいろな大学にできた社会福祉関係の学部をつくる。市立の大学では経済学部をつくりました。

 経済学部というのは、その周囲にある私立大学にいっぱいあるんですね。どういう意図でそういうことになったのかなと。普通に考えれば、青森にないんだから法学部をつくればよかったのにな、薬学部をつくればよかったのにななんという思いで見ていたんですが、それが二年前に私立大学で薬学部をつくったところがあります。ただ、私は、そういうことに対して、本来であれば、薬剤師がいないんだからということで、国や県や市町村が積極的にその問題に取り組まなければいけないと思うんです。

 ですが、それを行わないような現状の中で、それをやってみせた私学に対して、私は、そういう努力に対しての具体的な形での褒美というか、言葉は悪いですけれども、助成金制度などが充実されてしかるべきだという考え方を持っておるのです。つまり、そうでなければ、いわゆる民間活力というものもまた活性化していかないのじゃないかなという思いを抱いております。そういう形での補助金というのは、青森に限らず、全国で交付された例とか制度とか、そういうのはあるんでしょうか。ちょっとお尋ねしたいんです。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 私立大学の薬学部についての御紹介がございましたが、近年、医療技術の高度化や医薬分業の進展などを背景に、薬剤師は医療現場でこれまで以上に積極的な役割を果たすことが求められるところでございまして、医療人として一層高い資質を備えた薬剤師の養成を図るため、薬剤師養成のための薬学教育を平成十八年四月から六年制の学部・学科において実施されることになったところでございます。

 私学助成は、私立学校の果たす役割の重要性にかんがみ、私立学校の教育研究条件の維持向上や、学生、保護者の修学上の経済的負担の軽減などに資するため、私立学校振興助成法に基づいて行っているものでございまして、私立大学等経常費補助金の配分におきましては、各私立大学が教育研究に実際に要する経費に配慮して配分を行っているところでございます。薬学部につきましては、医学部や歯学部に次いで高い補助単価を適用しているところでございます。

 ただ、薬学部で申しますと、現在、全国に六十一大学ございますが、そのうち国立が十四大学、公立が三大学、私立が四十四大学ございまして、全体の七二%、約七割が私立の薬学部、こういうことになっております。

 薬学教育において私立大学の果たす役割は、それぞれの私立大学、大変大きなものがあると考えておりまして、これは特定の私立大学は特にというよりは、すべての私立大学がそれぞれの教育研究の実施を通して地域に貢献しているものと考えているところでございます。

 私どもといたしましては、私学助成を初めとする施策の充実に努め、私学の振興に今後とも努力してまいりたいと考えているところでございます。

横山委員 今のお話というのは薬学部のことを中心に話をしてくださいましたけれども、例えば、がん研究のために国が助成金を充実させるとか、国として、国民のことを思って、どういう研究分野を充実させたらいいかというような中で交付される補助金なわけです。

 私は、例えば都道府県に二つも三つも薬学部があるようなところだってあると思います。青森県の場合には、たまたま薬剤師不足という状況の中でそういう薬学部をつくったという点を評価しているわけです。よそにもそういう事例は、薬学部に限らず、ほかの分野で、それこそもう商人の町なのに商学部がないとか、そんなことだってあると思うんですよ。

 そういったいわゆる地域振興ということに対して、みずから努力をしたところに今までとは違う新たな補助金制度を考えていく。補助金じゃなくてもいいです。何らかの形でのそういう支援を考えていく、国から地方へというような考え方の中で。より積極的に考えていくような教育の資金の活用の仕方ということを考えていただけないかなという意図での質問であったんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

遠藤委員長 金森私学部長、質問に的確に答えてください。

金森政府参考人 失礼をいたしました。

 お答えを申し上げます。

 私学助成におきましては、例えば私立大学の補助で申しますと、一般補助と特別補助というのがございます。一般補助というのは、基盤的な助成として教職員や学生の数をもとに配分をいたしますけれども、特別補助の場合には、例えば経済的に修学困難な学生に対する授業料減免事業をやっている大学への支援とか、あるいは地域の活性化や生涯学習ニーズへの対応など、社会的要請の強い特色ある教育研究への支援を充実するものでございます。

 したがいまして、先生御指摘のありましたような、特にその大学で教育研究に御努力されている部分につきましては、こういった特別補助という中で対応していくというふうに考えているところでございます。

横山委員 理解いたしました。

 その補助金の使い方、私学助成ということに関しまして、もう一つ私なりの考え方を話をさせていただきたいんですが、厳しい財政事情の中で、私学助成についてもまた例外ではない、とりわけ都道府県の予算なんかでは出せないというような形で、本当に聖域なき改革の中での一律カットというようなことも実際にあります。しかし、私は、公教育の方を充実したくてもさせられないような、そういう財政事情があるときにこそ、私学の教育のためにお金を使うということはマイナスではない、そういうふうに考えております。

 例えば、地域政策において、具体的な企業名を挙げるのはあれですが、貧困地域があって、その貧困地域に二つぐらい自動車工場を進出させれば、その工場の進出したところにはしばらくの間不動産の税を課さないとか、地元の人を一人雇えばそれによって幾らかの補助金を出すとかいうような形で地域振興策を進めている国もあります。片方の工場が傾けば、その工場を助成金で支えるというようなのがいわゆるニュータウン政策なんかの一つの例だったろうと思うんですね。

 ところが、一九七九年にイギリスに登場したサッチャー政権、こういう改革はやめてしまったように記憶しています。むしろ、A工場とB工場があって、A工場が傾きかけていたら、A工場に補助金を出すのではなくて、業績のいいB工場の方に逆に補助金を出して、もうかるところをもっともうけさせてやって、そのB工場に第二工場、第三工場をつくらせる、そうすればより地域も雇用もよくなるだろうという発想で進めたのがサッチャーの民営化政策だったろうと私は思っております。

 同じ時期、日本では、今そこに、こっちを見ておられますが、中曽根総理大臣が民営化をやって、今回の郵政民営化で大勝した自民党と同じように自民党があのとき圧勝しました。

 結局、そのときのやり方として、つまり、限界的なA工場を助けないで、よりもうかっているB工場に第二工場、第三工場をつくらせる。そうすると、将来的には、補助金を使ってもうけるところをよりもうけさせて、そこに雇用を吸収するというやり方によって、補助金が必要なくなる。つまり、補助金をなくすために補助金を使うというような試みを行ったわけです。

 これを、例えば私学助成に例えるのであれば、都合がいいような話に聞こえるかもしれないが、薬学部を育てるために補助金を使う。そして、その薬学部が補助金を得てしっかりとした学部をつくり、そして優秀な薬剤師を地域に輩出していく過程で、その薬剤師たちがやがて寄附金をもってその学校に恩返しする。そうすると、当初の間薬学部をつくるために必要だった補助金は、将来的には不要になる。これが国公立の薬学部であれば、そういう関係の学部であれば、それを助けるためにずっと補助金を使い続けなければならないのに、私学だとそういうことが要らなくなるという試みをサッチャーなんかは積極的に展開したんですね。

 ですから、中曽根政権が三百議席とった後、しばらくして自民党は野に下りましたけれども、小泉総理が郵政民営化であれだけ圧勝した後に、そういう補助金をなくすために補助金を使うような試みができれば、サッチャーはその後、九六、七年、十七年ぐらい政権維持しましたから、自民党、公明党の政権はもう圧倒的に安泰すると思うんですけれども、それはともかくとして。

 そういう民活のための補助金の利用法、そういう新しい補助金政策というものも考えていただきたい。とりわけ国公立が金を使えないときにこそ私学助成というものを充実させることが必要なんだと私は思っておりますが、大臣、そういう点について、もしお考えがあればお示しください。

小坂国務大臣 お地元の例も踏まえながら、いろいろなアイデアを披露していただきました。

 小泉内閣としても、民間の活力を十分に活用しながらやっていく、そこにはやはり、民間の資金というものが、いい意味で、今日の高等教育を支えている私学の助成に回ってくる、またそのいい循環の中からさらなる発展が得られる。

 寄附金控除に係る適用下限額を、現行の一万円から五千円に引き下げるということを審議いただいております。また、今の御指摘のような、今日の大学生の約七五%が私立大学でございますから、そういったいい循環が達成されればこれにまさることはない。私も母校に対して、しょっちゅう寄金の要請が来、またそれに応じているわけでございます。そういう意味で、そういう心を持った学生をたくさんつくり、またいい循環をするということは大いに結構なことだ、このように考えております。

横山委員 まだ少し時間があるようですけれども、私の方はこれで十分です。

 最後に、助成金を出す場合には、受け取る側の財政、大学の財政状況等を含めた情報開示ということがもちろん必要であるということを申して、私の質問は終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

遠藤委員長 笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 小坂大臣には、私も文部科学委員会では初めての質問ということになりますけれども、先ほど私どもの牧理事の方からも質問があったわけですけれども、まず一点お伺いしたいことは、教育基本法のことについて若干お伺いをいたしたいと思います。

 私も、平成十五年の選挙で当選をして以来この委員会に所属をさせていただいておるんですけれども、当時河村大臣あるいはその後の中山大臣、小坂大臣と、三回通常国会で大臣の所信を聞かせていただきました。それぞれ教育基本法改正案をきちっと出すんだということを所信では述べられるものの、毎度毎度というか、今回はわかりませんけれども、提出をされてきていないという現状で、先ほど、今与党の調整、あるいは我が党の方でも検討しているわけですが、そういったことについて、そういう状況を踏まえてというようなこともあったわけですけれども、もう既に三年近くたつわけですね、平成十五年の三月に中教審の答申が出て以来。

 今現在、では文科省としてこれだという案がもうあるのか、いやいや、もう中教審の案などは私もわかっておりますけれども、例えば与党の方の協議がまとまらなければこれはこの国会でも出せないということになってくるのか、その点について大臣の、つまりは意気込みといいますか、どれぐらいの思いでこれを、ある時点まで待ってまとまらないようであれば、しっかりと国会の中で政府として出して議論していこうというくらいのつもりなのか、いやいや、もうとにかく与党次第だということなのか、その点をまず最初にお伺いいたしたいと思います。

小坂国務大臣 笠委員には、以前からいろいろな場面で御指導をいただいてまいりましたので、またこの文部科学行政においても、委員の御意見をいろいろ聞かせていただいて、御指導を賜りたいと思っております。

 ただいま御指摘の、昭和二十二年に制定をされて以来今日まで改正がされていない教育基本法、中央教育審議会の答申を経てからもう既に三年がたっているではないかという御指摘でございます。

 社会環境が大きく変化している中で、中央教育審議会の答申にも、人格の完成や個人の尊厳など普遍的な理念は今後とも大切にしながら、伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心、公共の精神や学校、家庭、地域社会の連携協力など、今日極めて重要と考えられる理念や原則を明確にするために教育基本法の改正が必要という御提言をいただいております。

 その提言を真摯に受けとめて、今、私ども文部科学省においても、与党における議論また御党におけるいろいろな議論をされていることを私どもとしても研究をさせていただきながら、出せる環境が整ったときに時間的に間に合わないということでは済みませんので、私どもなりの研究を進めさせていただきながら、そういった状況をしっかり把握させていただいて、環境が整ったと判断したときに私どもはそのようにさせていただきたいし、また、この通常国会で提出をするということをできるだけ達成できるように、関係の皆様にお願いを申し上げていきたいと思っております。

笠委員 いや、今大臣おっしゃいましたけれども、本当に研究を三年間しても、これは研究したから結論が出るという話じゃなくて、恐らくこれまでもさまざまな形で研究をされてきたと思うんですね。

 大臣、所信の中で、要するにこういうことをおっしゃっているわけですね。「中央教育審議会の答申や与党における議論を踏まえ、」そして「国民的な議論を深めつつ、」私はこの「国民的な議論を深めつつ、」ということが非常に大事なことだと思うんです。

 そのためには、今恐らく、私が仄聞あるいは報道を通じて知る限りでは、例えば国を愛するというところをどうするのかということで、連立与党の中で、自民党と公明党の中で、一番大きな、これが調整が難航しているんじゃないかと思っておりますけれども、こういうことも含めて、むしろ国会に、これは昨年私どもの平野理事の方から特別国会の中でも御指摘をさせていただいたんですが、この文部科学委員会のもとに置くのか、あるいは特別の委員会をつくるのか、その形は別といたしましても、そういったところでしっかりと議論をし、そして問題点を出しつつ、まさに国民に開かれた議論というものを一つ前の段階へ進めていくということが大事なのではないかと思っているんですけれども、その点について、大臣の御所見を伺いたいと思います。

小坂国務大臣 私の申し上げた「国民的な議論を深め」というのも同じ姿勢でございますので、委員御指摘のように、法案をじっくりと審議していただくことと同時に、この中央教育審議会の答申を経て今日まで、各党においても、また新聞等の報道を通じて国民世論の高まりというものもありますし、今御指摘にあった国や郷土を愛する心ということについての議論も、新聞等の報道を経ていろいろな議論がなされております。そういったものを私どもは十分に踏まえながら、この審議を進めるという体制で臨みたいと思っております。

笠委員 私はあえて小坂大臣だからこそ期待をいたしましてお願いしたいんです。小泉総理もこのことについては、一応一行ずつは、一行ごとに触れるといいますか、教育基本法の改正をやらなきゃいかぬということは常々おっしゃるわけですけれども、私から見ると、いま一つ教育には熱心ではない、議員として活動する中でそのように感じております。

 ですから、これはやはり文部科学大臣のまさに政府の中におけるリーダーシップですよね。自分が本当に職をかけてでも私のときにやるんだというぐらいの意気込みを、別にやらなかったからその時点で何か責任を問うなどというような小ざかしいことは私は考えておりませんので、やはりそれくらいのメッセージをしっかりと示して、そうしなければ何のための大臣なのかというようなことになりますので、それくらい踏み込んだ御答弁をひとついただければと思うんです。

小坂国務大臣 所信にもありますが、教育は百年の大計、国の成り立ちを左右する人材の育成という重要な使命がございます。このことは憲法に並ぶ重要な法律であろう、私は担当者としてそのくらいの重みを持って教育基本法というものをとらえたいと思っております。

 その意味で、この国会で提出をさせていただきたいという気持ちを持つと同時に、その環境が整うように努力もしたいし、また、それが提出されるようになりましたら、まさにこの法律に私のすべてをかけながら頑張っていきたい、そういう強い意思を持って臨みたいということは申し上げておきたいと思っております。

笠委員 もう一点だけ、この問題について確認をさせていただきます。

 それで、法案が出たときに、これは限られた時間で、この委員会の場だけでほかの法案と同じように議論をするテーマでないと私は思っています。むしろ、そこからが大事であって、ですから、これは改めて委員長にもお願いを申し上げたいと思っておりますけれども、この国会、委員会の場に、小委員会という形なのか、あるいは特別委員会という形になるのかは先ほど申し上げましたように別といたしましても、その形はお任せするとして、そういう場をつくってしっかりと議論をしていくということについての大臣の思いというものをお願いいたしたいと思います。

小坂国務大臣 審議の形は、これは立法府の問題でございますので、当委員会の理事の皆様初め議院運営委員会、あるいは各政党の国会対策部門、そういった皆様のいろいろな御議論があっての上で成り立っていくものだと考えております。そういった皆様の御努力の中で、しっかりとした審議の基盤が整うことを私ども期待いたしまして、臨んでまいりたいと存じます。

笠委員 その点については改めてお願いを申し上げたいと思いますし、また委員長についても、昨年平野理事の方からの提案がございましたけれども、まだその結論というものが出ておらぬということで伺っておりますので、ぜひお取り扱いの方、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

遠藤委員長 その件につきましては、今後、理事会の場等でよく協議をしたいと思います。

笠委員 さて、私は、先ほど牧委員の方が大臣の所信の「はじめに」というところから入られたわけですけれども、私は「むすび」についてちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 この「むすび」の部分で、「公益法人改革、公務員の総人件費改革、独立行政法人の組織・業務の見直し、被用者年金の一元化等の重要な課題に積極的に対応してまいります。」ということを大臣がおっしゃっております。まさに、私は、この国会というものの中で一番大事なことは、これは与党側も小泉総理も行革国会であるということをおっしゃっているわけですが、それは我々民主党も、まさに無駄遣いをなくしていくためにどういうふうにしていくのか。今本当に国民に対する負担というものが、年金であれ、あるいはまたこの国会で議論される社会保障、医療制度の見直し等々を含めましても、あるいは増税路線といったところで、多くの国民が将来自分たちの負担はどうなっていくんだということに不安を抱いております。

 そうした中で、やはり税金の無駄遣いというものをなくしていこうということについては、恐らくどの政党であれ、その方向性について異を唱える政党もあるいは国会議員もいないのではないかと思っております。そうした点で、きょうは幾つかちょっと御指摘をさせていただきたいのでございます。

 まさに税金というもの、特に文部科学行政の中では人づくりでございますから、これはお金が足りないぐらいですよね。本当にもっともっとかけたい部分はたくさんあるはずです。耐震強度の問題、学校の問題、あるいは義務教育、これだけ今経済の格差というものが言われている中で、果たして本当に義務教育の機会というもの、これの無償化というものが、ある意味ではきちんとした形で機会の均等というものが図られているのか。こうした点については、また義務教育自体のあり方については改めて議論もさせていただきたいと思いますけれども、そういう格差というものは絶対にあってはならない。子供たちが教育を受ける権利というもの、これを守っていかなければならない。そのためには、やはりお金もかかるわけです。

 ですから、すべて、何でもかんでも予算を削れとか、あるいはお金を使うなということを言うつもりは全くありません。むしろ、教育の分野に関しては、しっかりと使うべきお金をきちんと我々が確保していくということも大事なことだと思っております。

 そうした中で、ただ、無駄遣いというものはどうしてもやめていかなければならない。無駄はなくす、必要なものにはお金をかけていく、この当たり前のことをぜひ文部科学委員会としても、また文部科学省としてもやっていただきたいという中で、先日、我が党で中央省庁から公益法人あるいは独法などへの天下り、あるいは出向の状況についての予備的調査を行わせていただきました。

 先日、党首討論で前原代表からも一部質問をさせていただいたわけでございますけれども、全体で三千九百二十五団体に二万二千二百三十六人の方が天下り等々をされている。しかも、これらの団体には年間で五兆五千億円を超える補助金等が交付されているわけです。

 文部科学省に限って見ても、八百十二団体に二千三百四十七人が天下っているという現状がございます。驚くことに、職員の定数が二千二百八人の中で、これよりも天下り、出向者の方が多いという変な逆転現象が起こっているという状況ですね。もちろん文部科学省の場合は、国立大学というものが法人化したとか、いろいろな理由はあると思います。しかし、やはり、本体が逆にスリムになったことで天下りがいかに多いのかというものが浮き彫りになってしまった。こういう現状について、状況について、まず大臣はどう考えられているのかをお尋ねいたしたいと思います。

玉井政府参考人 数字のことでございますので、先にお答えをさせていただきたいと思います。

 先ほど御指摘のございました衆議院内閣委員会の予備的調査におきまして、文部科学省所管の公益法人等へ再就職をしている国家公務員出身者は、あの調査の数を積み上げてまいりますと、非常勤の者を含めて二千六百二十七人という数字でございます。多くは、財団法人、社団法人が千七百三十人で一番多うございます。これら二千六百二十七人のうち、役員は一千二百七十三人でございます。

 そして、これは国家公務員でございますので、文部科学省だけではなくて他省庁もみんな含まれているわけでございます。ただ、役員のところは、これは各省庁の出身がわかるようになっておりますので、そこで申し上げますと、役員が一千二百七十三人でございますが、役員のうち、文部科学省出身者は六百九十九人という数でございます。

 それから、これは委員も御指摘いただきましたけれども、新聞等で定員を超えるとおっしゃっていますが、そもそも国立大学法人化以前の文部科学省の定員は約十三万五千人でございます。ただ、この予備的調査は国立大学の教員を除いておりますので、教員を除きましても、文部科学省総定員は約六万二千人でございます。こういう母体の中からの再就職ということでございます。

 それから、同時に、非常勤の役員、評議員等が大変多く含まれております。もちろん、これは両方込みの数字で出ているわけでございますけれども、ちなみに、私ども、公益法人十法人を、多いと言われるものを抽出してみたところ、非常勤の役職員が七八%を占めているわけでございます。

 いずれにせよ、文部科学省は、教育、文化、スポーツ、学術、科学技術と大変広い分野を所管しておりまして、これに携わった者がそのときの知識とか経験を請われて、例えば財団法人、社団法人の非常勤の理事として就任している者が多いというのが実態でございますので、御理解を賜りたいと思います。

小坂国務大臣 笠委員の御指摘のいわゆる無駄遣い、その中でも国家公務員の天下り、また渡りによる無駄遣いというものがあってはならぬ、私もこのように考え、議院運営委員会においても、野党の皆さんともども一緒になってこういったものにメスを入れることをやってきたものでございます。

 現在のこの職にあっても同じ気持ちで取り組んでおりまして、今官房長の方から御説明申し上げたように、この実態は、決して皆さんが新聞等の題字に踊らされて誤解をなされることのないように今説明をさせていただいたわけでありますが、六万二千人の総定員の時代のものを現在の二千二百八人と同じレベルで議論をするということになってしまうんですね、独立行政法人が切りかわったところがちょうどそこに当たっているものですから。一年の間にこれだけ定員というものが入れかわって、そして六万人の母数の中で再就職をさせていただいた者を全部今の定員数と比較して上回っている、こう言われると、他省庁とのバランスを欠いてしまうということにもなります。

 そういう意味で、誤解を解いていただきたいということを一つ申し上げたいことと、それから、今説明をさせていただきましたように、文部科学省の場合には大変厳しいそういう規定を設けて、人事院の規定もしっかり守りながら、いわゆる調達とかそういうところから関係の先に天下ることのないように、そういったようなことに厳しく目を光らせながら今日やってきているところでございまして、その辺の御理解を賜りたいと思っております。

笠委員 私は、今るる官房長から説明がありましたけれども、これだけ母体があるから、それに比べれば少ないんだというようなことではなくて、これはやはり他省庁と比べても多い部分がある。

 ただし、私は天下りがすべて悪いということを言っているんじゃない。これは私、実は、今度またほかの省庁も比べて、例えば独立行政法人等々も今いろいろと見直しへ向けて党内のプロジェクトの中でやらせていただいているんですけれども、一番質の悪いのは天下り渡り鳥なんですよ、幾つもの財団を経て。そういう人は実は文科省からの天下りの中には一部なんですね、割と一カ所行って。ただ、その先、民間に行かれている動向まで調べますと、まだそこまで私も全部調査できておりませんので、その実態が明らかになっているわけじゃない。

 しかし、例えば、一つ一つの独立行政法人とか、あるいは関連の公益法人等々を今一つ一つチェックすると、果たしてこんなに天下りがいる必要があるのか。人材を活用するのはいいんです。例えば、来年から団塊世代の方が大いに今度は退職されていきますね。そして、今さまざまいろいろな点から、そういう人材をいかに地域で、例えばNPOであったりボランティアであったりそういう形で活用するのかということが大きなテーマになってくる。そのときに、一方で中央官僚の方々が余りにもそういう民間の常識とはかけ離れて、例えば天下るのはいい、しかし、また大きな巨額のお金をもらったり、あるいは退職金をもらったりということでは国民は納得しないという、それは、また私もしっかりとそういった点についてもこの委員会でも個別具体的に挙げさせていただく機会があろうかと思います。

 では、もう一つ確認をさせていただきたいんですが、今防衛施設庁、これは文科省ではありませんけれども、例の官製談合事件でも問題になっているのが、今、国家公務員法では、退職後二年間は省庁と密接な民間企業への再就職ということは禁止をされています。しかし、こうした外郭団体への天下りであるというのは規制をされておりませんし、そして、ここでも一つの背景として浮き彫りになっているのが、二年間外郭団体に身を寄せて、そして、そこからその後民間企業に行くというようなことを意図的に行っているんじゃないかというのがこの防衛施設庁の問題では明らかになっているわけです。

 文科省ではこういうケースというものがあるのか。これは具体例を出せということではなくて、そういったことをしっかりと管理をしているのか。そういうことがないようにきちんとした把握をされているのか。その点だけお伺いしたいんですけれども、よろしくお願いします。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員御指摘のような、いわゆる意図的にというお言葉を使っていらっしゃるわけでございますけれども、文部科学省において、そのような御指摘のように、意図的に営利企業に再就職するためにそういう外郭団体に身を寄せる、このようなケースがあるとは承知しておりません。

 今後とも職員の再就職については、行政に対する国民の信頼を損なうことのないよう適切に対処してまいります。

笠委員 結果としてそういうふうになっているというのはございますか。

玉井政府参考人 個々具体を全部今把握しているわけではございませんので、私も官房長という立場でございますので、そういう立場で申し上げて、意図的にやっている例はないと申し上げているわけでございます。

笠委員 また改めてこの点については調査をさせていただきたいと思います。

 これは大臣にひとつお伺いしたいんですが、私ども民主党として、この国会に、これは今与党の方でも検討されていると思いますが、やはり天下りの規制の対象に、こういったケースも起こったわけですから、やはり公益法人や独法も加えていく、あと、さらには規制の期間を、やはり二年じゃ短い、これを五年に延ばすべきではないかということで我々も法案の方を提出させていただいているんですけれども、お互いにそういったことを、これはいいと思うんですよ、これぐらいのことをやはりしなきゃいけない。それについて大臣としてはどのように、我々の天下り規制法案について御所見があれば伺わせていただければと思います。

小坂国務大臣 それぞれの党の中で、議員立法をお出しいただくような形でお取り組みをいただいたり、いろいろあると思います。それぞれの法案については、それが提出されましたら、その内容を私どもとしてもしっかり見せていただいて判断をさせていただきたい、このように考えております。

笠委員 ちょっと残念な、もう少し前向きな御答弁をいただきたかったわけでございますけれども、ぜひまた審議をするときにはよろしくお願いをいたしたいと思います。

 それで、独立行政法人の見直しということについて、この国会でもまた今度具体的な、これは統合あるいは非公務員化の法案が出てきますので、きょうはそういう細かい一つ一つのケースについてはお伺いをいたしませんけれども、ひとつ独立行政法人の中で、これは言うまでもなく、自由を与えるかわりに成果については事後チェックをしっかりとしていこうという仕組みになっているわけですね。今本当に事前の規制から事後チェックの仕組みというものが、さまざま耐震強度の偽装の問題を含めて、社会の大きな課題になっているわけです。これが、かつて本当に無駄遣いの温床であると言われた特殊法人、評判悪かった。これが今ほとんど独立行政法人に衣がえをして、そしてこれは特殊法人のときとは違って、しっかりとチェックをしていくんだよということが、これが目玉でもあったと私は理解をしております。

 もちろん総務省の評価機関とは別に、各所管省庁ごとにチェック機能として独立行政法人評価委員会というのが置かれております。この評価委員は当然ながら客観的かつそして公平中立に評価するにふさわしい方を任命されていると思うわけですけれども、ちょっと事務的に確認なんですけれども、人選はどなたが行うんでしょうか、文科省の評価委員会の場合は。

玉井政府参考人 これは文部科学大臣が任命いたします。

笠委員 そうですね。

 そこで、あわせてお伺いしたいのは、この中で結構、私もリストをいただいておるわけでございますけれども、評価対象である独立行政法人あるいは文科省等から謝金や研究費、中には一千万単位のお金もございます、そうしたものを受け取っている方がおられるんですけれども、だれがとか幾らとは言いません、何人くらいおられるでしょう。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成十七年一月時点の数でございますが、その時点で私どもが把握いたしました文部科学省独立行政法人評価委員会において評価の対象である、一番わかりやすいのは、科学技術振興機構、それから日本学術振興会より競争的資金の助成を受けている委員がおられます。委員と臨時委員と合わせて九人が研究費を受け取っていらっしゃったと承知をしているわけでございます。

笠委員 私が調べたところではもうちょっと多いはずなんですけれども。今三十人ですよね、評価委員の方は。そのうち、では今の九人としても、三分の一の方が何らかの形で自分が評価するところからお金をもらっている。これはやはり私はおかしいことだと思うんですよ。ですから、今なられている方がそれにふさわしいかどうか、人物的にとか、あるいはいろいろな見識上とかいうことではなくて、やはり国民から見たときには、少なくとも独法を評価するわけですから、そこから金銭が、やはり授受があるということは、これはいささか、ちょっとお手盛りの委員じゃないかという疑いを持たれても仕方がないと思うんです。

 これは二年間なんですね、任期が。ですから、平成十九年のたしか二月までこの委員で、今そういう人たちを私はかえさせろとか、かえろとは言いません。しかし、大臣、そのとき小坂大臣が文科大臣かどうかちょっとわかりませんけれども、次にこういう評価委員というものを選ぶときには、やはりその辺の基準というものはしっかりと、新たにこれは内部で別にやればいい話で、法律をどうこうする話ではありませんので、やはりそこら当たりは一つの線を引くというようなことをすべきでないかと私は考えておりますけれども、どうでしょうか。

玉井政府参考人 ちょっと基本的なところがございますので、仕組みについて御説明いたします。

 この評価委員会の委員は、経験、識見の豊かな有識者の中から選んでいるわけでございますが、今申し上げた研究費の助成につきましては、研究資金としてピュアレビューがきちんと行われて、その適切な審査の上で受けられているわけであります。したがって、委員であることによって研究助成の交付が影響を受けているのではないということはぜひ御理解を賜りたいと思います。

小坂国務大臣 今申し上げたように、人選に当たって、そういったお金が流れているところを避けるというのは、基本的な考え方として正しいと思いますが、しかし、今申し上げたように、専門分野の研究者による審査という意味で、このピュアレビューというものがそういう性格であることから、適切な審査を行うという、そういう立場で皆さんに御就任をいただいておりまして、経験、識見の豊かな有識者を選ぶということがその基軸でございます。

 したがいまして、委員になられた方々もそういう視点で審査に加わっていただいておりますし、また、委員に選ばれた後に、その関係先のところへ、年度が二年以上ということでまたがりますので、その間に研究費助成が行くようなことだってある場合があるわけですよね。事後的なものを避けようということで、それが、就任したがゆえに補助金がもらえないということになると、またその所属する機構に対して不利になってしまうということで、人選にまた新たな制約を加えることにもなります。

 お考えの趣旨をしっかり体しながらも、そういう不正なことの行われない枠組みをしっかりつくって、委員の御指摘を一つの糧として取り組んでまいりたいと存じます。

笠委員 その点についてはよろしくお願いをいたしたいと思います。

 ちょっと時間が参りましたので、実はこの独法の件につきましては、また改めてこの統合の法案、非公務員化の法案のときに一つずつ具体的に追及をさせていただきたいと思います。

 最後に申し上げたいことは、この独法の見直し、これは単なる衣がえだけであるとかではなくて、やはり巨額の税金が運営費、交付金等々でつぎ込まれているわけですから、いい事業は残していくけれどもしっかりと無駄なものは削っていくという姿勢で、ぜひ大臣のリーダーシップをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

遠藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 ただいまも話題になっておりましたけれども、今国会は官製談合をめぐる官と業の癒着問題、特に天下りとの関係が大きな問題となっているわけでございます。

 そこで、きょうは、まず最初に文部科学省における天下り問題について、お聞きをいたします。

 衆議院の調査局の天下り調査によりますと、二千二百人の天下り、出向者が文科省にはいる、そして天下り先団体に対して補助金が二兆千五百億円出されている、これは新聞報道もされたところでございます。

 私は、文部科学省の役人が文部科学省所轄の公益法人、独立行政法人、認可法人や補助金等交付法人にどのくらい天下っているのかというのをちょっと調べてみたんですね。衆議院調査局の調査では、独立行政法人のうち特定独立行政法人を除いているんです。これは、私どもに関係の深い大学入試センターがあるし、オリンピック記念の青少年総合センター等々がありますけれども、除いていました。だから、それを含めて、特定行政法人と認可法人を加えて、きょうはちょっと表を配付させていただきました。そこには官僚の名前も載せております。これも、調査局の資料には人数のみですから、名前を加えさせていただいたということですね。たくさん法人がありますので、きょうは、そのうち独立行政法人と認可法人等のみでございます。これは昨年二月一日現在のものでございます。

 全体の人数なんですが、各法人への文部科学省からの天下りというのは、公益法人で五百五十三人、独立行政法人では百四十三人、認可法人等では十三人、補助金等交付法人には七十九人ですね。文部科学省所轄法人というのは千百一団体あるようですね。そうしますと、そこに七百八十八人、文部官僚が天下っているということになるんです。大変な割合じゃないでしょうか。

 大臣に伺いますが、文部科学省の所轄法人は、こうして見ますと文部官僚の天下り団体であって、いわば天下り先になっているのではないでしょうか。ちょっと御見解をお聞かせください。

玉井政府参考人 数字が必ずしも一致しないかもしれません、お許しいただきたいと思いますが。

 独立行政法人、これはお配りになった資料でございますけれども、確かにおおむねこうだろうと思っておりますが、ただ、要するにやはり官民のバランスをとりながら独立行政法人には就任するという考え方でございまして、これに沿って私どもはきちんと就任している、かように思っております。

 それから公益法人、財団法人、社団法人、文部科学省は非常に多うございますが、それも先ほどの、前の御質問のときにお答えを申し上げましたけれども、例えば先ほどの衆議院の予備的調査、ここでは財団法人、社団法人が国家公務員で千七百三十人いっている。これは文部科学省だけではなくて、他の人たちも、他の省庁もあるわけでございまして、そのうち文部科学省がわかるのは役員のところでございますので、役員については、そのうち文部科学省関係については六百九十九人である。しかもそれが、非常勤が非常に多いということも御説明いたしておりますので、そういったところもぜひまた加味して御理解いただければというふうに思います。

石井(郁)委員 その答弁は先ほどの笠委員への答弁そのものでありまして、それを伺っているのじゃありません。文部科学大臣に、やはりこういう所轄法人と天下り人数との関係、これについてどうお考えでしょうか、どう見ていらっしゃるんでしょうかという御見解でございます。

小坂国務大臣 委員が御指摘の点、天下り云々というようなネーミングまでされての位置づけでございますけれども、やはり官から民へ出せるものは出していく、そして民間の活力を入れていくということには、考え方として、全面的な御賛成はいただいていなくても、一つの方向性は御理解をいただけると思うんですが、そういう中で、官が今までやってきたことを民間でやっていただく、そのためには継続性あるいはノウハウの移転、そういったことも踏まえて、官の必要な人間がそこに行きながらも民間の方とのバランスをとって、そして仕事に当たっていただくということが必要だと思っております。そういう意味で、官から全く人が行かないで、すべて民間でスタートをしろということは必ずしも効率的なものではないと思っておりますので、その必要性をやはり御理解いただきたいと思うことが一つ。

 それから、全体的な流れの中で、いわゆる世間で言われる天下り渡り鳥のような税金の無駄遣いというものについては、私どもの党でもそうでございますし、今の私の立場としても、こういったものはやはりやめていかないかぬ、根絶しよう、そういう考え方で取り組んでいる。このこともあわせて御理解をいただく中で、私はそういう立場でこれを認識いたしておることを申し上げたいと思います。

石井(郁)委員 そういう官民のバランスとか、いろいろ考え方があるということを言われますと、それはそれとしての議論になりますけれども、きょうは私は、時間の関係もありまして、ちょっと実態を申し上げて、こういう実態はどういうことを意味しているのかということでお尋ねをしたいと思っているんですね。

 資料を配付させていただきました。資料の二の方には、六ページ以降ですけれども、同一人物が幾つかの法人に顔を出している。いわば渡りと言われる問題なんですけれども、これは本当に驚くようなことがわかるわけですね。古い方には懐かしい名前もあるかと思いますけれども、阿部さんという方は三団体、犬丸さん四団体、川村さん四団体、菱村さん四団体、鈴木さん六団体。つまり、文部官僚高官の十七人が多くの兼職をしている、こういう実態でございます。内田氏のように奈良国立博物館から日本育英会へ、国分氏のように公立学校共済から日本芸術振興会など、こういう渡り歩きがあるわけですね。

 その中で、ちょっと兼職ぶり、法人の渡り歩きの突出しているケースがございますので、きょう私は取り上げさせていただこうと思うんですが、国立博物館館長の野崎弘さん、理事長の方でございます。この方は、平成七年から平成八年まで文部省で事務次官です。平成八年から公立学校共済組合理事長におなりになっております。平成十三年からは国立博物館館長であります。

 そこで、具体的に伺いますが、文部事務次官としての退職金は幾ら受け取ったんでしょうか。公立学校共済組合からの退職金は幾らだったのか。また、今国立博物館ですから、もう平成十三年からですからかなり長いですね。年額幾ら報酬を受け取っていらっしゃるのか。それぞれお示しください。

玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 具体に野崎氏の名前を挙げての具体の額ということでの御指摘でございますが、これはやはり個人のプライバシー保護の観点から、答弁は差し控えさせていただきたい、かように思います。

 それから、理事長の兼職のことも御指摘ございましたけれども、確かに現在、東京博物館協議会あるいは財団法人日本博物館協会ほか八法人の理事を兼職されておりますが、すべて非常勤であり、無報酬でございます。

石井(郁)委員 何か最後の無報酬のところが強調されますけれども、なぜこれは報酬を言えないんですか。これはどうしてプライバシーですか。オープンになっている話じゃないんですか。

 これは不思議なことに、この国立博物館の役職員の報酬、給与がインターネット上では公開されていないんですよね。公開すべきことなんじゃないですか。だって、今国会議員もみんな公開しているじゃないですか。これは国家公務員の、あるいは独立行政法人等々の役員の報酬ですよ。何で公開できないんですか。言ってください。

玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 インターネット上では、役職員、役職として幾らかという、まあ言えば給与規程といいますか、それに基づくものはオープンにしておりますけれども、個人名で、個人としてだれそれが幾らという形でのものではございません。

 先ほど申し上げましたのは、御指摘がまさに個人名を挙げ、個人の退職手当という具体のことを御指摘になりましたので、そこはプライバシーもありますので控えさせていただきたいというふうに申し上げたわけであります。

石井(郁)委員 きょうこの場ではもう多分お答えにならないでしょうから、委員長、これは後でぜひ理事会で諮っていただきたい。ぜひ、その数字は出していただきたいと思います。おかしいでしょう。役職に幾らとなるんだから、それはそれが具体の個人に当てはまるということであって、この役職で幾らというのを出してくださいよ。それは出せないというのはおかしいでしょう。もうこんな押し問答をしている時間はもったいないので、ぜひこれは理事会で諮っていただきたいと思います。

遠藤委員長 理事会で検討いたします。

石井(郁)委員 他の独立行政法人の報酬はわかることがあるんですよね。国立美術館の法人の長の年間報酬額というのは千九百九十万円ですよ。約二千万円です。これは現役の事務次官に匹敵する高い報酬じゃないんでしょうか。

 先ほどの野崎さんの場合、国立博物館館長が幾つか、東京博物館理事、日本博物館協会理事、日本修学旅行協会理事、環境普及センター理事、日本高等教育評価機構理事、日本環境協会理事、産業教育振興会中央会理事、ソニー教育財団理事、特定非営利活動法人美味しんぼニッポン理事、九つの理事を兼職していらっしゃるんですよ。こういうことで本当にその仕事ができるんだろうかと思わざるを得ないんですけれども、それは非常勤だとおっしゃるかもしれませんけれども、ちょっと異常ですよね。

 それから、日本博物館協会には、教育方法等の実践研究委託費というのが平成十五年度で千七百二十六万円です。十六年度には千六百七十五万円が出ています。

 こういう形で、私は個人の名前を挙げましたが、何か特別の関係があるわけでは決してありませんで、調べてみましたら、こういう突出ぶりがわかりましたので、具体の例として申し上げているだけでございますので、どうか御理解ください。

 それで、国立美術館の辻村氏も七つの公益法人の理事を兼ねていらっしゃるんですね。その中の産業教育振興中央会に対して、十五年度五千四百万円の委託費も出されています。

 ですから、こうして見ますと、やはり公益法人と文部科学省のいわばつなぎ役あるいは補助金交付のための便宜上の理事を兼ねているのではないかと疑わざるを得ないわけですよ。こういう点からも、兼職、渡り歩きの問題というのは、やはり今厳しい国民の批判の目があるときですから、文部科学省としてはこういう実態を明らかにしてほしい。それから、こうした公益法人の理事などとの兼職、法人渡り歩きは禁止すべきではないかと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。

小坂国務大臣 先ほど申し上げましたように、民間との流れをつないでいく中で、それぞれの持ち合わせた知見というものを活用することが必要だと思います。そういった意味で、無償でそういった理事についたりあるいは請われてほかの団体の理事を兼務するということは、世の中あり得ることだと思います。

 しかし、委員が御指摘のものは、いわゆる渡りのような形によって退職金を二重三重として取って、ほかの人材でも代替できるようなところにあえて特定の人間が重複していくというような形があるとすれば、それを排除すべきだ、そのことについては私も同感であります。

石井(郁)委員 もう一点、具体の例を申し上げさせていただきますけれども、この独立行政法人の理事長のポストというのがやはり歴代文部科学省の高級官僚の天下りの指定席になっているんですね。

 日本育英会の第九代の理事長は三角哲生事務次官です。第十代は鈴木勲文化庁長官、十一代川村恒明文化庁長官、十二代が内田弘保文化庁長官でしょう。日本育英会がそうです。

 それから、公立学校共済組合の理事長ポストもしかりなんですね。一九八〇年からは安養寺重夫氏から加戸守行氏、国分正明氏、野崎弘氏、菱村氏、工藤氏等々ですね。これは文科省の、文部省の出身者で占められている。こういうポストを文部省、文科省官僚がいわばひとり占めしている、こういう事態なんですよ。こんなことがやはりいいのかと。

 今本当に官民の癒着、官民のバランスと言われましたけれども、今問題になっているのはバランスどころか癒着の構造なんですよ。そこがいろいろ談合の温床にだってなる。あるいは、補助金の交付先のいろいろな問題が絡んでくるということになるので、こういう官民の癒着の構造というのは、やはり国民から非常に強い批判があるところですから、私はこの点でもこの際きっぱりやめるべきだというふうに思いますが、重ねて文科大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

玉井政府参考人 恐縮でございます。

 独法への就任、これは基本的なルールがございますので、そのルールにのっとって我が省も適切にやっておりますし、それから、先ほど具体例で、育英会、今学生支援機構に変わっておりますけれども、今の理事長はあえて名前を挙げますと北原さんという元筑波大学の学長でございますので、そこはひとつ御理解をいただきたいと思います。

小坂国務大臣 委員の御指摘のような部分が不正の温床になるようなことは私は避けていかなければいかぬと。それから、今官房長が答弁しましたように、是正する必要がある、あるいは他の人材で、よりすぐれた人材、あるいは以前に一つの指定ポストのようになっていても、考え方とかいろいろなものを見た中で別の人間がいいということで就任した例もございます。

 そういう意味で、一概にそのポストが常に、歴代、どういう役職の人から流れているからいけないということではなくて、むしろ、そのポストが、独立行政法人あるいは外部の団体の運営の中での知見として一番適した人材であるとすれば引き続きそれが行われることもあり得るかと思いますが、委員が御指摘のような不正の温床になるようなことのないように、具体的に不正のような事例があったら御指摘をいただいて、私の気がつかないところもあるかもしれませんので、そういうことを御指摘いただく中でしっかりと対応させていただきたいと思います。

石井(郁)委員 大臣、かなり前向きな御答弁をいただいたと思います。私は、誤りやそういういろいろゆがみを是正するには、そういうタイミングというのもあると思いますから、こういう意味では、今これだけいろいろデータが出ているわけですから、ぜひ大臣のそういう決意で臨んでいただきたいというふうに思います。

 この点で、最後にもう一点御要望なんですが、やはり私は、これは文科省に要求をしてこの名前なども実はつくらせていただきました。だから、文科省は当然つかんでいるわけですから、退職官僚の再就職状況など、ぜひ本委員会に天下りの全容についてやはり資料を提出すべきだというふうに思うんですね。これは要望しておきたいと思います。

 もう少しの時間で、ちょっと別な問題でございますけれども、少しお尋ねをいたします。

 国立大学法人が法人化になったときの法人法案審議の際にこういう点があったと思うんですね。定数管理も自由になるんだ、国家公務員の定員削減の対象にはならない、これは政府答弁だったと思いますが、それには変わりはないでしょうか。

石川政府参考人 国立大学法人の法人化後の定員等の考え方の御質問でございますけれども、法人化後の国立大学法人の教職員につきましては、行政機関の職員の定員に関する法律、こういったものの適用対象外となりますので、国立大学法人については国の定員削減計画の対象とはなっておらないわけでございます。こういったことから、各国立大学法人におきましては、それぞれの中期目標、中期計画に掲げる事業の遂行に必要な人員管理を適切に行っていくということになるわけでございまして、このことにつきましては現在においても変わりはないものでございます。

石井(郁)委員 私はまさにそのとおりだというふうに思うんですね。変わりがあったら大変なんですよ、国会で確認したことなんですから、そのとおりなんですけれども。

 ところが、これは文部科学省が、この二月、ある文書を大学当局に出しているのではないでしょうか。これはこういうものです。文部科学省の高等教育局国立大学法人支援課から、総人件費改革の実行計画に関する情報提供となっています。その中では、中期目標、中期計画にかかわる対応としてこう言っていますね。大まかなスケジュールとしては、各法人から中期目標の変更原案及び中期計画の変更案を二月中に御提出いただく、三月上旬に開催予定の国立大学法人評価委員会総会の意見を聞くことが考えられますと。何かといいますと、中期目標について言うと、総人件費改革の実行計画、これは政府がしているということを踏まえて、人件費削減の取り組みを行う、計画についても、総人件費改革の実行計画を踏まえて、平成二十一年度までに概ね何%の人件費の削減を図るということになっているんですね。

 だから、これは、情報提供などという体裁をとっているけれども、二月中に中期目標、中期計画を書きかえて文部科学省に提出せよ、こういう文書ではありませんか。

石川政府参考人 ただいま二月二日付の文書についてお触れになったところでございますけれども、これらの文書につきましては、総人件費改革に関しまして、各国立大学法人が自主的な検討に資するための必要な情報につきまして、各法人からの要望にこたえるために、その時点での政府部内である程度方向性が定まった事項につきまして、各法人にできるだけ早くお知らせしようということでお出ししたものでございまして、したがいまして各法人の取り組み等を強制するような趣旨のものではございません。

石井(郁)委員 この方向で各大学が数値目標達成なんということになったら本当に重大な問題だということで、私はこの文書を見たときに、そういう重大性について文科省自身はどういう認識を持っておられるのかということを大変懸念したわけでございます。

 振り返るまでもなく、あの法人法の審議のときには、中期目標、中期計画について、六年間の入り口の部分とそれから事後的な行政評価と、要するに六年間だということで立てたわけでしょう。まだこれは三年ですよ。だから、法人実施三年目で、中期目標、中期計画について、文科省、国が書きかえよということになったら、これは本当に重大なことであって、こんなことが許されていいわけがないわけであります。

 再度、いかがですか。そうではないともう一度はっきり御答弁ください。

石川政府参考人 今回の人件費改革といいましょうか、昨年の十二月二十四日、行政改革の重要方針といったようなものが閣議決定されておるわけでございまして、今回のこの閣議決定の趣旨は、簡素で効率的な政府を実現ということで、独立行政法人であります国立大学法人を含めました公的部門全体のスリム化を図る、こういった趣旨でございまして、国立大学法人につきましてもしかるべき対応が求められているところでございます。こういった方針の中で、国立大学に対しましても、そういった方向で検討していく、そしてまた対応していただくということが期待されているものでございます。

石井(郁)委員 だから、あくまでも、それは昨年十二月二十四日の閣議決定の方針を、今こんな方針ですよということを伝えたという限りなんですか。だけれども、これはやはりそうではないですよ。三月までに中期目標、中期計画について具体的に考えよ、これに合わせて考えよということになると、さっきの答弁と違うじゃないですか。それから、国会の審議に反した方向、内容に進んでいくじゃありませんか。

 定員削減についても、法人法のときには本当に議論をいたしました。当時文科省は、法人化すれば少なくとも定員削減という問題は片づく、大学の自主性、自律性も拡大するということで盛んに言っていたわけでしょう。それで、遠藤局長は、御指摘のように、基本的には定員管理はしない。それから、昨年この点で私も質問いたしまして、石川高等局長自身が、これは行政機関の職員の定員に関する法律の適用対象外だということで、国の定員という概念はなくなっていると。だから、皆さんそう考えているわけですよ。

 しかし、いや、行革の方針がこうなんだから考えよ、これは違うんだと。どういうことになりますか。おかしいでしょう。だから、定員削減はやはり押しつけることはできないんだ。国はこういう方針だというのはいろいろな形でみんな知っていますよ、それは。それを各大学にどうして、通達、文書みたいな形で出すことができるんですか。これはできないということを、もう質疑時間が参りましたので、これは大変な事態だ、これから混乱をすると思います、各大学は本当にどう対応していいのかと。という点でいいますと、私は厳しくこういうやり方はやめるべきだということを申し上げたい。

 だから、天下りの天国文科省の実態が一方であって、一方で国会審議を無視して国立大学の法人に定員を押しつけたり、いろいろなことを行政指導していく、これはとんでもないと言わなければなりません。このことを厳しく申し上げて、きょうの質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

遠藤委員長 保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 午前中も馬渡議員から、障害のある子が懸命に普通学級で学ぼうとしているのに心ない言葉が投げかけられた、こういうお話がありました。きょう、私は障害のある子が障害のない子供とともに学ぶにはというテーマで幾つか質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、小坂文部大臣、そして馳副大臣にもちょっと感想を伺いたいのですが、ホテル東横イン事件、事件というか、東横イン問題と言った方がよろしいでしょうか。

 党の調査団で、事件が伝えられて四、五日して横浜の方に行ってまいりました。実際にあのホテルの中にも入って、一番最初に伝えられた、障害者用の車いすで乗りおりする駐車場が一回つくられたんですね。それが壊されて、もうロビーになっていました。それから、障害者の方用の客室、これはフロントの奥にありましたけれども、これは完成を見るまでもなく、図面上はあったんですが、完成するまでもなく倉庫でした。実際にあの部屋に上がってみましたけれども、車いすで入るには、やはり入り口が狭くてなかなか難しいなと。

 こういうようなホテルの実態というのは、もしかすると東横インに限った問題ではないかもしれませんけれども、問題は、この問題が発覚した後、時速六十キロのところを六十七キロぐらいで走ったかな、こういう言い方であるとか、点字ブロックとかをわざわざはがしてしまう。恐らく、バリアフリーということでスロープだとか手すりだとかそういうものをつける工事はあっても、一たんつくり上げたものを取るというのは非常に衝撃的だったわけですね。

 私は、いろいろな業法違反とか条例違反はありますけれども、やはり、障害を持っている人たちとともに暮らすという私たちの社会の方向、その決意について逆行する差別であるし、許しがたいことだというふうに思ったんですが、率直な感想を大臣と副大臣からお述べいただきたいと思います。

小坂国務大臣 よく保坂委員と小坂というのは間違えられまして、そういう意味では、ある意味の親近感を持っておるのでございます。

 今御質問の東横インのケースでございますが、確かに、一たん障害者に配慮をしているかのごとくつくっておきながら、それをわざわざ取り外して別の用に供してしまう。それも、営利目的に使ったり、あるいは不要なものという認識でそれを撤去する、これは絶対にあってはならぬと思いますね。それはすなわち、その行為を行った人の中に、障害者に対応するということは不要なこと、そういう面倒なことはうちは断ればいいんだというような発想が裏にあるように感じます。そういう人が来たら泊めなければいいんだからというような発想がもしあるとしたら、私は大変な差別だと思います。

 そういう意味で、今委員が御指摘になったように、今回のケースは、これからノーマライゼーション、障害者に優しい社会をつくるということに全く逆行していることだ、こういう意味で、私は、こういうことは即刻やめていただかないかぬ、こう思っております。

馳副大臣 法令違反、条例違反というのはけしからぬというのはもう当たり前ですが、それ以前に、やはり経営者の経営理念として極めて卑劣きわまりないことであるというふうな認識を持っております。

保坂(展)委員 文部科学委員会ですから学校の問題になるんですけれども、小坂大臣に伺いますが、世界の趨勢は障害児と健常児がともに学んでいくという、これは統合、インクルージョンといいましょうか、こういった方向性が文科省の調査協力会議やあるいは中教審の答申などでも議論されてきたというふうに思います。そういった基本姿勢について、大臣のお考えをお願いします。

小坂国務大臣 今申し上げて、考え方の方向性は御理解いただいたと思いますが、ノーマライゼーションという言葉、すなわち障害者と健常者が共生し、社会の中でともに生きる、そういう社会の建設を目指していくわけでございますし、またインクルージョンとおっしゃった今の世界の流れの中で、各国の事情を見ますと、それは、それぞれの社会の状況に応じて段階的に考えたり、あるいはその取り組みについていろいろな人の意見を入れてそれに配慮するというような取り組みが行われております。

 すなわち、一律的に何か法律で決めて、すべてを一律的に処理してしまうというのではなくて、障害者の皆さんの意見あるいは保護者の意見を十分に把握して、そして、学校であれば就学先、また社会の、企業であれば企業の就職先、そういったところの状況と照らして、それぞれに合った対応をしていただいているというのが実情だと思います。

 児童生徒の障害の状況のいかんにかかわらず、一律に通常の学級に就学させるということを決めてしまうことは困難でありますけれども、それぞれの状況に応じて、通級扱いをしたり、いろいろな形の中でその障害に対応していくというのが現実的な取り組みであろう、このように考えております。

保坂(展)委員 今回予定されている学校教育法改正あるいは同施行令で、今も現実には、普通学級の中で子供たち、障害のある子も一緒に学んでいるケースは多々あるわけですけれども、より垣根が低くなって、より一緒に学びやすくなるという方向ならとてもよいのですけれども、逆にいろいろな基準が出てきて振り分けが行われて、今一緒に学べているんだけれども、こういった法改正の後で逆の現象、むしろ今は一緒に学んでいるんだけれどもこの法改正後は振り分けられてしまうのじゃないかと心配されている親御さんなどもいらっしゃるんですが、そういう心配は懸念なのかどうか、局長、答えていただけますか。

銭谷政府参考人 今大臣の方からもお答えがあったわけでございますが、就学する学校につきましては、保護者や専門家の意見を聞いて、小中学校において適切な教育を受けることができると市町村の教育委員会が判断した場合には、小中学校に就学するといったような弾力的な対応が可能になっているわけでございまして、今回予定しております改正案においてこういうことを変えるとか、そういうことは考えていないわけでございます。

保坂(展)委員 続けて初中局長に二点伺いたいのですが、では、現在、日本の小中学校でどのくらい障害のあるお子さんが障害がない健常児の子供たちと一緒に学んでいるか。数の把握ですね。一部の把握は出てきたということを聞いているんですが、何かどのぐらいの子供たちがという数字をお持ちでしたら教えていただきたいというのが一点と、普通学級で学ぶ障害のある子供たちもなかなか大変なんですよね、ハンディーがありますから。そういったところに、支える予算措置といいましょうか、例えば介助したりとかあるいはサポートしたりという部分の、何かそういった予算措置みたいなことは考えられているんでしょうか。

銭谷政府参考人 まず最初のお尋ねの、通常学級に在籍をしている障害のある児童生徒の数の問題でございます。

 実は、文部科学省におきましては、昨年、認定就学制度の実施状況に関する調査を行ったわけでございますが、その調査を通じまして、通常の学級に在籍をしている障害のある小学校一年生の児童数についてあわせて把握をしたところでございます。

 その結果によれば、認定就学者を含めまして、平成十七年度の小学校一年生について、市町村の教育委員会の就学指導委員会が盲・聾・養護学校または特殊学級への就学が適当であると判断をした一万六千二百七十九名のうち二千六百五名、約一六%でございますけれども、この子供たちが通常の学級に在籍をしております。平成十六年度と十五年度についてもさかのぼって同様の数の把握をしたわけでございますが、平成十六年度では通常の学級に在籍をしている子供は二千六百四十名、平成十五年度は二千五百九十七名、それぞれ当時の一年生でございますけれども、一年生、二年生、今三年生になっている、この累計でいいますと七千八百四十二名ということでございます。

 ただ、それ以上の学年につきましては、私ども、まだ把握をしていない、これはあくまでも就学指導の際の数の把握ということでございますので、それ以上の把握はちょっとなかなか難しいところがあるというふうに思っております。

 それから二つ目の、通常の学級に在籍をしている障害のある児童生徒の教育が十分に行われるように、どの程度の経費、予算をかけているのかというお尋ねでございますけれども、通常の学級に在籍をする障害のある児童生徒の教育につきましては、通常、まず各市町村の教育委員会の判断に基づいていろいろな条件整備が行われるわけでございます。それにあわせて、国としても、学校施設のバリアフリー化などの施設整備に対する国庫の補助とか、点字、拡大教科書の無償の給与とか、通級による指導のための職員配置に伴う給与費の国庫負担などを行っているところでございます。

 これらにかかる金額につきましては、施設費など他の経費と切り分けることができないものもございますので、具体的にはちょっと額が出ないということでございます。

保坂(展)委員 済みません、時間が限られているものですから。

 今局長にお答えいただきましたけれども、小学校一年生、二年生ですか、小さなお子様たちの数は把握されているんですけれども、まだ全容はわかっていないし、財政措置もまだまだ足らないんですね。

 文科省の調査協力会議、これは〇三年の三月に、子供の障害の種類や程度が多様化しているとして、普段通常の学級に在籍して、籍を置いて、そして、必要であれば特別支援教室へ行く、つまり、籍は普通の学級に置いて、サポートは、必要なときに特別支援教室に行くというような、そういう方向性も語られているんです。私は、そういった方向がこれからの進むべき道じゃないかなと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

小坂国務大臣 方向性はそのようだと思っております。

保坂(展)委員 残りの時間、大臣と副大臣に。

 私たちは国会でチャイルドライン推進議員連盟というのを、馳先生とも一緒に、子供のことを超党派で取り組む活動を続けておるんですけれども、この中で知った二つの活動、一つはそのチャイルドラインですね。本当に子供がどうしようというときに、命が危ない、あるいは自分の危機があるというときにかけられる電話をという活動も、大変今日本に広がってきています。ただ、まだ欧米の各国に比べれば知られていない。これをぜひ文科省としても広げていただきたいという点。

 それから、子供の事件が相次いでいますね。相次いでいる中で、キャップ、CAPですね、暴力から子供を守っていくトレーニングを子供自身に課する。これは、子供が、大人に何かされそうなときに、ぎゃあっと大声を出して、その大人が犯罪、性犯罪ですけれどもね、これをやめるきっかけになったという、大半は大声だそうですね。防犯ブザーで逃げたというのは余りない。大声を出して、これはやめようと。そういった大声は、子供たちはなかなか出ないんです。こういうトレーニングを、あの奈良の楓ちゃんの事件、彼女は一年生。三年生からそのトレーニングは入ったらしいんです。一年生から入っていたらということをその女性たち中心におっしゃっているんですが、これはぜひ学校の先生にも体験してほしいと言っているんですね。文科省としてもぜひ取り組んでほしい。

 この二つについて、民間の知恵と活力を子供の安全のために学校現場に生かしていく姿勢をお願いしたいと思います。

馳副大臣 まず、チャイルドラインの問題について私から申し上げたいと思います。

 今、我が四十七都道府県の中で、いまだに十三の県は十分な整備をしておりません。基本的には各都道府県においてチャイルドラインの支援体制をつくっていただきたいと思っておりますし、私も議連のメンバーとして働きかけているところであります。また、文部科学省としても、そういった情報について注目をしてバックアップできるようにしたいと存じます。

小坂国務大臣 チャイルドラインについて、NPO法人のチャイルドライン支援センター等を通じて推進が図られていることは私どもとしても知っておりますし、また、好ましい動きだと思っております。文部科学省としても、平成十二年度より、毎年こういった活動を、全国キャンペーンに対して後援を行う等の支援を行ってきているところでございます。

 また、このチャイルドラインなどの民間主導の相談機関の活用ということにおいて、政府もいろいろな広報を通じて、また、学校のいろいろな、私ども、例えば文部科学省編集の広報誌、マナビィですね、チャイルドラインの取り組みについて掲載するのを初めとして、いろいろな機会をとらえてこの利用促進を図って皆さんに周知する、認知してもらわないといけませんので、そういうことを推進していくことが必要だと思って取り組んでいるところでございます。

 また、不審者に遭遇したときの、キャップというんですか、CAPのことにつきましても、これについて、実践的な安全教育というものが推進されるように指導をしてまいりたい、このように考えております。

保坂(展)委員 文部大臣に、まず学校の先生が、あるいは教育委員会の関係者、教育行政も含めて、意味をまずわかっていただきたいということで、子供の危機というのは、一番最後は子供自身が力を持って、大きな声を出して危機を回避するというようなことができるように、まず大人、教育行政や先生たちがそういった活動を知るということも推進していただきたいんですが、いかがでしょうか。

小坂国務大臣 おっしゃるとおりで、子供が認識するには、やはり指導者が正しい認識を持つことが必要だと思いますから、そういった理解が促進できるように私も努めてまいりたいと思います。

保坂(展)委員 子供の事件が相次いでいますけれども、学校の場で、今、いろいろな事情でなかなか子供たちは遊ぶということができませんので、学校の中で大きな声を出して、思い切り泣いたり笑ったりというような感情の表現ということも、私はイギリスにいじめ問題の取材で十年前に行ったときに、これを見てくださいと見せられたのは、ドラマという時間で、全身を動かして大きな声を出したり取っ組み合ったりしながら、あるいは自分たちでいろいろなロールプレーイングゲームをしながら、子供たちがその時間の中で内側からのエネルギーを出していくということによって、声も出てくるしエネルギーも出てくるという部分が、今なかなか子供たちを保障してあげられないので、ぜひ今言った二つの活動を応援していただきたいということを申し上げまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

遠藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十九分散会


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