衆議院

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第20号 平成18年6月14日(水曜日)

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平成十八年六月十四日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 遠藤 乙彦君

   理事 小渕 優子君 理事 大前 繁雄君

   理事 小島 敏男君 理事 西村 明宏君

   理事 松浪健四郎君 理事 藤村  修君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      安次富 修君    阿部 俊子君

      秋葉 賢也君    飯島 夕雁君

      小川 友一君    岡下 信子君

      岡本 芳郎君    加藤 紘一君

      川条 志嘉君    近藤 基彦君

      坂本 剛二君    杉村 太蔵君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      永岡 桂子君    西本 勝子君

      平田 耕一君    福田 峰之君

      藤田 幹雄君    馬渡 龍治君

      安井潤一郎君    山内 康一君

      山本ともひろ君    吉野 正芳君

      奥村 展三君    北橋 健治君

      末松 義規君    松木 謙公君

      松本 大輔君    山口  壯君

      横山 北斗君    笠  浩史君

      西  博義君    石井 郁子君

      保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       小坂 憲次君

   文部科学副大臣      馳   浩君

   文部科学大臣政務官    吉野 正芳君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (文化庁次長)      加茂川幸夫君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十四日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     安井潤一郎君

  飯島 夕雁君     杉村 太蔵君

  佐藤  錬君     岡本 芳郎君

  田中眞紀子君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  岡本 芳郎君     平田 耕一君

  杉村 太蔵君     山内 康一君

  安井潤一郎君     安次富 修君

  松木 謙公君     田中眞紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     井脇ノブ子君

  平田 耕一君     佐藤  錬君

  山内 康一君     飯島 夕雁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

遠藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長石川明君、スポーツ・青少年局長素川富司君及び文化庁次長加茂川幸夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小島敏男君。

小島委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の小島敏男です。

 与えられた時間が二十分という短い時間ですけれども、質疑の日も最後を迎えたわけであります。

 私は、文部科学委員会で筆頭理事を初めて務めさせていただいたわけでありますけれども、大変によい経験をさせてもらいました。与党の理事さんはもちろんのこと、野党の藤村筆頭理事さんを初め皆さんに大変御指導をいただきまして、本当にありがとうございました。

 なお、遠藤委員長の穏和なリードで、小坂文部科学大臣並びに馳副大臣、大変に丁寧に御説明いただきました。政府委員ももちろんのことでありますけれども、非常に法案審議がスムーズにいったということで、心から感謝をしているところでございます。

 私自身、文部科学委員会とそれから教育基本法の特別委員会に所属をしたわけでありますけれども、私は、委員会、特別委員会にこれほど座っていたことは初めての経験です。ともかく、筆頭も大変だし、特別委員会も大変だなと思ったんですが、私の部会だとか会議は全部お断りをしてこちらに出席をさせてもらいました。しかし、そのことによって得られたものが余りにも大きいということで、今は感謝しているんです。大変にすばらしい経験をさせてもらいました。

 そこで、きょうは、質問も出尽くした感がありますので、私は、地元にあります埼玉県立熊谷養護学校とそれから学校法人熊谷盲学校、ことしから名称が変わりまして熊谷理療技術高等盲学校というところがありますけれども、そちらの方を視察してまいりました。

 そこで、私思うんですけれども、きのうも、参考人で来られた日本LD学会の上野一彦会長が、今回の法律改正について冒頭で非常にすばらしい言葉を述べました。それは、特殊教育から特別支援教育への転換は、単なる看板のかけかえではなく、一人一人の子供の特別支援ニーズに的確にこたえる教育を実現するための、歴史に残る大きな教育改革であるというんですね。ですから、大変に日の当たらない盲・聾・養の教育施設制度に一矢を報いたということで、これは大きな歴史的な意義があるということであります。そういうところに私も立ち会うことができたことを本当にうれしく思っていますけれども、それぞれの関係者が並々ならぬ熱意で本法案の成立を待ち望んでいるということがよく理解ができたわけであります。

 この法案に直接携わった者として、そういう期待に沿えるような法案になるように、財政政策面でもきっちりとした、後ろ盾をやっていただきたいというふうに思っております。

 そこで、熊谷養護学校の関係であります。この養護学校は、もうたびたび私も、行事があるたびに出ているわけでありますけれども、質問をするので、何か変わったことがあるかなと思って伺ったんですけれども、これは、もう委員の皆さんがあらゆる角度から質問をしていましたので、同じような答えが実は返ってまいりました。

 これはどういうことかといいますと、地域の小中学校の要請に応じて、在籍している障害のある児童生徒の皆さんの教育について助言、援助を行うということになっておりますけれども、現状では、派遣依頼があった場合にできる限りの対応をしているようでありますけれども、一日に二名から三名要請がある、そうすると、養護学校本来の業務、任務に支障が出てきちゃう、だから、行ってあげたいのは全くもっともなんですけれども、我が養護学校も抱えていますので、小中学校の要請にすべてこたえることができないというのが非常に残念だということを申されていました。

 ですから、これは、教員の適正配置と加配というのは、昨日も皆さんが言っていることでありますけれども、これをやらないと、来年の四月一日ですけれども、スタートしないんじゃないかな、地域の皆さんががっかりしちゃうんじゃないか、また、障害を持っている方々もがっかりしてしまうのではないかというような感じを持つわけであります。これを一つお伺いしたい。

 教職員の確保は間違いないということのやはり気持ちを伝えていただきたいことと、きのう参考人でDPIの日本会議常任委員の姜博久さんがお話しがあったわけですけれども、その方が言っているのは、私たちも学校に呼ばれると、何かというと、障害者というのはこんなに容易じゃないんだ、だから皆さんということで、障害者に対する理解を求める講演の依頼は随分来るんですって。だけれども、私たちも、車いすだけれども、ともかくお手伝いすることがあれば、そういう障害を持った子と、生きる喜びだとか、または将来の目的だとかというのを適切にアドバイスできるのは私たちでしょう、だから、ぜひ学校でお手伝いができるようなそんなことはいかがなものでしょうかという問題を私たちに投げかけました。この辺について御答弁をいただきたいと思います。

馳副大臣 定数改善については計画的に進めていかなければならない課題であるというふうに認識しております。

 第七次定数改善についても、これは通級指導とか指導助言といった体制で計画的にやってまいりました。第八次についても、四百有余名計画しておったわけでありますが、昨年度は総人件費改革ということがありまして断念せざるを得なかった。

 しかしながら、実態は、児童生徒数が減少しているにもかかわらず、こういった特別支援教育の対象となる障害を抱えた児童はふえているという現状を踏まえて、これこそ法律の趣旨にのっとって計画的な職員配置のもとで支援をしていくということが必要になってきますし、センター的な機能というのは、法律に明記された以上、それに対応していけるような体制を整えるのが文部科学省としての責任であるというふうに考えております。

 これは平成十九年度の予算編成にそういう姿勢で臨むということになりますので、ぜひまた、与野党超えて委員の先生方の御支援、御指導もいただきたいと考えております。

銭谷政府参考人 今後の特別支援教育を考えた場合に、障害のない方とある方の交流あるいは共同学習ということは、今まで以上に進めていく必要があると思っております。

 やはり、お互いに共生社会をつくっていくために、相互に理解をし合ったり、ともに活動していくということは大変必要なことでございますので、学校教育の場におきましても、交流及び共同学習という観点から、障害のある方とない方の触れ合い、ともに活動する機会の醸成ということに私どもも努めていきたいというふうに思っております。

小島委員 馳副大臣の方から、力強い教職員の加配を含めた増加ということがありました。この特別支援の学校が有効に機能するように、ぜひお願いをしたいと思います。

 それでは、次に、学校法人の熊谷盲学校のことについてお伺いしたいと思うんです。

 熊谷盲学校は非常に歴史が古くて、設立されたのは昭和七年ということです。それで、十二年に校舎をつくって、今を迎えているわけでありますけれども、たまたま私が小学校に通っていた、すぐ裏にあったものですから、もう五十数年前になりますけれども、その盲学校は私もよく知っています。

 先日お伺いしたところ、周りが畑ばかりだったんですけれども、今は周囲が住宅でびっちりと埋まっちゃっていて、往時の面影というのはないんですけれども、そちらに伺ってみたところ、昭和十二年の建物、それをリフォームする。いわゆるリフォームというのは、屋根を囲ったり、または土壁を囲ってパネルを張ったりという形で、教室そのものだとか、また部屋そのもの、廊下そのものはそのままですよ。

 私は思ったんですけれども、学校法人の私立の盲学校というのは全国で二校しかないんですよ。熊谷と横浜しか、実はありません。それで、どういうことで私立が公立に対してやっているのかというのを聞いたんですけれども、公立の門が狭い、いわゆる公立に入れない人、その人たちが体が不自由で行く場所がないわけですよ。その人たちに寄宿舎だとかそういうものを与えながら、ともかくマンツーマンで指導しながら国家試験を合格させるということであって、熊谷じゃなくて、もうみんな近県からそこに来ているんですけれども、そういう私学の建学の精神を生かしながら、今日まで頑張っているわけであります。

 私もそこを見まして、ともかく、盲学校で何ですか、これ、階段ですか、段差があるんですか、そういう話をしたんですよ。普通だったら、やはりスロープをつけてバリアフリーにするというのは、今、町中の商店でも何でもそういうことをしようということになっているんですけれども、肝心かなめの、目が不自由であって、そして伝統と歴史あるそういう学校にいまだバリアフリーがなくて、しかも狭い廊下の中でやっているということに対して、これはちょっと、私も政治を長いことやっているけれども申しわけなかったなというような感じがするわけであります。

 そこで、では公立と私立の補助制度はどういうふうになっているのかということをお聞きしたんですけれども、公立の一人当たりのそういう障害を受けた人というのは年間一千万ぐらいあるらしいですね。ところが、私立の場合には、普通の私学だと寄附金だとかそういうものがどんどん出ますけれども、盲学校なんかだとないんですよね。生徒一人当たりに係る補助は二百万だそうです。公立の五分の一ということで、私が寄附金なんか集まりますかと言ったら、いや、なかなか寄附金集まらないんですというような話もされていたわけであります。

 そういう私立の盲学校は、厳しい環境の中で、経営改善をしよう、または障害のある子供たちのために努力をしようということでやっているんですけれども、公立の盲・聾・養護学校に比べて国や県からの予算が少ないと、今お話ししたように、聞いています。国の支援内容はどうなっているのか、また今後、全国に二校という、落ちこぼれを何とか救おう、そういう私学に対してどのようなお力添えをいただけるのか、この辺をお聞きしたいと思います。

馳副大臣 まず現状ですが、私立の盲・聾・養護学校は全国に十四校あります。それぞれの建学の精神に基づいた特色のある教育を実施して、特別支援教育においても重要な役割を果たしていただいております。しかし、その経営状況については、障害のある子供を対象としていることから、児童生徒数も少なく、また児童生徒数に対する教員等の人件費の割合も高いため、経営状況は厳しいと団体からも伺っております。

 こういう状況を踏まえまして、私立の盲・聾・養護学校に対しては、各自治体からの補助のほか、文部科学省においても総額約九億円程度の経常費補助を行っているところであります。

 こういう実情を踏まえながら、今後の補助の充実を図ってまいりたいと考えております。

小島委員 ともかくそういうことで、時間がありませんから、了解しますが、いずれにしても、そういう形の中でぜひ頑張っていただきたいというふうに思っています。

 それから、この間の質問の中で、私は感動を受けたのは、大前繁雄先生がみずからの子供のことを取り上げて、行政はどうなっているんだ、おれたちはこれだけ遠回りしながらもやってきたと。こういう、大前先生のようないろいろなことを知っている方が苦労して苦労して、自分の子供が三十数歳になったということなんですけれども、全く一般の方だったらば、とてもじゃないけれども動けませんね。だから、そういうことを考えると、大前先生のお話しされたことというのは、実体験として、私も感銘を受けたし、これからそういうことがないようにしなきゃいけないと思っています。

 それで、これは「致知」という小説なんですけれども、一級一種の脳性麻痺の先生が、体が御不自由な方が高校、大学を出られて教員試験を取ったということで、やればできると、頑張ってきた方の記事を読ませてもらったんですけれども、この中で私が一番、ああそれはそうだなと思った点がありますので、この辺を一つ聞かせてもらいたいと思うんです。

 これは担任の先生によって全く違うというんですね。小学校では、最初の担任の先生が障害のある僕に深い理解と愛情を示してくれた、それで生きがいを感じて、ともかく運動会でも何でも、駆け足をしなさいと。そして、途中で転んだら、頑張れということで、みんなが、泣きながら走った僕を応援してくれたということで、そういう先生がいて、そしてやってきたんだけれども、今度は、四年生のときの担任の先生というのは、残念ながらこの方を、三戸学という人なんですけれども、その人を受け入れてくれなかったんですね。そしてマラソン大会に参加しようとすると、「三戸君はいろいろ大変だから、参加しない方がいいと思います」、それから「少しは人の迷惑を考えなさい」などと平気な顔で言ったというんですね。だから、いずれにしても、障害を持つ人の担任の先生というのは、その子供の将来の成長に向かって大変なブレーキもかけるというわけですね。

 ですから、そういう担任の先生を障害を持つクラスにしっかりと位置づけるということはできるんでしょうか、できないんでしょうか。

銭谷政府参考人 今担任の先生のお話が出ましたけれども、小学校、中学校における先生方、教員の方が、やはり特別支援教育についてしっかりとした理解と、また、愛情を持った教育を行うということが大事でございますので、教職員の配置につきまして、これは各校長が決めるわけでございますけれども、そういう観点から考えていくということはやはり大事なことだと思っております。

小島委員 それでは、時間もありませんので、最後の質問に移りますが、今の担任の考え方というのはその子供に対して非常に大きな影響を及ぼしますので、校長に任せるというんじゃなくて、障害があって入ってくる子はわかるわけですから、そのときに、年配者の人だとかそれから経験者だとか、そういう方々を充てる配慮はやはり必要ですから、考えてください。

 それで、この委員会で大変に皆さんが取り上げた問題でありますけれども、これは、小中学校への就学に関して、就学相談の際に、保護者意見の方を、話を聞いているのかということをやりましたね。だれがやったかな。民主党でも力強くその発言をされた方もおりましたけれども。

 そういうことを話をされたんですけれども、ぜひこの保護者意見を聞くということを明確に位置づける必要があると思うんですけれども、この辺のことについて、答弁は大臣ですか、では大臣から答弁をいただきます。これはもう皆さんが、三、四人の方が言っていますよ。だから、ぜひこの辺をお願いしたいと思うんです。

小坂国務大臣 就学につきましての御要望につきましては、これは、参議院におきましても、また衆議院におきましても、与野党を問わず多くの委員からの御指摘もございました。また、私も、小島先生が最初におっしゃったように、この特別支援教育というものが大きな転換期にあるというふうに考えておりまして、大前先生の御質問に対しても、私として決断をしながら前向きに対応して、この支援教育がさらに進むような努力をしたつもりでございます。

 ただいまの点につきましても、保護者や専門家の意見を聞きつつ、児童生徒の就学すべき学校についてこれを決定すべきだと申し上げてまいりました。しかし、流れはインクルージョンの流れにあるわけでございます。そういったことを踏まえながら、認定就学制度をより柔軟な形で的確に運用するためには、保護者の意見を必ず聞くように、それは現場に徹底してまいらなきゃいけない、このように考えます。

 そういうような観点から、私は、政令でしっかり書き込むことが必要だ、こう考えまして、先生の御質問に対してそのようにお答えをして、皆さんの御要望にこたえていきたい、このように考えるところでございます。

小島委員 最後に、小坂文科大臣から、皆さんが質問したことを真摯に受けとめながら、政令で位置づけたいというようなお話がありましたので、こういう前向きな答弁を了として、私の質問を終わります。

 どうも御静聴ありがとうございました。

遠藤委員長 池坊保子さん。

池坊委員 おはようございます。公明党の池坊保子でございます。

 この法案につきましては先回も大臣にお伺いいたしましたので、幾度となく質問を重ねてまいりましたが、今国会での委員会はこれが最後になるのではないかと思いますので、大臣に、質問というよりは大英断をお願いしたく、ここに立ちました。

 先回問題になりました芸術選奨のあり方でございます。

 政治家になりましてから、その時々において、私は、担当者にもっと細やかな選考のあり方があるのではないかと言ってまいりましたけれども、そのたびごとに、検討いたしますとか、これで十分でございますと言われてまいりました。

 考えてみましたら、担当者にこのような改革を求めるのは無理でして、やはり私は政治家である大臣に、ぜひこの選考のあり方を改革していただきたいというふうに思っております。大臣はバランス感覚もおありでいらっしゃいますし、リーダーシップもおありですので、ぜひこれはしていただきたいことでございます。

 国が関与しております賞はたくさんございますが、例えば芸術院賞、これは組織が別だと言われてはおりますけれども、天皇皇后両陛下もお出ましになる大変権威あるものでございますとともに、予算も十億以上、これは文化庁からだとは思いますが、出ておりますから、やはりしっかりしたものにしていかなければいけないと思います。

 文化、芸術に携わって人生を賭している人にとっては、文部科学大臣賞を受けるということは強い重みがございます。だからこそ私は、公平性、透明性が求められるのではないかと思います。確かに文化、芸術を選考するのは難しいのですが、専門性を有している人が選考したならば、必ずそれは透明性も公平性も担保できるということを私は申し上げたいのです。

 一番の問題は、選考委員会に諮られる以前の公的機関自身の候補の選定の仕方に私は問題があると思います。公的機関は候補者を選定する段階で十分な調査をすべきだと思います。でも、今回、それは全く欠如しておりました。

 この作者の盗作情報というのは、美術家の中心部にいる方々は、昨年八月、彼が展覧会を東京で開催されたときに既に表面化して知っておりました。御存じのように、昨年四月に三重県立美術館、八月に渋谷区立松濤美術館、そして十一月二十六日に茨城県つくば美術館でしておりまして、つくば美術館のときには館長あてにしっかりとした手紙も来たというふうに聞いております。

 そして、私が残念だと思いますのは、こういう問題が起きました後、五月に開かれました選考委員会のときに、委員の七人のうち四人が欠席なさったというのは、ちょっと私は無責任なのではないかなというふうに思います。その中で唯一救われましたことは、文化庁の担当者が速やかに調査に乗り出したこと、そして大臣がいろいろな情報収集の中でそれを取り消されたということではないかというふうに思っております。

 この美術部門の審査員、洋画の専門家は何人いたのか、選考のための審査会は何度開かれたのか。そして、美術といっても、書とか七宝は選考できる能力を持っている、専門性を有している人がありませんから、今まで選考されてこなかったのではないかというふうに思うのです。ですから、芸術選奨の受賞候補者というのはまずどのようにして選ばれるのか、そして受賞者選考の基準は何か、これは全く見えてこないんですね。

 芸術選奨は、その年に業績があり、新しい分野を切り開いた人というふうになっております。ですが、本当に切り開かれたのかなという気も私はいたしております。

 それらのことを含めまして、選考のための審査会は何度開かれたというのはわかるでしょうか。わかったら教えてください。これは次長でもいいです。あとは大臣、お願いいたします。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 十七年度の芸術選奨の選考審査会の開催についてでございます。この美術部門につきましては、本年一月に開かれたわけでございますが、審査会の会議本体は一日、一回でございました。

池坊委員 これ、一日なんですね。

 それで、この審査員で洋画の専門家というのは何人いたんですか。館長は何人かいらっしゃいますが、この館長は必ずしも洋画の専門家ではないと思います。わかりませんか。

加茂川政府参考人 七名の選考審査員の中に、洋画の、その部に限った専門家、その分野の評論家というのは一名でございますが、日本画の専門家でございますとか公立美術館等の館長さんも含まれておりまして、広く専門分野をカバーしているのだということも言えようかと思います。

池坊委員 日本画と洋画はまた審査の基準が違いますから。それから、映画監督は映画の部門ではすぐれていらっしゃると思いますが、その方が絵の専門性を有しているかというと、これは全くそんなことはないというふうに思うのです。確かに審美眼は一緒ですが、専門性となりますと、これはやはり技術的なものもわかっていなければならないと思います。

 公的機関の情報収集の充実、選考委員の選考の公平性、透明性、それからどのようなプロセスを経て選考されたのか、それから選考される前に第三者機関の評価の有無をしっかりと担保できる仕組みをすべきというふうに私は考えております。大臣、それについて、ぜひ御英断を、改革をぜひしていただきたいと思いますので、お願いし、御見解を伺いたいと思います。

小坂国務大臣 委員から御指摘いただきましたように、今回の芸術選奨にかかわる取り消しの問題、盗作問題というものは、結果として、必要な周辺情報が不足していたことになりまして、選考手続に大きな瑕疵が生じてしまったということは、大きな反省であり、まことに遺憾なことだと、おわびを申し上げたいと私は思っております。

 私は、今回のこの一連の事件を通じまして、選考のあり方並びに迅速な処理について文化庁を指導してまいりました。そもそもこの芸術選奨の実施要項というものは昭和四十五年に定められておるわけでございますが、平成十五年に、今日の制度のより適正化を図るという点から、選考審査員七名、それぞれの部門の七名に加えまして、それぞれの部門別に十人の推薦委員というのをまた新たに設けまして、その推薦委員の推薦に基づいて選考委員がさらなる選考をする、こういう過程を経たわけでございます。

 しかしながら、先生がおっしゃるように、それぞれの美術の分野においても、洋画初め、それぞれ専門家が、それでは何名いるかということになるとなかなか難しい問題になります。したがって、周辺情報が的確に収集でき、それが選考に反映できるように、また推薦をされるような委員の発言が過大な影響を及ぼさないように、これはこの選考委員の人数についても増加をさせて、特定委員の推薦というようなことではなく、全員の中で適正な評価が行われるような体制をさらに推進する必要がある、このような認識に立っておりまして、今回の反省のもとに、この選考制度の抜本的な見直しを行い、また、今回の選考過程を厳格に見直す中で、その反省を生かした新たな選考基準の策定を行いたい、このように思っているところでございまして、一層の適正化を図ってまいることで指導力を発揮してまいりたい。二度とこのようなことは起こさない、この決意のもとに、皆さんの信頼を回復するべく全力を尽くしたい、このように考えているところでございます。

池坊委員 時間が参りました。

 国がかかわっております芸術家等の顕彰は十ございます。もう欧米では国が芸術家等の顕彰には余りかかわらないという流れになってきております。その中で、やはりしっかりとした選考をしていただきたいというふうに思います。

 時間がございませんから申し上げませんが、芸術院賞を決めますのも、全く違った分野の五十人の方の過半数以上の投票で決まるんですね。ですから、全く違った方が、どうして一つのその人生をきわめているものの価値それから芸術性を決めることができるのかというのは、私は大変に不思議でございますので、その点もぜひ大臣の御英断をいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

遠藤委員長 横山北斗君。

横山委員 民主党の横山北斗です。よろしくお願いいたします。

 質問に移らせていただきます。

 今回、改正がされますと、一つの懸念材料としてずっと言われてきたことで、障害種別が混在すれば、いろいろな障害を持った人たちが、果たして今以上に一人一人のニーズにこたえた教育を受けられるのだろうかという問題がずっと意見として出されてきました。

 中でも、盲学校の場合、これは成人してからの中途視覚障害者、この方々は、最近、五十歳以上を含めて非常にふえてきているというニュースをよく聞くわけですけれども、この方々が再度社会復帰をする場としても使命を担っていると聞きます。年々この中途視覚障害者がふえている中で、果たして障害種別が混在した学校で専門性が確保されるのかどうかという懸念があるわけです。

 視覚障害部門の設置に関しては、視覚障害部門を設置するということで専門性を保証するということになっていますが、では、この設置については国が義務づけるのか、あるいは都道府県にゆだねることになるのか、この点知りたいのですが、よろしくお願いいたします。

馳副大臣 これは設置者の判断ということになりますから、地域の実情に応じて、基本的に都道府県が判断をいただくということになります。当然、専門的な教員とか障害種別の学級編制をするということについても、地域の実情とかニーズに応じて、設置者の方で判断をいただくということになります。

横山委員 わかりました。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 特別支援学校について、その目的が、児童生徒のニーズに応じたきめ細かな教育を行うことにより、障害による学習上または生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識、技能を授けること、こうあります。

 最後に来て極めて基本的な質問になりますけれども、この障害教育のあり方について、障害者の自立と社会参加を支援するとしています障害者基本法、それから国連で審議されている障害者権利条約など、この障害者施策をめぐる内外の動向、こうしたものとの関連で、この法律が、その転換に基づくものなのか、発展的継承に基づくものなのかというその全体像を、とりわけこれまでとの考え方の違いについて、最後にもう一度お聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

小坂国務大臣 今回の法改正は、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育を実施するという意味で、特別支援教育の考え方に立ちまして、特別支援学校の創設や小中学校における特別支援教育の推進を図ることとしておるわけでございまして、すなわち、端的に言えば、場から人へ着目をするという点において、ある意味の方針の転換になっていくと思っております。

 従来の特殊教育は、障害の種別や程度に応じて、盲・聾・養護学校や特殊学級といった特別な場で指導を行うことにより、手厚くきめ細かい教育を行うことに重点を置く考え方であったわけでございますが、これに対して、特別支援教育というのは、障害のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援するという視点に立って、子供たち一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善、克服するために、適切な指導と必要な支援を行うという考え方であるわけでございます。

 こうした考え方は、障害者の自立と社会参加の支援のための施策の基本理念を定めることなどを目的とした障害者基本法など障害者施策の動向を踏まえたものということになるわけでございます。

横山委員 ありがとうございました。

 それでは次に、小中学校におけるこの制度について、その見直しで幾つかまだわからないところがありますので、質問をさせていただきたいと思います。

 これまでの議論の中で、私立学校における障害児教育について、これは財政的な問題もあるのか、ほとんど行われていなかったものと認識しております。今回、小中学校において特別支援教育を推進することが明確に規定されるわけで、これに伴う私立の小中学校等の対応、そしてこれに対しての国の支援等々について、全体としてどのようなお考えをお持ちか、お尋ねいたしたいと思います。

銭谷政府参考人 本法案におきましては、第七十五条の第一項におきまして、小学校、中学校等における教育上特別な支援を必要とする児童生徒等に対する障害による学習上及び生活上の困難を克服するための教育を行うという旨の規定を設けているところでございます。この規定は、国公私を問わず、すべての小中学校等をその対象としているところでございまして、本規定によりまして、私立の小中学校における取り組みがより一層充実することを期待しているところでございます。

 文部科学省におきましては、これまで、私立の小中学校に対しましては、まず特殊学級を設置している私立の学校、これは実は一校でございますけれども、私立の小中学校への経常費の特別補助を実施いたしております。また、平成十六年の一月に作成をいたしましたLD等の児童生徒への教育支援体制整備のためのガイドライン、これを配付いたしております。また、発達障害者支援法施行通知等を発出いたしまして、私立の小中学校における特別支援教育の推進を促してきたところでございます。

 今後とも、今回の法案の成立を機に、現在文部科学省で実施をしております特別支援教育体制推進事業、こういう事業への私立の小中学校の参加も呼びかけて、私立の小中学校における特別支援教育のより一層の推進を促してまいりたいと考えております。

横山委員 申しわけありません。では、その点についてもう一点お聞きしたいんですけれども、それは将来的に私学への助成金なんかとも、受け入れ、受け入れないとかで影響してくることというのはいかがでしょうか。そういうことは特別考えていない、やはり私学の自由度というものもありますので、そのあたりの、今の段階で結構ですので、お考えをお聞かせ願えればと思います。

銭谷政府参考人 私立の小中学校で特別支援学級を設置している場合には、私学助成における特別補助ということを行っていきたいと思っております。また、今後、例えば今、私立の幼稚園で障害を持つお子さんを受け入れている場合に、例えば二名以上受け入れている場合には特別補助といったようなこともやっておりますので、こういった点も勘案しながら、私立の小中学校に対する経常費の助成ということについてはよく検討していきたいというふうに思っております。

横山委員 ありがとうございました。

 受け入れた学校に対しての奨励ということであれば、なるほど、それならばと思います。

 では次に、それに関連いたしまして、特別支援教育は決してLDやADHDや高機能自閉症の子供たちのためだけのものではないということは、昨日の話の中でも私は理解いたしました。一人一人に対してきちっとニーズに応じた教育をしていくということは、実は、実はというか考えてみれば、何も障害のある子供だけではなくて、すべての子供に対して行うべきことであります。この点、一人一人のニーズに応じて適切な支援をしていくということが学校の中でも社会の中でも認知されてくる、それが当たり前の社会になることによって、今学校教育が抱えている、いじめ、不登校、学級崩壊、学力低下、こういう問題の解決にもやがてはつながっていくものと私は期待したいと思っておりますが、この点については大臣はどのようにお考えでしょうか。

馳副大臣 横山先生御指摘のとおりです。一人一人の子供のニーズにこたえていくということを考えたときに、学級崩壊をしてしまう原因は何なのか、その子の不登校の原因は何なのか、学力低下の原因は何なのか、まさしく一人一人の児童生徒に着目をしないと対応していくことができないのは当然でありまして、今般の法律は特別支援教育の理念を明らかにするものでありますが、その目的とするところは、まさしく一人一人がどういう困難な課題を抱えているのか、それをどういう、教職員体制とか保護者も含めて、周囲の協力も含めて対応していくのかということをまとめ上げたものでありますから、当然今後も、不登校児、いじめ、学力低下、学級崩壊、そういったことに対応するときに、一人一人の児童の状況に応じて対応していくべき、こういうことに資するものと考えております。

横山委員 ありがとうございました。そういうほかの学校教育の今抱えている問題、そういうものに対して幅広く対応していくということを方向性として見出しているということであれば、私は、いろいろな人への周知徹底というものも自然と図られていくものだと考えます。今の馳先生の御答弁を聞いて安心いたしました。ぜひそのような取り組みを積極的に推進していただきたいと思います。

 次に、今回の教員の資質等々についても幾つか質問が出ました。私、教員免許について、特別支援学校の教諭になるための免許の取得について、ちょっと見ていて気づいたことがあるのでお聞きしたいのです。

 免許状取得に際して、大学において修得する単位数が三単位ふえるということになっているようです。その増加分によって総合性、専門性を高める、こう書いてあるんですが、三単位ふえることで、三単位というのはそもそも、まず、単位が二とか四ならわかるんですけれども、奇数であるというのは、授業科目でいうとどういう科目を考えているのかということもちょっとよくわかりませんし、それがいかに総合性、専門性を高めるのかという点についてのこともよくわかりません。ただ、単位数がふえるということしか書いていないようなので、私の見落としというか、もっと詳しく見ればいいのかもしれませんが、ちょっとそのあたり、つまり、二単位であれば半期の科目だ、四単位であれば通年の科目だとわかるんですよね。三単位というのは一体何なのかということと、もう一つは、それによってどう専門性が高まるのか、総合性が高まるのかということをお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

銭谷政府参考人 特別支援学校の教員免許状の総合性と専門性につきましてお尋ねがございました。ちょっと説明的になりますので少し答弁が長くなるかもしれませんが、御容赦を願いたいと存じます。

 今回、特別支援学校の教員免許状につきましては、従来の盲・聾・養護学校の免許状の取得のために必要な単位数二十三単位を二十六単位ということで、三単位ふやしております。この考え方は、特別支援学校の教員免許状において、幅広い障害に関する総合性と、障害種ごとの教育の専門性、この双方を担保するものとして考えられたものでございます。すなわち、一種の免許状について申し上げますと、まず、総合性の確保については次のような考え方によっております。

 まず、免許状の取得に必要な単位数を三単位増加させる、それから、特殊教育に関する基礎理論を見直しまして、従来の四単位から二単位に減ずることとする、そういたしますと、この三単位の増と二単位の減を合わせました合計五単位分につきまして、重複障害やLD等発達障害を含む幅広い障害についての知識、理解を得る学習といたしまして五単位を必修とするということを予定いたしております。この五単位の学習を通じまして、幅広い障害に関する総合性を確保するということにしているところでございます。

 次に、専門性の確保につきましては、従前の盲・聾・養護学校の教員免許状取得の場合と同程度の専門性を確保するということといたしまして、専門科目については従来同様、十六単位を必修とするということを予定いたしております。

 以上の制度にすることによりまして、重複障害や発達障害等に関しこれまで以上に総合的な対応が可能となると同時に、引き続き、従来と同程度の障害種別ごとの教育の専門性を確保するということが可能になると考えております。

 それから、二単位、四単位ではなくて三単位あるいは五単位という奇数の単位の考え方でございますけれども、当面課題になりますのが、一種免許状の場合、重複障害やLD等の幅広い障害についての知識、理解を得るため五単位の修得を必修とするという予定にしておりますので、この五単位の科目の設定をどうするのかということになろうかと思います。

 これは、各大学のいろいろな工夫によって行われるべきものと考えておりますが、例えば、一例といたしましては、四単位の通年科目と一単位の集中講義を組み合わせるやり方でございますとか、二単位の半期科目と三単位の集中講義を組み合わせるとか、大学の方針によりましては、さらに、五単位が最低必修でございますが、六単位以上の科目を設定して学習をするとか、いろいろなやり方が考えられるというふうに思っております。

横山委員 それで何となくわかりました。要は、三単位の授業が一個できるということではないんですよね。三単位以上を修得するわけですから、それは大学によって、別に四単位であっても、三以上あればいいということで、授業科目や担当教員を一人ふやさなきゃいけないということではないということですね。わかりました。

 では、次の質問に移らさせていただきます。

 就学指導のあり方につきまして、これも改めてといいますか、最後の確認なんですけれども、障害のある児童の就学について、平成十四年に学校教育法施行令が改正されまして、就学基準に該当する子供でも、学校側の受け入れ態勢によっては小中学校への就学が可能となる認定就学制度が導入されました。この制度を導入しました背景や理由、その後の運用状況について教えていただければと思います。よろしくお願いします。

馳副大臣 認定就学制度とは、盲・聾・養護学校の教育対象とする児童生徒について、児童生徒の障害の状況に照らして、小中学校に就学させることができる特別の事情がある場合には、小中学校への就学を可能とするものであります。

 この制度は、平成十三年一月に取りまとめられた協力者会議の報告を踏まえて、教育の地方分権の推進と、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育の推進の観点から設けられたものであります。平成十四年九月より施行されております。

 なお、平成十五年度以降、この認定就学者数は増加傾向にあり、各教育委員会の判断により制度が運用されているところでありまして、数字を申し上げますと、平成十五年度は、小学校で九百五十七人、中学校で三百二十三人、平成十六年度は、小学校千百三十六人、中学校三百七十七人、平成十七年度は、小学校千三百十二人、中学校が四百四十五人ということで、この制度の趣旨が多くの方々に理解されてきているものというふうに考えております。

横山委員 ありがとうございました。

 それにちょっと関連しまして、そうすると、これは参議院の方の質問にもあったんですけれども、通常学級にいる障害を持つ子供の中に認定就学者でない子供もいるにはいるということですね。そちらの方は、今の、こちら側の認定された子供との比較みたいなことでは、何かデータみたいなのはあるのでしょうか。データといいますか、ちょっとそのあたり、実態がわかればと思います。

銭谷政府参考人 認定就学制度は、ただいまの副大臣の御答弁にもございましたけれども、平成十五年度から実施をしているものでございまして、それ以前に、就学指導の過程におきまして、就学指導委員会等におきましては、盲・聾・養護学校への就学が適当ではないかという最初の判断があった中で、最終的に、親との、保護者の方との意見交換等を通じまして、小学校、中学校への就学という市町村の判断が下されて、現実に、小学校、中学校に在籍をしている障害をお持ちの児童生徒がいるということは事実でございます。そういう児童生徒につきましても、小中学校におきましては、認定就学している児童生徒と同様に、通常の学級等におきまして、配慮、一人一人のニーズに応じた教育が行われているという状況にございます。

横山委員 認定就学者と同様の配慮がなされているということでよろしいわけですね。はい、ありがとうございました。

 それでは、最後の質問に移らさせていただきます。

 就学援助の問題というのは、就学指導の問題とも重なります。障害がある子供の保護者がさまざまに、本当に、苦労しているだろう、通勤通学から、もう本当に大変な思いをしている。その負担の軽減のために、特殊教育就学奨励費というものがあるわけですが、これが、都道府県の財政力格差によって格差が生じてくることはないのか。最後に、この点をお伺いいたします。

小坂国務大臣 御指摘の就学奨励費、これは、盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律によって規定をされているわけでございますが、特殊教育諸学校等への就学の特殊事情にかんがみまして、保護者等の経済的負担を軽減するために、経済的な負担能力に応じて就学に必要となる経費についての補助を行う、こういう考え方でございまして、近年、障害の重度化、また重複化等によりまして、保護者の経済的な負担も大きくなっている傾向がある中で、各都道府県においては、就学奨励費の趣旨を踏まえて確実に補助を実施するという考え方で実施を行っているところでございます。

 文部科学省といたしましては、障害のある子供の就学を保障するには、全国どこでも同様の支援が受けられることが不可欠でありまして、御指摘のように、地方公共団体の財政力格差による地域間格差などはあってはならないと考えているわけであります。

 今後とも、障害のある子供の就学の実態を踏まえ、制度のさらなる改善を行うとともに、就学奨励の確実な実施に努めてまいりたいと考えております。

横山委員 ありがとうございました。

 今のお話は、もちろん、特殊教育の学級のお話としまして、地域間格差が生じないようにということをお伺いいたしました。

 しかし、現実に、これからこういう法律ができて、学校で、そして地域で障害を持つ子供たちへの教育、その自立等々の検討をしていくということになりましたときに、これは質問とは違いますが、私は、通常学級で学んでいる障害を持つ子供たちが排除されないような仕組み、それをきっちりとつくっていく必要があると思います。現実の問題として、そういう障害を持つ子供がいると、そうでない親たちが、自分の子供の教育がおくれるからというようなことを担任の先生や教頭、校長に申し出る、そういう人たちに突き上げられて、教頭や担任もその子たちを排除しようとか、そういう動きに出ているというケースが全国で幾つも報告されている。そういう懸念があるだけに、この法律に対して慎重な意見がたくさんあることは事実だと思います。

 最後、私ごとで恐縮なんですが、私は、青森県で政治家などになる前に大学の先生であったときに、スペシャルオリンピックスの設立準備委員会の代表をしておりました。それで、知的発達障害のある子供たちと一緒にオリンピックに参加する。一緒に寝泊まりをともにして、そのときに、要は、ああ、理解が遅いんだな、だけれども、それ以外のことはもう全く普通と一緒なんだなということがよくわかりました。ですから、本当に一緒になってみないと偏見というのが解けないような部分というのもございます。

 私は、教育学部の教員でしたから、教育実習の指導等で養護学校にも行ったりしたことがありました。そのときの給食の時間に、大変厳しいな、本当にゆっくり食べていられる状況じゃないなということで、どうしたらいいのかおろおろしてしまったんですけれども、その後、スペシャルオリンピックスの準備委員会代表になって、子供たちと数多く接することによって、そういう対応の仕方、また、社会が、世間がどれだけの偏見を持っているかというようなことも実感いたしました。

 今現在であれば、学校長や担任の先生が、通常学級におけるそういう子供たちを排除するというようなことが、現実に起こっていると思います。そういうことに関して、今後、文科省、大臣がきっちりと指導をしていく体制づくりをしていくことを御要望して、私の質問を終わりにいたします。

 ありがとうございました。

遠藤委員長 藤村修君。

藤村委員 民主党の藤村修でございます。

 遠藤委員長のもとで、こういうメンバーで実質審議を行うのが、ひょっとしたら、きょうが最後かもしれません。そんなことで、政府提出の法案の審議も最終局面でございます。関係各位に、この間、大変御尽力をいただき、また、文部科学委員会進行に当たりましても、与党筆頭理事ほか皆さんに大変御理解をいただいて、スムーズに進んできたということを、私なりに理解しておりますので、感謝を申し上げたいと存じます。

 私は、きょうは三十分の短い時間で、参議院を経て衆議院に来たこの案件は、多分相当緻密に議論をされてきたというふうに思っておりますので、最終的にいろいろ確認答弁をいただくという形で、割にテンポよく進めたいとは存じますが、幾つかのことは申さねばならないと思っております。

 今、横山委員が最終述べられました、知的発達障害者の世界のスポーツの祭典、スペシャルオリンピックスについては、昨年二月に冬の大会が長野県で行われた。小坂大臣の出身地であります。そういう関係から、横山委員は地方において関係者であったんですが、小坂大臣は、中央において、長野におけるスペシャルオリンピックス実現に大変尽力をいただいたということ、私もたまたまその中に加わって、国が行うべき予算の獲得など、走り回った経験がございます。小坂大臣はそういう経験で、すなわち、知的発達障害の方々の世界のスポーツの祭典、これは大変たくさんのボランティアの人たちが参加をし、成り立つわけですね。そして、スペシャルオリンピックスの会合などを経ると、必ずそのボランティアの人たちが、大変勉強になった、こうおっしゃるわけですね。すなわち、これがまさにインクルージョンの考え方で、先ほどの横山委員の考えもそうでしたが、学校の先生も、きょうまでの、いわゆる養・聾・盲の免許取得者がまだまだ少ない中で、かつ、その学校で教えている人もたくさんいるんですが、そこに行くことでその先生方は非常に啓発されるし、理解が深まる、だから人事交流も必要だということであろうと思います。

 今回、この法案をここで審議し、採決に至るまでの間に幾つもの御発言があったんですが、先ほどの小島委員の質問で、小坂大臣は、大きな転換期である、こうおっしゃっておりました。私も大きな転換期だと思います。その転換の内容が、過去長い間、文部科学省は分離、別学という基本の考え方を固執していた。しかし、ここへ来て、これは世界の潮流云々という御発言もあるし、いよいよまさにインクルージョン、ノーマライゼーションというこの思想を日本の文部科学省が取り入れるんだ、こういうことであろうと思います。

 この確認をしたいと思うんですが、実は二月二十四日、衆議院本委員会において、これは与党の委員から、一般質疑でございましたが、やはり障害者の教育の問題について、小坂大臣は、原則分離を撤廃せよというお話は、まず、実態というか、環境がまだついてこない、しかし、どちらが先という問題は確かにあるけれども、今ようやく一歩前へ踏み出している、私はこれを、一歩を二歩、三歩と足早に進めさせていただいて、環境を早く整備しというくだりでお答えをされておりますので、そして、きょうの朝の発言、大きな転換期ということであるなら、文科省は、過去の分離、別学をいよいよ転換するんだ、今回の法案審議の中でこう確認させていただいてよろしいでしょうか。

小坂国務大臣 私も、ただいま横山委員の御質問を聞いておりまして、昨年のスペシャルオリンピックスにかかわる皆さんの御支援、御理解を思い出しておりました。藤村委員におかれましても、当時、同じ議院運営委員会の仕事を通じて御協力を賜り、また、公明党の冬柴議員ともども、この予算獲得に向けてかなり困難な作業に挑戦をしていただきまして、一時はギブアップ寸前までいきましたけれども、最終的に達成をすることができ、そのスペシャルオリンピックスは、全国のボランティアの皆さんの参加によって、過去のスペシャルオリンピックスでは最も成功したものと言われるような評価を得る大成功に終わったわけでございます。これはすべて、そのボランティアの皆さんの献身的な御努力によりまして、まさにこれを機会に、日本の障害者に対する考え方というものを改める機会にして、そして、多くの人にボランティアとして携わってもらうことによって理解をしてもらおうという努力の結果であったと私は思っておりまして、そういう意味で、ようやく日本も、いわゆるインクルージョン、インクルーシブな考え方に近づいてきている、こう思っております。

 やはり、教育の現場は、そういう意味で、徐々に変わりつつありますけれども、教員の配置及び学校の施設等の環境整備を待たなきゃならない部分もまだ残っております。したがいまして、今すぐ完全なインクルージョンの考え方で進めようと思っても難しい面はありますけれども、先ほど御指摘をいただきましたように、私は、たまたま私が大臣として学校教育法の改正に携わったこの機会に、少しでも前へ進めたい、こう思って、できるだけ前向きな答弁をして、省内の体制も整えるような形を進めたい、こう考えて答弁に臨んでおります。

 そういう意味で、今委員が御指摘いただきましたように、私も流れはインクルージョンの流れであるということをここではっきりさせていきたい、こう思います。その上で、現場の体制整備を行っていきたい、そして、国民の皆さんの理解をさらに促進してまいりたい、こういった意味において、今回の審議は、国民の理解を得る上で、また大きな役割を果たした、このように考えているところでございます。

藤村委員 小坂大臣の、流れはインクルージョンであると。これは大変大きな大臣答弁でございまして、文部科学省は、過去の分離、別学ということから、ここは大きく、本当に一歩踏み出されたということを評価したいと思います。

 次に、確認答弁に近い状態ではございますが、何度も問題になっております、いわゆる就学の選択ですね。きょうまでの答弁は、普通の学校へ行くか、特別支援学校へ行くか、あるいは特別支援学級かなどは、学校の先生や専門家や保護者がそれなりにきちっと情報交換し、相談し、決めるんだ、こういう話でありました。また、先ほどの答弁で、小坂大臣は、それをきちっと、保護者の話をちゃんと聞くようにということは、政令で位置づけるというふうにはっきりおっしゃっていただきました。私は、ここは一歩本当に前進したと思うんです。

 今回、教育基本法にもありますとおり、保護者が何より家庭の教育の第一義的責任者でありますから、そういう意味で、やはり保護者の責任者としての考え方であり、そして選択であると思うんですね、最終的に。ただ、保護者が必ずしも子供の最善の利益を促す選択ができるかどうかは、そこは専門家が入るところだと思う。だから、この辺を間違わないようにしながらも、しかし、やはり保護者の意向の尊重、あるいは、保護者が納得するように十分な機会、相談をする、こういうことをお願いしておきたいと思うんです。

 銭谷局長が、これは参議院で答えていらっしゃいます。その際には子供の最善の利益を考慮して決定することが重要である、こうお答えなされている。それは、心は今私が申し上げたような、そういうことでいいのかどうか、ちょっと確認をしたいと思います。

銭谷政府参考人 障害のある児童生徒の就学につきましては、保護者や専門家の意見を聞きつつ、当該児童生徒の自立と社会参加のために、文字どおり子供にとって最善の利益ということを考えて総合的に判断されるべきものと考えております。

藤村委員 さらに、その際の今の専門家というところにおいて、先日の参考人質疑で姜さんなんかも来ていただきまして、そういう民間の団体で非常によく勉強し、あるいは実際に障害者の皆さんとともに歩んでいる人たちがたくさんいるわけです。そういう方も専門家の中に入るかどうか、これだけ、ちょっと一つ確認させてください。

銭谷政府参考人 今後の就学指導のあり方を考えたときに、児童生徒の教育的ニーズをきめ細かく把握し、これを就学先の決定に反映するための調査審議を専門的に行う機関でございます就学指導委員会の構成、開催方法、これは今後とも十分に検討していく必要があるわけでございます。

 この就学指導委員会につきまして、その構成は各市町村でいろいろございますけれども、障害を持つ方々のためにいろいろな活動をしておられる団体の方とか、そういう方もこの構成員には当然入り得るものと考えております。

藤村委員 はい、わかりました。

 次に、教員研修と免許制度のことを確認していきたいと思うんです。

 この法律が成立しますと、来年の四月からもう動き出す、こういうことであります。すると、今から養成している話ではなしに、現に現職の教員の方々にどのように研修をしてもらうか、これが喫緊の課題となるわけでありますが、文科省としての現職教員の研修に対する認識、それから、それに対して来年度予算を今から措置、まさに概算要求するわけですから、その予算の考え方、そしてどういう問題点があるのかなどをお聞きしたいと思います。

馳副大臣 これは大きく分ければ三つ申し上げられると思います。まず、横須賀にございます国立特殊研において、いわゆる中核となる教員の研修を進めるということが一つ。二つ目は、全都道府県に委嘱しております特別支援教育体制推進事業、こういった中で特別支援教育のコーディネーターを養成していくということが二つ目。三点目は、これはまさしく初任者研修や現職教職員の十年経験者研修を通じて、すべての教職員に特別支援教育についての基本的な理解を深めていただき、研さんを積んでいただく。

 三つの大きな事業を中心にしてやっていくべきと考えておりますし、そのために、平成十九年度の概算要求についても、そういった現職教員の資質向上のための研修にしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

藤村委員 今、十年研修までおっしゃったんですが、長期研修というのが教育公務員特例法でもできることになっておりますが、長期研修でまさにこういう専門性を磨くということはお考えではないんでしょうか。

銭谷政府参考人 教職員につきましては、現職のまま、任命権者の定めるところによりまして、長期にわたって研修が受けられるということが、教育公務員特例法の二十二条の第三項に規定をされております。

 特別支援教育に携わる先生方が、こういった長期研修を活用してその資質の向上を図るということは、これはもちろんあり得る話でございまして、例えば、国立特殊教育総合研究所に長期に研修に来ていただくとか、そういったようなことも当然あり得るわけでございまして、こういった長期研修の一層の活用ということは、私ども促してまいりたいと思っております。

藤村委員 長期研修が一カ月以上ということで、一年ぐらい、場合によっては二年もできるということであります。こういうものを利用して、やはり免許も磨いていただくということができると思います。

 今、これは都道府県がそれぞれ行われるわけで、文部科学省がああしろ、こうしろと言うのではないにしろ、長期研修で、特に一年ぐらいの大学院などに通うようなケースの場合は、何か管理者養成コースのようになってはいないか。やはり長期研修というのは専門家を養成するんだという考え方に少しシフトしていただきたいと思うんですね。単に長期研修で一年、専修の免状を取ったから将来はもう教頭、校長、こういう一つのルートをつくりつつあるようだと聞いておりますので、そういうことにならないように、特に専門性のものに長期研修を利用してもらいたいということで、これは何か答弁があればお聞かせください。

銭谷政府参考人 長期研修につきまして、特別支援教育に限定したわけではございませんが、全体的な状況を申し上げますと、例えば、平成十七年度では一月以上長期研修という形で派遣をされている方は四千六百人ほどおられます。その派遣先を見ますと、やはり大学等の教育機関が三千四百人ぐらいで一番多いわけでございますが、それ以外に、企業とかあるいは福祉施設などに派遣をされているというようなケースもございます。

 したがいまして、長期研修につきましては、それぞれの研修目的ということがございまして、今先生からお話のございましたように、本当に御自分の専門分野をさらに磨いていくというような長期研修もございますし、管理職になるための幅広い経験を積む、あるいはマネジメントを学ぶといったような研修もございますし、御自身のいろいろな教育技術のアップということを目的とする研修もあるわけでございまして、それぞれの多様な研修目的を設定して行われるべきものであるというふうに認識をいたしております。

 したがいまして、本当に特別支援教育に関連をして言えば、特別支援教育に関する一層の指導力の向上のための長期研修ということが今後もっと活用されていいのではないかというふうに考えるところでございます。

藤村委員 今、平成十七年の四千六百十人の数を挙げていただきました。小坂大臣、これは三年間だけ、とりあえず資料をいただいたら、平成十五年は五千三百人、十六年が四千九百三十八人、十七年が四千六百十人、右肩下がりでありますよね。これは他の、要するに教育関連予算というものがこういうことになっているのがここにもきちっとあらわれているわけです。

 今、局長答弁ありましたけれども、こういう特別支援の専門的なスペシャリスト養成のために考えたいとおっしゃるなら、これはふやさないとだめですから。これに、では例えば二百人ふやすとか、それはぜひとも特別支援の教育のスペシャリストを養成したい、そういうことを文科省ははっきり言わないと、今までどおりいっちゃいますよ。どうですか。

小坂国務大臣 今御指摘いただきましたように、資料によっても右肩下がりになっているのは現実のようであります。

 現下の厳しい財政事情のもとで教職員の定数の効率的な活用ということが重要であることから、今の御指摘を踏まえて、今後の定数改善の中で研修等の充実を図りたい、こう考えるんですが、実際には、研修等の定数の合理化措置も配置を見直す中で行ってきたのも事実でございます。

 しかしながら、今局長が答弁しましたように、流れとしては、委員が御指摘のように、単なる管理職への通過点ではなくて、やはりスペシャリストや技能的な資質向上、スキルアップのためにこの制度をしっかり使ってもらうということがやはり必要だと思います。御指摘がありましたように、今日このまま放置すれば、まさにその流れになってしまいかねない懸念があることも私は認識できますので、今後、そういった意味で、この配員の見直しの中で現場を指導して検討してまいりたい、こう考えます。

藤村委員 現下の厳しい財政事情の中でという冠が必ずつくんですが、教育は本当にそれでいいのかというと、皆さんそうじゃないとおっしゃるはずですよね。ですから、やはりそのことは、教育が聖域だとは申しません。でも、教育に今お金をかけないと二十年、三十年先にさらに困るんですよという話は、本当にしっかりと認識を、特に財務省関係の方にはしていただかないといけないな、このように思っております。

 そこで、そういう財政との関係でいうと、これはパネルにはしてこなかったんですが、この表は文科省の皆さんはすぐわかると思うんです。今回、この法律によってどういうふうに対象が広がるかというと、今までは従来の特殊教育ということで、通級による指導、あるいは特殊学級、それから盲・聾・養護学校、こうだったと。今回、それを新たに対象者としたのがLD、ADHDあるいは高機能自閉症等。この表で見ると何か半々ぐらいですが、数でいうと、この辺まで来ますからね。つまり、この法律はそれだけ大きな、対象をうんと広げたわけです。しかし、財政措置のない法律であります。

 だから、ここが私は今回のこの法律の矛盾点だと思うんですね。これだけ、非常に中身のある、インクルージョンの思想、世界の潮流を取り入れて、特別支援学校、そしてさらにそこがセンター的機能、さらにLD、ADHD、高機能自閉症等、皆さんに拡大をする、非常に理想の高い法律である、そのことは認めます。

 が、しかし、現実はどうか。現実は常に、先ほども答弁ございましたけれども、個人のニーズになかなか適応できない。ですから、それが今後努力するんだと。だから、理想は高いけれども実態が余りにおぼついていないというか、追いついていないですよね。

 それから、対象をこれだけ広げたけれども、第八次改善はやめたし、わずか今回の件で二百八十二人にふやす。それも単年度だと。非常にお寒い限りであります。

 このことは、小坂文部科学大臣にはもう十分な御認識はある上で、間もなく概算要求になりますので、十九年度の予算の問題がありますが、ここは本当に決意を示していただかないと、この法律、理想が高くていい法律だと我々もだんだんに評価はしてまいりましたが、余りに実態が伴わないんじゃ、言っていることとやることが違うじゃないか、こうなってしまいますので、ここは文科大臣の決意のほどをお知らせいただきたいと思います。

小坂国務大臣 平成十八年度の予算折衝に当たりましては、財務大臣との協議において、喫緊の課題であります特別支援教育及び少人数教育の観点からの二百八十二人の定数改善を、自然減等見直す中の対応でこれを消化するという形で、第八次の定数改善は五カ年計画としては見送ったわけでございますが、単年度の実質を確保することで対応してまいりました。

 この十九年度の予算編成に当たっては、もう一度私どもは定数改善の基本的な考えに立ち返って財務省当局との折衝に当たってまいりたい、そのように考えておりまして、とりわけ今回の審議を通じて賜りました委員の皆さんの御意見というものを背景にして頑張ってまいりたい、このように思うわけでございます。

藤村委員 ところが、先般この国会を通過し可決成立した、いわゆる行革推進法五十五条三項にこう書いてあります。「政府及び地方公共団体は、公立学校の教職員」、中略をいたしますが、「その他の職員の総数について、児童及び生徒の減少に見合う数を上回る数の純減をさせるため必要な措置を講ずるものとする。」

 これは内閣不一致ではないか。これは内閣でもう既に成立した法律ですよね。片や、こういうことで法的に縛られる。一方で、こういう立派な法律を出して、今後はインクルーシブの思想のもとで特別支援学校をやっていこう、これには対象者をうんと広げた、だから人手もたくさん要るはずだと。実はきょうまで幾つも紹介されたように、この分野は児童が純減していなくて、ふえているんですよね、だからここはふえている分野ですからね。これをどう理屈を立てて扱っていくのか、この矛盾はないのか、お知らせ願いたいと思います。

小坂国務大臣 御指摘の行政改革推進法の第五十五条第三項、これは確かに私どもにとって大きな課題として投げかけられたものでございますが、実際の運用に際して、私どもとしては、標準法対象の教職員の純減につきましては、児童生徒の減少に伴う自然減によって対応することといたしまして、これに加えて、給食調理員や用務員等の削減により教職員全体の削減を図って、自然減を上回る純減を確保する、このように対応することとしたわけでございます。

 したがいまして、先ほど御指摘の研修等々を考えますと、加配定数は児童生徒の減少と関係なく行ってきたところでございますので、この行政改革推進法によって純減という形にはならないこととなるわけでございまして、私としては、こういった全体の流れの中で、必要とされるもの、すなわち、今後とも、先ほど御指摘の長期研修や、あるいは特別支援教育や、あるいは食育を初めとした、そういった定数改善の必要な部分、また特別支援教育分野における児童生徒数の増加に対応するような配置について対応できるように努めてまいりたい。

 したがって、行革法の精神は精神として持ちつつも、現実的な対応をする中で、ぎりぎりのところで私どもとしての立場をしっかり守っていきたい、こういう形で対応したいと思っているところでございます。

藤村委員 こっちが法律通っちゃったものですから、苦しい答弁にならざるを得ないわけですが、そんな中で、しかし、努力する、頑張る、そのお気持ちだけは酌んでおきたいと思います。

 残りの時間ですので、私は、教員養成について、さっき横山委員から免許の問題がございましたが、教員養成について、今回、特別支援学校の免状が三単位ふえる。これは相当きつきつなんですね、現状の四年制度の教員養成課程においては。必修が多分百二十ぐらいになっちゃうんじゃないでしょうか。ということは、選択の余地がほとんどなくなっている。

 私はかつて、本委員会で当時の文部大臣とも議論をいたしましたが、教員養成課程を、今、文科省は専修免許などで大学院に少しシフトも考えていらっしゃる部分はあるんですが、最近でいえば、たしか薬剤師、薬学部の六年制がもうスタートをしたのか、来年からかで、あるいは何年か前には獣医師、これも四年制から六年制になりました。犬猫の先生が六年制で、人間の先生が四年制かという、それは適切な比喩ではないですけれども、私は、実態としても、いよいよ四年制での教員養成というものが満杯になってきたのではないか。

 私は、六年制の教員養成をもう十年来、主張しております。特に、うち一年間は、青年海外協力隊のような、海外で一年ばあんと実習してくる。それから、残り一年のうちの相当部分は、やはり国内実習、それも学校だけでない部分というものも加えていくという構想をずっと温めているんですが、文科省の方として、あるいは小坂大臣の見解でも結構ですが、大学院修士にシフトしていく、それはそれで一つの方向だと思うんですが、この教員養成課程自体を四年制から五年制ないし六年制に延ばしていくというお考えはまだ出てこないのかどうか、現時点でのお考えをお伺いしたいと思います。

小坂国務大臣 委員が御指摘の、教員養成課程において高度な専門的な知識、技能や指導力を確実に身につけさせるという観点から、学部段階での教員養成課程を六年制化したらどうだ、こういう御意見があることは私も承知はいたしております。

 しかしながら、昨年十二月の中教審中間報告では、大学院レベルにおいて高度な専門性を備えた力量のある教員を養成するための教員養成課程の改善モデルとして、今御指摘のありましたような、教員養成に目的を特化した専門職の大学院である教職大学院大学の制度の創設が提言もされております。

 こういった検討は引き続き進める中で、教員養成の六年化や修士レベルを原則とすることは、では、現状でどうなるかといいますと、現在の採用者に占める大学院修士課程修了者が大変少ない。小学校で六%、中学校一一%、高等学校でようやく二三%、四分の一、こういう現状であることも認識をせなけりゃなりません。養成期間の長期化が現実の教員採用に与える影響が大きいこと。そして、今日、開放制の教員養成の原則をとっておるわけでございますので、ともに四年制である教員養成系の大学、学部と一般大学の学部、それぞれの特色を発揮して多様な人材を教育界に送り出していただこう、この考え方で開放制をとっております現状からすると、今直ちに六年制に移行するというのは難しいことはもう委員も御存じでありますが、今後の検討課題として、研究をしていく必要がある課題と認識せざるを得ない。

 教職を魅力あるものとするために、給与等の処遇改善をするとか、また、教職大学院の成果等を踏まえて、質の高い教員の養成確保が現場にどのような影響を与えるか、こういったものをしっかり研究する中で対応してまいりたいと考えます。

藤村委員 時間が参りました。終始丁寧な御答弁をいただきましたことに敬意を表して、終わります。ありがとうございました。

遠藤委員長 保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 大事な法案審議があるんですが、一般質疑の機会がなかなかとれないということで、今国会で何度か馳副大臣にお聞きをしたスケート連盟の問題、大変関心を持って見てきたわけですけれども、簡単に、まず三点にわたって、事実がどうなっているのか。

 これは報告書が三十九ページにわたって文科省の方に提出されたというふうに聞いていますけれども、例えば、国際スケート連盟役員招聘五万ドルというようなことが書かれておりますが、これは不適切であれば返還させるということがないのか。あるいは、国際事業委員会扱いの大会経費として認められていない部分が弁済された、こういうふうにあるんですが、だれが幾ら弁済したんだろうか。三点目に、記念品や商品の仕入れ問題で元会長が連盟に被害を与えた、こうありますけれども、金額は幾らで、返還は求めないのか。ほかにもあるんですけれども、三つくらい、端的に、おわかりになりましたらお答えいただきたいと思います。

馳副大臣 とにかく、今回の事件というか問題というのは、スポーツ団体を運営するに当たって、本当に期待を裏切るというか言語道断の問題であったと思っております。

 それで、三点ほど答えさせていただきますけれども、まず、国際スケート連盟の役員招聘の件については、連盟において、実際に受けた損害額について、現在調査を行っております。損害額が確定すれば、返還を請求するなど、連盟において適切に処理されるものと考えております。

 二点目は、大会経費と認められなかった部分の弁償額及び弁償したものについては、既に弁償済みであるということで、連盟は公表しておりません。そういうことから、文部科学省として申し上げる立場にはございません。

 三点目として、記念品、商品の仕入れ問題についても、連盟において、実際に受けた損害額について、現在調査を行っております。損害額が確定すれば、返還を請求するなど、連盟において適切に処理されるものと考えております。

 全体的に言えば、元会長も弁護士を立てて、また、この調査委員会についても弁護士や会計士さんが入って十分精査をしながら進めておって、連盟としても民事、刑事を含めて訴訟も辞さずという姿勢で取り組んでいるということの報告はいただいておりますので、御指摘のあった三点についても、司法的な観点からもきっちりと調べた上で対応がなされるというふうに報告をいただいております。

保坂(展)委員 確認ですが、五月十一日の新聞には、元会長に法的手段も検討という記事が掲載されていますけれども、民事、刑事含めたそういった対応も含めて、今後、連盟の再建に向けて文科省としても指導していくということでよろしいんでしょうか。

馳副大臣 御指摘のとおりです。

保坂(展)委員 それでは、法案の方に移らせていただきます。

 まず、共同学習と交流学習という言葉が、これは局長さんにお聞きしていきますけれども、共同学習、そして交流学習、それぞれどういうふうに違うんだろうか。

 世田谷区の「ふれあいの教育」というパンフレットがございます。これを見ていくと、ちょっと紹介をいたしますが、心身障害学級の児童生徒と通常の学級の児童生徒の交流は、同じ社会を生きる人間として互いを理解し、ともに助け合い、支え合っていくことの大切さを学ぶ場であると考えられます。小中学校の通常の学級と心身障害学級では、児童生徒の実態に応じながら、学校行事、クラブ活動、総合的な学習の時間、給食及び清掃、また一部の教科での交流を行ったり、ともに力を合わせて取り組んだりしています。また、知的障害学級と都立養護学校との交流や、地域の方々との交流など、学校外のかかわりも見られています。こういうふうに紹介をされておるわけなんですが、これは従来の交流学習の内容ではないだろうかという声があるんですね。

 ここを踏まえて、交流学習と共同学習の概念整理というか、どういうふうに分けてお使いになっているのか。この点、いかがですか。

銭谷政府参考人 これまで学校教育の場では、学習指導要領に基づきまして、小学校、中学校の児童生徒と例えば盲・聾・養護学校の児童生徒が活動をともにするということにつきまして、交流あるいは交流教育ということで表現をしていたわけでございます。この中には、小学校、中学校におきまして、特殊学級の子供と通常学級の子供が活動をともにするといったようなことももちろん含まれているわけでございますけれども、通常、交流あるいは交流教育という表現で今までは使っていたわけでございます。

 平成十六年の六月に障害者基本法の一部改正が行われまして、その際、交流及び共同学習ということについて規定がなされたわけでございます。その内容としては、盲・聾・養護学校、小中学校の特殊学級または通常の学級に在籍をしている障害のある児童生徒が障害のない児童生徒と同じ教育の場でともに学習や活動を行うものを指すというふうに理解をいたしております。

 したがって、共同学習の概念については、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒とが活動をともにしたり学んだりすることが相互の理解を深め、障害者の自立と社会参加の促進や、障害のない方の障害者理解の促進が図られ、共生社会をつくることにつながることがその背景にあるというふうに私どもとしては認識をしております。

 ですから、交流それから共同学習、どこまでが交流でどこからが共同学習かというのは、これは大変区分が難しいところがございますので、私どもといたしましては、交流及び共同学習というのを一体的にとらえて、障害のある方とない方、こういう方の交流、あるいはともに学ぶということを促進していくということが大事ではないか、こういうふうに思っているところでございます。

保坂(展)委員 よくわかりました。

 平成十六年の障害者基本法の議論の中から、これまで交流学習だけだったのが、交流及び共同学習と。今局長さんの説明にあったように、普通学級で障害のある子が障害のない子とともに学び育つことを、これこそインクルージョンだと思うんです。

 そこで、ちょっと大臣にお聞きしたいと思うんですが、今改正案で、七十五条一項で、認定就学者、あるいは先ほどの議論にもあったように、認定就学者ではないけれども、普通学級に在籍をしている子が、普通学級にいる状態というんですかね、ともに学んでいる状態というのはまさに共同学習ではないかと思うんですが、その点、小坂大臣、いかがでしょうか。

小坂国務大臣 今御指摘のように、通常の学級に在籍する児童生徒については、そのニーズに応じてさまざまな指導や支援の手当てが考えられる、こういう形でございます。

 障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の交流及び共同学習ということでいいますと、その対応はさまざまな内容、方法が考えられるところでありまして、障害のある児童生徒とない生徒が同一の教科を学習するということ自体が交流及び共同学習の一形態である、こういうことは確かに言えるというふうに思います。

保坂(展)委員 その点、局長にも答弁していただきたいんですけれども、共同学習であるというふうに考えてよろしいでしょうか。もちろん交流も含んでいると思いますけれども、共同学習かなと思うんですが。

銭谷政府参考人 障害のある子と障害のない子が同じ教室で学ぶということは、ただいま大臣から御答弁がありましたように、文字どおり、交流及び共同学習ということになるわけでございますが、活動によりまして、共同学習の側面が強い場合もあれば、交流の側面が強い場面もあるだろうと思います。

保坂(展)委員 共同学習という言葉が障害者基本法で入ったということから考えると、これは共同学習と位置づけていっていただきたいなと思います。

 続けて、先日もサラマンカ宣言のことを取り上げましたけれども、初中局長に伺います。

 特別なニーズを有する人々は、そのニーズに見合った子供中心の普通学校にアクセスしなければならないと書かれている、この宣言を踏まえて、教員の発想の転換や、学校全体が意識を転換することが必要ではないかと昨日の参考人質疑でも語られました。これが、学校の教員であるとかあるいは教育委員会、行政の部門に働く人たちに十分徹底されているかどうか。例えば研修で、こういった宣言、こういう趣旨で出ていますよということをやられているかどうかという点についてはどうでしょうか。

銭谷政府参考人 何回か御答弁を申し上げたところでございますが、障害児の教育について、いわゆるインクルージョンを国際的には志向して、それが大きな流れになっているということは、私どもも十分認識をしているわけでございます。

 そして、そういう中で、今回の法律改正などで私どもが御提案をしておりますのは、一人一人の子供のニーズに応じた教育というものを的確に実施をしていく、そして一人一人の子供の社会的な自立というものを育てていくことが大事ではないかということで、今考えているわけでございます。

 特に、今回の法律改正におきまして、学校教育法の七十五条の一項におきまして、小学校、中学校等におきまして、特別支援教育ということをすべての学校で取り組んでいただくということになるわけでございますので、これからの教職員の研修におきまして、すべての教職員が特別支援教育の考え方について十分に理解をしていただくということが必要でございますので、国際的な動向を含めまして、初任者研修あるいは十年経験者研修等さまざまな研修の場を通じまして、そういった考え方について十分学ぶ機会が得られるように、私ども、これから指導してまいりたいと思っております。

保坂(展)委員 小坂大臣は前回、大変明確にお述べいただきまして、この宣言の部分を紹介いたしましたら、大変すばらしい考え方である、できるだけそういったインクルーシブ、サラマンカ宣言にあるような考え方を日本においても普及するような環境になるようにしたい、こういうふうに御答弁いただいています。

 学校現場で障害のあるお子さんに接する教員あるいは教育行政関係者に、この宣言がある、こういう内容だということをぜひ研修に努めていただきたいと思います。いかがでしょうか。

小坂国務大臣 これは教員のみならず、一般の皆さん、父兄の皆さん、いわゆる保護者の皆さんに理解していただくことも必要だと思っております。そういう意味で、幅広い皆さんの御理解を得られるように、今後とも努めてまいりたいと存じます。

保坂(展)委員 ここに、養護学校で教育を受けた全盲の青年の手記が届いております。彼は、小学校の時代にも近くの学校と交流をしていた、そのときはつき合いがあったけれども、いざ卒業してみると、全然つながらなくなりました、僕は、交流とか、毎週YMCAに行って健常者と触れ合おうということは、単なるごまかしだと思いましたと書いている。彼は普通学級を希望するのですが、担任は、転校したらいじめられるよと言っていたんですが、高校へ入学して、初めて友達から殴られたときに、うれしかったと書いている。彼は、本当に怖いのは、いじめられるということではなくて、無視されることだ、こういうふうに言っているんですね。

 今の状態で普通学級にいきなり障害のあるお子さんが入ってくる、整備する課題はとても多いと思うんですけれども、しかし、こういった生の声を聞いて、馳副大臣、どうでしょうか。

馳副大臣 障害があろうがなかろうが、やはり個人としての尊厳を持った人生を送らなければならない、ましてや義務教育の段階、高等学校においてどのような人生観を身につけるかということで、極めて重要な問題であると思っております。

 やはり、私もそうですけれども、一番恐れるのはだれからも相手にされなくなることでありますから、そういった観点からも、共同学習、交流といったものも重要でありますが、通常の学校におられる、また、特別支援学級となりますけれども、そういう学級に在籍する障害児とそうではないお子さん方との垣根を低くしていく、そのための教員の研修、理解、深めていくことが重要だと私も思います。

保坂(展)委員 副大臣にさらに聞いていきたいんですけれども、昨日の参考人質疑でも、現場から、車いすに乗って、姜さんという参考人がお話をしていただきました。まだ今の時期でも、お配りになっていただいた資料の中にも、子供が地域の小学校に通いますと言うとこんなにも周囲から阻害されなければならないんだろうかというふうに親たちは悩んでいる。

 就学先の決定について、保護者の意見を十分に聞くんだという答弁はいただいているんですけれども、養護学校の方に行きなさいよということが一つの答えとしてあって、そうじゃない普通学校を希望したいと言うのはなかなかエネルギーが要るというか、そういう状態なんですね。ここは、やはり保護者の意見をただ聞くだけではなくて、尊重して、同時に子供の状態を見ながら、なるべくその希望がかなうように努力をされたいというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。

馳副大臣 ここは子供の最善の利益を考えてということがやはり私は最後のポイントになろうと思っております。そのために、専門家の意見も聞く、また情報も提供される。また、やはり義務教育ということを考えると家から近い方がいいにこしたことはないわけでありますから、いろいろなやはり総合的な観点から判断されるべきものと思います。

 そういう意味で、先ほど大臣が明言されたように、政令においても保護者の意見をしっかりと聞くようにという観点が、これはまさしく一歩も二歩も前進した対応になると思いますので、そういったことから就学先の決定が判断されるべきものと考えております。

保坂(展)委員 先日というか、この国会の冒頭に紹介しましたけれども、本当に小さな規模で統合教育を三十年やっている幼稚園があるんですね。これは規模が小さ過ぎていろいろな補助金が受けられない中で苦戦しながらやっているんですが、この審議があるということで、何か北海道で今お子さんと一緒に農園作業をやっているという中から、お手紙をいただいたのでちょっと紹介をしたいと思うんです。

 三十年、統合保育を通していろいろなことに気がついた。健常児がどうかというところで、気配りが育っていく、自閉的な子が動き回っていても必ず子供たちが声をかけて連れてきて落ちつきが出てくる、着物の着脱、これはみんな当たり前のように助ける。それから、優しさが育つ、列から離れた子を連れてきて並ばせてくれる、言葉の出ない子の代返をしてくれる、こういうちっちゃな子たちが。感動が育つ、できなかったことができるようになった、障害児の姿に感動の拍手が自然に起こるんだ。仲間意識が育つ、二人、三人で一人を守ろうとする体制が自然にできてくる。

 では、ハンディのある子の方はどうか。模倣によって育つ、まねをすることでですね、返事ができるようになる、言葉が出てくる第一歩だ、それから、いすに座っていられるようになる、行動が落ちついてくる、自分の持ち物の場所がわかってくる。それから、励ましを受ける、返事ができたことを周りのみんなが喜んでくれる、そのことによって積極的になってくる。意欲が出てくる、健常な子が絵をかく姿を見て自分も書いてみようと書き出す。そして、ルールを知る。

 こういう形で、でもこれは余り大人数ではやれないようなんですね。

 小学校、中学校の話を我々はしていますけれども、もっと小さな、保育園、幼稚園の段階からこの統合教育ということを、少ないけれども、厳しい条件の中で信念を持って進めているところにもっと光を当てていただきたい。そしてまた、そういう取り組みを日本全国だんだんふやしていこうじゃないか。もちろん、経済的な支援も必要だと思いますし、その点、これは政策的にもつながる問題として、小坂大臣、いかがでしょうか。

小坂国務大臣 今保坂委員が御指摘なさった、頑張っていらっしゃる、統合教育を志向していらっしゃる幼稚園、保育園、まあ保育園の取り組みというのは、御指摘をいただいたことはなるほどな、そういう面で効果があるということを再認識するなということが多いわけでございます。

 そういう意味では、我々も理想というものをやはり頭の中にしっかり持って日々の行政の改善に努めなきゃいかぬな、こういうことは思ったわけでございますが、今すぐここで答弁を申し上げてこういう方向にということはなかなか申し上げにくい部分はありますけれども、私も一人の理解者として、そういう方向へ進めるような努力をしてまいりたい、このように考えております。

保坂(展)委員 前回、銭谷局長に二回ほど答弁をいただいているんですが、原則統合だという中で、今は特殊学級というところで学級としての枠があってそこに在籍をしている、そして、普通学級とは、行ったとしても交流になるわけですね。私は、普通学級に原籍を置いて、そして、かなりの時間を特別支援教室で過ごすというんですかね、この場合は特別支援学級で過ごすというふうに根本的な転換をしてはどうかというふうに思うんですね。

 実は、文部省時代に、不登校の子供たちは大変悩んで、原籍校という考え方、フリースクールや他の居場所などで学んでいても、実際これまでは中学校卒業というのはできなかったわけですけれども、その期間、この学校にいて、原籍校の校長がちゃんと卒業証書を出して、立派に高校に行って大学にも行っている子供たちもたくさん出てきていますよね。

 この場合、今回の法律改正を踏まえて、普通学級に籍を置いて、相当の時間は特別支援教室にいるけれども自分のところに戻ってくる、こういうふうに変えたらどうかと思うんですね。その点、検討するとか努力していきたいぐらいの話はいただけないでしょうか。

小坂国務大臣 先ほど申し上げたように、そういう方向を志向したいと申し上げた以上、モデル事業とか、そういう形の中で、モデル校をつくって検討させていただくという前進を検討、検討というよりもさせましょう。モデル校でやるということをやって、研究を進めさせるような形にしたいと思います。

保坂(展)委員 小坂大臣もよく現場の状況をおわかりになっていると思うんですけれども、我々大人になると子供のときのことをほとんど忘れるというのは普通なんですけれども、いろいろなときにちょっと思い出してみると、子供のころというのは結構いろいろ憶病なものですよね。周りはみんなわからない、どういう制度かわからない。

 例えば、特殊学級にいた子が普通学級に顔を出して、何でおまえは来たんだ、何なんだおまえは、こういうふうに、見えないバリアというんですか、そういうことがあってはいけないわけで、教室は別に学んでいてもホームグラウンドはこのクラスだよというと、やはり親の気持ちも、その子供の気持ちも違うと思うんですね。

 そういう点で、モデル事業も結構ですけれども、この点、転換しようということを少し検討を始めていただく、そして、この法律が生きたものになって回っていくような努力をしていただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

小坂国務大臣 今、モデル校等を活用しながらやっていくというのは、この研究をまさに進めるという意味でありますので、そういうように御理解をいただきたい、こう思います。

保坂(展)委員 それでは、局長に伺います。

 就学先の決定について、専門家の判断ということでこの間答弁をされておりました。

 昨日、姜参考人のお話や資料にもあったように、専門家に保護者がいろいろ指示をされる中で、専門家にもう少し実情をわかってほしいなという声が親たちの間からも出てきております。そしてまた、前回も指摘しましたけれども、専門家というのは、行政の窓口で対応する方たちだけではなくて、長いこと、この普通学級で障害を持つお子さんが学ぶということを後押ししてきた人や、その親である当事者、何年もそういった形でかかわってきた、そういう人の声も入れて、ぜひ少しでも壁が取り払われていく努力をしていただきたいと思うのですが、局長、いかがですか。

銭谷政府参考人 いわゆる就学先の決定に至るまでの就学相談等におきましては、やはり児童生徒の教育的ニーズの的確な把握ということが非常に重要でございますので、就学指導委員会の構成メンバー、いわゆる専門家の構成メンバーについては、本当に子供たちの教育的ニーズを的確に把握できる方、あるいは各市町村の受け入れの状況等についてもいろいろ御説明をできる方とか、いろいろな観点から選任されるべきでございまして、今先生からお話がございましたように、関係団体との連携あるいは協力というようなことも必要な場合がございますので、それは一つの選任の方策であるというふうに考えるわけでございます。

保坂(展)委員 時間になりましたので、終わります。ぜひ心を込めていい体制をつくっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

遠藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 この際、本案に対し、石井郁子君から日本共産党提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。石井郁子さん。

    ―――――――――――――

 学校教育法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石井(郁)委員 私は、日本共産党を代表して、学校教育法等の一部を改正する法律案に対する修正の動議を提出いたします。

 その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。

 まず、修正案の提案理由を御説明申し上げます。

 本法律案で、軽度発達障害への対応を従来の障害児教育も含め、特別支援教育として学校教育全体で取り組むことが法文上初めて明記されました。

 しかしながら、新たな取り組みを進めるにもかかわらず、教職員の配置の充実は今後の課題とされています。通級指導担当教員の増員、さらには四十人となっている普通学級の学級編制基準の引き下げなど、抜本的に教職員を増員する必要があります。

 また、盲・聾・養護学校は特別支援学校となり、新たに小中学校等に在籍する障害のある児童生徒の教育について助言、援助を行うセンター機能を位置づけています。しかし、特別支援学校が在籍する児童生徒への教育を行いながらセンター的機能を果たすためには、担当する教職員配置が必要になります。

 このような観点から修正案を提起するものでございます。

 以下、修正案の概要を申し述べます。

 本法律案の附則に、小中学校等での学級編制基準の見直し、通級による指導の充実、特別支援教育コーディネーターの配置、特別支援学校の教職員数を現在の水準から後退させることなく、新たに取り組まれるセンター的機能を担う教職員の配置を進めることを、法施行後の状況等も勘案し、政府に検討と必要な措置を義務づけるものであります。

 何とぞ委員各位の御賛同を心からお願い申し上げます。

遠藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、学校教育法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、石井郁子君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

遠藤委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

遠藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、小島敏男君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。横山北斗君。

横山委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    学校教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たって、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 障害のある子ども一人一人に十分な教育を受ける権利を保障することは政府及び関係者の重要なる責務であることを踏まえ、施策等の検討・決定・実施を行なうこと。また、それぞれの施策の進捗状況を確実に把握、評価し、制度の改善に努めるとともに、子ども、保護者、専門家や一般国民からの意見に耳を傾け、考慮すること。

 二 障害者基本法に基づき、また、国際的な障害者施策の潮流であるノーマライゼーションやインクルージョンの理念を踏まえつつ、障害のある子ども達が、生涯にわたって健康で文化的な生活を営むためにも、障害のない子どもとの交流及び共同学習が一層推進されるよう努めること。

 三 特別支援教育が、就学前教育から高等教育までのすべての学校において取り組まれるべきものであることに鑑み、厚生労働省との連携も強化し、障害をもつ子どもの就労支援まで含めた長期的な学習機会、適切な教育環境及び支援の享受が、居住する地域に係わらず可能となるよう配慮すること。

 四 特に小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校においては、障害のある児童生徒一人一人のニーズを踏まえた教育の実現に必要な教職員の確保、バリアフリー化の促進などの適切な学校の施設整備等、教育諸条件の継続的な向上に努めること。

 五 教職員の意識の高揚、資質の向上及び特別支援教育への理解を深めるよう教職員研修の充実に努めること。また、教員免許状については、特別支援学校の教員免許状の在り方の検討、及び他の各種教員免許状における特別支援教育の扱いについての研究を更に進めること。

 六 障害のある子どもの学ぶ機会を阻害することのないように、一人一人のニーズに対応した教科書をはじめ、教材、教具の研究と開発に努めること。また、その自己負担の軽減に努めるとともに、特に拡大教科書等の普及充実を図ること。

 七 就学先の決定に際しては、事前に本人や、第一義的責任者である保護者の意向を十分に聴取し、各学校の情報提供など積極的に行い、十分な相互理解の上でより適切な就学先の決定がなされるよう、相談体制や手続の在り方等を検討し、改善に努めること。

 八 特別支援学校のセンター的機能が、地域にある諸学校並びに子どもが利用する施設等のみならず、医療・福祉・労働関係の諸機関及び保護者のネットワーク構築と連携に役立つものとなるよう努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

遠藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

遠藤委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小坂文部科学大臣。

小坂国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分に留意いたしまして対処させていただきます。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

遠藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十九分散会


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