衆議院

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第6号 平成18年12月1日(金曜日)

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平成十八年十二月一日(金曜日)

    午前九時四十分開議

 出席委員

   委員長 桝屋 敬悟君

   理事 鈴木 恒夫君 理事 田野瀬良太郎君

   理事 西村 明宏君 理事 平田 耕一君

   理事 松浪健四郎君 理事 藤村  修君

   理事 笠  浩史君 理事 遠藤 乙彦君

      阿部 俊子君    赤池 誠章君

      秋葉 賢也君    井脇ノブ子君

      飯島 夕雁君    江崎 鐵磨君

      小川 友一君    小渕 優子君

      加藤 紘一君    小島 敏男君

      佐藤  錬君    柴山 昌彦君

      鈴木 俊一君    馳   浩君

      平口  洋君    福田 峰之君

      藤田 幹雄君    二田 孝治君

      馬渡 龍治君   山本ともひろ君

      奥村 展三君    川内 博史君

      田名部匡代君    高井 美穂君

      野田 佳彦君    牧  義夫君

      松本 大輔君    松本 剛明君

      横山 北斗君    西  博義君

      石井 郁子君    保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   総務副大臣        田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   政府参考人

   (内閣府規制改革・民間開放推進室長)       田中 孝文君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 中田  睦君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         磯田 文雄君

   政府参考人

   (文化庁次長)      加茂川幸夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           黒川 達夫君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月一日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     赤池 誠章君

  奥村 展三君     田名部匡代君

  田島 一成君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  赤池 誠章君     西本 勝子君

  川内 博史君     田島 一成君

  田名部匡代君     奥村 展三君

    ―――――――――――――

十一月二十九日

 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)

同月十七日

 高等教育予算の大幅増額、私大経常費補助二分の一の実現、父母・学生の学費負担軽減に関する請願(横山北斗君紹介)(第四六八号)

 同(田島一成君紹介)(第五四六号)

 子どもに行き届いた教育に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第五八三号)

 三十人以下学級の早期実現と教育予算の拡充に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第五八四号)

 私学助成の大幅増額など教育関係予算の拡充に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第五八五号)

同月二十四日

 人材確保法改正・教育専門職待遇改善、義務教育費国庫負担制度堅持、文教予算の充実に関する請願(河村建夫君紹介)(第六〇四号)

 高等教育予算の大幅増額、私大経常費補助二分の一の実現、父母・学生の学費負担軽減に関する請願(田島一成君紹介)(第六三六号)

 同(石井郁子君紹介)(第七二五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第七二六号)

 同(牧義夫君紹介)(第七二七号)

 私立学校の保護者負担軽減、教育環境改善のための私学助成充実に関する請願(町村信孝君紹介)(第七六四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

桝屋委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。伊吹文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 著作権法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

伊吹国務大臣 このたび、政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 我が国の著作権制度については、これまでも逐次整備を進めてまいりましたが、知的財産立国の実現に向け、一層の充実が必要となっております。

 この法律案は、技術の進展などの時代の変化に対応し、著作物の適切な保護と公正な利用を図るため、放送の同時再送信に係る制度の見直し、情報化等に対応した権利制限の拡大、罰則の強化など、必要な改正を行うものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、放送の同時再送信に係る制度の見直しを行うこととしております。地上デジタル放送への全面移行に向け、その補完路として、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信が期待されております。当該同時再送信が本年末に開始される予定であることから、放送の同時再送信の円滑な実現を図るため、一定の範囲において、実演家等の権利を制限するとともに、有線放送事業の拡大等を踏まえ、有線放送による放送の同時再送信について、実演家等に報酬請求権を付与するものであります。

 第二に、視覚障害者に対する録音図書の送信、特許審査等の行政手続のために必要な複製等、時代の変化に対応した権利制限等の措置を講ずることとしております。

 第三に、著作権等の保護の実効性を確保するため、輸出行為を取り締まりの対象とするとともに、刑事罰を強化することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。

桝屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

桝屋委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府規制改革・民間開放推進室長田中孝文君、総務省大臣官房審議官中田睦君、法務省大臣官房審議官三浦守君、文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、大臣官房審議官布村幸彦君、生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長清水潔君、高等教育局私学部長磯田文雄君、文化庁次長加茂川幸夫君及び厚生労働省大臣官房審議官黒川達夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

桝屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

桝屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野田佳彦君。

野田(佳)委員 おはようございます。民主党の野田佳彦でございます。

 私は、きょう、未履修問題を中心に質問をさせていただきたいと思います。

 法案審議については同僚議員がしっかりと質問をすると思いますけれども、それに先立ちまして、委員長と、そして各党理事におかれましては、このような御配慮をいただいたことを、まず冒頭、感謝申し上げたいと思います。

 私は、これまで教育特、そしてこの文科委員会、主に三つの調査を大臣にお願いしてまいりました。一つは、現段階において、未履修の学校数、生徒数、どれぐらい広がっているかということと、それから、過去にさかのぼった高等学校における未履修の実態調査、それから中学校における未履修の実態調査、主にこの三つのことの調査の要求をさせていただきました。というのも、余り観念論で議論をするよりも、きちんとした実態把握を踏まえた議論をした上で、その上で対策を講じるのが筋だろうという認識であるからであります。

 そこで、現段階における未履修の広がりについては、十一月二十日に新たに判明したものを集計されて、文科省として公表されました。それによりますと、六百六十三校、十万四千二百二人ということで、十一月に集計をした段階よりも、学校数では百二十三校ふえ、加えて、未履修の生徒数は二万人さらにふえたというような状況でございまして、改めてこの深刻な広がりというものに驚いた次第でありますけれども、集計を新たにしていただいた御努力には敬意を表したいと思います。

 きょうは、そのときにも御質問させていただきましたけれども、過去にさかのぼった実態調査であります。

 私が十一月十五日に質疑をした際には、十四日に全国に通知を出すという形で、集計は十一月下旬であるというお話を大臣からいただいたと思います。ということは、きのうで一応締め切りをされたので、まだその詳細な分析までは至っていないと思いますが、どういう集計の状況なのか、あるいは公表をする時期というのはいつなのか、その見通しを明らかにしていただきたいと思います。

伊吹国務大臣 先生から御指摘というよりも、委員会の御要請という形を受けまして、当省におきまして、過去にさかのぼっての調査を実施いたしております。これは、今お話がございましたように、十一月四日に各都道府県教育委員会、私学がありますから知事部局等に調査を依頼いたしまして、お約束をいたしましたとおり、昨日の午後五時をもって締め切りという要請をいたしております。

 今のところほぼ順調に返答が来ておりますが、私学及び公立について、なお完全に当該県において集計ができていない県が一県ずつあるようでございます。これは早急に督励をいたしまして、数字をまとめてみたいと思います。

 先ほど今年度の未履修についても先生からお話がございましたが、当初、学校数でいうと五百四十校という調査結果を第一次集計で発表しておりましたが、その後百二十三校もふえるという、ありていに言うと、ていたらくという言葉を使わねばならないような状況でございますので、集計はできるだけ急いでやらせますが、同時に、後で六十六校もふえてくるというようなことにならないように、少し念を入れてやらせていただきたいと思いますので、向こうからの数字はきょうあすには来ると思いますので、集計でき次第、また理事会へお諮りいたしたいと思っております。

野田(佳)委員 ありがとうございます。速やかにその集計の結果を明らかにしていただきたいと思います。

 加えて、十一月下旬から中学校における未履修の実態調査についても着手をするということをかつて御答弁いただいたことがございます。この着手をされたかどうか、あるいはいつごろまでにこの結果をまとめるおつもりなのか、お答えをいただければと思います。

伊吹国務大臣 これもお約束したことでございますので、昨日、ようやく、過去にさかのぼっての締め切りを行いましたので、現場では、次々と調査が来るので、やや混乱をしているようですが、昨日、高等学校と違いまして、中学校については必修、選択という余地が非常に少ないカリキュラムの内容になっておりますので、どういう調査をするのが実態に即するのかというようなことについて都道府県、市町村の教育委員会と打ち合わせを始めております。

 ですから、調査項目また調査にどの程度時間がかかるかについては、各教育委員会からの御意見を我々の方へかやしていただいて、その結果を踏まえて各教育委員会に調査票を発出したいと思っておりますので、過去にさかのぼっての高等学校の集計及びそれに漏れがないかという追加調査の状況にもよりますが、できるだけ早く、今月前半ぐらいまでには調査票の発出をしたい、その方向に向けて努力をさせていただきたいというのが現状でございます。

野田(佳)委員 ありがとうございました。

 次々と何か調査ばかりお願いをしている形で恐縮でございますが、実態把握というのがまず前提で、それから有効な善後策を講じることができると思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 さて、前回、平成十三年度における未履修の、幾つかの県で明らかになった実態について質問をさせていただきまして、そのときには初等中等教育局長に主に御答弁をいただきました。きょうは、当時の教育課程課長であられた布村審議官にお越しをいただいております。

 布村審議官におかれましては、平成十三年の一月六日から平成十四年の七月三十一日まで教育課程課長という職にあられました。その在任中に、私が知る限りにおいては、熊本県の私立の高等学校で未履修が一件発覚をし、そして広島県で十四校、兵庫県で五十九校の未履修が明らかになった、そのときの教育課程課長であられると思います。

 こういう複数の県にまたがって未履修問題が発生をしている。しかも、特に広島と兵庫は大量に発生していますけれども、ともに未履修というのは平成六年度から始まっていて、そして未履修があった教科というのは地歴、公民、理科、全く共通をしているわけであります。

 これまでの局長の御答弁などでは、広島県には特有の事情があった、兵庫県にもこれまた特殊な事情があった、それぞれ特有な事情があったから全国的な広がりはなかったというふうに認識をしていたというのが主だった答弁だったと思いますけれども、これはどう見ても私自身は、なぜ全国の実態調査に至らなかったのかというのがまだすとんと落ちません。したがって、当時まさに担当課長であられた布村審議官が、平成十三年度、複数の県にまたがってこういう未履修の問題が明らかになったときになぜ全国調査をしなかったのか、その御認識をまず問いたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 平成十三年当時、全国の実態調査はこの未履修の件につきまして行っておりません。

 広島県におきましては平成十三年の八月、兵庫県におきましては平成十四年の一月に、それぞれ未履修の事例が判明いたしております。当時、広島県、また兵庫県におきましては、法令等に照らしまして不適切な事例が多数発生している、そして、当時の文部省から管理運営等につきまして是正が必要ということで指導を行っている状況でございました。

 このため、当時、教育課程課といたしましては、未履修問題につきまして、このような当時の広島県そして兵庫県の状況を背景としたものととらえており、また当時、他の都道府県から未履修の事態が生じているという報告は受けておりませんでしたので、残念ながら、全国的な広がりを持つというところまで思いは至っておりませんでした。

 また、熊本県の私立学校の事例につきましては、当時の文部科学省に対しまして報告をいただいておりませんで、把握ができておりませんでした。

 このようなことで、文部科学省として全国的な実態調査は行いませんでしたけれども、各都道府県教育委員会の指導主事等の担当者が集まる会議を通じまして、未履修の問題が生じないように適切な教育課程の編成、実施について指導を行うという対応をさせていただきました。

野田(佳)委員 まず、広島、兵庫の問題はそれぞれまた特有の事情があったというお話だったと思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、広島も兵庫も平成六年度から未履修が行われていたということが平成十三年にわかっていますよね。加えて、教育課程課長になられる前だと思いますが、平成十三年の前の平成十一年に熊本県で、二校でしたか、未履修が明らかになったときも、これも平成六年からなんです。

 平成六年というのはどういう年かということは、当然御専門だからおわかりだと思います。平成元年に学習指導要領の改訂があって、平成六年から実施をされています。特にこういう地歴であるとかの内容の変更があったわけですよね。ということは、広島や兵庫にいろいろ事情があったとしても、この履修漏れ、未履修の問題というのは何で平成六年から始まったのかということに思いをいたすのが当然専門家、プロであるはずだと私は思っております。その時点で多分全国的な広がりがあるかもしれないなと思ったから、全国の指導主事を集めて指導をされたわけですよね。そういう認識がどこかにあったんだろうと私は思います。

 実態調査をしなかったというその根拠が、なぜ平成六年というところに注目をしていなかったのか、その点になぜお気づきにならなかったのですか、改めてお尋ねをしたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 同じ答弁になってしまうかもしれませんけれども、平成十一年に長崎、熊本の事例がございましたけれども、その事例は学校数も比較的少ない、そういう状況でございました。それから、先ほど、兵庫、広島の件については是正指導の途上という事情も申し上げまして、当時全国的な実態調査ということまで思いは至りませんでしたけれども、そのような事例が他の都道府県の公立あるいは私立の学校であってはならないということで、改めていろいろな場、公立に向けあるいは私立の学校に向け指導はさせていただきました。

野田(佳)委員 指導といっても、きのうちょっと文科省にお尋ねをして、どういう文書を出したのかと聞いたら、文書は出していない、全国の指導主事を集めて口頭で伝えたというお話でしたから、まさに指導というのは余り徹底されていなかったと私は思うんです。

 先ほど申し上げましたとおり、平成六年から兵庫、広島、それからその二年前に明らかになった熊本で未履修の問題が発生をしたわけであって、学習指導要領というのは別に広島や兵庫や熊本だけに適用している話じゃないわけですから、当然全国的に逸脱しているケースがあるのではないかというふうに想像するのがやはり責任ある立場の人だったんだろうというふうに思いまして、その気づかなかったということは大きな責任があるというふうに私は思います。

 さらにお聞きをしたいのは、教育課程課長当時、高等教育局との連携はどのようになされたのかどうか。十一月十五日の質疑においては、局長からは私学部との連携はあったというお話がありましたけれども、もっと広範に高等教育局と連絡をとり合わなかったのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先ほどのお答えにつながる点を先に申し上げたいと思いますけれども、当時は、ゆとり教育見直しあるいは学力低下という報道等が多数ございまして、新しい学習指導要領の実施に向けて新しい学習指導要領の趣旨の徹底にかなり力を割いてございまして、その際、あわせましてこの未履修の問題についても、口頭ではございますけれども、徹底するように指導させていただきました。

 また、高等教育局との連携につきましてでございますが、広島県の事例が起きました際に、平成十三年九月に、当時私学部の方が担当しておられましたけれども、私立学校の主管部課長会議が開催されるということがわかっておりましたので、私立学校におきましても必履修科目の未履修という事態が生じないようにということで、その会議に私が出席をさせていただきまして、私学の関係の指導に当たる方々に対しまして説明をするという形で対応させていただきました。

 そのような形で私学部との連携を図っていたところでございますけれども、御指摘の点からいきますと、大学入試の担当課との連携につきましては十分なものはなかったというふうに認識しております。

野田(佳)委員 高等教育局の、特に大学入試の関連とほとんど連携をしていなかったという形ですけれども、ことし、富山県の県立高校に端を発し、これだけ全国的な広がりに至ったときに、これは初等中等教育局だけの対応ではなくて、例えば、「大学入学者選抜における調査書の取扱いについて」であるとかあるいは「既に高等学校を卒業した者の大学等の入学資格の取扱いについて」、これは当然、高等教育局とかあるいは生涯学習政策局とかと連携をしながら全国に通知をしていますよね。平成十三年度だって、広島だって兵庫だって、大学に入学しようとする生徒たちはたくさんいたはずでありますし、あるいは既に卒業されている皆さんについての対応も、高等教育局と相談をしたり連携をしながら対応したと、私は当然ではないかと思いますけれども、それはなかったんですか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 今から振り返りますと、今回の対応に比べまして当時の対応は、高等教育局との連携、入試の関係との連携は十分ではなかったというふうに認識してございます。

 あと、多少当時の事情でございますけれども、広島県につきましては、八月に未履修が判明いたしておりまして、当時、広島県と連絡をとり合いまして、広島県では、調査書につきましては訂正を行うという形で適切な対応をして、入試の時期には間に合う対応がとれた、また、兵庫県につきましては、一月に事態が判明をし、入試のさなかでございましたので、事実上、調査書の訂正等が困難であったという判断をしたわけでございますけれども、その点につきましても、高等教育局の入試担当との連携をよりしっかりとるべきであったというふうに認識いたしております。

野田(佳)委員 高等教育局との関連を執拗にお尋ねしていますのは、前回も申し上げましたとおり、「大学生の学習に対する意欲等に関する調査研究」がちょうどこの時期に発表されて、高等教育局に渡っているわけですよね。当然、高等教育局が知っていただろうというふうに私は判断をすると、文科省としては、平成十三年度中に未履修の問題は広がりがあるということを認識していたはずだというふうに推論をしていたからであります。

 今のお答えでは明確なお答えではございませんけれども、いずれ過去にさかのぼった実態調査の中からいろいろ傾向が出てくると思います。ゆとり教育の問題であるとか週五日制の問題とかいろいろと言われていますけれども、私は、平成六年度あたりからの新しい学習指導要領の実施の時期からというのが多分多いんだろうと思うんです。そのことは平成十三年のときに気づかなければいけなかったというふうに私は思っていますので、その責任はとても重いと思います。

 大臣におかれましては、もう既に佐賀県あたりでは、今回の未履修にかかわった校長先生だとか教育委員会の責任を問うべく、処分が出ているようです。私は、文科省についても大きな結果責任を負わなければいけないと思って、当然のことながら、それに関連した処分ということもいずれは出てくるだろうと思いますが、その辺のお考えはいかがでしょうか。

伊吹国務大臣 まことに残念なことなんですが、九月末に私が文部科学大臣をお引き受けしてから、タウンミーティングの問題、今御指摘のあった未履修の問題等、過去の事案がいろいろ出てきておりますので、私が後追い的に、結果論としてかつての行政を批判するということはできるだけ慎重でありたいと思いますが、いろいろ実情をよく調べて、これはまさに先生がおっしゃった結果責任というのか、行政上の瑕疵とか法令違反をしたとかということじゃなくて、言うならば感性の不足ということによって生じた部分が非常に多うございますので、文部省内における行政のあり方、それから各教育委員会との行政のあり方をも含めて、今後こういうことがないように、まず立て直していくということと、同時に、その過程で先生がおっしゃったようなものについても私なりに考えていきたいと思います。

野田(佳)委員 時間がなくなりましたので、終わります。ありがとうございました。

桝屋委員長 次に、牧義夫君。

牧委員 それでは、著作権法の質問に移らせていただきたいと思います。

 先ほど、大臣の方から提案理由とその内容の概要の説明がございました。この法案については、この国会が始まって直後に、たしか役所の方からも概略説明を受けておりましたが、私も、今国会は教育基本法の国会であるということで、もう会期末も迫っております、この法案は次に先延ばしかなと正直思っておりましたところ、一昨日、日程が決まった、きょうはもう採決だというお話で、私も慌ててもう一回これを見直して、ちょっとこれは看過できない部分もあるんじゃないかなと思ったものですから、二十分だけ時間をいただいて、大臣のお考え等をはっきりさせておきたいなと思う次第でございます。

 と申しますのも、先ほどの趣旨説明にもございましたけれども、本題というか、多分、説明で、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信の円滑化、ちょっとわかったようなわからないようなお話で、この本題については後ほど同僚議員からも質問があろうかと思いますけれども、私は何もこれが本題であるとは思わないわけですね。幾つかここに羅列をされている、しかも、多少異質なものがここに紛れ込んでいると思わざるを得ないわけで、私はこういうやり方というのはいかにも役所のやり方だなと思うわけで、何かこういうものに紛れて、どさくさに紛れてと言ったらちょっと語弊があるのかもしれませんけれども、看過できないものがまざっている。提案理由の内容の概要の説明の中にも出てこないんですね。

 私が今言いたいのは、時代の変化に対応した権利制限等の中の、特にきょうは薬事行政手続における文献の複製について問いただしたいと思うんです。こういうものをどさくさに紛れてここに紛れ込ます、その役所の神経を私はまず疑わざるを得ないんですね。私は、文化庁、文科省を信じたいと思う立場ですから、よもや文化庁の発案ではないと思うんですけれども、そもそもこの発想というのはどこから出てきたんですか。私は、学術振興という観点から、これを著しく阻害する要因になる話だと思わざるを得ないんですけれども、そもそもこれはどこから出てきた話ですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 今回、法改正をお願いしております中で、権利制限に伴うことについての御指摘ではないかと思っております。

 著作権法に関します権利制限の見直しにつきましては、それぞれ社会的なニーズあるいは関係団体の要望等に応じて、適宜これまでも見直しを図ってきたところでございます。委員御指摘の権利制限、今回につきましては、障害者対策あるいは特許審査手続、薬事行政手続といった関係分野につきまして、社会的なニーズの求めに応じて、ニーズに対応する形で、必要な権利制限を見直していく、権利制限をかけていくというものでございます。

 これまで関係の審議会等で、関係団体の要請、関係行政機関等への要請を踏まえて検討を行ってまいりましたが、この手続は、これまでと同じように、それぞれの社会的な情勢の変化に応じて適宜対応するというルールに従ったものでございます。

牧委員 私も、正直、ある程度わかった上で聞いているんですが。

 今加茂川さんおっしゃったように、社会的なニーズ、これはどんな人がどういうニーズを感じるかという、そういう問題だと思うんですけれども、いみじくもおっしゃったのは、関係団体からの要請であるということですよね。これは、つまりは、日本製薬団体連合会が経団連を通じて厚労省に働きかけて、厚労省から文科省、文化庁に要請があった、こういう一連の流れなわけですよね。

 私は、最初の大臣の提案理由説明の中にも「知的財産立国の実現に向け、」という文言があったので、それはすばらしいことだと思いますけれども、果たしてこれが本当にその知的財産立国の実現に向けての正しい流れなのかどうなのかということを私は聞きたいんですよね。

 出版の継続性ということを考えたときに、これがもう大きな阻害要因になるということは、恐らくこれまでの審議会、分科会の中でも議論が相当あったと私は聞いておりますけれども、そういうことを一切無視してでも、これは社会的ニーズなんだと言い切れる話なんでしょうか。

伊吹国務大臣 先ほど先生から、どさくさに紛れて潜り込ませるというお話がございましたが、提案理由説明等に公正という見地からこういうことはきちっと書いて、ここで申し上げればよかったのかもわかりませんが、基本的には、改正の法案というのは立法機関である国会が御審議をして了承をいただかなければ通らないわけでございますので、であるからこそ、今回、法改正という形で、これを委員会の御審議にゆだねているわけですから、持ち出し方あるいは表現方法、どこに何を盛り込むかということについては、先生の御指摘を受けとめて、謙虚にやらせたいと思いますが、決して潜り込ませるんじゃなくて、眼光紙背に徹しておられるから今御質問をまさにしていらっしゃるので、そういう見地から、私は国会を御信頼申し上げて、御審議をしていただければ結構だと思っております。

 それで、この件につきましては、私もやや先生と同じような気持ちがある一面、現行法においても、「立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合」は、著作権というのは制限されておるわけですね。今回、確かに、新薬の審査を行うということが、これは立法または行政目的のための内部資料に当たるのか、あるいはまた、審査というのはやはり内部資料には当たらないんじゃないか、新薬の審査は。

 ただし、新薬の審査を行うことによって、副作用があるものは認められませんし、あるいは効果のないものは認められませんし、しかし、認められたことによって、広く国民一般の病気の治療に有効な薬として使われる。もちろん、その過程において、株式会社が関与しているわけですから、利潤を上げるということは私は否定しておりませんが。したがって、審査の目的だけに使う場合の新薬の迅速な、そして副作用を抑止した状態での販売というか、すべての人が手に入れられるという状態をつくり出す公益と、著作権をその部分だけ制限させていただくということとの間の公正さをどう判断するかということになりますので、将来、新薬を販売する目的に、審査のときに使った著作権を使うとか、そういうところについてはこれは当然慎重でなければなりませんが、薬の良否を認定するところに限ってこの四十二条の二項の二号でお願いしている、そういうことに限定するならば、国会の審議にお願いすることはいいだろうという判断を私もしたということです。

牧委員 大臣のお考え、よくわかりました。ただ、審査の迅速性も求められる、これもよくわかります。

 では、著作権がその迅速性を阻害してきたのかどうなのかということが一つ議論としてあると思います。それと、審査手続に係るものと内部資料との話がございましたけれども、これも、民間の出版社というものがどういうものを市場として想定して出版を行っているかということもやはり考える必要があろうかと思います。医学書に限らず、自然科学書も恐らくそうだと思いますけれども、極めて専門的な、限られた分野における著作であり、そしてそれが限られた市場を想定している。その中には、行政手続というものも最初からその市場として想定されているわけですよね、あるいは医療機関における研究ももちろん入っているでしょうけれども。

 だから、それを否定してしまうと、もうそれが、一つの継続性のある出版という事業そのものが成り立たなくなるんじゃないかということを私は申し上げているのであって、そこら辺のところをよく考えていただきたいと思います。

 そして、もう一つは、これは厚労からもおいでいただいていますから、ぜひお聞かせいただきたいんですけれども、例えば文化庁からの説明資料によると、「国民の生命・健康への被害を未然に防止するという観点から、」というような文言があります。これは恐らく厚労からのお話だろうと思うんですけれども、では今までこれが、著作権という保護の対象、権利が守られていることによって、薬事行政というか、極めて公共性の高い国民の健康、生命、これを守るというところを何か阻害してきたという認識はあるんですか。あるのかないのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

菅原大臣政務官 大変重要な御指摘だと認識をいたしております。

 ただ、そのことがあるのかないのかということに関しましては、結論から申し上げますと、ないというふうに認識をいたしております。

牧委員 おっしゃるとおりだと思うんですよね。ないわけですよ。今までも、権利者とそれを使用する者との間で、複写権管理団体における委託出版物についての許諾と利用料の支払いというのは、事前の包括契約あるいは事後処理によって可能となる、そういう制度を取り入れていて、厚労省が前に言ってきたような迅速性だとかどうとかということを阻害することになってないわけですよね。だから、なぜこれが必要なのかということを私は問いたいんですよ。

菅原大臣政務官 現行の薬事法におきましては、製薬企業等に対して、医薬品及び医療機器の承認申請の際に、その有効性、安全性のデータを添付することや、その確保のために必要な各種の関連情報の収集あるいは評価、そしてそれを厚労省の方に報告をするという義務を負っているわけでございます。その中で、医薬品等の有効性や副作用等の評価を適時適切に実施していくためには、製薬企業等における情報収集、報告が迅速に行われるということが求められておりまして、そのための関連する研究論文等のいわば複写、コピー等が必要となることが大変多いわけでございます。

 そこで、もとより、この著作権者の権利を尊重することは重要であるわけですが、今回の改正によりまして、著作権法上の例えば許諾を得るですとか、その他の手続が不要となることによって、製薬企業等からの国へのより迅速な資料の提出が可能となるというふうに考えております。したがって、公益上これは極めて重要なことだと考えております。

牧委員 さっきから言っているように、許諾に時間がかかるという実態はないんですよ、今までも。許諾に時間がかかるという実態はないんですよ、もう伊吹大臣はおわかりだと思いますけれども。それでもなおかつ、その権利を制限する理由というのは一体何なんだということを端的に聞きたいんですね。お聞かせください。いいですよ、事務方でも、どうぞ。

黒川政府参考人 御説明申し上げます。

 今般問題となっております文献、こういったようなものは、国内のみならず海外のものもございます。それから、その数も、これは例えば内科領域とか外科とか、いろいろございまして、それで、千ないし、勘定の仕方によっては一万に近いような数もあるわけでございます。これを製薬企業が、例えば、自分の手元にすべてそろえて即時、現在副作用が問題になっている、そういうときにきちっと対応をとれるように出してくるというのは、懸命にやっておるわけでありますけれども、現実的になかなか困難な部分がございます。

 したがって、先ほど菅原政務官が申し上げましたとおり、より迅速に得るために、こういった法律上の手当ては、公衆衛生上大変意義あるものと考えている次第でございます。

牧委員 そこまで言われれば、もっとはっきり私も申し上げれば、これは恐らく、今まで事実関係として、無断で複写してきた実態というのはたくさんあったと思うんですよ。それを今回追認するような形にするというのが実体じゃないかと私は思います。

 それともう一つ、行政手続だけじゃなくて、今現実に、製薬メーカーが、営業の人が病院を回ったりするときに、半ば医療機関に対するサービスのように、文献を複写したものを添えて持っていったり、そういう実態もあるように聞いております。

 この辺についても、分科会では、今回の法改正に盛り込んだらどうかみたいな議論もあったように私は聞いておりますけれども、よもや、これをきっかけに、そこまでなし崩し的に今後追認されていくようなことがあったとしたら、これは非常にゆゆしき事態だと私は思います。そこら辺の認識について、これはきょう採決までしてしまうということですから、はっきりと大臣のお考えをやはりここで議事録に残していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 著作権法というのは本来権利を守る法律でございますので、その権利を制限するのは公益という部分にやはり限定して考えなければなりません。

 率直に言いまして、私たちも著作物を購入しますし、製薬会社も著作物を購入するということで、その権利に対する対価を払うわけですね。しかし同時に、著作物そのものを薬事審査のところへ持ち出すわけにはいきませんから、コピーをかける。我々も買った本の一部をコピーにかけて配付してよく議論している。これは厳密にはやはり違法行為なんですね、多数の人たちに見せるわけですから。ですから、違法性を阻却するということはしっかりしておかなければなりません。今先生がおっしゃったような、不特定多数の人に医薬品を販売するための一種の道具として著作権を使うということについては、これは極めて限定的にしなければなりません。

 これは、この法律が通れば、厚生労働省を通じて製薬団体にもきちっと、もし、そういう副作用あるいは効果、その他の論文を引用する場合には、当然この権利を管理している団体との間でお話をしていただいた上で印刷物として使っていただくということは、私の方の役所からもしっかりと申し入れをさせておきたいと思います。

牧委員 そこら辺のところをしっかりお願いいたしたいと思います。

 もちろん、薬というのは人の健康、生命にかかわるものですから、そういった情報についての公共性というか、そういうものは私も否定するものではありませんけれども、一方で、薬というのは特許権で守られているわけで、法律のバランスというか、製薬会社というのはもちろん薬を売って利潤を追求する会社ですけれども、そういうところが特許権に守られている、じゃ、その薬がどんどんどんどんまねをされて、コピーされてもいいのかというと、そうではないわけですよ。ただ、その会社の利潤のために一方で著作権が侵害されて、ひいては、そういった学術的な文献の出版が一つの業としてもう成り立たないような状況になってしまえば、これは、本当に大きな意味での学術振興を阻害する一つの大きな要因になってしまうというふうに私は非常に危惧をいたします。

 これは、分科会で議論された一と二と三とあって、今回一と二ですけれども、ここら辺のことについては、あくまでも内部資料というか行政手続ということで、これは業界団体も多分理解はされていると思いますけれども、問題は、その三のところが現状としても多分横行しているんじゃないかという懸念を私は持っております。

 そこら辺のきちっとした許諾のシステム、迅速かつ幅広く、みんながデータを共有しながら、しかも、許諾をしっかりと対価を払ってできるような、そういうシステムを一日も早くきちっとこの際構築していただけますようにお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。

桝屋委員長 次に、松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 提案理由説明を見ますと、「法律案の内容の概要について御説明申し上げます。」とありまして、「第一に、放送の同時再送信に係る制度の見直しを行うこととしております。地上デジタル放送への全面移行に向け、その補完路として、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信が期待されております。当該同時再送信が本年末に開始される予定であることから、」というふうにあるわけなんですが、大臣、本年末に開始する予定を立てられたのは、つまり、この当該同時再送信を本年末に開始しようとしているのは一体だれなんですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 IPマルチキャスト放送による同時再送信が今年度末、すなわち平成十八年度末に開始される予定であることは、委員御指摘のとおりでございます。(松本(大)委員「年末ですか」と呼ぶ)十八年末でございます。この十二月ということでございます。

 これは、提案理由説明にもございましたように、地上デジタル放送への全面移行に当たって、このIPマルチキャスト放送が、難視聴地域における放送受信のための重要な手段、有効な手段、選択肢として大きく期待されておるということを踏まえて、いわばその準備手続として、関係行政機関それから関係会社とも連携の上、この手続が進んでおるものと理解をいたしております。

松本(大)委員 関係行政機関というのは何ですか。

加茂川政府参考人 関係行政機関と申しますのは、放送行政を担当しております総務省と私ども文化庁が十分に事前に連絡をとりながら、なおかつ、知財ということについては政府の方針でもございますので、十分に連携を図りながら、または、参加できる業者については、私ども、総務省から情報をいただきながら、この法案の準備にかかったということでございます。

松本(大)委員 何かきのうのレクと違う回答をいただいているような気がしてならないんですが、今度は総務省に伺います。

 本年末に開始するのは、これは文科省であり、総務省なんですか。

田村副大臣 密接に連携をし合いながら、その中でこのような方向で決めさせていただいて、進めていくという話でございます。

松本(大)委員 実施主体は総務省であり、文科省なんですか。総務省の事務方で結構ですから御答弁いただきたい。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 実際の放送を行うというふうに計画しておりますのは、電気通信役務放送事業者でございます。(松本(大)委員「今、全然答弁が違うじゃないですか」と呼ぶ)

伊吹国務大臣 私が答える。

 先生のおっしゃっていることと私の理解が合っていれば、今の質問にみんなばらばらの答えをしていると思いますので、私がお答えを申し上げます。

 そもそも、放送事業を所管しているのは総務省でございますから、総務省がこの通信形態を認可して、そして通信をする企業その他に放送の実施を許可した場合に著作権上の問題が生ずる部分について、この法律を我が省がお願いしているということです。

松本(大)委員 のっけから答弁が全く正解ではなかったと、総務省の事務方と文科省の事務方と、あるいは総務の副大臣、文科省であり総務省なんだというふうなお答えがあった後、総務省の事務方からは、いや電気通信事業者ですと全く食い違った答弁をされていることについては、一体何なんだろうというふうな疑念を抱かざるを得ないわけです。

 つまり、提案理由説明にある当該同時再送信を本年末に開始する予定を立てているのは電気通信事業者であるという理解でいいんですよね。どうですか。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣から御説明がございましたように、実は、制度を現在御審議いただいております本法の改正が施行されました場合には、そういうことを前提といたしまして、現在、電気通信役務放送事業者において実際のサービスの開始を検討している、そういうことでございます。

松本(大)委員 そんなのおかしいですよね。電気通信事業者が、法改正が終わったらできるだけ速やかにやりたいなというふうに思っていらっしゃるんだったらそれはわかるんですが、提案理由説明の中に本年末に開始される予定と、何か国会の審議がどうであろうとも、本年末には電気通信事業者がやることになっているんだから、それがあたかも立法事実であるかのように、本年末に電気通信事業者が同時再送信というのをやるから、だから今回法改正をするんですと。つまり、事業者の事業展開に合わせて、それに間に合わせるためにこうやって急いで今回法改正をするんだ、こういうことになっているわけですけれども、これはおかしくありませんか。

伊吹国務大臣 それは、先生の解釈は私は少しおかしいと思いますよ。総務省が法律を所管していて、その法律は当然国会で御審議をいただいている、この委員会じゃないでしょう、総務委員会で御審議をいただいている。そして、それによって放送事業者に事業を認可するということになれば、文部科学省の立場としては、権利を守ってやらねばならないという立場なんですから、我が方は著作権法を持っておって。ですから、そういう予定があるからこの法案をお願いしているということを言っているわけで、もう国会の御審議を全く無視して、開設することになっておりますのでという提案理由説明にはなっておりません。

松本(大)委員 では、この本年末という根拠は何ですか。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 もともと、現在、二〇〇三年から地上デジタル放送というのを開始いたしまして、二〇一一年に完全にデジタル放送に移行するということで全体の地上デジタルのスケジュールが進んでおります。そうした中で、地上デジタル放送の再送信の手段というのが幾つかございますが、そういうすべての手段を尽くして二〇一一年への移行を円滑に進めてまいりたいというのが全体の大きな動きでございます。

 その中で、IPマルチキャスト放送というものも非常に有効な手段であるということで、従来から、情報通信審議会等の御答申でも、できるだけ二〇〇六年末を目指して所要の関係者の準備を進めていこうということで各種の準備が進められてきたということでございます。

松本(大)委員 この本年末に開始される予定だというのは、では総務省としても予定をされている、事業者もそういうふうに予定していると承知をされているということですか。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 これを実現するためにはいろいろな要件がございまして、例えば技術的な検証の問題でございますとか、それから再送信を、もともとの放送を行う放送事業者側の体制等の準備がございますけれども、これらの諸準備については既に完了しているところでございます。そういう意味で、ほとんどの準備が整ったということで、残るは著作権法の問題が残っているということで、これがクリアできれば、実用化に向けてほとんどのハードルがなくなるというふうに考えております。

松本(大)委員 きのうのレクで御説明いただいたことの中で、この委員会の場ではお話しになられていないことがありますよね。つまり、総務省がみずから手がけられていらっしゃる実証実験と、事業者による試行サービスというものを分けて考えるべきですし、総務省がやっていらっしゃる実証実験については、今回の法改正は絡まないときのう説明をいただいたわけですよ。その説明と今の御説明は矛盾している、あるいはわざとそこら辺をぼかして答弁されているというふうに聞こえますが、いかがですか。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 若干事実関係で誤解を招くようなことを御説明したかもしれませんけれども、今実証実験として予定をしておりますのは、次の世代の技術ということでございまして、現在実用化されている伝送方式よりもっと高圧縮のような方式、技術的にはH・二六四と申し上げますような、そういう次の世代のさらに高度な伝送圧縮方式というものを実証する、そのことによって、例えば同時に二チャンネルが送れる、そういったことを実証したいということでございまして、既に……(松本(大)委員「それは法改正に絡まないのか」と呼ぶ)それとは別に、今すぐできる方式というのは、これはもう技術的に検証しております。終わっております。

松本(大)委員 実施主体と本年末というのにこだわっているのは、要するに総務省が、あるいは総務省と連携して云々というふうにわざとぼかして答弁されているのは、総務省が本体でやられる予定の実証実験と、それから電気通信事業者がやられようとしている同時再送信の試行サービスというのは、これは全く別物であって、後者の方だけが今回の著作権法改正が絡むわけなんですよ。

 この提案理由説明にある当該同時再送信を本年末に開始する予定の主体というのは、あくまでもこれは事業者なんですよね。だから事業者の事業計画に合わせて、それが本年末に開始されるんだから、だから急いで改正しなきゃいけないんだ。お経読みの当日に野党質疑もやって採決まで予定する、非常に慌ただしい質疑になっているんですよ。こういう状況になっているから、私はこれは明確に分けて答弁をしていただきたいというふうに思っているんですね。

 もしも、本年末に開始される予定だという電気通信事業者の同時再送信サービス、試行サービスの部分も総務省として絡んでいるんです、公的なサービスなんですとおっしゃるのであれば、つまり、立法事実になり得るぐらいの公的なものなんだ、公的な性格を帯びているんだとおっしゃるのであれば、では、その具体的な中身、実施時期、実施主体については把握されているんでしょうか。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 本件につきましては、電気通信役務放送事業者側の立場といたしましては、それを実行する上で、私どもの所管の法律の関係ではすべて用意ができておりまして、そういう意味では、準備ができた段階で彼らは法律を施行しようと準備しておりまして、私どもは、今そういう中で御相談は受けているということでございます。そういう環境がすべて整うということを……(松本(大)委員「だから実施時期はいつなんですか」と呼ぶ)これはまだ、事業者の方で最終的に確定をするということでございまして、その大きな要素として、本件の改正法が可決成立するかどうかということも含めまして、事業者におきまして現在検討しているところでございます。

松本(大)委員 この問題については、私、きのう総務省からペーパーで回答をいただいているんですね。「具体的な実施主体や実施時期など個別の事項につきましては、現時点では、総務省として把握しておりません。」というふうに、総務省は関知していないんだというふうにお答えになられているわけですよ。

 ですから、何かあたかも総務省が事業者と連携してやるようなことを冒頭からおっしゃっていますけれども、実は、総務省本体でやる実証実験の部分とそれから電気通信事業者がやろうとしている試行サービスとは全く別物であって、しかも法改正は後者の方にしか絡んでこないし、そして、その試行サービスがいつから行われるのかというのは、それは当然民間の独自のサービスですから総務省としても関知をされていない、こういうことになるんじゃないですかと思うんです。

 実は同じような質問を文化庁さんの方にも私は投げておりまして、文化庁さんの方からはどういう答えが返ってきたかというと、文化庁長官官房著作権課さん作成のペーパーで、

  IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信については、平成二十三年のデジタル放送への完全移行を実現するため、平成二十年までに本格的に実施することが予定されています。

  このサービスの本格実施までに技術上及び運用上の仕組みを確立するため、本年十二月末には総務省の実証実験という形で株式会社アイキャストが約五十世帯を対象に地上デジタル放送の同時再送信を開始する予定です。現在、総務省を中心に、技術面及び運用面の条件の整理等について着実に進められているところです。なお、当初はSD品質で開始することが予定されていましたが、これまでの実証実験の結果、HD品質で開始されることとなっております。

とありますけれども、総務省さん、この回答は正しいんですか。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、現在、地上デジタル放送の方は着々と進んでおりまして、それの再送信という手段の一つがこれでございますけれども、これについては、地上デジタル放送を再送信する現実のサービスというのはCATV等で行われているわけでございます。

 それで、この電気通信役務放送法経由の再送信、IPマルチキャストの再送信、これにつきましては、今、放送事業者側等も、従来からない形態ということで、同意をするような条件等もできなかったわけでございますけれども、こういうものも着々と準備をしてまいりまして、ほとんどのハードルはすべてクリアをした、いつでも放送事業者が現実の問題としてできるところまで来ているということでございます。

 そういう中で、現在、今回の著作権法の改正というものが最後の大きな課題であるというふうに認識をしておりまして、これが整えば、本格的なサービス開始に向けてすべての条件が整うというふうに考えております。

 具体的にお話がございました実証実験、これは私ども総務省の方でやっておりますけれども、これは今すぐにやろうとされているような技術の実証実験ではなくて、さらに高度な技術上の実証実験をやっていこうということでございまして、このような実証実験については、具体的には、放送事業者のサービス、具体的な商用サービスあるいは試行サービスを、その一部を変えて行うような形になるのが現実的であるということで、一つの実用的なサービスと、その上に関連した実証サービスというのを関連づけて行われるということが好ましいというふうに考えております。そういう意味では、先生がおっしゃっるとおりであると考えております。

松本(大)委員 長い御答弁をいただいたんですが、では、もっと具体的に絞りますね。

 「本年十二月末には総務省の実証実験という形で株式会社アイキャストが約五十世帯を対象に地上デジタル放送の同時再送信を開始する予定です。」これは正しいんですか、本当に。私のおっしゃるとおりだとおっしゃったけれども、それで正しいんですか、本当に。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 実証実験につきましては、NTTコムの方で行うということで現在進んでおります。(松本(大)委員「正しくないじゃないですか」と呼ぶ)コムの中の一部に御指摘の企業が参加をしている、NTTコムの下で参加をしているということでございます。

松本(大)委員 それは地上デジタル放送の同時再送信なんですか。

中田政府参考人 はい、そうでございます。

松本(大)委員 きのうのレクではそのようにおっしゃっていませんでしたよ。あくまでも圧縮技術の何か実証実験みたいなのをやっていらっしゃるのであって、要するに放送波は絡まない部分が総務省本体でやっていらっしゃる部分だと。本当にそうなんですか。ちょっと確認してください。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 純粋技術的な実験であれば、当然いろいろなやり方がございますけれども、現実の地上波デジタルを再送信するという形が、それを使ってやることが、一番技術的な検証としても意味があるものというふうに考えております。そういう意味で、地上波デジタルの再送信というものをぜひ土俵にしたいというふうに考えております。

松本(大)委員 地上デジタル放送の同時再送信を総務省本体が本当にやられるんですか。

 私は、きのうのレクでは、何度も繰り返しになりますけれども、電気通信事業者が地上デジタル放送の同時再送信をするのに今回の法改正が必要なのであって、総務省がやっていらっしゃるのは放送波は絡まない部分なんだ、例えば圧縮技術などの実証実験なんだ、その部分はこの法改正にはかかわっていないんだというふうな御説明だったんですよ。本当に今の説明は正しいんですか。きのうと随分違っていますよ。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 地上デジタル放送の再送信もこの実証実験の中でやるということで、現在、総務省からの委託というものを考えております。

松本(大)委員 もしそうだとすれば、きのうの長い長いレクは一体何だったんだと、私は非常にがっかりしております。

 これはそのとき、文化庁の担当者の方にも確認をして、そして総務省の方にも確認をして、こんな説明はしていないんだ、総務省としてはこういう説明はしていないんだ、誤りがあるということで、文化庁の方にも確認をして、それは文化庁として総務省に最終確認をせずにペーパーを出してしまったんだというようなてんまつだったわけですね。

 ですけれども、何か今の話だと、いや、違っていませんと、何かつじつまを合わせるようなことを言われて、きのうとは違う説明を今私にここでされているというのは、私は、議院の国政調査権に基づいて質問をしている、資料要求をしていることについて、きのうときょうとですっかりと答えを変えられる、しかも質問取りという大事な前提が変わってしまうというのは、もうこんなことでは質問取りは受けられませんよ。

 では、本当にきのうの説明と違うということでよろしいんですね。

桝屋委員長 大丈夫ですか。きちっと答えてください。総務省中田大臣官房審議官。

中田政府参考人 失礼いたしました。

 二つの話が少し混同しているようでございまして、私どもの方の説明がちょっと混乱をしておったということで、改めて御説明申し上げます。

 民間の事業者が現実の問題としてサービスをできるということは、もう既に技術的にも確立をしておりまして、これについては、放送事業者の方で具体的な条件がクリアされ次第、すべて試行しよう、始めようとしております。

 それとともに、私ども総務省の方で実証実験をしようとしておりますのは、さらにその次に、よりすぐれた伝送方式というものについて実証実験をしていこうということでございまして、それをリンクさせて、できれば実証実験というものも、単なる実験場でやるということではなくて、より実用に近い場面で実証を行うことができれば、それはより効果があるだろうということで、二つを、現実の場面では連携をしてやっていく、そういうことでございます。

桝屋委員長 それでは、田村総務副大臣、明確なお答えをお願いします。

田村副大臣 昨日のレクでうまく先生の意図がこちらに伝わっていなかったというか、こちらがうまく受けとめていなかったという部分で、多分、いろいろなやりとりのところで誤解が生じて御迷惑をおかけしたんだと思います。その点はおわびを申し上げたいと思います。

 今回のことは、今も御説明ありましたとおり、技術的にはほぼ同時再送信ができるところまで来ております。業者がそれをやるということは、確かに民間のことではありますが、一方で、地上波デジタルというものが一〇〇%、これは二〇一一年に各世帯に行き届くようにという目標を立てておりますが、ただ、ロードマップを見ますと、どうしてもまだ一〇〇%にいかない、九九でとまっている、そこをどうするかというときの一つの決め手にこれがなるということで、我が省といたしましてもこれを進めていくという方向性がある中で、できる限り早く権利関係というものを整備したいということで、今回、文科省さんと相談をさせていただきまして、このような法律を提出させていただいているということでございます。

松本(大)委員 ちょっと時間の関係もあるので次の質問に移りますけれども、もう一つ、私、この提案理由説明の中で確認しておきたいのは、補完路という言葉なんですね。本年末という単語と補完路という言葉は、私はこれは非常に重要だと思っているんですよ。つまり、緊急性がある、必要性が高い、これはマストの話で、しかも本年末とけつも切られていますよ、だから急いで審議するんです、そういう意味で、この補完路それから本年末という言葉は、私は非常に重要だと思うんです。

 そこで、本年末の実施主体はだれかという質問をしてきたわけなんですが、もう一つ、補完路という部分について、もう少し詳しく御説明をいただけますでしょうか。どういう趣旨でこの補完路というふうな言葉を用いられているのか。

伊吹国務大臣 提案理由説明は私が申し上げましたから、私からお答えをさせていただきます。

 今、総務副大臣がお答えになりましたように、地上デジタル放送というのは、もう全面的にそれに切りかえていくということは方針として決まっているわけですね。ただし、地上デジタル放送は、御承知のように、必ずしもすべての地域でこれが受けられるということではありませんから、見えないところがあるわけですよ、当然。それを補完するものとしてIPマルチキャスト放送という放送が非常に重要だということは、これは先生も御認識なさっていると思います。

 我々の立場からしますと、いつ放送が始まるか、そんなことは、著作権の立場からいえば関知しないことですよ、率直に言えば。ただし、民間放送事業者がそこへ入ってくるということになると、我々の立場からすると、著作権を保護する立場ですから、その保護は当然しなければならないので、総務省が今年末に民間放送事業者がそこへ入ってくるとおっしゃるから、この法律をお願いしているという論理構成だと思います。

松本(大)委員 今の大臣の最後の方の答弁だと、本年末に民間事業者が入ってくるから文科省として法改正をするんだ、著作権法改正をするんだというふうに聞こえますので、やはり事業者の事業展開に合わせて本年末に合わせた法改正をするのかなと。

 次の質問に移りたいんですが……(伊吹国務大臣「そうじゃないよ、ちょっと待った、それは違う」と呼ぶ)

桝屋委員長 伊吹文部科学大臣。

伊吹国務大臣 それは、民間放送事業者が入ってくるというのは、公益のために総務省が許可をするから入ってくるんですよ。何も民間の人がもうけるために入ってくるわけじゃないですよ。自由に入れるのなら、事業法で縛る必要はないでしょう。だけれども、デジタル放送を補完する放送手段として公益上必要だと思って認可をしているから、しかし、その放送が、民間事業者がその主体として行う場合には、やはりこちらとしては著作権を守ってやらなければいけないのであって、民間放送事業者に合わせて云々しているわけじゃないんですよ。これは、許可、認可の対象になっているわけでしょう、事業法から。だから、何も民間のもうけ仕事のために合わせているというような誤解を受けるような表現は、私は適当じゃないと思いますよ。

松本(大)委員 公益のためだということなんですけれども、それで補完路という表現もあるわけなんですが、ただ、情報通信審議会の第二次答申には、条件不利地域に限らずというような表現がありまして、ですから、これは必ずしも補完路ということには限っていないというふうに一見読める。これは総務副大臣に伺います。

桝屋委員長 田村総務副大臣、簡略にお答えを願います。

田村副大臣 もちろんそれ以外にも、そのような難視聴地域以外でもこういうものが将来広がっていく可能性は十分にありますし、今回のことに関しましても、そのようなことが認められれば、そういう地域にも、当然のごとく、流れる可能性というものは十分にあるということであります。

松本(大)委員 総務省とのやりとりで時間が経過してしまったのが非常に残念なんですけれども、一方で、第三次答申には、「IPインフラを活用した補完措置については、条件不利地域、あるいは都市部における難視聴対策に限って認めるべきであり、大手通信事業者が事業の採算性だけでサービスをすることを避けるべきではないか。」という指摘もされているわけでありますから、補完を超えて単なる選択肢の多様化ということなのであれば、これは、提案理由説明に、補完路並びに選択肢の多様化というような形で表現すべきであって、補完路という、何かいかにも、あったらいいなではなくて、どうしても必要なものだという表現を用いて今回の法改正が行われているというのは、私はどうも違和感を覚えるということを最後に指摘しまして、質問を終わります。

桝屋委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。おはようございます。

 委員長、与野党の理事の先生方のお許しをいただきまして、発言をさせていただきます。大臣、よろしくお願いを申し上げます。

 本日は著作権法の改正案がテーマでございますが、その前に、昨日衆議院を通過いたしました貸金業の規制法の改正案に関して、これは文部科学省にかかわる問題がございますので、文部科学大臣に話を聞いていただいて、御所見を承りたいというふうに思います。

 それはどういうことかと申しますと、高校家庭科の授業の消費者教育で、消費者金融大手六社が組織する消費者金融連絡会、今は一社抜けて五社になっておりますが、当時は六社、消費者金融大手六社が企画、発注をした十六分のビデオを高校家庭科の教材として文部科学省が文部科学省選定のお墨つきを与え、消費者金融の宣伝と言っていいんでしょうか、に手をかし、今政府は多重債務者対策本部を設置して、政府を挙げて多重債務者問題に立ち向かうというときに、このビデオを文部科学省選定ビデオとしておくのは甚だ不適当ではないかということを、私は一昨日の財務金融委員会で金融担当大臣に申し上げて、金融担当大臣は、関係各所と協議をし、対応を考えたいという御答弁をいただきました。

 それから間一日入りまして、きょうになっているわけでございますが、私は、財務金融委員会で文部科学省の事務方の方にお伺いをしたら、消費者金融連絡会が企画、発注をしたということを知らなかったというふうにおっしゃられました。企画、発注をしたことを知らなかった、したがって選定をしてしまったと。しかし、指摘をされた時点で初めて知ったんだ、消費者金融の会社から企画、発注されたということを初めて知ったというふうにおっしゃいました。

 消費者金融の会社が、これは今はまだ規制の対象である業界団体ですからね、消費者金融連絡会というのは。貸金業規制法で規制されている業界の団体が企画、発注をしたビデオでございますが、私も、ビデオの内容、十六分見ましたけれども、物を買うのに三つの選択肢がありますというんです、このビデオの中で。一つ、お金をためる、二つ、消費者金融からお金を借りる、三、あきらめると、三つしか選択肢がない、三つ選択肢があるという。ほかにもいっぱい選択肢はありますよね、人生の中には。明らかに消費者金融の利用を勧める。さらには、契約を守れ。契約を守らないと人間として信用されなくなりますと。御丁寧に外人を出してきて、いや、お金を返すと次借りるときにいっぱい借りられるからねとか言わせるわけですよ。

 これは私は大問題なビデオだというふうに思いますが、文部科学省選定ビデオというものをこの消費者金融が発注、企画したものに関しては見直すということの、間一日おいて御検討の結果をちょっと教えていただきたいというふうに思います。

伊吹国務大臣 私は、朝から晩まで参議院の教育特に座りっ放しでございますから、まことに申しわけありませんけれども、財金委員会でどういう話があったか、まだ報告は受けておりません。

 先生にお伺いしたいんですが、質問の中でおっしゃっていただければいいと思いますが、消費者金融というものは違法ではないということは十分御理解の上だと思います。現下の消費者金融の仕事ぶり、やり方が法令に違反したり反社会的な行為があるということですね。ですから、それは糾弾されねばならないと私は思います。また、その違法性あるいは反社会的な行為を助長するような内容になっているというのであれば、それは私はまことに不適当なことだと思います。

 ですから、多分それを宣伝に使ったとか、先ほど来御質問の中にそういうお言葉がありましたから、そういう違法性あるいは違法な仕事ぶり、反社会的な仕事ぶりをしている企業の団体が、その違法性、反社会的な仕事に人を引き込むような宣伝、先ほど宣伝という言葉を使われましたが、にこれを使っているということであれば、それは私は非常に不適当なことだと思います。

 問題は、消費者金融というものそのものは法律によって認められている業種ですし、商法によって設立をされ、そして金融庁の業務開始許可を得て業務をしており、大手銀行もみんなそこへ資金を投入しており、そして、公共的な性格を持っておる大新聞やテレビもみんな、違法な行為、反社会的な行為が明るみに出るまでは平然とコマーシャルを載せておったわけですね。

 ですから、違法あるいは反社会的な行為をやる前に文部科学省がそれを認定しておったのなら、これは私は、けしからぬというのはちょっとどうかと思いますよ。ただ、既に、反社会的な行為、そして法律違反、多重債務、そんなことが明るみに出ておるときに、その団体がつくったものをもし認可していたとすれば、それはもうまことに、先生がおっしゃっているとおり文部省認定というようなお墨つきを与えておったのなら、それは非常にけしからぬことだと思いますし、また、それを学校現場へ持っていって、消費者金融会社の人がそこへ来て、消費者金融を慫慂するようなことをやっているというようなことがあれば……(川内委員「やっているんですよ」と呼ぶ)いやいや、ちょっと待って。あれば、それは今度は、文部科学省の認定ということを与えた時点の後でそういうことが起こっているのなら、当然それはもうやめさせるべきことだと私は思いますね。

川内委員 まさしく今大臣がおっしゃられたとおり、消費者金融の社員が高校に出かけていって、そのビデオを見せて、契約が大事だ、約束は守りましょう、お金は返しましょうと。それは、言っていることは正しいですよ。だから、私は、法令に違反しているとか法律に違反しているなんて言っていないじゃないですか、さっきから。本当のことを言っていないと言っているんですよ。

 この教育映像等審査規程、これは文部科学省が制定したものですよ。「審査は、申請された映像作品等のもつ教育上の価値を主とし、次に掲げる基準に従つて行う。」「内容について」「正確なものであるか。」「信頼できるものであるか。」と書いてあります。利息制限法という言葉もなければ、出資法という言葉も出てこない。そして、消費者は利息制限法を超える金利については支払う義務はないのだというような、正確なことは何一つビデオの中では出てきませんよ。それを、サラ金の社員が出かけていって、皆さん、お金がないとき、欲しいものがあったら何しますか、一、お金をためる、二、消費者金融から借りる、三、あきらめると。皆さん、借りたいでしょう、借りて返せばまた次はたくさん借りられますよと。そんなものが消費者教育なんですか、文部科学省、田中さん。

 こんな答弁を大臣にさせたらだめだと言ったじゃないですか、きのう。きょう、お母さんたちだって、子供たちだって来ているのに。そんなビデオは即刻取り消しますと言わさないとだめですよと、きのう言ったじゃないですか。(伊吹国務大臣「ちょっと待った、待った」と呼ぶ)

桝屋委員長 伊吹文部科学大臣。

伊吹国務大臣 失礼ですが、役人が大臣に対して、言わさなければいけないというような立場には、私はおりませんよ。(川内委員「だが、見てないとおっしゃった」と呼ぶ)いやいや。(川内委員「はい、はい、はい」と呼ぶ)

桝屋委員長 ちょっと待って。

伊吹国務大臣 だけど、言わさなければいけないと、役人に命令されるような立場には私はおりませんよ。

川内委員 大臣、問題の本質と違うところで、そうやって問題をずらしちゃだめですよ。

 私が申し上げているのは、田中さんに、大臣にしっかり説明をして、大臣がしっかり御答弁できるようにと、私はきのう申し上げたんですよ。大臣はお忙しいから、ビデオをごらんいただく時間もないし。でも、このビデオは文部科学大臣が選定すると書いてあるんですからね。だから、大臣にしっかり説明をされて、そして大臣にしっかりした答弁をしていただくようにしていただかなきゃいけませんよと、私が田中局長の下にいる課長補佐さんに申し上げたんですよ。だから、大臣にどういうふうに言うかは、それは文部科学省の中のお話であると、そういうことを御理解ください。私の言い方が悪かったら謝ります。どうも済みません、どうも済みません。

 ただ、私が言いたいのは、このビデオをこのまま学校教育の現場で使わせておくことが果たして本当の消費者教育なんですか、それを文部科学省の生涯学習局はどう思っているんですかということですよ。

伊吹国務大臣 今のような違法性のある商売をしていることが判明した現在において、その仕事を助長するようなことを学校現場でこのビデオを持っていってやるということは、それはやめさせなければいけませんよね。それは当然のことです。

 私が申し上げたのは、先生が田中さんと指を指して、大臣に答弁をさせろということをおっしゃったから、これは先生自身を辱めていることになるんですよ。議院内閣制のもとでは、我々議員が、民主党も内閣を形成される場合があるんですから、その大臣や国会から入っている者が、役人に答弁をこういうふうにさせろなどと言われるような立場に国会議員はないということを申し上げているんですよ。

川内委員 だから、それは謝ったじゃないですか。どうも済みません、大臣。申しわけなかったです。それはもう終わりました。謝罪をいたしました。

 私が問題にしているのはこのビデオのことでございます。局長、どうなんですか。

 さらにもう一つ言えば、このビデオの企画、制作の段階で、文部科学省出身者が消費者金融連絡会に協力して、このビデオの企画、制作に携わっているということもあわせて答弁してください。

田中(壮)政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の「カード社会をどう生きる!?」というビデオにつきましては、文部科学省の教育映像等審査制度によりまして文部科学省選定となったものでございます。当ビデオに関しましては、高校生や青年、成人向けの消費者教育の教材として、カード社会で生きていくためには自分自身の責任を果たすこと、自己責任の重要性を表現しておるということで、教育上の価値が高いと判断されて、文部科学省選定となったものでございます。

 ただ、文部科学省の選定ビデオの選び方に関しましては、申請時におきましては、制作者から申請をしていただきまして、その企画をだれがしたかというようなことに関しましては申請の中では問わないことにしておるところでございます。したがいまして、そのときにおきましては、このビデオが消費者金融連絡会が企画したビデオであったということは把握しておらなかったところでございます。

 現在、先生から御指摘を受けまして、このビデオがどのような使われ方をしているのか、私どもとしても、実態を踏まえて関係機関とも協議をしてまいりたいということでございます。

伊吹国務大臣 先生、つくった時点で消費者金融の違法性あるいは反社会性があったかどうかというのは、これはいつの時点でつくったかというのが一つですよね。それからもう一つは、もうそれがわかっている現時点において、それをいかにも自分たちの商売に使う、今先生がおっしゃったとおりのことを現場で言っているかどうかは確認してみないとわかりませんよ。先ほどもかなり激しいお言葉で表現された後、随分丁寧に私の立場をしんしゃくしていただいた言葉にかえていただいたわけだから、現場の表現がどうであったかということはよくチェックしてみないといけません。

 いずれにしろ、現在、反社会的な行為として違法性があると言われているものが、それを助長するような行為をこのビデオを使って学校でやっているという実態があるならば、それは即座に私の方でやめさせます。

川内委員 ありがとうございます。

 学校の現場で使っているようなことがあればやめさせるという御答弁をいただきました。

 それだけではなく、文部科学省選定ビデオという、この選定の取り消しをぜひ御検討いただきたい。なぜかならば、もしお許しをいただければ大臣にお渡ししますが、これはパッケージのコピーですが、「推薦の言葉」として、ある大学の教授、名前は個人情報ですから申し上げませんが、教授として「(元文部科学省主任視学官)」と括弧で、元文部科学省主任視学官という方が推薦の言葉をこのビデオにつけているわけですよ。消費者金融連絡会が企画、制作したビデオ。こういう箔づけをしながら、消費者金融の方たちは消費者教育の現場にすうっと入り込んで、借りたお金は返しましょう、借りたお金は返しましょうと。グレーゾーン金利のことは一切言わないですからね、ビデオの中で。大臣がおっしゃったやめさせるという言葉の中には、選定を取り消すということも含まれるという理解でよろしいでしょうか。

伊吹国務大臣 これは、私は、申しわけないんだけれども、実はそのビデオの内容を見ておりませんので、断定的なことをここで言うのはいけませんが、グレーゾーン金利だとかどうだとか、これはどこ向けのビデオなんですか、小学生ですか、中学生……(川内委員「高校です」と呼ぶ)高校ですか。高校だと……(川内委員「二〇〇一年」と呼ぶ)

 ですから、二〇〇一年に認定をした時点で、今だからこそですよ、今だからこそこの問題は大問題になったわけですよ。ですけれども、二〇〇一年のときは、今この消費者金融をめちゃめちゃに批判してたたいている大新聞から何からみんな広告を載せておったわけでしょう。ですから、その認定をした時点で内容が別に違法的なもの、正しくないものでなければ、取り消すかどうかは私は非常に難しい問題を含んでいるということを最初に申し上げたわけですよ。

 しかし、その後、違法性がずっと出てきたり、いろいろなことが明るみに出てきて、しかもそれを使って自分たちの商売の宣伝にするというようなことはまずやめさせなければならないし、現時点においては、そのビデオを使うことは、例えば文部科学省認定ですか、というものがつけてあるんならば、それは使うことはもうお断りしますということは言わないといけないと思うんですよ。しかし、さかのぼって、その時点で認定をしたものを取り消すかどうかということは、それだったら各大新聞から何からがみんな出していたコマーシャルもみんな消せということになると、やはり後から確かに違法性があったということは二〇〇一年のときはわからなかったわけでしょう。

 だから一番最初に私が申し上げたのは、消費者金融というものがルールにのっとって、そして国の法律を守ってきちっとお仕事をされて、反社会的な取り立てだとか何かがなければ、それはそれで、先生も別に御反対になっているわけじゃないんですよ。消費者金融というものを悪と認めて抹殺するんなら別ですよ。それは違うわけでしょう。ですから、今のような状態から見て、これを学校現場で使ってもらうのは困るし、そしてまた文部省認定などということを振りかざしてもらうんならこれは取り消さねばならないよとか、あるいはこれを使うことはお断りしますよということは申し上げなければいけない。だから、よく金融庁とも話してみましょう、それは。

川内委員 ありがとうございます。

 あと八分ぐらいしか時間が残っておりませんが、さらに、本題に入る前にもう一つ。本題は四問ぐらいあるんですが、未履修のことをちょっとお伺いさせていただきたいんですけれども。

 実は、教育特でも大臣と未履修のことをちょっと議論させていただきましたが、金沢大学という大学が、「二〇〇二/二〇〇三年度「教育改善のための新入生アンケート」」というのをとっておりまして、この中に、七ページに、データをいろいろ分析して、「高校で必履修のはずの世界史が、世界史A・Bの履修者を足しても一〇〇%にならず、三〇%近い学生は世界史を学んでこない。」というふうに、世界史が未履修だということが金沢大学のレポートに出ております。

 金沢大学の副学長さんとか事務局長さんというのは、調べましたら、文部科学省から出向していらっしゃる。こういうレポートをどのようにお取り扱いになられたのかということを教えていただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の金沢大学の、大学の教育改善に生かすためのアンケートにつきましては、平成十四年以降金沢大学の事務局長として在職した者から事情を聞いたところでございますけれども、いずれの者も、このような調査が金沢大学において行われていたこと、そしてその調査結果についても承知しておらず、私どもにも報告はなかったということでございます。

川内委員 承知しておらずと、今大変なことをおっしゃられたんですが、知らなかったから我々に責任はないのだという論理をおとりになられるんでしょうが、ちょっときょうは時間が、著作権法のこともお聞きしたいので、この問題についてはまた高等教育局に聞きますが、文部科学省はこの未履修をすべて知らなかったから責任がないということで済まそうとしているようでありますが、それは法令上大変大きな逆の責任を発生させるのではないかというふうに思います。

 もう一つだけ。

 長崎県と熊本県で平成十一年、先ほど野田議員もおっしゃっていらっしゃいましたが、平成十四年の兵庫県も全県内の高校を調査したわけでありますが、さらに言えば、熊本県は、長崎県で未履修があったということを聞いて、もしかしたらうちの県でもあるのではないかということをお考えになられて調査をされたという経緯を聞いております。

 そういうもろもろの経緯の中で、長崎県、熊本県、兵庫県、広島県、それぞれその県に特有の事情だという御判断をされた、その特有の事情をそれぞれの県について教えていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 まず兵庫県でございますけれども、当時の兵庫県におきましては、法令等に照らしまして不適切な事例が多数発生をしておりまして、当時の文部省から、学校の管理運営について是正が必要との指導を受けている状況にございました。具体的には、職員会議や学校評議員に関しまして、職員団体と教育委員会との間に多数の不適切な確認書の存在等があって、こういったことを含めまして是正指導を行っている状況にございました。当時、未履修問題については、このような兵庫県の状況を背景としたものであるととらえまして、これが全国的な広がりを持つというところまでは思いが至らなかったものでございます。

 それから、長崎県や熊本県につきましては、未履修に該当した学校数も比較的少なく、全国的な実態調査を行わず、当該県教育委員会に対して指導を行うということにより対応したものでございます。特に県特有ということはこの両県につきましてはないというふうに思っております。

川内委員 また、この件についても次回に譲らせていただきたいと思います。

 それでは、法案の方に入らせていただきます。(伊吹国務大臣「もう時間ないんじゃないの」と呼ぶ)時間はないんですが、時間はないけれども、濃い質問をさせていただきたいと思います。

 今回、IPマルチキャストについての法改正をするということでございますけれども、その前に、まず、有線放送の分野について、本来であるならば有線放送に与えてはいけないというか、国際条約上認められていない権利を有線放送に与えていることはないのか。そしてまた、与えているとすれば、それはいかなる理由によるのかということを文化庁の方から教えていただきたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 我が国の著作権法では、有線放送事業者に著作隣接権を付与しており、また、有線放送事業者が自己の有線放送のために行ういわゆる一時固定を認めるなど、有線放送について無線放送と同様の特権を与えているわけでございます。

 こういった国内法の権利規定、有線放送に関する法制度を定めるに当たりましては、我が国が締約しております条約に違反することがないよう十分検討して規定しておるものでございまして、私どもは、有線放送に関するこれらの特権についても、国際条約に違反することには当たらない、違反はないと思っておるのでございます。

 確かに、国際条約を少し付言させていただきますと、ベルヌ条約には、放送のための一時固定のような、有線放送のための規定は置かれていないわけでございます。しかし、私どもとしましては、有線放送については一時固定を認めないという趣旨ではないんだと理解をしております。

 と申しますのは、同条約では、特別な場合に、著作物の通常の利用を妨げず、かつ著作者の正当な利益を不当に害しない場合には著作権を制限することができるという規定もあるわけでございまして、著作権法四十四条二項が具体に関係するわけでございますが、これは、この条約の範囲内の規定であると理解をしておるからでございます。

川内委員 今、加茂川次長が、国際条約には違反しないと思っていると。思っていることの内容をその後御解説されたわけでございますが、この件についてもまた次回に譲らせていただきます。

 最後に大臣に。大臣は先ほどから、著作権法は権利を保護するためのものであるというふうな御答弁を繰り返しおっしゃっていらっしゃるんですが、他方、著作権法の一条は、目的として、「著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」文化の発展というところが一番大事なんだと。すなわち、保護と利用のバランスをとって文化を発展させていくことが著作権法の目的ですということを書いております。

 伊吹大臣、これからの二十一世紀型の著作権法制度全体のあり方について、パブリックドメインという言葉がありますけれども、著作物あるいは文化の共有とでも言えばいいんでしょうか、この言葉をこれから著作権法制の世界で私は大事にしていかなければならないというふうに考えております。パブリックドメインの社会的意義、そしてまた著作権法との関係について、政府の基本的な、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

伊吹国務大臣 これはやはり日本国憲法の精神に基づいて物事は判断すべきであって、権利というのは大変重要なものですから、これがないがしろにされてはなりません。特に、先ほど来お話があるように、文部省のお墨つきをもらって自分の商売の種に利用するというのとよく似たように、権利だけを主張したらこれはもう社会は成り立たないんですよ。だから、それはあくまで公共の福祉の範囲の中でと日本国憲法も注記しているわけですね。

 ですから、権利で保護された人がどこまでその権利を行使するかというのは、やはり公益とのバランスで決定されていかねばなりませんから、例えば、保護されている期間の問題、あるいは先ほど来も御質問があったように、公共目的の場合は権利は制限されるということがありますから、そういう視野に立って、先生がおっしゃった日本の公益、文化の発展ということも公益の大きな一つの柱ですから、ここを良識的に判断していくのがやはり政治家であり、その政治家を信頼して自分の主権をゆだねていただく国民がおられるという社会が文化的に発展すると思います。

川内委員 全く同感であります。

 終わります。

桝屋委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 著作権は、今もお話にございましたけれども、著作権法に「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」とあるように、文化の発展のための大事な制度でございます。とりわけ、内容のよしあしには国は関与しない、権利を守るという特徴を持っていると思います。我が党は、これまで著作権法改正に当たって、権利者の権利を充実させ保護するとともに、公正な利用を図るための措置には積極的に対応してきたところでございます。

 その上で、本法案について質問をいたします。

 まず、著作権等の侵害についての罰則強化の問題なんですね。罰則の強化でいえば、二〇〇四年の改正で、個人罰則における懲役刑が既に三年以下から五年以下に改正されまして、昨年の一月から施行されています。なぜ再び、今罰則の強化をするのか。この点では、著作権侵害の特殊性については考慮したのでしょうか。お答えいただきたい。

加茂川政府参考人 このたびの罰則強化についての改正案についてお尋ねでございます。

 このたびの罰則強化の背景としましては、いわゆるデジタル化、ネットワーク化といった急速な技術革新が進展する中で、大量かつ高品質の著作物のコピーが容易に作成され得る、または流通できるような状態が生じてきておりまして、その権利に対する侵害の機会または規模が大変高まってきているという状況を私どもはまず考えたわけでございます。

 また同時に、著作権は知的財産の一種類になるわけでございますが、知的財産の保護を強化していく、知的財産立国を実現するというのが政府全体で取り組んでおる課題でもございます。このことを踏まえまして、既に本年の通常国会における法改正によりまして、特許法等の産業財産権法における罰則が強化されたわけでございます。

 著作権も、先ほど申し上げましたように、知的財産権の重要な構成要素でございますし、我が国にとりまして、国民の文化的、経済的活動を支える重要な権利でございますので、著作権侵害に係る罰則につきましても、先ほど申し上げました、本年通常国会において成立しました特許法等の改正と同程度の引き上げを行う必要があると考えたものでございます。

石井(郁)委員 今お話しのように、特許法、意匠法等の改正とのいわば横並び的な発想でということだと思いますけれども、このときにもいろいろ意見があったと思うんですね。我が党は、やはり刑事罰の強化による弊害の懸念があるということで反対をしてきたところです。

 それはそれとして、とりわけ著作権という問題なんですね。思想または感情を創作的に表現した著作物の創作によって成立するという特殊性があると思うんです。この点、日弁連も、保護の外延があいまいな著作権の侵害に対して、かような重い法定刑が科されるおそれがあるとすれば、後発創作行為者に対して心理的な萎縮効果を及ぼし、かえって自由な創作活動を阻害することにもなりかねないという指摘がございます。だから、産業財産権と同一に扱うべきではない、扱えないというふうに思うんですね。

 刑事罰という、国が直接かかわるわけですから、まさに憲法上、内心にかかわる問題としても慎重であるべきだというふうに思います。やはり著作権侵害の特殊性という問題、先ほど御答弁はなかったんですけれども、大臣、いかがでございますか。

伊吹国務大臣 これは、先生、ずっと詰めていきますと、著作権の対象になっているものは、思想的なもの、文化的なものから、ずっと動いていって、先ほど牧先生がおっしゃったような経済活動に直接関与してくる論文その他まで広範にかかわってまいりますね、著作権の対象というのは。ですから、確かに、これは行政庁への登録ではない権利ですから、先生がおっしゃっている文化的な側面についてはなるほどと私は思う部分があります。

 しかし同時に、先ほどのような、明らかに企業が自分たちの営利行為に使うということになると、これはもう、言うならば、登録商標あるいは特許の対象と極めて近いものも含まれていますから、その間をどういうふうに分けるかということになってくると、政府がそこへ入っていくのはどうかなという気もしますし、先生のお気持ちはよく理解を私はできますが、一般論としてはやはり同じに扱う、そして、むしろどちらかというと権利の所有者が、先ほど川内先生もおっしゃったように、権利の行使についてできるだけ抑制的にやっていくということで処理していかないとなかなか難しいんじゃないかと思います。

石井(郁)委員 知的分野は本当に急激な変化をしている分野でもありますし、今お話しのように、経済活動に直接する部分での問題をどう考えるかということは確かにあると思いますが、しかし、これは国際的に他の国も同様に抱えている問題でもあるというふうに思うんですね。

 そこで、では、こういう罰則強化を国際的な動向と比べてみますとどうかということなんですが、文化審議会著作権法分科会の報告書の中にございましたけれども、アメリカでは最高五年以下の禁錮です。イギリス、フランスで最高二年以下の禁錮、イタリアでは六カ月以上三年以下の禁錮なんですね。期間も短いし、懲役ではなく禁錮だとなっているということに私はちょっと注目したいと思うんです。

 それと日本の五年以下の懲役、これ自身、他国と比べて非常に重い。その上で倍にするわけですから、十年以下の懲役に引き上げるというのは他国と比較して余りにも突出しているのではないか。なぜこれを今行う必要があるのかという問題についてでございますが、大臣、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 いわゆる罰則の規定状況、委員御指摘のように、国によってさまざまであるわけでございます。懲役刑のみならず、禁錮刑の差にとどまらず、期間についてもさまざまでございますが、日本以外にも懲役刑を科しておるのは、例えばお隣、韓国の例もございますし、期間も国情によってさまざま、これはそれぞれの国が構えております刑事法とのバランスが背景にあるからだと思っておるわけでございます。

 一方で、委員先ほど御指摘ございました著作権の特殊性といいますか、産業財産権である特許権等とは違うではないかという御指摘があることも私どもは十分承知をしておりまして、今回、もちろんバランスということも一方で考えましたが、権利保護の要請にこたえつつも、今回の改正では、著作権の特殊性でありますとか刑事処罰の謙抑性といった観点から、今回の法改正につきましては著作人格権侵害に対する罰則を据え置くということも行っておりまして、引き上げについて言うと最小限にとどめておりますということも御理解をいただければ大変ありがたいと思っております。

石井(郁)委員 余りこの件だけでもあれなんですけれども、私どもは、罰則そのものは決して否定するものではありませんけれども、やはり創作活動という非常に文化的な活動という問題に対しての心理的な萎縮効果ということを考えなきゃいけないと思いますし、また、倍ですから、これを今以上に強化するということは文化の発展に寄与すべき著作権法にはなじまないのではないかということで、私は罰則の強化には強く反対をしたいと思っているところです。

 次に、今回の法改正のもう一つの柱なんですが、言われているIPマルチキャスト放送における著作権法の扱いのことでございますが、今回の改正で、IPマルチキャスト放送において地上波放送を同時再送信する場合のことですが、実演家らの許諾権がございますけれども、報酬請求権へと変わってしまうわけですね。これはいわば権利の引き下げだというふうに理解していいのでしょうかということなんです。

 こういう形での著作権法改正というのは、これまでどのように行われてきたのか、あったのかどうかを含めて御答弁いただきたいと思います。

加茂川政府参考人 御指摘のように、IPマルチキャスト放送による放送の同時再送信については、これまでの許諾権を報酬請求権化することでございまして、委員御指摘のように、権利の切り下げといいますか権利制限を課することになるわけでございます。

 こういった著作権の権利制限につきましては、先ほど別の委員の方の御質問にもございましたが、それぞれの社会的な変化、ニーズに応じてこれまでもその都度行ってきておるわけでございます。一般的に権利制限につきましては必要に応じて判断をしてきておる、今回もその一環であるという御理解をいただければよろしいかと思います。

石井(郁)委員 今回、こういう問題についての関係者からの意見聴取といいますか、その辺での理解というのはどのように得てきたところですか。

加茂川政府参考人 今回の法改正に至ります手続といたしましては、文化審議会の著作権分科会で、関係者、専門家のみならず関係団体との十分な意見交換、議論を踏まえて成案を得たものでございまして、IPマルチキャスト放送に関係する事業者または、実はこれは有線放送も全く同機能を持つものでございますから関係団体として意見を聴取いたしましたけれども、関係団体から特に異論なく、今回の法改正については御理解をいただいておるところでございます。

石井(郁)委員 一応、そこのところはその辺で伺っておきたいと思います。

 関係団体のところの動きとしてちょっと私ども聞いたところでいいますと、ことし十月から、日本芸能実演家団体協議会、芸団協ですね、あるいは実演家著作隣接権センターなどが、放送番組のインターネットなどでの二次利用に関する一任型管理、集中型というんでしょうか、そういう事業を始めたと伺っています。また日本レコード協会も、レコードを録音した番組をインターネットで利用する際の送信可能化権の一任型管理を始めたということがありますね。

 既にこうして民間団体では、インターネット上での利用についての許諾のルールをつくって合理的な運用を始めていると思うんですが、こういう動きを文化庁としてはどのように把握をされて、どのように見ていらっしゃるのか、伺っておきたいと思います。

加茂川政府参考人 放送番組などのいわゆる映像コンテンツの場合でございますが、多数の著作権者等が関係しておる状況にございますから、いわゆる二次使用に関する契約の円滑化を図るためには、これらの分野における委員御指摘の集中管理、こういったものを進める必要があるわけでございます。

 現在のことを申し上げますと、これまでも、商業用レコードの放送利用に関しましては、これも御指摘にございました、実演家の団体である社団法人日本芸能実演家団体協議会、それとレコード制作者の団体でございます社団法人日本レコード協会が集中管理を行っておるところでございまして、私どもとしましてはこういった取り組みを大変高く評価しておるところでございます。これに加えて、両団体におきまして、現在、放送番組のインターネット配信など、さらなる放送番組の二次利用に向けた集中管理の体制の整備が進められつつあるところでございます。

 民間における自主的な取り組みによって著作物等の流通促進が進むことは、繰り返しになりますが、大変意義のあることだと考えておりますので、実演、レコードの両分野におきます集中管理の取り組みが今後ともさらに充実することを私どもは期待しておるわけでございます。

石井(郁)委員 私は、こういう動きが始まっているもとですから、やはり現行著作権のもとでもこうした事業が円滑に進むようにする、そういうことを支援していくということが、文化庁として、政府として大いにやるべきではないかというふうに思っております。

 権利の引き下げという問題はやはり慎重に行うべきだというふうに思いますので、こういう問題できょうは質問をさせていただきまして、やはり拙速に行うべきではないということを申し上げて、きょうの質問を終わりたいと思います。

桝屋委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 十一月の二十四日になるんですが、朝日新聞に小さな記事が載りました。「海賊版の音楽や映像 ネットでの入手禁止」、これは政府の知財本部が、最近「YouTube」などで音楽や映像を違法にコピーした海賊版をインターネットからダウンロードすることを全面禁止である、罰則を設けるということも書かれている。〇八年の通常国会に提出予定ということで現在検討中であるということですが、これは大変な反響でして、私のもとにもいろいろな問い合わせとか、どうなっているんですかと、私もよくわからないんですが。今回の法改正の内容ではなく、今検討中の内容ですが、例えば、添付ファイルを開いてみた、そこに違法コピーがあった、パソコンは読み込んでこれを表示しますからこれはもう記録されるわけであって、そうすると犯罪者になってしまうのかと。

 しかも、今回、実は罰則の点で、今石井委員からもお話があったように、五年から、十年という大変重い罰則に引き上げられているということがございます。きのうこの点で文化庁といろいろお話をしましたが、個人を罰する、例えばインターネットでふっとキーボードを押したら十年以下のあるいは一千万以下の罰則、こういう話になるのかどうかと言ったら、そういう心配はないようなことをおっしゃっていたのですが、本当にないのですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 新聞の引用を委員なさいましたけれども、私どもの現在の検討状況をまずお話をしたいと思いますが、現在、文化審議会著作権分科会におきましては、私的録音録画の範囲あるいは私的録音録画補償金制度のあり方について、本年の三月から検討を行っておるわけでございます。この検討の過程をオープンにしておりますけれども、この検討の過程では、違法なネット配信からの録音録画を著作権法三十条に規定するいわゆる私的録音録画の権利制限の範囲に入れるべきかどうか、またはこの範囲から外して権利者の権利が及ぶべきものにするかどうかの議論も確かに行われておるわけでございます。

 しかしながら、新聞記事にございますように著作権法上の取り扱いについて、私どもの審議会では結論が出ておるわけではございません。違法サイトからのダウンロードの扱いあるいは罰則の適用等も含めた改革案が現時点で固まっているとか、あるいは具体的に法改正に着手をしたという段階にはないわけでございます。

 この問題、いろいろ御意見もあろうと思いますので、今後引き続き議論を重ねて、ユーザーあるいは権利者等の関係者が納得できる制度のあり方を検討していかなければならない、こう思っております。

 また、委員が御指摘になりました個人が行う行為については配慮が必要ではないかという視点からでございますが、今の著作権法三十条の規定との関係もございまして、個人が行う私的目的の複製行為につきましては、過去の立法例を申し上げますと、例えば、技術的保護手段の回避による複製につきましては、これ自体は問題になるわけでございますが、刑事罰を科すほど悪質な行為とは考えられないということで罰則の対象から外しておるわけでございます。

 こういったことを参考にいたしますと、違法サイトからのダウンロードの取り扱いにつきましては、こういった前例も十分考慮しながら、可罰性があるのかないのか、十分慎重に検討する必要がまずあるなと思っておるわけでございます。

保坂(展)委員 法務省刑事局に来ていただきましたが、時間の関係で簡潔にお願いをしたいんです。

 来ていただいたのは、前通常国会で審議をして激論になった共謀罪の対象範囲の具体例として、たしか著作権法違反事件なども例示をされていたように思うんですが、政府提案の共謀罪だと、どういう場合に著作権法違反で問われるようなケースがあるんでしょうか、簡潔にお願いします。

三浦政府参考人 現在国会において御審議いただいております犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案により新設することとしております組織的な犯罪の共謀罪は、死刑、無期または長期四年以上の懲役、禁錮の刑が定められている犯罪であって、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われる犯罪等の遂行を共謀した場合に限って成立するというものでございます。

 現行著作権法百十九条の罪、例えばこの罪は五年以下の懲役刑が定められているということでございますので、この組織的な犯罪の共謀罪の対象犯罪に当たり得るということでございます。

 具体例としてどういうものがあるかということにつきまして、私どもの方で御説明をいたしたことがございますのは、例えば、いわゆる海賊版のコンパクトディスクの販売を繰り返している集団、団体の構成員らが多量のコンパクトディスクを無断で複写して組織的に販売することを共謀したりというような場合などを御説明したところでございます。

保坂(展)委員 今の説明でわかったように、金銭的対価を目的として、海賊版CDでしたけれども、時代が変わってきて、ファイル交換ということで何らかの対価を得ていたようなグループなども対象になるのではないかという心配もございます。

 時間がないので、もう一点。

 国会テレビ、きょうも中継をされているわけですけれども、専門家の方の御指摘で、この国会テレビというのは、衆議院本会議における代表質問とか施政方針演説とか、こういうものについては著作権法四十条の一項が適用されている。二項の適用で、こういった委員会の審議あるいは参考人質疑など、こういうものが適用されているということなんですが、文化庁はそれでよろしいでしょうか、解釈をお願いします。

加茂川政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。

保坂(展)委員 四十条の二項を適用できるのは放送や有線放送であって、いわゆるインターネット中継はだめだというのが文化庁の見解ではないのですか。

加茂川政府参考人 国会のテレビ中継でございますが、報道目的であれば著作権法に従って有線放送できるということは確かでございます。

保坂(展)委員 さらに、ではインターネット中継も放送ということでよろしいのかどうかという疑問が残るんですが。

 もう一つ、ビデオライブラリを、私どもも自分の質問も含めて、他党の方はどんなことを聞いたのか、大変便利に重用させていただいていますが、ビデオライブラリについてはどうなんですか。オーケーなんですか。

加茂川政府参考人 ビデオライブラリにつきましては、これは著作権法が働く分野ということになりまして基本的には権利が働きますから、関係者が契約によってまたは所定の手続をとって事前了解等の適式な方策、方途をとることは想定、期待をされておるわけでございます。

保坂(展)委員 これは国会事務局ないし議運の判断と文化庁の判断とどうも違うようなんですね。実際には、参考人質疑で、ではビデオライブラリに入りますがよろしゅうございますねと委員長が確認してやっているわけじゃないわけであります。

 今改正案でこの四十条の二項が変わります。この中で中継の部分は恐らくオーケーになると思うんですが、ライブラリの部分、ここのところは、やはりまだ文化庁的にいえばいかぬという状態のままになってはいませんか。

加茂川政府参考人 委員御指摘のいかぬという意味が、私、取り違っておるかもしれませんが、権利制限が働いていない、著作権法の本則が適用になるということであれば、そのとおりだと思います。

保坂(展)委員 ですから、国会がすべからく、昔は委員会の議事録すら非公開だったわけですよね。それが、時代が変わって、インターネットでもリアルタイムで見られる。見逃してしまっても、仕事が終わってからどういう議論だったのかなと見られる。大変な進歩で、これはもう本当に大事な国会、それこそ大臣もおっしゃる基礎だと思うんですね。議会として非常にいい基礎だと思うんですが、この点についてしっかり文化庁の見解等そろえていく必要があると思うんですね。

 アメリカなどでいうフェアユースですか、公正な利用ということで、こういうものは何ら問題はないんだというふうに考えていくことは、文化庁、できないんでしょうか。

加茂川政府参考人 ただいまアメリカの法制度の例を挙げてフェアユースのことを御指摘ございましたが、フェアユースについて日本でももっと前向きに検討すべきではないかという意見が強くございまして、私どもは課題の一つとして認識をしておるのは事実でございます。

 ただ、今御指摘の国会のテレビ中継のライブラリー化について申しますと、これは、私どもは著作権を所管しておりまして、関係者の権利を守るということが基本でございますので、確かに公益性は高いわけでございますから、権利の制限の方法でいくのか、または契約の方法でいくのか、いろいろな工夫の余地があろうかと思いますので、これは御担当であります国会事務局ともこれから鋭意協議をしてまいりたいと思います。

保坂(展)委員 我々立法府の中の議論の話でございますが、民間の話よりも国会の中の話、これは一番最初にクリアしなきゃいけないですよね。大臣、この点、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 国会というのはやはり国民から主権を負託された国権の最高機関であって、負託した国民はすべて、国会で何が審議されているかというのは、よほど制限的に秘密会にならない限りは許されるべきことだと私は思います。

 したがって、今政府参考人が国会事務局ともと、これは全く間違った答弁で、これは我々国会議員が決めることです。ですから、議運において協議をしていただければ、それに応じて法制の整備をさせていただきます。

保坂(展)委員 大臣に最初の点について伺いたいんですが、今回の著作権法改正の後に続くと考えられる、今現状審議中の、確かに海賊コピーとかはんらんしています。これによる侵害も大変な侵害でしょう。

 ただ、他方において、インターネットというのはこれだけ普及して、我が国の経済社会、あるいは子供が何か学んでいくツールにもなっている、弊害もありますけれども。しかし、大変な数の国民が利用していて、個人のダウンロードという一般的な行為が犯罪化されるかもしれない、そういうことに対して非常に懸念がある。だから、私どもとしては、この罰則の引き上げは早過ぎる、この議論をしっかりしてから、国民全体が非常に関心のあるダウンロード規制の議論をしっかりしてからでも遅くはないんだと思います。

 そういう意味で、余り今関心がありませんが、五年から十年に先にここで引き上げてから、来年、再来年この議論に入るというのは順番が逆じゃないでしょうか。

伊吹国務大臣 これは、先生も、違法サイトという言葉があるわけですから、これが違法だということは当然お認めになると思います。これからのダウンロードをどうするかということによって、違法サイトそのものの位置づけ、違法サイトがどういうふうにこれから動いていくかということも慎重に見きわめなければなりませんから、ここのところは少しやはりいろいろな方々からの意見を聞いてやりませんと、難しい問題を含んでいる課題だと認識しております。

保坂(展)委員 インターネットというのは、何人かでやるというよりは大体一人でやることが多くて、自分の部屋であるとか会社であるとかいうところで行われるんですが、個人の行為というのはなかなか全容把握は不可能なんですが、ネットへの接続というのは事後検証が非常に容易であるということが特徴です。サーバーなどでログをたどっていくことも十分可能なので、この法制度が厳罰化されたことの、先ほど文化庁の次長の方はかなり謙抑的にという言葉をお使いになりました。そうなってほしいと思いますが、しかし、謙抑的ではなく、むしろ一般国民に対してダウンロード規制に対する罰則がかかることもその範囲にして検討が今進んでいるというふうに聞いているので、ここは罰則を先に決めてしまうことには反対であるということを申し上げて、時間になりましたので、終わりたいと思います。

桝屋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

桝屋委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党を代表して、著作権法の一部を改正する法律案に対し反対の討論を行います。

 本法律案では、著作権侵害に対する個人罰則を強化しています。しかし、著作権侵害に対しては、侵害者に対する差しどめ請求など民事上の請求権を行使することで、その侵害行為の停止、予防と被害回復を図ることができるものです。著作権侵害に重罰を科すことは、創作行為者に心理的な萎縮効果を及ぼし、自由な創作活動を阻害することにもなりかねません。

 政府は、産業財産権との調和を図るとしていますが、そもそも著作権は、登録を必要とする特許権などの産業財産権とは異なり、著作物の創作によって著作権が成立(無方式主義)するものであり、著作権の対象も「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と内容も表現方法もさまざまなものが含まれることから、産業財産権と同一に扱うべきでなく、罰則のあり方もより慎重であるべき性質のものです。

 さらに、実態として著作権侵害の検挙例は、レコード、CD等の海賊版の輸入などデッドコピー事案が大部分であり、それ以外の著作権侵害罪の適用は極めて少数であり、現行法が定める懲役刑の上限、それに近い刑が適用された事例も少なく、二〇〇四年に行われた法改正で上限を三年以下から五年以下に引き上げたばかりで、その効果が十分に検証されていないことからも、直ちに懲役刑を引き上げる必要性も乏しいものです。

 その他の点については賛同できる面もありますが、罰則の強化による懸念を払拭することはできず、本法案に反対します。

 終わります。

桝屋委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社会民主党の保坂展人です。

 今回の著作権法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。

 我が党は、著作権の保護に関して、その侵害に対して厳しくこれを守るという立場で、ほぼ著作権法の改正については賛同してまいりましたが、先ほど質疑の中で述べたように、五年から十年、そして五百万円から一千万円という個人に対する処罰規定がかなり重いのではないか、重い処罰がごく少数の国民を対象としているということではなくて、現在、審議中、検討中であるダウンロード規制というようなことについてまでかかるおそれもある、その対象となる場合もあるという議論があることを考えると、罰則のみが本著作権法改正案の中で先行して提示され議決されるというのは、順番が逆であるということを申し上げたいと思います。

 同時に、共謀罪などの対象犯罪となっている著作権法は、まさにネット社会の中で悪質な犯罪集団のみが対象とされるわけではなくて、ごくごく悪意のない、ファイル交換などが違法である、これを繰り返しているというような集団がこれらの対象になるようなことも考えられなくはないということを考えますと、この著作権法改正案、大きな企業の中で利便性、潤滑に事業を行っていくということに配慮はされているものの、国民一人一人の立場から、特にインターネット社会などを阻害して窮屈にさせ窒息に向かわせるおそれがある議論が行われている一方での罰則の引き上げということに着目をして、残念ながら、賛成しかねる、反対であるということを申し添えて、私の討論にしたいと思います。

桝屋委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

桝屋委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

桝屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

桝屋委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、田野瀬良太郎君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。松本大輔君。

松本(大)委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 IPマルチキャスト放送(電気通信役務利用放送法(平成十三年六月二十九日法律第八十五号)第三条第一項に基づく登録を受けた事業者が、IPマルチキャスト技術を活用してサービスを行う有線役務利用放送をいう。)が、著作物等の利用形態としては、著作権法第二条第一項第九号の二に規定する有線放送とほぼ同様であることに鑑み、事業者が自ら番組を調達して放送する「自主放送」の著作権法上の位置付けについても、速やかに検討を進めること。

 二 近年のIPネットワーク技術の進歩による伝送経路の多様化に鑑み、著作権法第二条第一項第八号に規定する放送、同項第九号の二に規定する有線放送及び同項第九号の四に規定する自動公衆送信については、現在の伝送経路等による区分を見直し、伝送経路の多様化に対応した包括的な規定に改めることを含め、速やかに検討を進めること。

 三 前項の検討に当たっては、著作者の権利保護にも配慮しつつ、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律(平成十六年六月四日法律第八十一号)第三条に規定する基本理念にのっとり、デジタル情報の特性を生かしたコンテンツの二次利用が促進されるよう、著作権処理の円滑化を図ること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

桝屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

桝屋委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。伊吹文部科学大臣。

伊吹国務大臣 ただいま議決のありました附帯決議の趣旨に十分留意し、対処してまいりたいと存じます。(拍手)

    ―――――――――――――

桝屋委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

桝屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

桝屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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