衆議院

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第4号 平成19年3月16日(金曜日)

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平成十九年三月十六日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 桝屋 敬悟君

   理事 鈴木 恒夫君 理事 田野瀬良太郎君

   理事 西村 明宏君 理事 平田 耕一君

   理事 松浪健四郎君 理事 藤村  修君

   理事 笠  浩史君 理事 伊藤  渉君

      阿部 俊子君    秋葉 賢也君

      江崎 鐵磨君    小川 友一君

      小渕 優子君    越智 隆雄君

      岡部 英明君    加藤 紘一君

      小島 敏男君    木挽  司君

      清水清一朗君    柴山 昌彦君

      鈴木 俊一君    田中 良生君

      西本 勝子君    馳   浩君

      平口  洋君    福田 峰之君

      藤田 幹雄君    二田 孝治君

      馬渡 龍治君    盛山 正仁君

      安井潤一郎君   山本ともひろ君

      太田 和美君    田島 一成君

      田名部匡代君    高井 美穂君

      野田 佳彦君    牧  義夫君

      松本 大輔君    松本 剛明君

      大口 善徳君    西  博義君

      石井 郁子君    保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   国立国会図書館収集部長  内海 啓也君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     岡部 英明君

  飯島 夕雁君     安井潤一郎君

  佐藤  錬君     木挽  司君

  馳   浩君     越智 隆雄君

  二田 孝治君     盛山 正仁君

  奥村 展三君     田名部匡代君

  横山 北斗君     太田 和美君

  西  博義君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     馳   浩君

  岡部 英明君     田中 良生君

  木挽  司君     佐藤  錬君

  盛山 正仁君     二田 孝治君

  安井潤一郎君     清水清一朗君

  太田 和美君     横山 北斗君

  田名部匡代君     奥村 展三君

  大口 善徳君     西  博義君

同日

 辞任         補欠選任

  清水清一朗君     飯島 夕雁君

  田中 良生君     井脇ノブ子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人国立博物館法の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)


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     ――――◇―――――

桝屋委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、独立行政法人国立博物館法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長銭谷眞美君及び文化庁次長高塩至君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

桝屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

桝屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高井美穂君。

高井委員 民主党の高井美穂です。おはようございます。質疑、よろしくお願いいたします。

 まず、質問に入る前に、一つ大臣にぜひ教えていただきたいと申しますか、私はまだ議員として当選回数が浅いもので。

 今回の独法の所管庁は文化庁でございますよね。だから、当然この独法の最高責任者としては文化庁長官ということでよろしいんですよね。そうすると、当然文化庁長官も、要求すれば委員会に、はいわかりましたということで、すぐ出てきていただけるものだというふうに勘違いをしておりまして、昨日の通告のときにも、文化庁長官と大臣をぜひよろしくお願いしますということを申し上げましたけれども、いや、文化庁長官は来てもらうときには理事会に諮って、今まではそういう慣例がないのでというふうなお答えがあったもので、ああ、そうですかと。

 つまり、防衛庁長官なりエネルギー庁長官なり、ほかの省庁の場合、前日に通告しても、スケジュールが合えば来るというふうになっていると思ったので、この独法がきょうかかる、先日水曜日に大臣が説明をなさいましたので金曜日に質疑されるというか、国会の中の予定はある程度御存じでないかというふうに思います。それなのに、やはり文化庁長官を要求できなかったというのは大変私は残念に思っておりまして、この点、恐らく政府の方なので要求できないということはないんでしょうけれども、では、前もって、何日前までに言っておけばいいのか。

 そういう点からすると、大変私は複雑な思いできょうここに質問に立たせていただいているんですね。だから、この独法のことを大臣にすべてお聞きするというのもまた、直接の責任者でないわけですからいかがなものかというふうにも感じていたので、文化庁長官が呼べなかったのは大変残念です。

 呼べないことはないですよね。それをちょっと教えてください。

伊吹国務大臣 私は今、行政府の立場でここにおりますので、議会で少し経験が長い者として申し上げますと、国会の運営というのは、国会法がまずございます。それから議事規則と、あとは慣例集というのがあって、その三つによって動かされているんですね。各委員会の運営は、各党から出ておられる理事の協議を委員長のもとで行われて、その決定によって動かされている、その積み重ねが慣例だと思います。

 先ほど防衛庁長官のお話がありましたが、今はもう防衛大臣になっておられますが、いわゆる議員の資格を持っている大臣長官は、内閣が国会に法案を御審議願っているんだから、これは全員当然出席をしなければなりません。

 各省にいる長官、例えば国税庁長官とか公安調査庁長官とか、今お話のあった文化庁長官とか、これを国会へ出すというのは、慣例的には、各党の理事のお話し合いによって、大体次長をもってやってきているというのが慣例のようです。もちろん長官を呼べないということはございません。それは呼べないということはございませんが、それはあくまで各党の理事間の協議によって決められるので、今までの慣例の積み上げとしては、大体次長をもって対応してきたというのがこれまでの、私が二十数年見てきた国会の委員会の現状でございます。

 それから、それ以外に、例えば日本銀行総裁とか、あるいは何とか公団、何とか機構理事とかという人は、これは、率直に言うと政府の一員ではないんですね。ですから、いわゆる国会法に言うところの参考人でございます。参考人をお願いする場合は、基本的には、理事会で諮って、そして、はっきりと覚えておりませんが、何日か前にその方の出席を要請するというのが国会の慣例であったのではないかと思いますので、これは、今の私の立場では、口を差し挟むべき立場ではございません。委員長のもとでの各党理事の御協議にゆだねられることだと思います。

高井委員 説明していただいたとおりのことはよく理解できました。

 ただ、そうはいっても、国会でこの質問がこういう日程になるのは割と直前にならないとわからないわけでございますし、この法案の最高責任者は一応文化庁長官ということでございますので……(伊吹国務大臣「いや、それはそうじゃない」と呼ぶ)大臣なんですか。文部科学大臣ということですか。わかりました。

 お聞きすると何か中国へ御出張されているということなので、海外へ行かれているということは、たとえ一週間前に要求したとしても、いなければ無理なのでしょうし、そこら辺を調整ができないものなんでしょうか。

伊吹国務大臣 これは高井先生、立法府である国会と法案審議をお願いしている内閣の中で、例えば私が海外に出張できるかどうかについてももめるんですよ。必ずもめるんですよ。そして、外交上大切だから行きたい、しかし、法案を出している、審議があるじゃないかという立場でもめるんです。野党の皆さんも、いやそれは、外交が大切だから行けばいいじゃないかとおっしゃるわけですよ。しかしその間は審議しませんというのが、私の経験からいうと過去の流れですよね。

 そうすると、法案の審議が後へずれるから、例えば一週間前なら一週間前におっしゃった場合には、これについていいとか悪いとかというのは議院運営委員会でみんなきちっとチェックするわけですよ。ですから、海外出張に行っているから呼べないというわけじゃなくて、呼びたいということがあれば、事前におっしゃった場合には出張を取りやめざるを得ないというケースもあるんです。そういうケースがたびたび重なるので、これは御党の党首が御提案になって、副大臣、政務官制度というのをつくったんです。

 だから、常に大臣をお呼びになるんじゃなくて、副大臣、政務官に闊達に御質問をして、そして議院内閣制のルールをうまく回していこうというのは、小沢党首の御提案でできているわけですから。

高井委員 他の委員会との兼ね合いもあられるし、副大臣というのは、それはそれでいい機能になっているんだろうとは思いますが、ただ、大臣という最高責任者が答えられるのと、副大臣という立場、やはりそれはある意味で重みが違うと思います。

 それに、文化庁長官になぜお聞きしたかったかという説明を今させていただきたいと思うんです。

 大臣が御就任前のことなので、高松塚古墳という古墳を文化庁が責任を持って管理している、それにもかかわらず損傷させたということがございました。御存じでございますか。そうしたら、詳しい経過よりも、かいつまんで申し上げますけれども。

 これ自身、公表をしなかったんですよね。しかも、事実を把握していたのに四年間も公表しなかった、これは大変なことだと思います。しかも、その後にさらに、作業中に作業の方が電灯を倒して壁がはがれ落ちたということに加えて、空気清浄機が転倒してさらに傷がついてしまった。さらにその後また、マニュアルに書いてあるとおり、本当は防護服を着て作業に当たらなければいけないそうなんですが、それをしなかったもので、それによって大量のカビが発生してしまったという、文化財を扱う上で大変なことが起きて、これは大問題だと私どもなんかは感じておりまして、これを大臣にお聞きして、これは問題だというふうに私は思うんですが、その責任は大臣が負っていただけるということでよろしいんでしょうか。

伊吹国務大臣 文化庁長官は私の部下でございますから、我が省で起こったことの全責任は私にあるというか、当時の文部科学大臣にあるというのは、これは当然のことです。そして、大臣がお答えするべき大局的、政治的なことは大臣がお答えをするというのは、これはもう政党間で話し合っている限り当然です。

 しかし、細かな過去の事実関係だとか数字だとか、そういうことまで一々大臣に聞くのではなくて、それは政府参考人や政務官、うちの政務官は偉い政務官がおりますけれども、政務官などに聞いていただくというのが筋で、そして大きな、政治家同士の対話が必要であれば、いつでも大臣に聞いていただきたい、そして国会を活性化していくということじゃないでしょうか。

高井委員 それは私もそうするつもりです。細かい数字を細かく大臣にお聞きするつもりはございません。

 ただ、この劣化問題が明らかになって、また、隠ぺいのことが明らかになったときに、これはある雑誌か何かのインタビューで当時の文化庁長官河合隼雄さんが、壁画はぼろぼろ、ばらばらという状態、あばたもすごい、状況を隠すつもりはなかったが、きちんと公開をしてきたのか反省しているというふうにお述べになっておられます。これは国会外の答弁ですので、これの真偽は定かではありません、記者が編集しているかもわかりませんが。でも、恐らくこういう趣旨のことをおっしゃったんだろうと思います。

 しかし、それにもかかわらず、明日香村の村議会が文化庁に、修復後の原状回復や公開、村議会での説明などを求める決議書を文化庁次長に出しているんですね。当時の文化庁次長は加茂川さんとおっしゃる方です。そのときの回答として、文化庁が謝罪するだけの明らかな落ち度はない、村で説明する法的根拠も明確でない、謝罪と説明を拒否したということが新聞に出ておりました。これは二〇〇五年の八月あたりの新聞でございます。

 これをお聞きになって、大臣はいかが思いますか。今回の件は、私は、文化庁にはかなり、マニュアルもきちんとあったし、とりわけきょう質疑する国立博物館法、文化財研究所の件に関して非常に密接にかかわることなので、この次長の発言でございますが、大変問題だと思うんですが、大臣も問題と思われませんか。

伊吹国務大臣 直接私はその発言を聞いたわけでもありませんし、今の発言はどこの発言なんでしょうか、国会の議事録のようなものでそういうことを申しておるんでしょうか。

 つまり、マスコミの報道では私の真意が伝わらずに、えらい目に遭ったことは私は何度かございますので、必ずしもマスコミの報道がすべてそのとおりだという前提に立ってのコメントは少し控えたいと思いますが、率直に言えば、国宝というか国民的財産なわけですから、それを扱うときは細心の注意を持ってやらなければならないし、同時に、その状況については全国民に透明性を持って説明しなければならないというのは当たり前のことです。だから、そういうことが行われていないというようなことがあれば、これは私は非常に問題だと思います。

 同時に、その国民的財産が所在している地域の方々はそれを大切にして、誇りにしてやっていただかなければならないんだけれども、それを一地域に発表するんじゃなくて、発表するのは全国民にきちっと透明性を持って発表するものであって、所在をしている一地域にだけお話しする筋合いのものでは私はないと思いますよ。

高井委員 だから、私もさっき申し上げましたけれども、マスコミを通じてしかこのことを調べることができなかったので、だから国会でぜひとも答弁していただきたいというふうに思ったわけでございます、文化庁次長のこの件に関しても。だから、文化庁長官にぜひお聞きしたかったんですけれども。

伊吹国務大臣 文化庁次長は今生涯学習局長として在籍をしております。そして、きょうは文化庁次長も来ておりますから、前任の文化庁次長にお聞きになりたいのならば、加茂川生涯学習局長をお呼びになればよろしいんじゃないんですか。それから、当該次長のポストの継続性ということからいえば、次長職の人間は来ておりますから、どうぞお聞きになってやってください。

高井委員 では、この件に関して、きちんとした通告はしていないんですけれども、今お答えできますでしょうか、前任者のこの御発言について承知をしておられるかどうか。高松塚古墳の件に関してどのように対応、対応というかお考えになっておられるか、次長の立場でお願いをいたします。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御指摘のございました平成十三年二月に実施いたしました高松塚古墳の取り合い部の天井崩落どめ工事及びその後の壁画の補彩につきましては、昨年六月に文化庁に外部の有識者から成ります調査委員会を設けまして、事故当時の事実関係の検証を行いまして、報告書がまとめられたところでございます。

 その報告書につきましては、私ども、先生から御指摘がございましたような、いわゆる情報公開、説明責任の認識の甘さということを厳しく指摘されておりまして、文化庁といたしましては、この結果といたしまして、壁画の劣化を招いた事実については大変厳粛に受けとめている、こういう考え方でございます。

高井委員 厳粛に受けとめているということは、失敗はなかったということなんですか。間違いはなかった、落ち度はないということの意味なんでしょうか。ちょっと教えてください。

高塩政府参考人 この調査報告書の報告にございますように、文化庁に対しまして、縦割り行政の弊害と情報公開、説明責任の認識の甘さについて厳しい指摘を受けておりまして、私どもはその点について落ち度があったというふうに考えております。

高井委員 もう一度確認させてください。落ち度があったと今おっしゃいましたが、それは、厳しい指摘を受けたことに対して、認識の甘さについて落ち度があったということなんでしょうか。この事実、起こってしまったことに対して、今までやってきたマニュアルの作業、それからカビが生えてしまったことそのもの自体には落ち度は文化庁としてはないということなんですか。

高塩政府参考人 高松塚古墳の壁画の保存につきましては、三十数年来、可能な、考えられる措置を講じてきたわけでございますけれども、特に、先生から御指摘のございました、平成十三年の取り合い部の天井の崩落どめ工事及びその後のいわゆる作業中の事故の後の補彩等のことにつきまして、昨年調査会を設けまして、その原因と対応についての調査を行ったところでございまして、それにつきまして、私どもは、全体として、高松塚古墳の保存について指摘された点につきましては、まさに私どもの方で落ち度があったというふうに考えているところでございます。

高井委員 その調査委員会の議事録というか、検討結果については公表しておられますね。それで、その内容についてすべて落ち度があったというふうにお認めになっておられるという御答弁でよろしいですか。

高塩政府参考人 そのように考えております。

高井委員 承知しました。

 今大臣もお聞きになったとおり、まさにこの件は大変な失敗だったということを文化庁もお認めになっておられる。

 さらに、もう一つ問題なのは、高松塚古墳という大事な壁画がここまで傷んでしまって、結局石室を解体することに決めましたよね。そのときに、国宝高松塚古墳恒久保存対策検討会というものが設けられて、ここで解体することを決めたというふうなことでございますが、この二十四人の委員のうち、座長など半分以上が文化庁の関係者で、壁画管理の当事者も加わっていたということでございますから、解体してしまおうという決定自体が、文化庁ぐるみで、もうこれは修復不可能だから隠してしまえみたいな意図があったのではないかと思って、大変私は懸念をしているところなんです。

 本当に、これは解体する以外どうしようもないということだったんでしょうか。もし今手元に細かいことがなければまた改めて伺いますけれども、もしわかれば文化庁次長から教えてください。

高塩政府参考人 高松塚古墳の壁画につきましては、御承知のように、昭和四十八年に現地保存の方針というものが決定されまして、それに基づきまして、大変狭隘で高湿度な厳しい作業環境のもとで、その時々の最新の保存科学の研究成果に基づきまして、壁画の保存修理に最大限の努力をもって対処してきたところでございますけれども、その結果、カビ等の発生は一定の時期につきましては抑制されてきたということがございます。

 しかしながら、御指摘のございました平成十三年の天井の取り合い部工事を契機に、石室内に大量のカビが発生するという状況を踏まえまして、平成十六年に絵画や考古学のほか、保存科学、生物科学など多様な分野の専門家から成ります恒久保存対策検討会を設置いたしまして、壁画の恒久的な保存についての検討を行ったところでございます。

 その検討会におきまして、多様な保存方法を検討いたした結果、一昨年、平成十七年六月に、現在の環境で壁画を維持していくことは大変困難であるという結論に至りまして、御指摘のございましたように、石室を取り出しまして、適切な環境のもとで壁画の修理及び保存措置を行うことが適切であるという判断に至ったものでございまして、現在そのための作業に取り組んでいるところでございます。

高井委員 まさにみずからが招いた失敗によって結局解体せざるを得なくなったということ、その一因を招いたということで、そういう結果になったわけでございますが。

 今回の国会の法案の趣旨というか、書いてあることに、今度新しくできる国立博物館と文化財研究所が統合されてできる国立文化財機構というのは、「博物館を設置して有形文化財を収集し、保管して公衆の観覧に供するとともに、文化財に関する調査及び研究等を行うことにより、貴重な国民的財産である文化財の保存及び活用を図る」というふうに書かれてございますが、まさにこの点に背くようなことを高松塚古墳でしてこられたという事実に対して、私は、文化庁、先々を大変心配をしております。しかも、四年間隠していたということもございますので、文化財保存を本当に任せていいのか少し不安に感じるんですが、大臣、いかが思いますか。

伊吹国務大臣 高井先生、これは、高松塚のことも含めて、発掘をしなければわからないんですね、そういうものがあるかどうかというのはわからないんです。発掘をして、大気に触れさせるといろいろな自然的な変化が起こります。だから、私は、今回の文化庁の失敗は、マニュアルどおりやらなかったということ、そして失敗したことを隠ぺいしたこと、そしてそれを情報公開していないこと、この三つの失敗なんですよ。三つが責められるべきことなんですよ。

 しかし、発掘をして、大気に触れさせるということによって、なるほどそういうものがあるということを今に生きる我々は把握できて、そしてそれは大変な国民的価値のあるものだということがわかったんだけれども、マニュアルどおりきちっとやってもカビができなかったかどうかは、これは非常に科学的にちょっと詰めないといけないですね。

 そして、解体をせずに置いておけばもっと悪くなったものを、解体をして隠ぺいしてしまうんじゃなくて、解体して保存するためにやっているわけですから、私は、先生のおっしゃっている文化庁の仕事のやり方については、先ほど申し上げた三つの点からいって、大変問題があったと思いますよ。しかし、自然現象も同時に作用しながら今のような状況をつくり出してしまったので、その中で、いかにして国民的資産を保存して後世に残していくかということについて最大限の知恵を絞りながらやっていくということが今求められているんだと思います。

高井委員 大臣、私も、発掘をして、きちんと保存をして、目にさらすことは何も悪いことではないというか、むしろそうするべきだと思っています。それをいけないと言っているのではありません。それに、やはり自然のものですから、マニュアルどおりにやったとしてもカビが生えることだってあろうと思います。

 ただ、ここでの問題は、まずはマニュアルどおりにやらなかったことに加えて、さっき大臣の御指摘の点三つ、さらに、修復中に傷をつけてしまったことをこっそり隠そうと、小手先の補修をしていること、こここそ問題であって、この点は本当に指導をきちんとしていただかなくてはならないというふうに思います。

 そして、文化財研究所というのは、さっき大臣がおっしゃったような、マニュアルどおりにしてもカビが生えてしまったなんということも多分あるかもしれないなどということも含めて、科学的なトータルでの検証をすることもこの機構でやるというふうに考えているんですが、その点はいかがでしょうか。

高塩政府参考人 現在の文化財研究所、また今後統合される国立文化財機構におきましては、現在から、高松塚古墳の壁画につきまして、その保存修復の重要な任を担っているわけでございまして、私どもといたしましては、文化財研究所と連携をいたしまして、壁画の調査研究を行うとともに、壁画の保存修復計画の策定、その他管理体制のあり方について連携協力して行うということを考えているところでございます。

高井委員 高松塚古墳のことだけに限らず、さまざまな、こういう発掘の仕方であったり科学的知見であったり、いろいろ研究するんですよね。そういう事業はきちんとやっておられると思っていいんですよね。御確認をお願いします。

高塩政府参考人 御指摘のとおりでございます。

高井委員 わかりました。

 ちょっと、本体の法案についてもう少し詳しくお聞きしたいんですけれども、もともと、行革によって独立行政法人の統合が決まりましたけれども、文化財の保存を目的とする博物館と、文化財の調査研究を目的とする文化財研究所では、その性格も活動も基本的に異なっているというふうに思います。

 そもそも、民俗博物館であったり、ほかにもいろいろあると思いますが、なぜこの二つが統合するということで挙がってきたのか、教えていただきたいと思います。

高塩政府参考人 国立博物館におきましては、国民の貴重な財産でございます文化財を収集、保管し、一般の供覧に資するということをもちまして、文化財の保存、活用を図るということをその目的としております。一方、文化財研究所につきましては、文化財の調査研究を行いますことによりまして文化財の保存、活用を図るということを目的といたしているところでございます。

 いずれの法人も国民の貴重な財産でございます文化財の保存、活用ということをその任にしているということで、この両法人の統合ということを考えているわけでございます。

高井委員 先ほどの高松塚古墳の失敗の件の話を聞きましても、国民の貴重な文化財を守るということに説得力が少し薄いような気がいたしまして、大変心配をしておるんですが、具体的に、この組織の統合によって、何か効果が期待できるというふうにお考えなのでしょうか。

高塩政府参考人 この統合後の法人におきましては、これまで両法人が実施してまいりました文化財の保存科学に関する調査研究及びその修復業務につきまして、統一的なマネジメントのもとで、それを体系的に実施することによりまして、文化財の保存修復科学及び修復支援のナショナルセンター的な機能を果たしていくことが期待されているわけでございまして、有形文化財の保存管理業務というものの格段の質が上がるということを期待いたしておるところでございます。

高井委員 格段の質が上がるということに私も期待したいと思うんですけれども、この統合による削減の効果は、予算だけでなく、やはり人の側面もあるだろうというふうに思います。この統合によって、この二つの組織の役員や職員の数、それから出向者の数などは削減される予定になっているのか、具体的に数字が上がっていれば教えていただきたいと思います。

高塩政府参考人 統合後の法人におきましては、その統合効果を最大限に発揮いたしまして、法人本部の体制につきましては、現在国立博物館は本部が東京にございますが、また、文化財研究所の本部は現在奈良にございますけれども、これを現在の国立博物館の本部、東京に集約するということを考えております。こうしたことによりまして、平成十九年度の一般管理費、これは物件費でございますけれども、その一〇%に相当する額を統合後五年間で削減するということを予定いたしております。また、役職員につきましては、両法人合わせまして、現在、理事、理事長が六名でございますけれども、これを二名削減いたしまして四名に、また、非常勤の監事でございますけれども、両法人合わせて四名を二名に削減するということにいたしております。

 なお、職員につきましては、このような制約のもとで、法人の長によりまして適切に定められるものでございまして、現在、両法人におきまして、統合後、共通の事務の一元化、さらには業務の効率化、民間委託の推進などに取り組むことを検討いたしておりまして、これらを踏まえまして、適切な数の職員というものが決定されてくるというふうに考えております。

高井委員 さっき次長がおっしゃったとおり、五年という目標が設定されて、人件費、事業費は五%、管理費は一五%の削減が求められているということでございますし、さらにその上に、一般管理費を一〇%削減するという目標が定められているということですので、大変これは、経営というか、厳しいと思います。

 この文化財と博物館などという収益を目的とするものではないところに対して、こういう目標を掲げるというのは本当に厳しいだろうと思いますし、さまざまにそうやって御努力をされる必要があるだろうと思うんですけれども、業務全般の見直しについてどのようになさっていくつもりなのか、もう少し詳しくお答えできるんでしたら、お願いいたします。

高塩政府参考人 業務の文化財保存修復科学及び修復支援のナショナルセンター的な機能を果たすということでございまして、現在、東京文化財研究所にございます保存部と修復部の修復関係の両部を統合いたしまして、いわゆる文化財の保存科学センターというものを設置する方向で、今、業務の向上を図るということを予定しているところでございます。

 また、これは東京文化財研究所にございます黒田清輝を記念した記念館がございますけれども、その記念館で現在週二回の公開を行っておる黒田清輝作品がございますけれども、その所管を東京国立博物館の方に所属を移すことにいたしまして、国立博物館の有します展示公開機能というものを使いまして、より広く一般への黒田作品の供覧に資したいということも考えているところでございます。

高井委員 東京に集約されるということでございますけれども、組織を構成する博物館は東京、奈良、京都、福岡、文化財研究所は東京と奈良というふうに点在をしておりますよね。この点在する組織を結びつけて、さらに統合の効果を生み出してやっていく。

 一つに集約をしていくと、やはり事務連絡や意思決定にかなり時間がかかることがあるのではないか。その点については心配ないということでございますか。

高塩政府参考人 今度、両法人の統合後、新しく法人本部というものを独立して現在の東京国立博物館の中に置きまして、その専任の体制を強化いたしまして、現在、東京、京都、奈良、九州にございます博物館、東京、奈良にございます文化財研究所の六博物館、研究所につきましてのまさに円滑な事務の運営に資そうということを予定しているところでございます。

高井委員 この文化財に関係する分野は大変競争原理が働きにくい分野でございますし、機能させてはならない分野でもあるのではないかと思うので、費用の削減をする中でも、行き過ぎた合理化の結果現場の方に支障が出るようなことがないように、科学的研究なり、そこの分野が怠っていったりすることがないように、ぜひ御努力をお願いしたいというふうに思います。

 この統合後の文化財政策全体における位置づけについて少しお伺いしますけれども、今回の統合は、行革の名前のもとに組織の数を減らそうということだろうと思いますけれども、ナショナルセンターになる、新しい組織が日本の文化財行政の中核になるというふうにさっき御答弁がございました。

 では、今回のこの二つの独立行政法人の統合自体、文化財政策全体の中でどういうポジションで位置づけられるのか、全く今までと変わらないということでいいのか、お願いをします。

高塩政府参考人 この新しく設置いたします国立文化財機構は、現在、独立行政法人国立博物館が担ってまいりました、博物館を設置、運営して文化財を収集、保管、供覧するという業務を行うとともに、現在の独立行政法人文化財研究所が担ってきた文化財に関する調査研究業務を行うなど、文化財に関する全般的な広い業務を行うということを予定いたしておるものでございます。

 この新法人は、我が国の文化財行政の実施部門を専門的に扱う唯一の独立行政法人として、貴重な国民的財産でございます文化財の保存、活用の中心的な役割を果たしていくものになるというふうに考えております。

高井委員 ごめんなさい、ちょっとよくわからなかったんですが、より重みが増すというか、ポジションとしてはナショナルセンターとしての機能がより重くなるということでよろしいんでしょうか。

高塩政府参考人 そのように考えております。

高井委員 それでは、これは将来的にはどうなっていくのか、お聞きをしたいと思います。

 これはむしろ大臣にお聞きした方がいいかもしれませんけれども、この独立行政法人改革というのは、もともと行政改革会議の中で、この最終報告で特殊法人の問題点として、経営責任の不明確性、それから、事業運営の非効率性及び不透明性、組織及び業務の自己増殖性、経営の自律性の欠如ということが指摘されて、それにより、この行政改革大綱を受けて、特殊法人、廃止または民営化される法人以外は、事業及び組織運営の実態を踏まえつつ、独法への移行を検討するということで、これに基づいてこういう形になったんだろうと思います。

 そして、独法そのものは、この通則法の中で、「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの」そして「一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、」設立される法人ということでございますよね、もう釈迦に説法でございますけれども。

 であるならば、今回のこの独立行政法人は、どっちのケースに当てはまるものなのかはわかりませんけれども、どっちかのケースに当てはまるということで独法になっているんだろうと思いますが、行く行くこれは独法のままでずっとやっていくのか。またさらに、この独法というのは要するに運営交付金の削減など、合理化努力がどんどんどんどん毎年要求されていくんだろうと思います。どんどんどんどん合理化していくことが、この国立博物館、文化財研究所の統合される組織において、それにそぐうのかどうか、私はちょっと心配をしておりまして、この先行き、独法そのもの自体、また、新しくできる国立文化財機構そのものの将来的なものはどうなっていくのか、御質問いたします。

伊吹国務大臣 先生がおっしゃったように、非常に市場経済に乗りにくい分野なんですよ、率直に言うと。しかし、例えば英国でいうと、大英博物館というのは結構収益を上げちゃっているんですね。大英博物館のスペースを使っていろいろな事業も行っておられます。今の文化財研究所は、これはもうほとんど収益は上がりません。ですから、私は、本来であれば、一番いいのは、やはりおのおのの仕事に従事しておられる方々が、国民の税金で仕事をしているんだから最小限の税金で仕事をするんだという効率意識を持って国立のまま置いておくのが一番いいんですよ、と私は思いますね。しかし残念ながら、国立で置いておくとどうしても親方日の丸的感覚があるから、民にはゆだねられないけれども、ある程度責任を持たせてやらせようというのが独法なんですね。

 ですから、私は、博物館については、今後のイベントだとか、いろいろなやり方によって収益が上がっていく努力の余地があると思います。しかし、それだけの努力をしましても、率直に言うと、この分野はむしろ市場経済に乗りにくい分野であるから、これをどう守ってあげるかということのために、そういう政治的な理念あるいは見識を持った大臣以下がいかに手腕を振るうかということにかかっているわけでして、私は不敏にしてどれだけ能力があるかわかりませんが、ここは非常に微妙な分野で、国民的な資産を預かり大切な役割を果たしていくということですから、必ずしも効率ともうけ仕事だけの方向に流されないように見て、そして足らざるところは国民の税金をやはりお願いしていくことがかなりの比率で必要な部分だと私は考えております。

高井委員 私もその点においてはとても大臣がおっしゃるとおりだというふうに賛同いたしますし、むしろ私どもは、独法自体すべてをゼロベースで見直す中で、民間として存続すべきものはもう民間に任せる、国としてどうしても必要なものはむしろ国営で、直轄でやるとはっきりしていく方がいいのではないかというふうに考えておりますけれども、その点、どうでしょうか。

伊吹国務大臣 これは先生おっしゃるとおりでいいと思います。

 しかし、現実はどういうふうに動くかといいますと、民でできるものは民、地方でできるものは地方、自由民主党の政権は中央主導型の、官主導の経済管理だといって、ずっと民主党に我々は批判されていたんですよ、率直に言えば。しかし、その後、小泉さんという人が出てきて、どちらかというと民主党のアイデアをとっちゃったんですよね。その後、そうすると、このごろ国会でずっと質問しておられるのは、その結果、格差が出てきた、地方が大変だ、中小企業が大変だ、労働が大変だ、官が入って格差を直せということをおっしゃっているわけですよ、今ね。

 ですから、私はやはり政治家も、知的エリートというものは時流に少し流されずに、この分野はどうなんだと。先生がまさにおっしゃったように、この分野はやはり民に任せるべきだ、しかし、民に任せるのがすべていいんじゃなくて、この分野は国がやるんだと、やはりこの分野は国に戻せということになると、民に任せるものまでも国に戻しては祖先返りになっちゃいますからね。逆に、民でやるべきものをいつまでも国の方へ抱え込んでもいけないし、逆に民でやれるものを国で抱え込むということの逆があってもいけないし、これはやはり与党、野党を通じて、政治家の見識によって処理していくべき分野だと私は思いますね。

高井委員 率直な御答弁をいただきましたけれども。まさに前段の部分は、小泉首相がおっしゃったことの部分、大部分は、我々が提案していた、もともと言っていた部分もございます。

 ただ、我々は時流に流されて言っているわけではなくて、大臣や自民党と民主党との一番の違いは、どこまでを国がやってどこまでを民に任せるかというところの切り分けの部分で、我々はもうちょっと、格差の下の方になっていった部分を余りにも政府が手を放し過ぎているのではないかということで、その切り分けをどこにするか、もうちょっとこっちに手厚くするべきじゃないか、セーフティーネット、最低限の保障としてはちゃんとやるべきじゃないかというところの切り分けの件で議論をしていると思っておりますので、単なる時流に流されて格差格差と喜んで言っているわけではございませんので、大臣も御承知の上だと思いますけれども、改めて申し上げたいというふうに思います。

 そして、最後の御質問になるかと思いますけれども、これは文化庁次長の方にお聞きしたいんですが、新しい組織になってから、名称として博物館という名前がなくなってしまいますよね。国立文化財機構という名前で、これを英訳しますと、ナショナル・インスティテュート・フォー・カルチュラル・プロパティーズか、もしくはナショナル・カルチュラル・プロパティーズ・インスティテュートということでしたか、どちらかになるというふうに、検討されているということだったのでございますが、博物館、ミュージアムという言葉がなくなってしまう。これは例えばこの表記を外国から見て、これは博物館の機能をするところではないのではないかと思われてしまうという感じを懸念しておりまして、この点、言葉がなくなってしまうのは少し残念ですが、どのような経緯で外国語の名称がこういうふうになったのか。また、日本の文化財修復技術は海外の高い評価を受けていると思うんですけれども、国際協力分野においてもやはりこの新しい組織がどういうふうな活動をしていくのかもあわせてお願いしたいと思います。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 この新しい法人の名称につきましては、その機能、目的を的確にあらわしたものにすると同時に、独立行政法人の名称としてふさわしく、端的なものとするという必要があります。

 先ほども申し上げましたけれども、この両法人とも貴重な国民的な財産でございます文化財の保存、活用を図るというのを目的といたしております。そうしたことから、両法人に共通いたしますキーワードでございます文化財という文言を用いまして、端的に国立文化財機構というふうにしたいというふうに考えているところでございます。

 なお、先生御指摘ございました、さまざまな国際協力や館の活動というのがございます。それらは、この国立文化財機構に置かれます、例えば博物館でございますと、東京国立博物館につきましては従来どおり東京国立博物館、また、文化財研究所につきましては東京文化財研究所という名前を従来どおり館の名称として使いまして、国際協力も行っていくということで、従来行ってまいりました業務それから機能につきましては何ら変わるものではないというふうに考えているところでございます。

高井委員 わかりました。海外の国々との連携からしても、誤解のないようなさまざまな努力というか説明も求められると思いますし、今後もまた頑張っていただきたいというふうには感じております。

 さっき大英博物館のお話が大臣からもございましたけれども、私も外国に行って驚くのは、博物館、映画館にしても、すごく安いですよね。日本は物価が高いということはもともとあったんだろうと思うんですが、ただ比べてもやはり安い。そして多くの人がしょっちゅう出入りしている。子供もよく入っているし、規模の大きさなり値段の安さに驚かされることがしょっちゅうございます。

 この国立博物館も日々努力されて、大型展の開催とか常設展の充実など努力をして、平成十八年度でしたか、入館者数と自己収入、かなり拡大されたということでございました。十七年かな。十六年か十七年か。そういうふうにお聞きしておりますが、逆に言うと、そうやって努力すればするほどその実績が逆に反映されて、目標額がさらに上げられ交付金が減額され運営交付金が減るということになって、それが目標でございますから、運営交付金を減らしていく。ある意味で矛盾するように、努力すればするほど、より苦しくなるみたいな感じの部分があるのではないかと思います。

 この点からも、やはり国がやるべきなんじゃないかという気持ちを持っているものですから、最後にその点への懸念だけ申し上げて、大臣から一言、何かあればお願いをいたします。

伊吹国務大臣 そうならないように、責任者がよく見るというところに責任者の見識と手腕が問われるんじゃないでしょうか。そして、博物館で上がった収益は、またできるだけ新しい展示品の購入等に充てる、研究の部分は収益性は伴わないんですから、博物館の方で何か利用料収入が上がったからといってその部分を減らすなんということをやらないというように、やはり見ていくというのが私の役割だと思います。

高井委員 ありがとうございました。

 もう文化庁も二度とこの高松塚古墳のようなことにならないように、隠ぺい体質だと言われないように、これからも御努力をお願いしたいと思いますし、大臣にもぜひ厳しい御指導をお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

桝屋委員長 次に、松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 先ほど高井委員の質疑の中で、高松塚の古墳の壁画の劣化とそれから毀損について、文化庁の事務方との間では、その責任の問題、やりとりがあったんですが、大臣御自身は、この壁画の毀損についてだれに責任があったと考えていらっしゃるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 人間は、もう最大限の注意を払っても、人のやることですから失敗は起こります。万一失敗が起これば、それを率直に認めて、そしておわびをするという態度が必要でしょうし、特に国民的な資産というか国宝なんですから。ですから、毀損をしたということが、マニュアルどおりなされない結果として毀損をしたとかいうことであれば、それはマニュアルを守らなかったという責任はまず出てきますね。しかし、すべて注意深くやったとしても、私でもよく失敗はしますし、先生でも、失礼だけれども失敗はされるでしょう。

 しかし、結果責任としてだれに責任があるかといえば、やはり最後の責任は、その行政全体を預かっている大臣にあるということじゃないでしょうか。だから、そういうことにならないように、常に大臣は文化庁長官を督励し、文化庁長官は次長以下の部下を督励し、部下はまた、おのおのの文化財の補修に当たる人たちに緊張感を持って仕事に当たらせるという組織でありたいと私は思いますね。

 私が当時大臣であったらというのは余り適当な言葉ではないけれども、失敗したことは、やはり率直にまずその時点でおわびをするという態度がないとだめなんじゃないかと思います。

松本(大)委員 非常に潔い御答弁が返ってまいりました。最後の責任はだれにあるかと言われればそれは大臣なんだ、過ちがあれば、何か失敗をしたらそれは認めるべきだという御答弁をいただいたわけですけれども、実は、この調査報告書が昨年出されているんですが、残念なことに、これは通常国会の閉会日の翌日なんですね。絶妙のタイミングと言わざるを得ないわけなんですが、責任の問題をもし考えていらっしゃったのであれば、当時、大臣違いますけれども、ぜひ開会中に出していただいて、立法府でしっかりと議論ができるタイミングにしていただきたかったなというふうに思います。

 この調査報告書を出されたときに、一応、けじめとして、処分と給与の自主返納ということが行われていまして、それがお手元の資料なんですけれども、資料一として、自主返納された俸給の総額をおつけしております。ちなみにこれは全部文化庁からいただいた資料です。

 自主返納額の総額は七十三万八千九百円です。一方で、しりぬぐいといいますか、この壁画の修復にどのぐらいの予算がかけられていると大臣はお考えですか。

伊吹国務大臣 先ほど高井先生にお答えした中で申し上げておりましたが、予算の具体的な数字については、これはやはり担当者から答えさせていただきたいと思います。

松本(大)委員 オーダーとしてどのぐらいなのかという認識を最高責任者として御存じなのかという御趣旨だったわけなんですが、これは資料二におつけしてありまして、これも文化庁からいただいた資料です。

 十八年度予算で総額が七億四百万円、十九年度予定額は二億五千六百万円、二十年から二十八年度、完全修復までに十年かかるということなので、二十年から二十八年度の見込みは六億七千万。ただし、これは、この表で言うところの上から二行目、壁画の保存修復という部分の十九年度予定額六千四百万円の隣に位置する数字でありまして、少なくとも、これだけを足し合わせても総額は十六億三千万円ということになります。もちろん国民の税金であります。

 比べていただきたいのは先ほどの自主返納額なんですが、一方で七十三万八千九百円の給与、俸給が自主返納されて、加害者側は。被害者の国民の財産からは十六億三千万円の税金が負担となってはね返ってくる。大臣、これはおかしくないですか。

伊吹国務大臣 松本先生、私は、予算がオーダーでどれぐらいかかっているかというのは知っておったんですよ。知っておったんだけれども、大臣がそういうことを答えるということは国会の場の大臣の役割じゃないと思ったから答えなかった。

 今先生がおっしゃったように、金額から比べると、もうそれはとてつもないことで、この程度の返納額でいいのかということはあります。

 例えば刑法上の罰金でも、その与えた被害から比べると、極めて罰金の金額というのは少ないですよ。

 私は、むしろここで問われるべきことは、マニュアルを守らずに作業をした結果、結果、損傷をやったのなら、そこにまず責任が出る。それから、損傷をしたのなら、全幅の注意を払って作業をしたけれども国民の財産を傷つけちゃったら、その時点でそれを公表しておわびをすれば、それで私は、済むことという表現はいけませんが、それで国民は納得してくださると思いますよ。人間は神様じゃないんだから。だけれども、そのときに隠ぺいをしちゃったということにもう最大の私は責任があるんだと思いますね。

 ですから、金額を比べるのではなくて、私は、やはり自主返納するという気持ちを前に出して、そして国民の批判を浴びる姿勢を示したということを評価してあげるべきだと思いますし、単にお金がどうだとかこうだとかということだけの問題ではないと思います。ただ、大きな損害を与えてしまって大変な国民の税金を浪費したということについて、どれだけ、この給与の返納額以外に、心の痛みと将来の仕事に対する真摯さを取り戻しているかということの方が大切なことだと思います。

松本(大)委員 問題は、隠ぺいはいつから続いていたのかということだと私は思うんですね。無責任な管理体制を続けて、約七十四万円の負担で、十六億の予算がまんまとついてしまった。これでは、言ってみれば火災保険金詐取事件みたいなものでございまして、一体全体、予見可能性というのはいつからあったんだ、隠ぺいはいつから行われていたんだということだと思うんです。

 私も実は、この報告書が提出されて、その後、具体的には昨年九月ですけれども、現地に行ったんですね。高松塚古墳を見に行ってきたんですけれども、その視察と、それから今回の質疑に当たって調べを進めるまでは、二〇〇一年のカビ発生と翌年の損壊事故までは良好な状態が保たれていたんだろうなというふうに思っておりました。

 大臣は、その点についていかがですか。壁画の保存状態について、どういう御認識でいらっしゃいましたか。

伊吹国務大臣 これも先ほど高井先生に御答弁したんですが、まず、発掘をしない限りは世に出ないんですよ。こういうものがあったかどうかということ自体がわからないんですよ。発掘をして、大気に触れさせることによって菌の流通というか、今まで菌に触れていないところに自然界にある菌が入ってくるわけですね。だから、そういうときに、湿度の状態だとか菌の発生だとかというのは、多分私はわからなかったんだと思いますよ。

 先生がおっしゃったように、破損をしたということは、これは人為的なものですね、明らかに人為的なもの。失敗であったのか不注意であったのかは別として。

 カビが生えてきたというのは、どの時点でカビの発生を認識していたのか。発掘をした結果、自然にカビというのは出てくるんですね。そのときに、言うならば、カビが生えてきたからこれをどうしようかなということを考える感性というのかな、文化財の保存をしている立場からすると、えらいことになり始めているなということを考える力があるかどうかということに私はかかっているんだと思うんです。

 だから、先生がお調べになったように、保存状態が劣化したのは、発掘をした時点から劣化は始まっていると私は認識をしているんですけれども。

松本(大)委員 大臣がその御認識をお持ちになられるに至ったのはいつの時点だったか、ちょっと聞いてみたいところでありますけれども、つまり、昔から気づいていらっしゃったんだったらそれは御炯眼だなというふうに思いますが、だとすれば、何でそのとき緊急事態宣言を出されて即座に行動に移っていただけなかったのか、大変残念であります。

 実は、率直に文化庁に尋ねたんです、いつから劣化に気づいていましたかと。資料三として、回答が返ってきました。これは下から二行目ですけれども、「壁画のうち白虎を描いた線の薄れについては、昭和五十六年一月の壁画の点検・管理の際に認識した。」と書いてあるんですね。えっ、こんな早くから劣化を認識していたんですか、全然聞いていませんよというのが私の率直な感想でしたし、恐らくは多くの国民もそう思っていらっしゃるんじゃないかと思うんですね。

 実際、昭和六十二年に「国宝 高松塚古墳壁画」というものが文化庁から発刊されていまして、ここに白虎の写真があるんですよ。それと、発見当時にやはり「高松塚古墳壁画」というのがありまして、これにもやはり同じように写真があるんですけれども、委員長、これはちょっと印刷が不適切だと思ったので、実物を実際に大臣に見ていただきたいんですが、いいですか。――これをごらんいただくと、発見当時、今お手元の二枚の紙と、昭和六十二年に発刊されている、つまり発見十五周年で発刊されている「保存と修理」という本に掲載された白虎の写真というのは明らかに黒ずんでいるし、カビっぽい黒ずみがありますね、それから線が薄れています。明らかに劣化が認められる。

 つまり、文化庁が昭和五十六年一月、つまり六十二年の刊行物よりもさらに六年前には既に気づいていたんだというのもなるほどなとうなずけるということであります。つまり、発見から十年前後、具体的にはその場合は十五年ですけれども、その段階では既に劣化は始まっていたことだというふうにそれは明らかに示していると思うんですが、大臣はいかがお考えですか。

伊吹国務大臣 今見せていただいて、そのとおりでしょうね。

 私は、発掘をしたときに、これが発見されたという大きな記事になったときに、いろいろな人と話をしたのは、これはもう発掘をして大気に触れさせた途端にだめになるなという話は、私は炯眼でも何でもない、これはごく常識的なことなんですよ。ミケーネの洞窟で、何か壁画があって、そしてそれを発見して、多くの人がそれを見に来ることになった途端に、その壁画というか、かいてあるものはだんだん薄れてもはやなくなっちゃったというような話を私は聞いていましたのでね。

 しかし、先生、これは人間の業みたいなものなんですよ。つまり、そういうものがある、そして何とかそれを目にしたい。これを劣化させないんなら、発見をせずに埋めておきゃいいわけですよ。だけれども、やはり古代の研究もあるし人間の探求心もあるから、これをやはり、人目に触れる、そして、こうして今見せていただいたように、多くの人に見せるように印刷して出したい。

 だから、劣化をするんだという前提でやはり物事を処理していかなければいけないわけで、傷をつけるということと劣化をするということと、そして、今ようやく気がついて、解体をしたのを、そのままうやむやにしてしまうというような御質問がありましたが、私はむしろ、解体をして保存をすることによって、そのときの原状はなくなりますけれども、この白虎の姿はむしろ保存しやすい状態になる。だから、そのときにそういう決断ができたかどうか。そのときにそういう決断をすると、多分そのときの御批判は、大切な原状をはぎ取って、原状を崩しちゃったという今度は御批判になるでしょう。

 だから、いろいろなことの試行錯誤の上に、結果的に大変残念な現状になっているのが今の、もちろん、その中には、先ほど来御批判を受けているような担当者の隠ぺい体質とか感性のなさだとかいろいろなものがありますよ。ありますけれども、試行錯誤の結果、今に至っているということだと私は思っております。

松本(大)委員 今、大臣は、多くの人に見せるように印刷したというふうにおっしゃったんですが、実は、その「保存と修理」は実際多くの人に触れているのかと思って、文化庁に確認をしたら、わからないと。これは、ある関係者の発言では、あるところで、三百部というようなお話もあるんですね。

 国立国会図書館にお尋ねしますが、この「保存と修理」については所蔵されているんでしょうか。文化庁から納品はあったんでしょうか。

内海国立国会図書館司書 先生御指摘の資料について、文部省支部図書館からの納本送付書というのを一九八七年、八八年、念のため八六年について調査をしました。結果、送付されておりませんでしたので、きのうの夕方、文化庁に対して納本督促をいたしました。

松本(大)委員 大臣、お聞きになりましたか。こういうことなんですよ。

 だから、感性って、何か、いじめと未履修の話でもこれはさんざん出ましたけれども、全く同じなんですね。感性をはぐくむ教育というのは、実は文部科学省内でこそ最も大事なんじゃないかと思わざるを得ないですね。

 この問題について、出版はしたけれども、国立国会図書館にすら納品しない。つまり、研究者の人すら目にする機会はほとんどなかったわけですね、奪われていたわけですよね。

 しかも、では、対外的に、劣化しているという事実を、認識は昭和五十六年一月にあると答弁しておきながら、やってきたのかといえば、全くやっていない。

 お手元の資料四ページですけれども、資料四の一、二十五周年のときに、担当の調査官が「これまでのところは異常はない。」というふうに記者団に答えている。めくっていただいて、これが三十周年のときですけれども、同じ調査官が「自分の見た限り、目立った変化はない」とお答えになられているんですよ。(伊吹国務大臣「どれ」と呼ぶ)

 資料の四の一ですね、四の一。これが二十五周年のときの文化庁の担当調査官のコメントなんですけれども、傍線を引いているところ、下の段ですね。「これまでのところは異常はない。」とお答えになられている。めくっていただくと、今度は資料四の二というのが出てきます。上から五段目ですね。同じく、同じ担当者、調査官のコメントとして「自分の見た限り、目立った変化はない」と。周囲は、発見時よりも全体に色がくすんだんじゃないのというふうに突っ込んでいるんですが、いやいや、自分の見た限り、目立った変化はないんです、こう否定しているわけです。

 つまり、さっき大臣がごらんになられて一目瞭然、もう既に昭和六十二年の段階で明らかに黒ずんでいるし退色もしていたのに、五十六年から文化庁自身も気づいていたと文書で答弁をしているにもかかわらず、当時は、実際には、二十五周年のときも三十周年のときも、問題ありません、異常ありませんと答えているわけですね。やはり、こういう体質、隠ぺい体質がずっと連綿と続いてきたことが結果として今日の解体というリスクを余儀なくされている。とんでもない話だと思います。

 直近の、これは二〇〇四年だったと思いますが、「国宝 高松塚古墳壁画」というものに、序言、つまり巻頭言として文化庁長官がコメントを寄せています。「幸い、三十年を経ても壁画は大きな損傷あるいは褪色もなく保存されております」というふうにコメントされていますね。

 五十六年一月には退色を認識しておきながら、もう線が薄れていると認識しておきながら、しかも、今大臣がごらんになられてもわかるように、だれが見ても明らかなのに、ずっと否定をし続けてきた。これは、結果として、国民に対して長年にわたってうそをつき続けてきたということにはなりませんか。大臣、いかがですか。

伊吹国務大臣 長年にわたってうそをついたかどうかはその人の現状に対する認識だと思いますが、私が見ても色はかなり変わっているわけですから、どういう対応をするかということは、やはりそのときそのときもう少し考えるべきであるんじゃないかなという気がしますね、私が見ると。

 感性ということをまた言うとしかられるんだけれども、私は大臣になりましてから、随分怖い、うるさい大臣だなと文科省は思っていると思いますが、なすべきこと、考えるべきことについては、日々私は注意をしているつもりです。

松本(大)委員 これは感性の問題では済まない問題も多数含まれていまして、先ほど紹介した報告書の中には、二〇〇二年に新聞社からの求めに応じて写真を提供しているんですが、そのときの写真の日付を二年間改ざんしているんですよ。そういう内容がここにちゃんと出ているんですね。やはりもうこれは感性では済まされない。過失というよりも限りなく故意に近い。とんでもない話だというふうに思います。

 その結果、先ほども御紹介したような十六億もの負担を国民が余儀なくされている。これはやはり感性の問題では済まされないということをまず御認識いただきたいし、だからこそ、こんな不祥事はめったにあっちゃいけないんだから、文化庁の長官がしっかりとこの場に出てきて、立法府でもって御自身が、私は謝罪をなさるなり御説明をなさるなりされるべきだと思いました。要求もしました。でも、来ていただけない。私は、とんでもない話だと思いますね。感性は文化庁長官にもやはりないんじゃないか、そう思わざるを得ません。

 呼びたかったのは、文化庁長官だけではありません。大臣、さっき御紹介した新聞記事ですけれども、二十五周年のときに、担当の調査官が「これまでのところは異常はない。」と答えていますね。このときのこの人の上司、これは対外的に記者に言うわけですから、当然上司も知っているわけですよ。このときの上司、美術、当時は工芸課、美術工芸課長はだれだったと思いますか。

伊吹国務大臣 課長の人事を国会で大臣が説明をするというのは、ちょっと大臣に本来要求されている答弁対象ではないと思いますから、必要があれば参考人から答弁させますが。

松本(大)委員 大臣が御存じないからといって、別にそこをぐじぐじ詰めようという気ではないんです。御存じですかというぐらいなんですが。

 今回統合される独法の文化財研究所の理事長なんですよ。東京文化財研究所の所長、鈴木さんです。この人も呼びましたけれども、来ていただけない。

 先ほどの資料の四の二、三十周年のときに、やはり同じ主任調査官が「自分の見た限り、目立った変化はない」とおっしゃっているんですが、このときにこの人の上司だった、美術、当時は学芸課と名前を変えていますが、この美術学芸課長はではどなただったと思いますか。クイズです。

伊吹国務大臣 いや、後ろからこの人だということを何か担当の課長が言っておりますが、それは担当の課長なり次長が答えればいいことだと思います。

松本(大)委員 同じく、今回統合されることになる独法の国立博物館の理事で、現在は奈良国立博物館長、湯山さんなんですよ。つまり、今回統合される二法人の、一方は理事長だし、一方は理事なんですね。このお二方は、当然、本法案で統合されることになる新法人でも理事になる可能性は高いわけですよね。現在、理事長であり理事なわけだから、横滑りする可能性は高いわけですよね。しかも、文化財の保存を担当するわけですから、今後も高松塚にかかわる可能性があるわけですね。

 それだけではなくて、今お話しした鈴木美術工芸課長と湯山美術学芸課長のさらに前任者、この方は三輪さんとおっしゃいまして、何とこの人も独法の国立博物館の理事なんですよ。九州国立博物館の館長さんです。この人についても出席を要請しましたけれども、お断りということでありました。ちなみに、じゃ、国立博物館の方の理事長である野崎さんはどうなのかと聞きましたら、本日は大事な仕事で来られないと。

 つまり、文化庁長官は来ないし、統合対象となっている二法人の理事長は来ないし、そして、国立博物館の理事であり、かつ、お二方とも文化庁で美術工芸課長、美術学芸課長を務められ、この高松塚の壁画の保存とか修理にも携わってこられた湯山さんと三輪さんも来られない。五人ですよ、五人。五人が五人とも当事者なのに全く来られない。しかも、五人のうち四人は、なぜかそろいもそろって出張中なんですね。この五人全員、かつて文科省に在籍したか今在籍している方々です。

 当事者が全員いない中で、いない中で大臣だけこうやって答弁をされているというのはやはりおかしいと思われませんか。

伊吹国務大臣 今名前を挙げられた人たちは、かつて文部科学省に在職をしてその仕事に従事をしておりましたから、必要な場合にはやはり私は事情を説明する義務があると思いますね、先生おっしゃったように。ですから、これは、先ほど高井先生にお答えしたように、国会というのは国会法と議事規則と慣例によって動いているわけですから、それを前提にして、各党間の理事の協議によって、必要な出席を求められれば、私は、今先生のお話を聞いていて、当然出てきて説明をするべきだと思いますね。

 ただ、慣例、議事規則、国会法の手続と違うことで来いというのは、やはり、国会、各党の理事の協議がまとまらないんじゃないでしょうか。私は、行政の立場からして院の運営について口を出すべき立場にはありませんけれども、国会議員としてかつて委員会あるいは本会議の運営に携わっていた者として、先生のお気持ちはよく理解した上で、そんな印象を持っております。

松本(大)委員 事前に時間をとれということなのかもしれませんが、いかんせん、趣旨説明がおとといの夕方六時十分ですよ。質疑は金曜日、二日後の午前中から始まっているわけですね。呼びたくても呼べないじゃないですか、これでは。であるならば、五人が五人とも都合がつかない時期に、本来、質疑と採決という、こんなタイミングでやるべきではないということですよ。これは、日程設定の方がそもそもおかしいと私は思います。

 資料の五をごらんいただきたいんですが、美術工芸課長と主任の文化財調査官、七二年の発見以来、どんな人が担当してきたのかという一覧表であります。これをごらんいただくと、美術工芸課長も主任調査官も、今回の統合対象となっている二法人の間を天下りしたり出たり入ったりという、出入りをしているわけなんですね。もう事実上一体化しているわけです。

 先ほど来お話をしているとおり、昭和五十六年の一月の段階で既に劣化に気づいていたし、写真でもあからさまにわかる。ところが、その写真は国立国会図書館にすら納められていない。そして、あろうことか、二十五周年のときも三十周年のときも異常なし、問題なしと言ってきて、直近の写真集においては、文化庁長官みずからの名前で問題ないとしてしまっているわけですね。

 連綿と隠ぺいを繰り返してきた現場の方々、責任者の方々が、今回統合対象の二法人にことごとく、一人例外がいるのかな、ことごとく天下りをされている。さすがに、この人たち全員の責任を問いたいところなんですが、中にはこの独法からもう退いちゃっている人もいますので、せめて、この統合対象の二法人に今現在在籍をしておられる、具体的には三輪さん、鈴木さん、湯山さん、もとの美術工芸課長ですが、この方々は今回の統合対象の二法人のそれぞれ理事であり理事長なわけですから、やはりこの方々については統合のタイミングで退いていただく。そして、退職金はもちろん払わないか、払っても自主返納させる。そうでなければ、十六億もの国民負担について到底理解が得られないというふうに考えますが、大臣、いかがですか。

桝屋委員長 時間が来ておりますから、簡略にお答えをお願いします。

伊吹国務大臣 どの程度この問題について瑕疵があったのか、その瑕疵の程度や、あるいは本人のそのときの責任の範囲や、それから、今先生が御注意になったようなことも念頭に置いて考えさせていただきたいと思います。

松本(大)委員 ぜひ、気づいたら解体修理が解体処分になっていたなんてことにならないように、厳正な処分をお願いしたいと思います。

 終わります。

桝屋委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 国立博物館法一部改正案について質問をさせていただきます。

 まず、文化財行政において、博物館また文化財研究所、それぞれ両法人がどういう使命を担っているのか、簡潔にちょっと述べていただきたいと思います。

高塩政府参考人 独立行政法人国立博物館につきましては、我が国の文化財保護政策の一翼を担う機関といたしまして、国民の貴重な財産でございます多数の国宝、重要文化財を初めとする文化財を収集、保存、展示いたしまして、次代に継承することを目的として設置されております。この目的を果たすために、有形文化財の収集、保管、公衆への供覧、またこれらに関する調査研究、教育普及等の活動を行っております。

 また、独立行政法人文化財研究所につきましては、我が国における文化財研究の中核的研究機関といたしまして、貴重な文化財を未来の人々に適切に継承していくために必要な知識技術の基盤を形成することを目的として設立をされておりまして、この目的を果たすために、文化財に関する調査研究、資料の作成、公表、文化財の保存修復に関する国際協力などを行っておるところでございます。

石井(郁)委員 二〇〇一年からこの両法人ともが独立行政法人になったわけでございますけれども、そこで、ずっとお聞きをしたいとは思うんですが、時間の関係上、二〇〇四年から二〇〇六年、この年度の運営費交付金と自己収入の予算額、これはどうなっているでしょうか。

高塩政府参考人 国立博物館の運営費交付金予算につきましては、平成十六年度が五十九億五千六百万円、平成十七年度、二〇〇五年度が六十六億二千二百万円、平成十八年度、二〇〇六年度が六十一億三百万円ということでございます。

 今申し上げました運営費交付金の予算の主な変動要因といたしましては、平成十七年十月十六日に開館いたしました九州国立博物館の運営経費が大きく影響をいたしております。

 また、国立博物館の自己収入予算につきましては、平成十六年度が五億八千万円、十七年度が六億八千百万円、十八年度が十億四千五百万円となっております。この十八年度に十億円になっておりますのも、九州国立博物館の開館に伴うものでございます。

 また、文化財研究所の運営費交付金につきましては、平成十六年度、三十二億千六百万円、平成十七年度、三十億四千六百万円、平成十八年度、二十九億八千五百万円でございます。

 なお、文化財研究所の自己収入予算につきましては、平成十六、十七年度とも二千百万円、十八年度が四千二百万円ということでございます。

 この自己収入予算につきましては、第二期の中期計画の策定に当たりまして、平成十三年度から十六年度までの実績を踏まえまして、十七年度に見直しを行ったという経緯がございます。

石井(郁)委員 今お聞きしますと、両法人とも二〇〇六年度に運営費交付金が減っている、そして自己収入予算額がふえているという結果になっているんですね。

 私は、この数字をいただきまして、そしてまた実際に各博物館でどういう事態が起きているかということについて一つの例を申し上げたいと思うんですけれども、国立博物館では、平常展の観覧料の値上げというのが起きているんですよ。

 国立博物館は観覧料改定のお知らせというのを発表しておりまして、それにこのようにありました。平成十八年度の自己収入目標額が約十・四億円となりました、平成十七年度の約六・八億円に対して大幅に高く設定されることになりましたというんですね。省略がありまして、各種事業費の削減とともに光熱費などの管理費の削減、また省略して、多角的な事業展開による収入確保に努めてまいりますと。

 だから、いろいろ事業費は削減される、しかしこれからも努めていく、しかし自己収入目標額は上げざるを得なかったということを書いているわけですが、その結果、有名な京都と奈良の博物館、そこでは、高校、大学生の個人で百三十円から二百五十円の、二倍という入場料になっているんです。また、高校、大学生の団体、大臣も京都でございますけれども、大変、京都、奈良、修学旅行生が行きますけれども、団体の入場料七十円から二百円と三倍近い値上げでございます。また、一般料金でも個人の場合は四百二十円から五百円、一般の団体では二百十円から四百円という値上げなんですね。

 余りにも額の大幅な値上げに驚くわけですけれども、この博物館の関係者は、今のところ入館者数にはそう影響していない、増減はないというふうに話しているようでございますけれども、本当にこれは大丈夫なのかな、子供たちあるいは一般の人たちの足が遠のいてしまうのではないかというふうに思いますが、このような値上げをしなければやっていけないということなんでしょうか。こういう事態については、文化庁、どのように認識していらっしゃるんでしょうか。

高塩政府参考人 国立博物館の入場料金につきましては、設置者でございます独立行政法人が自主的に決定するということになっておりまして、今御指摘のございました観覧料の値上げにつきましては、平常展を一層充実させるために行った措置ということを法人からは聞いているものでございます。

 私どもといたしましては、入場料金につきましては、なるべく低廉な料金で文化財の鑑賞の機会を多く国民に与えるという法人本来の使命も踏まえまして、この値上げに際しまして、法人からは、さまざまな割引等の他の代替措置、また入館者サービスの向上もあわせて実施したというふうに伺っているところでございます。

 値上げにつきましては、先生から御指摘いただきましたように、第二次中期計画期間におきます自己収入予算が第一期に比べまして高く設定されたということが背景にあるということを承知いたしております。

石井(郁)委員 大臣、いかがでしょうか。結局、自己収入の目標額を高く設定する。なぜ高く設定しなきゃいけないのかということもあると思いますけれども、高校生や大学生の団体、七十円が一気に二百円と、三倍も引き上げなければいけないという、余りにも異常だとは思いませんか。

 だから、独立行政法人にして、こういう形で自己収入の増を結局国民に押しつけてくるということになっているという事態について、ちょっと大臣の御感想を伺いたいと思います。

伊吹国務大臣 今の子供のお金の使い方から見て二百円が高いか低いかというのはいろいろ議論があると思います。

 しかし、先ほど高井先生の御質問にも私はお答えをしたように、交付金、つまりこれも国民の税金なんですけれども、交付金が減らされるから入場料単価を上げてそれを賄うんだというようなことが起こるということは、少なくともこの分野では余り望ましいことではないんですね。特に、小さな子供たちが過去の歴史的な資産だとか何かに触れるということはとてもいいことであるし、教育上も大切なことですから。

 ですから、先ほど参考人が申しましたように、入場料金そのものは独立行政法人の判断にゆだねられていますが、私のやるべきことは、入場料収入がどんどん上がったら交付金を減らすとか、交付金が減らされるから入場料収入でそれを補てんするとかいうことが起こらないように、無駄を省いて、そして交付金をできるだけ確保してあげる、これが私の役割だと思っております。

石井(郁)委員 二〇〇五年十月に、文化庁は、独立行政法人に関する有識者会議ヒアリング関係資料を作成しております。それを見ますと、国立博物館と文化財研究所の統合による予想されるデメリットということで、五点ほど挙げているんですよ。その一つの中に、「経営効率や自己収入の多寡が法人全体の評価に反映される中では、自己収入があり、入場者数などの成果が見えやすい博物館業務への資源の重点化が図られるおそれ」があるというふうに指摘をしています。私は、今まさにそのおそれがこのような形で、観覧料の引き上げという形で出ているというふうに思うわけです。

 実際、奈良の博物館と文化財研究所ではこのようなことが起きたというふうにお聞きしました。共同で企画展が行われた、その企画の展示物の搬入、陳列、入場者に渡すパンフレットの原稿まで、そのほとんどを文化財研究所の担当職員らが一手に引き受けなければならなかった、だからその間はもう研究どころではなかったというわけですね。いろいろ協力し合うことはあるかもしれませんけれども、先ほど冒頭伺ったように、やはり文化財保護の調査や研究、そういうこと、本来の業務がなおざりにされていくということで、博物館業務、自己収入の方に重点化されていくということになっているような事態ではないのか。

 だから、こういう事態、まさにおそれを指摘されたように、博物館業務が重点化されるようなことにならないようなやはり歯どめということが必要ではないのかというふうに思いますが、その点では、大臣、いかがでしょう。

伊吹国務大臣 今先生の御指摘のようなことにならないように努力をするというのが私の役割だと思います。

石井(郁)委員 そもそも、両法人の共通部分というのは実は少ないんだということもこの当時から言われておりました。これは文化庁の資料でも出ておりました。文化財研究所の研究者や職員の方は、やはり統合によって、博物館がつくってきたお金を文化財研究所が使うという構図になってしまう、ノルマが厳しくなる中で経費削減を迫られるとしたら文化財研究所の研究にはね返る、何のための効率化なのかという話もございました。

 私は、今大臣の御答弁がありましたけれども、もう一点、やはり本来の、この二つの法人それぞれの使命を果たさせることが大事でありまして、そういう使命を果たすためにも、運営費交付金の削減や自己収入ノルマの設定というようなことを本当に行うべきではないというふうに思いますが、この点での大臣の再度の御決意をちょっと伺いたいと思います。

伊吹国務大臣 先ほど来、高井先生にもずっとお答えして、今先生の御質問も同じ趣旨で流れていると思いますが、やはり文化財研究所も博物館の職員もコスト意識を持ってやってもらう、これは本来、国立であっても当然のことなんですよね。その意識をまずたたき込む。そして、収益を上げるために、先生がおっしゃったように、入場料の単価を上げるだけじゃなくて、いろいろなアイデアを出し、イベントをやる。

 それで収入が上がったときに、収入が上がったから交付金が減るなどということにはさせてはならない、その役割を私が果たさねばならないということだと思います。

石井(郁)委員 残りの時間で、私、もう一点、先ほど来も議論になっておりますけれども、装飾古墳の保護について伺いたいと思います。

 高松塚古墳の石室の壁画の問題が今議論になっております。劣化が非常に厳しい、激しい。国宝にもなっている壁画が消失の危機にさらされているという問題でございます。同じ奈良県では、国指定の特別史跡キトラ古墳もあるんですね。ここも壁画の劣化が非常に激しいということで、壁画をはぎ取って保存することにもなりました。また、石室にまだ残っている壁画の上にカビのようなものが生えているということもわかっております。

 そこで、こうして国指定の装飾古墳が国の不手際で消失の危機に陥ったという問題は、私はやはり大失態だというふうに考えておりますが、このような装飾古墳の壁画の危機というのは高松塚古墳やキトラ古墳だけの問題ではないんです。

 国指定の史跡になっている装飾古墳、特に壁画系の装飾古墳、これは文化庁から資料をいただいたんですけれども、全国で四十二基ございます。それで覆い屋を設けたり、石室入り口に扉を設置したりして保存措置をとっているということでございます。そこで、聞くんですけれども、今申し上げたような文化庁のとっている措置が、壁画が消失しないような完全な保護措置となっているのかどうか。

 そのことと、壁画そのものがどういう状況にあるのかというのがこの資料ではわからないわけです。こういう四十二基の一覧表はいただきました。だから、壁画が発見されて以降、現在の状況はどうなっているのか、これはすべて把握しているのかどうかはいかがでございますか。

高塩政府参考人 国指定の石室内に壁画がかかれている古墳は、先生御指摘のように、高松塚古墳、キトラ古墳を含めまして、四十二基ございます。高松塚古墳、キトラ古墳は、御承知のように、その美術的、歴史的価値が高いということで、高松塚古墳については国宝という指定もございます。これに対しまして、他の四十基ほどの古墳は、時期的にもやや古うございまして、六世紀の後半までの古墳ということでございまして、壁画につきましても、幾何学紋様や船、鳥などを描いたものということでございます。

 御指摘のように、これら四十基の古墳につきましては、保存施設の設置また覆い屋の設置、それから入り口の扉の設置、入り口の埋め戻し、かつ現在保存工事中のものもございますけれども、保存措置を講じているところでございます。

 現在のところ、それぞれの古墳を管理いたします地方公共団体から、問題となる劣化が起こっているという報告は受けてはおりません。しかしながら、古墳は土地と一体となっているものでございますので、石室の内外も構造上も完全に遮断されるわけではございませんので、壁画はまた生物の被害、カビ等の被害も受けやすいということでございまして、劣化しやすい環境にあるということはございます。

 したがいまして、私どもといたしましては、古墳を管理いたします地方公共団体を通じて必要な情報の把握、指導助言に今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。

石井(郁)委員 そうしますと、その四十二基、高松塚は別として、壁画はどういう状況で保存になっているのか、直接文化庁としては把握していないという話ですね。そう理解していいわけでしょう。

 私は大変これは問題だと思うんですよ。やはり国指定の史跡ですよ。国指定の史跡の状況が文化庁は把握できていないということは、私は大変重大な問題だというふうに思います。だから、第二の高松塚古墳、キトラ古墳が生まれるおそれがあるわけですから、まずきちっと把握をしていただかなければならない。そうしなければ適切な保護もできないということになるわけですね。私は本当に、先ほど来文化庁の姿勢が問われているわけですけれども、その姿勢を問わなきゃいけないというふうに思います。

 ちょっと具体的に伺いますけれども、文化庁にいただいたこの資料の中に、佐賀県の田代太田古墳というのがあるんですね。これも国指定の特別史跡の装飾古墳なんです。保存施設を設置ということはこの資料に書いています。ここには保存措置、どういう現状かということだけは書いているんですが、ここで状況がどうなっているかはわからないということを私は問題にしているわけですけれども、それについて、これは知人からお聞きしたところによりますと、三十年前には見えていた壁画の模様が、今ではすっかり薄くなってしまっている、もうよく見えないという話でございます。

 ですから、やはりこういう実例があるわけですから、私は直ちに、国として、このような装飾古墳、四十幾つの古墳、とりわけ壁画の現状調査を行っていただきたい、またその報告もしていただきたいと思いますが、これはどうでしょうか。

高塩政府参考人 今先生から御指摘をいただいた事実につきましては、残念ながら、古墳を管理する地方公共団体からの報告は受けておらないところでございます。事実を確認いたしまして、保存措置が十分でなければ、必要な指導助言を行ってまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 ぜひきちっとそういうことを調べてみてください。

 だから、報告がなければ調べないということになったのでは、本当に劣化がどんどん起こっていくということだと思うんですね。私は、手おくれになったら、まさに国が文化財の消失を黙って見ていたんだという責任は免れないというふうに思います。それほど件数も多くないわけですから、やはり文化庁として、きちんと現状を把握していただきたいということを重ねて申し上げます。

 そして、もう時間ですけれども、壁画の保存修復という技術は高度な専門的技術を要します。だから古墳の壁画の保存修復を行ってきたのは東京文化財研究所、奈良文化財研究所などではなかったでしょうか。そういう高度な技術的知見を持つスタッフを抱えた専門の研究機関ですから、そういう装飾古墳の壁画を保護するために、やはり速やかに対応できるような体制あるいは財政的措置をとっていただきたい、このことを強く申し上げて、きょうの質問を終わります。

桝屋委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 私は、昨年の十月二十日に、伊吹文科大臣に、これは長年未解決の事柄として、財団法人日本美術刀剣保存協会の問題について質問をさせていただきました。そこでも、平成十三年の当時に、理事や親族が審査に関与するということは正した方がいい、こういう文化庁の指導があって、この協会としてもこれに応じるという旨の回答があって、しかし、それがそのまま無回答状態が続いているということを申し上げ、そして大臣からは、やはり、そういう一つしかない鑑定機関がいささかも疑念などが生じてはならないんであって、国民の信頼が回復するように文化庁はしっかり努力をさせる、こういう答弁を明快にいただきました。

 そこで、私は、先日、「文化庁とのやりとりについて」という、刀剣協会の、二月二十六日、つい最近でございます、この文書を、理事あるいは評議員に対して出したものなんですが、これを入手して、読んでみますと、全く反対のことが書いてあるんですね。理事や親族の申請を拒否するのは弊害が多いということで、むしろこれを拒否してはならないんだという主張が書いてある。だけではなくて、まず、文化庁は監督権行使などはしていないんだ、それは国会質問のやりとりを正確に読めばわかることであると。

 どういう国会質疑なのかなと思ってこの文書を読んでいますと、私と大臣のやりとりなんですね。私と大臣とのやりとりは、今紹介したように、一つしかない機関がインサイダーだとか行為規範違反だとか、こういった疑いを指摘されないように厳正に行動していただきたい、文化庁もその方向で努力させるということです。

 当時、協会は、親族や理事、本人ですね、審査にかかわる人本人がみずから出すというのはやめた方がいいという主張に対して、これは憲法違反の疑いがある、法のもとの平等、営業の自由に抵触する疑いがあるんだ、こういうふうに言っていました。

 さすがにそういう主張ではないんですが、十月二十日から、つい先日、予算分科会でもこの質問が佐々木議員から出たとも聞いておりますけれども、まず大臣に伺いますけれども、これだけ明快にお答えになっていただいているにもかかわらず、全く正反対の見解を表明し続けているということは、これは放置できないんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 これは、先生だけではなく、共産党の委員の方からも、衆議院の予算の分科会で御質問があり、私は、そのときに、先生にお答えしたのと同じように、明快にお答えをいたしております。

 それで、指導権がないわけではなくて、これはもう当然のことですが、私どもが主務大臣でございますので、民法上の法人に対するいろいろな当然の主務大臣としての責務がありますし、あと、法律的に詳細に少し担当者から聞いていただきたいんですが、最後の最後までさかのぼれば、解散命令権があるはずですね、すべての法人には。

 ただ、この問題は、ありていに言うと、中の、内紛というんですか、官印を押した正式な文書をかつて出してこられたにもかかわらず、その理事長の文書は中の合意でなかった文書であるとか、いろいろなことをおっしゃっていることはもう先生御承知のとおり。

 今、そういうことも踏まえて、担当しております文化庁において相手側と話し合いをさせておりますので、どこかで、いつまでも不正常な状態が続くときは私どもが行政上の措置をとらなければならないと思いますけれども、そこへ行くまでに、やはり良識ある評議員の皆さん方の御判断で正常化していただくというのが本来のあるべき姿で、官があらゆることに介入をして民の動きに制肘を加えるということの引き金になってもいけないなと思って、そのバランスの間で、今話し合いをさせているというふうに御理解いただきたいと思います。

保坂(展)委員 大臣が答弁していただいたことは、この件に関しては全く同じ見解でありまして、そのバランスも必要だと思うんですね。しかし、この協会の言っていることはバランスを欠いているんじゃないかというふうに思うんですね。

 今大臣がお答えいただいたように、民法上の規定を使って改善命令を出すということは当然できるわけですが、これに関して、この二月二十六日の文書ですよ、こう書いてあるんですね。

 公益法人改革の三法が成立をして、やがて内閣府に移っていくということを書いた上で、文化庁は、公益法人改革が成立した現在、その監督官庁ではなくなる日が近いわけだから、そういうことが、例えば取り消しだとかいうことがあるのは常識的にあり得ないんだ、こういうことを書いて、別のところでは、文化庁の指導は私がつぶします、こういう公言をされていたり、この資料の中には、文化庁の指導は断固として拒否します、こういう文言もあるんですね。

 文化庁次長、いかがですか。これは、お話し合いをされているというふうに承知していますけれども、いつまでやるんですか。年度末ですからね、この区切りのいいところでしっかり決着をつけたらいかがでしょうか。

高塩政府参考人 協会に対しましては、先週の三月六日になりますけれども、事務局長を呼びまして、一つには、平成十三年度の文化庁の指導及び協会の業務改善措置の報告以降これまでの対応についての事実関係及び刀剣審査の公正性、透明性を確保するための今後の方策についての報告書を今月中に提出するよう、強く指導しているところでございます。

保坂(展)委員 亡くなった橋本元総理は、こういった不正常な形を早くしっかりまともな形にするようにという指導をされていたという記録が残っております。

 率直に言って、文化庁はしっかり指導をして、三月三十一日までに、こういったことをずっと繰り返すのであれば四月以降はもっと強い対応で臨みますよということは私は必要だと思います。

 というのは、評議員の任期という、今は、評議員の中にも公益法人のいわゆる公益性についてやはり自覚のある方の意見もあるので、内部で議論が起きている。しかし、こういうことはもう聞かなくていいんだ、いわば文化庁なんというのはもう離れてしまうんだから、次は内閣府になるんだからもういいですよという形で、さらに、いわゆる極端な意見で突っ走ってしまう危険もあるわけですね。

 もちろん、官がいわば強権を常に発動するべしとは私は思いません。しかし、公益法人の公益ということからすれば、ここまで大臣の答弁に対しても、私の質問に対しても、文化庁に対しても、国会に対しても、やや失礼じゃないか。かなり私は憤慨をしてこれを読みました。大臣、いかがですか。

伊吹国務大臣 先生との質疑、共産党の委員との質疑はここに彼らが書いているようなことでなかったということは我々は十分理解しているわけですから、余り理解力が行き届かない、国会を軽視しているような団体というのは、あるいは団体の評議員、理事というのは、理事あるいは公益法人として適当じゃないということでしょうと私は思いますがね。

保坂(展)委員 文化庁次長、もうちょっと力強く答弁していただきたいんですが、文化庁の指導はつぶします、断固として拒否する、そういうふうに言われて、どういうふうにいさめますか。しっかり答弁してくださいよ。

高塩政府参考人 先生御指摘のように、刀剣協会からの、これまで、昨年十一月に出された報告書にも、みずからが出しましたその報告について、その妥当性については問題であるというようなことをみずから述べるということでございます。

 私どもとしては、この改善報告につきましては、職印の押印された文書でございまして、当然組織として提出されたものと理解しておりまして、協会に対しまして、これまでの対応、今後の業務改善計画について、しっかりしたものを提出するように、強く指導しているところでございます。

保坂(展)委員 強く指導していくと前回も、五カ月前もお答えになっているので、強くということをしっかり年度内にやっていただきたいということを強く、本当に強く要望しておきます。

 法案の方について二問ばかり文化庁の方にお聞きをしたいと思います。

 ちょうど一年前に、博物館や美術館への市場化テストの問題で平山さんらがアピールを出されて、そして、保存とか修復とか研究とか、そういったいわゆる収益性になじまない事業というのがあるわけであってという議論がございました。

 今回、独立行政法人、統合されることで、例えば、九州の博物館の収益が上がっているということですよね、これは非常にいいことだと思いますが、この収益が上がっていることで、平成十七年度が六億八千百万円だった負担分というんですか、ノルマ、これが五割増で十八年度には十億四千六百万円になっている。これからノルマは一%ずつ上がっていくんだ、こういうことですけれども、ここの部分、昨年議論された部分は、その収益性などになじまない部分をしっかりやっていくんだということだったと思うんですが、その点、文化庁、いかがですか。

高塩政府参考人 収入の見込みにつきましては、平成十七年度におきまして、平成十三年度から十六年度までの平均ということを見るとともに、平成十七年度に開館いたしました九州国立博物館の自己収入というものを加えた額を設定するということで設定がされたところでございます。

保坂(展)委員 独立行政法人になったメリットとして、収益を目的積立金としてプールしていくことができるんだということでありました。ところが、二年間はこの積立金は積み立てられなかったということですね。これはどういう事情だったのか。

 そして、これは、要するに前年度分を上回らなければ積立金が積み立てられないという制度によってゼロになったというふうに私は理解をしていますけれども、これはこのまま、こういうふうにゼロのまま続くんでしょうか。

高塩政府参考人 平成十六年度、十七年度につきまして目的積立金がないことにつきましては、平成十六年度につきましては、国立博物館におきまして収入のすべてを支出したということで申請ができなかったということでございます。また、平成十七年度につきましては、中期目標期間の最終年度であるために、目的積立金の申請を行わなかったということでございます。

保坂(展)委員 本当にこれで大丈夫なのかなと不安に思います。やはり博物館や、特に予算が非常に圧迫をされて文化財などの購入ができないというようなことも続いているというふうに聞いていますし、ここは、しっかり予算を文化に対してはかけるべきだという意見を申し上げておきたいと思います。

 次に、答弁というよりは、ちょっと大臣に聞いていただきたい。

 昨日、いじめでお子さんを亡くされた親御さんたちが私たちの党のもとに訴えに来られました。中でも驚いたのは、先月の二十六日に岸祐太朗君というお子さんを亡くされたというお父さんがお見えになっていたんですね。大阪の方です。

 そこで聞いたのは、これは私学です、私学に通っていられた。そして、前の日か何かに、ややそういう言動というか、教室で自分の首を絞めたりとかいう不安定な兆候があったということで、息子が帰ってこないということで、お父さんが心配になって学校に電話した。学校へ電話したところ、要するに、だれも出ないわけですね、夜ですから。学校には電話は行かないで、留守番電話になっている。それで、警察に届けをしたそうです。

 つまり、彼は放送部員で、放送室が居場所になっていたらしいんですね。放送室を捜してくれということをその時刻、帰ってこない、夜の九時という時刻に捜し始めているんですけれども、残念ながら、学校とは連絡がとれなくて、最後は、朝の六時半に放送室で首をつって亡くなっているという悲惨な姿で発見されたんですね。

 これの背後に何があるのか、これはわかりません。生徒同士の問題、それからまた、事前に教師による指導がやや、放火事件について、君がやったのか、こういうやりとりもあったようです。

 ただ、結果として私が受けとめたのは、全く学校関係者と話ができていない。これだけのことがあったにもかかわらず、極めて強い不信感があって。学校も報告もしていない。こういう中で、私学であっても、いじめについて強い決意で我々は臨んでいくわけですから。やはりお子さんを亡くされたその親御さんに対して、学校関係者はしっかり誠意を尽くしてお話をする。そのお話をする内容に対して不満な場合もありましょう。しかし、その姿勢だけはやはりとるべきではないかということを感じるんですね。

 今の話を聞いて、ちょっと大臣、どのように思われるか。

伊吹国務大臣 事実関係を私は直接把握しておりませんし、また、一方の当事者からだけ伺うということは不公平ですから、一般論として申し上げたいと思いますが、私学は、先生御承知のように、教育委員会の所管になっておりませんね。知事部局がこれは戦後ずっと所管をしておられます。

 先般来、高等学校の未履修、義務教育の未履修においても、中学校の未履修があったのは私学だけです。国公立はすべて未履修はございません。そういう状況のもとで、建学の精神というのがあって、私学というのは、私学助成費は入っておりますけれども、できるだけ国の統制の枠の外に置くということでずっと来ているわけです。しかし、国会で決めた法律とか、今おっしゃった命にかかわることとか安全にかかわることというのは、これはやはり建学の精神とは全く別のことでして、私学であろうとなかろうと、それはきちっとしていただかないといけないことなんです。

 ですから、私たちは私学にお話を申し上げるときは、必ず知事を通さなければできないです、教育委員会からはできないです、今の行政の仕組み、法律の仕組みでは。ですから、私どもも、先生の今の御心配を踏まえて、私学に対する対応を、国家統制と言われないように注意しながら、できるだけのことはさせていただきます。

 それから、もう一つ大切なことは、安倍内閣総理大臣が、今回提出する、予定しております教育三法について総務大臣に指示されたことは、やはり私学行政を預かっている知事部局において、全国的な、各児童一律に、国会が決めたことはきちっと守っていけるような制度を担保するとともに、地方自治の本旨から見て、地方議会がその知事部局の仕事ぶりを十分チェックして事後評価をするように促してもらいたいという指示をしておられるんですよ。

 ですから、今の件は大阪ですね、だから大阪の府議会が、そういう、先生がおっしゃったような学校の実態を把握している大阪府知事のもとの総務部の仕事ぶりについて、どういう評価を事後的にされるか、これは私はぜひお願いしておきたいことだと思います。

保坂(展)委員 教育三法については、かなり安倍内閣とは見解が違うわけですが、やはり子供の命をなくした親御さんに対する姿勢というのは、これはどういう学校であってもしっかりやってもらわなきゃ困るということだけ申し上げておきます。

 終わります。

桝屋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

桝屋委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党を代表して、国立博物館法の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。

 文化財の保存や活用は文化行政の重要な柱です。本来ならば、その中心的役割を担う国立博物館と文化財研究所の人的、予算的な拡充が求められるものです。ところが、ともに〇一年から独立行政法人化され、経費削減と自己収入増加が求められてきました。運営費交付金削減の一方で、入場料などの自己収入の増が求められたため、観覧料の値上げという事態となっています。文化鑑賞の機会を奪いかねない状況は、国立博物館の使命の後退にほかなりません。

 本法律案は両法人を統合するものですが、博物館は、美術工芸品など有形文化財の保管、展示、教育普及が中心的な役割であるのに対し、文化財研究所は、埋蔵文化財、遺跡等の発掘、保存と調査研究が中心であり、文化財を扱う点で共通部分はあるものの、役割、重点事業、対象文化財を異にしており、博物館と文化財研究所が共通して取り組める分野は極めて限られており、統合による効率性のメリットはありません。

 むしろ、文化庁自身、二〇〇五年、独立行政法人に関する有識者会議ヒアリング関係資料において、両法人統合の際に予想される具体的なデメリットとして、「高松塚・キトラ古墳の壁画保存修復の検討調査、バーミヤーン遺跡の調査など、文化財研究所が法人をあげて取り組む国家的・世界的プロジェクトの継続的かつ円滑な遂行が、法人体制の変更により停滞するおそれ」があるなど五点を挙げていたのです。今回の統合を契機に、基礎的、基本的な研究がおろそかにされかねません。

 以上の点から、文化財の保存や活用の充実を文化行政の重要な柱に掲げながら、中心的な機関である両法人を統合し、業務の縮小、廃止を進めることは、文化行政のあり方として見識を疑うものであり、本法案に反対するものです。

桝屋委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社会民主党・市民連合を代表して、独立行政法人国立博物館法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。

 社民党は、昨年三月の独立行政法人に係る改革を推進するための文部科学省関係法律の整備に関する法律案に反対をいたしました。基礎的な教育や研究にかかわる機関を安易に独法化し、その職員を非公務員とすることに対しての問題点を指摘したところであります。

 国立博物館と文化財研究所を統合する今回の法案はその典型であります。職員の非公務員化によって身分の安定が失われ、より効率性や成果が重視されることになるおそれが強い。また、公共性の高い、長期的視野に立った基礎研究がないがしろにされたり、あるいは営利企業との癒着が進んでしまうのではないかという疑問がございます。

 このような組織いじりに賛成することはできません。非公務員化に当たって、それぞれの独立行政法人が公務員である必要があるのかどうかを慎重に精査する必要があり、組織の統廃合に当たっても、その機能や任務を十分に検証し、利用者、国民生活に支障が生じることがないような配慮を十分に行うことが求められます。

 この法案審議に当たってこのような疑問が晴れたとは言えず、公共性の高いこれらの組織を行財政改革の名で安易に統廃合することは問題です。

 以上の理由で、本法案に反対する討論にいたします。

桝屋委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

桝屋委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、独立行政法人国立博物館法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

桝屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

桝屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

桝屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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