衆議院

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第11号 平成19年6月6日(水曜日)

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平成十九年六月六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 桝屋 敬悟君

   理事 鈴木 恒夫君 理事 田野瀬良太郎君

   理事 西村 明宏君 理事 平田 耕一君

   理事 松浪健四郎君 理事 藤村  修君

   理事 笠  浩史君

      阿部 俊子君    秋葉 賢也君

      井脇ノブ子君    浮島 敏男君

      江崎 鐵磨君    小川 友一君

      小渕 優子君    加藤 紘一君

      亀岡 偉民君    小島 敏男君

      佐藤  錬君    柴山 昌彦君

      鈴木 俊一君    西本 勝子君

      馳   浩君    平口  洋君

      福田 峰之君    藤田 幹雄君

      二田 孝治君    馬渡 龍治君

      安井潤一郎君   山本ともひろ君

      奥村 展三君    小宮山泰子君

      高井 美穂君    野田 佳彦君

      牧  義夫君    松本 大輔君

      松本 剛明君    横山 北斗君

      西  博義君    石井 郁子君

      保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山中 伸一君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      風岡 典之君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   鵜瀞 恵子君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        樋口 修資君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     安井潤一郎君

  小川 友一君     亀岡 偉民君

  田島 一成君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  亀岡 偉民君     小川 友一君

  安井潤一郎君     浮島 敏男君

  小宮山泰子君     田島 一成君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     飯島 夕雁君

    ―――――――――――――

六月五日

 国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)(参議院送付)

四月十九日

 行き届いた教育を進めるための私学助成の大幅増額に関する請願(前原誠司君紹介)(第七七七号)

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(保坂展人君紹介)(第八四四号)

 同(秋葉賢也君紹介)(第八五八号)

 同(田島一成君紹介)(第八六七号)

五月十六日

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(野田佳彦君紹介)(第九一七号)

 私立幼稚園教育の充実・発展に関する請願(松本剛明君紹介)(第一〇二三号)

 同(石井郁子君紹介)(第一〇五一号)

 就学援助の準要保護世帯に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一〇四九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇五〇号)

同月二十八日

 私学助成大幅増額、三十人以下学級実現に関する請願(井上義久君紹介)(第一二五一号)

は本委員会に付託された。

四月十八日

 「改正」教育基本法の廃止を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第五七号)

 憲法九条を守り、「改正」教育基本法の廃止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五八号)

 同(石井郁子君紹介)(第五九号)

 同(笠井亮君紹介)(第六〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六二号)

 同(志位和夫君紹介)(第六三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六六号)

は教育再生に関する特別委員会に付託替えされた。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)(参議院送付)

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

桝屋委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官山中伸一君、宮内庁次長風岡典之君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長鵜瀞恵子君、文部科学省大臣官房総括審議官金森越哉君、生涯学習政策局長加茂川幸夫君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長清水潔君、スポーツ・青少年局長樋口修資君及び文化庁次長高塩至君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

桝屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

桝屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。亀岡偉民君。

亀岡委員 おはようございます。自由民主党の亀岡です。

 きょうは、高校野球が今話題になっておりますので、高校野球の問題を少し……(発言する者あり)それから、伊吹大臣には、日ごろから教育行政に関して哲学を持ってやっていただいていますことに心から感謝を申し上げたいと思います。

 今お話にもありました、特待生制度という大きな問題が今高野連の中で出てきております。そして、高校生の多くの球児が甲子園を目指すために日ごろから練習をやっておるんですが、今回一番問題になっているのは、その子供たちにかなりしわ寄せを寄せてしまった。

 私の知人なんかも学校を経営している人がいるわけですが、母子家庭で、どうしても学校に行って勉強もしたいし野球もしたいということで、学校に特待生で入れたけれども、今回の事件が起こってから、その生徒がその経営者のところに来て、僕はやめなきゃいけないんでしょうかと。その話を聞いたときに涙が出てきたと言うんですね。だから、まさにこの問題は大きな問題を抱えているんじゃないかということで考えております。

 実は、きょうは、野球憲章の十三条、十四条ということを盾にとって高野連がいろいろと規制をかけたわけですが、お手元の資料に、野球憲章をつくられた外岡茂十郎先生の「フェア・プレー」という本の中から抜粋した文章をちょっと引用させていただきました。その最初のところに、「これらの規定があるからといって、選手または部員が一般学生として、したがって一般学生と同じ条件の下で、かつ、同じ基準によって、奨学金を受けたり、授業料を免除されたり、するようなことまで制限しようというのではありません。」という、野球憲章をつくった人の解説がこういう形であるわけですが、どうもそのことが高野連の中では違ってとらえられているのかなというふうに考えております。

 大臣には、特待生制度についてどのようにお考えか、ちょっとお考えをお聞かせいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

伊吹国務大臣 今先生がおっしゃった、高野連にかかわる特待生制度の問題は、特待生制度として各私学がどのような内容の資金供与をしておられるのか、また、学生をどのようにして集めておられるのか、そして、その費用の負担が、結果的に特待を受ける以外の保護者の負担になっているのか、あるいはまた、私学助成費という国民の税金でそのようなことが賄われているのか、これはかなり深い検証をしなければなりませんので、個別問題に言及することはちょっと後にしていただいて、一般に特待生制度というのは私はあって当然だと思います。学業成績が優秀な子供にも特待生制度はありますし、野球以外の他のスポーツは認められているわけですから、私は、高野連だけがこういうものを認めていないというのは現実と少し離れているんじゃないかなと。

 ただし、現実と離れている高野連が、今問題があるようなことを知っていたのか知っていなかったのか、わかった途端に学校と学生のせいにしているのか。素人のような私が見たって、甲子園に出ている生徒の出身地が、すべて当該高校の所在地以外の県になっているという例はたくさんありますね。だから私のような者が見たって、これは全国から学生が集まっているというのはわかりますから、ましてや高野連の人がわかっていなかったとは思わない。

 そういういろいろな要素がまざり合って高野連のあり方を議論するべきであって、特待生制度が悪いとかいいとかということだけに議論を絞るのは私は間違っていると思いますね。

 だから、特待生制度は私はあって構わないと思いますし、高野連も球児について特待生制度をお認めになった方が世間の常識に近い対応になるだろうということは考えておりますが、いわゆる、今野球少年に行われている特待生制度の中身すべてを私は是とするものではありません。

亀岡委員 ありがとうございます。

 まさに、今お話しになったように、高野連が知っていたか知っていないかという問題。そして、昭和二十一年から二十五年につくられた野球憲章を一回もきちんと見直さないで、それを盾にとって今回は処罰を科したというのは、私も大きな問題だと思います。

 今大臣が言われたように、一つの県、その県の学校であるにもかかわらず、全国各地から集まってきているというのがあるんです。これは、よく間違えられて、スカウトされてきたという例がたまたま何件かあったら、それが全部悪いように言われているんですが、そうではなくて、例えば田中君の場合のように、自分の意思で、大阪にいるよりは北海道の方が出やすい、出場校の校数が違いますから、可能性のあるところにみずから望んで行った場合なんかもあります。これは、どうしても、自分の意思として行きたいというのがあったようなんです。

 私学に関しては学区というのはないと私は思うんですね。学区というのはありませんよね。私学の場合はもう全国どこから行ってもおかしくはないと思うんですが、それを野球留学、野球留学と特別に言われて非難をされるんです。

 私、野球をやっていて思うんですが、私なんかは県内の高校に行ったんですが、どんなに集めてきても、勝てないときは勝てません。集めたから勝てるというものではないと私は思うんですね。ただ、その地域の中でたまたまうまい選手がたくさん、多ければ、その地域の中だって勝てるわけです。

 何か、野球留学という言葉だけが非難をされてしまうという傾向があって、特に私学に関しては、集めてきて、野球留学だ、集めてきて非難をされる。しかし、その多くがひょっとしたらみずから望んで来ているかもしれないということもあるわけですね。ですから、私、この野球留学という言葉が私学にとってどういう影響を与えているんだと思うんで、ちょっとその辺のお考えを聞かせていただければと思います。よろしくお願いします。

伊吹国務大臣 少なくとも高等学校は義務教育ではございませんから、特にどこの私学へ行くのかは全く自由だと思います。ですから、自分が行きたい学校へ、学生が手を挙げて、親元を離れて行くということはあったって構わないです。しかし、そのことに、大量のお金が結果的に私学から出ているということがあると、これはよほど身体能力にすぐれている者だとかどうだとかということはあっても私は構わないと思いますよ。特待生制度というのはあっても構わないと私は思います。

 しかし、例えば三百人の定数のうち、五十人が特定のスポーツの特待生であるという形は、本来の教育というのは知徳体のバランスのとれた教育をやはり行わねばならないわけですね、ですから、そういうことからすると、私は、児童生徒には責任はないと思いますが、私学の経営者は少し考えられなければいけない面があるんだろうと思います。

 例えば、甲子園を沸かせた八重山商工高の大嶺というピッチャーがいますね。彼は、その地に生まれて、その地の高校へ行っているんですよ。そして、彼は大変な身体能力があって、今、百五十キロの速球を、ロッテに入って投げていますね。周りはそうそろった選手ばかりじゃなかったから、甲子園では彼は優勝はできなかったけれども、ああいう人を特待生制度で八重山商工高でやるということは、私は、何ら恥ずかしいことじゃないし、立派なことだと思います。

 しかし、三百人の定数の中で五十人も全国から特待生を集めるということは、二百五十人の父兄の負担で集めているということでしょう。そして、私学助成費が入っているからできているということですね。

 これはやはり、教育とスポーツと、校名を上げて定数を充足するということとのバランスを考えてやっていただかないといけないので、これは特待生制度の問題というよりも、大人の規範意識というか、私学経営に対する姿勢のような問題だろうと思います。ですから、野球留学という言葉を使って、自分の行きたいところへ行っている児童生徒を責めるべきでは私はないと思っています。

亀岡委員 ありがとうございます。

 まさに私も、私学経営の中で、行き過ぎた、全部、バランスの悪い、特待生をとるということは問題があると思います。

 ただ、その中で、本当に良識ある私学の中で、優秀な生徒をとりたいとか、きちんとした意思と、明確な学校の、学校ですから、私学ですから、理事会の中できちんと承認された形でのとり方が多分あるんだ、決め方をされているんだと思いますから、多分自分の学校が経営ができなくなるようなことはしないと思うんですが、それはきちんと文部科学省の方で監督していただくということは必要だと思います。

 それからもう一つ、今監督の話が出たんですが、高校野球連盟が、平成十九年、ことしの四月二十四日付で各学校全部に通達を出しているんですね。私はこの通達の文章を見てちょっとびっくりしたんです。こういう文章にして出しなさいというひな形を見せてもらいました。そうしたら、例えば、部長を解任しますということを約束しますということで、そのひな形をつくって各学校に配っているとか、今度は、生徒の、父兄と子供にそこにサインをさせて、その特待生制度を、自分たちみずからそれをやめますという誓約書の文章もつくって出させている。私、これはどうしても納得がいかないんですね。

 高校野球、いろいろな方に聞きましたが、どんなに弱い高校でもやはり夢は甲子園だから、甲子園につながる道だけは切ってほしくない、弱くたって可能性があれば頑張れるんだ、その可能性を切られてしまう、高野連から嫌われてしまうとそれさえ、夢が消えてしまう、だからほかの学校はみんな言うことを聞くんだ、こういう話になっているわけです。

 これは、所管する文部科学省としては、あってはならないことだと私は思うんですが、文部大臣、これ、ちょっとそこで真剣に考えてもらいたい。僕は一番重要なことだと思っているんですが、それについてどういうお考えかお聞かせいただければ。よろしくお願いします。

伊吹国務大臣 基本的には各競技団体の運営というものに政治の権力だとか行政が介入しないというのは、これは基本なんですね。

 特に私学は、大学は、高等局というのがあって、うちが直接監督していますが、私学は、まあいろいろ戦前の苦い思い出があったんでしょう、結果的には、教育委員会もこれを所管せずに、知事部局に任せっきりという状況、私学行政の流れは御承知のとおりです。

 ですから、高野連の会長にこの前来ていただいて私が申し上げたのは、児童生徒の問題であるのではなくて、高野連が知っていたか知っていなかったか、知っていて、問題が明るみに出たときに責任を児童生徒と学校に押しつけるということはよくない。

 そして同時に、学校経営者も、先ほど申し上げたように、特定スポーツをもって校名を上げて充足数をふやしていく、しかも、その特待生という制度の内容、金銭の供与の内容、これが授業料の免除とか寮費の免除にとどまっている場合はまだいいと私は思いますよ。しかし、これはよほど内容を厳しく見きわめないと。

 両方に私は問題があると思います。

 ですから、高野連が一方的なことをおっしゃって児童生徒に被害が及ばないようにしてあげてもらいたい、それを前提にして、将来に向けての特待生制度の基準を、高体連の持っている基準とそう違わないものをおつくりになった方がいいんじゃないでしょうか、この二点を申し上げて、その方向で御努力なさるというお話でお帰りになったということです。

亀岡委員 今大臣から、金銭まで出してということが、お話があったんですが、各私学も多分、もしそういう学校があるとしたらこれは大問題だと私は思うんですね。普通の私学は絶対そういうことは僕はあり得ないと思っています。

 今回も、特に、対応が各高校でばらばらになりましたけれども、結構有名な高校が関東大会出場を辞退しております。結構最近甲子園に出たようなチームは、その選手を特定してメンバーから外して、大会に出ました。これはどうしてそんな違いがあるかといったら、有名校は、入学するまでは特待生制度を使います、でも、入ってからは同じだよ、だれが特待生かわからないように、同じスタート台に立たせてやっています。ところが、最近出たところは、その特待生選手をきちんと分別、分けてしまった。それで大きな問題がまたさらに起こり始めたという現状もあるわけですね。

 だから、多分、よっぽどひどいところが一校か二校あるかわかりませんが、そこはそこできちんと対応して処分をしたりなんかしなきゃいけないと思うんですが、それが全部にということでは私はないと思うんですね。

 だから、その辺ちょっと局長に、突然で申しわけないんですが、本当に全体でそんなにひどいということでは私はないと思うんですが、どれぐらい把握されているか、ちょっと突然で申しわけないんですが、答えられたら。よろしいですか。

樋口政府参考人 今の御質問でございますけれども、特待生制度を導入している学校等における実態は区々であろうかと思っております。御案内のとおり、入学金や授業料を免除したり、あるいは寮費、生活費まで支給するという実態も一部にはあろうかと思っております。

 ただ、先ほど御指摘いただきましたように、今回の調査の結果、高野連としては、憲章違反の実態を速やかに是正するという上で、特に夏の甲子園が迫っておりますので、そういったことで、緊急的な対応として、是正措置を短期間に円滑に進めるということでの措置を講じさせていただいたところでございまして、先ほど御指摘ありましたように、様式等まで細かく示して学校側に対応を求めたのではないかということも、夏の甲子園ということに対しての緊急対応措置として決めたところでございます。

 ただ、結果として、特待生の契約とか野球部の顧問の身分にも及ぶことになり、非常に大きな影響が及んだということで、高野連としても、特待生制度の解消によって退学者等を出すのは本意ではないとして、御案内のとおり、措置の緩和を決定したところでございますので、私どもとしては、今後とも、高野連として、新しい基準づくりの中で、特待生制度が教育活動の一環であるということを踏まえた特待生制度のあり方について御検討いただけると思っておるわけでございます。

亀岡委員 ぜひその辺はお願いしたいと思いますが、ただ、今言ったように、高野連が、夏の甲子園が目の前だからということを言っていますが、突然その処分を考えて発表したというのは高野連側に大きな問題があると思います。

 そして、先ほどから大臣が言われているように、自分たちが非難されかねないから、西武の裏金問題から始まって突然降ってわいたように、各高校や生徒にしわ寄せがいったのは間違いありません。

 それを何で高野連ができたかということが大きな問題なのであって、私は、高野連の体質に大きな問題があると思っています。これは高野連の役員の人事を見ていただいてわかると思うんですが、私はちょっとびっくりしたんですが、かなり偏った役員構成をしている。確かに、文部省の規制の中での、通達の中でのちゃんとした枠にはおさまっているんですが、ほとんどが大阪です。しかも、その主催のマスコミ社が四人、四人の八人を占めている。

 これもかなり大きな数字なんですが、文科省の認可団体でありながら、バランスの悪い理事の構成がまた、こういう、何か怠慢というかおごりがある、本来であれば、年度が変わるまでに研究をした上でそれを通知して、新しく入学する生徒からそれを課するならわかりますが、夏の甲子園前の一番の大変なときにわざわざそれをやらざるを得なかったという、全く大きなばかなことをやったわけですけれども、この役員なんかも、私は、文科省、きちんと指導すべきじゃないかと思うんですが、大臣、どう思うか、ちょっとお願いします。

伊吹国務大臣 これは先生、基本的には、各スポーツ団体あるいは私立大学協会、私立高等学校協会の人事をこうしろああしろということを政府が発言することは、やはり控えねばならない。

 しかし同時に、今先生がおっしゃったようないびつな役員構成になっていたり、またそれを、どういう報道その他の雰囲気の中でそれが維持されているのかということは、やはり世論の盛り上がり、そして高野連に入っておられる各高等学校の方々、地区の代表の方々の御努力で、世論を背景にして直していただかなければならないんです。

 今先生がおっしゃったことについて私が発言して直させるということは、そのことについてはいいことかもわかりませんよ。しかし、一度私がその引き金を引けば、政府というもの、政治権力というものは常に介入の道を開いたということになりますから、これだけは、やはり政治家として、私は自己抑制をしなければならないことだと思っております。

亀岡委員 非常によくわかります。

 ただ、やはり監督官庁として、もしバランスが悪い場合は、発言をする場所があったり機会があるべきだと私は思うんですね。

 今回ちょっと、野球憲章、もうずっと調べて、私自身も長いこと野球に携わってきた者として、やはり各県の高野連の会長さんたちも、それから私学の方々も、今まではほとんど、高野連の権力に立ち向かうと何か自分たちが不利になると言って、言えなかったという。でも、今はもうかなり地域の中でくすぶっているんですね。多くの方々の意見、話を聞きましたら、やはり高野連の体質は変えてもらいたいという話がたくさん出ておりました。

 そして一つ、文科省もかなり引いているのがわかるので、僕も勉強して、野球統制令というのが過去にあってそれで非難された経緯があるということがあったんですが、それが原因になっているのかな、ちょっとわかりませんけれども、ちょっとお話をお伺いしてよろしいですか。

伊吹国務大臣 それは先生、そんなことはございません。高野連の会長が私のところへおいでいただくということも、本来、政治権力の側からやるべきかどうか、私は随分迷ったんですよ。だけれども、児童生徒のことを考えると、やはりここは一言言っておかなければいけないというので来ていただいて、そして児童生徒に、夏の甲子園はもちろんのことですが、将来大変な負担が生じないようにしてあげてほしいということは申し上げたわけです。

 ただ、このことは、高野連の問題であると同時に、やはり私立の学校の経営者の問題でもあると私は思うんですね。

 これは真実はわかりませんよ、報道ですから。ある社の報道を見ていると、甲子園に出た場合の成功報酬は二千万で、あるところの少年野球チームか何かの人を監督に引き抜いた、そしてその人は見事甲子園に出したので、二千万円をもらって、今レストランの経営資金にそれを使っちゃったとか。そして、例えば駅伝でも、高校生、留学して、日本へ来てやりたいという志のある人は大いに受け入れたらいいですよ。しかし、五人で走る駅伝の中で三人も四人も外国の人が走っている高校駅伝というようなものが本当に教育の本質なんだろうかということだけは、やはり学校経営をしている方はよく考えていただかないといけない。

 要するに、学校経営者と高野連との犠牲者が児童生徒だということをよく考えていただきたい。私は、ここは大切なところだと思います。

亀岡委員 確かに、一般社会の中で、きちんと私学の経営の中で、日本人としての、学校としてプライドと誇りがあれば、しっかりとそれも考えていただけると思いますし、その中で留学生を受け入れるというのは大いに結構だと思いますが、やはり日本人にもそれに負けない力をつけるような努力を学校側もしてもらわなければいけないというのは間違いないと思います。

 今ちょっとお話があったんですが、なかなか口は出せないけれども、今回、頑張って高野連の会長を呼んでいただいたということがあるんですが、やはり野球組織図を、球界全体図を見ていただくとわかるように、ほとんどが文科省の認可団体なんですね。文部省が監督官庁になっておりまして、そして実は、私も調べてみたんですが、それがほとんどがばらばらで、話し合いがなされていない。全日本野球会議というのが形だけである。もしこれが、相撲ではありませんけれども、まさに横綱審議会じゃありませんが、これだけ日本の中で一番底辺が、末広がりのある、一番スポーツ人口の多い野球だからこそ、逆に言えばそういうものが必要なんじゃないだろうかと私は思います。

 ですから、この全日本野球会議なるものを、きちんと文科省で少し携わっていただいて、何か問題があったときはそこできちんと処理ができるような、それぞれがワンマンにならないように、行き過ぎがないように、それこそ国がきちんと関与すべきポジションというのを私はつくるべきじゃないだろうか。

 確かに、スポーツはスポーツで、それなりに皆さんその中でやっています。だけれども、どうしてもその中でまた、偏った見方、偏った構成になってしまいがちである。そういう中で、一つそういう場面が出てくるとしたら、文科省、ぜひ積極的に、それは高校球児のためにも、私学も、学校関係がこれは全部あるわけですから、率先してこういうものに携わっていただきたいと僕は思っておりますので、ちょっと考え方を聞かせていただければ。よろしくお願いします。

伊吹国務大臣 スポーツ団体ですから、やはり、その団体を構成する、特に役員その他は最もフェアでなければいけないので、今先生がおっしゃったようなことも念頭に置いて、全日本野球会議というのがそれに当たるのがいいかどうかは、これは競技団体が決めなければならないんですけれども、もう少し全体でバランスのとれたお話し合いをしていただけるようには私どもの方から促してみましょう。

亀岡委員 ぜひ私はお願いしたいと思います。

 甲子園の始球式には必ず文部科学相から始球式をしていただく、そうすると、全部お墨つきをもらってやっている、どの立場から見ても文科省が全面的にこれはもうバックアップしているとだれもが思っているんですね。だから、高野連の単独ではないと思い込んで、みんなが言うことをうのみにして聞いてしまうという現状もあるものですから、ぜひ、そうであれば本当にタッチしていただいて、そしてしっかりした指導ができるような、それは行き過ぎた指導ではなくて、まさに一番国民的なスポーツとして人気のある野球の中で、これは去年の甲子園を見ていただいてわかるように、たった二人のピッチャーの投げ合いが全国をフィーバーさせた。そして、今でもそれが続いているわけですね。プロで活躍している、その一人が。もう一人は六大学で活躍している。その社会に与えている経済効果というのは物すごい大きなものがあるというスポーツだからこそ、僕は文科省にぜひしっかりと携わっていただきたいというふうに考えておりますので、ぜひそれはお願いしたいと思います。

 最後にもう一問だけ。

 ちょっと話は変わるんですが、認定こども園というのをつくっていただいたんですが、どうも地方の中ではなかなか認定こども園というのが理解できないというところがあります。

 まさに、これから小学校に入学する子供たちが平等な環境の中で入学できるのは絶対に必要だと私は思っています。それには、幼稚園とか保育所じゃなくて、認定こども園でなくて、全部義務教育化して無償化して、できれば同じ環境のもとで同じ価値観を持てるような教育をしっかり国がしていく、その必要があるだろう。でも、どうも、認定こども園というのができ上がってしまったら、幼保一元化して本当に同じ条件で小学校に行くというようなところが消えてしまっているような気がしておりますので、ぜひ最後にそのことだけお聞きしておきたいと思うので、よろしくお願いします。

伊吹国務大臣 小学校に入るまでは、いわゆる福祉施策としての措置で行われていた保育園と、学校である、教育機関としての幼稚園と、それから両方に行かない児童とがおられますから、同じように平等にするというのであれば、今までの組織をすべて一度なくして、しかも、義務化という場合は膨大な財源が要りますよね、そのことに国民が納得していただけるのかどうなのかも含めて、今回の教育基本法にも義務教育の年限は書いておりませんから、国会の場等でも十分御審議をいただければ結構だと思います。

亀岡委員 幼児教育というのは、小学校では非行がないと言われたけれども、今は小学校でも殺人が起こる時代ですから、幼児教育というのは一番大事な課題になってきていると思いますので、できましたら早急に義務教育化して、できれば建学の精神がしっかりしている私学にやらせるとか、ぜひそういう環境をつくっていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

桝屋委員長 次に、西博義君。

西委員 おはようございます。公明党の西博義でございます。

 大臣、大変お忙しいところ、きょうは一般質疑をさせていただきまして、本当にありがとうございます。

 今回の教育関連三法案の本会議の場で、私は、人間が真に成熟していくためのシステムが機能していないのではないか、こういう問題提起をさせていただきました。まず初めに、このことについて大臣と議論させていただきたいと思います。

 大臣も御存じかと思いますが、日高敏隆さんという有名な動物行動学者がいらっしゃいます。たくさんの本を書いていらっしゃる方ですが、最近の本の中で、この方が日ごろの動物行動学を通して教育というものについて言及された本でございますが、「人間は遺伝か環境か?遺伝的プログラム論」という本がございます。

 この日高さんによれば、動物は、それぞれの種の生き方、育ち方に従って、それにぴったりと合った形の学習の遺伝的プログラムがそれぞれ組み込まれているというふうにおっしゃっています。集団を形成することによって生き延びてきた人間、日高さんによりますと、アフリカで初めて人間が遺伝的にといいますか発生したその段階で、多くの猛獣がある、そんな中で、きっと人間は、孤立していたのではなくて、百人ないし二百人の集団として守り合いながら生きてきたことは間違いない、そういうところから説き起こされているわけですが、その生き方に沿った遺伝的プログラムが組み込まれているというふうに考えておられます。言いかえれば、人間の発育の遺伝的プログラムの特徴といいますのは、集団の中で育つ、こういうことだというふうにおっしゃっておられます。

 私も、全くそうだろうな、これは現在に至っても変わらない原理ではないかというふうに思っております。

 ところが、現在は少子化それから核家族化等によって、地域とのつながりが大変希薄化しております。一方で、その核家族化の中で、一人一人をとってみますと、平均的な人間というものは、これはある意味ではそれぞれ個性がありますから存在しておりません。集団から見れば、それぞれ、父親、母親といえども、何らかの形でその中からは外れた存在ということになるかと思うんですが、その外れた存在である家族から子供が学べることには限界がある。学校では、横割で、同じ年齢で構成されている社会集団である。

 このように、本来人間はたくさんの人のいる中で育っていくものであり、さまざまな人々からいろいろなことを学び取っていくようにできている動物ということになります。ところが、現在ではそれがなかなか実現しない、そういう社会構造になっているというふうに思われます。

 生物学者の視点から、現在の教育問題にかかわる根本的な問題を提起されているわけですが、大変興味深く読ませていただきました。

 こういう視点について、大臣のお考えを初めにお聞きしたいと思います。

伊吹国務大臣 日高先生は、私の地元の京都大学で教鞭をとっておられた方で、私も存じ上げております。

 チンパンジーの群れの中にもルールというのがあるんですね。自由と規律という言葉がありますが、一人一人の個が、個体というか個人というかが自分の思うままに行動して、自分の本能のままに動けば集団というのは成り立たないんですね。お腹が減れば他人のものをとって食べるとか、こういうことをやり始めると、集団の秩序というのは保てません。ですから、チンパンジーの群れにも、あるいはライオンの群れにも、一定のルールというのがあるんですよね。

 ですから、人間社会にも、ましてや万物の霊長である人間社会には当然のことであって、そのルールを決めているのが、一番わかりやすい例は法律なんですね。ただ、法に書かれざる約束事というのが、動物の世界にもあるように、ましてや人間の世界にもある。これがコモンローと言われるんでしょうか、慣習、道徳、規律、安倍流に言えば規範意識のようなものだと思います。

 先生がおっしゃったように、いろいろな社会情勢の変化がありました。特に日本の場合は、豊かになってきましたので、集団の中に頼らなくても個として生きていけるという状況が非常に強く出てきているんですね。戦後の教育とかいろいろなことが言われますが、今新しい教育の理念を、今先生がおっしゃったように、もう一度再確認しようというので、教育基本法の改正の中に公共の精神ということを盛り込んでいるわけです。

 ですから、自由と規律の中で、自由、つまり個人の権利、個人の尊厳、個人の思いというのをどの程度認めるのか、規律、つまり国家集団のルールというものに対する個人の従属性をどの程度認めるのか、これは政治理念の最大の争点であって、このウエートの置き方によって多分、与党、野党ができているというのがほとんどの外国の事例なんですね。

 だけれども、基本的なところだけはやはり個人の尊厳を認めて、そして全体のルールの中で生きていくということをやらなければならない、それがまさに先生が今おっしゃったことだと認識いたしております。

西委員 同感でございます。

 さらに申し上げれば、そのことがその後の学習ということについても大きな能力の開発につながっていくというふうに私は思っております。

 続いて、大集団の中で育つ環境が必要であるということでございましたが、先ほども申し上げましたように、家庭、学校だけでは、現在の教育が抱える根本的な問題の解決にはなかなかなりにくいのではないかということを申し上げました。そういう意味では、人間を人間として成熟させるためのかぎというのは地域社会、そしてそこで多くの人と交わる、こういうことにあるのではないかというふうに思います。

 さて、先日、NHKの「芸術劇場」で、話題の若手指揮者、グスタボ・ドゥダメルを取り上げて報道しておりました。私も余り芸術には詳しくはないんですが、このドゥダメルは、ベネズエラの出身で、二〇〇四年、マーラー指揮者コンクールで第一位を獲得して、ロサンゼルス・フィルの次期音楽監督に内定しているという方です。指揮者としてスター街道を走ろうとしている、弱冠二十五歳の新進気鋭の指揮者であります。彼はベネズエラのユースオーケストラの出身であり、ここからは、彼以外にも数多くの演奏家たちが活躍しているようです。

 実は、このドゥダメルなどの音楽家たちを生んだのはベネズエラのある教育政策である、こういうふうに言われております。ベネズエラにはFESOJIV、フェソジブというんですかね、ベネズエラの若者と子供のオーケストラのための国家的財団という財団でございますが、そういうものがあって、全国で三百カ所の拠点でオーケストラの活動をしており、二十五万人の子供が参加をしている、こういうことです。ユースの年齢を過ぎた後も指導者などでこの活動を、国として支えているという活動をしております。

 興味深いのは、この活動は、すぐれた音楽家を、演奏家を育てようというふうに意図されたものではなくて、ベネズエラの貧困地域の子供たちを、クラシック音楽の練習、演奏を通じて育てていこうというのが真の目的だというふうに言われております。

 私が紹介したいのもこの点ですが、元文化大臣のホセ・アントニオ・アブレウ博士が、一九七五年、三十年以上前に、カラカスのガレージで十一人の子供に音楽演奏を指導したというところからスタートしたというふうに言われております。そのアブレウ博士は、子供たちを犯罪と貧困から救い善良な市民に育てるためにはオーケストラのクラシック音楽が一番いい手段だ、音楽で子供の情緒、感受性、協調性、人格が形成され、社会の発展につながるという信念から、全国規模でこの普及活動を進めてきた。

 先ほど、ちょっと野球の話がございましたけれども、野球も全国的規模の運動、活動になっておりますが、そういうことでございます。

 この趣旨に賛同した世界的に有名な指揮者たちが、カラカスに出向いてオーケストラを指導したり共演したりということが行われておりまして、今や世界的な支援の広がりを見せている、こういう状態になっているそうです。

 私は、このことを通して、地域に根差した文化、芸術と教育政策を融合したこの取り組み、大変すぐれたものだなというふうに思っております。一つの例ではございますが、そういう感想を持っております。

 日本では、先ほど紹介したような、教育の根本、社会情勢の変化とともに教育の根本を問われるような課題を抱えていると思います。学校教育における取り組みではなかなか十分な効果があらわれないようなことから、規範意識、先ほど大臣がおっしゃいましたその議論、最近では家庭教育にも目を向けていかなければならない、こういう流れになっております。しかし、そうした手法だけでいいのか。地域社会での取り組み、それからその支援こそが、今後の教育政策を進める上で大変この事例は参考になるものというふうに思いますが、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

伊吹国務大臣 全くお説のとおりだと思います。

 私も地元で、これは芸術じゃありませんけれども、スポーツ少年団というのがあって、そこのお世話をしているんですが、この指導者の方々が、自分の私生活、土日をほとんど返上して、無休で、そして、チームを形成している子供たち、補欠に至るまで、やはり集団のルール、そしてその中で人間として生きていかなければならない、いろいろなことを教えておられますね。

 ですから、今先生がおっしゃった、音楽、各地元の伝統芸能等につきましても、私どもの文化庁で事業がありまして、例えば中村吉右衛門さんとか、立派な方を各地に派遣をしてそういう触れ合いをしていただくとか、いろいろなことをやっておりますが、むしろ、先生の今の御提言は、継続的に地域でずっと同じ仲間が集まって、芸術を通じて、集団としてのルールを学んでいくということでしょうから、ひとつ御提言として受けとめさせていただいて、文部科学省もどういうことができるかは考えてみたいと思っております。

西委員 ありがとうございます。

 次の議論に移りたいと思いますが、教科書の問題です。教科書の問題というと歴史問題ということなんですが、もう少し基本的な問題についてお伺いしたいと思います。

 教育の基本はもちろん授業を中心に行われるんですが、この授業の質の高さを確保するには、一つは教員の資質、これは十分この間の特別委員会でも議論をしたところです。二つ目は、やはり先生が教える教科書の質ではないかと私は常々思っておりまして、この質が子供の教育を大きく左右する、こう思っておりまして、教科書の質、それからそれを支える教科書の予算の問題というのは今後避けて通れない問題になってくるのではないかと思います。

 今大臣に、中学校の歴史と理科の教科書を参考にお渡しをしておりますが、値段が、手元にあるこれ、平成十八年度の価格で、歴史教科書が六百九十五円、理科の一が、上下があるんですが、五百三十七円、四百六十一円。例えば、ほかの教科書でいうと、英語が二百九十三円、小学校で、音楽、図工が百九十五円、書写に至っては百四十四円、こういう値段でできております。

 私は、非常に内容の濃い、立派なものをそれぞれの教科書の出版社がつくっておられると思うんですが、まだまだ満足はしておりません、この内容については。ただ、これは限界があるということも十分、予算の範囲内ですから、感じておりますが、このことについて大臣の、教科書の評価、それからその価格等についてのお考えをお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 予算を預かっておりますので、墓穴を掘るようなことを言うといけないんですけれども、率直なところ、これだけのものが随分安いなという感じがしますね。逆に言うと、一般で市販されているものは随分もうかっているんじゃないかという印象も持ちました。教科書の無償制度というのは、憲法にまずその根拠があるほど重いものですから、内容をよくしていただいて、できるだけ国民の理解を得て、適正な価格で児童生徒に渡るように努力をしていきたいと思っております。

西委員 ぎりぎりのところでの記述だと思うんですが、やはり、これからの教育、もう少し幅を持った、もっと基礎的な部分の記述も欲しいと思いますし、もう少し、それを超えるような記述もあっていいんじゃないかというふうに思います。現場の先生方はそういう工夫をしながら、それぞれの生徒の能力に応じた教育をされているわけですから、そういう観点と、それから、もっと自分で学べるような教科書の仕組みというものもこれは考えていかなければいけない、こういうふうに思うんです。

 そこで、ちょっと時間がもうなくなってきましたので議論する余裕がなくなっちゃったんですが、最後に、今回の教育基本法の改正を受けて、新しい基本法のもとで教科書が、もちろん学習指導要領とも関連して出版されていくと思うんですが、この教科書のあり方に関して、もう一度根本的な問題について検討する、そういう会議か協議会かわかりませんが、そういうものを僕は設置していくべきではないか、こう思っております。

 その内容は、もちろん、小中高の教科書について、望ましい教科書とは何かということを学術的にきっちり検討していく。私どもの今議論をしていく、今後の新しい学校教育のあり方のそのベースになっていくものなんですね。学習指導要領はまだ余り詳しいところまでいきませんから、具体的な形にして、そして、どういうレベルの内容をどの学年に記述していったらいいのかという、そのもう少し具体的な部分を研究する機関をぜひともつくっていただきたい、そのための調査研究費も同時に上げていただきたい、こういう考えを私は持っているんですが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 本来、物の値段というのは、買う側と売る側のやりとりというか、あうんの呼吸で決まってくるわけですね。だから、使うのは多分学校現場の先生と児童でしょうから、この人たちが、どういうものであればわかりやすいとか、もう少し実証例を欲しいとか、そういうことの意見を聞くというのは、私は大いにいいことだと思うんですよ。

 ただ、内容について、どういうことを書くかとか、例えば極端な例を言えば、歴史認識についてどうするとか、あるいは数学でいえば、算数でいえば、やはり児童生徒の発達段階に応じて教える基準というものはあるわけですから、それを変えてほしいとか、そういう意見はちょっと聞きにくいですね。

 ですけれども、前者のようなものについてはよく聞いて、図表をもう少し入れた方がいいとか、そういうことを研究してみるというのは、御提言は受けとめさせていただきたいと思います。

西委員 時間が参りました。

 教科書の充実のためにも積極的な施策をお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

桝屋委員長 次に、牧義夫君。

牧委員 おはようございます。

 教育再生特を挟んで、また再びここに立たせていただいて、また大臣とのやりとりをさせていただきたいと思いますけれども、国会の院内、院外ともに、もう会期末も迫ってまいりまして、その後に参議院選も控えて、やや浮き足立った感がございますけれども、ここでは選挙関係なしに内容のある議論をぜひさせていただきたいとまず冒頭申し上げさせていただいて、質問に入ります。

 私ども、質問項目を簡単に事前に御提示させていただいておりますけれども、十分に所管する部局でお答えできる内容についてしか私はお聞きをしませんので、あえて簡単に事前通告をさせていただいて、大臣には、私と事務方とのやりとりをぜひお聞きいただいて、その都度、私から求められたときに御感想なりお考えをお答えいただく、そういう範囲内での質問を大臣にはさせていただきますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 前回、文科委員会で、私、著作権のことに触れさせていただいて、議論の入り口のところに入ったつもりでございます。そのとき、四月に行われた全国学力・学習状況調査についてもちょっと触れたんですけれども、そのやりとりの中で、この学力調査の問題に使われる原著作者の著作権の保護については一体どういうふうになっているんだという質問をさせていただいて、そのとき文化庁にちょっと聞いたものですから、著作権のことだから文化庁に聞いたんですけれども、文化庁の方はこの学習状況調査について余り御存じなかった、したがってちょっとちぐはぐな答弁があって、その後、大臣が適切に答弁をされたのを覚えております。縦割り行政の中で、私、本当はもうちょっとお互いに情報を共有していてもらいたかったなという感もあるんですけれども、大臣はそこで適切にお答えになりました。

 それは、私の質問というのは、原著作者の権利の許諾についてでありましたけれども、これを、民間のベネッセですとかあるいはNTTデータが問題作成までかかわっていたとすれば、これは営利企業がやる一つの営利事業ですから、これには許諾が必要じゃないかというお話をしたところ、文化庁の方はそうですと。ただ、大臣は、実態としてはこれは違うんだから、文科省でこれは実施しているものだからということで、これは許諾がないというお答えだったわけですよね。そこのところを改めて私は確認をしたいというところから入りたいと思います。

 再度確認をさせていただきますけれども、この調査というのは、ちょっと念のためにお聞きしたいんですけれども、これはベネッセがつくったわけでもないし、あるいはNTTデータが問題もつくったわけじゃないですね。念のためにお聞きしますけれども、これは省内で、どこでだれがこの問題をおつくりになっているんでしょうか。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 全国学力・学習状況調査の調査問題は、文部科学省の所轄機関でございます国立教育政策研究所が作成をいたしております。

牧委員 わかりました。

 それで、この間の大臣の御答弁ではっきりしたことは、今は今の回答でいいと思うんですけれども、もしこれが民間への丸投げでつくられた問題、作成された問題であれば、それは事前の許諾も必要だし、その権利使用にかかわる使用料ももちろん発生するという御回答だったわけですけれども、念のために、それでよろしいですね。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御質問ございましたように、今仮にという御質問でございますけれども、全国学力・学習状況調査の問題作成を、現在は国立教育政策研究所の方で作成をしておるわけでございますけれども、仮にという御質問でございましたけれども、仮に営利目的の民間業者に委託した場合には、民間業者がその著作権者にまさに使用料を支払う必要かどうかということにつきましては、その実施主体である、その場合文部科学省になりますけれども、そこと、問題作成の依頼を受けたところの関係などの実態に応じまして、個別の事例に即して判断する必要があるというふうに考えているところでございます。

牧委員 よくわかりました。

 それでは、関連して次の質問をさせていただきますけれども、大学等の入学試験、これについては、もう既に二〇〇三年、新聞等報道機関でも指摘をされておりますけれども、これは国公立も含めて、大学入試の問題を、民間である、具体名を挙げれば河合塾ですとか代々木ゼミだとか、そういったところが問題作成そのものを請け負っているという事例がもう既に二〇〇三年に指摘をされて、二十大学、二〇〇三年で国公立を含めて六十以上の大学、全国の約一割の学校の入試でこういった丸投げの試験問題が使われているということがもう既に指摘されております。これは二〇〇三年ですけれども、現在の状況についての文科省の認識をまずお聞かせください。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 国公私立の大学を問わず、大学の試験問題は各大学の責任のもとに基本的にみずから作成しているものと考えますが、一部の私立大学において、先生御指摘のように試験問題の一部の作成あるいは試験問題のチェック業務を外注しているという報道があり、そういう業者が存在しているということについては承知しております。

 なお、御指摘の、国立大学の試験問題は国立大学がみずから作成、点検をしているという実態もございますし、また、大学入試センター試験の問題は大学入試センターの責任のもと、みずから作成、点検を行っております。

 ただ、具体的に、国公私立大学の教員等が科目ごとに分かれて問題を作成するわけでございますけれども、その点検に当たっては、百名を超える国公私立大学等の教員及び高等学校関係者の参画を得ているという実態にございます。

牧委員 ちょっと今の御回答、決して十分だとは思わないんです。

 二〇〇三年当時報道されて、その時点でも、文科省大学入試室、決して望ましくはないが、基本的には大学の自由、ただ、批判を受けたときに説得力ある説明をできるようにすべきだとくぎを刺したとあるんですね。ここまではっきりとした文科省としての認識もされていたわけです。

 今私が質問したのは、では、今現在どういう状況なのか、何校ぐらいでそういうことが行われているのか、このときと比べてどう変わっているのかということもあわせてちょっとお答えいただくべきだと思うんですけれども。

清水政府参考人 お尋ねをいただきましたのに、申しわけございませんが、現在の実態の詳細については把握しておりません。

牧委員 それはちょっと、私、無責任だと思います。しっかりと状況を把握して、また後日改めてで結構ですから教えていただければと思います。よろしくお願いします。

 今のやりとりを大臣お聞きになって、やはり大学入試の問題ですから、事前に外に万が一でも漏れたらいけないわけで、その機密性の担保というのをしっかり図らなければならないということがまず第一だと思います。

 それからもう一つは、国公立はないというお話でしたけれども、では私学だったらいいのかということにはやはりならないと私は思うわけで、私学は私学の建学の精神というものがもちろんあるわけですから、どういう生徒を入学させたいのかという私学なりのアドミッションポリシーというものがやはりその入学問題に反映されてしかるべきだと思うわけで、そういう中で、入試問題そのものを外注に出している実態があるということについて、大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 まず、先生から、かつて二十大学ほどあったのに現状がどうなのかということを、把握しておりませんで、これはまことに行政のあり方として申しわけないことだと思いますので、早急に把握をさせて、理事会に御報告をさせていただきたいと思います。

 それから、おっしゃったように、外部に漏れてはいけないということ、これはもちろんです。漏れるおそれがあるという疑いを抱かせること、これはあってはなりません。

 それから、私は実態をよく把握しておりませんが、先生の御質問からすると、河合塾その他、私学を受験する可能性のある仕事に携わっているところが問題を作成するなどということは、極めてやはり社会的に問題があると言われても仕方がないと私は思います。

 それから二番目のお尋ねの、私学には建学の精神があって、どのような学生を採りたいかということは私学としてあるのは当然なんですが、それを放棄されて、私学自身が丸投げをされておられるということにむしろ問題があるんじゃないんですか。ですから、二番目の御質問は、私は私学に問題があると思います。

 あえて言えば、私学であろうと建学の精神があろうと、やはり、国民の税金である私学助成費を昭和四十数年からもう受領しておられて、国会でお決めになった法律のもとで教育をおやりになっているんですから、建学の精神という自由は当然維持しておやりいただいて結構なんですが、維持していくべき最低のルールだけはやはりしっかりしていただきたい。二番目のお答えはむしろそういうお答えではないかと思います。

牧委員 全く大臣の認識と私の認識は同じでございますから、ぜひとも文科省としての意思表示をしていただいて、アクションを起こしていただければと思います。また、具体的なアクションについてはお聞かせをいただければと思います。

 もう一つの問題、先ほどの著作権の話に戻りますけれども、では、民間が営利目的でつくった入試問題の中身の、著作者についての著作権の許諾、そしてまたそれに対する権利使用の対価、これは当然発生すると思うんですけれども、そのところはどういうふうに扱われているんでしょうか。無許諾でつくられているのか、そこら辺の認識をお聞かせいただきたいと思います。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 先生、大学入学試験を民間の業者に委託して作成する場合の問題でございます。

 これにつきましては、民間の業者と大学との関係になるわけでございまして、まさに著作権法の三十六条でも、試験問題の作成につきましては無許諾ということでございますけれども、営利を目的として著作物を利用する場合には補償金を払う、こういう規定があるわけでございます。

 この場合、大学入試問題を委託した大学と、それから民間業者との関係になるわけでございますけれども、その関係がどういったことかということで個別に判断されるということでございまして、そもそも民間の業者が営利を目的として試験問題作成をやっておる、そういうものを大学に売り込んでいく、そういった実態がある場合には、当然営利目的として民間業者は業をなしておりますので、その著作者に対して補償金の支払いが必要になるということがあると思っております。

 実際、大学で今入試問題を委託する実態があるというお話がございましたけれども、どういう形で大学が民間業者と関係を持っているかということを個別に判断して考えていかなければならない問題だというふうに思っております。

牧委員 個別に判断してと言いますけれども、河合塾なり代ゼミが営利を目的としないでやる場合というのはあるんですか。慈善事業でやるんでしょうか。これは、三十六条二項の営利目的ということはもう明らかじゃないですか。時と場合によるんですか。ちょっとはっきり答えてください。

高塩政府参考人 私もその実態をなかなか知らずに、また先日と同じようなお答えになって恐縮なんでございますけれども、まさに営利目的でやっている場合には補償金の支払いが必要になるというふうに考えております。

牧委員 営利目的の場合にはではなくて、営利目的以外にあり得ない話なわけで、そこのところはきちっと判断をして、しかるべき、まあ、行政としてしかるべき措置をとるのかどうなのかよくわかりませんけれども、先ほどの大臣のこの件に関する御認識とあわせて、やはりこの際こういうことはもう禁止すべきじゃないか。これは入試問題ですから、事前の許諾なんということはもちろんできないわけですし、そもそもこういうものになじまないんじゃないか。だから、もう一切、外注でそういうものを作成するということそのものを文科省としてきちっと、取り締まると言ったら変ですけれども、させるべきじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 これは非常に、ちょっと、そのことだけを取り上げると、もう先生がおっしゃっていることに私は全く賛成なんですよ。

 先ほど、スポーツ団体にというお話がいろいろあって、私はそのことにちゅうちょしていると申し上げたのとよく似たことがありまして、国立大学はもう今やなくなって国立大学法人になって、自主的判断を国立大学だってゆだねているわけですね。だから、私立の大学の運営そのものについて、どこまで、要するに政治というか行政が介入できるのかということですね。

 そして、先ほど政府参考人の答弁は、聞いておって、非常に歯切れが悪いと私も思いましたが、やはりグレーゾーンみたいなところがあって、当該問題の作成については利潤を上げない対価で作成をしているけれども、後、予備校に学生が来たときに、大学との間の、例えば大学での見学だとかいろいろなことについての便宜を当該大学に払ってもらうというようなことを、代々木ゼミだとかそういうところが別途のベネフィットみたいなものを持っていた場合はどうだとか、いろいろなことがあるんだと思うんです。契約の内容は私はわかりませんが。

 しかし、基本的には、先生がさっきおっしゃった最初の方の理由から余りそういうことは望ましくないんだということは、一応私は促すということはしたいと思います。禁止できるかどうかは、このことについては、そのことが非常に望ましいことはわかりますが、そこへ一たん権力が手を突っ込みますと、あらゆるところに同じようなことが生じ得る可能性がありますので、極めて私は抑制的にやりたいと思いますから、促してみましょう。

牧委員 前向きな御答弁ありがとうございます。文科省としての、まあ強制力はないにしても、やはり一定の姿勢というか、促すという表現でしたけれども、一定の姿勢は示していただきたいなと切に望むものでございます。

 それでは次に、教育現場、主に義務教育の現場で使用される図書教材について質問をさせていただきたいと思います。

 皆様のお手元に、これは小学校、ちょうど中間をとって四年生の教育現場で実際使われている、いわゆるワークテストというんですね、最近。最近かもうかなり前からかよくわかりませんが。現実に、教科書に準拠したワークテストというものが各教室で使われて、学校の先生がこれを使って授業を進めているというのが実態でございます。

 皆様方のお手元に届いておりますけれども、こういうワークテストについて、教育現場における著作権保護に関する予備的調査という、平成十八年、去年の二月、調査局がまとめた調査がございますけれども、全国の小学校数の約八六%、二万四十五校の小学校、それから中学校の約三四%、特に小学校の現場ではもうほとんどと言っていいぐらいこういったワークテストを使っているという現状が浮き彫りになっております。

 このことについてちょっと質問を進めさせていただきたいと思うんですけれども、現在の各採択された教科書に応じたこういうテストが各児童に配付されて、先生が授業を進めるんですけれども、その販路、販売ルートだとか、あるいは父兄の負担についての文科省の認識をまずざっと簡単にお聞かせいただきたいと思います。

銭谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 学校で使用されます教科書以外のテストやドリルなどの図書教材の販売方法についてでございますけれども、これは、図書教材を出版しております出版社により組織されております社団法人の日本図書教材協会から伺った話によりますと、一般的には、ほかの書籍とは異なりまして、取次や小売書店を経由せずに、出版社と契約を結んだ特約販売店から学校に直接販売されているというふうに伺っております。

 具体的には、特約販売店が学校に見本を届けまして、学校において審査し採用されたものが特約販売店から直接学校に供給されているというふうに承知をいたしております。

 学校で使用される教科書以外の教材については、学校の設置者であります教育委員会が、その取り扱いについて、地教行法の三十三条の二項に基づいて定めをするわけでございますが、多くの教育委員会においては、各学校がどのような教材を使用するかを判断し教育委員会に届け出る旨の定めを設けているというのが通例でございます。

 それから、実際に図書教材にかかる保護者の負担というお尋ねでございますけれども、これはいわゆるテストやドリルに限定したものではございませんけれども、文部科学省が平成十六年度に行いました子どもの学習費調査によりますと、授業で使用いたします辞書などの費用も含んだ経費でございますけれども、教科書以外の図書費として、公立の小学校では一学年平均千八百五十一円、それから公立の中学校では一学年平均四千二百四円、保護者が負担をしているということでございます。

牧委員 ちょっと後で触れますけれども、今の局長の御答弁だと、各教材図書出版社の特約販売店があって、そこが売り込みに行っているんだという御説明ですけれども、正確に言うと、これはそうじゃないんですね。日本図書教材協会と表裏一体の販売協会、そこが窓口になっていて、そこの特約店が配っているわけで、各社の特約店じゃないでしょう。私は、そこに問題の一つがあると思っておりますので、それをまた後ほど触れさせていただきたいと思います。

 皆様のお手元に配らせていただいた資料の中で、この一枚紙がございます。「ひまわりグッズ」と上に書いてあるものですね。これは、あるワークテストの巻末の部分のコピーであります。下の方をごらんいただいておわかりになると思います、社団法人日本図書教材協会の「テスト・ドリル・ワーク等の複製禁止について」という文言がございまして、これは大体ほとんどの教材の巻末には、どの社の教材にもこの注意書きが書かれているわけで、ここには、要するに、現場の学校の先生がこの図書教材を勝手に複製して生徒に配って使ったらこれは権利の侵害であって、その権利の侵害に対しての補償をしてもらいますよということが必ず巻末に書かれているという実態がございます。

 これについて、私も、十分たくさんの現場からの声を吸い上げたわけではございませんけれども、何件かのお話を聞いております。やはり、学校の先生、著作権についてはそんなに詳しい知識があるわけでもないし、ともすると、学校の授業で使うんだからこれをコピーとったっていいじゃないか。私はいいと思うんです、これ。許諾は必要ないと思うんですけれども、ただ、こういうふうに警告をされる。

 中には、これは数年前の話ですけれども、ここでは匿名にしておきますけれども、著作権侵害による損害賠償ということで金十万円を請求されたというケースも現実にございます。この損害賠償というのは学校で負担するわけにもいかなくて、仕方なしに、同じ学年を担任する先生方がお金を出し合ってこれを払ったという例も聞いております。

 私、これを聞いたときにちょっと合点がいかなかったのは、やはりこの権利というもの、まず、学校現場でこういうのが権利の侵害に当たるのかどうなのかというのも一つ議論があると思いますし、この権利というものが、図書教材協会が自分のところの著作権を主張するその権利と、図書教材出版社が原著作者の著作を二次使用していることの権利の侵害と、このお互いの権利のバランスというものがやはりあろうかと思うんですね。

 前に、著作権法改正で、薬事行政手続だとかあるいは特許申請のときの許諾の話がありましたけれども、そのときも私ちょっと触れたんですけれども、例えば薬というのは特許権で守られている、いるからこそ薬の代金というのは高いわけで、本来もっと安くなった方が医療福祉の向上のためにはいいと思うんですけれども、ただ、やはり権利で守られているからこそ製薬会社は本当に莫大な資金を投入して新薬の開発ができる、そういうバランスの上に成り立っていると思います。やはり、そこら辺のバランスというのは、すぐれて政治的な判断というか、そういうものによってきちっと支えられなければいけないと思うんですね。

 そういった意味で、私は、今つまらない例を取り上げましたけれども、こういったことというのは、本当にそういったことで権利のバランスがとれている話なのかどうなのか。まず大臣、感想だけちょっとお聞かせいただきたいと思います。簡単で結構です。

伊吹国務大臣 ちょっと、この問題はやはり事実関係にのっとって判断をしなければならないと思うんですが、これは、ずっと今先生からちょうだいした資料を拝見しておりまして、まず教科書を作成する場合に、教科書に引用をされた著作権について教科書会社が対価を必ず払っているのかどうなのか。もちろん、夏目漱石のようにもう著作権がなくなったものは別としまして。

 それから、その教科書を引用してこういう教材をつくった場合、教科書会社と多分これは同じ会社がつくっておるんじゃないかと思いますが、違うんですか。違うのであれば、その教科書会社が著作権を払っているものについては、引用した作成会社は当然著作権の対価を教科書会社に払わなければならないですよね。それをやっておるのかどうなのか。

 そういう事実関係を十分調べた上で、ずっと著作権の対価をこの教材作成会社までが払ってきているということであれば、そのときに、限定的にコピーをして使ったものと、かなり大量にコピーをして使用したものと、いろいろ内容に差が出てくると思いますから、ちょっと、一般論としてお答えするのは非常に難しいと思いますが、自分たちが著作権料を払っていないものについて教材会社が著作権を主張するということは、これはまことにやっちゃいけないことだと思います。

牧委員 ちょっと事実関係を十分に大臣が御認識をされていないので、それはされていなくて当然だと思いますから結構なんですけれども、されていないので、ちょっとざっと簡単に説明させていただきますと、日本図書教材協会に加盟する教材出版社があるわけですね。何社かあって、そこが、教科書会社の、検定を通って採択された教科書をもとに、各現場で使われるこういったワークテストを作成するわけです。

 この日本図書教材協会という一つの団体と、それから教科書会社、教科書を出版する教学図書協会という任意団体ですけれども、そことの間のやりとりがあるんですね。

 これは毎年毎年二億円近く謝金というものを払ってきた。その謝金の中身についてはまたいろいろこれまでの経緯があって、かつては白表紙本を流用していた、それを事前に横流ししていた、それに対する謝金であったということが問題化をして、これについては文科省も厳しい態度をとって、そこはきちっと改められた。ただ、その謝金の仕組み、システムそのものはいまだに残っているわけです。それは何の対価かということは、かつて裁判でももう決着がついたわけで、この謝金というのは、現在は著作権、教科書の編集著作権です、それに対する二次使用の対価だという形でこの団体間の決着はついているわけです。

 ただ、これから私が申し上げたいのは、今お配りした資料、この中に、今、五通りの資料がございますけれども、実は、これは教科書会社との間の決着だけでは十分じゃないんですね。教科書の中で使用されている原著作者の著作権は一体どうなっているんだ、それについての二次使用の許諾は得ていないじゃないかということがもう既に指摘をされて、訴訟も起きています。この日本図書教材協会傘下の会社が抱える訴訟だけでも、もう既に、既にというか現在かな、そこら辺の認識はあるのかどうかはお聞きしようと思っていましたけれども、私が聞くところによると、もう現時点で三十七名の原告がいる、被告が三十社、延べ三十社、これだけの係争案件を抱えているというのが現状です。

 そういう中で、では、もうこの会社には使用許諾をしないということをはっきり著作者の団体なりなんなりから言われているところの教材を、実は今皆様方のお手元にお配りさせていただきました。ちょっとごらんになっていただきたいと思います。

 これは、同じ教科書についてのワークテストです。一つは、明治図書というのがお手元にあろうかと思います。一番上にあるかな。この表紙をごらんいただきたいと思うんですけれども、表紙の「国語」と書いてある横、左横です、黄色い欄に、「明治図書のテストには「教科書を開いて答える」問題はありません。」と、わざわざうたっているんですよ。大臣、それです。これは、明治図書のを見ると必ずこれが書いてあるんですね。こんな当たり前のことが書いてあるんですけれども、では、ほかの教材出版社のものを見ていただくと、あえて明治図書がそういうことをうたい文句にする理由がよくわかると思うんです。

 同じような問題ですけれども、教科書の五十四ページ三行目から五十七ページ三行目までを読みましょうと。教科書を開かせて、それで、それに対する設問があるわけですね。これは、私がさっき御説明申し上げたような理由で許諾が得られないので、教科書を開いてこの問題をやってくださいという形になっているんですよ。

 まず、私は、教育現場のありようとして、これは異様な光景だと思うんですよね。こういうちゃんとしたのもある中で、別に私、ここから頼まれてこういう質問をしているんじゃないですよ、全く関係ありませんけれども、こういうのがある一方で、許諾の得られないものはもう穴あき、穴あきワークテストですよ。こういうものを使わざるを得ない学校現場というのも寂しいなと私は思うし、こんな穴だらけのものだったら、学校の先生が問題をつくればいいじゃないか。教科書をコピーして自分で設問をそこに、教科書を学校の先生がコピーしたっていいわけですから、いいわけでしょう。それをもとに、下に設問をつくって、それで学校で印刷をして生徒に配ればそれで済むわけですよ。それを、なぜこういうものをわざわざ購入してまで使わなきゃいけないのか。

 その実態を私は大臣にも認識をしていただきたいと思いましたし、これまでの教育再生の中でも、教員の指導力のお話もありました。こんなことをやっていて、本当に教員の指導力が向上するのかなと思わざるを得ないと思うんですけれども、私のちょっと雑駁な説明でしたけれども、ちょっと、これまでのところの大臣の感想を簡単にお聞かせいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 実態は、先生から今教えていただいたことで十分私は理解をいたしました。

 学校の先生がつくるというのが最もそれは望ましいことでございますから、そういう学校の先生が問題をおつくりになるような時間、余裕を持ってお考えいただけるようにする、これが私の仕事だと思います。

牧委員 ぜひ、十分御認識をいただいて、今後の取り組みをお願いいたしたいと思います。

 時間が余りございませんので、私は、この団体、日本図書教材協会、それから販売を担当する、表裏一体の全販協という団体との問題についてもうちょっと深く掘り下げて質問させていただきたいと思っておりましたけれども、次回にそこら辺は回したいと思います。

 ただ、時間のある限りでちょっと申し上げさせていただきたいと思うんですけれども、そもそもこの日本図書教材協会、これは公益法人ですから、会長も元初中局長という方が天下りをされているわけで、何年かすると銭谷さんもそこの会長になるかもしれませんけれども、やはりそういう団体だからこそ、もうちょっと規範意識を持っていただかなきゃ困るわけだし、白表紙本の問題が解決したとしても、では、この団体の設立の趣旨からして、今存続する意味というのは一体何なのかということを考えたときに、それだけ多く抱える係争案件、これをまさに護送船団方式で守るための団体であるとしか私には思えないんです。

 実際に数字を申し上げれば、有力な何社かの中で、例えば小学校八十何%と言いましたけれども、全国で約二万校ですよ、これを購入して生徒にやらせている学校が。二万校のうち、一々生徒に教科書を開かせなくても済むような、ちゃんとした原著作者の許諾を得ている、こういう教材図書がでは実際どれぐらい採用されているのかというと、四百八十ぐらいなんですよ。値段も若干安いんですよ。使い勝手もよくて、ちゃんと原著作者の許諾も得ている、しかも値段も同じか安い。そうしたら、普通の市場の原理からいったら、こういうものが採用されてしかるべきだと思うんですけれども、二万校のうちわずか四百数十校というのは私は異常な数字だと思いますけれども、大臣、どう思われますか。

伊吹国務大臣 値段、使い勝手からいえば、先生がおっしゃっていることが当たっているんじゃないかと思いますね。

牧委員 十分時間がございませんから、また後日、今度ここに特化をしてもう少し掘り下げていきたいと思います。

 質問を終わります。

桝屋委員長 次に、高井美穂君。

高井委員 民主党の高井美穂です。

 大臣におかれましては、連日の質疑、大変お疲れさまでございます。教育特の方で、まだ参議院の方でさまざまな質疑が続いておると思いますが、本日は、私、三点について大きく伺いたいと思います。

 第一点目は、実は、教員免許更新制の件で一つだけ確認しておきたいこと、前回、質疑時間が足りなくて積み残した分がございまして、これだけ、政府参考人の方からで結構でございますので、一つお伺いしたいと思っています。それから学校週五日制について、そして大学の運営費交付金について、大きくこの三点に分けて、今すぐにすべての答えをいただこうというわけではございません、次の国会、次の委員会等につながる現状の認識、把握、お考えで結構でございますので、お答えをちょうだいしたいというふうに思っています。

 では、まず教員免許更新制でございますけれども、ちょっとペーパーティーチャーのことについて確認がしたいのでございます。

 今までに取った取得者は有効期限がなしというふうに認識をしております。ただ、本法案施行後、教員免許を取得して、それでペーパーティーチャーとなった者は、逆に言うと十年で失効してしまうという認識でよろしいのでございますでしょうか。

銭谷政府参考人 今回、改正法案を提出しているわけでございますが、改正法案の施行後に免許状を受けた方につきましては、現職教員であるかペーパーティーチャーであるかを問わず、その免許状に十年の有効期間の定めがあることになります。

高井委員 ということは、私が例えば来年大学を出て免許を取得したとします。それから、教員になれなくて、例えば十年たったとします。そうしたら、十年後には教員になって講習を受けなければ失効するということでいいんだろうというふうに思うんですけれども、例えば、免許を取ったけれども残念ながら先生にはなれない、採用枠がないということで、十年たってしまいそうな方で、免許を持っていたいんだ、更新講習を受けたいんだという人に対しては、今のところはまず、受けたいという申し出があったとしても受けられないということでいいんでしょうか。

銭谷政府参考人 免許更新講習は現職の教員を対象に実施をいたしますので、ペーパーティーチャーの方は、採用内定などを得ていれば別でございますけれども、更新講習を受講するということはできないことになっております。

高井委員 例えば先生にはなっていないけれども塾の講師をするというときに、大学を出て、免許を取ったんだけれども、十年たってしまったということになると、履歴書に書くときに、私は教員免許を持っているというふうに書けなくなるということなんだろうと思うのですね。本法案施行後取った場合というのは、そういうふうになるんだろうと思います。

 これは大事な点でございまして、先生になる人以外は教員免許を取らないというふうな方向になってしまうのではないかということも一つ懸念をしておりますし、十年講習で一年間に十万人という試算が出ておりますので、現職の先生を優先させて、ペーパーティーチャーである方とか、例えば民間人校長であるという方とかは受けられないということになるんだろうと思うんですけれども、制度をこれから整えていく中で、希望すれば受けられるような仕組みに必要なことをしていく必要があるのではないかと思うんですけれども、大臣はこの点、いかがお思いになりますか。

伊吹国務大臣 その前に、参考人の答弁はそのとおりなんですが、極めて紋切り型の答弁をいたしましたんですが。施行後に免許をお受けになった方でも、例えば十二年目に教職におつきになった場合は、その時点で、おつきになる前に申し出られて、当然研修をお受けになって、教員免許がそこでよみがえると言うといけませんが、教員におなりになるわけですね。ですから、塾の教師その他の履歴書をお書きになる場合は、何年何年に教育免許を取得したということをお書きになるということによって、将来、研修を受ければ教員免許を保持できる資格のある者だということを表示なされる道はあるということですね。

 それにプラスをして、とりあえず、予算その他の制約がありますから、十年で動かしてみて、将来的に先生のおっしゃっているようなことが予算その他の範囲でできるかどうかは将来の検討課題というふうに受けとめさせていただきたいと思います。

高井委員 ありがとうございました。

 弾力的な運用をしていただけるということで御理解を申し上げました。

 ただ、十二年目というふうに大臣もおっしゃいましたけれども、多分二年ぐらいの猶予期間というか、十年過ぎても二年間ぐらいのうちに受ければいいというふうな法の仕組みになっていると思いますが、例えば十三年、十四年になったときでも復活してできるのかどうか、確認をお願いします。

伊吹国務大臣 これは、仕組みとしまして、施行後十年でお受けにならなければ教壇に立てなくなる可能性があるということであって、別に二十年後でも二十五年後でも、研修で認定をお受けになれば、その時点で教員免許というものは復活いたします。

高井委員 ありがとうございました。今の御答弁で私もよく理解ができました。

 それでは、学校週五日制のことについて少しお伺いしたいと思っています。

 先週末からここ一週間ぐらい、教育再生会議の議論が報道されました。大臣も恐らく、教育再生会議についてはさまざまな思いがあるんだろうというふうに思うんですけれども。

 私もこの提言、この間、六月一日に出た提言を拝見いたしました。報道の中の幾つかでは、学校週五日制見直しの方向に提言が出されたというふうには出ておりましたが、よく拝見をすると、「国は、学校週五日制を基本としつつ、教育委員会、学校の裁量で、必要に応じ、土曜日に授業(発展学習、補充学習、総合的な学習の時間等)を行えるようにする。」というふうに書かれておりました。

 そこで、出されたこの第二次報告の中では提言だけが細かく書かれておりますが、この提言の背景について、どういう認識に基づいてこういう方向を出されたのか、少し踏み込んでお聞きしたいと思うんですが。

 本当ならば山谷補佐官に来ていただければ一番その辺は詳しいだろうと思うんですが。伊吹大臣は直接教育再生会議を取り仕切る立場にないということでございますので、これは内閣官房の方、参考人の方にお伺いしたいと思います。

 今申し上げた、学校週五日制についての提言の背景にどういう議論があったか。つまり、土曜日復活というのは、学力低下を招いたんだ、だから、もう一回戻すような議論をしなくてはいけないんではないかということが背景なんでしょうか。

山中政府参考人 教育再生会議の第二次報告でございますけれども、この中で、先生御指摘のように、「国は、学校週五日制を基本としつつ、教育委員会、学校の裁量で、必要に応じ、土曜日に授業を行えるようにする。」という提言が行われたところでございます。

 第一次報告におきまして、現在の教育においてしっかりと基礎、基本を徹底する、あわせて、知識を生かす応用力を身につけさせる、そのためには、授業時間がすべてではございませんけれども、授業時数一〇%増等々を提言したところでございます。

 この授業時数一〇%増というものを具体的にどうやるんだということについて、さらにその具体策を教育再生会議で検討したところでございますけれども、まずは、現在の夏休みの活用ですとか、あるいは四十分授業にして七時間目の授業も実施するとか、いろいろな学校五日制の中で弾力的な授業設定ですとか、それぞれの地域に応じた形での工夫というものをやっていただいて、そういう中で授業時数一〇%増は生み出せるんではないか、こういう議論があったわけでございます。

 その中で、さらに、例えば総合的学習の時間のように、地域の方の力をおかりした方がより効果的な授業ができる、そういう授業もあるだろうといった議論の中で、学校五日制を基本としながらも、教育委員会あるいは学校の裁量、判断によって、土曜日も活用するということも考えたらどうかという議論があったところでございます。

 そういうものも踏まえまして、今回の提言では、学校週五日制を基本としつつも、それぞれの地域の実情に応じた形で、教育委員会、学校の裁量で、必要に応じて、土曜日に授業も行えるようにするという提言に至ったということでございます。

 以上でございます。

高井委員 授業時間数を一〇%ふやさなければいけないという話の背景には、今教えている内容が少な過ぎるということなのか、それとも、今教えている量はいいけれども、もっと丁寧に教えるか、何がしか、もう少し知識の量をふやすべきでないか、そういう認識でいいんでしょうか。

山中政府参考人 授業時数一〇%増というのは、ことし一月の第一次報告のところで提言したところでございますけれども、ここでは、総授業時数につきまして、例えば、前の学習指導要領よりも七%減というのが総授業時数でございます。

 また、一〇%の授業時数増をしても、国際的に見ましても、国際的に今、ほかの国は大体学校五日制をとっておりますけれども、そういう中でも中程度のグループ、授業時数が少ないグループではなくて、中程度のグループということもございます。

 そういうことも踏まえながら、しっかりと基礎、基本の反復、徹底を図る、プラス、知識を生かす応用力を身につけるような教育を実現する。そういうためには、授業時数だけではなく、先生の指導力の問題ですとか、教えるための指導方法の工夫ですとか、あるいはITとかそういうものを活用したいろいろな効果的、効率的な教え方、いろいろなことがございますけれども、それにしても、授業時数というものについてもしっかりと確保していかないと、基礎、基本の反復、徹底、それを踏まえた形での応用力を身につけさせる、そういう教育というものが十分できるかどうかということで、一〇%の授業時数の増というところを提言したところでございます。

高井委員 先ほど御答弁の中にも、幾つかの国でも学校週五日制をとっているという話もあったように思いますけれども、たしか教育特の委員会でも、学習時間と学力の関係はどうなのか、また、本当に日本の子供は学力が下がっているのか、いろいろな議論があったというふうに思っています。

 私は、やはり学力低下の原因の一つに学ぶ意欲の低下があるのではないかというふうに感じておるところでございますが、大臣は、今ほど来の教育再生会議の提言の背景にあることを受けまして、土曜日授業を復活していくということを必要だというふうに考えておられるのか、今の御認識で結構ですので教えていただきたいと思います。

伊吹国務大臣 先生、御質問の際に、土曜日の復活というふうに新聞報道があったけれども、詳細に読んでみると、週休二日制というか週五日制を基本としてと書いてあるというので、随分やはりしっかりとお読みになっているなと私は思って御質問を聞いておったんです。

 しかし、その後、土曜日の授業の復活、復活というお言葉を使っていらっしゃいますが、土曜日に完全に授業をするということは再生会議は決めていないと私は思います。授業数がふえれば学力が上がるかどうかについては、御質問のようにいろいろな意見があって、必ずしもそれに結びつくとは私は思いませんけれども、しかし、総合学習という時間で基礎学習の時間を若干削減して、そして週五日制が導入された後のOECDの調査等を見ると、残念ながら、学力が国際比較から見ると下がってきているという事実はあるんですね。ですから、再生会議が言っているのは、土曜日も活用して授業数をふやしてくれないかというふうに私は理解しております。

 ですから、提言はいろいろ、提言はだれでもできるんですよ。しかし、現在の労働法規がまずございますね。週四十時間、そして、裁量労働制をとる場合は労働基準法によれば一カ月ですよ。もちろん、地方公務員には労働基準法は適用されませんが、地方公務員法その他で同様の規定が行われているわけです。

 その中で、土曜日をどう活用していくかということは、これは文部科学省にお任せいただかないといい仕組みはつくれませんので、土曜日を活用してやってほしいということであれば、こちらとしてはお引き受けをするということは申し上げて、新聞やマスコミ等からいろいろ意見を求められましたけれども、一次報告から見ると、二次報告はかなり現実の制約の中に立った御提言になっていると私は受けとめているということを申し上げたわけです。

高井委員 大臣、提言はだれでもできるとおっしゃいましたけれども、総理からきちんと委託を受けたこの教育再生会議というところの提言というのは、非常に次の方針に反映される可能性も高うございますので……(伊吹国務大臣「だから、そうしているんですよ」と呼ぶ)いや、だからこそ注目をして見ているわけでございます。

 大臣は今、文科省に任せてください、土曜日を活用するということをおっしゃいましたけれども、明らかに「土曜日に授業を行えるようにする。」というふうに提言には書いてあるんですね。つまり、これは、土曜日の授業を復活させる学校が出てもいいというようにする、方針でいこうというように私は読んだわけでございます。

伊吹国務大臣 先生の御理解は何ら間違っておりません。

 しかし、現在でも土曜日に授業を行っている学校はございますよ。それはよく御存じでしょう。現行法律だってできるんですよ、振りかえ休日その他を使えば。

 ですから、土曜日に授業を行えるということは、授業時間数を大幅にふやして土曜日を復活させるということであれば、先ほど申し上げているように、地方公務員法を変えるなり、定員をふやすなり、予算をふやすなりしなければできません、それは。

 しかし、現行制度の中でも土曜日に授業をやっていることは御存じなんでしょう。ですから、それは、土曜日に授業をやれるようにしてくれとおっしゃったら、今だってできておりますから、それはこちらでお引き受けしますと言っているわけです。

高井委員 大臣から見られればそうだろうと思いますが。

 私ども現行制度でできるのもよくわかっております。いろいろなところが取り組みをしているのもよくわかっているつもりです。でも、それならば、こんなことはやっているから、教育再生会議、こんな提言はむしろ無意味ですよね、今やっている中でということですから。(伊吹国務大臣「そんなことはありません」と呼ぶ)現状、できるわけですよね。それをまた違う制度に変えようとするとなると、さっき大臣がおっしゃったように、さまざまな法整備ほかの整備が必要になってくると思うんですけれども。そこへ踏み出すかどうかというのを現場もやはり注目しているだろうと思いますし、私たち保護者にとっても、これは方針転換なのかどうなのか、これからどういうふうにしていくかということをお聞きしたいわけで。

 現状、維持できているから、このまま、現場でそれぞれに努力してくれる状態でいいというふうに思っていいんでしょうか。

伊吹国務大臣 現状は、やっている学校とやっていない学校がございますね、現行制度でも。現行制度でもできるけれどもやっていない学校の方が多いでしょう。それをみんな一律に、現行制度でやれることならやっていただくように促していくということも提言の一部じゃないんですか。そして、先生がおっしゃったように、法律を改正して大幅にやるというやり方もあるでしょう。

 しかし、それなら、提言はだれでもできると私が申し上げたのは、まさにそのことなんですよ。法律を変えて、そして定数をふやして、予算をつけるという裏づけがない提言をなさっても、それは、単に提言ならだれでもできるという批判の対象になりますよと。

 ですから、できる範囲の中で私はやりますし、予算をふやす必要がある場合にはそういうふうに努力をいたしますから、そのことをきちっと再生会議の提言の中に書いてくださらないと困りますよということを私は申し上げたということです。

高井委員 提言は提言で、その後は大臣の権限ではないんでしょうか、予算をつけるかどうかは。何か、骨太の方針に、六月に出されるというふうなこともちょっとお聞きをしたんですが、その中に盛り込まれるかどうか。今、教育行政の一番の責任者である文部科学大臣が盛り込みたいかどうか、そういう意思というのもやはり反映されるだろうと思いますけれども。提言は提言で、多分、それ以上のもっと細かい制度や何かについて、予算措置までやはり教育再生会議は提言するものなんでしょうか。だから、文部科学省としてどうなさるのか。どういうふうにお考えなのか。盛り込んでいく方向であるのか、お聞きをしているわけでありますけれども。

伊吹国務大臣 そういう細かなことは教育再生会議は何も責任は持たないけれども、言いたいことを言うというだけならだれでも言えると私は言っているわけです。

 教育再生会議がそれほど、自分たちの提言が大切だと思われるのなら、予算の提出権というのはもちろん内閣にありますよ、しかし、内閣を構成する各国務大臣は共同して国会に対して予算提出の責任を負うんですよ。だから、私一人が予算をつけようと思ったら、それは文部科学大臣の責任じゃないですかとおっしゃるのは簡単です。しかし、一度政権を御担当いただければ、そして先生が文部科学大臣におなりになれば、そんなに簡単なものじゃないということは、それは外から見ていてもおわかりになるでしょう。

 私がそういう努力をし、提言をしたときに、せめて内閣全体に対してのメッセージぐらいは発揮してもらわないと、言いっ放しですべて文部科学大臣がやれやれという再生会議は、ちょっとそれはひどいんじゃないでしょうか。

高井委員 それはもう、私も政権与党にはなったことがないので。外で見る限り大変だろうと思います。では、一回渡していただければその大変さもわかるかもしれないので、その時期を楽しみにしておりますけれども。

 ただ、いかに大変だろうと、文部科学行政を背負ってやはり伊吹大臣が内閣で物を申すという一番の責任があられる方でございますから。

 この教育再生会議というのは総理がお願いしてつくられた会議ですよね。総理自身がこの提言を骨太の方針に反映させていこうというお考えがあるというふうに報道でも書いておりましたし。議論だけして、反映もしないんだ、取り入れもしないんだ、参考にもしないんだということにはならないと思いますので、その点で確認をしておるわけでありまして。難しいから難しいから、大変だからあなたたちじゃわからないというふうに言われたって、そうしたらもう国会の質疑はできなくなりますよ。

 私はわかりません、大臣になったこともございませんし、官僚になったこともございませんので。だから、そういう意味で、もうちょっと真摯な御答弁をお願いしたいと思いますが。

伊吹国務大臣 一番真摯な答弁をしているつもりでございます。

 政権を渡していただいたらとおっしゃいますが、私は民主党に政権を渡す力はございません。国民の選挙による負託をとって政権を御担当ください。

 その上で、あらゆるところで私は私なりの努力をいたしております。それは、今度初めて骨太の方針に教育再生という項目が書かれることになっております。その内容をどう詰めるかについては、今いろいろな意見がありますから、まだ白紙の状態なんです。こんなことは初めてです。今までの文部科学大臣では、そういうことはございません。そして、あらゆるところで私は努力はいたします。

 しかし、これも、私が政権をお渡しするのではなくて、選挙にお勝ちになって国民の負託を得て政権をおとりいただければおわかりになることですけれども、あれをやるこれをやるというのは、まず、国民負担をどれだけ国民に求めるか、その求めた国民負担をどの予算項目に配分するのか、そして、文部科学費として配分された予算の中で、土曜日の活用に予算を配分するのか、高等教育に予算を配分するのか、みんな限られた国民負担の中でやるわけなんですよ。その作業は年末までかかるんです。

 ですから、今私がここで、土曜日の活用をするために予算をとりますとかどうだとかということは、それは私の立場としては申し上げられませんよ。全力を尽くしているわけですから。

 ですから、私が申し上げたのは、提言をしてそれだけ大切だと思うのなら、せめて私の努力の後押しをすることぐらいは再生会議の提言の中に書いていただかないと、言いっ放しになりますよということを申し上げているんです。

高井委員 そういうふうに、現状どのような議論が行われているかを私は知りたいのであって、今大臣がまさに本音を吐露されたと思います、全く白紙の状態だと。

 まさに、だれがどう負担するようになるのか、税金をどうするのかという問題こそ国会でやるものですし、今、開会中でございますから、現状は白紙だということを国民の皆さんにもわかっていただかなきゃいけない、そうしたら、後押しも国民の皆さんにもしていただかなきゃいけない、そのために議論をして、ここでできるだけわかるように伝えようと。

 全然議会でないところで議論されたことを、私たちは見ることができませんし、文部科学省がこれからどういう方向でいくのか、どう考えてこの問題に取り組んでおられるのか、まさに今大臣がおっしゃったような議論が、今全く白紙であるならば、では我々もそういうつもりで、教育再生会議が引き続きどういう議論をしているのか見ていかなくてはならないですし、それに伴って行政である文部科学省が方向性を決めていくのか注視しながら、時折こうして質問をしてお聞きしていきたいわけでございますので。

 もちろん大臣の御努力は、本当に私は敬意を表しております。牧議員も先ほどおっしゃいましたけれども、大事なことは一緒にみんなでつくり上げていく。国会ですので、対決すべきところはいろいろありますけれども、教育に関してはぜひ御尽力をいただきたい。私どももできる限りのことをしたいというふうに本当に真摯に思っておりますので、どうぞ、今後も頑張っていただきたいというふうに思っています。

 それで、学校週五日制というのは、完全実施までに随分と時間をかけました。月一から始まり月二、そして完全実施になって五年ということでございますけれども、例えば、学校週五日制に対する総括といいますか、ゆとり教育に対する総括。その点については、今、これまでの教育行政、ゆとり教育、学校週五日制の制度の導入がどうだったのか、うまくいったのかうまくいっていないのか。感想というか今のお考えで結構でございますから、御認識をお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 週五日制というか週休二日制、土曜日を休みにするということは、私は、教育の分野だけではなくて、かなり定着をしてきていると思います。そして、世論調査なども見ますと、土曜日に学校を開いてくれという御要望は非常に高いですよ、七割ぐらいあります。しかし、それはどういう動機から出ているのか。つまり、土曜日、子供を学校の方で責任を持ってもらいたいという動機から出ているのか、教育のために土曜日を使ってほしいという動機から出ているのか、この辺はよほど慎重に見きわめないといけませんね。

 ですから、今回再生会議も極めて、いろいろ私どもも今回は率直に教育再生会議に苦いことを申し上げましたから、再生会議も余り予算や現実ととっぴなことは今回は御提言になっていないように私は思いますよ。読んでみると、授業時数の確保の一つのやり方として、学校の週五日制を基本としつつ、先生がおっしゃったように、基本としつつ、学校の判断で土曜日を活用するということをしてもどうかということを言っておられるわけですよ。

 ですから、土曜日の時間数をふやすということによって、家庭との、お父さんは週休二日でうちにいるときに、子供との接触の時間が今度はなくなるとか、そういうことも起こってくるわけだし、本当に授業を復活するのなら定数をふやさない限り、地方公務員だけあるいは教師だけ週四十時間の原則から外すということは、これは大問題になりますからね。そのいろいろな問題をやはり前提にして考えていくということだと思います。

高井委員 ありがとうございます。

 まさにその、大臣が教育再生会議におっしゃったことを知りたくてお聞きをしているわけであります。報道で見る限りは、本当に断片的に取り上げられておりますけれども、まさに、大臣がよくおっしゃるように、報道がすべてを伝えているとは思いませんし、だからこそこの委員会の現場で、そのように、おっしゃったことの真意を聞きたかったので、いろいろお聞きをいたしました。

 私も実は、保護者としては、土曜日を復活させていただく方がいいなというふうに思います。というのは、まだうちの子は就学前でございますけれども、やはり土日に家で学習させるというのは大変困難であるなというふうに思っておりました。逆に言うと、塾や習い事や、勉強できる環境にある子はより一層、ますます土曜日を使って伸びるだろう。しかしながら、そういう環境にない子供たちはますます、やはりどうしても身近なテレビやパソコンやというのに向かってしまって、勉強時間が減っていくのではないかということを、この導入のときにも少し懸念しておりまして、まさに学びに差ができることを広げていくのではないかというふうに考えておりました。

 学力低下の要因というのはいろいろあると思いますけれども、一つのデータでは、今まで学力が低かった子がより低くなったことによって全体が下がってしまったというような分析もあるようでございますから、いろいろなやり方をどんどん議論していただいて、さっきおっしゃった人員の手当て、予算の措置、もっともっと議論が必要な局面に来ているんだろうなというふうに感じております。

 確かに、万が一土曜がまた復活するようになれば、教育委員会の体制だって、土曜日に何かあったら、では月曜日というわけにもいかないでしょうし、教育委員会も同じように人員の体制ができなければいけない、学校現場にも教員の体制ができなければいけないと思いますので、私も、いろいろな勉強を重ねながら、この議論を注視していきたいと思いますし、できるだけ前向きな御提案を、協力してできるように頑張っていきたいというふうに思っています。

 最後に、国立大学の運営交付金について少しお伺いしたいと思います。

 教育再生会議の二次報告の中にも国立大学について少し提言もございました。経済財政諮問会議の中でも、研究成果や実績に基づく配分に改めるような話が出ているというふうにお聞きしております。特に、教育再生会議の中では、教育財政基盤強化のための寄附税制の拡充とか教育予算への競争原理の導入も提言されているようでございますが、この点についてはどのようにお考えになっておられるでしょうか。

伊吹国務大臣 改正教育基本法で大学の目的というのは三つを規定しているわけで、一つは教育、もう一つは研究開発、そして社会教育その他の社会への還元ですね。この三つをバランスよくやっていくわけですけれども、やはり一番大切なのは教育なんですね。

 先生、大学生は突然出てくるわけじゃないんですよ。これは幼稚園から小学校、中学校、高等学校と、きちっとした教育を受けている上に大学生というものはあるわけですね。そして、大学の中で基礎的な常識、学問その他を修めた上に応用の研究開発をできる能力を備えてくるわけです。

 ですから、当面産業化できるものあるいは人間の暮らしに役立つものだけに集中的にお金を入れろというのは、当面成果は上がりますよ、しかし、長い目で見ると、応用の能力を持つ基礎の勉強がおろそかになっている人、初中の教育が不十分な人が大学生になったら、日本はイノベーションも研究開発もできなくなるんですよ。

 だから、当面食べたいものを我慢してでも将来に備えるというのが米百俵の原則なんですから、私は経済財政諮問会議などがおっしゃっている当面役に立つものにお金を入れろというのは反対だということをこの前申し上げてきたということです。

高井委員 私も大臣と認識を同じくいたします。

 まさに、やはり研究内容とか成果に応じて配分されるようになりますと、ますます成果を出すこと、研究をすることのみに偏り過ぎて、まさに教育そのもの、生徒を教育するという、数字として成果が見えにくいところが評価をされなくなっていくのではないか。つまり、人文系であったり教養系であったり、教員養成なんかもそうだと思いますけれども、研究の成果というのは見えにくいですよね。そこが衰退していくことになりはしないか、余りにも競争、競争という、競争原理により配分を決めるということになっていくと、そういう弊害が出てくるのではないかというふうに懸念を持っているところであります。

 この間、財務省からこの試算をいただきましたけれども、国立大学法人運営費交付金に関するシミュレーションということで、科学研究費補助金の比率で再配分をしてみると、全八十七国立大学のうち七十四大学で交付金が減額されることになるというふうな、ある意味ですごくショッキングなデータをいただきました。こういうふうになっていきますと、地方の大学であるとか、先ほど申し上げた成果が見えにくい大学が衰退していくんではないかというふうに、本当に心配をいたします。

 やはり、こういうふうに国立大学の運営費交付金について、さまざまなこういう提言が出る背景には、やはり地方国立大学は努力していないんじゃないかとか、魅力がないんじゃないかとかいう認識があるんではないかというふうに思うんです。

 私なんかも徳島で生まれて、ずっと育ちましたので。奨学金もいただいて、幸い東京には出てきましたけれども。ただ、地方でしか学ぶ機会を持てない人もいるでしょうし、地域の特性に応じた社会貢献をしている大学も多いと思います。徳島大学なんかも、知的クラスター創生事業を得まして、今さまざまな研究に力を入れておりますけれども、地方国立大学を文科省として今後どうサポートしていくというか、どういうふうにやっていってほしいのかというお考えが、今のところあったら教えていただきたいと思うんです。

伊吹国務大臣 先ほど私が申し上げたことに対して、高井先生は認識を同じゅうしているとおっしゃいました。しかし、私が申し上げたから、大学の基礎的なことに携わっている人が国民の税金を預かって、効率性を全く無視した悪平等のような運営をしていただいていいということではないんですよ。

 今までそういうことが余りにも多かったから、大学が国立大学法人になり、そして今のような議論が沸き起こっているんだということを大学人はまず認識をしていただくという前提で私は申し上げているわけですから、そこは誤解のないようにしていただいて。

 そして、経済財政諮問会議や財務省が言っていることは二つありますので、よくこれを分けてしっかりと議論しないといけないのは、一つは運営交付金を減らして、あるいは私学助成費を減らして、プロジェクト別に、役に立つ、競争的研究資金に回せという主張が一つあります。それから、運営交付金そのものはそう減らさなくてもいいんだけれども、これの各大学への配分について、論文その他の研究成果に応じて配分をした方がいいので、大学生数や何かで配分するのはよした方がいい。

 今の先生の御質問は二番目のことに関することなんですね。だから、教員養成だとか、やや実務的なことをやっている大学は論文などよりも人材養成の仕事が多いですから、これの効率をどう図るかというのは非常に難しいんです。

 ですから、その辺はよく考えながら運営交付金の配分は私はさせたいと思いますが、そういった途端にまた親方日の丸的な認識を持ってもらうと困るので、これは、両方の間ぐらいにやはり真実があるんだということを、仕事に携わる人みんなが自覚してやっていくということだと思います。

高井委員 丁寧な御説明、ありがとうございました。

 質問を終わります。ありがとうございました。

桝屋委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 五月十七日の教育再生特別委員会で私は、日本青年会議所が中学校などでいわゆる靖国DVDを上映している、それで、グループディスカッションを行っているという問題を取り上げました。きょうは、この問題に関しまして質問いたします。

 改めて紹介をしておきますと、このDVDのストーリーというのは、若くして戦死して靖国神社に祭られている青年が現代にあらわれる、それで、自分の子孫である女子高校生を、一緒に靖国神社に行かないかと誘う、日本の行った戦争を大東亜戦争と呼ぶ、大東亜戦争は自衛のための戦争だった、愛する自分の国を守りたい、そしてアジアの人々を白人から解放したいということを教えるものになっているわけですね。朝鮮などについても、日本は、国を近代化するために道路を整備し、学校を設置したというだけでありまして、日本の侵略、加害の歴史については一言もありません。植民地支配という言葉も一言もありません。私は、これは、アジアの国々に対して植民地支配と侵略をしたという歴史の事実について痛切な反省を行うといういわゆる村山談話ですね、一九九五年、この談話はやはり今日も引き継ぐ政府の立場だと思いますけれども、その立場に反するものだというふうに言わざるを得ません。

 それが文部科学省の委託事業に採択をされる、学校でこの靖国DVDを上映する、生徒の間でグループディスカッションをやる、発表会もやる、生徒は感想文も書くということが、まだ一部ですけれども、行われた、行われようとしているという問題を取り上げたわけでございます。今、こうした靖国DVDに対して各地の教育委員会、校長先生などから、こんな偏ったものは見せられないという声が上がっているところでございます。

 そこで、なぜこういうものが文部科学省の事業として認可されるのか、されたのかということをお尋ねしたいというふうに思っております。

 ここに、採択番号七十七というペーパーを持ってまいりましたけれども、これを見ますと、「研究タイトル」として「地域のちからによる学校教育支援の実践と検証」というふうにあるんですね。その「実施方法・検証方法」としてこのように書いています。「社団法人日本青年会議所が作成した補助教材をもとに、全国JCがそれぞれの地域において、小中学校の「総合的な学習の時間」または学校と連携した青年会議所主催の事業においてプログラムを実施して効果を測るとともに、よりよい教材づくりなど、各地JC会員の学校協力活動に対する組織的支援の手法について検討する。」というふうに書かれています。この文書に沿って採択されたわけですが、そうしますと、審査に当たって、まず文部科学省は補助教材を見たのでしょうか。

銭谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 日本青年会議所から申請のありました調査研究は、日本青年会議所の会員が全国各地の学校に出向いて授業を行い、アンケート調査を活用してその成果を分析することを通じまして、地域の人材が学校教育活動に参画する際に必要なノウハウや留意点などを整理することを目的としているものでございます。

 このため、DVDの内容は調査研究の直接の対象ではないために、採択の可否を決定するに当たりまして、その内容の審査は行っていないところでございます。

石井(郁)委員 おかしいですよね。授業を行う、そのために補助教材というのが必要になってくるわけでしょう。授業を行うということは審査するけれども、補助教材は審査の対象にならない、そういうことなんですか。もう一度お答えください。

銭谷政府参考人 今回の日本青年会議所から申請のありました調査研究は、全国におります日本青年会議所の会員が学校に行って授業を行って、そしてその授業を行う際に、いわば彼らは地域の人材ということになるわけでございますが、そういう地域の人材が学校教育活動に参加をする際にどういう点に留意をしたらいいのか、あるいは授業の反応はどうなのか、そういったようなことを、アンケートなどを通じまして収集、分析をして、これから地域の方が学校教育にどういうぐあいに協力をしていくのか、そういうことを調査するという、その点に着目をしたものでございまして、私ども、審査に当たりましては、その点を着目して採択をしたわけでございますので、具体的なそのDVDの内容そのものにつきましては、これは直接の対象ではないということで、採択の決定に当たりましては、その内容については審査はしていないということでございます。

石井(郁)委員 このプログラムの採択に当たっては、文科省としては審査基準というのを一応設けていると思うんですね。私、見ましたけれども、形式要件の中には三項目ありまして、「仕組みの見直しにつながるものであること」「費用対効果など、客観的な検証が可能であること」三つ目に「国の教育政策(中央教育審議会答申など)に反するものではないこと」とあるんですよ。国の教育政策に反するものではないこととあるわけで、だとすれば、その補助教材の内容など、今申し上げましたように、これは明らかに国の政策に反する内容ですよ。ですよね。そういうことを、見ないで認可するということがあり得るわけですか。私はあり得ないと思いますけれども。

 そして、しかも、あなた、重大な御答弁だと私は思いますけれども、それは直接の審査の対象にはならないと、わざわざ分けているんですよね。審査の対象じゃないから見なくて済むということですか。しかし、全体としてこういうプログラムで授業あるいは学校に出向くということですから、これは見ないで認可する。

 では審査基準、何のために設けているんですか。おかしいじゃないですか。

銭谷政府参考人 今回の経緯について少し申し上げますと……(石井(郁)委員「ちょっと済みません。時間がないので、簡単にで結構です。見たか見ないか、なぜなのか」と呼ぶ)

桝屋委員長 委員長の許可を得て発言をしてください。

銭谷政府参考人 今回の事業の採択に当たりましては、地域の人材が学校の教育活動に参画する際に必要なノウハウや留意すべき事項など、貴重なデータが得られることになると期待をして採択したものでございます。この事業の目的にかんがみまして、授業に用いるDVD教材につきましては、採択に係る審査の対象とはしておりません。

石井(郁)委員 同じ答弁を繰り返していらっしゃるわけでありまして、それは本当におかしいですよ。納得できない答弁だということを私は重ねて申し上げておきます。

 この日本青年会議所はこのように言っているんです。二〇〇七年度協働運動が文部科学省新教育システム開発プログラム研究事業に採択、これはインターネットで大きく報道されておりました。このように書いていました。この都度、「誇り」なんですね、このDVDの名称が、を用いた近現代史教育プログラムを初めとする二〇〇七年度協働運動が文部科学省の新教育システム開発プログラム研究事業に採択されましたと。大宣伝ですよ、これはインターネットですから。DVDのこのプログラムが採択されたと当事者は言っている。

 そして、私は先ほど十七日の国会で取り上げましたと言いましたが、その後、そうしますと、この「DVDアニメ「誇り」が認定になったのではありません。」と打ち消しているんですよね。私は、これを聞いて、今まさに局長が御答弁になったのと、文科省と、これは口裏を合わせているとしか思えません。そうでしょう。あなたたちはこのDVDは認定したのではありません。すると、この団体もそのように言い逃れをしているということですね。

 では、さらに申し上げたいと思うんですが、日本青年会議所の会頭であった池田佳隆氏でございますけれども、最近、本を発行されております。この「誇り高き国日本」という書名なんですが、ことしの一月に出ておりますけれども、そこではこのように述べているんですね。国家戦略として現在の教育行政、教育現場の改革を進めていくことが必要ですが、この問題について我々日本JCは直接教育現場に流れを生み出すべく、独自に新しい近現代史教育プログラムを作成しました、日本JC制作の「誇り―伝えようこの日本のあゆみ―」と題したアニメーション教材を使った歴史教育プログラムです、二〇〇七年から本格的に全国展開しています、これも政治家、文部科学省、教育委員会ほか多くの方々に御評価していただき力強い教育変革の流れを生み出されるものと確信しています、このようにこの本の中で述べています。

 当然、本人がみずから書いているし、そして文科省も、この団体の現場に出向いて、いろいろ実践することは大いに結構だとあなた方はおっしゃったわけですけれども、まさに文科省の評価とお墨つきを得て、こういう非常に特定の価値観、そしてまた間違った歴史観に基づいて全国展開を図ろうとしているということは明白ではないのでしょうか。どうですか。

銭谷政府参考人 繰り返しの答弁になって恐縮でございますけれども、私どもは、事業の採択に当たりまして、このDVDのアニメの内容を、例えば文部科学省の認定とか、そういうことで採択をしたというわけではございませんで、DVDの内容は、先ほど申し上げましたように、審査の対象にはなっていないわけでございます。日本青年会議所の方も、この点については、DVDアニメが認定になったのではありませんということは、ホームページによりまして明記をしているところでございます。

 私どもが今回採択をいたしましたのは、こういう、地域の人材の方が学校に行っていろいろ授業に参画をして、その場合のいろいろな留意点について、これは全国的な規模で調査研究を行うというところを評価して採択をしたというものでございます。

石井(郁)委員 同じ答弁の繰り返しなんですけれども、私、御紹介したでしょう。当初は、この「誇り」、近現代史教育プログラムが認定されましたとはっきり言っていたんですよ。今それは消していますけれどもね。本当にそういう同じ答弁で、とても納得ができない答弁を繰り返しているわけですけれども、私は、今回の文科省の対応というのは、見て見ぬふりをしたのか、無理やり通したのか、極めて不明朗な、また理解しがたい対応だったというふうに思います。

 それでは、伺いますけれども、この新教育システムの開発プログラムの実施の委託要綱を見ますと、委託手続としてこのようにあります。文部科学省は、提出された事業計画書等の内容を検討し、第三者有識者会議であるステアリングコミッティー、これは運営委員会のようですが、の意見を聴取した上で、適切な計画と認める場合は事業実施の委託費として支出するとしています。この第三者有識者会議、ステアリングコミッティーが公募案件の審査を行うということですか。

銭谷政府参考人 新教育システム開発プログラムにつきましては、この事業を開始いたしました平成十八年度から、自治体、団体等からの申請を審査するために、ステアリングコミッティー、有識者会議を置いております。この有識者会議で審査をいたしまして、採択するものを決定しているところでございます。

石井(郁)委員 それで、日本青年会議所からの、地域の力による学校教育の支援の実証と検証が審査されたとき、この審査機関である第三者有識者会議、ステアリングコミッティーですね、このメンバーには、日本青年会議所の会頭の池田氏は入っていましたか。

銭谷政府参考人 このステアリングコミッティーの委員は、事業の効果的かつ適正な運営を図るために、中教審の委員の方や教育行財政に詳しい有識者、市町村の教育長、私学関係者、地域で活動を行っている団体など、多様な分野から十名の方に御就任をいただいております。

 当時の池田佳隆日本青年会議所会頭につきましては、地域において多彩な活動を行う団体の関係者として、その経験に着目をして、会議発足当初の平成十八年四月から、ステアリングコミッティーのメンバーとして参加をいただいております。

石井(郁)委員 今お聞きしましたように、この有識者会議のメンバーは十人だと。私もメンバーをいただきましたけれども、各分野別といいますか、そういう形で選ばれているんですね。ところが、団体という枠で一人なんですよ。団体が一団体、一人です。その方が今取り上げております日本青年会議所会頭の池田氏なんですね。

 なぜこの一団体なんでしょうか。地域における活動というのは、いろいろな団体があると思いますよ。なぜこの団体が選ばれるのか。また、池田氏が入ったのはどういう経緯なんでしょうか。私は、官邸からの指示があったのではないかということまで言わざるを得ないんですが、ちょっと簡潔にお答えください。

銭谷政府参考人 ステアリングコミッティーのメンバーは、先ほど申し上げましたように、中教審の関係者の方、教育行財政に詳しい有識者の方、市町村、私学の団体の関係の方、NPOの方ということで、十人の方に御就任をいただいております。

 この十人の方の選定に当たりましては、こういった分野等を考慮いたしまして、団体につきましては、日本青年会議所が、いわばPTA相当の三十代の方が中心の実業家の集まりであり、学校教育に対して積極的な活動を全国規模で展開をしているということで、日本青年会議所の会頭に御就任をいただいたものでございます。

石井(郁)委員 審査機関である第三者有識者会議ですよね、その十人のメンバーの一人、しかも団体枠ではただ一人という形で入っている。あなたが何度もおっしゃるように、全国展開をするという。まさにこういうDVDを使って全国展開をするというのは、本当に重大なことじゃありませんか。

 私は、既にこういうプログラムをもって授業をしたい、学校でやりたいということを公言している団体が、そういう審査の有識者会議のメンバーに入り、みずからの内容を、受託をするということというのは、余りにも意図的なやり方だというふうに言わざるを得ません。

 だから、特定団体のいわば思想とか、これは文科大臣に言わせるとそういうことになると思うんですが、そういう利益まで絡んで事が運ばれていくということというのは、余りにも不公正なことになっているのではないかというふうに思いますが、ここは大臣、ひとつ御答弁いただけますか。

伊吹国務大臣 私が大臣に就任しておりませんときのことですから、私が予断を持って申し上げるのはいけないと思いますが、こういう人事について、官邸がだれを入れてくれとか、そういうことは、私が今まで各省をお預かりしてきた中ではなかったと思います。ですから、先生、官邸がというようなことはないと思いますが、自分の団体が採択の対象になっているときは、その会議を中座するとかあるいは遠慮するとかいうのは、これは人間として当たり前のことでして、当時私は大臣じゃなかったからわからないけれども、政府参考人も、当然そういうことぐらいの配慮はしたぐらいの答弁は私はすると思います。

 問題は、この補助教材と言われるDVDがどういうものであったかということを除くと、申請書を私、先生から御指摘があって読んでみましたけれども、読んでいる限り、書面を読む限りは、そんな違和感はないんですよ。DVDを見て採択を決めるか決めないかというのは、これは確かに今おっしゃったような御注意はしなければいけないかもわからないが、同時に、そのことを文科省がやると、唯物史観的なフィルムがあったから今度は採用しないよとか、そういうことをやると、一種の検閲にもなるんじゃないですか。

 だから、私は、そこのところは、確かに今回のことは、今までの政府の方針から見ると、DVDにとっておられることは、私が校長だったら、持ってこられたときは採択しないなと思う内容なんですけれども、だから文科省がすべて事前に目を通して検閲をして、いいか悪いかを決めて補助金を交付しろというのも、ちょっとこれは怖い思想だなという気がしますね。

石井(郁)委員 私は、検閲という問題と同列にできないことだと思うんですね。国自身が国の教育政策に反しないと言っているじゃないですか。そういう基準を設けている。ですから最初から、その基準に照らしてどうなのかということを言っているわけですよ。ぜひ大臣、そういうすりかえをしないでいただきたいと思うんです。

 それと、今申し上げましたように、この団体が、今の教科書はほとんど自虐的過ぎるというところから出発して、教育現場がこれをできないので放棄するのであれば、我々JCが買って出よう、この新しいプログラムは来年からぜひとも教育現場に持ち込みたいと、やはり意図的に、近現代史ですよ、教育歴史プログラム、まさにそういうことをしていいのかという問題として私は指摘をしているところでございます。

 もう一つ、もう時間なんですけれども、実は、昨年の教育基本法審議のときにも参考人質疑でこの方はいらっしゃっていますよ。だから、文科省はそこでお述べになったことを十分知っているはずですよ。昨年のたしか五月の段階ですよね。そして、こういう本も書いて、全国展開しようと言っているような団体を有識者会議のメンバーに入れて、そしてみずからのそのプログラムを採択させる。何か本当に、こういうことこそ怖いんじゃないですか、大臣。

 私はこのことを申し上げて、もう時間になりましたから、質問を終わりたいと思います。

桝屋委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 私は、本日、日本美術刀剣保存協会の問題について引き続き質問をしたいと思います。

 まず、文化庁の次長さんに来ていただいていると思いますが、昨日、新作名刀展というものが開催をされたようですけれども、文化庁の後援が出ていないということ、そして文化庁の後援は出るんだと、例年出ていますからね、というような情報が事前に流れていたとも聞いているんですが、そのあたりについていかがでしょうか。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘がございました日本美術刀剣保存協会におきますいわゆる現代刀の作家のコンクールでございます新作名刀展につきましては、毎年開催が行われておりまして、文化庁といたしましては、昭和四十年の第一回以来、後援名義を交付いたしますとともに、文化庁長官賞を授与するということを行ってきた次第でございます。

 しかしながら、本国会でも御議論ございましたように、この協会につきましては、平成十三年の文化庁の指導に基づく改善措置が適切に履行されておらず、また今後の審査が確実に行われることが必要というふうに認識いたしておりますことから、今年度の新作名刀展につきましては、後援名義の使用を許可すべきでないと認める特段の事情がないことという文化庁の後援名義取扱要領に当たらないということでございまして、本年度につきましては、後援名義の使用許可及び文化庁長官賞の交付は行わないことにした、こういう経緯でございます。

保坂(展)委員 「刀剣美術」という雑誌にこの協会が、平成十九年度新作名刀展も協会主催、文化庁後援により開催されますという、広報というか、そういうのがされていますよね。このこと自体が文化庁の後援があるものということで出品をされて、なされているということを確認をしておきたいと思います。

 続いて、この最高賞であるところの高松宮記念賞、これが大変、最高の賞として継続をしておったわけですが、これも見送られたという事情について、宮内庁からお話しいただきます。

風岡政府参考人 お答えいたします。

 財団法人日本美術刀剣保存協会の新作名刀展につきまして、文化庁の方から私どもに対しまして、先ほど文化庁次長の御説明にありましたように、同協会については文化庁の指導に基づく改善措置が適切に履行されておらず、引き続き改善を求めている状況であることから、文化庁としては、同協会が行う今年度の新作名刀展に対して後援をしないこととするとともに、文化庁長官賞も授与しないこととする、その旨の連絡がございました。

 それを受けまして、私ども宮内庁といたしましても、こうした文化庁の対応も踏まえまして、同協会が開催をいたします新作名刀展において高松宮記念賞が授与されることはふさわしくないと判断をし、その旨同協会に申し入れた結果、ことしは高松宮記念賞の授与がなされなかったと承知をしているところであります。

保坂(展)委員 文化庁次長に伺いますが、ことしは文化庁長官賞の交付もしないので、宮内庁も歩調を合わせていただきたい、こういうお願いをしたということはありますか。

高塩政府参考人 文化庁といたしまして、宮内庁にそうした依頼を行う立場にはございませんで、あくまで同協会が行います今年度新作名刀展につきまして、今年度、文化庁といたしましては後援は行わず、文化庁長官賞を授与しない方針であることをお伝えした、こういうことでございます。

保坂(展)委員 そして、宮内庁に伺いますけれども、ことしは辞退するようにということで、同協会の方が辞退をしたという事実はございますか。

風岡政府参考人 先ほど御答弁をさせていただきましたように、私どもから協会に対しましては、文部省の先ほどの対応も踏まえて、高松宮記念賞が授与されることはふさわしくないと判断をして、その旨を協会に申し上げたところでございます。

 私どもとしては、高松宮記念賞の授与というのを見合わせるという考え方をお願いしたところであります。

保坂(展)委員 伊吹大臣にも見ていただきたいんですが、これは全日本刀匠会月山会長あてに昨日同協会が回答した文書の三のところを読んでいただくと、宮内庁より辞退していただきたいという旨のお話を受け、その理由は、文化庁から後援しないから歩調を合わせていただきたいというお話があった、そして、協会としては本年も辞退するということで、今の事実関係と相当違うんですね。

 大臣、どういうふうにお感じになりますか。

伊吹国務大臣 宮内庁と文化庁とのやりとりは、今私は初めて先生の御質問で伺いました。

 担当者がどういう表現をとったのか、それを宮内庁がどう受けとめられたかということに尽きると思いますので、直接宮内庁に、お話をした者にお答えをさせるのが適当だと思います。

保坂(展)委員 これはこの協会の根本的な姿勢についてつながっていく問題なので、あえて、ちょっと細かいですが、事実を挙げました。

 実は、昨日の大変大きな行事、新作名刀展、こちらの方の表彰式というのがあったそうですけれども、この表彰式の場で、国会で問題にされていることは事実無根ですというごあいさつが専務理事からされたということも伝え聞いているんですね。

 文化庁の次長さんに、どうでしょうかね、そういう認識が、まだ変わらないんでしょうか。

高塩政府参考人 先生から先ほどの御質問でございました、きのう付の回答書を私も今いただいたところでございまして、この三番の部分につきましては、私どもとしても大変遺憾でございますので、抗議を申したいと思っておりますし、今御指摘のような御発言があるとすれば、あわせて厳しく対応したいと思っております。

保坂(展)委員 大臣が大変忙しい中で、この問題、私だけではなく他の議員も問題にしましたが、このことについて、かなりのスピードで、ふだんより大人数の文化庁の実地検査団を編成して、協会の特別重要刀剣に係る逐一の検証をしたという報告を私も聞きました。これはよく迅速に動いていただいたというふうに思っています。

 問題は、かかる問題を生んだ根本体質が転換をされたのかどうかというところに尽きるわけですが、三月三十日に同協会の会議がございました。理事会ですね。三月十六日の文部科学委員会で私も伊吹大臣にお話をいたしましたけれども、その以前の二月の内部文書で、私と伊吹大臣とのやりとりを引用する形で、文化庁の監督権限行使などはないんだというのはこの議事録を読めばわかるというふうに引用された、どうお感じになりますかということに対して、大臣は、余り理解力が行き届かない、国会を軽視しているような団体というのは、あるいは団体の評議員、理事というのは、公益法人として適切じゃないでしょうと、非常にはっきりとお答えになったんですね。

 ところが、この議論を三月三十日の理事会で佐々会長が紹介をしているところを、記録を見ると、この間の答弁は、これは佐々さんの発言なんですが、僕は行き過ぎだと思う、国会軽視をするような団体は解散ということはあり得るしというような発言を引いて、怒って電話をしたけれども、伊吹大臣は僕に会ってくれないと。伊吹さんの、自分に伝わってきた話では、教育基本法をやらなければいけないし、学校のいじめだ何だと山積みのときに、佐々さん、何とかしてくれよ、おれの余計な負担をかけないでくれよというのが本音なんですねと。高塩さんというのに、本当にあんた、文化庁そう思っているのと聞いたら、大臣の御意見でございます、こう言ったと。だから、大臣がだれかに唆されて答弁しちゃったんですね、と。私は、伊吹さんを唆す人というのはなかなか考えにくいんですけれども。

 これはどうですか。高塩次長、こういうようなやりとり、三月にあったんですか。まず、次長から。

高塩政府参考人 去る三月二十八日に佐々会長と私は直接会いまして、報告書の提出を求めたところでございまして、そのときは大臣からの御指示を正確にお伝えしたということでございます。

保坂(展)委員 何か、文化庁は話はわかってくれているけれども、伊吹大臣が頑固の一徹でよくわかってくれないというような認識をどうも持っているようなんです。

 文化庁に伺います。

 特別重要刀剣について、十六年について審査をしたんですね、実地検査。その中で、この国会審議が事実無根かどうか、これを確かめたいんですけれども。

 我々は、その中に、例えば会員じゃない者とか、あるいは会員であっても記載がおかしい者とかあるんじゃないですかということを聞いてまいりましたが、調べた結果、どうでしたか。端的にお答えください。

高塩政府参考人 日本美術刀剣保存協会の実地検査につきましては、五月の九日から十一日の三日間にかけまして、私どもの美術学芸課長以下美術刀剣の専門家二名を加えます総勢十名で、民法六十七条に基づきます定期検査に加えまして、刀剣審査事業に関する臨時検査を実施したところでございます。その結果については現在取りまとめているところでございますけれども、臨時検査として行いました個別の刀剣審査につきまして、先生から今御紹介がございましたように、平成十六年四月の特別重要刀剣審査、一番価値の高いと言われている審査でございますが、その審査の個別、三百七十八点をすべて調べたわけでございますけれども、その中に、今御指摘がございましたように、非会員からの申請を受け付けるなど、みずからが決定いたしました規定にのっとって行われていないこと、また、審査書類を初め資料の管理が不十分であるといった問題点が確認されたところでございます。

 また、本年三月三十日に刀剣協会から提出されました報告書において述べられている、私どもの改善通知の内容でございます役員、職員及びその親族等からの申請があった、九件でございますけれども、あったことを確認したところでございます。

 具体の数につきましては、繰り返しになりますけれども、この平成十六年の特別重要刀剣審査等におきましては全体で三百七十八件の申請がございまして、そのうち、協会の規定で非会員の申請はできないということになっているわけですけれども、非会員もしくはいわゆる会員番号と合致しない申請が約一割の三十七件、それから役員、職員、親族等からの申請は今申し上げましたように九件が確認をされたところでございます。

 このうち非会員からの申請につきましては、三月三十日付の報告書につきましては、すべて、いわゆる申請の後は会員になっていただく、または申請の際に入会をしてもらうということで報告がなされたわけですけれども、それにたがう結果があったということで大変遺憾に思っている次第でございます。

 こうした検査結果を踏まえまして、今後、改善を要する事項につきまして適切に協会を指導していく考えでございます。

保坂(展)委員 今次長から答弁があった、そこを私まさに指摘しようとしていたんですね。三月三十日のあの中には、非会員からの申請も入会後に申請を受け付けていると言って、国会でいろいろ審議があった後、このぐらいの報告書を私も受け取ったわけですね。しかし、実地検査に入ってみると、そうではないという事実が今確認されたということです。

 大臣にお聞きしますけれども、私は、これは平成十三年以降、以前は山中会長だった、そして橋本会長にかわり、ある種、この協会の中で文化庁が、刀剣の関係者、先ほどの話にもちょっと共通点があるかもしれませんけれども、自分の持ち物とか家族の持ち物とか職員の持ち物とかというのはやめましょうよという、当たり前のことでございます、この窓口規制。

 ただ、この三月三十日の刀剣協会の佐々会長の文書には堂々と、審査の窓口については、法のもとの平等の精神にのっとって、資格制限を撤廃する方向で公正化を期したい、ここは文化庁と協議していきたいと書いてあるんですね。ここがまだ、結局根本の考え方が変わらなくて、指導は受けるんですけれども、根が変わっていないんじゃないか。

 ということと同時に、私どもがここで議論している議論は、多分、政党、会派の立場というよりは、刀剣という唯一の鑑定機関を公正なものに、信頼ができるものにしていこう、そういう趣旨であって、そんなに、だれもが考えるような線からお話を聞いていると思いますし、伊吹大臣がおっしゃったこともその線で、常識的に仕切っていこうということだと思いますけれども、文化庁は何か協会の話に割と理解があるけれども、大臣はちょっと理解が不足しているというような認識は、これはちょっとおかしいんじゃないかなと私は思いますが、いかがですか。

伊吹国務大臣 基本的に大切なことは、自分の身内あるいは自分が持っているものについて、審査の結果、認定をしてその財産価値を上げるということはやはり基本的にはやらない。その一点だけを守られれば、あとは個別の民法団体について政府だとか役人が口出しをしない方が私はいいと思います。しかし、その原点を守っていただけない場合は、これはやはり不公平な社会の一つの縮図ですから、その点は直していただかなければならないと思います。

 その原点だけで私は話しておるんですが、実は協会内に内紛があったり、あるいは労働組合ができて特定政党に頼みに行ったりというようなことになってくるということは、先生や私がここで議論している本質から外れていることだと思いますね。

 ですから、私が頑固で、文化庁は物事がわかっている、これは高塩次長はそういうことを言ってないと思いますが、役人がよくやる手なんですよ。いやもう、うちの大臣には困ったことで、私はよくわかっているんですけどねなんというのは。それで、よく言いますよ。だから、もう一々目くじらを立てていてはそれはしようがないです。しかし、総理の意向がこうだなんと言うような大臣は自分の調整能力がないということを満天下に公言しているのと同じことであって、うちの大臣がこうだということを言う前に、担当者が自分で処理する能力がなきゃ、役人として給料をもらっている値打ちはないでしょう。(発言する者あり)

保坂(展)委員 うん、なるほどね。

 もう一つ大臣に伺いますが、こういった、ある種、人事抗争もありますね。そしてその抗争の対立軸ですか、これが一応その、言い分としては、文化庁の指導をきちっと受け入れて、例えば今、調査で平成十六年の特別重要刀剣だけやったら一割出てきたんですよ、不適正なものが。ほかにもずっとあるわけですよ。というものについて精査をしていくべきだと言う人たちが協会内では一応放逐されてしまったんですね、いなくなってしまった。という中で本当に大丈夫かなという懸念を持ちますね。

 そして、文化庁長官賞や高松宮記念賞というものを見送られた。そして、たたら事業に対する補助金も一応凍結をしている。これはしっかり実地検査を徹底して、その結論を得るまではということだと思いますけれども。しかし、そうやって、ある種正されて、厳粛な気持ちで身をしっかり処さなければいけない時期の協会が、先ほど冒頭に紹介をしたように、今回長官賞や高松宮記念賞がない理由を、どうもその事実関係を違えて説明をしているというのは、懲りてないのかなというふうに私は思うんです、率直に言って。しっかり本当のことを、謙虚に、業界の皆さんにも伝えて、全体の力で信用を回復するという大きな方向をつくらないといけない。そのためには、変なごまかしやうそはやめてもらいたいというふうに思います。いかがですか。

伊吹国務大臣 今先生がお話しになって、私も御答弁をしておりますから、政府参考人もよくそれを聞いておるでしょうし、先方にも伝えるでしょうし、きちっと自分の職務を果たすと思います。ですから、内紛だとか、あるいは組合をつくって争っているとかということの片棒を担ぐことのないように我々は注意をして、不公正なことをさせないという原点に絞って対応をしたいと思います。

保坂(展)委員 今後とも、国会審議が事実無根だなんということを言わないように、しっかり議事録も読んでいただいて、事実に即して文化庁の指導を強めていただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。

     ――――◇―――――

桝屋委員長 次に、内閣提出、参議院送付、国立大学法人法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。伊吹文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 国立大学法人法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

伊吹国務大臣 このたび、政府から提出いたしました国立大学法人法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、国立大学法人における教育研究体制の整備及び充実を図るため、大阪府内に所在する国立大学法人の大阪外国語大学を大阪大学に統合するものであります。

 なお、両法人の統合は平成十九年十月一日とし、平成二十年度より学生受け入れを行うことを予定しております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

桝屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る八日金曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    正午散会


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