衆議院

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第4号 平成20年3月21日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十年三月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 佐藤 茂樹君

   理事 伊藤信太郎君 理事 江崎 鐵磨君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 渡辺 具能君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 西  博義君

      井脇ノブ子君    飯島 夕雁君

      小川 友一君    小渕 優子君

      岡下 信子君    加藤 紘一君

      木原 誠二君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    鈴木 恒夫君

      土井  亨君    原田 令嗣君

      平口  洋君    福田 峰之君

      藤井 勇治君    藤田 幹雄君

      保坂  武君    馬渡 龍治君

      松野 博一君    松本 洋平君

      村田 吉隆君    安井潤一郎君

      楠田 大蔵君    田島 一成君

      土肥 隆一君    藤村  修君

      松本 大輔君    山口  壯君

      横山 北斗君    笠  浩史君

      谷口 和史君    石井 郁子君

      日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   内閣府副大臣       山本 明彦君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   文部科学副大臣      松浪健四郎君

   外務大臣政務官      中山 泰秀君

   文部科学大臣政務官    原田 令嗣君

   文部科学大臣政務官    保坂  武君

   政府参考人

   (内閣法制局第二部長)  横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 雅人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        樋口 修資君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十一日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     村田 吉隆君

  中森ふくよ君     安井潤一郎君

  二田 孝治君     藤井 勇治君

  山本ともひろ君    木原 誠二君

  高井 美穂君     横山 北斗君

  富田 茂之君     谷口 和史君

同日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     松本 洋平君

  藤井 勇治君     二田 孝治君

  村田 吉隆君     阿部 俊子君

  安井潤一郎君     土井  亨君

  横山 北斗君     高井 美穂君

  谷口 和史君     富田 茂之君

同日

 辞任         補欠選任

  土井  亨君     中森ふくよ君

  松本 洋平君     山本ともひろ君

同日

 理事富田茂之君同日委員辞任につき、その補欠として西博義君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に西博義君を指名いたします。

     ――――◇―――――

佐藤委員長 内閣提出、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第二部長横畠裕介君、内閣府政策統括官柴田雅人君、外務省大臣官房参事官小原雅博君、領事局長谷崎泰明君、文部科学省初等中等教育局長金森越哉君、科学技術・学術政策局長森口泰孝君及びスポーツ・青少年局長樋口修資君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧義夫君。

牧委員 おはようございます。

 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案について、最初、トップバッターですからフルネームで紹介をしましたけれども、質問させていただきたいと思います。

 この議案については、とりたてて異議を唱えるものではございませんから、さほど深追いする必要もなかろうと思いました。ただ、せっかく四十五分時間をいただきましたので、今週火曜日、水曜日に、大臣に所信に対する質疑が行われましたけれども、その中で質問が出れば、私もこの話はきょう避けようと思ったんですけれども、本題に入る前に、このことぐらいはちょっと触れておいた方がいいかなと思う点についてまず質問させていただいた上で、きょうの本題に入りたいと思います。

 というのは、今回の学習指導要領の改訂、新しい教育基本法に基づく初めての学習指導要領ということなんですけれども、今回、基本法が変わって指導要領がどう変わったのか。一部そのことに触れられた質疑者もおられましたけれども、より本質的なところで、基本的な精神というか、どの辺に貫かれているのかということがいま一つ私にはよく見えてまいりません。

 そこで、特に、教育の目標であるところの、我が国の伝統、文化を尊重し、それらをはぐくんできた国を愛する心、態度を育てるというようなところが今回の新学習指導要領のどこら辺に読み取れるのか、まず、そこら辺のところからお聞かせいただきたいと思います。

渡海国務大臣 委員おっしゃいますように、今回、学習指導要領が改訂をされまして、記者会見でもこの位置づけというものが冒頭に聞かれました。私がお答え申し上げましたのは、何よりも、新しい教育基本法が制定をされて初めての改訂である、そこが一番大きな特徴の一つであろうというふうにお答えをさせていただきました。それがまさに今、牧委員がお尋ねになりました部分でございまして、今回、新しい教育の目標というのは、特徴的なものは、今おっしゃったような部分、伝統と文化を尊重する、環境を保全する、また命や自然を大切にする、こういった部分があったわけでございます。

 その中で、教育基本法の第二条で、教育の目標の一つとして、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養う、こういうことがございます。今回の学習指導要領の改訂に当たりましては、それを受けまして、特に道徳教育また社会科等でこういったことについて学習内容をより充実するとともに、その他の教科におきましても、さまざまな教育の内容の充実と指導の強化というものの改善を図っております。

 例えば道徳でございますが、これは言葉の繰り返しになりますけれども、郷土や我が国の伝統と文化を大切にし、先人の努力を知り、郷土や国を愛する心を持つことや、例えば社会科におきましては、我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を育てるようにする、こういった記述を加えておりますし、その他の教科におきましても、例えば、そろばんや和楽器、また唱歌、それから美術文化、和装、また武道といったようなところもより充実をさせていただいております。

 この学習指導要領にのっとり、改正の趣旨を一年間、前回の御質問でもお答えをしたところでありますが、やはり書いても趣旨が徹底しないと効果が上がらないわけでございますから、さまざまな研修等を通じて現場によくこの趣旨を説明し、こういった教育の充実を図っていきたいというふうに考えておるところでございます。

牧委員 趣旨はよくわかるんですが、いかにもお役所的な答弁だったと思います。思いは、私も渡海大臣もほぼ同じ思いを抱いているんだろうなということは、これまでの大臣の政治行動等を拝見しておりまして、よくわかるつもりですけれども、ただ、今、例えば、書いてもその趣旨が徹底しないというお話がありましたけれども、書いていないことが問題になっている部分もあるんですね。ですから私が聞いているわけで、今回の学習指導要領で、もうちょっと盛り込むところが、書き込むところがあってもよかったんじゃないかなという指摘が各方面からございます。与野党の議員の中からもそういう声も、委員会等のオフィシャルな場ではありませんけれども、出ているということも恐らく大臣は御認識をされていると思います。

 その部分については、大臣も閣僚の一員としてのお立場もあるでしょうし、いろいろな部分での制約もあろうと思いますから、私もその辺はしんしゃくして、あえて大臣からの答弁を求めようとするものではございませんけれども、例えば領土問題一つとっても、これは我が国を愛する態度を養うという意味では非常に基本的な部分だと思いますけれども、今、解決すべき領土問題の例示として、北方領土の問題がある、その他というような形になっているわけで、私は、この例示の中に、はっきりと現在解決すべき問題となっているところというものをきちっと列挙すべきだという意見を持つ者の一人でありますから、私の立場で申し上げれば、竹島やら、あるいは尖閣諸島についてもしっかりと学習指導要領の中に例示ぐらいしてもいいんじゃないかな。書き込んでもそれが徹底しないというお話がありましたけれども、書き込んでもいないというのが私の意見であります。

 これについては、あえて答弁を求めるものではありませんけれども、ただし、やはり、例えば教科書問題一つとってみても、これは近隣諸国に対する配慮というのは私は必要だと思います。過去における歴史の事実もあるわけですし、一方的にどちらが加害者でどちらが被害者という決めつけ方は私は賛成できませんけれども、ただ、やはり過去の経緯を踏まえて、配慮するということ自体を否定するものではありません。

 ただし、配慮するということと、物事をうやむやにする、あるいは妥協してしまうということとは全く別の次元の話であるということは、私はっきり申し上げたいと思いますし、恐らく大臣も同じ考え方じゃないかなと思うわけであります。

 そういう観点からすると、私の思いと恐らく大臣は一緒だと思うんですけれども、配慮するということと物事をうやむやにするということとは違うんだという認識をお持ちかどうかということだけはお聞かせいただきたいと思います。

渡海国務大臣 認識は全く同じでございます。

牧委員 であれば、本来そこに書き込むべきであったと私は思いますし、大臣も、恐らくいろいろな政治的な配慮もあるんでしょうけれども、同じ考え方を持っていたというふうに理解させていただいて、深くうなずいていただきましたから、深くうなずいたと速記者の方は括弧つきで議事録に残していただければ十分でございます。

 ただ、その大前提となる部分について、せんだって、他の無所属の議員から文科省に対してというか、内閣に対しての質問主意書も出ております。学習指導要領においてどういう扱いをするのかと、今私が質問したような内容について、その部分について、政府としての見解が私なりにちょっと腑に落ちないところがありますので、ちょっと改めて確認をさせていただきたいと思うんです。

 北方領土についてははっきりしていますけれども、竹島、尖閣諸島については我が国固有の領土であるというふうに政府の見解として固まっているという理解でよろしいのかどうなのか、そこら辺をちょっと、基本的なことですけれども確認させていただきたいと思います。

中山大臣政務官 おはようございます。

 先生御指摘の竹島は、歴史的事実に照らしましても、かつ国際法上も、明らかに我が国固有の領土でございます。政府としては、竹島の領有権の問題の平和的解決を図るため、粘り強い外交努力を行っていくという方針でございます。

 また、尖閣諸島が我が国固有の領土であるということにつきましても、歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、現に我が国はこれを有効に支配しております。したがって、同諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在していないという認識に立っております。

牧委員 ということは、そもそも存在しないから解決すべき問題の中に入っていなかったという理解でいいわけですね。竹島の問題は解決すべき問題で、尖閣諸島はそんな問題ですらない、もうそんなことを言うまでもなく、我が国固有の領土であるというふうにとらえてよろしいわけですね、今の回答でいえば。

中山大臣政務官 基本的にはそういうことだと思います。しかしながら、先生の心中、そしてまたこの質問の趣意においては、先ほど来、渡海大臣は同じ認識だろうということで深くうなずいているということを明記せよという御指摘、速記者に対してございました。私も同じような心中を持っております。

牧委員 わかりました。

 その上で一つだけ確認をしておきたいのですけれども、二月に報道がありましたけれども、中国・上海の日本人学校で使う教材が向こうの税関で差しとめられたという事件がありました。この話は報道されましたけれども、その後どうなったのかというのを、私も見逃したのかもしれないですけれども、どこでも見なかったものですから、その後の経過をちょっと教えていただきたいと思います。

中山大臣政務官 今先生の方からございました、いわゆる中国の上海の日本人学校が輸入した図書館用の図書が上海の税関に差しとめられた事案につき、現在までの経過を御説明申し上げたいと思います。

 二月十四日、在上海総領事館から上海市政府に対し、税関にとめ置かれている理由等を照会いたしました。早期通関も申し入れました。二月十八日には、八冊の図書を除く図書、計八百八十四冊が上海日本人学校浦東校に引き渡されたことが確認をされました。

 その後、中国に対し、とめ置かれた残りの八冊につき早期通関の申し入れ等を行いましたが、三月六日、上海市政府により、在上海総領事館に対し、中国の出版管理条例に基づき輸入できないとの決定がなされた旨の説明がございました。これに対し、同日、在中国日本大使館及び在上海総領事館から、それぞれ中国政府及び上海市政府に対し、本件決定は遺憾であるという抗議を強く行っております。

 三月十日、中国側輸入業者から返送された本件図書が日本側送り主に届いているという状況でございます。

牧委員 つまりは、結局こっちが泣き寝入りという話なわけですね。

 文科省としてはどういう対応をとられたのでしょうか。

渡海国務大臣 私ども、外務省からそのような連絡を受けまして、事実関係を確かめるべく、外務省を通じて、今報告がございましたようなやりとりをやらせていただきました。そして、これも外務省を通じてということでございますが、政府として先方に厳重抗議をさせていただき、日本人の子女の教育というものに支障のないように、これを速やかに通関していただきたいということも申し入れをさせていただきました。結果、今御報告がありましたように、返還をされたということを聞いておりますけれども、我々として大変遺憾に思っております。

 今後とも、海外にいる、特に義務教育課程、今回は教材ということでございましたが、こういったことにおいて、かかるべきような事実が起こらないようにしっかりと、起こらないようにというよりも、これは向こうがとった態度でございますから、こういう場合には、しっかりと我が方から、速やかに通関をしていただくようにということをきっちりと申し入れもしていかなければいけないというふうに思っております。

牧委員 それが今の政府の限界なのかなという気もいたしますけれども、ただ、先ほど来確認をさせていただいたように、尖閣諸島というのは、この差しとめられたのも、どうも尖閣諸島を含む我が国の領有権が地理の地図の中にきちっと明記をされているということで向こうは気に食わなかったということだと思うんですけれども、我が国としては、ここは疑う余地もなく我が国固有の領土であるという見解をしっかり持っているわけですから、そのことについて、それは外務省も文科省も一体となってきちっとした対応をとらなければ、何のために教育基本法を改正して、学習指導要領を改訂するのかと。

 これは、言葉だけで我が国を愛する態度を養うと言っていてこういうことをしていたのでは、全く何の意味もないと私は言わざるを得ない。この辺のところをきちっと、毅然たる態度を一体となってとっていただきたいということを強く申し上げたいと思うんですね。近隣諸国に対する配慮ということと、物事をうやむやにする、妥協してしまうということとは違うわけで、やはり政策上きちっとめり張りをつけていただきたいと思います。

 文科省の予算の概要を見ると、教員の給与をめり張りつけるとか、いろいろめり張りという言葉がいっぱい出てきますけれども、やはり政策上のめり張りというのはこういうところでしっかりつけていただきたいということを強くお願い申し上げて、次の議題に移りたいと思います。

 では、早速、今回の義務標準法に移らせていただきます。

 そもそも、私、これを通り一遍にさあっと見て、今回の加配措置というのは行革推進法に抵触しないか、これと矛盾しないかどうかということをちょっと心配したんですけれども、そこら辺のところを、まず見解をお示しいただきたいと思います。

渡海国務大臣 今回の加配といいますか、定員増、これをめぐって我々いろいろと交渉する中で、行革法の五十五条の三項という壁は大変厚うございまして、我々の要望としては、それ以降、教育基本法が変わった、また学校教育法が変わった、こういった状況の変化を受けて、やはり教育というのは非常に重要でありますから、これは行革法五十五条の三項、この部分、これとは国会の情勢として、立法府の意思として変化したんだという主張で頑張ってきたわけでございますが、しかし、行政改革というのも大変大きな国家としての課題でございます。我々の立場からすれば、壁が厚かったなという感じがいたします。

 ただ、今、牧委員がお尋ねになりました趣旨からすれば、その範囲内で、これまでの実績とか、それから今後の見通しを勘案して、教員定数の自然減を上回る教職員その他職員の総数の純減の範囲の中で今回の職員定数の増を図っているということでございますから、行革法には抵触しないというふうに御理解をいただきたいと思います。

牧委員 おっしゃるとおりだと思いますし、いろいろ苦慮されてきたという苦労の跡も見てとれるわけですから、そこら辺のところは、積極的評価というわけにはいきませんけれども、一定の御苦労は認めたいと思います。

 ただ、やはりひっかかるのが、今回こういうことで加配をするんだ、こういう意義のあるものだということじゃなくて、今の大臣のお話にもあったように、どうしても行革推進法が壁になって、その中で、その他の職員がおよそ千人減るから、その範囲内でふやせるから千人ということであって、政策的な理念で千人ということじゃなくて、これが何とかぎりぎりの線だから千人だという理解でよろしいんですね。

渡海国務大臣 基本的にはそういうことで私は結構だと思います。

 定員削減というのは、例えば五十五条の三項にしましても、それから国家公務員の定員削減にしましても、やはりある目標値を立てて、それに向かってむしろ努力をしていくということでございますから、結果としてはそうなっているということは事実であろうと思います。

 ただ、我々としては、その中で、やはり先ほども御説明しましたように、今教育の大きな変化があるわけでございますから、地方公務員、基本的にはもっともっと実は削減をされている中で、教員に関しては、この定員削減という中であっても、先ほど申し上げました、これまでの実績と今後の見通しという中で、行革とのぎりぎりのバランスということが正しいのかと思いますが、私どもとしてこれだけの定員増を確保した。カバーしなきゃいけない部分については、さまざまなほかの方策も用いて、教育再生というこの目標を果たしていくべくこれからも努力をしようということで、現在こういう数字になっているというふうに御理解をいただきたいと思います。

牧委員 理解はしますけれども、ただ、やはり教育の本質を語っていただく立場として、もちろんそれはいろいろじくじたる思いもあろうかと思いますけれども、これは、例えば義務教育国庫負担を二分の一から三分の一にしたときも、その差額分を税源移譲予定特例交付金と交付金化するときもいろいろ議論はありましたけれども、何か初めに数字ありきで、その数字に合わせざるを得ないということにこの教育行政がなじむのかどうなのか、そこら辺の思いぐらいは大臣の口からおっしゃっていただきたいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 基本的には私はなじまないと思います。これははっきり申し上げたいと思います。今もそういったじくじたる思いがございます。

 ただ、時系列で見ていただいたときに、やはり行政改革という大きな命題がありまして、それに対して五十五条の三項というものが決められているわけでありますが、その後、日本の教育、これでいいのかというふうな、その議論の中で今我々は努力をさせていただいているんだと。

 当然、我々の主張としては、これは立法府、衆参両院の決議もございますから、そういった中で、五十五条の三項をたとえ外してでも、特例をつくってでもやるべきだという主張を強く夏からやってきたわけでございますが、力足らずといいますか、全体として、現時点においてはこういう決着を見ているということでございまして、よくやったと言われる方もいらっしゃいますが、私としては満足をしているというわけでもありませんし、評価をいただくたびに、むしろ、恥ずかしいとは言いませんが、何か変な気持ちになるといいますか、自分としても、こんなものでいいのかな、そういう思いは持たせていただいているというふうに御理解をいただきたいと思います。

牧委員 大変いいお話を聞かせていただきました。

 五十五条三項をもうこの際撤廃しようじゃないかというお話については、私どももこの法案を参議院の方から先に提出させていただきますので、これは大臣にお願いするというよりも、与党の委員の皆さんに、ほどなくまた衆議院にその法案が回ってきますので、今の大臣のお言葉を受けて、ぜひ私ども民主党のこの法案に御賛成をいただけますように、これは大臣にじゃなくて、こちらに座っておられる委員の皆さんにお願いを申し上げたいと思います。ぜひ拍手をお願いしたいと思います。それで、これはまた後日議論されると思います。

 ただ、現状でいえば、残念ながら、その他の職員の減員分が増員されるにすぎないという事実は厳然とあるわけで、そうなると、例えばの話、今、食の安全がいろいろ取りざたされる中で、例えば給食調理員なんかもこれはどんどん減らしていかざるを得ない状況になって、これからますます冷凍食品に頼るような、そんな方向性、結局、言っていることとやっていることが逆の方向性にならざるを得ないようなところが、例えば一つ給食調理員という例を挙げても言えると思うんですけれども、そういう方向でいいんでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成十八年度、十九年度の削減実績を見てみますと、給食調理員を含みますその他の職員につきましては、平成十八年度が二千六百四十四名、十九年度が二千七百三十名以上削減されているところでございます。

 これらは、各地方公共団体におきまして、行革推進法を踏まえ、地域の実情などに応じて、民間委託等を活用した学校運営の合理化を含む適正な定員管理の中で進められているものと考えているところでございます。

牧委員 やはり行革推進法が一つの大きな負担になっちゃっているんですね。だからそういうことになるわけで、この間、中国産の冷凍ギョーザの問題で、改めて全国で給食の調査をされたその結果を見て、意外に冷凍食品を使っているところが多いんだなと改めて思ったんですけれども、今のお話からすれば、今後ますますそういうことに頼らざるを得ない現場になっていくんだということが容易に見てとれるわけです。そこら辺のところも踏まえて、やはりこの際、この行革推進法、この邪魔な部分は何らかの考え方をしなければいけないなと思いますし、大臣、今そこでうなずいていただいていますので、そういうことで今後の流れをつくってまいりたいなと改めて思う次第であります。

 そして、この行革推進法そのものについても、私はこの条文を、五十五条の三項ですね、改めてちょっと読めば、「政府及び地方公共団体は、公立学校の教職員その他の職員の総数について、児童及び生徒の減少に見合う数を上回る数の純減をさせるため必要な措置を講ずるものとする。」というふうになっていますけれども、これをよく読んで、私ちょっと変だなと思ったのが、一方で政府が一つの大きな政策の柱として掲げている少子化社会対策、これとの矛盾というか、何か、この法文を見ると、もう少子化していくということを前提に、子供の数が減る、さらにそれを上回る数の減員をせよと言っているということは、もう少子化を前提とした法律なんですね。だけれども、一方では少子化に歯どめをかけなきゃいけないと言っているわけでしょう。これはそもそも法体系としておかしいんじゃないかなと私は思うんですよね。そこら辺のところをちょっとお答えいただけますか。

渡海国務大臣 揚げ足をとるわけではありませんが、これは十七年から二十二年まででございますから、基本的には子供の数というのは残念ながらもう決まっておりまして、ですから、少子化の問題とそんなに真っすぐはリンクしないんだろうな、ちょっと今、牧委員のお話を聞いていてそんな気がいたしました。ただ、少子化は少子化としてちゃんとやらなきゃいけない。

 ただ、やはり我々として一番考えなきゃいけないのは、その法律ができた、行政改革というか歳出削減、財政再建ですね、こういった大きな目標のもとでこの法律ができた段階と、日本の教育というものを何とか変えていかなきゃいけないというここ一、二年の大きな流れの違いといいますか、そういったことを考えたときに、我々は、五十五条の三項がたとえあっても、今学校現場は大変忙しゅうございますから、そこのところを変えていかなきゃいけないんだろうということを申し上げました。

 ちょっと余計なことを言わせていただければ、二十二年まででございますから、学習指導要領が本格的に小学校で動き出すのは二十三年というところで、この行革自身というものについて、我々はぎりぎり我慢しながら、しかし工夫をしながら、やはり学校現場でちゃんと教育をやっていただくために、現場の皆さんが元気が出るような、そんな努力をしていかなきゃいけないな、今そのような思いでやっているわけでございます。

牧委員 確かに二十二年までの、この間児童数が減少するということはわかり切ったことだから、だからいいんだというお話、それも一つわかります。理屈としてはわかるんですけれども、ただ、政府の姿勢としてどうかということを私は申し上げたかったわけで、少子化対策基本法というのは、単なる少子化に歯どめをかけるんだという話だけじゃなくて、その大綱にもいろいろなことが盛り込まれているわけですよね。やはり教育というものをきちっとしなければ、これから安心して子供を産んで育てられる環境にはありませんよという趣旨がその一つの大きな柱になっていると思うんですけれども、そうですよね、内閣府の方。

山本副大臣 牧委員からいろいろとお話がございました。行革と教育ということで非常に相反する部分もあるんじゃないか、こういうお話だというふうに思いますけれども、私どもは、行革推進法を推進する立場として、何とか所期の目的に合った形のものを進めていきたい、こんなふうに考えております。

 先ほどお話がございまして、果たして前提として少子化対策と定員削減がどうかという話がありましたが、今文部大臣がお話しのとおりでありまして、十七年から二十二年については、既にもうこれは少子化していくことが決まっておるわけでありますので、それに応じて定員削減していくということで御理解いただきたいというふうに思っております。

 気持ちは牧委員と一緒だというふうに私は思っております。よろしくお願いします。

牧委員 確かに、時系列的に数字を追っていけばそういう話だけれども、私が申し上げたいのは、今しきりに、教師が生徒と向き合う時間がない、もっとそれをきちっとつくれということが言われているわけで、そういう中で政府としての姿勢を示す、その上で、こういう行革推進法の中に、児童数の減少に見合う、それを上回る減員をせよと書いてあること自体が、私はちょっと政府の姿勢として変じゃないかな、そうとられてもおかしくない、政府の意思表示としてちょっとおかしいんじゃないかと言われてもいたし方ないんじゃないかということを申し上げたかったわけで、そこら辺のところは御理解をいただきたいと思います。

 そしてもう一つ、時間もございませんので肝心なところだけ申し上げたいと思うんですけれども、今回、主幹教諭の制度の導入ということでの加配の措置ですけれども、そもそもこの主幹教諭についても、昨年の教育三法の議論、教育再生特で議論されたと思いますけれども、その中でもいろいろ取りざたをされた覚えがございます。

 これは、これに先立って、例えば東京都ですとか一部の自治体で非常にこれに似た制度の導入を図ってきたところの例を挙げて、いろいろな議論が当時あったと思うんです。そのときの議事録ももう一度私も見てみましたけれども、例えば東京都においても、平成十四年から導入をして、当初、希望者も相当な数があって、そこから主幹教諭を選んできた。ただ、年を追うごとにこの希望者そのものがかなりの率で減ってきたということも、これは紛れもない事実だったわけですけれども、どういうふうにこの現象をとらえているのか。どう分析して、どう評価して、その上での今回の制度設計があると思うんですけれども、どのように文科省としては認識をされているのか教えてください。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 学校をめぐるさまざまな課題に効果的に対応していくためには学校の組織力を高めることが必要でございまして、主幹教諭は、学校の組織運営体制の充実という観点で大きな役割を果たす職であると考えております。

 平成十五年度から主幹を配置しております東京都教育委員会が、平成十八年十月に、都立学校長や区市町村立学校長などを対象に行った調査によりますと、回答者の八六・九%が、主幹制度の導入の結果、学校の組織的課題解決能力が向上したと評価をしております。具体的には、健全育成や教育課程、人材育成、学校運営、家庭、地域との連携、いずれの面におきましても効果があったとの評価がなされております。

 この結果を踏まえ、東京都教育委員会としては、主幹制度の導入により、子供たちの教育環境の向上や、また、より質の高い教育の提供などにつながっていると評価をしていると聞いております。

牧委員 ごめんなさい、最初の方をちょっと聞き逃したのかもしれないですけれども、すべての面において評価がされているという今お答えだったと思うんですけれども、それはだれの意見ですか。どなたの意見なんでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 東京都教育委員会が平成十八年十月に行いました調査の対象は、都立学校及び区市町村立学校の校長、また区市町村立教育委員会が調査の対象となっております。

牧委員 お言葉ですけれども、校長と教育委員会にアンケートをとって、それだけですか。もう一度ちょっと答えてもらえませんか。それだけですか。教員その他の意見というのは聞いていないんですか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま申し上げました東京都の教育委員会の調査の対象は先ほど申しましたとおりでございますが、この調査の中でも、例えば、配置されている主幹の能力などに課題があってその職責を十分に果たせていないとか、あるいは主幹の兼務する主任が固定化されているなど、学校実態にふさわしい運用が図られていないといった、主幹制度のあり方に課題があるというような御意見もいただいていると伺っております。

牧委員 私、もう一度聞いたら、後からそういう課題もあるという話が出てきたけれども、その前はもうすべての面で評価されているというのは、ちょっとおかしいんじゃないですか。もうちょっときちっとしたデータを出すべきじゃないですか。やはり、今後の話として、またこれは、一年、二年やってみたけれども余り効果が上がらなかったじゃ困りますよ。行き当たりばったりで。

 では、その問題点を指摘されたことについては、どのように文科省は考えているんですか。どう改善していくか。そのことについて、今回、国の制度として、必置義務がないにしろ、こういう制度を取り入れたわけですから、そこら辺の問題点の指摘については、制度の中にその反省をどういうふうに今回取り入れているんでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 東京都の教育委員会が行いました調査によりますと、回答者の八六・九%が、主幹制度の導入の結果、学校の組織的課題解決能力が向上したと評価をしているところでございますが、なお課題も指摘をされたところでございます。

 私どもといたしましては、各教育委員会において、主幹教諭の役割の重要性を十分周知いたしますとともに、その職責に応じた適切な処遇を行うことが重要であると考えております。また、主幹教諭のみに業務が集中することのないよう適切な校務分掌が整えられることも重要でございまして、各教育委員会等に対しましては、こうした主幹教諭の配置の効果についても十分検証するよう指導してまいりたいと考えております。

牧委員 ここで深追いしてもしようがないのでこれでやめますけれども、ただ、いろいろ課題が指摘されたと。それについては、その処遇が問題なのか、あるいは教員同士の余計なあつれきがこれによって生じる可能性があるとか、現場でのそういう空気がいたずらに乱されるというようなことがあるのか、具体的に何が課題なのかということをやはりきちっと示していただきたいと思うし、今回のこの制度導入によって、四十七都道府県、全都道府県が手を挙げているわけじゃないというふうに私も聞いています。この導入についてはちゅうちょしているところもあるというように聞いておりますから、恐らくそういうところはよその様子を見たいんだろうな、いろいろまだまだ課題があるからこそ、いきなり今年度からは導入できない、よその様子を少し見よう、そういう動きじゃないかなと。

 富山県ですとか茨城なんかも今回は導入しないというように聞いていますけれども、今回、四十七都道府県のうち、手を挙げているのはどこなんでしょうか。あるいは、挙げていないところが少なければ、そこを例示していただいても結構ですけれども。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の主幹教諭に係る加配につきまして、各都道府県からの申請状況を申し上げますと、現在、学校教育法上の主幹教諭の平成二十年度からの配置を検討しているのは十二都府県でございますが、その十二都府県から、今回の法案に係る教員の加配の申請が出ているところでございます。

牧委員 十二都府県というのは意外と少ないですね、私の印象としては。

 これは、その原因というのは、要は三十五県が今回は見送ったという話ですよね。大半が見送ったと言っても過言ではないと思うんですけれども、ということは、様子見なのか、あるいは、三分の二が設置者の負担でしょうから、その裏負担ができないからこれ以上財政的な負担を負いたくないということで拒否をされているのか。そこら辺のところはどういうふうに把握されていますか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 十二の都府県から今回の法案に係る教員の加配の申請が出ているところでございますが、そのほかの府県におきましても、例えば、平成二十一年の四月一日から学校教育法上の主幹教諭とすることについて検討しているところもございまして、学校教育法上の主幹教諭とするためには、関係の学校管理規則の改正でございますとか、給与に関する条例の改正が必要となってまいりますので、そういった準備の関係で、二十年度からの配置を希望しているものは十二都府県、こうなっているところでございます。

牧委員 時間がなくなったのでこれでやめますけれども、例えば、学校管理規則の改正やら、あるいは給与基準だとか、あるいは選考基準だとか、そういったものについてはもう去年からわかっていた話ですし、こういう話というのは、きちっと文科省として各自治体あるいは各教育委員会に指針というか、そういったものというのは示してこなかったんでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 私ども、学校教育法の改正を受け、その法律の施行に伴う関係政令の整備について、ことし一月、通知を出したところでございます。

 その中では、こういった主幹教諭につきまして、特定の業務が集中することのないような必要な指導を継続的に行っていくことが望ましいというような通知も出しているところでございますが、一方、義務教育費国庫負担金として加配の対象となるものということになりますと、給与上の条例改正でございますとか、またそういった位置づけというのが必要になってまいりますので、そういったことにつきましては、私ども、各都道府県について情報提供やまた指導を行っているところでございますので、ほかの都道府県におきましても、順次検討が進められていくものと考えているところでございます。

牧委員 私としては、ちょっと対応が遅いなと言わざるを得ないと思うんですけれども、ただ、いろいろ地方の教育について文科省がああだこうだ細かいところまで口出しすべきでないということも、私、一方ではわかります。

 ただ、財政的な裏づけというか、その部分については、国庫負担が二分の一から三分の一になっているわけですし、そういう中でのきちっとした国としての配慮というものが私は大前提としてあると思いますので、そこら辺のところをきちっとしていただかなければ、この制度が制度として今後私はきちっと育っていかないなという懸念を非常に強く持っていますので、そこら辺のところを申し上げて、時間が来ましたので質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 以上で牧義夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 引き続き、質問をさせていただきたいと思います。

 金森局長、今の質疑の答弁を聞かせていただいて、本当に大丈夫なのかなという気持ちが、私、非常に高まってまいりました。人数がふえるということに対して異を唱えるものでは全くありません。しかし、残念ながら、地方の教育現場が本当に求めている今回の千人の純増なのかどうかを考えたとき、これはやはりしっかりとした議論を重ねないとだめだな、そんなふうに思ったところでもあります。

 笛吹けど踊らずという言葉があります。せっかく文部科学省が現場の教師と子供たちが向き合う時間をつくろうとしているにもかかわらず、それが、現場としては反応が鈍い。四十七都道府県のうち三十五都府県が見送ろうというこの事態、これはやはり看過できないな、そんなふうに実は思っているところであります。

 とはいえ、まずベースをきちっとつくっていくこと、これは大変大事なことだろうというふうに思うわけでありますが、ただ、先ほども行革推進法との関係の問題点を指摘される中で、千人の純増を措置するため、これによって新たにどこかにしわ寄せが出てきはしないだろうか、そんなふうに思うわけであります。三十五都府県が見送るという事実を受けて、千人をふやす、しかし、それが結果的に他の職種にしわ寄せが万が一起こるんだとするならば、これはやはり慎重に考えていかなければならない今回の法改正ではないかというふうに思うわけでありますが、千人をふやすことによってしわ寄せがどこかに及ぶかどうか、削減される職種がほかにあるかどうか、まずこの点を確認させていただきたいと思います。

渡海国務大臣 今回の千人でございますが、先ほどの牧議員の御質問でもお答えをいたしましたけれども、これまで十七年度以降行ってきました定数削減、そして今後の見通しといいますかトレンド、実績等において、ぎりぎりのところで行ったものでありまして、それが行革推進法の範囲内ぎりぎりというところでやっておりますから、そういった意味では、どういいますか、今までの実績をある部分に使わせていただいたというふうな部分もありますし、これから先のことというのはまた別の話になりますけれども、直接的にこれが関係をするというふうには思っておりません。

 いずれにしましても、地域の実情はいろいろございますから、そういった中で、各地域で、例えば先ほど給食の安全性というお話もいただいたわけでございますが、その他職員の皆さんの部分につきましても、これは地域がさまざまな御努力をされておるわけでございますから、そういったこと等を含めてこれからの問題は考えていきたい、そういうふうに思っております。

 今回の千人につきましては、これまでの基本的な実績それから見通し、そういうもので行っておりますので、では、全然関係がないかと言われれば関係がないと言うことは難しいと思いますけれども、今までも行われてきた、そういったことの中においてぎりぎりこの数を確保したと御理解をいただければいいのではないかというふうに思っております。

田島(一)委員 何か微妙な発言をちょっと最後にされたので、私は何かその含みが大変気がかりなんですけれども。

 当初、概算要求では七千百二十一人という増員を要求されていたわけでありまして、千人というと、計算するとわずか一四%程度の充足だ。果たしてこれだけで満足ではないというのは、概算要求の数字との違いで明らかではないかというふうに思うわけであります。やはり大臣もそれから総理も、先生が子供と十分に向き合う時間を確保することが重要とこれまでずっと認識もされ、公式の場ででも発言をされてきたわけでありますけれども、本当にこれで十分に向き合う時間を確保すること、ふやすことができるというふうにお考えなのかどうか、それがやはり尋ねたい部分でもありますし、これから先のことについては別の話だと今答弁なさったわけなんですけれども、別の話ならば別の話として、では、来年度以降、実際、これから先として、毎年千人ずつふやしていく考え方を政府として持っているのかどうか、その点、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。

渡海国務大臣 確かに、概算要求に対して少ないじゃないかと言われたら、先ほども申し上げましたが、なかなかつらいところがあるなというのが正直な実感でございます。

 ただ、御案内のように、我々は、教師が子供と向き合う時間をできるだけふやしたいということで、非常勤という形ではございますけれども、七千人という枠、それに千八百カ所、これは各市町村に一つというふうに今考えておりますが、学校支援地域本部を新たにつくりまして、地域が学校のいろいろな問題を支援していくということによって、従来の先生方のいろいろな仕事を軽減しようというふうなことも計画をしております。

 それから同時に、これは昨年末もやらせていただいたことなんですが、例えば事務作業というのを減らせないか。要は、必要ない調査、モデル事業等がたくさんあり過ぎるんじゃないかという、これは私の問題意識でございまして、有識者そして関係者の皆さんにいろいろと御議論をいただいて、まず我が省で数を減らす、そして都道府県教育委員会でもそういった調査物を減らすといいますか、そういったことも考えていただいて、できるだけ学校の負担を少なくしようということも考えております。

 それらが相まって、先生が生徒に向き合う時間というものがふえてくれれば非常にいいなということでやっておりますから、来年以降のことといいますか、来年はどうするんだと言われるんですが、それはこれからの検討でございますので、今ここで即座にどうするということは答えられないわけでございますけれども、そういったことに加えて、さらに我々としては、向き合う時間がふえるように、しっかりと八月に向けて概算要求をしていきたいというふうに思っております。

田島(一)委員 やぼな質問だったかもしれませんけれども、概算要求で七千人からの要求を出されていたという背景からすると、やはり少なくともこの一年必要なのは七千人の数だというふうに私たちは理解をしておりますし、それについて足りない、一四%しか充足していないという現実からすると、それは来年度の概算要求はもちろんのことですけれども、適正にお考えの根拠たるものはやはり一定示していただかないと、私たちも、今回のこの数字が本当に適正なのか、このやり方でいいのかどうかを判断しづらいところがあります。

 そういうところを、余り無責任な感じで、来年のことはわからないというふうにやられてしまいますと、私たちもこれは判断のしようがありませんので、そこは大臣、ぜひ御認識をいただいた上で、やはり丁寧な御答弁をいただかないと困るな、そんなふうに思うわけであります。

 それはそうといたしまして、先ほども行革推進法の問題点についても牧委員の方からかなり質問をされた中であります。先ほどの大臣の御答弁も振り返りますと、これは十七年から二十二年というふうに決まってしまったことだから、何かとり方によると、とりあえずは二十二年までの辛抱だから我慢しているんですよねというようなニュアンスにしかやはり受けとめられないんですね。五年間というスパンの中での行革推進法ではありますけれども、この五年間の中ででも、やはり現場では子供たちが教師と向き合い、そして学び、そして成長していっているわけですよ。この五年間だけ文科省としては辛抱すればいいことかもしれませんが、現場の先生方、現場の子供たちは結局そのしわ寄せを食らっているのが現実なんですね。

 だから、五年だけ辛抱すればいいというようなニュアンスをもしお持ちだったとしたら、やはり訂正していただかなければならないし、誤解を払拭していただかないと、これは文科省の責任問題にもなろうかと思うんです。政府としての考え方にもひびが入ってくると思うんです。その点、もう一度、しっかりと現場に届けるメッセージのつもりでお答えいただきたいと思います。

渡海国務大臣 もしわからないというふうに、これからやりますというつもりで言ったんですが、言葉足らずだったとしたら、それは訂正をさせていただきたいと思います。

 それと、よくそれは理解をしていただきたいんですが、牧委員が言われたことは、少子化とそれから行革法がおかしいんじゃないかと言われたから、この期間においてはこういうことですよというのでお答えをさせていただいたわけでございまして、私は何も、この五年間はしようがないということを申し上げているわけではありませんので。もししようがないと思うのであれば、例えば、去年この概算要求を出して、しかも我々は年末の予算で、五十五条の三項はとにかく状況が変わったんだから関係ないんだと言って、予算の段階で主張はしなかったわけでありますから、そのことは、私も名誉のために言わせていただきますので御理解をいただきたい、誤解のないようにいただきたいというふうに思います。

田島(一)委員 前向きに受けとめさせていただきたいと思います。

 やはり待ったなしの教育現場、常に現場は動いているわけでありますから、そのことを受けとめて、ぜひこの行革推進法、この後、自民、公明の与党の先生方も質問に立たれるわけでありますから、この問題点、矛盾点については厳しく御指摘を多分いただけるんだろうというふうに私も期待をしており、そちらの方にお譲りをしていきたいと思っています。

 さて、関連する問題点について幾つか指摘をしていきたいと思います。

 まず、外部人材活用事業であります。先ほども、学校支援地域本部事業について一定お触れになられました。私たちも、杉並区立の和田中学校を実際に視察もさせていただきましたし、地域本部の本部長さんとも意見交換を随分重ねてまいりました。

 新たな取り組みに対してこうして積極的に取り組んでいこうという、その前向きな姿勢は評価をするところでありますけれども、同じように、子供たちと先生が十分に向き合う時間をふやすための措置として、今回のこの教職員定数の改善のほかに、外部人材の活用ということで、退職教員等の外部人材活用事業というのが盛り込まれています。

 習熟度別の少人数指導であるとか、小学校の高学年の専科教育充実というようなために、都道府県が非常勤講師を配置する場合は三分の一の事業補助をする内容というふうに聞いておりますが、これは、いっても、しょせん単年度の措置でございますね。七千人という数が見込まれているところでありますけれども、単年度で果たして本当に効果が発揮されていくというふうにお考えなのかどうか。

 長年の経験に基づいた退職教員の能力を活用していこうという趣旨は、意図するところはわかりますが、果たして、身分の不安定さや、また現場と、それから、過去やってこられた経験知に基づく方法とそごが起こったりだとか、いろいろな問題が生じていくのではないか。退職教員といえば、その学校の校長先生以下学校の教職員よりも年上の、いわば教職員の大先輩でありますから、果たして学校という一つの組織の中で意思命令系統がきちっと徹底をしたりできるのかどうか、そのような危惧をするところでもあります。

 先輩に向かって、ああしてください、こうしてくださいとなかなか言いにくいのは世の常でありますが、そういった非常に素朴な疑問も含めて、どのようにお考えのこの外部人材活用事業なのか、御説明をいただけないでしょうか。

渡海国務大臣 趣旨は今先生の方からお話がありました。どういうことを考えているかということはおわかりなんだと思うんです。

 先生が今御心配になったような問題、そういった問題は私はゼロとは言えないと思います。これは、そういうことが起こらないようにやはり工夫をしていかなきゃいけない。

 ただ、一方、そういったベテランの先生、また、いろいろなノウハウを持っていらっしゃる先生が大量に団塊の世代で退職をされるわけでありますから、そういった人材をやはり有意義にこれからも使っていくというふうなことを積極的にやるべきじゃないかという意見も非常に多いんですね。

 ですから、そういう意味で、この非常勤講師の問題というのは、そういう能力を持った方々が活躍をしていただける場所をどうやってうまくつくっていくかということと、そのことで現場がいろいろな混乱を起こさないということを考えながら、そして、総合的に考えた場合に、その先生方が活躍していただくことで今の現場の先生方の負担が減るということを、やはりそれぞれうまくやっていかなきゃいけないんだろうなというふうに思います。

 完全に心配がないと言い切るのはなかなか難しいかもしれませんが、そういう心配がないように、どうやってこれからうまくやっていくかということを、もちろん我々も問題が起これば考えていかなきゃいけないだろうと思いますし、また現場で考えていただきたい、また都道府県教育委員会も、そういった趣旨をよく理解して現場の指導をしていただきたいというふうに考えております。

田島(一)委員 何やら見切り発車的な印象を私、今の答弁を聞いて思ったわけであります。ねらいとするところは私も本当に理解しているつもりなんですね。

 しかし、そういった問題点、心配はゼロではないというふうにお認めいただいた大臣ですけれども、その心配をやはり一定払拭してスタートしていかないと、これ、やったはいいけれども現場が混乱した、組織として学校経営がうまくいかなくなったというようなことになってしまっては、結局、しわ寄せを食らうのは現場の先生方であるとか子供たちであります。モデルケース的なそういった事業展開を踏まえて、きちっと精査をした上でスタートしていくならばいいんですけれども、走りながら考えていく難しさというのは、なかなか現場はしんどいと思うんですね。

 これについてはこれ以上触れませんけれども、その点、どうぞこの疑問を払拭できるような対応をきちっとやっていただきたい、そのことを強く要望しておきたいと思います。

 それと、その他の教職員に関してなんですけれども、まず、学校事務職員の増員についてであります。

 今、地域本部についてもお触れいただいたわけですけれども、今回は、予算案の中では学校事務職員の増員については見送りされたところであります。地域本部自体も、それこそ先進的にやっていらっしゃる和田中学のようなケースと、また、それによって実際に学校事務がどれだけ軽減されたのか、先生方の負担量が減ったのかというような検証というのが、まだまだデータ的にはそろっていないというふうに思うんですね。

 その割には、以前私もこの委員会で指摘させていただいた学校給食費の滞納問題、それの徴収事務に学校の担任の先生方が、学校が終わって勤務時間外に家庭訪問をしたりとかというような大変な実態等々もお示しをさせていただきました。そうなってくると、今度は個人の情報保護といったような観点等々もあり、地域本部とかでそういう事務が受け入れられるのかどうかだとか、そういったいろいろな問題もまだついてくるわけでありまして、地域本部を立ち上げれば学校の事務が全部軽減されていくんだというふうにすぱっとはいかない現実もやはりあろうかと思います。

 学校事務の職員の増員等について、今回見送りをされたわけでありますけれども、将来的にどのような展望を描いていらっしゃるのか、お示しをいただけませんでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 教育再生の取り組みを真に実効あるものとし、子供たちの学力の向上と規範意識の育成を図りますためには、教員が子供と向き合う時間を拡充することができるよう、学校現場で日々頑張っている教員を支援する体制が必要でございます。

 このため、平成二十年度概算要求におきましては、教員の事務負担を軽減することといたしまして、学校事務職員の定数改善を盛り込んだところでございますが、平成二十年度予算案におきましては、行革推進法の範囲内で小中学校の教員について定数改善増を行うこととしたところでございます。

 二十一年度以降の教職員定数のあり方につきましては、今後検討していきたいと考えているところでございます。

田島(一)委員 検討は、ふえる、ふえないにかかわらず、やはり毎年検討されるべきことなんですね。どういう姿勢で検討していくのか、そこをお答えくださいよ。ふやしていくべきだというふうに検討していくのかどうか。お願いします。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 教員が子供と向き合う時間を拡充するため、学校現場で日々頑張っている教員を支援する体制が必要でございますものですから、私どもといたしましては、教員の事務負担を軽減するということとして、二十年度予算案におきまして、教職員定数の改善を初め、退職教員等の外部人材の活用事業や、また学校支援地域本部の創設などを盛り込んだところでございます。

 学校事務職員につきましては、今回、二十年度予算案では増員が見送られたところでございますけれども、私ども、学校事務職員が学校の中で果たす役割の重要性にかんがみ、それらも含め、全体として学校の事務負担が改善され、また充実した教育が行われるように取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

田島(一)委員 今の答弁で決して満足したわけではありませんけれども、現状がどうなっているのかということを徹底して調査した上で、やはり必要だ、いや、必要ではないという判断をしていかなければいけないと思うんですね。現場の実態をどこまで把握しているのか、この点について、それこそ私、伊吹大臣にお願いをして、教職員の勤務実態調査をしていただいた経緯がありました。四十年以上調査されなかったものにメスを入れていくと、いろいろな問題点が明らかになってきたところでもあります。

 平成十八年の教育職員に係る懲戒処分等の状況の調査においては、病気休職者数は七千六百五十五人と、前の年に比べて六百三十八人増加をしています。在職する先生の数というのは減っているんですけれども、病気で休職している先生の数は年々増加をしている。一九九五年と二〇〇五年のこの十年間で見ても、およそ三・三七倍に増加をしているのがこの病気休職者数であります。この増加傾向の甚だしさ、とりわけ精神性疾患による休職者数、これは四千六百七十五人と、全体休職者数の六割を超えているという実態があります。

 前にも文科省に、伊吹大臣にお尋ねもしてきましたけれども、渡海大臣はこの要因をどのようにお考えでいらっしゃるのか。この数、何が原因で増加しているというふうにお考えか、今、検討、判断をされていこうとお考えなのか、お示しをいただきたいと思います。

渡海国務大臣 やはり一つは、現場で起こっている問題というのが非常に複雑になっているんじゃないかと私は率直に思います。

 この職につきましてから、いろいろなお話を聞かせていただく機会が多くなったんですが、やはり自分たちがいたころ、自分たちの子供が学校にいたころ、そのころのことはよくわかっているんですけれども、ふだん、学校の現場が、今、田島議員は、たしか体験もされたというふうに記憶をいたしておりますけれども、自分でそこへ行ってやっているわけでもありませんし、私は余りできのいい親ではなかったかもしれませんが、父兄会というのは一回しか行ったことがなくて、そんなことも含めて、家内に任せっ切りだったものですから。

 そういう意味では、最近、いろいろ聞くと、ああ、学校はこれだけ変わってきたのかというふうな感じがいたします。父兄への対応の問題、そしてまた、さまざまな要求ですね、学校に対する要求が随分変わってきているな、そんなことを考えたときに、先生方にかかっている精神的負担というものが以前に比べてやはり大きくなっているのかな、それが率直な私の感想でございます。

 また、現代社会というのは、学校だけに限らず、コミュニケーションにおいて非常にさまざまな問題が起こっている社会でございますから、当然、そういうことについても原因があろうかと思いますけれども、そういったことが複合的に作用して、学校の先生方においても、今言われたような数字の増加というものが見られるんだというふうに理解をいたしております。

田島(一)委員 その認識の方向性は否定するものでもありませんし、ぜひ現場にお出向きいただきたい。文科省のお役人さんをぞろぞろ引き連れて、公式の場ではない、お忍びでぜひ一度現場に赴いていただきたいと私は思います。

 教職員というのは、教壇に立てば先生でありますが、見方を変えれば、教育労働者という視点からも当然この問題を解決していかなければならないというふうに私は思います。

 二〇〇八年の四月から、すべての学校を対象に、この改正労働安全法に基づいて、長時間労働者への医師による面接指導体制の準備が今義務化をされていくわけであります。二〇〇六年度の全国公立学校の数字ですと、この整備状況はわずか二二%にしか来ていないわけでありまして、時間外勤務の管理等の整備がやはり何よりも急がなければならない問題だというふうに私は考えております。

 現場のこうした病気休職者数がふえ続けている現状を踏まえて、とりわけふえているウエートの多い精神性疾患の休職者数を抑えていくための手だてが急務だというふうに考えておりますけれども、文科省として、来年度以降の整備体制についてはどのように考えていらっしゃるのか、ぜひあわせてお聞かせをいただきたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 公立学校教員の、特に精神性疾患による休職者数が多いというのは御指摘のとおりでございまして、さまざまな要因が複雑に関係しているのではないかと考えているところでございます。

 私どもといたしましては、各教育委員会に対しまして、校務の効率化や、また相談しやすい職場環境づくり、カウンセリング体制の整備など、教員の心身の健康の保持、増進について、各教育委員会の取り組みを従来から促しているところでございまして、今後とも、教員の心身の健康の保持、増進について、各教育委員会の取り組みを支援してまいりたいと考えているところでございます。

田島(一)委員 愚問かもしれませんけれども、改正労働安全法の施行に伴って、長時間労働者への医師による面接指導体制の準備、これは、二〇〇六年度は二二%ですけれども、四月からは確実に一〇〇%になるというふうに認識していいんですね。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 教員の心身の健康の保持、増進は大変大事なことでございますので、ただいま委員御指摘の点も含め、各教育委員会でさらに充実した取り組みが行われますよう、私どもも促してまいりたいと考えております。(田島(一)委員「質問に答えてよ。一〇〇%にできるんですね」と呼ぶ)

佐藤委員長 金森局長、質問の内容に的確に答えてください。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 来年度、必ず一〇〇%が達成できるかどうかということにつきまして、今直ちに数字がこうだというのは申し上げることができないわけでございますけれども、そういった大事な問題につきまして各教育委員会がしっかりと取り組みますように、これからも促してまいりたいと考えております。

田島(一)委員 私、これについて、数字が一〇〇になるかどうかという通告をわざわざしなかった責任かもしれませんけれども、ことしの四月からすべての学校が対象になってくるわけですね。一〇〇%にしないとだめなわけですよ、改正労働安全法に基づいては。やはりそのあたり、局長としてきちっと把握をしておいてもらわないと、これはイロハのイですよ、こんな話。あえてわざわざ質問したのがわからないみたいな、そんなこと言われると大変不安になってきます。

 現場でこうした問題がある、教育委員会とも相談をしながらきちっと相談業務でやるとかカウンセリング体制を整えていきたい、これは毎回毎回お答えになっている話なんですね。大事なのは、きちっとした体制を整えてこうした病気休職者数の数をやはり減らしていくことなんですね。病気休職された先生がいれば、そのしわ寄せはそのほかの先生に行くわけですよ。

 そういったことも考えていけば、なぜ現場でそういうように精神疾患等に苦しむ先生がふえてきているのか、その人たちを事前に、病でお休みなさる前に何とか解決していこうと手だてをするために、今回この改正労働安全法の中でそういう体制が、整備をしなさいというふうにルール化されたわけなんですね。そこのところもやはりしっかり踏まえていかないと、現場の現状をどう解決していくのか、この精神疾患のウエートを減らそうという姿勢が本当に見られない状況で、大変ゆゆしき状況にあるんだなというふうに私は思うわけであります。

 その点、大臣、どうですか。やりますとか何か、決意とか意気込みだけじゃなくて、その整備について本当にやる気があるのかどうか、ちょっとお聞かせください。

渡海国務大臣 適正に対処したいと思います。

田島(一)委員 そういう答えですこんとやられてしまうと、なかなか続けにくいんですけれども。ただ、現場の先生方が本当にしんどい状況にあるということは、大臣も多分聞き及んでいただいていることだというふうに思います。

 私は、二年前の十月、この文科の委員会である新聞記事を引用して、当時の伊吹大臣にお示しをしたことがあります。北海道の公立小中学校で、教頭昇進試験を受ける教諭の数が十年前に比べて三分の一に減っているというゆゆしき事態を取り上げました。教頭先生といえば、一番早くに学校へ来てかぎをあけて、一番最後にかぎを閉めていくと一般的に言われているわけでありますけれども、教頭試験、校長試験などの受験者数がどんどん減っているという、これは北海道だけに限った話かもしれませんけれども、こういう実態を示したのが二年前であります。

 それ以降、この教頭試験や校長試験の受験者数の推移というものは調査をされてきたんでしょうか。もししたと言うならば、どんな結果が出てきているか、お示しをいただけないでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま御指摘のございました教頭のなり手が減っているかどうかというようなことに関する全国的な状況について調査は行っておりませんけれども、例えば北海道の教育委員会について申し上げますと、公立小中学校の教頭昇任受験者の推移につきましては、例えば平成九年度は受験者が五百六十一名、平成十年度は四百六十九名でございましたけれども、それが平成十八年度は二百二名、平成十九年度は二百五十五名と、教頭昇任受験者数が減少しているという状況は御指摘のとおりでございます。

田島(一)委員 今北海道の事例しかない、全国調査はしていないということですけれども、では、その北海道の事例をとって、これは全国的にもやはり同じ傾向だというふうに認識をされているのかどうか、お答えください。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 教頭の昇任試験の受験者数の増減につきましては、各都道府県によりまして、退職教職員の数でございますとか、あるいは児童生徒数の数の増減に差がございますことから、全国一律にそれが減少しているということではございませんで、都道府県によりまして増加や減少、いろいろな県があると承知をいたしております。

田島(一)委員 それだったら、やはり全国調査した方がいいんじゃないですか。する必要はないというふうにお考えなのかどうか。どうですか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 公立の小学校や中学校での校長やまた教頭への任用につきましては、各都道府県の教育委員会が任命権者として行っているものでございますので、それぞれの県におきまして、今後、受験者数や希望者数がどういう状況であるのかということは把握をしていただくものと考えているところでございまして、私どもといたしましては、各都道府県教育委員会においてそういったことの状況を踏まえた適切な校長や教頭への任用がなされることを期待しているところでございます。

田島(一)委員 私は、全国調査した方がいいんじゃないですかと申し上げたんですよ。都道府県にもう任せっ切りです、その都道府県によって違いがあると思います、これは北海道のたまたまの減っているという実態ですよというだけの報告であるならば、私は、この後、主幹教諭も結局同じことじゃないかということを思うんですよ。だから、わざわざ教頭試験の北海道の事例をもう一度二年前の話をほじくり出して、今話を持ち出させてもらったんですね。

 やはり責任が重い、負担が大きい、そして精神疾患等々の病気で休職しなければならないというようなこの数字、現場の実態を把握すれば、今回新たに主幹教諭という制度を設けても、教頭試験の受験者数が北海道で少ないという実態と同じように、主幹教諭になりたがらない先生がふえていくんじゃないか、そういう心配を私はしているんですね。だから、まず教頭試験のこの実態、受験者数の推移というのも全国的に調べた方がいいんじゃないですかというように提案を申し上げたのが二年前なんですよ。どうですか、それでもやはりしない方がいいんですか。各都道府県に任せておくべきことなんですか。

 でも、今回の主幹教諭制度というのは、これは文科省がやることなんですよ。都道府県に任せっ切りのことじゃないんですよ。皆さんが責任を持ってやはりやるべきですよ。こうして負担も減りますよということをお示しして、今回千人の増員をするんじゃないですか。それの根拠とした数字を把握しておかないと、結局、笛吹けど踊らずになりませんかという心配を私は今して質問をしているんですよ。

 どうですか、それでもまだやらないというふうにお考えですか、お答えください。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 私どもがみずから全国的な状況の調査をやるということは行っておりませんでしたけれども、そういった事柄につきましてのデータというものは、各都道府県教育委員会が任命権者としてある程度把握をしていると存じますので、さまざまな会議や打ち合わせなどの機会がございます、そういった際、都道府県の状況がどうなっているかということを教育委員会を通じてしっかりと把握をしてまいりたいと考えております。

田島(一)委員 把握をしていきたいというふうにおっしゃったわけですから、大がかりに調査してくれじゃなくてもいいですよ。数字をきちっとやはり求めて出してもらうようにしてください。また次の機会にでも、その数字が出てきた段階でぜひ私どもに出していただきたいと思うわけですが、委員長、お取り計らいお願いをしたいと思います。

佐藤委員長 ただいまの要求につきましては、理事会において協議をいたします。

田島(一)委員 今申し上げたように、この主幹教諭の職務というのも、校長や教頭、それから現場の先生に準じてやはり大変責任が重いということで、この役職に見合うだけの能力、また量的な人材を本当に確保できるのかどうかという不安も一方ではあります。

 牧委員の質問、答弁でもあったとおり、四十七都道府県の中で三十五都府県が設置を見送るという話にも、財政的な負担であるとか、何か規則改正の準備が整わないというようなことが理由だというふうに答弁にもありましたけれども、それ以外に、実際になり手がないというような不安もひょっとしてあるんじゃないかということを私は一方で心配するわけであります。

 現場の実態というものをきちっと把握して、耳ざわりのいいことだけを聞いて判断をしていくと、結局そのしわ寄せは現場に来てしまう、だからこそ、しっかりと現場の状況を把握した上で取り組んでいただきたいというふうに私は思うわけであります。

 最後に、大臣、私が申し上げたもろもろの質問、また懸念に対しての総括的な御意見をぜひ聞かせていただきたいと思います。

渡海国務大臣 いろいろな意見をいただきまして、ありがとうございました。

 私はいつも思うんですが、法律もそうです、制度をつくっても、さまざまな制度というのは、やはりその本来の趣旨がうまく生きていかないと結果的には何にもならないということでありますから、今いただいた御指摘も十分に踏まえて考えていきたい。

 ただ、今回おくれているのは、基本的には、初年度であり、地方の側の準備の問題もあろうかと思います。財政的な問題では、これは地財措置はちゃんとやるわけでありますから、負担にならないようになっております。そのことも申し上げておきたいと思います。

 いずれにしましても、先生がおっしゃったようなことも踏まえ、状況把握といいますか、それにもしっかり努めて頑張っていきたいというふうに思っております。

 最後に一つだけ。申しわけありません。最近は、父兄とは言わないんです、保護者と言わなきゃいけないということで、以降、気をつけて……。

田島(一)委員 父兄会というのも今は保護者会というふうに呼んでおります。家内というキーワードも、今はちょっと神経を使った方がいいのではないかと指摘を申し上げて、質問を終わります。

佐藤委員長 以上で田島一成君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。提出の法案にかかわって質問をさせていただきます。

 二〇〇八年度の文部科学省予算案によれば、〇八年度に認められた教職員定数改善が千百九十五人、そのうち千人分が、主幹教諭の配置に伴うマネジメント機能の強化ということに充てられたわけでございます。

 先ほど来、四月一日から主幹教諭を置くとしている自治体が十二都府県ですか。しかし、以前から主幹教諭に相当する職を導入しているところもありますので、合わせた自治体数、そして主幹教諭に該当する職の教員数をまず教えていただきたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 主幹教諭に類似した職を置いている都道府県の状況でございますけれども、公立小中学校に置かれている主幹教諭や主幹等の名称を用いた職員の数は、平成十九年九月現在、七都府県、すなわち、埼玉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県の七都府県でございまして、合計八千人と承知をいたしております。

石井(郁)委員 私は、今本当に現場が求めているのは教員数をふやしてほしいという声だと思うんですが、これは、文部科学省が実施をした教員の勤務実態調査結果によっても、教員の負担軽減である、子供と向き合う時間の確保ということは、もう昨年来共通の理解になっているかというふうに思うんですね。

 ところが、今回の法改正で主幹教諭に対してだけ加配措置を行うということになったわけですが、あえてですけれども、なぜこういうことになったのかについて、ちょっとお答えください。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 学校をめぐるさまざまな課題に効果的に対応していくためには、学校の組織力を高めることが重要でございます。

 主幹教諭の職務は、児童生徒の教育を担当いたしますほか、校長、副校長、または教頭の職務を助け、校長から任された校務の一部を取りまとめ、整理することでございます。今回の加配措置は、学校の規模等を勘案し、効果的かつ効率的な学校運営を図りますため、組織運営に関する主幹教諭の機能が十分に発揮されるよう、特別の配慮を必要とする学校について、担当授業時数の軽減のための加配措置を講じようとするものでございます。

 御指摘の副校長でございますが、副校長の職務は、校長を助け、命を受けて校務をつかさどることでございまして、副校長は教頭にかえて置かれることが想定されますため、特段の加配措置を講じていないところでございます。

 また、指導教諭の職務は、児童生徒の教育を担当いたしますほか、他の教諭等に対して教育指導に関する指導助言を行うことでございます。授業を基本としながら教諭等への指導助言を行うことが想定されておりますため、担当授業時数の軽減のための加配措置は講じていないところでございます。

石井(郁)委員 なぜ主幹教諭にだけ加配措置なのかということについては、私はどうも今の説明でも納得しかねるわけです。それから、これは後の方でも議論させていただきますけれども、学校のマネジメント機能という、組織力とか教育力とかいうことですけれども、組織的な機能というようなことが強調されているわけです。それが今本当に必要なのかどうかという問題は、これはこれとしてあるわけですけれども、どうも十分な納得説明には伺えません。

 今回、この法案の中に、加配措置が、「運営体制の整備について特別の配慮を必要とする事情として政令で定める」とありますね。今、少し御答弁にも、そこら辺に入り込んであったかというふうには思うんですけれども、「特別の配慮を必要とする事情」と、わざわざ「事情」ということを定めているというようなことで、どういう加配の仕方になるのかということについても、もう少しお答えいただきたいと思います。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 義務標準法の改正案第十五条第三号では、「運営体制の整備について特別の配慮を必要とする事情として政令で定めるもの」としてございます。この政令で定める内容につきましては、主幹教諭を置く学校におきまして、主幹教諭の職務の内容やその学校の規模、教職員の配置等の状況を勘案して、学校の効果的かつ効率的な運営を図るため、主幹教諭が学校運営上期待される役割を十分に果たすことができるよう、その学校の人的体制の整備を行うことが特に必要であると認められることを規定する予定としているところでございます。

石井(郁)委員 その場合の教員の配置なんですけれども、どうなんでしょうか、定数の範囲内で教員を置くということになりますと、例えば非常勤講師を置くということもあるわけですか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 主幹教諭に係る加配につきまして、教職員定数の範囲内で具体的に常勤教員を配置するか、また非常勤講師を配置するかにつきましては、どのような教員配置を行うかにつきましては、各都道府県教育委員会において、地域や学校の状況を踏まえ適切に判断されるものと考えております。

石井(郁)委員 私は、やはり今の予算状況を考えますと、必ずしも常勤の人が配置されるという保証はないわけですね。だから、非常に非常勤に置きかえて配置されるということが考えられるわけでして、そうすると、大変身分の不安定な非常勤講師が置かれるということになると、主幹教諭以外の教員にもしわ寄せが及んでいくんじゃないかというふうに思うわけです。

 現実に今、教員の補充の際に、教職員定数の範囲内で一年契約の非常勤講師に置きかえて配置しているということが多数見られるわけですね。これは、広島県のある地域の話を伺いましたけれども、半年の契約更新で一回しか更新が行われない、だから一年で雇いどめになってしまうということです。しかしながら、この教員は、他の教員と同じようにクラス担任、校務分掌も受け持っている。一年で契約が切られてしまうことになるために、教員と非常勤講師の間、あるいは非常勤講師と子供の関係が断ち切られてしまうということが起こるわけで、やはり、教育に重要な継続性あるいは集団性、そういうことが非常に問題になっているわけですね。

 今出されているのは主幹教諭という、非常に学校での、まさに中核的な役割を果たさなきゃいけない、その授業の軽減、文科省の説明では学校の中で非常にリーダーシップを発揮しなければならない、そういう立場の人の授業の軽減ということになりますと、一体、非常勤講師でその負担を軽減させるということがあっていいのかという問題が起きますし、こういう形になりますと、学校全体、教育の質の低下を招くことになりませんか。

渡海国務大臣 今回の主幹教諭の配置によって、どういう授業がどの程度、主幹教諭がなさっていた部分が軽減されるかというか減るか、そこをどういう形で補っていただくかということにつきましては、実は非常に多種多様だと思います。

 先ほど局長が答えましたように、地域の実情に応じて、学校の規模に応じて、そこはある意味制度設計をしていただかなきゃいけないということであろうかと思いますが、できるだけ、今先生がおっしゃったようなことが起こらないように、非常勤講師を有効に、今回の主幹教諭の場合は、これは定数の加配でございますから、それを有効に使っていただいたらいいというふうに思いますけれども、全体のバランスを考えていただいて、私は、学校の授業の組み立てというものをやっていただきたいというふうに考えております。

石井(郁)委員 主幹教諭の負担軽減といいながら、やはり定数内といいながら非常勤講師を複数置くというようなことでやっていこうということでいえば、私は、非常に安易なやり方に流れるんじゃないかということを大変懸念するわけであります。

 その主幹教諭ですけれども、この法改正以前に、特に東京都では二〇〇三年度から全公立学校にこの職が導入されましたよね。それで、そこの実態というのはいろいろ問題が起きているということは、昨年の教育問題に関する特別委員会でも私たちが指摘したところなんですけれども、改めて、昨年五月に東京都の教職員組合が職の分化にかかわる職場の緊急調査を行ったのを見せていただきました。これは主幹職とか主任職にかかわる問題なんですけれども、そこで出されている自由記述の、いわば生の声なんですね。これは主幹の方の声なんです。これはなかなか聞かれないものだというふうに思いますけれども、三人ほど御紹介をしたいと思います。

 主幹制度を生かして運営委員会のようなものをやっていた、しかし、やればやるほど学校教職員のまとまりに欠けたような気がする、管理職と教職員の間に中二階を置くようなもので風通しが悪い、学校全体にやわらかさがなくなってきたという御意見です。

 もう一人の方は、主幹がいるからといって組織的課題解決能力や学校全体の教育力については全く関係がなかった、いてもいなくても意味が余りない、むしろ主幹によっては職場の人間関係を分断することもあるので、必要のない職だと思うという声でした。

 もう一人の方は、今まではみんなで力を合わせてという意識があったけれども、主幹導入後は、主幹がやるものでしょう、主幹にお願いしましょうというような空気が生まれている、自主的に力を合わせてやろうという雰囲気を壊すものだ、長く続けばすっかり東京の教育のよさが壊れてしまうと思うという声なんですね。

 東京では、主幹になり手がないということで、昨年大変問題になったわけですけれども、私は、まずこういう実態、声があることを受けとめるべきだというふうに思うんですね。

 だから、学校というのは、やはり教職員間で協力、共同して運営に当たるということですから、その回復につながらないということになれば、ここでも教育の質をやはり低下させるのではないか、この点での基本的な御認識を伺いたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 学校をめぐるさまざまな課題に効果的に対応していきますためには、学校の組織力を高めることが必要でございまして、主幹教諭は学校の組織運営体制の充実という観点で大きな役割を果たしてほしいと考えているところでございます。

 副校長や主幹教諭、また指導教諭が新たに設けられるようになりましたことに伴いまして、私ども、各都道府県に通知なども出しているところでございますが、そういったところでは、こういった主幹教諭などの新しい職が適切に機能し、また各教職員の適切な役割分担と協力のもとで教育活動や校務運営が円滑かつ効果的に行われるよう適正な校務分掌を整えることが重要であるということから、各教育委員会などにおきまして、副校長や主幹教諭等の配置の効果について検証し、例えば、副校長や主幹教諭等のみに業務が集中することのないよう、必要な指導を継続的に行っていくことが望ましいということも示しているところでございます。

 こういった主幹教諭などの導入によりまして、子供たちの教育環境の向上や、また、より質の高い教育の提供などにつながっていくよう今後とも促してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 同じ都の教職員組合のアンケートなんですけれども、職の分化で学校がよくなるかという問いに対しては、どちらかといえば悪くなる、大変悪くなる、合わせて九四%という答えでありました。職場がやはり分断される、校長、副校長、主幹が他の教員を見張っている、こういう関係になるんですよね。評価が先立つような雰囲気で、全員総意のもとでの教育がなされていない、保護者の声が担任から広がらないし伝わらないし、保護者と学校が分断される、教員が評価を気にして、悪いこと、つまり評価が下がりそうだということは言わなくなったというようなことが起きている。これが学校の実態なんです。

 そこで、ちょっと伺いますが、主幹教諭の導入の際には、当時の銭谷初等中等教育局長が国会でこういう答弁をされていました。「主幹教諭につきましては、置くことができる職として規定をしておりますので、それぞれの学校や地域の実情に応じて、設置者でございます都道府県の教育委員会等がいろいろと工夫をしながらその配置を進めていける、」省略して「そういう制度にしていきたいと考えている」というお答えでございました。これは我が党の笠井議員への答弁なんですけれども。

 そもそも主幹教諭は、このように必置の職ではなかったわけですよね。ないとわざわざおっしゃっているわけですから。ところが今回、加配措置、こういうやり方で、やはり教育委員会に主幹教諭の設置を促すということになるわけですよ。こういうやり方自身は、国会答弁と違うんじゃないですか。これはいかがですか。

渡海国務大臣 これはあくまで任意でございまして、要は、主幹教諭を配置するかしないかというのは地域の判断でございます、学校の規模等によって判断をしていただくということでございます。

 ただ、そのことによって、主幹教諭が主幹教諭としての仕事をするときに足りなくなる授業数を補おうというものでございますから、特にこれは、任意ということにおいては変わりはないというふうに考えていただいて、加配であっても任意でやられる、この原則には何ら抵触もしない、介入にもなっていないというふうに思います。

石井(郁)委員 私はちょっと強く申し上げますと、もちろん、任意だということはそのとおりなんですよね、都道府県がお決めになるということでもありますし、そうだと思うんですが、国が予算措置をする、そうするとこういう負担軽減になりますよと言うことは、ある種の予算誘導、政策誘導につながるんじゃないですか。そういう役割を果たすんだということは自覚していただきたいというふうに私は思います。

 最後になりますけれども、今現場が求めているのは、そういう主幹教諭のための負担軽減という形、しかも、これはやはり管理職の強化ということにつながっていくわけですから、そうではなくて、子供と向き合う時間、本当に教員の負担を軽減するということが必要でありまして、これも先ほど来出ていたように、一応文科省も、教員の子供と向き合う時間の拡充と掲げて〇八年度の概算要求ではされたというふうに思うんですね。しかし、なかなか認められないということになっているわけです。

 それで、私からも、本当に今後どのようにして子供と向き合う時間の拡充というか確保を進めていくのかと。〇八年度は、定員増分を差し引いても、三百人の教員が減っているんですよ。ですから、現場の教員が一方でこうして減り続ける、どうやって教員の子供と向き合う時間がつくれるのかということは本当に切実で深刻な問題だというふうに思いますので、一般教員の定員増にやはり思い切って踏み出す、これはもう文科省も、そして政府としても挙げてちゃんと取り組むということについての大臣の強い御決意を伺いたいというふうに思います。

渡海国務大臣 総合的にいろいろな判断をしながら、我々としては、申し上げておりますように、子供と向き合う時間をふやすために、今後ともあらゆる努力をしていきたいというふうに思っております。

石井(郁)委員 以上で、質問を終わります。

佐藤委員長 以上で石井郁子さんの質疑は終了いたしました。

 次に、飯島夕雁さん。

飯島委員 自由民主党の飯島夕雁でございます。

 本日は、公立義務教育学校の学級編制や教職員の定数といった、まさに現場にかかわる法律の改正について質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 そう申しますのも、先ほど来よりいろいろ質問が出ておりますが、本当に昨今の学校現場は、学校の先生方は大変でございます。子供はもちろん、保護者や地域から求められているニーズは本当に多岐にわたっており、以前と比べまして保護者の満足度というのも非常に高くなっている、これが学校の先生の頭を悩ませているという現状があるように感じられております。

 先生たちは、非常に多忙、また多角的な即戦力を求められるようになっておりまして、先ほど別の議員からも指摘がありましたように、休職している学校の先生が七千人を超え、さらに精神的な理由で四千人を超える休職者という衝撃的な数字についても、これも学校現場で働く先生方が大変な実態にあるということを反映しているものではないかと心配をしております。

 しかし、そんな中の一つの取り組みとして、今回、平成十九年の学校教育法の改正で、学校の運営体制の充実を図るため、主幹教諭などの新たな職を置くことができるというふうになったわけでございます。そして、今回、主幹教諭の機能が十分に発揮されるためには、学校の運営に係る業務に従事する時間を十分に確保することが必要ということを認識されまして、主幹教諭の担当授業時間の軽減をする目的で新たな教員の配置を行う、いわゆる学校運営体制の整備のための加配措置が定められることになったというふうに私は認識しております。

 主幹制度がこれから発足、始動するに当たり、本当に現場に即して、この魅力を十分に発揮し、子供たちの健全育成や学習指導の充実、教員の人材育成、そして学校運営などに力を発揮するようにできることがとにかく大切だと思いますので、今回の加配措置については大変期待をしているところでありますけれども、改めて、いろいろ混乱や不安も生じているようですので、主幹の求められている役割、それからまた主任と主幹の違いについても教えていただきたいと思います。確認させてください。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 学校をめぐるさまざまな課題に効果的に対応していきますためには、学校の組織力を高めることが重要でございます。このため、昨年の通常国会で学校教育法を改正いたしまして、主幹教諭等の職を学校に置くことができることといたしますとともに、平成二十年度予算案におきまして、学校の規模等を勘案し、効果的かつ効率的な学校運営を図るため、主幹教諭の担当授業時数を軽減し、主幹教諭がその機能を十分発揮することができるよう、千人の教職員定数の改善を盛り込んでいるところでございます。

 こうした主幹教諭の制度を設けることによりまして、学校の実情に応じて、校長や教頭と教諭との間に置かれた主幹教諭が、校長等を補佐し、任された校務の一部を整理することを通じて、例えば組織的な生徒指導や個に応じたきめ細かな教科指導など、教育現場が抱える課題により的確にこたえることができるような体制となり、学校運営の改善が図られるものと期待をしているところでございます。

 次に、主任と主幹教諭の違いについてのお尋ねでございますが、主幹教諭の職務は、命を受けて、担当する校務について一定の責任を持って取りまとめ、整理し、他の教諭に対して指示することができるものでございます。主任の職務が、担当する校務に関する事項について連絡調整及び指導助言を行うことにとどまるものであることと比較いたしますと、主幹教諭はその権限と責任において異なるものでございます。

 また、主幹教諭は都道府県教育委員会が任命する職でございまして、学校を異動いたしましても主幹教諭としての身分は変わるものではございません。それに対しまして、主任は市町村教育委員会や校長の職務命令により当該学校における校務分掌の一つとして命じられるものでございますことから、当該学校を異動した場合には新たに主任を命ずる必要があるわけでございまして、以上の点が主任と主幹教諭の違いでございます。

飯島委員 ありがとうございます。

 確かに、高まるニーズの中で、しかし限られた学校の先生の数の中で、組織力をまさに生かしてやっていかねばならない、そういうことができることによって、先生一人一人が悩みを抱えて精神的に追い詰められていくというようなことも防いでいけるのではないか、このように思っております。そういう意味で、主幹制度に大きく期待するところであります。

 しかしながら、今回、主幹制度、現実に早い段階から主幹制度を導入しているケースもございまして、例えば、東京などの現場で話を伺いますと、学校運営にさまざまな向上が見られたという報告がある一方で、また、先ほど来より指摘のありました、主幹教諭自身は主幹業務と現場業務の両立で大変多忙であるといったような話も聞こえてまいります。

 具体的には、物すごく忙しいんだけれども手当は五千円ぐらいしか違いがないということで、処遇面の魅力が乏しいですとか、時に管理職の下請になってしまう、あるいは、婚姻や出産、親の介護などが発生して一般教諭に戻りたい、ちょっと荷が重過ぎるというような個人的な事情が発生した場合であっても、一度主幹になってしまうと一般教諭に戻れないといった制約がありまして、教員が主幹選考に消極的になってしまっているという側面が指摘されております。

 また、教務主任だとか学年主任といった主任を兼務することが条件になっているというのも大きな足かせになっている部分があるのではないかと思います。

 これは、東京についての一例でございますけれども、こういった状況がある中で、学校現場の管理職からは、何とか、せっかくやる気のある、そして力のある、なってほしい人が主幹を希望してほしい、そういう思いも聞かれております。また逆に、現場の主任教諭の方が十分にしっかり頑張っていまして、主幹制度の資格は取りましたけれども案外不適格ではなかったかというような人材がいることもしばしばあるようにも聞いております。

 本当に頑張ってもらえる人材が欲しいという切実な声がある中で、こういったいろいろな実例を踏まえまして、主幹の弾力化というものも考えていく側面があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 主幹教諭が、その力を発揮して、学校の組織力を高め、学校をめぐるさまざまな課題に効果的に対応していきますためには、その職に適格者を得ることが重要でございます。

 文部科学省といたしましては、適切な選考を実施し、真に主幹教諭としてふさわしい者を任用するよう、各教育委員会等へ指導をいたしているところでございます。

 なお、主幹の弾力化ということについて御指摘がございましたが、一度主幹教諭に任用した者でございましても、任命権者である教育委員会等の判断により、本人の希望に基づいて一般の教諭への降任を認めるといった取り組みも考えられるところでございます。

飯島委員 ありがとうございます。

 今のところ、各都道府県それぞれに、主幹というものについての制度を認識している段階なのではないかと思います。これからスタートするわけでございますので、どうか、今まで既にスタートしている東京のような地域、そういった例も踏まえながら、主幹制度の活用の仕方、これを活用することによって、本当に、文部科学省でもさんざん話しております、教員が現場で子供たちと向き合える時間をつくっていくのだという、このキーワードになる制度なのであるということを、文部科学省としてもぜひ積極的にPRをしていただきたいと思っております。

 そう言いますのも、先ほど北海道の教頭の話が出ておりましたけれども、教頭試験の希望者が激減しているという話の中でありましたけれども、実は、教頭先生だけでなくて、私の地元の北海道の学校現場では、いまだ主任という制度に対するアレルギーも根強く残っているのでございます。本来、主任制度についても、これから導入を始めようとしている主幹制度も、目的は、子供のための、また学校の先生のためのよりよい学校教育現場の実現にあるはずであります。

 しかし、教育の中に上下関係をつくらない、そうした趣旨がアレルギーの中にもあるように思うんですが、限りある人材で、先ほどお話があった組織力を十分に生かしながら頑張ってもらうには、頑張っている先生がその仕事にやりがいと責任を持って取り組むことができる、そういう環境づくりをしていく、そういうことで初めて子供たちに、あるいは保護者に対してきちんとした学校の役割が果たせるものだと思うんですが、こういった混乱が既にある中で、主幹制度がうまく北海道にも導入されればよいなと非常に心配しているところでございます。

 こうしたことについて、大臣、どのようにお考えでおられますでしょうか。

渡海国務大臣 主幹制度の趣旨等については、きょうの議論の中でいろいろやりとりがありました。現場でこれがうまく運用されるように、我々も努力をしていかなきゃいけないというふうに思っております。

 一方、北海道で、まだ主任制度について、まだと言うとしかられるかもしれませんが、いろいろと問題があると。昨今も新聞記事が出ておりました。

 上下をつくらないことがいいことなのかと言われますと、必ずしも一概にそれがいいことだとも思えないんですね。上下というのは一つのルールであって、例えば意思を伝達していく、また責任体制をどうやってとっていくかというときのルールであって、そのことによって、人間関係と信頼関係がしっかりしていれば、何もそれは管理体制ではないわけでありますから、そういったところをやはり理解して、ちゃんとやっていただきたい。

 私どもの兵庫県も、実は一時、随分いろいろな問題がありました。だけれども、今は余り聞いておりません。

 この主任制度について、やはり、しっかりとその趣旨が図られるように、まず教育委員会として努力をしていただきたいと思いますし、いろいろな対応はとっていただいておるようでございますが、単に主張をぶつけ合うだけではなくて、よく話し合っていただいて、そういったことにならないようにやっていただきたいなというのが正直な気持ちでございます。

 その上で、当然、この主幹という制度につきましても、先ほどから御説明を申し上げておりますように、都道府県教育委員会が学校規模とかそういった地域の実情とかに応じて配置をするわけでございますから、また同様なことにならないように、さらに教育委員会の方において努力をしていただきたいというふうに考えております。

飯島委員 ありがとうございます。

 私も、地元の学校の先生とお話しする機会がありまして、毎日の夕方や、それから休日を返上して部活動の顧問をやってくださっている先生、それから子供に向き合うのがとても上手な先生、そういった先生が本当に頑張っている実情を目にしております。そういった頑張っている先生には、やはりきちんと頑張ったなりの評価を受けてもらいたい、そういうふうに見返りをきちんと受けてもらいたいというふうに思うんですね。また、それから、学校運営に対して非常にすばらしいセンスを持っている先生もおられます。

 ですから、現場が得意な先生、学校運営が得意な先生、いろいろな先生がそれぞれの場面でそれぞれの能力をしっかり発揮してもらうということが大切でありまして、それをきちんとまた外部も評価をして、その力を高めていってもらうということの中に主幹制度も位置づけられるのではないかと思っております。

 そういう意味で、今回、主幹制度がうまく導入され、学校運営の方に抜群のセンスをまた発揮してもらいながら、学校現場でしっかりと力を発揮できるような主幹が一人でも多く生まれることを期待するわけでございます。

 国会議員も省庁も、私たちが常に気をつけていかなければならないのは、法律をつくったり今回のように改正するときに、さまざまな現場の実情を踏まえるということは当然だと思いますけれども、その現場の実情を踏まえるときに、うまくいっているケースというのはしばしば大変わかりやすいわけでありますが、あえて、混乱しているというか問題を抱えている、そういうケースをしっかり見きわめながら、そうした現場が本当に使える制度であるかどうか考えながらつくっていくことが大切なのではないかと思います。

 そういった不安があるがゆえに、先ほど来より聞いておりますと、同じような質問が繰り返されているのではないかと思うのですが、しかし、私は、この主幹制度、そしてそれに対する加配措置、これは大切な一歩であろうと思います。

 今回は千人の加配でありますけれども、主幹という制度がきちんと認知され、そして機能していけば、当然、千人では足りない、もっと概算要求をして、主幹制度を十分に活用して、そして加配措置ももっと文科省の予算としてとっていくような、そのぐらいの迫力を持って臨んでいけるきっかけになるものでないかと思うんです。

 ですから、まだ足りない、これが足りないという議論の前に、まず一歩進めてみる。組織力をしっかりと学校教育の現場の中においても、これも組織でございますから、組織力をしっかり高めていくということをする、その大切な一歩として、今回の法改正は十二分に吟味しながら、そして役立てていく必要があると思います。

 そうした意味で、主幹制度、またそれに係る加配措置を全国に普及させていくために、大臣として今後どのようにまた取り組んでいかれますでしょうか、お聞かせください。

渡海国務大臣 まず、きょうも御議論をいただいたわけでございますが、この主幹制度によって何を意図しているか、また、組織力を上げていくということにおいて、これをやっていただくということを十分都道府県に伝え、そして、それと同時に、やれやれと言うだけではだめなわけでありますから、そのことによって学校現場に新たな負担が生じないように、今先生がおっしゃった、我々自身、予算また人員配置、これをさらに充実するように今後とも努めてまいりたいというふうに思っております。

飯島委員 ありがとうございます。

 学校の先生というのは聖職でございますので、何か事件があるとすぐメディアに取り上げられます。何か悪いことがあると、本当に不祥事だ、不祥事だということで新聞でもテレビでも取り上げられておりますけれども、そういった事件があると非常に悲しく残念に思う一方で、しかし、現場のほとんど多くの先生は、本当に子供たちのことを思い、一生懸命頑張っております。そして、この文部科学委員のメンバー、ここにおりますメンバーみんな、そうした頑張っている先生たちを何とかしっかりと守っていける体制づくりをしたいということで、気持ちは一致しているのではないかと思います。

 そうした目線の中から、学校現場をよりよくし、そして、教職員の先生方の働く環境がしっかり充実させられることによって、ひいては子供たちに安心していい教育を、情報提供ができるという中で、前向きにとらえていくことが何より大切かと思います。

 今後、今回のスタートは千人でございますが、全国的にスタートするこの主幹制度、この成功事例等も今後出てくることだと思いますので、そうしたものをまた各都道府県の教育委員会、地方自治体の教育委員会などにもぜひ啓蒙、啓発していただきまして、そして、新しい工夫が現場から生まれてくるようにお願いを申し上げまして、質問とさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 以上で飯島夕雁さんの質疑は終了いたしました。

 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 先ほど来、教職員定数改善についての、特に教職員の定数について種々お話がありました。今回は、主幹教諭による学校のマネジメント機能を強化するというこの大きな課題をどう実現していくかということで、先ほどからもお話がありましたように、本年は三千六百六十九人の改善、概算要求をいたしましたが、今回、それで一千人増員をするということになりました。

 この間の議論については、もう既に何人かの委員から話がありましたので省かせていただきますが、来年度以降の定数改善についての、私ども与党として、もちろんこれは大きな課題だというふうに思っておりますが、行革推進法という一つの枠組みの中で、今後どういうふうに目標に向かって将来増員をしていくかという展望と決意もあわせてお願いをしたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 教育再生の取り組みを真に実効あるものとし、子供たちの学力の向上と規範意識の育成を図りますためには、教員が子供と向き合う時間を拡充することができるよう、学校現場で日々頑張っている教員を支援する体制が必要でございます。

 平成二十年度予算案におきましては、行革推進法の範囲内での教職員の定数の改善や、退職教員等外部人材活用事業、また学校支援地域本部の創設などを盛り込み、信頼される公教育の確立に取り組むこととしておりますが、二十一年度以降の教職員定数のあり方につきましても、今後よく検討してまいりたいと考えております。

西委員 今後よく検討する、非常に聞こえのいい言葉でございますが、本当にこれからが実は大変でございまして、我々も性根を入れてやらなければいけないというふうに思っておりますので、大臣を初め、次の課題のために全力を尽くしていただきたいことを冒頭お願い申し上げます。

 ほかの課題が幾つかございますので、先に進ませていただきますが、外部人材の活用についてお伺いしたいと思います。

 今回の主幹教諭千人の増員のほかに、外部人材を活用するための非常勤講師の配置事業、これが今回盛り込まれております。退職教員等の活用ということで、先ほどもちょっと議論がありましたが、団塊世代の大量退職に伴う影響を緩和しながら教員の年齢構成のアンバランスを解消することが、私は今後の人材配置の上で大変重要なことだというふうに思っております。私も、教育現場におりまして痛感いたしました。

 この課題について、文部科学省、教育委員会はどのような方針で臨んでいるのかということをお伺いしたいと思います。また、今後、この非常勤講師配置事業はどのように展開していくおつもりなのかということもあわせてお答えをいただきたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 子供と向き合う時間を拡充いたしますため、平成二十年度におきましては、教職員定数の改善のほかに外部人材の活用を行うことといたしておりまして、退職教員や経験豊かな社会人等を学校に七千人配置することといたしております。

 この外部人材の活用についてでございますが、具体的には、例えば、習熟度別少人数指導の充実や小学校高学年における専科教育の充実、小一プロブレム、不登校等の生徒指導の充実などに退職教員や経験豊かな社会人を幅広く活用していただきたいと考えているところでございます。

 今後、文部科学省といたしましては、この事業も活用しながら、教員が子供と向き合う時間を拡充し、その職責を自覚して教育に取り組むことによって教育の質の向上を図り、国民の皆様から信頼される公教育の確立に努めてまいりたいと考えているところでございます。

西委員 次に、新しい学習指導要領、これがこれから出発をするわけですが、その移行措置についてお伺いをしたいと思います。

 これは、大臣の御発言で、前倒しをしていく、非常に私は結構なことだというふうに思っておりますが、このことについて、今後の移行措置に関する、多分省令とか告示とかいう形で決めていかれるんだと思いますが、このスケジュールについてお伺いをしたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 改訂を予定しております新しい学習指導要領につきましては、教科書の準備に時間を要しますため、完全実施は小学校は平成二十三年度から、また中学校は平成二十四年度からを予定しておりますが、可能なものにつきましては、平成二十一年度から先行して実施をしたいと考えております。特に、内容が増加いたします算数、数学及び理科につきましては、平成二十一年度から新しい課程の内容を一定程度前倒しして指導することが必要と見込んでいるところでございます。

 こうした事情を踏まえ、移行措置に関する省令や告示につきましては、新学習指導要領の改訂の告示を三月中に行った上で、可能な限り速やかにその具体的な内容を公表したいと考えているところでございます。

 なお、移行措置も省令及び告示の形式で示すものでございますことから、具体的な内容の案を公表いたしました後、一カ月間のパブリックコメントを実施いたしました上で、最終的に省令及び告示として官報に公示することになるものと考えているところでございます。

西委員 そこで、今、そういう形で前倒しをするということの御答弁がございましたが、若干今触れられておりましたが、さまざまな問題がございます。

 中でも、今回教育内容をふやすということで、今までのように、教える内容を削減していくときとは逆方向で、かなり慎重な配慮が必要だというふうに思っております。その学年で新たに学ぶ内容があるということのほかに、それ以前の学年で学んでいなければならない内容ということも十分気をつけなければ、スムーズに新しい学習指導要領に移行することができない、こういうことになります。児童生徒へどうこの問題を対処していくかということが重要になるわけです。極めて細やかな配慮、対応が必要だということをまず申し上げたいと思います。

 このほかに、授業時数の確保をまずどうするか、それから人員の配置等の問題がさまざまございますが、一点だけ、きょうは教科書に関して質問をさせていただきたいと思います。

 理科、数学等に関して新しい教材を用意するということになるというふうに聞いておりますが、これはかなり分量が多くなるのではないか。もちろん学年によっても若干違うかと思いますが、そういうふうに予想されます。使う教科書によって内容も異なって、一律のものを使用することは実際にはかなり難しいのかな、それぞれの教科書会社がつくっておりますので、ここら辺が一つ問題かなというふうに思っております。特に、教員用の指導書ですか、これも実際はそれぞれの教科書会社が発行しているわけですが、ここもまた問題になると思います。

 移行措置期間の新しい教材についてどのように準備をしていくのかということについて、その方針を示していただきたいと思います。大臣、よろしくお願いいたします。

渡海国務大臣 今、具体的なスケジュールについて、いつまでということを申し上げることはまだできませんが、パブコメが終わって、学習指導要領、告示をこの年度内に出します。これで一応確定ということになるわけでございますから、し次第、できるだけ早急に検討して、先ほどお話しになりました教材の問題、そして先生方が使っている教員用指導資料等については、支障がないように、早いものは二十一年度からと言っておりますから、それに間に合うように用意をするように、我々もそれに向けて頑張っていきたいというふうに思っております。

西委員 具体的には、それぞれの教科書会社ごとにそれぞれの追加をするのか、まとめて一つにするのか、費用の点、いろいろな作業の点等があると思いますが、その点と、それから、スケジュールがかなり切迫しています。一年とはいえ準備段階がかなり要ると思いますので、早急な対応をお願いしたいというふうに思います。

 今回の理科、数学教育の充実に向けまして、理科支援員等配置事業、それから理数系教員指導力向上研修というような形で、すそ野を広げる施策、土台となる文科省の施策がございますけれども、きょうはさらに進んで、科学技術系人材を育成することを目的とする施策について、一点質問をさせていただきたいと思います。

 これは、国際科学技術コンテスト支援という内容でございます。二〇〇九年に、来年ですね、国際生物学オリンピック、それから二〇一〇年に国際化学オリンピックというのが開催される予定になっております。これを運営するのは関連の学会等が担っておりますけれども、資金的な基盤が脆弱という問題が挙がっております。

 特に、来年行われる国際生物学オリンピックについては、当初の予定国だったギリシャが辞退し、急に日本で開催することが決まったという事情がございます。本番までの準備期間が短い、それから、生物学オリンピックは三年前から参加ということで、いわば後発組で体制が十分ではないということで、資金的な面でも寄附等が十分集まっていないということを聞き及んでおりまして、課題が多いと思います。

 私も高専で化学を教えていたんですが、生物学そのものがまだまだ企業化されている分野が少ないということもございまして、主催者としては大変な御苦労があるかと思います。

 こんな事情も踏まえて、ぜひさらなる御支援をしていただきたい。もちろん理科、数学全体に対する底上げが課題ですが、いわばこの分野のオリンピックというのは、関心を持っている人たちの夢でもありまして、また全体の実力を引き上げる上においても、日本にとっても大変有益な事業だというふうに思っております。

 松浪副大臣、担当だというふうにお伺いしておりますが、御答弁をお願いしたいと思います。

松浪副大臣 西委員仰せのとおり、科学オリンピックを担当させていただいておりますので、私の方から答弁をさせていただきたいと存じます。

 もとより西委員は化学研究者でもあられました。それゆえに、昨今の生徒の理数科離れを心配されて、そして日本で開催するこれらのオリンピックについて大変御心配をいただいておる、このように御理解をさせていただきますけれども、我が国の科学技術を支える人材養成を進める上で大きな意義を有するものである、このように私どもも認識しております。

 二〇〇九年には国際生物学オリンピックの国際大会がつくばで行われます。次いで二〇一〇年には国際化学オリンピックの国際大会が東京で開催される予定でございますけれども、それぞれ産学官から構成される大会組織委員会が組織されまして、準備が進められておるところでございます。

 先日も、第二回日本科学オリンピック推進委員会が行われました。会長は江崎玲於奈先生にお願いをしておるわけでございますが、そこには小柴、野依といったノーベル賞の受賞者も含まれておりますけれども、そうそうたるメンバーでございます。第二回日本科学オリンピック推進委員会が開催され、私も出席をさせていただきましたが、そこでは、各科学オリンピックの取り組み実績及び計画について、また国際生物学オリンピックの準備状況、日本代表の強化訓練の予定、また化学オリンピックの準備状況、加えて日本科学オリンピック推進委員会の活動等について討議されたところでございます。

 いずれにいたしましても、文部科学省といたしましては、国際科学オリンピックの代表生徒の強化、国際大会の派遣等について積極的に支援してまいりたい、こう考えておりますし、平成二十年度予算案におきましては、対前年度比一億円増の三億五千二百万円を計上させていただいております。これは生物学及び化学の国際オリンピック大会の日本の開催のための増額を図ったというふうに御理解いただければと思います。

 国際科学オリンピックを知のオリンピックとして盛り上げ、より多くの子供たちがあこがれを持ってチャレンジするものになるよう、文部科学省といたしましては、今後とも各団体への支援の増額及び国際大会日本開催経費の支援の増額を図ってまいりたい、このように考えておるところでございます。

西委員 ありがとうございました。

 私が化学出身だということで、化学を中心に詳細に御答弁いただいたと思いますが、決まるのが遅くて、先発の生物学についてもぜひとも御支援をいただけますように、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、科学ということで、平成十四年度から始まったスーパーサイエンスハイスクール、これは非常に効果を上げているというふうに伺っておりますが、評価と課題について質問をさせていただきたいと思います。

 スーパーサイエンスハイスクールは、研究開発学校制度というものを活用して今行われているわけですが、一般的に、研究開発学校制度の成果が有機的に集積されたり活用されたりしていないという課題があると思います。しかし、その課題を克服するために、このスーパーサイエンスハイスクールでは、科学技術振興機構が、研究開発についての各種経費の支援のほかに、研究開発協議会や生徒の間の交流会を開催するなど、実施している学校や関係者の横の連携を果たす役割を担っていただいているのが特徴でございます。この点、スーパーサイエンスハイスクールの取り組みは少し進んでいると私は評価をしております。

 ただ、今後の課題は、指定校を終了した後、このスーパーサイエンスハイスクールであった学校が成果をどのように生かしていけるのか、また、実施していない学校でもこの成果を活用できるようにどのようにしてやっていくのかということが課題だというふうに思っております。研究開発学校制度の成果をホームページで掲載して共有できるようにするなど、活用策を講じるべきではないかと思っております。

 ことしの一月十七日の中教審「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」の中でも、現場の責任でそれぞれの工夫を生かせるような新たな研究開発学校の制度創設を提言しております。新たな研究開発学校制度の導入を推進して、スーパーサイエンスハイスクールなど、指定後もそれぞれの取り組みの成果が生かせるような環境整備をぜひともしていただきたい、こう念じておりますが、大臣の御所見を賜りたいと思います。

渡海国務大臣 このスーパーサイエンスハイスクール、大変効果を上げていると思います。

 私も先日、福島県のある高校に行きました。去年終わったところでありますが、新しい県の枠組みを使って今一生懸命やっている。あと、全部、生徒が感想を寄せてくれまして、その最後に、ほとんどと言っていいほど、再度指定してほしい、こういうのが出てくるぐらい生徒も一生懸命やっております。

 ただ、やはりそうはいいながら、この成果を広げていかなきゃいけないということがありますから、今の枠組みは、ただ単に指定したところだけではなくて、そこを中心にして、その地域、いろいろなところにも広げていけるようにまず考えるということ、それから、終わったところについては、やはりやっている間に蓄積があるわけですから、その成果が使えるように、機器なんかも結構残っておりますし、それから発表の機会、大学とのネットワークなんかがより有効に生きるようにしてあげなきゃいけないなというのが率直な実感でございます。

 ポストスーパーハイスクール、要するに、終わった後どうするかというのは、私も大変問題意識を持っておりますので、さらに有効な手だてをいろいろと考えていきたいというふうに思っております。

西委員 過去に、理数科などいろいろな試みがなされまして、外国語を学ぶ内容だとか、いろいろなことがございましたけれども、次々と展開していく割には前のものがなかなか遺産として残っていないという感じを私は受けておりまして、今回、これだけの有機的な展開をされ、そして設備等も更新をされという条件があるわけですから、ぜひとも、今後ともこれが生かせるように、また、大臣の御指摘のように、出口、いわゆる進学等についてもきちっとした対応が行われるように、さらなる御努力をお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 以上で西博義君の質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 最初に、ちょっと大きな話になりますが、現場で頑張っている教師の教育実践というのは何を目的にして行われているのかということについてお聞きをしたいのと同時に、現在教師が置かれている現場の状況、環境、これは教育実践が目指している崇高な目的を実現するのに十分な環境条件になっているのかということについて、ちょっとお聞きをしたいと思っているんです。

 私は、教育基本法が新しくなって、若干疑問を持っているんですが、しかし、基本的には、教師の教育実践の基本的な目的というのは、子供たちの成長と人格形成、学力の問題、さまざまな問題がありますが、これに直接現場の教師が責任を負っているということだと思っているんです。

 しかし、そういう本当に大事な任務を持っている、したがって、みずからもきちんと律していかなければいけないし、もちろん日々研さんを重ねていかなければならないような教師、こうした教師が置かれている現場の状況は実に悲惨だ、本当に人間的な現場、職場になっていないというふうに言わざるを得ません。

 先ほど来、多くの委員から話がございました。平成十九年十二月、教育委員会月報というのを出されまして、これは先ほどもありましたから詳しくは触れませんが、これによりますと、平成九年から十八年まで、在職者数、つまり教員の数はずっと減り続けました。一方で、病気休職者数、これは増加の一途をたどっていますし、平成九年度から十八年度を比べると約二倍になっている。その休職者数のうちの精神疾患、これは平成九年は三八・六%だったのが六一・一%に上がっている。これはもう皆さん御指摘されたとおりなんです。

 これは、一般の職場と比べても高いですよ、比率が物すごい高いんです。なぜこんなことになっているのか。これはきっちりメスを入れていかないと、本当に、教育実践が目的としている子供たちのための教育、人格の形成などとてもできないような現場になっちゃうんじゃないかという心配を私はしております。

 同時に、自殺者、これもふえています。大臣も御存じのとおり、東京で二十三歳の新任の教師がみずから命を絶ちました。自分の責任だといって亡くなったんです。しかし、実際には、月百時間も残業を強いられていたし、やっていかなければならないような環境があったんです。経験豊かな先輩の教師に相談をしようとしても、その先輩も忙しい。そういう同僚意識、仲間意識みたいなものが職場で希薄になっていて、相談もできない。一人で悩んで悩んで悩んで命を絶ってしまった。今、労災の申請か何かをしているようですが、こんな事例もあります。

 申し上げると、例えば残業時間、これは一般教員でも平均月四十時間超えていますよ。中には過労死ラインと言われる月八十時間を超える先生も一割ぐらいいらっしゃる、そういう統計もあるわけですよ。さらに、休みのときに自宅に仕事を持ち帰って仕事をしている、平均三・五時間ぐらいやっていらっしゃる。そうすると、そういう教師の皆さんは睡眠時間がやはり六時間を切っちゃうというんですよ。こんな悲惨な、非人間的な環境の中で、本当に、子供たちに接して、子供たちの気持ちをしっかりと受けとめて、一緒に成長していくような教育ができるのかという疑問がございます。

 だからこそ、一方では、もうこれ以上やっていられないといって、早期退職者、大臣も御存じのとおり、これもどんどんふえているでしょう。六十歳までやっていられませんというわけですよ。

 こういう現状について、ぜひ大臣のお考えを最初にお聞きしておきたいと思います。

渡海国務大臣 学校現場が大変忙しくて、そして今委員が御指摘いただいたような状況が生じているという話はよく聞きます。

 やはりそれは、先ほどから議論になっているように、状況が随分変わってきたんだろうな。最近は、よく言われるモンスターペアレンツというふうな現象もあるわけでございまして、そのことを考えたときに、やはり負担も減らす努力もやらなきゃいけない。我々はそういう考えのもとで、一つは千人の定員増、それから一つは七千人の非常勤講師、加えて、学校支援地域本部という形で、いろいろな負担を減らすための予算というものを、今二十年度予算として出させていただいておるところでございます。

 加えて、一番最初に実は私がやりましたのは、事務量を減らす努力をやれということで、これは我が文部科学省もそうでございますが、いろいろな調査とかいうことで、モデル事業とかいうことで、現場の負担が随分ふえている部分がある。最小限とは言いませんが、必要なものをやって、余計なことはやらないように、都道府県教育委員会も含めてきっちりやりなさいということも、これは既に動いております。

 そういった努力をして、先生が本当に、今先生おっしゃった、子供たちに向かう時間をできるだけ多くとれるように努力をしていきたいというふうに考えておるところでございます。

日森委員 事務量を減らすというのはもちろん当然の話で、実は、これはちょっと思い出したんですが、イギリスで、あそこは学力の比較をやりますよね。一番トップになった学校の校長先生は何をおっしゃっているかというと、イギリスの教育省ですか、ちょっと名前は忘れましたが、二日に一遍ずつ通達が来て、あれやれ、これやれと言うそうなんですよ。これを一切無視をしたと。そういうくだらぬ仕事をやらないで、本当に子供たちと接していったら、トップになったんですよ。ゆとりの教育ですよね。

 そういう意味では、ぜひ事務量を減らしていただきたいと思うんですが、しかし、今回の主幹教諭とこれに関連する加配の問題で、本当に先ほど申し上げたような非人間的な教師の職場、これは改善ができるのかという不安を持っているわけです。

 一つは、確かに行革推進法がありまして、それとの兼ね合いの中でなかなか人がふやせない、大臣頑張って千人だ、こうおやりになってきたわけでしょうが、しかし、最初にちょっと聞いておきたいんですが、中教審は、教員が子供一人一人と向き合う時間を確保しなきゃいけないよとおっしゃって、こういう中身を出した、これは行革推進法といわば乖離があるというふうに思うんですが、この辺について、御見解はいかがなんでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 教育再生の取り組みを真に実効あるものとし、子供たちの学力の向上と規範意識の育成を図りますためには、教員が子供と向き合う時間を拡充することができるよう、学校現場で日々頑張っている教員を支援する体制が必要でございます。一方、財政健全化努力を継続し、行政改革や歳出歳入一体改革を徹底して進めることも必要なことでございます。

 このため、私どもでは、限られた財源の中で、教員の子供と向き合える時間をふやすとともに、教員の質の向上に取り組むという方向でいろいろと工夫をしているところでございまして、平成二十年度予算案におきましては、定数増千人を含む千百九十五人の教職員定数の改善を計上したところでございますが、今回の千人の定数増につきまして、文部科学省といたしましては、これまでの実績や今後の見通しを勘案し、行革推進法第五十五条第三項に規定する、教職員定数の自然減を上回る教職員その他の職員の総数の純減の範囲内で行うこととし、それを主幹教諭に係る加配措置のための定数改善に充てることとしたものでございます。

日森委員 結局、御努力は評価をいたしますが、私が聞きたいのは、この悲惨な現場の実態を一日も早く改善しなければいけないということなんですよ。

 主幹教諭が配置をされるということ自体は、例えば、先ほど申し上げました、精神疾患がふえている、これは、現場で教師自体が競争を強いられたり、あるいは学校の中での管理が厳しくなって、本当にコミュニケーションがとれないとか、そういう閉鎖的な学校現場というところでにっちもさっちもいかなくなった特に若い教師という人たちが、本当に精神的に参っていくということもあるんです。

 今度は確かに、加配と連携して主幹教諭が入りますけれども、この主幹教諭の配置というのは、逆に言うと、むしろ、学校で教員への管理だとかあるいは階層化、これを強化してしまうことになるんじゃないかというふうに私たちは思っているんです。だから、今精神疾患がこれだけふえている、これを解決する方向とはむしろ逆の方向になっていくんじゃないかというふうに思うんですよ。

 それから、主幹教諭が配置をされても、管理職の事務量は減るかもしれない、しかし、一般教員が今おやりになっている事務だとか、本当に雑多な仕事がたくさんありますよ、物すごいありますね、これが減るとはとても思えないんです。とすると、せっかく御努力されて一千名という加配があっても、これは今の学校現場の状況を解決することにつながっていかないんじゃないか、むしろ、ある意味では、管理を強めて先生方を萎縮させるようなことになるんじゃないか、こう思うんですが、これはどんなふうにお考えでしょうか。

渡海国務大臣 これは随分いろいろな議論がなされたんですね。

 その議論の中で、今先生もおっしゃったように、例えば、教頭が忙し過ぎると若い先生の話だって聞けないわけなんですね。そういったことを考えたときに、私は、人間関係を常に、上下関係があるから管理だというふうに考えるのか、そうではなくて、主幹教諭ができれば、例えばそういう若い先生の相談に乗ることだってできるという面もあると思うんですね。

 また、いろいろな意味で、例えば、校長、教頭が忙しくて、今先生、それは忙し過ぎるからと。事実そうですから。そのことを考えますと、いろいろな相談に乗ってあげる、またいろいろなことを効率よくやるときに、例えば、教頭に対して何か報告しなきゃいけないのに、教頭が忙しくてほとんど時間をとってもらえない、そういうときだって、主幹教諭が一たん受けとめて、そしてやるということで先生方の負担を減らすということだって私は可能だと思います。

 ですから、これは必ずしも管理をするために新たにこういう制度をとるわけではありませんし、先生方の間で、いろいろな意思の疎通といいますか、そういうものがうまくいっていないなと思うときには、みんな一度集まってくれという声をかける、そういう役割も主幹教諭は新たにやっていただけるんだというふうに理解をしていただきたいというふうに思います。

日森委員 大臣はそうおっしゃいます。しかし、現場ではどうもそういう受けとめ方をできないというのが実態じゃないでしょうか。現場の実態も踏まえて、どういうあり方がいいのかというのをきちんと検討しなきゃいけないと思うんです。

 さっき、教頭の話が出ました。これは残業時間を見たら、教頭先生は月平均六十時間ですよ、超過勤務。だから、なり手がないんですよ、北海道の話がありましたけれども。なり手がないんですよ。過労死しちゃう。子供に接するなんということはできないですよ。

 そして、ではその分を今度は主幹教諭が少し受け持ってやろうじゃないかということかもしれないけれども、しかし、それほど減るとは思いません。そういう主幹教諭が本当に若い教師やあるいは同僚教師の相談をしっかり受けて、十分に学校が組織力を発揮できるような、そういう体制をつくれるという保証はないと思いますよ。そこはこれから実践の中で検証していくしかないと思いますが、そういう懸念はぬぐい去れません。

 ということを申し上げて、時間がありません。最後に、実は、こういう格好ではなくて、本来、今のような学校現場を改善していくため、そしてそれは子供たちの人格形成にしっかりと教師が直接責任を持ってやっていける、そういう条件をつくるのは、少人数の加配であるとか三十人以下学級を進めるであるとかいう、本道というか王道でこれは実現していくべきだというふうに思うんですよ。

 これについても大臣の感想をお聞かせいただきたいと思います。

佐藤委員長 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

渡海国務大臣 少人数学級の問題、いろいろ意見があると思います。今後、その意見の中で申し上げたいと思いますが、私は、必ずしも、人数を少なくすればそれで解決するというふうには正直思えません。これは私の持論でございます。先生も同じ世代でございますが、我々のときは五十五人いたわけでございます。要するに、その状況をどうとらえて、どういう形で今教育をするのが現代一番いいのかということをきっちりとやはり見きわめて考えなきゃいけない、これが率直な意見でございます。

日森委員 終わります。

佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。石井郁子さん。

石井(郁)委員 私は、日本共産党を代表して、公立義務諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正案に対し、反対の立場から討論します。

 本改正案によって新たに認められる教員の加配は、主幹教諭の管理的役割を発揮させるために授業などの負担軽減を図るためのものです。既に主幹を置いている東京では、忙し過ぎてなり手がおらず、教員自身からも、かえって人間関係を悪くする、必要のない職との声が上がっています。こうした現実を直視せず、加配によって主幹教諭の設置を促し、教職員集団の管理をさらに強めようとするもので、主幹教諭を置き、上意下達の教職員集団をつくり上げることは、自主的で自由な教育活動を阻害するものであり、認めることはできません。

 また、今回の加配は、実際にはごく一部にしか配置されなかったり、あるいは賃金の安い非常勤講師を置くことによって負担の軽減を図るものです。これでは、教育の質の低下を招き、主幹教諭以外の教員に新たな負担となることは明らかです。

 今求められるのは、子供と向き合う時間の確保のための教員の負担軽減であり、主幹教諭の負担軽減ではありません。そのことを強く指摘して、本法案に反対するものです。

佐藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十九分散会


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