衆議院

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第9号 平成20年5月16日(金曜日)

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平成二十年五月十六日(金曜日)

    午前九時四十分開議

 出席委員   

   委員長 佐藤 茂樹君

   理事 伊藤信太郎君 理事 小渕 優子君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 渡辺 具能君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 富田 茂之君

      阿部 俊子君    井脇ノブ子君

      飯島 夕雁君    江崎 鐵磨君

      小川 友一君    大塚 高司君

      岡下 信子君    加藤 紘一君

      佐藤  錬君    鈴木 恒夫君

      中森ふくよ君    原田 令嗣君

      平口  洋君    福田 峰之君

      二田 孝治君    保坂  武君

      馬渡 龍治君    松野 博一君

      御法川信英君    石関 貴史君

      内山  晃君    田島 一成君

      高井 美穂君    藤村  修君

      松本 大輔君    和田 隆志君

      西  博義君    石井 郁子君

      日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   文部科学大臣政務官    原田 令嗣君

   文部科学大臣政務官    保坂  武君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  近藤 基彦君     御法川信英君

  山本ともひろ君    大塚 高司君

  山口  壯君     内山  晃君

  笠  浩史君     石関 貴史君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     山本ともひろ君

  御法川信英君     近藤 基彦君

  石関 貴史君     笠  浩史君

  内山  晃君     山口  壯君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 社会教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、社会教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。渡海文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 社会教育法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

渡海国務大臣 このたび、政府から提出いたしました社会教育法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 一昨年、約六十年ぶりに教育基本法が改正され、新しい時代の教育理念が明示され、生涯学習の理念、家庭教育並びに学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力に関する規定等が新設されました。このような改正教育基本法を踏まえ、また、家庭や地域の教育機能の一層の向上を図るため、社会教育行政の果たすべき役割を明確にすること、社会教育に関する専門的職員の資質の向上を図ること等が必要となっております。

 この法律案は、このような観点から、社会教育に関する国及び地方公共団体の任務並びに教育委員会の事務に関する規定の整備、公民館、図書館及び博物館の運営の改善、司書等の資格要件の見直しなど、社会教育行政の体制の整備を図るため必要な改正を行うものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、国及び地方公共団体が社会教育に関する任務を行うに当たって、生涯学習の振興に寄与することとなるよう努めるものとする旨を規定するとともに、教育委員会の事務として、家庭教育に関する情報提供、放課後に学校等において児童及び生徒に対し学習活動の機会を提供する事業や学習成果を活用して学校等において行う教育活動の機会を提供する事業の実施等に関する事務を追加するものであります。

 第二に、公民館、図書館及び博物館がその運営状況に関する評価及び改善並びに地域住民等に対する情報提供に努めるべきことを規定するものであります。

 第三に、文部科学大臣及び都道府県教育委員会が司書や学芸員等の研修を行うよう努めるものとするとともに、司書等となる資格を得るために必要な実務経験に社会教育施設等における一定の職にあったことを加える等の資格要件の見直しを行うものであります。

 第四に、地方公共団体が社会教育関係団体に補助金を交付する際に事前に意見を聴取すべき機関について、社会教育委員を置かない場合には、他の審議会等をもってかえることができることとするものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省生涯学習政策局長加茂川幸夫君及び高等教育局長清水潔君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部俊子さん。

阿部(俊)委員 自由民主党の阿部俊子でございます。

 本日は、このような質問の時間をいただきましたことにまずお礼を申し上げまして、ただいま趣旨説明のございました社会教育法等の一部を改正する法律案について、三十分質問させていただきます。

 まず初めに、教育関連予算についてお伺いをしたいというふうに思います。

 平成十八年の教育基本法の改正を踏まえ、社会教育行政の体制整備を図るという観点から、今回、社会教育法、図書館法及び博物館法の一部改正が検討されたことは非常に意義あることだと認識しております。特に、図書館法、博物館法は、いずれも昭和二十年代に制定されて以来、今回が初めての大きな改正となると伺っています。中でも図書館については、保存媒体として現在主流である電磁媒体ということが追加されたことや、いわゆる司書等の資格要件についての規制が緩和され、実態に即した資格となったことは非常に喜ばしいことであると評価しております。

 一方で、我が国の教育に占める予算に目を向けてみますと、学校教育費の予算は諸外国と比較して非常に少なく、教育予算のGDPに占める割合を見ても、わずか三・五%となっています。これは、OECD加盟国二十九カ国中二十八位ということになっておりますが。また、この数年、イギリスやフランスなどの諸外国が政策として教育予算を伸ばしている中、日本だけは教育予算がふえていません。

 これは、社会教育関係予算に関しても同様のところであります。例えば、公共図書館の年間予算額を諸外国と比較してみますと、日本の一人当たりの年間予算額は八百八十六円でございまして、アメリカの三千五百五十一円、イギリスの二千七百七十一円と比較いたしまして三分の一以下の予算となっているところでもあります。私の地元の図書館でも、必要な蔵書の購入さえ困難な図書館がございます。

 また、博物館に関しましても、公立博物館の四分の三は博物館資料の新規購入予算が百万円未満という実態でもあります。博物館はあっても、その整備や維持のための予算がなく、メンテナンスの悪さから、貴重な動物の剥製にカビが生えているなどという博物館も多く見られます。

 このような観点からも、社会教育法等の改正に当たりましては、あわせて必要な予算を確保していく必要があるというふうに考えますが、これに関しまして政府のお考えをお伺いしたいというふうに思います。

加茂川政府参考人 社会教育関係の予算について御説明を申し上げたいと思います。

 委員御指摘のように、他の教育予算と相まって社会教育予算もその充実を図られますことが、広く国民に教育の機会を確保する観点から大変重要な課題であると私どもも認識をいたしておるわけでございます。

 社会教育予算について少し御説明を申し上げますと、まず、国、文部科学省においてでございますが、これまで社会教育の振興を図るため、私どもとしましては、生涯学習の一環として、例えば、高等教育の機会を提供する機関、あるいは我が国唯一の国立の総合科学博物館といったものを設置、運営をいたしましたり、さらには、家庭や地域の教育力の向上、生涯を通じた学習機会の拡大など、各般にわたる施策を展開するための予算措置を講じてきたところでございます。

 とりわけ、本年度、二十年度からは新たに、地域全体で学校活動を支援するため、学校と地域の連携体制の構築を図ろうとする学校支援地域本部事業を実施するための経費を計上しているのが特徴と言えるところでございます。

 一方、地方においてでございますが、御指摘のように、公民館、図書館、博物館の具体的な事業展開の予算が課題になるわけでございますが、まず、これらの事業展開は、第一義的には各設置者、各館が判断すべき事柄でございます。そのことを前提といたしまして、公立の施設、具体には公民館、公立図書館、公立博物館の関係につきましては、国としましては、必要な職員の給与費あるいは図書購入費等を地方交付税として措置をいたしておるわけでございます。

 ただ、実態を見てみますと、御指摘にもございましたように、これらの社会教育施設の運営については、地域によってさまざまな差があるのも事実でございます。各地方公共団体の財政事情等も背景にあると思っておりますが、必ずしも十分な予算の確保がなされていない状況が見られるわけでございます。ただ、一方では、各自治体の判断にもよるわけでございますが、例えば、公立の図書館の運営について、県あるいは市のレベルで大変先進的な取り組みを行っている地域も事実ございまして、地方の判断によるところが多いわけでございます。

 私どもとしましては、地域による差が生じることのないように、一つは、各社会教育施設の設置及び運営上の望ましい基準、ガイドラインを策定いたしますとともに、先進的な事例の紹介等を通じまして、各地域における社会教育の振興に努めているところでございますが、各自治体ごとにおいて、教育の機会の均等が図られますように、自治体における積極的な取り組みをさらに促してまいりたいと考えておるところでございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 ぜひ、必要な予算の確保に向けてよろしくお願いいたします。

 次に、教育委員会の役割としての情報リテラシーに関しましてお伺いをしたいというふうに思います。

 社会教育法改正案第五条第十号におきまして、市町村の教育委員会の事務として「情報化の進展に対応して情報の収集及び利用を円滑かつ適正に行うために必要な知識又は技能に関する学習の機会を提供するための講座の開設及び集会の開催並びにこれらの奨励に関すること。」という、いわゆる情報リテラシーに関する内容が織り込まれたことに関しまして、私は非常に高く評価しているところであります。

 現在、インターネットのいわゆる情報が急速に普及したことにより、社会は大量の情報ではんらんしています。党の方でも有害サイトのフィルタリングなどが話し合われているところでありますが、このような情報がはんらんする中、この情報を的確に選択し、評価し、判断するための能力として、これからの社会においては情報リテラシーということが必要不可欠であるというふうに考えています。

 今回の改正案では、この情報リテラシーに関する講座なども開催することが推奨されておりますけれども、具体的にどのような内容のものになるのか、お尋ねしたいというふうに思います。

加茂川政府参考人 情報化社会の進展に伴いまして、多様な情報が混乱をしておるということがよく指摘されるわけでございます。したがいまして、情報通信技術の活用のみならず、情報及び情報伝達手段を主体的に選択する、選び取る、またはこれを活用していくための基礎的な能力でありますとか態度等を身につけることが大変重要になっておるわけでございます。

 同時に、いわゆる有害情報対策を初めとする情報化の影の部分への対応も課題となっておるわけでございまして、社会教育行政においても、これらの課題に国及び地方ともに積極的に取り組んでいくことが求められておると認識をいたしております。

 これまでも、市町村教育委員会のレベルにおきましては、こうした課題に関連する学習機会を提供してきたところでございますけれども、その重要性の高まりを踏まえまして、このたび、市町村教育委員会の事務として新たに社会教育法上明記をして、その一層の振興を図ろうとするものでございます。

 具体的な事務としましては、パソコンの基礎、入門など社会通信機器の操作方法に関する内容から、情報セキュリティー、情報モラルなど情報を適正に扱うための内容まで、多様なテーマについて講座等の開設を行う事務を想定しておるわけでございます。こうした取り組みが、いわゆる情報リテラシーの向上、情報格差の解消、有害情報対策の充実などに資するものと私どもは大きく期待をしております。

 現在さまざまな取り組みが市町村レベルでなされておりますけれども、高齢者を対象としたパソコンの基礎的な操作方法を教える講座、あるいは保護者向けにインターネットや携帯電話の危険性留意などについて教える機会を提供するもの、さらには子供を対象としたパソコン教室など、さまざまな取り組みが現在もとり行われているところでございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。ぜひとも情報リテラシーを進めていただきたいというふうに思います。

 次に、社会教育における家庭教育の充実についてお伺いをしたいというふうに思います。

 今回、社会教育法の改正案におきまして、「学校、家庭及び地域住民その他の関係者相互間の連携及び協力の促進」ということが国及び地方公共団体の任務として盛り込まれたことは、非常に意義あることだと考えています。これまで学校と家庭の連携が十分に行われてこなかったことで、保護者は子育てやしつけといった本来の家庭教育を十分に行わないまま、子供たちの教育は学校教育の責任であると考えたり、必要以上の権利意識を主張するなど、いわゆるモンスターペアレンツと呼ばれる対応困難な保護者の問題が浮上してきたのではないかというふうに考えています。

 社会教育法の改正に当たりましては、子育てやしつけなど家庭教育につきまして、社会教育の一環として国が率先して取り組み、家庭の教育力の充実を図っていくべきであるというふうに考えますが、特にこの家庭教育における責任の問題も含めまして、これらのお考えをぜひ聞かせていただきたいというふうに思います。

加茂川政府参考人 家庭教育の重要性につきましては、委員御指摘のように、私どもも大変重要な課題であると、同じく考えておるところでございます。

 よく言われますように、家庭教育はすべての教育の出発点でございまして、基本的な倫理観あるいは社会的なマナー、自制心や自律心などを育成する上で重要な役割を果たしているものでございます。

 ただ、都市化、核家族化、少子化、地縁的なつながりの希薄化等に伴いまして、家庭の教育力の低下が見られるという指摘が久しくなされておるところでございまして、そういった状況を踏まえながら、社会全体で家庭教育を支援していくことが大変重要だと思っておるわけでございます。

 これらの状況にかんがみまして、改正教育基本法第十条に家庭教育に関する新しい規定が設けられたわけでございます。その第一項では、保護者が子の教育について第一義的な責任を有すること、また第二項では、家庭教育の自主性を尊重しつつ、国や地方公共団体による家庭教育の支援を講じるよう努めなければならないことについて明示されたわけでございます。

 また、社会教育法におきましては、これまでも、その第五条に規定する教育委員会の事務として、家庭教育に関する講座等の開設が規定されておりました。今回は、これに加えまして、「家庭教育に関する情報の提供」を追加するなど、この法律案に家庭教育支援を一層促進するための関係規定の整備をお願いするものでございます。

 このほか、家庭教育の支援方策としましては、これまでも私どもは、子育て講座の実施に加えまして、家庭教育手帳の作成、あるいは「早寝早起き朝ごはん」運動の推進などに取り組んできたところでございます。

 このうち、家庭教育に関するヒント集である家庭教育手帳について少し申し上げますと、乳幼児あるいは小学生等を持つ保護者への配付を通じまして、子育ての不安や悩みの解消に役立っているものでございますが、その中で、親につきまして、親の自覚を促す指導事例としまして、親の生き方が子供への最高の教育になるといった事柄や、あるいは、よく言われることでございますが、子供は親の姿を見て育つといったことも盛り込まれてございまして、モンスターペアレンツに代表されますような、親の自覚を促す事柄についても、この家庭教育手帳では触れられているところでございます。

 また、先ほども申し上げましたが、これらの取り組みに加えまして、二十年度予算におきましては社会教育の関係の予算が充実しておりますが、家庭教育支援チームの予算もお認めいただいておるところでございます。これは、新たに子育てサポーターあるいは民生委員など地域の人材等で構成する家庭教育支援チームを身近な地域に設置いたしまして、子育ての悩みを抱え孤立しがちな親など、さまざまな状況下に置かれます保護者に対して、情報や学習機会の提供あるいは相談体制の充実を初めとするきめ細やかな支援を行う体制整備の促進を図るものでございまして、必要な経費を計上させていただいておるわけでございます。

 私どもといたしましては、これらを踏まえまして、学校、家庭が相互に連携協力しつつ、家庭において保護者がその責任を果たすことができますよう、きめ細やかな家庭教育支援に一層努めてまいりたいと考えておるところでございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。

 家庭教育については、親や保護者などに対して家庭教育の責任を明確化していくことも非常に重要であるというふうに考えますので、ぜひ社会教育という観点からも推進をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 最後に、学校と地域の連携という点から、地域の教育力の向上について質問させていただきます。

 先ほどもお話をさせていただきましたが、モンスターペアレンツ問題に代表されますように、保護者から教職員に対する一方的な批判や道理に基づかない要求など、いわゆる教育活動が停滞いたしまして教職員が疲弊しているところであります。さらに、いじめや暴力などの児童生徒の問題行動、不登校や心の問題を抱える生徒の増加により、学校教育を教職員だけに依存するのは限界にあると考えています。

 党の方で部会がありましたときに、京都市の教育委員会で、医師、弁護士、臨床心理士や警察官のOBなどが協力して、対応困難な保護者の対応を検討するためのチームとして学校問題解決支援チーム、さらには、問題行動のある子供たちに対する特別支援を考えるための自律促進教育チームというものを立ち上げて、教員の支援を開始したということを聞いているところでもあります。特に、発達障害の子供たちがふえる中、各小学校に、またそれぞれの学校に臨床心理士をつけていくことが非常に難しい状態となっていますが、やはり、教育カウンセラーなどの適正配置をしっかりと考えたときに、このような形での教育チーム、支援チームということも可能ではないかというふうに考えました。

 私の地元の岡山県美作市では、武蔵青少年育成会というものがございまして、美作市は宮本武蔵の生誕の地ということが言われておりますが、武蔵青少年育成会という名前がつけられて、この育成会では、地域住民がチャリティー募金や寄附をもとにお金を集め、学校や行政、家庭だけではなく、育成会が中心となって、地域住民が一体となって青少年を守っていくという取り組みが行われているところであります。

 具体的には、寄附をもとに集めた資金で、さまざまなイベントやスポーツ大会の開催など、子供たちの健全育成を図るための支援事業を行っているわけでありますが、このように、市民ぐるみ、地域ぐるみで社会が一丸となって次世代を担う子供たちを育てていくという姿勢が非常に重要であるというふうに思います。

 社会教育としての観点からも、平成二十年より、学校支援地域本部事業として、地域住民から成る学校支援ボランティアを活用し、子供たちの登下校の安全確保や、教員の勤務負担の軽減などの一環として学校行事の開催、部活動の指導など、さまざまな学習支援活動を行う取り組みが開始されたというふうに聞いています。この学校支援地域本部事業、進捗状況に関しまして、ぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。

渡海国務大臣 委員のお話を聞かせていただいて、実は大変不思議な感じがしましたのは、私の地元の高砂市というのは、武蔵、伊織の生誕の地ということで、実はあさってにも武蔵・伊織まつりというのが開催をされます。同じようなことをやっております。剣道大会とか、さまざまな健全育成をやるということで地域が実は頑張っておりまして、恐らく先生の地域からもだれか来られるんだろうと思っているんですが。

 地域がそうやってやはり青少年の育成に取り組むというのは大変大事なことでございます。先ほど局長からもお答えをいたしましたが、家庭の問題を考えましても、やはり家庭を孤立させないといいますか、母親が逃げ込める場所があるといいますか、逃げ込むという言葉はよくないですね、相談に行ける場所がある、そういったことも非常に大事だというふうに思っております。

 そんな観点から、今御指摘をいただきました学校支援地域本部というのを今年度からスタートいたしております。今年度枠で千八百、すべての市町村にまず一カ所ということで考えておるわけでありますけれども、現在までのところ、一次募集で千カ所ちょっと募集があるというふうに聞いております。今月中に内定をいたしまして、速やかに実施ができるような手続を進めようということを考えております。

 なお、予算上、地域の取り組み上、六月の都道府県議会とか、こういった形も考えられますので、二次募集をいたしまして、当初の目的であるまずはすべての市町村、最終的には中学校区、日本全国というふうに考えておるわけでありますけれども、この事業が進められるということを今意図しております。

 状況としてはそういうことでございますが、この事業におきまして、まず地域と学校が一体となってさまざまなことを行っていくということでありますけれども、この事業は、コーディネーターを配置する、学校の事情をよくわかっていて、なおかつ地域をよくわかっている人、これはボランティアも含めて、そういう方々に少し謝金を払わせていただくとか、そういうスキームもございまして、団塊の世代が退職をするといったような時代もございますから、そういった中で、地域と学校が連携を図りながら、今後とも教育というものが地域において行われていくということができるだけ効果を上げていただきますように、地域も御協力をお願い申し上げますし、また、我々も学校サイドから頑張っていきたいというふうに考えておるところでございます。

阿部(俊)委員 ありがとうございました。ぜひ、千八百地方自治体にこの学校支援地域本部事業が普及することを願っております。

 実は、昨日も自民党の方の部会の中で学校の先生方の教員事情をお話しされる方がいらっしゃいまして、最近の教員の中では、のむ、うつ、買うというのがはやっているんだと。何を言うかといいますと、のむのは胃カメラ、うつはいわゆるうつ病のうつでございまして、さらには、買うのは、疲れ切った体で学校帰りに宝くじを買い、当たったら教員をやめてやろうと考えているという、のむ、うつ、買うという、非常に学校の先生方がお疲れになっていることをあらわす言葉で言われていました。

 ぜひともその先生方を支援していただくべく、この取り組みを行っていただきたいと思いますし、今後は教育委員会で行われている取り組みと連携を図って、学校と地域の連携体制の構築でこの取り組みをぜひとも進めていただきたいと大臣にお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 以上で阿部俊子さんの質疑は終了いたしました。

 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 私の方からは、まず、社会教育法の改正につきまして何点か御質問をさせていただきたいと思います。

 教育基本法の改正等がありまして、また、大臣の方から中教審にさまざまな諮問がされましたけれども、ことしの二月十九日に中教審の方から、「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」という答申が出ました。その中で、大変大事なことだなと思う指摘がされておりました。このように中教審の方は答申されております。

 「地域の教育力の向上のために、学校・家庭・地域が協力した地域ぐるみの教育活動等の重要性は高まっており、社会教育が積極的に地域における子どもたちの健全育成等を支援することが求められている」「学校を支援する活動等の地域における教育活動等、地域住民が学習の成果を生かして活動する機会の提供を社会教育行政の任務として明確に位置付けることは、このような取組を推進する上で必要である。」というふうに指摘をされました。「特に、これまでも学社融合等の重要性については指摘されてきたものの、学校の支援等については、学校教育行政との関係で社会教育行政の役割が必ずしも明確にされてこなかったが、社会教育行政が積極的に担う役割があることを明確にすることは、地域における取組を制度的に後押しする上で意義があるものであり、今後、社会教育行政の新たな積極的な展開を図っていく上で極めて重要である。」このような答申がされました。

 この答申の中で具体的に施策としていろいろ挙がっていましたけれども、特に大事だなと思いましたのは、社会全体の教育力の向上のためには、学校、家庭、地域が連携するための仕組みづくりが大事だ、この仕組みをどうやってつくっていくかが大事だという指摘がありました。特に、学校を地域の拠点として社会全体で支援する取り組みとして、今、阿部先生の方からも御指摘がありましたが、学校支援地域本部事業、そして放課後子どもプランを推進することが私は大変重要だと思います。

 今回のこの社会教育法の改正で、この学校支援地域本部事業、また、放課後子どもプラン、この両施策をどのようにバックアップしているのか、まず御説明をいただきたいというふうに思います。

渡海国務大臣 御指摘をいただきました委員の考え方といいますか、全く同感でございます。地域がしっかりと学校と連携を図りながら、学校が果たすべき役割、また、地域が果たしていただく役割、そして連携をしながら、その相互が相まって地域全体の教育レベルが上がっていくということであろうというふうに思っております。

 御指摘のことにつきましては、今回の法改正の中の、法の例えば十三条にまず子どもプランのことが書いてございますし、また、十五条にこの地域本部のことが記載されております。法律でしっかりと書く。

 これは、委員も御指摘をいただきました基本法の十三条の根拠規定に基づく法制でございまして、十三条では、「主として学齢児童及び学齢生徒に対し、学校の授業の終了後又は休業日において学校、社会教育施設その他適切な施設を利用して行う学習その他の活動の機会を提供する事業の実施並びにその奨励」、これはまさに放課後子どもプランでございまして、従来、放課後子ども教室というメニューを文部科学省は持っておりましたが、厚生労働省と一緒になって、放課後とか休日を利用して地域の方々がいろいろなことをやっていただく。私も岡山県と香川県に視察に行ってまいりましたが、本当に、やっていることは地域によっていろいろな工夫をされておりますが、生き生きと遊んでいる姿、また生き生きと、ある意味遊びながら学習している、こういう子供の姿を見てまいりました。

 また、十五条においては、「社会教育における学習の機会を利用して行つた学習の成果を活用して学校、社会教育施設その他地域において行う教育活動その他の活動の機会を提供する事業の実施及びその奨励」ということでございまして、これに基づいて、今、支援地域本部を提案させていただいております。

 先ほどから議論の中でも言われておりますように、本部を設置し、コーディネーターを配置いたしまして、より連携をスムーズにする、そのことによって、これは地域の特性がございますから、何をやれということを言うことはよくないと思いますが、いろいろな例を、我々も、情報も収集しながら情報を提供していくということは、今後とも大事であろうというふうには考えておるところでございます。今出ている千余、そしてことしじゅうには全市町村にこれが配置をされて、それぞれの創意工夫をもって運営されていく、また、それに対して我々は適切なアドバイスをしていくということをやっていきたいというふうに考えておるところでございます。

富田委員 今大臣の方から御指摘いただいたんですが、社会教育法の五条の十三号と十五号です。十三条、十五条じゃなくて。それぞれの号に今の規定がありましたので、訂正をしておいていただきたいと思います。(渡海国務大臣「五条」と呼ぶ)

 先月、学童保育をされているお父さん、お母さんたちの会合にお邪魔しまして、文科省の方も、放課後子どもプランということで、これまでどちらかといえば厚生労働省の方が子供たちの放課後についてはいろいろ力を入れてきたんですが、今後は文科省もしっかり協力してやっていくんだというお話をしましたら、大変喜ばれておりましたので、ここにもぜひ力を入れていただきたいと思います。

 学校支援地域本部事業につきまして、先ほど大臣の方から、一次募集で千カ所の応募があったというふうなお話がありました。私の地元、千葉県で、公明党の地方議員さんが百六十名いらっしゃいます。三月議会でぜひこの事業を取り上げてもらって、各市町村で実施できるようにやってもらいたいというお話をしまして、千葉県内、いろいろ地方議員さんがそれぞれの市町村で教育委員会と話し合いをして、ぜひ自分の町でもこの事業をやりたいというふうにやってもらったんですが、二つ、問題点を指摘された。

 新規事業ですので、文科省がこういう新規事業をやると、ちょっとまずくなると、すぐ手を引っ込めちゃう。文科省の指導に乗っかってやるのはいいんだけれども、地元が頑張った途端にはしごを外されることがよくある。

 もう一つは、今回五十億四千万でしたか、予算がつきましたけれども、この予算がちゃんとついていくのか、これが心配だというふうに教育委員会の方で言われて、千葉県内ではかなり積極的に支援していただく市町村また教育委員会もあったんですが、教育委員会のところでだめだと言われてしまったところも結構ある。これは、教育委員会の方もこの事業の中身をまだ余りよく理解していない。先ほど大臣がおっしゃったように、本当に地域の特性があるし、コーディネーターに適切な人材を確保できるかどうかというのが本当に大事だと思うんですね。

 杉並区の和田中では、これまで五年間、同じようなことを藤原前校長のもとでされていて、藤原校長に聞きましたら、事務局長になったお母さんが、以前PTA会長もやり、地域での人脈も広くて、この方がいたからやれた部分があるというふうにおっしゃっていましたので、やはり、地域特性もありますし、どう人材を確保するかというのは問題だと思うんです。

 教育委員会がちょっと待ってよと言うのはいかがなものかなと。文科省の方でよく説明していただいて、まずやってみよう、やはりこれはいい方法だということで動き出すべきだと思うんですが、どうでしょうか。

渡海国務大臣 そのようなことがあるのは、我々も聞いております。

 やはり私は、いい事業だったらちゃんと続けられると思うんですね。スタートして、そしてこれをしっかりやっていく、そのことによって、これは財政上の措置の問題を私が今約束するわけにはいきませんが、我々はしっかりと主張できると思いますし、また、例えばこれは地財措置に変わっていくというふうなことも考えられます。将来のことについて今明快に確約をさせていただいてもいいですが、その責任は負いかねますので、ちょっとお許しをいただきたいと思いますが。答えは、要は、いい事業としてうまくいっていれば、それはちゃんと続いていくということであろうと思います。

 その前提として、まずやはり、これはこういう事業なので、この趣旨をよく理解してくれということをしっかりと教育委員会の方に私どもの方からも申し上げたいというふうに思いますし、今委員が御指摘いただきましたことにつきましては、我々も努力を、今もさせていただいておりますけれども、なお一層努力をさせていただきたいというふうに思います。

 五条の十三号です。失礼しました。

富田委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 実は、私、今住んでいる習志野市の新年の賀詞交歓会で、この事業が立ち上がるという話を一月にさせてもらいました。地域のお母さんたちが大勢いらっしゃっていて、習志野市内、中学校が七つあるんですが、七つの中学校区とも全部手を挙げたというふうに市長が電話をしてきました。二次募集なんかしないで、ぜひこの一次募集の千校全部決めていただきたいということをまず御要望しておきたいというふうに思います。

 もう一つ、学校、家庭、地域を結ぶPTA活動の充実も大切だというふうに、この中教審の答申の中では具体的施策の一つとして挙げられていました。

 先日、朝日新聞だったと思いますが、杉並区の和田中のPTAが区のPTA協議会から脱退したというような報道がされていました。なぜ脱退したのかということを地域のお母さんが話していましたけれども、子供たちのためにPTA活動に入っていくのはいいけれども、よそのPTAの人との会合とかPTAと関係ないと思われるような地域のいろいろな会合に引っ張り出される、ただでさえ自分の学校のPTA活動でお父さん、お母さんは忙しいのに、そんな負担はちょっと意味がないんじゃないかと。では、なぜそういうほかのPTAの会合に出されるのかというと、見ていると、どうもこれまでの慣行だ、そうなっているからだということしかなくて、ちょっと意義づけができない。そういう意味で、和田中のPTAとしては、たまたまこの三月、藤原校長が退任される際にいろいろ話し合って、脱退することを決めたんだという報道がされていたんです。

 PTAの協議会というのはそれぞれの地域が独自にやるものですから、文科省がどうこう言う立場ではないと思うんですが、こういうふうな動きがあるというのは、文科省としてはどう考えられますか。

加茂川政府参考人 PTAの役割についてでございますが、委員御指摘のように、保護者と教員が協力をいたしまして、学校、家庭教育、地域の教育環境の改善等の活動を行うことによりまして子供たちの健全な育成を支援するという意義を有しておるわけでございます。そういった団体でございますから、この意義は、強まることはあっても低減することはないのだと私どもは考えております。

 PTAの活動のあり方としまして、どういった団体に属しながらその役割を果たしていくべきかということにつきましても、PTA自体が任意団体でございますから、PTA自身が自主的に判断すべき事柄だと考えておるものでございます。

 PTA関係の団体または上部機関にどのように帰属したり、または連携を図るかについては、委員、慣行的な事務が多いというお話もございましたけれども、私どもとしましては、帰属したり連携することによって活動の範囲を広げる、あるいは、単独では入手できない情報を入手するなどして本来の活動を充実していくことができる等のプラス面があるとは考えておりますけれども、繰り返しになりますが、関係する団体にどのように帰属するか、または上部団体とどういう関係を持つかにつきましては、各PTAが自主的に判断すべきだと思っております。

 ポイントは、PTAが本来持っております機能、役割、すなわち、個々の学校、教職員、子供との関係において十分役割を果たしていくかどうかといったことが、まず判断の第一のポイントになるのではないかと考えておる次第でございます。

富田委員 文科省としてはそう言うしかないと思うんですが、PTAは任意団体だと言うんですが、その記事の中で、この和田中で学校支援地域本部の一部門にPTAを位置づけよう、学校支援地域本部の方がいろいろなことをやるので、その一部門にPTAを位置づけるとPTAの会長さんとかその他いろいろな役員の人たちの負担も軽くなるんじゃないか、地域全体で学校を面倒見る、その一部門にPTAを位置づけるんだというような考え方が出てきた、すぐやりたかったけれども、すぐは移動できないのでそういう考え方で今後検討していきますというような報道ぶりでした。

 これは、今後の学校支援地域本部事業を展開していくに当たって一つのいい指標になるんじゃないかなというふうに思うんですが、そのあたりはどうでしょうか。

加茂川政府参考人 地域本部の設置またはその活動のあり方につきましても、さまざまな地域の状況を反映してそれぞれに判断されるべき事柄だと考えております。

 委員から和田中学校の事例のお話がございましたけれども、和田中学校も学校支援地域本部については先進的な取り組みを行っているものと私ども高く評価をいたしておるわけでございますが、あくまでも自主的な組織でございますから、具体的な機能を含めまして、組織、構成についても、それぞれの地域に応じて判断された事例の一つと理解をしておるわけでございます。

 PTAとの関係でございますが、実は、それぞれの地域の取り組みについては、和田中以外の先進的な事例もございまして、PTA自体がこういった学校支援地域本部と変わらない設置主体になって運営しておるものもございますし、他の団体と連携をしながら同様の機能、役割を果たしているといった事例も想定されるところでございます。

 PTAはあくまでも、先ほどの繰り返しになりますが、学校、家庭教育、地域の教育環境の改善等の活動を行いまして、地域を通じて子供たちにとって健全な育成環境を醸成していくことを支援する役割を持っておるわけでございますから、学校支援地域本部が学校教育にかかわることに主にその事務を中心に考えますときには、その活動範囲、役割が必ずしも一致していない部分があるわけでございます。

 ですから、PTAが本来期待されます機能や役割を、地域本部のかかわり方とは別に果たすべきことを私どもは期待しておるわけでございます。学校本部に参画することももちろん想定されるわけでございますが、それに伴って、本来期待されるPTAの機能や役割が果たされなくなるようなことはあってはならないのではないかと考えておるところでございます。

富田委員 今局長が言われた和田中以外の先進的な取り組み事例をぜひ全国に発信していただきたいと思うんですね。それぞれの地域で、どういうふうに自分たちに合ったPTA活動、地域に根差したPTA活動ができるかというのは大事だと思いますので、今局長が言われるとおりだと思いますから、ぜひ全国への発信をよろしくお願いいたします。

 大臣、何かありましたら。

渡海国務大臣 これは新しい取り組みですから、ある部分、私は、いい意味で試行錯誤があっていいと思います。それが混乱につながらないように我々はしっかりと情報を流していかなきゃいけないというふうに思いますから、今委員がおっしゃいましたように、いろいろな先進的な例、いい例、これがこうだという定型はないんですね、ですから、PTAそれから支援本部、コミュニティースクールという学校に直接かかわってくる部分もあるわけでございますから、そのところの連携がかえって混乱するようなことがないように、しっかりと我々は見守っていきたいというふうに思っております。情報はまた、いろいろ提供することも視野に入れながら検討してまいります。

富田委員 ありがとうございました。

 残りの時間を使いまして、横浜市立大学医学部の学位取得をめぐる謝礼授受問題について何点か質問をさせていただきたいと思います。

 ことしの三月十二日付の読売新聞で、「博士号取得の謝礼授受」という大きな見出しのもとに、学位取得をめぐって金銭の授受があったんじゃないかという報道がされました。その後さまざまな報道がされていますが、文部科学省としては、この問題をどのように認知されたのか、また、問題の所在を知ってどのように横浜市立大学に指導されたのか、まず教えていただきたいと思います。

清水政府参考人 横浜市立大学医学部の学位取得をめぐる謝礼についてでございますけれども、文部科学省としては、本件に関して、三月七日金曜日夕方、私どもに投書をいただきました。三月十一日に横浜市立大学に対し、当該通報があった旨を伝え、事実関係の説明を求めたところでございます。その後、三月十二日に読売新聞において本件について、先生御指摘の報道があったというふうに承知しております。

 横浜市立大学に対しては、三月十三日以降、再三にわたって、今回の学位審査をめぐる不祥事に関して事実関係の究明と再発防止策の適切な対処、すなわち、医学部のみならず全研究科の学位審査に係る教員、学位申請者に対する調査の実施、あわせて、倫理規程、行動指針の策定等再発防止あるいは是正のための措置をどのように対処するのかということについて、きちんと対処していただきたい旨指導を行ったところでございます。

 また、文部科学省としては、学位審査に関する透明性、客観性が確保されるよう各種会議を通じて指導を行ってきたところでありますけれども、その重要性にかんがみ、三月十九日付で各大学に対し、厳正な学位審査体制を確立するよう通知、すなわち、公開での論文発表会の実施でありますとか学外審査委員の積極的登用、通報、相談窓口の設置等を発出したところであり、引き続き指導の徹底を図ってまいりたいと考えておるところでございます。

富田委員 文科省の方は、御自分のところにそういう申し出があったのですぐ動いたというのは理解できるんですけれども、どうもこの横浜市立大学の対応というのははっきりしない。

 資料によりますと、去年の十一月一日に内部通報があった、どうもそのまま放置されていたようですね、内部通報したそのお医者さんがことしの一月に異動の内示を受けた、配置転換させられそうだというふうに同大学のコンプライアンス推進委員会に保護を求めたけれども、結局、四月一日付で神奈川県内の病院の専門外の診療科に異動させられたというふうに、やはり同じ読売新聞が今月の十一日付の報道でこの事実を報道されていました。事実がどうかは、新聞報道ですのではっきりわかりませんが、一連の経過から見ると、恐らくこのような配置転換があったんだろう。

 文科省の方としては、認知した途端にすぐ適切な指導をされた、また各大学に、同じようなことがあってはならないということで通知を発出したというのは評価しますけれども、どうもこの大学自体の対応というのはどうなっているんだ。

 コンプライアンス委員会がありながら、十一月に受けたのに、結局、文部科学省の方から行政指導を受けて慌てて動き出して、コンプライアンス委員会の報告が三月二十五日になされた。この報告書もかなりいいかげんで、そんな事実ありませんよみたいなことを言っているのもあります。

 それに、文部科学省の方で厳しく指導した結果ですか、学位審査等に係る対策委員会をこの大学の方で設置されて、元東京地検特捜部長を務められた弁護士さんを委員長にして、特別の委員会を立ち上げて調査した。その中間報告書というのが五月二日付で出されています。文科省の方としても、中間報告を掌握していると思うんですが、この中間報告書に対してはどんな評価をしていますか。

清水政府参考人 御指摘の横浜市立大学の対策委員会が行った学位審査に関する実態調査は、その中間報告書というふうなタイトルが示しますように、医学研究科を対象とした平成十六年から十九年に至る状況についての調査でございます。この内容につきまして申し上げますれば、学位審査に関し、学位審査手数料のほかに金品等のやりとりがあったとのことであり、私どもとしては極めて重大な問題であると認識しております。

 また、中間報告書では、学位取得者、すなわち申請者の側でございますけれども、金銭の要求があったとの回答が二名からあったという報告になっており、この点についても今後さらなる究明が必要であるというふうに考えております。

 横浜市立大学では今後、他研究科に対するヒアリングを実施することとしており、文部科学省としては、最終報告も踏まえ、引き続き横浜市立大学において厳正な学位審査体制の確立が図られるようしっかりと指導してまいりたい、このように考えております。

富田委員 今局長が言われたように、金品を要求されたという学生さん、学位を申請した方のアンケートの中で、二人が要求されたというふうに出ている。これが事実だとすると、みなし地方公務員ですから、贈収賄の可能性も出てくる。きちんと調査するように今後も徹底して指導していただきたいと思いますし、この調査報告書はちょっとずさんじゃないかな。

 審査する側の教授、准教授たちの方には弁護士さんのグループが直接聞き取り調査か何かされているようです。ところが、申請した学位取得を望む方たちには文書でアンケート調査。アンケートに自由意見を書いてくれというところに、「このような形式のアンケートで、実際に金品の授与をした者が正直に申告するとは思えない。」という意見を書かれているんですね。そのとおりだと思いますね。こんなものを出したら、自分が今後、医局の中あるいはそれぞれの病院との立場でどんな不利な扱いを受けるかわからない。また、「アンケート用紙に氏名が記載されているため、対策委員会から回答内容等が教授等に漏れないか不安である。」こういう意見もある。

 もう少し調査方法をきちんと考えて、少なくとも、弁護士さんのグループに委託されているようですから、文科省の方でも指導して、答えた方が不利益を受けないようなことを十分に考えていただきたいなと思いますし、今回の読売新聞の報道で一番問題だなと思ったのは、通報したお医者さんが専門外に配転された。医学部の詳しい内情はわかりませんが、自分が専門的にずっと研究していたところから外されて全く関係ない専門の病院に置かれたら、多分このお医者さんにとっては、おまえ出ていけよというのと同じだと思うんですね。もうこのグループにはいられない、もう自分で生きていくしかない、また自分の研究も続けられない。正義を通して内部通報した方がこんな扱いを受けていいのか。

 この大学のコンプライアンスの推進規程というのがあります。その推進規程の第九条に「通報者等の保護」という規定があるんですね。「通報者等が通報等をしたことを理由として、いかなる不利益な取扱も被ることがないよう、必要な措置を講ずるとともに、通報者等の職場環境又は修学環境等の保全に努めなければならない。」こういう規定を持ちながら、なおかつ、通報した方が、自分の専門外のところに異動させられそうだ、何とかしてくれというふうに一月にお願いしているのに、それを無視して、結局四月一日付で異動させられてしまった。これではもう正義が通らなくなると思うんですね。

 こういったことを、文科省としては、この大学に対しては、学位取得をきちんとしてくれ、学位取得に不正があってはならないというところがストレートな関係性なんでしょうけれども、大学に対して、科研費とかいろいろな補助金とかいろいろな助成をしているわけですから、どんな意味でも行政指導というのはできると思うんですね。きちんとこういうコンプライアンス推進規程を持ちながら、その規程どおりに全然していない。全然コンプライアンスなんかないんですよね、法令遵守なんかされていない。

 こういったところにきちんと文科省としても指導して、正義を貫いた人がきちんとこの社会の中で生きていけるようにしていくのが大事だと思うんですが、最後に大臣の感想を伺って、終わりたいと思います。

渡海国務大臣 報道が事実とすれば、これは大変問題であるというふうな認識を持っております。

 そういうルールもしっかりお持ちなわけでございますから、まずは、合理的な説明がちゃんとできるようにしっかりとやれということを我々は指導していきたいと思いますし、それがなされないようであれば、その状況に応じて適切に指導してまいりたいというふうに考えております。

富田委員 終わります。ありがとうございました。

佐藤委員長 以上で富田茂之君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時三十五分散会


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