衆議院

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第12号 平成20年5月28日(水曜日)

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平成二十年五月二十八日(水曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 佐藤 茂樹君

   理事 伊藤信太郎君 理事 小渕 優子君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 渡辺 具能君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 富田 茂之君

      阿部 俊子君    井脇ノブ子君

      飯島 夕雁君    江崎 鐵磨君

      小川 友一君    岡下 信子君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      鈴木 恒夫君    中森ふくよ君

      原田 令嗣君    平口  洋君

      藤田 幹雄君    二田 孝治君

      保坂  武君    馬渡 龍治君

      松野 博一君    安井潤一郎君

      山本ともひろ君    岡本 充功君

      田島 一成君    高井 美穂君

      土肥 隆一君    藤村  修君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      和田 隆志君    西  博義君

      石井 郁子君    日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   文部科学大臣政務官    原田 令嗣君

   文部科学大臣政務官    保坂  武君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 岩橋 理彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      舌津 一良君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        樋口 修資君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       上田 博三君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森山  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局食糧部長)         奥原 正明君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十八日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     安井潤一郎君

  山口  壯君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  安井潤一郎君     飯島 夕雁君

  岡本 充功君     山口  壯君

    ―――――――――――――

五月二十六日

 学校保健法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)

同月二十七日

 国による三十人学級実現、私学助成大幅増額に関する請願(太田誠一君紹介)(第三二五七号)

 著作権保護期間の延長反対に関する請願(松本大輔君紹介)(第三三二七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 学校保健法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校保健法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。渡海文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 学校保健法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

渡海国務大臣 このたび、政府から提出いたしました学校保健法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 学校において児童生徒等が安全で安心な環境で学習活動等に励むことができるようにすることは、公教育の実施において不可欠なものであり、各学校において、メンタルヘルス、アレルギー疾患等のさまざまな心身の健康課題に適切に対応した学校保健活動がなされるとともに、事件、事故あるいは災害に対して児童生徒等の安全の確保が的確になされるようにすることが喫緊の課題となっています。また、児童生徒等が健やかに成長発達する上で、今日、学校における食育の推進が重要な課題となっています。

 この法律案は、このような観点から、学校保健及び学校安全に関して、地域の実情や児童生徒等の実態を踏まえつつ、各学校において共通して取り組まれるべき事項について規定の整備を図るとともに、学校の設置者並びに国及び地方公共団体の責務を定め、また、学校給食を活用した食に関する指導の充実を図る等の措置を講ずるものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、学校において、養護教諭その他の教職員が相互に連携し、日常的な健康観察等を通じて児童生徒等の心身の状況を把握し、地域の医療機関等と連携を図りつつ、保健指導を行うとともに、文部科学大臣が定める望ましい基準に照らして、学校の環境衛生の保持に努めるものとすることであります。

 第二に、学校において、施設設備の安全点検、通学も含めた学校生活や日常生活における安全指導等について定めた学校安全計画、及び危険等発生時に的確に対応できるようにするための対処要領を作成するものとし、地域の関係機関等と連携して児童生徒等の安全の確保を図るよう努めるものとすることであります。

 第三に、学校保健及び学校安全に関して、国及び地方公共団体は相互に連携して、必要な施策を講ずるよう努めるとともに、学校の設置者は、施設設備及び管理運営体制の整備充実等の措置を講ずるよう努めるものとすることであります。

 第四に、学校における食育の推進を図る観点から、学校給食の目標を見直し、栄養教諭がその専門性を生かして学校給食を活用した食に関する指導を行うとともに、文部科学大臣が定める望ましい基準に照らして、学校給食の衛生管理に努めるものとすることであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房文教施設企画部長舌津一良君、初等中等教育局長金森越哉君、スポーツ・青少年局長樋口修資君及び農林水産省総合食料局食糧部長奥原正明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川友一君。

小川(友)委員 おはようございます。自由民主党の小川友一でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 ただいま文科大臣の方から、本法律案の改正の骨子の説明がなされました。まさにこの法案は、学校生活を子供が安全に送れるように、そしてまた、学校給食法の一部を改正することによって食文化をしっかりと植えていこう、こんなふうな骨子ではないかなというふうに理解をしたところであります。

 学校給食法の一部改正の中には、さまざまな規定が盛り込まれています。いわゆる食に関する指導の充実とか、自然を尊重する態度をしっかりと涵養を促していこう、さまざまな規定が盛り込まれているわけでありますが、この法案の骨子に沿って、文科省としてどのように実効性を持って指導に当たられていくのか、まず文科大臣の所信をお伺いさせていただきたいというふうに思います。

渡海国務大臣 今委員が御指摘をいただきました点につきましては、やはり一昨年の教育基本法の改正、この考え方が基本になっているというふうに思います。

 教育というのは知徳体とよく言われます。某先輩は、健全な体があって初めて健全な精神がということで、体徳知ということを言われる方もいらっしゃるわけでございますが、そういった観点から、今回、この法律の改正もいたしまして、日ごろの、健全な体をつくるといいますか、児童生徒がやはり健全に成長する、そういったことを目的とするものであろうと思っております。

 今、自然体験というお話もあったわけでございますが、このことは、体を動かすわけでありますから、やはり健康という面で考えましても非常に重要であろうと考えますし、同時にまた、自然に触れることによって、いろいろな新しい発見をしたり感動を覚えたり、また精神的にも、さまざまな体験をすることによって、強い精神といいますか健全な精神をはぐくむといったような目的を持っていると承知をいたしております。

 そういった意味において、日ごろの学校教育においても正しい食習慣を身につけ、また、自然体験等において、健全な肉体と精神といいますか、そういったことをしっかりと児童生徒に身につけさせる、そういうことを教育の場において今後これまで以上にしっかりと行っていかなければいけない、そのように考えておるところでございます。

小川(友)委員 今、文科大臣の方から、いわゆる教育三法を含めた教育基本法の改正に伴っての制度設計であるというふうな御説明をいただきました。

 先般、先週の金曜日だったと思いますが、社会教育法の改正の議論がなされました。そのとき、委員の中から、ひとしく国としての責任を果たしてその恩恵に浴せるように、国がしっかり指導すべきではないかというふうな意見が出されました。これに基づきまして、文科大臣の方は、地方に裁量権をゆだねている、財政力の格差はあるかもしれないけれども、国が余りにもそこに介入することは好ましくないというふうな御発言があったように記憶をしております。

 本法案も同じようで、義務規定が記されていないわけでありまして、地方の裁量に大きな差異が生じるというふうに想定がされると思います。言いかえれば、その自治体の、まずは財政力によっても違うでしょう、あわせて首長の事務事業の優先順位のつけ方によっても違ってくるでしょう、そしてまた、それぞれの自治体が、自校方式でやっているのかセンター方式でやっているのか、もしくは完全委託で給食をやっているのか、そのような大きな要因も多分あると思います。

 あわせまして、自然体験をしっかりと若い子供たちに周知していこう、いわゆる農の大切さを肌で感じていただこうというふうな制度がこの法案には盛り込まれていると思います。そのような意味でいいますと、農地があるのかどうかもあわせて、その自治体の自然環境によっても大きな差異があるというふうに思います。

 そのような意味で、文科省として、今後、これをどういうふうに整合性を持ちながら、この法案の骨子に沿って指導をしていかれるのか、文科省の政府参考人の方から御答弁を賜れればと思います。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の学校給食法の改正におきましては、私どもといたしまして、食育の充実ということを改正の眼目にしておるわけでございまして、これは、給食実施者であるそれぞれの市町村の教育委員会において適切な取り組みを促してまいりたい、国としては、望ましい基準を示しながら、各給食実施者において適切な取り組みをお願いしたいと思っておるわけでございます。

 そして、この食育の充実のためには、栄養教諭制度の充実が基本的に重要なことであろうと思っておりまして、この栄養教諭制度の充実につきまして、各都道府県教育委員会等に対して働きかけを行いながら、各学校において適切な食育が充実されるように、私どもとしても努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

小川(友)委員 今の御回答ですと努力をしていくということでありますけれども、私が今質問させていただいたのは、いろいろな差異がある中を、どういうふうに整合性を持って学校給食を推進していこう、文科省として指導をしていこうというお考えがあるのかどうか、その辺を再度お伺いをさせていただきたいと思います。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 御案内のとおり、学校給食の実施に当たりましては、共同調理場方式あるいは単独調理場方式等々さまざまございまして、例えば共同調理場方式ですと実施率は五四・六%ということで、各地方の実情に応じて単独調理場以外の方式をとっているところもあるわけでございます。

 私どもといたしましては、それぞれの方式はあるにしても、それぞれ完全学校給食、小学校では実現しておりますし、中学校でもきちんと実現の方向に向けて今取り組みが進められているというふうに思っておるわけでございまして、できる限り学校給食において差異がないように、地方交付税措置等を通じて努力をさせていただきたいと思いますし、各都道府県の教育委員会あるいは給食実施者に対して働きかけを行ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。

小川(友)委員 なかなか心地よい御答弁をいただけないわけでありますけれども。

 たまたま、私が住む日野市、私たちの町は学校給食の問題には先進的に取り組んできたという自負があります。そのことは、公立の全学校がすべて自校方式、そしてそれぞれに栄養士を配置して、調理員も配置して、まさにこの法案に示されている地産地消も含めて、農業経営者と連携をとって農業体験も含めながら、学校給食を今推進しているところであります。

 今、地産地消も含めて、私たちの町では農地が非常に少なくなってまいりました。そのことによって、子供たちに農業体験をしたり、農の大切さを教える機会が少しずつ危うくなってきたような状況です。給食調理員そしてまた栄養士に時々お話をお伺いしますと、学校の子供は、キュウリが根に生えているのか上からなっているのか、大根はどこにあるのかもわからないような人もいる。キュウリは真っすぐなものしかキュウリじゃなくて、曲がっているものを食べられるのなんと言う子供もいるというふうにお伺いをしたところであります。

 あわせまして、今近郊農地が少なくなっている状況を勘案しながら、みずから、農地法の自作農、そしてまた都市計画法と生産緑地法をあわせながら、今の相続税の猶予制度の法改正に議連を立ち上げて頑張っているところであります。

 しかしながら、今、国全体で、食料自給率も低下してきた、カロリーベースで三九%と言っています。フランスでは、米のいわゆる減反の措置を解除していこうというふうな報道もなされています。また、フィリピンでは輸出を少し抑えていこうというふうな国策がとられているというふうに思います。私たちの日本の国、まさに戦後、昭和三十年、四十年代は、米主食で自給率を七〇%ぐらいで維持してきたというふうに記憶をしているところであります。

 そういった意味で、これから私たちの農業政策の中で、いわゆる米文化、米に対する子供の思いというものをしっかりと今から制度設計をしていく必要性があるのではないかなというふうなことも今感じています。

 そこで、お伺いをさせていただきたいと思いますが、昭和六十年、文部省通達で、米飯学校給食、実施回数を週に三回程度を目標として推進をするようにという通達が出されているというふうに思います。今、食文化も多様化して、パン食だとかスパゲッティとかいろいろなものが出てきて、米の消費というものが少しずつ少なくなってきた実態を踏まえた中で、学校給食が米飯給食をどんどんしたからといって自給率が何%も上がるということではないんですが、まさに農耕民族として米主食で生きてきた日本人が、これから再度、米を主食とした方向に向かざるを得ない状況の中で、文科省としてもこれに取り組むような方向が見出せないか、こんなことを質問させていただきたいと思うんです。

 でき得ることであれば、今まで、十四年度以降は大体週に二・九回ぐらい、横ばいの状況ですが、これを三・二とか三・五とか、米飯給食を少しずつふやしながら学校給食の中に織り込んでいく、こんな方策を文科省としてとれないのか、お伺いをさせていただきます。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省におきましては、学校におきます食育の観点から、米飯給食は、日本人の伝統的食生活の根幹であります米飯の正しい食習慣を身につけさせることでありますとか、地域の食文化を通して郷土への関心を高めることができる、極めて教育的意義を持つものであると認識をしておるわけでございます。

 委員御指摘のとおり、昭和六十年に、私ども、学校給食におきまして週三回程度を目標として米飯給食の積極的な導入を指導してきたところでございまして、現在、全国平均が二・九回ということで、まずはすべての学校において現在の週三回という目標が達成されるように、普及啓発に努めてまいりたいと考えておるわけでございます。

 今後、この三回を達成すべく、そしてそれを達成した暁に、米飯給食の一層の推進を図るためにどのような取り組みが必要かについて、実は、地場産物の活用のお話もございましたが、地場産物の活用について、私ども、学校給食において積極的に取り組んでおるわけでありますが、二十年度の予算におきまして、地場産物の活用方策についての調査研究を行うことといたしておりまして、その中におきまして、専門家会合を立ち上げて、教育的観点から米飯給食の一層推進のあり方についてきちっと検討を行って、それを踏まえて米飯給食の推進に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

小川(友)委員 今委員の方から、小麦粉も自給率が一三%前後ということを聞いておりますし、小麦粉にかわってお米、米粉によってのパン等も、これが今研究が進んで、おいしいということで大きく評価されているというふうに思います。その辺もあわせて文科省で取り組んでいただければありがたいなというふうに思います。

 文科大臣、この件に関して何か御所見があったらお伺いしたいと思います。

渡海国務大臣 米飯給食について私がいつも思いますことは、教育的意義ですね。地産地消といったようなこと、また、地域の食文化、こういったことを子供たちが学ぶ、そしてそのことによって、例えば地域によっては、それと自然体験という意味で農業を組み合わせて、先ほど御案内がございました、真っすぐじゃないキュウリ、こういうものもあるんだということを知っていただくといったようなこと、こういったものが総合的に考えられていなきゃいけないというふうに私は思っております。多種多様な考え方があるんだろうと思いますし、ここはやはり地域がそれなりの考え方を持ってしっかりと対処していただくことが大事じゃないか。

 余り長く話をするつもりはありませんが、地方分権の問題と、地財措置はやっているけれども、実はきょうも新聞に、教材がちゃんと買われていないような話が出ていましたね。この問題というのは、地方にできるだけ自由にいろいろやってください、しかも地財措置をやっているのにもかかわらず、地方がちゃんとやらないという問題をもっとちゃんと指導しろというのが本当に正しいのかどうか、ここは大変議論のあるところだと思う。やはりもう少し大きな議論をしていかないと、本当の意味で地方分権にならないですよ。

 これは財源の問題も含めてきっちりと、地方にどれだけ任せるのか、そして国は実はどこまで基準をつくっていくのか、またガイドラインを示していくのかというのは、これは分野によって変わりますが、やはり我々はしっかりと議論をしていかなきゃいけない。

 食の問題に関しても、そういったことが大きな課題として一つあるんじゃないか。ただし、教育的意義という意味で、ぜひこの米飯給食、また米粉のパンのことも御議論をいただければありがたいな、そんなふうに聞かせていただいておりました。

小川(友)委員 今、地方の自主性に関しての御見解が示されました。私も同じような感覚を持っています。国で行革大綱をつくれと言っても、首長によっては、一応大綱だけはつくるけれども、実施計画とか目標数値を明確に出していない、ただつくっているだけ。まさに地方の自主性というものがこれから問われるというふうに思います。その意味では同じ思いを今感じたところであります。

 まさに今の食育の分野では、農水省は、教育ファームということで子供に体験をさせている、こんなこともなされています。どうぞ、食文化に関しましては文科省と農水省がしっかりと連携をとりながら、子供のいわゆる食に対する文化というものを、涵養を広めていっていただければありがたいなというふうに感じました。

 今、社会全体で、子供の虐待も含めながら、家庭の虐待、そしてまた不登校、いじめの問題等が惹起されています。あわせまして、教職員も含めて精神的に非常に厳しい状況に追い込まれて、メンタルヘルスの部分で職を辞しているような方が非常に多いというふうに承っております。

 そんな状況の中で、今、国の方では、教育振興基本計画の中で、教職員を二万五千人ぐらい増員して、定数配置をしていこうというふうな方針も出されているというふうにお伺いをしているところでありますけれども、現行、学校では、学校医の配置、そしてまた、学校歯科医の配置、学校薬剤師の配置、これは学校保健法十六条で義務規定として規定がされています。いわゆるそれを置きなさいということである。しかしながら、今、社会がそういう状況になっている中で、スクールカウンセラーの配置に関しましては、法律上の規定は現行ではないわけであります。

 今、文科省として、このカウンセラーの活用事業費として、いわゆる配置経費の三分の一を国が負担をしてやっていこうという方針が出されています。現実、十八年度では、私たち日本の国では大体一万校ぐらいがカウンセラーを配置しているというふうに承っているのでありますけれども、今の社会状況、現行を踏まえた中で、やはり、教職員そして子供を含めながら、しっかりとメンタルヘルスを行えるようなカウンセラーを制度の中に、規定の中に包含して、義務規定として法律にうたい込んでその辺の解消に進むのも国の責任ではないかなというふうに思いますが、文科大臣、御答弁いただけますか、お願いします。

渡海国務大臣 これは、委員がおっしゃるように、国がちゃんと対処しなきゃいけない問題だと思っております。

 どのような形がとれるのか、確かに各校一人というのはある意味理想的でございますが、学校の規模もあるわけでございますし、何校か受け持てるような環境があるような状況にあるのか、そういったことも含めて考えていかなきゃいけない。

 法律の義務化ということでございましたので、これは定員配置等にも大きく影響するわけでございますから、今即座にお答えすることは、これは大変無責任なことになりますから、差し控えさせていただきたいと思いますけれども、委員が御指摘をいただいたような観点も十分視野に入れながら、しっかりとこの問題に対応していきたいというふうに考えております。

小川(友)委員 時間が参りましたので、質疑は終わらせていただきたいというふうに思います。

 最後に一つだけ。先般私は、自分たちの町の柔道大会に行きました。武道を習っているということで普通の人よりもきりっとして、いや、たくましいなと思いました。式次第が進んで国歌斉唱の場がありました。小さい子供が何なのかなとぽかんとしている顔を見まして、愕然としました。今、教育基本法が改正されて、国歌の指導は、歌えるように指導するという一言が追加されました。しっかりとその辺を踏まえて対応していっていただければありがたいなということも申し添えて、この国旗・国歌の問題は違う場面で改めて議論をしたいなというふうに思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

佐藤委員長 以上で小川友一君の質疑は終了いたしました。

 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 二十分間の質問時間をいただきましたので、早速ですが、質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、学校耐震について一問だけ、大臣にお伺いしたいと思います。

 四川省の大地震で学校が崩落し、たくさんの人が、生徒が亡くなったことを一つのきっかけとして、学校耐震が再び重要な課題となってきたように思います。公明党も、また与党としても、そのことについて今一生懸命に努力をしているところですが、渡海文部科学大臣も、補助率の引き上げに向けて指導的な役割を果たしていただいていることにまず敬意を表したいと思っております。

 学校の耐震化を進めるには、いろいろな観点があるんですが、まず、財政力が弱い自治体に対して一層の財政的な支援が必要となると思っております。学校耐震化の機会を単なる設備更新の機会としてだけではなくて、今後の教育を考えて、例えば、小中一貫教育、中高一貫教育を導入する、また統廃合をする、自治体はさまざまな取り組みを一方では模索しております。財政が厳しい自治体であるからこそ、学校耐震化の機会を生かして目指すべき学校づくりを行おうとしているというふうに思っております。そうした自治体の意向にこたえられるような配慮が必要である、こう考えるわけでございます。

 さて、耐震化に必要な予算は、国の補助、それから地方債、そして自治体の一般財源で賄われている、こういう仕組みになっております。そうした自治体の話を聞いてみると、当初に必要な自治体の一般財源を確保するのがまず難しいということで、いわばそれが学校耐震化を進める際にネックになっているということでございます。いわば頭金に該当する額の捻出に苦労しているというのが実態でございます。

 そこで、対処方法としては、補助率、起債充当率を引き上げるということが考えられると思います。学校耐震化は行わなければなりませんが、自治体の置かれている状況から、学校の場所、建築する場所を変えていく、こういう場合もございます。今回の取り組みに引き続いて、ぜひ、今述べさせていただいたような教育的な観点も踏まえてさらに御努力をいただくようにお願いしたいと思いますが、文部大臣、いかがでしょうか。

 文科省においても、こうした状況を踏まえて、今後、総務省に地方財政措置に関する要望を行っていただきますように、あわせてお願いを申し上げたいと思います。大臣の御答弁をお願いいたします。

渡海国務大臣 公明党も含め、自民党また民主党の皆さんにも大変御協力をいただいているといいますか、これは議員立法でございますから、皆さんの御要望も、本当に精力的に動いていただきまして、私の立場からも感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 今回、補助率を引き上げてというスキームの中で、やっていただきたいということのお願いもさせていただいたわけでありますが、これは内閣がやろうと議員立法でやろうと、そういうことを言っているときではないというのが正直な認識でございます。

 私が思っておりますのは、我が方の担当部局が全国を実は調査に歩きました。そして、地方の財政力で今早急にやれと言っても、なかなかやはりできていない現状がある。これはもう補助率を上げて、そして総務省にもお願いをして、起債を起こしていただく充当率を上げていただく、こういう方法をとらざるを得ないなという判断があったからでございます。

 そういったことを前提に今の委員の御質問にお答えをいたしますと、統廃合等が複雑に絡んで、耐震化を行うというときに、そのことに関して、耐震という防災的なスキームと学校を統廃合するという地域の実情に応じたスキーム、このことが必ずしも今一緒になって行われていないという気がいたします。

 ですから、今回、まだ法律も出ていないわけでありますから、予見でしかないわけでございますが、新たなスキームができるという前提の中で、今後何ができるか。それから、当初予算というふうにおっしゃいました。ということになりますと、補助率だけの問題ではなくて、地債をどれだけ認めていただけるか。これは総務省とも絡んだ話でございますけれども。

 そういったことも含めて、やはり今、地域の実情として子供が減ってきて、教育的意義も含めて、学校はもう少し統合してそこそこの人数の子供がいる学校にした方がいい、こういう考え方もあるわけでございますから、地域の御理解を得る必要があるとは思いますけれども、そういった場合にどういうことができるのかということを地財措置も含めて検討させていただきたいというふうに考えておるところでございます。

西委員 大変積極的な御答弁、ありがとうございました。

 確かに、過疎地域等におきましてはそういうことが現実の問題になっておりまして、過疎小学校はたくさんございますので、そういうこととあわせて大きな将来の教育展望をそれぞれの地方自治体が考えているということも、あわせてうまくこれが解消できればという思いから質問させていただきました。

 続いて、先ほどの委員からも質問がありましたが、米飯給食についてお伺いをしたいと思います。

 去る二月二十五日の予算委員会で、米飯給食について質問いたしました。きょうは、予算委員会で、米飯給食の一層の取り組みを支援するために改善策を提案し、御検討をお願いしていた政府米の無償交付制度について質問させていただきたいと思います。

 まず、制度を利用する立場から、文科省にお尋ねいたします。これらの制度が現実に余り利用されていないというふうに思いますが、その理由それから状況について、まず御説明をいただきたいと思います。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 学校給食におきましては、地場産物の積極的な活用が図られているところでございますが、その中でも米飯給食につきましては、先ほど申し上げましたとおり、日本人の伝統的食生活の根幹であります米飯の正しい食習慣を身につけさせることでありますとか、地域の食文化を通して郷土への関心を高めることができる、極めて教育的意義を持つものであると認識しておりまして、米飯給食の普及、定着を私どもとしても積極的に進めているところでございます。

 今御指摘の政府備蓄米の無償交付による米穀の利用実績につきましては、文部科学省といたしましては全国的な調査は実施しておりませんが、農林水産省のまとめによりますと、平成十九年度の利用学校数は四百七校、総量は三十一トンと承知しておりまして、十八年度は千九百四十七校、七十三トンということに比べますと、利用実績が減少の状況にあるというふうに承知をしているところでございます。

 私ども、幾つかの都道府県教育委員会に、この無償交付制度について、利用しない理由についてお伺いをさせていただきましたところ、例えば、米どころであり地場産の新米を活用しているという新潟県のようなお話、あるいは、古米を使うことについてなかなかPTAの理解が得られないという都道府県の御回答等があったわけでございます。そのほか、交付措置が前年度の増加分の六割のみで、翌年度からの恒常的な支援がないことなどが理由として考えられるというふうに理解をしているところでございます。

西委員 今、文科省の方から、いわば制度を利用する立場から御答弁をいただきました。

 政府米の無償交付制度については、新米の交付、それから増加分の十割交付に対する要望のほかに、交付対象に関する要望もあるようでございます。政府備蓄米の無償交付制度については、学校給食ということで、小中学校、それから夜間高校、特別支援学校、幼稚園が対象になっておりますが、保育所も対象にしてほしいという要望もございます。

 以上のような要望など、無償交付制度の幾つかについて改善していただきたいというふうに考えております。食育推進基本計画を側面から大変熱心に応援していただいている農水省にお考えをお伺いしたいと思います。

奥原政府参考人 お答えをいたします。

 米飯学校給食につきましては、日本の伝統的な主食であります米を中心とする日本型食生活を継承していく上で重要であるというふうに考えております。特に、穀物の国際需給が大きく変化をし、国際価格も上昇してきている中で、その重要性はさらに高まっているものと認識をしております。

 このため、農林水産省では、米飯学校給食の推進に資するよう、政府米の無償交付制度というものを設けているところでございます。

 この無償交付制度は、前年より米飯学校給食の回数が増加した場合に、増加した分の六割に相当する政府米を無償で交付するという制度でございまして、小学校、中学校、幼稚園等を対象に実施をしております。それから、米粉のパンもこれの対象になっております。

 しかしながら、米飯学校給食の回数が全国平均で週二・九回となりまして、目標の三回に近づいているということもございまして、回数の増加が頭打ちとなっていること、それから、交付される米が新米ではなくて、これは十五度以下で低温保管はされておりますが、持ち越し米、古米ということになっていること、それから、交付される数量が増加分の全量ではなくて六割であること、こういったことがございまして、これまでの交付実績は低調になっているところでございます。

 農林水産省といたしましては、文部科学省ともよく御相談し、また連携しながら、米飯学校給食の推進に向けた総合的な対策を講じていくことが重要であるというふうに考えておりまして、その中で、御指摘のありました新米の交付等の点につきましても積極的な姿勢で検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

西委員 今、御答弁の中で新米のことについても触れられましたが、先ほど文科省からの要望の一つだったというふうに思いますので、ひとつぜひとも改善をしていただきたいと思います。

 先ほども若干答弁がありましたが、この制度の交付条件というのは、米飯給食の実施回数が前年度より年三回以上ふえていることと、この条件を満たした上で交付数量は当年度増加分の六割以下、こういう二つの条件がかかっております。

 例えば、米飯給食に大変熱心なところがあって、週五回全部米飯給食を行っている、こういう理想的なところがあったといたします。現行制度では、これは米飯給食へ誘導しようという措置ですので、増加分がなければ翌年からは交付されない、こういうことになります。

 そこで、例えば、週三回という目標を超えて取り組んでいるところは超えた分の何%かについて無償にする、こういうふうにするとか、交付期間を複数年に持っていくとか、もしくはそれらを組み合わせる、そんなことで、誘導措置だけではなくて、頑張っているところはそれなりのメリット措置も検討したらいいのではないかというふうに考えております。

 さて、二月二十五日、予算委員会の質問が終わった後、ある新聞記者と話をしておりましたところ、普通、お昼御飯には大人は皆さんお米を食べているよ、週三回目標でほぼ達成したというけれども、週四回どころか、毎日食べるという方針でもいいんじゃないか、逆に言えば、今はお昼にパンを食べる教育をしているようなものだ、こんな逆説的なお話があって、なるほど、そういう考え方もあるんだなというふうに思いました。お昼は御飯しか食べてはいかぬということじゃないんですけれども、そういう観点も加味して、三回でいいんだということではなくて、地元の実情にも合わせながら、しかも回数をふやしていく努力をぜひともしていただきたいというふうに思います。

 いずれにいたしましても、農林水産省からも前向きに取り組むという御答弁をいただきましたし、私どもも、食育推進基本計画の趣旨を踏まえながら、米飯給食が行われやすい環境づくりに努力をしていきたいと思っております。

 そこで、文部科学省にお聞きしたいと思うんですが、米飯給食を推進する上で、無償交付制度に関してどのような改善が見られればいいか。最近、若干の問題点といいますか、要望がそれぞれの地方から上がっているというふうにお聞きしましたが、改善の要望があればぜひともお聞きをしたいと思います。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 政府備蓄米の無償交付制度につきましては、農林水産省の事業でございますので、文部科学省としては直接かかわる立場にはございませんが、先ほどお話し申し上げましたとおり、学校給食の実施者の立場であります教育委員会からの意見を踏まえますと、一つは、古米ではなく地場産の新米の交付が求められているのではないか、二つ目には、交付措置が単年度であるということのために負担軽減が一時的なものにとどまっているといったことが課題となっているのではないかと考えられるわけでございます。

 私どもは、米飯給食の推進のために、教育的な意義を踏まえた米飯給食の推進という観点で取り組みを進めてまいりたいというふうに思っておりまして、近々立ち上げます専門家による検討会議におきまして、米飯給食の一層の推進を図るためにどのような取り組みが必要なのか、この無償交付制度のあり方も含めて、農水省とも十分連携をとりながら、教育的観点を踏まえたしっかりとした検討を行ってまいりたいと考えているところでございます。

西委員 今御要望がありましたけれども、子供の身長は伸びておりますけれども、体力そのものがなかなか思うように維持されない時代になってきているという問題点も一方ではございます。

 教育基本法の議論も私も参加させていただきましたけれども、さまざまな観点から、子供の体力づくり、それから、子供の基礎になる食育というものにこれから真剣に取り組んでいかなければいけない時代になってきておると思いますので、大臣初め文部科学省の一層の努力をお願いいたしまして、質問にさせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 以上で西博義君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

佐藤委員長 次に、文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官岩橋理彦君、文部科学省高等教育局長清水潔君、科学技術・学術政策局長森口泰孝君、研究振興局長徳永保君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官上田博三君、大臣官房審議官森山寛君及び職業安定局次長大槻勝啓君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。岡本充功君。

岡本(充)委員 本日は、文部科学委員会においてお時間をいただきましたことを、まず冒頭、この場で感謝申し上げます。

 きょうは、もうかねてより私が指摘をしてきております課題、大学病院における医療行為のあり方ということでお尋ねをしていきたいと思います。この問題は、平成十八年三月一日に行われた予算委員会第四分科会で私が指摘をし、その後、機会をとらえて指摘をしてきた問題であります。

 きょう、皆様方にお配りをしましたのは、まず一ページ目ですけれども、大学病院における静脈注射の実施の状況です。病院における注射というのは、基本的には、多くの病院で看護師さんが行っており、医政局長通知においても、看護師の行える医療行為の一つとして通知をされています。しかしながら、大学におきますと、平成十八年三月、私が質問した当初、実際に注射をしている割合は、診療科ベースで見ますと一割にも満たない状況でありまして、改善をするべきだということで答弁をいただいて、これまで文部科学省から、各般の会議等でその方向で説明をしてもらいましたけれども、しかしながら、現状においても、いまだにこの一割を挟む状況が続いています。

 ちなみに、文部科学省にこれを持ってきてくださいと言ったら、この一番目の表であったわけでありますが、うちの事務所でつくりますと、二枚目の表のようになるわけでありまして、一枚目で見るとあたかもふえているように見えますが、全く同じ表をうちの事務所でつくるとこのようになります。全然変わっていないのがおわかりだと思います。

 委員各位の皆様にもぜひお考えをいただきたいんですが、大学病院においては、いまだに医師が注射をし、また、胃カメラ等で出てきた検体を検査室に運ぶ、いわゆる検体運びの業務なんかもやっている。そういうところに医師がたくさん必要になってくる。なぜかといえば、医師が一番安い人件費というか、ただで働いてくれる人間でありますから、そういう意味では、医師にやらせるのが一番安いということもあって、今でもこのような状況になっています。

 つまり、これが医師不足の一つの原因にもなっているということで、重ねてこれまで指摘をし、改善を求めてきました。しかしながら、この状況であります。

 平成十九年十月の調査から、二十年十月には一体どのようになる予定なのか。この一年後、二十年十月は、もう残りあと五カ月ぐらいでありますけれども、遅々として進まない今の状況をどのようにしていくのか、その目標についてお答えをいただきたいと思います。

清水政府参考人 ただいま先生から御指摘いただきましたように、いろいろこの問題について非常に叱咤激励をいただきまして、まことにありがとうございます。

 平成十九年の十月以降でございますけれども、御案内のように、平成十九年の十二月には、医師、看護職員その他の職員も含めた役割分担の推進に係る医政局長通知が発出されております。また、私ども、平成二十年四月からの予算でございますけれども、平成二十年度予算におきましても、国立大学病院に勤務する医師の過重労働、過長労働の軽減あるいは勤務環境の改善というために財政措置を行わせていただいております。

 したがいまして、前回の調査は十九年十月、その前が十九年三月でございます。次に実施いたします平成二十年の十月には調査を行いたいと思っておりますけれども、ここではかなりの改善を私どもとしては期待しているということでございます。

 いずれにいたしましても、各大学病院の調査を通じて進捗状況の把握を行い、さらなる改善に向けて、すべての大学病院での対応が速やかにできるような形で私どもとしては考え、このように思っております。

岡本(充)委員 数値をきちっと示してくださいと、きのう質問通告をしています。どのくらいの数値目標をこの十月には達成される予定であるか、お答えいただきたいと思います。

清水政府参考人 平成二十年の私どもが講じました措置等も含めて、この十月の調査も踏まえまして、できるだけ速やかにということで、なかなか数値目標はお示しできないことを御理解賜れればと思います。

岡本(充)委員 大臣、ぜひお聞きをいただきたいんです。

 この私のグラフを見てください。ほとんど医師が注射をしている。要するに、点滴が漏れましたよと言ったら、医師が呼ばれるわけですね。普通の病院だったら看護師さんが刺してくれる、点滴をとり直してくれますが、大学病院においては、実験中の研究者もしくは大学院生なり、そういう人間が呼ばれて、仕事をおいて処置をしに行かなきゃいけない。先ほどもお話ししましたけれども、後で聞きますが、医師がやらなくてもいい医療行為を大学においては今なおし続けている。ごらんいただいたように、下をはうようなこの数値の状況が全然変わらない。

 局長通知でも出したらどうですか。これは、何らか今までどおりの会議で言っていきますというんじゃ遅々として進まなくて、十年たっても、平成十九年十二月二十八日発出の医政局長通知、医療行為、看護師さんがある一定担えるものがあるんだからそれはやりなさいという医政局長通知どおりになりません。

 これは前回、他の委員会でありますけれども、医政局長から、すべからく、すべての医療機関でこの通知は有効だと言われているのに、大学病院だけ進まないんですよ。これで結局、医師がたくさん大学病院で必要とされてしまう。この状況を変えなきゃいけない。だから目標を持たなきゃいけない。

 大臣、どうでしょう、この数値目標、倍増ぐらいは言えませんか。

渡海国務大臣 今までの進捗状況を見ておりまして、その数値目標として、これは目標でありますから、目標を立てるということは、できないとは言えないというふうには思います。ただ、これだけ進んでいないものを、例えば倍増するという目標を立てるとなると、もう少し実態を解明しないと、私は、なかなか簡単には、無責任には言えないと思います。

 ただ、通知を出せばどの程度進むのか、そういったことも含めて検討はしてみたいと思います。通常の病院でやれているんですね。大学の病院では余りやれていない。これはやはり、医療行為として、大学病院特有の問題がなければそうはならないはずですよね。ですから、そこの部分の解決がしっかりと図られるのかどうか。

 私は、正直、それほど詳しくないんですが、ここ数日いろいろな話を聞いていて思いますことは、これは、やはり大学病院としての特有の問題というものをきっちりと解決していかないと、目標だけ立てて通知を出すということで、これが有効に、本当に率を上げることにつながるのかというふうに疑問に感じますので、あえて今数字は申し上げませんが、そのことをしっかりと検討させていただきたい。また、通知を出すことも前向きに考えていきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 大臣、これはもう本当に、丸二年、私はこの問題、おかしいんじゃないかと言ってきて、当時の小坂大臣も、実態をよく調査させますと答弁をされて、もう二年半たって、それでもなお進まないということで、まだこれから調査をしますでは、やはり困るわけです。

 したがって、またこの問題は取り上げます。これはしっかりと目標を出していただかなきゃいけない。やはり目標を決めなければ、まあ改善していくんですと言うんじゃ、これじゃ、いつまでたったって変わらないわけです。

 ちなみに、「原則看護師が実施」と書いてありますけれども、この「原則」というのは一体どういうことを指しているのか、ここで明確にしていただきたいと思います。要するに、看護師が要請をすれば医師が点滴をするということなのか、それとも、医師の側から申し出があれば点滴をすることもあり得るという程度の話なのか、この「原則」を明確にしていただきたいと思います。

清水政府参考人 今先生から御指摘いただきました、原則看護師が実施するというのは、私どもの調査において、静脈注射を原則看護師が実施している診療科か、あるいは原則医師が実施しているのか、あるいは区分を設けず医師、看護師が実施しているかという、その調査の区分でございます。

 基本的な考え方といたしましては、医師が行うとされていた静脈注射については、御案内の平成十四年通知により、医師の指示のもとに看護師も取り扱うことが可能であることが示され、また、実施に当たっては、施設内基準、看護手順の作成、見直しを行い、個々の看護師等の能力を踏まえた適切な業務分担を行うとされているものと承知しております。

 また、十九年の通知は、平成十四年の通知を踏まえて、第一に、各医療機関の実情に応じて適切な役割分担、すなわち、この場合は、医師の過重労働等の改善を図るべく看護職員の積極的な活用を図ろうというものでありますし、第二には、具体的な業務分担のあり方については、患者の安全を前提とした上で、各医療機関が置かれた状況、すなわち、業務量でありますとか内容、職員数、職種あるいは能力、患者の状態等を踏まえつつ、各医療機関の判断にゆだねられていることを示しているものと理解しております。

 各医療機関、大学等におきましては、その一つの目安として、例えば、平成十五年四月に日看協、日本看護協会が指針において示された、看護師が実施しないとされている「切開、縫合を伴う血管確保、及びそのカテーテル抜去」など一部の行為を除いたすべての行為を、看護師が実施することが可能な範囲、それが「原則看護師が実施」ということの意味であろう、そういうふうに理解され、そういうふうに運用される、このようなことでございます。

岡本(充)委員 「原則」の基準を変えて数値を上げるようなことがないようにしてもらわなきゃいけませんので、きちっとこれまでどおりの調査でお願いをしたいと思います。

 それとあわせて、先ほども話が出ました、平成十九年十二月二十八日発出の医政局長通知、「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」という通知、この中で、例えば医師、看護師等が行わなくてもいいのではないかと言われているような業務を含めて、大学病院において、私が今指摘をした静脈注射の問題、それから物品等の運搬等、こういったもののほかに、医師が行わなくてもよい業務は大学病院でどのようなものが行われているのか、それをここで御報告いただきたいと思います。

清水政府参考人 平成十九年十二月の厚生労働省通知により、静脈注射等において、医師と看護師等の間で適切な役割分担がなされるべきとされておるところでございます。

 安全性が確保できる限り、医師の負担を軽減することは必要と考えておりますけれども、実際、私ども、幾つかサンプル調査をしてみましたところ、当該通知発出後も、採血でありますとか患者の搬送でありますとか、時間外の手術における器械出しでありますとか使用済み器械の洗浄等、医師でなくても対応可能な業務について引き続き医師が行っている病院もある、こういうふうに承知しております。

岡本(充)委員 サンプル調査でなくて、ぜひ調べてほしいんです。この局長通知にも書いています。「滅菌器材、衛生材料、書類、検体の運搬・補充については、専門性を要する業務に携わるべき医師や看護師等の医療関係職が調達に動くことは、医療の質や量の低下を招き、特に夜間については、病棟等の管理が手薄になるため、その運搬・補充については、看護補助者等の活用や院内の物品運搬のシステムを整備することで、看護師等の医療関係職の業務負担の軽減に資することが可能となる。」こう書いているんです。

 今、夜間は、滅菌の、要するに洗い物まで医者がやっているということですよね。洗い物まで医者がやっている、したがって大学病院において医師がまだまだ必要だ、足りないと言われるのは当たり前です。

 では、その医師はどういう給料でやっているんだというと、次のページを見てください。雇用関係がないにもかかわらず診療を行っている医者の数が出ています。これもずっと指摘をしてきているんですが、大学病院においては、その洗い物をしている医師は雇用関係にないわけです。まさに給料はもらっていなくて、ただ働きで洗い物をしている。

 私はそれを指摘してきました、おかしいじゃないかと。そして、改善をすると言ったけれども、これも遅々として進んでいない。まだ五千人以上の人が、雇用関係がないけれども診療行為を行っている。こういう実態が明らかになっています。

 これは、同じく平成十八年の決算行政監視委員会、こちらは六月六日の第二分科会で、私は厚生労働省に、労働基準法違反じゃないか、いわゆる強制労働じゃないか、大学の教授が学位の審査権を持ち、そして人事の権限を持つ中で、医師を一番安い人材だと、看護補助者の方よりも安い、つまりはただですから、ただで洗い物をさせてみたり、ウイルス感染症の方の点滴注射をさせてみたり、万一針刺し事故になってウイルス感染症になったら、それは残念でしたね、さよならという話ですね。これで本当にいいのかということで、これは強制労働じゃないかと言って指摘をしてきました。

 遅々として進まないこの状況を受けて、厚生労働省、一回調査されたらどうですか。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 この問題につきましては、先生からたびたび御指摘をいただいております。私ども、この労働者性の問題につきましては、先生御案内のように、個別に判断しなきゃいけないということでやっておりますけれども、雇用契約を結ばれた場合には、これは当然、労働基準法等の違反、あった場合には、これは労働者になるわけでございますので、労働基準法が適用されて、法定労働条件を下回らないようにする必要があるわけでございます。

 この問題につきましては、私ども、先ほど申し上げましたように文科省と連携をとって対応しておりますけれども、文科省におきましては、大学病院の大学院生等の診療目的や診療行為の実態を調査した上で、雇用契約による対応を検討するよう大学に要請しているところでございまして、それを踏まえた予算措置もされているところでございます。

 私ども厚生労働省としましては、今後とも文部科学省と連携をとりまして、さらに個別の大学病院等におきまして労使から御相談があった場合には、適切に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 二年たっても進まない状況を見て、それでもなお、個別に判断をするからしばらく待つ、そういう厚生労働省は御判断ですか。いつまでたったって、これだけの数の方が雇用契約がないまま診療行為を行っているわけです。これはどう考えても、私は労働者性があると思います。給与をもらっていないだけです。

 そういう意味では、きちっと雇用関係を結ぶなり雇用保険を掛けるなりしなければいけない、もうそろそろ、しっかり厚生労働省の方からも促していく必要があるんじゃないかと思うわけですけれども、これについてどのようにお考えですか。

森山政府参考人 先ほど申し上げましたように、現在、文部科学省の方で、雇用契約による対応を検討するように大学に要請をしているところでございます。

 私ども、従来も文部科学省と連携をとっておりましたけれども、今後とも、そういう文部科学省の対応等も含めまして、文部科学省と連携を図りまして、さらにこの問題について対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 ちっとも進んでいないこの状況を委員の皆さんにもごらんいただいたと思いますね。

 こういう状況の中で、大学病院において千人もの医師がいて、医師が足りない、皆さんの地元でも医者がいないと言っているんです。ここを改善して、大学病院からもっと皆様の地元の病院に医師を出せるようにしなきゃいけないと私は思っています。しかし、それをこのような役所の仕事の対応で進ませていないという状況を僕は各委員会でお話をしています。

 そういう意味で、ぜひ、きょう改めて委員各位にもこの事実をお知りいただいて、それぞれの党の中でも取り上げていただきたいと思っています。

 それからもう一点……(発言する者あり)

佐藤委員長 静粛にお願いします。

岡本(充)委員 医療系大学間の共用試験の実施評価機構について質問したいと思います。

 これまた、大学医学部においての試験のあり方でありますけれども、これも前回取り上げさせていただきましたが、教育課程において、進級に必須の試験でその試験料を取るという試験はほかにはないわけであります。そういう意味では、この試験料を取っていること自体が大変異質じゃないかと、前回、当時の局長にもこの問題を指摘し、当時の大臣からも、暫定的なものだという話をしていただいておりますけれども、いまだにこのような状況であるということを踏まえ、改善を求めたいと思いますが、御答弁をいただきたいと思います。

清水政府参考人 御指摘いただきました共用試験でございますけれども、共用試験は、医学生の臨床実習に必要な知識、技能、態度の基本的な診療レベル、能力レベルを評価し、本試験の合格を臨床実習の要件と位置づけて、医療系大学間共用試験実施評価機構が主体となって、各大学の協力を得ながら、全大学の医学部で実施されております。

 共用試験の実施に伴う費用についてでございますけれども、受験者数に応じた受験料相当額を、一義的には各大学が同機構に対して支払うこととされていると承知しております。この場合、受験料相当額の取り扱いについては、例えば大学が実習等に要する教材等を別徴収することと同様に、その費用についてあらかじめ学生に対して明確に示した上で、受験する学生から授業料とは別途に徴収していると承知しております。

 なお、共用試験受験料について、全七十九大学のうちの三十六大学でございますけれども、受験料への補助を大学から行っているという実態もあるやに承知しております。

 また、私どもとしては、学生負担軽減という観点から、同機構に対して受験料相当額の引き下げについて検討を促してきたところであり、引き続き、そのあり方についての取り組みを促してまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 ほかの学部ではない、承知をしていないと以前答弁をされています。進級に必須な試験、定期試験などを含めて、お金を取って試験を受けさせて、それがなければ進級ができないのに、その費用が二万八千円もするということが問題だ。しかも、これはちっとも値段が下がっていないという状況、ぜひ改善をしてもらいたいと思います。

 続いて、もう一枚おめくりいただいて、五ページ目です。やはり高等教育にかかわる話ですが、博士号の標準修業年限内での学位授与率を表にさせていただきました。

 実際にごらんいただきますと、要するに、大学院の期間の中でどれだけの人が実際に学位を取得できたかでありますけれども、残念ながら、人文科学、極めて低い状況が続いています。大学院に進学するモチベーションの一つに、やはり学位が取れるということがあるにもかかわらず、こういう状況。これがいわゆる人文・社会学系の問題点であります。

 その一方で、先般、医学部においては、横浜市立大学や名古屋市立大学で学位授与に伴う金銭授受が明らかになっております。こういった実態で不透明な学位授与も行われている、こういうことも問題意識として持っております。

 学位授与のあり方について、少し改めていくべきではないかというふうに考えておりますし、またあわせて、学位授与に伴う金銭授受でも明らかになりましたように、一部においては、パワーハラスメントを含む、大学内における不透明な教官と学生との関係があるようであります。一回、実態調査をされてはいかがかと思うわけでありますけれども、それぞれの大学に任せずに、文部科学省として調査をされるよう求めたいと思いますが、御答弁をいただきたいと思います。

清水政府参考人 二点のお尋ねでございます。

 まず第一点として、いわゆる課程制大学院、そのあり方とかかわって、人文・社会科学の分野において学位授与率が低い、御指摘のような課題がございます。これは、旧来の碩学泰斗のイメージが人文・社会科学で十分払拭できず、その水準という観点から、課程制大学院あるいは学位制度の趣旨が不徹底なところに要因があるというふうに思っております。

 したがいまして、私ども、学位授与に向けた教員の意識改革、あるいは体系的な教育課程の実施とその水準の明確化等教育のプロセスを明確化する仕組み等々、学位制度あるいは大学院の課程のあり方にかかわって、今、中央教育審議会で大学院の問題について特に取り上げて御審議をいただいているところでございます。

 したがいまして、そういうものを踏まえながら、いわゆる学位制度あるいは課程制博士大学院をめぐる課題に私どもとしても取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 それから、第二点目のことでございます。いわゆる学位審査に伴う金品の授受等、不透明な例についてのことでございます。

 私どもとしては、三月十九日付で、厳正な学位審査体制を確立するという観点から、例えば、公開での論文発表会の実施、学外審査委員の積極的登用、通報、相談窓口の設置等、そういうことを内容とする通知を発出しております。

 私どもとしては、今後、そういう論文発表会の実施あるいは論文審査に係る学外審査委員の登用等、いわゆる厳正かつ透明な審査体制の確立という観点から、その審査体制の状況について調査を学位授与状況調査の中で行うことを考えております。

岡本(充)委員 ぜひ、大学院における学位授与について、またそれに関連する金銭授受やパワーハラスメントの実態について調査をされて、理事会でその調査について協議をしていただくよう求めたいと思います。

佐藤委員長 ただいまの御要求につきましては、理事会において協議をいたします。

岡本(充)委員 続いて、学位を取った後どうなっていくかという話で、もう一枚おめくりいただきますと、六ページ目、研究者の養成です。実際に学位を取りました後、ポスドクと言われる状況になって、その人たちがどういう状況に置かれているか。

 そこに、真ん中よりちょっと下のあたりですけれども、「特別研究員の区分」というのが載っています。給与体系としてはこのぐらいの給与体系、三十六万四千円が研究奨励金として支払われていて、当然ボーナスは出ませんし、先ほどの話ではありませんが、労働者性がないということで社会保障もついていないのではないかと思います。

 このような状況で三年間仕事をした後、果たして、では次の職があるかというと、これまた厳しい雇用条件にある。日本が、やはり研究開発をして、そういう意味で研究者をもっと育てていくという観点で考えると、私はこの体系で本当にいいのかということも疑問に思います。

 きょうは、厚生労働省にもう一回確認をしたいんですが、こういう研究員に対する雇用保険や、また労災等の補償についても行っていくべきだと私は考えています。研究、実験で何らかのトラブルに巻き込まれた、けがをした、そういうときにも、正規の職員であれば補償はされるけれども、実際に手を動かしている若手の研究員は何の補償もないという状況ではやはりまずいのじゃないか。ここに厚生労働省の一工夫を求めたいわけでありますけれども、答弁をいただきたいと思います。

森山政府参考人 お答え申し上げます。

 労災保険の適用対象は、これは先ほどと同じでございますけれども、労働基準法上の労働者であることが前提でございます。労働者であるか否かにつきましては、その実態を見て個別に判断するということでございます。

 特別研究員制度につきましては、資料にありますように、すぐれた若手研究者に、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与えることを目的として、研究の奨励金等を支給するものであると承知をしております。その際に、特別研究員が研究に従事する大学やあるいは研究機関等においてどのような形態で研究に携わっているかは個々に異なるというふうに考えているところでございます。

 そこで、御指摘の特別研究員について、これは一概に労働者性をお答えすることは困難でございまして、特別研究員の研究に従事する各施設との関係、あるいはまた研究に対する具体的な指揮命令関係、こういうものを具体的に個別に判断をしていく必要があると思っています。

 いずれにしましても、個別に御相談があった場合につきましては適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

大槻政府参考人 雇用保険の関係につきましてお答えを申し上げます。

 雇用保険制度につきましては、御承知のように、みずからの労働による賃金で生計を維持している労働者につきまして、失業時に必要な給付を行うことによりまして生活の安定を図りつつ求職活動を支援する、そういう趣旨の制度でございます。

 この制度の趣旨を受けまして、雇用保険の適用対象につきましては、事業主と雇用関係がある労働者であるということが前提となるものでございまして、その雇用関係の有無につきましては、就業実態を見て個別に判断をするということでございます。

 御指摘の日本学術振興会特別研究員につきましても、同様に、個別に実態に応じて判断をしていくという考えでございます。

岡本(充)委員 ぜひ調査をしてもらいたいと思います。

 続いて、ちょっと飛びます、十ページ目、十一ページ目に行きたいと思います。

 厚生労働省、文部科学省、それぞれ科学研究費補助金というのを出しています。これは、競争的資金ということで、それぞれの研究者がみずからの研究のシーズを、研究計画を示して資金を獲得していく。そういう意味では、ある意味、先進国でも取り入れられている仕組みであって、これ自体を私はよくないと言っているわけではありません。

 ただ、皆さんにきょうお話をしたいのは、この経費のうち、一部が直接経費、一部が間接経費という名目になり、そして、間接経費については、このさらに後ろをおめくりいただきたいんですが、十四ページ目からでありますが、間接経費の執行に係る共通指針という中で、十四ページの一番下でありますが、直接経費の三〇%に当たる額を間接経費として、十六ページをごらんいただきたいんですが、使える先は本当に多岐にわたって使えて、これは、実はもう少し細かなガイドラインというか指針があるわけでありますけれども、この内容、ハンドブックを読ませていただきますと、例えば管理部門に係る経費の中の会議費というところは、飲食もできるというふうに書いています、アルコール類は除くと書いていますが。こういうようなお金で、しかも、十七ページ目をごらんいただきますと、その報告は、「競争的資金に係る間接経費執行実績報告書」、このような形態で出せば領収書が要らないということになっています。

 一体、国全体で競争的資金の中で間接経費というのは幾らぐらい今あるのか、その実態をお知らせいただきたいと思います。

岩橋政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十八年度の競争的資金に係ります間接経費の総額でございますけれども、関係府省から内閣府に報告があったところでは約四百七十億円となっております。

岡本(充)委員 この四百七十億円のお金が領収書もなしに、場合によっては飲食にも使えるという状況は、私は、国民の皆さんの大切な税金が原資でありますから、あらぬ誤解を生むのではないかと。

 実際に、それこそ「科学研究費補助金の使用にあたっての確認書」では、自署によって、私は、平成何年度の科学研究費補助金により研究を遂行するに当たり、補助条件を理解しこれを遵守します、また、科学研究費補助金が、国民の貴重な税金で賄われていることを十分認識し、科学研究費補助金を公正かつ効率的に使用するとともに、研究において不正行為を行わないことを約束しますと書いておきながら、一部の研究者の中ではこれを利殖に使っていた者までいたわけであります。つまり、領収書は要りませんから。直接経費についても領収書が要らない。これは、残高証明書なり通帳のコピーを示せばいいということでありますから、空になりましたといってお金をどこかに移して、それで利殖をすることができて、利殖をしていた者がいたという報道もあったわけでありまして、そういう意味においては、こういういわゆる報告書のあり方ではまずいのではないかと思っています。

 そういう意味で、内閣府にきょうお越しをいただいておりますが、間接経費の報告書のあり方について、前回問いをしましたけれども、この点について見直すべきだと考えるわけでありますが、再度御答弁をいただきたいと思います。

岩橋政府参考人 お答え申し上げます。

 間接経費につきましては、直接経費と同様に、科学研究費補助金等の交付を受けました大学等において領収書等の支出を確認できる会計書類を保管することとなっております。

 また、大学の内部の監査あるいは関係府省の実地検査等も行っておるところでございまして、実績報告書への領収書の添付は義務づけてはおりませんけれども、この会計書類を適宜チェックすることは可能でございます。

 こういった形により、経費の適切な使用の担保を図っているところでございます。

岡本(充)委員 旅費についても、どこまでが研究に必要な旅費なのかというのは明確に区分が難しいし、領収書を添付させなければほかの事案とごちゃごちゃになってしまう可能性がある。みずからも、直接経費、間接経費の区分をしっかり研究者に、これは代表研究者から分担研究者にお金を渡すときに示すようにと書いているぐらい、この部分がごっちゃになりやすいとしているわけですから、そういう意味では、これはあり方を考えていただかなきゃいけないと思っています。

 ちょっとお戻りをいただいて、十ページになりますが、その一方で、お一人の方がどのくらい研究費を集めてみえるかという話であります。

 それぞれ、これは文部科学省、厚生労働省の科学研究費補助金の交付額上位を示させていただきました。間接経費で多いところでは、文部科学省分だけでも東京大学は三十三億九千万円です。その一方で、ゼロの大学もこれだけあります。個人でも三億五千四百四十万円の交付金を受けている研究者もいます。

 実際のところ、研究計画を立てて、いろいろなところに競争的資金をとるべく申請をして、結論として充足率が一〇〇%を超えているようなそういう研究もあるんじゃないかと思っているわけでありますが、そういった研究者はいるのかいないのか、お答えをいただきたいと思います。

徳永政府参考人 お答え申し上げます。

 科学研究費補助金は、御承知のように、研究者の自由な発想に基づく研究でございます。その研究内容、研究方法、研究形態、研究規模もさまざまでございます。

 そういう中で、御指摘の大型の科学研究費補助金の、例えば特別推進研究といったものがございますが、私ども、実際に研究計画を審査し、採択をするに当たりましては、もちろんそういう研究内容も当然でございますが、それに加えまして研究組織、一体どういう方々で研究をするのか、一体どういう方々で組織をするのか、また同時に、その中での研究遂行能力あるいは経費の妥当性といったことについても、きちっと専門家により審査をしております。

 また、科学研究費補助金の中では、当然、一人の方が主たる研究者になるというようなことはないわけでございますが、その他のいわば競争的研究資金との重複といったものが、もちろん分担者の場合と主たる研究者という意味での重複はあるかもしれませんが、お一人の方が、こちらでも主たる研究者になる、こちらでも主たる研究者になって大型の資金をとるということがないように、今年度から内閣府を中心にそういった全体での研究者の情報というものが一覧的にわかるような仕組みになっております。

 そういう意味で、私ども、できるだけそういったことを踏まえまして、いわば一人の方が幾つも主たる研究者として採択をされるということは、本来あってはならないことでございますが、そういうことにならないようにきちんと注意をしていきたいと思っております。

岡本(充)委員 その実態はどうなのか、お答えいただくよう求めたはずであります。

 一〇〇%を超えている人、もしくは複数とっている方は何人ぐらいみえるのか、数値でお答えいただきたいと思います。

森口政府参考人 競争資金の公募申請におきまして関係府省が申し合わせておりまして、他の競争的資金の受給状況を記載させる、そういうことになってございます。その際に、いわゆるエフォートでございますが、この合計についても確認することになっておるわけでございます。

 ただ、実際のシステムとして、本年一月から運用を開始しております府省共通研究管理システム、e―Radと言っていますけれども、このシステムで、各府省の競争的資金の研究課題データがシステムに集約されておりまして、研究者の競争的資金の公募に申請した研究課題に関しまして、課題の重複状況とか、あるいは申請した当該研究者の研究費の集中状況、こういうことを確認することができるようになったところでございます。

 これは本年一月からということですので、今後、このシステムが本格稼働すれば、このシステムを活用しまして集中状況の確認が確実に実施できる、そういう予定でございますけれども、現時点におきましてはシステムがスタートしたばかりでございますので、今後これを活用していきたい、そういうことでございます。

岡本(充)委員 大臣、私の質問に対しての答弁がいただけていないんです。

 要するに、研究費をいろいろなところから、私はこういう研究をしたいと言って、あそこからもここからもお金をもらって、本来の予算よりもたくさんのお金をもらって、しかもこれは返還率が極めて低いんですね。十二ページが文部科学省分、十三ページは厚生労働省分ですけれども、科学研究費をもらっておいて、例えば平成十七年度、厚生労働省分の科学研究費の返還率は〇・〇三%です。ことしから他のお金が少しまぜられるようになったようでありますけれども、そもそも、予定する研究費のうち、この科研費をもらって、そしてほかのお金を合わせることができないのに〇・〇三%の確率でぴたっと予算どおり使い終える。しかも、基本的に繰越件数は極めて少ないわけでありまして、繰り越しもせずこの金額でぴたっと終えるというのは本当に神わざなんです。残しもせず、余りもせず、足りなくもないというこの神わざを実現しているのは、私はおかしいんじゃないかと思っています。

 したがって、今の、だれがどのくらいお金をもらってきているのか。極論を言えば、予算よりもたくさん、例えば経産省からももらい、文科省からももらい、厚生労働省からももらい、そして実際に必要な経費よりも多くのお金をもらっていてもぴたっとその金額で終えているという話では、先ほどお話をしました、国民の皆さんの大切な税金から出ているという認識をもとにした研究費のあり方にそぐわないのではないかと思っています。

 そういう意味できちっと調査をしていただきたいと思うわけですが、大臣、責任のある御答弁をいただけませんでしょうか。

渡海国務大臣 今局長からお答えしましたように、そういう問題が数年前に問題になりまして、そして各府省横断的に研究費というものをしっかりと把握ができるシステムをつくろうということで、e―Radというシステムが新たにスタートいたしました。これも、当初の予定ですと今年度末ぐらいの予定だったものを、ことし、二十年一月からスタートをさせるということで、今運用を開始しております。そのことによってかなり、いろいろな意味での重複がまず避けられるというふうに我々は期待をしておりますし、また、研究者がどういうことをやっているかというのが一覧表で出てきますから、そのことがまずできると思います。

 最後の、今委員が御指摘いただきました、例えばぴたっと合わせるというのは、これは私はなかなか難しいだろうと正直思いますよ。ただ、資金の使い勝手というのが悪いというのもこれまた事実なんですね。そういう意味で、この質問の冒頭の方に出ました間接経費、こういったものも、もちろん中身はチェックしなきゃいけないけれども、できるだけ使い勝手のいい研究費というものをつくろうということでつくった結果が、今、すべてではありませんが、三割というものが認められる研究費ができてきたという背景でございます。中身はチェックする必要がありません。

 そういったことも含めて全体をしっかり見守っていかなきゃいけないという意識で我々も臨んでおりますので、これは長年我々も取り組んでおりますから、しっかりとそういう意識で今後とも見守っていきたい。きょう委員から御指摘をいただいたような指摘も踏まえて、実態をしっかりと把握したいというふうに考えております。

岡本(充)委員 充足率が一〇〇%を超えている実例があるのか、複数からもらっている人がいるのかどうかを調べて、報告をいただきたいということです。いただけますね。

森口政府参考人 今申し上げましたように、e―Radを活用して、その点について今後調査をしていきたいと思っております。

岡本(充)委員 続いて、今の話で、八ページのところでごらんいただきたいと思いますけれども、多額の研究費をもらっている人はどうしているかというと、実は、必ずしも一人で使っていない、半分近い方が違う研究者とともにその研究を行っている。ところが、この研究費の配分は、主たる研究者が自由に配分ができるなど、その中での恣意的な運用も指摘をされていたり、先ほどの三億を超えるようなお金をもらっている方が、そういう意味で本当に適正な使用をしているのかどうかもありますけれども、その分配のあり方についてもいろいろ議論があるところであります。こういう点でもやはり見直していっていただかなきゃいけない。

 また、九ページの話でありますが、これは橋渡し研究支援推進プログラムと言って、これもある意味競争的資金でありますけれども、ここで六提案八機関を採択となっています。どういう応募があったか。二十六件の提案が寄せられた中でこの八機関を選択されているわけでありますが、結果として、この提案についても、実質的にだれを採択するかという審査委員がいる機関が採択をされてきたという経緯もあって、一部の研究者からは異論も出ています。つまり、競争的資金をだれに配るかということを決める人が応募をして、結果として自分のところに決まる。審査委員ともらう人が同じというのでは、やはりそれはほかの研究者、二十六ある中で異論も出てくるでしょう。そういうあり方も考えていただきたいと思います。

 それからもう一点、時間になりましたので、最後にお願いをしておきたいと思います。

 運営費交付金で特別教育研究経費というのが認められておりまして、この中で、例えば名古屋大学などは、トランスレーショナルリサーチとしての先端医療用マテリアル開発・供給システム構築のための戦略的推進研究というのを平成十七年度から行ってきています。例えば、こういう研究である程度成果が出ていれば、これが二十一年度で終わる、一応当初五年間ですから終わるとしても、その後、成果の出ている研究はこれからも育てていかなきゃいけないという観点も含めて、やはりこういう分野について運営費交付金の弾力的運用も求めていきたいというふうに思いまして、最後に要請が重なりましたけれども、御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

渡海国務大臣 今先生が御指摘をいただいたような意識は、我々も十分わかっておるつもりでございます。

 そして、審査の方法、どういうことで選ばれているのか、科研費の配り方。これは本当に一週間ぐらいの間、全部、ぎりぎりやりました。例えばことしのものについて、これはどういう理由で、どうやって、どういう組織でと。やはり今のシステムが一〇〇%とは言いませんが、でも、かなり改善をされてきているというふうにはお考えをいただきたいと思います。

 採択をされなかったところから苦情が出るというのは、この種のものにはかなりあることでございまして、具体的におっしゃっていただければ、私は理由ははっきり説明できるというふうに思っております。ここは自信があります。私自身が、本当に一週間ぐらいかけまして、ことしのものにつきましてかなり細かくチェックをいたしましたから。

 ですから、そういう視点を常に持ってこういうものはやっていかなきゃいけない。例えば、審査委員の構成、それから、どういう分野であるか、どういう出身校であるか、今たまたま私学にいらっしゃっても、もとをただせば某国立大学じゃないか、こういったことまで含めて、かなりぎりぎり私はやったつもりでございます。

 そういうことも含めて、過去においていろいろなことが言われたわけでありますから、そういうことが言われないようなシステムをつくっていく。また、今、研究開発促進法という新たな議員立法を出していただいている、これはいろいろな研究分野の資金の運用についての記述もあるようでございますから、そういった試みも含めて、国民の税金がより有効に使われるシステムというものを、立法府の御議論もいただいてつくっていかなきゃいけないというふうに思っております。

 また、きょう御指摘をいただきました委員の意見も念頭に、さまざまなチェックというものを私自身はしていきたいというふうに思っておるところでございます。(岡本(充)委員「運営費交付金の話は」と呼ぶ)

佐藤委員長 質疑時間が終了しておりますので、御協力を。

岡本(充)委員 済みません。

 運営費交付金のことについても御要請をさせていただいていると思います。特別教育研究経費の弾力的運用についても御答弁いただければと思っています。

佐藤委員長 では最後に、清水高等教育局長。

清水政府参考人 特別教育研究経費でございますけれども、新たな教育研究ニーズに対応して、各国立大学等の個性とか特色に応じた意欲的な取り組みを私どもが重点的に支援する、こういう趣旨でございます。

 継続事業についての具体のお話でございます。これについては、各大学の優先度を尊重しつつも、それぞれの内容、性質、進捗状況、成果というものを踏まえていきたい、こういうふうに思っております。

岡本(充)委員 終わります。

佐藤委員長 以上で岡本充功君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る三十日金曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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