衆議院

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第14号 平成20年6月4日(水曜日)

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平成二十年六月四日(水曜日)

    午前八時五十二分開議

 出席委員

   委員長 佐藤 茂樹君

   理事 伊藤信太郎君 理事 小渕 優子君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 渡辺 具能君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 富田 茂之君

      阿部 俊子君    井脇ノブ子君

      飯島 夕雁君    小川 友一君

      岡下 信子君    加藤 紘一君

      川条 志嘉君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    鈴木 恒夫君

      中森ふくよ君    原田 令嗣君

      平口  洋君    福田 峰之君

      藤田 幹雄君    二田 孝治君

      保坂  武君    馬渡 龍治君

      松野 博一君   山本ともひろ君

      田島 一成君    高井 美穂君

      土肥 隆一君    藤村  修君

      松本 大輔君    山口  壯君

      笠  浩史君    和田 隆志君

      石田 祝稔君    石井 郁子君

      日森 文尋君

    …………………………………

   参議院内閣委員長     岡田  広君

   参議院議員        鈴木  寛君

   参議院議員        林  芳正君

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   文部科学大臣政務官    原田 令嗣君

   文部科学大臣政務官    保坂  武君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   真砂  靖君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤田 明博君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月四日

 辞任         補欠選任

  江崎 鐵磨君     川条 志嘉君

  西  博義君     石田 祝稔君

同日

 辞任         補欠選任

  川条 志嘉君     江崎 鐵磨君

  石田 祝稔君     西  博義君

    ―――――――――――――

六月三日

 研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律案(参議院提出、参法第二〇号)

同月四日

 国による三十人学級実現、私学助成大幅増額に関する請願(渡辺具能君紹介)(第三五八二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律案(参議院提出、参法第二〇号)


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 参議院提出、研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。参議院内閣委員長岡田広君。

    ―――――――――――――

 研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岡田(広)参議院議員 ただいま議題となりました研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主な内容を御説明申し上げます。

 近年、グローバル化の加速やいわゆるBRICs諸国等の台頭により、世界の勢力地図に大きな変化が見られており、国際的な大競争の時代に入ったとも称される状況が出現しております。このような中、我が国については国際競争力の低下が指摘されておりますが、資源に乏しく、人口減少、少子高齢化による労働力人口の減少がますます顕著となる我が国にとって、国際競争力を強化するとともに、経済成長を維持し、豊かな国民生活を継続、発展していくためには、科学技術を通じたイノベーションの創出が不可欠であります。

 米国や中国を初め諸外国においては、既に、イノベーションの創出による国際競争力の強化のため、科学技術の発展に必要な研究開発システムの改善のための法整備を行うとともに研究開発投資の拡大を活発化させており、我が国が諸外国におくれをとることは許されない状況にあります。

 本法律案は、ただいま申し上げました状況に対処すべく、研究開発推進のための基盤整備、予算、人材等の資源配分から研究開発成果の普及、実用化に至るまでの研究開発システムの改革を推進することにより、公的研究機関、大学、民間も含めた我が国全体の研究開発能力の強化及びイノベーションの創出を行おうとするものであり、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、科学技術に関する教育水準の向上、若年研究者等の能力の活用、研究者の人事交流及び国際交流の促進、研究開発法人による人材活用等に関する方針の作成等を行うことにより、研究開発等の推進を支える基盤を強化することとしております。

 第二に、競争的資金の活用により、研究開発等に係る競争の促進を図ることとしております。

 第三に、科学技術の振興に必要な資源の柔軟かつ弾力的な配分、研究開発法人及び大学等の研究開発能力の強化、研究開発等の適切な評価等を行うことにより、国の資金により行われる研究開発等を効率的に推進することとしております。

 第四に、研究開発施設等の共用の促進、研究開発の成果の実用化を不当に阻害する要因の解消等を行い、研究開発成果の普及、実用化を促進することとしております。

 第五に、研究開発システム及び国の資金により行われる研究開発等の推進のあり方に反映させるため、研究開発システムの改革に関する内外の動向等の調査研究を行うこととしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 また、附則において、研究交流促進法を廃止するほか、法施行後三年以内に、研究開発システムのあり方に関する総合科学技術会議における検討の結果を踏まえて見直しを行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主な内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。(拍手)

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省主計局次長真砂靖君、文部科学省科学技術・学術政策局長森口泰孝君、研究振興局長徳永保君及び研究開発局長藤田明博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福田峰之君。

福田(峰)委員 自由民主党の福田峰之です。よろしくお願いいたします。

 世界を見渡しますと、中国初めインド、ロシア、ブラジル、いわゆるBRICsと呼ばれる諸国などの成長により、競争が激化をしています。天然資源に乏しく、人口減少が伴う少子高齢化社会の日本が、持続的かつ安定的な経済成長を続け、社会福祉大国になるためには、競争力の強化と生産性向上の源泉である科学技術を一層発展させ、その成果を絶えざるイノベーションにつなげていくことが不可欠です。

 研究開発力は、科学技術振興の基盤をなすもので、その意味で、イノベーションを生み出し、経済成長の原動力となっています。その継続的な強化こそが日本にとって最重要の課題であります。私は、この激動の時代において、日本が他国におくれをとらぬよう、早急に研究開発力の強化を加速させることが必要であると考えています。

 まず、今回の法案提出の背景となりました諸外国の状況に関する認識、及びその認識を踏まえた本法案の提出の理由をお聞かせいただきたいと思います。

岡田(広)参議院議員 福田委員の御質問にお答えいたします。

 福田委員御指摘になりました中国を初めとするいわゆるBRICs諸国の台頭などによって、世界的な競争環境の激化に対応して、科学技術によるイノベーション創出、研究開発システム改革への取り組みを強化することが世界的に大きな流れとなっております。

 御質問の世界の情勢でありますが、米国におきましては、昨年八月に、超党派による議論の後、国立科学財団などの研究開発機関の大幅な予算増額等を掲げる競争力法が成立をいたしました。中国におきましては、昨年十二月に、海外人材の呼び戻し、ハイリスク研究の促進などを内容とする科学技術進歩法の抜本的な改正が行われました。さらに、イギリスにおきましては、高等教育から科学技術振興、イノベーション創出までを一貫して担当するイノベーション・大学・技能省を創設するなど、世界的に、科学技術によるイノベーション創出の強化、研究開発システム改革の動きが加速しているところであります。

 我が国といたしましても、これらの世界の動きにおくれることなく、我が国の研究開発力の向上を制約するさまざまな要因を取り除いて、研究開発力を一層強化し、限られた資源で効率的かつ効果的に研究開発を推進することを可能とする必要があることから、今回、本法案を策定することとしたものであります。

 以上です。

福田(峰)委員 科学技術を振興し、これをイノベーションの創出につなげていくためには、科学技術を担っている大学、研究開発法人及び民間が有する研究開発力を最大限に生かすことが不可欠です。そのためには、それぞれのセクターにおいてその力を最大限に発揮できるような環境整備を促進することが重要だと思います。

 特に、国の研究開発の中核を担う研究開発法人や大学においては、それぞれが有する研究開発力を最大限効率的に活用し、より多くのすぐれた成果を創出しなくてはいけません。そのためには、研究資金や研究人材を機動的、弾力的に投入できる体制あるいは制度の整備こそが不可欠だと思います。

 一方で、厳しい財政状況を背景に、これら研究機関に対しても、他の独立行政法人と横並びで人件費や運営費交付金の削減措置がとられています。これにより、優秀な研究人材の確保や機動的、弾力的な研究資金の投入といった、研究開発の特性に即した対応が困難になっているのではないかなと思います。

 私は、このような状況を改善して、これら研究機関においてすぐれた研究人材の確保や人材の流動化促進、国として進めるべき研究課題への柔軟で機動的な予算措置などが重要だと考えています。本法案ではどのような措置が実際にとられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

林(芳)参議院議員 お答えいたします。

 今委員がお話しになられましたように、研究開発力の強化のための基礎となる研究者の人件費の確保とか、国の重要なミッションへの研究費の柔軟かつ弾力的な対応、こういうものが不可欠になる、こういうふうに思っております。諸外国でも、先ほど岡田委員長からお話がありましたように、この制度を競い合っている、こういう状況でございます。

 そういう状況でございますので、本法案でも、まず三十二条で、研究開発法人や大学等への柔軟かつ弾力的な資源の確保を図るということで、そこへ行く予算のことをうたった上で、さらに、今御指摘がありました人件費についても、三十三条で、行革推進法の五十三条の一項の規定の運用に当たりまして、卓越した研究者の確保や研究人材の流動化促進のための人件費を確実に確保し、研究開発法人の研究開発能力の強化等を図ることができるように配慮するということを規定したところでございます。

 さらに、従来研究公務員の人事交流の促進を内容としていた研究交流促進法を本法案の中に取り込むということをやりまして、研究開発法人に人材活用等に関する方針の策定の義務づけを行っております。こういうことによりまして、研究公務員だけではなくて、今委員が御指摘ありましたように、研究開発法人や大学を含めた全体の研究者の人事交流の促進を図るということにしております。

 これらの措置によりまして、国の資金による研究開発等の中核的位置を占める研究開発法人や大学の研究開発力の強化を図ってまいりたい、こういうふうに思っております。

福田(峰)委員 国際的な競争が激化する中で、これに打ちかつために科学技術を国力の源泉として位置づけ、その強化に積極的に取り組んでいるということは現状でも理解をしています。

 本法案が、日本が引き続き科学技術創造立国として世界ナンバーワンの地位を築いて、維持して、そしてさらに発展させていくためにも、私はこの法案は重要な法案であると思っています。先ほど提案者よりも説明がありましたが、アメリカや中国での法制度、改正の動きを迅速にとらえて、これにおくれることなく政治主導で法案を早急に取りまとめいただいたというのは、大変に意義のあることだと思います。

 そして、この法案を受けて、今後政府として具体的な取り組みを実施していくということになると思うんですが、最後に、研究開発の主要な部分を占める文部科学省として、本法案を踏まえた日本の研究開発力強化のための取り組みについて、大臣に決意を伺いたいと思います。

渡海国務大臣 今、日本が置かれております状況、また世界に比して日本の研究開発力をこれからどうしていくか、いろいろと委員からお話があったとおりであろうというふうに思います。答弁もございました。

 そういう状況の中で、やはり日本の持てる力を最大限発揮していく、これに尽きると思うんですね。よく言われます選択と集中、それから総合力を発揮する、こういったこともございますし、私がいつも申し上げているのは、強い部分をより強くしていくといったような政策も必要であろうと思います。

 今回の法律によってこのことがより強化された、そういうふうに認識をいたしておりまして、我が省は約六割を所管いたしておりますから、科学技術創造立国に向けて全力でこれからも努力をしていきたい。

 取りまとめに当たって御努力をされた委員の先生方に対して心より感謝を申し上げたいというふうに思っております。

福田(峰)委員 今大臣の決意もお伺いしましたが、ぜひしっかりやっていただきたいなと思います。

 最後に、これは、財政措置を初め、振興策が国民に当然理解をされていかなくてはいけない。とかく難しい説明ばかりに終始をされてしまいますので、研究開発によって生み出された技術が例えば具体的にどんなことに使えるのかとか、国民にイメージができるように伝えていくということが非常に大切だと思うんですね。

 本法案が成立をした際には、研究開発機関、大学等はこうした点を念頭に置いて、ぜひ国民に対する、イメージできるような説明みたいなものをしっかりと果たしていただきたいということをお願い申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。

佐藤委員長 以上で福田峰之君の質疑は終了いたしました。

 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田でございます。

 きょうは、提案者の先生方にわざわざ参議院からお越しいただきまして、ありがとうございます。

 先ほど林先生の方から三十二条以下について御説明いただきましたけれども、この法案では、二十八条に「科学技術の振興に必要な資源の柔軟かつ弾力的な配分等」という規定と、二十九条に「会計の制度の適切な活用等」という規定が置かれています。研究開発について、ここに必要だというところに研究開発費をどんと投入する、そういうことがこれまでなかなか日本の行政では行われませんでした。そういった意味で、こういう規定を置いてそこに星を一個打つんだという趣旨だと思うんですが、両規定の目指すところ、この立法趣旨をまず教えていただきたいと思います。

林(芳)参議院議員 お答えいたします。

 今富田委員が御指摘になりましたように、めり張りをきかせて集中的にやっていくというのは専門家の間でもかねてから御指摘があったところでございまして、まさにそういう趣旨を二十八条で規定しておるところでございます。

 具体的には、第一項におきまして、我が国の研究開発能力の強化を図るために、国が内外の動向、例えば、先ほど来ありますような昨年の米国における競争力法の制定や中国の状況などなど、こういうところを踏まえまして、研究開発システムをどういうふうに改革していく必要があるか、また研究開発の重点分野というのはどういう動向になっているか、こういうことを踏まえて、資源の配分を柔軟かつ弾力的に行うべきだということを明示的に規定したところでございます。

 また、第二項におきましては、いわゆる国家基幹技術などの経済社会の存立の基盤をなす科学技術への安定的な資源の配分への配慮というものを規定しております。

 また、第三項におきましては、主に短期的で機動的な資源投入に適して競争的環境を促進する、こういう性格を持っております公募型の研究開発と、それ以外の研究開発、例えば長期で安定的な資源投入に適した研究開発法人に対する運営費交付金などと、それぞれ役割があるわけでございますが、こういう役割の違いを踏まえた、それぞれの調和のとれた資源配分等による研究開発能力の強化等を規定して、今委員から御指摘のあったような、めり張りのきいた機動的なことをやっていこうということを二十八条全体として規定しておるところでございます。

 また、二十九条、単年度予算の弊害というのがこれもずっと言われてきたところでございますが、研究資金の使い勝手を向上させ、国の資金による研究開発の効率的な推進ということをやるためには、やはり、開発法人、国、また国立大学法人等がみずから研究開発を行う場合におきまして、繰越制度の活用をするということなど、会計制度、既にそういうものはあるわけでございますので、これをまず適切に活用を図るということと、経理事務の合理化を図るというような努力義務を課して、より一層、単年度主義の弊害からなるべく弾力的に外れていけるように努力義務を課したということでございます。

富田委員 この両規定が十分に活用されれば、これまでと違った配分ができるようになると思いますので、そういう意味ではよく考えていただいたなというふうに思います。

 大臣にちょっとお伺いしたいんですが、京都大学の山中先生がiPS細胞の発表を昨年の十一月にされましたが、その後、アメリカはチームで研究を進めている、我々は駅伝を一人で走っているようなものだというような発言をされた。これを受けて、文科省の方としても、iPS細胞研究等の加速に向けた総合戦略というのを昨年の十二月に策定されて、また、その総合戦略の具体化というのをこの三月に大臣の方で決定されたということです。

 これまでと違ってかなり機動的に、この山中先生の言葉を受けて、オール・ジャパンでやっていくんだという体制をつくったんだと思うんですが、この総合戦略、またその後の総合戦略の具体化についてという大臣の決定ですが、どういった背景、またどういった経過でこういうふうになったんでしょうか。

渡海国務大臣 十一月の終わりだったか十二月の初めだったか、記憶が少し飛んでおりますが、山中先生来られまして、同じ話を私は聞きました。とにかく早くやらなきゃいけない、それから、オール・ジャパンでやらないと、向こうは駅伝チームが六つぐらいある、こんな話だったと思います。

 とにかくスピード感を持って物を決めろということで、科学技術・学術審議会のライフサイエンス委員会だったと思いますけれども、十二月の終わりに、まず総合戦略として、オール・ジャパンの体制をどうやって組んでいくか、こういうことを決めていただいたわけでございまして、それが今先生がおっしゃった総合戦略というものでございます。引き続いて、この総合戦略に基づいて、研究拠点四拠点を決定させていただきました、時間の関係で細かくは申し上げませんが。

 その同時並行に、予算折衝が中にありましたから、できるだけこれから予算を積んでいくということで、従来五年間で山中先生がお使いになった金額からしますと、これから五年間、十五倍ぐらいだろう、これでも少ないかもしれません、しかし、そういった決定をいたしまして、その後、具体的な案ですね、総合戦略で決められておりましたことがどうなっているかということをフォローアップするためのこの具体化ということについて、三月に発表させていただきました。

 簡単に言いますと、ネットワーク間の中でどういうふうにこの細胞を移動させるか、また知的所有権等の問題についてどういうふうに考えるか、こういったことをより具体的にオール・ジャパンの体制を組むために策定していただいた。現在は、その案に従って研究が行われていると御理解をいただければいいと思います。

富田委員 きょうは、財務省の方から真砂主計局次長に来ていただいていますが、先週は教育振興基本計画でなかなか意見が合わなかった。このオール・ジャパンで研究支援というところについては、財務省としてもかなり積極的に取り組んでいただいているというふうに伺っています。

 毎日フォーラムという雑誌を見ましたら、きょうもいらっしゃっています徳永さん、研究振興局長が、昨年の暮れに財務省と交渉したら、これまでに例のない、十五億円を二十億に査定で上乗せしてくれた、すばらしいことだと。ぜひ財務省はこういうふうに何にでもやっていただけるといいんですが、残念ながら、それぞれの査定でかなり厳しい。

 こういうふうに、研究開発力強化法ができて、これだというものが出てきたときには、やはり積極的に財務省の方としても支援していただきたいし、この研究開発力強化法というのは、iPSのように、もう絶対いいものだというものが出てくるその前段階、これもなかなかいいんじゃないかな、ここにどんと資金を投入して日本の科学技術の発展のために力を入れていくんだというところを、やはり、文科省だけじゃなくて財務省としても積極的に支援していくべきだと思うんですが、そのあたりについてはどのようにお考えですか。

真砂政府参考人 先生からお褒めの言葉をいただきまして、ありがとうございます。

 二十年度予算では、渡海大臣からの強い御要請もございまして、iPSを含む再生医療の実現化プロジェクトというのは、前年度の倍増の二十億円を計上したところでございまして、私どもも、こうした重点的な投資というのは心がけていかなきゃいかぬというふうに思っております。

 先生御指摘の、まさに今後研究をオール・ジャパンでやっていくということでございます。我々も、科学技術予算、限られてはございますが、めり張りづけをしっかりして、研究体制あるいは知的財産の戦略の整備というのも重要だというふうに考えております。総合科学技術会議あるいは文科大臣のリーダーシップのもとで、私どもも議論にはぜひ参加させていただきたい、このように考えておるところでございます。

富田委員 これで終わりますが、真砂次長からなかなか積極的な答弁が出ました。研究開発力強化法だけじゃなくて、教育振興基本計画についてもぜひ同じような発言がいただけるように、今後我々も頑張っていきたいと思いますので。

 どうもありがとうございました。

佐藤委員長 以上で富田茂之君の質疑は終了いたしました。

 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 この研究開発力強化法案、これについて、私は先日、GXロケットについて大臣に伺いました。今回、この研究開発をどう強化するかということとの関連で、法案を見てみれば、JAXAのこともしっかり書いていますし、そういう意味で、どういうふうにGXロケットを位置づけるかということがまず最初にあると思うんです。

 前回もお聞きしましたけれども、十八年の十二月二十六日の総合科学技術会議有識者議員という形で、「GXロケットに関する戦略重点科学技術の位置付けについて」という中で、GXロケットについては、「これを戦略重点科学技術の施策の一つに位置付ける。」ということがまず一つあります。

 それから、さらに、十九年の一月十二日には、文部科学省と経済産業省、この二つで、「GXロケットの位置付け」として、「GXロケットについては、我が国の宇宙輸送系における「中型ロケット」として明確に位置づけ、政府として着実にその開発を支援する。」こういうふうに書いています。

 大臣、この方針にまず変わりはないでしょうか。

渡海国務大臣 基本的な方針に変わりはありません。

 ただ、いわゆる民間側から、今回、今のままのこれまでの役割分担では、このまま進めていくことが難しい、だから、民主導と言っていたものを、官の役割というものをふやしていただきたい、こういう要請があったことで、現在、その場合に、このプロジェクトが本来の目的、そういうものにかなって、今後JAXAとしてやっていけるかどうか。今の宇宙開発委員会の位置づけというのは、JAXAの役割について審議をするということになっておるわけでありますから、そのことを今御議論いただいていると御理解をいただきたいと思います。

 委員の質問にお答えするとするならば、これは、そのことについては変わっていないという前提で、今議論が行われていると承知をいたしております。

山口(壯)委員 大臣から、変わっていないということがありました。

 ただ、最初の答弁で、基本的にはそうなんだけれども、ただという、この辺のニュアンスがとても気になるんです。

 その中で、先週の金曜日に読売新聞が記事を出しました、「GXロケット中止へ」と。非常に衝撃的なわけです。大臣はその後、車寄せのところでしょうか、記者会見をされて、私は、正式な記者会見のようにもちょっと思えないんですけれども、そういうことはないというふうにおっしゃったように思いますけれども、この場でもう一度、きちっと、この記事について、どこまで正確で、あるいは全くそのような事実ということはないのか、お答えいただけますか。

渡海国務大臣 中止が決定したという事実はございません。また、たしか、この質問通告、私は、これは政府委員が答えることになっていたから細かくはちょっと見ていないんですが、中止を報告する予定だったことが延期をされたというような記事が載っていたやに聞いておりますけれども、そういう事実もございません。

山口(壯)委員 それからあと、最初大臣が民主導でやることになっていたけれどもということもありましたけれども、これは、二〇〇八年一月十日の日経新聞とかあるいはまた別の記事にも、GXが国主導で開発へとか、あるいは開発は国が主導へとか、大臣が今言っておられるニュアンスというのが当時の雰囲気と少し変わっているようにも私には感じられるんですけれども、国が最初主導で、あるいは、官民と言いながら、こういうロケットとか宇宙開発というものに対しては民が主導でということは、最初からそもそもリスクが大き過ぎると思うんです。

 H2Aに関してはすべて国がやってきた、そこに三菱重工が大きくかかわっているということはあっても、それは国が主導でやってきているわけですね。今回、官民ということでやっていますけれども、途中で国がすっと引くようなことがあれば、もうこれから官民共同ということは、だれもやってこないんじゃないのかと。特に、日本の研究開発というのは国よりも企業の方がたくさん頑張っているという現状がありますから、そういう力を活用しようと思ったら、官民共同でやったのに最後に国がはしごを外したという前例は絶対につくるべきじゃないと思うんです。大臣、いかがですか。

渡海国務大臣 はしごを外したということでないから今審議をいただいているわけです。

 山口議員の議論にも多少無理があると私は思うんですね。官民共同であることには変わりがない。しかし、役割分担としてどういうふうにしてやっていくかというのは、これまでも何度も話し合いがされて取り決めがされた。その前提条件が変わってきたわけでありますから、それはどっちに責任があるとかそういうことではなくて、今後、国がこの研究にかかわっていく中で、今までのやり方で、しかも、その後の延長線上でやれるかどうかということは、これは今後新たな税の投入ということをやっていくわけでありますから、ちゃんとそれは説明責任があると思うんですよ、国には。私はそう考えますよ。

 そのことを前提に、要するに、この意味づけというものが、当初、質問の冒頭で聞かれましたね、要するに、この意味は変わっていないですねと。その意味をちゃんと実現し得るのかどうか。中型で、しかも、H2のこれはバックアップですから。エンジンのシステムとしては、バックアップということは、このシステムでやれるということが今わかりつつあるわけですから、それはいいと思うんですね。ただ、現実に、いわゆる中型のものを一定のコストでこれは打てる、そういうことを今検証しているわけでございますから、そのことをきっちり検証しない段階でいろいろなことを申し上げるのは不適当だと私は思いますし、また、必ずしも、途中で引いているとかはしごを外すとか、そういうことにはならないというふうに私は考えております。

山口(壯)委員 大臣が今H2Aのバックアップというふうに言われましたけれども、現実には違うわけですね。H2Aは液化水素で噴射する、このGXはLNGでやっていく。全く違うわけです。しかも、GXについては、日米共同という格好で、アメリカ側の技術的なアドバンテージというものも取り入れることもシステム的にできる。大臣も御存じのとおり、アメリカでの打ち上げというものも、当然のことながら、ロッキードとの共同で可能になる。

 バックアップという位置づけは、三菱重工はそういうふうに言いたいと思いますけれども、やはりいろいろな企業の立場がありますから、そういう意味では、余り一つの立場にとらわれずに、むしろ大きな立場で日本の研究開発力の強化という観点からこの問題は取り上げていただきたいと思います。

渡海国務大臣 後、参議院の本会議がありますから、余り長く時間を使えないですが。

 バックアップというのは、実は従来からこれは確認をされてきた、しかも、GXを進めようという方々がいっぱいいらっしゃいます。それは、私もいいと思うんですよ。バックアップというのは、H2がだめなときに違ったシステムでやれる、要は、一つのシステムのエンジンだけでは心配だという意味でバックアップということを使っているわけでございますから、今、山口委員が言われたようなことではありません。そのことだけは申し上げておきます。

山口(壯)委員 今大臣からも、GXについてはGXなりのきちっとした位置づけがあるという答弁と受けとめました。

 こういうことをきちっとやはり最後までやり遂げることの方が、今から、むしろ税金を追加的にということで心配されているという答弁がありましたけれども、ここまできちっとできているんだし、それから民間の側でもこれはきちっとやり遂げられるという見通しをはっきり言っているように私は認識していますので、その辺は、文部科学省として、あるいは政府として、研究開発力をこれから大局的に見ていくという観点から、むしろ後押しをしていただきたいと思うんです。

 法案提出者にお聞きします。

 こういう今の答弁を聞いて、この研究開発力強化法案を出された提出者として、どういう感想あるいはビジョンをお持ちか、お聞きします。

佐藤委員長 参議院議員鈴木寛君、簡潔にお願いします。質疑時間が経過していますので。

鈴木(寛)参議院議員 はい。

 お答えを申し上げます。

 実は、私は、NASAの附属研究機関のJPLと超高温材料研究センターの共同研究協定の取りまとめということをした経験がございます。やはり、アメリカの今日の宇宙開発というのは、大変膨大な試行錯誤の積み重ねの上に今日の国際的競争力があるということを痛感いたしました。

 今御指摘のGXロケット、これは中型ということで、ある意味で、彼我の差がある日米の差を埋めていく、もちろん協調のもとでですけれども、そういう、非常にコンセプトとしてもエリアとしても有望なプロジェクトだと思っております。

 我が国は、このような分野における、もっと、懐の深さといいますか、やはり研究開発というのは試行錯誤なんだ、だからこそ、国も参画をして支援をしていくというような大きな姿勢でもって、国を挙げて抜本的に取り組んでいく、そういった体制とそして環境を整備していく、これが今回の研究開発強化法の本旨でもございますので、その中でこのGXプロジェクトもきちっと位置づけて取り組んでいくのが望ましいというふうに考えております。

山口(壯)委員 大臣、はしごを外すことがないように、しっかりとよろしくお願いします。

 終わります。

佐藤委員長 以上で山口壯君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 時間がありませんので、直ちに質問に入らせていただきます。

 法案は、第十二条で若年研究者の能力の活用をうたっております。若年研究者の現状は極めて深刻であります。我が党は、党のホームページ上で若手研究者の現状のアンケート調査をしているんですけれども、ポスドクの方から切実な声が多く寄せられております。

 一例を挙げますと、ポスドクは数年で契約が終わる、精神的にも経済的にも安定した生活を送ることは不可能。企業、研究職、ポスドクの募集はすべて年齢制限がある、将来は研究とは全く関係のないアルバイト生活を余儀なくされるのだと暗い気持ちですということなんですね。

 ポスドクは半年から三年の短期雇用です。その後の就職先が見えない、民間企業も採用してくれない、大学や研究機関の安定したポストも基盤的経費の削減でどんどん減っています。任期後の将来像、将来が見えないわけです。

 そこで、提案者にお聞きをします。経団連の昨年三月の「イノベーション創出を担う理工系博士の育成と活用を目指して」を見ても、博士号取得者の活用というのを求めている。ポスドクを研究プロジェクトに積極的に参画させることを求めています。しかし、こうした形のポスドクの活用は短期雇用のポスドクをふやすだけでした。法案の若年研究者の能力の活用には、安定した研究職をふやすという中身を含んでいるのでしょうか。

鈴木(寛)参議院議員 お答えを申し上げます。

 今、石井先生の御指摘、我々も基本的に同じ問題意識を共有しております。

 御指摘いただきました法案の第十二条で、あえて「若年者」という文言をきちっと盛り込ませていただいたのも、同じ問題意識でございます。

 御質問の、安定した研究職をふやすということを含んでいるのかということでございますが、これはきちっと含んでいるというふうに御理解をいただきたいと思います。

 加えまして、今回議論の中で、今まで、やはり競争的資金、これも充実が大変必要でございますけれども、ポスドクの場合は独自にこの競争的資金をとるということは不可能なわけですね。そういう中で、将来はそういうものをどんどんとっていただく人材に育っていただくためにも、運営費交付金を十分確保して、そして安定的にポスドクの皆さんが研究テーマの縛りもなく取り組んでいただくということを想定して応援していく、そういうことを考えている法律でございます。

石井(郁)委員 次に、人件費の問題なんですが、人件費削減ということについても触れていないのはいかがかなというふうに思われます。

 政府は、人件費五%削減、国立大学と独法研究機関に押しつけてきたわけでありまして、国立大学は法人化後、人件費四百七十九億円の削減になっているんですね。これは、旧国立大学時代の助手の初任給は年収四百五十万円でしたから、一万人分に当たる人件費になるわけです。こういう人件費削減が助手や助教の採用を抑制しています。

 なぜ人件費削減をやめるとかあるいは人件費増額というものを入れないのかという問題について、私は、そこの担保がなければ若年研究者の活用ということを言っても具体性が欠けるのではないかと言わざるを得ないわけでございまして、提案者にお聞きをいたします。

鈴木(寛)参議院議員 お答えを申し上げます。

 今回、この法律をつくらなければいけないな、つくる必要があるということに至った問題意識の非常に重要なことの一つに、今御指摘の人件費、とりわけ研究者の人件費の一律カットというものが日本の研究開発力の強化に大きな障害になっているという問題意識を持ってこの法案をつくらせていただきました。

 具体的には、法案の第三十二条で研究開発法人及び大学等への柔軟かつ弾力的な資源の確保を図ることということがまず決まっておりまして、その後に、法案の第三十三条におきまして、いわゆる行政改革推進法第五十三条第一項の規定の運用に当たっては、卓越した研究者の確保や研究人材の流動化促進のための人件費を確実に確保し、研究開発法人の研究開発能力の強化等を図ることができるように配慮することというふうに明記をさせていただいております。

 御存じのように、行革推進法五十三条といいますのは、十八年度以降の五年間で、平成十七年度の水準から五%に相当する額を減少させることを基本とする。これが日本の研究開発力強化のための人材確保に大きな障害になっていたわけであります。これに対しまして、その運用に当たってはきちっと人件費を確保するという規定を盛り込ませていただいて、今御指摘の懸念に対して我々も抜本的に取り組んでいきたいということで、財務省の大変寛大な御理解と御支援も得ながら、この条項を盛り込ませていただいたということでございます。

石井(郁)委員 大変丁寧に御答弁いただきました。その点では、政府からも本当にそれをやるんだなというような確認の答弁もいただきたいところですけれども、時間もありますので次に進みたいというふうに思います。最後に、ちょっと政府にもそれを含めて御答弁いただければと思います。

 ポスドクなどの若手研究者の就職難というのはとにかく深刻であります。やはり、民間企業が博士課程の修了者やポスドクを採用する気配がないというところも大きな問題になっているわけですね。

 毎日コミュニケーションズがアンケート調査を行っているんですけれども、民間企業の研究開発職の学位別の採用実績という結果を見ますと、博士、ポストドクターにとっては厳しい就職環境だということになっています。学部卒ですと、毎年必ず採用実績がある、ほぼ毎年採用実績があるという方は今三九・六%なんですが、大学院、これは修士課程で二二・六%ですが、それに対して大学院の博士課程は二・九%なんですね。ポスドクになるとわずか〇・二%です。

 ポスドクなど若手研究者の就職難の原因というのは、こうして見ますと、短期雇用の研究者をふやしたところに根本的な原因がありますし、やはり問題は、だれがどこからそういう要求を出してきたのかということを見ないわけにはいかないわけです。

 例えば、バイオ産業の業界団体である日本バイオ産業人会議というのが、一九九九年にバイオ産業技術戦略という提言を発表しております。そこによりますと、バイオテクノロジー産業の市場規模を二〇一〇年には二十五兆円規模にするというふうにして、そのためには研究人材が少な過ぎる、日本ではアメリカの三十分の一しかないということで、大学や大学院で生物系の教育を受けた人材を拡充することが必要だというふうに、バイオサイエンス、バイオテクノロジー分野の研究員の増員、ポストドクターの活躍の場を拡大するということが要求されておりました。

 結局、こうして見ますと、今回の法案の趣旨と同じように、産業競争力を強化するために研究人材をふやせ、ポストドクターをふやせということを産業界がやはり求めてきたわけですね。政府も、二〇〇二年にバイオテクノロジーの戦略大綱をつくるなどして産業界の要求にこたえてきました。ですが、ポスドクをふやせと要求してその研究力を活用しながら、任期が終わったらポスドクは雇わないという状況になっています。これは大変身勝手な話でありまして、まさに研究者の使い捨てと言わなければなりません。

 そこで、もう最後の質問なんですが、やはり、大企業に博士やポスドクの採用をふやしなさい、社会的責任を果たせということを求めるべきではないのでしょうか。この点では、提案者に一言と、政府からの御答弁をいただきたいと思っています。

鈴木(寛)参議院議員 お答えを申し上げます。

 実は、私も大学で教鞭をとっておりまして、博士を一人育てるというのは本当に大変なんですね。もちろん教育者の方も大変でございますが、国の方も、博士課程に関しましては、奨学金の充実とか相当な資金も投入しているわけであります。そこまでして育てた博士が研究を続けられないというのは、これは本当に国家的、社会的損失だというふうに理解をいたしております。

 そういう中で、今回の法案の第十二条第一項において若年者を活用するということを規定させていただきましたが、第二項で、研究開発法人、大学はもとより、大企業を含む事業者による若年者の活用ということも規定をさせていただいておりまして、ぜひ民間企業の皆様方にもこの若年研究者をまさに研究の分野で活用していただきたい、そういうことを期待しているところでございます。

森口政府参考人 今御指摘のございました、優秀な若手研究者を養成して、その人材が活躍できる環境を整備する、これは非常に重要だと文部科学省としても考えてございます。その一方で、先ほど御指摘もございましたように、ポストドクター等につきまして、任期終了後のキャリアパスが不透明である、そういうことでございますので、活躍の機会が十分与えられていないという指摘もあるわけでございます。

 このため、文部科学省におきましては、平成十八年度から、一つは、若手研究者が任期つきの雇用形態で自立した研究者としての経験を積み、厳格な審査を経て、助教等のより安定的な職を得る仕組み、これはテニュアトラック制と言っておりますけれども、これの導入に向けたいろいろな支援を行っております。それから、御指摘のございました大学の研究職以外の進路、これも含めた多様な職業選択を支援する科学技術関係人材のキャリアパス多様化事業、こういったことについても進めております。

 また、平成二十年度からは、特に企業と若手研究者が一緒になって研究をする機会を与えるという意味で、イノベーション創出若手研究人材養成プログラム、こういったものをスタートさせているところでございます。

 また、御指摘のございました産業界、このような取り組みを通じていろいろ進めてまいりますが、特に産業界に対しましては、機会あるごとに、若手研究者の受け入れ、こういったことについても要請をしているところでございますが、今後とも、若手研究者の採用をより一層進めてもらうよう働きかけてまいりたい、そのように思っております。

石井(郁)委員 以上で終わります。

佐藤委員長 以上で石井郁子さんの質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森でございます。

 ちょっと、行革関係は先ほど御答弁いただいてほぼ理解できたんですが、第三条第二項で、研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進は、行革の基本方針との整合性を配慮して行わなければならないというふうに書いてございました。基本方針というのは何を指すのか、ちょっと不明なんですが、行政改革の重要方針であるとか、あるいは行革推進法で言われているところだというふうに思います。

 そうすると、この整合性を考えていくと、当然、一律人員削減とかいうことが出てくるわけで、整合性に配慮をしていくと、実は、これだけしっかりと研究開発を充実していこうということと矛盾が出てくるんじゃないか。

 先ほどおっしゃったとおり、この行政改革が研究機関や独立行政法人、国立大学法人の経費を削減させていって、日本の研究開発に大きな障害になっているというふうにおっしゃいました。むしろ後退させてきたような面もあるのではないかということですから、もう一度、この行革の基本方針との整合性というのを、一体どういう意味でおっしゃったのか、むしろこれを越えてやっていかないと、実際に研究開発の向上というのは望めないのではないかという思いがあるので、改めてお聞きをしたいと思います。

鈴木(寛)参議院議員 お答えを申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、やはり日本は、特にこの十年間、研究開発人材への投資が、残念ながら、微増ではございますが、ほとんど伸びていなかった。一方、中国とかは、二倍とか、そのような勢いで充実をしているわけであります。欧米においても、それにまさに迫る。これは先ほど委員長からの提案説明にもございました。アメリカも、大統領競争力イニシアチブで、NSFというところが相当な予算拡充を行っております。そういう中で、研究開発力の強化のためにはまさに人材が必要だ、これが今回の法律をつくったまさに目的でございます。

 行革方針に照らして、こういうことでございますけれども、研究開発の分野とて、きちっと効率的、効果的に、重点的に資源の配分とかそういうことをやるということはもちろん当然であります。そのことを否定しているわけではないわけでありますが、御指摘をいただきました人件費につきましては、先ほど申し上げましたとおり、あえて法案第三十三条というものを盛り込ませていただいたのは、先生の御指摘をいただいたことを踏まえまして、特に卓越した研究者の確保とか研究人材の流動化というもので今相当な問題が起こっているということを、私どもも、例えばノーベル化学賞をとられた理化学研究所の野依先生などからも直接伺いまして、これは大変だということで、この行革法の運用に当たっては、研究開発法人の研究開発能力の強化ということをきちっとできるように配慮すべきだという規定を盛り込ませていただいたところでございます。

 ぜひとも御理解をいただきたいと思います。

日森委員 もう一点。第八条で、「政府は、研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならない。」というふうに規定をしているわけですが、「財政上又は金融上の措置」というのは具体的にどういう内容を想定していらっしゃるのか。例えば、伸び悩んでいるような科学技術関係の予算について、思い切って上積みをするとかいうことも含めて、いろいろな範囲があるんでしょうけれども、想定されているのか、お聞きをしたいと思います。

鈴木(寛)参議院議員 お答えを申し上げます。

 財政上の措置といいますのはまさに予算執行、予算の確保についてでございまして、金融上の措置ということは政府関係金融機関を通じた融資等々を指しております。

 私ども立法者の意図といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、欧米各国あるいはBRICs諸国に比べて、ここへの特に公的分野の取り組みがこの十年間極めておくれてきた、そういう中で、特にライフサイエンスあるいは宇宙、こうした分野が相当、BRICs諸国に比べても、大丈夫なのか、そういう危機感のもとでこの法律をつくらせていただいております。

 この国会での御審議を踏まえて、ぜひ政府におかれては予算の確保、拡充に努めていただきたい、そういう思いでございます。

日森委員 それはぜひ私どもも応援していきたいと思います。

 終わります。どうもありがとうございました。

佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党を代表して、研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律案に反対の討論を行います。

 本法案では研究開発システムの改革を行うとされていますが、大学など公的研究機関の研究能力を事実上大企業の国際競争力強化に奉仕させるものと言わざるを得ません。

 公務員の任期づき採用や国の委託研究の成果の無償譲渡など、研究交流促進法の諸制度を引き継ぐとともに、国等の知的基盤の民間への開放などを定めています。これらは、国の研究機関における研究活動とその成果の公共的性格を弱め、全体の奉仕者たる研究公務員を一部の大企業の奉仕者へと変質させかねないものです。

 また、本法案は研究開発の基盤強化を大きな柱としていますが、予算配分の重点化と競争の強制によって深刻な予算不足に陥っている公的研究機関の現状を改善する方策は示されず、逆に、さらなる重点化と効率化、競争の促進で、研究環境を一層ゆがめ、悪化させると言わざるを得ません。

 社会問題化している若手研究者の就職難も、是正されるどころか、より深刻化させるおそれがあります。

 研究開発成果の実用化について、それを阻害する要因解消のための規制の見直しについても、大企業に使い勝手のよいものにするだけのものになりかねません。

 このように、法案が我が国の研究開発の発展につながるものではないことを指摘し、反対討論とします。

佐藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより採決に入ります。

 参議院提出、研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、鈴木淳司君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 それでは、提出者を代表いたしまして、私から本動議について御説明申し上げます。

 なお、案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 国際的な頭脳獲得競争の中で、我が国の研究開発力の強化を図るためには、その基礎となる優れた研究人材の養成・確保が不可欠であり、研究人材に係る適切な人件費の確保、若手・女性・外国人研究者のための研究環境整備に努めること。

   また、技術士等の人材の有する技能及び知識の有効な活用及び継承が非常に有効であることを踏まえ、その積極的な活用・推進に努めること。

 二 研究開発法人における外部資金の積極的な受入れを促進する観点から、毎年度の運営費交付金の算定に際して、研究開発法人における自己収入増大に向けた経営努力を積極的に評価し、更に促すよう適切な対応を図ること。

 三 我が国の研究開発力の強化に当たっては、独創的・基礎的な研究活動及び教育活動を実施する大学の基盤の強化を図るため、国立大学法人の運営費交付金や私学助成を確実に措置すること。

 四 我が国の研究開発等を効率的に推進する観点から、国の資金による研究開発に係る収入や購入研究機器等については、その積極的な活用が図られるよう制度面・運用面での改善を図ること。

   その際、我が国の研究開発における民間企業の果たす役割の重要性にかんがみ、これらの機器が広く民間企業にも共用されるよう十分配慮すること。

 五 国際競争力の確保の観点から、特許その他の知的財産に係る審査等の手続きについて、迅速かつ的確に行うための審査体制の更なる充実・強化その他必要な施策を講じること。

 六 研究開発システムの在り方に関する総合科学技術会議の検討においては、研究開発の特殊性、優れた人材の確保、国際競争力の確保などの観点から最も適切な研究開発法人の在り方についても検討すること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようよろしくお願いを申し上げます。

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡海文部科学大臣。

渡海国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分に尊重し、我が国研究開発力の強化及び研究開発等の効率的な推進に努めてまいります。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

佐藤委員長 次回は、来る六日金曜日午前九時理事会、午前九時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前九時五十一分散会


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