衆議院

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第6号 平成21年4月8日(水曜日)

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平成二十一年四月八日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 岩屋  毅君

   理事 木村  勉君 理事 佐藤  錬君

   理事 馳   浩君 理事 原田 令嗣君

   理事 茂木 敏充君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    井澤 京子君

      井脇ノブ子君    飯島 夕雁君

      浮島 敏男君    小川 友一君

      越智 隆雄君    大塚 高司君

      岡下 信子君    加藤 勝信君

      加藤 紘一君    鍵田忠兵衛君

      亀岡 偉民君    谷垣 禎一君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      萩生田光一君    平口  洋君

      福田 峰之君    田島 一成君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      藤村  修君    松本 大輔君

      山口  壯君    笠  浩史君

      和田 隆志君    富田 茂之君

      西  博義君    石井 郁子君

      保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       塩谷  立君

   文部科学大臣政務官    萩生田光一君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  清水  治君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   参考人

   (独立行政法人日本学生支援機構理事長)      梶山 千里君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     大塚 高司君

  山本ともひろ君    越智 隆雄君

  日森 文尋君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     山本ともひろ君

  大塚 高司君     加藤 勝信君

  保坂 展人君     日森 文尋君

    ―――――――――――――

四月六日

 特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二三号)

同月八日

 教育格差をなくし、すべての子供に行き届いた教育をするために私学助成大幅増額を求めることに関する請願(遠藤宣彦君紹介)(第一三八三号)

 教育格差をなくし、すべての子供に行き届いた教育に関する請願(林潤君紹介)(第一三八四号)

 教育格差をなくしすべての子供に行き届いた教育を求めることに関する請願(西本勝子君紹介)(第一五一二号)

は本委員会に付託された。

四月七日

 父母負担軽減、私立高校以下への国庫助成制度の拡充に関する請願(第八五号)は「河村たかし君紹介」を「牧義夫君紹介」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二三号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

岩屋委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人日本学生支援機構理事長梶山千里君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府沖縄振興局長清水治君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長布村幸彦君、初等中等教育局長金森越哉君、高等教育局長徳永保君及び文化庁次長高塩至君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。

 大臣、おはようございます。ちょっと、義務教育費国庫補助負担金が全額使われないで国庫に返納されているといううわさを小耳に挟みまして、実態はどうなのかなということで、昨年度、平成二十年度、もし万が一そういう実態があるのであるならば、調査をして資料をつくってほしいと文部科学省に要請をいたしました。それが、きょう委員の皆さんにもお示しをしております資料であります。

 まず、この資料についての説明を局長の方にお願いしたいと思います。

金森政府参考人 平成二十年度におきまして、教職員を含む職員の給与削減を実施しているのは三十五道府県でございます。このうち、教職員給与費の実支出額が義務教育費国庫負担金の限度額を下回っているのは十六道府県となっております。

 しかしながら、義務教育費国庫負担金につきましては、平成十六年度から総額裁量制を導入いたしまして、国庫負担の最高限度額の範囲内で各都道府県が給与水準や教職員配置を弾力的に決定できるようにしたところでございまして、給与削減をしている場合でございましても、鳥取県や京都府などのように、この制度を活用して教職員配置の充実を図っている状況も見受けられるところでございます。

 なお、近年の厳しい地方財政の影響もございまして、大多数の地方自治体で給与削減を実施いたしておりますことから、実支出額が限度額に達しないのは、平成十六年度は六県でございましたが、平成二十年度は十六県と増加する傾向にございます。

馳委員 基本的に各都道府県とも財政が厳しい中で、公務員の給与を一律削減している。それに倣って教育公務員の給与も下がっている。したがって全額使い切れていないというのも、これまた一つのむべなるかなとも思いますが、局長、義務教育費国庫補助負担金という制度を改めて考えると、三分の一が国庫負担、三分の二は地方交付税によっての地方負担、いわゆる一般財源化されているということだと思いますが、改めて、私のその認識でよろしいですね。

金森政府参考人 御指摘のとおりだと存じます。

馳委員 そうすると、国庫補助の部分が全部使い切れないで、使われないで国庫に返納されている。では、地方負担の三分の二の部分、これは地方交付税措置になって一般財源化されていることになるわけですね。今、局長が私の改めて言うまでもないことにお答えいただいたとおりです。この三分の二の部分はどうなっているんですか。

 使われないで国庫に返納されている十六の道府県があるわけですよね。同じようにその三分の二の部分も国庫に返納されているんです。そこはどうなっているんですか。

金森政府参考人 国庫負担以外の部分につきましては、一般財源でございますので、返納はされておりません。

馳委員 私はこの実態はちょっとおかしいなと。率直に言って、義務教育費国庫補助負担金、これは、教員給与一人当たり、あるいは義務標準法等いろいろ掛け合わせた上で基準があって、各都道府県にお配りしているわけですよね。使われていない。国庫補助負担の分が国庫に返納されている。ところが、残り三分の二は、地方交付税として渡っているにもかかわらず、返納されていないんですよ。いやあ、もったいないな。どうせお渡ししているんだから、全部使い切ってほしいな。ましてや、平成十六年から総額裁量制にして、各都道府県で頑張って工夫をして、少人数学級とかあるいは習熟度別の学習とか、いろいろな教員配置を頑張って工夫してやっているにもかかわらず、この残り三分の二の分は一般財源化になって、大臣、返ってきていないんですよ。

 一般財源化になって教育のために使っているんですか。局長、一般財源になって、教育のひもつきになって、ちゃんと教育のために使われているんでしょうか。どう思います。

金森政府参考人 一般財源化された部分につきましては、どのように使われているか、必ずしもつまびらかでないところでございます。

馳委員 例えば、この数字からいろいろなことを私は読み取ることができるなと思うんですよ。資料をもう一度ごらんください。

 一番差額のあるのは、黒三角を見ていただければいいんですが、大阪府の三十五億三百万円ですよ。多分これは三分の一の部分ですから。つまり、その裏負担の三分の二となると、倍掛けすれば七十億六百万円は、大阪においては教育の目的以外に使われている可能性がある。というよりも、教育の目的以外に使われていると指摘をすることができるんですよ。大臣、できるんですよ。

 そうすると、大阪府の橋下知事は、私から言わせればずるい男だなという評価もできるし、なかなか大した知事だな、本来ならば義務教育の人件費に使わなければならないのに、うまくやりくりをして、ほかの財政の補てんなんでしょうか、うまく使っているなという評価もできます。

 でも私は、文教族の誇りを持って言うならば、ずるいよ、人件費なら人件費として渡しているんだから、ちゃんと使ってよ、ましてや、総額裁量制というやり方があるんだから、教育の人件費で使ってよと私は率直に思います。

 まず、この総額裁量制というのは、これは、ある意味では政治的な落としどころとして、各自治体で教員給与を有効に使っていただきたいということで平成十六年から始まりました。この制度を使えば、大臣、国庫に返納なんてしなくてももっと有効に使おうと思えば使えるし、これは数字を見ましょうか。定数超過の部分、鳥取県、六・二%も上増ししているし、京都府は四・八六%上増し、福島県は四・五%上増し、香川県は三・二四%、佐賀県が三・一五%と、定数以上にうまく教員の配置を、恐らくこれは非常勤の講師なども使いながらやっているんでしょう。こういう数字を読み取ることができるんですよ。

 この総額裁量制を有効に使うべきである、そして、私が今指摘したように、国庫補助負担金、返納なんかしないで、お渡ししたんだからちゃんとお使いくださいというこの指摘に対して、大臣の所見、感想、思いを伺いたいと思います。

塩谷国務大臣 今、馳委員御指摘の点は、全く私も気持ちの上では同感でございます。

 ある面では、先ほど御説明がありましたように、橋下知事の話がありましたが、うまくやっている。国庫へ返納しても一般財源化が確保できるという方法を選択しているんだと思いますが、教育の面で総額裁量制という制度を入れて、その地方においてそれをうまく使って教育を充実させてほしいというのが私どもの思いでございまして、三位一体のあの議論のときは大分その議論をやって、結果、その裁量制を採用したわけでございますので、ぜひ私どもとしては、教育の充実のためにこの国庫の負担金を十分に使っていただくことをこれからも指導してまいりたいと思っております。

馳委員 もう一度改めて数字を見ますよ。百十八億八千六百万円が、本来ならば国庫補助負担として都道府県に行っているものが返納されているんです。百十八億八千六百万円です。教員給与、いろいろありましょうが、一人五百万円と計算したって、これだけで少なくとも二千四百人は現場で何とかなるんですよ。この二千四百人という数字、これは、単純な積み上げの計算だけですからそうはいかないかもしれませんが、少なくとも、国庫補助負担の返納されている分だけでも二千四百人は現場の教員の配置ができるんですよ、やろうと思えば。やっていないんですよ。やっていないどころか、返納しないでもいい地方交付税で渡っている三分の二を使って、教育以外の目的にやっているんですよ。

 そうすると、今度は私は大臣にあえて問わなければいけないのが、このままでよいのかなと。三分の一と三分の二に切り分けられたのが平成十八年ですから、以来三年間たちました。それで、下の方の数字を見てください。「実額負担県数の推移」とあって、十六年度、これは総額裁量制が始まったころからですけれども、六、七、六、十一、十六と右肩上がりに伸びてきているんですよ。恐らく、都道府県の知事もわかってきたんでしょうね。これはしめしめ、国庫補助負担金を使い切らなくて返納したとしても、三分の二は我らで使えるぞ、これを一般財源として厳しい財政の中でほかのことに使ってやろう、しめしめという思いがこの数字に出てきているんですよ。これは極めて憂慮すべき、私はもうけしからぬなあと思います。

 ただ、ここで私も先ほど橋下知事のことを評価したように、このやろう、ずるい男だなと言える部分と、なかなかうまくやっているじゃないか、うまく工夫しているじゃないかという二つの評価をしようと思えばできるんです。全額一般財源化をすると、まさしく地方の実情によって、教員給与といえども、お住まいの地域によっては物価も違ったり事情もありますから、自治体が条例で決めればいいことであって、一々国に全部基準を決めて配ってもらうものではない。一定の水準の計算式に基づいて渡してくれれば、自由に教員給与水準を決めた上で有効に使う。だから、一般財源化してくれという知事の裁量に基づく判断で一般財源化を求める。こういう言い方もあるでしょうが、実際には、まさしくきょう文科省が示していただいた数字のように、本来の趣旨どおりに使われていないということなんです。税金が本来の趣旨どおりに、目的どおりに使われていない現状をこの一枚の表から読み取ることができるわけですよ。

 こういう意味では、義務教育費国庫補助負担制度の根幹に、税金の使い道の根幹にかかわる問題ではないのかなと私は思います。

 大臣、今の私の説明をお聞きになって、主張をお聞きになっての感想をお伺いしたいと思います。

塩谷国務大臣 義務教育費国庫負担金については、やはり、教育水準の確保、そして格差がないようにということで国が保障する大事な制度でありますので、これはしっかりと堅持していく必要がありますし、三分の二が一般財源で措置をするということになって今回の調査の結果が出ているわけですが、大変私どもも憂慮すべき点が出ているなというふうに感じております。

 今後、どういうふうに教育費としてしっかり実効あるものに使っていただくような措置ができるか、いろいろな検討をしていかなければならないと思っておりますので、そういう実態の調査の結果が出ておりますので、ぜひ、御指摘の点を踏まえて、また今後しっかり検討してまいりたいと考えております。

馳委員 大臣、私が一つ謝らなきゃいけないのは、私はさっきから国庫補助と言いましたよね。でも大臣は、今、国庫負担金とおっしゃいましたよね。これはまず最初に局長に確認した方がいいですね。私が言った補助という考え方は文科省はとっていないんですよね。文科省としては、国庫負担金という考え方でこの問題に取り組んでいる。補助じゃないんだ、国庫負担金なんだ、大臣は今国庫負担金とおっしゃいましたから。それでいいんですね。金森局長、ちょっと。

金森政府参考人 御指摘のとおり、義務教育費国庫負担制度でございます。

馳委員 これはまさしく哲学ですよ。補助じゃないんです、国庫負担金なんですよ。教育公務員の給与については国庫負担金なんですよ。それが三分の一と三分の二に切り分けられた。あの三位一体の中でのこれは政治決着の苦渋の決断だったというふうに私は思っています。

 それから三年間たちました。実態を見るとこうなっています。三分の一の部分が使い切れなくてというか、いろいろ事情もあって国庫に返納されていますが、三分の二は、しめしめということで使い放題ですよ。

 私はあえて大臣に答弁を求めますが、この問題、実態を踏まえて中教審に諮問をすべきときではありませんか。

塩谷国務大臣 今回の調査でそういう結果が出ておりますので、中教審に諮問するかどうかは別として、今後その傾向が続いていく可能性もありますので、そういう点を踏まえて、大事な国庫負担金が返納されているということを、どう今後実効的に使えるかということを検討する必要があると感じております。

馳委員 中教審に諮問をするに値する問題だと思いませんか。もう一度答弁を求めます。

塩谷国務大臣 もちろん、中教審に諮問する前に私どもでしっかりとまだ検討する必要があると思っておりますので、まずは私どもで検討させていただきたいと思います。

馳委員 中教審に諮問をするに値するという表明と私なりに解釈をいたしますが、確かに、諮問をする前に、きょうは一枚のペーパーだけで、私はこれをずっと眺めながら、何でこうなるのかな、結局は、教育は、もっとはっきり言いましょう、都道府県の教育長は都道府県知事に人事権も握られていて頭が上がらないんだなというのを、私はこの数字から読み取ることができると思いました。

 本来ならば、各都道府県においても教育の現場というものは、ある意味で言えば、政治とは一定の距離を置いて、中立で、子供たちの、特に義務教育についてやはり役割を果たしていかなければいけない。政治とか政党とか、あるいは都道府県知事や市長もそうでしょうが、こういった圧力に負けないで、自立をして教育を行っていくという姿勢が必要なんだろうと私は思っています。

 ところが、見事に各都道府県によって、この数字を見てくると、総額裁量制を有効に使っている都道府県もあれば、そうではない都道府県もあれば、わざわざ国庫に返納してくる、それも百十八億八千六百万円、こんなに私はあるとは思いませんで、びっくりいたしました。

 今後、どのような検討、調査をして、その上で中教審に諮問をすべきだとお考えですか。いいですか、今後、どのような調査や検討、分析をした上で最終的に中教審に諮問をすべきだとお考えですか。お答えください。

塩谷国務大臣 御指摘の点については、私どもとしては、その調査をもとに、実際に現場でどのような形でそういう数字が出てきたかということを調査していかなければならないと思っております。総額裁量制を十分に活用しながら、そしてまた教員の給与あるいは人数等、こういうものもしっかり配置していく上で、現在の地方財政の厳しい状況の中で、ある面では、地方財政の中でかなり苦労をしてそういう結果になっていることも考えられますし、そのために教育がおろそかにされるようなことがあってはならないわけですが、しかし、それぞれの各都道府県で、全体を見て判断してかなりうまくやっているという例もあるかもしれませんし、そういう例をしっかり踏まえて、今後どういうふうな形で検討できるかということを十分に調査をして、その上で中教審に諮問するかどうかを判断していきたいと思っております。

馳委員 大臣、私は今、人件費の話でちょっと突っ込んでお伺いいたしました。これは金森局長も、ぜひ、この返納されているという、私は、本当に小耳に挟んだ情報から、数字を見て深くいろいろなことに思いが及んだわけでありまして、私以上に賢明な局長として、もっといろいろな数字から読み取れる都道府県の実情、そして、教育委員会がやはり知事に何か遠慮しているのかなというふうな部分を踏まえた実態調査をしていただきたいと思っております。いかがですか、局長。

金森政府参考人 私どもといたしましては、先ほど来御指摘ございましたように、各都道府県においてこの総額裁量制を活用した一層の教育条件整備が図られるよう、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

馳委員 何度も言いますが、金額の大きいところを言いますよ。北海道十六億一千四百万円、大阪府三十五億三百万円、広島県十八億四百万円、沖縄県十二億八千万円、どうでしょう、財政的に厳しい自治体の叫び声がこの数字からもやはり見えてくるんですよ。広島県が財政的に厳しいのかどうかはどうでしょう。これはちょっと首をかしげたくなるところでありますから、これはやはり、恐らく知事の采配というものがこういったところに出てきているんだろうなと私は思います。

 したがって、各都道府県によって実情が違う、それから、公務員の給与水準を数%ぐらい条例で下げているところもありますから、そういった実情もあるでしょうし、そこら辺がやはり知事さん方の腕の見せどころなわけじゃないですか。そんなときに、教育長が大きな声を出してこれは守らなければいけない、義務教育の重要な人件費なんです。

 さらに、総額裁量制を使えば、少人数学級とか、習熟度別とか、特別支援教育への支援とか、あるいは小学校の体育の授業を充実させようとか、何だってやろうと思えばできるんですよ。やっているところだってあるんですよ。そういう指導、そういう関与を文部科学省としてすべきではないんですかと私は思うんです。局長、どう思いますか。

金森政府参考人 この義務教育費国庫負担金は、義務教育水準の維持向上のために、各都道府県に対して、都道府県ごとの給与単価と、標準となる教職員定数に基づく限度額まで国庫負担することを可能としているものでございます。

 確かに、一部の都道府県におきましては、財政上の理由などから、教職員を含むすべての職種について給与削減を行っており、やむを得ない面もございますけれども、文部科学省といたしましては、各都道府県においてこの総額裁量制を活用した一層の条件整備が図れるよう、今後とも必要な助言を行ってまいりたいと考えております。

馳委員 最後に大臣に、今までのやりとりで私は、人件費について一応自分なりに心配をし、憂慮をし、文部科学省として、都道府県、また、小中学校の場合は設置者は市区町村ですから、市区町村に対して一定のやはり影響力を持って指導できるようにすべきではないんですかということを申し上げました。私なりの問題意識についての最終的な感想を一つ。

 もう一つ、まだ表に出てきていませんが、追加経済対策として、人件費とともに必要な施設設備の対策、これは追加経済対策として出てきておりますが、こういう状況であることを考えれば、学校施設設備の高度化、エコ化、ICT化、あるいは耐震化というものは、言葉は悪いかな、チャンス、でも、本当にやはり老朽化した施設、あるいは、エコ化をすればもっとよくなる学校、地域によってとてもやはり助かるわけですよ。これは、私はぜひ追加経済対策で大臣の責任のもとに進めていただきたいと思っております。

 これは人件費の問題ではありませんが、この人件費の問題についてと、追加経済対策で文部科学省としてどのような前向きな学校施設設備の整備について取り組もうとしているのかというお考えをお聞きして、私の質問を終わります。

塩谷国務大臣 きょう、馳委員の御指摘の点につきましては、今後、実態をしっかり調査して、教育環境をしっかり整えるべく努力をしてまいりたいと思っているところでございます。

 また、現下の経済状況において、党としても、提案をいただいた、特にスクール・ニューディールと言われる学校施設整備については、やはり子供たちの教育環境というのは、もっと新しく、また、将来を見据えた環境をするべきだろうということで、そういう意味では絶好のチャンスだととらえて、耐震、あるいはエコ化、あるいは芝生化等、いろいろな面で今回しっかりと整備を進めてまいりたいと思っておりまして、私どもとしても今その点で要求をしているところでございますので、また今後とも御協力をよろしくお願い申し上げる次第でございます。

馳委員 終わります。

岩屋委員長 以上で馳君の質疑は終わりました。

 次に、池坊保子君。

池坊委員 大臣初め皆様方、おはようございます。公明党の池坊保子です。

 私は、きょうは、先日国会に提出されました沖縄科学技術大学院大学に関する法案について、内閣府にも来てもらっておりますので、ぜひ塩谷大臣にもこれへの関心を深めていただき、これは内閣府提出ではございますけれども、教育研究は私たち文部科学省が深くかかわってきておりますので、内閣府も連携が必要かと思いますので、これについて幾つかの疑問も持っておりますので質問をし、審議をしてまいりたいと思います。

 目的は、沖縄に拠点を置く国際的に卓越した科学技術に関する教育研究を行い、そのことを通じて沖縄の振興と我が国及び世界の科学技術の発展に寄与すること。私は、この目的は大変いいなと思っておりますが、まず私は、学校の設置形態に対してちょっと疑問を持つのと、莫大な国費を投じながら、沖縄の県民の方々がこの大学院大学を果たして喜んでいらっしゃるのか、どれぐらい沖縄に社会貢献できるのだろうか、これに対しての大きな懸念を持っております。

 これについて内閣府に伺いたいのですけれども、この沖縄科学技術大学院大学というのは学校教育法上の設置主体はどこなのかというのを伺いたいのです。

 言うまでもなく、大学の設置主体というのは、学校教育法上、三者あると思います。つまり、国、地方公共団体、学校法人です。国は国立大学法人、地方公共団体は公立大学法人です。学校法人は私立大学ですね。今回の沖縄科学技術大学院大学は、この三つのどこに入るんですか。

清水政府参考人 学校法人である沖縄科学技術大学院大学学園が設置することを想定してございます。

池坊委員 この三つのうちのどこに入るのですか。私立大学ですか、私立大学だったらそうおっしゃってください。この三つのどこに入るんですか。

清水政府参考人 学校法人として私立大学ということになります。

池坊委員 ここにいらっしゃる方も、何で私立大学とお思いになった方が多いと思うんですよね。

 学校というのは、言うまでもなく、理事会が主体となって運営し、その責任を理事会が負うわけですね。監督責任というのは、私立大学も、また最終的には国立大学も、文部科学省、そしてそのときの大臣が負うわけです。となると、これは内閣府に属するわけですね。最終的にはだれが責任を持つのでしょうか。

清水政府参考人 監督についてのお尋ねでございます。

 一般的な学校法人としての監督の責任を文部科学大臣が持たれると同時に、内閣府の所管部分について、内閣府の長たる内閣総理大臣が監督責任を負うこととしてございます。

池坊委員 これは私たち公明党の文部科学部会でも大いに議論になったところですけれども、内閣総理大臣が監督責任を持つ私立大学というのは、本来的には腑に落ちないのじゃないか。これは少なくともこの大学だけですね。

 そして、これはマスコミによっては国設民営とも言われておりますが、この特別な学校法人というのはほかにありますか。

清水政府参考人 二点お尋ねがございました。

 私立大学で内閣府の監督のもとという点につきましては、世界最高水準の大学院大学の理念に沿って検討した結果、科学者を中心とする合議体による自主的な大学運営、また、御指摘のように、財政支援について沖縄振興の観点からの財政支援ということが不可欠でございますので、学校法人制度を基礎とする特別の学校法人という形態で御提案させていただいています。

 なお、このような形態としては、放送大学学園が同じような形態と承知してございます。

池坊委員 内閣府に置く、沖縄振興費によって設置される特別な大学ということなんですね、今御説明いただいたのは。放送大学も、文部科学省の中に特別な学校法人として存在するとおっしゃいました。

 私も、放送大学の入学式並びに卒業式に参りました。十代から九十代までの方、それぞれの分野において、例えば学校に行けなかった十代の人たち、不登校の人やいろいろな人たちが通っていたり、あるいは、七十代から目覚めて、もう一度勉学したい、それぞれの分野で目標を持ち、それを生きがいにして勉学していらっしゃる。本当に広範、老若男女によって支えられている。私は、あの現場を見ましたときに、大変すばらしいな、こういうものがあることを心強く思いました。私も、リタイアしたらもう一度放送大学で学ぼうかと思ったんです。

 では、この特別な、内閣府に置いた科学技術大学院大学は、沖縄の県民に幅広く受けとめられなければなりませんよね。沖縄振興費だとおっしゃいました。私は、沖縄振興費に対しては共鳴するものです。

 初めて沖縄に参りましたときが、ちょうど沖縄返還の数カ月前でした。そのとき私はまだ二十代でしたから、私と同じ世代の二十代の青年に、うれしいでしょう、返還されるのよと言いましたら、複雑な心境だと。確かに、自分は日本人だから、日本に戻ることに対しては幾ばくかの喜びもあるけれども、でも、生まれ育ったときからアメリカ人としてアメリカの国籍を持ち、そしてアメリカの教育、文化の中に生きてきた、今、日本の国の方針によって、あなたは日本になるんだよ、返還されるのだよと言われても、ああそうですかと手放しで喜ぶ気持ちではないのですよと言われましたときに、私は、沖縄に生きる方々の、そして戦争や時代に翻弄されていく方々の一人一人の身になって考えなければいけないなということを思いました。

 それとともに、やはり戦争によって唯一の地上戦を経験した、そして今も米軍基地があって、上空は飛行機が飛んでいる、穏やかで静かな生活を脅かされている、また経済的にもいろいろな格差があったり、自立がなかなか難しい。沖縄振興費があるということ自体は、私は、痛みや苦しみを分かち合う、共有認識を持つ、その一つが沖縄振興費であるというふうに思っておりますが、ならばなおのこと、沖縄の県民一人一人に役立つものでなければならないというふうに思うんです。

 国際的に卓越した教育研究拠点とするためには、国内外の優秀な人材を集めてくる必要もあると思います。そのためには学校も必要でしょう。だって、その人たちに子供だってできるんですから。それからまた、インフラも整備されなければならない、アクセスも必要だと思うんですね。

 恩納村に突然これができましたことの経緯をちょっとお話しいただきたい。簡単にお願いいたします、私も三十分の時間しかありませんので。

清水政府参考人 経緯についてのお尋ねでございます。

 沖縄振興で、本土復帰以来、社会資本整備を中心に本土との格差是正に努めてまいりましたが、現行の平成十四年沖縄振興特別措置法で基本コンセプトを展開し、民間主導の自立型経済の構築ということに重点を置いてまいりました。その中で、沖縄の科学技術振興や人材育成を通じて自立型経済の構築に資するということで、現在の沖縄振興特別措置法及び沖縄振興計画に位置づけられたものでございまして、その後、地元の要望等も踏まえて、恩納村の場所に建設が決められたものでございます。

池坊委員 自立型経済構築、必要だと思うんですね。これから直接どのような形で自立型経済に、自立に結びついていくのかというのが私には疑問で、今お答えになったのは、文章的にはいいのでしょうが、私にはちょっと説得力に欠けるように思ったんですね。

 恩納村は、地域の方々の利益に資することができるということで、あれを無償で多分提供したんだと思うんですね。私なんかは一般的な人間ですから、沖縄というとすぐ輝く太陽と青い海とリゾート地、だから、もうちょっと別の視点があったんではないか。

 例えば、桑田選手が入った早稲田大学大学院のスポーツ科学研究科ですか、ああいうように、何かスポーツなんかのトレーニングセンターをつくるとか、あるいはスポーツ科学だとか、一年じゅう運動ができるんですから。あるいはまたリゾートとか海洋とかそういうことを考えるんですが、では、なぜこのときに科学技術大学院が必要だったのかなという気も私はするんです。

 今、日本には国立としては二つの科学技術大学院大学がございますね。一つは奈良先端科学技術大学院大学、一つが……(発言する者あり)北陸、そうです、お隣の馳さんがいらっしゃいます北陸にございます。三つ目なのですけれども、これは私立大学だということですけれども、研究活動は生命科学、物質科学、応用化学を含む先端的な学際分野であり、その研究成果がすぐに地域産業に資するとは考えられないんですね。

 こういうことに対して、きっちりと議論をされた上でこれを設置なさったのか。私は、これができちゃいました以上はしなければならないと思いますが、今までの経過からいって、地域の方々の理解の上でこれが成り立っているんですか。

清水政府参考人 沖縄に国際的な教育研究の拠点をつくろうということでございます。

 その際の分野については、やはり世界水準でございますので、先端的な学際分野に重点を置いてやっていこうというのがコンセプトでございまして、内外の科学者のもとで世界の潮流を見ながら方針を決めてきたわけでございますが、これまで、御指摘のように生命システムを中心的なテーマと選んで研究を進めてございますが、新たな学際分野として環境科学を柱の一つに加え、研究に着手しているところでございます。

池坊委員 何か突然それだけができちゃったような気がいたしますけれども、私は、腑に落ちないことがたくさんあるから、本来的にはこの大学院大学は心から賛成というわけではありません。だけれども、もうでき上がっているんですよね。でき上がっている途中であること、そして、優秀な研究者が外国からもたくさん来ていらっしゃる。教育研究というのは継続が必要ですから、これは歩き出したらそれを途中でやめることはできませんから、ならば、やはり地域の人たちに資するような方法を考えていくことが必要かと思います。

 私は、さっきも申し上げるように、地場産業に資するような研究活動を行う、地域で活躍できるような人材を育成することが必要なんですよ。これからの沖縄がどんなふうに発展していくかというのは、やはり沖縄を愛し沖縄のために尽くすような人材確保、そういう育成こそが本当は必要だったんじゃないか。地場産業はいっぱいありますでしょう、それをもっと研究するとか、もっと広げる工夫をする、そういうことが県民を愛して県民のためになる、こんな国費を使うならやるべきであったんではないかと思うのですが、過去を振り向いてもしようがありませんから、ではこれからどういうふうにしていくかといったら、いろいろな方法があると思います。

 例えば、沖縄というのは本土とはまた違う環境を持っている、そのような環境の研究だとか、地域で活躍する方々の、さっきも申し上げたように人材育成が必要なんですよ。それから、地域住民を対象として、最先端の研究活動を、こんなすばらしいのをしていたってなかなかわかりませんよ、わかりやすく説明するような公開講座を持つ。それから、地域企業の悩みを解決するような共同研究や受託研究の実施、大学施設の地域への開放、地域の活動への教職員の積極的な派遣など、地域と一体となった活動のあり方、いろいろなアイデアがあると思うんですね。

 琉球大学というすばらしい大学がございます。この高度な研究は、東大や京大でもなかなか連携してやっていけないと思うんですよね。まして、地域の人たちと、これだけ研究をしていますといったってわからないじゃありませんか。そういうことが必要と思いますが、いかがですか。これをやっていらっしゃる責任者なんですから、すごく大きな重責を担っていらっしゃると考えていただきたいんです。

清水政府参考人 大学院大学の教育研究について、地域との関連が極めて重要であるという御指摘でございます。

 二、三例を申し上げますと、一つは、琉球大学については研究協力協定を結びまして、連携関係に努めているところでございます。また、ここでの研究成果、これ自体は先端的なものではございますが、例えばいろいろな機会に、教授クラスの方あるいは著名な科学者の方に出前講義をやっていただいたり、あるいは一般向けにした講演会をやるなど、できるだけ地元との関係を重視した運営を既に現在の沖縄研究機構でも行っていますが、そういった方向で進めてまいりたいと考えてございます。

池坊委員 今、産学連携ということが言われております。地域社会と結びつき、そして産業界と社会に貢献しなければだめだ、ただ研究しただけでは自立的な経済にはならないと思うのですね。

 幸せなことに、文部科学省はそういうノウハウをたくさん持っていますから、内閣府だけでやろうと思ったら必ず失敗なさると思うんですよ。これは連携をとっていただきたいと思いますが、大臣、今のところの審議を聞いていてどのようにお思いになりますか。やはりこれは連携をとって、いろいろな文部科学省としての今までの知恵を出していくべきと私は思っておりますけれども、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 この大学院大学につきましては、沖縄にとって今後いろいろな意味で大きな役割を果たしていただきたいという期待があるわけでございまして、今までの経緯は別として、今後しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

 研究内容等、沖縄の地域とどれだけ直結するか、そういうこともありますし、また、こういった機関が今まで沖縄になかったからこそ、やはり必要な部分もありますし、その波及効果等もあると思いますので、そういう点も含めて考えていかなければならないと思っております。

 我々文部科学省としましても、職員を当然内閣府に派遣して、やはりその内容的な充実、大学院大学としてのしっかりとした研究体制あるいは予算措置、そういったものも含めて、十分に内閣府と協力して、これからしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

池坊委員 これから本当にいい大学にしなければならない。これは政治主導でできた大学ですから、ここにいる議員はきっちりと責任を持ってそれもサポートしなければいけない。そのためには、国会議員たちにも、また県民たちにも情報公開、どういう研究をしてどういうことをしているということはきっちりと説明する責任があるかと思います。

 この沖縄大学院大学、現在どれぐらいの国費が投入され、将来的にどれぐらいの国費がかかるんでしょうか。時間がありませんので、端的に教えてください。

清水政府参考人 これまでの予算でございますが、独立行政法人沖縄機構において、施設整備費で二十一年度予算までで約二百九十億円、また研究事業費等の運営費等について約二百十三億円となってございます。

 また、今後、施設整備費については、基本設計当時の平成十七年でございますが、総額三百二十五億円程度と見積もられてございます。

 また、将来の運営については、現在の主任研究員規模を参考に概略試算いたしますと、教授クラス五十人程度の開学時点において年間約百億円程度と見込まれてございます。

池坊委員 教授五十人に百億じゃなくて、五十人だけじゃないんですね。教授は五十人ですね。それから、研究者は何名ですか。それから、学生は何名ですか。

清水政府参考人 開学時の教授が五十名程度の規模と想定されてございます。それを支えます研究スタッフについては、現在の機構の人数を参考に試算いたしますと四百名程度、合わせて四百五十名程度の規模と想定されます。

 また、学生でございますが、教育課程にもよりますが、一教授当たり五人程度と仮定いたしますと、二百名から三百名程度と試算されます。

池坊委員 今皆様もお聞きになっておわかりのように、学生は二百名、だから授業料なんかではとてもやっていけない。これは自立してはやっていけない私立大学なんですよね。つまり、沖縄振興費に頼るしかない大学である。ならば、これからも大丈夫なのですか、財政的にというのが私の一番懸念する問題なんですね。恒久的に財政的な支援がなければ、言うまでもなく、研究をすることはできません。やった以上は、科学技術の発展に資するような大学にしなければならないわけです。

 国会に提出されている法案では、附則第五条において、施行日から起算して十年間は二分の一以上の補助があるが、十年を超えた後は法律上は二分の一以内の補助となるというふうに言われております。もちろん、十年後にはその時々の状況を見ながら判断することになるのだと思いますけれども、これはそういう恒久的な担保がないわけですね。

 ぜひとも、やった以上はこれを、何度も言うようですが、継続していかなければならないわけです。継続的な財政支援というのはどういうふうになっているんですか。どのように担保できるんでしょうか。

清水政府参考人 この大学院大学では、世界最高水準の教育研究を目指して、教育研究実績を積み重ねることによりまして、それに応じて競争的資金等、外部研究資金の獲得も図られ、財政基盤が強化されるものと期待してございます。また、こうした自主的な努力と相まって、国としても開学後の教育研究水準の向上に向けてしっかりと支援してまいる所存でございます。

 なお、開学十年後以降についての御指摘がございました。教育研究について国際的な評価の確立状況等を踏まえ、適切な時期に財政支援のあり方等を検証し、必要に応じて見直しを行うことと考えてございます。

池坊委員 ODAも削減されてきておりますね。沖縄振興費もこれからどういう変化を遂げていくかわからない。沖縄振興費だけに頼っていってこの大学は大丈夫なのだろうか。

 実はきょう財務省にも来てもらおうと思ったんですが、経済対策で忙しいということで、では財務省はどういう方針なのと言いましたら、内閣担当の主査は、その時々の内閣府の要求に応じて、その時々検討させていただきたいと言ったんですね。つまり、その時々検討するということは、大丈夫ですということではないんですよ。内閣府がこれだけ出してくださいといったら、その交渉の中で出されるかもしれないということでしか私はないのだと思います。

 例えば、教授一人につき二億円の給与それから研究費というのを払っていますね。これは一般的な日本の国立大学あるいは奈良先端科学技術大学院大学に比べたら非常に高いということもおわかりかなということを私は申し上げたいんですね。

 それぞれの大学の個別は詳しくはわかりませんけれども、例えば奈良先端大学院大学の実績ベースでは、教授クラスの人件費は年間一千万とか一千百万程度なんですね。助手クラスで年間百二十万程度となっております。これに一人当たりの研究費が年間一千五百万程度、これに学生一人当たりの教育費が年間五十万円程度、五人受け入れれば二百五十万、これぐらいの規模でみんな一生懸命いろいろな成果を上げながら研究しているんですよ。外国から来る教授だからといって大盤振る舞いし過ぎるのではないかと私は思うんですね。少なくとも、一人に二億、ぱっと渡すからこういう運営費も高くなるわけです。

 私はこれを思っておりますのは、外国人ばかり主として呼んでおりますね。何で日本の人たちを育てようとしないのか。国際的だということならば、日本のもっと優秀な教授者がいるんです、研究者がいるんです。そういう人たちをもっと、これだけの莫大なお金を使うなら、百億というのは大体中堅の大学だと思います。ですから、もっと研究者を育てることができるんですよ。

 それから、学生も外国人を半分以上入れる。その学生たちの奨学金あるいは滞在費、それらを考えたら莫大なものである。費用対効果があるのかと私は思うのと、ではなぜもっと沖縄の県民の優秀な人たちを研究者として雇い入れないのか、研究をしてもらわないのか。学生に奨学金を上げて研究させる、そういうことが私は必要だと思います。

 これからは、外国人だけでとか、外国人だけだから国際的にいいんだなんて思うのは大間違いで、まず日本の研究者を外国に出すこと、そして外国の人たちと一緒になって、外国人の優秀な方々に来ていただくのは刺激になってすごくいいことであると思いますよ。思いますが、日本人も一緒になってやらなければ沖縄県民や日本のためになると私は絶対に思いませんので、これは強く強く私は希望いたします。

 これらのことをお聞きになって、大臣、どういうふうに、これから大臣にもリードしていっていただきたい、深い関心を持ちながら文部科学省のリードが私は必要というふうに思っておりますが、いかがでございますか。

塩谷国務大臣 ある面では全く新しい試みの大学だと思っておりますし、沖縄という土地のいろいろな状況をかんがみて今回の設置に至ったと思っておりますので、沖縄の振興の点、それから科学技術の大学院として有効に、そして将来しっかりと発展できるような形をとるためにどうしたらいいかということは、今後その内容いかんにかかわってくると思います。そういう点で、文部科学省の経験、あるいは将来的ないろいろな研究開発等の内容をしっかりと定めながら、いかに国際的にまた国内的にもすばらしい大学院に育てていくかということは我々の責任だと思っておりますので、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

池坊委員 国際的に私も成長していってほしいと思います。

 くどいようですが、国際的であるということは、外国人の優秀な研究者を呼んで、そしてその場所で、研究所で研究したから国際的なのではありません。国際的というのは、やはり日本人がともに勉強し、共存共学、そしていろいろなものを生み出し、それが沖縄県民、日本、世界に発信できるものを生み出していかなければならないというふうに私は考えております。

 ですから、どうぞ開かれた研究所、大学院大学にしていただきたいということと、これは沖縄振興費なんです。国民が一人一人、沖縄の県民に思いをはせて出している税金によって成り立っているんですから、沖縄の方々に資するものでなければいけないということは、どうぞ心して方針の中に入れていただきたいと思います。

 地域社会との連携、これも絶対に忘れていただきたくないと強く希望いたしまして、私はこれからもずっと、この沖縄科学技術大学院大学がどのような推移を遂げていくかを見守っていきたいと思いますので、情報公開もしっかりされて、立派な研究成果を上げていただきたいと切に希望し、私の質問を終わります。

岩屋委員長 以上で池坊保子君の質疑は終了しました。

 次に、和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。

 きょうの質疑に入る前に、私自身非常にうれしゅうございましたので、塩谷大臣には一言お礼を申し上げたいと思います。

 先般、委員の皆様方にもお聞きいただいたことと存じますが、三月二十五日の一般質疑では、色素性乾皮症という、子供さんたちが数百人ほどかかっていらっしゃる病気のことについて御紹介して、対処を求めてまいりました。大臣、本当にありがとうございます。早速指導力を発揮していただきまして、当事者の方々の通う、入学される中学校におかれましては、そういった必要な措置を講じてくださったようでございます。

 その当事者が喜ばれるのは当然でございますが、私のもとには、全国で同じ病気に悩んでおられるお子さんたち、またその保護者の方々からお声が寄せられまして、やはり声を上げれば国が動いてくれる、国が動けば県や市が動いてくれるということの一つの例となったのではないか、私たちも声を上げていくべきだというふうなコメントをいただきました。

 そういったことで、大臣の指導力によりまして、国会全体で一つの評価を得たのかなというふうに考えております。こういった実例を、与野党問わず、ぜひ私たち全員の力で一つずつ発揮していければというふうに思った次第でございます。本当にありがとうございました。

 さて、きょうの質疑は、この四月から実行されております教員免許の更新制度について、その実行実態について大臣がどのようにお考えなのか、また、それらの中で改善すべき点がどのようなところにあると考えていらっしゃるのか、そういったところについて主に質問してまいりたいと思います。

 私自身はその当時議席を持ち合わせませんでしたけれども、教育基本法の改正の際、この教員免許更新制について導入が決定されておりますが、その際にも大議論があったとおりでございます。与党の先生、野党の先生問わず、この実行には非常に心配をなさっておられるがため、当時、衆議院でも参議院でも、法律の採決に当たりましては附帯決議が付されておりました。もう大臣もよく御存じのことと思います。

 歴史上まれに見るほどの項目数でございますが、そんな中でも、この更新制の実施に当たりましては、個々人の教員が実際にその負担をすることになることを前提とした法律でございましたので、その負担軽減を図るということを附帯決議でも盛り込まれているわけでございます。

 委員の皆様方にもう一度思い出していただくために、幾つかその当時の、私たちが決議しました内容を読み上げさせていただければと思います。

 衆議院では十一項目ございましたが、八項目めに「免許状更新講習の受講負担を軽減するため、講習受講の費用負担も含めて国による支援策を検討するとともに、へき地等に勤務する教員のための講習受講の機会の確保に努めること。」

 もう一つ、後に質疑させていただくこととの関連で申し上げたいのが、九項目めにございますが、それまでにいろいろ制度としてつくられております現職の教員に対する研修、現職研修と、この新しく導入する免許状の更新講習との整合性の確保、名前が挙げられておりますが、「特に十年経験者研修の在り方について検討すること。」

 さらに、十項目めでございますが、先ほど馳委員の方からもいろいろな御心配の向きの御質疑がございました。実際に教員の負担がふえていくということを前提にしておる制度でございますので、「教員給与の優遇措置の改善及びメリハリある教員給与体系の実現に努めるとともに、教員の多忙化の解消及び教育の充実のため、教職員定数の改善、事務の外部委託化並びに外部の専門家及び地域人材の活用に努めること。」このようなことが附帯決議で定められておるわけでございます。

 法律成立当時の大臣は伊吹文明大臣でいらっしゃったようでございますが、それから代々受け継がれておられる文部科学大臣におかれまして、いよいよことしの四月からこの制度が実施されるわけでございます。どのようなお考えのもとに今年度に予算措置をされ、またその実施に入られたのかということについて、まず大臣の方から、大きな大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

塩谷国務大臣 いよいよことしから教員の免許更新制がスタートするわけでございまして、今和田委員お話ございましたように、これの決定に至るまでの経緯の中でいろいろな議論がなされ、附帯決議も数多くの項目で付されたわけでございます。

 そういった点を踏まえて、私どもとしては、この制度をしっかりと推進するために万全の体制を整えてきたわけでございますが、できるだけ教員の皆様方には、受講しやすい形、あるいは負担も少なくするような形で考えてきて、昨年も試行的に実施した。そういった点も踏まえ、また内容的にも更新制講習に資する内容であることが必要でありますので、あらゆる面で準備を進めてきたところでございます。

 これをいかに速やかに実行に移すかということで、ことしはある程度、そういう意味では緊張感を持って新年度を迎えたつもりでございます。もちろん、実行に当たってはいろいろな課題が出てくると思いますので、そういう点もしっかりと我々受けとめて、この免許制のしっかりとした遂行に努めてまいりたいと考えております。

和田委員 大臣に今大体のお考えの御答弁をいただきましたが、私が少し期待しておりました内容が含まれておりませんでしたので、もう一度その部分をお聞きしたいと思います。

 なぜならば、先ほど強調したつもりなのでございますが、この制度は教員の個々の負担を生じせしめる制度だけに、それらについては十分な配慮が必要であることを衆参、本院におきましても決議したわけでございます。その面で、先ほど予算の御説明もおありかなと思ったんですが、その部分がございませんでしたので、改めてお伺いいたします。

 与党の先生方も、この政府提出の予算案を担がれて、成立させられた責任もございますので、ぜひお聞きいただければと思います。

 この教員の免許更新制の円滑な実施について、この四月に始まりました年度の予算、これにつきましては、概算要求上はこの項目に四十六億八千三百万円が計上されております。そして、数カ月後に政府原案が決定した際には、この項目が十億二千二百万になっております。

 実は、先ほど質疑の直前に事務方の方から、この額の推移についてどのような概念の変化があったのか、おおよその御説明はいただきました。私の理解するところが違っていれば大臣に正していただければと思いますが、ぜひ委員の皆様方にも、これで本当によいかどうか、聞いていただければと思います。

 まず、概算要求として四十七億ほどの要求が出ていた段階では、教員が免許の更新に必要な講習を受ける際に、実施されるところが各地にある大学、そういったところになっていたようでございます。そしてもう一つは、そうはいえ、山間僻地からそういったところまで全部行っていただくのは大変だということで、そういった行かれることが非常に困難な地域におきましては、逆に、出張して講習を実施するということになっていた中での概算要求だったようでございます。

 しかし、今申し上げたのは大きく二つ種類がございますけれども、その二つの種類の中で、前者に申し上げたような大学などで実施する講習に各教員が行って講習を受ける部分については、あくまで個人資格であるから個人の負担に帰すべきであるという財政当局との折衝の中で、その部分が抜け落ちていった後、今回の予算措置として、確かに予算の説明にもございますが、文言が変わっておりまして、「山間へき地、少数教科・科目の更新講習の開設の支援」等々に十億ほど措置するということが書かれておるわけでございます。

 私、この説明を聞きまして、確かに個人資格、教員を仕事とするために資格が必要だということに対して、個人の負担が発生することそのものを否定するわけではございませんが、ただ、今申し上げたような経緯を皆様方にお考えいただければと思うんですが、まず、免許というものは、その業を営むために必要な素養を身につけている者にはその許可を与えるという意味で免許という言葉が使われています。その資質をはかるための費用であれば、それは個々人が志願してくるときにその費用を負担すべきであろうとは思いますが、この免許更新制度のもう一つの本質論として、文部科学省は説明を時宜に応じて変えてこられたようでございますが、不適格な教員を排除するためのものではなく、各教員の時代に合った知識、技能を身につけさせるための講習を含むのであるという説明の中で今に至っていらっしゃるわけでございます。

 つまり、まず大臣にお伺いしたいのは大きな概念論でございます。教員として免許を与えるのに必要なものについては私も個人負担に帰すべきだというふうに思いますが、現に教員となっている者が実際に時代の要請に応じた素質を身につけているかどうかを判断し、身につけていなければ身につけさせなければいけないわけでございますが、その講習を行うことについて、本当にこれがすべて個人負担に帰すべきなのかどうか、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

塩谷国務大臣 この問題は、今、予算の経緯あるいはこの制度設立の経緯なんかでいろいろ議論をされて、なかなか難しい議論だったわけでございますが、基本的に、予算の概算要求から実際の決定に至るまでに果たしてそうなのかというふうに問われますと、私どももなかなかそうだということが言えない部分もあることも事実でございます。

 したがって、最初の概算要求では四十七億というものを出したわけでございまして、そういう中で、やはり個人の資格を取るための講習の受講料等は個人が負担する、そういった結論を最終的に出したわけで、これは、そういう形でこの制度をしっかりと円滑に進めるということで私どもは判断したわけでございます。

 もちろん、今後こういったことが、当然いろいろな経費、ほかの経費等もかかる中で、どう判断していくかというのはまた検討しなければならない場合もあるかもしれませんが、私どもとしては、いろいろな議論の中で、受講に関する費用は個人の負担で、今回は制度的にそういう形にしたということでございますので、そもそも論としてどうあるべきかというのはなかなか難しい判断になると思いますが、私どもとしては、そういう議論を経て今回判断したわけでございますので、その点はぜひ御理解いただきたいと思っております。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

和田委員 私、実はきょうは、今の大臣の御答弁によって質問の方向性が大分異なるなと思ってまいりましたが、今の大臣の御答弁をお聞きして、それに整合的に制度をつくるということを考えた場合、大きく言えば個人負担に帰す結論を出したんだという御答弁でございますが、そうであれば、この山間僻地の方々に措置された十億は本当に正しいのかということでございます。

 私は、大学で実施される講習並びに更新のための試験、そうしたものに対する費用が個人負担に帰すという結論を大臣がお導きになるのであれば、山間僻地にいらっしゃる教員の方々につきましても、その費用負担が個人に帰するという原則は崩していただきたくなく、その山間僻地に出張講習するための費用を個人で割っていただいて御負担いただくのが筋ではないかと思うわけでございます。

 今のこの予算執行のままで推移した場合に、私が申し上げたいのは、教員の住んでいる場所、勤務している場所によって不公平が起きるのではないかということなんでございますが、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 いろいろな状況が考えられると思いますが、いわゆる山間僻地、離島等、大学等で開設する場合に、これはできるだけ公平性を期すべく受講の体制を整えるという観点から、そういうところに開設する費用を負担しようということでございまして、それを受講する人たちの個人で割ってということは、ある面では一つの考え方であると思いますが、個人的に負担していただく、基本的にはそうでありますが、そういう中で、やはりできるだけ公平性をしっかりと保っていこうという観点からこういうふうな措置をしたつもりでございますので、これもやはりそういう考えに沿って今回は判断したということになると思います。

和田委員 今の大臣の御答弁、私、すべて納得できるものではございませんでした。

 これから数分間は私自身の頭の中の整理を申し上げてみたいと思いますが、先ほど申し上げたように、教員としてこれから先もしっかりとやれるだけの素質、素養を備えているかどうかという意味での免許制、またそれを十年ごとに更新する、そのために必要な費用については教員を志願する者が負担するのは、例えば自動車の運転免許でもそうでございますので、そこは私は整合性がとれるのではないかと思うんですが、今、本質的な部分として、それよりも莫大、大きな金額の予算がかかる、費用がかかる、その三十時間の講習を受けさせる部分でございます。

 この部分については、会社に例えるならば、教員というのは一つの資格を持って入ってくるわけでございますが、一つの学校の教職員に採用された以上は社員でございます。その社員の質を向上せしめる、一定レベルを維持させるために必要な費用は、普通は会社の費用として会社が負担するものではないでしょうか。そして、その資格が本当に備わっているかどうか、それは国家資格でございますので、国の試験を受けてこいということで、その受ける費用としましては、そこは個人負担に帰してもいいのではないかというふうに思います。

 そのときに、今のこの予算措置では、本土という言い方は余りよくないのでございますが、つまり、実施場所に比較的すぐに行ける方々については個人で交通費も負担し行っていただくということを担保しながら、逆に、離れた場所、離島、山間僻地、そういったところにいらっしゃる教員については、その交通費がかからないような形で、実際に講習をする人間がそこに行ってやるということでございます。

 現場の声をお聞きしますと、三十時間の講習を受けることが本当にそれほどの御負担がかからないものであれば、私もそれほど目くじらを立てる必要はないのではないかと思いもしますけれども、実際に現場の声を聞いてみますと、その三十時間の講習の実施体制がまだまだ十分ではなくて、休みの間に集中して受けなければいけない、何泊かしなければならない、そうすると宿泊費もかかる、ちょっと離れたところだと、さらに前泊もしなければいけない、こうしたことをすべて個人負担に帰していくという制度をつくられているわけでございます。

 私はやはり、今申し上げたように、本当に教員の免許を与えるかどうか、更新し続けさせるかどうか、その判断をするのに必要な費用は、確かに個人の資格でございますので、その費用として出させてもよいのかもわかりませんが、そのために必要な素養を身につけているかどうか、国として、それぞれの県や市の教育委員会として判断するために講習を受けさせる、そして身につけさせる、そうした費用は、雇用主である方が負担される方が普通ではないかというふうに思うわけでございます。

 こうしたことについて、現場の声があることはまず大臣として受けとめていただき、本当に教員がやる気を持って、十年ごとに、自分が本当に素質を身につけているかどうか自己診断しながら進めていけるような制度をつくっていただければというふうに思うわけでございます。

 時間も限られておりますので、もう一つの、研修制度の整合性をとるということを附帯決議で決めているわけでございますが、大臣の現在までのお考えをお聞かせいただければと思います。

 先ほど附帯決議のところで御紹介申し上げたとおりでございます。委員の皆様方も本当によく御存じのところでございますが、歴史的な経緯として、数年前に中教審の方が教員免許更新制の導入をいろいろと議論された際に、なかなか、先ほど議論しましたような費用の問題等多々あり、そういったことを導入することをある程度断念された上で、十年者研修の導入を提唱され、それを実行に移されたのが数年前でございます。それから数年を経た後に、今度はいよいよ免許更新制を導入するんだというふうに文部科学省がお決めになられて、それを導入されたわけでございます。

 普通に考えれば、十年者研修がそのような経緯でつくられた制度であれば、本来、免許の更新制を導入される際に包含されるか、もしくは、全く新しい制度ができるんだから廃止されるかということが考えられてしかるべきであったのではないかというふうに思っております。

 ただ、切迫したタイミングの中でお考えになったんでしょうから附帯決議がついたわけでございまして、その後、大臣はどのように考え、どのように行動をとってこられたのでしょうか、お聞かせください。

塩谷国務大臣 この免許更新制の講習が始まるに当たって、十年経験者研修との整合性ということで、これにつきましては、通知によりまして、現職研修の精選を求めるとともに、実際に十年経験者研修の校外研修のうち、免許状更新講習の三十時間に相当する約五日間程度の十年研修を短縮する考えを明示したところでございまして、本通知により、大体七七%の都道府県の教育委員会等が、校外研修の約四・五日程度の軽減を決定もしくは予定をしているところでございます。

 この十年経験者研修の内容の見直しや、また、これ以外の研修の一部廃止等も含めて、今後、現職研修の精選も合わせて行われているところでございまして、こういう点で整合性を確保してまいりたいと考えておるところでございます。

和田委員 恐らく大臣もいろいろと悩まれておられる最中であろうと推察いたしますが、少なくとも、現時点での制度を見渡す限り、先ほど五日間ほど短縮されるというお話をされましたが、短縮されるということで対処されるのであれば、あとの残った期間は必ず研修として別途必要なものであるという概念を御説明なさったのと同義になります。

 そういった意味で、教員になって十年目の者がその部分で受けなければいけない研修、講習、その内容、そういったものは免許更新制の際に必要とされていない素養で、さらにプラスアルファで研修で身につけさせるということをお考えになってのこの制度の実施なんでしょうか。

塩谷国務大臣 免許更新制につきましては、研修とは別に、やはり新しい時代に合った教員としての資質をその時期に合わせてやるということで、通常の研修とは基本的な考え方を別に考えてきたわけでございます。

 したがって、更新制につきましては、当然十年ごとに講習を受けていただくわけですが、特に十年研修と重なる部分については十年研修の軽減をするということで整合性を保っているわけでございまして、今後精選をしていくことも当然考えていかなければならないわけですが、むしろ、免許更新制という位置づけを明確にする中で十年研修等の内容を検討していく必要があるということで、その重なった部分の五日間をまずは軽減したということでございまして、当然、今後も精選を進めていくつもりでございます。

 一番大事なことは、更新制という制度を定着させることが今後の教員の資質向上には必要だろうという考え方で今進めているところでございます。

和田委員 十年者研修をそのように御説明なさるということで、またさらに全体の整合性が非常に説明しづらくなっているように私は受けとめました。

 先ほど来申し上げていることでございますが、十年者研修で五日間短縮したとはいえ、残りの日数を割いて研修なさるその部分は、教員として国がお考えになっている素養を身につけさせるために必要だと判断されたわけですから研修が残るわけでございます。その研修の費用は国の費用で賄うわけでございます。

 それと、国の教員免許更新制度の中に組み込まれている三十時間の講習部分というのは、大臣の今までの御説明で私が整合的に説明しようとする限りは、この三十時間の講習部分は、個人として、個人の責任で本来身につけておくべきものがついていないということも想定されるからみんな受けさせるんだということで、そこは個人の費用負担だというふうにしか説明しようがないというふうに思うわけでございます。

 本来、教員として資質の向上を目指しながら、これだけのものを国として受けさせるべきだと御判断になるのであれば、この講習部分は、先ほど申し上げましたが、国の費用で賄うべきではないかというふうに思っております。

 もう時間がございませんので、きょうの質疑の総括として申し上げた上で、大臣に一言コメントをいただければと思います。

 免許という言葉、教員をやる資格ということでございますが、その免許が、もともとの世論が、不適格な教員も中にはいるではないか、そういった者をしっかりとしてもらわなきゃ困るというところから始まって、当初は不適格な教員の排除ということも目的に入れながら検討が進められ、しかし、そこは指導改善研修でしたか、そういったもので措置するということにしたんだから、改めて、教員として資格を備えているかどうかということをはかるための更新制度、それに講習制度をくっつけられたということでございましたね。

 本当に免許ということがしっかりと資質を備えた者として担保されるという言葉として受け取る限りは、そこの部分は、個人の資質として個人が申請し、個人の費用負担で認めてもらうということが筋でございましょうが、そのほかの部分についてまで全部個人負担に帰すべきという、恐らく財政当局からそういうふうに指導があったんだと思いますが、そこはぜひ文部科学大臣として闘っていただきたいというふうに思うわけでございます。

 免許更新制を、必要な素養をはかる部分と、必要な素養を身につけさせるべく雇用主としての国や県や市が公的機関としてなすべき作業という部分を、きちっと概念を切り分けていただいて、今後予算措置をしていただければというふうに思うのでございますが、いかがでしょうか。

岩屋委員長 塩谷文部科学大臣、時間が参っておりますので簡潔に願います。

塩谷国務大臣 免許更新制につきましては基本的に十年ごとということで、十年研修は十年研修一回で終わるわけでございまして、これは十年ごとにしっかりとやるべきだという考えのもとでスタートしたわけでございます。したがって、最初の十年と免許更新の十年と重なるわけで、そこら辺の部分を今精選していかなければならないということで、基本的にこの更新制を十年ごとやるということがしっかり定着する中で、今予算措置の問題ももう一度整理していかなければならない部分もあると思いますので、きょう御指摘の点を踏まえて、また今後に生かしていきたいと考えております。

和田委員 ありがとうございました。

 ぜひ、積極的に教員がやる気になるような更新制度を目指していただければと思います。

 終わります。

岩屋委員長 以上で和田君の質疑は終了いたしました。

 次に、高井美穂君。

高井委員 民主党の高井美穂です。

 きょうは、どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、きょうは、いわゆる教科書バリアフリー法案、障害のある児童及び生徒のための教科用図書の普及の促進等に関する法律案というのが去年成立しまして、それに関することを中心にお伺いをしたいと思っています。

 実は、私の娘もあしたが入学式です。小学校一年生になることになりました。(発言する者あり)ありがとうございます。

 さっき申し上げたいわゆるバリアフリー法案が成立してから十カ月がたちまして、きょう八日から多くの学校で新学期が始まって、弱視の生徒の皆さん、目の見えない児童をお持ちの皆さんも、新しい拡大教科書で勉強ができるというふうに期待に胸を弾ませておられる方も多いと思います。

 義務教育段階については、この法案が通ってから、おおむね当初期待していたとおり、かなり普及が進んでまいりまして、本当に関係各位の皆さんにまず感謝を申し上げたいと思っております。

 しかし、問題は高等学校の方であります。この点を中心に質問させていただきたいと思います。

 理事の皆さんの了解を得まして、実は、特別支援学校で実際に教えていらっしゃる先生方の御協力を得て、こうしたものをお借りしてきました。これは、また質疑の途中で皆さんにも見ていただきたいし、大臣にも一回試していただきたいと思うんですが、これをかけて、弱視の生徒さんがどのように苦労して教科書を読まれているかということをぜひ皆さんにも体験してほしいということでお借りをしてきました。

 こうかけると、左側の目の方が弱視の皆さんが見えている状態で、こうしたルーペを使って教科書を実際に読んでおられるわけです。私も試してみましたが、やはりかなり見づらいですし、本当に肩が凝ります。こうやって苦労して勉強されているんだなと本当にしみじみと感じましたので、ぜひ皆さんで回していただいて、体験をしていただければと思います。

 それで、特に、視覚障害を持つ児童の皆さんの中で、点字を必要とする方と拡大教科書を必要とする方とおられると思います。まず、分けてお聞きをしたいと思います。

 まず、点字教科書についてであります。点字教科書を必要としている児童生徒の実数を文部科学省として調査して、適切に対応していただく必要があるんではないかと思うんですが、この点、まず政府参考人の方からで結構でございますが、実数把握の状況を教えていただきたいと思います。

金森政府参考人 小中学校の通常の学級に在籍する児童生徒につきましては予算措置で、また、特別支援学校の小中学部や小中学校の特別支援学級に在籍する児童生徒につきましては教科書無償給与制度により、それぞれ点字教科書を給与してございます。

 これに基づきまして、義務教育段階におきましては、点字教科書を必要とする児童生徒の概数については把握をし、適切な対応を図っているところでございます。

高井委員 今、高等学校の方のお話はございませんでしたけれども、義務教育についてはそういう適切な把握をされているということでございますが、ぜひ高等学校の方も把握に努めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

金森政府参考人 高等学校段階につきましては、先般、拡大教科書普及推進会議から第二次報告が提出されました。その中でも、高等学校等に在籍する弱視生徒の実態調査を実施する際、あわせて点字教科書を必要とする生徒についての実態把握を行うことを検討したいと考えているところでございます。

高井委員 大臣、今御答弁が検討したいということでございましたけれども、ぜひこれは積極的に進めていただきたいと思います。

 本来ならば、この法案には平成二十一年度から使用される検定教科用図書等から適用されるようにということで、今年度から本当は実施をされないといけなかったはずなんです。できれば高等学校においてもそうしていただきたかった、でも現実的にそうではないので、いろいろとその点について細かく質問を申し上げていきたいと思います。

 拡大教科書の方は、拡大教科書普及推進会議というのが設置をされて、国としての取り組み方針を関係者を交えながら議論していっております。点字の方も、つくり方が違いますので別途早急に検討してほしいので、点字教科書普及推進会議という形を並行して設置されればいいのではないかと思いますし、こうした要望も関係団体から出されているんですが、この点、いかがでございますでしょうか。

塩谷国務大臣 拡大教科書と同様に点字教科書も重要な課題と考えておりまして、拡大教科書普及推進会議での報告を踏まえて、教科書デジタルデータの提供を開始したり、また、点字教科書製作者等にも対象として提供しているところでございますが、今お話ございましたように、点字教科書普及に関する意見交換会を本年一月十九日に開催しまして、拡大教科書と同様に今後しっかりと推進してまいりたいと考えておるところでございます。

 特に、点字教科書作成のために提供される教科書デジタルデータのあり方、あるいは視覚に障害のある児童生徒の学習に対する配慮がなされた点字教科書の作成方法等、積極的に議論をいただいているところでございますので、その結果を踏まえて、今後、普及方策を講じてまいりたいと考えております。

高井委員 点字教科書の方は意見交換会が一回だけということだったので、点字を必要とされる方が拡大教科書を必要とされる方に比べておくれているんじゃないかということを御心配されておりますので、さっき御答弁あったとおり、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 そして、全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会という特定非営利法人がございます。二〇〇五年に設立されております。ここから聞いたお話なんですけれども、一九八〇年代から、通常の地域の高等学校に進学をする点字を使用している生徒さんがおりまして、東京都や大阪府などでは、点字の教科書や副教材を製作する費用が保障されているようであります。だが一方、点字教科書を全く保障していない都道府県も高等学校で見られていまして、大きな格差が出ている。特別支援学校、いわゆる盲学校というところの高等部においては就学奨励費により点字教科書が保障されているということを考えれば、少し平等性に欠けるのではないかということを心配いたします。

 点字教科書に関しても、高等学校段階における課題解決を図ることを急いでやっていただきたいと思いますし、文部科学省が全都道府県に対して教科書保障措置を講じるように指導する必要もあるのではないかと思います。国費による保障を創設するなど、こうした不合理な地域格差をできるだけ解消していく努力をしてほしいという要望が出ておりますが、この点はいかがお考えになりますでしょうか。事実関係は参考人でも結構でございますが、ぜひ大臣からも御意思をお聞かせいただきたいと思います。

金森政府参考人 事実関係についてのお尋ねでございますが、一部の自治体におきましては、御指摘ございましたように、それぞれの実情やニーズなどを踏まえ、高等学校に進学する全盲の生徒に対して教科書や副教材を点訳するための経費を負担している事例もあるものと承知いたしております。

塩谷国務大臣 各自治体でそういった措置をしているということで格差が生じていることは問題だという御指摘だと思います。

 高校について、義務教育と違って各自治体の判断にゆだねているという点で、すぐに国費で保障する制度等を創設することはなかなか難しいかと思いますが、各自治体にできるだけそういう措置をするように今後何らかの方策で指導してまいりたいと考えております。今の御指摘の点は今後しっかり検討してまいりたいと思っております。

高井委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いをいたします。

 次に、今度は拡大教科書の方の実施状況について御質問させていただきたいと思います。

 教科書バリアフリー法の第九条には、小中のみならず高等学校においても「視覚障害その他の障害のある児童及び生徒が、その障害の状態に応じ、採択された検定教科用図書等に代えて、当該検定教科用図書等に係る教科用特定図書等を使用することができるよう、必要な配慮をしなければならない。」というふうに入ってございます。附則にも、先ほど申し上げた平成二十一年度において使用される教科書から適用するというふうになっています。

 言うまでもなく、義務教育では先ほど申し上げたように実施されておりますが、高校一年という新しいスタートを切るに当たって、受験などを考えても待ったなしの状況で、この子たちにもぜひ、本当は高等学校にもこうした拡大教科書が今年度から手に渡るようにしていただきたかったというふうに思います。

 実は、現場の方からも新学期に間に合わないのではないかと心配する声が以前から上がっておりまして、私もいろいろ聞いておりました。二月、三月等も、早くしないと間に合わない、ぎりぎり、いつになったらできるんだろうかということを心配し続けておりましたけれども、結局、今度の拡大教科書は出版ベースでは今年度には一種類も弱視の生徒の手に渡っていないという状況が、現在、四月八日の現状でございます。

 ボランティア団体を中心に義務教育段階の拡大教科書の作成に頑張っていただいて、そちらの方に今手がかかって、その業務に追われて、高校段階の方の教科書作成には少し手が回っていないというのが現状だというふうに思います。

 私が先般聞きました質問主意書に対して、政府の御答弁が、「視覚障害のある児童生徒のための教科用特定図書等の普及促進は、教育の機会均等の観点から重要であり、必要とする児童生徒に教科用特定図書等が速やかに、かつ、確実に給与されるよう措置することは、喫緊の課題と考えており、今後とも、教科用特定図書等の普及に向けて必要な措置を講じてまいりたい。」という御回答を得ました。

 そこで、改めてまた伺いますが、高校の拡大教科書はなぜ新学期から給付されるようにならなかったのでしょうか。この給付の状況と、もしくは給付が欠ける理由を教えていただきたいと思います。

塩谷国務大臣 御指摘のとおり、拡大教科書については、小中のみならず高校段階においても早期に提供できるように精力的に取り組んでまいった次第でございますが、高等学校段階については、現状では拡大教科書使用実績が極めて少ないということで、効果的な拡大教科書のあり方について十分な実証データが得られていない点がありまして、このために、推進会議の提言も踏まえて、高等学校の必修教科等、需要の高いものを中心に拡大教科書を試行的に作成しまして、適切な標準規格を早期に定めるために、実証データ的な収集をすることとしております。

 したがって、ことし、今年度については、今まで使用実績がない中で標準をどうするかということで、多分二種類ぐらいの試行の教科書を各現場に配付して、そして実際にどちらが標準にふさわしいかという検証をした上で本格的な拡大教科書の作成をしていかなければならない段階でございまして、まことに残念ながら、それが間に合わなかったということでございます。

 また一方で、高等学校段階では、いろいろないわゆるニーズが、義務教育とは違って、科目もそうですし、学校現場におけるいわゆる授業内容ですか、そういったことも多様化されておりますので、そういうことにも対応するために多少時間がかかっているということで、大変おくれた面は申しわけないと思っておりますが、今そういう状況の中で鋭意努力をしているところでございまして、速やかに標準等を決定し、そして拡大教科書の発行に努めてまいりたいと考えております。

高井委員 教科書バリアフリー法第六条第一項に基づく、教科書出版社等が拡大教科書を作成する際の標準的な規格が文部科学省より昨年末に公表されました。これが、さっき大臣もおっしゃった検討の中の有識者による拡大教科書普及推進会議で出された結果を踏まえて、こうした標準規格を出されたわけでございますし、まず義務教育段階についてすべての教科書を対象としてこういう標準規格が出されたことで普及が進んだことは間違いございません。

 そして、なぜそれが、義務教育だけじゃなく、高校段階の標準規格が先送りされたのかということが疑問でございます。さっき大臣がおっしゃったように、いろいろと教科がレベルが上がって難しくなっているし、その他さまざまな実証データが少なくてまだ検討中だということもおっしゃっておられましたが、高校段階の基準、この標準規格をするということに関して、三月三十日に出された拡大教科書普及推進会議の中でも、実証的な研究に早期に取り組むべきと考えると出されていますし、さっき大臣がおっしゃったとおり、需要の高いものから中心に、試行的に発行、供給し、実証データの収集を行って、早期に高等学校段階の標準規格を作成する必要があるというふうにまさに出されておられるし、大臣もそのように御認識をされていると思います。

 この高校の教育方法、教材のあり方を検討するワーキング会議というのも昨年五月から八回も開かれておきながら、結局その八回、この結論は、こうした早期に検討、早期に検討ということだったのですが、ここに書かれているとおり、本当に、さっき大臣おっしゃったように、二種類でもいいですから、まず高校生に渡して試して見てもらう、そうでなければ前に進まないと思いますので、それぐらいでしたら早急にできるのではないかというふうに思うんですが、ぜひお願いを申し上げたいと思います。

 出版社やボランティアがどんなに頑張っても一週間では作成することは不可能ですので、できるだけ早く、会議ばかり八回も開いても、前に進んでいなければ、会議を開いても結果として果実が得られないということでは、期待していた関係者の皆さんも残念でありますし、会議を開く意味を考えると、費用もかかるわけですから、ぜひ前向きに進めていただきたいと思います。

 もう一度聞きますが、ここまで八回も開いておきながら、試行的に高校生にお渡しすることがなぜこんなにおくれたんでしょうか。

金森政府参考人 拡大教科書普及推進会議におきましては、平成二十年四月から、拡大教科書標準規格、それから教科書デジタルデータ提供促進、また高校における弱視生徒への教育方法・教材のあり方の三つのワーキンググループを設置し、議論が進められました。平成二十年十二月に小中学校段階を対象とした第一次報告がまとめられ、高等学校段階につきましては、この第一次報告も踏まえて議論が進められ、ことし三月三十日に第二次報告を取りまとめたところでございます。

 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、高等学校段階におきましては、教科書発行者から拡大教科書は発行されておらず、また、その利用実績も小中学校に比べて少ない上、生徒のニーズや教科、科目も小中学校段階に比べてより一層多様化いたしますことから、どのような拡大教科書が効果的かについての実証データがないのが現状でございます。

 こうした状況を踏まえながら、この推進会議におきまして精力的に検討、討議が進められた結果、第二次報告において、小中学校の標準規格に準じた拡大教科書を試行的に発行、供給し、望ましい体裁、態様等の実証データの収集等を行った上で、高等学校段階の標準規格を文部科学省において策定すべき旨が提言されたところでございます。

高井委員 利用実績も少ないというかないですし、教科書出版社から発行されていないということですが、逆に言うと、高校段階の標準規格を先送りしたということは、逆にまた出版社に拡大教科書発行の努力義務が課せられないということになって、それはどっちが先かわからないわけですね。だって、標準規格をつくらなければ発行させることができないですし、標準規格がまだ決まっていないから、実証データが少ないから決まらないということであれば、行ったり来たりの繰り返しです。

 本当に早く、少なくとも試行的に、さっき大臣がおっしゃった二種類でもいいです、とりあえずそれを決めてみて、またうまくいかなければ来年やり直す。やはり実際にやってみていただきたい、実際に教科書を手に渡してあげていただきたい、一刻も早く渡してあげていただきたいというふうに思いますので、ぜひ今後ともの御尽力をいただきたいと思っています。

 予算的な裏づけについても一つ確認をしたいと思うんですが、特別支援学校の場合は就学奨励費により教科書も無償提供されております。私が先ほど申し上げた質問主意書に対する答弁書によると、二十一年度の就学奨励費の総予算額が七十一億七百万ということでしたが、これは二十年度と比べ幾ら増額されたんでしょうか。つまり、せっかく教科書バリアフリー法ができて教科書が給与されることになったにもかかわらず、こうした予算をきちんと計上されていたのかどうか、ちょっと心配ですので教えていただきたいと思います。

金森政府参考人 平成二十一年度における特別支援教育就学奨励費の予算総額は七十一億七百万円でございまして、二十年度に比べて二億五千七百万円の増額となっております。

 この特別支援教育就学奨励費の補助対象には教科用図書購入費がございまして、その中には拡大教科書の購入費も含まれているところでございます。この拡大教科書の購入費に係る予算額を区分計上はいたしておりませんが、先ほど申しましたように、この教科用図書購入費の中に拡大教科書の購入費が含まれているということでございます。

高井委員 特別支援学校高等部において使用される教科用拡大図書給与に係る予算は区分して計上していないということでしたけれども、結果として高等学校の方は拡大教科書が行き渡っていませんので、結局申請されていないということになります。

 規格ができていないから出せなかったという、本当にどっちが先かわかりませんけれども、予算の枠は少しふえていらっしゃるので、実際にそういう要望があればきちんと本当は対応できたということで多分理解をしていいんだろうと思いますので、これからも現場で使用できるように御尽力をいただきたい。そして、要求があれば即対応できるような予算の方も検討をお願いしたいというふうに思います。

 特別支援学校でさえ拡大教科書が十分行き渡っていないという現状は、やはり憲法や教育基本法、先般できた教科書バリアフリー法自体にも抵触しかねないと私は思います。特に弱視生徒の皆さんの期待を裏切ってはならないと思います。関係団体の皆さんもこの法律ができたことを大変喜んでおられて、期待をしておられる。

 そして、私自身も、どう考えても、日本の印刷技術は世界でもトップレベルだと思いますし、書店に行くといろいろな週刊誌や月刊誌はどんどん速いペースで並んでおりますのに、なぜ子供にとって最も必要な教科書というものが、高等学校レベルでもすぐこういうふうに提供できないのか、不思議でなりません。印刷に時間がかかるわけでもないだろうと思いますし。

 特別支援学校、いわゆる盲学校の先生方には、どのようなレイアウトをすれば子供たちに見やすいか、いろいろな知識も経験もございます。専門的な知識があります。それを一冊でもまず印刷、製本して取り組んでいく。オンデマンド印刷という技術もございますし、日本にはいろいろな技術があると私は思いますので、こうした方々が連帯すれば拡大教科書を安定的に供給することができる日も近いと思いますので、ぜひ大臣、よろしくお願いしたいと思います。

 最後に一言、積極的な御答弁をお願いします。

塩谷国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたが、高校の拡大教科書については、いろいろな状況によって今準備を進めているところでございますが、とにかく早く、まずは試行的な教科書で、皆さん方にそれを使っていただいて、しっかりとした標準規格を設けて、それに伴ってその普及、作成にしっかり努めてまいりたいと思っております。

高井委員 ありがとうございます。大臣の指導力に御期待を申し上げたいと思います。

 あと学校耐震化の問題について、とりわけ国産材の使用について、私は最後に一点だけ御確認というかお願いを申し上げたいと思います。

 先日、地元の徳島県の東みよし町というところに、いやしの里「増川笑楽耕」、実はこれは休校になった小学校を改装して、グリーンツーリズムの施設として新たに再オープンしました。この事業は、文科省はもちろんのこと、総務省、農水省との連携プロジェクトで、子ども農山漁村交流プロジェクトの一環として、増川小学校が笑って楽しく耕す増川笑楽耕として新しく生まれ変わったわけであります。徳島産材を使った、木を使ったバンガローなどの施設をつくっておりまして、田植えとかの農業体験から、そばづくり、加工作業まで親子で体験できる、自然に恵まれたすばらしい施設というふうになっているんです。

 それはさておきまして、現状、やはり国産材の十分な利用が学校関係の施設においても必ずしもされていないのではないかというふうに思います。

 文科省から先般いただいた木造施設整備状況という資料によりますと、平成十四年度に七・二%だった木造施設比率が、平成十八年度、ちょっと古いデータですけれども、六・六%と減少傾向にあるというふうに聞いています。学校耐震化に向けて、皆さんの努力により、また我々議会の方の決意もあり、大きな予算を割いていただくことになり、鋭意進められているというふうに思いますけれども、建てかえや補強も含めて、国産材を活用できる方策の検討を、もうちょっといろいろなところと協力をしながらぜひ進めていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 木材、木は本当にあったかいというか気持ちが伝わるということで、できれば多くの学校で使っていただきたいというのは、私も同じ気持ちでございます。

 残念ながら減少傾向にあるという結果が出ておりますが、やはりすぐれた性質がありますし、また豊かな教育環境をつくるという意味で今後も期待をしているところであります。特に、武道場、これから学校施設の整備においてこの円滑な推進をしてまいりたいと思っておりますので、そういったところの使用とか、また、技術的な面でよりよい木造建築を進めていくことも必要ですし、学校施設について木造あるいは木質化に対する国庫補助等も加えて、学校施設への木材活用のための手引として「早わかり木の学校」を全地方公共団体に配付してその推進を求めているところでございまして、今後も木材使用に積極的に努めてまいりたいと考えております。

高井委員 ありがとうございました。

 最後に、ちょっと一つだけ政府参考人の方に確認をしたいんですが、建築基準法改正、改悪と言ってもいいかもしれませんけれども、耐震診断に対応できる技術者が不足して診断が滞っているということがあるというふうにちょっと聞いたんですけれども、学校耐震化に向けて、それが理由で耐震診断がおくれているということはありませんね。耐震検査が細かくなったり時間がかかるということによって、耐震判断、それを見る技術者が、対応できる技術者が少なくておくれているといったことはございませんかどうか、確認だけお願いします。

岩屋委員長 布村文教施設企画部長、時間が来ておりますので簡潔に願います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 昨年来、学校施設の耐震化を進めさせていただいておりますが、一部の市町村で、耐震診断につきまして入札が不調であったり、耐震の構造設計等ができる技術者が不足であるという実態が出ておるのは事実でございますので、現在、国土交通省などとも連携をして、建築士あるいは技術者の方々の確保について、地域を超えた方々を活用できる、そういう仕組みを工夫するなり発注の仕方を工夫するなりで、そういった面での支障が出ないように取り組んでいるところでございます。

高井委員 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で高井君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 今年度は、国立大学が法人化されて六年目に当たります。今、各大学は、二期目に当たる中期目標、中期計画を作成中でございます。その意味で、ことしは国立大学法人の節目の年と言っていいと思うんです。そこで私どもは、この法人化が国立大学に何をもたらしたのか、ことしになって幾つかの大学を訪問しておりまして、学長らとの懇談も進めてきたところでございます。きょうは、それらを踏まえて私は質問したいと思っております。

 まず運営費交付金ですけれども、これは効率化係数一%削減というものが課せられました。毎年減額されてきましたが、法人化以降、何億円減額されたんでしょうか、大臣。

塩谷国務大臣 大学法人化以降、運営費交付金につきましては、平成十六年度と今年度、二十一年度の予算を比較すると、約七百二十億円の減額になっております。

石井(郁)委員 二〇〇四年度には一兆二千四百十五億円だったんですね。それが、二〇〇九年度は一兆千六百九十五億円ですから、今御答弁のように、七百二十億円減額されたということになります。これは、一橋大学の規模でいうと十二校分に当たります。東京外国語大学の規模だと二十校分の運営費交付金の削減ということになるわけです。

 懇談しました学長の先生方は、共通して、運営費交付金が削減、さらに人件費抑制策がございますから、それはもう大変な支障を来しているんだということを話されたわけです。

 ちょっと御紹介します。学部教員の一割近い三十人が減りました。これ以上人員の削減が続けば、専攻が維持できない。そういう課程が出ることも懸念される。また、交付金の削減が続くのは大変苦しい。技術立国政策をとっているが、人文系の学問が切り捨てられるのは悲しい。各教員の研究費は三十万円で、年間ですよね、専門誌など共通資料として購入するので、残るのは約その半分です。一年間これで一教員当たりの研究費というのは、本当に乏しい額ですよね。それから、ある大学は、削減した教職員は百七十六人、退職した方が九百十六人がいますので、教職員の補充というのは七百十二人に抑えられてきた。このようにして教職員は減らす。専攻を維持できるかどうかというところまで追い込まれている。先生方の言葉をかりますと、もう限度ぎりぎりです、これ以上やると崩壊しかねない状況だ。また、このまま削減が続けば、教育系から倒れていくということをおっしゃっていました。

 まず大臣に、率直なところ、このような状況に国立大学が追い込まれているということについてどのようにお思いでしょうか。

塩谷国務大臣 運営費交付金が先ほど御答弁申し上げましたように減額されているということで、これについては、効率化係数で人件費を初め経費節減、あるいは、一方で外部資金の獲得等、運営費交付金の削減に伴っていろいろな対応がなされているわけでございますが、私どもも、大学から、大変困難な状況にあるということは聞いているわけでございます。

 今年度につきましては、政策の棚卸しなどが行われる中で、国立大学運営費交付金の確保に最大限努力して、一%、最小限に食いとめたということで、今お話しございましたように、今後の中期計画の中でどういうふうな方向でいくかというのは、しっかりとまた現状を踏まえて検討をするべきだと考えております。

石井(郁)委員 国立大学の法人化法の審議のときには、衆参両院で附帯決議がつけられています。とりわけ、運営費交付金についてもきちんと述べられておりまして、衆議院ではこのような文言になっています。「運営費交付金等の算定に当たっては、公正かつ透明性のある基準に従って行うとともに、法人化前の公費投入額を十分に確保し、必要な運営費交付金等を措置するよう努めること。」とあるんです。参議院の場合も、「運営費交付金等の算定に当たっては、」「法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること。」というふうにございます。当時、遠山大臣でございましたけれども、「ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたい」というふうに述べておられます。

 しかし、運営費交付金は毎年毎年減額されてきた。七百二十億円も削られた。これは国会の附帯決議に反するんじゃありませんか。その点いかがですか。

塩谷国務大臣 運営費交付金、大学法人化されて、もちろんその必要な確保は当然のことでございますが、一方で、やはり経費の節減等も考える、効率化も考える。そういったことも含めて、運営費交付金とは別に、競争的資金等、また外部資金の確保についても努力をしていただくということで法人化を図ったわけでございまして、当然、必要な運営費交付金は確保するということは我々努力しているわけでございますが、効率化等も必要なことでございまして、その両方の目的に従って今日まで、第一期六年目を迎えたわけでございますので、その実績を踏まえて、今後、このあり方をしっかりと検討すべきだと考えております。

石井(郁)委員 法人化という新制度というか、新しいシステムが発足したその直後からこういう経費削減が始まっているという点で、私は、国会の審議や附帯決議が本当にこんな形でほごにされるということはとてもたまらない思いがするわけですけれども、これはやはり、小泉構造改革の骨太方針二〇〇六、これがやはり足かせになっているわけでしょう。国立大学運営費交付金について、効率化を徹底する、各年度の予算額を名目で対前年比一%減とした経済財政会議の閣議決定というものがあるからなんですよ。

 私はやはり、こういう閣議決定そのものをこの際改めるということにはっきりと踏み出すべきだというふうに思うんですけれども、これは閣議決定ですから大臣はなかなか言いにくいことかもしれませんけれども、しかし、文科大臣としてやはりきちんと姿勢を今お示しになるべきではないのかというふうに思いますが、いかがでございますか。

塩谷国務大臣 いわゆる二〇〇六の決定に従って今御指摘のとおりの状況になっているということでございますが、やはり文科大臣として、教育費あるいは公財政支出、こういったことを、将来に向かってどうあるべきかを改めて今検討させていただいております。

 特に高等教育については、この運営費交付金、あるいは私学助成も含めて、公財政支出を高める、これは、教育振興基本計画、昨年の策定の状況の中でもしっかりと明記するつもりでございましたが、なかなかそこまで至らなかったということでございます。

 方向としては、OECDの中で今最下位となっている状況でございますので、それを何とか将来の教育にあるべき姿を明確にして、今後の予算措置に努力をしてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 いろいろな方の御発言がありまして、これは山形大学の学長結城章夫さん、元文科省の事務次官でいらっしゃいますから。こう述べておられるんです。周辺の国立大学の状況を見ても、今の国立大学は教育や研究の基盤がやせ細り、ぎりぎりの状態になっている。これ以上の運営費交付金の削減は、日本の科学研究を崩壊させる、国立大学の存立を危うくしかねないと心配している。私は、この発言には、あなたがいたときとちょっと違う発言かなという思いもしたぐらいですけれども、こういうことをやはり言わざるを得ない現場なんですよ。

 一%削減というのは、資源の大きい大学も少ない大学もこれはもう一律にかかるわけですから、当然、地方大学、単科大学とか教員養成系大学というのは深刻になるわけです。交付金を削減されながら、競争的資金を獲得せよ。そこをとらなければ運営できないということになるわけです。ですから、学長は、削減分を補うために競争的資金の獲得に追われる、教職員のストレスと疲弊感は相当なものですとおっしゃっていました。

 また、教育系学問はもうけを上げる研究にはなじまない。よく外部資金、外部資金と言われますけれども、私はある大学で聞きまして、産学連携と言うけれども、教育系大学でどんな産学との連携か。実際にできないですよ。ないんですよ。だけれども、何か書いてある、産学連携やっていますと。これはおかしいんじゃないかと言わざるを得なかったんですけれども。

 それで、外部資金の導入は難しい。このまま削減が続けば、もう教育系から倒れていく。これは学長先生の言葉なんですよ。ある先生は、大学教員がプロジェクトに追われて金勘定ばかりしているようでは絶対だめだ、教員がじっくりと教育研究に取り組めないといけないというふうにも述べていらっしゃいました。

 そこで、先ほど来、大臣の御答弁がありますけれども、中期目標、中期計画を策定していくに当たって、本当に運営費交付金の削減はやめるということをきちっと言明していただきたいと思いますが、重ねていかがですか。

塩谷国務大臣 今御指摘のとおり、人文社会系等が、なかなか、例えば外部資金を獲得ということも難しいし、いろいろな産学連携も難しいというのはもう現実のところで、私どももそう受けとめております。

 したがって、六年間の実情を踏まえて、今回の中期計画については、この運営費交付金の制度設計に当たってやはり相当検討を要するところでございますので、ぜひ、今の状況あるいは御指摘を踏まえて検討していきたいと思っておりますので、今後ともいろいろな面でもまた御支援もいただきたいと思いますし、これから、先ほど申し上げました公財政支出がどうあるべきかという、そういった将来的なあるべき姿も示していくことも必要だと思っておりますので、そういう点も含めてしっかり検討してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 ずっと申し上げましたとおり、地方の大学、人文系大学、教育系大学というのは、その地方に本当に重要な役割を果たしておられると思うんですが、やはり、その役割をきちんと今確認すべきだというふうに思うんです。

 というのは、こうした大学というのは、法人化以前からのいわば劣悪な条件で出発しているんですよ。これは、学科目制とか課程制というのがありまして、差別がありました。だから大変不公平だ。出発のときから劣悪なところで一律に一%掛けられる、やっていけないじゃないか、こういう声になっているんですよ。ですから、このように財政力の弱い大学に対して、より財政的な支援を強めるということも考えるべきだというふうに思うんです。

 大臣、繰り返し御答弁で、今後、高等教育についての公財政支出の問題でも検討したいというふうにはおっしゃっていただいているんですけれども、効率化係数や経費の改善係数というのはこの際やめる、大臣としてやはりそのぐらいの言明をいただきたいと私は思うんですが、いかがですか。

岩屋委員長 先に徳永高等教育局長、後で大臣、お願いします。

徳永政府参考人 技術的な事柄でございますので、私の方から先に御答弁申します。

 先ほど大臣から答弁を申しましたように、現在、第二期中期目標期間に向けて、運営費交付金制度の制度設計を行っているわけでございます。

 そういう中で、今先生御指摘のように、それぞれ国立大学間で、設立の経緯、学問分野、あるいはそのさまざまな大学院等の規模によりまして、事業費総額、運営費交付金の配分額、あるいは外部資金比率、人件費比率、そういったことで大きな差があることも当然承知をしております。大学の方からは、そういう意味では、一律の効率化係数というのは大変厳しいということも承知をしております。

 ですから、現在、そういう具体的な運営費交付金制度の設計を検討しているわけでございますが、こういう中では、当然、各大学の置かれている状況、そういったものが配慮したものとなるように今検討を進めているところでございます。

塩谷国務大臣 御指摘のとおり、運営費交付金の一律削減がいいかどうかという点も含めて当然検討をしていかなければならないと思っておりますし、国立大学法人に移行されて、効率化等の問題は一方で大学の活性化にもつながっている部分もありますので、その点も踏まえて、この六年間の実績をしっかり実証しながら、そして、今後あるべき姿を検討してまいりたいと思っておりますし、また、どういうふうな検討をしていくかということ、いろいろな、例えば大学法人の評価とかもありますし、あるいは機能分化する面でどういうふうな点を重視するか、そして、多様性あるいは特性、そういった点を配慮した効率化を考えるかという点でこれからいろいろな検討をしていきたいと思っておりますので、いずれにしましても、今御指摘があった一律でということは、これは変えていく必要があると考えております。

石井(郁)委員 どうもちょっと趣旨がねじ曲げられているように私は思っているんですけれども。つまり、一律は変えると言っても、パイ全体を上げないことには、削減された中で何か配分だけを変えるという、そういう話をしているんじゃないんですよ。そこはちょっと間違えないでいただきたい。全然違いますよ。だから、競争的資金で、あるいは特別経費でいろいろ配分を変えていくというようなことをされては困るわけですよ。

 どうかその点では、こういう運営費交付金の一%削減、これは本当に今見直すということに文科省が頑張らなくてどこがやるんですかという意味で私は質問してきたわけでございまして、もうこれ以上繰り返しませんけれども、そこのところは念を押しておきたいというふうに思います。

 さて、その次の問題で、次期の中期目標、中期計画の作成にかかわってなんですが、これは、前回、三月十八日の委員会で私もちょっと質問をしたところなんですけれども、二月五日に各国立大学法人の中期目標・中期計画担当理事あてに、高等教育局の国立大学法人支援課長名で文書が送付されていました。「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点」というものがつけられての送付なんですよ。

 では、この「視点」をまとめた国立大学法人評価委員会の議事録というものを私はきちんと本委員会に提出してほしいということを要望いたしましたけれども、今もっていただいておりません。なぜこれがこんなにおくれるんでしょうか。

徳永政府参考人 前回もお答えをしたわけでございますが、それぞれ評価委員会の先生方のきちっとした御確認も必要でございます。また、さまざまな作業もございます。

 私どもとしては、できるだけ速やかに、議事録作成次第、御提出したいと思っております。

石井(郁)委員 三月十八日も速やかに提出したいとおっしゃったんですよ。どのぐらいたっているんですか。何で議事録のそういう点検がこんなにおくれるんですか。いつですか。

徳永政府参考人 基本的には、テープ起こしをしてきちんとした議事録の原案をつくり、その上で、参加した各先生方お一人お一人にきちんと確認をするという作業が必要でございます。こういったことから、それぞれに時間がかかるものでございます。

 私どもとしては、正直申しましていつということは申し上げられませんが、ちょっと繰り返しになって恐縮でございますが、できるだけ速やかに、可能な限り速やかに提出をしたいと思っております。

石井(郁)委員 これは私は本当にひどい話だと思うんですよ。二月五日に評価委員会の議論をした「視点」というものはこういうものですと、あなた、つけて大学に配っているじゃないですか。当然、各大学では、それはどういう議論に基づいてこうなっているのかと知りたいでしょう。要旨をつけて出しているんですよ。ということは、本文があるということじゃないですか。それが、今ごろテープ起こしをしているんですか。何か変ですよ、とてもこれは。意図的にこれは公表したがらないというか、おくらせているということでしかちょっと思えないような作業の仕方だと言っておきます。今はもう答弁はいいですよ。

 ひどいんです。とにかくこのやり方はおかしいですよ。二月五日にちゃんと送っているんですよ、こういう「視点」、これだけのペーパーで。この裏づけが欲しいじゃないですか。あるいは、ちゃんとそういう資料をつけて送るのがやり方じゃないんですか。今はまあいい、もうこの辺は答弁いただきません。だけれども、まずきちっと議事録を出していただきたいということが第一点です。

 それで、この文書の問題点をちょっと以下質問するんですけれども、こういうふうに言っているんです。今後、中期目標、計画の作成に当たって文部科学大臣は、見直しの「視点」をもとに組織、業務全般の見直し内容を作成する。六月を目途に国立大学法人に示す。各法人は、文部科学大臣から示される見直し内容を踏まえて中期目標、中期計画の素案を作成する。今、大学もつくっているんですよ、議論をしながら六月までに。だけれども、これだと、文科省の案が示されるまでは素案はつくれないということになりますよね、これは。どういうことなんですか。ちょっと確認させてください。

徳永政府参考人 先生も御承知のように、私どもといたしましては、まず、中期計画、目標それぞれにつきましても、大学がそれぞれ、中期目標については原案を、中期計画についてはそれ自体を大学が作成をするわけでございます。そういったことで作業を進めているわけでございますが、一方では、中期計画終了時に、いわば組織、業務に関する全体の見直しというものを行わなければいけない。そういう中で、私どもからすれば、大臣の方からそういう形で見直しということを、「視点」をお示しをするわけでございますが、やはり大学の自主性あるいは教育研究の特性といったことを考えますと、まず大学御自身がみずからの組織、業務について見直しを進めていただく、そういったことを踏まえて大臣の方から見直しということの意見をお出しするということの方が、大学ということの特性を考えればふさわしいのではないか。

 ですから、大学とすれば、当然、そういうみずからの組織、業務についての見直しを進めつつ、そのことを前提として、さまざま、次期中期目標期間に向けて、原案なり計画といったことについての作業を進めていくというふうに考えております。

石井(郁)委員 局長の今の答弁では、何かいろいろなことが入っていてさっぱり要領を得ないんですよ。

 業務の見直しは、その法人の第一期の終了時に行うということになっているんですよ、法律上は。しかし、それを今やろうと言うんでしょう。その見直しの「視点」をあなた方は出しているんですよね。だから、それが中期目標、計画とリンクしているから非常にややこしい話になっていると思うんです。

 確認しますけれども、これは大臣にぜひお願いします。一体、中期目標、計画を作成する主体というのは大学法人だということでいいですか。

塩谷国務大臣 主体は大学でありますが、いろいろな評価委員会等の意見もあり、そういったものを聞いた上で大臣が意見をまたそこにつけるというようなことを踏まえて大学が検討するということになっております。

石井(郁)委員 この問題も本当に法人化法のときに非常に議論になったところでございまして、目標、計画をつくるのは法人ですということは、これは法文上そうなっているし、審議の過程でもそのような御答弁もありますし附帯決議もあるという問題なんですけれども、今ややこしいのは、終了時の問題で盛んに大臣が見直しの「視点」をお出しして、大学がやっていただく。終了していないんですよ。終了時は来年三月ですよ。まだ一年残っているじゃないですか。何で終了時の話を今出さなきゃいけないのかというのが一つあります。まあこれはいいです、もう時間がありませんので。

 実は、この見直しの「視点」という中身に大変私は危惧を覚えるわけです。危惧というか、重大な問題があるということなんです。見直しの「視点」に「見直しの基本的な方向性」というのがあって、「第二期の中期目標・中期計画は、大学の機能別分化を進めるため」だとあるんです。つまり機能別分化というのは、財政制度審議会が昨年示したものです。それは、大学を、研究大学院大学、これは国費を投入する。総合大学も国費を投入する。教養教育大学は学費ベースです。つまり国費を投入しない。教員養成大学も学費ベースです。四つのこういう大学に分けろと言っているじゃないですか。だから、今の制度を抜本的に変えるものになるわけです。これは、地方大学とか教員養成大学の国費を削減するということにもなるわけです。

 こういうものを見直しの方向として示す、重大な方向に大学を再編するということになるので、私は、日本の高等教育の将来を左右する重大な問題があるということで、これを各大学が今中期目標の原案に盛り込めというのは、本当に文科大臣のまさに大学に対するこれは方向の押しつけあるいは強要ではないのかという問題なんです。これは大臣、いかがですか。大臣に聞いていますから。大臣、もう時間がないので。

岩屋委員長 先に徳永局長、簡潔に願います。

徳永政府参考人 事実関係に関することでございますので、申し上げます。

 大学の機能別分化ということは、これは、文部科学省自身の中央教育審議会の第十七年の今後の我が国の大学の将来像答申にあることでございます。

 その中で、今後、我が国の大学は、いわば大きく分けてさまざまな、七つのカテゴリーをその当時はお示しをしましたが、大学の自主的な判断によって機能別分化が進んでいくだろうということを中央教育審議会答申で示しているわけでございます。そういったことに従って、私どもとしてみれば議論が行われたものと考えております。

岩屋委員長 塩谷文部科学大臣。(石井(郁)委員「済みません、後にして」と呼ぶ)いいんですか。(石井(郁)委員「いいです」と呼ぶ)では、質問を続けてください。

石井(郁)委員 時間がありませんので、最後に御答弁いただきます。

 中央の教育審議会の答申にそうあっても、しかし、それを各大学がどうやるか、各大学、法人が決めることじゃないですか。あなた方が押しつけるという話じゃないでしょう。これが本当におかしいんですよ。私は、こういうやり方をしていったのでは、法人法の本当にいわば脱法行為にもなるし、まさに逸脱だというふうに思います。

 この中身にもう一点加えますと、「教員養成系学部においては、教員採用数の動向等も踏まえ、入学定員や組織等の見直しが必要ではないか。」これもあるんですよ、ここまで。「その他の学部・研究科においても、当該分野に係る人材の需給見通し等を勘案しつつ、必要に応じ、入学定員や組織等の見直しが必要ではないか。」附置研究所なども全般的見直しだと。だから、こういう内容を文科大臣が大学に示す、この方向で中期計画をつくりなさいということをやるんですか、こういう問題なんですよ。そういう文書を出している。

 しかも、出しているけれども、その裏づけとなる議事録は一向に公表しない。こんなやり方を通していっていいのかという問題なんです。これでは、大学の自主性というか自律性が、あれほど議論をしたのがまさに消し飛んでしまう。こういう問題ではありませんか。

 私は二月五日のこの文書というのは撤回すべきだと思いますが、大臣に最後に伺います。

塩谷国務大臣 当然、大学の自主性は尊重しなければなりませんが、今後の日本の高等教育のあり方等を考えますと、やはり、機能分化あるいは多様性の中での特殊性をいかに出していくかということも必要なことでありまして、その中で、国際競争力も含めて、今後の高等教育の質をいかに高めるかということを我々は検討していかなければならない。

 そういった上での幾つかの指針を出しているつもりでございますので、それを踏まえて各大学で自主的にこの計画を立てていただきたいということでございますので、ぜひその点は、文科行政を担う我々文科省としては、やはり、これからの方向性というものはある程度示していくことが大事だと考えておるわけでございまして、あくまでも自主性を重んじることは基本と我々考えておるところでございます。

石井(郁)委員 法人化法の三十条は、中期目標を決めるときは、「あらかじめ、国立大学法人等の意見を聴き、当該意見に配慮する」ということになっていまして、私は、今はやはり順番が逆だと思っているんです。全然この法文どおりになっていないということを指摘したいというふうに思います。

 それで、委員長にお願いなんですが、いずれにしても、大学法人法ができて今一期目が終わろうとしている。そして、二期目の計画という、日本の高等教育の将来を決める重要な方向に行こうとしているわけですから、これまで法人法がもたらしたものは何だったのか、大学はどんな状況にあるのかということで、これは、衆参の附帯決議、衆議院は十項目です、参議院では二十三項目あるわけですから、こういう附帯決議に照らして検証するときだというふうに思うんです。ぜひ当委員会での集中審議をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

岩屋委員長 後刻、理事会でよく協議をさせていただきたいと思います。

石井(郁)委員 以上で終わります。

岩屋委員長 以上で石井君の質疑は終了いたしました。

 次に、保坂展人君。

保坂委員 社民党の保坂展人です。

 きょうは、奨学金の問題について集中的に聞いていきたいと思います。

 奨学金については、貸出額が有利子の方が非常にふえていて、しかも、この現下の経済情勢で延滞されている方が大変多い。

 まず、ちょっと事例を紹介していきたいと思うんですが、昨年の秋から三回にわたって沖縄なかまユニオンという労働組合の方がホットラインを実施されて、百人を超える方からの相談を受けたというふうに聞いております。

 中城村のHさん、男性、二十二歳は、米軍基地の食堂で働いていて、ボーナスなしの十二万円の給料である。したがって年収は百四十四万円ということになりますが、お母さんと御一緒の母子家庭で、お母さんはヘルニアの腰痛で働けない状態。百十五万円の一括返済を求められて、返せない状態に陥っている。

 また、もう一人、浦添市の男性Kさん、二十歳は、昨年から名古屋のトヨタ系の派遣社員をやっていた。この間の状況で派遣切りに遭って、ことしの一月で沖縄に帰ってきました。仕事がない状態。高校での奨学金六十四万八千円が滞っている。二十六歳のお兄さんが月収十四万円で働いていて、お母さんは病気で倒れて働ける状態ではなくて、知的障害のある妹と彼とお兄さんの四人で十四万円でやっている。このお兄さん自身も、専門学校を卒業する際に、百七十三万六千円の奨学金の返済が返せないでいる。

 今帰仁村のOさん、二十七歳、男性ですが、九州の私大を卒業して実家に戻った。沖縄はなかなか仕事がないということで、バイトをかけ持ちで現在月収五万円だ。五百三十七万六千円の奨学金のいわば返済ということがあるんだけれども、これがなかなか返せない状態。

 浦添市のKさん、二十歳、この方は女性ですけれども、子供が産まれて、夫の収入十三万円で生活をしている。専門学校で奨学金として借りた二百四十万円が返せなくて困っている。

 こういうことなんですが、沖縄は県民所得がもともと低いということがあって、そこへ持ってきて、このリーマン・ブラザーズのショック、そして世界経済危機、日本も大変な大不況という影響が二重、三重に出てきている状態。新たなるというか、非常に構造的な貧困が拡大をしているという問題です。

 文科省に聞きますけれども、ある種社会政策として、これは個々の、もちろん、借りたものは返すというのは当然なんですが、これだけ収入が低いとなかなか返せないというのは当然だと思うんですが、特別減免などを考えていないんでしょうか。私は、景気対策と経済対策の中で、こういった教育の中で非常に大きな負債を抱えてしまった人に対して一度考え直す時期に来ているのかなと思うんですが、いかがですか。

徳永政府参考人 先生から御指摘もございましたように、現在の奨学金事業の中でも、失業や年収三百万円以下のいわゆる低所得者などの生活困難者、あるいは災害、病気、生活保護受給者につきましては、返還者からの申請に基づきまして返還を猶予する、こういう制度も設けているわけでございます。

 ぜひ今後とも、奨学金の返還が困難な方々につきましては、返還猶予の手続が的確に行われるよう、貸与者や各学校に対してもその制度を十分周知をしてまいりたいと思っておりますし、さまざま今後、返還猶予ということが円滑に行われるよう、そういうことについての財源的な裏づけといったことについても努力をしてまいりたいと思っております。

 ただ、さらにこれ以上の、従来のいわゆる猶予ということではない特別減免ということにつきましては、さまざまな財源の問題、あるいは、他の、公的資金を原資として貸与するというような類似の制度、同趣旨の制度との公平性、そういったことから、さまざま検討すべき課題があろうかと思っております。

保坂委員 もう一つ、長期にわたって延滞が続いている方のケースなんですが、これは那覇市のSさん、女性で四十九歳の方。三十一年前に百十八万五千円の奨学金を借りて、残金が七十八万五千円というところまで返した。ところが、その後滞っているということで延滞金が百二万六千円と膨らんでしまって、これを合わせて百八十一万一千円の一括請求が来た。

 これなんですが、当然、百八十一万円というのはなかなか返せない。では、仮に三十万円とか二十万円とか、あるいは十万円返す。そうすると、充当順位というのがあって、まず催促費用に充てられる、その次に延滞金に充てられるということで、例えば思い切ってお金をつくって相当額返したとしても、元金が減らないということがあるんです。

 これは、民法四九一の弁済の充当というところで住宅ローン等と同じ考え方でやっているとこう思うんですが、少なくとも、返しても返してもその元金が減らないということだと、返すための意欲というか、返してもこの元金自身についてはゼロなわけですから、そのところをもう少し規制するとかこの充当順位を変える、返せば幾らかはもともとの借金の返済に充当される、こういうことは考えられないんですか。

徳永政府参考人 先生御指摘ございましたように、日本学生支援機構の奨学金の返還金の充当順位につきましては、民法第四百九十一条に準じまして、利息、割賦金の順に充当すると定めているわけでございます。

 一方では、一部の都道府県の資金貸し付けにおきましては、その弁済充当の順位について特例を設けている、そういったことがあることも承知をしております。

 こういった例も踏まえまして、特に、現在のさまざまな経済状況、あるいは実際の返還者の方々の実態、そういったことを踏まえて低所得者に対して十分配慮が行われるよう、そういう債権管理のあり方について、日本学生支援機構に対しては検討を促していきたいと考えております。

保坂委員 きょうは、独立行政法人日本学生支援機構の理事長に、昨日急に求めたわけですが、来ていただきました。以前、国会でお会いしたと思いますけれども。

 そういうことでちょっと具体的に伺っていきたいと思いますが、これ、債権回収業務を委託されているわけですよね。一枚、文科省からもらいましたけれども、日立キャピタル債権回収株式会社というところに、延滞一年以上二年未満かつ入金履歴なしというところを、現在でいえば九千件を委託しているということです。平成十七年からおやりになっていると思いますけれども、このいわゆる民間業者に対する、ことしは四千七百六十二万円を払うということになっているようですが、どういう基準でこの業者への支払い金額というのは決まっていくのか。例えば、回収したらした分、加算して払っていくようなそういうスタイルになっているのかどうか、おわかりですか。

梶山参考人 議員のおっしゃられるとおりですが、金額に関しては出来高払いということになっておりますので、最初から決まっているわけではございません。

保坂委員 それで、きのう文科省から、機構の方の「奨学金返還促進策について」という、これは有識者会議のつくったパンフレットをいただいて読んでみたんです。これにも出ているんですが、相談体制がなかなか整っていない。

 つまりは、こういった債権回収業者を使って催促をかけるということもやり、あるいは法的手続にも入るということになると、当然相談がふえるわけですね。そして、この機構の中にも、現状でどういう方が延滞をされているのかというのは、やはり経済的困窮者、低所得の人が大変多くなっていると書いてあるんです。そして、この中には、本来は猶予の手続を受けられるのに、それを知らずして延滞をしている状態になっている人もいると書いてあるんです。とすると、この相談体制というのは大変重要ではありませんか。

 そこで質問なんですが、先ほど、そういった日立系の債権回収業者が電話をするときに、返しなさいという話をすると思うんですが、猶予の手続があるんですよという話はその対象者に伝えるようになっているんでしょうか。それはいかがですか。

梶山参考人 初めてなものですから、手を挙げるのをいつも忘れまして申しわけなく思っています。

 返還の相談体制は基本的に電話で受け付けるということになっていますし、そういう意味で、返還相談センターというのがございます。それで、返還の相談の仕方というのはプッシュボタン方式になっていまして、職員が直接回答する、プッシュボタンのやり方によって回答したり、いろいろな方式がございまして、ファクスで直接送信して回答するとか、一般的なことであれば、定例的なことであれば音声によって出すとか、そういうことでございます。

 また、電話以外でも、電話で非常に込んでいるということも承っておりますので、電話だけでなくて、手紙とかファクスで受ければ、直ちに返答するようになっております。

保坂委員 私が聞いているのは、返してくださいという、これはかなり多額の方もいるわけですよね、あるいは滞り始めた若い方がいるわけですね、そのときに、例えば、今失業しているとかお母さんが病気になって大変になったとか、理由があってそういう状態になって、これは猶予の対象だなというふうに、機構の電話の方とか皆さんが見れば、ではあなたはこれを使ってくださいよという方にも多分回収業者から電話が行くわけですよね。その回収業者は、少なくとも、猶予という手続がありますよということを知らせているんですか。知らせていないんだとしたら、これはおかしいんじゃないですかと言っているんです。

梶山参考人 猶予の手続は知らせております。ちゃんと会社の方から、そういう電話をかけたときに、猶予のこういう手続がありますよというのを知らせております。

保坂委員 文科省に聞きますが、きのう、私が会館で一時間説明を受けたときには、回収業者は猶予のことは言っていませんと。これはわかりやすいんですね。だって、回収すればするほど収入になるわけですから。猶予の手続があるよと言ったら、それを猶予されたら収入にならないわけですね。だから文科省の説明では、それはやっていません、そのかわり、別の電話でお知らせしていますよと私は聞いているんです、今耳打ちされたと思うけれども。これはどっちですか。

徳永政府参考人 先生に御説明した者の言によれば、その時点ではきちんと確認できておりませんでしたので、先ほど梶山理事長から御答弁したとおりでございますけれども、そのことについてその時点では十分確認できていなかったので、その旨お答えできなかったということでございます。

保坂委員 私のところにはこんな声も寄せられているんです。債権回収会社に電話で、私大変だからどうしましょうかと相談しても、相談は取り扱っていません、支援機構に電話しろ、こう言われるということなんです。それで支援機構に電話しても、この報告書にありますけれども、ほとんどつながらない。つながらないので、結局、返そうとしている人が、もういいかということでとまってしまうという弊害も指摘をされているわけです。

 それで、あるお一人の方は、学部と大学院の前期、後期の三種類の奨学金を受けていたけれども、非常勤講師をされている方です。学部の奨学金は全部返済をしました。ところが、大学院の方が滞っていて、昨年百五十万円を一括して返したそうです。ただ、まだ残っているということで、三月十一日、夜間の電話があって、本人がいるのかということだった。翌日も夜十時過ぎに電話があったと書いてあるんです。私、留守でした。必要があればこれから連絡する。あと幾らですか、この方は百万円ぐらい残っているのかな、そういう形で追っかけ回される。こういうことを訴えておられます。

 そういう意味で、確かに、そういった回収業者を使ってどんどん取り立てろということで一定の成果は上げているかもしれませんが、時間に限りがあるのでちょっと理事長に伺いますけれども、これは「奨学金ガイド」という、委員の皆さんにもお配りをしているパンフレットです。今は大変多いわけでしょう。収入の低下、派遣切りとか失業とかで奨学金が、ことしになってからとか、例えば、今月返せなくなり始めている人は大変多いわけですよね。それで、このパンフレットのどこに書いてあるんですかというと、これは非常にわかりにくいんだな。ここの、開いたところの二番目の「返還について」の下です。ここに二行だけ。理事長、自分のところのパンフレットいいですか。ここの「返還について」の一番下に、確かに、「「返還期限の猶予」の制度等もあります。」こう書いてあるだけなんです。

 何百万という、払えない、あるいは返済途上であっても滞っていれば、一括して返せとこう来るわけですから、中には、多い人は五百万とか六百万とかそういう金額です。もっとわかりやすく書かなきゃいけないのと、少なくとも、この猶予についてのパンフレットは機構でつくっていないんですか。問い合わせがあったら送ってあげるとか、そういうことは対応されていないんでしょうか。

梶山参考人 お答えします。

 返還猶予に関しては、都度都度いろいろな機会で奨学生の皆さんに知らせているわけですね。一つは、採用決定のときに「奨学生のしおり」ということも上げますし、それに非常に詳しく書いてあります。それから、直接説明もいたします。それから、貸与終了時にも「返還のてびき」というのがありまして、しかも、返還の説明会をやってちゃんと説明しているわけですね。それから、延滞者に対しては、督促の際にも、そういう返還の猶予がありますよということをちゃんと手紙を同封して送っているわけです。しかも、機構のホームページにもそれがちゃんと出ているわけですね。

 これだけではございませんので、確かに、この字が小さいのは、私も今、年とって目が悪いので探すのが大変だったんですけれども、これ自体は問題があると思いますけれども、返還猶予に関しては、本当にすごい機会をとらえて知らせているということだけは御理解いただきたいと思います。

保坂委員 では、ちょっと文科省に伺いますが、この有識者会議のパンフレットにも、延滞の調査、分析をされた中でちゃんと書いてあるんですよ。本来は、「返還猶予の要件に該当しながら、延滞に陥っている者が少なからず存在している」ということが書いてあるんです。ということは、今、理事長がいろいろな機会でやっていると言われた、にもかかわらず、生活が困窮して、要するに、そういう知識がないということで請求書が来て絶望的な気分になる、そういう方は少なからずいるんじゃないですか。

 だからここは、猶予の手続があるということをもっと知らしめる。それから、今、回収業者が言っているということでちょっと議論がありました。それをちゃんと言わせるということをやらせるべきじゃないですか。

徳永政府参考人 現在のさまざまな経済状況の中で、今後、そういう返還が困難になってこられるという方もふえるというようなことも予想されるわけでございます。

 私どもとすれば、現在も、今理事長の方から答弁いたしましたようにきちっとPRをしているわけでございますが、これまで以上にそういう猶予制度があることをきちんと周知をしていきたいと思っておりますし、また、さまざまな資料等もきちんと完備をいたしまして、その上で、さらにそういった手続等が円滑に行われるように努力をしていきたいと思っております。

保坂委員 次に、一番社会問題化しているブラックリストなんですが、低所得や失業、無職等の理由で返済が滞っている人が多いということが、先ほどから紹介している機構の調査でも明らかですね。

 ところが、その相談にも応じ切れない、電話がずっと話し中であるという状態も同時にある。本来、丁寧に対応するためには、多分一人当たり一時間程度かなり丁寧に話をして、こういった延滞の方で猶予の手続がとれる方はそうしてもらうということが必要なのではないかと思いますが、信用情報機関にリスト化する、延滞をした学生についてはこれは三カ月ですかね、ということで同意書をとるということが始まっていて、この同意書を今奨学金を受けている学生からもとる、それで、出さない学生に対しては打ち切り、こういうことが始まろうとしているわけです、その期限は若干延長されたようですけれども。大学によっては、同意書を提出しなければ学位を授与しないぞ、こういう対応も出てきていると聞いています。

 これも、小泉構造改革の中で、貸出残高、これを一〇〇%に近く回収せよ、そのために徹底的にやれと。これは経済の目から見ればそうですけれども、教育という目から見たときに、果たしてそれだけでいいのか、自動車ローン、住宅ローンとこの奨学金は同じなのかというふうに言いたくなるんです。延滞率ワースト学校名を全部公表しようということも今はやっているわけです。

 こういうブラックリスト化について私たちは非常に危惧を持っています、これで本当に大丈夫かと。そして、社会人になるときに最初からブラックリストに掲載された、その後に払ったとしても、社会人一年生、二年生で滞って三カ月でブラックリストに載って、そしてまたその後まとめて返した場合にも、このブラックリストに五年間載るわけでしょう。余りにも社会人としてのスタートの段階でどうかというふうに危惧をしていますが、この点、理事長、いかがですか。

岩屋委員長 恐れ入りますが、指名を受けてからにして。

梶山参考人 ふなれなもので申しわけありません。

 貸与継続者に同意書を求めるという件でございますけれども、そういう意味で、奨学金の返還促進に関する有識者会議において、「延滞者の情報を個人信用情報機関に提供することにより、延滞者への各種ローン等の過剰貸付を抑制し、多重債務化への移行を防止することは、教育的な観点から極めて有意義なことと考えられる。」とされております。

 このお考えに基づき、個人信用情報の取り扱いに関する同意書については、既に貸与を終了し返還中の者や、現在貸与中の者に対しても同意を求めることにしたものでございます。

保坂委員 大臣に総括的に聞きます。

 やはり教育に金がかかり過ぎているんですよ、日本は。ヨーロッパでは、ほとんど無料という国もありますよね。それから奨学金についても、給付型、これを使って勉強しなさい。そのことによって社会の活力が、低所得層であっても、若い時期に一生懸命勉強することによって、実は日本もそういう社会だったんです。でも、それが今、大変教育費が高騰している。そして奨学金という形で、総額五百万とか、四年制の大学でも私立ですとかなりの金額になるということで、もう人生のスタート時から多額の債務を負いながら、しかも、今やりとりがあるようにブラックリスト化もあり、そして、生活の困窮度合いがこの経済危機で非常にひどくなっているわけです。

 というときに、このままのやり方でいいのかということについてどう思われますか。先ほど細かい議論もしましたけれども、もうちょっと抜本的にこの奨学金のあり方について、景気対策、経済対策と言うのであれば、未来の人材に対する対策も含めてしっかり主張をしていただきたいと思いますが、いかがですか。

塩谷国務大臣 根本的な問題として、我が国の教育費のあり方という点で、家計負担が大変多いということ、これは欧米の比較からしてそういうことが言えると思いますが、アメリカなんかは、かなり授業料も高い一方でかなり奨学金が充実しているということでございますので、そういった点も含めて、今後のこの奨学金のあり方も当然ですが、いわゆる家計負担という点で検討してまいりたいと考えております。

 いずれにしましても、経済がこれだけ厳しい中で教育機会が奪われることのないように、私どもとしては、今後ともその充実を図ってまいりたいと考えております。

保坂委員 ぜひお願いしたいと思いますし、これは、与野党を超えてしっかり文科省にも機構にも取り組んでいただきたい。相談体制の充実はもう本当に急務です。どうしたらいいんだろうというときに電話がつながらない、これは即刻何とかしてほしいと思います。

 最後に、お配りをしましたが、私、この委員会で財団法人日本美術刀剣保存協会の問題について何回か質疑をしてきたので、きょうは文化庁に来ていただいています。

 先日の新聞記事で大変な記事がございまして、届け出不明の刀三百九十一本が突然見つかった。これは相当古いもので、場合によっては相当美術的な価値がある刀も含まれているが、腐食も進んでいる。大変あってはならないことが起きてしまったわけですが、文化庁としてこれをどう把握をしているのか。そして、代々木警察署ですか、これを届けたというんですけれども、警察の問題と、文化庁が所管してきたわけですから、警察ではわからない、この協会で何が起こっているのか、その刀はどうだったのか、だれにいわば過失があったのか、今後どうするのか、ちゃんと調査してほしい。いかがですか。

高塩政府参考人 先生から御質問ございました、日本美術刀剣保存協会で発見された刀剣につきましてのお尋ねでございますけれども、文化庁から協会に確認いたしましたところ、本年二月に、この収蔵庫の修繕のために点検をした際に、合計三百九十二振りの刀剣が発見されたということでございます。

 協会によりますと、これらの刀剣につきましては、収蔵庫の中のいわゆる長持やたんす、木箱の中にあったものでございまして、この刀剣博物館が設置されたのは昭和四十三年でございますけれども、それより前の段階から持ち込まれていたのではないかということでございまして、詳細については、今そういった推測の域だということでございます。

 それらにつきましては、今お話しございましたように、所轄の警察署に銃砲刀剣法に基づきまして届け出るとともに、刀剣本体につきましても搬送したということを伺っているところでございます。

 文化庁といたしましては、今お配りいただきました新聞記事が出る前に協会からお話をいただきまして、現在までの状況を聞いているところでございまして、それらの状況を踏まえまして、今後警察の方でどういう判断をするかということもございますけれども、そういうものを踏まえまして、必要に応じて、指導というものが必要ならば行いたいというふうに思っております。

保坂委員 この刀剣協会、現佐々会長の就任以降、この中では相当人事の問題もあり、そのことについてきょう触れませんけれども、少なくとも、美術的な価値を認めている刀剣協会があり、博物館もあって、展示をしている。全国のそういった美術的な価値がある刀剣をある種コントロールしているところで、その倉庫に三百九十一本もの刀が、忘れられていたのか放置されていたのか、これは、やっていることと言っていること、全く相反していると思いますね。

 そういう意味で、文化庁としての調査は警察の問題とは別にしっかりやっていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で基本施策に関する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

岩屋委員長 次に、内閣提出、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩谷文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩谷国務大臣 このたび、政府から提出いたしました特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 我が国の科学技術を振興し、国際競争力の飛躍的な向上につながる研究成果を世界に先んじて創出するためには、先端的かつ高度な研究等を行うための施設を、産業界の研究者等も含めた多様な研究者等に開放し、その共用を促進する等、我が国の科学技術に関する研究等の基盤の強化を図ることが必要です。

 独立行政法人日本原子力研究開発機構により設置される特定中性子線施設は、世界最高性能の中性子線を発生させることができる施設であります。本施設から発生する中性子線は、生命科学、物質科学等のさまざまな研究分野において画期的な計測等の手段として用いることが可能であるため、産業界の研究者等も含めた多様な分野の研究者等に対して、本施設の共用を促進することが強く求められています。

 この法律案は、科学技術に関する研究等の基盤の強化等を図るため、特定中性子線施設の共用を促進するための措置を講じるものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、この法律の対象となる特定先端大型研究施設の定義に特定中性子線施設を追加するものであります。

 第二に、独立行政法人日本原子力研究開発機構は、特定中性子線施設の設置者として、中性子線共用施設の建設及び維持管理を行い、並びにこれを研究者等の共用に供すること等の業務を行うものとするとともに、文部科学大臣の定める基本方針に即して、当該業務に関する実施計画を作成し、毎事業年度、文部科学大臣の認可を受けることとするものであります。

 第三に、文部科学大臣は、特定中性子線施設の設置者として独立行政法人日本原子力研究開発機構が行うものとされた業務のうち、利用者の選定及び支援に係る業務の全部または一部を、登録施設利用促進機関に行わせることができることとするものであります。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

岩屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十五日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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