衆議院

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第7号 平成21年4月15日(水曜日)

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平成二十一年四月十五日(水曜日)

    午前十時三分開議

 出席委員

   委員長 岩屋  毅君

   理事 木村  勉君 理事 佐藤  錬君

   理事 馳   浩君 理事 原田 令嗣君

   理事 茂木 敏充君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    井澤 京子君

      井脇ノブ子君    飯島 夕雁君

      石原 宏高君    浮島 敏男君

      小川 友一君    岡下 信子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      鍵田忠兵衛君    亀岡 偉民君

      菅原 一秀君    谷垣 禎一君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      萩生田光一君    平口  洋君

      福田 峰之君    藤田 幹雄君

      山本ともひろ君    田島 一成君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      藤村  修君    松本 大輔君

      山口  壯君    笠  浩史君

      和田 隆志君    富田 茂之君

      西  博義君    石井 郁子君

      日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       塩谷  立君

   文部科学副大臣      松野 博一君

   文部科学大臣政務官    萩生田光一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            磯田 文雄君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤木 完治君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     石原 宏高君

  加藤 勝信君     菅原 一秀君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     井澤 京子君

  菅原 一秀君     加藤 勝信君

    ―――――――――――――

四月十五日

 教育格差をなくし、すべての子供に行き届いた教育に関する請願(小此木八郎君紹介)(第一八二〇号)

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(石井郁子君紹介)(第一八六四号)

 同(日森文尋君紹介)(第一八六五号)

 学校事務職員等の定数改善と給与費等国庫負担の拡充に関する請願(玄葉光一郎君紹介)(第一八九二号)

 父母負担軽減、私立高校以下への国庫助成制度の拡充に関する請願(伊藤渉君紹介)(第一九三四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二三号)


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     ――――◇―――――

岩屋委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房長森口泰孝君、高等教育局長徳永保君、研究振興局長磯田文雄君及び研究開発局長藤木完治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 きょうは、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法改正で質問させていただきます。与党の方がどなたも質問をなさらないので、私がトップバッターに立つことは大変僣越ではございます。皆さん、多分何も否定することはないということで質問に立たれないのかもしれませんけれども、私、今回の独法のいわゆる運営、とりわけ安定した運営を図るための、言い方は大変下品かもしれませんけれども、何か独法の電気代法案のような内容でございますので、今後、独法がどのような形で運営をされていくのか、その点等について、大きく四点、質問させていただきたいと思っております。

 今回のこの研究独法では、民間では到底実施することが困難な研究開発がメーンでなされており、イノベーション創出などに向けて能力を十分に発揮していただいているところだというふうに認識をしております。

 とりわけ今回の日本原子力研究開発機構は、独法として発足したのが平成十七年でありますから、この三年半の間で、予算額また職員数、いずれをとっても随分目減りをしてきている状況にあります。研究開発の重要性を文科省として説いていらっしゃるにもかかわらず、現実は非常に厳しい。人員においても六・五%減、予算においても百億近くが減らされているというような状況から考えると、果たして、本当にこのままでいいのかなという心配をしているところであります。

 この三年半、独法としての業務内容については特に大きな変化がありませんでした。にもかかわらず、職員数、それから、国の機関では定員に相当するものということで、予算が減らされてきたわけであります。

 人員の合理化は、定型的な業務の効率化を主眼に置いた削減目標を算定すべきだというふうに思うんですけれども、残念ながら、この原子力機構を初めとする研究独法というのは、研究者の比率が非常に高いわけでありますから、そう簡単に、組織を効率化すると言っても、生首を切るわけにもまいりませんし、実際に人員の管理をしようと思うにも、定年退職された方の補充を我慢するというような状況で続いてきております。

 これ以上新規採用が困難な状況になっていくと、この研究者また職員の年齢構成が逆ピラミッドの形になって、将来的に本当に存続していけるのかどうか、研究のノウハウであるとか研究者の知見等々をきちっと次の世代へ渡していくことができるのかどうかという不安を私は感じるわけであり、時間をかけてやらなければならない国家的なプロジェクト自体の進展、実施についても、人材確保の懸念が大変心配ネタとなっているわけであります。

 その点について大臣、どのようにお考えなのか、まず冒頭、お聞かせをいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 原子力機構については、我が国の原子力基本法に基づいて、原子力の中核的な研究開発機関として国策に基づいて原子力研究開発プロジェクトを推進していくということで、国家的なプロジェクトを実施するために必要な予算を十分に確保することが大変重要だと考えております。

 今御指摘の予算については、行政改革の方針に基づいて、人件費や一般管理費等、人件費については六%、全体予算については約三%減ということで我々としても合理化に取り組んできた一方で、核燃料サイクルの確立に不可欠な高速増殖炉の研究開発や長期的なエネルギー確保のための核融合開発などの重要プロジェクトについては、予算を大幅に増加させてきたわけでございます。

 文部科学省としましては、厳しい財政状況のもとで、エネルギー確保という、国にとって重要な課題に向けての方針として今後も必要な予算を確保して、今御指摘の人材についても、今後ともしっかり取り組んで、この開発プロジェクトの着実な推進をできるように努力をしてまいりたいと考えております。

田島(一)委員 現場の声をお伺いいたしますと、職員の平均年齢というのがもう四十歳を超えているんです。ある意味、高齢化とまではまだ言いませんけれども、やはり平均的に非常に高い状況にあるという現実は、これは真摯に受けとめなければなりません。

 それだけではなく、現場で各種機器等の操作に当たる、現業に当たっていただいている職員、高卒の方々を対象として採用されているわけなんですけれども、この高卒の職員の募集になかなか人材が集まらないというような嘆きの声も聞いております。

 原子力というものに対する風評、また、さまざまな先入観が新規採用者に対して敬遠されているというような状況からすると、正直申し上げて、この研究独法自体が、将来にわたって長期間にわたる国家プロジェクトを推進するためにきちんとした基盤をつくり上げることができるのかどうか。とりもなおさず一番重要なのは、やはり人材確保であり、そしてそれを裏づける予算の確保だというふうに思います。どうぞその点、しっかりとお取り組みをいただきたいんです。

 もう一点、運営費交付金についてのお尋ねをさせていただきたいんですけれども、独法の場合、自己収入というものがふえていきますと、結局その分、運営費交付金は減らされていく、減額されていくということであります。このような制度でありますと、積極的に特許を得ていくであるとか、事業を行っていこうということの妨げになっていくのではないかと私は感じるものであります。

 ちなみに、この原子力機構の自己収入、平成十七年度では百八十三億円だったのが、平成二十年度になりますと九十三億円と、何と半減しているわけであります。

 自己収入を研究開発に充当することを可能にするような仕組みであるとか、また、自己収入を上げるがゆえに、結局、ノーベル賞を受賞されたような基礎研究自体がおろそかになる、いわゆる収入を目的とした研究に加担してしまうのではないかというような心配も、その一面で出てくるのではないかというふうに思います。

 とにかく、この運営費交付金の制度自体にやはり大きな問題があるわけでありまして、独法自体の研究そしてプロジェクトを進めていく上では、もう一度問題点をきちっと洗っていかないとこれは何ともしようがないんじゃないかなというふうに心配するわけでありますが、この点についてどのようなお考えをお持ちなのか、お聞かせいただけないでしょうか。

塩谷国務大臣 ただいま御指摘の運営費交付金につきましては、やはりいろいろと問題があると我々も受けとめておるわけでございます。

 今現在、自己収入という点においては、受託研究や施設設備の共用等により、我々としても自己収入を多く得るということの観点から努力をしておりますが、これにつきましては、特に、国からの受託研究とか競争的資金による研究、そして、高速増殖炉の経済性、信頼性、安全性に関する研究開発、軽水炉の安全性に関する研究開発等の国策上の重要な研究開発であり、いわゆる収入を目的としたものを当然考えておる中でやはり研究開発という点で重要な点で取り組んでいるところでございまして、機構が本来行うべき研究開発に必要な研究能力の技術力向上に資するものであるという観点でこの程度の規模の受託研究を受けているわけでございまして、本来の業務に妨げがあるということではないと思っております。

 予算についてのいわゆる自己収入の点と運営費交付金の関係については、今後、独法のあり方等も含めて、やはり将来的に予算を本来の目的のためにしっかり確保して、同時に、できる限りの自己収入もという両立できるような関係をつくっていくことが機構としても前向きに進んでいけるんだと思っておりまして、自己収入がふえた分また運営費交付金が減らされるようなそういった相関関係は、なかなか、財政的には今求められているわけでございますが、実際の運営上、私としても非常に問題があると考えておりますので、また、今後のそういった機構の運営については検討していかなきゃならぬと思っております。

田島(一)委員 かくなる上は、財務省をいかに熱意を持って文科省が説得するかなんですね。そのあたりをしっかり肝に銘じていただかないと、いわゆる基礎研究をおろそかにすることによって国家の発展に大きなひびが入ってしまう、それぐらいの覚悟を持っていただかないと、私は、これは将来的に大変不安を残したままの今回の法改正の部分になってしまうのではないかというふうに思います。

 その点だけは十分に御留意をいただいて、財政措置の支援についてはやはり十分に配慮いただきたい。そのことだけは強くお願いを申し上げておきたいと思います。

 さて、先ほど冒頭も申し上げたとおり、この法案の最大のねらいというのは、電気代法案というふうに私は皮肉ったところもあったんですけれども、この法人が安定した運営を図っていくための補助金の交付というのがメーンの法案ではないかというふうに思っております。

 この法文の中には登録機関への交付金について書かれているんですけれども、法制定された後、その効果として結局は、この特定先端大型研究施設の設置者に対する補助金というものがあるわけであります。平成二十一年度のSPring8の運転それから維持管理の費用が七十五億三千二百万円計上されているんですけれども、そのうちの補助金が、何と、九八%に相当する七十三億九千七百万円。九八%が補助金で賄われているというこれは現状なんですね。SPring8それからJ―PARC、エックス線の自由電子レーザー、それから次世代スパコン、すべてこの法律関係施設の補助金というのを合わせていくと、将来的には年間百億円以上積み上げていくことが予想されるんですけれども、これだけの予算を投入している中で、国会に対して何ら説明もなく、結局、この法案が成立をした後は財政当局と勝手に相談をして決めますよというので果たして本当にいいのかなと私は思うわけであります。

 もちろん、予算というのはそれぞれ単年度でつくられているわけでありますから、そのことは承知しておりますけれども、ただ、今後これだけの、年間百億円を恐らく超えるであろう予算を決めていくということについては、今後の見通しであるとか、また、将来はどういうような構想でお考えになっていらっしゃるのかということをきちっと示していただかなきゃならないと思うんですけれども、その点についてお考えをお聞かせください。

塩谷国務大臣 今回の改正によりまして、原子力開発機構にJ―PARCにおける共用ビームラインの建設業務が追加されるわけでございまして、この予算については、共用ビームラインの建設のための補助金、そしてまた、機構には運営費交付金が措置されておりまして、その中からJ―PARCにおける運営費が支出されておるわけでございます。

 また、加速器施設の増強のための施設整備補助金が支出されておるわけでございまして、さらにはまた、共用ビームラインが稼働を始める段階では、共用促進法二十一条に基づいて、利用者の選定や利用者に対する支援を行う登録施設利用促進機関に対しての交付金を支出することになっております。

 これらの経費は、いずれもJ―PARCの中性子線施設の運転、共用を促進するために必要な経費と考えておりますが、我が省初め、原子力機構を初めとする関係者が、どのような成果が創出されるかなど、J―PARCの中性子線施設の状況について丁寧に説明をしていく必要があると考えておりまして、いずれにしましても、こういった予算の獲得については、多額の補助金をしっかりと確保する必要性と同時に、説明責任を果たしていく必要があると考えております。

田島(一)委員 説明責任というところまで言及をいただきました。やはり、国民の理解を得ていく、納税者に対してきちっと説明責任を果たしていくということが重要であろうかというふうに思います。

 このJ―PARCは、それこそ総額千五百二十四億円という多額の国費をおかけになって建設された研究施設でありまして、大強度陽子加速器計画中間評価報告書、これは平成十九年に出されておりますけれども、こちらによると、年間の運営経費が、現在のこの施設の整備状況からいくと、年間約百八十七億円かかるということが見込まれているというふうに書かれています。年間百八十七億円、大変厳しい経済状況の中で、何をやっているのかもわからない、何にお金を使われているのかもわからない、しかし額だけは百八十七億円、国民がそれを聞けば、やはりそう簡単に理解をしていただけるとは思えない状況にあります。

 このJ―PARCとよく似た諸外国の研究施設等々を見ても、例えばアメリカのオークリッジ研究所などのホームページを見ますと、いわゆる科学者向けのページと、それから科学者以外向けのホームページというのをきちっと御用意をされて、ある意味、全く科学には関心や興味、理解のない国民に対してでも、いかにそのオークリッジ研究所がどのようなことをやっているのかというのを、伝える努力を図っていらっしゃいます。

 大臣はこのJ―PARCのホームページとか、ごらんになられましたか。はっきり申し上げて、国民が、ましてや科学だとかの知識がない方が見て、ああ、これだけお金を使っているんだったらしようがないよね、こういうことにやっているんだったら当然だねとわかっていただけるような構成には全くなっておりません。

 わかりやすい広報を行っていくということは、単に、理系を目指している方であるとか地元茨城県の方だけにアナウンスをするのではなくて、やはり広く国民に伝えていくという努力が私は必要だというふうに思うんです。それが予算を執行する側の責任。それを果たしているかと言えば、到底ちょっと追いついていないというふうに感じるんですけれども、その点についてどのような広報をしていくのか、お考えをお聞かせください。

磯田政府参考人 まず、御指摘いただきました定常的な運転についてでございますが、これは今後の我々の予測でございますので、今後、予算として要求する際にしっかり御議論いただければと思っております。

 また、本法人の中期目標、中期計画並びに各年度の計画等でこの詳細を明らかにして、説明責任を果たしていくという必要があろうかと思います。

 また、今御指摘いただきました、広く国民、社会に対する説明責任でございますが、先行しておりますSPring8の例をとりますと、インターネットにおける公開の改善、あるいは施設の一般公開、地元小学校への主張授業、科学技術イベント等への参加などのさまざまな取り組みをしているところでございますが、本J―PARC中性子線施設につきましても、できるだけ謙虚にさまざまな方々の声に耳を傾けまして、国民にわかりやすく、その内容、その成果を伝えるべく努力をしていきたいと思っております。

 特に、昨年十二月にJ―PARCの一部が稼働を開始しましたので、それを契機に、さらに改善すべく検討しているところでございます。研究開発についての御理解をいただけるよう、取り組みを強化したいと思います。

田島(一)委員 次に、人材育成という点についての質問に移らせていただきたいと思います。

 皆さんも御承知かとは存じますけれども、ちょうど、きょうを含む四月の十三日から十九日は、科学技術週間というふうに位置づけられています。もう少しそのあたりについても、PRも含めて広報活動等をやはりやっていただきたいと思うわけであります。

 今、全国的に理数離れが甚だしいというふうに言われています。それこそPISAの調査結果等々からも明らかなとおり、小学生や中学生にとどまらず、高校生も、また大学生、大学院生においてもそのような状況にあるということは、大変危惧しなければならない課題だというふうに思います。

 とりわけ、次世代の科学技術人材を育成していくということが大きな課題でありますが、こうした人材育成にこうした特定先端大型研究施設が活用されていくのかどうかという点について興味があるところなので、質問したいと思います。

 先ほども例にとりましたアメリカのオークリッジ国立研究所、こちらの方ですと、他の研究所と合同で、それこそ大学院生向けに約三週間にわたってのプログラム、中性子の散乱スクールというものを開催されていらっしゃいます。全米にとどまらず、それこそ全世界の科学者を目指している学生たちを集めて、そういった理解を深めさせるようなプログラム、こうしたものをやはり用意していくこと、また、SPring8であるとかJ―PARCについて理解を深め、また、そういった分野で活躍していただける人材を養成していくことというのは何よりも大切だというふうに思うんですけれども、この点について、まず、SPring8の方でどのような現状に取り組んでいらっしゃるのか、また、J―PARCについてこれからどのような活用の方針をお立てになっていらっしゃるのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

磯田政府参考人 我が国の科学技術を支える基盤でございます特定先端大型研究施設を大学院、大学での教育研究に活用するということは、将来の科学技術を支える人材の育成という観点から、有効なものと考えております。

 既に先行しておりますSPring8におきましては、文部科学大臣が定める特定放射光施設の共用の促進に関する基本的な方針、これにおきまして、人材の育成というのを基本的な方向の一つとして掲げているところでございます。通常の利用研究以外に、大学院博士課程在籍者を対象とした萌芽的研究支援課題の設定をし、これを利用に供しております。また、米国と同様の、大学生、大学院生等を対象とした講習会も開催しております。

 さらに、設置者であります独立行政法人理化学研究所と関係大学が、連携大学院制度を活用しまして大学院教育を行っているというようなこともございまして、私どもといたしましては、このSPring8の例を参考にしながら、J―PARC中性子線共用施設につきましても、基本的な方針において人材育成に関する事項を盛り込むことを検討しており、さらに、具体的な事業については、SPring8を参考に、積極的な活用に向けて検討を進めてまいりたいというぐあいに考えております。

田島(一)委員 ありがとうございます。オークリッジの例だけではなく、例えばスイスのポールシェラー研究所でも、二、三カ月という非常に長期間にわたっての研修を行うなど、単にSPring8の例を参考にするだけじゃなくて、諸外国の研究所の事例というものも参考にしていただきたい。やはり、それぐらいの大きな、グローバルな視点での研究プログラムというのを開発し、応用を図っていただきたいなというふうに私は思うわけであります。

 その点についてあえて改めてお尋ねはいたしませんけれども、そういった諸外国がいわゆる若手の研究者を育成していくための早期早期の人材育成に取り組んでいるわけでありますから、その点についてもぜひ心がけていただきたいというふうに思いますし、もっと言えば、中学生や高校生、小学生も含めたこの理数離れという課題からいきますと、今月末にもまたSPring8の施設公開が、二十六日ですか、予定されているというふうに聞いておりますけれども、こうした施設の公開だけではなく、先ほども答弁の中でおっしゃいました、公開講座であるとか出前講座等々の実施をなさっていらっしゃるわけでありますから、施設見学それからまたサイエンスキャンプなど、いろいろな研究内容それから成果をわかりやすくやはりお伝えしていただき、一人でも多くの方が興味と関心を持っていただいて、次の時代を支えていただけるような人材育成に取り組みをしていただきたいと思います。

 もうこの点についてはお尋ねいたしませんけれども、要望としてぜひ聞いておいていただきたいと思います。

 さて、先ほども申し上げましたけれども、他の先端研究施設との共用についての問題を取り上げさせていただきたいと思います。

 これも、どちらも理由があって、進めていいのか、また、やらない方がいいのか、もろ刃の剣でありまして、申し上げるにも大変整理がつかない部分でもあるんですけれども、他の先端研究施設と共用しなければならない、この点については、それこそ平成十八年の第三期科学技術基本計画で、次世代スパコンであるとか放射光源のような先端大型共用研究施設については、多額の経費等を要しているので、広く共用に供することが世界最高水準の成果の創出につながる、そのため、国が責任を持って整備し、共用を推進していくべきであるというように閣議決定されているところでもあります。

 共用を図っていく、これは、もったいない精神と申しますか、無駄を省いていくというような点では納得もできますし理解もできるところでありますが、例えば、大学法人や独法の研究機関のそれぞれの自主性、自律性というものを考えたとき、共用というものがややもするとブレーキになっていく可能性もあるわけであります。

 こうしたさまざまな問題を抱えながらも、他の先端研究施設との共用という点についても言及されてきた今日でありますけれども、これまでのこの共用促進法の対象としている基準であるとか、この共用促進法とそれこそ創出事業の相違点などを確認させていただきたいと思うんです。その点についていかがお考えなのか、お聞かせください。

磯田政府参考人 本法案で御議論いただいております先端大型研究施設の共用につきましては、要件としては、重複して設置することが多額の経費を要するため適当でないこと、先端的な科学技術の分野において比類のない性能を有すること、広範な分野において多様な研究等に活用されることにより、その価値が最大限に発揮されることということで、巨額の国費を使わせていただいているということで、官民あわせてできるだけ多くの方々に御活用いただこう、そういう制度であり、これを法律でおつくりいただいているというものでございます。

 一方、これほどの金額ではございませんが、各大学研究所には、さまざまな先端的あるいは大型の研究装置がございます。これにつきましては、それぞれの大学研究所が共同利用あるいは専用等の形でやっておりますけれども、その施設の有効活用という観点からは、できるだけ広くその他の方々にも可能な限りお使いいただこうということで、先端研究施設共用促進事業というものをスタートさせております。

 これは、例えば当該大学で利用支援者が不十分であるとか、あるいは運転経費が不足するために他の方に御利用できないというようなものにつきまして、財政的な支援を行うことで共用体制を促進していこうというものでございます。

 ただ、御指摘のとおり、自主性の問題と共用の問題というのは非常に二律背反の面がございます。研究が進めば進むほど専用したいという側面もございますが、高価なものであるということから共用も進めなければいけないということで、その装置の次代のステージ、例えば五年後には非常に安価になる場合もございますので、その場合はかなり専用が可能になりますが、巨額な金額の場合にはそれを共用でお願いをする。ただ、その場合にも、公平な選定機関とか、あるいは、利用についての明確な大学の自治を尊重するルールとか、そういう体制づくりが大事であると理解しております。

田島(一)委員 本当に二律背反の課題というのは、どちらを優先すべきかといっても、非常に難しいところであります。

 しかしながら、やはり科学技術基本計画の観点から申し上げますと、大学の自律性であるとか自主性を持っての研究を進めるという一方で、きちっとこの一体的な体制整備というものをやはり集中的に行っていかなければならない。そうしないと、無尽蔵にある財政状況にないわけでありますから、そのあたりの交通整理というものをきちっと文科省がかじ取りをやらないと、これ、それぞれ独立した法人格を有しているだけに、大変予算要望等々にもこたえることができない、研究開発等にもそれぞれの自主性を盾にするだけではやっていけないというような状況にあるわけであります。

 その点についても文科省がきちっとリーダーシップをやはり発揮していくということ、その点については、十分にお考えをいただいた取り組みをしていただきたいというふうに強くお願いをしておきたいと思います。

 次に、平和利用の確保という観点からお尋ねを申し上げたいと思います。

 一般的に申し上げて、科学技術の進展、発展は人類の進歩によって有益だというふうにとらえてきました。しかしながらその一方で、場合によっては、不適切な利用に対するおそれ、とりわけ、世界的に見ても大変脅威を及ぼしている大量破壊兵器の開発等々、思わぬ方向へ悪用されていくことも懸念をされるところでもあります。

 こうした状況を勘案してみると、今回のこの特定先端大型研究施設が万が一にも不適切な研究開発に悪用されないだろうか、そのようなやはり心配はここできちっと確認をさせていただきたいというふうに思っております。

 今日まで、この施設利用について、SPring8についてはガイドラインを設けていらっしゃるというふうに思うんですけれども、どのような内容のガイドラインをつくっていらっしゃるのかを御報告いただきながら、続くJ―PARCについてのガイドラインの内容について御説明をいただきたいと思います。

磯田政府参考人 まず、SPring8やJ―PARC中性子線施設につきましては、科学技術振興の観点から、科学技術に関する試験、研究及び開発のための汎用的、基盤的な施設であると考えております。専ら、軍事に関する技術の試験、研究及び開発への利用を想定しているものではございません。

 こうしたことから、SPring8につきましては、登録機関の定めております放射光共用施設の利用研究課題選定に関する基本的考え方におきまして、課題の選定に当たり、その実施及び成果の利用が平和目的に限定されるべきこと等が規定されておるところでございます。

 また、J―PARCにつきましても、現在検討中でございますが、同様に、課題の選定基準として平和目的への限定が盛り込まれるべきものと考えております。

 登録施設利用促進機関におきましては、これらの基準を踏まえて利用者の選定を行うことになりますので、本施設の共用に当たり、平和利用の確保というものは図られると考えておるところでございます。

田島(一)委員 今回も私、質疑をつくるに当たって、諸外国の研究所の平和利用等々についてどのような規定がされているのかをいろいろと拝見をいたしました。それ以上に、まず利用者をどこまで制約するのかというような問題等からすると、例えば、今回、SPring8の利用者の限定については、国籍、身分、研究分野を問わずに、すべての研究者、技術者に平等なチャンス、機会を提供するというふうになっており、一見これは、大国としての大変大きな、懐の広い態度だなというふうにも評価できるんですけれども、この広いお心が、逆にさまざまな悪用等々のきっかけを生み出すのではないかというような心配も、実は一面にあるわけであります。

 アメリカの例えばオークリッジ研究所なんかも、きちっと利用者と知財等々を含めたアグリーメント、契約書というものを結んでいるわけでありまして、そういったもので判断をしなければならないだろうし、また、実際に平和利用に限定をした研究がなされたかどうかを確認するには、それぞれが提出をいただいている利用報告書ではかり知るよりほかにすべはないように私は思うわけであります。

 この利用報告書の現状というものも見てみますと、研究成果を公表したことになる報告書の提出ですけれども、これをやることによってビームの使用料が無料になるとかいうような条件があって、皆さんそれぞれお出しいただいているんだろうというふうに思いますが、残念なことに、この報告書のボリュームというのが、わずかA4の紙切れ一枚、紙切れと言うとまた失礼になるんですけれども、A4の紙一枚に結局おまとめになって提出をいただいているようであります。オークリッジ等々の報告書もどうやらA4一枚にまとめられたペーパーで出されているようであり、最初これを見たとき、ああ、国際標準として決められているのかなというふうに思ったんですけれども、どうも国際標準だとかに決まっているわけでもない。

 ある意味、研究の支障にはならないようにしながらも、実際にどのような利用をされてきたのかというのをはかり知るには、利用報告書を詳細にやはりお出しいただくしか私はないのかなというふうに思います。

 例えば、研究データ等々と突き合わせて一々どうだったかというようなチェックをしているほど人材が豊富なわけでもありませんよね。それでありますと、性善説に立って利用者に対しての求める報告書の内容をやはり充実させていくということが、私は何より大事なのではないかというふうに思うわけであります。

 とりわけ、二十四時間開設等も今後検討されているわけでありますし、長時間にわたって研究に没頭しなければならないという今回のこの施設のオープンについては、その合間の時間に何をやっているのかも全くわからないわけでありまして、施設の管理者がずっとそばに座ってチェックをしているわけにもいかない。それだったら、いわゆる秘密の守秘義務等々が崩壊してしまうという問題もあるわけでありますから、こうした極秘の状況の中でいかがわしい研究等々がなされないようなことをきちっと担保するためには、監視体制であるとかをこの利用報告書等々を通じてより綿密にやっていくしかないのかな。それがやはり、ビームの使用料を無料にさせるであるとか、国費を使っての研究者としての一定の私は責務だというふうに思うわけで、面倒くさいとか手間がかかるだとかでは済まされないというふうに思うんです。

 この平和利用という点についての監視体制、また、そういったいかがわしい、不適切な利用を阻止させる方法として何かお考えになっていらっしゃるのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。

磯田政府参考人 まず研究課題につきましては、非常にボリュームの大きいもの、小さいもの、それから、非常に重い課題、小さい課題がございますので、それに応じて考えてまいりますと、研究報告書、今、用紙一枚ということで少ないのではないかという御指摘について、なかなかそれを、現段階ではこれはこのままで行きたいとは思っておりますが、しかしながら、やはりその研究成果を広く公開すべきであるということで、この成果につきましては、例えばシンポジウム等で公表していただくとか、あるいは学会等で発表していただく等、それを社会に説明していただこうということで考えております。

 また、実際の研究の内容につきましてでございますが、これは、安全管理あるいはテクニカルサポートという観点からも、実験補助者の実験試料の確認、あるいは二十四時間交代で実験状況を把握しサポートする、こういう体制をつくろうと思っておりますので、研究者の申請内容と異なる実験が行われない、平和利用を維持するということについて、こういうものを通じて努力をしてまいりたいと考えております。

田島(一)委員 わかりました。

 こうした巨額の国費を投入して行われる研究施設での研究開発であります。どうぞ、その責任と自覚をしっかりと胸に刻んでいただいて、それぞれの研究者が個々の研究に専念できるような体制はもちろん担保しつつも、やはり、納税者に対しての説明責任というものをきちっと図っていただくことが何よりも肝要ではないかというふうに思っておりますし、とりわけ、日本国憲法の理念にのっとった平和利用という点は、この日本国内の研究施設だけではなく、広く万国共通の課題ではないかというふうに思っております。平和国家としてのその立場をしっかりと踏まえていただきながら、適切な科学技術の発展、そして、国際平和に対しての貢献をしていただくということが何より肝要であります。

 その点の決意も含めていただいて、最後に、大臣からの御所見等々いただけたらお願いをしたいというふうに思いますが。

塩谷国務大臣 ただいま御指摘いただいた点、重要な点でございまして、我々国としても、基本的な方針に基づいて今回の共用についても検討して、できるだけ国民に理解をされる、特に原子力等の問題については、大変難しい、高度な内容が多いものですから、そういう点で、安全性も含めて、また、補助金を獲得する上でしっかりと国民一般に広く理解されるような努力をしつつ、この研究開発を進めてまいる所存でございます。

 今後とも一層の努力を重ねてまいりたいと思っておるところでございます。

田島(一)委員 ありがとうございました。終わります。

岩屋委員長 以上で田島君の質疑は終了いたしました。

 次に、山口壯君。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 きょうは、J―PARCの点についていろいろお聞かせいただいた後、さらにまた別の問題についても聞きたいと思うんです。

 いろいろ、今、田島議員の方から聞かせてもらいました。私は、ポイントを幾つか絞らせていただきたいんですけれども、まず一つ目は、中小企業に使いやすくなるような工夫をどう考えておられるか。

 実は、SPring8はいわゆる私の地元にあるんですけれども、その地元の企業にとっては雲の上の存在、なかなか難しくて近寄りがたい。そういう意味で、産業利用という観点からいくと、まだ工夫が必要だと思うんです。SPring8でいろいろ経験を深められて、そして今回、このJ―PARCというものにもお金を出すということですから、その経験も踏まえながら、中小企業がどういうふうに使いやすくなるんだろうかということについて、まずお聞かせください。

塩谷国務大臣 この施設の利用者の選定については、まずは公平また透明性を確保していかなければならないわけでございまして、J―PARC等の選定に当たっても、科学的な価値あるいは産業利用の価値、社会的意義、さらには実験等の安全性を含めて、課題の性格に応じて定めていると考えております。

 特に中小企業にということでございますが、いずれにしても、公平性、透明性のある選定が行われる中で、特に中小企業の利用に対して、できるだけ適切な情報提供や相談などの利用促進業務の実施が図られるように努力をしてまいりたいと考えておりまして、やはり情報提供そして相談という直接の接触をして、この利用促進を図ってまいりたいと考えております。

山口(壯)委員 情報提供とか相談というのは具体的にどうされるんでしょうか。

磯田政府参考人 本J―PARCにつきましては、企業の方々の組織ができ上がっておりまして、そこでいろいろな要望等を承っておりますし、同時に、研修あるいはさまざまの講習会活動もやっておりますが、我々といたしましても、それに向けてさまざまな研修会を開いてまいりたいと思いますし、先ほどの審議にもございましたが、広報活動の改善も、ホームページを含めて努力をしたいと思っております。

山口(壯)委員 大体、そのグループというのはいわゆる大企業の方が多いと思うんです。中小企業の方がおられるかどうか、いかがですか。

磯田政府参考人 まずスタートでございますので、会長、副会長以下、大企業が中心であるということはやむを得ないと思います。

 ただ、私ども、既にSPring8の実例でも御案内のとおり、少しずつ中小企業の方たちに、この施設を利用することがどのように研究上効果があるかということを広く実施するためのトライアルを、今現在、実際にやっているところでございまして、そういう活動を充実したいと思いますし、また、茨城県とも連携をしながら、茨城県、地元のまずは中小企業の御要望等を施設の稼働に十分反映させていきたいと考えているところでございます。

山口(壯)委員 一回使うと四十万とか五十万とかというお金だったと思うので、中小企業の方にとっては特に大変でしょう。ですから、いろいろ、人工衛星とかでも日本の中小企業というのが世界をリードするという面も見えているようですから、ぜひ後押ししてあげてください。

 そして、それを今外国にも門戸を広げるという話がありました。外国に門戸を広げた場合に、研究成果が、外国の会社が例えば特許を申請して、知的財産権を外国に持っていかれると逆に日本の会社が使いにくくなる。何かちょっと調子悪いですね。

 したがって、外国の会社がJ―PARCを利用して研究成果を上げた場合にも、変な形で外国の知的財産権にならないように、何かうまい工夫は考えておられますか。

塩谷国務大臣 外国の企業の利用については、今お話あった、いわゆる特許を取得することを目的として成果非公開の利用の申し込みがあった場合には、やはり我が国の国際競争力の維持のため、あるいは日本の企業が積極的に活用していただくような状況をつくるため、そういう環境をつくることと、やはりお互いに、外国の施設と同じような条件で、バランスを整えた上で、諸外国の同様の施設等具体的な例を踏まえて慎重に検討する場合があるわけでございます。

 具体的に、そういったことをあえて阻止するとかというのはなかなか難しいし、できるだけ公平性でやっていきたいと思っておりますが、そこは、お互いの国々のバランスをもって個別に判断していかなきゃならぬと考えております。

山口(壯)委員 塩谷大臣はいい大臣ですから、私、突っ込みません。事務方、今の答弁、補佐してください。

磯田政府参考人 まず、成果の公開というのが中心になっておりますので、成果公開ということは基本的に特許の取得につながらない。もちろん、そこに抜け道を起こすことのないように、そこはしっかり対応してまいりたいと思っております。

 そういう成果公開を前提にする場合については、海外の利用者につきましても、それを平等に、国際協調、国際貢献の観点も含めて対応していくわけでございますが、問題は、外国企業等が特許を取得すること等を目的として、成果を非公開で来る場合ということの御質問であろうと思っております。

 これにつきましては、先ほど大臣からもお話ございましたように、多額の国費により建設されているということ、我が国の国際競争力という観点から、まずは国内の企業あるいは国内の学術、科学技術研究の推進と考えておりますが、一方で、米国のオークリッジにおきましては、国内外の企業の利用について差をつけていないということもございまして、その辺とのバランスで現在悩んでいるところでございます。

 まずは、SPring8でもそうでございますけれども、国内の利用が大半でございますので、一つ一つ案件について慎重に検討しながら考えてまいりたいと考えておるところでございます。

山口(壯)委員 今の答弁では、外国からの会社が使うに至る場合にはまだ対応を考えていない、こういう答弁ですね。

 したがって、オークリッジの研究所においても、何かアグリーメントというのをつくっているそうですね。契約に署名をして、そういう知的財産権の問題について云々という約束を交わすようです。そういうことを考えられていますか。

磯田政府参考人 海外におきまして、今御指摘いただきましたように、一定のアグリーメント、一定のその貢献等の関係において、海外で利用させているということは承知をしております。その辺もしっかり踏まえながら検討しているというところでございます。

山口(壯)委員 だから、やられるんですか、やられないんですか。

磯田政府参考人 まだ現在検討中でございまして、まず国内の利用を優先したいと考えているところでございます。

山口(壯)委員 ということは、外国の会社にはまだ門戸を開放しない、こういうことですね。

磯田政府参考人 私どもといたしましては、まず学術的な研究の利用は既に予定されておりますが、企業等の利用につきましては、これまでのケースですと比較的少なかったわけですけれども、既に中性子線につきまして原研で先行しております施設におきましてはかなりの期待があるということを考えますと、委員御指摘のように、企業の利用というのは拡大すると想像しておりますが、現段階で海外からそのようなお話があるのではないかということは我々の情報としては把握していないものですから、現段階で、それについてはまだ時間をかけて検討しているというところでございます。

山口(壯)委員 これはある意味で、日本の産業力を守るというところに視点を置いてもいいと私は思っています。

 したがって、外国からの会社が来たときには、知的財産権について日本の会社に不利にならないようによろしくお願いしますということにサインを求めればいいわけです。そういうことについて積極的に考えてください。答弁、いかがですか。

磯田政府参考人 この施設が世界の三大拠点施設になるということでございますので、国際的な観点から、いわゆる特許とか我が国の利益というものを担保し、かつ、それを開くという委員の御指摘については、十分検討してまいりたいと思っております。

山口(壯)委員 役人答弁が続いているからこれ以上言ってもしようがないけれども、しかし、お金を出す以上は日本の会社のこともしっかり考えていますよと、税金ですから、よく考えてください。これは附帯決議に入るのかどうかわかりませんけれども、今の答弁では少々中途半端ですね。考えていないという答弁ですから。

 それから、経費の問題、先ほど百八十七億円という数字が田島議員の質問に対して出てきました。この運用の経費について、ピークのときの基本料金をもとに考えているとかというのを資料で読んだような記憶がありますけれども、何か腑に落ちないんですね。ピーク時の基本料金でやれば高くなるに決まっているような印象を私は受けるんですけれども、この運用の経費を抑えるための具体的工夫はどういうふうに考えておられますか。

塩谷国務大臣 経費については年間通じて運用した場合ということで設定をしておりますが、当然ながら、効率的な指摘を受けておりまして、例えば業務委託を一括して契約するとか、また保守の点検等の期間を一番電力料金の高い夏季に設定するとか、そういったことを考えておる。また、運転実績を踏まえてさらなる効率化を検討していくなど、引き続き効率化については考えてまいりたいと考えております。

山口(壯)委員 基本料金はピーク使用電力で決まる年間固定費となっている。

 この契約方法の見直しは行うんでしょうか。

磯田政府参考人 利用料金につきましては、それぞれ今現在検討中でございますが、例えば初期の段階にはビームが少ないということ等もございますので、これからの建設の経緯を踏まえて、公平かつ妥当な負担になるように考えていきたいと思っております。

山口(壯)委員 ピーク時の使用電力量を基本に考えるのが妥当な計算方法でしょうか。

磯田政府参考人 失礼いたしました。J―PARCの各装置稼働時の使用電力につきましては、実施電力需要量を推定して、フルコスト時の最大電力と年間電力量を予測して積算はしておりますけれども、それを具体的にどのように削減するかということにつきましては、施設の保守に必要な停止期間を電力料金の高い夏季に設定するとか、あるいはこの契約においてどのような契約形態をとるかというようなことを含めて、現在、経費の、電力量の削減について検討しているというところでございます。

山口(壯)委員 見直しもあり得べしという答弁ですか。

磯田政府参考人 削減に努力してまいりたいと思います。

山口(壯)委員 努力するということは、見直しも考えているということですか。

磯田政府参考人 努力の結果として、見直しの必要があれば見直しをさせていただきます。

山口(壯)委員 余りこういう答弁になると、この法案、本当に賛成できるのかという気にちょっとなりますね。後でよく相談させてもらいます。どういうことが必要なのか、ちょっとよく考えさせてください。

 さて、それではもう一丁、別の質問に行きましょう。

 独立行政法人というもの、果たしてよかったのかという疑問を多くの方が持っていると思うんですね。私も、国立大学について、こういう官から民へという話が本当に当てはまるのかというのを、一番最初に議論させていただいたことを覚えています。例えば、京都大学にサンスクリット語という有名なものがある、しかし、もうかる話じゃないですから、そういうことについては、もうかるものしか置けないのであれば、どんどんなくなってしまう、そういうことが国立大学のあり方として本当にいいのかどうかということを問題提起した覚えがあります。

 もう一つは、文部科学省の関与。独立行政法人になるんだったら、そういう関与がなくなっていってしかるべきでしょう。そういうことがどうなっているのかということを疑問に思うわけですね。

 きょうは幾つか具体的に事前に質問を投げていますけれども、筑波大学の例から行きましょう。

 筑波大学の理事をされていた磯田文雄さんという人は、今何をされているんでしょうか。

森口政府参考人 御質問のございました磯田文雄につきましては、今答弁をしておりましたとおり、文部科学省の研究振興局長をやってございます。

山口(壯)委員 この磯田さんが、その磯田さんですか。なぜ理事がここにおられるんですか。

森口政府参考人 今申し上げたとおり、平成十六年四月から平成十八年三月まで筑波大学理事に在職しておりました磯田文雄につきましては、現在、文部科学省研究振興局長でございます。

山口(壯)委員 四年の四月から六年の三月まで二年間おられたんですね。

 その六年の三月以降は、磯田さん、どうされたんですか。

森口政府参考人 その後、平成十八年の四月から平成十八年十月まで文部科学省の官房審議官、高等教育局担当をしてございます。その後、平成十八年の十月から平成二十年七月まで高等教育局の私学部長をしてございます。その後、平成二十年七月から現職の研究振興局長でございます。

山口(壯)委員 私学部長ということは、今の河村さんの前任になられるんですか。そうですね。

 そうしたら、その磯田さん、今の局長ですね、筑波大学に行かれる前はどうしておられたんですか。

森口政府参考人 その前は、平成十四年四月から平成十六年三月まで初等中等教育局の審議官でございます。それで、命として大臣官房の総括会計官をやってございました。

山口(壯)委員 総括会計官から筑波大学の理事に二年間行かれて、その後、審議官、私学部長、局長、こう来ておられるわけですね。

 その磯田さんの後に名前が出てこられる方が泉紳一郎さんになっているんですけれども、この泉紳一郎さんは磯田さんの後任ですか。

森口政府参考人 一点だけ訂正させていただきます。

 磯田文雄の筑波大理事の前は、初等中等教育局の審議官ではなくて、視学官でございます。訂正させていただきます。

 それから、泉紳一郎でございますけれども、泉紳一郎につきましては、磯田文雄が平成十八年三月まで理事をやっておったわけですけれども、その後、筑波大学の理事を平成十八年四月から二十年七月まで務めております。

山口(壯)委員 この泉紳一郎さんという人は、その前は何をされていて、その後は何をされたんですか。

森口政府参考人 筑波大学の理事に就任する前は、平成十六年七月から平成十八年三月まで文部科学省の官房審議官、高等教育局担当でございます。

 それで、筑波大学の理事の後は、現職でございますけれども、平成二十年の七月から現在まで文部科学省の科学技術・学術政策局長でございます。

山口(壯)委員 泉紳一郎さんという人は、文科省の高等教育局の審議官をされていて、筑波大学に行かれて、科学技術・学術政策局長に今なられている、こういうことですね。

 そうしたら、この泉さんの後の人がこの田中敏さんという人ですか。

森口政府参考人 泉現局長が平成十八年四月から二十年七月まで筑波大学理事を務めまして、その後、平成二十年七月から田中敏が筑波大学理事を務めております。

山口(壯)委員 この田中さんは、それまで何をされていた方ですか。

森口政府参考人 田中敏の前職は、平成十九年七月から二十年七月まで大臣官房審議官、スポーツ・青少年局担当でございました。

山口(壯)委員 今、私、筑波大学だけ見ているんですね。北海道大学から南は沖縄まで全部調べました、何年も何年も。これは正直、物すごい作業をやりましたよ。最初にこの資料をまず配ってからやった方がよかったかもしれないけれども、まずちょっと、ひょっとしたら磯田さん、まさか同一人物だと思わなかったけれども、似たような名前の人がおられるから、そこから聞いたんですけれども。

 今、筑波大学だけやっていますけれども、これはどういうことが起こっているかというと、独立行政法人と言いながら、二年単位のきっちりはかったような周期で、磯田文雄さんが行かれて、その後、文部科学省の後任の泉さんが行かれて、その後、文部科学省の後任の田中さんが行かれている、こういうことでしょう。八年の七月から行かれているんですね、去年の七月から。これは独立行政法人じゃないじゃないですか。どこが独立なんですか。

 国立大学法人と言っているんですか。これはひょっとして、独立の字を抜いたのは何か意味があるんですか。なぜ国立大学法人というふうに独立の字を抜いたんでしたっけ。

森口政府参考人 これは委員よく御承知のとおりでございますけれども、法律に基づきまして、国立大学法人法に基づいて設置されたものでございますので、国立大学法人という形になっていると承知しております。

山口(壯)委員 なぜ独立の字が抜けたんですか。

森口政府参考人 当時、同様に独立行政法人という枠組みができたわけでございますけれども、そういう中で、国立大学法人、大学としての運営を大学としてしっかりやっていく、そういう趣旨もあったのかというふうに承知しております。

山口(壯)委員 ローテーションになっているということは、私は以前、約三年前ですけれども、この問題を取り上げさせてもらいました。当時は、独立行政法人というか、国立大学法人化されて間もないし、前の人が残っているんです、こういう答弁もありました。もう一丁は、大学から求められているんです、望まれている人だからというのがありました。

 では、この人たちは、二年たったらみんな飽きられるような、大した人材じゃないわけですか。

森口政府参考人 国立大学法人の理事につきましては、今まさしく委員お話しになられましたように、各大学の学長が、みずからの考え、責任に基づいて選考、任命を行っているというふうに考えております。

 文部科学省の出身者の人事につきましても、大学からの要請に基づき就任しているということでございまして、その都度、その場その場におきまして、大学の学長と当方との間での話し合いに基づきましてこのような人事が行われている、そのように承知をしております。

山口(壯)委員 大学からの要請に基づいて行っていると。では、大学からの要請に基づいて出ているんですか。

森口政府参考人 その都度その都度におきまして、双方でよく話し合いをしまして、学長の希望等も踏まえまして、話し合いの結果としてこのようなことになっている、そのように承知しております。

山口(壯)委員 これは出向という概念ではないんですね。

森口政府参考人 いわゆる出向ということでございます。(山口(壯)委員「出向ということですか」と呼ぶ)出向ということです。

山口(壯)委員 出向、文部科学省の関与というものに若干近いような気がするんですけれども。いや、正直、出向ではありませんという答弁を予測したんですけれども、出向ということであれば、文部科学省、では、ちなみに、これは正直に書かれているんだ。

 信州大学のホームページに、西尾さんという方、この方も日本私立学校振興・共済事業団参与から行かれているから、大体文部科学省の関係の方でしょう。文部科学省からの出向者ということで西尾さんの経歴がばんと出ているから、むしろこれは、ちょっと私は違和感があったんだけれども、独立行政、独立というのがいいかどうかという議論はあるにせよ、全然独立していないじゃないかと。文部科学省、何か知らないけれども、これは全国にわたって、こういうのがローテーション人事であるんですよ。

 順番にやっていきますけれども、こういうことを改めるべし、こういうことをやっているのは少なくとも私一人じゃないですよ、ほかの人もやはりずっと見ているわけですね、きっと。

 そんな中で、それはポストも困るでしょう、だけれども、例えば大学に教授という格好で行ってもいいし、あるいは事務局長で行かれても、二年ごとにかわるんじゃなくて、事務局長で行かれたら、そこでずっといる、そんな二年ごとにかわったりしないというようなことであれば、私はまだ納得しますよ。だけれども、この二年ごとにくるくるかえて、何か後任は文部科学省の人だという感覚がおかしいと思うんです。

 ちなみに、徳島大学、一番最後の質問に、私、きのう伝えましたけれども、徳島大学の理事をされていた中村廣志さんと小林和久さん、この方々は前任と後任の関係でしょうか。

森口政府参考人 中村廣志につきましては、平成十六年四月から平成十八年三月まで徳島大学理事に就任しておりました。

 また、小林和久は、その後の平成十八年四月から平成二十年四月まで徳島大学理事に就任しておりました。

山口(壯)委員 前任、後任の関係ですね。

 この方々、調べてみましたら、最初に中村廣志さんが室蘭工業大学の事務局長から徳島大学に行かれているんです。その後の小林和久さんも、前職は室蘭工業大学の事務局長だったんです。間違いないですか。

森口政府参考人 中村廣志の徳島大学理事の前職は、室蘭工業大学事務局長でございます。

 それから、小林和久の徳島大学理事の前職は、室蘭工業大学副学長・事務局長でございます。

山口(壯)委員 結局、室蘭工業大学の事務局長が、ところてん人事で次は徳島大学に行くことになっていた。こういうのはよくないですよ。どこが独立しているんでしょうか。国立大学法人の独立の字がないからこれでいいんだということじゃないんでしょう。

 そういう意味では、こういう話は、文部科学省としてポストがどうのこうのというような、例えばここの徳島大学に行ったんだったら、二年でかえない。これはもうしっかり二年なんですよね。四年の四月から六年の三月まで、それから六年の四月から八年の四月と今言われましたけれども、しっかり二年なんですね。そういうのはよくないと私は思いますけれども、官房長、いかがですか。

森口政府参考人 まず、今の徳島大学の件につきましては、前職がそれぞれ室蘭工業大学であったわけでございますけれども、その他の人事を見てみますと、こういう同じ大学から同じ大学に移るということは非常にまれでございますということは、一点申し上げておきたいと思います。

 それから、役員の出向制度でございますけれども、その導入の趣旨というのは、やはり一つには、短期の在職期間で退職金をもらって、いわゆる退職金をもらった後でまた次に行くというような、そういう多額の退職金ということについての批判にこたえる、それが一点ございますし、また、現職ということでありますので、職員の職務経験の多様化、そういう点から、経験を積むという意味では、双方、それぞれ人事交流等もあろうかと思いますけれども、そういう点でも、これはこれとして非常に重要なことだ、そのように考えております。

山口(壯)委員 職務経験の多様化ということは、文部科学省のローテーション人事としてされている、こういうことですね。それはよくないんですよ。

 退職金は出してもいい、しかし、徳島大学に行きっ放しでいいんですよ。次に帰ってくるというような話がおかしいんですよ。それだったら独立云々じゃないということ。それでも文部科学省の関与がそこに残るというのが私はよくないと思うんですけれども。これは関与と言わずに何と言うんですかね。経験を積む。ほとんど一緒でしょう。よくないですよ。

 現実に、これは、誤りは改むることはばかるなかれ。確かにそうでしょう。この国立大学というものが、よくない、法人化して独立行政法人云々と言っているけれども、こういう話もあるし、よくないということで、私はやはり、日本のすそ野を広くするために、高い山というのはすそ野が広いわけですから、そのすそ野を広くするためには、どうしても、余りもうけ主義でいくべきじゃない、もうかる学問しかしないとかそういうことじゃなくて、基礎的な学問あるいはもうからない学問でも、世界の、やはりここは京都大学しかないとかそういうものを大事にしていく観点が、もう一度振り返って、いいのかなという気がしますが、いかがでしょうか、大臣。

塩谷国務大臣 今御指摘の国立大学法人と文科省との人事の観点につきましては、今、最後にお話があった、もうからなくてもいい、そういったことが実際に独立してできるのかどうなのかということも含め、大学はやはり国立大学法人として当然ながら国と関与していくのが私は当たり前だと思っておりますし、人事で何が問題かをまた御指摘いただいて、基本的には学長の要請に基づいて文部省の職員が出向しているという形でございまして、そういった役職が必要だということで私どももその人事をしているつもりでございます。

 その点で、どういう問題点があるのか。先ほど来、よくない、よくないというお話もございましたが、どういうことでよくないのか。

 いわゆる国立大学が大学法人になって、いろいろな自由な研究開発等も、また民間からのいろいろな産学官の共同研究等も進んでいると思っておりますし、また、当然まだ改善しなきゃならない点はたくさんあると思いますので、特に今の人事の点では、大学運営に基づいた考え方で要請されていることが基本でございますので、もちろん今後改善に努めてまいりますが、より一層の国立大学法人としてのこれからの発展を考えながら、また検討すべき点は検討してまいりたいと考えております。

山口(壯)委員 かわいい子には旅をさせろという言葉もあります。大学のいろいろな自主性あるいは自律性、そういうものを大事に考えるんであれば、こういうローテーション人事はやめるべきです。

 そして、これが特に、いわゆる官僚機構のローテーション人事というところがあるから、政治家はそういうことをきちっと正していかなきゃいけない。乗っかっているだけではだめですよ。きちっと指導していく、そういうことが今求められているんです。

 そういう意味で、例えばちょっと京都大学にいきましょう。

 京都大学、これも事前に通告していますね。木谷雅人さんはいつからいつまで在職されていたのか、あるいは、その前何をされていたのか、今何をされているのか、お答えください。

森口政府参考人 木谷雅人でございますけれども、平成十七年十月から平成二十年七月まで京都大学の理事に在職をしておりました。京都大学理事の前職は、文部科学省大臣官房審議官、研究開発局担当でございます。現在は、平成二十年の七月から独立行政法人国立高等専門学校機構理事に就任しております。

山口(壯)委員 要するに、文科省の研究開発局の審議官から文科省関係の機構の理事に行かれた、こういうことですね。

 その後任になるんですか、この大西珠枝さんという方は。どこから行かれていますか。

森口政府参考人 大西珠枝につきましては、平成二十年七月から京都大学の理事に就任しておりますが、大西の前職は文化庁文化財部長でございます。

山口(壯)委員 森口さんの後輩になられるわけですね。この方は、京都大学に行って、そして京都大学のために頑張ろうと、この方は京都大学出身みたいだから、そういうつもりで行かれているんでしょうか。

森口政府参考人 これは繰り返しで恐縮ですけれども、学長と文科省との話し合いにおいて、特に学長からの希望等に基づきまして、話し合った結果としてこのような人事になっているところでございます。

山口(壯)委員 我々が政権をとった場合は、こういうごまかしのレトリックは通用しないですよ。そんな大学の要請に基づいて云々なんという役所のレトリックに、大臣、乗っちゃいけないです。

 今、我々が大学をどういうふうに育てるかという観点から、かわいい子には旅をさせてください、そして本当の意味での大きな羽ばたき方をできるように見守ってあげてください。そういう意味では、この大西珠枝さんという人もいずれ文科省に帰るかもしれないという含みを今残されましたけれども、そういうことでは、結局、文部科学省の関与というのは、よくないですよ。

 アメリカの大学、いい面も悪い面もありますけれども、私もアメリカの大学で博士号をもらったわけだからちょっとよく見えてしまうかもしれないけれども、だけれども、現実に彼らは、例えば教育省みたいなものがあって、こんな人事なんて一切ないですよ、一切ない。それぞれの長所があって、それぞれの創意工夫で頑張って世界レベルの大学になっているんですよ。

 それが、こういう文部科学省の言ってみればところてん人事というかローテーション人事の中に組み込まれて、どこをとっても大して変わりがないということでは寂しいじゃないですか。そういう意味では、我々は、こういう観点から、早く、文部科学省の人事のあり方の中で大いにこれは見直すべきだというふうに思います。

 せっかくだから、事前に通告しているわけですから、もう少し聞いていきましょう。

 東京大学の理事をされていた上杉道世さんという方がおられるんですね。もう面倒くさいから言いますけれども、この方は科技庁の審議官等を歴任された後、東京大学に四年の四月から七年までおられて、今、日本スポーツ振興センターという独立行政法人の理事をされているわけですね。

 その後任に、これは辰野裕一さんという方が行っておられるんでしょうけれども、この方は文科省の高等教育局の審議官から行かれた。それで今現在に至っていると。旧帝大と言われるようなところは大体こういう人事をされているんですね。京都大学とか東京大学、大体同じですよ。

 私、前に質問をずっとしたときに豊田三郎さんという方がおられたけれども、この方についても、きょう質問の紙に挙げていますよね。

 名古屋大学におられた豊田三郎さん、ここで大臣秘書官もされていましたよね。その方は、どういう立場で名古屋大学におられたんでしたっけ。その直前は何をされていたのか、今何をされているのか、教えてください。

森口政府参考人 豊田三郎でございますが、平成十七年四月から平成十九年三月まで名古屋大学理事に在職しておりました。名古屋大学理事の前職は、文化庁文化部の宗務課長でございます。現在は、平成十九年四月から公立学校共済組合理事に就任してございます。

山口(壯)委員 この豊田さんが今おられる公立学校共済組合というのは、文部省のいわゆる管轄というのか関係のところですね。

森口政府参考人 そのとおりでございます。

山口(壯)委員 私の記憶に間違いなければ、工藤さんという、私もよくお世話になったけれども、局長さんもされたり、審議官もされていた方がここの共済組合に今おられると思うんですけれども、それで間違いないですね。

森口政府参考人 間違いございません。

山口(壯)委員 この豊田さんの例も含めて、いわゆる特に旧帝大というのが顕著ですけれども、文部科学省の言ってみれば何か指定席みたいになっているわけですね。

 関与というところはどうしてもこれはよくないと思うんです。役人の習性として私もわかりますけれども、今まであったポストというのはどうしても離したくない。しかし、これは大学にとってどっちがいいかと考えたら、それは文部科学省が指導しなきゃ大学はちゃんとやっていけないというのが今の大臣の答弁でした。

 しかし、そうじゃないですよ。一回、大学の自主性とか自律性とかそういうものをこういう人事抜きにやってみられるということをされて、例えば経営面についても、それはいろいろ税制面の工夫はあるでしょう。今、自民党が贈与のことについて何かいろいろな案を出していますけれども、例えば大学に寄附する場合の税金というのは全部控除しますよ、そういう話だって、やっていけば全然違ってくると思うんですね。

 アメリカなんかよくあるじゃないですか。自分の名前を残したいから、何とかかんとかのチェアとかいってどんとお金を出して、そのお金でもっていろいろ教授をずっとリクルートしたりやっている。自主性が高まるわけですね。

 そういう意味で、大学のディーンの、学長の、言ってみれば経営的な負担は大きくなっているようですけれども、しかし、アメリカの中で、例えば教育省みたいなのがあって、そこががんがん指導しているという話は一切ないわけです。

 そういうことに対して、大臣、いかがですか。どういう感想を持たれますか。

塩谷国務大臣 大学の自主性を重視する点では、今後もできるだけそういう環境をつくることは必要だと思っております。

 しかしながら、先ほど来、大学がやはり基礎研究とかあるいはもうからないいろいろな授業、そういったことをやるためには、ある程度は国立大学法人という中で国の関与も当然必要でありますので、そういう点で、国立大学という立場から大学法人になって、私はかなりの自主性を今発揮できているような状態になっていると思っております。

 今後、もちろん、より一層改善をしていく点は改善していかなきゃならぬと思っておりますし、国立大学法人になって、今までと違って学長を中心にかなりのいろいろな自分たちの研究開発のそういったものが出てきていることも事実でありますので、これは、一つの方向性として私は間違っていないと考えております。

山口(壯)委員 自主性ということに関しては、例えば評価ということもあります。あのときの議論の中で、焼け太りじゃないかという指摘もありました。そのレビューというのはこれからなされるんでしょうけれども、やはり、今いろいろな改革、改革というか工夫がなされている中で、この人事だけは昔ながらのやり方ですから、これに関してはぜひもう一度省内できちっと議論していただいて、そして文部科学省、行かれる場合に、磯田さん、教授で行かれたらいいんですよ。教授で行かれて、そこでしっかりいろいろな教育のことを教えられたらいいんですよ。だけれども、また文部科学省へ戻ってきて、現場経験積みましたということは、もう文部科学省としては、一度大きな再考をしていただくようにお願いします。

 質問を終わります。

岩屋委員長 以上で山口君の質疑は終了しました。

 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 法案に関連しまして、我が国の基礎研究の状況認識と改善の方向ということについて、きょうは若干質問をさせていただきます。

 この間、ノーベル賞を受賞された方々が、そろって基礎研究の重要性について語っておられたことが私は大変印象深いことでございました。

 小林さんはこのように述べていらっしゃるんですね。最近は競争、成果を強調し過ぎている気がする、もう少し大学での基礎研究を重視してほしいと。

 下村さんは、近ごろは応用研究が重視されているが、基礎研究がなければ応用もない、基礎研究は絶対必要だ、日本もどんどんやってほしいと述べておられる。

 益川さんは、東北のある湾でカキの養殖をしていたが、あるときから生産性が落ちてきた、調べてみると湾に流れ込む川の上流で開発が進み、栄養が流れ込まなくなっていたという、科学も同じで、上流、すなわち基礎研究から栄養が流れ込まなくなると大変なことになる、そのことを為政者は注意してほしいと。さらに、大学でもベンチャービジネスばかりに目が行くような体制はよくない、基礎科学に十分関心が行く社会であってほしいという、これは昨年の日経、十月九日付でございましたけれども、こういう発言をされていらっしゃいます。

 まず、大臣に、こうした三人の御発言をどのように受けとめていらっしゃるかということと、基礎科学、基礎研究の重視という方向に向かわせるための具体策、どういう中身をお考えになっていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 基礎研究につきましては、当然、大変重要な位置づけをして取り組んでまいらなきゃならないと思っておりまして、特に昨年、四人のノーベル賞受賞者が出て、私どもも、四人に限らず、以前のノーベル賞受賞者の方々からもいろいろな御意見を伺って、やはり基礎科学力をしっかりと強めていくべきだという結論に達しているわけでございます。

 それに伴って、昨年末にも、ノーベル賞受賞者の意見も踏まえて、基礎科学力強化総合戦略構想というものを打ち出して、ことしに入って、いわゆることしを基礎科学力強化年というふうな位置づけをして、省内でもその推進本部を立ち上げて、つい先日、基礎科学力強化委員会を設けて、全省的な体制で基礎科学力強化のために取り組みを進めているところでございまして、夏ぐらいまでにはこの総合戦略構想をまとめて、しっかりと推進をしてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 そういう大臣の大変決意に満ちた御発言なんですけれども、では、その基礎科学の強化の方向のために、今やはり何が必要なのかということで、これまでの政府の施策とも関連させながら、若干私は触れてみたいと思っております。

 そのために日本学術会議が提言していることがございまして、これは大変重要な提言、いろいろ現状分析を含んでおりますので、それに沿って質問したいと思っているわけです。

 日本学術会議の科学者委員会学術体制分科会というところが、二〇〇八年八月一日、昨年の夏、「我が国の未来を創る基礎研究の支援充実を目指して」ということを発表しておられるわけです。その提言のトップにあるのが、このように述べておられることなんです。ちょっと紹介します。

 基礎研究を支える国立大学、研究機関では、法人化により基盤的経費が削減された。基礎研究を支える文部科学省科学研究費の補助金、科研費の予算配分も厳しい状況が続いている。さらに、私立大学の経常費補助金も削減されている。さらに、研究を支えるハード、ソフトのインフラストラクチャー整備についてもその支援体制が急激に脆弱化している。こうした負のスパイラルによって、今や大学、研究機関等の体力は急激に弱まりつつある。もしこのような状況が続けば、近い将来、我が国にとって極めて大きな損失となることが懸念されるというふうに現状認識が書かれていました。

 それで、こうした状況が続くことにより、国際的な知の創造の営みの根幹が揺らぐ事態が危惧されることから、基礎研究の推進に向けて抜本的な対策を講ずることは緊急課題だ、国の財政が逼迫している状況においてこそ、長期的視点に立った資源配分が重要だという提言なんですね。

 大臣もこの夏にはまとめられるということでございますけれども、この提言と同じような認識をお持ちだということでよろしいでしょうか。

塩谷国務大臣 今お話しの日本学術会議での提言につきましては、特に、基盤的経費の充実、あるいは競争的資金の基礎研究への支援強化、さらにはインフラストラクチャーの整備、若手研究者への支援と環境整備などが提起されているということで、今お話のあったとおりでございます。

 これについて、厳しい財政状況の中でありますが、やはり、科学研究費補助金の充実や、大学あるいは大学共同利用機関における大型プロジェクトの推進、さらには若手研究者の活躍促進など、支援措置の充実に努めているところでございまして、先ほど申し上げましたように、基礎研究の充実については、ことしをその強化年として、できるだけ早目に、先ほど八月くらいと言いましたが、戦略構想をまとめて、その推進に努力してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 その提言の中身をより確かなものにするために、少し立ち入って、今の現状について私はもう少し述べて、御答弁いただきたいと思うんです。

 一つは、資源配分という点で、科学技術の基本計画、これまで第二期、三期それぞれございましたけれども、そこの戦略的重点化という方向なんですけれども、私はそれが一つ問題ではないのかというふうに思っているわけです。

 戦略重点科学技術を選定して、選択と集中、こういう柱を持って進めてきたと思うんですけれども、こういう方針の結果として、我が国の基礎研究費の割合は、応用研究、開発研究の構成比で、二〇〇四年度は一五%あったんですけれども、一三・八%に下がっているわけですね。これは総務省の毎年の統計でわかるとおりです。

 日本は、応用、開発研究に比べて基礎研究の割合が低い、こういう数字がはっきり出ているわけですね。フランスは二四・一%あり、ドイツで二〇・七%ある、日本は一二・七%ですごく低いんですけれども、アメリカでも一八・七%で、アメリカよりもぐんと低いということで、これは平成十九年版の科学技術白書で示されているとおりであります。

 だから、これを見ても、世界の主要国が基礎研究費をふやしているという中で、日本の下がり方、落ち込み方というのは極めて目立つのではないか。これはやはり、こうした重点化という政策のもとでこういうことが進んできたということが言えるのではないのかと私は考えていますけれども、この点、大臣はいかがお考えでしょうか。

塩谷国務大臣 基礎研究につきましては、今お話ございましたように、比率としては一五%から一三・八%に落ちているということでございますが、全体の科学技術の予算がふえておりまして、額としては増加傾向にあることは間違いないわけでございます。

 そういう点で、比率として落ちているのは事実でございますが、最近の再生医療の実現に向けた、極めて重要な成果を上げたヒトiPSの研究とか、日本の基礎研究については世界に遜色のない成果を上げていると考えております。

 いずれにしましても、この基礎研究につきましては、今回のノーベル賞の受賞で改めてその重要性が明確になりましたので、今後とも、いわゆる重点化、選択と集中等、いろいろと科学技術政策についてはその都度の考え方で推進していかなければならない、そのベースにあるのは基礎研究であると思っておりますので、将来的にもこのベースをしっかり守っていくべく、我々としては長期的な視点に立って考えていかなければならないと考えております。

石井(郁)委員 科学技術政策の選択と集中、これが特定の分野、特に国際競争力につながる研究に資金を重点化してきたわけですよ。他方で、やはり基礎研究への支援というのを弱めてきたということは私は明らかだというふうに思うんですね。

 このことは、実はこういう方が述べていらっしゃるんですよ。第二期、第三期の科学技術基本計画の策定に参加された元文科官僚有本建男氏、これは「化学と工業」という雑誌、ことしの一月号に出ていますけれども、このように言っていらっしゃるんです。十年近く選択と集中の方針が維持されたことによって、負の影響も出ており、再検討の必要がある。どうでしょうか。内部に携わってきた方からもこういう問題意識が出ているということをやはり私は受けとめなきゃいけないと思うんですね。

 だから今、選択と集中ということでやってきた科学技術政策、これをやはり根本的に見直す、そういうときに来ているのではないか。そして、基礎研究を重視するとおっしゃるけれども、実際に、今データで見るように、そしてまたこういう方々の発言に見るように、やはり十分なものではない、弱まってきているということがあるわけですから、自由な発想に基づいた基礎研究というものに支援を思い切って進めるということで、先ほど来大臣は、基礎研究重視という御答弁はいただいていますけれども、実際としてというか、それを本当に実のあるものにするためにも、改めて、基礎研究予算は増額をするということできっぱりと御答弁いただければと思いますが、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 我が国の科学技術政策につきましては、第三期の基本計画に基づいて今推進しているところでございますが、三期を経て、やはりもちろん見直すところは見直さなければならないと思っておりますし、また、選択と集中という観点でも、そういう重点的に推進するものもあり、また、基礎科学については、先ほども申し上げましたように、やはり長期的なしっかりとした基盤のもとで研究できるような体制を整備していくことが重要でございますので、財政的にもなかなか厳しい中で、私どもとしても見直しすべき点は見直して、しかしながら、ベースとしての基礎研究はしっかりとこれから進めていくべく努力をしてまいりたいと考えております。当然ながら増額したいという気持ちは持っておりますので、そうなるように頑張りたいと思います。

石井(郁)委員 日本学術会議の提言の中では、さらに基盤的経費という問題についてもとりわけ強調がございますので、私はその点ももう一点伺っておきたいというふうに思います。このように述べています。紹介します。

 研究評価の浸透により研究資金配分の重点化が一層強まる一方で、基盤的経費というのが毎年削減されている。その背景として、基盤的経費がなくても競争的資金さえ拡充すれば世界的な研究成果が生まれるはずだという誤った考え方が底流にあるのではないかと考えられる。しかし、実際の研究はそんなものではない。国立大学法人化とともに、大学の基本的運用資金の定率削減によって大学の疲弊は顕著だ、多様な基礎研究を推進する体制は極めて脆弱化している。早急な対策を講じることが望まれる。具体的には、来るべき国立大学等の中期目標期間の第二期目以降の施策では基盤的経費を増額したらどうか、これは急務だという形で述べているわけですね。

 中期計画の問題は私も先般質問をしているところでありますけれども、ぜひこういう危機感に基づいた予算の増額、基盤的経費を重視するという点も、これは大臣、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 先日も御指摘いただいた運営費交付金の問題も含めて、今後の中期計画にどうこれを改善していくかということは、私どもも一つの大きな課題だと考えておりまして、当然ながら、この運営費交付金に基づいた基盤的経費をしっかり充実させていくことが基礎研究の発展につながると考えておりますので、それをどう今後できるかということを十分に検討してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 ここで私は予算をふやせふやせという話ばかりしていますけれども、現状はどうなのかということで、ある地方国立大学の生物学研究者にちょっと伺うことができたんですね。いろいろな方々からいろいろな実態をお聞きするわけですけれども、この例というのは、ここまで来ているのかということを本当に考えさせられますので、ちょっと御紹介いたします。

 この方によれば、二十五年ほど前、自由に使える研究費は百万円以上あったと。それでも少ないと思うんですけれども、生物学で。それがずるずる下がって、法人化の前は八十万円ほどになった、法人化後さらに下がって、昨年は六十万円になったと。それで、学科共通の専門雑誌、いろいろなものを購入しなきゃいけないんですけれども、もうやめてしまったという話です。

 年間六十万円ですから、学生の実験、卒論指導、院生の研究指導、最低限の消耗品がこれで出せるかどうかだというところなんだ、十ミリグラムで五万円もする試薬を買ってやりたいけれども、それさえ困難だ、遺伝子の塩基配列を決める装置、電子顕微鏡も古くなっている、それが故障したらアウトという状態だと。大体、こういう話は多いですよね。実験設備も十分でなくて、世界の一流雑誌に投稿するような研究をやりたくてもできないと。よく文科省は研究成果を出せ出せと言いますけれども、やはり、器材がなくて、設備がなくて、成果も出せない、今流行の共焦点レーザー顕微鏡、私もよくわかりませんけれども、一千五百万円以上もするんだ、だから、基礎系の学科や学部でこれを買えるような状況にはないんだということなんですね。

 私は、こういうのを伺うと、本当にこういうことをいつまでも放置しておいていいのかということで、本当に胸が痛くなるわけですけれども、こんな状況がございます。

 他方、COEなどの大型プロジェクト研究、ここにはかなり、あり余るとは言いませんけれども、一定額の予算がつぎ込まれているわけですね。しかし、その研究というのは、期間が区切られる、短期で成果を上げる研究となる。そこでは、必ずしも自由な発想による研究、地道な研究ができないという問題だとか、研究費雇用のポスドクという人たちが増大をするだとか、若手研究者の使い捨てが広がるとか、こういう問題が生じているわけです。それから、プロジェクトが終わると、高価な設備が使われないで今度はほこりをかぶってしまうとか、こういう話までもあるんですね。こういうことはいかがかということはありますけれども。

 だから、お金を使って成果を出せということが、かえってこんなことを生んでいるんだという実態を私たちはよく見る必要があるのではないのかというふうに思うんですね。いろいろなお金の使い方は苦労してやっているようですけれども、大事なことは、やはり研究者がもっと基礎研究に自由に使える研究費が欲しい、そして伸び伸びと研究ができる環境をつくるべきだということだと思うんです。

 これで最初に戻りますけれども、私は、今回、ノーベル賞受賞の方々からのいろいろな、研究のときの環境、そしてどうやってこういう発見ができたかという話を伺ったときに、当時のそういう自由なというか一定研究環境の中で生まれたんだということを本当にいろいろ感じさせられることがございました。多くの方はそうだと思うんです。ですから、時間なんですけれども、そういう研究環境をつくるように文科省が今一層力を入れていかれるべきではないかということを重ねて強調したいと思うわけです。

 それで、もう時間ですけれども、最後にもう一点なんですが、今申し上げたように、研究のための装置が購入できない。これはもう最低条件ですよね。この研究を支えるインフラストラクチャーの整備という問題がもう一点あります。

 これも、実は、平成四年から十五年までで見ると年平均三百九十五億円がありましたけれども、法人化以降で、平成十六年から二十年で平均百五十五億円、これは大幅に減少しているんですよ。昔はよく大学設備費と言ったものでしたけれども、こんなに減っているという傾向ですね。だから、ここら辺も、きちんとやはり整備充実を図るべきだということで、最後、大臣の御答弁をいただきます。

塩谷国務大臣 科学技術計画につきましては、当然ながら、いわゆる大型プロジェクトあるいは国家基幹技術等、しっかりと予算をとって推進しなければならないそういったこともあるし、また、基礎研究という基盤となるような研究を充実させることも、いろいろな、多面に必要な経費がありますので、それをできるだけ、私どもとしては、今科学技術基本計画に基づいて、予算も獲得して、その推進に努力をしているところでございます。

 今後、四期の方向に向けて、また改善もし、日本の科学技術の推進にしっかりと頑張ってまいりたいと思いますが、今お話ございました施設設備についても、やはり五カ年計画で推進をしておりますが、正直、なかなか設備の予算がとれないのが現状でございます。そういう意味で、ちょうどことしの経済危機対策においても、ここはしっかり充実させようということで、施設設備の高度化、老朽化に対して、これを何とか改善すべく、今努力して予算を積み上げて、補正でしっかり獲得してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 きょうは大臣から大変力強い決意をいただきましたので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 終わります。

岩屋委員長 以上で石井君の質疑は終了しました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 やや重複することもあるかもしれませんが、通告をしてありますので、質問させていただきたいと思います。

 平成十八年の四月五日の文部科学委員会、研究交流促進法及び特定放射光施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案、これは附帯決議がつけられました。その中で、「本法に基づいて研究交流を促進するに当たっては、日本国憲法の理念である平和国家の立場を踏まえ、進んで全世界の科学技術の発展と国際平和に資するよう努めること。」と政府関係者に求めているわけです。

 それらを踏まえて最初にお尋ねをしたいと思いますが、施設を利用するための条件、これは何か具体的なものがあるのか。

 同時に、どのような研究目的であっても利用は認められているのか。極端な例になりますが、断定はできないかもしれませんが、例えば軍事目的に関連するようなもの、こうしたものも認められているのか。

 三つ目に、施設利用に関する審査なんですが、これはどんな基準といいますか、どのような形でこの審査が行われているのか。

 四つ目に、申請者があって、施設の利用を拒否した、そういう事例が現在まであって、もしあったとしたらどんな理由なのか。

 まとめてで恐縮ですが、お聞かせいただきたいと思います。

磯田政府参考人 特定先端大型研究施設を利用するためには、登録施設利用促進機関が行う公募に応じ、学識経験を有する者により構成される選定委員会における審査を受ける必要がまずございます。

 この登録施設利用促進機関による審査に当たっては、研究計画の科学的妥当性や安全性等のほか、提案された課題が平和利用目的であるかといった観点も取り入れられることになるものと考えております。

 既に広く研究の用に供されておりますSPring8につきましては、施設の利用可能な枠に照らして利用者の絞り込みを行う必要が生じておりまして、審査の結果、必ずしも希望者全員が施設を利用できているわけではないと承知しているところでございます。

日森委員 そうすると、申請が多過ぎて対応できないということで利用をお断りするぐらいの話で、その研究目的の内容でチェックをしたりする例はこれまでになかったということでよろしいんでしょうか。

磯田政府参考人 今、SPring8の例を申し上げましたが、SPring8におきましては倍率は一・五四倍ではございますけれども、同時に、その審査の中におきまして、その研究課題が適切であるかどうか、あるいはそれの安全性、あるいは実施の可能性ということ等も議論をしておりますので、内容において適切でないということで利用をお断りした事例もございます。

日森委員 平成六年に特定放射光施設の共用の促進に関する法律が制定をされて、平成九年十月から大型放射光施設が稼働開始というふうになっているわけですが、これまでの利用状況、それから、これは個人情報に関係するので具体名はというのは難しいかもしれませんが、利用している団体などその内訳について、まず一点目、お聞かせいただきたい。

 それからまた、これまでの具体的な研究成果はどんなものがあるのか。公表できる範囲で結構なんですが、素人ですので、わかりやすい事例がありましたら教えていただきたいと思います。

磯田政府参考人 SPring8におきましては、平成九年十月の共用開始以来、延べ約九万七千人の研究者に利用され、約一万四千件の研究課題が実施されており、医学、生命科学や物質科学などの幅広い分野で利用されていると理解しております。

 利用している団体についてでございますが、平成二十年度においては、大学等の教育機関が五五・二%、国公立研究機関等が一八・〇%、産業界が二〇・五%、海外機関六・三%という割合で利用されております。

 また、SPring8を利用したこれまでの研究の成果でございますが、発表された論文数は二十一年一月現在で四千三百六件でございまして、その中には、ネイチャーやサイエンスなどの著名な科学誌に掲載されたものも含まれており、世界的に評価の高い研究が数多く輩出されております。

 具体的にわかりやすい例を御紹介させていただきますと、例えば自動車の排気浄化触媒というものがございまして、再生機能があります。ちょっとわかりづらくて恐縮ですが、その機能がどんどん落ちていくわけでございますけれども、その機能を維持するための開発がここで行われまして、自動車メーカーがそれを生かして、二〇〇八年七月現在で、四百万台を超えた車がこの新しい技術を生かしているということを伺っております。

 あるいは、髪の毛の老化に伴いまして、つやが落ちてうねりができてくるということがございますが、そのうねりを細胞レベルで定量的に評価、分析し、若く見せると言ったら失礼ですけれども、それを緩和し、つやを与える効果のある有機物をつくられたメーカーもございまして、これは実用の部分でございます。

 そのほか、膜たんぱく質ロドプシンの立体構造の解明等、基礎科学においても大いに新しい成果が生まれているところでございます。

日森委員 ありがとうございました。

 活発に利用されていて、髪の毛の話は感動しました。ぜひ発展させて、私も完成品ができたら早速利用したいというふうに思うぐらいであります。

 研究、実験の成果の公開と非公開というのがどうもあるようなんですが、これはどれぐらいの割合になっているのか。ちょっと時間がありませんので、理屈抜きでお聞きをしたいと思います。

 また、成果を非公開にする場合、利用料金を徴収しているということなんですが、これはどの程度のものになるのか。

 三つ目に、利用者が研究、実験成果を非公開としているのはどんな場合なのかということについてお聞かせいただきたいと思います。

磯田政府参考人 SPring8におきまして平成二十年度に実施された研究課題千八百九十一課題のうち、成果公表による利用が九一%、千七百十九課題でございまして、非公表による利用が九%、百七十二課題でございます。

 施設の利用に当たりましては、成果を公開した場合には、消耗品等の実費、八時間単位で計算しておりますが、約一万円程度を負担していただき、それ以外については原則無料としております。

 一方、成果非公表、成果を専有されるという企業等の利用でございますが、そういう利用におきましては、国費で賄われる運転経費について受益者が負担するという観点から、先ほどの公開の消耗品等の実費に加えまして、相当の料金を課しております。現在、通常、一シフト八時間当たり四十八万円程度となっております。

 利用者が利用料金を支払って成果非公表の利用を希望する理由でございますが、具体的に把握しているわけではございませんが、いろいろな情報を総合しますと、企業間競争にある技術開発テーマにかかわる研究、あるいは製品の実用化につながる成果の研究などがあると推測されております。

日森委員 今回の法改正で、特定中性子線施設が先端研究施設に追加されるということになるようです。なかなか素人には理解しがたいというか難しいお話なんですが、この施設が利用されることによって、近い将来どんな研究成果が期待されるのか。ちょっと漠とした質問で恐縮なんですが、お答えいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 今回、中性子線の施設を利用することによって、まず中性子は、水素等の軽い元素の分析等を得意としておりまして、また、金属への透過力も高いということで、従来の測定計測手段とは異なる特徴を持っております。

 そして、今回期待される成果というのは、一つは、がん等の疾病対策への期待に対応して、体内のたんぱく質と薬の候補物質との相互作用を解明することによって、画期的な新薬を開発することに貢献できるだろうということ。もう一点は、新素材の開発において、充電池内部でのリチウムイオンの挙動を解明することによって、より高性能のリチウム電池に対して貢献ができるということがあります。

 他の施設では創出できないような画期的な成果が期待できるものであり、生命科学、物質科学等の発展を通じて、国民生活の向上に大きく貢献できると確信を持っております。

日森委員 髪の毛にしてもがんにしても、成功に期待をしたいと思います。

 中性子ビームラインの産業界による利用促進のために、中性子産業利用推進協議会というのが発足をして活動しているというふうに聞いていますが、今後、これらの民間企業によってこの施設がどの程度利用されるのか。予測されていることがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

磯田政府参考人 原子力研究機構が既に産業利用に資しておりますJRR3というものがございますが、これの民間利用が、平成十七年度五%が平成十九年度一〇%と上昇しております。

 そして、この中性子産業利用推進協議会におきまして利用の仕方、応用の仕方等につきまして検討され、さまざまな要望をいただいておりますが、そのような御議論を踏まえますと、このJRR3を上回る要望があると理解しておりまして、具体的なデータは現段階では申し上げられませんが、企業の大いなる活用が予測されるのではないかと期待しているところでございます。

日森委員 同時に、今回の法改正で、特定中性子線の利用者選定業務と利用支援業務、この二つ、これは大臣が登録施設利用促進機関に行わせることができるということになるようです。

 どのような機関が特定中性子線に関する登録施設利用促進機関の候補として想定されているのか。それで、候補施設というのは複数存在しているのか。さらに、選定業務や支援業務を登録施設に行わせるということによって、これまでと違ってどんなメリットが生じてくるのかということについてお示しいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 特定中性子線施設にかかわる登録施設利用促進機関については、国が一方的に指定するものではなくて、法律の定める登録基準等を満たせば、法人の形態は問わず、登録を認めることになります。

 このために、個別具体的な機関を現在想定しているものではありません。例えば、中性子の利用のノウハウを有する組織や加速器の運転にノウハウを持つ企業などが現存するので、複数の機関が候補として考えられます。

 この登録施設利用促進機関に利用促進業務を行わせることによって、利用者の選定業務について公正性と中立性を確保すること、また、利用者に対して充実した支援を講じることなどが可能になり、当該施設が効果的に共用されることができるということで、画期的な成果の創出が期待できるものと考えております。

日森委員 今回の改正で大型研究施設が三施設ということになりますが、今後、この法律に加えられる予定の施設はあるのかどうか。あれば、どんなものなのか。お聞かせいただきたいと思います。

磯田政府参考人 本法律におきまして対象となる施設の要件について、重複して設置することが多額の経費を要するため適当でないこと、先端的な科学技術の分野において比類ない性能を有すること、広範な分野における多様な研究等に活用されることにより、その価値が最大限に発揮されることと定められております。

 現時点では、同法の対象とすべき具体的な施設は想定されておりませんが、今後、これらの要件を満たす可能性がある施設が整備される際には、同法の対象とすべきか、個別に判断してまいりたいと考えております。

日森委員 時間前ですが終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

岩屋委員長 日森君の質疑をもちまして本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岩屋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、馳浩君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。牧義夫君。

牧委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 特定先端大型研究施設の研究開発については、国が主導する長期的かつ大規模なプロジェクトの推進に支障が生じないよう、優秀な研究者の確保等研究体制の充実及び十分な財政措置等の支援に努めること。

 二 特定先端大型研究施設の建設・研究開発については、その意義について広く国民の理解を得るよう努めること。また、原子力政策全体の検討を踏まえ、高レベル放射性廃棄物の処理技術の研究開発のため、適切な評価を行いつつ、大強度陽子加速器施設の核変換実験施設の建設計画の着実な推進に努めること。

 三 特定先端大型研究施設の共用においては、産業界の円滑な施設利用のため、研究成果の知的財産権の問題等が発生しないよう十分配慮すること。特に、大強度陽子加速器施設の共用においては、産業界による中性子利用の更なる拡大に向けて努めること。

 四 特定先端大型研究施設の運用においては、効率性に配慮するとともに、基礎研究、応用研究及び開発研究の調和のとれた発展に努めること。また、登録施設利用促進機関の運用に当たっては業務運営が適正に行われるようにすること。

 五 特定先端大型研究施設については、科学技術人材の育成の観点から大学院や大学における教育・研究に活用できるよう更に配慮するとともに、理数離れの解消や国民の理解促進の観点から中学生・高校生の施設見学やサイエンスキャンプの実施など、研究内容・成果の分かりやすい広報に努めること。

 六 独立行政法人、国立大学法人等の先端研究施設をはじめとする研究施設の共用を促進するため、各機関における体制の整備を促すとともに、国は必要な支援をしつつ、共用に積極的な風土の醸成に努めること。

 七 本法に基づいて研究施設の共用を促進するに当たっては、日本国憲法の理念である平和国家の立場を踏まえ、科学技術の適切な発展と国際平和に資するよう努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

岩屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岩屋委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。塩谷文部科学大臣。

塩谷国務大臣 ただいまの御決議につきまして、その御趣旨に十分留意いたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

岩屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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