衆議院

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第8号 平成21年4月24日(金曜日)

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平成二十一年四月二十四日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 岩屋  毅君

   理事 木村  勉君 理事 佐藤  錬君

   理事 馳   浩君 理事 原田 令嗣君

   理事 茂木 敏充君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    井澤 京子君

      井脇ノブ子君    浮島 敏男君

      小川 友一君    岡下 信子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      鍵田忠兵衛君    亀岡 偉民君

      谷垣 禎一君    西本 勝子君

      萩生田光一君    平口  洋君

      福田 峰之君    藤田 幹雄君

      松本 洋平君   山本ともひろ君

      階   猛君    神風 英男君

      田島 一成君    高井 美穂君

      土肥 隆一君    西村智奈美君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      和田 隆志君    富田 茂之君

      西  博義君    石井 郁子君

      日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       塩谷  立君

   文部科学副大臣      松野 博一君

   文部科学大臣政務官    萩生田光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 小田 克起君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         河村 潤子君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 木曽  功君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           服部 敏也君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     松本 洋平君

  藤村  修君     階   猛君

  山口  壯君     神風 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  松本 洋平君     飯島 夕雁君

  階   猛君     西村智奈美君

  神風 英男君     山口  壯君

同日

 辞任         補欠選任

  西村智奈美君     藤村  修君

    ―――――――――――――

四月二十三日

 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)

同月二十四日

 国公立の高等学校における教育の実質的無償化の推進及び私立の高等学校等における教育に係る負担の軽減のための高等学校等就学支援金の支給等に関する法律案(参議院提出、参法第七号)

同日

 教育格差をなくし子供に行き届いた教育を求めることに関する請願(松木謙公君紹介)(第二〇〇六号)

 教育格差をなくし、すべての子供に行き届いた教育をするために私学助成大幅増額を求めることに関する請願(原田義昭君紹介)(第二〇九四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)

 文部科学行政の基本施策に関する件(外国人学校及び外国人子弟の教育等について)


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     ――――◇―――――

岩屋委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件、特に外国人学校及び外国人子弟の教育等について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官小田克起君、文部科学省大臣官房長森口泰孝君、生涯学習政策局長清水潔君、初等中等教育局長金森越哉君、高等教育局長徳永保君、高等教育局私学部長河村潤子君、国際統括官木曽功君、文化庁次長高塩至君及び国土交通省大臣官房審議官服部敏也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田令嗣君。

原田(令)委員 自由民主党の原田令嗣でございます。

 定住外国人の子供たちの教育を考えるために、おととい水曜日、岩屋委員長を先頭に委員会で、外国人労働者が多い、塩谷大臣の御地元浜松市のブラジルの外国人学校三校を視察してまいりました。本来なら、公立の日本の学校で学んでいる外国人の子供たちの様子も見たかったのでありますけれども、残念ながら時間が足りずにできませんでしたが、その点も踏まえて、質問、質疑をさせていただきたいと思います。

 外国人労働者の中でも南米の日系人の家族、子供たちは平成二年の入管法改正以降急増し、二〇〇一年からは外国人集住都市会議が毎年開かれております。そして、外国人児童生徒の教育問題など、外国人住民との地域共生に向けたさまざまな宣言や提言が行われています。

 そうした中で、昨年の秋以降の百年に一度の経済危機に伴い、日本経済を底辺で支えてきた外国人労働者が真っ先に派遣切りをされ失業者が急増している中で、不就学児童の増加が懸念されています。

 外国人の子供たちの教育環境が今どうなっているのか、文部省はどのように実態を把握しているのか、お答えいただきたいと思います。

木曽政府参考人 失礼いたします。

 最新の実態調査によれば、平成二十一年二月二日現在でございますが、ブラジル人学校の数は八十九校、人数につきましては、有効回答を得た五十八校のみでございますが、三千九百人と把握しております。

 また、昨年十二月から本年二月にかけて、ブラジル人学校の子供たちが約四割減少しております。そのうち、本国に帰国した者が四二%、七百二十二人、次に、自宅、不就学等につきましては、二四・六%、四百二十三人でございました。

 以上でございます。

原田(令)委員 三つのブラジル人学校を視察したわけでありますが、一校は各種学校として認可され、ペルー人の子供たちへのスペイン語教育を行っておりました。二校は無認可校でありました。

 子供たちは、日本生まれの子供もいれば、本国の学校から移ってきた子供たちもいまして、日本語ができない子供が大半でしたが、中には流暢に話せる子供もいました。公立学校に入学したものの、いじめに遭ってブラジル人学校に転校してきたという子供の話を聞きまして、外国人教育の難しさを痛感させられました。

 授業料はおおむね、およそ三万円前後でありましたけれども、経済危機以降、減免措置を講じている学校も多いということでしたが、失職した父兄が負担できるものではなく、いずれの学校も、昨年暮れからことしにかけて児童数が半減しているというような説明でありました。また、企業などからの寄附も激減し、非常に苦しい財政状態の中で頑張っているという状況がうかがわれました。

 ブラジル人学校側から、各種学校、準学校法人として認可を求める声や、企業が寄附を行う際に財政上の優遇措置を受けることができる特定公益増進法人の認可をブラジル人学校に適用してほしいという要望がありました。

 一方、浜松市からは、県の認可を受けた外国人学校の運営に対しては、運営費補助を行っているほか、新たに外国人学校に通う生徒への教科書購入費の三分の一補助や外国人学校の日本語教育支援などを始めるという説明を受けました。

 こうしたブラジル人学校の要望や地元自治体の取り組みに対して国として対応できることはどんなことがあるのか、その点、お伺いをしたいと思います。

木曽政府参考人 失礼いたします。

 この三月二十七日に第二次の緊急支援プランを発表いたしました。

 その内容でございますが、主なものにつきましては、まず、ブラジル人学校等の子供に対する就学援助として、授業料の軽減のための助成や日本語指導等を実施する自治体を対象に、総務省におきまして特別交付税により支援することといたしております。公立学校への受け入れ円滑化のため、初期指導教室の設置や、外国語が使える支援員を活用した外国人児童生徒の指導等を実施しているところでございます。

 以上でございます。

原田(令)委員 今、ブラジル人学校への授業料の軽減措置とおっしゃいましたけれども、これは、いわゆる各種学校と認定されている学校に限られたものなのでしょうか。

木曽政府参考人 これにつきましては、無認可の学校も含めて、すべてということでございます。

原田(令)委員 不就学児童がふえることは、子供本人にとっても、また日本社会の将来にとっても、大きな社会問題になることが想像されます。

 日本国憲法第二十六条第二項に、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」とありますが、この無償の義務教育は定住外国人には適用されるんでしょうか。

 適用されないとしても、定住外国人については、雇用されている企業などとも連携して、日本人児童と同時に就学を促す対策、地域の自治会や民生委員などの協力を得て、不就学児童への働きかけをこちらから積極的に手を差し伸べていく、そういうことが必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 ただいま、憲法について、義務教育への就学義務がないかということでございますが、外国人がその子供を公立義務教育諸学校へ就学させることを希望する場合は、国際人権規約等を踏まえて、日本人の子供と同様に無償で受け入れているということでございます。

 特に、日本の教育制度や就学手続等について就学ガイドブックを七カ国語で作成しておりまして、教育委員会を通じて配付をして、特にバイリンガルの相談員あるいは教育委員会に配付し、就学案内・相談等を実施しているところでございまして、外国人生徒への日本語指導の補助に当たる、母国語のわかる支援員の配置等も取り組んでいるところでございます。

 今お話しございました企業との連携については、帰国・外国人児童生徒受入促進事業の委嘱地域において、企業と連携した外国人労働者に対する子弟の就学啓発活動や、地域NPOやボランティア団体の協力による就学案内等にも取り組んでいる例もあるわけでございまして、今後とも、外国人の子供の公立学校への円滑な受け入れと、地域を挙げての支援体制を整備してまいりたいと考えております。

原田(令)委員 大臣のお答えにもありましたとおり、私も、日本に定住する可能性のある外国人に対しては、公立学校への就学を保障するという考え方が重要だと考えております。ですから、日系人が働いている企業や派遣会社、そうしたところにも、日本の義務教育という制度を外国人に必ず教える、そして、公立学校への就学を促すようやはり協力してもらうということが必要だろうというふうに思います。

 関連して、日系外国人の子供を地元の公立の小中学校で受け入れる際の問題点や、教員の確保、対応能力、そして二カ国語ができるスタッフの確保など、そうした十分な対策がとれるのかどうか、文部科学省のお考えを伺いたいと思います。

 また、彼らが、小中学校だけではなくて、高等学校などへの進学を目指せるような支援も必要ではないかというふうに考えておりますけれども、いかがでございましょうか。

金森政府参考人 外国人の子供が増加する中、公立小中学校での受け入れをめぐる課題といたしまして、日本の学校制度を知らないまま入国する外国人の増加や、就労環境や親の意識の違いによる不就学の外国人の子供の出現、また、日本語指導が必要な外国人児童生徒の増加などがございます。

 このような課題に対応して、文部科学省におきましては、帰国・外国人児童生徒受入促進事業におきまして、就学促進員の活用や教育委員会と関係機関等との連携による就学支援、また、初期指導教室、プレクラスの実施、学校と保護者との連絡調整等を行う際に必要な外国語を扱える支援員の配置などの取り組みを実施しているところでございます。

 さらに、この事業の委嘱地域におきましては、高校への進学や就職の支援のために、外国人生徒やその保護者への進路説明会の開催、職業安定所の協力を得た就職相談の実施等に取り組んでいる例もございます。

 また、都道府県によりましては、高校の入学者選抜に当たりまして、外国人生徒のための特別枠を設けたり、試験教科を減らす等の取り組みを実施しているところもございます。

 今後とも、外国人の子供を円滑に公立小中学校へ受け入れ、高校への進学や就職ができるよう、こうした取り組みを支援してまいりたいと考えております。

原田(令)委員 文部科学大臣の諮問会議である国際教育交流政策懇談会の緊急提言を踏まえ、経済危機対策として、定住外国人の子供の就学支援の目玉として、このほど、虹の架け橋教室が計画されているというふうに伺っておりますが、どういった内容であるのか伺いたいと思います。

塩谷国務大臣 このたびの政策については、昨今の経済状況で、ブラジル人学校の実態調査において、昨年の十二月から本年二月にかけてブラジル人の子供たちが約四割減少している。二四・六%、これは自宅待機あるいは不就学になっている実態が出てきたわけでございまして、ブラジル人の子供の就学のための対応策として自治体と意見交換等もしておりまして、この景気悪化を背景にした、ブラジル人の学校を退学するというような子供たちの就学の確保が大変大きな問題になってきたわけでございます。

 このために、自宅待機、不就学等となっているブラジル人の子供が集える教室を設けて、そして、その教室においてまずは日本語の能力をしっかりと指導していく。日本語ができないということで公立学校への転入をちゅうちょしている子供たちが多いということで、円滑な転入を促進するということ。また、学習習慣を維持するための教科指導も行って、ブラジル人学校への復学が可能になるまでの学習の場を提供する等、今後とも、子供を中心とした地域社会との交流の拠点としての機能を持たせるためのそういった施策を実行してまいりたいと思っておるところでございまして、やはり、日本語が不十分、あるいはブラジル人のコミュニティーと地域の社会との交流促進、そういう観点から、こういった事業を改めて今回始めたいということで今計画しているところでございます。

原田(令)委員 今、大臣も最後におっしゃられたように、地域の子供や住民と触れ合い、そして交流する機会をやはり少しでもふやすことが、子供たちを公立学校へ行かせる一つのモチベーションになるというふうに考えております。

 そのために、そういった拠点を、新たな場所を確保することもあるでしょうけれども、できれば学校の空き教室や地域の公民館を利用して、学校、PTA、地元住民の理解を得ながら、ともに触れ合いながらそうした共生が進むようにしていっていただきたいということを強く要望したいと思います。そうした面で文部科学省のぜひ指導力を発揮していただきたいというふうに考えております。

 次に、成人の定住外国人に対して、失業したり、職がかわってもいろいろな新たな職にチャレンジできるようにするためには、日本語教育や職業訓練が極めて重要だというふうに考えております。文部科学省の役割と取り組みについて伺いたいと思います。

高塩政府参考人 文化庁におきましては、平成十九年度から、生活者としての外国人のための日本語教育事業といたしまして、地方公共団体や各地域の国際交流協会、また、NPO法人などが行います日本語教室の設置や日本語指導者の養成事業に対しまして支援を行っているところでございます。

 一方、先生からお話しのございました定住外国人の就労の関係につきましては、厚生労働省の方でそれに関する職業訓練というものを担当しておりまして、同省におきましては、日系の求職者を対象といたしまして、日本語コミュニケーション能力の向上を含む就労準備研修事業を実施いたしておるというふうに承知いたしております。

 私どもといたしましては、生活者としての外国人のための日本語事業の実施に当たりましては、この厚生労働省の職業訓練のための事業と十分な連携を図りまして、定住外国人の日本語教育の一層の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

原田(令)委員 ぜひ連携をとって、日本語教育と職業訓練をなるべく一緒にやれるように努力をしていただきたいというふうに思っております。

 次に、日本人の子供たちへの対策について御質問したいと思います。

 この経済危機のために、子供たちが学業の継続や進学をあきらめたりすることがあってはならないと思います。やはり、国が責任を持って対策を講じることが何よりも重要であります。政府が策定した経済危機対策では「教育費負担への支援」という項目が入っていますが、経済的理由により修学が困難な学生生徒への支援について、具体的にどのような対策を考えているのでしょうか。

河村政府参考人 先般取りまとめられました経済危機対策において、「教育費負担への支援」として、「経済情勢の悪化により修学が困難な学生・生徒に対する授業料減免・奨学金事業等への緊急支援等」が盛り込まれております。

 具体的内容の詳細については、平成二十一年度補正予算案における措置を政府内部で調整中でございますけれども、まず、現下の経済状況からは、今後三年程度、授業料を滞納したり学業の継続が困難となったりする高校生がこれまでより増加することを見込み、現在、すべての都道府県で実施している私立高校生の授業料減免措置への補助や奨学金の事業について、国が都道府県に対して新たな交付金を措置することを検討しております。

 これに加え、文部科学省としては、私立大学による授業料減免事業等に対する支援等として、日本私立学校振興・共済事業団による、私立学校に対する無利子融資の創設、保護者の失職等により家計が急変した学生に対する緊急採用奨学金の貸与人員の増、奨学金の返還猶予者の増加に対応した、日本学生支援機構に対する政府貸付金の増などを検討しているところでございます。

原田(令)委員 修学継続困難な者がどれだけ多くなっているかに懸念を持たざるを得ないわけでありますけれども、例えば、授業料滞納者がどれだけふえているのか、また、経済的理由で退学した者がどれだけふえているのか。その辺、数字をつかんでおられるのか、教えていただきたいと思います。

河村政府参考人 私立高校に関して申し上げますと、授業料滞納状況について日本私立中学高等学校連合会が調査を行いまして、二月に結果を取りまとめております。

 この結果は、平成二十年十二月末時点と平成十九年度末時点のものをとっておりますので、調査時点が若干異なっておりまして単純比較ができないものの、滞納者数が大きくふえているということでございます。

 滞納の理由はこの調査では聞いておりませんけれども、授業料の延納や奨学金の相談が前年度より増加している学校が多いということですので、ふえている滞納者の多くは、経済的理由によるものであると考えております。

 さらに、昨年度末、この三月末の時点の状況につきまして、文部科学省としても授業料滞納状況等についての調査を現在行っておりまして、私立学校分については五月下旬ごろに結果の取りまとめを予定しております。

原田(令)委員 これまでの経済対策と比べて、教育費負担への支援の重要性についてこれほど取り上げられていることはなかったと思います。国民は、十分な支援が行われると知っていれば修学をあきらめないで済むでしょう。したがって、支援策を十分に周知し、国民に活用してもらうよう取り組んでいくべきことが重要だと思います。また、既にあきらめた者に対するきめ細かな対応も検討すべきではないでしょうか。大臣のお考えを伺いたいと思います。

塩谷国務大臣 これまでの累次の経済対策においても、奨学金事業を中心に、学業を継続するためのさまざまな緊急支援を実施してきたところでございますが、今回、百年に一度と言われる経済危機の中で、今般まとめられた経済危機対策を踏まえて、経済状況の悪化により修学が困難な生徒等に対する授業料免除あるいは奨学金事業の緊急支援等、これまで以上の積極的な支援策が講じられるよう、現在検討しているところでございます。

 特に修学支援については、その実効性が上がるように、国民に対する施策のわかりやすい広報や相談体制の充実に努めているところでありまして、既に私の方から支援策の周知やマスメディアに対する要請も行っているところでございまして、補正予算案に盛り込まれる緊急支援対策についても周知を図っていきたいと思っております。

 先日、三月十三日でございますが、各種支援策について整理をしたものをホームページ上にて公表するとともに、直接、マスメディアにもこの協力要請を行ったところでございます。

 また、修学を断念した生徒を含めて、生徒等や保護者の多様なニーズにこたえる形で大学や各行政機関において相談が行われることが重要だと考えておりますので、文部科学省としても、その相談体制の充実、整備について支援をしているところでございます。

 いずれにしましても、生徒等の状況に応じてきめ細やかな対応がなされるよう、そして一人でも多くの生徒が学業を継続できるように、総力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。

原田(令)委員 政府の修学援助対策を期待していなかったため、ことし合格したのに入学をあきらめてしまった者も多いかと思いますけれども、例えば来年の入試で特段の配慮をすることが可能か、そうしたことも、これは大学側の取り組みが主になると思いますけれども、ぜひ検討をお願いしたいというふうに思っております。

 いずれにせよ、意欲ある国民が一時の経済的な理由で教育の中断や中止に追い込まれるようなことがないよう、十分な対策が必要であります。これは、子供たちへの配慮であるとともに、国の成長力の維持のためにも大切であります。大臣を先頭に、ぜひ特別の取り組みをお願いしたいと思います。

 政府は留学生三十万人計画を進めていますが、人材立国日本にとって、多文化共生社会をつくり、国際的な人づくりを進めていくことは、日本の国際貢献や国際競争力強化にもつながる重要な課題であり、その中で地域や教育の果たす役割は非常に大きいと考えております。

 アメリカは移民国家であり、単純に日本との比較はできないと思いますけれども、定住外国人の中からさまざまな分野のトップリーダーが育ち、世界一の国力の源泉になっています。そして、ケニア出身の父親を持つ、アフリカ系二世であるオバマ大統領を誕生させました。ペルーでは日系二世のフジモリ大統領も生まれています。定住ブラジル人や外国人の子供たちにそうした夢や機会を与えることが、日本の将来にとって大きなプラスになるよう努めるべきだというふうに考えております。

 六年前に自力でブラジル人学校を立ち上げた松本雅美校長のお話でありましたけれども、ブラジル人学校の中で、ずっと日本にいたいという子供たちはおよそ三割から四割程度だといいます。やはり、子供たちにとって日本語の難しさが大きな障害になっているようでありますけれども、校長先生は、たとえ彼らが本国に帰国しても、日本はすばらしい国だったということを本国の人々に伝えてもらう、そして、彼らがこれからの日本とのかけ橋になってくれれば本当にうれしいという気持ちで頑張っているというお話がありまして、非常に感銘を受けました。

 外国人についても、日本人と一緒になって我が国の経済や社会の担い手として重要な役割を果たしてもらえるよう、教育面から十分な対策をとっていくことが極めて重要だと思います。

 文部科学省の一層の取り組みの強化をお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

岩屋委員長 以上で原田君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 一昨日の浜松市のブラジル人学校への視察では、改めまして、日系ブラジル人の就労、子供たちの教育、大変な困難の中にあっていろいろな努力をされているということがうかがい知ることができました。昨年の雇用情勢の悪化で、とりわけ経営状態等々厳しくなっている、学校そのものの運営が厳しいということや、それがいろいろな形で及んでいるということも本当に知ることができました。

 日系ブラジル人のこういう日本での就労、教育の問題というのは、文科省としてもこれまでも把握をされてきたというふうに思うんです。私、まず最初に、そういう点でいうと、文科省が二〇〇四年にこうした委託調査を発表しておりまして、「外国人労働者の子女の教育に関する調査研究 ブラジル人学校の事例」という報告書を見ることができたわけですけれども、これは調査報告書ですからかなり綿密な調査をしておられまして、ここにもいろいろと問題点は述べているということがわかりました。

 ここではこう言っているんですよ。国籍にかかわらず、ゼロ歳から十八歳未満のすべての子供たちが子どもの権利条約によって守られる対象であることが大事だ、こう言っています。「外国人の子どもの不就学の実態さえ確認できず、外国人児童生徒への教育の機会を確保することへの努力を長期に渡り放置してきた文部科学省は、同条約の批准国でありながらその責務を怠ってきたと言える。」これを読んでまさにそのとおりだということですが、本当に厳しい指摘だというふうに私は思うんです。

 それで、こうした調査は二〇〇四年から毎年されているんですよ。こういう調査をして、厳しい指摘がありながら、文科省の対応は一体どうだったのかということをまず最初に伺わせていただきます。

 つまり、この調査結果をどのように受けとめてこられたのか、そして、幾つかの指摘に対してどう対応してこられたのかということを最初に御答弁いただきたいと思います。

塩谷国務大臣 ただいまの調査研究についての内容は、今お話しあったようなさまざまな観点で指摘がされてきておりました。その点については、国としてなかなか対応できていない点もある。

 実際、浜松を御視察いただいたわけでございますが、そういった市町村、現場での方が自治体対応が行われて、国がどちらかというとおくれてきているのが現状だと思っておりまして、それを、特に今の経済状況の中で、緊急対応を含めてしっかり対応していかなきゃならぬと考えておるわけでございまして、解決する手段としては、学校経営を安定させることが一つの方策ということで、ブラジル人学校等の準学校法人立の各種学校への促進を図るための都道府県への働きかけ、また、ブラジル政府との協議を行って、ブラジル政府による学校の認可の促進等を要請してきたところでございます。

 さらに、外国人の子供が公立小学校への就学を希望する場合は、国際A規約に基づいて、日本の子供と同じように無償で受け入れているところでございまして、そういった各種施策を推進してきたところでございますが、まだ、今の経済状況の悪化に伴って新たなさまざまな課題が出てきておりますので、授業料の減免あるいは助成、日本語指導等を実施する自治体への交付税の支援等を今予定しているところでございまして、しっかりとまた対応してまいりたいと思います。

石井(郁)委員 一番の問題は、やはりこの調査にもありますけれども、「ブラジル人学校における不安定な財政基盤」、財政基盤の不安定さというふうに思うんです。高額な授業料、生徒数の不安定さ、それが財政状態に反映される、慢性的な負のスパイラルから抜け出せない状態だということがここにも書いてありました。

 そこで私は伺いたいんですけれども、地方自治体の方が先行していろいろな取り組みをしているということも一昨日わかりましたけれども、国としてそうした公的な財政支援というのは取り組まれなかったというか、なぜできなかったのかということについてはいかがですか。

塩谷国務大臣 この問題については、やはり、公的関与のない無認可の外国人学校への国からの公的な財政支援についてでありますが、憲法八十九条に抵触するおそれがあるということで行われていないわけでございまして、この問題は、今後どうするかということの中で、いろいろな外国人学校の問題、あるいは、例えば各種学校等の支援の問題も含めて検討しなければならないわけでございまして、現在のところ、やはり憲法に基づいて公的支援は行われていない状況でございます。

石井(郁)委員 しかし、これも現地で伺いましたけれども、いろいろ教科書代、自治体などは出しているということもありましたよね。いろいろな形でのできることがあるんじゃないかと一つは私は思うんですが、しかし、補助金という枠組みがつくられない以上は国としては出せないということがあるかもしれないけれども、地方自治体としては支援している道は幾つかある。何か、憲法の八十九条を持ち出すのも一つですけれども、現行の中でもできるような支援ということで本当に知恵を絞ったのかどうかという問題と、やはり枠組みをつくらない限りこれは無理なんだということなのか、それをぜひもう少し明らかにしていただきたいのが一つです。

 現地でも、とにかくこの雇用情勢の悪化で、もう本当に学校が成り立つか成り立たないかという状況に追い込まれているわけですから、事態は急ぐと思うんですよ。二万数千円から四万円という月謝では、とてもこれは本当に大変だろうなというふうに思うし、やはり教育にはいろいろな教材そのほかお金がかかるわけですから、地方自治体との関係でも、国としてのそういう財政的な支援というのは本当に知恵を尽くしたのかどうかということについて改めて伺いたいと思います。

塩谷国務大臣 私どもとしましても、そういった実態を踏まえて何とか支援をということで、ブラジル人の生徒に対する就学支援とか、特に日本語の能力、これがやはり大きな課題になっておりますので、それに対しての、先ほど質問にあった虹の架け橋教室、あるいはその指導者の派遣とか、そういった形でできる限りの今支援体制を考えているところでございまして、これは、今後もできる限りのことをやるべく、現場のいろいろな実態把握とともにしっかりと対応していきたいと思っておりますが、緊急対応の場合は、本当に速やかにやらなきゃならぬと思っております。

 一方で、先ほどちょっとお話し申し上げましたが、根本的に外国人生徒に対する支援というのはどうあるべきかということもあわせて検討して、憲法問題もお話をさせていただきましたが、そういう中で何ができるかということをしっかりと明確にするのは、大変重要だと思っております。

石井(郁)委員 それは我々立法府にいる者の課題でもあるかとも思うんですけれども、やはり文科省として、あれできない、これできないじゃなくて、もっとできることについてきちんと支援の選択肢というのをふやすべきだというふうに私は思います。

 もうお話もありましたけれども、ブラジル人学校だけでなく、日本の公立学校に通う子供たちもかなりいらっしゃるという問題なんですね。ところが残念ながら、そこで日本語がまだ習得できていない。生活する上では本当にコミュニケーションとして日本語が欠かせないわけですから、そういう問題として、やはりそこの公立学校でちゃんと学ぶためにも、特別な手だてというのも要るんだろうと思うんです。

 その辺で一つ伺っておきたいんですが、日本語指導のために、日本語指導だけじゃないけれども、公立学校に来る外国人の子供たち、ブラジル人の子供たちに特別な支援策としてはどういうことがとられているのか、伺いたいと思います。

塩谷国務大臣 日本の公立学校へ入学される、就学しているブラジル人の子供たちに対しては、当然ながら、日本語の指導それからやはり生活等の支援も含めて、プレクラス等の場を設けたり、あるいは、そこに母国語の理解できる支援員を派遣したり、そういった点で今、公立学校においてもできるだけ就学しやすいような形を整えるべく努力をしているところでございまして、その点については、今度の補正予算でもしっかりとそういった場をつくるということで、明確に今方針を決めて努力をしているところでございます。

石井(郁)委員 この問題は何か法律をつくらなきゃいけないという話じゃなくて、日本の公立学校に受け入れているわけですから、公立学校での教員の加配だとかいろいろな体制をつくるということでは、これは国として直ちにできることだろうと思うんです。

 しかし、これとて、きのうも伺いましたら、帰国・外国人児童生徒受入促進事業というのを始められたということですけれども、大変遅いですよね。本当に現場が二十一年度の予算額でどのくらいの教員が配置されるのか、十分足りているのかどうかということも今後検証をしていかなきゃいけないなというふうに思っていますけれども、それはもう本当に力を入れていただきたいというふうに思います。

 もう一点は、今、ブラジル人学校それから公立学校に来る子供たちの話をしましたけれども、そのどちらにも行けない、行っていない、そういう不就学の子供の問題がもう一つあるんです。

 この点は、何か聞きますと、公立学校に行ったけれども、なじめなくてやめてしまう、しかし、ブラジル人学校に行くにはお金が高過ぎて行けないというような話も聞いているんですけれども、そういう子供たちがかなりおられるということについては実態はつかんでいるんでしょうか。

塩谷国務大臣 今お話にありました、ブラジル人学校へ経済的な理由で行けない、あるいは日本の公立学校へもなかなか日本語の能力でなじめないというような不就学の生徒に対して、まず、スクールカウンセラーとかスクールソーシャルワーカー等の配置によって教育相談体制をこれはしっかりと整えること、また、母国語のわかる支援員の活用を通じて、不就学の外国人生徒を含めその実態を把握しておるわけでございまして、さらにこの取り組みを進めてまいりたいと思っております。

 特に、不登校の外国人児童生徒に対する対策としましては、教育支援センター、これは、適応指導教室ということでそこに受け入れたり、特別の教育課程の編成による教育が可能でありますので、その旨を都道府県あるいは市町村の教育委員会に周知して、しっかり実行を促してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 これはブラジル人学校に対する調査の中で知ったことなんですけれども、学校をやめてしまった子供たちの四人に一人は不就学の状態だ。これは九百人ぐらいが不就学ではないかという推計もあるんですね。しかし、ここには、公立学校からやめた子供たちはまだ入っていません。

 私は、そういう子供たちが全国的にどのくらいに上るのかというのは、これは文科省としてちゃんと把握するべきではないのかというふうに思います。そういう実態もつかんだ上でいろいろな対策もぜひ講じていただきたいということを強調したいと思います。

 時間になりましたけれども、日系人の多くの方々が日本の製造業を支えてきました。この急速な経済悪化で真っ先に首を切られる、路頭に迷わされている、子供たちがその犠牲にもなっているという状況だというふうに思うんです。ブラジルでは日本人と言われた、日本に来たら外国人と言われるのが日系人でございます。

 昨年、私はブラジル百周年にも行ってまいりましたけれども、改めてやはり、そういう歴史的な背景も踏まえてこの就労、就学支援ということに日本政府として本当にもっと力を入れるべきだということを強調させていただいて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で石井君の質疑は終了いたしました。

 次に、馳浩君。

馳委員 外国人学校への公的支援のあり方について、これをテーマに質問をいたします。

 そもそも、認可校、無認可校も含めて、外国人学校への公的支援はどうなっているのでしょうか。

木曽政府参考人 外国人学校への公的支援でございますが、現在、各種学校として都道府県の認可を受けている外国人学校のうち、準学校法人立の各種学校のほとんどにつきましては都道府県から公的支援が行われているものと承知しております。

 また、各種学校に認可されていないいわゆる無認可校でございますが、これにつきましては国及び地方公共団体からの学校に対する直接の公的支援は行われてはいないということでございます。

馳委員 かつて岐阜県が県内の外国人学校に支援をしようとしましたが、文部科学省の指導もあり、結局、学校自体ではなく保護者に支援をすることになりました。

 なぜ学校に直接支援できなかったのでしょうか。

木曽政府参考人 これは一般論としてでございますが、無認可の外国人学校への直接的な支援につきましては、憲法八十九条の、公金その他の公の財産は公の支配に属さない教育施設に支出またはその利用に供してはならないという規定がございまして、そこと抵触するおそれがあるというふうに考えております。

馳委員 岐阜県のような自治体が直接外国人学校を支援したいとする政策判断について、文部科学省はどう評価しているのでしょうか。これを容認する法的担保が必要だと考えてはいないのでしょうか。

木曽政府参考人 今般の景気後退により、厳しい経営状態にありますブラジル人学校等につきまして、都道府県がどのような支援が可能かということを検討していただいているということにつきましては、非常にありがたく感じております。

 ただ、先ほど言いましたように、憲法八十九条との関係がございまして、これらに対する直接的な支援につきましては、法制面あるいは政策面からさまざまな解決すべき問題があるというふうに考えております。

馳委員 公立の小中学校への受け入れはすることができるということは、先ほどからの質疑、答弁でも理解しておりますが、問題は、公立学校への受け入れの体制が、質と量ともに十分と言えるのかどうかだと思います。また、日本の公立学校に入学はしたものの、その受け入れ体制の不十分さから、外国人学校に入学し直した児童生徒が多数いることをどう考えているのでしょうか。

 浜松市での視察においても、子供たちが直接、ひどいいじめに遭って、外国人学校、ブラジル人学校に来ているというふうな声も多数聞きまして、大変、何となく私も、日本人として申しわけないような思いもいたしました。

 この状況についての見解をお伺いしたいと思います。

金森政府参考人 文部科学省におきましては、従来から、公立学校に就学または在籍する外国人児童生徒の支援のために、日本語指導を行う教員等の配置や、日本の教育制度や就学の手続などをまとめた就学ガイドブックを七言語で作成、配付いたしましたり、日本語指導の際の補助や、学校と保護者との連絡調整等を行う際に必要な外国語が使える支援員等の配置、また、外国人児童生徒を受け入れるためのセンター校の設置などを実施しているところでございます。

 外国人の子供を公立学校に円滑に受け入れ、必要な教育を施すためには、まず、日本語指導や適応指導を適切に行うための体制を整えることが課題となってまいりますが、文部科学省といたしましては、先ほど申しましたような施策の充実によって、公立学校に入学を希望する子供の受け入れをさらに促進してまいりたいと考えているところでございます。

馳委員 受け入れ体制が十分と言えるのかと私は聞きました。大臣の見解を伺います。

塩谷国務大臣 現時点でできる限りのことは今努力をしておりますが、いわゆる人的な問題とか細かな指導という点ではまだ不十分な点があるかと思います。

 今回、急激な経済状況によって、また公立学校への受け入れというものがより重要な位置づけになってきておりますので、そういう点で、今後、指導者といいますか、支援員といいますか、そういう人たちもしっかりと確保していかなければなりませんが、例えば母国語で話ができる支援員等、これはなかなか現実に難しい。ただ、いわゆるブラジル人の中でも職を失った方なんかも採用していくということも考えたり、いろいろな方策を考えて、より充実をしていかなければならない状況だと思っております。

馳委員 なかなかやはり十分ではないと私も判断せざるを得ない。そう考えると、これは金森局長に御答弁いただければいいと思うんですが、やはり、教育委員会の指導主事とか学校経営者また教職員に対する理解を求めるための研修がより充実されなければいけないと思うんですよね。

 この研修の体制、ここについて、私は今以上に充実してほしいんですが、その研修について今後どのように取り組んでいくのか、決意も含めて、ちょっと金森局長からお聞かせいただきたいと思います。

金森政府参考人 教員の研修についてのお尋ねでございますが、日本語指導者等に対する研修の実施といたしまして、独立行政法人教員研修センターと文部科学省の共催によって、外国人児童生徒教育に携わる教員や、校長、教頭及び指導主事などの管理職を対象として、日本語指導法などを主な内容とした実践的な研修を毎年実施しているところでございます。

 こうした研修は、各都道府県におきましても必要に応じて実施されているところでございまして、外国人児童生徒の公立学校への円滑な受け入れを進めていくためにも、こうした研修の充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。

馳委員 ここはやはり、大臣にぜひ指導力を発揮していただきたいんですが、学校経営者また教職員に日本語指導の充実だけでは十分ではないと思うんですよ。

 なぜ日系人の子供が日本にいるのか。平成二年に入管法が改正されて、これは政府の判断として受け入れてくるようになった。言葉がちょっと悪くなりますけれども、やはり労働者として製造現場で必要不可欠で受け入れてきたということの判断なんですよ。

 そうした場合に、当然、定住する場合にはお子さんがいるわけで、そのお子さんの教育環境の整備ということは、政府としてもやはり責任を持って対応していくべきである。こういうふうな大きな政府の判断から考えて、現場の校長は、この地域にも外国人のお子さんがいらっしゃる、受け入れなければいけない。こういった実情を踏まえた研修、外国人の子供がなぜ日本に存在しているのかというその意義を踏まえた十分な研修がないと、日本語を指導するだけではまだ十分ではないと私は思うんですが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

塩谷国務大臣 まさに委員おっしゃるとおりだと思っておりますが、いずれにしましても、我が国としてブラジル人の皆さんをこちらへ受け入れる、それは、日本の経済の状況から、労働力としても日系ブラジル人に対して受け入れを始めたわけでございますから、そのための、これは単に教育だけに限らず、社会保障の面とか労働条件の面とか雇用対策とか、さまざまそういった総合的なことをしっかり踏まえて、子供の教育をどうするかということもあるわけでして、残念ながら、その点については整備が整わない中でこういう経済危機になったということでございまして、麻生総理も、内閣府官房の方ですか、総合的な外国人に対する対策室を設けて、けさも閣議等でその問題がお話しされました。総合的にしっかりと検討しなきゃならぬと。

 これは、中長期的な検討とあわせて、今、緊急的な対応もすべきでありますので、そういった点も含めた教員の研修ということで、やはり時代的背景とか今の経済状況も含めた指導をしていかなきゃならないと考えております。

馳委員 そこで、この外国人学校に対する公的支援のテーマに戻りますが、外国人学校は、外国人子弟の義務教育段階の教育について補完的な役割を果たしていることになるのではないかと思いますが、大臣はどうお考えですか。

塩谷国務大臣 外国人については、その保護する子供に憲法及び教育基本法上の義務教育を受けさせる義務は課されていないわけでございますが、外国人が子供を公立義務教育諸学校へ就学させることを希望する場合は、国際人権規約を踏まえて、日本人の子供と同じように無償で受け入れることになっているわけでございます。

 一方で、例えばブラジル人学校等は、将来母国へ帰国するということを予定している子供が、保護者の需要にこたえて、外国の教育課程に従って、外国人の教育を目的として行っておりますので、日本の公立学校あるいは外国人学校は、それぞれの役割を担っていると考えております。

馳委員 私は、外国人学校が日本の義務教育の補完的な役割を果たしているというのは、今の大臣の説明からは十分に判断し切れませんでした。しかし、現実はそうなんですね。現実はそうなんですよ。浜松に行って、よくわかりました。

 そう考えたときに、経済環境も世界的に厳しい中で、外国人学校の閉鎖とか経営難が現実化している中で、国も外国人学校に一定の支援をすることは、外国人子弟の教育を受ける権利の保障、さらには日本の国益にも資することだと考えておりますが、いかがお考えでしょうか。

木曽政府参考人 外国人の子供の就学支援を行うことは、ある意味で非常に重要であるという認識はしておりますが、その中で、先ほど出ましたような無認可の外国人学校への支援につきましては、種々の検討すべき課題があるということが一つございます。

 そういう中で、文部科学省におきましては、このたびの経済危機対策として、自宅待機、不就学となっている子供がまさに集まれる教室をつくろうということで、定住外国人の子供の就学支援事業を計画しているところでございます。そういう形で支援をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

馳委員 そこで、今の木曽統括官の発言をちょっと逆手にとるようで申しわけないんですけれども、無認可の学校に対して検討すべき課題があるということを、逆に、我々立法府としてこういう考え方をとればどうかということで申し上げます。

 外国人労働者の地方の偏在性、外国人学校が果たす補完的役割のある、なし、程度というのは自治体によりかなり異なるという現実を踏まえれば、国が外国人学校に直接支援することは困難でありますし、適当ではないと考えます。つまり、自治体がその自主的判断により直接外国人学校を支援できるようにして、国は自治体の支援や申請を踏まえて間接的に支援する体制をとるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 今のお考えは私どもとしてもある程度理解はできるわけですが、いずれにしましても、無認可の学校への支援については憲法八十九条に抵触するおそれがあるということで、この問題はいろいろな観点からしっかりと議論をしていかなければならないと思っているところでございます。

 それについて今の御提言、例えば、先ほど来お話ししておりますように、外国人、ブラジル人の子供への直接支援とか、いろいろな形での支援を考えていく必要があると思っておりますが、無認可の学校への直接の支援というのは、先ほども答弁申し上げましたが、いろいろなほかの日本人、日本の学校等のことを考えると、一方的に簡単にはできないと考えております。

馳委員 つまり、大臣がおっしゃったように、現状では無理なんですよ。そして、税金の使い道というのはやはり公平性の問題がありますから、ここはやはり乗り越える知恵、また、我々立法府としての取り組みが必要ではないかという観点から、私は先ほどの試案として見解を求めたというところであります。

 そこで、私が今申し上げた試案は、現在の外国人学校の果たしている役割とか置かれている窮状を踏まえての緊急措置という意味で申し上げているんですが、でも、長期的な課題として、外国人学校を日本の学校教育上どう位置づけていくかという大問題は残ります。この問題は、言いかえれば、外国人子弟の受け入れ先について、日本の公立学校の受け入れ体制が十分整備されたとしても、日本の公立学校と外国人学校を共存共栄させて、外国人子弟にとって選択的教育システムとするかどうかという問題でもあります。この点についての大臣の御意見を伺いたいと思います。

塩谷国務大臣 先ほど私もお話し申し上げましたが、基本的な課題として外国人学校をどう位置づけるかということ、これは中長期的にしっかりと私どもの法的あるいは政策面で整備していかなきゃならぬと思っているところでございます。

 まず、外国人の子供に対する、いわゆる憲法あるいは教育基本法での義務というものは課されていないわけでございますが、公立学校としては、その子が希望すればしっかりと無償で受け入れるということは基本的な考え方として、そして外国人学校については、やはり何年かで本国へ帰るということでその国の教育に基づいて行われる、これが両方が両立してしっかりと受け入れ体制が図られれば望ましい環境だと思っておりますので、まずは私どもが一番力を入れなければならないのは、公立学校での受け入れ体制を確立することだと考えております。

馳委員 実は私たちが視察をした浜松市は塩谷大臣も選挙区でありますし、むしろ我々以上に市民の一員として、外国人の労働者の皆さん、その子供たちが生活されている現場を見て、何らかのやはり手を差し伸べなければ政府として申しわけないなという気持ちを一番持っておられるのではないかと拝察いたしますが、いかがですか。

塩谷国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、今回、文部科学委員会の皆さん方が視察していただいたことは大変感謝しているところでございまして、実は、浜松市と文部科学省とも、そういう意味では、直接現場と連絡をとりながら具体的な対応を図っているところでございます。

 特に、私が先ほどもちょっと申し上げましたが、やはり、特に集住都市が直接いろんな対応をしている、しかしながら国としてはまだそれがおくれているというのが現状でありますから、私どもの立場でも、私の地元でそういう状況がありますので、よくここは、国としてもしっかりそれを受けとめて、国としての対応を考えていかなければならない。そしてこれは、ただ単に浜松だけじゃなくて、日本の国として、今後、外国人の労働者も含め、雇用の問題も含め、そして教育の問題、全体的にどう対応するかということをしっかりと検討して整備する必要があると感じております。

馳委員 幸いにというか、今、麻生総理も、それから河村建夫官房長官も塩谷文部科学大臣も、我々自由民主党が誇る文教族の大物中の大物でありまして、だからというわけではありませんが、ことし一月になって内閣府に支援室も特段設置をしていただいて、大変にこの問題にスポットライトを当てていただいているということには大変感謝をしております。であるがゆえに、国家的な課題として、この外国人子弟への教育問題に、より前向きに取り組んでいただきたいと思っています。

 ちょっと次元の違う話に入りますけれども、そもそも、その外国人の本国から教材の提供とか教員の派遣など、できる限りの支援を求めるべきではありませんか。

木曽政府参考人 まさに御指摘のとおりだというふうに思っております。ブラジル人学校等の教育の充実につきましては、ブラジル政府の役割が非常に重要であるというふうに考えております。

 文部科学省といたしましては、平成十七年度より、ブラジル政府との協議会をつくりまして、毎年開催しております。その中で、ブラジル政府との情報交換を含め、特に教科書の無償給与あるいは教師の派遣等についての支援をお願いしているところでございます。

馳委員 そのお願いしている支援がどの程度のものなのかについて、やはりよりハードルを上げることによって、日本国内の外国人学校での経営を支援することは可能になるわけですよね。

 ちなみに、国と国の関係ですから、ちょっとイレギュラーかもしれませんが、例えば草の根無償援助資金などを活用して資金援助をすることは可能でしょうか。この資金援助という意味は、先ほど申し上げたように、教材とか教員の派遣などなど、あらゆる限りの支援をこういったことで検討し、これは外交上の問題にもなりますので、やはり何らかの支援ができないかとすがるような思いで外務省にお尋ねいたしますが、いかがでしょうか。

小田政府参考人 お尋ねの草の根・人間の安全保障無償資金協力でございますけれども、これは、開発途上国におきまして、当該国の非政府団体、NGOとか地方公共団体などが実施する社会経済開発事業に対して資金協力を行っているものでございます。

 よって、この資金を我が国国内における経費に充てるということは、これまでも認めていないということでございます。

馳委員 我が国国内における経費というとらえ方ではなくて、外国人学校で使われる教材であるとか、指導する教員に対する研修を本国で行うときにこの資金を有効に使えないでしょうかという間接的なお願いなんですけれども、いろいろな組み合わせで検討はできないものなのでしょうか。もう一度外務省にお伺いいたします。

 現地のNGO団体が、日本の外国人学校でこういう課題があるので、教員研修をしたり、あるいは教材、教科書等、こういったことを支援する、いろいろな活動が含まれると私は思うんですが、外務省、もう一度、ちょっと検討いただけないでしょうか。答弁をお願いします。

小田政府参考人 お尋ねが、開発途上国において何か準備をするということであれば支援できるのではないかということだと思うんですが、目的が日本で行われる在日外国人子弟への支援という、活動場所が日本国内ということになりますと、当初申し上げました、やはり開発途上国の社会経済開発事業というものに該当するかどうかというところがどうしてもひっかかるということでございます。

馳委員 では、開発途上国において、いわゆる教育職員の研修をするために日本語指導をしてあげるとか、その活動支援とか、いろいろな組み合わせをやろうと思えばできないことはないし、むしろ、こういうことこそ我が国政府がその途上国に支援をする中で日本に対する信頼を深めるための事業となるのではないか、こういう考え方もしていいんじゃないかと私は思うんですが、もう一度、外務省の答弁を求めたいと思います。

小田政府参考人 開発途上国におきまして、当該国の先生の能力向上を図るというものについて当該国政府から支援要請があれば、そういう広い意味での事業ということであれば検討対象にはなろうかとは思いますが、そうした点も含めて、ちょっと考えさせていただきたいと思います。

馳委員 私、いつも思うんですが、できないことを前提にして話をするんじゃなくて、使われる税金がより我が国の国益に資するために考えて対応すべきであって、その税金の使い道がある意味では最終的には我が国の国益につながる、こういう判断をしていただいて、私は個人的には、やはり外国人学校に対する支援は、税制の面からも、先ほど申し上げたように根拠法をつくって支援するということも含めて考えていくべきだという立場に立っております。

 文部科学省も含めて、関係各省、どうやれば我が国政府としての一貫した支援体制をとることができるのかという観点からぜひお考えをいただきたいと思いますが、最後に大臣の答弁を求めて終わりたいと思います。

岩屋委員長 塩谷文部科学大臣、時間が参っておりますので手短にお願いします。

塩谷国務大臣 私どもも、どうやれば外国人の子供たちの教育が、安心してだれもが通えるという状況をつくるために努力してまいりたいと思っておりますが、なかなか役所、当局としては、いろいろないい意見もすぐ実行できるかどうかということも判断しなければなりませんので、すんなりと答えが出ない部分もありますので、その点は御理解いただきたいと思います。

馳委員 終わります。

岩屋委員長 以上で馳浩君の質疑は終了いたしました。

 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 先ほど馳委員が、政府開発援助、草の根無償資金協力について御質問いただきました。私も実は通告をしておりましたので、順序を変えますけれども、今、熱いうちにこの問題をもう一度打たせていただきたいと思います。

 もう一度、外務省の官房審議官の方にお尋ねをしたいんですけれども、そもそも、この草の根無償資金協力の支援規定の中に、日本国内の活動に対して支援が不可能だという規定はありますか。

小田政府参考人 草の根・人間の安全保障無償資金協力、そもそもこれはODAでございますので、ODAの定義としては、その開発途上国の社会経済開発に資するということになっておりますので、基本的にその途上国において実施されている事業に充てるということだと思っています。

 この草の根・人間の安全保障無償資金協力、これは私どもの使い方として、通常の無償資金協力ですと、途上国政府からの要請を受けて実施するものですが、これについては、先ほども申し上げましたとおり、当該開発途上国のNGOとか地方公共団体とか、いわゆる中央政府でないところからの要請も受けて実施はしておりますけれども、あくまでもODAですので、当該国の社会経済開発に資する事業、こういうことに使い方を限定しているということでございます。

田島(一)委員 教育とは、そもそも社会経済開発に資するものだというふうに私は思います。恐らく、ここにいらっしゃる皆様も、異論を挟まれる方はいらっしゃらないというふうに思うわけであります。

 一例を申し上げたいと思います。例えばODA、この草の根無償資金協力で某国へ拠出をしたといたしましょう、NGOに。一例として、学校法人に出したといたしましょう。それについては現行は何ら問題はありませんね。

 しかし、その学校が諸外国に分校を持っていた場合、その分校に利用されたことは、これはこのODAの規定から反するというふうにお考えなのかどうか、お答えいただきたいと思います。

小田政府参考人 今御質問のその前提が、まず開発途上国のあるNGOが草の根・人間の安全保障資金協力を、要するに当該国に学校を建てるという目的で要請があった場合、これはもちろんその当該国での事業ですので、それに支援をするということは可能でございます。

 仮に、そのNGOがほかの、例えば今議論になっているのは日本ですから、では日本に分校を建てると言われた場合は、その開発途上地域の、国の経済社会開発に寄与するのかどうかという部分で、やはり慎重に検討しないといけないというふうに思っています。

田島(一)委員 慎重に検討しなければならないということは、全くだめだという状況にはないというふうに私は解釈をいたしました。

 現に、これまでこの草の根無償資金協力で、こうした直接協力をしたケースから、他の外国のそういった学校の施設であるとかまた教材等々へ流れているケースというのは間々あるはずであります。一つ一つそれをひもといていく時間がありませんので、きょうは省略をさせていただきたいと思いますが、こうした事例を、私は門戸を閉ざす必要が本当にあるのかどうか。

 政府開発援助大綱が、平成十五年の八月に改定をされました。その前書きの部分にこうあります。「ODAの戦略性、機動性、透明性、効率性を高めるとともに、幅広い国民参加を促進し、我が国のODAに対する内外の理解を深めるため、次のとおりODA大綱を改定する。」と。

 この一文に照らし合わせても、日本のODAに対する内外の理解を深めていくためには、ブラジル人学校に投資をすることはこの目的とする部分に十分に私は沿っているのではないかと思います。また、この「内外の理解を深める」という点では、ブラジル政府、そしてブラジル人学校もあわせて、将来、本国に戻るか日本で居住するかのいかんを問わず、意義あることとして私は受けとめてもいいのではないかというふうに思います。

 十分に検討しなければならない課題だというふうに審議官もおっしゃいました。私、どうぞ十分に検討をしていただきたい、その覚悟だけお聞かせをいただきたいと思います。

小田政府参考人 どういう形があるかというのは検討したいと思いますが、ちょっと私、教育行政そのものには全く門外漢で恐縮なんですけれども、先ほどのいろいろな御議論を聞いておりますと、無認可の学校施設、教育施設に対して国の資金を出すということが大きな問題になっているというふうに先ほど拝聴しておりました。

 ODAも国の資金でございますので、どの役所から出ていくかとは関係なく、そういう大きな問題というものはかかっているのではないかなと思います。そういったことは別として、どういうことがあり得るのかは検討はしたいと思いますが、基本的にそういう問題もあるんじゃないかなというふうな気はしております。

田島(一)委員 審議官、誤解しないでいただきたいんですけれども、認可を受けているかどうかというのは日本国内のことであって、例えばブラジル人学校の今問題にしている学校は、それぞれブラジル政府の認可は受けている学校だったりするんですね。つまり、ODAで資金協力をされている国からは学校として認められている、しかしながら、日本の学校の基準に満たないからというような問題で、こうしたさまざまな資金の転用等々ができないのかということで、今申し上げているわけであります。

 いずれにしても、門外だというふうにおっしゃいましたから、改めてこの議論を続けてもせんないことでありますので、こうしたODAに対する内外の理解を深めていくということを一つ考えても、私はそういった使い方があってもいいのではないかというふうに考えております。

 恐らく、先ほど御質問された馳理事も同じ意向だというふうに思いますので、どうぞ、与野党問わずにこういう質問があったということだけは十分に省へ持ち帰っていただきたい。そして、次の質問へと移らせていただきたいと思います。

 さて、私は、過日の大臣所信に対する質疑の中ででも塩谷大臣にブラジル人学校を初めとする外国人学校のあり方についてお尋ねをさせていただきました。ここで、やはりもう一度、きちっと概念とそして位置づけを整理しなければならないと思うのでありますが、日本にいる外国人の子供たちの教育の考え方であります。

 もちろん、日本が既に批准をしております国際人権条約や子ども権利条約そして人種差別撤廃条約等では、しっかりと外国人また民族的マイノリティーの教育の権利というのを明文で保障されております。つまり、批准をしている日本としても、この条約にうたわれている外国人、民族的マイノリティーの教育の権利をきちっと保障しなければならないというのが前提としてあるわけであります。

 もちろん、先ほど憲法に抵触するというふうな御意見も大臣の口からありましたけれども、しかし、日本に居住するすべての外国人、民族的マイノリティーの教育を保障していくということが何より私は前提なのではないかと思います。

 その上に立って、今回の問題となっている外国人学校の位置づけというものが議論としてスタートしていくんだと思いますが、この学校の位置づけについての御認識も含め、外国人そして民族的マイノリティーへの教育の権利というものの保障について、大臣はそもそもどのようにお考えなのかをまずお聞かせください。

塩谷国務大臣 外国人学校につきましては、今、国際条約等の考え方から、その教育を受ける権利を保障されなければならないということは根本にあるわけでございますが、特に、現在のブラジル人学校は八十六校ありまして、その中で五十四校がブラジル政府からの認可を受けているということで、ブラジル人の子供たちの母国語における上級学校への円滑な進学が可能となっているわけでございます。特に比較的短期に帰国する人を対象としていると思っておりまして、そのために、ブラジルの教育課程に従って自主的に教育を行っていると考えております。

 例えば、ほかの国の外国人学校を考えますと、このような問題はほぼないといいますか、ごく少数であったり、長期、その国の必要性に応じて設立された。例えば日本人学校であれば、日本の労働者が何とかということで、日本がしっかり、日本人がそれぞれ設置しているというのが通常な状況である。

 しかしながら、先ほど馳委員のお話がありましたように、ブラジル人の場合は、我が国が労働力として日系ブラジル人を特別に門戸を開いて入れてきた経緯があって、そこの対応がほかの外国人学校とは違うのかなという感じがしておりまして、しかしながら、今まで、例えばインドネシア人学校とかそういう学校がある、そこは何の問題もなく本国がしっかりやっていけるんですね。しかしながら、ブラジル人の場合は、日系ブラジル人として特別に、しかも大勢入れてきた、そういう中で起こっている問題でありますので、これはこれでまた新たに別な位置づけをしていかなければならないのかなという、そんな感じは受けています。

 それに対して、日本のいわゆる整備はされていないという状況だと思っておりますので、特に最近の経済状況でいろいろな問題が出てきていまして、それに対してはまた我々としては緊急的に対応しておりますが、いずれにしても、将来的な位置づけをどう考えていくかというのは、改めてしっかりと検討していく必要があると考えております。

田島(一)委員 今の大臣の御答弁、もうちょっと平たく申し上げると、将来日本に定住されるのかどうかが問題なのかというふうに私は受けとめたわけであります。短期間でいずれ帰国される方々がブラジル人学校には多いから、そこで問題があったので、別の考え方でこの問題を取り上げなければならない、そういうふうに私は聞こえたんです。

 学ばなければならない、学ぶべき子供たちが、長期間であれば手を打つのか、短期間だったらどうするのかじゃないはずですよね。もう一度、大臣、お答えをください。

塩谷国務大臣 私が申し上げたのは、例えばインドネシア人学校とかほかの外国人学校は、大体一校とか二校とかという数で、その国がしっかり支援をしながらずっと成り立って、特にこういう問題はない中で来たわけですが、ブラジル人学校の場合は、大量に労働力として日本が受け入れた結果、大勢のブラジル人生徒が出てきたということで、それへの対応がおくれているということを今申し上げたわけでございまして、長期とか短期とかというのは、ただ単に、ブラジル人学校の位置づけとしては、短期で帰る人を対象にして、ブラジルの教育課程で授業を行っているということを申し上げたわけでございます。

田島(一)委員 国の教育に対する考え方、認可のあり方がそれぞれ違うわけでありますから、当然、それに対しての姿勢というものもそれぞれに考えていかなければならない、そのお立場もわからなくもありません。しかしながら、現に条約等で批准をしている外国人そして民族的マイノリティーの教育の保障という観点から立つと一刻の猶予もないというような状況にあることを、私たちも過日の浜松での三校の視察でつぶさに拝見してまいりました。

 ただ、浜松市内の三校のブラジル人学校を拝見しても、まだ立派な施設、立派な教育をなさっているなという認識を私は持って帰ってきたところであります。いわば、学校と呼ぶにはまだまだほど遠い、過日の質問でも取り上げましたが、プレハブ小屋に机を並べただけの、本当に劣悪な教育環境にさらされているブラジル人学校もまだまだあるわけであります。これだけ、ブラジル人学校と一くくりをしてもなかなか難しい状況にあることも、大臣も御報告等をいただいていらっしゃると思うんです。

 しかしながら、何としてもこのブラジル人学校の劣悪な環境を正していきたい、よくしていきたいという思いの中で、いわゆる各種学校等の認可、設置基準の緩和というものに、これまで文部省そしてまた総務省も取り組んでいただいてまいりました。しかしながら、二〇〇四年の三月に静岡県を初めとして東海四県が、その後も茨城県や埼玉県、神奈川県がこの各種学校や準学校法人の設置に関する基準を緩和するという手をとってきたわけでありますが、これでも四十七都道府県の中ではごく一握りであります。

 生涯学習政策局の通知であるとか、総務省が策定をした地域における多文化共生推進プランは、まだまだ各都道府県におりていないという現状が問題にありますし、その緩和された基準自体も、都道府県によって相当ばらつきがあるところであります。

 これだけ遅々として進んでいない都道府県における緩和措置の現状について、どのようにお考えになっていらっしゃるのか、そしてどのように対応されていこうとお考えなのか、お答えをいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 今お話があった点でございますが、私どもとしては、準学校法人及び各種学校の認可基準について、その緩和を進めてきたわけでございまして、人数等のこと、あるいは施設等のこと、最終的には、それが借り物であってもいいというようなところまで基準を緩和しているところでございますが、残念ながら数としては、この間、平成十六年からは約五校が認可になった程度でございますので、今後も、そういった緩和した基準をもう一度徹底して都道府県に周知するとともに、さらに何が必要かということもまた検討して、今後認定できるような状況をできるだけ推進してまいりたいと考えております。

田島(一)委員 全都道府県、足並みをそろえろと強要できるような立場にないことも承知しておりますが、しかしながら、認可基準を緩和していない都道府県にもこうしたブラジル人学校を初めとする外国人学校が多数あるという認識からすると、やはり文科省の生涯学習政策局の果たすべき役割はまだまだあろうかというふうに思います。どうぞ、その点、認識を新たにしていただきまして、さらにスピードを上げていただきたい、そのことを心からお願い申し上げておきたいと思います。

 さて、もう一方で、公教育における外国人児童生徒の受け入れ問題についての質問に入らせていただきたいと思います。

 現在、公教育の中で、もちろんブラジル人、ペルー人を初めとする外国人の子弟も、子供たちも多く学んでいるわけでありますが、どうしても公教育の中ではさまざまな課題や問題が生じていることは、私も前回の質問の段階で、ブラジル人のいわゆるアイデンティティーを重んじる考え方と、日本人のいわゆる共同学習、共同生活とがなかなか相入れないという問題も提案をさせていただいたところでありました。

 そういった中で、それぞれの国の、マイノリティーも含め、外国の文化、暮らし、習慣、こうしたものをやはり理解するという共生型教育の必要性が私は何よりも重要だというふうに思っております。

 本当なら、時間があれば大臣にこの必要性についての認識を聞きたかったんですけれども、それはまた次の機会にさせていただくとして、現状、各学校で教壇に立っていただいている先生方が、大学で教員養成課程で学んでいただいての教壇生活だと思いますが、実際に教員養成課程においてこうした多文化と共生する教育といったものを学ぶような機会というのが果たしてあるのかどうか、また、そういったブラジル人であるとかペルー人の子供たちを初めとして、いわゆるスペイン語やポルトガル語といった語学が第二外国語で選択をすることができるような状況にあるのかどうか、お答えできるのがそれぞれかもしれませんけれども、順次御答弁をいただけたらと思います。

金森政府参考人 大学におきましては、地域の必要性に応じ、教員養成課程に在籍する学生が日本語教育や国際理解教育を履修することが重要であると考えております。

 こうした観点から、大学におきましては、教員養成課程において、多文化教育論等の科目を開設している例や、教職の意義等に関する科目の中で多文化共生教育について取り扱っている例が見られるところでございます。また、特色ある大学教育支援プログラムを利用して、多文化地域で活躍できる教員の養成を行っている大学もございます。

 今後とも、こうした大学の取り組みの充実を期してまいりたいと考えているところでございます。

徳永政府参考人 教員養成の課程認定を受けている大学の中での第二外国語ということでございますが、必ずしもきちんとした統計があるわけではございません。私どもの職員が集計をした限りでございますが、スペイン語を選択できる大学が二百七大学、ポルトガル語を選択できる大学が四十九大学、課程認定を受けている大学でございます。

田島(一)委員 語学に関してなんですけれども、スペイン語が二百七大学、ポルトガル語が四十九大学、それぞれ第二外国語として選択できる環境にあるというお答えでありました。

 しかしながら、そこを学生たちが選択してくれなければ、せっかくステージを用意しても、意味のないことになってしまうわけであります。それぞれ、学生たちが、今教育現場でどのような課題があるのか、そのあたりを認識し、そしてその必要性を感じて、この第二外国語が選択されるように祈りたいところでありますけれども、祈るだけでは何ともこれはしようがないところでありますね。

 何か、例えばこうした教育現場において、ポルトガル語やスペイン語の履修が将来教育現場で役に立つというようなことをきちっと伝えたりするような、そういうチャンスというのは大学の中であるんでしょうか。

徳永政府参考人 もとより、外国語の学習というのは、基本的には大学の中で、いわゆる一般教育、そしてさまざまな外国の文化を学ぶためのものとして位置づけられているわけでございます。その意味では、どのような第二外国語の科目を立てるのか、それを学生たちがどのように選択、履修するのかといったことは、本来それぞれの大学の自主性にゆだねているところでございます。

 特に、先生御指摘のような形で、いわば教員養成の一環という形で強く意識をするということについては、それはそれとしてまた別の観点での施策ということは可能だと思っておりますが、こういういわゆる第二外国語というような中でそういったことを誘導していくということは、それぞれの大学の自主性に期待をするということだと思っております。

田島(一)委員 自主性に期待をする、非常に聞こえはいいんですけれども、裏を返せば、任せっきり、ほったらかし、一切文科省からは何もしないという裏返しではないかというふうに私は思います。

 ややもすれば、単位が取りやすい選択科目へ流れてしまいがちな昨今の風潮、その中で、教育に対する熱意をできる限り、それぞれのその選択科目においてでも、学生たちが認識をした上で選択できるような状況を何とかつくれないだろうか、そんな思いが私は改めてしているところでもあります。

 スペイン語やポルトガル語を通して、それぞれのマイノリティー、外国人の子供たちの心情理解につなげるようなきっかけがとれれば、そんな思いからの質問でありますので、どうかそのあたりの御認識もぜひ踏まえていただいて、各大学へそういった質問があったことをぜひ伝えていただくことを心から念じるところであります。

 とはいいながら、語学だけがすべてではありません。それぞれの文化、習慣、そういったものが子供たちの心情を大きく形成している事情もあるわけでありますから、その外国人の子供たちが何に悩み、何に今大きな課題を考えているのかを考えるには、やはり同じ国籍を持つ方の教育指導、外国人の教員の採用というものがもっと拍車がかかればいいのにな、浜松へお邪魔をしたときにもそんなふうに感じたところであります。

 例えばブラジル人学校にも数多くの、ブラジル国籍を持ち、そしてまた教員免許を持った教師の方々がいらっしゃいます。もちろん日本語も御存じであり、スペイン語、ポルトガル語も御存じの方々であります。ブラジル人学校の中には、それこそ授業のカリキュラムは午前中で終わってしまうというのが常であったり、また、午後も居残りで勉強されている方もいらっしゃるわけでありますが、午後、お願いすれば、そういったブラジル人の学校教員の先生方をブラジル人学校から派遣をしていただいて、公教育の中でいわゆる学んでいる外国人児童生徒の受け入れ校に派遣をするということが、また、ある意味では、もっと効果的な支援が私はできるのではないかというふうに思うわけであります。

 浜松でもブラジル人学校と公立の小中学校との交流をやっているというお話も聞かせていただきましたが、単発的な交流ではなくて、例えば、ブラジル人学校の午後から休校になったその時間帯を公教育の中で派遣をしてもらって、さまざまな相談事業、また言葉の事業等々に教育をしてもらうというようなプログラムを開発すること、また、そういう事業を進めていくにおいて、文科省から助成をしていくというような手だてが私は考えられるのではないかというふうに思うんですが、文科省としてのお考えをお聞かせください。

塩谷国務大臣 ブラジル人の子供たちへの指導については、何といっても母国語がわかる指導員が一番重要だと思っておりますが、現在のところ、帰国・外国人児童生徒受入促進事業ということで、その就学促進員あるいは母国語のわかる支援員等を、外国人生徒に対して日本語指導等の補助を行っていただいておるわけでございまして、この就学促進員や支援員を、今話がありましたブラジル人学校の教師の皆さん方になっていただくことも可能でありますので、この点は、今後そういった活用をして、できるだけお互いの学校で、お互いにいい、子供たちにとっての整備をしていくことが必要だと思っておりますので、今後、具体的にも検討してまいりたいと考えています。

田島(一)委員 ありがとうございました。

 時間がなくなりましたので、あと一問だけお尋ねをして終わりたいと思います。

 そもそもこの認可を受けるかどうかという問題を多くの皆さんも御指摘をされましたけれども、では、ブラジル人学校等がいわゆる認可を受けていくそのプロセス、手続をいかに促進していくかという課題があります。残念なことに、このブラジル人学校、それこそムンド・デ・アレグリアは日本人の校長先生でありましたけれども、それ以外はほとんどが、日本語が余り得意ではないブラジル人の方々が校長として学校経営をなさっていらっしゃいます。

 こうした状況の中で、認可を受けるであるとかさまざまな手続をしていくにも、残念ながら書類は日本語で書かれており、その手続に要する書類等々も大変膨大な量になっております。簡単に認可さえ受けてくれればいいとこちらが笛を吹いても、そう簡単にその手続に乗れないというような状況があります。また、間接的に行政書士等々に依頼をされるケースもあろうかと思いますが、その経費等々を考えていくと二の足を踏まざるを得ないというような問題もあります。

 許認可を得ることによるメリットというのは、管理をされる側の行政当局側にもあるわけでありますから、こうした外国人学校の認可の手続等々にかかるさまざまな経費を、認可手続の促進という観点から助成をするというような間接的支援もあるのではないかというふうに思いますが、その点についてどのような御認識か、お聞かせください。

岩屋委員長 木曽国際統括官、時間が参っておりますので手短に願います。

木曽政府参考人 認可申請によるいろいろな申請書類を書く際のその翻訳の問題等々ございます。これらにつきましては、地方公共団体と御相談しながら、どういう支援ができるか考えていきたいというふうに思っております。

田島(一)委員 地方公共団体にそれぞれ任せても、これは仕事量が大変膨大になるわけですね。文科省がやはり統一的に、申請書類が全国共通だったりするわけですよ。やはりそういった無駄や無理を省いていくという取り組みをするのが私は文科省の仕事だと思うんですね。何でもかんでも地方自治体に任せればいいというような、こういう姿勢では絶対にうまくいきません。

 今回ようやく初めてこうして集中審議をすることができましたけれども、この課題はまだまだありますし、積み残した質問もあります。こういった問題それぞれを、やはり真摯に取り組んで解決していただくことを心からお願い申し上げて、私、時間が参りましたので質問を終わります。

岩屋委員長 以上で田島君の質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 私どもの福島党首が、昨年の六月の三日に「外国人学校等に関する質問主意書」というのを出しました。その中で、外国人学校の実態を把握するために調査をすべきではないかというふうに聞いておりますが、これに対して政府は、「外国人児童生徒に係る施策を行う上で必要が生じた場合には、その都度、日本語指導が必要な外国人児童生徒数や一部の地方公共団体における学齢相当の外国人の就学状況等について調査を行うなど、学校基本調査以外の方法による外国人児童生徒等の実態把握にも努めているところである。」と答弁して、一定のデータもあるようです。

 しかし、現在、外国人学校が必要としている支援策は、もはやその個別的対策の域を超えた総合的なものではないかというふうに考えているわけです。

 そうした観点から、ブラジル人学校、きょうはその集中審議ということなんですが、だけではなくて、外国人の子供たちの就学状況、これを広く網羅的に調査をすべきではないかというふうに思うんですが、これについて御見解を伺いたいと思います。

木曽政府参考人 現在の実態調査以上の精密な総合的な実態調査をということでございますが、現実問題としましては、調査の費用の問題もございますが、それ以上に、地方自治体側の体制の問題あるいは負担の問題等々ございまして、これも今後の検討課題とさせていただきたいというふうに考えております。

日森委員 ぜひ実施をしていただきたいと思います。

 この間、浜松に行ったときも、浜松市ももちろんブラジル人が圧倒的に多いんですが、それ以外に中国だとか、何カ国ぐらいでしょう、かなりの国の方々がいらっしゃって、公立学校に行っている方が多いのかもしれませんが、それぞれお子さんがいらっしゃるわけで、そういう意味では、確かにお金の問題、十五兆円の補正が出るという話もちょっと耳にしておりますが、いずれにしてもちょっと大変な話もあるようですけれども、ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 それから、在留外国人には憲法第二十六条というのは適用されない、外国人の子供には就学義務はないということになっているようですが、しかし、我が国が一定の留保条件をつけて批准をした経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第十三条というのがあるんですが、この中で教育についての権利というのが明記をされて、我が国に生活する外国人の子供たちに教育の機会を保障するということになっているわけです。

 しかし残念ながら、先ほど来ずっと議論があるように、これが実際にはそうなっていないということから、さまざまな問題が生じているわけです。

 外国人の子供であっても、日本の小中学校に行けば給食費以外は無料で学ぶことができるということになっているんですが、先ほど来あるように、いじめの問題とかあるいは文化の違い、アイデンティティーの違いとかいろいろなことがあって、なかなかそこに行かないで、母国語で教育を受けられる外国人学校に通学している子供たちが大変多いという実態になっていると思うんです。

 最初に基本的なことでお伺いしたいんですが、外国人の子弟の就学に関して文科省は、公立の小学校に進学してもらうのが基本だというふうにお考えになっているのかどうか。もしそうであるならば、その根拠についてお聞かせいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 外国人については、先ほどもお答え申し上げましたが、その保護する子については憲法及び教育基本法上の義務教育を受けさせる義務は課されておりませんが、外国人がその子供を公立義務教育諸学校へ就学させることを希望する場合は、国際人権規約や児童の権利条約を踏まえて、日本の子供と同様に無償で受け入れているということでございます。

 児童の権利条約規定について我が国では、母国語により教育を受ける権利を保障しているものとは解釈をしておりませんで、平成三年に各都道府県の教育長に対して発出した通知においては、学校教育法第一条に規定する学校に在籍する外国人に対しては、課外において、当該の言語や文化等の学習の機会を提供することを制約するものではないという旨を明らかにしているところでございます。

日森委員 そうすると、日本に在住する外国人の子供たち、児童に対して教育を保障するという観点から文科省は基本方針は現在のところお持ちになっていないということなんでしょうか。どういうところでどういうものをいわば環境整備をしてその教育権をきちんと保障していくんだ、できる限り公立学校に行ってもらうのなら、そこでもちゃんと通訳がいて学べるような状態にしていくのかとか、そうでなければ、違う条件のもとでもしっかりと教育権を保障していくんだという基本方針というのは、定まっていないということなんでしょうか。

塩谷国務大臣 外国人の子供たちに対する考え方というか、このことについては、多分、いわゆる外国人労働者に対する対応とか、そういったこととあわせて我が国としてどうあるべきかということは、まだ確立されているような状況ではないと思っております。

 これについて当然私どもも、今、こういう状況の中で先ほど来お話をさせていただいておりますが、中長期的なあり方を明確にしていく必要があると思っておりますし、緊急対応としては、できるだけ子供たちが学校へ通えるような状況をつくる。これが、日本の公立学校とそして外国人学校と両立できるような状況が望ましい。

 これは、子供の状況から考えますと、長期、これから日本に滞在する場合はできるだけ公立学校で日本になじんでもらう。あるいは短期の場合は、ブラジル人学校等でその母国の教育を受けられる。そういった両立ができれば、我が国としても、いろいろな政策の上でも今課題となっている問題も解決されるのではないかと思っておりますので、今後しっかりと検討してまいりたいと思います。

日森委員 公立学校で学ばねばいけないとかいうことはやはり教育上そういうことはできないというか、やってはいけないことだというふうに思いますし、そういう意味では、いずれにしても、外国人の子弟には母国語で教育を受ける権利というのは当然あるわけで、その権利を保障する義務というのが国際規約や子どもの権利条約などで政府に課せられているという観点から、ぜひ、外国人の子供たちの主体性をしっかり伸ばしていく、個性を伸ばしていけるような、そういう条件を整備するという立場からの基本的な考え方を整理をしていただけたらということを申し上げておきたいと思います。

 それから、これもさっき田島委員さんからお話がありましたので、重複するところは省きたいと思いますが、外国人学校を各種学校として認可する基準を緩和するように促したということになっているようです。先ほど、人数とか施設だとかいうことが緩和の条件であったという話を伺いました。しかし、現実には、都道府県単位でこれは十分に受けとめられていない。先ほど御答弁があったように、五校しかないということになっているわけです。

 そういう意味では、基準を緩和したその緩和の仕方が問題なのか、あるいは、緩和をして認可をしなさいと言うけれども、都道府県の側ではお金がないとか人手がないとかいうことでなかなか進まないのか。その都道府県の反応というのは一体どういうことなのか、なぜ進まないのかということについてお答えいただけたら、ありがたいと思います。

木曽政府参考人 各都道府県においてその認可基準の緩和が現実に進んでいないんじゃないかということでございますけれども、都道府県それぞれの置かれた条件といいますか環境といいますか、があって、なかなか進んでいないというのが実態だろうと思っております。

 個々の理由についてはそれぞれでございますのであれでございますが、いずれにいたしましても、文部科学省としては、各都道府県に対して基準を緩めていただきたいというお願いを続けていきたいと思っております。

日森委員 お願いを続けるだけではどうしようもなかったという結論が今出ているわけで、そういう意味では、そこの部分はもう少し踏み込んで精査していただいて、実際に都道府県がそういう認可がしやすい条件というのは一体何なのか、お金が必要ならばどう手当てをしていったらいいのかということについても、かなり真剣に考えていく必要があるんじゃないかというふうに思っているわけです。

 仮に、そういう認可基準が緩和をされて認可をされたところはそれなりに支援が得られるということなんですが、これも、認可基準の多少の緩和などではどうしようもない小規模校というのもかなりあるんですよ、私の埼玉にもございますが、そういう学校に対しても当然支援を考えなきゃいけないということになってくるんではないかと思います。

 認可されるところはいいけれども、いや、基準緩和で認可するように努力してくれと言って、五校が十校、十校が十五校にふえるかもしれないけれども、それから漏れちゃうところ、これはかなり差別化されてしまうということにもなると思いますし、ここら辺についてはどんな手だてがあるのか、これからどう検討されていくのか、ちょっとお考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 認可については緩和して促進するということで、しかしながら、現実なかなか難しいというような状況があるわけでございます。いずれにしても、その基準については、ある程度学校であるために必要な基準だと思っております。

 しかしながら、なかなかそこまで至らないところについては、当然、ブラジル人学校へ通う子供たちへの授業料の減免とか、あるいは日本語指導、さらには健康診断等、地方自治体が行った場合に総務省よりの特別交付税措置が予定をされておりますので、こういった点で、いわゆるその学校自体のことではなくて、生徒にかかわるような指導等の中でできる限りの支援を考えてまいらなきゃならぬと思います。

日森委員 あと三つあるんですが、終わります。

岩屋委員長 以上で日森君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

岩屋委員長 次に、内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩谷文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 著作権法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩谷国務大臣 このたび政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 我が国の著作権制度については、これまでも逐次整備を進めてまいりましたが、文化芸術立国、知的財産立国の実現に向け、一層の充実が必要となっております。

 この法律案は、昨今の情報通信技術の一層の進展などの時代の変化に対応し、インターネット等を活用した著作物等の流通の促進や、障害者の情報利用の機会の確保などを図るため、必要な改正を行うものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、インターネット等を活用した著作物等の利用の円滑化を図るための措置を講ずるものであります。

 昨今の情報通信技術の一層の進展を背景に、インターネット等を活用したさまざまな著作物等の利用形態が可能になるとともに、これに関連する事業が発達してきております。これらの中には、社会にとって有意義であり、かつ、権利者の不利益にならないと考えられるものもあり、著作権法上の位置づけを明らかにすべきとの要請が寄せられております。このため、インターネット情報の検索サービスの実施のための複製、美術の著作物等の譲渡の申し出のための複製、国立国会図書館における所蔵資料の電子化のための複製等について、権利者の許諾なく行えるようにする措置を講ずるものであります。

 また、過去の放送番組等をインターネット等で二次利用する際に、出演者等の所在不明が原因でこれらの二次利用が進まないとの問題が指摘されております。このため、権利者が所在不明の場合における著作物等の利用を容易にするため、現行の文化庁長官の裁定制度を著作隣接権にも適用できるようにするとともに、より迅速に著作物等の利用が開始できるように措置を講ずるものであります。

 第二に、違法な著作物等の流通を抑止するための措置を講ずるものであります。

 インターネット等における著作物等の流通を促進するためには、権利者が安心して著作物等を提供できる環境を整えることが重要であります。

 このため、著作権等を侵害する行為によって作成された物と承知の上で、その物の頒布の申し出を行う行為を権利侵害とみなすとともに、著作権等を侵害して自動公衆送信されている音楽や映像を録音し、または録画することについて、著作権法第三十条の適用範囲から除外し、権利者の許諾を要することとするものであります。なお、この第三十条の改正については、違法なものと知りながら行った場合に限るとともに、罰則を科さないこととしております。

 第三に、障害者の情報利用の機会の確保を図るための措置を講ずるものであります。

 技術の進展に伴う障害者による著作物等の利用方法の多様化や障害者の権利に関する条約をめぐる状況を踏まえ、障害者の情報格差を解消していくことが求められております。

 このため、障害者のために権利者の許諾を得ずに著作物等を利用できる範囲を抜本的に見直し、障害の種類を限定しないこととするとともに、デジタル録音図書の作成、映画や放送番組の字幕付与、手話翻訳など、障害者が必要とする幅広い方式での複製等を可能とし、あわせて、障害者福祉を目的とする施設以外でもそれらの作成を可能とするなどの措置を講ずるものであります。

 なお、この法律は、一部を除いて平成二十二年一月一日から施行することとし、所要の経過措置を講ずることとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

岩屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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