衆議院

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第9号 平成21年5月8日(金曜日)

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平成二十一年五月八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 岩屋  毅君

   理事 木村  勉君 理事 佐藤  錬君

   理事 馳   浩君 理事 原田 令嗣君

   理事 茂木 敏充君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    井脇ノブ子君

      飯島 夕雁君    浮島 敏男君

      小川 友一君    岡下 信子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      鍵田忠兵衛君    亀岡 偉民君

      薗浦健太郎君    谷垣 禎一君

      土井 真樹君    永岡 桂子君

      長島 忠美君    西本 勝子君

      萩生田光一君    平口  洋君

      福田 峰之君    藤田 幹雄君

      松浪 健太君    川内 博史君

      田島 一成君    高井 美穂君

      土肥 隆一君    藤村  修君

      松野 頼久君    松本 大輔君

      山口  壯君    笠  浩史君

      和田 隆志君    富田 茂之君

      西  博義君    古屋 範子君

      石井 郁子君    日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       塩谷  立君

   文部科学副大臣      松野 博一君

   文部科学大臣政務官    萩生田光一君

   国立国会図書館長     長尾  真君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (内閣官房知的財産戦略推進事務局次長)      内山 俊一君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山本 和史君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        山中 伸一君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  中森ふくよ君     松浪 健太君

同月八日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     永岡 桂子君

  加藤 紘一君     土井 真樹君

  鍵田忠兵衛君     薗浦健太郎君

  山本ともひろ君    長島 忠美君

  藤村  修君     川内 博史君

  笠  浩史君     松野 頼久君

  富田 茂之君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  薗浦健太郎君     鍵田忠兵衛君

  土井 真樹君     加藤 紘一君

  永岡 桂子君     井澤 京子君

  長島 忠美君     山本ともひろ君

  川内 博史君     藤村  修君

  松野 頼久君     笠  浩史君

  古屋 範子君     富田 茂之君

    ―――――――――――――

五月七日

 独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)

同日

 学費の負担軽減、大学予算増額を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二一九三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)

 独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)


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     ――――◇―――――

岩屋委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房知的財産戦略推進事務局次長内山俊一君、公正取引委員会事務総局審査局長山本和史君、文部科学省スポーツ・青少年局長山中伸一君及び文化庁次長高塩至君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高井美穂君。

高井委員 おはようございます。民主党の高井美穂です。

 きょうは、著作権法の一部を改正する法律案ということでお時間をいただきまして、ありがとうございました。

 インターネットという手段ができて、著作権が、一部の業界人だけが注目していたものが国民すべてがこれにかかわるようになったという時代になりまして、まさにだれにどのような著作権を付与するかということは、やはり国民の合意によって決めていくものだと私は考えております。つまり、国民の合意によって決めるということは、この国会で議論をして決める。つまり著作権というのは、権利者と利用者、そのどちらもが利害や思想が異なる、そのどちらの立場を認めていくかということを国民すべてがかかわる中でルールをつくるということだと思っておりまして、どっちの立場に立つのが正しいとか、善とか悪とかいう問題ではないというふうに考えております。

 そうした中で、どういう著作権を付与するのかしないのかを決めていくのは、やはり産業政策や、どうすれば人々がより利用しやすいか、幸福になれるのかという観点から法律をつくるわけだと思いますが、これからさらなる技術の発展や新しいビジネスモデルに対応できるように、不断の改善の努力が必要だというふうに考えております。

 今回の法律改正においては私は一定の前進だという認識を持っておりまして、とりわけ、きょう質問をさせていただきます障害者のための著作物利用の円滑化についてという点においては大変な前進だと思いまして、この点からまず質問を申し上げたいというふうに思っております。

 今回の法改正の中で、国連の障害者の権利条約の第三十条三にうたわれている、「締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとる。」というふうな精神にのっとりまして、また、文化審議会の著作権分科会の中でも議論がありました、障害等によって著作物の利用が困難な者を可能な限り権利制限の対象に含めるとともに、複製主体、方式も拡大する方向で速やかに措置を講ずることが適当というふうなこういう検討結果に沿って今回の改正がなされようとしておるわけで、障害者のために権利者に無許諾で行える範囲を拡大するということは、先ほど申し上げた権利条約の趣旨にものっとったものとして大変評価をいたしますが、具体的に、障害者の皆さんや障害児の通う学校や図書館等、また、障害を持つ方々の大きな支えとなっておられるボランティアの方々やさまざまな活動団体にとってどのようなメリットがあるとお考えになっておられるか、大臣からまずは御答弁をお願いしたいと思います。

塩谷国務大臣 著作権につきましては、今高井委員がおっしゃったように、インターネット等の情報通信が発達する中で、国民全般にかかわることとしてこれから状況に応じてしっかりと対応していかなければならないということでございまして、今回、特に障害者についての三十七条三項の改正の意味ということでございますが、これについては、健常者と障害者の情報格差の拡大、さらには障害者の著作権利用法の多様化、障害者の権利に関する条約をめぐる状況を踏まえて、障害者のために権利者の許諾を得ずに著作物を利用できる範囲の抜本的な見直しということで、障害者の情報格差を解消しようとするものでございます。

 特に具体的に、一つは、弱視や発達障害者なども含めて、視覚による表現の認識に障害のある者が対象となること、二つ目には、録音図書に限らず、拡大写本、DAISY図書の作成など、それぞれの障害者が必要とする方式で複製等が可能になること、また三つ目として、図書館など、障害者福祉を目的とする施設以外でもそれらの作成が可能となること等の改善が図られるわけでございます。

 こういった措置を通じて障害者のために著作物の提供が一層円滑になるようになり、障害者による著作物の利用機会の拡大が図られることとなるものと考えております。

高井委員 この第三十七条の三項、今回改正になりますが、障害者福祉に関する事業を行う者を政令で定めることとしております。

 これまで、弱視の子供たちのための拡大教科書等を全国各地のほとんどボランティアの皆さんが一冊一冊手づくりで作業を進めてこられて、本来、国や教科書会社がきちんとすべき教科書づくりを支えてきていただいたわけであります。昨年、教科書バリアフリー法が議員立法でつくられ、私もこれに関係して何度か質問に立たせていただきましたけれども、義務教育段階においてかなり普及が進んだことは感謝を申し上げたいと思いますし、評価をしたいと思いますが、今度はボランティア団体の皆さんも副教材づくりに力を入れていこうということで、意欲を新たに前向きに頑張っておられるところであります。

 しかし、今回の改正で運用面などの点で不明確な部分がありますので、ちょっと確認をさせていただきたいと思うんです。

 これからも、ボランティアで行おうとする教科書以外の教材の拡大写本は著作権者の許諾を得なければならないのか。そうしなければ違法行為になるのではないか。また、権利承諾の複雑な手続が必要になってくるのではないかというふうに心配をする向きも上がっています。

 拡大写本等のボランティアをしている皆さんを、例えば事業者として今回のこの法律の中に組み込むことが難しいのか。定めることが難しくなければ、政令で定めるということになりますと、かなりいろいろな団体等を含めなきゃいけない。それ以外の、政令で出てこない団体がみんな違法になってしまうのではないかというふうな懸念があるんですけれども、引き続き、自発的に行っている団体等が権利者の許諾を得なくて済むのかどうか、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。

高塩政府参考人 先生お尋ねの、今回の法律案の改正法の三十七条三項の複製が認められる主体として政令で定めるものにつきましては、今後、関係者の意見も聞きまして検討を行うこととしております。現時点では、利用者確認の体制の整備状況などに応じまして、公共の図書館や民間の法人などを対象としていくことを考えているところでございます。

 このため、先生御質問ございました拡大図書の作成などを行いますボランティア団体が、法人格を得て組織的に事業を実施でき、また、障害者の確認体制が整えられている場合には、第三十七条三項の複製主体として政令指定の対象とすることも可能と考えられるところでございます。ただ、個人や少数のグループなどによる活動を規定することは、政令としてはなかなか困難な面があるのではないかと考えております。

 ただ、政令指定の対象となります公共図書館等の活動に協力するという形態をとることなどによりまして、これまで同様、ボランティアの方々が拡大図書の作成を行うことは可能でございますし、そういうことを促進してまいりたいというふうに思っております。

高井委員 今の御答弁からしますと、政令等にボランティア等を書き込むことは難しい、また、そのボランティア等の皆さんに、例えばNPO等の法人格を取れば書き込みやすいということにもなるのかもしれませんけれども、なかなか個人でやっている方々、また、いろいろな御事情もありますし、そういうふうにNPOの資格などは取りにくかったりするというふうに思います。でき得る限り、ボランティアの皆さんがやることに対して、違法とならない、わざわざ著作権の利用許諾を得なければならないということのないように、少なくとも、改正になった後に皆さんにも広く周知徹底をしていただきたいと思います。

 今の御答弁だと、今までどおり、これからもそういうことではなくていいということだと思いますので、ボランティアの皆さんが萎縮しないように、くれぐれも関係諸団体の皆さんに対して御支援をお願い申し上げたいというふうに思っています。

 拡大教科書などの電子データが提供されている場合、今回追加されたこの三十七条の三項のただし書きによって、ボランティアがそれ以上複製できなくなるということはないというふうに思いますけれども、このただし書きの「当該方式」の定義の詳細についてお伺いをしたいと思います。

 音声という媒体についてですけれども、例えば出版社が音読カセットを販売している場合、これを図書館が視覚障害者のために、DAISY方式といいまして、利用しやすい情報システムに、学習障害とか障害を持たれている方、高齢やさまざまな発達障害などにより文章を読むのに困難を有する方々への読書の支援のシステムの方式でございますけれども、音訳図書に複製するということを図書館がやってもいいということになりますでしょうか。もしくは、そのカセットがある場合、例えば、カセットを利用せずに、既にカセットがあるものに対して、もっと読みやすいDAISY方式、もっと違う形の方式をとる場合、図書館内で独自で作成したりということはできるんでしょうか。

高塩政府参考人 先生が御質問の改正案の三十七条第三項のただし書きによりまして、権利者等によりまして障害者に対応した形で著作物の提供が行われている場合には権利制限を適用しないということをしているわけでございます。これは、そういう権利者が障害者のためのものを作成しているということにつきましては、障害者のための条約でもそれを促進することを求めているところでございまして、このような規定を置いたわけでございます。

 ただ、このただし書きの適用の有無につきましては、先生からお話しのございました、音声カセットが販売されている場合にDAISY方式の録音図書を複製できるかという問題でございますけれども、これは、音声カセットが発売されていますので、対象となる障害者がその音声のみではその著作物を認識ができない、やはり、文字と音声両方で見聞きするDAISY方式によってのみしか、障害上の理由でそういうものがぜひ必要だということが認められる場合には、認められた図書館などで複製が可能だというふうに考えております。

 単に、テープよりDAISYの方が容量が大きいとかそういった物理的な理由ではなくて、真に障害者の方がそういうものでなければ図書などを認識ができないという理由が認められれば、音声カセットが発売されておりましても、このDAISY方式のものを複製ということは可能だというふうに考えております。

高井委員 最近のデジタル技術の発展とか情報通信技術の革新は大変目覚ましいものですから、DAISY技術についてもかなりいろいろな機能が上がってきているのではないかと思いますし、先ほど冒頭申し上げた、障害者の権利条約上の観点からも、障害者の皆さんが利用しやすいような形を許していく、許諾していくということをでき得る限り運用上やっていただきたいというふうに思っています。

 この音声ということに加えて、電子データにおいても同じような問題が生じると思います。例えば、講談社なんかにしても、ドットブックといった形式で電子図書というものをインターネット上で販売、配信をしています。それを、例えば図書館が同じように別のファイル方式に転換をして障害者に貸し出すということが技術上は大いに可能だと思いますし、それができるというふうに解釈をしていきたいと思うんですけれども、スキャナーとかで読み取ってテキストファイル化していくとかいうことは、先ほどの御答弁からすると、同じように、障害者のために限定されたものであればできるということでよろしゅうございますか。

高塩政府参考人 今、先生から、ドットブック方式で電子図書がインターネット配信されている場合に、別のファイルに変換する複製はできるのかというようなお話でございますけれども、これは、そのドットブック形式が音声読み上げソフトに対応しておらず、これが可能となりますファイル形式に変換する必要がある場合など、障害上の理由でこのドットブック方式以外のものが必要であるという場合には、先ほどと同じ考え方で、複製は可能であるというふうに考えております。

高井委員 今、すべての電子データも音声の読み取り方式にすぐにできるということはないと思いますけれども、それを図書館とかが、例えば工夫をしながらファイル形式を転換してDAISY方式で対応するようなものに変えていくということは、一回複製が生じますので、著作権法上問題が生じないかということを確認させていただいたわけですが、限定されたものであり、また、それが障害者のために必ず資する、必要であるということであれば、問題が生じないということでできるというふうに理解をいたしました。

 同条項は、同じく、障害者が利用するために必要な方式による公衆への提供等がされている場合は、権利者に無許諾で、許可なく複製ができないというふうに規定をされていますが、読み上げソフト等が逆に組み込まれていたりすると、これはだめだということになるんでしょうか。

高塩政府参考人 先生から再三御質問のございますただし書きの趣旨というのは、権利者がみずから障害者に対応した形で著作物の提供が行われている場合には権利制限を適用しないこととするというものでございますけれども、こうした趣旨に照らせば、必要な方式の複製物が形式的に存在するといたしましても、その著作物を実質的に障害者が入手できないような場合にまでただし書きの適用があるというふうには考えておりませんので、そういう考え方に立ちまして、ケース・バイ・ケースでございますけれども、考えてまいりたいというふうに思っております。

高井委員 ありがとうございます。

 先ほど御答弁していただいたとおり、例えば、どうしても入手できない、絶版になっている、どうしても高くて買えないだの、買いに行けないとかいういろいろなケースが障害者の皆さんにはあるかと思いますけれども、そういう場合は、できるだけしんしゃくをしながら広く適用していただけるようによろしくお願いを申し上げたいと思います。

 例えば、図書館が独自に作成をして、それをボランティアの方が音読をする、それを例えばテープにとるとか、そういう個々一つ一つやっている場合も図書館によってはあると思います。そういう場合への制約はかからないということで対応をよろしくお願いしたいと思っています。

 次に、今回、国立国会図書館のバリアフリー化という条項が入りまして、この点についての質問に移らせていただきたいと思います。

 本日は、図書館長の長尾館長みずからお越しいただきまして、ありがとうございました。かなり積極的に御発言をされているようですので、ぜひこの場でも意見開陳をお願いしたいというふうに思っています。

 今回、バリアフリー化ということで条項が入りまして、電子図書館のアーカイブの電子図書が活字を画像として表示されておりますので、視覚障害者等が使う音声読み上げソフトには対応していないと伺っております。ですから、スクリーンリーダーなどの音声読み上げソフトを利用する視覚障害者にとってみると、独力で内容を知ることができないという状態になっておりますが、社会福祉法人の盲人福祉委員会などからは、私の方へも、ぜひこの電子図書館アーカイブの電子図書も文字として認識できる形式で提供していただいて、私たち視覚障害者でも、拡大文字で読書したり合成音声で聞くことができるようなホームページにしていただきたいという御要望もあるんですけれども、この点はいかがでございますか。

長尾国立国会図書館長 国立国会図書館がインターネットで提供いたしますサービスのうちで、ホームページによる各種の情報提供と書誌情報の検索サービスにつきましては、文字データである部分については、原則として音声読み上げソフトに対応できるようになっております。

 しかし、電子図書館アーカイブにある本文情報の提供は、現状は画像情報によるものでありまして、対応するテキスト情報は作成していないわけでございます。

 その理由は、これまでの対象が明治、大正時代の古い資料が中心でありまして、旧仮名、旧字体資料のテキスト化には多大の費用と労力が必要だからであります。

 また、刊行年代の新しい資料のテキスト化につきましては、出版関係者等から、商業活動に影響を与える可能性があるとして強い反対意見が出されております。

 国立国会図書館としましては、昨年度の出版関係者、著作権者等との数回の関係者協議の場を通じまして、利用、提供の範囲、条件につきまして合意形成を図る努力を重ねてまいりましたんですけれども、テキスト化につきましてはなかなか抵抗が強くて、音声読み上げソフトに対応することは当面難しい状況だということでございます。残念なことではございます。

高井委員 確かに、私もきのう通告の段階でいろいろお聞きをしまして、昔の大正や明治等の資料と旧字体等の資料等もなかなか難しいというふうにお聞きをしましたし、これから電子図書にしていくのに関してかなりお金も手間暇も時間もかかっていくものだと思いますが、ただ、デジタル技術がここまで進んでいる時代において、私は最近の図書でもどんどん新しく、早くできていくものかなと思っていたんです。やはり人手も時間もかかっていくということではありますが、これからぜひ前向きに進めて検討していっていただきたいと思っています。

 障害者の権利条約も採択されて、二〇一〇年の国民読書年に向けて読書のバリアフリー化を目指した運動も全国で始まっておりますので、子供たちの読書活動や、また、障害者の皆さんも本当に分け隔てなく情報が手に入るように、技術的にはこれからできていくんだと思いますので、我々も含めて努力をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 申すまでもなく、教育基本法にも、障害のある者がその状況に応じて十分な教育を受けられるよう、教育上の必要な支援を講じなければならないというふうに規定されておりますので、予算もかかることですが、この点においてこそぜひ進めていっていただきたい。国会の方の意思として予算もつけて進めていきたいというふうに思って、私どもの党は少なくとも思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 そして、今回の改正で、図書館において以後すべての所蔵資料について電子化を進めていくというふうな御予定だと思いますが、アーカイブ形式が促進されるということにおいてどのようなペースでこれから進めていかれるのか、また、電子保存されたアーカイブ資料は国民の皆さんにどのように活用していただく御予定があるのか、教えていただきたいと思います。

長尾国立国会図書館長 現在、国立国会図書館の所蔵する明治、大正期の刊行図書を電子化してインターネット公開する事業を行っておりまして、これは、十四万八千冊を画像情報の形で提供中でございます。

 それから、国立国会図書館におきましては、資料電子化の基本計画を策定しておりますけれども、平成二十一年度補正予算案では計画を加速いたしまして、図書等の大規模なデジタル画像化を進めるために、関係経費百二十七億円余を要求しております。これにより、デジタル化すべき図書約四百万冊につきましては、その四分の一が画像形態での電子化がされるという見込みでございます。全部やるためにはこの四倍の予算が必要でございますし、さらに、雑誌の電子化につきましても同程度の資金が必要であると考えております。

 それで、作成いたしました電子情報の利用につきましては、原資料の保存の観点から、来館利用者に対して館内提供をするということとともに、今後、出版関係者、著作権者等との協議を通じまして、さらに利便性の高い利用の仕方を実現すべく努力していきたいというふうに思っているところでございます。

高井委員 長尾館長、今模範答弁をされましたけれども、館長自身はいろいろと電子図書館構想等も御検討されているということを報道等で聞きかじりました。もし可能ならばそれを開陳していただきたいと思いますし、私が新聞報道等で読んだのは、例えば、出版社から有料で本やデジタルを購入して、それを外部利用者が利用したい場合には利用料をいただき、それを中継役として単に利用料を出版社の方に渡す。だから、営利目的のものはできないので、単にアーカイブを持っている中継役として、外部利用者に対してお金を払ってもらって出版社に払う、そうした構想もお持ちだというふうにお伺いしましたけれども、これが可能であるならばぜひ前向きに検討していただきたいと思いますし、少なくとも、出版社であったり図書館の側であったり、利用者の側が協議をして、現状の枠組みの中でもできるというふうにはお聞きをしているんですけれども、今どのようなお考えで検討中にあるのか、教えていただければと思います。

長尾国立国会図書館長 図書館の資料をデジタル化しまして、日本じゅうの人たちに遠いところからでもインターネットを通じて利用していただくということは理想のところでございますけれども、これを無料でやりますと、出版社あるいは著者が成立しないというところに追い込まれる危険性がございます。日本の文化というのは、やはり著者、出版社がしっかりと進んでいく、そして図書館と協調していくということがなければいけないわけでございますので、そういうある種のビジネスモデルをつくっていく必要があるんじゃないかということを提案しております。

 これは大ざっぱに申しますと、音楽のダウンロードで皆さんがイヤホンで聞いておられる、そのときお金を適当に払うというようなモデルでございますが、図書館はあくまでも無料ですべての情報を提供するというのが基本でございますので、お金につきましては、これは、ダウンロードするわずかな金額を集めて、これを出版社あるいは著者に還元するような第三のセンターみたいなものを設けまして、これをうまく活用して、すべての人にデジタルな著作物の提供をするということをしてはどうかということを提案しております。

 図書館としましては、無料でデジタル情報を外部のセンターなんかにお渡ししまして、そしてそこから要求のある読者に渡す、こういうモデルを考えておるわけでございますが、こういうことにつきましては、著者、出版社あるいは利害関係者と今後よく議論をして、両者が納得する形でつくっていければというふうに思っておりまして、今後努力をしたいと思っております。

高井委員 これから、出版社等、また利用者の利便に資するためにも、すごく前向きな新たなビジネスモデルを提案される館長の姿勢というのは私はすばらしいと思っておりまして、ぜひ関係者の皆さんと議論を進めながら、また、より前向きに検討を進めていっていただきたいと思います。

 館長がおっしゃったとおり、私も徳島でありますけれども、父もちょっと病気をいたしまして遠くまで外出できません。でも、地方にいても高齢者であっても、どこからも最新の情報を手に入れられる、そこからお金を払って手に入れられるということは、技術の発展によりそれができるようになったというのは、本当に私はすばらしいことだと思っておりますので、ぜひそうしたビジネスモデルを前向きに検討していっていただきたいと思います。

 また、今回の改正の中で、聴覚障害者のために映画や放送番組への字幕とか手話の付与を可能とするということも盛り込まれておりますけれども、レンタルのDVD映画等にも字幕の義務づけをしていただきたいというふうに運動してきた「バベル」字幕の願いをつなぐ市民の会、きょうもお見えになられていますけれども、そうした方々からもさまざまな期待を持たれております。邦画ビデオの字幕の採用等には、かなりこれまでは著作権者と映画会社の事業者のコスト負担がネックになっているところもありまして、これはむしろ産業政策の方かもしれませんけれども、でき得る限りいろんな形で後押しをしていけるように、多くの関係者と協力をしながら進めていきたいと思います。

 最後の質問になりますけれども、本改正の趣旨を広く国民に周知徹底をしていっていただかなくてはならないと思いますし、最近大学のレポートなんかでも、コピペという、何かウィキペディアからとってそのまま張りつけしたりとかするようなことがふえているというふうに報道でも聞きますし、新聞とか週刊誌というプロの世界ですら、この著作権法違反ということがしばしば問題になります。

 こういう現状を見るにつけ、また、冒頭申し上げた、インターネットという手段を通じて国民みんなが著作権の利害関係者となる、利用者となるという立場の中で、著作権に関する教育というものに対して必要性が、もしくは高校生レベルからでも必要ではないかというふうに感じておりますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

塩谷国務大臣 御指摘のとおり、情報化の急速な発展によって、国民に広く著作権に関する知識を周知することが必要だと思っておりまして、文部科学省としましても、国民向けの普及啓発事業として、著作権に関するさまざまな質問にインターネットを通じて答えるシステムの開発を現在しておりまして、これを運用していきたいと思っております。

 また、図書館職員、教員や一般の方々を対象としての各種講習会の実施に取り組んでいるところでございます。

 また、生徒や教員を対象とした多様な教材等の作成、配付やホームページでの提供などを実施してきたところでございますが、特に、平成二十一年三月、ことし三月でございますが、高等学校の学習指導要領の改訂において著作権にかかわる記述を充実しまして、従来の情報に加え、音楽や美術等においても著作権について指導することとしたところでございます。

 著作権に関する普及啓発や教育については、一層の充実を図ってまいりたいと考えております。

岩屋委員長 高井君、時間が来ております。

高井委員 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で高井君の質疑は終了いたしました。

 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 きょうは、当文部科学委員会におきましてこうして質問の時間を与えていただきましたこと、委員長を初め各党の皆様に心から御礼を申し上げる次第でございます。

 早速質問に入りたいと思うんです。きょうは公正取引委員長に出席をいただいているんですが、ことしの二月二十七日、音楽著作権協会に対して排除命令を出されたということを聞いております。この件について若干伺いたいと思うんです。

 実は、私も学生時代にテレビ局の制作の現場でアルバイトをしていたことがあります。そういう経験から、今回の排除命令に非常に僕は違和感を実は感じたんですね。といいますのは、放送事業者、テレビ局の制作の現場では、少なくとも、この曲はJASRACが管理をしている楽曲だから使いやすいから使おうとか、この曲は違う事業者が管理をしている楽曲だからこれは使うなとかいう会話というのは、全くないんですね。

 今回も、この質問に当たって、何人か知り合いのテレビ局のプロデューサーにヒアリングをいたしました。やはりそういう現状があるんですか、どうしてもJASRAC以外の楽曲について使いづらいから使わないとか、そういう状況なんですかということを伺いましたらば、そんなことないぞと。まず、自分たちは曲を選ぶ責任者として、これはJASRACだからとか、これはJASRACじゃないからとかいう、少なくともそういう選別をした一覧表さえ見たこともないし、そんなことを考えて番組なんかつくっていない。一番考えるのは、まず視聴者にとってどういうイメージを与えるか、いいイメージを与える曲を選びたい。そして、それが自分のつくる番組にどういうイメージになるのか、そういうことだけを考え、わずか一曲何万円か数万円かわかりませんけれども、そんなことを気にして番組はつくっていないよというのがやはり現場の実態なんですね。

 確かに、シェアが九十数%と高い。そのシェアが高いからこれは私的独占である、その状況だけを見て私は排除命令を出したのではないかというような気がしてならないわけです。

 きょうは理事会において承諾をいただいて、今、その排除命令の文書を配付をさせていただきました。「違反行為の概要」のところの二番、線が引いてある、真ん中よりちょっと下のところです。「管理楽曲が放送事業者の放送番組においてほとんど利用されず、また、放送等利用に係る管理楽曲として放送等利用が見込まれる音楽著作物をほとんど確保することができないことから、」排除命令でこの「ほとんど」という言葉に非常に違和感を覚えるんですけれども、これは一体どういう根拠でこういう文言になったのか、また、どういう状況でこれを調査されたのかということを教えていただけないでしょうか。

竹島政府特別補佐人 お答えいたします。

 今、松野委員、プロデューサーというのは、だれが管理している楽曲かというようなことにはとらわれずに必要なものを選ぶ、こういうことをおっしゃったわけですが、プロデューサーのレベルは私はよくわかりませんが、少なくとも今回調べた結果、そうではないと。

 管理している方でしょうか、要するに経理の方なんでしょうか、著作権使用料について管理している放送局の部門から、具体的には、これは、イーライセンスが管理楽曲として預かっていたエイベックスの関係の楽曲について、これを使用しようとする動きがあったのに対して、そういうことをすると追加負担が生ずる、著作権使用料を余計に払わなければいけない、だからだめだ、こういう社内における通知なり通達なりがあったと。そういうことがあって、では三カ月ぐらいは無料で結構ですというようなことまでやったんですけれども、その先が見えないということで、結局は使われることに至らずということがあったわけです。

 したがって、ここに「ほとんど」と書いておりますが、事実上一〇〇に%近い言葉で、一〇〇%とは言い切れませんから「ほとんど」と書いてあるわけでございまして、まさしく、放送局向けの管理楽曲の許諾ないしは利用の市場においてJASRACが文字どおり私的独占、特に新規参入、平成十三年と記憶していますが、管理事業法ができて新規参入ということに道が開けて、現に手を挙げた業者がいて、かつ管理楽曲も確保したにもかかわらず、それが放送局において使われることにならなかったという事実があるわけでございまして、これはまさに排除型私的独占に当たるというのが我々の判断でございます。

松野(頼)委員 独占禁止法第三条、「事業者は、私的独占」、要は、この場合の事業者というのは著作権管理会社だと思うんですね。「事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。」この第三条に基づいて今回の排除命令が出されたということであります。

 それは、放送事業者側の問題を今はおっしゃっているのではないかと思うんですね。要は、例えば今回でいうと、JASRAC側が何か私的独占をするとか、これを使わなければうちはもう一切取引をしませんよとかいう、何か不当な取引制限をされたという事実はあるんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 おっしゃるとおりこれは、放送局側がどういう反応を示したかということを今申し上げた。その反応の原因をつくったと我々が見ているJASRAC、その原因は何かというと、これは、放送事業収入掛ける契約上は一・五%の利用料を取りますよ、何かに使おうが、もうそれで結構でございますと。その結果として、利用割合、逆に言うと、その放送局において使われている全管理楽曲に占めるJASRACの割合という利用割合を加味すべきだということを我々はこの命令で言っているわけですが、そういうふうにいたしますと、別途、例えばイーライセンスのようなものが出てきた場合に、それを使おうとする場合に、それを使っても追加負担という問題は起きないで済む可能性がある。今は、JASRACのものであれば、放送事業収入掛ける一・五%、実際はもうちょっと低い率だと思いますが、それさえ払えばもういいわけなので、あと別なものと放送局が契約すると追加負担が要る。追加負担がかかると放送局としては困るものですから、そういうものは使うなということにここでなっているわけです。

 したがって、利用割合というものを加味してください、一%でも二%でもいいんですが、九八なり九九なり、それはやってみなきゃわからないですが、その新規参入者の分というものが反映されるような利用割合を加味した徴収、同じ包括徴収であっても利用割合を加味していただければ、今申し上げたような放送局側の反応はなくなるでしょうと。

 ただ、申し上げておきますが、これは、現行の一・五%で徴収している利用料総額というものがいて、これが正しい、これを維持すべきだということを我々が言っているわけじゃありません。それはまさに当事者同士が交渉でお決めになればいい。だけれども、利用割合というものを加味してください、これだけを言っています。したがって、そういうことが行われた結果、利用料の総額がふえるか減るか、これはわかりません。これはまさに、競争に基づく当事者同士の契約がどうなるかで決まってくるわけでございまして。

 いずれにしても、新規参入者が、利用者側から見て、これは使ったら損だというような契約内容を、JASRAC側がこれは契約の片方の当事者ではあるわけで、一方に放送局がいるわけですけれども、そういう契約内容を見直しなさいという命令をしているわけです。

松野(頼)委員 ですから、JASRACが私的独占または不当な取引制限をしたならば、JASRACに対して排除命令を出すことは当然だと思います。ただ、先ほど挙げられた排除命令を出された事実は、それは、放送局側の内部通知があったからJASRACに排除命令を出したんだと言う。それはちょっと違うんじゃないかと思うんですね。

 この条文によると、事業者は私的独占または不当な取引制限をしてはいけない。JASRACが私的独占または不当な取引制限をしたならば、JASRACに対して排除命令を出すのは適当だと思うんですけれども、今回は、JASRACは何も私的独占もしておりませんし、不当な取引制限もしていないわけです。なぜJASRACに排除命令が出たのかというのは、僕は非常に疑問なんです。

 ちょっと文科大臣にお伺いをするんですけれども、この包括契約というのは、世界的に見て日本が独特な契約なんでしょうか。僕は、諸外国ではほとんど包括契約だと思うんです。放送事業者と著作権管理者の契約というのは諸外国もほとんど包括契約をしていると思うんですけれども、その辺、御答弁いただけないでしょうか。

高塩政府参考人 先生御指摘のとおり、諸外国におきましては、放送局が管理事業者に支払う放送使用料につきましては、欧米先進国を含めましてほとんどの場合、包括契約に基づいて行われているというふうに承知しております。

松野(頼)委員 委員長、今聞いていただいたとおりなんですね。要は、諸外国で見ても、一曲一曲放送事業者が、この曲を使いました、これに対する著作権は幾らです、この曲を使いました、この曲を使ったので幾らです、一曲ずつやっている国というのはほとんどないんです。どこも包括契約なんです。

 だから、今回私が感じたのは、例えばJASRACはJASRACで包括契約をする、新規参入事業者は新規参入事業者でまた別途包括契約をすればいいわけですね。現場のプロデューサーに僕もヒアリングをしたところ、それは、売れている曲はどこが著作権を持っていようが使うんだよ、決して、包括契約があるから絶対にそこに入り込めないような状況じゃないということを何人も証言しているんです。

 にもかかわらず、先ほど申したように、JASRACが私的独占または不当な取引制限をしていないにもかかわらず、そこは、している確認はできているんですか、委員長。

竹島政府特別補佐人 私どもが言っていますのは、JASRACが例えばイーライセンスに対して何か妨害をしたとか排除行為をしたとか、そういうことを言っているわけじゃないんです。この契約、JASRAC側が放送事業者と結んでいる、自分のところの利用割合を反映しない、そういう契約を結んでいる行為が排除型私的独占行為に当たると言っているわけなんです。

松野(頼)委員 だから、JASRACが例えば私的独占をしたり包括契約をして、うち以外を使ったらば、それはもううちとの取引をやめますよとか、こういう不当な制限をしたならば、JASRACに対して排除命令が出るのは、これは理解できるんですよ。でも、そういう事実はないわけですよね。そういう事実がないにもかかわらず、この包括契約がほかを排除しているからJASRACに排除命令を出したんだとおっしゃっているんですけれども、でも、諸外国はみんな包括契約なんですよ。

 ドイツなんかは包括契約をしなければならないと著作権法で決めているんですね。アメリカでも二社が包括契約をしている。ほとんどの国が、一社なり二社という非常に狭い著作権管理事業者が包括契約をしているんです。日本だけ、それはだめなんだ、排除命令なんだ、これは私的独占に当たるんだというふうにおっしゃるのに僕は非常に違和感を感じているわけです。

 今回のこの排除命令で、公取としては、では、今後どういうふうにすればいいというふうにお考えなんですか。

竹島政府特別補佐人 今の御質問にお答えする前に、私どもも外国において包括契約が行われているということは承知しています。

 アメリカにおいては、今からもう数十年前から大変問題があって、アメリカはたしか著作権管理事業者、大きなのが三つあるはずですが、そこで包括契約も確かにありますが、パー・プログラムというんでしょうか、そうじゃないものもありまして、それから、トラブルがあった場合はその料率についての仲裁委員会みたいなものもあって、それで現実に競争が排除されているという状態ではないと思うんです。

 同じ外見上、ドイツとか何かは物の考え方が違うのかもしれませんが、少なくとも日本においては、平成十三年に管理事業法がつくられて、いわば一社独占からそうじゃない、新規参入を入れていい競争をさせることによって、権利者の立場も守り、利用もよりよいもの、より安く利用できるようなそういう条件を整備したはずなんですね。

 ところが、この契約、こういう利用割合を加味しない契約があるがゆえに、日本においては少なくとも競争が全然起きていない。新規参入もない。放送の利用分野において新規参入がありません。イーライセンスがやろうと思ってそれが排除されて、それ以来私はないと理解しておりますが、したがって、あれからもう随分たっているにもかかわらず、そういった状態になっている。

 それは、利用割合を反映してください。利用割合を反映させるために全数を全部把握するということは大変でございます。それはわかります。その包括契約もいい点があることは十分に我々も理解していますから、包括契約をやめてくださいとは言っていないんです。言っていないんだけれども、利用割合を加味するようにしてください。それは私はできると思う。

 今、キー局は、もう全数的に把握して、どの曲をどれだけ使ったということをJASRACさんに報告をしているはずです。それから、それ以外のところも、権利者に対してそのロイヤリティーを分配するときに一体どなたに幾ら払えばいいかわからないので、その目安にするためにサンプル調査もしておられるはずなので、精密な利用割合というものができなければ、それのいわば推計値というようなことは、今現実に分配するときにはそういうものが必要なわけですからやっているわけなので、そういった数値を入れるということもとりあえずはできるはずですし、行く行く、これだけコンピューターその他が進んでいるときに、少なくともキー局は全数把握して報告もしているということでもあるわけなんですから、もっと精密な、だれの曲を何回流したということは把握できるわけでございますから、ますます精緻な利用割合というものが計算できるようになるはずなんです。そういったことをお考えいただきたい。

 そのためにはそれなりの時間が必要でしょう。それはわかっております。常識的に必要な時間は使ってくださいと。それから、相手方がある話です。それは放送局側がどういう反応をするかによっても変わってくるけれども、そこはまず、私どもが指摘している、この利用割合を反映しない包括契約というものを直すということで交渉してください、こういうのが公正取引委員会の立場でございます。

松野(頼)委員 そうすると、利用割合を割り出して、では、今のJASRACとの包括契約の幾らかわかりませんけれども、幾らの中から割合分でその新規参入業者に、使ったか使わないかわからないけれども、今後はその割合で新規参入業者にその割合分を払いなさい、包括契約の中のお金を外の新規参入業者に分配しなさいということですか。

竹島政府特別補佐人 そうじゃございません。それはオール・ジャパンでパイが一定ということじゃない。これは、それぞれの管理事業者が相手方と交渉してお決めになることで、JASRACが放送局とお決めになって、引き続き包括契約をなさればいい。そのときに利用割合を入れてくださいと。一方、例えばイーライセンスなりほかの管理事業者がいたときに、そことまた包括契約ということもあるでしょう。なさればいい。そういうことでありまして、全体のパイ、今JASRACが得ている利用料収入の一部を割愛してだれかに渡してくださいということを言っているわけじゃありません。

松野(頼)委員 もちろん、先ほどからおっしゃっているイーライセンスという会社もすばらしい会社で、聞くところによると、インディーズという割と珍しいアーティストの曲を何千曲も今管理をされて、またそれはそれで伸びてくるんだと思うんですよ。それが伸びてくるのは伸びてくるで僕は非常にいいことだと思う。時代を反映して違う形のマーケットができて、またその事業者も伸びてくる。今あるJASRACはJASRACで、もちろん同じように伸びてくる。それが対等な競争で、いいことなのではないか。

 決して、新規参入業者を排除したとかいう事実は今は認定をされていないわけですから、自由競争の新しい分野をどんどん新しい新規参入業者が広げてくるということで、僕は、何も公取が入ってこうしなさいとかこうしなさいというようなことではなかったんじゃないのかなという違和感を感じているんです。自由な競争の中で世界ではそういう形でずっと包括契約も当然認められるし、新しいところもたくさんの楽曲を一曲ずつ割り出すのが大変であれば、新規参入業者と放送事業者はまた包括契約をすればいい。また、それ以外にもおもしろい著作権管理をする新規事業者が出てきたならば、またそこも数がたくさんあって一曲ずつ出すことが大変であれば、またそこも包括契約をすればいい。これが僕はある程度自由な競争なのではないかというふうに実は思っているんです。

 そういう中で、寡占率が余りにも高いからという事象だけをごらんになって、だから独占しているんだ、だから排除命令なんだとされたような気がしてならないので、僕はきょうこういう質問を実はさせていただいているわけです。

 今は何回伺っても、さっきの法律の、JASRACがこの独占禁止法第三条に当たる、「事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。」に違反しているという事実がないんですよね、委員長。

竹島政府特別補佐人 それは先ほど御答弁申し上げましたように、利用割合を全然加味しない、そういう契約をしたことが排除型私的独占に当たると申し上げているんです。したがって、ただシェアが大きい、よって何か違反だ、そんなことは一切申し上げていません。大きいことが悪いことでは必ずしもありませんので。

 それが、こういう契約をすることによって、現にイーライセンスというものが参入しようとしたけれどもできなかったという事実があるわけなので、ただ我々も机上の空論で申し上げているわけではない。そういう事実があったので、これは、この契約がまさに排除型私的独占に当たる。

 それで、今委員がおっしゃるような自由な競争、確かに、どれもこれも皆さんが頑張って包括契約を結ぶなら結ばれるのが、そういう状態が、平成十三年に管理事業法ができてもう八年もたっても一切できていないということに見られるように、決して今先生がおっしゃったような状態は起きていない。少なくともその大きな一つの原因がここにある、こういうふうに見ているわけです。

松野(頼)委員 いやいや、そんなことはないんじゃないですか。その新規参入事業者が管理をしている売れた曲名、僕も聞きましたけれども、テレビでばんばん流れているじゃないですか。僕も現場のプロデューサーに聞いたけれども、それは僕らは使うよ、使っているよと。それで現に流れているんですよ、委員長。これが全部全くテレビから流れていないで一〇〇%排除されているならば、それはそれでわかります。

 ただ、当然、JASRACが管理をしている曲の数と新規参入事業者が管理をしている現在の数の割合が圧倒的に違うから、新規参入事業者の管理している楽曲の流れる割合が当然低くなるんですけれども、全く流れてないですか、委員長。

竹島政府特別補佐人 私どもが調べた範囲で、特に何回も例に出して恐縮ですが、エイベックス、イーライセンスが扱おうとした管理楽曲、これについて具体的な排除効果が及んだということは我々は把握しておりますし、それから、冒頭申し上げましたように、放送局の中において別な管理事業者の曲を使おうとしたが、それはいけない、追加費用が発生するから使うな、こういうことになっている。

 ですから、あとのコマーシャルとか何かに使われているというものと違う可能性はありますね。コマーシャルでは使われている、それはまた別な著作権使用料の支払いの形になっている場合があると思いますので、放送局が流すということに関しては、私の知るところ、JASRACの管理楽曲以外は流れていないというふうに理解しております。

松野(頼)委員 おおむね時間が来てしまった。本当にこれしかできなかったんですけれども、何で私はこんな質問をさせていただくかというと、今、日本の音楽にしても映画にしてもアニメにしても、世界的に物すごいレベルまで達しているんです。特に東南アジアを中心に、東南アジアどころか、映画なんかはもうアメリカ本土でも、日本の映画のリメークをしてハリウッドが映画をつくるような時代まで来ているんですね。すごく世界標準ということが僕は求められるのではないかというふうに思うんです。

 それで、以前から、輸入CD還流防止法だとかコンテンツ法案だとか、また、今回も経済産業の方では、新しいそういうコンテンツの管理事業を国が後押しをしてつくろうなんということを言っている。非常にソフトのビジネスが、エンターテインメントのビジネスというのが、世界的に物すごく外貨を稼げるんじゃないか、それぐらいのレベルに達しているので、僕は逆に期待をしているんです。そういう中で、もちろん新規参入業者も僕はどんどん伸びてもらいたい。いろいろな管理業者が楽曲を管理して、今度は、世界になるともっとこの著作権の管理というのはより複雑になってくると思うんです。

 そういう中で、ある程度世界基準の中で、今回の著作権法改正もそうですけれども、きちんと日本がその著作権が管理できる状態というのをまず今固めておかなければいけない状況に来ていると思うんです。それで、世界から日本のアーティストが演奏している曲が流れる、映画が流れる、そしてその著作権料が日本に入る、こういうことをぜひ後押しをしていきたいというふうな思いがあって、きょうはあえてこの質問に立たせていただいたんですけれども、そういう中で、世界的に見て包括契約はほとんどの国がやっている。その当事者に対する何か不当な排除行為が見受けられない状況で、この包括契約こそが新規参入業者を排除している、だからここに排除命令を出したんだというのがどうも腑に落ちなかったので、今回質問に立たせていただきました。

 きょうは、委員長、わざわざ当委員会にお越しをいただいてまことにありがとうございます。委員長はちょうど私が議運の筆頭理事をやっているときにいろいろお話をさせていただいて、本当に斬新な考えをお持ちの委員長で、非常に期待をしているところでございます。どうか今後、そういう観点から私たちもやっていきたいと思いますので、ぜひ今後ともよろしくお願いを申し上げます。

 本日は当委員会におきましてお時間をいただきましたことを心から感謝を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で松野君の質疑は終了いたしました。

 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。川内でございます。

 委員長や理事の先生方にお許しをいただきまして、当委員会で発言の機会をいただきましたことに、まず心から感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 それでは、早速質問をさせていただきます。

 著作権法第一条には、「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」と書いてございます。

 文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図ると、利用が先で保護が二番目に来るというこの目的規定、それが文化の発展に資するのだということになろうかと思いますが、その著作者、著作物を創造する人たちも、最初はその著作物の利用者であった。今はもうインターネット時代で、すべての人がクリエーターで、すべての人がユーザーであるというふうに言えると思うのでございますが、そこでこの著作権法というのは非常に大事になるわけでございまして、だからこそ私は、この著作権に関する議論に関して、私自身は利用者の立場に立っていつも議論をするようにしております。それによってバランスが保たれるんじゃないかなというふうに感じております。

 まず聞かせていただきますが、今回の著作権法の改正では、利用者の立場から見て非常に、ああこれは問題だなというふうに思うのは、三十条の、私的複製に関して、違法にアップロードされているサイトからダウンロードすることは違法ですよという、私的複製は著作権法上三十条でもともとどんなものであれ合法だよというふうになっていたわけでございますが、今回の改正でダウンロードが違法化されるということでございます。

 まず、文化庁にお伺いしますけれども、私的利用のためのダウンロードを違法とする規定を設けるに至った立法事実が何なのかということを御説明いただきたいと思います。

高塩政府参考人 今回、三十条の改正を行いましたのは、近年、インターネットの普及、それから大規模な大容量化を背景にいたしまして、特に携帯電話向けの違法音楽配信サイトやファイル交換ソフトによりまして、違法に配信される音楽や映像作品を複製、ダウンロードする行為が正規の配信事業を上回る規模になっている、こういった指摘がございまして、そういった指摘を踏まえて著作権分科会の方で審議をした結果、今回の法改正につながっているというふうに考えております。

川内委員 指摘があって、それを踏まえて法改正をした。その指摘をしていたのはだれですか。

高塩政府参考人 今回、審議会におきましては、さまざまな資料の検討をしたわけでございますけれども、それにつきましては、権利者団体でございます日本レコード協会、並びに社団法人のコンピュータソフトウェア著作権協会などの実態調査結果というものをもとに、審議会の方で検討したということでございます。

川内委員 今、日本レコード協会などの業界団体の指摘に基づいて、それを立法事実として審議会で議論して法改正をしたというふうな御説明だったかと思いますけれども、私は、その権利者団体の指摘に基づいて著作権法を改正します、新たな権利を設けます、損害賠償を請求する権利を設けますということに関して、これは非常にネットユーザーを不安定な立場に置くわけですね。損害賠償請求がいつ送られてくるかわからないという状況になるわけでございますから、これは手続的にも厳正にすべきではないかというふうに考えます。

 文化庁からの御説明では、仮に損害賠償請求権の権利行使を行う場合には、事前に警告を行うなど慎重な手続をとるように努めるはずである、権利者あるいは権利者団体はそのようにするはずであるというふうに説明を受けておりますけれども、文化庁としては、これは法律ができれば、そもそもそういう権利が創設されるわけですから、法律上はいつでも損害賠償を請求できるということになるわけでございまして、これは関係団体をどのように指導されるのか、明確に議事録に残したいというふうに思いますが、お答えをいただきたいと思います。

高塩政府参考人 権利者団体側におきましても、今回の法改正におきまして、先生から御指摘のございました利用者への法的な措置、損害賠償請求をいきなり行うというよりは、違法ダウンロードというものが適切でないということを、権利者団体としてのホームページやマスメディアを通じますものを周知いたしまして、違法な現在のこのインターネット配信の状況を改善するということに努めたい、また、その違法行為を助長するような行為に対しての警告に努めたいということでございまして、権利者団体がいきなりその利用者に対して、先生御指摘のございましたような損害賠償請求を行うということは基本的にはないというふうに考えております。

 また、先生も御承知のように、インターネットにつきましては、あるサイトからダウンロードを行っているということについて、それを発見するということが技術的に困難でございます。御承知のプロバイダー責任制限法におきましても、サイト運営者に対するダウンロードの個人情報開示の手続というものはございませんので、ダウンロードを行う利用者を特定するということは困難ではないかというふうに考えております。

 ただ、私どもといたしましては、今回、この改正を踏まえまして、先生が御懸念しているようなおそれを軽減しなければいけないというふうに考えておりまして、文部科学省といたしましても、利用者への改正内容の周知徹底、また、違法配信サイトを識別するための権利者団体による取り組みの支援に加えまして、権利者団体に対しまして、仮に権利行使を行う場合には、先生御指摘のございましたような事前の警告を行うなど、慎重な手続をとるよう努めるよう指導してまいりたいというふうに考えております。

川内委員 もう一つ、条文の解釈を明確にしておきたいと思うんですけれども、四十七条の八で「電子計算機における著作物の利用に伴う複製」というところがございます。

 これは、わかりやすく言うと、YouTubeとかあるいはニコニコ動画とか、最近もうたくさんの人がYouTubeあるいはニコニコ動画にアクセスをして、音楽やあるいは動画を見るということをするわけでございます。

 これは、パソコンというかコンピューターは使い勝手がいいように自動的にキャッシュという形で見たものを複製するという機能を持っているわけでございまして、これなども、YouTubeやニコニコ動画を見ただけで違法になってしまうというようなことが想定をされてしまうようでは困るということで四十七条の八が置かれているのだろうというふうに思いますが、YouTubeとかあるいはニコニコ動画等で、どのような手続でアップロードされているものであろうと、ただそれを見るだけでは違法にはならないよ、見るだけなのは違法ではないですよということを、四十七条の八の解釈を明確にしていただきたいというふうに思います。

高塩政府参考人 先生御指摘のとおりでございまして、この法律案では、動画投稿サイトなどにおきまして違法投稿された動画を視聴する際に、コンピューター内部に作成されるいわゆるキャッシュ、情報の蓄積物に関しましては、この改正案の四十七条の八に盛り込まれております電子計算機における著作物利用に伴う複製に関する著作権の例外規定を置いておりまして、権利侵害にはならないというふうに考えているところでございます。

 ただ、こういったキャッシュをさらにキャッシュフォルダーから取り出して、別のソフトウエアで視聴したり別の記録媒体に保存したりするような場合については、例外規定は適用されず原則どおり著作権が及ぶ、こういうことになるというふうに解しております。

川内委員 見るだけだというのは全然問題ない、今回の対象にはならないよということですよね。ちょっともう一度。

高塩政府参考人 そうでございまして、今回は、三十条ではいわゆる違法な配信からの録音録画、ダウンロードでございまして、視聴というものは違法にならないということでございます。

川内委員 これは「電子計算機」という言葉が使われているわけですけれども、携帯電話などでもYouTubeとかニコニコ動画とかを見れるはずだと思うんですけれども、携帯電話などのモバイル機器も同様であるということでよろしいですね。

高塩政府参考人 そのように考えております。

川内委員 そのように考えているという御答弁はちょっと……。文化庁というか政府が有権解釈権を持つわけですから、「電子計算機」という言葉の中には携帯電話等のモバイル機器も含むのだと明確におっしゃっていただけますか。

高塩政府参考人 この四十七条の八の「電子計算機」には携帯電話などのモバイル機器を含むというふうに考えております。

川内委員 さて、大臣にお伺いをいたしますが、私は、この著作権法の運用に当たっては、著作権法第一条の目的規定、先ほども私が申し上げたとおり、公正な利用に留意しつつ権利の保護を図るというところが大事だろうというふうに思うんですけれども、消費者、利用者が利用しやすいようにしながら権利の保護を図っていくという著作権法のそもそもの考え方について、大臣の御所見を承りたい。

塩谷国務大臣 著作権法については、今、川内委員がおっしゃったように、利用者の公正な利用あるいは権利者の保護という観点で、時代の変化によって情報化等が進む中で、その状況においていろいろと改正を重ねていかなければならない、また、世界的な問題もありますし、これから国際的にはやはりいろいろな課題が出てきます。ただ、基本は、今おっしゃったような公正な利用と権利者の保護、このバランスをいかにとっていくかということが非常に重要だと考えております。

川内委員 そこで大臣、私は音楽が大好きで、この携帯電話の中に、音楽配信サービスで着うたフルというサービスがありまして、約四十曲ぐらい入っているんですけれども、すべて合法的にきちんとお金を払ってダウンロードをさせていただいておりますが、この着うたフルというのは異様に高いんですよ。一曲四百円とか、一曲ですよ、四百五十円とか、安いものでも三百五十円とかするわけでございまして、まあ着うたは百五十円とかあるんですけれども、短いフレーズですね。着うたフル、一曲丸々で四百円とか四百五十円とか、これは世界じゅう探してもそんな国はどこにもないわけでございまして、外国なら一曲大体百円ぐらいだと思うんですけれども、この着うたフルの日本の高さ、一曲四百円というのはいかにも高いというふうに思うんですけれども、大臣どう思いますか。

塩谷国務大臣 着うたフルの値段、一曲四百円か四百五十円ということですが、これについては、やはりサービス事業者のビジネスモデルや利用者のニーズ等によって価格が決定されると思いますので、私からそれが高いかどうかということは判断する立場にございません。

 今ちょっと声がありましたが、CDなんかで二曲入って千円とか千五百円とかということを考えると、それに合わせていくとそのぐらいかなという考え方もあるし、世界的に今もっと安いということになれば、今後の需要と供給とのバランスが、またこれもいわゆる価格を決定するのではないかと考えております。

川内委員 モバイル機器にさまざまなデータを蓄積してそれを利用するというのは、非常に今、日本では、我が国では、世界じゅうでもそうでしょうけれども、ポピュラーなライフスタイルの一つになっているわけでございまして、そういう意味では、中学生や高校生が携帯電話を持つことの是非はまた別に議論すべきことであろうかと思いますが、しかし実態として、もう中学生、高校生が携帯電話を持ち、そこに音楽や映像をダウンロードし、そして利用をしているというライフスタイルがある。

 そのときに、私は、なるべく安くする方がたくさんの人がそれを買いやすくなるし、ビジネスモデルとしてもその方が大きく発展をしていくのではないかというふうに思うんですけれども、文化庁さんの御説明では、先ほど大臣がおっしゃられたように、パッケージの商品、CDとかDVDとか、要するに、物として、物に固定して売るというパッケージの商品が最近はこういう電子配信などでどんどんシェアを食われて売り上げが落ちているので、その売り上げをカバーするために一曲四百円ぐらいにせざるを得ないのではないでしょうかという御説明を受けているんです。

 しかし、音楽や映像を楽しむ世代が主に若い世代である、中学生や高校生、大学生、あるいは二十代、三十代の世代がそういうことに最もお金を使うであろう世代であるとすれば、なるべく安くして、そして多く利用してもらうということが私は文化の発展に資するということになるのではないかというふうに思います。

 そこで、先ほど同僚の松野委員から公正取引委員会にJASRACの件について、公正取引委員会の今回のJASRACに対する処分がちょっと違うのではないかという趣旨の御発言があったわけですけれども、私は全く違う観点からちょっと聞かせていただきたいというふうに思うんです。

 着うたについては、公正取引委員会は、レコード会社各社がレーベルモバイルという会社に業務委託をし、そして、そこから着うたを配信しているということに関して、不公正な取引方法ということで処分をし、今、裁判でレコード会社各社はそれを認めずに争っているというふうに聞いておりますけれども、まず、この着うたについて、審判事件の概要について公正取引委員会から御説明をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘の着うたの事件につきましては、公正取引委員会は、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントなど着うたの提供業者五社が共同して設立いたしました会社に対して、着うたの提供業務を委託する一方で、共同して他の着うた提供業者に対しては原盤権の利用許諾を行わないようにしているという行為が、不公正な取引方法として禁止しております共同の取引拒絶ということに該当するとして、独占禁止法十九条の規定に違反すると判断して、昨年、平成二十年七月に排除措置を命ずる審判審決を行ったところでございます。

 なお、本件につきましては、ただいま先生御指摘のとおり、その後、会社四社から審決取り消し訴訟が提起され、現在、東京高等裁判所において係属中でございます。

川内委員 着うたについてそのようなことであるということですが、着うたフルもビジネスモデルは全く一緒なんですね。着うたと着うたフルは全くビジネスモデルが一緒ですから、そもそも、変な相談でもしてなきゃ、一曲四百円で配信を堂々とやるなんということは私はできないと思いますよ、恥ずかしいですから。

 着うたフルは一曲四百円でしか買えませんというようなことは、お互いに相談してやらなきゃ、あるいは他の業者を排除しなきゃできないことですから、私は、この着うたフルについても、着うたと同じように、レコード会社数社が共同で設立したレーベルモバイル株式会社に業務委託をし、また、諸外国と比べて異常に高い、価格競争が全く働いていないということなどから、この着うたフルの業務が独占禁止法第十九条の不公正な取引方法及び独占禁止法第三条の不当な取引制限に当たると思料をいたします。

 よって、独占禁止法第四十五条に基づいて、この事実を公正取引委員会にこの場で申告したいというふうに思いますが、公正取引委員会はこの申告を受理していただけますでしょうか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生の御指摘のありました件については、申告としてお受けさせていただきます。

 ただ、今申し上げましたとおり、着うたの事件では、着うたの提供業者が共同して他の着うた提供業者に対し利用許諾を行わないようにしている行為ということを共同の取引拒絶として問題としたものでございますけれども、申告いただきました内容を検討の上、適切に対処してまいりたいと考えております。

川内委員 適切に対処をしていただきたいと思います。

 私は、要するに、著作権法の目的、文化の発展に資するということを実現していくためには、ネット社会ではすべての人がクリエーターであり、すべての人がユーザーであるという考え方のもとに、なるべく多くの人にコンテンツが利用できるような環境というものをつくっていかなければならないんだというふうに信念として思っております。

 世界じゅうどこを探しても、一曲四百円で着うたフルを配信しますなどということをやっている国はないわけでございまして、大臣、そういう意味では、それはどんな理屈をつけようがおかしなことはおかしなこととして、なるべくそれが安くなる方向にして、そしてたくさん売ることによって売り上げを上げてちょうだいねというビジネスモデルをつくっていただきたいなという思いで申告をさせていただきました。

 さて次に、次にというよりも最後ですが、日本版フェアユース規定の導入について質問いたします。

 先ほど大臣からも、まだまだこれから多くの課題があるという御発言がございました。

 そこで、まず知財戦略本部に伺いますが、日本版フェアユース規定の導入について政府の基本方針を御説明いただきたいと思います。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

内山政府参考人 お答えいたします。

 知的財産戦略本部におきましては、本年四月六日に、二〇〇九年度から二〇一三年度におきます第三期の知財戦略の基本方針を決定したところでございます。この中におきまして、委員御指摘の、権利制限の一般規定、いわゆる日本版フェアユース規定につきましては、「著作権法における権利者の利益を不当に害しない一定の範囲内で公正な利用を包括的に許容し得る権利制限の一般規定の導入に向け規定振り等について検討を行い、必要な措置を講ずる。」こととしております。

 知的財産戦略本部としましては、本基本方針を踏まえ、今後、知的財産推進計画二〇〇九の策定などにおきまして適切に対応してまいりたいと考えております。

川内委員 導入に向けて検討を進めるということでいいんですよね。ちょっともう一回、済みません。

内山政府参考人 お答えをいたします。

 第三期の知財戦略の基本方針の中では、委員御指摘のように、「権利制限の一般規定の導入に向け規定振り等について検討を行い、必要な措置を講ずる。」としております。

川内委員 日本版フェアユース規定の導入について、政府の知財戦略本部、これは閣僚がすべて入っているんだよね、だから閣議決定と似たような決定になるわけですけれども、政府の方針になるわけですけれども、そこでそういう方針が決められたと。

 文化庁としては、日本版フェアユース規定の導入について、それを受けてどのようにされるのかということをちょっと御説明いただきたいと思います。

高塩政府参考人 知財戦略本部の方から日本版フェアユース規定の導入が必要とする内容の報告書が提出されたことは、今御答弁があったところでございます。

 このフェアユースの規定を我が国の著作権法に設けることにつきましては、これはアメリカでフェアユース規定があるわけですけれども、両国の法制度の違いなどを理由に、従来慎重な意見、見解が多かったわけでございますけれども、文化庁といたしましては、この知財戦略本部の報告書の内容も踏まえまして、幅広く論点を整理した上で、今年度から文化審議会著作権分科会において具体的に審議を始めたいというふうに考えております。

川内委員 最後に大臣からも、日本版フェアユース規定の導入に向けて大臣としても文化審議会での議論を加速していただけるように督励していただきたいというふうに私は思いますが、大臣としての御所見をいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 著作権法につきましては、文化審議会の分科会で検討して必要な改正を行ってきているわけでございまして、今、知財戦略本部の報告、そして我々、文化庁としても、やはりそれを踏まえて、今まで慎重だったわけでございますが、実際の今までの運用等あるいはヒアリング等もしっかりこちらで行って審議を進めてまいりたいと考えております。

川内委員 終わります。ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で川内君の質疑は終了いたしました。

 次に、和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。

 民主党はもう四人目のバッターでございますので、ここらで法案に対する姿勢も示しながら、質疑を進めさせていただきたいと思います。

 塩谷大臣、我が党はこの法案の提出を受けまして何度か会議を持ちましたけれども、今回、法案の提出理由、趣旨等については、おおむね非常に理解できるという結論でございます。しかし、これから先、ぜひ賛成していただくためにも、これから三十分間、ぜひ大臣の前向きの御答弁をいただいて、私どもも安心して文部科学省にこの行政を任せられるよう感触を持った上で採決に臨みたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、さきに立たれました三人の我が党の同僚委員の質疑も参考にしながらちょっと進めてまいりたいと思いますが、まず、今回のこの法改正の内容、目的等を拝見しました際、概括しまして、価値あるものが世の中に適正な対価をもって取引される環境を整えていくために一歩を記すんだというようなイメージを持って私自身は受け入れておる次第でございます。

 先ほど来御議論が何回も出ていますけれども、常識的に言って、着メロ、着うたが一曲四百円というのはだれが考えても高いというふうに、この委員会室にいらっしゃるほとんど皆様方がお感じになることだと思います。では、それを本当に適正な対価でどのように取引していただくのが一番世の中で正しい姿なのかということを考えていくべきだろうという趣旨から今回の法案提出に至られたものというふうに推測いたします。

 実は、党内での会議でも申し上げたんですが、私、今回この法案を自分で担当させていただくに当たりまして、やはり国民の皆様方の御反応を聞かなきゃと思いまして、若い者が一番集まります渋谷に行ってまいったんです。何百人か聞いた上なんですけれども、今、ほとんど高校生以上大学生ぐらいの方々が必ず一曲や二曲は着うたをダウンロードしていらっしゃる。しかし、その方々に、一つ一つ携帯をこうやって見せていただきながら、このダウンロードは本当に適法なものか違法なものか知っているかというふうに尋ねると、ほとんどが、そんなもの知りませんよというふうにおっしゃるんですね。若い方々です。

 しかし、私自身も本当に不勉強でしたが、だんだんやるうちに、あ、これは海賊サイトだ、これは適正なサイトだというのがわかってくるんですけれども、これらについてそういった現にダウンロードしていらっしゃる方々の意識を聞くと、違法でも適法でもいいじゃない、ダウンロードできるんだからというふうにおっしゃる若い方々が多いんです。

 私ども、今、与党委員もあわせまして皆さんで、文部科学行政、つまり、子供の教育という観点に最も大きな重点を置いて審議しなければいけない場でございますが、私たちの社会を将来担ってくれる若い人たちが一つの道徳規範を持たないまま大人になっていくことに私自身は、その実際に若い方々、二百人程度当たりましたが、当たっていて、すごく怖い感じがいたしました。

 そういった意味で、やはりどの分野であっても、正しいことは正しい、間違っていることは間違っているというふうに私たちの将来を背負ってくれる若い人たちに認識してほしいという趣旨から、私は今回、この法改正はいいことではないかというふうに感じております。

 ただし、先ほど申し上げたとおり、四百円で一曲ダウンロードさせる世の中というのは、先ほどの川内委員の御指摘にもあったとおり、我が国ぐらいのものです。これが適正な価格で取引されるためには、当然、国民皆様が本当に価値あるものだと認めた上で、その価値に対して適正な対価を支払うという文化、意識を醸成することが一つの国の役割だろうというふうに考えておる次第でございます。

 そこでなんですけれども、大臣、今回いろいろ内容的にはございます。障害者の方々の利用をどんどん促進する条項を当然入れていただいて結構だと思いますし、また、本当に絶版となっているものがどういうふうに著作物として取り扱われるのか、そういったものについての規定も置いていただくことは結構でございます。国会図書館でいろいろなデジタル化を図っていただくのも結構でございます。

 一番議論の対象になっているのは、結局、先ほど来何回も出ているように、最初のもとが違法だというふうに知りながらそれをダウンロードする、もしくはそれを販売するといったことについての規定を今回置こうとしているわけでございますが、こういった規定を置くことは、最終的に国民の皆様方の幅広い利用を促進するために置く規定だと私自身は解釈しております。

 そこで、大臣に御意向をお聞きしたいんでございますが、こういった規定を置く以上は、一歩で終わるのではなくて、二歩、三歩と歩を進めていただいて、この著作物を扱う業界におかれても、本当にそういうふうに違法と適法なものを切り分けた上では、適法なものの取引に対しては適正な価格をつける。四百円は普通常識外だと思いますが、そういったことを業界の方にも行政府のトップとして指導なさるべきではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 現状は、先ほど渋谷の話があったように、だれもがダウンロードして、それが違法かどうかわからないというようなのが現状だと思っておりますが、おっしゃるように、いかに正しく、広く流通させるかということだと思うんですね。

 そこら辺でやはり業界側にも、今回はこういう法改正をして、しっかり正しく利用を広めるという方向で行ってほしい。その結果、価格も適正な価格になるだろうということを期待しての今回は一歩だと思っておりまして、一方で、権利者の保護等も考える中で広く普及、利用されれば、その分もしっかり確保できるだろうという方向で今回検討した結果だと考えております。

和田委員 当然のことながら、各著作物についてその権利者が、自分で自分の作品はどれぐらいの価値があるものか、それを考えて価格をつける自由を阻害すべきではないというふうに思っています。

 ただ、世の中には著作物以外にもたくさんのものが取引されていますが、そういったものは、一たん価格がついた後でも、当然のことながら、需給原理によって価格が動いてまいるわけでございます。この曲はすばらしいな、みんながダウンロードしたいなと思ってわっと要するに需要が高まるときには、普通の物の取引の原理で考えれば、その着うたの値段がすうっと下がっていく。そして、適正な価格をつけたつもりなんだけれどもなかなか売れないなというふうに判断されたときも、ちょっとずつ価格を下げて売れるところまで持っていく。逆に、権利者としては、いやいやこれは、需要が高いのはおれの著作物が価値が高いからだ、それであれば、もっと価値が高くてもよいのではないかということで価格を上げる、下げるということを考えてもよいのではないか。私自身は、こういった市場競争原理がこの著作物の中にもしっかりと行き渡ることが本来必要なのではないかというふうに感じているわけでございます。

 今回は、少なくとも発端となったのが、著作物を扱っていらっしゃる業界の方々から、適法にダウンロードされたり、要するに引っ張られたりするものよりも違法にダウンロードされたりするものの方がもう既に圧倒的に数が多くなっているんです、これはいかに言ってもおかしいんじゃないですかというお声を受けての法改正でございました。

 しかし、私どもがその方々の御要望を要するに聞くという形もさることながら、考えなければならないのは、先ほど私、川内委員の発言、非常にいい発言だなと思ったんですが、すべてがユーザーであり、すべてがクリエーターであるというようなことをおっしゃっていましたが、最終的に国民の皆様方がそういった原理の中で動かれていて、では、自分は情報を発信してみよう、情報を受け取ってみようという文化をつくっていくことにこの法案改正の目的があるんだと思うわけでございます。

 そうした意味におきまして、先ほどの御答弁をお聞きしておりまして、ある程度のところは要するに理解するのでございますが、一つポイントとしてもう一度お聞きしたいのは、大臣として、今後、この法改正を行った後、著作物を管理する団体等に対して、適正な価格で取引されているかどうかという観点から指導を行う所存がおありでしょうか。いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 現在のところ、価格については、特にビジネスのかかわる問題でございまして、先ほども着うたフルの価格がどうかということを聞かれて、私どもはそれを高いどうのと言う立場にないわけでございまして、希望としては期待をするというような言葉で発信をすることはあると思いますが、指導というところまでは、なかなか価格については私どもから言う立場にないと考えております。

和田委員 行政府のトップとしてはそこまでの御答弁が多分限界だと思ってお聞きしました。

 しかし、今回、我々が最終的にこの法改正案に賛否を決するときに意思として表明したいのは、そこまでが行政の限界であれば、当然、今度は業界側の自主的な方向づけを望むということを意思として表明しておきたいというふうに思うわけでございます。この点は、またすぐ後の採決の際に附帯決議等で検討してまいりたいというふうに思っています。

 それでは、次の問題に移りたいと思います。

 今回、外国でもこの著作物についてはいろいろな議論が起こっているさなかでございます。委員各位におかれましても、各新聞に何度か報道されておりますので御存じではないかと思いますが、今、世界の中で最もインターネットの検索サイトとして知られているものにグーグル社というのがございます。このグーグルという会社が、先般、自分が絶版だとみなしたような著作物について、いわゆるスキャンといいますけれども、自分で映像を撮って、それをデジタルコンテンツとして配信することを要するに考えている。ついては、その著作物を編み出した権利者、こういった方々にその使用を認めてもらうよう、権利料をある程度払うから、意思のある人は言ってきてくださいというような趣旨の、和解案というんですかね、権利者との間で幾つか争訟になっておりますので、そういった案を示したところでございます。

 諸々まだまだ外国の中で賛否両論あったり、権利者団体からすればどっちに動いていいか戸惑っていたりということもありまして、当初、実はこの審議の直前、ゴールデンウイークのさなかに期限を迎えておるところだったのでございますが、四カ月ほど延長されて、グーグル社の提案した和解案に応じるかどうかということを九月まで期限延長したという報道が出たばかりでございます。

 そこで、ここまで御紹介した上で、委員各位にもお考えいただければと思って、きょうは、法律の解釈論として一般的にはどのようになるかというところから初めてまいりたいと思いますが、内閣法制局の方にいらっしゃっていただいております。私、事前に通告いたしておりますので、大体の趣旨は御理解いただいているかと思います。

 今回、このグーグル社が和解案に応じてくれと言っている範囲のものですけれども、当然、アメリカにある会社で、アメリカの中で著作されたものについてはその範囲となっているわけでございますが、しかし、実は、アメリカに持ち込まれているものについては全部対象となるというふうにアメリカ側の報道ではきちっと流れていまして、例えば、日本で出版されたものがアメリカに持ち込まれてアメリカで流通している場合には、これはもう既にグーグルの和解案の対象だと。対象だということは、その和解案に応じなければ、アメリカで訴訟して自分の権利を守らなきゃいけないということになるし、応じるのであれば、応じたそこから後は、自分の権利料をグーグルに払っていただく以外は自分で著作物の権利を主張できない、少なくともアメリカ国内においてはということになっているようでございます。

 ここまで御説明した上で、一般的に、物を持っている方、一つの権利を持たれている方が日本国民であった場合に、この日本国民の持たれている権利を外国の法制上で、クラスアクションというのですが、集団訴訟という制度があって、その中に自分が入らなければ、その後は要するにそれに応じたものとみなすというふうに考えられていることがアメリカの制度ではございます。これとの間で、我々は日本国の国会でございますが、日本国民の権利をきちんと守るという上でどんなことが可能なんだろうかということを、きょうはちょっと内閣法制局の方に御答弁いただければと思っておるわけでございます。

 もう一度簡単に言いますと、このようになります。一般的に国民の権利が国外で脅かされる危険性がある場合に、その権利の有無の確認やその内容、そしてその保護のあり方について、どういったことが日本の法制上考えられるんでしょうか。御答弁いただけますでしょうか。

宮崎政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 一般論として、かつ著作権法に関してでございますが、ごく一般論として申し上げれば、各国の国内法は当該国内において適用されるというのが原則だと思います。我が著作権法につきましても、日本国民の著作物についての著作権、これが国外においての保護がされるかどうかということにつきましては、当該著作物の利用行為が行われる国ごとにそれぞれの国の著作権法制によって保護される、こういうことである、これが基本であると考えております。

 したがいまして、例えば米国の著作権法が適用されます米国の国内において我が日本国民の著作物の利用行為が行われた、こういう関係についての問題でありますれば、それは直接的には我が国の著作権法の適用があるという問題ではなくて、ただ、ベルヌ条約等の相加盟国ということになっていることによって、アメリカの著作権法により日本国民の著作権が保護されるという状態になっているということだと思いまして、そこで保護されます権利の具体的内容については、各法によって少しずつ違いがあってもそれはやむを得ないということである。

 基本的には、ベルヌ条約によって日本の著作権法はアメリカの著作権者を保護しますし、アメリカの著作権法によって我が国の著作権も保護されますが、細かいところについては、各国の法制で具体的な内容がどうなっているかということによる、こういうことだと思います。

 したがって、我が日本国民の持っている権利について外国の法制度のもとでいわば脅かされるような可能性があるかどうかという御質問でございますけれども、著作権法に関して言うと、日本国内における利用行為が妨げられるというふうなことになれば、これはなかなか考えられないことで、それはあってはならないことだと思いますけれども、どうも問題は、我が国民の著作権ではありますけれども、国外における利用行為について、それは自分の行為の権利の侵害であるから差しとめを求めるであるとか、あるいは損害賠償を求めるであるとか、そういう権利の行使については、それぞれ当該外国の著作権法によって保護されているということでございますので、そういう前提で、それでもいいからどういうことが我が国としてできるかということになりますと、それは、権利のそれぞれの内容であるとか、その当該分野を規制します国際条約の内容、規定方法がどうなっているか等々見ないといけませんので、私どもの立場として一概にお答えすることが難しいと思います。

 いずれにいたしましても、個別のケースに応じて、必要な場合には関係各国の間で調整が図られることになるであろうというふうに思います。

和田委員 今の御答弁、一生懸命私も追いながら聞いておりまして、まだ十分に理解しがたいところがございますが、委員の皆様方はいかがでしたでしょうか。

 長官、私自身、今御答弁をお聞きしておりまして理解したところまで、もしくは違っているのかもわかりませんが、もし違っていれば正していただければと思いますが、日本国民の持っていらっしゃる権利が外国に何らかの意味で持ち出し可能な場合というのは、たくさんございます。例えば、動産である車を持って出るというときだってそうでございますが、その所有権はずっとその本人が主張し続けることが可能でございますね。今おっしゃっておられた答弁では、この所有権は行った先の外国の法制によって守られているはずである。

 そこで、日本の法制上、要するに所有権を規定しているような各法制がございますが、そこから一たん国外に出たら外国の法制によって保護されるはずであるというふうに私は受けとめたんですが、この部分は正しいんでしょうか、いかがでしょうか。

宮崎政府特別補佐人 なかなか、ごく一般的に所有権まで対象にしてどういうことが言えるかにつきましては、確たることは申し上げる自信がございませんけれども、著作権に関する限りは、法律によって近代生み出された権利でございますから、したがって、法律によって付与されることで初めて生まれる権利という性格がかなり強いのではないか。

 その上で、ベルヌ条約等によって考えられている考え方は、各国の国内法によってそれぞれが保護するということを基本的には前提にした上で、条約で最小限ここまでは各加盟国はお互いに保護しましょうという国際約束を結び合って、そして広く保護を普及させるということになっているんだろう、著作権についてはそういうことが言えるだろうというふうに申し上げました。

和田委員 一般的なものについての御答弁が難しいということの中で著作権についてお話しいただきましたが、塩谷大臣、今お聞きいただいたとおりです。著作権というものは、確かに長官の御答弁のとおり、もともとの権利として存在していたというよりは、法制によって付与された権利であろうかと思います。ただいずれにせよ、私が先ほど申し上げた物の所有権を著作権に置きかえると、恐らく今の長官の答弁は、私が申し上げたようなことになるんだと思っております。

 つまり、日本の著作権法は、日本国内で著作権が発生して、それが権利を取引されるところに規制としてかかる。しかし、それが外国に出ていった際には、外国の著作権法の規定に係るのであるということだろうと思います。それが、今回の場合にはベルヌ条約という条約によって相互主義的なところがきちんと定められているからこそ、お互いの権利がどちら側に行ったとしてもちゃんと守れるはずである。

 こんな法律、法制のつくりになっているものだというふうに御答弁を解釈したいと思って先に進めますが、それでは大臣、今のこういった原則の中で、日本の著作物を出していらっしゃる方々は、現実問題、たくさんの報道で流れているとおり非常に心配していらっしゃるわけでございます。その心配というのは、自分がこの和解案に応じれば、グーグルがデジタル化するたびに何らかの権料が発生してそれが入ってくるから実利上はよろしいのではないかという方もいらっしゃるし、いやしかし、自分のものはほかの世界にもどんどん売れていくはずのものであって、それを制約されるのは非常に困るという方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、私は、そういった方々がいろいろな情報をもとに悩みに悩まれて得られた結論を国の制度上阻害することはあってはならないと思っていますが、どちらかというと、こういった問題があることを知らないうちに期限が来てしまって、自動的に自分がどちらかの結論の範疇に組み入れられてしまうという仕組みは、どうも私自身には日本国民を守る立場から納得できないのでございますが、大臣、この点についてはいかがでしょうか。

塩谷国務大臣 今回のグーグル問題については、今おっしゃったように、基本的なところは、著作物について相手国の法律に従うということでございますが、ただ、それぞれ団体やらいろいろな利害等があって、対応が違ってきている。

 それを国として一つにまとめるというのはなかなか難しいのかなということもありまして、ただ、今おっしゃったように、このことを知らないで、そのままこの和解案のいわゆる決定に従ってしまうような状況、これを避けるべきではないかなという質問だと思うんですが、そのことはちょっと私ども、情報をしっかり収集しながら、権利者に対していろいろな情報提供をするとかそういうことを促してまいりたいと思いますが、改めて、今の件はもう一度検討していきたいと考えます。

和田委員 ぜひ御返答いただければと思います。

 残りが五分程度になりましたのできょうの総括に入りたいと思いますが、まず、今回の法改正案について、私ども、権利者の保護という観点という狭い観点ではなくて、やはり、国民の皆様方にできるだけ健全な各情報の取引をしていただきたいという観点からこの法改正に臨んでまいりたいというふうに思います。

 そうした意味で、今回の、違法と知りながらダウンロードするということはやはり違法なんですよということを定めることには、先ほど申し上げたとおり、私たちが将来を託す若い世代の教育のためにも必要なことではないかというふうに考えています。

 この点について、まず、大臣の総括的な御判断として、若い人たちの教育上この著作権法をどのように扱っていく御意思かということを、御決意として述べていただけますでしょうか。

塩谷国務大臣 特に若い人たちに対しては、最初にお話しございましたように、今の情報化時代には、いろいろな行動にしろ毎日の生活にしろ、よりその情報化にかかわっているところが多いということで、私どもとして周知徹底をさせることを考えていかなければならない。

 これは、我々のホームページとか、あるいは各種講習会等でしっかり徹底させる。そして、先ほども答弁しましたが、特に高等学校の学習指導要領を改訂して、この著作権については、改めて、音楽等にもしっかりとかかわるということをこの内容を含めて充実をさせたところでございますので、より一層この教育に関して力を注いでまいりたいと考えております。

和田委員 今、御決意としてお伺いしたことは私も同感でございます。

 一つだけつけ加えさせていただくならば、先ほど申し上げました、渋谷で若い人たちにアンケート的に聞いてまいりました。こういったものが適正な価格で何か人に認められるような作品をつくれば、それが適正な価格で取引されて自分が収入を得られる、そしてそれに対してやりがいを感じられるということが国民の情報取引の文化上醸成されるならば、もっともっとこうした芸術や音楽や、そうした分野に若い者がどんどん自分の将来の職業として考えていこうというふうな雰囲気も生まれてくるのではないかというふうに思うわけです。そういった意味でも、教育的な見地から今回の法改正を私どもも支援してまいりたいと思っています。

 最後にもう一つございます。

 先ほど来申し上げてきたことでございますが、今回の法改正が、まずもって、価値あるものを適正な価格で取引していただくという文化をつくるための一歩であるということを考えに入れる観点からは、著作物を扱う業界の方に対しましても、また、一たん流通することになった段階で流通を担う業界においても、適正な価格とは何ぞやということを常に意識した上でこの著作権を取り扱うような雰囲気をつくっていくことが国の責務だというふうに考えています。

 その面からの大臣の御決意をお聞かせいただけますでしょうか。

塩谷国務大臣 当然ながら、法律の改正の趣旨としても今おっしゃったような趣旨で考えておるわけでございまして、価値あるものが適正な価格だということで、これはもちろん、それがいかにまた利用されるかということにかかわっているわけでございまして、我々としましては、そのバランスといいますか、権利保護ということとあわせて考えていかなければならない。そこにまた適正な価格という観点では、ビジネスモデルといういろいろな手法がこれから出てくることも考えられる。

 正直、この分野においては、IT化の進展が著しい中でなかなか追いついていないというところが現実だと思っておりまして、むしろ、若い人たちが大いに利用することがまたこの発展につながることもありますので、それを正しく促していくような法律改正であるような気持ちでおりますので、今後も、またしっかりと状況を見守りながら前向きに対応していかなければならないと考えております。

和田委員 常に、国民各層の使いやすい環境を整える国会でありたいと思います。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で和田君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 今回の法案は、障害者が多様な情報に接する機会を確保するために、公共図書館での障害者サービスを充実する必要な改正が行われております。また、インターネットの情報検索サービスなど、現行法上課題となる行為についても対応しておりまして、インターネットの発展に伴った改正となっていることから、賛成できるものでございます。

 このことを表明した上で、きょうは、私的録音録画補償金制度について、ホットな問題も生じておりまして、質問をいたします。

 私的録音録画補償金制度の見直しという問題は長らく著作権分科会で議論がされておりまして、この間、私どももその動向を注目してきたところでございます。しかし、今のところ、結局見直しというのはできておりません。

 まず、この制度の今日的な意義というものをどのように考えておられるか、この点は大臣にお伺いをいたします。

塩谷国務大臣 私的録音録画制度につきましては、利用者の録音行為を認めつつ権利者がこうむる不利益を補償するということで、平成四年に導入されたわけでございまして、その後、著作権保護技術の導入や、音楽の配信事業のように著作権保護技術と契約の組み合わせにより、家庭内の録音録画について一定の制限を課したり、また、契約により使用料を徴収できるような仕組みが整えられつつあり、補償金制度の見直しを求める意見があるということは承知をしております。

 しかしながら、すべての利用形態について補償金制度にかわる制度が導入できる環境にないわけでございまして、新しい仕組みについてもまだ関係者の評価が異なるところでありますので、現状においては、新しい制度が直ちに補償金制度にとってかわるという状況にないと考えております。

 したがって、現在、今の補償金制度について、一定の意義を有するということで考えておりまして、いずれにしても、過渡的な時期に位置はしていると考えておりますが、現在の制度についても意義があるということで今審議をしているところでございます。

石井(郁)委員 現在の制度も意義があるということをはっきりお述べいただいたというふうに思います。

 デジタル複製ができる電気機器というのは広がっているにもかかわらず、現在対象となっている機器というのはMDなどに限られて、補償金の額というのも年々減少してきているんですね。制度の見直しというのが、議論中、進まないということなんですけれども、その原因というのはどこにあるんだろうか。それはよく検討されなきゃいけないと思いますけれども、まずいろいろ関係者がいらっしゃるわけでして、関係者の合意が進まないと聞いておりますけれども、それはなぜできないのかという点はいかがでございますか。

高塩政府参考人 この私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しにつきましては、平成十八年から、文化審議会の著作権分科会におきまして、三年にわたり検討してきたところでございますけれども、結論を得るに至らなかったというのが現在の状況でございます。

 この検討に際しましては、例えば、先ほど大臣から近年のさまざまな状況のお話がございましたけれども、携帯用のオーディオレコーダーのような記録媒体を内蔵した一体型の機器や、パソコンなどのような録音録画専用機器でないものなどが広く普及いたしまして、このような機器等を用いまして広範に録音録画が行われているという状況がございまして、こうした機器を対象とするべきかどうかということにつきましての著作権改正の議論は行われてきたわけでございます。

 この委員の中には、大まかに申しまして、権利者関係の方、家電のメーカーの方々、それから消費者の方々と、さまざまな立場の方々がおられまして、それぞれの方々がこの私的録音録画小委員会の方で御意見をお述べになったということでございます。

 そういった経緯の中で、文化庁としては、大まかに分けまして三者がおるわけですけれども、その中で一つの妥協点として文化庁の提案というものを審議会にも行ったわけでございますけれども、この提案につきましても、最終的には、メーカー側、それから消費者側を含めまして賛同に至らなかったということでございまして、今日、なお引き続き検討する、こういった状況になっている次第でございます。

石井(郁)委員 三者の関係者の間で合意に至らないと。私は、なぜ至らないのかというのをもう少しお述べいただきたかったんですけれども、私がこの著作権分科会の報告書を見てみますと、いろいろ隔たりは大きいなということを感じるんですね。

 今お述べになった文化庁がまとめた事務局提案に対しまして、権利者側の意見としては、一定の結論として評価しているというふうに出ています。消費者側の意見としては、整理がなされ一定の評価ができるとあるんですよ。学識経験者の意見として、一定の評価を与えるということもございました。だから、この限りでは一定の評価はされている。しかし、メーカーだけがこう言っています。制度の縮小、廃止の道筋が見えない、著作権保護技術が拡大すれば当然補償は不要だということで、明らかにこの補償金制度は不要だという立場からの意見が述べられている。

 こうなると隔たりは大きいわけですよね。ですから、メーカーだけが合意できないというのが実際ではないのかというふうに思うんですが、いかがですか。

高塩政府参考人 今先生から御紹介ございましたけれども、私的録音録画小委員会におきまして、関係者の主張につきましては、確かに、権利者、それから消費者、学識経験者それぞれが一定の評価というようなことはお述べになったわけでございますけれども、メーカー側におきましては、著作権保護技術が機能すればこの補償制度というものは不要であるというお立場をなかなか変えるに至らなかったということでございます。

 さらに、今回の提案につきましては、当面の措置として、一体型の機器等の追加というのがございますけれども、そういった対象の機器をふやすことについても、将来この制度を縮小していくという文化庁側の基本的な提案があったわけですけれども、それと必ずしも行き先が見えないというようなことから反対をされたということでございまして、この文化庁提案というものが、そういった主張が主なものとして、まとまるに至らなかったということでございます。

石井(郁)委員 ところで、今こうした見直しの議論が進行中にもかかわらず、実は重大な問題が起きていることがありまして、この点でただしておきたいというふうに思います。

 パナソニックという会社ですけれども、このように言っているんですね。今後、デジタル放送専用チューナー搭載機、これはデジタル放送のみ受信できる機器ということになっていますけれども、これには補償金を支払わないという立場を表明するに至っているというふうに聞いていますけれども、文化庁、御存じですか。

高塩政府参考人 今先生からお話のございました、デジタルチューナーのみを搭載した録画機器というものが、ほとんどことしになりまして電機メーカーの方から販売をされております。

 このデジタルチューナーのみに対応した録画機器につきましては、いわゆるダビング10と言われます著作権の保護技術が組み込まれていることから、録画機器の製造業者の団体の方で補償金の支払いの必要性はないのではないかというふうな主張をしているということは承知いたしております。

石井(郁)委員 パナソニック側がこう言っているんですよね。無料デジタル放送のデジタル録画に私的録画補償金が課せられているかどうかについては明らかでない状況にあるということなんですけれども、現行の制度というのはデジタル録画、録音できる機器、媒体を対象にして課金しているというふうに理解しますけれども、これでよろしいですか。

高塩政府参考人 現行法の、私的録音録画補償金の支払い義務を定めております著作権法の第三十条二項では、私的使用を目的として、政令で定めるデジタル方式の機器、記録媒体を用いて録音録画を行う者は補償金の支払い義務が発生するということにしておりまして、その際に著作権保護技術の有無が補償金の支払いの発生要件になるかどうかは明示的に規定をしていないというふうに考えております。

石井(郁)委員 どうなんですか。現行の制度というのはデジタル録画、録音できる機器、媒体を対象に課金しているんじゃないんですか。ここをはっきりさせていただきたいと思うんですけれども。もう一度お願いします。

高塩政府参考人 現在、政令によりまして、録画であればDVDなど、それから録音であればCDやMDなどを指定しておりますが、これらは補償金の支払いの義務がある機種や記録媒体でございます。

石井(郁)委員 そうしますと、パナソニック側の言っている内容でいいますと、どうなんですか。

 例えば、これを私、見せていただいたんですけれども、社団法人の私的録画補償金管理協会あてにパナソニック側からこういう四月八日付の文書があるんですよね。それを見ますと、デジタル放送用DVD録画機はそもそも私的録画補償金の対象機器であるか否かについて疑義があるということから、デジタル放送用のDVD録画についての私的録画補償金の徴収に協力することは差し控えるべきであるというふうに言っているわけですよね。こういうことが通用するのかどうかという問題なんです。

 ですから私は、こういう主張というのは、現行法からしてみても、これを無視したものにもなるわけですし、それから著作権法を持ち出すまでもなく、著作権法百四条の五では、メーカーに補償金支払い請求、受領に協力することを義務づけているということがありますよね。だから、徴収に協力することができないということは、この法律にも抵触する。協力を拒否するということなどはできないと思いますけれども、この点はいかがですか。

高塩政府参考人 先生御指摘の文書が四月八日付で私的録画補償金管理協会の方に届いたということを承知いたしております。

 この文書を受けました私的録画補償金管理協会におきましては、今後、これはパナソニック株式会社と協議をしてまいりたいという立場をとっているというふうに承知いたしておりまして、私どもはその推移を見守りたいと思っております。

石井(郁)委員 そして、この文書ですけれども、最後に結論づけているんですけれども、現状において技術的保護手段と補償の必要性の関係がはっきりしない以上、これは議論されているところだと思うんですけれども、デジタル放送用DVD録画機についての私的録画補償金の徴収に協力することはできないことを通知すると。一方的な通知になっているんですよ。

 だから、今議論している最中の問題はそれとしてあると思いますけれども、このデジタル放送用のDVD録画機についての私的録画補償金の徴収に協力することはできない、こういうことを言えるのかどうかという問題なんですよね。言えないんじゃないですか。はっきりさせていただきたい。

高塩政府参考人 この三十条二項の規定につきましては、先ほども申し上げましたけれども、著作権保護技術の有無ということは問わずにその対象機器を規定しているということでございまして、補償金の支払い義務が生じるということであれば、当然に百四条の五に定めます機器の製造業者に課された協力義務というものは発生するものというふうに考えております。

石井(郁)委員 だから、こういうパナソニック側の主張というのは、私はこういう行動は現行法上からも道理がないというふうに思うんですね。こういうことがどんどん許されたら、次々、協力しなくても何も問題は起こらないということになっていきまして、補償金制度そのものが崩壊しかねないというふうに思うんですね。

 ですから私は、こういう一方的な文書というのは、この法律上、著作権法上に定められている協力義務があるわけですから、これに違反する。これは政府としてもやはり法にのっとって対処していく、是正を求めるべきだというふうに思いますが、この点は大臣の御見解を伺いたいと思います。大臣、いかがでしょう。

塩谷国務大臣 確かにその文書につきましては、この補償金制度に照らし合わせて問題があると考えております。

 今後この制度をどうするかということにつきましては先ほど答弁したとおりでございまして、この問題、今後もしっかりとした協議を続けていく必要があると思っておりますので、今の文書の問題とあわせて検討してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 大臣から著作権法に照らしても問題だということをはっきり言っていただいたと思いますけれども、やはり私的録音録画補償金制度というのがなし崩し的に空洞化されていったり形骸化されていったりということは、大変問題だというふうに私は思っているんですね。

 そもそも、長い期間をかけて、やはりこの制度、一定の補償金を支払うということによって私的なコピーを自由にできる、これは消費者のための制度でもあるわけですから、これを充実させていくということが大事だというふうに思いますし、きょう、この議論の経過と今回の出ている問題に照らしても、やはりメーカー側の責任というか、このあり方ということが非常に問題だというふうに思うんですよね。

 制度そのものについて、メーカー、大企業、権利者も含めて、議論をお互いにしていくというのは重要なんですけれども、現行の制度に協力しなくていいんだというふうなことになってしまっては、これは到底、本当にこの制度を否定することですから、認めることはできないというふうに思います。

 つけ加えれば、著作物の複製できる機器や媒体を発売し、そのことで莫大な利益を得ているのがメーカーですから、やはり文化の維持、発展のために、そういう必要な経費は進んで負担すべきだということは、もっときちんと文化庁としても主張していいのではないか、主張すべきだというふうに思います。

 今回のパナソニックの行動というのは、やはりメーカーにも協力義務があるということから見ても大変問題だし、義務があるというふうに答弁されたということは大変重要だというふうに思っております。

 さて、また法案に戻るんですけれども、一点伺っておきます。

 今回、裁定制度のことなんですが、著作権だけでなくて著作隣接権、実演などですね、にも拡大しています。供託制度も導入するということで、裁定結果が出る前でも暫定利用が可能になる仕組みというのを導入しています。放送番組のネット配信を行う際には、すべての権利者の許諾が必要となります。今回の改正で、所在不明で許諾をとることができない権利者がいる場合、裁定制度を利用することでネット配信が可能になるというふうに聞いております。

 そこで確認させていただきたいんですが、この制度はあくまでも所在不明の場合であって、現に存在する権利者、実演家が許諾を拒否している場合にまで適用するものではないというふうに理解していいのかどうか。

 それから、安易に所在不明だとされないように、制度的にはどのように担保されていくのかということについて明快に御答弁いただければと思います。

高塩政府参考人 権利者不明の場合の裁定制度の拡充を今回の改正案に盛り込ませていただいているところでございますけれども、第一点の御質問がございました、権利者が不明ではなくて存在している場合について、この制度を活用するといいますか、利用することはないということは、そのとおりでございます。

 それから、この制度につきましては、そもそも放送番組の二次利用に関しまして、権利者不明によりまして、その契約交渉ができない場合の問題点というものがさまざまなところで指摘をされるというようなことがございますけれども、私ども、著作権分科会の報告書におきましては、この権利者不明の場合の措置としては、まず権利者情報の管理など関係事業者の取り組みが進められる中で、民間の取り組みが引き続き行われることを前提としつつ、その取り組みを補完するものだというふうに位置づけているところでございまして、文化庁といたしましては、この点を踏まえまして、今回の改正とあわせまして、円滑な契約のための関係者への取り組みへの助言、協力を行ってまいりたいと思っております。

 また、第二点の御質問がございました、裁定制度を利用するためには権利者の確認といいますか捜索といいますか、それにつきましては相当な努力を必要とするということが従来の裁定制度でもございますけれども、この改正後におきましても、同様に相当な努力というものは課すということを考えておりまして、十分な捜索を行われない安易な利用を認めるという趣旨のものではございません。したがいまして、今回、相当な努力につきましては政令において明確に定めることにしておりますけれども、関係者の意見を聞きながら慎重に検討してまいりたいというふうに思っております。

石井(郁)委員 権利者が不利益になるようなことのないように、この条文については進めていただきたいというふうに思います。

 若干残しましたが、きょうは以上で終わります。

岩屋委員長 以上で石井君の質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森でございます。

 最初に、ちょっと基本的なことをお聞きしておきたいと思うんですが、今回の法改正では、デジタルコンテンツの流通促進あるいはその有効活用と同時に、違法な著作物の流通抑止という二つの側面を持った改正が行われるということになるんだと思います。

 著作権の保護と流通促進というのは、ある意味、相反する側面があるんじゃないか、こう思っているわけです。インターネットの利用拡大の経済効果、これははかり知れないものがあるというふうに私も考えておりますが、その効果を手に入れるために、仮に著作権の保護がおろそかになるとかいうことがあったら、これは文化財産を生み出す知的創造力の弱体化を招くことになりやしないか、ちょっとこんな心配もしているわけです。

 そこで、文科省といいますか、政府全体ということになりますか、著作権の保護とデジタルコンテンツの流通促進あるいはインターネットの利用による経済効果拡大、この両立についてどうお考えになっていくのかということを最初にお聞きしておきたいと思います。

塩谷国務大臣 御指摘の点については、そのバランスが非常に重要でございまして、今回の法律改正も、適切な流通促進あるいは権利者の適切な保護、バランスを保つという点で改正案を提出したわけでございます。

 公正な利用に配慮した権利制限規定だけではなく、違法な著作物の流通を抑止するための措置もあわせて盛り込んでおりまして、文部科学省としましても、時代の変化あるいは社会の要請を踏まえて、バランスに留意しながら、著作権の円滑な流通の促進と著作権の適切な保護に努めてまいりたいと考えております。

日森委員 次に、先ほど和田委員からもお話がございました、例のと言うとおかしいんですが、グーグルの書籍検索をめぐる紛争といいますか問題についてお聞きをしたいと思うんです。

 これは世界じゅうでかなり大きな問題になっているようです。最初に、このグーグル問題の経緯、それから米国で成立したと言われている和解内容、これについて簡単に教えていただきたいと思います。

高塩政府参考人 アメリカにおきますグーグル社のブックサーチをめぐる紛争の経緯について簡単に御説明申し上げたいと思いますけれども、これは二〇〇五年の九月に、グーグル社が米国内の大学図書館などと提携いたしまして蔵書のデジタル化を行う事業につきまして、これを著作権侵害として訴えておりました全米作家協会と全米出版社協会との間で、二〇〇八年の十月に和解が合意されたということでございます。

 この和解案では、グーグル社は一定の使用料を支払うことで、今後、米国内においてデジタル化した書籍データサービスのアクセス権の販売や広告掲載などが可能となるというものでございます。権利者につきましては、その和解に参加した場合には、みずからの書籍をウエブ上で公開することの可否を選択でき、また公開を認めた場合には、その公開によって得られました使用料を受け取ることができるということでございます。

 一方、この和解に不参加をした場合には、そのことをもってグーグル社からデジタル化した書籍の公開を停止し、データベースから削除するという保証はないわけですけれども、米国におきまして、このグーグル社に対しまして訴訟を起こすことができるということになります。

 我が国の著作者の著作物がこのグーグル社のブックサーチの中にも数多く含まれておりますが、これはベルヌ条約に基づきまして、米国内でも我が国の著作者の著作物は権利が保護されておるわけでございますけれども、このたびの和解の効果は、アメリカの訴訟制度、これは集団訴訟、クラスアクションと言っておりますけれども、その代表の方が訴訟したものが、それに権利を持つ者にすべて及ぶというアメリカの連邦民事訴訟規則に定められている方式でございますけれども、このクラスアクションによりまして、米国内において著作権を有するすべての者を対象としているため、我が国の権利者にも及ぶ、こういうことになっております。

 この我が国の権利者につきまして、グーグル社の方から、一定の期限までにこの和解に参加するか否かについての期限というものが、先ほども御紹介がございましたけれども、五月五日という期限があったわけですけれども、これが四カ月延びて九月四日ということになっておりますけれども、我が国の権利者がこの和解案に参加するか、また不参加するかということの期限というものが定められておりまして、それに対しまして、今、我が国の作家や作家の協会、それから出版の協会などがさまざまに検討を行っている、こうした状況にあるというふうに承知いたしております。

日森委員 その和解案、幸か不幸か延期されたのですが、日本文芸家協会というのがございますが、こう言っているわけです。

 著作権者が米グーグル社側に何らの通知も行わなければ、自動的に和解案記載の条件を原則として受け入れて和解に参加した者とみなされ、同社は、将来に亘って当該著作権者の二〇〇九年一月五日以前に出版された著作物について、デジタル化、ネットワーク上での検索への利用、データベースへのアクセス権の販売、今後開発されるその他の商業的利用までできる権利を有することとなっている。すなわち、日本の著作権者が何も知らないか、あるいは何も積極的な行為をとらないままでいれば、日本の著作権法上、違法として許されない行為を承認したものとみなされるのである。

というふうに言っておりまして、

 米グーグル社は、アメリカの著作権の常識が他国の固有の文化に基づいたそれぞれの国の著作権の常識を壊すことはできないということを強く認識すべきである。

というふうに批判をしているわけです。

 先ほどは、その法的な根拠などについて内閣法制局長官からお話を伺ったのですが、どうもいまいちはっきりしないということもございました。大臣はこれらについて今後検討を加えていきたいということも先ほどございましたが、これほど文芸家協会などが心配をされているという問題があるわけですので、改めてなんですが、アメリカにおける和解というのが日本における著作権者を拘束できる法的根拠というのを、もう一回わかりやすく示していただきたいと思います。

 それから同時に、この問題に対する文科省の見解、先ほど大臣の見解をお聞きしましたが、これも改めてお聞きをしたいと思いますし、同時に、著作権保護について国際協議がどのような枠組みで行われているのか、この協議に我が国がこうした問題を通じてどうかかわっているのか、この三点についてお聞きをしたいと思います。

高塩政府参考人 著作物につきましては、国境を越えて利用されるために、世界各国がさまざまな多国間条約を結びまして、互いに著作物を保護しているわけでございます。我が国におきましては、これまでこれらの条約形成に積極的に関与してきたわけでございます。

 今回、先生から御指摘ございましたグーグル社のブックサーチの問題につきましては、アメリカの訴訟制度によりまして、アメリカ、米国で保護を受ける著作物を有する我が国の権利者にも今後効力が及んだものでございまして、これによりまして大きな影響が生じまして、今後の展開等、権利者の方たちに不安、懸念が広がっていることにつきまして、私どもとしても大変憂慮をいたしているところでございます。

 文部科学省といたしましては、各国の権利者それから政府の対応状況につきまして、引き続き関心を持って情報収集等に努めるとともに、必要に応じまして、二国間協議の場を通じまして情報交換に努めてまいりたいというふうに考えております。

 我が国が著作権関係の国際的な枠組みに入る際には、大きな、権利者、著作権側のベルヌ条約、著作隣接権についてはローマ条約というのがございまして、それらを踏まえた新たな条約交渉、さらには、現在、放送番組等の条約交渉が行われておりますけれども、そういった国際的な著作権の関連条約というものに私どもとしては積極的に参画して、著作物が世界的に保護されるといいますか、流通する状況になっておりますので、そういうものに適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

日森委員 問題は、当面、九月四日という一定の期限があって、これに間に合わないと日本の権利者が重大な被害を受けるという可能性も否定できないということだと思うんです。

 そういう意味で、今おっしゃったような具体的な取り組みについて、どのように行っていこうとしているのかについて、今わかる範囲でお答えいただければありがたいと思います。

高塩政府参考人 ただいま御答弁申し上げたように、私どもとしては、このさまざまな状況につきましての情報収集や、必要に応じます二国間協議の場ということでございまして、特にアメリカとの間では日米間の著作権協議というのがございますので、そういう場において、この問題をアメリカの政府としてどういうふうに考えるかということの問題提起なども行っていきたいと思っております。

 現在、私どもは、アメリカを含めて欧米の諸国に政府としての対応を確認しつつございますけれども、今回の本件につきましては、民間のグーグル社に対して民間の作家協会等が起こした訴訟ということでございまして、政府レベルでは直接干渉しないという国が多いというふうに伺っておりますけれども、そういった情報も含めて、私どもとしては、我が国の権利者に対して、適切な情報を収集し、それを提供していくという努力を続けたいというふうに思っております。

日森委員 一つは、文芸家協会なども、一応この和解を受け入れた上で削除させるとか、いろいろなことを考えて努力をされていると思うんですよ。こうした問題についてもしっかりと受けとめて、そして、しっかりと著作権を保護するという観点から対応していただきたいというふうに要請だけしておきたいと思います。

 それからもう一点、これも先ほど委員から御質問が出ましたけれども、日本版のフェアユースについてお聞かせいただきたいと思います。

 文化庁もそれから文科大臣も、積極的であったんですかね、導入したいという意向が先ほど示されました。ここで、日本版フェアユースというのが一体どのようなものなのか、アメリカとは若干違うんだということであるんですが、アメリカ版のフェアユースと具体的に基本的にどこがどう違うのかということも含めて、最初にちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

高塩政府参考人 アメリカの著作権法におきますフェアユースという包括的な規定がございますけれども、アメリカにも個別の権利制限規定がないわけではございませんで、図書館での利用とか障害者の利用といった個別の権利制限に加えまして、ただ、その権利制限規定は非常に数が少のうございまして、個別の適合性について逐一定めるのではなく、フェアユースと申します包括的な規定によりましてその利用を認める、仮に権利者の方で問題があった場合には、それを裁判で明らかにする、こういったことでございます。

 アメリカは、御承知のように、我が国のような成文法系の国ではございませんで、コモンローということで、このフェアユース規定につきましては、以前から判例によって形成をされてきたという経緯がございます。これに対しまして、我が国は大陸法に基づきます成文法をとっておりまして、これまで著作権法におきましては個別に権利制限規定を置きまして、さまざまに判断をしてきたということがございます。

 確かに、我が国におきましても、フェアユース規定を置くかどうかにつきましては、先ほど申し上げましたように、今年度から文化審議会の著作権分科会の方で検討をしたいということでございますけれども、さまざまに、我が国とアメリカとはよって立つ法体系の基盤が違いますし、また、裁判によって物を解決するという土壌が必ずしも日本には育っていないというようなこともございますし、そのためにまた多額の費用がかかるというようなこともございます。また、権利者側からは、この規定が安易に利用されて権利侵害が起きやすく、そのたびに裁判を起こすのかというような懸念も示されているところでございます。

 私どもとしては、先ほど申し上げましたように、具体的に知財戦略本部の方からの御提案をいただきましたので、この問題について整理をいたした上で、さまざまな御意見を伺っていく場というものを検討していきたいというふうに考えております。

日森委員 確かにそのとおりで、法体系が違う、それから訴訟がなかなか、まあだんだん訴訟社会になっていますけれども、なじみづらいということもあるんだと思います。

 この知財制度専門調査会の報告書に対して、また日本文芸家協会で恐縮なんですが、こういうコメントを出しています。

  新しいデジタル時代に対応できる制度は「権利制限」に関する細目を整備し、法律改正を迅速にするために、利用者と権利者がワーキングチームを作り、観念的な議論ではなく、実質的・現実的な話し合いで対応できるでしょう。また法令によるだけではなく、双方の話し合いによるガイドラインを設定することで、法令に準じた慣行をつくることも可能と考えます。

というふうにコメントを出しておられるわけです。これはなかなか傾聴に値するというふうに私は思っているんですが。

 同時に、報告書に対するパブコメもやられたようです。そのパブコメではどのような意見が寄せられていたのか、そして、文科省自身が、日本版のフェアユースあるいはその導入について、このパブコメ等を見た上で、改めて、これから検討とおっしゃっていますが、どういうふうなお考えをお持ちなのか、お聞きをしたいと思います。

高塩政府参考人 知財戦略本部から伺っているところによりますと、知財本部で昨年の十一月に発表した報告書の以前に、昨年の十月三十日から十一月十七日までの間に、この日本版フェアユース導入についてのパブリックコメントを受けたということでございまして、四十五の法人と四十九の個人から意見が出されたということでございます。

 主な具体的な意見は、一方で、導入がもたらす効果を検証しつつ慎重に検討を進めるべきという意見、それから、訴訟コストの増加を含め権利者の負担が増加するのではないかという懸念などがありました。その一方で、この報告案において提案された権利制限の一般規定の導入に賛成し、また早急に改正を求める意見もあったということでございます。

 私ども文化庁の法制問題小委員会の今回の最後のまとめにおきましても、フェアユース規定につきまして今後の検討ということを示したわけでございますけれども、これにつきましても、私ども文化庁で行いましたパブリックコメントにおきましても、日本版フェアユースにつきましての御意見を幾つかいただいております。一方で、積極的に導入すべきという意見と、慎重にすべきという意見、さらには、先生からも御提案がありましたけれども、こういった制度導入について留意すべきという意見等々の具体的な提案などもございますので、こういったこれまで寄せられているさまざまな意見なども参考にいたしまして、今年度よりこのフェアユースについての検討を著作権分科会の方で行ってまいりたいというふうに考えております。

日森委員 ぜひ知恵を出して、基本的には保護ということがあるわけですので、進めていただきたいと思います。

 それから、文化庁長官の裁定制度について、現状について、先ほどちょっと関連の質問もございましたけれども、お聞きをしておきたいと思います。

 裁定制度が改正をされるわけですが、現行は、手数料が高いとか、それから手続に時間がかかる、著作権者の調査に多大な時間と費用がかかるとか、著作隣接権を有する俳優さんなどについても適用対象にならないとか、非常に使い勝手が悪いということが言われているようです。

 最初にお尋ねをしたいと思うんですが、裁定の申請件数というのは年間どれぐらいあるんでしょうか。これはもう著作権者がよくわからない、不明の場合だけあるわけですから、裁定後に著作権者が発見されちゃったなどという例はこれまであったんでしょうか。同時に、見込みがあったら、今回改正されることで申請などがどの程度増大するのか、三点あわせてお答えいただきたいと思います。

高塩政府参考人 現在の裁定制度についてのお尋ねでございますけれども、現在の著作権法で裁定制度が定められて施行されましたのは昭和四十六年でございますけれども、それ以降の件数は四十二件でございます。平均すると年に一件に満たないという状況でございますけれども、年によってばらつきがございます。

 それで、裁定後に権利者が発見されたという例は報告を受けていないということでございます。これは先ほども申し上げましたように、権利者不明の裁定制度の際には、利用者の方で相当な努力をして捜索をした後に裁定制度に来るというような制度の中で、こういった結果になっているのではないかというふうに思われているものでございます。

 今回の改正におきましては、今御紹介ございましたけれども、問題となっております、手続に時間を要する、さらには著作隣接権についての適用がないということを解消いたしまして、新たに、一点目としては、著作隣接権者の不明の場合も裁定制度を適用するということ、もう一点は、制度の要件を政令で明確化いたしまして、一定の条件のもと、裁定結果を待たずに、担保金というものを供託することによりまして利用を開始できる制度を新設するということを盛り込みまして、裁定制度の利用というものを図りたいというふうに考えているわけでございます。

 具体的にどれくらい増加するかの見込みにつきましては、隣接権の制度についてが初めてでございます。また、隣接権につきましては、関係団体の方で権利者の集中システムなどの構築が行われているということもございます。また一方で、権利者団体にそういった状況もございますので、明確な予想は困難でございますけれども、こういった制度を今回の改善を踏まえて有効に活用していただくことを私どもは期待いたしているところでございます。

日森委員 資料によりますと、レコードやCD、映画、これについては著作権等に関する権利関係が極めて明瞭であって、パソコン等への配信についてもさして問題は生じていないというふうに書かれておりました。しかし、放送番組については、製作段階においてその後の利用を含めた契約がほとんど行われてきておらず、放送事業者に権利が集約されていないため、契約ルールが成立していない分野や、団体に属していない権利者との間で権利処理が滞っているという指摘があるわけです。

 そこでお聞きをしたいんですが、なぜ放送業界においてだけ放映後等の権利関係が契約に盛り込まれてこなかったのか、その経緯、原因、これについてお聞かせいただきたいと思いますし、文科省はこのような現状についてどう対処されていくのかということについて、あわせてお聞きをしたいと思います。

高塩政府参考人 放送番組におきまして契約が進んでいないということの原因につきましては、放送に関するビジネス上の課題があるとも言われております。

 御承知のように、放送番組は一回の放送利用で利益を回収する仕組みになっておりまして、ネット配信をその後行うには、著作権使用料を含めまして新たな経費というものが必要になりまして、これに見合う収入が見込めるかどうか放送局側で判断しづらい面があるということ、それからまた、放送時の契約の際にネット配信の利用許諾までを含めるということは、なかなか放送局側の収入見込みを含めた場合に難しい場合が多くて、事後に行うことが多いということでございます。

 しかしながら、こういった状況はあるわけでございますけれども、今後はネット配信のビジネスモデルということを積極的に確立するという動きもございまして、一昨年の二月には、日本経団連を中心に出演契約のガイドラインというものが策定されまして、ネット配信を策定した契約締結を促進する取り組みというものがなされている状況がございますので、私どもとしては、こうした契約は今後多くなっていくものというふうに考えておりまして、そういった取り組みを助言や協力をしてまいりたいというふうに思っております。

日森委員 最後になりますけれども、インターネットオークションにおける画像利用円滑化というのがあるんですが、これについてお聞きをしたいと思います。

 最初にその認識をお聞きしたいんですが、インターネットオークションに限らず、販売者が官であろうが民であろうが、東京都なども税金滞納者から差し押さえたものを競売しているとかいうことにも使われているようですが、インターネットによる通信販売すべてに画像利用の円滑化が適用される、こういう理解でよろしいのかどうかということを最初にお聞きしたいと思います。

高塩政府参考人 インターネットオークションにつきましては、インターネットオークションの際に美術品や写真の取引が行われる際には、商品の説明のために画像掲載は売り主の義務として不可欠であるということから今回の改正を行うものでございまして、この改正案におきましては、美術または写真の著作物の譲渡等を適法に行うことができる者がその申し出の用に供するために行う場合であれば、販売者を官民問わず規定の対象とするものでございます。

日森委員 わかりました。

 ちょっと時間が、あと四分ほどありますが、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

岩屋委員長 以上で日森君の質疑は終わりました。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岩屋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、馳浩君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。

 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 違法なインターネット配信等による音楽・映像を違法と知りながら録音又は録画することを私的使用目的でも権利侵害とする第三十条第一項第三号の運用に当たっては、違法なインターネット配信等による音楽・映像と知らずに録音又は録画した著作物の利用者に不利益が生じないよう留意すること。

   また、本改正に便乗した不正な料金請求等による被害を防止するため、改正内容の趣旨の周知徹底に努めるとともに、レコード会社等との契約により配信される場合に表示される「識別マーク」の普及を促進すること。

 二 インターネット配信等による音楽・映像については、今後見込まれる違法配信からの私的録音録画の減少の状況を踏まえ、適正な価格形成に反映させるよう努めること。

 三 障害者のための著作物利用の円滑化に当たっては、教科用拡大図書や授業で使われる副教材の拡大写本等の作成を行うボランティア活動がこれまでに果たしてきた役割にかんがみ、その活動が支障なく一層促進されるよう努めること。

 四 著作権者不明等の場合の裁定制度及び著作権等の登録制度については、著作物等の適切な保護と円滑な流通を促進する観点から、手続の簡素化等制度の改善について検討すること。

 五 近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴う著作物等の利用形態の多様化及び著作権制度に係る動向等にかんがみ、著作権の保護を適切に行うため、著作権法の適切な見直しを進めること。

   特に、私的録音録画補償金制度及び著作権保護期間の見直しなど、著作権に係る重要課題については、国際的動向や関係団体等の意見も十分に考慮し、早期に適切な結論を得ること。

 六 国立国会図書館において電子化された資料については、図書館の果たす役割にかんがみ、その有効な活用を図ること。

 七 文化の発展に寄与する著作権保護の重要性にかんがみ、学校等における著作権教育の充実や国民に対する普及啓発活動に努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

岩屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岩屋委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。塩谷文部科学大臣。

塩谷国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意いたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

岩屋委員長 次に、内閣提出、独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩谷文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩谷国務大臣 このたび、政府から提出いたしました独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 我が国が現在直面する厳しい経済状況に対処するため、平成二十一年四月十日に政府・与党において取りまとめた経済危機対策では、中長期的な成長力を高める観点から、底力発揮・二十一世紀型インフラ整備として、先端科学技術開発、人材力強化に緊急に取り組むこととしております。

 この法律案は、このような観点から、現下の厳しい経済状況に対処するための臨時措置として、将来における我が国の経済社会の発展の基盤となる先端的な研究及び有為な研究者の海外への派遣を集中的に推進するため、平成二十一年度の一般会計補正予算により交付される補助金により、独立行政法人日本学術振興会に、先端的な研究の総合的かつ計画的な振興のための助成及び有為な研究者の海外への派遣に係る業務等に要する費用に充てるための基金を設ける等の措置を講ずるものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、独立行政法人日本学術振興会は、平成二十六年三月三十一日までの間に限り、先端的な研究の総合的かつ計画的な振興のための助成等に要する費用に充てるための先端研究助成基金を、有為な研究者の海外への派遣に係る業務等に要する費用に充てるための研究者海外派遣基金をそれぞれ設けるものとし、あわせて、これらの基金の運用方法の制限や、基金を廃止する際の残余金の処理について規定するものであります。

 第二に、文部科学大臣は、先端研究助成基金を財源として実施する業務に係る部分について、独立行政法人日本学術振興会の業務方法書や中期計画の認可等をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、総合科学技術会議の意見を聞かなければならないものとするものであります。

 第三に、先端研究助成基金及び研究者海外派遣基金を財源として実施する業務について、それぞれ特別の勘定を設けて経理しなければならないものとするものであります。

 第四に、独立行政法人日本学術振興会は、毎事業年度、先端研究助成基金及び研究者海外派遣基金を財源として実施する業務に関する報告書を作成して文部科学大臣に提出するとともに、文部科学大臣は当該報告書を国会に報告しなければならないものとするものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

岩屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十七分散会


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