衆議院

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第11号 平成21年5月22日(金曜日)

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平成二十一年五月二十二日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 岩屋  毅君

   理事 木村  勉君 理事 佐藤  錬君

   理事 馳   浩君 理事 原田 令嗣君

   理事 茂木 敏充君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    井澤 京子君

      井脇ノブ子君    浮島 敏男君

      小川 友一君    岡下 信子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      亀岡 偉民君    篠田 陽介君

      谷垣 禎一君    西本 勝子君

      萩生田光一君    平口  洋君

      松浪 健太君    松本 洋平君

      山本ともひろ君    小川 淳也君

      菊田真紀子君    田島 一成君

      土肥 隆一君    藤村  修君

      松本 大輔君    山口  壯君

      笠  浩史君    和田 隆志君

      富田 茂之君    西  博義君

      石井 郁子君    日森 文尋君

    …………………………………

   参議院議員        鈴木  寛君

   参議院議員        大島九州男君

   文部科学大臣       塩谷  立君

   内閣府副大臣       増原 義剛君

   文部科学副大臣      松野 博一君

   内閣府大臣政務官     並木 正芳君

   文部科学大臣政務官    萩生田光一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 西川 泰藏君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       泉 紳一郎君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            磯田 文雄君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十二日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     篠田 陽介君

  高井 美穂君     菊田真紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     飯島 夕雁君

  菊田真紀子君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     高井 美穂君

    ―――――――――――――

五月二十日

 私学助成の拡充・父母負担の軽減で公平な教育を実現することに関する請願(吉川貴盛君紹介)(第二四五二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)

 国公立の高等学校における教育の実質的無償化の推進及び私立の高等学校等における教育に係る負担の軽減のための高等学校等就学支援金の支給等に関する法律案(参議院提出、参法第七号)


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     ――――◇―――――

岩屋委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官西川泰藏君、文部科学省大臣官房長森口泰孝君、大臣官房文教施設企画部長布村幸彦君、初等中等教育局長金森越哉君、高等教育局長徳永保君、科学技術・学術政策局長泉紳一郎君及び研究振興局長磯田文雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本大輔君。

松本(大)委員 本日は補正予算関連法案の質疑であります。

 名前を申しおくれました。民主党の松本大輔です。

 きょうの朝刊に「世帯所得十九年ぶり低水準」という報道がありました。「一世帯当たりの平均所得額は前年比一・九%減の五百五十六万二千円、一九八八年以来十九年ぶりの低水準」ということであります。先般の新聞報道にもありましたとおり、ことし一―三、ことしの第一・四半期というべきか、昨年度の第四・四半期というべきか、GDPは戦後最悪のマイナス成長を記録している、速報値ですけれども。さらには、ことし六月までに二十万人を超える非正規雇用の方々が職を失おうとされている。

 そういう中で提出をされた補正予算として、本当にこれが生きたお金の使い方なのかどうか、そういった観点からきょうは質疑をさせていただきたい、こういうふうに思っています。

 お手元に資料を配付させていただいております。ちょっと枚数が多いですが、最初から見ていただくと、これが今回の文科省の二十一年度補正予算案の概要でありまして、四枚目の一番下に書いてありますが、総額で一兆三千百七十四億円であります。ところが、この中身、施設整備とか設備の整備とか、こういう予算がこの一兆三千億円のうちの八千億円以上を占めております。

 今の経済情勢の中で、文部科学省の補正予算として施設や設備の整備費にその大半が充てられている。こういうこの補正予算について、大臣はこれは適切であるというふうにお考えでしょうか。

塩谷国務大臣 今回の補正予算につきましては、現在の経済状況から、どうしてもその脱却を図るために、景気の底割れを防ぎ、また、将来に向かっての成長ということの観点から策定されたものととらえておりまして、我が省、今お話しございましたように、一兆三千億円に及ぶ数字になっておりますが、施設整備費、これも我々、教育の面あるいは研究開発の面でどうしても必要だし、また耐震化等、やはり子供たちが学ぶ環境をしっかりと整備することが必要であり、これがまた経済効果、また将来に向かっての成長に大変役割を果たしていくということで、今回できるだけ、むしろ今までできなかった部分も当然あります。したがって、それをしっかり早急に設備を整えることによって将来に向けての成長に役立てるということで今回この内容になったわけでございまして、そういう点では、緊急経済対策の趣旨に従った、それを十分に果たせると考えております。

松本(大)委員 景気の底割れを防ぐんだというふうにおっしゃいましたが、この一兆三千億の予算の中には、三枚目ですけれども、「(九)文化芸術の振興」、いわゆる国立の漫画、アニメ、ゲーム博物館というようなものも含まれておりますし、JSTという文科省の天下り先に七百億円を投じて、四十七都道府県に拠点を整備する。一体何の役に立つのかよくわからないようなもの、こういった箱物予算も含まれているわけです。

 私はこういう予算では景気の底割れを防ぐことはできないというふうに思いますし、先ほど大臣からは、いや、施設整備にも大事なものがあるんです、耐震化をやっていくんだというお話がありました。昨年も、昨年だったと思いますが、私も議員立法で地震防災対策特別措置法の改正をやりましたので、耐震化そのものを否定しているわけではありません。

 しかし実際には、今回のこの補正予算の一枚目をごらんいただくとわかるとおり、これは、公立小中学校、公立高等学校については「Is値〇・三未満の予算措置を完結する」、こういうことが書いてあるわけですけれども、地震防災対策特別措置法で新たに適用と範囲を拡大した幼稚園とか特別支援学校、これは入っていないんですよ。積算の基準に入っていない。これは確認しました。積算の基準に入っていないんですよ。とりわけ、災害の際に逃げおくれる可能性が高い、自分で自分の身を守ることのできない、そういう保護の要請の強い幼稚園児であるとか、あるいはさまざまな障害を抱えたチャレンジドの皆さん、こういった方々が通っていらっしゃる学校については、この積算基準に入っていないんですよ。

 これは、自治体の方がごらんになられても、小中学校や高校だけかというふうにやはり読めてしまうわけで、大臣は施設整備には大事なものがあるんだというふうにおっしゃるけれども、このままでは積算の基準に入っていないというわけですから、申請してくればそれも認めるんだというようなお話がありましたけれども、これ、積算の基準に入っていない以上は、全部が申請されてくれば、当然割を食うところが出てくる。

 こういうことをやる暇があったら、無駄な箱物整備を削ってでも耐震化に回せばいいんですよ。施設整備のすべてを私は否定しているわけではありません。しかし、今回のこの補正予算については、理念とか哲学というものが全く見受けられないということを申し上げておきたいというふうに思います。とりわけ、箱物整備への並々ならぬ情熱に比べて、人への支援、まさに文科省が本来果たさなければならない分野への手当てが非常に不十分であると私は思っております。

 四枚目、「教育費負担への支援や就職支援の充実」というところでありますが、ここはわずか六百四十六億円です。施設や設備の整備には八千億円以上かかっているけれども、教育費負担の支援にはわずか六百四十六億円ですよ。これは「高校生の授業料減免等に対する緊急支援」というふうに書いてあるわけですが、実はこれ、授業料の減免に対して新たに基金が上積みされるのは私学だけなんです。説明を伺いました。公立はこれは入っていないんですよ。公立は入っていない。もともと各都道府県でやっていたということで、今回のこの補正では措置されていない。

 しかし、大臣も御存じのように、私立学校では、昨年度だったと思いますが、アンケート調査で、五百人を超える私立の高校生が中退をしている。戦後最悪になっている。公立についても、ちょっと文科省のデータをもらいましたけれども、実は千三百人もの生徒さんが経済的理由で中退されているんです。一年間では、全体で七万人を超える高校生が中退をしている。その中でも、公立高校ですら、千三百人の高校生が経済的理由でこれは中退をされているんですよ。

 こういったことにかんがみれば、やはり我々は、参議院の方に提出しました高校無償化を初めとして、教育費負担の軽減をこそ本当は重点的にやっていかなければならない。そういうときなのに、相変わらずのサプライサイドといいますか、家計に直接支援が行き届かない不要不急の箱物予算に非常に偏っているという感が否めません。

 これは高校だけじゃありません。大学についても、これは「私立学校に対する無利子融資の創設」というふうにあるわけなんですが、国立については、同じようにこれは運営費交付金でやってくれという話なんですよ。ところが、その運営費交付金は毎年一%ずつカットされています。一%以上ずつカットされてきているんです。その中で、いや、運営費交付金を配っているんだから、その中で授業料減免とか対応してくれればいいんだという話をされている。非常に無責任であるというふうに思わざるを得ません。

 先日、新聞報道で、これは五月十七日ですけれども、「大学中退・滞納を調査 文科省 支援検討の材料に」という記事がありましたけれども、一方で運営費交付金を毎年一%ずつカットして、大学の首を絞めている。非常に財政状況を逼迫させている。その中で、調査だけやって、手当ての方の、解決策の方の担保については何ら手をつけ加えられていない。今回の補正でも措置されていない。私は、これは非常に大きな不作為であるという感がしてなりません。

 ちょっとお伺いしたいというふうに思いますけれども、今回、奨学金の貸与人員を四千人から八千人に倍増するというふうに書いてはあるわけですが、やはり、直接その授業料減免を各大学が十分にできるように、財政的な理由でためらうことのないように、運営費交付金を毎年一%ずつカットしているこの政策は直ちに見直すべきだと思われませんか、大臣。いかがですか。

塩谷国務大臣 運営費交付金につきましては、毎年一%カットということで、現在、その政策に従って予算措置をしているところでございますが、これも、基本的な問題として、今後のあり方は当然検討しなければならないという考え方でおりますが、今回の、今お話しのいわゆる授業料等の免除につきまして、交付金につきましては大学の収入と支出を算定して交付金が決まるということで、収入が減ればその分交付金で賄うということになっておりますので、直接その授業料のことが交付金にはね返って、それが運営に支障があるということはないと考えておりますので、その点は御理解いただきたいと思っております。

 また、交付金、最初に申し上げましたように、この一%の問題、今後新しい新規の考え方を今検討し始めているところでございますので、そういう中で、しっかりと安定的な運営ができるようなことで検討してまいりたいと考えております。

松本(大)委員 運営費交付金をカットして、それでも運営には支障が出ていないんだというふうにおっしゃいますが、それはその中でのやりくりを余儀なくされているだけなんですよ。つまりは、雇用が危うくなっていたり、あるいは学生に対する配慮が十分に行き届かなくなりつつある。だからこそ、文科省もこうやって中退、滞納調査をされるんじゃないんですか。言っていることとやっていらっしゃることが全く別だというふうに思わざるを得ません。

 今回、返済猶予の増加に対応した政府貸付金の増ということをやっていらっしゃいます。十億円盛り込んでいらっしゃいますが、確かに、年収要件を今の百六十万円から三百万円以下に引き上げる、そのことによって、大学を卒業した後返済を猶予されるその対象者がふえるということは私は一歩前進だというふうに思いますが、一方で、これは猶予期間は五年なんですよ。五年という返済猶予期間、この期限を満了した人が、これは文科省にいただいた資料によると、二十一年五月十一日現在で六千六百九十一人いらっしゃいます。

 きょうは、日本のあるべき科学技術政策を考えるということも一つの大きなテーマだというふうに思いますが、例えば、理系の進路選択をされて博士課程まで進まれて奨学金を受けていらっしゃる。ところが、ポスドクが一万六千人という数に上っていることに象徴されるように、出口戦略を政府が描いてこなかった。そのツケが回っているんですよ。非常に低所得の方も大勢いらっしゃる。そんな中で、返済猶予期限である五年間をもう過ぎてしまったけれども、一方で、年収三百万円未満という方もこれはいらっしゃるはずなんですね。

 ですから、こういう経済状況にかんがみて補正予算を組まれる。返済猶予のところに見直しを加える。さらには、今回はあるべき科学技術政策を議論しているわけですから、ここは大臣、この返済猶予期限の五年間についても、年収が三百万円に満たない、せっかく基準を引き上げたわけですから、緩和したわけですから、この基準に満たなければ、五年という非常に硬直的な運用をするのではなくて、そこは個々の事情に応じて弾力的にするんだ、研究に専念していただけるように、これは経済的な不安、将来不安というのを解消するべきだというふうに私は思いますが、大臣、これはいかがですか。

塩谷国務大臣 この返済猶予につきましては、今お話しありましたように、五年を限度とするという、制度的にはそのようになっているわけですが、実際には特認という形で個々の相談に応じておりますので、ここら辺を、今基準を引き上げた中でしっかりと対応してまいりたいと考えております。

 五年を何年にすればいいかという話もまたあるかもしれませんけれども、一応、五年というのは、ある程度返済ができるだろうという考え方で五年というふうに設定をしておりまして、それをまた延ばすと、そこの努力義務的な考え方もなくなってきますので、やはり五年を基準として、それ以上はまた特例的に相談に乗る、実際にはそうやって相談して、しっかりといわゆる研究に専念できるような、そんなような体制は考えていっておりますので、ぜひその点も御理解いただきたいと思います。

松本(大)委員 大臣、特認の話は私もレクのときに伺いました。しかしこれ、さらに一年というような対応なんですね。一年ごとに更新をしている。ということは、将来への不安が消えないんですよ。だから、研究にとてもではないけれども専念できるような状況ではない。不安の解消にはつながっていないわけです。

 ですから、今回補正を組まれる、八千億円をアニメ博物館を初めとした箱物や設備の整備に充てるぐらいであれば、こういうまさに人への支援ということをこそ私は考えるべきであるということを指摘しておきたいというふうに思います。

 本題に入ってまいりたいというふうに思いますが、今回の補正予算、全体で四十六の基金を設けるんだ、四兆円を超えるお金がそこに流れる、天下り先もそこに多く含まれている、こういうことは予算委員会等で何度も指摘をされてきたところであります。

 今回のこの基金の設置先として、JSPS、独立行政法人日本学術振興会が挙げられているわけでありますけれども、この日本学術振興会も、まごう方なき天下り先なんですよ。理事長は文部科学事務次官です、小野さん。それで、過去十一人の理事長がいらっしゃるんですが、これはお手元の資料にも配付させていただきましたけれども、さっきの予算が終わったページからさらに二枚めくっていただいて、「JSPSの歴代の会長及び理事長がわかる資料。」ということで文科省が提出してきた資料です。

 理事長のお名前がずっと書いてあるわけですけれども、上から三番目の天城さん、元文部事務次官、二つ下の木田さん、元文部事務次官、さらに三つ下の大崎さん、元文化庁長官、二つ下の佐藤さん、文部事務次官、その次、今の小野さん、この方も文部科学事務次官ということで、これはずっと、特に旧文部省の事務次官または文化庁長官の天下り先として運営がされてきているんです。

 これは今理事が二名いらっしゃると思いますが、この理事についても、文科省の出向、天下りがあるんじゃないですか。確認させてください。

磯田政府参考人 現在、理事が二名おりますが、その構成は、文部科学省からの出向者一名、研究者一名でございます。

松本(大)委員 理事長の報酬も千八百七十二万円、理事も千四百万から千五百万という水準でありまして、今、理事二名のうちの一名が文科省からの出向だという話でしたが、この方だけじゃないんです。その前の前任の方も文化庁文化財部長、その前の方も文部省大臣官房付ということで、理事ポストのうちの少なくとも一つは、これはずっと文科省からの出向なんですよ。これは理事長と理事だけじゃないんです。

 お手元の資料にも配っていると思います。もう一枚めくっていただくと、これは部と課の組織図が挙げてあるわけですけれども、この部長ポスト、課長ポストについての文科省からの出向状況はどうですか。

磯田政府参考人 部長三名のうち、文部科学省からの出向者数は三名でございます。課長につきましては、十五名中十一名でございます。

松本(大)委員 お手元の資料を一枚おめくりいただくと、その表が書いてあります。

 要するに、部長ポストが三つあるんですが、それは三つとも文科省からの出向です。課長ポストが十五ポストあるわけですが、そのうち十一が文科省のポスト。計十八ある部課長ポストのうちのつまりは十四が文科省の出向なんですよ。これは部課長だけじゃなくて、職員さんにも出向者が九十人中十八人を占めているという状況でありまして、これはまさに文科省丸抱えの、ずぶずぶの天下り先なんです。

 予算も、これはJSPS自身の資料に書いてありますが、全予算額の九九・八%が国からの運営費交付金及び補助金ということでありまして、大臣、こういう文科省と実質同一体のような先の一体どこが独立行政法人なんですか。

塩谷国務大臣 日本学術振興会においては、今お話しございましたように、文部省の事務次官からの理事長就任あるいは職員の採用があるわけでございますが、基本的に、研究者、大学等の信頼関係を構築して、やはり公平な立場で研究開発をやっていく、そして、特に科学研究費補助金の配分等を専門的にやっていく機関として、独立した行政法人としてふさわしいということでこういう体制になっているわけでございます。

 したがって、我が国の科学技術研究開発につきましては、専門的な機関としてこういう位置づけになっているということで、百八人の職員がいるわけですが、それを五千五百人の審査委員等のいろいろな配分等、仕事としてはしっかり私どもやっていると認識をしているところでございます。

松本(大)委員 これは専門的にやっているとおっしゃいますが、もう一枚資料をめくっていただくと、これは、実際に科研費の審査がどういうふうに行われているかが書いてあるんですね。

 要するにこのJSPSがやっているのは、審査委員の選任なんですよ。外部の大学の先生とか研究者にピアレビューを依頼して、その審査自体は要するに丸投げしているんです。外注している。アメリカのNSFとは全然違うんですよ。その結果を受けて、最後の白四角のところの「交付内定、決定」をやっているだけなんです。つまり、間の専門的な審査業務というのは全部外に出しちゃっているんですよ。それで、部課長ポストはほとんど文科省で占められている。

 これであれば、文科省自身が従来科研費の交付をやっていたんですから、この独法については、これはもう統廃合というか、考えなきゃいけないはずですよ。存在意義をもう既に見失っている。この不景気の中、二万六千人の官僚OBが四千七百の天下り団体に天下っていて、十二兆六千億円、つまり、消費税五%相当の税金が垂れ流されているんですよ。

 こういう中にあって、このJSPSについては、地域、学歴を勘案しても、その給与水準は国家公務員よりむしろ高い。一〇四・七。つまり外注する意味はないんですね。しかも、かねてから、行政減量・効率化有識者会議という、これは小泉さんのころでありますけれども、このころにも、旧科技庁の天下り先である科学技術振興機構、JSTと統合すべきだというふうに言っているわけですが、文科省側の説明は困難との説明であるが、その理由が明らかでなく、引き続き検討が必要と指摘されているじゃないですか。

 大臣、この統合の話、あるいはもう廃止するんだという話、麻生内閣になって全然進んでいないんじゃないですか。どうなっているんですか。

塩谷国務大臣 学術振興会と科学技術振興機構との統合ということでございますが、これについては、それぞれの役割がありまして、どちらかというと、JSTはかなり一貫した産業化までの支援も含めてやっているということで、規模も大分違います。したがって、その役割をそれぞれが果たしているという観点で今両者が協力し合って、科学技術振興、学術振興に寄与していると考えておりますので、当然ながら、例えば指摘されたのは、ワシントンでの事務所の統合、これは正直なところ、今はまだ現実なものになっていませんが、これをぜひまずはやっていこうということで、今両者で検討しているところでございます。

 そういった効率化等も含めてこれからしっかりと改善していく、そして役割を果たしてまいりたいと考えております。

松本(大)委員 それぞれの役割があるんだ、JSTは産業化までの支援だというお話でありました。学術と科学技術、そんな役割分担をしてきたんだ、アカデミーと、政策的な要請に基づいた産業化を見据えた技術支援だ、役割分担だとおっしゃっているんですが、今回のこの改正案を見る限り、その説明はもう成り立たなくなったというふうに私は思っているんですよ。学術というようなみずからが掲げてきたにしきの御旗すら、欲に目がくらんでもうおろしてしまったというのが今回の法案だというふうに私は思っています。

 世界最先端研究支援強化プログラムというものでありますけれども、お手元の資料、六枚目、「世界最先端研究支援強化プログラム」、これは役所からもらったいわゆるポンチ絵です。内閣府、文科省というものですが、「(仮称)」「五年間で三十課題程度」とあります。大臣、これはなぜ三十課題なんですか。

並木大臣政務官 総合科学技術政策を担当しています、内閣府大臣政務官の並木でございます。そちらの方からのお答えを申し上げます。

 なぜ三十課題なのかということでございますけれども、これまでに、御存じのとおり、総合科学技術会議というものが中心になってまとめてきた。その中で、世界のトップレベル、他の追随を許さないというようなものが、革新的技術戦略という中で二十三ぐらいあります。そして、低炭素社会実現、今世界的課題でありますけれども、こういったところでの、日本が持ちますまさに環境エネルギー技術の革新計画、こういう中での技術が三十六ぐらい。あるいは、第三期の科学技術基本計画の一環で選ばれました戦略重点科学技術というものが六十二ということで、今のを合計しますと百二十一ここであるわけですけれども、これを、三年から五年というところで世界をリードする研究成果を上げ得る技術課題として考えた場合には、三十課題程度が想定できるというふうにして三十ということにさせていただきました。

 具体的には、今後とも総合科学技術会議のもとで設けられます会議におきまして吟味していきますので、必ずしも三十になるかどうかということでは、フレキシブルな選択になってくるかと思います。

松本(大)委員 革新的技術が二十三個、低炭素を初めとした分野で三十六、第三期科学技術基本計画の戦略重点課題が六十二、合計百二十一、この中で三年から五年で世界をリードする課題としては三十程度かなという御説明でしたが、それは後づけの理屈だというふうに私は思っているんです。

 お手元の資料のポンチ絵から一枚戻っていただいて、これは、二〇〇九年四月六日に社団法人日本経済団体連合会産業技術委員会が出している提言であります。「「世界最先端研究支援強化プログラム」(仮称)の創設について」とあります。

 一枚進んでいただいたさっきのポンチ絵には、四月十日に決定された経済危機対策を踏まえてこの世界最先端研究支援強化プログラムというふうになっているわけですが、大臣、これは物すごく違和感ありませんか。お二人から答弁していただいて結構です。

塩谷国務大臣 今回新しく改正をして、世界最先端支援のプログラムにつきましては、経済の緊急対策として三月の後半からそういう状況が考えられ、そして官邸でもいろいろな百人近くの人たちの意見を聞き、今回、先ほど言いましたように、景気の底割れを防ぐ、そして、将来に向かって成長を期待されるところへの投資ということで、さまざまな意見の中で考えられてきたわけでございまして、日本経済団体連合会のそういった話もあり、それがまた最終的な決定にどう影響したかは具体的にはわかりませんが、いろいろな総合的な判断で今回の新しいプログラムができたと思っておりますし、むしろどちらかというと、今回は基金を中心とした予算措置が多いわけですが、ある程度、今までになかった仕組みで、特に総理は、そういう点で新しい成長あるいは新しい枠組みで支援をしようという、そういう観点が多く出ていると思います。

 したがって、今回の世界最先端支援のこのプログラムについても、やはり、将来国際競争力をしっかりと伸ばしていく、そして、今までの政策にさらに世界のトップを目指すというようなことで考えられた枠組みでございますので、その点は、日本経団連の考え方等そういったところの話も、先ほど申し上げましたように、いろいろな意見を聞く中で出てきた話だと受けとめております。

並木大臣政務官 今大臣がお答えしたような内容でもありますけれども、もともと、総合科学技術会議におきまして効果的に研究開発を進めていく上では、多年度にわたる自由度の高い資金が必要である、あるいは研究者等が、いろいろな申請、単年度ごとに事務が煩雑で研究に没頭できない、そういった点では、まさに研究に専念できるようなそういうシステム、環境が必要、こういうところがもともと議論のベースで、この世界最先端研究支援強化プログラム、こういうのができ上がっているところであります。

 御案内のとおり、最近になりまして、三月十八日ですか、これは、総理が例の百人会議ということで有識者会議をつくられましたけれども、この中には当然、百人ということで、経団連の産業技術委員長で、総合科学技術会議の有識者議員でもあります榊原さんという方が含まれておりまして、その方から、科学技術の一層強力な推進を求める、こういう意見をいただいております。

 これを踏まえて野田大臣の方から我々科技部局に、こうしたシステムをきちっとつくるように、こういう御指示がありまして、そのまたつくっていく中では、先生御指摘の四月六日付のこの経団連の産学官協働による研究支援プログラムの創設、こういう提言を当然参考にはさせていただいてこのプログラム案を作成させていただいた。こういうところがいきさつでありまして、先にこれがすべてありきということではありません。

松本(大)委員 いろいろと言いわけされていましたが、丸写しじゃないですか。経団連のこの世界最先端研究支援強化プログラム、名前まで同じじゃないですか。二の「予算規模」のところを見てくださいよ。「例えば、数百億円規模×三十課題程度」と、これは三十課題程度と出ているじゃないですか。丸写しですよ。いや、答弁を求めていません。ビデオで見ていらっしゃる方は、今の説明でこれは到底納得しませんよ。研究に没頭できるように自由度を高めるというのはわかりますけれども、基金の形にするということは、それだけこれは国会の関与が薄くなるということなんですよ。しかも、この基金の設置先は独法ですから、国じゃないわけですからね。

 だから、この現下の厳しい経済情勢の中で税金の使い方については我々はとりわけ厳しい目を光らせていかなきゃいけないときに、経団連の意向丸写しの三十課題程度だというようなものを出されてきて、何にするかは、麻生さんいわく、何かどうも私が決めさせていただくということをおっしゃっていますけれども、これは、私が決めた結果がアニメ博物館なんですよ。

 だから、経団連の意向を丸々のんで、あとはこれは総合科学技術会議の議長の麻生さんに決定権があるなんてやっていたら、それで、何に使うかはわからないけれども、とりあえず予算の総額だけ国会で認めてくれなんてやっていたら、国会審議の意味がなくなっちゃうんです。

 今回、これは国会報告になっていますけれども、大臣から、これは今何に使うかわからないし、こんな経団連の意向丸のみのプログラムについては、基金の創設については、柔軟性を高める、弾力的運用に資するということはわかりますが、これは国会での承認事項にすべきだと私は思います。報告ではだめです。これは実際に三十課題程度になっちゃったのかどうか、意向を丸々受けたものになっちゃったのかどうか。

 世界がハイリスク研究なんかを見直している。これは科学技術白書にも書いてあるじゃないですか。「ハイリスクでハイリワードを目指す研究等への様々な検討・試行が実施されている。米国競争力法及び中国進歩法において」もと書いてあるんです。特定の分野に偏ると、これは多様性の芽を摘むんです。将来の飯の種も摘むんですよ。科学技術政策のポートフォリオからいっても、これは間違っているというふうに思わざるを得ません。

 その意味で、今回のこの法案については、これは国会の報告事項じゃだめです。国会の決算としてこれは承認事項にしていただきたいというふうに思いますが、大臣、どうですか。

並木大臣政務官 短くあれですけれども、時系列的には、当然榊原さんは会議の方にも出ていただいていますけれども、先に会議の取りまとめがあって、そうした中で、その後というか、経団連もまとめていただいているということですから、経団連のをそのまま写したという表現は誤解ということで、ちょっと認識を改めていただければというふうに思います。

松本(大)委員 これは、四月十日の閣議決定を受けて、要するに経済危機対策を踏まえてこの法案が出てきたわけでしょう。この四月十日の前に経団連が出しているわけじゃないですか。

 しかもこれ、提言には続きがあるんですよ。閣議決定の後に、有識者会議の半数を産業界出身者とするというようなこういう提言まで行っているんです。ステアリング委員会というのをつくるべきだ、こういうような提言も行っている。これは絶対決算事項にすべきだというふうに思いますし、それから、もう一つのこの海外派遣、研究者派遣……

岩屋委員長 松本君、簡潔に願います。

松本(大)委員 はい、あと一問にします。

 これ、そもそも基金でやる意味は全くありません。基金でやるべきじゃない。しかも、海外派遣が本当に必要なら、運営費交付金や私学助成の形で戻してやって、あるべき研究者の人材養成についてはその機関にゆだねるべきですよ。海外派遣、これは何で一律、しかも一カ月のものも含まれていると聞きましたよ。どこが武者修行なんですか。これは初めてのお使いになっちゃうじゃないですか。こんなもので若手の研究者の育成というのは到底おぼつかないというふうに思いますが、大臣、どうですか。

岩屋委員長 塩谷文部科学大臣、時間が参っておりますので簡潔に願います。

塩谷国務大臣 いろいろ話をしたいんですが、先ほどの経団連との関係は、並木政務官が話をしたように、やはり、いろいろな意見を聞く中で経団連でもそういう意見があって、まとめて、ある面では正直応援してもらった面もあると思っておりますが、考え方としては、もともと政府内で考えであったわけでございまして、その点はぜひ御理解いただきたい。

 それから海外派遣の問題、これは一番我々が憂慮しているのは、本当に今若い人たちがあるいは研究者が出なくなったということ、そして研究者にしても、いい海外での研究場所があっても、そこへ行って帰ってきてポストがなくなるような心配があって、なかなか出ないのが現実なんです。

 これを、何とかまずは出る、癖をつけると言うとおかしいですが、そういう機会をふやして、いろいろな武者修行も含めてしっかりと国際社会の中でもまれてくることを一つきっかけにしていかなければならないという考え方で、制度として余り毎年のことで決められたものより、短期的に今回基金でやってそのきっかけをつくろうということでございまして、もちろん、今後運営費交付金の中でも考えなければならないこともあるでしょうし、今回は、緊急経済対策で将来に向かっての一つのきっかけということで、我々若手の研究者等がぜひ海外に多くまずは出ていくこと、これを目指して今回計画したわけでございまして、そういう点を御理解いただきたいと思います。

松本(大)委員 そもそも、運営費交付金をカットして不安を高めている、これをこそまずは手をつけるべきである。ポストがないという話をされていましたけれども、その元凶がどこにあるのか、しっかりと見直していただきたい。

 これでは科学技術政策としては到底認められないということを私は指摘して、質問を終わります。

岩屋委員長 以上で松本君の質疑は終了いたしました。

 次に、和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。松本委員に続きまして質疑させていただきます。

 きょうは文部科学委員会でございますが、内閣府から増原副大臣にいらっしゃっていただいております。よろしくお願いいたします。

 あらかじめ時間的制約がおありだとお聞きしておりますので、増原副大臣に優先的に御質疑させていただき、その後、文部科学大臣の方にその御感想も含めてお伺いしてまいりたいと思います。

 先ほどの松本委員の質疑をお伺いしておりまして、私自身、民主党の一員として今回の法案に接しまして、ある程度我が党のスタンスをもう一度確認しながら進めていった方がよろしいのかなというふうに思った次第です。

 まず、文部科学大臣、内閣府副大臣、我が党としましても、科学技術の振興、また最先端の研究開発、こうしたものを日本として今までより一層進めていかなければいけないというスタンスは共通しております。そういった意味において、この趣旨を政府や与党に対して御協力する意欲は多大にございます。

 しかし、今までそうしたものも大分叫ばれてきて現在に至っておりまして、事この緊急経済対策を組むのに当たりまして、何ゆえまたこのようなスキームを組むのであろうかというところに松本委員の質疑が集中していたように思うわけでございます。

 そうした意味におきまして、いわゆる日本の最先端の研究開発予算、また若手の研究者の育成、こうしたものについて、政府・与党に対しては苦言になりますけれども、やはり今まで諸外国に比べて余りにも規模が小さかったのであろうということは与野党を含めて真摯に受けとめまして、これから先の予算編成上最も重点を置かなければいけないという共通認識を持って進めるべきだというふうに考えながら質疑させていただきたいと思います。

 その点におきまして、少し歴史的な経緯を振り返ってみたいと思うんですけれども、私どももある程度趣旨には賛同しながら歴史は動いてきたと思っておりますが、例えば、ずっと十数年前に議員立法によりまして科学技術基本法が成立いたしました。その後、いわゆる科学技術の基本計画が策定されて、もう関係大臣でいらっしゃいますからよく御存じだと思いますが、今、第三期、いわゆる最終期の最後の二年目を行っているということでございます。平成二十二年度にはこの計画を一たん終了するということになりますが、そういったフェーズの中で、本来我々としてどのような予算編成をしなければいけないのかという点でございます。

 私、今回、補正予算案を財務省から取り寄せましていろいろずらっと一覧しましたときに、非常に気になった点が二つほどございます。この点について、増原副大臣も役所の先輩でいらっしゃいますので、恐らくは現役時代、相当問題意識を持っていらっしゃったと思うんですが、お伺いしてまいりたいと思います。

 まず、こういった本予算、補正予算を組んでいく際に、本当にある程度中長期的に取り組まなければいけない課題について補正予算でどの程度措置すべきなんだろうか。本来ならば、本予算の本当の予算枠としてきっちりと確保した上で、それでも本当に足りないというときに補正予算で措置すべきではなかろうかというふうに思っています。これがまず第一点目です。

 次に、今回、補正予算案としてこの学術振興会という独立行政法人を使うことになっています。この独法の所管として増原副大臣にきょうおいでいただいたようなものでございますけれども、独法の法律を策定する際、私も若干携わらせていただきましたけれども、増原副大臣も独立行政法人通則法というのは恐らく御一覧されていると思います。そこを一部紹介いたしたいと思います。

 独法の通則法上、第二条に定めてありますが、この独立行政法人というのは、まず、当然のことですが、「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、」ここから先が非常に私が取り上げたいところでございますが、「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、」云々、それで定める法人というふうに定義してございます。御存じのとおりです。

 そうした場合、今回の補正予算で審議しようとしておりますこの最先端の研究開発や若手研究者の派遣事業、こうしたものをまず独法である学術振興会に予算措置するということは国の機関ではできないということを把握した上で、その上でやるべきことであろうというふうに思っているわけでございます。

 よく言われることは、この補正予算案の審議の際、我が党から随時指摘しておりますけれども、基金を設けることの不透明になりかねないことだとか、そういったことが逆に裏返しとなりまして、本省予算では数年間にわたる多年度予算がなかなか組めない事情があるということは重々承知いたしております。しかし、きょうせっかく、財務当局にもいらっしゃった増原副大臣にいらっしゃっていただいているわけでございますので、決して技術上不可能ではございません。

 そういったことを含めて考えたときに、一つ答えとしていただきたいのは、なぜ国の機関ではなくて独立行政法人に今回の補正予算としていろいろな事業を組んでいるのか、これについてお答えいただけますでしょうか。

増原副大臣 和田委員の御質問にお答えします。

 私は、自民党の中の行政改革推進本部、そちらの方でこの独法関係、いろいろやってまいりました。民主党のマニフェストにあるように、百余りの独法を全部廃止して三兆八千億円を別の財源にするというような、そういう乱暴なことは申し上げませんが、いろいろな意味でやはり、日々これは見直し、整理統合していくものはそうしていくという必要はあるのであろうと思っております。

 ただ、この独法をつくるときに、これは和田委員も既に御承知のように、イギリスのエージェンシーの制度を大体念頭に置いてつくってきたものであります。要は、本省というところは企画立案を中心にやっていくということであります。そして、いわゆる執行については、まさに独立行政法人に任せて、人件費、物件費などの区分を余りしないで、予算の枠内で最も効率的に執行してもらうということだと思っております。

 ここで、「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもの」というところの中には、今申し上げました企画立案以外だけではなくて、例えば公権力の行使といったものも入るのだろうと思います。したがって、独法では余りそういったものは入れ込んでいない形で、いわゆる執行面、国税庁とは違うということなんだろうと思っております。

 このたび補正予算でこういうものを入れることになりましたのは、要は総理が言われております成長戦略でありまして、全治三年というふうに総理は言われておりますけれども、世界同時不況のトンネルを抜けた後の日本は一体どうなっているんだ、まさにそこでも隆として貿易立国として、あるいは力強い成長力を持って日本があるためにはどうしたらいいか、この危機感が根底にあると私は思っておりまして、これをしっかり裏打ちしていこう。

 これまでの、どちらかといえば単年度主義とか各省庁ごとの縦割り主義とかいろいろあります。あるいは、事務について、こういう研究開発でもいろいろな、膨大な資料を出さなくてはいかぬとかあるんだろうと思います。そういったものをこの際打破して、思い切って三年ないし五年というような形の基金をつくってやっていく。これは明らかに、成長戦略の中の、世界同時不況というトンネルを抜けた後の日本をどう考えるかというふうな観点から、総理の指示に基づいてつくられているものというふうに考えております。

 なぜ独立行政法人かということでありますが、要は、企画立案は本省でやっていく、あるいは内閣でやっていく。執行面であります。では、このために何か新しい執行機関をつくるのか、あるいはいわゆる本省の方にそういうものを増員してやっていくのかということになりますと、この財政厳しき折、行政改革の折、なかなか難しいというところから、既存の独法の中でどこが最も適当かという観点から、日本学術振興会の方にやってもらうということになったものと私は理解しております。

和田委員 今の増原副大臣の御答弁を聞いておりまして、恐らく考え方の違いがあるように思ってお聞きしました。

 まず、科学技術の振興に対して、この十数年間、政府は、内閣一体となって取り組む必要があるからこそ総合科学技術会議をつくられたわけでございます。そして、文部科学省はある程度その一端を担っているという認識で動いていらっしゃると思うんですけれども、今回いみじくもこういった措置を講じられるということは、学術振興会に一たん予算配分した上で、形上は学術振興会の判断によって研究事業を決められるという形を組むわけですよね。そのときに総合科学技術会議が入ってきて選定するんだという説明をいただいておりますけれども、どうしてそのようなまどろっこしい仕組みをつくらなければいけないのかという点なんでございます。

 素直に総合科学技術会議が予算を持って、その予算の実行機関として学術振興会を選べばよろしいのであって、なぜ、学術振興会に一たん予算配分をした上で、それをまた総合科学技術会議が出ていって選定しなければいけないのか。この部分についてお答えいただけますでしょうか。

増原副大臣 ただいまの御指摘、これは表から見るか裏から見るかというような面もあろうと思いますが、要は、学術振興会、ここが、はっきり言えば庶務ですね、そういうものをしっかりやるということだと思います。実質的には、先ほど申し上げたこれまでの単年度主義とか縦割りとか、そういったものを超えたものを総合科学技術会議のもとに置かれる有識者会議でもって大胆に決めていこうということでありまして、ある意味では振興会の方は庶務をやる、私はそのように考えております。

和田委員 増原副大臣、庶務をやるということに徹底していただけるのであれば、先ほど申し上げたとおり、予算配分の相手先は、本来、学術振興会でないべきでございます。庶務をやるということであれば、委託すればいいわけであって、国の役所から、その役所で予算を持って、その庶務を分担せよということで、その分だけお金を払えばよろしいというふうに私は素直に、予算担当者として経験を積んできたところで思うわけでございます。

 この点、恐らくいろいろ問題意識はお持ちだと思いますので、政府・与党の中でその問題意識をぜひ解決の方向に導いていっていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、時間が迫っておりますので、独立行政法人の実態について増原副大臣はどのようにお考えかということをお聞きしたいんです。

 私自身、役所の経験の中で、ちょっと分野は違うのでございますが、副大臣はよく御存じのとおり、産業投資特別会計というのを財務省で持っておりまして、その特別会計から、今は独立行政法人となったいろいろな機関に研究開発資金を投資いたしておりました。

 実は、独法の通則法を定めるとき、それから独立行政法人化していくときに、これらの機関の今までやってきたことを総括すべき立場に立ちました。その際に、内閣府の方にもいろいろお問い合わせしましたけれども、正直申し上げて、今おっしゃっておられた総合科学技術会議、こうした部署においてその研究成果をどのように評価しているかというふうに問い合わせても答えが返ってこない。それはそれぞれの機関がやっていらっしゃることですというお答えが返ってくる。そして、実際にその機関にお問い合わせしてみると、その研究はもう十数年、二十数年続いているけれども、その成果は一向に上がらないで毀損する状態ばかりが続いている。

 私、担当者だったんですけれども、そのときに、じゃ、この結果を受けてどうするんだということをそれぞれの当事者とさんざん議論させていただきましたが、結局この研究は、恐らくこれから続けていくと五年、十年先にはどこかで日の目を見ることがあるんですという、本当にとても国民の皆様方にお見せできないような説明をした上で独立行政法人化したわけでございます。

 私のそうした経験と思い出があるだけに、今、学術振興会を庶務だけにお使いになると宣言されておられましたけれども、実際のところは、予算が学術振興会に行き、選定する権限が総合科学技術会議にあるままでは、どちらもが結局無責任なまま過ごすことになるのではないかという危惧が非常に高いわけでございます。

 そうした意味におきまして、独立行政法人を所管していらっしゃる増原副大臣として、今の独立行政法人の実態をこのままの状態で、今おっしゃったような庶務さえ任せられるんだろうかというふうに私としては思うわけでございますが、いかがでしょうか。

増原副大臣 和田委員の御懸念、私もある程度わかるところはございます。しかし一方において、新たな組織をつくってやるのかどうかという議論にもこれは直結する話になります。既存の独法で対応できないか、では対応させるとした場合はどこが一体適当か、こういう判断だろうと思います。

 法制的には協議という形になっております。文部科学大臣が関係大臣に対して協議をするという形になっておりますが、その意味するところは、総合科学技術会議のもとに置かれる有識者会議で実質的にプランはしていく、決定はしていくということになるんだろうと私は思っております。

 それがうまくいくかどうかという御懸念、これはあろうと思います。それはしっかりウオッチをしていかなくてはいけない。そういう意味で、私の上司であります野田大臣にも、あるいは総理にもそのような御意見があったことは申し伝えておきます。

和田委員 副大臣として真摯なる御答弁をいただいたと思っております。ぜひ、これから先の改善策を講じていただきますようよろしくお願いします。

 お伺いしておりました時間でございますので、私としては御退室いただいて結構でございます。委員長、よろしいでしょうか。

岩屋委員長 はい。

和田委員 それでは、ありがとうございました。

 これから先は、文部科学大臣の方にお伺いしてまいりたいと思います。

 今、増原副大臣といろいろやりとりさせていただきましたが、この独立行政法人というものが今回の補正予算の予算配分対象者になっていること、それらについての問題意識を先ほど述べてきたわけでございますが、裏っ返した御質問になります。今回、文部科学大臣として、この最先端の研究事業や若手の派遣事業をなぜ文部科学省本省ではやれないんでしょうか。これについてお答えいただけますでしょうか。

塩谷国務大臣 今回の新しい最先端研究支援強化プログラムにつきましては、先ほど来、将来に向けての成長戦略としての科学技術の振興、そして科学技術については、和田委員お話ございましたように、科学技術基本計画に基づいて、今回第三期目ということでございます。

 そういった一連の流れがある中で、新たな仕組みといいますか、新しい最先端の研究支援ということで、今回、特に研究者に焦点を当て、また三年から五年という多年度にわたって行うということでございまして、いろいろな考え方があったんですが、そこを科学技術会議ともちろん我々文科省、さらには、基金という形でやる以上、その専門的な機関としては日本学術振興会が今までもそういう役割を担ってきたという経験もありますので、そういったところを総合して今回の仕組みになったわけでございます。もちろん文部科学省独自でということを、ただ、役所としては企画立案ということで、実施については独立行政法人がという仕組みがありますので、そういう点ではそれに従ったところもあります。

 したがって、今後どういう形でまた新たな研究体制を整えるかということの中で、いろいろな方法が考えられるわけですが、いずれにしましても、今までの一つの科学技術の政策の推進の中で、あるいは、それにない新しい形として今回のいわゆる支援プログラムができたわけでございますから、もちろん文部科学省ができないのかということに対しては、今までどちらかというと実行部隊は独立行政法人だという考え方に基づいてやっておりますので、その考えに基づいて今回の形になったわけでございます。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

和田委員 今の御答弁も増原副大臣の御答弁とほぼ同趣旨なんでございますが、とどのつまり、私がこの件で諸外国に調査出張させていただいたときに実感したことでございますが、日本の場合、ともすると、企画立案は役所でという文言はございますけれども、実際の企画立案をできるスタッフの配置が本省に行われていないのではないかという危惧がしてならないわけでございます。諸外国、私が訪れたところで目の当たりにしたのは、どちらかというと、それぞれの役所に専門家がきちっと職員として配置されていて、そうした見識を活用しながら予算配分、予算要求を行っていくというやり方をとっているようでございます。

 それは、日本の場合これが悪いというふうに申し上げるつもりはございませんが、少なくとも今までの独立行政法人と、今回世間で大きな問題になっておりますが、公益法人など、こうしたものに幾らかなりとも権限と予算を渡していった先でどんなことが起きているかということを考えた場合に、もう一度自分たちの領域の中でしっかりと予算と内容について詰めていけるだけの人材配置を行うよう努力すべきではないかという問題意識を持っているわけでございます。

 ですから、本来そういったものこそそれぞれの役所がある程度中長期的に人材配置上考えていくべきテーマであって、それをおざなりにしたまま、毎年毎年補正予算では、いや、本省では体制が整っていないから外に出すんですと。今増原副大臣は庶務とおっしゃっておりましたが、実際には、本省の中でも企画立案が私から見るに十分できておらず、結果的に予算を渡されたところが全部一任された状態でやっているところが山ほどございます。漢検の場合だってほとんど同じことではないでしょうか。こうしたことをいろいろ世間の皆様方は見ていらっしゃるように思うんです。

 そうした観点から、今回補正予算の編成をするときに、ここまで外部の機関にいろいろなものを出していいのだろうか。独立行政法人という概念を見ても、本来あれを定めたときには、ある程度行政から独立して中長期的な目標を達成させるためにできている法人でございます。今回、景気対策はまさに国の対策でございます。国の方針を実施する機関として使う方向に逆戻りするということになっているんだろうか、そうした疑念が世の中で勉強されている方々に巻き起こっているように思いますが、これに対して、本件を担当される文部科学大臣、お答えいただけますでしょうか。

塩谷国務大臣 ただいまの和田委員の問題意識は、ある程度私どもも常に考えていかなければならない課題だと思っておりますし、独立行政法人を設置した考え方、あるいは、そうやって実際にどうかというと、全部本省でやった方がいいのではないかという今の考え方、さまざまあるわけでございまして、ある程度中長期的に検討課題として今後検討していくことが必要だと思っております。行革等の観点からも、いろいろと、例えば国立大学法人の話もありますし、運営費交付金の話も先ほど出てきたわけでして、今後どういう方向でいくかというのは、改めて、また常に将来に向かって改善の方向で考えていく必要がある。

 諸外国の例から比べると、いかにも予算が小さいとかスタッフも少ないという話がよくあります。これはどこまで膨らませていけるのかというのは、現実問題、なかなか現状の路線の中では難しいことも多分よくわかっていただいていると思いますので、そういう中で、今回は緊急的な一つの方向性を持った成長戦略としてのあり方として、科学技術政策の中で今までできなかった方向で一つ踏み出したという点でぜひ評価をいただきたいと考えております。

和田委員 今大臣に御答弁いただいたところは、私としてもある程度評価はいたしております。大きな概念で言えば、科学技術振興のためにここまで大枠をとろうとしてその結果実ったという意味におきましては、私どももそうした趣旨を共有できるというふうに思っています。先ほど来何度も申し上げておりますが、その実施体制がまだまだ問題であるというふうに思っているわけでございます。今御検討いただけるような趣旨の御答弁でございましたので、ここから先、それを見守りたいと思います。

 次に進みたいと思いますが、そういう過程をたどる中で国としてどうすべきかという点について、幾つか質疑させていただきたいと思います。

 今回こういった予算配分を行うことによって、数年先、多くは五年先だと思いますが、それぐらい先には何らかの研究の結果が出てくるわけでございます。そのときに、今申し上げた問題意識をある程度国民の皆様方に御理解いただけるよう努力しているということを示すためには、渡しちゃったら渡しっきりということだけでは済まないように思うわけでございます。

 質疑項目として挙げさせていただきましたけれども、もう少し、実際に進捗過程の中にあって、どこかどこかで節目を設けながら、その当該研究、選定された研究がどのような状況になっているのか、もしくはどんなものに使っているのか、さらに、想定される成果は今どのような状況になっているかということをきちっとこの国会に御報告いただくぐらいのことをやったらどうかと思うのでございますが、この点について今大臣がお考えになっている施策はどんなものでしょうか。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

塩谷国務大臣 今お話しいただいたとおり、私どもとしても、その成果をしっかり公表していく、あるいは私から国会に報告する等の措置をしていかなければならないと考えております。また、具体的に、例えば三年間あるいは五年間という計画等が多分出てくると思いますので、それに基づいて節目節目で報告することが必要だと考えております。

和田委員 私ども、それをしっかり見守りながら、今回の予算措置が正しいものなのかどうかということをチェックできるようにしてまいりたいと考えています。

 もう幾つかございますけれども、今度は、研究がとにかく一たん終了したといったときに、何らかの研究の成果物が出てまいるわけでございます。この件については、非常に、それをどう扱うかというのは諸外国でもいろいろ議論になっているところなんでございますが、今のところ、事務方からお伺いしているところでは、今回研究開発を実施してもらうことになった機関の側にその成果物の所有権が行くんです、このような説明をいただいております。それでいいのかということをお問い合わせしたいんです。

 確かに、実際に研究した当事者でございますので、その方に所有権が行くということを真っ向から否定するつもりはございませんが、今この研究は何のためにやるのかというと、国の施策として、しかも緊急経済対策として、将来の国の成長力を何とかして上げるための研究を行っていくわけでございます。そうだとすれば、その研究の結果が出たときに、その成果物、いわゆる特許権のような概念も含むわけでございますが、そうしたものは広く国民の皆様方、実質的にはいろいろな企業の皆様方になるのかもわかりません、その権利というものは国民みんなで共有すべきではないかと思うんですが、この点について大臣はいかがお考えでしょうか。

塩谷国務大臣 今回、支援プログラムによって、その終了した時点で、成果が出てきた段階でしっかりとまず評価をすることが大事だと思っておりまして、それにつきましては、総合科学技術会議にて厳正な評価がなされると考えております。

 その成果物の帰属については、過去においてもいろいろな議論がされた中で、やはり機関に属するということが正しいあり方であろうということで、特に、国の知的財産戦略会議が策定した知財戦略大綱においては機関に属するようにということになっておりまして、基本的にはそういう考え方でありますが、広く国民に還元されるという点では、今後、新たな仕組み、あるいは知財権を適切に利活用できるということについて、そのルール等を支援機関にあらかじめ定めていただくようなことも考えていく必要があるんだろうと思います。今回、いろいろな実施機関が選定されると思いますが、そういう中で、ぜひそのことも含めて計画の中に入れていただくとか、そういうことも考えていく必要があるかなと思っております。

 いずれにしましても、これだけの新しい支援プログラムでありますから、できるだけ国民に還元できるような方向で考えていくことが必要だと思っております。

和田委員 大臣のお考えの方向性は共有させていただきますが、それではまだ甘いのではないかというふうに思っていまして、できるだけではなくて、まず、国民の税金を使って二千七百億円ほど突っ込むわけでございますので、これは本来、国民で共有すべきものでございます。ですから、こういったところを予算を編成する際にはきっちりと概念構成した上で予算を提案していただきたいと思っているわけでございます。

 例えば、先ほど来の議論で、企画立案は政府の中でやるということについては、副大臣も含めて、両大臣とも責任を持たれているわけでございます。そのように御発言なさっておられるわけでございます。そうだとすれば、その実施スキームの中で、この結果生じたものをどうするのかは今決めておいた上で提案なさってしかるべきではないかというふうに思うわけでございます。

 実際に研究者の方々や、私の場合、前にそういった仕事をしていたこともあり、研究開発費を国から委託を受けてやっているような当事者も知り合いがございますので聞いてみましたけれども、そういったところがはっきりと提示されない限りは、企業の担当者としても団体の担当者としても、少し危なくて、要するになかなか申請できないというふうに言っているわけでございます。

 先ほど松本委員の方からは、実際には経団連が提示したものと同じじゃないかという御指摘がございましたが、ぜひ大臣にお考えいただきたいのは、世の中にはそれ以外にもっともっと可能性を秘めた研究者や研究団体がたくさんあるということでございます。そういったところを広く相手にするためには、その仕組みそのものをしっかりと明らかにしてあげた上で、どうぞ申請してくださいというふうにしなければ、結局のところ、ちょっと言葉は悪くて恐縮ですが、今まで失敗を重ねてきた機関同士の中での話になってしまうのではないかというふうに思うわけでございます。

 ですから、先ほどの御答弁、一歩二歩の前進は認めるところでございますけれども、やはりこれは、予算の執行段階までにはきっちりと片をつけた上で、成果物についてどうするんだということを決めた上で取りかかっていただきたいというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 ただいまの御意見につきましては、今後、いろいろな公募の条件とか今後の計画のあり方等も含めて今検討中でございまして、そういう中でしっかりとその御意見を踏まえて、成果についてどうあるべきか、研究の内容によってはいろいろな考え方が出てくると思いますので、その研究についてはこういったやり方で成果をどういうふうにしたいとか、そこら辺のところまで求めた内容にすべきだということを多分おっしゃっているんだと思いますので、そういうことも含めて、今後、公募の条件あるいは選定の基準、さまざま今検討に入っておりますので、予算が決まった段階でそれをしっかりと公表して、できるだけ多くの皆さん方から公募を受けてまいりたいと考えております。

和田委員 ぜひ真摯に御検討いただければと思います。

 残り時間が少なくなってまいりましたので、最後の質問に入りたいと思います。

 こうした研究過程を経て、結果が出てまいります。そのときに、ここは私自身も担当者時代に非常に悩んだところでございますが、研究開発というものに対する国の姿勢が今現在どのようなものになっているかという点です。つまり、先ほどは、国民の税金をつぎ込んで研究をする以上、それについて情報開示をなすべきだという趣旨から御質問させていただきました。今度は、国民の税金を使う以上、国として、その税金部分に該当する以上のものが成果として得られているかどうかというチェックをどのように行うか、また、それに対してどのように対処するかという点でございます。

 これには、いろいろと自分自身で研究したときには、諸外国、やはりいろいろばらつきはございました。極論すると、研究開発というものは、巨費を投じてやるけれども、それが結果的に価値の還元としてその分だけ戻ってくるなんということはなかなか想定しがたい、そういうところから、思い切ってそこの部分は毀損しても仕方がないというスタンスで取り組むという国もございます。一方で、いや、それはどういったって国民の税金だから、そのつぎ込むという判断をしたところでは必ずそれ以上の成果が上がるんだということを政府・与党として責任を持って予算を編成しているんだというふうになされて、制度がつくられている国もございます。

 大きく分けてこの二つだと思うんですが、今、塩谷文部科学大臣として、こういった分野について国はどのようなスタンスでいらっしゃるということになりますでしょうか。

塩谷国務大臣 大変難しい御質問でありまして、常にその点を考えながら研究費等のあり方を考えていかなければならないと思っております。

 例えば、昨年のノーベル賞受賞者等からは、基礎研究の重要さをかなり強く訴えていただきました。これについては、基礎研究というものをどう評価するかというのは非常に難しい話になるわけでございまして、国民にそれがすぐに還元されるかということをどう国が説明できるかというと、これも実はなかなか難しい点がたくさんある。

 しかしながら、私は、研究の内容とかそういったものをしっかりと公表するといいますか、そういうことが必要であって、そういうことがないと全く国民の目に触れないでいってしまう。常に公表することによって、何らかの時点で、それが具体的に世の中に影響を及ぼしたりなんかするときに、ああ、あの研究がこうなったのかという、やはりそういうことが常に、不断の努力が必要だと思っておりますので、税金を使う以上、そういったことをやっているということを公表することが大事であろうと思っております。

 もちろん、具体的な、税金に見合う、あるいはそれ以上の成果還元については、その研究開発がどう産業化がされる、あるいは世の中に還元されるかをまた別な段階で進めていくことも必要でありましょうから、それは研究は研究だけで終わらないということであると思いますので、それをいかに我々人類あるいは国民生活に生かしていくかというのは常に考えていく必要がある、そのために研究開発があると思っております。

和田委員 考え方は共有させていただきます。

 私なりに今回の質疑を通じて感じたことを申し上げて、大臣からの御見解をいただければと思いますが、今のそれぞれの国のやり方が、幅があっていいものだと思います。これだけの資金を投じて、とにかく情報を開示していくということが大事だということも大臣と共有できたかと思います。

 結果についてどう判断するか。今回二千七百億円を投じるわけでございますので、五年後に二千七百億円以上の何らかの価値を見出した説明ができるかどうか、これについて、二千七百億円以上出ていれば全く問題ないわけでございますが、そうでない場合に、どんな説明を国民の皆さんにするんだろうということでございます。

 塩谷大臣として、また、今回の場合、独法を使う以上、内閣府もしくは総合科学技術会議が事業選定の責任を負うわけでございますので、こうしたことに携わった方々、組織の責任の所在を明確にすべきではないかというふうに考えています。

 その際、私が短絡的に、二千七百億円の価値が生み出されなかったらやめるべきだということを申し上げるつもりはございません。しかし、その責任の所在がある以上、国民の皆様方に、この機関が何をどうやってきて、どれだけの価値は生じているけれども、それらをどのように国民の皆様方に使っていただきますというような総括の説明を、その期間が終了したときにはぜひともなさるべきであろうというふうに思うわけでございます。その説明責任を果たすということも含めて責任を果たすということになるのではないかと思いますが、この点について大臣の御見解をお伺いして、終わりにしたいと思います。

岩屋委員長 塩谷大臣、時間が参っておりますのでお願いします。

塩谷国務大臣 今回、二千七百億円という多額の予算を投ずるわけですから、当然その責任を果たさなければならないわけでございまして、今回、三十程度のプログラムが策定される、そういう中で、やはり一つの目標、あるいは予想される成果等も明確にして、それが三年、五年たったときにどう評価されるかということ、そしてその達成度とかそれから生まれる成果、金額的にどの程度の成果が期待されるとか、そういったことはきちっとやるべきだと思っております。また、そういう期待がされないものについては今回は採択できないと思っておりますし、その期待がされるものに対してしっかりと選定を行っていくことが必要だと思っております。

和田委員 時間が参りましたので終わりますが、今の御答弁をお聞きしていて、その部分をやっていただきたいのと、加えまして、責任大臣として、文部科学省自体が、学術振興会に配分した二千七百億円、総合科学技術会議が選定した事業のその選定結果、これらについての評価を国民の皆様方に広く公開なさるべきであろうというふうに思いまして、それを要望して終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で和田君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 この法案は、日本学術振興会に二千七百億円の基金をつくり、世界最先端研究支援強化プログラムとして、研究者を中心に、五年間で約三十課題を対象に、一テーマ九十億円程度の支援を行うというものになっています。また、もう一つの三百億円の基金をつくって、若手研究者の海外派遣事業として、五年間で一万五千人から三万人の若手研究者、大学院生らを海外の研究機関に集中的に派遣をするというものでございます。

 予算額は今回の方が圧倒的に大きいんですけれども、この間、大学を中心に二〇〇二年から、二十一世紀COEプログラム、グローバルCOEプログラムなど、大学の構造改革の方針に基づいて、世界最高水準の研究教育拠点の形成と人材育成を行うということで、重点支援がされてまいりました。私は、こうした競争的資金による支援というものがどのようなことをもたらしたのか、あるいはもたらすのかということを今検証する必要があるというふうに思うんですね。

 そこで、まずお聞きしますけれども、この二つのCOEプログラムが開始された二〇〇二年度から今日に至る採択件数と金額をお示しいただきたいと思います。そして、一テーマ当たりどれだけの支援額となっているのかということも報告していただきたいと思います。文科省。

徳永政府参考人 二十一世紀COEプログラムは、平成十四年から十六年の三カ年で二百七十四件を採択し、その交付金額は一千七百六十九億円でございます。グローバルCOEプログラムは、平成十九年度、二十年度の二カ年でこれまで百三十一件を採択していまして、それに係る交付金が五百七億円となっております。合計で四百五件、そして二千二百七十七億円でございます。

 したがいまして、いわば平均的な交付金額というものは、二千二百七十七を四百五で割った額でございますが、もちろん内容的には研究分野等によってさまざまでございます。

石井(郁)委員 今お示しいただいたんですけれども、そのうち、十件以上採択された大学名、その件数、これは採択件数が多い順から教えてください。

徳永政府参考人 両プログラムを合計しまして十件以上採択している大学は十一大学でございます。多い順に申しますと、東京大学四十四件、京都大学三十五件、大阪大学二十六件、東北大学二十五件、名古屋大学二十件、東京工業大学二十件、慶応義塾大学十九件、北海道大学十八件、早稲田大学十六件、九州大学十三件、神戸大学十件、この十一大学で二百四十六件を採択しております。

石井(郁)委員 私も調べてみたんですけれども、一位が東京大学、四十四件で二百八十六億円です。二位の京都大学、今のお話、三十五件で二百二十五億円。三位の大阪大学は二十六件、百六十九億円。旧七帝大が占めているわけで、そこに東京工業大学が二十件とか神戸大学十件というのが食い込んでいますけれども、そういう図式になっていますよね。

 だから、国立の九大学の件数で見ますと、国立大学の採択件数の六八・六%です。だから、約七割です。金額でも七二%ですから、七割方がこういうところで占められている。私立大学も、今お話しの、慶応十九件、早稲田が十六件と続いていまして、この二つの大学で私立大学の採択件数のうちの四二・一六%なんですね。だから、旧帝大と巨大私学にこの競争的資金が集中しているということがわかるわけであります。

 そこで、次にもう一つ伺っておきますけれども、この競争的研究資金である科学研究費の補助金、これは平成十九年度、二〇〇七年度の分で結構ですから、そのトップテンを明らかにしてください。

磯田政府参考人 二〇〇七年、平成十九年度におきます科学研究費補助金の採択件数が多い大学を、研究代表者が所属する大学で整理いたしますと、東京大学、京都大学、東北大学、大阪大学、九州大学、北海道大学、名古屋大学、筑波大学、広島大学、東京工業大学の順でございます。

石井(郁)委員 ここでも、その大学での採択件数、あるいは金額等々を見てみますと、東京大学は二千九百六件なんですね。直接経費と間接経費合わせて二百十二億二千二百万円。二位の京都大学は二千三百六十六件の百四十二億八千万円。三位の東北大学は二千七件で百四億千二百万円。七位の名古屋大学で千三百十八件の六十六億三千三百万円。だから、ここでも旧七帝大が上位七位まで占めている。それに筑波、広島、東京工業大というふうに続くわけですね。

 この十位までの大学で、国公私立合わせて総額の五三・三一%ですから、半分以上だと。さらに、外部資金である受託研究、奨学寄附金等を見ても、旧七帝大に集中するという傾向を同じく示しているわけであります。

 今見てきましたように、この競争的資金というのは旧七帝大に集中する。この一方で、地方大学や単科大学では、運営費交付金の削減、私学助成の削減等々で非常に困難が生じている。ですから、今、日本の大学は総じて、富める研究室と非常に貧困な研究室と二極分化しているという状況だと言わなければならないと思います。こういう現状について、まず文科大臣、どのように見ていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

塩谷国務大臣 ただいまお話にありました二十一世紀COEプログラムあるいはグローバルCOEプログラム、そして科学研究費補助金につきましては、いずれも国公私立すべての大学を対象としまして公募を行って、専門家、有識者から成る委員会において、客観的かつ厳正な審査で、各事業の趣旨に沿ったすぐれたものが選定されていると考えております。

 特に、競争的資金につきましては、競争的研究環境を形成するのに貢献していると思っておりますし、科学技術の基本計画三期目においても、引き続きその資金、補助金を拡充していくことが考えられているわけでございます。

 二十一世紀プログラムあるいはグローバルCOEプログラムの取り組みは、国公私の大学を通じた競争的環境の中で、特色、個性あるすぐれた大学の取り組みを選定して支援するものでございまして、こういった施策は、いずれも大学における教育研究活動の活性化にとって極めて重要な意義があると考えておりますので、今後とも充実に努めてまいらなければならないと考えております。

石井(郁)委員 大臣の御答弁では、すべて公募で、客観的に審査した結果がこうだということでございますが、私は、今結果として非常に資金が、ある大学に集中する、そして二極分化という状況が起きている、この現状をどう見ていらっしゃるのかということを伺いたかったんです。御答弁はありませんでしたが、いかがですか。

塩谷国務大臣 確かに、結果として、特定の大学に偏っている結果、これはそれぞれの大学がそれぞれの優秀な研究を行っていただいていることだと思っておりますが、一方で、残念ながら公募に漏れたようなところもあることも事実でございますので、これについてはそれぞれの大学に御努力をお願いすると同時に、また、基本的な、例えば運営費交付金のお話とか、石井委員が常にその話をしていただいておりますが、そういう仕組み等のことも考えていかなければならない。

 ただ、こういった科学技術研究費につきましては、かなりやはり高度な部分、あるいは特色を持った部分、そういったものが求められるわけでして、この研究費については、おのずとそういう結果にならざるを得ない状況があると思っております。

 したがって、大学全体のことについては、地方へのいろいろな貢献度とかそういうことも含めてまた考えていかなければならないわけでして、石井委員のおっしゃったような趣旨は十分に理解しているつもりでございます。

石井(郁)委員 私は、その競争的資金がどうなのか、なぜこういう状況が生まれるのかということについて突っ込んで議論したら、それはそれでいろいろ出てくるんですけれども、ただ、結果としても、こういう競争的環境とか競争的資金の投入ということだけをするとこんな状態にあるんだ、これはもう必然的にこうなっているというところをやはりきちんと見ておかなきゃいけないというふうに思うんですね。

 さらに、今実態が本当にどうなっているかということについて、最近出された報告を見ましたので、私も取り上げたいと思っているんですが、日本化学会というところが教員一人当たりの教育研究費調査を行っておりまして、ことし四月、それが明らかになりました。ここでは、東大、京大、北海道大学など旧七帝大と、それに東京工業大学、筑波大学、広島大学の科研費十位以内の国立の有力十大学と、地方国立大学の三十校、公立二大学を加えた二つのグループを比較しているんですね。

 そうしますと、非常にはっきりしてきた。国立の有力十大学のグループでは、教授、准教授らの教員一人当たりの教育研究費が、法人化前年度の〇三年度千二百四十万円だったけれども、二〇〇八年度では千九百十万円ということで、一・五倍にふえています。一方で、地方大のグループというのは、〇三年度六百四十万円です。これ自身も半額ですけれども、〇八年度は五百十万円と二割減少しているんですね。だから、この二つのグループの格差というのは、〇三年度の一・九四倍から、〇八年度には三・七五倍に拡大しているんです。こういうことで、地方大学の教授の方々は、今机や棚も買えないとか、機械が古びて研究ができないという悲鳴を上げていらっしゃるわけですね。このことをある新聞は報じていますけれども、こう書いています。「強いところはより強く、弱いところはより弱く」だという今状況ですね。

 私は、今回の二千七百億円を基金とした重点配分というのは、こうした今起きている研究のゆがみに一層拍車をかけるものではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 ただいまの日本化学会の調査結果につきましては、これは教員一人当たりの研究費に関する調査について、今までやったことのないアンケートだと思うので、毎年の比較というものではなかなか難しいんですが、同時に、化学系の学部だけ、回収率も四割程度ということで、どこまで正確かというとちょっと疑問があるところでございますが、このデータで見ると、おっしゃるとおり二つのグループの差がある。

 ただ、年度の推移でいきますと、伸び率といいますか増減率については、例えば十六年度、十九年度については大体二四、五%ということで、両方とものグループが同じような伸び率を示しておるわけでして、その前提となる基本的なAグループ、Bグループの存在の位置づけ自体が根本的にちょっと問題だというのであれば、またそれはそれで見直さなければならない点もあると思います。

 いずれにしましても、こういった実態を踏まえる中で、また改善すべきは改善するべきだと思いますが、今回の支援プログラムにつきましては、先ほど来申し上げているとおり、やはり何といっても、この厳しい経済状況のもとで世界の先端研究に対する支援プログラムでございまして、やはり我が国としてはこの世界先端の研究をしっかりとこれからも推進していくことが当然求められるわけでございますので、その点の今回新たな仕組みということでぜひ御理解をいただきたいと思います。

石井(郁)委員 大学の教育研究費でいいますと、基盤的経費の運営費交付金は削る一方でこういう競争的資金にシフトしてきたということで、この結果として、上位旧帝大と巨大私学に資金が集中するということがこんなような結果をもたらしている。だから、二つのグループの格差、〇三年度の一・九四倍、〇八年度は三・七五倍ですから、こういう格差を広げていっているという問題は私は大変ゆゆしい事態だというふうに思うんですね。

 この化学会の調査報告書では自由意見というのが記載されておりまして、ちょっと紹介したいんですけれども、このように書かれてありました。競争的な資金をふやすことは、数少ない主要大学に資金が集中することにより、それ以外の大学の研究及び教育基盤の低下につながると。

 また、ある教授の方は、全国的に運営費交付金が減っている中で、特定の研究にトップダウン的に配分するのは危険である。基礎的基盤を弱めることになる。今、旧七帝大学プラスアルファの大学と地方大学と格差が大きい。地方の大学からのノーベル賞の芽を摘むことになると。

 今回ノーベル賞を受賞された中でいわば地方大学出身の方もいらっしゃったということが私は大変、やはりそうだろうなという気もしたんですけれども。この間のノーベル賞の受賞を見ますと、やはり基盤的研究経費を充実してこそ将来の創造的研究というのが生まれてくる、発展するんじゃないかというふうに思いますけれども、そのことをちょっと強調しておきたいというふうに思います。

 そして、COEをとったある教授の方は、こうしたやり方というのは底上げにはつながらない、今地方大学は疲弊して厳しい状況にある、そういうところをどうサポートするかなんだ、こう言っていました。今回はそれはないわけでしょう。二千七百億円もの資金というのを三十テーマに配分するということになるわけで、しかもかなりそれは限定されるわけですから、中には緊急に必要なテーマと言える部分もあるかと思いますけれども、やはり運営費交付金、この基盤的研究費の充実のためにもっときちんとやはり回すべきだ、今文科省はそういう姿勢をこそとるべきだというふうに思うんですね。だから、大きな山を築こうと思えばやはりすそ野を広くしなければいけないというのはよく言われることであります。

 国立大学の運営費交付金というのは五年間で七百二十億円の削減ですから、もう限界だと、これは大臣もおっしゃっていただきましたように、私もたびたび当委員会で取り上げてきたことでもあります。だから、こういうことこそ基金をつくって運営費交付金に回せば、運営費交付金は増額に転換することができます。この二千七百億円というのは、削った額でいえばその四倍に当たるわけでしょう。本当に広く地方大学も含めて基盤的経費をやはり底上げしていくということにつながるわけで、私は今そういうことにまさに政策転換をすべきだというふうに思うんですが、もう大臣もちょっと触れていただきましたけれども、大臣はそうした決断を今こそすべきではないかと思いますけれども、伺っておきたいと思います。

塩谷国務大臣 基盤的経費につきましては、十分私どもも、その今の削減された状況を踏まえて、今後どうあるべきか、運営費交付金のあり方を検討すべき時期だと思っております。

 一方で、今回のプログラムにつきましては、何といっても、我が国が世界最先端の研究をしっかりと推進していくということも我が国には絶対に必要なことでありますので、そこら辺を今後どう、ある面ではバランスをよくしていくかということでございますが、まずはこのプログラムをしっかりと推進して、いい成果を期待したいと思っておりますし、一方で基盤的経費も、しっかり安定的な研究あるいは運営に資するような形で今後どう改善していくかということにも取り組んでまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 時間なんですが、一問だけですけれども、若手研究者の問題、私もたびたびこれも質問してまいりましたけれども、その雇用確保というのは極めて深刻だと思うんですね。今回、海外への派遣事業として組まれましたけれども、海外に出て日本に帰ったら職がない、この現状はさっぱり変わらないということでは困るわけでして、私はここでも、若手研究者の雇用の確保とか、あるいは今高学歴ワーキングプアということでの非常勤講師などの待遇改善、これは本当に急がれるんですよ。こういう問題のためにも、そういう基金こそすべきではないかと思いますが、この雇用確保で一言大臣の御決意を伺いたいと思います。

岩屋委員長 塩谷大臣、時間が参っておりますのでお願いします。

塩谷国務大臣 今の点についてはしっかりと取り組んでまいりたいと思っておりますが、特に今回の海外の派遣につきましては、やはり若手がもっともっと海外でしっかりと研究活動をしていって、それがまたその次のポストにつながるという一つのシステム的なことをつくっていくことが必要だと考えておりまして、むしろ海外へ出て、そしていろいろな経験を積んで、また日本で活躍していただきたい、そういう方向性で考えていきたいと思っております。

石井(郁)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で石井君の質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 最初に、各委員から質問が出されておりますけれども、日本経団連の産業技術委員会、ここが出した世界最先端研究支援強化プログラム、この創設を経団連は求めてきたわけですが、先ほど来ずっと主張されているように、今回の文科省がお出しになられたこの法律といいますか、三千億円の金を使う基金の中身は、どうもこの経団連の主張されていることを丸のみをしている、こう言わざるを得ないと思っているわけです。先ほど来、説明を聞いてもどうも釈然としない、一体どこに文科省の独自性があるのか、なかなか理解しがたいということになっているというふうに思います。

 しかも、これは緊急の経済危機対策で打ち出されている話でありまして、そうすると、例えばこういう批判めいたお話もあるわけです。経団連は恐らくそういうことをお考えになっていらっしゃると思うんですが、実用化一歩手前の研究を集中的に選んで、この企業に重点的にお金を配分して産業界の研究開発をさせる、事実上の公的資金として使われていくのではないかという思いがしてなりません、ほとんど同一なものが出されているわけですから。

 そういう意味で、改めて、この日本経団連が主張されていることとほとんど同じものを文科省がお出しになったこの経緯や、それから、そうじゃないんだったらそうじゃないと言っていただきたいんですが、もう少しその位置づけについて明確にしていただきたいと思います。

西川政府参考人 経団連の提言との関係についてのお尋ねでございます。

 この世界最先端の研究支援強化プログラム、これは、これまで相当時間をかけて総合科学技術会議の場で検討してきたそういった検討の延長線上にある施策ということでございます。

 総合科学技術会議では、効果的に研究開発を進めていく上で、多年度にわたる自由度の高い研究資金が必要だ、あるいは、研究者が研究に没頭できるようなそういったシステムが必要だ、これは、今の、平成十八年に制定されました第三期科学技術基本計画等の文書の中にもそういった趣旨のことが実は書かれておりまして、時間をかけて、そういったこと、科学技術分野の制度改革が必要だという議論を積み重ねてきたというのが、まず一番ベースにございます。

 それ以降は、ごく最近に至りまして、三月の十八日に総理が招集されましたあの経済危機克服のための有識者会合、この場で、中長期的な我が国の成長力強化、そういった成長力の強化を図るために、総合科学技術会議のイニシアチブのもとで科学技術の一層強力な推進が必要だといったような御提言、これはことしの三月の十八日でございます。

 こういったことを踏まえまして、科学技術政策担当野田大臣の方から、私ども内閣府の科学技術政策担当部局の方に具体的な制度設計についての検討の指示があった。そういう一連の流れの中で、この四月六日付で経団連からも、今回御質問にございましたような提言が出てきたということで、一連の流れの中で、経団連の提言も参考にしながら検討させていただき、あの案の作成に至ったということで御理解いただければと存じます。

塩谷国務大臣 先ほど来、また今、内閣府の方でも御答弁がありましたが、総合科学技術会議の方でかなり検討してきたと同時に、総理官邸での有識者会議、これでも大分同じような意見が出て、また、私が先ほど申し上げましたように、政府の考え方をある面では応援してもらうためにああいうような経団連の提案をしていただいたと考えておりますので、ずっと検討していく課題は数多くある中で、具体的に実行に移す段階である程度手順を踏むというようなことも必要でありますので、今回、経団連には、多くの意見が、そういったことが出ていた中で一つの提案をしていただいたということになったと私は受けとめております。

日森委員 御理解いただきたいということですが、なかなか難しいというふうに思います。

 例えば、長年そういうふうに研究してきたその結果としてあるんだとすれば、経団連が出した途端に今度の補正予算でばたばたと出さずに、本予算でしっかりと年月をかけて基礎研究を育てていくとか、先端技術を育てていくとかいうことにしていくべきであると思うんですよ。これは筋悪ですよね。

 そういうことがあるから、御理解していただきたいと言われてもなかなか御理解できませんねということになるんだと思いますが、これはやはり、経済対策としてこれを打たれるということになると、日本経団連の意向をしっかりと受けておやりになっている、こういうふうに判断せざるを得ないということを申し上げておきたいと思うんです。

 ちょっと関連して幾つかお聞きをしたいと思うんですが、先端研究助成基金、これは、基礎研究から出口を見据えた研究開発まで、幅広い先端的科学技術分野のうち、世界をリードする成果を上げ得る研究開発を推進するということが目的になっているわけですが、この具体的な内容というのはどういうものを想定されているのか。基礎研究から出口まで五年なんですね。こういうことで本当に成果が上げられるのか。

 しかも、これも幾つか新聞などでも大丈夫なんですかという話が出ていまして、五年という短期間で本当に画期的な成果を生み出すようなことが期待できるのかどうなのか。なぜ五年なんだということもありますし、同時に、二千七百億円なんですよね。この二千七百億円という根拠は一体どこにあるのかということについて御説明いただきたい。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、世界最先端研究支援強化プログラムの具体的な内容についてのお尋ねでございまして、このプログラムにおきましては、まず、課題及び中心となって研究を進める中心研究者、こういう方々を、総理、科学技術政策担当大臣、総合科学技術会議の有識者議員等が中心になりまして、特に基礎研究から出口志向の研究開発まで幅広い先端科学技術分野の中から三十程度の課題及びその中心研究者をまず選ぶ。その上で、その選定された研究課題に対する研究支援機関、これは研究者が研究に専念できるように研究のサポートをする機関、それを中心となる研究者御自身に選んでいただく。その上で、世界をリードするような研究成果を目指して、研究開発を三年から五年間実施していただく。そういった段取りで具体的には考えております。

 それで、基礎から出口まで五年間、ちゃんとした成果が出るのかというお尋ねでございます。

 このプログラムにおきましては、その助成対象研究といたしましては、繰り返しでございますけれども、基礎研究から出口を見据えた研究開発まで幅広く想定している、個々の研究開発の期間といたしましては三年から五年程度、そういう趣旨でございます。

 したがって、基礎研究で始まったものが三年から五年で出口まで行くということ、そういうことが期待できるものももちろんございますが、すべてがすべてそういうものではなくて、基礎研究フェーズのものが三年から五年たってその次の応用研究フェーズにフェーズアップするとか、そういったこともこの三十課題の中には含まれるのではないかというふうに考えているところでございます。

 三点目の、二千七百億円の具体的な根拠という点についてでございますが、これはやはり、十分な研究成果を上げるためには、ある程度の期間、ここでは三年から五年という期間が必要であろう、その上で一定規模の研究資金を提供する必要があるという考えに基づきまして、過去の研究課題、研究開発のプログラム等々を参考にいたしまして、一課題当たり年間で十億円から三十億円程度、一研究課題の研究期間が三年から五年ということで、平均的に一課題九十億円といたしますと、三十課題で二千七百億円、そういった数字をはじいているところでございます。

日森委員 どういう分野や課題を想定されているのかということとかなり関連してくると思うんですが、今、一般的にお話しいただきましたが、三年から五年で成果を出すということになると、最初に申し上げた、恐らく経団連も期待をされているような、いわば実用化間際のものについて公的資金を投入して成果を上げさせるというふうにどうも考えざるを得ないというふうに思うんですよ。実際、あのクラゲの研究は数十年でノーベル賞ですよね。

 そういうことを考えていくと、これは本当に、幅広ではなくて、一定に限られた課題について公的資金を出してあげて研究のしりをたたくというような思いに駆られるんですが、まあ、それはいいです。また後でちょっと関連してお聞きをしたいと思います。

 その先端研究助成基金では、有識者会議で中心研究者が選出されるということになって、研究課題が設定される。これは透明性が高いものじゃなきゃいけないということに当然なるわけですが、官僚のあっせんした業界関係者という人たちが恣意的に手を挙げて、それにどんどん金を出すようなことであってはならないわけで、実際にちゃんとした哲学、理念を持ってこれは選定していかなきゃいけないし、その過程は透明性がなければいけないというふうに思うんです。

 この中心研究者の選考に当たってどういう基準をお考えになっていらっしゃるのか。その選考過程の透明性とか、国民の税金を使うわけですから、国民の皆さんに見えるように、そういう客観性みたいなものはどういうふうに担保されるのか。

 それからまた、時間がないのでまとめて聞いちゃいますが、研究支援担当機関は公募するというふうに言っているんですが、その公募の中身ですね。仮に中心研究者が何らかの組織に属していた場合、その自分が属している組織、これを指定してしまうということができるのか。そうであると、何か公募という意味が極めて軽薄になってしまうのではないかという思いがするんですが、その辺をちょっと御説明いただけますでしょうか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 研究テーマの選定過程においてきちっとした透明性を確保すべきだという御指摘、委員の御指摘のとおりだと存じております。

 具体的に、そのためには、具体的な研究課題とか中心研究者、これは総合科学技術会議で最終的に決定していただくわけでございますが、その決定プロセスにおきまして、研究者や研究テーマの選定に当たって、まず広く公募を実施したいと考えております。また、公募と並行いたしまして、学界あるいは産業界、そういったところからも広く意見を聞くということがまず一つ重要なポイントだと思っておりますし、また、課題、研究者の選定に当たりましては、その内容選定過程といいますか、そういうものをきちっと公表することによって透明性をきちっと確保していきたいというふうに考えているところでございます。

 それから二点目の、研究支援機関をなぜ公募で決定するのかと。

 これはやはり、研究者を最優先するような、研究者が研究に没頭できるようなそういう環境をつくる。そのために、研究サポートを提供する研究支援機関、これが非常に重要になってまいります。したがいまして、その研究支援機関の選定のプロセスにおきまして、複数の選択肢を用意して、その中から中心となって研究される研究者御自身に最適なものを選んでいただこう。そういうことで、研究支援機関選定プロセスに公募という考え方を入れているところでございます。

日森委員 よくわからないところがありましたが、これから恐らくもう少し鮮明になってくると思うんです。その透明性なり客観性というのは、ぜひ確保する努力をしていただきたいと思います。

 余り時間がなくなりましたので、先ほども少し議論になっておりましたが、先端研究助成基金には二千七百億円という、これは異例の大盤振る舞いというふうに言われていますが、異例の大盤振る舞いの二千七百億円が投入される。税金が投入されるということになります。先ほどちょっと御答弁を聞いていますと、研究成果が個人、団体、企業等の所有物になってしまってそこが独占してしまうということになると、経済的利益も当然生み出すわけで、税金を投入してそういう格好になるのは、ちょっと国民感情からして納得できないというふうに思うんですよ。

 先ほどのお話ですと、研究成果は研究した機関に属するというお話があったようなんですが、これは、税金を投入して、しかも大盤振る舞いですよ、大盤振る舞いをして、そして研究をした成果がだれに帰属するのか。税金を投入したわけですから、先ほどの議論にもあったように、国民に広くこの成果が還元できるようなそういうシステムということにしておかないと、これは問題が起きるんじゃないかと思うんですよ。それを改めてお聞きしたいと思います。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、研究によって得られましたその成果につきましては、きちっと還元されるべきというのは御指摘のとおりでございます。

 成果の中には、いわゆる論文等で発表される学術的な成果と特許等の知財権が考えられるわけでございますが、その学術的な成果につきましては、まず研究者御自身の名前で発表され、その成果は広く国民、世界に還元されるということが基本でございます。一方で、特許権等の知財権につきましては、これはまず適切に権利確保を行った上で、その上でその成果普及を図るということが重要でございます。

 本プログラムのような、いわゆる助成事業の結果得られる特許権等につきましては、一般的には、研究を助成する側ではなくて実施する側に知財権が帰属する、それが通例でございます。その上で、その発明した研究者個人なのか研究支援機関なのか、その帰属については、これは当事者間で契約等で決めるというのが原則でございまして、いずれにいたしましても、本プログラムの趣旨にかんがみまして、この知財権が適切に保護、さらには活用されることで成果が国民に還元される。

 極めて重要な点だと理解いたしておりますので、そのように対応してまいりたいと考えているところでございます。

日森委員 もう時間になりました。

 なかなか明確にならない。これだけお金を使って、仮に成果が、できるかどうかわかりませんけれども、生まれたものが本当に明確に国民の側の利益につながっていくんだということについてもう少し研究を重ねていただきたいと思いますということを申し上げて、あと二つ残りましたけれども、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で日森君の質疑は終了いたしました。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

     ――――◇―――――

岩屋委員長 次に、参議院提出、国公立の高等学校における教育の実質的無償化の推進及び私立の高等学校等における教育に係る負担の軽減のための高等学校等就学支援金の支給等に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。参議院議員鈴木寛君。

    ―――――――――――――

 国公立の高等学校における教育の実質的無償化の推進及び私立の高等学校等における教育に係る負担の軽減のための高等学校等就学支援金の支給等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木(寛)参議院議員 ただいま議題となりました国公立の高等学校における教育の実質的無償化の推進及び私立の高等学校等における教育に係る負担の軽減のための高等学校等就学支援金の支給等に関する法律案につきまして、その提案の趣旨及び内容の概要について御説明申し上げます。

 民主党は、さきの参議院通常選挙において、公立高校の学費などの実質無償化と私立通学者の学費大幅軽減を提案いたしました。

 高等学校や専修学校高等課程等への進学率は九八%に達し、これらの教育機関が準義務教育的な役割を担っている現状にかんがみれば、その教育費に係る保護者の負担を軽減し、もって次代を担う子供たちの教育機会を保障し、教育格差の解消を図ることは極めて重要な課題であります。

 殊に、経済情勢の悪化は家計を直撃し、高等学校等への進学に伴い教育費が急増する世帯にとって、その負担の抜本的軽減を図ることは喫緊の課題となっております。

 また、日本政府は留保しておりますが、国際人権A規約における中等教育に係る条項、第十三条の2(b)においても、「すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。」と定められております。今回提案いたしておりますいわゆる高校無償化法案は、こうした理念の具体化を図るものであり、後期中等教育の無償化実現に向けた第一歩と考えております。

 以下、主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、本法律案は、高等学校等の生徒の保護者に高等学校等就学支援金を支給すること等により、国公立の高等学校における教育の実質的無償化を推進し、あわせて私立の高等学校等における教育に係る負担の軽減を図り、もって高等学校等における教育の機会均等に寄与することを目的としております。

 第二に、本法律案において就学支援金の支給対象となる学校種は、高等学校、中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部、高等学校の課程に類する課程を置く専修学校及び各種学校並びに高等専門学校としております。

 第三に、就学支援金の支給は、原則として当該生徒が二十歳に達する年度までの三年間とし、一定の場合には、支給月数の調整あるいは追加ができることとしております。

 支給額は、国公立の高等学校については、学校種等に応じて授業料の標準額として政令で定める額までの範囲内で、また、私立の高等学校等については、公立の全日制高等学校の授業料の標準額に相当する政令で定める額までの範囲内で、納めるべき授業料の額としております。特に、私立の高等学校等の場合、世帯収入額が一定以下のときは、その二倍までの範囲内で支給することとしております。

 第四に、就学支援金の支給は市町村長が行うこととし、支給を受けようとする保護者は、住所地の市町村長に申請し、支給の決定を受けることとしております。

 第五に、就学支援金の支給に要する費用は、全額を国庫が負担することとしております。

 以上が、本法律案の提案の趣旨及び内容の概要でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。(拍手)

岩屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十七日水曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十二分散会


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