衆議院

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第2号 平成21年11月18日(水曜日)

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平成二十一年十一月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 奥村 展三君 理事 首藤 信彦君

   理事 松崎 哲久君 理事 本村賢太郎君

   理事 笠  浩史君 理事 坂本 哲志君

   理事 馳   浩君 理事 富田 茂之君

      石井登志郎君    石田 勝之君

      石田 芳弘君    江端 貴子君

      川口  浩君    城井  崇君

      熊谷 貞俊君    後藤  斎君

      佐藤ゆうこ君    瑞慶覧長敏君

      高井 美穂君    高野  守君

      中川 正春君    平山 泰朗君

      牧  義夫君    松本  龍君

      山本 剛正君    湯原 俊二君

      横光 克彦君    横山 北斗君

      吉田 統彦君    井上 信治君

      遠藤 利明君    北村 茂男君

      塩谷  立君    下村 博文君

      菅原 一秀君    永岡 桂子君

      古屋 圭司君    松野 博一君

      池坊 保子君    宮本 岳志君

      城内  実君

    …………………………………

   文部科学大臣       川端 達夫君

   文部科学副大臣      中川 正春君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   文部科学大臣政務官    後藤  斎君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      西阪  昇君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          板東久美子君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       泉 紳一郎君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        布村 幸彦君

   政府参考人

   (文化庁次長)      合田 隆史君

   文部科学委員会専門員   芝  新一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十八日

 辞任         補欠選任

  松本  龍君     山本 剛正君

  菅原 一秀君     井上 信治君

同日

 辞任         補欠選任

  山本 剛正君     松本  龍君

  井上 信治君     菅原 一秀君

    ―――――――――――――

十一月十八日

 学費負担軽減と私大助成の大幅増額を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第二四八号)

 同(松本龍君紹介)(第三二七号)

 高校授業料の無償化、給付制奨学金の創設等子どもの貧困克服を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第三二六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房文教施設企画部長西阪昇君、生涯学習政策局長板東久美子君、初等中等教育局長金森越哉君、高等教育局長徳永保君、科学技術・学術政策局長泉紳一郎君、スポーツ・青少年局長布村幸彦君及び文化庁次長合田隆史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。

 私自身、四年ぶりに国会へと戻していただきまして、久しぶりの質問ということで一生懸命に努めさせていただきたい。特にこの四年間、地元を歩いてまいりまして、多くの声を受けとめてまいりました。その声をぜひ、このたび皆さんのおかげさまで発足をさせていただいた新しい政権の皆様とともに共有をして頑張っていきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、川端大臣に対しまして、このたびの大臣就任のお祝いを心から申し上げたいというふうに思っています。

 我が民主党はこれまでも、チルドレンファースト、子供が第一ということでやってまいりました。その我が民主党政権におけます文部科学部門の総責任者としても、そしてまた、恐らく珍しい形ではないかと思いますが、理系出身の文部科学大臣ということで、教育施策に関しましても、そして科学技術に関しましても、大いなるらつ腕を振るっていただきたいということを期待するところであります。私自身もできる限りの手伝いをぜひ政権党の立場としてさせていただきたいというふうに思うところでありますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、せんだっての文部科学大臣のごあいさつからございました、教員の実践的指導力、そして教職員定数を着実に改善、あるいは、経験豊かな社会人や退職教員など地域の教育力を学校現場に生かして云々という趣旨の御発言をいただきました。その一つ一つに関して、特に教員の能力の向上について、新たな政権のもとでの今後の取り組みというところを順次お伺いしていきたいというふうに思っています。

 この四年ほど、地元の学校現場の声を多く伺ってまいりまして私自身が強く感じておりますのは、何らか課題や問題があったときに、それは学校の仕事だということで押しつけられることが大変多い。しかし、その肝心の学校、とりわけ教員にかかる期待や負担というものが相当に大きいというのが実情でありました。

 細かいところで申しますと、教科指導や生徒指導、部活動、そして職員会議の出席から、年間二百本に及ぶというふうに言われておりますが、教員自身が書かなければならないという報告書のたぐい、そういうものを一つ一つ見てまいりましたときに、結果として、子供と向き合う時間がとれず、日々の雑務といってしまうと少し大げさかもしれませんけれども、要するに、教員の方々に本来果たしてほしい仕事とは違うところに力を割いているんではないかというところが現在の教員の状況としてあるというふうに私自身は実感として持っています。

 そこでまずお伺いをしてまいりたいのが、そうしたいわゆる正規の教員の方々と、今、学校現場で多くの専門的な人材といっている方々にさまざまな形でお力添えをいただいているそのそれぞれの位置づけについて、まず確認を含めてお伺いしてまいりたいというふうに思っています。

 私自身は、そうした専門的人材、例えば最近でしたら、スクールカウンセラーですとか、あるいは食育に関して申しますと、今、概算要求に上げられているものでいえば、いわゆる栄養教育が足りないという名目での食育支援、あるいは、理科教育に携われるそういう専門的な能力をしっかり持った方がなかなかに得がたいというところで理科支援員という話などが出てきているわけでありますが、そうした専門的人材の力をかりるということも大事なところがありますけれども、むしろ、正規の教員が教育のプロとしてそのど真ん中で手綱を締めてしっかり握ってやっていくということが必要なんじゃないか。

 特に、先ほど申した教科指導や生徒指導という子供たちと向き合う本分の部分とそして学校運営にかかわるところというのは、やはり、求められる資質、素質が少し違うんじゃないか。そういったところを切り分けながら、役割分担していく仕組みづくりというのを新たな政権のもとでさらに進めていく必要があるというふうに思っておりますけれども、教員と専門的人材の位置づけという点について大臣の見解をまずお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 答弁させていただく前に、文部科学委員会、きょうから本格的議論のスタートでございます。委員長を初め各党の理事、委員の皆さん、よろしくお願いしたいと思います。

 城井さん、本当に久しぶりにお帰りいただいて何よりでございます。九州にも応援に行ったのをこの間のように思い出しましたが、教育に対して本当に、逆に地域をくまなく歩かれてのいろいろな実感を込めて御質問をいただきました。

 おっしゃるように、非常に先生が忙し過ぎるということが事実であります。民主党のマニフェストの中でも、「教員が子どもと向き合う時間を確保するため、教員を増員し、教育に集中できる環境をつくる。」ということをマニフェストに書かせていただいた意味では、現状認識は共有いたしておるというふうに思っております。

 そういう中で、OECD比較を含めまして、やはり明らかに教員の数が少ない。それと同時に、多様化し複雑化する社会環境が子供にいろいろな意味で大きな影響を与えているという意味で、授業も非常に難しくなってきているという中で、やはり、きめ細かい教師の指導のもとにやられる教育というのがどうしても必要であるし、そういうことの取り組みの成果が、いろいろな生活態度やあるいは生活習慣、それと学力に非常に反映してきているというふうな調査の結果も出ております。

 そういう意味では、おっしゃるように、正規の教員の数をふやすということは、私たち鳩山内閣として、教育の質の向上と教員の量の確保ということで至上命題の一つでございますので、今年度の予算としても、概算要求においては、御指摘の理科系教育の少人数指導の充実も含めまして、五千五百人の改善、定員増ということを概算要求しているところであります。

 久しぶりに自然減を含めましてのトータルの純増の要求ということで、私たちの姿勢としては御理解をいただきたいと思いますと同時に、理科系教育が非常に充実しなければいけないという部分の配置と、今言われた食育なんかの配置と、それから、いろいろな応援する正規の先生でないという部分では、そういう経験豊かなということでのOBの先生方に支援いただくような仕組みもあわせて求めているところでありますので、総合的に教育の質が向上できるような環境整備のための教員数の増に取り組んでまいっているところであります。

 以上です。

城井委員 ありがとうございました。

 我が民主党もこれまで、「コンクリートから人へ」ということを繰り返し申し上げてきたところでありました。その中核は、やはり子供たちという視点での人づくり。その意味では、今回のいわゆる教員の増員を含めた総合的な取り組みの強化というところは極めて心強いというふうに思っているところでありますので、引き続き、取り組みをしっかり形にしていけますようにお願い申し上げる次第であります。

 それに関連してということで、一点申し上げたいというふうに思います。

 教員の数をふやすということと同時に必ず求められてまいりますのが、教員のいわゆる質という点であります。今、国民の間でも教員の方々に対して注がれる視線というのは、必ずしも優しいものばかりではありません。特に、不適格教員という視点でありますとか、あるいは、最近でも、いわゆる主幹という形で役割を担うことが難しいかもしれないというふうなことをおっしゃる方も出てきているというのも事実であります。

 その意味では、いわゆる入り口の部分として、教員の方々にどのような能力を身につけていただくかというところ、我が党の部分では、いわゆる六年間の教育の中でそうしたところを担保していこうという議論があるわけでありますが、きょうお伺いするのは、その入り口のところだけではなくて、むしろ、教員として働いていただく過程においていかに教育のプロとして腕を磨いていただくかといういわゆる教員研修の部分について、ひとつ、御確認を含めて御質問させていただきたいというふうに思っています。

 具体的には、国が教員研修について責任を持つ必要性がいかがかという点であります。

 私は国が教員研修に責任を持つべきだというふうに考えています。しかし、昨今の議論を踏まえますと、例えば、自治体ですとかあるいは民間に教員研修を任せようという意見が存在するのも事実であります。質と数、この両面という意味でいったときに、教員の質の確保という点についてかんがみながら、教員研修についての責任はだれが持つべきかという点について大臣のお考えを聞きたいというふうに思います。お願いします。

鈴木副大臣 お答えを申し上げます。

 教員の質というのは、まさに教育の根幹だというふうに考えております。

 そういう観点から申し上げますと、まずは、教員についての人事権を持っております県教委、そしてもちろん、設置者であります市町村の教育委員会、と同時に、国がきちっと全国レベルでの教員の質というものについてトータルのデザインをしながら、そしてそのための支援の枠組みもきちっと整備をしながら、まさに国、県、市町村、そのいずれの現場でも適切に、かつ、連携をしながらやっていくということが必要だというふうに考えております。

城井委員 ありがとうございました。

 全国レベルでの教員の質の確保、そのためのデザインという御答弁だったかと受けとめております。

 今後の我が政権のもとでの教育施策を推進していった場合には、恐らく、こうした教員の部分に関しても、現場に近いところで物を決めていこうという話になっていくんじゃないかというふうに思うわけでありますが、とりわけに、全国を見渡したときの質の確保という点については、やはり国がしっかり見ておく必要があるというふうに思っておりますので、その点をぜひ心得ていただきながら今後も進めていただければというふうに思っています。

 続いて、この研修について少しお伺いをしたいというふうに思います。

 大臣のごあいさつにありました「実践的指導力」とは、まさに、現在の教育現場でニーズとして求められているものの大きなものの一つだというふうに私自身も思っています。

 ただ、この実践的指導力を教員の方々に身につけていただこうと思ったときには、なかなかに難しいところをくぐっていかなきゃいけないなというふうに思っています。それがいわゆる座学で身につくものかといったら、そうではない。かといって、今の教育現場で、いわゆる徒弟制度のような、要するに先輩の先生の背中に学ぶといったところをそれぞれのクラスに追いまくられている中で期待するのはなかなか難しいとなりますと、限られた機会でそうしたある意味で体験、実践からつかむものを得ていただかなきゃならないとなりますと、それぞれの機会が大変大事になる。

 例えば、座学ではなくて、実践的な研修でありますとか、あるいは教員間の交流でありますとかといった、限られた機会での、ある意味での肝をつかむと申しますか、エッセンスをつかみ取っていただくという機会を重視しなきゃいけないというふうに思うわけであります。これまでも、いわゆる教員研修センター、独法という形でございますが、そうしたところでもそういったプログラムがある。

 ただ、これまでの機会のつくり方で本当に足りているか。それぞれの都道府県の教員研修のあり方とも関連すると思いますけれども、この実践的な研修あるいは教員間の交流、特に今は、教員研修センター、宿泊型の施設として要るかという話が出ておりますけれども、実際には、人間の交流ということでいうと、昼間のそういう研修というよりは、夜の交流でそれぞれに悩みも共有しながらというところが効果が大きいんじゃないのかなと、ノミニケーションが大好きな私としては思うわけでありますが、そうしたところも含めて、実践的な研修と教員間の交流というところを重視すべきだという点について御見解を伺いたいと思います。

鈴木副大臣 教員研修センターが今議論になっているところでございますが、この議論、まさに、どういう研修をしていただくのかというこの内容をどうデザインをする、あるいはそれは、英知を結集してこのプログラムあるいは知見を広く開発し普及をしていくという問題と、それから、国と地方公共団体がどう分担を、かつまた連携をしていくのかという問題と、今お話がございました施設をどうするのか、こういう議論をきちっと分けていかなければいけないと思います。

 そして、今御指摘の、もちろん教員間の交流ということも非常に重要でありますし、それから実践的なということでございます。もちろん、現場でのOJTもさることながら、今、城井委員の御指摘は現役の教員についてということが主だったと思いますので、そういうことで申し上げますと、教え子たちが巣立っていく先のまさに世の中あるいは現実の社会というものがどういうことであるかということについて、教員自身がやはり肌で実感をするということも非常に重要な現場だというふうに思っておりまして、そういう観点で、今行われております教員研修センターのあり方ということも、きょうの御議論も参考にさせていただきながら、しっかり検討していきたいというふうに思っております。

城井委員 ありがとうございます。

 では、実践的な研修がなぜ必要かというところを一点申し上げて、次に行きたいと思います。

 例えば、発達障害でありますとかあるいは不登校でありますとか、その兆しが子供たちの中に見えてきたときに、本来だったら、一番最初に見つけなきゃいけないのは現場の教員であるはずだというふうに思うわけであります。

 気がついた後に専門的人材の出番が来るんだろうというふうに思うわけでありますけれども、その最初の兆しを見つけるきっかけ、例えば、不登校の兆しがあった子供たちが二学期の初めに学校に出てきたときにその先生が何と声をかけるかで、いわゆる不登校のグラフの数字、よく文科省さんからも数字でいただくわけですが、その数字の動きというのは多分変わってくるんじゃないか。そういう兆しをつかむような研修が仮に現場の先生方が一回でも二回でもくぐっていれば、その効果というのは違うんじゃないかというふうに思うわけでありまして、それが、今教育現場で抱えている問題のそれぞれにそういう部分があるというふうに私自身は思っております。

 そうした点をぜひ御考慮いただきながらで、この機会を一つでも二つでもとふやしていけますようにお願いを申し上げる次第であります。

 次の質問に入りたいと思います。

 そこでこの研修でありますが、そうした貴重な機会をふやしていただけるだろうというふうに想像をするわけでありますが、ただ、実際に学校現場では、先ほどのとても忙し過ぎる状況というところもさることながら、教員の数自体がぎりぎりで、研修のお誘い、案内をいただきましたけれども、研修に出ようにも、受け持っている授業に穴があいてしまうがために、結果としてその先生方は行けないというケースがほとんどであります。それが教員の方々からの生の声としてあるというところを多く受けとめてきたわけであります。

 そこでお伺いしたいと思うわけですが、今回の概算要求で盛り込んだ五千五百人増、純増千五百名という画期的な部分があるわけですが、ただ、その人数をふやすところが、ある意味で、研修の機会を得ていくところを含めて、複数配置と申しますか、学校現場での連動、連携というところがどれぐらい図れてくるか。結局、人数がふえるといっても、そういう結果として研修をする機会を得られないぐらいのぎりぎりの状況が続くようでは、今のお話の説明だけではなかなかうなずきがたいというふうに思うわけであります。

 そうした、ある意味で研修への円滑な参加を見込めるめどが今回の教職員定数の改善で立つかどうか、また、今後の見通しのところも含めて、この点についての見解を伺いたいと思います。

鈴木副大臣 おっしゃるとおりでございまして、せっかくそういう枠組みをつくっても、まさにお話がありましたように、研修に行ってしまえばその穴を埋めなければいけない。ここをきちっとやらなければいけないというのは、もう本当に重要な御指摘だと思います。

 来年度の五千五百人増という要求の中では、まさに今お話しのございました研修等への対応のために、三百十三人の増員要求をさせていただいているところでございます。前年度が五千百七十一人でございますから、プラス三百十三とこういうことになりますが、もちろんこれで十分だとは思っておりませんで、さらに、これからの重要な課題として検討を深めてまいりたいと思っております。

城井委員 ありがとうございました。さらなる取り組みをお願いさせていただきたいというふうに思います。

 それでは、少しテーマを変えまして、奨学金についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私自身、大学に通いました折に、奨学金のおかげさまで卒業までこぎつけることができました。これがなければ、恐らく大学で学ぶ機会はつかめなかっただろうというふうに自分自身では思っています。バイトではとても間に合わないような学費、生活費というところがあったというのが現状でありました。苦しい時代こそこの奨学金の役割は大きいというところでは、現在の我が政権の取り組みは拡充という方向で、これは大変重要な部分があるというふうに思っているところであります。

 ただ、一点気をつけておかねばならぬと思っていることがあります。

 それは、拡充拡充という方向が大きく打ち出されていくときに、国民の間でのその受けとめが、いわゆる貸し出す、差し上げるという方が先に立って、その中に、例えばただ乗りをしている人がいないか、不正をしている人がいないか、具体的に申しますと、貸与の奨学金であるにもかかわらず、その返済ということ、経済的な余裕があるにもかかわらず逃れている人がいないかという点についてきちんとチェックをしているかどうか。この、不正についてのチェックをきちんとしてきたかどうかという点が、あわせて国民の目からは見られているというのが現状であります。

 その意味では、今からお伺いしたいのは、貸与の奨学金の返済についてであります。

 借りたものは返すというのが世の中のルールであります。概算要求では、例の無利子の奨学金の拡充などが事項要求として盛り込まれるということでありますけれども、これまでの貸与の奨学金の中で返済された資金というのは、こういった将来の奨学金の拡充の原資であるはずであります。そうしたところをやはり我々は改めて自覚をしておかねばならぬというふうに思うわけであります。

 ただ、これまでの返済を催促あるいは回収を進めていくという取り組みのときに、いろいろ御説明を文部科学省からも伺ってまいりましたが、一点、どうしても解せない、やはり今後の取り組みが要るなというふうに思っているところは、いわゆる返済猶予の制度がありながら、その部分の活用はせずに、未回収のまま何カ月も、そして一年たってもという形で放置されてきた事例というのが相当分あるんじゃないかということであります。

 いわゆるサービサーによる回収でありますとか、あるいは法的措置でありますとか、そういった最終手段に近いところの腕を振るうことは簡単でありますけれども、その中できちんとそういう返済猶予の仕組みの手続をくぐったかどうか、そこの把握すら怪しいというのが文部科学省からの報告でありました。

 その意味では、この返済猶予の制度の活用という部分についての改めてのチェックを現在の新政権のもとでやるべきだというふうに思うわけでありますが、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。

鈴木副大臣 奨学金の重要性についての御質問でございました。

 御指摘の返済猶予制度の周知が不十分でないかという御指摘でございますが、これについては、学生支援機構を通じまして、債権回収業者、あるいは、そもそも借りている者に対して周知徹底ということはきちっとやっていきたいと思っております。

 ただ、ちょっとその前提で、若干報道等々によって世の中の認識がややミスリードされているのではないかというふうに思います。と申しますのも、現行も、回収率を民間の要回収の考え方の基準に当てはめていきますと、九六・六%以上が回収されているということになっております。

 では、その返済ができなくなっている要因というものを見てみますと、例えば、借りている額の、例えば高校卒業の場合は五・三%がその高校の分が借りておられるわけでありますが、それがいわゆる延滞ということになってしまいますと、二八・六%が高校分が占めるとか、あるいは、これは旧日本育英会分でありますが、日本学生支援機構分で申し上げますと、一%が高校分であるにもかかわらず、延滞に占める比率は一二・七%ということで、卒業後の就職、あるいはそこでの年収、収入、こうしたやはり返済能力の問題が根底にあるということは、委員はよく御理解をいただいていると思いますが、文部科学省もきちっと御説明、国民の皆様への御理解をさらに頑張っていかなければいけないということをあわせて申し上げたいと思います。

城井委員 ありがとうございました。

 そうした取り組みをさらに進めていただきたいというふうに思いますが、問題点だけあと少し指摘をさせていただきますと、今、奨学金返済相談センターの相談内容というところで、例えば返還期限の猶予相談というところで、二次請へ転送された件が約一万件弱あるわけでありますが、その後の取り扱いについてきちんと状況を把握できていないというのが文部科学省の状況でありましたし、また、これまでの前政権の取り組みでは、住所不明者に対する調査が徹底されておりませんで、約四万人がいまだに不明というのが、これは文部科学省からの報告でありました。

 こうした部分、これまでに把握が十分でないところについては、新たな政権での情報把握ということをぜひ今後進めていただきたいということを要望として申し上げて、次の質問に入りたいというふうに思います。

 次に、科学技術についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 大臣のごあいさつの中で「先端科学技術によるイノベーション創出は、」ここから中略をいたしますが、「我が国の生命線」という極めて重い表現でおっしゃっていただきました。また、「何よりもまず、科学技術の担い手となるすぐれた人材を育てることが重要」ということでもおっしゃっていただきました。

 そこでお伺いしたいんですけれども、科学技術の振興並びにそれに携わる人材ということでお伺いをさせていただきます。

 まず、科学技術の振興についてでありますが、特に、最先端の科学技術の開発についての認識についてお伺いします。

 私は、この先端科学技術というのは、次の鶏を生むための卵だというふうに思っています。ところが最近は、昨今の議論では、この卵を産む鶏をとりあえず先に食えという趣旨の議論が大変多いというふうに思っています。つまり、目先の費用削減を行うことが先じゃないかという話が出てくるわけでありますが、ただ、それをやってしまうと、その場の空腹はしのげるかもしれませんけれども、次の卵はもう手に入らないわけであります。

 科学技術というのは次の次の果実を得るための投資であるはずだと。だとするならば、特に、今なかなかに振りかえられない形になっているのが純粋基礎科学という分野になると思うんですけれども、こうした部分への我が国の投資、これからさらに進めていく必要があるというふうに私は思うわけですが、この点についての見解をお聞かせいただければと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 科学技術、そして基礎科学に対して大変御理解ある御発言で、ありがとうございます。

 所信でも述べましたように、資源のない国日本として国際社会の中でしっかりと歩んでいくために、このバックボーンとして科学技術が、まさにバックボーン、柱であることは言うまでもないと思います。そして、そういう中で、とりわけ脚光を浴びる実用間近な技術も大変大事なのでありますが、それを支えるという意味で、地味な基礎科学分野が一番大事である。そしてそれは、地味であると同時に、非常に長期間かかるということでもあります。

 そういう意味で、気がつきますと、主要国のいわゆる研究開発費自体の中で日本は非常に少ない。加えて基礎科学が少ない。そして、研究開発費の中でいわゆる公のお金が投資に占める割合が少ない。国際社会で大きな地位を占めているアメリカやEU、あるいは急成長している中国、韓国に比べても非常に劣っているという状況であります。

 総合科学技術会議の議論等々でも、五年計画をもって一定の枠で推進しようということでこれまでも取り組んでこられました。そういう中で、引き続き基礎科学力の強化ということで、いわゆる科研費を中心とした部分に関して、重点的に今回の予算要求としては配分をしたつもりでございます。

 そういう意味では、今後とも、総合的かつ体系的な基礎科学力強化ということに取り組んでまいりたいと思います。

城井委員 ありがとうございます。

 今のお話で意を強くするわけでありますけれども、国民からの視線は少々厳しいものがあるというふうに思っています。

 例えば、今回も予算計上されておりましたいわゆるスーパーコンピューター、例のあの行政刷新会議などでも厳しいお声が出たりしておりました。その部分についても、これまでの計画でそもそも目指したところと少しずれてきているところもあるんではないかというふうにも感じておりまして、そうした意味では、今回の新政権のこの機会に、これまで進めてきた計画自体の本来の趣旨が守られているかどうかというところの抜本的な見直しを含めた部分が必要だというふうに思っております。

 またこの件については次の機会に譲らせていただくことにしたいと思いますけれども、その点についてもぜひ御検討をお願い申し上げまして、私からの質問を終わりとさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、石井登志郎君。

石井(登)委員 民主党の石井登志郎でございます。

 去る八月三十日の総選挙で初当選をさせていただいた、ぴかぴかの一年生でございます。今回の鳩山政権の発足は、まさに私たちがつくったんだ、そうした思いでおりますが、これからの川端文部科学行政に関しましては、私たち新人の文部科学委員がしっかりと支えていくんだ、そうした気概で初質問に立たせていただきたいと思います。何分勝手がわからない点もあろうかと思いますが、その部分は御容赦いただければと思います。

 まず冒頭に、私のバックグラウンドを一言で申し上げたいと思いますが、私は兵庫県の西宮市、芦屋市というところが選挙区でございます。甲子園球場がすぐ出てくるわけであります。真夏の高校野球もやっておりますけれども、それ以上に、若年層比率が一五・四%と、全国の一三%よりも格段に高い比率のある、大変若い町であります。また同時に、文化の面でも、阪神間モダニズムという言葉がありますが、谷崎潤一郎の「細雪」のあの桜並木の舞台となった、そういう文化の薫り高い町でもございます。

 そうしたバックグラウンドの中で、文化そして教育行政をつかさどる文部科学委員として職責をいただき、そして質問の機会をいただきましたこと、委員長並びに理事の皆様方に感謝を申し上げて、質問に入りたいと存じます。

 本日は、川端大臣の所信に関する質問ということでございましたが、新しい鳩山政権の中でどのような子供たちを育てていくのか、そのことについて質問させていただきたいと思います。

 所信の中で大臣が、近年の子供たちは、基礎的な知識は身についているが応用力はない、人への思いやりや規範意識など社会性が低くなるといった問題が指摘される旨お話しでありましたが、それとあわせて、どんな子供を私たちはこれからの時代に対して育てていくのか、大臣の熱き思いをお聞かせいただければと思います。

川端国務大臣 石井議員にお答えいたします。また、これからもぜひとも御活躍いただきたいというふうに思います。

 子供が健やかに育って立派な大人になってほしい、これはひとしくだれもが願うことであります。そういう中で、いわゆる定量的あるいは感覚的な状況も含めて申し上げますと、今お触れいただきましたように、基礎的な知識、例えば台形の計算はできるけれども、地図があってそこに台形の形があったときに、この面積をといって数字を出すとよくわからないというふうな傾向がややあるとか、あるいは、社会性、規範意識という部分はやはり公共意識を含めて少し劣っている。それから、大分戻ってきましたけれども、今の小中学生の親御さんが子供のときよりは体格はいいけれども体力が劣っているというふうな状況があります。

 そういうことを総合的に、弱点といえば弱点ですので、そういうところをカバーするような教育をしていきたいということでありますが、トータルで見ますと、子供がいろいろな、例えば不登校やいじめや、場合によっては自殺というふうな大変悲しいことまで起こしている状況の中には、背景もいろいろありますけれども、やはり子供の生きる力が随分弱くなってきている。一人で抱え込んで、悩んで、苦しんで、途方に暮れてどうしようもなくなる。それを、いろいろな方法で、これも所信で申し上げましたから重複は避けますが、いろいろな意味で子供が心を開ける場をどうしてもつくっていかなければいけないと同時に、そういうある種のバリアがなくなっていくという子供の環境をつくってあげたい。学校へ行くのは楽しいと思ってほしい。

 ここにいるみんなは選挙をやる人間でありますので、朝早くいろいろな街頭とか駅に立つと、小学校一、二年生の子供が見えますと、候補者でありますけれども、おはようと言ってくれるのがだんだん元気がなくなり、高校生ぐらいになるとちょっと恥ずかしいという部分もあるのかもしれませんが、気持ち的に何かちょっと元気がないなというのが皆さんも感じられると思うんですが、やはり、学校は楽しいというところにしてやりたいというのが私の思いであります。

石井(登)委員 ありがとうございました。

 今、大臣から、生きる力、そうしたまさにワーディングもいただいたわけでありますが、その中で、大臣所信の中でもおっしゃっておられます「子供の好奇心をかき立てるような工夫や、さまざまな体験を通じて子供がコミュニケーション力を高める教育を行っていくことが必要」、このことで私が一番ぴんとくるのは、いわゆるICT、情報技術を使った教育、これの活用が、こうしたことを達成する上に大いに効果的なんではないかと思うところであります。

 それについてお伺いをいたしますが、一方で、さきの行政刷新会議、事業仕分けにおいて、文科省、総務省、それぞれ所管するICT教育の関連事業に対する評価、なかなか厳しい評価でありました。また、現場の声を聞く限り、例えばさきの補正予算で計上、そしてもう西宮市では入っておりますが、購入に至った電子黒板、一つ七十万円ということであります。これに関して、大変有益だというような意見もあれば、同時に、なかなかソフトウエアもない、使い勝手も十分よくわからない、七十万円あるんだったらほかのものに使ってもらった方がよかったんじゃないか、いろいろな声があろうと思います。

 そうした中で、しかし、ICT機器を活用するためにいろいろな環境も整えなければいけない。大いなる可能性があるところだけれども、まず、ここで政権交代を一度果たしたわけでありますから、今日までのICT教育というものに対して、その今日までの政策に対しての評価をどのように新しい川端体制としてとらえていらっしゃるか、今日までの評価をお聞かせいただければと思います。

高井大臣政務官 お答え申し上げます。

 おっしゃるとおり、まさに我が政権、大臣も何度もお答えしておりますが、ハードからソフトということへ、まさにパワーにおいても、武力、ハードパワーから、知力、ソフトパワーというのを育てるという意味から、まさにいろいろな点からの見直しをしているところでございます。

 そしてICTの機器においては、まさに前政権が、平成二十一年度補正予算で電子黒板やデジタルテレビ、コンピューター、校内LAN等ハード面の整備を中心にやったものでございますけれども、我々の鳩山新政権におきましては、電子黒板等に対しましても、まさに教育現場においてこれを最優先に置くべきものなのかどうか。先ほど来質疑にありましたとおり、もっと教育現場には人が必要であったり、生きる力を養うためにさまざまな取り組みをしている。そういう点を支える点からもさまざまな見直しが必要だということで、検討いたしたところでございます。

 もちろん、ICTを活用して指導できる教員の体制、電子黒板というものは大変有効なものではございますけれども、それを使う先生や効果的な授業のあり方等、教育効果、デジタル教材の充実等において、重ねてやはり両面からやっていかなければならないものだというふうに思っております。

 これからも、もちろん学校自体そのもの、耐震化等のハード面も大事でございますが、やはり、より一層現場の声を重視しながら、ソフト面、ヒューマン面に焦点を当てて、教育の情報化等のさらなる推進を図ってまいりたいと思っております。

石井(登)委員 ありがとうございました。

 これから大いに見直していただいて、その見直しの方向性でありますが、私は、あくまでICTという新しい技術をしっかりと活用していくというのが、これがまさに大前提だと思います。新しい技術は、まさに英知を絞って最大限フルに活用して大きな成果をどんどん形にしていく。その未来形の一番理想形の一つが、私が考えますのが、教科書のデジタル化ということだと思います。

 このICTの特徴を生かせば、例えば歴史の教科書の膨大なデータを、一つのCD―ROMでも結構ですし、もしくは情報のハードの中に詰め込むということもできます。理科の実験をイメージ化することもできれば、算数ないし数学で、この子供がどういう間違いを犯すのかというようなことを先生が瞬時に解析をすることもできる。発達障害の教育にも大いにデジタルの教科書というのは期待がされる。海外では、韓国などがどんどんどんどんこれは進んで、数年先にはデジタルの教科書をつくってしまおうというようなことで、国家を挙げて取り組んでいるところであります。

 さきのネガティブな面も今日までの見直すべきICT教育の政策についてはあるけれども、しかし、これから先、この情報技術というものを使って、大いなる可能性、そして子供たちが学びに好奇心をより醸し出していける、好奇心を感じて学んでいけるようなそうしたことに関してデジタル教科書の普及ということを進めていってはどうかと思いますが、それに関しまして、現在の検討状況そして今後の見通しについてお聞かせいただければと思います。

高井大臣政務官 まさに御指摘ございましたとおり、デジタル化することによってさまざまな新しい教育のやり方が取り入れられるというふうに思っています。それには、先ほど来話があった電子黒板等も、行く行くは、本当は各教室に一台ぐらい入るようになればすべてのデジタル教材を使えるということにもなりますし、両方の面があると思っています。

 我が文部科学省といたしましても、教科書デジタル化に関する取り組みとして、とりわけ、障害のある児童生徒のためにデジタルデータの活用を進めておりまして、拡大教科書等を作成するボランティア団体等に教科書デジタルデータを既に提供をしております。その教科書デジタルデータを、拡大教科書や点字教科書だけに限らず、音声読み上げソフトや電子教科書などの多様な媒体に展開していくという、ワンソース・マルチユースということの実現に向けて調査研究を行っていきたいというふうに思っております。

石井(登)委員 ありがとうございました。

 同時に、デジタル教科書のみならず、教科書周りの副教材、そして、副教材と言われるまでに至らないようなさまざまなソースに関して御検討いただきたいと考えるのが、これまた著作権の問題です。もちろん、教科書そのものはこのまま今の法のもとにおいてつくっても大丈夫というようなことであろうと思いますが、しかし、さまざまな副教材、いろいろなものに関しては、将来的には日本版フェアユースの検討というようなことが必要なのかなと思います。

 あわせて、大臣もおっしゃっておられますが、「時代の進展に対応した著作権施策の推進等に努め、」というふうにおっしゃられておりましたので、著作権の問題に関して一つ御質問させていただきたいと思います。

 先般、さきの国会で著作権法改正がされて一定の前進が図られたところでありますが、一方で、出版界において、いわゆるグーグルショック、つまり、インターネット検索大手のグーグルと全米作家協会などによるグーグル社の書籍全文のデジタル化事業をめぐる和解が我が国においても大きな波紋を呼んでいます。この三年越しの訴訟は、先週十三日に新たな和解案が示されて、日本の出版物に対してはサービスの対象から外れるということで、とりあえずは我が国にアメリカンルールが押しつけられるということは回避された。これはよかったと思います。

 ただ、情報技術というのは、日進月歩、私たちの想像よりもはるかに速く進展します。今は無理だと思っているようなことが数年のうちに実現するかもしれない。例えば今回の書籍のデジタル化、今回はそこまででありましたが、これから先は、デジタル化された書籍がワンクリックで翻訳をされたりというようなこともあるかもしれません。そこまでのボーダーレスの話も非現実的な話ではないわけでありますが、そうしたときに、アメリカンルールそして我が国のルール、国際ルールの中でどうしたルールを今後確立していくのか。

 我が国でも、国会図書館を中心に新たなプラットホーム構築に向けて大いに協議をされているようでありますが、より先を見越して、本質的には、我が国のみならず、著作権者の権利がしっかりと守られ、そのことが質の高い出版分野、創作活動の維持発展に寄与するためにも、我が国が積極的に役割を果たすことを期待するところであります。

 これに関しまして、グーグルの和解に関して、今、大臣もしくは三役の方の御所見と、そして、私が申しましたようなこれから先のボーダーレス化に向けての見通しもしくは取り組み、検討、決意も含めてお聞かせいただければと思います。

中川副大臣 グーグルの問題については先ほどもう既に御説明いただいたとおりなんですが、政府としては、私人間の訴訟であるということから直接の干渉を避けてきたわけでありますが、これはしかし、そのまま放置をしておくということは、我が国の新たなシステムを構築していこう、そういう途上の中でこれはまずいんじゃないか、やはり、我が国としてはどういう形でこの法制度を進めていくかということについてはアメリカに対してもしっかり主張をしていくべきだろうということで、外交ルートを通じましてそのことを含めて伝達をしたということであります。

 その結果ということでも実際はないんですが、向こうのペースで和解が成立をして、さっき御指摘のとおり、アングロサクソン系とそれからフランス語だったと思うんですが、これについてのみやっていくということで、その他は関与しないということで日本の場合はそこから外れたというような解釈はされているんですが、しかし、考えようによっては、また日本の国内でも同じような問題、いわゆる日本語を対象にした同じような問題が出てくる可能性がありますので、これはそのまま放置するという形じゃなくて、積極的にアメリカと話し合っていこうということであります。

 ただし、日本の場合は、さっき御指摘のように、国会図書館ですべてをアーカイブ化していくということ、これをデータベースにしながらシステムを構築していくということでありますので、そこのところの整理の仕方も含めて、これからしっかり対応をしていきたいというふうに思っております。

石井(登)委員 ありがとうございました。時代の進展にぜひおくれずに、私たちもぜひ協力してやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 先ほど城井委員の質問にもありました、次世代スーパーコンピューターについて少し見解をお聞きしたいと思います。

 大臣の所信の中で、我が国の教育に対する公財政支出や研究開発投資の政府負担は先進諸国に比べて低い状況にあり、今後、先進諸国の水準を目標として充実していく必要がある、そういったことや、人類の英知の創出、蓄積やイノベーションの創出の基盤となる基礎科学については確かな研究体制を構築するというふうにおっしゃられておるところであります。先ほども城井委員おっしゃっておられましたが、一方で、先日の行政刷新会議の事業仕分けの中でこのスーパーコンピューターも取り上げられたところでございます。

 そうした中で、私としては、例えば、今のスーパーコンピューターの経済効果が三・四兆円であるとか、もしくは、さまざまな経済効果で六千億円、八千億円というようなことがいろいろ言われておるわけであります。しかし、私も文系人間でありますから、なかなかそうしたところがぴんとこないわけであります。

 昨日も文科省の担当の方から説明を受けました。詳しく説明を受けると、少しずつなるほどなるほどとわかってくるわけであります。今日までであれば七百億円かかるジェットエンジンの開発が、そうしたスーパーコンピューターを使うことによって、今までのプロセスが割愛でき、大体三百五十億円で済むだとか、もしくは自動車の衝突実験、一回四百万円ぐらいかかるのを、年間三千回ですか、やっておるというようなことだということで、これがデジタル上でできれば大変な経済効果が出る、六年間で二百四十億円というようなことで昨日は御報告をいただいたところであります。

 一方で私自身は、行政刷新会議の事業仕分け、これは私たちの政権のまさに大きな大きな象徴でありますから、これの意見も十分に反映をさせるべきだと思います。その中で、いろいろと御検討をいただいて何とか前向きな結論が出るようにと思うわけでありますが、例えば、先ほど申し上げたような自動車の衝突実験で二百四十億円の効果が出るのであれば、これは成功報酬というわけじゃありませんけれども、それに関して何か民間の技術開発がうまくいったら、一割もらったら二十四億円、ジェットエンジンで三百五十億円節約できたら三十億円、そんなふうにいかないかもしれませんけれども、そうした新たなスーパーコンピューター利用のスキーム、料金徴取の形式は考えられないのかとか、もしくは、これからさらに七百億円かかるということでありますが、これが極端な話、半分でも同等のものができないのかとか、いずれにしましても、文系人間であるとか一般の有権者に対しても、なるほどなるほどというような説明をこれから年末までにしていただくことによってこの先行きが決まっていくものと思います。

 そうした点に関しまして御所見をお伺いできればと存じます。

中川副大臣 実は私も文系人間でありまして、あの事業仕分けに参加しながら、改めて、こうした大規模プロジェクト、あるいは研究開発そのものもそうなのでありますが、その必要性、そしてそれがもたらす効果というものをいかに一般の国民に説明していくかということ、これの難しさ、あるいはまた、それについて文科省としてもその体制がしっかりできていないという反省をしているところであります。

 先ほど、その効果については、それぞれ既に私が答弁させていただく分も含めてお話しをいただいたということでありますが、今、環境問題、特に、日本も二五%のカットを表明してこれからリードをしていこうということなんですが、この問題のベースになっている科学的知見というのが、実はこの日本のスーパーコンピューターのシミュレーションから出てきておりまして、そういう実績の中で今回の議論もあるわけであります。

 そのほか、いわゆる省エネ半導体の開発であるとか、ウイルス共同解析で創薬に貢献をしていくということ、あるいは、これからのいわゆるコンピューターの開発自体に先進的に、先端的にこの分野が先導していって、それが周辺の開発に対して波及をしていくというその構造、そんなものをさらにしっかり説明をしていかなければならないというふうに思っております。

 それから、さらに申し添えれば、今の段階で終わったところは、設計の部分が終わったということでありまして、これから入っていくのがそれこそ本体の部分であります。それが凍結という話になると、恐らくこの事業そのものが、凍結ということじゃなくてもうあきらめてしまうというような選択になってしまうということでありますので、そのことも含めて、トータルで、日本のいわゆる科学技術の戦略の中にしっかり位置づけながら議論をしていきたいというふうに思います。

 中のコスト、それだけ本当にかかるのかどうかというのは、これも改めて精査をしていくということも含めてお話をさせていただきたいというふうに思っています。

石井(登)委員 ありがとうございました。

 次世代スーパーコンピューターは、兵庫県神戸市、私の選挙区の隣の町でありますが、そうした神戸市、そして兵庫県も今日まで頑張ってきていただいた部分もありますから、ぜひ、それに報いる頑張りを年末までしていただければと思います。

 同時に、事業仕分けにおいて指摘を受けたあのSPring8という施設が、これまた兵庫県の西播磨にあります。こちらは、運営費八十六億円を三分の一ないしは半分というようなことでありますが、こちらに関しても、一般国民にわかるようなそうした形での提案、そして、文科省の方でよりそうした検討をしていただいて、前向きな結論が得られるように、大臣を初め三役の皆さんに頑張っていただきたいとお願い申し上げるところでございます。

 それでは、最後の質問に移らせていただきたいと思います。

 最後に、文化芸術に関してお伺いをいたします。

 大臣所信の中でも文化芸術を積極的に推進すると言及されておるわけでありますが、政権もかわった、文化政策も変わった、そう実感できることを多くの国民の方々が期待しておるところでございます。文化そして文化財の保護、活用について、基本的な姿勢についてお聞かせいただければと思います。

川端国務大臣 文化芸術が大事であることは言うまでもありませんし、まさに、私たちはこれを大事にするというときに、トータルとして、ある意味でいうハードからヒューマンというキャッチコピーがありますが、これの一つのシンボルでもあろうというふうに思います。心豊かな感性を持つ、自然に対して感動を覚える、そのことは人格形成の一番大事な部分の要素を占めているということは、もう言うまでもありません。

 そういう中で、非常にまさにメディア的に注目をされてしまったんですが、メディア芸術総合センターという事業が補正予算で計画をされました。メディア芸術というものをしっかりと、日本のアニメあるいはゲーム、漫画、CG等々を日本の非常にすぐれた技術と文化として発展させるということは極めて大事なことであり、国はしっかり応援しなければいけない。

 しかし、そのときに、やはり私たちが応援する、政府が支援するというのは、そういうよさを評価する中で、人のつながり、人材の育成、そして、チャンスを得て能力が発揮できる場の提供等々を充実すべきで、拠点をつくってそこに組織をつくり運営するのに、組織の維持費と運営費にきゅうきゅうとすることが起こってはいけないということで、大転換をいたしました。

 そういう意味で、民主党の文化芸術政策の一つのシンボリックな出来事であったのではないかというふうに思います。

 やり方の問題ですので、当然ながら、それぞれの時代にそれぞれの政権が文化芸術を大事にしていこうと一生懸命施策をとってこられたことは間違いありませんし、過去の歴史の中で大きな文化の継承を引き続き熱心にやっていくことは、変わりないと思っております。

石井(登)委員 ありがとうございます。

 その中でいろいろな新しい施策というようなことも考えられるわけでありますが、一つお伺いをさせていただきたいと思います。

 私の選挙区は芦屋というところで、お金持ちといいますか、昔お金持ちだった人も多いわけであります。そうした方が立派な例えば絵画を持っている。それを国立美術館ないし芦屋の市立の美術館に寄贈する際に、それは税金がかからぬようになっているわけでありますが、一方で、例えば白鶴美術館というようなもの、もしくは、岡山県であれば大原美術館というようなもの、こうした国公立でない美術館というのも文化の担い手として我が国には存在しているわけでありますが、そうした私立というんでしょうか、そうした美術館に対しては今申し上げたような施策が遡及しないというふうに聞いたところでございます。

 これはつまり、文化の担い手は国公立でなければいけないのかというような、これはある意味本質論にかかわるわけでありますが、私の考えとしては、私立であっても、今でもそれなりの要件を満たせばそのようになるということであるわけでありますが、より広く、そうしたお金持ちであった人が贈与をするのであれば、国公立以外のところにも、うちの近いあそこに渡したいなというようなことが可能になるような新しい施策はできないものかどうか、御所見をお聞かせいただければと思います。

中川副大臣 実は、国公私立を問わずという前提になっておりまして、公益法人あるいは財団法人に対する優遇措置というのも国公立と同じような形で今あるわけなんですけれども、実際、今の程度の優遇措置というのが十分なのかどうかということについては、これは改めて、その範囲も含めて我々も点検をしていきたいと思いますし、広げていきたいというふうに思っています。

石井(登)委員 ありがとうございました。

 時間も参りましたので、質問を終わらせていただきます。

田中委員長 次に、瑞慶覧長敏君。

瑞慶覧委員 民主党の、沖縄選出の瑞慶覧長敏でございます。

 生まれて初めてのこういう場での質問でございます。皆さんの御協力をもちまして滞りなく進めてまいりたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 まず、川端大臣を初め政府三役及び文部科学省の職員の皆さんが、二〇一〇年度の予算編成、そしてまた事業仕分け等において毎日御苦労なさっていることに心より敬意を表したいと思います。そういう御苦労の中とは存じますが、本日は、大臣を初め文部科学省の皆様に対しまして忌憚のない御質問を率直にいたしますので、簡潔かつ明快な御答弁をお願い申し上げます。

 本日は、主に三つの点に絞って質問させていただきます。教科書検定の問題、そしてもう一つは、部活等にかかる遠征費の予算の問題、そしてまた、日本における外国語教育の問題について質問させていただきます。

 まず、教科書検定の問題でございます。川端大臣にお伺いをいたします。

 教科書検定という制度がございますが、その制度の目的等について大臣の御所見をお聞かせください。

川端国務大臣 ありがとうございます。委員もぜひとも御活躍いただきたいというふうに思います。

 教科書検定制度でございますが、教科書の著作それから編集は民間にゆだねようということでございます。教科書をつくり、そして編集、著作を民間がやっていただくということで、それぞれの発行者が創意工夫をして、いい教科書をつくっていただきたい。これが、もともとある考えの基本にありました。

 しかし、そうだったら何でもいいのかということになります。そういう意味で、文部科学大臣が教科用図書検定調査審議会の専門的な審議に基づいて教科書として適切か否かを決定し、これに合格したものを教科書として使用することを認める制度が検定制度であります。

 そういう意味では、教科の主たる教材としての教科書の重要性にかんがみて、客観的かつ公正で教育的配慮がなされたものとなるように実施していくということで、教育における全国的な教育水準の維持向上、二番目、教育の機会均等の保障、三番、適正な教育内容の維持、四番、教育の中立性の確保などの要請にこたえて検定を行っているところでございます。これが趣旨でございます。

田中委員長 瑞慶覧長敏君、挙手をしてくださいね。

瑞慶覧委員 わかりました。

 それでは、教科書検定等の仕組みについてですけれども、高井政務官からでも結構ですので、よろしくお願いいたします。

高井大臣政務官 お尋ねのあった教科書検定の仕組みについてでございますけれども、教科用図書検定規則等に基づいて行っております。

 まず、教科書発行者から検定の申請を受けまして、文部科学大臣が教科用図書検定調査審議会に諮問をいたします。

 その次に、審議会で、検定時点における客観的、学問的成果を踏まえた上で専門的、学術的な審査が行われ、教科書として適切か否かを審査いたします。修正が必要な場合には、合否の決定を留保して、検定意見を通知するということになります。

 なお、検定意見の原案である調査意見は、教科書調査官が作成して、審議会に提出されます。

 そして最後に、検定意見に基づき修正が行われた申請図書について再度審議会の審査に付し、その答申に基づいて文部科学大臣が合否の決定を行うという手続でございます。

 なお、教科書検定における客観性や公平性、公正性を担保するために、文部科学省におきまして、検定における審査基準として、あらかじめ教科用図書検定基準を定めて、告示をしております。

瑞慶覧委員 ありがとうございます。

 審議会という制度があるということでございます。それに基づいて大臣の方が最終的には決定をするということでございます。

 そこで、三年前、二〇〇六年度の高校日本史の教科書検定において、いわゆる白表紙本の段階で、沖縄戦の集団自決について、日本軍の命令で起きたとの趣旨の記述が削除されました。そして、そのことによって、沖縄の中における識者や関係者だけではなく、沖縄県民それから教育に携わっている人々の間で大変な問題となりました。沖縄戦を体験した人間にとってみたら、日本軍の命令で起きたというのはいわゆる常識の範囲内だったんですね。それが削除されるということは、沖縄にとってみたら本当に大問題だったんですね。

 したがって、沖縄戦をめぐる検定とあわせて、そして、教科書検定それ自体のありようが今問われているわけでございます。

 この件について御質問する前に、関連して、実は、その二〇〇六年度の前にも一度そういうことがあったんですね。大分前、二十七年前ですけれども、一九八二年六月の検定、高校日本史の教科書検定の際、日本の中国への侵略、この侵略という言葉が実は進出と書きかえられたということがございました。これは全国で問題になりまして、抗議、あるいは記述の回復を求める声が高まりました。そしてまた国際問題にもなりました。そういう圧力もあったのかどうかですけれども、国際問題となったことも相まって、侵略という表現にまた戻されたんですね。

 そのことに関しては文部省の方では御存じでしょうか、どなたでもいいですけれども。

高井大臣政務官 事実関係も含めて申し上げたいと思います。

 御指摘あった昭和五十七年に、昭和五十六年度高校教科書の検定結果を公表いたしましたところ、日中戦争における日本の侵略を進出と修正させているとの報道がなされ、これを契機に中国、韓国から、歴史教科書の記述の修正を求める申し入れがございました。

 政府において検討を重ねた結果、「政府の責任において是正する」旨の官房長官談話を発表いたしましたのが昭和五十七年の八月でございます。文部省として、官房長官談話を受け、教科用図書検定調査審議会への諮問、答申を経て、教科用図書検定基準を改正をいたしました。昭和五十七年十一月。いわゆる、このとき近隣条項が追加というふうになったわけでございます。

 この教科用図書検定基準をもとに適切にそれ以来検定を行ってきたところではございますけれども、御指摘のあった沖縄戦に関しまして、そのちょうど同じ昭和五十六年に申請された高校日本史教科書のときに、八百人の沖縄県民が日本軍の手により殺害されたという記述に対し、検定意見によって記述を裏づける資料等の提出を求めたところ、発行者において修正がなされ、当該記述が削除され、合格したというものでございます。

 その後、昭和五十七年九月に沖縄県議会において採択された、記述の復活を求める意見書が提出されました。それを受けて、また昭和五十八年に改定検定の申請がなされた高校日本史教科書においては、沖縄県民が日本軍に殺害されたとする記述には検定意見が付されず、合格となったという経緯でございます。

瑞慶覧委員 ですから、検定のことに関しては、沖縄の中では、きちんと事実を教科書には載せるべきだという声がずっと続いているのが現状でございます。

 そこで、委員会の理事会に御了承いただきましてそれぞれの委員の皆様のもとに資料をお配りしておりますので、ごらんになっていただきたい。

 これは、一九八二年の高校日本史の教科書検定の際に、沖縄戦において日本軍によって住民が虐殺されたとの表現が削除されたことを取り上げた、地元の沖縄タイムスという新聞の記事でございます。一九八二年七月四日付でございます。

 この書きかえ問題は、つまり、侵略を進出と書きかえたことは国内で大きな問題になったんですけれども、沖縄戦の住民虐殺の方は残念ながら本土では余り問題とならなかったんですね。そこで、本日、あえて当時の沖縄の地元紙をお配りしたのです。

 それはともかくとして、当時の文部省はなぜ日本軍の住民虐殺の文言をあえて書きかえさせたのか。その理由についてお伺いしたいと思います。

高井大臣政務官 理由についてでございますけれども、この記述に対して、検定意見によりその記述を裏づける資料の提出を求めたというところ、それが出てこなかったため、発行者において修正が行われ、当該記述が削除され、合格したというものでございます。

瑞慶覧委員 資料がなかったということですけれども、実は資料はあったんですね。ここに持ってきたのが、「沖縄県史」という沖縄県がつくった当時の資料で、たくさんの証言が載っているもので、当時の文部省はこれは資料ではないという位置づけをしたんですけれども、しっかりとした資料だと私どもは思っております。

 それで、もう一つお伺いします。

 日本軍の中国への侵略を進出と書きかえ、また、沖縄戦における日本軍による住民虐殺を削除しましたが、その部分は直されたということで、侵略は進出になって、進出からまた侵略になった。しかし、住民虐殺に関してはなかなか今日においてもまだ載っていないということでございます。

 それで、今回、二〇〇六年度の高校日本史の教科書検定の問題の質問に移らせていただきます。

 二〇〇六年度の検定では、先ほど申し上げましたように、沖縄戦において起きました住民の集団自決は史実として日本軍の命令によるものであったことは、さまざまな調査あるいは体験者の多くの証言によって明らかになっているのですけれども、文部科学省の検定担当者はその表現を削除しております。もちろん、その二〇〇六年度に関しても、沖縄県内でもこの処置に抗議する声が高まりまして、その年、二〇〇七年の九月二十九日には、県内で十一万人が参加した、検定の撤回を求める県民大会が開かれました。

 そこでお伺いしますけれども、日本軍の命令によるという表現、それがなぜ削除されたのか。その理由を御説明いただきたいと思います。

高井大臣政務官 この件につきましては、先ほど来、文科省が認めなかったとか認めたというお話が少し出ましたけれども、改めて申し上げますが、文科省としては、どの資料を認めるか認めないかという話は省としてはかかわることができません。それは審議会に任されておりまして、教科書検定自体そのもの、制度自体が、検定時点における客観的、学問的成果等に照らして、教科用図書検定調査審議会のその審議に基づいた上で欠陥を指摘するということを基本というふうにしております。

 その上で、この平成十八年度の高等学校日本史教科書の検定における、沖縄戦に関する今ほど来指摘があった事実につきましては、最近の議論等を踏まえて、教科書の記述としては、軍の命令の有無について断定的な記述を避けることが適当であるというふうに判断されて検定意見が付されたものでございます。

 それで、御指摘の記述について、検定意見を受けて、欠陥を修正する際に発行者において削除されたというものと理解をしております。

瑞慶覧委員 ということは、この検定の意見書というのは今でもまだ生きているということでしょうか、それとも撤回されているのでしょうか。それをお伺いいたします。

高井大臣政務官 意見書はそのまま生きております。有効でございます。

瑞慶覧委員 この検定の意見書がやはりついていることによって、教科書をつくる出版社の方あるいは執筆者の方が非常に困っているんですね、どうしても真実をなかなか載せることができないと。ですから、できたら何としてもこの意見書の撤回を、沖縄の県民、特に、戦争を体験した、真実を本当に体験した方々はそう願っております。

 これは、撤回をするという議論にはなっているんでしょうか。

高井大臣政務官 誤解があるといけませんので申し上げますけれども、検定意見は生きてはおりますが、日本軍の責任や関与を否定するという趣旨ではございません。したがって、日本軍にごうを追い出されたり自決した住民もいた、日本軍の配った手りゅう弾で集団自決と殺し合いが起こった、また、日本軍に幼児を殺されたりスパイ容疑などの理由で殺害される事件が多発したなどの記述については、検定意見は付されておりません。

 私個人としましても、沖縄県の県民集会のことや、また、その過去の経過等もよくよく本当にかみしめておるつもりでございますが、省としてこれをどうする、こうするという話ではございませんので、御理解いただければと思います。

瑞慶覧委員 少しわかりにくいんですけれども、要するに、検定意見書があることによって、出版社それから著者の方々がうまく真実を書けない、繰り返しになりますが、それが事実でございます。私の方にもそのことに関して相談もございました。今でもまだやはりそれによって滞っている、ことしのあるいは来年度に向けての教科書に関しても十一月、十二月にかけてぎりぎりなんだという声もございます。

 ぜひともこれは精査をしていただいて、検定意見のこの部分に関する撤回、これをすっきりとやっていただく。このことが本当にちゃんとした教科書をつくるもとになるものだと私は思いますので、その部分に関してこれは検証をするということをお願いしたいのですが。それはお願いいたします。

川端国務大臣 いろいろと経過を含めて御指摘があったような状況が続いてきたことは事実だというふうに思っておりますし、沖縄の皆さんの悲しみや心の痛みというものが、いろいろな形で、県民集会を含めて出てきた経過も十分承知をしております。

 ただ、一方で検定制度自体は、検定の審議会を通じて客観的にしっかりやろうという体制の中でやってきて現在に至っているという状況がありますので、この件に関しては、先ほど高井政務官から申し上げましたように、日本軍の関与がなかったとかいうことにしろというふうな意見ではありませんで、ある種の誤解を招いてはいけないということは、慎重にしてほしいという、まあ、日本軍がかかわったことは、事実を書いてはいけないということではなくて、いわゆる日本軍が強制をしてというのは誤解を招く可能性が一部あるんではないかというのが、検定の審議過程の中の有識者の御判断として意見書が出された。

 それに基づいて、いわゆる訂正申請も含めて最終的には承認をされ、現在では、これは高井政務官が申し上げましたように、日本軍にごうを追い出されたり自決した住民もいた、日本軍の配った手りゅう弾で集団自決と殺し合いが起こった、日本軍により幼児を殺されたりスパイ容疑などの理由で殺害される事件が多発した等のこういう現象があったというのは事実でありますので、このことを今申し上げたとおり書いている教科書に検定意見は付されておりませんので、そういう部分では、現時点では、いろいろな経緯はたどりましたが、適正に経過をしていると認識をしております。

瑞慶覧委員 ありがとうございます。

 今の大臣の答弁によりますと、検定の意見というのは今付されていないということでございますので、そういうことであれば、来年度の教科書の作成に当たって出版の方あるいは著者の方々の意見をしっかりと聞いていただいて、事実が本当に事実として伝えられるようなそういう教科書をつくっていただきたいと思います。

 次に私の質問は、時間もありますけれども、スポーツ振興に関してに移らせていただきます。

 地方におけるスポーツ振興に関連して、生徒の体育大会等への派遣ですけれども、どうしても沖縄県は離島をたくさん抱えていまして、離島から沖縄県の大会への旅費それから宿泊費、個人負担というのに多く頼っております。そしてまた、沖縄県から東京の全国大会に行く場合も同じような感じでございます。沖縄県から助成金等も出ておりますけれども、しかし、当然それでも足りません。

 このような負担を背負っている現状を文部科学省としてはどの程度認識をなさっているかどうか、お伺いしたいと思います。

高井大臣政務官 御指摘あった、離島の子供たちがスポーツ大会に積極的に参加するための負担が重いということは、よく理解できます。

 私も、四国というある意味で島国でございますので大変移動等にも費用もかかるわけでございますが、子供たちがスポーツ大会により積極的に参加して部活、運動部等で鍛えた日ごろの成果を試すということは、本当にスポーツを行う上で目標や励みとなりますし、子供たちにとって大変意義があることだろうというふうに思っています。

 スポーツ大会に参加するための経費は、基本的には自己負担というふうになっておりますけれども、全国の高等学校体育連盟や都道府県教育委員会等には、保護者や教員から、生徒が全国大会等に出場する場合の費用負担の軽減を求める声がおっしゃったようにあるのも承知をしております。沖縄県など一部の自治体では、自治体独自で補助を行っている例もあると聞いておりますので、よりできるだけ適切にそうした補助が行われるようにお願いを申し上げたいと思っています。

瑞慶覧委員 ありがとうございます。

 これは沖縄だけに限らず、地方の学校あるいはPTAの方々は同様な問題を抱えております。子供たちにはスポーツもさせたい、しかし、スポーツをして優勝するとお金がかかる、そういう矛盾を抱えながらやっております。ぜひとも、国としての支援策も行っていただきたいと思います。

 そこら辺に関してどなたか御答弁をお願いいたします。

高井大臣政務官 おっしゃることはよくわかりますし理解できますけれども、文科省として、全国高等学校総合体育大会や全国中学校体育大会等の開催運営費経費等に対しては補助を行っていますけれども、派遣費用については、国の補助制度が三位一体改革の流れの中で廃止されたという経緯がありまして、現状を改めてこれを復活させたり国が助成を行うということはちょっと難しいというふうに考えておりますが、先ほど申し上げたように、離島の子供たちが県大会や全国大会に参加する場合の旅費については、行うための経費を都道府県が独自でやっておられるところもありますので、できるだけそっちの方で賄っていただけるように配慮がなされるということを期待したいと思いますし、我々も、できる限りの努力をまた検討してまいりたいとは思っております。

瑞慶覧委員 ありがとうございます。でき得る限りの努力をぜひ行っていただきたいと思います。

 次の質問は外国語教育に関してですけれども、鳩山総理が提唱なさっている東アジア共同体構想というのがございます。そうすると、アジアに向けた教育というんですか、その制度も確立していかなければならないと思います。

 特に言語に関しましては、受け手ではなくて、こちらから日本の技術をアジアにも伝える、そのためには、当然英語だけではなくて、中国語あるいは韓国語等のマルチの外国語教育というんですか、それにも取り組んでいくべきじゃないかと私は思っています。実は私、英語教室をずっと十何年間やっていまして、英語だけではなくて、それ以外のことも必要だということを痛感しております。

 マルチの外国語教育の必要性についてお尋ねしたいと思います。どなたでも結構でございます。

高井大臣政務官 英語が広くコミュニケーションの手段として用いられているという実態を踏まえて、学習指導要綱においては小中高を通じて英語教育を履修させるということを原則としつつ、やはり、地域の実態に応じて英語以外の外国語を履修させるということができるということになっております。

 近年、中国語や韓国語、朝鮮語、フランス語等の英語以外の外国語を開設している学校等も増加傾向にありまして、やはり、引き続き外国語教育の一層の充実等に努めてまいりたいと思います。

瑞慶覧委員 ありがとうございます。

 実は先日、うちの次男と友達で、今高校一年生ですけれども、ついこの間までオーストラリアの中学校に通っていたんですね、小学校、中学校はオーストラリアで。何げなく、中学校では第二外国語はオーストラリアではあったのと聞いたら、第二外国語は何と中学校で、もちろん日本語、それから中国語、スペイン語、それからもう一つ、四つぐらい中学生レベルでも第二外国語をやっているんですね。

 ですから、そういうのを聞いて、ああ、日本もそれぐらいまでやはりやっていって人材をきっちりつくっていきたいな、こう思いました。ぜひとも、その取り組みに向けても私もまた微力ながら協力をしてまいりたいと思います。

 本日は三つの点に関しまして質問させていただきました。今後とも、日本の未来に向けた子供たち、やはり文部科学省がかぎとなっておると思いますので、一緒になってつくってまいりたいと思います。

 本日はどうもありがとうございました。

田中委員長 次に、本村賢太郎君。

本村委員 民主党の本村賢太郎でございます。初めての質問でありますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 川端文部大臣初め政務三役の皆様、そして田中委員長、理事、委員の皆さんと一緒に、誇れる日本を継承するために、この文部科学委員の一員として頑張ってまいります。子や孫の世代が、日本に生まれてきてよかった、そして、お父さん、お母さん、私を産んでくれてありがとうと思えるような国づくりを皆さんと一緒に党派を超えて頑張ってまいりたいと思います。

 それでは、まず第一番目の質問といたしまして、教育基本法の改正についてお伺いをいたします。

 平成十八年の五月二十三日に、我が民主党は日本国教育基本法を衆議院に提出いたしました。しかしながら、数の力でこの日本国教育基本法を法律化することができませんでしたが、今の現行教育基本法と私たち民主党が掲げた日本国教育基本法の違いについてお伺いをいたします。

川端国務大臣 本村議員もこれからの御活躍を御期待申し上げます。

 御質問ありがとうございました。

 御案内のとおり、五十年にわたって教育基本法がずっと同じものであったという中で、社会も変わり、子供を取り巻く環境が当然ながら大きく変化をし、価値観も随分変化をしていったという社会状況の変化と、先ほど来の議論にありました技術の進歩を含めたいろいろな知識の領域も幅広になったということで、教育基本法を大改正しようということが国会の中でありました。民主党は日本国教育基本法を出しました。そして、当時の政府・与党の立場での法律との長い間の議論の中で現行法律が成立をして、今、教育基本法として実施をされております。

 私の認識では、現状こういう状況にあって、こういう教育をして、こういう子供を、子供だけではありませんが、育てていこうという大きな概念、価値観において、何か決定的に違いがあるというふうには思っておりません。基本的にはほとんど一緒だと思っております。

 そして、概念的な部分で言いますと、「国民は」という現行法律に対して、私たちは「何人も」という表現をしたということは、あまねく日本にいる人はという概念というのをもっと大きく広げた。

 それから、教育は、義務教育を含めて幅広に教育がありますが、両案ともに、今までどちらかというと義務教育に視点が行っていたのが教育全体をとらえることになったというのは、これは共通だと思いますが、もう一つは、国民がひとしく教育を受ける権利があるという権利に言及したのが私たちの案でありました。

 そして、よく言われる愛国心条項ということがあるのですが、私たちは、心を涵養するという表現をいたしました。それと、態度を養う。態度を養うと心を涵養するということを評価としてするのかしないのか、議論はありましたが、表現としては、そういう部分で思いの部分の表現の仕方は違いましたが、いわゆる国を大事にしようということにおいては一緒だったというふうに思っております。

 そして、私たちの案の方がより細部の仕組みまで言及したのかなという思いがあります。地方の、地域の力を生かした教育をするという仕組みや、あるいは、ある種の無償化を目指していくようなことを書き込んだのは、概念的に今の教育基本法に否定されるものではないと思いますが、法体系として基本法に書いた場合と書かなかった場合の違いがあるんだというふうに思っております。

 そういう意味で、私たちは、今動き出した教育基本法のもとで、教育関係法を含めて教育行政が行われているときに、今直ちにこの部分をこう変えて教育基本法を改正しようというふうに予定をしていることはありません。

 ただ、施策的に、我々が主張してきた日本国教育基本法の施策の部分を、現行の教育基本法にのっとりながら実行していきたいという思いは、政策的には無償化とか含めて幾つかあるということが現状だと思っております。

本村委員 今の現行法と民主党の日本国教育基本法、基本的には同じ方向だということで安心をしたわけでありますが、今、教育現場はとても荒廃し、教育格差やいじめ問題、さらには不登校、学力低下といった問題が山積をしているわけであります。

 今大臣からもお話をいただきました、この前文の下段に「日本を愛する心を涵養し、祖先を敬い、子孫に想いをいたし、伝統、文化、芸術を尊び、学術の振興に努め、他国や他文化を理解し、新たな文明の創造を希求すること」、私、この前文、本当にとてもすばらしい内容だと思っておりますし、当時の小泉元総理も、このことはなかなかいいんじゃないかという御評価もいただいたようであります。

 この日本国教育基本法は総選挙の際にも公約に盛り込まれて、直ちに提出はしないと大臣も記者発表等でお話をされたようでありますが、私は、これは政権交代をして、確かに今の現行法と変わらないかもしれませんが、先ほど大臣が言われた高校教育の無償化とか、さらには幼児教育の無償化、さらには教育委員会を廃止して教育行政の見直しをするなど、新しい視点のこの日本国教育基本法を、私は大臣の手で、ぜひとも私たちと一緒になってこの日本国教育基本法の実現に向けて取り組んでいきたいというふうに考えておりますけれども、いつごろこの改正に取り組まれていくのか、お聞きいたします。

川端国務大臣 先般の日本国教育基本法という形を提出し、いろいろな施策をその法律の中に書き込んだことを民主党として提案したことは事実であり、それが成立せず、現行教育基本法が成立したことも事実であります。

 それを踏まえて、今回の選挙に臨むに際して、私たちは、最長四年間政権をお預かりさせていただきたいという中で、これをやらせていただきたいというお約束がマニフェストであります。

 そのマニフェストの中には、そういう思いを込めた政策の実現としての高校の無償化の問題や、あるいは教育監査委員会のことは書きましたが、いろいろな議論の過程であるという問題は、お約束ではなくて、議論をしてこういう思いを持っているということで、インデックスという形で整理をさせていただいたことは御案内のとおりでありますので、そういう意味では、教育基本法を大改正するということは現在考えておりません。

本村委員 それでは再確認ですが、今のお話ですと、日本国教育基本法を提出されるかどうか、ちょっと私もわからなかったんですが、大臣御自身は今の現行法でよろしいということでいいでしょうか。

川端国務大臣 冒頭申し上げましたように、大きなこの国の教育のあり方、目指す方向に関して、現行法が教育基本法でありますので、これにのっとって、行政の立場でいえば、文部科学大臣、文部科学省としては着実にやっていくというのが私の責務であります。

 そして、政策的に過去を振り返れば、民主党という政党が野党のときに、こちらの方がいいという法案を出したことも事実です、もうくどくなりますから言いませんが。という中の政策で、現行教育基本法にのっとって実現できるものは実現していきたいということで、これはマニフェストのお約束を中心にやっていくということが現在の立場でございます。

本村委員 日本国教育基本法案についてはよく理解いたしました。要望といたしましては、ぜひとも、野党時代、民主党が掲げたこの基本政策、大臣の手で実現をしていただきたいというふうにお願いをいたします。

 次の質問でありますが、高等学校の授業料実質無償化についてお伺いいたします。

 昨年秋からの不況が続き、経済理由で高校進学を断念したり高校を中退するケースが相次いでいることから、教育現場からもこの高校教育無償化は期待をされているわけでありますが、また、教育の格差にもつながるということで、私も民主党のマニフェストの大きな柱として支持をしてきたわけであります。

 公立の生徒がいる世帯に授業料相当額を助成し、実質的に無償化する、私立の生徒の世帯にも同額を助成し、さらに低額所得層は倍の額を助成するという内容だと思います。今回、高校教育の無償化をして国民負担を軽減していきたいということでありますが、この実施プロセスは、実施時期というかプロセスというか、予定どおり来年四月実施ということでよろしいでしょうか。

鈴木副大臣 お答えを申し上げます。

 来年の通常国会に法案を提出させていただいて、国会の御審議を経、そしてその法案を可決していただいて、来年度から、つまり四月一日から始まる年度におきまして実施をさせていただきたい、このように考えております。

本村委員 来年四月の実施ということで、来年の通常国会提出予定でありますので、その際にまた詳しく議論もあるかと思いますが、ちょっと数点、この点に関してお伺いしたいことがありますので、質問させていただきます。

 今回、この無償化に伴いまして、間接支給にするのか直接支給にするのかということで、世帯者に直接支給か、または学校設置者に間接支給かということで議論があったようでありますが、間接支給という方向にした理由をお聞かせ願いたいと思います。

鈴木副大臣 私どもは、私どもはと申し上げますのは、民主党においても、あるいは現政権においても、間接支給あるいは直接支給という用語を使って何らかの政策をまとめてきた事実はございません。

 という前提で、私どもは、今、概算要求に当たりまして考えておりますスキームは、高等学校等就学支援金の受給権を世帯に創設する、そしてその受給権を学校設置者、公立の場合は地方の教育委員会、私立の場合は学校法人でありますが、学校設置者が代理行使をして、そして国から、しかしそれは法定受託事務で地方自治体に事務が受託されますけれども、就学支援金を代理受領するというスキームをとっているところでございます。

 この理由は、こうしたスキームをとりますと、まさに就学支援金の受給ということにかかわる事務経費を最も最小化することができます。今回の概算要求におきましては、八・六億円という非常に少ない金額でこの事務を実現することができますので、極力、貴重な税金を、直接的に世帯あるいは生徒の学びを支援したいという観点から、このようなスキームを考案いたし、今要求をいたしているところでございます。

本村委員 代理受領にされた中身、そして概算要求八・六億円ということであることから代理受領をとったということで、よく理解をいたしました。

 次の質問でありますが、これはすべての高校生に大体年間十一万八千八百円程度の助成をするということでありますが、高等専門学校や専修学校の高等課程、さらには外国人が通う各種学校でも公立高校の無償化の対象に含むというお話も聞いております。高校に準じた教育が行われている場合にはなるべく対象にしていきたいという鈴木副大臣の記者発表というか新聞からのニュースを見たんですけれども、例えばフリースクールとかNPOなどの学校にはどうお考えなのか、お聞きいたします。

鈴木副大臣 専修学校や各種学校につきましては一定の基準がありまして、それを満たしているものは設置認可をしている、こういうスキームになっております。一方で、フリースクール等の民間の教育施設というのはさまざまなものがございますので、現段階では、専修学校あるいは各種学校など、教育水準の一定レベルが確保されていることが確認をできるものというものを対象にしていきたいというふうに考えております。

 ただ、フリースクールに通う生徒が高等学校に在籍している場合がございます。この場合には、その高等学校の授業料についての負担軽減は図られるということで御理解をいただきたいというふうに思っております。

本村委員 今の経済格差が生んだ教育格差等の問題もある中で、できましたら、すべての学ぶ子供たちに均等の機会を与えていただければなと思っております。

 また、私は、この高等学校教育の就学支援金の施策に関しては大変関心を持っていますし、また応援もしていきたいと思っておりますが、一方では、富裕層まで無償化するという形で、ばらまきではないかというお声も一部ございますが、今後の課題についてお伺いいたします。

鈴木副大臣 今後の課題は、確実に予算編成の中でこの予算を満額確保していくということが最大の課題だというふうに思っております。

 と同時に、このスキームを、現場の方々のお声を伺いながら、現場に極力御負担のかからないようにさらにこの精度を上げていくということと、そして、このスキームについて、もう時間もありませんので、ただ、これは法律が通る前にこうなりましたということを申し上げるのもなかなか難しいということはありますけれども、まさに申請をしていただく皆様方、あるいは国民全体の皆様方に新しい制度、意義を含めてきちっと御理解をいただくということをきちっとやっていかなければいけないなというふうに考えているところでございます。

本村委員 高等学校等就学支援金の制度に関しては、ぜひとも予算をしっかり確保していただきまして、未来の子供たちに向けて、だれもが学ぶ均等の機会というものをしっかりとつくっていただきたいなと要望して、この質問を終わりにいたします。

 次に、高等学校における日本史の必修化についてお伺いをいたします。

 現在、国際化が進む中で、真の国際人として羽ばたくには日本人としてのアイデンティティーの確立が必要だと私は考えておりまして、その中で、日本の歴史や伝統を学ぶことがとても重要であると考えております。その中で、平成二十五年度から実施予定の高校学習指導要領では、引き続き世界史が必修となり、地理と日本史が選択という形になっております。

 私の地元の神奈川県教育委員会では、県独自の取り組みで、高校学習指導要領の実施時期に合わせ、県立高校で、必修の世界史とともに日本史を必修とすることにしております。また、神奈川県を含む一都三県の教育長と関東知事会の皆さんが、平成十八年、文部科学省にこの日本史の必修化について検討を要望したほか、石川県と茨城県の県議会も意見書を議決しているということも過去にございます。

 今後、日本史を高等学校で必修とすることについての御見解をお伺いいたします。

鈴木副大臣 私も、神奈川県の取り組みについては承知をさせていただいておりまして、一つの御見識かと思います。

 ただ、御質問の趣旨は、これを必修化するかどうか、しかも、そのことを学習指導要領で位置づけるかどうか、こういうことだと思いますので、この点については、もちろん、政権がかわりましたので、理論的には、あらゆることは一から見直して、こういうことは可能だと思いますが、一方で、学習指導要領のようなものは、かなり決めるまでの前段階の準備期間、そして決めてからの教科書をつくる、あるいはそのための教員を養成する、あるいはそのための教員を配置するということで、今まさに、新学習指導要領が決まって、そしてそれに対する対応が現場も含めて行われている、こういう段階でございます。学習指導要領というのは十年ごとにこういう大きな流れがあるわけでございまして、その流れの中で、必修にしていく、していかないということは考えていかなければいけない課題だというふうに思っております。

 ただ、日本史をすべての国民の皆さんに、特にこれから社会に出る若者に徹底して教育をしていくということは当然のことだと思っておりまして、これは先ほど引用していただきました日本国教育基本法においても、その前文においてもそういう理解でございます。

 私も、この学習指導要領ができるプロセス、野党ではございましたがかかわらさせていただいて、私、もちろん文部科学省の公式の認識といたしましても、日本史については義務教育終了段階まで、つまり中学校できちっと徹底してやっていく、そして、高等学校においては体系化された世界の歴史というものを必修して、さらなる学習として日本史または地理を選択するという、いろいろな議論を経てこういう扱いになったというふうに承知をいたしておりますので、そうした議論も踏まえて、当面はこの方針にのっとってさまざまな対応をしてまいりたいというふうに考えております。

本村委員 高校の学習指導要領は小中学校に比べて柔軟じゃないかなと私は思っていますし、工夫次第では、都道府県レベルでも統一した新科目で、例えば私、日本史の中でも江戸幕府末期、明治維新、やはりこの近現代史を特にこれから子供たちに学ばせる機会をつくっていかなきゃいけないなと痛切に感じておりますので、ぜひまた御理解をいただきたいなと思います。

 また、東京都では必修という意味では奉仕活動、そして茨城県では道徳というものも必修化しておるわけでありまして、こういうふうに都道府県で、地方分権の時代、さまざまな特色が出ることは非常にすばらしいことだなと思っています。

 また、今、新学習指導要領実施に関してのお話もあったので、ちょっと日本史の話からずれますが、小学校学習指導要領では平成二十三年度から五年生、六年生で外国語活動、さらには中学校学習指導要領では平成二十四年度から一、二年生の保健体育で武道とダンスが必修となっていると伺っておりますが、小学校の外国語活動である英語、中学校の武道、ダンスが必修となることに伴う教員の研修の必要性についてお伺いいたします。

鈴木副大臣 まず、日本史の必修化の各都道府県での御対応については、それは一つの御見識だというふうに思っておりますので、現行学習指導要領の範囲内で行われることについては、私ども、それについてどうこう申し上げるということではございません。現場主権、地域主権の中でお考えをいただければいいなと思っております。

 それから、小学校の外国語活動あるいは中学校における武道、ダンスの必修化、こういうことについてのお尋ねでございますけれども、これも特に小学校の外国語導入についてはさまざまな議論が国会でもございました。そうしたさまざまな議論を経て、学習指導要領は改訂をされたわけでございます。

 現行新政権におきましても、この新学習指導要領の方向性というものは踏襲をしていくということでございますので、当然、今御指摘のありました、それを教える教員、武道、ダンス、英語、それぞれでございますけれども、についての研修体制はきちっととっていかなければならないと思っておりますし、それから来年度の教職員の定数改善におきましても、新しいこうした教科対応が可能な、そうした教員の増というものもきちっと要求をさせていただいておりますので、これをきちっと予算化をしていくということは大変重要な課題だというふうに思っております。また御支援もいただきたいというふうに思います。

本村委員 ぜひとも、教員の方々の教育の方もよろしくお願いしたいと思っています。

 最後に、時間もないのでちょっと質問いたしますが、私の地元相模原に、独立行政法人国立美術館の分室というか、フィルムセンターの相模原分館というのがございまして、政務三役の皆様も現地をごらんいただいたようでありますけれども、私は、やはりフィルムの保存というのは文化継承のためにも必要なことかもしれませんが、フィルムのデジタル化をしていかないと、これは何ぼたっても増築増築で、今回も補正で四十億円、そして概算要求で十億九千万円と、たしか数字が並んでいたと思います。

 私は、その中で特に、二百名の上映所がありまして、年間三百六十五日のうち三日間しか稼働していないというような状況を聞いて、ちょっと残念だなと思っております。京橋のフィルムセンターは三百六十五日、毎日上映をされていて、大変皆様に親しまれていると聞いておりますが、私どもの地元の相模原のフィルムセンターに関しても、ぜひまた上映等も検討いただき、地域との共同作業でまた芸術文化を発信していただきたいと思っておりますが、それに関して最後に御質問させていただきます。

中川副大臣 御指摘のとおり、保存をしていくという部分については、これはフィルムとデジタル化ということはちょっと質の違った話になりまして、フィルムそのものを、ビネガーシンドロームというんですか、酸化していくということから防いで、文化財の一つとして保存をしていくということ、これも大事なことだと思います。

 しかし、御指摘のとおり、それだけではなくて、それを利用していくという時点で、一部デジタル化もしながら利用をしていく、あるいはまた、いろいろな機会をつくって、地元のせっかくの施設でありますので、しっかり開放していきながら活用していくという方向で指導をしていきたいというふうに思っております。またひとつ御協力をお願いしたいと思います。

本村委員 ぜひ、地元にも、そして近隣にも活用できるように、またお力をいただきたいなと思います。

 これをもちまして私の質問を終了いたします。ありがとうございました。

田中委員長 次に、湯原俊二君。

湯原委員 こんにちは。民主党の湯原俊二でございます。

 私も初めての質問する機会でありますので、私なりに、大臣を初め三役、文部科学省の行政サイドに対して、技術論というよりも、私の思いをぜひ質問を通じて少しでも伝えることができたらなというふうに思っております。よろしくお願い申し上げます。

 質問は、大きく分けて三点。まず、少人数学級と教師の育成について、それからシチズンシップ教育の導入について、そして学校図書館のあり方について、この三点について質問させていただきます。時間配分は、初めてのことですので、どうなるかわかりませんけれども、させていただきたいと思います。

 まず、少人数学級と教師の育成についてであります。

 今まで、他の諸議員の方が少人数学級等質問されてまいりましたので、改めて、確認の思いを込めて質問をさせていただきたいと思います。

 大臣の所信のあいさつにも教員の質と数の充実が述べられておりました。最初に、今日までの政権による、この四十人学級についての大臣の所見、まずこれを求めたいと思います。お願いします。

川端国務大臣 湯原議員も、どうぞこれから御活躍をいただきたいと思います。

 現在は、法令で四十人以下という決まりになっております。現実には、全国平均で申し上げますと、公立小学校が二十八・一人、公立中学校が三十三人なんですが、OECDの平均が、公立小学校は日本が二十八・一に対してOECDが二十一・四、あるいは公立中学校は日本の三十三に対してOECD平均が二十三・四ということで、相当高いというのが現実であります。

 そして、これは先ほどの議論で申し上げましたけれども、多様化する教育の中身と、それから子供を取り巻く社会環境、家庭環境を含めた環境の変化の中で、子供たちにしっかりとした教育をするためには、よりきめ細かく教育をしなければいけないというのはもう当然のことでございます。今までの政権のもとでも、実質は四十人を切っていますが、ばらつきがあります。

 そういう中で、数を例えば四十人学級という法令を三十人にするとかいうことではなくて、弾力運営条項ということで取り組んでこられた経過があります。そういう意味で、柔軟な定員の取り組みということで四十人以下の学級を運営しているというところが、各都道府県では一応全部ある、東京都を除いて全部あるということではありますけれども、さらに、やはり今の状況で、問題をきめ細かく解決していい教育をするためには、もっと定数をふやして、一クラス当たりの児童の数を減らしていくという、質の高い教育をするようにすべきだ。今もいろいろな工夫の中で一定の成果を上げておりますが、なお問題が多いということで、さらに数はふやしていきたい。

 ただ、何十人学級という目標にしても、やはり現実にいろいろな学校がありますので、そういう意味では、きめ細かく対応できるような仕組みもあわせて考えていきたいと思っております。

湯原委員 ありがとうございました。

 今、先ほど大臣から弾力運営条項に基づいてやっているということと、何十人という学級というよりも、きめ細かくやっていく方がという答弁があったと思いますけれども、実際、私、鳥取県に住まいしておりまして、鳥取県では、平成十四年度から、基本的に生活習慣が身についていない児童に大きな変化が見られるという小学一年生、つまり就学時の最初に、一年、二年は三十人学級にしました。翌年、同じような理由から、中学一年に対応するために、中学一年でも少人数学級にしました。生徒は、もちろん活発に発言する機会も得ることができますし、先生としても、より目が行き届くということもありますし、保護者の声も、もちろん、おおむねいい評価、声を聞いております。

 弾力的なこと、あるいはきめ細かくということがありましたけれども、そこでお伺いしたいのは、鈴木副大臣でありますけれども、先ほどの話についてでありますけれども、今後、少人数学級の効果を考えたときに、いいと思っていますけれども、その所見と、そして導入するとすればどういう工程、タイムスケジュールで実施をしていくのかということを答弁求めたいと思います。

鈴木副大臣 お答えを申し上げます。

 鳥取県におきましても非常に精力的な取り組みがなされているということを承知いたしておりまして、また敬意も表しているところでございます。

 民主党のインデックスには、これは一つの目標値としてでございますが、OECD加盟先進国平均水準並みの教員配置ということをうたっているわけでございまして、今もお話がございましたように、少人数指導というのはやはり極めて効果が高いというふうに私ども考えております。特に、小一プロブレムなどには最も重要な効果を果たすのではないかなというふうに思いますし、また、すべてが学力調査ではございませんけれども、秋田県などは、全国でも最も少人数指導が、特に少人数学級が行き届いている。例えば、三十人以下が秋田県では七〇%という状況でございまして、全国が五割強でございますので、そういう効果も、いろいろな面で教育的な効果があって、結果として学力調査にも反映をしているんだろうというふうに思っております。

 そこで、私どもの政権として非常に重要なウエートを置いておりますこの教員配置の拡充ということのスケジュールということでございますが、まず来年度は、平成三年以降ずっと純減をしてまいりました教員配置を、大臣も何度か申し上げておりますけれども、五千五百人の定数改善、これでもって自然減を含めましても一千六百人の純増ということになりますので、これを来年度、何としても実現に向けて頑張っていきたいというふうに思っております。

 そして、次の次の年度でございますけれども、私ども民主党は、野党時代に既に参議院で学校環境整備法案というものを可決していただいております。ここでも、まさに基本方針、基本指針の中で、そうした教員配置の拡充というものを極めて重要な指針の柱の一つとして盛り込んだ法案をもう既に参議院では可決をしているわけであります。

 こうした法案をたたき台にして、もう一度、新しい政権として、そうしたことを大いに参考にしながら、この問題を抜本的に次の次の年度に向けては取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

湯原委員 ありがとうございます。

 今、鈴木副大臣からOECDの問題、そして秋田県で三十人以下学級が七〇%という言及があったと思います。そして、次々年度、次の次の年度から民主党の基本方針にのっとってということがあったと思います。

 一つこの関係で申し上げると、財源の問題がやはりどうしても関係してくると思います。この間の大臣の所信あいさつでもあったように、「学校運営の責任は基本的に自治体が負い、国は教育水準の維持や環境整備、財源確保に責任を負う」、こういった言及があったわけでありますので、少人数学級をするときに地方の自治体、地域に負担を求めるということになれば、なかなか導入しづらい部分がどうしても出てくるのじゃないかなと思いますので、財源についての国の責任のあり方について、さらに鈴木副大臣に求めたいと思います。

 そして、教師の育成についてでありますけれども、民主党の公約等いろいろなところで、フィンランドでもそうでありますけれども、六年制卒、修士資格を持ったということが今までたびたび出ております。

 私は鳥取県でありますけれども、鳥取県の教員免許を持っている現場で働いている教師の皆さん方、実は小中学校平均で三割強、四割近くが私学、私立大学で教員免許を取った方であります。私立大学で取ったということは、私立大学などの教育学部というよりは、ほかの学部に所属しながら教員免許の課程を経て資格を取った人が現在教育の現場にいるということであります。この過程で見られるのは、六年、修士を教師の資格とするならば、なかなか私立大学の出身者の、私立大学自体が教育学部というものをなかなか持ちづらくなってきて、手を引くんじゃないかという危惧を私は持っております。

 ですから、逆に、四年の学士をとって現場に出て、その過程で現場を経験しながら、この分野で専門性を高めたい、そういう思いの中で、現場を経験した上で二年、プラスアルファ内地留学的に専門性を高めるような、修士課程をとるような、そういったシステムにすればこの点が解決しますし、逆に、現場を知った上で専門性を高めた部分の二年がつけ加わるわけですので、より一層教師の資質の向上につながると思いますけれども、この二点について鈴木副大臣の答弁を求めます。

鈴木副大臣 お答えを申し上げます。

 今お話のあったようなキャリアの方々が、例えば社会に出て、そして教職専門職大学院、これは国公立が設置するものも、あるいは私立が設置するものも既にございますし、特に私立においても教職専門職大学院の充実あるいは新設に励んでいただきたいという思いは持っておりますが、社会に出て教職専門職大学院で修士をとって、そして教員になってもらうというのも大いに望ましいことだと思っておりまして、マニフェストを作成いたしておりましたときから、そういうことは大きな流れの一つとして念頭に置いております。

 現に、私どもが野党時代に提出をいたしました法律におきましても、修士を持っている、かつそれが教職専門職大学院またはそれに準ずる大学院によってということは申し上げておりますけれども、一気通貫で六年制ということは別に言っていないわけでございまして、その点はきちっとこれからも御説明をしていかなければいけないなというふうに思っております。

 そもそも、なぜやはりそうした修士、かつ、もう一点御理解をいただきたいのは、専門職大学院制度というのは、実はまだ導入されて日が極めて浅い。法科大学院ですら五年であります。教職専門職大学院につきましては、平成二十年の四月一日、つまり昨年の四月一日にできたばかりでございまして、まだ卒業生を出していないんですね。したがって、私どもは、法律では教員専門職大学院の修士というものを念頭に置きながら、中心に据えながら、もちろんそれ以外のいろいろなこともこれから御意見を伺いながら議論を深めていきたいと思っております。そのことに来年いっぱいかけていきたいと思っていますけれども、今我が国は教職専門職大学院を卒業した人というのが一人もいないわけです。

 したがって、いろいろな、まだ理解が及んでいないところがいっぱいあるかなと思いますが、専門職大学院というのは、例えば専門職大学院の教授職ですね、教授及び准教授に当たられる方々は、教育現場で校長先生とかあるいは教科指導のプロとか、そういう方々が四割以上いなきゃいけない。それから、教職専門職大学院のカリキュラムというのは、現場での実習というものを既に単位数においても相当程度位置づけております。そして、さらに加えて私たちは現場での実習というものを充実させていかなければいけないという認識を持っております。

 そうした制度をベースに、しかしながら、いろいろな現場のお声もいただきながら、またきょうの御提案も非常にいい御提案だと思いますので、来年度要求におきましては、そういう検討をするための前提となるさまざまなエビデンスを集めるために、調査検討予算を要求させていただいているということでございます。

 ぜひ、制度設計に当たりましては、いろいろな御指導と御教示をいただければというふうに思います。

湯原委員 副大臣、ありがとうございます。

 財源論、少人数学級にする財源の言及について、後でまた答弁いただきたいと思います。

 次に、シチズンシップ教育の導入についてでありますけれども、ここにおられる皆さん方は聞かれたことがあると思いますし、よく御存じだと思いますけれども、大臣は所信あいさつでこう言及されております。「近年の子供たちは、基礎的な知識は身についているが応用力がない、」先ほども石井さんからもありましたけれども、「人への思いやりや規範意識など社会性が低くなっているといった問題が指摘されます。」こういう認識を述べられております。

 まず最初に大臣に答弁を求めたいのは、今日までの教育、特に社会性が低くなってきたことについてのより具体的な所見を求めたいと思いますし、また、私なりに申し上げますと、今日までの教育で、とかくやはり受験戦争を勝ち抜く教育があったのではないか、簡単に言いますと知育偏重、もっと言いますと知識の暗記優先の教育が今日まであったのではないかというふうに私は見ているわけでありますけれども、この点について大臣の所見を求めたいと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 私、所信でも述べましたように、子供の社会規範性みたいなものがやはりどんどん低下している。自分だけみたいな、ミーイズムみたいな、昔からよく言われましたが、どの時代もあるんですけれども、自己中とか言葉がいろいろありましたけれども、そういう部分でやはり子供の社会性が欠けてきた。

 これは、いろいろな背景があると思うんですよ。一つは、言うまでもなく、やはり受験戦争に象徴されるように勉強、勉強ということで、これは総理が子供たちの居場所をつくらなければならないということを総理の所信でおっしゃいましたけれども、居場所のある社会。これは、勉強ができなかったら学校に居場所がない、家庭にも居場所がない、だからもうどこにいればいいのか、行く場所がないからということで悩み苦しみ、いろいろなことを起こすということも含めて、やはり学力というものが非常に学校現場で大きくウエートを占めたことは否めない事実だというふうに思います。自分だけ勉強ができたらいいと。

 それと同時に、やはり地域力というか社会力というか、地域が子供を育てるという力もやはり弱くなってきた。そして家庭も、高学歴化というのと裏腹に、やはり職業との両立という問題もいろいろ社会的に難しい問題を抱えていますから、子供と接する時間とかいうことも含めて問題を起こしてきているというふうな、いろいろな背景があると思います。その中の大きな一つに、やはりお勉強ができるかどうかが非常に大きな物差しになっているという傾向があることは事実だと私も思います。

鈴木副大臣 先ほど答弁漏れがございました財源確保の問題でございますが、まず、現行は義務教育国庫負担制度ということになっておりまして、もちろん、その使途については総額裁量制ということでございますから、まずこの予算を確保し、これは教育以外には使われるということはございません。

 そして、次の段階での制度設計での予算確保でございますが、これは現行の教育基本法にも盛り込まれておりますが、教育振興基本計画、昨年の七月一日に閣議決定もされておりますが、これに基づいて、この衆議院の委員会の場でも先進国並みに確保すべしとの委員会決議もいただいております。こうした御支援もいただきながら確保をしていく。

 その中で、民主党のマニフェストにおきましても、一括交付金の流れというのはございます。そして、教育一括交付金というのも勉強をしております。しかし、その大前提として義務教育費は確保するということの上で、使い勝手といいますか現場のニーズに応じた使いやすさというもの、この両方を目指すべく今検討を進めているところでございます。

 それから、シチズンシップは……(湯原委員「いや、まだ」と呼ぶ)まだですよね。

湯原委員 申しわけございません。先を行かないようにお願いします。御安心ください、シチズンシップは鈴木副大臣には聞きませんので。

 先ほど大臣から、いろいろな背景があるんだろうということで、ただ、勉強ができない子の居場所が教室、学校にないという状況はというような言及があったわけですけれども、私は、社会性を高めるということでこのシチズンシップ教育というのは非常に有益だと思っています。

 横文字で言うとあれですけれども、市民性教育、この市民性教育のシチズンシップ教育には幅広い定義がありまして、有権者教育であったり政治教育であったり、それこそ先ほどありましたように道徳に関するようなものもあったり、あるいは司法教育、消費者教育まで、定義を広げようと思えば幾らでも、逆に言うと、今の知識だけを押し込めるようなところ以外の、一人前の社会人、一人前の市民になるための教育が大ぐくりになるのではないかなというふうに私は思っております。

 このシチズンシップ教育というのは、一九九〇年代から、特にこの言葉で、定義づけの中で、イギリス、アメリカ等々で導入されてまいりました。北欧ではもっと早くからされたり、ドイツでもされているわけですけれども、このグローバル化の中で、国民という概念もそうでありますけれども、市民という位置づけの中で、形成する市民を育てるような教育、こういったことがやられているわけであります。

 では、日本でどうかといいますと、残念ながら、こうした教育は、大戦の後の反動かもしれませんけれども、できるだけかかわらないような教育現場だった。あるいは、先ほど来話がありましたけれども、先生方も忙しいということで、学校のカリキュラム以外のこういったカリキュラムといいますか、知識、勉強、いわゆる勉強のところ以外のこうしたものからできるだけ遠ざけてきた、タッチしないようになってきたわけであります。

 こういったことに触れて、改めて大臣に、私は他の先進諸国で行われているこのシチズンシップ教育も日本にぜひ導入すべきではないかというふうに考えているわけでありますけれども、大臣の所見を求めたいと思います。

川端国務大臣 近年、シチズンシップ教育というのが非常に注目されていることは私も承知をしております。そういう中で、東京の品川区では、区内の全公立小中学校を対象とした市民科の設置というのも一つのそういう流れなのかなと。神奈川県においては、県立学校を対象としたシチズンシップ教育推進事業というふうな、地域において自主的にいろいろと特色ある取り組みをされている事例もあります。

 そういう意味で、今の精神は私も非常に大事な精神だと思っておりますので、それぞれの特色、創意工夫をしていただく中で、将来、我々としても、そういう事例を見ながら、どうしたら子供が自立心を持って強く社会の中で生きていけるかという教育のあり方を検討してまいる中で参考にさせていただきたいというふうに思っております。

湯原委員 大臣、ありがとうございました。

 検討ということでありますので、一義的には了としますけれども、よく行政の中で、質問をして、これこれはどうですかと言うと、先進事例の一個か二個を言って、さも全部でやっているような答弁をよく聞くことがありまして、品川区の事例とか他の先進事例は、ありがとうございます、了解しました。

 問題なのは、私が申し上げたのは、全国的にこういったシチズンシップ教育を導入すべき、大臣がおっしゃっているような社会性を高めるための教育としてどういうものが必要かと考えたとき、私は必要ではないかなという思いを持っています。

 なぜかといいますと、私はシチズンシップ教育に最初に関心を持ったのではありません。最初に関心を持ったのは、有権者教育とか政治教育ということに関心を持ってこの問題をずっと調べ始めました。その前提は何かといいますと、実は、小泉政権時の選挙では郵政選挙だったわけですけれども、小泉劇場とマスコミはやゆしておりましたけれども、テレビの影響で、余りにも有権者の意識が翻弄されているのではないかという、私自身、有権者の一員でありますけれども、危惧を持っておりました。

 実際、今までの教育現場でそうした政策を判断するような教育カリキュラムをやってきたかというと、日本は先ほど申し上げたように反動からかありません。では、世界各国ではどうかというところから調べ始めたら、こういったように、シチズンシップ教育の前として政治教育、有権者教育を徹底して行っているということがわかりました。アメリカでは、多民族でありますし、模擬で大統領選挙を高校生時代からやったりとか、ディベートをやってきています。ドイツでも、ヒトラーが普通選挙制度で選ばれて政権をとったその反動からか、実際こうやってちっちゃいときから政治教育の一環としてやっていって、それは教師が特定の政党とか政治を刷り込んだり押しつけるのではなく、子供たちにとって政策とか社会の一つのことを判断する物差しを自分なりにつくるような教育をずっとしてきているんですね。

 私が調べたあれですけれども、ドイツでは高校生のときに、実際の選挙のマニフェスト、例えば先ほどの衆議院選挙のマニフェストを高校生の段階で吟味して、君たちだったらどこに投票するということを実際に高校のときからやっています。イギリスでは、それに道徳がプラスアルファになって、こうやってシチズンシップ教育になっていますし、北欧では、御案内のように税金の問題があって高いので、賢明なタックスペイヤーにならなきゃいけないということで、有権者の判断が最終的には社会を決めるし税金の使い道を決める、そのためにはちっちゃいときから自分なりの物差しをつくりなさいよということで、その支援をするような教育をカリキュラムに入れてやってきております。

 日本は、先ほど来申し上げるとおり、翻って言うと、投票率も低くなる、社会性も大臣があいさつでおっしゃったように低くなっている現状の中で、私はこういった政治教育、有権者教育のもっと大ぐくりなところのシチズンシップ教育というものをぜひとも日本の教育現場の中に、カリキュラムの中に入れていただきたいと思っております。そういう意味でぜひ御検討をいただきたいと思います。この点について、また御答弁いただけたらと思います。

 次に、時間がないので、学校図書館の位置づけについて聞きたいと思います。

 大臣は所信あいさつの中で、資源小国の我が国の発展を支えるのは人と知恵であり、来年度の概算要求でもソフトとヒューマンへの投資と述べられております。一方で、経済不況のもとで、子供が経済的理由で十分な教育が受けられないことも懸念をされておられます。

 私は、この点、図書館というものの役割は非常に重要、大切ではないかなというふうに思っています。

 アメリカでは、図書館というものを民主主義のとりでとさえ言っているようであります。民主主義のとりでであります。なぜならば、貧富の差に関係なく、過去の情報を含めて知ることができる、それが図書館であるからであります。学校においても、当然ながら、学校図書館の重要性は申し上げるまでもないと思っておりますけれども、先ほど申し上げたシチズンシップ教育と同様に、社会性を高めたり、子供の好奇心を高めるため、情操教育には欠かせない図書館、学校図書館であります。

 文部科学省の平成二十年度の学校図書館の現状に関する調査結果を拝見させていただきました。近年、全国的に学校内での一斉読書は成果が出つつあるということは認識をしておりますが、一方で、学校図書館の充実のための予算が地方交付税に算入されているにもかかわらず、私の記憶ですと、大体七八%ぐらいしか学校図書館に使われていないという数字を拝見させていただきました。

 例えば、学校図書館の蔵書冊数でも図書標準を達成していない学校の割合が非常に多いです。逆に達成しているのは、小学校で四五%、中学校で三九%は図書標準を達成しておりますけれども、過半数の小中学校が図書標準を達成していない、こういう状況であります。

 スタッフの面はといいますと、司書教諭は一九五四年施行の学校図書館法で規定がありますので配置はされているものの、担当職員の配置は小学校で三八%、中学校で三九%にとどまっています。それも配置の多くは非常勤であります。

 つまり、児童生徒が本のことを聞きに行っても、司書教諭というのは自分でクラスを持っていたりしますので、位置づけはありますけれども、任命はされていますけれども、学校図書館にはおられません。非常勤でありますので、時間的にも限りがある。こういう現状が今あります。

 私は、資格を持つ専任の図書司書をぜひ配置すべきだというふうに考えております。子供たちが実際学校図書館に行って本の相談あるいは情報の相談をしたときに、その場でちゃんと対応をできるようなそういう制度にすべきと考えております。

 このことについて、図書館の役割、特に学校図書館の役割についての認識と、また今の学校図書館の充実度について、図書標準や常勤の専任司書の配置などについても含めて、大臣の答弁、所見を求めたいと思います。

鈴木副大臣 図書館の重要性について、とりわけ司書については、民主党は野党時代から折に触れて、毎年の予算要求でもずっと要求をし続けてまいったところでございます。

 おっしゃるとおり、民主党が定めました日本国教育基本法でも、真の主権者をつくるという上で、シチズンシップ、あるいはそれの母体となる学校図書館の充実、あるいは公立図書館の充実もおっしゃるとおりだというふうに思っております。

 残念ながら、今委員もいろいろ御指摘ございましたけれども、図書冊数で申し上げると、標準に対しまして小学校四五・二%、中学校三九・四%、本もないということであります。それから、学校司書の配置比率も、小中高全体で四三%でございます。小学校だけで申し上げますともっと低くなります。常勤ということでいいますと二割を切ってしまう、こういうある意味で惨たんたる状況ということでございます。

 それから、先ほど御指摘もございましたが、地方財政措置に変わってしまったわけですね。もちろん、県によって、例えば山梨県でありますと基準財政需要に対しまして一三八・五という非常に頑張っておられる県もございます。愛知県、東京都なども一〇〇をはるかに上回っておりますけれども、それ以外の県では残念な県も非常に多い。どこの県とは申し上げませんが、基準財政需要額に対して実施されている予算が三八・四%というところもあります。まさに三八・四%の県から一三八・五の県まであるという中で、やはりちょっとこの施策というものは、まさに交付税化というところからさらなる格差が広まってしまったということは大問題だなというふうに思っています。

 それから、司書の問題については、先ほど来申し上げておりますけれども、教職員定数を改善していくという中で、きょうの御議論も踏まえてきちっと確保していかなければいけないなというふうに考えているところでございます。

田中委員長 湯原委員に申し上げますけれども、持ち時間が経過しておりますので、簡潔に。

湯原委員 はい。一言だけ。

 質問をさせていただきまして、ありがとうございました。今後とも質疑させていただいて、さらなる御答弁等よろしくお願いします。ありがとうございます。

田中委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 きょうは、文部科学大臣のあいさつに込められましたこれからの文部科学行政、そして日本の教育のあり方、この大枠に従いまして、その中から三つのテーマを中心に質問をさせていただきます。

 まず、この大臣のあいさつの中で川端大臣はこう述べられておられます。これは地方と国との分業の話ですが、国は教育水準の維持や環境整備、財源確保に責任を負うとの考えのもと、教育における地方主権の確立を目指します、こういう話に書いてございます。

 しかし、これはある意味で、財源は確かに政府が責任を持つということでございますが、国の教育に関しては地方に任せるというふうにもとれないわけではありません。今、日本の各地で問題となっておりますのは、ただいまの図書館の問題で鈴木副大臣の話にございましたけれども、余りにも地方格差が大きいということもございます。

 例えば、私は神奈川県から出仕しているわけでございますが、この神奈川県においても、例えば国が一生懸命私学関係の交付税交付金を増額いたしまして教育の充実を図っている、しかし現実には、例えば神奈川県においては、最近においては高校の経常費を六億ぐらい縮小するというようなことが伝えられておりまして、また最近では、同じように、日本で初めて、日本で初めてというのもおかしな話でございますけれども、高校の授業料に対して二千円の補助をした。ところが、神奈川県においては、このうち七百六十三円しか使われていないということを、先日、私立学校の家族の皆さんから訴えられたわけでございます。

 そうなりますと、国が一生懸命教育の再建、そして厳しい経済環境において教育を守ろう、基礎教育を守ろうといってお金をつけているわけでございますが、地域においては必ずしもそうではなくて、優先度はそれではないということで、その交付金がさまざまな形で、全く関係ないとは申しませんが、教育にちょっと関係があるということでほかの分野に転用されている。これでは、一つも国が責任を持って教育を立て直していることになっていないのではないですか。

 では、国は一体どうして、自分たちがつけたお金、責任を持って出した財源を、それが本当に効果が生まれているということを保障することができるでしょうか。そのメカニズムについて大臣にお聞きしたいと思います。

川端国務大臣 首藤委員の御質問でございますが、これはいつも、いわゆる国の責任と地方分権あるいは地方主権という議論で、教育に限らず議論になるところの論点でございます。

 何年か前に義務教育の国庫負担金の配分をめぐって大議論になった、いわゆる三位一体の改革のときも同じ議論も含めてあったというふうに思います。財源的に、やはり国が確保するという意味で予算手当てをする中で、全額国がそのままストレートに使途を決めて出すということから、地方分権では、地方の自主性に少し、裁量の幅を持たせるべきではないか、だから、使い勝手がいいように緩やかにというのが、教育の幅だけなのか、もう少し広まるのかということで、地方交付税になりますと地方自身の判断と。

 これは、仕組みとしては、そういう首長はすべて主権者たる有権者の審判を受けますので、そういうやり方の行政をする、まさに税の使い方をするというやり方の市長さんあるいは知事さん、首長さんと、それに対してこういう政策を掲げるという人は、まさに主権者の判断にゆだねるべきだという議論との、いつも両論の議論の中だというふうに思います。

 そういう意味では、私たちは、国としての義務教育の国庫負担金制度は基本的にそういう部分で、先ほどの、今直前の議論もありましたように、現実には濃淡はあって、図書費の部分でも、計算したときに一三〇%どころか三〇%台と幅はあるけれども、概してやはり地方の厳しいところに行けば行くほど教育の部分が痛みを与えられているという傾向があるということは承知をしております。

 そういう意味では、どうかしてこのことを確保するというのはなかなか悩ましいところでありますが、我々は、国からの部分の、じかに教育のいろいろなお金として国庫から直接行くものは使い勝手のいいメニュー化をするということで工夫をして地方の自主性を尊重したいと思いますが、地方においての交付金の問題は、仕組みにかかわる問題としては、現行の制度は非常に大事な制度だと思っております。

首藤委員 大臣、おっしゃることはよくわかるんですよ。

 しかし今、教育は危機ですよ。危機的な状況ですよ。もう今の未曾有の経済危機の中において、各家庭は非常に苦しいです。今までは何とか独自の教育を求めて私学に行っていた人が次々と、家計が苦しくなったといったらやめさせなければいけない。それほど危機状態にあって、やはり今までがそうだったから主権者の判断というのでは、主権者の判断というならば、例えば次の地方選挙までどれぐらい待たなければいけないのか、そんなことを考えると、私たちは、今の危機状態の教育を救うためには、やはりここで、大臣が所信で述べられたように、あいさつで述べられたように、国が教育の再生に責任を持つなら、その末端まで国が責任を持たなければ、何のための教育ですか、何のための文部科学省ですか。

 ですから大臣、今は本当に緊急のときでございますから、ぜひ末端まで目をしっかりと配らせて、そして、その趣旨に合わない使い方をされることに対しては、ぜひ国が責任を持って教育を実効あらしめる、このために全力を尽くしていただきたいと思うわけでございます。(発言する者あり)ありがとうございます。また言っていただくことにして。まだたくさんございますので。

 もう一つ気になることをおっしゃっておられるわけですが、問題意識は恐らく全く同じだと思います。六万人を超える高校生が中途退学していること、そして、みずから命を絶つ小中高校生が三百人にも上ることでございます、こういうふうに書いてございます。

 そこで、委員の皆さんにも資料をお配りさせていただいております。

 本当に悲しいことでございますが、こうした小学校、中学校、小学校でもみずから命を絶つ、これはテレビの影響もあるかもしれませんが、全く大人と同じやり方でみずから命を絶っているという悲しい状況があるわけでございます。

 私がここで一つ気になるのは、文部科学大臣が、小学校、中学校、高校のそうした児童生徒が三百人も年間自殺しているという発言でございます。

 この資料を委員の皆さんもごらんになっていただきたいと思いますが、上が警察庁の資料でございまして、確かに三百人を超える自殺者がいるということはわかります。しかし皆さん、次の下の資料を見ますと、これはその約半分しか自殺者の数が規定されておりません。

 これはなぜ警察庁の、警察のデータと文部省が定義する自殺とに差があるんでしょうか。どなたでも結構です。

鈴木副大臣 お答え申し上げます。

 資料を配付していただいたように、差がございます。

 この理由は、警察庁の調査は、警察の捜査権限に基づいて検視あるいは事情聴取の結果を集計いたしております。文部科学省の数字は、学校が把握し、教育委員会等から報告が上がったものを集計しているということでございます。

 二〇〇六年の議論でもこうしたことが行われまして、今現在は、警察庁からの情報をきちっと受けながら対策は講じていくということで取り扱わせていただいているところでございます。

首藤委員 ですから大臣、大臣があいさつで述べられるなら、私は文部科学大臣としては百五十名という数字を言うべきではなかったかと思うんです。

 文部省あるいは教育機関が考えている自殺というのは、残された御家族の考え方、それからさまざまな状況を考えてこういうふうな数字を出している。しかし現実に、客観的に言えば、それは大臣のまさにおっしゃった三百人以上なんですよ。三百人以上、小中高と言っていますけれども、それがちょっと一歳上げて十九歳以下となれば、この数字が三倍に上がっちゃうんですよ、ぼんと。確かにそれほどの多くの若者が死んでいるんです。みずから命を落としているんです。そしてそれを教育現場では百五十人しか定義していないわけですよ。

 そこに込められたギャップというのは何でしょうか。子供さんを失った御家族の苦しみ、そしてなぜ子供たちが死んでいったのか、いじめなのか、それはまたほかの理由なのか、学業なのか、そういうことが御家族の間とでもきっちりと合意ができていないから、このギャップが出てくるんではないですか。

 ですから私は、このギャップというのは物すごく、私たちの教育現場そのものの矛盾であって、これを解決することなくしては子供たちの自殺の問題というのは解決しないと思うんですよ。

 そこで、やはり情報公開が全くされていない、そして御遺族の方が何度も何度もいろいろな本を出されております。それを見れば見るほど、いつまでたっても情報がない、そして、文部科学省を含めてもたらされた情報というのは、真っ黒に墨で消されていて、何の情報も家族に伝わらない。

 私は、紛争解決にいろいろ働いてきたものでございますけれども、結局、この問題というのは、解決というのは真実と和解しかないんです。悲しいことでございますけれども、真実があって、真実が明らかになって和解するしかない。ところが今、この教育現場における自殺というのは、真実が明らかにならないから、いつまでたっても家族との間で、一体これが何であったのかということがない。それがこの大きなギャップになるんではないですか。

 そこで、もう時間がございません、ここで文部科学大臣に、どうすればこの教育現場での自殺をなくすかということはたくさんあります、いろいろな手段があります、いろいろな識者の意見もあります、マスコミ用に対する対応もあります。しかし私は、文部科学大臣に在籍している間に例えばどれだけ減らすのか、例えば川端イニシアチブというのをつくって、必ず私の在任中に三割減らします、五割減らします、それだけのやはり提言をしていただきたいと思うんですが、その御覚悟はいかがでしょうか。

川端国務大臣 自殺が多発をして深刻に受けとめられて、御提言は大変重く受けとめたいというふうに思います。

 おっしゃるように、本当のことが何だったのかが御両親を含めて家族がわからないという悲痛な声を私もしばしば伺っております。そういう部分で、ややもすると、事なかれあるいは隠ぺい体質というのがあることは許しがたいことだと思っておりますので、そのことに関しては私たちも新たな目でしっかりと対応してまいりたいというふうに思います。

 一方で、議論としては、加害者の子供、加害者といいますか、いじめなんかでいいますと、している部分の子供をどうしていくのかというのにまたさまざまな議論もありますが、今言われました自殺者の部分は数値的に目標を掲げてやるのが、何かかけ声だけを言う、決意を示すということでない、いろいろな複雑な要素もありますので、御提言として検討させていただきたいと思います。

首藤委員 ありがとうございます。非常に多として考えたいと思います。

 昔、交通事故というのは減らないものだと言われておりました。しかし、各国で取り組んで、単に運転手さんの責任だけではなく、例えば道路標識、道路の状態、それから車の色、そうしたものをすべて含めて、多くの先進国で三分の一まで交通事故が減ってまいりました。日本においても、最近は激減して半分近くになっております。ですから、やはり数値目標、ターゲット数値を決めて、それに向かって必死に努力する、ありとあらゆる力を傾注して努力する、そういう形がやはり子供の悲劇を救う道だと私は考えております。

 ですから、この表が、ずっとこういうふうに延びておりますけれども、これが三百あるいは百五十というのではなくて、あるときから激減するように、やはりターゲット数値を決めて、総力を挙げて取り組んでいただきたいと思うわけでございます。

 最後に、今回のごあいさつの中で、教育の国際化の問題について触れられておりました。

 この問題に関しましては、日本政府も野心的なアイデアを持っております。これが留学生三十万人計画ということです。日本に三十万人の留学生が来て、そしてその一部は恐らく日本に定住して、そして日本の今の少子化社会の産業現場も支えるかもしれない。逆に、日本の留学生が海外へ出ていっていろいろ活動できるかもしれない。三十万人計画、立派なものでございます。

 しかし、この三十万人計画のその前提は、国内の大学がそういう留学生を受け入れられるということでございまして、それをグローバル30ということで拠点大学を設けて、そしてその中において、大量の、一つの大学で例えば毎年四千人、五千人という留学生が受け入れられる、こんなことも想定してつくっていったわけでございます。

 そして、それにおいて予定していたわけでございますが、実際についた予算というのは四十一億円でございました。その四十一億円で、ではどうするかということで審査をしたら、結局十三大学ということになったわけでございます。

 ということは、大体、満額がきちっと出て、それでも一年に三千人、四千人、五千人という留学生が一つの大学に入ってくる。もう想像を絶するような、本当に隅から隅まで、みんな英語をしゃべり、フランス語をしゃべり、スペイン語をしゃべらなきゃいけない。そういうことが考えられているわけでございますが、それが半分以下しかない。十三拠点大学でやっている。これでどうして三十万人計画が実現できますか。三十万人計画そのものが破綻したんですか。それはもう根本的に変えられるんですか。抜本的なことですよ。最も重要なことです。日本の教育の国際化に関して、これはどうするのかというのを今すぐ決めなきゃいけないことでございますけれども、大臣、いかがでしょうか。

中川副大臣 御指摘のとおり、三十万人計画、これが三十万という数字で目標を持続していくのか、あるいはまたそれ以上、我々の政権として新しく打ち出した国際化計画の中で発展をさせていくのかということはありますが、いずれにしても、留学生を受け入れていく、あるいはまた日本から学生を出していくということ、両方含めてしっかり対応していくということの方向性というのは変わりもありませんし、前以上に頑張っていきたいということであります。

 その上で、今回、この国際化拠点整備事業について、御指摘のとおり、今回分は十三拠点選考しましたが、そこで一たん休憩をして、新たな形で次の体制を考えていこうということで、一たんこの事業は新規で募集をするということは停止いたしました。

 そんな中で、次の構想というものをしっかりまとめていきたいというふうに思いますし、それぞれ、今回十三拠点選考したところで、今のような枠組みでいいのかどうか、恐らくこれから指摘があると思うんですが、地方の大学あるいは非常に特色を持った形で海外と拠点形成をしているような大学等々も含めて、今回の基準だけで見ていくということではない、そんな構想というのをつくり上げていきたいというふうに思っています。

首藤委員 基本的に、もうこの三十万人計画は破綻したんです。一刻も早く新たな体制をつくってスタートしないと、とんでもない大きな問題になります。

 一方、この三十拠点の中にたまたま選ばれた十三大学は、今のこの少子化社会で、留学生の取り込みということでこれを大々的に宣伝して、インターネット、そして車内の、折り込みとかチラシとか、そういうのを全部使ってやっている。すなわち、この計画がいい加減なまま、文部科学省がその特定の大学のマーケティングに加担しているというひどい状況なんですよ。ですから、これは早急に対応を考えていただきたい。

 ただ、またもう一つ問題なのは、この十三大学を選んだ選考過程でございます。皆さんのお手元に、委員の皆さんにも資料を配らせていただいておりますが、教育プログラムの選考した委員会の名簿でございます。資料の二の一と書いてあります。すばらしい先生がおられますよ。石先生から始まりまして、ずっと、私の知っている人もたくさんおります。

 私は、これを見て、この文部科学行政にはもう未来がないと。ここに例えば女性がおられますか。これからの国際化で、現代社会でこれからの新しい企画をしているのに、例えば女性の委員が入っているでしょうか。もう女性の委員が入っていない委員会はやめてください。私は別にフェミニストでも何でもない。しかし、人口の半分がそうで、まさに重要な役割を担っているのに、女性の委員が一人も入っていない委員会は、これは無効ですよ、はっきり言えば。

 それだけではないんです。この問題が国際化なんです。たくさん留学生が来るんです。ですから、地域社会の代表やNGOや市民活動をやっている方、そういう留学生問題をやっている、この接点をやっている方がどうして含まれていないんですか。そして、同じように留学生であったけれども、今は日本で定着して企業人として成功している、日本にはたくさんおられますよ、そういう人がどうしてこの中に入っていないんですか。日本の国際化、三十万人を受け入れようという委員会が、どうしてこういうメンバー構成でできるんですか。私は、これはやはりこの構成自体に大きな問題があると言わざるを得ません。

 そして、この中で驚くべきは、多くの学長さんがここに含まれていることです。学長さんは一人の知識人じゃないんです。学長さんは一族郎党の親分なんですよ。ですから、これをやるということは、その大学がしょせん選ばれ、その大学の人たちが委員になり、その人たちが選考し、その人たちがその系列で人を集めてくるということなんですよ。このことが日本の高等教育を腐らせてきたんですよ。ですから、こういうことでやったら日本の国際化なんか一つもできないではないですか。ですから私は、このことは抜本的に改革していく必要があると思っております。

 この選考過程に関しましては、例えば選考期間がたった一カ月しかない。これは何を意味しているか。この大学で何千人も入れるという大学は、当然教授会で論議しなきゃいけません。それから法人としての理事会で議論しなければなりません。大変な改革です。それが一カ月でできるということは、要するにインサイダーで、だれかがみんなすべてを知っていて、その人たちだけがこうだと言ったことじゃないですか。だから、ここにユニークな大学や小規模な大学はほとんど含まれていなくて、旧帝国大学や有名私立大学しか入っていないんじゃないですか。これでどうして日本で三十万人の留学生を受け入れることができるでしょうか。

 ですから、この三十万人のグローバル30は、そのやり方自体を抜本的に改革しない限り、こういうやり方では何回やってもだめだということでございます。

 そして、やはりこういうことで問題なのは、この委員の透明性、それから審査の透明性でございますが、この辺に関しては、私は、これからはやはりこういったことも含めて、今警察ですら可視化ということを言っておりますけれども、委員会論議の公開とか、なぜこの大学が選ばれ、なぜこの大学が落ちたのかも含めて、委員の発言を含め、議事録の公開も含めて、国民の皆さんが納得する形でやらないと、日本の社会に対しては大変な負荷のある、こんな大きな問題に対して納得することはできない。したがって、この問題は抜本的に改革すべきだと思っております。

 時間が迫ってまいりましたけれども、結局私が言いたいことは、このグローバル30というのは、そのもととなっている留学生三十万人計画も含めて、一瞬でも早く、一秒でも早く抜本的にこれを立て直さないと、やり直さないと、これはとんでもないことになるということでございます。こんないいかげんなまま、たまたま選ばれた十三大学がこれ見よがしに、グローバル30に選ばれました、うちの大学は国家認証の国際化大学ですといってマーケティングをこれ以上続けさせるのは、私は許されるべきではないと思っております。

 そして、やはりこの問題に関しては、これほど問題があるわけですから、ぜひ今行われようとしている予算執行を停止して、本当に三十万人の留学生が必要なのかどうかぜひ考えていただきたい。

 そして、本当に必要なら、これは本当にやったらいいと思うんですよ。例えば、三十万人計画ではなくて、もう日本のことでは、半分しか予算がない、四十億円しか出ないんです、四十一億円しか出ないんです、それでもぎりぎりなんですということを言うなら、留学生の受け入れは十万人にしたらいいんです。十万人にしたら、三十拠点やれば、一つの大学でそれこそ三百人、五百人、千人の受け入れの大学ができることになります。そうすれば、日本の中でどれだけユニークな私立学校、いろいろな特徴の、地方との関係を持つ、世界とのリンクを持っている私立学校や公立学校、こうしたものと、どれだけ多くの留学生を引き受けることができ、そして日本の大学の国際化、高等教育の国際化に資することができるか。それはもうはかり知れないチャンスがあると思うんです。

 ですから、川端大臣、これは一番大きな、最大の問題でございますけれども、今お聞きになったように、この問題というのは、留学生三十万人計画も含めて、グローバル拠点の三十を含めて、もう一瞬でも早く抜本的に改革のスタートを切らないと、これはとんでもないことになる。ぜひそれを実現していただいて、それに関してはきちっと予算もつけて、新しい本当の、国民が納得する、国際社会、日本社会に対する負荷も大きいこの問題をしっかり解決するための抜本的な対策、今までのグローバル30やあるいは三十万人計画の予算執行をとめてでも新しいスタートを切っていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

川端国務大臣 いろいろな御指摘、なるほどと思う部分もたくさんございました。そして、人選等々、仕組み等々については、何か私が怒られているような、怒られていいのかなと思いながら、しかられていいのかなと思いながら聞いておりましたが、そういう人選のあり方への御示唆も大変大事な指摘であることは事実です。

 そして、三十万人計画ということで前内閣で関係閣僚の会議でお決めになって進んできて、三十万人にしてはなかなか道遠いということも現実にあるということも承知しております。

 一方、鳩山内閣は、アジアを中心とした国際交流、そして大学間交流を含めた人的交流も強く国際的にメッセージを発信し、やっていこうという姿勢を持っていることも一方で間違いない事実であり、この人的交流、留学生交流の重要性は当然のことだというふうに思います。

 よりよいものにしっかりやる仕組みをやる、予算をやるべきだというのが委員の御主張の要点だというふうに思います。そのことをしっかり踏まえて、今の三十万人計画も含めて改めて検討を加え直して、これからのあるべき姿を構築してまいりたいと思っております。

首藤委員 ありがとうございました。終わります。

田中委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。下村博文君。

下村委員 自民党の下村博文です。よろしくお願いいたします。

 きのうで、政府の行政刷新会議、平成二十二年度予算の概算要求の無駄を省く事業仕分け、五日目の作業を行って第一ラウンドの議論を終えたということで、マスコミにも随分大々的に報道されておられます。

 この中で、廃止や予算計上の見送りと判定された事業の予算削減額が約一千五百億円。しかし、独立行政法人の基金や特別会計の剰余金などいわゆる埋蔵金の国庫返納が約九千億円に上り、予算の縮減などを求められた事業分を合わせて、削減効果は一兆三千億円を超える見込みということです。国民は、こんなに無駄があったのか、それをこの仕分けでやっているというのはこれは大したものだということで、今政府の行っている国民に対するパフォーマンスというのは逆に大したものだなと私は思うんですけれども、国民はそうとっているわけですね。

 そもそも、この平成二十二年度の概算要求、文部科学省においてはだれがどのように決められたか、大臣にお聞きします。

川端国務大臣 新内閣の方針とマニフェストの政策方針に基づいて政務三役で基本的な方針を議論し、各原局含めて前の事業の報告を求め精査をする中で、最終的には、政務三役そして私が判断をし決定いたしました。そして、概算要求として内閣に提出したということが流れでございます。

下村委員 民主党は脱官僚依存ということを言われているわけですね。今の答弁は歴代の概算要求のときとそれほど変わらないのではないかと私は答弁で今印象を持ちましたが、歴代のそれぞれの省庁がつくっていた概算要求と今回の概算要求、どう違うか、大臣、はっきりお答えできますか。

川端国務大臣 基本的に、例えば文部科学省という立場で申し上げれば、文部科学行政の方向という政策の方針はあります。それに基づくときに、今までやってきた政策が、これはとんでもないというふうなものがあるという認識は、私自身は個々にはそのように思っておりません。

 そういう中で、今度の概算要求の中で、私たちの政策として非常に大事な観点で申し上げれば、やはり、教育を受けるということの中で、公教育に実質的には、これは後で議論があるのかもしれませんが、高校の授業料の無償化等々を含めて、教育環境を公が支えるという施策をしっかり支えていきたいということと、教員の質と量を確保するということを重点に置いたということが一つと、それから、箱物と言われるものは、工夫をしていろいろなことで建てない、耐震補強や老朽化というのは別にして、そういう新しいものはできるだけ建てないという方向の中で予算を組みたいという大きな考え方の中で個別の政策を積み上げていったというふうに認識をしております。

下村委員 そうすると、民主党のマニフェストに沿って、そして政務三役がそれに沿った指示をそれぞれの局と課に話をして、その中で最終的に政務三役として概算要求をまとめたということでよろしいわけですね。

 であれば、これは昨日の朝日新聞の中で書かれているんですが、作業が始まる前、赤松農水相は仙谷行政刷新大臣に直談判した、「(概算要求を)提出した(政務三役)側が査定側になるのは制度的におかしい。官僚に説明させるより、政治家同士が議論するのが正しいあり方だ」。今の大臣の答弁を聞いても、政務三役が文部科学省においても、来年度の概算要求をつくられたわけですから、その政務三役がこの行政刷新会議で説明しなければおかしいんじゃないですか。これはいかがですか。

川端国務大臣 概算要求は政務三役が責任を持って行いました。そして、私たちの内閣は、貴重な税金を使って政策をやるということでありますので、いわゆる事業仕分けという手法を使って、今までですと、詳しくは私はそういう予算にかかわった仕事を今までやったことがありませんのですが、概算要求が出されて、それから最終予算に至るまで、各局、財務当局を含めていろいろなレベルの折衝、協議が行われて最終的に復活折衝も含めて予算が決まるという過程が、どちらかというと国民、納税者から見ると見えないということが現実に多かったというふうに思います。

 そういうことをクリアして、より納税者に予算編成過程が見えるようにという考えのもとに事業仕分けという手法が取り入れられた。

 それで、事業仕分けという仕組みの中で、納税者の立場、あるいは地方の立場、あるいは有識者の立場から、我々が出したものを事業仕分けのテーマに沿って仕分けをしていくということで議論をされ、意見を出されたという手順を踏んで、これ以降は私たちは、これはここで決まったらそれが終わりということではありませんので、後でまた詳しく必要であれば申し上げますが、事業仕分けの手法で、そういう立場で見ればこういう意見になるという一定の議論がされたという、ワーキンググループの答えが出されたという、判断の一つが出たという状況で位置づけております。

 そして、この部分は政務三役が対応、責任を持つべきだとおっしゃっていますけれども、これは、事業仕分けを行うといういわゆる刷新会議が仕組みを決めて、事業仕分けのテーマはかくかくですというのは刷新会議がお決めになり、そしてそれは七分間初めに説明をして、次に財務当局がコメントを述べて、あと、意見交換をして、判定者が投票して判定するという仕組みでやるということが決められて今やられたということと私は認識しております。

下村委員 そうすると、この赤松農水大臣が昨日の朝日新聞で発言された記事、「(概算要求を)提出した(政務三役)側が査定側になるのは制度的におかしい。官僚に説明させるより、政治家同士が議論するのが正しいあり方だ」ということはおかしいということですか。

川端国務大臣 赤松さんが具体的にどういうふうに言われたか、私はちょっと報道の記事だけでありますが、実は、我々は、概算要求をかくかくの方針でやりなさいという総理指示を受けて概算要求をいたしました。そのときに、それ以降、行政刷新会議で事業仕分けをするということで、これは、国民の目線から徹底した事業の効率化と優先順位づけを図るため公開の場で予算の要否などを議論するもので、総理から、副大臣、政務官を行政刷新会議に出席させ、徹底した削減に取り組むということで出席を求められ発言も許されるというときに、要求大臣であると同時に査定側であるということも認識しろという制度になりました。

 赤松さんが言われた部分は、要求したことは、ベストとして要求したのをまた俎上にのせて査定するというのはどうかという御意見ではないのかなと私なりに憶測をいたしますが、刷新会議の中では、例えば、これはいろいろな切り口がありますので、そういう切り口で議論するときに参加をするということ自体は仕組みとして決められた部分であり、これがいい、悪いというコメントを私自身は持っておりません。

下村委員 きのうで終わったわけですけれども、きのう午後、本会議があったわけです。本会議があったということで、これも国対レベルですけれども、民主党が強引に、二つの重要法案説明が入ってしまって三時間を超える本会議になってしまったということで、これも国会運営の中で相当問題になっています。本題と別ですからちょっとこれは省きますが、しかしとにかく、政治家不在のまま一部事業の仕分けを行う可能性が強まった。実際きのうそうなってしまったわけですね、この仕分け会議ですけれども。その仕分け作業が、第一弾を新たな混乱要因と矛盾を抱えたまま終えることになるということを朝日新聞の記事の中に書いてあるわけでございます。

 さらに、きょうの産経新聞の朝刊一面に、「行政刷新会議の事務局が事業仕分け作業にあたって作成した仕分けマニュアルの存在が十七日、」昨日、「明らかになった。マニュアルは事前に仕分け人に配布され、これをもとに仕分け作業が進められた。」「実際の仕分け作業でも民主党マニフェストに基づく一部の政策を除けば、財務省のお膳立てに従った判定が」実際は「目立っている。 仕分けマニュアルは対象事業の問題点を列挙した上で、担当省庁の反論に対する再反論の方法までも指南した内容。そこに盛り込まれた具体例からは、財務省が好みそうな「成果主義」「行政効率」「受益者負担」などの原則が浮き彫りになっている。 実際の仕分け作業でも、短期に成果があがらない事業は冷遇された。特に文科省は長期的視野に立った事業が多く、予算全体の約七割が仕分け対象となった。」ということです。「教育、人材育成の関連する事業の「廃止」について、同省幹部は「『コンクリートから人へ』という政権の方針はどこへ行ったのか」と不満を漏らす。」

 まあ、別にこれは文科省の幹部だけではないと思いますが、相当、この文科省関係、科学技術関係を含めて、この仕分け作業の中で、行政刷新会議の中で削られましたね。これについては大臣はどんなふうに思っておられますか。

川端国務大臣 先ほど申し上げましたように、行政仕分けという手法自体は、ああいう、テーマを選んで、短時間で議論をして必ず答えを出すというやり方の、やり方というのは、同じ言葉で手法であるというふうに承知をしています。

 それは、そういうやり方でやればそういう答えが出たという一つの答えであることは間違いありませんが、それが、予算編成を我々政治家が最終的に判断していくときに、そういう見方があるという一つの判断材料を提供されることにはなると思いますが、その結果が法的根拠や権限を有しているものではないのは御案内のとおりでありますので、位置づけとしてはそういうものだと思います。

 そして、いろいろな中身において、例えば、やり方も含めて、あるいは仕分けの結果を含めてもいろいろな意見がたくさんあることも事実ですが、私たちは、税金を使った予算編成の過程の中で我々が概算要求を出すときに、事業仕分けという手法でやればこういう切り方のこういう意見もあるということは事実でありますから、それを踏まえながら、しかし、私の立場で言えば、まさに単なる成果主義ではなくて、長期的に答えを出さなければいけないものや、あるいはリスクを伴う費用もあります。そういうことを含めて、あるいはどうしても必要なものがということに関しては、しっかりと最終の政治判断での予算編成の中で、事業仕分けも踏まえながらでありますが、しっかりと無駄のない、しかし根本を間違えない予算を組むために最善の努力をしてまいりたいと思っております。

下村委員 大臣がおっしゃるとおり、この行政刷新会議、確かに法的な根拠がどうなのか、権限がどうなのか、これは相当問題だと思うんです。

 しかし、実際、この第一弾が出た中でそんな大臣が今おっしゃったような答弁が通じるのかどうか。実際、削らなくちゃいけないということは事実なわけでしょう、今の民主党政権の中で。そうすると、この行政刷新会議の結論というのは私はかなり重いんじゃないかと思うんです。果たして、大臣がそのような答弁がいつまでも続けられるのかどうかということに対して疑問に思うわけであります。

 そもそもこの行政刷新会議のあり方が、中には、公開処刑みたいな感じで、説明人が何か被告人で、弁護士がいない中で裁判、受刑者のような雰囲気で扱われているというようなことを言っておられた方がおられました。

 ちょっとこれについてお聞きしたいんですが、今まで鳩山政権は脱官僚依存ということをおっしゃっていたわけですけれども、実際のこの事業仕分け作業に当たって、先ほどの御答弁のように、直接大臣等が説明されているわけじゃない。これは、関係府省の説明者を局長または審議官クラスとして官僚が説明を行うこととしているんですね、確かに。しかし、政策決定者を大臣、副大臣及び大臣政務官、政務三役としている。そもそも脱官僚依存、政治主導をアピールしているんですから、先ほどの赤松農水大臣のような発言をされるのは、私は当然のことだと思うんですよ。

 ですから、本来は、この事業仕分けの対象になっている諸事業の予算要求に責任を負う政務三役が説明者となって、そしてきちっと答えるべきではないかと思うんです。ここを官僚に答弁をさせているというのはやはり問題だと思うんですが、これについていかがですか。

川端国務大臣 先ほど申し上げましたように、この事業仕分けを刷新会議が行うに当たってどういうルールでやるかということは、刷新会議の中の議論としてお決めになって、こういうことになったことは現実でございます。

 そのことの是非を含めては、議論はいろいろあると思いますが、私の立場では、そういうふうに決められたルールに基づいてやるということ以上にお答えすることはありません。

下村委員 テレビ等で、仕分け人がそれぞれ一時間ぐらいで説明者である官僚を厳しく責め立てている、こういう場面を報道でいろいろなところで拝見しましたけれども、これは単なる官僚たたきじゃないでしょうか。都合の悪い場面では説明責任を逃れる政務三役の姿勢に疑問を感じざるを得ない。

 決まったことだからしようがないということじゃなくて、それはやはり自己責任として、特に、文部科学省関係予算がこのままだと相当削られますよね、第一弾だけでこれだけもう想定できるわけですから。これは、官僚の士気も文部科学省においても相当著しく低下しているのではないかと私は思わざるを得ないんですが、いかがですか、文科省内は。

川端国務大臣 今回の事業仕分けの中で決して私たちが逃げているわけではありません。これは、この事業仕分けの結果を踏まえて、先ほども私申し上げましたけれども、最終的に、予算編成する中での責任は私以下政務三役が負っているわけですから、その結果がどういう結果になるかの責めはすべて私が負うわけですから、そういう部分では、逃げているということではございません。制度上そうなったということはぜひとも御理解いただきたいと思います。

 それと、時間的には、たくさんの事業仕分け項目があり、いろいろな事前の説明資料要求があり、その事務的作業の負担は相当ハードであったことは事実です。かなり夜を徹して事業仕分けに備えるという部分で官僚の皆さんに大変な負担をかけたという部分では、肉体的には相当負担をかけたと思っております。

 ただ、改めて納税者の皆さんに理解を得るということは、政策がいいということだけではなく、当然ながら効率を、効率というのは、無駄なく効率的に使うということと同時に、いろいろな施設を含めてがきちっとやらなければならないという厳しい国民目線が見方としては大変厳しくあるということを、改めて私たちも含めて官僚の皆さんも実感をしていただいたと同時に、やはり、それを乗り越えて今度は私たちがその結論を、逆に、そういう目線ではそうだという答えを、また、そうではないんだということを言う、今度は我々の責めが負われているわけですから、そういうことに関しては、みんなで本当に国民のために大事な政策は情熱を込め、根性を込め、そして理念、理想を持ってしっかり主張して予算をつけようという思いで、士気が下がっているとは思わず、逆だというふうに思っております。

下村委員 相当主観的な御発言だと私は思わざるを得ないですね。

 それでは大臣、本来だったら、大臣がやはり出て説明すべきだと私は思うんですよ。それにもかかわらず、関係局長、審議官レベルが出てかわりに説明をした。なおかつ、この事業仕分けというのは、テレビ等で見る中、評価者による一方的な質問に終始して、説明者が意見を聞く機会はほとんど与えられていなかったということなんです。相当これは公平性にも欠くわけですし、反論ができないわけですから、だから相当不満、ストレスがたまっているんじゃないですかね。それぐらいは理解する必要があるんじゃないですか、担当大臣として。

川端国務大臣 それは、負担が相当かかって精神的にも厳しかったことは事実だと思います。それで、士気というのがどういう定義なのかにもよると思いますが、困難が多くあるという認識は間違いなく持っているし、苦労をかけたことは事実だというふうに思っておりますが、本当に必要な予算を、国民が、いろいろな認識のレベルの方がおられる中で、予算を執行する、予算を獲得するということが大変大事だという認識はみんな共有したんだというふうに思います。

 そして、自分が一生懸命やろうとしたことが、一時間という決めごとの時間でありますので、そして七分間は説明するんですが、あとの仕切りのやり方としての部分の、いろいろな私たちの声にもやるせなさとか不満とか切なさを感じていたこと、精神的にそういうことを受けたことも、これも委員言われるようなことで言うたら、みんな、そんなの言われたけれども全然何ともなかったというわけではないことは事実でありますし、そういう運営のやり方の批判が、一部か全部かわかりませんが、あることも事実だというふうに認識をしておりますし、これは、初めてのことであるという部分で、お互いなれない部分を含めての経過でもあるのかなと思っております。

下村委員 これは、初めてのことであることは事実ですけれども、私は相当財務省にしてやられたのではないかと思うんですよ。

 文部科学政策というのはこういうことにそもそもなじまないと思うんですね。今回の行政刷新会議のコンセプトというのは、成果主義、行政効率、受益者負担、こういう物差しでいったら、それは、科学技術関係、教育関係というのはほとんど切られますよ、大幅に。それを唯々諾々と相手の言うことをイエスと聞いていたら、文部政策は成り立たないでしょう。

 しかし、今申し上げたように、第一弾で削減効果は一兆三千億円。額が多いといえば多いかもしれないけれども、でも、来年度の概算要求は九十五兆円ですから、これは相当大幅にカットしなければ組めないだろうということの中での行政刷新会議があるわけだし、第二弾、第三弾が続くでしょう。その中で、皆さんの主張を取り入れて、そしてまたもとに戻すなんということがあり得るんですか。

 今後については大臣はどんなふうにお考えになっていらっしゃいます。

川端国務大臣 今、効率、成果という物差しが強く出ているのではないかという御指摘でありましたが、そういう側面もないとは言えないと思います。

 そういう中で、ただ、政策的な必要性と、それをやるときのやり方としての政策実行のお金の使い方と、それから、それを国がやるのか地方がやるのかという分担の仕方、そして、そのときに、共通的にそれを実行するのに固有の設備が要るのかどうかという観点、あるいは、独立行政法人等々外郭団体を通してやるのがいいのかどうかという、いろいろな観点があるというふうに思います。政策的に大事なことが否定されているということなのかどうかという判断、それから、いや、こういう施設はもう国が持つんじゃなくて地方に任せたらと言うけれども、やっている中身は意味はあるよという御議論なのかといういろいろな議論が、実は中を見ますとあります。

 そういう部分で、少なくともというか、私たち文部科学行政のときに、効率や効果だけを見れば、先生の物差しだけでいえば科学行政というのは理屈に成り立たない要素がいっぱいあることはもう当然でありますので、そういう部分で行政刷新会議は、効率や成果を中心とした物差しを非常に強く持って議論をされたということであります。

 その中には、やはり我々ももう一度改めて検討し直すべきではないかという御指摘もあるというふうに思っていますが、政策の部分の必要性に関しては、本当にトータルの予算枠が大変厳しいことは、それは事実であります。

 だけれども、何兆円規模で予算を組むのかは最終的に菅副総理のもとの戦略会議で近々におまとめになると思いますが、その中で、文部科学行政が政権が変わったら大変なことになったということのないようには、見通しをどうかということは大変トータルとして難しい状況でありますが、最大頑張ってまいりたいと思います。

下村委員 これは基本的に戦略を誤ったと私は思いますよ。大臣、文部科学政策というのは、こういう財務省的な無駄を省く、不要不急というコンセプトから物差しとしてやはり合わない政策テーマは、たくさんありますよ。それを同じ土俵に乗っちゃったら、これは私は応援で言っているんですから、同じ土俵に乗っちゃったら削られるのはやむを得ないというか、当然の部分がやはりあるわけですね。

 ですから、その前に、国家戦略として我が国の科学技術立国なり教育文化立国なり、それを明確に打ち出して、それは、既に民主党のマニフェストで打ち出している例えば高校無償化とか子ども手当だけではなくて、まさに、理念的な、政策的な部分としてこの国の教育、文化をどうするのか、科学技術をどうするのか、そういうものをきちっと打ち出した中でこのような行政刷新会議の俎上にのるのであれば、まだ議論の余地があったかもしれませんけれども、それがないでしょう。まだできていませんよね。国家戦略室で菅副総理がつくられているのかもしれませんけれども、間に合わないでしょう、少なくとも今回は。だから、今回は後の祭りになっちゃうんじゃないですか。ひっくり返すことはできますか。

 もう一度、これからの行政刷新会議は、第一弾はきのうで終わったわけですけれども、これからはいろいろとありますね。ほかの部分も相当切り込んでくると思いますよ。結果的にそれに従わざるを得ないんじゃないですか、文部科学省としては。文部科学省というか、文部科学省の大臣としては結果的に従わざるを得ないんじゃないんですか、その内閣の中で。いかがですか、今後の活動は。

川端国務大臣 先ほど来申し上げていますように、行政刷新会議の事業仕分けは、そういう手法と、そういう人たちが見たらこうなったという整理の一つでありますので、おっしゃるように、それは非常に重いというふうにおっしゃるけれども、最終的にはそれを踏まえながら予算編成を内閣の責任で行うということでありますので、その部分では今まさに応援していただいているということは、認識としては私もありがたい認識だというふうに思いますし、同時に、科学技術立国として日本は、科学技術を中心に、それに伴う教育も含めて国を支える根幹であるという認識は、これはマニフェストだけではなく、鳩山内閣の所信も含めて述べておられます。

 ただ、言われるように、それは、多分科学技術に関してこういう骨格で政策をやるんだということは、先般の総合科学技術会議でのグリーンイノベーションということを中心とした政策は出されておりますけれども、体系的にというのは、現実に大きな大綱的なものは今はありませんので、そういう部分では御指摘を言われたらそのとおりかもしれませんが、大きな基本的な柱は科学技術立国であるということは、今までのことを含めた鳩山内閣の柱であることは間違いありませんから、そういう部分を含めて、例えば高校の無償化とかいうのは数字的に政策で非常にはっきりしたことですが、同じように、科学技術を推進してこれをしっかりやっていくんだというのはマニフェストに主要項目として書いてあるんですが、この肉づけの政策としての部分が至っていない書き方でありますので、その部分を支えるつもりで私たちは概算要求をいたしました。

 それが事業仕分けという切り方では厳しい見方をされた部分もたくさんありますので、これは、こういう結果を見たというのは、委員おっしゃるように、世の中も、批判というよりは、ようやっているなみたいなことが出ているというのをまた変えるということの説明責任は相当重いと思っています。

 逆に言うたら、それだけ説得をしなければいけないという大変重いものを負っているけれども、それは、それを乗り越えてでもやらないとこの国は大変なことになるという覚悟を持って臨んでまいりたいと思っております。

下村委員 話がやはり抽象的なんですよね。ですから、科学技術立国というのは、それは柱はあるかもしれませんけれども、柱だけでは予算がつかないわけですよ。あるいは、少なくとも、この行政刷新会議の中で説得力を持った材料が出せないでしょう、その前に国家戦略がないから、理念とか政策がないから。それを打ち出す必要があると思うんです。

 一つの典型的な事例で、先ほど午前中、首藤委員が質問されていたことを私も御指摘しますけれども、大臣のあいさつの中の五ページ目で書いてあるわけです。「アジアにおける国際交流を進める上で、大学が大きな役割を果たすことが期待されています。大学間の単位互換など大学の国際化を推進するとともに、留学生の受け入れと派遣を大幅に拡充し、今後の東アジアやアジア太平洋協力を支える人材の育成に長期的視野で貢献してまいります。」これは鳩山総理の東アジア構想にも合致するような、少なくとも、大臣のあいさつの中で明確に明文化されているわけですよ。

 にもかかわらず、先ほどの御質問の答弁のように、グローバル30の話をされていましたけれども、実際はそのときは中川副大臣が答弁されていましたが、もう中断しますと言っているんですよ。大臣のこのあいさつにあるにもかかわらず、行政刷新会議で判定を下されたら、もうあきらめます、そういう答弁ですよね。これからどうするんですか。グローバル30をどうされますか。

川端国務大臣 行政刷新会議で云々だからという位置づけではありません。それで、外国人の留学生の交流を活発化していくことは大変大事なことである認識も変わっておりません。

 ただ、三十万人計画ということでやってこられた中身の中で、現在十三万弱という中で、推進していくときに、三十万人計画という中身で十三大学というやり方で延長線上をやっていくことが、三十万人というか、その数字も含めて大きく留学生の交流拡大、充実に資していくのかどうかをいま一度見たい、再取り組みをしたいということも含めて、この十三大学はやり出したら続けていくわけですから、これの予算は別にやめたわけじゃなくて、この仕組みは新たにまた大学をふやしていくということではないという中川副大臣の答弁でありますので、概算要求では引き続き同じ額の予算を要求しているわけですから、これが事業仕分けでどうこう言われたからどうするということでやっているわけではありません。

下村委員 私は、与党の首藤委員が質問されているので同じことを質問申し上げているわけですけれども、確かに、政権交代になったわけですから、前政権の政策をそのまま全部継承しなくてもいいとは思いますよ。ただ、途中でやめるのであれば、なぜやめたのか、では、これからそれにかわることをどうしていくのかということを説明する責任はあるでしょう。

 少なくとも、グローバル30ですから、今おっしゃったように、来年は十三大学、つまり、三十ですからまだこれからふえていくという前提なんですよ。留学生三十万人計画というのは福田内閣のときに立ち上げたもので、しかし、どの内閣だとかいうことに関係なく、これからの我が国の将来のあり方を考えると、海外からたくさんの優秀な留学生に日本に来ていただく、そして日本からも優秀な学生をどんどん送り出す、こういう留学生政策というのは必要だと思うんです。

 これは二〇二〇年に三十万人計画をしようということの一環で、では、大学側にその国際化拠点整備をしていってもらおうという一つとしてグローバル30というのはあるんです。来年とりあえず、いきなり三十校は無理だから十三校でやっていきましょうということで、この十三校だけでなく、ほかの大学を含め、大学だけじゃありません、政府がそういう教育における国際化に大きく踏み出した。今おっしゃったとおり、まだ海外からの留学生は十二万人ぐらいですから。しかし、国内からの海外に行っている留学生は八万人とか九万人なんです。それを二〇二〇年に三十万人にするということは相当大変なことでありますけれども、しかし、文部科学政策としてそれをぜひ実現していこうということでスタートしているわけです。

 それがいきなりこれで、では一たんは中止だと言うんだったら、それはやはり説明責任はあるでしょう。今までされていませんよ。先ほどの答弁で私も初めてお聞きしたんです。

 やはり、こういう行政における継続性は少なくとも持っていかなければ、それは関係教育機関に対しても相当な迷惑を及ぼすことになるんじゃないですか。それが、政権がかわったからもういいんだということでは済まされないでしょう。説明責任があると思いますよ。これはいかがですか。

川端国務大臣 三十万人計画でやるというのは、福田内閣からスタートして、国際的にもある種の公約といいますか、そういうものを前提にいろいろ取り組んできたところでありますし、鳩山内閣も、先ほど申し上げましたように、東アジア構想の中でも交流を深めていこうということであります。

 そういう中で、三十万人構想を、中身的に十三から一たんとまっているということの説明がしっかりできていないというのは事実だと思います。それは、どういう方向でやるのかということが今こういう時期において多少議論がおくれていることは、正直言って申しわけないけれども認めざるを得ないというふうに思っておりますが、そういう中で、いろいろな角度で結構議論があって手法もあるのでということで、大学をふやすことが一たん概算要求では継続の部分十三だけで、ふやすことにいたしませんでした。

 それを踏まえながら、今の先生の御指摘も、我々がもう少し次の案をしっかり示してやらなければいけないというのは当然の御指摘でありますので、それを踏まえて、今後できるだけ早くに対応できるように努力してまいりたいと思います。

下村委員 たまたまの事例で出しただけでありますが、この留学生計画、これだけでなく、大臣、今民主党政権が進めている教育改革、これが見えないんですよ。

 きのう、教育再生懇談会というのが廃止になりましたね。これは安倍内閣のときの教育再生会議からきているものですけれども、同じものをつくれとは言いませんけれども、しかし、文部科学省の中で、あるいは大臣のもとで、先ほどの行政刷新会議もそうですが、それに対応できるような教育における国家戦略、これはやはりつくられる必要があるんじゃないですか。それとも、これはあれですか、菅さんのもとで今つくっているんですか。

 教育における国家戦略、あるいは民主党が目指す教育理念、具体的なお金の問題じゃなくて、目指すべき教育理念、これはどうされますか。

川端国務大臣 民主党の長い間の教育の議論の一つの集大成としては、日本国教育基本法に集約した議論だというふうに一つは位置づけております。ですから、いろいろこれからやるときの政策の中には、高校の無償化も含めて、あるいは、地方の地域の力を生かした学校の運営のあり方を検討していくという方向性を含めては、大きな政策の柱としては日本国教育基本法というものを位置づけております、政策的には。

 なお、新たなそういう教育に関する懇談会、あるいは意見を聞くことは、今、中教審という一つの組織がありますけれども、そういうものでないまた別のことでということは、大事な仕組みの一つだと私は思っておりますし、これから検討していきたいと同時に、教育の基本方針も含めて、科学技術の基本方針も含めて、菅国家戦略担当大臣のもとで近々にその大きな骨組みはまとめられるというふうに思っております。

下村委員 大臣の答弁は、率直に言ってわからないんですよ。

 今、民主党の教育理念、それは日本国教育基本法に出ている、日本国教育基本法の中に入っている、日本国教育基本法を具現化していく中でそれはあらわすことができる、そういうふうにおっしゃいましたよね。

川端国務大臣 日本国教育基本法を実行するという意味で申し上げたのではありません。議論をしていった集大成として日本国教育基本法という形で一たんまとめたところに、考え方としての理念としてのものは、一応集大成としての大きな柱は考え方としてはあると思っているという意味で申し上げました。そして、そのときに、いろいろな幅広い議論の中で現在の教育基本法が成立しております。

 したがいまして、私たち、私も含めて、この両方の議論の中で、これは朝も少し申し上げましたけれども、基本的な認識とあるべき姿において何かえらい違いがあるなということは私はないと思っております。そういう部分で、我が党の法律の方が、基本法だけれども具体論に踏み込んだかなという感想はありましたけれども、そういう意味で、現行の教育基本法をしっかり踏まえる中で、施策としてやるときには、いろいろな議論の集大成としての日本国教育基本法で議論したものが、一つのマニフェスト化されたものを含めて、実行していくという大きな教育の方針があると認識をしているということを申し上げました。

下村委員 いや、わからないですよね、本当に。それは、午前中の御質問のように、今の改正教育基本法をまた改正して日本国教育基本法に改正した方が、大臣のさっきの、その前からお話しされている理念の具現化によっぽどなるんじゃないかというふうに私は思いますけれども。確かに、今の改正教育基本法と日本国教育基本法、理念的に共通部分もありますよ。しかし、方向性が同じといっても、実際のところはそんなに同じじゃないんですね。

 例えば、地方分権の中で教育委員会のあり方とか、相当踏み込んでいますよね、皆さんの日本国教育基本法は。我々は、その前提条件として幾つもクリアしなくちゃいけない問題がたくさんあると思っていますから、それは今の教育基本法の中ではできないのではないかと私は思っているわけで、ある部分は重なっている部分もあるけれども、今の教育基本法の中で、本当に皆さんがお考えになっているような民主党のマニフェストを実現していくことができるのかなということは、私は相当疑問です。

 とりあえず、まず今されようということについての違い点についてちょっと確認をしていきたいんですが、少なくとも、我々が進めてきた教育政策、この改正教育基本法ですね、この理念を実現するということは、今まで以上に子供たちが我が国の歴史や伝統に誇りを持ち、国を愛し、将来の主権者たる自覚をはぐくむための改正案です。この辺は恐らく日本国教育基本法も同じことだと思います。そして、すべての子供たちに高い学力と規範意識を身につけさせるために、国が教育における目標や最低限指導すべき内容をきちっと決めることが、責任ある教育行政として必要不可欠として考えている。そして改正教育基本法が成立したというふうに思っております。

 具体的に、この教育基本法の理念を実現するために、その後すぐ、教育三法の改正を行ったんです。この教育三法の改正の中に、教員免許更新制度、それから全国学力・学習状況調査、これは教育再生に対する取り組みです。これを行ってきたわけです。つまり、これまでの教育行政は、すべてがこの新しい教育基本法の理念のもとに位置づけられて、教育三法の改正も含めて行われてきたわけです。

 しかし、民主党の今おっしゃった日本国教育基本法案、それからマニフェスト、これを分析すると、国の役割を一定の教育水準の維持や財源確保に限定をして、そのほかの権限を地方自治体に、最終的には学校現場、学校の先生に移行させる方針だと思うんです。そういう方針があるからこそ、民主党鳩山政権、いち早く、教員免許更新制度それから全国学力・学習状況調査については、廃止を含む抜本的な見直しを表明されている。でも、それは我々からすると、新しい教育基本法の理念にそぐわないと思っています。

 この教育基本法の理念を前提とする現行制度の中に異なる理念に基づく制度を入れ込むことは、教育行政の整合性を害し混乱を招くことになると思うんですが、いかがですか。

川端国務大臣 改正教育基本法の中で教育三法も改正され、教員免許制度あるいは学力テストが行われたということは、その理念に基づいての手法としてやられたのは承知をしております。

 しかし、それはいわゆるやり方でありますので、目的は、より質の高い先生を確保すること、そのために、教員免許を更新制というやり方をもって、一定年限たったときに一定の講習を受けて試験をして、当時言われたのはリニューアルという言葉だったんですかね、ということをしようと。これの目的は、やはり先生の質を向上させる、リニューアルさせるということが目的の仕組みの一つであったと思っております。

 そして、全国の学力テストも、悉皆方式というやり方でありますが、全国津々浦々の教育の学力レベルを把握しようという目的の手法だというふうに思います。

 私たちは、そういう意味で、現行の改正教育基本法の理念に基づいて、教育の質を上げよう、そして学力を維持し向上させようという目的でやっておられたその目的に沿って、その立場に立ちながら、より高い教員の質を確保するためには、教員免許のあり方、養成、採用、それから現場の研修、幅広く総合的に、教員免許をどういう人に与えていったらいいのか、どう資質を向上させていったらいいかということを来年度の概算要求で調査研究する予算を計上して、よりよい、質の高い先生を生み出す免許制度のあり方を本格的に検討しようということであります。

 そういう中で、十年研修や免許更新制度も研修という位置づけの中では含まれてきますので、それらも包含して検証、検討していこうということであり、これをやめるという議論を前提にしているものではないことは御理解をいただきたいと思います。

 学テのことも、三年間やっていただいたのは私は高く評価をいたしております、悉皆でやられたこと。これによって随分多くの知見が得られました。それぞれの弱点、生活と学力とのかかわり方、そして、それぞれの地域における状況等々のデータが蓄積されましたので、それを踏まえて、もう少しほかに科目をふやしたらどうかということの御指摘もあります。そういうことも含めながら、全国の都道府県レベルの水準を一定のグルーピングできるランクで評価できるというためには四〇%ぐらいの水準を見ればいいという状況の中で、あと、いろいろな知恵と工夫を示しながら一定の効果が得られるようにという施策をとったわけであります。

 以上二つの点も、改正教育基本法の根幹の改正をしたとおっしゃる部分の目的に合致して検討、改正をやろうとしているということは御理解いただきたいと思います。

下村委員 もう時間がなくなってまいりましたので、大臣、予算委員会で私が御指摘をさせていただいたのは、民主党の地方分権という考え方は決して間違っているとは思わないけれども、しかし、先ほど午前中も質問がありましたが、やはり国家として教育の果たす役割というのがあるわけで、何でも地方に移譲すればいいということにはならない。

 ただ、その中で非常に危惧しているのは、やはり日教組の政策提言要求、この二〇〇八と二〇〇九の要求が、そのまま民主党のインデックス二〇〇九あるいはマニフェストに入っているんですよ。皆さんがどの程度意識しているかいないかにかかわらず、ほとんど同じ項目で、同じ方向性であることは事実なんですね。

 ですから、今回の行政刷新会議でも、例えば心のノートとか道徳教育について相当削られますね。そもそも、来年度の概算要求の中で昨年に比べて既に削って出されていました。にもかかわらず、三分の一から半分ぐらいに縮減するというのが行政刷新会議の中で出たそうです。

 道徳教育、これは、今申し上げたような、例えば、日教組が改正学習指導要領について、「教育基本法等の「改正」をもとに伝統・文化、公共の精神、規範意識等が、学習指導要領に具体的な形として示され、拘束する方向へと強化された」「教育内容が「価値の一元化」「国家主義」的なものへと公教育を根本から変えるものであってはならない。」などと批判をしている。道徳教育については、その典型例として反対闘争を繰り広げており、例えば北海道教職員組合は、各学校に配付した「改悪学習指導要領に対峙するために」と題した冊子資料の中で、道徳教育を国家道徳と決めつけ、国家による支配的なイデオロギー、感性、精神で国の方針政策を受け入れさせようとしている、学校教育を通じて強制的に行うとして、徹底的に排除している。こういうことなわけです。

 ですから大臣、その理念はいい、方向性はいいといっても、実際に予算も削られ、それから実質的に心のノートも廃止になるということだったら、これは日教組の方向性と全く同じじゃないですか。だから、言っていることとやっていることが結果として全然違うことになってしまうのではないかということを危惧しておりますが、いかがですか。

川端国務大臣 心のノートの問題は、道徳教育をしっかりと子供たちにやるということに関しては、全く私はそのとおりだと思います。

 そういう中で、大きく分けると、心のノートを含めて三つの事業をやっておりました。(下村委員「もうちょっと短く、時間がない」と呼ぶ)ということで、それをより地方の自主性というか、先生の工夫も生かせるようにということで電子化したりして最大の応援をするということで、工夫をして、予算は減りましたけれども中身は充実したと私は思っております。

 そして、例の行政刷新会議の事業仕分けは、ちょっと議論の詳細は十分に真意をはかりかねますが、道徳教育自体を否定している議論ではなかったというふうに思っております。

 それと、今、日教組云々というのを御指摘されました。事前に伺ったときに、これがどこで言ったのかを一生懸命探したんですが、先ほどの伝統文化の尊重云々とかいうのがどの時期なのかちょっとわからなかったんですが、日教組が言っているそのままをやろうということは毛頭ございません。日教組も、学校現場の先生の一つの任意団体として大きな組織であることは間違いありません。しかし、いろいろな教育関係者がおられます。私は幅広く公平に聞いていく中でやりたい。

 政策はそのままではないかと言うが、そうでないものもあると思いますし、またそれは、いろいろと議論する中でさせていただきたいと思います。

下村委員 時間になりましたので終了させていただきますが、引き続き議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳浩です。

 今の下村委員の発言を聞いておって、大臣、やはり民主党がおつくりになった日本国教育基本法に変えたらいいんじゃないですか。大臣、改正教育基本法の議論のときに同時並行で議論もありましたが、あのときには大臣は我々が全面改正をした教育基本法に賛成されましたか、反対されましたか。

川端国務大臣 反対をいたしました。

馳委員 鈴木副大臣、賛成されましたか、反対されましたか。

田中委員長 済みません、馳委員、指名してから発言してください。

 鈴木副大臣。

鈴木副大臣 反対をいたしました。

馳委員 後藤政務官は賛成されましたか、反対されましたか。

後藤大臣政務官 反対しました。

馳委員 高井政務官は賛成されましたか、反対されましたか。

高井大臣政務官 反対いたしました。

馳委員 下村さんもおっしゃったように、改正教育基本法と日本国教育基本法の中身を比べていけば、似ているところはたくさんありますが、基本的な目標、目的等、違うところもたくさんあります。我々は、改正教育基本法のもとで教育振興基本計画をつくり、その上で教育三法の改正に入り、教育改革を進めていこうという流れでやってきましたが、こういった政権交代ということがありました。

 もし本当に政権交代で民主党の信じる教育政策を進めていこうとするならば、教育改革のスタート地点から変えるべきなのではないかなと私はやりとりを聞いていて思ったんですよ。もし、改正教育基本法をそのまま受けとめて、そして教育振興基本計画もそのまま受けとめて、それで個々の教育改革に関する改革を進めていこうとするならば、それは民主党の方針とはちょっと違うんじゃないのかなと思わざるを得ないんですよ。

 鈴木副大臣、コメントをお願いします。

鈴木副大臣 二〇〇六年に日本国教育基本法案を提出いたしました際に、民主党は、当時の政府よりも先んじて、関連三法案というのを提出させていただきました。政府も、もちろん、次の国会で三法案を提出いたしました。私どもは、その際に提出をさせていただいた三法案を、一部は参議院でも可決させ、さらに必要なものは追加をさせ、既に野党時代に、ほぼ主要な、日本国教育基本法案を実現するための関連法案については提出をいたしております。

 そして、その路線に基づいてマニフェストも作成をし、今回の総選挙で国民の皆様方の御支持を得ておりますから、基本的に日本国教育基本法案の理念に基づいて作成をさせていただいた、そして提出をさせていただいた関連法案をまさに着々と国会にお諮りをして成立をさせていく。もちろん、その中で、国会の議論を踏まえて、大きな基本路線は変えませんけれども、与野党のお知恵を入れてもっといいものにしていく、そういうオープンな考え方は持っております、教育は与野党超えての課題だと思っておりますから。しかし、基本的にはそういうことで。

 まずは、次の通常国会に高校無償化法案、これについては参議院では既に可決をいたしておりますものがありましたが、この際、改めて概算要求もし、制度も見直して提出をさせていただきます。

 そして、もちろん来年きちっと議論をいたしますけれども、次の次の国会では、まさに小泉政権以来の自公政権下での、文教委員の皆様方は違うお考えだったと思いますけれども、残念ながら、行政改革の中で教員の数について削減をされてしまった。このことが日本の教育力の低下につながってしまった。ここについては我々も重大な問題意識を持っておりますから、これも、学校環境整備法案というものは参議院で可決をさせていただいておりますので、これをベースにいろいろな、これこそ与野党そして各般の御議論を踏まえて、もっとよりよいものにして、そして来年一年かけてきちっと議論をして、教員の数の問題、そして質の問題、これを議論していきたいというふうに思っております。

 教員免許更新制の議論に私も参加をさせていただいておりましたが、我々は、更新制をさらに発展、進化をさせて専門免許状制度というものを踏まえた法案は提出をいたしております、野党時代でございますが。もちろんこれはまだ可決を見ておりませんけれども、教員の質を上げていく、こういう方向では、方向は同じだということを先ほど大臣から申し上げましたが、教員免許更新制も半歩は進んだかもしれませんけれども、まだ中途半端であるという声などもあります。

 それから、今の教育現場に求められる資質が非常に複雑化しているし高度化している。それからその一方で、これから教員になる若い世代のコミュニケーション力、実践能力等々に、以前の我々の世代に比べて劣ったものがあるという現状を踏まえて、さらに発展、進化させていきたいという原案はあります。しかし、もちろん、これについてはいろいろな声を聞いていきたいと思っておりますが、そういうことでございます。

 それから、先ほど来お話がありましたガバナンスの問題は、恐らくここは、おっしゃるとおり、これも当時の自公政権が出されました改正教育基本法に基づいて地方教育行政法の改正がなされました。しかし、私どももそれに対して地教行法の改正案を出しておりますので、これはまさに、地教行法のあり方の根幹としては少し違ったところがいろいろあろうかと思いますから、これから一年二年かけて議論を深めていく、こういうことではないかと思って理解をしております。

馳委員 今鈴木副大臣がおっしゃったことは、スタート地点を違えて個別の政策議論に入ってるる説明をされたと私は認識をいたしました。

 私が言いたかったのは、川端大臣を先頭にした政務三役で、これから政策の企画立案まで行くのか、それとも最終的な決定のところまで行くのか、その理念というものをより打ち出していくには、私たちがやった改正教育基本法に基づいてやるのではなくて、日本国教育基本法というものを出し直してやった方がわかりやすいんじゃないんですかと私は言いたかったんですよ。あるいは菅さんのところの国家戦略室でやるのか。私は余り教育という言葉と戦略という言葉はなじまないと思いますから、特別な、川端臨教審でも行った方がいいのかもしれませんし。私は、そういう意味ではスタート地点が違っているんですよということの認識を皆さんにはまず持ってほしいと思っているんですよ。

 個別の政策の問題について今からまた入っていきますけれども、それはやはり新しい政権のもとで出してくる政策の内容がよりよければ我々も賛成しますし、修正を求めることもありますし、いや、ちょっと理念が違うから対案を出そうかということもこれはあり得る話でありますから、やはりそういう認識のもとで今後の教育改革に臨んでいかなければいけないという私の考えをまず最初に申し上げさせていただいた上で、質問に入ります。

 大臣の所信あいさつ、平成二十一年度の補正予算見直しについて、ハードからソフト、ヒューマンへ、不要不急の事業停止、こういうことになっておりまして、例として地域産学官共同研究拠点整備事業を取り上げたいと思います。

 補正で六百九十五億円積んでおりました。執行停止が四百三十二億円、そして残り二百六十三億円について今恐らく再審査をされている段階だと思います。これは、四十七都道府県に拠点をつくって、その地域の産学官の連携を進めていこうという理念で補正予算に組んだものでありますが、この一つ一つの、四十七都道府県で上がってきた事業計画、申請内容、四十七都道府県の事情というものをすべて政務三役で精査をされて決定をされたものなのでしょうか。

川端国務大臣 前提として、この補正予算を一度全体に見直そうという政府の方針が出ました。いわゆる不要不急なもの、緊急性のものを含めてスリムにするという方針が出ましたので、それを受けて、文部科学省としては政務三役で議論をいたしました。

 施設整備に関する事業は極力見直したい、それから、知的財産形成、人材育成、確保に係る事業は必要性を十分に確認した上で実施するという方針で全体の見直しを行うという大きな方針を確認して書類として出しました。もう一つは、いろいろな理屈は当然解釈はできるんですが、財政法上は「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となつた経費の支出」等という位置づけ、背景も含めて、施設に関しては慎重に支出を見直そうという大方針がありました。

 それを受けて、この地域産学官共同研究拠点整備事業は施設の予算も入っておりますので、その部分の中身を、全部の計画を提出いただき、中身の研究テーマの詳細までは、正直言って、概要はリストとしていただきましたけれども、その詳細まで詰めたほどではありませんが、設備と施設の比率がどういう状況になっているのか、あるいは自己資金がどうなのか、今までの経過というのをおさらいする中で、事業をどこまでチェックしたかと言われると、そういうリストの中で我々が疑問に思ったところは、改めて地域に問い合わすことも含めてチェックをした。

 主には、施設と設備の費用がどれぐらいなのかということを中心に、これは設備はできるだけ何とか工夫をしてほしいという思いの査定でありますので、そういう見直しがどれぐらい可能かということでのチェックをいたしたところが現実でございます。

馳委員 これは事務方で結構ですから、今の大臣の答弁を受けて、施設、いわゆる箱物は慎重にと言いながらも、補正の執行停止になっているんですね。これは来年度の概算要求でJSTの予算に入っていますでしょうか、入っていませんでしょうか。

泉政府参考人 御指摘のものは、二十二年度の概算要求には計上いたしておりません。

馳委員 個別事情を私が地方の声として申し上げたいと思います。

 先週、鳥取県のバイオフロンティア計画を進めている、鳥取は産官金学なんですよ。産業界、行政、学術、これは鳥取大学です、金というのは金融ですね。ということで、お話を伺って、大変困っておられましたので、ちょっと今から彼らの声というものを直接お伝えしたいと思います。

 鳥取県ではバイオサイエンスにかかわる産学官の連携がうまくいき始めている。企業もなければ拠点もないので、いつまでもやることができない地方にこそまず拠点をつくるべきではないでしょうか。建物がバイオフロンティアではなく、精神がバイオフロンティアであり、箱物がなくてもやる気持ちはあるという鳥取県の現場の声です。

 でも、僕は助けは必要だと思っています。現地の事情を考慮せずに、箱物だからだめだというのでは説得力はありません。

 現地としては、研究設備、装置の満額確保を目指し、箱物は自腹でやらざるを得ないと嘆いております。予定していた平成二十三年四月オープンはおくれざるを得ないので、予定がおくれることで企業への説明があるが、とても頭が痛い。

 鳥取県の年間収入は五百億円、今回の施設整備費は十六億円、一般財源で捻出する体力はない。借金してでもやるか、補正予算の公共投資臨時交付金を使い、本来やるべき公共事業を押しのけてでもやるか究極の選択である。これは弱い者いじめだ。大変切実な声でありました。

 ちなみに、鳥取県のバイオフロンティア計画、この染色体工学については、経済産業省が認めた鳥取県内における地域資源であるということ、このことは御存じでしょうか。

川端国務大臣 今御指摘のとっとりバイオフロンティア構想の中核になる技術は、かねてから注目をされておりまして、文部科学省でも、二十一世紀COEプログラムで染色体工学技術開発の拠点形成ということで、平成十六年から約一億六千八百万円、それから同時に、都市エリア産学官連携促進事業一般型ということで平成十八年から二億二千七百万円、そして、多分今おっしゃったのはJSTの戦略的創造研究推進事業として、いわゆるCRESTとしても支援をしてきたということで、この研究が非常に意義のあるものであり、国としても支援をしてきたということは承知をしております。

馳委員 ということで、私は前向きに考えたいんですよ。箱物を何とかしてあげられないのかなと。県の財政が厳しい、ほかの公共事業を押しのけてでもということでは、これは議会も人材育成で結構支援してきているんですよ、議会に対する申し開きもなかなかしづらい。ではといって、先ほど聞いたんだけれども、JSTの予算には来年は入っていない。

 そうすると、大臣、これは第二次補正、やると私は聞いていますけれども、これは一つのチャンスではあると思いますし、あるいは、そもそも大学予算の中に何らかの工夫として入れてあげることができないのかなと。何度も先ほどから私が申し上げたように、地元の声にもあったように、企業もない施設もない、どんどんやはり地方は来ないんですよ、経済の成長戦略を描くことができません。

 世界にも類のない染色体工学の技術であるという主張でありました。具体的な話もお伺いしました。何とか大学予算としてでも工夫をしていくことはできないのでしょうか。

川端国務大臣 一生懸命地域でそういう芽を出し、協力して頑張ってこられて、そして国としても、文科省としても、これは合計でいいますと、今まで数億円の御支援をしてきたという中で、実はこういう建物をどうしようかという構想をまだ具体化するまでに、補正でこういうことをやろうということが出てきたから、これはいいチャンスが来たというので、一気に加速できるという思いを持たれたし喜ばれたことは事実だと思うんです。

 ただ、経過からいうとそういう経過で、非常に、一気にここに日が当たるということに期待をされたことは間違いありません。ただ、鳥取の例ではなくてトータルでいいますと、JST、科学技術振興機構は全国十六カ所にイノベーションプラザ、サテライトを持っている、それから、中小企業基盤整備機構は全国三十二カ所にインキュベーション施設ということで、みんな名目は産学官共同施設を持っているわけですね。

 そして、平成十九年十二月の独立行政法人整理合理化計画においては、外部有識者による評価等を踏まえて、成果が低調でかつ改善の見通しが立たないものは廃止する等の見直しを行うようにというのが、イノベーションプラザ及びサテライトという、いわゆる地域に何十カ所かある支店にはそういう指摘が出ているように、一方では、そういう施設をつくったけれどもうまくいかずに、お荷物というか負担だけになっているというのもいっぱいあって、整理統合しなさいという状況も一方であるという中で、私たちの基本方針としてはそういうことで建物は何とか最大限工夫してどこかでならないかというお願いの中で、こういう事業ができないかという更問いをさせていただきました。

 今審査を受け付けている途中でありますので、このことがどうかということまでは言えませんけれども、その中で、今再応募するに際して、当初提案では鳥取大学の敷地内にマウス飼育のためのクリーンルーム、細胞実験、遺伝子実験を行うための実験室、研究を行うためのオープンラボ等の機能を備えた二千五百平米の建物を建てるという御計画でございました。

 それが、政権交代に伴う我々の方針変更で、建物は何とか工夫できませんかということでの提案はできませんかということに対して大変御苦労をいただいたのですが、マウス飼育のためのクリーンルームについては鳥取大学の既存施設内にスペースを確保し、JST予算を活用して設備を整備する、我々は設備は支援しますから、それは鳥取大学の中に場所を確保しておこうと。それから、マウス用のケージは、いわば人口密度でいえば高密度化して、ちょっと居住性が悪いのかもしれませんが、要するに、半分のスペースで同じマウスが飼えるようにしようという工夫。あるいは、共同実験室及びオープンラボについては大学の敷地内に県費により新たな施設、約千二百平米、四億円程度を建てようかと。これで議会の了解が得られるだろうかということを検討しておられるということで、何とか時間的にも中身的にも工夫をしてできるようにしたいので、応募をしようという動きになってまいりました。

 そういう部分では、期待を持っていただいて、一気に進むということに対して、方向を変更したことは大変心の痛む思いでありますが、何とかその中でも知恵を出して、このテーマはこれから採択の審査がありますので、これについてどうこうは申し上げられませんが、いいテーマについて、中身があって、そしてなおかつ、そういう建物とかはまずないという中で創意工夫をしていただくという努力もしていただきながらということで取り組んでまいりたいと思います。

 何分こういうものを本当に育てていくということが、今世界的に注目を浴びている例えばiPS細胞にしても、初めはほとんどだれにも見向きもされなかったテーマに、やはり科学技術の支援をしたことで芽を出した、いっぱいそういう事例はありますので、こういうことはふだんから我々も感性を磨いて大事にしていきたいと思いますし、また、いろいろな事例がありましたら御指導をいただければと思っております。

 以上です。

馳委員 大変丁寧な答弁ありがとうございます。

 現場は何とかして工夫してやっていきたいというふうな強い思いを持っているんですね。

 徳永高等教育局長にちょっとお伺いしたいんですが、あなたは北九州で産官学連携の事業を随分と立ち上げて頑張ってこられたと私はよく伺っております。

 どうですか。大臣に四十七都道府県のすべての事業について一つ一つ検証しなさいというのもなかなか難しい話でありますし、たまたま私は、鳥取大学の方からとにかく話を聞いてくれといって、お話を伺った上できょう質問しているんですが、徳永局長、今までの行政経験の中で、北九州で取り組んできた事情などもお話しいただいて、ぜひ参考にしたいと思いますので、お聞かせいただきたいと思います。

徳永政府参考人 突然の御指名でございまして、具体的にどういうことをお答えすればいいのかわかりませんが、端的に私が北九州市の企画局長のときにやってまいりましたことだけ申し上げれば、当時、北九州市としては、若松方面に学研都市を造成したい、つくりたいと考えておりましたけれども、もちろん、大変資金もかかるわけでございますし、また、大学等そういったものの整備、あるいは組織の構築というのはなかなか難しいという点がございました。

 そこで、当時の旧建設省の都市事業というようなことを活用いたしまして、いわば学研都市のインフラを整備する、そうしたことを市として行うために、小さな市立大学の環境工学部を設置する、さらにその上に国立大学の独立研究科を設置する、そして同時に、早稲田大学と福岡大学という私立大学も誘致をし、国公私混合キャンパスという形で、いわば少ない資源を活用して学研都市をつくってきたということ、そういうことがございました。

馳委員 やはり地域に持っているこういった知的財産を集積して、それをコアとしながら産業に結びつけていくということ、ここの芽出しをしてやるのは、やはり文部科学省としての一つの役割だと思うんですよ。たまたま私は、きょうは鳥取の個別事情だけ申し上げましたが、全国にこういう種はたくさんあるはずですし、それは我々は伸ばしていこうという努力をしていると思っているんですよ。

 鈴木副大臣、川端大臣一人でもちろん政務三役チームをやっているわけじゃないですから、ぜひ鈴木副大臣にも、全国の高等教育機関あるいは研究所あるいは産業界、あなたは経済産業省出身でしたか、多分このことは何となく意味をわかって聞いておられたと思うんですけれども、これはやはり、結びつける人、コーディネートする人がいて初めて、国からのちょっとした後押しがあれば大きく花開いていく、それがあれば、まさしく最終的に雇用も生み出していくことができるという本来の目的を達成することができると思うんですよ。

 鈴木さんの一つのこれまでの経験や知恵の中で、政務三役で今後やっていく中で、お知恵、考えがあったらお話しください。

鈴木副大臣 御指名をいただきましたので、お答えを申し上げたいと思います。

 私は、実は山口県で地域産学官の事業を担当した課長も務めておりました。それから、通産省を退職いたしました後は、今度は学の立場で、地域産学官、神奈川県等々のプロジェクトのメンバーに加えていただきました。

 そういった今までの、もちろんこれも一部の偏った経験ではありますけれども、やはり研究者あるいは開発者の方々が本当に何を望んでおられるのかという順番が、もちろんその声に耳を傾けるということは非常に重要だと思いますが、総じて申し上げれば、県庁が絡んできたり、あるいは中央省庁が絡んできたりしますと、本当に研究現場が望んでおられるものと少しずつ違っていくなということを、それに加担をしていた者として痛感をしてまいりました。

 そうした経験を踏まえて、やはり今回、研究をやる場合にはまず人が重要です。それから、どうしてもそれに必要不可欠な設備というのがあるんですね、確かに。これは私も山口県のときに、その設備をどうやって導入するかということに腐心をいたしました。

 一方で、地方の場合は、今まで、私もその昔は、今度テクノポリスとか頭脳立地の計画策定、このときに初めて通商産業省と文部科学省が一体となって、大学がなければテクノポリスの構想の認可はできないというスキームを入れたわけでありますけれども、そのころが一番最初の産学の始まりだと思いますが、その後、テクノパークとか頭脳立地パークだとか、かなりのそういう造成、あるいは工業用地とか頭脳何とかパークとかいう造成はかなり進んでおりまして、さらに申し上げれば、それが売れ残っているというか、その用地利用を困っているという事例等々もございますという実態も、私、大分見てまいりました。

 そういう観点から申し上げ、さらにいろいろな省庁がある中で、文部科学省が主として果たさなければいけないものは何かという観点に立ち返って考えますと、やはり一番、研究者、開発者に近いところの研究自体を支援していくということであろう。そういう観点から、知的クラスター以来ずっと文部科学省はその部分を支援してまいりました。

 したがいまして、施設もないよりはあった方がいいと思うし、やらないよりはやった方がいいかと思いますが、文部科学省がやるべきは、施設よりも設備、あるいは設備よりも人材といったことではないかということで、今回のJSTの事業もそのような方向で修正をさせていただいて、私も政務三役の議論の中でそういうことを申し上げさせていただいたところでございます。

馳委員 おっしゃればおっしゃるほど、やはり何とかして組み合わせて拠点を整備してあげなきゃいけないなということなんですね。

 先ほど徳永局長おっしゃったように、あのときは国土交通省の予算をうまく引っ張ってきたということですし、今回JSTには箱物が入っていないということを考えると、これは県に無理してやってもらうのか、大学予算の中で何らかの配慮をやはりしていくのかということが必要で、この計画自体が、これは計画に基づいて進めているということでありますから、これに対する配慮というものは継続をして必要だということを申し上げたいと思いますし、それはまさしく四十七都道府県それぞれの事情があるということ、財政力が豊かな地域もあれば、全くそうではないからこそ、のどから手が出るほどこれを進めたいというところもあるという事情を踏まえて、政務三役には指導していただきたいし、リードをしていただきたい、このことを申し上げたいと思います。

 さて、午前中の質問にちょっと私はつけ加えて、本村さんが質問しておられました高校教育の実質無償化について、法案を出されるということです。我々自由民主党もそれに対してどう対応するかは法案の中身を見たりしながら検討しますが、そもそも、所得制限もなく実質無償化をやっていいのかどうかという議論はやはり残らざるを得ないんですね。

 高校に就学援助制度を拡充してやるかとか、返済義務のない奨学金制度をするかとか、今現在やっておる入学金、授業料減免制度というものを拡充するかとかを組み合わせれば、実質的な、高校実質無料化に近いというよりも、本当に支援を必要とする御家庭に対する支援というのはできるはずなんですよね。

 それはさておき、これは法案が出てきたときにまた議論したいと思いますが、その前に、私もちょっと心配なんですが、自分が大臣になったつもりで心配しているんですが、この概算要求、文科省の予算をスクラップ・アンド・ビルドして持ってこいという話なのか、そもそもマニフェストとして、民主党政権としてこれを訴えて勝ったんだから政府全体で生み出してやるべき話なのか、この辺の議論の仕分けはどうなっているのかなということを大臣にお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 概算要求を作成するときの内閣の方針として、マニフェストのいわゆる一ページ、工程表に載っている一年目にと約束したものは、基本的にしっかりとそれを要求しなさい、最終的な査定は別にしましても、それは乗せなさいと。そして、マニフェストの工程表に載っていない、マニフェストに書いてあるものを含めてのすべての予算は、既存予算とのトータルで、今までの現行二十一年予算の枠内で編成するようにというのが基本方針でございました。

 そういう意味では、高校無償化はマニフェストの工程表に載っているテーマでありますので、それはそこに上げて、おっしゃった整理でいえば後者の方ですね、その財源は全体で何とかしようという位置づけであると認識しています。

馳委員 何か大臣、大船に乗ったような気持ちのようですが、とするならば、なかなか、概算を出しましたが、今後、十二月末に向けて絞り込みの中で、よっぽど頑張らないとだめだなということを直感として思いましたので。

 そんな中で、ちょっと細かいことではありますが、これは鈴木さんにお伺いした方がいいと思いますが、外国人にも出すのか、日本の税金を使って外国人にも出すのかという議論になるんですね。これは二つの意味がありますよね。各種学校では外国人学校等もあります。あるいは日本の高校や専門学校に入学している外国人もおられます。外国人にも出すということでよろしいんでしょうか。

川端国務大臣 その前に、今、予算のことは、概算要求の方針はそういうことで概算要求を出しました。そして、これからの予算編成全体の財源論を含めた部分の全体のスキームもありますので、そのことは予算編成に関する閣僚委員会で議論をして、そのマニフェスト項目を含めて議論をしてその取り扱いを協議するということで、当然のことでありますが全体で議論をするということで、スクラップ・アンド・ビルドという方針ではもちろんありませんが、別枠でどこかでとってくるということで本体に影響ないという意味でもありません。そこの部分だけは、スクラップ・アンド・ビルドかと言われたらそうではないということははっきり申し上げられますが、全体的には、十一月十七日、つい先日の閣僚委員会の合意事項として決定されておりますので、申し添えておきたいというふうに思います。

鈴木副大臣 お答え申し上げます。

 今回の高校無償化でございますが、大きく申し上げると二つ目的がございます。

 一つは、経済的に大変な世帯の生徒の学びを支援するということで、五百万円以下の私立だとか三百五十万円以下の私立の方々にはかなり手厚く上乗せの支援策をさせていただいているところでございます。

 もう一つの目的は、国際人権規約のA規約の中で、教育についてすべての者の権利を、この後期中等教育については漸進的に無償化するということが書いてあるわけですね。このことを日本とマダガスカルは留保をしてきた。この事態を何とか改めようではないか、こういう思いの中で、そして諸外国を見ましても、多くの国が高校は無償化になっております。そうしたことも踏まえて、そして民主党は、何人も学ぶ権利を保障しよう、こういう趣旨で、今回の高校無償化法案あるいは高校無償化制度というものを考えております。

 そういったことでございますので、まず我が国の高等学校に在学する外国人をも対象としていきたいというふうに思っております。現在も公立の小学校、中学校で学ぶ外国人、これは公立の小学校、中学校は受け入れているわけでございますので、それと同じ趣旨でございます。それから、外国人学校に在学している外国人についても、これは何人をも後期中等教育の機会を保障しようということでございますから、後期中等教育と呼ぶに足る、あるいは認定するに足る教育を受けている外国人についても対象とする方向で概算要求をいたしております。

 なお、この制度は、我が国の、日本社会の納税者がこの高校等における学びや成長を支援するという趣旨でございますから、もちろん支給の際にはそのことを十分に理解をしていただく。あるいは支給後も、教育現場で生徒あるいは世帯に対して、そのことをしっかりと折に触れて自覚をしてもらうということは極めて重要な前提だというふうに思っておりまして、そういう前提のもとで今概算要求をさせていただいているということでございます。

馳委員 限られた財源ということですね。日本国民の税金を使って、限られた財源の中で行う施策としての判断が今後どうなるかだと私は思っているんですよ。

 私は、冒頭申し上げたように、就学援助制度、これを高等学校にも拡充するとか、奨学金でも返済免除型のをつくるとか、あるいはその授業料、入学金減免制度を拡充する、こういう今までのやり方を拡充することで十分対応できると思っているし、その考え方の、そもそもの私の考え方は、義務教育ではない中で、親の責任というものをまずは果たしていただきたいというふうな私の考えでありますので、あとは法案が出されると思いますので、そのときにまたこういった議論をさせていただきたいと思います。

 それから次に、ちょっと大臣の政治資金について不名誉な報道がありましたので、確認ということでさせていただきます。

 民主党滋賀県第一区総支部と資金管理団体川友政治研究会、政治団体達友会が、赤坂のクラブやニューハーフパブなど六店で十四件、計百十四万円を支払っていると報道されました。事実でしょうか。

川端国務大臣 お答えいたします。

 大臣の質疑時間にこういうテーマで取り上げられて時間を消費することはまことに申しわけないことだ、みっともないことだと思っております。

 正式に、収支報告は、その趣旨で使った日時、場所、支払い先を正確に報告するようにということで報告いたしました中に、報道されたような指摘に伴う三団体で、報道では六店十四件、百十四万円という報道をされました。二〇〇三年から二〇〇七年ということで精査をいたしましたところ、こうした店は六店十四件で、合計はもう少し多くて百三十万円余りという記録で報告をしておりましたことは事実でございます。

馳委員 だれと行きましたか。

川端国務大臣 六店の中で四店は私自身が行ったことはあります。大きく報道されました新宿と祇園の二軒は、私は行っておりませんでした。だれと行ったかということが、何年も前のことで、本当に正直言ってよく覚えていないのと、担当の秘書が、あとの二店は一回ずつ行ったようでありますが、これも実は退職をしておりまして、問い合わせをしたんですがよく覚えていないということで、何人で行ったかも含めて調べたんですが、詳細は把握できませんでした。

馳委員 一緒に行った人も割り勘で払いましたか。

川端国務大臣 経費含めて、いろいろな会合で、初めからそこなのか途中からかは別にしまして、いろいろな交流、懇談の場として使ったということで、費用として計上したということでは、それぞれの団体で全額負担をいたしました。

馳委員 一緒に行った人が払っていないとすると、ごちそうしたということですか。

川端国務大臣 趣旨としては、いろいろな交流とか懇談とかはありますし、それはある種の政治活動の日程だという認識で当時はしましたので、ごちそうしたというのか、会合費を我が事務所で持ったということの認識をしております。

馳委員 お店の会計はだれがしましたか。

川端国務大臣 請求書が送られてきて、それぞれの会計担当者が、その要請に基づいて振り込みで支払いをいたしました。

馳委員 政党助成金や資金管理団体や政治団体の会計で処理することをだれが指示をしましたか。

川端国務大臣 そういう会合に費用が発生した部分というのは、それぞれの場面場面で、私が参加したものは私がその経費を持つようにということであったと記憶を、定かに個々に記憶をしておりませんが、そういうときはそうだというふうに思いますし、私が行っていない分は秘書の裁量でそういう判断をしたんだと思います。

馳委員 政治資金収支報告書には川端大臣の承認の署名はありますか。

川端国務大臣 これは所定の書式で届けておりますので、所定の必要事項はすべて記載をしております。

馳委員 この報道がされて、大臣になるとひっくり返されて過去のいろいろなことが調べられるんだなと、私も半分気の毒に思ったようなところもあるんですが、ただ、訂正の処理をしましたか。

川端国務大臣 政治資金収支報告書の趣旨は、冒頭申し上げましたように、日時、場所、金額を正確にその団体が支出した分は報告するようにということでありまして、これを事務所の名前で支出したことは事実でございます。そういう部分では報道も含めていろいろ御批判をいただいておりますが、これも公開をするということの責任を私は負っているんだと思っております。そういう意味では、事実を何か訂正すると、なかったことにするということは逆によくないことだと思って、訂正はいたしておりません。

馳委員 二つ聞かざるを得ないんですね。要は、政治資金の使い道として正しいと思いますかというのが一点と、もう一つは、言葉は悪いかもしれませんが、もしごちそうしたというふうな印象であるならば、これは供応に当たりますよね、こういう指摘をすることができますが、大臣としての見解をお願いします。

川端国務大臣 適切でないという御批判があり、そうであるという認識を現在は持っております。これは不適切な支出であったというふうに思います。

 したがいまして、訂正はいたしませんし、批判を浴びましたし、その責めは負っておりますが、三団体それぞれの担当者を含めまして、今後こういうことで指摘をされる対象に支出をしないことを申し合わせで決めました。

 そして、供応に当たるかどうかということですが、供応という、正確に法的に承知をいたしておりませんが、会合の費用を政治団体が持つことは別に供応には当たらないというふうに思います。というので、我々、いろいろな会合ということで、それがちょっと違うだろうという御批判を受けたことは事実ですが、供応という認識は持っておりません。

馳委員 選挙の時期とも絡むわけではありますよね。公職選挙法との、触れるか触れないかというそういう視点もやはり指摘しようと思えばできるということ。

 きょうはこれ以上は追及しませんし、今後、政治資金を使って赤坂のクラブやニューハーフパブに行きませんよね。

川端国務大臣 今申し上げましたように、三団体ともにこういう御批判を受けて改めて反省をし、今後こういう支出は一切しないということであり、行くとしたら自分のお金で行かせていただきます。

馳委員 貴重な時間でありましたが、確認という意味で質問をさせていただきました。

 次に、実はことしの通常国会に、我々自由民主党、公明党が議員立法を三本提出いたしております。PTA・青少年教育団体共済法、海外美術品公開促進法、そしてスポーツ基本法であります。

 この後、スポーツ問題については我が党の遠藤利明委員よりまた質問をさせていただくと思っておりますが、いずれの法案についても、実は真っ向から対立する法案ではありませんでした。国会上のいろいろな事情もありまして、うまく与野党、超党派の議員立法としてまとめ切ることができなかったという事情があったんですね。

 この臨時国会においても、我々は議員立法として提出をする準備に入っております。もう実は通常国会で出ておる法案でありますので、中身は御存じだと思います。現状、私も今こうやって委員会の場で表明させていただいておりますので、もう事情は御存じだと思いますので、PTA・青少年教育団体共済法について、あるいは海外美術品公開促進法について、スポーツ基本法について、政府、特に政務三役としてどのように対応すべきとお考えかをお聞かせいただきたいと思います。

川端国務大臣 経過は私も十分に承知をいたしております。

 そういう中で、PTA共済事業法に関しては、技術的にいろいろまだ、前も両方とも出ましたし、いろいろな議論があることを踏まえて、やはりPTAの共済事業が継続してやれるようにしなければいけないということは共通の認識でありますので、次期通常国会に閣法で提出するということで今準備をしているのがPTA共済法であります。

 それから、海外美術品の公開促進法に関しては、これは各省に絡む、目的としてはみんなはっきりしているんですけれども、各省の、文化庁だけではなくて外務省、法務省等、例えば外務省の外交上の観点というものの配慮をどう考えるのか、法務省の強制執行等我が国の民事法制との整合性ということと同時に、ユネスコでもこれは大きな議論になっておりまして、ここの部分の整合性の動向を見きわめながら判断をしてまいりたいと思っております。

 それから、スポーツ基本法は、私もスポーツ議連の方で昨年の経過も重々承知しております。内閣としても、来年、ちょっとおくれるという御批判はあるかもしれませんが、いろいろな議論も実際あります。体育とスポーツは違うとかいう議論までありました。ということで、我々としては、法案提出に向けた具体的な検討を来年取り組んでまとめたいというふうに思っております。

 以上です。

馳委員 PTA共済法の方について、要望団体の方から、内閣提出法案になるとハードルが高いので、できれば超党派でお願いしたいという具体的な提案がありますので、これは議事録に残しておくという意味でも私はちょっと申し上げたいと思います。

 五点あります。

 一つ。「内閣提出法案では、設立に必要な準備金が高額となることが予想され、団体によっては、このような高額の資金確保は難しく、新たな互助会設立や新しい運営への移行が困難となる団体も生じてしまいます。」

 二点目。「会計等の監査人の条件がより高くなり、アクチュアリー等の資格を持った監査人を確保することは大変難しいだけでなく多くの経費が必要となり、相互扶助の精神のもと、少ない額の予算で運営している団体では監査人の確保ができなくなるおそれがあります。」

 三点目。「互助会加入に際して、組合員制度の導入が求められることもあり、相互扶助の考えのもと全員加入である現状から大きく乖離してしまいます。さらに、組合員制度導入となると、会費の徴収や見舞金の受け渡しなど学校へのお願いが難しくなり、学校安全互助会の運営がほとんど出来なくなります。」

 四点目。「安全互助会は、事故に遭わないための安全教育にも力を入れており、会費の中から各学校等で進めている安全教育を支援しています。内閣提出法案では、これらに必要な経費を共済の費用から支出することが難しくなる心配があります。この支出が出来ないと学校の安全教育に支障をきたします。」

 五点目。「内閣提出法案では罰則規定が厳しくなることが予想されます。議員立法によるこれまでの案では、罰金刑のみでありましたが、内閣提出案では懲役刑まで入ることが予想されます。学校の教員やPTAの役員が懲役刑に問われることは、役職を引き受けないなどの問題が発生する等PTA活動に支障を生じかねません。」

 ということで、内閣提出法案となった場合の懸念というものも皆さんやはり心配をしておられるということを一応伝えておきますし、私は別に自民党、公明党が出したからやれよと言っているんじゃないんですよ。

 この共済が現場にとって重要なものであり、継続をしたい、その形を早く整えてほしい、制度共済としてやらせてほしいという切実な要望があるわけで、それは政府提案ですぐ、あっという間に成立することができれば可能ですが、来年のということになりますと、これは予算関連法案じゃないので、四月以降、下手すると五月近くになるんですね。またおくれてしまうということで、希望しておられる子供会やPTAや今の安全互助会の皆さん方にとっては、大変困った状況にあるということをお伝えしておきたいと思います。

 私も、準備してきた質問を余りできませんでしたが、この議員立法に対する、私たちが議員立法を出すと言っている一方的な話ではありますが、今はっきり申し上げましたので、政府としてのお考えをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

川端国務大臣 さかのぼれば、これはいわゆる保険業法の改正のときからの議論でありまして、私たちも、現実に空白期間が続いていくと、今やっているものがもうもたなくなってきているという現状もあるので、できるだけ早い対応をと思って、次期通常国会というふうに思っています。

 それから、今御懸念の部分は、我々、そういう御懸念がないような法律をつくりたいということと、国としての責任ある法律というもののどこの選択になるのかというのが多分これからの議論になるというふうに、御意見としてはしっかり受けとめながら考えていきたい。

 それから、いろいろな政治判断として議員立法をお考えになり、それをどうするかはまさにこの場の御判断ですので、私からはコメントは差し控えたいと思います。

 以上です。

馳委員 終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、松野博一君。

松野(博)委員 自由民主党の松野博一でございます。

 初めに、改めまして川端大臣、御就任おめでとうございます。大臣は高い見識とバランス感覚に富んだ方とお聞きをしております。ぜひ、日本の教育行政と科学技術の推進のために御存分の活躍をいただきたいと思いますし、副大臣、政務官の皆様方も、それぞれの分野におきまして力を発揮していただきたいというふうに思います。

 三十分の時間でございますし、これから一般質問にも立たせていただきたいというふうに思います。

 我が党は教育政策の専門家がきら星のごとくおりますので、個々の議論に関してはその機会に深めさせていただきたいというふうに思いますが、きょうはまず、民主党を中心とした政権、川端大臣の教育に対する考え方、お立場、それと私たちの教育政策の違いについて、どこが一体違うのかということに関して明確にしていきたいというふうに考えております。

 政権交代がありました。これまで民主党さんが委員会等を通じて主張されてきた教育政策、また、先般の選挙で公約をされた政策を具体的にこの政権で実現をしていくということかと思いますが、今までの審議をお聞きしても、大臣の教育政策、特にその内容、コンテンツに関しての話が、どうもなかなか私たちにも国民にも伝わっていないのじゃないかなというふうに思います。御答弁の中も、これから検討するとか、来年の審議をというようなお話も随分あって、これでは、国民が何を民主党政権に教育分野において期待をしているのかということが伝わらないと思います。

 先般来、大臣所感も含めて広範囲な大臣の教育に対するお考えはお聞きをしましたが、特に、八月まで自公政権で教育行政をやっておりました。自公といって他党まで含めていると恐縮でありますが、少なくとも、自民党の今までやってきた教育行政、教育政策の中で、この点が問題だから、それをこの民主党政権の中においてこう変えるんだというのを端的に一点挙げていただけますでしょうか。

川端国務大臣 教育行政というのは大変息の長い政策でありますので、長く自公政権や自民党政権がやってこられたということがあると思いますが、この政策が悪かったからというふうなことの、一概にそういう分析を私はするつもりはありません。

 ただ、現時点でいえば、学力、知識はあるけれども応用力がないとか、体力が欠けたとか、いろいろなことが言われますが、これが、政策としてというより、社会の変化の中で政策がうまくマッチしなかった部分は確かにあると思うんですが、そういうようなのを抜きまして、今、一番教育の中で現状最優先にカバーしなければならなかったのがちょっと急激な変化の中で対応し切れなかったのか、むしろそういう方向を助長したのではないかというのは、これは教育政策だけではなくて、やはり、経済格差の拡大というのが随分進行した。それが教育現場、子供たちに非常に大きな影響を与え、教育環境を毀損しているという現状にあるという意味では、教育政策というよりも、全体の政策方針が、格差拡大ということがやはり問題であったのではないかというふうに私は思います。

松野(博)委員 経済格差から派生する、教育の機会をどう担保していくかという問題に関してはまた後ほど議論をさせていただきたいというふうに思いますが、学校と教師の職務と責任の範囲に関しての大臣のお考えをお聞きしたいというふうに思います。

 明治期以来、日本は、知識、生活様式、芸術、ほとんどすべてにわたってと言っていいほど、学校を通して、特に小中学校を通して普及させてきました。司馬遼太郎さんはこの学校の機能を文明の配電盤というふうに表現をされていましたが、まさにそういった機能を持ってきたんだろうというふうに思います。地域の中心に学校があって、日本人は、国際的に見ても、特に自分たちの町の学校、自分たちの出た学校に関しての思い入れが強い国民だというふうに思います。おらが学校という意識かと思いますが、このことはもう日本の文化であり、大切にしていくべきことだと思います。

 一方で、欧米においては、学校の機能というのは主に知識を習得する場所であって、しつけに関しては家庭が責任を持つ、スポーツは地域のスポーツクラブがある、倫理教育に関しては教会が大きな役目を負っているということであって、おのずと、教師や学校がこれをやるべきだ、ここまでが教師、学校の範囲だ、責任だということが明確になっておりますけれども、大臣、日本において教師、学校の職務の範囲はここまでやるべきだ、ここまで責任をとるべきだというようなことに関してのお考えをお聞かせいただければと思います。

川端国務大臣 非常に定量的には難しい議論になるのかなという思いをいたしますが、基本的には、やはり国の責任として、特に義務教育をしっかりやるという責任があります。

 その教育をする現場の先生は、子供たちに学校を通じて教育をするというのが最大の責務であるというふうに当然のこととして認識をしておりますし、学校教育法においても、「教諭は、児童の教育をつかさどる。」というふうに書いてあるとおり、当然のことでありますが、それが第一義的な教師の責任であり役割であると認識しております。

松野(博)委員 大臣の、教育に対する責任というのは一番基本のところだと思いますが、例えば、道徳はどこまで学校で教えるべきかという議論もあります。また、責任論において、例えば通学の安全管理に関して、ヨーロッパの場合ですと、校門から一歩出れば、それはもう各家庭で責任を持ってくれ、学校はその責任は負わないというのも明確になっているんですね。

 どうも、明治期以来のこういった文化の中において、今、学校では保護者の不満が大変渦巻いています。一方で教師も不満を持っています。その最大の理由といいますのが、保護者が考えている、どこからどこまで学校がやってくれ、教師がやってくれという範囲と、教師が考えている、いや、教師がやるべき仕事はここからここまでなんだという範囲がずれているんですね。これは、文科省が行いました教師の意識調査、保護者の意識調査でも明確になっております。

 このことをきちっともう一度整理をすると、今学校現場で起こっているかなりのさまざまな問題の所在がクリアになってくるかと思います。大臣、この作業をやられるおつもりはありますか。

川端国務大臣 日本と西洋の文化の違いの中に、やはり共同、連帯という概念が随分違う。個と連帯というものの概念が違う文化を長年にわたって形成してきたんだと思います。そういう意味では、学校の責任か、教師の責任か、教育委員会の責任か、生徒の親の責任かみたいな議論の責任論というのは、昔は余り言われなかったというふうに思います。

 そういうなのがいろいろな社会の変化の中で起こってきていることは事実でありますし、私は、だからこそ、地域社会の中に学校が中心に大きな役割を、社会で子供を育てるときの学校が大きな役割を果たすと同時に、地域社会の構成員が学校にいろいろな形でかかわるということが、その共同という意味で大事だと私は思っております。

 そういう中で、いろいろな先生の意識から保護者の意識というのがありますが、体系的にということを分析することを今具体的に想定を私自身はしておりません。

松野(博)委員 それは、この問題はきちっとすることが非常に重要だと思うんですが、文科省の職員にこの議論をしますと、大変それは重要なことですねというふうに話すんです。でもサボタージュするんです、この問題に関しては。

 なぜそういうことになるかというと、教師の職務の範囲、こういう議論を進めていくと、当然、教師の労務管理の問題というのが出てきます。また、現行の教師の給与の構成要件の問題も絡まってきます。そしてもう何よりも、保護者が要求している教師のレベルと日教組なんかが主張している教師の職務範囲というのは大きく違うんですね。だから、これは一種パンドラの箱でありまして、この箱をあけると大変な議論が巻き起こって収拾がつかなくなるんじゃないか。だから、できればこの問題には触れたくないなということなんだろうというふうに思います。

 私たちは、日教組と相当距離がある政党でありましたから話がうまくいかなかった面もあると思いますが、幸いなことにと言っていいのかどうかわかりませんけれども、御党の場合、日教組とも近しい関係でコミュニケーションがとれるんだろうというふうに思いますから、ここからここまでが教師、学校のやるべき仕事で責任だということを明確にする作業というのを、ぜひ川端大臣のもとでお進めをいただければというふうに思います。

 そして、とどのつまり、教育行政の一番本質、大事なこというのは、教員の質の管理をどうしていくか、これは量の問題もあると思いますが、質の管理をどうしていくかということだと思います。文科省でとった意識調査では、多くの教員が自分たちの仕事に誇りを持っているという結果が出てきまして、これはもう本当に安心をいたしまして、ほっといたしました。

 しかし、教育行政ということを考えたら、教師という職業は日本全体で百万人いるんですね。百万人の職業集団というのは、職業集団の中で恐らく最大のものの一つだと思います。そして、管理という言葉が適切かどうかわかりませんが、百万人に対して質を一定レベル以上に求める、すべてが有能で、そして品格がありというレベルを求めるということが、これは事実上大変難しいことだと思いますし、やはり、教師は聖職であるという議論に関しては私もそうあってほしいと思いますが、実体的に教育行政に責任を持つ立場では、やはりフィクションを前提としてはいけないんだろうというふうに思います。

 そこで、例えば、企業でもそうでありますし、役所でもそうであるかもしれませんが、有能な人とそう有能でない人がいた場合、通常、企業の場合は、一つの集団の中でカバーをしてリスクヘッジをしているんですね。同じ課の中でほかの人がその弱い部分を補う。しかし、教師という職業は個人商店的なところがありまして、その教師の能力、資質に負うところが大きい分野であります。そして、今の学校の人事体系というのはいわゆるなべぶた型になっていまして、教師側の言い分も、教師の自主性、自由度を高めてくれというような主張が今まで大変強く続いてまいりました。

 しかし、全部の教師が完璧であるということはありませんから、それをフォローすることを考えれば、人事制度もお互いの弱いところを補い合うような人事制度、研修制度を続けなければいけない。免許更新制もその中の一つでありますが、人事システムにしても、自公政権の中において主幹制度も取り入れましたが、さらに、お互いの欠点を補い合って、そして全体としての効率を上げていくような人事体系をつくっていくことが必要だというふうに思いますが、こういった考え方に関して大臣はどういうふうにお考えですか。

鈴木副大臣 先ほど来、大変、本当に重要な御議論を提起していただいていると思います。

 ただ、結局、べき論と現状と、この両方のまたはざまに陥っているということはよく委員も御存じのことだと思います。

 本来はこうあるべき、教師についても、あるいは保護者についても。しかし、なかなかそれを実現できていない保護者もいるし教師もいるという中で、まさにその保護者と学校の関係で申し上げれば、まさに、地域の子供は地域で育てるということでコミュニティースクールという概念で、そこを、完璧な人間はそんな教師とて保護者とていないけれども、最大限の全力を尽くし合うことでコミュニティーとしてやっていくということだと思います。

 それで、これは学校の中の話も全く同じことだと思っておりまして、私どもは専門免許状という考え方を打ち出しております。

 これは、まさに十年選手になった教師に、学校経営、あるいは教科指導、あるいは生活進路指導それぞれの、すべてをこれまたできる人はいませんけれども、学校経営であれば学校経営のまさにその能力をさらに磨いてもらって、そして専門免許状をとった暁には、自分の担当する学級だけではなくて、所属する学校、コミュニティー全体のその分野でリーダーになってもらう。教科指導であったら教科指導、生活指導であったら生活指導というような、学校の中のチーム、コミュニティーというものを充実していきたいということに向かって歩んでいきたいというふうに考えております。

 もちろん、理想はそうでございますが、なかなか現実は難しいですけれども、これは、まさに総ぐるみでそれぞれの役割を認識しながら全力を尽くし合って、そして共同をし合うということの不断の努力を積み重ねるしかないというふうに考えております。

松野(博)委員 この分野に関しては、今後も議論を詰めていきたいというふうに思います。

 教育委員会制度の抜本的見直しということについてお伺いをします。

 民主党さんが長く委員会の中で、教育委員会制度というのは文科省が地域の教育の問題に関して干渉するツールになっている、地域の教育の自主性を妨げているという意味において、教育委員会は廃止をして新しいものをつくるべきだという御議論をずっと委員会でお聞きをしておりました。民主党さんが提出した日本国教育基本法の中にも書かれておりますし、先般の選挙のマニフェストの中にも、教育委員会の抜本的な見直しということが言及されています。

 鳩山総理が、マニフェストに書かれたものは四年間の一定期間の中で実現をするというお話をされていました。そうしますとこれは、教育委員会の抜本的な見直しを四年間の中で機関の廃止と新しい組織の移行までお考えになっているのか。それとも、この四年間の中では、法的な議論をして、そして法律を制定するというところまでのスケジュールをお考えになっているのか。お答えをいただければと思います。

鈴木副大臣 マニフェストでは、教育委員会制度を抜本的に見直して教育監査委員会を設置するとともに、地域住民や保護者の学校運営の参画を一層進めるため、学校理事会を設置することということが盛り込まれております。それで、このことは、一九五六年に定められました地方教育行政法のかなり核心の部分に触れることでございますので、まさに、この四年間をかけて十分にきちっと議論をしていきたいと思っております。

 ただ、現行の教育委員会制度が、例えば、教育委員長も含め教育委員会が非常勤であることによって責任の所在が不明確になっていて、あるいは、特に緊急を要するいじめ問題への対応等々がおくれた、あるいは、事実上それが隠れみのになった形で、教育委員会がありながら教育長が実際の教育行政をやっている、こういう議論はこれまでも国会等々でありました。

 そういう意味で、ガバナンスを、責任とその権限というものをもう一回議論をし直そう、そして常勤、非常勤のあり方も見直していこう、あるいはその任命のあり方も見直していこう、そういうチェックのあり方も見直していこう、その中で執行と監査というものも見直していこう、そういう論点が上がっていたということは委員も共有をしていただけるというふうに思っております。

松野(博)委員 国立大学法人や文科省管轄の組織との人事交流に関して、この問題は、かなり民主党は大臣がかわるたびに同様の質問を繰り返されました。

 それは、特に国立大学法人でありますが、せっかく国立大学法人組織にしたのに、交流という名のもとにおいて文科省からの人事支配が続いている、このことが国立大学法人の独自性をつぶしているんじゃないか、この交流人事をすぐやめるべきだという話を随分質問をされました。

 私どもは、国立大学法人に対する人事交流は、基本的には国立大学法人の要請に基づいて行っていることであり、大学法人の事務処理負担の問題もあり、また、文部科学省職員として現場をしっかりと見るということにもつながるのでこの制度は続けたいというお話をしてきましたけれども、これは、早く国立大学法人等々との文科省の交流人事をやめるべきだという質問が続きましたから、今、政権がかわって民主党政権になったとき、これはもうやめられますか。

鈴木副大臣 各団体の要請に基づいて真に必要な人材が行っているのか、それが建前となっているのかというところはやはりきちっと見きわめていかなければいけない、こういう主張は今までもさせていただいている、そういう意味で主張はさせていただいたと思います。

 私は、偶然、各大学法人の理事あるいは理事会の方々あるいは総長の方々と話をする機会もこれまでもありましたし、就任いたしてからもあります。これは率直に申し上げて両ケースある。本当は本省に戻ってほしくない、非常に頼りにされていて有能であるにもかかわらず、本省から帰ってこいというので、総長はもっと残っていってほしいのに帰ってしまったという例も皆無ではありません。これは、逆に、先生方も地元の国立大学の理事の皆様方とお話をすれば、そういう話は聞いておられるというふうに思います。

 ですから、真にそれぞれの法人が要請に基づくという、ちゃんとそこのところを確実にしていくということをきちっとやっていかなければいけないんではないかなというふうに考えております。

松野(博)委員 副大臣の今のお話と従来の民主党さんの主張はちょっと違うんじゃないかなというふうに思いますが、私は、野党時代に民主党さんが主張されていたことが、政権側に回って、それは立場も違うし情報も違ってくる、さまざまな、野党時代には見えなかった点もあるかと思います。その中で政策や手法を変えるということは決して悪いことではないというふうに思います。思いますが、しかし、変えるときは、従来はこういう主張であったけれども、今、政権の立場に立ってさまざまな情報を考えたときに、こういうふうにしたい、変えたいということはしっかりとアナウンスをするべきだというふうに思います。アナウンスをせずに政策や主張が変わったりすると、国民がまずわからなくなるんですね。そして、民主党政権に対する期待、話が違うじゃないかということになるかと思います。

 ですから、この問題もまた追って細かくお話をさせていただきたいと思いますが、まず、政策を変える折には、しっかりとアナウンスをして国民に説明をしていただきたいというふうに思います。

鈴木副大臣 そうした主張は私が従来大分してきたので、特に変わっているわけでございません。従来の与党でありました自民党、公明党の皆様方は、団体の要請に基づき必要な協力を行っているとおっしゃっておりましたが、それと実態が違うケースもあるから、それは正すべきだということを申し上げてきました。

 実態がそれと違う場合には、現政権においてもきちっとそれは正していかなければいけないというふうに思っておりますので、政策変更をする考え方はありません。

松野(博)委員 これに関しては、また今後時間をとったときにやりたいと思いますが、もう一点、統合教育、インクルーシブに対する考え方を確認させていただきたいというふうに思います。

 これも、民主党さんの議論の中で、統合教育を進めるべきだという意見は大分委員会の中でもございました。また、今回の民主党さんのインデックス二〇〇九の中でも、インクルーシブを推進しますというふうなことが書いてあります。

 私たちも、特別支援教育というのは非常に重要で、やはり、行政分野の中において一番弱い立場の人たちに関してどういった施策をとるかということがその行政の方向性を決定するというふうに思っていますので、大事にしてきた分野であるし、これからも大事にしてまいりたいというふうに思います。

 個々のハンディキャップを持った子供たちが、その個性を生かして、そしてそれぞれの夢を実現していく。それに一番適した教育を提供したいというふうに思いますし、その中にあって、統合教育が適している場合であるかそうでないか、その子供たちの状況に応じて判断をしていきたいというのが、私たちの統合教育、インクルーシブに関する考え方でありましたけれども、それをより推進するというのは、具体的にどういった点を言われているんでしょうか。

鈴木副大臣 これも、日本国教育基本法案の中で「特別な状況に応じた教育」という条項がございます。「障がいを有する子どもは、その尊厳が確保され、共に学ぶ機会の確保に配慮されつつ自立や社会参加が促進され、適切な生活を享受するため、特別の養護及び教育を受ける権利を有する。」こういうことを言っておりまして、特別支援教育については私どもが野党のときもそれなりにかみ合った議論をさせていただいて、あの法案審議も、両方、双方で充実したものにさせていただいたというふうに思っております。

 ただ、御質問の趣旨がよくわかりませんが、インクルーシブ教育に向けて特別支援教育、それは相反するものではなくて同じ方向を向いたものですから、これをその時々の状況に応じて不断に促進をするということは、当時の政権もそうであったと思いますが、我々も、そのことをよりきちっとちゃんとやっていくということに尽きるのではないかなというふうに思っております。

 そういう意味で申し上げると、平成二十年度から、これは現政権におきましてですが、調査研究協力者会議を設置、検討していただいております。この検討会を我々は引き続き存続させて、検討を深めていただいて、しかるべき結論が出た場合には、それに基づいて政策をさらに充実をさせていきたいというふうに考えています。

松野(博)委員 推進するという表現の中で個々具体的な個別の政策がおありなのかと思ったのでお聞きをしたのですが。

 各国の統合教育に対する考え方の中で、現在、日本の場合は、文部科学省が一定のガイドラインは出しますが、御本人と保護者が教育委員会と話し合っていただいて、最終的には教育委員会の判断で決定されるということになっているかと思います。しかし、海外の事例等を見ると、統合教育で学ぶか特別支援教育の学校等々に進むかを教育委員会が判断するというよりも、御本人や保護者の方々に決定権を与える、より強い権利といいますか、判断を与えるという考え方もあります。

 今までは前者であったわけでありますけれども、民主党政権になってその考え方が変わるということではないということですか。

鈴木副大臣 先ほど条文を引かせていただいたのもそういうことなんですけれども、教育委員会が設置者でありますから、どこで就学するかということはそこが決める、少なくとも現行の地教行法が生きている限り、なりますね。

 ただ、その際に、当然、保護者ないし御本人のまさにそれぞれの状況それから意思というものは最大限尊重をされて話し合いがなされるべきだというふうに思っております。ということでございます。

松野(博)委員 時間が参りましたので質問を終わらせていただきますが、別にここは揚げ足をとるということではないんです、ただ確認をさせていただきたかったということであります。

 また、質問事項がいろいろと残ってしまいましたけれども、引き続きの議論の中で深めてまいりたいというふうに思います。

田中委員長 次に、遠藤利明君。

遠藤(利)委員 自民党の遠藤利明です。

 川端大臣、そして副大臣、政務官、御就任まことにおめでとうございます。

 ずっとこれまでも、いろいろな機会に教育問題あるいはスポーツを数多く話をしてまいりましたし、主義主張あるいは考え方に少しは差があるかもしれませんが、しかし、日本の教育を、たくましい子供たちをつくっていく、あるいは科学技術の振興や文化、スポーツ、そういう思いは多分一緒だと思いますので、むしろ、いろいろな議論をしながら、少しでもそうした日本の教育が、あるいはそうした施策がしっかり推進できる、ただすべきものは我々もしっかりただしていきたいと思いますが、協力するものは協力していきたい、そんな観点からこれからいろいろ質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど来、教員の定数改善といいますか、定数をふやしていく、あるいは、いろいろな形で予算がこれから感覚的にかなりふえていくのかなという感じがいたします。

 今回、仕分け事業の中でいろいろ削ったわけでありますが、先ほど下村議員から話がありましたので重なりますから申し上げませんが、ただ、見てみると、大体、これまで財務省がこれはやめたいと言った話がほとんどかなと。そして、その仕分け事業の中でも、主計官が最初にコメントをする。まさに政治主導という話ですが、どうも財務省主導の色が強過ぎるのかなという感じが私はいたします。

 同時に、何か三兆円ありきなのか。今は一兆とか一兆三千億、これはまだ集計の仕方によって違うようでありますが、何か九十五兆から九十二兆にしなきゃならない、赤字国債をどうのこうのという議論がありますから、これは予算を組んでそれを見せていただかないとわかりませんが、何か最初からそうした数字がありきなのかなと。

 そうすると、基金というのは一番崩しやすいといいますか、不要不急という言葉がありますが、何年間もかけてやっていくわけですから、不急といえば不急かもしれない。しかし、逆に考えれば、それによって天下りがありますよ、だめですよ、こういう議論ももちろん当然そうなりますが、同時に、これを一回使っちゃったらあとはもうなくなります。そうすると、経常的な経費で減った分を賄っちゃったら、次はなくなってしまう。そういう観点もしっかり頭に入れていかなければならないのではないかなと。

 その意味からすると、何か三兆円ありきかなという感じがしますが、これは、結果が出てからまたいろいろ御質問させていただきたいと思います。

 最初に、教員の養成あるいは採用についてお伺いしますが、その前に、実は月曜日、私、地元が山形県でございますが、その上山市南中学校、今ここに荻野雅裕君という研修の先生がおります。これは今二年生付というようなことになっておりますが、実は、彼はもともと教員ではなくて、文部科学省の職員であります。

 三年前からといいますか、十九年度から、実は我々三位一体の改革の議論をしたときに、文部科学省の役人の皆さん方というのはどうも現場を知らないんじゃないか、もっともっと現場を知ったらどうかという議論をしましたら、いや、私たちは、県に行って教育長あるいは課長として現場の先生方と交流しますと。しかし、現実に現場に行きますと、課長や教育長は大体校長がほとんどおつき合いをするだけであって、現場の職員と余り交流がない。だったら、一回、文部科学省の職員が直接学校の現場で先生として研修といいますか先生を経験をして、そうした交流の中から文部行政の中に地域の声をしっかり生かしていったらどうか。そんな話の中で、平成十九年度にお二人、そして二十年度三人、今年度、私の地元の上山それから岡山県の総社市、この二つに派遣の形で今行っております。

 ちょうど理科の授業の実験を見てきたんですが、もちろん、ことしの四月に先生になったばかりですから自分がまだ主導的にならない部分もありますが、しかしよく頑張っているなと。もちろん教員免許を持っていますから、これまで半年間いろいろ努力をされたんですが、できればもう一年ぐらいいたいものだと。今二年生を教えているんですが、できれば受験の先生をやってみたい、そんな話をしておりました。

 これはこれからの人事の問題でいろいろ難しい課題はあるんだと思いますが、例えばその分を定員に入れちゃって、そして、今度、山形県からその分を文部科学省で引き取ってツーペイにする、こんなやり方もあるのかなと思いますが、どちらにしてもこうした事業、当時、平成十九年、新聞、テレビ等でも大変話題になっておりましたが、その後の文部科学省において、この派遣事業における成果あるいは今後の継続について、これは通告を正式にはしておりませんでしたので、わかる範囲内で結構ですが、お答えいただければありがたいと思います。

川端国務大臣 遠藤委員、またよろしくお願いします。

 今山形に派遣されている文科省の職員の先生のお話をいただきました。現地で高く評価をしていただいて、本人もやる気であることは大変ありがたいことだなと思っております。

 現在まで、十九年度から二十一年度にかけて一年ずつでありますが、二名ないし三名で七名、ことしは二名行っております。

 そういう意味では五名戻ってきておりますが、学校現場の体験を踏まえて、初等中等教育局などにおいて、まさにその経験を生かして、生徒指導や教育課程に関する業務に精力的に取り組んでいると報告を受けております。

遠藤(利)委員 大臣、これからもそうした事業を継続されるお考えですか。

川端国務大臣 続けていくつもりをしております。

遠藤(利)委員 実は、そのときにいろいろな議論をした中で、学力テスト、一斉テストについて、やはり現場の皆さんは、本音は、評価されるのは嫌なんですね。やはり、どうしてもうちの学校とほかの学校を比較されるのは嫌だ。

 ただ、そのときに話があったのは、来年はちょうど小学校六年生で受けた人が中学校三年になります。そうすると、ちょうどその受けた人たちの三年間の学びがわかるし、できれば、せめて来年ぐらいはできないんでしょうかと。

 私は、実は抽出よりも悉皆がいいと思っているんです。ただ、毎年毎年でなくて、何年に一回でいいと思っているんですが、少なくとも、せっかくこれまで積み重ねてきたその成果、小学校六年生がちょうど中学校三年で受けられる、そうするとこの何年間の歩みが全国的に見られる。そういう意味では、せめて来年ぐらいは、本当はずっとがいいんですが、せめて来年ぐらいは悉皆でやってみる、そんなお考えはないんでしょうか。

鈴木副大臣 今議論をいたしているところでございますけれども、希望利用方式をすれば、むしろ採点は早くできるわけですよね。むしろ今までは、四月にやったものが九月の二学期まで全部待たなければいけないみたいな話がありましたので、現場での指導ということで申し上げると、改善をしている部分というのもあるということは御理解もいただきたいというふうに思います。

 もちろん、一方で悉皆の持つそういう可能性ということも私どもも否定しないわけではございませんが、ただ、そういういろいろなことをかんがみて、今回、四〇%ということで抽出でやっておりますので、全体の傾向はわかります。その中でそれぞれの利用方式と両方をつき合わせれば、今、遠藤委員がおっしゃったことの相当程度は把握をできるのではないかなというふうに思っております。

遠藤(利)委員 四〇%でわかる、統計学上とかいろいろあるんだと思いますが。ただ、現場の先生は、さっき言いましたように、比較されるのは嫌なんですが、やってみたいという気持ちもあるんです。やはり、これまで自分たちがずっとやってきた学びがどれだけ効果が上がっているかと、比較したい気持ちもあるんです。

 きょうは結論を求めませんが、ぜひそこら辺も含めて御検討をいただきたいと思いますし、初年度は結果が出たのがたしか十二月だったと思います。こんな遅いんじゃだめだというので九月になった。そうすると、もう少し努力すれば夏休み前とか、そういうことだって可能性ももしかするとあるかもしれませんし、そういうことも含めてぜひ御検討をいただきたいと思います。

 さて今回、大臣の所信の中にも、「教員の質と数の充実」、そこの中で、「教員免許更新制の検証とあわせ、教員養成の充実」等々で「専門免許状制度の導入など、」こんな形で述べておられます。

 いろいろ民主党の皆さん方のインデックスやらマニフェストやら、あるいは、その後の大臣、副大臣の発言の中で、それにかわって教職大学院を採用したい、それと初任者研修等を絡ませて、そして専門免許制度を含めてこのかわりをしたい、こんな記事が出ております。正確に聞いておりませんし、あるいは、新聞のまた違った感覚でとらえているかわかりませんが、今も実は教職大学院、去年からスタートしてやっております。

 まず、なぜ教職大学院なのか、お伺いしたいと思います。

鈴木副大臣 委員もこの教職専門職大学院の創設には大変御尽力をされたと承知しております。

 まず、やはり教員の望まれる資質、身につけなければいけない資質というものが、発達障害の問題もある、あるいは、先ほど来御議論いただきました特別支援の問題もある、あるいは最近は、両親のどちらかが日本語を母国語としない家庭の子弟が非常にふえている等々、あるいは児童虐待といったものの家庭の子供というように、十年前と比べても、相当教師に要求される能力、あるいは、やはりそういう経験、これも委員よく御存じのとおりだと思いますけれども、特に、新任で一年間でうつになってしまうという事例もあります。その多くは、今まで体験もしたことのないようなそうした問題に直面をして、しかも、それを担任という形で、あるいは副担任という形で背負わなければいけないというプレッシャーに耐えかねてと、こういうケースがかなり多いんだろうと思います。

 したがいまして、特に今教員課程で学ぶ学生は、ある意味で順風に来た学生が、そうでない人も多いですけれども、比較的多いという中でのギャップ、それから、少子化の中でそもそも子供と触れ合うというチャンスが今の学生には圧倒的に欠けているという中で、今までは、それこそ大学でやることと、それまで小学校、中学校、高校までの学びの中で、あるいは人生の中で普通に我々の世代では身につけていたことをも大学で教えざるを得ない。これはもう、べき論は別として、現状としてそういう状況があるという中で、従来より大学教育が抱えなければいけない分野といいますか役割というものがふえざるを得ないという中で、教職専門職大学院ということが出てきたんだと思います。

 ただ、そのときに、これはなかなかまだ専門職大学院ということが日本になじんでいない。これはまた御苦労もされたわけでありますけれども、今までの大学院というのは、もうとにかく研究者を養成するということでありましたから、いわゆるあの象牙の塔にこれから突き進んでいく方の卵というようなイメージでありました。

 しかし、これはまさに、学校教育法も改正をして、これは二〇〇二年だったと思いますけれども、そして専門職大学院という、まさに専門能力を持ったプロが社会で活躍するそういう人たちをつくる。そしてその枠組みの中で、昨年からやっと、委員も大変御尽力をされて、教職専門職大学院というのが立ち上がったんだと思います。

 ただ、これはまだ本当に二年目でございます。したがいまして、これをやはりきちっと育てていくということは必要でありますが、しかし、この教職専門職大学院の設立目的というのは、まさに、質の高い教員を生み出すということをその設置目的のど真ん中に据えたものでありますから、ここで学んでいただいた方はすばらしい教員の卵になっているはずという理想の中で仕事をしてきましたから、これを理想に終わらせず、ちゃんと実体もこれは伴った上で、こうしたところで十分まさに能力といいますか修行をしていただいて、若いながらも経験もある程度積み、そして、実践能力、コミュニケーション能力を十分伴った状態で学校現場に出ていただく。こういうことを考えていきたいというふうに思っております。

遠藤(利)委員 現在の教職大学、二十四校ありますが、ちょっと定員が足りないところも幾つかあります。そして、現在は、今言った、大学からストレートに行く生徒さん、それから、一回先生になられてそれから戻ってくる、リーダー的な要素と、もともと中教審のこの議論をしたときには、それぞれ皆さんやはり思惑があって、正直、私もいろいろな皆さんと話をしたんですが、一致した考え方まではいっていなかったかなという気がいたします。まずはスタートしてみようと。ただ、さっき副大臣おっしゃったように、学ぶべきものがふえてきた、これが一つあります。

 もう一つは、世の中がみんな大学を出てきているものですから、先生の威厳、威厳というのは、何も学校を出たから威厳があるわけではありませんが、しかし、かつて師範学校なんというのは、旧制中学と並び称されて優秀な人が入ってきましたよ。ですから、ほとんどの親は旧制中学とかそういうところに入らないわけですから、もうそれだけでも外形的にも信頼感があった。

 そうすると、今の大学の先生というのは、ほとんどの、五七%が今大学へ行くわけですから、そうすると、大学を出てあそこの何々大学で先生になったといっても、確かに、外形的な威厳という意味からも私はやはりあっていいのかなと。

 ただ、現実にこの六年制の制度設計というのはかなり難しいんだろう。特に私学の問題、それから、今ですと、これは県の教育委員会と連携をとっていますから、教職大学院を出た人は、優先的とは言いませんが、大半は採用していただく、そんな形が少しずつ出てきています。それにしても、十一万人が先生の免許を取って、そのうち二万二千数百人が先生になって、そのうち今のところ千人ですから、まだまだ道遠しなので、これは私は大賛成ですけれども、そこら辺の議論をこれから少し時間をかけてゆっくりさせていただきたい。

 ただ、そのときにちょっと心配なのは、教育学部あるいは教員養成大学とは何だろうと。全国に、大体各県に一つぐらいずつあるわけですが、なかなかその教員養成大学の評価がいまいち高くない。これをやはり上げて、なおかつ教職大学院なのか、あるいはここでもう少ししっかりレベルアップしてもらって、そして、教職大学院が必ずしも二年でなくて、場合によっては一年のインターンを入れる、そういうことだって私は考え方としてはあるのではないだろうかと。

 それからもう一つは、初任者研修を今やりますけれども、初任者研修をやるんだったら、インターンでそこで仮免か何かでやっちゃって、そして現場に出て責任を持つ。新採で採用してやめる人が最近かなりふえているということから見ると、なおさらインターン制度、これは、医者みたいに免許を取ってからインターンをやるやり方と、免許を取らないうちにインターンをやるやり方といろいろあるかと思いますが、やはりそこら辺も含めて私は考えていく必要があるのではないかなと。

 もう一点、これについてはこれからまたいろいろ議論させていただきますが、免許更新制はやめる、そして専門免許制度ということでありますが、私、これは考えとして違うんじゃないかなと思うんです。私と大臣か副大臣の考えが違うのかもしれませんが、免許更新というのは、もちろんその先生を排斥するためにやっているわけではありません。しかし、十年たって、今まで学んできた分、若干惰性になったり、あるいは、新しい分を引き受ける能力が落ちてきたり、そういう人たちにもう一回講習を受けてしっかり頑張ってくださいよ、これが免許更新制だと思うんです。

 しかし、実は私がフィンランドに行ったときにそうなんですが、校長は資格試験があるんです。ですから、現場の中で、例えば主幹あるいは副校長、教頭、そして校長、そういう人にはむしろ資格試験があってもいいのかなと。

 実は、これをやると世代交代ができるんです。若手登用ができるんです。実際、私のところは山形ですが、山形大学教育学部を出た人が多いわけです。若くて優秀だといっても、同じ大学の先輩がいると、その人を上になかなか持っていきにくいものです。ですからやはり、五十になってから校長よりも本当は四十五歳ぐらいでもう校長にしたいと言っても、なかなか現実にはそうした縦社会の中で、同じ地域社会で難しい。もちろん、山形大学だけではありませんからそれがすべてとは言いませんが、しかし、そういうことを考えると、この専門免許制度というのは、私は、むしろそうした人たちに、取ったら資格として与えますよという形の方が本来感覚的に合うのかなという気がしています。そこら辺についても、ぜひこれからいろいろ議論をさせていただきたいと思っています。ではどうぞ。

鈴木副大臣 教職大学院についても非常に貴重な御意見をいただきました。かなりイメージを共有しておりますので、大いに御参考にさせていただきたいと思います。

 と同時に、そのときに、見切り発車の部分があるというふうにお話にございましたけれども、学習者の視点というか、子供たちあるいはその保護者の視点というものをやはり我々はきちっと真ん中に据えていきたいと思います。今までは、やはりどうしても大学の理論だったり、あるいは教員の理論だったりがやや先行し過ぎていた感もある。もちろんそれは、やっていただくわけですから大事でありますけれども、一番大事なのは、子供たちが質の高い教師から質の高い教育を受ける、こういうことでございますので、その観点を大事にしていきたいと思います。

 それから……(遠藤(利)委員「副大臣、短くて結構です」と呼ぶ)いいですか。今の点は、専門免許状はまさにそういうことを考えているんです。

 つまり、学校経営という分野の専門免許状を取った人は、これは十年選手以降になりますけれども、しかし、当然その学校の管理者、校長、副校長、教頭、こういうルートを近い将来担っていただく、こういうことに当然なるんだというふうに思っておりますので、そこもかなりの点でイメージを共有させていただいていると思いますので、さらに御議論をさせていただければというふうに思います。

遠藤(利)委員 今、子供の立場から、子供の視点からという話がありましたが、まさに子供がどうなるかが一番大変なのであって、そのために先生がいるわけですから。

 そうすると、実は、クラスによってかなり成績が悪かったり、その学年が悪かったりというのが現実にあるんです。やはり、先生の能力によってかなり現場ではこの差が開いている。ですから、そういう意味で、そういう人たちをしっかりサポートする。排斥するための法律ではありませんけれども、しかし、現実に、教員の人権を守る、教員の職業を守るという意味もこれは私は大事だと思います。

 しかしそれ以上に大事なのは、子供が学びができるか、それに対してしっかり教えることができるか。できない先生は、正直、ちょっと別なところに行ってもらいたいなという私は気がします。ですからこれは、これからそこら辺も含めてぜひお考えをいただきたいと思います。

 時間がありませんので、最後にスポーツ基本法、これは副大臣と何回も議論をさせていただきまして、それから、大臣はスポーツ議連の副会長でいらっしゃいましたのでいろいろ御相談させていただいて、最後、ほぼ煮詰まってきたのかなという気がしておったのですが、会期末だったということと、多分、意見が合わなかったというかまあまあ考えざるを得なかったというのは、一つは、スポーツ権の問題。これは、私自身もスポーツ法学会等の話を聞いて、スポーツ権というのがあります。しかし、まだ日本として、学会も含めて全体の意見になっていませんねと。しかし、そういうことをこの法律の中で機会をしっかりつくる、これはうたいましょうと。

 それからもう一つは、地域スポーツとそれからトップスポーツ、あるいはコミュニティースポーツとトップスポーツということになると思いますが、どっちが先かという議論は余り本当はこれは好ましくなくて、両方が鶏と卵みたいなもので、どっちかをやればどっちかがよくなるという理屈になるんです。

 ただ、世界的に見てどっちがスポーツ振興されるかというと、これは、理想、理念は別として、やはりトップスポーツで強い選手が出ると、みんなあこがれてスポーツの人口がふえるんです。フェンシングの太田選手、それから卓球の福原選手、そうした人たちがいるとすそ野が広がっていく。今のサッカーも、あのメキシコ・オリンピックの横山、杉山、釜本、あれまでは野球全盛だったのが、ああいう人たちで初めてサッカーがふえてきた。それこそ副大臣はサッカーの専門家でありますから。

 ですから、そういう意味で、どちらが先じゃないんですが、やはりトップスポーツをしっかりサポートしていく、そういう感覚は必要かなと。もちろん地域スポーツも大事ですから、総合型地域スポーツクラブをつくらなきゃなりませんが、そうした観点。

 それからもう一つは、昔、スポーツというのは企業とかそれから個人が支えてくれたんですが、今は企業も大変苦しくて支えられない。どうしても国が責務として取り組んでいかなきゃならない。

 今言った、一つはスポーツ権、そしてもう一つは、どちらが先かという、これは余り議論したくないんですが、この問題、そして三つ目は、スポーツ支援をどうする。

 時間も時間ですから、最後に、私たちは、前回の国会で廃案になりましたので、何とか今回もこのスポーツ基本法を出していきたいなと。しかし同時に、ほぼ考え方はそんなに差がないと思いますので、できれば、閣法よりもこうした問題については議員立法の方がふさわしいのかなと。せっかくこれまでスポーツ議員連盟の中で一緒にやってきましたので、歩み寄れるものなら一緒にやれないだろうかなという気がいたします。

 ですから、そのことについて大臣にお話しいただきたいことと、それからもう一つ、スポーツ庁についてどうお考えなのか、お考えをいただきたいと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 遠藤先生、スポーツに本当に熱心に今まで取り組んでいただいて、先国会のスポーツ基本法の議論は本当にもう少しというところまでいったんですが、解散と同時に廃案ということと同時に、やはり、議論の部分で若干の最後のいろいろな議論が、理念、思い入れがそれぞれお強いですから、うまくいかなかったという背景があります。

 スポーツ基本法をつくってスポーツをしっかり政策としてやっていくことは大事だというのは内閣として認識をいたしておりますので、法案提出に向けた具体的な取り組みを、今みたいな議論の整理も必要ですので、来年は取り組みたいというのが内閣の基本方針でありますが、議員立法云々の議論は、まさに国会、委員会の御議論でありますので、そこにゆだねたいと思います。

 それから、スポーツ庁構想も長年いろいろな形で議論をされてまいりました。行政組織のあり方を含めてまた検討を加えてまいりたいと思っております。

遠藤(利)委員 時間が来ましたので終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 川端大臣を初め副大臣、政務官、御就任おめでとうございます。川端大臣とは新進党以来でございますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 最初に、平成二十一年度の補正予算の執行停止について何点かお尋ねしたいと思います。

 お手元に、文科省の方が作成しました、執行停止の事業、三十七事業を三枚の資料にしていただいたものを配付させていただいております。これは、衆議院の予算委員会の理事会で、執行停止分について、どれが無駄で、どれが不要不急なんだ、明らかにしてくれということを野党側からお願いしましたら、できる限り分類してということで出てきた資料ですが、残念ながら文科省の資料の中では、二枚目にありますが、二十二年度の要求額のところに三事業だけ記載があって、ほかの事業についてはどれに当たるのかが全く書いてありません。

 なぜこういうことをお尋ねするかというと、鳩山総理が所信表明演説でこのように言われていました。「税金の無駄遣いを徹底して排除するとともに、行政内部の密約や省庁間の覚書も世の中に明らかにしてまいります。 既に、本年度補正予算を見直した結果、約三兆円にも相当する不要不急の事業を停止させることができました。」「今後も継続して、さらに徹底的に税金の無駄遣いを洗い出し、私たちから見て意味のわからない事業については、国民の皆様に率直にその旨をお伝えすることによって、行政の奥深くまで入り込んだしがらみや既得権益を一掃してまいります。」こういうふうに総理は言われて、また、菅副総理が十一月二日の衆議院の予算委員会でこの執行停止に関しまして、「つまりは、皆さんがやったことが、いいことはちゃんと引き継ぎ、おかしなことを切ったのがあの三兆円だと理解してください。」菅さんはおかしなことを三兆円切ったんだと言われたので余計わけがわからなくなってきて、この三兆円というのは一体どういう判断基準で停止に至ったんだと。

 無駄、不要不急、菅さんの言われるおかしなこと、これは一体何を意味して、お手元にお配りしました三十七事業は一体この三分類のどれに当たるのか、ちょっと教えていただければなというふうに思います。

川端国務大臣 総理大臣から補正予算の見直しについての指示が九月十八日にございました。補正予算に計上されたすべての事業について、政務三役が省内ヒアリングを実施して、必要に応じて現地調査を行うことにより政策的必要性を精査して、地域経済、国民生活に与える影響も勘案して、執行の是非について点検をいたしました。

 その際、私の方から、文部科学大臣という立場で、文部科学省政務三役の確認事項として、一つは、全体として施設整備に関する予算は極力見直して、知的財産形成、人材育成、確保にかかわる予算について、必要性を十分確認した上で事業を行う。それから、新たな箱物事業は原則として行わない。ただし、当該分野におけるソフト、ヒューマン支援事業は配慮する。三番目が、安全確保、耐震化、老朽化、狭隘化などの対策が必要な施設の修繕、増改築や設備の整備については原則として事業を行う。四番目が、エコ改修、電子黒板等の事業については、地方議会での予算議決の現状など地域主権、現場の状況を尊重しつつ、優先順位を十分検証して、将来展望を見据えて事業を行う。五番が、今後は学校環境の整備、国立大学及び独立行政法人等の施設整備について、これまでの整備のあり方を基本から見直し、それぞれの将来展望を明確にした整備計画を策定するとともに、それに沿って計画的、効果的な予算執行に努めることにするという五方針を指示書として出して、各部局で精査をさせました。

 そういう考えに基づいて、ハードは極力見直して、ソフトにシフトできないか、先ほどの御議論にありましたような意味では、いわゆる産官学地域協力事業も、事業の中身は理解するけれども、何とか設備だけは工夫してやっていただきたいというふうな見直しをすると同時に、今年度でなくて来年度に工事は回した方が実際は効率的であろうというふうなものとかいう精査をいたしたと同時に、事業についても、もう地方議会でいろいろやっているというものに関しては、内定の段階、内示が終わっていなくても、これは地方に混乱を与えるためにとめることはやめようというふうなことを含めて、ここにあったリストにあるものが出てきましたので、私たちはこの五方針に基づいて整理をさせていただいた次第でございます。

富田委員 今の大臣の説明は、九月二十九日付の補正予算の見直しについてという指示書に書かれていることを御説明いただいたんだと思うんですが、大臣がこういう指示をされたというのはよくわかるんですけれども、無駄と不要不急とおかしなことというふうに分類したときに、この三枚に載っている三十七事業というのは一体どうなるのか。多分、「メディア芸術の振興(国立メディア芸術総合センターの設立)」、これは無駄だというふうに政務三役は判断されたんだと思うんですね、これまでのいろいろな経過を考えますと。ただ、そのほかの事業が、必要性がないのか緊急性がないのか、ちょっとよくわかりません。

 資料の二枚目に「準天頂衛星等の開発・利用」、また、午前中もちょっと話題になっていましたが、「メディア芸術の振興(映画フィルム等のナショナルアーカイブ化)」、あと「文化振興のための基盤整備」というのは、今大臣言われたように、来年度以降にやった方が効率的だろうということで、そこは書かれているんですが、では、ここに挙げられているほかの事業はもう絶対にやらないのか。必要性がないというふうに大臣初め政務三役が判断されているのか。あるいは、これからの二次補正あるいは本予算を決定していく中で、こういうところ、ただ、概算には載っていませんから二十二年度ではやらないということなんだと思うんですが、補正の中で取り組んでいくものがこの中にあるのかどうか、そのあたりはどうですか。

川端国務大臣 この事業をこのままの形で、例えば第二次補正あるいは本予算でといいますと、今御指摘いただいた項目以外は考えておりません。

 ただ、事業として、例えばICT化の事業とかエコ改修とかそういうものは、総合的にとらえる施策の中で、こういう補正でぽんと出てきて一過性でということでない、トータルの事業として、その政策の趣旨のいいものについては改めて考えて、あるいは包含してやっていくという中で取り組んでいるというふうに認識しております。

富田委員 トータルで考えていただくときにぜひ一点配慮していただきたいんですが、電子黒板等はとまりましたよね。我が党の山口代表が愛媛県に伺ったときに、電子黒板で今日本で最大のシェアを持っている会社が、電子黒板を学校に導入できるということでラインを三倍増した、資本投下しちゃった、途端に、政権がかわったからもうやりませんということで、会社がつぶれちゃうんじゃないかというような訴えを我が党の代表にされました。また関東でも、電子黒板は電子黒板だけじゃありませんから、いろいろな周辺の機材がありますので、その周辺機材に自分は新たに参入できるということで、中小企業の皆さんが本当に健闘されて、何とか銀行融資を受けてそういう設備をしたのに、もうだめですよというような訴えがかなり我が党には来ております。

 そういったところも、ぜひ、今後総合的に考えるというふうに大臣言われますので、そのあたり、困っている業者、人に優しい政治と言われるなら、そういう方たちの目線に立った次の政策のあり方というのを考えていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。

川端国務大臣 電子黒板が多機能を含めて非常に効果的なツールであるという評価があることは私も承知しています。ただ、学校の設備の充実強化の中で、優先順位としてどうなのかという議論がいまだにあることも事実であります。

 そういう中で、いろいろなICT化を図っていくという機能は、引き続き全国のLAN化とかいろいろなことで考えておりますし、そういう中で電子黒板もいろいろ検討される素材にはなると思いますが、今おっしゃった部分で申し上げますと、電子黒板はもともと九十八億四千三百万円。それで、先ほど申しましたように、補正予算を組んで、進んでいるところはとめないということで、それと、欲しいと言ったけれどもやはり要らないとおっしゃったところもありました。辞退もありました。そういう部分で、実質的には、九十八億四千三百万円中、十八億八百万円が減額されたということであります。実態の数字はそうです。

 民間企業の皆さんが、また別の観点から、それが契約に至っていない見込みの部分をどうこうというのを申し上げるつもりはありませんが、こういう状況であったことは御理解いただいて、このことがいろいろな経営危機にならないようにということで、私は、たまたま山口代表にお電話したときも情をお話はいただきましたし、私も事情は承知をいたしております。

富田委員 あと、地方自治体の方で、契約に至っていない、内示前だとかそういうことで返納もあったというようなお話もありますが、九月議会にかからなかったけれども十二月議会で予定していたのに、こういうふうに方針が変更になったのであきらめたというような部分もあるので、ぜひそのあたりも、今後、二次補正等検討されるのであれば、本当によく地方の実情を見ていただきたいというふうに思うんですね。その点、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に、二十二年度の概算要求に絡みまして、大臣のあいさつの中で、教育費の負担軽減に触れていただきました。ここは大臣が指摘されたとおりだと思うんですね。大臣はこのように言われました。「昨今の経済不況のもとで、子供が経済的理由で十分な教育を受けられなくなることが懸念されています。本来、教育は、個人の豊かな社会生活ばかりでなく、社会全体の活性化を実現するものです。いかなる環境にある子供たちに対しても、生まれてから社会に出るまで切れ目なく学びや育ちを支援していくことが必要です。これは、社会が次世代を担う子供の成長を支援し、成長した子供が社会を支えるという好循環をつくることになります。」

 ここはもう本当に同感ですが、この後にすぐ高校の無償化が、マニフェストにあったから当然こう書かれたんでしょうけれども、午前中来、高校無償化の議論がありましたけれども、教育費の負担軽減というときに、高校の無償化、なぜここが最優先になっていくのかということが、午前中来の議論を伺っていても私にはよく理解できません。

 鈴木副大臣がさきの国会で法案の説明等をされている資料を見てみましても、九七・八%高等学校に進学しているのでもう準義務教育化しているんだ、そういうような御答弁がありましたし、先ほどは、経済的理由で修学が困難な高校生を応援するんだ、また、人権規約の後期中等教育の漸進的な無償化、留保しているけれども、そういう考え方に立つんだというような発言がありましたけれども、本当にそうなのかな。

 準義務教育と言われるけれども、義務教育の方が本当に無償化になっているんだろうか。高校の実質無償化を言う前に義務教育の実質無料化を考えるのが文部科学省としてあるべき姿ではないんですかね。そのあたり、どうお考えになりますか。

鈴木副大臣 授業料については、御存じのことだと思いますが、これは無償化になっておりますので、もちろんそれ以外の学習費の負担を軽減しなければいけないという御指摘はおっしゃるとおりでございまして、ここは要保護、準要保護という制度がございます。ただ、これは、御存じのように、自公政権のときに準要保護については地方に移管をされて、そこで地方の財政力によるばらつきというものがある。ここを何とかしなければいけないというのは、恐らく少なくともこの委員会に所属をしておられる委員の皆様方のすべてのコンセンサスだと思っておりまして、そこはきちっとやっていかなければいけない。

 次に、幼児教育と高等教育の優先順位という御議論があることは私ども理解しておりますし、我々も日本国教育基本法の中で言っております。これは、例えば公立高校の総学習費を見ますと、大体五十万円でございます。これは授業料プラスアルファのところ。幼稚園で申し上げますと二十五万円。先ほど申し上げましたように、国際人権規約で無償化と決まっているのは中等教育、要するに後期中等教育の部分だけだということもありますから、まずこれはきちっとやりたい。それから、実態論から申し上げましても、今申し上げました五十万と二十五万、こういう差でございますから、五十万円の方の負担をまずは先に取り組んでいきたい。

 それから、もちろん幼稚園の方については、これは子ども手当ということを別途考えておりますし、それから、その上で幼稚園就学支援費というものもきちっと総額も維持をさせていただいておりますし、特に生活保護世帯等々については今回の概算要求の中で相当な拡充要求をさせていただいておりますので、そういう意味で、まさに生まれてから社会に出るまで切れ目なくということを実現をしていきたいというふうに思っておりますので、御支援のほどお願い申し上げたいと思います。

富田委員 何かちょっとだまされたような答弁なんですが。

 鈴木副大臣がずっとこれまで言われてきたこと、午前中来の発言の中でも言われてきたこと、プラス通常国会での御答弁とかを見ると、格差を是正するんだということも言われていましたよね。やはり高校から大学に進学する子たちを見ていると、収入の低い層の方たちというのは高い層に比べて三〇%以上大学に行けない、そういったチャンスを与えなきゃだめじゃないかということも随分言われていたので。ただ、そこを基本にすると、所得制限等を設けないで全員に一律に高校無償化に向けて支援するというのは、ちょっと議論がずれているんじゃないかと思うんですよ。

 これは通常国会でもそういう議論をずっとされていましたけれども、考え方の違いだといえばそうなってしまうかもしれませんが、本当に大変な世帯、五百万とか三百五十万で切って、そこには特別の支援をしますというふうに答弁されていましたけれども、公立高校はもう全部一律ですよね。どんな収入だろうが一律に全部やる。本来、別に支援を受けなくてもいい高額所得の人たちも全部支援を受けちゃうわけですよね。

 それだったら、私立高校の大変なお子さんたちへこれだけのことを考えるんだったら、では、義務教育だけれども私立に行かせているお子さんたちだって大変なのはいるわけですよね。そこのいろいろな周辺の経費をどう考えるんだ、なぜ高校だけに特化するのかというのが、ちょっとこれまでの議論ではまだ私にはなかなか理解できません。

 まだ法案が出てきていませんのでこれ以上突っ込みませんが、ちょっと言われていることが変わってきているんじゃないかなというふうに思うんですが、どうですか。

鈴木副大臣 いろいろ御指摘をいただきましたけれども、公立についても三百五十万円以下の公立高校の世帯については入学金、授業料の支援対象ということで概算要求をさせていただいております。それから、私立中学校に対する支援でございますが、これは十五歳まででございますので基本的に子ども手当の対象になるということで御理解をいただきたいと思います。

富田委員 これは通常国会で法案が出てきてからまた議論したいというふうに思います。

 大臣、ちょっといいですか。大臣のあいさつの中ですばらしいなと思ったところがあるんですが、先ほどもちょっと御答弁されていましたけれども、学校を中心とした地域のきずなづくり、これが大事だというふうに言われて、「スポーツや芸術文化の活動のみならず、学校も地域のきずなの中心となるものと考えます。今後、地域が学校教育を支援する学校支援地域本部等の取り組みを全国に広め、学校を中心とした地域のきずなづくりに努めてまいります。」というふうに言われました。これはもう大賛成です。

 ちょっと文科省の方から資料をいただいたんですが、ただ、今回の概算要求を見ますと、この学校支援地域本部事業の予算は減っているんですよ。二十年度から始まって、二十年度、二十一年度、今度二十二年度の概算なんですが、大臣がこう言われるのに予算が減るというのは何か変だと思うんですが、そこはどうですか。(発言する者あり)

川端国務大臣 ありがとうございます。

 大変重要な政策と思って、それこそ前政権のときも含めて構想を練られ、取り組んでこられたことは事実でありますし、補助率の変化とかいろいろな状況がありました。

 そういう中で、本年二月に市町村担当者を対象に実施したアンケート調査では、取り組まないところが結構あるので、ぜひともいいことだから取り組んでくださいというお願いに対して、取り組まないという理由の中に、先行きが不透明だからということと同時に、学校の体制が整っていない、またはかえって負担が大変だ、それからコーディネーターにふさわしい人材が見つからないからやっていく自信がないみたいな状況がいっぱい出てまいりました。

 これを踏まえて、事業実施に関する予算を確保するということと同時に、むしろ学校関係者にしっかりとこういうことだからぜひとも頑張ってやっていただきたいということをお願いすると同時に、コーディネーターの研修会等々でそういう人材を育成するということをしないと、スキームだけつくっても実際なかなかやっていただけないということだという認識で政策が組まれました。

 そういう部分でより一層の改善に取り組んで、ぜひともに進展するように、そしてそういう状況が効果を上げられるように努力してまいりたいと思います。

富田委員 今、二月に会議をやられたということですが、学校支援地域本部事業、これが二十年度に最初できたとき、私も、千葉県の習志野に住んでいるんですが、去年のお正月の習志野市の賀詞交換会で今度こういう事業をやりますという話をさせてもらったんですね。自治体の皆さんとかみんな新年の賀詞交換会に来ていますから。

 そうしましたら、習志野市は中学校が七校、小学校が十六校あるんですが、この中学校七校が全部手を挙げてくれまして、中学校に一つずつ本部が設置されて、十六の小学校もそこに連なって、全部の学校でやり出したんです。

 知らないということもあるし、どういうことができるのかというのをきちんと広報していかないと、せっかくこれだけ予算をつけてやるのになかなか広がっていかないんじゃないか。もう一つは、大臣さっきおっしゃったけれども、いつまで続く事業かわからない。文科省がこうやって言ってきたけれども、こんなのまた途中で終わっちゃうかもしれないとブレーキをかけている教育委員会があるわけです。そこも打破していかなきゃいけない。

 それを考えたときに、予算が減っちゃだめだと思うんですね。しっかり予算つけますよ、鳩山内閣になってもここはちゃんと予算つけますよというふうにしないと、せっかくいい事業なのに全国に広がらないですよ。

 ちなみに、ちょっと調べさせていただいたんですが、大臣の御地元の大津市、学校支援地域本部はありません。まず大臣の御地元から、こんないい事業なんだということで広報していただきたい。特に与党の皆さんに広報していただいて、ぜひ広めていっていただきたいと思いますし、今大臣がおっしゃったように、本当にコーディネーターがいないとなかなかこれは難しい。実際にやっていただくボランティアの方たちも必要ですし。

 今回の予算の中で事業費の方をきちんと見直して、消耗品費を見直してボランティアの活動費が出るようにというふうに考えていただいたというのは本当にいいことだと思うんですね。だからこそ余計、もう少し上乗せをしておかないと、ボランティアの皆さんも期待しないんじゃないかなと思いますので、そのあたりは今後の制度設計の中で考えていっていただきたいと思います。

 もともとこの学校支援地域本部事業を組み立てたときに、リクルート出身で杉並区の和田中学の校長先生をやられていた藤原和博さんが、よのなか科ということを学校でやっていて、地域の皆さんがいっぱい学校に入ってきて子供たちと一緒に学んでいる、また子供たちにいろいろなことを教えている。そういったことをやられたのがこの学校支援地域本部事業が立ち上がるきっかけになりました。

 私も二年前、当時浜四津代行と一緒に授業に行かせていただいて、そのときのテーマがホームレス問題を考えるというのを中学校でやっているんです。ホームレスだった人、ホームレスの支援をして立ち直りをさせた人、この二人を呼んできて、ホームレスとは何だというのを徹底的に議論しているんですね。

 こういったことで子供たちは学んでいくんじゃないかなと思いますので、やはり地域によってはそういうボランティアの方がいないからできないとかそういうところもあると思いますけれども、できればこれがきちんと全国展開になるように、大臣を中心に、先頭になって、もう一歩進めていっていただきたいと思いますけれども、どうでしょうか。

川端国務大臣 この制度に対して思いを込めて言っていただいた御指摘は一々ごもっともなことだと思いますので、しっかり受けとめて、また、本当に私の地元も含めてあまねくやれるように努力してまいりたいと思います。ありがとうございます。

富田委員 よろしくお願いします。

 残り十五分ですので、私も事業仕分けのことについてちょっと質問したいと思います。

 各先生からも質問ありましたので、事業仕分けの中身等については後で御質問したいんですが、十一月十七日付の読売新聞を見ていましたら、事業仕分けで廃止とされた事業等について文科省が意見募集を始めたという記事がありました。

 文科省のホームページを開いてみましたら、「行政刷新会議事業仕分け対象事業についてご御意見をお寄せください」「この事業仕分けを契機として、多くの国民の皆様の声を予算編成に生かしていく観点から、今回行政刷新会議の事業仕分けの対象となった事業について、広く国民の皆様からご意見を募集いたします。」ということで、事業名とか書いてあって、担当の副大臣、政務官まで全部載っていて、ここに直接メールを下さいということなんですが、これをやり出した意図は何なんですか。

川端国務大臣 先ほど来の議論も含めまして、予算編成の過程を可能な限り透明化すると同時に、いろいろな立場の納税者の皆さんがいろいろな意見を持っておられるということを吸収していこうということの一つの手法として、事業仕分けという観点で選んだ事業を仕分けされるということです。

 当然ながら、先ほどの御議論にありました、何かお白州みたいだとか、お白州という言葉じゃなかったですか、何かちょっといじめているんじゃないかみたいな雰囲気があるとか、いろいろな御指摘がありました。

 そういう意味では、こういう事業仕分けをやっているということ自体を国民の皆さんがどうお考えになるのか、あるいはこのテーマについてどうなのかということで、別にこの廃止事業を対象にということではなくて、幅広く意見をいただきたいということで国民の意見を聞く、要するに双方向のコミュニケーションが、我々は国民の意見を聞くんだという事業仕分けをやっていると言っているんですが、実はそれ以外の国民の皆さんはそれを見ているだけで物を言えないということは、やはりアクセスする場は確保したいという思いでありまして、十六日から始めたばかりでありますけれども、きょう十八日で千件を超える意見が寄せられておりますが、私はまだ詳細把握しておりませんが、いろいろな御意見を、これも、この意見も一つの国民の意見でありますし、事業仕分けも一つの意見を踏まえながら予算編成に資するために参考にさせていただきたいと思っております。

富田委員 今回の事業仕分けは、先ほど来各委員からありましたけれども、私はやはりちょっと問題じゃないかなと。一時間でできる話なのか、また、事前調査を本当にきちんとやったのかというような、事業仕分けを担当された何人かの議員さんをテレビカメラが追いかけていたのがありましたけれども、あれはもうごく一部なんじゃないかなと。これだけ多くの事業を事前に調査できたとは思えませんし、やはりマスコミ等の批評を見ていますと、どうやって今回の仕分け対象事業が選ばれたんだ、全くわからないじゃないか、先ほど来財務省主導じゃないかという話がありましたし、事業仕分けをされる仕分け人の選定も私は非常に不透明だと思うんですね。

 文科省は第三ワーキンググループで対象になっていますけれども、文科省と農水省と防衛省の事業を対象にして、一般の方でその三つを専門的にわかっている方がいるとはとても思えない。そこを、対象事業の選定方法と仕分け人の選定方法をきちんとしない限り、幾ら鳩山内閣で、行政刷新会議でそういうのをやるんだと決めたからといって、それで文科省の事業が廃止されたのでは私はたまらないと思うんですね。

 そこはどうですか、大臣。

川端国務大臣 ずっと朝からの議論も、何度も申し上げたことの繰り返しになるかもしれませんが、事業仕分けという手法はこういう手法なんですね。

 時間的には一時間で、初め説明してということと、場合によっては、というか、いわゆる地方の行政経験の方もおられますし、経理の専門家とかある種の有識者もおられますが、それぞれの分野の専門家であって、必ずしも当該分野の専門家でない人たちが、いわゆる納税者目線という形でぱっと説明を聞いてやれば、どういう答えになるのかというやり方の一つの手法が仕分け作業という手法であります。

 多くの自治体がこれをやりながら後々のいろいろな予算の編成に参考にされたことはたくさんありますが、その場合でも、すべてそこが決定するような権能も権限もありませんので、それは一つの、予算編成のときに、非常に抽象的で無責任な言い方になるかもしれませんが、国民目線で見たときにこういう見方があるということを提示されたという位置づけだと私は承知をいたしております。

富田委員 今大臣が言われたような視点も確かに大事だと思うんですが、それぞれの事業仕分けの中でこういう意見があったというのがホームページに載っています。それを全部見させてもらいましたけれども、例えば国立女性教育会館は、たまたまテレビで蓮舫議員と女性教育会館の神田理事長がどなり合いしていたのがテレビでばっと映っていましたが、私の意見もちゃんと聞いてくださいというふうに理事長の方が言われていましたけれどもね。

 国立女性教育会館は、二年前の独法の整理合理化のときにも対象に挙げられまして、当時、我々与党もどうしようかということでかなり迷いましたが、これまでのいろいろな経過の中での女性教育会館の役割とか、今果たしている中での、今後アジアの中で女性センターの中心拠点になるんだ。また、本当に努力されて経費をどんどんどんどん削っていって、そういう中でやっているというのがわかって整理合理化の対象にならなかったんですね。

 ちょっと調べてみましたら、内閣委員会で、民主党の西村智奈美さんが、今政務官か何かやられているんですかね、これはもう絶対残すべきだという質問を何度もされている。それを今度蓮舫さんがばさばさと切るという、もう党内不一致も甚だしいと思うんですが、やはりいろいろな意見をきちんと聞いた上で、残すべきものは残すべきだと思うし、私は女性教育会館については本当に意義のあるセンターだと思うんですが、今後どうするかは別として、女性教育会館の存在意義について大臣はどう思いますか。

川端国務大臣 当然ながら、設立の趣旨から含めて、大変な苦労の中で、そう決して最新の設備とは言えない施設の中で頑張っておられて、大きな成果を上げてこられたことは評価をしておりますし、私自身、言いましたように、仕分けチームが、本当にここが最終決定の権限を持ち、判断する機関であるならば、徹底的に、客観的に我々も含めてやってということでありますが、そういうものでないということで、多少外見的には乱暴なやりとりに映ったかもしれません。

 物差しがどうしても、私の感想として言いますと、その会館や団体の趣旨がいいか悪いかという議論よりは、そういう会館運営が適切かどうかということにやや論点が、重きが行っていたのかなということで、この議論を含めても、この組織及び会館が拠点として大きな役割を果たされて、これからもそういう使命を帯びてアジアの中で頑張ろうという意欲を持っておられることは十分に承知をしております。

富田委員 そのほかにも、廃止とか地方に移管すべきだと言われた事業で、ちょっと文科委員会所属の委員としてはそれはないだろうと思うのが随分ありました。

 特に、子供の読書運動も、こんなのは地方自治体がやればいいんだとか、すごい乱暴な仕分け人の意見で、今やる必要があるのかみたいな話でしたけれども、先日、十一月十三日の日経新聞に、小学生が年三十五・九冊図書館で借りた、本当に子供たちが読書をするようになったという記事が載っていましたけれども、これは子供読書運動の本当に成果だと思うんですね。

 何か、事業仕分けだと、目に見える成果、数はどうなっているんだとかそういうことばかりやっていますけれども、やはり文科省がきちんと取り組んで、全国の自治体、また学校にも協力してもらって地道にやってきたことがこういうふうに一つ成果として出ているのに、そんなの関係なしに、地方に任せりゃいいんだとか文科省がやる必要はないという、ちょっと乱暴過ぎる議論だなというふうに見ていて思いました。

 そのほかにも、伝統文化こども教室事業とか学校への芸術家派遣とか、何年もかけて、やはりこういうことが子供たちの育成のために大事だというふうにこの文科委員会でも議論してきちんとやってきたことを、何かわけのわからない人たちが出てきて、そんなのはやめろみたいなというのはちょっと、先ほど下村委員も言われていましたけれども、文科省の担当する事業というのがこの事業仕分けの対象とすべきじゃないものが多いんじゃないか。

 事業仕分けでやって、独法の理事長さんの給料が高い、おかしいじゃないか、ああいうのはいいと思うんですね。公になって、やはり納税者の目線から見て、それは高過ぎるよ、だったらどうすればいいんだというのはいいと思うんです。やはり、目に見える成果がすぐ出ないけれども、そういったことをこの文科委員会でしっかり議論して、子供たちが本当に健全に育っていくためにどういうことがいいのかとやっているわけですから、それを一時間でばさばさとはなかなか切れないと私は思うので、今後、もっと問題は、今大臣が言われた、この事業仕分けのチームに法的根拠がないし、最終判断する人たちじゃないのに、何かあそこで全部決まったかのように報道されるということ自体も問題だと私は思うんです。

 そういう意味では、文科省が今回意見募集をしていただいて、国民が本当にどんなふうにこの事業について思っているかというのをきちんと判断していただいて、最終の予算編成に臨んでいっていただきたいと思うんですが、その点、どうでしょうか。

川端国務大臣 事業仕分けの権限、権能は、言われたように法的根拠なく、一つの手法としてそういう意見をまとめられたということで、そのやり方等に、私、先ほどややそういうおっしゃったようないわゆる無駄遣い的に国民からも明らかに思われるようなことに非常に重きを置いてやっておられるという感想はありますけれども、政策判断自体のことは、そのことをどうこうされたことを直接的にコメントすることは控えたいと思います。

 委員おっしゃったように、長い蓄積の中でいろいろな事業をやってきて評価を受けてということも、私たちとしては必要だと思って概算要求をしたところでありますし、そういうようなことと別の切り口で事業仕分けチームが出した結論があります。それは一つの判断として、この委員会でもいろいろ各委員からきょうも御指摘をいただいたのは、これはまたある意味で重い、国民を代表する議員の正式な委員会の声でもあります。

 そういうことも踏まえながら、最終的には政治の判断として、内閣の判断として、その答えに責任を持つ立場でありますので、また、そういう御意見もあったことを踏まえてこれから取り組んでまいりたいと思います。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

田中委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 石井郁子前議員の後を受け継がせていただきました日本共産党の宮本岳志です。どうぞよろしくお願いをいたします。(発言する者あり)ありがとうございます。

 本日は、高校の無償化の問題と大学の給付制奨学金について質問をさせていただきたいと思います。

 川端大臣は、先日の大臣あいさつで、昨今の経済不況のもとで、子供が経済的理由で十分な教育が受けられなくなることが懸念されていると、先ほどもある委員が触れられましたが、こういうふうに述べられました。これはもう懸念どころか既に今の事態は極めて深刻だと言わなければならないと思います。

 十月の三十日に全国私立学校教職員組合連合の方々が発表された学費の滞納状況の調査というものを見せていただきますと、私立に通う中高生のことしの九月末の三カ月以上の学費滞納者、それが高校で四千五百八十七人、中学で三百四人といずれも過去最高に上っている、こういうふうになっています。

 今申し上げた全国私教連の小村委員長は、「このまま推移すれば多くの生徒が学費が払えず、年度末までに高校を辞めていくことになる。私学の授業料減免措置に国と県が思いきった措置を講じる必要がある。」と述べられております。

 経済的理由で一人の中途退学者も出さないために、緊急に授業料減免措置を拡充するなど機敏な対応が求められていると思うんですけれども、大臣の決意とともに、具体的な対応を求めたいと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のとおり、所信では、十分な教育を受けられなくなることが懸念されているという表現を使いましたけれども、事態は逼迫し、深刻であることは私も認識しておりますし、今お示しいただいた数字も把握をいたしております。

 そういう中で、経済的理由により修学困難な高校生に対しては、現在、すべての都道府県において、公立高校授業料の減免を行うとともに、奨学金事業を実施いたしております。これは都道府県で実施をしております。都道府県における私立高校が行う授業料減免への補助に対しては、文部省が私学助成としてその一部を補助しているというのが現行の制度でございます。

 これらの支援策を周知徹底するとともに、そういう保護者に対してしっかりとわかるように、そういう制度がありますよということを周知徹底するように各教育委員会に通知をしており、せっかくある制度を知らなかった、やめてしまったみたいなことにならないようにということが一つでございます。

 またさらに、経済的理由により修学困難な高校生が増加しているわけですので、それに対応するために、これは平成二十一年度補正予算で、都道府県による高校奨学金事業や私立高校生の授業料減免措置への補助について、都道府県に基金を設置する形での緊急支援策として、高校生修学支援基金、平成二十一年から二十三年の三年分、四百八十六億円を措置されております。

 したがいまして、これを財源として、都道府県で今の制度に人がふえたときに対応する財政措置をとっているところであります。

 この基金を活用して、高校生が経済的理由で中途退学することのないように支援を行っていただきたいと都道府県に要請をしているところであります。

 以上です。

宮本委員 来年度の予算概算要求で高校の実質無償化という方向が打ち出されたことは、私どもも大変歓迎をしております。同時に、来年以降の子供たちはともかく、今現に中退という状況が生まれているわけですから、ことしの今の子供たちをどう救うのかという点で、やはり緊急の授業料の減免や緊急融資など具体的な措置が求められると思っておりますので、この点もどうぞ取り組みを強めていただきたいと思っております。

 それで、教育を受ける権利を公的に保障する公教育は、原則的に公費で賄われるべきだと私たちは考えます。特に進学率が九七%を超えている高校教育の無償化は喫緊の課題だ、これは同じ思いです。私ども日本共産党も一貫して高校無償化の実施を政府に要求してきましたけれども、これは本当にある意味では遅きに失したという感があるわけですね。

 そもそも、高校の無償化は諸外国では随分早くから取り組まれているということが明らかになっています。私が調べたところでは、アメリカが世界で最初に高校の無償化をある州でやったと思うんですけれども、この州は御存じでしょうか。そして何年からであるか、お答えいただけますか。

鈴木副大臣 一八二七年にマサチューセッツ州において初めて公立学校の無償化が実現をしております。南北戦争以前に六州で高校が無償化をされているというふうに承知をいたしております。

宮本委員 そのとおりでありまして、一八二七年、南北戦争以前にアメリカでは無償化に踏み出している。私、きょうは資料をおつけいたしましたけれども、一つ目の資料にそのことも出ております。イギリス(スコットランド)では一九一八年に、ドイツでは一九一九年、トルコで一九二六年、フランスは一九三三年と、本当に早くから無償化に踏み出しているわけですね。

 それで、OECD三十カ国の中で、高校の授業料が無償化になっていない国はどこになるでしょうか。

鈴木副大臣 私どもが承知している範囲で申し上げますと、OECD加盟国の中で、日本以外には、イタリア、韓国、ポルトガルということだと承知しております。

宮本委員 OECD三十カ国の中で、今おっしゃった日本、イタリア、韓国、ポルトガル、こういうことでありますから、日本は本当に少数派なんですね。

 それで、イタリアも確かに高等学校は有償なんですけれども、調べてみますと、年間授業料は十五ユーロでありますから、日本円換算しますと一年間で二千二十五円。実質無償と言ってもいいぐらいの額なんですね。

 ポルトガルも、具体的な数字は不明なんですが、生徒は年間少額の授業料を払わなければならない、今はわずかなものだというふうに聞いております。

 有償とされる韓国では、報道によれば、授業料は平均で年間百四十五万八百ウォン、日本円に直すと十一万三千円。これは日本の公立学校とよく似た額なんですけれども、グローバル経済危機への対策だということで、韓国の教育科学技術部は、十六のすべての市、道の教育庁に対して、二〇〇九年度高等学校の授業料を凍結することを決定したと報道されています。

 まさに、対応で一番おくれてきたのが日本だと言わなくてはならないと思うんですね。

 ここはちょっと大臣に御決意をお伺いしたいんですが、学費無償化を一刻も早く実現する、このことはよろしいでしょうか。

川端国務大臣 政府といたしましては、二十二年四月から新たな支援制度の導入ができるように準備をして、国会の御審議に付したいと思っておりますので、御理解いただきたいと思います。

宮本委員 大臣の決意が聞けました。

 それでは、具体的に中身に立ち入ってお伺いしたいと思います。

 高校無償化と私学との関係であります。

 二〇〇八年度で、私立高校の授業料の平均は三十五万二千五百七十七円で、入学料、施設整備費を入れると総額は七十万六千五百八十九円になっております。

 概算要求によれば、私立高校の場合、年収五百万円以下の世帯の場合は公立高校の二倍の額が補助される、二十三万七千六百円支給されるということでありますけれども、それ以外は公立高校と同様の十一万八千八百円の支給ということになります。

 それらが支給されたとしても、なお、授業料で、五百万円以下の世帯では十一万五千円余り、五百万円以上の収入の世帯では二十三万三千八百円もの支払いが必要となります。この分とともに、入学料、施設整備費を自己負担しなければなりませんから、なお四十七万円から五十八万円もの額は結局自己負担になるわけです。

 私学の場合、高校実質無償化にはかなりの距離があると言わなければなりません。これに制服代、修学旅行費などを加えると相当な額になりますね。公私間格差を埋め、私学も実質無償化をという声が起きるのは当然のことだと思います。また、私学の経営難を案ずるそういう声も経営側からも出ております。志望する公立に入れずに私立高校に通う生徒も少なくないわけでして、公立が授業料ゼロとなるのに私立は低所得者でも四十七万円、それ以外が五十八万円の負担というのでは、公立と私立の差が余りにも大き過ぎるということになりませんか。

鈴木副大臣 今御紹介をいただきました五百万円以下につきまして、倍額を支給するのとあわせまして、このたびの概算要求で、都道府県が低所得世帯の私立高校への授業料減免補助をできるように地方交付税の要求もさせていただいております。ここに国庫補助あるいは高校生修学支援基金を合わせますと、授業料減免補助分ということで三百二十八億円を都道府県の収入になる形を要求しておりまして、私学の状況というのは都道府県によってかなり違いますので、そこの詳細な設計は都道府県にゆだねたいと思いますが、三百五十万円以下の世帯につきましては、それを実施いたしますと、おおむね、先ほどお話がありました授業料平均の三十五万円に近づくというふうに考えております。

 それから、加えまして入学金あるいは教科書がかかるわけでございまして、これは私立、公立問わずでございますが、三百五十万円以下の世帯につきましては、給付型の奨学金ということを今要求しているところでございます。

 こうした要求をぜひ実現すべく頑張ってまいりたいと思いますので、御支援のほどお願い申し上げたいと思います。

宮本委員 我が党は、かねてから、年間収入で五百万円以下の世帯は授業料、入学料、施設整備費も入れて無償にすべきである、八百万円以下の家庭には二分の一の補助、そういう提案を行ってきております。こうすれば、公立、私学の学費格差は解消の方向に向かうということになります。ぜひ御検討いただきたいと思うんです。

 三百五十万以下のところに手当てをするというふうにおっしゃいましたけれども、三百五十万というこのラインは生活保護及び準要保護というラインですから、そういう点では、やはり五百万、八百万というところへの配慮も必要ではないかというふうに思っております。

 これは一言、御答弁いかがでしょうか。

鈴木副大臣 御指摘のことはよくわかりますが、鋭意検討をしていきたいと思います。もちろん、極めて厳しい財政状況でもございますし、税収不足という状況もありますので、そうしたことを勘案して、まずは要求を確実に実現していくことに注力をしまして、また、きょうの御議論も踏まえて、今後の勉強の課題ということにさせていただければというふうに思います。

宮本委員 次に、先ほど鈴木副大臣も触れられた高校の奨学金の問題です。

 高校奨学金事業等の充実改善の予算、これは、年収三百五十万円以下の世帯の生徒約四十五万人を対象として、入学料と教科書費にかかわる分を返済不要の給付型奨学金として支給する、こういうことになっております。この四十五万人がほぼ要保護、準要保護の世帯と聞いておりますけれども、返済不要の給付制奨学金を我が国に導入するというのは、これは画期的なことだと私も思います。

 しかし、この支給対象は、八月の旧政権下での概算要求段階では、学用品、私学の施設整備費、それから制服代、通学用品代、修学旅行費も対象にして、四百五十五億円要求しておりました。それをなぜ百二十三億円に引き下げて、対象枠も入学料、教科書費だけに絞り込んだのか、これをお答えいただけますか。

鈴木副大臣 三百五十万以下の世帯の授業料部分については、高等学校の就学支援金の枠で要求をさせていただいておりますので、その重なる部分については調整をして要求をさせていただいているということでございます。

宮本委員 対象枠を狭めた理由は何ですか。

鈴木副大臣 これは判例にもございますけれども、無償化の対象範囲として、授業料というものは確定した見解であります。そして、それに準ずるものとして、入学金、教科書代といったことがより学びに直結した分野でございますので、もちろん、予算に余裕があれば、その他学用品についても対象にしていきたいという思いはございますけれども、まずは議論の確定をいたしておりますことを今年度は対象にして要求をさせていただいたということでございます。

宮本委員 旧政権でさえ四百五十五億円で、今私が申し上げたような通学用品費、制服代、修学旅行代、全部これは対象にしたわけですよね。今、先ほど差額を申し上げましたけれども、四百五十五億と百二十三億の差額、三百三十二億あればやれるということなんですよ。これはやはり、こういうものについても進めるべきだと私は思います。

 十月二十日付の読売新聞にこういう記事が出ました。「格差 若い嘆き」という記事ですけれども、文部科学省が概算要求に盛り込んだ高校授業料の実質無償化、高校教師からは不十分といった声が聞かれると。次のような教員の声を載せております。「高校生は授業料以外に、教材費や修学旅行費、PTA会費など数十万円がかかる。ここを支払えない生徒が多いのが実情。低所得世帯のほとんどは、すでに授業料の減免措置を受けており、授業料が無償化されても恩恵を受けられない生徒は多いのではないか」。現実に、修学旅行の十万円が払えず高校をやめていった女子生徒のことがこの記事に出ております。

 日本高等学校教職員組合の行った二〇〇八年度の修学保障のための調査によれば、公立高校で、授業料、入学金、PTA会費などの学校納付金とともに、制服にかかる費用、教科書代、副教材、体育用品など、初年度の負担総額は、全日制高校の女子で三十一万四千八百二十八円、男子で三十万八千六百二十八円かかっております。

 また、学区の拡大だとか再編統廃合によって遠距離通学が今ふえておりまして、通学費が重くのしかかっております。先ほど紹介した修学保障調査でも、通学費が年間五十万円を超えるという例も報告されておりますし、最高額は年額百七十七万六千円、定期代がかかっているというものまでありました。定期が買えない、家族の生活費に充てるために定期券を解約した、その日のバス代がないので片道四時間もかけて歩いて学校まで行った、通学費が高くて高校に行けないという生徒が現に今存在しているわけです。

 学校に行くための交通費がなく学校をやめざるを得なかった、あるいは修学旅行費が出せなかったというこの悲劇をなくすためには、給付制奨学金の対象枠の拡大とともに、やはり保護者の年収額を三百五十万円から五百万円に引き上げることが必要だと私は思いますけれども、これはいかがでしょうか。

鈴木副大臣 まず、委員は当然わかっておられると思いますが、四十五万人の皆様方は、十二万ないし二十四万円の授業料無償につながる就学奨励金を受け取るわけでございます。これは計算していただければわかると思いますけれども、四百五十五億円マイナス百二十三億円の三百三十二億円以上であるということは、もう十分おわかりだと思います。

 そして、今の点も含めて、先ほど申し上げました、都道府県に対して財源を確保している部分で、まさにそれぞれの地域の事情に応じた、そこにさらに上積みをしていただいて、手厚い支援はしていただきたいという思いで、先ほどの総務省に対する地方交付税の要求をしているということでございます。ここで、まさに国の仕事と地方の仕事という整理論の中で、授業料については国がまずきちっとやるべきだろう、こういう整理をさせていただいたところでございます。

 今いただいたお話は大変に重要な話でございますので、重く受けとめさせていただいて、今後の検討課題ということで、さらに勉強させていただきたいと思います。

宮本委員 重く受けとめて検討いただけるということですけれども、鈴木副大臣は、さきの国会で、我が党の石井議員の質問に対して、この問題についてこうおっしゃっているんですね。政権がかわりましたならば、その授業料無償化の憲法二十六条の対象範囲を、今先生、石井議員がおっしゃったものについても十分逐次検討をして追加的に対象にするということは、これは時の政権の二十六条の公権解釈によって十分可能だというふうに思っています、こう答弁いただいているわけですから、ぜひとも御検討いただいて、十分可能な拡大を、追加的に対象に加えていただくということをお願いしたいと思います。

 次に、大臣のあいさつに当然触れられるかと思っていたが触れられなかった問題がございます。それは、国際人権規約の留保解除の問題であります。

 日本は、国際人権規約の経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、A規約十三条の2の(b)、(c)を留保したままでありますけれども、まず事実をお伺いしますが、この条項を留保している国、先ほども答弁ありましたが、改めて、どこでしょうか。

鈴木副大臣 日本とマダガスカルの二カ国ということでございます。

宮本委員 実は、これについても今年五月の国会審議で鈴木副大臣は答弁を、当時は副大臣じゃないですけれども、現副大臣は当時答弁をされております。この条項を批准していないのがマダガスカル、ルワンダ、日本、この三カ国というお話がありましたが、実はルワンダは留保を解除いたしまして、今や日本とマダガスカル、この二カ国になってしまったわけで、まずこの状況は一刻も早く解消してまいりたい、こう答弁をされております。

 ルワンダがいつ解除したかといいますと、昨年の十二月に解除したということであります。条約の加盟国百六十カ国中、この条項を批准していないのはわずか二カ国、留保しているのはわずか二カ国だけとなりました。

 そこで、大臣にお伺いするわけですけれども、鈴木副大臣が言うように、一刻も早くこの条項の留保を解除すべきだと思いますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 この条項の国際的環境がどの位置にあるかは今御指摘のとおりであります。

 文部科学省といたしましては、条約を所管するのは外務省でございますので、外務省などとも連携しながら、留保撤回に向けた施策について検討を進めてまいりたいと考えております。

宮本委員 次に、国立大学のことについてもお伺いしたいと思うんですね。

 概算要求には国立大学の授業料減免枠を五・八%から六・三%に広げることは明記をしておりますけれども、大学については学費の軽減、無償化の方向には触れていないんですね。また、奨学金についても、事項要求として今後の予算編成過程での検討に任せております。大学においても、私は、返済不要の給付制奨学金の創設は急務だと考えます。

 そこで、これもお伺いするんですが、OECD参加三十カ国の中で、大学の授業料が有償で、つまり無償でなくて、しかも給付制奨学金もないという国はどれだけあるか、お答えいただけますか。

鈴木副大臣 OECDで大学の授業料が有償な国は十四カ国ございます。そのいずれの国におきましても、大学生に対する給付型の奨学金が存在しておりますというのが事実でございます。

宮本委員 つまり、日本だけですよね。日本は、授業料が無償でなく、しかも大学については給付制の奨学金というものがないわけでありますので、これは世界で日本だけだという状況になっています。

 図書館で調べていただいて、一覧にして、きょうは二枚目の資料におつけしてあります。わかりやすく言えば、公的な給付制奨学金のない国はアイスランドと日本という二カ国でありますけれども、アイスランドは授業料が無償でありますので、両方ないのは日本だけということになります。

 それで、授業料を取り、給付制奨学金もないという状況でありますから、世界一高いと言われる授業料を取りながら貸与制と有利子制の奨学金しかない。余りにも日本の到達点は世界におくれていると思うんですね。これはぜひとも、今こそ大学においても給付制の奨学金に踏み出すべきだと思うんですけれども、これはひとつ川端大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 大学に対しての奨学金制度の充実については、いろいろな観点から、今以上にさらに拡大すべきであるということで、私たちもマニフェストに記載をし、事項要求でありますけれども、いろいろな施策を盛り込んで要求しているところであります。

 なお、給付型の奨学金制度の導入については、財源の問題が一つあります。同時に、大学に進学しない者との公平性の確保などさまざまな課題があることから、慎重な検討も必要という認識で取り組んでおります。

宮本委員 選挙中、前の総選挙のさなかに、フジテレビで党首討論会が行われました。八月の二十三日だったと思います。その席上、中学生の傍聴者というか参加者が、政治家の人たちはけんかばかり、もうちょっと仲よくすればいいのにという声が中学生から出されて、それを受けて我が党の志位委員長が、一つ提案があると。この選挙の公約で、与党も野党も給付制の奨学金を言い始めている、一致点はどんどん進めていこうということを呼びかけました。そういたしましたら、当時の与党も給付制は支持していると公明党の代表がお答えになって、当時の野党側からも、民主党だったと思いますけれども、賛成の声が上がって、与野党が一致して、やはり給付制の奨学金を広げていこうということで選挙のときには一致したんですね。

 その点では、ぜひともこの機会に、高校はもちろんですけれども、大学にも給付制の奨学金を広げていただいて、やはり若い人たちがお金のために勉強を断念しなければならないということがあってはならないというのは川端大臣のごあいさつのとおりですから、そういう立場で頑張っていただくということをお願い申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十八分散会


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