衆議院

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第10号 平成22年4月9日(金曜日)

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平成二十二年四月九日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 奥村 展三君 理事 首藤 信彦君

   理事 松崎 哲久君 理事 本村賢太郎君

   理事 笠  浩史君 理事 坂本 哲志君

   理事 馳   浩君 理事 富田 茂之君

      石井登志郎君    石田 勝之君

      石田 芳弘君    江端 貴子君

      川口  浩君    城井  崇君

      熊谷 貞俊君    後藤  斎君

      佐藤ゆうこ君    瑞慶覧長敏君

      高井 美穂君    高野  守君

      中川 正春君    平山 泰朗君

      牧  義夫君    松本  龍君

      湯原 俊二君    横光 克彦君

      横山 北斗君    吉田 統彦君

      あべ 俊子君    遠藤 利明君

      北村 茂男君    塩谷  立君

      下村 博文君    菅原 一秀君

      永岡 桂子君    古屋 圭司君

      松野 博一君    池坊 保子君

      宮本 岳志君

    …………………………………

   文部科学大臣       川端 達夫君

   文部科学副大臣      中川 正春君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   文部科学大臣政務官    後藤  斎君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   経済産業大臣政務官    高橋 千秋君

   環境大臣政務官      大谷 信盛君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       泉 紳一郎君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤木 完治君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       平野 良雄君

   文部科学委員会専門員   芝  新一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月九日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     あべ 俊子君

同日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     菅原 一秀君

    ―――――――――――――

四月八日

 すべての学校図書館へ、専任・専門・正規の学校司書の配置を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六四四号)

 同(笠井亮君紹介)(第六四五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六四六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六四七号)

 同(志位和夫君紹介)(第六四八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六四九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六五〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六五一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六五二号)

 教育格差をなくし、すべての子供たちに行き届いた教育に関する請願(志位和夫君紹介)(第六五三号)

 同(稲津久君紹介)(第七六八号)

 同(宮島大典君紹介)(第七六九号)

 教育格差をなくし、行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(梶原康弘君紹介)(第六六五号)

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(石田芳弘君紹介)(第七〇六号)

 教育格差をなくし行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(野田毅君紹介)(第七三七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案の審査に資するため、去る三月三十一日に十九名の委員が参加し、独立行政法人日本原子力研究開発機構の視察を行いました。

 この際、参加委員を代表いたしまして、その概要を御報告いたします。

 まず、茨城県那珂郡東海村の独立行政法人日本原子力研究開発機構原子力科学研究所では、岡崎理事長及び横溝理事から同機構における放射性廃棄物対策の概要についての説明を聴取し、クリアランス制度における専門人材育成及び運用の信頼性、クリアランス制度の検討の経緯、諸外国におけるクリアランス制度の導入例、廃棄物処分の形態等についての質疑応答を行いました。

 続いて、J―PARCにおいて、ニュートリノ実験施設及び物質・生命科学実験施設、北地区において、研究炉JRR3改造時の廃棄物についてクリアランスを実施している作業現場及び放射性廃棄物の保管状況を視察いたしました。

 次に、茨城県那珂市の那珂核融合研究所では、岡田理事から臨界プラズマ試験装置JT60の概要及び改修工事に伴って発生する廃棄物についての説明を聴取し、同施設の視察を行いました。

 今回の視察に当たりまして御協力いただきました方々に深く御礼申し上げ、視察の報告とさせていただきます。

    ―――――――――――――

田中委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省科学技術・学術政策局長泉紳一郎君、研究開発局長藤木完治君及び厚生労働省労働基準局安全衛生部長平野良雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高野守君。

高野委員 民主党の高野守でございます。

 本日は、二度目の質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 冒頭に、今宇宙で頑張っていらっしゃる山崎さん、野口さんのミッションの成功を委員の皆様方とともにお祈りを申し上げたいと存じます。

 さて、先週、田中眞紀子委員長のもと、私の地元でもあります東海村、那珂市、日本原子力研究開発機構の視察に皆様と参加をさせていただき、有意義な時間を過ごさせていただきましたことに感謝を申し上げます。

 また、一昨日は大臣も東海村等にお入りをいただいたということでございまして、地元といたしまして、御礼を一言申し上げます。

 本日の議題でございます放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の改正案の質問に入る前に、これは大変大切なことであると思いますし、原子力安全対策、特に、昨年で十年の節目の年を迎えましたジェー・シー・オー臨界事故について御質問をさせていただきたいと存じます。

 まず、皆様にどうしても御紹介をさせていただきたい憲章がございます。それは、日本で初めて平和利用の象徴としての原子の火がともりました東海村の村民憲章でございます。ちょっと朗読をさせていただきます。

 東海村村民憲章、「わたくしたちはゆかしい歴史と原子の火に生きる東海の村民です」という言葉で始まる文章でございます。この「原子の火に生きる」という言葉の中には、東海村の皆さんがこれを受け入れるに当たって、自分たちが平和利用の象徴としての原子の推進役に一生懸命頑張るんだという、ある意味誇りのようなものが込められております。

 また、平和利用推進・核兵器廃絶の宣言文もちょっと朗読をさせていただきます。

  世界の平和は全人類の願いであり、原子力の平和利用は人類の生存と繁栄のため更に推進しなければならない。

  日本が原子力の平和利用に踏み切り、東海村が原子力関連諸施設の設置を受け入れたのは、原子力基本法の精神を堅持し、平和の目的に限って原子力の研究・開発及び利用を進めるということを確認した上でのことである。しかるに核兵器保有国間の果てしない核軍備拡張競争は、今や人類の脅威であり憂うべき状況である。

  このような時にあたり、唯一の核被爆国として全世界に対し、原子力の平和利用と核兵器廃絶の実現に向けて訴え続けることは、東海村に住むわれわれにとって大きな使命である。

  よって、東海村民は世界のすべての国に向け、原子力の平和利用推進と核兵器の廃絶をここに宣言する。

というふうにございます。

 きのうは、米国のオバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領が約二十年ぶりに核軍縮条約に調印をしたという、ある意味歴史的な日でもありましたけれども、東海村の村民も、これと心を一つ、その平和のために頑張っていきたいという願いが込められているわけでございます。

 どうか委員の皆様には、ぜひ東海村村民憲章の言葉が示す思いというものを改めて強く受けとめていただければありがたいというふうに思います。

 一九五六年に、茨城県東海村に日本初の原子炉を備えた原子力研究所の設置が決定をしました。一九五七年には、日本原子力研究所で、日本最初の原子炉でありますJRR1が臨界に成功をしました。さらに、一九六五年に、日本原子力発電株式会社の東海発電所で、商用炉としても初めて臨界に成功したわけであります。また、この東海発電所では、今、日本初の原子炉解体に向けたプロジェクトが進行をしておりまして、日本の原子力産業の先駆けとして、ある意味貴重なデータ、経験を蓄積しているところでもございます。

 このように東海村は、半世紀以上日本の原子力分野を支えてきたということが言えると思いますし、また、繰り返しになりますけれども、そうした原子力の平和利用は東海村村民の誇りでもありました。原子力施設等で幾つかの事故といいますかトラブルが今までにもあったわけでありますけれども、それにもかかわらずそれを乗り越えてきたのは、まさに、東海村や地域の方々のそうした自分たちの誇りがあったということを御理解をいただきたいと思います。

 しかし残念ながら、一九九九年九月三十日、この東海村で、バケツで臨界という信じがたい事故がございました。当時、私は、隣の隣ですけれども、常陸大宮市にちょうどいたのでありますけれども、見えない恐怖というものをやはり感じました。そして、この結果、皆様も御記憶にあると思いますけれども、このジェー・シー・オーの臨界事故で六百六十六名の被曝者を出し、そして二名の方がお亡くなりになりました。

 この事故は、東海村だけではありませんけれども、地域の皆様に大変な不安を抱かせ、あわせて日本じゅうに不安を抱かせ、世界じゅうと言ってももしかしたらいいかもしれませんけれども、そして、そういう中で、東海村の村民の皆さんのこうした憲章に示されている誇りが揺らいだことも事実でございました。

 どんなに立派な制度、法律、技術があっても、それを運用するのは人であるということを忘れてはならないというふうに思います。

 原子力政策を進める上で最も重要なことは、ふだんの管理監督、教育、そして、その法律や制度、そうしたものを守り抜くというすべての関係者の意志がそこになければならないし、持ち続ける以外にはないというふうに私は考えております。加えて、原子力安全対策における組織、システムというものも抜本的に見直す必要もあるというふうに今感じております。

 そこでまず、この事故から十年という節目の年を昨年迎えたわけでありまして、東海村を中心に昨年は国の防災訓練も行われたところでありますけれども、今、民主党が政権与党となって、新政権として、ジェー・シー・オーそして臨界事故に対する川端大臣のお考え、加えて国の事故後の対応、これからの決意についてお尋ねといいますか、所信といいますか、お聞かせをいただきたいと存じます。

川端国務大臣 高野委員が、まさに東海村が御地元で、強い関心と同時に、誇りを持って村民の皆さんがやっていただいていることを御紹介いただきました。

 私が初めて東海村の再処理工場を視察させていただいたのは、まだ民間企業の研究にかかわっていた三十年前でございます。お話しありましたように、まさに日本の原子力のいつも先頭を切って大変な御苦労の中で成果を上げてこられたことは、心から敬意と感謝をしたいというふうに思いますと同時に、非核保有国として唯一、再処理を含め、プルトニウムの取り扱いを含めて世界の中で認められている国、平和利用を認められている国という立場を築いてきた中に、多くの研究者の努力と同時に、東海村の皆さんの御協力があったことというふうに認識をしております。

 そういう中で、平成十一年にジェー・シー・オーの事故があった。信じられないという言葉に尽きるようなことが現実にはあったということでありまして、そのときの状況も含めて、実にさまざまな反省と教訓をもたらしたというふうに思っております。もちろん二度とあってはいけないと同時に、いろいろな仕組みをやっても、先生がお触れになりましたように、やはり法律も大事だし組織も大事だけれども、本当に、現場で動く部分の意識というのが欠けると大変なことが起こっているということであります。

 そういう意味で、二名の方が亡くなられ、大変な被曝者を出し、住民がまさに恐怖の状況で避難をしたという状況を起こしてはいけない。

 昨年、新内閣発足の直後に十年を迎えましたので、防災訓練を含めて、官邸において、総理以下すぐに招集がかかって、東海村を含めてのシミュレーションの訓練を現地も含めてやらせていただいたところでございます。

 法律的に申し上げますと、平成十一年に原子炉等規制法が改正をされました。保安規定の遵守状況に係る検査の導入、原子力保安検査官の配置、従業員の申告制度の創設等、安全規制が相当強化をされました。同時に、万が一の災害に備えてくれということで、同じ平成十一年に原子力災害対策特別措置法が制定されまして、緊急事態応急対策拠点施設、オフサイトセンターの整備、原子力防災訓練の実施等、体制の強化が図られてきました。

 そういう意味で、文部科学省でも、これらの安全規制、原子力災害対策の充実を図っていくと同時に、特に、原子力災害時の緊急時モニタリング体制、緊急被曝医療体制の維持向上等に取り組んでおります。今後ともこうした取り組みを着実に進めて、万全を期してまいりたいと思っております。

高野委員 ありがとうございます。

 ぜひ、新政権としてもしっかりと安全対策に万全を尽くしていただきたいと存じます。

 私は、平和利用による原子力の健全な推進というのは、これはもう必要であるというふうに考えております。原子力政策やエネルギー分野では、事実、原子力発電の発電量が全体の約三〇%、今現在は二五・五%だそうでありますけれども、そうした大きな割合を占めているのが現実でございます。さらに、硼素中性子捕捉療法などのがん治療等の医療分野、また、物質・生命科学などの基礎科学分野等、非常に多岐にわたる分野でございます。

 将来を見据え、国すなわち文部科学省がやるべき重要な役割として、現実に実用活動が行われている部分でいろいろな問題が出たとき、技術あるいは基礎科学に立ち戻らないと解決できないときに力を十分発揮できるような、そうした研究開発能力を原子力研究開発機構などがしっかりと持って責任を果たしていくということが国としての大切な責任であるというふうに思っておりますが、この点についてもちょっとお尋ねをしたいと存じます。

 また、現在、日本原燃で行われている再処理工程ではガラス固化がうまくいかず、東海村の原子力機構で問題解決に向け実験が繰り返されているわけでございますけれども、この国の技術成果を民間に移転する、それを新産業につなげていくということは大変重要なことでありますけれども、ただ移転すればいいというわけにはいかないというふうに私は思っております。

 特に今後、高経年化対策、廃炉、あるいはその新規建設などいろいろな事態に対応してしっかりと人の面から技術基盤を維持できるように、何としてもこれは国がしていかなくちゃいけないというふうに思っております。公的研究機関は、質のよい研究者、技術者だけではなくて、民間が持てない研究インフラをきちっと持ち続ける、維持し続けるということが大事でありますし、新しい科学技術だけではなくて、原子力等の日本の根幹にかかわる技術の維持というものは、これは安全対策上も絶対に私は必要であるというふうに思っております。

 ウランの濃縮の技術も全部民間に移転して、今機構ではやっていないんですね。そうしたこともやはり重要ではないかというふうなこともつけ加えさせていただきたいと思いますし、そうしたことを含めて、現場の研究者たちが意欲的に仕事に取り組める体制というものを整備しなくてはならないと考えておりますけれども、この点についてのお考えをお尋ねをさせていただきたいと思います。

中川副大臣 私自身も、先般、東海村に視察に入らせていただきました。地元の原子力行政あるいは原子力に対する技術、これに対する信頼というものがいかに大事かということを痛感いたしましたし、その中で、地元の議員として御活躍をいただいております高野委員に改めて敬意を表したいというふうに思います。

 御指摘のとおりに、やはり、技術基盤を国が保持し発展をさせていくということがあって、初めて民間の活動についてもそれに対する信頼性が生まれてくるんだということ、これが原則だと私も思っております。

 そういう意味で、原子力機構を中心に、そうした基盤をしっかりつくり上げていくということに努力をしていきたいというふうに思います。

 また、先ほど御指摘ありましたように、再処理技術や、最終の廃棄物についての処理技術あるいは濃縮技術など、そうした研究成果を民間に移転をしていくというプロセスがあるわけでありますが、これについても、なかなか六ケ所村でスムーズに転換をしていけないという現実もあるわけでありまして、ここについてもう少ししっかりとした問題に対する分析を入れて、これから、特にMOX燃料あるいは「もんじゅ」の燃料を含めて、この原子力機構でやっていることを民間に移転をしていくというようなプロセスもある中で、今回の六ケ所の教訓をしっかり生かしていくようなそういう対応をしていくべきだというふうに思っております。頑張っていきたいというふうに思っております。

 そういうような原子力の基盤的な技術について、その基盤が的確に維持されるようにこれからも努力をしてまいります。

高野委員 ありがとうございます。

 そうした技術の維持というものは、賛成、反対とかいう問題ではありません。五十四基の原子力発電所を既に日本は持っているわけでございますし、例えば、将来廃炉とかいうときに国が全くその力を持っていないということでは大変困るわけでございまして、そうした意味で、原子力機構等、東海村の村上村長等も頑張っておりますけれども、どうか、そうした連携をとってこれをきちっと進めていただきたいというふうに思います。

 では、本日の議題であります、放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律の改正案についてでございます。

 東海村は私の地元でありますが、この近郊には、社団法人日本アイソトープ協会から持ち込まれたいわゆるRI廃棄物と日本原子力研究開発機構から出たRI廃棄物が、二百リットルドラム缶換算で約十二万五千本が今管理、保管されております。また、現在は、約十一万本の廃棄物が千葉県を中心に持ち込まれ保管されているというふうにも聞いております。そのほかに、いまだ未回収のRI廃棄物が、民間研究機関や大学及び医療機関を中心に約一万本が保管されており、これらのRI廃棄物の総計は約二十五万本と言われております。

 この約二十五万本のRI廃棄物のうち約五割は、自然放射線量と比べて十分に低い、年間に自然界から人間が受ける放射線量の約二百分の一、〇・〇一ミリシーベルトであるというふうなものでありまして、クリアランスすることで処分コスト等が低減され、医療、産業、研究機関等において合理的な運用が可能になるとは聞いております。

 そこでまず、経済産業省にお尋ねをさせていただきたいと存じます。

 日本原子力発電株式会社東海発電所は、平成十年三月三十一日に営業運転を終了し、商業用原子力発電所では日本初となる廃止措置工事に着手をしております。その後、平成十七年五月二十日に原子炉等規制法が改正され、商業用原子炉を対象にクリアランス制度が既に導入されているわけでございます。

 東海発電所では、廃止措置工事で発生する鉄やコンクリートなどの撤去物を、新たに制定されたクリアランス制度に基づき、国により安全が確認されたものを一般の廃棄物と同様に再加工したりして再利用する、我が国初めての取り組みが現に今行われているわけでございます。

 原子炉等規制法の改正以来、どのくらいの量の放射性廃棄物がクリアランスの対象となったのか、そしてまた、五年がたった現在、どのような効果、結果の中に、あるいは問題点等が出てきているのであれば、ぜひその辺のことをお聞かせをいただきたいと存じます。

高橋大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 先ほど委員御指摘のとおり、平成十七年に改正以降ということでございますのでもう五年たつわけでありますけれども、この日本原子力発電株式会社東海発電所の解体に伴って発生した金属につきましては、約四百トン、五年間でクリアランスの確認を実施しております。

 この四百トンのものにつきましては、まだ本制度が定着するまでその事業者の関連のところに再利用するということで、そういう計画をしておりまして、現時点では、ベンチだとかテーブルだとか、その事業者の中で使うものの金属に使っております。

 それで、現時点で安全規制上特段の問題点は発生していないというふうに聞いておりますし、今後とも、安全の確保を大前提にクリアランス制度を運用していきたいというふうに思っております。

高野委員 ありがとうございます。

 とにかくこれは、どういう状況であるかというのをやはり国民の皆さんによく知っていただくことが重要でありますし、保安院の位置づけの問題であるとか、あるいは、技術力を現実に持っているのは文科省の機関が持っているわけでございますし、十分にこれからも文科省と経産省と連携を密にしていただいて、こうした取り組みに頑張っていただきたいということをお願いしておきたいと存じます。

 高橋さん、ありがとうございました。

 では次に、放射性同位元素の中で、この改正案が成立した後に、放射性同位元素によって汚染された放射性廃棄物の約五割が、クリアランスにより再利用等の一般廃棄物としても処理可能となるとは聞いておりますけれども、文部科学省として、実際にどの程度の費用の面であるとか、さまざまなどういった効果を見込んでいるのかということをまずお聞かせをいただきたいと思いますし、また、現段階で約一万本のRI廃棄物を管理、保管している民間研究機関や大学及び医療機関では、だれが放射能値を計測し、だれが責任を持って管理、保管しているのでしょうか。

 そしてまた、法案成立後、放射能濃度の測定、評価の結果を行う登録濃度確認機関に対し、その適正な業務実施を担保させるための方策をお聞かせください。

 あわせて、商業用原子炉から発生する低レベルの放射性廃棄物の最終処分場については青森県六ケ所村ということになっておりますけれども、クリアランスの対象とならないRI廃棄物の最終処分場の計画は現在どのようになっているのか。今のまま東海村や、あるいは市原市が多いわけでありますけれども、そういったところで管理、保管することになるのか、お尋ねをさせていただきたいと存じます。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、放射線障害防止法で規制される放射性廃棄物の保管量でございますけれども、先ほど委員がお触れになられましたように、各事業所において二百リットル入りドラム缶に換算いたしまして約二十五万本分相当が保管されているところでございまして、そのうち五割がクリアランスの対象となる可能性があると考えているところでございます。

 クリアランス制度を適用した場合の処分の費用でございますけれども、これは、一定の前提のもとに試算をいたしまして、放射性廃棄物として処分した場合と比較して、三分の一から十分の一のコストとなる見込みでございまして、そういったことで、このクリアランス制度を活用することによりましてコストの削減が期待されるところでございますし、クリアランスされた場合には、放射性廃棄物の物量が減るわけでございますので、保管の能力にも余裕が生じるというような効果も期待できるところでございます。

 それから、現在、二百リットル入りドラム缶相当で約一万本分のRI廃棄物を保管しております民間研究機関あるいは大学等の管理、保管の問題でございますけれども、これにつきましても、放射線障害防止法に基づきまして、これらのところで保管されている廃棄物も、放射性同位元素の種類あるいは放射能量をこれらの事業者が測定して記録することになってございまして、それぞれの事業所は、資格を持っている放射線取扱主任者の監督のもとでこういった測定等を定期的に行っているところでございまして、それぞれの事業者が責任を持って管理、保管しているところでございます。

 文部科学省は、法令に基づきまして、これらの事業者の行っている管理が適正に行われているかどうかを規制しているということでございます。

 それから、この法律ができて登録濃度の確認機関というものが出てまいるときでございますけれども、登録濃度確認機関は、濃度の確認業務の実施方法あるいは濃度確認の信頼性を確保するための措置等について定めました業務規程をつくって、国の認可を受けなければならないこととなっております。

 また、登録濃度確認機関は、毎年、事業年度の事業報告書等を国に提出するとともに、帳簿を備えて、濃度確認の結果等については記載して保存しなければならないこととなっております。

 国は、こういった報告を受けるほか、必要に応じて報告の徴収、立入検査等も行いまして、登録機関の厳正な指導監督に努めてまいります。また、登録機関が公正に濃度確認を行っていないと認められるような場合には、改善命令等を発することによりまして、適正な業務確認を担保してまいりたいと考えております。

高野委員 ありがとうございます。

 RI廃棄物というのは、私ども東海が地元の人たちにとっては、あるいは現場では、大したことないやという気持ちがどこかであるのかもしれませんけれども、やはり、たとえRI廃棄物であっても、きちっとした管理、そうしたものに十分に留意しなければ、信頼が失われてはこれはもうすべて終わりでございますので、ぜひ、しっかりとしたそれらの対応に努めていただきたいと存じます。

 時間が余りなくなりましたのですが、最後に一つ、既に五年たっているわけですが、原子炉等の規制法に引き続きましてこのクリアランス制度が導入されるということになるわけですけれども、放射線廃棄物として取り扱う必要がないものとされた廃棄物については、当然、先ほど来の話のように、再利用も可能となるわけであります。

 このときに、クリアランス制度の趣旨、内容、安全基準などについて、やはりここは国民の皆さんの理解を得ること、繰り返しになりますけれども、信頼が第一でありますので、そのことを強く求めるとともに、実際にクリアランスされた廃棄物のほとんどは、先ほどの経産省の話からもありましたけれども、関係施設内にとどまり利用される、一般の市場では利用されないというふうに聞いてはおりますけれども、今後、クリアランス制度の安全性に関して国民の皆さんの理解を図るための広報というのがやはり大事だと思いますし、文科省として具体的にどのようにこれらの課題に取り組んでいるのか。

 結局、大丈夫なのは地元にいる僕なんかは比較的わかってはいるんですけれども、これ、やはりなかなかそうはいかないと思うんですね。ですから、不安を抱かせるのではなくて、きちっとした安心を築き上げるために、ぜひそういったことにも力を入れていただきたいというふうに思います。

 また、クリアランスされた放射性廃棄物のうち、再利用されないもの、廃棄物の処理及び清掃に関する法律というのがあるそうですが、これに基づいて処理もできることになるわけですけれども、こうした将来のことを考えたときに、ぜひ文科省として、この産業廃棄物処理業者に対してどのように周知徹底を図っていくのか。さらに、これは環境省との連携も非常に重要になってくるわけです。これは将来的な話になるのかもしれませんけれども、こうしたことにどのように取り組んでいかれるという今心づもりというかお考えをお持ちなのか。

 現段階でのことで結構なわけですけれども、ちょっとお尋ねをさせていただきたいと存じます。

中川副大臣 御指摘のように、このクリアランスとそれから最終処分に関して国民の理解をいかにとっていくかというのは、一番大事なところだというふうに思っています。

 二つに分けて考えていきたいと思うんですが、一つは、関連の業界、いわゆる協会ですね、それを実際に扱っていくそういう業界関係について、各種講演会等さまざまな機会をとらえて、一緒に参加してやっていくんだというそういう思いを醸し出すような周知を図っていきたいということ、これが一つであります。

 そして一般国民に対しても、特に今回の法律改正の内容について周知徹底をしていく、あらゆる機会を通じて、あるいはメディアを通じてやっていきたいというふうに思いますし、特に、最終処分になると環境省がメーンになってきますので、環境省とも協力をしつつ、クリアランス制度の社会的受容性、これを高めていくという取り組みをぜひしていきたいというふうに思っております。

高野委員 時間が参りましたのでここで質問を終わりますけれども、ぜひ、各省庁連携をとってきちっとした対応に努めていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、吉田統彦君。

吉田(統)委員 皆さん、おはようございます。民主党の吉田統彦でございます。

 二回目の質問でございますが、初質問同様、非常に緊張しております。不調法は平にお許しください。

 私は、大学病院での実験でRNAの量を測定するノーザンブロッティングという手技で放射性物質を取り扱っておりましたが、毎回非常に緊張したことを今でも覚えております。あるときに、何のミスを犯してないにもかかわらず、放射線を測定するガイガーカウンターが非常に高い数値を示したことがありまして、危うくパニックになりかけたこともあります。

 放射線は目に見えないから、扱いを誤ると本当に恐ろしい事象を引き起こします。キュリー夫人は素手で放射性物質を精製したんですが、これは放射線の危険性を全く知らなかったからであって、人間は、その有用性とともに、危険性に関して多くの知見を得てきました。確かに、極めて大きな力であり有用なツールではありますが、チェルノブイリがよい例ではございますが、一たん何かが起こってしまえば、恐らく、人類が地球上に存在する間ずっと修正できない大問題となります。

 ですので、本法案、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の改正案に関しましても、慎重にお取り扱いいただくようお願いいたします。

 では、質問に入ります。

 本法案の趣旨に、安全かつ合理的に廃棄物を再利用、処分するためにクリアランス制度を放射線障害防止法に導入するということがあります。つまり、放射性廃棄物の処理処分に当たって必要な土地やコストを縮減するということであると思いますが、現段階における放射性廃棄物の処理処分コストはどのくらい必要とされているのでしょうか。

 例えば、五百床以上の医療機関や大学研究機関一施設当たりの平均年間処理費用についてお伺いいたします。

後藤大臣政務官 吉田先生がおっしゃるように、本法案が成立した後も、仮にこのクリアランス制度というものが原子炉等規制法と同様に導入されても、やはり、安全性というものをどう確認し担保していくかということが重要なことは、言うまでもありません。

 今の御指摘の中で、例えば先ほども質問がありましたように、現在、放射性廃棄物の本法の規制対象が二百リットル入りドラム缶換算で二十五万本ということでありまして、そのうちの十二万五千強が原子力研究開発機構で今保管をされているということで、今先生御指摘の医療機関では、五百七十七本、百三十八事業所というふうに聞いております。

 それで、計算という前提がなかなか一律には言えませんが、例えば、医療機関で平成二十年度一年間で発生した放射性廃棄物の発生量というのが、平成二十年度では、二百リットルドラム缶換算で四百九十二本発生をするというふうなことを言われております。これにトータルで一億円というふうに試算をされており、一事業所当たりにすると六十二万円ということになります。

 一方、医療機関等、先生がお勤めになった大学研究機関という分類では、平成二十年度一年間の放射性廃棄物の発生量というのが、二百リットルドラム缶換算で三百三十六本、処理コストが七千万円と試算をされています。一事業所当たりだと百七十四万円ということであります。少し大きな大学附属病院、京都大学で年間発生が四十五本、これは平成二十年度ということのようですが、処分コストが九百五十万円というコストになるというふうに試算をされております。

 いずれにしても、先ほども先生がお話をされた処分コストが高い低いかというのは、もしクリアランス制度が導入をされれば、先ほどの高野先生の御発言にもありましたように、当然処分費用が削減をされる。それが大体三分の一から十分の一ということのコストの削減効果は期待はされるものの、先ほども冒頭お話をしましたように、できるだけこれは安全に基準をつくり、そして審査をし、それを分離することについて、国民の皆さん方からきちっと理解をされるようなやはりこれから制度体制づくりもしていかなければいけないということで、その点についても万全を期してまいりたいというふうに考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 放射能、放射線を取り扱うには、当然専門的な知識や万全の備えが枢要になります。あくまで生身の人間は完璧ということはございませんし、必ずヒューマンエラーは発生してまいります。

 放射能の取り扱いにおきましては、一時的な外部被曝よりも、放射性物質を経口的に口から取り込む、皮膚の傷口から血管に入る、エアロゾルや気体を鼻から肺へ吸い込んでしまうといういわゆる内部被曝による、呼吸器、消化器そして全身への影響が最も懸念されます。体内に取り込まれた放射性物質は、その元素の種類や化学系によってさまざまな動態を示すのですが、例えば、沃素は甲状腺部分に集積しますし、ストロンチウムは骨の中のカルシウムと置換して体内に蓄積します。そして、人体にずっと影響を与え続けます。

 そこで、事業所及び測定機関、評価機関における外部被曝及び内部被曝を防止するための措置とそれを確認する方法についてお伺いいたします。

後藤大臣政務官 先生おっしゃるように、外部被曝、内部被曝、どうそれぞれきちっと測定をし、それぞれかかわる者に対してそれを防止する措置を講ずるのかということで、現在の放射線防止法の中でも、外部被曝及び内部被曝の線量の測定ということをまず事業者に義務づけをしております。これは法第二十条で規定をされております。これが測定の部分であります。

 それで、例えば線量限度というのが、五年間で百ミリシーベルト、かつ一年間で五十ミリシーベルトとするという、まず基準を決めるということになっています。

 このクリアランスする際に、作業者に対する外部被曝という部分を当然防止する措置として、作業者個人個人に線量がはかれる着用の義務をするというふうなことをまずしながら、なおかつ、作業時間によっても当然被曝量が変わってくるわけですから、その作業時間もきちっと管理をする措置をまず講ずるということになっております。

 あわせて、内部被曝の防止というのは、まず、防護マスクという部分をメーンにしながら放射線防護具を着用の義務ということを通じて対応するというふうなことで、では、それをどう今度記録をするか、その個人個人がどのくらい線量が加算をされているかということについては、放射線業務従事者の記録というのをきちっと義務化をし、そしてその写しを交付させながら、その記録を確認する中で、外部被曝及び内部被曝が限度値を超えていないことを事業者も放射線業務従事者も確認をできる仕組みをまずつくっているということであります。

 文科省にも放射線従事の被曝線量の分布等を記載した状況報告書を毎年提出をさせ、文科省がこれを確認するという作業を通じながら、必要に応じてまたそれぞれの事業所に文科省が立入検査を実施しながら、外部被曝及び内部被曝の管理状況や被曝を防止する措置の状況をきちっと確認をするというふうなことを現在も行っております。

 いずれにしましても、先生が御指摘のように、今回、このクリアランス制度が導入された以降も、放射能濃度の確認を行う登録濃度確認機関の職員にも、労働安全衛生法に基づいても被曝の管理をするように適切に対応してまいりたいというふうに考えています。

吉田(統)委員 大変よくわかりました。ありがとうございます。

 次に、本法案では、放射性物質の違法な輸入及び販売を行った者に対する罰則規定として、従前の罰金三十万円以下を百万円以下へ、同五十万円以下を三百万円以下へ罰金の引き上げをするとしておりますが、同違反行為は国家の安全保障にもかかわる問題で、首藤先生なんか御専門かもしれませんが、場合によっては、テロや破壊行為に使用される可能性もないわけではありません。

 よって、本法案の違反者に対して、将来的に懲役刑など、より重い刑事罰を適用する意向はおありなのでしょうか。政府の御意向をお聞かせください。

後藤大臣政務官 先生御指摘のように、やはり違反者に対してきちっとした罰則規定の強化ということで、先生も御案内のとおり、今回の法律でも、例えば所持制限違反については、現行、一年以下の懲役もしくは五十万円以下の罰金ということで、併科ができることになっていますが、改正では、一年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金、併科という形で、罰金の額を五十万円ふやしております。

 例えば、廃止措置義務違反、報告徴収義務違反というところは、懲役義務が現行の罰則規定ではございませんが、例えば廃止措置義務違反では、五十万円以下の罰金の現行の罰則規制を、改正後では、一年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金または併科ということで、罰金の額を倍増し、あわせて一年以下の懲役というものも追加をしております。

 報告徴収義務違反についても、現行では三十万円以下の罰金刑ということでありますが、改正後の部分では、一年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金または併科ということで、新たに懲役刑を科すような措置も今回講じているところであります。

 その点について、今後それでも不十分かどうかということの御指摘かもしれませんが、その状況も見ながら、いずれそういうものが出てきたら必要に応じて検討をすることになると思いますが、今回の改正案でも先生の御指摘も踏まえたものになっているということをぜひ御理解賜りたいと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 次に、本法案では、測定の数値により対象廃棄物の扱いが大きく異なってくることから、厳正そして適正な測定、評価が極めて重要であるのはもちろん言うまでもありません。よって、厳正そして適正な測定、評価がなされているかを監視する方法はどのようにお考えでしょうか。

後藤大臣政務官 確かに、厳正かつ適正なクリアランスレベルの測定、評価をどう監視するか、要するに、いわゆる事後評価の部分も大変大切な部分だというふうに思っています。

 先生御専門の部分が非常に多いので、私たちもこの法案の検討に当たって、いろいろな技術的なレベル、放射能濃度がどうなっているのか、それぞれの項目によって違う部分でかなりの勉強をさせてもらいました。

 やはり、測定、評価の方法が妥当であるかどうかというのが、先行している、先ほどもお話がありました原子炉等規制法で導入したその測定、評価というものがある意味ではクリアランスの一つの前提になって、これから多分、省令の大きな方向性がその部分でベースになってくるというふうにも思っていますが、いずれにしても、国が基準をきちっと決めた以降、その基準に従って認可をそれぞれの事業者に行うということでありますし、それと、このクリアランスするときにある意味ではまざってしまって、本当に均一なものになっているかどうかというのも多分懸念をされると思います。

 それは、汚染物の偏りがないようなことを、それをふるうのかどうなのかというのは現場によって違うのかもしれませんが、偏りがないことを確認したクリアランス対象物からサンプルを採取して放射線を測定するということで、濃度のばらつきがないようなことも一つ工夫としてきちっと対応していかなければいけないというふうに思っています。

 いずれにしましても、先ほどの冒頭申し上げましたように、本当にクリアランス対象物の放射能濃度の測定、評価が、登録機関または国が確認をまずして、その後、認可された方法に沿って測定、評価されているかということを、これからの国または登録機関、あわせて事業者の皆さん方、あらゆる角度から基準に基づいた測定、評価に関する仕組みというものは国が責任を持って対応していかなければいけないということで、まず、原子炉等規制法に基づいた部分でのベースも参考にしながら、体制づくりに万全を期してまいりたいというふうに考えております。

吉田(統)委員 本法案の趣旨、内容、運用の仕方が大変よくわかりました。ありがとうございます。

 次に、この場をおかりして、原爆症の認定そして被爆者の救済という観点で、厚生労働省山井政務官にお伺いいたします。

 昭和二十年八月に広島市、長崎市へ原子爆弾が投下されてから六十年余りが経過いたしました。原爆投下による当時の死者数は、広島で約十四万人、長崎で約七万人と言われまして、二〇〇八年のデータでは、今なお約二十五・二万人の被爆者が存在し、その平均年齢は七十四・六歳に達しています。

 先ほども触れましたが、内部被曝ほど恐ろしいものはありません。人体の内部汚染を起こした場合、汚染の除去は外部汚染よりはるかに困難となり、人体の中で一生放射線が出続けるわけですから、より長期間被曝することになります。

 例えば、原子爆弾投下時のキノコ雲の下では放射能を帯びた微粒子が非常に充満しておりまして、それはやがて粉じんとなり、直接の熱線で被爆されなかった多くの方がその微粒子や粉じんを吸い込んで、また、終戦時の何もない時代、汚染した物質をさわった手や汚染された食器で食事をし、汚染された川や井戸の水を飲み、今なお内部被曝に大変苦しんでおります。それを考えると、今までの政府の認定基準というのは、その実態をよく理解していないようにも思えるのです。

 それで、原爆症に関して質問させていただきます。

 原爆症の認定は昭和三十二年から始まりました。以前は、いや、今でも被爆した方の中には、差別を恐れて自身が被爆者であることを隠し、申請をちゅうちょされている方が大勢いらっしゃいます。そのような状況で多くの被爆者の方々は、子供や孫が差別を受けるのではないかと案じつつも、勇気を持って、もしくは病魔に侵されて、本当に困り果てて原爆症の申請をしていると私は認識しております。

 そこで、これまでの原爆症認定申請件数、それに対する認定件数、棄却件数、保留件数、また、申請者数に占める認定者数の比率はどれくらいでしょうか。お答えください。

山井大臣政務官 吉田委員、御質問ありがとうございます。お答え申し上げます。

 平成十三年度から平成二十一年度までの累計として、原爆症認定申請件数は一万八千八百九十六件、認定件数は六千九百九十九件、却下件数は五千五百三十三件となっております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 我が国では、昭和三十二年原爆医療法、四十三年に原爆特別措置法が施行され、後、平成六年に前述の原爆二法を一本化し、被爆者援護法ができました。平成十三年には、提出資料の二番をごらんください、ここでお示しした「原爆症認定に関する審査の方針」という審査基準が設けられましたが、一方で、その中で原爆症認定を却下された被爆者の方々が、原爆症認定申請却下取り消しと申請却下に伴う精神的苦痛に対する損害賠償を求め、平成十五年四月に原爆症認定集団訴訟が開始されました。

 そこで、この訴訟にかかわる原告数及び、そのうち、裁判や、提出資料一にお示しした、平成二十年にできた新たな審査基準によって原爆症と認定された原告数はそれぞれ何人いるのでしょうか。

山井大臣政務官 吉田委員にお答え申し上げます。

 原爆症認定を求める集団訴訟については、平成十五年四月以降順次提訴され、原告数は三百六名となっております。

 そのうち、原爆症と認定された方は平成二十一年度末現在で二百五十名となっており、その内訳は、判決の確定により認定された方が八十三名、そして、平成二十年四月からの「新しい審査の方針」により判決の確定以前に認定された方が百六十七名となっております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 では引き続いて、前述の提出資料一のように、平成二十年、新たな審査の基準が示されました。そこでは、放射線起因性の判断において、積極的に認定する範囲の場合とそれ以外の場合とありますが、そのおのおの、原爆症認定申請者に対する審査方法とその進捗状況はいかがでしょうか。

 特に、それ以外の場合に関して審査が若干滞っているように見受けられますが、その理由もあわせてお伺いしたいと思います。

山井大臣政務官 お答え申し上げます。

 それ以外の場合においては、申請者の被曝線量、既往歴、生活歴等を総合的に勘案して放射線起因性を総合的に判断する必要がありますので、審査に一定の時間を要する傾向があるのは事実でございます。

 いずれにしましても、被爆者が高齢化していることも踏まえ、迅速な審査に努めてまいりたいと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。大変よくわかりました。

 放射線による障害というのは、確定的影響というものと確率的影響というのがあります。ちょっと説明しづらいんですが、前者の確定的影響というのは、閾値という一定以上の放射線を蓄積すると、例えば不妊になったり白内障になったり、そういう疾患を引き起こすという放射線の障害でございます。そして、後者の確率的影響、どちらかというとこちらの方が怖いんですが、これは閾値という一定レベルの決まりがなく、悪性腫瘍など発症の確率と浴びた線量が比例するという影響です。いずれにせよこの両者は、ともに、多くの放射線を浴びれば浴びるほど影響は強くなります。

 いずれにしても、放射線はDNAを傷害するわけです。DNAの傷害というのは本当に恐ろしいもので、さまざまな、場合によっては全く予想できない疾患を引き起こすわけです。DNAというのは、つまり遺伝子、遺伝情報ですから、例えばがんを抑制する遺伝子が損傷すればがんが起こりますし、本当にとんでもない、予想できないことが起こるんです。

 つまり結論から言うと、放射線を浴びたことによって起こる事象というのは、だれも予想できないということになるんです。

 そこで、この確率的影響の代表であります原爆による内部被曝を含む放射線と悪性腫瘍及びそれに準ずる疾患の因果関係に関する認識をお聞かせください。

山井大臣政務官 お答え申し上げます。

 現在、原子爆弾被爆者医療分科会において、原爆症の審査の基準となっている「新しい審査の方針」のもとでは、被爆者救済の理念に立ち、特にがんなどの悪性腫瘍や白血病等に罹患した場合には、まず、爆心地から三・五キロメートル以内で直接被爆した者に加え、第二番目としまして、原爆投下より約百時間以内に約二キロメートル以内に入市した者などについて、放射線以外の原因であることが明らかな場合を除き、原爆症と認定することとしております。

 今後とも、放射線に関する最新の科学的知見を踏まえながら、被爆者救済の観点で援護行政を行ってまいりたいと考えております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。大変心強いお言葉をありがとうございます。

 では、先ほど述べました確定的影響の代表である原爆による放射線と白内障の因果関係に関する認識、特に、加齢による加齢性白内障と放射性白内障との区別の仕方をお聞かせください。

山井大臣政務官 お答え申し上げます。

 白内障は、高齢者の七〇%以上に見られる一般的な疾患であり、主な原因は加齢や糖尿病等でありますが、放射線もその一つであります。

 近年、高齢化の進む被爆者の方から多くの原爆症認定の申請が寄せられているところですが、厚生労働省としては、放射線起因性が認められる放射線白内障を認定しております。

 これまでの知見により、放射線白内障には三つの特徴があります。

 まず第一に、他の白内障には余り見られない眼内の特定の部位に濁りが見られるということ、第二番目に、通常、被曝後早期に発症し、被曝線量が高くなるほど発症率も高く、発症時期も早く、重篤になる、第三番目に、その多くが進行しないなどの特徴があることが判明しておりまして、これらの知見を踏まえ、原子爆弾被爆者医療分科会において、放射線白内障の診察経験を有する専門家によって、医学的な見地からの審査を行っていただいているところであります。

吉田(統)委員 山井政務官、ありがとうございました。眼科の専門医も知らないぐらい詳しく御存じで、大変びっくりいたしました。よく御理解いただけているということで、多分、被爆者の方々は非常に心強く思われると思います。

 続いて、昨年の臨時国会で、十二月一日、原爆症救済法が成立いたしました。これによって、新たに設立される第三者機関の基金に政府が三億円を補助して、基金は原爆症で敗訴した原告に分配され、救済に充てられることになりました。

 しかしながら、これは本当に彼らの望みなんですが、彼らの本当の希望というのは、原爆症に認定していただくことなんです。民主党はマニフェストにも、「高齢化している被爆者を早急に救済するため、」「新しい原爆症認定制度を創設する。」と明記していますし、長妻大臣も昨年十二月一日、年内か年明けに被爆者側との定期協議を始めるとおっしゃいました。これは、一回目はもう既に行われていると伺っています。

 また、国が裁判において敗訴を続けていた最近の原爆症訴訟における判決というのは、国の認定基準が司法判断より狭いという現状を如実にあらわしているものだと私は考えますが、これらを受けて、原爆症認定基準を見直す意向についてお聞かせ願えませんでしょうか。

山井大臣政務官 吉田委員にお答え申し上げます。

 今御指摘のように、最近の判決において、国の主張が一部認められていないことは承知しております。

 ただ、司法判断は個別の事情に基づく救済を旨としておりまして、原爆症認定に係る判決相互間でも判断が分かれているものであり、個別の司法判断を一般化することはできません。

 また、原爆症認定に係る現行の審査の方針は、一昨年三月の新方針の策定、昨年六月の改定により、被爆者援護法に基づき、科学的に許容できる限度まで疾病等の範囲を拡大したところでありまして、法律改正なしにさらなる改定はできないと考えております。

 こうした認識のもと、訴訟継続による解決や現行法のもとで審査の方法の見直しは不可能との認識に立ち、昨年八月に関係者間で集団訴訟の終結を図る確認書に署名をし、さらに、この確認書を受けて、昨年十二月に成立した原告に係る問題解決のための基金法の附則においても、政府は原爆症認定制度のあり方について検討し、必要な措置を講ずる旨規定をされております。

 今後、このような趣旨を踏まえ、法律改正による原爆症認定制度の見直しに向けて国民的な理解が得られるよう、幅広い観点から総合的に検討してまいりたいと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 先ほども述べましたが、被爆者の年齢というのは、今こうしている間にも高齢化しております。私はきょう大変よくわかりましたし、これを聞いていた被爆者の方々もよく御理解いただけたと思いますが、そういう状況を御理解いただいていない国民の方々の中には、厚生労働省は被爆者が死ぬのを待っているのかとか、そういう誤解があるようにも思います。そういうそしりを受けないように、被爆者の方々が、積年の思いを遂げ、日本に生まれて本当によかったと思えるようなしっかりした対応をしてくださるようにお願いいたします。

 最後にその御決意をお聞かせ願って、私の質問を終わりたいと思います。

山井大臣政務官 本当に、原爆症の被災者の方というのは、日本の中でも最も悲惨な思いをされた方々であります。そういう意味では、本当に、生きている間に補償、救済がなされなければ意味がないと思いますので、今の吉田委員の御指摘をしっかり重く受けとめて、長妻大臣を先頭に取り組んでまいりたいと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございました。これで終わらせていただきます。

田中委員長 次に、永岡桂子君。

永岡委員 自由民主党の永岡桂子でございます。おはようございます。どうぞきょうはよろしくお願いいたします。

 本日審議されます放射線障害防止法の参考のために、先日、文科委員会で視察を行いました。原子力科学研究所におきましては、J―PARC、ニュートリノ施設、そして物質・生命科学実験施設、お昼からは、もう既に原子炉等規制法に基づきまして実施されておりますJRR3クリアランスの現場、また、放射性廃棄物の保管現場などを視察させていただきました。核融合研究所におきましては、この法律ができたら運用になるわけですけれども、これから廃棄しますJT60の視察もさせていただきまして、大変有意義に過ごさせていただきました。

 大臣も水曜日には同じように施設をめぐったということでございますので、同じ認識での質問をさせていただくことを大変ありがたいと思っております。

 質問に入る前に、実はちょっとこれを見ていただきたいんです。これは、文部科学省と資源エネルギー庁共同で、エネルギーについての副読本、これがことしから使用されるということでございます。小学生用と中学生用があります。我が国は本当に、エネルギー資源の九四%、ほとんどを輸入しておりますし、化石燃料ばかりに頼れないという現実を直視して原子力についての理解を深めるためにも、大変有意義な副読本であると思っております。

 私が何よりうれしいのは、この副読本の原点が茨城だということなんですね。茨城県は以前から、小学生用、中学生用、そして高校生用と、子供の理解度によりまして、独自でつくった副読本なんですけれども、副読本が使われております。日本で初めて原子力の火がともったのが茨城県でございますので、このことは、茨城県民にとりましても大変誇りとするところなんです。

 しかしながら、日本というのは世界で唯一の被爆国でもありますし、国民の間には原子力についてアレルギー反応というのがありますよね。それを払拭するためにはやはり教育から大事ということで、茨城県は独自で原子力の副読本をつくっておりました。これを参考にしてできたのがこちらにあるものなわけですね。全国版の文科省の副読本でして、子供たちも原子力についての理解を深めてもらいたいと思っております。

 四年前に私が初当選したときにこの茨城県の副読本を文科省の方に御紹介いたしまして、それが今年度から実を結んで全国的に使われるようになったのかなと思っておりまして、私も大変うれしく感じているところです。

 大臣、ぜひこの副読本、各自治体に使っていただけるように十分な御指導をしていただきたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。

川端国務大臣 ありがとうございます。

 先ほども議論ありましたけれども、まさに原子の火がともった茨城県、御地元の皆さんの本当に御努力と御協力と関係者の技術開発を含めて、日本の原子力の推進に先頭を立っていただいた功績は大変大きなものがあると思います。

 同時に、その中で、残念ながら先ほどのジェー・シー・オーのトラブルが議論にありましたけれども、情報公開と安全性の徹底という部分で、やはり国民への不安を招いた事象があったことも事実であります。

 そういう意味で、引き続き、透明性と安全性を確保するという大前提をしっかり守る中で、原子力の平和利用のすばらしさというか大切さというのをしっかり子供たちの段階から理解してほしいという先生のいろいろな御指導もいただきながら、この春からこれができることになったのは、我々も大変うれしく思っておりますし、報道でもそういうことの基調で報道されたこともいいことだと思っていますが、全国の小中学校、教育委員会に配付をいたしました。

 そして、より学校現場からの意見を踏まえて、継続的に当然ながら改善も加えてまいりたいというふうに思いますが、副読本をうまく活用するための先生のセミナーを実施する、それから、これにかかわる副教材を、もう少し広げたものというのも工夫が要るのではないかということも含めて、せっかくできたものですから、学校現場でより活用していただけるように進めてまいりたいと思いますので、また御示唆をいただきたいと思います。

 ありがとうございます。

永岡委員 どうもありがとうございます。

 そのとおりだと思いました。ちょっと見ましても、小学生の副読本、大変難しくなっておりますので、やはり改善、改善ということで手を加えながら、子供たちにも原子力、またエネルギーの理解を深めていっていただきたいと思います。

 それでは、質問に移らせていただきます。

 原子炉等規制法のクリアランス制度につきましては、昭和五十九年八月に原子力委員会が、放射性廃棄物として扱う必要のないものの区分をする概念が提案されました。その後、原子力委員会などでクリアランスに関する検討が続けられました。原子力施設から発生いたします放射性廃棄物については、平成十七年五月、原子炉等規制法が改正されまして、クリアランス制度が導入されております。ただいま審議しております放射線防止法、クリアランス制度の導入につきましては、平成十六年から検討が開始されたと聞いております。平成十八年には中間報告、平成二十一年七月には制度設計の基本方針、そして、ことし平成二十二年の一月には第二次の中間報告が取りまとめられまして、これらの内容に沿ったものになっていると思っております。

 中間報告の中では、最も重要な、クリアランスレベル以下であることの測定方法、評価単位などやクリアランスレベルの算出につきましては、今後の検討課題、検討事項となっております。クリアランス制度を適用するということになりますと、やはり放射能の濃度についての確認ということが絶対的要件でありますので、そのためには、放射能濃度の測定、評価の方法について大臣の認可を受けなければならないわけですね。最も根幹をなす事項なわけでございます。

 この一月の中間報告では今後の検討課題となっておりますが、現在はどのようになっているのでしょうか。教えてください。

中川副大臣 永岡委員には、地元で御努力をいただいて、先ほど御指摘のあったような参考資料を全国に持ってきていただいたということ、改めて私からも敬意を表したいというふうに思います。

 御指摘のありました放射線安全規制検討会第二次報告でありますが、これに基づいて、今、鋭意それぞれの作業をしております。

 中身につきましては、先ほどお話しのありましたように、現実的と考えられるパラメーターを用いた放射性同位元素ごとのクリアランスレベルの算出結果、及び、政省令、告示等を定めるための今後の検討事項、これを取りまとめつつあるということでありますし、それから、今後の検討事項として挙げられております、クリアランスレベルの算出に用いたパラメーター等の妥当性、例えば、被曝計算に用いる飲食物の摂取量などですね、こうしたものの妥当性、そして二番目には、放射化物としての規制を必要としない放射線発生装置の種類の特定、それから三番目には、焼却灰等のクリアランスの確認方法、こういうことについては、引き続き、放射線安全規制検討会において専門家の検討を進めているというところであります。

 こうした結果を踏まえて、クリアランスレベルを定める告示であるとか、あるいは、規制の対象外とする放射線発生装置の出力等を定める運用基準を策定していくということにしております。

永岡委員 ありがとうございます。

 今審議しているこの法案が成立してから二年以内にこのクリアランス制度というのが実行されるわけですけれども、その間にきちんとその精査がされるということでよろしゅうございますでしょうか。

中川副大臣 そのとおりでございます。

永岡委員 ありがとうございます。

 それでは、次に移ります。

 原子炉等規制法では、クリアランス制度の対象となるものは、金属、ガラス、コンクリートになっています。対象物の中には可燃物が入っておりません。今回のRI法では、可燃物を焼却した灰もクリアランス制度の対象になっております。

 経済産業省にお伺いいたします。原子炉等規制法では、なぜ対象物が金属、ガラス、コンクリートだけなのでしょうか。

高橋大臣政務官 原子炉等規制法のクリアランス制度の導入に当たりましては、原子力安全委員会が示した基本的な考え方に基づいてやっております。

 まず、原子炉施設の解体に伴って大量に発生する、かつ再生利用が可能、そのような金属物を対象としておりまして、このため現時点では、可燃物は再利用もしませんので、対象とはなっておりません。

 今後、可燃物が大量に発生するなど、可燃物やその焼却灰も対象とする必要が出てくるということになれば、適切な評価を行った上で、対象に含めていくことも検討したいというふうに考えております。

 ちなみに、諸外国を見ましても、我が国と同様、金属などを対象にしている例が多いというふうに聞いております。

永岡委員 ありがとうございました。

 それでは、対象物の範囲の違いについてまたお聞きしたいんですけれども、今回導入されますRI法に基づく制度は、判断方法、クリアランスレベルなど、原子炉等規制法と同じ考え、方法なのでしょうか。この法律では、可燃物も今お話にありましたように対象となっております。原子炉等規制法とどこが違うのかなと実は考えております。安全面からは問題はないのでしょうか。お聞きいたします。

中川副大臣 放射線障害防止法での、いわゆる導入予定のクリアランスの制度そのものですね。測定あるいは評価方法の認可基準や、測定・評価結果の確認の方法、こういうものについては、原子炉等規制法におけるクリアランス制度の考え方を参考にして、大体そのレベルで決めていくということになっています。

 先ほどお話しのありましたように、RI法に基づく対象物は、例えば、日本アイソトープ協会が保管している放射性廃棄物、ドラム缶で十一万本あるわけですが、このうちの七割が実は可燃物であります。そういう意味から、今回の対象物のその可燃物をいわゆる燃焼して焼却して、それを廃棄物としてこの基準に基づいてクリアランスをしていくという手法を加えているということでありまして、そこのところが対象物として加わったということであります。

永岡委員 それで、安全面の方では問題はありませんかというのも申し上げましたので、よろしくお願いいたします。

中川副大臣 安全面については、同じ規定でやっていくわけでありますから問題はありませんし、また、測定・評価方法の認可基準について、対象核種あるいは測定条件、放射能濃度の計算方法などについて、いわゆる専門家による検討会における検討を経て文部科学省が省令で定める、このプロセスも同じ形でやっております。

 また、認可された方法に従って測定、評価されているが、測定された結果がクリアランスの濃度基準以下であるかについて、これも、国または登録濃度確認機関が現地におけるサンプリングを含めた確認を行うということにしておりまして、ここについても、ダブルチェックでやっておりますので問題はないということであります。

永岡委員 どうもありがとうございます。

 この方法で新しく導入しますクリアランス制度の適用となったものは、放射線障害防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律その他の政令で定める法令の適用については、放射性汚染物ではないものとして扱うものとするということになっております。大変難しいですね。

 一般的には、クリアランス制度の適用になったということは、自然界の放射能レベルに比較して、それよりも十分小さくて、健康への影響が無視できるものであるということですから、危険性はないということになるわけですね。けれども、一般廃棄物と全く同じ扱いということでは、クリアランス制度の適用になった廃棄物が、普通の国民の方々にしますと、それが知れますと、どこにあるのか、ひょっとしたら身近にあるのかもしれない、そういうふうに国民の方は感じるんじゃないかと思うんです。

 改正法の四十八条の二におきまして、環境大臣との関係について規定してあります。大臣同士が連絡を密にして協力体制を万全なものとして、国民が安心できる対応をしていただきたい、そういうふうに思っているんですけれども、具体的には、一般産業廃棄物となった焼却灰など可燃物の取り扱いはどのようになるのでしょうか。教えてください。

中川副大臣 御指摘のように、クリアランスした結果というのは、低レベルの廃棄物と、それから、いわゆる一般廃棄物に分けて処理をしていくということになるわけです。

 そのうち御指摘のところが、一般廃棄物として分類されたものを処理をしていくというところに地域住民あるいはその周辺の国民の理解が必要ではないか、その努力をする必要があるということ、その御指摘のとおりだというふうに思います。

 それで、そこの部分を環境省が担当していくということでありますが、私たちも最大限の協力をしていく必要があるというふうに思っています。

 一つは、地方公共団体や廃棄物処理業者に対する制度の周知、これを進めていくということで、しっかりしたクリアランスレベル、これが大丈夫なんだということを周知をしていくということ。それからもう一つは、クリアランスを行う事業者に対して、産廃、廃棄物処理者に十分な説明をするようにということですね。これを要請をしていくということで対応をしていきたいというふうに思います。

 いずれにしても、環境省との協力というのが前提になっていくと思っておりますので、頑張っていきたいと思います。

永岡委員 ありがとうございます。

 それでは、環境省の大谷政務官、同じ質問ですけれども、よろしくお願いいたします。

大谷大臣政務官 基本的には中川副大臣と同じような回答になるんですが、不安を与えないようにしなければいけないということは、正しい知識をしっかりとみんなで共有をするということだというふうに思っております。

 これから、多分、ミリシーベルトによって一定の基準をつくるんだというふうに思いますが、MRIを受けたら六・九ミリシーベルトを人間が受ける。私、きのうレントゲンを撮りましたが、レントゲンを撮ると〇・六ミリシーベルトを受ける。それよりかもっともっと低いものなんだというような工夫をして、地方自治体それから事業者の皆さん方と文部科学省、連携をしながらつくっていく。それからもう一つは、最終処分をされるごみの量を減らしていく工夫、努力というものを考えていかなければならない。そして何よりも、クリアランス物に関しては、トレーサビリティーでそのごみがどこに行ってどのように処理されているのかというのをしっかりと透明化していく。

 こんな三つのやり方で無用な不安が発生しないように取り組んでいきたいというふうに考えておりますので、ぜひとも先生の御知恵も経験も出していただいてと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

永岡委員 ありがとうございます。

 既に原子炉等規制法では、それぞれ、廃棄されたものがクリアランス制度にのっとりましてトレーサビリティーもきちんとどこにあるのかというのがわかっているわけですけれども、今回は灰も含まれますので、これは風が吹けば散ってしまう、そういうレベルのものなので、非常に安全であるというのは、ここにいらっしゃる先生方はみんなわかっておりますけれども、それが国民全体に理解をされるというのは非常に困難なことなはずです。

 ぜひ、文科省も環境省もお互いに手を組んで、きちんとした広報また理解を充実させることをお願いしたいと思います。

 それでは、次に移ります。

 クリアランス制度の導入に当たりましては、今申し上げましたように、国民の安心、安全を確保、担保する根幹のもと、これがやはり、放射能の濃度の測定また評価の方法にあると思います。これは、大臣の認可とそれによる濃度の確認であるわけですよね。それで、クリアランス制度の適用となるためには、この二つをクリアしなければならないということになっております。

 その一つであります濃度の確認等は、大臣または大臣の登録を受けた者いずれでもいいことになっております。濃度の確認の作業を行い、それによって処分が適正であるかどうか決まるわけですから、最も重要な作業であるわけです。したがって、知見、能力、体制等、盤石な能力を有する者でなければならないと思います。

 文部科学大臣の登録を受けた者、つまり、登録されました濃度確認機関になるためにはどのような要件が必要とお考えでしょうか。

後藤大臣政務官 先生御指摘のとおり、登録をされた確認機関がきちっとした体制であることは言うまでもございません。法第四十一条で登録の要件というものを規定をしております。

 その中で、今先生の御指摘の部分で、どのような要件を満たす必要があるのかということでありますが、この四十一条で認められた要件を満たした知見を有する濃度確認者がまず三名以上体制的にいるということ。二番目に、濃度確認の業務に五年以上従事した経験者がいらっしゃる等、専任の主任濃度確認者、これは、従事した年限と、主にということで主任濃度確認者ということが二番目。三番目に、登録確認機関が利害関係者に支配されているものではない。例えば、許可届け出使用者の子会社等でないことというのが三番目。そして、やはりきちっとした財務内容が要件ということで、債務超過の期間が常態ではないというふうな基準を満たしていることが必須だということになっております。

永岡委員 ということで大変厳しい基準が設けられているわけですけれども、これを、今のところ具体的にどういう機関が、どういう方が登録されるであろうというのはもうおわかりになっていらっしゃいますか。

中川副大臣 今あるところでということになりますと、原子力安全技術センターか、あるいはあと一つ二つ、例えば日本放射線技師会か、その辺が対象になってくる可能性はあります。しかし、これも、これからの展開によってまた民間が参入をしてくるという可能性、それを期待しながらやらせていただきたいと思っています。

永岡委員 そうですね。新しい民間の方々の参入というのも期待したいところでございます。

 では、次に移らせていただきます。

 放射能濃度についての確認等ということで第三十三条の二の条文を新設したわけですけれども、この条文によりますと、「文部科学大臣又は文部科学大臣の登録を受けた者の確認を受けることができる。」と規定されております。受けなければいけないではなく、できるということになっていまして、この制度を利用するかどうかは事業者、使用者の任意であり、自由であります。

 これまでは、放射性廃棄物でも放射能濃度の強いものと弱いものがあるわけですから、いずれのものでも厳重に保管義務が生じていたわけです。でも、今回、この制度の導入によりまして、放射能の濃度の小さいものは、自然界の放射能レベルに比較して本当に十分小さくて、人の健康への影響が無視できるものであるという放射能濃度の確認をすれば、放射性汚染物ではないものとして取り扱うことができるということで、あとは、濃度の強いものだけをきっちりと管理すればいいということになります。この制度は、私は大いに利用すべきだと思っております。

 文部科学省はこの制度を任意としているわけですけれども、任意としたその理由またはそのメリット、何かメリットがあるから任意にしたのだと思っておりますので、お答えいただけますでしょうか。

中川副大臣 この放射性廃棄物の処理処分方法については、安全性が確保されるということを前提にして、事業者が、発生する放射性廃棄物の量やあるいはクリアランスに必要なコスト等を勘案するという部分があるんだと思うんです。その事業者の形態によって、これでメリットが出てくるかどうかということについては変わってくるということもあるということを前提にして、選択できるようにとすることが合理的であろうという判断をいたしました。

 そういう意味で、このクリアランス制度を任意に活用できる制度として設定をしたということであります。

永岡委員 どうもありがとうございます。

 では、次に手数料についてお聞きいたします。

 今回導入いたしますクリアランス制度の適用を受けるためには、大臣または大臣の登録を受けた者の濃度確認を受けなければなりません。さらにまた、その前提といたしまして、濃度確認を受けようとする者は、放射能濃度の測定及び評価の方法について大臣の認可を受けることが要件になっております。

 第四十九条では、この濃度確認と認可、これが政令の定めるところによって手数料を徴収するということになっておりますが、その手数料の徴収、算定の方法、お値段のぐあいはいかがかとお聞きいたします。

川端国務大臣 お答えいたします。

 クリアランスの測定と評価方法の申請に対する認可手数料は、先ほど来御議論がありました、原子炉等規制法を参考にしつつ政令で定めることになっております。まだ詳細設計までに至っておりませんが、基本的には、この手数料の算定の根拠としては、審査に要する日数、人数、それからその人たちの人件費等をもとに、いわゆる実費でこれぐらい要るというのをベースにしたいというふうに思っております。

 また、クリアランス確認は、仕組みとしては国または登録機関が行うということになっておりますが、国が行う場合の手数料も政令で定めるということでありますので、これも同じように、確認に要する人と日数等を判断して算定するということにしておりますが、新たに別途登録機関が参入してくることも当然想定されていますので、これも見ながら適切に判断する。

 そして、登録機関の手数料は、これは登録機関が国の料金設定を見ながらみずからが決めるということになるわけですけれども、仕組みとしては、登録機関は、料金その他の事項について定めた業務規程について文部科学大臣の認可を受けるということで、料金も認可の対象になっておりますので、認可手続を通して料金が適切になるようには見てまいりたいというふうに思っております。

永岡委員 もう終わってしまったんですが、済みません、最後。

 結局、このクリアランス制度が導入されて、今のお話にもございましたけれども、経費によっては従来どおりの保管になってしまうのではないかという懸念があります。このクリアランス制度の導入でごみはつまり減るのでしょうか、それともそのままなのでしょうか。

中川副大臣 一つは、焼却というプロセスが入って、その分は減るかふえるかという話でいくと、大きく減るということになりますが、もう一つは、最終のコスト、これが、以前にも指摘をされたように、大体半分ぐらいにはなっていくだろうというふうなところ、そういうところに一つのメリットがあるということだと思います。

永岡委員 どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、馳浩君。

馳委員 おはようございます。自民党の馳浩です。

 法案に入ります前に、最近報道で、また事業仕分けが始まるようでありますが、私は実は心配しているんですね。今回視察にも参りました日本原研機構、これも研究開発分野の独法ということで事業仕分けの対象には入っておりますが、実際に原研機構が対象になるかどうかはまだ定かではありませんよね。

 この間視察に参りましたときも、理事長の岡崎さんという方は、元科技庁の事務次官として田中眞紀子大臣にもお仕えしたようでありまして、いわゆるガバナンスについても、組織運営について大変物事がわかっていらっしゃって、国内だけではなくて国際的にも大変評価の高い方であります。

 私は事業仕分けを否定しているものではありませんが、ところが報道のされ方等によっては、国がなさなければならない研究開発のリード役、特に基礎研究の推進役といったものは、民間にどうぞやってくださいと言ってもなかなか難しい分野なんですね。したがって、まだこれから始まるわけでありますけれども、どうでしょう、大臣は何となく審判を受ける立場にあるのではありますが、研究開発分野の独法等の事業仕分けについての御意見があれば、最初にまずお聞かせいただきたいと思います。

川端国務大臣 ありがとうございます。基本的な認識は、馳委員と私、共通している認識をしていると思います。

 事業仕分けの観点も、今回の独法に関しても幾つかの観点があると思いますが、一つは、共通して、いわゆるお金の流れが適切であるのか、効率的であるのか、不必要な人がたくさんいないか、あるいは無駄な費用を使っていないかという部分で全体を見ることは大変大事なことだというふうに思っております。

 もう一つの観点としては、独法にもいろいろな種類があるので、それぞれの役割の中で、これは前回の事業仕分けと同じでありますが、民間でできることはもう民営化してやるべきものがあればやったらいい、あるいは地方に任せた方がいいのはやったらいい、逆に、国として要るものは国としてやるべきだろうということの中で議論がされるんだというふうに思っています。

 同時に、刷新会議の中の議論として、別の形で、いわゆる国がかかわる研究というものはどういう形でどういう機能を持ってやるべきかという議論を、一方でしていただいております。

 そういう意味で、国の科学技術の進め方として、今回は我々は、グリーンイノベーション、ライフイノベーションということを柱に、地球環境とそれから命にかかわるものというのを大きな柱にしていますけれども、国としての戦略として、こういう研究テーマを国として、例えば今、山崎さんが宇宙に行かれたけれども、こういうものを重点的にやろうという戦略と、予算をどれだけ確保するのかということと、それをどこが担当するのかということは、科学技術の根幹にかかわる政策、仕組みですので、このことの中で、研究独法というのがそれぞれどういう役割を果たすべきなのかということも、総合科学技術会議の有識者議員の皆さんの御協力を得ながら、今一方で議論をしています。

 そういう意味では、ややもすると、何かばっさばっさと切るのが仕分けというイメージがあるんですが、そうではなくて、これからの特に研究独法に関しては、効率的な、無駄のないお金の使い方に心がけるのは当然のこととしてメスは入れるけれども、本来、国の研究として、例えば原子力も民間でというのは、原子炉を開発して技術移転して民間が商売するのはやっているわけですけれども、根幹の技術研究開発を民間がやることはできませんので、そういう意味では、その根幹だけは間違えない仕組みでしっかりとやっていくことは、私としても当然のことと思っております。

馳委員 私も全く同感でありまして、ここはやはり民主党政権においても、情報の発信において誤りのないようにやっていただきたいなという期待を持っております。枝野さんが頑張っておられることは私も高く評価をいたします。

 ただ、例えば独法の人件費の問題とか、また私も午後ちょっと質問しますが、理研の随意契約の問題とか、指摘せざるを得ないところはそれは指摘をいたしますけれども、本来、こういった原子力を扱う研究の推進については、むしろ、より若手研究者の登用とか、また、世界から人材を日本に呼んできて、よりよい、人類の進展に必要となるような研究をしてもらうとか、まさしく地球の根源とは何ぞやという、分子学というか原子学というんですか、こういったことこそ我が国が世界をリードするという、このところは絶対に譲ってはなりませんし、むしろ、事業仕分けの結果、やはりもっと予算も必要だし人材も必要だし、組織としても役割があるんじゃないか、こういう議論を私は期待するものでありますので、そういう事業仕分けになることを願っております。

 視察に参りましたときに岡崎理事長がおっしゃった一言が私も大変印象に残っておりまして、ようやく処分の時代に入ったと。なるほどな、わかりやすい一言だなと私は思いました。

 原子炉等規制法でクリアランス制度が導入されて、いよいよ、今回の放射線障害防止法の改正でクリアランス制度が導入されるに至って、これは後ほど質問しますが、最終処分も含めて、いよいよ処分をどのように取り扱っていくかということは、間違いなくリスクとベネフィットの関係からいっても必要ですし、マスコミ等に対する広報、国民に対する広報という観点からも必要な問題だと思っておりますので、改めて大臣、副大臣の指導力を発揮していただきたいと御要望申し上げながら、質問に入らせていただきます。

 まず、クリアランス制度の導入についてお伺いをいたします。

 先に質問された先生方とかぶさる部分も多くありますが、そこは御容赦をいただき、御答弁の方、お願いいたします。

 まず、放射線障害防止法で規制されている放射性廃棄物は約二十五万本と言われております。現在の保管状態はどうでしょうか。そして、安全は保たれているのでしょうか。特に、その廃棄物を保管している現場で働く方々の安全がしっかりと守られているのかどうか、このことをまずお伺いしたいと思います。

後藤大臣政務官 二十五万本の保管状況でありますが、先生方も御視察いただいた原子力研究開発機構等に二十四万七千五百三十二本、これは平成二十一年三月三十一日現在でありますが、原子力機構に十二万五千六百十七本、二百リットルドラム缶換算であります。日本アイソトープ協会に十一万一千百四十七本。その他、医療、教育関係の事業者の総体で一万七百六十八本ということになっております。

 その安全の部分の担保でありますが、これも、御議論いただいております放射線防止法に基づいて、保管等を行う廃棄施設には、地崩れや浸水のおそれのない場所に設置をすること、主要構造を耐火または不燃材でつくること、遮へい壁を設けること等を義務づけております。

 そして、放射性廃棄物を保管施設に保管する場合、外部と区分をするということも決まっておりまして、扉やふた等外部に通ずる部分には、かぎ、閉鎖の施設、施錠をできるような器具を設けることというふうなことになっております。

 いずれにしましても、この廃棄施設については、一カ月を超えない期間ごとに放射線の量の測定、記録を行うということを事業者に求めておりますし、あわせて、これ以外にも、施設の定期検査、記録の定期確認を行いながら、安全な放射性廃棄物の保管ということで確保をしております。

 ここで働く方々についても、先ほども吉田議員の部分でお答えもしておりますが、きちっとした器具をつける等の法的基準を満たす中で、総量を上回らない等の確認を随時事業者個人個人でしながら、安全性については働く方々にとっても万全を期してまいりたいというふうに考えております。

馳委員 これは現状、その保管場所には何メートル以内に近寄るなとかあるいは監視カメラを置いてあるとか、あるいは働く人は健康診断を特別にやるとか、そういったことは規定されているんですか。

川端国務大臣 数字まで申し上げることが今できませんが、放射性物質の取り扱いに関しては厳格な法律がございまして、それに基づいてしっかりと管理されています。

 そういう意味で、先生方も御視察に行かれたときにも、多分、代表者の方だけかもしれませんが、バッジをつけて線量をしっかりチェックするというのは、外来者に対してもそこへ立ち入るときはということですので、それぞれの区域がイエローゾーン、レッドゾーン含めて全部区分けされておりますので、これは非常に厳格にやられていると御理解いただいて結構だというふうに思っております。

馳委員 そうですね。我々も参りましたときに、田中委員長が代表して、線量検査の何か体温計みたいなものをつけて入られました。

 したがって、法律によって厳格に保管もされているし、作業をされる方々の健康も守られているということ、これは原点でありますので、これからもしっかり対応をお願いしたいと思います。

 それで、放射性廃棄物を廃棄物として処分すると産業廃棄物の処分コストの約三倍から十倍かかると文科省の資料で拝見いたしましたが、では、二百リッタードラム缶一本当たり幾らぐらいかかっているのでしょうか。

後藤大臣政務官 日本アイソトープ協会による平成二十二年四月一日より適用する価格でありますが、二百リットルドラム缶換算で、可燃物については十三万四千八百二十円、コンクリート、金属は四十八万九千三百円というふうになっております。

馳委員 意外と高いんですね。これが何万本も処分の対象になっているということは、やはり事業者にとっての大きなコストになっているんだなということ、そしてこれは、民間の事業者にすればより大きな負担にもなっているんだなということがよくわかりました。

 それで、新たにクリアランス制度をつくるのでありますが、そもそもその意義とは何でしょうか。また、対象物の測定や評価方法の設定に法的根拠を与えるということでよいのでしょうか。そして、その評価や測定方法は幾つもあるのでしょうか。お伺いいたします。

中川副大臣 放射能の影響が無視できるような極めて低レベルの放射性廃棄物については、放射線障害の防止上特段の措置は不要であることから、例えば産業廃棄物として処分したり、あるいは再利用したりすることが合理的であり、処分コストの低減、それから合理的な研究施設等廃棄物の埋設が期待できる点で意義があるというふうなことであります。

 クリアランス対象物の測定それから評価方法については、事業者から申請のあった測定・評価方法について国が認可基準に基づいて審査して、これを認可することとしておるわけでありまして、御指摘の、法的根拠を持つかどうかというのは、これによって法的根拠が持たれる、持つということになります。

 さらに、測定・評価方法については、既に原子炉等規制法において認可実績がある方法、これを基本として、現在、専門家から成る検討会において検討中であります。例えば、日本原子力学会における代表的な方法というのがここで列挙されているわけでありますが、放射化計算法による評価であるとか、あるいは放射線の測定法による評価、この測定法による評価も三つぐらいに分類がされるようでありますが、こういう形で、この中の適当なといいますか一番適した方法でもってクリアランスの実質的な放射能濃度の測定及び評価方法の基準をつくっていくということであります。

馳委員 ということは、三つほど分類する方法があるということですが、三つとも審査の段階で採用されるということですか。そのうちのどれか最適なものを一つだけということでしょうか。

 私は、日本原子力学会として今検討中であるならば、一つにこだわらなくてもいいんじゃないかなという気もするんですよ。なぜかというと、コストの問題もあるし、やはりできるだけ早い審査というものを求められるときもあるでしょうし、これはどういう仕切りになるんでしょうか。

中川副大臣 その点については、汚染の状況から、そのクリアランスしようとする対象物に含まれる核種などを考慮して、ケース・バイ・ケースで測定及び評価方法を決めているということでありますから、これを組み合わせたり、その中の一つを使ったり、その核種に適合した形の方法を選んでいくということであると思います。

馳委員 よくわかりました。

 それで、その法的根拠というのは、現行の原子炉等規制法のクリアランス制度と同様の制度であり、法的根拠となると考えてよろしいのでしょうか。

中川副大臣 放射線障害防止法に導入予定のクリアランス、この制度については、原子炉等規制法とほぼ同様の制度となっております。

 そして、クリアランス対象物の測定・評価方法が認可された場合には、当該方法については御指摘の法的根拠が与えられたものということになります。

馳委員 それから、クリアランス制度導入によって、埋設をする放射性廃棄物の量の見込みに影響を与えることに当然なりますが、現在の処分計画や処分場の立地活動はどうなっているのでしょうか。

 クリアランス制度によって見込みに影響を与えるわけですから、埋設する量は半分ぐらいに減ると先ほどからも答弁がありますから、余裕を与えることになります。ここは恐らくスペースのあきが出てくるわけでありますから、こういったところにおいて今後の処分のあり方について余裕が出てくるというふうに考えていいんだろうと思うんですが、私の考えでよろしいでしょうか。

中川副大臣 これまでの議論で出ておりましたように、放射線障害防止法で規制される放射性廃棄物は、各事業所で合計二十五万本ということであります。今後も、原子力の利用に伴って年間六千本のペースで発生するものというふうに見込まれております。この研究機関あるいは医療機関等から発生する低レベル放射性廃棄物、これについて確実に処分事業を実施していくという必要があります。

 そして、この二十五万本の廃棄物は、圧縮したりあるいは焼却等で埋設処分が可能な形態、いわゆる廃棄体に加工した上で処分されるということになりますので、実際の処分時には、物量としては大幅に減っていくということが期待をされます。

 このため、平成二十年の通常国会において独立行政法人日本原子力研究開発機構法が改正をされまして、原子力機構が研究施設等廃棄物の処分の実施主体になっていくということにされました。

 同法に基づいて、昨年の十一月には、原子力機構が今後国内で六十年度までに発生が見込まれる研究施設等廃棄物として処分可能な廃棄体約六十万本規模の処分場を建設するということになっています。そういう内容のいわゆる実施計画を策定したところであります。

 現在は、この実施計画に従って、原子力機構が埋設施設の設備仕様、レイアウト等の概念設計を実施しているところでありまして、その結果を踏まえて、公平そして公正な処分場立地を行う、そのための考え方を策定していくということでありまして、これからが一番難しい、そして一番大事なところに入っていくということになります。

馳委員 よくわかりました。

 報道によりますが、地球温暖化対策で二五%マイナスという目標を達成するために、我が国は原子力発電所を十三基ほど増設しなきゃいけないのじゃないか、こういうふうな方針が出ておる中で、やはり岡崎理事長がおっしゃったように、処分の時代ですよ。まさしく今回、このクリアランス制度をしっかりと法的根拠のもとにとっていくということは、必要な問題だと私は思いますよ。

 昔からよく言われるとおり、マンションをつくってトイレをつくらないような、何かそういうふうな我が国の原子力政策じゃないかという指摘を受けてまいりましたので、大いに、中川副大臣の今の御答弁のように、今後やはり計画的な廃棄物の処理のあり方といったことをより一層進めていただきたいと思います。

 そこで、クリアランスレベルの〇・〇一ミリシーベルトの根拠は何でしょうか。国際的に認められた基準でしょうか。資料によりますと、一般公衆の線量限度の年間一ミリシーベルトではだめなのでしょうか。お伺いします。

後藤大臣政務官 まず、先生御指摘のとおり、このクリアランスレベルの〇・〇一ミリシーベルトというものは、国際放射線防護委員会、ICRPと略称するようでありますが、年間〇・〇一ミリシーベルトを示しております。

 この基準は、被曝した個人にとって無視できるリスクに相当する線量が年間〇・一ミリシーベルトのオーダーであることを踏まえ、さらにこれから、現在と将来において規制を外された複数の線源から被曝する可能性も考慮して〇・一ミリシーベルトの十分の一の値としたということでございます。

 また、国際原子力機関、IAEAの安全基準においても、クリアランスレベルに係る基準として、個人に対する実効線量が〇・〇一ミリシーベルトとしていることから、この基準は国際的にも認められている基準であるというふうに思っています。

 いずれにしましても、これらの国際基準も踏まえて、放射線審議会において、クリアランスに係る個人線量の基準については年間〇・〇一ミリシーベルトを適用することが望ましいということが結論でございます。

馳委員 国際的に認められたレベルの〇・〇一ミリシーベルト、これをクリアランスの基準にするということでいいんですね。

 そうすると、これは私、急に質問するので泉さんでも藤木さんでもいいんですが、国際社会でいろいろな国が放射線障害防止法を持っているのかどうか、私はよくわからないんですよ。つまり、今、私は日本国内の話をこうやって法律に基づいてやっているんですが、国際的に〇・〇一ミリシーベルトという基準でクリアランス制度を導入しているんでしょうか。

 これは我が国だけがやりましたと言っても、それはもちろんそれでいいんですけれども、国際的にはどうなっているんでしょうか。これは、いわゆる放射性廃棄物の処理の問題は国際的なレベルの問題としても考えなければならず、特に我が国はJ―PARCなども通じて国際社会をリードしようとしている立場にもあるわけですから、ちょっと私は理解を深めておきたいんですが、国際社会の中でこういう基準をしてクリアランス制度をとっている国というのはどの程度あるものなのでしょうか。

泉政府参考人 海外におきましてクリアランス制度を導入している国は、ドイツ、イギリス、スペイン等がございまして、これらの国は、先ほど来御議論になってございます〇・〇一ミリシーベルトを基準として採用しているか、あるいは採用しつつあるということで動いているところでございます。

馳委員 泉さん、私、今ちょっとしゃべりますから、資料を見ながらちょっと考えておいてくださいね。なぜかって、中国もロシアもアメリカもフランスも入っていないんですか。というか、このクリアランス制度をとっていないんですか。

 これは、もしこういう法律に基づいたクリアランス制度をつくっていないとするならば、もう一回言いますね、中国やロシアやアメリカやフランスや、どうでしょう、原子力政策を推進している国々は、むしろ我が国よりももっと率先してとらなければいけないんじゃないかと思うんですが、どういう状況になっているんでしょうか。

中川副大臣 手元にはアメリカのクリアランス制度があるんですが、米国は、我が国と同じような様式のクリアランス制度は導入はしていないんですが……(馳委員「いないの」と呼ぶ)はい。

 実は、以前より、規制された区域内で使用したものについて、規制指針、これがRG一・八六というマークがついているんですけれども、この規制指針に基づいて規制当局がケース・バイ・ケースで判断することによって対応をしているということ。それから、我が国と同様の考え方、年間〇・〇一ミリシーベルト以下によるクリアランス制度の導入がこれまで検討されてきたんですが、二〇〇五年に、米国原子力規制委員会、NRCは導入を見送った。その導入を見送った理由というのが、二〇〇五年に導入を予定された手法では複雑であって、従来どおりのケース・バイ・ケースによる対応で十分満足な対応ができるということ、だから現在やっている対応でいいということ。それから、原子炉の解体等が当初の予定よりもおくれているということもあって、まだこれからのそういう意味では課題でもあるということであります。

 それから次に、フランスでありますが、フランスにおいては、これもやはり我が国で導入するクリアランス制度と全く同じ制度ということではない。しかし、フランスでは、その汚染の可能性によってゾーニングをやはり設定しておりまして、その区域ごとに一定の条件、例えば一定の厚さを取り除くということなどを設定して、放射性の廃棄物と通常の廃棄物とを区分して管理がなされているということであります。

 その辺の情報が、今、手元にはあります。

馳委員 中国とロシアはどうなっておりますか。泉さん、わかればちょっと教えてください。

泉政府参考人 中国、ロシアにおきましては、このようなクリアランス制度というものは導入されていないというふうに承知しております。

 なお、先ほど私のお答えの中で、諸外国でクリアランス制度を導入している国にイギリスを挙げましたけれども、イギリスの基準は、IAEAやICRPの〇・〇一ミリシーベルトとはちょっと異なった基準になっております。ちょっと御訂正申し上げたいと思います。

馳委員 これは、私、ちょっと大きい問題じゃないかなと思うんですよ。国際的に定められた基準が〇・〇一ミリシーベルト。我が国も、放射線障害防止法、原子炉等規制法によって、法的根拠に基づいて処分の基準を決めて、処分の方針、計画を今後立てていきますよ、それに必要な予算も使いますよというのは、これは国民性なんですかね。

 いや、私があえて言うのは、アメリカだと膨大な土地があるから、フランスもそうでしょうが、ゾーニングをして、埋設をして置いておけばいいやというだけの判断なのか。むしろ、今後は、放射性廃棄物の処理の方針ということを考えると、国際社会はもうちょっと足並みをそろえていかないと、まさしく地球温暖化対策で原子力発電所とかはつくっていかなきゃいけない、日本もこれを海外に日本の高い技術レベルを売り込んでいこうとしているときに、廃棄物の処理の話というのは必ずセットになるはずなんですよね。

 こういった分野で我が国も法律をつくって、廃棄物の処理を適正、適法にやっていきますという以上、このことはもうちょっと強く主張していってもよいのではないかと思うんですがね。中川副大臣、どう思われますか。

中川副大臣 確かに、どこの国でも、これから歴史が重ねられれば重ねられるほど、こうした特に発電所等々を含めた大規模施設の廃棄ということも課題になってくるわけですから、今の対応だけでいけるということではないだろうということは想像にかたくないというふうに思います。

 そういう意味で、おっしゃるように、日本は非常にかたい数値を基準にしまして、その上でこうしたクリアランスの制度をつくったということでありますので、ここのところを海外に対しても強調しながら、同じような基準レベルで国際的に協力していこうじゃないかという主張、これは十分にすべきことだというふうに思っています。

馳委員 次の質問に移ります。

 国による測定・評価方法は、どこで決めて、だれが最終的に認可することになりますか。

川端国務大臣 お答えする前に、今の前段の議論は大変大事な部分でありまして、日本は世界で一番厳しいということはもう間違いございません。

 そして、例えば放射性物質の、これはクリアランスするかどうかは別にして、その前、クリアランスをしなかったら、要するに廃棄物としてそのままあるんですけれども、これの管理の基準を含めても、廃棄物だけではなくて取り扱いの基準も、日本ほど厳格な国はほかにはないと思います。

 そういう意味では、平和利用の最先端を走る日本がむしろ国際基準をつくって、それをしっかり広めていくということが日本の役割ではないかというふうに思っております。昔、某国が原子力潜水艦の廃炉を海に捨てたという問題がありました。そういう感覚と、日本では考えられない部分の乖離があることも現実にありますので、それは大変大事な指摘だというふうに思っております。

 そして、今おっしゃいましたことで、先ほど中川副大臣から、専門家による検討委員会において測定・評価方法の認可基準を今議論していると申しました。それは一応、原子炉等規制法の同様の規定を参考にしながら、今専門家の中で核種ごとにどういう評価方法をどうするのかという基準を議論していただいておりますが、これは最終的には、前もしょっちゅう出てまいりましたが、文部科学省が省令で定めるということになっております。

 その部分で、測定・評価方法の認可基準を国が省令で決める、それに基づいて業者は、自分がこういう物質を取り扱うから、この方法でやりたいからということを認可申請する、それを国が認めるか認めないかという判断をして、そしてチェックしていく、こういう仕組みでございます。

馳委員 省令と言われたら私も黙っていられないんです。

 つまり、白紙委任はだめよ、基本的事項は決めて、やはり委員会でちゃんと言ってくださいよということなんですよ。いかがでしょうか。

川端国務大臣 それで、先ほど中川副大臣から三つほどの方法ということを申しましたけれども、基本は、この基準、評価の方法というのは、やはり原子炉の規制法で同じ仕組みがありますので、基本的にはこれを見習ってやりたい。そして、RIの方での、原子炉と違って核種が相当多岐にもわたりますので、その部分は専門的により詳細に詰めた形で決めたいというふうに思っておりますので、概略の部分は大体もう既にわかっているというふうに思っております。

馳委員 そのとおりですね。

 そこで次に、国または登録機関による測定・評価結果の確認はどこでだれがするのでしょうか。虚偽の報告書が出た場合はどうするのでしょうか。その結果、不法投棄された場合にはどうするのでしょうか。

 虚偽報告は、国民に対する背信行為であり、罰金だけで済ませるのではなく懲役刑に相当すると思います。こういった厳格な手続が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

川端国務大臣 認識はおっしゃるとおりだというふうに思っております。

 そういう意味で、先ほど来ありましたように、国が認可した方法で事業者が行ったクリアランス対象物の評価、測定の結果の確認は、国または登録機関がその業者業者の現場に赴いて確認をするということで、万が一にも虚偽の申請がなされないように現地確認をするということで万全を期したいという仕組みにしております。

 それでもまだ、万一、虚偽でやった、虚偽の申請を行い現実にクリアランス対象外のものがクリアランス対象物として世の中に流れたということに対しては、廃棄した放射性廃棄物をまず回収しなさいという命令を法律に基づいて出すということと同時に、告発により違反者の処罰、これは三百万円以下の罰金等の対応を行うということで、まずは回収しなさいという命令を出し、罰金も科すように告発する。

 しかし、さらに回収しない、命令に従わないという場合には、これは極めて悪質であるということで、さらに百万円以下の罰金と一年以下の懲役、そしてそれは両方を科すこともできるというふうにして、厳罰で臨むということにして抑止力を働かせるようにしております。

馳委員 次に、クリアランス制度による経費負担は事業者の新たな負担となるのでしょうか。この経費負担には国の助成制度はあるのでしょうか。

 また、クリアランス制度の導入で、再利用や適正処分する廃棄物の量はどのくらいと想定しているのでしょうか。それによって、事業者のコストはどの程度の負担軽減をできるという見積もりをしておられますか。

 恩恵を受ける研究機関や医療機関や産業界とは、具体的にどういうような機関であり、組織でしょうか。そういう機関や組織に対する事前の十分な広報体制が必要だと思っておりますので、お答えをお願いします。

中川副大臣 このクリアランス制度を適用した場合のコストについて、今の時点で正確に算定をしていくというのはなかなか難しい部分もあるんですが、このクリアランス対象物の種類等にも依存をしていくということでもありますので、その辺を勘案しながら一定の前提を置いて試算をしますと、クリアランス制度を導入した場合の処分費用は、放射性廃棄物として処分した場合と比較をしまして約三分の一から十分の一となる見込みであります。

 クリアランス制度の導入によって、放射性廃棄物を発生させる多くの事業者がこれで恩恵を受けるということになるわけですが、主な事業者としては、放射性廃棄物を多く保管している先ほど出ました日本原子力研究開発機構、それから高エネルギーの加速器を有する高エネルギー加速器研究機構、そして理化学研究所、放射性同位元素を用いた研究を実施している大学等が想定されます。

 また、医療分野では、非密封放射性同位元素や放射線発生装置を使用する病院等があります。

 そしてまた、産業分野では、トレーサーの利用、これは流量測定とか合金腐食の解析などに使うものなんですが、そういうトレーサーの利用で非密封放射性同位元素を使用している事業者が想定をされます。

 以上のように、多くの事業者が恩恵を受けるため、クリアランス制度の経費負担についての国の助成制度は設けていかないということにしております。

馳委員 わかりました。

 それで、このクリアランス制度の結果、それでも残る放射性廃棄物の最終処分はどうお考えでしょうか。

中川副大臣 ここについては今、前の議論でも出ましたように、最終的にどこに立地を定めて、どういう形でこれを最終処分していくかということについて、法律によって計画を立てて、それが具体的に立地のできる努力を重ねていくというところでありまして、そこのところが原子力行政全般で一番大切なところになっていくというふうに思っています。

馳委員 引き続き、最終処分に向けての政府としての検討を強く求めるものであります。

 次の質問を最後にして、私はまた午後に質問をさせていただきますが、放射化物への規制についてお伺いします。

 どうして現行のガイドラインでの対応ではだめなのでしょうか。そして、今回の法改正で、どのような放射化物の規制をするのでしょうか。その実効性をどうやって担保いたしますか。

 さらに、法律の規制によって安全を確保するためにも、事業者や一般公衆への広報、周知徹底が必要だと思っています。法の成立後、どうやって国民に対して周知徹底を図るのでしょうか、教えてください。

中川副大臣 これまでは、出力の低い放射線発生装置が多くて、放射化物が発生することは本当にまれで、出力の高い装置を取り扱う事業者そのものが限られていたという事情がありました。なものですから、ガイドラインということであったんですが、近年、例えばBファクトリーとかJT60あるいはJ―PARCなど、放射化物が生じる可能性のある出力の高い放射線発生装置が増加をしてきました。恐らく、これからもそういうことになっていくんだろうと思うんです。

 放射線防護上の安全確保の必要性がこれによって高まってきたということでありまして、現実に、その中のJT60については解体が現実化をしておりまして、Bファクトリーについても次にそれが想定をされるという状況になってきたということ、このことによって、法定化をしてクリアランスをはっきりさせていくということが必要になったということであります。

 もう一つは、ガイドラインによる対応には、違反した者に対して罰則をかけるということもできなかったということでありますので、これについても法的拘束力をかけるということによってそれが可能になって、このクリアランス制度の導入とあわせて法規制の対象とすることが望ましいという判断をいたしました。(馳委員「周知徹底」と呼ぶ)

 そこは一番大切なところだと思っておりまして、関係事業者、それから、廃棄物を産業廃棄物として最終処理していく事業者に対しての、いわゆる事業者間の周知徹底と同時に、一般国民に対しても、原子力行政全般にわたって、日本の将来にとって必要なものなんだと。その中で、最終処分ということについて同時に協力をしていただけるような、そういうことを図っていく広報活動といいますか、そんなものをさらに工夫していく必要があるというふうに思っております。

馳委員 済みません。質問の区切りになりますので、一たんここで終わって、私はまた午後質問させていただき、公明党の富田委員に譲ります。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 まず、法案について何点かお伺いしたいと思います。

 これまでの委員からもほぼ質問は出尽くした感はあるんですが、先ほど来の審議を聞いていましても、ちょっと、あれっと思うような部分もありました。

 クリアランス制度を今回なぜ導入するんだということで、事前に事務方の方から何度も説明を受けましたが、審議で明らかになったように、今、放射性廃棄物が二百リットルドラム缶換算で二十五万本ある。先ほど中川副大臣は、毎年六千本ぐらいふえていくんだというお話をされていましたが、事前に受けた説明では、六千三百本あたり出てくるというような御説明もありました。そのうち五割は自然放射線の量と比べて十分に低い、〇・〇一ミリシーベルトだというようなお話もありました。

 また、処分コストのお話も、これまでの委員の質問の中で何度か出てきました。処分コストの話を聞いていて、非常におかしいなと思うんですが、これはまだ処分されていないんですよね。処分されていないのに、その処分コストの比較をしているというのはどういうことなんだろうと思って、事前に説明を受けました。

 そうしましたら、調査室の皆さんがつくっていただいた資料の中にも数字がありましたけれども、現在、日本アイソトープ協会の方で、集荷、処理、処分を前提として引き取り価格を設定している。その価格が、五十リットルのドラム缶一本当たりで、可燃物は三万三千七百五円、コンクリート等は十二万二千三百二十五円だと。これを二百リットルドラム缶換算にすると、先ほど後藤政務官が言われた数字に多分なってくるんだろうと。

 まだ処分はしていないんですよね。処分は、最終的には独立行政法人原子力研究開発機構が担当して、これから処分地も選定した上で埋設処分をするようになるんだと思うんですが、処分地の決定によっては、アイソトープ協会が設定している金額も変わってくる可能性があるという御説明もいただきました。

 では、産業廃棄物として処理したら幾らかかるんだというふうに伺いましたら、二百リットルドラム缶二十本当たりで試算すると約百万だと。これまでのアイソトープ協会の方の換算でいきますと、二百リットルドラム缶二十本で換算すると二百六十万から一千万かかるから、いろいろ事前にいただいた資料で言うように三倍から十倍の負担なので、ここを何とか抑えたい、これから毎年六千三百本出てくることを考えると、こういうことをやっておくのが必要なんだというのはよくわかるんです。

 ずっと質疑を聞いていて、もうそのとおりだなと思うんですが、ただやはり、このクリアランス制度の運用で一番国民の皆さんが心配するのは、基準値を超えた放射性廃棄物が通常の産業廃棄物としてもし流れてしまったらどうするんだというところなんだと思うんですね。

 先ほど大臣の方から、現地できちんと確認するんだ、現地主義なんだというお話があって、もしそれを破った場合には回収命令も出すし、両罰規定で処罰もするんだ、だから万全だというふうに言われるんですが、国民の皆さんから見たら、やはり放射性という名前がもともとついているわけですから、今回のクリアランス制度で本当に大丈夫なのかという御心配がやはりあるんだと思うんですね。

 そのあたりは、文部科学省として、国民の皆さんに、こういうふうにしているから大丈夫ですよというふうに、どのように訴えられますか。

川端国務大臣 お答えいたします。

 コストの話は、確かに御指摘の部分で試算でありまして、それで、実際に今研究段階として、埋設の処分場のことが研究されておりますと同時に、原子炉の方では既に埋設をしているというときのコストを参照するのと、運送も、ごみを運ぶのと放射性物質を運ぶのは全く違いますのでということの大まかな試算でも相当コスト削減できるということと同時に、これをやれば間違いなく量は減るということでいうと、保管の費用と同時に絶対量が減るということは効果としてあるわけですけれども、そのときのクリアランスしたものは一般ごみだから普通のごみだというと、これはいわゆる安全と安心という意味の、物理的に言えば安全ではあるという、〇・〇一ミリシーベルトと言っているんですから非常に安全なんですが、安心という部分ではなかなかそうは簡単にいかない。

 原子炉の廃棄物に関しても、先ほどどこかの御議論にもありましたけれども、基本的には鉄も、再生、再利用するというときも全部場内の鉄として使う、要するに外には出せない。ちょっと例は違いますけれども、人形峠のれんが問題というのがありまして、れんがで再生するというときにもいろいろあります。

 ということで、これはいろいろな機会を通じて、安全ですよということと、これの意義を、事業者だけではなくて、これは一般の皆さんの理解ですので、周知して啓蒙していくということに尽きるんだというふうに思いますと同時に、やはり、ある意味の実績という意味では、現実のクリアランスされたもの、瓦れきとかそういうものがどういうふうに処分されるかは、我々としてもそんなに簡単ではないという認識は持っておりますので、実績を積みながら粘り強くやっていくということに尽きるんだと思っております。

富田委員 今、大臣の方から簡単じゃないというお話がありましたけれども、やはり国民の不安を解消するには、登録機関が今度新しく出てきますけれども、先ほど中川副大臣からも詳しく説明がありましたが、先ほどのお話ですと、どこでも手を挙げられる可能性がある、公募できる、民間が手を挙げてくる可能性があるということですから、この登録機関の選定方法とその機関に対する監督をどうやってやっていくのかというのが不安の解消に一番つながるんだと思うんですね。

 法文の規定を見ますと、要件を満たせば手を挙げられるというふうになっています。また、その登録機関に対して報告徴収したり立入検査したり、いろいろ規定が準備されているんですが、この登録機関が適正に業務を行うということが今回の法文の手当てだけで本当に大丈夫なのか、そのあたりはどういうふうにお考えになりますか。中川副大臣の方から。

中川副大臣 登録機関については、登録を受けようとする民間企業あるいは先ほど申し上げた公益法人等からの申請に基づいて、文部科学省が審査を行い、放射線障害防止法に定められた登録の要件に合致する機関を登録する、こういうことになっております。

 登録機関は、毎事業年度の経過後三カ月以内に、その事業年度の財務諸表及び事業報告書等を作成して文部科学大臣に提出するということがまず義務づけられております。

 それから二番目に、放射線障害防止法においては、登録機関に対し、必要に応じて報告を求め、立入検査を行うことができるということにしているほか、公正な審査を行っていないということが認められる場合には、業務の改善命令それから検査員の解任命令、業務の停止命令及び登録機関の登録の取り消しを行うことができる、このようにしております。

 これらの措置によって、登録機関制度の業務の公正さを確保できるというふうに考えております。

 と同時に、こうした形で任せていくわけでありますが、それの実態として、この定期検査、クリアランスの確認等は、原子炉等規制法については国または独立行政法人が行うということになっているんですけれども、一方、放射線障害防止法においては、既に実施されている検査等の業務については登録機関に運営されている、そこのところが違うのでどうだろうかということなんだろうと思うんですね。

 それについてさらに御説明しますと、放射線障害防止法の対象施設については、施設内の放射線、放射能量が原子炉等規制法の対象施設と比べて少ない、それと同時に、一般公衆に大きな影響が及ぶ蓋然性が低いために、検査、確認等の定型的な業務については外部機関に任せて、効率的に規制を行っていこうという区別をしたということであります。

 それから、クリアランス制度についても、事業者からさまざまな方法が提示されて、その妥当性を個別に検討する測定・評価方法の認可ということについては国が行うということにしておりまして、一方で、評価結果の確認は、測定された結果がクリアランスの基準以下であるかを確認するといった技術的な定型業務であるため、これも登録機関であっても適切に実施がし得るものであろうというふうにしております。

    〔委員長退席、奥村委員長代理着席〕

富田委員 原子炉等規制法との違いは今の御説明でわかるんですけれども、そのあたりのことを、先ほどの馳先生の質問じゃないですけれども、周知徹底しておかないとなかなか不安の解消にならないと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 もう一点、今回、放射性廃棄物として取り扱う必要のないものとされた廃棄物については、今度、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき処理されることになります。

 大谷環境大臣政務官に来ていただいていますが、実はこの廃掃法、廃棄物処理法の方も、今環境省の方で改正案を出されて法案審議が始まったんですかね。この廃棄物処理法の方の改正案の資料をずっと読んでいまして、中央環境審議会の方から「廃棄物処理制度の見直しの方向性」という意見具申がされていました。これを全部読みましたけれども、この中央環境審議会の方の資料の中に放射性廃棄物のことが一切触れられていないんですね。

 文部科学省の方では、今回この法案の改正を出している。一方、並行的に環境省の方では廃棄物処理法の改正をしていて、放射性廃棄物が一般の産業廃棄物になるのに、この間の連携が全くとられていないんじゃないかなというふうに、両方の資料を読んでいて、あれ、これはどうなっているんだと。

 先ほど来、今回の法案でも、文部科学大臣から環境大臣に、また環境大臣から文部科学大臣にというようにいろいろ意見交換できるような、情報交換できるような規定がありますけれども、それぞれの法改正に至る過程の両方の審議の中で全くこの放射性廃棄物のことが検討されなかったというのは一体どういうことなのかなと思うんですが、大谷政務官、そのあたり、何か事情はわかりますか。

大谷大臣政務官 一つは、この放射性物質が対象外であったということがございます。しかしながら、これは廃棄物と同じように扱っていいのかというと、もしものもしものもしもが出てきた場合は、しっかりと、どこに行ってしまったのかというのを判断しなければいけないということで、トレーサビリティーをしっかりと持たなければいけないと考えておりますし、そういう議論をしてきましたし、何よりも本年度の予算においては少しいただきまして、そのトレーサビリティーを確保するような具体的な施策を検討する費用とさせていただいているところでございますので、まさに、この安全性を確保するために、文部科学省それから事業者等と連携をしながらつくっていく検討が始まったところだということで御理解をいただきたいというふうに思います。

富田委員 大谷政務官のおっしゃるのはよくわかるんですが、もともと、産業廃棄物処理法の方の改正のきっかけが、やはり不法投棄する業者が産廃業者がほとんどだ、半数近くだ、また、七割から八割ぐらい建設廃材等が不法投棄の対象になっているというようなことなので、今回、放射性廃棄物を産業廃棄物として出す排出事業者がいるわけですよね、この放射性廃棄物として扱っている事業者がそれを産廃として出せるんだということになったときに、自分が産業廃棄物の排出業者だという認識があるのかなと。しかも、その中に、もともと放射性廃棄物として扱われていたものが一般の産業廃棄物になって出しているんだ、そのあたりをきちんと今放射性廃棄物として保管している人たちに認識していただかないと。

 産業廃棄物処理法の方の改正案というのは、マニフェストの管理をしっかりしようということですよね。これは民主党の皆さんのマニフェストじゃなくて、産業廃棄物管理票というのもマニフェストと業界では呼ばれていますけれども、ここを排出事業者の方で、今までは出してしまえば後は運搬業者なり処理業者からマニフェストになって戻ってきて、それだけでは出したときのあれとどうなるかわからないじゃないかというところが改正の主要点に多分なっているんだと思うんですね。

 ということは、今まで放射性廃棄物として保管していた事業者が産業廃棄物の排出業者になるわけですから、その点も文部科学省の方としてもしっかり認識していただいて、環境省の方と連携していただかないと、先ほど大谷政務官の方からトレーサビリティーをしっかりするんだと言っていますけれども、環境省だけの問題じゃないんだと思うんですね。ここはやはり文部科学省としてもしっかり把握した上でやっていただきたい。

 できたら、マニフェスト、管理票の中に、もともと放射性廃棄物からそうじゃなくなったんだというような、何かそういうのがわかるようなものを置いておく必要もあるんじゃないのかなと。もしまじっていたらどうする、もしも、もしもと先ほど大谷政務官、言っていただきましたけれども、そういったものも工夫する必要があるんじゃないかなと今回両方の法案の改正の経過を見ていて私は感じたんですが、大谷政務官、そのあたりはどうですか。

大谷大臣政務官 安全性確保、それから無用な不安を呼び起こさないようにするためにはそういうことも大いに考えられると思いますので、ぜひ先生の御指導をいただきながら検討していきたいというふうに思います。

富田委員 川端大臣にもぜひこのあたりの問題を御認識いただいて、指導していただきたいと思います。

 先般の視察に私も参加させていただいて、日本原子力研究開発機構の東海研究開発センターで旧JRR3の改造工事に伴って発生したコンクリートの保管状況、またその中から木くず等をはじき出す作業をしているところを見させてもらいましたけれども、ちょっと現場で気になることがありました。

 選別作業をされていた方は職員の方ですかと聞いたら、いや、請負ですとぽろっと言われたんですね。あれ、請負だと現場で指示できないじゃないか、派遣じゃないんですから、別の会社の方できちんと指示した上で現場に入ってくるということになって、おかしいなということを実は宮本委員と二人で話していたんですけれども。後で聞いたら、請負でも大丈夫だというふうにおっしゃるんですが、やはり大事な作業をされている方が請負でいいのかなというような部分もありますし、本当に請負でこの現場が大丈夫なんだということを言えるんでしょうか。

 そのあたりはどうですか、大臣も見に行かれたということですので。

    〔奥村委員長代理退席、委員長着席〕

川端国務大臣 私も現場を見てきましたが、二つありまして、一つは、あそこに来ているクリアランス対象物として、いわゆる分類、あれも仕分けですね、コンクリートや金属等々を仕分けしている、あのもの自体は既にその事前のチェックとして放射能レベルが非常に低いというのが確認されたもとで作業は行っております。

 その業務を請負でやるということでありますが、基本的には原子炉等規制法では、契約形態にかかわらず、原子力関係業務に従事する者で管理区域に立ち入る者は放射線業務従事者となって、原子炉設置者は当該放射線業務従事者の放射線安全管理義務を負うという部分では、どういう人がおろうとトータルの責任者としてそこの管理義務を負うということが法の位置づけであります。

 そういう意味では、いわゆる、よく言われる偽装請負の問題で、直接指示してはいけないということですが、一番厳しい状況でいえば、緊急のときにはそれは指示ができるという位置づけになっております。ただ、請負ということで一種の外注をしておりますので、これは契約のときに、いわゆる放射線安全関係諸規程の遵守、それから被曝管理、それから保護衣、保護具、被曝線量計着用、それから監督、総括責任者を置いて安全管理をさせるということ等を求めて、場合によって、必要があれば機構が請負会社に安全確保の措置を指示することができるということを契約条件としてしておりますので、安全の関係でいえば万全を期していると同時に、法の体系において緊急の場合には機構の職員が直接作業員に指示できるということでありますので、その部分では、こういうものを請負がやるのがいいのかどうかというものの議論の中で、安全性ということにおいては担保されていると承知をしております。

富田委員 ありがとうございました。大谷政務官、もう結構でございます。

 ちょっと法案から離れて二点ほどお伺いをしたいんですが、実は、この四月二日に我が党の井上幹事長が定例の記者会見でこのような発言をいたしました。

 四月一日、入社式が一斉に行われた。新社会人としてスタートされる皆さんに心からお祝い申し上げたいと思う。その一方で、就職が決まらない新卒者が大卒で八万人、高卒で二万人、合計十万人と推定されている。社会人としての一歩を踏み出すときに、適切に職につけないということは、その人生にとっても非常に厳しい問題であり、日本の将来にとっても大変憂慮すべきことだと思う。雇用問題を成長戦略のかなめとして、きちんと政府は一体として手を打つべきだというような発言をされたんですが、その中で、検討課題として、卒業後三年間は新卒扱いにすることを経済界に要請するというように発言されました。

 これは実は、その何日か前に日本学術会議の大学と職業との接続検討分科会の方で報告書の案文を公表されまして、これは近々最終の報告書となって、まだ文部科学省の方には正式に提出されていないようですが、公表された部分を見させていただきました。かなりいろいろ検討されて、特に新卒の部分についてこういう表現がありました。

  日本で広く行われてきた新卒一括採用という労働者の採用方式には、それと裏腹の関係で、一度大学を卒業した者は、翌年度の卒業予定者を対象とした採用の枠組みに応募することができないという慣行が付随している。平成十八年版の国民生活白書によれば、若年既卒者を新卒者と同じ枠で採用対象とした企業は調査対象企業の二二・四%に留まっており、採用対象としなかったとする企業が四四・〇%、中途採用枠では対象としたとする企業が二九・一%であった。しかし中途採用枠では、通常、職務経験が重視されることから、そもそも就職できなかった若者にとっては厳しい門戸である。

  つまり、大学を卒業して直ちに正社員に採用されなければ、その後に正社員となる可能性は非常に狭いものとなるが、このことと、正社員ではない非正規雇用の職においては、多くの場合、自らの労働の価値と生活水準を高めていく可能性が狭く閉ざされたものであることとが相まって、卒業時に正社員に就職できなかった若者の問題を深刻なものにしている。新卒一括採用という採用方式は、その「新卒」要件が従来のように厳格に運用される場合、個人のライフコースの特定の時期にリスクを集中させるとともに、景気の変動を通じて、世代間でも特定の世代にリスクを集中させるという機能を潜在的に内在させることになると言えよう。

というふうに指摘されていました。

 では、これをどう解決するのかという提案もされていまして、「卒業後最低三年間は、若年既卒者に対しても新卒一括採用の門戸が開かれること」を当面達成すべき目標とすべきだと。

 これは本当にこのとおりだと思うんですが、その手法として、規制的な手法と経済的な手法があるというふうに提案されて、私はこの経済的な手法というのはなかなかいい観点だなというふうに思いました。ちょっと御紹介させていただきますと、

 国民生活白書の調査で二二・四%の企業が、若年既卒者を新卒者と同じ枠で採用対象とすると回答しているが、一定の明確な定義の下に、たとえ少数ではあっても、そうした企業をリストアップして公表し、若年既卒者や学生が知ることができるようにすることは、現状に少なからぬインパクトを与えることになると考える。このことは、リストアップされた企業においても、新卒という要件にこだわらずに多様な人材がアクセスしてくる機会を拡大するとともに、事実上、従来単一のものとして認識されてきた新卒一括採用方式に新しい形態を加えることとなり、新旧二つの形態が競合する状況をもたらすだろう。その結果、どちらの形態が企業が望む人材を効率的に採用するために有利であるのか、一種の市場メカニズムを通じた調整が働く可能性が期待できる。

このとおりだと思うんですね。

 そして、こういう「アプローチをとるにしても、卒業後一定期間は、大学あるいは大学間連合による就職支援を受けられるよう、関係する法律の改正と、大学の支援機能・体制の強化等が必要である」、政府は一体としてこれをきちんと具体的に検討してほしいというふうに提言をされていました。

 法改正というのは、職業安定法で、学校が無料で職業紹介するというのは所属している学生等に限ると書いてあるので、ここを多分変えないと卒業してしまった学生はできないということを意識されているんだと思うんですが、今後この提言が文部科学省、大臣の方にきちんと出てくると思うんです。

 今、来年就職する学生の就職活動も本当に大変です。私の息子は今大学四年生で、去年の秋ぐらいからずっとやっているのを見ているんですが、私たちの時代と違って、三年の夏ぐらいからいろいろな形でインターンシップに行ったり、いろいろな企業の紹介所へ行ったり、ことしになって、エントリーシートをどんどん出して、その中でまた面接の時間が決まっていくというような状況を見ていますと、就職活動期間も物すごい長いですし、一たん外れてしまうと本当大変だなというのを肌身に感じているんですが、今の学術会議の提言について大臣はどのような感想を持たれていますか。

川端国務大臣 今御紹介ありましたように、私もダイジェスト的に見させていただきましたが、この学術会議の指摘と提言は、私は、非常に御苦労の中でよく考えられていて、ためになるというか大きな示唆に富んでいるというふうに思います。

 それで、今起こっているこの現象は、教育も含めて、企業のあり方も含めて、非常に大きな問題を全部はらんでいるといいますか、世界の中で日本の大学だけがと言っていいほど、ほとんどが高校を出た新卒者、現役、一浪、二浪ぐらいまでがほとんどで、年齢がほぼ二十代前半の人がいる。先進国で、ほとんどの大学はいろいろな年齢の人がいっぱいいる。これは、そこで、大学である種の単位を取る、学士号を取る、修士号を取ると、企業においてそれが一定評価されて、給料が上がるというシステムが日本ではなくて、ある種年功序列、終身雇用ということは新しく入ってきた人を前提にしている。

 ところが、一方で年功序列が崩れてきて、終身雇用も崩れてきているのに、そういう個々人の評価ではなくて、安い労働力という派遣みたいなものにシフトするということで、企業のある種受け皿も非常に混迷している中で、現に、就職できないんだったら留年する、留年する学生にまた、そうしたら特別に学費をまけてあげるという学校まで出てきている。

 何をやっているんだろうということと同時に、今先生言われたように、三年生からもう就職の準備で、勉強どころでない。そうすると、企業は企業で、勉強を大学でしていない子を一生懸命就職で集めて、学生は学生で、勉強できなくて就職活動するというふうなことが、悪循環がどんどんいろいろなところで顕在化していくことは事実だと思います。

 その中で、学術会議が言われたことは、私は、十年ほど前の就職氷河期の子供たちがミスマッチ等大変な目に遭っているというのがよく話題になったときに、ある一流企業の採用担当の役員に、今あなたの会社で、この世代の人、手を挙げろ、そして就職試験をして正社員で採用すると言ったら、すごいいい人材が集まるはずだ、苦労に苦労を重ねてそして正社員になれたという喜びと使命感と、そして企業のイメージも上がるんだと言ったら、いいアイデアだけれどもで終わって、やらないというのが現実です。

 そういう意味では、私たちも、この提言を受け取る中で、教育の現場も、それから企業の側も、就職協定を復活してほしいという声もあるんですが、理屈としては通年採用しているから就職協定は要らないんだと一方で言われるという企業の言い分もあります。そういうことを総合的に、大変、就職あっせんをする仕組みとかカウンセラーとかいうのも大事だけれども、根幹にかかわる問題としてとらえていきたいと私自身思っております。

富田委員 実は、新卒者の就職問題について、我が党でリクルートワークス研究所の大久保幸夫所長に先日来ていただいて、現在のいろいろな状況をお伺いしました。

 大臣おっしゃったように、大卒者の新卒就職は景気問題じゃなくて教育問題だし、質的なミスマッチの解消がキーポイントだろうとおっしゃっていました。留年してというお話がありましたけれども、大久保さんの話だと、留年してもスキルアップできないんですね。結局、ことし採用されなかった子は来年も多分採用されないだろうというような話もされていまして、そのあたりも含めて、新卒者の就職問題というのは文部科学委員会としても扱うべき大きな問題だと思いますので、今後、また一般質疑の際に具体的な質問をさせていただきたいと思います。

 もう一点、児童虐待の防止について、先日の委員会で私と我が党の池坊議員の方から質問させていただきました。そうしましたら、高井政務官の方で、三月二十四日付で「学校及び保育所から市町村又は児童相談所への定期的な情報提供に関する指針」、このことについて通知を出していただきました。

 早速対応していただいて、すばらしいなと思ったんですが、文部科学省からの通知について、きのう、ちょっと嫌なニュースを耳にしました。二年前に杉並の小学校で天窓から落下したときに、文科省からきちんと通知を出して、天窓の周りに防護さくをつけろとか、あるいは下にちゃんと防護網をつけろというような通知を出していたのに、鹿児島県の小学校の方で、そのときに天窓はありませんというふうに教育委員会に答えていた学校で、今回小学生が落下してしまった。

 幸いけがで済んだのでということらしいですが、やはり文部科学省が出すこういう大事な通知、全部読ませていただきましたけれども、厚生労働省の方とよく考えていただいて、丁寧に情報提供するようにということで出していただいているんですが、この辺の通知の実効性を持たせるために、ただ通知を出しっ放しじゃだめだと思うんですけれども、高井政務官、どうですか。せっかくいい通知を出していただいているので、天窓問題みたいにならないようにしていただきたいんですが。

高井大臣政務官 この間の通知の件に関してはもう御存じだと思いますが、早速、御指摘もあって、厚生労働省の山井政務官と連携して出したところであります。

 しかし、私自身も、この職になってから、政務官名の通知というのをもう何通か出しましたけれども、たった半年間でも何通か出している上に、副大臣名ももちろんあり、課長名の通知とか、各現場では恐らく週に何十ぐらい通知がいろいろな形で行っているんじゃないかと思います。

 御指摘あったこの事件、本当に残念なことでありますし、ただ、通知を出すときには、ではこの通知だけが大事なんだという通知でもないと思います。もちろん、事務的な連絡の通知も多々ある中で、やはりより危機感を持って、特に児童虐待の問題等の通知は社会問題として、大事な児童の人権を守る点からも大変大事な問題なので、教育委員会等やまた現場へおろすに当たり、再度、丁寧に言っていただけるように、よりお願いはしようと思うんですが、本当に通知ばかりが届いて、結局通知による多忙化ということや、ほかにもいろいろな難点もありますし、我々としても、効果的でできるだけ響くというか届くような伝え方をいろいろと努力をしていきたいと思っております。

富田委員 高井政務官名の通知でちょっと気になる点が、二点ありました。

 定期的な情報提供を求めているので、緊急時にどうするんだという「緊急時の対応」という項目があったんですが、これは本当に大事だと思うんですね。定期的な報告にしてしまうと定期の報告の日まで待ってしまう、そうじゃないんだということをきちんと指摘していただいている。ここは本当に大事だと思いますので、この徹底をお願いしたいというのが一点。

 実は、「個人情報の保護に対する配慮」というところの文章を読んでいましたら、やはり報告に対する一つ障害になりますよね、個人情報に配慮しなきゃだめだというふうにきちんと書いてあるので。これは、児童虐待のときに、個人情報の保護だということで逆作用になってしまうことがよくあると思うんですね。個人情報の保護に配慮する余りに、伝えるべき情報がきちんと伝わらなかったという可能性が出てきますので、ここはそういうことのないように、今後ぜひ徹底をお願いしたいと思います。その点、よろしくお願いいたします。

 もう一点、前回の委員会で、我が党の池坊委員の方から鈴木寛副大臣に、この児童虐待の問題で、スクールソーシャルワーカーをもっときちんと学校に配置すべきだというような質問をさせていただきました。鈴木副大臣の方から、今五百七十三名になっているのを平成二十二年度の予算で千五十六名になるべく予算措置をしたんだという御答弁をいただいたんです。

 文科省の方からいろいろ資料をもらって調べてみましたら、去年の、二十一年度の予算でも、スクールソーシャルワーカーは六十五県市、千四十人の枠をとっているんですね。千四十人の枠をとっているんだけれども、結局五百七十三名にとどまってしまった。地方自治体の方から実施計画として出てきたのが五百七十三だったと。

 スクールソーシャルワーカーが今回の江戸川区の事件のような場合に本当に大事だというのはもう実証されていると思うので、特に小学校の低学年のお子さんたちの面倒を見られるように各小学校に配置すべきだと私は思うんですが、こういうふうに枠を決めても、自治体の方から具体的な実施計画としてなかなか上がってこない。今回も、千五十六名の枠をとっていただいても、同じようなことになってしまうんじゃないか。池坊委員が前回お話ししていただきましたけれども、これはやはりスクールソーシャルワーカーの役割に対する認識の不足がまだあるんじゃないか。そのあたりを文部科学省の方としても徹底していただきたい。

 これは、補助率三分の一の補助事業なんですね。ここがやはり最大のネックになっているんじゃないか。やりたい自治体はいっぱいあるけれども、やはり三分の一しか補助されないのでは、財政難に苦しむ自治体は多いわけですから、こういう大事な事業はもう少し国の責任でというふうに踏み込むべきじゃないのかな。国が全部負担してもいいんじゃないかというふうに思います。

 先日の報道で、今、文部科学省の方で教育一括交付金を検討しているという報道がありました。ここにもうぴったりなんじゃないかな。現場で任せて使っていただきたい、そういう方向にぜひ持っていきたいと思うんですが、もう時間もありませんので、この点、鈴木副大臣でも大臣でも結構ですので、どのようにお考えでしょうか。

川端国務大臣 スクールソーシャルワーカーの有用性というか、大変大事な役割を果たしていただいているということは、もうかねがね御指摘いただいているし、私もそのとおりだと思っています。そして、これでこういうことの、事例も含めていろいろな紹介するということ、広報と同時に周知することは、今までも、これからも一生懸命やってまいりたいと思います。

 最大の部分は、平成二十年度は委託費ということで、モデル事業ということで、こういうことですよとやれば、全国に九百四十四名を配置した。これは全額国持ちですから。三分の一にした途端に半分になってしまった。予算は余っているということの中で、一括交付金という仕組みは、ある意味で、それぞれの教育にかかわる部分をどこにどう使うかを任せるというときの優先順位としては、多分していただけるんだろうということも一つのアイデアですし、地域によってそれぞれですが、全体でもって、地域ごとにもう少したくさん配置できる人数を財政的にどう手当てするかということとか、せっかくいい制度で効果があり、社会的必要が非常に高いというふうに思っておりますので、いろいろな仕組みの中で配置がもっと進むようにということで検討してまいりたいと思っております。

富田委員 よろしくお願いします。

 ありがとうございました。終わります。

田中委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 本法案にはさまざまな改正点がありますけれども、主要な改正は、クリアランス制度の導入であります。

 クリアランスの基準とされる〇・〇一ミリシーベルト以下のものを放射性汚染物から除外することは、一定の合理性もあり、異論はございません。

 ただ、放射線、原子力に対する国民の不信、不安が広く存在しておりますし、そもそも放射線防護の観点からは、できるだけ人体に放射線を受けないことが望ましいことは明瞭であります。

 問題は、クリアランス制度を実施する場合、国民の安全の観点から、放射能濃度の高い放射性汚染物が産業廃棄物として処分、再利用されるようなことがないように制度的に担保されているのかどうかが問われると言わなければなりません。放射能濃度が高い汚染物が産業廃棄物として処分されることは、国民の安全を確保する点からも、万が一にもあってはならない。これはもう当然のことであります。

 そこで、本法案で導入されるクリアランス制度は、放射能濃度の測定と評価方法について国の許可を得れば、放射性同位元素を扱うあらゆる事業者がクリアランスの実施主体となることができる、そういう仕組みになっているわけですね。

 そこでまず最初にお伺いいたしますけれども、その事業者の放射性同位元素の管理の実態がどうなっているか、これを確認したいんです。

 昨年、二〇〇九年一年間で、管理下にない放射性同位元素の発見、放射性同位元素の所在不明となった事例、これはそれぞれ何件あるか、お答えいただけますか。

泉政府参考人 お尋ねの、二〇〇九年の一年間でまず所在不明になった件数でございますけれども、三件でございます。

 それから、管理下にない放射性同位元素の発見件数でございますけれども、これにつきましては、二〇〇九年の十月一日付で、一年を期限としまして、使用事業者等に対しまして、管理下にない放射性同位元素の一斉点検とその結果の報告を依頼したところでございまして、これまでの報告については現在取りまとめ中でございますけれども、二〇〇九年の一月からこの一斉点検の依頼をする前までの二〇〇九年の九月末までに発見されました管理下にない放射性同位元素の発見件数は、四件ということになっております。

宮本委員 現に今でも、所在不明となった事例や、あるいは、管理下にない放射性同位元素が発見されているという実態があるんですね。

 先ほど御答弁にあったように、文部科学省は昨年十月に、放射性同位元素を扱う事業者に対して、「管理下にない放射性同位元素等に関する一斉点検の実施及び報告依頼について」という文書を出しておられます。この文書の趣旨、そして、この報告を求めている目的は何ですか。

泉政府参考人 この一斉点検の趣旨でございますけれども、これは、管理区域の外に置かれていた放射性同位元素の発見等があるという事例が相次いだことから、許可届け出の使用者及び許可の廃棄事業者に対しまして、放射性同位元素等が適切に保管されているかどうかについて、管理区域の外の居室あるいは実験室などで、長年こういった形で放置されている放射性同位元素がないかどうかを点検してもらうというのが趣旨でございます。

宮本委員 ここにその現物がありますけれども、前書きにこうありますね。「しかしながら、今なお管理されていない放射性同位元素等の発見が散見され、現在の管理が適切であったとしても、過去に購入された線源が管理されないまま存在している状況が報告されております。その原因は、平成十七年に実施していただいた管理下にない放射性同位元素等の調査に不十分な点があったのではないかと考えております。」したがって、「管理区域のみならず、管理区域外についても、」「長年放置されている放射性同位元素等がないか、今一度、別添に示す手順により一斉点検をしていただくようお願いします。」こういう文章ですよね。

 それで、今なお、管理されていないそういう放射性同位元素が発見されている。また、二〇〇五年の調査は不十分だったということもこの通知ではっきりと認めておられます。しかもこの一斉点検、まだ現在進行中でありまして、ことしの九月末までにそれを取りまとめるという状況なんですね。すべての事業者が適切に管理しているのか、今の時点でその最終確認すらできていないのが現状だと思うんです。

 この状態ですべての事業者がクリアランスができるような状況をつくり出すというのは、私は非常に不安がある、心配があると言わざるを得ないと思うんですけれども、これは大臣、どうお考えですか。

川端国務大臣 御指摘のように、現在一斉点検を行っている、そして、管理下にない放射性同位元素の存在が年に何件かあったということは事実であります。過去に起こった。調べましたら、要するに、昔のものであったということで言えば、十七年ですか、やったときに見つからなかったという意味では、十分でなかったというのは間違いない事実であることはそのとおりだと思います。

 ただ、そういう部分で、現在取りまとめ中でございますが、前回そういう不十分であったことを踏まえてしっかりやることで、一定の取りまとめをする中で適切な状況がつくれるというふうに思っておりますが、同時に、今回のクリアランスの部分は、管理下にあるクリアランス、要するに、もう使い終わったものをどう処理するかという趣旨のものでありまして、今までの管理で所在がわからなくなってしまったものがどうあるかということと、これを万全を期すというものと、それが不十分であるからクリアランスはやれないというのとはちょっと性格が違うというふうに私たちは思っております。

 現在、規制の体系下にある同位元素を、もうくどくど申しませんが、法案の趣旨に従って測定、評価そして管理をしっかりやるという法体系の中で、この中にクリアランス対象外がまじるというふうなことを排除する仕組みで十分に安全性は保たれるというふうに思っております。管理下にないものがあるというものとは性格は異にするという対応をしているつもりでございます。

宮本委員 十分に安全が担保されるかどうかということが、これから一つ論点になってくると思うんですね。

 それで、想定されているクリアランスをお伺いしますと、放射性同位元素のうち、半減期の短いものに汚染されたものだけを一定期間保管して除外する、こういうふうにお聞きをいたしました。

 しかし、今改めて文部科学省も報告を求めているように、どんな種類の放射性同位元素があるのか正確に把握できていない現状がある。調べてみたら実はこんなものがありましたよという事業者が現に存在しているにもかかわらず、厳格に半減期の短い放射性同位元素だけより分けて処分することができる、こう言われても、本当にそんなことができるのかと疑問に思うのは当然だと私は思うんですけれども、そういう疑問は当然じゃないでしょうか。

川端国務大臣 これは当然、半減期の短いものを取り分けて保管することはできる。それで、半減期を過ぎて一定期間、これも、人間の暮らしでいう常識的な短い期間で半減期を経て放射線量が基準以下になるということが確認できれば、それはそういうこととしての処分ができますよということであって、クリアランスにするというときには全体を一緒に保管をして、クリアランス対象としての基準での測定、評価をして行うことを当然やっていいわけですから、半減期が短いものだけを取り分けてやるということをしてもいいという意味であって、必ずやりなさいという意味ではなく、そのものを含めた部分が全体としてクリアランスの対象として当然ながら入るわけですから、今御指摘のような想定外のものがということは、この半減期のものだけだということで測定をしてひっかかればそれでだめですから、そういう意味では、そのものだけという特定できるようなものがあれば、分けて保管をして除外をすることは可能であるということを言っているだけであると御理解をいただきたいと思います。

 例えばPETなんかで、私も受けているんですが、RI化したブドウ糖を打ちますけれども、あれは本当に半減期が短いので、検診が終わって一日もたてば、多分、体の中で半減期が全部終わってしまうというものはそういう処置が当然できるということを想定しているんだと私なりに理解をしております。

宮本委員 もちろん、だから冒頭申し上げたように、〇・〇一ミリシーベルト以下のものをクリアランスするというこのこと自身に、別に大した異論があるわけじゃないんですよ。ただ、現状が、本当にそういうものの中にそれを超えたものがまじらないかどうかということを一つ一つ検証する必要があると思うんですね。

 何かありますか。では大臣。

川端国務大臣 そういう意味で、仕組み的にはそういうふうに分けてやることはできるということでありますが、当面は、制度が安定して動くまでは、全部クリアランスの対象とするというふうに考えております。

宮本委員 既に放射性廃棄物をめぐっては、これまでも問題となる事件、事例がたびたび起こってまいりました。

 そこでまず、事実の報告を求めたいのですが、二〇〇六年六月に旧大阪府立産業技術総合研究所で起こった事例、二つ目に、二〇〇七年五月の大阪府立母子保健総合医療センター研究所での事例を、これは事実ですから、事務方で結構です、説明してください。

泉政府参考人 お尋ねの事例の一番目でございますけれども、これは大阪府の旧大阪府立産業技術総合研究所の件でございます。

 この研究所の跡地、これは平成八年に研究所が移転されておりますけれども、この跡地において放射能標識のついた金属容器が発見されたという連絡が大阪府から当時文部科学省にございまして、その連絡があった翌日に文部科学省が立入調査を行ったところ、その発見された容器というのは空であったところでございますけれども、容器それからこの容器が見つかった部屋の内部にわずかながら汚染が認められたということでございました。この汚染による放射線障害のおそれあるいは環境への影響はなかったということでございます。

 それから二番目の件ですけれども、これは大阪府立母子保健総合医療センター研究所の件でございます。

 これは、この研究所において使っていた微量の放射性同位元素を含む物品を誤って廃棄したという連絡がございました。それで、この物品は一般廃棄物として回収、焼却された可能性があるわけでございますけれども、含まれている放射性同位元素の数量はごく微量、これは炭素14で百キロベクレルということで、環境への影響はなかったということでございます。

宮本委員 いずれも軽微だという話ですけれども、もちろん、それはそうであればこそ今日大事件になっていないわけであって、ただ、問題は、公的機関でさえ、現に、放射性廃棄物を放置していたり、誤って一般廃棄物として捨ててしまったという事例が起こっているわけですよ。この母子医療センターは一般ごみ箱に投入したとなっていますから、放射性廃棄物に当たるものをごみとして捨てた、そういう事故が現に起こっているわけですよ。

 こんな状況でクリアランス制度を導入したら、それこそ、放射性汚染物から除外するというものを間違ってどんどん一般廃棄物としてあるいは産業廃棄物として、そういうところへ捨ててしまうという事態が起こり得るのではないかと私は思うんですけれども、これはその危険性はないと断言できますか。

川端国務大臣 先ほどと同じようなことなんですけれども、いわゆる放射性同位元素を含む物質を管理するという点において、過去に、要するに管理されていないものが出てきたとかいう部分、あるいは、それを保管、保存するときに誤廃棄をしたということが起こったことは事実であります。それぞれに二度と起こらないような対策を含めてやっておりますが、それと、管理された状況で廃棄物が出たときに、それを保存し続けるか、厳格な基準と評価方法と管理、監視のもとにそれをクリアランスして処分する、保存処理じゃなくて、廃棄処分ができるように極めて低濃度のものを処理するという仕組みとは、性格は違うものだというふうに私は思っています。

 こういうあってはいけないような誤廃棄や、あるいは所在不明のものが出てきたということをもって、クリアランスするのはいかがなものかというのとはちょっと性格の違う議論ではないかというふうに私としては思っておりますし、このクリアランスするに関しては、先ほど来の議論、法の仕組みも含めて評価・測定方法、それからその部分の認可、そして立入検査等々を含めてしっかりとした確保をするということ。

 多分、委員は、どうしてもいいかげんなことをする人がいるではないかということなのかもしれませんが、現在、ただ単に保管をしていくということには保管する以外の法の網は一切かかっておりませんから誤廃棄も起こったのかもしれませんが、そういうのは、むしろ出口もしっかりするという意味でも、安全に対しては万全を期していく仕組みとして考えているところでございます。

宮本委員 その厳格な管理、監視のもとにクリアランスがされるのであれば、そして、間違いなく〇・〇一ミリシーベルト以下であるということが本当に責任を持って確認できるのであれば、このクリアランスという制度に合理性がある、これは冒頭から申し上げているわけですよ。

 しかし、現状の、核汚染物質の管理もそうですけれども、また、産業廃棄物の取り扱いということを見たときにも、実際にはそれがきちっと担保されない事態が起こっているのではないかということを申し上げているわけです。

 それで、国がクリアランスの結果を確認するとおっしゃるわけですけれども、それでは、クリアランスされたものすべてを全量国が検査するんですか。事務方、いかがですか。

泉政府参考人 この確認でございますけれども、国または登録の濃度確認機関が確認をするわけでございますが、事業者が、認可された方法で行ったクリアランス対象物の測定・評価結果の確認を行うわけでございます。この測定・評価結果が放射能濃度基準を超えていないかにつきましては、全記録を確認するということでございます。

 それで、さらに現場において、事業者は全部はかっているわけですけれども、一部サンプリングを行いまして抜き取りを行って、実際にこれをはかりまして全記録の信頼性を確認するということといたしております。

宮本委員 事業者は全部を確認する、当たり前であって、でないとクリアランスにならへんので、確認もせずにこれは大丈夫と言うたらえらい騒ぎになりますから、事業者が全部確認するのは当たり前だが、国がチェックするのはサンプリングだという話なんですね。国が全部確認するという話じゃないんですよ。

 この前、当委員会で、原子力研究所、東海村、見に行きました。あそこでやっていたクリアランスというのは、原子炉規制法に基づくクリアランスですから、あの現場では、この積み上げているものはすべて国が確認するんですみたいなことをおっしゃっていましたけれども、今ここで法改正しようとしているのは、直接国が全量検査するわけでもないんですよね。結局、最終的には、形式的にチェックする、あるいはサンプリングでチェックするということになります。そうなりますと、すり抜けることがあり得るのではないかという問題を提起したいんです。

 そこで、これも事実関係を、これも事務方で結構です、御報告いただきたいんです。

 二〇〇三年三月に岡山県倉敷市で起こった事例、二〇〇八年十一月に福島県西白河郡西郷村、ここで起こった事例について御説明ください。

泉政府参考人 まず、初めの二〇〇三年の方の件でございますけれども、これは、倉敷市の製鉄所で、放射性物質を含むスチールの缶をプレスしたブロックが見つかっておりまして、このブロックの放射線の線量率が表面で最大二十四マイクロシーベルト・パー・アワーでございまして、直ちに人体に影響を及ぼすものではなかったわけでございますけれども、このものを鉛の容器で封印いたしまして、放射線防護上必要な措置を施した上で、この原因物質の分析及び処分のために、日本アイソトープ協会の方に搬出がなされました。それで、このアイソトープ協会での分析によりまして、放射性物質は密封されたラジウム226であるということが確認されております。

 それから、二〇〇八年の方の事例でございますけれども、これは、福島県の鉄くずリサイクル業者の工場内にございました砂状の物質から放射線が検出されたという連絡がありましたので、文部科学省では、この会社に対しまして、安全確保措置と専門の分析機関による分析を指導したところでございます。

 分析の結果、この砂状の物質にトリウムが含まれているということが判明いたしましたので、文部科学省職員を派遣いたしまして、この砂状の物質が安全に保管されていること、それから、従業員に対する放射線障害のおそれがないこと、さらに、事業所の外に影響のないこと等を確認いたしまして、その上で、この会社に、原子炉等規制法に基づく核原料物質の使用の届け出を提出させるとともに、適切に管理するよう指導を行ったところでございます。

宮本委員 この一つ目の事件、これは、製鉄所に空き缶をプレスしたものが運び込まれて、その中に放射性物質らしきものが発見されたという連絡があった。結論は、線量は少なかった、つまりこの影響は少なかったと言うんですが、物質そのものは、今おっしゃったように、ラジウム226という紛れもない放射性物質がプレス缶の中にまじっていたという事例であります。

 二つ目の事例は、これも鉄のスクラップでありますけれども、鉄のスクラップの中から布袋に小分けされた砂状の物質が出てきて、これがトリウムを含む放射性物質であるということが明らかになった。

 これは、これらの物質が発見された業者が悪いという話じゃないんですよ。この業者にそれを持ち込んだ者がおるわけです。空き缶を処理するところへこの放射性物質を紛れ込ませた、あるいは、鉄スクラップの処理工場へそういう放射性の砂状のものを持ち込んだ者がいるわけですよ。これはもう完全に取り扱いとしては間違っていると思うんです。

 これは随分時間がたっていますけれども、だれがこれをこれらのところへ持ち込んだか明らかになっておりますか。

泉政府参考人 お尋ねの点については判明いたしておりません。

宮本委員 わからないんです。密封されているかどうか知らないけれども、スチール缶をプレスしたところへだれがこのラジウム226というものを出した犯人なのかはわかっていないわけです。それから、もう一つの福島県の例でも、鉄スクラップの中になぜトリウムを含んだような砂状物質が出されたのか、だれが出したのかはわかっていないんですよ。

 だから、今度の法というのは、〇・〇一ミリシーベルト以下だったら大丈夫じゃないかという議論は、それは、〇・〇一ミリシーベルト以下は大丈夫ということに異論はありません。しかし、現状でも、一体だれが出したかわからないような形でこういう事例が起こっているわけですよ。

 問題なのは、このように処理、再利用、つまりスクラップや何かに入ってしまった後では、だれが不法に投棄したのか廃棄したのかわからなくなってしまうということですよ。

 先ほど、廃棄費用は、産業廃棄物なら百万円、放射性物質だったら二百六十万から一千万という話になりましたから、これはどう考えても、コストからいえば産業廃棄物として処理した方が安くつくわけですから、そういう不心得者が生まれてこないという保証はないわけですね。圧倒的多数の方々はまじめだとしても、中にこういう事件は幾らもあるわけですから、こういう点がそもそもチェックする体制がないのではないかということを私は指摘しているんです。

 大臣、この点についての御所見をお伺いしたい。

川端国務大臣 午前中の質問でもそうですが、いわゆるクリアランスの実施の方法とその測定の正確さのチェック、先ほど、サンプリングと全記録の検査と同時に、現地に赴いてそれをチェックするということで、二重三重の安全確認ということと同時に、これは、管理区域外へ出るという意味で、管理区域内にあるクリアランス適用外のものと混入するということは仕組みとしては排除する形をとっておりますが、先生言われたように、悪意を持って何とか紛れ込ませてやろうというものを完璧に全部とらえられるかどうかと言われれば、それは、どんな仕組みでもそれをチェックするということがかなうかどうかは議論のあるところであろうというふうに思います。

 悪意を持ってそれは最後にぽこっとそこへ紛れ込ますことをすることまでということで、その代償措置として当然そういうことがあり得るということでの厳罰に処するという罰則規定があるということは、そういうことをやることが起こるということを基本的には考えて、やったら罰しますよという抑止力を働かせているというのが、理屈上はそういうことだと思いますが、制度的、仕組み的には、考えられる管理体制を非常に厳格にするということで、先生もそれが担保されるならばという、担保できるかどうかの議論は多分ここで今やっている話だと思いますが、万全を期すということで臨んでいるところでございます。

宮本委員 いや、反対という態度を私どもの党はとってよかったという御答弁ですね。

 悪意を持ってやる者がいた場合に、これを本当に防げるかどうかはわからないという答弁が大臣から出るとは思いませんでした。もちろん、罰則があって事後に罰則で処罰するにしても、紛れ込んでしまえば、先ほどの二つの例だってわからなかったじゃないですか、だれが出したのかは。

川端国務大臣 私が申し上げたのは、そういう部分で、二重三重のチェックによって、過失であろうと悪意であろうと基本的には摘発できる、チェックできるようになっているけれども、本当に悪意を持って何とかごまかしてやろうという人まで全部パーフェクトに排除できるということじゃないということは、当然そういうものだと思うんですよ。だから罰則規定がある。

 これは、過失においてもそういうことがあるということがなければ罰則なんて要らないということになるわけですが、そういう意味で申し上げたのであって、そういうことが基本的には起こらないという前提で制度設計をしているということだけは、誤解のないように申し上げておきたいというふうに思います。

宮本委員 このクリアランスの制度が入れば、クリアランスの結果、放射性汚染物から除外されたものについては、国が安全であるというお墨つきを与えることになってしまいます。

 事業者がやったことだとか、国は関係ないとか、悪意を持った者が悪意を持ってやった場合にはそれはちょっと無理でしょうとか、そういうふうにはならないんですね。そうである以上、安全であると広く国民に説明する責任は国にあるわけですし、そこに国がしっかり責任を果たす担保できる体制が必要だと言わなければなりません。

 我が党は、改めてその点を直視して、制度そのもののあり方を根本から構築し直すべきだということをはっきり指摘をして、私の質問を終わります。

田中委員長 次に、馳浩君。

馳委員 共産党の宮本さんはああいうふうにおっしゃいましたが、私は一定のルールを責任を持って国家が構築をするという、一歩前進ということで、この法案には賛成したいと思っております。

 ちょっと息抜きという意味で、先ほど川端大臣に眼鏡ふきをおすそ分けいただきまして、何で私におすそ分けいただいたのかなと思ったら、論語の一節がプリントされているんですね。馳君、もっと人格的に勉強しなさいという思いが込められているのかなと思いながら読んでみたら、あれっと思ったんです。

 これは高校の漢文の授業で一番最初に取り上げる文章ですね。「学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや。朋あり遠方より来たる、亦楽しからずや。」ところが、その次の一番大事な文章が入っていないんですよ。

 大臣、今読み上げた文章の次に来る文章はどんな文章か知っていますか。(発言する者あり)

 では、ちょっと漢文の授業を。

 これは実は、ここの後に来る文章が、孔子が一番言いたかった部分なんですね。「人知らずして慍らず、亦君子ならずや。」

 「人知らずして慍らず、」というのは、他人が自分の本当の価値を認めてくれなくても、「亦君子ならずや。」というのは、これが君子という、人としての生き方ではないかということなんですが、実は、ここで終わってしまっては、漢文の授業で終わってしまうんですよ。

 私も国語の教員をしておりましたが、そこで授業を終わるのではなくて、次にこういうことを子供たちに投げかけるのが本来の国語の授業なんですね。つまり、他人が自分のことを認めてくれるように努力をしましょうねというのが一つの段階、さらに次の段階は、人から認めてもらうことばかりに気を持つんじゃなくて、あなたは他人を認めようとするそういう気持ちを持っていますか、さあ、高校生の諸君、あなたはどうですかと、ここまでいくのが、実は、漢文を習いながら、国語の授業として人生観を養う高校生の授業、こういうふうになるんですね。

 では大臣、感想をどうぞ。

川端国務大臣 馳先生に漢文だけではなくて人間の生き方をお教えいただいて、改めて、単なるサンプルを差し上げただけですけれども、御活用いただいたことと、大変含蓄のあるお話だというふうに思いますし、勉強になりました。ありがとうございました。

馳委員 やはりこうやって、この文章も特に、漢文というのは韻を踏んでおりまして、小学生のころから、耳になじむ形で読んで覚える、覚えて理解をする、理解をした上で自分を振り返る、こういうふうな教育というものの進め方が大事なんじゃないかなと思って、私も急に昔のことを思って、つい申し述べさせていただきました。

 では、本題に入りたいと思います。

 廃止措置の強化についてお伺いをいたします。

 放射性廃棄物を完全に廃棄しないまま虚偽の報告をし、廃止措置を終えた事件が発生したということですが、具体的にどういう事案だったのでしょうか。そして、この事件でだれか処罰を受けたのでしょうか。そして、この事件での放射性廃棄物はだれがどうやって処分をし、その費用はだれが負担をしたのでしょうか。この件についてお伺いをしたいと思います。

後藤大臣政務官 先生お尋ねの、放射性廃棄物を完全に廃棄しないまま虚偽の報告をし、廃止措置を終えた事件が発生したという事案につきましては、平成八年に、千葉県野田市にある夜光塗料会社が、放射性同位元素の使用を廃止し、すべての放射性廃棄物を処分したとの報告を行ったが、実際はラジウム等を用いた自発光塗料の放射性廃棄物が野外に放置されている事実が平成二十年に判明したことだというふうに承知しております。

 この際、この部分で言えば、平成二十年に文科省として、直ちに、周辺住民の安全を確保するため、応急の安全対策を実施するとともに、同社に対して安全確保措置の実施と放射性廃棄物の撤去等の措置命令を行いましたが、履行されないため、行政代執行により文科省が安全確保措置を実施したものであります。

 措置命令が履行されなかったということで、同社及び同社の代表者を措置命令違反として告発を行い、同社の代表者が罰金三十万円の処罰を受けております。

 ただし、この会社は平成二十一年の一月二十八日に破産手続という部分になりまして、文科省が代執行に要した費用のトータルで五百九十九万円のうち、破産法に基づいて一部だけ、三百四万円が回収できていますが、それ以外は文科省が負担をしたというふうになっております。

馳委員 その代執行の命令をしたときの大臣が塩谷大臣なんですね。

 当時、罰金三十万円だった、ところが最終的に、会社の経営が思わしくなく、行政代執行せざるを得なくなった、そしてそれが五百九十九万円かかり、ところが、当社が破産したので三百万円ほどしか、多分、財産は差し押さえしたんでしょうね。

 こうなると、今回、廃止措置を強化することによって、こういう事案がまた起こった場合に的確に対応できるのかなという心配があるんですよ。

 したがって、だから私も先ほど申し上げたように、法改正した以上は、業者も含めて、やはり関係者に対する周知徹底をしっかりしなければいけませんよねということを改めて申し上げたんですが、後藤政務官が今おっしゃったような事件が悪い意味で理解されたら、まあ少々罰金を払えば、あとは国がやってくれるから逃げ切ろう、そういうふらちな事業者もないとは限らないわけですよ。

 今回のこの改正で廃止措置が強化されます。これで本当に大丈夫なんでしょうかということを改めて私は問わなければいけないんですが、いかがでしょうか。

後藤大臣政務官 先生がおっしゃるように、この廃止措置、クリアランス制度が導入されて、いろいろな負担増にできるだけならないようにということは、当然のことながら、事業者みずからが、クリアランス制度を活用した方がいいのか、それとも現行のまま保管をするのがいいのか、そういう意味で、選択制にしたというのは先生御案内のとおりであります。

 あわせて、廃止措置についても、三十日ルールというのを基本的には見直すことにしております。

 ただし、昨今の経済環境の中で、先生からお尋ねの千葉県野田市の夜光塗料会社の事案についても、この廃止措置を終えた事案が発生し処罰をされたという事実には適用されますが、やはり経済環境全体がどうなるかによって、その部分の、先ほど大臣もお答えをしたように、本当に不届きな方がいらっしゃれば、それにどう法の網をかぶせるかというのは、まさに罰金刑ということで、むしろ強化をしたという部分も今回ございます。

 そのある意味では法律の新しい仕組みと経済環境も含めたもののバランスというのが、多分、非常に大切になってくると思いますし、ある意味での、これから手数料の具体的に政省令で決める案件につきましても、事業者の方に過度の負担にならないような形というものは配慮してつくっていかなければいけないというふうに考えております。

馳委員 それで、この法律の条文の一番最後を読むと、この法律の施行期日は、何と二年以内となっているんですね。これは、平成十六年から改正に向けて議論が始まり、今回のクリアランス制度とその他改正案、強化されることになったわけなんですが、準備期間に二年もかかるんですか。もちろん、二年以内となっておりますから半年かもしれませんが、この二年という期限を区切った根拠は何なんでしょうか。それだけの準備期間がかかるんだと思うんですけれども、どういうことがかかるのかなと。

 法改正をして施行するまで準備期間が二年、この意味をちょっと教えていただけますでしょうか。

後藤大臣政務官 できる限り早く法施行をお願いしたいというふうに思っておりますが、一点目は、先ほども大臣、副大臣からも御答弁を申し上げているように、ある意味では、放射化物も含めたたくさんの対象があるという、その個別個別に基準を策定しているということと、あわせて、放射化物に対する規制が新たに法規制として導入をされることになります。その場合、新たな施設、例えば汚染を検査する部屋とか廃棄設備等の新たな施設整備が必要になることが想定されます。そういう意味で、放射化物の施行というものは、二年以内の政令で定める日というふうになっております。

 ただし、廃止措置の強化であるとか罰則の強化というのは、ある意味では、先ほど来御議論がありますように、放射化物の放射能が減衰するものを一定の確認という行為を経て放射線汚染防止に関する規制から除外する制度も新たに設けていかないと、被規制者に過剰な規制を課し続けることになります。そういう意味で、規制の強化を行う放射化物への規制の導入や廃止措置の強化、罰則強化という、ある意味ではセットで行うということで、十分な時間ということで、二年以内の施行ということで現在国会の方で御審議をお願いしているということで御理解を賜りたいと思います。

馳委員 二年を待たずに法が施行されるように、準備の方を万般よろしくお願いしたいと思います。

 そこで、きょう、ずっと法案審議という形でさせていただいてきて、やはり大事だなと思ったのは、放射線を取り扱う、要は人の問題ですから、人材育成について、この問題というのはやはり残るなと思いました。放射性物質の取り扱いには極めて透明性の高い手続が必要だと思います。同時に、取り扱いに精通した専門的な人材が欠かせないと思います。人材育成についての文部科学省の見解をお伺いいたします。

 放射線業務従事者の育成は現状どうなっておりますでしょうか。原子炉の建設、原子炉の保守点検ができる人材は足りているのでしょうか。

 また、海外の需要を踏まえ、原子力産業が日本の成長戦略の一つであることを考えると、トップレベルの研究者の育成や海外の人材育成も手がけていくことが重要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 さらに、人材育成の受け皿となる原子力関係の学部や大学院が少ないのではないでしょうか。昭和五十九年度では、学部レベルで十大学、大学院レベルで九大学だったのに、平成二十年度では、学部レベルで二大学、大学院レベルで五大学と激減をしております。そう考えると、別に拠点をふやせと私は言うつもりはありません。むしろ、拠点校に対して予算配分の集中と選択が必要であると思いますし、特に、海外の人材を育成していく姿勢が政府にも求められるのではないかなと思いますので、このことをお伺いして私の質問を終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。

川端国務大臣 原子力政策、そして産業を進めるのに人材も中核であることは言うまでもありません。そういう意味で、国としてのいわゆる放射線取扱者主任制度という部分で、一定の技術レベルを持った人をしっかりと国家資格として位置づけるということでの放射線取扱者主任制度ということでやっていると同時に、この認定の試験は当然毎年やっているんですが、主任者になってからの定期講習等々含めて、いわゆる原子力を扱う、放射線を扱うという者の主任制度というのをしっかりと維持するというのが一つの制度であります。

 そして、現場で働く人、指導者、監督者等々もこれまた大変大事な、要するに運転も含めた大事な人材でありますので、これは放射線障害防止法に基づいて、こういう人たちをしっかり安全を確保するということと教育と訓練が義務づけられておりますので、こういう人材もしっかり確保していくことをやっております。

 さらに、先生おっしゃいました、高度な技術者ということでの取り組みの中で、御指摘のように、大学において、昔は原子核工学科とかいうのは私の学生の時代は花形の一つでありました。私も大学院のときに、工学部の工学研究室の中の化学工学科という学科だったですが、専門講座は原子核化学工学専攻という、全部忘れてしまいましたけれども、という名前の講座もありました。しかし、ほとんどなくなったというところから、やっと最近は、関係各位の御努力の中で、大学の中にも原子力あるいは原子核、原子という名前のつくことが復活してまいった状況にありますが、そういう中で、先生御指摘のように、やはり重点的にしっかりと応援をしながら、そこで拠点として育つようにという政策も講じているところでありますので、大学に対しての支援プログラム等々もやっておりますので、そういうことで応援をしていきたい。

 海外も、先ほど成長戦略とおっしゃいましたけれども、これから安全性を確保する中での原子炉の建設、運転というのが世界で広まっていくという中で、それを運転する人材を共通的に一緒にトレーニングしていくという制度も、各般の協力で、大勢の人の教育訓練を受け持つと同時に、技術者の派遣もやっております。そういうことを通じて、原子力の平和利用の拡大のための人材育成と、それを通じた日本の役割を果たすということに引き続き各方面の努力をしてまいりたいと思っております。

馳委員 これは私は川端大臣を応援する意味で申し上げますが、平成二十二年度の予算で、新規の国際原子力人材育成イニシアチブ、これは大変すばらしいと思います。国内で不足する原子力人材の供給、優秀な研究者、技術者の国際的集積、そして、信頼性の高い我が国の技術移転と安全の確保、特にアジアの人材育成に我が国がリーダーシップを持つことは重要であり、この新規の事業は今後ぜひ拡充をしていってもらいたいと思います。

 そういった意味で、今般の法改正に、岡崎理事長がおっしゃったように、いよいよ処分の時代に入った、そういう意味では政策の前向きなステップアップの時代に入ったという認識のもとで政府一体となって取り組んでいただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

田中委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。宮本岳志君。

宮本委員 私は、日本共産党を代表して、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部改正案に対し、反対の討論を行うものです。

 本法律案にはさまざまな改正点がありますが、主要な改正は、放射性同位元素等による放射性汚染物のクリアランス制度の導入です。クリアランスの基準とされる〇・〇一ミリシーベルト以下のものを放射性汚染物から除外することには一定の合理性があります。ただ、放射線、原子力に対する国民の不信、不安が広く存在しているし、そもそも放射線防護の観点からは、できるだけ人体に放射線を受けないことが望ましいのは明らかです。

 問題は、クリアランス制度を実施する場合、国民の安全の観点から、放射能濃度の高い放射性汚染物が産業廃棄物として処分、再利用されることがないよう制度的に担保されているかどうかです。放射能濃度が高い汚染物が混入されてしまうことは、国民の安全を確保する点からは万が一にもあってはなりません。

 本法律案で導入されるクリアランス制度を見ると、放射能濃度の測定の評価方法について国の認可を得れば、放射性同位元素を扱うあらゆる事業者がクリアランスの実施主体となることができます。質疑で明らかになったように、事業者は五千を超え、その管理能力、実態もさまざまです。いまだにみずから所持している放射性同位元素の種類、量でさえ正確に把握できていない事業者もいる現状で、すべての事業者に安易に任せることなどできません。

 また、クリアランス結果の国による確認も、全量検査でなくサンプリング調査にとどまり、大半は書面で済まされ、形式的なものとならざるを得ません。このように安全確保に対する国の関与が限定的かつ形式的で、事業者任せの制度になっているのでは、放射能濃度の高い放射性汚染物が万が一にも産業廃棄物に混入しないという保証、担保がなく、国民の安全が確保されません。

 本法律案には、放射線発生装置から発生する放射線による汚染物(放射化物)の規制の導入、輸出制限の緩和、罰則の強化など、現状に照らして必要であり、賛同できる部分もありますが、このようなクリアランス制度の導入は問題であり、全体としては反対せざるを得ないことを申し上げ、討論を終わります。

田中委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより採決に入ります。(発言する者あり)

 恐縮ですが、私語はちょっと慎んでいただけますか、あべ俊子さん。済みません。重要な採決に入ります。

 内閣提出、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、松崎哲久君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・改革クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。坂本哲志君。

坂本委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 政府は、クリアランス制度の導入について、適正な運用を図るため、事業者等への周知徹底を図ること。また、本制度に関して、広く国民の理解が得られるよう、その趣旨や内容についての広報に努めること。

 二 文部科学省令に定める安全基準については、最新の技術や知見に基づき安全が確保されるよう適正に定めること。また、本制度の運用に当たっては、事業者等に対して十分な指導及び監督を行い、その厳格な運用がなされるよう万全を期すこと。

 三 政府は、放射能濃度の測定及び評価結果の確認を行う登録濃度確認機関に対し、適正な業務実施が確保されるよう万全の措置をとること。

 四 放射性同位元素の使用を廃止した者等が行う廃止措置については、廃止措置が確実に履行されるよう、政府は、廃止措置の履行の状況を十分に把握し、適切な指導を行うこと。

 五 政府は、放射性同位元素等の使用等に関する安全規制について確実かつ円滑な実施を確保するため、新たな技術や施設などの状況を踏まえて、必要に応じ安全規制の見直しを図るとともに、専門人材の育成及び安全規制体制の強化に一層努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同いただきますようよろしくお願いを申し上げます。

田中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。川端達夫文部科学大臣。

川端国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

田中委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

田中委員長 次回は、来る十四日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十五分散会


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