衆議院

メインへスキップ



第9号 平成23年5月13日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十三年五月十三日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君

   理事 野木  実君 理事 松崎 哲久君

   理事 松宮  勲君 理事 下村 博文君

   理事 馳   浩君 理事 池坊 保子君

      石井登志郎君    大西 健介君

      大山 昌宏君    奥村 展三君

      金森  正君    川口  浩君

      城井  崇君    熊谷 貞俊君

      佐藤ゆうこ君    笹木 竜三君

      瑞慶覧長敏君    高野  守君

      中屋 大介君    平山 泰朗君

      村上 史好君    室井 秀子君

      本村賢太郎君    山田 良司君

      笠  浩史君    和嶋 未希君

      遠藤 利明君    河村 建夫君

      塩谷  立君    永岡 桂子君

      古屋 圭司君    松野 博一君

      斉藤 鉄夫君    宮本 岳志君

      城内  実君    土肥 隆一君

    …………………………………

   文部科学大臣       高木 義明君

   内閣官房副長官      仙谷 由人君

   文部科学副大臣      笹木 竜三君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   文部科学大臣政務官    笠  浩史君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 土屋 定之君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          山中 伸一君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       合田 隆史君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤木 完治君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        布村 幸彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中西 宏典君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            班目 春樹君

   参考人

   (原子力安全委員会委員) 久住 静代君

   参考人

   (独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長)   鈴木 篤之君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十三日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     大西 健介君

  富田 茂之君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 健介君     石井登志郎君

  斉藤 鉄夫君     富田 茂之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件(文部科学行政における原子力関連施策)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件、特に文部科学行政における原子力関連施策について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長班目春樹君、原子力安全委員会委員久住静代君及び独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長鈴木篤之君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として文部科学省大臣官房長土屋定之君、初等中等教育局長山中伸一君、科学技術・学術政策局長合田隆史君、研究開発局長藤木完治君、スポーツ・青少年局長布村幸彦君及び経済産業省大臣官房審議官中西宏典君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松宮勲君。

松宮委員 おはようございます。民主党の松宮勲でございます。初めて質問に立たせていただきます。

 三月十一日の福島原子力第一発電所の事故は、振り返ってみますと、恐らく間違いなしにかつてのアメリカの九・一一に匹敵する、場合によってはそれ以上のインパクトを、単にエネルギー分野のみならず、私どものウエー・オブ・ライフ、生活のありようまでに及ぶ大変な事故だと思います。

 しかも、この事故、なお今進行中でございまして、一日も早い収束、そして、これを教訓とした日本のエネルギー政策の抜本的な見直し、それは間違いなしに日本のあした、いや世界の未来につながる、大変なインパクトを及ぼさざるを得ないような、そういう大きなタスク、課題が我々の目前に今控えているわけでございます。

 そういう文脈も頭の中に入れさせていただきながら、限られた時間でございますので、本委員会でもかねてより問題になっております福島県内の学校等における安全規制の暫定的な考え方、当座二十ミリシーベルトという暫定値を出しておりますが、この件と、それから先般、一昨日でございましたか、本委員会が委員長主宰で勉強会をやらせていただきました。

 文科省傘下の原子力関係の二十四の独立行政法人、公益法人等について、時間の関係で非常にさっとした粗っぽいスタディーでございましたが、それでも幾つかの問題点を私は委員の皆さん方とともに共有させていただきましたし、そこから導き出される、冒頭申し上げましたようなこの福島原発の事故と関連して、文科省傘下の原子力関係機関が取り組まなくちゃいけない、あるいは、今取り組んでいるだろうけれども、これまで以上に今後中長期的なパースペクティブ、視野のもとで取り組まなくちゃいけない課題というのも、ある程度抽出されたんだろうと思います。

 この問題についても、二十四の法人等の中でもとりわけ巨大な陣容と予算を占めております原子力機構について、きょうは理事長にもお越しいただきまして、若干の質問をさせていただきたいと思います。

 まず、例の二十ミリシーベルトの、正確に申し上げますと、「福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方」、これが四月十九日に出されました。私の理解で申し上げますと、これは、菅総理が本部長である原子力災害本部が正式にまとめられて、これを受けて文科省が福島県知事を初め福島県の教育関係者に通知をした、こういう位置づけだと思います。

 もちろん、この間に、文科省が事前に実施した調査結果等も踏まえて、これを原子力安全委員会と御相談しながら内々に詰められたものを、形式的には、先ほど申しました原子力災害本部が改めて原子力安全委員会の意見を求めて、そしてそれを、原子力安全委員会が二つの条件をつけて、差し支えないというお答えを災害対策本部に出されて、それを受けて文科省が福島県の知事以下学校関係者に連絡した、こういう位置づけと理解しておりますが、まず、それでよろしゅうございましょうか。

高木国務大臣 今の委員の御指摘、それはそのとおりでございます。

松宮委員 そういたしますと、これは、連休前の本委員会で、本問題について議論があって、そして、文科省サイドと御出席いただきました原子力安全委員会の久住委員との間で若干見解の差異がございまして、やや委員会の審議も中断したということがあったのでございます。

 そのときの議論を想起いたしますと、二十ミリシーベルト・パー・イヤーの値については、これも場合によっては原子力安全委員会の中では十ミリシーベルトというような意見もあったというようなこともあったと思いますし、それから、二十ミリシーベルトを持ち出す根拠としての三・八マイクロシーベルト・パー・アワー、この値を前提としての測定で、中学生等は地表から一メートル、そして小学生以下は五十センチ、この議論についても多少のそごがあったとか、あるいは外部被曝と内部被曝との関係をどうするかということについても、必ずしも納得的な説明が十分になされたとは思われないような状態で終わったんじゃないかという気もいたしますので、改めてこれについてお伺いしたいと思います。

 なぜならば、実はきょうも、各メディアを見ますと、これは残念なことを申しますが事実でございますから、私どもの同僚の民主党の国会議員二人が、官邸に対して、二十ミリシーベルト・パー・イヤーの値を大幅に低減すべきじゃないか、こういうことでの意見書を出されたという報道もございます。

 一方では、これも昨日のメディアですけれども、某全国紙には、WHOの、名前は正確には忘れましたが衛生環境局長が、日本政府がお出しになった二十ミリシーベルト・パー・イヤーについては問題はない、こういう某大手日刊紙のインタビューに対してのお答えも報道されております。

 いろいろな意見があるということを踏まえてでございますけれども、先ほどの手続を前提にして十分になされたということでございますが、改めて、前回の連休前の本委員会では、政府が、文科省と原子力安全委員会との間で完全に私どもが納得できるような御説明が必ずしもなかったということでございますので、まず文科大臣の方から御説明いただいて、その後、きょうはお忙しい中、班目安全委員長にも御出席いただいておりますので、班目委員長の方からも簡単に御説明いただければ幸いだと思います。

高木国務大臣 先ほどのお尋ねでもございました、いろいろ経過はそのとおりでございまして、特に、条件というものがございます。

 改めて、四月十九日付で、私たちが原子力安全委員会の助言を求めた中で、まず一つは、継続的なモニタリングの結果について、少なくとも二週間に一回以上の頻度を目安として、原子力安全委員会に報告をすること、二つ目には、学校などに一台程度ポケット線量計を配付して、生徒の行動を代表するような教職員に着用させ、被曝状況を確認すること、こういうことでございました。

 そういうことを私たちとしては今なお十分受け入れながら、配慮をしておるところでございます。

 そこで、この四月十九日に取りまとめた暫定的な考え方について、これは福島県が四月五日、六日、七日、学校の校庭あるいは幼稚園の園庭について調査をしておりまして、我々はこの調査をも踏まえて、四月九日以降、原子力安全委員会とさまざまな論点について意見交換をさせていただいております。

 この暫定的な考え方について、年間二十ミリシーベルトを浴びてもよいというものではありませんで、あくまでも国際放射線防護委員会、ICRPの勧告を踏まえて、年間一から二十ミリシーベルト、いわゆるこれは非常事態収束後の参考レベルでありますが、この参考レベルを暫定的な目安として、今後できる限り児童生徒などが受ける線量を減らしていくことが適切であるというものでありまして、この点について、原子力安全委員会との間で見解に違いはないと私は考えております。

 また、内部被曝の件がございました。内部被曝の影響については、土壌分析の結果から、放射線全体の平均二%程度であることについて、原子力安全委員会に説明をしてきたところでございます。原子力安全委員会としては、一般論として、子供にとっての内部被曝の影響は小さいとは言えないので注意が必要であることを述べたものであると承知をしておりまして、私どもも、子供の感受性を考えますと、できるだけ子供の安全については十分配慮をしなきゃならぬ、今でもそのように思っております。しかし、このことについても、両者に相違はないと私は思っております。

 なお、各学校の空間線量率を、中学校では一メートルの高さ、小学校では発達段階に応じて五十センチの高さで測定をするということをしております。

 先般のこの委員会におきましても、議論が出ました。一般的に、受ける線量を合理的に達成できる限り低くするために保守的な対応が望ましい、いわゆる原子力安全委員会はそのような考え方でございまして、個別の具体的な計測方法については文部科学省が判断すべきものである、こういう認識だと思っております。

 私どもとしましては、放射線審議会のいわゆる標準的な物差しとして、地上から一メートル、こういうことでずっと線量をはかってまいりまして、あえて、発達段階があるということで、五十センチもはかろう、このようにしたのでございます。

班目参考人 文部科学省と原子力安全委員会との間の話し合いの結果の合意事項については、ただいま大臣の方からお話があったことに、まさに相違ございません。

 それで、委員から御指摘がありました、まず、測定の高さの件でございますけれども、原子力安全委員会が求めているのは、合理的に達成可能な限り被曝線量を下げるということでございますので、そういう意味では、五十センチの高さでも計測していただいたということを、むしろ高く評価しているぐらいです。

 ただ、細かいところでちょっと行き違いがあったかと思います。というのは、二十ミリシーベルト・パー・イヤーという値は、線量限度的な、そこまで浴びてもいいよという値ではなくて、あくまでも一から二十の間で合理的に達成可能な限り下げる、こちらの方にむしろ力点がございます。そういう意味では、もし五十センチのところで高い線量があるならば、やはりそこはそこでちゃんと対処してほしい、これは当然のことなので、そういうあたりでのそごがちょっとあったかと思っております。

 それから、内部被曝の問題についても、現在、評価していただいた。それは了承してございますし、それから、いろいろ計測していただいています。内部被曝、特に我々が気にしているのは、土ぼこりを呼吸によって吸うことでございますけれども、このあたりについては、現在、文部科学省の方でも計測をしていただいています。

 ただ、まだ検出感度以下というようなデータしか出てきませんので、そうしますと、線量限度的な値、要するにこれ以上浴びてないということを確認するのだったらそれで十分なんですけれども、できる限り下げるということからいくと、もっと厳密な計測をしていただきたいというような話を、実はきのうの原子力安全委員会の臨時会議なんかでもお願いしたところでございます。

 基本的な考え方としては、文部科学省と原子力安全委員会の間に考え方のそごはない、これは確かでございます。ただ、文部科学省の方のいろいろな具体的な施策のあり方、これは文部科学省の方で考えていただくので結構なんですけれども、特にそれの説明のあり方については、いろいろともうちょっと心がけていただきたいことがあるかなというふうには思っておりますけれども、これはこれからも原子力安全委員会としても文部科学省の方に助言していきたいと思っているところでございます。

松宮委員 大臣、そして班目委員長からのお話で何となく理解はしたいと思いますが、ただ、今、班目委員長が御指摘されたようなそごがあったとすれば、今はもうそのそごは解消されていると理解してよろしゅうございますか。(班目参考人「はい」と呼ぶ)はい。

 あわせて、これから文科省と原子力安全委員会とのコミュニケーションにつきましても、事務レベルではダイレクトに、そして、政府にああいう災害対策本部が設けられているのであるならば、かつ、そのメンバーとして高木大臣も入っておられるはずでございますので、災害対策本部を通じての文科省とそれから安全委員会とのコミュニケーション密なるものを、そしてそごの再来がないようにということをぜひ期待させていただきたいと思います。

 それから、改めてでございますけれども、どうしてもやはり、二十ミリシーベルト・パー・イヤーの値はマックスであって、今私どもが理解しているのは、限りなくこれはICRPの勧告に基づく参考レベルとしての、平常時においても一ミリシーベルトを目指して努力する、そういう理解ですし、文科省からも私どもはそういう説明はちょうだいいたしております。

 そうであるならば、今、班目安全委員長が御指摘になった点と平仄は合う、そごはないと思いますけれども、そこは、一言で結構でございますが、そういう理解でよろしゅうございますか。

高木国務大臣 この暫定的考え方につきましては、年間一から二十ミリシーベルトを、学校の校舎、校庭の利用判断におけるあくまでも暫定的な目安とさせていただきました。これについては、我々としてはできるだけ線量を減らすこと、これに努めなきゃならないということであります。この考え方は、何度も申し上げますけれども、国際放射線防護委員会の勧告を踏まえて、そして原子力災害対策本部が原子力安全委員会の助言をいただいて取りまとめたものでございます。

 暫定的な考え方というのは、年間二十ミリシーベルトまでを受けてもよいということを意味するものではありませんで、例えば、今の学校生活あるいは自宅での生活パターンを考えて試算をしてみますと、事故発生から一年間の積算線量は多くても十ミリシーベルト程度になるのではないかという結果が出ております。もちろん、学校の校舎はコンクリートがほとんどでありますし、木造に比べたら遮へい率が非常に高いとか、それから、子供が屋外で活動するのが八時間ということをとっておりますので、いろいろ子供の生活パターンを考えても、そのことをずっと計算してみますとその程度になるということが明らかになっております。

 また同時に、大事なのは、今言われましたように、ダストを含めたきめ細かいモニタリングだ、このように思っておりますので、これについてはこれからもしっかりやっていく。

 同時に、学校の教職員の皆さん方にも積算線量計を携帯していただいて、被曝の状況について確認をしていくということでございます。このことについて、五月十日に、五十五校・園の平均が毎時〇・二二マイクロシーベルトであるという十分低い結果が報告をされております。毎時〇・二二マイクロシーベルトでありました。

 なお、この考え方というのは、あくまでも夏休み終了までの暫定的なものでありまして、継続的に我々は低く抑える努力をしていく。また、当然のことながら、改めて申し上げますけれども、きっちり原子力安全委員会の方に計測結果を報告して、評価をいただくということにいたしておりますので、私どもとしては、児童生徒の学校における活動について、最大限これからも慎重に見守っていきたいと思っております。

松宮委員 時間の関係で、本来お尋ねすべき二十ミリシーベルト・パー・イヤーの問題についてまだあったのでございますけれども、一言、最後にこの問題についてのお願いでございますが、文科省、そして原子力安全委員会も、簡易平明で、クリアカットで、かつスピーディーに、関係者のみならずメディアを通じて、やはり国民にこの問題についてぜひ情報伝達というのを改めてしていただきたいと思います。

 きのうも、日本医師会の方からは、やはりこの問題については問題だという意見表明がなされたというのもきょうメディアに出ております。また、やはり今御説明いただいたようないろいろな手続を経て打ち出され、かつ、これを受けとめて今福島県下の各学校関係者は動いているわけでございますし、父兄も、その数値を信頼しながら子弟の通学等々を期待して見守っていると思います。

 そういう心配にもおこたえいただくためにも、そしていろいろなところからいろいろな意見が、きょうもまた先生方からも出ると思いますけれども、わかりやすい格好で、繰り返し、簡明で迅速でクリアカットな御説明というのをぜひタイミングよくしていただきたいと思います。

 そして、残された時間でございますけれども、原子力研究開発機構についてちょっとお尋ねさせていただきたいと思います。

 もう既に先般の勉強会で、文科省サイドからは、JAEA、原子力機構は、その持てるパワーでもって、能力でもって福島原発及びこの事故に伴う放射線計測、モニタリング、分析等々について格段の御尽力をいただいているという御報告をいただきましたが、連休中の五月六日に、改めて理事長を本部長とする福島支援本部をお設けになられて、本格的に今後予想されるであろう諸般の問題について積極的に対応していかれるということを発表されたと理解しております。

 理事長、その目的、そして今後どういう方向でJAEAとしては問題解決に寄与されようとしているのかということを御説明いただきたいと思います。

 実はもう既に、四月の中旬に、東京電力が収束のための三つの段階、スリーステップスの工程表を出しました。私自身は、まことに泥縄で出したなと思っていましたが、案の定、きのうになって、F1、福島第一発電所第一号機については完全なメルトダウンなんです。きのうまでは東京電力は、損傷だという格好で来たんですけれども、メルトダウンだったし、班目委員長の方は、もうそんなものは最初からわかっていたというようなお答えもきのう記者会見か何かの場でされたようでございます。

 そういうことでございますから、まだ本当に完全に収束をするという見通しは私は立っていないと思いますが、だからこそ、なおかつ、やはり日本の知見、総力を挙げて、あの不幸な事故の一日も早い、しかも安全な収束、そして、それから後も大変なタスクが我々の前には山積しているわけでございます。今進行中の除染の問題もそうですし、それから安定的な冷却、恒常的な冷却をし安定させるというのも、まだ道半ばまで行ったのかどうかもわからないというようなことでございます。しかしその先には、やはり解体なり、あるいは、飛散した放射能で、飯舘村を初め、あまたの周辺自治体の農耕地等も汚染されておりますので、この除染の問題等々もございます。

 そして、もっと言いますと、きのうは民主党の党内で東京電力の補償問題についての議論が分かれて、どうやら補償スキームの決定が一日おくれたようでございますけれども、あの補償スキーム、巷間伝えられるところによると、東京電力が見積もっている解体費用だけで一兆五千億円という声も聞こえてきております。これも、本当に、効率的にどう安心、安全を旨としながら進めていくのか。

 これは世界の英知を結集してやっていかなくちゃいけないということは当然でありますけれども、とりわけその中でも、日本では、組織体としては原子力研究開発機構がこれまで、規模はともかくとして、そういう経験も持っておられるわけですから、その辺も視野に入れて、今後、JAEA、原子力研究開発機構として、どう福島事故に対応されていこうとするのかという意図も表明いただければ幸いです。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 私ども機構といたしましては、福島事故に係る状況認識につきましては、ただいま先生のおっしゃったとおりでございまして、原子力開発機構は我が国唯一の原子力にかかわる総合的な研究開発機関と位置づけられておりますので、私どもとしては、その置かれている立場をよく認識し、この事故の収束、及び、その事故によって周辺の皆様方に大変御迷惑、御心配をおかけしているわけでございますが、その周辺の皆様方のためにできることは何でもしていきたい、このように考えております。

 具体的には、プラントの事故収束及びその廃止措置等につきましては、これからいろいろなことが課題として出てくる、このように考えておりまして、先生がおっしゃいますように、私どもとしては、例えば「ふげん」につきましては、廃止措置を、今鋭意その事業を進めているところでございますし、そういう経験を生かすとともに、あるいは、燃料の処理につきましては、東海村に再処理工場がございますので、そこで得られた技術、知見をできるだけ生かさせていただければというふうに考えております。

 それから、周辺の皆様方に対しましては、先ほどもここで御審議ございましたが、校庭、園庭の除染、さらには田畑等、地元の方々がいろいろな活動をなさるに当たって、我々として考えられる環境修復ということについても技術的な検討をさせていただいて、提案をさせていただきたい、そんなふうに考えております。よろしくお願い申し上げます。

松宮委員 ぜひ積極的に、持てる知見、能力を総動員して、この福島原発事故に伴うリパーカッションというのをできるだけ抑えていく、そういう方向での復旧というのをお願いしたいと思います。

 最後に一言だけ。

 とはいえ、政府全体としては、あの福島事故を契機として、総理御自身が五月十日には、昨年の六月に策定したエネルギー計画を抜本的に見直すということになっております。

 あの計画では、二〇三〇年度には、原子力エネルギー、日本の電力エネルギーに占めるウエートを今の三〇%前後というのを五〇%へ持っていく、十四基アップして、稼働率も六十数%から九〇%に持っていくという計画でございましたが、これはもうゼロベースになったということを前提に考えますと、恐らく、原子力研究開発機構、JAEAのこれからのありようというのも、私の選挙区、地元は「もんじゅ」でありますけれども、この「もんじゅ」のありようも含めて、あるいは核燃料サイクル問題も含めて、もう一回改めて検討し直す。その中で、JAEAのありようというのもこれからしっかりと、もう間もなく二次補正もありますけれども、来年度の概算要求の話もあります。

 そして、経産省では、なぜか知らない、原子力関係者がほとんど入っていない、有馬さんを座長とする賢人会議もきのうスタートしたようでございます。あそこでどういう議論をするのかよくわかりませんが、政府全体として、文科省もそして安全委員会も、あるいは知見を持っておられる、能力のある研究開発機構なんかも直接、間接に参加しながら、日本のエネルギー政策のありようというのを、ぜひやはりもう一回ゼロベースで打ち立てる。

 その中で、安全委員会はもちろんでありますし、文科省もそうですけれども、原子力研究開発機構がどういう位置づけになって、何を主たるタスクとしてこれから取り組んでいくべきかということについて、組織全体としても大変大きな課題が投げかけられていると私は思いますので、その辺は文科省と一体となって、ぜひいい方向、いいベクトルでの方針が出ますよう期待しながら、時間になりましたので、私の質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、下村博文君。

下村委員 おはようございます。自民党の下村博文です。

 まず、浜岡原発についてお聞きしたいと思います。

 菅総理は五月六日の記者会見で、中部電力の浜岡原子力発電所の原子炉をすべて停止する要請を行ったと発表されました。理由について菅総理は、浜岡原発で事故が発生した場合、社会全体に及ぼす甚大な影響を考慮した結果だと説明をしております。

 確かに、これは今の民主党政権だけの責任に転嫁させるつもりはありません。もともとこの浜岡原発について、あれだけ東海地震源の中心的なエリアになぜつくったのかということについては、地元住民を中心として危惧があったことは事実でございます。また、今後三十年以内にマグニチュード八程度の東海地震が発生する可能性が八七%ある。これは文部科学省のデータですが、これを引き合いに菅総理が、状況が逼迫しているという点を挙げておられました。

 東海地震に十分に耐えられるように、防潮堤の設置など中長期の対策を確実に実施することが必要だとして、中長期対策が完成するまでの間、だからすべての原子炉の運転を停止すべきと判断したと説明をしておりますけれども、しかし、いかにもこれは唐突であるし、思いつきとして決定したとしかこれは思えないんです。

 法治国家ですから、やはり法律、ルールにのっとって関係機関に事前に相談したのか、それから与党民主党とも相談したのか。そういう中で、もちろん、地震はいつ起きるかわからないわけですからタイムリーな判断というのは必要だったかもしれませんが、それにしても、これは完全にもう独断で決めたというふうに思うんです。

 ですから、この浜岡原発については危惧があって、いろいろな手続の中で最終的にこれを停止することを要請するということはあってもいいかもしれません。しかし、その決め方、手続、そして菅総理の判断の仕方、これは大変な問題があるというふうに思っておりまして、その部分についてまず事実確認からして、そして、きょうは仙谷官房副長官にお越しになっていただいております、答弁をいただきたいというふうに思います。

 まず、五月六日に原子力安全・保安院が発表した「緊急安全対策の実施状況の確認結果について」、これでは、例えば「中長期対策」として、津波に対する防護措置が各電気事業者において措置されているかなどを確認し、「まとめ」において、「各電気事業者等から報告のあった緊急安全対策は、適切に実施されているものと判断する。」というふうにこの五月六日時点で言っているんです。

 そして、中部電力の浜岡原子力発電所に対しても、四月二十一、二十二日、そして直近の五月五日、立入検査をして、その結果を踏まえて原子力安全・保安院は「緊急安全対策は、適切に実施されている」と判断した、そのように承知をしておりますが、そのことについてまず事実確認、原子力安全・保安院にお聞きます。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 この四月二十日に、中部電力から緊急安全対策の実施状況の報告を受けました。その後、保安院といたしまして、四月二十一日、二十二日、さらには五月五日に立入検査等を行いました。

 その中では、電源車あるいはポンプ車等の資機材の配備状況、あるいは緊急時の対応マニュアルの整備状況とか、あるいは緊急時対応訓練の実施状況について、内容を確認してございます。

 その結果、先ほど先生も御指摘のとおり、これは五月五日になりますけれども、浜岡原子力発電所の緊急安全対策は「適切に実施されている」というふうな判断に至った次第でございます。

下村委員 菅総理の記者会見の前日に原子力安全・保安院は、「緊急安全対策は、適切に実施されている」、こういうふうに報告をしているわけです。そして海江田経済産業大臣は、この結果を受けて五月六日に、「防潮堤の設置、原子炉建屋の水密化工事や空冷式非常用発電機の高所での設置など、各発電所の立地環境に応じた中長期的対策を進める計画を有していることも確認した。これにより、安全対策の信頼性が更に向上する。」という談話も発表しているわけです。

 菅総理の会見は、この原子力安全・保安院が浜岡原発に立入検査を行った翌日、なおかつ海江田大臣が談話を発表したその当日にもかかわらず、短期間で浜岡原発についての津波に対する防護措置などの評価を変更して、そして、運転停止を急遽菅総理がみずから要請せざるを得ないような状況がそのわずか数時間に生じたのか、重大な何か問題があったのか。これについて原子力安全・保安院にお聞きします。

田中委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

田中委員長 速記を起こしてください。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 緊急安全対策のうち、短期的な対策につきまして適切な実施が行われているということを確認できますので、津波による全交流電源喪失という今回の福島で起きたような事象が発生いたしましても、給水による冷却を図り、多量の放射性物質の放出などの深刻な事態に至ることがなく冷温停止状態に原子炉をつなげることができるというふうに考えてございます。

 さらに、防潮堤の設置、あるいは原子炉建屋の水密化工事、あるいは空冷式の非常用発電機を高いところに置く、そういったことを通じまして、各発電所の立地環境に応じて中長期的な対策を進めるというふうな計画も確認している。それは先生御指摘のとおりでございます。これにより、中長期的な対策といったものもちゃんとなされているということで、全体として安全対策は信頼性がさらに向上するというふうに認識しているところでございます。

 そこが、緊急対策についての対策が本当にちゃんとやれているのかどうかというような確認をしたところでございまして、さらに、他方、そういった状況に加えまして、想定されます東海地震というものが、これも先生御指摘のように、三十年以内に震度六強の地震に見舞われる可能性が高い、八四%だといった状況がございますので、こういう大規模な津波が来るかもしれないという切迫した状況という固有の浜岡の状況を踏まえまして、中長期対策がとられるまでの間、その浜岡原子力発電所の停止を要請するというふうな判断に至ったというのが現状でございます。

下村委員 前日まで原子力安全・保安院では安全確認をしていると。にもかかわらず、急に菅総理が重大な事実を新たに、何か保安院なり関係機関から通知があったのでないのにもかかわらず、このような唐突な要請をしたということであります。

 報道によれば、原子力安全・保安院はこの菅総理の会見まで中部電力の浜岡原子力発電所の停止要請を知らなかったということですが、これは事実かどうか確認します。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の要請に関しましては、大臣自身が中部電力浜岡原子力発電所の視察報告を兼ねまして総理にお会いをいたし、地震発生に伴う大規模な津波襲来の切迫性を考慮して、一層の安心のための措置が必要ではないかと相談したというふうに聞いてございます。その場ではいろいろなことを考慮しながら熟慮を重ね、国民の安全と安心というものを考えた結果、停止の要請を決断したというふうなものと承知してございます。

 原子力保安院といたしましては、例えば浜岡原子力発電所に関するいろいろなデータ、そういったものを提供しているといったことがございますので、総理の記者会見が行われるまで我々が停止要請を知らなかったというふうな事実はございません。

下村委員 つまり原子力安全・保安院は、事前に菅総理の会見まで停止要請を知らなかったということですね。確認をしましたが、そういうことですね。

 そして、今も出ましたが、担当の海江田経済産業大臣、きょうは松下副大臣が来られています。松下副大臣は、菅総理がこのような記者会見をする、停止要請をするということについては事前に話があったんですか。

松下副大臣 事前に秘書官を通して私のところに、こういうことを決断するという連絡がございました。

 先ほど保安院の話がございましたけれども、事前に保安院からいろいろなプラントに関する資料や必要なデータというものはしっかり大臣を通して提出してありますので、全くそのことを知らなかったということはないと私は考えております。

下村委員 松下副大臣、さっきの答弁と私の質問を正しく聞いていただきたいと思うんですけれども、前日まで原子力安全・保安院は、この浜岡原発については、きちっと調査した結果、安全については心配ないと。それから、当日の六日には海江田大臣が視察した結果、防潮堤はつくる必要がある。しかし、この報告においても、すぐ今ここで菅総理が急に停止要請をしなければならないそのようなデータ、材料は菅総理にはそもそも提出していないし、また、そういうデータそのものは保安院の中ではつくっていなかったということだと思いますよ。

 ただ、確かに、この三十年以内に震度六強の地震が起きる可能性、これは、ことし一月一日が基準日の防災科学研究所のデータでは、浜岡原発において八四%あった。次に確率の高い女川原発が八・三%であるから、地震発生の確率が極めて高いというのは事実です。しかし、きょうあしたということかどうかわからない。三十年以内の問題ですね。確率が低かった福島第一原発においても想定外の大規模な地震が発生したということを考えれば、この危険性の確率のみで評価するということはできないわけです。

 ちなみに、このデータによれば、福島第一原発において今後三十年以内に震度六強の地震が起きる可能性は〇・〇%だったわけですね。にもかかわらず、あれだけの大きな地震が起きたわけです。

 そういう意味で、地震の危険性に安全に対応するということを考えると、これは、今回の菅総理の浜岡原発の要請を受けて、ほかのすべての原発が設置されている都道府県の首長においても大きな不安が広がっております。このままであれば、菅総理の唐突な浜岡原発停止要請によってすべての日本の原発が停止せざるを得ない、こういう状況になってくる可能性が非常に高いと思いますが、これについては、仙谷官房副長官としてはどのようにお考えになっていますか。

仙谷内閣官房副長官 菅総理の唐突なというお話がずっと頭についていらっしゃるわけでありますが、私も、事務分担として、この原子力事故問題あるいは浜岡の三号機の運転再開、再起動問題、全く関与しておりませんので、下村先生の御指摘が正しいかどうか確かめるすべはないわけであります。

 ただ、官邸におりますので、官邸情報を総合して申し上げますと、この今回の浜岡の三号機以下の停止については、経済産業省が主導し、あるいは海江田大臣が原子力保安院等々とも相談をしながら主導し、そして菅総理大臣のところに意見具申をし、五月六日に二人で記者会見をして、全面的におとめいただくように要請をしたというふうに私は見ておりますし、どうも事実はそうらしいと思います。

 それで、本格的にそういう動きになった発端は、先生も御指摘になっているように、四月二十七日に中央防災会議という会議が官邸で開かれました。これは、安保会議に並ぶ、ある意味で権威の高いといいましょうか、何というんですか、政府としても、その会議で出た議論というのは、大きな重要な参考資料にして政策を点検し展開しなければいけない会議だと思っているわけでありますが、そこで、東京大学名誉教授の阿部勝征先生がいらっしゃって、先生が先ほど御指摘されたような事実も摘記したわけでございます。

 私もその会議に出ておりましたが、これはある意味でショッキングな話で、先般のNHKの日曜討論の席上でもこの絵をお示しさせていただきましたが、この絵も示されたわけであります。

 この絵によりますと、先ほどおっしゃられた、要するに三十年以内に震度六以上でございましたか、マグニチュード八以上の地震が起こる可能性ということが指摘されておりまして、ごらんになるとおわかりのように、これは、太平洋岸は、私の出身地でございます四国も含めて、全部そういう大地震が起こる可能性が大変大きいというふうに言われておりますが、日本海側と瀬戸内西海岸の方はほとんどございません。

 これを見て経産省の方で、浜岡の三号機の運転再開が政治的な課題になろうとしている時点で、そこから内部的に検討を始められたと、私はこういうふうに見ておりまして、そのことは、私はそのチームに入っていませんけれども、官邸内で、官房長官あるいは原発問題を担当している補佐官というようなところで、ある種ぎりぎりの検討を加えて、六日の段階でああいうふうになったと、こういうふうに承知しております。

下村委員 仙谷官房副長官たる人が、チームには入っていなかったかもしれませんけれども、しかし、総理官邸における重要な立場の方が、菅総理が最終決断をする前に事前に相談がない、事前に話がない。これはもう官邸機能を呈していない。仙谷さんが煙たがられて外されているのかどうかということはわかりませんけれども、しかし、組織としては体をなしていない。こう言わざるを得ないというふうに私は思います。

 それから、今、原子力安全・保安院にそういう意味で確認をしてきたわけですが、五月六日に、「緊急安全対策の実施状況の確認結果について」、「適切に実施されているものと判断する。」という正式なペーパーが出ているわけですから、本当に今の御答弁のようなことがあったのかどうかということは、実際に仙谷副長官もそのメンバーに入っておられたわけではないわけですから、想像されての答弁のところが多々あったわけでありまして、事実かどうかというのはいかがなものかと思います。

 私が質問したのは、このような要請によって、先ほども資料を提示されていましたが、つまり浜岡だけで終わらないのではないか。ほかの原発においても、それぞれの自治体の首長の判断によって停止せざるを得なくなってしまうのではないか。結果的に、すべての原発が近々のうちに停止せざるを得ないような状況になってしまうのではないか。このことについてどう責任をとるか、どうお考えか、お聞きしております。

仙谷内閣官房副長官 先ほどおっしゃられた、私が外されているとかなんとかという話は逆でございまして、私は、官邸に帰るときに、何というんですか、へぼサッカーのように、一つのボールのところにみんなが集まるのはよくない、機能的に事務分担をして責任を持って、そして、連携はとって情報流通はよくしなければいけないわけでありますが、みんなが会議、会議、会議で寄ってやるというふうな仕組みはこういうときにはうまく機能しない、それぞれが分担をして責任を持ってやろう、こういうふうに申し上げたし、自分もそういうふうにしているつもりでございますので、何ら、この問題について私がプロセスの中で議論に入っていないのは不思議でないと思います。

 それで、私自身は、今も下村先生から質問されたことについて答弁する立場にも、資格もないと思います。個人的な見解を言えというんだったら幾らでも言いますけれども、ないと思います。

 その点については、重々、経産大臣それから総理大臣、官房長官のところにおいて十二分にその他の原発の稼働を堅持するという前提でお考えになった結果があの五月六日の要請ということだろうと、あるいはそういうことであるというふうに私は考えております。

下村委員 仙谷副長官、本来は総理にお聞きしたいことなんですよ。ただ、総理が出席されないので、総理のかわりに答弁をされる立場なんですね。ですから、仙谷さん個人に対して私は質問しているわけじゃないんです。総理に対する質問を総理のかわりに副長官にするというのがこれは委員会ですから、総理にかわって答弁してもらわないと困るんですよ、私は総理に対する質問としてしているんですから。

 そして、そもそも今回のこの浜岡原発について、要請とはいって、法律的なものじゃありませんから。結果的には、中部電力としてはこれは受けざるを得ませんね。受けました。次の日に会長がすぐカタールに飛んだそうです。つまり、火力発電所の新たな原油を確保しなくちゃいけない。このためにカタールとしては了承してくれて、結果的に、年間二千五百億円、さらに中部電力としては費用をふやして対応せざるを得なくなったということであります。

 先ほども答弁がなかったわけですけれども、このことによって全国の原子力発電所が、結果的に地元の要請等によってとめざるを得ないということを首長の方が判断をして要請する。その結果、再稼働ができなくなる。浜岡だけでなくて、ほかの原子力発電所すべてです。このことによって、我が国におけるエネルギー危機、経済危機、この一、二年のうちに急激に悪化するという可能性は非常にあるわけです。

 代替エネルギー等を考えていたとしても、これは一年や二年で対処できるわけじゃないわけです。長期的な展望の中で、これから原子力にかわる新たなエネルギー政策をどうしていくかということについては、もちろん考えていかなくちゃいけません。しかし、今唐突に菅総理がこのような要請をしたことによって、今後、我が国が壊滅的な、ことし、来年、数年のうちに経済的な危機、つまり、エネルギーが供給されないことによって、この夏には、東京電力管内だけでなく、全国において計画停電が行われざるを得ないかもしれない。あるいは、このことによって海外の企業も日本にはもう入ってこなくなる。日本の企業もこれから新たな投資を海外にシフトしていくということによって、大変な大ダメージが起きる可能性というのは非常にあると思うんです。

 このことについてどのように官邸としては考えておられますか。

仙谷内閣官房副長官 日本の誇るべきベストミックス路線を必ず堅持する、こういうふうに考えていると思います。

下村委員 総理との関係がどうだか、三面記事的な言い方はしませんけれども、答弁になっていませんよね。まあ、それ以上は求めません。

 せっかくですから、松下副大臣はどう考えますか。

松下副大臣 第二次世界大戦の後六十五年、日本人が一致結束して今日の日本の経済をつくってきた。その基盤は、やはり、しっかりとしたエネルギーが供給されたということが基盤にあると考えています。

 今、仙谷副長官がおっしゃったように、私もこの担当ですけれども、ベストミックス、太陽光や風力といった再生可能エネルギー、そして原子力、そしてまた化石燃料、水力といったものを上手に組み合わせながら、間断なきエネルギーの供給をしていくことこそ大事だと思っていまして、このベストミックスというのは非常に大事だと私も考えています。

下村委員 全く答弁になっていませんよね。

 つまり、今回の浜岡原発によって全国の原子力発電所も停止せざるを得ない状況に追い込まれるかもしれない。そのときに変わる経済危機、経済、エネルギーに対する対応をどうするか。これは早急に政府が責任を持ってぜひ至急考えていかないと、この国が天災ではなくて人災によって壊滅的に破壊に向かっていくことになりかねない状況であるということを、強く危機意識として持っていただきたいと思います。

 お忙しいでしょうから、ついでに仙谷副長官に一つだけお聞きして、お帰りになっていただいて結構です。

 それは、御承知のように、小佐古内閣官房参与が強い批判をして辞任をされました。今委員会において、前回においても、それからきょうにおいても参考人として要請をしているんですけれども、全く出てこられません。これは、守秘義務違反になるよというようなことを含めて官邸サイドから圧力がかかっているのではないか、そういう話も出ておりますが、事実確認はできておりません。

 参考人として来ないという中なので官房副長官にお聞きしたいと思うんですけれども、この小佐古氏が辞意表明に当たって二つの問題提起をしているんです。一つは、原子力災害の対策は法と正義にのっとってやっていただきたい、二つ目は、国際常識とヒューマニズムにのっとってやっていただきたいということを言われているわけです。

 具体的に、法と正義にのっとってやっていただきたいということについては、もう細かくは申し上げません。きょうの、今回のこの委員会のテーマであります、二つ目の国際常識とヒューマニズムにのっとってやってください、これについてはつまり、「小学校等の校庭の利用基準に対して、この年間二十ミリシーベルトの数値の使用には強く抗議するとともに、再度の見直しを求めます。」このことなんですね。つまり、これが認められないから辞任した、二つのうちの一つは。

 これはもう大変大きなことでありまして、これは福島県内の方々だけでなく、全国の子供を持っている親御さんからも、大変な危機感を持って、今、国会審議も含めて注目されているところでございまして、小佐古内閣官房参与がこのような理由で辞任をしたことについてどう今考えられているか、お聞きしたいと思います。

仙谷内閣官房副長官 私は全くその間の事情も存じ上げておりませんし、官邸としては、ああ、随分見解の違う方だったんだなという評価をされておるというふうに聞いております。

下村委員 そういうふうな、ある意味では全く一体感となった機能をしていないというところが、国民から見て、今の菅政権に対する大いなる不安と危惧、そして、本当にこのままやっていくということが我が国のこれからの復興対策として当事者能力を持ってやってもらえるのかということについて、大多数の国民が不安感を持っているということを申し上げたいと思います。もう結構です。

 そして、高木大臣にお聞きしたいと思うんですが、五月十一日の水曜日、当委員会で勉強会をしたんです。委員会として勉強会をするというのも極めてまれなことだというふうに思います。

 私も驚きましたし、すべての委員が驚かれたのではないかと思いますが、文部科学省には、三つの独立行政法人、そして二十一の公益法人、合わせて二十四もの原子力関連法人があったんですね。この二十四の原子力関連法人が存在していたのにもかかわらず、今回の原発事故に当たって、どのような活動をしているのかどうかということがよくわからない機関もたくさんあるというところが私は非常に問題であるというふうに思っております。

 さらに、職員数よりも役員数の方が数倍も多い法人というのも幾つもあるんです。

 例えば、日本医学放射線学会は、職員数が四人しかいないんですけれども、役員数が十八人もいるんです。プラズマ・核融合学会というのも、職員数五人のところ、役員数が二十人もいる。原子燃料政策研究会、これは職員が二人しかいないんですけれども、役員が十三人もいるんですよ。原子力弘済会、職員数五人のところ、役員数十一人。

 こういうことを見ていると、国民から見たら、完全にこれは天下りだ、そして、役人のみの利便のために存続しているのではないか、こう思わざるを得ないような部分があったということでありまして、これは我々の反省も含めて、やはり、こういうところこそ事業仕分けをしっかりしながら見直していく必要があるのではないかと思います。

 一応、議事録に残すために確認として質問いたしますが、これら二十四の原子力関連法人の総職員数、総役員数、それから、平成二十二年度予算における総事業費、総事業費のうちの国費の額、これについてお答えください。

土屋政府参考人 お尋ねの件でございますが、御説明させていただきます。

 文部科学省原子力関連法人、御指摘のとおり二十四ございますが、これらのうち三つの独立行政法人の常勤職員総数は、二十三年一月一日時点で六千八百六十九人でございます。また、二十一の公益法人は、二十一年十二月一日現在で千百五十一人でございます。

 また、役員数につきましては、現在、三つの独立行政法人につきましては二十三人、二十一公益法人につきましては三百六十五人でございます。

 また、二十二年度当初予算における総事業費につきましては、まず、三つの独立行政法人におきましては約三千百四十三億円、そのうち、国の財政支出は約二千九百五十八億円でございます。また、二十一公益法人におきましては、総事業費は全体で約八百十三億円、そのうち、国費は約七十五億円でございます。

下村委員 合計すると八千四百人ぐらいの人が原子力関連法人で働いている。にもかかわらず、今回のような対応がどの程度この八千四百人近くの人たちができているのかということについては、非常に問題があるというふうに思います。このような原子力関係法人は今後見直す必要があるのではないか、この整理、再編、統合も含めた大胆な見直し。

 そして、想定外と言われますけれども、今回のような状況について、しっかりと機能していくような新たな法人の制度設計というのもきちっと考えていく必要がある。これは政府全体の問題でもありますけれども、担当大臣のもとでこれだけの法人があるわけですから、文科省の中でも、もちろん関係省庁とも連動しながらということですが、これはもう高木大臣が先頭に立って大胆な見直しをこういうときだからこそしていく必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。

高木国務大臣 下村委員にお答えをいたします。

 先ほどお話がありましたように、この委員会で原子力関係法人のあり方について勉強会をされたということを聞いておりまして、敬意を表したいと思っております。

 その上で、この福島第一原子力発電所の事故に対しましては、これは原子力災害対策特別措置法に基づいて、緊急時環境放射線モニタリングとそれから緊急被曝医療支援などを、日本原子力研究開発機構そして放射線医学総合研究所などの文部科学省所管の独立行政法人を初めとして、文部科学省として総力を集めて取り組んでまいりました。

 また、所管の特例民法法人も、原子力安全委員会などに対して職員の派遣をしたり、あるいは二十四時間体制で各種の試料の放射線分析、あるいは健康相談のホットライン、電話相談への参加など、原子力事故対応の協力を行っております。

 今重要なことは、原子力発電所の収束に最大の総力を挙げることであります。引き続き、これに対する役割を果たしていただくことについて全力を挙げていただく、このことを強く求めております。

 同時に、その上で、委員御指摘のとおりに、今回は、あってはならないこのような事故に対して本当に機能しておるのか、役割が果たせるのか。これについては、徹底的な検証を行うことが極めて大事だと思っております。

 そのような意味で、委員も、これまでの反省を含めてということでございましたけれども、私たちとしては、原子力機関のあり方について、これは文部科学省はもとより、政府全体的な議論の中で文部科学省として必要な検討を行ってまいりたい、このように思っております。

下村委員 先ほど、小佐古前内閣官房参与についての話をしましたが、この小佐古氏が二十ミリシーベルトについて強い批判をしているということを申し上げました。通常の放射線防護基準に近い、つまり年間一ミリシーベルト、特殊な例でも年間五ミリシーベルト、これで運用すべきだろうと。警戒域であるにしても、緊急時、これはせいぜい二日か三日、長くても一、二週間ぐらいに運用すべき数値を、今現在、この時期に使用するのは全くの間違いだ、こういうふうに厳しく批判しているわけです。

 この二十ミリシーベルトについて、計画避難区域についてもこれを設定して、この指定から一カ月をめどに住民を避難させるということについて、事故発生から一年の期間以内の積算線量を二十ミリシーベルト、計画避難区域についてはこれをやっているわけです。

 一方、文科省においてこの積算二十ミリシーベルトについて、毎時三・八マイクロシーベルト以上の線量が計測された学校・園などは四月十九日現在で十三あった。五月六日現在では一校である。

 放射線が年間二十ミリシーベルトに達するおそれがあるという点では同じなのにもかかわらず、計画的避難区域では住民を避難させる。しかし、文科省の基準では、これら十三校・園は校庭及び屋外活動の制限にとどまる。つまり、国としての考え方に整合性がない。この点が地元の方々からしても大きな不安材料なんです。

 このことについて、暫定基準の原案を作成したのは文科省ですけれども、文科大臣はこの暫定基準案の策定に際してどのように関与したのか。また、暫定基準案の策定に際し原子力安全委員会の代谷委員は、年間十ミリシーベルト、こういうことも言っていたんですね。こういうことを実際考慮されたのか。これについてお聞きしたいと思います。

高木国務大臣 御指摘の暫定的考え方については、これは、国際放射線防護委員会の勧告を踏まえて、原子力安全委員会の助言を得て、原子力災害対策本部によって取りまとめたものでありまして、この取りまとめに当たりましては、私を初め政務三役の議論の中での方針を決め、そして、文部科学省として主体的に取り組んだものであります。

 策定の過程においては、原子力安全委員会の記者会見の中でも、ある委員より、子供が年間に受ける放射線の線量は年間十ミリシーベルトぐらいが目安との発言があったことは聞いております。

 しかし、これは原子力安全委員会の組織としての見解ではないと私は承知をしておりまして、私どもとしましては、学校における子供の安全、そして、福島県を初め地域が、学校教育における目安を早く示していただきたい、こういう要請がございましたので、私どもの判断としてそのように通知をしたところでございます。

下村委員 今の答弁のように、ICRPそれからIAEA、これの緊急時被曝状況における放射線防護の基準値を考慮して、事故発生から一年の期間に積算線量が二十ミリシーベルトに達することのないようにという話がありましたが、本当にそれでいいのかということについては、どうも明確な答弁になっているとは思えないです。

 労災認定は、五ミリシーベルトで認定になっている事例もあるというふうに聞いています。それからチェルノブイリについても、実際は五ミリシーベルト、十八歳以下は三ミリシーベルト、こういうこともあるんですね。

 ですから、本当にICRPそれからIAEAが言っている基準でやっているから二十ミリシーベルトで大丈夫だというふうに言い切れるのかどうかということについては、非常に危惧をします。

 これは小佐古参与だけでなく、ほかの原子力安全委員の方々も、これは代谷委員ですけれども、年間十ミリシーベルトと意見も言っている方だって、内部の中だっておられるわけでありまして、特にこの小佐古教授は、年間十ミリシーベルトという数値についても、これはウラン鉱山の覆土上でもなかなか見ることのできない数値で、つまり、せいぜい年間数ミリシーベルトだ、この数値の使用は慎重であるべきだ、こういうふうに言っているわけです。

 文部科学省の説明によれば、現実的に児童生徒が年間十ミリシーベルトの被曝をするというのを、けさの自民党の部会の中でも言っておりました。つまり、二十ミリシーベルトではなくて、実際は十ミリシーベルトぐらいの被曝ではないかと言っていましたけれども、しかし、本当に児童生徒の健康に影響を及ぼさないと言えるのか。これについて改めて、文部科学省と原子力安全委員会双方の意見についてお聞きしたいと思います。

合田政府参考人 お答えをいたします。

 放射線によります健康被害についてでございますけれども、この健康被害につきましては、先ほどのICRP、国際放射線防護委員会の二〇〇七年勧告におきましては、百ミリシーベルトよりも高い線量では、確定的影響とがんの有意なリスクの可能性が高くなるというふうにされているというふうに承知をいたしておりますが、私どもの、先ほどの問題になっておりますあの暫定的な考え方と申しますものは、そういったような点も含めまして、原子力安全委員会の方の助言を得た上で、一ミリから二十ミリシーベルトの範囲の中でできるだけこれを下げていくということを目指すという考え方に立っているものというふうに理解をいたしておりまして、そういったような方向で私どもとして鋭意取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

久住参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、五ミリ、三ミリ、いろいろな値がございますが、通常の状態は、一ミリで公衆の方々の被曝線量というものを抑えているわけです。

 ただ、残念ながら今回の場合は、一ミリを超えてしまった地域が幾つかあります。そのような場合に、国際的な基準では、チェルノブイリのいろいろな状況も踏まえまして、その後の反映すべき知見も踏まえまして、積算すると年間一から二十ミリシーベルトに相当するところでは全く日常的な活動をやめてしまうということではなくて、経済的な問題、政治的な問題、あるいは教育の問題、文化的な問題等々、そのベネフィットとのバランスでもって活動をしてもいいというのが国際的な基準であると私は理解しております。

 そういう中で文部科学省が、今回、一から二十ミリシーベルトの、参考レベルと申しますけれども、その範囲で活動を始めたい、学校教育を再開したいということを持ってまいられましたので、安全委員会は、それは妥当であるというように返事いたしました。

 先ほど、代谷委員のお話が出ました。その持っていらした御相談を何度かさせていただいたわけですけれども、その過程で、文部科学省の方から出された線量の測定結果、モニタリングの結果を見ますと、例えば、沃素の割合が非常に多い、一〇対一で沃素が多くてセシウムは少ない、そうなると、いずれ近々、一カ月もすれば沃素は減ってくるだろう、なくなるだろうということも考えられますので、代谷委員が多分その時点で十という数字を出されたのは、いずれ近々十ミリシーベルトぐらいには、二十ミリと今は計算されても、十ミリに下がるであろうという意味合いで代谷委員は発言されたんだと思いますけれども、そのとき、十ミリを線量限度的な意味で発言されたというように私どもは理解しておりません。一から二十ミリの間では活動を全くやめるのではないという、そのコスト・ベネフィットの関係で私どもは可能であるというように判断したということです。

下村委員 今、久住原子力安全委員会委員からお話がありましたように、文科省の方が一ミリから二十ミリシーベルトの基準を出したのでよしとしたということを言われましたけれども、小佐古教授も辞任表明の中で、「行政側の都合だけで国際的にも非常識な数値で強引に決めていく」、こういうことを言っているんですが、これの裏づけになるんじゃないかと。

 つまり、生徒の年間被曝許容量が二十ミリシーベルトを下回る、例えば今のような十ミリシーベルトと最初に設定すると、基準値を超える地域が大幅にふえてしまう。危険か危険でないかというのは、つまり、基準値をどの程度に設定したかどうかによって決定するということで、文部科学省の基準の設定は、うがった見方をすれば、大きな混乱を避けようとした政治的な決定ではないか、このように見ている国民の皆さんも非常に多くおられるんですね。

 このことについて高木大臣はどうお考えになりますか。

高木国務大臣 私どもとしましては、この決定については、そのような政治的な決定とは考えておりません。

 私どもとしましては、今申し上げましたように、これは政府の災害対策本部として取りまとめたものでございまして、あらゆる知見、専門家の意見を聞きながら、そして、最終的には原子力安全委員会の助言、この助言は、二十ミリシーベルトでいいというものではありません。一から二十ミリシーベルト、できるだけ線量を少なくする努力をしなさい。同時に、二つの条件、一つの条件は、何といいましても、ダストも含めて的確なモニタリングをして、速やかに報告をしなさい。もう一つは、学校における児童生徒の行動の中で、教職員の皆さん方にも協力をいただいて、携帯の線量計をつけて随時計測をしておくこと。そのようなことでございます。

 我々としても、今実際の計算をしておりますと、大体十ミリシーベルト前後になろうかと思っておりますが、これからも線量の計測をして、高目のところについては、不安解消のために何かできることがあればということで、我々としても内々検討もしておるところでございます。

 いずれにいたしましても、教育的な見地も踏まえて私たちとしては判断をさせていただいたものでございます。

下村委員 時間になりましたので終わりにしますが、内々検討じゃ困るんですよ。きちっと積極的に早目に対応していくということが国民の安心、安全に対する責務だというふうに思います。引き続き、この問題は提起をしていきたいと思います。

 以上で終わります。

田中委員長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 既に質問をされた委員の方々から、校庭、校舎等の利用判断における暫定的な目安、いわゆる二十ミリシーベルトの問題についていろいろな質疑がなされておりますが、公明党としても、この問題に対してきちんとした意見表明をし、質問をさせていただきたい、このように思います。

 私は、党の東京電力福島第一原子力発電所災害対策本部の本部長を務めております。この二十ミリシーベルトの問題が出てまいりまして、地元の方々からも大変不安のいろいろな声をお聞きしました。そういう声をお聞きした上でICRP勧告等を勉強したところでございますけれども、その結果といたしまして、二十ミリシーベルトの数字を大幅に引き下げるべきだ、このように党として結論を導いたところでございます。

 その立場でお話をさせていただきたいと思いますけれども、ある意味で、緊急時における一から二十ミリシーベルトという値、これはICRPの二〇〇七年のパブリケーション一〇三に出てきているわけですけれども、その作成にかかわった学者さんからのヒアリングによりますと、この一から二十ミリシーベルトという値は、まず、公衆に対しては一から十ミリ、そして、職業人に対しては二十ミリシーベルトまでという二つの考え方があって、そのバンドを合わせたものとして一から二十ミリシーベルト、そういう表記がされたと。しかしながら、パブリケーションの中にはその文章はございません。

 そこで、二〇〇九年、これは二年後ですけれども、パブリケーション一一一の中に、そこを明確といいましょうか、数字は使っていないんですけれども、明確にしたパブリケーションが出ておりまして、公衆被曝に対しては、二〇〇七年のパブリケーション一〇三、先ほど申し上げたパブリケーションです、で勧告された一から二十ミリシーベルトの範囲の下方部分から選定すべきであることを勧告する、このように二〇〇九年の勧告で明確にICRPが言っているわけでございます。このことが、世界の学術界の結論がそうである。

 これは、先ほど二〇〇七年の勧告をつくるときに、緊急時ですけれども、公衆については十ミリシーベルト、職業人については二十ミリシーベルトという基本的なベースを後から明らかにしたもの、このように私は考えております。

 これは大人も子供も同じ基準でございますけれども、子供の放射線に対する感受性が高いということ、また、先ほども下村委員から話がありましたけれども、管理区域が三カ月で一・三ミリシーベルト、これを単純に四倍して年に直すのがいいのかどうかちょっとわかりませんけれども、年に直しますと五・二ミリシーベルト、労災認定もこの五・二ミリシーベルト、このようになっております。

 こういうことを考え合わせますと、やはり二十ミリシーベルトはおかしい、高過ぎる、このように感じておりまして、また、地域の方の不安を払拭するためにも改善すべきではないか。

 また、それが合理的に達成できないものではない。例えば、校庭の表土を取るとか、また埋めるとか、天地返しというようなことも提案されているわけですけれども、そういう我々が達成可能な合理的な手段でそれが達成できるということもあるわけですから、ここは二十ミリシーベルトを撤回して、どの数字がいいかというのは後でまた質問させていただきたいと思いますけれども、まず、この二十ミリシーベルトを撤回すべきである、このように思いますが、文部大臣いかがでしょうか。

高木国務大臣 斉藤委員にお答えをいたします。

 斉藤委員も、特に被曝者問題を初め、あらゆるところでいろいろ活躍されておる。敬意を表したいと思っております。

 その中で、今お話がございました二十ミリシーベルト、委員御承知のとおりでありますが、私どもとしましては、この暫定的考え方は、できるだけ放射線を浴びないようにするために設定をした数値でありまして、よくちまたで言われますけれども、直ちに二十ミリシーベルトの放射線を浴びるという意味ではないことは十分御承知をしておられると思っています。

 したがって、いまだ福島第一原子力発電所の事態が収束をしていない中で、私どもは、国際放射線防護委員会、ICRPの勧告を踏まえて、緊急時被曝状況における参考レベル、これは年間百から二十ミリシーベルトのうち、最も厳しい値である二十ミリシーベルトを出発点にして、事故後の復興期における参考レベルである年間一から二十ミリシーベルトを暫定的な目安として、できる限りその線量を低く減らしていく努力をすることという考え方をとっておるわけでありまして、このことについては、子供たちの心理的なストレスなどにつながらないように十分配慮しながら、原子力安全委員会の助言を踏まえて、私どもとしては、原子力災害対策本部として取りまとめ、地元にお示しをしたということでございます。

 なお、この暫定的な考え方は、言うまでもなく夏休み終了までのものでありまして、文部科学省としては、児童生徒が受ける線量が継続的に低く抑えられる、そういうものを確認するために、これまた原子力安全委員会の助言の中でも、学校における継続的なモニタリング、特に、ダストも含めたモニタリングを二週間に一回以上の頻度で報告をすること、また、学校などに積算線量計を配付をして、教職員に携帯してもらって随時被曝の状態を確認すること、こういうことについては私たちとしてはしっかりやってまいりたいと思っております。

 なお、そのまた後に、さらなる安心のためには、できることについて私たちとしても検討を加えておるところでございます。

斉藤(鉄)委員 先ほどのICRP、二〇〇九年の勧告、その「一から二十ミリシーベルトの範囲の下方部分から選定すべきである。」ということを勧告した文章のその後に、では、どういう数字がICRPとしては望ましいと考えているかというのがございまして、これは直訳ですので大変わかりにくいんですけれども、「過去の経験により、長期の事故後状況における最適化プロセスを制約するために用いられる代表的な値は一ミリシーベルト・パー・年であることが示されている。」ということで、やはり一ミリシーベルト・パー・イヤーを目標にせよということも勧告をされているわけでございます。

 私どもは、今回の福島の現状を見ますと、この一ミリシーベルトが、達成すべき目標として選定することが非常に難しい。また、それを達成するために払わなければいけないいろいろな努力を考えると、これが非現実的であるということもわかります。しかし、この精神を用いるべきではないか。

 今、大臣は、二十ミリシーベルトとは設定したけれども、そこまでを浴びていいと言っているわけではない、できるだけ低い値を目指すんだとこうおっしゃるのであれば、その低い値を目指す合理的な値、これはわかりません、五なのか、七なのか、十なのか、しかし、先ほどの答弁からすれば、そういう合理的な目標を掲げても当然ではないか、論理的な帰結ではないか、このように思いますが、いかがですか。

高木国務大臣 私どもとしましては、あくまでも、一ミリシーベルトを目指してできるだけ線量を下げていく努力、ただ一方で、今、原子力発電所の事態の収束には至っておりませんので、適切な値というのは委員も大変難しいということも言われておりましたけれども、私どもとしましては、この三・八マイクロシーベルトというものを一つの目安にして、できるだけ線量を下げていく。

 特に、学校においてのコンクリートでの遮へい率等を考えますと、あるいは子供たちが外で活動する時間、一日八時間というのを私たちは目安にしておりますけれども、そういったことを考えますと、実際計算してみれば大体十ミリシーベルトぐらいではないかというのも出ておりますが、それも私たちとしては、できるだけ下げる努力、これからもいろいろな知恵を絞りながら、また、専門家の御意見も伺いながら取り組んで進めていきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 今、日本が世界に対して発信をする、こういう事故が起きた、公衆が被曝の危険にさらされている中で日本政府がとるべき態度は、私は国際標準に従うということだと思います。日本だけの特別な基準をつくらないということだと思います。

 その国際標準として、ICRPに従うということが、その勧告を十分考慮に入れた対応をするということが、私は、これからの日本が世界で信用されていくということの大きな要因になるのではないかと思うわけですけれども、なぜ、ICRPのこのような勧告、二〇〇九年のパブリケーション一一一等に書いてあるその勧告をあえて無視してまで二十ミリシーベルトにこだわられるのか、高木大臣ほどの人がよくわからないんですけれども、もう一度御答弁をお願いします。

高木国務大臣 これは私も専門家ではありませんけれども、今、あらゆる我々の知見、そして、国際基準であるICRPの基準の中で、私たちは、このことについては、一ミリを目指して取り組むことによってそれは可能になるのじゃないか、このように判断をいたしております。

 いずれにいたしましても、子供たちの健康、安全については、十分念頭に置きながらの決断でございます。これからも、早く事態の収束を目指す、同時に、日常の活動においても、できるだけ被曝に遭わないようなそういう工夫も一定程度お願いをしているところでございます。

 仮に、今も線量をはかっておりますけれども、線量が低下をしておる傾向も出ております。高いところにおいては、御指摘のように、土壌の改良等のことも含めて私たちとしては検討してまいりたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 久住原子力安全委員会委員にお聞きしますが、私が先ほど申し上げたICRP勧告の私の理解、今申し上げましたけれども、それは間違いないですよね。パブリケーション一〇三の考え方、そしてパブリケーション一一一の考え方、私がそれをどう読んで、どう解釈したかというのは間違いないですよね。

田中委員長 久住原子力安全委員会委員。参考人に申し上げますが、ちょっと大き目な声でお願いいたします。

久住参考人 わかりました。失礼しました。

 お答え申し上げます。

 先生の解釈に間違いございません。ただ、一〇三にも一一一にも書いてありますことは、とにかくこういうものを決めるときには、社会的、経済的、倫理的、あるいは文化的、あらゆるものを配慮して、そこの中でバランスよく決めてくださいというのが基本的な精神でございます。

 先生おっしゃるとおり、一一一はなるべく低いところからというようなことも書いてございますが、そのときに全体的なバランスでどこらから始めるのがいいかというのは、その状況によって違ってくるのではないかと思います。

 ですから、先ほど来文部科学省がおっしゃっています、今のレベルから低いところを目指していくという考え方は、私は今回はあり得るのではないかと思っております。

斉藤(鉄)委員 それでは、ちょっとこの問題についてはおきまして、もう時間がなくなってきました。

 最後に、十二年前の東海村ジェー・シー・オー事故のときは、文部科学省はまだ科学技術庁という形でした。科学技術庁の中に原子力局があり、原子力安全局があり、そして、その科技庁が事務局をする形で原子力委員会があり、原子力安全委員会がある。すべて科技庁の中にあったわけです。そのことが批判されて、できるだけ分離しようと。

 分離していくという考え方そのものは私は間違っていないと思います。もっと分離して、チェック・アンド・バランス、チェックをしなきゃいけない体制をつくらなきゃいけないと思いますが、反面、何というのかな、日本の原子力は我々がやるんだ、だれが何と言おうとおれが責任持ってやるんだという姿勢が、政府の中に、また、文部科学省の中になくなってきた。このように感じられてならないんです。

 その一つに民主党の間違った政治主導ということがあるかと思いますけれども、やはり、体制は分かれても、官僚やお役人が持っている専門知識は最大限使っていくということが今回の対処の中でも欠けていたのではないか。そのように思えてなりません。

 ジェー・シー・オー事故のときには、すぐ原子力安全委員会の委員長代理住田さんが現地に行きました。私も、現地の対策本部長、科学技術庁の総括政務次官でしたので行きました。ある意味では、政府が原子力委員会や原子力安全委員会と結束して、また、全官僚の知識も集約してそこで対処した、このように思いますけれども、今回、そういう政府の総力を結集するという姿勢がない。特に文部科学省、ある意味では先頭に立って頑張らなきゃいけないのに、その姿が見えてこない。

 このような気もいたしますが、大臣、最後に、私のちょっと昔話になりましたけれども、そのことも含めて、今の霞が関の原子力に対しての体制についての御見解を伺えればと思います。

高木国務大臣 斉藤委員御指摘のとおりに、御批判は甘んじて受けたいと思っておりますが、それぞれの持ち場、立場で全力を傾注しておる、このことだけ申し上げておきたいと思っております。

 しかし、ただ、私どもとしましては、従来、科学技術庁というお話がございましたけれども、私ども文部科学省が、やはり科学技術も含めてしっかりした体制をこれから以上に保っていかなきゃならぬという思いもございます。また、さきの特殊法人あるいは公益法人の件についてもお話がありましたように、今回の事故というのは、あってはならないそういう事故でございました。

 今回の事故をきっちり検証して、そしてそれぞれの組織、機構のあり方も含めて私たちは見直すべきは見直さなきゃならぬ、私はそのように思っております。

 今さらながら、改めて、科学技術という大きな責任を痛感しております。

斉藤(鉄)委員 しっかり、今回のこと、それからこれからの原子力行政も含めて文部科学省に頑張ってもらいたい、このように申し上げて、質問を終わります。

田中委員長 次に、池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 仙谷官房副長官にはお忙しい中お出ましいただき、感謝いたしております。

 今、公明党の斉藤鉄夫さんが、最後に、政府の総力を結集してという言葉を申しておりました。私は、この原子力問題に関しても政府の総力を結集する必要があるかと思っておりますので、きょうは、日本のエネルギー政策をどのように行っていくか、これは未来に向かって極めて重要な課題ではないかと思っております。

 私は、いつも、政治家として未来に何を残していくことができるのか、それが政治家の使命ではないかと思っておりますときに、与野党を超えてこれからの日本の姿を描いていかなければいけない。浜岡を中止すれば済む問題ではないと思っております。

 私は、フランスの原子力事情を知りたいと思いまして、一人で心細かったのですが、パリに行ってまいりました。御存じのように、フランスというのは五十八基の原子力発電所を稼働しております。そして、全電力量の七八%が原子力に依存しております。現在の原子炉開発、それからITERの原子力分野の研究開発を積極的に推進しております。

 なぜ推進しているかといったら、これは単純に二つあって、一つは、現状の快適な生活を維持したいから。二つ目には、中国、インド、フィンランド、韓国、ヨルダン、南アフリカなど、海外への原発輸出を積極的に推進している。そういう経済的な推進力、この経済力の担保のためでもあると思います。

 私たちの福島第一原発事故発生後にも、早期に日本に原発関連支援物資を提供いたしましたし、また、アレバ、女性社長でしたけれども、高レベル汚染水の処理とか土壌除去などに係る協力に向けた専門家の派遣等なども行っていました。

 五つの、原子力庁を初めとした、アレバ、そしてまた研究機関などがございまして、私は、原子力安全規制当局、ASNと、ASNを技術面で支援する機関である放射線防護・原子力安全研究機関、IRSNから話を聞いてまいりました。

 原子力安全規制当局、ASNは、民生用の原子力施設を規制することを目的とし、省庁から独立した機関として二〇〇六年に設立いたしました。五名の有識者から成る委員会で設立されておりますけれども、三名は大統領が決める。二名は、一名ずつ上院、下院の議長が選任して、罷免は行われない。

 日本でいいましたら、原子力安全・保安院と原子力安全委員会を合わせたようなものですけれども、申し上げたいのは、これが会計検査院のような独立性を持たせた機関なんですね。原子力安全委員会は内閣府、保安院は言ってみれば経済産業省ですよね。それぞれの省庁の下にある。これが私は問題なのではないかというふうに思っております。

 構成員は四百五十人、予算は約一・五億ユーロですか、二百億ぐらいです。〇・八億ユーロは、特別支援機関である放射線防護・原子力安全研究機関に対しての分析費用として支出しております。

 このASNの主な任務というのは五つございまして、一つは、言うまでもなく安全規制です。二つ目は原子力施設の許可、三つ目は検査執行、四つ目は緊急時の対応です。五つ目は国民への広報なんですね。国民への広報というのは、後で浜岡の、先ほど下村委員がおっしゃいましたけれども、これについても伺いたいと思っておりますけれども、やはりこの五つをしっかりとしていく必要があるのだと私は思っております。

 それの研究を補完いたします放射線防護・原子力安全研究機関、IRSNというのは、安全規制を担当する原子力安全規制当局を技術面で支援する機関として二〇〇一年に設立いたしました。原子力及び放射線のリスクについて評価、研究などを実施する。日本の原子力安全基盤機構と原子力研究開発機構の一部を合わせたような機関なんですね。福島第一原発の事故についても、日本政府などが公表しているデータに基づいて、放射線物質の拡散予測などを独自に実施しております。

 私、そのとき思いましたことは、日本は今まで一体何をしてきたのだろうか。日本が努力してきたことは、四万人の小中高校生に配付する副読本の中にも、大津波、大地震があっても原子力発電所は絶対安全ですという、この安全神話を徹底さすことにだけ努力をしてきたのではないか。

 私は、もちろんそれは私どもの反省も含めてですけれども、やはり必要なのは、これからいかにチェックをして安全性を保たせるかということではないかというふうに思っております。第一次的に、ストレスチェックとかリスク管理というのが今まで何もなされてこなかったのではないか。

 フランスでは、ストレスチェックを十年ごとに行って、リスク管理に力を注いでおります。つまり、危険を伴うことを前提として、原子炉の安全性の確認作業をきめ細やかに行っているんです。フランス国内においては、地震、津波という危険性が極めて低いです。低いですが、想定されるそれらの災害を超える規模を前提にした安全性の確保を事業者に求めているわけです。

 一時、想定外、想定外という言葉が出まして、余りにもそれがひどいので、今は鎮静化いたしましたけれども、私は、リスク管理というのは、やはり想定外のことをきっちりと管理することがリスク管理なんだと思うんですね。想定内のことを管理したって、それは別にリスク管理にならないのではないかと思います。

 私が仙谷官房副長官に申し上げたいのは、今みたいな組織のあり方、つまり、例えばSPEEDIにいたしましても、これは国土交通省と共管です。経済産業省の人も出てきて一緒になってやっていく。それから、大気は文部科学省がする。だけれども、水の方は環境省がしているのではないかと思うんです。何かみんな、省庁がそれぞれ別個にやっている。その省庁の下にあるということが問題ではないのか。

 私は、原子力政策に関する行政組織のあり方を見直さなければいけないのではないかと考えておりますが、それについての御見解を伺いたいと思います。

仙谷内閣官房副長官 これから日本が大変参考にすべきといいましょうか、参照にしながら、新たな原子力の安全を求める仕組みをつくっていかなければならない、そういう観点でフランスの事例を御紹介いただきました。

 私どもも、こういうフランスのやり方、そしてアメリカの現行のNRCでございますか、こういうやり方も十二分に参照しながらこれからのことを考えていかなければならないのではないかなというふうに思っておるわけでございますが、大変貴重な事例を提起いただきましたことを感謝申し上げたいと存じます。

 ただ、私、今回はこの原発事故にはほとんどかかわっていないわけでありますが、従来、一般的に日本の統治構造の中で、ある種、行政をどのような機関でどのようにチェックしていけばいいのかということは問題意識として十二分にございまして、そういう観点からも、いろいろ日本の行政諸制度を見てきたつもりでございます。

 それで、日本人は、農耕民族であるからなのか、対立という言葉が大変嫌いでございます。私に言わせれば、対立構造というのは敵対というふうになって、そこで働く人々は、異見、異なる意見を言うとすぐその組織の中からはじかれるとか、そういうことが多々ございます。

 私は若いときから、敵対と対立というのは違う、あえてもうちょっと言えば、対抗といいましょうか、緊張ある対抗関係がいろいろなところにないと、それぞれが堕落してしまうというような思いで世の中を見てきた部分もございます。

 したがって、行政を監視する機関というふうなもの、あるいはチェックする機関というふうなものが一般的にも重要だし、とりわけ、こういう国民の生命身体の安全そのものにかかわる原子力行政というふうなものについては、おっしゃるように、独立した、非常に独立性の強い権限を持ったそういう規制当局といいましょうか、規制機関も必要なんだろうなと改めて最近感じておるところでございます。

 ただ、先ほどからも申し上げておりますように、制度、組織というのは、これを運用する人間の方がうまく使えるかどうかというのも半分あると思っておりまして、人間がみずからのミッションを自覚して、あるいはそこを構成する人が自覚をして、あえて緊張感のある運用といいましょうか、働きをしませんと、せっかく独立しているある機関が制度としてできておりましても、ぐずぐずになってなれ合って、わけがわからなくなるという、そのことによって事故がもし起こるというふうなことになれば、これは大変なことでありますから、制度も大事、そして、そこで働くといいましょうか、それを運用する人間も同じ比重ぐらいで大事だろうなと思っております。

 私は、そういう観点から、この間の、戦後六十年でしょうか、あるいは原子力発電というのが商用に供されてから四十数年でございましょうか、改めてこの規制のあり方というのを、今回の事故を検証する中から見詰め直してみないといけない、こういうふうに考えているところでございますので、きょうの池坊先生の御提起は大変ありがたい御提起だったというふうに考えております。

池坊委員 もし、少しでもありがたい提起と思っていただけますならば、政治家は、実行なくしては政治家ではあり得ないと思いますので、それを実行していただけたらと思います。

 制度とそれを動かす人材とがどっちが先かというのは、従来の役所などを見ておりますと、やはり制度が先になるのではないかと私は思っております。そして、検討に当たりましては、単なる組織だけではなくて、規制行政機関、検査機関などの第三者機関設置等の役割分担、先ほど役割分担ということをおっしゃいました。役割分担を図って、それぞれの責任を明確にしていくことが私は極めて重要だと思っておりますので、それについても簡潔にお答えいただけたらと思います。

仙谷内閣官房副長官 基本的におっしゃるとおりでございます。

 ただ、今回の事故に関しては、これから本格的な検証の、あるいは事故調査の委員会といいましょうか機関を、専門家に入っていただいて、専門家も多分、今私がお伺いしているところによりますと、原子力工学とか構造力学とかそっちの、理科系の専門家のみならず、ある種、失敗学といいましょうか、なぜこういうことになったのかという、社会システム工学とでもいうんでしょうか、あるいは法律的な観点から、コンプライアンスの観点からはいかがだったのかという、そういう総合的な調査委員会になるのではないかと思います。

 そのプロセスの中で諸外国がうまくいっているとすれば、あるいはアメリカの場合には、スリーマイルの体験、経験を踏まえて今のような形になっているんだと思いますので、そういうことも参照し、あるいはフランスが、堂々たる核エネルギー主権を主張されて、それを万全なものにするために多分、規制あるいは検査、あるいは専門的調査機関といいましょうか、人材を集めて助言をする、あるいはそこに注意を喚起するというふうな、フランスなりの万全の体制で臨んでいるということでございましょうから、よくこれも勉強させていただくということになろうかと思います。

池坊委員 日本においても、原発の安全性を高め、有効なチェック体制を構築することは、極めて日本の未来のために必要なのではないかと思います。

 浜岡を中止なさいました。さっきもお話に出ていました。五十四基のうちの三十四基、今中止しております。二十基は稼働しているんですね。これの安全チェックというのをしていらっしゃるのだろうか。この国民への情報開示というのはなされていないのではないかと私は思うのです。

 先ほどのお話によったら、原子力安全・保安院の中西さんは、技術的には問題なかったと。国民が今、原発事故に対して不安を抱えておりますから、それを払拭するために浜岡を中止することは結果はよかったかもしれません。でも、民主主義というのはプロセスが大切なんです。日本というのは法治国家でございますから、ある日突然、浜岡を中止するようでは、本当にこれからの日本は怖いな、怖いと私は思いました。結果がよかったら何をしてもいいということではなくて、きっちりとプロセスをやはりお示しにならなければいけないんだと思います。

 菅総理が中止されるまでの経過は下村委員が先ほどお聞きになりましたので、時間がないから割愛させていただきますけれども、このようなことがこれから先も起こったら、国民は不安になるのではないかと思います。

 先ほどのASNの中にも、五番目に、国民への開示というのがございます。やはりきちんとした国民へのコンセンサスをとるということは、私はこの日本において極めて重要ではないかと思っております。政府がこれから英知を結集される原子力の問題、被災地の災害対策にかかわっていらっしゃいますので、そのことに関しまして仙谷官房副長官の御見解を伺いたいと思います。

仙谷内閣官房副長官 これも一般論になりますが、今保安院の方もいらっしゃるので、浜岡の安全性、あるいは、この間の福島原発の事故についての国民への情報の開示の仕方というものについては事実をお聞きいただければと思います。

 何せ日本も情報過多社会でありますから、保安院の方が適切に情報を開示しているということになっても、特にメディアの中でそれがどのように扱われているのか、あるいは、ある種大事なところが、保安院がこれが大事なんですよという情報開示をしても、それが余り大きく扱われないで、むしろかき消されていくというようなこともあったのかもわかりませんが、情報開示については、おっしゃるように、特に原子力の安全にかかわることについてはありのまましっかりと出す。

 ただ、ありのまま出すことの意味が国民によくおわかりいただけるような出し方ということも必要なのではないかと思います。つまり、数字の意味が、なかなか、私なんかは全くの素人でございますので、それほどわかりません。そこのところをゆがめないように適切な意味を、つまり解説してといいましょうか、それが重要なんだと思います。

池坊委員 時間が参りましたので終わりますけれども、国民は取捨選択する能力も持っていると思います。それほどばかではないと私は申し上げたいと思います。

 そして、この浜岡の中止に関しましては、やはり私は、総理は独断であった。リーダーシップと独断をちょっとお間違えになっているのではないか。これから先、こういうことが起こらないことを、一政治家として、一国民として願っておりますことをつけ加えて、私の質問を終わらせていただきます。

 きょうはありがとうございました。

田中委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 前回に引き続き、「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方」についてお聞きをいたします。

 前回、私の質問に、大臣の答弁と原子力安全委員会の答弁が食い違って、審議がたびたび中断をいたしました。きょうはそういうことのないように、真摯な答弁を求めておきたいと思います。

 まず、前回の宿題から始めたいと思うんです。

 前回の委員会で、中学校は地上一メートル、小学校は五十センチメートルを基準に空間放射線量を測定し、たとえ中学校で五十センチの高さで放射線量が高い値を示していてもノーマークになっている問題を取り上げました。年間二十ミリシーベルトという、ICRPがこれ以上は絶対に浴びてはならないという限界線量に基準を定めておきながら、中学校で、五十センチの高さであれば四・一マイクロシーベルトなどという高い数値が測定されていてもよしとしているのはおかしいではないか、こう指摘をいたしました。

 原子力安全委員会の久住安全委員は、文部科学省といろいろ議論してきた過程では、校舎外あるいはほかの場所においても三・八を超えるようであれば、そこは三・八以上と判断するというような説明を受けていると答弁をされて、大問題となりました。最終的に私が、ではもう一度、そういうやり方でよいかどうか助言を求めよと迫ったのに対して、大臣は、「当然、これは求めてまいりたい」と答弁をされました。

 大臣、原子力安全委員会に対して助言は求めましたか。そして、この問題はどのように議論され、どういう結論になりましたか。

高木国務大臣 宮本委員にお答えをいたします。

 前回の委員会で御指摘のありました点につきましては、改めて原子力安全委員会の見解を伺ったところでございます。

 原子力安全委員会としては基本的な考え方に関して助言をしているものであって、どこの高さで判断するかなどについては、助言された基本的な考え方に即して実施者である文部科学省において適切に判断されるものであればよい、こういうことで受けております。

宮本委員 先ほど、原子力安全委員会の委員長の方からもそういう答弁がありました。ただ、同時に、先ほども、五十センチで高いならこれはこれでちゃんと対処してほしいともおっしゃっていたわけですね。

 ですから、具体的な計測方法については文科省が判断するということであれば、これは文科省の方で、五十センチのところでは四・一と出ていながら、一メーターが三・八なのでこれはオーケー、こういう判断は文科省がおやりになったということでありますね。ですから、文科省の判断としては、今後しっかりとこの点は見直していく。

 やはり私が申し上げたように、三・八というのが限界線量から割り戻したものであるならば、たとえ一メーターというところで低くても、五十センチのところでそれを超えるような線量が出た場合にはやはり規制をするというふうに運用すべきである、見直すべきである、こういうふうに思うんですけれども、これは文科省の方の御見解をお聞きします。

合田政府参考人 お答えをさせていただきます。

 先生御案内のように、現段階では、校庭線量につきましてはおおむね低減傾向にございまして、当初十三校ございました屋外活動制限対象の学校は現在一校だけになっているわけでございます。

 将来におきまして新たな事態が生じるなどの状況がございましたならば、先生御指摘の趣旨も踏まえて、合理的に達成可能な限り低くという、いわゆるALARAの観点から検討してまいりたいというふうに考えてございます。

宮本委員 過去の問題じゃないと思うんです。今下がっているということでありますけれども、福島第一原発の現状は、昨日も、原発一号機の燃料棒が完全に溶融し、圧力容器の底に落ちていることが明らかになりました。

 東電の松本純一本部長代理は、燃料の形を維持できない状態で溶けていることは認識している、原子炉の底が完全に抜けているとは考えていないが、部分的に突き破ったことは否定できず、一部の燃料が格納容器に落ちていることもあると思うと述べました。

 東京電力は、原子炉の底に穴があいて格納容器側に大量の水があふれ出し、さらには格納容器からも原子炉建屋などに水が漏れ出ているという見方を示しております。危機的状況は一層深まっておりまして、予断を許さないという状況なんですね。

 ですから、再び何らかの原因で放射性物質が原発から漏れ出す危険はいまだに否定はできないわけです。その点では、今後の運用において、私が指摘したように、きちっと再検討し対応すべきだと先ほど局長の方からも答弁がありました。大臣もこれでよろしいですね。

高木国務大臣 いわゆる暫定的考え方については、これまでも申し上げておりますように、これは年間一ミリから二十ミリを学校の校舎あるいは校庭の利用判断における暫定的な目安として示しておりまして、二十ミリシーベルトでいいというわけではありませんで、あくまでも、できる限り線量率を減らしていくことが適切である、こういう考え方であります。

 また、毎時三・八マイクロシーベルトという数値も、屋外に八時間、屋内に十六時間、こういう安全サイドの前提でありまして、年間二十ミリシーベルト、放射線量を受けてもよいという意味ではないということは御理解いただきたい。

 例えば、これはもっと詳しく計算をした値が出ておりますが、今、児童生徒の平均的な生活パターンから見ると、四月十四日の測定時点で校庭の空間線量が毎時三・八マイクロシーベルトであった学校における事故発生から一年間の線量率は、多くても十ミリシーベルトではないか、こういう試算もあります。

 さらに、福島県内五十五校・園の教職員などに積算線量計を配付しておりまして協力をいただいておりまして、昨日、先月の二十七日から五月の八日までの測定結果を取りまとめました。この結果を見ても、実際の児童生徒が受ける放射線量の全体平均は毎時〇・二二マイクロシーベルトということになっておりまして、さきに述べた試算を用いた値と比べても相当低いところにある、このように承知をしております。

 しかし、これはあくまでも暫定的な考え方でございまして、私どもとしては、ほかに線量を下げる努力、そして夏休みに一定の見直しを行う、こういうことでございます。

 なお、冒頭話されましたように、今のサイトの状況は予断を許しませんけれども、我々としては、一日も早く安定した状況になるように全力を傾注しなきゃならぬ、このように思っておりますし、またそのことを期待しております。

宮本委員 詳しくやってみたら十ミリシーベルト以下、私が聞いたところでは九・九九ミリシーベルトという計算結果が出ておりましたけれども、だったら下げられるんじゃないですか。下げても差し支えないんじゃないですか。

高木国務大臣 私たちとしては、ICRPの基準に基づいて今このような考え方を示しておりますので、安心の上で計算したところ、そうでございますということでございます。

 したがって、これからもできるだけ線量の軽減の対応を図ることが必要である、このように考えておりますので、一応の目安として示した値は今の状況でございます。

宮本委員 いや、二十ミリシーベルトというのが安心できないという議論が起こっているわけですから、そして実際には十ミリシーベルト以下に抑えられるというんだったら、下げればいいんですよ。

 前回の委員会では、もう一つの体内被曝問題も問題になりました。しかし、これは大事な問題なんですが、きょうは当面するさらに重要な課題があるので、引き続き取り上げるということにしたいと思います。

 大臣、あなたは十日の記者会見で、暫定的考え方について、いろいろな専門家の意見を聞いて決めたものだから、ここはひとつ信頼してほしい、つまり二十ミリというものを信頼しなさい、こうおっしゃいました。

 端的に聞きますけれども、なぜこの二十ミリというものが信頼されていないか、おわかりですか。

高木国務大臣 いろいろな専門家の御意見もありますし、私どもとしましては、最終的には、原子力安全委員会の助言をいただいて、原子力災害対策本部として取りまとめを行ったものでございます。

 この上は、私たちとしては、二十ミリシーベルトでいいということでは決してなくて、少なくとも一ミリシーベルトを目指して、原子力発電所の収束を願うし、そして同時に、その間少しでも線量の軽減のための努力をしていく、こういうことでございまして、ぜひひとつ、そのようなことで御理解をいただきたい、このように思っております。

宮本委員 いや、もう全然現場も理解できていないんですよ。

 私、この五月九日に福島県に入りました。福島県教育委員会、あるいは福島市の教育委員会、郡山市の教育委員会からも直接聞き取りを行って、養護学校、小学校、保育園等々の現場を、運動場も含めて、この目で見てまいりました。

 どこでも、現場の関係者は怒り心頭という状況でありました。父母や県民の不安の声に対して、我々は専門家ではないので、国が決めた基準だからといって説明するしかない。ところが、その政府の内部から、とんでもなく高い数値だと涙を流して訴える記者会見をやられたら、もう説明のしようがないんだ、こう語っておりました。

 これ、私、小佐古さんの辞意表明の文章も持っておりますけれども、改めて、この事態が起こって、現場はもう本当に、この数値について信じられないという状況になっていると思うんですね。

 私、これはもう仕切り直ししかないと。この際、年間二十ミリシーベルトを撤回して、政府として改めて、中通りや福島市、郡山市なども含めて、放射能汚染の実態について正確かつ綿密に把握をした上で、もう一度、幅広い専門的、科学的知見を集めた納得のいく基準づくりを行うべきではないか、こう思いますが、大臣いかがですか。

高木国務大臣 これまで、私どもとしましては暫定的な考え方をお示しいたしましたので、これに基づいて、できるだけ線量が少なくなるように取り組むことでございます。

宮本委員 私、こうなってまいりますと、まさに、先ほど来他の委員からも出たように、小佐古敏荘元内閣官房参与にこの委員会に出てきていただいて、一体、政府内でのこの意見の分裂というものがどういう経緯で起こったのかということについてもただす必要が出てくると思います。

 委員長、これはお願いですけれども、元内閣官房参与小佐古敏荘氏を参考人として招致することを求めたいと思いますが、お取り計らい願えますか。

田中委員長 後ほど理事会で検討いたします。

 質問を続行してください。

宮本委員 四月十九日の暫定的考え方の発表時には、十三校・園が、校庭、園庭での活動を一日当たり一時間以内に制限する、こういう措置がとられました。その後、一週間ごとに調査を行い、二週連続して下回った場合は解除をされてきたわけです。

 五月六日時点で、この暫定的考え方に照らして屋外活動を制限されている学校・園はどれだけございますか。

高木国務大臣 暫定的考え方に基づいて、五月六日現在、校庭などの空間線量率が毎時三・八マイクロシーベルト以上の学校は一校のみでございます。

宮本委員 福島県渡利中学校一校のみと伺っております。

 そうしますと、今福島県で継続的な放射線量のモニタリングを行っている学校、五十六校・園となっておりますけれども、三・八マイクロシーベルトを上回って屋外活動が制限されているのは一校のみですから、あとの五十五校・園では、子供たちが屋外に出て通常どおりの活動をしていてもよいはずですが、実際はどのようになっておりますか。

高木国務大臣 文部科学省においては、継続的なモニタリングをしております。

 その五十六校・園については、屋内活動の実態調査をしたところ、五月九日現在、学校長の判断によって、体育、部活動等の野外活動を一、二時間、一から二時間程度に制限して行っている学校等は、園も含めて十三校・園。屋外活動を行っていない学校は四十三校・園でありました。

宮本委員 きょうは資料にその一覧をおつけいたしました。「福島県内の学校等における校庭等の表土除去と屋外活動状況」という一覧表であります。これは文部科学省提出資料です。

 先ほどの大臣の答弁にあったとおり、屋外活動を制限していないという学校は全くのゼロです。表土の除去を行った学校でも、私が福島県を訪問した五月九日時点では、一部実施さえしておりませんでした。私が訪問した郡山市では、やっと五月十日から、授業で一時間以内、クラブで二時間以内で校庭の利用を始めようというところでありました。これでさえ授業では一時間以内というんですから、文科省の言う毎時三・八ミリシーベルトを超えた学校、つまり、一時間以内というものとほとんど同じ扱いなんですね。

 つまり、これまでは表土を取ったところでも、一時間も外には出していないということであります。つまり、文科省の基準を信じて、では三・八を下回っているから結構ですよとやっているところなんかは一つもないんですよ、現実に。

 福島県教育委員会では、今外で遊ぶ子はいない、会津では遊んでいる子供がいるが、福島、郡山では連休中も外で遊んでいないという話でした。福島市教育委員会では、一時間当たり三・八マイクロシーベルト、年間二十ミリシーベルトについては保護者に理解してもらえないので、たとえ制限がかかっていなくとも屋外活動を自粛しているとのことでありました。この自粛というのは、一時間も外には出していないということであります。

 大臣、結局、文部科学省が四月十九日に示した暫定的考え方というようなものは、もはや何の意味もなしていないじゃありませんか。基準にもなっていないんですよ。こんな、県民から相手にもされていないようなものを、変えないんだと言って頑張ってみたって、意味がないんですよ。

 第一、日弁連からも会長声明が出る。昨日は日本医師会から声明が出たと、先ほど民主党の委員からも触れられました。

 私は、ここに医師会名の声明、見解を持ってきましたけれども、一から二十ミリシーベルトの最大値の二十ミリシーベルトを扱った科学的根拠が不明確である、成人と比較し、成長期にある子供たちの放射線感受性の高さを考慮すると、国の対応はもっと慎重であるべきだ、こう述べて、国は、幼稚園、保育園の園庭、学校の校庭、公園の表面の土を入れかえるなど環境の改善方法について、福島県下の学校等の設置者に対して検討を進めるよう通知を出したが、もっと国として責任を持って対応せよと。

 医師会だって日本医師会名で出しているわけですから、それは父母にしたって、幾ら文科省がそう言っても、弁護士会は言う、医師会は言う、そのもとで到底これは納得されないということになると思うんです。

 だから、私は、あらゆる科学的知見を集めて、現地の声にもよく耳を傾けて、本当に納得していただける基準をつくり直すべきだ、守られていないような基準にいつまでもしがみついていても仕方がないじゃないかということを申し上げているんですが、大臣、そうは思われませんか。

高木国務大臣 私どもは国際基準に基づいてこの暫定的考え方を決めさせていただきました。

 それぞれの学校の判断で、今の議員御指摘の現状があるかと思っております。

宮本委員 ボタンをかけ違えているんですよ、これは。あなた方がそうしてかたくなになればなるほど、国民から疑念を持たれることになります。そういう態度は早晩続かなくなる。間違えたときには思い切って引き返す勇気を持っていただきたいということを、これは指摘をしておきたいと思います。

 この暫定的考え方は、同時に、できる限り今後児童生徒の受ける放射線量を減らすことが適切だ、そうも書いているわけでありますが、あなた方がやってきたことはモニタリングを続けてきたわけであって、放射線量を減らす具体策はこれまで示されてこなかった。そして、この間初めて、表土を除去するという話が出てまいりました。

 郡山市では、十年後の子供のリスクを考えて、後顧の憂いは残してはならない、市民の安全と子供たちの健康は市が守るとの強い意思のもと、小学校十五校と十三の保育所において表土の除去を行いました。

 私の聞き取り調査によると、薫小学校では、除去前四・一マイクロシーベルトあったものが、除去後一・九マイクロシーベルトへと劇的に下がっております。また、鶴見担保育所でも、四・五マイクロシーベルトから〇・九マイクロシーベルトへと劇的に下がったと聞きました。

 文科省は、五月八日に、福島大学附属幼稚園と附属中学校の二カ所で、表土を下層の土と入れかえる上下置換工法の実地検証を行いましたけれども、この結果、線量はどれだけ下がったか、またその効果はお認めになりますね。

高木国務大臣 御指摘の点でございますけれども、私どもとしましても、線量を下げる努力の一つとして、独立行政法人日本原子力研究開発機構において、五月八日に、福島大学と協力いたしまして、学校あるいは校庭、幼稚園における空間線量の低減を検証するために、表土の上下置きかえに関する実地調査を行いました。十一日にその結果の報告を受けました。

 この中では、土壌は二十センチ程度の厚みで九〇%程度の線量率低減効果がある、二十センチ程度の覆土で放射線遮へいの観点から十分効果がある、また、まとめて地下に集中的に置く方法と上下置きかえ法の二つの方法が有効とされております。

 文部科学省といたしましては、こういったことについて、原子力安全委員会にその結果を報告した上で、現状において学校における対策として、この方法を採用する際の留意事項として福島県教育委員会に示したところでございます。

 今後、設置者である市町村教育委員会の要望に応じて、私どもも必要な助言を行ってまいりたいと思います。

宮本委員 佐藤福島県知事の要望書でも、「土壌の入れ替えや、除去した土壌の処理について、適切な方法を早急に示すこと。」と強い要望が出されております。

 私がお会いした郡山の教育長も、発生者責任の原則に立って、国と東電の責任で、除去した土、砂の適切な処理方法、場所について速やかに提示するとともに、除去費用について助成を求めたいという強い要望が出されました。

 これは、ぜひ国として前向きに受けとめていただきたいと思うんですけれども、大臣いかがでしょうか。

高木国務大臣 郡山市などにおいては、市の独自の判断として校庭の土を削り取ったものと受けとめております。

 この削り取った土をどうするかについて、処分場所の検討とともに適切な処理方法について、今回の事務連絡を踏まえながら必要な助言等を行ってまいりたいと思っております。

宮本委員 表土除去といいましても、先日文科省が行った上下置換工法、いわゆる天地返しというものもありますけれども、大きな穴を掘って表土を埋め、きれいな土で覆うという方法、一直線に深い溝を掘ってそこに表土をずっと埋めて、上に一メーター程度のまた新鮮な土を入れるという方法、さまざまな工法があるというふうに聞きました。

 また、現地の学校で聞いたところによりますと、校庭の二十センチ下にはパイプが幾つも通っており、それらを傷つけてはいけない、あるいは、学校の周辺には井戸水を使っている家庭もあり、地下水系に影響を与えてはならない、さまざまな条件が学校ごとにあると聞きました。

 それぞれの学校の状況に応じて表土除去、穴埋め、または表土の搬出、さまざまな対応を行う柔軟な対応が必要だと思いますが、大臣いかがですか。

高木国務大臣 御指摘のとおり、それぞれの学校の校庭の築造に対してもいろいろなやり方もあっておりますし、またそれぞれ違ったケースもあります。

 したがいまして、この件については、適切な方法を選択することについて、私どもとしましては、柔軟な対応が行えるように必要な助言を行ってまいります。

宮本委員 何よりも現場の意見をよく聞いて進めていただきたい。

 郡山市では、既に表土の除去を行って、先ほど述べたように、放射線量を低下させるために大きな効果があることがわかっております。

 しかし、表土をはいだだけで解決といかない問題があるんですね。一つは、そうやって表土をはぎますと、校庭が大変荒れるんです。私も見ましたけれども、上のやわらかい土が取られていて、ざらざらなんですね。このままで子供が使うとけがをするというので、校庭を使うことに二の足を踏んでおります。やはり、そこにやわらかい表土をかぶせる、あるいは芝生を植えるなどして使えるようにしなければならない。

 表土をはぐだけじゃなく、今後こういうことについても手当てが必要になってくると思いますが、大臣、その点はいかがでしょう。

高木国務大臣 私どもとしましては、先ほど述べましたように、効果的な方法を選択していただく。

 もちろん、郡山の例においては、取り除いた土砂の処分場に地元の了解が得られないということもございまして、またもとのところに山積みをされておると思っています。これの取り扱いについては、やはりきちっとしなきゃなりません。

 したがって、私どもとしましては、表土については、柔軟な対応をこれからもとってまいります。

宮本委員 たとえ天地返しをしても、上に行く土はやはり表面にあるやわらかい土と違いますので、郡山のように、はぎ取ってのけたからざらざらになっているんじゃなくて、下にはざらざらの、大変やわらかくない土があるんですよ。天地返ししたって、文科省の言うようにやったって、上に出てくる土はやわらかくないんです。だからちゃんと手当てが要るんです。

 もう一つ聞きますけれども、二つ目に、幾ら校庭や園庭の土壌だけをきれいにしても、周りがそのままでは、子供たちは校外で被曝することになります。また、時間がたてば、風で飛んできて、校庭の放射線濃度も再び上がることになります。現に、私が視察した郡山市の保育所は、表土の除去によって放射線量は低下しておりましたが、その目と鼻の先にある公園から高い線量が検出されて、その公園が新たに使用禁止となったと聞きました。

 通学路や地域全体の放射線量も下げなければ、子供たちの安全は守れないと思うんです。学校外の土壌についても放射線量を計測し、高いところは土壌を除去するなどの対応が必要です。

 これは文部科学省だけの問題ではないと思うんですけれども、文部科学大臣として、政府内で問題提起をする必要もあると思うんですが、大臣の御決意をお伺いいたしたいと思います。

高木国務大臣 児童生徒のいわゆる生活パターンに即した試算を先日行いまして、学校で受けると想定される線量の影響は生活全体の約一七%という結果が出ております。

 今後は、学校外でも線量の高いところはあるわけでありまして、できるだけ、モニタリングをしながら、例えば水たまりとかそういう線量の高いところを避けるように、私どもとしても考えていく必要があろうと思っております。

 また、今後、文部科学省としましては、子供たちのことを考えて、さらに、医学あるいはまた医療、あるいは子供の心理、発達と教育、こういうことをさまざまな観点から専門的に議論していく場もぜひ設けていきたいと思っております。

宮本委員 今回の原子力災害は、子供たちや親はもちろん、学校にも自治体にも責任はありません。原子力安全神話を無責任に振りまいて原発依存を進めてきた東電と国にこそその責任があることは明らかです。

 地元自治体が求めているように、発生者責任の原則に立って、国と東電の責任で一刻も早く万全の措置をとることを強く求めて、私の質問を終わります。

    ―――――――――――――

田中委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 文部科学行政の基本施策に関する件の調査のため、来る十八日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.