衆議院

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第10号 平成23年5月18日(水曜日)

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平成二十三年五月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君

   理事 野木  実君 理事 松崎 哲久君

   理事 松宮  勲君 理事 下村 博文君

   理事 馳   浩君 理事 池坊 保子君

      石井登志郎君    石田 三示君

      磯谷香代子君    小原  舞君

      大山 昌宏君    奥村 展三君

      川口  浩君    川越 孝洋君

      熊谷 貞俊君    佐藤ゆうこ君

      斎藤やすのり君    笹木 竜三君

      瑞慶覧長敏君    高野  守君

      高橋 英行君    中屋 大介君

      平山 泰朗君    藤田 大助君

      村上 史好君    室井 秀子君

      本村賢太郎君    山田 良司君

      湯原 俊二君    笠  浩史君

      和嶋 未希君    渡辺 義彦君

      遠藤 利明君    河井 克行君

      河村 建夫君    北村 茂男君

      塩谷  立君   田野瀬良太郎君

      古屋 圭司君    松野 博一君

      宮本 岳志君    城内  実君

      土肥 隆一君

    …………………………………

   文部科学大臣       高木 義明君

   文部科学副大臣      笹木 竜三君

   経済産業副大臣      松下 忠洋君

   文部科学大臣政務官    笠  浩史君

   厚生労働大臣政務官    小林 正夫君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         河村 潤子君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       合田 隆史君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       平野 良雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中西 宏典君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           長尾 正彦君

   参考人

   (長崎大学名誉教授)   長瀧 重信君

   参考人

   (福島県伊達市長)    仁志田昇司君

   参考人

   (中部大学教授)     武田 邦彦君

   参考人

   (静岡県立静岡がんセンター総長)         山口  建君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            班目 春樹君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  金森  正君     磯谷香代子君

  城井  崇君     川越 孝洋君

  熊谷 貞俊君     渡辺 義彦君

  佐藤ゆうこ君     木村たけつか君

  本村賢太郎君     高橋 英行君

  あべ 俊子君     河井 克行君

  永岡 桂子君     北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     斎藤やすのり君

  川越 孝洋君     小原  舞君

  高橋 英行君     本村賢太郎君

  渡辺 義彦君     石田 三示君

  河井 克行君     あべ 俊子君

  北村 茂男君     永岡 桂子君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     熊谷 貞俊君

  小原  舞君     湯原 俊二君

  斎藤やすのり君    藤田 大助君

同日

 辞任         補欠選任

  藤田 大助君     金森  正君

  湯原 俊二君     城井  崇君

    ―――――――――――――

五月十七日

 教育格差をなくし、子どもたちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(高野守君紹介)(第六二〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第六七三号)

 同(磯谷香代子君紹介)(第六七七号)

 同(志位和夫君紹介)(第六八一号)

 同(志位和夫君紹介)(第六八二号)

 同(田中和徳君紹介)(第六八九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六九〇号)

 同(稲津久君紹介)(第六九二号)

 同(志位和夫君紹介)(第六九六号)

 同(磯谷香代子君紹介)(第七一一号)

 同(西村康稔君紹介)(第七一三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、長崎大学名誉教授長瀧重信君、福島県伊達市長仁志田昇司君、中部大学教授武田邦彦君及び静岡県立静岡がんセンター総長山口建君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知いただきたいと思います。

 それでは、まず長瀧参考人にお願いいたします。

長瀧参考人 おはようございます。参考人の長瀧でございます。

 今回の福島第一原発事故は、チェルノブイリと並ぶレベル7になってまいりましたが、それでもまだ収束せずに、我々の今まで経験したことのない原発事故になってまいりました。現実に、地上にたまった放射性物質、あるいは現在も降り注いでくる放射性物質の中で生活を余儀なくされている地域住民の方々の被害を最小にするということのために、我々全員が、関係者が協力して対応していかなければならないと考えております。

 そういう意味で、私は、長崎大学、あるいは退官後の放射線影響研究所で原爆被爆者の治療あるいは調査研究に従事してきた経験、あるいは同時に、チェルノブイリの原発事故に関しまして、調査の最初からつい最近の国際機関の結論が出るまでの間関係してきた経験をお話しいたしまして、少しでも福島原発の対応にお役に立てればということで出てまいりました。

 レジュメに従ってお話しさせていただきますが、最初に、私自身のきょうお話しする基本的な立場といたしまして、学識経験者として放射線の人体に対する影響を科学的立場から説明するということでありますけれども、科学的という知識の場合は、最初は、こういう原子力災害を例にとりますと、現地の住民の証言であるとか、あるいは現地を訪れた人たちの見聞から始まりまして、そのうち、次第に科学的論文が出てまいります。

 これは、非常にたくさんの科学的論文、賛成、反対がございまして、科学的にそこで賛成、反対を議論するのは必要なことでありますけれども、これが、科学的という名前を使いましてそれぞれ社会における主張をするというふうなことになってまいりますと、非常に社会が混乱してまいります。

 そういう意味も含めまして、賛成、反対の世界の論文をまとめて世界の複数の学者が議論して、そしてその時代、その時代のコンセンサス、同意を発表するという習慣がございます。これは、国連の科学委員会、UNSCEAR、あるいは、もう何度も出てまいります放射線防護委員会、ICRPというふうなものがございまして、一応きょうは国際的な合意を得た科学的知見についてお話しさせていただきます。

 次のページは、原爆被爆者の調査結果を非常に簡単に書いてございます。

 急性影響としましては、広島、長崎で二十一万人という方が亡くなっておりますが、これは爆風が原因か、あるいは熱線か放射線かという、その比率はいまだに明らかではありません。

 問題は晩発影響でありまして、この晩発影響といいますのは、急性影響の後、現在でもなおその影響があらわれているというのがその特徴でございます。そして、一番難しい、理解するのに難しいのは、一人の患者さんを幾ら調べても、それは放射線のせいかわからない、現在の医学ではわからないということでありまして、これはもう非常に基本的に理解しておかなければならないことであります。

 では、どうして放射線の影響を調べるかといいますと、簡単に言えば、疫学的あるいは統計学的な手法でありまして、たくさんの集団、例えば原爆被爆者の場合は十二万人という集団がございますが、この方たちを一九五〇年から現在までずっと追跡調査をいたしまして、その方々の被曝線量とある病気の死亡率、これは死亡調査と申しますが、あるいは罹患率、罹患の調査と放射線量とが関係するかどうかということを見て、その関係があるときに初めて、これは放射線の影響であるということは決められるわけでありまして、一人の人を見ても絶対にわからないということが特徴であります。

 時間の関係でもう途中を省きまして、その一番結果だけ示したのがこの表でありまして、被曝線量と発がんのリスクは直線関係にある、そして、有意な影響は百ミリシーベルトまではわかるけれども、それ以下はわからないというのが原爆被爆者の統計でありますが、これは同時に、世界でこのような事例はないわけでありますので、現在でも世界のゴールドスタンダードということで通用しております。

 ここに書きましたように、千ミリシーベルトを浴びますと、原爆の場合はがんが一・五倍になる、あるいは、今ICRPとしていいますと、急性の被曝ではがんが一〇%ふえる、あるいは慢性の被曝では五%ふえるというのが国際的な常識でございます。これは直線関係でございますので、今申し上げました百ミリシーベルトの被曝でがんが一%、あるいは慢性の被曝ではがんが〇・五%ふえるということは、常識として国際的なものに書かれているわけであります。

 その次のページは、これは参考資料としてかいた、持ってきたものでありまして、上の方は、先ほどの模型的にかきました図のもとの図であります。

 もう次に移りまして、今度はチェルノブイリ原発事故の健康影響のまとめをお話しさせていただきます。

 これは、二〇〇六年に、IAEA、あるいはWHOなど八つの国際機関と三つの共和国が一緒になって発表した、それから、ことしの二月、つい最近でありますが、UNSCEARという国連の科学委員会からの発表がございまして、その両方をまとめてここに示しました。

 急性影響としましては、これは原発の中の問題でありますが、百三十四名の職員が急性放射線障害、明らかな臨床症状を示した。そして、その中の二十八名は高線量の被曝のために三カ月以内に亡くなっております。そして、その後、十九名が二〇〇六年までに死亡したと言われますが、これは被曝との関係は認められておりません。

 それで、晩発影響としまして、最初は、原発周辺で汚染除去作業に従事していた方でありまして、これは二十四万人が、除染作業と申しますか、石棺をつくったりなどに働きまして、百ミリシーベルト被曝したと言われておりますが、この中からは、今のところ、白血病も含めて健康の異常は認められておりません。

 それから、原発外の周辺の住民でありますが、十一万四千人が強制疎開の避難、日本でいうと、今、避難でありますが、これが三十三ミリシーベルトの被曝、二十七万人が高線量の地域、これは五百五十五キロベクレル、今アメリカのDOEと日本の文科省との汚染の地図で出したのと同じ表現になっておりますが、そこで居住した二十七万人は五十ミリシーベルト被曝した、五百万人はもっと少ないところで十から二十ミリシーベルトの被曝だ。

 そして、結論は、住民に関しては放射線に起因する健康影響のエビデンスはないというのが、私も実際に行って、子供たちを診察しまして、セシウムがいっぱい体の中に入っている子供を診察いたしましたけれども、少なくとも、チェルノブイリに関して、セシウムで健康被害があったという証拠はないということが今回の国際機関の発表であります。ただ、例外は、汚染されたミルクを飲み続けた人たちの中で、子供に甲状腺がんがふえた。それは現在六千人、手術で見つかっておりますが、二〇〇六年までに亡くなった方は十五名であるということでございます。

 その次のページには、参考資料として、WHOの二〇〇六年の発表、それから国連科学委員会のことしの二月の発表を書いてございます。

 以上の結果を考えるときに、科学的調査をどう考えるかということでありますが、影響が認められるということは、これはもうだれもが問題なく認められるんですが、認められないというときにどういうふうに考えるか。

 認められないということは、科学的に否定したということではないんですね。否定はできないけれども認められなかった。それでは、否定できないのなら認めてもいいではないかという議論も当然出てまいりまして、これを繰り返しますと非常に社会が混乱してまいります。ですから、これは認められないというときには、その範囲は科学的には不確実な範囲である、不明、不確実だということをむしろ積極的に取り上げまして、そこでの学問上の議論をいきなり社会の中で議論するということは避けた方がよろしいということを申し上げたいと思います。

 何度も同じことの繰り返しになってしまいますので、科学的にはっきりしたことをまず中心に、それ以下はわからない、したがって百ミリシーベルト以下は科学的にはわからないということが前提であります。

 例えば二十ミリシーベルトで何か決めるときというのは、これは科学的な理由ではなくて、科学以外の、行政であり、住民の要望であり、あるいは司法の立場ということの意思、理由をはっきりさせて表明する必要があるのではないか。決して科学を隠れみのに、隠れみのと言ってはぐあいが悪いですが、科学のためにといって賛成、反対の議論をここに持ち出しますとこれは大変な混乱になりますので、不明である、むしろ科学以外の立場で決めていただきたいということであります。

 そして、人体に対する影響の物差しとしましては、今申し上げました科学的な調査結果がございます。そのほかに、科学的な事実に基づいて、安全を願う国際的なポリシー。

 これはポリシーでありまして、放射線は浴びなければ浴びないほどいいというポリシーに基づいて、国際的な議論、合意が勧告として発表されておりまして、これは先ほど百ミリシーベルトが最低の影響の認められたところであると申しましたけれども、このポリシーとしては一ミリシーベルトで、百倍の差がございます。ここは非常に解釈の上で大事なところでありまして、この間はポリシーとして決まっている。ですから、普通の人は一ミリシーベルトでいいけれども、職業としている人は五十ミリシーベルトでいいというのは、科学的な根拠というよりはポリシーとして決めたということになると思います。

 それで、このポリシーの中でも、緊急事態では、公衆では二十から百であるとか二十から一というふうな幅を持った勧告がなされておりますが、この幅の理由は、放射線の被害を除くため、防護するための被害です。

 例えば、大きな町でみんなが移住しなきゃならないというような場合と、非常に人が少ないような、あるいは外国で起こったという場合とでは、同じ放射線の被害を避けるための防護の被害というのは非常にけたが違います。したがって、これは幅を持たせたというのは、その地域における放射線の影響を避けるためにどんな被害があるかということとのバランスで決めるという意味で提示をされたものでございます。

 これは、我が国の法律はほとんどこれに従っておりますし、もう一つのスケールを入れるとすれば、私はチェルノブイリで非常に大きく印象を受けましたのは、パニックであります。これはもう、理由はない、線量に関係はない、ただ放射線は怖いということが住民の間に広がりまして、私どもが最初に参りましたときは、このパニックにどう対応するかということが科学的な支援の最大の目的になったほどであります。

 先ほどから申し上げましたように、その次のページの放射線の影響と防護の影響のバランス、例えば、では、放射線による具体的にどんな影響があるのかということをはっきりさせる。それから、その防護のためにどんな影響があるか、どんな被害があるか。

 例えば、避難のために家屋や財産を放棄したり、農業、漁業、工業はもう放棄する。そういう具体的な被害とそれから放射線の具体的な被害を比較して、そして、今回のような未曾有の緊急事態に直面している、もう既にそこに放射性物質があるということを頭に置きまして、そして、緊急事態の各段階に応じてきめ細かく、また周辺住民の被害を最小にするということを最大の目的としまして、冷静に対応するということが必要ではないか。情報を開示して、住民とのきめ細かい対話が必要ではないかと思う次第であります。

 チェルノブイリの教訓としまして言えますのは、健康影響は先ほど申し上げたとおりでありますが、ソ連邦は崩壊いたしました、経済も壊滅状況になった。そして、現在、一番の健康に関しての問題は、被曝と分類された、例えば避難、転地、補償などの中から、ストレス症候群で自立できない人が数百万人いるということでございまして、この精神的な影響が公衆衛生上の最大の被害であるというふうに結論されております。

 最後は、私の願いでありますが、福島原発事故に関する日本からの発信としまして、先ほど申し上げましたように、レベル7である、いつ収束するかわからない前代未聞の出来事であって、教科書はありません。

 その中で、今まで説明してまいりました科学的な知見、放射線に対する安全を願うポリシーであるとか、あるいは我が国の法律、放射線の影響の物差しをすべて勘案しまして、そして周辺住民の苦痛を最低にするということを目的に、しかも日本の経済的、社会的影響の負の遺産を最小限にするという方針を決定することが現在の急務ではないか。

 原爆の被爆者を持つ日本として、世界に対して理想的な対策を発信するということを願って、お話を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、仁志田参考人にお願いいたします。

仁志田参考人 御紹介いただきました、福島県伊達市長の仁志田昇司と申します。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 このような場にお招きいただきまして、本当に大変光栄に思っているところでございますけれども、なぜ呼ばれたかということにつきましては、今福島県は、放射能被害があるわけでございまして、特に子供の父兄の方から強い不安が寄せられておりまして、そうした中で、学校の表土をはぐという手段によって放射能の低減を、線量の低減を図ったということについてお話をしたいと思います。

 それでは、お手元に資料をお配りしてありますので、そしてレジュメも用意しましたので、これに基づいて御説明を申し上げたいと思います。

 まず、伊達市でございますけれども、福島県伊達市は、五年前に合併した新しい市でございまして、五つの町が集まって、六万七千人の人口の、農村地帯の町でございます。

 位置といたしましては、これは三ページを見ていただきたいと思いますけれども、積算線量推定マップの中で左上の方が伊達市でございます。原発地域から約六十キロ離れておるわけですけれども、北西方向に放射線が風に乗って来ているという状況にあります。

 それで、小学校、中学校につきましては、五ページを見ていただきたいと思いますけれども、伊達市立の小学校は二十一校ございます。中学校が六校ございます。そのほか、地図には落としてありませんけれども、幼稚園が公私立合わせて十五園、保育園が認可外も入れまして十三園、計二十八園あるわけでございます。これらがすべて、これからお話しする放射能ということについて父兄の方から大きな不安が寄せられている、こういうことでございます。

 伊達市の被害としまして、地震で小学校二校が使用不能になりまして、これは今バスで通っておりますけれども、そうした地震の被害の対策よりも、これからお話しする子供たちの放射能の対策、それから、これから具体的になってくるであろう農産物の風評被害も含めた放射能の被害といいますか、そうしたことがこれからの課題であろうと。

 当初、六十キロも離れておりますと、そんなに放射能は怖くはないというふうに私も市民に言っておりました。距離の自乗に反比例するということですから、離れても大丈夫だと。しかし、一週間もしないうちに原発地帯から避難する方がどんどん来まして、一時は千七百人近くの方が伊達市に避難してきました。現在でも百人を超えてまだいらっしゃるんですけれども。

 そして、伊達市は、計画的避難区域ということで今回指定されました飯舘村と川俣町に隣接しているということでありまして、かつまた、伊達市の一部については、計画的避難区域であるが今回は検討から外したという官房長官の発言もありましたように、伊達市においても、そういう部分があるということでございます。

 それで、当初、放射能はそんなに心配ないと思っていましたけれども、十日ぐらいしたときにSPEEDIの公表があって、そして現実に飯舘村とかが高いということになりまして、私どもの伊達市も、はかってみると。ただ、はかる器械もないという状況の中で、急遽借りてきまして、はかってみると高いということで、そして学校ということから県の方も測定をいたしまして、四月の初めには、かなり高い学校がある、こういうことはわかっておりまして、はて、どうしたものかということでございました。

 いろいろ識者の意見を聞いたり新聞を読みますと、表土をはぐということが効果があるということで、それをお聞きしましたので、それからまた、そうこうしているうちに、文科省の方から、暫定基準で年間二十ミリシーベルト以下である、三・八マイクロシーベルト以上であれば屋外活動は控えなくてはならないけれども、逆に、三・八未満であれば屋外活動も含めて大丈夫だ、こういうものが示されたわけでありますけれども、この三・八を超えているところが、実は三カ所、幼稚園一カ所、小学校二カ所あったものですから、これについてどうするかと。

 このことについては、放射能的には大丈夫だということでございますけれども、屋外活動が制限されるということは、子供の心身の発育ということを考えた場合に、やはり子供は表で元気に遊ぶということが大事なのではないかというような思いから、これを何とかクリアする方法がないのかと。そうすると、思いつくというよりも、具体的にあるのは表土をはぐしかないなということで、そのことにつきまして、では、我々も実験してみようということでやったものがあります。

 それは四月二十七日のもので、六ページをお開きいただきたいと思います。

 六ページに写真が載っておりますけれども、伊達市霊山町小国小学校でございますが、ここに一・八メートル四方の区画を広げまして、そして、そのとき、一メートルで四・三六マイクロシーベルト、五十センチで四・八二でありました。地上の一センチでは五・五四ということだったんですね。

 これを三センチ、それから五センチ、十センチ、六ページ、七ページにその模様が載っておりますけれども、やってみましたところ、三センチでも、五センチになればさらに、三センチで一・七八、五センチで一・三五マイクロシーベルト、十センチ掘れば一・〇五になる、こういうことであります。

 しかし、一方において、七ページの一番下にありますように、その掘った土、表土を集めるとどのぐらい残留放射能といいますかあるかというと、四・六マイクロシーベルトある、こういうことなんです。

 その残土をどうするかという問題はあったんですけれども、残土はどこかに仮置きしようということで、財産区の山林に置くことにしたんです。これは残念ながら周辺住民の理解が得られなくて、結局は小学校校庭に置かざるを得ないということでありますけれども、実施しようということで実施したものが八ページでございまして、これは小国小学校について具体的に実施いたしました。写真のように工事をしたわけでございまして、残土につきましては、ブルーシートといいますか、遮へいシートをかけて校庭の片隅にこのように置いてある。

 これは面積で八千平米ぐらいのところでございまして、工事費は百六十万でございます。処理土も五百三十六立米ということですから、トン数にしても四百トンくらいのものがあるということですので、かなり小山のようになっているということでございます。

 それから、学校が休みということで二十九、三十日でやったんですけれども、八ページが小国小学校で、次のページ、九ページは富成小学校でございます。

 これも同様に工事をいたしました。これは幼稚園と合わせまして、次のページが幼稚園でございますけれども、工事費で百八十万かかっております。面積は七千三百平米ということでございます。

 幼稚園の方は三十三平米ぐらいでございまして、非常に狭いんですけれども、遊具があったり花壇があったり、もう手でやらざるを得ないというところもありまして、工事業者の方には、お願いして丁寧にやっていただいた。

 ここが狭いんですね。ですから、仮置きにつきましては、富成小学校がすぐそばにありますので、これにつきましては富成小学校の仮置きのところに一緒に置いた、こういうことを実施したわけでございます。

 福島県内においては、私どもより数日早く郡山市さんの方でも実施されておりまして、これはそれぞれ独自に検討した結果、実施したということでございます。

 では、レジュメの方に戻っていただきまして、そういうことでやってまいりましたが、この表土の処理につきましては、このままでいいというわけにはまいらないのは当然でありまして、このことについての扱いについては、五月初めに、一日でしたか、文科大臣まで、福島市長、郡山市長、私どもと一緒に陳情もしておりまして、この処理について国の指示をいただきたいと。

 と申しますのは、産業廃棄物等の法律上の定めはあるんですけれども、すべて放射性物質は除くと書いておりまして、要するに、放射性の物質が入ったものについての処理というのは定めがないというのが実情であって、仮置きせざるを得ないということであります。

 今回、国においていろいろ試験をされまして、表土入れかえ方式とか、あるいは取った表土について穴を掘って埋めるとか、そういうことについて具体的に、そういうことをやってもよろしいということをいただきまして、これは非常にわかりやすいというふうに思っておりますけれども、ただ、仮置きであるということについては余り変わりはないので、いずれきちっとした最終処分というものが必要になるのではないか。

 天地法というのは、そういう意味でいうと、その場合、全部もう一回削り直すのかなというふうにも思うんですけれども、ただ、こういう軽い、軽度のといいますか、あるいは微弱のといいますか、そういうものはそのままでいいというような定めになればそのままでいいんでしょうけれども、その辺のところは、これから具体的に国においてお示しいただければありがたいというふうに思っております。

 レジュメの五番に参りまして、暫定基準三・八ということに対しましては、保護者からは、大変強い、これでいいのかというふうなことを我々市町村長に本当にたくさん寄せられておるわけです。

 この辺につきましては、私も、大人と子供が同じでいいのかとか言われましても、何とも説明のしようがないということです。私としては、大人も子供も同じだとは言えないので、子供にとっても安全で、大人にとっては十分安全だけれどもというふうに言っているところなんです。

 私としましては、行政機関の一員として、国の示した基準に従うということでやっておりますから、私どもも、三・〇を超えている学校はほかにも多数あるんですけれども、それもやれ、あるいは二マイクロでもやってくれという声は非常に強いんですが、それは国が定めた三・八を超えていないんだから、大丈夫だから遊びなさい、安心しなさいと言っているんです。

 学校の先生も、保護者からそういうふうに言われると、子供を表に出せないとか、あるいはその子供だけを別にするとか、非常に扱いに苦慮しているということでありまして、このことについては、国の方から何かそういった説明をしていただければというふうに思うところであります。

 そして六番に、そういうことに対する我々首長の立場といいますか、これはなかなか厳しいものがあるというのは申し上げたとおりでございますけれども、自分でもはぐというようなことも言っている父兄もいるんです。

 私は、これに対してはだめだと言っております。それはもちろん、剥離した表土の扱いとかが決まっていないこともあるし、一応三・八というのが示されているんだから、勝手な行動はするべきでない、こういうことなんです。

 そういう意味で、資料の一番最後に、十一ページ、十二ページに、これは震災後、特に放射能の問題が出てきてから、そうした市民の不安を解消するために、「だて市政だより」ということで、臨時号、災害対策号というのを一週間に一遍出しております。

 これの編集方針は、とにかく軽挙妄動しないで、放射能に対して、一定のしっかりした考え方で対応するようにしよう、そのことについては、市もきちっと皆さんに場合によっては指示をするから、それまで勝手に避難したりとか、そういうことをしてはならないという基本的な態度で当たっているところでございます。

 しかしながら、そういう中でも、やはり父兄の子供を思う気持ちというのは強いものがあって、ほかの市ではやったのに、なぜ当市はやらないのかと。

 伊達市でいうと、私は三・八という基準を守っている。ただ、表土をはいだのは、外で子供の行動が制限されるのをクリアしたいからやっただけであって、それ以外はやらないと言っているんですけれども、市によっては二・幾つとか、三・八の半分だから一・九ですね、それでやるとかというようなことで検討されている市もあるんですけれども、そういうふうにしますと、今言ったように、なぜほかがやっているのにここはやらないんだ、こういう話になるんですね。

 こういうことについては、なかなかやはり、選挙で選ばれる立場になると非常に苦しいものがあるわけでございまして、心ならずも、もしくは積極的な政治的判断でやられる方もいるんですけれども、この辺は、やはりきちっとした基準があって取り組むべきではないか。

 それから最後に、剥離による効果と国暫定基準の低減の可能性ということで、意見といいますか、私どもも、三・八ではやりましたけれども、それ以下についてどうするかというのは非常に大きな悩みでございまして、いろいろ検討しております。

 表土剥離には一定の効果があることは明らかでありますから、先ほど御説明しましたように、はげば一マイクロ以下になるということであります。そうすると、三・八と一マイクロを比較しますと、単純に言うと、これを年間累積に直せば五・三ミリシーベルトになるのではないか。つまり、四分の一に標準を下げても別に問題ないのではないか。

 つまり、全部表土をはいでしまえば、三・八が高いとか低いとかという議論に対しては、下げることも可能でありますし、逆に三・八を、これは医学的あるいは学術的に問題ないんだという立場であっても、下げる努力をしていくということになると、年間累積シーベルトで一ミリ以下という国際的な標準からすれば、いろいろなことをやれば一ミリ以下にもできないわけでもないのではないかなと。表土をはいだだけでは今四分の一ぐらいでありますけれども、そのほかのことを考えれば何とかなるのではないかというふうに思っております。そういう意味では、校舎の洗浄とかそういうこともやる。

 また、あと今、これからプールの季節になりますけれども、プールで泳がせることについていかがかというのももう既に問題が惹起しておりまして、ほとんどの校長はことしはやめますと言っておりますけれども、しかしこれも、表で子供を遊ばせることは心身の発育上極めて重要だというふうな観点に立てば、プールをことしはやめだというのを軽々に言うべきではないのではないかと私は思っておりまして、何とかしろというふうに教育委員会には言っているところでございます。

 それから、もう一つ最後に、幼稚園、保育園児への対応ということでは、幼稚園児等の行動については、もちろん背がかなり低いということもありますけれども、園庭にしゃがんだり、寝転んだり、お友達と土いじりしたり、そういうことが実態としてある。そうするとこれは、小学生で五十センチの放射線量とかいうような被曝の問題ではなくて、食べるというようなことから、内部被曝的な話になるのではないかと。

 これも父兄から強い話がありまして、いろいろ聞いていますとなるほどなというふうに思うところがありますので、伊達市といたしましては、国の定めた三・八というものを逸脱するつもりはありませんけれども、それとは別の考え方で内部被曝を避けるというような意味においては、伊達市には二十八、幼稚園、保育園がありますけれども、これらについては実施するということでただいま検討しているということを御報告申し上げたいと思います。

 以上、伊達市から、今の取り組みについて御報告させていただきました。

 どうもありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、武田参考人にお願いいたします。

武田参考人 中部大学の武田でございます。

 きょうは三点ほど論点でお話をさせていただきますが、まず最初は、日本の原子力発電所の自然災害に対する安全性であります。これは御存じのとおりと思いますが、二〇〇六年に日本の原子力発電所は新しい地震指針というものが決まりました。

 そのときにどういうことが決まったかといいますと、まあ余り安全じゃなくていい、残余のリスクというのを認めようじゃないか、そういうことでした。これが現在では想定外という言葉で言われておりますが、その基準には「残余のリスク」という言葉で説明されております。

 それで、残余のリスクを認めるということはどういうことかといいますと、言ってみれば、建設側、電力会社の想定した想定外のことが起これば、その結果が三つ明記されております。第一に、施設が壊れること、第二に、大量の放射線が漏れること、第三に、「著しい」というのは説明書に書いてあるんですけれども、著しく住民が被曝すること、この三つが起こることを認めなければいけない。そういう指針がこれは正式に通っております。

 ということはどういうことかというと、日本国が、原発は想定外であれば倒壊して、大量の放射線が漏れて住民が被曝する装置であるということを構わないと認めたことでありまして、私は大変にびっくりいたしました。それまで比較的、私はずっと原子力の仕事をやってきましたので原子力をもちろん推進しておったわけですが、これはもうだめだと。何でだめかといいますと、もともと壊れるようなものをつくって、大きな災害になって、それで原子力を続けるなんということは技術的にはもう全然できないことでありまして、私はやや批判的になりました。

 つまり、国策で進めている技術が大災害をもたらすということが技術的、論理的にはっきりしたということでして、それはもうとてもやっていけないというのが私の感想であります。

 その後、詳細は除きますが、震度六の柏崎刈羽原子力発電所が壊れたのが二〇〇七年、今回、二〇一一年に同じく震度六で福島第一原発が壊れ、さらに、余震で女川と東通原発が電源を失ったりいろいろなトラブルに巻き込まれる。その中でも、特に青森県にあります東通原発は、震度四で全電源を失う。私は技術者でありますので、そういうような技術的な作品といいますか、そういうものをつくる、また運転するということ自体が極めて大きな問題であろうというふうに思っています。

 それで、浜岡原発がこの前停止になりましたか。原子力発電所の自然災害による弱さというのはどこにあるかというと、いろいろな原因があるんですが、一番大きいのは、原子炉は守られているけれども、そのほかは守られていないということなんです。

 例えば、今度、福島で電源系が落ちました。そうしますと、多くの人が津波に備えなきゃいけない、こう言っていますけれども、そんなものじゃないわけです。原子力発電所は極めて複雑なものでありますから、地震と津波に備えればそれで終わりというものじゃありませんで、熱交換器のパイプが外れても同じことが起こりますし、計測系に間違いがあっても同じことが起こります。

 したがって、どこに問題があるかというと、原子炉は比較的強く守られておりますが、原子力発電所全体の安全は非常に弱いということです。

 これはなぜかといいますと、私は地震指針のときに専門委員で地震指針の審査に当たったわけですが、その冒頭に私が、この指針は原子炉を守るための指針なのか付近住民を守るための指針なのかという質問をしております。この意味は、原子炉だけを守るのと、原子力発電所全体を守り、かつ付近住民が被曝しないということを守るのとでは、設計上大きく違ってまいります。どちらをとるかということが極めて重要な問題であろうというふうに思っています。

 そういうことで、私の技術的な見解、これは政治的にはいろいろ私はわかりませんが、飛行機が欠陥があって墜落しますと、その時点でその飛行機の使用を一応やめて、検査をして原因を明らかにしてから飛行機の運航をするというのが技術的な常識であります。福島原発では、論理的に原子力発電所が壊れるという設計どおりのことが行われたわけです。その設計どおりのことが行われてそれで壊れたわけですから、これはやはり日本のほかの原発を全部とめて、そして設計の見直しを行って、安全の見直しを行って再開するのが、政治的にはどういう影響があるかわかりませんが、技術的には正しい方法であろうと私は思っています。それによって原子力発電所が安全に動くことができる。

 飛行機も、かつては墜落しましたが、現在では非常に安全に運航しているわけですけれども、それは、そういった技術的な観点がはっきりしているということが技術の進歩をもたらしているのであろうと思っています。

 それから、論点の第二ですけれども、これは、非常に原子力発電所というのは奇妙で、今言いましたように、壊れるのがわかっているものを動かしているという問題が一つと、もう一つは、技術の問題は必ずしも一〇〇%安全ということはあり得ないわけです。したがって、必ず、事故が起こったら何をするかということは決めておかなければいけないわけであります。

 この前、ある電力会社とプライベートな会合をやりまして、私はこういうふうに質問しました。原子力発電所が壊れたら、我々の市は水源を失うんだけれども、電力会社はペットボトルを用意されていますか。していないと。そのうちには空間線量率が上がって子供たちを疎開させなきゃいけないけれども、電力会社は疎開先の小学校をどこに用意していますか。用意していないと。そのうちには土地が汚れて、土地の土を持っていかなきゃならないけれども、その土を持っていくところはどこにありますか。ないと。

 私は、現在の社会で技術的に適用されている巨大技術というのは、すべからく、その実施者がそれに何かあったときにちゃんとその始末をする責任を持つ、もしくは実施能力を持っているがゆえに認められているというふうに思っています。ある技術をやって製品をつくって、僕は技術を長くやってきましたけれども、それが壊れたら何も知らないというふうな技術が存在する、それがしかも国策でやられているということは、非常に私は違和感を感じます。

 それとともに、きょうは放射線の御専門のお医者さんがおられてちょっと言いにくいんですけれども、事故が起こる前、我々は、原子力発電所の安全を保つために、常に一年一ミリシーベルトを基準に設計してきたわけです。あらゆることをやってきたわけです。事故が起こって、突然一年百ミリシーベルトまで大丈夫なんと言われたら、設計の根幹が崩れます。一年に百ミリシーベルトまで安全なら、原子力発電所は突然安全に変わります。私たちが原子力発電所の安全技術というのをつくるときは、まず第一に、医療関係者が一年何ミリシーベルトまで大丈夫だということを基準に設計を始めるわけです。

 したがって、そこが揺らいだら、原子力発電所というものをつくること自体がもともとできないと私は思いますので、今回の事故が起こって、何ミリシーベルトまで安全だなんという話が出てくるということ自体が、私はもう非常に違和感を感じております。これでは技術をつくることはできませんです。

 技術は必ず、それのもたらす社会的結果において、それを防ぐための対策を主体として設計するものでありますから、例えば自動車でも、時速が千キロまでというのだったらまた設計が変わってきますし、時速十キロに制限されたとなったらまた変わってくるわけです。

 だから、そこのところは非常に根幹であって、現在そういうことが、三・八マイクロシーベルトであるがどうとか、それを議論しているというようなことでは、私は巨大技術をやることはできないと思っています。

 それから三番目の論点は、私が言うことではないかもしれませんが、原子力基本法が成立いたしまして、原子力は常に民主、自主、公開でなければいけないという原則がありまして、私は技術者として今までやってきまして、この原則があるという前提で原子力は安全に技術として展開できる。

 つまり、現在では一番大きな問題は公開でありますが、これは、原子力基本法ができたときに日本学術会議が、原子力についてはあらゆるプロセスですべて公開というような要請をしておりますけれども、私も技術者の一人として、公開がなければこのような大きな技術を安全に運行するということはもうほぼ不可能であるというふうに思いますので、その点も御考慮いただければと思います。

 以上、三点を中心といたしまして私の意見を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、山口参考人にお願いいたします。

山口参考人 どうぞよろしくお願いいたします。

 レジュメ、スライド原稿をお手元に差し上げてあると思いますので、これに沿って御説明をさせていただきたいと思います。

 がん医療の立場から放射線被災地の復興を目指すという論点でお話しさせていただきますけれども、なぜ突然がんセンターが出てくるのかという疑問を皆さんお持ちになるかもしれません。というのは、晩発性の障害では、その大部分、対象ががんになります。したがって、今さまざまな議論というのは、がんを想定して多分九割九分はなされていると思いますので、そういう意味でがん医療というのが重要になってまいります。

 次の二ページをスキップしていただいて、四ページ、黄色と赤で書いたスライドをごらんください。

 ここでは、現在問題になっているような放射線で、どれぐらいの数の方が将来がんで命を落とすかということを予測したデータです。仮定として、十万人という集団を仮定いたします。

 そういたしますと、この放射線の問題がなければ、これは何十年か百年近くその集団を観察した上で結果が出ることなんですが、おおよそ三万人ががんで亡くなられます、放射線と基本的には関係のないがんで。一方で、七万人の方ががん以外の病気でお亡くなりになります。

 そこに今回のような放射線の影響が加わるとその数がどれだけ上乗せされるかというのが、点線、実線で書いた黒い線です。下の横軸は、被曝する線量、一、十、二十、百というのを一応プロットしてありますが、百でプラス五百人の上乗せ、三万五百人、それから、二十でプラス百名、一でプラス五名、これが現在想定されている数です。これは死亡ですが、かかる数というのは、大体これの二倍とお考えいただければよろしいのではないかなと思います。

 それで、この点線で書いてあるところは、実はエビデンスがない部分です。実線のところまではエビデンスがありますけれども、点線の部分についてはあくまでも推測の世界です。ここに関してはいろいろな考え方がありますけれども、現在主流になっている考え方で計算をするとこういう数字になるという点を御了解いただきたいと思います。

 次のスライドをごらんください。今度は死亡ではなくて、がんにかかりやすさのデータです。タイトルに「目安」と書いてあります。これも、なかなか正確に言えない部分、幾つかのデータをまとめた、エビデンスとしては弱いデータですけれども、おおよその目安ということで御理解いただきたいんですが、縦軸に「相対リスク」と書いてありますけれども、生活習慣も含めて全くそういう危険性のない方のがんにかかるリスクを一としたときに、中央に書いたさまざまな生活習慣、右側に書いた被曝の危険度、それがどの程度に分布するかということが示されております。

 黄色の文字を下から上にちょっとごらんいただきたいんですが、受動喫煙(女性)、野菜の不足、塩分のとり過ぎ、運動不足、肥満、それから一日二合以上の飲酒、これが大体一・四になります。さらに上がって、一日三合以上の飲酒、そしてたばこを吸うこと、これが大体一・六で、同じぐらいのリスクになってまいります。

 それと、右側に書いてある被曝した線量、これは長崎、広島のデータが用いられておりますので、基本的に急性の被曝ということになりますが、百から二百浴びたときのリスクが大体一・〇幾つということで、野菜不足と同じぐらいということに評価をされております。その上、二百から五百、五百から千と徐々に上がっていきまして、普通、一般人にはまず起きないような千から二千ミリシーベルトを浴びたときに一・八で、三合以上の飲酒、それから喫煙より高いレベルになってまいります。

 このがんの死亡、それからがんの罹患、かかる、この二つをあわせて考えますと、正しく恐れるという意味では、その上乗せ効果というのはそれほど大きくはない。しかし、一定の線量以上では確実にある。現在議論しているところは、率直に言って不明な部分であるということをまずは申し上げたいと思います。

 六ページ、次のスライドは放射線の体への影響ですのでこれはスキップさせていただきまして、その次、「医療被ばくとの比較」という、ブルーの囲みが入ったところがございます。これは、体に起きること、それからどういう安全基準が設けられているかということに加えて、医療現場ではこれは特に基準がございません、患者さんは青天井で放射線を浴びることになるんですが、そこを医師がしっかり管理をするということで進められております。

 上の方から、局所への放射線治療、これはがんの場合ですけれども、これが極めて高い線量を使っておりますし、白血病等で骨髄移植をやる場合、その患者さんの免疫機能を落とす必要があります。このときにはほぼ致死量の全身照射を行います。それを、骨髄移植によって命を救うということをやっておるわけでございます。

 それから、今話題になっているヨード131という核種は、甲状腺がんの治療あるいはバセドー病の治療に積極的に使われております。このとき、内服していただくんですが、たしか何億ベクレル、非常に高い濃度を投与しております。

 外部被曝という点では、多分、医療の現場で一番高いのが心臓のカテーテル検査等ではないかと思いますが、これが、一般の人ですと悪心、嘔吐が出てくる大体千ミリシーベルト程度になります。それから、そのずっと下にCTスキャン、PETというあたりがありますけれども、これが大体一から十の間でございます。

 私も一週間前にがんの検診を受けているんですが、胸部のCTスキャンそれから腹部のCTスキャンにPET、合わせますと大体それで二十から三十ミリシーベルトを被曝しております。それは全く内容は違うんですが、やはりちょっと落差が大きいかなと思うのは、私はそういう医療で二、三十ミリシーベルト浴びて直ちに仕事を始めているわけですけれども、これが現地ですと、二十になると緊急避難の対象になる、あるいは計画的避難の対象になる。この落差を何とかできないかというふうに考えます。

 ただ、重要な点、この部分はしっかり考えておく必要があろうかなと思いますのは、小児の問題です。

 これもそこにいろいろ書いてございますが、大量被曝に関しては、大人よりも子供の方が感受性が高いというデータがございます。一方で、先ほどから問題になっている百ミリシーベルト未満、ここには、大人にとってもないわけですから、子供さんにとっても、成人との比較という点で信頼性の高いデータはございません。

 一方で、あのICRPのパブリケーション一一一等でも、小児や妊婦などの特別なグループには特に留意すべきであるとか、甲状腺がんに関しては、あのチェルノブイリでの非常に重い治験、小児、乳幼児で甲状腺がんが多発しているという点、それから臨床の現場では、小児のバセドー病には、そういうことも勘案して放射性ヨードの治療は行っておりません。大変いい治療なんですが、日本では原則十八歳以上、積極的なアメリカでも、十歳以下には原則とられていない治療になっております。

 それから、放射線から少し離れますが、たばことの関係ですけれども、たばこも一種の発がん物質ですが、十五歳ぐらいで喫煙を始めた方、それから二十六歳ぐらいから喫煙を始めた方、これを比較しますと、やはり圧倒的に、若いときからたばこを吸い始めた方の方が何十年後かに肺がんになっております。

 こういう点を勘案いたしますと、やはり小児は、がんのかかりやすさという点では十分慎重に対応する必要があろうかなと思っております。

 そういうことを考慮しながら、私としては、何とか今現地で大変な苦労をなさっておられる方、通常の暮らしに可及的速やかに復帰をしていただくためにはどういう手法があり得るのかということを考えてみました。

 目標は、日常の暮らしに戻っていただくことプラスがんを防止すること、がんにかからなくする、そしてかつ早期発見をする。そういうことでがん死をできるだけ少なくする。

 具体的には、一部の方については警戒区域にも居住をしていただけるようにする。それから、計画的避難世帯数を想定されているよりも今後減少させる。それから、これは余り考えたくないんですが、新たな原発イベントが生じたようなとき、その対応についても、そういうことを流用すれば、より洗練された避難ができるのではないかなと思います。

 それで対象者ですけれども、一応、厳し目で年間積算線量推定二十ミリシーベルト以下の地域に居住されておられる方、この数字ですと、現時点での緊急時あるいは復旧時のICRPの基準を守ることができます。年齢的には、四十歳から五十歳以上と年齢で分ける。まずはこういう方々にそういう対象になっていただく。市町村機能が保持されているということは重要です。

 次のページのマップの中では、この赤で囲ったところ以外の部分が多分対象になろうと思いますが、こういたしますと、この二十キロの警戒区域の中にもかなりの部分が対象となる、戻れるのではないかと思います。ですから、これからは、やはり同心円でやっていた時代からは、線量、データに基づく避難に変わっていくことが必要ではないかなと思います。

 次のページ、では、具体的には何をやればいいのか。

 まず、お一人お一人の住民の方々には、バッジ型の簡易線量計を用いて個人別の線量測定をしっかりやっていただく。一カ月で、あるいはこれは二週間でも構わないんですが、個人が、自分がどれだけ被曝したかということを把握できます。また、生活エリア随時計測ということで、携帯の線量計を持っていただく。あるいは地域に一台とか、最初はなかなか集まらないと思いますので。

 それで、住民の方々にも、自助努力の中で、例えば草取りなんかをすれば少し下げられると思いますし、そういう被曝の量を減らすことを頑張っていただく。

 それから決して忘れてならないのが、そういう方に関して、一生、高精度のがん検診を一年に一回あるいは二年に一回受けていただく。今、多くの方ががん検診を受けておられますけれども、それにこの放射線の問題を絡めたスペシャルメニュー、それで精度をより高くする、そういったものをつけ加える。

 この三点セットが重要ではないかと思います。国、行政等におかれましては、まずは原発の事故の安定化ですけれども、これは、収束する前に、例えば今でも実行可能だと思います。

 ただ、詳細な地域の線量の測定、これは必須です。お戻りになる地域が定まった時点で、そこを徹底的に、ホットスポットが存在しないか、これがその方々の被曝の量を避けることができます。住宅の除染、あるいは治安、生活物資の供給、これはもちろん必須です。

 その次に、どういう器具を使うかということを書いております。リアルタイムで線量がわかる線量計、これが実物ですけれども、幸いこの部屋は、一時間たっても一マイクロシーベルト・パー・アワーにはなっておりませんので汚染されていないと思いますが、そういう形で今この場の線量がわかります。これがバッジです。これを肌身離さず持っていただく。大体費用が、一年間分析して一人頭このバッジが七千円ですので、一万人やって大体七千万円程度の予算になるかと思います。こういうことをやっていただく。

 最後のスライドですけれども、達成目標ですが、大変今つらい思いをされている住民の方々、本当に苦しいと思っているんですが、何とか一部の方でも、一人一人でも構わないから、通常の暮らしに戻っていただく。ただし、それは精神論ではなくて、同時に、がんによる死亡は避けていただく。そのための方策を今るる述べさせていただきました。

 何もしなければ三万人に百人の放射線由来のがん死が加わる形になると想定されます。これは非常に過大な見通しだと思いますけれども、念には念を入れてというとこの数字になりますが、それを検診等の充実で二万人に下げることができると思います。だから、一万人ぐらいの方については、より安楽な暮らしを提供することができるではないかなと思っております。

 これは現時点では机上の空論ですけれども、実現可能な、容易に実現できる方法ではないかと思って提案をさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井登志郎君。

石井(登)委員 おはようございます。民主党の石井登志郎でございます。

 参考人の皆様方には、本当にお忙しい中、こうしてお運びいただき、そして陳述をいただきましたこと、心より御礼を申し上げます。

 大変貴重な時間でございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 今回の事案に関しましては、もうまさに人類にとって初めてのことであるということ、そして、私もいろいろ物の本などを、私に限らず同僚各位が読みあさって、何が正しいんだろうというようなところで探っているところでありますが、しかし、申しましたとおり、人類初めてのことであって、なかなかそうした意味では確定的な答えというのが出てこないというところだと思います。

 そうした中で、ぜひそれぞれの知見に基づいて御意見をいただければと思いますが、まず、長瀧参考人にお伺いいたします。チェルノブイリの件に関してであります。

 チェルノブイリの際に、六千人の子供が主に汚染をされた牛乳を飲んで、そして甲状腺のがんを四年後以降に発症していったというようなことが今になってわかったということであります。

 そこで、これは端的な質問なんですけれども、その当時に、そうした牛乳を飲んで内部被曝をするかもしれないというようなリスクはその当地においては認識をされていなかったからこうなってしまったのかということについての質問、つまり、当地ではどういうリスクをその当時は想定をしていて、そして想定をしていなかったのかということ。

 そして、もう一つチェルノブイリに関して、一平米当たり五十五万ベクレル以上のことに関しては強制移住となりました。この基準が今となって考えてみると適切であるのかないのか。

 そのあたりについて御意見をいただければと思います。

長瀧参考人 お答えいたします。

 最初に甲状腺がんの問題でありますけれども、私はもともと専門が甲状腺でございました。この発表も、一番最初にソ連以外で発表になったのは日本でございまして、日ソ専門家会議で発表。その当時は、私どもはとても信用できないといいますか、常識ではなかった。

 といいますのは、先ほどもございました、普通の医学の範囲でバセドー病の治療なんかになりますと、億の単位のベクレルを飲んでいただきます。非常に安全だという感覚を従来持っておる。私も一九五〇年からずっとその薬を使っておりまして、安全だという頭であったので、初めは信用できなかった。

 そのうち、アメリカとヨーロッパ、私も含めて調査団が現地へ行きまして、本当に、甲状腺がんの患者がこんなにたくさんいるということでまず驚きました。ただ、それが本当にチェルノブイリのせいなのか、放射線の影響なのかということに決着がつくまで数年間議論が世界じゅうで続くぐらい、予想しなかったことであります。

 それで、なぜわかったかといいますと、もともとは百万人に一人ぐらいの非常に珍しい病気なんですね、この子供の甲状腺がん。それがふえたものですから、比較的発見しやすかったということがあります。

 初めは、本当にふえているかどうかということを、簡単に言いますと、母集団がないと証明できないじゃないかという議論を続けまして、結局、ウクライナ、ベラルーシの国の全部の子供を母集団にしまして、その中で発見された、手術した甲状腺の患者を分子にしましてそれで見ていくと、百万人に一人だったものが、一番多いところで百倍、平均して五十倍ぐらいふえたということがわかりまして、それで、客観的な証拠として放射線のせいだろう。

 そうすると、逆に考えまして、沃素131を飲んだということが原因ではないかということが想像されますが、私たちが行きましたときには既に全部沃素131は消えてなくなっておりますので、ここは想像でしかないというのが現状でございます。

 それから、次のもう一つの質問……(石井(登)委員「五十五万ベクレル」と呼ぶ)これは私も気になりまして、最近また改めて当時の人と相談しているのでありますけれども、私どもが最初に大統領府に行きましたときは、まさに、DOEと文科省が発表しましたああいう汚染地図を一番最初に見せられまして、その単位も、今のDOEの発表と同じ単位でございます。

 その中で、最初は空中線量で避難を決めたけれども、そのうち地面の汚染で決めたんだということを言っておりまして、実際には五百五十五キロというのが避難の条件になっていたのでありますけれども、最終的な国際的な報告では、そこの地域に二十七万人住んでいたということになっておりまして、その二十七万人の被曝線量も一応計算して、五十ミリシーベルトぐらいである、しかし、その中から特に健康の被害は認められなかったというのがこの間のまとめの報告でございます。

 ですから、五百五十五というのは、今の福島の原発で計測して発表されている濃度でございます。

石井(登)委員 ありがとうございました。

 では、引き続きまして仁志田参考人にお伺いしたいと思います。今、大変な現場の中でわざわざ時間を割いていただいて、本当に感謝をするところでございます。

 先ほどの冒頭の陳述に加えて、現在、具体的な学校生活における弊害、つまり、二つに分けてお伺いをしたいんですけれども、この三・八以上、三つの学校に関しては土は取り除いた、ちょっとそこに土の山はあるけれども、普通に体育の授業は問題なく行われているのかどうかということと、もう一つは、三・八に至らなかったところ、二・幾ばくかのところで市長のリーダーシップの中で今のオペレーションをされておられるようですが、しかし、やはりうちの子供は出したくないから体育を休ませるとか、そういうようなことがあるのかないのかという、現実的な現場での学校生活における影響をお聞かせいただければと思います。

仁志田参考人 そういう点では非常に混乱をしております。

 つまり、表土をはいでも危険だと言う親がおりまして、そういう子供は、先生も、大丈夫だからやれというふうには今はならないんですね。先生はやはり親のそうした要望には弱いといいますか、それから先生も、私に言わせると、もっと子供の健康というのは、放射能被害ももちろん考えなくてはいけませんけれども、やはり、健全な心身の育成という観点から、放射能の危険の度合いというその判断というのは難しいところもあります。

 しかし、一定の政策をとっている以上、その中でちゃんとやらせるべきだと私は思っておりますが、現実は、三・〇の中学校でもちゃんとクラブ活動もやっているところもありますし、二・〇でもほとんどやっていない、何といいますか、教育として統一のとれた状態になっていないというのが現実であって、まことに遺憾に思っている次第でございます。

 以上です。

石井(登)委員 ありがとうございました。

 その中で、先ほど仁志田参考人が言及されたプールのことは、私も、ああ、そういうことはこれから心配だなと思ったところでございます。

 プールについて、私も、今これは参考人の意見を聞いて思いついて御質問するんですが、長瀧参考人、武田参考人、山口参考人にそれぞれ、もちろん、水は基準値以下ということになろうと思いますが、子供がそこで泳ぐということに関して問題があるのかないのかということについて、それぞれ御見解をお聞かせいただければと思います。

 まず長瀧参考人、よろしくお願いします。

長瀧参考人 これは、少なければ少ないほどいいということは絶対に確かでございます。何もないときには一ミリシーベルト以下ということは確かなんですが、今実際に放射性物質が落ちてきている、地上にもある、プールの中にもあるという状況でどうするかということは、具体的に、では、そのプールの汚染の程度、どれぐらいの被害をもたらすかということと、泳ぐことを禁止した場合に子供にどれだけのマイナスがあるか、そのバランスで決めるということが原則だろうと思います。

 ちょっと今、具体的にその汚染の量がわかりませんので、泳いだ方がいいとかいけないとかということはうかつに申し上げられませんが、少なくとも、放射線によってどういう明らかな害があるか、そして、それを禁止するために、例えば遊泳禁止ということにした場合にどういう害があるか、そのバランスで決めることであろうと思っております。

武田参考人 私は、福島県で何をやるにしても、放射線のレベルが高ければ、どれも、野菜も汚れるし子供も被曝するし、もしくは通常の生活に入れないということがありますので、例えば今のプールの件に関しては、もちろん、被曝しないでプールをすることができるわけであります。つまり、放射性物質を含まない水でよく洗ったプールで泳がせればいいわけですから、我慢しろという方向ではなくて、改善した状態で子供たちがプールをする。

 つまり、プールで運動することが大切であるからして放射線の被曝は我慢しろという方向ではなくて、やはり、放射線の被曝もしない環境で、必要であれば疎開も必要でしょうし、夏季教室で、放射線の被曝をしていないところで子供たちにプールをさせることもできると思いますので、そういうことを積極的にしていただきたいというふうに思っています。

山口参考人 ほぼ同じ意見になりますけれども、やはり個別に一つ一つのプールについてデータをしっかりチェックして、それが一定の基準を満たしているかどうか、それをチェックした上で、それを低減させる努力を十二分にやって判断をするという形になろうかと思います。

石井(登)委員 ありがとうございました。

 放射線というこの被害が実際どれだけになったらどういうリスクになるかというのがわからないというようなことが、そういう意味では、いろいろ確定的にならないことの一つの大きな要因だと思います。

 そうした中で、私は、物の本を読んでいて、これまたきょうはどうしてもお伺いしようと思っていた一点は、例えば、ブラジルのある地域では自然の被曝量が年間十ミリシーベルトである、そして、イランのラムサールになると三けたを超えるところもある。そうしたところでは、それは外部被曝であろうと思いますけれども、全く健康被害もなく普通の生活が営まれている。その中で、これをどう理解すればいいのか。人間というのはそうした環境になれるものなのか。もしくは、その線種、放射線の種類によって影響があるのか。

 この点について見解を、これも長瀧参考人、武田参考人、山口参考人、お聞かせいただければと思います。

長瀧参考人 先ほど申し上げましたけれども、放射線の影響というのは、特に晩発影響は、一人一人を調べても、これが放射線の影響だということはわからない。そうすると、数を集めて被曝した人としない人とを比較して、被曝した人にある病気が多い、それしか方法が現在はないわけです。将来、方法は出てくると思いますけれども、現在はそれしかない。

 そうしますと、今おっしゃいましたような十ミリシーベルトを年間浴びているところと、では日本とを比べてどうだというときに、差があったときでも、それが放射線のせいなのか、それとも食べ物の違いなのか、人種の違いなのか、それはなかなか決定する方法がない。

 私が申し上げていますのは、わからないということをただ申し上げるんじゃなくて、実際に、そういう状況で不明なままのところが多い。そこを無理に科学的にこうだという議論をすると、かえって複雑になって混乱するので、わからないところはわからないということを申し上げているわけでありまして、十ミリシーベルトの影響がどうだということは、今のところはわかっておりません。少なくとも、影響があるという明らかな結果はないというふうに思っております。

武田参考人 私は、医学的見地でなくて、材料の劣化というのをずっと長くやっておりましたので、その関係から、生体材料の劣化ということからいいますと、赤道地方の人たちがなぜ色が黒いかといいますと、紫外線が強いので、それに対する皮膚がんの防御のために色が黒いわけであります。その土地、その土地でその環境に合わせて最も長寿なように生体は防御いたしますので、世界のどこが放射線が高いから日本人もそれと同じであるというようなことは、科学的には少なくとも論理的ではないと思います。

 それからもう一つは、私は医学的じゃないんですが、生体の防御というのを科学的に見れば、例えば日本ですと、現状においての、年間一ミリシーベルトにおいての防御系を形成しているわけでありまして、それにプラスされる部分については、原則としては、個人は自分の力では防御できないというのが通常であります、それの程度がどのくらいかという問題がありますから。

 それから、もう一つ私がここでお話ししたいのは、一年一ミリシーベルトという国際的な基準は、非常に長い間の医学的もしくは総合的な検討の結果、国際勧告になっていて、さらに、日本の文部省、厚生労働省などの主要な法律は、すべて一年一ミリシーベルトで健康というものを管理するということでやってまいりました。それを、この緊急時に別の議論をするというのは、相当難しいというふうに思っています。

山口参考人 今御質問にあった地域について、いろいろ疫学調査で余り明確な差が出ていないということは承知しておりますけれども、先ほど、私のプレゼンの中で申し上げましたように、その程度の量、たとえ百ミリシーベルトでも、現地の方の生活習慣の方がはるかに大きな影響を与える。

 それから、長い歴史の中で、そういうところの方々がやや高目の低線量になれてきたということが起きているかもしれないということを考えますと、それは、科学のレベルからいうと差を認めることができなかったということだと思うんですが、そのデータをそのまま福島に移すということは、ちょっと危険かなというふうに思います。

石井(登)委員 ありがとうございました。

 それでは、これからは、この先何をしていくかということについて二つほどお伺いをしたいと思います。これはそれぞれのお立場から四人の参考人の方にお聞かせをいただきたいと思いますが、原子力に関連する行政組織のあり方について御意見をお伺いしたいと思います。

 と申しますのも、経産省と保安院のあり方であるとか、もしくは、それぞれの調査発表が、やれ内閣府、経産省、そして文科省、それぞれの所管に分かれている。もしくは、現場の首長さんである仁志田参考人におかれましては、それぞれの行政発表と、それから、県もしくは市との関係の中で御苦労された点等あれば、今後の行政組織のあり方という観点で御意見をいただければありがたいと思います。

長瀧参考人 全く専門の知識はございませんので一般論になってしまいますが、やはりこれは、推進する側と規制する側というものは独立して存在して、お互いに自由に意見を述べ合って議論するということが根本的には必要だろうと思います。

 以上でございます。

仁志田参考人 今回、私ども、避難者を受け入れたいろいろなそういう経験を通して、数年前に国民保護法という法律ができまして、地方においても、その対応で我々もそういった法律に基づく体制をつくったところですけれども、あれによれば、あれは、あの当時、テポドンとかそういうのが来た場合に、要するに、従来と違って、広域的に避難するとか広域的に何かをやらなければならないというときに対応するものだというふうに承知しておりましたけれども、今回初めて、大体あの避難者も、最初、地震のときは私どもの市民がやはり千三百ぐらい避難しておったんですけれども、これは、インフラが解消するに従って逐次自宅に帰っていく。そのうち、原発地域の人たちがどんどん来る。それが全く脈絡なく来るんですね、突然あらわれるという感じで。しかし、それでも我々は受け入れていったんです。

 そして、受け入れる中で、県のやるべき仕事、我々がやるべき仕事はあるんですけれども、例えば、避難民が来る、それに対して我々は受け入れた。その食料といいますか給食というか、それは、一日二千食、県が配給してくるんです。それを市役所から八カ所に分かれて持っていく。しかし、県も、対策本部もあるし、それに、私どもでも八カ所ある。各市町村にも何カ所もある。恐らく何千カ所というところがあるんじゃないか。そこへ、どれだけの何食だとかというような配達をするということではなかなか大変ではないかということで、現地で、我々市の方にやらせてもらいたい、インフラも落ちついてそういう弁当屋さんもやっているんだから、では、うちでやらせてくれと言ってやらせてもらった例があるんです。

 つまり何を申し上げたいかというと、一つは、こういう事態というのはこれからも想定されるんだと思うんです。そうすれば、やはり大規模なそういう災害に対して、何といいますか、少なくとも市町村を越えて避難するとか、そういうことに対しての体制とそれからその役割分担というものを、国と県と、それから、我々市町村は直接市民を持っておりますので、そういうこと。

 今回つくづく思ったのは、私どもには南相馬市とか浪江町とかいろいろなところから来るんですけれども、その人たちに対して我々は、具体的にいろいろな行政サービスをしようと思っても、長くなるとそれはできないんですよ。

 しかし、当該の町でやることになって、市町村でやっていることをやらなければならないんだけれども、それは遠くに避難している。避難しているというか、役場が遠くにある。そうすると、一週間、十日はいいんですけれども、何カ月もたったら、いろいろな意味で、行政サービス、例えば介護保険であるとかなんとかというのが発生しますけれども、それらをどうしていくのかというようなことについて、やはり新たな体制というものを構築していかないとまずいのではないか、このように思っているところでございます。

武田参考人 私は、原子力の技術を三十八年、ほかのこともやっておりましたけれどもやってきまして、技術的に今回の福島は破綻したわけでありますね。事実としては、何が原因であれ、我々が技術的にクリアできなかったことが生じた。

 その原因を、私が経験したことを忌憚なくお話しをいたしますと、まず、原子力保安院というのができたのが大変なマイナスでした。これが、推進をするのか抑制をするのか、性格もはっきりしない。ほとんどのデータがそこにとまっていてほとんど出てこないということで、事実を把握することがほとんどできませんでした。

 この前、国会で東電の清水社長が五・七メートルの津波の想定が甘かったと言うことに対して質問が出なかったのは非常に奇妙に思ったんですが、技術的な見地に対しては、プライベートカンパニーである、もしくは地域独占である電力会社側の想定が甘いことは技術的に想定の範囲でありまして、それに対して国のチェック機関がある、国民にかわって国がそれをチェックすることがあるということが前提になっておりますが、実は、その五・七メートルのまま通っているということが技術的に非常に不安定な原子炉をつくったということであります。そこのところは、私としては非常によくない組織であったというふうに思います。

 それから、原子力安全委員会も独立性が非常にないということも、私、長い間そこにいる先生方とか、実際にやってこられたことで感じております。一つは、大学の先生であって、なかなか力を発揮することができないというような問題もありますし、それから、原子力関係者がほとんどでありまして、それによって安全ということに対する配慮が非常に不足していたということが言えます。

 それから三番目に私が感じますのは、私が安全委員会の専門委員を終わりまして原子力委員会の方の専門委員になったときに、まだ今から二年ぐらい前でありますが、国民がこれほど原子力発電所に不安を持っているのに、なぜそこに予算を配分しないんだということを再三言ってまいりましたけれども、そういった意識のずれというものも、技術的な欠陥を生んだ原因ではないかというふうに考えております。

山口参考人 医療の問題だと思うんですが、静岡の地で見ておりまして大変残念なつらい思いになりますのは、その近隣の病院がある意味使えなくなって、そこに御入院なさっていた御老人の方々、数十名近くが亡くなっておられるんですね。そういう体制が今後万が一同じようなことが起きたときには、絶対に防止しなければならない。そうすると、医療機関のネットワークをよほどつくっておかないと、原子力災害が起きたときの拠点病院と称するものが二十キロ―三十キロ圏内使えなくなってしまいますので。

 ただ、これは口で言うほど簡単な問題ではございませんので、よほど強力なリーダーシップでそういうことを実現しなければいけないのではないかな、そのように考えます。

石井(登)委員 ありがとうございます。

 時間が限られてまいりましたので、これは最後に、では山口参考人にもう一度、山口参考人の冒頭の陳述に関してお伺いをいたしますが、きのう、東電の事故収拾道筋の改訂をされたのとともに政府の被災者支援工程表が発表されましたが、しかし、いつ帰れるのかということについては、まだ明確な言及がない状態でした。

 ただ、今の山口参考人の冒頭の陳述とこのお話を聞いておると、炉の状況をどう判断するかもありますけれども、戻れるところは、この条件を満たせばもう戻ってもよろしいのかということに関して、もしくは、とにかく今のままいくと、最低限でも、ステップ1、2と言われる、早くても年末以降というぐらいの相場観ではありますが、そうではなくて、場合と場所によっては、早々に普通に帰宅をするということを検討してもいいのかどうかということについて御意見をいただければと思います。

山口参考人 陳述で申しましたように、私はそう考えております。

 個人管理に移すこと、それから、自助努力ができるように携帯の線量計をできればお渡しすること、あるいは貸すこと、そして、将来にわたって健康チェックをしっかりやっていただくことでそれはかなり容易に実現できると信じております。

石井(登)委員 ありがとうございました。

 きょうは本当にお忙しい中、ありがとうございました。また、国難のときでありますから、ぜひ引き続き、積極的にさまざまなシーンで意見をおっしゃり続けていただければと思います。きょうは本当にどうもありがとうございました。

 これで終わります。

田中委員長 次に、馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳浩と申します。

 きょうはありがとうございます。私は、当然、原子力政策については一通り国会議員としての理解はしておりますが、こういった事故あるいは健康被害という問題については素人でありますので、失礼なことを聞くかもしれませんが、できれば、かんで含んで教えるような感じでいろいろ答弁いただきたいと思います。

 まず、武田参考人に伺います。

 私たちは、地震と津波という原因によるいわゆる天変地異、事故により今回の放射線の原子力施設以外への放出が始まったという認識でおりました。ところが、報道されているように、どうも初動の態勢で政府と経済産業省あるいは東電の対応が、的確に、法令どおりにされていなかったのではないかという疑いが明らかになってまいりました。

 そう考えると、事故ととらえればよいのか、事件というふうにとらえて、やはり時系列を含めてだれがどのように対応したか、その根拠は、法律は何なのか、ここをやはり調査をしていかなければいけないなと思っているんです。

 まず、事故と考えたらいいのか事件としてとらえるべきか、この点についての見解をお伺いしたいと思います。

武田参考人 まず、最初の陳述に申し上げましたように、日本の原子力発電所は、ほぼ震度六以上ぐらいの地震で倒壊するように、この場合の倒壊というのは倒産みたいな意味でありますが、つまり、原子炉がいろいろな形で壊れるということを前提につくられているわけですから、その意味では、技術の問題よりか、そういう設計基準をもって原子炉をつくった、原発をつくったということがまず第一であろうと思います。

 それから、あのぐらい大きな装置というのは、必ず半日もしくは一日ぐらい前に兆候があらわれます。今度ですと、例えば電源が切れて循環水が通らないということになりますと、小さな装置ですと、あっという間にある意味では爆発したりいろいろなことが起こるわけですが、物理的に言いますと、大体サイズのルートで時間が経過します。

 したがって、大きい装置ほど、簡単に言うと象の動きは遅いというのと同じなんですが、原子力発電所の場合は装置が大きいだけに、実際に事故になる原因が起きてから例えばその事故が具体的な形をあらわす、今度の場合は、循環水が切れたという状態から熱の量は計算できます、それに従って水の蒸発量も計算できます、それから、腐食によって水素が発生する量も直ちに計算できます。したがって、循環水が切れた時点で、一日後とか半日後に水素爆発するとか燃料が溶融するということは予想できるわけであります。これは、装置が大きいことによってできることですね。

 それから、もしもそこの時点での風向きというのがわかっていれば、一日ぐらいの余裕がありますから、何号炉はいつ爆発する、それによって放出する量は何ベクレルである、これも計算の方法がもう確立しておりまして、予算を使ってそういう計算のソフトも完成しております。それに気象庁がもし力を尽くして風向きを推定したら、確実にどこの地点がどのくらいの汚染を受けるということがわかります。そこからもしも計画的にバスとかそういう手段で避難させるとすると、変な話ですけれども、原発自身は、原発という機械は壊れますが、住民は被曝することなく退避をすることができる。

 そういうことができたという点では、初動における情報の公開、特に技術的な情報の公開が著しくおくれたというふうに思います。

 それから、最近になって、燃料が溶融しているのではないかという報道が流れましたが、これは、専門家の間、原子力安全委員長も言っておられますし、それから日本原子力学会も発表しておりますが、私もそうでしたけれども、三月末には燃料が破壊されているということはおおよそ検討がついておりました。それが二カ月後に発表されるということがあって、いろいろな対応がおくれた。

 例えば、東電の最初に発表した、四月中旬に発表した工程表というのは、既に東電が炉内での燃料の破壊がわかっていながら違う工程表を発表する、そういうことになりましたので、全体的な技術の初動態勢というのは、大変に人間的な要素が多かったというふうに思っています。

馳委員 事故が、人為的な対応のまずさ、連携不足、公開不足により事件性を帯びてきているのではないかなという疑いを持って私たち見ておりますが、そうすると、この後、やはり検証しなきゃいけないんじゃないだろうかと国会でも議論になっております。

 そうすると、菅総理は、政府が任命した人によって検証し、もちろんその対象には私も、つまり総理自身もなりますというふうにおっしゃられました。

 一方、我々自由民主党は、議員立法で国会に、例のアメリカのスリーマイル島の事故のときのようなケメニー委員会をつくって、偽証罪とか、また、調査権限も持ったそういう独立性の高い調査委員会を置いてやはり検証しないと、そして、その検証した結果を国際社会に報告する、できればIAEAのメンバーにもその中に入ってもらう。同時に、次の起きてはならない事故に対しての備えという意味でも、我々はやはり国会にそういった委員会が必要なのではないかなというふうに思っております。

 今後の課題もやはり含んでおりますので、武田先生、どういうふうにお考えですか。

武田参考人 陳述でも申し上げましたとおり、原子力発電というのは、人間の想像を超えるような出力、つまり熱の出力を持っております。そういった巨大技術を日本社会がマネジメントするためには、今言われましたように、原因追求を極めて厳密にやるということが、五十基ほど日本には原子力発電所がありますが、今後、それの実質的な安全性を保つ上で非常に重要である。

 そのときに極めて重要なことは、やはり、事実を非常に重視するということに基づいて実施することが今後の技術の安全性を保つものだというふうに考えております。

馳委員 もう一点、武田参考人にお伺いします。

 私たちも、SPEEDIがあるのに、どうして毎日、できれば一時間に一枚ずつ、SPEEDIによる、地図の上に放射性物質が拡散していくようなあれを報道してくれなかったんだろう、公表してくれなかったんだろうかといまだに疑問なんですよ。三月二十三日が一番最初でしたっけ、その後、四月に入って一枚、それはないだろうというふうに思うわけです。多分、私たち国会議員以上に、地元住民の皆さんは大変な憤りを持っておられると思います。

 武田参考人、SPEEDIは法令に従えば公表できるはずなのに、されていなかった。この点についての見解をお伺いします。

武田参考人 私が最初にその事件があって爆発して大体どのくらいのベクレルが出たということを思ったときに、風向きが一番心配でした。風向きによって風下は大量に被曝をします。そのときに政府は放射線は距離の自乗に反比例すると言いましたけれども、これは科学的に間違いでありまして、放射線の被曝は、原子炉からもやもやっと上がった、いわば噴煙とか花粉というようなものと同じなんですが、それが風に吹かれていくところの下が被曝するわけでありますので、距離の自乗には全然関係がないものであります。

 したがって、最も重要なことは、風向きを伝えるということであります。それにSPEEDIが役立つわけでありまして、SPEEDIは、もちろん即刻、迷うことなく公表すべきであり、それはやはり、原子力発電所という、非常に危険だけれども国益に即しているという技術を開発する上の一番下の要件といいますか、そういうものであるということか思います。

 三月二十三日に最初に発表されたSPEEDIのデータを見まして私はびっくりいたしました、これは大変だ、もう既に百ミリを超えているところが相当な地域あるということで。これをもしも手続上何かのかげんで隠したとすると、それは被曝した人の病気に直接かかわることですから、私のような科学をやっている人間にはとても考えられないような措置であったというふうに思います。

馳委員 内閣参与であった小佐古先生も、法令に基づいて対応していればよかったのにというふうな疑問の声を持って、記者会見をして退任されました。私は、この辺は今後の検証の課題なんだろうと思います。

 次に、山口参考人にお伺いをいたします。

 きのう、大塚厚生労働副大臣がジュネーブのWHOの総会で、大量に放射性物質を大気中、海洋に発散をさせたことのおわびを申し上げた後、長期的に健康調査をしますというふうに表明をされました。

 そこで山口参考人にお伺いいたしますが、長期的に健康調査をする場合に必要な要件、その基準というもの、どういう健康調査なのか、だれがするんだろうか、こういうことについて教えていただけますでしょうか。

山口参考人 我が国では、広島ないしは長崎、そういう調査をやってきた歴史があろうかと思います。一方で、これは私そう詳しくはございませんが、チェルノブイリにおいてはそういう機関が十分に働かなかったのではないかなと思っております。

 ですので、項目としては、一般の健康チェックプラス、先ほど私が申し上げたような健康管理、検診等も含めて、そういうものを住民の方に施行できるような施設をしっかり置くということは理想的だと思います。

 大変長期にわたりますので、場合によって、研究機関等の充実が図られるべきではないかなと思っております。

馳委員 山口先生、素人なので何でも聞きます。

 血液検査とかがん検診とか、お子さんから高齢者まで必要だと思うんですが、当然、その費用は国なのか東電なのかによって行われるべきだと思いますが、そういった体制を整える必要性はあるというふうにお考えですか。

山口参考人 まさにそういうことを申し上げております。

 がん検診を充実させた形でやるということは、血液の検査から全身状態のチェック、目等、放射線障害の起き得る部位についての検診が全部含まれますので、まさに先生のおっしゃるとおりだと思います。

馳委員 もう一点、放射線障害というふうに聞くと、がん、白血病、甲状腺とかそういう単語がすぐ思い浮かんでまいりますが、また、これは先生御専門じゃないと思いますが、生態系への影響、こういったことも私はやはり懸念が出てまいりまして、そうすると、人間のホルモン作用への影響というのは、やはりこの放射線の健康被害と関連するものなのでしょうか。

 実は、今からもう十数年前になりますけれども、いわゆる環境ホルモンの問題で、目に見えない健康被害ということについて、そして、世代間を超えた、連鎖をする健康被害について世界的に大きな問題となりました。我が国でも、ダイオキシン対策の法令ができて、焼却炉などの規制強化などがされたところであります。

 放射線による健康被害というのは、がん以外にどういった健康被害といったことを我々は想定すればよろしいんでしょうか。

山口参考人 これはICRP等でも言っておられるとおり、がんを含めたものプラス、非常に率は低いですが、遺伝的な影響というのは見ていかなければいけないだろうなと思います。

 したがって、ある意味、次の世代、さらに次の世代、そういう長期的な視点に基づく調査を、これは日本がやる責務があるのではないかなと思います。

馳委員 山口先生、もう一点、さらに突っ込んでお聞きします。

 いわゆる世代を超えた健康被害ということを考えると、生殖系への影響が何かあるんじゃないかなというふうに疑ってしまうんですね。そういった点の心配はありませんか。

山口参考人 大量に被曝した場合にはそのデータは科学的に証明されていると思いますけれども、現在議論されているような被曝量では、一応認められないということになっていると思います。科学的に証明されていないというのが正確な言い方ですが、ただ、それが本当にそうなのかということは、調査を続けるべきだと思います。

馳委員 次に、仁志田参考人にお伺いをしたいと思います。

 表土をはぐことは市長の判断ですか。

仁志田参考人 私の判断です。

馳委員 市長が判断をされるに当たって、市の教育委員会、県の教育委員会、文部科学省、学識経験者、だれの意見を参考にして決断をされましたか。

仁志田参考人 福島県が顧問に迎えております山下先生の講演、それから、チェルノブイリでも表土をはいだという事実、この件について、伊達市が表土をはぐということについては、県やその他には相談をしておりません。

 と申しますのは、それは、国が定めた基準といいますか考え方を何ら侵してはいないと。つまり、三・八というのも尊重をしておりますけれども、それは、先ほど申し上げましたように、子供たちが屋外で遊ぶことを三・八以上は制限する、放射能的には大丈夫だけれども制限するということについて、これはやはり、子供の発育上、表で遊ぶということを制限する、そういうことはできるだけ避けていきたい。

 したがって、これは伊達市の判断で、表土をはげば下がるという実験の結果、実行しよう、こういうことになったところでございます。

馳委員 実は私、四月五日に、福島市、相馬市、南相馬市の市長、教育長、視察に参りまして、一番懸念されることをお伺いしたときに、この健康基準を国が定めるべきであるという強いおしかりをいただきました。この委員会でも質問をし、その後、四月十九日にこういった基準、三・八マイクロシーベルト、そして一年間の二十ミリシーベルトというのが出てきて、また今日のこういう参考人質疑につながってきているんですけれどもね。

 文部科学省のしかるべき立場の人が、本来なら、福島県の教育委員会、そして伊達市の教育委員会を通じて、むしろ指導なり通知があってしかるべきだと私は思っているんですよ。こういう重大な決断を市長の判断に任せてしまうこと自体が、政府として十分な対応ではなかったのではないかなというふうに疑念を持っているんです。

 したがって、この判断に至るに当たって、文部科学省に問い合わせるということはされなかったんですか。

仁志田参考人 私どもは、直接国と相談するというそういう関係ではないのです。県とは、もちろん、相談といいますかそういう話をしております。

 それで、文科省の基準も県を通して県教委が流したものでありまして、それに従って私どもは学校の生徒の指導を教育委員会がしている、こういうことであって、その表土をはぐかはがないかというのは、ですから、先ほど申し上げましたように、三・八未満でもはぐというのは、私はその三・八を、疑っていると言うとなんですけれども、それはないがしろにすることに結果としてはなるんじゃないかと。

 私も父兄からは強く責められておりますけれども、しかし、そこまで実施するという確信といいますか科学的な根拠といいますか、そういうものは持ち合わせていないので、三・八が正しいか正しくないかというのは私には科学的には判断できませんけれども、しかし、しかるべき判断をいただいたということですから、それを基準にして行動しているということでありまして、そういう意味で、表土をはぐというのは、三・八以上で子供たちが自由に遊べるようにという観点と、冒頭陳述で申し上げましたように、幼稚園児等についてこれから表土をやはりはいでいかなければいけないのではないかというのは、内部被曝の問題があるということですから、これは何ら三・八マイクロシーベルトというような基準について疑義を挟むからやるという性質のものではない、このように考えておりますので、実行したところです。

馳委員 長瀧参考人にお伺いしますが、科学的事実に基づいて安全を願う国際的なポリシー、私は、今、伊達市長の一連の発言とこの経緯をお伺いをしていると、政治的にというか、行政の長として極めて妥当な判断をされたと思いますが、長瀧先生もそう思われますか。

長瀧参考人 先ほどから国際的なポリシーということを言いまして、ここでもかなり長期間にわたって議論されておりまして、ただ、はっきりさせたいのは、平常時のときと、それから、今のように実際に放射性物質が降ってくるような、地上にあるような異常な事態とは、本当に感覚を分けて考えないといけないというふうに思います。

 その中の一つとして、国際的なポリシーの中でも、その状況に応じて、二十から百とか、あるいは二十から一という幅を持たせた勧告をしておりまして、これは、そのときの現場に合わせた状況での対策ということで幅を持たせている。

 これは極端な言い方でありますけれども、では、放射線の影響、そこにいたらどんな危険があるか。では、がんになる可能性が仮に数%ふえるといたします。そうすると、そこにもう既にがんにかかった患者さんを、病院に入院している患者さんを、将来がんになる可能性がふえるからといって移動させる、そして、実際に移動の途中でその患者さんたちが亡くなるというふうなことがありました場合には、これは、放射線の規制を守るということと、それから、規制のための犠牲というものとのバランスを十分に考えなきゃいけない。少なくとも、その入院している患者さんは、規制よりは、防護のために被害の方がはるかに大きいということはだれが見てもわかることだと思うんですね。

 ですから、そういう平常の場合と緊急の場合とは頭を分けて考えなきゃいけないし、そのときに、放射線の害を少なくする努力はするんですが、その害と、移転その他、守るための害、それとのバランスを本当にその住民の方の声を聞いて決めるべきだろう。

 それは、国際的なポリシーからいってもその感覚は十分に勧告の中に入っておりますし、現実に、それを日本でも適用して、住民の方の御意見というのは本当にもっともっと伺いたいなと私自身は思っております。

馳委員 放射性廃棄物の処理、いわゆる放射線を浴びた物質の処理についてお伺いしたいと思います。

 こうして放射性物質が降り注いでくる中での日常生活というのは、我が国が戦後初めて経験をした事態でありまして、当然、放射線を浴びた物質、あるいは被災地においては、実は御遺体がまだそのままなんですね。瓦れきもそのままです。家畜は今後安楽死させますけれども、石灰をかぶせてブルーシートをかけるだけでありまして、最終的な処理の方針というのは、まだ実は決まっておりません。

 私は、早く議論の上、最新の科学的な知見に基づいて処理方針を決めて、その場所も設定する。埋設をするのか焼くのか、その方式はどうするのかということを、懸念されることをこれはやはり政府として早く出すべきであり、調整がつかないなら、議員立法ででも、やはりどんどん政府のしりをたたいていく必要があると私は思っています。

 その必要性について武田参考人の御意見を伺うのと、もう一つ、仁志田市長、プールのお話をされましたが、今後、夏が近づいてまいりますと、暑いですね。私は、せめてクーラーは、すべての幼稚園、保育園、小学校、中学校、高校、これはやはり設備として必要なのではないかと思っていますし、その予算的な措置はしなきゃいけないと私は思っています。

 運動場に出て一時間以内、また、市町村によっては校外での活動を自粛しているところもあります。そう考えると、クーラーの施設設備というのは必要性を感じます。それについての御意見がありましたらお伺いしたいと思います。

 武田参考人、仁志田参考人の順で答弁をお願いします。

武田参考人 放射性物質というのは、今回のことで、ソ連の次に日本が汚染されたわけです。ソ連は何もしなかったので、現在でもチェルノブイリはコンクリートをかぶって、そこの中にある遺体も回収できない状態でありますし、汚れたところには人が住んでおりません。

 しかし、日本は、工業力もあるし科学的な力もあるし、もしも日本国挙げて、要するに、現在福島県が汚れているというのは、あれは十年、二十年全然使えない汚れじゃなくて、単に放射線を出す粉が表面にあるだけですから、ですから、その粉を取れば、福島というのは一年ぐらいで住めるようになると僕は思うんです。今、汚れているところをそのままにして野菜をつくったり、汚れているところをそのままにして二十ミリシーベルトで頑張れというのは、いかにも方策がなさ過ぎると思うんです。取れるものなんですから、土の上にただぱらぱらと乗っているものです。

 チェルノブイリでは、大体、放射性物質というのは二十年間で二十センチしか沈んでいないわけですよ、余り雨が降るといけないんですが。現在のところ、例えば梅雨の前であれば、放射性物質というものは表面にしかないんですよ。それをローラーのように取ってしまえば、言ってみれば掃除機でいいわけです。事実、郡山の小学校で土が三・三マイクロシーベルトからぐっと五分の一ぐらいに下がったわけですから。それは何をやったかといったら、ブラシでわあっとかきまぜて、その表土をさっと取っただけなんですね。

 したがって、日本の国土は非常に重要だし、技術的には取り得るので、放射性物質で汚れたから十年、二十年は郷土に帰れないとか、二十ミリで我慢しなさいというのは一切やめて、できるだけ早い機会に放射性物質そのものを取ってしまう。取って、福島原発の近くに返してしまえばいいわけです。

 要するに、事態としては、福島原発にあった放射性物質、これは物質ですから、粉ですから、粉が散ったんですから、その散った粉は三十年間放射線を出し続けるわけですから、これはもう技術的に単に集めて福島原発に返してあげればいいだけのことで、これは、日本の国土が非常に重要だということもあって、できるだけ早くやるべきだ。

 梅雨が来まして雨が降りますと、下の方にしみていきます。そうすると、五センチ、十センチ取らなきゃいけないということになって、これは不可能であるということになりますが、現在では全く不可能じゃないわけです。残念ながら、その放射線を出す粉が自分の目に見えないのでふこうという気が起こらないというだけですので、ぜひ早目に取って、福島がきれいになることを非常に期待しているんです。

仁志田参考人 最初に廃棄物の問題ですけれども、廃棄物については、先ほど申し述べましたように、何とか早く基準を示していただいてこれを最終処分しなければならない、このように思っておりますし、校庭の表土のみならず、私は衛生処理組合の管理者でもあるんですけれども、最終処分場に持ち込まれたそうした廃棄物にも放射能が降り注いでいて、環境省から現状においては移動差しとめの指導を受けておりまして、改めて指示するまで移動してはならない。これは原発地域のいろいろな津波による廃材も全く同じでありまして、会津地方程度ならばいいというふうに環境省からは言われているというふうに報告を受けておりますけれども、こうしたことについて早く国からの御指示をいただきたいというふうに思っているところでございます。

 それから、プールの件に……(馳委員「クーラー」と呼ぶ)クーラーも含めて、要するに、先ほども申し上げましたように、三・八という標準は、別にその三・八であればいいというものではなくて、下げるべき努力をするというのは当然のことだと思うんです。

 それで、表土をはぐことによって一マイクロシーベルト以下にできるということ、それから、窓枠のほこりを払ったり、もちろん閉め切っておくこともいいわけですから、当然それは先生言われるように、クーラーなどの設置をしていかなければならない。そうすることによって、年間累積放射線量を幾らかでも下げることができるという可能性はあると思うんです。

 ですから、結果として、今、年間累積で二十ミリシーベルトといって国の方の標準が示されておりますけれども、そうしたことをすることによってそれを下げるということは可能ではないか。つまり、クーラーも必要ではあろうというふうに思っております。

 プールにつきましては、まだ実際にはどのぐらい放射性のものがあるのかということは、私どもの方では実はわかっていないんですね。これにつきましては県に測定を依頼しているところでございます。

 ただ、今の段階でも父兄が騒いで、騒いでと言うと表現は適切でありませんけれども、父兄からはプールはやめてほしいとか、あるいは校長もやめたいとか、そういうふうに言っている実態にあります。

 その理由には二つありまして、一つは、もちろんプール自体が汚染されているということもありますけれども、プールの水というのは、冬は張っておきますので今も張ってあります。これをシーズン前に抜いて、また新たに入れるわけです。この抜いた水が田畑に入る。そういうことはまかりならぬという農家の皆さんからの意見があって排出できない。もちろんこれについては今調査をしておりますけれども、田んぼに入らない水系でもって流れるものは抜くことはできると思うんです。抜いて入れれば新しい水ですから、問題がないのではないか。

 それから、コンクリートとかそういったところは、経験的に言うと、水洗いすれば放射性物質は大分流れていくということですから、相当程度低くできるんではないかと。

 ですから、私はプールは使用可能ではないかと思っておりますけれども、現状は、今の段階では、ことしの夏のプールはやめたいとかやめるべきだとか、そういう情勢にあるということで、私としては遺憾に思っているところでございます。

馳委員 終わります。どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 本日、四名の方には大変有意義なお話を伺うことができ、心から感謝いたしております。たくさんのことを伺いたい思いでございますが、まず、長瀧参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほど、バランスとポリシーのお話をなさいました。それについてちょっと御説明をいただきたいのですが、参考人は、平時と異常時と変わるのが当然である、現場に合わせた、現状に合わせて変わるべきとおっしゃいました。だけれども、私は、なぜ変わるのか不思議でならないのですね。

 つまり、一ミリシーベルトと決めましたのは、一人の人間の放射性物質を受けるときの身体的影響を考えて一ミリシーベルト。これは、一人の人間は、平時であろうが、また異常時であろうが変わらないわけです。異常時でそんなにころころ変わるならば、私は、一ミリシーベルトなんて決める必要はなかったのではないかというふうに思うのです。この辺についてどうお考えでいらっしゃるかを伺いたいと思います。

長瀧参考人 お答えいたします。

 異常時のときといいますのは、放射線の量が少ないという原則は、異常であろうが正常であろうが、それは同じでございます。ただ、そのために、周辺住民、その地域にいる方がどれだけの被害をこうむるか、その住民の方がこうむる被害を無視して、単に放射線は少ない方がいいという主張はよくないというのが国際機関のポリシーであります。

 先ほどちょっと申し上げましたけれども、一人の人をとってみた場合に、将来の放射線の危険は何か、一ミリシーベルト以上で何が起こるかということを具体的に考える。その害と、例えば、がんにかかって入院している患者さんを放射線からの被害を守るために移動させて、その間にその患者さんが亡くなってしまったとしますと、これは、放射線の一ミリシーベルトというものを守るためにその患者さんは亡くなってしまったということも起こり得るわけですね、極端な例ですけれども。

 ですから、被害を守るためにその住民の方が受ける被害と、それから本当に放射線で受ける被害とを比較して、緊急の場合は行動する必要があるのではないか、そういうことを申し上げたのであります。

 ですから、例えば、放射線の被害として今わかっているのは百ミリシーベルトと申し上げましたけれども、それをそのままICRPの勧告、ポリシーに従って下まで直線的に下げてみますと、例えば十ミリシーベルトというのは、がんになる可能性が〇・一%ふえるという言い方になります。

 そうすると、具体的な放射線の害、将来〇・一%がんになる可能性がふえるということと、それから避難のためにうちを捨てて患者さんが動くという防護のための害と、それを本当に住民の身になって考えて放射線の被害を議論すべきであるというのが、ポリシーで幅を持たせたものである。

 決して、浴びてもいいと言っているわけではない。比較して、その場所で、防護のために起こる被害を無視して、ただただ放射線の被害をなくした方がいいという主張だけではよくないというのが幅を持たせたポリシーであります。

池坊委員 がんにかかっている患者さんを避難させるのがいいのかというのはちょっと極論であるような気がいたしますけれども、武田参考人は、このことに対してはどのようにお考えでいらっしゃいますか。

武田参考人 まず確認しておきたいのが、一年一ミリシーベルトというのは国際勧告でもありますし、国内の法律でもすべて一ミリシーベルトであると。

 これは最近、いろいろな自治体がホームページに、一年百ミリシーベルトまで大丈夫である、こう書いてあるので、私が個別にその自治体の人に聞きますと、いや、政府が一年一ミリシーベルト、法律はどこにあるんですかというような答えが返ってまいりますが、やはり私は、これは四十年来のいろいろな先生方の検討で一年一ミリシーベルトが、線量限度と言っていますが、この限度という考え方は、まあ少しがんになるんだけれども、いろいろな社会的なことを考えればこのくらいは我慢するということで、我慢の限度ということで一年一ミリシーベルトを決めております。

 御存じのとおり、ヨーロッパは〇・一ミリシーベルトを主張しておりますし、日本の法律からいえば、原子力施設のような放射線を出すところは五十マイクロシーベルト、つまり〇・〇五ミリ、それから、これは放射線がないからこのままでいいよというレベルは、クリアランスレベルといいますが、〇・〇一ミリシーベルトという全体的な法体系で進んでおります。

 例えば、校庭の上の土と下の土をまぜるということをしますと、これはもう完全に低レベル廃棄物の違反の行為ということになりまして、どういうことが起こるかといいますと、雨が降ると、下に入った土から地下水が汚れる、すべてそういうことを勘案して現在の日本の放射線防護の法体系ができております。これは、今先生が言われたように、事故になったから急に人間が放射線に強くなるわけではない。

 もう一つは、多くの方々の不安は、今まで放射線が危ないと言ってきたのに、事故が起こったら、突然放射線は危なくないと言われますと、それの方の心理的ストレスは極めて高いというふうに考えますので、やはり一年一ミリに早く到達するように、付近の放射性物質を除くとか住民を避難させるとか、適切な処置を私はするべきだと思っています。

池坊委員 私も同じような意見を持っておりまして、原子力基本法でしたか、法律を読みましたが、一ミリシーベルト。では何のための法律なのか、そんなの最初からおつくりにならなかったらよかったんだと。法律においてはこうしております、だけれどもいろいろな事情をかんがみてということならいいですけれども、突如これだけの範囲は大丈夫ですよというのは、私は解せないなという思いがするんですね。

 校庭における三・八マイクロシーベルトというのも、一から二十ミリシーベルトの許容範囲の中で、二十ミリシーベルトを基準にして算定して三・八とつくったわけですよね。だけれども、三・八なら大丈夫なのか。それはどういうことを基準にしてそういうことが言われているのかわからないのに、三・八、三・八というのだけがひとり歩きしているような気がするんです。

 先ほど仁志田伊達市長が、三・八がどうなのかはわからないけれども保護者は心配していると。私、自分の子供が住んでおりましたらやはり心配ですよ。だって、三・八というのは、これを安全だという保証はだれもできていないんですね。

 私、これに対しては長瀧参考人はどうお思いになるかを簡潔にちょっと言っていただきたいと思います。

長瀧参考人 決して浴びていいと言っているわけではございませんので。比較してと。

 今の緊急事態で、実際にその放射線、放射能が校庭にある、そして空中からふえている状況でどうやってその方たちが暮らしていくかということを、単に放射線は怖いということだけで決めていくと、それはその人たちにとって大変な犠牲を強いることにならないか、そういうことが一つございます。

 では、具体的に、二十ミリシーベルトを被曝した場合に何が起こるということを具体的に心配しておられるかということを本当に考えていただきたいんです。

 ただ国際的にこうなっている、法律はこうなっている、もうそれはそれなりに議論をして、ポリシーで決まりました。しかし、具体的に、今それだけの放射線の中にいるときに、二十ミリシーベルトを浴びると何が起こるから移転しなきゃいけないのかということを本気になってその地域の人のために考えなきゃいけないんじゃないかということを申し上げたかったのです。

池坊委員 一応ですけれども、私たちは法治国家でございますから、法律ができていることはしっかりと守っていかなければいけないのではないかと思います。

 山口参考人に伺いたいのですが、私も、がん対策基本法を策定いたしますときにちょっと勉強もさせていただき、いろいろな施設にも参りました。

 二人に一人ががんになり、三人に一人ががんで死ぬ、だから百万人のうちの七十万人はがんでは死なないんだよというお話でしたけれども、実は、心不全とか最終的な死亡が書かれていても、要因はがんだったという方も多いんだと思うんですね。

 因果関係でいうならば、ストレスが非常に大きながんの要因だと言われておりますけれども、現実には、ではどういうふうなストレスなのかというようなことは細かくはまだ分析されていないのではないかと思うんです。

 そういう意味では、チェルノブイリでも、二十四万人の人が被曝線量平均百ミリシーベルトで健康に影響はなかったと長瀧先生は書いていらっしゃいますけれども、放射線はがんの、ある意味では直接的ではなくてもいろいろな要因を生むのではないかと思いますけれども、その点についてはいかがでございましょうか。

山口参考人 今のお話の中で、三割、三〇%ががんで亡くなられる、それはほかの病気の中にさらに紛れ込んでいるのではないかという点については、その効果はほとんどないと思います。かなり正確に三〇%ががん死ということになっていると思います。

 もう一点は、ストレスとがんの関係。これは今のところ科学的には明確になっておりませんので、一応一言申し上げた上で、御質問の趣旨をちょっと十分理解しているかどうかはわからないんですけれども、今回の放射線で、直接の発がん、それから直接ではない事態が起きているかという御質問かなと思ったんですが、もちろん、その放射線を浴びたという住民の方々は大変心配されて、それによって引き起こされる心の問題、これは極めて大きいと思います。そのためのケア、あるいはもっと前向きな姿勢、こういったものは必要ではないかなと思っております。

池坊委員 私が申し上げたのは、三人に一人以上に、二・七人に一人ぐらいがんなのではないですかということを申し上げたかったんですね。というのは、死亡欄で心不全などと書いてあっても、それは三人に一人の中に、本当はがんだったからといって、がんに数が入っているのかどうか。多分それは心不全で、がんの中に入っていないんじゃないか、がんの死亡率というのは、二人に一人の人ががんになる、そしてやはり三割以上の人ががんで亡くなるのではないかなというふうに私は思っているのです。

 話はかわりますけれども、武田先生が、今は推進派じゃなくて停止派だというふうにおっしゃいました。私は推進派でも停止派でもございませんが、未来のエネルギー政策を考えたときに、やはり原発というのは不可欠なのではないか、つまり安全な原子力発電所が必要なのではないかと思うんです。

 フランスに行って、原子力事情というのをちょっと聞いてまいりました。これは原子力安全規制当局に聞いたんですけれども、向こうでは、きっちりとしたリスク管理ができている、マネジメント能力もある、それからストレスチェックをすごく行っているわけです。

 一つ目には、安全な原子力、安全規制をしっかり定めている、二つ目には、原子力施設の許可をしている、三つ目には、検査執行している、四つ目には、緊急時の対応をしている、五つ目には、国民への広報なんです。

 これは、省庁にまたがっていないで政府として直轄にある。大統領が三名を任命し、上院、下院の両議長が任命している極めて重いものであるわけです。日本の場合には、先ほどもちょっと触れられていましたが、保安院は推進派だと思うんです、経済産業省なので。原子力安全委員会は内閣府にございます。そういうのがいろいろなしがらみで推進をしていったのが今日の姿ではないか。

 やはりチェックが必要だというふうに私は思うし、これから先、もしも原発を多少なりとも推進していくためには、何といっても、安全神話ではなくて、もっと冷静な、安全に運行できるシステム、組織のあり方を考えなければいけないと思うんです。

 武田先生は、ダーウィンの言葉を引用して、勇気がなければ真実が見えないと述べていらっしゃいます。先ほどいろいろなお話をなさいましたが、今の時点における真実というのは具体的に何だというふうにお考えでしょうか。

武田参考人 今のお話にありますとおり、私は、安全な原発推進派と言っていたんですけれども、今は取り下げたんです。

 私も原子力をずっとやっておりまして、フランスに随分長く行ったことがあるんですけれども、原子力発電所を技術的に安全にするということは可能なんですね。

 これは例えば、特に周辺装置の耐震性とか耐災害性が弱いものですから、これを非常に上げても、もともと電源系だとか熱交換器系とか計測系というのは建設費が安いものですから、それにある程度お金をかけても、原子力発電所の資源性だとかコスト性には影響がない。したがって、そこに日本の技術が本当に投入されれば私は大丈夫だと思います。

 しかし、私が、もう全部の原発をとめた方がいいんじゃないかと言っていますのは、原子力発電所を安全に動かすためには技術があってもだめだということを、今さらながら今度の事故で痛感いたしました。日本には原子力発電所が必要だから原子力発電所は安全であるという、技術的には破綻した論理が通っていたというところに問題がある。

 原子力発電所の安全性と原子力発電の必要性というのは別個のものでありますし、また、逆に言えば、安全性を保たなければ原子力発電所を利用することはできないわけでありますので、その点では、私は、原子力発電所の今度の事故は人災だ。

 それは、原子力発電が故障したときには、人が亡くなることも非常に重いんですけれども、郷土を長い間失ってしまうという非常に大きな影響を与えるということ、そういう事実を真正面から見て、それでそれに対する対策をとっていくという点では、残念ながら、私も、フランス人の胆力よりか少し弱いなと。

 そうすると、そういった社会の中で、原子力発電所を安全にやるということは現実的に無理ではないかというふうに、非常に今では、少し後退的に考えておりますが、本当に日本が原子力発電所という巨大なものを正面から見詰めて、事故が起こったら何が起こるのかということもはっきりと見詰められるようになったら、私は大丈夫だと思います。

 しかし、現在でも、二十ミリを我慢しろというような基本的な姿勢にとどまるならば、やはり私は今でも難しいというふうに思っています。

池坊委員 私も国民はそうばかじゃないと思うんですね。だから、いろいろな情報を知っているわけです。そうすると、一ミリから二十ミリと言われて、前は一ミリだったでしょう、法律で決まっていたのは。それなのに何で二十ミリになっちゃったのと。では、政府の言うことは本当なのかしらという疑心暗鬼がすごく生まれてきているように思うんです。

 これは私の偏見かもしれませんけれども、政府にかかわっていらっしゃる先生方というのは、何か基準がすごく甘くなっているんじゃないか。

 放射線のはかり方も、今パソコンなんか開きますともういっぱい出ているんです。そうすると、その方が政府が発表しているよりもはるかに高い数値が出ているんです。だから、なおのこと、一体本当は何なのか、それが非常に不安をかき立てているんだと私は思うんですよね。

 このことに関してはどうお思いになりますか、武田参考人は。

武田参考人 今言われているとおりでありまして、実は、今はもう情報を隠しておくということがもちろんできないわけであります。

 自治体の中には、地上から高さ十五メートルとか、四階のところではかっている。これを住民が、我々は生活するところではかりたいんだ、もしくは、お子さんがおられるわけですから五十センチのところの値を欲しいんだと言いますと、自治体ではこういう答えが返ってくることがあります。測定器は高いから、壊されるといけないので高いところをはかっているんだと。

 十五メートルのところと〇・五では全然違うわけですね。そういうデータを幾ら示されても、これは、お母さん方がそれで満足するはずは絶対ないですね。

 それから三・八マイクロシーベルト。文部省が言っている二十ミリに対して、一時間当たり三・八マイクロシーベルト。聞いてみたら、内部被曝は二%だ。そんなことは専門家では絶対にあり得ないことです。それじゃ、二%の内部被曝というのは何でたった二%なんですかと聞いても、根拠が返ってこないんです。

 これは、今先生言われたとおり、今の時代は幾らでも情報はとれますから。したがって、そういう十五メートルのところではかって、今はマンションの四階以上ですとほとんど被曝は、随分少ないんですよ。一階で多いわけですね。

 ですから、そういう事実がありながら、要するに、僕は、十五メートルのとき、器械が高いんですというのを聞いたとき、いや、この人たちは国民が被曝することを考えているのか、ただ、はかればいいと思っているのかというふうに非常に疑問に思いました。

 そういう点では、やはり心配されているお母さんの立場に立って、しかも、お子さんは非常に低いところで生活されています。それを考えて、もうあしたからでも本当は各自治体が、文部省を含めて、子供が生活するところをはかってもらいたい。

 私は、子供が守れれば、大人は自動的に守れます。したがって、焦点を子供に合わせて、やはりデータの公表、それから説明、全部やっていただきたいというふうに思っております。

池坊委員 放射性物質というのは、ガスとミストですから、飛ぶわけですよね。そうすると、距離には比例しない。先ほどもおっしゃった、飛んでいく方向によって強くなっていく。だから、女川原発なんて、百キロ離れていても影響を受けたわけですね。

 この間、私の友人が、山口参考人がおっしゃる測量計を持っていまして、東京よりも京都の方が高かった。そういうこともあり得るのか、ちょっとそれも不思議なんですけれども。

 山口参考人が計画避難区域のことにちょっと触れられましたね。私は、年齢別に分けて避難させていいのではないかと思うんです。つまり、私なんかは、そんなにひどくない限り、放射線をちょっと浴びたってもう大丈夫なわけですよ。それを、ゼロ歳と私とを一緒にするということがそもそも間違っているのじゃないか。私は、きめ細やかな避難計画というのが必要ではないかというふうに思っているんです。

 本当に私は子供は守りたい、だって影響を受けるんですから。だけれども、受けない人間もたくさんいるんですね。八十歳と八十五歳の住んでいらっしゃるところへ自衛官が来て、避難してください、でも私たちはいいんだ、ここで死にたいんですよ、もうここが私のふるさとだからと。

 私、それでいいんじゃないかと思うんです。今そういう方々が何ミリシーベルト受けたところでそんなに影響はないと思うんですが、ちょっと山口参考人のお話を伺いたいと思います。

山口参考人 まさに私が陳述で申し上げたのはそういうことでございます。その個人個人の感受性、それから積算をしていってどれぐらい浴びたかというデータに基づいて、十分住める場所は今かなりふえてきているのではないかなと思っております。ぜひそういう方向で実現をしていただければと思います。

池坊委員 私の持ち時間はあと五分しかございませんので、今一番こうするべきだということを一分ずつ、四人の参考人の方に伺いたいと思います。

長瀧参考人 やはり地域住民の被害を最小にする、これが一番大切なことであると思います。きめ細かく、その時期時期に応じて、現在の対策、そして来月の対策は十分違っているし、客観的なデータを可能な限り集めて公開する、そして、地域住民と討論、対話を続けながら対策を決めていくということが根本だろうと思っております。

仁志田参考人 私は、子供の生活も含めて、できるだけ日常生活に戻さなくてはならない、そのためには、何とかして放射能のレベルを下げるための努力を、あらゆる努力をするべきではないのか、その一つとして、校庭の表土剥離とかそういったことに取り組むべきではないか、できることはやっていくべきではないか、このように思っております。

武田参考人 今福島を汚しているのは放射性を持った粒でありますから、この粒を、小学校の校庭ばかりでなく、すべての道路、壁、それから、最後には木とか草が残りますから、それを切って、木を全部切る必要はありませんが、葉っぱを切って焼却する、放射性物質回収つきので焼く。これを、できれば可能な限り梅雨の前にやって、土壌の汚染を防ぎ、さらに全体的に洗浄することによって、私は、日本が不幸にして原子力発電所の事故を起こしたけれども、それからは土地の回復は一番早かったという例をぜひつくっていただいて、世界に示したいというふうに思っています。

山口参考人 やはり子供たちのことを考えて、今我々ができるすべてのことをやるべきだと思います。

池坊委員 山口参考人、セシウムというのは、熱を加えますとなくなるのですか。ちょっと、もし御存じの方があったら。

 今いろいろな、お茶の葉などにセシウムがついている、これは熱を加えると少なくなる、減少するというふうにニュースで言われておりますが、それについて、武田参考人、お願いいたします。

武田参考人 放射性物質自体は何をしてもなくなりませんが、野菜の葉っぱについているセシウムは比較的水に溶けやすいので、例えば野菜でゆがくようなことができれば、スウェーデンのデータ及び日本のデータから見ますと、五分の一ぐらいに下がる。だから、余り放射性を含んだものを口にされるのは望ましくないんですが、そういう方法はあるということであります。

池坊委員 四人の参考人のお話を伺いながら、私はやはり、日々変化をしておりますので、一度決めたことは守る、守らなきゃいけないということではなくて、住民の視点に立って、それぞれ、例えば文部科学省は三・八と決めたけれども、三・八じゃなくてもっとそれを低めてもいいんだし、避難計画ももっと年齢によって分ける、そのような柔軟性が必要なんだなということを痛感いたしました。

 本当にありがとうございました。

田中委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、四人の参考人の先生方には、貴重な御意見をまことにありがとうございます。私の方からも御質問を申し上げたいと思っております。

 それで、当委員会で、私も繰り返し福島県における放射線の被害の問題を取り上げてきました。とりわけ校庭の基準値というものについても議論を重ねてまいりました。

 おさらいになりますけれども、ICRPが定めた危機収束時の一から二十ミリシーベルト・パー・年というものを、子供が屋外に八時間、木造の屋内に十六時間いるということを想定し、割り戻して三・八マイクロシーベルト・パー・時間、一時間当たりというところを定めたわけですね。

 これに対して、なぜ二十ミリという最大値をとったのか、こういう疑問と不安の声が繰り返し出されてまいりました。先日は日本医師会が見解を発表して、「一〜二十ミリシーベルトを最大値の二十ミリシーベルトとして扱った科学的根拠が不明確である。」医師会もそういう見解を示されているわけです。

 そこで、きょうは四人の参考人の方々全員にまず一言ずつ聞きたいんですが、この年間二十ミリという最大値を子供に対してとったということについて妥当と言えるのかどうか、それぞれお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

長瀧参考人 子供も含めまして、確実な科学的な証拠として放射線の影響が認められたというのは、やはり百ミリシーベルトであります。これは科学的な影響であります。

田中委員長 何シーベルトですか。

長瀧参考人 百ミリシーベルト。その中に子供も入っております。

 それから、子供について本当に科学的なデータがあるといいますのは、放射線を大量に浴びた子供というのは、原爆の場合を除いては、チェルノブイリの場合はございましたけれども、直接の被曝というのは原爆ぐらいしかない。原爆について出たデータだけ言いますと、百ミリシーベルト以下はわからないといいながら、そのレベルで比較しますと、三十歳、五十歳、あるいは十歳ということで、危険率、危険の比率が出してございます。

 三十歳と比べますと、十歳の子供は二倍ぐらいだというデータが出ております。そのデータをもとにしてICRPは、子供に対しては数倍と。その数倍という言葉が不明確だからということで議論して、たしか二、三倍という言葉になっていると思いますが、それは原爆のデータをもとにしたものでございます。それも百ミリシーベルト。

 それ以下はわからないということでありますので、医師会の「科学的根拠」は、だれも今二十ミリシーベルトについて科学的根拠を言える方はいないはずなんですね。それだけのデータを持って、ちゃんと二十ミリシーベルトでこれだけのことが起こると言う方はいらっしゃらない。

 むしろ、そういう科学的な根拠のない議論をするよりは、実際に学校の生徒がそれを避けるために、今後全部の学校が基準に戻るまで休校にするのか、あるいは全部ほかの県に行ってしまって避難するのか、そういうものとの比較をして議論される方が現在は正しいのではないかと思っております。

仁志田参考人 年間累積二十ミリシーベルトが妥当かどうかということについて、私は判断する能力がありません。

 ただ、とにかく少ない方がいいということは常識的にわかりますから、行政の長としては、そういう努力をすると言うしかありません。

武田参考人 一年に二十ミリシーベルトでも大丈夫だと言う方は、どういう根拠を持って言われているのか全くわからないので、私は、神になった人だ、こう言っています。つまり、わからないことを言うわけですから。それも、人の健康にかかわることでわからないことを言うわけですね。

 今もほかの参考人の先生が言っておられたように、一ミリシーベルトと二十ミリシーベルトの健康がどうなるかということはだれも言えないんですね。だれも言えないのに、二十ミリシーベルトで大丈夫だと言っている人がいるんですね。その大丈夫だなんというのはどこから出てきたんだと。

 もしも今までのICRPの考え方に沿えば、それが唯一我々の指針ですけれども、学術問題以外では指針ですが、一ミリシーベルトに比べて二十ミリシーベルトは二十倍のがんの過剰発生があるということしか我々は言えないわけです。

 それからもう一つつけ加えるならば、文部省の三・八マイクロシーベルトを私が計算しますと、子供は年間に約六十ミリシーベルト浴びます。それはどうしてかといいますと、お子さんは、そこの三・八マイクロシーベルトをはかっている場所によるんですけれども、土の上ではかっているのならいいんですけれども、あらかたは〇・五とか一メートルのところではかります。ところが、お子さんは運動場で腕立て伏せをしたりほこりにまみれたりします。それを計算に入れていないということですね。なぜこれを文部省が計算されなかったのか。学校における児童とか生徒の行動がわかっておられないのではないかと思います。

 それからもう一つは、実は地産地消なんといって、福島のお子さんたちは本当にかわいそうなんですが、校庭で被曝し、砂ぼこりで被曝し、さらに地産地消で被曝し、地産地消のものというのは、規制値以下でも足し算になりますから、空間だけでいっぱいいっぱいの被曝を受けているお子さんがさらに足されるわけですから。コウナゴのときに、汚染されたときに、これを一年じゅう食べても規制値の〇・八倍になる、それはほかで被曝していないときに言えることでありますので、そういった専門家とかお国がそういうようなことをなさらない方がいいんじゃないかというふうに思います。

山口参考人 科学的なデータが十分でないところですので、医師としての勘といいますか、そういうことになろうと思いますが、やはり二十ミリシーベルトを基準にしたことは高過ぎると思います。特に子供さんが生活をする大事な学校という場ということを考えますと、そのように考えます。

 理由は、まず、やはり子供さんの感受性については、チェルノブイリでいろいろなことが起きたものが前もって想定されていなかった。何が起きるかわからない部分があると、一番感受性が高い。それからさまざまな数値の整合性、それから過去の幾つかの事例、そういうことを勘案して、やはり個人的には高過ぎると思います。

 ただ、これはいろいろな政府の御答弁を聞いておりましても、ずっとそれでいくんだというお話は決してされておられなくて、これからどんどん下げていくということであれば、最初のスタートとしてはいたし方なかったのかなという気がします。

 ただ、私たちが聞いておりましても、説明がやはり不十分だと思うんですね。なぜ二十で始めたか。それから、今後、データがどんどん集まっておられると思いますので、可及的速やかにどんどん値を下げていって、ICRPが言っているのは、そういう目標に向かって皆が努力することだということを明確におっしゃっておられますので、そういう努力、先ほど学校の表土の問題、そういう努力をすべてやって、ともかくできるだけ被曝する量を下げていくことじゃないかなと思います。

    〔委員長退席、松宮委員長代理着席〕

宮本委員 この問題をめぐって、一度この委員会が紛糾したことがございます。

 最大の二十ミリというものを基準に三・八マイクロシーベルトという値を定めたわけですね。そして校庭の放射線量の計測をやっております。武田参考人がおっしゃったように、中学校は背が高いので一メーター、小学校以下は五十センチで判断するということでありましたけれども、実は五十センチも一メーターも、すべての小学校も中学校も両方ではかっているわけであります。

 ある中学校で、一メーターの地点で三・八マイクロシーベルト毎時を超えていない、つまり文科省の基準で言う制限はかからないんですが、五十センチのところで四・一マイクロシーベルトという値が出ている中学校が、これは伊達市長のところではありませんけれども、他のところでございました。これが全く規制にかかっていなかったんですね。

 三・八というぎりぎりの、いわばそれを一年間続ければ二十ミリになるようなところに定めておきながら、実はその運用を見たら、中学校は一メーター、小学校は五十センチ、他のところでどんなに高くても、その一メーターとか五十センチとかいうところだけがクリアならばいいですよ、オーケーですよ、こんなばかな運用があるかという議論をやりまして、実はこれは文科省と原子力安全委員会の答弁が食い違うということもこの場であった次第です。

 ですから、私は非常に、こういうところにもやはり不安の原因があるんだというふうに思うんです。これほど科学的でないやり方はない。やはりどちらかでも、そういう定めた三・八を超えればこれはだめだというふうにすべきだということを申し上げて、今後は運用を少し検討したいという答弁をいただいたわけですけれども。

 これは少し、医学の専門家である長瀧参考人そして山口先生お二人から、この点、当然、どちらかでも上回ればそういう運用をすべきだと私は思うんですけれども、お考えをお聞かせいただけますか。

長瀧参考人 繰り返して申し上げますけれども、低い方がいいことは間違いがない。

 ですから、その害として、例えば一ミリシーベルトというものを守ったときに、現在、福島県の学校は幾つ閉校、開けないかということを考える。そして、もう福島県の学校が全部その条件を満たさない場合に、では福島県の学校を全部休校にしてしまうのか、あるいは、福島県の子供を全部県外にやる、集団疎開させるのか、そういう議論を僕は一緒にしないといけないと思うんですね。

 ただ二十ミリがいいのか一ミリがいいのかという議論は、全く一方的な、架空の、架空とは言いませんけれども観念的なものであって、問題は、学校を幾つ再開するのか、どの基準にしたらみんな小学生は学校に行けるのか、あるいは、もう全然行けなくて、ほかの県まで行かなきゃならないのかと。

 そういうものとの比較で線量が決まるので、空間線量が云々というよりは、そういうファクターよりは、むしろ、学校が開けるのかどうか、子供たちが、少なくとも校庭で遊ばなくても学校の教室に行ければ子供たちにはいいのか、そういう具体的な議論がこの際私は必要ではないかなという感じがいたします。

山口参考人 問われている、場所によってという問題を私は把握しておりませんので、お答えは避けたいと思うんですけれども、何が一番大事かというと、その一人一人の児童の被曝量をできるだけ少なくすることでありますので、それがただ単に学校の問題だけではないと思うんです。

 当然、御自宅に帰られて夜は休まれるわけで、そういうところを、そこからどの程度の放射線を受けているかということも大切なポイントですので、そういうことを総合して、これは線量計を持たせれば代表的なあれがわかるわけですから、そういうことも勘案しながらやるべき問題じゃないかなと思います。

宮本委員 おっしゃるとおりで、どういう影響が出るかということなんですが、そのときに厳密に私の言うように、どちらかでも三・八が出ればという運用をしたとしても、数校ふえる程度であって、そんな軒並み全部だめになるというわけじゃなかったんです。

 だから、それをあえて数校減らすために、そういう五十センチで四・一出ているところまで、まあ一メーターじゃないからいいですよという運用は、余りにも不安をむしろ広げるものじゃないかという議論をやったわけです。

 実態はどうかといいますと、これはきょうは市長お見えですから、なかなか現場はそう簡単でないとおっしゃるとおりなんですね。

 前回の委員会で私は明らかにいたしましたけれども、今福島県内でこの三・八をいまだに超えて屋外制限がかかっているのは、ある中学校一つだけなんですね。ところが、今福島県内で何の制限もなく校庭を使っているという学校は、ずっと観測してきた五十六のうち一つもありません。すべてのところでやはり使っていません、普通どおりには。それは、だれも、この三・八を下回ったから、市長おっしゃったように、どうぞどうぞと言われて、よし、もう大丈夫と、こうは今なっていないんですよ。

 なぜそうなっていないのか。ここはやはり非常に伊達市長も御苦労いただいているところだと思うんですけれども、私が福島県内のある自治体へ行ってつぶさに担当の方にお伺いしたところによりますと、市長がおっしゃるように、これは国が決めた基準なんだ、だからこれを守ってほしいということで、自分たちは専門家でないので、専門家の知見も聞いてそういう形で決めたんだから、これはもう国が決めたんだから守ってくれという説得をしてきたと、それは、行政の一部なんだから。

 ところが、その政府の中から、涙を流して、これは危険なんだと言う人があらわれた日には、大丈夫ですかと問われて、大丈夫ですと答えるような立場すらもはや失う。だから、本当に今、不信感が現場に漂っているということを言われるわけですよ。

 だから、私は、前回も大臣に、ここは仕切り直すべきだと。このまま突っ張ってみても、大丈夫だと言われているところでもやっていないわけですから、しっかりと、例えば伊達市長おっしゃったように、表土を取ればぐっと下がるわけですから、それで安全ですよというふうにしないと、三・八以下だったら大丈夫だという議論をやったって、もうだれも信用しない。本当にみんなが安心できる、納得できる知見をしっかりつくるべきだというふうに申し上げたんですね。

 伊達市長、多分こういう点では非常に御苦労されているというふうに思うんですけれども、そういう点では、本当にみんなが安心できるような形でしっかりと国がもう一度基準を見直すという点についてはどうお考えでしょうか。

仁志田参考人 その基準というものをどう考えるかということなんですけれども、それは、その基準というのはどこかに置かなくてはならない。

 今議員からお話がありましたように、三・八で屋外活動に制限がかかる。では、三・八未満ではどんどん自由にやっていい。私も、ここの、ようかんを切ったみたいにいくのかなというところはあるんですけれども、基準というのはそうしたものなんだろうというふうに割り切るしかないとは思うんです。ですから、基準は下げられるならば下げて設定すべきではないかと。下げられないからそういう基準だというのは、やはりちょっとおかしいと思うんですね。

 現実に、表土をはげば下がることはわかっているわけですから、それからそれ以外の方法もあるわけなので、そしてまた、他の参考人も言っておられますように、我々の近隣の市町村、もしくは伊達市内でも自主避難をしている人がいるんですけれども、いずれそういう人たちが帰れるかどうかというのは、そういう土壌あるいは生活環境からどれだけ放射線量が下がるのかということですから、あらゆる努力をしなければならないということであって、その一環として、学校という場においても、やれることはやっていくということではないかというふうに考えております。

    〔松宮委員長代理退席、委員長着席〕

宮本委員 表土をはげば放射線量が下がるということは、私も実は郡山に行って、この目で確認をしてまいりました。同時に、鉄筋コンクリートの校舎内の線量が外に比べて十分の一程度、つまりぐんと低いということも、この目で確認をしてまいりました。

 そうしますと、きちっと運動場、グラウンドの方の表土の処理をしまして、そして鉄筋コンクリート、大半が今鉄筋の校舎ですから、子供たちにとっては、きちっとすれば学校の方がうちにいるよりもむしろ安全な場所である、あるいは、何もうちの近くの表土を取ってない公園でいるよりは、はるかに学校にいた方が安全な場所になるわけですよね。だから、これは非常に大事なことであって、親が、むしろ学校に行った方が安全だ、こう思えるというのはすごく大事なことだと私は思うんです。

 そうなってまいりますと、では学校外をそのままにしておいてよいのかということになってまいります。ですから、子供たちは学校が終われば学校から出ていくわけですし、通学路の問題、あるいは近くの公園で遊んだ場合にどうなるのかと。つまり、地域ぐるみで線量を引き下げるための努力がこれから子供たちにとっても不可欠になってくると思うんです。

 これは重ねて伊達市長にですけれども、そういう、子供たちが学校外で引き続きまだ放射線にさらされる、これについても、今後国もしっかり対応して、それをどう対処するのかということをしっかり示さなければならぬと思うんですけれども、この点についてはどうお考えでしょうか。

仁志田参考人 それは先生の言われたとおりだというふうに思っております。

 今、教育の場だけで三・八マイクロシーベルトという具体的な基準があるので、それに合わせる、合わせないというようなことで、そこのところは一生懸命やっておるわけですけれども、一般の、子供たちが帰った後のそういう生活の場における放射能の低減策というのは、現実には具体的に何も取り組まれていない実情にあることは間違いありません。

 行政の長としては、そうしたことにも取り組まなくてはならない、このように思うところでございます。

宮本委員 表土をはぎますと、僕もそのグラウンドを見てきたんですけれども、随分粗い土が下から、つまり、上のやわらかい土を取ると下が粗くて、郡山なんかでは、このままでグラウンドを使うとすぐに子供がけがをする可能性がある。だから、やはり上に少しやわらかな土をもう一度入れないと、はぐだけではちょっと危険だという現場の声もあったんですけれども、その辺の手当ては何か考えておられますか。

仁志田参考人 現実の、表土をはいでいく場合には、そのようなことは起こるわけですね。

 それから、校庭というのは、下に暗渠があったりして、つまり、排水をよくするためにいろいろな手だてをとっているところがありますので、砂利層があったりですね。そうすると、埋めたりすることも、必ずしもすぐにはできないところもある。ですから、ケース・バイ・ケースで対応しております。

宮本委員 武田参考人に次にお伺いしたいんですが、お書きになった「驚くべき原子力村の常識」というような先生のものも読ませていただきました。

 私は、今日までの日本の原子力行政というのは、本当に、安全神話の上に成り立ってきたということがやはり非常に大きな問題だと思うんですね。それで、これは我が党の元議員である不破哲三が述べていることですけれども、国会で原子力問題を追及して、本当に驚くべきことが多かったと後になって語っておるわけです。

 例えば、電力会社がある土地にねらいをつけて、そこに原発を持ち込もうということになりますと、まず最初に、原発はいかに安全かという大宣伝をするんだと。つまり、もしも事故が起こったらこういうふうにします、あるいは、もし事故が起こった場合にはこういう対策がちゃんととられていますというようなことを言えば、事故が起こるのかと言われるので、事故が起こったときの話などというのは絶対やらないと。

 だから、今回のような事態になったら全く何の備えもないというのが実態なんだということを指摘して、ここから脱却しなければ、やはり原子力行政というものは安全神話から抜け出せないというふうに指摘しているんですが、武田参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

武田参考人 通常の原子力以外のものですと、すべての責任はプライベートカンパニー、私企業にかかってきますので、今度のような場合は、もちろん東電は福島県の土地を全部掃除しなきゃいけませんし、被害者に補償しなきゃいけませんから、たちまちつぶれますね。ですから、もしかすると、電力会社は原子力発電を選ばなかったのではないかとも思われます。しかし、実は国策として原子力発電をやってきた。

 したがって、国が開発の面倒も見る、再処理の面倒も見る、それから、事故が起こったときは、面倒を見ていないんですけれども、見るという建前になっているということのもたれ合いが、原子力をやるときに、別に、電力会社が地元に安全だと言うのは当然だと僕はこの前言ったんですよ。だって、自分たちがやっているんですから、不安全だと思ってやるはずないわけですね。ですけれども、そのかわりに国がチェックしますよといったところが全部抜けている。

 それから、事故が起こったら、実は国が何もやらない、僕はきょうは随分言わせていただきましたが。国側は、結局、国策としてやった原子力が、もともと危険な設計であり、事故が起こったときの、国民を救うという点で何のポリシーとか具体策を持っていなかったということは事実なので、できるだけ早く国が、今福島の方は、私も行きましたけれども、国の影がないですよ。例えば、国が行って除染しているとか、系統的に市町村と協力して片っ端から片づけているとか、全くないですね。もう二カ月たつわけですから。

 ですから、電力会社の問題というよりかは、大変に言いにくいんですけれども、これはやはり、国が今まで進めてきたところに大きな基本的な欠陥があった。それが我々原子力をやっている人間に心のすきを与えて、そして徐々に危険な方向に行った。その一つの証拠が今度の福島原発の事故だというふうに思っております。

宮本委員 そういう意味では、国の役割という点で非常に問題が多いと思うんです。

 例えば、昨日も工程表というものの見直しが行われております。ただ、先ほども、既にメルトダウンがわかっていながら前回の工程表が出ているという御指摘もありましたけれども、実際、この工程表は東電がつくっているだけであって、結局、東京電力に危機収束の工程表づくりを丸投げして、政府は何ら責任ある対応をとっていないと思うんですよ。

 こういう点では本当に、先生がおっしゃるように、政府が前に出てきちっと危機の収束の見通し、展望を示すということがなければならないと思うので、この点についても武田先生のお考えを。

武田参考人 四月の中旬に東京電力が工程表を発表したときは、もちろん、その中にわかっていることを書かないという問題がありましたけれども、それ以上に、あの日に政府側も今後の方針を発表しましたが、何ら工程表のようなものは出てこなかった。

 つまり、少なくとも、東京電力という会社はよきにつけても悪きにつけても存在するけれども、日本国というのはないんだなと思いました。というのは、もう現実に被曝している人が一カ月苦しんでいるにもかかわらず、いつから片づけるのかということすらプランを示せないということは非常に大きな問題だったんじゃないかと思います。

 それは、今度政府が発表されましたけれども、やはり非常に抽象的であるということで、これは責任上もう一歩踏み込まなきゃいけないというふうに思っています。

宮本委員 山口参考人にお伺いするんですけれども、前々回の委員会で、さっき言った五十センチ、一メーターということも大紛糾したんですが、もう一つ紛糾したテーマは、子供たちに対する内部被曝の影響についてなんです。

 文科省は一貫して内部被曝の影響はごく軽微である、全体としての影響のうちのわずか一%、二%程度にとどまるのでということで、実は、先ほどの三・八マイクロシーベルト・毎時という計算の中には、内部被曝の影響は全く考慮されておりません。これはもう、空間からの外部被曝の影響のみで論じているわけです。

 しかし、先ほど武田先生も、内部被曝がゼロだということは考えられないという話が出ましたけれども、多分伊達市でも、保育所や幼稚園の表土を三・八を下回っていても取るのは、幼児はそれを直接口に入れる、そういう可能性大だということがあるからこそのことだと思うんです。

 原子力安全委員会も、実は、ダストの影響を軽視してはならないという指摘もつけているわけですけれども、いまだに内部被曝については考慮されていないんです。山口先生、この点についてはどうお考えでしょうか。

山口参考人 やはり、過去の例を参考にしますと、ヨード131による内部被曝、これは体の中で生物学的な濃縮が起きますので非常に慎重に取り扱わなければならないと思います。

 ただ、時間がたっておりますので、最初の水素爆発ですか、そこで出たヨードというのはもうかなり減衰していると思うんですけれども、数値を見てみますと、福島市の空間線量は余り変わっていない。ということは、やはり少し出てきているのではないか。となると、ヨードは少しながらでも届いている。

 したがって、内部被曝として非常に重要なヨード131の状況がどうなっているか、この点をしっかり調べた上で議論をすべきだと思います。

宮本委員 親たちは本当に心配な思いで見ているわけでありまして、私は、これはやはり、低ければ低いほどいいというのはもう衆目の一致するところでありますけれども、しかし同時に、こういう事態のもとでありますから、そこはまさに、先生がおっしゃるようにしっかりと、子供たちに対する影響とそれを避けるために起こる状況とをきちっと見分けていくということは必要なことだと思うんです。

 しかし、今の時点では、明らかにされないまま考慮から外され、大丈夫だという議論がまかり通っている。本当に大丈夫なのかと不安に思っていたら、政府内部からでさえ、これではだめだという声が出て、行政はもう説明に窮して困っているという、これは本当に、人災というか政治の責任が大きいというふうに思っております。

 時間が参りましたので、最後に伊達市長にお伺いするんですけれども、私は、今回のこの前例のない原子力災害に対応するためには、国が責任を持って原子力災害の応急対策、復旧対策、復興対策を一元的に進める体制の確立が急務だと。その点では、そのための特別立法を定める。

 これは福島県知事からも要望が出ているんですけれども、現行法でカバーできることはもちろんやるけれども、現行法でカバーできない問題について、しっかりと特別立法して、これは国が責任を持って、この対応、対策、復興まで責任を持つ必要があると思うんですが、伊達市長のお考えをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

仁志田参考人 私たちも未曾有の体験をした、体験中だということで、そういう意味では、例えば、校庭の表土をはいでも、まだ降ってくるという状態だと、またはぐのかということも実は心配としてはなきにしもあらずということなんです。

 そして、今回、私もそうですけれども、シーベルトとかベクレルとかいう単位も初めて知った次第であります。それに、恥ずかしながら、先ほど申し上げました、市の、安心しなさい、放射能は距離の自乗に反比例するというようなことも現実に書いたけれども、きょうの参考人の意見の中にも、そんなことはない、降ってくるのは全然関係ないと言われますと、不明を恥じるばかりでありますけれども、つまり、そうした社会体制そのものといいますか国家体制が、そういうものを想定していない。

 ですから、先ほど国民保護法を議論したときに、あれは放射能とは直接関係はないですけれども、やはり大規模なこうした災害とか、対応を迫られるような、あるいは避難が、市町村外どころか県外にも行くというふうな、避難しなければならないといったときの体制というのは、これはやはり現行法の中で対応するというのは不可能なのではないか。

 そしてまた、あえて言わせていただくと、岩手県、宮城県の被害というのは確かに大きなものがありますけれども、しかし、避難所の皆さんの表情というのは、もちろんいろいろな悲しみはあるでしょうけれども、天災だからもう仕方がない、これから頑張ろうというふうなことだと思うんですね。

 福島県の場合は、まだ災害が定まっていないことと、それから、人災というような言葉が出ましたけれども、完全な天災ではない、どこかに何か原因があったのではないかという、もしこれがなかりせばというような部分があるわけですよね。

 ですから、非常に暗いと言うとちょっと表現が適切ではないんですけれども、だれかが視察に行かれると、宮城県とか岩手県の場合は、復興を頑張るから支援をよろしく頼むですけれども、福島県の場合は、何とかしてくれ、我々はなぜここにいなきゃいけない、いつまでいなきゃいけない、そういうことだと思うんです。

 そういうことを考えますと、これはやはり何らかの新しい立法あるいは体制づくりというものを考えなければならないのではないか、このように考えているところでございます。

宮本委員 ありがとうございました。時間ですので、終わらせていただきます。

田中委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 貴重な御意見を皆様にお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長班目春樹君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として、文部科学省高等教育局私学部長河村潤子君、科学技術・学術政策局長合田隆史君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長平野良雄君、経済産業省大臣官房審議官中西宏典君及び大臣官房審議官長尾正彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平山泰朗君。

平山委員 ありがとうございます。

 午前中も、原発の問題、多くの参考人の方々に、非常に参考になる、役立つお話を聞かせていただきました。やはりこの問題というのは、非常に大きな問題であり、私たち与党である民主党も非常に憂慮をしているということから、改めて、原発の関係に関して御質問をさせていただきたいと思っております。

 さて、まず第一点、郡山市など、放射線の線量が高い地域があります。現在、ここでいわゆる校庭の表土をはいでいるわけですけれども、一般の建設土木業者がこれをやっている。しかし、そこにセシウム137などを含む放射性廃棄物、特に極低レベル放射性固体廃棄物に該当するものがあると考えられ、放射線業務従事者として登録して、電離放射線障害防止規則に基づいて特殊健康診断などを受けなければならないのではないかと考えておりますが、その点はいかがでしょうか。

平野政府参考人 お答えを申し上げます。

 電離放射線障害防止規則では、原子炉の運転などの放射線業務に常時従事する労働者につきましては、雇い入れまたはその業務の配置がえの際と、その後六カ月以内ごとに一回、定期的に「医師による健康診断を行わなければならない。」というふうになっております。

 御指摘の、放射性物質を含む可能性のある表土の除去の作業を行う労働者の方々に関しましては、その作業態様等から、その方々の健康障害を防止するということのためには、防じんマスク等の有効な呼吸用保護具の着用、作業場所での喫煙、飲食の禁止、長そで、長ズボン、手袋の着用等傷口の防護、作業が終わった後に作業着に付着した粉じんを払って手をよく洗うこと、また、これらに関する労働者への教育の実施等の措置を講ずることが非常に重要であると考えてございます。

 厚生労働省といたしましては、作業員の安全や健康を確保するため、これらの措置が確実に実施されるよう、関係事業場に対する指導等を徹底してまいります。

平山委員 わかりました。そこの点は、こういう今まで起きたことのない状況でありますから、留意してやっていただきたいと思います。

 さて、先ほどから、これは野党の方々も含めていろいろな委員会で聞かれていることだと思いますが、いわゆる二十ミリシーベルト・年間、小学校で授業が行われるこの限度数値ですね。ICRPのパブリケーション一〇三、これは二〇〇七年に発表されているんですけれども、ここで、年間一から二十ミリシーベルトの高い方の二十ミリシーベルトが採用されている。一方で、最新のICRPの勧告、これはパブリケーション一一一、二〇〇九年の発表では、「汚染地域内に居住する人々の防護の最適化のため」には年間一から二十ミリシーベルト、ここまでは一緒なんですけれども、そこに、「下方部分から選定すべきである。」というふうに記載されております。

 二十ミリシーベルトを適用するのは職業人の計画被曝に対する線量限度の値であって、子供は大人に比べて放射線感受性が高い、これも何度も言われていることだと思いますが、やはり、校庭利用の基準に上限の二十ミリシーベルトを適用するのは適切であるのだろうか。そして、ICRPは、原発の推進とまでは言いませんが、厳しい基準は、ECRR、欧州放射線リスク委員会に比べれば、どちらかというと緩い基準を示している。

 そういうことを考慮しても、この二十ミリシーベルトというのは適切かどうかということをお答えいただければと思います。

合田政府参考人 ICRPのパブリケーション一一一に関するお尋ねでございますけれども、御指摘のように、国際放射線防護委員会、ICRPのパブリケーション一一一におきましては、放射線防護のために使用する参考レベルは、原子力事故等の影響を受けた地域の住民等が受ける線量をできる限り引き下げていくということを推奨しているということでございます。

 これについて具体的に申し上げさせていただきますと、まず、緊急時被曝状況、緊急時を脱した後の現存被曝状況、これは事故収束時の状況でございますけれども、この状況におきましては、適切な参考レベルとして、まず、年間一から二十ミリシーベルトの範囲で選ぶべきとしているわけでございます。さらに、その現存被曝状況にとっての長期目標として、通常とみなせる状況に近い、またはそれと同等のレベルまで被曝を低下させること、これが長期目標であって、このために、一から二十ミリシーベルトの範囲の下方部分から選定をすべきであるということでございます。

 したがいまして、このパブリケーション一一一の考え方に立ちましても、年間一から二十ミリシーベルトの範囲を採用して、その中でできる限り引き下げていくという現在の暫定的考え方のアプローチは適切なものであるというふうに考えております。

 この点につきましては、本年の三月二十一日にICRPが、今回の福島原発事故を踏まえて改めて声明を発表してございますけれども、その中でも、一から二十ミリシーベルトの参考レベルを採用することが適切であるというリコメンデーションをいたしておりますし、また、この点につきましては、原子力安全委員会の方からも、こういう考え方について差し支えないという助言をいただいているところでございます。

 職業人の計画被曝に対する線量限度についての御指摘ございましたですけれども、御案内のように、暫定的な考え方におきましてお示しをいたしておりますのは、学校等の校舎、校庭等の利用の判断基準として、毎時三・八マイクロシーベルトということを使用しているわけでございます。

 これは、校庭に一日八時間、三百六十五日立ち続けた場合に年間二十ミリシーベルトになるという計算をして三・八というものを導き出しているわけでございますけれども、したがいまして、実際問題といたしまして、校庭等の空間線量率が毎時三・八マイクロシーベルトの学校につきまして、児童生徒の現実的な生活パターンに基づいて試算をいたしますと、多く見積もっても十ミリシーベルト程度になるというふうに私どもは把握をしてございます。

 そういった中で、私どもといたしましては、児童生徒の受ける線量につきまして、さらにできる限り低減をするように努めてまいりたいというふうに考えてございます。

平山委員 文科省の方々の御意見を含めて、現状ではどんどん下がってきているというのは私も理解しておるんですけれども、逆にこの二十ミリシーベルトというのが、今、現状下がっていっている中で、例えばソ連のチェルノブイリ事故であっても、一年目、最大線量を年間五ミリシーベルト、次の年から年間一ミリシーベルトにした。

 そしてまた、これは本当に難しい問題だと思うんですけれども、軽度の病気になった場合、過去の労災認定では、放射線管理区域の五・二ミリシーベルト、こういうことで国が責任をとってきた。そういうことを考えたときに、今後、この二十ミリシーベルトということが、国が責任をとらなければならない可能性があるのではないか、そのように考えます。その点はいかがでしょうか。

合田政府参考人 チェルノブイリ事故についての御指摘をいただきました。

 チェルノブイリの原発事故の際に、この事故は一九八六年に発生をしているわけでございますけれども、この際には、年間百ミリシーベルト以上と見積もられた地域が移転等の防護措置の対象となったというふうに承知をしてございます。

 その後、防護措置の導入に関します基準が段階的に引き下げられまして、事故後五年たった一九九一年に、年間五ミリシーベルト以上ということとされたというふうに承知をしてございます。

 御指摘のように、一年目五ミリシーベルト、翌年に一ミリシーベルトという放射線防護基準が設定をされたということでございますけれども、これは恐らく、チェルノブイリ事故後にノルウェー政府においてとられた対策であるというふうに承知をしてございますけれども、この防護対策につきましては、これは、ノルウェーの状況、汚染された食料摂取の制限が中心となっているといったようなことなどの事情があった上での考え方であろうというふうに承知をしてございまして、今回の学校の利用基準の問題とは少し区別して考える必要があるのではなかろうかというふうに考えてございます。

 いずれにいたしましても、今回の福島原発事故に関しましても、長期的に私どもきちんとモニタリングを行いながら、児童生徒等の受ける線量につきまして、できる限り低減されるように努めてまいりたいというふうに考えてございます。

平山委員 ありがとうございます。

 この原発の問題というのは、私、非常に大きいなと思っておりますのが、とにかく、いつまでたっても終わりが見えない。工程表等々は見させていただいておりますけれども、それに対しても、例えばガス爆発とか火事とか、そういうものに比べれば終わりがなかなか見えないという状況の中で、今また再臨界、水素爆発なども可能性があるんじゃないかというふうに言われております。

 そういう中で、急激に放射能が拡散をされる、そういう状況の中、被曝の影響を受けやすい子供たちがそういう状況になったときに、学校などでどういう避難計画、それを防護する計画、そういうものが立てられているかということを教えてください。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 東京電力福島第一原子力発電所のこの事故の状況、この状況自身はまだ十分に安定していないということもございます。そういうことから、半径二十キロ以遠の区域においても、今後なお避難等の対応が求められる可能性が否定はできないというふうに考えてございまして、これは四月二十二日でございますけれども、緊急時避難準備区域といったものを設定いたしました。

 この緊急時避難準備区域におきましては、常に、緊急時に避難のための立ち退きあるいは屋内へ退避するというふうな準備をしておくということが求められてございます。この区域におきまして、基本的には、自主的に避難できるということが求められるということでございます。特に、子供さん、妊婦の方という方々は、この区域に入らないようにするということを求めてございます。

 具体的に、あと学校での対応でございますけれども、保育所、幼稚園、小学校及び高等学校につきましては、この区域にあるところにつきましては、すべて休園あるいは休校、あるいは移転先での授業というようなことをやることになってございますので、今の御指摘のようなとこら辺は、十分あらかじめ対応できていると認識してございます。

平山委員 学校で二十キロ範囲と言いますけれども、原発が爆発したときには二十キロの飛散というのは一時間で訪れるわけですから、そういうことも含めて勘案をしていただきたいと思います。

 さて、文科省の肝いりで原子力損害賠償紛争審査会、これが設けられたと聞いております。いわゆる原発の直接及び間接の被害に対して賠償を行うと。

 こういう中で、新聞記事にありましたが、訪日旅行キャンセル九〇%、旅行者五〇・三%という、いわゆる震災の影響あるいは原発の影響で来訪者が減ってしまった等々の問題が今後起きてくる。いわゆる風吹けばおけ屋がもうかるではないですけれども、直接、間接被害、もしくは一次被害、二次被害、三次被害、そこがつぶれたから、またそこで次なる損害を受けた等々の問題をどのような指針で考えられているのか、今後臨んでいくのかということをお聞かせいただきたいと思います。

高木国務大臣 平山委員にお答えをいたします。

 既に原子力損害賠償紛争審査会が審査を行っておりまして、被害者を可能な限り早く救済をするということで、相当因果関係が明らかなものから順次策定をしていくことにしております。

 既に出されました第一次指針においては、政府の指示によって避難をされた方々、あるいは、農産物の出荷停止などにより生じた損害に関しては賠償の対象となることが明らかにされております。

 いわゆる風評被害やあるいは間接被害については、第一次指針の対象にはなっておりませんけれども、「今後検討する。」ということが第一次指針の「はじめに」において記載をされております。

 こうした被害については、御指摘のように、景気や、あるいは震災など事故以外のほかの原因による影響の有無や程度、こういったものを含めて実態についてさらなる調査が必要であろう。一昨日行われました第四回の審査会では、被害が生じている分野ごとに専門委員を任命をして、各分野の被害状況の調査分析を行う方針を決定しております。

 なお、原子力損害賠償紛争審査会におきましては、専門委員による調査結果も踏まえつつ、このような損害を含む原子力損害の範囲の全体像について、七月ごろには中間指針として取りまとめていただきたいと考えております。

 いずれにいたしましても、被災者の救済、保護、このことについて万全を期してまいりたいと思っております。

平山委員 大臣、ありがとうございました。

 この問題、非常に大きな問題だと思っていまして、一次的には震災、津波の影響で日本全国がさまざまな被害を受ける中、原発の問題に関して起きたことに対して、適宜きちんとした対処を行っていただきたいと考えております。

 では、次の質問に入りたいと思います。

 今、原発の中に入っていく作業員の方々の問題も含めて、それに対処するために、いわゆる原発災害遠隔ロボットの活躍が非常に期待されていたと思います。

 現在、そのロボットがどのように原発の中で使用されているか、また、現在開発中のロボットの予定などを教えていただきたいと思います。

長尾政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、福島第一原子力発電所の事故対策におきましては、遠隔操作ができます日本製の重機を用いた瓦れき撤去作業が行われておりまして、これまで、コンテナ百三十八個分の瓦れきを撤去するなどの実績を上げてきております。

 それから、建屋内の環境調査のためには米国製の遠隔操作ロボットが活用されております。これは、建屋入り口付近での放射線量の測定などの作業の内容と、それからロボットの持つ特性をあわせ検討いたしました結果、実績にすぐれた当該ロボットの活用に至ったものというふうに承知しております。

 それから、その他、悪路の走行性にすぐれる日本のロボットも、現在、導入に向けて準備を進めておるところでございます。

 特に、これまで、経済産業省の支援を受けまして千葉工業大学が開発されたロボット、これは名前でQuinceというふうにつけられておりますけれども、こういったものがこれからの導入に向けての準備を行っておるというところの状況でございます。

平山委員 非常に活躍されているというお話を聞きましたが、私は朝日新聞社から出されている記事を持ってまいりまして、この記事の中に、「廃棄された原発無人ロボット 東電など「活用場面ない」」、そういうふうにコメントが書かれておりまして、ちょっと読み上げさせていただきますと、「遠隔操作ロボットをめぐっては、一九九九年に茨城県東海村で起きた「ジェー・シー・オー(JCO)」の臨界事故を受け、当時の通商産業省が同年度にロボットの開発費として三十億円の補正予算を計上。開発事業を受注した日立製作所、三菱重工業、東芝など四社は二〇〇一年に計六台のロボットを製造した。だが、電力会社などからの配備希望がなかったという。」と書いてあります。いわゆる、実際には使えないロボットをつくってしまった。

 今回の原発の事故自体が、ほとんどの方、私も含めて想定していなかったことだとは思いますが、余りにも現実と遊離したものを予算をかけて使えなかったというのは非常に残念なことだと思いますし、今後にそれを生かしていただきたいとも思います。

 そういう中で、いわゆる今後の計画といいますか、いわゆるロボットの、人が当然入れない、そういう中で、米国製のロボットでなく国産のロボットをどのように活用していくか、その点のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

笹木副大臣 今お話があった点ですが、事実については、文部科学省では、人がいないところの放射線量を測定するということで、遠隔操作でそれを調べるというモニタリングロボット、これを、お話があったように、財団法人原子力安全技術センターが開発をしていたわけです。おっしゃるとおり、今二台提供しているわけです。一台は東京電力に対して、一台はバックアップ用で福島県庁に待機しているわけですが、現在使われておりません。

 いろいろ実態を確認してみますと、瓦れきの中でこのロボットが転倒した場合に、その後の復旧作業、人がいないような状態のところでありますから、それをまた戻したりすることができない。倒れたままになっている状態で、その後の復旧にも差しさわりが出てくるということで使われていない、こういう説明であります。

 率直に言ってみますと、一つは重さの問題があるのかなと思います。非常に重過ぎるものだったというのがあるかもしれません。もう一点は、もちろん、こういう複合的な災害を想定してつくっていなかったということでありますが、こういう瓦れき、こういう状態で使えないものであったということ、この点はしっかりと反省をしないといけないと思います。

 ただ、人がいないところで放射線量を管理しないといけない事態、例えば高レベルの廃液、これをどこかで管理してそこの線量を測定する場合とか、こういうチャンスが今後全くないというわけじゃありません。

 そういう今は現実ですが、いずれにしても、メンテナンスが平成十二年度にでき上がってから余り万全にはされていなかったとか、いろいろな問題もあります。

 今後、どういうふうにしっかりと重点化してロボットの開発に取り組むか、検討をして見直さないといけない、そう思っております。

平山委員 ありがとうございました。

 時間が五分間余りましたけれども、ちょうど質問が尽きましたので、これで私の質問は終わりとさせていただきます。

 まことにありがとうございました。

田中委員長 次に、池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 きょうは、第一次補正予算における専修学校への支援、第一次補正予算は終わりましたけれども、これから第二次補正予算に向けて皆様方が審議していらっしゃると思うので、それに先駆けて大臣に伺いたいと思います。

 東日本大震災は、東日本広域にわたって地震、津波、福島の原子力発電事故により未曾有の災害をもたらし、幼稚園から大学まで甚大な被害を受けました。このような状況の中において、学校において直ちに支援が必要なものは第一次補正予算において、例えば、学校の災害復旧支援だとか就学支援などのための予算措置がとられました。

 ところが一方で、専修学校、各種学校においては、教育法の一条校になっていないためにちょっと取り残されたのではないかなというふうに思っております。

 例えば、学校の災害復旧支援とか、私学事業団の無利子融資五年融資とか奨学金貸与事業では措置はされておりますけれども、他の学校種では措置されなかったものが多かったと思うんです。震災によって修学が困難な状況になった生徒の授業料減免事業は措置されていなかったというふうに私は思います。

 一方で、被災した世帯の専修学校の生徒の状況については、生徒の家計支持者の自宅の全半壊、死亡・行方不明、死亡・失業などの複数要因によって家計急変が大変多く出ているというふうに聞いております。

 専修学校において、自宅が全半壊したり保護者が失業するなどして授業料減免等が必要な生徒が多数いるかと思いますけれども、文部科学省として現状をどの程度把握していらっしゃるかを大臣に伺いたいと思います。

高木国務大臣 池坊委員にお答えをいたします。

 専修学校に対する授業料の減免等の国の支援についてのお尋ねがございました。

 今回、第一次補正予算においては、私立大学などと同様に、専門学校生徒に対して、日本学生支援機構による奨学金の緊急採用、無利子奨学金、また、返還期限の猶予などの措置を実施しておるところであります。また、震災に伴う被害が著しい専修学校が授業料減免を行うことによって経営上資金が必要になった場合には、日本私立学校振興・共済事業団の長期低金利の融資を受けることも可能になったところでございます。

 お尋ねの件でございますけれども、専修学校の生徒への授業料の減免については、現時点では国の支援は措置をされておりません。

 今回の震災の影響によって自宅が全半壊したり保護者が失業されるなど家計が急変した専修学校の生徒は、抽出調査によって現時点で把握をしている限りで、約千九百人となっております。

池坊委員 私も調べました。千九百名、ああ随分多いんだなと思いましたことと、それから、私、それはちょっとうっかりしていたんですけれども、被災した東北三県、岩手、宮城、福島というのは、財政状況については、阪神・淡路大震災があった兵庫、大阪府に比べて財政規模が小さく、その歳入においては自主財源の割合が低く、地方交付税の割合が高いなどから、追加的財政支出が限られているんです。

 それとともに、高校卒業後の高等教育の進学先として専門学校の比重が他県に比べると大きいこと、特に、岩手、福島では三人に一人が専門学校へ進学、高等教育数における構成比が高いわけです。ですから、被災地の復興の担い手育成の中核的な教育機関として重要な役割を果たす専門学校への財政支援が不可欠ではないかなというふうに思ったんです。

 私どもはどうしても、何かございますとすぐに、短期大学、大学、それから高校、そういうことを考えがちですけれども、私はやはり、技術を身につける専修学校とか専門学校というのは、極めて重要ではないか、これからの日本をしょって立つ、ある意味では中堅層ではないかというふうに思っております。

 調べましたところ、例えば宮城県のある学校では、東北三県沿岸地域出身で、自宅が津波で全壊した、御両親が亡くなるなど、特に厳しい状況にある生徒には何とか独自の授業料減免を行わなければならないわけですけれども、学校自体も被害を受けているため、全員への支援は困難であるというのが現状なんです。

 それから、授業料減免措置がなされた大学に通う兄は修学を継続することができる、そのようになったけれども、措置されなかった専門学校に通う弟は入学を辞退しなければならなかった、こういう事態も起こっております。

 それから、福島県のある学校では、自宅が全壊し家族が避難生活を送っているため、貸与奨学金を受けても学校生活に必要な費用が賄えず、入学を辞退してしまった。

 探しますとこういうのがすごくたくさんあるわけです。同じ兄弟でも、大学に行っているときっちりと授業料の減免がある、専門学校、専修学校ではない、これはどうなのかなという気がいたします。

 被災地の復旧復興を担う人材を育成する教育機関として、専修学校の果たす役割というのは極めて重要だと大臣もお思いだと思います。家計急変のあった専修学校生徒に対する授業料等減免への国の支援は私は絶対必要だと思っておりますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

高木国務大臣 委員の御指摘のとおりに、専修学校、専門学校、いずれも、今の社会のニーズ、そして即戦力といいましょうか、私はかなり高いものがあると認識をしております。そういう意味で、今回の災害によって修学を断念するということがあってはならない、このように思っております。

 さきの阪神・淡路大震災においては、一条校と異なって措置されなかったという経過もございます。いわゆる阪神・淡路大震災のときの復興基金で、兵庫県、神戸市が創設した復興基金によってそれは何らかの支援を行ったということでございました。

 今回の被災地は、特に専門学校への進学率が高いという状況も承知をいたしております。したがいまして、今回の被災地の状況、そして、この被害が余りにも大きかったわけでありまして、地域における専修学校の役割等も十分勘案しまして、文部科学省としては、今後どういうものができるのか、実態の把握をしながら被災生徒の授業料減免について引き続き検討をしてまいりたい、このように思っております。

池坊委員 大臣、ぜひこれは第二次補正のときに忘れずに入れていただきたいと思います。

 そしてそれは、東日本の三県だけでなくて、ここに住んでいて大阪だとか東京とかに行っている子供たちも多いんです。そういう子供たちは、当然ながら、家計が急変いたしましたから勉強を続けることができないという状況にございますので、そういう子供たちもあわせて救済をしていただきたいと思います。いかがですか。

高木国務大臣 確かに、全国各地で被災地を離れて修学されておられる方々もおりますので、そういうことも含めてどういうものができるのか、これは検討してまいりたいと思っております。

池坊委員 何か、検討と言われますと余り確約でないような気がして心配ですが、そういうことはございませんね。首を振っていらっしゃいますので、これは確約だと私は受けとめさせていただきます。

 調べましたら、専修学校生徒による被害者支援によるボランティア活動というのが実に多彩なんですね。本当に直接役に立つ子供たちなんだというふうに思って、私は心をいやされるだけでなくて、社会に、被災者に直接役立っているんですよ。

 例えばお菓子をつくる人たちは、直接行ってお菓子をつくってあげている。あるいは美容師さん、調理師さん、それからメイクをするエステの人たち、そうすると、直接きれいにしてあげると、また希望がわいてきて何か生きる勇気がわきましたというのを私ニュースでも見たんです。それから、自動車関係の整備士を目指す生徒だとか、もう実に多彩に被災地に行って頑張っているのを見ましたときに、ああ日本を支えているのは、もちろんエリートも大切だけれども、そうじゃないんだ、こういう専修学校、専門学校に行っている、どちらかといえば、先ほど大臣もおっしゃったように、一条校でないからちょっと陰になってしまうのかなと思いますけれども、そういう子供たちこそ大きな光を当てていただきたいというふうに私は思います。

 先々回も私ちょっと質問いたしましたけれども、自公政権のときに、二十一年度に四百八十五億七千万、高校生の修学支援基金というのをつくりました。それが、二分の一が国庫です、二分の一が地方自治体です。二分の一、基金にお金を出すのはやはり地方としてはやりづらいんだ、これは使いたくないと言って、二十一年度は五十億しか使われておりません。それで、二十二年度は百十七億使われる予定なんです。ということは、国庫に返還するときには三百十八億七千万残るということなんです。

 これを全額十割にしてくださいと申し上げたことはできるのかどうか。それから、もし仮に財務省がどうたらこうたら言いましたら、せめて被災地の生徒たちだけにでも十割の適用をしてほしいというふうに願っておりますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

高木国務大臣 委員の熱い思いはよく伝わってまいります。

 先日も、全国の専修学校、各種学校の団体の代表の方が私のところにお見えになりまして、現状の厳しいことについてお話がありまして、要望も受けたところであります。

 御指摘のいわゆる高校生修学支援基金、これについては、授業料減免事業及び奨学金事業について、各都道府県ごとに、平成二十年度の対象生徒数を超える生徒数について必要額を、これは全額でありますが、充当することを基本としております。

 また、先般成立いたしました平成二十三年度の第一次補正予算においては、被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金を創設をいたしまして、東日本大震災により被災した私立学校の生徒などの授業料等の減免額について、必要額、これも全額でございますが、充当する予定でございます。

 そのほか、授業料の減免の仕組みについてどのようにしていくかについては、これはこれまでの国会での御議論もかなりありましたし、平成二十二年度の各都道府県の基金の取り崩し状況、これも十分把握をした上で検討してまいりたいと思っております。

池坊委員 財務省がいろいろの使い方によってうるさいことを言うんだと思いますけれども、平時ではなくて異常事態ですから、今大臣がおっしゃったように、これを十割きっちりと国でやると言うと、本当に地方も喜ぶんですね。これをつくりましても、半分だと言うと本当に使われない。いかに地方が疲弊しているかということがわかってまいります。

 それとともに、特に東日本三県というのは、先ほど申し上げましたように、ほかと比べて財政的に大変厳しいところですから、このようなものがございましても、二分の一を今この異常時で使うということはありませんので、そういう意味では、先々回、ぜひ十割にしてほしいと申し上げて十割になりましたことは、大変心強い気がいたします。

 それで、この高校生の修学支援ですけれども、これがもしゆとりがあるならば、高校を卒業した専修学生たちにもぜひ配られたらなという思いもいたしております。つまり、入学金が払えないとかあるいは教科書代が払えない、そういう子供たちにも細やかな心配りをというふうに私は思っております。

 話はちょっとかわります。また校庭の三・八マイクロシーベルトの話で、大臣は、何度も何度もこの文部科学委員会で話題になりましたのでもううんざりだよみたいな思いもおありになるかもしれませんが、午前中に四人の参考人の方々からいろいろな意見を伺ったときに、やはり子供は二十ミリシーベルトは高過ぎるよ、それで、二十ミリシーベルトを基準として三・八というのはどうかねという御意見が出ました。

 その中で私が感じましたことは、起こりましたことは本当にだれも想像することができなかったような事態でございますので、一度出したことをその後いろいろと状況判断の中で変更しても、私はちっとも政府の権威にはかかわらないと思うんです。現場の方々の意見を聞きながら、それに合わせて状況も変化しているわけです。

 ですから私は、この三・八というのを、もし、いろいろな方々の御意見をお聞きになって柔軟性を持ってお変えになっても、それは政府がいけなかったんだ、文部科学省はけしからぬなんて言う人間は、いたとしたら、その人の方がおかしいのであって、刻々変わってもいいんだと思います。

 高木大臣はいつまでも三・八というのに固執なさいますか。

高木国務大臣 私もこれまでも言っておりますように、放射線のリスクを甘く見てはならない、しっかり状況を把握をして適切に判断する、特に学校の校庭、校舎の利用については、その点については十分配慮をしておるつもりでございます。

 もちろん私は専門家でもございませんけれども、これまでの国際放射線防護委員会の勧告なども踏まえ、そして専門家のお話も十分聞き、あるいは、これまで文部科学省、ずっと以前は科学技術庁という多くの知見もございます。こういうことを総合的に判断して、暫定的な考え方として四月に発表させていただきました。

 しかし、これはあくまでも暫定的でございまして、状況は変化するものもございます。私たちとしては、その間、できるだけ放射線量を下げる努力もしなきゃなりませんので、先日、校庭の土壌の置きかえについても試験もいたしておりますので、そういう努力はしていかなきゃならぬと思っております。

池坊委員 今大臣がおっしゃいましたように、保護者の不安を払拭するためにも、これは暫定的なので、やはり、保護者の不安を払拭する、納得する範囲に定めていただけたらなというふうに思います。

 原子力基本法では、法律によっては一ミリシーベルトということを明確に書かれてございますので、これは政府関係者の参与とか原子力関係者の学者たちが割と甘いDL数値を決めているのではないかと、むしろ不信感を持ちます。

 時間ですのでこれで終わらせていただきますが、最後に一つ。

 はかっておりますSPEEDIのこの数値が何か甘いのではないかとおっしゃる方が多いんです。というのは、パソコンなどをごらんになりますとおわかりのように、いろいろな人間がはかっております、写真までもが載っていて、その数値が文部科学省、SPEEDIが出します数値とは異なっていて、もっと高いのがあるのですが、そういうことは絶対ございませんか。正確でしょうか。

高木国務大臣 決してそんなことはありませんと答えさせていただきます。

 あくまでも正確な数値を早く公表する、当面、これが私たち文部科学省としての政府全体の中での大きな役割だろうと思っております。

池坊委員 わかりましたし、その言葉を信じたいと思います。ただ、ずっとパソコンをあけますと不安になる方々が多いというのも事実ではないかと思います。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、河井克行君。

河井委員 自由民主党の河井克行です。

 前回質問に続きまして、今回も、福島第一原子力発電所事故、その後の対応などにつき、文部科学大臣初め関係の皆様に質問をさせていただきたいと存じます。

 まず初めに、経産副大臣、お越しをいただいておりますが、四月二十日の外務委員会で私が中山義活大臣政務官に質問をいたしました事項、つまり、安全・保安院、三月二十六日の報道発表で、一号機において塩素38を検出したと。このことによって、海水中のナトリウム24と汚染水の中の中性子が結合して発生したのではないか。なぜならば、半減期がわずか三十分しかない物質がこのように表に出てしまった。つまり、国の内外の専門家から、一号機においてはその時点で再臨界が発生したのではないかという疑念が示されております。

 調査をすると確約をしていただきましたので、お答えをいただきたいし、もし、ないと言うならば、その根拠、スペクトルも公開してくださいとお願い申し上げましたので、あわせてお答えをください。

松下副大臣 一号機につきましては再臨界があったのではないか、こういう御質問でございますけれども、再臨界を防止するために、注水に際して硼酸をあわせて注入していたということでございます。また、燃料ペレットが溶融した場合に制御棒もあわせて溶解する、融解する、その中に含まれる硼素も混入される、こう考えられるということでございまして、その場合でも再臨界に至った可能性は極めて低いと考えられる、こういうふうに報告を受けております。

河井委員 極めて低いというお答えですね。全くゼロではないということだと解釈をさせていただいてよろしいんでしょうか。

 それとあわせて、その根拠となるデータも公表をしていただきたいとこの前申し上げました。

松下副大臣 極めて低いということでございまして、それ以上の報告は受けておりませんけれども、今申し上げましたとおりに、硼酸を注入している、そして、ペレットが溶解し、制御棒が溶解するときにあわせて硼素もその中から出てきているということで、極めて低いという報告を受けておるわけでございます。

河井委員 いや、ですから、その根拠となるデータを公開していただきませんと。これはもう二十日の質疑でも申し上げております。残念ながら、私は松下忠洋衆議院議員個人は以前から存じ上げておりますので、人間としては信頼しておりますけれども、もう今は役所の人間でいらっしゃいますから、国の内外の専門家から、またぞろさまざまな隠ぺいを行っているのではないかという疑念が寄せられている。明確にお答えをいただきたいし、公開をしていただきたいんです。

松下副大臣 建屋の外での中性子の検量をしておりますけれども、中性子はその中で検量されていないということが事実としてございますので、再臨界は行われていないということだと考えています。

河井委員 ですから、重ねて申し上げますが、その根拠となるデータを、きょうこの委員会の場でも結構ですし、あるいは経産省のしかるべき方からの公式の会見で公表していただきたい。そうしないと、信頼されないという残念な状態になっておりますので。メルトダウンについても、事故発生直後にそういう状態になっていたのに、ようやく、つい最近になってその事実が明らかにされた。何を信じていいかわからないというのが、残念ながら、我が国国民の率直な気持ちであります。

 国民から信を失った政府は、国の外に対しても発言権がない、発言力がないということはよく御存じのはずでございますので、ぜひこの点についてデータを公表していただきたい。もう一度お願いいたします。

松下副大臣 しかるべき専門家もおりますので、十分検討してお答えいたします。

河井委員 副大臣、私、四月二十日の外務委員会で既にこのことは、中山義活大臣政務官に質問で申し上げました。そして、データの公開についても、行うというふうにはっきりと明言していただいているんですよ。今になってその発言が後退している。理解することができません。

 もう一度、専門家から、きっちりとした公式の会見で公表していただきたい。

松下副大臣 今私が承知しておりますのは、再臨界を起こした場合には、これは中性子が連続して発生するという事実があるわけでございまして、その中性子の発生が確認されていないということを確認しております。そのことのデータが必要であるということであれば、これは専門家にしっかり指示して、データを出してもらうようにいたします。

河井委員 二十日にもそのようにおっしゃったんですね、政務官が。いまだに公表されていない。至急にやっていただきたいと強く強く訴えたいと思います。

 続きまして、三号機についてなんですけれども、温度の上昇がとまらないと報じられております。

 副大臣、一度は、温度は下がってきたんですね。それがまた上がってきた。これは大変嫌な事象でありますけれども、一度下がったときが何度で、そして最新が何度であるか。そして、その意味するものについて考えを示してください。

松下副大臣 三号機につきましては、原子炉の圧力容器の温度が上昇傾向でありましたけれども、これは、原子炉の圧力容器内への注水量が不足した可能性があるということだと考えています。

 なお、その後の注水量を調整することによりまして、五月十八日の午前五時現在、これは圧力容器の底部ですけれども、そこのヘッドの上部で百八十二・五度まで温度は下がっています。

 注水が不足した原因の詳細はまだ把握できていませんけれども、三号機への注水方法のうちに、消火系の注水ラインというのがあるんですけれども、それが想定どおりに機能していなかったおそれがあるというふうに報告を受けております。

 もう一つ、給水系の注水の仕組みがあるわけですけれども、給水系の注水を増加したところ、五月十五日の午前五時時点の二百七十五・五度をピークに温度がだんだん低下してきているということでございまして、低温冷却にするためには、我々の目標は百度でございまして、百度を目標にしてやっているということでございます。

河井委員 副大臣、一号機から四号機の中で、この温度が最も高いのは三号機だと理解してよろしいんでしょうか。

松下副大臣 そのとおりでございます。

河井委員 注水に支障があったのではないかとおっしゃいましたが、注水系に支障があったのか、あるいは、注水した後のだあだあ漏れる量が想定以上だったのか、どちらなんでしょうか。

松下副大臣 当初注水していた消火系の系統からの注水、これに支障があったんじゃないかということで、十分入っていなかったんじゃないかということが言われておりまして、それを今度は、給水系という直接冷やしていく系統の方に切りかえてやっていくことによって、温度の上昇が抑えられることができたというふうに聞いております。

河井委員 ただ、しかしながら、最新の数字では百八十二・五度Cということでありますので、とてもとても、これは冷温どころか大変高い値が続いてきているということで、予断を許さない状態だというふうに考えております。確認をさせていただきました。

 次に、これも前回、四月二十七日の当委員会におきまして質問申し上げました。文科省が実施をしております実測値に基づく各連続観測地点の積算線量の推定値、つまり、いわゆるポケット積算線量計によりまして測定を開始した日の以前の推定値も加え、十ミリシーベルトを超えた日について類推ができるのではないかとこの場でただしましたところ、にわかには答えられないということでございました。

 文科大臣からお答えをいただきたいと存じますが、幾つかの地点において十ミリシーベルトを超えた日が出ていると思います。その地点番号と具体的な地名、そしてその日付についてお答えをいただきたいと存じます。

高木国務大臣 お答えをいたします。

 いわゆる三十一キロ地点の、地点番号と御指摘ありましたから、地点番号でいえば八十一番、そのおよその住所は双葉郡浪江町赤宇木の石小屋というところであり、十ミリシーベルトを超えた日は三月二十一日でございました。

 また三十一キロ地点の、いわゆる地点番号三十二番、これは同じく赤宇木の手七郎というところでありまして、十ミリシーベルトを超えた日は三月二十一日。

 それからもう一カ所、三十三キロ地点、地点番号で申し上げますと三十三番となっておりますが、相馬郡飯舘村の長泥でございます。これは、十ミリシーベルトを超えた日は四月一日となっております。

 以上です。

河井委員 以上三カ所、浪江町二カ所と飯舘村が一カ所というお答えでございました。

 この十ミリシーベルトというのは、大臣、意味のある数字ですね。政府が、屋内退避二十キロから三十キロ、その根拠として十ミリ以上を想定されるということで、これは大変重要な数字でございますけれども、既に三月二十一日に二つの地点、そして四月一日の時点で、本来でしたらこの屋内退避の基準となる値を超えてしまった。

 まず、この事実は政府の中で共有をされていたのかについて、経産副大臣、情報がおありでしょうか。

松下副大臣 私も現地対策本部長をいたしました。そしてまた、現在、戻ってまいりまして、四月からは原子力の被災者の生活支援、帰還するまで責任持ってやるというチームの事務局長をしておりまして、関連するいろいろな資料、そして情報等については共有して仕事をしております。

河井委員 ということは、現地の自治体や住民の皆さんにも、既に三月の下旬から四月の初めにかけて、屋内退避の基準以上の放射線量があなたの住んでいる地点で推定ではありますけれども超えていますよということについては、文科省あるいは政府は周知をされたわけですね。確認をさせていただきます。

高木国務大臣 文部科学省では、三月十六日以降、空間線量率のデータを公表しておりまして、このデータについては関係機関に提供しております。

 提供したデータについては、その都度原子力安全委員会が評価をすることになっておりまして、三月二十日には、三十キロメートル圏外の特定地域において、先ほど御指摘のあったとおりでございますが、屋内退避に関する指標の下限値に達している可能性があるとの評価が行われたと承知をしております。

 原子力安全委員会の評価結果については、政府、原子力災害対策本部や原子力災害現地対策本部を含め関係機関に情報が共有されておりまして、それぞれの役割分担に従い必要な措置を講ずることとされております。

河井委員 もう一度大臣に確認をさせていただきます。

 この十ミリシーベルトを特定の地点で超えたと推計される情報は、既に現地の住民の方々には、きょうこの委員会が始まるまでにお知らせがあったのかどうか、確認をさせてください。

高木国務大臣 情報は共有をしておりますので、住民に知らせるかどうかについては現地対策本部が対応すべきものであろう、私たちはそのように考えております。

 私どもとしましては、先ほど申し上げましたように、役割分担の中で、モニタリングの強化についてあるいはまた緊急的な被曝医療について、その役割を十分果たしていくということでございました。

河井委員 経産副大臣、現地対策本部にボールが回ってきたんですけれども、現地対策本部から住民に知らせたんでしょうか。

 もう一度、時系列で言いますと、四月二十七日に私がこの委員会で質問をしたときには、答えられなかったんですよ、文科省の方は。きょうこの場で大臣から正式にお示しをいただいて、私は、これは大切な数字だというふうに思っております。

 なぜならば、住んでいるところが、三月の下旬には屋内退避の基準となる十ミリシーベルトを早くも超えていたということでありますので、これについては現地対策本部の仕事だと言われたわけですから、現地対策本部は住民にきちっと、このことについてはいつどのようにお知らせがあったか、大切な話ですから、あえて確認をさせてください。

松下副大臣 三月十一日に事故が発生してから、SPEEDIによるある区間までの予測値が出ました。これは三月二十三日だと思いますけれども、多分、新聞紙上で一斉に公表されておりますので、そのことで初めてこういう数値のあらわし方があるんだということは、私自身は認識いたしました。

 その後、四月の上旬、たしか六日だと思いますけれども、福島県下では一斉に、これは三十キロから外ですけれども、学校の入学式、入校式、開校式等が行われるということでありまして、そのことについて、こういう線量の状況を県民の人たちも非常に神経質になって、どういう状況になっているかということがあったことは事実でございまして、私ども、できるだけ、その時点での情報は市町村長さんたちにお伝えしたわけでございます。

河井委員 どうも話を聞いていて理解することができないんですが、つまり、現地の住民の方々は、浪江町の二地点とそれからもう一カ所、飯舘村の一地点、八十一、三十二、三十三の地点番号のところに住んでいる方々は、三月二十一日あるいは四月一日に十ミリシーベルトを超えたということを、いつどのようにして知ったのかということについてお尋ねをしているんです。

松下副大臣 一番先端の人たちにまでどういう形で行ったかということは、私自身は現地対策本部長としても承知しておりませんけれども、その時点時点での大事な必要な数値については市町村長さんたちにお伝えしているということでございます。

河井委員 もう一度文科大臣にお尋ねします。

 文科省がつくり上げたこの計算値、十ミリシーベルトを超えた推計値については、いつ政府の他のところに情報として伝達をされましたか。

高木国務大臣 お答えをいたします。

 測定エリア、三十一キロにおける積算線量に係る経過でございますが、三月十八日、これも測定結果について対策本部に報告をし、そして原子力安全委員会の見解をいただいております。

 例えば、三月十八日の場合は、「現状と今後の推移を考慮すると、身体への影響を生じるレベルのものではありませんが、約三日程度で屋内退避に関する指標の下限値に達するため、この状況がさらに継続する場合には、屋内退避地域の一部見直しについても検討する必要があると考えられ、文部科学省に対して、積算線量計を設置し、推移を注意深く見守るよう要請。」ということでございましたので、我々としては、それに沿いまして、モニタリングの充実を図っております。また、三月二十日についても報告をして、原子力安全委員会の見解をいただいております。

 三月二十三日には、測定エリア三十二、地点三十二でございますが、三十二を含む六カ所に簡易型積算線量計を設置しました。四月三日には、測定エリア三十二の積算線量が十ミリシーベルトを超えております。原子力安全委員会は、四月十日に、測定エリア三十二を含む二十キロ以遠における三月十二日六時から四月五日二十四時までの積算線量の推定を公表しております。

 以上がこれまでの経過です。

河井委員 よくわかりません。もう一度確認をします。

 三月二十一日に十ミリシーベルトを超えただろうと、後になって類推をしたわけですよ。そのことが三月十八日にはわかっていたということですか。もう一度お答えください。(発言する者あり)

田中委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

田中委員長 速記を起こしてください。

 高木文部科学大臣。

高木国務大臣 御指摘の点については、詳しいことについては質問通告があっておりませんけれども、先ほど申し上げました三十二地点の番号については、三月二十一日に十ミリシーベルトを超えた日だろう、これは計算値でございます。したがって、その後、四月三日から四月九日の間に原子力安全委員会にそのことを報告した、このように思っております。

 詳しいことについては、なお、後で御報告を申し上げたいと思っております。

河井委員 正確に言ってください、私は事前に質問通告はこの項目についてしておりますので。

 四月三日から四日の間に、原子力安全委員会に、これらの地点、十ミリシーベルトを超えたということは報告があったということですね。

高木国務大臣 失礼いたしました。今確認をとりますと、四月十日に原子力安全委員会に連絡をしたということでございます。

河井委員 ということは、私が前回質問したときには既にあなたたちは御存じだったのに答弁をしていただけなかったということが一つ。

 もう一つは、屋内退避は二十キロ―三十キロ圏ですから、その外なんですね、三十一キロ、三十一キロ、三十三キロですから。ずっとそこに住民の方々が、屋内とはいえ存在、居住をし続けてしまったということであります。今になって、まさに後手後手ですけれども、飯舘村を含めた地区の新しい対策は実施をしておりますけれども、私は前回もこの場で追及をいたしましたけれども、不要な被曝を住民に強いてしまった、一つそのことが今の御説明で明らかになったと思います。

 もう一つ、後手後手ということでいいますと、同僚議員が何度も質問をしておりますけれども、学校や幼稚園、保育所の校庭、園庭の汚染をされた表土の除去作業であります。

 私は前回、四月二十七日のこの委員会で大臣に申し上げました。チェルノブイリなどの事例からも、一センチメートルから五センチメートル、表土をはがすだけで劇的に放射線量が下がるということを言いましたところ、大臣は御答弁の中で、そういったことについては考えが至っていなかったというふうにおっしゃった。

 私がこの質問を終わって、自分の議員会館の部屋に戻ってテレビをつけたところ、ちょうど郡山市が、国の対応のおくれにしびれを切らして、独自に表土をはがし始めたというその映像がまさに流れていたんですよ。私がこの場で大臣に確認をして、早くやってくださいと言って帰ったら、地元がもう国の対応に我慢できないと。

 ところが、その後、展開は御存じのとおり、はいだ表土を持っていく予定だったところの周辺住民の方々が、不安に駆られて反対をした。いまだにそのはいだ表土は、大臣、どこにどのようにして置いてあるんでしょうか。

高木国務大臣 はいだ郡山市のことがありました。はいだ土は、もとの学校のグラウンドに山積みにされておる。もちろん、シートをかけて安全対策は講じられておるものと思っております。

河井委員 まさに、野積みになって上にブルーシートが置かれているだけと言っていいわけです。不安に駆られた地元のお父さん、お母さん方が、自前で共同で買ったガイガーカウンターを持って、毎日毎日その土の塊のところに行ってきている。

 先ほど、午前中も、参考人の方々より現場の貴重な情報が出されたとおりでございまして、そういう事態になって慌てた文科省は、五月八日になってようやく、三月十一日の震災後から二月近くがたった時点で、福島大学の附属学校など二カ所で、剥離した表土、そして剥離した表土の処理方法の実験を行った。

 まさに後手後手に来ているわけでありまして、私が四月二十七日のこの場で質問するようなことは、あのときも言いましたけれども、まともな科学的知見を持っている専門家だったらだれでも知っている情報なんです。なぜそういう人たちが今の文部科学省の周りに存在しないのか。役所の振りつけどおりに踊ってくれる、後でまた言いますけれども、御用学者ばかりそろえているんじゃないか。地元のお父さん、お母さん方からはそういう不安の声ばかりが入ってきている。

 この場で確認をさせていただきます。

 大臣、きょう現在、あるいは最新の日付で結構ですから、福島県の学校、幼稚園、保育所での表土の除去作業の進捗状況、具体的に何校のうち何校で完了したのか、そして、今後の見通しなどについてお示しをいただきたいと思います。(発言する者あり)

 委員長、速記をとめてくださいよ。

田中委員長 河井委員は質問通告をされておられますか。

河井委員 しております。表土の除去作業について、進捗状況についてということでしております。

田中委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

田中委員長 速記を起こしてください。

 高木大臣。

高木国務大臣 今日現在、郡山市で六十七学校・幼稚園、伊達市において三校・幼稚園、このようになっております。

河井委員 まだ済んでいないところがどれぐらいあるんでしょうか、この地区に存在する学校などを含めまして。終わったところは聞いたんですけれども、済んでいないところがどれぐらいあるんでしょうか。何校中何校でというふうに今質問させていただきました。答えられますか。

 つまり、どれぐらいの割合で完了したかということを知りたいわけですね。すぐ答えられなかったら後で、大臣、この委員会中で結構ですから。

高木国務大臣 詳しい数字については、また後ほど御報告いたします。

河井委員 すべてではないという理解でよろしいですね。

高木国務大臣 そういうことで、そのように私も思っております。

河井委員 その除去、あるいは除去した表土の処理をするためには莫大なお金がかかります。

 予算措置、これにつきまして、笹木副大臣が十一日の会見で、この予算措置は、今後、国において必要性の有無を議論していくという発言をされましたが、大臣、これは国が費用負担をしていくという方向性なんでしょうか、お答えをください。

高木国務大臣 校庭の土砂の対策については、これは学校の設置者において適切に判断をして実施されていくものと考えております。

 文部科学省としては、学校教育がうまく進んでいきますようにという観点から、既に教育委員会に対しては必要な助言を行ってきております。

 もちろん、表土の置きかえなどもそうですけれども、引き続き、こういった土砂の対応について、土壌の改良についてどのような支援が可能であるかについて、現在検討を進めておるところであります。

河井委員 検討検討と、いつまでたっても検討じゃいけないんですね、大臣。だって、野積みにされているわけですから、この六十七校、郡山市だけで。

 これこそ、まさに第二次補正予算案に入れ込むべき中身だと私は思いますよ。本当に現地の子供たちのお父さん、お母さん方が心配に駆られている、そのままこれから梅雨どきを迎えていくのか。ゆめゆめ、六月二十二日で終わる予定の通常国会をその場で閉会して、そして第二次補正予算先送りなんということをするということは、この福島の子供たちやその親御さんたちに対する国としての責任放棄だ、私はそういうふうに考えております。

 松下副大臣は連立与党の最高幹部のお一人でいらっしゃいますが、第二次補正予算案、今国会中に提出、今のことも含めて、お考えをお示しいただきたいと思います。

松下副大臣 一番困っているのは福島の原子力被災者でございまして、その人たちが少しでも未来に展望を開けるようなあらゆる努力は、補正も含めて、今すべきことは全力を挙げてやるべきだと私は考えています。

河井委員 今国会中に出すべきだと副大臣もお考えなんですね。

松下副大臣 内閣、閣僚で検討されることだと思いますけれども、私自身は、現地の本部長もし、被災者の生活支援をしている立場からいえば、必要なものは直ちに予算化して実行すべきだ、そう考えております。時間は早ければ早いほどいいと考えています。

河井委員 全く正論です。でも、その正論が正論でないのが今の政治の状況でありますので、与党の立場から、しっかりとしかるべきところに副大臣からもお話をしていただいて、ぜひ第二次補正予算案には、少なくともこの子供たちと親御さんたちの不安を払拭するような、表土をはいだものの除去、除染についてしっかりとした予算措置を入れ込むように力を尽くしていただきたいと思います。

 次に、厚生労働省小林大臣政務官にお越しをいただいております。

 今、校庭、園庭の議論をずっとお聞きになっていらっしゃる中で、四月十九日に突如文科省が放射線基準値、年間の二十ミリ、毎時三・八マイクロを打ち出しまして、住民、保護者ばかりか専門家からも反対が表明された。小佐古前第一号内閣参与が、辞任の記者会見で涙を流しながら、この値が学者としての考え方から筋が通っていないということを訴えられたことは全国民が見たわけでありまして、私は、あの映像を見た段階で、政府が無理くりつくり上げた二十ミリシーベルトという学問的な根拠は崩壊した、そのように考えております。

 そういう中で、この二十ミリというのは、政務官、放射能管理区域内の労働者が浴びる被曝線量と同じだということは、もう今これは子供でも知っているような数字なんですよ。なぜそういう値と、いたいけな子供たち、なりわいでやっているんじゃない子供たちの上に課せられる放射能の値を同じにしなきゃいけないのか、全く理が通っていないと私たちは考えております。

 確認をいたします。法令によりまして、放射線管理区域内のさまざまな放射線の値は幾らなんでしょうか。

小林大臣政務官 放射線区域での放射線業務に従事する労働者の健康障害防止措置については、労働安全衛生法に基づき電離放射線障害防止規則で定められております。

 具体的には、外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量の合計が三月につき一・三ミリシーベルトを超える区域を放射線管理区域と定めて、区域内で放射線業務に従事する労働者について、線量計の保持だとかあるいは被曝線量の測定、放射性物質による汚染を防止するための保護具などの着用、そして特殊健康診断などの実施の措置を求めているところでございます。

河井委員 議論を聞いておりますと、原発労働者ですら二十ミリという議論がよくありますが、あれはあくまで上限の値でありまして、福島の子供たちの上には、放射線管理区域と全く同じだけのものが概念としては適用されている。三カ月で一・三ミリシーベルトということは、毎時にすると〇・六マイクロシーベルトではないかと思われます。その値は、今回文科省が発表した三・八は、そのおよそ六倍以上の値だというふうに計算できますが、政務官、確認をさせてください。毎時〇・六、そして六倍以上だということを。

小林大臣政務官 今、河井委員おっしゃったとおり、おおむね〇・六マイクロシーベルトと承知しております。

河井委員 労働基準法では、子供たちの放射線管理区域内での労働は認めているのでしょうか。

小林大臣政務官 労働基準法に基づく規則は、使用者の事業活動のために指揮命令を受けて働く者である労働者の保護を図る観点から、使用者に対する規制を設けているものであります。

 特に、心身ともに発育過程にある年少の労働者については、特別な保護措置として、危険有害な業務にはつかせてはならない、このようになっております。この一環として、使用者が十八歳未満の者を有害放射線にさらされる業務につかせることを禁止しているため、一定以上の線量の放射線にさらされるおそれのある管理区域での業務に十八歳未満の者をつかせることも禁止されているものでございます。

河井委員 十八歳未満の子供たちは働くことも認められていない。その場に今こうして、文科省が四月十九日に二十ミリという、この値も私は全く学問的な知見にのっとっていないと思いますけれども、それまでほったらかしにされていたという状態であります。

 しからば政務官、この管理区域内で法令がどのように規定しているか。被曝量の測定、働いている人たち、外部と内部、あるいは健康診断の実施についてどのような規定を持っているか、お答えをください。

小林大臣政務官 福島第一原子力発電所の事故発生以降、福島県内の各地域において延べ十八万人以上の住民の方々に実施されたサーベイメーターによるスクリーニングにおいて、四月以降、除染が必要な十万cpmを超えた方は確認されておりません。また、内部被曝について、特に注意を要する小児の甲状腺被曝に関して、ゼロから十五歳までの千人以上についても三月下旬に測定を行ったところ、スクリーニングレベルを超えた者はいなかった、こういう実態でございます。

 ただ、このような状況ではありますけれども、地域住民の受けた放射線量の実態の把握や、その後、適切なフォローアップを行うことが大変重要でありますので、関係省庁との連携のもとに、まず、被災住民の方々について、避難経路や行動調査、そして環境モニタリング結果を活用することなどによって、内部被曝線量を含めて、これまで受けた放射線量の推定を実施したい、このように考えております。その上で、健康調査の対象手法について、原子力災害対策本部のもとで関係省庁と協力しながら検討を進めていく、このように考えております。

 なお、厚生労働省としても、専門家の御意見に加えて、福島県など地元自治体の御意向を十分に踏まえて、地域住民の方々の健康管理のための対応を検討してまいりたい、このように考えております。

河井委員 私が聞いていないことまでいろいろと御答弁をいただきましたけれども、その前に、法令によりまして、放射線管理区域内において外部被曝、内部被曝の線量の測定とか健康診断をどのようにしていらっしゃるか。今のお答えは、一回やりましたよ、だから大丈夫ですよということでありますけれども、そうではないですね、労働者という観点から見た場合は。お答えください。

小林大臣政務官 具体的には、外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量の合計が三月につき一・三ミリシーベルトを超える地域を管理区域と定めておりますので、管理区域内で放射線業務に従事する労働者について、線量計の保持とか被曝線量の測定、あるいは放射性物質による汚染を防止するための保護具などの着用、こういうことを求めております。

 厚生労働省としては、原子力発電所の事故の処理に当たる労働者の安全や健康を確保するために、これらの措置が確実に実施されるように、関係事業所に指導徹底を図っているところでございます。

河井委員 今の議論を文科大臣お聞きになっていただきまして、原発労働者ですら、繰り返しの被曝量の測定や健康診断が法令によって義務づけられている。

 皆さんがお決めになった二十ミリシーベルトによって、今現場は運用をされているわけであります。その二十ミリシーベルトという数字に自信がおありだから、最大限のことでそれをおやりになっていらっしゃるということであるならば、私は、当該地域に住んでいる子供たち全員の内部被曝の実態について、具体的に、のどと全身、沃素とそしてセシウム、全身についてはホール・ボディー・カウンターという全身の測定装置、これなどを活用して、子供たち全員についてやっていただきたい。

 前回の委員会でも、早くしないと生物学的な半減期がやってきて、特に沃素は足が速いですから見えなくなっていってしまうというふうに申し上げた。その後の実施の状況など、新しい話がありましたらお示しをいただきたいと思います。

高木国務大臣 子供を含む住民の被曝の調査については、これは原子力災害対策本部を中心に検討が行われているものと承知をしております。前回の委員会での委員の御指摘も、有益な御意見の一つとして賜ったところでございます。

 文部科学省としては、今後とも、放射線医学総合研究所や、あるいは大学などのあらゆる知見を生かしながら必要な調査に協力をしてまいりたい、このように思っております。

 なお、先ほどからいろいろ言われておりますけれども、いわゆる原子炉等規制法に基づく管理区域のお話がございました。これはもう、たびたび国会の中でも出されております。

 私も、管理区域はよく承知をしております、いろいろな現場で。ただ、今言われておるようなことで私なりに思うのは、これは強力な放射線、放射線源の存在ということを前提に、管理区域として、従事労働者、これの特別な保護措置としてあるものであり、そもそも管理の対象となるような強力な放射線源が存在していない学校に関して、私は管理区域の線量限度と比較することはいかがなものかな、このように思っております。

 したがって、私は、二十ミリシーベルトでいいというのを言っているのではありませんで、一から二十ミリシーベルトの間で、できるだけ被曝をしないようなことが望ましい。このことは原子力安全委員会としても強く求められておりますので、私たちとしては、例えば、先ほども出ておりますように、何らかの土壌の改良等も今検討を進めておりますけれども、同時に、常時そのときの放射線量をきちっとはかって、皆さん方の不安にならないようなことを行っていく。

 少なくとも二週間に一回程度以上は報告しなさいという安全委員会からの要請もありますし、同時に、これも既にやっておりますが、教職員の皆さん方に御協力いただいて、携帯の線量計を持っていただいて計測をしていく。そういう中で、我々は子供の安全確保を図っていく。

 何度も申し上げますように、これは暫定的な考え方でございまして、夏休み中にこれをもう一回見直す。先生初め皆さん方の御意見も十分承ることは当然のことでございまして、私たちとしてはそのように今考えておるところでございますので、どうぞひとつ御理解をいただきたいと思います。

河井委員 私は、やはり文科大臣の今の御認識は甘い、そう考えております。

 一ミリシーベルトから二十ミリシーベルトの間というふうにおっしゃいました。本来は一ミリシーベルトでないといけないわけであります。放射能の強さとそして遺伝子の損壊の比率というのは、これはその値によって全般的には比例をされていく。放射線の量は低ければ低い方がいいに決まっているわけでありまして、また後から、原子力安全委員会も含めてこの点については議論をしたいというふうに思っております。

 さっき私が言いましたように、とにかく、全身測定装置、これをぜひ使っていただきたい。これによって体内に存在する特定の放射線核種を突きとめることができる。全員じゃなくていいんですよ。抜き取り調査で子供たちをやっていただくことによって、さまざまな事柄がこれからわかってくるだろう。これも広島大学の専門家の先生方から聞いてきた話でありまして、ぜひこの点も考慮に入れていただきたい。

 そして、早急にやります、やりますという話ばかり聞かされているわけでありますけれども、大臣、いつ子供も含めた住民の大規模かつ緊急の調査を始めようとしているのか。中には、生物学的半減期が過ぎて値が見えなくなるのを待っているんじゃないか、そういうふうなお子さんの親御さんたちからの今の政府に対する厳しい見方すら寄せられている。わざと隠ぺいしているんじゃないか、今測定してしまうといろいろなことが見えてきてしまう、だから時間をかけているんじゃないかとすら言われているその状況の中で、いつこのことを始めていかれるのか。もう一度お示しをください。

高木国務大臣 このことについては、これは政府全体、原子力安全委員会の助言をいただきますけれども、原子力災害対策本部として検討していくものと思っておりますので、今ここで、いつまでということについては答弁はしかねます。

河井委員 ほとんど変わらぬ御答弁を四月二十七日にもこの場で、この部屋で私は聞いたんです。

 では、その後、何が進んだんですか、大臣。これは本当に子供たちの命がかかった、未来がかかった大切なことだから繰り返し申し上げている。では、その後、政府部内でどういう検討がどうなされてきたのか。いつまでたっても、やります、やりますじゃないですか、これは。だから、さっき言ったような疑念が生まれてくるんです。今測定してしまうと、子供たちの中にはさまざまな値が出てくるかもしれない、それによってまたさまざまな政治責任が生まれるかもしれない、だから隠しているんだという議論すらある。

 大臣、いつになったらこれを始めてくれるんですか。もう一度お答えをください。特にこれは学校現場の話なんです。子供たちの命にかかわる話ですから。政府全体の話はもちろん大事かもしれないけれども、文科省が率先してすることはできないのか。答弁をいただきたいと思います。

高木国務大臣 私どもは、既にお示しをした暫定的な考え方は変わっておりません。したがって、できるだけ線量を下げる努力、例えば土壌の入れかえ等について今既に試験も行って、これは一つの努力ではないかと思っております。

 あとは、私たちとしては、最終的には早くサイトが収束をすること、このことについてまさに全力を挙げていくこと、これは東電の皆さん方の、現場の皆さん方の大変な御苦労もありますけれども、そのことに尽きる。その間、我々はできるだけのことをする。このことについては、日ごろから専門家の皆さん方、原子力安全委員会の皆さん方とも意見交換をしながら進めております。また、国会におきましても、いろいろな御意見、御提言もございますから、こういうことをしっかり我々も受けとめております。

 申し上げましたとおり、暫定的な考え方は夏休みまで、私たちとしてはこのことで進んでいく、そして、そのときにまた改めて見直しを進める、こういうことでございます。

河井委員 大臣、お答えになっていないんですよ。何ですぐに始められないんですかと聞いているんです。自信を持って、暫定値だろうと何だろうと、政府が責任を持って公表したこの一から二十の数字なんですから、それに基づいて、どうしてすべての子供たちの測定を国の責任でやってくれないのか。もう繰り返し委員会でも申し上げておりますけれども、正面からの答弁を今なおいただくことができない。

 人の問題だけでなくて、文科省においては、土壌の緊急調査についても私は繰り返し申し上げております。さまざまな学会、具体的に言いましょう。放射線化学会ですとか、地理、物理学会、大阪大学や東京大学や広島大学の学者、研究者らから文部科学省に、既に三月の末の時点で、専門家の方々が共同体をつくって、早く詳細な、そして大規模な緊急調査を土壌についてするべきだと。いまだに始まっていない。

 その学者の方々が文科省の担当と話をするたびに、いや、いろいろな会議体や委員会があるものですから、そこと話を通さないといけないので時間がかかると。まさに今、文科大臣が答弁したのと同じじゃないですか。そういう中で、会議は踊っても、放射能は待ってくれないんですよ。時間との競争なんだ。事は一刻を要する、一刻を争う、時間との闘いだ、これも何度も何度も申し上げております。

 大臣、この土壌の調査について、さっき言いました、三月末から専門家のさまざまな方々が申し入れをしているということですけれども、いつ始めるおつもりなのか、そして、いつまでに調査を終えて公表するのか、お答えをいただきたいと思います。

高木国務大臣 文部科学省では、これまで、福島県内七百以上の土壌試料を採取しております。また、これを分析もしております。一方、福島県においても、独自に県内の七百以上の土壌試料を採取、分析しております。

 被曝線量の評価のためには、この土壌表面の放射性物質の蓄積状況に関する広範な、また詳細な土壌濃度のマップの作成が必要であるということについては、私はそう認識をしております。

 特に、沃素131の半減期は短いことに加えて、今から季節は梅雨に入りまして、梅雨の影響によって地表面の放射性物質の蓄積状況、これが変わることから、梅雨が本格化する前に福島県において詳細な土壌調査を一通り完了させて、地表面における放射性物質の蓄積状況を把握することとしたい、私たちはそのように考えております。

 繰り返しますけれども、梅雨が本格化する前に調査をしっかり完了させたいと思っております。

河井委員 この調査をする地点の選択については、できれば一キロ単位で、細かい単位でやっていただきたい。そして、これまでの放射能災害の経験からいっても、ごく限られたところ、いわゆるホットスポットですけれども、そこに濃縮された値が存在をしていることは今回も想像できるわけですから、あくまでも、大臣、これは初歩の初歩というか、しょっぱなです。第一段階にすぎない。まずは一キロから二キロぐらいでやっていただいて、それで決して十分ではない、その後またやっていかなくちゃいけない。だからこそもっと早くしていただきたかった。

 これは研究材料では決してないんです。学者の方たちもそんなふうには思っていない。この土の上には、紛れもない、私たちと同じ日本国民が、この国の人々がこの上に住んでいる。

 放射線量をこれから測定していただくわけですけれども、恐らく検出されるのは学校の校庭とか園庭の上だけではないですよね。だって、学校の上だけ放射線が降ってきたなんということは、これはあり得ない話であります。かなり広範囲な、地理的なところで放射能の汚染が確認されるだろうということは、既に実際、文科省自身が試験的に始めた測定でも明らかだというふうに思っておりますので、梅雨までに調査を完了したいというふうにおっしゃった。

 その上で、学校の園庭や校庭以外のところでも高い値が検出された場合、文科省、それについては政府の部内でどのように発言をしていくおつもりなのか。私は、全般的な表土の除去というものをしなきゃいけないというふうに思いますよ。文科大臣とそれから経産副大臣、続けてお考えをお示しください。

高木国務大臣 私どもは、これまでも一定の測定値が高どまりで下がらないというところに対しては、土や砂の除去といいますか、入れかえを含めて何とか対応するということは言ってまいりました。

 今言われましたのは、学校校庭のみならず、地域全体にわたることであろうと私も承知をいたしておりまして、調査としてはできるだけ早く、そしてこれは関係省庁とも十分な連携もとりませんといけませんし、またもちろん地元の皆さん方との調整もありますので、これについては丁寧に適切な対応をとらなきゃならぬ、私はこのように思っております。

 特に私の担当では、学校の校庭については先ほど申し上げたとおりでございます。何らかそういう努力をしていかなきゃならぬと思います。

松下副大臣 二つの視点がありまして、子供さんたちを初めとして、二十キロ―三十キロ、それから飯舘の方も含めて何回か避難された人たちがいらっしゃいます。その人たちのいわゆる追跡調査、健康の状態はどうなのか、私は特に子供さんたちについては生涯にわたってしっかりと健康をフォローしていく必要がある、そのためにも必要な資料を集める、調査をすることは徹底してやっていきたいと考えております。

 もう一つは、いつ帰れるのかという切実な願いがありますから、帰還計画に向けて、二十キロ―三十キロ、そして飯舘の方に広がった、三十キロから外に広がった地域の線量がどうなのか、土壌がどうなのか、農業はいつごろから開始できるのかということも含めて、これは真剣に全力を挙げてこの事態を打開するための調査をしていきたい、そう考えております。

 きのう、そのことの全体の工程表も我々の原子力災害対策本部で認めていただき、これから実行していきたいということでございます。

河井委員 文科大臣、先ほど、自分たちの管轄では校庭、園庭だというふうにおっしゃいましたけれども、通学路も大事なんですからね、通学路。通学路における内部被曝の問題もあるわけですから、校庭、園庭だけでないということをあえて申し上げたいと思います。

 原子力安全委員会班目委員長、お待たせをいたしました。

 四月十九日の、二十ミリシーベルトに文科省が突如引き上げたときの決定過程、幾つかお尋ねをいたしたいと思います。

 原案は文科省から持ってきたんですね。

班目参考人 文部科学省とは四月九日から断続的にいろいろな御相談をさせていただいております。最終的な暫定案に関しましては四月十九日にいただいて、それで議論の末、差し支えない旨回答してございます。

 ただし、留意事項をつけてございまして、二週間に一回以上の頻度でモニタリングの結果を原子力安全委員会に報告してくださいということ。それからもう一つ、特にやはり実際に子供たちがどれだけの線量を被曝するのかということを気にしましたので、教員の方どなたか一名に、子供たちと同じような振る舞いをする先生方を選んでいただいて、その方に線量計をつけてはかってください、その結果も報告してください、そういう留意事項をつけてございます。

河井委員 四月九日から文科省が話を持ってきたということを今答弁をされました。

 決定は四月十九日ですが、これは正式な会議ではなかったんですね。

班目参考人 原子力安全委員会の会合では、ナンバーをつけている、正式といったらどうなのでしょうか、第何回とつけている委員会と、それからそれ以外に、随時開いている委員会と、現在ございます。そういう意味では、ナンバーはつけていない委員会ではございます。

河井委員 月曜日が定例会議ですね。この十九日は火曜日なんですよ。確認をします。

班目参考人 定例会議は月曜日でございます。そういう意味では、定例会議ではございません。

河井委員 なぜ定例会議の月曜日に、あなたは今、九日から文科省から相談を受けたとお答えになった。なぜ前日の正式な会議のときにこの大事な話をしないで、次の日にこういうことをどさどさっとなし崩し的に決定したのか、お答えください。

班目参考人 文部科学省の方からこの案が示されたのが十九日だったものですから、それから、この案件というのが非常に大切であり、なるべく早く決定をするべきものであるということから、至急開催したという次第でございます。

河井委員 いやいや、先ほど、案を示されたのは十九日とおっしゃったけれども、九日から相談をされていたんですね。

 では、十日間一体何をやっていたんですか、原子力安全委員会におかれましては。

班目参考人 原子力安全委員会では、四月九日に文科省から示された案に対して、いろいろな助言をしました。そして、ぜひこういうところを見直して、また持ってきてくださいということを何回かやったわけでございます。

 大変申しわけないんですけれども、原子力安全委員会の方では、それぞれの学校の個別の事情までは存じ上げません。そういう意味では、そういうことをよく御存じの文部科学省の方から具体的な提案をいただいて、それに対して助言をする、そういう仕組みになってございますので、そのためのいろいろなやりとりを続けていたということでございます。

河井委員 当日の議事録はあるんでしょうか。

班目参考人 申しわけございません、当日の正式な議事録はございませんけれども、そのときどのような議論が行われたかということについては、その後、きちんとしたメモとかいう形で残してございます。

河井委員 正式な委員会でもない、正式な議事録でもない、そういうものが十九日の火曜日に重要な決定をなされた。どうしてもそこで疑念を抱かざるを得ないわけであります。

 委員長、今の状態では、福島県東半分の方々が年間被曝量一ミリを超えるのは確実ですね。お答えください。

班目参考人 ちょっと、東半分、どこですか。(河井委員「福島県の東半分」と呼ぶ)福島県の東半分。

 いや、場所によるとは思いますけれども、多くのところは年間一ミリシーベルトを超えるだろうというふうに予想しております。

河井委員 結局、一ミリシーベルトを超えるその見たくない現実に、一ミリから二十ミリに引き上げた。現実に基準を合わせただけじゃないか、そう考えております。

 文科省が話を持ってきたときに、住民の方々の健康以外に何を彼らは心配していたか、何を考慮していたか、教えてください。

班目参考人 文科省が案を持ってきたときに、我々は、国際放射線防護委員会、ICRPでございますけれども、それの最新の勧告についていろいろとるる御説明申し上げました。

 それによりますと、このように不幸にして放射線量がふえてしまったような場所においては、一ミリシーベルトから二十ミリシーベルト・パー・イヤーの、参考値と言っていますけれども、参考レベルの中でできるだけ低くなるように、合理的に達成可能な限りの努力をするという条件でさまざまな生活を認めるというふうになってございます。

 そのあたりを申し上げて、その上で文科省の方で案をつくってくださいというふうに申し上げたわけでございます。

河井委員 つまり、委員長、文科省は、学校の運営の方に力点を置いていたのか、そこに通っている子供たちの健康被害の方に力点を置いていたのか、どちらだというふうに印象を抱かれたでしょうか。

班目参考人 もちろん、安全委員会に相談があったのは子供たちの健康の観点からの相談であったというふうに認識してございます。

河井委員 しからば、二十ミリに引き上げたということについて、原子力安全委員会として助言をした、引き上げたということについて妥当だというふうに助言をしたということでありますので、例えば遊べなくなった校庭に置かれた土、それの除去や除染などについては思いが至らなかったんでしょうか、考えが至らなかったんでしょうか。

班目参考人 まず第一に、二十ミリシーベルト・パー・イヤーに引き上げたという表現ですけれども、これは明確に否定させていただきます。あくまでも、一ミリシーベルトに近づける合理的に達成可能なできる限りの努力を払うという条件で、一ミリシーベルト・パー・イヤーから二十ミリシーベルト・パー・イヤーの参考レベルを使うことは差し支えないと申し上げたということでございます。

 それから、例えば土のことについては、これはあくまでも文部科学省の方から我々に説明がその後あったわけでございまして、その除去等々については、原子力安全委員会としては、我々自身が提案したものではないわけですので、その処理等々について特に何か考えたということではございません。

河井委員 時間が来ましたので、最後に一つだけ、原子力安全委員長。

 委員長は会見で、自分たちには力がないんですということを、以前、この事故が起こった後おっしゃいましたね。今後、もう少し事態が収束して、いつ収束するかどうかわかりませんけれども、今後さまざまな原子力安全についての役割、体制などの見直しの議論をしなきゃいけないときに、委員長が発せられた言葉というのは大変重いというふうに思っておりますので、あえて聞かせていただきます。

 今回の一連の対応、みずからの身を振り返って、みずからの身というのは委員長御自身じゃないんですよ、原子力安全委員会全体、どのように自己評価をしていらっしゃるか、そして、どこに力がないという意味であの会見はおっしゃったのか、お聞かせください。

班目参考人 原子力安全委員会というのは、法律上の位置づけは、いわゆる三条委員会みたいな強制力を持った委員会ではございませんで、いわゆる八条委員会、いわば諮問委員会のようなものでございます。ということは、いろいろなことをみずから調査したりする能力というのは余りない。

 実際に、常勤の職員というのは七十名ぐらいしかおりませんし、あと三十名ぐらい、臨時のといいますか、ある程度年齢のいった方をお願いしている。

 それからあと、三百人ぐらいの学識経験者を抱えてございますけれども、このような方たちは、大学の先生であったりお医者さんであったり、あるいは弁護士の方であったり、さまざまな職業を持っていらっしゃる方です。そういう方の協力のもとに成り立っているという組織でございますので、そういう意味からいくと、我々のやれることには限界がある。

 しかしながら、今みたいな大きな原子力災害が発生しているときには、助言を行っていくということは最大の任務でございますので、これについては、我々としてはもう最大限のことをやってきたというふうに自負してございます。

河井委員 しっかりとこれから議論をしていきたいと思います。存在するだけで機能していないという御指摘ですとか、政治的独立性や技術的独立性が全くないという指摘もある。

 最後に、経産副大臣、今の議論をお聞きになっていて、原子力安全委員会、密接にさまざまなお仕事を一緒にしてこられたと思います。どういう評価をしていらっしゃるか。満足ですか、あの人たちの仕事ぶりに。お答えください。

松下副大臣 原子力の世界というのは大変専門性の高い分野だ、こう考えています。その中で、官邸に入り、あるいは内閣府の中でそれぞれの持った技術をしっかり我々の方に助言していただくというのはやはり大変大事なことだと思っていますし、人間的にも私は大変尊敬しています。

 そのスピードが速かったか遅かったか、タイミングがそれでよかったかどうかという議論はいろいろあると思いますけれども、私は一流の技術を持っている人たちだと、そう考えています。

河井委員 終わります。

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五分散会


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