衆議院

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第16号 平成23年8月3日(水曜日)

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平成二十三年八月三日(水曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君

   理事 野木  実君 理事 松崎 哲久君

   理事 下村 博文君 理事 馳   浩君

   理事 池坊 保子君

      石井登志郎君    大山 昌宏君

      奥村 展三君    金森  正君

      川口  浩君    川越 孝洋君

      木村たけつか君    城井  崇君

      熊谷 貞俊君    瑞慶覧長敏君

      高野  守君    中屋 大介君

      平山 泰朗君    村上 史好君

      室井 秀子君    本村賢太郎君

      山田 良司君    笠  浩史君

      和嶋 未希君    あべ 俊子君

      稲田 朋美君    遠藤 利明君

      河村 建夫君    塩谷  立君

      田野瀬良太郎君    橘 慶一郎君

      古屋 圭司君    松野 博一君

      富田 茂之君    宮本 岳志君

    …………………………………

   文部科学大臣政務官    笠  浩史君

   参考人

   (独立行政法人放射線医学総合研究所理事長)    米倉 義晴君

   参考人

   (独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長)   鈴木 篤之君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月三日

 辞任         補欠選任

  瑞慶覧長敏君     川越 孝洋君

  永岡 桂子君     橘 慶一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  川越 孝洋君     瑞慶覧長敏君

  橘 慶一郎君     稲田 朋美君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     永岡 桂子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人放射線医学総合研究所理事長米倉義晴君及び独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長鈴木篤之君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の……(発言する者あり)静粛にお願いします。議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人三十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず米倉参考人にお願いいたします。

米倉参考人 放射線医学総合研究所の米倉でございます。

 本日は、このような意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、大変ありがとうございました。

 まず最初に、改めまして、今回の東日本大震災により被災された多くの方々に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

 特に、災害の発生後四カ月半を経て、今なお、東京電力福島第一原子力発電所からの放射性物質の放出により、多くの方々が避難を余儀なくされ、これによって身体的、精神的に多大の負担を強いられているという現状を考えますと、この状況を早急に解決する努力が求められているというふうに考えております。

 まず最初に、今回の災害につきまして、三つの大きな特徴があるのではないかと思っております。

 第一は、地震、津波に原子力災害という大きな三つの災害が加わった複合災害である点であります。第二が、現地における医療体制の崩壊でありまして、このことが、緊急時にはもとより、復興段階の作業においても大きなネックとなっております。さらに、三番目として、大規模な放射能放出の可能性は和らいだとはいうものの、今後も、かなりの期間にわたって環境に放出されてしまった放射能への対応が求められるという点があります。

 このために、私どもが今まで参考にしてきましたマニュアルのみでは対応できず、教科書には書かれていないような事態に対して、私たちの英知を結集して最善の方策を考えていくということが求められているのではないかというふうに思う次第です。

 放射線医学総合研究所は、放射線医学、放射線科学に関する私どもの能力を最大限に活用して、この困難な状況の克服に当たってまいりたいと思います。

 本日は、放射線被曝の影響について意見を申し上げる機会というふうに認識しておりますが、まずその前提として、少しお時間をいただきまして、放医研の活動について簡単に御説明を申し上げたいと思います。お手元の資料に私どもの概要について記載しておりますので、適宜参考にしていただければ結構です。と申しますのも、今回の原子力災害への対応は、研究開発病院を擁します放医研全体が、一体となって対応して初めて可能となっているというふうに考えるからであります。

 放医研は、一言で申しますと、放射線医学、放射線科学の分野における、日本で唯一かつ世界的にも類例のない総合的な研究機関であるというふうに考えております。今回の原子力災害対応では、医学応用あるいは産業利用で放射線がこれだけ身近になっているにもかかわらず、放射線についていかに世の中に知られていなかったかを痛感しております。私ども放医研は、放射線をよく知り、放射線から人々の体を守り、そして放射線により病気を治すことをその業務の中心に据えて活動をしているわけであります。

 御承知のように、太平洋上のビキニ環礁での第五福竜丸事件を契機として、国民の放射線の影響等への関心の高まりと、放射線の医学的利用に関する研究の必要性への認識の高まりを背景として、一九五七年に旧科学技術庁所管の研究所として設立されました。

 放射線に関する幅広い領域を扱うということから、医学、生物学、物理学、工学、あるいは薬学や獣医学といったさまざまな専門家を結集した総合的な研究機関として発足し、それ以来五十四年間、放医研は、放射線に係る安全確保のための基礎的な研究を行うとともに、その医学応用を推進する活動を同時に進めてまいりました。放射線防護、放射線の医学利用という両方の側面から研究開発を総合的に実施してきたことによって、放射線に関する専門家の養成と幅広い人材育成に貢献することができたというふうに考えています。

 放医研では、放射線科学を通じて、人々の健康と、安全で安心な社会づくりに貢献するという基本理念のもとに、放射線の医学的利用のための研究、放射線安全・緊急被曝医療のための研究、そして放射線科学領域における基盤技術開発という三つの柱に対応したセンター構成により効果的な研究を実施しています。

 このうち、皆さんよく御存じだと思いますが、放射線の医学への応用に関しましては、中性子線に始まって陽子線、さらに近年は重粒子線を用いたがん治療研究を先導しまして、診断については、陽電子断層撮影、PETと言われる検査ですが、この方法の開発や、分子イメージング等の最先端技術でこの分野の先導的な役割を果たしています。

 一方、放射線防護の面では、放射線の生物影響に関する基礎的な研究を実施するとともに、一九八六年のチェルノブイリ事故の際には、帰国者の除染や調査を行ったほか、一九九九年の東海村のジェー・シー・オー臨界事故の際には、患者三名の治療に当たるなどの対応を行ってまいりました。

 今回の原子力災害におきましては、基礎研究者や技術者に加えて、医師、看護師等を含めて、研究開発病院を有する放医研の特徴を生かして、全所的に対応しております。災害発生の当初に、大量の被曝患者が発生した場合にも対応できるように病院の受け入れ態勢を整えていたことなど、放医研でなければできなかった対応であったというふうに考えています。

 さて、緊急被曝医療体制について少し説明をさせていただきます。

 今回の東京電力福島第一原子力発電所に係る原子力災害への対応として、私ども放医研は、我が国の原子力防災体制における第三次被曝医療機関として、震災直後から現地に被曝医療関係の専門家を派遣し、避難所等での住民のスクリーニングの実施や、発電所内の作業従事者の被曝等に対応した医療活動を行ってまいりました。

 我が国の緊急被曝体制では、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力防災体制において、災害現場において初期医療を行う機関をベースとして、広い意味での医療圏において、軽微な被曝に対応する第二次被曝医療機関というピラミッド構造を前提とし、さらに内部被曝を含むような重篤な被曝患者が発生した場合に対応する第三次被曝医療機関という位置づけになっています。日本を二つのブロックに分けて、西は広島大学、東は放医研が原子力安全委員会により第三次被曝医療機関として指定されているわけであります。さらに加えて、放医研は、日本全体の被曝医療の取りまとめ機関となっています。

 今回、不幸にして発生してしまったこの大規模な原子力災害は、頻繁に起こるものではありません。その対応を持続可能なものにするためには、このような階層構造のシステムが資源投入の観点からも合理的であるとの判断は間違っていなかったというふうに考えております。

 さて、次に、今回の災害への取り組みについて御説明をします。

 放医研は、我が国の原子力防災体制における第三次被曝医療機関として、震災直後から現地に被曝医療関係の専門家を派遣し、避難所等での住民のスクリーニングの実施や、作業従事者の被曝等に対応した医療活動を行ってきたというふうに申し上げました。

 その基本的なスタンスにつきましては、専門的な高度の医療を行う三次被曝医療機関としての機能を果たすこと、それから、放射線計測、防護、環境、医療の専門家としての現場重視の対応と助言を行うことを中心に、当初から全所的な体制を組んで対応しております。

 放医研は、今回の災害発生後、いち早く被曝患者が発生した場合の受け入れ準備を整えまして、翌日の朝八時過ぎには緊急被曝医療派遣チームの第一陣を現地に派遣いたしました。

 このように初動において迅速な行動ができましたのは、放医研におきまして、一昨年、海外の施設における放射線に関する災害対応のため、緊急被曝医療支援チーム、REMATというふうに訳しておりますけれども、これを設立しました。そして、諸般の準備をしてきたことが大きく貢献したものと考えております。残念なことに、最初の対応が海外ではなく国内になってしまいましたが、このようにあらかじめ準備していたことによって、震災発生の翌朝に現地に第一陣を派遣することができました。

 派遣チームは、現地における緊急被曝医療や汚染検査の支援等を行うとともに、現地のオフサイトセンターにおいて、専門的な立場から関係者への指導助言等を行っております。

 また、放医研は、発災の当初から、一般国民への放射線に関する情報提供にも注力しております。三月十四日には、放医研のホームページにおいて、放射線に関する被曝医療に関する基本的な知識、あるいは沃素剤の服用に関する情報提供と注意喚起を行いました。

 また、一般の方々への放射線分野に関する情報提供、特に、放射線を正しく理解し、今回の事故の健康影響を正しく判断するための材料の提供にも力を入れており、三月十四日から一般の方々の電話相談を開始しております。七月末までに延べ一万二千件を超える相談を受けております。こうした一般の国民の方々の不安に対しても適切にお答えしていくことは、放医研としての責務であるというふうに考えております。

 さて、本日は、放射線被曝による影響について意見を述べるようにとのことですので、以下、放医研が長年行ってまいりました放射線と放射性物質の人体に与える影響について、これまでの研究の成果を踏まえて、この問題について私の考えを述べさせていただきたいと思います。

 まず、放射線被曝による生物への影響は、大きく、確定的影響と確率的影響に分類されます。少しわかりにくい言葉ですけれども、できるだけわかりやすく説明をさせていただきたいと思います。

 確定的影響というのは、あるレベルよりも高い線量で見られる影響ですので、例えば、放射線が当たったときに毛が抜ける、脱毛といったものがこれに当たります。放射線を一度にまたは比較的短期間に全身に浴びますと、受けた線量に応じて吐き気、嘔吐、皮膚のやけど、脱毛といった急性症状が起こります。これらはいずれも確定的影響でありまして、これらの症状は受けた線量が大きいほど症状が早く、強く出るという特徴があります。

 また、この症状が出るかどうかに、最低限の線量、これを閾値と申しますが、この閾線量があり、そのレベル以下の線量では影響が出ません。一般に、千ミリシーベルト以下の放射線量ではこれらの急性の身体症状は見られないというふうに考えられています。

 すなわち、確定的影響というのは、細胞が損傷を受けて機能障害を来すことによって生じるもので、閾値があるわけです。これに対しまして、たった一個の細胞の変化によっても起こり得る可能性のある影響を、確率的影響というふうに呼んでおります。これについては、後で説明をさせていただきます。

 次に、組織が回復するという現象と閾値について、ポンチ絵を使って、お手元の資料で十ページ目になりますが、少し説明をさせていただきます。

 もし、わずかな線量の放射線によってごくわずかな数の細胞機能が失われたとしますと、この場合には、残った細胞が失われた細胞の機能を補うということが起こりますので、回復してまいります。線量がそれよりも少し高くなって、失われる細胞の数がふえたとしましても、まだ回復が可能であります。ところが、さらに線量が高くなると、残された細胞だけでは機能が十分に回復できずに、その組織が担っている役割に応じて、機能が失われたり、形の異常が起こってくるわけです。

 そういった意味で、ある程度までの線量では影響が見られず、その線量を超えると障害があらわれる線量、これを閾線量というふうに呼んでおります。

 これに対しまして、放射線を受けて十年程度してからがんが増加することが知られております。がんの発症は、放射線のみによって起こる現象ではなくて、ふだんの生活の中でもある一定の割合で起こってくるものが、放射線によってその頻度が高くなるということで、確率的影響というふうに呼ばれております。

 原爆被爆者の方の健康調査などの結果から、放射線被曝によって、将来、その方ががんによって死亡される確率が、千ミリシーベルトで数%増加すると推定されています。このときに、では、それよりも低い線量ではどうなのかということが問題になるわけでありますけれども、一般に、百ミリシーベルト以上の線量では、線量に比例してがんのリスクが増加するというふうに考えられています。ところが、百ミリシーベルト以下の低い線量では、この関係は明らかではありません。

 そこで、閾値なし直線モデルという考え方が提唱されました。これは、放射線防護の観点から出されたものでありまして、低い線量における放射線影響のリスクについては、直線的な仮説を採用しています。これが閾値なし直線モデルというもので、疫学的な観察で認められています影響の下限を、それよりも低い放射線レベルまで直線的に延長して、リスクを推定するものです。

 ところが、実際に私たちの生活を考えてみますと、もともと、日本人の三分の一はがんによって死亡するというふうに考えられています。がんによって死亡するリスクが三〇%という非常に高い中で、ごくわずかながんリスクの増加を見つけようとするので、これには限界があるわけであります。さらに厄介なことに、それぞれのがんが、放射線で起こったのか、それ以外の原因によるのかを区別することはできません。これは、発がんという複雑な生物現象と関係しており、特に、低い線量の場合には、確たる影響を見出すことが極めて困難であります。

 現在の放射線影響に関する国民の方々の漠然とした不安は、この直線モデルの立場に立って、どんなに低い放射線の被曝を受けてもがんなどの生物影響のリスクがあるという立場の情報と、低線量領域での一定水準での生体防御機能を認める立場からの情報が入り乱れて社会に発信されていることから来ているというふうに考えております。

 それでは、この低い線量領域における生物影響の有無とそのメカニズムをどうすればいいのかということが大事な問題ですが、残念ながら、先ほども言いましたように、このメカニズムはまだ解明されていないということで、私ども放医研が継続的に取り組むべき難しい課題の一つだと認識しています。

 実際に、チェルノブイリ事故の際に、非常に低い線量まで考えて予測された膨大ながん死亡率というのがマスコミ等に出ました。ところが、現実にはこれが観察されていないということは、直線モデルが必ずしも実際の健康影響を反映するものではないということを示す状況証拠の一つでもあるかなとも考えられます。

 現在、福島県におきましては、県民の健康調査の一環として、住民の方々の被曝線量評価のための作業が行われています。放医研も協力させていただいておりますが、放射線の、生物、つまり私たち人間への影響を考えるに当たって、まず被曝線量がどの程度であるのか、また、どのような時間経過でこの線量が与えられたのかについて、十分に調査されなければならないと考えております。

 次に、非常に社会的な関心事になっております内部被曝について少し説明をさせていただきます。

 この問題についてのさまざまな情報を見ますと、しばしば誤解やそのリスクが誇張されているように見受けられます。内部被曝では、線源が体の中にあるということ、あるいは長期間にわたる被曝であるということが強調されております。これらはいずれも事実でありますが、実際のところは、内部被曝だから特別に危険だということではなく、影響はその与えられている線量によるということを御理解いただきたいと思います。

 内部被曝の線量を評価するにはどのようにするかといいますと、一つは、体の中に入った放射能そのものが、物理的半減期といいますけれども、この物理学的半減期に従って減少してまいります。放射能そのものの減衰と、体の中に入った放射性物質が代謝などによって体内から体外に排出されていきます。残った体内蓄積量の減少、これを生物学的半減期といっていますが、この二つの減衰を考慮して、大人の場合ですと五十年間、子供の場合ですと七十歳に達するまでのすべての期間にわたる被曝線量の影響、当然、放射線は減衰してまいりますので、広範囲になればどんどんその影響は低くなりますけれども、これらをすべて織り込んだ上での集積線量として、預託実効線量、難しい名前を使いますけれども、この線量が与えられています。

 このように、正しく行われた線量評価に従いますと、影響が出るかどうかという判断は、外部被曝による線量評価と同じ基準で扱うことができます。

 実際に、今まで放医研において実施しましたホール・ボディー・カウンターによる福島県民の方々の内部被曝評価では、これまでのところ、治療が必要であったり、健康影響が心配されるという方は見つかっていないということであります。

 先ほどお話をしましたように、外部被曝と内部被曝というのは、もともと、同じ基準で評価できるように測定されたシーベルトという単位に基づいています。このシーベルトは、よく誤解をされるのですが、実際に物理的に測定している放射線量ではなくて、放射線の影響を加味した線量であります。いろいろな種類の放射線がありますので、そのいろいろな種類の放射線の影響を比較するために考え出された指標だというふうにお考えください。それですので、体の外からの放射線被曝であっても、体の中に入ってしまった放射性物質からの影響、これらを両方足し合わせることによって健康への影響を評価できるということになります。

 ただ、この場合に、一つだけ注意が必要です。それは、放射性物質の種類によっては、体のある部分だけに極めて強く作用することがあります。例えば放射性沃素による甲状腺への被曝などでありまして、これについては、その集積する影響を最も受けやすい臓器について別の判断というのが求められます。

 さて、その次にもう一つ、今回の福島の状況は、また別の問題を抱えています。これは、極めて長期間にわたる被曝による影響はどうなのかという単純な疑問であります。

 御存じのように、人を対象としました疫学的な研究というのは、多くが広島、長崎の原爆の場合のように、瞬時に放射線を受けた場合に基づいています。これと、比較的長い期間にわたる放射線による影響というのをどのように比べるかというのが今一つの大きな課題になっております。

 その例としては、例えば、比較的自然放射線が高い地域に住んでおられる方々が何十年にもわたって受け続けた、こういう住民の方々の発がんリスクを比較することができます。

 それが、お手元の資料の十六ページに比較が載せられていますけれども、原爆の場合には、百ミリシーベルトを超える線量では有意な発がんリスクの増加が見られます。ところが、ここに示しますインドにある自然放射線の高いケララという地域の住民につきましては、じわじわじわじわと放射線を受けておりますので、合計で五百ミリシーベルトという高い線量を超えても発がんリスクの増加が見られないというふうに報告されています。

 これらのデータからは、合計の線量が同じであれば、一回に受けるよりも、長期間にわたって受ける場合の方が影響が少ないということが考えられます。

 このような結果は、低い線量の放射線に対する生体が持っている本来の防御機能というのを考えると説明がつきます。

 御存じのように、私たち人類あるいは地球上の生物は、この地球に生物が誕生してから数十億年にわたって常に放射線を浴び続けてきました。その進化の結果として現在の生物が存在しますので、放射線に対してはある程度の抵抗性を持って存在しているわけです。この防御能力というのをどのようにはかるかは現在のところ非常に難しいわけでありますけれども、もしごくわずかな放射線を長期にわたって受けた場合に、この防御能力を超えなければ影響がなく、超えたとしてもその程度が軽くて済むのではないかということが考えられます。

 実際にこの防護能力がどれぐらいのレベルなのかということについては、現在まだ解答はありませんが、私たちが少なくとも毎日受けている自然放射線よりも高いレベルのどこかにあるのではないかなということが推測されます。

 このときに問題となりますのが、常に受けている線量、線量率といいますけれども、福島で今起こっている高い線量率と呼ばれるものは一体どれぐらいなのかというのを私たちが日常で経験するものと比べたのが、十八ページにある図であります。

 ここに示しますように、東京都は現在、非常に低い線量になっております。これは福島原発の事故が起こる前の線量、〇・〇三マイクロシーベルト・パー・時、一時間当たりこれぐらいの線量があるというふうに観測されますけれども、まず、日本国内でも地域によって大きな差があります。岐阜県では〇・〇八、これより高いところも、関西地区等、いろいろなところに存在します。その理由としましては、実は、岩石等から出る放射線から非常に大きな影響を受けているでしょう。

 例えば、温泉のある地域では、ラジウムから出るラドンによってしばしば高い線量率、これは、ここに書かれている三朝温泉等よりもはるかに高い線量率も観測されているようであります。

 一方、海外に目を向けますと、これよりもさらに高い、日本は比較的自然放射線の低い地域でありますので、ヨーロッパ等の町においては、これよりも高い線量率が見られることがあります。

 それから、スウェーデンのデータをそこに示しておきましたけれども、住んでいる環境によっても大きく違います。特に石づくりの建築物の中では、岩石から出てくる放射線によって自然放射線が高くなるという傾向もあります。

 さらに、高い山に登ってみますと、宇宙からの放射線の影響を強く受けまして、線量率が高くなります。富士山では、東京都の地表から比べますと約五倍程度の線量率になりますし、高い高度を飛んでいます航空機や宇宙ステーションは、これよりもはるかに高い線量率となっています。

 このように、私たちは、大きな幅を持った線量率の中で生活しているということをよく理解しておくことも重要ではないかと考えます。

 最後に、まとめになりますけれども、放医研は、今回の原子力災害への対応として、以下のような課題について注力してまいりたいというふうに考えております。

 まず第一に、放射線被曝の影響に関する健康調査であります。

 住民の方々の健康調査につきましては、福島県の方でこれから三十年にわたってやっていかれるということですので、積極的にそちらの活動に協力してまいりたいと思っていますが、それに加えまして、原発の作業者や、緊急対応を行っていただいた自衛隊、消防等の方々、こういった方々の健康調査を長期間にわたって追跡する必要があると考えております。これらの方々は、比較的高い線量を受けられた方ですので、特にそれが重要となります。

 問題点は、省庁の壁をいかにして乗り越えて、これらの方々をまとめて追跡調査するかというふうに考えております。

 二番目が、低線量の放射線の影響研究であります。

 特に小児への影響、それから、先ほど言いました長期間の被曝の影響、こういう基礎的な研究成果を蓄積して、その成果を生かしてまいりたいと思います。私ども放医研では、子供に対する影響を、放射線影響の年齢依存性研究の一環として長年にわたって取り組んでまいりました。

 これまでの動物実験を用いた研究では、高い線量の場合には、発がん率等を指標とした感受性が小児期で高いことが示されています。大体二倍から三倍の感受性があることが証明されています。ところが、低い線量におきましては、小児期の被曝でも、被曝のない群との間に有意な差が見られないことから、低い線量を受けたときの影響というのは明らかではありません。

 これと、長期間にわたって低い線量を受け続けたときの影響、こういったことは今後明らかにしなければならない極めて重要な課題であるというふうに考えています。

 三番目が、放射線に関する教育と研修の充実であります。

 今回の事故対応に当たる中で痛切に感じられたことは、医療関係者を含めまして、放射線に関する基礎的な理解がいかに不足していたかという問題です。それからもう一つは、放射線に関する正確な情報をタイムリーに伝達することの重要性も挙げられます。

 私どもは、大学医学部、医療従事者あるいは緊急被曝医療の関係者、そして学校教育の現場等における放射線に関する基本的な素養を身につける活動について、積極的に対応してまいりたいと思います。

 発災直後の緊急被曝医療対応におきまして、放射線に関する知識が少ない医療関係者が現場から離れてしまった、あるいは、サーベイメーターによる証明がなければ医療を受けられない、そういった事態も現地では起こったやに聞いております。これを考えますと、これまでの医学教育において、いかに私どもが放射線関係の教育を怠ってきたのかということを痛切に感じさせられます。

 実は、三月十一日の発災直前に、医学教育の内容に放射線防護の項目を多く盛り込んだ改訂をお願いしておりました。今後、放射線に関する素養を十分に持った医師が全国的に配置されることこそが、緊急被曝医療の基盤を形成することに貢献するというふうに考えています。さらには、医師には、放射線影響への不安を訴える患者様への適切な対応が求められているわけでありますので、放射線をわかりやすく国民に理解させるコミュニケーション能力についても従来以上に求められてくるのではないかと考えます。

 放医研は、こういったことのための必要な環境づくりにも努力を惜しまない覚悟であります。

 中学校指導要領の理科に放射線に関する事項が組み込まれたところではありますけれども、放医研も副読本の監修などでの面で協力をしておりますが、この機を活用して、早い段階からの正確な知識を提供する仕組みを整える必要があるというふうに考えております。

 さらに、四番目が、リスクコミュニケーションであります。

 社会が状況を正しく認識するためには、正確な情報が伝達され、リスクが正しく理解されなければなりません。そうすることによって初めて、放射線に対する社会の不安を和らげることができると考えます。

 放医研は、今後、放射線分野のリスクコミュニケーションに関する活動も一層強化してまいりたいと考えております。

 これまで放射線になじみのなかった人々は、ともすると過度の不安を抱きがちであり、このような人々の懸念を払拭するようなわかりやすい情報提供が必要で、こうした努力が初等教育の段階から行われるよう、切に希望する次第です。

 放医研は、放射線の生物影響という視点から基礎的な研究を進める中で、その成果を社会にわかりやすい形で発信していくとともに、重粒子線がん治療等の研究推進を通じて得られた知見を最大限に活用しつつ、また、研究開発病院という資源を最大限に活用して、緊急被曝医療体制の中心として、今回の原子力災害に今後も適切に対応してまいる所存であります。

 最後になりましたが、本日にこのような意見表明の機会をいただきまして、まことにありがとうございました。これで私の意見陳述を終わりにしたいと思います。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、鈴木参考人にお願いいたします。

鈴木参考人 日本原子力研究開発機構の鈴木でございます。本日は、お招きいただきましてまことにありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。

 最初に、福島第一原子力発電所の事故によりまして、国民の多くの方々、特に、そのために避難を余儀なくされて大変な御心労、御迷惑をおかけしていることにつきまして、私自身、長年原子力に携わっておりました者の一人として、心からおわび申し上げますとともに、お見舞いを申し上げます。

 本日は、環境修復に向けた除染技術に関し御説明を申し上げるというふうに御要請いただいていると理解しておりますが、原子炉事故による環境修復に係る除染の実績といいますかそういうことにつきましては、先生方は御承知のように、旧ソ連のチェルノブイリ事故のときの経験がございます。本日は、その状況につきまして、資料に基づきまして概要を御説明申し上げますとともに、日本原子力研究開発機構として現在どのような取り組みを考えているのか、進めているのかについて御紹介させていただければ大変ありがたいと思っております。お手元の資料に即して御説明申し上げたいと思います。

 最初に三ページ目をごらんいただければと思います。

 最初に申し上げることは、チェルノブイリ事故と福島第一事故との環境影響のもとになる放射能が、実際どのくらい環境に放出をされたのかという点でございます。三ページ目の表は、上の方にチェルノブイリ事故の放出量の実績、きょう御説明申し上げますチェルノブイリ事故に係るいろいろなデータは、IAEA、国際原子力機関が二〇〇六年に発表しております報告書に基づいております。

 この資料によりますと、ごらんいただきますように、大気に放出された放射性物質の量でありますが、大気中に放出されるわけですので、希ガスと申しまして、もともとガス状で出ていくもの、それから、揮発性ガスと申しまして、比較的温度が高くなると揮発しやすくて、結果的にガスで出ていくもの、それから、その次に揮発しやすい、ここでは準揮発性元素と書いておりますが、ストロンチウムのようなもの、それから、ほとんどは揮発はしないんですが、粒子状で、いわばちりのような形で放出されるもの、これがプルトニウムのようなものでありますが、こういうものについて、報告書で、そこに書いてあるような放出量だったというふうに推定をしております。

 先生方御存じのように、大気に放出される放射性物質として重要なものは、沃素131、これは半減期が八日でございます。それからセシウム137、これは半減期が三十年でございます。それからストロンチウム90、これが半減期が二十九年、約三十年、セシウムと同じであります。それとプルトニウム、プルトニウムにはいろいろな核種がございますので半減期も違いますが、最も半減期が長くて気をつけないといけないものの一つが、プルトニウム239というものでございます。これは半減期が二万年以上でございます。

 こういったものがチェルノブイリの事故においては、そこに赤い数字で書いてございますような形で放出されました。

 これに対しまして、その下の表は、チェルノブイリ事故と福島第一原子力発電所事故の放出量の比較でございますが、幸いにして今回の福島第一事故においては、ストロンチウム90あるいはプルトニウムといったものにつきましてはほとんど放出されていないというように、観測データによればなっております。

 それで、沃素とセシウムは放出されておりますが、これを比較いたしますと、そこにございますように、沃素131でチェルノブイリの約十分の一、セシウム137の場合には約五分の一から六分の一、七分の一というような程度でございますか、十分の一以上ではあるようですが、十分の一近くというような状況でございます。

 したがって、まず第一に、今回は、沃素131は半減期が八日でございますので、現時点においては、環境中にこれに基づく放射線の影響というのはほとんどないということでございます。しかし、セシウム137は半減期三十年でございますので、今後ともこの影響は続くものと考えざるを得ない、こういうことでございます。

 それ以外のストロンチウムとプルトニウムにつきましては、現在のところ、チェルノブイリにおいてはこれが問題でございますが、あるいはございましたが、福島第一の場合は、そのことは特に環境安全上は今も大きな問題にはなっていないというふうに私どもは理解しております。

 次に四ページ目を見ていただきますと、チェルノブイリ事故においては、プルームと申しまして、大気中に拡散して飛んでいくわけですが、その際、いわば雲のような形で集団で風に乗っていくという現象がございますが、これをプルームと呼んでおりまして、事故直後は、お手元のその資料にございますように、北西方向に、スカンジナビアの方に向けて拡散したようでございます。それで、その後西側に風向きが変わり、さらにその後東側に変わった、その後は南側に移っていったと、こういう経過でございました。

 このために、お手元の資料の右側にございますように、ロシア、ベラルーシ、ウクライナという旧ソ連三国の次にその汚染が拡大していったのが、このスウェーデンとフィンランドといったところであったわけでございます。

 私自身、このときちょうど出張しておりましたが、出張先で、スウェーデンからの一報で、何か大きな原子力の事故があったらしいというような情報が飛び込んでまいりました。スウェーデンだったものですから、どうしてスウェーデンで事故が起きたのかなというような話から始まったことを記憶しております。

 次に五ページに移っていただきたいと思います。

 このように、チェルノブイリの事故においては国境を越えて放射性物質が拡散したわけでございますが、汚染の拡大した範囲を面積であらわしますと、チェルノブイリの事故の場合は、このお手元の資料の数字がやや細かい数字で並んでおりますが、これは、実は三十七キロベクレルという三十七という数字は、キュリーに直しますと一に相当する数字なためにこういうふうになっております。

 そういうようなことはちょっとお許しいただくとして、福島第一の方の下の絵を見ていただきますと、これは三百キロベクレルから一万四千キロベクレルまで四つに刻んで書いてあります。これを全部足していただきますと約千四百平方キロメートルぐらいになるんでございましょうか、約千四百ぐらいでございます。

 これに対しましてチェルノブイリの方は、これに相当するのが、百八十五から千四百八十以上というところを足していただきますと、これが約三万平方キロメートルぐらいになるんでございましょうか。

 したがいまして、福島第一による汚染の面積とチェルノブイリの面積を比較いたしますと、福島第一の場合は約二十分の一ぐらいになるということでございます。

 次に七ページに移らせていただきます。これから、チェルノブイリによる環境汚染の実態について、報告書に基づいて御説明申し上げたいと思います。

 七ページは、居住区域でのセシウム137がどのような状況であったのか、あるいは現在でもあるのかということでございます。一九八六年と二〇〇〇年を比較しております。

 土壌中に降ったセシウム137は、除染を特にしなければそのものがそのまま存在しているというのが普通でございますので、そこに書いてございますように、左側が、降砂のような形で降った場合、右側は、降雨に乗って降った場合でございます。

 降砂のようにドライな形で降った場合には、木や枝あるいは葉っぱ、そういう植物につくことがかなり著しいということをここで示しております。これは、一九八六年事故当時が空色、小豆色が二〇〇〇年の数字でございます。しかし、二〇〇〇年になるとかなり減っております。

 降雨の場合は、これは土壌に沈着するのが一番やはり多いということを示しております。

 次に、八ページは、これは牛乳中のセシウム137の濃度でございまして、フランスで測定したものが報告書に載っております。

 フランスですから、大分離れていますので、汚染の心配はそれほどないというふうに当初思われていた節もございました。しかしながら、やはり当初から牛乳中のセシウムが観測されておりました。徐々に減っていったわけでございますが、そこにございますように、八六年の春から夏に収穫した汚染した干し草を牛に与えたために、再び、翌年になってから牛乳中のセシウムの濃度がふえたということが事実としてございました。

 次に九ページに移らせていただきますと、これは、土壌の深さ方向に対して放射性物質がどのように分布しているかというものの測定の結果でございます。

 左側がこれはセシウムで、砂状の土壌の場合、右側が、やや変質した砂状の土壌の場合ということをあらわしておりまして、いずれの土壌であっても、セシウムにつきましては、左側も右側も見ていただくとおわかりだと思いますが、比較的表面近くにとまっているということを示しております。これは、黄色が一九八七年、小豆色が二〇〇〇年でございます。

 したがって、セシウムは表面にそのままとどまっておりますが、やはり、時間とともに深い方向に少しは移動するということを示しております。一方、ストロンチウムのようなものは、さらに移動が著しいということをこれは示しております。

 したがって、セシウムについては、できるだけ早く表面を除染することによる効果が期待されるということを示しております。

 次に十ページですが、これは、作物中のセシウムあるいはストロンチウムの濃度がどうであるかを示しておりまして、これは、肥料に含まれておりますようなカリウム、これがそこにございますと、カリウムとセシウムというのは同じような化学的な性質がございますので、カリウムがあればセシウムがなかなかつきにくいということを示しております。

 したがいまして、カリウムを添加すればセシウムはその分減るだろうということを暗示しております。それで、いずれの土壌においても同じような傾向が見られるということを示しております。

 次に十一ページでございます。これは魚の中のセシウム137の濃度の例でありまして、左側がキエフ、右側がドイツの方で観測されたデータでございます。上の方にコイのようなもの、下はカマスに似た魚というふうなことで、キエフ、ウクライナですね、ウクライナとドイツのデータが載っております。

 これをごらんいただきますように、例えばドイツのデータを見ていただきますと、おわかりにくいかもしれませんが、下の方にございます線が、これは水中の放射能の濃度、セシウム137の濃度、一方、上の方の線は、これは魚中の濃度でありますから、水中の濃度が減っても魚中の濃度はそれほど水中に比べると減りにくいということを示しておりまして、これは、魚が例えばコケなどを食べてその体内に取り込んでいるために、恐らくそんなに減らないんだろうというふうに理解されております。

 次に、では実際、どのような除去の技術がチェルノブイリのときに用いられたのか、その効果はどの程度だったのかについて御説明申し上げます。十三ページを見ていただければと思います。

 これは、比較的簡便な除染の方法としてどういうことが行われたかということを示しておりまして、家屋、公共の建物等々の通常の土壌、それから果樹園、菜園、その他屋根なんかについても整理されております。

 これはごらんいただきますように、例えば土壌については、表層土を表面から五センチから十センチ程度取り除くと有効であったというようなことが書いてございます。

 それから、掘削した、取り除いた汚染している土壌は、その近くに穴を掘って浅地中に保管しておくというようなことが行われたということで、そして、その穴を掘るために出てきた土壌は、これは逆に汚染地域の覆土に用いるというふうなことをしたという例が載っております。これは、いわゆる放射性廃棄物の埋設というものとは違った形で実施するということだったようでございます。

 等々、以下同じようなことが書いてございますが、次に十四ページに移ります。

 十四ページは、これは都市や居住地における除染の方法で、これもそんなに高度な技術を使っているわけではございません。壁であるとか屋根、庭、牧草地、あるいは道路というの等に分けてございます。

 そこに書いてございます数字は、これは、そのような除染をするとどの程度放射線のレベルが下がるかを示しているわけでございまして、十から百と書いてあるのは、十分の一から百分の一に減ったという意味でございます。

 実際、壁や屋根は砂を吹きつけたり高圧の水をかけたりすることによって除染ができる、土については掘り起こしをする、木については剪定等をするというようなことで、通常の手法を用いることによってある程度の除染は確かに可能だったということでございます。

 次に十五ページに移ります。十五ページは、農家においてどういうことが行われたかということでございます。

 これについても、実際、表面の土壌を改質するとかいうことが、いろいろな肥料を試みで使っていたようでございます。いずれも除染の効果は、数分の一から、うまくいって十分の一程度になった例があるということでございます。

 次に十六ページは、これは森林の場合であります。

 森林についても、通常の、我々でも考えつくような方法に基づいていろいろ対策が打たれ、その場合の効果と逆にコストが、コストの面のマイナス面がどうだったということが報告書で整理されております。

 次に、十七ページ以降、日本原子力研究開発機構において現在どんなことをやっているかについて御説明申し上げたいと思います。

 十八ページには、機構での体制が、今どういう体制でやっているかについて記してございます。

 五月六日に福島支援本部を設置いたしました。六月三十日には福島事務所を開設いたしました。現在、この福島支援本部に三つの部と福島事務所を持って活動しております。何とか地元の皆様方がもとの状態に戻れるように、我々でできることは総力を挙げて取り組もうという姿勢で臨んでおります。

 それで、試みにどんなことをやったかについて、十九ページ以降にちょっと例を書かせていただきました。

 これは、福島大学の附属の中学校と幼稚園、そこにちょっと航空写真のような絵がございますが、左側に幼稚園、右側に中学校のグラウンドがございます。ここに私も参りまして、その測定をいたしました。

 測定等をした結果、どういう方法がいいかを議論いたしまして、結果的には、文科省により示された方法、対策のうち、まとめて地下に集中的に置く方法ということを採用いたしました。それを五月の末から六月の初めにかけて行いまして、表層の土を取り除き、三回に分けてその作業を行い、山砂を覆土したというようなことです。

 二十ページは、そのときどういうふうに線量分布をはかったかで、十メートル間隔で非常に細かく、地面から一センチ、五十センチ、一メートルというようなところで測定いたしまして、各地点の線量が除染前と除染後でどうなったかを測定いたしました。

 その結果が二十一ページでございます。結果的に、約十分の一から二十分の一に減らすことができました。

 したがって、こういう非常に原始的な方法でございますが、やはり除染をすることが有効だということを確認いたしました。

 それから、二十二ページはプールの除染でございます。

 プールについても、お子様方がプールを使うことについて大変心配される御父兄の方が多くて、これについても私どもも何とかできないかということで、これもそんなに難しい方法ではございませんが、水中の濃度をはかり、その濃度が飲料水中の暫定規制値を下回るようなところまで除染いたしまして、排水し、さらにプールの壁等を洗浄した結果、少なくとも、空間線量率といいますか、その地点での放射線のレベルは非常に低いレベルに下げることができた。

 そこに書いてございますのは、伊達市の富成小学校、福島大学の附属幼稚園、附属中学校について、そのような時期に行いました。

 次に二十三ページでございます。

 二十三ページは、こういうことに基づいて今現在どんなことをやっているかについてまとめたものでございまして、モニタリングやマッピングについては、今、ほかの機関と共同で航空機サーベイもいたしております。それから、いろいろな長期予測のための調査を始めております。

 それから、実際の技術の評価としては、今後やはり、汚染したものを除去した結果出てまいります物質については、これはできるだけ減量することが大事だということで、焼却等による処理が有効かどうかを今計画しております。

 それで、次に二十五ページは、これは、実際除染をするといいましても、地域の各生活をされているところについてすべてくまなく完全に除染するということは理論的に難しいわけでございまして、したがって、どのような状況であったときにどのような除染をすれば全体の空間線量率が下げられるかということについてコンピューターシミュレーションをやった例でございます。

 これは非常に簡単なモデルでございまして、評価位置というのが二十五ページの真ん中あたりにちょっと書いてございますが、仮に区画A、B、C、Dと四つに分けたときに、当然のことながら、BとDを除染すると有効であり、それがどの程度定量的に効果があるかということを二十六ページで実際試算してみた。

 現在、このような方法に基づきまして、いろいろな地形であるとかそこの周囲の状況をコンピューター上にシミュレーションすることによって、どのような程度の除染をどの区域について集中的にやることが有効かが計算機でわかるように今努めているところでございます。

 最後に、全体のまとめが二十七、二十八ページにございます。

 私といたしましては、環境修復は、地元の皆様方にできるだけ早くもとの状態に戻っていただくためにも、これはぜひ早期にやらなきゃいけない、そのために我々としてできることは何でもしなきゃいけないと考えておりますが、やはり、たまたまセシウム137が中心でございますので、これについては、半減期等から考えて、比較的、今後どういう状況になるかが見通しが立てやすい物質でございます。したがって、除染効果としてどういうことが考えられるかも割と考えやすい。

 大事なことは、繰り返しになりますが、地表近くにとどまっている間にできるだけ早くこれを除去すること、しかし、これは完全な除去の方法というのもなかなかそうございませんので、段階的にやっていくということ、そういうことを科学的な合理性、妥当性を持ってやっていくということだと思っております。

 しかし、より広域で考えた場合には、環境動態、つまり、例えば河川に入って、河川の水に含まれるセシウムがコケや何かにたまっていくというようなことも含めた環境動態を把握し、調査し、モデル化し、そういうことを通じて長期的な影響についても、それが最小化できるようなことを考えるべきだ。

 これについては、たまたま、アメリカのようなところは昔から国立の原子力研究機関がございますが、そういうところでは、残念ながら、昔、大変深刻な環境問題を引き起こしております。逆に言いますと、そういうところでいろいろな知見が得られておりまして、専門家も多くいるようでございます。

 今現在、パシフィック・ノースウエストの大西先生という方の御指導を得て、大西先生はチェルノブイリの方も中心的にいろいろ調査研究をされた方で、世界的に著名な方ですが、そういう方の御指導を得ながら、機構としてこのことについて長期的に取り組んでいきたいと思っております。

 次にコミュニケーションでございますが、これは、先ほど米倉先生のお話にもございました。私といたしましては、このようなことは、専門家が一方的にそういうのを決めてしまうということではなかなか事はうまく進まないと思っておりまして、やはり、国民の皆様、県民の皆様方、地域の皆様方が納得してくださる、安心してくださるレベルで考えていかなきゃいけない。その点にはどうしても対話型のコミュニケーションが大事であり、特に、専門家と一般の方々が公共の場で自由な話し合いを通じて、これを公共圏と言うようですが、通じてこの活動を進めていく必要がある、このように考えております。

 次に、科学的な情報発信活動の充実ということで、これも米倉先生のお話にございました。情報は正しく信頼されるものでなきゃいけないということでございまして、私は、チェルノブイリの報告書はかなりしっかりしたものが確かに出ておりますが、今度の福島第一につきましては、何年か後には、さすがに日本の報告書は立派だ、信頼できるというものにしていかなきゃいけないと思っております。

 最後に、知識、知見、教訓の国際的共有化ということでございます。

 先生方は御存じかどうかわかりませんが、最近、アメリカの原子力規制委員会が、福島第一の事故を踏まえた調査報告書を出しております。その中の冒頭に、この報告書は日本国民にささげる、特に、福島の発電所で必死になって献身的に取り組んでいる人たちにささげるというふうに書いてございます。

 日本に対する関心が大変高いのは当然でございますが、一方において、日本だからこそ、こういう事態であっても何とかしてくれるんじゃないかという日本に対する大変熱い期待があるというふうに私は感じております。

 これにこたえるのが我々の使命だというふうに感じておりまして、そういう意味で、我々機構は、日本で唯一の総合的な原子力研究開発機関というふうに位置づけていただいておりますので、私どもができることは何でもやらなきゃいけないと思っております。

 本日はどうもありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づきまして、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 この際、委員各位に申し上げます。

 発言を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、委員長の指名を受けた後、御発言ください。発言が終わりましたら、ネームプレートは戻していただくようにお願いいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。また、発言の際には、所属会派及び氏名を述べた上、お答えいただく参考人を御指名いただきますようお願いいたします。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は三分以内といたしたく存じます。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 それでは、発言を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

本村委員 おはようございます。民主党の本村賢太郎でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、放医研の米倉理事長にお伺いいたします。

 東日本大震災の発災後、福島県では、十八歳以下の皆さんの健康被害調査を生涯にわたって行っていくということも決定しておりますし、先生のお話のように、チェルノブイリの事故から見ても、二、三年後には白血病、数年後には甲状腺がんの発生率が増加するというようなお話もございました。

 そうした中で、やはり子供たちにできる限り線量を抑える工夫というのが大変必要だというふうに考えておりまして、私たち文部科学省でかかわる話でいうと、例えば学校給食なんかにおきまして、保護者の皆さんの、いわゆる食品の線量が大変気になるというお話も伺っております。

 例えば、食品の暫定基準は、放射性セシウムならば年間被曝量が五ミリシーベルト以下が前提でありまして、一部を除き大人と子供が同じということであるんですが、やはり子供と大人は違う基準が私は必要だと思っているんです。

 先生のお考えで、まずその点を一点お聞きしたいのと、それから、今回、重大な健康被害としては、やはり心のケアが大きな問題だと思っておりますが、その点についてお伺いしたいと思います。

 次に、原研の鈴木理事長にお伺いしたい点が一点ございまして、新学習指導要領で、来年四月から中学校の理科の授業で、「放射線の性質と利用」という形で三十年ぶりに放射線授業が再開されるわけでありまして、大いにこれは評価をしていきたいと思っております。

 どうしても皆さん、放射能イコール怖い、恐怖というようなイメージがあるわけでありますが、例えば、病気の発見やがんの治療や農作物の品種改良など、プラスの視点もあるわけでありまして、私自身は、この放射能授業の復活を大変評価しております。

 また、文科省としても、放射線の小中高校生向けの副読本を策定するということも伺っておるわけでありまして、これから広く、子供たち初め、大人の皆さんも含めて、放射能に関する知識、知見を高めていく必要があると思っていますが、先生から見られて、この放射能授業の復活に関する御意見をお聞きしたいと思います。お願いいたします。

米倉参考人 それでは、御質問にお答えしたいと思います。

 まず一番目が、小児の基準についてどのようにすべきかという御質問だったというふうに理解しております。

 先ほど私のお話の中でも申しましたように、小児が成人、大人に比べまして放射線感受性が高いということは、高線量では確かに認められています。ただ、低い線量のところではその証拠がないというところですけれども、基本的な考え方からいいますと、防護の視点からは、やはり小児においてもそういうことを想定した上で対策をとるというのが安全サイドに立った方法だというふうに考えます。

 そのときに、問題は、では、小児と大人で違う基準をつくったときに、それによって起こり得る別の障害、いわゆる、それによって何か問題が生じないかということを常に念頭に置く必要があるだろう。例えば、緊急時におきまして小児、子供を切り離すということは、場合によっては非常に大きな障害を起こすこともあり得るわけです。

 そういうことから考えますと、学校という特殊な場においては、やはり違った環境で、ここには子供たちしかいないわけでありますので、厳しい基準というのを設定することはそれなりに妥当な考え方であろう。ただ、一たん家に帰りますと、子供たちだけ別の物を食べさせるということ自体が既にかなり大きなストレスを与えることになります。

 そういったことを踏まえて、全体的な考えとしてどういう施策をとるかというのを選ぶべきであろうというふうに考えます。

 ただ、原則論としまして、小児の場合の安全性ということを考えると、できるだけ下げるという原則をやはり小児についてはより注意して考えるというのがいいんではないかなというふうに思っています。

 それから、二番目の心のケア、これは私の中で全くお話をしませんでしたが、先日の青少年特別委員会の方で少しお話をさせていただきました。

 チェルノブイリの事故のときに最も大きな問題となったのが心のケアであります。これは、放射線による直接の影響ではなくて、放射線を浴びたということによる間接的な影響が非常に大きいわけでありますけれども、これに対しては、早い段階から積極的に介入をして、住民の皆さん方の不安を取り除くということをやっていく必要があるんだというふうに考えます。全くそのとおりだと思います。

鈴木参考人 先生、どうも御質問ありがとうございました。

 放射線に係る教育が取り入れられるようになったことについての考えはどうかというお尋ねでございました。

 私も、放射線について学校教育の中でより積極的に取り入れられるようになっているということについて大変ありがたいと思っております。

 と申しますのは、放射線といいますと、通常は、俗にアルファ線、ベータ線、ガンマ線という三つの放射線がよく言われるわけですが、中性子も放射線でございますし、それから米倉先生のところの重イオン粒子線、これも放射線でございます。それで、その他、レーザーも分類によっては放射線になるわけでございます。

 さらに、私どもが今、J―PARCと申しまして、東海村の方に新しく設備を建てまして、大強度の陽子線に基づいていろいろな放射線を出して、いろいろな材料の開発であるとか科学的な研究を行っているところでございます。これはまさに国際的にも大変注目されておりまして、多くの海外の科学者が東海村の方に来て、その設備を使って研究してくれております。

 では、今後、もともと天然に放射線が存在するということもございますが、今後の科学技術の発展あるいは医療の発展において、放射線の利用なくしてこれは多分ないんだと思っておりまして、そういう意味でいいますと、放射線に対する基礎的な知識が小さいころから身につくようにしてもらえるということは大変ありがたいことであり、また、日本の科学技術の基礎を高めていく上でも有効だというふうに思っております。

 ありがとうございました。

高野委員 民主党の高野守でございます。

 鈴木理事長の方にお尋ねをさせていただきたいと存じます。

 私は、五月九日に原研機構の方を、大島敦先生等々と視察をさせていただきました。十六日には日本原電、これは民主党の地元議員を連れて、主に、一番重要であった取水口のいわゆるバックアップ電源がだめになってしまっていたところを見させていただきました。また、八月一日、おとといでありますけれども、原口さんと川内博史さん等々と、東海第二原発と、機構の支援状況についてちょっと視察をさせていただきまして、ありがとうございました。

 その中で、大変に連携をとって、我々政治家の責任だと思いますけれども、今、不十分な制度の中で大変努力をしていただいているということは十分理解をしているつもりでございますが、きょうは時間がございませんので、主に二点についてちょっとお尋ねをしたいのであります。

 福島の事故そのものが起きているところはとにかく高濃度でありますし、それともう一つは、下水処理等から出てくる汚泥の、実は線量はどのぐらいになるか、いろいろ不確定でありますけれども、これは恐らく関東地方を中心に、あるいは静岡ぐらいまで、各地域で出ております。

 今、省庁がいろいろと分かれておりますので、非常にやりづらい部分はあるわけでありますが、それぞれが努力をして、法律は整備をされております。しかしながら、実際の作業部隊は、作業に携わる、民間にするのか、公的機関にするのか、あるいは登録制にするのか、RI廃棄物で議論したことが今さらながら吹っ飛んでしまった感じでありますけれども、この問題が非常に重要になってくる。

 その準備をしなくてはいけないと私強く感じておりまして、まず、事故そのもののかなりの高濃度の放射性物質、それから汚泥等、民間のふだんの生活の中から出ているもの、これを分けて、それと地域も分けて、これは準備をしなくちゃいけないというふうに思っております。

 その点についてちょっとお考えをお尋ねしたいのと、高濃度の場合、これは動燃さん、原燃に非常に私は問題があったと思っているんですが、ガラス固化技術、今機構で一生懸命やって何とかなったという話も聞いておりますけれども、設計段階で原燃が二倍にしてしまったんですね。私はあれに反対したんですけれども、実は個人的には。しかし、それをやってしまった。がために、動かなくなっている。

 高濃度の場合に、濃度によると思うんですが、ちょうど八月一日に見に行きましたときに、今、アレバ社製やいろいろなものを投入して処理をやっているんですが、いわゆる我々の血管内がコレステロールで詰まるのと同じように、今、何か相当、三割ぐらい、変なものが、物質がついて、プールで取って配管で流していくんですが、その配管が詰まりつつあるという話を機構さんの方から伺いました。その物質が何であるかが現地で全くわからないということで、ちょうど来週早々にその物質が届くそうでありまして、担当者は、一生懸命解明しますと言っておりました。

 ただ、それはどのぐらいのレベルの濃度のものなのかよくわかりませんけれども、そうすると、コンクリートで固めてドラム缶に詰める処理を東電さんがみんなするのか、あるいは、レベルによってはガラス固化の技術を使うしかないと思うのであります。

 そういう段階を考えますと、その技術の開発と安定した処理の問題というものは相当なスピードで準備しなくてはいけないと思っておりまして、私としては、機構が日本の公的機関としては一番そういう意味では力といろいろな集約能力があると思いますから、この活用の仕方、いろいろな方がいろいろなことを言うのでありますけれども、やはりきちっとした位置づけを我々がしていかなくちゃいけないというふうに思っておりまして、ぜひ忌憚ないその辺の御意見をお聞かせいただきたいと思っております。

 ほかにもいろいろ聞きたいことがあるんですけれども、その点だけちょっと。

 あともう一点。東海第二がいかに危険な状況だったかということは理事長よく御存じだと思うのでありますけれども、きょうは趣旨がそうではなかったのでやめておきますけれども、実は、先生方にわかっていただきたいのは、三月九日に止水工事という、本当に穴があいたままのところをコンクリートでふさいだり鉄板で密封したりしたために、三月九日の夕刻四時過ぎと聞いておりますけれども、その穴をふさぐことは、たまたま偶然、これは保安院の規定にないことだったんですが、それをやったがためにバックアップのディーゼルの二機が保たれて、それで冷温停止に持っていくことができたということがあります。北側は実はオーバーヒートしたんですが、これはピットとかいろいろな穴をふさいでいなかったものですから、取水口がやられてだめになったと。

 要するに、三月九日にたまたま工事をやっていなければ、東海第二は、まさに全電源を失ったという意味では、女川や福島第二よりも深刻な実は事象であった。したがって、この検証はきちっとやっていかなければならないというふうに思っておりまして、その辺についてもお尋ねをさせていただきたいと思います。

鈴木参考人 先生、ありがとうございます。

 機構に対して大変いろいろな御期待をいただいているようでございますが、私ども、力不足でなかなかそれにおこたえできていないということを申しわけなく思っております。

 第一点目の汚泥等の問題でございますが、これにつきましては、やはり、大きな、深刻な問題にできるだけならないうちに対策を打つことが大事だと思っております。

 私どもとしては、汚泥に限りませんが、それなりに汚染が相当進んでいて、これを安定な形にしなきゃいけないものは、やはり、一番現実的な方法というのは、地下の、浅地中でいいんですが、浅いところで結構ですけれども、いわゆる埋設をして、そしてこれをちゃんとモニターしていく。つまり、そこから放射性物質が漏れ出ないことをちゃんと確認していく。そういうことが一番現実的ではないかと思っております。

 ただ、これは、それではそういう施設をどこにつくるかということが一番難しい問題でございますので、私どもとしては、できるだけ地元の、先生おっしゃるように、それぞれの地域地域で考えなきゃいけない問題でございますので、それぞれのところでどこか候補となるようなところがあればぜひ教えていただきたい。そこで、私どもとしては、試験的な、いろいろな検討をさせていただいて、その結果を見ていただいた上で合理的な対策をしていただければというふうに感じております。

 二点目は、先生がおっしゃった配管の詰まり等は、私の理解しているところでは、今の汚染、滞留水といいますか汚染水といいますか、それを洗浄してまたもとに戻すという装置を今稼働している最中だと思いますが、その稼働している配管の中の一部がどうも詰まったようだというふうに聞いております。それは恐らく、処理の過程で持ち込んだ化学的な薬品が多分何か影響があるんだろうというふうに私も聞いております。それについて、今、機構の方で分析をしているというのは聞いております。

 おりますが、それと、より濃度が非常に高いというものは、実は、ちょっと私はもう一つ別の大事な問題があると思っておりまして、それは、これから取り組まなきゃいけない、破損した燃料、溶融した燃料等がいろいろなところに分布している可能性がございます。

 最近も、放射線のレベルが非常に高いところがあるという報道がなされております。これと今私が申し上げていることは恐らく関係があるんだろうと思っておりますが、そういうところは、先生おっしゃるように大変放射線のレベルが高くて、通常の取り扱いは難しいかもしれないと思っておりまして、そういうものについては、私ども研究開発しておりますガラス固化という技術が有効かもしれないと思っております。

 これについては、TMI、アメリカのスリーマイル島の経験も若干ですがございますので、そういう経験を踏まえて機構としてできることをやっていきたい、こう思っております。

 最後に、東海第二についてでございますが、先生おっしゃるように、私も、大変、いわば薄氷を踏む思いだったという気がしております。

 このように、規制とは別に、事業者が自主的により安全な対策を打つということは今後とも大事だと思っておりまして、そういうことについては、私は、機構に参ります前は安全委員会におりましたが、安全委員会の方でもそのことをよく公式の場でお願いしていたところでございまして、今後とも、機構の立場になりましたが、そのことについては忘れないでいかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

 ありがとうございました。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩と申します。

 私は放射性物質については素人でありまして、さはさりながら、環境中に放出された放射性物質を規制するという法律が我が国にはありません。

 まず、その点から第一点伺いますが、ジェー・シー・オー事故があったときは、あのときはどういうふうに処理をしたんでしょうか。もしおわかりだったら教えてくださいというのが一点目です。

 実は、きょう午後四時から私は環境省で記者会見をして、自民党、公明党の案を説明してまいります。素人ながらもちょっと勉強して、こういうふうな処理法案が必要だろうということで取りまとめましたが、どう考えても、環境基準、そして生活基準、健康基準というものはやはり基準としてつくった上で、廃棄物処理と除染というルールはつくらざるを得ないと思うんですね。

 ただし、私はやはり素人ですから、基準というものについてどういうふうにアプローチしてよいか、よくはわかりません。かつて十二年前にダイオキシン類対策特別措置法をつくったときは、WHOの基準を準用して設定いたしました。今回、環境中に放出された放射性物質、環境基準をつくって廃棄物の処理や除染をするとなったときの基準値の設定についてのお考えをお伺いしたいと思います。

 最後に、米倉先生に、放射線被曝の影響について、これは化学物質などの問題と結構似ていると思うんですが、リスクとベネフィットの観点からマスコミの皆さんにも報道していただきたいと私は思ってまいりましたが、非常に怖い、恐ろしいという不安をあおるような報道が多く見受けられます。

 リスクとベネフィットの観点から、マスコミ各社に対して、今回の被曝の影響について、こういうふうな報道姿勢を持ってもらいたいということがあれば教えていただきたいと思います。

 以上です。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 一点目の、ジェー・シー・オー事故のときにどうだったかということでございますが、ジェー・シー・オー事故というのは、先生御存じのように、予期しない臨界現象が起きまして、その結果として大変強い中性子線が飛び出たということで、瞬間的に大変レベルの高い放射線が出てきたということなんですが、現象としてはそれがほとんどでございましたので、いわゆる放射性の汚染物が環境中にそれによって新たに発生したということはございませんでした。したがって、今先生のおっしゃっているような問題は、ジェー・シー・オー事故のときにはなかったというふうに理解しております。

 それから、今後、環境基準をどのような考え方で設定すべきかというお尋ねでございますが、先生御存じのように、WHOも含めまして国際的にいろいろなところが関連する事柄については、基準を、国際機関ですから、それを各国に強制することはできないわけですけれども、それなりに勧告している数値がございます。

 今、特にヨーロッパは、私の理解しているところでは、もちろん国がそれぞれの基準を決めなきゃいけないんですが、その前提として、やはり域内では共通の基準を採用しようということを、かなり法律でそれを義務づけるようなことで国際的な統一化を図っております。

 それで、実は、チェルノブイリの事故のときに、これは汚染が国境を越えて広がりましたので、いろいろな議論がございまして、例えば日本のいろいろな食物等の基準を決めるときには、輸入してヨーロッパから来る物品、食料品もございますので、そういうものと国内のものがやはり同じじゃなきゃおかしいだろうというようなこともございまして、国際的な統一化をできるだけ図るということをいたしました。今後とも、やはりそれはまずは大事なことだというふうに私は思っております。

 一方、しかし、それぞれのところにおいて生活のやり方も違うところは当然ございますので、実際の運用においては、これをできるだけきめの細かい配慮をしながらしていくということが大事かというふうに思っております。

 ありがとうございました。

米倉参考人 リスクとベネフィットという視点からの放射線の影響に関する御質問をいただきました。

 私、今回の事態をずっとこの数カ月見守っておりますに、発災当初は、比較的、国民は落ちついて行動していたように思います。それは、マスコミの方々も、いたずらにあおるようなそういう発言もなかったように思いますし、皆さん落ちついていたというのが最初の印象でした。ところが、最近になりまして、一部のマスコミの方々から、非常に放射線を怖がるようないろいろな記事等が出てまいりました。これは非常に大きな問題だと思っております。

 放射線に関しましては、先ほど来御説明を申し上げましたように、どこかに白か黒かという基準があるわけではありません。私たち自身が常に放射線の中で生きているという状況がありますので、単純な、白か黒かと言うことができないことが逆に国民の皆様に不安を与えているわけでありますけれども。

 では、一つは、日常の環境の中でどれぐらいなのかということを知っていただく。私たちが旅行をしたり海外に行ったりしたときに、これぐらいの線量を浴びているんですよということをまず知っていただくことが第一。それから二番目は、それを避けようとする努力をすることによって、失うべきものがどれぐらいあるかということを考える。これが、まさにリスクとベネフィットの非常に重要な部分になると思います。

 一般に、放射線を積極的に利用する、これは例えばがん治療であるとかがんの診断であるとか、こういう場合には、それによって得られる利益が非常に大きいために、障害となり得る二次的な放射線による障害というのはそれほど問題にしなくてもいいというのが医療被曝の考え方です。

 それに対しまして、今回の事態は、もともとのベネフィットが非常に少ないかもしれないという状況の中で、では、規制をする、あるいは放射線を避けるという行動をすることによって何を失うのか。例えば、家族と離れて暮らさなければいけない、あるいは海外に移住をする。変な話ですが、海外に移住した先の方が放射線量が高いということは往々にしてあり得る話です。

 そういうことまで踏まえて、きちっと国民が納得をして、そして冷静に判断するということが必要でありまして、これを、単に怖い怖いとあおるようなことはやはり避けていただきたいというふうに思う次第です。

瑞慶覧委員 民主党の瑞慶覧長敏と申します。

 鈴木理事長にお伺いいたします。

 資料、ページでいいますと二十二ページのプール除染の件ですけれども、理事長の方はそんなに難しい方法ではないとおっしゃっていましたが、もう少し詳しく教えていただきたいのが一点。

 沈殿物を一時保管というふうに書いていますが、その一時保管された沈殿物は今どういうふうになっているのか。

 それと、予算は一つのプールについて大体どのぐらいかかったのか、もしおわかりであれば教えていただきたい。その予算はどこが負担したのか。

 以上、よろしくお願いします。

鈴木参考人 そんなに難しいことではないというようなことを確かに申し上げたんですが、プール水は、もともと、除染をしないとどのくらいの放射線のレベルであるか、これは測定して調べるわけですね。その結果、飲料水の場合には二百ベクレル・パー・キログラムというふうに今暫定的に決められているというふうに理解しておりますので、それ以下には少なくともしなきゃいけないだろうということです。

 実際どういうことをやったかといいますと、セシウムは普通、多分、水中には微粒子のような形で存在しているんですね。ですから、それが沈んでろ過できるような状態にするということで、今回の場合は、ゼオライトという鉱物を入れましてセシウムをくっつけやすいようにして、同時に、凝集剤というんですが、沈殿を加速するような薬品を入れまして沈めて、そして上積みをもう一遍はかって、それが確かに二百ベクレル・パー・キログラム以下だということを確認した上、それは学校の方で排水して結構ですということなので、これを排水したということでございます。

 それで、その沈殿させたものが結局セシウムを含んでいるわけでございますので、これについては、校庭の中、隅の方なんだと思いますが、小さな穴を掘りまして、そしてそこに安全な形で保管してあるというふうに聞いています。

 それから、それにかかった費用でございますが、これは、私どもとして、おおよそ二、三十万程度だったのではないかと思っています。

 これは、厳密に、何人がかかって、旅費でどうだこうだということまでちょっと今試算しておりませんが、恐らくその程度、つまり、今申し上げましたように、そんなに複雑な作業を要するわけでございませんので、今回の場合はその程度だったということでございます。

 その費用は、私ども、運営費交付金でいただいております費用の中から捻出して、今充てております。

 ありがとうございました。

宮本委員 貴重な御意見、ありがとうございます。日本共産党の宮本岳志です。

 まず、米倉参考人にお伺いするんですけれども、先ほど来、放射線授業あるいは放射線教育ということについても議論がされましたし、お話の中にもございました。

 副読本という話も出たんですけれども、実は、副読本というものは別にこれまでもつくられてきたわけでありまして、私が当委員会で指摘をして、現在は使われておりませんけれども、全体としては原子力安全神話に固まったというような、例えば原発は五重の壁で守られていて大丈夫だ、あるいは、どんなに大きな津波が来ても大丈夫だ、こういうものがむしろこれまで使われてきたと思うんですね。

 そういう議論がもう既に根拠のない安全神話であったということは、先ほど、東海第二も薄氷を踏む思いだったと原研の鈴木理事長がおっしゃっている、そういうことからも明らかだと思うんです。だから、安全神話が崩れた、そして逆に不安が高まっている、こういういきさつというのもしっかり見る必要があると思うんですね。

 その点で、やはり、今後進めるべき教育、放射線授業というものは、科学的で正直な教育でなければならない、つまり危険性についてもきちっと教育しなければならないということだと思うんですけれども、この点についてのお考えをお伺いしたいというのが一点です。

 鈴木参考人にお伺いしたいのは、さまざまな形で除染の方法の御紹介がありました。校庭の表土を除去するというのが非常に効果があるということは原研の方でもやっていただいた実証実験で明らかになったことなんです。

 五月の上旬にやったあの実証実験から既に三カ月がたったのですけれども、七月二十七日の当委員会で私が質問したところによりますと、現在、申請予定が三百十四校あるわけですけれども、済んだのが九十七校、工事途中が百十四校、百三校はまだ未着手になっている。

 セシウムというものは時間がたてばしみ込んでいくというお話もありましたけれども、急がなければならぬと思うんですね。ですから、せっかくそういう形で除染の方法がわかっても遅々として進まない、こういう現状について非常に歯がゆく思うんですけれども、先生の御感想をお伺いしたいと思います。

 以上です。

米倉参考人 学校教育の中の教え方についての御質問をいただきました。

 まず最初に、従来の副読本と言われるものにいろいろ問題があるというのは、多分そのとおりだと思います。

 私自身もちょっと記憶をたどってみているんですけれども、こういった分野で出てくるというと、一つは原子爆弾の怖さ、そしてそれが、エネルギーが役に立っているという原子力発電所であったり、もしあると、若干、場合によっては医療に役立っているよということがある程度、この程度であったというふうに思います。

 やはり基本的に教えなければいけないのは、まず私たちが地球上に住んでいる以上、ある種の放射線を常に浴びているという放射線に対する基本的な知識、これが一番重要だと思います。それによって得られるさまざまな利益と、それからそれによる可能性のある障害、これをきちっと教えることによって子供たちがそれを理解してくれる、それが一番重要ではないかなと思います。

 その先で、原子力のエネルギー政策等についてのリスクとベネフィットの問題点も当然あるとは思うんですけれども、まず放射線をきちっと教えること、これをやっていかないと、今後の私どもの未来が余りないんではないか。

 すなわち、原子力発電所がたとえなくなったとしても私どもは放射線を使い続ける、これはもう間違いない事実でありますので、そこをきちっと教えることが最も重要ではないかと私は感じています。

 以上です。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 校庭等の除染が進まないことについてどう思うかというお尋ねでございました。

 私、ちょっと先ほど、プールの場合は比較的簡便な方法で、また費用もそれほどでないと申し上げましたが、校庭等を除染する場合には相当面積も広いわけでございまして、それから校庭だけをやってもなかなか効果は上がりません。校庭の周りも除染しないと、線量は安心するレベルには下がりませんので、そういうことを考えますと、相当の費用がかかる、また時間もかかる、それから、それなりに専門の業者なりに加わってもらってその専門的な作業をお願いしなきゃいけない、こういうことだと思っています。

 そういうことを考慮いたしますと、恐らく、いろいろな予算等の面で、やりたくてもすぐはできないという状況が現実にあるのかもしれないと思っております。

 しかしながら、先生おっしゃるように、これはできるだけ早くやっていただきたいと思いますし、機構といたしましては、標準的ないわばマニュアルのようなものをお示ししていますので、それに基づいてできるだけ早くやっていただけると大変ありがたい、こういうふうに思っております。

 ありがとうございました。

石井(登)委員 本日はありがとうございます。民主党の石井登志郎と申します。

 まず、米倉参考人にお伺いさせていただきます。

 生体防御能力と、あと、先ほどインド・ケララ地方の例を出していただきましたですけれども、この防御能力というのは人種によって違いはあるのかと。

 例えば、白人の方と黒人の方だと紫外線に対する耐性が変わって、大きく違うんじゃないかというようなことをおっしゃる方もいらっしゃいます。この地方の方々は、何か本質的にいわゆる防御能力が高いというようなことはデータ的にあるのかどうか。

 また、あわせて、こういう人種の問題でなくて、例えば私のような者がこの地方に生まれ育ったら、この日本に生まれ育った方々よりも高い能力がどんどんついていくものなのかどうか、この点についてお聞かせください。

 また、もう一点、米倉参考人にお伺いいたしますが、高線量の被曝と、それから低線量による持続性の被曝ということでありますが、これは、どこからどこが高線量で、どこからどこが低線量かというようなこと、何かイメージでも結構ですから、ちょっと教えていただければと思います。

 そして、一点、鈴木参考人にお伺いいたします。

 いただきました資料の二十三ページのところにありますが、「汚染土壌再利用(構想中)」と書いておられまして、そして右に図があるわけですけれども、これについて、この構想が、実現のめどというか、現状、どのようなものなのか、あと、これはそもそもどういう概念なのかというのをちょっと詳しく教えていただければと思います。

 というのも、これから、限られた校庭だけでなくて、相当膨大な量の除染をすると、汚染土壌というものも相当膨大になってくると思いますので、再利用、こうしたことが必須になってくると思うんですが、現状についてお聞かせいただければと思います。

 よろしくお願いします。

    〔委員長退席、高井(美)委員長代理着席〕

米倉参考人 二点、御質問がありました。

 まず、放射線の防御能力ということで、人種による差はどうだろう、もう少し突き詰めて言いますと、個人差があるのかどうかということになるかと思います。

 現在のところ、先ほどお話をしましたインドのケララ以外に、いわゆる自然放射線の高い地域としては、例えばイランのラムサール、あるいは中国の黄土高原という奥地の地域等がございます。これらのところでも、いずれも発がんのリスクが上がるというデータは出ていませんので、比較的いろいろなところでいろいろな人種に見られる現象かなというふうに思っておりますが、残念なことに、日本人のデータがどうであるかということを示すものはございません。

 そういう意味では、そのまま答えにはならないのですが、片方で、実は、放射線に対する生物学的な反応というのはよく知られております。特に、動物実験で、比較的低い線量の放射線を与えますと、その後に引き続いて高い線量、低い線量、高い線量は後で御説明いたしますけれども、高い線量の放射線を当てたときに、障害が起きにくいという現象も見られます。

 これは適応応答というふうに呼ばれておりまして、まず最初に低い線量を与えられたときに、生体が何らかの反応をして、防御機構が働くということが知られています。

 これは、例えば病気ですと、心筋梗塞の患者さんというのは、突然発症をすると亡くなる方が非常に多いのですが、狭心症を繰り返していると、それに対する耐性ができる、あるいは脳梗塞等でも同じような現象が見られていまして、放射線にもよく似たような現象があるようであります。

 そういうことから考えますと、低い線量をずっと浴び続けていると、それなりに体がそういうものに対して抵抗ができるという可能性はありますが、これはきちっとした証明ができているわけではありません。

 それよりも、我々として考えていますのは、人種による差というよりも、個体差がかなりあるかもしれないということは懸念としてございます。

 それは、実際に放射線治療をやったときに、障害のあらわれるあらわれ方が、非常に強い副作用の出る方がいらっしゃいます。これに関しましては、現在、私どものところで、その方の遺伝子を調べて、どういう遺伝子を持っておられる方がそういう、放射線に強いあるいは弱いという現象があるのかということを、臨床的に人で調べている状況でありますので、こういった研究もぜひ続ける必要があるかなというふうに思っています。

 それから、高線量と低線量をどこで分けるのかと。

 実は、切れ目は当然ないわけでありますが、放射線防護の世界では、現在のところ、百ミリシーベルトあるいは二百ミリシーベルトといったところで分けられています。

 これは、国際的な機関である国連の科学委員会あるいはICRP等、それぞれの機関によってその考え方は若干異なりますが、先ほどお話をしましたように、放射線を受けたときに直ちに影響が出る線量を高線量、そして、百ミリシーベルト以下ではそういった影響は出ませんので、そこを低線量と言うことが多いように思います。

 実際に、いや、低線量の中でも百ミリシーベルトなら安全なのか、十ミリなら安全なのか、そこに切れ目が現在ないのは事実であります。このあたりは、先ほど私の意見表明の中で御説明をさせていただいたとおりです。

 以上でございます。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 ここの資料にございます「汚染土壌再利用(構想中)」というところでございますが、これは、いろいろな方法が現実的には考えられるんだと思います。

 例えば、先生おっしゃいますように、量的に大変膨大になってまいりますと、やはりそれなりに対策を打たないと、実際問題として扱いが難しくなりますので、そういう場合に、例えば再利用の可能性としては、セメントをつくるときに一部まぜて使うというようなことが考えられると思いますが、しかし、それは当然のことながら、そのセメントを使う場所というのは限定されて、十分放射線の管理ができるようなところということになろうかと思います。そういう場合は、当然いろいろな法的な規制もございますので、そういうものをクリアしないといけない。

 原子力発電所でも今いろいろな廃棄物が出てまいります中、やむを得ず、これは最終的に廃棄物として扱わなきゃいけないというものはリサイクルできませんが、できるだけやはりリサイクルをしようという方向はあるわけでございまして、それも、一部放射性物質がまざっている場合であっても再利用が可能な場合は、可能な場所で使用目的を限定して使うようにしようということでございます。

 私は、福島のような場合はそういうことも十分考えるべきではないか、そんなふうに思っております。

 ありがとうございました。

熊谷委員 民主党の熊谷でございます。

 大分同じような質問が出ておりまして、私も同趣旨のお話になるかもわかりませんが、少し違った観点の御質問を両理事長にさせていただきたいと思います。

 まず米倉理事長には、今のいろいろな原発事故以来の社会の不安状況、これの一番大きな原因は、幸いにして大量な直接被曝がなかったという、今まではないという中で、LNT仮説ですか、要するに、閾値がないリニアモデル、これの中で、なるべく少ない線量でないと心配だ、こういうのが基本的に社会不安の原因になっている。

 放医研の中でも、LNT仮説を主張される先生もおられますし、いや、ホメオシス効果で、低線量率でかえって先ほどおっしゃった免疫効果があらわれる、体にいい、これは温泉療法なんかの一つの根拠になっているわけですが、こういう話も二つあって、なかなか権威のあるところでばしっと、もちろん、非科学的な変な政治的バイアスで物事を言うのはこういう問題ではよくないわけですけれども、しかしながら、やはりそこにコモンセンスというか、そういうところが入ったような形でむやみな不安を払拭するというためには、何らかの、これまでは気にしなくてもいいというようなものを、特に百ミリシーベルト以下の話については僕はすべきだと思います。これは米倉参考人に対する話でございますが。

 もう一つは全然違う観点なんですが、鈴木理事長の方に、事故発生当初から機構のかかわり方はどのようなものであったか。我々が見ていて、もちろん安全委員会もそうでしたが、東電と保安院の対応しか見えなかった。オフサイトセンターの活動等々もほとんどわからない。一番技術的なバックグラウンドをお持ちで、こういうときに指針あるいは適切な助言を私はされるべきだと思う機構が、当初以来どういうかかわりをしてこられたかということが非常に見えなかったものですから、歯がゆい思いをいたしました。

 特に、直後以来、しばしば委員会や研究会で放出放射能の推定値が出されたんですよ。安全委員会の方は、これはSPEEDIの実測値をもとにした逆推定で……

高井(美)委員長代理 熊谷先生、短目にお願いいたします。

熊谷委員 済みません。

 今、この三ページで出されておられる数値と余り変わらない数値を出されたんですが、保安院の方はこれの半分ぐらいです。半分というのは、誤差が半分といったって、十の十五乗のオーダーの半分でございますから、倍ですから、あるいは半分でございますから、これは大変な違いなんですよ。

 だから、初期において炉心の状況がどうだったかというようなことが科学的、技術的にリーズナブルな推定がされないとだめだったので、やはりそこを、いまだに炉心状況がどうなっているかわからない、発災以来十時間ぐらいでメルトダウンしたのではないかとこう言われているわけですよね。その状況をいち早く機構の方でどういう対応をされたかということを、これをぜひお聞かせください。

米倉参考人 社会不安の状況を御説明していただいたのは、まさにそのとおりであります。

 私も、きょうの意見表明の中で、直線閾値なしモデルあるいは閾値なし直線モデルということで、LNTモデルというのを出させていただきました。

 大事なことは、このモデルは、あくまで放射線防護のために設定されているモデルだということであります。安全側に見越して、このモデルに基づいて放射線防護の体系をつくりましょうということで、低い線量でこの現象が起こっているということではないということは、これはいろいろな権威のある国際機関が認めています。

 その具体的な例としては、国連の科学委員会、あるいはICRP、あるいはIAEAといったところが皆さん一致して、これはあくまで防護のためのモデルであって、これを統計学的なデータや将来のリスク予測に使ってはならないということが明らかに言われております。

 そういう意味では、例えば極論を言いますと、普通、私たちは千ミリシーベルトで五%のがん死亡のリスクが上がる。これを単純に、では、一ミリシーベルトであればその千分の一なのか。十万人、百万人、一億人の方がこの一ミリシーベルトを浴びたら、それに当たるような発がんのリスクがふえるのか。これは明らかに間違いであります。

 よくこれに使われるのが、医療被曝で、例えば、CT検査を非常にたくさん受けると発がんのリスクが高まるというときも同じような議論がされていました。

 こういうことに使ってはならないというのは国際的なコンセンサスですので、もしそれを現在私どもの研究所に所属している職員がそういったことで使っているとすれば、それは明らかな間違いなので、直したいというふうに思います。

 この防護のための指標というのが非常にわかりにくいということはいろいろ言われておりますが、現在のところ、放射線防護体系を考える上では、このモデル以外これよりもいいものが見つかっていないというのが現実でありまして、これを使ってリスクを評価してはならないというのは、国際的なコンセンサスだと私は思っております。

    〔高井(美)委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木参考人 先生、ありがとうございます。

 機構のかかわり方でございますが、確かに、事故直後に機構が実際具体的にどういうことをやっているのかについて十分御説明もしておりませんでしたし、また、わかりやすい形で活動していなかったということについては、本当に申しわけなく思っております。

 お尋ねの点でございますが、ああいう事態になった場合に機構としてどのようにかかわっているかというのは、大きく分けて二つございまして、一つは、機構の中には多くの専門家がおりますので、それぞれが専門知識、専門分野ごとにその専門家がおりますので、その専門分野ごとの専門家として、例えば、原子力安全委員会の中にございます緊急時助言組織の中にあらかじめ委員として登録されておりまして、ですから、機構の人間というよりは、機構に所属する専門家の一人としていつも助言ができるように、いつもそういう心構えをしていなきゃいけないという何人かの者がおります。

 そういう者があのときも何人かすぐ徴集されて、安全委員会のサポートに回ったりしておりました。こういうのは、今でもそういう体制になっているわけです。

 それからまたもう一つは、先ほどちょっと先生が御指摘になったSPEEDIですが、SPEEDIというのは、もともと機構の前身の日本原子力研究所というところで開発したものを、今はほかの機関が使えるようにして実際運用しておりますが、専門的な知識はもともと機構にございますので、その知見をもとに原子力安全委員会がいろいろ試算をして、それが公表されている。

 したがいまして、機構の名前で公表するということにはなっておりませんが、実質的には、機構がそれなりのお手伝いをしてそういう数値を公表しているということでございます。

 もう一点は、機構としてやはりそれなりの組織としてやるべきことがあるんじゃないかということなんでございますが、それは私もそう思っておりまして、したがって、ちょっとおくれたんですが、対策本部みたいなものを立ち上げて、組織として今取り組んでおります。

 そういう中で、先ほどちょっと例としてお尋ねがあった、放出放射能がどのくらいだったのか等について、本来は専門家集団である機構がもっと前に出るべきじゃないかというお考えをいただきましたけれども、これは先生御存じのように、事故直後、一、二、三、四と四機もございまして、それぞれ、原子炉の中あるいは使用済み燃料のプールの中にどういう燃料がどういう状態であるかというのは、これは実際の運転データにかかわることでございまして、このデータが常に我々のような組織がアクセスできるということにはなっておりません。これは世界的にどうしてもそうなると思います。

 と同時に、そのときに、どういう事故の進展を抑えるような技術的な設備がそれぞれの一、二、三、四の中のプラントについているかというのは、これは設計にかかわることでございまして、したがって、もう三十年以上前の図面等に基づいてこれを考えなきゃいけないということで、これも、実は正確なところを議論しようとすると、どうしても時間がかかるわけでございます。

 そんなことで、機構の専門家が何人か、いろいろ想像も交えまして、あるいはいろいろな仮定を置いて、燃料の炉心の状態がどうだったかということは確かに解析をしておりましたが、私の考えとしては、そのことが本当にそうであるかどうかを必ずしも保証できるようなものでございませんので、やはりそういうものを世の中の方々にお示しするについては、これは慎重でなければいけないというふうに私は感じていました。

 ただ、いろいろな議論をする中でいろいろな可能性は検討しなきゃいけませんので、そういう議論の中にはできるだけ可能な範囲で情報を提供させていただいていた、そういうことでございます。

 ありがとうございました。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 米倉参考人には、青少年特別委員会でもお話を伺い、大変私も勉強させていただきました。

 でも、現在でも私は、まだ子供の体のことを心配している保護者並みの知識しかございません。なぜ不安かといったら、やはり、このような広域にわたる原発事故は日本で起きたことがないわけですから、みんなその材料がわからないという点にあると思うんです。

 先生がおっしゃるような身の回りの線量率というのは、みんなわかってはおります。けれども、例えば、では、医療従事者が長時間働いた場合にどのようなリスクがあるのか、あるいは、日本の鉱山で働いている人、住んでいる人たちはどのようながんにかかる率があるのか、それからまた、飛行機に乗っている添乗員たちはどれぐらいのリスクがあるのか、私は、そのような検証データがないからではないかと思います。

 そのような研究はしていらっしゃるのか。私は、これからする必要があるんじゃないか、日常生活での低レベルのと思われるかもしれないけれども、そのような研究も必要じゃないかというふうに思っております。それを伺いたいことが一点。

 鈴木理事長に、全体のおまとめとして、知識、知見、教訓の国際的共有化とおっしゃいました。私は、このような事故を起こした国の責任として、研究して発信していくべきであると考えております。でも、その前に、私は、日本社会での知識、知見、教訓の共有化が必要なのではないか。

 例えば今、農水の問題にいたしましても、稲わらを牛が食べていたとみんな知っていたか。知りませんよね。でも、こういう研究をしていらっしゃる方は、稲わらは危険だということをもう既に知っていらしたと思うんです。どうしてそういうことを、事前にそれは危ないよということをおっしゃらなかったのか。

 今まで、除染の芝の問題にしたって、事が起きると、除染をしましょう、こういうふうにしたらいいんですよ、それから、牛は危ないですよ、こうしたらいいんですよと言う。その以前に防げる方法があったんじゃないか、そういう共有をどうしてなさらないのか、私はなさるべきではないかというふうに考えておりますので、そのことについての願いとともに、御意見を伺いたいと思います。

米倉参考人 ありがとうございました。

 いわゆる低線量で作業しておられる方々の健康に関する調査データがどこかにあるのではないかと。確かに海外では、一部、こういう方々のデータがございます。

 はっきりした線量効果関係といいますか、影響がどこからあらわれるかというのは実は余りよくわかっていないのでありますけれども、我が国における一つの大きな問題点は、こういういろいろな作業をされておられる方々の職務上受けられたさまざまな被曝の記録、これを一カ所に集めるということができていません。

 実はこれは、国連の科学委員会、私は過去四年間にわたって日本代表を務めさせていただいておりますけれども、こちらの方から各国に対して非常に強い要請がありまして、国民が受けている放射線に関する線量はすべて一括して管理して、それを提出するようにという宿題が来ております。

 我が国におきましては、原発作業者につきましては、基本的には個別のサイトにおける管理でありますけれども、現在、原発作業者のみは一カ所に管理されています。

 ところが、それ以外の放射線に関する作業を行っておられる方々、これは、医療従事者もそうですし、それ以外の、工場等で働いておられる方あるいは研究で使っておられる方々、こういう方々はすべて施設における管理だけでありまして、その方が移られると、そのデータがどこかへ行ってしまうということが起こり得るわけであります。

 今、非常に大事なことは、私、これは原子力安全委員会等でも何度もお話をしておりますけれども、私たちが国民が受けている線量をすべて一括して管理することが重要でありまして、そして、その健康調査をきちっと見ることによって、先ほど先生から御質問がありましたことにこたえていけるようなデータが出せるのではないかというふうに思っています。

 それから航空機乗務員の被曝につきましては、これは、ついこの前まで全く管理はされていませんでした。そして、私どもの方のデータで、これがそれなりに問題になるということで、現在は年間に五ミリシーベルトを超えない範囲でやろうということになっておりますが、これは法律的な規制ではございません。

 というのは、このように自然放射線の高いところで作業をされる方々というのは、これは、規制上の問題でいわゆる放射線の規制管理の中に入ってこないという問題があります。

 例えば炭鉱で働いておられる方々、こういった方々も、当然、その場所によっては非常に線量が高いことがありますけれども、これもいわゆる放射線の規制の中には入ってこないわけであります。

 そういうことも含めて、国民の受ける放射線量をきちっと管理すること、この中には、多分といいますか最も大事なのが、医療被曝によって国民が受ける線量、これもきちっと管理する必要があると思います。

 こういうものをすべて一括してまとめて、そして、その長期的な影響というのを三十年、五十年にかけて調べていくということが、今、私は非常に重要になっているというふうに思っております。

 以上でございます。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 先生おっしゃいますように、稲わらの問題につきましては、大変我々も申しわけないと思っております。事前にそういうことは当然すべきであったんじゃないかという先生の御指摘は、そのとおりだと思います。

 先ほど、私の話の中に例としてちょっと紹介させていただきましたのも、フランスのミルクで、干し草を食べさせたために、実はその翌年にむしろ高い、汚染したミルクが出てきたという例を申し上げました。

 そういうことを十分わかっているわけですから当然そういうことを生かすべきだったというのは、私もそう思うんですが、これは言いわけになってしまいますけれども、恐らくチェルノブイリの事故でも、まずはロシア、ウクライナ、ベラルーシ、そういう、発電所のそばで汚染の非常に深刻なところがどうしてもまずは優先的にいろいろな研究者がそこに集中してしまうわけで、日本においても、今回まさに、どうも私が伺っているところでは、こんなところまでセシウムが飛んできて稲わらが汚染していたのかというようなところが出ていますよね。

 ですから、おのずとやはり我々が放射線あるいは放射性物質による環境の影響をまず心配すべきは、発電所のそばであったり、汚染の程度の深刻なところにどうしても行ってしまうわけですけれども、しかし、先生おっしゃるように、今回のことも踏まえますと、今後は、より多面的に、できるだけ国民生活に悪影響が及ばないように我々も考えていかなきゃいけない、このように思っています。

 どうもありがとうございました。

松崎(哲)委員 民主党の松崎哲久でございます。

 きょうはお二人、どうもありがとうございます。最初に鈴木参考人、次いで米倉参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

 大変不幸な事故が起きてしまって、結局、私たちはこれから放射線というものと共存していかなければいけない。それは、日常の生活でも食べるものにしても、共存して、なるべく安全を図ってどうやって生きていかなきゃいけないかということを考えなければいけないような事態になってしまったわけですが、ただ、事故が起きてからいろいろ伺っていますと、今までも既に共存をしていたわけでありまして、例えば、それはいろいろな理由があって、自然の放射線もあるし、それから、大気圏核実験があった時代は今よりももっと線量が高かったということも伺っております。

 問題は、そういうことが、やはり今、普通の国民のといいますか、科学者の方々ではなくて、一般レベルで余りそういう知見が共有されてこなかったことではないかなというふうに思います。

 今回いろいろ勉強させていただいて、確かに、百ミリシーベルト以下のことはわからない。それは、わからないということが科学的態度だというふうに教えていただきましたし、そう思っているわけですが、一般の人たちの感覚は、何か白か黒かをつけてほしいという気持ちがあるんだと思いますね。ですから、わからないと言うと不安になる、こういうことがどうしてもあるのだというふうに思います。

 それで、私は、日本の国民性というのは、むしろ白黒を余りはっきりさせないというのが日本の国民性なんだというふうにこれまで理解していたのですけれども、どうも最近は、白か黒かはっきりしてくれ、こういう方々の意見が多くなってきている。

 それには、特にこの問題に関してですけれども、今までの放射線というものに対する知識を、国民に広く共有するような形でやはり情報が発信されていなかったのではないか。これはもちろん政治の問題であるし政府の問題ですが、長く原子力行政にも携わっておられたという意味で鈴木参考人にも伺いたいんですが、やはり、怖いものには触れさせないでおこうというようなそういう意識がどうもあったのではないかなというふうに思いますので、その辺についてどう思われるかということを鈴木参考人に伺いたいと思います。

 次に米倉参考人に伺いたいんですが、食品の安全、特に牛肉の問題が今大変大きな問題になっておりますけれども、これは、先ほどのような、政府に失態があったということは別にして、いろいろ伺ってみると、例えば、セシウム137は半減期が三十年だ、だから大変だとこう思いますけれども、実は、それは物理的半減期のことであって、生物学的半減期は六十日ぐらいで、そうすると、半年、一年ぐらいたってしまうとほとんど体内には残らないというようなことも一方で教えていただいております。

 ですから、そういうようなこともやはりもう少し広く伝えていただきたいというか、一緒に伝わるような方法がなかったものか。

 例えば、五百ベクレルとこう言っても、これはパー・キログラムですから、牛肉を一日一回、一キログラム食べる人はほとんど実際いないわけで、百グラムとか百五十グラムの世界ですから、またこの単位が少し違うわけですよね。

 ですから、行政とか科学的に言われるときに、パー・キログラムというのは科学的にはそうなんでしょうけれども、食の問題になったときには、キログラム当たりではなくて、もう少し一食に換算してとか、ステーキ一枚に換算してとか、例えば学校給食の場合には、一人当たり十グラムぐらいしか一食当たり食していないということも文科省の方から聞いておりますが、この辺の発表の仕方の配慮みたいなことも必要だったのではないかなというふうに思います。

 米倉参考人に伺いたいのは、ですから、生物学的半減期でいうとセシウム137は六十日、これは数字がいろいろ違うようですけれども、少なくとも三十年じゃないんだということをまず確認もさせていただきたいということ。

 それから、発がんのリスクということですが、百ミリシーベルトで〇・五%、それは、そもそも三〇%死亡率があるところに〇・五%加わるということだと思うんですが、そうであるならば、そのことを過剰に心配するよりも、がん対策の方、がん治療の方に向けていけば、むしろその〇・五%の危険というのは、かえって下がる。早期発見というのはがん治療の場合は必要だというふうに言われておりますけれども、まさに逆に、こういうようなことで検診が進めば、むしろリスクが下がるということもあるのではないか。

 ですから、その部分もあわせて御説明をいただけたらいいのになとこういうふうに感じましたので、先生のまた御意見をいただければというふうに思います。

 以上です。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 私も原子力安全委員会におりましたので、確かに、先生お尋ねのようなことについて、もっとそういうことを真剣に考えるべきだったと思います。

 ただ、怖いものには触れさせないといいますか、何かそういう、意図的ということはないかもしれませんけれども、何となく余り危ない、危ないと言わないようにしていたんじゃないかというふうなお尋ねもございましたが、私はそれほど放射線について余り余計なことは言わないようにしていたかというと、そんなことはないんじゃないかと思います。

 つまり、放射線というのは、天然に自然界に存在いたしますので、いわば、我々はそういう世界で生活しているわけでございます。

 現に、例えば原子力安全委員会の場合で申し上げますと、放射線にかかわる専門部会であるとか、あるいはいろいろな基準を議論する場であるとか、そういうものがスタンディングコミッティーとしてございますので、常に、いわば新しい知見等は取り入れながら規制、基準に反映させるという議論もしております。

 これはもうほぼ日常的にやっておりますので、したがって、何か意図的に余り議論をしていなかったんじゃないかということはないんだと私は思っております。

 しかしながら、先生おっしゃいますように、そういうことに対する国民の皆さん方の理解が十分でないというのも確かであると思います。

 今現在は、機構によりまして、実は、学校で子供がいろいろな生活をするのに心配だという保護者の方々が非常に多いというふうに伺っていますので、これは福島県の方にお願いして、もし御希望があれば、御父兄の方あるいは先生方のお集まりの場に機構の職員を派遣して、放射線や放射能にかかわる御質問には何でもお答えしますという活動を始めました。

 先週あたりから具体的に始まっておりまして、それでいろいろな御希望をいただいていまして、十月ぐらいまで、ほぼ毎週のようにこちらから伺うというようなことを計画しております。

 遅まきながら、今先生おっしゃったようなことにつきましては、機構としてもできるだけ取り組んでまいりたいと思っております。

 ありがとうございました。

米倉参考人 大事な問題を御指摘いただきました。

 牛肉だけではございませんけれども、これから先、私どもは、多分セシウムの問題が、半減期三十年ですので、ずっとついて回るだろうというふうに考えます。

 それで、問題はやはり、それによってどの程度のリスクがあるのか。この程度なのよ、この程度以下なのだよということを国民の皆様にきちっと伝えて、しかも、それを理解していただくというプロセスが必要だと思っています。

 私自身は、セシウムに関しては全く怖くないと考えている一人です。

 なぜかといいますと、私たちの体の中には、皆さんよく御存じのように、放射性のカリウムがあります。このカリウム40は、たしか半減期が十億年以上の非常に長い核種ですが、常に体の中にあり続ける。それによって、内部被曝として年間に〇・四とか〇・五ミリシーベルトぐらいの被曝を受け続けているわけです。

 それで、このカリウムと非常によく似た挙動をセシウムは化学的にします。一価のイオンとして動きます。そのために、全身の細胞の中、筋肉などに入っていくわけですけれども、先ほど御説明があったように、物理的半減期は確かに三十年と長いのですが、生物学的半減期は、これは実験によっていろいろ違いますけれども、たかだか九十日から百日ぐらいというデータが出ております。

 だから、それを一回食べたことによって起こる生涯被曝線量というのはごくわずかであるということから、現在、福島県民の方々のホール・ボディー・カウンターの調査等で出てきている線量も、非常に低いということがわかってきております。

 たとえこれを毎日毎日食べ続けたとしても、ある意味では放射性カリウムと同じような挙動を示すのであるとすれば、そんなに怖いものではないということが言えると思います。

 ただ、問題は、先ほどもいろいろ議論がありましたように、白か黒か、ちょっとでも汚いものは怖い、大腸菌が一個ついていてもその食べ物を食べられないというのがやはり国民感情としてはあるわけで、その中にたとえ一個の粒子でもセシウムが入っていると怖いというそういう気持ちの方、感情ですね、これはなかなか納得していただくには難しくて、やはりそこは、リスクとベネフィット、先ほど来話がありますようなそういうリスクコミュニケーションという手法を使って、国民の皆様方と一緒にこれを解決していくという姿勢が必要だと思っています。

 私ども、その分野についての努力を続けたいというふうに思っております。

 以上でございます。

平山委員 お二人の方々、ありがとうございました。民主党の平山泰朗です。

 米倉理事長にちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、先日、議員会館で、二〇〇三年にアカデミー賞を受賞しました「チェルノブイリ・ハート」というのが放映されました。この中で非常にショッキングな内容が流れておったんですけれども、チェルノブイリ近郊のベラルーシの一部では、健常者の赤ん坊は二割しか生まれない。それ以外の子供たちは、水頭症を初めとして、四肢不全、心臓異常、かなりの奇形児が同地域で生まれているという映像が流れておりました。

 我々は真意がよくわからないものですから、見たものをそのまますべて信じるわけではないんですけれども、見たものがどうなのかなと思うしかないんですけれども、これ自体がチェルノブイリの事故の影響だと言われている。実際に、その奇形児の数の多さに公的な赤ちゃんポストが創設されて、そこに赤ん坊が捨てられているという現状もあるらしいです。

 そこで、放医研の立場としてちょっとお伺いしたいんですけれども、このチェルノブイリのベラルーシの状況、そこで流されていた映像なんですけれども、つまり、尋常でない数の奇形児が生まれていること自体が事実なのかということと、日本でもこのような状況に陥る可能性があるのか、そして、ならないとするならば、チェルノブイリと福島、その状況というのはどこが違うのかということを教えていただければと思います。

米倉参考人 私自身はその映画を見ておりませんので直接お答えができないのですが、まず、放射線の遺伝的な影響ということに関しては、現在のところ、余り強くないということがまず第一点ございます。

 それから、奇形ということは、子供の発達の過程の中で、あるときに非常に強い影響を受けるとおなかの中である種の奇形が起こるということは確かに事実ですけれども、それが放射線によって明らかな奇形が起こるということは、少なくとも、今まで証明されていないというふうに私は思っています。

 特に、チェルノブイリの健康影響につきましては、国連の科学委員会が報告を出しておりまして、この中で奇形の問題は取り上げておりませんので、国際的なコンセンサスはまだとれていない状況だと思います。

 ただ、こういう地域におけるこういう奇形児が出たとしたときに、それが本当に放射線の影響なのか、あるいは、それに伴う何か二次的な別の影響によるのかということを、必ずしもきちっと明確にできていないのではないかということを懸念します。

 これは、統計学的な手法を使って、例えば放射線の線量が高かったところである病気が起こったとしても、それが直接的な影響なのか、あるいは、二次的にたまたま両方が重なり合うような要因があったのかということを常に注意して見る必要があるかと思います。

 これにつきましては、そういう意味で、私どもとしても、もしそういう報告があるのだとすれば、きちっとチェックをしてみたいというふうに考えています。

 今回の福島の事故におきましては、少なくとも、住民の方々の受けられている線量は現段階でそれほど高くないということから考えますと、こういう問題は起こり得ないというふうに私は思っています。

下村委員 自由民主党の下村博文です。きょうはありがとうございます。

 まず、鈴木参考人に二つお聞きしたいと思います。資料の二十五、二十六にもございますが、除染の問題です。

 これは、どこまでどの程度除染するかということについて、日本原子力研究開発機構としても、基準、目安、これをぜひお考えになっていただいた方がいいのではないかと思うんです。

 それだけ、半径二十キロとかあるいは三十キロとか、もちろんその放射線量の飛んだエリアにもよりますし、ホットスポットの問題もありますけれども、どれぐらいの基準で、実際こういう集落単位の除染というシミュレーションもつくっておられる中で、校庭についてはやっていますけれども、では、田んぼ、畑、それから森林、それぞれの基準をどうするのか、目安としてどうなのかということについて、シミュレーションをつくられているわけですから、具体的に、基準の中でどうするかということをぜひ提案をしていただきたいというのが一点ございます。

 それからもう一つは、いろいろな努力は除染についてされているんでしょうけれども、まだ目に見えてこれはというものが出てきていない。これは機構だけの問題ではないわけですけれども、私のところにも民間の方々から随分いろいろな提案が来ているんです。いろいろなところに御紹介しているんですけれども、ことごとく対応できていないんです。

 これは何なのかということについて率直な鈴木参考人の意見をお聞きしたいんですが、恐らく、原子力研究開発機構だけでは受け切れない問題もあると思います。

 実際には農水省がやっている。農水省でもいろいろな実験をやっているんですけれども、それも、ごく限られた会社とか、あるいは大学とか研究者とか限定して、いろいろな提案があっても実際はそれがチャレンジできる場がないということで、どこかでコーディネートして、それを、縦割り行政が弊害になっているのか、あるいは、そもそも、機構が、鈴木参考人のところができないとしたら、なぜできないのか。

 つまり、国内外のいろいろな英知、実際は効果あるかどうかやってみないとわからない部分が除染というのはあると思うんです、年数がかかる部分がありますから。

 しかし、そのチャレンジする場をどんどん提供することによって、逆にそれが、日本が世界に発信する新たな除染技術としてのレベルアップ、それからビジネスにもつながっていくかもしれませんし、その辺のコーディネート能力なりトータル的なものが、今、何が問題でそれがおくれて、私はおくれていると思っているんですが、滞っているというふうにお考えかどうか、二点。

 それから、もう一つは米倉参考人にお聞きしたいと思うんです。

 直接きょうのテーマではありませんが、重粒子線を用いたがん治療、これは、ほかの既存の放射線のがん治療とどう違って、諸外国では同じようなことをやっているところがあるのかどうか、どのように普通の放射線治療とこの重粒子線を用いたがん治療、違いがあるのかについて簡単に御説明をしていただければと思います。

 以上です。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 一点目の、基準について何かその目安といいますか提案をすべきじゃないかというお話がございました。

 先生おっしゃるように、確かに、何か判断の基準になるようなものが必要ですので、これについても、機構としては、できるだけ参考にしていただけるものについては積極的に提案させていただきたいと思っています。

 例えば、先ほどプール水の例を申し上げましたが、一応暫定的には飲料水の暫定値がございますので、その暫定値を私どもも判断の基準としてお示ししたんですが、福島県のあの幼稚園においては、それで結構ですというお話だったのでそのようにさせていただきましたけれども、他方、別のところでは、周りに田畑があるということで、もっと下げてほしいというような御要望がございました。

 そういうことなので、より効果的な、時間をかけて沈殿させるなりの方法でより濃度を下げまして、そして排水をするというようなこともさせていただきました。

 したがって、現状においては、基準というものをできるだけ決めると同時に、あわせて、やはりそれぞれの地域、地元においての御要望にも可能な範囲で対応していかなきゃいけないのかなというふうに私は感じております。

 それから二点目の、なかなか除染等の作業が進まない、これについてどう考えるか、それから、いろいろな除染についての提案が出ているのに、それについての検証の場であるとか検討の場が十分にできていないというようなお話についてでございます。私もそのとおりかと思っております。

 機構がやっております活動の一つに、機構の方にいろいろな御提案を間接的あるいは直接的にいただいた場合には、我々の方にあるチームをつくってありまして、そこで集中的に検討をし、検討の結果が明らかに出た場合はそれをお返しし、また、それについてさらに我々の設備等を使って一緒に検討させていただきたいという場合はそのような御提案をするというような、そういう作業を今進めております。

 ただ、先生おっしゃいますように、機構の中でできることは、やはり限度はあろうかと思います。

 やはり、私のきょうの御説明でも申し上げましたが、例えば農業や畜産業にかかわることについては、農水省が責任あるお役所としていろいろなことを検討されていますので、機構は文部科学省に所属する機関ですので、そういう意味でのやはり壁と申しますか限界というのは、どうしても、例えば、我々がいただいている運営費交付金をどの範囲で使うべきかというのは、これはやはりある節度を持ってやらなきゃいけないと思っておりますので、そういう限界があるのも感じております。

 感じておりますが、もう今のあの福島県の状況というのはそんなことを言っている段階ではないと思いますので、私どもとしては、あるいは私としては、先生おっしゃいますように、いろいろな可能性を検討して、もっと積極的にしていきたい。

 それともちょっと関連いたしますが、機構では、今、福島県の方に環境安全センターのようなものをつくらせていただけないかと提案しております。

 それについては、先生もおっしゃいますように、国内ばかりではなくて国際的な英知も結集すべきだと思いますので、国際的な機関にそういうものをしていきたいということで、除染については、少し時間をかけて長期的に取り組まなきゃいけないこともございますので、ぜひそのようなことをやらせていただきたいと思っております。

 ありがとうございました。

米倉参考人 重粒子線がん治療についての御質問をいただきました。

 これは、炭素という原子を光の速さの七割から八割ぐらいのスピードまで非常に超高速で回す、これは加速器を使って回すわけですけれども、そして、がんに当てて治療をするものです。

 従来の放射線治療と大きく違うところは、がんだけに傷害を与えるというテクニックができまして、そのために、正常組織への副作用がほとんどないというのが特徴であります。いわば外科的な治療を切らないでやるということになりますので、最近非常に注目されているものです。

 現在のところ、放医研が一九九四年にスタートしてから、その後、兵庫県とそれから群馬大学で稼働しておりまして、二年後には、佐賀県にある鳥栖でもう一台目が稼働することになっております。

 各国の状況ですけれども、ドイツのハイデルベルクで現在治療が行われております。それから、中国の蘭州で比較的限局した表面のがんについてのみの治療が行われているということですが、ヨーロッパを中心として非常に導入が進んでおりまして、この数年間の間に、多分数カ所以上が出てくるものというふうに考えられています。

 そういった状況ですので、もし興味があれば、一度我々のところにお越しいただければと思います。

山田(良)委員 民主党の山田良司でございます。

 時間もございませんし、各委員の御質問と重複する部分がありますので、簡潔に御質問させていただきます。

 放射線のリスクとベネフィットという範疇の中で、先ほど平山委員の方からお話がございましたが、チェルノブイリ、ベラルーシの奇形遺伝というような事例の記事を私も読みました。こういう中で、マスコミも、過剰反応の中で、知能障害があるとかいろいろ報道があるわけですが、放射線というのは大変なモンスターで、どういう弊害、障害がもたらされるのか、まだすっきりしない。

 我々としては、がんとの因果関係だけでとらえて情報を発信していけばいいのか。今言いましたような知能障害、あるいは妊娠等にも弊害があるというのを保留しながらこれは発信すればいいのか。そこら辺を米倉参考人にお聞きしたいと思います。

米倉参考人 奇形についての御質問ですが、まず大事なことは、広島、長崎のデータから見ましても、非常に高線量、極めて高い線量のところでは、確かに奇形が発生しております。しかしながら、低い線量ではそれは見られていません。それから、動物実験等のデータを見ましても、百ミリシーベルト以下の低い線量でこれが出たというはっきりした論文はございません。

 そういうことから考えますと、低い線量での奇形というのは考えなくてもいいのではないかというふうに考えますが、単にがんだけではなくて、いろいろなほかの疾患でもこういう低線量での影響があるのかどうかについては、きちっとした今後の研究を続ける必要があるというふうに考えています。よろしいでしょうか。

田中委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人お二人に対しまして、貴重な御意見を御開陳いただきまして、本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして、心から厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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