衆議院

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第2号 平成24年3月16日(金曜日)

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平成二十四年三月十六日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 石毛えい子君

   理事 金森  正君 理事 田島 一成君

   理事 高井 美穂君 理事 松本 大輔君

   理事 村上 史好君 理事 馳   浩君

   理事 松野 博一君 理事 池坊 保子君

      石井登志郎君    石原洋三郎君

      磯谷香代子君    江端 貴子君

      大山 昌宏君    岡本 英子君

      奥村 展三君    川口  浩君

      川村秀三郎君    城井  崇君

      熊田 篤嗣君    瑞慶覧長敏君

      杉本かずみ君    田中美絵子君

      高野  守君    高橋 昭一君

      竹田 光明君    中野渡詔子君

      中屋 大介君    永江 孝子君

      橋本 博明君    初鹿 明博君

      花咲 宏基君    松岡 広隆君

      室井 秀子君    本村賢太郎君

      山岡 達丸君    山口 和之君

      山崎  誠君    笠  浩史君

      和嶋 未希君    あべ 俊子君

      甘利  明君    遠藤 利明君

      河村 建夫君    下村 博文君

      田野瀬良太郎君    永岡 桂子君

      古屋 圭司君    富田 茂之君

      宮本 岳志君    三輪 信昭君

    …………………………………

   文部科学大臣       平野 博文君

   文部科学副大臣      奥村 展三君

   文部科学副大臣      森 ゆうこ君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   文部科学大臣政務官    城井  崇君

   文部科学大臣政務官    神本美恵子君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      清木 孝悦君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            板東久美子君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         小松親次郎君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (文化庁次長)      河村 潤子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           唐澤  剛君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    岡田 太造君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  笹木 竜三君     竹田 光明君

  瑞慶覧長敏君     田中美絵子君

  高野  守君     中野渡詔子君

  高橋 昭一君     花咲 宏基君

  永江 孝子君     磯谷香代子君

  本村賢太郎君     松岡 広隆君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     江端 貴子君

  田中美絵子君     川村秀三郎君

  竹田 光明君     笹木 竜三君

  中野渡詔子君     熊田 篤嗣君

  花咲 宏基君     山崎  誠君

  松岡 広隆君     本村賢太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  江端 貴子君     永江 孝子君

  川村秀三郎君     山口 和之君

  熊田 篤嗣君     初鹿 明博君

  山崎  誠君     橋本 博明君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本 博明君     高橋 昭一君

  初鹿 明博君     高野  守君

  山口 和之君     瑞慶覧長敏君

    ―――――――――――――

三月七日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(黒岩宇洋君紹介)(第一四九号)

 同(今村雅弘君紹介)(第一六五号)

 同(大西健介君紹介)(第一八一号)

 同(橘秀徳君紹介)(第一八二号)

 同(松木けんこう君紹介)(第一八三号)

 同(稲津久君紹介)(第一八九号)

 同(笠浩史君紹介)(第二一二号)

 同(橘慶一郎君紹介)(第二二八号)

 同(森本和義君紹介)(第二二九号)

 同(額賀福志郎君紹介)(第二三六号)

 同(北村茂男君紹介)(第二三七号)

 同(田中美絵子君紹介)(第二三八号)

 同(高邑勉君紹介)(第二三九号)

 同(福島伸享君紹介)(第二四〇号)

 同(古賀敬章君紹介)(第二四五号)

 同(西村康稔君紹介)(第二四六号)

 同(横山北斗君紹介)(第二四七号)

 同(江渡聡徳君紹介)(第二四九号)

 同(梶原康弘君紹介)(第二五〇号)

 同(浅野貴博君紹介)(第二六〇号)

 同(木村太郎君紹介)(第二六一号)

 同(遠藤利明君紹介)(第二六七号)

 同(高橋昭一君紹介)(第二六八号)

 同(浅野貴博君紹介)(第二七七号)

 同(福田衣里子君紹介)(第二七八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二七九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二九六号)

 同(向山好一君紹介)(第二九七号)

 同(村田吉隆君紹介)(第二九八号)

 教育予算の増額、教育費の無償化、保護者負担軽減、教育条件の改善に関する請願(古賀敬章君紹介)(第二四四号)

 同(鳩山邦夫君紹介)(第二六九号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(中谷元君紹介)(第二五八号)

 同(山本有二君紹介)(第二五九号)

 同(川村秀三郎君紹介)(第二八一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二八二号)

 教育格差をなくし行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(玉木雄一郎君紹介)(第二八〇号)

 教育費の無償化、子育てにかかわる費用の大幅な軽減、安全な学校施設を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二八六号)

 同(笠井亮君紹介)(第二八七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二八八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二八九号)

 同(志位和夫君紹介)(第二九〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二九一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二九二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二九三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二九四号)

 教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善に関する請願(梶原康弘君紹介)(第二九五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

石毛委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房文教施設企画部長清木孝悦さん、初等中等教育局長布村幸彦さん、高等教育局長板東久美子さん、高等教育局私学部長小松親次郎さん、スポーツ・青少年局長久保公人さん、文化庁次長河村潤子さん、厚生労働省大臣官房審議官唐澤剛さん及び社会・援護局障害保健福祉部長岡田太造さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石毛委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石毛委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文委員。

下村委員 おはようございます。自民党の下村博文です。よろしくお願いいたします。

 まず、高校授業料無償化の三党合意に基づいた質問をしていきたいというふうに思います。

 三月の六日に、高校授業料無償化について検討していた三党実務者協議が論点整理に入りました。民主党からは田島筆頭初め三人の実務者の方々が連日笑顔で対応していただいたんですが、残念ながら誠意は全くなく、ただの論点整理で、三党としての合意が事実上ほとんど得られなかったということは残念でございます。

 低所得者の支援、それから特定扶養控除の減額により負担増となる世帯への対応、この必要性については三党で共通認識が得られたわけでありますけれども、ところが、具体的な政策や財源について、我が党そして公明党と民主党との意見の隔たりは大変大きくて、全く合意に至らなかった。

 これは、少しでも制度それから平成二十四年度予算の見直しにつながる合意は拒否するという民主党の全く硬直した態度に原因があるというふうに思っておりまして、八月の三党合意から半年余り協議を行わなかった不誠実な姿勢がここにもあらわれているということで、非常に遺憾に思うところであります。

 しかし、今後のことについては、合意文書の末尾に、可能なものから随時、施策を実施すべきことを求める、これは合意したわけでございますので、今後、この検証は終わったわけではありませんから、国会のこの委員会等の中で、低所得者支援や特定扶養控除の縮減により負担増となる世帯への具体的な対応、対策については議論をしていくということが求められて、これは三党で合意したことでございます。

 まず、高校授業料無償化の附帯決議、このときも、低所得者への支援措置、そして高校教育の質の向上、また公私間格差の是正、特定扶養控除の見直しにより負担増となる世帯への対応、これに対応すべきだということも指摘をされておりましたし、また、この実務者協議の論点整理でも指摘をされていたわけでございまして、政府において、この法の附則に三年後の見直し規定があったわけですが、しかし、直ちに対応する姿勢をとってもらうことを改めて求めたいというふうに思います。

 これからいち早く、解決するものは解決する、着手するものは着手する、そういう姿勢をぜひ文部科学省としても持っていただきたいというふうに思いますし、平野文科大臣に対して、この附帯決議、そして三党合意に基づく課題、これは全く重なったものでございますし、ぜひ、これについてはできるだけ早く対応していただきたいと思いますが、まず、大臣からお聞きしたいと思います。

平野(博)国務大臣 改めまして、文部科学委員会で質疑に立たせていただきます。初めてでございます。どうぞよろしくお願いします。

 下村先生からの今の御指摘でございますが、附帯決議並びに三党合意に基づく課題についての検討、こういうことでございます。

 特に、附帯決議の中に、法律施行後三年後に施行状況の検討を行うこととされており、こういうことでございますので、政策効果の検証については随時行っていくべきだ、かように考えております。

 また、先生からも今、民主党に対する、誠意のなさという御指摘もあったわけでありますが、私どもとしては、先月の十四日の三党幹事長の確認書を踏まえて、精力的に御議論をいただいたというふうに覚えておりますし、六日には論点整理を取りまとめられた、こういうふうに理解をいたしております。

 そういう中で、実務者の協議の結果については一読をさせていただきまして、かなり合意のとれている部分と平行線というところはございますが、あと、この実務者協議の結果を政党間の結論としてどういうふうに導かれていくかというようなことについての結果を待ちたいと思っております。いずれにいたしましても、今先生御指摘のところについては、文科省の立場で随時検討してまいりたい、こういうふうに考えております。

 いずれにしましても、政党間の協議はこれで終わりだというところの部分を確認させていただきながら、そこで決められたことについては省としては真摯に対応したい、こういう決意でございます。

下村委員 実務者協議は、もう三回にわたって論点整理をしてまとめたものでありまして、それぞれ三党が幹事長や政調会長等に報告したと思いますが、これはこれで残念ながら一つの決着、めどがついたというふうに私は思います。ですから、今後は、国会等の中でさらに議論を深める。問題意識については共有している。

 ですから、これは、それぞれ幹事長が新たに、さらに三党の中で議論するということではないというふうに思います。具体的にどう国会の中で、あるいは文部科学省が進めるかという次のステップに来ているということですから、今の答弁であれば改めて幹事長に確認するほどのことではないと思いますが、そういうふうな答弁でありましたから、改めて、それでは、平野文科大臣から輿石幹事長に対して、三党合意を踏まえて、民主党としてどうするのかということを確認していただきながら、同時に、それはそれとして、文部科学省として、この三党合意に基づいて対応するべき部分についてはしっかり対応していただきたいと思いますが、いかがですか。

平野(博)国務大臣 下村議員の今の御指摘でございますが、私の立場では、与党の中でそのことを含めて確認をとりたいと思っていますし、逆に、先生御指摘の、実務者の中である意味合意のとれている部分につきましては、私どもとしても、その部分についてはしっかりと受けとめて検証を進めたい、あるいは具体的解決に向けた施策を打ち出したい、かように考えます。

下村委員 既に、高校授業料無償化が施行されて丸二年近くになるわけでありますが、もともと、当初から我々は、高校教育に対するそもそもの理念、考え方が示されていないというふうに指摘してきました。

 三党合意では、学力や学習意欲等の効果については、政府において、詳細な検討を行う。つまり、実際、二年間たっても具体的な学力、学習意欲についての効果がまだ見られない、そういうことだったわけですね。そもそも、高校授業料無償化の理念、目的に基づく目標が定められていなければ、その検証を行うことは困難なことである。実際は検証を行っても成果、効果が言えないだろうというふうに思います。

 そもそも、平野大臣が予算委員会で、経済的理由による中退者が三六・七%も減少した、成果があったというふうに堂々と発言されていましたが、これは数字のトリックだと思いますよ。

 これは、高校中退者が五万五千人いる中で、経済的理由で中途退学しているのはその二・九から一・九%、それで三六・七%減少したと言っていますけれども、実際、数字上は六百人減っただけですから、つまり五万五千人に対して六百人ですよ。では、六百人のために四千億円の税金を投入する意味があるのか、こういうことにもなるわけですね。

 つまり、その程度のことしか成果、効果として挙げられない、あるいはその程度の答弁しかできないということ自体が私は問題だというふうに思うんですね。

 ですから、今後、しっかりとした検証だけじゃなくて、具体的に高校教育の中でこれからどんな理念、目標設定しながら、新たなそれだけの税金を投入するのであれば成果、効果を上げるかということをぜひ考えていただきたいと思うんですね。

 それから、文部科学省が我々に出した資料として、生徒による学習意欲、公共心への影響、これも成果が上がったということをデータとして出してこられました。しかし、実際に何らかの効果があったとする学校が九割あるというふうな数字が出されましたが、調べたのは四十七都道府県の中で一つの県だけなんですね。なおかつ、具体的な効果の内容も明らかになっていないという中、これはまさに独善的なデータとしか思えないわけでございます。

 改めて、高校授業料無償化の理念、目的、それから目標、これは明確にすべきであるということを提起し、具体的に生徒による学習意欲とか、公共心への影響とか、どのような内容の成果、効果があったかということについて検証、検討するかということについて、スケジュールとあわせて、改めて高校教育の無償化を導入した中での理念、目的、目標、それからどのような内容の検証を行うか、スケジュールも含めてお聞きしたいと思います。

平野(博)国務大臣 先生、理念、目的ということについては、先生の御指摘とは意を異にすると私は思っています。特に私どもとしては、高校無償化制度の理念と検証、こういうことでございます。

 まず、理念は、高等学校の進学率が九八%、こういうことに達しておりまして、国民的なある意味の教育機関になっている、その教育効果というのは広く社会に還元されていくんだ、こういうことですから、その教育については社会全体で負担していく方向で諸施策を決めていくべきだ、これが基本的な理念でございます。

 また、家庭の経済状況にかかわらず、全ての意志ある高校生が安心して教育を受けることができる、こういうことが一つの大きな効果として出てくるものと考えておりまして、家庭の経済的負担の軽減を図る、こういうことが一つの大きな目的でもございます。

 加えて、やはり世界の国々から見ましても、多くの国々は高校無償化は世界的な基本的な常識である、こういうことからこの制度を導入した、こういうことでございます。

 その中で、先生の御指摘、ではもっと具体的な検証についてはどうするんだ、こういう御指摘でございますので、現制度における詳細な検証につきましては、二十四年度のできるだけ早い時期に着手したい、私はこういうふうに思っておりますし、また、公私間の手続等、不公平さの問題についても指摘をされておりますので、どのような改善が可能になるか、このことについても、できるだけ早くこの問題については解決したい、かように考えています。

下村委員 平野大臣、それは理念ではないと思うんですね。

 既に高校教育は実施され、そして、今おっしゃったように九八%近い進学率でもあるわけであります。しかし、その中で、四千億円の税金を新たに投入するわけですから、やはり国民から見たら、それだけ効果がさらに上がる高校教育をしてもらわなければ税金を投入する意味がないというふうに普通の国民の皆さんは思われると思うんですね。

 ですから、プラスアルファといいますか、そもそも今の高校教育そのものが問題点がたくさんあると思います。これは、もちろん今の民主党政権だけの責任にするつもりはありません。これは自民党政権のときから、やはり、これは高校教育だけの問題じゃありません、日本の教育そのものが時代の厳しい変化の中で対応できていないという部分については、立法府も、あるいは行政側も、しっかりとした対応をしてこなければならない部分、それが後手後手である、あるいはいまだに対応していない部分がたくさんあるということでありますから、ただ単に、今の野田政権に対して批判をするということではありません。

 しかし、それだけの新たな税金を投入するわけですから、当然それだけのプラス、新たな高校教育のあり方ということは考えていかなければ、それはただのばらまきである。それがこの二年間においても全くないということについては、やはり真摯に受けとめて、考えていただきたいと思うんですね。

 今大臣おっしゃったように、我々もそれは、教育の中でさらに財源を投入して、より志ある、能力を持った人たちが学べる場をどう提供するかということはしなければならないことだと思いますが、ただ、やはり財源が限られていますから、無尽蔵にこの教育分野において財源が投入できるというような状況ではないわけですね。

 そういう中で、限られた財源の中で、より成果、効果が上がる教育をどう実現していくかということについて、我々は、同じ四千億使うのであれば、これは画一、均一的なばらまき、十一万八千八百円を、同じように、公私も関係なく、所得も関係なく、均等にばらまくということではなくて、所得制限を設けて、真に必要なところに対して支給すべきではないか。こういうことを、国会の場でも、予算委員会でも、前からそうですけれども、二年前から提案をしているわけでございます。

 民主党は、この所得制限について、制度の理念を大きく後退させる、先ほどもおっしゃっていましたが、そういうことで反対をしているわけですけれども、この所得制限により後退することとなる制度の理念というのは一体何なのかというのが何回聞いてもわからないんですね。

 そもそも、今回の高校授業料無償化によって、特定扶養控除の縮減によって負担増となる低所得者世帯、これは、通信制とか定時制とか、あるいはフリースクールとか、こういうところについて、さらにその通っている家庭の中でも低所得者ですね、総体的にも三十万人を超えています。

 その中で、所得制限を設けた場合にどの程度対象になるかはわかりませんが、我々が計算しただけでも半数以上は間違いなく該当するわけです。そういうところにこそ給付型奨学金制度を創設して、本当に必要なところに給付する、支援をするということを考えると、しかし、先ほど申し上げましたように、財源は無尽蔵にあるわけじゃありませんから、同じ四千億を使うのであれば、困っているところに、それから、特定扶養控除によって縮減されたことによって結果的に負担増になっている、そういうところにこそ厚く対応しなければならないのであって、その財源をどこかから持ってくるというわけにいかないですから、そういう意味で、自己完結的に言えば、高校無償化によって投入される四千億をいかに有効に使うかということで対案、提案をしているわけであるんですね。

 にもかかわらず、所得制限を設けることは制度の理念を大きく後退させるということを再三再四主張されているわけですけれども、その理念が本当に真に困ったところに財源を投入する以上に必要なのかというのは、理念の話ですけれども、わからないんですね。

 これについて、いかがですか。

平野(博)国務大臣 ここは、もう先生とかみ合わないというのか、少し認識が私どもと違うというふうに御理解をいただくしかないわけですが、私どもとしては、先ほども、何回も申し上げますが、家庭の状況にかかわらず、全ての意志のある高校生が安心して学べる、こういうことでありますし、その教育費については、所得云々ということではなくて、社会全体がそれを負担すべき、こういうところでございます。そういう観点から、所得の制限を設けずにやってきたわけであります。

 しかし、先生は、三党の実務者協議は終わったから、これはもう終わりだからいいんだとおっしゃいますが、私ども行政の立場でいきますと、政党間の協議がどうなるかというその結論を待って真摯に対応したい、こういう立場で今おるところでございます。

 その点についても、もう終わったんだと先生おっしゃいますが、政党間としての協議がもう終わったというふうにまだ私どもとしては理解をいたしておりませんので、党の中に確認はとらせていただきたいと私は思います。

 それともう一つは、高校教育ということをどういうふうに変えていくのか、今の高校教育が本当にいいのか、こういう先生の御指摘に対して、私は、ややもしますと、やはり画一的な教育体系になっている。時代の大きな変化に、もっと多様性のある社会になっているわけですから、そういう意味での、いろいろな多様化した生徒に対応する、こういうことが大事だろうというふうに思っております。

 そういう意味で、高校教育というのは非常に大事でございますから、どういうふうに変えていくか、こういうことでありますが、多様化した生徒の能力や適性に応じて、より高校教育制度を柔軟な仕組みに変えていくべきだろうと思っておりますし、先生の御指摘の、高校三年間で学んだことに対する成果がやはり目に見える形にしてまいりたい、こういうふうに思っております。

 生徒一人一人の個性を伸ばして、社会で活躍していけるようにしてまいりたい、こういう意味で高校教育を変えてまいりたい、かように考えております。

下村委員 平野大臣、答弁を逃げているとしか思えないんですけれども、実務者協議はもう終わったんですよ。終わっていないと、何でそんなふうに解釈されるんですか。

平野(博)国務大臣 終わっていないというよりも、私どもが承知しておりますのは、実務者協議は終わったということは承知いたしています。それを各党の幹事長に上げられて、政党としてどうするかという結論が、私どもとしてまだ与党の中から聞いておりませんので、そういう答弁をさせていただきました。

下村委員 いや、それぞれ、実務者協議でまとまった部分と、まとまらなかった部分、これがほとんどですけれども、それは、各党の幹事長に説明して、それでそれぞれがそういうふうに判断しただけですから、別に、新たにまた三党の幹事長が集まって高校授業料無償化について協議するということについて、実務者協議の中で提案はしていません。ですから、それでおしまいなんですよ。次のステップに移っているんですよ。

 これは三党だけの問題じゃありませんから、共産党だっているし、ほかの党だっているわけですから、今度は、この国会の平場の中で、委員会の中でこれについて議論しようという、次のステージに入っているんですよ。だから、大臣だけが三党協議にいつまでも固執されたら困るんですよ。もう次のステップなんですよ。これからは国会の中でどうするかなんですよ。

 ですから、こういう平場の中でさらに高校授業料無償化の問題で問題点を提示しながら、より改善できるものは改善してもらいたいということについては、戻ってもらったら困るんですよ。

 あとはしっかりと文部科学省が、平野大臣がどう対応するかということですから、三党の実務者協議はこれで、もう十一回やったんですけれども、それはそれで、我々は、結論としては、残念ながら合意に至らない部分は多々ありましたが、論点整理はもう終わりました。次のステップです。ですから、これは、輿石幹事長と、また戻って聞くとかいう話じゃないんですよ。

 もっと責任を持って対応していただきたいと思いますが、いかがですか。

平野(博)国務大臣 もちろん、先生、国会での議論を軽視しているつもりはありません。国会での御議論をいただいて、その中で、私どもとしても、先生方の御意見を踏まえながら一番いい方法を取り入れていく、こういうことは当然だと思っておりますが、ただしかし、その前に、政党間の協議、実務者協議をされましたから、そのことに対しての結果を真摯に受けとめます、こういう答弁までしているわけですから、そこの部分について再度確認をした上で、今先生おっしゃるとおり進めていきたいと私は思っております。

下村委員 それは、輿石幹事長に確認されるのはぜひしていただきたいと思いますが、確認しても、三党合意の結果が翻るとかいうことでは全然ありませんから、これについては、国会の中でしっかりと次のステージに行くような誠意ある対応をしていただきたいと思うんですね。

 具体的にちょっと申し上げたいと思いますが、その中の一つとして、給付型奨学金の問題があります。

 これは、現在、自公政権のときに創設した都道府県の高校生修学支援基金の延長で対応しているわけですが、支援金の返済、返還猶予やあるいは減免の判断、これは都道府県に委ねられております。

 これについて、解決の先送りであり、これは、奨学金とはいえ、借金を負わせて社会に送り出す、こういうことでありますので、ほかの高校生は授業料が無償化され何らの負担も負わないことに対して極めて不公平である、こういうことが言えると思います。

 国の制度として高校授業料無償化を行い、そのために特定扶養控除を縮減したわけですから、国の責任をもって負担増となる低所得者を救済すべきであると考えます。

 その抜本的な解決策が給付型奨学金制度であり、これは、自民党、公明党初め民主党の中からも創設を求める提案が本委員会でも、予算委員会でも出ています。文部科学省でも、事実、三年連続で給付型奨学金の概算要求をしているわけですね。

 民主党自身も給付型奨学金の必要性は認めているわけですから、高校授業料無償化法案の趣旨説明、質疑の時点において、既にそのときから給付型奨学金の創設を政府に求めているということでありますので、みずからの政策によりつくり出した問題、特定扶養控除の問題ですけれども、これは民主党の責任においてできるだけ早く、現実に負担増となる家庭が生じる前に、抜本的に解決すべき問題であるというふうに思います。

 これは今までもずっと、附帯決議でも、それから先ほど、繰り返すようですけれども、三党合意の中でも同じ問題が出されているわけですから、これはもう幹事長云々の話じゃないですよ。平野文科大臣が即決断をして解決する、対処すべきことだというふうに思います。

 これについて、いかがですか。

平野(博)国務大臣 先生御指摘のとおり、高校無償化制度や特定扶養控除の見直しは、国として、政府として決定したものであることは事実でございます。そういう中にあって、先生の今御指摘の給付型奨学金制度、こういうことで、文科省も概算要求では要求してきたことも事実でございます。加えて、三年続けてやってきたということも事実でございます。

 しかしながら、今回、そのことについては、総合的に政府としての判断として、実現がかなわなかったわけでありますが、しかし、実行でき得る方法を何としても考えよう、こういうことから、御案内のとおり、所得連動返済型の奨学金制度を整備するということと同時に、三次補正においての期間の延長を加えて、実質そういう制度設計にさせていただいた、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。

下村委員 いや、大臣、よく聞いていただきたいんですが、それは実質的な対応じゃないんですよ。

 先ほど言いましたように、高校授業料無償化という制度を導入されたことによって、特定扶養控除がなくなる。そのことによって、結果的に、通信制、定時制、フリースクール、そういう家庭の子供にとっては負担増になっている。この負担増になっている家庭において、特に低所得者層の方々に対してはしっかりとした対応をしなければ、それは制度の改悪でしょう。

 そのために、給付型の奨学金を導入することによって対処したらどうですか。事実、文科省も概算要求で今まで提案されていたじゃないですか。

 ですから、今の答弁は対策にならないんですよ、それは。軽減策じゃないんですよ。ですから、具体的な軽減策をきちっと図るべきではないですかということを申し上げているんです。

平野(博)国務大臣 そういう意味におきましては、先生、高校生の修学支援基金という、今、舌足らずで御理解いただけなかったかもわかりませんが、その基金の改正を行って対応させていただいている、こういうことでございます。

 ただし、先ほど先生言われた、ニートでありますとかそういうところについてはどうするんだというところは、再三再四、予算委員会の中でも御指摘をいただきました。

 これについて何らかの対応ができないかということで、今、財務省、厚生労働省含めて検討協議に入っているところでございますので、全くその部分については対応できていなかったという指摘はございましたので、それについて対応すべく、今、財務省、関係省庁と詰めをさせていただいている、こういうことでございます。

下村委員 二つ。

 基金の問題ですけれども、これは、だって、終わっちゃうんでしょう。その先どうするんですかということについて、まだ対応できていないじゃないですか。では、この基金はどうするんですか。

 それから、財務省のじゃなくて、私が聞いているのは、文科省としてどんな対応をするかということについて、私は具体的に、給付型奨学金等で対処するしかないのではないですかということを提案しているわけですから、財務省とは協議しているかもしれませんけれども、文科省としてというか、平野大臣としてどうするつもりなんですかということをお聞きしているんですよ。

平野(博)国務大臣 私どもとしては、給付型奨学金という制度をやはり求めていくという考え方には私は立っております。

 したがいまして、今回、たまたま所得連動型という制度にしましたが、これは一つの一里塚だ、究極のところはそういう方向性を導きたい、こういうふうに私は考えております。(下村委員「基金」と呼ぶ)これは当然、基金がなくなるということのないように対処したい、こういうふうに思います。

下村委員 大臣、事前通告しているんですから、そんな答弁ではやはりまずいですよ。

 基金について、では、いつまで使えるんですか。今後どうするんですか。

平野(博)国務大臣 先ほども言いましたように、基金については三年間延長し、積み増しをいたしました。その上に立って今後どうしていくかということは、先ほど言いましたように、何とか文科省が今まで要求してきたところが実現できるように努力はしていきたい、こういうふうに思っておりますし、結果的に実効性があるように今いたしておりますが、文科省が三年続けて要求しておりますように、その実現に向けて私は努力をしたい、こういうことであります。

下村委員 もう全然答弁になっていないですよ。では、高校授業料無償化も途中でどうするか考え直しますか。

 これは、高校授業料無償化、恒久政策であるのであれば、この支援基金についても恒久政策にしなかったら対処できないでしょう。これは二十六年で終わることになっているんですよ。今後についてどうするんですかということを質問しているわけです。

 それから、大臣、給付型奨学金ですけれども、なかなか、限られた財源の中でやはり難しいんじゃないですか。過去三年間、実際、文部科学省が財務省に要求しても実現できなかったということを考えると、みずから文部科学省が財源を考えなければいけないのではないか。

 今まで三年間だめだったのがこれから可能だと、その心意気は買いますけれども、現実的な話を、実現可能性のある話をしていただかないと困るわけですよ。

 それについては、所得制限を設ければ財源をそこから引っ張ってくることができるのではないですかと建設的な提案をしているつもりなんですね。ですから、もうちょっと誠実に答えていただきたいんですね。

平野(博)国務大臣 高校無償化は法制化をしている、ある意味では恒久化をしている、それに伴う部分としては、基金についての恒久化、こういうことをおっしゃっておられる部分があると思います。特にこの恒久化につきましては、私は一つの考え方だと思っていますが、これは十分に、奨学金事業並びに授業料の減免等々含めて都道府県の事業である、こういうところから、そことの調整をしっかり、役割分担、こういうことを踏まえて対応を検討しなきゃならない、こういうふうに思っています。

下村委員 大臣、それを聞いたら全国の都道府県知事は怒ると思いますよ。だって、高校授業料無償化は国で始めたんでしょう。国で始めたんですから、国が責任をとらなきゃおかしいですよ、それは。

 それから、そもそも都道府県格差が相当、このことによってさらに拡大しているんですね。例えば、大阪は、私立高校に通っている所得六百十万までの子供はそのまま差額の授業料も負担します、事実上無償化にしますというふうに、それぞれの都道府県の中でも、かなり上乗せして事実上の公私間格差は努力している都道府県もあるし、一方で生活保護世帯に上乗せができない都道府県もあるんです。

 つまり、高校授業料無償化によって、公私間格差も拡大しているし、都道府県格差も拡大しているし、それから本当に必要な低所得者層の人たちにとって、事実上、特定扶養控除が廃止されることによって負担増になっているという問題があって、それについては何ら今解決策について答弁されていないです。

 ただ、ちょっと時間が限られていますので、もう一つ重要なテーマがありますので、この無償化については、今後、もっと積極的、前向きに検討していただくことをお願いして、次のテーマに移ります。

 その大阪の問題なんですが、大阪維新の会が提案している教育基本条例、これについては我々もしっかりと受けとめて精査をし、必要に応じて立法措置もとっていく必要があるというふうに考えております。自民党の中でもプロジェクトチームをつくってこれについて対応しています。

 大阪維新の会の資料によると、教育にかかわる関係者、これは市長、首長、議会、都道府県教委、市町村教委、校長、教員などの権限と責任が不明確、この結果、誰も責任をとらない無責任体制になっている、教育の政治的中立性という名のもとに文部科学省を頂点としたピラミッドが形成され、民意不在の教育行政となっている、現場は教員組合のやりたい放題、こういう認識ですね。これは我々も共有しているところです。

 このことについては、むしろ国が立法として措置すべきところをその作業が行われない、そのために大阪が独自に条例案を策定するに至ったということを我々も反省しなければならないと率直に思いますし、また、今後、立法府がこれを機会に必要な制度設計について検討すべきである、その準備もしているところであります。

 平野大臣は、お地元は大阪ですから、大阪の状況というのはよく御承知だというふうに思いますが、今回、我々はこの大阪の教育基本条例全てを賛成しているわけではありません。

 ただ、現場は教員組合のやりたい放題であるということについてはそのとおりで、そのための立法措置がされていなかったということについては自民党も深く反省をしながら、これから国会における新たな立法案を出していきたいというふうに思っています。是々非々で対応していきたいと思っています。

 その中で、この教育基本条例、最大の焦点と論点となったのは、首長による教育目標の設定でした。これについて、二月に大阪府議会に提出された修正案において、首長が教育委員会と協議して教育振興基本計画を作成し、議会で議決するということになったそうであります。

 原案と違って、修正案においては、知事による教育目標の設定は地方教育行政法に抵触するということで、この修正案は、教育委員会と協議して、教育振興基本計画を作成して、議会に提出するということになったということでありますけれども、原案ではなくて修正案ということになると、これは地方教育行政法に抵触しないということでよろしいんでしょうか。

平野(博)国務大臣 微妙なところを御指摘されていると思いますが、私どもとして理解をしておりますのは、当初の維新の会の案にあった教育目標の設定については、知事が府教委と協議して、教育振興基本計画の案を作成し、議会で議決し、その中で教育目標を設定するという修正案になったという、このことでよろしいんですね、修正案としては。(下村委員「はい」と呼ぶ)これは承知をいたしております。

 したがいまして、条例案につきましては現在府議会で御議論いただいていると思っておりますし、現時点でこの部分が法令に抵触するか否かについて、私は、今議論をされているところでございますから、所見として述べない方がいいと思いますので、控えたいと思っております。

下村委員 しかし、抵触するということであれば、それは問題なんじゃないですか。文科省として、それははっきり言うべきことなんじゃないですか、抵触しないならしないと。はっきり言ってください。

平野(博)国務大臣 これは、議会での審議に影響を及ぼす、こういうことは控えたい、こういうことから、私は今控えているところでございます。

下村委員 何で府議会で影響することについて控える必要があるんですか。違法であれば違法で、きちっと最初に明示しなければ、それは無責任体制でしょう、違法でなければないでいいんですけれども。それは、国としての姿勢ははっきりすべきじゃないですか。

 国が結論を言わないまま、府議会で一定の結論が出た。その結果、それがもし違法であったということであったら、余計もっと問題になるでしょう。その前に国がはっきりさせるというのは当然のことじゃないですか。

平野(博)国務大臣 私としては、現時点では違法とは言えない、こういうふうに認識をしておりますが、ただ、府議会で議論をされていますから、私の立場でこのことについてコメントすることは、私は差し控えたい、こういうことでございます。

下村委員 そういう無責任な体制が地方自治体から国に対して不信感を買っているんですよ。それは法律ですから、法治国家ですから、ルールにのっとって、違法なのか違法でないのかということを明確に言えなかったら、それは行政の長たる関係行政の責任大臣とは言えないんじゃないですか。

 今の話は、直ちに違法とは言えないということを前提で、ちょっと議論を深めたいというふうに思いますが、そもそもそういうことだと思いますよ。

 だって、もともと原案でやろうと思っていたということですけれども、それは違法なんだ、だから修正したんだと。修正案については違法ではないという、ある意味で、大阪の方も、それは文科省との事前の相談なり打ち合わせなり、何らかの形がなければ修正をするはずがないですから、そういう形になったと思うんですね。

 ただ、今後どういう形になるかというのは、予断を持って言えない部分があるということは事実です。

 その予断を持って言えない想定でちょっと申し上げたいと思うんですけれども、この修正案ですね。修正案には、知事と教育委員会の協議が調わない場合を想定した条文が設けられています。

 実際に基本計画を策定する場合において、教育委員会の職務権限に属する事項について、知事と教育委員会の間で意見の不一致を抱えたまま、知事が教育委員会を押し切って基本計画の案が作成され、議会の議決を経て基本計画として作成される可能性もある。

 つまり、知事が教育目標を勝手に設定するのは、これは違反になる。教育委員会の職務権限に属する部分については教育委員会が判断することだという部分について、今回の修正案で、知事が、あるいは首長が、教育委員会と協議して、そして教育振興基本計画を作成する、これは違法とは言えないというふうに修正したわけですね。

 修正をしたわけですけれども、しかし、今申し上げたように、最終的に、知事と教育委員会が意見がまとまらないまま議会に提出した。議会においてその基本計画が策定されるということについて議会の了承を得たといったときに、つまり、教育委員会とそれから知事では合意がされていないですね。このことについて、法的に何か問題が生じるかどうかということについてちょっとお聞きしたいと思います。

平野(博)国務大臣 知事と教育委員会との間で問題が生じる可能性があった場合、こういうことでありますが、私どもとしては、地教行法に求める教育委員会と首長の教育事務に関する職務権限の分担を尊重してほしいという気持ちが基本でございます。

 しかし、どういうふうにやるか、こういうことでありますが、ただ、そういう流れの中で、私から、先ほども言いましたように議会中でございますから言いたくはありませんが、一般論として言えば、やはり、法令に抵触するということが起これば、何らかの指導助言というのは当然していかなければならない、こういうふうに思います、想定ですから、なかなか難しい問題はありますが。

下村委員 議会において教育基本計画が策定されるということについて了承され、つまり手続上は問題がない、しかし、今の危惧のように、実際に、首長と教育委員会の職務権限との関係で問題が生じることがあるかもしれない、この場合のことですね。

 そのときに、文部科学省が法的に何らかの対応を行い得るのかということで、今答弁されたことが本当にできるのかどうかということについて、私、確認したいと思うんですね。

 地方公共団体の教育行政の遂行に違法がある際に発動される可能性があるのが、地方教育行政法の文部科学大臣による是正要求、四十九条、それから是正指示、五十条です。

 実際にこれが可能なのかどうかということについて質問したいと思うんですが、具体的に、沖縄県の八重山地区の教科書採択について、竹富町が無償措置法に違反した状態である、このことは文部科学省も認めているわけです。しかし、今日に至るまで、この是正要求、第四十九条、これを文部科学省は行っていないんですね。違反した状態であるというふうに認めているにもかかわらず、もう来月、四月、新学期が始まりますね。そのまま放置している。

 我々は、是正要求を行うべきではないか、是正指示を行うべきではないかということを再三再四文科省に言っているわけですが、いまだに行われない。その理由は何ですか。

平野(博)国務大臣 八重山のお話が出てまいりましたが、これは教科書採択の関係での御議論だと思います。

 特に無償措置法に反した状態が起こった、無償でやるためには共同採択をしなさい、こういうことですが、そういうことに反した状態になっておられたわけでありまして、文科省としても手をこまねいていたわけではありません。再三再四……(下村委員「端的に答えてください」と呼ぶ)はい。

 再三再四、県の教育委員会を通じて、無償措置法に、採択するよう指導してきたところでありました。

 では、先ほど言われたように、是正要求をなぜしなかったのか。このことについて、できますのは四十九条で、市町村教育委員会の教育に関する事務の管理及び執行が法令の規定に違反するものがある場合、プラス、児童、生徒の教育を受ける機会が妨げられている、こういうことで、いわゆる教育を受ける権利が侵害されたときにそのものを発動する、こういうことでございます。

下村委員 文部科学省が竹富町は無償化措置法に対して違反した状態であると言っているにもかかわらず、実際は是正要求ができない事例であると今お答えになりました。

 同じように、是正指示、もっと強い法的権力ですが、これは第五十条、これについて、今日まで発動された事例がありますか。

平野(博)国務大臣 今まで、是正指示、こういうことができる規定になっておりますが、発動されたことはございません。

下村委員 地方教育行政法、是正要求、四十九条、それから今の是正指示、五十条、これについて、事実上は両方発動されたことがないということですよね。

 なぜ、問題、違法状態にもかかわらず、例えば竹富町なんかもそうですが、実際は両方、是正要求それから是正指示、これが一度も発動されていないんでしょうか。

平野(博)国務大臣 この案件につきましては、基本原則というのは、地方自治法に定める関与という制度設計から起こっておるものでございまして、第五十条の指示というのは、先ほど申し上げましたように、その要件は、生徒等の生命身体の保護のため、緊急の必要性がある場合にいわゆる権利行使についての部分を限定している、こういうことでございますから、そういうことがなかなかできにくい環境にある、こういうことでございます。

下村委員 同様のことがこれから大阪で起きるかもしれません。大阪維新の会が、教育委員会の設置を自治体の選択制とする、これを大阪維新の会の船中八策、選挙公約に示すと。事実、今回、それをしようと橋下市長がしているわけですね。

 もし、これが議会の同意のもとに、教育委員会の設置を自治体の選択制とするということを大阪で議決した場合、この場合、文部科学省はどのように対応されますか。

平野(博)国務大臣 これは、今議員が言われたことというのは、今大阪の状況の中で生じるということは、私自身としては考えにくいと思います。

 しかし、そのような事態となって違法な事務処理が行われた、法令の規定に違反しているということから、文部科学大臣としては、地方自治法に基づく、二百四十五条だと思いますが、是正の要求をすることは可能だと思います。この場合は、地方公共団体は、是正のために必要な措置を講ずる法的義務を行うことになります。

 なお、御指摘のとおり、地教行法五十条に基づく文部科学大臣による是正の指示は、私は、現行ではできない、こういうふうに思います。

下村委員 これは、今御指摘のように、我々もといいますか自民党も、安倍内閣のときにつくった教育再生会議の中では、この教育委員会の設置については、自治体の選択制も考えるべきだというのが提言の中では入っております。

 ですから、これについて全く反対の立場ではないんですが、ただ、もろ刃のやいば的なところがありまして、誰が首長になるかによって相当、そもそも今、教育における政治の中立性が担保されているとは全く思いませんし、御党の輿石幹事長もそういうふうにおっしゃっているわけですね。

 そういう中で、実際にこの教育委員会のあり方、自治体の選択制にするということはかなりリスクがありますが、しかし、もし大阪議会がこれを議決した場合に、本当に国が是正措置なり是正勧告なり指導助言等の中で対応をしようとしても、それについて対処を国ができるのかどうかということについては、私は相当の疑問を持っておりまして、一般的に、一義的に、地方自治法全体における国と地方自治体との関係として捉えた場合に、このような違法措置を国が是正することが事実上はできないのではないか。

 つまり、それぞれの自治体がそういうふうにしてしまった場合に、それを違法として対処することが本当にできるのかどうかということについて、もう一度確認したいと思います。

平野(博)国務大臣 先生はもうよく承知の上で話されていると思っております。

 そういう意味では、私、先生のおっしゃるところについては、ある意味共感を持っているところも実はあるわけであります。

 義務教育の最終的責任は国が負う、こういうことだと私は思っております。地方公共団体の教育行政に違法行為があったときに、文部科学大臣が是正することができるように検討しなきゃいけない、こういう思いは私自身も共感をするところでございます。

 しかし、今日までのこの教育行政の変遷を見てきたときに、私は、いろいろな点で課題があろうと思っております。

 特に一番大きな問題というのは、やはり平成十一年の地方分権の一括法での機関委任事務の廃止、教育長の任命承認制度が廃止、こういうところがいろいろな意味で影響が出てきているのかな、私はこういうふうに思っております。

 したがいまして、自民党政権でも、平成十九年に、伊吹大臣のときだったと私は思いますが、そういう意味で是正のことができるように一歩前進といいましょうか改革をされたわけでありますし、改めて私は、こういう議論については、いろいろな部分、これは特に国と地方のあり方の議論の中でも、義務教育についてはどうするんだ、こういうことについては、先生の御指導もいただきながら、私はやはり慎重な議論が必要だと思いますが、検討していくべき課題であろう、このように思っております。

下村委員 今大臣の答弁のように、地方自治について、地方でできることはできるだけ地方に移譲するということについては私も賛成いたします。

 ただ、一方、憲法には教育の義務も定められております。子供たちの教育を受ける権利を守り、義務教育の最終的な責任を国が担うという観点から、地方公共団体の教育行政に違法行為があった際に、文科大臣がきちっと是正措置を行うことができる、このことについてはやはり法改正をしておく必要があるというふうに思いますので、これについてはぜひ文部省としても検討していただきたいというふうに思います。

 時間が限られていますので最後にしたいと思うんですが、先ほどの大阪の問題も教育振興基本計画というのがキーになっているんですが、この教育振興基本計画というのは、新しく教育基本法がつくられて、その関連によってこの施策についてきちっと行おうということで、教育振興基本計画にのっとって国もスタートしているという状況にもかかわらず、一方で、本当にその教育振興基本計画どおりにやっているかというと、民主党政権になってから大幅にこれを逸脱した予算が組まれているというふうに思います。

 例えば、教員免許更新制の廃止に向けた見直しとか、それから全国学力・学習状況調査の縮減とか、それから道徳教育の縮減、これも半分ぐらいに予算が減ってしまいました。これは、閣議決定された教育振興基本計画に違反することである。

 そもそも、その三つというのは、これは日教組が強力に、それぞれ、廃止しろ、あるいは縮小しろということを要請していた部分でありますが、民主党政権になってそれがそのとおりに反映することによって、結果的に教育振興基本計画に違反する、そういうふうになってしまっているというふうに思いますが、どういうふうに文科大臣は考えられますか。

平野(博)国務大臣 先生もすごく思い込まれて御発言されておるように思いますが、教育施策の実施に当たっては教育振興基本計画に沿って取り組むべきものと私は考えております。

 我が省におきましても、計画に定められた基本的方向性に沿って取り組みを進めておるところであります。

 特に、今回新しく、今現在、中央教育審議会で、教員の質でありましょうとか、育成、採用、あるいは全国の学力・学習状況調査等についてはきめ細かい調査を行う、こういうことですから、決して、ゆがめられている、こういうことではないと思っています。

 また、道徳教育についても、私は、各学校に道徳教育の推進教師を配置する等々を含めて指導を充実させてきている、こういうことですから、先生の御指摘は御指摘として真摯に受けとめますが、文科省としては、そういうことではなくて、方針に従って、計画に従って進めているということについても御理解をいただきたいと思います。

下村委員 これは、平野大臣、全くわかっておられないと思います、今の答弁。実際に予算が減っているんですよ。減っているからそういうふうに申し上げているんであって、思い込みでも何でもなくて、客観的な数字の上で今指摘をしているんですよ。

 ですから、そんな答弁は全く認められない答弁ですが、もう時間がオーバーしましたし、この問題は引き続き馳議員の方から質問されると思いますので、これについては次回に譲りたいと思いますが、今の答弁のような答弁は答弁になりませんよ。数字できちっと出していただかないと、予算として。

 一応終わります。ありがとうございます。

石毛委員長 次に、馳浩委員。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩です。

 今の下村委員の質問を引き継がせていただきます。

 国会が開かれるたびに、大臣所信を拝見するのは楽しみにしております。いただきました資料四ページ、「平成二十五年度からの第二期教育振興基本計画の策定に向けて、しっかりと検討を行ってまいります。」こういう一文がございます。

 大臣、今、下村さんの問いかけに答弁をされましたが、第一期の教育振興基本計画を検証した上で、この所信に書いてあります第二期教育振興基本計画の作成に入るというのが当然だと思いますが、まずそれでよろしいですか。

平野(博)国務大臣 当然そういう観点で、その流れの中で、新たな問題が出てくれば、中教審を含めて御議論いただいて、次の制度設計に入っていく、こういうことであります。全く無視をしてつくっていく、こういうことではございません。

馳委員 先ほどのやりとりを聞いておりましたら、学力テストにしても、悉皆調査が抽出調査になった。道徳のテキストにしても、やはり予算が削減をされた。あるいは、理科の支援員、これは現場は、小学校の理科の支援員ですよ、実験等をサポートするような予算措置、これも事業仕分けで削られましたね。なくなってしまうんですよ。

 そう考えると、第一期教育振興基本計画で計画をつくり、それに基づいた予算措置をし、現場でも事業化をしていたものが、やはり政権交代の後にカットされたり、制度の中身が縮小されたりしてきているという事実があるので、我々はそこを指摘している。下村さんが言いたかったのはそこなんですね。大臣、いかがですか。

平野(博)国務大臣 予算は予算として、より効率的に進めていく、こういう観点が一方では必要であろうと思っています。悉皆調査がなくなった云々ということはありますが、我々としては、よりきめ細かい学力調査をしよう、こういうことでございますので、私は、方針、計画については、その方向性に沿ってやっていると自負をいたしております。

馳委員 これは見解の違いではないと私は思うんですよ。なぜならば、義務教育だからなんですね。全ての子供に憲法に基づいて教育を保護者が受けさせる義務を負う中で、やはりその成果を問う。そこに、第一期教育振興基本計画の大きな意味と意義があったということをまず申し上げておきます。

 所信質疑なので、二、三点確認をいたします。

 質問通告していませんので、大臣の瞬発力が問われるのと、答えられなかったら答えられないと言ってください。

 私は行間を読むのが大好きで、一つ目です、この所信に、どこに平野大臣の教育観があらわれているのかなと。そこで、結婚観に絞ってお聞きしたいと思います。

 教育基本法で、家庭教育、学校教育、地域の教育と、こういうふうにうたいました。結婚観をどのように養っていくのか。結婚するのは自由でしょう、一々文部科学省や国会で議論されたくないという、アンケートに対する答えが、とても現代の二十代、三十代には多いんですよ。

 大臣は結婚されていますよね。結婚するときにどういう結婚観を持っていたのかということを、まずちょっとお聞きしたいと思います。嫌だったら答えなくていいですよ。

平野(博)国務大臣 せっかくの御質問ですから。

 結婚観というふうに改めて言われますと大変つらいものがございますが、私としては、学校を出て企業の寮に入りましたね。寮に入って、四年でその寮から出される。私は、こういうことが一つのスイッチでもございました。

 いま一つは、やはり、結婚をして円満な家庭を築くことによって、また、子供をつくって次の世代に、自分の生きざま、さらには我が国の、私の生活観を含めて、体験したことを子供に引き継いでいく。また、その子供が新たなる発想でこの社会に貢献していただきたい、こういう願いのもとに結婚をいたしまして、今三人の子供がおります。

馳委員 現代の二十代、三十代の若者たちの結婚観で必ず出てくる言葉は、結婚するのは自由でしょうという部分に対する違和感を私は持っているので、実はお聞きしたんですね。

 教育行政を担うリーダーである文部科学省の大臣として、結婚の果たす公的な役割というものをやはり認識した方がよいのではないのかな。そういう観点を持って義務教育や高校教育や大学教育や社会人教育に対して取り組む一面がないと、確かに、個人のことですので結婚は自由です、私は否定しているのではありません。同時に、恋愛をするということ、結婚をするということ、家族を持つということ、親をみとるということ、子供を育て上げるということには、多くの社会的な制度上の義務と責任が伴うわけであります。

 ここの理解がないと、何のために勉強するのか、何のために生きるのか、ここのモチベーションに対して、教育によるモチベーションに対する、やはり、何のためにという部分の模索が出てこないと私は思うんですね。

 だから私は、あえて、平野大臣とはどういう人なのかな、どういう結婚観を持っていて、どういうふうに子供たちを、あるいは社会教育を支えていこうとしているのかなということを聞きたかったんです。改めて、私の指摘も踏まえてお答えいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 私は、人間の営みとして、この前にも、予算委員会だと思いますが、福島のある方が言われたことに感動しました。福島で生まれて、福島で育って、福島で結婚をして、福島で子供を産んで、孫を見て、こういうことで、福島で亡くなりたいと。郷土を含めて、郷土愛に満ちたこの生き方というのは、非常に私は敬意を表します。

 いま一つは、私は、結婚という行為、これは、今先生御指摘のように自由でございます。しかし、我が国に生まれた日本人として、この国を支えていくということはやはり非常に大事なことだと思っていますし、その責務があると私は思っています。そのための教育をどうしていくのか。

 あるいは、社会を支えていくのには、一人で支えていく場合もありますし、家庭を持ち、子供をつくって支えていく、こういう多様な生き方があると思いますが、いずれにしても共通していることは、我々としては、この国を持続的にやはり発展させていく、この社会を構成する要員であることは事実ですから、その自覚を持って生計を立てていくことが大事だと私は思っております。

 そういう中にありまして、これは馳先生に申し上げたかどうかわかりませんが、私の家庭は、私が三十幾つまででございますが、祖父が全盲でございました。そういう家庭の中で私は育ちました。したがいまして、今の教育の中にあっても、なりたくてなったわけでない障害者の方々もたくさんおられるわけであります。したがって、障害者、健常者という区別なく、この社会の構成として、ともに学び合う、ともに生活し合う、ともに社会を支える、こういう社会であってもらいたい。また、そういうふうになるための施策は、教育の局面において、今私の任務がそういう立場でありますから、そういう生きざまのもとに教育はあってもらいたいなということを私は強く念じているところでございます。

馳委員 結婚観から入りました。後ほど我が党のあべ俊子委員から性教育についての質問もありますので、その辺はまたあべさんに譲りながら。

 もう一点、これは奥村副大臣に聞いた方がいいかもしれませんが、この大臣所信にはロンドン五輪という言葉が入っていないんですよ。ことしの我が国にとっての大きなイベントの一つです。まさしく国民が日の丸を掲げ、同じ日本人が頑張っている、いや、世界のみんなが頑張っている、国を代表して。これに向けて応援をする言葉も何もないんですよ、所信に。これは私は残念ですが、大臣、いかがですか。

平野(博)国務大臣 言葉として、確かにそういう部分では入っておりませんが、私は、我が国の代表選手がオリンピック、パラリンピックを含めて頑張られるわけでありますから、しっかり応援する、こういうことを含めて思いは持っております。ただ、言葉として出しているかどうかということについては申しわけなく思っていますが、基本的には、やはりしっかり頑張ってもらいたい、国を挙げて応援をしていかなきゃならない、こういうふうに思っております。

馳委員 それでは、準備をしてまいりました特別支援教育そして少人数学級の問題について、質問に移りたいと思います。

 平成二十四年二月十七日金曜日、文部科学省特別支援教育課長の千原由幸さんと課長補佐の稲葉敦さんが、石川県金沢市の中央小学校の芳斎分校を視察されました。その目的は何ですか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 特別支援教育課長及び同課長補佐二名が金沢市立中央小学校の芳斎分校を訪問したところでございますが、この目的といたしましては、現在、中央教育審議会の初等中等教育分科会の中の特別支援教育の在り方に関する特別委員会におきまして、重要な論点となっております教員の特別支援教育に関する専門性の向上について、その検討を進める上での大いに参考となる学校ということから訪問をしたところでございます。

馳委員 視察の結果、どういう点が参考となりましたか。その教育的な課題を教えてください。

布村政府参考人 お答えいたします。

 特別支援教育を推進する上で教員の専門性の向上は重要であるという認識のもと、このため、個々の教員の専門性を高めるということとともに、学校全体で組織的に取り組みを進めていくことも大切であるということが、まず一つ、この学校訪問を通じて実感があったというふうに聞いております。

 また、紹介のございましたこの分校におきましては、特別支援学級で自信をつけさせて、もとの小学校に戻すというような取り組みにつきましても、昨年八月の障害者基本法の改正において触れられておりますとおり、十分な教育が受けられるよう、「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る」という規定がございますけれども、そういった面にも実践的なよきモデルとなる実践例であるというふうに伺ったところでございます。

馳委員 私も、きのう、金沢市教育委員会の担当者に、どういう事情だったのか、お話を伺いましたので、ちょっと紹介いたします。

 芳斎分校は、実は元芳斎小学校なんです。市街地の小学校統廃合で廃校寸前のところを分校として残りました。分校なので、耐震化も、建てかえの計画もおくれています。

 今では、金沢市の特別支援教育担当教員の専門性育成の中心的な学校ともなっています。金沢市の浅香久美子教育長は、来年度、ここを拠点校として公開授業を行い、教員研修の場とする施策を準備しています。

 芳斎分校では、独自の校舎を生かし、小集団での学習を重視し、児童が主体的に学習に取り組む姿が見られています。法的には中央小学校の特別支援学級という位置づけでありますが、保護者の希望により、中央小学校以外の児童も受け入れています。ここでしっかりと自信をつけることによって、もとの小学校のクラスに戻るケースも多々あるそうです。

 また、全教員が全児童を把握しており、児童理解に関する職員会議においては、全教職員が意見をぶつけ合い、専門性の向上を図っているということでありました。

 現代は児童生徒の減少期でありますから、都会の中心市街地では、小学校の統廃合も現実の問題です。金沢市が取り組むこういう手法で、特別支援教育のシステムを再構築し、教員の専門性を向上させるということは、とても重要ではないかと私も思いました。

 文部科学省に参考にしていただきたいと思い、きのういろいろと事情を伺った上で、今報告をさせていただきました。

 大臣の所見を伺います。

森副大臣 お答えいたします。

 今先生の方から、金沢市の特別支援教育担当教員の専門性育成の中心的な学校である金沢市立中央小学校芳斎分校の様子、その取り組みについて御紹介をいただきました。

 児童生徒数の減少に伴う学校の統廃合等種々の課題もある中で、地域の実情に応じて創意を工夫し、障害のある子供に適切な教育を行うことは、文部科学省としても大変重要であるというふうに考えておりますので、参考にさせていただきたいと思っております。

馳委員 平野大臣、参議院での予算委員会がございますから、もう退室されて結構ですよ。

 さて、では、引き続き森副大臣にお伺いした方がいいと思いますので、質問を続けます。

 教員養成の段階で、特別支援教育に関する知識は免許取得の必修講座となっていますか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 大学における教員養成課程におきましては、国語、理科などの教科に関する科目のほかに、教員として共通に学ぶべき科目として、教職に関する科目を履修することが求められております。

 学生が幼稚園、小学校、中学校、高校等の免許状を取得しようとする場合に、この教職に関する科目におきまして、障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程について扱うことと文部科学省において示しており、これを踏まえて、各大学の養成課程におきまして特別支援教育に関する内容を学ぶという課程になってございます。

馳委員 教員採用後の初任者研修で、特別支援教育は必修となっていますか。

布村政府参考人 初任者研修につきましては、任命権者であります各都道府県の教育委員会が原則としてその内容を定めるということになってございますけれども、平成二十二年度におきましては、初任者研修を実施した全ての都道府県教育委員会において、特別支援教育に関する研修が行われているというふうに把握しているところでございます。

馳委員 特別支援教育の研修は、座学方式ですか、実習方式ですか。

布村政府参考人 研修の方式についてでございますけれども、教員研修をどのような内容、方法で行うかにつきましては、研修の実施主体でございます教育委員会の判断によるところになりますが、文部科学省としては、講義だけではなく、実践的な演習を取り入れるなどの工夫をした研修の実施が望ましいというふうに考えております。

 このような観点から、例えば法定研修である十年経験者研修につきましては、実際の授業実践を通じた授業研究や教材研究などを通じた研修の実施に留意するよう教育委員会等に通知しているところでございます。

 また、特別支援の関係では、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が実施いたします特別支援教育専門研修におきましては、具体的な事例を通じて個別の指導計画を作成する、あるいは指導方法について演習をする、そして実際的な教材を作成するなどの演習や、協議方式を取り入れるなどの工夫を行っているところでございます。

馳委員 特別支援教育学級での専門的な資格を持つ教員の配置状況はいかがですか。

布村政府参考人 特別支援学級での教員の配置状況についてとなりますけれども、特別支援学級を担当する教員のうち特別支援学校教諭の免許状を有する者の割合につきまして、平成二十三年五月現在、小学校で三二・八%、中学校で二六・九%、小中学校合わせて三〇・九%という実情でございます。

馳委員 私、特別支援教育学級と質問しまして、今、布村さんは特別支援教育学校というふうにおっしゃいませんでしたか。

布村政府参考人 失礼いたしました。

 特別支援学級の実情をお答えしたところでございます。

馳委員 はい、わかりました。

 では、布村局長、この三割という数字をどう評価するかなんですね。

 私、皆さんには渡しておりませんが、ちょっと調べてまいりました。例えば、平成二十四年度の青森県の公立学校教員採用候補者選考試験実施要項を見たら、「特別支援学校教諭」という項目があるんですよ、青森県は。「特別支援学校教諭」で、中学部、高等部で三十五人採用見込みです、こう出ているんですね。やはり「特別支援学校教諭」という項目立てがあるんです。

 ところが、私の地元、石川県の教育委員会を見ると、ないんですよ。中学校教諭及び高等学校教諭「(特別支援学校の中学部及び高等部を含む)」と。これは百六十人程度となっていて、ここが、取り組む教育委員会の意識の差だなと私は思いましたし、専門的な資格を持っている人がわずか三割しかいないということの、やはり一つのブラックボックスじゃないかなと思いました。

 ここは政策ですから森副大臣にお伺いした方がいいと思うんですが、発達障害者の実態調査を今されていると思います。秋にも報告が出るはずです。そうすると、特別支援教育学校、学級含めて、専門性のある資格を持った教員が継続的に配置をされる、この方針はやはり文部科学省として持たなければいけないんじゃないでしょうか。いかがですか。

森副大臣 お答えいたします。

 今先生御指摘のように、特別支援学級を担当する教諭につきましては、まず原則として、教育職員免許法上は小中学校等の教諭免許状を有していればよく、必ずしも特別支援学校教諭免許状を有している必要はございません。しかし、その専門性の向上の必要は文部科学省としても認識をしているところでございます。

 その観点から、特別支援学校教諭免許状の保有や専門的な研修の受講などを通じて担当教員の専門性を向上させることが望ましいと考えておりまして、各都道府県教育委員会等に対し、特別支援学級を担当する教員の専門性の向上を図るよう求めてきたところであります。

 引き続き、各都道府県教育委員会に対しまして、専門性を有する教員の特別支援学級への配置、特別支援学級担当教員を対象とした研修の充実を求めていくとともに、特別支援学級の担当教員を含めて、特別支援学校教諭免許状の取得を促進するための講習会、指導者養成講習会を実施するなどの支援を充実してまいりたい、このように考えております。

馳委員 細かいことをもう一つお伺いします。

 一特別支援学級の定数は児童八人です。多過ぎるとの意見を現場からいただきました。個別指導することも多々ありますので、そうすると、四、五人が限界だな、こういうふうに伺いました。文部科学省としての見解を伺います。

布村政府参考人 小中学校における特別支援学級の学級編制の標準につきましては、先生御指摘のとおり、現在は一学級で八人が標準という位置づけでございます。障害のある児童生徒に対して十分な教育を提供できるという観点から、これまでも着実な改善に努めてきたところでございます。

 平成五年からは八人となってございますが、それ以前は十人、あるいは十二人という実態でございました。そして、平成二十三年五月一日現在、特別支援学級の平均児童生徒数は、小学校で三・三人、中学校で三・四人という実情にございます。複数の学年の児童生徒を同一学級に編制することが認められているという面、それから在籍する児童生徒の障害が重度、重複化しているということから、より個に即した教育が求められているという実態もまたある現状でございます。

 文部科学省といたしましては、このような現状を踏まえつつ、特別支援学級に在籍する児童生徒数が急速に増加しているという状況にも対応できるように、特別支援教育の充実について検討していきたいというふうに考えているところでございます。

 あと、先ほど、入試の関係を少しだけ補足させていただければと思いますが、先生御指摘のとおり、青森県では特別支援学校教諭の採用枠が明示されておりますけれども、石川県の例では、小学校教諭の中で、特別支援学校の小学部を含むという形で採用枠を設けられているというふうに伺っております。

馳委員 これは、森副大臣、お願いなんですね。

 私がなぜこの芳斎分校のことを申し上げたかというと、もともと芳斎小学校だったんです。近隣の中心市街地、人口も多かったので幾つかあったのが、やはり減少期に入って、中央小学校というのが新しくできて、統合されたんです。

 ただ、地域の皆さん方の声で、何とか学校を残してほしいという中で、やはりこの特別支援教育の問題は課題としてございましたから、金沢市の教育委員会として、特別支援教育学級、一応小学校はあるんだけれども、その分校という形で芳斎分校を残し、そこでやはり専門性の向上、特に教員の専門性の向上、それからきめ細かい児童に対する支援、ここをやっていこうということで今日に至っており、新年度は、浅香教育長がここで公開授業をしながら、さらに先生方の専門性を高めていこう。なぜか。通常学級にも普通に発達障害児などの障害のあるお子さんがいらっしゃるからです。

 これはまさしく、平野大臣が所信でお述べになられたようなインクルーシブ教育の、やはり一つの典型だと私は思っているんですね。中心市街地の活性化策という、ちょっと経済産業省的な言い方もあるかもしれませんが、やはり子供たちが通ってくる学校があるというだけで、それは商店街だって、地域のほぼ高齢者の皆さんだって、とても和やかな温かいコミュニティーづくりになっているんです。

 ぜひ、森副大臣にも、新潟から近うございますから、この金沢の芳斎分校を視察に来ていただき、教職員の話を聞いてやってほしいな、保護者の話を聞いてやってほしいなと思いますが、私のお願いを聞いていただけますでしょうか。

森副大臣 ありがとうございます。

 私も、その小学校のお話の説明を受けまして、十四、五人の生徒さん、その子供さんたちを全ての担当の教職員が把握して、その子供さんたちの状態等について、いろいろな意見を闘わせながらという報告がございました。その中で、子供たちにとってよりよい教育環境を整えるために、よりよい教育を実施するために、御努力をされているというふうに伺いました。

 大変歴史のあるそういう取り組みであるというふうに考えておりますので、ぜひお邪魔をさせていただきたいと思いますので、そのときには、先生、どうぞよろしくお願い申し上げます。

馳委員 ありがとうございます。

 続いて、財務省の吉田政務官、お待たせいたしました。少人数学級の問題について質疑をさせていただきます。

 まず、文部科学省に伺います。平成二十四年度の予算概算要求段階で、義務標準法改正を前提としての小学校二年生の三十五人学級分の予算要求をしましたか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 昨年九月の平成二十四年度予算概算要求におきましては、小学校二年生の三十五人以下学級の法改正による制度化を前提として、これに必要な四千百人について定数措置を要望させていただいたところでございます。

馳委員 吉田政務官に伺います。

 その概算要求に対して、財務省はどのような査定をしましたか。

吉田大臣政務官 四千百人の要求をいただいたわけですが、結果として、小学校二年生の三十五人以下学級について、法改正による対応は行わないということになりました。

 ただし、その実質的な実現のために必要な加配定数、これを九百人増加させて、実質的に小学校二年生三十五人以下学級を実現するということとなりました。

馳委員 なぜ法改正を認めなかったのでしょうか。

 本音で言いますね。恒久的な制度にさせないためですか。それとも、法改正をしない方が現場にとってよいという判断をされたんですか。その査定をした理由をお聞かせください。

吉田大臣政務官 査定の理由でございますが、一つは財政状況、それから大震災という背景もございました。

 具体的には、政府・与党会議、日本再生重点化枠についての、この会議で取りまとめというものが行われましたが、それを御紹介します。

 小学校二年生の三十五人以下学級について学力等への政策効果を全国レベルで検証した上で検討する、それまでの間、地方での進展や公務員人件費改革を十分踏まえ地方の自主的な取り組みを支援すること、こういう取りまとめを踏まえて対応したところでございます。

馳委員 吉田政務官に引き続き伺います。

 平成二十三年度予算の編成段階において、義務教育費国庫負担金に一律一〇%のマイナスシーリングをかけましたか。

吉田大臣政務官 かけました。

馳委員 その理由は何ですか。

吉田大臣政務官 二十三年度の概算要求組み替え基準、従来はシーリングという手法でなされてきたわけですが、そのときは、政権交代後でございますが、中期財政フレームというところで歳出の大枠という考え方がございますが、その範囲内で予算の大胆な組み替えを行う、そのための土台づくりを行うということで、この義務教育費国庫負担金も含めて一〇%のマイナスシーリングがかかった、こういうことでございます。

馳委員 戦後、我が国の義務教育費国庫負担金にマイナスシーリングをかけたことはありますか、吉田政務官。

吉田大臣政務官 マイナスシーリングという考え方は、昭和五十八年度予算に係る概算要求以降ということでございますが、それ以降は、義務教育費国庫負担金にマイナスシーリングがかかったということはございません。

馳委員 平成二十四年度の予算編成で、義務教育費国庫負担金にマイナスシーリングをかけましたか。

吉田大臣政務官 二十四年度はかけておりません。

馳委員 どうして二十三年度にかけて二十四年度にはかけなかったんですか。その理由をお示しください。

吉田大臣政務官 二十三年度は、先ほど申し上げたように、予算の大胆な組み替えのための土台づくりという哲学で概算要求基準をつくったところでございます。

 ただ、平成二十四年度は、一度その大胆な組み替えの土台づくりをもうやっておりますので、それを踏まえて、こういった義務的な経費、人件費については、前年度予算額と同額の概算要求枠を示したところでございます。

馳委員 財務省は、これからも国と地方の財政状況に応じて義務教育費国庫負担金にマイナスシーリングをかける考えはありますか。

吉田大臣政務官 かけるかどうかは、基本的には中期財政フレームの改定によるということでございます。

 毎年、半ばごろに中期財政フレームを改定しておりますが、二十五年度以降も、このフレームに示された基準に従って、それに整合的な基準をつくるということになっておりますので、今この時点でかけるかかけないかということは申し上げられないということでございます。

馳委員 森ゆうこ副大臣、今の吉田政務官の発言を聞いていましたか。副大臣としての御意見を伺います。

森副大臣 お答えいたします。

 この震災を乗り越えて日本が元気に復活していくためには、何よりも教育の充実が重要であるというふうに我々としては考えているところでございまして、今御審議をしていただいております平成二十四年度の当初予算におきましても、大変厳しい財政状況の中ではありますが、さまざま工夫をさせていただいて予算要求をさせていただいているところでございます。

 財源の余裕があればしっかりとやっていきたいというふうに思いますけれども、我々としては、厳しい状況の中でも、できるだけしっかりとした教育予算を基本的に確保していくという立場でございます。

馳委員 私が副大臣だったら、多分、こういう答弁をすると思いますよ。教員の一人一人の単価は、我慢してもらって、ちょっとは減らしてもらうかもしれない、けれども、絶対に財務省にこの義務教育費国庫負担金にシーリングはかけさせませんと私だったら明言しますよ、そこに座っていたら。

 森ゆうこ副大臣、政権交代があったからというふうな先ほどの吉田政務官のお答えは、一つの理屈にはなると思います。予算の組み替えという考え方、大胆さと。だけれども、一律にマイナスシーリングをかけるということがどういう意味を持っているかということについて、私はもっと文科省の、現場の声を聞いていただきたい。

 そして、一人一人の単価が少々減ったとしても、しっかりと教員の数は確保する、そして、教員の質の向上に向けては任せてくれ、文科省はしっかりやるから、現場の都道府県の教育委員会や市町村の教育委員会と、教員研修等も含めて、養成も含めて、人事もしっかりやるから、質は任せてくれ、しかし、絶対にマイナスシーリングはかけさせないんだということを私は森ゆうこ副大臣に言ってほしかったんですよ。いかがですか、森ゆうこ副大臣。

森副大臣 いろいろありがとうございます。

 一〇%のマイナスシーリングをかける一方、元気な日本復活特別枠というものを設けさせていただいた。その枠を最大限利用させていただいて、質の高い教育を実現するために、我々としては頑張ってきたところでございます。

 引き続き、質の高い教育、それを確保するために、私どもとしては頑張っていくということでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

馳委員 かつて委員会室の机の上に駆け上がった、尊敬する森副大臣らしくない答弁だな、今のは。後ろからメモが入っているようでありますが、マイナスシーリングを財務省からかけられたということの屈辱を、我々も民主党の皆さんも、ここを私はわかってほしいから言っているんですよ。

 次の質問に移ります。

 三十五人学級の実施をしていく上で、恒久的な制度として法改正が必要だと思いませんか、布村局長。

布村政府参考人 三十五人以下学級を恒久的な制度として全国で実施し、必要な定数を措置する、そのためには義務標準法の改正が必要であるというふうに認識をいたしております。

馳委員 そこで、一般にはちょっと誤解もあるようなので、少人数学級と少人数指導、この違いを教えてください。

布村政府参考人 まず、少人数学級についてでございますけれども、学校において児童生徒一人一人に目が届く指導を行いやすくするために、学習集団でもあり、また生活集団としての側面もあわせ持つ学級の人数、学級規模を縮小する取り組みというふうに考えております。

 具体的には、義務標準法の三条の二項というところでは「都道府県の教育委員会は、当該都道府県における児童又は生徒の実態を考慮して特に必要があると認める場合については、この項本文の規定により定める数を下回る数を、当該場合に係る一学級の児童又は生徒の数の基準として定めることができる。」ということを踏まえて、今申し上げました。

 それから二点目として、少人数指導につきましては、学級規模は変更せずに、きめ細やかな学習指導を行う観点から、教科等に応じまして、例えば四十人のクラスを二十人、二十人の二つのグループに分けて習熟度別などの指導を行う、そういう取り組みであるというふうに考えております。

 この少人数指導に関しましては、義務標準法の七条というところの条文の中に、「少数の児童若しくは生徒により構成される集団を単位として指導が行われる」、そういう文言があるところでございます。

馳委員 そこで、布村さんにお聞きするんです。

 少人数学級、恒久的な制度として法改正が必要だと思いますと先ほど布村さんは答弁をされました。

 しかし、少人数指導という指導のあり方もあるわけですから、少人数学級にするか、少人数指導にするか、クラスの編制、そしてまた教育の制度として選択肢を、都道府県の教育委員会、いや待てよ、もっと、設置者は市町村の市町村長なのだから市町村の教育委員会、さらに言えば、学校の責任者である校長に任せた方がよいのではないかと。そこまでの選択肢、権限は、法改正で少人数学級というのを固定していくよりも、こっちの、少人数学級も少人数指導も、はっきり言いますよ、加配を使って選択肢を現場により与えていった方がよりいいんじゃないのかなという考え方もあるはずなんですが、どちらの方がよいと思われますか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 学級編制につきましては、基本的に各学校の校長が行うということになります。また、国としては、学級編制の標準を国の基準として定め、それを踏まえて、各都道府県で創意工夫、総額裁量制も含めて、創意ある取り組みをしていただいている、そういう実態になりますけれども、現実に、市町村の教育委員会あるいは都道府県教育委員会にとりまして、一定の長期的な観点から学級編制に取り組んでいくという観点からは、ある意味、国としての長期的な計画等に基づいて国としての一定の方向性をお示しし、それを踏まえて、都道府県、市町村で地域性を踏まえた創意工夫ある取り組みをしていただくという形が、教育現場の方々の今後の施策の進め方としては一つのあり方ではないかと考えております。

馳委員 ということは、国としての長期的な取り組み等、これを示した上で、後の選択肢は市町村の方により委ねていった方がいいのではないか、そういうふうなお考えでよろしいんですか。先ほどの答弁で、もし修正があるところがあったら、修正してください。私は今指摘しようと思ったんだけれども、後ろから何かもごもご言っているみたいだから、どうぞ。

布村政府参考人 学級編制を実際行うのは、市町村の教育委員会が行っていただいております。

馳委員 そうなんですよ。学校長じゃないんです、教育委員会なんですよ。

 その上で、今ほど言いましたね、長期的な計画等を国が示す必要があるとおっしゃいましたよね。だから、恒久的な制度には法改正が必要だというふうな答弁をさっきされたんですよ、布村局長は。それでいいですよね、もう一回確認します。その答弁を吉田政務官はよく聞いていますから。

布村政府参考人 二十四年度概算要求におきましては、法改正を前提として、四千百人の定数改善措置を要求させていただきました。また、予算編成の過程で、最終的に、政府・与党の全体的な予算の方向づけの中で、加配定数で措置をするという予算要求になったところでございます。これは、震災などを含めた予算の状況を踏まえた政府としての方針の決定でございます。

 そして、今後の学級編制のあり方につきましては、現在、教育関係者を初めとした専門家の方々の有識者会議を設置し、そこで今後の教員定数改善のあり方を検討いただいておりますけれども、その中の論点の一つとしても、一定の長期的な観点からの計画的な改善ということも、その論点の一つとさせていただいているところでございます。

 その有識者会議における検討を踏まえて、文科省としても、しっかりと検討をして、来年度、平成二十五年度予算の段階も含めて、しっかりと対応できるように努めてまいりたいと思います。

馳委員 では、布村局長、来年度の概算要求のときには法改正を出しますね。

布村政府参考人 先ほど申し上げたとおり、今有識者会議でも御検討いただいているところでございます。また、大臣、副大臣の御指導をいただきながら、できるだけの努力はしたいとは思っておりますが、今の段階では、お答えできるのはそこまでではないかと思います。

馳委員 そこなんですよ。やはり官僚として、私はすばらしいと思いますね。大臣、副大臣が最終的な政策の判断をできるまでの積み上げをやはりやっておいてほしいんですよ、あなた方官僚の皆さんには。

 なぜか。中長期的な計画がなければ、都道府県や市町村の教育委員会も人事をやるときに困るんですよ。教員の人口構成を見ながら、どの程度採用し、人事をどのように動かしていこうか、市町村の壁を越えて、そしてそのための研修をどうしようかと。全てつながっている中で、長期的な定数の改善計画の見通しがなければできないんですよ。

 その上で、次の質問に移ります。

 小学校一年生から二年生に進級するに当たって、クラスがえは妥当だと思いますか、布村局長。

布村政府参考人 小学校一年から二年に進級時のクラスがえにつきましては、全体のクラスがえも含めて、児童生徒の実態や各学校の実情を勘案しながら、基本的に、教育上の観点から、各学校長の判断によって行われているというものになります。

 文部科学省といたしましては、小学校一年生から二年生に進級するに当たり、十分な教職員配置が行えないということが理由で各学校においてクラスがえをせざるを得ない状況となることは望ましくないというふうに考えており、このため、二十四年度予算案におきましては、小学校二年生三十六人以上学級を解消するために必要な加配定数を措置して、要求をさせていただいております。

馳委員 我が国の小学校における三十五人以下学級の割合はどのくらいですか。パーセンテージをお願いします。

布村政府参考人 平成二十三年五月一日現在になりますけれども、公立の小学校における三十五人以下学級は、全体の学級数の中の約八八%となっております。

馳委員 この三十五人以下学級というのは、いつごろから存在しているんですか。

布村政府参考人 全国的な実態として、少子化も進んでおりますので、実態としての三十五人以下学級の存在は従前からあったものと認識をしておりますけれども、制度的な三十五人以下学級という観点から御説明いたしますと、学級編制の弾力化につきましては、平成十三年度から、義務標準法の改正によりまして、都道府県の判断によって、児童生徒の実態などを考慮して、国の標準、当時は四十人でございましたが、この、国の標準を下回る特例的な学級編制基準を設定することが可能ということが制度的に実現いたしまして、その後、制度的に三十五人以下学級などの少人数学級の推進が各都道府県によって図られてきているという実情でございます。

馳委員 少人数学級の政策効果、教育的効果について、文部科学省はいつごろから検証していますか。

布村政府参考人 現在の四十人学級の完成は、第五次の教職員定数改善計画、昭和五十五年から平成三年度に成ってございます。その後、四十人学級の完成の後は、さらなる学級編制の標準の引き下げという取り組みではなく、チームティーチングや習熟度別指導による少人数指導を推進するための加配定数の改善を主として行ってまいりました。

 それから、平成十三年度には、都道府県の判断で少人数学級を行うという、先ほどの制度改正が行われたところでございます。

 そして、学級規模あるいは少人数指導に関する研究やアンケート調査は、平成に入りましてから、国立教育政策研究所などにおきまして行ってきているところでございます。また、文部科学省としては、平成十七年度にアンケート調査を行い、少人数学級により不登校やいじめなどの問題行動が減少したという回答が九割となるなどの調査結果を得たという形で、検証を重ねてきているところでございます。

馳委員 数字を伺います。

 一九七〇年、一九八〇年、一九九〇年、二〇〇〇年、二〇一〇年、それぞれの年で、三十五人以下学級はどのくらいの割合でありましたか。

布村政府参考人 最初に、公立の小学校についてお答えいたします。

 公立小学校における各年の総学級数に対する三十五人以下学級の割合ですが、一九七〇年、昭和四十五年が約四二%、一九八〇年、昭和五十五年が約三五%、一九九〇年、平成二年は約六九%、二〇〇〇年、平成十二年は約七九%、二〇一〇年、平成二十二年は約八六%でございます。

 公立中学校につきましては、一九七〇年が約二〇%、一九八〇年が約一六%、一九九〇年が約二九%、二〇〇〇年が約四九%、二〇一〇年が約六七%という実態でございます。

馳委員 最後になりますね、もう時間ですから。

 財務省の吉田政務官に伺います。

 先ほどの少人数学級の政策効果の検証の報告、そして今の、一九七〇年、今からおよそ四十年前からの少人数学級の数の推移、この数字を見ながら、さらに少人数学級の政策効果の検証が必要だと思いますか。そして、教育の質の向上に三十五人学級は効果があると思いますか、ないと思いますか。

吉田大臣政務官 学級編制の基準が四十人まで下がってきた、下がった。それから、加配定数による支援等も含めて地方の自主的な取り組みによって、実質的に八八%の三十五人学級が実現しているということはよくよく承知しております。そして、その結果、日本の教員一人当たりの児童生徒数、これはG5と比べて遜色のない水準になったというような状況が、今、現にあるということでございます。

 そして、さらに少人数学級を進めよう、例えば中学校三年生までこれを進めようということになると、やはり財政負担というのが相当出てまいります。国費で八百億円、地方負担を含めると二千四百億円ですね、中学校三年生までやるとこういう追加事業費が必要となるということでございます。

 したがって、結論としましては、個別県の成功事例、少人数学級による成功事例等は我々も聞いておりますけれども、やはり全国レベルで政策効果を改めて検証する必要があるのではなかろうか。学力に対する効果、さらには、いじめ、不登校、暴力行為の抑制に対する効果、こういうものを検証する必要があるのではなかろうかというふうに思います。

馳委員 だから、我々自由民主党は、高校教育の質の向上の検証もなく四千億円を出すことに、ちょっと待てよというふうなことを三党協議でもずっと申し上げてきたんですよ。

 きょう私が言っているのは、これは義務教育なんですよ。今吉田さんがおっしゃっただけでも、二千四百億じゃないですか。そして、教育的な政策効果はあるとずっと布村局長もおっしゃっているじゃないですか。そして、実質的に今、小学校では八八%、中学校でも六割ちょっとが少人数学級なんですよ。歴然としているんですよ、数字を見ても。今までの過去の文科省の中教審を含めての政策効果の検証を見ても、私は、義務教育における教員の安定的な数の確保と質の向上のための長期的な定数改善計画をつくっていくことは絶対に必要だと思いますよ。

 私は、政策の検証と予算のつけ方について、もうちょっと慎重に進められた方がいいと思いますし、これは吉田政務官はよく御存じですが、むしろ平野大臣や今の文科省の政務三役に対して、まずこの義務教育の教員定数の問題と質の向上を計画的に行うということをやってほしいんですよ。これこそ文部科学省の責任ではないか、我が国の教育の根幹を担う部分なのではないかなということを申し上げて、きょうのところはここで終わります。

 ありがとうございました。

石毛委員長 次に、あべ俊子委員。

あべ委員 自由民主党のあべ俊子でございます。

 本日は、大臣所信に関連いたしまして幾つか質問させていただきたいと思います。

 大臣所信におかれまして、大学改革に関しての検討を行うというふうに大臣がおっしゃったわけでございます。

 そうした中におきまして、私、前職、大学におきまして看護学を教えておりました。そういう中において、教育体制がやはりまだまだ不備だなということを実感したわけでございますが、今、医師不足、医師の地域偏在、そういう課題がある中にありまして、医療を取り巻く環境が大きく変わっているわけであります。

 医学部定員の増加の対応が幾つかされておりまして、平成十九年に七千六百二十五人、平成二十四年度は八千九百九十一名と、千三百六十六人の増員となったわけであります。

 しかしながら、数だけじゃなくて、医療にかかわる質の高い人材を確保すること、私はこれが重要だと思っているわけでございますが、御存じのように、医学教育においても、また医療全体に関しても、大学教員の数が諸外国に比べるとかなり低いということが言われております。

 大臣、この辺に関しましての御見解をお伺いいたします。

平野(博)国務大臣 あべ議員は医療の専門のお立場での御見識で御発言をされておるわけでありまして、医療全体から見たときに、高いところと低いところ、当然あると思っていますが、私は、これからの時代の中にあって、もっと医療系人材の質の充実と体制を強化していかなければならない、そういう観点からそういう人材を育成していく、こういうことについても積極的に取り組んでいかなければならない、こういう基本認識にございます。

あべ委員 特に、人が、質の部分もさることながら、やはり数の部分も重要でございまして、ことし百歳になられた日野原重明先生、聖路加国際病院の理事長でいらっしゃいますが、その方が書かれた文献を見ますと、数字がちょっと古いものになっておりますが、京都大学医学部が七十二人の教員であるのに対して、東京大学医学部が百十六人、佐賀医科大学に関しては三十七名、旭川医科大学が三十名、比べまして、ハーバード大学が一千四百八十、ジョンズ・ホプキンスが四百二十六とかなり差があるわけでございます。

 大学設置基準に基づく標準教員数というのがございまして、ところが、実際の教員の数とは乖離しているのは、大臣は御存じですか。

平野(博)国務大臣 数字的に見ますと、そういう視点で認識できる側面は、私はあると思います。

あべ委員 実は、旧国立大学、今は独立行政法人になっておりますが、看護学部に関しては、大学設置基準、教員標準数は、学生二百人に十二名、すなわち、学生一人当たりの教員数〇・〇六となっているわけです。これは十分な数だと思いますが、実際どれぐらいの数になっているか、大臣もしくは政府参考人、御存じですか。

板東政府参考人 申しわけございませんが、今ちょっと手元に正確な数字がございませんので、また調べまして御報告をさせていただきたいと思います。

あべ委員 今の大学設置基準の部分は、学生一人当たりの教員数〇・〇六でありますが、実際、平成二十二年度の学生一人当たりの教員数は〇・一〇になっています。

 これはなぜかというと、そのままでは実習指導などが回らないからふやしているわけでございますが、この充実した教育を行うために標準数を超えて教員を配置しているところ、しかしながら、お金の方は教員標準数に基づき算定されているわけでありますから、その差額は学校側の負担になっているわけであります。

 それは、大臣、御存じでしたか。

平野(博)国務大臣 承知をいたしております。

 ただ、先生おっしゃるように、そういう部分もございまして、冒頭、先生からもお話がございました、特に医師不足、地域偏在等々の今の医療関係の状況においてどうあるべきかということで、まずは医師の定数をふやしていこう、こういうことでございます。ただ、ふやすためには、当然、それの専任教員が要るわけでございますから、そういう意味の観点に立って、改めて、先生の御指摘がございますから、もう一度よく現場をチェックしたい、このように思っております。

あべ委員 私は、特に、大学教員を実際自分でやってきた立場として、大学教員が、やはり、特に医療系に関しましては、臨床指導、さらには普通の座学における知識における教育、さらには研究を、三つやっていかなきゃいけないというのは、かなりアクロバットなことじゃないかと思っています。

 特に、研究に関しましては新規性が求められる中、教育は常識的なことをしっかりゼロから教えていかなければいけないということを考えたときに、平成八年の六月に、文部科学省の二十一世紀医学・医療懇談会、この報告書におきまして、やはり、大学が地域の医療機関にすぐれた人材を臨床教授に任命し、医学部学生の臨床実習など教育に協力してもらうという臨床教授制度、これが提案されたわけであります。

 文部科学省政府参考人にお伺いいたしますが、臨床教授制度の導入、どれぐらい進んでいるか、また、導入に関してどういう課題があるか、教えていただきたいと思います。

板東政府参考人 ただいま御質問ございました臨床教授とか臨床准教授といったような制度でございますけれども、これは、医科系の大学におきまして、臨床現場に即した教育を実施しようということで、臨床現場の、大学以外、例えばほかの病院などの医療スタッフに臨床教授とか臨床准教授といった称号を付与いたしまして、その実習等の指導をお願いしているということで、そういった参画をいただいての実務的な教育の充実というものを図っているということでございます。

 これは、こういう取り組みは各大学が独自の基準に基づきまして行っておりますところでございますので、まだ文部科学省としてその導入状況の具体的な数などについての調査をしたことはございませんので、申しわけございませんが全体の数は把握しておりませんけれども、やはり臨床の多様な現場における実務的な教育の重要性ということを大学も一層認識をしているということで、これについては積極的な導入を行っているというふうに理解しているところでございます。

 看護教育その他につきましても、今御質問の臨床教授などの称号の付与などが行われているわけでございますけれども、先生御質問の課題ということに関しますと、やはり、その臨床の現場の指導者に当たる方々の資質向上を図るということも重要な点であるかと思っておりまして、これにつきましては、現場と教育をつないでいただくような医療人の育成プログラムの開発とか、あるいはその指導をしていただく方の研修の充実等、そういったことにつきまして充実を図っていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 現に、千葉大学などにつきまして、そういった点についての取り組みをして、全国から臨床現場で臨床教授などとして指導されている方の資質向上の取り組みをしているというふうに聞いております。

あべ委員 実は、看護職、一割ぐらいが、大学もしくは看護学校を出てから一年以内に離職をしてしまいます。その中の一つの大きな理由が、リアリティーショックといいまして、すなわち、教わったことと現場が余りにも違うということが大きい。私は、やはり臨床指導は臨床の方々がやっていく方が、その現場がもっとしっかり見えていくのではないか。

 やはり、大学教員、臨床から離れてしまっている。本来であれば、医学部のように大学の教員が臨床に出ていくことをやればいいわけでございますが、今医学部と比較して、看護の方が十分の一ぐらいの教員数しかいないということを考えたときに、大学教員が臨床に出ていくのは難しいのであれば、臨床にいらっしゃる方が臨床教授として、もしくはさまざまな形でもっと御協力をいただく方がいいのではないかと思っているわけです。

 この臨床教授をもっともっと進めるべきではないかと思っているわけですが、平成八年からどれぐらいやっているかを文部科学省が全く把握していない。

 さらに言えば、特に千葉大学は、看護学部というのが別にあるわけです。ほかの大学病院を持っているところは、医学部の中に看護学部が入っているわけでございまして、この臨床教授の認定のときに、教授会にかけるということになったときに非常にハードルが高いという部分があるのではないかと私は思っています。

 しかしながら、予算的にいっても、人数が今ふやせないという事情もある。しかしながら、そちらも頑張っていただきながら、臨床指導者、これは、タイトル、さらには少額のお金でお手伝いをいただけるのであれば、これを促進していくことが私は必要だと思いますが、大臣、これに関して、臨床教授、これは薬学部もそうであると私は思っています、もっともっと進めるために、ぜひ御検討いただけないでしょうか。

平野(博)国務大臣 先ほど局長が答弁いたしましたが、これは、そういう意味で、先生御指摘のように、臨床現場の方々からしっかり教えてもらう、こういうことで大学独自でやっておるものですから、なかなか総体としての数がつかめていないということでございます。

 しかしながら、先生御指摘のように、やはり現場を十分熟知した人が今度は医療現場に入っていくということが非常に大事だと思いますし、そのギャップをいかに小さくするかということが大事だと思っております。

 したがいまして、臨床現場との連携、各教育機関と臨床現場との連携強化をさらに私どもとしては強めていきたい、こういうふうに思います。その中で、具体的にどういう強め方がいいのか、このことについては私どもで一度検討させていただきたい、かように思います。

あべ委員 ぜひとも、必ず検討いただきまして、どのように検討するか、大臣、ちゃんと私に教えていただけますでしょうか。

平野(博)国務大臣 理事会の御理解をいただいて、その検討結果については先生の方に御報告させるようにいたします。

あべ委員 ありがとうございます。

 医学はかなり進んでいるわけでございますが、看護に関しても、臨床の実態を学生がしっかり知っていって、リアリティーショックがないような教育をしていくということが非常に重要であります。しかしながら、今、薬学に関してもそうでございますが、臨床者が忙しくてなかなか手が回らないという問題もありますので、タイトルだけもらってもほかの後押しがなければということも言っておりますので、ぜひ、その辺の体制整備をお願いしたいと思います。

 次に、学校における性教育についてでございます。

 大臣のお話の中には、チルドレンファーストということが書いてございましたが、子供たちは次世代を担う国の宝でございます。きょうは、厚生労働省の方からも唐澤大臣官房審議官が来てくださっておりますが、実は、性をめぐる感染症、妊娠中絶の実態が、今、特にひどい状態でございまして、このことに関して、大臣、数値などは具体的にごらんになったことはございますか。

平野(博)国務大臣 数字については、私、掌握をいたしておりません。

あべ委員 では、唐澤官房審議官、この数値に関して、特に妊娠中絶、十五歳以下、十五歳未満と十五歳、さらには性感染症を簡単に教えていただけますか。

唐澤政府参考人 お答え申し上げます。

 私もちょっと今正確な数字は持ち合わせておりませんけれども、先生の御指摘にございましたように、特に低年齢化しております性感染症、それから妊娠中絶というものも、若者の性の問題としては非常に重要な問題になっているというふうに認識をしております。

あべ委員 私が持っている数字ですと、平成二十一年、九百六十一の定点医療機関、これは、ですから全数ではないということでございますが、十五歳から十九歳の性器クラミジア感染症が二千九百五十五件、性器ヘルペスウイルス感染症が三百二十件。人工妊娠中絶に関しては、これは報告をするということが義務づけられています。すなわち、報告されていないものはこの中に上がっていないということでございますが、平成二十二年でございますが、十五歳で人工妊娠中絶一千五十二件、十五歳未満で四百十五件でございます。

 この数字を聞いて、大臣、どのように御感想を持たれましたか。

平野(博)国務大臣 性感染症については数字的には少し下がっていっているのかな、しかし、中絶についてはふえていっている、こういうことだと思っております。

 これはどういう原因でなっているのかということはわかりませんが、正しい知識をしっかりと、どの年次に教えていくかということは別にしても、成長段階でこういう問題があるということをその対象者、子供に教えていく、そのことによって、この感染症並びに人工中絶の状況というのは抑制され、改善されるものと私は認識をいたしております。

あべ委員 大臣おっしゃるとおりでございまして、実は、文部科学省が出している学習指導要領の中では、性に関する指導の内容がしっかりと書き込まれてはいます。書き込まれてはいるんですが、実際それがどう行われているのか、また、子供たちがしっかり理解をしているのかという話は、実は整理はされていないわけであります。

 私は、性教育に関しては、性活動を、やたら興味をそそるものでもいけないと思っておりますし、価値観を余りにも入れるということは余り賛成ではないんですが、それ以前に、自分をちゃんと大切にしましょうということを子供たちに教えないといけない。

 特に、日本の女性、女の子たちは、自分に対しての自信がないという傾向がある中にありまして、性教育の前段階で、セルフエスティームといいますか、自分に対する尊厳、思いをしっかり築いた上での性教育が必要だと思っているわけであります。

 しかしながら、大臣、その性教育、要領には書かれてあるわけですが、それがきちんとされているのか、子供たちがどのようにその性教育に対して知識を得ているかということを、もう少し文部科学省として見ていただくことは可能でしょうか。

森副大臣 お答えいたします。

 御指摘ありがとうございます。

 私どもも、先生御指摘のような問題意識を持ちまして、文部科学省の中で、神本政務官とともに、私、少し勉強を今させていただいているところでございます。

 先生が御指摘になったように、指導要領にはそのように書いてあるわけですけれども、実際にはなかなか難しい部分もございます。

 一方で、先ほど御指摘のございました感染症の低下傾向に関しましては、外部の産婦人科の先生ですとか、そういう方を講師にお招きして教育をした結果、それが有効に働いているのではないかというふうなこともございます。

 そういう意味で、改めて、私どもの方で、神本政務官と一緒にもう少し検討をさせていただいて、充実するように努めてまいりたいと思いますので、ぜひまた御助言等よろしくお願い申し上げます。

あべ委員 今、インターネット情報が、本当に性情報が氾濫していく中、正しい情報が子供たちに伝わるということが極めて重要だと私は思っているわけであります。

 先ほども申し上げましたが、性に対する興味をあおるということではなくて、また、要領の中にしっかり書き込まれているコンドームの使用などに関しても、実際、やってはいるんですが、どうもコンドームの使用に関しては、それをやってゲームみたいになっちゃっていて、それの教育はもともと何のためにしているのかということが子供たちに伝わっていないのではないかという声も実はあるわけであります。

 ですから、早期の健康教育ということも含めた部分は必要でありますが、性に対する興味をあおり過ぎない、また茶化したりしないということを考えたときに、私は、担任の先生が全部やっていくのは難しいのではないかと特に思っております。

 先生はどうだったのと言われたときに、先生もいろいろですから、森副大臣のようにはっきりした方とそうじゃない先生と分かれたときに、やはりここは誰がどう教えるのかということを具体的に踏み込んでいただき、また、どういう実態になっているかということを、平成二十年に書かれた内容であると思いますが、森副大臣、ここは一度見直しを全面的にしていただけないでしょうか。

森副大臣 大変さまざま重要な御指摘をありがとうございます。

 まず基本としては、先ほど先生がおっしゃいましたように、自分自身を大切にする、そして他者を大切にしていく、そういう基本的な観点が必要であろうかというふうに思います。

 私、十数年前に北欧にさまざまそういう面で視察に参りましたときに、青少年センターで保健師さんが中心になって、きちんとした性教育を行い、若者たちをサポートしているという現実を見てまいりました。

 性教育については、余り子供たちの関心、無用な興味をあおってもいけない、しかし、事実は事実としてしっかりと伝えなければならない。また、女性の場合、卵母細胞の数が限られているですとか、そういう妊娠のできる可能な年齢等々についての教育についてももっと必要ではないかというような指摘も最近なされているところでございまして、そういう面について、誰がどのような形で教育していくのか、今の先生の御指摘も踏まえまして、少ししっかりと検討させていただき、御報告をさせていただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

あべ委員 おっしゃるとおりでございまして、特に低年齢で妊娠中絶をいたしますと、そのまま不妊につながる確率が非常に高い。また、やはり出産というのは、女性の場合は卵子が年をとっていくんだということは子供のときに教える必要があるんだと私は思っておりまして、そこは、言い方はなかなか難しいところだと思うのですが、基礎教育の中でどのように指導していくかということは非常に重要なことでございます。

 しかしながら、自分を大切にしていくということがまず第一にあって、それで性教育、これは事実として教えていかなければいけないことは、変な偏見を持たせない形で教えていくということが重要であります。また、指導者に対しての教育をもっとしっかりしていかなければ、変な教え方をしてしまえば、子供たちがやはり基礎教育の部分で方向性を誤ってしまいますので、ぜひこれは大臣もよろしくお願いします。

 最後に、大臣、そのことに関して何か御意見がございましたら、よろしくお願いいたします。

平野(博)国務大臣 先生の御意見、ごもっともだと思って、今、森副大臣とのやりとりを聞かせていただきました。

 私は、やはり正しい理解をさせる、適正な年齢に応じた教育の課程の中でしっかりこのことについては教える、そのときに、先生おっしゃられましたように、みずからを大切にする、相手を思う気持ちもあわせてしっかり教えていくことが大事であろう。

 一方、保護者の方にもやはりしっかりと理解をいただかなければ、私も昔、野党のときに、今御党でおられますが、山谷議員と、健全な教育を考える会、私、会長でございまして、彼女が事務局長という立場で、性教育の問題について彼女が一生懸命取り上げておられました。そういう中で感じたところも、今あべ先生が御指摘するところは、ある意味共通していることだと思います。

 そういう意味で、正しい理解をしてもらう、そんな環境をしっかりつくると同時に、しっかりと適正な年齢の時期に教育機関として教えていくことが大事でありますので、そのことをしっかり者の森副大臣に命じて、見直しをやっていただくようにしたいと思います。

あべ委員 ぜひとも、日本の宝である子供たちを守っていくためにも、よろしくお願いいたします。

 時間になりましたので、終わります。

石毛委員長 次に、永岡桂子委員。

永岡委員 自民党の永岡桂子でございます。

 本日は、大臣所信の質疑ということで、平野大臣にお伺いさせていただきます。

 まず、大臣は所信の中で、文部科学大臣として、まずは野田内閣の最優先課題である大地震からの復旧復興に全力で取り組みます、とりわけ放射線から子供たちを守るという強い決意を持って、安全、安心のための取り組みに力を注いでまいります、そう述べていらっしゃいます。

 大臣も御承知のとおり、原発事故によります健康への影響に関する調査、これは、現在、各自治体が独自の判断のもとに行われているということでございますが、この実施の必要性の有無とか、また、実施する場合の調査対象や内容、こういうものは全て自治体に任されているということになっております。

 しかしながら、これは本来ですと、このような調査は、国が基準を各自治体に示したり、その方向性、そういうものも示して、国として系統立てて行うべきものではないかと考えております。

 各自治体がそれぞれの判断でばらばらに実施をしているということでは、例えば調査を実施しないという自治体の住民は、うちも調査が必要なんじゃないかなという不安を抱えてしまいましたり、また、反対に調査を実施しているところ、これは、そこに住んでいる住民は、うちはそれだけ放射能への影響があるんだというふうに不安にとってしまうということもあるかと思うんですね。

 ですから、こういうことを考えますと、国が統一して方向性を示すということが非常に重要だと思っておりますし、また、もう一つ、私は茨城県なんですけれども、福島のお隣の県です、ですから、結構、各自治体の方も、実際は首長さんなんかは健康の影響調査をやりたいと心の中では思っている方が多いんですね。

 ところが、みずから自治体が手を挙げるということは、安心をいただくために調査をしたいと思っても、反対に地域の方々の不安をあおるということがあるんじゃないかと思って、なかなか手が挙げられないというのが実情なんですね。また、それプラス、実は財源の問題もあります。これも全部自治体でやらなきゃいけないということになります。

 こんな住民の不安を解消するためにも、国の責任において、健康影響調査の必要性、対象者、また調査内容、実施する主体などに関する基準を国が示す必要があると思っております。

 大臣の所管外の部分があるとは思いますが、やはり、次世代を担います子供たちの健康、これは、健全な健康を願うというのは、大臣にとっても大きな責任があると思うんですね。ですから、このことについて、大臣のお考えをお聞かせください。

平野(博)国務大臣 先生、ありがとうございます。

 私、所信でも申し上げましたし、いろいろな予算委員会等々の答弁でも、放射能から子供を守る、こういうことを強く申し上げているところでございます。

 そういう中で、今回の案件で、特に、昨年の十二月の末でございましたか、被災三県、岩手、宮城、茨城の三県の連名で、子供の生活全般にかかわることだから、こういうことで、経済産業大臣、環境大臣、厚生労働大臣宛てに今先生申されたような御要望が出されたということは承知をいたしております。

 今、現実的に、二次補正におきまして、福島の原発の関係については健康調査をやっておりまして、四次補正につきましては、基金という名のもとに、自治体の御協力をいただかなければなかなか進まないものですから、基本的には自治体の皆さんと連携をとってやっていかなきゃならぬ、こういうことが前提でございますけれども、文部科学省としては、子供をしっかり守っていくんだ、こういう立場で、先ほど申し上げましたような環境並びに厚生労働の関係省庁の動きを子供を守るという視点でしっかりと見守っていきたい、そういう中で、文科省の立場でできることについてはしっかりやらせていただこう、私はかように考えています。

永岡委員 ありがとうございます。

 所管外とはいえ、やはり文科大臣の発言は大きいと思います。関係の各省庁と一体となりまして、子供たちの放射線の影響の調査、これをしっかりと、国全体として、これから新たにでも取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、所信の二ページに、こうございました。原発事故対応としては、放射線モニタリング強化を図り、適時適切な情報強化に努めるとともに、校庭等の線量の低減、学校給食の安全、安心の確保に取り組みますと書かれております。

 食品の放射性物質の基準値につきましては、この四月から、今までは一キログラム当たり五百ベクレルでございましたのが、一般の食品では百ベクレル、乳児用では五十ベクレルになるということはもう御承知のことと思います。

 私も、このことにつきまして、予算委員会そして厚労委員会などで厚労大臣にお聞きしております。

 これについては、学校教育とは関係ないんですけれども、例えば五十から百の間の八十ベクレルの野菜について、これを出荷しようとしてもスーパーが引き取ってくれなければ、これは風評被害で対応していただけるのかということとか、あと、また、自主規制の場合はどういうふうになりますかということなどについて厚労大臣にはお聞きしたんですけれども、昨年の十一月ごろだったと思うんですね、この厚労省からの基準値の、これはまだ決定ではございませんでしたけれども、百、五十の案が公表される中におきまして、この文科省でも政務三役の中で、給食の最低、不検出がどのぐらいの値になったらいいか、四十だ何とかだということで大分もめた状況もあったなと実はちょっと思い出しました。

 それで、お聞きいたします。

 学校給食の現場で、食品中の放射性物質の検査に関しまして、現在どのような状況になっておりますでしょうか、お伺いいたします。

久保政府参考人 学校給食の放射性物質の検査状況に関する御質問でございます。

 食品の安全につきましては、まず、規制値を超えるものが出回らないように出荷段階で検査が行われ、出荷制限等の措置がとられることになっているということを前提といたしまして、さらに、学校給食の検査に関する事業を実施しているところでございます。

 まず、平成二十三年第三次補正によりまして、東日本の十七都県を対象といたしまして、学校給食の食材の検査を行うための検査機器を整備するための補助を行ってございます。

 さらに、福島県につきましては、福島県原子力被害応急対策基金に東日本大震災復旧・復興予備費を活用いたしまして財政措置することによりまして、県内の全ての学校給食調理場につきまして検査体制を整えることができるように、必要な検査機器の整備に関する経費を措置したところでございます。

 また、これに加えまして、平成二十四年度予算案におきましては、福島県内の各市町村と福島県以外の各都道府県を対象といたしまして、学校給食における一食全体について、提供後の検査を継続的に行う事業に関する予算を計上しているところでございます。

永岡委員 ありがとうございます。

 いろいろと文部科学省も、この学校給食の放射性物質への検査には取り組んでいらっしゃるとは思います。

 昨年の十二月の十六日、これは原子力災害対策本部が取りまとめました「原子力被災者への対応に関する当面の取組のロードマップ」によりますと、文科省も随分と、先ほど久保局長からお話ししていただきました十七都県、学校の給食の食材を検査するための機器を整備することにもなっていらっしゃいますよね。

 でも、これだけではないんですね。実は、この今のロードマップの中には、消費者庁は消費者庁として、地方消費者行政活性化基金ですとか、あとは国民生活センターの既存の運営費の交付金で、地方自治体に対して、食品についての放射性物質の検査機器の導入を支援するということにもなっているようでございます。

 やはり、学校給食での食材の地方自治体への検査機器の導入というのは、お話を伺いますと、十七都県で平均で五台、七十七台が交付決定されているということでありまして、四月以降、簡易型のスペクトロメーターというんですか、これは一台二百五十万円程度するようでございますが、これが順次導入をされるということを聞いております。

 実際、基準が変わりますのが四月でございますから、この新しい基準に対してもっと早く、国として、文科省として対応される必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

森副大臣 お答えいたします。

 学校給食の安全確保につきまして、今委員から御紹介がございましたように、平成二十三年度第三次補正予算で一億円を計上させていただきまして、食材の事前調査ということで、今既に申請を対象の各県からいただいているところでございます。

 もちろん、四月一日から新しい基準値になるわけですので、それをクリアできる機材を今各自治体において購入のために準備をしていただいているというふうに思います。できるだけ前倒しでこういう安全確保策をやらせていただきたい、そういうことで、私も相当頑張ってまいったわけでございます。

 学校給食モニタリング事業、平成二十四年度予算の中に計上してございます。これは、食材、給食一食丸ごとミキサー検査ということで専門家の方々から御提案をいただき、また、先行して横須賀市で実施をしておりまして、横須賀市は一週間分冷凍してまとめて検査機関に送る、それが一回約二万円だということで、費用も余りかからなくて済むということで、非常によい方法ではないかなということで、来年度はまず全国的に、予算的にはちょっと箇所は少ないんですけれども、ただ、まずは始めさせていただく。

 徐々にそういう体制が他省庁とも連携して整ってきているというふうに思いまして、私としては、さらに進めていけるように努力してまいりたいと思いますので、先生のお力添えもぜひよろしくお願い申し上げます。

永岡委員 ありがとうございます。

 森副大臣もおっしゃっていますけれども、やはり、小中学校の給食においては、新しい基準に備えて、本当は四月から、今でもいいんですけれども、地方自治体によりましては現段階から、二月でも三月でも、もう始めているという話も聞くところもあるんですよね。

 それに比べますと、やはり目に見えるように、しっかりと把握をして情報を提供する、そして、お子さんにも親御さんにも、また地域の方々にも安心をしてもらう、そういう必要があると思うんですね。また、事前の検査対策を講じられるように、本当によろしくお願いしたいと思っております。

 また、今お話しいただきました食材の事前検査、これはすごく重要だと思うんですが、当然のことながら、今、二つ目もお話しいただきました、丸ごとミキサーにかけてそれを調べるということもすごく重要なことだと思います。やはり両にらみで、食材の検査と子供が本当に食べたものの検査、これ二つをそろって、学校給食に関しては調査を、そして継続して把握して公表するということをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それと、今、学校給食モニタリング事業、少ないとおっしゃっていました。少ないですよ。これについては、福島県では全市町村に配付ということでございますが、あと、ほかの県では、一県について二台、二カ所ということでございます。これでは余りにも少な過ぎますので、それもぜひ対応を考えていただき、早急に手を打っていただきたいと思います。

森副大臣 ありがとうございます。

 もちろん、その前提として、出荷される食品についての放射性物質の検査が十分行き届いて、できるだけ汚染されたものが出回らないということが前提でございます。

 しかし、特にやはりお子さんをお育て中の御家庭、お母さんたちから大変不安の声が寄せられておりまして、先ほど御紹介した横須賀市では、当初、給食丸ごと検査をスタートしたときには相当な保護者からの問い合わせがあったそうなんですが、それを継続して発表していく、情報を公開していく。実際には、ほとんど数値は、ベクレルは出ていないんですね。そういうことをずっと継続することによって、結局、安全を確保するとともに、やはり安心していただけるということで、私は非常に重要な事業だというふうに思っております。

 来年度、モニタリング事業は、今お話がございましたように、各県二カ所程度というような予算の規模で、十分とは言えないんですけれども、またさらにこれが充実していけるように今後とも努力をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

永岡委員 ありがとうございます。

 それでは、次に移ります。

 現在は、消費税のことで大分、テレビ、新聞、一般の方々も税金に関して大変関心が高まっているときだと思っております。消費税というのは間接税でして、基本的な税である直接税、例えば所得税ですとか住民税、法人税、こういうものを社会に出る前に学校で教えるということは非常に重要なことだと思うんですね。

 先日、私、日本税理士会の方と懇談しましたときに、税金に関して学校教育の中でしっかりと対応していただきたいという強い御意見を承りました。私が学生だったころというのは、まだ消費税もなかったものですから、それぞれ、所得税とか住民税、余り学校で勉強したことは記憶にないんですよね、ただ、納税は国民の義務であるということは覚えてはいるんですけれども。

 実は、昨年の十二月、文科省の三局から「学校教育における「租税教育の充実」について」という通知が出されているようでございます。

 学校教育の中で、税に関する教育の現状はどうなっていらっしゃいますのでしょうか。そして、昨年末の通知によりまして、どのような点が充実改善されることになるのでしょうか。お伺いいたします。

石毛委員長 平野文部科学大臣、質疑時間が終了しておりますので、簡潔に御答弁をお願いいたします。

平野(博)国務大臣 先生、ありがとうございます。

 特に、やはり国民としての義務、こういうことでの租税教育の必要性について御指摘をいただきました。

 昨年十二月に関係機関に対して発出した通知が、実は、租税教育の充実について、こういうことで発出しております。

 私どもとしては、平成二十三年度の税制改正大綱をしっかり踏まえたい。その中に、租税教育の推進協議会を国レベルでも発足させる、こういうことで、先日、税理士会の中央会の会長さんを含めて、文科省としてどういうことをすればいいかという、専門的立場から教えてほしいということで、協議会を実はこの三月までに発足させるということで合意をいたしました。

 そういう上において、現場の教員の先生方に対する指導と、税理士の専門的知見から現場で教える機会もつくってほしいということで、積極的な回答をいただいておりますので、これをロードマップにどうのせていくかだ、かように思っていますので、また御指摘よろしくお願いしたいと思います。

石毛委員長 永岡委員、終了をお願いいたします。

永岡委員 はい、まとめます。

 大臣おっしゃるとおりで、税理士さんの方々も、やはりわからないところ、もう小学校から大学まで、知りたいと思っているところ、どこにでも出かけてまいりますので、税金のことを国民に対してよくよく教育しましょうということを御提言いただきました。

 それにつきまして、文科省としても積極的に取り組んでいただけるようによろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございます。

石毛委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

石毛委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。池坊保子委員。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 平野大臣には、私が文部科学委員長時代に筆頭理事としてお支えいただきました。お忘れでございますか、覚えていてくださっていますか。私はお支えいただいたことを大変御恩に感じておりますので、教育問題、文化、芸術、スポーツ、科学技術に対してまた御一緒にお仕事ができますことをうれしく思っております。

 東日本大震災から一年がたちました。私たちはあの大きな不幸を決して風化させてはならないと思います。

 亡くなられました方々には、改めてお悔やみを申し上げますとともに、今なお不自由な生活をしていらっしゃる方々に、政治家として細やかな尽力をすることを私はいつもいつも心に刻んでおります。

 いつも心の中で、震災で両親を失った子供たちが、無事に日々を心豊かに過ごしているかなとか、あるいはお母さんを亡くした子供たち、元気を装いながら、本当は心の中で深い悲しみを持っているのではないか。私は子供が大好きですので、本来ならば、ここに立っているよりも子供たちの傍らに行って、子供たち自身と手をとり合いながら励ましたりすることの方が私自身の幸せ感が感じられるのにと思うこともございます。

 ですが、今は政治家ですから、そういう子供たち、また大人たちの環境が少しでもよりよいものになっていくために力を尽くしていかなければいけない。それは、一年たった今も、一年前と変わらない気持ちでおります。

 ちょっとこの大震災から外れますけれども、先日読みました、八年間、国際協力機構理事長をお務めになり、三月末に退任なさる緒方貞子さんのインタビューが載っておりました。発展途上国の開発援助をすることがJICAの仕事だからということもございますけれども、私は、ぜひこれは政治家が、そして役人もともに頭に入れておきたいことを言っていらっしゃるなと思ったので、申し上げたいと思います。

 緒方さんは、部下に常に、「東京にいないで外に行きなさい。外に行ったら、都市にいないで奥の方へ行きなさい」「机の上で事業を行う組織じゃない。一番大事なのは現場を知ることだ」。そして、彼女は十年間、国連難民高等弁務官、難民支援の顔として御活躍なさいましたけれども、「難民支援と同様、「人を大切にする」という視点で仕事をしてきた」、そしてまたこれからもしていかなければいけない、現場を知って初めて重要な援助ができる、主義ではなくて必要性からくるんですと言っていらっしゃるんですね。

 私は、これは法律をつくるときも、また支援をするときにも大切なことで、主義主張ではなくて現場の声、現場がどのように考えているか、それを見て判断し、そして物事を決めていかなければいけないというふうに思うんです。どうか大臣も、部下の方々にそうおっしゃっていただけるよう私は切に望んでおります。

 被災地の子供たちはいまだ悲しみの癒やされない日々を送っていると思います。一日も早い復興を遂げなければならないわけですけれども、一年が過ぎました現在、被災地域の学校施設の復旧状況はどうなっているのか、授業はきっちりと実施されているのか、改善されたのか、その辺を私は大臣からお伺いしたいと存じます。

平野(博)国務大臣 池坊先生からの、こういう立場で答弁をするということは思ってもいなかったわけでございます。同期に国会に参りまして、池坊先生は政府にあっても、立法府にあっても、党にあっても教育を一貫してやってこられた、心から敬意を表します。私も、途中、あちこち抜けましたが、約四、五年は文教の場で先生と一緒にやってきたことを今でも思い出すわけであります。

 先ほど緒方さんのお話がございました。先日ちょっとお顔を拝見いたしましたが、お元気でおられました。彼女の今日までの御功績は、私は本当に、我々も一生懸命学ばなければならない、こういうふうに思っております。

 私も就任をして以来、四日目に福島の学校の現場に行ってまいりました。私自身も、やはり現場を知らなければ何も語れない、こういう気持ちでこれからも文部行政に接してまいりたいと思いますし、役所の連中にもそういう考え方はお伝えをしたいと思います。

 そういう中で、一年を経過した中で、被災した学校施設の復旧復興、こういう現状の状況についてはどうなっているんだという御質問でございます。

 改めて申し上げますが、学校施設の復旧事業につきましては、交付申請に先立ち事前に着工が可能であることから、公立学校施設国庫補助予定の学校二千四百校のうち、約九七%が既に復興事業に着手をいたしております。これらの国庫補助の予定事業のうち七割はこの年度内に完了する、こういう状況でございます。

 また、私立学校につきましては、国庫補助予定の学校は約七百九十校ございますが、そのうち九七%が既に復旧事業に着手済みでございまして、その約九割は今年度中に完了する、こういうことでございます。

 文科省としては、学校設置者の状況を十分勘案しつつ、学校施設の復旧が一日でも早く完了するように必要な支援をしてまいりたいと考えております。

池坊委員 授業ができないところもあるかと存じますけれども、それに対してはいかがですか。

平野(博)国務大臣 確かに先生おっしゃるとおり、授業ができない状態があって、私も仮の校舎を借りてやっておられるところに、現場に行ったわけですが、また、県を越えてお受けをいただいている、こういうところにも参りました。何としても、県外に出て学んでおられる、こういう子供さんが被災をしたからというハンディを受けないように私もしっかり頑張らなきゃいけないと思いますし、子供さんは元気にその学校の生徒さんとなじんでおられて、元気な姿で学んでおる姿を見まして、私もほっとしたところでもございます。

池坊委員 今大臣がおっしゃったように、まだ一〇〇%とはいきませんけれども、随時設備の方は整いつつあるのが現状ではないかと思いますが、同時に、私は子供たちや教職員の心のケアについてお尋ねしたいと思います。

 昨年に三十五人学級法律成立のときに、私どもは修正案といたしまして、東日本大震災によって被害を受けた子供たちへの加配、そしてスクールカウンセラーということを法律に入れました。私は常々、スクールカウンセラーが大切だ、子供たちは元気に見えていても、特に一年ぐらいたちますと、被害を受けたそのときには感じなかったトラウマなどが後から出てくる、PTSDというのは時間とともに出てくる場合もございますので、スクールカウンセラーのきめ細やかな必要性ということを申し上げてまいりました。

 児童生徒への対応というのはもとよりなんですけれども、地域の避難所となった学校の運営に奔走し、学校の復旧に尽力して疲弊している教職員の方々の心のケアというのも重要ではないかと思うんですね。現場に参りましたら、本当に、先生方がボランティアの中心みたいにして頑張っていらっしゃって、その分、大変疲れが出てきているということも見られました。

 教職員が心身ともに疲れたら、子供の教育にも影響を与えるのではないかと思います。今回の震災を受けた教職員の加配定数の措置を活用しながら、教職員の休暇取得を促すよう周知していらっしゃるようですが、二、三日の休暇といわないで、私は、せめて一カ月ぐらいの長期休暇を認めることもお考えになった方がいいのではないかと思うんですね。

 文部科学省は、このような児童生徒や教職員に対応するため、平成二十四年度予算案において、第一次及び第三次補正予算の三十四億円に加えて、スクールカウンセラー等の派遣に約四十七億円、スクールカウンセラー千三百人を盛り込んでいらっしゃいますね。また、昨年の加配定数の追加措置に加えて、今回の震災に係る教育復興支援として、新たに千人の教職員の加配定数の措置を盛り込んでおられると思います。

 これらの予算措置を、被災した子供たちや教職員への心のケアについて具体的にどのようにやっていきたいとお考えになっているのか、文部科学大臣のプランというものがおありになるかを私はちょっとお伺いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 議員も全て御案内のところだと思いますが、あの阪神・淡路の震災においても、そのときは緊張していろいろやっておられますが、ある時期が来ますと必ず心のハンディが来るというのは、統計学的にも出ているわけでございます。

 そういう意味合いにおきましては、児童、子供たちはもちろんでありますが、一番、子供たちをサポートする教職員が、先生御指摘のようなケアが必要な状態になっている。このことについては、私は、基本的には、一過性の対処ではだめだ、こういうふうに思っています。そういう意味では、長期的視点で取り組んでいくことが重要であろう、こういうふうに思っています。

 そういう意味で、先生も御指摘いただきましたが、平成二十三年度、特に岩手、宮城、福島の県の要望を全部、全面的に受け入れる、こういう思いのもとに、全国から延べ二千二百六十四名のスクールカウンセラーを派遣いたしておりますし、また加えて、切れ目ない支援をしなきゃならない。こういうことから、先生御指摘のように、平成二十四年度の予算を今審議いただいておりますが、予算案の中に、復興特別会計として、全額国庫負担として四十七億円を計上させていただいているところであります。

 また、昨年十一月には、副大臣通知として、休暇促進、二日、三日じゃなくて、しっかり心を癒やしてほしい、こういうところに一層の配慮をしてもらいたい、こういうことを含めて通知をし、各県とも、特に教職員のメンタルヘルスの保持に向けた取り組みを持続的に進めてまいりたい、このように考えています。

池坊委員 次に、私は、防災教育の必要性について、大臣にぜひ聞いていただきたいと思っております。

 東京は、きのうも夜中に地震がございました。今や、被害を受けた三県のみならず、日本じゅうが、いつ地震が来るかわからないという不安におののいているのではないかと私は思います。

 文部科学省は、東京では直下型の地震が六度、いや、そうじゃなくて今度は七度に、震度七に変更された。ある小説家が随筆の中で書いていらっしゃいましたけれども、文部科学省は七が来るぞよと言っておきながら、では国としてこれに対してどうするのかということは言わないで、怖さだけを国民に通達しておきながら、では、後、自分の身は自分で守りなさいよと、今やもう、地下鉄に乗るときも電車に乗るときも、いろいろな場所で恐怖を感じているというのを書いていらして、私も同じ思いなんですね。

 特に、今、共働きの御家庭が多いと、お子様をひとりで置いておくこともあります。そういう場合に、自分の命は自分で守らなければならない。私はやはり、この防災教育というものを小学校の段階から、どういうことが必要だということを教えていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 今までは学習指導要領において、小学校の社会、理科、中学校の保健体育などの各教科の中でそれぞれ教えてきたと思います。ですが、今回の震災を受け、そしてまた、東京に直下型が震度七で来るよなどと言っていらっしゃるならばなおのこと、私は、防災科、つまり防災教育の教科化というものを図るべきではないかと思います。

 学校教育において、小さいときからどうやって危機管理を植えつけ、そういうときに際し、どのような対処をしていくかということは真剣に考える必要があると思いますが、大臣はそのことについてはどうお考えでいらっしゃいますか。

平野(博)国務大臣 文科省として、首都圏の直下型というところでございますが、これは少し、議員も不安を募らせるだけではないかというふうにとらわれると趣旨は違うんですが、もともとプレートのところには、三十キロぐらいのところにある、こういうところで震度六ぐらいだと言っておったんですが、もう少し十キロぐらい浅いところであるのではないか、こういうところが、研究、調査の結果が出たものですから、そういうことも踏まえて、中央防災として、これからどうしていくかということをしっかりやってほしいという情報提供をさせてもらった、こういうことでございます。

 そういう中にありまして、議員が特に防災教育、こういうことでございます。特に児童生徒等に、災害時にみずからの危険を判断、予測する、安全な行動ができる判断力を身につけさせる防災教育は特に重点的に取り組んでいくべきだ、こういうふうに思っております。

 また、学校の拠点は、地域コミュニティーの拠点ともなっていくものと私は考えておりますから、地域との接点を持ちながら、そういう防災教育のあり方をしっかりと身につけてもらう、こういうことでございます。

 したがって、学校で生徒に教えていくと同時に、地域住民と一緒になった体系を組んでいかなければならない、こういうことでございます。

 特に平成二十四年度の予算におきましては、何点か明確にいたしておりますが、生徒がみずからの命を守り抜くため、主体的に行動でき得る態度を養う教育手法を用いる。また、被災地でのボランティア活動を通じて、安全な地域づくりに貢献する意識を身につけさせる。さらには、学校の防災マニュアルや避難訓練などに対するチェック、助言をでき得る有識者を学校に派遣する等々、学校と地域の防災関係機関との連携体制の強化を図る。こういうことを今回の部分でやらせていただいているわけであります。

 具体的には、教職員を対象にした、各都道府県で実践をしてもらうために〇・二億円を計上いたしております。また、参考資料等々に向けた部分として〇・四億円、各学校へ配賦をする、こういうことでございます。

 特に、今までの防災という概念でいきますと、自然災害というところについては余りやっていなかった。したがって、今回、東日本大震災のことを受けまして、自然災害を含めた防災教育をしっかりやっていこう、こういうことで予算をお願いいたしているところでございます。

池坊委員 大臣がおっしゃったように、ぜひこれは強化していただきたいと思います。

 学校というのは、今や拠点なんですね。その地域のコミュニティーの場ですから、先生方や保護者を巻き込んで、地域住民を巻き込んで、ここが中心となっていかなければいけないと思います。そして、生徒に防災教科を教えるということが、先生みずからが、また防災の知識を身につけることだと思います。

 東日本大震災では、防災がしっかりと考えられていたところは一人の犠牲者も出しませんでした。そこがやはり、きっちりとした認識がなかったところは子供たちの不幸を招いてしまいましたので、その辺は深い反省の上に立って、私は必要ではないかというふうに考えております。

 東日本大震災とそれに続く原発事故は、社会における大学の役割や教育研究のあり方など、これらの大学を考える上で、さまざま重要な課題や問題提起、視点を投げかけたのではないかと私は思っております。例えば、原発や放射能の知識、これはマスコミに頼っていた部分があったのではないか。大学や高校の授業で、地震、津波、原発及び放射能の基礎知識を、もっともっと学ばせておくことが必要だったのではないかと思います。日本史の学習以外にも、地震、津波被害の歴史などを学ぶ機会も今までは少なかったと思います。

 大臣は所信の中で、「震災の教訓を踏まえつつ、未来に向かうための復興教育を支援してまいります。」と言っていらっしゃいます。では、具体的にどのようなことに取り組んでいらっしゃるおつもりかをお聞かせいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 野田政権としては、被災地の復旧復興、再生がなくば日本の再生はない、こういうふうに、総理のお考えでもございます。そういう中にありまして、私自身も、文部科学省の立場、政府の方針を踏まえながら、特に、この被災地における大学、さらには研究所を誘致していく、こういうことで、改めてその地域の復旧復興に努めてまいりたい、こういうふうに思っています。

 そういう視点で、では東北でどういうことが一番効果的なのか。こういう視点から見ますと、産官学の科学技術の結集をできるような拠点機能を形成する、いわゆるイノベーションによる新しい産業や雇用をその地域で創出していきたい。また、大学を中心としたセンター機能を整備することによっていろいろな地域ニーズを集約する、こういうことでございます。専門学校や専門高校において、産業界との連携により即戦力になる人材を育成していくんだ、そのことによって雇用を確保していく、こういう観点で推進をしていくことが、私は重要であると考えております。

 したがいまして、文科省といたしましては、三次補正予算、並びに今お願いをしております二十四年度予算案において、被災地の大学等の知見をやはり活用する、こういうことで、東北マリンサイエンスの拠点を形成したい、これが第一点でございます。

 また、先端材料等々の開発、さらには素材産業を発展させるための東北発素材技術先導プロジェクト、こういうものを発足させたい。

 医療復興への貢献や個別化医療等の実現を目指す東北メディカル・メガバンク計画等々含めて、要は、地域で復興させる拠点をこの被災地域でつくっていきたい、こういうふうに今検討をいたしているところであります。

 食、農林水産、介護等の、被災地のニーズが高い分野におきましては、専門人材を育成していく。要は、人材の育成と雇用の場をどう確保するか。

 地域にある大学の知見を結集して、そういうプロジェクトを起こしながら拠点づくりを進めてまいりたい、かように考えています。

池坊委員 私も、予算委員会で、野田総理には強く申し上げました。教育の、東北における復興復旧なくして再生はあり得ないのだということも、どうぞこれは肝に銘じて、教育、文化、芸術、その再生を最優先していただきたいとお願いしたところでもございます。

 所信の中に述べていらっしゃる、「大学や研究所等を活用した地域の再生に向けた取り組み、復興を担う専門人材の育成等を進めてまいります。」というのは、今おっしゃったようなことで私は理解したいというふうに思っております。

 大学生の中には、みずからの専門分野を生かし、美術史、文化財保存、修復を学ぶ学生が、津波で泥や水につかった書物とか彫刻の修復に取り組んでいる例もございます。専門知識を生かした学生ボランティアなどの活動は非常に重要であると私は思っておりますので、今後とも、復興においては、大学において研究分野の人材がさらに磨かれることができるような人材養成を私は支援していっていただきたいというふうに考えております。

 現場の声ということなんですけれども、岩手県のある方からこのような要請をいただいたんです。被災した子弟の大学入学金、授業料の納入で、公立、私立では減免に大きな差がある。公立においては入学金等は返還するようになっておりますけれども、私立においては入学金等の返還は、自発的になさる方もあれば、認めていないところもございます。

 これは指導ということで、指示をすることは文部科学省はできませんけれども、せめて大震災によって被災された方についてはその辺の事情を考慮するような何か御配慮があってほしいなというふうに私は感じておりますけれども、大臣はいかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 池坊先生、これは私立大学という、やはり大学自体が御判断するところでございますが、被災地出身者の入学金を返還していない、返還しようという意思のない学校もあるように聞いていますし、授業料の取り扱いは、うちは要らないというところの大学もございます。したがいまして、一律的に返還しろと、これはなかなか言いにくい部分でもございます。

 しかし、実際やっておられる入学金の返還、さらには学生の経済的負担の軽減等々、大学にできること、やれることについてやっていただいていることには、私は感謝を申し上げたいと思っております。

 そういう意味で、文科省としては、被災により経済的に修学が困難となった学生を対象とした授業料なり入学料の減免を行う大学をある意味支援していくためには、補正予算で計上いたしましたが、文科省としては、通常二分の一だけれども三分の一まで補助率をかさ上げしますよ、したがって大学の自主的判断でそういう枠をふやしてください、こういうことをお願いしているということでございます。

 来年度予算案においても、同じような支援を継続するための予算、約六十一億円を計上させていただいておりまして、大学に対してそういう間接的なお願いをしているというふうに御理解をいただきたいと思います。

池坊委員 おっしゃるように、文部科学省は指導はできても指示はできませんし、個々の私立学校も、大変な重い、経済的困窮にあることも確かだと思います。ですから、一律に入学金を取ってはいけないというのではなくて、今おっしゃったような措置、つまり、入学金を取らなかった学校に対する文部科学省からの支援とか、きめ細やかなそうした支援が私は今後とも必要なのではないかと思いますので、そのことについてはぜひ心していただきたいと思います。

 それでは、文化芸術を活用した、町の復旧復興についてお尋ねしたいと思います。

 被災地の復興に当たっては、文化的景観などの文化財を保護、活用することによって被災地域を復興していく視点が私は必要であると考えております。

 実際には、住宅などを建設する場所が史跡や名勝であったり、埋蔵文化財がある場合、文化財としての価値を維持することと住民生活の復旧復興との調整が非常に難しいのではないかというふうに考えております。

 文化庁は、平成二十三年度文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業において、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県を中心とした被災地域における事業を採択していらっしゃいます。この事業は、地域の文化遺産を面的に捉えるという文化的な観点を踏まえた復興計画の策定であり、非常にすぐれた事業であると私は考えております。

 この事業の実施に当たっても、文化財の所有者や地域住民に対して文化財の価値への理解を深め、文化財の保護の必要性を踏まえた上で、地域住民等による適切な判断ができることが必要ではないかと思います。

 文化財を活用した被災地の復興について、大臣はどのような御見解をお持ちでしょうか。

平野(博)国務大臣 先ほど池坊先生に答弁いたしましたが、補助率を二分の一から三分の一と言いましたか、私。三分の二、かさ上げですから、そこをちょっと間違いでございましたから、そういうことでございます。

 今、文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業、これは私は、地域での、いろいろな意味で、文化遺産、すなわち、やはり宝なんだろうというふうに思っております。そういう意味では、その地域でのお祭りでありますとか神楽でありますとか民俗芸能をやはり支援することによって、地域の町おこしができ上がってくるものだ、こういうふうに思いますし、被災された住民の方々を元気づける、こういうことでは、復興、振興につながっていくと考えております。

 平成二十三年度から開始しました、これは池坊先生からの強い御要望のあったテーマだというふうにも理解をいたしておりますが、岩手、宮城、福島県に対して、特に被害が大きかったこの地域には補助金を出しまして、とにかく復興させよう、こういうことでやっております。

 具体的には、民俗芸能の上演、お祭りに使用する衣装など津波で消失した用具の修理、新調、さらには被災した地域の祭礼行事や民俗芸能の状況調査をしっかりして、補助金を交付する。いわゆる、調査をもっとしっかりしてほしい、もっといろいろなものがあるのではないか、こういうことで、その調査に対しての補助金を交付しているところでございます。

 文科省としては、今後も、被災した民芸、芸能等の文化財の復旧を通じながら、被災地の町おこし、地域おこしに取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

池坊委員 ことし四月にコンソーシアムを立ち上げられますよね。文化庁、芸術家、芸術団体、企業、助成団体などが、分野の枠を超えて連携協力して、文化芸術を通じた被災地の復興支援活動を展開するために、社団法人全国公立文化施設協会及び社団法人日本芸能実演家団体協議会を共同事務局とするコンソーシアムだと思いますけれども、そこでの調査研究というのも今のような復興の、さまざまな文化を研究していらっしゃるのでしょうか、どのようなことを計画していらっしゃるのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。

平野(博)国務大臣 今先生おっしゃられたのは、文化芸術による復興推進コンソーシアムの件だと思っております。

 この進捗状況についてでございますが、このコンソーシアムは、芸術家、芸術関係団体、企業、大学等が、被災地の状況やニーズについて情報を共有し、綿密な連携協力のもとに文化芸術活動を展開することによって復興に寄与する、このことを目的といたしております。

 このコンソーシアムは、文化庁の呼びかけにより関連団体が協議をし、昨年十一月に設立準備の事務局が発足をいたしました。現在、設立準備委員会におきまして、組織のあり方、活動内容の検討を続けておりまして、この三月の十三日にも設立シンポジウムが開催されたところでございます。準備委員会では、今後、文化芸術に関係する団体、個人等の参加の賛同を得て、本年四月以降にコンソーシアムを立ち上げる予定といたしているところでございます。

 これについて、どういう支援をするのかということですが、この状況を見据えて、具体的な対応がどうできるのか、このことについては検討してまいりたいと思っております。

池坊委員 企業や芸術家、実演家とか、さまざまな分野で活躍している方々が連携協力し合っていくことは、私は極めて重要だと思っておりますので、それをリードしていらっしゃるのが文化庁であるならば、文化庁はきっちりとした計画性を持って当たっていただきたいというふうに思います。

 最後に、我が国における文化行政のあり方についてお尋ねしたいと思います。

 東北三県、やはり私は、心が癒やされていくためには、文化芸術の果たす役割は言うまでもなく、大ではないかというふうに思っております。しかしながら、残念なことに、東電の福島第一原発事故による放射能への不安により、海外の美術館から、我が国、特に福島県の美術館に対しての美術品の貸し出しというものが中止されております。アメリカの美術館七館が所蔵する、画家のベン・シャーンの作品については、福島県立美術館への貸し出しが中止されました。また、いわき市立美術館では、チェコ、フランス、アメリカなどが貸し出しを禁止いたしております。

 言うまでもなく、文化芸術というのは、個々人の心を癒やすだけでなく、その国と他国との友好の大きなかけ橋になっていくのではないかと思います。昨日、テレビを見ておりましたら、ニュースで、北朝鮮とフランスが一緒になってオーケストラを演奏している。これも、国交とかにかかわりない、文化が果たす大きな役割を自覚してのことではないかと思っております。フランスのルーブル美術館は、四月から、岩手、宮城、福島の被災三県を巡回する展覧会を開くというふうにも聞いております。

 片方では開催をしてあげようと手を差し伸べるところがあれば、また片方においては、やはり原発事故による放射能の不安を払拭することができずに、貸し出しをやめているところもございます。

 今こそ、地域だけに委ねるのではなくて、文部科学省が、外務省などを通じまして、こういう被災地においてこそ県民たちがすばらしい美術品に触れたいと思っている、そういうものを見ること、鑑賞することを渇望しているということを、積極的に文化庁、文部科学省が発信していただきたい。今までの、待つとかいうことではなくて、もっと積極的に言うべきときが来ているのではないかと私は思います。

 それに対しては、大臣が何かお考えがあるかをお聞かせいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 まず、文化行政と、先生から、被災地でなかなか開かないというところの二点の御指摘がございました。

 文科省、文化庁といたしましては、次世代人材の育成、我が国の文化力の発信にやはりもっと重点を置く、こういうことを含めて、文化芸術の振興、伝統文化の保存、継承、国際文化交流、こういうところの推進について一層戦略的に取り組み、心豊かで活力ある文化芸術立国を目指してまいりたい。そういう観点で、今回、先ほど先生から御指摘いただきましたように、なかなか我が国での開催を予定していた展示会が、東日本の震災により、震災直後には諸外国の美術館から作品の貸し出しをとめるとか、こういう事案があったということは承知をいたしております。

 このことにより、諸外国の大使館や関係機関等への働きかけをいたしました。一旦改善はされましたが、六月から福島県立美術館で開催予定のベン・シャーン展というのは、先生御指摘のとおりでございました。放射能に対する不安があった、こういうことでございます。

 私どもとしましては、三月の二十七日に開催予定のカルコン、日米文化教育交流会議美術対話委員会におきまして作品の貸し出し中止についてを議題として、米国の博物館、美術館関係者へ協力要請をいたしておるところでございます。

 先ほど言われましたように、フランスのルーブル美術館が、岩手、宮城、福島県、三県で所蔵品の巡回展をやっていただける、こういうことでもございます。

 私どもとしては、我が国の現状について誤解のないようにしっかりと情報発信をし、海外の作品を鑑賞できる機会は確保できるように努力をしてまいりたい、かように思っております。

石毛委員長 時間が参っておりますので、よろしくお願いいたします。

池坊委員 はい。

 ことしの二月に東京国立博物館で北京故宮博物院二百選がございまして、大盛況でございました。二十六年には台湾の方からもさまざまなものが来る、そして見ることができるというような報道も目にいたしております。

 台北駐日経済文化代表処副代表の羅坤燦さんには、三月十一日には指名献花ができなくて大変失礼だったというふうに私は思いますけれども、二十六年に台湾の博物展が開催されましたら、本当に文化によって友好の輪を広げることができるというふうに思っておりますので、ぜひ尽力いただきたいということをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

石毛委員長 次に、宮本岳志委員。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 東日本大震災で、学校や子供たちが大きな被害を受けました。文部科学省が昨年十二月に公表した調査を見ても、震災に伴う休校や他校、施設の使用、仮設校舎を使用しているなど、子供たち、教職員が特別な困難を抱えていることは明らかだと思います。

 とりわけ、東京電力福島第一原発事故により避難を余儀なくされ、福島にとどまる子供たちは、外で遊ぶことさえできない事態がいまだに続いています。ことし一月時点でさえ、屋外活動をしていない学校が七十校、屋外活動の一部制限をしている学校が三百九十九校に上ります。

 まず、大臣の基本認識をお伺いしますけれども、被災地には特有の課題があり、教職員の増員が必要である、このことはよろしいですね。

平野(博)国務大臣 議員の御指摘のとおりだと私は思っています。

宮本委員 阪神・淡路大震災の際には、教育復興担当教員、心のケア担当教員が十五年にわたって配置されてきたわけです。今回の震災でも、単年度に終わらせることなく長期に取り組んでいく必要がある。特に福島においては、いまだに原発事故でふるさとに帰ることもできない事態が続いており、これは災害そのものがまだ終わっていないと言わなければなりません。

 加配では単年度になってしまい、学校現場では先生が一年ごとにかわらざるを得なくなる。子供たちに寄り添い支えていくためにも、学校現場は、継続的に、長期安定的に同じ人、同じ先生が配置されることを望んでおります。

 被災地への教職員の加配を次年度以降も長期に継続して取り組んでいくべきだと私は思うんですけれども、この点、大臣、よろしいですか。

平野(博)国務大臣 先ほども池坊先生からの御指摘がありましたが、やはり長期的にケアをしていく、こういうことが必要であるということも、私も答弁をさせていただきました。特に、きめ細やかな学習支援や心の被害、このことについてのケアというのは中長期的なテーマとなろうかと私は思っております。

 引き続き、家庭訪問を通じた家庭との密接な連携や、放課後を利用した個別指導などの対応が必要である、こういう認識のもとに、御指摘の加配措置については継続的な措置が必要である、こういうふうに認識をしておりまして、今年度の加配数と同じ程度、約一千人ぐらいの加配を考えているところでございます。

宮本委員 現在、今もおっしゃった加配約千人、これではまだ足りないという声が現地から届いております。

 昨年十二月十八日に福島大学で、福島県内の小学校長会、中学校長会、PTA連合会、教育委員会など教育団体が参加をして、教育復興シンポジウムというのが開催されました。シンポジウムでは、福島の子供たちの深刻な実態も浮き彫りになりました。将来展望が持てず、どうせ僕らは死ぬんだから勉強も何もやりたくないと口にする子供さえいる。こういうのは本当に胸の痛む話であります。

 震災の影響で教室に行けなくなった子が福島県を初め被災地には少なからずいて、一人一人丁寧に話をじっくり聞いていく必要がある、こういうのが現場からの声であります。

 この間、スクールカウンセラーも配置をされてきておりますけれども、日数も限られ、人も目まぐるしくかわる。やはり養護教諭を加配してほしいというのが現場からの切実な声なんです。

 現に、落ちつきのない子供が多く保健室に集まっているという実態もあります。通常業務を行う養護教諭以外に、子供に常に寄り添うような養護教諭をもう一人配置して、複数配置にしてほしいという声も寄せられております。現在、小中学校合わせて四十六人にとどまっているこの養護教諭の加配を抜本的に増員する必要があると思うんですね。

 それで、文科省は二〇〇八年度から、退職した養護教員をスクールヘルスリーダーとして派遣する事業を行っております。スクールヘルスリーダーの派遣も含めて、養護教諭の複数配置が必要だと思います。これはどうかということが一点。

 同時に、事務職員の抜本的増員が焦眉の課題だと思うんです。

 被災地の学校では、就学援助の増加、避難している子供たちの異動に伴う転入学の手続、除染などの放射線汚染についての保護者への対応、高校でも奨学金の申請の増加など、事務の仕事も急増している。しかし、事務職員の加配も小中学校合わせて二十二人にとどまっております。事務職員も抜本的に増員すべきだと思うがどうか。

 この二点、お答えいただけますか。

平野(博)国務大臣 スクールヘルスリーダーという、いわゆるOBの皆さん方を含めて、しっかりやらなきゃならない、こういうことでございます。

 阪神・淡路の状況を見ましても、十五年ぐらいかけてケアをしている、こういうことも現実の姿としてございます。

 そういう中で、養護教諭、この方についての必要性、これは私は必要だというふうに認識をしております。また、先ほど先生から御指摘がありましたスクールヘルスリーダーという、OBの熟練の、ベテランの方を、来ていただいて若い新人の方を一緒に教育してもらいながら充実強化する、こういう制度も、今、学校等にも財政的な支援を行っております。

 いずれにいたしましても、地元の被災県の要望には的確に応えていきたい、かように思っております。

宮本委員 ぜひ応えていただきたいと思うんですね。事務職員の方もお願いいたします。

 次に、少人数学級、三十五人以下学級の問題について質問いたします。

 大臣は先日の当委員会の所信表明でも、「今後、さらなる少人数学級の推進や教職員配置の充実に努める」と述べられました。

 小学校一年生に三十五人学級を導入した昨年の義務教育標準法改正時の国会審議で、当時の高木文部科学大臣は、私の質問に答えて、少人数学級の教育効果を認める画期的な答弁をされました。そして、まず小学校一、二年生から三十五人学級を導入し、順次、小中学校全部に三十五人学級を導入した上で、二〇一七年度には小学校一年生で三十人学級を、二〇一八年度には小学校二年生で三十人学級を実現するという、時期は少し変更があるかもしれませんが、一昨年八月の文科省の教職員定数改善計画の案について、「今も考え方は変わっておりません。」こういう答弁が昨年もございました。

 これもまず大臣の基本認識を確認するんですが、少人数学級の教育効果、これはあるということ、この認識。それから、少人数学級の計画的推進について。これも高木大臣と変わりありませんね。

平野(博)国務大臣 基本的認識は変わっておりません。

 先生も、若いころ、どれだけの学級編制だったかと思い出していただいたらわかりますが、私のときには大体、一学年五十四、五名おったような気がします。そのことを考えますと、少人数にすることによって、先生が一人当たりの生徒に目配り、気配り、指導する時間がふえるということは物理的にもあるわけでありますから、少なくともそういう視点から見ての教育効果はある、こういうふうに私は思っております。加えて、計画的な教職員定数の改善というのは私は必要であろう、こういうふうに思っています。

 したがって、では、今回はどうなっているんだということにつながっていくんだろうと思いますが、実質、今年度につきましては、加配という制度を使いながら三十五人学級の実現をさせていただいた。今後については、そういう考え方は変わらずに、何とか実現をしてまいりたい、かように思っております。

宮本委員 義務標準法の改正によって、既に昨年の四月から小学校一年生の三十五人学級が実施をされております。いよいよこの四月から小学校二年生、さらには三年生以上に順次拡充されていくだろうというのが多くの父母や教職員、国民の願いだったと私は思うんですね。しかし、小学校二年生のみ、しかも、標準法改正ではなく加配でということになりました。

 なぜ標準法の改正を国会に提案しなかったのか、お答えいただけますか。

平野(博)国務大臣 なぜ法案、改正を国会に出さなかったのか。端的な御指摘でございますが、まず、平成二十四年度の予算案につきまして、一方では大変厳しい財政事情がある、しかし一方ではきちっと法定化をして計画的に進めていかなきゃならない、こういう強い要望、我々の考え方も政策的にはあるということでございますが、政府としては、震災復興という、東日本の大震災が起こった、最優先でやらなきゃならない、こういうことで、政府全体としての意思は、まずは震災復興に、全てのエネルギーをそこに出すんだということであります。

 したがって、文科省の立場でいえば、やはり未来への投資、人的投資が大事だ、教育は大事だという観点から、何としても、本年度でとめることなく、加配というやむを得ない方法でもって三十五人学級の実現を考えさせていただいている、こういうことで御理解をいただきたいと思います。

宮本委員 震災復興に最優先で取り組む必要がある、これは予算委員会でも大臣からそういう答弁が繰り返されているんですけれども、昨年の義務教育標準法の改正の議論を当委員会でやりましたけれども、審議されたのは三月の二十三日、二十五日、採決が三十日。昨年のあの法改正だって、大震災後にやっているわけですよ。震災復興はもちろん当然のことでありますし。そして、少人数学級を進めることは、被災地の子供たちにとっても、よりきめ細かな対応が可能となる話であります。

 これまで少人数学級を実施していない自治体に、今回加配という形で加配するということになりますけれども、これでは、今まで国の加配定数も活用して独自に少人数学級を実施してきた自治体には教職員の増員が行われないということになります。今までやってこなかったところがふえるというやり方では、国に先んじて少人数学級を進めたら、結果として損をするということになるのではないか。これは大臣、いかがですか。

平野(博)国務大臣 先ほどちょっと、少し補足をいたしますが、震災復興を最優先すると同時に、もう一度、これは自治体との関係もあるわけですが、地方での取り組み、さらには施策の効果検証も含めて、今後のあり方について今有識者会議で御議論をいただいている、こういうことでございます。ただし、基本的な認識は、やはり少人数学級はやらなきゃならない、こういう認識でございます。

 加えて、今宮本先生からございました。率先してやっているところについては、では、加配の人員が来ずに損をするのではないか、こういう御指摘ですが、やはり、最初に一生懸命やっているところについては、一生懸命汗をかいたところは損をする、こういうことのないように、三%のレベルできちっとそれは加配をする、別の意味の加配をする、こういうふうに公平な加配をしたい、かように考えています。

宮本委員 ぜひ、頑張ってきたところがばかを見るということがないように、きちっとしていただきたいと思うんですね。

 では、本当に三十五人以下学級になるのかということを問いたいんです。時間がありませんので、二問分けるつもりでしたが、一度に聞きます。

 現在、既に小学校二年生で三十五人学級になっている県、独自にやっている県でも、例えば、北海道では、学年二学級以上で一学級の平均児童生徒数が三十五人を超える学校で三十五人以下学級、こうなっているんですね。広島では、学年三学級以上の学校で三十五人以下学級となっているんです。

 それで、例えば、北海道で、一学年の人数が三十六、七人で一学級という場合はだめですし、広島では、八十人弱で二学級という場合には三十五人以下には現在もなっておりません。このような場合も含めて、この四月から、加配で小学校二年生の全てが三十五人以下学級になると言い切れるのか、これが一問ですね。

 もう一つは、そういう三十六人程度の学級で、自治体の判断で分けないというふうに判断した場合に、小学校一年生、義務標準法を変えてやっている一年生の方は、二人の教員がそれでも配置されることになります。しかし、今回の二年生は果たして二人配置されることになるのか、これについて、これはもう事務方で結構です。

布村政府参考人 お答えいたします。

 小学校二年生の三十六人以上学級解消のための加配定数につきましては、各都道府県からの申請を踏まえて措置を講ずるということとしており、基本的に、都道府県の申請どおり配分することを予定してございます。

 その中ででございますけれども、小学校二年生の三十六人以上学級を解消した場合に措置されるということであるため、自治体あるいは学校の御判断によりまして、例えば、十八人以下の学級とせず三十六人以上の学級を維持するということで、十八人に二つに分けると学級の規模としては小さいという御判断があった場合には、加配の対象にはならないということになります。

 しかしながら、このような学校に対しましても、各都道府県の判断によりまして、少人数指導あるいはチームティーチングという形で、少人数に分けた形の指導を充実させようという場合には、加配定数を措置することも可能という制度になってございます。

宮本委員 やはり、標準法を変えてやるのとは違った事態が生じるんですね。自治体の判断というんだけれども、分けない場合でも、一年生ならちゃんと二人配置されているわけですから。その点では、私たちは、改めて義務標準法の改正できちっと進めるべきだということを申し上げておきたいと思います。

 時間がありませんので、次に、奨学金に入りたいと思うんです。

 去る二月二十一日の予算委員会で、私が、なぜ一旦概算要求に盛り込んだ給付制奨学金を予算案では削ったのか、こう聞いたら、平野文科大臣は、所得連動返済方式の奨学金を創設して、一歩前進、二歩前進として対応している、こう答弁をされました。私は、イギリスの例も紹介をして、イギリスは一九九八年に所得連動型に切りかえたが、貧困層が救われなかった、二〇〇四年に給付制が復活した、こういう指摘もいたしまして、給付制奨学金のかわりにはならないと指摘もいたしました。

 この制度、所得連動返済型奨学金ですが、目安として年収三百万円未満の場合、五年を超えても返済を猶予するという制度でありますけれども、これは、年収三百万に満たない人が奨学金の返済をすることは難しい、こういう認識に立ったものだと考えてよろしいですか、大臣。

平野(博)国務大臣 委員の、年収三百万の基準の認識に関してでございますが、所得連動型の無利子奨学金制度は、経済的に今困窮する家庭の学生が将来の奨学金の返済負担を懸念して修学を断念することがないように、安心して進学や修学の継続ができるように環境整備をしたものであります。そのために、年収三百万円以下の経済的に困窮する家庭の学生を対象とし、それらの方々が将来の不安を抱かないように、本人の年収が三百万円を超えるまでは返済を猶予するようにしたものであります。

 つまり、受験をしよう、進学しようと思っているときの家庭の年収が三百万円、今度は、卒業されて本人の年収が三百万円以下であるならば返済についての猶予、こういう二通りの論点がある、こういうふうに御理解いただいたらいいと思います。

宮本委員 今のちゅうちょをなくす制度なんだ、将来、三百万以下だったらどうかということとは別なんだというふうにちょっと聞こえたんですけれども、しかし、将来に不安が残るということは、三百万円以下だったら返せないということをおもんぱかって、三百万未満の場合は返さなくていいという制度設計になっているんですね。

 だったら、当然、既に奨学金を借りて現在返済中の人についても、年収三百万円未満の場合、五年を超えても返済を猶予すべきだと思うんですが、これはそうじゃないんですか、大臣。

平野(博)国務大臣 今借りているという方ですか。(宮本委員「今」と呼ぶ)今借りているという方については、新しいこの制度の対象からは基本的には外れていますが、状況に応じては減額をしていくとか、そういう長期に減額をする制度を平成二十三年度から導入いたしております。このことについて、もう少し周知徹底をこれからもしていくべきだと考えております。

宮本委員 これはやはり矛盾なんですよね。これから借りる人は猶予されるが、既に借りて困っている人は猶予されないというのは、誰がどう考えてもバランスに欠けると思うんですね。

 それで、そもそもこの奨学金の目的というのはどういうものかということを確認したいんです。日本学生支援機構の目的については、日本学生支援機構法第三条に定められております。これは、城井政務官の方からお答えいただけますか。

城井大臣政務官 お答え申し上げます。

 独立行政法人日本学生支援機構法第三条、御指摘の部分でありますが、以下のとおりであります。

  独立行政法人日本学生支援機構は、教育の機会均等に寄与するために学資の貸与その他学生等の修学の援助を行い、大学等が学生等に対して行う修学、進路選択その他の事項に関する相談及び指導について支援を行うとともに、留学生交流の推進を図るための事業を行うことにより、我が国の大学等において学ぶ学生等に対する適切な修学の環境を整備し、もって次代の社会を担う豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に資するとともに、国際相互理解の増進に寄与することを目的とする。

と規定されております。

宮本委員 教育の機会均等に寄与するために学資の貸与を行い、もって次代の社会を担う豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に資すると。ところが、今や、この日本学生支援機構のやっている奨学金の制度は、学生を奨学金債務奴隷ともいうべき状況に追いやって、無慈悲に取り立てることによって、次世代を担う豊かな人間性を備えた創造的な人材を台なしにしていると言わねばならないような事態が生まれているんですね。

 現在返済中の人は、返済猶予は五年しか認められておりません。それでやむなく滞納というふうになれば、滞納三カ月で個人信用情報機関に通報し、ブラックリストに載せる。滞納九カ月で法的処理に移ります。滞納期間には一〇%の延滞金が上乗せされております。

 ここでまた城井さんに聞くんですが、奨学金の滞納を理由に学生支援機構が訴訟に訴えた支払い督促申し立て件数はどれだけあるか、二〇〇六年度以降二〇一〇年度まで、年度ごとに答えてください。

城井大臣政務官 お答え申し上げます。

 支払い督促申し立ての件数について、数字だけ申し上げます。二〇〇六年度は一千百八十一件、二〇〇七年度は二千八百五十七件、二〇〇八年度は二千百七十三件。この後、閣議決定がなされまして解消促進が図られたということで、二〇〇九年度が七千七百十三件、そして二〇一〇年度が七千三百九十件であります。

宮本委員 法的処理に移れば裁判所から呼び出しが来るんです。今の数で見たら、二〇〇六年度に比べてもう七倍ですよ、二〇一〇年度は。

 出頭してわずか十五分で判決が出ると聞くんですね。私、話を聞いたんです。滞納金の支払いが難しいと説明してもなかなか受け入れてもらえない。百万円近い滞納金の支払い、延滞金の支払いを泣く泣く受け入れた子育て中のある返済者は、子供を育て上げねばならない人間にこのような仕打ちをする日本には未来がない、いつかは国籍を捨て子供を連れて日本を出る、こう語っておられました。

 こんなことで、次代の社会の担い手、豊かな人間性を備えた人材を育成できるわけがないんですね。

 そもそも、何ゆえ、定められた金利よりもはるかに重い一〇%もの延滞金を課しているのか、これが一つです。二つ目に、延滞金や利子は、会計上、奨学金の原資には入らず利益として計上されているのではないか。これも城井さん、お答えできますか。

城井大臣政務官 お答えを申し上げます。

 まず、延滞金についてでありますが、返還者に対して返済期日に返還するように促す側面を有し、延滞となった場合、期日どおり返還している者との公平性の観点から課しているということであります。

 その上で、延滞金や利子の使い道についてでありますが、延滞金や学資金利息は、会計上は経常収益として区分されるものでありますけれども、無利子奨学金の延滞金については、日本学生支援機構の奨学金事業運営の一部、ソフト部分ということでありますが、そちらに充当されているというふうにされています。

 有利子奨学金の延滞金及び利子については、有利子奨学金事業の原資の一部である財政融資資金等の利払いに充当されております。在学中は、本人は無利子でありますけれども、そのときにもその財政融資資金の部分に関しては利子が発生しておりますので、その一部の補填という形で使われているということであります。

宮本委員 返還を促すためというのであれば、本人がきちっと返還する意思を示せば、この延滞金については、相談に応じて減額にも応じるべきですよ。

 そして、学生支援機構のホームページを見たら、延滞金収入で四億円以上上げたとはっきり書いているじゃありませんか。まさに利益の扱いになっているんですね。そして、この延滞金は一円もまけないというような話がまかり通っている。

 弁護士の方から聞くと、これでは特定調停制度と比べてもひど過ぎると。民民の間でやる場合は、金融会社がむしろ延滞利息を減額するというのがあるんだけれども、学生支援機構は一円たりともまけないという態度をとっている。

 それから、民間の金融会社の場合は、代理人を立てたら、弁護士に連絡はあっても返還者や保証人に電話をして取り立てることはしないが、支援機構は、代理人を立ててもなお本人や保証人に取り立てる、こういう事例があるというんですね。

 これは余りにもひどいやり方ではないですか、城井さん。

城井大臣政務官 お答え申し上げます。

 いわゆる奨学金事業の返還金は、基本的には次の学生への貸与の原資であるということで、返還金の回収は大事だと思うんです。

 ただ、そうはいいながら、先ほどの延滞金も、公平性の観点からももちろん課していくけれども、先ほども御指摘のあったいわゆる一円たりともという部分も含めて、例えば弁護士さんを立てた場合に督促はいかがかといった場合に、原則的には、弁護士から債務整理の受任通知が機構に届いた後に弁護士に対して請求を行うこととなっているということなんです。

 ただ、機構のチェックのミスで、それが漏れていた形で、弁護士から債務整理の受任通知が機構に届いた後に支払い督促申し立てを行って取り立てたような例もあるものですから、やはり、当事者当事者が、一人一人がどうかというところをきちんと見ていきながら、督促に至る前までのプロセスのところを周知するなり、丁寧にやるなりというところはもっと徹底をしていくべきだというふうに考えております。

石毛委員長 宮本委員、簡潔にお願いいたします。

宮本委員 大臣にお伺いいたします。

 少なくとも、返済者が年収三百万以下であって、既に借りている人ですよ、新しい制度じゃないですよ、それで延滞というような事態になった場合でも、例えば三百万以下でも、本人が申請しなきゃ猶予されないわけですよ。五年の限度まで猶予されずに、そういう制度があるのを知らずに膨れ上がっちゃったという人がいるわけですね。

 後からでも、年収三百万未満であったことが証明されれば、その猶予を受けたとみなして、やはり延滞金などの減額にきちっと誠実に応じるべきだと私は思うんですけれども、大臣、そういう点での御検討をやるべきだとお感じになりませんか。

平野(博)国務大臣 こういう制度を知らなかった、こういう場合には、例えば学生支援機構へ、過年度における猶予の事由、どういう理由でこういうことだということの証明書を提出していただくということにより、今議員御指摘の点について返済期限を猶予するということは、私は、だめだということではないと思っております。

宮本委員 大臣、もう結構でございます。ありがとうございます。

 こういうことをしっかりやっていただいて、やはり、そもそも全ての返済者に対して所得連動返済型を適用すべきだということを申し上げたいと思うんです。

 そうしたら、これに一体幾ら、試算したらかかるかと聞いたら、大体百七十二億円というのが文科省からの試算結果でありました。わずか百七十二億円で全ての返済者に対して所得連動型で返済をしっかり猶予することができるのであれば、そうすべきだ、それぐらいの金額はきちっと確保できるということを申し上げたいと思います。F35という戦闘機を今度の予算で買いますけれども、二機やめればおつりが来ます。政党助成金、いつも言いますけれども、この三百二十億、これは半分でそれぐらいのことはできるわけですね。

 世界では大学無償の時代に、未来を担う学生に世界一の高学費を押しつける。世界では奨学金は給付制が常識だというのに、我が国では奨学金と称して金を貸し付け、多くは利子まで取る。返済できなければ一割もの延滞金を上乗せし、ブラックリストや法的措置で、サラ金まがいの取り立てをする。そんなことをやっている国が一体どこにあるか。こんな無慈悲な取り立ては直ちにやめることを求めて、私の質問を終わります。

石毛委員長 次に、杉本かずみ委員。

杉本委員 衆議院議員の一回生の杉本かずみであります。また、民主党の杉本かずみでありますが、きょうは、貴重な質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私は去年の秋から文科委員会に所属させていただいているような立場で、本当に貴重な機会を、委員長、そして各理事の皆様、そして委員の皆様に御礼申し上げます。

 私、最近、質問させていただく機会が結構多くて大変ありがたいんですけれども、毎回、日本は言霊の国なので、各委員室に響き渡るように言っているんですけれども、そろそろ足の引っ張り合いの政治を卒業して、褒めたたえ合う政治をやりましょうということを言わせていただいていますので、この十七委員室にもそれが響き渡ってほしいと思っております。(発言する者あり)特に、華道もまたちょっと後で触れさせていただきたいと思っています。

 それで、私は、党派を超えて、日本の長期のビジョンを考えていくことが極めて大事だと思っておりまして、そんな勉強会も他党の皆様とさせていただいております。

 また、東日本大震災がございました。それによって、我々政治家自身も、あるいは国民の皆様お一人お一人も、バリューというか、価値観というか、あるいはパラダイムというか、この変化が求められているときが来ているというふうに認識をしております。

 二十世紀の物質万能主義から、二十一世紀の精神主義、心の主義、あるいは魂、大和魂という言葉がありましたけれども、きょうは、そういった日本の源流とか原点を探る質問をさせていただきたいと思っております。

 あと、もう一つ、あわせて、我が党もよく言っているんですが、控除から手当へということを言っております。私はその方向は正しいと思っておりますが、あえて突っ込んで言うと、控除から給付、そして、その給付も、現金ではなくて現物を給付する形にあらゆる政策で変えていくべきだというふうに認識をしておりまして、そういった意味では、子ども手当改め児童手当も、あるいは高校の無償化も、現金ベースじゃなくて現物の給付というのが今後の我が国の政治が求められている姿だと思っております。

 さて、大臣所信に対する質問ということなので、改めて大臣所信を読ませていただきました。

 初めのところで、元気な日本の再生を実現すべく、未来への先行投資ということを言っていただき、三ページ目では、未来を担う人と知の創造である教育、科学技術を振興し、また、豊かな生活の源泉となる文化やスポーツの推進を図っていく。それから、総理も言っておられますけれども、教育は繁栄の礎という中で、分厚い中間層の復活と言っておられます。

 また、その後、大学改革、あるいは、朝、馳議員が質問された、第一期からつながっていく第二期の教育振興基本計画、こういったこと、あるいは、所得連動返済型奨学金の導入、子ども・子育て新システム、特別支援教育の推進、障害のある子供、障害のない子供が同じ場でともに学ぶことを追求する、本当にいいことがたくさん書いてあります。

 また、世界に雄飛する人材というような形での外国語教育、このあたりも触れていただいています。

 その教育の中身についてちょっと私は質問したいんですが、結びのところで、国家百年の計を担う文部科学省の全責任を担う者としてという大臣所信があるんです。

 きょうは森副大臣にお運びいただいているんですが、これは特に質問通告していないんですけれども、副大臣のお気持ちをこの国家百年の計という言葉で、今どんな所感をお持ちか、ちょっとお聞かせいただけないでしょうか。

森副大臣 御質問ありがとうございます。

 大変高度な御質問といいますか、国家百年の計ということで御質問いただきました。

 大臣の所信でも述べられておりますように、特に、この昨年の大震災、これを乗り越えて日本が再び世界をリードしていく、そのような国にしていく、元気になっていく、そのためには、やはり教育を充実させることが極めて重要であるというふうに考えております。

 民主党政権発足以来、教育の質、量とも向上を図ってまいったところでございますが、現在、大学改革タスクフォースを昨年末に立ち上げまして、知の拠点である大学、これが本当に新しいフロンティアとして我が国の成長を引っ張っていっていただける、そういうふうに結果を出せるという形で大学改革を進めていきたいと今進めているところでございますし、また、地方教育行政についても同じくタスクフォースを立ち上げております。

 省内で、今、本当に熱い議論を交わしておりまして、できるだけ早くその具体的な工程表等を皆様にお示ししたいというふうに考えております。

 教育改革に向けて、本当に全力で取り組みたい、このように考えているところでございますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

杉本委員 ありがとうございます。

 唐突な質問で御無礼いたしましたが、お答えいただいて本当にありがとうございます。また、お答えを聞いて大変安心をいたしました。

 次に、野田総理がおっしゃられる分厚い中間層の復活ということの中で、予算委員会で田島議員も質問をされていたかと思うんですが、高校の無償化の問題ですね。

 私は、分厚い中間層を復活させるために、高校の無償化というのは極めて重要な政策だと思っておりますが、これはあえて褒めていただくという見方をすると、この高校の無償化、下村先生からは中身が大事だというお言葉もさきの質問でありましたけれども、実額として、導入前と導入後、今、実際、予算額が幾らになっているか、お教えいただけるでしょうか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 高校無償化につきましては、平成二十二年四月より実施されているという形になってございまして、平成二十二年度の予算額が三千九百三十三億円、平成二十三年度予算額が三千九百二十二億円、平成二十四年度予算の政府案につきましては三千九百六十億円を計上いたしているところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 導入前、導入後ということでいいますと、高校の方の手当てというのは実際なかったわけなので、それが四千億近く拠出されるということになって、中身についてはまた英知を集めてよりよいものに変えていくという議論も午前中あったと思うので、それはそれで私は前向きに受けとめたいと思います。こういった思い切った政策が打たれることになったのも、僕は政権交代の意義ではないかと思いますので、政権がまたどっちにかわろうと、どなたがとろうと、建設的にそういった大きな変化をつくっていくことが大切だなというふうに認識しております。

 その意味から、教育行政で、地球は丸くて、学ぶべきところは地球上幾つかあると思うんですけれども、そんな中でフィンランドの教育というのは、皆さん、私よりも各委員の方が十分認識されているかもしれないんですが、改めて、フィンランドは二十年、三十年かけて、教育大国、教育立国になったという認識を持っております。

 今、文科省として、フィンランドの教育改革をいかに評価されているか、そして、改革の内容、あるいは現在のフィンランドの状況についての文科省の御認識を伺いたいと思います。

森副大臣 お答えいたします。

 先生御案内のように、フィンランドは過去十年のPISAの調査で一貫してトップグループに位置するとともに、生徒間、学校間、そして家庭環境の違いによる学力の相違、格差が、他国と比較してみても少ないことが指摘をされているところでございます。

 その特徴としては、まず、教員の要件が修士課程修了となっているなど、教員の質が高く、保護者や社会の信頼を獲得していること、二番目として、生徒がみずから考えて学ぶことを基本に据えたカリキュラムであり、読書の習慣が身についていること、第三に、学校等に一定の裁量が認められ、現場の創意工夫が生かされるようになっている、第四番目、学習に困難を抱える生徒に対する十分な支援など、きめ細かな教育を行っている、さらには、社会福祉全般に手厚い支援を行う国家であり、教育費の私費負担が軽いというようなことが指摘をされているところでございます。

 それで、このようなフィンランドの状況を我々としてもしっかりと確認させていただく中で、こういうフィンランドの特徴は継続的な教育改革の積み重ねによるものでありまして、このことが過去十年のPISA調査の好成績につながっていると考えられるというふうに認識をしてございます。

 今後とも、フィンランドを含め、他国の教育改革の状況を十分把握しつつ、我が国の教育改革に生かしてまいりたいと思っております。

杉本委員 ありがとうございました。

 また、文科省さんもきちっと認識してくださっていて、継続的な改革ということの大切さを私も確認いたしました。

 そこでなんですが、私は最近、私自身も反省しなきゃいけないかもしれないんですが、道徳観が失われがちだとずっと言われて久しいかもしれません。あるいは、池坊先生がいらっしゃいますけれども、礼儀作法とか、これは華道から学ぶのか、茶道から学ぶのか、武道から学ぶのかはわかりませんが、あるいはビジネスマナーなんかでも、例えばエレベーターに乗ったときにどこが上座なんだというようなことを知っているか知っていないかで人間関係のコミュニケーションというのは大分変わると私は思っております。

 そんな意味で、道徳教育を拡充する必要があると私は考えておるんですが、道徳教育という点で、現在、一週間に何時間授業があって、そして、年間何時間授業が行われているか、教えてください。

布村政府参考人 お答えいたします。

 現在、小中学校については、教科ではない道徳の時間という形で設定されておりまして、それぞれ年間の授業時数の標準として三十五単位時間を規定しております。

 週当たりの授業時数は一単位時間という形で道徳の時間が設定されておりますけれども、学校における道徳教育につきましては、この道徳の時間をかなめとして、ほかの特別活動ですとか各教科を踏まえて、学校教育全体として取り組んでほしいという方向で学習指導要領で規定させていただいているところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 そこで、今お話があった道徳の時間というのを、制約が一週間でも一年でもあるわけなので限りはあると思うんですが、もっとこの道徳というものの時間をふやしていただくということを私として要望しておきたいと思います。

 それで、またお話の中で、特別活動あるいはほかの科目の中での授業の織り込みというようなこともありましたので、あえて申し上げますと、私は、戦前の修身教育といったものがありましたけれども、軍国主義的な意味は全く否定したいと思いますが、そういった意味ではなくて、礼儀作法であるとか、長幼の序だとか、挨拶だとか、そういったことの大切さを進める意味でも道徳的な時間をふやしていただくということで、これは国語になるのか社会になるのかわかりませんけれども、あるいは倫理か何かになるかもしれませんが、例えばで恐縮ですけれども、二宮金次郎であるとか、野口英世さんであるとか、王貞治さんだとか、本当に先達として、まあ、現在も生きておられる方は、王さんなんかは頑張っておられますけれども、そういった先人に学ぶといった形での道徳教育を進めていただきたいなということを考えさせていただいています。

 翻って考えますと、私ももう五十一なんですが、四十年前ぐらいに小学校で道徳の時間があったやに記憶していますが、やはり週一時間だったと思います。

 その週一時間の授業の結果、今日の日本の、海外から日本は礼儀正しいとかいろいろ言っていただいていると思いますが、時代の連続性からいくと礼儀が失われがちな時代に入ってきているような気がいたしますので、改めてこの道徳教育といったものの拡充を、文科省さんも拡充、充実とか、いろいろ政策を打っておられますけれども、改めてお願いをしたいと思います。

 続きまして、今度は音楽の関係の中身について行かせていただきたいと思います。

 橘先生がいつも万葉集を歌われるんですが、私も、ちょっと音痴かもしれないんですが、二曲歌いたいと思っております。

 それで一曲目は、先ほど下村博文先生に伺ったら、私は知らないとおっしゃっていたんですが、「蛍の光」に、戦前歌われていた四番というのがあります。それが戦後は歌われなくなりました。

 ちょっと歌います。

  千島のおくも、沖縄も、

  八洲のうちの、守りなり。

  至らんくにに、いさおしく。

  つとめよ わがせ、つつがなく。

こうあるんですが、拍手がないんですけれども……(拍手)ありがとうございます。余計なことを言いました。

 こういった「蛍の光」であるとか、あるいは文部省唱歌とよく言われていた「ふじの山」、あるいは「故郷」だとか、「仰げば尊し」だとか、「紅葉」だとか、春のうららのという「花」とか、あるいは「われは海の子」とか、こういった曲が、私も小学生のときによく歌って、いまだに口ずさんで日本を思う気持ちが強くなるんですけれども、現在の文部省唱歌の音楽の授業で導入されている状況というのをちょっと教えていただきたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 また、先ほどは歌をありがとうございました。

 我が国におきましては、歌い継がれて親しまれてきた歌や音楽を世代を超えて引き継いでいくことは音楽教育にとっても重要なテーマだというふうに考えております。

 お尋ねの文部省唱歌につきましては、小学校の音楽の学習指導要領におきまして、おおむね全ての学校で取り扱うという形で歌唱共通教材として全体で十七曲が示されているところでございます。

 このような形で各学年にふさわしい文部省唱歌を四曲ほど提示して、三曲あるいは四曲を必ず指導するようにという形で指導がなされているところでございます。

杉本委員 どうも御回答をありがとうございます。

 十七曲と伺ったんですけれども、十七曲は何なのかなと思っていまして、最近、卒業式には、「仰げば尊し」ではなくて、「贈る言葉」だとか「世界に一つだけの花」だとか、そういうことも歌われるのはいいことだとも思いますが、我が国の歴史と伝統という意味で、より文部省唱歌のようなものが歌われるということを、引き続き、文科省さんとして力を入れていただきたいと思います。

 ちょっと話がそれるかもしれませんが、これは文部省唱歌ではありませんが、私は沖縄北方問題をずっとやっておりまして、「知床旅情」という歌があって、はるか国後に白夜は明ける、またメロディーをつけると変なのでつけませんが、はるか国後と歌われているんですけれども、これはちょっと詞を変えてほしいなと思っております。知床半島の羅臼岳の頂上から、登って下を見ますと、眼下に国後島がございます、はるかではなくて、眼下の国後でありますので。

 プーチンさんが大統領に選ばれまして、五月から着任されるという機会になりました。ぜひともこの北方四島の問題も、正しい情報の発信というのも大事だと思っていまして、四島一括返還というのが、昔、民放の番組で、私が小学生のころにやっていて、四島一括、四島一括と言っておったんですが、政治家にならせていただいて、外務省の考え方を聞くと、四島の帰属を確認して、段階的に返還をしていくというのが本来だということを学びました。

 そういった意味で、きちっとした知識を、先ほどの歌もそうなんですが、やはり、千島の奥とはいっても、国後、択捉まででございますし、沖縄もそうなんですが、我が国の領土というものをきちっと意識できるような歌を引き続き歌っていただきたいと思いますし、そういうものを子供たちにきちっと伝承をしていただきたいと、ちょっと北方問題とあわせて、お願いを申し上げます。

 余り時間がなくなってきたんですが、次に、読み書きそろばんというものについて質問をしたいと思います。

 私も今超党派で勉強会をやっていますが、自民党さんの村上誠一郎さんが「日本よ、浮上せよ!」という本を書かれていて、私も全く共鳴している部分に、読み書きそろばんの復活といったところを考えております。

 大分古い話でちょっと恐縮でございますが、文科省さんは、江戸時代の藩校、寺子屋教育の読み書きそろばんをどんな形で評価されているでしょうか。教えてください。

布村政府参考人 お答えいたします。

 藩校、寺子屋につきましては、それぞれ、江戸時代を中心に武士と庶民の教育機関として位置づけられており、まず、藩校におきましては主に漢学、特に儒学を授けておられた、また、寺子屋におきましては実用的、初歩的な読み書きそろばんを教えていたものというふうに認識をしております。

 そして、これらの藩校、寺子屋は、明治維新後の我が国の学校教育発展の重要な基盤となる、また、近代日本の建設に大きな役割の礎を果たしたというふうに認識しているところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 ちょっと、寺子屋といった部分とあわせてなのですが、例えば松下村塾では、いわゆる四書五経とか、古事記、日本書紀、万葉集なんかを多分教育していたというふうに私は認識しているんです。漢文とか古典の時間というのもあると思いますが、あるいは現代国語の中も含めて、古事記、日本書紀、万葉集の原文と、ちょっとこれは御質問がちゃんとできていなかったかもしれないんですけれども、現代語訳でこういったものが授業の題材に採用されているかどうかを確認したいと思います。お願いします。

布村政府参考人 新しい学習指導要領、小学校では今年度から、中学校では来年度から、全国の学校で実施されることになってございますけれども、今回の指導要領の改訂におきましては、言葉、言語文化というものを極めて重要視しております。

 そして、我が国の言語文化を享受し、継承、発展させるため、小学校、中学校、高等学校を通じて古典の学習の充実を図っているところでございます。実際に教科書におきましても、古事記、日本書紀、あるいは万葉集、論語などが教材として掲載されているところでございます。

 それから、論語などの四書五経につきましては、中学校社会科の歴史的な分野というところで、中国文明を取り扱う中で孔子や儒教が教科書に記載されているほか、高等学校世界史あるいは倫理等におきまして、先人の思想を学習する中で四書五経の構成や儒教の思想の内容が教科書に取り上げられている。また、万葉集についても、和歌などが国語の教科書などで引用されているというのが実態であろうかと思います。

石毛委員長 口語訳ということはよろしいですか。(杉本委員「現代語訳」と呼ぶ)現代語訳。

布村政府参考人 古典の教科書の中では、原文とともに口語訳という形で取り上げられていたと思います。

杉本委員 委員長に質問いただいた、その現代語訳ですね。これは、ある意味で、古典とか漢文というくくりじゃなくて、現代国語の中で古典のよさみたいなものを子供たちに知っていただくという意味で、そういった取り上げ方も関係者の皆さんにしていただけないものかとちょっとお願いをして、その質問は終わりたいと思います。

 次に、読み書きそろばんの書きとそろばんなんですが、書くことは大切でして、書道の時間あるいはそろばんの授業、インドなんかですと、日本の九九に当たるのが、二十掛ける二十まで勉強しているということを聞いておりますので、そういった意味での、書くこととそろばんの教育といった点はどうなっているか、お教えいただきたいと思います。

布村政府参考人 まず、書く方でございますけれども、例えば、書道につきまして少し御説明をさせていただきます。

 子供たちに毛筆を使って、正しく美しい文字を書くということをしっかり伝えていくことも重要なテーマでございますので、従前より、小学校三年生から中学校三年生の各学年の国語の中におきまして、毛筆を使用する書写を必修として、一定の時間、例えば小学校では、三年生以上の場合ですと年間三十時間程度を書写の時間として確保しているところでございます。

 それから、そろばんにつきましては、我が国の伝統的な計算用具ということで、数や計算の意味、理解を深める作業的な道具として有意義であるという認識のもとで、小学校の算数の授業で扱うことになってございます。

 今年度から実施した新しい学習指導要領のもとでは、これまで小学校三年生で行っていたそろばんの指導を、第四学年、四年生にも位置づけ、繰り返しそろばんの学習ができるように、その充実が図られたところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 ちょっといろいろな科目のことを聞いていて大変恐縮なんですが、このそろばんなんかも、やはり理数系の教育といったものと関連して、極めて頭の体操的にも効果があると思っています。私も、途中で挫折しましたが、そろばんを習っていたことがありますので、改めて、そろばん教育あるいは書道の充実をお願いしたいと思います。

 続きまして、最近よく言われます理系離れということであるのですけれども、その一方で、小学生で理系を志向する女の子さんを、リケジョという言葉があるようでございますが、この理科、数学、算数関連の教育の充実度合いは今どんな状況にあるか、教えていただきたいと思います。

布村政府参考人 今回も、理数教育につきましても、学習指導要領の改訂を中心に御説明をさせていただきたいと思います。

 小中高を通じて、観察や実験、あるいはレポートの作成、また論述、自然体験などに必要な時間時数をしっかり確保するために、理科などの授業時数をふやすという方向性を持っております。

 また、国際的な通用性や小中高の学習の円滑な接続という観点から、より体系的に数学や理科の教育内容を組み直して、しっかり習得できるようにしようという方向性を持っております。

 そのような観点から、具体的には、繰り返し指導や観察、実験の指導に必要な授業時数を確保するため、小学校の算数では、一六%、百四十二時間分の授業数の増加、小学校理科では、一六%増、五十五時間の増加、中学校の数学では、二二%増に当たる七十時間の増加、また中学校理科では、三三%増の九十五時間の時数の増加という形で、理数教育につきまして、授業時数をふやしながら、子供たちが自然科学に興味、関心を持って、しっかりとした基礎的な素養を身につけてほしいということで、授業の充実を図ろうとしているところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。引き続き、理科系あるいは数学、理数系教育の拡充もぜひともお願いをしたいと思います。

 さて、次なんですが、英語教育です。

 私が知る限り、韓国は、ナショナル・イングリッシュ・アビリティー・テスト、NEATというものを、ことしからですか、実際に導入して、この中身はいわゆるTOEFLとかTOEICを韓国版にして、読み書きだけではなくて、聞く、話すという、これは合わせて四技能というそうですが、この四技能をよりレベルアップするということを目途に、そもそも韓国と日本は、TOEFLなんかでもレベルが差がついて、向こうが上でこっちが下になっちゃって、同じウラル・アルタイ語圏にもかかわらず、日本の英語教育というのがなかなか進んでいないと言われております。

 先般の予算委員会でも、みんなの党の山内さんが先生の英語のレベルというようなことを含めて質問をされていましたが、あえて、私は突っ込んでお願いしたいなと考えているのが、日本の教育にも、もっと聞く、話すを充実させる必要があると思っております。

 そんな意味から、この韓国の動向をぜひとも注視していただきたいと思っていますし、いいものがよければ、与野党問わず、国を挙げて、この国家百年の計の中での英語教育と考えていただきたいと思っています。

 それで、韓国は、大学受験にもそのNEATというものでとった点数が代替できる形で、日本でいうセンター試験のような部分について、英語だけ外出しをしてレベルアップを図れるようにするというような仕組みのようでございます。

 我が国、翻って考えると、皆さん、英語、相当勉強されておられますが、私もいまだ決して得意とは言えないかもしれないんですが、読んだり書いたりすることというのは、実は、コミュニケーション上、多くなくて、聞いたり話したりということが国際コミュニケーション上、極めて必要だと思っています。

 東南アジアに行っても、皆さん、生きるために英語を勉強して、英語を話す、英語を聞くということができる方がたくさんいると思っています。

 そんな意味から、この韓国のNEATについてぜひとも注視していっていただきたいと思いますし、将来的な私の願いと展望としては、日本で一番勉強する時期というのはやはり大学受験の時期だと思っていますので、その大学受験の中に、話す力あるいは聞く力を問われるような試験体系に変えていくことによって、日本のお子さんたちの英語力が上がり、しかも、先生方も、子供たちに抜かれちゃうという状況の中で必死に英語を聞く、話す、勉強せざるを得ない環境がおのずとできてくるという可能性が、この四つの技能の中の聞く、話すに力点を置いた英語教育、そしてそれに向けての大学の試験のあり方みたいなものをちょっと考えていただきたいなと思うんですが、そのあたりについて、文科省さんの、韓国に対する見方だとか、御所見を伺えればと思います。

石毛委員長 森文部科学副大臣、時間が来ておりますので、よろしくお願いいたします。

森副大臣 ありがとうございます。

 韓国におきましては、来年の入学者選抜より、希望する大学を対象に、実験的に、今御指摘のNEAT、ナショナル・イングリッシュ・アビリティー・テストを導入するというふうに聞いているところでございます。

 文部科学省としては、韓国における動向も注視していくとともに、今、センター試験の今回のトラブルについての検証委員会をやっておりますけれども、そこでも、英語の試験についてそういう御指摘もございます。今後とも、よりよい外国語のコミュニケーション能力の向上に向けて頑張ってまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

杉本委員 ありがとうございます。

 もう少しだけ、私の一方的な話になるかもしれないですが、許していただきたいと思います。

 ぜひとも、このNEATの英語、本当に採用するぐらいの大きな変化を与野党を超えてやっていただいて、世界に通用する、世界に雄飛する人材をぜひともつくっていただきたいと思います。

 あと、これは問題提起だけ、二つ言わせていただきたいと思います。

 大学教育でございますが、私の実感でいくと、やはり一般教養課程というのは本当に要るのかという感じがしてなりません。

 これは、各大学に今お任せして自己改革をしていただいているというふうに聞いておるんですけれども、一般教養課程を、もう高校で十分足りている、そして、専門的な分野を充足させていくのが大学だということにするためにも、この一般教養課程のあり方というのをさらに国会でも、あるいは関係各位の中教審初めそういったところでも議論をいただきたいとお願いを申し上げます。

 そしてもう一つ、さっき午前中、馳先生がおっしゃっていましたけれども、義務教育の質と量を高めなきゃいけないんだということをおっしゃってくださいました。

 私は、先生が本当に先生と呼ばれて尊敬される職業というふうにならなきゃいけない国だと思っています。政治家を先生と言うのはちょっといろいろ議論があると思いますが、少なくともお医者さんと学校の先生だけは、先生として評価され、そして尊敬されるような地位にあるべきだと思っています。

 そういった意味で、これはお願いでございますが、先生方の処遇がやはり少しよくて、ビジネスマンになるんだったら、先生になって人を立派に育てたいと思うような処遇、あるいは、先生としてきちっと威厳を持って指導ができるような、いわゆる尊敬の念を抱けるような職場環境、そういったものができていくように、先生方の地位向上、質向上をこれは与野党を超えてお願いをしまして、私の雑駁な質問でございますが、終了とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

石毛委員長 次に、室井秀子委員。

室井委員 近畿比例ブロック選出の民主党の室井秀子でございます。

 去る三月十一日、東日本大震災から一年目を迎えました。今なお、行方不明者三千百五十五名、避難者等の数は三十四万四千二百九十名に上っております。改めまして、お亡くなりになられました皆様の魂の安寧をお祈り申し上げます。また、行方不明者の一日も早い発見、復旧復興を迅速に進めていただくことを御要望申し上げ、質問に入らせていただきます。

 今月八日に、首都直下地震の対策を検討している文部科学省の研究チームは、東京湾北部でマグニチュード七級の地震が発生すれば、東京湾岸の広範囲で、従来想定の震度六強より大きい震度七の揺れが予想されるとの研究成果を公表いたしました。子細な震度分布を盛り込んだ最終報告を月内に発表し、中央防災会議において、新年度、被害想定や対策の見直しに着手するとお聞きいたしております。

 また、一月二十三日には、東京大学地震研究所の平田直教授チームの試算では、四年以内にマグニチュード七級の首都直下型地震が七〇%の確率で発生することが発表され、地震に対するさまざまな報道がなされております。

 私は、昨年三月二十五日に質問させていただきました。文部科学省の研究開発局地震・防災研究課が大変よい調査研究を行っておりましたが、東日本大震災発災前の昨年一月一日の時点で、海溝型地震の今後の地震発生確率によると、三陸沖北部のプレート間地震は十年以内に六〇%程度、三十年以内に九〇%程度、また、宮城県沖は十年以内に七〇%程度、三十年以内に九九%、三陸沖南部海溝寄りでは十年以内に四〇%、それから三十年以内に八〇から九〇%、五十年以内に九〇から九八%と予測しておりました。しかしながら、この研究結果が生かされていなかったように思われます。

 そこで、文部科学省として、首都圏直下型地震の確率を含め、どのような調査研究を行い、それを政府部内においてどのように生かしているのか、奥村展三副大臣、お聞きいたします。

奥村副大臣 ありがとうございます。

 今お話しのように、昨年の発災直後にもそうした御意見をいただき、また御質問を賜ったわけでございます。今、それぞれ数字もお述べをいただきました。

 特に、文部科学省といたしましては、その後、御指摘もいただいた関係もございまして、地震の調査研究、これにつきましては、地震対策特別措置法に基づきまして設置をされました地震調査研究推進本部、これは、文部科学大臣が本部長となって、関係省庁の事務次官を先頭に、いろいろと連携をとりながら進めてきたところでございます。そうしたことにおきまして、まず、基本方針にのっとりまして、いろいろと関係機関と連携をしてずっと進めてまいりました。

 その中で、特に基盤的な調査ということをしっかり進めていかなければならないということで、いろいろな関係機関と連携をとっているんです。今お話しのように、先ほども大臣がお答えになったんですが、従来三十キロから二十キロの調査をいろいろやったりしておったんですが、最近は十キロということですね。揺れの頻度も変わってきておりますので、そこらもしっかり把握をしながら、地震発生のメカニズムを捉まえて進めていきたいというように思っております。

 特に、やはり被害の予測のプロジェクトをしっかりつくっていかなければ、ただ会議をやっているだけでは意味はございませんので、そこの点は中央防災会議等でしっかり連携をとりながら進めていきたいし、特に地方自治体の関係の皆さんにもそのプロジェクトにお入りをいただいて、連携をして、情報交換しながら進めていくというようにしております。

 そういう流れの中で、特に国土交通省等につきましていろいろな連携をとって、関係自治体との連携を図っているところでございます。

 特に、室井議員も御承知かと思いますが、日向灘のいろいろな研究もやりまして、そこらを皆さんにしっかり情報を流して進めておりますので、先ほど御指摘をいただきましたように、発災後、しっかりそういうことを、もう少しきめ細かく連携をとってこれからも頑張っていきたい、そういうように思っているところでございます。

    〔委員長退席、田島(一)委員長代理着席〕

室井委員 奥村展三副大臣、ありがとうございます。

 私は、阪神・淡路大震災のときに実際に体験いたしまして、私の家が半壊でした。隣の家は全壊でした。周りを見回すと家がほとんど潰れている、そういう地域におりました。

 その中で、震度六、震度七、震度九というふうに上がっていくということは、二倍になるわけではないんです。例えば、震度六から震度七に移るというのは、お皿がテーブルの上から落ちるのと、お皿がテーブルから飛ぶのの違いがあるんです。私の家は、電子レンジが飛んでいました。もちろんピアノも動いておりました。お皿はもう至るところに、はだしでは動けないような状態になっておりましたので、ぜひともその危険性というのをやはり家庭の皆様方にも伝えていってほしい、そういうふうに思います。

 そして、どんなにすばらしい研究であっても、研究で終わっては何にもなりませんので、ぜひ、研究結果を文部科学省の中にとどめ置くことでなくて、他省庁にも横断的に研究を配付してほしいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次の質問に入らせていただきます。昨年の六月二十五日、東日本大震災復興構想会議から出された提言、こういう提言書が出ているんです。「悲惨のなかの希望」、大学に関する記述がこの中にたくさん入ってきます。

 例えば、十四ページにありますけれども、「地域包括ケアを中心とする保健・医療、介護・福祉の体制整備」の項に「大学病院を核とする医師や高度医療を担う人材育成のための教育体制の整備を進め、大学・専修学校等の学校教育機関を含む多様な訓練機関を活用した職業訓練などを行い、それらの分野を担う人材育成を進める。」十九ページには「産業・技術集積とイノベーション」の項にたくさん書いておりますので、ぜひ皆さん、読んでください。

 その中で、奥村副大臣に、文部科学省としてこの提言をどう具現化していくのか、お聞かせください。

奥村副大臣 先ほど、室井委員は兵庫県でございますから、阪神・淡路大震災の御経験のお話をされました。私も滋賀県ですから、同じ近畿で、あのとき、ちょうどもう十七年になりますが、思い出しておりました。やはり、震災というものの恐ろしさというのをひしひしと感じたわけでございます。

 特に、今、東日本の震災の復興構想の中のお話をいただいたわけでございますが、たび重ねて、東日本の関係の、特に福島、宮城、そして岩手から陳情をいただいております。今お話しのように、産官学の科学的なこうした結集したイノベーションの、新産業、雇用とか、いろいろなことを陳情いただいております。

 結論から申し上げますと、東北マリンサイエンス拠点の形成ということで、これをしっかり取り組んでいきたいというように思っております。

 そして、東北ならではの素材技術を活用したいろいろなプロジェクトをおつくりいただいて、そして、しっかりバックアップをしていきたいというように思っております。

 もう一つは、今お話がございましたように、特に医療関係でいろいろと御苦労いただいたわけでございますので、東北メディカル・メガバンク計画ということで、特にこれは、テーラーメード医療といいますか、個別化の医療なんかの分野に特に力を入れていきたいというように思っておりまして、地元からのいろいろな御要望をいただきながらこの問題もやっていきたいと思っております。

 特に放医研、放射線医学総合研究所等、こういうところといろいろと、特に福島あたりの皆さん方は、福島の県立医科大学との連携をぜひしてほしい、そして、そういう放射線医学の研究なんかをしっかりやってほしい、やれる拠点をつくってほしいという御要望もいただきましたので、そういう方向をしっかり進められるように、その機能を整備するように努力をしていきたいというように思っているところでございます。

    〔田島(一)委員長代理退席、委員長着席〕

室井委員 先ほど奥村副大臣から出ました福島県立医科大学、実は、こちらに今いらっしゃいます御地元の石原洋三郎先生の御尽力をいただきまして、今週の十二日月曜日に、当委員会の委員であります、今ちょっとお席を離れられましたけれども、永江孝子議員が事務局長をしていらっしゃるんですけれども、民主党の、子どもたちの未来を守る女性議員ネットワークで実は訪問してきました。

 そして、大学側の意見を聞かせていただきました。とても意欲的で、国内にとどまらず、世界の放射線の分野で研究をされている学者の皆様方が参加するといってたくさん集まってきていらっしゃるそうです。情報をリアルタイムで世界に発信すると積極的におっしゃっておりましたので、そのことをお伝えさせていただきたいと思います。

 このように、各大学は、東北大学、いろいろな大学がございますが、金太郎あめではなくて、大学独自でいろいろなテーマを決めて、特色ある研究をされるというふうに聞いておりますので、これはすばらしいことだと思います。そして、ぜひ、被災地の復興のためにも、地域ニーズに応えていただきますようよろしくお願いいたします。

 次に、公立学校の耐震化に関してお伺いいたします。

 実は、今月五日の予算委員会の分科会でも質問させていただきましたが、なかなか時間が短くて深く御質問することができませんでしたので、もう一度、その部分を省いて質問させていただきます。

 公立学校の耐震改修については、地方公共団体の財政的な要因や耐震化への認識の差などにより、耐震化への取り組みがおくれているところが見られます。さきの文部科学省の研究開発局地震・防災研究課によりますと、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法で該当します地域の三十年以内発生確率は、南海地震で六〇%程度、東南海地震では七〇%程度、想定東海地震では八七%と、いずれも高くなっております。

 実は、お手元に資料一を配付させていただいております。これが、昨年の四月一日現在の東南海・南海地震防災対策推進地域、一都二府十八県のうち、同じく昨年の四月一日現在の公立学校施設の耐震改修状況調査の耐震化率です。同調査の小中学校の耐震化率の全国平均は八〇・三%です。平均以下が、実はこの中に九府県もあります。

 また、御存じのとおり、東南海・南海地震防災対策推進地域の中には、昨年四月一日現在、四百十四の市町村も指定されております。その中で、実は、兵庫県は県としては八一・五%と全国平均より高いわけですが、私の地元、尼崎市の公立学校耐震化率は、昨年四月一日現在、三六・五%と、中核都市としては、非常に不名誉なんですけれども、ワーストワンなんです。もちろん、兵庫県としても一番低いんです。

 その中で、平野文部科学大臣の所信でも、「学校施設は、地域コミュニティーの拠点として非常災害時には応急避難場所ともなることから、耐震化や防災機能の強化等に積極的に取り組む」と述べられております。

 言うまでもなく、学校施設は、児童生徒の学習、生活の場であるだけでなく、大臣の所信にもありますように、非常災害時には地域住民の応急避難場所でもあります。文部科学省の研究開発局地震・防災研究課の調査結果でも明らかなように、東南海・南海地震への対応は急がれます。

 そこで、この東南海・南海地震防災対策推進地域への国庫補助率のかさ上げを高めることが必要だと思いますが、森ゆうこ副大臣の御意見をお伺いいたします。

森副大臣 お答えいたします。

 先生御指摘のように、学校施設は、防災の観点から、子供たちの安全を確保すると同時に、地域コミュニティーの防災拠点ということで大変重要である。であるからこそ、この間、原則三分の一である公立学校施設整備の国庫補助率について、全国を対象とする地震防災対策特別措置法によって、今御指摘ございました東南海・南海地域も含めまして、例えばIs値〇・三未満の耐震補強補助率を三分の二にかさ上げする等のかさ上げ措置を講じてまいりました。

 また、国庫補助事業の地方負担、いわゆる裏負担でございますけれども、その裏負担に対する地方財政措置についても充実したものとなっておりまして、既に十分な地方負担の軽減措置が講じられております。

 どの自治体も大変財政状況が厳しい中、この間、今先生が御提示されました資料のように耐震化は進んでおりまして、平成二十四年度予算が執行されますと、これが約九〇%になる。そして、二十七年の早いうちに一〇〇%にしたいということで我々頑張っているところでございまして、まだ耐震補強が進んでいない地域に対しましては、これからもさまざまな情報提供を行うなど支援をし、そして要請をしてまいりたいと思いますので、ぜひ先生の方からも御地元の自治体に耐震補強を進めるように強く働きかけていただきたいと、この場をおかりしてお願い申し上げたいと思います。

室井委員 副大臣がおっしゃるとおりなんです。本当に財政措置はたくさんしていただいているのは存じ上げております。

 そこで、またまた申し上げております、申しわけございません、先ほどおっしゃいましたように、平成二十三年度、公立小中学校が九〇%、そして、二十七年度までに、できるだけ早い時期に耐震化を完了させる、つまり一〇〇%にという目標を今おっしゃいました。

 しかし、私の地元の兵庫県が、東日本大震災と同規模のマグニチュード九に備えるために、暫定的に津波を二倍に引き上げハザードマップの修正を行ったところ、実は尼崎市は八二%が浸水するという結果が出ました。

 もちろん、尼崎市役所の方々、市長さん初め市役所の方から、全員耐震化をしたいというのはもう十分わかっているんです。そして、私の住んでいるところは、四十九平方キロメートルに四十六万人が住んでいるという、人口密度が非常に高いところです。そしてまた、逃げる場所は、山もないんです、平地です。つまり、全て平地ですので、ビルに逃げる以外ありません。高いところに逃げる以外、身を守ることができませんので、そこを、もうわかり切ってまたお願いしているんです。

 提案ですけれども、かつて、東海地震に当たり、法律でも他地域のかさ上げ率と違いました。過去ですけれども、かさ上げ率は違いました。そして、過疎地でもかさ上げ率が異なりました。閣法が無理であれば、議員立法を使い、東南海・南海地震防災対策推進地域の安心、安全のために何かの方法をとらないと、財政的に無理なところばかり残る状態になると思いますので、今後とも御指導よろしくお願いいたします。

 次の質問に入らせていただきます。要望だけです。

 次に、心理職の国家資格化に関してお伺いいたします。

 東日本大震災の発災を受け、きょうたくさんの方が質問されましたが、被災した幼児、児童生徒、教職員等の心のケアや、教職員、保護者等への助言、援助、学校教育活動の復旧支援、福祉関係機関との連携調整等さまざまな課題に対するためスクールカウンセラー等を緊急派遣され、心のケアや必要な支援が実施されました。

 本年度の文部科学の予算でも、スクールカウンセラー等派遣事業や緊急スクールカウンセラー等派遣事業などの予算が盛り込まれております。

 今日の社会状況の中で、国民の心の問題、うつ、自殺、虐待、不登校、発達障害、認知障害等は複雑化、多様化してきており、それらへの心理専門的対応が急務となっております。しかし、心理専門職としての国家資格の整備はいまだなされておらず、国民が安心して心理的援助を受けられる状況とはなっておりません。

 こうした心の援助活動には、国家資格によって裏づけされた一定の資質を有する専門家が必要だと思います。しかしながら、いまだに心理専門職が国家資格になっていないのは甚だ疑問に感じております。

 そこで、厚生労働省に、心理専門職の国家資格についてお伺いいたします。

岡田政府参考人 先生御指摘のとおり、臨床心理士などの心理職の方々は、医療、保健のほか、福祉、それから教育、司法、産業など、さまざまな分野で大変重要な役割を担っていただいているというふうに考えております。また、東日本大震災の被災地におきましても、被災者の方々に対して心のケアを行うなど、心理職の方々は非常に重要な役割を果たしていただいてきているというふうに認識しているところでございます。

 御指摘の、これらの心理職の方を国家資格といたしますことにつきましては、関係者の間で、例えば心理学的行為と医行為とをどういうふうに整理するのかなどについてさまざまな御意見があるというふうに伺っております。まずはそうした御意見の動向について注視していきたいというふうに考えているところでございます。

室井委員 ありがとうございます。

 一つの資格にまとめる必要はないと私は思っております。社会福祉の分野でも、社会福祉士や介護福祉士など、国家資格がいろいろあります。メンタルケア先進国である欧米諸国はもとより、中国、韓国にも心理職国家資格が既に整備されております。やはり、ぜひ一定の基準を明確にした方が、受診される方も安心されるのではないでしょうか。(発言する者あり)ありがとうございます。馳先生の方からそうだという声が出ていることは非常にうれしく思っておりますので、ありがとうございます。

 ぜひとも、心理専門職の国家資格に前向きな取り組みを党派を超えて行いたいと思いますので、御指導よろしくお願いいたします。(発言する者あり)池坊先生も、ありがとうございます。

 次に、遺跡調査について質問させていただきます。

 実は、十七年前の阪神・淡路大震災の発掘調査のときは費用負担が、国が二分の一、県が四分の一、当該市町村が四分の一でしたので、なかなか財政的に前に進めなかったのもこれは事実です。

 しかし、今回、いち早く、東日本大震災の復興事業に伴う埋蔵文化財調査について、国の全額財政措置で行われると決まりました。大変これはよかったと思っております。

 集団移転先などで復興事業を進めるに当たり、遺跡の調査への配慮も重要です。また、豊かで愛着の持てる復興町づくりに地域の記憶を伝える歴史遺産や美しい自然をどう生かしていくかが大きな課題だと思います。

 私は、地震考古学の観点で、発掘で得られた情報は、地震の予測に利用するためにもデータベース化が必要だと考えますが、文部科学省のお考えはいかがでしょうか。

河村政府参考人 お答え申し上げます。

 埋蔵文化財は、おっしゃってくださいましたように、我が国の各地域の豊かな歴史、文化を物語る貴重な国民的財産でございまして、発掘調査によってその価値が判明し、新たな歴史の発見や地域への誇りと愛着をもたらす精神的なよりどころとしての意義があると存じます。

 その調査の成果の中に、過去の地震や津波等の痕跡が災害の歴史として判明することがございます。かつて、阪神・淡路大震災のときの発掘調査でもそのようなことがございました。この発掘調査の成果は、発掘現場における現地の説明会や地元の博物館での出土品の展示及び報告書としての記録ということがされておりまして、地域の人々を初めとする国民の皆様への広い周知を図っているところでございます。

 なお、この報告書のリストの電子データ化でございますけれども、リストと申しましても、タイトルだけではございませんで、調査の場所、調査機関、あるいは遺跡の概要というものを含むものでございますが、現在、奈良文化財研究所において徐々にその電子データ化が図られているというところであることを御報告申し上げます。

室井委員 本当に、遺跡から読み取れる地震の間隔など、防災にも活用できる部分がたくさんありますので、ぜひデータベース化して後世に残しておいてほしいと思います。

 次に、先ほども申し上げましたが、十二日月曜日に、民主党の、子どもたちの未来を守る女性議員ネットワークで福島にお伺いしました。そのときに、訪問先の一つであります福島市立南向台小学校の校長先生にお会いいたしました。

 そのとき校長先生がおっしゃるには、発災当日、学校の責任者として、児童、子供たちの安全確保はもちろんですが、その後の避難民の受け入れ、避難民の皆様方への対応を教職員がどのようにすれば一番いいか、機動的にできるか、本当に悩んだとおっしゃっておりました。

 例えば、水道がとまっているのでプールの水の使用を考えたそうです。しかし、実際は使わなかった。結果的には、放射能のことを考えればよかったのですが、そのときに、PTA会長さんや自治体の方、いろいろな方と、どうしようと悩まれたそうです。

 そういうことがありますので、我々は今までは児童生徒への防災教育のことばかり考えておりました。例えば、釜石の奇跡と言われたのは群馬大学の片田教授の教育ですし、本当にたくさんの命が救われた。でも、それを指導する学校の先生の方はどうなっているのか、ぜひお答え願います。

久保政府参考人 児童生徒に対して適切な安全教育を行うだけでなく、災害の発生時にさまざまな役割を担う教員に対する資質向上は極めて重要な課題であると認識しておりまして、文部科学省といたしましても、これまで、独立行政法人教員研修センターと連携して、各地域において指導的な役割を果たす学校安全を担当する教員等に対する研修、さらに、各学校において学校安全を担当する教員等に対する各都道府県での講習会、防災教室などを行ってきておりまして、いずれの事業につきましても、この東日本大震災を踏まえまして、二十四年度予算案では拡充をいたしているところでございます。

 これに加えまして、各学校では、自然災害を含む危険発生時に教員等が講ずべき措置の内容や手順についてマニュアルをつくることになっておりますけれども、これにつきまして、今回の大震災で明らかになりました新たな教訓を取り込みまして、各学校での防災マニュアルの改善充実を図るための学校防災マニュアル作成の手引きを文部科学省で作成したところでございます。

 その中で、地震、津波が発生した場合の具体的な対応について、参考となるような共通的な留意事項を取りまとめまして、今年度中、今月中に全学校に配付することといたしております。三月九日にはウエブサイトにも掲載しているところでございます。

 今後、文部科学省といたしましては、教員研修の際にこの学校防災マニュアル作成の手引きを教材として活用するなど、工夫を凝らしながら、被災地以外の教員等にも自然災害発生時に適切に対応できるように、学校安全に関する教員等への研修の充実により一層努めてまいりたいと考えております。

室井委員 ありがとうございます。平時にできないことは非常時にはできませんので、ぜひ日ごろの訓練をお願い申し上げます。

 最後の質問に入ります。

 文部科学省学びのイノベーション事業、ICT環境の課題を分析する総務省フューチャースクール推進事業が実施されておりますが、私の友人で小学校教諭の方の話なんですが、ICT導入に当たり教職を離れるという人がおります。この事業の概要と、教員の誰もがICTを活用した授業ができるよう、教員のICT活用指導力の向上への配慮に関しまして、森ゆうこ副大臣にお伺いいたします。

森副大臣 お答えいたします。

 ICTを活用した授業についての学びのイノベーション、質問していただきまして、ありがとうございます。

 先ほど、読み書きそろばんというお話があったんですけれども、私は、読み書きそろばん、ICT、そして英語というふうに言っているわけでございます。社会のグローバル化や知識基盤社会が進展する中で、子供たちの生きる力の育成が重要でありまして、ICTを活用し、課題を解決するための思考力、判断力、表現力や、主体的に学習に取り組む態度を育むことが必要であると考えております。このために、ICTの特徴を生かし、一人一人の能力や特性に応じた学びや、教員や子供たち同士の双方向性のある協働的な学びを推進していきたいと考えております。

 文部科学省では、総務省と連携をいたしまして、一人一台の情報端末や電子黒板等を活用した教育に関する実証研究である、学びのイノベーション事業を行っているところであります。私も、実際、実証校に視察に行ってまいりました。まさしく学びのイノベーション、学び方が変わる、教え方が変わるということだというふうに感じております。

 今ほど先生から御指摘がございました、ICTの導入に伴い教職をやめたというお話でございますけれども、実際には、今実証校で行っておりますこのICT、学びのイノベーション事業におきましては、支援員という専門家がついておりまして、むしろベテランの先生方の方が、その支援員の技術的な支援を受けながら、非常にタイミングよくそれを導入しつつ、授業のイノベーションということで取り組まれているというふうに伺っております。

 今後とも、教育の情報化を進めていく上で、教員のICT活用の指導力を高めるため、学びのイノベーション事業において、その参考となる指導モデルの開発などに取り組むこととしておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

室井委員 ありがとうございます。ぜひ進めていただきたいと思います。

 お手元の資料二をごらんください。昨年の東日本大震災時に広島の中学二年生の生徒のとった行動を紹介した記事です。

石毛委員長 室井委員、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

室井委員 はい。

 この記事にもありますが、単にITを使える、操作できることは目的ではありません。人のために生かす、または人類の福祉増進をもたらすための基礎として、ICTを活用した事業、文部科学省学びのイノベーション事業を推進していただきたいと要望させていただきまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

石毛委員長 次に、三輪信昭委員。

三輪委員 新党きづなの三輪信昭でございます。

 石毛委員長初め与野党の理事の皆さんの御配慮で質問の時間をいただきましたことを、まず冒頭、感謝を申し上げます。

 私は常々、公の教育における責任の所在、これが明確になっていないということに対していつも疑問を抱いていたわけであります。どういう教育によってどういう国民を育てたいのか、そのメッセージが残念ながら政府からは伝わってこないのが実態であります。

 そもそも、基本的な教育行政のあり方として、政府及び文部科学省は、教育に責任を持つという意識があるようにはどうしても思えないのであります。地域の教育委員会に任せておけばいいといったような感があるようにも思います。

 確かに、地方教育行政の組織及び運営に関する法律によれば、文部科学大臣は都道府県または市町村に対し、その教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言または援助を行うことができるとあって、大臣には命令権者の立場はないとなっております。だからといって、責任から逃れていいわけではないと思いますし、教育委員会に全て任せますとも言い切れないと思います。

 私は、少なくとも義務教育の最終的な責任は、その所在は文部大臣にあることを明確にするべきだと考えております。また、実務に当たる教育の現場における教育実践についての責任の所在をはっきりさせるためにも、できることなら、首長から独立した行政委員会としての今の教育委員会の権限を知事もしくは市町村に移行させた方がいいという考えを持っております。

 公の教育における責任の所在について、また、教育委員会の所管について、どういう姿が理想なのか、大臣はどのようにお考えか、ぜひともお伺いをしたいと思います。

平野(博)国務大臣 三輪先生とは違った立場でこういう答弁をすることになったことは、大変残念に思っております。

 元同志ですから、三輪先生の常々の政治ポリシー、行動等々を鑑みますと、今の政府、文科省、軟弱じゃないか、もっとしっかり骨の入った骨太でやりなさい、こういうことに対する御指摘だと思っております。そういう意味で、私も、この辺は共感するところはあるわけでございますし、午前中の下村議員のお話ともある意味では共通している部分を今指摘されたんだと思っております。

 改めて、私は、日本の教育の責任、これはやはり文科省、文科大臣が担うんだ、この気概を持たなければだめだと思っています。そういう中にあって、では、行政というのは遵法精神でありますから、法律を守りながら、その制度設計の中でその気概をどう発揮できるか、こういうことに相なるわけでございます。

 したがいまして、制度設計はしっかり、日本の教育のあり方を見て、国の役割としてやらせてもらいます、役割分担をやはりしっかりいたしましょうということで、地方分権との関係で、地方の役割、国の役割ということがより明確になってきたことも事実でございます。

 そういう中で、文科省としての、文科大臣としての責任という立場におきましては、全国的な日本の教育の基準を設定する、これは地方公共団体にはございません。この設定をできるということでございます。

 二つ目は、教育条件等の整備に伴いまして、財政的に支援を国の責任においてやっていくんだ、こういうこと。

 加えて、学習指導要領の設定でございます。これは明らかに、指導要領に沿って教育をいたしなさいということですから、少なくとも国としてのガイドラインをしっかり決められるわけであります。

 ただ、決めたことに対してしっかりそれが守られているかというチェック機能を、もっとやはり今の文科省としてはいろいろな意味で指標として持っていかなきゃいけない、こういうことは、先生の御指摘の部分の一つとして、私は肝に銘じておきたい、かように思っております。

 加えて、本当に、地方分権ということで、地方公共団体の役割としてしっかりとやっていただいているか、こういうことに対して、指導、助言、さらには援助、こういうことになるわけですが、この責任が本来あるわけでございます。そこのところが、午前中の下村先生の部分にあっても、極めて限定的な部分になっている。

 これは、現行法律はそうなっておりますから、その法律の中で、しかし、その部分については今後の大きな課題だと思っておりますが、先生御指摘いただきましたようなことを含めて、そう思われないように、しっかり気概を持って私は取り組んでいきたいと思っております。

 教育の政治的中立性や持続性、安定性を確保するため、首長から独立した部分として教育委員会制度がございます。

 その意味は、首長の選挙によって、交代することによって教育が変化をする、これは一番難しい部分であります。

 しかし、一方、だからといって、しっかりと政治的に、あるいは教育委員会が担保できなければどうしていくんだ、こういうことについても、私としても、これからの教育委員会制度のあり方についてはしっかりと改革をする、こういう視点に立っておりますから、今具体的にどうあるべきかということは、省内でタスクフォースをつくっておりまして、そういう中で御議論をいただいている、こういうことでございます。

三輪委員 決して、立場が変わって、いじめるとかそういうことじゃないわけでありまして、提言して、よりよい教育環境を整備したいという思いでありますので、今のお答えで十分だと思っておりますので、次に入ります。

 先ほども、教育の責任の所在に関する質問の中で教育委員会の制度について申し上げましたが、やはりそれは、地方における地方の主体性を持たせるということでありました。

 しかし、〇九年のマニフェストの中に掲げておりますのに、「現在の教育委員会制度を抜本的に見直し、教育行政全体を厳格に監視する「教育監査委員会」を設置する。」というふうに明記されておりますし、民主党の政策にも教育委員会制度の見直しは掲げられております。

 また、大臣の所信の中でも、地方教育行政のあり方については、本格的な検討を行っていくというふうにおっしゃっておられます。

 したがって、私は、政権交代というこのときに、教育委員会制度というものについて、本来の、現行行政から変わった形で、より充実した教育、公の教育というものが実現する機会になればいいかな、このように受けとめておったわけであります。

 このことについて、昨年の十月、当委員会において、中川大臣はこのように質問に対して答えられてみえるんですね。

 党の中のコンセンサスはもちろんですが、野党の皆さんとも、あるいは国民的な議論、あるいはそれぞれ行政機関、特に地方自治体の話も、参加をしてもらって、それで議論をしていくという形態をとらないと、なかなか一挙に進んでいくということにはならないと思います、そういうことを前提にして、しっかりと取り組んでいきたいというふうに思いますという答弁であります。

 何を言っておられるのか、私、ちょっとよくわからないんですが、マニフェストに、そして党の方針にこのように掲げておる、そして政権が交代したというわけでありますから、公の教育というものに対して、文科省として新たなる取り組みぐらいはもっと明確に出されてしかるべきだ、このように私は考えております。

 ぜひとも、平野大臣、先ほどの答弁の中でも、相当、一歩踏み込んだような形の答弁をいただいたわけでありますが、この問題に対してのさらなる意気込みをここでお示しいただきたいと思うわけであります。

平野(博)国務大臣 委員も同じ党の中でおられましたから、マニフェストで書いてきたこと、インデックスに書いてきたことはもう十分承知の上で御発言だと思っております。

 私、地方における教育委員会制度の課題ということを、今、森副大臣のもとでいろいろな御議論をいただいておりますが、どういうところがやはり課題になっているのかというところを少し私なりに整理をしてまいりました。そうすると、何点か御意見がございました。

 やはり一つには、地域住民の意向が十分に反映されていないんじゃないか、こういうことであります。逆に、国や都道府県の示す方向に向いてしまっているんじゃないか、こういう御意見もありました。また、教育関係者のOBがいろいろなところへ入っておって極めて閉鎖的ではないか、こんな御意見も、意見ですよ、ございました。

 また、今委員御指摘のように、権限と責任の所在が不明確だというお声もございました。特に、市町村立学校の管理権限は市町村の教育委員会にあるけれども、教職員の任命権は都道府県だとか、いろいろな意味で明確になっていない、こういうところがございました。

 教育委員会の審議というのは、従前と同じ流れで形骸化しているんじゃないか、こういうお声もございました。迅速性に欠けているんじゃないか。

 こんなことが、言われた意見として、私が少し情報収集したら、そういうお声がございました。

 改めて、私は、特にこれからの学校の運営というのは、やはり今回の震災もございましたけれども、地域の町づくり、コミュニティーの拠点である、こういうことで、その地域社会が学校運営をしていくんだ、こういう部分をしっかり持つような視点で検討していただけないか、こういうことでございます。また、地域の意見や力を学校運営の中に生かしてもらう、こういうことも取り入れていただきたい、こういうことでございます。

 そんなことを含めながら、抜本的に、今の教育委員会制度がどうなのか、先ほど委員御指摘のように、監査的なということも我が党の中での議論があったことも事実でございますから、私は、改めて、これからの学校運営のあり方については、文科省としても、そういう観点で議論をしていただく。また、我が党の中にも、そういう部分で議論をいただく。こういうことで、それをあわせて、また委員会の中での御議論をいただきながら、いい方向の改革を進めてまいりたい、かように思っております。

三輪委員 今、最後にいただきましたように、いい方向での改革に取り組むということでございますので、ぜひともお願いしたいと思います。

 私は県会議員を四期十六年やっておりまして、そのときに、愛知県でありますが、文教委員会というのがありまして、そこでいつも議論をしたわけであります。

 県で、教育委員会に何とスタッフ二百人おるわけですよね。市町村には市町村で、あるわけですよ。この人たちは一体何をやっているんだろうといつも疑問に思っておりました。そして、これはやはり地方に主体性を持たせているからどうしてもそれだけの数が要るのかな、本来、政治は、国の中央である文科省が権限を持って命令してやればこんなにたくさん要らぬだろうなという疑問を持ち続けておりましたが、結果として、現状も変わっておりません。

 ぜひとも、政権交代したこのときに、特に、平野大臣におかれましては、地元、この問題も一つの大きな問題となっておる部分もあります。英断をもってぜひとも教育行政の改革に取り組んでいただきたい、このことをお願いいたしまして、時間は少々ありますが、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

石毛委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十六分散会


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