衆議院

メインへスキップ



第3号 平成24年4月18日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十四年四月十八日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 石毛えい子君

   理事 金森  正君 理事 田島 一成君

   理事 永江 孝子君 理事 松本 大輔君

   理事 村上 史好君 理事 馳   浩君

   理事 松野 博一君 理事 池坊 保子君

      石井登志郎君    石原洋三郎君

      大山 昌宏君    岡本 英子君

      奥野総一郎君    奥村 展三君

      川口  浩君    川村秀三郎君

      城井  崇君    桑原  功君

      笹木 竜三君    瑞慶覧長敏君

      杉本かずみ君    高井 美穂君

      高野  守君    高橋 昭一君

      橘  秀徳君    中屋 大介君

      浜本  宏君    室井 秀子君

      本村賢太郎君    山岡 達丸君

      笠  浩史君    和嶋 未希君

      あべ 俊子君    甘利  明君

      遠藤 利明君    河村 建夫君

      下村 博文君   田野瀬良太郎君

      永岡 桂子君    古屋 圭司君

      富田 茂之君    宮本 岳志君

      三輪 信昭君    土肥 隆一君

    …………………………………

   文部科学大臣       平野 博文君

   外務副大臣        山口  壯君

   文部科学副大臣      奥村 展三君

   文部科学副大臣      高井 美穂君

   文部科学大臣政務官    城井  崇君

   文部科学大臣政務官    神本美恵子君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           田口 尚文君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      清木 孝悦君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            板東久美子君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  高井 美穂君     三日月大造君

同日

 辞任         補欠選任

  三日月大造君     高井 美穂君

同月十八日

 辞任         補欠選任

  笹木 竜三君     川村秀三郎君

  高橋 昭一君     浜本  宏君

  室井 秀子君     桑原  功君

  山岡 達丸君     橘  秀徳君

同日

 辞任         補欠選任

  川村秀三郎君     笹木 竜三君

  桑原  功君     室井 秀子君

  橘  秀徳君     奥野総一郎君

  浜本  宏君     高橋 昭一君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野総一郎君     山岡 達丸君

同日

 理事高井美穂君同月六日委員辞任につき、その補欠として永江孝子君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

三月十九日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(石津政雄君紹介)(第三二一号)

 同(北村誠吾君紹介)(第三二二号)

 同(佐藤ゆうこ君紹介)(第三二三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三二四号)

 同(谷川弥一君紹介)(第三二五号)

 同(松木けんこう君紹介)(第三二六号)

 同(宮島大典君紹介)(第三二七号)

 同(加藤勝信君紹介)(第三四二号)

 同(井戸まさえ君紹介)(第三五八号)

 同(秋葉賢也君紹介)(第三六四号)

 同(山尾志桜里君紹介)(第三七〇号)

 同(今津寛君紹介)(第三七八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四四〇号)

 同(馳浩君紹介)(第四四一号)

 同(吉泉秀男君紹介)(第四八六号)

 教育格差をなくし行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(坂本哲志君紹介)(第三二八号)

 教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善を求めることに関する請願(和田隆志君紹介)(第三五七号)

 学費の負担軽減、高等教育予算増額を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第三六二号)

 東日本大震災の被災地の全ての子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(秋葉賢也君紹介)(第三六三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四四三号)

 同(笠井亮君紹介)(第四四四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四四五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四四六号)

 同(志位和夫君紹介)(第四四七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四四八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四四九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四五〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四五一号)

 三十人学級の早期実現、私学助成の削減撤回・大幅増額等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四二八号)

 同(笠井亮君紹介)(第四二九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四三〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四三一号)

 同(志位和夫君紹介)(第四三二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四三三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四三四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四三五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四三六号)

 全ての子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(小野塚勝俊君紹介)(第四三七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四三八号)

 行き届いた教育に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第四三九号)

 教育予算の増額、教育費の無償化、保護者負担軽減、教育条件の改善に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四四二号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(福井照君紹介)(第四八七号)

四月二日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五二〇号)

 同(小野寺五典君紹介)(第五七七号)

 同(梶山弘志君紹介)(第六一〇号)

 同(田中和徳君紹介)(第六三〇号)

 東日本大震災の被災地の全ての子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(小野寺五典君紹介)(第五七八号)

 三十人学級の早期実現、私学助成の削減撤回・大幅増額等に関する請願(阿部知子君紹介)(第六一一号)

同月五日

 教育費の無償化、子育てにかかわる費用の大幅な軽減、安全な学校施設を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七四〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第七四一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七四二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第七四三号)

 同(志位和夫君紹介)(第七四四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七四五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七四六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七四七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第七四八号)

 学費の負担軽減、高等教育予算増額を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第七四九号)

 全ての子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(小泉龍司君紹介)(第七五〇号)

 学費負担軽減と私大助成の大幅増額を求めることに関する請願(下村博文君紹介)(第八一七号)

 教育格差をなくし、全ての子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(井上信治君紹介)(第八六三号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(赤松広隆君紹介)(第八六四号)

 同(井上信治君紹介)(第八六五号)

 同(石森久嗣君紹介)(第八六六号)

 同(川島智太郎君紹介)(第八六七号)

 同(高野守君紹介)(第八六八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

石毛委員長 これより会議を開きます。

 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石毛委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に永江孝子さんを指名いたします。(拍手)

     ――――◇―――――

石毛委員長 この際、高井文部科学副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。高井文部科学副大臣。

高井副大臣 このたび文部科学副大臣を拝命いたしました高井美穂でございます。

 副大臣として、大臣をよく補佐し、東日本大震災からの復旧復興のほか、特に、国家社会の繁栄の礎となる教育の振興をするとともに、豊かな生活の源泉となる文化芸術の振興に全力を尽くしてまいります。

 今後とも、委員長初め委員の皆様方の御指導、御鞭撻を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

石毛委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局選挙部長田口尚文さん、文部科学省大臣官房文教施設企画部長清木孝悦さん、初等中等教育局長布村幸彦さん、高等教育局長板東久美子さん、研究振興局長吉田大輔さん及びスポーツ・青少年局長久保公人さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石毛委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石毛委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川口浩さん。

川口(浩)委員 おはようございます。川口浩でございます。

 今、高井副大臣の御挨拶にもありましたように、地震から、震災から一年以上たちましたが、まだまだ被災地の児童生徒の皆さん、いろいろな問題を抱えて一生懸命頑張っていられるのは確かだと思います。そのお力になれるように、私どももあらゆる知恵と力を絞って取り組んでいかなければいけない、そのように考えております。

 きょうは、文部科学省が出しております学校歯科保健の参考資料というのがありまして、これのタイトルが「「生きる力」をはぐくむ学校での歯・口の健康づくり」というタイトルになっておりまして、私も歯科医師でございますので、この生きる力を育むということにどうやったら貢献できるかということを考えて御質問をさせていただいてまいります。

 まず初めに、三月の十九日に歯科医師国家試験の合格状況が発表になりまして、それに関連いたしまして、歯科大学の学生の資質をどうやったら向上させていけるかという問題について御質問をさせていただきます。

 歯科医師の国家試験というのは、私どもが卒業したころは合格率は限りなく一〇〇%に近く、ほとんどの人が受験をすれば受かっていた。ところが、最近はどんどん合格率が下がってまいりまして、これはどうしてかと考えたときに、やはり歯科医師の過剰問題の影響が大きいのだとは思うんですが、ある程度の点数をとれば確実に合格していた今までの資格試験という側面が、上位何人を合格とするというような選抜試験に変わってきていることを証明しているんじゃないかなという疑念があります。

 ここ数年の合格率というのは、歯科医師の場合ぎりぎり七〇%ぐらいでございまして、このままでいきますと、この合格率が今後どんどん下がっていく可能性が高く、二〇二五年までには約五〇%ぐらいになってしまうんじゃないかという可能性も取り沙汰されております。常に八〇%以上の合格率を維持しております医師の国家試験と大変大きな差が生じてまいっております。

 これは、入学定員割れを防ぐために、入学試験のときに、試験とは名前ばかりで、入学希望者全員を入学させる歯学部、歯科大学も幾つかあると耳にしております。このままでは質の低下というものは進む一方で、なかなか歯どめがかからないのではないかという危惧を抱いております。

 このような入学希望者を全員入学させてしまうような現状というのは、高等教育のあり方としてはいかがなものかと考える次第なんですが、そこにつきまして、こういった現状を鑑みて、お考えをお聞かせいただければと思います。

高井副大臣 御質問ありがとうございます。

 近年の我が国の高齢化や、歯科医療の高度化、それから専門分化、歯科医療ニーズの多様化などの進展に伴って、質の高い歯科医療を求める国民の要請は強く、歯学部の学生の資質向上というのは大変重要である、御指摘のとおりだというふうに思っています。

 歯学部で教育の改善充実のために意欲的な取り組みがなされている一方で、お触れになりました入学者選抜の競争率が限りなく一倍に近づくという学校も出たり、この入学者選抜が機能しておらず、すぐれた資質、能力を備えた入学者の確保が困難と思われる歯学部があるというのも承知をしております。

 文部科学省といたしましても、このような状況を踏まえて、平成二十一年一月に歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議というものが取りまとめた第一次報告書の提言を踏まえたフォローアップ調査を行っております。すぐれた入学者の確保が困難な大学や国家試験合格率の低い大学などに対して、適正な入学定員を設定するなど必要な取り組みの実施について強く働きかけたところでございます。

 その結果、歯学部入学定員の削減が古今図られてきているところでございますが、これからも、各大学の取り組みを促していきながら引き続き取り組んでまいりたいと思いますので、また御指導よろしくお願いをいたします。

川口(浩)委員 また、平野大臣は、所信演説の中で、歯学教育の質の充実ということについて明言をしていただいておりますが、今、私が自分の経験から考えるに、六年間という修業年限があるのでございますが、最後の一年が国家試験に合格するためだけの教育内容になっておりまして、どうも、歯学教育の質の充実ということを考えましても、国家試験のためだけに六年間を費やすのはちょっとおかしいんじゃないかなというふうに考えております。

 例えば、今、各大学においてCBTとかOSCEという試験をやっておりまして、ただ、その結果を各大学で任意に判断させるのではなく、在学中に全国で一律の基準のようなものを設定しまして進級とか留年を決定するなどの措置を行い、多様化する患者さんのニーズに対応できるような、臨床実習に当たる歯科大学の学生の資質を担保していくということが必要になってくるのではないかと考えております。

 また、さきの震災のときの身元確認等々、いろいろな問題もありますし、これからの高齢化社会、高齢社会の中で医療の一翼を担ってまいるということを考えますと、医科歯科連携を念頭に置いた臨床実習カリキュラムというのも組んでいかなければならないというふうに考えております。

 その辺についてはいかがお考えかをお聞かせいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 おはようございます。よろしくお願いいたします。

 今、川口議員の方から御質問でございますが、医科、歯科にかかわらず、大学教育の質的向上というのは今まさに求められておりますし、社会の求める人材について大学が果たす役割というものを改めて求められている、こういう中にありまして、きょう、川口議員は、みずから歯科医師の経験、治療をしておられる現場の状況を踏まえて御指摘がございました。

 改めて私は、先ほど副大臣が御答弁いたしましたように、質を高めていく取り組みは必須の課題である、こういうふうに認識をいたしておりますし、川口議員からも常々、特に東日本大震災のときの身元確認について、いろいろな意味で確認をしていく中で、歯形の問題を含めてしっかりと、その情報が身元確認にも有効である、こういうふうな御提言も頂戴をいたしているところでございます。

 さて、今の質的向上につきまして、どういうことを今やらなきゃならないか、こういうところでございますが、やはり一番大事なことは、歯科医師の社会的需要をしっかり見据えた、すぐれた歯科医師をどういうふうにつくっていくか、こういうことだと思っております。

 副大臣から御報告ございましたように、フォローアップの調査を現在しておりまして、特にそういう中にございましては、各大学の歯学部で臨床実習をしっかり終了したときに、到達目標を明確にする、こういうことや、開始時点から共用試験に加えて学内で独自の評価項目を実施する、こういうことで、特に臨床能力を確保する、こういうことだと思っております。

 また二つ目は、文科省としましても、昨年度、診療参加型の臨床実習を具体化するための事例を取りまとめておりまして、こういう考え方でどうだということで各大学の歯学部に提示をいたしておりまして、これをぜひ参考にしてほしい、こういうことで質を高める努力をさせていただいているところでございます。

 さらに、今年の二十四年度の予算におきましては、国際的な標準を踏まえた歯学教育の認証制度の導入を図るべく、今現在取り組みを開始しているところでございます。

 文科省としては、今後、さらに歯科大学、歯学部全体の教育の水準を向上させるための取り組みをしっかりやりたいと思っておりますので、議員も、現場の歯科医師としての知見をまた御指導賜りたい、かように思っております。

川口(浩)委員 大臣、大変ありがとうございます。今後も引き続き歯科大学の学生の資質向上を図るように、ぜひ御尽力をよろしくお願い申し上げたいと思っております。

 私どもの仕事というのは患者さんとの距離がこの距離でございますので、一番生活の現場に近いわけでございます。目は心の窓といいますが、まさに口というのは生活の窓でございまして、一人一人の生きていく力を支えていく根本の入り口であると認識しておりますので、一生懸命私どもも尽力いたしますが、ぜひ御指導もよろしくお願い申し上げます。

 次に、本年度より始まります武術、武道の必修化についてお尋ねをさせていただきます。

 今年度より、中学校の保健体育の授業で武術とダンスが必修科目となりました。武術では、半数以上の学校が柔道を選択すると聞いております。

 ほかの委員の皆様もお気づきではないかと思いますが、どうも昨今の子供たちというのは、上手に転べない。転んでも受け身がとれずに、顔から、頭から突っ込んで転んでしまうということが多々ございまして、大けがにつながってしまう場合も大変多いと思っております。護身術の意味でもまた、武術の必修化というのは非常に効果があるのではないかと期待されておりますが、その反面、授業中に事故が起きないのかどうかというのを大変御心配されている保護者の方々もいらっしゃるのも事実でございます。

 そこで、指導者並びに児童の両者に対しまして、どのような事故防止策がされているのかを具体的にお聞かせ願えればと思います。よろしくお願いいたします。

平野(博)国務大臣 中学校における武道必修化に関する先生の御質問でございます。

 特に、今回武道を必修化したという大きな目的は、先生も御案内のとおり、武道は我が国固有の文化である、こういうことで、武道の学習を通じて、技能を高めるということだけではなくて、我が国の伝統や文化を尊重する、みずから律し、相手を尊重する態度を養う、これが大きな目的として、武道を必修化させていただきました。

 しかしながら、先生御指摘のように、生徒の安全の確保というのは最重要課題でございます。全ての中学校で万全の体制をつくっていただく必要があると考えております。したがいまして、安全かつ円滑に武道の授業が実施できるように、今日まで、施設の整備、さらには指導者の対応などの条件整備を行ってきたところでございます。

 しかし、なかなか、指導者の整備というところにおきましては、学校教員の中に武道をしっかり学んでおられる人も少ない。こういう中にあって、しっかりと、そういう指導者に対する訓練、トレーニングをどうするかということ、加えて、外部の専門家を養成して、生兵法で指導するということだけは避けなければならないということで、今日までいろいろな研修会、さらには安全指導のための考え方における指導の普及に努めてきたところでございます。

 教育委員会や学校においては、平成二十年に学習指導要領が改訂されて以来三年間、武道の必修化に向けていろいろ準備を進めてまいりました。

 そういう中で、先生さらに御指摘ありましたが、生徒の安全確保という視点、三月の九日付で、特に教育委員会で再点検をしてもらいたいということで、改めて万全を期していくための通知を出したところでございます。

 私も、そういう意味では、専門家をぜひお願いしたい。充実を図るという意味で、警察、並びに、先月も講道館の方にもお願いをし、万全の体制でお願いしたい。なお、体制ができなければ、例えば柔道については、体制ができるまではやらないでほしいというところまで念を入れて今お願いをいたしているところであります。

 加えて、万が一事故が起こったときのしっかりとした対応についても、今やってもらうように、指導をこれからもしてまいりたい、かように思っております。

川口(浩)委員 時間的には、年間で十時間とか、それをちょっと超えるぐらいだと伺っておりますが、やはり、学校において、授業の一環でけがをしてしまったとなりますと、後々禍根を残すことも考えられますので、ぜひその辺は十分慎重な取り組みをしていただきたいと思っております。

 そこで、歯科医師の立場から、一つ提言をさせていただきたいなと思っております。

 スポーツをするときに、武道とかに限らずに、人や物とぶつかったり急な動きをするときに、歯で舌や口の中の粘膜もしくは唇等を傷つけてしまうことがあります。それは、人間の動物としての本能から考えますと、歯というものは、物を食べるときに、かみ切ったりすり潰すための刃物の役割を持っているわけです。

 この歯に覆いをかぶせることによって、口の切り傷というのは減っていくという事実がございます。歯が折れたり抜けたり、骨が折れたりすることへの防止もしくは軽減、歯によって相手を傷つけることをなくすためには、いわゆるマウスガードのようなものが有効とされております。

 特に、成長期の児童の顎はダメージを受けやすく、なかんずく女児の保護者の方にとっては、先ほどの問題等を含めて、大きな不安を抱えることになっているのではないかとも思われます。

 そこで、マウスガードの装着等、有効と思われる簡易な防具を装着することを促進させることについてはどのようなお考えを持っているかをお聞かせ願います。

奥村副大臣 専門的な分野からいろいろ御指摘もいただき、御提言もいただき、ありがとうございます。

 まず、やはり児童生徒の安全というものは最重点にしていかなければならないというように思います。そうした流れの中で、スポーツ医科学を活用した取り組みをしっかり進めていきたいというように思っているところでございます。

 特に、今、川口委員からお話しのように、マウスガードの件でございますが、昨年、いろいろと委員にも御指導、御協力いただきまして、スポーツ基本法が制定されました。そして、基本計画をこの三月三十日にスタートさせたところでございます。

 先ほど御提示いただきましたその参考資料の中にも書かせていただいているわけでございますが、マウスガードの着用等の効果そして普及について、しっかりそこに啓発等も含めて触れておりますので、今お話しのように、これからも、学校、体育あるいはまたクラブ活動等におきましても、いろいろな状況によって、マウスガードを着用することも大変大事だと思っておりますので、そのように努めていきたいというように思っているところでございます。

 特に、マウスガード、あれですが、スポーツするときには、瞬発力というのは奥歯をかみしめることによって生まれてくると言われておりますので、特に奥歯なんかのガードをマウスガードをつけてやっていけば、先ほど来の傷等がなくなるのではないかなというように思っておりますので、また御指導よろしくお願いいたしたいと思います。

川口(浩)委員 マウスガードは、実は現在、通販とかでも、自分でつくれるものがかなり普及をしているんですが、今、奥村副大臣のお話にもありましたように、やはり、きちんとした所定の位置で、きちんとかみ合わせるようにつくりませんと、なかなか、かえって危険な部分もありますので、その辺もぜひ頭の片隅に置いて御指導をお願いしたいと思います。

 次に、学校健診のことについて少しお尋ねをいたします。

 学校健診は、学校保健安全法によりまして、小学校から高等学校まで、毎年六月までに実施するというふうに規定がされております。

 中でも歯科健診は、虫歯を見つけるだけではなく、先ほど最初に述べましたように、子供たちの生活環境もかいま見ることができるという側面がございます。

 ネグレクト等児童虐待傾向にある子供は、どうしても虫歯の処置あるいは口腔ケアといったものが全くされておりませんので、歯科健診で容易に見つけることができます。昨今、悲しい事件が後を絶たない子供たちを取り巻くこの環境を少しでも未然に防ぐべく、大人たちは、ささいなことでも見逃すことなく子供の命を守るべきではないかと考えております。

 大臣は、新学期を迎える児童の皆さんに大変すばらしいコメントを出されておりまして、その中に、

  私も、学校の先生方と一緒に、みなさんの笑顔が消えないように、全力でみなさんを支えます。

  どうか、この春には、たくさんの新しい友達を作ってください。

  そうして、みんなで一緒に、もっともっと、楽しい学校を作っていきましょう。

とおっしゃっていらっしゃいます。

 子供たちはひとしく健康に育つべきであり、その笑顔を守るのは私たち大人の役目だと考えております。見た目ではわかりにくいネグレクト等の児童虐待を医師、歯科医師が見つけた場合は学校側に通達すること、その後の経過観察等、今以上に踏み込んだ対応をすることがかけがえのない命を守ることにつながるのではないかと考えておりますが、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

平野(博)国務大臣 議員御指摘のように、特に、見た目でわかりにくい児童の状況ということについて、先生は歯科医師としての知見を持って、そういう観点からも容易にそのものがわかる、こういうことですから、それをいかに早く情報提供いただき、連携を持ってその問題の解決に当たる、こういうことが私は大変必要であろうというふうに思います。

 特に、健康診断をしている中にあって、身体さらには内科健診、歯科健診を初めとするそれぞれの健診、検査において、虐待を発見しやすい大きな機会であると私は思っております。

 そういう意味で、学校、特に管理職を含めて、養護教諭、学校医、学校歯科医を含めた校内連携を十分にとりながら、早期発見、早期対応に一層努めるように、私どもとしても努力をし、また、そういう環境整備が整うように支援をしてまいりたい、かように思っております。

川口(浩)委員 やはり、見て、気がついて、そこで終わってしまうのではなく、その後に、いろいろな教職員の先生なり地域の皆さんとよく連携をとりながらこういった物事に取り組んでいければと考えておりますので、よろしく御指導をお願いいたします。

 最後に、学校健診のことについてお尋ねをさせていただきます。

 今、国会の中でも、議員の先生そして秘書の皆さんに健康診断というのが行われておりますが、大変残念ながら、歯科の健康診断というのはございません。何でかなと思うんですが、それは仕方がないのでさておきまして、学校保健安全法では、児童が健やかに学校生活を過ごすことができるようにということで、学校健診が義務づけられております。いろいろ調べましたが、学校によっては、上乗せというか、さらに踏み込んだ形で、血液検査等を行っている学校もございました。

 昨年、関係者、皆様の御協力を得まして、歯科口腔保健法というものが成立をいたしまして、歯科疾患の予防や口腔の保健に関する調査研究を初め、障害者、介護を必要とする高齢者等が定期的に歯科検診を受けること、または歯科医療を受けることができるようにするといった内容が盛り込まれております。

 子供たちにとって、先生というのは心のよりどころでございます。その先生方も、健やかで教育に携わっていくためには、子供たちと同様の健康の保持、増進が必要であると思います。自治体の中には、教職員の歯科健診を実施しているところもございます。今後、より一層そのような自治体がふえ、学校全体が健やかで笑顔が絶えないことを願ってやみません。

 今の学校保健安全法の規則等によりますと、教職員については歯科の健診というのが書き込まれてはいないというのも事実としてございますが、たかが歯と言われるかもしれません。しかし、されど歯でございまして、痛みがあれば笑うこともできません。差し歯がとれても笑えないんじゃないでしょうか。口の中が健康でなければ、食べることもできず、体も健康ではいられません。

 子供たちが歯、口の健康づくりを行い、生涯を通じて健康な生活を送るためには、まず、教職員みずからが歯、口の健康づくりの大切さを認識していただいた上で学校での指導に取り組んでいくことが重要ではないかと考えておりますが、その辺につきましてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 委員御指摘の点はごもっともだと思っていますし、特に、学校保健活動の重要な領域だと教員自身がみずから理解をするということが非常に重要だと思っています。

 川口議員冒頭言いましたように、生きる力という観点で、私どもとしては、歯、口の健康づくりをより積極的に推進していかなければなりませんし、今、推進しているところでございます。

 私もことし六十三になりましたけれども、虫歯は一本もございません。そういう意味で、私自身も歯は大事だなというふうに思っておりますし、八〇二〇に向けて頑張らなきゃいけない、こういうふうに思っています。

 また、関係団体と十分に連携をとりながら、教職員を初め、学校歯科医、都道府県の教育委員会等が参加をしております全国学校歯科保健研究大会を毎年開催させていただいておりまして、その中で、特に歯、口の健康づくりに関するシンポジウムや、日ごろの実践を踏まえた研究協議を行っているところでございます。

 こういう取り組みを通じながら、特に教職員の意識を高め、学校における歯、口の健康づくりがより推進できますように支援をしてまいる決意でございます。

川口(浩)委員 大変に力強いお言葉を本当にありがとうございます。

 冒頭申しましたように、私どもは生きる力を支えていくという使命に立って、無駄に六年間、学校で勉強をしているわけではございませんので、その辺がぜひ、無駄と言われないように一生懸命取り組んでまいりますので、今後とも御指導をひとつよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

石毛委員長 次に、永江孝子さん。

永江委員 おはようございます。民主党の永江孝子でございます。

 きょうは、質問の機会を頂戴いたしまして、どうもありがとうございます。

 ちょうどきのう、全国学力・学習状況調査、いわゆる学力テストが実施されました。国語、算数、それから、今回から新たに理科が加わりまして行われまして、結果は八月ごろに公表されるそうです。

 きょうは、学力について、システムそのものという議論もあろうかと思いますが、それはまた次の別の機会にいたしまして、どうやったら子供たちの学力を上げる、アップさせることができるかについて、ちょっと質問をさせていただこうと思っております。

 世界の中で比べても、日本の子供たちの学力が落ちている、これを心配されている方も多いと思います。日本の威信にかけて引き上げねばならぬという声もお聞きすることもございます。

 確かに、国際的な生徒の学習到達度調査、PISAの結果を見ますと、例えば読解力の調査、日本は、二〇〇〇年は第八位だったんですが、その三年後、二〇〇三年は十四位に転落をしております。

 これをよく見ますと、なべて全員の子供の力が落ちたわけではありません。できる子は、昔と同じく、今もできる子はちゃんといるんですね。変わらずおります。

 でも、PISAで言うところの最も低い得点レベルを示しますレベル1未満の生徒というのが、日本の場合は七・四%、OECDの平均が六・七%ですから、これを上回っているんです。つまり、学力的に中以下の層、ついていけない、落ちこぼれと言われる子供たちがふえてきているということなので、学力低下というよりも学力格差が問題ということが言えるかと思います。

 現場の先生方のお声もいろいろお聞きしておりますと、今の現場の一番の悩みというか問題というのは、いわゆる落ちこぼれを助けてやるシステムがないことだというお声も聞いております。

 そうすると、では、ついていけなくなった子供たち、生徒児童をどう救っていくか、ケアしていくかということになろうかと思うんですが、今進めております少人数学級、これも一つの策であろうかと思っております。

 今年度、全国の小学校二年生まで、三十五人学級というのを実現いたしました。一クラスの子供の数が四十五人から四十人に減らされたのが一九八〇年ですから、以来およそ三十年ぶりに少人数学級に向けて前進をしているということになろうかと思います。

 改めて、この少人数学級の実現が目指すもの、最終目標というのを確認させていただきたいと思います。

高井副大臣 少人数学級については、昨年四月の法改正により、三十年ぶりに国の学級編制の標準を見直して、小学校一年生の三十五人以下学級というのを制度化いたしました。さらに、平成二十四年、今年度には、小学校二年生の三十五人以下学級が実質的に全国で実現するために必要な定数措置というのを行うなど、推進を図ってきたところでございます。

 このことによって、子供たち一人一人に目が行き届くきめ細やかな指導や、思考を深める授業づくりが一層可能になるといったことや、教員によるきめ細やかな対応や、学校と家庭との緊密な連携が可能になるというふうな調査結果ももう既に出ておりまして、子供たちの学習意欲の向上とかきめ細やかな指導による学力の向上にとって、少人数学級の導入というのは大変意義があるものと、本当に御指摘のとおりだというふうに思っています。

 また、学級編制のあり方についても、昨年の法改正によって都道府県教育委員会との事前協議、同意制を事後届け出制というのに改めるなど、学校の設置者である市町村教育委員会がみずからの判断で地域や学校の実情に応じて学級編制が実施できるというようにしたところでございます。

 これらの取り組みによって、教員が子供一人に触れ合う、向き合う時間を確保することによって、まさにきめ細やかで質の高い教育を実現することが可能になるというふうに考えております。

永江委員 柔軟な学級編制ができるようになったというのも大きな前進だというふうに思っております。市町村が主体的に意思を持って、地域独自の対応が、地域の問題解決のために知恵を絞って力を発揮していけるという現場のエンパワーメントにつながるのではないかと期待しております。

 さて、おととしの学力テストの結果を見てみますと、去年は震災で実施されておりませんので、直近の結果ということで見ますと、全国の一位が秋田県、第二位が福井県ということで、これは決して順位が大事だということではありません、競うためとかそういうことではなくて、分析のためにあえて申し上げておりますが、一位、秋田県、二位、福井県ですよね。

 それで、学力格差というのは、かつて、今もそういう論があるのかもしれないんですが、経済格差からくるという論がありまして、確かにそう言えるデータもあるんですが、私、気になりまして、先月ちょうど県民所得というのが発表されておりましたので、これと比べてみました。

 そうすると、秋田県は県民所得で見ますと三十四位でありまして、福井県は十五位ということなので、これは必ずしも経済力直結と言えない結果ではないかというふうにも思われるんですね。

 ですので、これは御所感で結構なんですけれども、秋田の第一位の理由はどこにあるというふうに思われますでしょうか。

高井副大臣 御指摘のとおり、平成二十二年度全国学力・学習状況調査において、教科別の平均正答率が高かったという秋田県において、児童生徒質問紙の調査からは、早寝早起きをする児童生徒の割合、家族と一緒に食事をする児童生徒の割合、それから家で学校の予習、復習をしている児童生徒の割合というのが、平均に比べてずっと高いという点がございました。これは生活習慣という点からそうでございました。

 また、学校への質問紙の調査からは、補充指導とか学習方法に関する指導の実施とか、まさに学力の底上げへの努力というのをしているということ、それから、生徒の考えを引き出したり思考を深めたりするような指導の工夫をしている、それから、朝の読書活動などの一斉読書の取り組み、全国でやってはいるんですが、その中でも特に秋田県が高いという結果でございました。

 さらに、秋田県では早くから少人数学級というのを実施しておりまして、平成十三年から導入をしております。二十四年度においては、小一から小四、中一で三十人程度学級というものを実施しているということもあり、まさに少人数指導やチームティーチングなどにも積極的に取り組んでいるということが結果からうかがわれました。

 まさに、永江委員がお触れになったPISAの調査のとおり、成績下位層というか厳しい層に対して全体的に底上げをするという取り組みをきめ細やかにやっているということがこの調査からもわかりまして、大変これは重要な点だというふうに私どもも受けとめております。

永江委員 きめ細やかなというところが本当に大事なことなんだなということがわかりました。

 私も、学校生活基本調査というのをちょっと見てみましたら、秋田県というのは、疾病とか経済的問題以外の理由で年間三十日以上学校へ行かない不登校の子供の数、割合というのが非常に低いんですよね、私の地元の愛媛県も低いんですけれども。それともう一つ同じく、同じ調査で秋田県が低いのが、いじめが少ないところというのも挙げられると思います。全国平均の半分の水準というようなことになっておりまして、秋田県、子供たちの心のケアにも熱心に取り組んでいるというところが言えるのではないかと思っております。

 いじめとか親の虐待とか教師との不和など悩みを打ち明けることができる二十四時間相談電話というのを二〇〇六年に開設しておりまして、その翌年には、保健体育の先生、教師と医師など専門家たちが子供たちの心理ケアをするチャイルドラインあきたというのを発足しまして、そしてその翌年には、登校拒否の兆しを見せる子供たちを対象にして、あきたリフレッシュ自由学園というものをつくりまして、自然の中で地域の方たちと交流する心理プログラムというのも運営しているというようなことを拝見しております。

 つまり、少人数でサポート体制をつくるのとあわせて、心理面でも、落ちこぼれてしまって居場所がないということがないように、しっかりと学校もそれから地域も一緒にケアをしているということが言えるのではないかと思います。

 ですから、子供が楽しく学校へ行ける環境をつくれば学力はついてくるといいましょうか、学力も向上するのではないかというふうに思われます。でも、それは、学校の教職員の力だけでは間に合うものではありませんので、地域の力も、地域の大人の出番とも言えるのではないかと思います。

 平野大臣は所信の中で、地域とともにある学校づくり、これを推進するというのを掲げていらっしゃいますが、具体的にどんな仕組みを推進していこうとお考えでしょうか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、学校が地域に根差して地域の方々の御協力をいただくことによって学びを豊かにする、そういう取り組みが非常に重要な課題でございます。

 その中でも、コミュニティースクールという制度を制度化しているところでございます。具体的に、保護者や地域住民の方々が一定の権限と責任を持って学校運営に参画をするというコミュニティースクール制度が平成十六年九月に実施されております。着実に増加をし、平成二十三年四月一日現在七百八十九校という実績になってございます。

 しかしながら、分析をいたしますと、導入されている地域にはまだまだ偏りがあるという実情でございますし、小学校では公立の全小学校のうちの約二・五%、中学校では全公立中学校の約二%というふうにとどまっているのが実情でございます。

永江委員 現在、七百八十九校ということですね。私は、もっともっとふえていったらいいなというふうに思うんですね。まさに地域とともにある学校、地域のコミュニティーが動かす、支えていく学校づくりということになろうと思いますので、さまざまな人の意見とか声が入って、閉鎖性が指摘されがちな学校運営の中にいい風が入ってくると思うんですね。そのことは楽しい学校づくりにもいい影響があるというふうに思われるんですが、でも、いろいろな現場のお声を聞いていますと、指定されてもメリットがないというお声があったりとか、学校評議員制度、これを導入しているからもういいんだというような声も聞かれます。

 行く行くは、目標としては公立小中学校の一割、およそ三千校に広げていきたいという目標を掲げていらっしゃると思うんですが、どうやってこの先、全国に普及していくのか、その方策について伺いたいと思います。

高井副大臣 御指摘のように、学校評議員制度というのもございまして、これは、学校教育法施行規則という省令に基づいて、校長の求めに応じて、学校運営に関して各委員が個人としての意見を述べるという制度でございます。

 お触れになったコミュニティースクール、いわゆる学校運営協議会という仕組みは、合議制の機関であって、学校運営に関する基本的な方針について承認をする、それから、学校運営に関して、教育委員会または校長に意見を述べることができる、教職員の採用等に関して、任命権者に対してこれも意見を述べることができて、任命権者はこれを尊重するというものとされておりまして、これは法律に基づく一定の権限を有しているというものでございます。

 このコミュニティースクールをまさに導入を促進したいという思いから、今年度、二十四年度においては、全国コミュニティースクール連絡協議会というものがございます。ここと連携したネットワーク化、それから、会議等を行いまして、先進的事例の普及啓発の実施を行いましたり、コミュニティースクール導入を検討している教育委員会などに対して、きめ細やかに助言を行うというコミュニティースクール推進員というものを派遣したりしております。この導入促進や充実改善のための調査研究というものもあわせてしておりまして、運営費の支援とか、教職員の加配等も、コーディネーター役の教職員となる方々の加配なども実施をしておるところでございます。

 これからも、できるだけ全ての学校において、地域とともにある学校というこの理念から、学校からの町づくりというものも言われておりますので、その有効な手段であるコミュニティースクールというものの数を、平成二十四年度から精力的に、五年間で全公立小中学校の約一割、約三千校になりますけれども、そこに拡大していくということを目標として、一層の促進に向けて頑張りたいというふうに思っております。

永江委員 ぜひぜひもっともっとコミュニティースクールの魅力をアピールして、推進策を練って進めていっていただきたいというふうに思います。

 実は、私は学校評議員を務めたことがあるんですけれども、やはり、評議員として評議したり評価するというのと、運営に参画していくというのは全然違いますよね。かかわりが深くならざるを得ないというところがありまして、ついついのめり込むというか、かかわるといいましょうか、そうすると、何か、学校へは苦情を言うというようなことだったのが、だんだん学校に対して、提案をするとか、意見を言うとか、相談するとか、協力するという形に変わってくるんだと思うんです。ですから、保護者も一緒にかかわることで学んでいくのだなというふうなことを感じておりますので、地域の大人にとってもいいきっかけになるというふうに思っています。

 高井副大臣がおっしゃいましたように、学校からの町づくりとおっしゃいましたけれども、そのとおりだというふうに思います。といいますのは、今、学校に手をかしてやろうなんという力のある地域がそうそうあるわけではないというふうに思っています。地域そのものが消滅しているところも多いですから、地域が学校を支えるというよりも、学校を立て直すとか学校の問題を解決する過程で地域も再生する、同時進行していくのではないか、いい影響を与え合うことが大事だというふうに思っています。

 私は、ぜひ、コミュニティースクールと同時に、空き教室を活用して、どんどんと学校の中に地域をつくっていくことを提案したいというふうに思っています。

 私の地元の松山市では、市内中心部の清水小学校というところに、学校の中に、いきがい交流センターしみずという福祉施設が入っておりまして、ちょうど三日前の日曜日に十周年を迎えまして、十周年のお祭りをやって、地域のお年寄りもそれから子供たちも一緒に笑顔がはじけていまして、にぎわっておりました。

 そもそもは、十年前に清水小学校が大きくなりまして、新設校に子供たちが分かれたということで余裕教室ができたので、そこにデイサービスとか趣味の講座を実施する施設が設けられたということなんですが、こういった空き教室の活用の進みぐあい、それから現在の活用例の展開など、状況を教えていただきたいと思います。

清木政府参考人 公立小中学校のいわゆる余裕教室の、これは平成二十一年五月現在の状況でございますが、全国で約六万一千室ございまして、そのうち九九・一%に当たります約六万五百室が何らかの形で活用されております。

 この活用されているもののうち、九四・三%に当たります約五万七千室が学校施設として活用されておりました。このうち、約五万六百室が児童生徒のために、例えば学習方法、指導方法の多様化に対応するためのスペース等に使用され、また、約一千四百室がPTA室など地域へ学校開放を支援するスペースとして使用されております。

 一方、活用されているものの五・七%に当たります約三千四百室が学校施設以外の施設として活用されておりまして、例えば、そのうち約二千百室が放課後子ども教室や放課後児童クラブとして、また、約三百五十室が公民館など社会教育施設として、そして、約百六十室がデイサービスセンターなど社会福祉施設等として使用されたというのが現在の状況でございます。

永江委員 活用例としていろいろなパターンがあるようです。これは決して強制はできないとは思うんですけれども、私はぜひ、空き教室に地域の人に入ってもらうようなことに使っていけるように努力をしていただけたらなというふうに思っています。

 例えば、先ほど申しましたように、高齢者の方々の施設として活用すると、子供たちは一日のうち、学校で長い時間を過ごします。そこでお年寄りの姿を見かけたり、話をしたりする機会に恵まれて、世代間交流が体験できますよね。最近は、核家族で、うちにお年寄りがいない、お年寄りと触れ合う機会もないという子供たちにとって、生活経験を通して、いろいろな生きていく上での知恵ですとか、自然にこれを学ぶことができると思います。地域の文化も伝わっていくと思います。これが子供たちの発達に与える影響というのは非常に大きいものがあると思われますので、ぜひこういった形を推進していただけたらなと思っています。

 十年前、この清水小学校で、高齢者の方の施設を入れるときに、文科省と厚労省の縦割りの中で非常に苦労したというふうなことも聞いているんですが、現在の推進するための施策として、どういったことをやっていらっしゃいますか。

高井副大臣 御指摘、大事なことと思います。普通教室として使用しなくなった教室をまさに地域の実情に応じて有効に活用するということは、本当に重要だと思っております。

 文部科学省として、国庫補助を受けて建設された公立学校は、目的外の用途に転用する場合には国庫補助の返還が必要となるというふうになっておりましたが、この財産処分の手続を大幅に弾力化いたしまして、これは平成二十年六月からでございますが、弾力化して、ほとんどの場合において国庫納付金が不要というようにしてまいりました。この余裕教室などの転用等に対していろいろな支援を行っております。

 余裕教室を子育て支援施設とか高齢者福祉施設に転用する際に必要となる既存の黒板とか教壇とかの撤去工事などについても補助対象というふうにいたしまして、そのほか、縦割りという御指摘がございましたが、厚生労働省ともより連携をいたしまして、余裕教室の活用事例に関してパンフレットを作成いたしまして、地方公共団体にも配付をしているところであります。

 引き続き、本当に、地域の拠点として利用されるというのは大事なことでありますし、いろいろな点から意義があると思いますので、余裕教室の活用に関して地方公共団体が独自でやっていく取り組みを支援していくということで、頑張っていきたいと思います。

永江委員 ぜひよろしくお願いをいたします。

 ちょっと話はかわりますが、私は以前にも平野大臣に申し上げたんですが、ぜひソーシャルワーカーを学校に配置していただきたいというふうに思っています。

 被災地では特にそうなんですが、最近では、子供を救うにはまず家族を救う必要があります。年々、家族の問題は複雑化しておりまして、貧困それから虐待というように、幾つもの大変な問題が重なっておりまして、それに対応して、例えば保護者の仕事の相談を受けて、あるいは福祉制度の利用の手続をしたり、あるいは家庭内の虐待に対処するなど、これはもうスクールカウンセラーではなくてソーシャルワーカーの出番だというふうに思われます。

 ですので、例えば空き教室の活用でも、ある日は、ソーシャルワーカーが座って、そこでは子供たちだけではなくて保護者や地域の方々も来られて相談を受けるとか、地域に向かっても開放されるとか、そういう形ができないか。あるいは、ある日は、その空き教室にスクールカウンセラーとして大学の教育学部の学生が子供たちの話し相手になるとか相談を受けるとか、そういう形ができたらいいなというふうに思っているんです。

 実は、例えば私の地元の松山市では、平成二十年度から二十二年度まで、ソーシャルワーカーが週三日ずつ派遣されていました。ところが、二十二年度で一〇〇%の補助が切れたので、それっきりという状態になっておりまして、厳しい地方財政のことを思えば仕方のないことなのかもしれませんが、極めて重要度の高い施策だと思います。

 補助率を含めて、ソーシャルワーカーをもっと自治体が活用しやすい手だてをお願いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 先生には、分科会におきましても、このソーシャルワーカーの必要性について御指摘をいただきました。大変、現場を見られての見識に敬意を表したいと思っております。

 特に昨今、いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待、いわゆる生徒指導上、家庭との連動においても重要な問題が多数発生をしておりまして、特に、ソーシャルワーカーという専門家、教育的知識と福祉的知識の両面を持った方々がその指導に当たる、このことは非常に重要なことだと思っております。

 そういう観点で、文科省としましても、ソーシャルワーカーについて、配置をする公共団体についてはできる限り経費を補助していこう、こういうことで、平成二十四年度の予算におきましても、百八の都道府県、指定都市、中核都市に約一千名強のソーシャルワーカーを配置するように補助を行おうと今考えているところでございます。

 いずれにしましても、先生先ほどからの御指摘、空き教室を含めて、公共団体の中においてもこういう教育相談体制の充実強化に努めてまいりたい、かように考えております。

永江委員 ぜひぜひよろしくお願いをいたします。

 それでは最後に、奨学金制度についてお尋ねをさせていただきます。

 平野大臣が所信で述べられたように、「意欲ある全ての人が希望する教育を受け、みずからの能力を高める機会を確保することは、社会全体の責務であるとともに、社会の活力を向上させる有効な方策である」ということには全く同感でございます。

 そして、このたび、所得連動返済型奨学金制度が創設されたということは大きな一歩だというふうに受けとめています。

 この制度は日本で初めての制度ですので、使える学生の条件ですとか、あるいは返済が猶予される期間など、詳しいところをこの際教えてくださいませ。

板東政府参考人 ただいまの所得連動返済型の無利子奨学金制度の概要でございますけれども、具体的には、家計の厳しい世帯、これは給与所得世帯でございますと年収三百万円以下というような条件でございますけれども、その学生に対しまして奨学金の貸与をするということでございます。その貸与を受けた本人が、卒業後に一定の収入、これも年収三百万円に達するまでということを考えているところでございますけれども、その収入を得るまでの間は返済期限を猶予するというものでございます。

永江委員 この二月、実はロシアでは、大統領令で、三十五歳以下の若手の研究者を対象に、毎月、日本円に直しますと五万七千円ほどの奨学金を支給することが決まったそうです。これはロシアの平均給与に匹敵するという大きな金額であります。

 それから、去年から、宇宙、原子力、IT、ナノテクといった重点分野を専攻している学生には大変手厚い奨学金、これは毎月、日本円で二万円ほどの支給をするということをやっております。ですから、教育、人材づくりを国家戦略と位置づけていろいろ手を打っているということなんです。

 平野大臣も、グローバル人材の育成のための取り組みを戦略的にやらなければならないというふうにおっしゃって、継続的に推進していくという決意を述べておられますが、意欲と能力のある若者たちに教育の機会を保障するということは、日本にとっても大変重要な国家戦略だというふうに思います。

 私は、ぜひ給付型の奨学金制度、これを創設していただきたいと思っているんですが、平野大臣のお考え、思いをお聞かせください。

平野(博)国務大臣 いつも先生には給付型奨学金の必要性についての応援団として、大変うれしく思っております。

 今回、平成二十四年度の予算案におきましては、先ほど政府参考人が述べましたように、所得連動型、こういうことになりましたけれども、基本の理念、考え方につきましては、やはり意欲、学びたい、こういう方についてはしっかりとサポートする、こういう考え方は全く変わっておりません。給付型の奨学金制度の必要性ということについては私どもも重々理解をいたしておりますし、概算要求段階においては給付型奨学金も要求したところでございます。

 しかし、今回、政府・与党の議論を踏まえて、先ほど御答弁申し上げましたような形にはなりましたが、私としては、先生御指摘の給付型奨学金の実現に向けてしっかりと、一歩、二歩、三歩と実現に向けて頑張っていきたい、かように思っております。

永江委員 これは、本当にやる気も能力もあるのに経済的な家庭の事情などでチャンスに恵まれないという子供たちにとっては希望の灯となります。それと同時に、不安いっぱいの今の日本の状況の中では、全国の国民の皆さんにとっても、ああ、国はこうやって頑張る子供たち、頑張る人たちを応援するんだ、平等にチャンスをつくるということに踏み出しているんだという意味で希望の光となると思われますので、私も力いっぱい応援申し上げたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 それでは、これで質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

石毛委員長 次に、松野博一さん。

松野(博)委員 自由民主党の松野博一でございます。

 平野大臣には初めての質問になります。どうぞよろしくお願いいたします。また、副大臣、政務官、どうぞよろしくお願いいたします。

 先般の衆議院予算委員会において、我が党の小泉進次郎議員が野田総理に対して、どうも民主党政権は、野党のときに主張していたこと、また野党のときに提言した内容と現状が違うじゃないかという質問をしたところ、野田総理が、与党になって見えてきた風景が違ってきましたという答弁をされました。答弁としてはいかがなものかと思いますが、しかし、私はむしろこのことは積極的に評価をしておりまして、野党のときの考え方、情報量と、政府において行政の責任を持つ立場になったときは違ってきて当然だと思います。それはもう進化だというふうに思います。

 大臣は、文科大臣に御就任の前に与党の要職をお務めになり、官房長官もお務めになりましたけれども、与党になってやはり見えてきた風景は違っていますか。

平野(博)国務大臣 野党のときの議員の立場でのみずからの考え方と、政府、行政という立場に入ったときの今までの考え方と、みずからの政治家、与党としての発言というのは、現実対応、こういう視点と、将来に向かってのあるべき論という理想形と、当然そのギャップがございます。

 そういう中にあって、行政というのは現実の対応をしていかなきゃならない部分も多々ございますから、そういう観点での違いはあろうかと思いますが、しかし、やはり政治家として目指すべき方向を訴えてきた者としては、その方向を見据えながらやっていかなきゃならない、こういうふうに思っております。

松野(博)委員 与党としての政府の責任ある立場で考え方が変化をしてきたと。その変化をしてきた中で、私たちともいろいろと理念を共有できるところがふえてきたんだと思うんですね。ですから、もちろん政党が違うし、政治家それぞれの考え方はありますから、対立点は対立点としても、共通の理念を持って、お互いにそれを共有できるところは教育現場の改革に向けて一緒にやっていくことが建設的なんだろうというふうに思います。

 そこで、きょうは細かいことは聞きません。大臣の今おっしゃったところの大きな指針についてお伺いをしていきたいというふうに思います。私たちもそろそろ与党に戻る準備をしなければいけませんし、また、民主党の皆さんも、野党になってまた風景が変わったというのも困るものですから、しっかりと確認をさせていただきたいと思います。

 一問目は、これは教育行政の問題ではありませんが、まさに政府としての責任、大臣としての処し方について、国務大臣としての平野大臣にお伺いをしたいと思います。その案件は、先般の下呂市長選における前田国交相の対応についてであります。

 選挙の告示前の事前の期間において、特定候補に対する支援を要請する文書に自筆で署名をして、そして、自分の名刺を入れた国交省の封筒で、かつ、それを自分の所管の団体に送ったということでありまして、前田大臣御自身も、これは私が署名をしましたということはお認めになっておりますし、行為は軽率であって反省をしているというふうにお述べになっておられますが、それだけで済む問題ではないと思います。

 平野大臣を初め文科省の政務三役のことが、今後そういうことが起こるとは全く思っていませんが、しかし、私たちに引きつけて考えてみれば、大臣が大臣の所管の団体に関して特定候補の支援要請、自筆でサインをして、名刺を添えて文科省の封筒で送ったということですよね、文科省でいえば。そういう行為に関して、大臣、国務大臣として、どのように評価をして、また、前田大臣はどう責任をとるべきだとお考えになっているか、御所見をお伺いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 これは、前田国交大臣がどういう状況、シチュエーションでそういう行為を行ったかという事実関係が、私、定かでございませんが、前田大臣の個人的なことだと思っておりますので、私に置きかえてどうだという御指摘でございますが、仮定の話については、私、コメントは差し控えたいと思います。

松野(博)委員 大臣もなかなか答えづらいところがおありなんだろうというふうに思いますが、しかし、私は、今の前田大臣の、反省をしていると言うだけで済む問題ではないというふうに認識をしております。きょうは文科委員会でありますので、これ以上この問題には踏み込みませんが、今後、他の委員会も通してしっかりと責任は追及をし、責任をとっていただかなければならないというふうに考えております。

 それでは、本題の方に入らせていただきたいと思います。

 私たちは安倍内閣のときに現在の教育基本法に改正をいたしました。これはもう釈迦に説法ですが、前の、旧教育基本法は、日本が占領下に憲法と同時に発布をされたものであります。その内容を、日本の歴史や文化や伝統に根差し、そして今の時代性にマッチしたものにしたい、そういう思いで現行の教育基本法に改正をしたわけであります。

 その折に、民主党としても、民主党の教育理念のベースになる考え方として、日本国教育基本法というものをお出しになりました。これが今でも民主党の教育政策の根幹をなすものなんだろう、理念なんだろうというふうに考えておりますが、大臣、日本国教育基本法と現行の教育基本法の差異、一体どこが違うのか、何をポイントとしてこの日本国教育基本法をつくられたのか。大臣は民主党の文教関係の重鎮でもありますので、ぜひお話をお伺いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 私は今、行政の、政府の一員でございますので、確かに、平成十八年でございましたが、現行の教育基本法に大きく、六十年ぶりだったと思いますが、全面改正をされたということは承知をいたしております。

 特に大きな違いというところは、当然法律の対象でありますとか、教育の目標でありますとか、教育の行政でありますとか、そういうところは若干違いはあろうと思っております。しかし、今、政府の担当大臣として現行の教育基本法を含む現行法律に基づいて私としては仕事をしてまいる決意でございますし、しておるつもりでございます。

松野(博)委員 大臣のお仕事ですから現行法にのっとって仕事をされるのは当然だと思いますが、しかし、民主党政府の教育政策の基本理念がここに集約をされているんだろうというふうに思いますので、そのことについて確認もしたいと思いますし、また、大臣、中長期的に考えたときに、民主党政権、中長期的に民主党政権が続かないように私たちもやりますが、中長期的に考えた場合は、この日本国教育基本法に向けての改正を進めるお考えですか。

平野(博)国務大臣 今それをもって改正するとか云々ということじゃなくて、現行法にのっとりながら、しかし、民主党としては教育基本法という対案を出しました。そういう考え方を持ちながら、そういう思想にのっとって、具体的なところについてはそういう考え方のもとに取り組みをしたいということでございます。

 例えば、日本国教育基本法に書きました奨学金の充実でありますとか、あるいは教育費の負担の軽減等々、教員の質と数の充実等々、そういう私どもが求めてきたことは、現行の法律、教育基本法の中でもそういう考え方をそこに盛り込みながらやっていきたいということでございまして、今すぐに改正をする、こういう考え方はとっておりません。

松野(博)委員 具体的な改正に向けての議論は今していないけれども、その理念は大切にしていきたいというお答えだったというふうに思います。

 前回、大臣の所信に対する我が党の下村議員の質問で、要は国と地方の教育行政の責任のあり方について、簡単に集約して言ってしまいますと、教育現場が混乱をしているとき、十分な成果を上げていないとき、もっと言えば違法状況にあるときは、国が今よりも明確に是正指導、指示ができるようなそういう法体系の改正が必要じゃないかという趣旨の質問を下村議員がしたときに、大臣のお答えは、もちろん大臣のお立場で、現行法がありますから非常に言い回しは微妙なお話でしたが、大臣の思い、趣旨としては、非常に問題意識を共有しているというお答えだったと思います。そのことに関してはまさに私も大臣のお考えと同じ方向を考えていますから、ぜひ進めていただきたいなというふうに思います。

 しかし、この日本国教育基本法の基本的な考え方というのは民主党の地方自治の考え方に即してという説明を当時受けました。その地方自治の考え方は何かというと、大きくは二つのことをおっしゃっていました。

 一つは補完性、近接性の原理と、地域主権ということなんですね。補完性の原理とは、言うまでもなく、サービスを受ける住民により近い行政が責任を持つべきだ、そこで至らないところをさらに上位の行政が補っていくべきだという考え方でありますし、地域主権というのは、主権という言葉は政治、行政の中で最も強い言葉でありますが、地域主権だというふうにおっしゃいました。

 そうすると、大臣がお持ちになっている国の教育現場に対する責任の考え方と、補完性の原理と地域主権の考え方は、ここに考え方の差異があるわけですね。

 別に私は、この日本国教育基本法の考え方と、大臣、ここが矛盾しているじゃないですかと追及する気は全くありません。むしろ、与党になって風景が変わってきた中で、必要と思われるものは変えたり加えたりして、より現実的な対応をとっていただきたいというふうに思っています。

 先ほど私が指摘をさせていただきました日本国教育基本法、また民主党の地方自治のあり方に対する考え方と、大臣のお考え、そこに差異があるというふうにお考えですか。

平野(博)国務大臣 議員、私は、先般の委員会でも下村議員にお答えしました。その一番大きな背景というのは、義務教育というのはやはり国の責任においてやっていくんだ、そのときの指導助言という形で今終わっておって、もう少し強く指導したい、是正をしたいというところがなかなか今の法体系では、しづらい関係というよりも、靴の上からかいているような気もするものですから、私としてはしっかりとやっていきたい、こういうことを下村議員の御質問にお答えしたつもりでございます。

 ただ、私どもが申し上げている、原点はやはり一番現場が大事なんですよ、現場の責任でしっかりやってくださいということと、私が今申し上げたこととは相矛盾することではなくて、広義な意味の部分と狭義な部分との関係であって、決して、補完性の原理、近接性の原理を私は否定をしている、こういうことではないというふうに私は認識をいたしております。

松野(博)委員 今の法律のあり方が、大臣おっしゃったとおり、靴の上からかいているようなところがあるというのは私も同じ感覚を持っております。

 大臣の今の御答弁ですが、しかし、現実問題として、より明確に国が教育現場に何らかの指導をしていく上には、今の地教行法の四十九条とか五十条では事実上これはできないんですね。となると、法改正をしていかなければなりません。法改正をするという方向においては、大臣が今おっしゃったところの補完性の原理であったり、地域主権という考え方等を整理しなきゃいけないんですね。

 地教行法ですが、今後の法改正が必要だとお考えですか。

平野(博)国務大臣 ですから、今私は、そういう問題点もあるし、地教行法においての教育の現場のあり方、ガバナンス等々についてのあり方をどうしていくかということについては、民主党も変えていかなきゃならない、こういう判断で今日まで来ておりますので、問題の整理と課題を抽出して、今現在、省内でタスクフォースを構成いたしておりまして、また、私どもだけではなくて、関係者、有識者等の意見を踏まえながら、必要な考え方はとりたいとは思っております。

 しかし、今先生がおっしゃった部分につきましては、私は、やはり、強権的にやっていこうというところに戻そうという考え方はございません。しかし、しっかり、要は、子供のためにどうあるかということに対してどういう対応ができるのかという視点は私は大事だと思っておりますので、その点は、先般の下村議員と今先生がおっしゃる部分とは同じ共感という感覚に立てると私は思っております。

松野(博)委員 私たちは、何も、国の強権的な教育行政をやれと言っているのではありません。地方の自主性を尊重することはもちろん大切だというふうに認識をしております。

 その上で、しかし、今の教育現場において、国がより強い指導性を発揮しなければいけない、こういう場面が出てきていると思うんですね。かつて、私たち自民党が、国家戦略としての教育改革という提言の中で、大きな、国と地方の教育行政に対する責任のとり方は、国が明確な教育目標、ナショナルスタンダードを設定する。そして、運用に関しては、地方、特に学校現場の自由度を高める。その結果のアウトプットに関して国が検証をして、そこで国が、混乱が生じていたり何らか問題がある場合は指導性を発揮する。こういう流れの組み立てに持っていこうという提言をしました。

 大臣のおっしゃっていることと、大きな方向性においては同じなんだろうというふうに思いますが、今私がうちの党の考え方を申し上げましたけれども、この考え方に関して、国がナショナルスタンダードを設定して、そのスタンダードに向けての運用は、学校現場を中心とした地方の自由度を高めて、そしてしっかりと検証して、まさに足らざるところは国が指導性を発揮する。この考え方は、大臣、いかがですか。

 まさに、きょう、私が質問をして、大臣のお考えを聞きたい、もしくは副大臣、政務官のお考えも聞きたいのも、この考え方でお互いに共通の理解ができれば、新たな展開ができるというふうに思っているからしつこく聞いているんですが、大臣、いかがですか。

平野(博)国務大臣 先生御指摘のように、国と地方の教育のあり方、責任のあり方、こういうことでございますが、やはり、国は、全国的な教育制度の枠組み、基準等々の設定、地方に対する財政的な支援を行います。地方公共団体は、学校の設置の管理、教職員の任命などの教育事務を実施する。こういうことが私は基本であるというふうに認識をしています。

 その上で、学校現場に近い地域住民との関係、保護者との関係が、より協力し合って学校運営に努める。こういうことをベースに日本の教育体系はあるべきだ、私はこういう理解でおります。

松野(博)委員 確かに、日本国教育基本法の中にも、国は最終責任を持つという表現があるんですね。その最終責任を持つということは、今大臣がおっしゃったところの二点で、財政支援の面と、明確な教育目標の設定ということで、そこから先の、現場に関する、現場のアウトプットに関して国の関与はどうあるべきかについては言及されていません。

 加えて言うならば、民主党がかつて提出をした新地教行法の中に、文科大臣と都道府県は、地方の教育委員会また教育現場に関して特別な関与は認めないということになっていまして、その関与の仕方は、他の地方自治と同列、同レベルであるという解釈をされているんですね。

 そのことについて、ここら辺はどうなんだという話は今しませんが、こういった問題を含めて、民主党の中でも、やはり、より教育をしっかりと、先ほど永江議員がお話しになったとおり、教育の、学力のレベルを担保したり、混乱が生じないようにしたりするために、国のあるべき指導性とは何かというのが、ほぼ私たちと、まあ現行法はあります。現行法はあって、現行法をつくったのは私たちですから、私たちも反省というか、さらに党内で議論を深めなきゃいけませんが、大きな方向性において、国と地方の関係が理念の上で整理をされたということであれば、具体的に、もちろんうちの党もやります。しかし、民主党内も、この議論を整理して、現状に合った法改正をやりたいなというふうに希望しています。

 実は、このことを副大臣と政務官全員にお聞きをして、民主党の、政府の今後の教育行政理念の方向性を一致させたいと思ったんですが、ちょっとほかの質問もできなくなるので、代表して、今回就任をされた高井副大臣に、今、大臣と私の議論を聞いて、御所見をお伺いしたいというふうに思います。

高井副大臣 まさに大臣がおっしゃったとおりなんですけれども、改めて、今松野先生のお話を聞きながら、それこそ下村先生や松野先生の基本にある考え方というのは、方向性というのは大変共有するものであるというふうに私も感じております。

 まさに国の責任ということに関して、教育の機会均等と水準確保、いわゆる教育におけるナショナルミニマムをしっかり確保する。それとともに、現場の裁量をきちんと与えていく、運用においてはしっかり現場に任せていくということは、本当に、基本の部分では全く一緒の思いでございます。

 ただ、法令違反とかそういう件に関しては、やはり国がきちんと対応するという点においても、その点も価値観を共有しておりまして、まさに教育という問題は、政治的な中立性ということもずっと言われておりますので、できれば、こういう形で、政権がかわろうとも、同じ方向性や考え方を持っている部分では、ぜひ一緒に共有しながらやっていきたいというふうに思っているところであります。

松野(博)委員 ぜひ、この点に関しては建設的な議論をさせていただきたいと思います。

 続いて、日本国教育基本法の前文において、国を愛する心という表現があります。

 私は最初、この、国を愛する心という民主党の日本国教育基本法の表現を見て、私たちの提案したもの、提出したものは、国を愛する態度ですから、この点においては、民主党案の方がより踏み込んでいるなと率直に感じました。

 しかし、その議論の過程で、いや、これは法律的な拘束力のない前文に置かれているものだとか、愛する心の涵養だとかと、いろいろと理屈が後からついてきましたが、日本国教育基本法を最も象徴する前文の中において、国を愛する心という表現が入ったということは極めて重大なことだと思います。

 平野大臣、国を愛する心、この表現が前文の中に入ったということに関して、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 日本国教育基本法案の前文に「日本を愛する心を涵養し、」こういう言葉が入ったことも事実でございます。これは、日本の言語、文化、郷土、歴史等々、総体として日本を愛する心を育む、こういう観点から規定をされたと思っております。

 現行の教育基本法、これは前文ではありません、条文の中に書かれておりますが、我が国の郷土を愛する態度を養う、こういう言葉でございます。前文、条文という議論はあるかもしれませんが、少なくとも、国を大事にしたいんだ、こういう趣旨においては相通ずるものだと私は思っておりまして、同じ考え方だという認識のもとに、私は現行対応いたしておる、こういうことでございます。

松野(博)委員 まさに国を愛する心というのを子供たちにしっかりと持ってもらう、そのことの重要性の認識は、大臣と私たちは共有をできたんだろう、しているんだろうというふうに思います。

 ちなみに、心というのをなぜ使ったかという理由について、当時の民主党の解説というか話は、これだけ複雑化した社会情勢の中で、社会的また経済的環境を整えるだけでは実現できない、まさに心の問題に踏み込んでこそ本質的な解決ができるんだという意味において、心という表現を使ったんだという説明をたしか受けた記憶がございます。それもなるほどなというふうに思いますが、この点に関して、よく民主党が「日本を愛する心」という表現を使ったなと驚いた理由の一つに、民主党の最大の支援団体の一つである日教組がよくこの表現を許したなと思ったのは、率直な感想であります。

 そこで、神本政務官、この「日本を愛する心」という表現、心ですから、心というワーディングを使った理由は、先ほど、私が民主党さんから説明を受けたことをそのまま申し上げましたが、この解釈に神本政務官は共鳴をされますでしょうか。

神本大臣政務官 お答え申し上げます。

 国を愛する心ということが日本国教育基本法案、民主党案の中に使われていることに対して、理解をするかということでございます。

 先ほど大臣の御答弁もありましたように、この中に含まれているのは、日本の言語や文化や郷土、歴史、風俗、習慣、こういったものが、子供たちが生まれて、親や地域の人の中で育まれていく。こういう言語や文化や郷土、歴史、風俗、習慣、こういったものに囲まれて育まれていって、ああ、自分が生まれ育ったこの郷土を愛するとか国を愛する、そういう心が育まれていくことについて、私は何ら否定するものでもありません。

 先ほどちょっとお触れになった日教組については、そういう心を学校教育の中で強制するということについて、これは、昨年下村先生の御質問にもお答えしたんですけれども、そういうことについては反対をしてきたけれども、今言ったように、育まれていく中で心が育っていくということについて、何ら否定するものではないと思っております。

松野(博)委員 育まれていくには、全くほっておいたら育まれないんですね。それは、教育現場で指導があって育まれるわけであります。

 ありますが、この考え方は、神本政務官と私と今ここで議論をしても、理解し得ないところもお互いにあるんだろうというふうに思いますから、ここでこの問題はやめますが、政務官、少なくとも、教育現場で反日教育はだめだな、まずいなということは政務官もお考えになりますか。

神本大臣政務官 反日教育というのがどういうものを指すのか、ちょっと今、私、わかりませんけれども、自分の国を否定するような教育があってはならないというふうに思っております。

松野(博)委員 その答えは、安心をいたしました。

 次に移らせていただきたいと思います。

 これも日本国教育基本法に書かれているものですが、今、地方の教育行政の責任は、教育委員会が持っているわけです。この後、大阪の教育基本条例案に関しては下村議員から質問もあると思いますが、日本国教育基本法の中に、教育委員会が持っている権限を首長に移すんだという表現があります。

 私もこれは一つの考え方だなというふうに思っておりますが、首長に移さなければいけない理由、現状の教育委員会が抱えている問題、これも、先般の大臣所信の質問の中で大臣はお答えになりました。幾つか挙げられました。しかし、どうも私は、大臣が挙げられた理由が、教育委員会の今抱えている具体的な、リアルな問題点として、余りぴんとこないんですね。

 そこで、今の教育委員会制度のここが問題だから首長に移すべきだ、移すべきだというのは、今、大臣のお立場だと、これはあくまで日本国教育基本法の中の表現ですということだと思いますが、何が教育委員会の抱えている問題だとお考えか、具体的に御所見をお伺いします。

平野(博)国務大臣 特に現行の教育委員制度、こういうことについては、これまで、中教審等々の中においての問題点、課題としては、地域住民の意向を十分にやはり反映していないのではないか、あるいは権限と責任の所在が不明確ではないか、教育委員会の審議が形骸化しているのではないか、あるいは、合議体ゆえに迅速さ、機動性に欠けているのではないか、こういうような具体的な指摘があるということについては承知をいたしております。

松野(博)委員 今、大臣の御答弁の中に、地域住民の声が反映をされていないということがありましたが、地域住民のどういった声が教育委員会に反映をされていないのか、また、反映されるべきだというふうに大臣はお考えですか。

平野(博)国務大臣 特に地域住民の意向というところに絞って御答弁させていただきますと、私、そういう指摘を受けているのはこういうことかなというふうに思いますのは、やはり、国や都道府県の方向に沿うということにややもすると集中するのではないか、こういう部分。あるいは、教育委員の一部や事務局の職員等々の多くが、教育関係者やOB等々が攻めて、攻めてというよりは就任しており、いわゆる閉鎖的な領域になっておるものですから、地域に開放された、そういう実感が湧かない雰囲気になっているのではないか、こういうことだと私は理解いたします。

松野(博)委員 私も、具体的な、教育に関してはみんなそれぞれ一家言を持っていますから、お話があるんでしょうが、実際の教育委員会または学校の運営に関して、それほど地域住民の声が具体的に制度として吸収される必要がどの程度あるのかということに関しては、やはりこれは検証が必要なんだろうというふうに思います。割とその文言だと、やはり地域の声を聞かなきゃいけないというのは、みんながうんうんといってさらっと通ってしまうんですが、具体的にそれは一体何のことなんだろうということはもう一度考えていかなければいけないと思います。

 また、大臣の答弁の中に、スピード感がない、決定が遅いということも挙げられるというふうになりましたが、しかし、今までの文科省の教育委員会の機能の一つとして、教育委員会というのは遅効性がある、首長がかわっても、すぐその首長にかわった意向に沿って教育の方向性が変わるのではなしに、教育委員の任期がありますから、そこが、ずれが起こる、遅効性があることによって、教育現場が急激に変わることがないようにそれが担保される、これがメリットだという説明もされていたんですね。

 そうすると、過去のそういった説明と、もっと素早く、スピード感を持って教育現場が変化していくべきだというのは全く違う方向ですから、これは、今、私もどっちが正しいのかなという結論を正直持っておりません。恐らくは両方の要素を取り入れていくべきなんだろうと思いますが、このことも、個々具体的に今教育委員会の問題として挙げられている議論を取り上げていくと、実は、内容に関してそう掘り下げていないものが随分あるなという気がしております。

 このことに関してはもうちょっとお聞きしますが、首長が、市町村長さんが選挙のときに、私はこの町の教育をこうします、こう変えていきたいというような公約を掲げられるんですね。これは、ほぼ、どの首長さんも選挙のたびにこの公約が掲げられるんですが、しかし、今の制度では、直接的に首長が地方の教育行政に権限を持つことはできない。これは教育委員の任命を通してということであります。

 大臣、首長が持つべき教育の責任とは一体どんなものだというふうにお考えですか。

平野(博)国務大臣 私は、首長、市長さん、村長さん、町長さんを含めてだと思いますが、教育についてはこうだ、こういうふうに発言をし、教育に対する意見を選挙公約等々を含めてお述べになる、これは大いに結構ではないかと思っています。

 その上において、今の現行の制度でいきますと、間接的に教育委員会の、今委員御指摘のように、委員長、教育長の指名によって間接的にみずからの考え方を教育の中に反映してもらう、こういうことが現行の仕組みなんだろうというふうに思っております。

 したがいまして、首長の仕事というのは、自分の、みずからの公約を実現するために、学校の施設でありますとか学校の教育環境をどういうふうに整備し、それを実行していくかというところで、私は首長の役割なんだろうというふうに思っております。

 教育の目標につきましては、現行、教育委員会が教育の目標について具体的に決めて、学校現場で進めていく、こういう役割なんだろうと思っております。

松野(博)委員 今の首長が持っている教育行政に関する権限は大臣がおっしゃったとおりですが、しかし、問題意識は、その地域、その町の教育をこう変えていくんだという公約を提示して有権者に選ばれた首長が、その公約を実行するに当たって、教育施設の整備ぐらいしか直接的にはできないということの問題点が挙げられているんだろうというふうに思います。

 ですから、御党の日本国教育基本法の中で、首長に権限を移してやった方がいいということなんだと思いますが、首長に教育行政の権限を移す方がいいというふうに大臣はお考えですか。

平野(博)国務大臣 そういうお考えもあると思います。ただし、教育の普遍性、こういうところ、あるいは、政治の変化によって教育の現場が変化をするということは避けていかなければいけないと私は思います。

 ただし、何か課題があったときには迅速にその問題に対処でき得るというようなところは、どういう体制でやるのが一番いいのかというのは、これからの御議論があるところでございます。

 ただし、首長におきましても議会に対する提案権がございますから、これもやはり、地方自治の考え方の中にもそういう問題もございますから、その辺を総合的に整理した上で、子供の学びやにとって、学ぶ子供にとって一番何が大事なのかということを見失うことなく、どういう改革を進めるべきかということが必要であろうと私は思っておりますし、私自身も、教育委員会の制度のあり方については、何としても改革をしていかなければならない、こういう認識にございます。

松野(博)委員 教育委員会制度について改革をしなければならないという大臣の御答弁ですが、私は、今の議論というのは、今、教育委員会の欠点の一つとして、教育委員会というのは、別に教育長の教育行政に対する諮問機関ではありません、これは行政責任を持った執行機関なんですね。執行機関でありながら、その責任の所在が不明確だということからの議論なんだろうというふうに思います。

 その議論というのはさらに深めていかなければいけないというふうに思いますが、現実的な、今、機能としての教育委員会の問題点の最大のものは、実は、小規模教育委員会、地方の基礎自治体の小規模教育委員会が、例えば、県が今、教育事務所をどんどん引き揚げている中で、小規模の教育委員会ですと、教育主事も出せないということになって、機能の低下が著しい。これにどう対応していくか。指導主事だけじゃなくて、教育行政全般的に、小さい教育委員会ではスタミナが不足しているということが、一番わかりやすい今の教育委員会の問題点なんだろうというふうに思います。このことは首長に権限を移しても解決しません。

 さらに、先ほどの、大きな問題点である教育委員会の責任の所在が不明確だということに関しては、首長に権限を移せば明確になるんですが、もう一つの解決方法として、広域教育委員会制度、今の基礎自治体の教育委員会制度から、今は共同設置も認められていますが、さらに権限を一体化した広域教育委員会制度を組めば、まず、それぞれの町の首長から独立をします。ですから、責任のありようは明確になります。そして、先ほど申し上げた、小規模によって起こる弊害もカバーができる。

 ですから、教育委員会の責任の所在が不明確だという問題に関しては、首長に移行するのと、もう一つの方法論としては、広域教育委員会制度に移行するという解決方法もあるんだろうというふうに思います。

 もちろん、では、教育委員の選定方法はどうするんだとか、教育委員会の財源負担のありようはどうなるんだとか、まだテクニカルな問題は幾つかありますが、この教育委員会の改革の一つの方法として、広域教育委員会制度について、大臣はどのようにお考えでしょうか。

平野(博)国務大臣 委員冒頭言われましたように、小さな村、町等々を考えますと、そういう意味では、それぞれの地域で教育行政をしっかりと進めていくためには、教育委員会の体制というものはやはり充実をさせていかなければならない。特に、私は、事務処理の体制強化をしていくことは不可欠であるというふうに考えております。特に、小さな市町村におきましては指導主事が配置されていない等々の問題点が昨今言われておりますし、前々からの課題だ、こういうふうに認識をいたしているところでございます。

 そういう中におきまして、これは御党が与党のときだと思いますが、十九年に地教行法改正をされまして、共同設置をして連携を深める、こういうことで充実を図ってきた。こういう観点から、私は、今先生御指摘の考え方に沿ったような方向でより充実をしていこうということで来ているところでございます。

 文科省としても、共同処理の状況等々を含めて、各地方公共団体において、より教育行政が、特に小規模のところについて、その小規模であるがゆえに機能が不十分ということのないようにやっていかなきゃならない、こういうふうに思っております。

松野(博)委員 共同設置に関しては、あくまでそれぞれの教育委員会に責任の主体があるわけでありますから、広域教育委員会制度を考えるときには、より広域化された教育委員会の中に責任と権限がある形を想定しなければいけないんだろうというふうに思います。

 この教育委員会の問題を考えるときに、首長に権限を移すという考え方と、広域化する、アメリカのように、広域化した教育委員会が教育税をかけられるとか、そこまではなかなか日本は難しいと思いますが、一つの議論の方向として、ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 続いて、日本国教育基本法の中に幼児教育の漸進的な無償化に努めるという提言がありますし、御党の前回の選挙の中で、インデックスの方であったかマニフェストであったかちょっと忘れましたが、幼児教育の無償化も漸進的に取り組まなきゃいけないねという考え方があったかと思います。

 私たちも自公政権時に、幼児教育の無償化の実現を訴えました。野田総理が先般の党首討論のときに、自民党だって幼児教育の無償化を言っていたけれども、今まで実現していないじゃないかという発言をされていましたが、あれは野田総理が事実関係を御存じないんですね。

 私たちがいわゆる骨太の計画で閣議決定した文言というのは、歳入歳出の一体改革時に幼児教育を進めるということですから、まさに今、税と社会保障の一体改革が議論になっていますけれども、この機に幼児教育の無償化を進めましょうという提言をしました。

 今回、御党が、税と社会保障の一体改革の中に子ども・子育て新システムを入れ込まれていますが、この子ども・子育て新システムの中で、幼児教育の無償化に対する御党の主張というのはどういうふうに組み込まれているんでしょうか。

平野(博)国務大臣 幼児教育の無償化ということで、今委員御指摘でございました。

 現行法制におきましては、幼稚園に通う園児を持つ保護者の経済的負担の軽減、幼稚園の保育料等々を軽減する就園奨励事業を実施している公共団体に対して国が所要の経費の一部を補助している、こういうことでございますし、平成二十四年度においても約二百十五億強を予算計上させていただいている。

 したがって、その状況のもとで、今回の子ども・子育て新システムにおいてはどうなのか、こういうことでございますが、利用者負担につきましては、このような取り組みによる現行の利用者負担の水準を基本としつつ、具体的な水準については、財源のあり方を含めて、この実施日までに検討する、こういうことでございます。

 なお、幼児教育の無償化については、低所得者世帯を中心に保護者の負担は相当軽減をされている、こういうこと。財源の問題、先ほど申し上げておりますように、国、地方の役割分担を踏まえて、さらなる検討が必要であろうというふうに思っておりますが、私としては、やはり幼児教育の無償化という考え方は大きな一つの先生御指摘の御意見、こういうふうに思っておりまして、何とか教育の一気通貫でできればいいな、したいなという期待を私自身はいたしているところでございます。

松野(博)委員 まさに大臣がお話をされたところの財源の問題なんですね。

 今回の税と社会保障の一体改革の中で、子ども・子育て新システムの中に幼児教育の無償化はどう入っているのかと文科省の方に聞くと、入っていませんという答えなんです。端的に言えば、入っていない。

 今回の、政府として一〇%まで消費税を上げるというお考えですが、今後の増税、消費税をさらにどう上げていくべきかの議論はこれからさらにしますよということなんだろうというふうに思います。しかし、来年度には最低保障年金に対する法案を提出することも閣議決定してあるわけです。今回の一〇%までの値上げの中で無償化の財源は確保できない。将来的に向けても、今民主党さんがおっしゃっているところの社会保障の流れからいうと、次の増税の分も既に使い道はほぼ確定をしていて、幼児教育の無償化に向けての財源確保はできないんですね。

 ですから、私たちは、今、今回御提案の子ども・子育て新システムを実現するということと幼児教育の無償化を実現することは、これは両方とも同時には成立しないなという認識を持っておりまして、この問題、これだけでも一時間も二時間も議論しなきゃいけないんですが、私は、まず、御党が今回中心課題としている待機児童解消というのも重要な課題です。重要な課題でありますが、待機児童の定義というのもまだ不明確なんですね。かつ、待機児童の問題というのは時限的であり、また地域によって事情が違う問題ですから、消費税という恒久的な財源が本当にそれに充てられるのが適正かどうかということを考えれば、むしろ、恒久財源としては幼児教育の無償化に使われるべきだというふうに考えておりますから、今後もその主張をさせていただいて、議論を闘わせていただきたいというふうに思います。

 時間の関係で幾つか質問を抜かしますが、教師給与の全額国庫負担についてどうお考えかをお聞きしたいと思います。

 これは、御党の今までの委員の議論の中でも、自民党の政権のときに三位一体改革で二分の一の国庫負担を三分の一にしたじゃないか、これは間違いだったんじゃないかという御指摘をいただいて、当時は私も自民党の文教部会長をやっていて、まさにじくじたる思いで、皆さんから間違いだったと指摘をされれば、その批判は甘んじて受けなきゃいけないなというふうに思います。

 しかし、言いわけではありませんが、当時は、知事会、市長会を初めとして地方六団体は、全額よこせという主張だったんですね。そういう地方の声を踏まえて二分の一を三分の一に減額したわけでありますが、その後、地方六団体は、全額よこせ、これが正規の地方の声だといいながら、地方議会は、千数百の市町村議会が二分の一の国庫負担堅持の決議をしたんですね。ですから、地方の声をよく聞くというのは難しいなというふうに思うし、反省をしております。

 その中で、私たち自民党は、いや、自民党の中の文教関係と言った方が正確ですが、これは全額国庫負担にすべきだというふうに考えていますし、民主党の皆さんの質疑をお聞きしていても、これは国の責任として全額国庫負担の方向が正しいんじゃないかという御意見が多いように思います。

 大臣、これは、確かに今まで私たちの政権時も、全額国庫負担がいい、いいといいながら、対財務省との問題であったり、党内でも、総務省系の議員とのいろいろな議論の中で実現してこられなかったというのも事実です。ですから、私たちも反省をしなければいけませんが、今後の未来志向の中において、民主党の文教関係も全額国庫負担をするべきだと思っている、私たちも思っているということであれば、これは共同戦線を張って全額国庫負担に向けて動き出したらいいんじゃないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 これは、私、野党のときの、この委員会での筆頭のときの御議論だったと思いますし、その当時の大臣が河村大臣でありまして、三分の一にするのはけしからぬと言うた、質問をした、御意見を申し上げたことを記憶に持っております。

 今、改めて、三分の一から二分の一を超えて全額にしろ、こういうふうにどうだ、こういう御指摘でございますが、いろいろな御議論の経過で今日まで来ているんだろうと思います。しかし、そういう中にありましても、私は、教育の機会均等、水準を維持する、こういう意味においては、教職員の給与というのは確実な財源措置が必要であることは間違いのないことだと思っております。したがいまして、今の現行の国庫負担制度におきましては、国と都道府県の双方の負担によりその全額を財源保障する、こういうことでございます。

 今、先生からの御指摘は御意見として承りますが、それに伴う財源の配分等々の問題等々があるものですから、極めて大きな影響が出てまいります。したがって、文教の関係者だけということではなくて、政府全体の課題として私は捉まえていかなきゃならない、こういうふうに思っております。

松野(博)委員 大臣も思いは一緒だということだと思いますから、これは共同戦線を張っていきたいというふうに思います。

 ちょっと時間の関係で質問を幾つか飛ばさせていただきます。文科省の職員の皆さんは恐らく徹夜で答弁をつくっていただいたんだと思いますが、それを聞けなくて申しわけないんですけれども、引き続き、一般質疑は、委員長のお力で、頻繁にやるという方向で今理事会も議論が出ていますから、回させていただきたいと思います。

 日本国教育基本法の内容にちょっと絞ってもう一つ質問させていただきたいと思います。

 これは政府委員で結構ですが、現在、小中学校、高校の何%がバリアフリー化しているのか、バリアフリー化に向けての予算はどの程度増額をされているのかについて、御説明いただきたいと思います。

清木政府参考人 お答え申し上げます。

 これは小中高等学校でございますが、文部科学省が実施いたしました学校施設バリアフリー化の実態調査によりますと、スロープ、障害者トイレなど、何らかのバリアフリー対策が施されている学校の割合といたしましては、平成十八年七月現在が約七八%、平成十九年七月現在が約八一%、そして平成二十二年七月現在が約八三%という形で、だんだん増加してきているという状況でございます。

 文科省といたしましては、学校施設のバリアフリー化は大変大事な事柄であると考えておりまして、指針や事例集等を作成して地方公共団体に周知するとともに、学校施設のバリアフリー化に係る施設整備について国庫補助を行ってきているところでございます。

 ただ、バリアフリー化に関する予算額でございますが、これは公立学校施設整備に関する新築、増築、改築、改修などのさまざまな事業において取り組まれておりまして、この中からバリアフリー化に係るものだけを切り出すというのはちょっとなかなか困難な点がございますが、いずれにいたしましても、学校設置者からの要望がありましたものに対しましては全て対応しているというところでございます。

松野(博)委員 なぜバリアフリー化の比率とか予算を聞いたかというと、日本国教育基本法の中で、統合教育、インクルージョンに関して、これは正直、私は評価しているんです、民主党の考え方を。もちろん、現行教育基本法においても統合教育というのは進められるべきだという理念でありますが、それを法律によってというよりは政策事項として進めていこうという考え方だと思いますが、ちょっと、インクルージョンに対しての日本国教育基本法の書きぶりというのは微妙な言い回しが多いものですから、いろいろな読み方があるんだろうと思います。しかし、全体としては、インクルージョンの理念をしっかりと担保していこうという姿勢は現行の教育基本法より強いんだろうと思います。私はこれはすばらしいことだろうというふうに思います。

 それは、もちろん、障害を持つお子さんの障害の質やレベルによって、最大限その子の個性や能力を引き出すためにどういった教育方法がいいかというのは検討されなければいけません。特別支援学校の方がいいという子もいると思います。しかし、基本的には統合教育は進められるべきだと思います。

 それは、やはり学校を出た後の人生の方が長いわけであって、社会全般は、残念ながら健常者の視点で多くがつくられています。ですから、障害をお持ちのお子さんも、健常者の子供たちと一緒に生活をするという経験を早くから積むべきだと思いますし、一方で、障害を持っていない、健常者という言い方がいいのかどうか、ちょっと申しわけないんですが、普通の子供も、世の中にはさまざまな個性を持つ子供たち、人間がいるんだ、その中でお互いにしっかりと共生をしていかなきゃいけないんだということを勉強する極めていい機会だと思うんですね。

 ですから、むしろ、統合教育に対する考え方は、私たちの今まで言ってきた案よりも、民主党の理念を推し進めるべきだと個人的に私はそう思っておりますが、大臣の御所見をお伺いします。

平野(博)国務大臣 私、先生が今そういう御指摘をされましたことに全く同感でございます。

 特に、教育の中におきまして、健常者、障害者、やはりこの社会を構成しているのは、そういう方々でこの社会を構成しておりますから、教育という期間だけを分けてやる、これは、長い社会の中においてそういう対応ができないということですから、ともに教育を学んでいる中で、同じような環境のもとに社会に出ていくということが大事であろう、こういうふうに思っております。

松野(博)委員 残りの質問は次の機会に回しまして、これで終了させていただきます。

 どうもありがとうございました。

石毛委員長 次に、下村博文さん。

下村委員 自民党の下村博文です。よろしくお願いいたします。

 まず、二つ、事前通告しておりませんが、別に難しい話ではありません。まず質問したいと思います。

 最近、二つの超党派の議員連盟ができました。一つは、親学推進議員連盟、それからもう一つが、古典の日制定議員連盟で、両方とも私、事務局長をしておりまして、ここにおられる党派を超えた議員の方々に加盟をしていただいております。

 その中で、まず平野文科大臣に。

 高木さんはこの親学の方の代表代行をしていただいております。そして、鈴木寛さんには両方の幹事長をしていただいております。また、笠さんは幹事長代理をしていただいておりまして、一緒になってやっていきたいというふうに思っております。

 まず親学の方ですけれども、教育基本法が新しく制定されて、第一義的責任として家庭教育の重要さというのが明記をされました。にもかかわらず、今非常に、孤立している、孤育、孤独の中で親が、特に母親が子育てをしているという中で、現場が家庭教育の中で大変苦労されている中で、いろいろな問題が出ております。

 これは親だけの問題ではもちろんありませんが、学校教育の中においては、最近は第二次発達障害児と言われるような子供たちもふえてきて、一クラスの中で五人、六人、まあ一五%、二〇%が該当して、なかなか集団教育の中で落ちついて授業が受けられないような状況がある。あるいは、親学推進議連の中でも出ましたが、例えば北海道の調査によると、中学生のうち二三%がうつである、こういうデータも出ているんですね。

 ですから、今の学校教育だけでは十二分に対応できない部分を家庭教育も相当フォローしなきゃいけない。もちろん社会教育もそうです。しかし、今の親御さんだけではなかなか難しい。これを、一つには家庭教育推進基本法のような法律をつくってバックアップをしていこうというのが議連の趣旨です。

 そしてもう一つは、いろいろな民間団体、NPO関係等が、そういう孤立して子育てをしている親御さんに対するフォローアップ体制をつくっていこう、それぞれの子供たちの発達段階においてフォローアップをしていこう、あるいはそれ以前に、現在の小中学生の子供たちにそういう子育て、親のあり方ということを子供のうちからしっかり教育をするような機会をつくっていこう、こういうことを、別に国家が統制するということじゃなくて、フォローアップ体制をすることによって真に必要な人たちに対してはそういうチャンス、可能性を提供しよう、これが超党派の親学推進議員連盟の目的であります。

 これはぜひ文部科学省も全面的にバックアップをしていただきたいと思いますし、文科省の担当の役人の人には常時同席はしてもらっていますが、大臣は御存じであるかどうかわからなかったものですから、平野大臣に多分報告は行っていないと思いますので、ぜひこの親学については、文科省の中において大臣が先頭に立って、文科省でも、家庭教育のあり方については、今提言を受けて取りまとめの準備もしているというふうに聞いておりますので、対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 下村先生含めて、中心になって、親学について議連が発足したということについては承知をしてございます。

 加えて、私も、今山形大学に行っている結城学長を含めても、特に家庭教育の必要性等々含めて、おっしゃっている、NPOだったか忘れましたが、そういう提言も私の方に頂戴をいたしておりまして、全く先生との認識はずれていないと思っておりますから、私の立場でもバックアップできることはしていきたい、かように思っております。

下村委員 よろしくお願いいたします。

 そして、高井副大臣、就任おめでとうございます。このようなときに副大臣になるというのは、先行き不透明の中で大変なことだと思いますが、しかし、高井さん御本人にとってはさらなる活躍の場が広がったということで、期待を申し上げたいと思います。

 その中で、この間、古典の日の推進議員連盟の役員会、それから衆議院、参議院の文部科学関係の理事の方々に同席をしていただいて今後のことについてお願いをする機会をつくっていただいて、そのときに副大臣としても出席をしていただきました。

 十一月の一日、京都府ではこの日が、源氏物語が一千年前に書かれたという紫式部の記録が残っているということで、古典の日、京都府で始まっているんですね。これをぜひ国が、休日にするということではありませんが、古典の日というのを十一月の一日に定めて、そして、もっと古典に親しむ機会を多くの、これは学校教育だけではありませんが、我が国において広げていこうということで、古典の日を十一月の一日に制定しようということでの議員連盟がつくられたわけでございます。

 これについては、近々、そのための法律案も議員立法として提案をしていきたいと思っておりますが、これは文化庁の方でも進めていただきたいと思いますし、ぜひ高井副大臣には中心となって役所サイドの方で対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

高井副大臣 下村先生にはいつも大所高所から御指導いただきまして、感謝をしております。私にとって青天のへきれきの就任でございましたが、誠心誠意務めてまいりたいと思います。

 先ほどの古典の日の件に関してですが、大変意義深い、価値があるものと私も思います。温故知新という言葉もありますが、やはり古典というものに親しみ、学び、そこからまさに人間の生きざまを知っていく。人間にとって本当に大事なことだと思いますし、超党派で今議員立法を検討中ということでございますが、成立の暁には、文部科学省といたしましても、でき得る限り、教育の場でどういう教え方ができるのか、またそれを広げていくためにどうすればいいか検討してまいりたいと思いますので、これからも御指導よろしくお願いします。

下村委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、通告をしていた質問、本題に入りたいというふうに思います。

 まず、やはり朝鮮学校の問題なんですが、北朝鮮が人工衛星と称する長距離弾道ミサイルを発射しました。二分後には空中分解をして失敗したわけでありますが、しかし、これは東アジア地域全体の平和と安全を大きく損なう行為であって、断じて容認することはできません。我が国の安全保障上も重大な事態であり、独自の制裁をさらに検討すべきであるというふうに思います。

 この朝鮮学校の教科書において、平成十年、一九九八年、やはり弾道ミサイルが発射されました。このことについて朝鮮高級学校ではこういうふうに記述をされていたんですね。

 それは、一九九八年九月、共和国の人工地球衛星発射を契機にして日本当局と右翼勢力、言論出版機関などの騒ぎは極端な段階に至った。日本政府は国会で、共和国に対する制裁措置を加えることについての問題を決定し、言論出版機関は人工地球衛星をミサイル発射だと言いながら毎日のように北朝鮮脅威論を大々的に宣伝した。こういうふうに教科書記述で書いてある。

 こういうふうに朝鮮学校の教育内容というのは虚偽、捏造が多く、北朝鮮の立場を独善的に正当化する思想教育であり、我が国の教育基本法第二条「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」この規定に明らかに反するものであるというふうに思います。今回も同じだと思うんですね。

 朝鮮総連と朝鮮学校の関係は、これまでも国会審議などで再三指摘して、もう明らかになっていることでありまして、今回のことを受けて、これは、今、朝鮮学校を無償化するということで文部科学省は調査検討中でありますけれども、この時点でもう調査対象としないということをはっきりして、無償対象から外すということを明確にすべきときに来ているというふうに思いますが、大臣の所見をお伺いします。

平野(博)国務大臣 昨今の北朝鮮の衛星的ミサイルというんでしょうか、よくわかっておりませんけれども、そういうことについての脅威、これは国連の中においても大変な問題だ。我が国におきましても、これは北東アジアにおきましても大変な問題である、こういう認識のもとに、国会での声明等々、議決をいただいたわけでございます。そのことは私も十分認識をし、承知をいたしております。

 しかしながら、先生、今、朝鮮学校の高校無償化については厳正な審査を実施している、こういうことでございますので、外交的な判断を加えるということではなく、厳正な審査をさせていただく、こういうことで、今続行中でございます。

下村委員 平野大臣も官房長官をされているわけですから、今までの経緯はよく御存じなわけですね。外交的な配慮を加えないと言われましたが、実際に、我が国じゃなくて、北朝鮮が韓国の領土内、延坪島砲撃事件がありましたね。あのことによって、事実上これはストップしたわけですよ。それで、菅総理がやめる前日にどさくさに紛れて再開を指示したということで、これは明らかに外交的な配慮でとめて、また独善的に、外交的な配慮といいますか、改善されたということで再開したということなんですよ。だから、そもそもそういう理屈はもう通らないんですね。

 では、今回のことにおいても、これは粛々と進めているということですか。これはいつ決定するんですか。

平野(博)国務大臣 これは外部の方々によって進めていただいているということでございます。

 ただ、下村先生御案内のとおり、平成二十二年十一月の審査手続の一旦停止ということは、確かにございました。これは、国家の安全にかかわる事態、こういうことで、不測の事態に備えるということから、菅前総理の指示により、審査手続を一旦停止したことは事実でございます。

 あと、どさくさに紛れてとか、これはどうかわかりませんが、その後、審査再開の指示があり、審査を再開している、こういうことでございます。

 ただ、そのときの状況と今回の事態というのは、比較するということは本当にいいのかどうかはわかりませんが、少なくとも現時点で野田総理からそのような言、指示はございませんから、教育的観点から客観的な審査を厳密にさせていただいている、こういうことでございます。

下村委員 全くの無責任答弁だというふうに思いますね。高校授業料無償化がスタートして、もう三年目ですよ。これは朝鮮学校の生徒にとってもかわいそうな話だと思いますよ、そういう期待感を持たせたわけですから。

 ところが、二年間も、審査している、調査しているとほっておいて、いまだに、三年たっても出す出さないも明確にできない。こんないいかげんな政府が国際社会から信用されるのか。私はきっぱりと、これは朝鮮学校の学校の内容を内容的に変えない限りは対象にはならないということを日本として明確にすべきときだというふうに思います。

 これは、野田総理から指示があるとかないとかじゃなくて、当事者である平野文部科学大臣が独自に判断すべきであることだということを申し上げたいと思います。

 次に移ります。

 ことしは高校教科書図書採択の年であります。自民党の文部科学部会、それから、自民党の中にある教科書議員連盟合同会議で、ことしの高校教科書についての、教科書記述と文部科学省が検定意見を付したことについて調べました。

 その結果について我々が共通認識として持ったのは、一つは、新しい教育基本法が制定され、学習指導要領も改訂されたが、教科書は我が国と郷土を愛する点では記述が悪くなっており、検定制度も機能しているとは言えないというのが、全般的な、教科書を見渡した中での我々の判断です。

 二つ目に、韓国併合や強制連行の記述は、日本を断罪するトーンがより強くなっているということです。

 三つ目に、中学校教科書から消えた従軍慰安婦記述が高校教科書では使用されているということです。

 四つ目に、近隣諸国への加害記述には検定意見がついていない、一方、加害記述を検定で追加で入れろというふうにされた事例があります。これは、明成社の日本史Bでは、検定の結果、検定意見として、加害記述を追加して入れろというふうに指導されました。マッカーサー証言も削除されました。

 ちなみに、報道で出ていましたが、東京都の教育委員会が独自に、都立高校の日本史必修教材、「江戸から東京へ」という教材があります。この中で、マッカーサー証言や、あるいはハル・ノートのソ連作成説を掲載しています。また、南京記述もさらに改善する予定ですが、これについては文科省が逆の立場から抑えているという実態があります。

 この南京事件は、山川のAという教科書の中では、学者の間では三十万人説は誇大な数字というふうに疑問の記述が付されたものもありますが、全般的には依然否定説は掲載されず、かえって虐殺や暴行の事実が強調された、以前よりもそういう教科書に今回なっているという問題点があります。

 唯一評価されるのは領土問題ですね、尖閣諸島の問題。これは、もともとの各教科書では、尖閣諸島は我が国の固有の領土だと書かれていなかったんですね。書かれていなかったのを、教科書検定で我が国の固有の領土ということを付すようにしてそれを変えたということが、今回の検定意見の我々から見ると唯一の評価する点であります。

 これがなかったら、つまり原文では、どこの教科書も、尖閣諸島については中国とその領有権で争っている、こういうことしか書いていないんですね。ですから、石原都知事が今の政府のていたらくで見ていられないということで、あれを東京都が購入することというふうにしました。

 これは平野官房長官のときにも質問したというふうに思いますが、予算委員会で、本来尖閣諸島は国が領有すべきではないか、国有地とすべきではないかと提案したことがあるんですね。そのときも検討しますだけで終わって、いまだにそのままでありますけれども、本来は国がしっかりとした所有権を持って、管理をするだけでなく実効支配をするということが必要なわけですが、それが全くされていないということで、やむにやまれぬ気持ちがあって石原知事が、東京都が買う、購入するということを決めたというふうなことでありまして、私はこれを評価いたします。

 このことについて、これは中国だけではなくて、日本の子供たちが、原文にあるような教科書記述だったら中国が抗議するのは当然だ、つまり領有権を争っているわけだから、我が国の固有の領土と学校で教わっていないわけですから、中国が非難するのは当然だというふうに恐らく日本の子供たちの多くも思うような内容だったわけですね、もともとの教科書の原文は。それを検定意見で修正させたということについては評価いたしますが、それ以外は、今回、今申し上げたような教科書記述が非常に多くなっているということで、これは非常に問題だというふうに我々は思っております。

 その中で具体的に、例えば従軍慰安婦の問題、これは中学校の教科書でなくなったというのは当然のことだというふうに思っております。

 しかし、高校の教科書で、例えば実教出版というところは、植民地や占領地では、日本軍も設置や監理に関与した慰安所に、朝鮮人を中心に、中国人、インドネシア人、フィリピン人、オランダ人などの多数の女性を、日本軍兵士の性の相手である慰安婦として動員した、あるいは、東京書籍では、日本の植民地や占領地では、朝鮮人や中国人、フィリピン人、オランダ人など、多数の女性が慰安婦に駆り出されたというふうに記述されています。

 平成十九年三月十六日の、これは辻元清美議員の質問主意書に対する答弁書において、強制連行については、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」として、強制連行はなかったことを閣議決定している。

 この政府見解にもかかわらず、通常、人が読めば強制連行と解釈できる記述、つまり、動員したとか、駆り出された、こういう記述、これが検定意見がつかなかったというのはなぜなのか、高校教科書では政府見解に反した記述を行っていても許されるべきことなのか、これについてお聞きしたいと思います。

平野(博)国務大臣 今、下村議員、るる先生のお考え方を含めて御指摘をいただきました。

 御質問の従軍慰安婦問題に関する部分でございますが、教科書検定は、学習指導要領に基づいて、教科書検定審議会の学術的、専門的な審議を経て、申請図書の具体的記述について、その時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らしての欠点、欠陥を指摘するものでございます。

 教科書検定におきましては、国が特定の歴史認識や歴史事実を確定する、こういう立場で行うものではない、こういう認識の部分でございます。

 したがいまして、個別の教科書記述について、こういうことで強制連行だ、こういうことについてどうなんだという部分についてのお答えは、先生、本当に申しわけなく思いますが、差し控えたいと思います。

下村委員 大臣、質問を正確に聞いて答えていただきたいと思うんです。私はそういう質問をしているんじゃないんですよ。

 政府見解と異なった記述があるのではないですか。これは平成十九年だけではなく、その前でも、外務省が、強制連行はなかったというのは国会答弁で何回も実際答弁していることで、別に一回だけの話じゃないんです。つまり、政府の見解として明確にされていることに対して、政府見解と異なった記述が教科書記述でされているということについて、問題ではないかというふうに申し上げているんです。

平野(博)国務大臣 私は、だから、したがいまして、政府見解に反して記述をしている、こういう認識には立っておりません。

下村委員 どうしてですか。私は具体的に質問しているんですよ、具体的に。

 政府見解において、強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったということが明らかになっている中で、これに反する、実教出版においても東京書籍においても、そういう記述であるのではないですかということをお聞きしているんです。

平野(博)国務大臣 したがいまして、先ほど御答弁申し上げましたが、強制連行ということではないというふうに私は理解をいたしました。

下村委員 強制連行という言葉がなくても、動員したとか、駆り出された、つまり、これは日本軍がということですよね。これは、日本軍がそういうふうにしたということは、強制連行ということだと思いますね。これについて看過するという大臣の認識について、全く共有できないし、それ自体が問題だということをまず指摘をしておきたいと思います。

 これは、大臣だけではなく、恐らく民主党の議員の方々も八割、九割は、これから私が述べることについて多分共有されることだというふうに思います。日教組、ごく一部は違うと思いますが、民主党の中でも、日教組と同じ教育の考え方を持っている方々は、そうはおられないと実際思うんですね。

 ところが、この民主党の政策集のインデックスの二〇〇九、これは、皆さんの、議員の方々の意図と違って、やはり日教組の主張がそのままインデックスに入っているんですね、残念ながら。

 この中で「慰安婦問題等に引き続き取り組みます。」というふうに書いてあります。平野文科大臣は、この従軍慰安婦について、強制連行も含め、どういう認識を持っておられるのか、確認をしたいと思います。

平野(博)国務大臣 私自身、従軍慰安婦問題については、政府の一員として、今日までの政府答弁書を尊重する必要がある、こういう認識でございます。

下村委員 いや、尊重って、どういうふうに尊重するんですか。

平野(博)国務大臣 いわゆる従軍慰安婦問題に関しては、強制性の定義、こういうところが今一番言われておりまして、動員というのも強制ではないか、こういう御議論があるわけでございますが、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかったというところは私も共有している、こういうことでございます。

下村委員 日教組は、昨年八月に発表した政策制度要求と提言において、沖縄における集団自決に関する教科書検定意見を撤回するとともに、従軍慰安婦、侵略など加害の視点での教科書の記述をさらに進めるなど、近隣諸国条項を堅持すること、これを方針にしているんですね。これは、従来、日教組が政府や自治体を相手に政策要求を行ってきたそのものであるわけであります。

 まず、神本政務官にお聞きしたいんですが、現在も、この日教組の政治組織である日本民主教育政治連盟、ここに所属されておられますか。

神本大臣政務官 はい、所属しております。

下村委員 現在も所属をされていると。

 現在、どんな役職ですか。

神本大臣政務官 副会長だったと思います。

下村委員 日教組の政治組織である日本民主教育政治連盟の副会長。副会長の立場で、同時に文部科学省の大臣政務官をしているというのは問題だと思いませんか。

神本大臣政務官 日本民主教育政治連盟には議員として参加をしているところでございまして、現在は政務官として、行政府の一員として仕事をしておりますので、そこにそごはないと思っております。

下村委員 私も、政府側に入っていたときがあるんですね。そのときは、民間の役職も含めて全部やめているんですよ。例えば、私は、あしなが育英会という少なくとも政治的には関係ないところの副会長もしていたんですが、そういうところも含めて全部やめているんですね。

 ましてや、あなたは文部科学大臣政務官、つまり、日教組の政治運動の重なる該当委員会ですよね、該当省庁ですよね。それで兼務をしているというのは、やはり問題じゃないですか。

神本大臣政務官 ちょっと私自身、今御指摘のことについては判断がつきかねますので、お答えできません。

下村委員 平野文科大臣、兼務するというのは問題じゃないですか。いかがですか。

平野(博)国務大臣 大臣規範等々におきましてそれぞれのルールをこしらえておりますから、大臣規範にのっとって対処されるものと私は考えるべきだと思います。

下村委員 神本政務官が日教組の政治組織である日本民主教育政治連盟の副会長をしながら政務官をしているということを民主党政権が認めているのであれば、まさに民主党政権の教育政策は日教組政策そのものだというふうに断じざるを得ないと思います。そういう前提でこれから国会の中で議論を追及していくということを申し上げたいと思います。

 神本政務官は、今次の大戦及びそれに至る一連の事変等に係る時期において、旧陸海軍の関与のもとに、女性に対して組織的かつ継続的な性的な行為の強制が行われたとして、強制連行があったことを前提とする戦時性的強制被害者問題解決促進法案の発議者であるというふうに聞いています。慰安婦問題に中心的に携わっておられるわけですね。

 平成十七年の法案提出に際しては、ことしは中学校の教科書採択の年、教科書から慰安婦や強制連行問題の記述が消えてきている、子供たちにしっかりと教えるためにも、国会で議論し、国、政府がきちっと補償する姿勢を示すことが大切だと述べておられます。直近でも、平成二十二年十二月に韓国を訪れて、慰安婦問題について関係者と意見交換を行っておりますね。

 平成十九年に、先ほども申し上げたように、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったという政府見解、これについては、先ほど平野文科大臣も、共有するというふうに答弁されました。神本政務官はどう考えているんですか。

神本大臣政務官 いわゆる慰安婦問題につきましては、先ほど大臣が答弁された政府見解を踏襲するということに加えまして、私も、平成五年八月に出されました河野内閣官房長官談話、こういったものも含めまして、政府見解を踏まえて対処すべきだというふうに考えております。

下村委員 神本さんは、政務官と同時に、日教組の日本民主教育政治連盟の政治組織の副会長でしょう。日教組として運動していることと政務官の今の答弁というのは、相矛盾する話ですよね。それはどういうふうに整理されているんですか。

神本大臣政務官 現在、行政府の一員として、政務官として仕事をしておりますので、日本民主教育政治連盟の副会長の仕事とは峻別をして自分としてはやっているところでございます。

下村委員 いや、だったらけじめをつけるべきじゃないですか。

 これは、少なくとも我々の政権のときは当たり前の話だったと思うんですよね。恐らく、民主党の中でも、ほかの政務三役もそういうふうに整理されていると思いますよ。されていますね、うなずいている方もいらっしゃるから。

 神本さんだけはなぜ日教組の幹部をされながら文科大臣の政務官ということを認めているんですかね。認めているのか、あるいは自分だけそういうふうに判断してやっているのか。そういう注意なり、少なくとも見識だと思うんですね、これは。

 神本さんは、副会長をしながら政務官をしたいというふうに思って、みずからの意思でそういうふうにされているんですか。そうでなかったとしたら、これはけじめをつけるべきじゃないですか。どちらかやめるべきだと思いますよ。

神本大臣政務官 繰り返しになりますけれども、自分としては峻別をして仕事をしているところでございます。

下村委員 そんな答弁は通用しません。

 しかし、これはきょうの本質じゃないので、改めてこの問題は取り上げたいというふうに思います。

 まず、この戦時性的強制被害者問題解決促進法案、これは現在でも神本さんは成立を目指す立場であるのかどうか、お聞きしたいと思います。

神本大臣政務官 これまでの活動の中で、この法案の賛同者、発議者になってきたことは一議員としての活動でございまして、現在は行政府の一員として仕事をしておりますので、これについてのコメントは差し控えたいと思います。

下村委員 いや、コメントを差し控えたいは認めません。だって、あなたは両方兼務すると言ったんでしょう。私は、そちらをやめているんだったら、今そちらの方については休職中だったら、それで認めますよ。今、両方やっているんですから、差し控えますじゃだめです。ちゃんと答えてください。

神本大臣政務官 今、政務官として仕事をさせていただいておりますので、個人としての考えを御答弁することは控えたいと思います。

下村委員 個人のことを聞いているんじゃないんですよ、あなたは日教組の政治組織の副会長なわけですから、日教組の政治組織の副会長で、同時に政務官を兼務されているわけですから。その内容が矛盾しないんですか、どちらかやめるべきじゃないですかと言ったのにもかかわらず、それは両方兼務できると言われたんですから、政策についてもきちっと答えてください。

神本大臣政務官 日本民主教育政治連盟の副会長というのは、改めて今やっていることではなくて、これまでの経緯でやっておりますので、政務官となった今、先生御指摘のことにつきましては、自分の中ではそごがないというふうに考えておりますけれども、御指摘については今後考えたいと思います。

下村委員 それから、慰安婦、強制連行について、教科書で積極的に記述して子供たちに教育すべきだという考え方は持っておられたわけですね。これは今現在どうなんですか。

神本大臣政務官 繰り返しになりますが、政府の一員として、政府の方針に従って行動してまいりたいと思っております。

下村委員 いや、だとしたら、誰にでもわかるように、少なくとも日教組の幹部は、この間は、政務官の間は休職すべきじゃないですか。そうでなかったら、今の話は筋が通らないですよ、だって実際封印されるわけですから。封印しないということですか。どうですか。

神本大臣政務官 先ほど申し上げましたとおり、考えたいと思います。

下村委員 いや、考えたいじゃだめですよ。明確に答えてください。何をいつまでにどう考えるんですか。

神本大臣政務官 政治家としてきちっと考えて判断をしたいと思っております。

下村委員 では、次回の質問のときまでに明らかにしておいていただきたいというふうに思います。

 アメリカのニュージャージー州に設置されたいわゆる従軍慰安婦記念碑や、ソウルの日本大使館前に設置された平和の碑、これについて、自民党ももちろん、この問題については、歴史的に謙虚であるところは謙虚でなければならないと思います。ただ、一方で、国家の名誉のために、事実でないことについては、きちっと説明し、内外に発信する必要があるというふうに思います。

 このアメリカのニュージャージー州に設置された従軍慰安婦記念碑にはこういうふうに書いてあるんですね。

 一九三〇年代から一九四五年までの間、日本帝国政府の軍によって拉致された二十万人以上の女性と少女を記憶にとどめ、慰安婦として知られている彼女たちは、誰も見過ごすべきではない人権の侵害に耐えた、我々はこのような人類に対する罪の恐ろしさを忘れまい、二〇一〇年十月二十三日に寄贈される、ベルゲン郡、郡執行委員会、郡議会及びパリセイズパーク市、こういう記念碑が米国のニュージャージー州に設置されています。

 これについて、神本政務官はどう思われますか。

山口副大臣 済みません、ニュージャージー州のことで。

 二〇一〇年十月二十三日に、米国ニュージャージー州ベルゲン郡のパリセイズパーク市、私自身が問題だと思っているのは、そこの公共図書館の敷地内に記念碑というものが建設されたということで、それは三月八日にニューヨーク総領事館から申し入れを行いました。

 ただ、私自身思いますのは、具体的な申し入れ、あるいは具体的な内容については、余り向こうのペースに乗りたくないなと。下村議員も多分御承知のように、アメリカのほかのところでもこういうものをつくりたいという動きもどうもあるようですから、できるだけそういうものに対してくぎを刺して、そして、この二十万人云々というのはもちろん根拠がないわけです。

 拉致云々という言葉を使っていますけれども、それについては、私たちは河野談話でもってこれを引き継いでやっていくということであるわけですけれども、できるだけ彼らのペースに乗らないように、なおかつ、きちっとくぎを刺していきたいというふうに思っています。

下村委員 そんなひきょうな外務省の姿勢だから、周辺諸国からも甘く見られるし、何の対応も結果的にできない、結果的には追認だと各国から見られるんですよ。

 今ので、その間に、神本政務官、確認されたと思いますが、この内容について、書かれている内容についてどう思われますか。

神本大臣政務官 先生のお話、きちっと私自身が事実を把握しておりませんのでお答えができないんですけれども、お答えができないということで御勘弁願いたいと思います。

下村委員 それでは、平野大臣、ニュージャージー州に設置されたこの記念碑の文章についてどう思われますか。

平野(博)国務大臣 ちょっと私の質問の通告というふうに理解していなかったものですから、承知をいたしておりません。

下村委員 まず、読みますね、大臣。

 一九三〇年代から一九四五年までの間、日本帝国政府の軍によって拉致された二十万人以上の女性と少女を記憶にとどめ、慰安婦として知られている彼女たちは、誰も見過ごすことができない人権の侵害に耐えた、我々はこのような人類に対する罪の恐ろしさを忘れまい、こういう記述なわけですよ。

 この記述についてどう思われますかというふうにお聞きしているんです。

平野(博)国務大臣 その記述について、今委員から御説明を受けましたが、事実なのか、このことはしっかりと私は検証しないといけないと思いますし、やはり、史実という歴史的事実と歴史認識というのは時代とともに変わってまいりますが、今先生御指摘の碑の中にそういう文章があるということですが、それは事実なのかどうかということはしっかり検証しなければ、そのことに対する答弁は私としてはできかねます。

下村委員 では、この数字はどうですか、外務副大臣。

山口副大臣 二十万人については根拠がないというふうに認識しています。

下村委員 平野大臣、それから神本政務官、これは常識ですよ、つまり、根拠がないということは。根拠がないということは常識じゃないですか。これは別に事前に通告しようがしまいが、例えば野田大臣でも、これは予算委員会で根拠がない数字だと言っているんですよ。当たり前の話だと思いますよ。そんなことはあり得ない。

 これに対して、私は、事実を事実として日本政府が明確に反論しなければ、それが世界の中で常識になるということを言っているんですよ。ですから、まずはしっかりとして、文科省の政務三役の方々も勉強していただきたい。

 それから、きょう山口副大臣を呼んだのは、こういうことをきちっと、事実でないということを世界に発信すべきだということを申し上げたいと思ってお呼びしたんですよ。韓国はロビイストがいて、特にここの場所というのは三分の一は韓国系ですから、こういうところが、全国どこでもつくられたわけではなくて、そういうような要因があったことは事実です。

 しかし、これからいろいろなところにつくろうとしているんですね。これがたくさんできれば、今の大臣や政務官も明確に答えられなかったわけですから、ほかの国の人たちが見たら、当然、こういうことがあったんだろうなということを結果的にそういうふうに認識されてしまうことになりかねない。これは、我が国にとって大々国益を損じることになります。それを外務省が発信しないということ自体が、そもそも外務省の役目をみずから放棄しているのと同じですよ。

 これについては、我が国においても、これは日本の立場で各国のそれぞれの言葉を使って事実をきちんと説明する資料を作成して内外に発信する、このことについては明らかにこれは事実に反しているということを含めて我が国の立場を発信する、そういうことを外務省としてしっかりすべきではないですかということがきょうお呼びした趣旨なんですけれども、いかがですか。

山口副大臣 慰安婦問題については、我々は確かに、賠償あるいは請求権の問題については法的には完全に最終的に解決しているという立場です。このことはずっと韓国にも伝えているとおりです。

 この間、李明博大統領と野田首相との間で相当な激論になったときにも、我々はこの立場は全く崩していません。

 その中で、アジア女性基金ということで対応して、政府としてもいろいろと協力を最大限行ってきた、我々は、できるだけこの気持ちが韓国の方々に伝わるようにということは思っているわけですけれども、今、下村議員の御指摘の、どういうふうに資料をつくっているかということについては、特にホームページについて、我々外務省のホームページでは日本語と英語で、そして我々の韓国大使館のホームページ、ソウルにある在韓大使館のホームページでは韓国語で、そして、アジア女性基金は二〇〇七年に既に解散はしているわけですけれども、あえて解散したということも明記しながらホームページを残して、そこでは、日英でもって、我々自身の立場、やってきたことというものをできるだけわかっていただけるようにということでしている次第です。

 ただ、おっしゃっているように、下村議員もよく御存じのとおり、韓国系の人というのはどんどんアメリカでふえていて、このパリセイズパーク市ですか、御指摘のように三六%が韓国系の人で、その中で議会でいろいろ決められた云々というのも非常につらいところなんですけれども、だけれども、そういうことで間違った認識が広まらないようにという趣旨で、私たちもそういう数字の問題も含めて、ニューヨーク総領事館、総領事からきちっと物を申し上げている。その中で、我々自身としても、こういう間違った認識が広まらないようにというふうに思っています。

 なお、国際会議の場では、例えば人権理事会、これはジュネーブにあるものですけれども、ことしの二月にも、韓国あるいは北朝鮮の方からいろいろと発言があった際に、私たちの立場はきちっと伝えています。

下村委員 これは、明らかに歴史的な事実でないことをそのまま反論しなければ、それはまさにプロパガンダとして、日本というのはそういう国なんだということを世界の人たちに認識されることになるわけですから、これは明確に発信していくことが外務省の役目ですから、やっていただきたいと思います。

 そして、先ほどの教科書検定に戻りますが、今のニュージャージー州については、教科書の中で書かれているわけでありませんが、ほっておいたらいずれ書かれるかもしれないという危惧があって申し上げたわけですけれども、いずれにしても、平野文科大臣、この教科書検定が十分に機能していると言えないのではないかと私は思っています。この検定制度について抜本的に見直す必要があるのではないかというふうに思っていますが、大臣の認識をお伺いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 委員の御意見は御意見として承っておきたいと思いますが、教科書検定制度というのは、教科書の著作、編集を民間に委ねる、こういうことが一つの大きな背景であります。

 発行者の創意工夫を期待する。そういう中にあって、文部大臣が、教科用図書の検定調査審議会の専門的審議に基づいて、教科書として適切かどうかを決定する。こういうプロセスでございます。

 具体的には、やはり指導要領に基づいて、申請図書の具体的記述について、客観的な学問的成果、適切な資料等に照らして欠陥を指摘するものでございます。したがって、現時点で文科省としては、検定制度の適切な実施に努めなきゃならない、こういうふうに思っています。

 しかし、今、下村先生のるるの御指摘等々を考えますと、検定のあり方ということは本当にどうなのか、こういう御指摘に対しては、私は、一つの大きな知見に基づく御意見として受けとめておきたいと思います。

下村委員 このことについては私は韓国を見習うべきだというふうに思っておりまして、つまり、韓国は歴史については、検定からこれはもう国史にして、国定教科書にしているわけですね。しっかりとした歴史認識を子供たちにきちっと正しく韓国の立場で教えるということについては、我が国も大いに参考にすべきだというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなってしまったので、質問が相当残ってしまっているんですが、一つだけ、九月入学について。

 これは自民党でも、前の参議院選挙のときから九月入学について提案をしておりました。東大が最終報告をしたことによって、今、七つある旧帝国大学を含む、早稲田、慶応等十一有力大学との間で、秋入学の実施を協議する組織をつくって具体的に進めているということでありまして、私は一気にこれを進めるべきだというふうに思っております。

 あわせて、我々自民党では、三月高校卒業、その間の六カ月間、ギャップタームですけれども、この間に、海外青年活動や、福祉、ボランティア、あるいは自衛隊の体験入隊等、できたら労役的義務的なものを選択制ですけれども課したりしながら、若者たちに、受け身ではなく積極的に、前向きに生きる姿勢を身につけてもらう、みずから力強く前向きに生きる、そういうギャップタームをいろいろな体験の中から経験させるということもあわせてすべきではないかというふうに思っておりますが、これについての見解をお聞きしたいと思います。

平野(博)国務大臣 大学の九月入学、こういうことで、東京大学の総長の方からそういう御提起があり、五年をめどに実施をする、こういうことでございました。私どもとしても、一つの大きなグローバルスタンダードとして、また、グローバルな人材を輩出していく、こういう観点から、これは非常に大事な考え方だと思っておりまして、私どもとしては積極的に支援をしてまいりたい、こういうことが第一点でございます。

 そういう中にありまして、委員御指摘のギャップターム、こういうことについて、いろいろな問題が出てまいります。社会的受け皿の問題、その間の身分の問題等々、実現をするについてはどういう課題があるか、こういうことでございまして、委員御指摘のように、ギャップタームについてはどういうやり方が一番いいのかな、こういうことで今省内でも検証しておりまして、委員御指摘の海外での学習あるいは社会貢献、勤労体験等々の部分を含めて、そういうところに充実を期する、こういう観点でのギャップタームをどう埋めていくか、こういうことも議論、検討中でございます。

 ただし、これは、いろいろな関係省庁並びに経済界等々の御理解、御協力がなければならぬと思っておりますから、十分に関係者との連携を踏まえて、ギャップタームのあり方を前向きに検討したい、かように思っております。

下村委員 時間が来ましたので、きょうは終わりにしたいと思いますが、これは、大学の入学時期をずらすだけの問題じゃなくて、本質的に、今の日本の教育システムでは、次代の子供たちのたくましい育成はもう限界に来ているという中で、ドラスチックな改革が今求められていると思います。

 政府の方でも、六・三・三制の見直しも含めこれから検討するということでもありますし、大学入学試験のあり方そのものもこれから大きく変えていかなければ、国際社会へも通用しない。受験勉強だけした子供が有名大学に入ったところで、世界で通用する基準とは全く違いますから、そういうことまで含めた抜本的な改革をしていく必要があるかと思いますが、きょうは時間になりましたので、また次回に、提案と、また見解をお聞きしたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

石毛委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

石毛委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 四月に入り、新年度、子供たちが胸をときめかせながら学校に入ってきております。ところが、小学校六年を修了いたします孫娘は、半年ぐらい前から、中学生になるのが嫌だ嫌だと。何が嫌なのと言いましたら、柔道をしなければいけないのが嫌なんだ、もうそれを考えると憂うつで、中学生になりたくない、あれは危険だと。

 そうしたら、その孫娘の母親も、私の娘でございますが、そうだと。授業中も、部活においても、一番事故が多いのが柔道である。そしてまた、柔道の危ないところは、頭を打つ、だから後遺症もあるんだ。そのようなものを何で中学校で取り入れたのか。そんなに嫌だったら、それが原因で不登校になったら困るから、もう危険を伴う体育は休んでもいいよと言っているぐらいでございまして、これは、不登校にならないためにそうやって、ちょっと子供の心を緩和するために言っているのではありますけれども、私は、ある意味ではとても心配をいたしております。

 武道を学習指導要領の中に入れるということは、私は極めてよいとは思っておりますけれども、ちょっとその導入の仕方が、現場を余りにも知らなかったのではないかなというふうに危惧いたしております。

 まず簡潔に、どういう経過でこれを導入なさったのかを、これは当然に中教審の審議を経てだと思いますけれども、御説明いただけますでしょうか。スポーツ担当は地元の奥村副大臣、詳細、おわかりいただけますか。よろしくお願いいたします。

奥村副大臣 お答えをいたします。

 この経過等につきましては、もう委員が副大臣等をしておられたときの流れでございますので、私以上に御存じだと思っておるんです。

 御案内のとおり、平成十八年の十二月の教育基本法改正によりまして、教育の目標として伝統と文化を尊重することが想定されて、そして平成二十年の一月、中央教育審議会におきまして、武道の学習を通じて我が国固有の伝統と文化をより一層深めていくということで改善され、答申をなされたものだというように承知をしているところでございます。

 そのことからいたしまして、平成二十年の三月に学習指導要領を改正されまして、武道については、武道またはダンスとして選択、実施をして、中学生、一年、二年を対象とし、必修として進めるという経過があったわけでございます。

池坊委員 私も、日本の伝統文化の一つである生け花の発展、育成に努めてまいりましたので、伝統文化が次世代に受け渡されていくことを心より喜んではおります。

 今副大臣がおっしゃったように、日本の伝統と文化に触れ、礼儀作法や相手への思いやりの心を育むことを目的としていらっしゃると聞いておりますが、新しい学習指導要領解説では、わざができる楽しさや喜びを味わい、基本となるわざを用いて、投げたり抑えたりするなどの攻防を展開することも盛り込まれております。

 先ほど大臣は、わざよりも、技術よりも心だよとおっしゃいましたが、心よりもわざの習得に重きを置いているのではないかと、私はちょっと心配になってまいります。心を会得するのだって時間がかかります。技術と両方を習得するというのは、じっくりと時間をかけてしなければできないものなんですよ。

 短い期間ですぐやろうと思ったら保護者が不安になるのも当たり前で、むしろ私は、武道の必修であるならば、武道というのはどういうものがあるのか。剣道、柔道、なぎなた、合気道、空手、たくさんの武道があるわけです。今の子供たちは、なぎなた、どんなの、合気道、わからないという子供たちがいるのですから、体育でそういうことを教えて、その後で個々に、部活だとか、ドイツのように体育は地域でやるということの方がよかったのではないかというふうに私は思っております。

 安全面や指導面の育成が極めて大切だと思います。これはきっちりと準備を進めるべきではなかったかと思っておりますけれども、その点において、副大臣、いかがですか。

奥村副大臣 仰せのとおり、やはり基本的な安全を確保するということは当然でございます。

 ですから、時間をかけてやっていかなければなりませんが、一応、三年間、モデル校をつくりまして進めてまいりました。そしてまた、そのことによりまして、いろいろアンケートもとりまして進めてきました。大体約七割の学校等がいろいろな研修に理解もし、派遣もし、そしてそれを実践に結びつけていくというようにしております。

 ただ、今一番大事なことは、指導をするのにそれを教員が全て心得ているかというと、なかなか難しい問題でありますから、部外者、特に今おっしゃったように、柔道等いろいろ、なぎなたもそうでございますが、日本の今の武道には、九種目といいますか、九競技団体があるわけでございます。その流れの中でいろいろな段位を持った方がおられます。そういう方々に指導していただいて、そして位置づけをしっかりしていく。

 これは私も、この問題につきましていろいろ担当者と話をしている中には、やはり、この安全確保、そして指導していただくには、市町村の教育委員会がしっかりとした指導指針を持っていただくということが一番大事だと思っておりますので、市町村の教育委員会と、部外者の指導者を養成していただいて、そしてそこでしっかり連携をとっていただくということが大事だと思っております。

 今ドイツのお話もなされましたが、以前、馳委員とともにドイツへ行かせていただいたときには、地域スポーツ、そして指導者との連携というのを先進的にやっておられるところも拝見してきたところでございますが、今御指摘いただいたように、まず安全を確保していく、そして教員の指導をしっかり進められるように連携をとっていくということが大事だと思っておりますので、また御指摘をいただければというように思っているところでございます。

池坊委員 武道のわざというのは時間がかかるんですよ。すぐにわざが身につくんだったら、誰も武道を一生かけてなんてやらないんですよ。それを短絡的にちょっとだけ子供に教えようというところに、私は、教え方の何か根本的な誤りがあるのではないかなという気がしております。

 二月、NHKの番組「クローズアップ現代」でこの問題を取り上げていました。日本の三倍近い人口がフランスではいるんですね、フランスでは指導者は国家資格を取らなければ柔道を教えることはできないんです。それほど高い地位があるんです。資格を得るためには少なくとも三百八十時間のカリキュラムを受けます。生理学や救急救命学なども学んで、最低二段の段位も必要なんです。

 つまり、安全面で危険を伴うからこそ、奥が深いからこそ、ちゃんと指導者を育成し、そして次の世代に教えていかなければならないというようなことを、つまり柔道の原点をしっかりとフランスの人が把握しているからこそ、フランスの、人口がふえたのではないかと私は思っております。

 電通の、金メダルはどこがとるかという国民の意識調査の中で、当然のごとくに一位はなでしこジャパンでした。北島さんとかいろいろあって、柔道というのは上位に出てこないんですね。

 私、すごく残念に思いましたのは、柔道では絶対金メダルをとるんですよ。とるにもかかわらず、何か、今まで大切だと日本人が思っていた柔道が、むしろ、こんな、中学校で普及させようと思うことが、かえって私は裏目に出てしまったのではないかなという気がいたしまして、伝統文化に携わっている人間としては、これは伝統文化というよりは武道の、スポーツ、競技の方だとは思いますけれども、これが別の方向に行ってしまうのではないかという気がしているんですね。伝統文化の武道と位置づけているならば、もっと位置づけの仕方が違うのではないかと私は思います。

 中学校では相撲をとるところもあるんですね。学習指導要領では、男女の区別というのは書いてございません。ですから、女の子にも相撲をさせるんですよ。どうやって、しこを踏むというのは、やはり股関節が丈夫になっていいかとは思いますけれども、ショートパンツの後に、まわしをして、それで相撲をとるのか。そこに通っている女性生徒は、もうこんなことをするのは本当に嫌だわ、何で私たちがお相撲をしなきゃいけないのと。皆様、女性の方、お相撲をどう思われますか。嫌じゃないですか。私だったら、やはり嫌だと思うんですよ。

 ですから、何でもかんでも男女が一緒にやればいい、それは私はおかしいように思うんです。この辺で、日本の伝統文化とおっしゃるならば、もっとしっかりと把握し、幅が広く奥深いからこそ伝統文化なんだよという認識の中に立って武道というものも捉えていただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 先生も伝統文化の指導者として長くやっておられますから、今回、特に柔道とか空手とかいろいろ武道がございますが、私は、武道の訓練をする前に、やはり礼節をしっかりとする、こういうことから入っていくべきだ、こういうふうに思っていますし、今回の武道の必修という中にあっても、まずは礼儀から、礼に始まって礼に終わる、こういうところから入っていく部分だと認識をいたしております。

 特に、柔道は、確かにクラブ活動等々においては事故が起こっているというケースがございますが、柔道というのは、特に危険からみずからを守るという、この基本の原点に返っての、例えば受け身でありますとか、ここを、しっかりと基礎的なところを学べば、その危険性というのは格段に減っていくものだ、私はこう思っております。

 そのためにもしっかりとした指導者というのは先生御指摘のとおりだと思っていますので、私は、指導者がしっかりいるということを前提にして教育の中に取り入れていただきたい、いなければ、でき上がるまでやるべきでない、こういうふうに思っております。

池坊委員 今大臣が、礼節を知ると。私は、スポーツ競技も含めて、伝統文化のすばらしさというのは、奥行きがあり、さまざまな型に入り、型から出るんですよ。一旦は型を学ぶ、技術を学ぶ。でも、そこから新たな自分の世界を繰り広げていく。そして、それによって思いやりとか礼節を知ることができる。

 私、「美しい日本のしきたり」という本を、ちょっとPRになってしまいますけれども、今度出すんですけれども、日本には次世代に残しておきたいすばらしい習慣だとかしきたり、これを失っては国際社会の中で生きることができないと思います。だからこそ、私は、武道を入れたことによって、武道が嫌いになるとか偏見を持つようなことがないような指導をぜひぜひこの機会にやっていただきたい。それでないと本末転倒になってしまって、お相撲、嫌だわなんということになったら逆効果ではないかというふうに心配いたしております。

 中学校においては、ダンスの必修化というのもございます。創作ダンス、フォークダンス、現代的なリズムのダンスから選択することとなっておりますが、文部科学省の調査によると、六六・三%の学校がヒップホップやストリートダンスなどの現代的なリズムのダンスを選択するようです。

 ダンスというのは、今子供たちに人気があって、衣料品業界でも、ダンスウエアやシューズというのはすごく売れ行きがいいんだそうですね。子供の習い事でも、ヒップホップなどのダンス教室に通う子供が多いんだそうです。

 これを学校でやるということは、私は、大変いろいろな、体を全部使いますから、和気あいあいと、いいのではないかと思いますが、教員に対する研修や、授業における外部講師による指導というのが必要になってくると思うんです。

 私、教員の方も大変負担が大きくなると思うんですよ。突然に、現代的なリズムのダンスをしましょうと言われても、それはどういうダンスなのか。泥縄式に習いに行くということになってしまいます。

 文部科学省としては、そのことに対してしっかりとした対応をとっていらっしゃるのかどうかを、ちょっと伺いたいと思います。副大臣。

奥村副大臣 お答えいたします。

 前段に御質問ありましたように、本当に、日本の武道というもの、その基本、先ほど大臣がお答えになられましたように、やはり心技体という一つの心をしっかりと身につけていくということが、日本の武道を必修にしていく大きな意義があると私は思っておりますので、ぜひその点をしっかり生徒や児童たちに教えていけるように、その体制をつくり上げていきたいというように思っております。

 そしてまた、今ダンスのお話がございました。御質問いただくということで、私もいろいろ聞いてみたところ、やはり、今おっしゃったように、創作ダンス、あるいはフォークダンス、現代的なリズムのダンス、この中から一つを選ぶということでございますから、体を動かして、エアロビクスじゃないんですけれども、そういうようにして、阿波踊りにしても、あるいはまた、花笠音頭等につきましては、こういうことはフォークダンスの中に取り入れて、いろいろなまた触れ合いをしていくということについては、一つの大きな意義があるというように思っております。

 ですからこれも、先ほどの武道と同じように、やはり外部の指導者の方々のそうしたものをしっかり受けとめて、そして、本当に子供たち、生徒たちがしっかりそれを自分のものにしていく。そして、心身ともに明るい学校生活が送れるように、そして大人になってもまたそれを、フォークダンスなんかを地域あるいはまた御家族やいろいろなところでともにできるような、そういう体制といいますか、環境をつくり出すようなことにダンスの必修もなっていけばいいなと思っておりますので、またいろいろと御指導いただいて、しっかりと、これも必修科目の一つとして指導体制を整えていきたいというように思っているところでございます。

池坊委員 ぜひ、これからきめ細やかな御指導をいただきたいと思います。

 学生にとって、子供たちにとって、学校というのはかけがえなく大切なところです。そして、その中の授業というのは極めて重要な位置を占めておりますので、私は、現場を知るということが必要だと思っております。

 現場の細かい状況をちょっと聞こうと思って久保スポーツ局長を呼びましたけれども、時間がなくなったので、ごめんなさい、次回に回します。でも、いい体育授業ができますことを心より願っております。

 では、中学校の体育から、今度は秋入学、大学生に移りたいと思います。

 東京大学は、学部の入学時期を春から秋に全面的に移行し、グローバルリーダーを育成する旨の提言を発表いたしました。

 秋入学に関しましては、これまでも、昭和六十二年に臨時教育審議会、秋入学制への移行という提言がされて、それ以後も、教育改革国民会議や政府の教育再生会議においても検討がされてきました。

 平成十九年に学校教育法施行規則が改正されて、入学時期というのは学長の判断で決められるようになりました。文部科学省の平成二十一年度時点の調査によれば、学部段階での四月以外の入学制度があるのが二百四十五大学あり、実際に学生を募集しているのは百十五大学で、入学者は二千二百二十六人。大学院で制度があるのは二百八十六大学、二百九大学で募集して、五千五百四十七人が入学している、これが現状なんですね。

 私どもも、東大の副学長をお招きして、どのような理念でこれを秋入学にするのかと伺いました。けれども、私は納得はできかねました。国際化というだけであって、その背景の深い理念は何であるのかというのが、いま一つ私にはわからなかったからです。

 ついこの間の三月九日の国家戦略会議で、野田総理は、東大などの秋入学移行について、グローバル人材の育成の観点から評価する旨のコメントを出されていらっしゃいました。藤村内閣官房長官も、各省庁に課題などについて検討するように指示されたというふうに聞いておりますが、政府はどの程度秋入学への移行の意義や必要性を感じているのだろうかと私は疑問を感じているんです。

 国際化、国際化と、九月に入学させたら国際化になるんでしょうか。私は、何かちょっと、まず最初にするべきことは、九月の秋入学というよりは、グランドデザインをしっかりと示して、そのグランドデザインのもとで秋入学が必要ですよということにならなければならないと思います。理念というのが私には全然見えてまいりません。しっかりとその理念をお示しにならなければいけないと思いますが、これに対しては、文部科学大臣、どのようにお考えでいらっしゃいますか。

平野(博)国務大臣 大学入学時期の弾力化についての経過は、今先生からるる御説明、御指摘がございました。そういう中にあって、秋入学の理念、こういうことでございますが、秋入学ありきという考え方はとるべきではない、私はかように思っています。

 東京大学の秋入学の検討については、大学のグローバル化の動きに対応することのみならず、入学時期の見直しを一つの契機として、教育のあり方を根本から見直す総合的な教育改革という視点で見ていくべきものだ、また、そういう理念のもとに進められていると私は認識をいたしております。東京大学のこのような取り組みは、世界で活躍するグローバル人材の育成ということも一つの部分があろうと思いますし、また、今日的な必要な大学改革に大きなインパクトは与える、こういうことで評価をいたしております。日本人学生の派遣、留学生の受け入れなど、国際化の促進に資するもの、あるいは社会の多様性を生み出すもの、こういう効果を期待いたしております。

 文部科学省としては、大学の多様性ということを尊重しつつ、東京大学を初めとする各大学の主体的な検討を見守りながら、秋入学の実施を実効性のあるものにしていくために、いろいろな諸課題、検討を今抽出いたしているところでございます。

 私どもとしましても、一つの大きな改革の切り口として、この秋入学につきましての必要な支援はしてまいりたい、かように考えています。

池坊委員 留学生を日本に引き寄せる、それは何も九月に入学したから引き寄せられるわけではないのです。制度の問題ではなくて、私は内容の問題だというふうに申し上げたいと思います。

 この秋入学というのは大変大切な問題ですので、委員長、ぜひ、これは参考人をお呼びして、それは東大の総長であったり京大の総長であったり、あるいはまた経済界の方々、いろいろな方々をお招きして、私は質疑をしたいと思います。ここにいらっしゃる方々も質疑をしたいと思っていらっしゃる方があると思いますので、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。

石毛委員長 理事会で協議をしていただきます。

池坊委員 大学教育を充実させることなくして、秋入学だけ入れてもだめですということを今申し上げましたけれども、中教審の大学教育部会に専門家が提出した調査結果では、日本の大学生の勉強時間は、何と、皆様、どれぐらいだとお思いですか。授業を含めて、一日当たり四・六時間なんですね。本来必要とされる一日八時間程度の勉強時間、その半分でしかないんですよ。

 これは自主的な予習とか復習が少ないためで、外国に留学なさった方々が、本当にこれほど勉強したことはなかった、それぐらい勉強しなければついていかれなかったと。本当に勉強したい学生は、大学に入って、ただ一方的な講義を受けるだけで、不完全燃焼なんだ、ディベートなんかがないし、何か大学に行っていてもつまらないというのが、本当に勉強したいと思っている子供たちの実感なんですね。

 そういうことに応えることなくしては、私は、これからの大学を充実したものにしていくことはできないと思います。留学生だけ来たらいいわけじゃないんですよ。優秀な外国人を受け入れなければならないんです。そのためには、優秀な大学内容でなければならないんです。

 ですから、これは、例えば奨学金のこともあります。それから、寄宿舎の充実及び事務の改革、講義の国際的な標準化や単位互換の整備も必要ではないかと私は思います。研究や講義も魅力あるものにしていかなければなりません。

 このような本質的な問題に対して、本当に取り組んでいらっしゃるのかどうかを私は大臣に伺いたいということを申し上げたいんです。つまり、こういうことの方が先なのではないでしょうかということを申し上げたいのですが、いかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 池坊先生も十分承知をされて、提言だというふうに私は思っております。

 特に、今後の社会改革、さらには、その大きな過程の中に大学改革というものがあると思っています。その意味は、やはり、この日本の将来を担うすばらしい人材をどういうふうに輩出していくか、その輩出する過程の中にあって、世界の国々と対々にしっかりと対応でき得るグローバル人材、これをグローバル人材と呼んでおりますが、そういう人材をどういうふうに輩出していくか、こういうことだと思っております。

 そういう意味では、グローバル化や少子高齢化という我が国の経済社会をめぐる環境が大きく変化をしている中でございます。そういう中で、社会で活躍する人材の育成、研究を通じたイノベーションという、このイノベーションの創出、このことを含めた知の拠点としての大学でなければならない、こういうふうに思います。

 国民や社会の期待に応えられない大学は大学にならない、私はこういうふうに思いますので、応えられる大学改革を進めていくこと、すなわち教育政策の中で最重要課題のテーマである、こういうことを認識しておりますので、先生がおっしゃるように、質をいかに高めていくかということ、逆にそれは、大学の環境、教授陣の充実を含めてしっかりとやっていかなきゃならない、こういうふうに思っております。

池坊委員 秋入学の提言というのがあったればこそ、大学が今のままでいいのか、こんな、学生が四時間ぐらい勉強するだけの大学であっていいのかというような問題提起も起こってくるわけですから、そういう意味では、提言がなされたことには意味がなかったわけではないというふうに私は捉えておりますけれども、これで終わらせてしまったならば、本当に、日本の大学はさらにさらに国際的に評価されない学校になってしまうと思います。

 次は、この秋入学を導入するに当たってのギャップタームの位置づけについて伺いたいと思います。

 高校を卒業いたしまして大学入学まで、半年間あるんですね。私は、東大の副学長に伺いました、その半年間、では学生証を出されるんですかと。それはまだ何か曖昧な御返事でした。学生証がなかったら学割はないですよ、奨学金はどうされるんですかと。

 東大の報告書は、研究現場の体験、語学留学、ボランティアなどの社会貢献活動に充てることを想定しているらしいんですけれども、この語学留学、一体誰がお金を出すんですか、どういう経済的な裏づけでそれをするのでしょうか。そういうような具体的なプランなくして、私は、このギャップタームは無為に過ごしてしまうことになるのではないかと思っております。

 文部科学省は、このギャップタームの位置づけをどのように考えていらっしゃるのでしょうか。そして、多くの学生がギャップタームを有意義に過ごすためにどのような環境及び支援施策が必要と考えていらっしゃるかを伺いたいと思います。

平野(博)国務大臣 委員御指摘のように、九月入学、秋入学にすることによって、少なくとも半年間のギャップタームという期間があるわけでございます。

 したがいまして、これは当然、ただ単に過ごすということではなくて、この半年間の活用が非常に大事になってくるわけであります。海外の学習活動、社会貢献、勤労体験等々いろいろな体験活動をどういう立場でやっていくのか、こういうことも非常に重要になってくるわけであります。

 若者の多様な体験の機会をいかに多く持ってもらう、また、先生が師匠でございます、指導者でありますお花を学ぶことによって文化を学んでいく、こういう機会も、どういう立場で、どういう身分で学んでいくのか。このことにつきましては、私ども、どういう立場で支援ができ得るかということを、関係省庁さらには経済界とも十分連携をとりながら具体的な対応を進めていく、こういうことで今検証中でございます。

池坊委員 このギャップタームの間に生け花を習ってくれる子供たちがふえたら私はとても幸せですが、でもなかなかそういう状況にはないような気がいたします。なぜならば、今の子供たち、私自身もそうだったかもしれませんけれども、十八歳ぐらいの子供というのはやはり安易な方向に流れていってしまうんですね。

 ボランティアというのは自発的にするからボランティアなんだ、強制したらボランティアにならないよと言われるんですが、私は、今の子供って、さまざまなメニューがありますときに、嫌だよと言ってもそれを入り口まで連れていってあげないと、なかなか中に入らないんですよ。入りましたら、ああ、こういう社会貢献っていいんだなとか、こういう医療に携わりたいとか、ヤンキーみたいな男の子が、ああ、介護ってとてもいいんだと目覚めてくれたり、いろいろなことがございますので、私は、具体的なメニューをぜひつくる必要があるのではないかと思います。

 現在でも、AO入試とか推薦入試というのがございますね。これは秋には受験が終わってしまうんです。そういう高校生は、まだ高校に在学しているのでちょっと秋入学とは違うんですけれども、ギャップタームとは少し違いますけれども、大学入学までに半年間ほど猶予があるんですね。もしもこれが秋入学になったら、もっと猶予ができてしまいます。

 私は、この数カ月を高校生がどのように過ごしているか、これをしっかりと把握する必要もあるんじゃないか、これを把握いたしますと、次にギャップタームを考えるときの参考になるのではないかと思うんです。

 今のところ、AO入試をした、あるいは推薦入試をした子供たちが大学の入学を迎えるまでの間にどのような日々を過ごしているか、こういうような調査は文部科学省ではしていらっしゃらなかったと思うんですね。ぜひ私は、この生活意識調査というのをやっていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 確かに、AO入試、推薦入試の方々については、より時間軸で時間がある、こういうふうに思います。現実、学生がどういう生活の中でやっておられるか、このことについては、当該の高校生を含めてしっかり実態調査を、また高校生の意見をお聞きしながら、ギャップタームの具体的な検討の一助にしていきたい、かように思っております。

池坊委員 東大では三年から五年の間に移行するというふうに言っておられました。私は、春入学と秋入学があっていいんじゃないかというふうに思ったんですね。そうなるのかと思ってちょっと希望をつないだんです。

 なぜかと申しますと、春の受験のときに肺炎を突然起こしてしまって受験ができなかった、すごい優秀な子供だけれども。その子は一年間待たなければいけないというのは非常につらいんですよね。それから、春の試験は失敗してしまったけれども、集中して半年間勉強したら秋入学では試験に合格できるという子供もあります。私は常日ごろ選択肢の多い社会の方が充実した社会だと思っておりますので、子供にはいろいろな選択肢を与えてあげたいというふうに考えておりますので、春入学とともに秋入学という両輪があったらいいなというふうに考えております。

 その中にありまして、現行制度をうまく活用するということはできないのかなというふうな感じもするんですね。早稲田大学は一年を四学期に分けるクオーター制の導入を考えているという報道がございました。約二カ月で終える短期集中型の授業をふやして、留学生の受け入れや日本人学生の短期留学をしやすくする狙いだそうです。

 このような形で、まだ三年、五年というのはすごく長いんですよね。五年先だといったら、大学に入るのは、今中学二年じゃないと大学に入れません。そういうことを考えますと、日々、もう十年一昔は、今、五年が一昔だと思いますから、国際化を推進するときにいろいろな制度、いろいろな仕組みを導入することも私は必要じゃないかと思っておりますが、それに対して大臣はいかがお考えでしょうか。

平野(博)国務大臣 よく、一昔前はドッグイヤー、こういう言葉がございました。非常に一年が速い、時代の変化が速いということを言われたわけですが。特に、早稲田大学のクオーター制という制度でいきますと、ある意味では、入学、卒業の機会も年に四回設ける、こういう観点から、ギャップタームは生じない、こういうことでもございます。

 したがいまして、私は学期制のあり方についての部分、これは春入学、秋入学等々ありますから、先生御指摘のように、いかに学生にとって一番いいか、あるいは学ぶ環境にとって一番いい、こんな制度をやはり、これはあくまでもツールですから、導入して、その結果として、大きな、すばらしい人材をどう輩出していくかということの方が大事だと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

池坊委員 大変心強い御答弁をいただきました。大切なことは、子供たちの心に宿っているその可能性を、先を歩んでいる人間がいかに引き出すことができるかということだと思います。そういう意味でも、私は子供たちへの良好な教育環境をつくっていきたいと思っておりますので、ともに頑張っていきたいと思います。

 ありがとうございました。

石毛委員長 次に、馳浩さん。

馳委員 自由民主党の馳浩です。

 きょうは四月十八日です。何の日か御存じですか。今質問をなさいました池坊保子さんの古希の誕生日です。今夜はお祝いをして、パーティーもあるようでございまして、心からお祝いを申し上げたいと思います。

 そこで、高井美穂副大臣、最近政治資金パーティーを開催しましたか。

高井副大臣 先日の四月十五日に開催をいたしました。

馳委員 会費は幾らでしたか。

高井副大臣 一万円でございます。

馳委員 和服姿であでやかにお出迎えをされたようでありますが、これは大臣規範に抵触しないのでしょうか。

高井副大臣 今回の政治資金パーティーは、実は昨年来より準備をして、ことし一月から一万円の会費でチケットを販売して、衆議院議員高井美穂として御案内をしてきました。

 そして、パーティー開催九日前になります、私にとって青天のへきれきでございましたが、急遽文部科学副大臣ということに就任をすることになりまして、大臣規範を早速内閣官房から取り寄せて調べました。

 そして、その中に、国民の疑惑を招きかねないような大規模なものの開催は自粛するという大臣規範、それに照らし合わせて、私としては、今回の政治資金パーティーがこの大臣規範に抵触するものではないと考えまして、開催をいたしました。

馳委員 総務省の選挙部長に伺います。

 地元選挙区内の有権者に政治資金パーティーの無料招待券を送付したら、公職選挙法上、政治資金規正法上、どのような罰則がありますか。

田口政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省としては、個別の事案については具体の事実関係を承知する立場にございませんので、お答えを差し控えさせていただきたいと存じますが、その上で、一般論として申し上げますと、公職選挙法第百九十九条の五第一項におきまして、後援団体は、当該選挙区内にある者に対して、寄附をしてはいけない旨の規定がございます。そこで言う寄附とは、同法の百七十九条第二項において、金銭、物品その他の財産上の利益の供与等で、党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいうとされているところでございます。

 したがいまして、一般論として申し上げますと、招待が来賓として出席してもらう対価としての債務の履行と認められる場合におきましては、寄附に該当しないものと考えられるところでございます。

 いずれにいたしましても、個別の事案が法に抵触するか否かにつきましては、具体の事実に即して判断されるべきものでございまして、総務省としてはお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

馳委員 高井副大臣、入場券は何枚販売をし、来場者は何名でしたか。

高井副大臣 今集計中でございますが、地元に聞いたところ、出席者は実質七百名程度ということでございました。

馳委員 入場券は何枚販売しましたか。

高井副大臣 済みません、まだ詳細、ちょっと確認をしておりませんが、集計中でございます。

馳委員 委員会に報告を求めます、委員長。

石毛委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議をいたします。

馳委員 地元有権者に無料招待券を送付しましたか。

 よくこういう政治資金パーティーのときには、一万円とか二万円を書いて、上からちょっと線を引いて御招待、こういう形をとる慣例があるんですが、その対象者が地元有権者であった場合にはいかがかなという問題になるんですね。

 こういう招待券を送付しましたか。

高井副大臣 地元支持者には無料招待券は送付しておりません。ただ、知事また首長さん、来賓として御挨拶または御紹介をしていただく方は、招待券送付というか御案内をさせていただきました。

馳委員 改めて私の方にも内部告発が来ておりますので、事実関係を確認した上で、また質問をしたいと思います。

 では、お口直しの質問に移りたいと思いますが、平野大臣、三月二日、三日、東京・恵比寿ガーデンプレイス周辺で開催をされましたスポーツオブハートのイベントに、開会式に御出席をいただき、開会の御挨拶をいただいた。当委員会から宮本岳志委員も参加をされました。

 パラリンピアンと文化のコラボイベントということで、国民に対する啓発、ロンドン・オリンピックもございますから、幾ばくかの寄附をいただいて、支援もしようじゃないか、こういうイベントでありまして、もちろん我々国会議員も何人も応援をいたしておりました。

 出席をされた大臣の見解を伺います。

平野(博)国務大臣 委員御指摘のように、三月の三日、恵比寿のガーデンプレイスにおきまして、パラリンピアンズと文化のコラボレーションイベントということで、スポーツオブハートの開会式が開催され、私も出席をいたしました。

 特に、私、常々、健常者と障害者というのは一緒の社会なんだという思いがあるものですから、スポーツの分野におきましても、ぜひ、いわゆるオリンピック、パラリンピック等々含めて、こういう二つの競技団体がありますが、本来これは一つのスポーツ団体としてやっていくべきだ、こういう理想を私は持っておりまして、できるだけ、障害を持っている方々が一生懸命アスリートとして頑張っておられる、これを支援したい、こんな思いで激励に駆けつけたわけでございます。

馳委員 先般の委員会でお尋ねしたときに、おじいさんでしたか、全盲ということで、その大変さを家族として身にしみながら成長された平野大臣でありますから、率先してこういうイベントに出席をいただいたことには、心から敬意を表したいと思いますし、感謝も申し上げたいと思います。

 そこで、私も三月三十日に文部科学省がお出しになりましたスポーツ基本計画を読ませていただきましたが、基本計画だけあって、具体的な数値の入っておらない内容にちょっとがっかりしました。

 障害者スポーツを新たなスポーツ基本法において明確に規定し、支援していこうという中で、やはり、より具体的に施設の整備と指導者の育成、配置、これがなされないと、障害者スポーツの普及、また、トップレベルのロンドン・パラリンピックにおける活躍は見込めないのではないかと思います。

 せっかくの機会でありますので、文部科学省としての障害者スポーツに対する支援策のポイントをお伺いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 委員御指摘のように、スポーツ基本法におきましては、障害者が自主的かつ積極的にスポーツが行われるように、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮を十分にしつつ推進していく、こういうことが大事であるというふうに規定をされているところでございます。

 特に、障害者スポーツの強化、こういうことを考えますならば、やはり、私、実はこの前トレセンに行ってまいりました。まだなかなかユニバーサルな状態になっていないので障害者が非常に使いにくい、こういうことで、私も、ぜひトレセンをもう少しバリアフリー化する、あるいは、今後のそういうスポーツ施設については、ユニバーサルスタイルのそういう施設をつくることによって、ともに共用し合いながらトレーニングができる、こんなこともしっかり、文部科学省としても、そういう視点で私はスポーツを推進していきたい。特に、障害者の皆さん方の頑張り、これは元気が出ることですから、そういう支援を具体的にできないかを検討してまいりたい、かように思っております。

馳委員 障害者スポーツといいましても、視覚障害者、聴覚障害者、スペシャルオリンピックスは知的障害者のスポーツ、あらゆる分野がございますので、障害の特性に応じた指導者、そしてユニバーサルデザインの施設整備、こういったもののまず拠点の整備をする。拠点があれば、連携する地域が全国のブロックごとにある。こういったことを計画的に進めていただきたいと思いますが、いかがですか。

平野(博)国務大臣 委員御指摘の御意見、ごもっともでございまして、特に、連携がとれる、こういう視点で見ますと、まだ具体的検証をしておりませんが、私の頭の中でございますが、大学の施設とかそういうところは少し使えるのではないか、こんな思いもいたしているところでございます。

 したがいまして、まずは、やはり共用ができ得る施設をしっかりと確保する。さらに、先生おっしゃるように、種目によっては随分違うわけでございますから、そういう意味での連携をどういうふうにとっていくかということを検討していかなきゃならない、かように思っております。

馳委員 この問題での最後にいたしますが、私が配付させていただきましたスポーツオブハートのイベントのパンフレット、報告書がございます。

 最後のページを開いていただいて、ここにございますように、春の東京、秋の大分という形で、二カ所で展開をしていきたいという意向のようであります。そして、内容については、音楽コンサートなどの異文化からの応援イベントや、スポーツ体験教室などを開催しながら、障害者がスポーツをすることの大変さ、そして逆に、喜び、応援する喜びを理解していこうじゃないかというものであります。

 ここにはやはり、国や県からの助成金の取得とはっきりと書いてありまして、できればこういったNPO法人の活動を御後援いただきたいという要望もございます。

 平野大臣の応援の決意をお願いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 今先生から示されましたパンフレット、リーフレット等々を見ますと、本当に一生懸命やっている姿が描かれているわけであります。私どもとしては、いろいろな方々にこのすばらしさを、特に、頑張っておられる選手諸君の支援の輪を広げる新たな普及啓発イベントをこういう形でつくられているんだ、こういうふうに理解をいたしております。

 したがいまして、このイベントに関しては、文科省としても後援したところでございますけれども、これからは後援からより主体的な立場で支援の輪を強くしてまいりたい、かように思っております。

馳委員 スポーツの問題で、もう一点質問させていただきます。

 JOCの助成金の不正受給問題でありまして、これはどうも構造的な問題だなというふうに思わざるを得ません。当然、JOC内部で調査委員会も行われ、文科省に対して報告も行われたところでありますが、ここは、スポーツ政策の一つの負の、マイナスの部分の課題として取り組むべきであろうと私は思います。

 これは奥村副大臣がお詳しいかもしれませんが、この不正受給問題の根底に何があったと理解しておられますか。

奥村副大臣 お答えいたします。

 この問題につきましては、今御指摘のように、第三者の方々に調査をしていただくということで、この問題が出たときに、私は即指示をいたしました。

 確かに、マンネリ化した、そしてまた従来の組織の中で歩んでこられた、そのことが積み重なって、ちょっとルーズになっておった。そして、そこに、専任コーチをして寄附行為をしていくとか、ああいう、ある意味ではそれを指導した人もいたのではないか、大臣から、もう一度そこのところをしっかり調査しろと言われまして、進めてまいりました。

 ですから、やはり、文科省からの補助金、交付金、あるいはまたJOCからのこともありまして、これは当然返還をさせるべきだということで、今まとめさせているところでございます。

馳委員 皆さん御理解いただいたように、専任コーチ、これが謝金扱いになっていたということでありまして、ここがポイントなんです。

 コーチの立場になってみてください。毎年、次の年の契約があるかないかもわからない、あるいは、オリンピックまでの専任コーチとしての契約といった中で、自分の仕事をどうするのか、家族も養わなければいけない、社会保険はどうしようかということも抱えたまま、大体こういったときに専任コーチの対象となるのは、自衛隊とか警察とか教員とか、そういった方々が主になってしまうんですよ。

 したがって、ここのポイントは、私はきょうは提案申し上げたいと思いますが、NAASHが拠点となって、指導者の資格制度と、そしてできれば文科省や大学やNAASHやJOCやJISSを使って人材の育成を図っていってほしいんですよ。したがって、そのためには、指導者に対する資格制度において、どこに行っても通用する、人脈も戦略も立てることのできる指導者にふさわしい人材を育成してほしい。それには、やはり資格制度がきちんとしていなければいけない。

 今、体協やJOCがやっている指導者講習は幾つもありますけれども、それによって雇用が伸びているわけではありません。そこがポイントになっていることと、もちろん各競技団体が、お金を集められる体制とそうではない体制と、二分されているからであります。サッカーなんてすごいですよね。野球もすごいです。バレーボールもそうです。テレビとタイアップしているからです。国民に人気があるからです。そうではないマイナーの団体は、なかなか寄附金も集められない中で、いかにして三分の一自己負担の壁を乗り越えようかという中で、長年こういった問題になってきたんですよ。私はよく知っています。

 したがって、やはりここのポイントを絞った政策を進めていく、その拠点となるのがNAASHではないかなというふうに思っているんですが、奥村副大臣、いかがでしょうか。

奥村副大臣 お答えいたします。

 馳委員、おっしゃるとおりでございます。やはり、この資格制度を確立していくということが一番基本ではないかなというように思います。

 特に、お話の中にありましたJOC、いろいろ競技団体はございますが、プロのところは財源的には裕福なところがあるんですが、やはりアマチュアのところになりますと今おっしゃったとおりでございます。

 ですから、私も、偶然ですが、きのう指示をいたしました。NAASHの問題からJOCの問題、そして日本体育協会ももうマンネリ化しておる、だから、そういうコーチ制度だとか、いろいろな組織についてもう一度点検をしようということをきのう指示をしたところでございます。

 また、先生の長年の御経験によっていろいろと御指導いただいて、特に専任コーチなんか、そしてまた、その中で資格をしっかり取得いただいて指導していただくということも大変大事なことでありますし、先ほど池坊委員の御質問の中にもございましたように、やはり今度の必修の中に、そうした柔道の問題や相撲の問題等々、そういうような資格がしっかりとしておれば、市町村の教育委員会が五人なら五人、六人なら六人ということで指名をしていただいて、その人たちが校区内の指導をいただけるとか、しっかりしたものが確立できるのではないかなというように思っております。

 どうぞ、ひとつまた御指導いただきますようにお願いを申し上げます。

馳委員 もう一度改めて申し上げますが、やはりNAASHをポイントにした方がいいと思いますよ。何から何まで文科省が抱える必要はないと思います。

 その上で、JOC、体協、それから各大学、文科省、あとJISS、やはり資格を持った人間が、あともう一つ、済みません、自治体のスポーツセンター、広域のスポーツセンターを持っているところがありますから、そういった広域スポーツセンターの指導者、こういったところに人材を配置し回していくことによって、お互いの立場、文科省の立場、大学の研究機関としての立場、あるいは体協、それからJOCもそうですが、JISSという専門的な立場、こういったところの立場を理解しながら現場の普及と強化を一貫して行っていくという、これはまさしく民主党政権でお示しになったスポーツの好循環なんですね。人材の生かし方なんですね。

 せっかく育てたトップレベルの選手、そして指導者がうまく回っていくようにしていく、そのコントロールタワーがNAASHになることがふさわしい、こういうふうな私の提案でありますので、今後ともぜひ御検討をいただきたいと思います。

 次に、スーパーコンピューターの「京」について質問をいたします。

 大臣、神戸新交通ポートアイランド線に京コンピュータ前駅があることを御存じですか。

平野(博)国務大臣 承知いたしております。

馳委員 この駅は、以前はポートアイランド南駅でした。いつからどういう理由で駅名が変更されたか、御存じですか。

平野(博)国務大臣 これは、平成二十三年七月一日に、駅名がポートアイランド南駅から京コンピュータ前駅に改称された、こういうことであります。

 神戸新交通ポートアイランド線を運営する神戸新交通株式会社の記者発表がされまして、駅周辺の新たなランドマークとなる次世代スーパーコンピューターの進出に伴い、次世代スーパーコンピューターの愛称「京」を用い、京コンピュータ前駅に改称されたということでございます。

 これが本当かどうかは別にいたしまして、くしくも、その時期に「京」がスーパーコンピューター性能ランクにおいて世界一になった。世界一になったから駅名を変えたのかどうか、これは私、自分で勝手に推測していますが、経過は二十三年七月の一日に改称された、こういうことでございます。

馳委員 世界二位だったら、京コンピュータ前駅になっていたと思いますか。

平野(博)国務大臣 私が先ほどつけ足したことで、馳議員、そういう御質問があったんだと思いますが、一位でも二位でも「京」というふうになったと私は思います。

馳委員 今のは苦しい答弁でしたね。

 高さ二メートルの冷蔵庫ほどの大きさの計算機がずらりとつながれているのが神戸理化学研究所の計算科学研究機構です。

 ちなみに、このスーパーコンピューター「京」を製造しているのはどこの会社で、その会社がどこにあるか、御存じですか。そして、この冷蔵庫一つ当たり、販売価格は幾らしますか。

平野(博)国務大臣 「京」の製造に関する御質問でございますが、スーパーコンピューター「京」につきましては、富士通株式会社が製造を受注いたしております。

 実際の中身につきましては、CPUでありますとかいろいろな部品がございますが、生産につきましては、生産現場は、沼津、三重、宮城、それと先生の御地元の石川で生産をしておる、実質、組み立ては石川でやっておる、こういうふうに聞いております。

馳委員 そうなんですね。私たち石川県民のやはり誇りですよ。

 石川県かほく市の富士通ITプロダクツという会社が、製造の方を、そして組み立ての方を請け負っております。部品が二億個ほどあるんですよ。二億、桁が違いますよね。この部品は、もちろん、世界によりよいものを求めて製造し、目ききの社員が非常に微妙な部品を集めてきておりますけれども、製造しておるのは、このかほく市の富士通ITプロダクツという会社なんです。

 まさしく、我々石川県民にとっての誇りは、物づくりの技術が凝縮をされ、歴史のある石川県でつくられたなと。何の歴史かというと、繊維産業の歴史なんですね。このかほく市というのは、まさしく、繊維産業の産元の、産元中の産元だったんですよ。非常に手作業の細かい、技術者の多い地域であるということをちょっと宣伝させていただきながら、次の質問に移ります。

 「京」は、一秒間に一京回の計算ができます。その計算速度は世界二位の中国のスパコンの四倍以上で、二位から八位までのスパコンを全部足しても「京」の計算速度には及びません。また、連続稼働時間が二十九時間三十分という記録を持っておりまして、中国製は六時間が限界であるということと比較すれば、桁外れに長時間働きます。

 これこそが日本の物づくりの成果であり、世界一だからこそ英国ウェールズにおいても国家戦略のインフラとして購入が決定したもの、そのように私は理解をしておりますが、大臣、この私の理解で間違いないでしょうか。

平野(博)国務大臣 先ほど議員の御質問で、一筐体についての価格を御質問されましたよね。この一筐体の価格についてはなかなか難しゅうございますが、「京」の全体の製造に係る契約金額が四百九十億円、こういうことでございますので、「京」全体では八百六十四筐体のマシンから構成されているというところから、単純に割れば大体五千七百万円ぐらいなのかなと。ただ、附帯的な施設とか、もろもろございますから、単純にいきませんが、筐体という観点から見たらそういう割り算で値段が出るのかな、こういうふうに思います。

 そういう中で、先生が先ほど言われました、世界の二位の中国のスパコンとのスピード等々につきましては、委員が今御指摘されたとおりだと私は認識をいたしております。

馳委員 私も富士通の資料をちょっとチェックしてみたら、英国ウェールズが買ってくださったんですよ。「国家プロジェクト事例(HPC―Wales)」とありまして、「Walesの産業振興を目的に先端的なHPCインフラを地域大学間ネットワークの上に構築、地域の経済成長と技術力向上を目指す国家プロジェクト」というふうな位置づけでお買い上げいただいております。

 まさしく、今まで開発に莫大な予算がかかってきました。したがって、そろそろその回収を目指して頑張らないといかぬなと。やはり、その売り込みの先頭に平野大臣に立ってほしいと私は思いますが、その決意やいかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 確かにスパコンというのは、先生御案内のとおり、これだけの演算を超スピードでできる、こういうことにつきましての使用用途、汎用スーパーコンピューターでございますから、いろいろなところに使える、こういうことを考えますと、いろいろな利用形態がある、こういうふうに思っております。

 そういう意味合いにおきましては、スーパーコンピューターのビジネスは、これからは経産省が主体となろうと思っていますが、文部科学省としてもしっかり、インフラパッケージの考え方での科学技術の最高峰を世界に売り歩くという立場で、私の立場においてもそういうことは積極的に頑張っていきたい、かように思っております。

馳委員 日本で開発したこのスーパーコンピューターは、日本の国立大学法人や国立研究機関が率先して購入し、地元企業や研究者や自治体と共同利用していく、こういう方針は文部科学大臣としても提案できるのではありませんか。まさしく、それこそ産官学の連携となってくると思いますが、いかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 各大学にこれを持っていくというのは、財政的な問題も含めて、大変厳しゅうございますが、スーパーコンピューターを含めて、各大学との連携とか、こういう観点では非常に重要だと思っていますし、そのコアがやはり「京」であっていただきたいと思いますし、全体のシステムの連携、こういう意味では非常に重要な、有用な仕組みだと考えております。

馳委員 そこで、戻りますが、世界一の計算速度と耐久性を生かして、世界に先駆けてどういう分野で役に立つ成果を上げていくのか、ここに次のターゲットを絞っていくのが日本の強みだと思いますが、いかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 委員御指摘のとおり、非常にその視点は私も同感でございます。

 特に「京」の、これはあくまでも計算をしていく部分でございますから、私、つい先日も実は「京」に行ってまいりました。また加えて、SPring8とSACLAにも行ってまいりました。したがって、「京」を使って、これからの微細を含めたそういう部分で、SACLA、さらにはSPring8をいかにコラボする、こういうことを含めて、どういう分野で活動できるかというふうに思っております。

 特に、例えばでございますけれども、創薬のシミュレーション、これは非常に効果が出てくる、精度が大きいものですから効果が大きいというふうに聞いてございます。特に、標的たんぱく質と薬の候補物質の分子レベルでの結合状態を再現できる、こういうことですから、薬効の予測が十分可能になってくる、こういうことでございますので、特にそういう視点での部分。あるいは微細という部分、微細加工という部分では十分対応できますし、また、つい先日もiPSという、山中教授のところにも私訪問させていただきました。そういう意味で、ゲノムの解析でございますとか、そういうところの部分が十分にこれを使ってスピード感を持って対応できる。

 でないと、「京」というコンピューターをつくりましたけれども、このコンピューターから具体的な成果をいかに早くつくることがまた世界一につながっていく、こういうふうに思いますものですから、ぜひそういう連携と仕組みを早くつくっていかなければいけないと思っています。

馳委員 私はここで大変重要なことを大臣がおっしゃったと思うんですが、あえて具体的に言えば、脳みそと心臓の話をしたいと思います。

 いわゆるアルツハイマー、あるいは今私たちも心配しております発達障害児、脳のどの器官がどのような影響を受けてそういう症状が出るのかという原因が解明されれば、当然、診断、治療方法、薬の開発につながっていくということが、今までは動物実験などの実証実験をやっていたものがシミュレーションで一気にできてしまうということ、これはやはり一つ大きな問題だと思います。

 二つ目、心臓です。

 私の友人に金沢大学医学部の渡邊剛教授、冠動脈バイパス手術の世界的な権威です。心臓を動かしたまま冠動脈手術、バイパス手術をできる世界で三人しかいないお医者さんです。

 この方と話をしておりましたら、開発されているスーパーコンピューターのシミュレーションができれば、心臓のあちこちをまさしく3Dでも、以上の4Dでも、こういう場合にどういうふうに動いているのかということをシミュレーションができれば、さらにそれを活用した手術が可能になっていく。

 この渡邊教授は、ロボットでそういった手術をされるんですね。こちらでロボットを操作しながら、こちらでロボットがはさみとメスを使って手術しているんですよ。大変な指先の作業。こういったもののシミュレーションも解析できれば、もっともっと、危ないと思われていた心臓手術が安心にできる、手術した後の退院も早くなってくる、医療費も安くなる。

 こういったシミュレーションができてくることがいかに生活に、そしてまた、経済産業省とおっしゃいましたけれども、そういった先端分野で日本が先を行くことによって、世界から日本に人をお招きすることもできていく、世界にそういった技術を売り込んでいくこともできるということにつながるわけですよね。

 さて、この脳と心臓の話を私はあえてしましたが、今一番国民がやってほしいのは、防災、減災、そして予測した情報をスマホを使っていち早く個人に提供できる、これをやってほしいんですよね。

 こういったシミュレーションもできると思うのですが、平野大臣、いかがですか。

平野(博)国務大臣 先生御指摘のとおりだと思っております。

 先ほど、心臓に言及されましたが、多分、金沢大学の医学部の先生ですよね。極めて著名な方で、つい先日もベトナムへ行かれた先生で、私の方に、ぜひ先生にお礼を言っておいてほしいという手紙が参りました。それだけ立派な先生ですが、さらにその先生がより多くの方々を助けていく、こういうためにも、「京」をもっと使っていく、スーパーコンピューターを使っていくというところに私はしていかなければならないと思います。

 さて、今先生御指摘の、研究分野の一つの部分としては、地震、津波、これの被害予測の精度をさらに高めていく、このことについても一層研究を、三・一一の事案を含めて、今一番大事な一つのテーマである、こういう認識をいたしております。

 特に、先生の御指摘のように、今までは実験によって、実証によってしか手がかりがとれなかった部分が、シミュレーションという新しい考え方、このことによって導入されるわけであります。ただ、シミュレーションしていくんですが、そのソフトをどのようにいいソフトをしてシミュレーションするかということによってもまた大きく変わってくるわけでございますので、特に、今、防災、そういう地盤沈下、液状化の複合災害等々の部分については、「京」の果たすシミュレーションというのは非常に有用である、こういうふうに認識をいたしております。

馳委員 文部科学省の責任は重いと思うんですよ。準天頂衛星、これも、情報をつなぎながら、自治体、警察、自衛隊、消防、海上保安庁とつなぎながら、ただ、データを打ち込まなきゃいけないですよね。そうすると、海底のブイ、海洋のブイの数が余りにも少ないんですよ。

 私は、昨年、科学技術・イノベーション委員会で、実態を調べた上で指摘をしましたが、日本海側に本当に少ないんですよね。これでは基礎的なデータが入っていかないじゃないですか。それは、やはり拠点で打ち込むというシステムはあるんだから、打ち込むためのデータを、ブイをもっともっと設置すべきではありませんかということを担当大臣にお願いしたところであります。

 そういったものを組み合わせて、スーパーコンピューター「京」をどう生かしていくか、私は、ここに戦略として文部科学大臣は指導力を発揮していくべきであり、だからこそ経済産業省と連携をしながら、海外にも、特に途上国などにも売り込んでいく、そのシステムは世界的な競争の中に、真っただ中にあると思うんですよね。地震大国であり、津波の被害があった我々であるからこそ、こういった問題に責任を持って取り組む、その必要があると思います。

 そこで、二〇一二年、ことしの十月から共同利用されると伺っておりますが、これは間違いありませんか。

平野(博)国務大臣 当初、二〇一二年の十一月ということでございましたけれども、できるだけ早く前倒しをするということで、十月から九月末という観点で、十月から共用開始をしたいということで、今鋭意準備を進めているところでございます。

馳委員 そこで、いよいよ、その共同利用とは、どこでどういうふうに誰が共同利用するのでしょうか。海外の研究者や海外の政府機関も共同利用できるのでしょうか。その際、利用料金は幾らぐらいかかるのでしょうか。教えてください。

平野(博)国務大臣 「京」の共同利用、こういうことでございます。また、海外の研究者や政府機関も使えるのか、こういう御質問でございますが、「京」の利用につきましては、非常に重要な計算機でございますので、複数のいろいろな利用方法を組み合わせて考えていきたい、かように思っています。

 具体的には、国が戦略的知見から見たときの戦略分野と戦略機関を定めまして利用課題を計画する戦略プログラム利用、加えて、産業界を含め幅広い利用者から申請される一般公募の中から行う一般利用という二つの利用形態をとろう、こういうふうに思っております。

 利用者と利用課題につきましては、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律、これに基づきまして、登録機関として、高度情報科学技術研究機構が公正中立な立場で選定をいたします。

 特に、産業界による利用に際しては、研究開発にかかわる機密保持ということも大事でございます。そういう意味で、そういう利用環境を十分備えて、「京」とネットワークでつながれるアクセスポイントを東京と神戸に置きたい、こういうふうに考えまして、円滑に利用できる仕組みを整備してまいりたいと考えております。

 なお、海外の研究者等々、国際交流推進の観点から、「京」を利用することも可能にしたいと考えているところでございます。

 利用料金につきましては、利用の成果を世に公開をする、こういうことを原則としてこれを無償にしたいと思いますが、非公開、さらには適切な受益者負担、こういう考え方から、一部有料にしていかなければならないと考えております。その料金設定については、今後、具体的に検討してまいりたい、かように思っております。

馳委員 さて、このスパコンで最後の質問にいたしますが、スパコンの性能を左右するのは何でしょうか。これだけは絶対に世界のどこにも売り渡してはならないものがあるんですよ。平野大臣、よく御存じなので、ぜひそこをおっしゃってください。

平野(博)国務大臣 一番の根幹はCPUだと私は思いますが、これはCPUだけでもいきません。したがいまして、これはトータルのシステム技術があってこそ成り立つと私は思っておりますが、あえて先生から一個に絞れといったら、CPUだというふうに私は思います。

馳委員 おっしゃるとおりですね。大規模集積回路、このLSIのスピード、その一種であるスパコン用のCPU、これだけは富士通は、富士通でしか開発しないということで、ほかの部分はいろいろな企業とも連携しているんですが、ここだけは絶対に富士通、自分たちでしかやらないと決めてやっていることが、まさしく社員たちの誇りが世界一を生み出したポイントになっているわけですね。

 私は、我が国がまさしくイノベーションの力で経済の成長を促していく、この肝がこういったところにあると思うんですよ。それに対して、文科省が、絶対にこれは守っていく、協力していく、もうみみっちいことを言わないで、開発費をしっかりつけていく。そんなところに事業仕分けしてどうするんですかとあえて私は言わせていただきたいのですが、平野大臣の決意をまず伺いたいと思います。

平野(博)国務大臣 つい先日も、富士通の社長が来られました。そのときに、今のスーパーコンピューターの世界の動向を含めて、私に御報告がございました。

 今、アメリカでは二十ペタのスパコンをこの秋にもつくる、中国においてもつくっていく、こういう状況である。今の「京」につきましては十ペタでございますから、機能だけでいえば、もうすぐそういうものが出てくる。富士通としては、日本のスーパーコンピューターについては、さらにバージョンアップしたものをつくっていくためには、委員いみじくも指摘されましたが、官民挙げて、国挙げてこの問題についてぜひ対処していただきたい、こういう強い御要求がございました。

 私は、考え方としては同感でございました。大変厳しい財政事情でございますが、これは、戦略的な、国家のプロジェクト的な強い位置づけにあるだろうと私は認識しておりますので、今後、この点については、より前向きにどう対処できるか検討したい、かように思っております。

馳委員 さて、きのう、全国学力・学習状況調査が行われました。先ほど永江委員も指摘をされたところでありますが、実は私の娘も中学校三年生でありまして、きのうの問題に四苦八苦しておりました。

 さてそこで、抽出調査対象校と希望利用校、その割合は、平成二十二年度、二十三年度に比べてどうでしたか。ちなみに、我がふるさと石川県はどうでしたか。数字からお伺いしたいと思います。

平野(博)国務大臣 きのうから、二十四年度全国学力・学習状況調査を実施しております。今回、抽出調査対象校と希望利用校、こういうことでどんな状況だったかということと、先生の御地元の石川県はどうだったか、こういうことでございます。

 二十四年度の国として採点、集計を行う抽出調査対象は九千七百九校でございます。全対象学校に定める割合は三〇・五%でございます。国から問題冊子等の配付を行う希望利用校、これにつきましては一万六千百五十九校でございまして、割合は五〇・七%でございます。平成二十二年度の調査では、抽出校が九千九百七十四、割合が三〇・七、希望利用校では一万三千八百九十三校で、割合は四二・八%。二十二年、二十四年度で比較いたしますと、希望利用校の割合は七・九ポイントふえております。

 ちなみに、先生の石川県におきましては、平成二十二年度、二十四年度とも、昨年は実施しておりません、抽出対象校、希望利用校を合わせた割合は一〇〇%となっており、全県内全ての小中学校が調査に参加をしていただいている。また、二十三年度につきましては、県内全ての小中学校が問題冊子等の配付を希望した、こういうことでございますので、一〇〇%石川県ではやられている、こういう理解でございます。

馳委員 政権交代というのがあって抽出調査になってしまいましたが、希望利用校と合わせると、どんどんどんと、七三%、七六%、八一%とふえてきているという数字は否めないと思います。

 そうしたら、聞きますね、抽出調査対象校と希望利用校とでは、採点の仕方というのはどう違うのでしょうか。業者がやるのか、教師がやるのか。費用負担はどうなるのか。教師に超過勤務手当は出るのか。でき上がるのは早いのか遅いのかも含めて、どう違うのか教えてください。

平野(博)国務大臣 先生、なかなか理詰めで来られますから、多少間違うかもわかりませんが、お許しをいただきたい。

 抽出調査につきましては、国として、国全体、さらには都道府県別の学力の状況を把握する、こういう観点から国が一括して採点をさせていただいているところでございます。

 一方、希望利用校につきましては、当該学校等における教育指導に生かすために、各設置管理者の希望により参加している、こういうことから、この採点等については設置管理者の責務においてやっていただいております。具体的には、学校の教職員、教育委員会の委託を受けた業者、さらには教育委員会の職員など、設置管理者等々でさまざまでございます。

 したがって、一部、では国の採点と地方でやっていただいておる希望利用校との採点がどう変わるのか、こういうことですが、特に、記述式のところについては多少判断はありますが、大きくはそんなに変わっていかないものだと私は思っております。

 なお、教員について、その職務についておられる場合には、時間外勤務手当は支給されておりません。勤務時間の内外を包括的に評価し、給料の四%を基準とする教職調整額が支給されておりまして、その中で対応いただいておるものと理解をいたしております。

馳委員 学力テストを四十七年ぶりに復活させた、その目的を考えた上で、あえて申し上げたいと思います。

 理科もことしからやるようになりましたけれども、児童にとっては、より早く結果がわかった方がいい。教師にとってもその方が、どこがポイントなのかなということで、その後の指導に生かすことができる。学習状況調査もやりますから、まさしく子供たちの生活状況を踏まえて、児童生徒指導にも生かすことができる。やはり、できるだけ早く子供たちに伝えた方がいいというのが現場の声。

 もう一つ、文部科学省として考えれば、やはり全国全ての情報が集計できた方が、義務教育という国策を推進する上で、今後の教員研修のあり方、人事をどこまでおろしたらよいだろうか、松野さんもおっしゃっていましたけれども、教育委員会のあり方という問題、権限をどこまでおろし、財源をどう配分するかということまで踏まえると、やはり悉皆調査に戻す、より早く現場にフィードバックできるような採点方法をとる、その方向性で議論の選択肢を持った方がよいのではないかなと私は思うんですよね。

 私は今、絶対悉皆にしろという言い方をしているんじゃありませんよ。何のためにこの学力テストを四十七年ぶりに復活したかということを踏まえた今後の対策の選択肢を大臣として検討すべきではないかと思いますが、いかがですか。

平野(博)国務大臣 委員御指摘のように、今、悉皆調査を数年やらせていただきまして、一つの傾向と云々というものがとれてまいりました。そういう中にあって、抽出調査ときめ細かい調査とをある一定期間を合わせて、組み合わせて、トータルの学力調査をするということでございます。

 特に、委員御指摘のそういう御意見もございますけれども、財政的な部分等々を鑑みながら、いかに効率的に学力調査をし、加えて、できるだけ早く公表する。特に、国の視点は、各学校単位と云々というよりも、国全体と都道府県という考え方、各学校においては、それぞれの都道府県の中での部分については国がしっかりとフィードバックする、こういう組み合わせによって当初の目的を果たしていきたい。

 これがだめだということであればまた考えていかなきゃいけませんが、来年はきめ細かい調査をしていく、こういう年に当たっていると理解をいたしております。

馳委員 先ほど私の娘の話をしましたが、実は、私の娘は小学校六年生のときにも受けております。したがって、小学校六年生で受けて中学校三年生で受けてというふうなこのプロセスも、文部科学省は当初、検討の材料にしていたはずだということを申し上げます。

 では、最後の質問とさせていただきます。

 学習状況調査について指摘いたします。

 ネット中毒が社会問題になっています。携帯電話やパソコンを活用した検索中毒や、ソーシャル・ネットワーク・システム中毒や、オンラインゲーム、アダルトコンテンツ、ブログ、成り済まし、ネットいじめ、そしてネット犯罪の温床ともなっておりまして、不登校や引きこもりの要因ともなっております。

 学習状況調査とともにネット利用についての実態調査も行って、政府として対策を打つべきではありませんか。お隣の韓国ではいち早く政府が主体的に取り組んでおりますが、その対策を御存じですか。参考にすべきではありませんか。

平野(博)国務大臣 議員御指摘のように、特に科学技術の進展、さらにはネット社会、こういう中にあって、いろいろな社会問題が出ておることは事実でございます。特に携帯電話、パソコン等を利用した検索中毒、SNS中毒やネットいじめ、ネット犯罪の温床とも実はなっている、こういうことでございます。したがいまして、委員御指摘の韓国では、そういう問題についての予防や治療のための取り組みが行われているということは承知をいたしております。

 文科省としても問題意識は持っておりまして、十九年度から、いろいろな意味で、学習状況調査の中でのインターネットの利用状況等の調査、さらには児童生徒の問題等々に関する調査などで、パソコン及び携帯電話等で嫌なことをされる等いじめの実態に係る調査、学校裏サイトに関する調査等々を含めて、実態把握を実は行っているところでございます。

 この調査結果を踏まえて、地域においても有害サイトの監視、削除要請等ネットパトロールを行う民間団体等々の支援、さらには教育委員会等への協力要請を通じた児童生徒や保護者に対するフィルタリングの普及活動、生徒に対して情報モラル教育、教員に対する研修等々、いろいろな意味で実態把握をするとともに、適切な利用に関する教育や啓発活動をしているところでございますし、委員御指摘のとおり、私はまだまだ足りない、こういうふうに思っております。いろいろな問題を引き起こしておりますから、教育という観点からもしっかりこれは押さえていきたい、かように思っているところでございます。

馳委員 こうやって私と大臣がやりとりしている間も、委員の中にはパソコンを開いておられる方もおられます。いや、いい、悪いじゃないんですよ。それだけ非常に便利になり、世界どこにいてもいろいろな情報にアクセスをし、双方向のやりとりをすることができてよかったねという部分と教育という観点、どう捉えたらいいんだろうかという問題意識です。

 私は非常に、児童虐待の問題に長年取り組ませていただいておりますが、授乳をしながら、お母さんがお子さんにおっぱいを上げながら、ずっとスマホのアプリであちこちとつながっているんですね。あなた、そんなスマホとつながっている前に子供とつながれよと私は言いたいんですよ。

 これは何が問題かというと、子供さんとのおっぱいを通じた愛着という部分。御飯を食べながら常に気になっちゃってメールをチェックする、すぐやりとりをしないといたたまれなくなってくる、これはさっき言った中毒です。大人である我々ですらそうですよ。小学校高学年、中学生、高校生になったらもう一日じゅう、携帯電話を持ったまま寝ている、おトイレにも持っていく、防水機能があるからお風呂まで持っていく、それで本当にコミュニケーション能力が養われていくんだろうかということを考えたら、ここは国家としても、あるいは政府としても、これはほっておけない問題ですよねということを私は大臣にも認識いただきたいと思います。

 きょうのところはこれで終わります。ありがとうございました。

石毛委員長 次に、宮本岳志さん。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、授業、部活を含めて、学校教育活動下における柔道事故の問題についてお伺いをいたします。

 四月から、中学一、二年生の保健体育の授業で、柔道など武道が必修化されました。そこで、柔道を選択する予定としている公立中学校はどのぐらいあるか、お答えいただけますか。

久保政府参考人 今年度からの武道必修化に当たりまして、公立中学校を対象に抽出調査を行いました。その結果、調査対象の公立学校のうち約六四%の学校で柔道を選択するという結果でございました。

宮本委員 多くの学校で、秋以降、武道の授業が始められるということであります。生徒が安心して授業を受けられるよう条件整備を急ぐ必要があります。

 そこで、武道場の整備や体育館で行う場合の畳といった最低限の準備、それから、柔道経験のない体育教員への研修、外部指導者の導入状況、安全対策等々はどれだけ進んでいるのか、報告をいただきたいと思うんです。それとあわせて、予算措置がどうなっているか、お答えいただけますか。

久保政府参考人 文部科学省の調査によりますと、武道場の整備状況につきまして、平成二十三年五月一日現在、公立中学校で四九・八%、私立中学校で五四・九%でございます。また、用具等の整備に関しましては、各学校で柔道や剣道等からどの種目を行うかを決めて、学校の設置者がそれぞれ整備されているものと考えております。

 なお、文部科学省におきましては、武道場整備に当たりまして二分の一の国庫補助を行いますとともに、用具等につきましても地方交付税措置するなど、武道必修化の条件整備を促進してきているところでございます。

 また、教員への研修、外部指導者の導入状況等の安全対策につきましては、先月の三月九日付で通知を出しまして、指導者や指導計画等の対応につきまして学校と教育委員会等で再点検をしていただきまして、その結果を文部科学省に報告していただくこととしておりまして、その中である程度把握できるものと考えているところでございます。

宮本委員 財政措置、予算措置がどうなっているか、お答えいただけますか。

久保政府参考人 財政措置につきましては、武道場の整備につきましては二分の一の国庫補助で補助をいたしております。その結果、繰り返しになりますけれども、今、整備校数が公立では四九・八%まで進んできているという状況でございます。

 それから、武道用具の整備につきましては、地方交付税の中で、二十一年度から二十三年度までの三カ年、二千四百五十九億円を地方交付税の中で積算されているところでございます。さらに、二十四年度からの今後十年間の新たな教材整備計画の中にもその内数として積算しているところでございます。

宮本委員 柔道については重大な事故が相次いでいるということで、指導に当たる現場の教員、保護者の方々からも不安の声が上がっております。

 そこで、中学生、高校生の柔道事故の実態ですけれども、どのようになっているか、御報告いただけますか。

久保政府参考人 中高校生の柔道事故の実態でございますけれども、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付の給付実績を見ますと、中学校におきましては、体育の授業における柔道の死亡事故は、平成元年度から平成二十一年度まで、報告はございません。他方、運動部活動の事故については報告があるという状況でございます。また、高等学校におきましては、体育の授業における死亡事故の報告はございますけれども、授業中より運動部活動の方の事故が多いという実態でございます。

宮本委員 今答弁にありましたけれども、重篤な柔道事故は部活動が主で、授業ではほとんどないということを強調するわけですけれども、ここには大きな問題があると私は思っております。

 一つは、部活動でなら事故があっていいのかという問題であります。部活動ももちろん学校教育活動の重要な一環であることは言うまでもありませんね。確認いたしますけれども、学校教育活動に部活動はちゃんと含まれますね。

久保政府参考人 現在の学習指導要領におきましては、生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動につきましては、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として行うというように示されているところでございます。

宮本委員 ですから、部活動で頻発している重篤事故も含めてきょうはお伺いをするわけです。

 そこで聞くんですけれども、あってはならないことでありますけれども、子供が授業や部活動など学校管理下で、不幸なことに命を落とすような事故が発生したという場合、大臣、これは全て文部科学省に報告が来るということになっておるんですか。

平野(博)国務大臣 私は、先生にこういう御質問をいただいたことについて、はっと感じたわけですが、現実の事実としては、国への報告が来ることにはなってございません。

 私は、課題認識として持っておりますが、現実は、なっておりません。

宮本委員 これは、一体いつからそのようになったのか、そして、どういう理由で報告義務というものがなくなったのか、大臣、お答えいただけますか。

平野(博)国務大臣 では、いつから来ないのかということでございますが、平成元年十二月二十日の臨時行政改革推進審議会の国と地方との関係に関する答申を受けまして、平成元年十二月二十九日の閣議決定におきまして、それまで求めていた体育活動の事故に関する国への報告を廃止した、こういうふうに承知はいたしております。

宮本委員 その文書をここに持っております。平成元年十二月二十九日付の閣議決定、国と地方の関係等に関する改革推進要綱というものでありますけれども、確かに「児童生徒の体育活動中の事故に関する報告を廃止する。」こう書いてありますね。

 しかし、私は、もちろん、全ての事故を逐一文部科学省に報告させよと言うつもりはないんですよ。しかし、生徒が命を落としたり重篤な障害を負うような重大事故、それが数え切れないほど起こっているというんだったら大問題なわけでありますから、年間、それほど多くはないはずであって、そういうものをきちっとつかめなくて、対策などとれるわけがないんですよ。

 大臣、これはぜひ改善していただきたいんですけれども、全国の学校で不幸にして発生した、死亡はもちろん重篤、重大な事故については、きちんとその状況や原因など、実態を正確に報告させる、そして対策を立てる。これを機にちょっとそういう点は改善をいただきたいんですが、いかがですか、大臣。

平野(博)国務大臣 先ほど久保局長からも、事故の状況については、スポーツ振興センターの災害共済給付の実績から事故が上がる、こういう件数、数値についてはございますが、御指摘のように、やはり学校で発生した事故については状況や原因を把握する、こういう分析は私は重要である、こういうふうに思っております。

 このために、文科省としては、昨年度に、体育活動中の事故防止に関する調査研究協力者会議を設置いたしておりまして、体育活動の事故の分析や防止対策等について検討を今現実に進めております。

 さらに、柔道につきましては、先生御指摘ございます、いろいろなお方からの安全に対する御心配を頂戴いたしている、こういう観点から、学校と教育委員会等が指導者や指導計画等の対応を再検討した結果による報告を五月にいただこうと思っております。

 したがいまして、その意見交換、情報交換会を六月ぐらいに開きまして、事故の発生状況等の報告をいただきたいと思っておりますし、今後、情報の収集、検証の体制の改善も含めて、私は万全を期したい、こういうふうに思っております。

宮本委員 そのセンターのものしかないので、改めて御紹介申し上げたいんですが、内田良名古屋大学大学院准教授が、日本スポーツ振興センターの災害給付件数をもとに集計した数字がございます。

 センターが公表している「学校の管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点」というものをずっと集計してくださったところ、一九八三年度から二〇一一年度までの二十九年間で百十七名の中学生、高校生が亡くなっている。柔道固有の動きに伴って障害を負った中学生、高校生は、同じ八三年度から二〇〇九年度までで二百七十五人にも上っております。それをもとにして内田准教授が作成したのが、きょうおつけした資料の一番なんですね。

 それで、この調べでは、二〇〇〇年度から二〇〇九年度の十年間で、中学校の部活動での死亡確率は、陸上や野球、サッカーなどでは十万人当たり〇・二人程度などに対して、柔道では二・三人となっております。剣道ではゼロであることと比べれば、柔道だけが突出していることがおわかりになると思います。高校で見ても、陸上や野球、サッカーなどでは〇・六から〇・八人、剣道で一・二人程度なのに対し、柔道は三・四と、こちらもやはり高いですね。もちろん、高校の場合は、私もやっておりますラグビーというのが一番高い結果になっております。

 文科省は、二〇一〇年七月に「学校等の柔道における安全指導について」という依頼を出しておりますけれども、その後も、二〇一〇年十二月に中学生が亡くなり、二〇一一年六月―八月には高校生三人が亡くなる事故が起きております。柔道はけがや事故の多い種目と言われてまいりました。私もラグビーをやっておりますからわかるんですけれども、けががつきもののスポーツというものは確かにあります。しかし、死んだり重い障害が残るようなことだけは絶対にあってはならないし、その防止に全力を注ぐということは当然のことであります。

 ラグビーでは、毎年ルールを改正するなど、随分そういう努力もやられてきたところですけれども、柔道について言えば、発生確率が高いまま、三十年近くもの間、死亡事故や重大な障害を負う事故が起き続けてきたわけですね。ここが最大の問題だと言わなければなりません。

 そこで大臣にお伺いするのですが、なぜこういう状況が続いていると思うか、大臣のお考えをお聞かせいただけますか。

平野(博)国務大臣 委員のお示しをいただきました死亡事故件数、死亡事故の確率ということは、これは事実であるというふうに思っております。

 いずれにしましても、私どもとしては、中学校、高等学校の体育の授業等における死亡、重度の障害について見ると、先生御指摘のように、陸上競技や水泳などの発生件数が多いんですが、運動部活動におきましては柔道が最も多い。次いで野球、バスケットの順になっている、こういうことでございます。

 しかし、運動部の活動というのは、教育内容や指導方法が学習指導要領に十分に示されていなかったという点、また、各学校において指導が委ねられていた、こういうこと。文科省としては、運動部の活動の安全対策についても、これまで種々いろいろな通知を発出してまいりましたけれども、まだ十分でない、こういうことでございます。

 したがいまして、今回、スポーツ基本法また教育における武道の必修化、こういうことから、今までのことを十分に検証しながら、より、もともと必修化する趣旨を十分生かしていただいて、安全対策最優先、こういう考え方でこの問題については対処していかなければならないと思っています。

宮本委員 その原因ですけれども、やはり、重大事故が起こっても、正確に情報を集め、徹底的に原因を分析し、教訓を明らかにして、直ちに再発防止策を講じるということを怠ってきたからだと言わなければならないと思うんです。

 授業の開始はほとんどが秋以降だと。とはいえ、既に必修化は始まっております。二〇一一年、昨年六月一日の当委員会で、私の質問に対して、当時の高木文科大臣は、体育活動中の事故防止に関する調査研究というものを行い、事故の分析や防止策を検討し、安全確保に努めていくとお答えになりました。

 この調査研究はどこまで進んだのか、柔道の安全対策についてはどのようにしていくのか、これは事務方でいいので、お答えいただけますか。

久保政府参考人 御質問のございました体育活動中の事故防止に関する調査研究につきましては、昨年度、有識者から成ります協力者会議を設置しまして、これまでの体育活動中の事故の分析や防止対策等につきまして検討を進めてきていただいたところでございます。

 このうち、現在、不安の声が上がっております柔道につきましては、特に一つの重要な課題として取り上げて検討いただきまして、三月末には、その結果を踏まえまして、文部科学省でわかりやすい参考資料を作成して、全国の教育委員会や中学校に配付するとともに、文部科学省のホームページにも載せたところでございます。

 それ以外の、もう少し範囲を広く、体育活動中の事故防止全般につきましての調査研究協力者会議としての報告につきましては、現在、最終的な取りまとめ作業が行われているところでございまして、まとまり次第、公表したいと考えているところでございます。

宮本委員 事故の再発防止のためには、事故の正確な状況把握や原因の分析のほか、再発防止策などの公表が欠かせません。遅きに失したとはいえ、調査研究を行ったこと自体は評価をしたいと思います。しかし、これで終わりというようなことには到底なりません。

 先日、昨年六月、部活動中に、市立高校の生徒がとうとい命を落とした柔道事故を引き起こした、そして、それをきっかけに柔道安全指導検討委員会を立ち上げた名古屋の市教委にお伺いをして、話を聞いてまいりました。

 名古屋が立ち上げたこの柔道安全指導検討委員会は、弁護士や大学教員、頭部外傷に詳しい医師、知多市の中学校で指導者をしている柔道家など、第三者で構成されており、事故の検証、分析にとどまらず、授業や部活動での指導内容の見直しまでを議題にしております。市教委の担当者は、安全に関する指導も行っていた学校で事故がなぜ起きたのかをはっきりさせたいと私にも述べて、四月末にもまとめる提言を全国でも生かしてほしいと話しておられました。

 名古屋市は、この提言を踏まえて、頭部へのダメージが死亡事故につながるとし、頭を打つ危険性のある大外刈りを授業で扱うことを禁止することや柔道用投げ込みマットの使用など、安全策を盛り込んだガイドラインを作成して、学校に示していきたいとしておりました。

 それで、マスコミの報道によって、この間、頭部や頸部への外傷が死亡事故や重篤な障害につながることが明らかになってまいりました。これらの重大事故を根絶するためにも、今こそ国として、名古屋市に任せるんじゃなくて、過去の事故の原因究明や分析、医科学的な立場に立った安全対策の検討、公表を行う第三者的な機関、検討会を立ち上げるべきではないかと思いますが、これは大臣の御答弁をいただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 柔道に限らず、学校の体育の授業や部活動において発生した重大な事故については、状況や原因等を科学的に分析し、その原因究明並びに事故の防止につなげていく、こういうことは極めて重要であるというふうに認識をいたしております。

 そのためにも、調査研究協力者会議におきまして、体育活動の事故の分析や防止対策について、検討を今現在しておるところであり、公表いたします。

 さらに、今後、医学的立場に立った、そういう対策も含めて検討をしてまいりたい、こういうふうに思っておりますし、特にスポーツ振興センターの災害給付のデータをベースにこのことを検討したいと思いますが、この検討の結果も含めて学校関係者に公表してまいりたい、かように思っています。

宮本委員 ぜひ、しっかりと進めていただきたいと思います。

 同時に、安全対策とあわせて、外部指導者も含めた指導者のあり方が大きく問われていると思うんですね。

 昨年、私の質問に対して、当時の高木文科大臣は、しごきや体罰など、人権を侵害するとか、健康、安全を害することは絶対あってはならないと明確に答弁をされました。これは大臣も同じだと思うんですね。しかし、残念ながら、そういう事例が後を絶たないんです。

 私は、先日、全国柔道事故被害者の会の方々と直接お会いをして、子供たちが事故に遭った状況をお伺いいたしました。幾つか紹介をしたいと思います。

 経験一年足らずの息子は、部活動で講道館杯優勝経験を持つ顧問との乱取りで何度も投げられ、急性硬膜下血腫を発症。さらに、七分間に二回も気管を絞めるわざをかけられた。神奈川県中三男子。

 ぜんそくの持病を抱える初心者の息子に、部員も顧問も過度に無謀な練習を課し、顧問に投げられて死亡。病院に運ばれたときは、体じゅう、あざだらけだった。滋賀県中一男子。

 百六十センチ、六十五キロの息子と、百七十五センチ、八十キロの生徒同士の授業中の試合で頸部負傷。親への連絡に二時間もかかり、親が駆けつけて救急車を呼んでもらったが死亡。どの体育教師でも同じ判断をしたと説明された。静岡、高一男子。

 これらの指導者に共通するのは、行ったことの重大性ももちろんですけれども、その後も、事故の現実、事実に向き合おうともしない姿勢なんですね。大臣、こういう、指導者によるいじめやしごき、体罰などというものは絶対に許されません。このようなものは虐待や暴力そのものであって、スポーツでもなければ武道でもないと言わなければなりません。

 子供たちの命と安全を守ることを最優先に指導できる人こそ指導者とすべきでありますけれども、少なくとも、学校での柔道の指導者には暴力や人格を否定する言動は絶対認めない、この立場を大臣として明確にするのは当然だと思いますが、大臣、ぜひその立場を表明していただきたいと思います。

平野(博)国務大臣 武道というのは道ということを書くわけですが、その道をきわめるというのはやはり人格をきわめていくということになるわけでございます。

 したがいまして、今議員御指摘の、例示をいただきましたが、武道に限らず、指導者たるものは、しごきや体罰などあってはならないのは当然であります。これは、道という、道をきわめていく武道の一番の原点でございますが、そういうことをわきまえてやっていただかなくてはならないと思います。

 特に武道は我が国固有の文化でありますし、中学校において、武道の学習を通じて、技能という観点のみならず、我が国の伝統の文化を尊重するという、道をきわめていく、礼にあって礼に終わっていく、この精神を養ってもらうことが期待されるものでありまして、しごきや体罰は絶対にあってはならないものと私も思っております。

宮本委員 本当に当然のこととして、こういうことは根絶をしていただきたい。

 さて、そういうしごきや暴力が一掃されれば問題は全て解決するかといえば、実は、まだ問題は残ります。

 私は、全国柔道事故被害者の会との懇談で、先ほど紹介した名古屋市の高校生の御遺族にも直接お話をお伺いしました。

 この高校の柔道部の指導者は、常日ごろから安全喚起や声かけも行い、保護者にもけがが多いことも説明していたというんです。つまり、しごきや体罰とは無縁の指導者だったと御遺族自身も語っておられました。それでも事故は起こっているわけです。

 何が欠けていたかといえば、柔道によって頭部がダメージを受けること、また、そのダメージで命を落とす可能性があるという知識が欠けていたんだ、もし知っていたら事故は防げていた、無知は罪だという切実な訴えを聞きました。

 なるほど、文科省の柔道授業マニュアルでも全日本柔道連盟の「柔道の安全指導」第三版においても、加速損傷などに関する記述が行われ、初めて指導に当たる教員の中で認識が広がっております。

 しかし、私は、初心者の教員だけでなく、むしろ、柔道経験のある教員や、学校で授業や部活動の指導に当たっている外部指導者にこそ、加速損傷、セカンド・インパクト・シンドロームを初めとする頭部損傷の危険性を認識させる講習会、あるいは事故が起きた場合の救急対応を学ぶ研修などが必要だと思うんですね。

 この点、文部科学大臣、どう思われますか。

平野(博)国務大臣 委員御指摘のように、初心者にあってはもちろんのことでありますが、むしろ、なまじっか柔道を経験しておられる、こういう方についても、うっかりということがあって、さらにそういう問題を引き起こす可能性も実はないとは言えません。

 したがいまして、より、頭部の損傷に関する医学的な知識や緊急時における対応、これは柔道の指導を行う者にとっての一番の知識として持っていただかなきゃならない、このことは非常に重要な指摘だと私も思っております。

 また、こういった点につきましては、機会を捉えて、教育委員会を通じて研修等の充実を図っていただく、こういう要請をしてまいりたいと思いますし、また、全柔連の方に対しましても、外部の指導者研修を行っておられますが、その研修においても、特に頭部のけが、緊急時の措置等についてもぜひ取り扱っていただきたい、かようにお願いをするとともに、そういう研修会に積極的に参加をしていただくように要請をしてまいりたいと思います。

 委員御指摘のように、これはこの四月からということでございます。安全を十分に担保することによって私は慎重に所期の目的を達成するための施策を講じていきたい、かように思っております。

宮本委員 フランスでは柔道指導者は国家資格なんですね。それで、講義、実技、柔道クラブでの実習を合わせて千二百時間が必要とされております。それでもなお、三年ごとの更新制をとっている。フランス柔道連盟のジャン・リュック・ルージェ会長は、最新の医科学的知見を身につけてもらうために三年ごとの更新をしているんだとテレビの取材に語っておられました。

 加速損傷など頭部損傷の危険性についての知識を身につけなければならないという点では、初心者も経験者も違いはないんです。これはスタートラインなのだから、絶対に授業開始前までには徹底する必要がある、このことを強く求めておきたいと思います。

 最後の質問ですけれども、武道の必修化によって、新たに女子生徒も全員柔道を行うことになります。今まではダンスとの選択であったこともあり、多くの女子生徒も、指導する側もそうですし、大半が初めての体験ということになります。

 そこで、資料二を見ていただきたいんですけれども、内田准教授の調査によれば、中部、北陸七県の中学校の授業で起きた頭部外傷の割合は、男子の一〇・三%に比べ女子は一三・四%と女子の方が高くなっております。男子と比べ体格や筋力差がある女子の場合は頭部損傷に至る可能性が高いことから、内田准教授は性差を考慮した安全対策を講じる必要性があると述べられておりました。

 これは非常に重要な指摘であると私は思いますけれども、文科省として対策はとられておりますか、大臣。

平野(博)国務大臣 平成二十年三月から、学習指導要領の改訂によりまして、武道については、武道またはダンスとして選択を実施していたものを、中学一、二年で必修、こういうことで、男女問わず全ての生徒が履修をする、こういうことに相なりました。

 御指摘のように、女子も学ぶことを考えますと、体力差や性差ということも十分に考慮していただく必要性があると認識をいたしております。

 三月九日には、文科省から全中学校に配付した柔道の安全な実施に向けてという手引におきましても、生徒の経験や体力等を踏まえた指導を行うよう、さらに具体的には、女子に対して基本動作を中心に無理のない指導をしていただくように、指導計画の中にも紹介をさせていただいてございます。

 今後とも、女子を初め、生徒の学習段階や個人差を踏まえた無理のない段階的な指導が適切に行われるように徹底をしてまいりたいと考えております。

宮本委員 性差というものをしっかり踏まえて、万全の体制をとっていただきたいと思います。

 ラグビー事故の調査研究の草分けとも言える畠山一男元成蹊大教授は、一九七一年の論文でラグビーについて、競技の特質からある程度の傷害発生はやむを得ないとしても、致命的重傷や死亡事故は絶対に起こしてはならないし、過去の経験からこれは防ぎ得るし、また防がなければならないと述べるとともに、殊に重大事故が指導者の指導方法の誤りや理解不足などに起因している場合は、単に一競技の発展を阻害するというような問題ではなく、人道上の問題にまで及ぶことになると指摘をしております。

 部活動でも授業でも、指導者の無知や不理解から人道上の悲劇を絶対に生むことがないように、あらゆる手だてをとり切ることを強く求めて、私の質問を終わります。

石毛委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.