衆議院

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第2号 平成25年3月27日(水曜日)

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平成二十五年三月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松野 博一君

   理事 木原  稔君 理事 中根 一幸君

   理事 萩生田光一君 理事 馳   浩君

   理事 山本ともひろ君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      岩田 和親君    小此木八郎君

      神山 佐市君    菅野さちこ君

      木内  均君    工藤 彰三君

      熊田 裕通君    小林 茂樹君

      桜井  宏君    島田 佳和君

      新開 裕司君    永岡 桂子君

      丹羽 秀樹君    根本 幸典君

      野中  厚君    比嘉奈津美君

      藤井比早之君    前田 一男君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      義家 弘介君    小川 淳也君

      郡  和子君    中川 正春君

      松本 剛明君    遠藤  敬君

      椎木  保君    田沼 隆志君

      中野 洋昌君    青柳陽一郎君

      井出 庸生君    宮本 岳志君

      青木  愛君    吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣

   国務大臣

   (教育再生担当)     下村 博文君

   文部科学副大臣      谷川 弥一君

   文部科学副大臣      福井  照君

   内閣府大臣政務官     山際大志郎君

   財務大臣政務官      竹内  譲君

   文部科学大臣政務官    丹羽 秀樹君

   文部科学大臣政務官    義家 弘介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高橋 道和君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 山下 史雄君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      清木 孝悦君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          合田 隆史君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            板東久美子君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            戸谷 一夫君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (文化庁次長)      河村 潤子君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十七日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     前田 一男君

  工藤 彰三君     島田 佳和君

  熊田 裕通君     藤井比早之君

  新開 裕司君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     新開 裕司君

  島田 佳和君     根本 幸典君

  藤井比早之君     熊田 裕通君

  前田 一男君     池田 佳隆君

同日

 辞任         補欠選任

  根本 幸典君     工藤 彰三君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

松野委員長 これより会議を開きます。

 この際、福井文部科学副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。福井文部科学副大臣。

福井副大臣 おはようございます。

 私は、先々週、委員会を欠席させていただきました。チリにおけるALMA望遠鏡完成記念式典に出席をしてまいりました。共同してプロジェクトを進める各国の方々とともに、ALMA望遠鏡の完成を祝い、また今後の本格的な観測に向けた意識を共有することができまして、大変意義深いものでございました。

 このような次第で、先日の委員会において私から委員の先生方に挨拶をさせていただくことができませんでしたので、本日、改めて、第百八十三回国会においての各般の課題を御審議いただくに当たって、私の抱負を一言申し述べさせていただきます。謹んで御挨拶をさせていただきます。

 私は、副大臣として、大臣をよく補佐し、東日本大震災からの復旧復興のほか、特に我が国や世界が直面するさまざまな課題の克服に資する科学技術イノベーションを推進するとともに、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック招致に全力で取り組んでまいります。

 今後とも、松野委員長を初め委員の先生方の御指導、御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

松野委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官高橋道和君、警察庁長官官房審議官山下史雄君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長清木孝悦君、生涯学習政策局長合田隆史君、初等中等教育局長布村幸彦君、高等教育局長板東久美子君、研究開発局長戸谷一夫君、スポーツ・青少年局長久保公人君及び文化庁次長河村潤子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中根一幸君。

中根(一)委員 おはようございます。自民党の中根一幸です。

 浪人を含めて三年半ぶりのこの席での質問でございますので、何かとふなれなため、お聞き苦しい点等があるかもしれませんが、一生懸命頑張っていきたいと思いますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 内閣ができて三カ月でございますが、本日が通常国会の最初の質問ということでございますので、改めまして、下村文科大臣、御就任おめでとうございます。そして、福井、谷川両副大臣、そして丹羽、義家政務官、御就任おめでとうございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問させていただきたいと思いますが、所信についての質問の前に、大変気になる記事がきょうの朝日新聞の社会面に出ておりました。

 北海道の教育委員会による全道調査の結果、北海道の教職員が三千九百人処分されたとのことでございます。これについては、一連の北教組の違法活動に対しての処分ということだと思いますが、まず、この北教組の処分問題の経緯についてお尋ねいたします。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 北海道教職員組合の問題については、これまでも再三、国会の中でも、馳議員、あるいは下村大臣、そして松野委員長、当時の立場でそれぞれ、私も含めて問題提起をしてまいりました。違法ストライキの問題、偏向教育の問題、主任手当拠出金の問題、勤務時間中の組合活動の問題、そして選挙の折の教育公務員特例法で禁止されている政治活動等々の問題提起をずっと一貫してしてまいりました。

 そして、その延長線上で、平成二十一年の衆議院選挙において、北海道教職員組合による、当時の民主党議員への政治資金規正法違反事件が発生いたしました。そして、北教組に団体として罰金五十万円、そして当時の委員長代理に禁錮四カ月、執行猶予三年、そして当時の自治労の組合書記長に対して禁錮六カ月、執行猶予三年、また、当時民主党議員であった小林千代美議員は平成二十二年六月に議員辞職するという事件が起きました。

 これを契機に、しっかりとした教育公務員としての責任を果たすべきではないか、実態調査をすべきでないかという議論が、国会において、衆議院、参議院両院において行われまして、これを契機としまして、二十二年十一月から会計検査院による会計検査が道内二百九校において実施されました。その調査の中で、図書館での研修を行ったと報告していた日が図書館の休館日だったことや、あるいは始業時間後の登校、終業時間前の退校等、多くの不適切な実態が確認されたところであります。

 また、それを受けまして、文部科学省も、教職員の給与負担者である北海道教育委員会に対して、会計検査院と同様の調査を道内全校二千三百五十校で行うよう指導を行い、平成二十三年十一月から調査が実施されました。

 具体的には、学校数は二千三百五十校、職員五万七千四百九十七名で行われました。平成二十四年三月、北海道教育委員会は、二十三年度末までの退職者分を先行調査いたしまして、不適切な勤務実態が確認された退職者百二十七名について必要な懲戒処分を行ったところであります。また、二十四年十一月には全体の調査結果が公表され、本年三月二十五日に、北海道教育委員会及び札幌市教育委員会において、退職者以外の不適切な勤務実態が確認された三千九百九名に対する懲戒処分を決定したところであります。

 一方で、この聞き取りがしっかりと最後まで行われているかということはなお疑念が残っておりまして、これを契機にして、教育公務員としてきちっとその職責を果たしていただくよう、注視して見守ってまいりたいと思っております。

中根(一)委員 今、義家政務官にるるお話ししていただきましたが、この問題は大変大きな問題だと思うんですね。

 下村大臣は、委員のころに、義家さんや馳筆頭理事ともども、この問題については国会でも何回も取り上げて質問をしてきたところだと思います。この結果を受けて、大臣は今どう感じていますか。率直な御見解をお願いいたします。

下村国務大臣 おはようございます。冒頭、エールをいただきまして、ありがとうございます。

 会計検査院の会計検査や北海道教育委員会の全道調査によって、多くの不適切な勤務実態が発覚し、大量の処分者が出ました。合計すると、トータルでいうと四千三十六名でございます。これは、学校の先生は子供たちや保護者から尊敬されるべき職業であるにもかかわらず、学校の先生に対する処分が四千三十六名も出たということは極めて遺憾なことでございます。

 文部科学省としては、今回の処分を契機として、北海道における教職員に対する服務上の問題が是正され、北海道の教育が適正化されるよう、北海道教育委員会及び札幌市教育委員会に対し、厳正に指導を行ってまいります。

中根(一)委員 済みません、二期生の私が言うのも大変恐縮ですが、このような処置では、今後またやるんじゃないでしょうか。大変生ぬるいというか、この訓告処分等々、今この処置を見ていますと、これだけ多くの方々が、やってはいけないことを、これは憲法違反ですよね。確信犯ですよね。それに対して、延べに直すと全員で四千三十六人、これ自体も驚きですけれども、この処分自体はまことに当たり前のこととして、処分をした内容について私は非常に納得できておりません。

 先ほど義家政務官がおっしゃいましたが、これをもう少し詳しく、きょう初めての方もいらっしゃると思いますから、今までの一連のこと、どのようなことを学校の先生方がやったか、事例ももう少し含めてお話ししていただきたいんです。お願いします。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 先ほども若干触れましたけれども、まず、自主編成教材という形で、指導要領を否定した内容を教えるような方針を打ち出したり、あるいは、選挙の折、特定の候補者に、どの選挙区はどこの区域の組合のグループがつくというふうに人事配置をしまして、先生方がその動員や選挙活動に参加させられるというような声。あるいは、毎年行われ続けてきた日の丸・君が代反対闘争、これも、現在でも、北教組の出している通知、資料等の中ではそのことがそのまま書き込まれているという状況。

 あるいは、竹島については韓国の言い分の方が正しいなどというような外国メディアに対するインタビューを受ける、あるいは学校長の指示に従わない、あるいは事務室がそのまま組合の専従部屋のように化していた等々の具体的なものが、私自身も北海道で教員をやっていたという経緯もありまして、実は正常化を望んでいる教師たちが非常に多くいまして、これはやはりおかしいのではないかという具体的なものを挙げてくれた事例を国会で明らかにしたところであります。

 また、校長先生に対しては、新しく赴任してきた校長に校長交渉というのを組合で行いまして、本来、組合というのは設置者に対して行うわけですけれども、確認書をとって校長先生をそのままがんじがらめにしていくというような、具体的な校長交渉のペーパー等も明らかにしましたけれども、政治活動そして教育内容、職務専念義務違反、さまざまな問題を指摘してきたところであります。

中根(一)委員 今、話を聞いているだけでも大変なことをやっていたわけですね。これは職務時間中にやっていた可能性も十分、たくさんあるわけです。先ほど少しお話ししましたけれども、ここに出てきた結果ということ自体もまだ調査中、疑わしいわけですよ。もしかすると氷山の一角かもしれないということです。

 その状態の中で、少なくともここに出てきた人たちというのは、明らかにやっていたということがわかる人たちが四千三十六人なんです。しかも、教職員たるものが、先ほどもお話ししていましたけれども、このようにめちゃくちゃなことをやっていて、そのめちゃくちゃなことをやっていた人たちが、訓告にしても、これは文書を通知して、だめでしたね、よくないですよ、こういうふうなことを言って、それでおしまいになってしまうという。こんな生ぬるいことをやってしまったら、これは全国の教職員組合の皆さんも見ているわけで、ああ、こんなものなのかと皆さん思うんじゃないかと思いますよ。それに、北海道の人たちだけじゃなくて、全国の子供たちやその親たちが、こんなもので済まされるのかと思うんじゃないでしょうか。いかがですか、大臣。

下村国務大臣 我々、自民党が野党のときに調査した結果を踏まえれば、これは特に北海道でこのような事例があるのではないか、ほかの四十七都道府県で同様のような状況が必ずしもあるとは考えておりません。

 この北海道の問題を契機として、当時野党自民党で、教育公務員特例法の改正法案を議員立法で衆議院の方に提出をいたしました。

 これは、国家公務員並みに、学校の先生においてもこのようなことについての罰則規定を設けるということでございまして、これは今後、国会の中で、自民党がぜひ新たな議員立法として再提出を考えていただきたいというふうに思います。

 それからもう一つは、教育委員会のあり方においても、今御指摘のように、処分が甘いのではないかというふうな御指摘がございました。

 そもそも教育委員会が、今までもそして現在も、学校現場に対して適切な指導等ができているのかどうかという問題がある中で、抜本的な教育委員会そのものの見直しが今教育再生実行会議の中でも議論されていることでもありますし、また、さきの衆議院選挙で、教育委員会の見直し等について政権公約等で触れている政党もたくさんございます。

 ぜひ、改めて、教育委員会の抜本的な見直しをする中で、あるべき学校現場の正常化に向けた対応を、文部科学省としてもしっかり対処していくということが今求められていることであるというふうに思います。

中根(一)委員 おっしゃるとおりであり、これをこのままで終わらすわけには私はいかないと思っていますし、当然この処分も私は納得できていません。今後、またこの質問については続けて行っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、本題といいますか、大臣のこの間の所信についての御質問をさせていただこうと思います。

 きょうは、初めてということでございますので、できるだけ大局的に物事を質問させていただき、また、その観点からの御検討、御返答をいただければなと思いますので、よろしくお願いいたします。

 この間、大臣の所信についてお話を伺いました。大変みなぎる闘志といいますか、教育に対する思い、また、安倍第二次内閣は経済再生とともに教育再生をやるんだ、その先端の重要な大臣としてのお気持ちというのが伝わってきました。特に、この平成二十五年を教育再生の元年にするんだというようなことを最後の方でおっしゃいました。私は、それに大変共感するものでございます。先ほどの質問のように、教員の皆さんがことしは教育を変えるんだという意気込みを感じられる対応をとっていかなければ、結果的にはできないと思ったからでございます。

 まず、大臣は、政治家になる前から大変教育熱心だったというふうに私は伺っております。当然、政治家になっても、大臣になるまで教育一筋で御活躍されてきました。その中で、今大臣がどうしてここまで教育一筋で来られたのかという、最初なので、人となりというものも知りたいなと思ったんです。そのきっかけというんですか、動機というんですか、まずそこのところをお話ししていただきたい。

 そしてもう一つは、教育再生元年にすると言っているわけですから、どうして今まで教育がよくなかったのか、総括が必要だと思うんですね、よいところ、悪いところを含めて。いわゆる戦後教育について、一つの総括を、大臣の考えを、思いを、お話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

下村国務大臣 お答えいたします。

 お話ししたいことはたくさんありますが、時間も相当限られておりますので、二つだけ申し上げたいと思うんです。

 一つは、私が九歳のときに父が交通事故で亡くなりまして、高校に進学するのは経済的に大変厳しい、母子家庭でございましたので、そういうことに直面しました。当時、母から、就職をして定時制高校に行ってほしい、経済的にとても高校までは進学させることはできないという話がありました。

 そのときに、ちょうどあしなが育英会の前身である交通遺児育英会ができることになりまして、この交通遺児育英会と学生支援機構、当時は日本育英会ですが、そのときは日本育英会は給付型の奨学金制度もございました。両方の奨学金を借りたり、あるいは給付を受ければ高校に進学することができるということの中で、その後、大学生になっても、みずから街頭に立って、交通遺児に進学の夢をということで街頭募金に立ったことが何度もあります。

 つまり、経済的なハンディキャップによって高校、大学に進学できないということは、チャンス、可能性を潰すことになる。志と意欲があればどういう経済状況であっても教育環境をきちっとつくるということが、これは政治の責務として必要なことではないかということを、一点、体験の中で感じました。

 もう一つは、大学生のときから私は学習塾を始めておりまして、そのときに来ていた生徒が、本当にもう落ちこぼれの生徒ばかりだったんですね。学校でも相手にされない、場合によっては近所の交番でも名前が載っているような、もう親からも、社会からも、それから学校からもドロップアウトしてしまった子供たちばかりが集まってきた中で、五十人ぐらいで塾をスタートしました。

 しかし、もともと悪い子はいないんですね。そのときそのときの教育環境の中でそうなってしまった。その子供たちに学ぶ意欲を提供することによって、自信を取り戻して、自分もやればできるんだということで意欲、やる気を持って、もちろん非行の子もいましたが、それから立ち直ったということも踏まえて、教育というのは本当に人を変える最大の仕事ではないかという思いの中から、今の閉塞状況の中で、やはり教育が政治の中で大変重要だということをずっと思ってきたという経緯がございます。

 戦後教育の問題点というのは、近代工業化社会を支える人材育成としては、大変我が国は、特に初中教育等は成功したと思います。しかし、その長所が逆に、時代の変化の中で対応できなくなってきている。均一、画一の教育が求められている時代はもう過去の時代であって、これからの二十一世紀は、クリエーティブな、創造的な、また人間的な感性、感覚を持った、そういう教育こそが求められているわけでございますけれども、残念ながら、今の学校教育の中で、あるいは今の学校教育システムそのものが新たな時代に対応する教育になっていないという本質的な問題点がございます。

 これを、新しい時代の中で生き抜くたくましい人材を育成するための教育、これが教育再生でもあると思いますが、そういう新たな大きな制度変換を含めた教育の抜本改革について、ぜひ取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 大臣の幼いころの、お父さんが亡くなったりした、つらい、また大学時代の教育の経験が今の大臣につながっているという、人となりという部分もお話を聞くことができました。

 時間が大変短くなってきまして、いろいろと質問も考えていたんですが、あと八分少々になってきましたが、一応、資料をつくりましたので、その部分の質問をさせていただこうと思っております。

 まず、いじめ問題についてということでございますが、一昨年十月に大津市の中学校の生徒が自殺をしてしまいました。このような自殺というのが、皆さん一生懸命対応はしているんでしょうが、なかなか悲惨な悲しい事件が絶えておりません。

 近年のいじめの発生状況等、現状をどう捉えているか、また昨年十一月に行ったいじめの問題に関する実態把握に係る緊急調査の結果、これも踏まえてどう対応していくのかについて、お伺いいたします。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 毎年度、児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査で、いじめの認知件数について調査しておりますが、おおむね七万件から八万件で推移してまいりました。しかし、委員御指摘のとおり、大津のいじめ事件が社会問題化して以降の去年八月に実施した緊急調査では、四月から五、六カ月の間のいじめの認知件数は十四万四千という形で、突出してふえております。

 これは、過去の傾向も同じですが、いじめ等が社会問題化したときには一気に数がふえる、そして、そうでなくなるとまた数が下火になっていく。

 このような状態を打破するために、まず、文部科学省としては、しっかりとスピード感を持った対応をしていくためのさまざまな通知を発出しているところであります。また、議員立法において、いじめ対策の法制化、問題が起こったとき、それぞれがどのように責任を持って対応するか等々も現在議論させているところです。

 いずれにしましても、どこの学校にもいじめは起こり得る、しかし、そのいじめは絶対に許されないことである。子供たちを加害者にも被害者にも傍観者にもしないための毅然とした教育、そして道徳教育の充実、こういうものが担保されるべきであろうというふうに考えております。

中根(一)委員 この資料を見て、今、義家政務官がおっしゃっていただいたようなことで見ると、確かに今、非常にふえているように見えるわけなんですけれども、私がちょっと疑問に思ったのは、例えばこのいじめの認知(発生)件数を昭和六十年から見ていくと、この山があるところは、先ほど義家政務官がお話ししていたように、何か事件が起こると、マスコミが取り上げて、いじめの件数が大変ふえるというデータが出ております。今回もそれと同じような形だと思うんですが、これはいじめの認知件数であって、実際のいじめというのは、もっとたくさん、いつでもあるんじゃないか、存在しているんじゃないかなというふうに一つ思えるところがあるんです。

 一枚めくっていただくと、これは昨年十一月に緊急調査して、いじめの認知件数が県ごとに出ております。例えば十一番の埼玉県の千人当たりの認知件数を見ると、一・七人なんですよね。千葉県、下を見ると、二十四・二人と十倍以上多い。一番下をばあっと見て、鹿児島県を見ると、百五十九・五人ということなんですね。

 これは、同じような調査をして、同じ県でこれだけの差があるというのは、アンケートですから限界はあると思いますけれども、これ自体、何かちょっと疑うというか、もっと言えば、先ほどの話によると、何か大きな事件が起きて、マスコミの人とかいろいろ話題になると、学校の先生ももちろん、親もそして社会もみんな、いじめがあるんじゃないかといってアンテナを高くして、だからこそ、このアンケート調査に反映されて、たまたまいじめがわかるということなのかなとも考えられるんですよ。

 そうすると、この二枚目の全国の県ごとに分かれている数値からすると、逆にふえている。たくさん見えている方が、見えているわけですから、いじめというのは初期対応が大事なわけです。それを認知している、例えば鹿児島県でキャンペーンを張っているかどうかわかりませんが、いじめに対するマスコミ的ないろいろなことをやっている、みんながいじめに対してすごく興味を持って関心を抱いているからこそ、これが見つかるという可能性もあるかなと思うんです。

 この点に対してはいかがお考えでしょうか。

義家大臣政務官 委員御指摘のことは、もっともであろうと思います。私自身の教員経験を通した考え方でいえば、この数が多ければ多いほど、きちっとしたアンテナを張っているということになろうかと思います。

 現在、文部科学省で行うこの種のアンケートのいじめ該当項目について精査しているところでありますが、いずれにしましても、しっかりと早期発見をして、事実を確認した上で解決を図っていく。その先でしか、いじめによる不登校や、あるいは不幸なことに命を落としてしまうという事案を防ぐことはできないというふうに思っておりますので、一部、教育界に流布されている、評価が下がるのでいじめを隠蔽するというような、あのような間違った流布ではなく、しっかりと見つけ、しっかりと対処することが、教育の当たり前の責任なんだというスタンスをしっかりと徹底してまいりたいと思っております。

中根(一)委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。

 最後になりますが、いじめを含めたいろいろな自殺者数です。これも資料が皆さんのところに行っていると思いますが、一つは文科省の方の調査、そしてもう一つは警察庁の調査です。この中で一つ言えることは、いじめだけが子供たちが自殺している原因ではないということはこれを見れば一目瞭然なんですが、むしろ、いじめ以外のことで自殺してしまって、とうとい命を落としている方がたくさんいるということがわかると思うんです。

 そのあたりについてどう考えているか、御質問いたします。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 児童生徒の自殺者、これは答弁するだけでも胸が苦しいわけでありますが、毎年三百人以上に上っているという深刻な事態が起こっております。

 まず、自己肯定感、そして、自分は自分一人だけのものではない、連綿と踏襲してきた先祖からの流れの中で今自分がこの時代を生きている。個の教育ではなくて、あなたは歴史に紡がれて今ここに生まれてきたかけがえのない存在なんだ、そういう当たり前の教育というものを子供たちにしていくこと。そして、死んではならない、一緒に困難を乗り越えていこうという寄り添う大人たちの本気さ、それがまさに今問われているんだろうなというふうに思います。

 決して子供たちを孤独にしてはならない、その決意でしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

中根(一)委員 時間が来ましたので終わりにしますが、最後に一点だけ。

 この文科省の方の調査と警察庁の調査、恐らく警察庁の調査が正しいんだと思いますが、余りにも総数についてのばらつきがございます。縦割り行政のところなのかもしれませんが、これは、どちらにしてもお金をかけていることなので、ちゃんと精査するような形の資料のとり方も必要なんじゃないのかなということの意見を述べさせていただいて、質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

松野委員長 次に、木原稔君。

木原(稔)委員 自由民主党の木原稔です。どうぞよろしくお願いいたします。

 早速質問に移らせていただきますが、平成二十六年度から使用される、新学習指導要領に基づく、主として高等学校の中学年用の教科書検定が実施されました。けさの新聞各紙に一斉に報道されていたとおりであります。百八十一点が申請をされて、うち百七十八点が合格したというふうに聞いております。

 それぞれ一点一点、全体の説明というのは時間がありませんので、特に、領土問題、また南京事件、またいわゆる慰安婦問題、そして自衛隊について、検定意見や修正状況の概要を御説明願います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 今年度の教科書検定につきましては、例年どおり、教科用図書検定調査審議会の学術的、専門的な審議に基づいて、検定意見を付し、必要な修正を行った教科書が合格したものでございます。

 先生御指摘の一つ目、領土問題につきましては、我が国の領有権につきまして誤解するおそれがある記述、具体的には、日本固有の領土であるということがしっかり書いていないもの、あるいは竹島と尖閣諸島の問題を同列の領土問題として扱っているような記述には、検定意見を付し、修正を求めたところでございます。

 二つ目の南京事件に関しましては、南京事件に関する犠牲者数に、学説上、幅広い数字的な諸説があるということが理解できない記述につきましては、検定意見を付し、修正を求めたところでございます。

 三点目のいわゆる慰安婦の問題に関しましては、日本政府と韓国政府などの国家間の賠償問題が解決済みであることを十分に理解できないという記述に対しましては、検定意見を付し、修正を求めたところでございます。

 それから、自衛隊に関しましては、自衛隊の性格あるいは自衛隊の行っている海外を含めた活動につきまして、その評価などで誤解するおそれがある記述につきましては、検定意見を付して、修正を求めたというところでございます。

木原(稔)委員 全体としてですけれども、修正を検定意見をつけてきちっとできているものもあれば、まだまだ不十分な部分が見受けられるなというのが私の感想であります。

 まだこれから全てチェックをしなきゃいけないなと思っていますが、例えば、一点だけ申し上げておきますと、修正前の実教出版の日本史Aというものですが、これは記述を申し上げますと、南京城内占領前後の数週間で、少なくとも十数万人が殺害されましたと断定的に書いてあったものが、今回の修正を受けて、修正後の文を読みますと、南京城内外占領後の数週間で、多くの市民や武器を捨てた兵士などが殺害されました。犠牲者については、約二十万人や十数万人、またそれ以下などの諸説があります。上海から南京までの日本軍進路での虐殺行為も、多数発生しています。中国南京市の記念館では、三十万人以上が犠牲になったと表示されていますというふうに、むしろ修正後の方が悪くなっているような記述も見受けられて、驚いた部分もありました。

 そういったことも含めて、まだこれから考え直さなきゃいけないところはあるんですが、自民党が野党時代に教育再生実行本部を立ち上げて、解散直後の平成二十四年十一月二十日に中間取りまとめを行っております。

 教科書検定については、教科書検定基準につき文部科学大臣が各教科書共通で記載すべき事柄を具体的に定める方式に改める、そして複数の説がある事項について記述する際は、多数説、少数説を明記する、そして数値、特に歴史的事項について複数説がある際は、その根拠について明記する、さらに教科書検定基準におけるいわゆる近隣諸国条項に関しては見直すということを、自民党の教育再生実行本部の中で中間取りまとめをしております。

 そのことに関して、これは自民党の政権公約、J―ファイルの中にも書かれていると思いますが、下村大臣の所見をお願いいたします。

下村国務大臣 御指摘のように、昨年、安倍総裁が誕生した後、十月から自民党において教育再生実行本部が立ち上がり、私が本部長となりました。また、今御指摘の教科書検定・採択改革分科会は、松野委員長に当時この座長をしていただいて取りまとめをしたところでございます。

 歴史には光もあれば影もある中で、特に近現代史においては、影の部分を強調することによって自虐的なトーンになっている教科書が多いのではないかということが、当時、自民党の中で議論としてございました。

 改めて、教育基本法の改正、新しい教育基本法、それから新学習指導要領、本当にその趣旨を踏まえた教科書検定、採択がされているのであろうかという中でのこの分科会の提言でもございます。

 今後、教科書検定について、このような指摘も踏まえまして、改めて教科書検定制度の現状とその課題を整理し、そして一つ一つ見直しを行いながら、もちろん影の部分も歴史上事実の部分は事実として記述をする中で、一方で光の部分、子供たちに対しても我が国の歴史に対して誇りと自信も持ってもらえるような、そういう部分も含めて、全体的に教科書検定基準についてどのような形があるべきかということについて、これから検討してまいります。

木原(稔)委員 今の大臣が本部長を務めていただいた教育再生実行本部と、そして松野委員長が座長を務めた採択改革分科会でございますから、責任を持って、政権与党になった自民党、そして、与党でございますから、これについては今後も深くかかわらせていただきたい、私もそれの応援をしていきたいと思っております。

 それから、教科書採択の問題なんですけれども、沖縄県八重山地区の話をさせていただきます。

 御承知のとおり、公民の教科書の採択が一本化できなかったわけですが、義家政務官には、迅速に竹富町にお入りいただいて、教育委員会を指導していただいたことは高く評価をさせていただいております。

 その際、新年度に向けて、正しい教科書、新しい教科書を採択するように求めましたね。そして、その返事としては、今月中に竹富町教育委員会を開いて対応を協議して、一定の方針を示すということだったと思います。もうやがて新年度がやってまいりますが、その新年度の教科書は一体どうなるのでしょうか。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 大臣の指示で、三月一日、石垣の竹富町の教育委員会に行き、そして那覇に移りまして沖縄県の教育委員会に行き、現在違法状態になっている教科書無償措置法、そして教科書の発行に関する臨時措置法、これをしっかり合法な形として、子供たちに安心して教科書が無償配付されるような状況にしてほしいという強い指導を行ってきたところであります。

 例えば、竹富町は、学校が九校で社会科の先生が九人しかおりません。また、与那国は二校で二人、石垣が九校で十六人の先生方がいますが、そもそも共同採択地区というのは何のためにあるかといえば、その一つのところでは、調査員、教科書を研究する人もなかなか郡部だと捻出しづらいという中で、あるいは、進学先が隣接する市の高校である、同じ教材を使った方がいいだろう、さまざまな状況を踏まえて共同採択地区というものを設置しているわけですが、竹富町のみがその決定に従わず、結果として、発行法違反、そして教科書無償措置法で教科書が保障されないという状況になっております。

 この問題の問題性について、丁寧に丁寧にお伝えしてまいりました。現在は、沖縄県を通しながら、竹富町において対応を検討しているところですが、三月三十一日、つまり四月一日、新年度になったらまた別の段階に入っていくだろう、その別の段階の前に、きちっとした責任ある教育行政としての判断をしていただきたいと、引き続き指導してまいりたいと思っております。

木原(稔)委員 もうきょうは三月二十七日ですから、すぐ新年度がやってまいりますので、迅速な対応を求めていただきたいなと思います。適正な、法律違反ではない形で決着をしていただきたいなということを強く要望しておきます。

 続きまして、教科書の中のいわゆるまぜ書きについて、簡単に触れさせていただきます。

 新しい委員の先生もいらっしゃいますので、このまぜ書きについて、参考人の方から説明を願います。

河村政府参考人 まぜ書きについてのお尋ねでございますが、仮名と漢字をまぜて表記をする、いわゆるまぜ書きについては、読み取りが困難になったり、言葉の意味が把握しにくくなったりする場合には避ける必要がございますけれども、そのような事情がなければ、必ずしも問題があるとは言えないというふうに考えております。

 文部科学省で公用文を作成する上での参考とするために、一般に留意を要する用字、用語の標準を示しました文部科学省用字用語例というものを作成いたしておりますが、この中でも、例えば、子供という言葉の書きあらわし方としまして、「子供」という漢字二文字の用例を示す一方で、漢字書きで示した言葉についても、場合によっては仮名書きにしても差し支えないということを明記している次第でございます。

木原(稔)委員 まぜ書きについて説明がありました。

 子供についてちょっと踏み込んで発言をされましたけれども、幾つもまぜ書きがあるんですけれども、平たく言うと、例えば、小学校の各学年で習う常用漢字は各学年ごとに決まっておりますので、その過渡期の教科書においては、まぜ書きというのは発生するものだと思われます。しかし、私としては、まだ習っていない漢字でも、ルビを打つことによって、将来、子供たちにそれを予想させて前もって予習させるということもいいのかなというふうには思っております。

 子供というのはまた別の話なんですね。これは、子供の「子」というのは小学校一年生で習う常用漢字であります。「供」という字は小学校六年生で習うわけであります。それが合わさって子供となると、なぜか「ども」の部分を平仮名で書くということが起こっております。何を根拠にそういうことをしているのかなと。

 今、学習指導要領の説明にもありましたけれども、特に合理的な説明というのはないなと私は思いますし、あとは、これは我々も反省しなきゃいけないのは、今、法令でも子供というのは全て「ども」は平仮名で書かれているんです。

 例えば障害者なども、そういった、いわゆる人権団体の方が意図的に「害」という字を平仮名で書くという例はありますが、法令では「害」という字は漢字のままです。

 しかし、「子ども」に関しては、これはなぜかもう既に平仮名になってしまっていて、国の法令がそういうものですから、地方自治体の条例も今もう全て「ども」が平仮名になってしまっており、さらに学校の教育現場も、またPTAの方々が配る資料とか、全て「ども」が平仮名になっていて、一部の意見で漏れ聞くところだと、子供の「供」はとても差別的な漢字だというような意見もありますが、では、小学校六年生にその差別的な漢字を教えているのかということにもなります。

 そのあたりに対して、何か感想なり御意見なりがあればお伺いしたいんですが。

河村政府参考人 子供に関してでございますけれども、子供の「子」だけを漢字にして平仮名「ども」とか、あるいは全部「こども」という平仮名で表記するということの理由についてでございますけれども、これはいろいろな御意見があります。例えば、「供」という字が、お供というときに使われる言葉であるので、子供が大人の付随物であるように見えるのは好ましくないというような御意見をおっしゃる方がいましたり、また「子供」というのを両方漢字で書くと大変かたいイメージになるという御意見もありましたり、また発達心理学や児童心理学の専攻の分野では漢字の「子」と平仮名の「ども」という組み合わせが長年使われてきたというような、その分野での状況もあるというふうに認識をいたしております。

 まぜ書きの考え方につきましては、最初に申し上げましたように、読み取りが困難になったり、語の意味を把握しにくくなったりする場合には避ける必要があるけれども、事情に応じて、必ずしも全てが問題であるとは言えないというのがこれまでの常用漢字表等についての考え方でございます。

木原(稔)委員 いろいろな御意見があるのは、それはそうだと思いますが、でも、誰が何の権限を持って、いつからそういうふうになったのかというのが明確でないですし、この問題はもう文科省、文化庁に聞くだけの話ではないと思いますから、法令が全てそうなっているということですから、そのあたりのことはこれから私もちょっと追求していかなきゃいけないな、調べていかないといけないのかなと思っております。

 この問題はきょうはここで終わります。

 時間的なこともありますので、続きまして、高等教育政策について、大学の問題に移ります。

 国立大学法人の運営費交付金は、平成十六年度をピークに年々減少しております。また、GP事業、グッドプラクティスの事業や競争的資金の割合がふえて、特に地方大学の基礎的研究がおろそかになっているような気がして私は心配をしております。

 大きな大学で実施されている最先端の医療や、また宇宙とかサイバーとか、そういった分野の研究は国民やマスコミの関心度も高くて、また研究の成果が非常に目に見えやすいということもありますが、実は、地味な数学とか理学分野は、地味な割には、膨大な研究データが我々の関心の対象では余りなくて、しかしながら、その膨大なデータの蓄積というものが、我が国の科学技術とか医療の発展の原資となる人材の養成を担ってきたということで、その貢献度は極めて大きいと思っております。

 iPS細胞の山中教授、彼も神戸大学で研究していたころは重点配分の対象ではなかったと思っております。そういった若い研究者に基礎的研究を続けさせる地方国立大学の、特に理工系分野の戦略的な強化をすることは、次世代の発展につながるというふうに私は確信しております。

 国内の大学間競争というのも必要であることは認識しております。そして、新しい分野の研究も大事だというふうに思います。しかし、余りにも競争的資金の割合がふえ過ぎて、各大学が、また教授の先生方が予算の獲得に奔走してしまって、そして競争に疲弊をしてしまう、その結果として地方大学が非常に弱ってしまうという教授の声もよく聞きます。

 日本のライバルは、国内間ではなくてやはり海外です。海外の大学であり、海外の教授、研究者だと思います。そのあたりの所感を大臣からぜひお聞かせください。

下村国務大臣 今度、教育再生実行会議で、教育委員会の抜本改革についての議論を四月中にした後、大学教育を質、量ともに高めていくためにこれからどのような施策が必要かということについて議論をしていく予定でございます。大学教育を抜本的に変えるということが、大学入学試験を含め、高校以下の教育も大きく変えるということでございます。

 このような議論をする前提として、例えば、政府の中の産業競争力会議等で国立大学に対して非常に厳しい指摘がございます。社会のニーズに対応した人材を輩出するための教育研究体制になっていない、論文引用回数の低下が著しい、教育分野において国際的競争力が低下している、こういう指摘があることも事実でございます。

 こうした指摘に対して率直に耳を傾けつつ、国立大学が社会から期待される機能を強化していくためには、社会の変化を踏まえた戦略的資源配分、大学や学部の枠を超えた教育研究組織の再編成、世界と戦う大学については、スピード感を持ってグローバル化を断行、研究力の強化等、積極的対応等の思い切った改革を進めることが重要であるというふうに指摘をされております。

 一方で、御指摘のように基礎的基盤をきちっとつくっていくということも必要でありますが、しかし、現状の中でどのような改革をするかということについては、学内のガバナンスの改革を含めた、かなり大胆な、国立大学そのものも改革が問われているのではないかというふうに思いますし、現状の中で安定的に予算を配分するということによって改革が進まないのであれば、世界の中であるいは日本国内の中で通用する国立大学とは必ずしも言えないというふうに思いますし、その辺、しっかりとしたインセンティブを高めながら、しかし結果的に質、量ともに高める大学力をこれから安倍内閣としてはつくってまいりたいというふうに考えております。

木原(稔)委員 大臣御指摘のとおり、生ぬるい体制のまま、ただ単に維持存続している国立大学もあると思います。そういったことに対して厳しい指摘があるのも存じております。

 それを踏まえて、それでも、私は、一旦はこの運営費交付金を増額してはどうかな、そして外部からの監査委員を設けて厳しいチェック体制をしいたり、また、学長の権限を強化して、学長が変わったらもっと大学もよくなるような体制を構築するとか、そういうふうにしてはどうか。それでも改善をされない大学は統廃合してもやむを得ないかな、それぐらい厳しい視線を持ってこれからの国立大学は見ていかないといけないのではないかなというふうに、これは私自身の考えですけれども、これに対しては答弁は求めません。

 そして、大学に関して、私立大学のことなんですけれども、これは、国立とは違って、講義の約六割を非常勤講師に依存していると言われております。

 この非常勤講師というのは、雇用形態が余り変化しない、つまり給料が余りふえない、安いままずっと雇われている。したがって、生活的な安定が得られていないということで、非常勤講師の質が非常に下がっているというふうに言われております。

 さらには、国立大学法人でも、これはある大学の話なんですけれども、来年度から、四月から、シニア教授とかシニア准教授というような制度が始まると聞きました。これは、通常六十五歳で定年していた教授をもう一度再雇用して、シニア教授として、七十歳まで五年間、非常勤の待遇で残るそうであります。

 その結果どうなるかというと、教授に昇格する人が減るわけですね。さらに言うと、専任の講師とか専任の准教授が採用できなくなって、そのある大学というのは、今後の教育環境が先細りしてしまうというような心配もされているわけであります。これもいわゆる運営費交付金の減額の結果であると思っているんですけれども。

 それはさておいて、私立大学の非常勤講師の件について、御見解をお尋ねします。

義家大臣政務官 私も先日までは大学で教鞭をとってまいりましたけれども、多くの非常勤の先生方とも交流がございます。先ほど質の問題を言いましたが、少なくとも私のかかわりある非常勤の先生方は非常に見識のある方たちで、実際、私自身聴講したこともございますけれども、いい授業も行われている。

 しかし、私立大学等は高等教育の約八割を担っております。建学の精神に基づく個性豊かな教育研究活動によって、日本の学校教育の発展に大きく貢献している非常に重要な場所であります。その雇用のあり方については、御指摘の非常勤講師も含めて、労働関係法令にまずはのっとって、公教育を担う立場から各学校法人が自主的かつ適切に判断していただく性質のものであると思っております。

 一方で、私立大学におけるよりよい教育環境実現のために、文部科学省としましては、極めて厳しい財政状況ではありますが、これまでも私学助成の充実や税制上の優遇措置等の諸施策を進めてまいりましたけれども、御指摘の現状も踏まえつつ、私学振興に一層努めてまいりたいと思っております。

木原(稔)委員 おっしゃるように、質の低下は個人の努力で何とか頑張ってもらっていると思うんですね。ですから、やはりそれに伴う給与も、適切な給料ももらってしかるべきだと思いますし、私学に対しての応援もぜひよろしくお願いいたします。

 それから、最後ですが、ちょっと視点を変えます。

 ここに一冊の本があります。これは、一九九七年の男子世界ハンドボール選手権大会といって、ハンドボールのワールドカップの記念冊子になります、公式報告書です。これは一九九七年に熊本県で行われました。

 私もハンドボールの経験者なんですけれども、今、超党派で議員連盟をつくっておりまして、超党派ハンドボール振興議員連盟といいます。山口俊一先生に会長になっていただいておるんですが、その議連で、先般、決議をいたしましたので読み上げます。

  我が国で、世界女子ハンドボール選手権(World Women's Handball Championship)の大会を開催することは、国際親善とスポーツ振興に大いなる貢献となる。

  超党派ハンドボール振興議員連盟は、来る二〇一九年世界女子ハンドボール選手権大会が日本で開催されるよう強力に招致を推進すると共に、その準備態勢の整備に尽力する。

  右決議する。

という文言で、全会一致をもって決議をさせていただきました。

 二〇二〇年は東京オリンピックの招致の年であります。その前年、この世界女子ハンドボール選手権をぜひ日本で開催させていただきたいなと。

 男子を熊本でやった際には、非常にその後の評判がよくて、集客も多くて、評判がよかったわけですが、引き続いて、女子も日本でやらせていただきたい。それに対して、ぜひ文部科学省の応援をお願いしたいと思います。

下村国務大臣 ハンドボール振興議員連盟で、二〇一九年、世界女子ハンドボール選手権大会の招致について決議をされたということは、今お読みになりましたが、我々も聞いております。

 我が国で国際競技大会を開催することは、スポーツの振興、国際親善、地域振興等、大きな意義を有するものであって、スポーツ基本法の趣旨にも沿うものであるというふうに思います。

 現在、日本ハンドボール協会が招致について検討されていると伺っておりますが、文部科学省としても、しっかりその相談に応じてまいります。

木原(稔)委員 下村大臣から、前向きな、積極的な御答弁をいただきました。ありがとうございました。

 以上で終了させていただきます。ありがとうございます。

松野委員長 次に、山本ともひろ君。

山本(と)委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の山本ともひろです。

 本日は、下村大臣御出席のもと、大臣の所信に対する質疑の時間をいただきまして、まことにありがとうございます。

 早速ですが、大臣の所信の中に、少人数学級の推進に努めていくというようなお話がございました。私は、大変いいことだなと思っております。

 私自身は昭和五十年生まれになりまして、振り返ってみますと、私の小学校時代は大体四十五名ぐらいが一学級だったかなと覚えております。もっと前は五十名ぐらいで、それから少しずつ人数が減って、減ってというよりも少人数学級が徐々に進んできたんだと思うんです。

 大臣も御存じかと思いますが、世界で、もちろん日本も行われていますが、ボーイスカウトという活動がございます。私自身も、幼いころからこのボーイスカウトをやっておりまして、今もやっているんですが、文科省が今進めるこの三十五人の学級、三十五人というのがどういった理屈で出てきたのか、つぶさには私も知らないんです。

 ボーイスカウトをつくったベーデン・パウエルというイギリス人、彼が本の中で、「エイズ・ツー・スカウトマスターシップ」、日本語で言いますと「隊長の手引」、ボーイスカウト隊の隊長、トップのリーダーがどういうことをやっていけばいいかという教科書みたいなものを書いているんです。その中で、三十二人というのが、一人の指導者、一人の大人が一人一人の子供たち、スカウトに向き合っていくには一番理想的なんじゃないのかなということを書いているんです。

 そもそも、彼は、ブラウンシー島というところで最初、実験キャンプをやりまして、二十名ぐらいで最初のキャンプを行ったんですが、本人自身は、十六人ぐらいが自分が見られる適正規模だ、ただ、後の若い優秀なリーダーたちは、自分の倍ぐらいは見られるはずだから、三十二名で適正規模だろうと。一つの班、あるいは一つの組といいますけれども、それを八名で編成しまして、それが四つの班に分かれる、四つの組に分かれて一つの隊をつくる。その班ごと、組ごとにいろいろ競争し合って切磋琢磨をしていって、一つの隊をつくって、それを指導者が見る。

 大臣もこの所信の中で、「教師が子供一人一人と時間をかけて向き合える環境を整える」と。そういう意味合いでは、ボーイスカウトをつくったベーデン・パウエルが言っていた、まさしく隊の指導者が、一人一人のスカウト、子供たちと向き合って、その性格も、一人一人個性のある性格を見て、どういうふうに技術を教えていけばいいのか、どういうチームワークをみんながとっていけばいいのか、そういう指導をしていくという意味合いでは、ちょうどその三十五人、ベーデン・パウエルは三十二人と言っていますが、大体同じような規模に落ちつくのかなと。

 彼もずっと実は軍人でして、自分たちの部下を教育するですとか、そういったこともずっと積み重ねてきた彼の経験からそういう結論が導き出されたということなんです。私もずっと幼いころからボーイスカウトをやっているものですから、私自身も指導者、リーダーになって、子供たちを指導した経験もあります。

 そういった中で見ていきますと、三十五人学級、少人数の学級、実は、本当に的を射ているというか、いい制度だと思っていますので、これをどんどん進めていっていただきたい。

 今、一年生は制度的に三十五人で決まっているようでありますが、二年生も、三年生も、四年生も、五年生も、中一も、二年も、三年も、そういった三十五人学級を全国一律、公立の小中学校、義務教育の期間はやっていただきたいなと心の底から思っているんですか、大臣、いかがでしょうか。

下村国務大臣 ただいま大変に興味深いお話をお聞きしました。

 たまたま、きょう昼休みに、文部科学省に、ボーイスカウトの最高の栄誉である富士章受章者のスカウトの方々が表敬に来られることになっております。

 ボーイスカウトというのは、自然体験活動の中で、今、都市の子供だけでなく、地方の子供も、外で、自然の中で遊ばなくなってきた中で、大変重要な役割を果たしているところであるというふうに思います。残念ながら、少子化以上に、今ボーイスカウトの参加人数が減ってきているということでありますが、ぜひ、これはもっともっとたくさんの子供たちがボーイスカウトに参加できるような環境づくりをしていくことが子供の教育にとっても望ましいのではないかというふうに思っているということについて、まずエールを送らせていただきたいと思います。

 また、三十二人ということについて初めてお聞きしました。文科省の三十五人というのは、必ずしも、教育的な、論理的な根拠というよりは、四十人から少しでも人数を少なくするという一つの目安として三十五人と位置づけているというふうに思いますが、いずれにしても、三十五人以下学級の推進によって、子供一人一人に対して教師の目が十分に行き届く、そしてきめ細かく対応できる、そういう環境をより整備していくために努力していくということは必要なことであるというふうに思います。

 これは二十五年度の予算折衝で、財務大臣と、文部科学省として、また私としても、重要なテーマであるということで、最終折衝までお願いをしたんですが、残念ながら、平成二十五年度の予算では認められることがありませんでした。

 ただ、一方、いじめ問題や特別支援教育への対応などで八百人の教職員定数の増、それから、約七千人の、補習等のための指導員等派遣事業も新たに実施するということになりましたので、できるだけきめ細かな子供たちに対する対応をしていくということについては、前進があったというふうに思います。

 今後、小学校三年生以上の三十五人以下学級の推進については、悉皆で行われる平成二十五年度全国学力・学習状況調査等を活用し、効果の検証を行い、引き続き検討するということになりました。

 私としては、世界トップレベルの学力や規範意識の育成など、教育再生につながる教職員等の指導体制の充実に引き続きしっかり努力してまいりたいと思います。

山本(と)委員 私も存じ上げなかったんですが、きょう、ボーイスカウトの富士章受章者が大臣のところを表敬訪問すると。実は、私も富士章をとっておりまして、高校生のころに東宮御所ですとか首相官邸を表敬訪問させていただいたことを懐かしく思い出しました。ぜひよろしくお願いいたします。

 大臣が三十五人学級を進めていこうというお話を今いただきました。大変心強く思いますし、どんどん進めていただきたいんです。

 ただ、今、気になりましたのが、やはり財務省が、財政上の理由で教員をふやすというのもなかなか向こうが了承しないというような話が出てきましたけれども、平成二十三年あるいは二十四年、教員をふやしてこられた。

 そういう中で、教員をふやすというのは、少人数学級を実現していけば、必ず教員をふやさなければならないわけです。その中で、基礎定数と加配定数。少人数学級はいいことだ、それを進めていくためには教員の数を確保しなければならないということになりますと、理論的には基礎定数をふやさなければならないと私は思うんです。どうも二十三年も二十四年も、あるいは二十五年もなるのかもしれません、加配定数で何とか教育の現場でやりくりしているというような現状が見られるんですが、私はどうも納得いかないんです。

 これは、教育をつかさどる文部科学省が行うにしては、いささか筋が違うのじゃないかな。やはり、正しいことは正しいと正々堂々と、必要なものは必要、きちっと基礎定数で教員を堂々と確保するということが必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のように、三十五人以下学級をしていくためには、必要な定数を基礎定数化して、恒久的な制度として実現していく。そのために義務標準法の改正が必要でございまして、これはやはり原理原則であるというふうに思います。

 民主党政権下でも、二十三年度には、小一については法改正、基礎定数化をした。そして、平成二十四年度については、小二は加配方式をとったということでございます。

 これは、一つはやはり財源の問題で、財務省の理解が得られないということと、それから、加配方式というのも、必ずしもマイナスと言い切れない部分が実はあるという一つとして、地方自治体によって、学校によって、この学年は早く少人数にしたい、そういう意味で、地方自治体、教育委員会の裁量によって、より早く教育成果、効果を上げるためにどこを少人数にするかということについては、自主的な判断ができる。

 義務教育標準法を一気に全て、中学三年生まで全員を一年で三十五人以下学級にするということは、財源上不可能です。そうすると、段階的にしていくということになると、地方自治体によっては、小学校三年生、四年生よりは中学一年生に対して対処したいとかいうことについては、加配方式の方がより早く対応できる、こういう部分もあったということは事実でございます。

 しかし、文部科学省として、原理原則として、義務標準法の改正を行うということは御指摘のとおりだと思いますし、そういう方針にのっとってやってまいりたいと思います。

山本(と)委員 大臣、ぜひよろしくお願いをいたします。

 次に、先ほど大臣からも学力調査、悉皆調査のお話が少し出てまいりました。この全国学力調査でありますけれども、ふだん学校で学年ごとに、中間テストであったり期末テストであったり、あるいは、クラスによっては、先生から小テストと言われて突然テストを受けるというような、テストを受けるのは学生にとっては日常化しているわけでありますが、そういったテストを常に学生たちは受けているにもかかわらず、全国の学力調査というテストをまたする、この目的は一体どこにあるんでしょうか。

谷川副大臣 全国学力・学習状況調査は、義務教育の水準向上を図るため、平成十九年度より、小学校六年生、中学校三年生を対象に実施しています。

 その目的は、全国的な学力や学習状況を把握し、国の政策や教育委員会の取り組みの改善に役立てること、学校での教育指導の充実や学習状況の改善に役立てること、このような取り組みを通じて、教育についての継続的な検証改善サイクルを確立することであります。

山本(と)委員 今、谷川副大臣から御答弁いただきましたけれども、全国学力調査によって、子供たちがきちっと学んでいるのか、あるいは、そのデータを蓄積して現場にどう生かしていくのか、そういった目的があるということでありましたけれども、今御答弁いただいた目的ではない社会的影響が出てきているという指摘が一部あります。

 例えば、そういった学力調査をして、その結果が出てくることによって、学校間で不要な競争が出てくる、あるいは、地域にたくさん学校があるけれども、その学校の中で序列化が進んでしまうんじゃないか、そういった懸念、そういった指摘もありますが、その点はいかがお考えでしょうか。

谷川副大臣 少子高齢化やグローバル化が進展し、雇用環境が変化する中で、子供たちが切磋琢磨し、このような社会を生き抜く力をつけることは重要であります。そのような観点から、全国学力・学習調査を行い、教育の質の向上を図ることが必要であると思います。

 他方、調査を行う際に、序列化や過度な競争につながらないよう十分配慮することはもちろん必要です。そのため、調査結果の公表に当たっては、結果の分析を踏まえた今後の改善方策をあわせて示すなど、序列化につながらないように十分配慮するよう、実施要領で定めているところです。

 各教育委員会、学校では、調査の結果のみにこだわらず、わかった課題を改善するとともに、児童生徒一人一人の力をつけることに取り組むことが重要であると考えております。

山本(と)委員 今いただいた御答弁でいきますと、そういった学校の序列化が進まないように、あるいは過度な競争がないように、結果の公表についても慎重にしていますというような、簡単にまとめると、そういう御答弁だったと思うんです。

 そうなりますと、多額の税金をかけて全国で一斉に調査をして、実際、テストの結果、あるいは学校の結果、あるいは県単位の結果、そういった結果を全部まとめて持っているのは、恐らく文部科学省が全部まとめてデータの蓄積をしていると思うんです。では、この調査結果、全国学力調査の結果のデータは、最終的に、どこで、誰が、どのように活用をして、結果、全国の学校の現場で、どういうメリットといいますか、どういった改善結果というものが得られたんでしょうか。

 全国至るところで、全員やってくださいといってやっているわけですから、それなりに費用もかかりますし、そのことに対して人員も割かれるわけです。それが一体、では、どういった形で教育の現場に反映されているのか、誰が、どこで、どういうふうに活用しているのかをお教えください。

谷川副大臣 調査の結果については、国、教育委員会、学校において、児童生徒の学力や学習状況を把握、分析し、それぞれの取り組みや教育指導の改善充実に結びつけているところです。

 具体的には、教育委員会では、結果を踏まえた指導方法の改善のための資料の作成、教職員の配置の工夫、教職員研修の実施、学校では、わかった課題を考慮した授業改善や校内研修をし、家庭での学習慣習の定着のために保護者との連携を図っているなど、取り組んでいます。

 このようなことにより、全国学力調査の結果が悪かった都道府県の学力を上げることや、国際調査における平均得点の上昇、家では計画を立てて勉強している子供の増加など、家庭における学習習慣の改善などの効果が出ていると考えております。

 文部科学省としても、今後とも、教育施策の改善充実に役立て、教育委員会の学校における取り組みを支援していきたいと思っております。

 以上です。

山本(と)委員 全国学力調査をいろいろな形で、その結果を踏まえて、教育の現場で改善を行う資料として、データとして使っているというお話でした。

 この全国学力調査というもの、いろいろな経緯があって、なかなか毎年続けられなかったり、全員が受けられなかったり、あるいは全員に実施していなかったりと、いろいろな経緯が今までの中でもあったようでございます。これは別に、何でもそうだと思うんですけれども、特段学力の問題だけではなくて、いろいろな分野でデータを蓄積するというのは大切だと思うんですが、そのデータを蓄積する、そして、そのデータの信憑性がより高くなるには、当然、きちっと定点観測をしていくということも大切です。

 ただ、先ほど申し上げたとおり、全国で悉皆で行うとなると、相当予算もかかる、人員も割かなきゃいけない。大変だとは思うんですけれども、このように、全国学力調査を悉皆、全員で受けてもらって、実際、教育の現場にもいい結果として結びついているという現状があるのであれば、毎年必ず、それも悉皆で続けていって、きちっとデータを文部科学省として蓄積を積んでいって、さらに今後の教育の現場の改善に努めていくべきだと私は思っておりますけれども、大臣、いかがでしょうか。

下村国務大臣 イギリスのサッチャー改革、教育改革については、大変に参考になる部分があると思って、視察に行ったことがございます。

 それまで児童中心主義ということがイギリスにおいても行われたということで、自分の名前もアルファベットで書けない子供がたくさんいる、学力テストは世界から比べてもイギリスは非常に低いということで、当時のサッチャー首相が一番参考にしたのが実は日本の初等中等教育で、学習指導要領をイギリスにおいても新たに定め、また、全国学力テストも行ったというふうに聞いております。

 事実、我々が行ったときも、イギリスで各学校ごとの学力テストの平均点が一般紙等に掲載されておりました。しかし、イギリスは、日本のような学力だけの一つの物差しではありませんので、それはそれとして一つの参考資料でありますが、それによって、過度の競争になったり、あるいは、学校間における格差が生まれることによる弊害というようなことについては、一般の新聞に掲載をしても全くそういうマイナス点はないという判断でされていたところでありますし、一つの判断であるけれども絶対判断ではないというところについては、我が国も大変に参考にすべきことであるというふうに思いました。

 そのように、国として全ての子供たちの学力向上を図る、そのことによってイギリスでも学力テストの結果がかなり上がったという実績がございます。

 全ての市町村や学校等において、全国的な状況との比較によって課題を把握し、その結果を学校の指導改善等に生かす、これは大変重要なことであるというふうに思います。そのために、二十五年度については悉皆調査をする。そして、二十六年度調査についても、抽出調査から悉皆調査に見直しをすることによって必要な準備経費を、この平成二十五年度の予算に既に入れているところでもございます。

 平成二十七年度以降についても、継続的に悉皆調査をすることによって、単に学力による調査ということではなく、トータル的に、より成果、効果が上がる学習指導等、あるいは教育実績を上げるということのために資する材料として活用してまいりたいと思います。

山本(と)委員 ぜひ、二十七年以降もしっかりと毎年悉皆調査をやっていただきたいなと思っております。

 次に、土曜日授業に関してなんですが、所信の中にも土曜日授業を実施とありました。これは、私も自民党に所属をしておりますので、政権公約にもそういったことが書いてあると言われると、そうだなということになるんですが、振り返ってみますと、週休二日にしたのも自民党政権下で行ったなと。

 我々が週休二日にして、学校を土曜日お休みにして、また我々が土曜日授業が必要だという、少しおかしな話だなと思いつつも、あるいは、やってみたものの、もっと有効に活用できることがあるんじゃないかという判断で土曜日授業ということが生まれてきたのかなと思うところもあるんです。

 一説によると、実際、土曜日がお休みになって、子供たちが家でごろごろしているとか、あるいは、テレビゲームばかりやっているから、それだと、せっかく時間をつくったにもかかわらず、余り子供の教育上よくないんじゃないか、だから土曜日授業をやった方がいいんじゃないかという説もあるようですが、テレビゲームを土曜日お休みだからやっているといっても、丹羽政務官もテレビゲームは大好きですし、そういった丹羽代議士でも、きちっと立派な大人になって、政府高官として今この文部科学委員会にも出席をされているわけですから、特段、別にテレビゲームが悪いとは思いませんけれども、自民党政権下で週休二日にして、またさらに我々で土曜日授業をやろうと言った、この意図というのはどこにあるんでしょうか。

義家大臣政務官 お答えさせていただきます。

 まず経緯ですが、平成四年の九月から月一回の学校週五日制が実施、そして平成七年四月から月二回の学校週五日制が実施、そして平成十四年四月から完全学校週五日制が実施されたわけです。

 問題は、現在、過去に比べて教えるべき教科がふえております。例えば情報、例えば総合的学習の時間等々の時間がふえ、さらにはハッピーマンデーの問題で月曜日がかなり潰れておる。その中の振りかえの中で特別活動の時間がかなり少なくもなっているという現場の窮屈感、これは確かに存在しています。

 さらには、指導要領を見直して学習内容もふえましたので、その分を、学校の教師が、月―金のカリキュラムの中でなかなかきつきつになってしまい、また子供と向き合う時間がない等の問題も上がってきている中で、現在、学校教育法の施行規則の中で、特別の必要のある場合は土曜日授業をしてもいいという形で書いてあるわけですけれども、一方で、いろいろな土曜授業を先行実施している教育委員会とも話をしてきましたが、月―金のカリキュラムはそのままで別個土曜授業ということになると、これは負担だけふえてしまう。

 だから、そうじゃなくて、土曜日に地域に開かれた形で、例えば地域で一緒に総合的学習の時間をやるとか、それを正規の月―金のこまの中の一部として編入して認めてもらうような取り組みができないかという具体的な声も上がっております。

 そういう声も踏まえた上で、各教育委員会がまずこういう一年間の工程の中で実施していこうということを応援する仕組みを、現在省内で検討しているところであります。

山本(と)委員 現場の混乱がないようにいろいろな調整をしていただいて、みんなが、子供たちが伸び伸びと学習できる環境を整えていただければと思います。

 ありがとうございました。

松野委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 昨年の十二月の総選挙におきまして、私は、兵庫県第八区尼崎市でございます、初当選をさせていただきました。今回、文部科学委員会は初めての質問になりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 さて、昨今の教育をめぐる大きな課題の一つでございますいじめの対策、まずこれについて幾つか質問をさせていただきたい、このように思います。

 いじめを原因として、とうとい命が失われるような悲劇は絶対に防がないといけない、このように考えております。下村大臣も、その所信におかれまして、いじめ防止に関する法案を議員立法にて成立していただきたいと考えており、行政府として必要な協力をしてまいりたい、このように述べられたところでございます。私自身としても、しっかりと協力してまいりたいと思いますし、いじめは絶対に許してはいけない、この強い思いで政策を前に進めてまいりたい、このように決意をしております。

 さて、質問の一つ目につきましては、教育委員会制度の見直しについてでございます。

 いじめの問題も含めまして、今教育の現場でさまざまな問題が起こっておる、この問題に対応していくために、教育再生実行会議におきまして教育委員会制度の見直しがまさに議論をされているところであると承知をしております。

 我が党公明党といたしましても、前回衆議院選挙のマニフェストにおきましては、教育委員会の抜本的な見直しを図る、その機能の強化を図る、このように掲げて選挙を戦ったところでもございます。

 しかし、教育委員会制度の見直しの中におきましては、そもそもなぜこの制度が導入をされたのか、この経緯についてしっかり十分に配慮しながら議論を行っていく必要もまたあるのではないか、このように考えます。

 具体的に申し上げますと、教育委員会、これは、教育が政治的な中立性を確保する、それと同時に、教育の継続性、また安定性、こういったものもしっかり確保していく、これが教育委員会制度が導入をされたそもそもの理由である、目的である、このように私は考えておりますし、今回の見直しにおきましても、この制度の根幹そもそもを変えるような見直しは適切ではないのではないか、このように考えるところでもございます。

 今後、教育委員会制度の見直しをどのように進めていかれるのか、大臣の御見解を伺いたい、このように思います。

下村国務大臣 冒頭、いじめの問題がございましたが、大津においても、いじめで自殺をした少年の問題がございました。これは、学校現場やあるいは教育委員会が事前に十二分に対応できなかったということで、みずから命を絶ってしまったという悲惨な出来事でございまして、そういう意味で、今後の教育委員会の見直しも、このときからも叫ばれていたわけでございます。

 ある意味では、戦後の教育制度における一つの象徴的な制度として、この教育委員会制度があるわけでございますが、御指摘のように、教育の政治的中立性、それから継続性、安定性、この確保に留意しつつ、より的確な責任体制をどうつくっていくか、それから、先ほどのような現場の問題に対して迅速かつ的確に対応するためにはどうしていったらいいか、このためには、これはもう抜本改革が避けられないことであるというふうに思います。

 教育委員会の見直しについては、各界からもさまざまな改革方策の提案がございます。それぞれの政党においても、衆議院選挙の選挙公約の中で掲げていた重要なテーマでもあるというふうに思います。

 官邸に設置された教育再生実行会議の中で今議論をしていただいているところでございまして、御党、公明党からは富田委員が常時出席をしていただいているところでもございます。

 この教育再生実行会議の中で、教育委員会のあり方についての一定の方向性について提言をしていただき、それを受けて中央教育審議会でさらに議論を深掘りしていただいて、それをぜひ来年の通常国会に教育委員会の抜本改革案として政府としては出したいと思っておりまして、そのためには、中央教育審議会で年内のうちに答申をしていただく必要が日程的にあろうかというふうに思います。

 そのような形をとりながら、来年の通常国会では、あるべき教育委員会の抜本改革案についてぜひ提示をしていきたいと思っておりますので、国会においても、それぞれ積極的な教育委員会のあり方について御議論をしていただければ大変ありがたいと思います。

中野委員 大臣、ありがとうございます。

 いろいろな方がさまざまな御意見をお持ちになっている、そういうテーマでもあると思います。

 しかし、私もしっかりと力を合わせて、この教育委員会制度の抜本的な見直し、しっかり取り組んでまいりたいと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 さて、続きまして、その教育再生実行会議におきましてもテーマとなりました道徳の教育、道徳教育の充実についてでございます。

 いじめ問題への対応について、教育再生実行会議におきまして、二月の二十六日に第一次提言というものを出していただきました。道徳の特性を踏まえ、新たな枠組みにより教科化をする、このような表現がございました。これについて質問をさせていただきたいというふうに思います。

 さらに中身を見せていただくと、これは、現行の道徳教育の成果や課題を検証するとともに、諸外国における取り組みも参考にしながら丁寧に議論を進めていく、こういう中身でございまして、方向性としてはまさにそのとおりである、このように考えておるわけであります。

 しかし、道徳を教科化し、この教科化という表現がございましたけれども、何か、教科化といいますと、点数をつけて、教科として、では、例えば成績を出すのか、そういった印象を受ける方、そういう御意見もございます。私は、道徳教育の性質に照らしまして、果たしてこの教科化というやり方が本当に適当なのか、これは慎重に検討を進めていく必要があるのではないかというふうにも考えております。

 もちろん、道徳教育の充実の重要性につきましては論をまたないところではあると思いますし、しっかり進めていく必要がある、こう考えておりますけれども、どのようにこれも議論を進めていかれるのか、大臣の御見解を伺いたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、教育再生実行会議の第一次提言において、心と体の調和のとれた人間の育成に取り組む観点から、道徳教育の抜本的な充実を図るとともに、新たな枠組みによる道徳の教科化が提言されました。

 しかし、御指摘のように、道徳の教科化といっても、ほかの教科と同様の、数値による評価というのはなじまない教科であるというふうに思います。一から五まで通信簿をつけて、一と五を七%にするということが果たして道徳の中でできるのかどうかということについては、これは、そのような評価基準によらない形をとるべきであろうというふうに我々も考えているところでもございます。

 文部科学省としては、今回の提言を受け、道徳教育のさらなる充実について検討するため、昨日、道徳教育の充実に関する懇談会を設置いたしました。この懇談会において、道徳教育の現状や課題を検証しつつ、道徳の特性を踏まえた新たな枠組みによる教科化の具体的なあり方についても、丁寧に議論を重ねていただくということになっております。

 道徳性は人格全体にかかわる問題であり、その評価については極めて慎重な態度が求められるということから、数値による評価には課題が多いものと考えておりますが、こういう点も踏まえまして、評価のあり方についても、この懇談会において検討していただきたいと考えております。

中野委員 これにつきましても丁寧に議論を進めていっていただきたい、こう考えておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 さて、いじめ対策の一つとして現在進めていただいているスクールカウンセラーについて、御質問をしたいと思います。

 現在、公立中学校の全校にスクールカウンセラーの配置が完了しておりますし、その配置拡充というものが進んでおる、このように思うわけでございますけれども、実態としては、このスクールカウンセラー、学校に必ずしも常勤をしているわけではございません。積算上では、一週間に一回、それが四時間、このように伺っておるところでございますし、実態としても、確かに、なかなか来られない、いつもいるわけではない、こういう状況ではあります。

 いじめに悩む子供たちが相談しやすい体制をつくるためにも、このスクールカウンセラーのさらなる拡充、また質の向上、こういったものに力を入れていっていただきたい、こう考えますけれども、御見解を伺います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、いじめの問題を初め、児童生徒が悩みなどを速やかに相談できるようスクールカウンセラーによる教育相談体制を整備することは、カウンセリングの質の向上を図ることとともに重要なことと考えております。

 配置につきましては、先生御指摘のとおり、来年度予算案におきましては、スクールカウンセラーを全公立中学校に配置できるよう、また、公立小学校につきましては、その六五%に当たる学校に配置可能な経費を計上させていただいているところでございます。

 また、カウンセリングの質の向上についても御指摘がございました。

 文科省におきましては、各都道府県教育委員会が実施しますスクールカウンセラーなどの専門性を向上させるための研修会への支援を通じまして、カウンセラーの力量の向上に努めてきております。

 また、そのほか、スクールカウンセラーとして多くの方が採用されている臨床心理士の団体の方におきましても、研修会が毎年開催され、カウンセラーの力量の維持向上が図られているというところでございます。

 さらには、来年度予算におきまして、教員のカウンセリング能力の向上を図るために、スクールカウンセラーによる校内での教員のための研修を実施する経費も新たに計上させていただいたところであり、引き続き、子供たちが悩みなどを速やかに相談できるような教育相談体制の整備充実に努めてまいりたいと考えております。

中野委員 続きまして、次のテーマに移ってまいりたいと思います。

 私は、次は、英語教育について伺いたいと思います。

 少子化の進む我が国におきまして、グローバルに活躍できる人材を育成していく、これは大変に重要なことであると思いますし、そのためには、コミュニケーションツールとして英語を習得していく、これが課題になってくるであろうというふうに考えます。

 日本の英語教育というものは、昔からさまざまな御意見、また御議論があったところでございます。私は、最近、大変おもしろいアンケートを見たんですけれども、ベネッセ、この会社が小学校の保護者に対してアンケートを行った。この中身を見ますと、子供に対してはいろいろな教育をしようと思われているお母さん方でございますけれども、自分が英語を使う自信がない方が約九割、また、学校で習った英語が役に立たなかったと考えられている方が約八割。かなり高い数字だなと。まあ、いろいろなアンケートがあるわけでございます。

 この英語の教育というものをどうしていくか、大変な課題であるというふうに考えております。近年では、英語の教育も見直しが始まりまして、昨年度より、小学校五、六年生に対して英語が始まる、こういうことも起きております。私が現場を回りまして御意見として伺うのは、教科は確かに見直された、教える中身は見直されているけれども、教える側の体制が必ずしも追いついていないのではないか、こういう御指摘があるわけでございます。

 もともと小学校の先生は英語を教えることにはなっていない、その中でまた新しくこういうものが始まった。学校によりましては、外国語指導助手、ALT、アシスタント・ランゲージ・ティーチャー、これを活用しているところもございます。私は、ALTをもっと活用していくべきであるという意見を持っております。現在でも、例えば小学校では、約五四%の小学校が活用している、こういうデータもあるところでございますけれども、今後どのようにALTの活用を進めていかれるのか、政府の御見解を伺いたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 コミュニケーション能力の向上につながる英語教育を進めるという上で、先生御指摘のとおり、教員の資質を高めるということがまず一つ課題でございますけれども、また、御指摘のとおり、外国語指導助手、ALTの活用は重要な課題でございます。

 平成二十三年度におきましては、JETプログラムによる招致を含めまして、約一万人のALTが公立の小中高等学校で活用されているという実態でございます。また、英語の授業においてALTを活用した学校の割合は、先ほど小学校では五四%とございましたけれども、中学校で九八%、高等学校で九四%という実態でございます。

 文部科学省といたしましては、ALTの指導力向上あるいは日本人英語教員によるALTの効果的な活用のための研修などの取り組みを支援してきたところであり、引き続き、このALTの積極的な活用を奨励してまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

中野委員 英語を身につけるためには、また、グローバルに活躍する人材を育てるためには、私は、海外への留学、これももっと推進していく必要があるのではないかというふうに思います。

 データを見ますと、残念ながら、現在、海外留学をする日本人の数というのは徐々に減少している、こういうデータもございまして、学生が内向きになっているのではないか、こういう御意見もあるところでございます。しかし、私は、必ずしもそうではないな、周りの環境をしっかり整えていけば、当然、海外にチャレンジをしていきたいという若者はいっぱいいるというふうに考えております。

 しかし、その上で、例えば日本へ来る外国人の方に対する奨学金、こういうものと比べても、海外に留学をしようとする日本人に対する奨学金の額というのは少ないんじゃないか、こういう御指摘もあるところでございます。

 私自身が高校、大学と勉強していく中で、やはりいろいろ金銭的に大変だった、私自身も奨学金をもらいながら勉強をした、そんな経験もございます。大学のときも、海外留学をしたいという夢もございましたけれども、当時はそういう日本人に対する奨学金というものが余りなくて、学生のときは私は留学を断念した、こういう経験もございます。くしくも、先ほど大臣がおっしゃられていたように、学ぶ意欲のある人が金銭的な理由でそれを諦める、こういう社会であってはならない、私はこのように考えております。

 こういう人たちにもしっかりチャンスを与えないといけないと考えますし、外国に留学しようとする日本人に対する奨学金というものをもっと今後ふやしていかないといけないのではないかと思いますけれども、文部科学省の見解を伺います。

板東政府参考人 委員御指摘いただきましたように、今、日本人が海外に留学するという数が減ってきております。二〇〇四年には、ピークで八万三千人弱、一年以上留学しておりましたけれども、現在は五万八千人というような状況になってきているということがございます。

 ただいま御指摘のように、これは必ずしも内向きというだけではなく、経済的な問題、今お話がございました、奨学金が十分ではないんじゃないかという課題とか、先ほどから御指摘がございます英語力の問題、あるいは大学の支援体制が不十分なのではないかといったようなこととか、あるいは、就職活動の時期とか、就職で企業がどういうふうに見てくれるかといった、就職への影響などを気にしてというようなことがございます。

 先ほど御指摘のように、やはり海外へ留学する場合の経済的負担の問題というのは非常に大きいというふうに思っておりまして、今まで、確かに派遣をするということに関しての予算が少ないという状況がございましたけれども、近年、それについてふやしているという状況がございます。

 今現在、今年度におきましては、例えば一年以内の短期留学は八千五百人余りを支援しております。来年度予算では一万人を支援したい、一年以上の長期につきましては二百人ということで支援をしたいと思っておりますけれども、今後とも、それらの派遣についての経済的支援ということについて充実を図ってまいりたいというふうに考えております。

 そのほか、大学におきます国際化に向けた体制整備や語学力の向上に向けての取り組みなどの推進、あるいは入学試験におきますTOEFL等の活用など、さまざまな取り組みを推進してまいりたいというふうに考えております。

中野委員 さまざまな政策のパッケージを考えているということで、大変にありがとうございます。

 先ほどもまさに御指摘がございました、就職活動の時期が、今、三年次の大体十二月ぐらいから始まることが多いということで、これが一つ大きな問題なのではないか、もし留学をしようとしても、帰ってきたら就職活動が始まっていて就職に不利になるんじゃないか、こういうことをおっしゃっておられる学生の方も多くいらっしゃいます。

 私は、この活動時期自体をもう少し後ろにずらした方がいいんじゃないか、こういうことも考えておるわけですけれども、文部科学省としてはどう考えられているのか、御見解をお聞きしたいと思います。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、海外留学する日本人が減少している要因の一つとして、就職活動の時期と重なるということが挙げられております。具体的には、学生が留学先から帰国する時期に既に国内企業への採用選考が行われているという実態があるなど、就職活動への不利益を懸念して留学を諦めてしまうというケースが報告されているところであります。

 文部科学省としましては、下村大臣の指示で、谷川副大臣をトップとするPTを立ち上げまして、就職活動の開始時期を可能な限り遅くすることが望ましいのではないかという検討を、現在本格的に行っているところであります。

 一方で、この見直しについては経済界の協力が不可欠でありまして、これから、企業や学生、大学等のそれぞれの立場の御意見をしっかりと集約して、働きかけを行って、要請を行ってまいりたいと考えております。

 一方、中小企業等からは、おくらせると、大企業から就職活動が始まってなかなか雇用が確保されない等の意見もまた寄せられているのも事実ですので、その辺、総合的にしっかりと集約した上で要請を行ってまいりたいと思っております。

中野委員 大学で学ぶ学生、これからグローバルにどんどん活躍できる人を育てるという意味では非常に大事なことかと思いますので、ぜひまたよろしくお願いいたします。

 少し話はかわるんですけれども、夜間中学について一つ御質問をさせていただきます。

 これは、もともと、戦後さまざまな理由で中学校で学ぶことができない方が通われておった、そういう経緯がございますけれども、私の地元の尼崎でも一つ夜間中学がございます。しかし、現在、夜間中学というのは全国で三十五校、八都府県しかない。三十九の北海道、県には設置をされていないということで、大変に長い時間をかけて通学をされる、あるいはそのために引っ越しをされる、こういう方もいらっしゃる、こんなお話を伺いました。

 現在では、さまざまな方が通われております。昔教育を受けられなかった方が、例えばリタイアされてからもう一回勉強されたり、あるいは外国籍の方の子供が学ばれていたり、あるいは引きこもりや不登校で中学校に行けなかった、そういう方が通われている。いろいろな方の就学の受け皿となっておりまして、国として、こういう就学の場がもっと設置されるように支援をすべきではないかと考えるんですけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。

下村国務大臣 中学校の夜間学級は、学校教育法施行令第二十五条に規定された二部授業を行う中学校の学級として位置づけられたものであり、外国人を含め、義務教育未終了者のまま学齢を超過した方々の学習ニーズに対応しているところでございます。

 義務教育未終了のまま学齢を超過した方々の学習ニーズにどのような形で応えていくかは、住民に最も身近な機関である市町村教育委員会が判断することが適当であり、その際、中学校の夜間学級を設置するかどうかについても、市町村教育委員会が地域や学校の実情等、諸般の事情を勘案しながら基本的には判断するものであるというふうに思います。

 しかし、文部科学省としては、設置された中学校夜間学級に対しては、昼間の中学校と同様に、教職員給与、教科書の無償給与、学校施設設備の整備、外国人児童生徒等に対する日本語指導に対応した特例加配措置等の支援を行っております。また、中学校夜間学級における学習指導、生徒指導の改善充実に向けた取り組みを支援する実践研究事例を実施しているところでございます。

 今後とも、中学校夜間学級への支援を着実に行うことによって、義務教育未終了者の学びのニーズに応えてまいります。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

中野委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣おっしゃられるとおり、市町村、この基礎自治体が設置そのものについて判断をする、まさに制度としてはそのとおりでございますけれども、現場の実態として、こういう義務教育未終了者の就学の機会の提供というのは、より広域的な問題なのではないか、こういう御指摘もございまして、なかなか市町村レベルで働きかけをしても設置されるまで非常に難しい、こういう実態もございますので、また今後機会を見て引き続き議論をさせていただきたい、このように思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 さて、最後に、科学技術政策の推進についても質問をさせていただきたいと思います。

 世界の研究開発というものが大変今激しい国際競争にさらされている。アメリカにおいても中国においても、競争力を強化させるための法律の制定などが行われているところでございまして、手をこまねいていては世界の研究開発競争に日本は置いていかれてしまう、こういう強い危機感を持って取り組んでいかないといけない、このように考えております。

 私の地元の兵庫県にも理化学研究所がございまして、スーパーコンピューターの「京」、あるいはiPS細胞、再生医療の研究、こういったものが行われております。

 しかし、この理化学研究所に限った話ではございませんけれども、独立行政法人がやっているということで、一般的なそういうルールに縛られてしまう、いろいろな不都合が出ているんじゃないか、世界の競争という観点から見るといろいろな不都合があるんじゃないか、こういう御指摘があるところでございます。

 独立行政法人のあり方については、政府全体として今後の方針を検討される、こういうことも伺っておりますけれども、特にこうした研究開発を行う法人についてどのように検討がなされるのか、御見解を伺いたいと思います。

山際大臣政務官 委員御指摘のとおり、科学技術に関しては本当に重要なものだということを安倍政権としても深く認識をしてございます。その観点から、独立行政法人というのは本当に重要なものでございまして、御指摘のとおり、余りその運用上、かちこちに固まっているような状況ではうまくいかないというのも事実でございます。

 そういう問題意識も捉えまして、現在、行政改革推進会議において、これまでのその改革の取り組み等々を総括いたしまして、さらに点検した上で、独立行政法人、特に研究開発型の独立行政法人のあり方というものを、これからしっかり、本来の目的が達成できるようなものとして改革を進めていくという所存でございます。

 その際、一つには、各法人共通の規律、これはどうしても必要でございます。それをきちんと担保した上で、今御指摘があったように、研究開発型独法だからこそ自由度が必要だというところも加味した上で改革を進めてまいりたい、また、その方向で法案もいずれ出していきたいと考えております。

中野委員 今後議論が進んでいくということですので、その過程の中で、しっかりと日本の競争力というものが確保できるように、またしっかりと議論をしていきたいというふうに考えております。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

松野委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 民主党の笠でございます。

 きょうは下村大臣と、先ほども一部御指摘がありましたけれども、少人数学級、三十五人以下学級の推進を中心に議論させていただきたいと思います。

 ちょうど私どもも、政権交代をした後、この少人数学級を推進しようということで、小学校の一年生については法改正によって、しかし、残念ながら小学校二年生については加配を活用してということで、小学校一年生、二年生と三十五人以下学級を進めてまいりました。

 本来であれば、中学校三年生までしっかりと法改正をやっておけばという思いは今でも持っておるわけでございますけれども、残念ながら、財務省とのいろいろな交渉の上で、やはりそのハードルが高かった点というのは、私も、正直、自分も交渉した中で感じております。

 大臣、昨年のちょうど解散が決まった後の十一月の二十日だったと思いますけれども、大臣とは、私も、野党、与党、そして野党と、ずっとこの間、ともに少人数学級を進めていこうということで、党派を超えて活動をしてまいりました。

 十一月二十日に行われた、少人数学級推進、教職員の定数改善計画を求める教育関係の二十三団体、PTAの全国協議会、あるいは全国市町村教育委員会連合会等々、中学校長会、そういった二十三団体の皆様方の全国集会で、当時、私は副大臣として大臣のかわりに出席をしておりまして、下村大臣が自民党を代表して挨拶をされた中で、教職員の定数改善計画は着実に進めるべきだと思っている、自公政権が樹立したときには来年度の予算の中で定数計画が盛り込まれるようにしたい、本当の意味で子供たちを大切にする、教育を大切にするために、少人数学級を中学三年生まで着実に進めていく、定数改善を図りながら三十五人学級を進めていくことが必要最低条件であり、着実に実行したいということをおっしゃっているのを、私も聞かせていただきました。

 ただ、今審議をされている来年度の予算案の中では、小学校三年生を含めて少人数学級、三十五人以下学級の流れというものが一旦断ち切られた形になっておるわけでございますけれども、概算要求で大臣も頑張っていただいたということは私も承知をしておりますけれども、なぜこれを盛り込むことができなかったのか。あるいは、再来年度、定数改善計画をしっかりと策定していくというお考えがあるのか。まずその点をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 これは、党派を超えて、与野党を超えて、また政権交代があろうとなかろうと、文部科学関係の委員にとっては、共通して、教育現場を知っている者であれば、よりきめ細かな指導としての少人数学級を求めるというのは、ある意味では当然の思いであるというふうに思います。

 私も、御指摘のように、昨年十一月の集会、そのときは、自民党の教育再生実行本部長として今御指摘の発言をいたしました。その後、政権交代となって、大臣となって、それを実行すべく対応したところでございますが、なかなか財務省の壁が厚かったということでございます。これは、民主党政権のときも同様のことがあったのではないかと思います。

 我々、いわゆる文教族という言い方をするとしたら、党派を超えてこれから検討しなければいけない、あるいはこの問題が解決しなかった要因として、客観的に、国民的世論だけでなく、非常に科学的、教育的な成果、効果から、三十五人以下学級にすることがいかに教育上重要なのかという、理論的あるいは教育的な根拠を、より明確に財務省に対して、あるいは全体に対して打ち出すということがまだまだ足らなかったのではないかということをやはり謙虚に反省しなければならないというふうに思います。

 麻生財務大臣との最終的な大臣折衝においても、結果的に、小三以上の三十五人以下学級の推進については、悉皆で行われる平成二十五年度全国学力・学習状況調査等を活用し、効果検証を行いつつ、今後も引き続き検討するということになりました。つまり、まだまだ、そういう三十五人以下学級にした方が、より教育上、学習上、成果、効果が上がるということに対して、財務省の理解が得られていないということでございます。

 これは、全国学力・学習状況調査だけではなく、我々文教関係が、もっと学校現場の声を、先生方の声、あるいは親の声を含めて、きちっと把握をしながら発信をして、そして、ぜひこれがこれからより教職員の指導体制の充実になっていくような施策について取り組んでいく必要があると改めて感じております。

笠委員 今大臣おっしゃいましたけれども、もちろん私たちも、しっかりとした先行的な取り組みをしている事例や、あるいは今度の学力調査等々の中での検証というものも、これは不断にやっていかなければならないと思うんですけれども、やはりこの三十五人以下学級、少人数学級の必要性というものについて、これはもちろん学校の関係者、保護者の皆さん、あるいは全国の知事会の皆さん、もうずっと毎年のように、先ほどのような大会も含めて、多くの皆様方がその効果については、これは決して学力だけの話ではございませんので、学力ももちろん必要ですけれども、私は、財務省の、これは財源のことを考えてのことなのかどうかわかりませんけれども、意識を変えさせる努力というものを私たちがやはり協力をしながらやっていかなければならないというふうに思っています。

 きょうは財務政務官の方にもおいでをいただいておりますので、後ほど財務省にもお伺いをしたいと思いますけれども、我々、教育予算をやはりしっかりと確保しながら環境を充実させていきたい。しかし、一方で今財源が厳しい状況の中で、どういう形で工夫をしていけばいいのかということで、本来だったら、この平成二十五年度から五カ年で大量に退職をされていく、あるいは子供の数が減っていく、そういう自然減と、教職員の若返りの減額、給与費の減っていく部分を活用しながら、ですから新たな財源を使って少人数学級を進めていくということではなくて、そういった活用の中で、私どもは、むしろそれをいい機会として捉えて、教育環境の充実、少人数学級の推進につなげていこうというような思いで、五カ年計画というものを新たにつくっていこうということで用意をしておりました。

 大臣、確かに基礎定数をどうしていくのかとか法制化についてどうなんだということはあるかもしれませんけれども、やはり現実的には、今の財源の範囲の中で何ができるのかということを考えた方が、三十五人以下学級を進めるためには、実現する可能性が高いというふうに思っておりますけれども、これは二十六年度、次の年ですね、二十六年度から、例えば五カ年計画というような形で定数改善計画をおつくりになる、策定をする計画があるのかどうか、そのお考えを伺いたいと思います。

下村国務大臣 民主党政権のときにも、小学校一年生については教職員の定数改善の中で措置をされ、小学校二年生については加配措置で措置をされたという経緯があるわけでございまして、より現実的に柔軟にどう対応するかということの中での判断であったというふうに思いますし、それについても、今後も一つの判断材料ではあるというふうに思います。

 ただ、平成二十六年度以降については、これは、教職員の配置の適正化を計画的に行う施策という視点から捉える必要があるというふうに思います。財務省との関係の中で、二十五年度の全国学力・学習状況調査を活用し、効果検証を行うということの中で教職員定数のあり方について検討するという、財務省との、財務大臣との取り交わし、合意事項もございますので、これを踏まえながら、しかし、その結果を踏まえて、定数改善については計画性を持った対応を二十六年度以降してまいりたいと思っております。

笠委員 本来ですと、間もなく恐らく答申が出る第二期の教育振興基本計画に合わせる形で二十五年から五年間のということが、私たちも考えていたことですけれども、残念ながら、このことは我々は策定、そして現実に政策を実現することはできませんでしたので、ぜひ、二十六年度からで結構なので、やはり地方の自治体が、都道府県がとにかく計画的ないろいろな配置ができるような、これは十二、三年ぶりになるんですか、もう第七次で、定数改善計画、その後空白になっておりますので、第八次なのか、新しい改善計画かどうかわかりませんけれども、ぜひ五カ年計画、あるいはもっと前倒しをしても結構ですけれども、取り組んでいただきたいということを強く要請しておきたいというふうに思っております。

 それでは、財務省の方にお伺いをしたいわけですけれども、今、下村大臣からも話がありましたように、平成二十五年度の全国学力状況調査等を踏まえたさらなる政策効果の検証が必要であると。ただ、財政審では、単に各都道府県の平均学級規模と学力や欠席率を比較して相関関係がないことを理由に、効果がないんじゃないかというふうな主張を毎年のようにされているわけでございますけれども、学力に与える要因というものは、学級規模のほかにも、あるいは家庭の状況であったり、地域の状況であったり、さらには指導方法のあり方など、これはさまざま複合的な要因が絡んでいることで、単に県ごとの平均学級規模と学力の相関を見出すことは、もともとが私はナンセンスなんじゃないかというふうに考えているわけでございますけれども、まずその点についての政務官の御認識をお願いいたしたいと思います。

竹内大臣政務官 私も、個人的には地方議員経験もしておりまして、かつて、もう十年ほど前になりますか、京都市では、いち早く小学校一年生の少人数学級も自治体の単独の負担で実施したこともございまして、学校現場のさまざまな問題は非常によく認識をしておりますし、また先生の御主張の趣旨はよく理解しているつもりでございます。

 その上で、少人数学級につきましては、財政審におきまして、都道府県ごとの実績を見て、学級規模と学力、いじめ、不登校、暴力行為の発生件数の間に密接な関係は見出せないというだけではなくて、国際的なさまざまな実証研究におきましても、学級規模の縮小と子供の学力向上の間に相関関係が見出せない、いわばクラスサイズパズルというような言い方もされていますが、こういう見方が一般的であるということが一つ。

 それから、OECDにおきましても、学級規模を縮小することは一般的に費用が高く、教師の質向上への投資と比べて学力向上のための効率的な支出ではないとされていること等を踏まえまして、学力等への効果につきましては、全国レベルの検証を行う必要があるとしているものでございまして、単に都道府県ごとの実績を見て密接な関係が見られないということのみをもって効果がないと主張しているものではない、財政審の主張はそういうことでございます。

笠委員 今この少人数学級の効果についてはさまざまな学説がありまして、肯定的な評価、研究もあるわけです。あるいは、今政務官がおっしゃったように否定的に捉えているところもあるわけでございますけれども、私はやはり、今先行して取り組んでいる、例えば秋田県であったり、山形県であったり、あるいは大阪府の事例であったり、この少人数学級を進めているところは、それぞれの県の中で、学力、あるいはいじめの認知件数であったり、あるいは出席率、不登校の子供がどういうふうな数の変化があるのかとか、さまざまそういったことをかなり検証していることは政務官も御案内のとおりだと思うんです。

 また、国立教育政策研究所等々でも、この少人数学級の効果というものは行っているので、そうした中で、私はやはり、それぞれの地域の事情等々もありますから、大体、往々にして成果があったというような形のものが多いわけですけれども、お互いにそういったいい実例というものを共有しながら、フィードバックをしながら、よりその効果を高めていくということが重要なんだろうというふうに思っております。

 ですから、ぜひとも、この二十五年度の調査を踏まえたということでございますけれども、学力のみならず、今の学校の現場の状況、何が問題なのかということをしっかりと念頭に置いて判断をしていただきたいというふうに私は思っております。

 それで、今、財政審のお話がありましたけれども、この「平成二十五年度予算編成に向けた考え方」の中で、財政審は、定数改善の前に担任外教員、この十六・五万人を活用すべきではないかというようなことを指摘しております。

 これは文科省の方にお伺いをしますけれども、担任外の教員は学校でどのような任務を担っているのか、あるいは、この学級担任外教員を担任に振り向けるという場合にどういった支障あるいは影響が出てくるのか、その点について文科省からまずお答えをいただきたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 平成二十四年度において、校長、教頭などを除き、公立小中学校の教員の数は全体で約五十五万一千人となっており、そのうち学校現場で学級担任外の業務に従事している教員が約十四万四千人という数字になってございます。

 これらの学級担任外の教員につきましては、学校全体にわたります教務、生徒指導、進路指導、学年全体の連絡調整などの共通的な業務に当たるとともに、別途、加配教員として、小学校での専科指導、習熟度別指導、チームティーチング、通級による指導などの業務を担っているところでございます。

 これらの共通的な業務を担う教員につきましては、義務標準法上、一定数の学級担任外教員という形で制度的にも位置づけられているところでございます。そして、これらの担任外の教員を少人数学級の実現のために担任として活用した場合には、学校としての教務面あるいは生徒指導など、学校あるいは学年全体の共通的な業務がおろそかになる、学校としての組織の力がどうしても弱くなるということで、学校全体の円滑な運営に支障を来しかねないというふうに認識いたします。

 また、学校の実情に応じて特別に措置されております加配教員を学級担任に回すというケースの場合には、個に応じたきめ細やかな習熟度別指導や障害を持ったお子さんの通級による指導などが行えないということになり、教育の質の低下を招きかねないというふうに認識いたしております。

笠委員 今局長の方からも御説明ありましたけれども、担任外の教員は単に遊んでいるわけじゃないんですね、非常に重要な役割を今御説明があったような形で担っている。さらには、学級担任と学級担任外の労働時間もそう大きな差は見られないわけです。

 こういった中でも、やはり、まずは担任外の教員を活用すべきというような思いを持っておられるのかどうか、政務官にお伺いをしたいと思います。

竹内大臣政務官 担任外教員は十六万五千人いらっしゃるわけでございますが、その活用につきましては、学校ごとに状況は異なるものでございまして、担任外教員が学校で担っておられる任務や担任に振り向けた場合の影響につきまして、財務省として一概に言うことはできかねるところでございます。

 ただ、全体として見れば、一部の都道府県におきまして、実際に基礎定数約千二百人分を少人数学級に活用されているところもございます。それから、中学校の教員は約四割が担任外教員でいらっしゃいますこと等を踏まえまして、いろいろな御議論はございますけれども、私どもといたしましては、その活用の余地を十分に検討する必要があるのではないかと考えているところでございます。

笠委員 今、政務官は、この担任外教員の活用について財務省としては一概に言えないんだということをおっしゃっていたけれども、このことはかなり強く、概算要求段階でもそうですけれども、この予算編成に当たっても、これはいろいろなところに根回しに動いていたというのがやはり財務省のやり方なんですよね。

 私は、やはりもっと学校現場の実態というものを財務省の皆さんも見に行った方がいいと思います。今学校現場が抱える問題についても、きょう資料は出しませんけれども、十年、二十年前と比べてみますと、不登校の児童生徒の数も二倍ぐらいにふえているし、学校内での暴力行為の数も小学校で約五倍、中学校でも二倍以上、あるいは日本語指導が必要な外国人の児童生徒の数、通級による指導を受けている児童生徒数、要保護及び準要保護の児童生徒数、本当に今の学校現場の環境というものが非常に厳しいものになっている中で、やはり、一人の教員の、一人一人の子供たちと向き合う時間、そしてきめの細かい対応をしていきたい、そういった思いに応えていくためにも、私は、この少人数学級というものをぜひとも計画的にしっかりと進めていくことができるように、財務省にも、平成二十六年度へ向けては、政務官の判断を、大臣とともに、ぜひともこれを御理解いただきたいと思いますし、ぜひ政務官も、県会議員もやられていたということで学校現場にはかなり行かれているとは思いますけれども、そうした現場の声を直接に聞いてみてください。いかがでございますか。

竹内大臣政務官 私も、学校現場におきまして、いじめや特別支援の問題とか、多くの厳しい課題があるということはよく承知をしているところでございます。その上で、国全体の義務教育教職員定数という問題を、改めて国全体としてよく考えなければならないというふうには思っております。

 ただ、一つ二つ申し上げますと、子供当たりの教員数は国際的に見て遜色のない水準にあるということが一つ、それから、少子化のもとで、教職員定数は子供の数の減少ほど減少しないため、子供当たりの教員数は毎年二千人程度増加してきているということ等を踏まえまして、学校現場におけるさまざまな課題への対応を行うに当たっても、既存定数の活用の余地はないのか、不断の検討の必要性があるというふうに考えております。

 そうした検討を行う中で、その時々の学校現場の課題に対応した必要な加配措置を講じてきているところでございまして、二十五年度予算案におきましては、いじめ、不登校や問題行動への対応等のために約七千九百人の加配定数を行っております。それからまた、比較的軽度の障害のある児童生徒のためのいわゆる通級指導への対応等のため、約五千九百名の加配定数を講じております。そういう意味で、対前年度八百人増となる約六万三千四百人の加配定数措置を講じているところでございます。

 今後とも、少子化のもとで子供当たり教員数はふえていくことを踏まえまして、既存定数の配置の見直しを含めて、その時々の学校現場の課題に対応していく必要があると考えているところでございます。

笠委員 残念な答弁だと思います。

 決められたように大体同じ話ばかり毎回されるわけでございますけれども、では今おっしゃっているような一クラス当たりの人数であるとかいろいろな点でいうと、まだまだOECD平均よりも日本は上回っておるわけでございまして、やはりこれを先進国並みにしっかりとした少人数学級を進めていくということ、そしてさらには、今定数改善を行わなくても要は少子化で子供当たりの教員数は年間二千人増加している、いじめや特別支援教育など現場が抱える多くの課題というものを本当に深刻に受けとめているのかどうか、そこは私は財務省と我々の見解の違いだというふうに思っております。また改めて財務省とはやらせていただきたいと思います。

 やはり、大臣にもう一度お伺いをいたしますけれども、大体こういう調子だと思うんですよ、財務省。しかし、安倍政権がやはり教育改革というものを最重要課題の大きな一つの柱として掲げられていることは、私は高く評価をしたいと思っています。

 ただ、大事なことはやはり中身でありますので、ぜひとも、少人数学級の推進、五年間の新しい定数改善計画をつくっていただきたく、改めて御答弁をお願いしたいと思います。

下村国務大臣 時代の変化の中で、学校現場も多様な子供たちに対応するためには、教師の目が十分に行き届き、子供一人一人に対してきめ細かく対応できるような環境を整備する。そのためには、今まで以上に教員の配置を考えるということは大変重要なことだと思います。

 定数措置についての必要な検証は行いながら、教職員配置の適正化を計画的に行う。こういうことについて考えていくことは、文部科学省として大変重要なことであるというふうに思います。法制化による三十五人以下学級の制度化について、地方の声を十分に聞きながら、引き続き努力してまいります。

笠委員 それともう一点は、きょう最後にちょっとお伺いをしておきたいと思います。

 高等学校の無償化の所得制限、このことを自民党さんは公約として掲げられ、たしか昨年も三党協議も行わせていただきました。この中で一点。大臣、今度の幼児教育の無償化については所得制限をかけられるお考えですか。

下村国務大臣 高校授業料の無償化は、政権交代をしても、それを否定するものではございません。

 しかし、同じ財源四千億という中で、より成果、効果の上がる対応をすべきであろうということで、公私間格差を是正する、そしてさらに低所得者層に対する厚い支援をする必要があるのではないか。

 その財源をどこから持ってくるかということについては、なかなか今の財務省の答弁のように教育については非常に厳しい姿勢がありますから、この四千億の中で割り振るということになる。その中で、所得制限の中で、財源を浮かして、公私間格差や低所得者層に対する手当てを行う、このような形での所得制限を考えているわけでございます。

 幼児教育の無償化については、幼児期は生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要な時期であり、この時期に質の高い幼児教育を保障することは極めて重要なことであるというふうに思っておりますし、また幼児教育の無償化については自民党、公明党の連立政権合意にも盛り込まれている重要な事項であります。

 先日も、幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議を実施し、三月二十五日の第一回の会議に私も出席をしてまいりました。

 今後、関係省庁と連携の上、与党とそれから関係閣僚、厚生労働省、それから内閣府の担当大臣、この中において、政府全体として、所得制限を設けるかどうかも含め検討を進め、できるだけ速やかに実現に向けて努力してまいりたいと思っております。

笠委員 時間が参りましたのできょうは終わりたいと思いますけれども、また次回、高等学校の無償化と幼児教育の無償化の整合性を含めて議論させていただきたいと思います。

 終わります。

松野委員長 次に、郡和子君。

郡委員 民主党の郡和子でございます。

 まず、おくればせながら、下村大臣、大臣御就任おめでとうございます。

 きょうは、大臣と御一緒にいろいろと質疑をさせていただきますけれども、幾つか気になる点、特に、被災地ということもありまして、被災地の子供たちのケア等についても伺わせていただきたいと思います。

 冒頭は、まず、大臣も所信で述べられておりました、スポーツ立国の実現を目指すということに関してでございますけれども、いわゆる全柔連問題でございます。

 スポーツ界の指導及び指導者のあり方について、これまでも一部で問題視されてきた実情が明るみに出たというふうに思っています。とりわけ女性アスリートと指導者との関係性におきまして、水面下にあったパワハラですとかセクハラですとか、こういった問題を告発する声がようやく上がり始めた。この問題は、実は、スポーツ界のみならず、絶対に許されない人権侵害を暗黙のうちに許容してきたこの国のあり方そのものを問う深刻な問題だというふうに私は認識をしているところです。

 スポーツ界では女性アスリートが活躍する場面が急激に拡大をしているわけですけれども、この問題を乗り越えることこそが、アスリートと指導者との関係、また指導者のあり方の大改革につながって、スポーツ界の活性化とアスリートの飛躍に結びつくと確信しております。

 政府の御対応をお尋ねしたいと思います。大臣、よろしくお願いします。

下村国務大臣 エールをありがとうございます。

 今般、女子柔道日本代表チームの監督が指導において暴力行為を行った事案が生じたことは大変遺憾なことでございます。

 昨日、全日本柔道連盟は理事会を開催し、具体的な指導指針の策定と周知、指導者資格制度の確立、女性監督、女性コーチの導入などを内容とする第三者委員会の提言、コーチの資格制度の確立や定期的講習制度の導入、監督、コーチ、選手等の信頼関係の醸成等を含むJOCの改善勧告を踏まえ、全柔連改革・改善実行プロジェクトを設置し、改善に取り組むというところでございます。

 文科省としては、今後とも、この全柔連の対応を注視してまいりたいと思います。

 また、ことし二月五日、私がメッセージとして「スポーツ指導における暴力根絶へ向けて」を発しました。ここでもお示しいたしましたが、指導者が暴力によらず後進をしっかり指導できる能力を体得することができるよう、スポーツ界において指導者の養成、研修のあり方について改善が行われることが必要だと考えております。

 文部科学省においても、有識者会議を設置し、コーチング等やスポーツ医科学に立脚したスポーツ指導のあり方を検討することにしております。引き続き、JOCや日本体育協会等スポーツ界と連携しつつ、スポーツ指導における暴力根絶に向けてしっかりと取り組んでまいります。

郡委員 この件につきましては、後日、機会があれば、またじっくりと大臣と議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 次に、去る三月二十一日、参議院の文教科学委員会における質疑について幾つか確認をさせていただきたいと思っております。

 先ほども笠委員の最終質問にございました幼児教育の無償化についてでありますけれども、林久美子委員の質問に対しまして、大臣は、幼児教育の無償化については事実上二十五年度からスタートすることにしたと答弁をされました。それに続いて、ただ、これは全ての第三子目が無償化でありますけれども、三番目、三人全員がその三、四、五歳の対象年齢に入っていなければ、残念ながら第三子目が無償化ではありませんと答弁をされました。

 これは、来年度の幼稚園就園奨励費補助事業の多子世帯の負担軽減拡充の御説明だったというふうに受けとめさせていただきました。

 幼稚園に三人のお子さんが同時に就園をする場合に、三番目のお子さん以降は、保育所などと同様に所得制限を撤廃して、全ての園児を補助対象にして無償化する措置だというふうに理解をしているわけですけれども、三人が同時に入園をする状況といいますと、年子か、あるいは三つ子か、双子と兄弟か、いずれにいたしましても、無償化となる子供はほんの一握りだというふうに思います。

 対象となる子供の人数、それから想定している予算はどれぐらいでしょうか。

下村国務大臣 文部科学省の平成二十五年度予算において、幼稚園に同時就園する第三子以降の園児のうち、所得制限の撤廃により新たに幼稚園就園奨励費補助の対象として経費を計上することになりました園児の数は、約八百人でございます。その予算額は約六千三百万でございまして、事実上、まず二十五年度はこの八百人から無償化対象ということになるわけでございます。(発言する者あり)

郡委員 今、そんなのでいいのかと声がかかりましたけれども、これで二十五年度、幼児教育を無償化しましたと本当に言えるのかどうか。針小棒大と言わざるを得ないというふうに思います。

 次に、本来の意味での幼児教育無償化ということになりますけれども、三歳から五歳までの幼児教育を受ける子供の教育費を無償化する場合の予算、これは七千九百億円だと御答弁されました。この七千九百億円には、保育園や認定こども園に就園している子供たちの保育の無償化も入っているとのことであります。

 この予算の財源についてなんですけれども、社会保障と税の一体改革で新たな子供支援政策に投じられることになっている七千億円、あるいはプラスアルファで一兆円とも言われているこの予算の財源との関係性について問われまして、大臣は、子ども・子育て支援体制との関係の中で、今後どう議論するかということは一つの議論ですが、新規に今のテーマをその中に入れようという予定はない、幼児教育の無償化の財源をそこに入れるということを今考えているわけではないと御答弁されました。

 私は、今はない、今考えているわけではないという言い回しが大変気になるわけでございまして、先ほどもお話しでしたけれども、政府・与党で検討会を立ち上げられたそうですけれども、今後の検討の中で、無償化の財源を一体改革の予算財源の中に入れる可能性はないというふうに理解してよろしいのかどうか、明確な御答弁をいただきたいと思います。

下村国務大臣 まず、二十五年度の予算の中で第三子無償化はスタートであるということを申し上げたわけでありまして、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。

 そして、子ども・子育て支援新制度については、昨年六月の自民、公明、民主の三党合意において、「幼児教育・保育・子育て支援の質・量の充実を図るため、今回の消費税率の引き上げによる財源を含めて一兆円超程度の財源が必要であり、政府はその確保に最大限努力する」とされているところでございます。

 幼児教育無償化の財源については、今後、関係府省と連携し、検討を進めてまいりたいと考えておりますが、現時点において、子ども・子育て支援新制度に充てることとしている財源を、参議院の委員会でも述べたとおり、幼児教育無償化に充てることを予定しているものではございません。

郡委員 明確に、予定しているものではないということで、充てないというふうに御答弁をいただけるかどうかです。

下村国務大臣 文部科学省だけの政策であればそのように明言をしたいところでございますが、これは、厚生労働省それから内閣府の三府省、それから与党との連絡協議会の中で議論をするということになっております。しかし、文部科学省として、また私の立場として、充てないということで、財源については今後ほかの部分で検討をしてまいりたいと考えております。

郡委員 つまりは、議論の俎上にのせられる可能性はあるというふうな御答弁だったのだろうというふうに思います。ぜひ、大臣、今のお答えをしっかりとその検討会の中でも言っていただきたいというふうに思います。ぜひそのようにお願いをしたいと思います。

 次に、安倍政権の教育政策について、その方向性、理念について伺わせていただきたいというふうに思っています。

 大臣も所信の中で、第二次安倍内閣は経済再生と教育再生を内閣の最重要課題として掲げて取り組んでいる、日本の将来を担う人を育てる教育の再生に取り組むというふうに、強い御決意を述べられたというふうに思っております。

 安倍総理は、著書「美しい国へ」の中で、イギリスのサッチャーさんが行った教育改革を大絶賛されております。与党の教育政策は、サッチャー政権の教育改革を念頭に置いている一面が見受けられるというふうに私は受けとめておりますけれども、下村大臣はサッチャー政権の教育改革をどう評価されていますでしょうか。

下村国務大臣 私も、イギリス、サッチャー教育改革について特に学ぶべきものがあるというふうに考えまして、それを「サッチャー改革に学ぶ教育正常化への道」という、共著ですが、PHPから出版をいたしました。その中で、「国家戦略としての教育」ということで、視察に行ったことを我が国で参考にできる部分があるのではないかということで著書にも書いたところでございます。

 ただ、制度は、この制度にすることによってパーフェクトに全て解決するというものではなくて、どんな制度にしても、必ずその制度におけるプラス面、マイナス面もあるわけでございまして、イギリスにおけるサッチャー教育改革全てが成功した、全てがよしと思っているわけではございません。その中で参考になる部分については積極的に活用すべきではないかというふうに思っております。

 特に、一九八〇年代にイギリス国民に対してサッチャー教育改革を行うことによって、自尊心を育てる教育を行った、また教育水準の向上を目指す教育改革を行った。いろいろな、手段については必ずしも我が国がそのまま取り入れられるとは思えない部分もありますが、しかし方法論としては参考にすべき部分があるのではないかと思います。

 具体的に、例えば、これは我が国を逆に参考にしたわけでございますけれども、国定カリキュラムの作成や全国共通学力テストの導入、それから、我が国では導入されていませんが、学校査察機関の設置、また学校評価制度の導入、そういうふうな改革を実施したということでございます。

 いい部分については、イギリスだけでなく、ほかの国の教育制度改革等も参考にしながら、活力のある教育再生を行うことによって日本がよみがえるような国になるよう、教育の部分から取り組んでまいりたいと思います。

郡委員 私の認識はちょっと違っておりまして、このことはさまざまなところでも指摘をされていると思いますけれども、新自由主義的改革、つまり、国民に権限を与えるとともに自己責任を負わせる改革、これが教育改革の中にも盛り込まれたわけでございます。つまりは、学校の自律性を高めて裁量権を拡大して、地方自治体の権限を削減するなどです。保護者には学校選択の権利を付与するのとあわせて、学校理事会制度を通じて学校経営の責任を負わせたというようなこともあったわけでございます。

 このサッチャー改革では、基礎学力は実は向上いたしませんでした。しかも、教育機会の格差というのが拡大をいたしまして、放校、退学処分者が続出して、彼らによる犯罪も増加したわけです。

 教育の荒廃をとめたのは実はブレアでありまして、教育機会の地域間格差それから階層間格差の是正、いわば落ちこぼれを出さない施策を大変力強く進め、社会保障費を削って教育予算を三割ふやした、こういうことでイギリスでの教育改革がうまくいったんだろうというふうに思っているわけです。

 私は、今回のこの教育改革において、このサッチャー改革が色濃く反映されている、しかもサッチャーさんが言っていらっしゃった植民地政策が生んだ自虐史観の偏向教育を是正する、こういうことも含めて、安倍政権が取り組まれている教育改革というのは多少問題があるんじゃないだろうか、そんなふうに考えてもいるところです。

 次に、被災地の議員でございますので、その件についてでございます。

 所信の中でも、大臣は、東日本大震災からの復旧復興ということで、被災者の心に寄り添うということをおっしゃられております。

 子供さんを支援しているチャイルドラインみやぎの調査によりますと、相談電話の事柄別集計というのがありまして、二〇一一年は心に関することというのがとても多かったんですね。二〇一二年では進学、将来のことというふうに変わってきたんですが、二〇一一年は心に関することとあわせて虐待、暴力ということについてが全国と際立った差を見せておりました。被災地の子供たちに被災後どんなことが身の回りに起こったのかということを想像させる数字でございました。

 こうしたことに対応するためにも、被災地の学校におきましては、子供の心のケアの問題も勘案し、教職員と子供たちや保護者との継続的、安定的そして濃密なかかわり、人間関係の構築というのが大変重要になってくるんだろうというふうに思っています。

 公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議、一昨年の八月十九日に行われたものを見せていただきましたけれども、被災三県から意見が出されていますね。宮城県からは、校舎が被災して仮設校舎、ほかの学校の校舎を間借りする状況が長期化する可能性もあります、児童生徒の心のケアの面からもきめ細かい指導が必要でありますことから今後とも継続した加配をお願いしたいと思っております、家庭環境の激変が原因で経済状況の悪化まで進んでいるのが現状であります、児童生徒の心の変化に対応するためにも生徒指導加配や少人数等の加配の措置がこれまで以上に必要になるところでありますというふうに述べられているわけなんですけれども、この加配の問題に来年度予算でどういうふうに対応されましょうか。また、二十六年度以降も継続すべきと考えますけれども、いかがでしょうか。

下村国務大臣 お答えいたします。

 先ほどの御質問にまずお答えしたいと思いますが、ブレア政権も、教育、教育、教育ということの中で、サッチャー政権からの十八年間の中の教育のマイナスの部分について是正する中でさらに教育改革を進めたというふうに私は認識しておりますし、いずれにしても、イギリスにおいて、政権交代を経ても、教育については力を入れて、サッチャー政権そしてブレア政権でよみがえるイギリスをつくってきたのではないかというふうに評価しているところでございます。

 その上で被災地の問題でございますが、御指摘のように、被災した児童生徒に対するきめ細かな学習支援や震災による心的被害に対するケア等への対応が必要であると認識しております。

 このため、東日本大震災に係る教育復興支援加配として、平成二十三年度には千八十人、平成二十四年度には千三十一人の教職員定数措置をいずれも関係県から申請どおり、そのまま要求どおり実施したところでございます。

 この加配措置については中長期的に継続した対応が必要であるというふうに私どもも考えておりまして、平成二十五年度予算案においても、被災した児童生徒の学習支援のため一千名の定数措置を計上いたしました。

 ちなみに、阪神・淡路大震災のときも加配措置を十五年間継続したということでございますし、これを参考にしたいというふうに思います。当然、平成二十六年度以降も、各県からの要望等を踏まえ、息の長い支援をしてまいります。

郡委員 ぜひよろしくお願いをします。私どもも背中を押させていただきますので、ぜひともお願いしたいと思います。

 加えて、今、被災地では、多くの学校が、御承知のように、仮校舎であったり、また、ほかの学校に間借りをしたりしているわけです。そうした学校の校長先生や教頭先生、先生方は、避難、復旧の厳しい体験を子供たちとともに一緒に乗り越えてきたわけです。

 そうした子供たちにできる限り寄り添って成長を見守っていきたいという意思を持っておられる方々が多くおいでです。加配の臨時任用も含めまして、平時のルールでの人事異動というのは行うべきではないというふうに思うんです。子供の成長と地域の復興が見えてくるまでの一定期間は子供たちとともにありたいという意思を尊重した人事を行うべきだというふうに考えているわけです。

 実は、これは被災した小学校の校長先生が、児童の引き渡しが終了するまでの避難についてということで、大変克明におまとめになった文書がございます。実は、この校長先生は、ぜひとも、この子供たちと一緒に成長を見守りたい、そして、ここで得た知見をさらに生かしていけるようにしたい、そういうふうに思っておられました。しかし、その年が終わってすぐ四月には異動になられたんですね。

 本当であれば、同じ経験をともにした先生方には子供たちも信頼が厚いわけです。ぜひとも、平時のルールではない人事異動をお願いしたいと考えているわけなんですけれども、この人事権についてはそれぞれの自治体の教育委員会等に委ねられるのでしょうけれども、被災三県において、被災地に配慮した人事をどのように行っているのか、現状認識を伺いたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 被災三県における教員人事においての被災地に配慮した人事の状況でございます。

 平成二十五年度に向けた人事におきまして、宮城県におかれましては、被災地域の学校の活性化を図ろうという観点で、被災地域内の学校への留任を希望した教員の可能な限りの留任、あるいは、被災地域への広域的な異動や被災地域出身の教員の被災地域の学校への配置、また被災地域出身や被災地域の勤務を強く希望する新規採用教員の被災地域の学校への配置、また養護教諭の配置拡充による被災地域の児童生徒の心のケアの充実という方針で取り組んでおられると聞いております。

 また、岩手県におかれましては、沿岸部と内陸部の交流の積極的な実施、それから被災地域の学校を過去に経験した校長の沿岸部の学校への配置、また被災地域の学校への主幹教諭の配置という取り組みを進めておられるようでございます。

 また、福島県におきましては、県外へ避難した児童生徒が多い県への教員派遣の継続、それから被災地域において再開する学校への加配教員の配置という形で、各県の、また被災地域の状況に配慮された人事異動の方針をもって人事を行っておられる状況と承っております。

郡委員 ありがとうございます。

 ぜひ、平時のルールではない人事異動をお願いしたいと思います。

 今、子供たちは、仮設住宅から遠距離通学で学校に通っていて、時間を奪われております。仮設住宅の空間で、十分な自分の居場所を確保できない状態も続いています。避難生活で仲間と離れるというような状況もあります。時間、空間、仲間というこの三つの間、間というのが必要で、勉強だけじゃなくて、遊びですとかクラブ活動などがとても重要になっているんだろうなというふうに感じているところです。

 学校やNPOが、そういった意味で、広い学習を、クラブも含めてですけれどもサポートする、学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業は、地域や学校のアイデンティティーを保つ上で本当にとてもありがたい事業だというふうに思っています。この事業をぜひ二十六年度以降も継続すべきだと思いますけれども、大臣、短目にお答えいただければ幸いです。

下村国務大臣 御指摘のように、学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業を実施し、学校や公民館、仮設住宅等において、子供たちの学習支援や地域住民との交流活動を支援する、これは大変重要なことであり、平成二十五年度予算において十二億円計上し、これからも引き続き、被災地の要望を踏まえて継続、努力をしてまいります。

郡委員 二十六年度以降もぜひお願いをします。

 最後になりますけれども、被災地への修学旅行についてお尋ねをしたいと思います。

 地元、河北新報の三月八日の記事でございましたけれども、会津若松や松島など東北の主な観光地は観光復興を実感できずにいる、会津若松市への修学旅行は震災前の一〇年度、県外から八百四十一校あった、一二年度は二百十校と一一年度の倍にふえたものの一〇年度の二五%にとどまる。会津若松の観光物産協会の方は、震災前の三五%まで戻ってきたけれども首都圏が苦戦している、距離が離れれば離れるほど会津も福島だと一くくりにされると表情を曇らせたというふうにありました。

 しかし、被災地への修学旅行、研修旅行の効果は、実際に来られた学校によれば、本当に効果が大きいというふうにお話しになられています。

 大臣は、所信表明で、いじめ、体罰問題への対策の一環として、規範意識や自主性、社会性を育む道徳教育の抜本的な充実を図る、このように表明をされたわけですけれども、被災地では、子供たちが、まさにこの規範意識や自主性、社会性を発揮して、地域の高齢者や年下の子供たちを介助しながら避難し、多くの人命を救助いたしました。

 そしてまた、その被災地の子供たち、また地域社会と交流をするということは、まさに生きた教育になると確信をしております。道徳の教科化というよりも、まさに道徳の実践教育が、この修学旅行であり研修旅行になっているというふうに私自身は思っているわけでございます。

 政府として、被災地への修学旅行、研修旅行の実践を奨励すべきと思いますけれども、いかがでしょうか。

下村国務大臣 修学旅行は、学習指導要領における特別活動に位置づけられており、その行き先等の内容については、地域や学校の実態及び児童生徒の心身の発達の段階や特性等を十分考慮して、各学校において定めるべきものでございます。

 このため、文部科学省としては、被災地への修学旅行については、平成二十三年度から、各都道府県教育委員会の生徒指導担当者が参加する会議において、東日本大震災の被災地への遠足を実施した事例や、被災地への研修旅行を実施した事例等を紹介しているところでもございます。

 また、平成二十三年八月、各都道府県教育委員会等に対して、今後の修学旅行の実施に当たっては、風評に惑わされることなく、現地の正確な情報に基づき、できる限り予定どおりの実施が望まれる旨の観光庁の意向を周知したところでもございます。

 私自身も、中学生五十人ほどと陸前高田に一緒に、ボランティア、復興支援、現地の人との交流で行ったことがございますが、そのことをきっかけに中学生たちの意識が物すごく変わりました。そこは野球チームでありましたが、自分たちがやれることは一生懸命やろうということで、一日、二日で意識が物すごく変わったという体験をしておりますし、多くの子供たちにそういう環境を提供することは、教育上も大変望ましいことであるというふうに考えております。

郡委員 ここに、福岡の高校生なんですけれども、被災地を訪問した後の報告書がありますけれども、これも、本当に私も胸が熱くなって読ませていただきました。

 高校生の一人は、研修旅行で心に刻まれたことが二つある。一つ目は他への感謝、ボランティアさせていただくことへの感謝、被災時の様子を伝えてくださることへの感謝、そして何よりも自分がいる環境への感謝。二つ目は常の意識、阪神・淡路も中越も経験していないけれども、大震災が起きても対応できるような常の意識を養うことが大切だと。

 中高生というのは非常に多感な時代でして、親御さんや学校の中でもともすれば反発をする、そういう時代でもあるんだろうと思いますけれども、被災地の様子を目の当たりにして、本当に大きく変わるんだというふうに思います。

 ぜひ、千年に一度の被災は千年に一度の学びの場にもなっているということを御認識いただき、奨励していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

松野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

松野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鈴木望君。

鈴木(望)委員 日本維新の会の鈴木望と申します。

 それでは、文部科学大臣の所信表明に対する基本的事項について質問をさせていただきます。

 まず最初に、質問を始める前に、三月二十二日に行われた春の甲子園大会の開会式の文部科学大臣の挨拶についてでありますけれども、いじめや体罰について言及をし、いじめは人として決して許されないこと、スポーツの指導から体罰を一掃しなければならないことを述べられました。

 あのような、全国民が注目をし、また、スポーツの指導のある意味では頂点の場というようなところで、いじめ、体罰について、単なる激励の挨拶以上の挨拶をされたことを高く評価させていただきたいと思います。

 さて、日本維新の会の教育に関するスタンスを述べさせていただきますと、日本維新の会は、個人の自由な選択と多様な価値観を認め合う社会を前提に、自立する国家、自立する地域、自立する個人の実現を目指しております。自立する個人は、まさに教育によって形成をされるわけでありまして、維新の会は教育を重視しております。

 さて、質問に入らせていただきたいと思いますが、現時点における教育の再生とは何かということでございます。大臣も、所信表明の中で何回も訴えておられます。いつの時代にも教育は重要でありまして、教育の重要性については、いつの時代も叫ばれてきたところでございます。

 例えば、典型的な地方分権の世の中であった江戸時代にも、各藩は、誰に強制されるわけでもなく、それぞれ子弟の教育に努めていました。江戸時代の中期以降、ほとんど全ての藩に何らかの藩校があったと言われております。その中には、NHKの大河ドラマ「八重の桜」で取り上げられ、全国的に有名になった会津藩の日新館、お隣の米沢藩の興譲館、私の郷里の近くでいいますと、三河吉田藩の時習館、枚挙にいとまがございません。それぞれ有為な人材を輩出し、時代の要請に応えてきたわけでございます。

 さて、いつの時代にも、教育の重要性は認識をされていたわけであります。それでは、今の時代に、何が教育上問題となっており、教育の何を再生すべきと考えておられるのか、大臣の基本的な問題意識を改めましてお伺いさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

下村国務大臣 冒頭、甲子園の大臣挨拶について御評価いただきまして、ありがとうございます。

 当委員会の与野党理事から、大臣挨拶には必ず、いじめ、体罰、暴力の一掃、そして二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック招致、これをしっかり入れてほしいという御要望を踏まえて、挨拶文をつくらせていただいたところでございます。

 さて、今、教育において、何が問題で、何を再生すべきと考えているかということについては、教育再生という安倍内閣の最重要課題の一つ、経済再生と教育再生が並び重要なテーマでございます。

 これは、私の大臣所信の最後にも述べさせていただきましたが、特に、我が国においては、子供たちが、このときの大臣所信のデータは、高校一年生の、財団法人日本青少年研究所のアンケート、意識調査について披露させていただきました。六六%の日本の高校生は、自分はだめな人間だと思っている。これは、諸外国の、中国が一三%、アメリカが二二%、韓国が四五%の比率と比較しても、日本の子供たちは非常に自分に自信がない。こういう子供たちが大人になったときに、本当に活力ある日本をつくれるか、また、幸せな人生を過ごせるかということになると、非常に悲観的に思わざるを得ない部分がございます。

 本来、教育は、その人の能力を引き出すことによって自己実現をし、同時にそれが社会に、世の中に貢献することによって、人のために、社会のために、あるいは国のために尽くすことができるという充実感の中で幸せな人生を送る、そのツールとしてきちっとした教育を受ける、そういう環境をつくっていくことが必要だと思います。

 しかし、その教育の中で、自分をだめな人間だと思う子供たちがどんどんふえていくような教育はあってはならないことであって、それこそ教育再生をしなければならないことであるというふうに思います。

 具体的には、いじめが、相変わらずといいますか、今まで以上に数がふえている、また学力の低下も危惧されている、そういう危機的な局面があるというふうに思います。

 人づくりは国づくりである。強い日本を取り戻すために、日本の将来を担う子供たちの教育を再生するということは不可欠なことである。そのために、官邸に教育再生実行会議をつくったところでございます。

 目の前にいる子供たちを救うためにいじめ問題について提言をしていただきましたが、教育のある意味ではシステムの根幹である教育委員会の抜本的な見直し、これを議論した後は、ぜひ、大学教育のあり方そのもの、大学教育は入学試験を含めてですが、あり方そのものを議論することは、当然、高校以下の教育のあり方についても見直すということになってくると思いますし、六・三・三・四制のあり方を含めた、ありとあらゆる抜本的な制度疲労を今起こしている、あるいは、そもそもの教育目標、目的が新しい時代にそぐわなくなっている部分も出てきているんだな、こういう部分から、抜本的に、このときに教育再生として改革していかなければ、日本の未来、子供たちの明るい未来はない、そういう思いを持って教育改革に取り組んでまいりたいと思います。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 要するに、時代の流れに即応しというか対応した新たな教育制度を抜本的に改革していくのが今求められて、それが教育の再生であるというふうに受けとめさせていただいたわけでありますが、その中で、いじめの問題についても言及をされておりました。

 いじめ、体罰について質問をさせていただきたいと思いますけれども、昨今、いじめ、体罰の問題が社会的な問題となっておりまして、甚だ心の痛む事象も起こっているわけでございます。

 いじめや体罰は絶対に許されないことであり、決然たる態度で臨む必要がございます。一方で、いじめや体罰は、古今東西、いつの世の中でも、どこの地域でも存在をするというのも事実でございます。

 それでは、まず、いじめと犯罪の関係について質問をさせていただきたいと思います。

 いじめと犯罪は別個のものなのか、別個のものなら、どこまでがいじめで、どこまでが犯罪なのか、見解をお伺いしたいと思います。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 まず、いじめというものと犯罪というものの議論を区別すべきである、これは我々が一貫して言ってきたものであります。

 私も、教育現場で接しながら、日常起こる、例えば冷やかしやからかい等々がいじめのスタートの段階では起きます。それは、担任であったり教師であったり、大人がしっかりと教育的指導をして、責任を持って解決していくものであります。

 一方で、金品を盗むとか、あるいはたかられるとか、先日も、中学一年生が数十万円たかられて、非常に苦しめられていたという現状の報道がなされましたけれども、これは明らかに、窃盗罪であったり、物を壊されたりしたら器物破損罪なわけですね。学校という現場において、この犯罪までいじめというものの範疇に入れてしまいながら、結果、被害者は泣き寝入りせざるを得ないという状況が、現在の社会問題の根幹の中にあろうかと思っています。

 その中で、我々自身、このように、今までのアンケートでは、例えば、冷やかしやからかい、悪口やおどし文句、嫌なことを言われるというものと、金品をたかられる、あるいは、ひどくぶたれたり、たたかれたりする、これを全部いじめの範疇としてアンケート調査をしてきたわけですね。しかし、個別に具体例を示しまして、例えば、ひどくぶたれたり、たたかれたり、蹴られたりをする、これは暴行、傷害ですから、町でやったら当然逮捕される事案になるわけです。

 区別の仕方としては、私は教育現場の先生たちにはいつも言うんですが、一般社会で起こっていたら、一一〇番されたり、あるいは警察が介入して捜査を必要とするような事案は明らかに犯罪であると。つまり、教育的側面としての指導と、社会規範としてのルールとしての指導、この両方をしっかりと行わなければならないということを先生方にも言っていますけれども、これを報道というフィルターを通すと、明らかな犯罪も、またいじめ事件が起こったというように矮小化されているのは非常に、これは甚だ、そういう被害に遭っている者たちを傷つける報道であろうなと私は感じています。

鈴木(望)委員 犯罪でしたら、決して許されるべきではなくて、決して見逃してはいけない、これは当然のことだと思うんです。ただ、どこまでがいじめか、どこからが犯罪なのかというのは、例を挙げて再度お尋ねさせていただきたいんです。

 例えば、水や泥をかける、プロレスごっこの強要は、いじめだと思うんですね。ただ、それが、度が過ぎると暴行罪になる、犯罪になる。また、教科書を破る、捨ててしまうというのも典型的ないじめだと思うんです。ただ、これも度を越すと器物損壊罪に当然なって、これは犯罪。裸になることを強要する、これもいじめだと思うんですけれども、これも度を越えると強要罪になって、犯罪になるというふうになるわけです。

 そこら辺はどういうふうに考えておられるでしょうか。

義家大臣政務官 具体例の提示、ありがとうございました。

 これはまさに教育現場できちっと毅然として対応するものでありますが、例えば今の具体例に出た、泥をかぶせる、これは非常に深刻な事態なわけで、子供の側、加害者側はそれをいじめと言うかもしれませんが、教師として到底看過できない事案なわけです。

 それに対して、まず当たり前の指導として、加害保護者に、こういうことがあった、これはとんでもなく、許されないことなんだと。見て見ぬふりをした者たちに、これはとんでもないことなんだと。徹底的に、その傷ついた、泥をかけられた者を守っていく。それによって仮に解決するのであれば、私は、そういう教育の営みというのは当然であろうと思います。

 しかし一方で、それによって被害者の保護者が被害届を提出されると、当然警察は入ってくるわけですが、そこに犯罪性があるかないか、それを警察が判断していくものであって、まず教育が果たさなければならない責任と、そして、被害届あるなしにかかわらず司法に連絡して、学校が連絡しなければわからない事案というのがありますから、それを隠蔽せず、しっかりと保護者を含めて明らかにして対応していく、この姿勢が求められるのであろうと思っております。

鈴木(望)委員 要すれば、グレーの部分があって、いじめと犯罪は連続しているんじゃないのかなという感じがするわけですね。しかも、今御指摘がありましたように、表にあらわれた事象では大したことがないように見えても、本当は重大な結果や犯罪につながっているものも多いということで、深刻な事態にならないうちに、その芽を摘み取って未然防止につなげることが大切。これは多分共通の、当然の理解だろうと思います。

 そういう観点から質問をさせてもらいたいと思いますが、問題を学校内部に抱え込まないで専門機関に相談、連携していくことが非常に重要だと思うんですね。これはいじめなのか犯罪なのか、学校の中で抱え込んでいるということでは問題解決につながらない。そういう意味では、警察との連携というのは非常に重要だなと思いますが、警察と学校の連携はどうなっているんでしょうか、お尋ねをさせていただきたいと思います。

山下政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のいじめ問題を初めとするさまざまな教育の現場における問題の解決、こういうものに向けまして、警察とそして学校が緊密に連携をするということは大変重要なことでございます。

 そういう意味で、私ども、スクールサポーターという制度がございます。これは、退職した警察官等から成る非常勤職員でございまして、警察署に配置をされ、担当する学校への訪問活動を行うとともに、必要に応じまして、問題がある学校には常駐をする、こういったこともしております。いじめや非行事案など、校内における少年の問題行動への対応、巡回活動、相談活動等々、さまざま活動を行ってきております。

 平成二十四年の四月一日現在、四十三都道府県で六百二十人が配置をされております。御指摘のとおり、学校と警察の連携を図る上でのかけ橋として非常に重要な役割を果たしているところでございます。

 それ以外にも、学校と警察、この両者がいろいろな情報を共有する、非行問題を初めとする問題にさまざまな協議をするということで、学校警察連絡協議会というような制度もございます。

 私どもとしては、スクールサポーター制度あるいは学校警察連絡協議会、こういった制度を十分に活用いたしまして、連携を深めてまいりたいと思っております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 一つは、学校警察連絡協議会というような場で情報交換等をしているということと、もう一つは、私は結構重要じゃないかなと思うんですけれども、スクールサポーター制度というようなことで、OBの警察官が実際に現場である学校に入って、グレーゾーンのいじめが犯罪になるような事例の芽を摘み取っていくというようなことをやっておられるということで、多少、今警察庁の方からスクールサポーターについての御説明があったわけでありまして、二十四年度六百二十人ということですが、実際上、地財計画で認められている額よりも大幅に少ない人数しかまだ設置をされていないという状況だろうと思います。

 そうすると、これは現場ですので、形だけ制度がある、行くことになっている、また、スクールサポーターのような制度がありますよというようなことだけでは、実際、意味をなさないと思うんですね。何かあったときに、こういう制度がありますという単なる釈明の道具にしかならないというふうな感じもしますので、そこら辺、実態は今どうなっているのか。例えば、一人が何校受け持って、どのぐらい学校に行って実際に活動しておられるのか、そこの点をお伺いいたします。

山下政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のとおり、スクールサポーターにつきましては、地方財政計画上で容認をされてございます。

 この容認のベースでいきますと、現在、一千六百九十五名ということでございまして、これは全国の小中学校、特別支援学校の約二十校に一名という容認状況でございますけれども、現実の配置につきましては、御指摘のとおり、昨年四月一日現在で六百二十名ということで、これは、一人のスクールサポーターが約五十四校の学校を受け持つという状況でございます。

 私どもといたしましては、現在配置をされているスクールサポーターを最大限に活用するということで、問題のある学校等に重点を置いた訪問活動等を行いますとともに、先ほど申し上げました学校警察連絡協議会、さらには、情報をお互い通報するという学校警察連絡制度、こういったほかの枠組みも活用して連携強化に努めているところでございますが、御指摘のとおり、現在の大変厳しい非行情勢あるいはいじめ問題ということを考えますと、さらなる拡充は当然必要になってまいります。

 各都道府県とも大変厳しい財政事情ではございますけれども、警察庁としては、今後とも、このスクールサポーターの拡充に向けた取り組みをしっかりと進めてまいりたいと考えております。

鈴木(望)委員 厳しい財政状況ということを言われましたけれども、額が、地財計画で容認されている額でも、たかだか三十数億という額ですよね。しかも、その中がまだ余り使われていないということは、財政状況が厳しいから使われていないということではないんじゃないのかなというふうに当然思われるわけです。

 また、スクールサポーター制度というのは、これだけいじめ問題が全国的な、大きな問題になっているということを考えますと、しかも、私、あえてお尋ねをさせてもらったんですが、いじめと犯罪との連続をしているその境目のところは、これはなかなか専門家じゃないとわからないし、犯罪の芽となるようなものを摘み取っていく、それは、現場である個々の学校でやっていく必要が非常に強いんじゃないのかなと。

 せっかくこういう制度があって、警察官のOBということでありますので、私も団塊の世代ですけれども、多分私の世代の、ある意味では、現場でいろいろな経験を積んで、酸いも甘いもある程度わかって、孫がいる世代、孫はやはりかわいいですよ、孫の世代の子供が健全に育っていくように、しかも地域にいる人ですので、その地域にいるそういう専門家が、犯罪とか、そういう意味での専門、職業を経た人たちがそういった芽を摘んでいくということをやる。

 これは、目のつけどころが非常にいい制度だなと思う反面、おざなりに、単にそういう制度があるということで終わりにしてしまうんだったら、せっかくつくったのに、つくったけれども余り効果がなかったということでやめてしまうということになりかねないと思うんです。そこら辺はぜひ、こういう制度をつくった以上、実際に現場にきちんと配置をして効果を上げてもらいたい。実際、効果が上がらないんだったら、なぜ効果が上がらないのかをきちんと検証していただきたいなというふうに思います。これは御答弁は結構です。

 次に、食育の推進について質問をさせていただきたいと思います。

 いじめに関連しまして、教育再生実行会議のいじめ問題等への対応について、第一次提言では、道徳教育に触れた箇所で、食育等の視点も取り入れた指導に言及をされております。私も、極めて重要な着眼点ではないのかなというふうに思います。

 食欲というのは人間の根源的な欲求でありまして、特に、育ち盛りの子供であれば当然強いわけです。食事の際にお父さんやお母さんに感謝をし、また、食べ物を用意してくれたそのほかの多くの人々に感謝もし、また、国際社会を見渡してみると、食べたくても食べられない子供もたくさんいることに思いをいたさせるということで、感謝の気持ちであるとか物を粗末にしないことを教え込む非常にいい機会だと思います。しかも、毎日三度ある貴重な機会でありますので。

 お尋ねをさせていただきたいと思いますが、政府は、提言を受けて、食育にどう取り組むつもりでしょうか、お答えをお願いいたします。

下村国務大臣 食は命の源でございます。食育は、その過程を通じて、日々の生活や現在の自分が、今御指摘がございましたが、父、母を初めとする多くの人々の善意や支えによりあることを感謝し、それに応えようとする心を育むなど、豊かな人間性の育成に大きな役割を果たすものと考えられます。

 教育再生実行会議の第一次提言において、食事等の日常生活の乱れが子供の心の乱れにもつながっているとの指摘を重視し、道徳教育において、食育等の視点も取り入れた指導を行うことが提言されております。

 文部科学省では、この提言を受け、道徳教育の充実方策の検討を行うため、道徳教育の充実に関する懇談会を昨日発足させました。今後、本懇談会での議論を踏まえつつ、家庭科や学校給食などにおける食育の視点も取り入れた指導も含め、学校の教育活動全体を通じた道徳教育の充実に取り組んでまいります。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 また、食育については、具体的な施策については議論をさせていただきたいと思います。

 あと、時間がなくなってきましたので、それにつながる幼児教育等の問題は省かせていただきます。

 要するに、いじめの問題につきましては、学校や教育委員会の事なかれ主義、また隠蔽体質が大きな問題として指摘をされているところでございます。大津市の事例でも、残念なことでありますけれども、大津市教育委員会の対応が、事件の隠蔽、担当者の言いわけ、責任回避のような印象を与えておりました。事件を未然に防ぎ、再発防止に積極的に動くという印象は全くなかったわけでございます。教育委員会のあり方については、後ほど議論もさせていただきたいと思います。

 次に、体罰の問題について質問をさせていただきたいと思いますが、「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」というこの三月十三日の局長通知で、体罰と懲戒の線引きをされておられました。懲戒と体罰はどこが違うのか、御答弁をよろしくお願いいたします。

布村政府参考人 お答えいたします。

 最初に、懲戒についてでございますけれども、学校教育法十一条におきまして、校長及び教員が、教育上必要があるときに行うことが認められている制裁であり、児童生徒に肉体的苦痛を与えるものでない限り、通常、注意、叱責、居残り、別室指導、起立、宿題、清掃、学校当番の割り当てあるいは文書指導などは、懲戒権の範囲内と判断されるものと考えております。

 一方で、体罰につきましては、このような懲戒のうち、その内容が身体的性質のもの、すなわち、身体に対する侵害を内容とするもの、具体的には、殴る、蹴るなど。また、児童生徒に肉体的苦痛を与えるようなもの、長時間にわたる正座、直立など特定の姿勢を長時間にわたって保持させるという事例が該当いたしますが、これらに当たると判断されるものが体罰ということに整理をしてございます。

 ただ、具体的には、教員が児童生徒に対しまして行った懲戒行為が体罰に当たるかどうかにつきましては、当該児童生徒の年齢ですとか健康状態、心身の発達状況、あるいは当該行為が行われました場所的あるいは時間的な環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考えて、個々の事案ごとに判断していくことが必要であるという形でお示しをし、かつ、できるだけそれがわかりやすいように具体的な事例をつけさせていただいた通知としているところでございます。

鈴木(望)委員 この通知はマスコミでも大きく取り上げられまして、具体例についていろいろ言われております。私も、これでいろいろと思うことがあるわけですけれども、一つ具体例で、ふざけている生徒にボールペンを投げつけて当てることは暴力と例示をしているわけですね。それなら、これは約四十何年前の自分の経験ですけれども、チョークを投げる先生がいました。では、チョークを投げたら、これは暴力に当たるんですか。

 それについては、本当は質問して言いたいんですが、もう時間がなくなっちゃったものですから、一つ、そのチョークを投げる事例を御紹介して終わりたいと思うんです。

 がやがや騒がしい教室、数学の先生でしたけれども、やかましいということでチョークを投げたわけですね。そうしたら、たまたま運動神経のいい子がそのチョークをぱっとよけた。これは私のいた学級の実例ですけれども、そうしたら、ほかの生徒が、俺もよけられるかなと。では、先生をちょっと挑発して、その先生にチョークを投げさせようということで、わざと騒ぐというようなことになりました。

 そこは、先生がそういう雰囲気を察して、私も若いころは肩が強かったけれども、今は肩が弱くなっちゃった、だから大したチョークは投げられないけれども、頼むから余り教室で騒がないで私の授業をちゃんと受けてほしいというようなことを、じゅんじゅんと言ったのかどういう調子で言ったのか、しみじみと言ってくれたんですね。そうすると、悪餓鬼どもが、ああ、肩の弱くなっちゃった年老いた先生を余りいじめてもいけないなということで、それで終わっちゃったんですよ。

 だから、チョークを投げることが、ボールペンを投げることが暴力に当たるか、懲戒に当たるかというようなことは、余りそこを厳格に一つの境界を設けるということが事の本質的な解決に当たるのかというと、私は甚だ疑問であります。

 そうじゃなくて、例えば、先生に余裕がなくて学級運営がうまくできない、生徒が騒ぐ、つい暴力に頼ってしまう、あるいは、体罰が指導に効果的と錯覚している先生がいて、その先生が体罰を繰り返しても、学校や教育委員会の事なかれ主義や身内をかばう体質、隠蔽体質のために表沙汰にならない、ずるずるとあしき慣行が続いてしまう、このような、個別事象の背後に控えている大きな問題に正面に取り組むということが、いじめや体罰をなくす真っ当な方策じゃないのかなというふうに私は考えます。

 そういう観点から、教育制度のあり方についてはまた後ほど質問もさせていただきたいと思いますが、最後に、指導体制の充実。

 指導体制を充実するということは、いじめや体罰をなくすことにもつながっているというふうに強く思います。そういう意味で、最後に大臣に質問して終わりたいと思いますが、少人数学級の推進について、指導体制の充実という観点から、大臣のお考えをお伺いさせていただきます。

松野委員長 大臣、時間が経過をしておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。

下村国務大臣 はい。時間がもうオーバーしておりますので、簡潔にお答えしたいと思います。

 教師の目が十分に行き届き、子供一人一人に対してきめ細かく対応できるよう環境を整備することは非常に重要なことであると思います。そのために、少人数学級の推進にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

鈴木(望)委員 質問を終わります。

松野委員長 次に、田沼隆志君。

田沼委員 松野委員長と同郷、千葉から参りました、日本維新の会の田沼隆志でございます。

 所信への質疑の前にちょっと、きょうは初めての質問でございますので、簡単に自己紹介をさせていただきます。

 私は、政治の原点は鹿児島の知覧でございまして、知覧の特攻平和会館に行きまして、実物の遺書を読みました。あれにもう魂を撃ち抜かれて、三十歳前後ぐらいだったときに行きまして、国のため、ふるさとのため、家族のために命をささげた、私よりもはるかに若い若者がいたということに大変感動。もう涙がとまらず、逆に、自分は何をやっているんだと、豊かなところで平和で安全な自分が恥ずかしくなって、死なないんだから、死ぬ手前ぐらいまではリスクをとって何かをしなくちゃという思いになりました。それで、この世界にゼロから入りました。御英霊に恥ずかしくない国をつくる、脱自虐史観、これが私の原点です。

 その後、政治に入りましたけれども、会社をやめて挑戦した選挙で落選しまして、浪人をして、その間、日本教育再生機構、大臣御存じと思うんですが、義家政務官も御存じと思うんですけれども、教育再生機構の職員となりました。

 その後、千葉市議会に当選しまして、教科書問題を最大のテーマでやってきました。千葉市教育委員会に対して徹底的に追及をしてきましたけれども、全く議論にならないんですね。結局、千葉市の中学校の歴史、公民教科書は東京書籍というところになってしまいまして、非常に挫折を覚えた人間です。

 やはり、この全く機能していない、議論にならない教育委員会の体質に、もうこれをやらないと教科書の正常化というのはできないというふうに私は観念をいたしまして、この改革が我が使命と思っております。ですので、ちょうどそのときに、今の大阪の橋下市長、大阪維新の会の改革案、教育基本条例に感銘を受けて、その流れで日本維新の会から今回出馬をさせていただいた次第でございます。

 ですので、安倍総理はもちろんなんです、下村大臣も義家政務官も、昔から知る、私が職員のころからですけれども、完全な同志でございまして、偉大なる先輩でございます。正直なところ、安倍内閣ができて、お二人が入閣されたのが本当にうれしくて、ぜひ大活躍していただきたいなと心から思っております。きょうは胸をかりるつもりで迫らせていただきたいと思います。

 テーマも、この教科書採択正常化のための教育委員会改革でございます。

 まず初めにお尋ねしたいんですが、教育再生実行会議で配付されている文科省の「地方教育行政について指摘されている課題」という書類があります。大きく四点指摘されていまして、お配りの資料にないんです、ごめんなさい。一が、権限と責任の所在が不明確、二、地域住民の意向を十分に反映していない、三、教育委員会の審議が形骸化、四、迅速さ、機動性に欠ける。よくあるペーパーですね。

 これは、ちょっとタイトルが、何か人ごとみたいにも読めるんですけれども、この課題は文科省が認識している文科省見解とみなしていいんでしょうか。お答えください。

布村政府参考人 お答えいたします。

 地方教育行政制度について指摘されている課題ということで、教育委員会制度につきましては、さまざまな課題、また、昔より、教育委員会の合議体の会議の活性化という大きなテーマがございました。幅広くいただいた課題を整理するとこの四点になるということで作成した資料になります。

 そういう面では、文部科学省としても、このような教育委員会制度にかかわる課題を認識しているということになります。

田沼委員 ちょっと曖昧ですけれども、要は文科省見解ということで受け取りました。同じ課題からスタートできるかどうかは大事ですので、あとは方法論が違うということかと思いますが、ぜひ、ではタイトルも、しっかり文科省の見解だというふうに書いていただきたいなと思います。これは多分ほかの自治体でも使っていますので、私も千葉で使っていましたので、お願いします。

 さて、三月二十二日の教育再生実行会議で、最後に安倍総理からお言葉がありました。

 教育再生を実行していくためには教育の責任体制の確立は避けて通れない、私は現行の教育委員会制度について抜本的改革が必要だと思っている、この問題は、首長と教育委員会の関係、教育における国の役割など、さまざまな論点がかかわってまいりますが、責任と権限の問題、政治的中立とは何なのかということも含めて議論していただきたいとありました。最後、議論の中で、首長と教育委員会を全く切り離すというのはそれも一つの考え方ですが、そもそも、首長にしろ知事にしろ、自分がこういう教育をしたいということを市民、県民に問うて同意を得ても、当選ということですけれども、実行できないというのはおかしいのではないかというのが素朴な疑問ですという御発言があったと思います。

 これは、我が党の橋下代表も同じ見解を言われていますけれども、大臣、これは同じお考えと思ってよろしいでしょうか。

下村国務大臣 お答えいたします。

 その前に、知覧のお話がございました。先日、三枝さんがつくられた神風というオペラが東京文化会館でございまして見に行ったときに、これは知覧が設定されているところで、小泉元総理も来られておりまして、自分も総理になる前に行って号泣したところだから、ぜひ文科大臣として早目に行くようにという話がございましたが、まだ行っておりませんので、ぜひ行って、いろいろな史料を見てきたいというふうに思っております。

 そして、教育委員会の御指摘でございますが、権限と責任の所在が不明確との課題が指摘されており、その責任体制を確立し、現場の問題に迅速かつ的確に対応できるよう抜本改革をしていくことがこれは必要だと思います。

 また、地域住民の民意を代表する首長の意向をどのように教育行政に反映させるかという点については、今後議論が必要であるというふうに考えますが、その際に、教育の政治的中立性を確保するということも一つの留意点であるというふうに考えております。

 教育委員会の見直しについては、今御指摘のように教育再生実行会議で議論をしていただいておりますが、一定の方向が出てまいりましたら、中央教育審議会においても議論をお願いしたいというふうに思っておりますし、今委員が指摘の視点も踏まえた議論を今後積極的にしていただきたいと思います。

 また、これは、日本維新の会だけでなく、自民党、各党でも、教育委員会の抜本見直しについては政権公約等で出されておりますから、ぜひ、国会議論等も今後参考にさせていただきながら、法制化に向けて最終的にどのような形が一番望ましいか、決めてまいりたいと思います。

田沼委員 まさにその議論を今したいと思っています。

 御存じのように、教育委員会に首長が何も言えないのは、首長部局から教育委員会が独立しているからですね。その最大の理由が、やはり行政委員会として首長部局から教育委員会が独立しているということにあると私は考えます。

 結局、政治的中立確保とさっき大臣は言われましたけれども、そうすると、首長はほとんど介入できない。教育委員は任命できますけれども、その後四年間、評価できないんです。罷免もできない。要は首がないんですね。首がない。ここが決定的にほかの部署と、例えば地方でも財政局とかいろいろありますけれども、違うんですね。

 だから、どうしても、首がないので無責任体質になりやすい、あるいはやり過ごそうというふうになりやすい、前例踏襲的になりやすい。いじめや体罰の問題、先ほどもありましたが、これも隠蔽体質になる、やり過ごせばいいですから。委員会会議だって形骸化していますよね、責任が問われませんから。結局、全ての問題の源はここにあると私は考えております。

 あともう一つ、首長の影響力が弱いのは、首長と委員さんの任期がずれていることですね。例えば、現行法体系だと、全ての教育委員会さんは、自治体によって五、六人いますね。もしこれを全て入れかえるとするならば、最大三期務めないといけません。

 例えば教科書問題で、首長がこの教科書を採択したいと、それに賛同する教育委員を任命したとしても、非常に時間がかかる仕組みですね。例えば、我が党の山田代議士は杉並区長でした。中田代議士も横浜市長でした、育鵬社の歴史教科書を採択した数少ない自治体ですけれども、それでも二期かかっているんですよね。

 だから、当初の制度設計として、やはり政治的中立性を確保するために、一首長の当落に左右されないようにということで、少しずつ任期をずらしたそうですね。激変緩和措置とも言えますけれども、これがあるので何も変わらない。首長がかわっても何も変わらないでいるもう一つの原因になっていると考えます。

 首がないということと任期がずれているということによって、首長はほとんど何もできない構造になってしまっています。これを何とかしないといけないと私は考えております。

 その観点で、先ほど大臣、いろいろな党が政権公約で教育委員会制度のことを言われているとありましたが、自民党案に私はちょっと気になるところがございます。

 義家政務官が座長だったと聞いております自民党教育再生本部の教育委員会の部分で、教育長を教育委員会の責任者とするというふうにありましたけれども、まずこの理由が聞きたい。あと、もともとの案ですと、教育委員会を教育長の諮問機関に位置づけるとなっていますね。けれども、実際に発表されているものではそこがないようなんですけれども、その二点をお聞きしたいんです。

 絵の方の資料がお手元に行っていると思うんですが、今の私の御質問は、AなのかBなのか、このかわいい絵の方のものですね。Aは、これはほぼ今の教育委員会制度のままです。Bというのは、今と変えて、教育長をある意味独立した執行機関、教育委員さんは監査委員になって監査するという構造ですけれども、どちらを言われているのかを教えていただきたいと思います。

 あと、あわせて、その任期もずれがあるというのを先ほど私は指摘しましたけれども、それについてもどう考えているのか、お答えください。

義家大臣政務官 田沼委員とこうして論戦ができて、非常にうれしく思います。

 まず、自民党の公約、そして我々の考え方ですけれども、非常勤の教育委員から成る合議体が意思決定機関となっている、この結果として責任の所在が曖昧になる、そしてスピードが非常に遅くなるという弊害の中で、我々としましては、教育委員長と教育長という、どちらが常勤なのかもなかなかわからなかったものを明らかにいたしまして、常勤の教育長を責任者としてしっかりと位置づけるという方針を出した次第です。

 このAかBかというところですが、我々の議論の中では、タイプとしてはBのタイプとなります。

 しかしながら、ここは慎重にさまざまな観点から議論しなければならないものでして、単純に地方教育行政法だけの問題ではなくなっていくんですね。例えば地方自治法上どうしていくのか。さまざまな見直しの観点が必要なので、ここを、今、教育再生実行会議において丁寧な議論を行っているところですけれども、多くのいろいろな意見が出ています。

 例えば、レーマンコントロールを残して、限定された諮問に対して答申を行う場所にすべきだとか、あるいは、教育長が教育委員長を兼ねるみたいな案の意見も出てきたり、さまざまな意見です。

 いずれにしても、責任体制を明らかにして、さらに言えば、教育長は首長が議会の同意を得て任免する、つまり、首長の意向というものが、当然、一定、教育行政の中で生かされていく、選挙での公約が生かされていくという状況にする。

 一方で、逆に言えば、属人的なものであってはならないと思ってもいるんです。首長がかわったら教育方針ががらっと変わったら、当然、振り回されるのは子供たちですから、しっかりとした安定的教育行政はやはり担保しなければならない。そういう中で、現在、慎重に議論しているところであります。

 なお、任期のことについてもお話がありましたが、教育再生実行会議の議論の中では、教育長の任期は首長の任期と連動させるのがいいのではないか、新たな首長が再任することはもちろん当然あっていいけれどもというような意見も出ているところであります。

 いずれにしましても、教育長の任期は教育委員としての任期であるみたいな現状のあり方というのは、これは改革していかなければならない重要な課題であろうと考えております。

田沼委員 ありがとうございます。

 特に、首長が任免、免がうれしかったんですけれども、免が大事だというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 属人的になってはならないという件に関してなんですが、さっき大臣も政治的中立性の確保ということを言われましたが、私は、これに異議を唱えたいんですね。どの委員さんも、再生実行会議でも、政治的中立性は大事だと。大臣も大事だということなんだと思うんですが、余りに過剰に思います。

 例えば、属人的になってはならないと先ほど政務官は言われましたが、現状、法律として教育基本法がある、学習指導要領も法的にある、地方議会もチェックをしているわけですね。これで十分政治的な中立性というのは保たれるんじゃないでしょうか。わざわざ、さらに中立性担保のために組織まで変更する必要があるんでしょうか。私は、法規や議会チェックがあって政治的中立性を保てないとはちょっと思えない面もあるんですが、御見解をお尋ねします。

義家大臣政務官 この政治的中立性を論じるときに、プラスとして論じる場合と、非常に危険なものとして論じる場合と、両方、両論を考えねばならないと思います。

 例えば、北海道教職員組合がストライキを打ったとき、道の教育委員会の処分と、政令指定都市である札幌市の教員の処分が違ってきました。これはやはりいろいろな政治的方針もあったのかどうなのかという問題ですけれども、やはり、適正に法律に基づいて教育行政が行われている状態であれば、そのようなことが断言できるわけですけれども、残念ながら、私は、教育再生の前に教育正常化が何よりも必要だと思っていますので、この責任体制確立と並行して、やはり教育の正常化、どこが法律に基づいてしっかりと動いていないのかというところも、ぜひ委員も含めて検討してまいれたらと思っております。

田沼委員 それも一つの考えと思います。

 ただ、もう一つ食い下がりたいんですが、政治的中立性というときに、国の文科省は、各自治体の教育委員会に通知をしたり、是正要求もしたり、指導助言しているわけですね。これは極めて実態としては強い影響力を持っています。千葉市にいましたから、わかります。その文科省のトップはやはり文部科学大臣、大臣であるわけで、この方は政治家ですよね。

 となると、論理的に言うと、政治的中立性は既に崩れているのではないかというふうにも思います。原理どおり言うんだったら、文科大臣も政治家がやるべきでないんじゃないかという気もするんですが、この政治的中立性に矛盾があるんじゃないかということに関してはどうでしょうか。

下村国務大臣 政治的中立性については、今も義家政務官からお話がありましたが、全般的な制度設計の中で考えていく必要があるというふうに思います。

 現行制度の中で、政治的中立性というのをもし無視したとしたら、その前に教育の正常化がなされていない中で、これは負の部分も相当出てくるのではないかということから、全体的な制度設計をどうするかということの中での政治的中立性というのが、おのずと位置が決まってくるところがあって、制度設計にかかわらず政治的中立性云々ということは、時にマイナスになってしまう部分があるのではないかというふうに思います。

 そして、文科大臣と自治体の違いでございますけれども、地方公共団体は、学校の設置管理や教職員の人事などを初め、地域における教育行政を直接実施する役割を担っております。国は、全国的な教育水準の維持向上の観点から、制度の枠組みの制定や全国的な基準の設定、地方公共団体に対する支援などを行うことを主たる役割としておりまして、行政機関のあり方について国と地方公共団体を同列に論じるべきではないと考えます。

 また、国の行政は、議院内閣制のもと、内閣がその責任において行うことを基本としており、行政委員会が設置されているのは、一つには、個人の人権に対する直接的な関与という事務の性質から特別に政治的中立性の確保が強く必要とされているもの、例えば国家公安委員会等でございます。また、所掌事務のうち、準立法的または準司法的権限を有するなど、特に慎重、公正な事務処理を必要とされているもの、これは人事院とか公正取引委員会であります。そのような行政分野でございまして、これはおのずと、そういう意味で、国の行政と、また地方公共団体との違いがあるということでございます。

 我々としては、まず教育における正常化を行う。そのための法律改正を伴う部分も多々あります。その上で政治的中立性を議論するということであれば、それはそういうときが来るかもしれませんが、今この時点で政治的中立性を排するということについては、光の部分と影の部分がある、その両方を慎重に考えなければならないのではないかと思っております。

田沼委員 それも一つのお考えと思うんですが、ただ、やはり教育委員会制度の歴史をたどりますと、もともと、初めは公選制だったわけですね。その後、党派的対立が持ち込まれてしまったわけですね、それで昭和三十一年に改正したわけです。だから、そのときの制度設計思想というのは、政治的中立というのは、特に党派的に対立を避けたいということだと思うんです。大臣や政務官が教育正常化と言うのも、恐らくその党派的な混乱というのが来ないようにというのが先だということもよくわかるんです。

 しかし、昭和三十一年と今、平成二十五年。はっきり言って、イデオロギー対立の時代ですね、その時代というのはもう終わったと思います。かつては確かに、社会主義全盛時代でしたから、この時代の防衛策としては意義があったと思いますけれども、もう今は、過度に警戒するとメリットよりもデメリットの方が大きいと考えます。

 もともと、アメリカの教育使節団が、教育の民主化といって、大臣には釈迦に説法ですけれども、この制度を勧告したわけですけれども、これは、裏側の狙いとしては、戦前の教育の否定、日本の弱体化というのもあった、ウオー・ギルト・インフォメーション・プログラムというのがあったわけです。ですから、これをそのまま続けていいのだろうかという問題意識が非常に私はございます。

 政治的中立性の確保という言葉を隠れみのにして、やはり行政委員会であるべきものなのかが曖昧なまま教育委員会制度が続いているように思えてならない。先ほど大臣が、慎重、公正な事務処理が必要な行政分野を行政委員会にすると言われましたけれども、教育委員会は、慎重、公正な事務処理が必要なんでしょうか。それは、もちろん、どの行政分野でも必要だと思いますが、過度にやってしまうと、結局、何事も変えられないということが戦後ずっと続いてきたように思えてなりません。

 一番問題なのは責任が明確になっていないということでございまして、先ほど言いましたけれども、首がないということですね。今度の設計で任免の免があるならばまだいいとは思うんですけれども、首がない。そうすれば、それはもう無責任になってしまう。政治的中立性を隠れみのにしてブロックできてしまうわけです。安倍総理が言ったように、首長が選挙でこういう教育政策をやりますと言っても、教育行政に物申せないままなわけですね。これをまた続けてしまっていいのだろうかという思いが大変に強うございます。

 ですので、改めてもう一度大臣に、これは大臣にしか決断できないと思うんです。教育委員会を行政委員会としての位置づけで続けるのは、もう改めるべきじゃないでしょうか。御意見をお伺いします。

下村国務大臣 首長が選挙で立候補したときに、当然、教育問題も重要なテーマとして、自分がそこの首長になったらどういう教育の取り組みを行うか、教育改革を行うかということについて有権者に訴える、こういうことが多々あるというふうに思います。

 当然、なったとき、それが実行できなければ、選挙での有権者に対する何のための約束かということになるわけで、それが、今委員が危惧したような、現在における教育委員会においてできないのではないかということの中で、教育委員会の抜本改革においても、今の、教育長に対する任免を含めた、より首長が教育長に対して権限を行使できるようなシステム設計をどうしていくかということについて、今、議論がされているところでございます。

 いずれにしても、これは、教育再生実行会議で今議論されているところでもございますし、また、それを踏まえて中央教育審議会にも諮問することでございますので、私の個人的な意見というのはありますが、これは今ここで述べる状況ではないというふうに思いますが、ぜひ、御指摘のような危機感といいますか危惧の点を踏まえて、教育委員会の抜本改革の中で是正されるような、そういう制度設計について、今後、それぞれの会議、審議会等で御議論していただき、それを国会に法制化として出したいというふうに思っております。

田沼委員 維新の会で教育委員会廃止法案を御用意しているのも、今もお話ししたとおりです。危機感がある。

 今お配りしたペーパーですと、Cですね。私たちがイメージしているものはCでございまして、首長の下に教育長をつけて完全に責任を明確にするということをしなければ、教育委員会のあり方というのはやはり根本的には変えられないんじゃないかという危機感からきているわけでございます。

 大臣、危機感と言っていただきましたけれども、私も千葉市でずっと格闘してきたものですから、挫折経験がやはりあります。

 はっきり言って、言い過ぎかもしれませんが、改正教育基本法の理念は、地方の現場には全然浸透していないと思います。だって、私見ですが、育鵬社と自由社の歴史教科書が最も沿っていると思います。しかし、この教科書が採択されたのは全体のわずかに四%です。つまり、九六%は、私のみなすところの自虐史観の教科書がまだ続いている。教育基本法が変わったにもかかわらずです。これは、私としては許容できないわけです。

 今まで、大臣なり自民党の皆さんも、野党におられたときも、教科書がおかしいじゃないかとかいろいろ言われていたと思いますよ。見ました。そのとおりと思います。では、皆さんの地元で採択は変わったでしょうか。ほとんど変わっていないんですよね。安倍総理の地元の下関ですら変わっていないですよ。これを見逃していていいんでしょうか。私には思えません。

 となると、やはり思い切って、政治的中立性の確保に過度に警戒し過ぎないで、きちんと、民意を受けた首長の意向が教育行政に反映できるCのようなシステムに変えなければいけないんじゃないかという、現場での挫折というか、苦闘の思いがどうしてもございまして、そういうふうに言わせていただいているわけです。

 例えば、市議会のときのつらい思い出で、教科書の内容について、市議会では議論できません。例えば南京の占領について、一方的に日本が悪逆非道に扱われているという教科書があったわけですけれども、それはおかしいんじゃないですかと質問したら、教育委員会の答弁は、この教科書は国の検定を通過していますので問題ないなんですよ。どの会社の教科書も全部問題ないなんです。国のせいになっちゃっているんです。

 地方自治体の議会議員は、検定を通った教科書に対しては、内容の問題性を告発できない構造になっています。これを御存じだったでしょうか。このままでいていいと私は思えません。

 大臣、ちょっとお答えいただければうれしいんですが、こういう、国の検定を通過したものは内容には立ち入れないと今なっている構造は望ましい形なのか、お答えいただければと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、改正教育基本法、新学習指導要領、その精神にのっとった教科書基準がきちっとされているかどうかということについては、いろいろと問題のある部分があるのではないかと私も思っております。ただ、それは必ずしも教育委員会だけの問題ではなくて、教科書検定や教科書採択、全体的な問題があるというふうに思います。

 ですから、今後、近現代史も光と影の部分がございます、影だけでなく光は光として子供たちに自信と誇りを持ってもらうような歴史教育もしていく必要がある。そういう部分で考えると、認識は委員と同じ部分がございますので、今後、教科書検定、採択も含めた、教育委員会の見直しも含めた、トータル的な部分でより子供たちにあるべき教科書が使われるような、そういう教育について先頭に立って対応してまいりたいと思っております。

田沼委員 力強い御答弁、ありがとうございます。

 ちょっと細かいことなんですが、いろいろな理由があってそうなっている、そのとおりと思いますが、やはり教育委員会の体質が一番大きいと私は思います。形骸化は甚だしいです。

 その一つの例が、議事録を全然公開していないんですね、各教育委員会。私、千葉県で五十四個ある自治体を全部調べました。そうしたら、公開しているのはわずか十個です。教科書の部分だけはやはり非公開というのが十七。残りは全部していません。今、議会も市民も追及できないんですよ。これでまともな議論ができているか、そもそもわからない。わかっているところが何市かありましたけれども、見ましたら、指導課長のような方がわあっと、この教科はこれ、この教科はこれというのを、下から推薦します、いいですか、はいでほとんどが終わりなんですよ。私の見解ですが、千葉県でまともな議論がされていたのは、千葉市と船橋市、あと、ちょっと市原市だけです。

 これはやはり非常に問題であると私は考えます。余りに形骸化が甚だしい。教科書採択においても、教育基本法に沿っているかどうかという観点がない。これは問題と思います。教育基本法第二条の観点ですね、教育の目標。これにどれだけ教科書が沿っているかという観点で採択会議は議論されるべきではないかと、たしか馳委員もされていたと思うんですけれども、それについてどういうふうに思われるか、お尋ねします。

松野委員長 布村局長、時間が過ぎていますので、簡潔にお願いします。

布村政府参考人 最初に、教育委員会の議事録の公開状況の実態を御説明申し上げますけれども、都道府県、政令市の中の八一・八%の教育委員会では詳細な議事録を公開しているという実態でございます。

 また、教育基本法につきまして、二条の一号から五号についての規定ぶりが教科書にどのように反映されているかというのは、各教科書ごとに実態として出していただく、それを検定の段階で見ているという実態がございます。

田沼委員 思い切った改革を期待します。

 以上で終わりにします。ありがとうございます。

松野委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 みんなの党、信州長野県の井出庸生です。よろしくお願いをいたします。

 きょうは、下村大臣が御担当されている教育再生、経済再生と並ぶ安倍内閣の最重要課題である教育再生について伺いたいと思います。維新の会の鈴木委員も先ほど冒頭に同じ質問をされましたが、きょうはこの問題に限って突っ込んだ質問をさせていただきたいと思います。

 私は、第一次安倍内閣のときはまだ報道の記者をしておりまして、そして当選をいたしましてから今国会でも教育再生という言葉を何度も聞いてまいりましたが、ちょっと腑に落ちないところがある。端的に申し上げると教育再生という言葉の意味するところがわからない、そういう問題意識を持って過去の国会答弁などをきょう調べてまいりました。教育再生とはこういうことなんだということがはっきりお示しいただけるような議論をきょうさせていただければと思います。

 まず、教育再生の目的について伺いたいのですが、教育再生とは、一体何に、また、どこに再生をすることなのか。再生のゴールともいうべき過去の教育事例、施策、イメージされているものがあれば具体的にお示しください。大臣、よろしくお願いいたします。

下村国務大臣 まず、私の考える教育の定義でございますけれども、個々の一人一人の潜在能力を最大限に引き出して、そしてそれを高める。エデュケーションというのはまさに引き出すという意味がありますが、それがもともとの教育の基本的な考え方であるというふうに思います。

 そして、その個々の引き出した能力を高めることによって、お互いが認め合い、社会に貢献しながら自己実現をしていく。そういうことによって、一人一人の人生が幸せに、そしてよりよく生きられる、そのための手だてを提供する、そのために教育の本来の目的があるというふうに思います。そういう意味で、教育とは、個人及び社会の発展の礎となる未来に向けた営みである、また、それを行うツールであるというふうに考えます。

 第一次安倍内閣では、こうした問題意識から、教育基本法を改正するとともに、教育再生会議から教育改革の諸方策についての提言もいただきましたが、残念ながら、その後の教育において個々の一人一人の能力を社会の中で生かし切ることが必ずしも実現していない、そういう現実社会があるというふうに思います。

 このため、全ての意思ある者がその能力に応じた教育機会を得られ、持てる能力を最大限に伸長し、自己実現を図り、幸福な人生が送れるよう、そういう環境をつくるということ、またそのための教育を行う。その教育が行われていないということで、それを行うことこそが教育再生である、そういうふうに位置づけたいというふうに思います。

井出委員 今のお話を伺っていますと、現状にいろいろ問題がある、だから、現状は問題が多いところからの立て直し、再生という意味で教育再生が使われているのかなと思います。私自身、いろいろ調べさせていただいて、再生というものが、単に昔どこかにもとあったものに戻るのではなくて、新しいものがくっつくとかしてよりよくなるようなイメージなのかなと思いました。

 さきの衆議院選挙で、自民党の衆院選の公約をちょっと見せていただいたんですが、「教育を、取り戻す。」そして「教育再生」、もうちょっと小さい赤い字で教育を立て直すという言葉があったんですが、これだとまだ少しわかりやすいかなと思うんです。教育再生と言うより、教育立て直し担当大臣とでも言っていただけるとすごく親しみが出るかと思うんですが、そのあたりのイメージはいかがでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のように、安倍内閣における教育再生の目標は、特定の時代の教育や教育施策をそのまま復活させるということでは全くありません。教育というのは、先ほども申し上げましたがエデュケーションで、本人の一人一人の潜在能力を最大限に引き出す。それが必ずしも引き出された中で生き生きと生活をしているという、今、日本における環境がない。それをどうつくっていくかということが教育再生ということでございます。

 具体的に幾つかの施策ということで申し上げれば、この教育再生会議をさらにバージョンアップする形で教育再生実行会議というのを第二次安倍内閣でスタートさせたところでございます。

 その中で、今、子供たちの潜在能力、生き生きと一人一人が学ぶ意欲を持って学校に行っているという環境がない要因の一つとして、例えばいじめ問題等がある。いじめとかそれから体罰とか、スポーツ界においては暴力とか、こういうことで今悩んだり苦しんでいる子供たちに対して、あるいは自殺をしたいと思っている子供たちに対してすぐ手を差し伸べる、それこそがやるべき教育の一番のまず手だてでもあるというふうに思いますし、そのためにいじめや体罰や暴力を根絶させる、少なくとも減らしていく、そういう施策について今取り組んでいるところでございます。

 その次には、先ほどから議論になっていますが、教育委員会制度、これは我が国の教育制度における根幹の部分として、教育委員会そのものが形骸化している、実態対応できていないという部分があるわけで、そこから着手をしていこうという一つの象徴として、教育委員会制度が制度改革の一つとしてありますし、また、そもそも一人一人の能力を生かしながら、あるいは引き出しながら、社会に貢献する、社会の中でも実際に通用する、それだけの付加価値能力をつけるという意味では、大学教育をどう変えていくか。

 我々は、大学教育を質、量ともに充実させる必要があるというふうに思っておりますが、今の大学教育もグローバル対応ができていない。また、経営者あるいは企業サイドから見て、大学や学校教育は社会の中で全く通用しない、世界の中でも、我が国の学校教育は、経営者の人たち、企業家から見て最も評価が低いところでもございます。

 そういう意味で、学校教育と社会における相当なギャップが既に生まれているのではないか。あるべき社会において、それは企業のためだけではなく、一人一人が社会へ出て、本当に通用する、あるいは社会の中でさらなるその人の存在によって貢献する。そのための教育は何なのか、そのためになすべき教育は何なのかということを、大学教育をまずはターゲットに置いて教育再生実行会議で議論をしていただくことによって、高校以下の、大学入学試験も含めてですけれども、一つ一つ改善、改革できるところからやっていきたい、そういうふうに考えているところでございます。

井出委員 今、お取り組みになりたい施策を幾つか挙げられましたが、いじめ、体罰をなくしていく、これは私も本当に喫緊の課題だと思っております。

 しかしながら、例えば所信で述べられていた大学力、もっと言えば、今大臣がおっしゃったグローバルに対応していないという言葉は、私は今回の質問に当たってこれまでの歴代の文部科学大臣の所信を読ませていただいたんですが、どの大臣も、民主党の政権のときの大臣にもその問題意識というものは入っていたかと思うんです。きょうお願いしたいのは、教育再生というのが、この政策をやるんだ、教育再生の政策一丁目一番地はこれなんだと。例えば安倍内閣の経済再生でいえば三本の矢というものがあります。金融緩和、財政出動、成長戦略。中身にいろいろ議論はあるところなんですが、ただ、そういった具体的なイメージを示されている。

 きょう端的に伺いたいのは、やはり教育再生の一丁目一番地の政策は何ですかということをお伺いしたいんですが、お願いいたします。

下村国務大臣 教育改革の手段としては、先ほど申し上げたように、大学教育を質、量ともにどう高めるかとか、それから六・三・三・四制の見直しとか教育委員会の抜本改革とかありますが、基本的な教育の一丁目一番地ということで申し上げれば、これは大臣所信の中でも述べさせていただきましたし、また先ほどもちょっと申し上げましたが、日本の子供たちは教育を受ければ受けるほど自分に自信をなくしているという現実があるんですね。

 大臣所信のところでは、高校生の意識調査として、我が国においては六六%の高校生が自分はだめな人間だと思っていると。しかし、中学生のときは、もっと実際は低いんですね。つまり、上に行けば行くほど、教育を受ければ受けるほど、非常に自尊意識がなくなって自己否定的になっているというところが我が国の教育の問題点であると思います。

 本来であれば、教育を身につければつけるほど、一人一人の能力をさらに高めて、生かして、そして、うぬぼれでなくて、自分はそれなりの人間として、自己自身も自尊意識を持てるし、また自信を持ってこれから社会の中で生きていける、そういうことを与えることこそが本来は教育の役目でもあると思いますが、それが逆になってしまっているという部分が戦後教育の我が国の一番の問題点であるというふうに私は思っています。

 ですから、究極的に言えば、自分はだめな人間だと思う子供をゼロにするための教育、それをぜひ目指していきたいというふうに思います。

井出委員 今のお話と、あと私いろいろお聞きしてきたところで、今大臣がおっしゃられたように、今回の教育再生というのは、子供、人材、人づくりというところが大きなテーマなのかなと私は考えているんです。

 ただ、そうしたときに、ことし二月の二十六日に教育再生実行会議がいじめと体罰に関しての提言を提出した。一番大事なその冒頭のところで、我が国は十九世紀半ば以降驚異的な速さで近代化を実現し飛躍的な発展を遂げました、教育の成功がその大きな原動力となったことは言うまでもありません、一方、さきの安倍内閣において改正された教育基本法の理念が十分に実現しておらず、いじめが相次ぎ、学力低下が危惧される中、教育の再生は我が国の最重要課題となっていますと。

 私ちょっと、これを読んだときに、十九世紀半ば以降、明治の教育の詳細を私は存じ上げておりませんが、そこに回帰するということなのかなという疑問を一つ持ちました。

 大臣は、そういった特定の時代に復活することではない、安倍内閣の目指しているところ、そこは先ほど答弁の中ではっきり申し上げているんですが、教育再生実行会議のこの提言の冒頭部分の真意と、今大臣がおっしゃっている人づくり、そこの整合性について高橋審議官にお伺いしたいんです。

下村国務大臣 近代工業化社会を支える人材育成としては、日本は成功したと思います。これだけ明治以降に日本が大きく成長、発展した。端的に言うと、それは戦前の富国強兵政策でもあったわけですが、それだけの人材養成という意味では成功してきたと思うんですね。

 しかし、戦後七十年近くを経て、現在において、そもそも我が国において、時代はもう近代工業化社会ではなくなっているわけです。それに資する人材ではなくて、それは今後の我が国においては、現実社会において、もっとクリエーティブな、創造力を持った、企画力を持った、また、もっと人間的な感性、感覚、それは優しさとか思いやりとか、そういう部分を持った人でなければ、これから日本の社会において有為な人材として通用しない、あるいは生きていくのが厳しい。そういう時代の中で、教育の過去の成功事例をいまだに引きずっているというところが今の日本の教育の問題点であるというふうに思います。

 新たな、近代工業化社会を超えた時代に既に日本は入っているという中で、またこれからの時代に適応した教育という意味では、十九世紀型の学校教育の成功事例は、今度は逆にそれが足かせになる。新たな教育をこれから人材づくりとして目指していくという意味でありまして、教育再生というのは十九世紀型のその時代に戻るということではないということは先ほども申し上げましたが、これからの時代の人材育成にのっとった教育をするという意味で、本当の意味での教育再生ということを申し上げているわけでございます。

井出委員 教育再生という言葉が、今大臣おっしゃられた、まさに過去の成功事例を引きずってきたことが今の教育の問題点だと。だから、その再生という言葉が、また逆に過去に戻るということを想像、連想させるんじゃないかということで、きょういろいろ質問をさせていただいたんですが、少しずつイメージはわかってまいりました。

 ただ、これまでの歴代の文部科学大臣や総理大臣の発言を見てみますと、かなり教育再生という言葉が、いろいろなものにくっつけられているような使い方をされているケースもあります。よく言えば多様、非常に再生の中身が幅広いということなのかもしれません。

 一つ二つ例を挙げますと、平成二十年十一月十四日、文部科学委員会の塩谷大臣の所信ですね。「教育再生の取り組みを真に実効あるものとするためには、信頼される公教育を確立していくことが不可欠です。」と。その後に、当時、大分県教委で教員の不正採用に関する問題があった、そのことについて、まことに遺憾で、信頼を回復していくと。不祥事の再発防止に、再生という言葉を頭にくっつけていらっしゃる。

 あと、平成十八年十月十八日、伊吹大臣の所信の中では、「公教育の再生」「すべての子供たちに必要最低限の学力と日本人としての規範意識を身につける」と。

 翌十九年四月十七日衆院本会議、安倍総理なんですが、「すべての子供に高い学力と規範意識を身につける機会を保障することが必要と考えております」と。

 教育というものが非常に幅広くて難しい分野であるということは私もよく承知をしておりますが、ぜひ、教育再生の意味、優先順位というものをしっかりとお示しいただきたい。

 そうでなければ議論も深まりませんし、具体的なものを一つでもお示しいただければ、恐らく、今後、安倍総理の後の総理になられたりですとか、文部科学大臣が交代されるですとか、また政権交代ということもあるかもしれません。そのときに中身に優先順位がついていれば、それはしっかりと引き継がれる。

 まさに大臣が所信でおっしゃった改革の元年にことしはなるかと思うんですが、教育再生とはこれなんだというものがなければ、総理大臣がかわる、政権がかわったりすれば、前の政権との違いを見せるために再生という言葉にバツをつけて、何も変わらないのではないか。

 ぜひ、今後の議論を深めていくために、教育再生という言葉を、再生とはこういうことなんだということを示していただきたいんですが、最後に一言ちょっと抱負をいただいて、終わりたいと思います。

下村国務大臣 先ほどのあれはシオノヤ大臣でございますので、訂正させていただきます。

 井出委員の言われている教育再生という語彙をそのまま受けとめれば、もしかしたら教育創生とか、そういう語彙の方がよりぴんとくるのかなという思いは持ちましたが、具体的な教育再生で、何をもって教育再生とするかは、理念も大切ですけれども、具体的な事例をもって、ぜひ国民の皆様方にこれからお示しをしていきたいというふうに思います。

 その一つとして、先ほどから議論になっています教育委員会制度についても、実際は戦後一度も改革がなされてこなかったわけです。これを抜本的に、それでは教育委員会制度をどうしていくのか。

 それから、大学教育についても、いろいろなところで問題になっているわけですけれども、一言で言えば、質と量を高める大学教育といっても、では具体的に何をもって大学教育を改革するというのかということについて、あるいは六・三・三・四制の見直しもそうですが、戦後教育のそういう一つ一つの制度疲労を起こしている部分、あるいは新たな時代の変化に対応して変えていかなければならない部分、それをお示ししながら、それがトータル的に、それこそが教育再生なんだということが国民の皆様方にわかっていただけるようなものを、できるだけ年内のうちに具体的な事例を出すことによって、それこそが私が所信のところで申し上げた、平成二十五年が教育再生元年なんだという意味はそういうことなんだなというふうにわかっていただけるような、具体的な改革事例案を出すことによってお示しをさせていただきたいと思います。

井出委員 終わります。どうもありがとうございました。

松野委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 みんなの党の青柳陽一郎です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、大臣の所信に対して幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、先般の安倍内閣総理大臣施政方針演説において、第二次安倍内閣は経済の再生と教育再生を内閣の最重要課題として取り組むと言っておられます。実際に、教育再生実行会議を立ち上げ、教育再生のためのアクションを既に起こされております。その司令塔となる下村大臣の役割は大変な重責であり、党派を超えて教育の再生について議論を深めていければと思います。

 下村大臣の所信において、人づくりは国づくり、世界トップレベルの学力を備えた人材を育成していきます、少子化が進行する我が国においては個々の能力を高めグローバル化した社会で活躍する人材を育成することが喫緊の課題である、そのために秋季入学を促進するなど大学の国際化を徹底して推進するとともに、留学生三十万人計画の実現を目指し優秀な外国人留学生の確保等や日本人の若者の海外留学の促進を目指すと述べられております。

 実際に、教育再生実行会議のテーマでも、大学のあり方の抜本的な見直し、グローバル化に対応した教育の検討、大学入試のあり方についての検討を進めるという旨の発言をされておられます。私も、教育の再生、教育行政が抱えている課題や問題というのは本当に数多くあるんですが、中でも特に大学のあり方、大学のグローバル化について本日は質問させていただきたいと思います。

 まず最初に、大臣の大学改革へのお考え、大学のグローバル化に当たっての御決意を改めて伺いたいと思います。よろしくお願いします。

下村国務大臣 世界の大学競争ランキングにおいても、日本の大学ランキングは毎年毎年順位が下がっているという状況がございます。

 国際社会の中で、日本の大学教育そのものがどんどん通用しなくなってしまっているのではないかという危機感を持っておりますが、一方で、日本における各大学は内向き的なところが多いのではないか。ガバナンス機能もされていないし、またグローバル人材をどう育てるかということについて他国の大学より非常に対応が遅いという部分があって、それが結果的に大学の地盤沈下だけでなく日本の人材の国際競争力においても劣化しているという要因にもなっているのではないかというふうに思っております。

 ですから、これから経済再生を支えるための人材づくり、そして国際社会の中で真に活躍する人材を育成していくためには、大学教育を中心とした日本の教育の抜本改革、グローバル対応できるような、そしてそれぞれの大学ももっと活力を持った、競争力を持った、そのような対応ができるような改革をしていくということでないと、相対的に地盤沈下をし、二度とはい上がることが国際社会の中でできないような大学になりかねない現状があるのではないか、そういう危機意識を持っております。

青柳委員 ありがとうございます。

 ランキングについてはまた後ほど質問させていただきますが、私も日本の大学のグローバル化については明らかに世界からおくれをとっているという認識です。一つの課題が九月の入学、秋入学であると思いますが、私は大学のグローバル化には欠かせない一つの課題であると思います。秋入学についてはいろいろなハードルがあると思いますが、私は推進すべきだと思っております。大臣にもぜひその旗を振っていただきたいと思いますが、大臣はそういう御意思があるのか、あるとすればどのように推進していかれるおつもりなのか、お考えをお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 大学の入学時期については、教育再生会議第二次報告、これは平成十九年の六月のときでしたが、これを踏まえまして、若者の多様な体験機会の充実の観点から法令改正を行い、現在、各大学の学長が定めることになっております。しかし、残念ながら、まだ実際に受け入れているのは七大学程度、これは秋入学で五十名以上を受け入れている大学の数ですけれども、少ないというのが実感でございます。国際社会の中で通用するためには、もっともっと秋入学についてはバックアップをしていく必要があるというふうに思います。

 このような制度を活用して大学を九月入学にしたときに、高校卒業から入学までのギャップタームにおける大学生の体験活動、こういうことについてより一層促進することを国としても支援することが必要であるというふうに思います。

 今後、秋入学の推進に当たっては、各大学の主体性、多様性を尊重しながら、資格試験のあり方や短期留学に関する支援策など、関係省庁と連携しながら必要な環境整備について引き続き検討してまいりますが、積極的に各大学の取り組みについては文部科学省として支援をしてまいりたいと考えております。

青柳委員 ぜひ積極的に進めていただければと思います。

 次に、海外の大学との単位の交換そして学位の交換、いわゆるダブルディグリーについて御見解を伺いたいと思います。

 私は、現状はまだまだすごく低調だという認識であります。特に、ダブルディグリーを導入している国公立大学は、公表されている最新の数字では二十九校、私立大学では六十四校と低迷していると思います。この数字について文部科学省さんとしてはどのようにお考えになられているか。私は、政治のリーダーシップを発揮して推進していただきたい分野の一つだと思っておりますが、義家政務官、いかがでしょうか。

義家大臣政務官 お答えいたします。

 海外の大学との教育連携については、国内だけでは実施できない質の高い教育の提供に資するとともに、我が国の大学の国際通用性向上にもつながる重要なものと我々も認識しております。

 平成二十一年度時点で、我が国の大学のうち約三四%が海外の大学との単位互換協定を締結しておりまして、そのうち約一二%が国内外の双方の大学で学位を取得できる、委員御指摘のダブルディグリープログラムを実施しているところであります。そして、これらはいずれも急速に増加しているというふうに考えております。

 文部科学省としましても、海外の大学との教育連携を積極的に推進するために、まず一つ目として、来年度から各大学の創意工夫によって四学期制などの多様な学事暦を可能とする制度改正を行います。それとともに、二つ目、海外大学との単位互換やダブルディグリープログラムなど、質の高い共同教育プログラムを構築する大学への支援、これは大学の世界展開力強化事業という事業ですけれども、それで強烈に後押しをしてまいりたいと考えております。

青柳委員 ぜひこの分野も積極的に進めていただきたいと思います。

 さらに、大学のグローバル化には、教員、学生双方の英語力の向上が欠かせないと思います。現状、留学生の受け入れを積極的にできない理由の一つに、英語を使える教員がそもそも不足しているという課題、留学生を受け入れる大学の事務職員の英語能力の課題、さらには情報発信の不足、提出書類の煩雑さなど、さまざまな課題があります。学生そのものについても、英語力、特に英会話力、実践的な英語力が高いとは言えない状況です。

 一つの指標ですけれども、TOEFLの国別ランキングで、日本は百六十三カ国中百三十五位、アジア内に限っても二十七位です。ちなみに、アジアではシンガポールが一位、韓国が九位、中国が十六位、ラオスが二十八位です。こういうような数字で、グローバル化をします、あるいは世界トップレベルの大学を目指しますといっても、現状は遠く及ばないのではないでしょうか。

 国際的な通用性を高めるには、例えば、大学の一般入試に大胆にこのTOEFLの試験を導入する、あるいはTOEFLを必修科目化するといった取り組みがあろうかと思いますが、こうした件も含めまして、英語力の向上について文部科学省の取り組みを教えていただきたいと思います。

 政務官にお伺いします。

義家大臣政務官 国際化において非常に重要な御指摘であろうと受けとめております。

 文部科学省では、毎年度、TOEFL等の外部試験結果を各大学の入学者選抜に活用するよう要請しており、平成二十四年度には三六・二%に当たる二百六十八大学で活用しております。また、大学によっては、入学後の教育との関連を十分に踏まえた上で、受験生の外国語コミュニケーション能力を図るため、TOEFLのスコア等をセンター試験の英語科目に換算する等の取り組みを行っております。

 また、二十四年度からは、英語による授業の充実やTOEFL等の結果の入試への活用等を含めた、学生の語学力向上のための取り組みなどを行うグローバル人材育成推進事業を実施しております。

 一方で、後期中等教育、高校の英語教育、そして中学校の英語教育、この辺もしっかりと変えていかないと、英会話スクールに行ける子と行けない子でチャンス、機会が全く変わってくるというようなことがありますので、若者たちに国際化を促していく一方で、責任を持って公教育が彼らにしっかりとした英語教育をできるような体制をどうサポートしていくのか、指導していくのか、これもまた重要な観点だろうと考えております。

青柳委員 今、政務官がおっしゃられた数字は、一般入試の数字ではありません。私が申し上げたのは、一般入試ではまだまだ三%に満たないと聞いておりまして、一般入試に取り入れることによって、今政務官がおっしゃられたように、中学や高校の教育が変わってくると思いますので、ぜひ一般入試の方に採用を促されてはどうかという提案でございます。

 次に、大学の国際化の取り組みで、例えば、オーストラリアは二〇〇二年に十九万人だった留学生の受け入れを現在三十四万人に増加させました。オーストラリアは今や留学事業というのが一つの大きな事業になっていて、観光事業を超える産業にまで成長していると言われています。

 日本も、大臣所信でもありましたが、留学生受け入れでは、現状十四万人を二〇二〇年までに三十万人にする計画、一方、送り出しは、現状六万人を十二万人に倍増させる計画があります。私は、この計画の達成は最低限必要なことだと思います。特に、送り出しの部分では若干物足りなさを感じております。というのも、例えば人口が五千万人に満たない韓国は、特にアメリカに限って言いますと、アメリカへの留学生は現状で七万人なんです。一方、我が国は一億二千万人の人口がいて、米国への留学生は二万人です。今のこの数字を倍増させても、韓国にはそもそも追いつかないという状況なんです。

 ですから、こうした数字で本当に満足されるのかどうか。これも世界トップレベルの大学を目指すのであればちょっと物足りなさを感じる次第ですが、いかがでしょうか。大臣の御見解を問いたいと思います。

下村国務大臣 もともと、福田内閣のときに、私は自民党の中で留学生特別委員長をしておりまして、今から五年ほど前ですが、当時つくった目標が、二〇二〇年に留学生受け入れ三十万人、また送り出し三十万人という計画をつくりました。それが今回の御指摘のように後退をしているということでございまして、それが今の日本そのものの経済状況の反映でもあるというふうに思います。

 今後、日本から海外への留学生が減少傾向にある中で、社会や経済がグローバル化し、日本企業等が世界に展開していく中、個々の能力を高め、グローバル化した社会で活躍する人材を育成することは喫緊の課題であり、これをもっと数をできるだけふやしていくという施策をとっていく必要があるというふうに思います。

 日本人が留学しやすくなる環境を整備するため、一つには大学の国際化に向けた体制整備、二つ目に奨学金等の経済的支援、三つ目に日本人留学生の修学に関する経済団体への働きかけ、四つ目に英語教育の抜本的な改善、五つ目に学事暦の弾力化等が必要であると思いますし、これに取り組んでまいります。

青柳委員 先ほど大臣もおっしゃられましたように、世界の大学ランキングでは、オーストラリアは具体的な数字として二〇二五年までに世界トップ百に十の大学を入れるという具体的な目標を持っておられます。そして、我が国でも、先般、第四回の産業競争力会議の資料で世界大学ランキングトップ百に十校という目標が示されたんですが、これにはいつまでに達成するということが明記されておりませんでした。

 この点もお伺いしたいと思いますが、それと、この大学ランキングを上げるためには外国人教員の比率というのが重要な要件になっているそうなんですけれども、世界の著名な大学は外国人教員の割合というのは通常三〇%以上です。日本の大学は現状三から四%程度、さらに、外国人の学長に限って言えば国公立大学はゼロという状況です。

 こうした状況について、文部科学省さんの現状の見解を伺いたいと思います。

下村国務大臣 世界大学ランキングトップ百に十校という目標は、三月十五日の産業競争力会議において民間議員から示され、それに対して私から、大学を核とした産業競争力強化プランとして説明する中でも、一つの達成目標として掲げたものでございます。

 世界的な大学ランキングは複数ございますけれども、日本の大学に対する国際的な評価を知る上で参考になる点があるというふうに認識しております。

 我が国の大学については、外国人留学生や外国人教員の比率など御指摘がございましたが、国際化の面で評価が低いという傾向がございます。したがって、国際化を一層推進するとともに、教育研究水準の向上を図り、世界トップレベルの教育研究拠点を形成していくことが必要であるというふうに思います。

 大学の教育研究の充実強化、グローバル化への対応については、今後、教育再生実行会議でも議論をすることになっておりますので、いつまでに十校ということについても、この中で位置づけを今後の議論の中で決めさせていただきたいと思っておりますが、必要な施策を強力に推進してまいりたいと思います。

青柳委員 時間もちょっと迫ってまいりましたけれども、私は、このグローバル化の議論の中で一つ欠けている視点があると思っております。それは、日本の大学そのものが海外に出ていくという視点が欠けているんだと思います。

 日本は、もう御案内のとおり、少子化して、これから学生の数がどんどん減っていきます。一方、例えばアジアの国々は、特に東南アジアの国々は、今、爆発的に若年層、人口がふえている、さらに、これから中間層が爆発的にふえてくる、高等教育に対するニーズが物すごく高まっている、これが現状です。

 さらに、日本の大学に来てほしいというふうに首脳会談で要請されている。例えばベトナムは、二〇一〇年も二〇一一年も首脳会談で、実際に日本の大学をつくってくださいと言われていますけれども、日本の政府は、そういうスキームがありませんという見解に終始しております。

 私は、真に大学のグローバル化を目指すのであれば、こうした日本の大学そのものがアジアに、海外にどんどん出ていくべきだと考えております。ぜひそのことをお願い申し上げまして、私の質問は終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

松野委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 先日の下村文部科学大臣の所信を受けて、質問をいたします。

 大臣は、所信の中で、「教師が子供一人一人と時間をかけて向き合える環境を整える」ことを強調されました。

 我が党は、昨年十一月に、この間、深刻化してきたいじめ問題を解決するために、全国の現場の先生方や子供にかかわる関係者、あるいは被害者団体、学者、研究者の方々からの聞き取りをもとに、「「いじめ」のない学校と社会を」と題した政策提言を発表し、先日はこれを踏まえたいじめ問題のシンポジウムも開催をさせていただきました。

 私たちは、この問題では、まず第一に、目の前のいじめから子供たちのかけがえのない命、心身を守り抜く緊急の取り組みが必要だと考えます。そのためには、学校教育において、どんな大切な仕事があろうと子供の命より大切な仕事はないという、いわば子供の命最優先の原則を明確にして事に当たることが決定的だと考えております。

 大臣が所信で言われた「教師が子供一人一人と時間をかけて向き合える環境を整える」というそのお言葉には、私たちのこの思いにも響き合う中身があるのではないかと考えますけれども、まず、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 党派を超えて、子供の命を一番大切に思うそのための教育環境を整えるということは、これは共有して全く重要なことであるというふうに思いますし、そのようにぜひ取り組ませていただきたいと思います。

 私としては、質の高い教育を行うためには、教師の目が十分に行き届き、子供一人一人に対してきめ細かく対応できるような環境を整備すること、これが非常に重要だというふうに考えております。

 現在の学校現場は、学力向上、特別支援教育の充実など対応すべき多くの課題を抱えているが、御指摘のとおり、こうした教職員の指導体制の充実は、いじめの早期発見、解決にも資するものというふうに考えます。

宮本委員 しかし、問題は、大臣のおっしゃるとおり、教師が子供一人一人に時間をかけて向き合える環境がまだまだ整備をされていない。当委員会でも教員の多忙化について、それこそ党派を超えて、繰り返し繰り返し議論がされてまいりました。

 例えば、この大津市の中学校いじめ自殺事件の第三者報告書でありますけれども、ここでもさまざまな問題点が指摘をされております。「教員たちの多くは、業務に追われほぼ毎日深夜まで残業していた。こうした中で子どもたちのために費やされる時間とこころの余裕が失われていったことは必然である。」こう指摘をして、「教員の多忙化は克服すべき緊急の課題である。」とし、提言では、「教員の多忙化に対して、教員の定数を増やし、教員ひとりの負担を軽減することはよく言われることである。確かに一番の有効策であることは明白である。」こう述べております。

 いじめ問題の解決を進める上でも、教員の多忙化を解消すること、そのために教員をふやし負担の軽減を図ることは喫緊の課題だ、まさにそう思うんですけれども、大臣、これは同意していただけますね。

下村国務大臣 御指摘の大津市立中学校におけるいじめに関する第三者調査委員会の報告書では、今回の事案に係る問題点の一つとして、「教員の多忙化は克服すべき緊急の課題である。」というふうにしており、「教育委員会への提言」の中で、教員の多忙化に対して、教員の定数をふやし、教員一人一人の負担を軽減することが述べられていることは承知をしております。

 同時に、大津のこの問題は、それぞれの教員が孤立化していた部分もあったのではないか、お互いに教師が、多忙化も一因だと思いますが、思いやりを持ってフォローをし合えれば、早期発見することによって、子供が自殺まで追いやられなくても済んだ部分もあったのではないかということを、私もこの報告書を読ませていただいて感じたことの一つでございます。

宮本委員 いじめ問題に対応するためには、教員の増員は当然でありますけれども、特に養護教諭、保健室の先生の増員が非常に大事だと思っております。

 そこで、資料の一を見ていただきたいんですが、これは大津の第三者報告書でありますけれども、下の方の傍線、「養護教諭の大規模校常勤複数体制の確立が必要である。旧来より養護教諭、保健室の先生は、「学習の評価をしない」、「ありのままを受け入れてくれる先生」と生徒からの信頼は高く、またその役割は大きい。生徒の立場からすれば身近で相談しやすい先生である。生徒理解を進める上で、保健室という違った観点からの情報も大切であることは言うまでもない。」と指摘をされております。

 いじめ対策として養護教諭が果たしている役割について大臣はどのように認識をされているのか。そして、増員が必要だと思いますが、いかがかということについてお答えいただけますか。

下村国務大臣 御指摘のように、養護教諭は専門的知見を持って児童生徒の心身の健康に関する指導や相談に当たっており、例えば、いじめを受け悩んでいる子供のサインにいち早く気づいたり、担任教諭等に相談できない悩みを受けたりするなど、ほかの教職員やスクールカウンセラー等とも連携しつつ、いじめ対策に大変重要な役割を果たしていると認識しております。

 このような養護教諭の職務の重要性に鑑み、文部科学省が主催する全国養護教諭研究大会で、いじめの早期発見や被害者の立場に立った健康相談について研修したり、指導参考資料、教職員のための子どもの健康相談及び保健指導、これを作成し、各学校等に配付したりしているところでございます。

 また、平成二十五年度予算案では、いじめ問題への対応など、学校運営の改善充実のため、養護教諭は今三万八百五十人おりますが、それから比べるとまだまだ少ない数字でありますが、ことしの予算ではさらにプラス五十人の加配増を含む定数改善を計上しているところでございます。

 今後とも、養護教諭がいじめ対策等に積極的に取り組むことができるような指導体制の充実を図ることが必要であるというふうに考えております。

宮本委員 今御答弁あったように、ふやしたといっても加配なんですね。養護教諭の大規模校常勤複数体制の確立と大津の報告書は言っているわけですけれども、現状では、小学校では児童数八百五十一人以上、中学校八百一人以上の学校でないと複数配置にならない。ですから、定数改善をして、そもそもこの基準自体を引き下げるべきだと私は思うんですが、大臣、いかがでしょう。

下村国務大臣 御指摘のように、養護教諭の定数については、義務標準法上、大規模校、小学校児童数八百五十一人以上、中学校生徒数八百一人以上において複数配置というふうになっているわけでございます。

 このほか、大規模校に限らず、いじめ問題など課題のある学校においても養護教諭を複数配置できるよう加配措置を行っているところであり、それが、先ほど申し上げましたが、二十五年度予算では五十人増の改善で、トータルとして三百三十二人の加配定数を計上したところでございます。

 文部科学省としては、養護教諭が果たす役割の重要性等を踏まえ、引き続き必要な定数増にこれからも努めてまいりたいと思います。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

宮本委員 定数増に努める、定数改善をするとおっしゃるわけですけれども、では、平成二十五年度の内容に入りたいと思うんです。

 今回の予算案に至る過程では、昨年行われた本年度予算の概算要求段階では、三十五人学級を標準法改正で実施している小学校一年生、加配で実施している小学校二年生に加えて、小学校三年生から中学校三年生までを、加配という不十分なやり方ではあっても、五年計画で全て三十五人以下にしていく計画が文部科学省から出されました。これは、総選挙後、政権がかわった後もその内容はほぼ変わらず、引き続き概算要求されておりました。

 これは初等中等教育局に聞きますが、結果はどうなったのか。定数改善は何人で、自然減は何人ですか。

布村政府参考人 平成二十五年度予算案における教職員定数の改善数は八百人、内訳として、改善増千四百人、合理化減三角六百人、一方、自然減は三角三千二百人でございます。

宮本委員 愕然としたというのが多くの人の偽らざる気持ちだと思うんです。結局、差し引きで合理化減も含めて二千四百人もの減。差し引きで二千人以上教員数が減少するなどということは、この数年になかったことであります。

 しかも、その減少の中身も問題であります。先ほど合理化減という言葉が出ましたけれども、合理化のために六百人減員しているわけですね。この合理化減の中身を、初中局、説明していただけますか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 合理化減、六百人減の内訳につきましては、指導方法工夫改善定数に四百人減、また研修等定数に二百人減になってございます。

宮本委員 この指導方法工夫改善加配というのは、地方において少人数学級に充てられてきた定数なわけです。この少人数学級に充てられてきた加配まで削ると、これを削らずに維持するだけでも、地方では少人数学級への取り組みが、小学校二年から三年へ、あるいは地方によっては中学校に充てるというところもあるかもしれませんが、拡充につながったはずなんです。

 この定数を維持すること自体は、新たな財政負担がかかる話ではありません。大臣、なぜそんなことすらできなかったのか、これはひとつ大臣にお答えいただきたいと思います。

下村国務大臣 少人数学級にも活用されている指導方法工夫改善定数加配については、四万一千五百二十三人を計上しておりますので、事実上は前年度同数を維持しているというところでございます。

宮本委員 いやいや、今、四百人減らしたと初中局から答弁があったんですけれども。

布村政府参考人 お答えいたします。

 指導方法工夫改善定数全体の枠として四万一千五百二十三人でございます。そのうち合理化減は四百人減がございましたけれども、一方、この枠の中の小学校の専科指導の増員が四百ということで、都合、前年度と同数ということになってございます。

宮本委員 合理化減も含めて全体で二千人を減らしたことが、少なくとも、その分の定数を新たな少人数学級を拡充することに充てられたものが減らされてしまったことは間違いがないと思うんですね。私は、ここには、やはり加配でこれまでこれをずっと進めてきたことについての限界が示されていると思うんです。

 そこで、私は、より根本的なことを大臣に聞くわけでありますけれども、今回の予算案で定数改善の計画というものは策定されることになっておりますか。

下村国務大臣 小三以上の三十五人以下学級の推進や計画的な定数改善については、悉皆で行われる平成二十五年度全国学力・学習状況調査等を活用し、効果検証を行いつつ、今後も引き続き検討するということが文科大臣、財務大臣の間で合意されたところでございます。

 平成二十五年度予算案では、国、地方を通じた公務員全体の人件費抑制に取り組むという非常に厳しい状況の中で、いじめ問題や特別支援教育への対応など、八百人、約十七億円ですが、教職員の定数の増を確保したほか、約七千人、これは常勤換算ですと二千百人、約二十八億円でございますが、補習等のための指導員等派遣事業も新たに実施するということもしておりまして、できるだけ学校の先生の負担軽減にもなる、また教育効果が上がるような配分を二十五年度予算案の中で対応したところでございます。

宮本委員 定数改善計画の話をやったんですが、定数改善計画については、策定することにはなっていない、今後、学力調査の結果を見て検討するというのが財務省との間の結論になったという答弁だったと思うんです。

 今、補習等のための指導員等派遣事業、学校いきいきサポート人材の活用、こういう話で約七千人、常勤教員ベースで二千百人相当というお話もありましたけれども、これは確認しますけれども、布村局長、この学校いきいきサポート人材という方に担任を持ってもらって、少人数学級を広げるということは可能ですか。

布村政府参考人 お尋ねの学校いきいきサポート人材につきましては、放課後や土曜日における補充授業、あるいは発展的な学習を支援するため、地域の退職教職員、社会人、保護者などを児童生徒の学習サポーターや教師業務のアシスタントとして活用しようとするものでございまして、学級担任としての活用は想定しておりません。

宮本委員 ですから、先ほど定数改善が八百人とおっしゃいましたが、その一方で二千人を超える自然減が出ているわけであって、その分が、現に教員の数が減らされている。しかし、一方でサポート事業もやりますよということでありますけれども、定数改善計画も結局決められなかった。計画的に定数改善をしていくという話は、本当にこの間つくられていないわけですね。

 第七次定数改善計画が終了したのが二〇〇五年であります。二〇〇五年度以降、非正規教員の割合というのはどんどんどんどん上がってまいりました。これはまさに定数改善計画がない状態がこの原因にあるというふうに思うんですけれども、初等中等教育局、これは間違いないですね。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、臨時的任用教員や非常勤講師などの非正規教員は増加傾向にあり、平成二十四年五月一日現在で、実数ベースで教員総数の一六・一%を占めてございます。

 その背景として、非正規教員の任用状況は、各都道府県によって大きくばらつきがありますけれども、各県で教員の年齢構成を平準化するための採用調整が行われていること、また地方公務員についての定員削減計画、いわゆる集中改革プランということもございます。それ以外でも、平成十八年度以降、国の教職員定数改善計画が策定されていないことも、非正規教員の増加の要因と挙げられると考えております。

宮本委員 今あったように、まさに非正規教員が一六%にふえた。その大もとに、この定数改善計画が策定されていないことがあるというお話もありました。

 もう一度、資料一を見てください。今度は上の傍線であります。

 大津市の第三者報告書でも、「当該の学校にも多くの非正規教員が在籍している。その役割や学校への貢献度も大きく、なくてはならない存在でもある。非正規教員という不安定な条件をできる限り縮小し、安定した継続的な任用が望まれる。そのことが安定した安心のある学校づくりとなることは確かなことである。」と指摘をしております。

 これは大臣にお伺いしますけれども、学校現場で安定した雇用を広げる上で教職員定数改善計画は必要だと思うんですけれども、今後、新たな計画を策定するおつもりはございますか。

下村国務大臣 御指摘のように、国が計画的な教職員定数改善を行うことは、都道府県教育委員会に対し、教職員定数についての将来にわたる見通しを持たせることができ、それにより正規教員の計画的な採用、配置が可能になります。また、一定の計画期間があることにより、後年度に及ぼす財政負担を考慮しつつ、教職員の年齢構成のバランスにも配慮しながら、計画的に定員管理を行うことが可能であり、このようなことから必要であるというふうに考えております。

 私としては、このような考え方に立って、本年一月の概算要求の改要求においても、五カ年の新たな教職員定数改善計画、これは平成二十五年から二十九年度の改善総数二万六千七百人でありますが、この策定を目指して、その初年度分として五千二百人の定数改善を要求したところでございます。

 しかし、残念ながら、先ほど御説明したとおり、来年度予算案に係る財務大臣との折衝の結果、そのような措置は今回は見送られ、今後、全国学力・学習状況調査等を活用した効果検証を行いつつ、教職員定数のあり方について検討するということになされたところでございます。

 私としては、この検討の中で、世界トップレベルの学力や規範意識の育成など、教育再生につながる教職員配置の適正化を計画的に行う施策については必要だと考えておりまして、しっかりと必要な検討をこれからも行ってまいります。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

宮本委員 定数改善計画が必要だという御答弁でありますが、必要であるというのであれば、私はやはり、学級規模の縮小、三十五人以下学級を進めることだと思うんです。

 それで、少人数学級の推進とおっしゃるわけですけれども、これはどのように進めるのか。加配なのか、それともちゃんと標準法の改正で進めるのか、はっきりお答えいただけますか。

下村国務大臣 三十五人以下学級の具体的な推進方策のあり方については、地方の声も十分聞きながら検討を行ってまいりますが、本来的には標準法改正により恒久的な制度としていくことが望ましい姿でありまして、それに向けて文部科学省はしっかり取り組む必要があると考えております。(発言する者あり)

宮本委員 これは当然のことなんですね。今、他人事ではだめだという声も出ましたが、しっかりその方向で進める必要があると思うんです。

 二〇一一年の通常国会、小学校一年生に三十五人以下学級を導入した標準法の改正は、全会一致で行われました。

 その附則には、「政府は、この法律の施行後、」「公立の義務教育諸学校」「の学級規模及び教職員の配置の適正化に関し、公立の小学校の第二学年から第六学年まで及び中学校に係る学級編制の標準を順次に改定することその他の措置を講ずることについて検討を行い、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずる」こととはっきり定められております。

 この附則が定めていることは、小学校二年生から中学三年生までの学級編制の標準を順次に改定することを検討し、必要な措置を講じよと言っているのであって、加配で実施することの検討ではなかったはずです。ましてや、その加配さえいわば削ってしまうというのは法の趣旨を踏みにじるものだと言わざるを得ないと私は思うんですが、これは、大臣、そうじゃないですか。

下村国務大臣 三十五人以下学級については、必要な定数を基礎定数化して恒久的な制度として実現するためには、義務標準法の改正が必要であります。本来的にはそれが制度として望ましいものであり、文部科学省としては、それに向けてしっかり検討、努力していくのは当然のことであるというふうに思います。

 ただ、御指摘の平成二十三年度改正義務標準法附則第二項では、政府が、小二以降の学級編制の標準を順次改定すること等について検討を行い、法制上その他必要な措置を講ずることを規定はしておりますが、このことは必ずしも法改正を行わなければならないことを規定しているものではないというふうに思います。

 そういう意味で、ことしの平成二十五年度も、事実上、きめ細かな教員配置ということについては努力をしているところでございます。

 いずれにしても、私としては、教員の目が十分に行き届き、子供一人一人に対してきめ細かな対応ができるような環境を整備することは重要であると思いますし、今後とも努力をしてまいります。

宮本委員 いやあ、僕は下村大臣からそういう御答弁を聞くとは思いませんでした。そして、よもや下村大臣が今回の折衝で財務省にこのような形で押し戻されるとは思わなかった。これは本当にショックだということを率直に申し上げたいと思うんです。財政状況が厳しいという言い逃れは、この法律については許されないと私は思うんです。

 実は、先ほど私が指摘した附則は、当初の政府案では、今のこの文言の前に「国及び地方の財政の状況その他の事情を勘案しつつ、」という文言がもともとついておりました。その文言が、自民党、公明党、民主党による修正によって削られていったいきさつがございます。あのときの委員会を私はっきり覚えていますよ。下村大臣もおられた。馳自民党筆頭もあの場におられました。笠民主党筆頭もおられました。松野委員長もあの場におりました。みんな、この耳で聞いたと思います。

 そして、そのとき、この義務教育費国庫負担金については憲法に規定されている国の義務だから責任を持つべきだ、だから、そんな財政の状況などを勘案する必要はないのだといって附則から取り去ったというのがあのときの議論の中身であって、そのことは、きょうおつけした資料の議事録にはっきり出ているとおりであります。

 大臣、二年前におっしゃったことに照らしても、おかしいんじゃないですか。

下村国務大臣 改正義務標準法の修正案の提出者による提案理由説明にあるとおり、学級編制の順次改正等に関する検討に当たって勘案されるべき事項とされている国及び地方の財政状況について、勘案するのが当然のことであるため削除したもの、それは、私もその場におりましたし、今、宮本委員が御指摘のとおりで、我々野党であっても、これは池坊当時委員が提案されたことでありましたが、我々もそういう意味で削除したという経緯については当然承知しております。

 今回の財務、文科両省の合意においては、そのことも確認的に記載したというふうに私は認識しております。

宮本委員 もう一度答弁していただきたいんですが。

 議事録によると、政府案にあった「国及び地方の財政の状況その他の事情を勘案しつつ、」という言葉を我々は立法の立場で外しましたと、下村当時委員は胸を張っておられるわけですが、その下村文部科学大臣が財務省とこのたび結んだ、一月二十七日付、財務省、文部科学省の確認においては、三項目めのところに、「国・地方の財政状況等を勘案し、」と、みずからがやるときにはやはりその言葉を入れているじゃないですか。

 これは本当に筋が通らない、二年前に言ったことと今やっていることが全然違う。二年前のことはその場限りの言葉だったということですか、下村さん。

下村国務大臣 そのときの麻生財務大臣との話の中で、これは、全国学力テスト、意識調査等を悉皆で行うことによって、その結果を踏まえて少人数学級については検討するということでございました。

 項目としては財政状況等も入っておりますが、これは確認的に記載したということで、これについては、麻生財務大臣との話の中で、私は、拘束されないというふうに認識をしたいと思っております。

宮本委員 いや、拘束されないといったって、文言になって、文書になって出回っているわけですから。また、そういうふうに言われると、恐らく、その文言を二年前に削られた民主党の当時の政府を担っていた方々は納得いかないだろうと思うんですね。

 私は、いずれにしても、この標準法の改正の質疑で、大臣が盛んに当時の高木文部科学大臣に詰め寄ったのをはっきり覚えているんですよ。いろいろお答えになるのに対して、「ちょっと頼りない答弁ですね。財務大臣だったらまだそれは評価しますよ、私は。でも、文科大臣としてそういう姿勢では、本当に大丈夫なのかなと。」こう盛んに当時の下村委員が、筆頭理事が食い下がっておられたのを、きのうのことのように覚えております。

 先日発表された教育再生実行会議の提言を見ましても、「国及び教育委員会は、教職員配置を改善充実し、少人数指導・少人数学級の推進や生徒指導に専任的に取り組む教職員の配置を進めるなど学校の取組を支援していく」ことが提言されました。提言の全体については我々は賛成できないことが多いですけれども、この教職員配置についての指摘は重要だと思います。

 野党時代に主張したことは、政権をとった今こそ実施していただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

松野委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木でございます。

 本日は、さまざまな課題について一つ一つお伺いをさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、体罰問題でございますが、一月の二十四日の委員会でお尋ねをいたしました、一月二十三日発出の、都道府県教育委員会宛て、体罰等の実態調査の一次報告は取りまとめが終了したのか、また、委員会には御報告いただいているのか、お伺いをいたします。

 また、兵庫県高砂、中学運動部父母会の一部の方が、体罰なしと回答するよう働きかけていたという記事がございました。調査は正確な実態を把握したものになっているのかどうか、お伺いをいたします。

 また、あわせて、大分県の中学校剣道部では、外部コーチによる体罰が報道されております。コーチは解任されたものの、外部のコーチということで責任が明確にされておりません。三月十三日、初等中等教育局長とスポーツ・青少年局長連名の「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」という通知を学校設置者また管理者宛てに行ったようでございますが、スポーツ関係諸団体宛てには発信をしていないのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 体罰の実態把握に関する調査については、平成二十四年四月から平成二十五年一月までの体罰の状況について、第一次報告として、二月末までに報告を求めているところでございます。現在、これらの集計を行っているところでございまして、今後、速やかに結果を取りまとめ、公表したいと考えております。

 また、一部報道にあったような、もし正しいアンケート等が行われていないというところがあれば、再調査することも必要であるというふうに思いますし、また、外部コーチの問題についても、今後は、学校現場で教えられている方については内部も外部もないわけでございますから、同じような形で文部科学省としては取り組むことが必要であるというふうに考えております。

青木委員 この際、徹底的な調査を行っていただきまして、根本的な解決策を講じていただきますよう重ねてお願いを申し上げたいと思います。

 続いて、被災地の教育環境問題についてお伺いをいたします。

 三月十日の毎日新聞の一面に、気にかかる記事がございました。「福島の小中学生 学習の遅れ」「仮設生活が影響」と題した記事でございます。福島県内の震災、原発事故による被災者の主な避難先であります福島市や二本松市を初め、二十五自治体の教育委員会に宛ててアンケートを行ったものでございます。課題のトップは、勉強のおくれ、成績低迷。二番目が、学習意欲に乏しい。その理由は、仮設や借り上げ住宅の環境、また、家庭の教育機能低下との回答が多かったようです。解決に向けた要望として、教員の増員、また、安定した住環境の確保はもちろん、スクールソーシャルワーカーなどの教師以外の人員増と続いております。

 下村大臣は、所信の中で、就任後すぐにいわき市を訪ねていらっしゃいます。こういった実態をお感じになられたかどうか、今後、被災地の教育環境の改善策として具体的にどのようにお考えかをお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 被災地の子供たちが落ちついた環境の中で安心して学ぶことができることは、極めて重要な課題であるというふうに考えます。

 このため、文部科学省では、被災した児童生徒の学習支援等のための教職員定数の追加措置や、心のケアを図るためのスクールカウンセラー派遣を行うなど、被災地における学校教育環境の整備に努めてまいります。

 また、学校だけでなく、放課後等の子供たちの学習環境の改善を図るため、学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業を実施し、仮設住宅や公民館、学校等を活用した学習支援の充実に努めているところでもございます。

 平成二十五年度予算案においても必要な経費を計上しており、引き続き、被災地の要望を踏まえつつ、福島の子供たちに対する支援の充実に努めてまいりたいと思います。

 先日、被災したいわき市では、このようなことは当日会った小中学生からは特には聞いておりませんが、また今週末、被災地に行って子供たちに会ってくる予定でございますので、改めてその場でも、小学生、中学生等から、具体的にこのようなことについて私の方からも聞きたいと思います。

青木委員 ぜひ、よろしくお願いいたします。

 やはり、心のケアが大変必要な状況があり、個別対応が必要なケースが余りにも多く、人手が足りないという指摘がございますので、ぜひ、引き続きよろしくお願いを申し上げます。

 次に、今社会問題となっております、以前から続いておる課題でございますけれども、都市部の待機児童の課題について、ぜひお伺いをさせていただきたいと思います。

 二十五年度の文部科学省の予算を見ますと、一部にはございますが、この課題の解決につながる措置がほとんど見られず、待機児童の問題は厚労省任せで、文科省としての問題認識の薄さがうかがえるわけでございます。

 幼保一元化あるいは一体化の議論が長年続いております。子供から見れば、幼稚園なのか保育所なのか、ましてや文科省なのか厚労省なのか、全く意味もなく、関係がございません。一体とした立場で見てあげるのが子供の視点ではないかと思います。

 そして、子供の生後から小学校へ、またその先へと、成長の一貫性から見たときに、文科省こそが、継続的に子供の成長、教育に、またそのための環境整備に責任を担い、積極的に取り組むべき立場にあると考えます。

 下村文科大臣として、今社会問題となっておりますこの待機児童の問題に対する認識と取り組みに対する覚悟をできればお伺いさせていただきたいと存じます。

下村国務大臣 青木委員と同様に、私も都市部、私は東京の板橋でございますけれども、北区や足立区においても待機児童が大変多いと思いますし、待機児童を抱えているお母さん方にとっては切実な問題であり、それがなかなか解決できていないという問題がこれから重要な政治課題にもなっていると思います。この待機児童の解消について、政府が全力で取り組むことは必要であるというふうに思います。

 先日も、幼児教育の無償化の中で、これは文部科学省と厚生労働省と、そして内閣府の森担当大臣等の話の中で出てきたのは、幼児教育の無償化、そしてこの待機児童の解消、これを両方、いずれも重要な問題として解決する。我々は、幼児教育の無償化ということを第一優先ということではなくて、待機児童の解決も最優先課題として取り上げるということで議論もしたところでございます。

 しかし、文部科学省は、基本的に幼児教育を所管する役所ということでございますので、直接待機児童に対する施策が行われる役所ではございませんけれども、しかし、今申し上げたように、厚生労働省を初め関係府省の取り組みに対して、我々ができることについては最大限強力な必要体制をとっていきながら、解決に向けて協力をしていきたいと考えております。

青木委員 今、下村大臣の方から、幼児教育の無償化だけを優先するのではない、待機児童の問題も優先課題だというお話がございましたので、そのように進んでいただくことを本当に切に願うものでございます。

 文科省としての役割といいますか、子供の成長のつながりから考えますと、子供の成長過程におけるさまざまな環境整備というのは、やはり文科省としての責任が重いのではないかというふうに思います。

 私は、この都市部の待機児童解決の現実的な方法の一つとして、幼稚園に保育所の機能を持っていただくことが一つあろうかと思います。それは、子供を預かる時間を延長することと、ゼロ歳から二歳までの子供を預かっていただくということになりますが、ここ数年、少子化などで幼稚園の休廃園が目立っております。東京都内の幼稚園の数は、平成元年以降、二百七十五園も減少しております。現在も減少傾向にあると思います。

 今、東京都の待機児童の数は七千二百五十七人です。現存する幼稚園の定員数は二十万一千三百七十八人で、実際の在園児数は十七万三千六百四十二人、定員のあき数が二万七千七百三十六人です。現在の待機児童を収容してもまだ二万人のあきがある、単純に計算すれば、こういう計算が成り立つわけです。

 立地場所の条件ですとか幼稚園側のさまざまな事情、あるいは子育て、教育に対する考え方の違いもあるかもしれませんけれども、今直面しているこの課題解決のために、ぜひ幼稚園の協力が必要だと考えております。

 既に預かり保育を実施している園もあろうかと思いますけれども、まだまだ進んでいない部分もございます。ぜひ、もう一度検証していただいて、教職員の増員あるいは処遇の改善などの予算措置や、施設の基準の見直しなど、幼稚園に保育所の機能を果たしていただけるような積極的な支援をしていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 子ども・子育て新システムにつきましては、内閣府、文部科学省、厚生労働省と一体となりまして、待機児童の解消を最優先課題として今後具体的な制度設計をしていくことになります。

 その中で、先生御指摘のとおり、教員あるいは保育士の資質の向上、量的な整備というところも大きな課題でございますし、また、文科省としても、幼稚園が実施する預かり保育ということを推進いただく場合には、私立の幼稚園の場合ですと私学助成で財政的な支援も少々できるようになってございますので、また、幼稚園から認定こども園に転換をしていただいて積極的に保育機能も高めていただく、そういったところについてもできるだけの支援を重ねてまいりたいと考えております。

青木委員 子ども・子育て三法案でしたか、これも二十七年度の実施というふうにも伺っている部分があるんですけれども、やはりお母さん方は待ち切れない部分があります、子供はどんどん成長いたしますので。また、幼保の一元化あるいは一体化という流れがある中で、幼稚園が保育所の機能を果たすというのは、その前段階の道筋の中で、これは本当に現実的な方法の一つだというふうに考えますので、下村大臣、東京が御地元で身近に感じていらっしゃる課題でございますので、ぜひとも下村大臣こそ先頭に立っていただいて、この待機児童の問題に取り組む覚悟をもう一度お聞かせいただきたいと存じますが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 既に預かり保育を実施している幼稚園、これは私立幼稚園で九四・二%、公立の幼稚園で五九・七%ということで対応しているところでございます。

 ただ、青木委員から今御指摘がございましたように、幼稚園の立地の場所それから教育方針等によって、必ずしも待機児童をそのまま、数字的には吸収できるわけですが、そのような対応を考えていない幼稚園があることも事実でございます。

 その中で、認定こども園等、これもさきの国会の中で、認定こども園の問題点が指摘をされている中で、なかなか予想よりも少ない設置であるということが指摘されましたから、文部科学省としては、今も答弁がございましたが、認定こども園のハードルをできるだけ低くして既存の幼稚園等が対応できるような施策をとることによって、少しでも多くの子供たち、待機児童が解消できる、そういう施策について文部科学省も取り組みをしていきたいと思います。

青木委員 ぜひ、よろしくお願いいたします。文科省とともに、やはり厚労省においても、小規模保育所や保育ママの増設、あるいは育児休業制度の拡充等々も、いろいろなお母さん方の選択肢を広げていくことが必要だというふうに思いますので、省庁ともに、ぜひ全力で取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、高校の授業料の無償化についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 高校の授業料の無償化に所得制限を設けるという方針が打ち出されました。まず、政権がかわるごとに制度が変更されるということで、計画、見通しが立たないということで、現場や家庭は大変混乱をいたしております。この問題だけではありませんが、超党派で結論を出すことが必要な制度もあろうかというふうに思っています。

 私は、基本的には所得制限は必要ないと考えております。所得制限を設ける場合、七百万もしくは八百万と述べておられますけれども、所得をどのように把握しようと考えておられるのか、具体的にお伺いをしたいと存じます。

 これは現場の先生方からも御指導いただいていることでございますが、家庭によっては所得で把握できないケースがある。例えば、借金がある場合、介護や看護が必要な家族がいる場合、こうしたケースは単に所得だけでは家庭状況を把握できないという指摘をいただいています。また、リストラや破産、罹災などで家計が急変した場合、また、芸術家の方々や非正規労働者等は収入が安定しないことが多く、年度によって極端に収入が違うケースなどもございます。

 仮に、七百万以下の世帯全て審査するとなりますと、膨大な事務量が発生いたします。また、家計は随時変動いたしますので、毎年審査が必要になり、継続的に認定作業が発生します。これにかかるスタッフの確保と予算をどのように考えていらっしゃるか、お伺いします。

 また、所得の把握は個人のプライバシーに立ち入ることにもなり、精神的な苦痛を与える場合もございます。家庭の状況にかかわらず、全ての意思ある高校生が安心して勉学に打ち込める社会をつくるため、国の費用により公立高等学校の授業料を無償とし、家庭の教育費負担を軽減しますというのがこの制度の趣旨でございます。

 下村大臣が先ほど来お話しされているように、経済的な理由で教育の機会が奪われてはならない、志と意欲を持った子供に教育の環境を用意するのが政治の責務だと先ほどからおっしゃられております。

 この経済的状況を所得だけでは把握できない場合があるということでございまして、この点についてお伺いをします。今後、どのようにこの所得というものを把握していこうとお考えになられているのでしょうか。

下村国務大臣 民主党政権が導入した高校授業料無償化は、保護者の負担軽減という意味から見たら前進であるというふうに思います。ですから、我々はそれを廃止するつもりはございません。

 しかし、一律の十一万八千八百円を配賦するということによって、幾つかの問題点が出てきております。一つは、公私間格差が改善されない。あるいは、公立高校は無償、私立高校はその相当分だけ軽減されるということによって、実質的には、意識的に今まで以上に公私間格差がさらに広がっている、こういう問題点がございます。

 それから、低所得者層に対しても、高所得者層の家庭の子供に対しても、同じ無償、額ということで、我々は低所得者層の子供に対してもっと厚い教育支援をしていく必要があるということで、この高校授業料無償化については、これは改善しなければならないと思っております。

 この改善をしないということの中で、都道府県が独自の、今申し上げたような負担をすることによって対応しているところもありますが、そうすると、四十七都道府県によって、財政力がある県と、それからないところで、そういう都道府県格差も生まれている部分もございます。

 理想的に言えば、所得制限を設けなければ、どこからか財源を確保して、そして低所得者層や公私間格差にさらに上乗せできれば、それは委員がおっしゃるようなことができるということですが、しかし、それはなかなか財源的にはやはり厳しい状況がございますので、限られた四千億という財源の中で、そこで再配分をしていこう。その再配分の仕方として、所得制限を設けて、真に必要な家庭の子供に対して支援をするということを考えたわけでございます。

 その再配分の仕方の一つの目安として、野党の自民党のときに、例えば所得制限七百万を設けるとすると、そこで一千数百億円の資金が出てくる。それを公私間格差や低所得者層に対して厚く上乗せする。給付型奨学金なんかも一つの例です。

 それは一つの目安ですが、具体的にどう所得制限を幾らで設けるかどうかということについては、実際にこの四月からスタートするということはもう無理な話でございますので、来年、二十六年度から導入することを目指して、これから一年かけて制度設計をしていきたいというふうに思います。

 所得制限については、高校授業料無償化だけでなく、ほかの部分でも同じような、年収を幾らかというのはそれぞれによって異なっていますが、所得制限を設けている事例は幾らでもあるわけでありますから、それらを参考に。

 それから、マイナンバー制度も導入されるわけでございますので、事務的な手続も負担軽減をされてくるというふうに思いますし、トータル的な制度設計の中で、真に必要な子供たちに対しての教育費の軽減対応をしてまいりたいと考えております。

青木委員 御答弁ありがとうございます。

 その事務作業にどれだけの予算がかかるのかというところも一つあろうかと思います。そしてまた、所得によって子供の教育の機会が奪われることがないようにということも一つありながら、また、所得によって子供の教育環境が異なるということに対しても、逆にちょっと違和感を持つところもございまして、この課題については、今後ともいろいろと質問の中で御議論させていただければというふうに思います。

 最後に一問、これは科学技術の方のテーマで質問をさせていただきます。

 使用済み核燃料の処理の問題でございますが、私たち生活の党は、日本は即刻、脱原発をエネルギー政策の主要な柱に掲げ、自然再生エネルギー先進国を目指すべきだとまず考えています。

 いずれ最大の課題は、この使用済み核燃料の処理の問題でございます。

 現在、最終処分として、核廃棄物をガラス固化し、地中に何十万年も管理しなければならない状況にございます。何十万年も果たして安全に管理できるのかどうか、その確証は誰も持てないというふうに思っております。その確証がないままの原発の稼働は、私たちが後世の人々に極めて危険な物体を押しつけるものであると考えます。原子力発電所を稼働させている国は、どこも使用済み核燃料の最終処分が大問題になっています。

 日本は、高エネルギー研究は世界最高水準にあり、高レベル放射性廃棄物に含まれる長寿命核種、マイナーアクチノイドを短寿命核種に変換させる技術があります。

 一つは、高速増殖炉サイクル技術を利用したもので、いわゆる「もんじゅ」です。しかし、事故が多く、見通しが立っておりません。

 それに比較をして、加速器で加速した陽子を重金属に当てることにより大量の中性子を発生させ、その中性子によって長寿命核種を短寿命核種に変換させる技術が東海村、J―PARCに施設されています。これは未臨界であります。中性子は、加速をとめればとまるものでありますので、暴走することがありません。

 東海村にこの核変換実験施設、これが増設できれば、この研究のスタートができるということでございます。この技術によって、核廃棄物の処分に数十万年要していたものが数百年に短縮されるということでございます。今、ベルギーが二〇一六年に施設の着工を決めています。日本には、施設と技術があります。また、優秀な科学者がいるにもかかわらず、その予算はわずか一億円となっています。この技術を開発することは、日本が世界に貢献する最大の道であると考えております。核変換技術開発の推進について、大臣の御見解をお伺いいたします。

下村国務大臣 御指摘の点は、おっしゃるとおりだと思います。使用済み核燃料を再処理した後の高レベル放射性廃棄物は、原子力利用において大きな課題であり、高レベル放射性廃棄物に含まれる長寿命核種を短寿命核種に変化させる処理技術の実用化は、極めて意義があるものと認識しております。

 この核変換技術は、御指摘のように二つある。一つは、加速器で加速した陽子を重金属に当てることで大量に発生した中性子による、長寿命核種を短寿命核種に変換する技術、もう一つが、高速炉を用いて長寿命核種を燃料として燃焼させ、短寿命核種に変換する技術があるということで、国際的にも研究開発が進められており、我が国としても基礎的な研究等を実施しているところでございます。

 文部科学省としては、今後とも、核変換技術を含む、放射性廃棄物の処理処分を支える基盤基礎研究を着実に進めてまいりたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。

 この核変換実験施設、東海村、J―PARCは第二期計画となり、検討中のままでございます。ぜひ、下村大臣の御英断を本当に心から期待申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松野委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社民党の吉川元です。

 本日最後の質問ということで、先日の大臣所信に対して、高校授業料の無償化と、それから三十五人学級を中心にして尋ねたいというふうに思います。

 まず、高校授業料無償化についてでございます。

 今ほど少し質疑等がありましたので、私は、今回の所得制限というものは明らかに制度の後退ではないか、非常にこの高校無償化については成果も出ている中での所得制限というのは、後退ではないかというふうに認識をしております。その観点から、一点お尋ねいたします。

 政府は昨年、先進国で唯一保留をしておりました国際人権規約第十三条二項の(b)、(c)の保留を撤回し、中等教育、高等教育において無償教育を漸進的に導入することに同意をいたしました。

 確認をいたしますけれども、この条項からしても、既にある制度からの後退ということを考えれば、所得制限を行うということは、昨年保留を撤回した条項について、再び保留をするということになるのでしょうか。この点について、まず大臣に尋ねます。

下村国務大臣 我々は、後退だとは全く考えておりません。

 高校授業料制度への所得制限導入は、より効果的な施策を推進する観点から、現行予算を活用し、低所得世帯への支援へ重点化するなど、真に公助が必要な方々のための制度になる漸進的な取り組みをこれから行うというふうに考えております。

 国際人権A規約の保留撤回については、昨年九月に民主党政権のもとで行われましたが、高校無償化に所得制限を導入しても、無償教育の漸進的な導入に向けて教育費負担の軽減に努める方針が維持され、かつ、実際の施策が中長期的に見てその方向に沿ったものであると認められるものであれば、国際人権A規約に違反するものではありませんし、そもそも、これは、廃止するということではなくて、より制度の改善に向けた対応ということでございますので、全く違反するものではないと考えます。

吉川(元)委員 今ほどの答弁ですけれども、ちょっと私自身は納得がいかないといいますか、既にもう無償化をされているところから、一部の人を無償化から外すということですから、これはやはり私は後退ではないかというふうに思います。

 続きまして、三十五人以下学級に関連してお尋ねをいたします。

 今回、なぜ定数改善計画案を凍結したのかということについては、ほかの委員の先生方からもたくさん質問がありましたので、その点については、一点だけ。

 昨年十一月二十日の星陵会館で行われた集会、そこに当時の下村先生も参加をされて、それがこういうふうな形で配られております。恐らく、これを見た方は非常に期待をした、期待をされていたというふうに思いますので、ぜひ、今後、しっかりとこの点については取り組んでいただきたいというふうに思います。

 それで、質問の方ですけれども、ことしの一月二十七日に、これも既に指摘されておりますが、財務省、文部科学省で、少人数学級を今後検討していく際に、覚書といいますか、そういうものの合意が交わされております。その中に、平成二十五年度の全国学力・学習状況調査等を活用するということで合意がされております。

 ただ、私は、これは少人数学級の意義を学力向上だけに矮小化していないのか、そういう懸念を持ちます。特にまた、学力の中でもテストの成績ということに矮小化してはいないかというふうにも感じております。

 大臣も、戦後教育の課題といいますか、今後の課題ということで、人間的な感性や感覚というようなことも、先ほどの答弁の中で述べられておりましたけれども、この学力テストだけをもって少人数学級の成果を見るというのは、これは少しおかしいのではないかというふうにも思います。

 そこで、一つ尋ねますけれども、全国一斉の学力調査等で少人数学級の成果が見られないと判断したら三十五人学級は進めない、そういう判断をされるということなのでしょうか。

下村国務大臣 幾つかの誤解があるのではないかと思います。

 まず、ことし凍結をしたということではないということについては御理解いただけると思います。

 小三以上の三十五人以下学級の推進について、悉皆で行われる平成二十五年度全国学力調査というふうに御指摘がありましたが、これも誤解されておりまして、全国学力・学習状況調査等を活用し、効果検証を行いつつ、今後も引き続き検討するということで、学力だけで決めるわけではございません。

 もちろん、学力テストは当然行いますが、同時に、その中で、学習状況等、相関関係が、少人数学級、つまり三十五人以下学級で行われている学級、クラス編制の学校も相当あります。また、人数が超えている学校等もあります。そういうふうな学習状況、これは家庭環境も含めてトータル的な、あらゆるレベルで、学力以外の学習状況調査も行う予定でありますので、その中でトータル的に判断するということでございまして、学力だけで一律に決めるということでは全くございません。

吉川(元)委員 続きまして、教職員の定数に関連して、二、三質問させていただきたいというふうに思います。

 これも他の委員の先生方から質問がございましたけれども、非常に今、学校の現場におきましては、非常勤あるいは臨時の教員の方が年々ふえております。二〇〇五年段階では八万四千人だったものが、一二年には二万九千人ふえて十一万三千人と、全体で一六・一%という非常に高い比率になっております。

 まず、この数字について大臣はどのように認識を持っておられるのかということを尋ねます。それから、やはりできる限り正規職員として雇用していくというのが本筋ではないかと思いますが、この点についても御意見をお聞きしたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のとおり、臨時的任用教員や非常勤講師などの非正規教員は、平成二十四年五月一日現在、教員総数の一六・一%を占めております。

 これらの教員は、習熟度別指導などの指導方法工夫改善の取り組みに重要な役割を担ってはおりますが、一方で、正規の教員採用選考を経ず、体系的な研修を受けていないことや、非常勤講師の場合、担任や重要な校務分掌を担えない、このようなことから、各県の標準定数における割合が過度に大きくなると、学校の組織運営や教育の質の維持向上への支障が懸念されるところでもございます。

 非正規教員の増加傾向に歯どめをかけるため、各県における非正規教員の配置の実態等について公表するとともに、この割合が過度に高い県に対して改善を促すように文部科学省としてもしております。

 また、各県が長期的な見通しを持った計画的な採用、人事配置を行いやすくするため、国としても、教育再生につながる教職員配置の適正化を計画的に行う方策について、しっかり必要な検討、努力をしてまいりたいと思います。

吉川(元)委員 続きまして、来年度予算案の学校いきいきサポート人材のことに関連して尋ねます。

 今回、二十八億円が新規に盛り込まれて、約七千人と聞いておりますが、退職教員や社会人などの外部の人材を活用するというようなお話を聞いております。常勤教員ベースでいうと二千百人と換算されておりますけれども、本来必要な正規の教職員を増員できないから外部人材、いわゆる非正規ということで充当しているとも受け取れます。

 実際、これは日経新聞ですけれども、こういう記事が出ておりまして、その中に見出しとして、「正規教員の増員難しく」、これは新聞社が勝手に立てる見出しですから、新聞社の認識ということだというふうには思いますが、この点について、今回のサポート人材が教員の非正規化に拍車をかけるものではないということでよろしいのでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のとおりでございます。

 来年度の予算案において新たに実施する、補習等のための指導員等派遣事業六千九百人は、義務標準法上の定数とは別に、放課後や土曜日における補充学習や発展的学習等を支援するため、地域の退職教職員や社会人、保護者等を児童生徒の学習サポーターや教師業務のアシスタントとして活用しようというものでございます。

 この事業は、正規教員を配置した上で地域の人材や大学生等を活用することによって、学校の教育活動のさらなる改善充実を図るという趣旨でございまして、これにより、非正規教員の配置を増加させ、教育の質の低下を招くというようなものではございません。

吉川(元)委員 次に、現場の教職員の実態から質問したいと思います。

 近年、病気休職者が高どまりをしているというのはもう御存じだというふうに思います。文科省の調査でも、二〇一一年度で八千五百四十四人。二〇〇二年度は五千三百三人でしたから、十年間で約三千二百人、四割近くもふえております。

 東京都あるいは厚労省が実施した健康状況調査によれば、ふだんの仕事でとても疲れるというふうに答えた人は、一般企業では一四・一%なのに対して教員はその三倍、四四・九%に達しております。教員の業務が多忙をきわめているというのが、この点からもうかがえるのではないかというふうにも感じております。

 また、教員の病気休職者のうち精神疾患を原因としたものが六割以上を占めており、授業などの通常の教育活動に加えて、授業の準備、成績処理、さらには教育外活動とも言える会議や研修、それに加えて、昨今問題になっております、いじめや不登校などの問題、さらには保護者からのさまざまな要望や苦情、そういったものの処理、そういう中でストレスの蓄積が教員の健康をむしばんでいるのではないかというふうにも思います。

 大臣は、今指摘したような教員の長期病休者や精神疾患がふえ続けている原因というのがどこにあるというふうにお考えでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のように、教員がストレスを感じる要因としては、主に生徒指導や事務的な仕事、学習指導、業務の質、保護者への対応が考えられますが、精神疾患に至るものとしては、生徒指導や職場等における人間関係などのさまざまな背景が考えられると思います。

吉川(元)委員 大臣、長期病休や精神疾患の大きな原因の一つというのは、これはやはり労働時間の長さに起因するものではないかというふうにも思います。

 これは文部科学省の調査ですけれども、一九六六年度、一カ月当たりの平均、平日と休日とを合わせた超過勤務というのは大体八時間程度だった。それが、二〇〇六年度の調査では、平日と休日を合わせると四十二時間の超過勤務の実態になっております。しかも、教職員の場合は給特法がございまして、超勤の手当は支払われないという形になっております。その結果として、残業も青天井になっているのではないか。しかも、手当を支払わないかわりに出されている教職調整額、この基準というのは、超勤時間が一カ月八時間だった一九六六年当時の基準のまま推移をしているというふうにも思っております。

 このままいきますと、ますます教員の多忙化、それがまた長期病休や精神疾患にもつながっていくのではないか、そのようにも非常に心配をしておりますが、この際限のない長時間労働について大臣はどのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 学校教育に求められるものが多様化、高度化する中で質の高い教育を行うためには、教員の負担を軽減し、子供と向き合う時間を確保することが重要であると認識します。

 このため、これまでも文部科学省では教職員定数の改善措置を講じてきたところであり、平成二十五年度予算案においても、いじめ問題への対応や特別支援教育の充実等に八百人の教職員定数の増や、学校サポートのための指導員等派遣事業に先ほど御指摘の約七千人を計上しているところでもございます。

 あわせて、学校を対象として行う調査の縮減、そして校務の情報化などの学校運営改善の好事例の普及、また、地域住民のボランティアによる学校活動の支援等を行っているところでございます。

 引き続き、教員の負担を軽減し、子供と向き合う時間を確保できる環境づくりに努めてまいりたいと思います。

吉川(元)委員 先ほど大臣も、ほかの委員の先生方の質問の中で、これもまた戦後教育の課題という中で、創造性、クリエーティブな人材、あるいはこれからの時代を担う人材育成というのが、今後、教育において求められるというお話をされました。

 そういう子供たちを育てていくためにも、子供たちと実際に接していく教職員の先生方、この方々が、本当に、毎日毎日、私も知り合いの教員の方に聞いたところ、夜中の一時、二時まで仕事をして、うちに帰って、そして、次の日の朝七時にはもう学校に出ていくという、これは一番忙しい時期ですけれども、そういうものが一カ月以上続くようなときもある。調査によると、百時間を超える方、あるいは二百時間を超える方もいらっしゃる。これは、完全に過労死の範疇の中に入っているような、非常に長時間労働を強いられているということだろうというふうに思います。

 そういう長時間労働の中で、創造的な、クリエーティブな、あるいは自発性のある、そういう教育というものが果たしてできるのか。日々、業務に追われている、報告事項に追われている、会議に追われている、そういう教員の実態というものを、やはり定数の改善を含めて、しっかりと取り組んでいかなければいけないというふうにも思います。

 午前中の質疑の中で、勤務時間の適正化の問題等々も少し議論されましたけれども、本来適正化すべきなのは、際限のない長時間労働、先ほども少し触れましたが、給特法。これは、要は、民間企業であれば、残業時間がふえていけば当然超過勤務手当もふえますから、企業としては、なるたけ超勤を抑えよう、そういう動機にもつながりますけれども、今の教職員の給与の体系からいいますと、もう本当に働くだけ働く、しかも、それによって超過勤務手当というのは発生しないわけですから、そういう制度的な問題も含めて、今後しっかりと取り組んでいただきたいということを最後に指摘いたしまして、質問を終わります。

松野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時七分散会


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