衆議院

メインへスキップ



第7号 平成25年6月19日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十五年六月十九日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 松野 博一君

   理事 木原  稔君 理事 中根 一幸君

   理事 永岡 桂子君 理事 萩生田光一君

   理事 山本ともひろ君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      岩田 和親君    小此木八郎君

      大岡 敏孝君    大野敬太郎君

      大見  正君    神山 佐市君

      菅野さちこ君    木内  均君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    新開 裕司君

      高橋ひなこ君    野中  厚君

      比嘉奈津美君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君    山下 貴司君

      義家 弘介君    小川 淳也君

      郡  和子君    中川 正春君

      松本 剛明君    伊東 信久君

      椎木  保君    田沼 隆志君

      中野 洋昌君    青柳陽一郎君

      井出 庸生君    宮本 岳志君

      青木  愛君    吉川  元君

    …………………………………

   議員           土屋 正忠君

   議員           萩生田光一君

   議員           郡  和子君

   議員           松本 剛明君

   議員           笠  浩史君

   議員           鈴木  望君

   議員           浮島 智子君

   議員           井出 庸生君

   議員           青木  愛君

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学大臣政務官    義家 弘介君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          布村 幸彦君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十九日

 辞任         補欠選任

  菅野さちこ君     高橋ひなこ君

  桜井  宏君     大野敬太郎君

  丹羽 秀樹君     大見  正君

  馳   浩君     大岡 敏孝君

  宮内 秀樹君     山下 貴司君

  遠藤  敬君     伊東 信久君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     馳   浩君

  大野敬太郎君     岩田 和親君

  大見  正君     丹羽 秀樹君

  高橋ひなこ君     菅野さちこ君

  山下 貴司君     宮内 秀樹君

  伊東 信久君     遠藤  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     桜井  宏君

    ―――――――――――――

六月十九日

 いじめ防止対策推進法案(馳浩君外十三名提出、衆法第四二号)

五月二十日

 教育費負担の公私間格差をなくし、行き届いた教育を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第六三二号)

 同(玉木雄一郎君紹介)(第六五九号)

 教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善に関する請願(宮本岳志君紹介)(第六三三号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(大岡敏孝君紹介)(第六六〇号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(大串博志君紹介)(第七一七号)

 同(宮内秀樹君紹介)(第七四六号)

 教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善を求めることに関する請願(野間健君紹介)(第七五四号)

 学費負担軽減と私大助成の大幅増額を求めることに関する請願(笠浩史君紹介)(第七六一号)

六月七日

 学費負担軽減と私大助成の大幅増額を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七八三号)

 同(笠井亮君紹介)(第七八四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七八五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第七八六号)

 同(志位和夫君紹介)(第七八七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七八八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七八九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七九〇号)

 同(今津寛君紹介)(第八四〇号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(武藤貴也君紹介)(第八一〇号)

 学校教育における茶道の位置づけに関する請願(小川淳也君紹介)(第八四二号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、行き届いた教育を求めることに関する請願(瀬戸隆一君紹介)(第八四九号)

同月十一日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(笠井亮君紹介)(第一〇七〇号)

同月十九日

 給付制奨学金の実現と教育無償化に関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三一八号)

 同(吉川元君紹介)(第一三一九号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(鳩山邦夫君紹介)(第一三二〇号)

 同(土井亨君紹介)(第一三七六号)

 教育予算の増額、教育費の無償化、保護者負担軽減、教育条件の改善に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三七七号)

 障害児学校の設置基準策定に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一四三二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一四三三号)

は本委員会に付託された。

五月二十一日

 教育費負担の公私間格差をなくするための私学助成に関する請願(第一三四号)、同(第一四五号)、同(第一六四号)、同(第一七五号)及び同(第一八〇号)は「石川知裕君紹介」を「清水誠一君紹介」に、教育予算の増額、教育費の無償化、父母負担軽減、教育条件の改善に関する請願(第二九七号)は「石川知裕君紹介」を「高橋千鶴子君紹介」にそれぞれ訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 いじめ防止対策推進法案(馳浩君外十三名提出、衆法第四二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

松野委員長 これより会議を開きます。

 本日付託になりました馳浩君外十三名提出、いじめ防止対策推進法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。笠浩史君。

    ―――――――――――――

 いじめ防止対策推進法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

笠議員 ただいま議題となりましたいじめ防止対策推進法案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 いじめから一人でも多くの子供を救うためには、一人一人が、いじめは絶対に許されない、いじめはひきょうな行為である、いじめはどの学校でもどの子にも起こり得るとの意識を持ち、それぞれの役割と責任を自覚して行動しなければなりません。この決意を国民全体で共有し、風化させないために、社会総がかりでいじめに対峙していくための基本的な理念や体制を整備する法律の制定が必要であります。

 本案は、いじめが、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命または身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進しようとするものであり、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、いじめを定義するとともに、いじめの防止等のための対策の基本理念、いじめの禁止、国、地方公共団体、学校の設置者、学校及び学校の教職員、保護者の責務、財政上の措置等を定めることとしております。

 第二に、国、地方公共団体及び学校の各主体におけるいじめの防止等のための対策の基本方針の策定について定めるとともに、地方公共団体は、関係機関等の連携を図るため、学校、教育委員会、児童相談所、法務局、警察その他の関係者により構成されるいじめ問題対策連絡協議会を置くことができることとしております。

 第三に、学校におけるいじめの防止、いじめの早期発見のための措置、関係機関等との連携、いじめの防止等のための対策に従事する人材の確保及び資質の向上、インターネットを通じて行われるいじめに対する対策の推進、いじめの防止等のための対策の調査研究の推進、啓発活動等について定めることとしております。

 第四に、学校におけるいじめの防止等の対策のための組織及びいじめに対する措置、学校の設置者による措置、教員等による懲戒、出席停止制度の適切な運用、学校相互間の連携協力体制の整備等について定めることとしております。

 第五に、学校の設置者またはその設置する学校は、いじめにより児童等の生命等に重大な被害が生じた疑いがあると認められる等の重大事態に対処し、及び同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに組織を設け、適切な方法により事実関係を明確にするための調査を行うとともに、当該調査に係るいじめを受けた児童等及びその保護者に対し、必要な情報を適切に提供することとしております。

 第六に、この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することとしております。

 以上が、本法案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

松野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

松野委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長布村幸彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大岡敏孝君。

大岡委員 高島市、大津市、両市から選出をされております大岡敏孝でございます。

 大津はいじめの問題で全国的に有名になった市でございまして、このたびは六党、自民、公明、民主、維新、みんな、生活の各党の皆様でこの法案が提出に至ったということでございまして、実務を担当された議員各位には深く感謝を申し上げます。

 それでは、法案の審議に入りたいと思います。

 まず、二十二条関係でございます。

 ここでは、その学校に所属する複数の教員あるいは心理や福祉の専門家などによりまして構成される組織を置くことを義務づけているように読めるわけでございますが、まず、これは何を担い、一年間に具体的にどういう活動をすることを想定されているのか、教えていただきたいと思います。

 と申しますのも、いじめの事件以来、こうした問題は、担任だけに任せてはならない、むしろ学校全体で情報共有をして、学校全体で対策するべしというふうにされてまいりまして、もう既に多くの学校では、毎回、職員会議のあるたびに、いじめの問題を議題として情報共有を進めているというところがたくさんあるんですね。そうした中でこの法案をつくってしまうのは、半ば義務づけ的に読めるわけでございますが、そうすると、一部の先生を取り出して、そしてそこに福祉だとかの専門家を入れて、また新しい組織をつくるということになるわけでございます。

 これは、小規模な学校とか複式学級になっているところにしてみれば、非常に事務的な負担、あるいは議事、計画それから報告等の負担がかかってくるわけでございますし、逆に大規模校になりますと、一部の教師がその組織に入るというのでは、本当の意味での全校的な共有ができなくなる可能性もあるわけですね。

 したがいまして、これは非常に義務的に読める規定であって、三カ月後に施行ということになると、場合によっては多くの学校がこの法に違反することになりかねないという危惧があることから、まず、提案者側の意図を教えていただきたいと思います。

土屋(正)議員 ただいまの大岡先生からの御質問にお答えを申し上げます。

 大岡先生は、大津が地元でありまして、いち早く現地に調査に行かれ、詳細なレポートを提出されるなど、大変実践的に活躍をされてきた先生でございまして、深く敬意を表するところであります。

 その上での御質問でございますので簡潔にお答え申し上げたいと存じますが、本法案の第二十二条は実はこの法律の肝になる部分であります。

 我々はこういった共通の認識から出発をしたんですが、今まで、いじめというのは何回かありました。死に至ることもありました。この東京都においても、過去三十数年間に二回ほどありました。そのときは、みんなで、いじめを何とかしようということで頑張るわけでありますが、時がたつにつれて、さまざまな目先の授業に追われて、やや関心が薄れるといった傾向にあります。こういったことをなくするためにも、こういう事件を風化させないためにも、常設の組織を置くことが必要だ、こう考えて、この二十二条は肝になると我々は考えました。

 しかし、一方で、今、大岡先生から御指摘のあったような、この組織が中二階的で重荷になるんじゃないかというような見方もございます。

 我々としては、これを○○協議会といったような名称にしないで組織と呼ぶことにしたのは、今、大岡先生が御指摘のように、本来、学校教育の中で起こることでございますから、校長先生以下全教員が一体となって当たるべきものでありますし、既にそのような組織が先行してできているところもたくさんございます。こういったことを念頭に置き、一律に○○協議会あるいは対策委員会といったようなものではなくて、ここに組織というふうな名称にしたのは、そういった意図があって、学校現場がやりやすくなるということを念頭に置いたものでございます。

 もちろん、複数の教員だけではなくて、児童等や保護者にとっても総力を挙げて取り組むべきもの、このように考えているわけであります。

 さて、もう一つの御指摘の点でございますが、いわゆる小規模校あるいは人口の少ない市町村では重荷ではないかということについてでございます。

 「心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者」というものは、いわゆる外部の目も取り入れたらどうだ、こういう御指摘に応えたものでございまして、これは例示規定であります。もちろん、学校の規模、市町村の規模によっては、そういったものを入れなくてもうまく機能していくところもあるわけでございますので、それはそれで常設の、いわゆる校長以下の体制にしっかりとやっていただく、こういうことになるんだろうと思います。

 以上、大規模校のケースの場合、小規模校のケースの場合、いろいろございますが、学校現場を尊重して、自由度を高め、そして学校が責任者である、こういう観点に立って規定したものでございます。

 どうぞよろしくお願いします。

大岡委員 ありがとうございました。

 学校の自由度、さらには、もう既にやっている会議等の活動をもって組織とみなすということの御答弁をいただきましたので、これは承知をいたしました。

 次に、二十三条についてお尋ねをいたします。

 ここでは、市町村とか県とか国とかが設置をする子供相談センター、あるいはNPO等が実施している子供相談センターが相談を受けて、いじめの事案があると思った場合には学校への通報等の措置をとるものとするという、これもいわば義務づけ的な規定となっております。

 しかし、実態としまして、子供の方から相談をするときに、学校には言わないでほしいということで相談を受けているケースというのもたくさんあるんです。これはいろいろな事例があるんですが、例えば子供が何らかのいじめを受けている原因が家庭の崩壊にある、それを子供はわかっている、わかっているから学校に言われたところでどうしようもない、親に言われたところでどうしようもないとわかっているけれども、ほかに相談するところがないのでこの相談センターにかけてきているというケースがあるんです。

 これも含めて、全て学校の方に通報される、あるいは親に通報されてしまうということになると、これは相談センターとの信頼関係もつくれなくなりますし、場合によっては、通報しない、直ちに行動をとらないことがベストの判断だということだってあり得るわけでございます。

 そういうことから、ここの部分も読むと義務づけのように読めるわけでございますが、提案者としての意図を教えていただきたいというふうに思います。

土屋(正)議員 ただいまの御指摘も非常に実践的な御意見かと存じます。

 確かに、子供たちが悩む中には、家庭の崩壊、その他の理由もあろうかと思います。それらについて悩んでいることは、例えば子供電話センターとか子供相談室とかSOSセンターあるいはいのちの電話とかというさまざまな組織があろうかと思います。これらの相談者が受けた相談を一律に学校に通報するということになると、信頼関係が薄れ、重大な結果にもなる、あるいは相談の窓口を閉ざしてしまうこともある、こういうことの御懸念かと存じます。

 本法案で言う学校への通報は、適切な措置の例示でありまして、児童等から相談を受けた者に対して、いじめの事実があると思われるときに一律に学校への通報義務を課したものではございません。

 したがって、今御指摘のようなことを踏んまえて相談者が適切に判断し、また、学校が原因と思われるものについては通報していただく、こういう仕分けになるだろうと思います。

 どうぞよろしくお願いします。

大岡委員 丁寧に答弁していただきまして、これは結構、各相談センターが安心する答弁であったと思います。

 次に、二十八条以下に重大事態が発生したときの対応について書かれているわけでございますが、まず、三十条二項において、重大事態への対処に附属機関の設置ができる規定となっているんですね。ここで問題になるのは迅速性でございまして、土屋議員も市長をやっておられたのでよくおわかりだと思いますが、附属機関を設置するとなると、条例をつくらなければならない、そうすると、本会議を招集して、委員会にかけて、採決しないといけない。これは極めて時間がかかってしまうわけです。

 したがって、本来、今回の法律で首長が迅速に附属機関をつくれるような仕立てにしていただきたいと思っていたんですが、この条文、三十条二項はどのように読めばいいのかということを教えていただきたいと思います。

土屋(正)議員 ただいまの御指摘も相当肝になるお話かと存じます。

 一言で言いますと、この法律で言う附属機関は、地方自治法上の機関であります。したがって、法令の根拠があるか、条例でやるかということになります。しかし、この条文の中で「附属機関を設けて調査を行う等の方法により、」という言い方をしているわけでありまして、これは、いわゆる地方公共団体の長が包括的な規則制定権を持っております。これは別に議会に諮らなくて一件決裁で制定できるわけであります。こういった規則制定権は、法令に違反しない限り有効で成立をするわけでありますから、これに基づいて先行して調査委員会なりなんなりをつくることについては、この法律によって否定しているものではありません。「等」というところで読み込んで、迅速に対応していただきますようにお願いをいたしたいと存じます。

大岡委員 首長をやられた土屋議員からの答弁でございますので、そのように地方公共団体にはうまく伝えていただきたいと思います。

 一方で、附属機関と補助機関は若干機能の違いがあったりしますので、今後もう少し調査を進めて、どうしても附属機関だと長の権限の範囲しかだめだとか、あるいは非常勤の職員にならない、附属機関であればなるんだけれども補助機関であればならない等の細かい差異等もございますので、ここについては私も継続的に、今回の法の施行を受けて、調査をしてまいりたいと考えております。

 最後に、ちょっと時間がなくなったので、もう一問。

 重大事態が発生した後の対応の部分なんですけれども、全体として、調査に関して、ああせいこうせいということは詳細に書かれているんですが、問題は、調査の継続とその後のフォローなんですね。

 御案内のとおり、いじめが起きて調査をしているからといって、教室をとめることはできません。ほかのクラスも含めて、全部授業をやり続けている。その中で並行して調査を進め、後のフォローをしていくということになりますと、当然のことながら、学校のマンパワーでは不足をするわけです。

 しかし、三十三条では事務の適正な処理に対して援助できるという規定しかなくて、数カ月にも及ぶ調査、あるいはその後のフォローも含めるともうしばらくかかる、しかも援助してほしいことは事務だけに限らないという場合が考えられるわけでございますし、さらに、できる規定ではやはり弱いところがあるんですが、これも提案者としての思いの部分、真意の部分を教えていただきたいと思います。

土屋(正)議員 一般的な市教委や県教委の人的あるいは財政的な支援についてはほかの条項に書かれているわけでありますが、法案第二十八条第一項においては、重大事件が発生した場合に、学校の設置者または学校の下に組織を設けて調査を行うことを義務づけているわけであります。その際、学校が調査を行う場合においては、本法案第二十八条の三項により、学校の設置者が必要な指導及び支援を行うこととしているわけであります。支援の中身には、お尋ねにあったような人的な支援も当然含まれる、このように考えているわけであります。

 また、当然のことながら、市町村は、政令市と中核市などを入れて約百しかありませんから、それ以下の、残り千七百の市町村の中には、相当、事務能力というか、そういうのが弱体な市町村もあります。こういうところにつきましては、都道府県との関係において、本法案の第三十三条において、とりわけきちっと連絡をとりながら補い合っていくようにという趣旨の規定がされているところであります。

 どうぞよろしくお願いいたします。

大岡委員 時間になりましたので、ちょっと大臣に聞けずに残念だったわけでございますが、いずれにしましても、この法案、まずは成立をさせる、そして運用しながらよりよいものにブラッシュアップしていくということが重要だと考えておりますので、私も、これからしっかりとこの法案の運用も見ながら、建設的な提案をしてまいりたいと思います。

 本日はありがとうございました。

松野委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党、兵庫八区、尼崎市選出の中野洋昌でございます。よろしくお願いいたします。

 私は、このいじめ防止対策推進法案、実務者協議の方にもずっと参加をさせていただいておりました。ですので、我が党が主に主張しまして法案の中身に盛り込ませていただいた内容、こういう点を中心に質問をさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 まず一つ目に、いじめの定義、第二条でございます。

 いじめの定義についてはさまざまな御意見がございました。例えば、より厳密な定義を置くべきだ、こういう意見もあったかと承知しております。例えば、客観的に認められるものに限るでありますとか、あるいは、今回は心理的、物理的な行為という定義でございますが、これを攻撃にした方がいいんじゃないかとか、いろいろな議論がございました。

 我が党としましては、いじめはあくまでもいじめられた児童生徒の立場に立って判断をしていくべきだろう、こういう意見から、定義を広くとるべきであると主張させていただきました。今回それが反映されたものと考えておりますけれども、今回いじめの定義を限定的な記述にせずに現行の定義とした趣旨、これを提案者にお伺いしたいと思います。

浮島議員 中野委員にお答え申し上げます。

 中野委員におかれましては、実務者協議に本当にたくさん出席をいただき、ありがとうございました。

 本法案の第二条第一項におきましては、いじめの定義を、「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為」、これはインターネットを通じて行われるものも含むものでございますけれども、「であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」ということを定義とさせていただきました。

 実は、この定義は今回の中では与党のものを維持させていただいたということでございますけれども、与党における議論の経過をちょっと御説明させていただきますと、与党案を取りまとめるに当たり、公明党の方からは強い主張で、被害者の目線、これを重要な観点に入れるべきであるということで、できる限りいじめの範囲を幅広くするべきではないかということを、たくさん御意見をいただいたところでございました。

 そして、具体的には、定義において客観的に認められるものに限るというような文言を加えるということもありましたけれども、客観的にと言われますと、客観的に認められるのはどういう人がどういうふうに認めるのか、あるいは認められなかった場合、あるいは学校が認めないがために、本来は支援されるべきなのにいじめに苦しむ児童等が対象からこぼれてしまってはならないという観点から、今回はこのような広い観点にさせていただいたところでございます。

 また、今お尋ねにありました攻撃という言葉も初めはございましたけれども、攻撃となってしまうと、無視やからかい、そういう範囲の広いものが読み込めるかどうかということも議論になりまして、そんな議論の中で、「心理的又は物理的な影響を与える行為」とさせていただいたところでもございます。

 また、お尋ねの点でございますけれども、与野党の実務者協議、中野委員も出席していただきましたけれども、さまざまな御意見、御議論がありました。そんな中で結果として与党案の定義を維持することとなりましたけれども、被害者の児童等が心身の苦痛を感じているかどうかを確認する際に、客観性、これは本人の状況や周りの様子でございますけれども、この観点を持ち込むことが排除されることではないということについては認識が一致したものと考えております。

 また、いじめは誰にでも起こり得ることでございますので、そういう観点からも、早期発見そして早期対処をしっかりと行うことができるように、しっかりと対処をしてまいりたいと思います。

中野委員 ありがとうございます。

 続きまして、保護者の責務等についてお尋ねをいたします。

 本法案におきましてよく指摘をされることでございますけれども、保護者の責務というものが規定をされました。これを余りにも厳しく規定すると、例えば学校側が、保護者にも責任がある、こういうふうに考えて十分な対策を講じないんじゃないか、こういう御懸念の声がございました。

 さらに言いますと、例えば、事故等が起きたときに保護者と学校の間で訴訟になった、こういうときに具体的に損害賠償請求訴訟になるケースがあるわけですけれども、学校側が保護者の果たすべき責務が果たされていないという主張をしたときに、例えば学校の支払う賠償金額がそれによって減額をされる可能性もあり得るんじゃないか、こういう御懸念の声もありました。

 こうした点を我が党としても主張させていただいたところでございますけれども、本法案においては、こうした我が党の主張がどう反映をされたのか、こういう懸念は払拭をされているのか、これについてお伺いをいたします。

浮島議員 本法案の第九条第一項から三項までにおいて保護者の責務と定めさせていただいておりますけれども、いじめに関係して不幸な出来事が起こってしまった場合に、保護者についてそのような規定が置かれているということをもって、学校と保護者の間でいわゆる責任の押しつけ合いのようなことが行われてはならないと考えたところでございます。

 そこで、そのような懸念を払拭すべく、与党案で、取りまとめる際に、公明党の主張により、本法案の九条の第四項の方に、「前三項の規定は、いじめの防止等に関する学校の設置者及びその設置する学校の責任を軽減するものと解してはならない。」との規定を設けることとしたことであり、御懸念のような事態を防ぐことができると理解をしているところでございます。

中野委員 ありがとうございました。

 続きまして、第十五条、学校におけるいじめの防止対策、これについて質問をさせていただきます。

 これも本法案においてよく指摘をされる点なんですけれども、道徳教育、これについて余りにも強調し過ぎているのではないか、こういう意見がございます。

 私は、道徳教育の重要性というのは論をまたない、これはもちろんだと考えておりますけれども、それだけで防止策として十分かと言われると、これ以外にもさまざまな取り組みをしないといけない、このように考えます。

 例えば、体験活動を充実させることですとか、あるいは子供が自主的に取り組むいじめ対策、こういうものを支援していくでありますとか、いじめを許さない環境づくりをしっかりと学校の中で行っていく、これが重要である、このように主張をさせていただきました。

 こうした主張を踏まえて、今後の学校現場において、いじめを防止するための環境づくり、これがどのように行われていくことになるのかお伺いをいたします。

浮島議員 いじめを防止するためには何か一つを行えばそれで足りるということではないと思っております。いろいろな措置を組み合わせて、いろいろなところから対策をとっていくということが必要であると思っております。

 そんな観点からも、本法案において、第十五条第一項で、全ての教育活動を通じた道徳教育及び体験活動等の充実を図るということに言及するとともに、十五条の二項において、学校の設置者や学校がとり得る措置として考えられるものとして、お尋ねにあった学校のいろいろな資する活動でございますけれども、児童等が自主的に行うものを支援するということも今回盛り込ませていただいております。

 具体的には、生徒会の活動やいじめのパトロールなどの活動が想定されております。これは委員の方も現場の取り組みを二月に御視察へ行っていただいていると思いますけれども、足立区の辰沼小学校で取り組まれているキッズレスキューというような、子供たちでいじめをなくそう、いじめをやってはいけないという活動をやられております。このような、いじめを許さない環境づくり、これをしっかりとしていくことが大切であり、支援していくことも大切であると例示をさせていただいたところでございます。

 そして、本法案の施行後には、条文の規定において具体的に例示したものを含めまして、学校の設置者や学校の判断のもと、いじめの防止に資するさまざまな措置が講じられることにより、いじめの発見、そして対処だけではなくて、いじめが起こりにくい環境づくり、これをしていくことが大切だと思いますので、しっかりと進めてまいりたいと思っております。

中野委員 ありがとうございました。

 続きまして、第十八条、人材の確保及び資質の向上について質問をさせていただきます。

 いじめを防止するために何が必要か。確かに、どういうルールで対応していくのか、常設の組織をつくって、こういうときにはこう対応する、ルールづくりも重要でございます。しかし、それに加えて、いじめ対策に従事をする先生であるとか、こういう方々の体制をしっかりと整えていくことが何よりも重要なのではないでしょうか。

 我が党といたしましても、教員の資質向上、具体的には教職課程や研修を通じていじめ対策を教師がしっかりと身につける、こういうことを主張させていただきました。また、スクールカウンセラー、あるいは養護教諭。養護教諭のところ、保健室へいろいろな児童生徒が相談に来る、早期発見に非常に有効だ、こういう意見がございました。養護教諭も含めて必要な体制の確保を行う、こういう主張をさせていただきまして、これが盛り込まれたものと承知をしております。

 そこで、今度は大臣にお伺いをするんですけれども、例えばスクールカウンセラーあるいは養護教諭について、現在どのような配置の体制になっており、そして今後どのように拡充を行っていくのか、これについて御見解を伺いたいと思います。大臣、よろしくお願いします。

下村国務大臣 まず初めに、今回、超党派で、いじめ防止対策推進法案が取りまとめとなりまして、本委員会で質疑をしていただいていることに対して感謝を申し上げたいと思います。ぜひ、法案を成立していただいて、今国会で参議院におきましても成立をしていただきますように、各党に対して感謝とまたお願いを申し上げたいと思います。

 さて、御質問の件でございますけれども、いじめ問題への取り組みについては、担任教員や養護教諭、スクールカウンセラー等が十分に連携し、学校全体で組織的に対応することが、御指摘のように大変重要であるというふうに思います。

 スクールカウンセラーの学校等への配置体制については、それぞれの教育委員会において、地域や学校の実情を踏まえて定めているものでございますが、文部科学省としては、平成二十五年度予算において、全ての公立の中学校そして小学校においては六五%にスクールカウンセラーを配置するための必要な経費を予算措置したところでございます。

 また、養護教員の配置については、原則各校に一人、さらに大規模校におきましては複数配置としているほか、平成二十五年度予算において、いじめ問題など課題のある学校にも複数配置できるよう加配措置を行っているところでございます。

 文科省としては、引き続き、スクールカウンセラーの配置及び養護教諭の加配措置の充実に努めてまいりたいと思います。

中野委員 大臣、ありがとうございました。

 では最後に、懲戒及び出席停止制度などについて御質問をさせていただきたいと思います。

 今回の法案に対して、御指摘として、またよく御意見を伺いますのが、今回の法案は厳罰化を図っているんじゃないか、こういう御指摘をよく伺うわけでございます。確かに、懲戒や出席停止制度、これについての運用を規定しているところでございますけれども、公明党といたしましては厳罰化を図ろうとしているんじゃないか、こういう御指摘もございました。こうした懸念に対応しないといけない。

 例えば、校長室や図書館などにおいて加害生徒児童を教育する、こういう措置をとるべきではないかという主張をさせていただきました。そうすると、被害を受けた生徒児童も安心して教育を受けることができる。あるいは、加害生徒児童も、出席停止をしてしまうとその後のケアをどうするのか、そういう問題もございます。これも防ぐことができる、こういう主張をさせていただきまして、これは規定にも反映をされている、こういう理解でございます。

 こうした点も踏まえまして、今般の法案について、厳罰化の方向性にあるんではないか、こういう意見がありますけれども、そうではない、そういう懸念は払拭をされている、このように考えてよいか、最後に御見解を伺いたいと思います。

浮島議員 お答え申し上げます。

 第二十五条及び第二十六条において、学校教育法の規定に基づく懲戒及び出席停止処分等の必要な措置を速やかに講ずるという旨が今回規定されているところでございますけれども、他方、第二十三条第四項においては、公明党が主張して盛り込まれることになりました、いじめに対する措置として、加害児童等への指導を継続的に行うとともに、必要がある場合は校長室や図書館等の場所で学習を行わせる旨の規定を置かせていただいているところでもございます。

 このように、ただ単に処分をするということではなくて、その前段階として、加害者児童等への必要な指導、また、いじめを受けた児童等が安心して教育を受けられるようにするための措置を講じることとしており、厳罰化という指摘は当たらないものと思っております。

中野委員 以上で質問を終わらせていただきます。

 今般のいじめ防止対策法案、さまざまな御意見がある中で、何とか一本化されまして、このように審議が進んでおります。一刻も早く成立をさせていただいて、そうして実際に法案を運用していく中で、またいろいろな課題、いろいろな改善点が出てくると思います。しっかりとまた教育現場の意見も反映をさせながら、いじめ対策を推進していきたい、こういう決意でございますので、どうかよろしくお願いいたします。

 以上でございます。

松野委員長 次に、小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 過去も含めて、本当に数多くの犠牲の上に成り立った大変大事な法案だと思いますし、これに最前線で協議に当たられた先生方に心より敬意を表し、質問を行わせていただきたいと思います。

 ちょっと、各論も大事なんですけれども、限られた時間の中で本質論を聞かせてください。

 極めて誰も反対しないであろうと思われるこの法案なんですが、意外とお便りがたくさん来ていますよね、それぞれの先生方の中に。私、これは、いろいろ背景なり立場があってのことだと思いますので、全部が全部とは思いませんが、こういうお便りがあります。いじめは、禁止したり懲戒したり、法律でなくなることはありません、そういうお便りがある。

 こういうことに対してどう応えるか、私なりに、質疑に立つに当たって自問自答したわけですが、少し提出者とそれから大臣の御見識を聞かせてください。このいじめの問題の本質をどのように捉まえておられるか。

 当委員会で、かつて、今国会中に問題になった幾つかの事案があります。例えば、体罰、そしてパワーハラスメントを含めた暴力と、いじめの問題は同じですか、違いますか。

笠議員 今、小川委員の方から御指摘ありましたように、いじめというものがこの法案だけでなくなるとは私も思っておりません。しかしながら、やはり、大津の事件を初めとしてこれまでも、いじめが原因で子供がみずから命を絶つ、このことだけは何とか防いでいかなきゃならない、あるいはなくしていかなきゃならない。そういう、各党みんな、この委員の皆様方も同じような思いで今審議に立っておられるというふうに思います。

 それで、今、いじめと体罰あるいは暴力は同じなのか違うのか。私どもは、これは違うということでこの法案については整理をさせていただいております。

 本法案については、第二条第一項において、いじめを、「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」と定義をし、本法案の射程をいわば子供の間の行為に限定することとしております。もちろん、大人の中でもいじめはあるわけでございますけれども、少なくとも本法案の中では、子供の間のということに限定をしているわけでございます。

 お尋ねのあった暴力については、それが一定の人間関係のある子供の間の行為であれば、およそ、暴力を受けた児童等は心身の苦痛を感じると考えられることから、いじめの定義に含まれるものと考えられます。

 一方、体罰については、学校教育法十一条において「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」というふうに定められているように、子供の間の問題ではなく、学校でいえば、むしろ先生と子供の間の問題であると考えられます。いじめとの違いということでいえば、行う主体の違いということになるのではないかというふうに思っております。

下村国務大臣 今、いじめ、体罰、暴力については、笠さんからお答えがありましたし、そのとおりであるということで、重複は避けたいと思います。

 確かに、法律ができることによって根絶するわけではありませんが、しかし、一定の抑止力にはなるというふうに思いますし、文部科学省の全国の教育委員会を通じた昨年半年間の調査の中でも、十五万件いじめに遭っているという数字が上がっている中で、現実問題として、今いじめに遭っている被害者、加害者、傍観者も含めて、この推進法をつくることによってより早く関係機関や関係者が対応する、そのことによって一人でも多くの子供たちを救済し、あるいは抑止する、そういう効果があるというふうに期待をしております。

小川委員 ありがとうございました。

 主体間の関係で整理をいただいたことに、大変勉強にもなりますし、一定程度の評価といいますか、それを申し上げたいと思います。

 これは、振り返りますと、私自身も加害者になった、あるいはなり得た、逆に被害者になり得たことは多々あった、自分自身もそう思います。そして、一人の親として、学校に子供を通わせる身でいる生身の人間として、常にそういう事態に、子供が被害者にもなってほしくない、ましてや加害者になってほしくもない、そういう不安、心配を常に抱えながらである。

 それを考えれば考えるほどなんですが、この問題の深刻さ、厄介さは、まさに笠提出者がお答えになったとおり、大人社会にも明確にあり得る問題。歴史上もあり得た、政治的にもあり得た。さまざまな人種差別、民族差別を含めて、人間社会の抱えているある種の病理現象。そして、これが、社会性が未熟なために、子供社会で一たび起きたときは、極めて残忍性、残酷性を高めかねない。しかし、大人社会にも、同様かあるいはそれ以上の危険性を持った世界の話だ。

 その意味で、暴力は明らかに反社会的行為です。そして、体罰は、もちろんその許容限度というのはどんどん狭くなるべきだと思いますが、しかし、教育的指導という社会的行為の中で概念されている。しかし、このいじめというのは、社会の外ではもちろんあり得ない。しかし、内なるものであって、公認されていない、黙認されがちであり、深く潜行して存在しがちである。人間の社会性の病理であり、社会性の裏返しであるというところが極めて厄介だ。

 この法案提出に当たって、あるいは成立させる私たちの、この大人社会の見識なり責任意識、深い自問自答、自覚、自制がなければ、この法案の提出そのものがそらぞらしく感じられる。そのことを冒頭に少し押さえさせていただきたいと思います。

 そして、限られた時間ですので、ちょっと、この間の与野党協議に極めて高い敬意を払いつつでありますが、その与野党の協議に性格の違いがよくあらわれたと私自身認識しておりますのが、九条、保護者の責務についてであります。

 原案は、与党案は、保護者は、子の教育について一義的責任を有する、そして、いじめを行わないよう、規範意識を養う、その他の必要な指導を行うと書いてある。むしろ当然のことかもしれない。しかし、与野党協議の結果として、「指導を行う」から「指導を行うよう努める」というふうに規定が改められた、緩められた、この理由。

 同様に、第四項に、第一項の規定は、家庭教育の自主性の尊重を侵すものではない、これに変更を来すものではないということを改めて明記している。この趣旨、あるいは対立点がなぜ生じたのか。

 この点、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

笠議員 対立点かどうかは別といたしまして、これが大いに議論になったことは間違いありません。

 私も民主党の提案者として、保護者が子の教育について第一義的責任を有すること、あるいは、児童等の規範意識、これを養うことがいじめの防止について有効であるということを否定するつもりは全くございませんし、そのことは必要なことだというふうに思っております。

 ただ、国や地方公共団体が家庭教育の自主性を尊重するという教育基本法第十条第二項の規定の趣旨を踏まえて、ちょうど、私ども、生活の党、社会民主党、三党で参議院に提出をさせていただいた三党案においては、与党案の第八条第一項のように、保護者に児童等の規範意識を養うための指導を行う責務があるということを、あえて法律の条文に位置づけることはいたしておりませんでした。

 また、与党案の保護者の責務の規定については、与野党の実務者協議の中でも、国や地方公共団体が家庭教育の自主性を尊重するという教育基本法第十条第二項との関係、あるいは、これに伴う、百六十四国会における当時の小坂文部科学大臣の、個々の家庭における具体的な教育内容について規定する法律を新たに設けることを意図したものではないという答弁等々の議論もございました。

 その上で、与野党の実務者による協議において、本法案第九条第一項の規定が、教育基本法第十条第一項の範囲内において、保護者がその保護する児童等に対して規範意識を養うための指導を行うよう努める責務があることを確認した規定であって、家庭教育の内容を具体的に規定したものではないということを確認したことでございます。

 これにより、家庭教育の自主性については尊重されているということが与野党の実務者の中では共通の理解になったわけでございますが、なお、そのことを入念的に、本法案第九条四項に、第一項の規定は、家庭教育の自主性が尊重されるべきことに変更を加えるものと解してはならないという規定を置いたということでございます。

小川委員 これはいたずらに対立点と受けとめてはいけないのかもしれません。提出者御答弁のとおりですね。

 しかし、現政権あるいは与党の考え方に極めて親和的な部分と、私は、これはいい協議の結果、いい成案になったと考えている立場なんですが、私ども野党の立場で、時に相克を生じる部分ではないかというふうに、極めて特徴的だと思いました。

 というのも、伝統的な家族観、あるいは、そこに対する国家としての介在の余地の大小、それを比較的積極的に捉えられる現政権、与党・政府の考え方と、家族の変化とか多様性に対して寛容であり、そこに対する国家の介在を抑制的、慎重に考える立場。そして、多々いただいていたお便りも、恐らくその部分に対する懸念というのは一定程度あったというふうに理解しております。

 今回、大変いい協議が行われ、成案にまとまったわけですから、極めて評価をし、敬意を表する立場に変わりはございませんが、この点は、教育政策はもちろんのこと、今後の家庭政策、子供政策、そしてひいては憲法改正に至るまで、さまざまな課題に相克を生み得る部分でありますので、これはいたずらに、まさにおっしゃったとおり与野党の対立ということではなく、この価値観について、極めて健全に、積極的に、穏当に、冷静に議論を積み重ねていく必要があるということを指摘して、質疑を終わらせていただきたいと思います。

 本当にお疲れさまでございました。ありがとうございました。

松野委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 大阪十一区選出、日本維新の会の伊東と申します。本日は、よろしくお願いいたします。

 本日、私がこのようにいじめ防止対策推進法案に関しての質疑をやらせていただいた経緯というのは、二つあると認識しております。

 一つは、我が党のいじめ、体罰のプロジェクトチームの事務長として取りまとめをお手伝いさせていただいた、そして実務者協議会にも参加させていただいたその経緯と、私自身、高校時代からラグビーというものをやっておりまして、大学、社会人、そして議員になっている今もやっております。そういった観点から、母校の高校の方の強化対策委員長をやらせていただいて、今も高校生の運動部の指導及び現場の先生といろいろディスカッションをやらせていただいています。

 ラグビーという競技は十五人でやるんですけれども、当たり前のことですけれども、相手方のチームがいます。つまりは三十人の選手がグラウンドの中にいてるわけなんですけれども、ボールの奪い合いをしますので、いわゆる球技の要素と格闘技の要素があります。ですので、草野球、草サッカーという言い方も変なんですけれども、選手だけでラグビーをやるというのは極めて不可能なんですね。そこにレフェリーというのがいます。レフェリーがそのプレーを裁いてこそ試合というのが成り立つんですね。

 これを学校教育というか教室につなげていきますと、生徒がたくさんいる中で、古今東西どこにでもあるといういじめが起こった場合、いじめる側といじめられる側がいてるわけですね、被害者と加害者という言葉が適当かどうかはわかりませんけれども。そこで、レフェリーであるところの先生は、恐らくリアルタイムにその現場を見ることというのはほとんど不可能なわけです。およそ、先生が、目の前で自分の生徒が集団でたたかれたり、金品をせがまれるような行為をされて、それを見逃すような先生はおられないと思います。ということは、それを見ていない、もしくは気づくことが不可能やった、こういったことも前提になるわけなんですけれども、問題は、いじめということが発覚してからのことになります。

 そうなると、もしかしたら学校の先生は、そのことを、自分の落ち度だ、自分の責任だと非常に悩まれることだと思います。教師も学校の先生も一人の人間ですから、それがもし、自分の評価、出世につながると考えたとして、それを責める権利というのは誰にもないと思うんです。

 そういった観点で、でも、実際にいじめられる、被害者である子供が存在する。このいじめを防止するためにどうしたらいいかというところで、私の提案でもあるんですけれども、今回の法案の第三十四条、「学校の評価を行う場合においていじめの防止等のための対策を取り扱うに当たっては、いじめの事実が隠蔽されず、並びにいじめの実態の把握及びいじめに対する措置が適切に行われるよう、いじめの早期発見、いじめの再発を防止するための取組等について適正に評価が行われるようにしなければならない。」このように、いじめが発覚したことをマイナスに評価するのではなく、そこから、その現時点から努力すればプラス評価になるという、この第三十四条は非常に実質的で効果のあるものだと自負しておるんですけれども、この三十四条が採択されるに至った経緯を、提案者である先生に御説明をお願いできたらと思います。

鈴木(望)議員 本法第三十四条の趣旨を今伊東先生が問われたわけですけれども、現在、教育現場におきまして、いじめの隠蔽が、重大な事例が生じるたびに問題となっているところでございます。

 隠蔽と学校に対する評価の問題は、実は密接に絡んでいるというふうに私ども考えているところでございまして、お尋ねの本法第三十四条につきましては、三党案に同趣旨の規定があったところでございますが、与野党の実務者による協議においてこの規定を盛り込むこととなるに当たりまして、日本維新の会からも、学校の教職員について、勤務成績の評定などの評価が行われるに当たり、いじめの通報等への取り組みについて適正に評価が行われるようにすることが必要ではないか。要するに、いじめがあったから悪い先生、能力の低い先生ということではなくて、いじめは古今東西どこにでも起こり得る、露見したいじめにいかにきちんと対応し、子供の将来を考えて教育に当たるかということを適正に行う先生がいい先生という、評価のあり方に対する問題提起をしたところでございます。

 そもそも、いじめにつきましては、その問題が顕在化することによる学校の評価に対する影響を気にする余り、学校がいじめの事実を隠蔽したり、いじめの実態把握やいじめに対する措置が適切に行われないといったこともかなりの程度あったのではないかと、その前提として考えているわけでございまして、提案者としては、いじめはどこの学校でも起こり得るものであるとの認識のもと、その早期発見や、起こった後の再発防止のための取り組み等について適正な評価が行われるようにすることにより、隠蔽体質を改革する意味を込めまして、第三十四条の規定を置くこととしたものでございます。

 よろしくお願いいたします。

伊東(信)委員 鈴木先生、どうもありがとうございます。やはり、いじめというのは古今東西どこにでもある現象だと。

 いじめが起こらないように防止するというのは非常に大事なことなんですけれども、再発の防止もしくはそういった対策を考えるに当たって、この三十四条というのは非常に大事な条項だと思うんですけれども、では、この三十四条をもとに、現場ではどのような指導を行ってもらうのか、もしくは、政府の方針として、学校の先生がいじめに対して直視するためにどのような方針でいかれるのか、文部科学省、政府の方の見解を大臣にお伺いいたします。

下村国務大臣 いじめ問題に対する学校評価、教員評価の実施に関しては、いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、問題を隠さず適切な実態把握や迅速な対応が促される評価を行う必要があるというふうに認識をしております。

 これまで文科省としては、いじめの問題に関する学校評価等の留意点を示した通知を発出するとともに、教育委員会や教職員を対象とした会議や研修会等においてその趣旨を徹底してきたところでございますが、必ずしもそれが十二分に生かされていない現場、現状があるというふうに思います。

 今後は、本法案が制定されて、三十四条、学校評価に関する規定が盛り込まれるということでございますので、いじめの実態把握及びいじめに対する措置等について適正に評価が行われるよう、改めて、教育委員会等に対し、会議や研修会等を通じてその周知徹底を図ってまいります。

伊東(信)委員 大臣、ありがとうございます。そして、よろしくお願いいたします。

 いじめを見逃さないと簡単に言いましても、いじめと、いわゆる暴力、つまり犯罪との境界は、実際、曖昧なところもございます。金品を請求される、その他の境界は、曖昧なところもあります。実際、そこに至るまでの過程とか、口頭で言ったとき、もしくは、場合によっては、第三者が見たら単に仲のいい者同士がじゃれ合っているように見える場合もあるのではないか。

 ところが、一見大したこともない事態が深刻な問題につながる可能性もあることから、維新の会のプロジェクトチームでは、ゼロトレランスという考え方を採用いたしました。

 トレランスというのは、平たく言えば、なれということですね。これはどうなのか、普通のことなのかという、なれになってしまうことをトレランスといいます。ですので、ゼロトレランスということは、全くなれない、つまり、ほんのささいなことでもいじめはいけないものだ、そういったスタンスを持っております。

 しかしながら、このことを法律にすることは非常に難しいことでございまして、いざ疑わしきことがあったら外部から、極端な例を言いますと警察に介入してもらうのかといったような問題になると、教育現場として、我が党の議員の中にも、椎木先生を初め、教職員の経験の先生もおられるので、いろいろヒアリング、ディスカッションしたんですけれども、そういったことが果たしてどうなのかということもあります。

 しかしながら、やはり、いじめを防止するに当たって、政府の、法律の趣旨として、いじめは絶対いけない、そういった観点から、第四条、いじめの禁止、「児童等は、いじめを行ってはならない。」こういった規定をつくっております。

 私、立場的には、この規定に関して、法律として一体どうなんだというような議論は実務者協議の中でもあったんですけれども、肯定的な立場としてこの第四条に関して質問したいわけなんです。

 子供に、いじめはしてはいけない、こう言った場合、では、大人はどうなんだという話にもなるわけで、そこで、その後に体罰の規定を入れたりするのもどうなんだというところになったんですけれども、これはいじめ法案であるのでそういった条項もなくなったわけなんですけれども、「児童等は、いじめを行ってはならない。」この条項に関して、土屋先生、この第四条に関して、改めて肯定的な立場でお聞きしたいと思います。鈴木先生でも。

鈴木(望)議員 四条に関連して、大人のいじめというか、これはいじめ法案で学校教育現場における問題であるというふうに捉えてみますと、類似のものとしては、同じ学校現場で大人が子供に対するいじめ、それは体罰という格好でもって起きているのではないかというふうに考えております。

 そういう意味で、日本維新の会は与野党の実務者による協議におきまして、スポーツ活動や学校のクラブ活動で体罰が見過ごされ、あるいは組織的に隠蔽されている中では、子供のいじめがなくなるはずはないとの問題意識を持っておりまして、本法案において何らかの形で学校現場から体罰を一掃する意思を示すことができないのかという問題提起をさせていただきました。具体的には、四条に一項追加する形で規定をしたらどうかということを言わせていただいたわけであります。

 ただ、与野党の実務者による協議においては、体罰は本法案において定義するいじめとは異なり、学校の教員と児童等との間の問題であること、体罰が学校教育法で禁止されていること等から、本法案とは別に考えるべき問題であるとの議論が大勢となりまして、本法案に規定が盛り込まれることとはならなかったところでございます。

 なお、本法案の外の話ではありますけれども、暴力や威迫によって問題を解決することは、社会一般においてもこれは当然許されることではありませんが、学校においては特に望ましくない行為であることから、学校から体罰を一掃するよう、現場には従前とは異なる決意と覚悟を持って対応するよう強く求めるものでございます。

 以上でございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、この法案自体でいじめをゼロにすることは難しいんだと思いますけれども、まず政府の方針として、国の方針としていじめ防止対策推進法案が提出されるというのは非常に喜ばしいことだと思います。

 維新の会としてのポイントは二つで、一つは規律の回復、もう一つは規範意識の回復、向上ということで、これがいじめ防止に役に立つものであればどんどん賛成していきたいと思いますので、そういったことも含めまして、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

松野委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 みんなの党の青柳陽一郎です。

 本日は、いじめ防止対策推進法案に対する質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。そして、これまでに本法案を取りまとめてこられた与野党実務者の皆様の御尽力に敬意を表する次第であります。

 初めに、滋賀県大津市で不幸にも発生した自殺事件の御遺族の皆様、関係者の皆様に、改めてお悔やみを申し上げます。

 また、これまでに発生した、あるいは、きょうこの時点でも発生しているいじめで悩み、苦悩している児童生徒に対し、国会として、与野党を超えて、いじめの撲滅に取り組むことをお誓い申し上げたいと思います。

 いじめを必ずなくしていくという強い思いは、皆さんに共通していると思います。そして、こうした思いが今回の提案に至ったことと存じます。与野党でこの成案に至ったということについては大変に評価できるのでありますが、具体的に何をどうやっていじめをなくしていくのか、幾つもの考えがこの法案に入りまじってしまって、本当に実効性が確保されているのか、妥協の産物になってしまっているのではないかというのが若干気にかかるところです。

 まずは、本法案の目的とその方策について、法案提出者の説明を伺いたいと思います。

井出議員 青柳委員にお答えをいたします。

 本法案の目的と方策ということでお話をいただきました。

 先ほど来議論にありましたが、この法案は、大津の事件を初め、過去に何度も痛ましいいじめに起因する事故があった、それをなくしていくために、いま一度これまでの取り組みを見直して、笠先生の提案趣旨説明の中にもありましたが、社会総がかりでいじめを減らしていく、なくしていくんだ、そういう強いメッセージを出すことを目的に取りまとめの協議を進めてまいりました。

 また、その際、やはり子供に一番近い学校や教職員の皆さんがその早期発見、予防といったところの最前線に立っていることは間違いない、そこの皆さんがよりよい取り組みをされるような制度設計をやっていく、国を含めた社会全体がそれをバックアップしていくというところを狙いとして、そこは各党一致して話し合いを進めてまいりました。

 取りまとめの過程では、教育に対する考え方などで本当にさまざまな議論がありましたが、その大目的、狙いについては、一致した前向きな議論、取りまとめができたと思っております。

 今後、この法案が成立すれば、いじめの抑止に一定の効果があると私自身も考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 私は、これまでの事例、特に大津市の事件の一連の経過などを見ていると、やはり学校及び学校設置者の取り組みとその改革が特に重要であると考えています。すなわち、教職員の質の向上と教育委員会の改革が必要であると思います。

 まず、本法案における教職員の質の向上については、どのように考え、対策をとるのか、伺いたいと思います。

井出議員 今、教職員の質の向上という御質問をいただきましたが、まさに、いじめを減らしていく、未然に防いでいく、学校現場がその中心にある、その一つとして教職員の質の向上ということに対しては、我々も青柳委員と同じ大きな目的意識を持っております。

 この法案では、十八条の一項に、教員の養成及び研修の充実、教員の資質の向上といったことを挙げさせていただいております。

 これまでにも教員の質の向上というさまざまな施策が進められてきておりますが、例えば、今年度からは、教員のカウンセリング能力、子供が困っているとき、ストレス、そういった子供に対処できるカウンセリング能力を、スクールカウンセラーだけに頼らず教員の質を上げていこうという施策も始まっております。そうした新しい取り組みをやっていく、その新しい取り組みの予算づけの後押しとなる法案だと考えております。

青柳委員 次に、同時に申し上げた教育委員会の改革についてです。

 今国会の下村大臣の文部科学委員会での答弁でも、あるいは教育再生実行会議でも議論がありますように、教育委員会の体制、システムの機能障害というのが散見されているわけであります。政府は来年にも教育委員会の改革を行うとの報道もあります。そして、今回のいじめの事件についても、教育委員会の対応というのは大変多くの批判を受けていたというのは事実だと思います。

 しかし、今回のいじめ防止対策推進法案には、教育委員会の改革については全く踏み込んでおらないと思います。これで本当にいじめ防止対策の実効性が高まるのか、私には少し疑問が残ります。提案者から、このような疑念の払拭をしてもらうような答弁をいただきたいと思います。

井出議員 教育委員会の制度改革ということで御質問をいただきました。

 いじめで重大な事案があったときに、やはり教育委員会の対応が悪かったことがたびたび取り上げられてきております。

 まず、その件に関して申し上げますと、この法案の二十八条に、重大な事案のあったときに速やかに調査をしていく。そして、これは本当に今後肝になると私自身は思っているんですが、いじめを受けた児童や保護者にその事実関係など必要な情報を適切に提供していく。この情報提供がなされなかった問題が今までかなり指摘されてまいりましたので、こうしたことを明記させていただきました。

 しかしながら、今回は、教育委員会制度改革そのものとは別の、中立の議論でこの法案をつくらせていただきました。教育委員会の制度を変えていくということは各党においてもさまざまな議論がありますが、委員御指摘のように、教育委員会がよりよいものになれば、いじめをなくしていくことにもつながると思います。

 しかしながら、子供の命ですとか子供のさまざまな権利にかかわることですので、いじめを減らしていく、なくしていく、その全体の法案を一つまずきちっとつくろうということでこうした法案を議論してまいりました。

青柳委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間の関係で、一問順番を変えまして、今言及のありましたとおり、いじめの状況をきちんと把握する、情報をきちんと整理するということは、いじめ防止の対策上大変重要なことだと思います。これまでそうした取り組みがしっかりとなされてきたのかということについては甚だ疑問が残ります。

 今回のいじめ防止対策法案では、第十六条において、学校の設置者及び学校は定期的な調査を行うものとし、さらに、第二十条でも、調査研究及び検証を行うとされておりますが、それぞれ何を目的として、どのような効果を期待しているのか、最後にお伺いしたいと思います。

井出議員 今、調査研究というところで御質問をいただきましたが、十六条の方は、今現在でも学校や教育委員会、市町村の方で定期的に学校生活に関する調査をやってもらっている。これは、文部科学省がお願いをしてきた経緯もあって、ほとんどの学校でやってきてもらっております。それが恐らくベースになっていくと思いますが、ふだんからの子供たちの生活意識をきちっと現場が拾っていくというところを十六条で明記させていただきました。

 そして、二十条の方なんですが、これは、国がもう少し現場でいじめの防止に取り組んでいくこと、また、現場から出てきているデータを分析、研究をすればこれまでわかってこなかったような傾向が出てきたりですとか、調査研究を現場に反映させることで、ああ、ここではこういった取り組みもあるのか、こういったことをやってみよう、そういった情報提供を現場にやっていく。

 これは、みんなの党の方で少し提案をさせていただいたのですが、国がどんなにいい法律をつくっても、本当にどんなにすばらしい大臣を置いても、いじめを一件一件国が見ていくことはなかなか難しい。国のやることはバックアップだと思っております。そういう意味で、国は調査研究に積極的な役割を果たしていただきたい、そこの思いを各党で一致していただいて、こうした文面となりました。

青柳委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

松野委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 我が党は、昨年十一月に「「いじめ」のない学校と社会を」と題する提言を発表いたしまして、まず第一に、目の前のいじめから子供のかけがえのない命や心身を守り抜くこと、そして第二に、根本的な対策として、いじめの深刻化を教育や社会のあり方の問題と捉え、その改革に着手する取り組みを提唱いたしました。この提案には、いじめ防止に関する法的整備の検討も含まれておりました。その後、ことし四月には民主、生活、社民の三党案が、五月には自公案がそれぞれ国会に提出され、先日来、与野党の実務者協議が行われてまいりました。

 私は、自公提出の与党案には、原則的な問題で見過ごせない問題があるということ、その与党案に三党案から入れ込むという協議ではだめだと繰り返し指摘しつつ、協議の場には出席して問題を指摘してまいりました。本日審議されているいじめ防止対策推進法案は、協議の結果成案としてまとめられたものでありますけれども、残念ながら、法案を見る限り、我が党が指摘してきた問題点は何ら解決されていないと言わざるを得ません。

 まず、法案提案者は、提案理由説明でも答弁でも、いじめはどの学校でもどの子にも起こり得ると繰り返されました。文科省もこれは同じ立場だと思いますけれども、いじめはどの学校にもどの子にも起こり得るということは、どの子もいじめっ子になり得るということで、文科省、よろしいですか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、いじめはどの学校でもどの子供にも起こり得るものであるという認識に立ってございます。

宮本委員 子供たちの現実の姿を考えていただきたいんですね。子供は、きのう嫌なことがあった、友達の方が格好いいおもちゃを持っている、そんな嫌な気持ちやねたみから友達をいじめてみるということは十分あり得るし、そうやっていじめは起きていきます。いじめはどの子も成長途上で行い得る過ちなんですね。大事なことは、それを早い段階でとめて、継続させず、命や心身をきちんと守り切ること、そして、いじめを乗り越えることで、子供たちがいじめをしない人間関係のあり方を学んでいくことだと思うんです。

 ところが、法案第四条は、「児童等は、いじめを行ってはならない。」などと、子供たちに法律でいじめを禁止する条文を置いております。これは、誰もが違和感を持つ条文だと思うんですね。どの子も行う可能性があるものを、いじめをやったら法律違反だぞなどと法律で命令して禁止するようなことは意味がないし、これは自民党の法案提案者に聞きますが、おかしいとは思いませんか。

土屋(正)議員 お答えを申し上げます。

 宮本議員におかれましては、我々と見解が違うと言いつつ協議に参加していただき、そこに共通の問題に対する意欲といいますか、そういったことを感じて、大変うれしく思った次第でございます。

 もう既に何回も実務者協議に御参加されておられますので、そこで行われた協議についてはもう十分御存じの上での御質問かと存じますが、この法案第四条は、いわゆる訓示規定であります。

 今御指摘の、質問の前段でありました、早い段階で見つけて、そしてみんなで協力をして、児童も成長してそれを乗り越えていく、あるいは加害的な立場に立った子もそうだということについては、全くそのとおりでございますが、善悪とかよし悪しとかということについて、まだ人格未成熟な子供に対して一定の、これはしてはいけないことだよと明示するということは、何ら問題がないものと考えております。

宮本委員 そもそも、いじめは、法律で禁止だと宣言すれば解決するというような、そんな簡単なものではありません。過ちをしながら、それを周りから正され成長することが大切な子供に、一切過ちをするなというのは、大人のとるべき態度ではないと思います。

 いじめ問題の解決とは、いじめを行う子供がいじめをしなくなることにほかなりません。もちろん、いじめを行った子供への適切な指導を毅然と行うことは当然ですけれども、深刻ないじめほど、説諭、つまり規範意識のお説教だけでは解決しないというのが学校現場の声なんです。

 私は昨年八月の当委員会でこのことを指摘し、文部科学省も、いじめにおける子供への指導におきましても、児童生徒一人一人の悩みを理解し、共感的に受けとめ、応えていくということが重要であろうと答弁をいたしました。

 これは、文科省、間違いないですね。

布村政府参考人 お答えいたします。

 平成二十四年八月二十四日の衆議院文部科学委員会におきまして、宮本先生からの御質問に対しまして、だめなことはだめと厳格に指導するという面とともに、いじめの問題における子供への指導において、児童生徒一人一人の悩みを理解し、共感的に受けとめ、応えていくことが重要と答弁させていただきました。これに変更はございません。

宮本委員 そこで、法案提案者、今度は民主党の方に聞きますけれども、法案提案者は、いじめを行った子供たちに対し、子供の傷や悩みを理解し、共感的に受けとめ、人間的立ち直りを進めていくという立場、これは同じ立場に立っておられますか。

笠議員 先ほど宮本委員から御指摘がありましたように、やはり、いじめを乗り越えていくということ、これは大事でございまして、いじめを行った児童等の立ち直りのためには、いじめを行った児童の個々の状況を踏まえた上で、適切な対応がなされるべきであると考えております。その際、いじめを行った子供たちの気持ちや悩みを理解しようとする立場に立って対応することが重要であるということを十分に認識しております。

 この点については、本法案第二十三条第三項は、「いじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行う」と規定しているところでありますけれども、具体的な対応に当たっては、学校現場において、今申し上げたようなこともしっかりと踏まえながら、適切な対応がとられるものと期待しております。

宮本委員 ところが、そうおっしゃるのだが、本法案は、いじめを法律で禁止した上、第二十五条でいじめを行った子供に懲戒を加えること、第二十六条で出席停止を命ずることを規定しております。

 これは、子供たちの心の傷や悩みを理解し、共感的に受けとめ、人間的立ち直りを進めていくどころか、厳罰主義そのものではありませんか。自民党の提案者、お答えください。

土屋(正)議員 本法案で規定をいたしました懲戒の第二十五条や出席停止の規定などについては、現在の学校教育法の中にも規定されているものであります。したがって、学校教育法以上の、さらに厳罰を与えるという意図は全くありませんが、従来のいじめ対策の中に、このようなことをちゅうちょしたりということがなかったのか、そのことによっていじめが深刻化したことがなかったのかといったような議論もあり、これらについて学校教育法の規定をさらに重ねて明示した、こういうことになるわけでございます。

 なお、第二十五条の懲戒と第二十六条の出席停止については少し違いまして、出席停止は、どちらかというと本人に対する懲戒という観点ではなくて、学校の秩序を維持し、他の児童等の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられているものであります。

 以上でございます。

宮本委員 新たな厳罰化ではない、今でもできることを改めて書いただけと、実務者協議でもそういう説明を聞きました。それならわざわざ書く必要がない、削除せよと私は要求しましたが、あなた方は、この懲戒あるいは出席停止規定に固執したんです。できることすらやられていないと言うけれども、それこそ、ただ単なる懲戒や出席停止ではいじめ問題は解決しないことの証左だと思うんですね。

 いじめを法律で禁止し、いじめた子を懲らしめ、たとえ出席停止にしても、何らいじめの根本的な解決にはなりません。いじめを行った側の子供たちが一番かけてほしいのは、何か嫌なことがあったのという言葉だと言われております。厳罰化によって子供を抑えつければ、一層子供たちの心の傷は深まり、いじめは深刻化、陰湿化しかねないということを厳しく指摘しておきたいと思います。

 次に、道徳教育の問題です。

 法案は第十五条で学校におけるいじめの防止の第一に道徳心を培うことを挙げ、全ての教育活動を通じた道徳教育の充実を図らなければならないとしております。

 我が党は、子供たちに市民道徳を培うこと自体は極めて大切で、むしろ不足していると考えますけれども、それは教員、子供、保護者の自主的、自発的な取り組みの中でこそ実を結ぶものであり、法令で上から押しつけるやり方ではかえって逆効果になりかねないと考えます。しかも、子供の具体的な人間関係に起因するいじめを防止するのに道徳教育を中心に据えるのは、既に破綻しつつあると言わざるを得ません。

 既に国会質問で私も指摘をしましたが、大津の学校は唯一の国の道徳教育推進指定校だった。事実を丹念に調べた同市の第三者調査委員会の報告書は、道徳教育の限界を指摘し、教員が一丸となったさまざまな創造的な実践こそが必要だと報告をしております。このことを聞いたら、文部科学大臣は、道徳教育が不十分だったんだ、こういう御答弁でありました。

 これは民主党提案者に聞きますけれども、民主党提案者も同じ考えでございましょうか。

笠議員 今、宮本委員おっしゃいましたけれども、私ども、いじめを防止するための対策について、何か一つをやればそれで足りるんだ、それで全て解決するんだということではなくて、いろいろな措置を組み合わせていじめを防止していくということが重要であり、児童等の理解を深めることも重要であるというふうに思っております。

 その意味では、今御指摘の道徳教育が不十分であったがゆえにあのような痛ましい事件が起こったというような考え方には立っておりません。

 ただ一方、いじめの防止に対する道徳教育の有効性を否定するものではありませんし、本法案においても、第十五条第一項で、全ての教育活動を通じた道徳教育及び体験活動等の充実を図ると言及しているところでございます。

宮本委員 今度は大臣に少し聞いていただきたいんですね。実は、深刻ないじめを克服した学校で、その学年が卒業式で読み上げた答辞というものを私はきょうここに持ってまいりました。

 これは、ある中学校で読まれた答辞であります。

  私たちの学年にはいじめがありました。上に立つ者、下に立たされる者、自分の意見が言える人、言えない人。そんな見えない上下関係が一つではなく、たくさんありました。「言ったら何か言われる」「あの人には怖くていえない」「ダメの一言がいえない」「次は自分がいじめられるかもしれない。」そんな思いを抱きながら何もすることができず、ただ「見ているだけ」の人もいました。言葉の暴力、集団無視…そんなことが実際にありました。

  そして、二年生へと進級。一年の時のいじめはなくなったけれど、それでもいじめという影がなくなることはありませんでした。三年生に進級する前、三学期の終わりにいじめについての学年集会をしました。いじめた人、いじめられていた人、ただ見ていた人、すべての立場に立った人、どの人も本音で話し合いました。

  ねたみやうらみ、嫉妬…いじめの根元になるものはこの世界に人がいる限りなくなりません。しかし、その感情を「いじめ」という形に現してしまうのかどうかはその人の心の強さにかかっていると思います。人は一人では絶対に生きてはいけません。支えあって関わりあって生きているからこそ今の自分がいます。「いじめをなくそう、みんなでなくそう!」私たちが集会で誓ったこの言葉を絶対忘れません。いじめは心に傷と後悔を残すだけ。いじめを受けて喜ぶ人なんて誰もいないのです。

  私たちはこの話し合いを通して大事なことを学びました。

まだ続きますが、こういうふうに答辞で生徒たちが語ったというんですね。

 こういう現実に起きているいじめや上下関係の人間関係、今はスクールカーストと呼ばれるほどの上下関係が少なくない学級が個々にあるわけですけれども、そういうものに即して、子供たちが話し合う創造的な教育こそが最も大事な予防の教育ではないかと私は思いますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 今の中学生の答辞、大変すばらしい認識の中での答辞だというふうに思います。全ての子供たちがそういう認識を持ってもらえるような教育現場をつくっていくことは、大変に重要なことだと思います。

 その上で、先ほど、聡明な宮本先生とは思えない御指摘がありましたが、まず、大津の学校は唯一の道徳教育推進指定校ではありません。道徳教育推進指定校というのは結構あります。

 その中で、私が、道徳教育が不十分であったがゆえにあのような痛ましい事件が起こったという言い方はしておりません。

 大津の当該中学校において、道徳教育の推進指定校ではあったけれども、名前だけの指定校であって、十二分な道徳教育が行われていない学校であったというふうに聞いているという話をいたしましたが、それと痛ましい事件というのは相関関係があることではありませんし、あわせて、不十分だから痛ましい事件が起こったとは申し上げておりません。それはまず申し上げておきたいというふうに思います。

 その上で、先ほどの中学生のような指摘というのは大変重要なことでありますし、子供同士でいじめについて話し合って、いじめを解決する取り組み、これをぜひ進めるべきだと思います。

 先日も、中学校の生徒会の方々が、八月か九月に全国生徒会サミットを行いたい、そのときに、自分たちでいじめ撲滅のための宣言等を話し合って、そして、全ての中学生に発したい、大臣もぜひ来てもらって一緒に参加してほしいという話がありました。これは文部科学省や自治体が働きかけたわけじゃなくて、中学生がみずから提案して、わざわざ大臣室まで来られたということは大変すばらしいことだというふうに思いますし、ぜひそれを推進していきたいというふうに思います。

 一方で、我が国は法治国家ですから、これは抑止力として、議員立法でこのような法律案をつくることによって少しでもいじめが解消されるような方向に行くということは、やはり望ましいことであるというふうに思います。

宮本委員 大津市のこの中学校は、大津市内の中学校では唯一の指定校だった、少し舌足らずだったと思います。

 それから、道徳教育が十分に行われていなかったという認識をおっしゃいましたから私はそう指摘したまでであって、ただ、道徳教育というのは今現場でどうなっているのかということを大臣にも知っていただきたいんですね。副教材が配られ、そこに書いてある正しい結論に導くような、形式的な授業が多いんです。

 さきに、このいじめ問題での院内集会がありましたが、そこでこういう例が報告されました。

 ある担任の先生が、道徳の時間に、佐世保の女児刺殺事件を題材に話し合いをしたというんです。子供たちから、むしゃくしゃする気持ちが自分もあると率直な現実の思いが、交流され、それをどう乗り越えるのか、随分いい授業になったと聞いております。

 ところが、その授業後、指導主事からは、自分たちの周りのことを話し合うのは否定しないが、それは道徳の授業ではありませんと指導が入ったと、それはその場でお話がありました。

 実は、一九五八年、かつて道徳の時間が特設されたとき、当時の文部省は、小中学校道徳実施要綱という文書で、道徳の時間においては、児童生徒の心身の発達に応じ、その経験や関心を考慮し、なるべく児童生徒の具体的な生活に即しながら、種々の方法を用いて指導すべきであって、教師の一方的な教授や単なる徳目の解説に終わることのないように特に注意しなければならない、こうしておりました。

 ところが、その後、この方針は変更されます。副教材重視になるんです。一九六三年七月十一日の教育課程審議会答申で、「道徳的な判断力や心情を養い、実践的な意欲を培うために、児童生徒にとって適切な道徳の読み物資料の使用が望ましい。」とされ、それは今も共通する部分が受け継がれていると思うんですが、文部科学省、事実ですね、それは。

布村政府参考人 お答えいたします。

 昭和三十八年の教育課程審議会答申におきましては、当時の道徳教育の状況が生活指導の面に力点が置かれ過ぎているのではないか、そういう現状認識のもと、「読み物資料の使用に当たっては、道徳教育の性格にかんがみ、他の指導方法と合わせてこれを適切に活用するように配慮すること。」という答申が出されたところでございます。

 現在の学習指導要領の道徳におきましては、児童生徒が感動を覚えるような魅力的な教材の開発や活用を通じて、児童生徒の発達の段階や特性などを考慮した創意工夫ある指導を行うことと規定しているところでございます。

 そういった面では、共通する面も有しているという認識でございます。

宮本委員 現場では、そういいながら、実際には、そういう話し合いだけでは道徳の授業にならないんだというようなことが言われている。私は、先ほど申し上げたように、大臣も非常に大事だとおっしゃった、子供たちの中でいじめの問題を現に取り上げた、しっかり自主的な自覚的な討論が非常に大事だと思いますし、そういう点では、ただ単に道徳教育をやれば解決するというふうにならないと思うし、この法案をつくれば、一層、教師の一方的な教授や単なる徳目の解説がまかり通りかねないということは指摘せざるを得ないと思っております。

 結構です、時間がありませんので。

 次に、遺族の知る権利についてお伺いしたいんです。

 いじめ問題がこれだけ社会問題になって、国民の怒りの的となっている原因の一つに、学校と教育委員会の隠蔽体質の問題があります。

 いじめ被害で不幸にして子供を亡くされた遺族のお気持ちは、学校の虚偽、隠蔽により、被害者と遺族が二重の苦しみを味わったあげく、裁判をするような不毛なことは避けたいというものであります。

 私は、ことし四月十日の予算委員会で、鹿児島県出水市での中学生いじめ自殺事件を取り上げ、御遺族にアンケートが一枚も開示されていない事例も挙げて、改善を求めました。安倍総理からは、遺族の気持ちにはできる限り応えていくべきだろうと答弁があり、下村大臣からも、親御さんの心情は我が事としてよくわかるとの答弁をいただきました。そして、その場で、文科省の通知が隠蔽を正当化する根拠にされていることを指摘し、改善を求めました。

 そこで民主党提案者にお伺いするんですが、この法律ができれば、いじめ被害者の保護者の知る権利が保障されることになりますか。

笠議員 本法案においては、まず、第二十三条の第三項において、学校がいじめを受けた児童等の保護者に対する支援を行うこととしておりますけれども、ここで言う支援の中には、今御指摘のあった情報の提供といったことも含まれるものと考えております。

 また、次に、本法案第二十八条第二項においては、学校の設置者や学校が重大事態に係るアンケートなどの調査を行ったときは、いじめを受けた児童等及びその保護者に対し、当該調査に係る重大事態の事実関係等の必要な情報を適切に提供することとしております。

 学校の設置者や学校において適切に情報提供がなされることをしっかりと期待をしたいと思います。

宮本委員 必要な情報を適切に提供というのでは、知る権利の保障にならないんですね。だからこそ、大津市いじめ自殺事件の被害生徒のお父さんがあなた方に要望書を提出して、このいじめ対策推進法案では現状は何も変わらない、必ず法案化してほしいと思っていたことが入っていないと指摘し、いじめ被害者の保護者の知る権利を実効あるものにすることを求めました。

 この被害者遺族の声にどう応えるのか、現状より前進する担保がどこにあるのか、ひとつ、笠さんにお答えいただけますか。

笠議員 私は、今申し上げたような、今回のこの法律ができたことによって、もちろんこれは、文科省においても、国においても、地方公共団体においても、あるいは学校の現場においても、情報を共有し、しっかりと適切にそのための提供を行っていく、そして、いじめに対する解決、本当に、特に重大な事案が起こったときに適切な対応ができるように必ずなるというふうに信じておりますし、我々も全力を挙げていきたいというふうに思っております。

宮本委員 そこで、文科省に聞きたいんです。

 遺族の願いは、子供たちへの聞き取り調査を行うにしても、重大な事態が起こってからすぐに行ってほしい、せめて三日以内には開始をというものです。これに応えるべきだと思いますし、あわせて、子供たちからアンケートをとるに当たっては、遺族に開示することを事前にアンケートに明記することを求めております。こういう改善を検討していただけますか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 平成二十二年度児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議のまとめがございまして、亡くなったお子さんと関係の深い子供さんや教師への聞き取りなどの初期調査はおおむね数日以内に行うということを一つの指針としてございます。

 また一方で、御遺族に対しまして随時調査の状況を説明する必要があるとした上で、分析評価前の資料の取り扱いについては、事実確認がなされておらず、臆測や作為が含まれている可能性があるために、それをそのまま公表したり、そのまま御遺族に情報提供することは調査の客観性や中立性を損ないかねないということが提言されており、文科省の通知におきましても、そのような趣旨に触れさせていただいてございます。

 ただ、先生からお話もございましたように、御遺族の方々から御提言も寄せられておりますので、現在、文部科学省では、自殺が起きたときの背景調査のあり方につきまして、現在の運用状況や関係者の御意見を踏まえ、有識者会議におきまして、情報開示のあり方も含め、必要な見直しの検討を進めているところでございます。

宮本委員 それは四月に聞いたんですよ。だから、その検討の中で、今の二つの点をしっかり受けとめてやっていただきたいということなんですね。

 最後に、家庭への義務づけの問題です。

 本法案は第九条で、保護者に、その保護する児童等がいじめを行うことがないよう、当該児童等に対し、規範意識を養うための指導その他の必要な指導を行うよう努力義務を課しております。しかし、本来、家庭教育は自主的に営まれるものであり、法律で号令をかけて家庭に特段のことを行わせていいのか。これは民主党提案者にお答えいただけますか。

笠議員 これは先ほど申し上げましたように、提案者としては、本条、第九条第一項は、教育基本法第十条第一項の範囲内において、保護者が、その保護する児童等に対して規範意識を養うための指導を行うよう努力する責務があることを確認したものであると考えております。家庭教育の内容を具体的に規定したものではなく、その自主性は尊重されており、法律で号令をかけて家庭に特定のことを行わせるといったような御指摘は当たらないというふうに考えております。

 なお、家庭教育の自主性の尊重については、第九条、私どももこれを主張しまして、第四項前半において、家庭教育の自主性が尊重されるべきこと、すなわち教育基本法第十条第二項の趣旨に変更を加えるものではないことを確認させていただいたところでございます。

宮本委員 第九条第四項に、第一項の規定は、家庭教育の自主性が尊重されるべきことに変更を加えるものと解してはならない、こういう言葉を書き加えたわけですが、わざわざこう書かなければならないところに、家庭教育の自主性の尊重という、まさに教育基本法の大原則に抵触する危惧があると法案提案者自身もまさに語っているに等しいと言わざるを得ないと私は思います。

 同時に、とても気になる条文があるんです。「保護者は、国、地方公共団体、学校の設置者及びその設置する学校が講ずるいじめの防止等のための措置に協力するよう努めるものとする。」という九条三項なんですね。

 例えば、学校で、いじめ防止のために、教材に基づく道徳教育に協力をという方針を持ったとします。しかし、例えば、私が保護者で、その方針には異論がある、徳目を上から教えるのではだめで、現実の人間関係を改革する自主的な話し合い、行事の方がいいんだ、こう考えたとしても、学校の方針への協力義務が定められてしまえば批判もできなくなるのではないか、こういう危惧がありますが、いかがですか。

笠議員 私はそういうふうには解釈をしませんけれども、まず、本法案において、基本理念として、第三条第三項において、「いじめの防止等のための対策は、いじめを受けた児童等の生命及び心身を保護することが特に重要であることを認識しつつ、国、地方公共団体、学校、地域住民、家庭その他の関係者の連携の下、いじめの問題を克服することを目指して行われなければならない。」と規定しており、いじめの防止等において家庭の役割も非常に重要なものであると考えております。

 その上で、保護者の責務として、第九条第三項において「保護者は、国、地方公共団体、学校の設置者及びその設置する学校が講ずるいじめの防止等のための措置に協力するよう努めるものとする。」と規定し、保護者についても協力できる範囲においていじめの防止等のための措置に協力していただくことで、社会全体でいじめ問題に取り組んでいくということを目指しております。

 もとより、学校の方針と保護者の意見が今御指摘のように食い違った場合は、保護者は学校を批判できなくなる可能性があるといった指摘は当たらないというふうに思っております。

宮本委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、この法案では、親が子供に対してやる中身も、規範意識を養うための指導が特段に例示をされております。私は、一人の親として、やはり子供に対して、家庭の深い愛情や精神的な支え、信頼に基づく厳しさ、親子の会話や触れ合いこそ、いじめをなくすために大切だと実感をいたします。それを規範意識を指導せよと国に命じられても、子供にも親の心にも響かないと言わざるを得ません。

 残念ながら、本法律案は、いじめ解決の原則的な問題で見過ごせない点が含まれております。それは、家庭や学校を息苦しい場にし、いじめを深刻化、陰湿化させかねないものであります。

 子供にとってよりよい法律をつくるために、当事者、関係者から意見を聞き、広い視野で法案をつくり直すことを求めて、私の質問を終わります。

松野委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 本法案の取りまとめに当たり、各党間協議が誠実に進められてまいりました。本日はいらっしゃいませんが、座長を務めました馳委員を初め各党の実務者の皆様に敬意を表したいと思います。私も社民党から参加をさせていただき、大変有意義な議論ができたというふうにも思っております。

 それでは、質問に入っていきたいと思います。

 まず初めに、もう既にこの場で何度も問題になりました四条についてです。

 四条では、いじめの禁止について書かれております。いじめを行ってはいけないというのは、当たり前過ぎるくらいに当然のことです。ただし、私たちがいじめ防止で立法化する際には、あくまでも子供たちに寄り添い、社会全体、とりわけ大人たちが、教育を受ける権利を含め、子供の人権を守る内容にすべきだというふうにも考えております。また、最近のいじめ事案を考えると、教育現場や教育委員会で事実の隠蔽、改ざん、あるいは放置が多発しております。

 したがって、子供たちにいじめの禁止を求めるのではなく、社会全体でいじめをなくすために努力していくというたてつけにすべきだというふうに考えますが、この点についてはいかがでしょうか。提出者に尋ねます。

浮島議員 吉川委員にお答え申し上げます。

 吉川委員におかれましては、本当に実務者協議でたくさんの御意見をいただき、感謝を申し上げます。

 また、今御提案がありました、いじめ問題を社会全体で解決するという点におきましては、提案者といたしましても、とても重要であると考えております。

 この点につきましては、本法案において、基本理念といたしまして、第三条第三項におきまして、「いじめの防止等のための対策は、いじめを受けた児童等の生命及び心身を保護することが特に重要であることを認識しつつ、国、地方公共団体、学校、地域住民、家庭その他の関係者の連携の下、いじめの問題を克服することを目指して行われなければならない。」と規定をさせていただいており、関係者の連携のもと、社会総がかりでいじめの問題を克服するということを目指して対策に取り組むことが重要であるということを考えているところでもございます。

 今もお話がございましたいじめの禁止、第四条でございますけれども、先ほども宮本委員の方からもお話がございましたけれども、これは訓示規定であり、昨今のいじめは、行う側と受ける側の関係がかわってしまうということも多々あります。

 このことを踏まえると、本法案の第四条の規定も、単に加害者、児童等に向けられた規定ではなくて、全ての児童等に対する訓示規定たり得るものであるといった考えに基づき設けられるものとしたものであり、御理解をいただきたいと思います。

吉川(元)委員 各党協議の場でも議論させていただきましたが、訓示規定とはいえ、法律で子供たちにこれこれをしてはならないというふうに書くことについては、やはり強い違和感を感じざるを得ません。

 時間の関係もありますので、少し飛ばして、時間があれば、後ほど家庭教育の問題あるいは道徳教育についても質問したいと思いますが、まず、人材確保、資質の向上についてお尋ねをしたいと思います。

 今回の法案で、子供が一番身近で、なおかついじめの現場になっている学校で、いじめ防止基本方針を決め、また、いじめ防止対策のための組織を置くことで協議がまとまったことは、大きな成果だと考えております。

 ここで、いじめ問題に取り組むNPOのジェントルハートが行っているアンケートを少し紹介させていただきます。

 先生へのアンケートで、いじめ問題を相談されたときに解決できる自信があるかという質問に対して、解決できると答えた先生は、小学校では一一・三%、中学校では七・四%にすぎません。関連して、いじめ問題が他の仕事に支障を来すかとの問いに対しては、そう思う、また、どちらかというとそう思うと答えた先生は、実に、小学校では八四・四、中学校では八七%に達しております。

 ここから推測できるのは、一つには、いじめ問題で先生方のスキルアップを図る取り組みが必要なこと、同時に、教職員数の増員も含めて、先生方の多忙化を解消しなければならないということです。この後者ですけれども、昨年九月に、十二年ぶりの教職員定数改善計画案が打ち出されましたが、今年度予算では、今後の教職員配置は検討事項ということにとどまっております。

 紹介したいじめ問題のアンケート結果、さらには法案の第十八条一項の趣旨を踏まえれば、計画的に教職員定数を改善し、学校現場での多忙化解消によって、先生が子供と向き合う機会をふやすべきだと思いますが、提出者はいかがお考えでしょうか。

笠議員 私も、吉川委員同様に、まず、このいじめ問題に取り組むためにもということも含めてですけれども、やはり、教職員の定数の改善を計画的に進めて、そして子供たちと向き合う時間というものをしっかりと確保することは大変重要なことだというふうに思っております。

 提案者としましても、学校現場の負担増については、先ほどのアンケートにもありましたように、本当に、教職員定数の改善措置によって対応をすること、これは非常に重要なことだと思っておりますし、私どもとしては、この議員立法を成立させ、そして、文部科学省に対しては引き続き、教員の負担を軽減し、子供と向き合う時間を確保できる環境づくりを、また皆様方の御理解もいただきながら、求めていきたいというふうに思っております。

吉川(元)委員 関連しまして、教職員定数の計画的な増加は、少人数学級を進めるためにも不可欠だというふうに考えます。その際、財政措置も不可欠に当然なります。法案の第十条では、国と自治体に対し必要な財政措置を求めていますが、教職員定数の改善に向けた予算措置をしっかりと文科省にさせていくべきだと考えますが、いかがお考えでしょうか。提出者に尋ねます。

鈴木(望)議員 学校現場におきまして、いじめをなくす直接的なポイントは、何といっても教師の人材確保、資質の向上であることは言うまでもございません。

 提案者といたしましては、これまで講じられてきたような、生徒指導上特別な配慮が必要な児童等に対する指導を行う教員を配置するための教職員定数の加配措置、養護教諭の複数配置に係る定数措置といったようなものを引き続き行ってもらいたいと考えておりまして、そのための財源確保についても、政府部内できちんと確保されることを望むものであります。

 以上です。

吉川(元)委員 私は、共同提出者にはなれませんでしたが、この点については全く先生方と同じ意見ですので、ぜひ一緒に頑張っていきたいというふうに思います。

 そこで、文科省に尋ねます。

 全ての公立小中学校への配置が進められているスクールカウンセラーですが、その現状、配置状況、カウンセラーの勤務状況についてお聞かせください。

布村政府参考人 お答えいたします。

 スクールカウンセラーの小中学校への配置につきましては、まずは、教育委員会において、地域や学校の実情を踏まえて、その配置計画、配置制度を定めているところでございます。

 それに対しまして、文部科学省として、平成二十五年度予算におきまして、全公立中学校、それとともに公立小学校の六五%に、スクールカウンセラーを配置するために必要な経費を予算措置しているところでございます。

 また、スクールカウンセラーの勤務実態でございますけれども、スクールカウンセラーの、学校などでの勤務形態につきましては、平成二十三年度の配置状況から、平均すると週一回、約四・二時間という勤務実態となっているところでございます。

吉川(元)委員 このスクールカウンセラーですが、外部性、第三者性、さらには専門性を兼ね備えておりまして、生徒や先生が相談しやすいという側面を持つ大変重要な制度だというふうに思います。

 ただ、今お話があったとおり、大変数が少ない。六十何%といいますけれども、非常勤という大変不安定な身分であること。それから、幾つもの学校をかけ持ちしている。今、週四・二時間というふうに答弁がございましたが、一週間当たり平均で四時間、多いところでも八時間程度の勤務になっており、タイムリーに子供の相談を受け、対処できないのではないかという問題があるのではないかと思います。

 いじめ問題に取り組む尾木直樹先生は、スクールカウンセラーが、外部性の確立という本来の機能を発揮していない、生徒指導の下請機関になり、いじめ問題での先生方のスキルを逆に低下させているのではないか、そういう深刻な指摘もされております。

 そう考えますと、スクールカウンセラー制度については、カウンセラーの正規職員化など、制度の根本的な改善というものが求められると思いますが、法案提出者はこの点についてどのようにお考えでしょうか。

浮島議員 今御指摘のとおり、子供たちがしっかりとした相談のできる体制をつくっていかなければならないと私も思っております。そして、子供たちが何よりも話しやすい環境をつくっていくのが大切だと思っております。

 そして、今お尋ねのありましたスクールカウンセラー、生徒指導の下請化を進めているといった御指摘もたくさんいただいているところでもございますけれども、スクールカウンセラーが学校の教職員としっかりと連携して本来の機能を発揮していくためには、例えば、相談する児童生徒の立場に立って、学校全体として相談しやすい場所や雰囲気づくり等の配慮をしっかりと行っていくこと、そして、児童生徒やその保護者のプライバシーに配慮しつつも、適切な連携の観点から、スクールカウンセラーと学校の教職員との必要な情報の共有を適切に行うことといった点にしっかりと留意をしていく必要があると考えているところでございます。

吉川(元)委員 次に、これは厳罰化ではないという御議論もありますけれども、やはり、二十五条、二十六条の問題点について指摘をさせていただきます。

 今回、二十五条、二十六条で、加害者の子供への懲戒あるいは出席停止について規定がされております。実務者協議でも意見を述べさせていただきましたが、学校教育法に既に盛り込まれている規定をいじめ問題の法案に改めて持ち出す必要はないというふうにも考えます。

 文科省の平成二十三年度の調査結果、児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査、これを見ましても、いじめ問題での出席停止はありませんでした。そういう点から見ましても、なおさら違和感を持ちます。また、いじめに多くの生徒がかかわっている場合に、クラスから多数の出席停止の子供が生まれることすら考えられます。

 子供さんがいじめで自殺に至った遺族のお話を伺いましても、学校でいじめの予防をしっかりと講じることが先決であって、懲戒や出席停止は、子供と学校、子供と先生の信頼関係を壊すことになるのではないかと大変危惧をしていらっしゃいました。

 あくまでも、いじめの予防、いじめ事案への適切な対応にこそ重点を置くべきであって、いたずらに厳罰化をアピールすることがいじめ防止の柱になってはならないと考えておりますが、この点についての提出者のお考えを尋ねます。

土屋(正)議員 先ほど他の委員の御質問にもお答え申し上げましたが、この法案の第二十五条で懲戒、第二十六条で出席停止の制度をうたっております。これは、既に御指摘のあったとおり、学校教育法の規定にあるものを改めて確認するという作業であります。

 この背景には、これらの手段を講じる必要があったにもかかわらず適切に講じられてこなかったのではないかというような懸念もあり、もちろん懲戒をしたり出席停止をすることが目的ではないわけでありますが、いじめを防止する、しかも決定的な重大ないじめ、生命にかかわったり人格が深く傷つくようないじめを防止する措置の中には、このような学校教育法が予定しているものについても学校の責任者並びに教職員の皆さんはしっかりと対応してくださいよというメッセージを出しているわけであります。

 したがって、学校教育法以上の規定をしているわけではないわけでありますので、これは、言ってみれば、現行の制度をきちっと使ってくださいよというメッセージをこの法案の中で出しているというふうに御理解をいただきたいと存じます。したがって、厳罰化ではないかとの御指摘には当たらない、このように御理解をよろしくお願いいたします。

吉川(元)委員 この点については、協議会の場でもずっと議論をさせていただきました。既にある規定だとはいいながらも、それを特出しして、改めてここで規定し直すということは、そこから発せられるメッセージというのはやはり厳罰化ということになるのではないかという危惧を持たざるを得ません。

 次に、大臣にお聞きをします。

 この法案、附則の二条で、いじめによって長期の病欠や不登校になってしまった子供たちに対し、学校への修学以外の方法で教育を可能とする制度について検討を行うとされております。小中学校での不登校の子供さんは約十二万人いらっしゃいます。高校では約五万五千人ですが、同じ程度で中途退学者も出ております。不登校と中途退学は必ずしも同じというわけではございませんが、いずれにしても、長期にわたって学校に行くことのできない子供たちがこれだけ多くいるわけです。ですから、それらの子供たちに学校以外の修学の場を提供していくことは、私は行政の側の責務だとも思います。

 直ちに検討を始め、制度化することが必要だと思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。

下村国務大臣 フリースクールが既存の学校に行けない子供に対して大変なサポートをしていることに対して、私は感謝を申し上げたいと思います。教育相談や体験活動、学習指導等の活動、そして、学校生活になじめない子供たちに対して貴重な学習の機会を提供していただいているわけでございます。

 このため、フリースクールがそもそも学校になったらいいという御指摘の中、弾力化施策をしております。一つは、最低基準、学校設置基準の制定です。それから、資産要件の弾力化、さらに教育課程の特例、弾力化、このようなことを行うことによって、学校設置に係る基準等を緩和、要件を弾力化して、多様な学校の設置を可能とするよう対応してきているところでございまして、例えば東京シューレのようなNPOが学校法人を設置した例もあります。私も視察に行ったことがございます。また、フリースクールに通う不登校児童生徒については、一定の要件を満たす場合において校長が指導要録上出席扱いすることができるようにするなど、所定の措置を講じてきたところでございます。

 さらに、平成二十三年度より不登校生徒に関する追跡調査を実施してきており、平成二十五年度においては、調査結果を取りまとめ、分析を行った上で、法案の附則第二条第二項に言う課題も含め、不登校の児童生徒に対する、より効果のある支援のあり方も検討してまいりたいと考えております。

 いずれにしても、フリースクールの学校がより希望するところは学校化、なれるようなフォローアップ、弾力化を今後とも検討してまいりたいと思います。

吉川(元)委員 協議会の場でも、これは協議会に参加した全てのメンバーの総意だというふうにも思っております。文言についてはいろいろと議論はありましたけれども、ぜひ、大臣も積極的にこの検討を加えていただければというふうに考えます。

 それでは次に、少し戻りまして、九条の家庭教育に関してお聞きをします。

 法案の第九条では、保護者の責務や家庭教育についての記述がございます。九条一項で、規範意識を養うための指導を保護者の努力義務としております。第四項において、家庭教育の自主性の尊重に変更を加えるものではないとはしておりますけれども、やはり、努力義務とはいえ、家庭教育に法律が介入することについては違和感を覚えざるを得ません。

 政府が批准をしている子どもの権利条約の前文では、家族について以下のような記述があります。「家族が、社会の基礎的な集団として、並びに家族のすべての構成員特に児童の成長及び福祉のための自然な環境として、社会においてその責任を十分に引き受けることができるよう必要な保護及び援助を与えられる」ことを確信し、という内容です。

 要するに、子どもの権利条約では、家庭や家族に○○すべき、こうすべきという義務を課すのではなく、家族が子供の成長に責任を負えるよう、社会が必要な保護と援助を与えるべきということになっております。

 この観点からすると、家庭あるいは保護者に規範意識を養う努力義務を課すのではなく、いじめをなくす社会全体の努力に保護者あるいは家庭も協力し、責任を果たす内容でいいのではないかというふうにも考えますが、提出者はどのようにお考えでしょうか。

笠議員 今、吉川委員がおっしゃったように、保護者や家庭が、いじめ問題を解決する社会全体の努力に協力していくべきであるという点については、提案者としても同じ考えでございます。

 この点について、第三条第三項において、「いじめの防止等のための対策は、いじめを受けた児童等の生命及び心身を保護することが特に重要であることを認識しつつ、国、地方公共団体、学校、地域住民、家庭その他の関係者の連携の下、いじめの問題を克服することを目指して行われなければならない。」と規定しており、家庭の役割も非常に重要なものであると考えております。

 保護者の責務として、九条第三項において、国、地方公共団体、学校の設置者及びその設置する学校が講ずるいじめの防止等のための措置に協力するよう保護者は努めるものとすると規定をしており、まさに、保護者や家庭が、いじめ問題を解決する社会全体の努力に協力していくことを目指しているものでございます。

吉川(元)委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、本法案の策定において各党の皆さんが真摯に意見交換をできた意義というのは大変大きなものだと思います。ただ、時間の制約もあって、本委員会での審議も含めて、識者の方々あるいはいじめ問題の当事者の方々の意見をいただく機会がなかったこと、これは当事者の一人として大変残念に思っております。

 今後、政府、自治体そして学校でいじめ防止の基本方針を策定するに当たっては、関係者の意見を幅広く聞く機会を設け、反映していただくことを大臣、法案提出者の方々にお願いし、質問を終わります。

松野委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

松野委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。宮本岳志君。

宮本委員 私は、日本共産党を代表して、自民党、民主党など六党共同提案のいじめ防止対策推進法案に反対の討論を行います。

 この間、いじめ対策をめぐって各党協議を行ってきましたが、そこで私が最も強調したのは、いじめは人権侵害であり、暴力であり、憲法と子どもの権利条約を踏まえ、子供がいじめられずに安全に生きる権利を明確にし、国民的、社会的な議論と一体で取り組むことが必要だということです。したがって、立法作業においても、各党間の協議だけでなく、教育関係者や被害者などを巻き込んだ議論が不可欠です。

 ところが、先週になって自民、公明両党や民主党の間で合意したとして、昨日、六党共同の法案が提出され、本日、わずかな議論で採決し、残り会期一週間の中で成立させようというのであります。教育現場や関係者の意見を聞くこともなく、余りにも拙速であります。

 しかも、法案の内容には看過できない重大な問題があります。

 第一に、法案は、いじめの防止対策として、法律で子供にいじめの禁止を義務づけ、厳罰で取り締まる仕組みを中心としています。いじめは、子供の成長途上で誰にでも生じ得るものであり、教育の営みの中で解決することが基本で、法律で禁止すべき性格のものではありません。

 しかし、法案は、子供たちに「いじめを行ってはならない。」といじめを禁止し、その上で、いじめを行った子供に対し「懲戒を加える」と定めるとともに、慎重に実施すべき、「出席停止を命ずる」と厳罰化を明確にしています。

 いじめに毅然と対応することは必要ですが、厳罰で臨むのではなく、いじめを行った子供にいじめを行った事情を丁寧に聞き取り、いじめをやめさせるとともに、子供自身が人間的に立ち直れるように支えることこそ求められています。

 懲戒を強調するやり方は、子供のうっくつした心をさらにゆがめ、子供と教員の信頼関係をも壊し、いじめ対策に効果がなく、悪影響を及ぼすものです。

 第二に、法案は、学校におけるいじめの防止の第一に、道徳心を培い、全ての教育活動を通じた道徳教育を推進するとしています。市民道徳の教育それ自体は必要ですが、それは、教員、子供、保護者等が自主的、自発的に進めてこそ実を結ぶものであり、法令で上から押しつけるやり方はかえって逆効果になりかねません。

 さらに、保護者の責務として、規範意識を養うための指導を行うことを努力義務としていますが、家庭教育の内容まで法律で義務づけることは、自主的な営みである子育て、家庭教育を否定しかねません。

 また、いじめ被害に遭った子供、遺族などが真相を知る権利が明確にされていないことも問題です。

 最後に、私たち日本共産党は、いじめ対策について子供の命を守り抜き、教育と社会のあり方を見直す改革に着手すべきだと考えます。引き続き子供のことを学校、地域、社会の各分野で話し合い、いじめのない学校と社会をつくるために取り組むことを表明し、討論を終わります。

松野委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党・市民連合の吉川元です。

 議題となりましたいじめ防止対策推進法案に反対の立場から討論を行います。

 本法案の提出に際し、各党実務者によって真摯な協議が行われてきたことは、深刻ないじめ事案がやむことのない中、立法府としての責任を果たす上で、大きな役割を果たしたものと考えます。とりわけ、いじめの現場ともいえる学校において、学校いじめ防止基本方針を策定し、いじめ防止のための組織を設置することで合意できたことも、大きな成果です。

 しかしながら、保護者に、規範意識を養う指導などを努力義務に掲げたことは、家庭教育に法律が介入することになりかねません。

 また、学校におけるいじめ防止策として道徳教育を殊さら強調している点についても、いじめ問題と関係なく、特定の価値観を子供に押しつけることにならないか、危惧するものです。

 さらに、既に学校教育法に規定がありながら、いじめを行った児童に対する懲戒や出席停止の措置を盛り込んだことについても、厳罰化が、子供と学校、子供と先生の信頼関係を損ねるのではないかとの指摘がされています。

 いじめ防止は、子供たちに寄り添い、子供たちの人権、学ぶ権利を守る立場から、社会全体が努力すべき事案であり、家庭教育、道徳教育、厳罰化を強調することによって解決できるものとは思えません。残念ながら、本法案がそのような危惧を払拭させるには至らないと考え、反対せざるを得ませんでした。

 最後になりますが、政府、自治体、学校でいじめ防止の基本方針を策定する際には、有識者、いじめ問題の当事者、学校関係者の意見を十分反映させることと同時に、現在でも長期病欠者がふえ続け、多忙化をきわめている学校教職員の定数改善を図ることを政府に求め、私の討論とさせていただきます。

松野委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

松野委員長 これより採決に入ります。

 馳浩君外十三名提出、いじめ防止対策推進法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

松野委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中根一幸君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党、みんなの党及び生活の党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。中根一幸君。

中根(一)委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    いじめ防止対策推進法案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、いじめ問題の克服の重要性に鑑み、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 いじめには多様な態様があることに鑑み、本法の対象となるいじめに該当するか否かを判断するに当たり、「心身の苦痛を感じているもの」との要件が限定して解釈されることのないよう努めること。

 二 教職員はいじめを受けた児童等を徹底して守り通す責務を有するものとして、いじめに係る研修の実施等により資質の向上を図ること。

 三 本法に基づき設けられるいじめの防止等のための対策を担う附属機関その他の組織においては、適切にいじめの問題に対処する観点から、専門的な知識及び経験を有する第三者等の参加を図り、公平性・中立性が確保されるよう努めること。

 四 いじめを受けた児童等の保護者に対する支援を行うに当たっては、必要に応じていじめ事案に関する適切な情報提供が行われるよう努めること。

 五 重大事態への対処に当たっては、いじめを受けた児童等やその保護者からの申立てがあったときは、適切かつ真摯に対応すること。

 六 いじめ事案への適切な対応を図るため、教育委員会制度の課題について検討を行うこと。

 七 教職員による体罰は、児童等の心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるものであることに鑑み、体罰の禁止の徹底に向け、必要な対策を講ずること。

以上です。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

松野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

松野委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意いたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

松野委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

松野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.