衆議院

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第3号 平成25年11月6日(水曜日)

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平成二十五年十一月六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      石崎  徹君    小此木八郎君

      小田原 潔君    神山 佐市君

      菅野さちこ君    木内  均君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    今野 智博君

      桜井  宏君    新開 裕司君

      冨岡  勉君    永岡 桂子君

      根本 幸典君    野中  厚君

      馳   浩君    比嘉奈津美君

      福山  守君    藤井比早之君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      宮崎 政久君    菊田真紀子君

      細野 豪志君    山口  壯君

      吉田  泉君    遠藤  敬君

      椎木  保君    三宅  博君

      中野 洋昌君    井出 庸生君

      柏倉 祐司君    宮本 岳志君

      青木  愛君    吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   財務副大臣        古川 禎久君

   文部科学副大臣      西川 京子君

   厚生労働副大臣      佐藤 茂樹君

   内閣府大臣政務官     伊藤 忠彦君

   財務大臣政務官      葉梨 康弘君

   財務大臣政務官      山本 博司君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   文部科学大臣政務官    上野 通子君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    西田  博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山崎 和之君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         大槻 達也君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          清木 孝悦君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         小松親次郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鈴木 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月六日

 辞任         補欠選任

  菅野さちこ君     小田原 潔君

  熊田 裕通君     宮崎 政久君

  桜井  宏君     根本 幸典君

  野中  厚君     石崎  徹君

  比嘉奈津美君     福山  守君

  宮内 秀樹君     藤井比早之君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     今野 智博君

  小田原 潔君     菅野さちこ君

  根本 幸典君     桜井  宏君

  福山  守君     比嘉奈津美君

  藤井比早之君     宮内 秀樹君

  宮崎 政久君     熊田 裕通君

同日

 辞任         補欠選任

  今野 智博君     野中  厚君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省矯正局長西田博君、外務省大臣官房参事官山崎和之君、文部科学省大臣官房総括審議官大槻達也君、生涯学習政策局長清木孝悦君、初等中等教育局長前川喜平君、高等教育局長布村幸彦君、高等教育局私学部長小松親次郎君及び厚生労働省大臣官房審議官鈴木俊彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。義家弘介君。

義家委員 自由民主党の義家弘介です。

 この九月末まで下村大臣のもとで文部科学大臣政務官として、我々の野党時代から問題点を指摘してきた高校の授業料無償化、この問題点について、そして、真に公助の必要な者たちをさらに手厚く守るための改正案、それに汗をかかせていただきました。このように国会にしっかりと諮られることを、私も、かかわった一人として誇りに思っております。

 また、朝鮮高校の除外、そして政権公約、これを一日も早く実現するんだという大臣の強いリーダーシップに心から敬意を表します。本日はどうぞよろしくお願いします。

 さて、平成二十二年、当時の民主党政権は、さまざまな問題点が国会の議論でも明らかになりながらも、高校無償化が断行されました。それも、三月三十一日に成立し四月一日から施行という、大変乱暴な状態で始まったわけであります。

 そもそも、およそ四千億円もの税金を投入するこの制度は、戦後の学制改革以来の大改革とも言えるものでありましたが、その中身について、もう一度振り返りながら、一つ一つ確認してまいりたいと思っております。

 まず大臣にお聞きします。そもそも論であります。なぜ、義務教育でない高等学校及びそれに類する課程について無償化が必要だと考えるか、大臣、お答えください。

下村国務大臣 おはようございます。

 まず冒頭、義家委員が文部科学大臣政務官としてこの高校授業料無償化、省内におけるPTとして大変な取りまとめをしていただいたことに対して、敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 また、これは予算関連法案にもなってまいりますので、本来であれば臨時国会に出す法案ではないわけでありますが、ぜひ今国会で成立をしていただいて、来年の四月から導入がスムーズにいくための準備期間として、地方自治体に迷惑をかけないような形で行いたいということでの取りまとめについても御尽力をいただいていることに対しても、感謝申し上げたいというふうに思います。

 まず、私の方から、初等中等教育、特に公教育における国の責任ということについて申し上げたいというふうに思います。

 まず、初等中等教育は、高校まで実際入るわけでありますけれども、この初等中等教育における学校教育とは、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を行うことを目的として、主として、公の性質を有する国、地方公共団体及び学校法人が設置する学校で行うものとされております。

 中でも、公立学校においては、小中学校において市町村に、特別支援学校について都道府県に設置義務が課せられ、憲法の求める無償の義務教育を全ての国民に保障する役割を担っております。

 また、特に国の責任として、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るために、教育に関する施策を総合的に策定し実施するに当たって、具体的に、教育課程の基準である学習指導要領を定めること、主たる教材である教科書について検定を行うこと、それから、義務教育の無償制及び教育の機会均等等を担保するための義務教育費の国庫負担を行うこと、経済的理由によって修学が困難な者に対して奨学の措置を講ずることなど、義務教育に対してそういういろいろな責務を持って行うということでございます。

義家委員 義務教育については大臣のおっしゃるとおりなわけですが、そもそも義務教育でない高等学校及びそれに類する課程において無償化が必要と考える理由をもう一度お願いします。

下村国務大臣 高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とし、その実現を図るため、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うことなどを目標とするものでありまして、それにできるだけ資するような、国としても責務を持って提供する、環境をつくるということが大切だと思います。

義家委員 私、高校の教師をしてきたわけですけれども、実は、義務教育でないということに対して非常に大きな意味を感じながら生徒たちと向き合ってきました。私は全国から中退生、不登校生が集まってくる学校で教師をしておりましたけれども、親の理解のおかげで僕たちはやり直しをかけることができた、親が無理して一生懸命学校に送ってくれたおかげで今この人生があると、卒業式でみんな涙をしたものであります。

 この無償化というのは、家計に支援されるのではなく、法律のフレームとしては生徒個人に支給されるものでありまして、親が苦労して出してくれたという、だから義務教育じゃないことの意味というのは私はあると思っているんですね。

 ですから、就学支援をするならば、やはりその支援してもらった子供たちが、国がしっかりと自分たちの学習を応援してくれているんだ、だからこそ真剣に日常の高校生活をしっかりとやらなければならない、そういう自覚と意識を担保することが何よりも必要だと思っていて、無償化されるのが当たり前だ、就学支援金をもらうのが当たり前だという状況になると、高校というものの位置づけ自体が揺らぐものと考えておりますが、これについては大臣はどのように考えますか。

下村国務大臣 高校だけでなく、教育機関というのは、その一人一人の子供たちの可能性をさらに引き出して、そして未来に対するチャンスを提供する、そのために国や地方自治体等が支援するものでありまして、これは必ずしも高校だけでなく、それぞれの教育段階においても、ある意味では、教育環境を自力だけでつくれないという部分を広い意味では社会が提供しているということでは、常に学生たちは、そういう感謝の思いなり、さらなる勉学の志、意欲を、そのことによって自分はチャンスを与えられているんだということで持ってもらえるような動機づけはぜひ持っていただきたいというふうに思います。

 ただ、学生たちに感謝しろということだけでなく、やはり一人一人が、どこに生まれたか、どこの国で育ったかによって、あるいはどの時代に生まれてきたかによって一人一人の持っている能力を引き出すという意味では、個人の努力ももちろん必要ですけれども、同時に、社会環境、教育環境というのは大変大きく影響するものであるというふうに思いますし、私は、日本に生まれた全ての子供たちに、日本が最大限、世界のどこ以上にチャンス、可能性を引き出してくれた環境に自分は育ったということを感謝し、そして、それを享受できているということをありがたいと思う、そしてそれが確実に実現できる、そういう教育をぜひ実現していくために努力していきたいと思っております。

義家委員 学べるということは、当たり前のことではなくて非常に幸せなことである。だからこそ、権利だけではなくて、みずからの責任でもって義務教育でない高校でしっかりと勉学、スポーツ、日常生活に取り組むという内容の精査も、また、法律の見直しと同時に進めていくべき課題であろうと思っております。

 さて、先ほど大臣、公教育、義務教育も含めて国の責任等々についてお答えいただきましたが、先日閣議決定された国家戦略特区法においては、公立学校の民間開放が明記されております。この法律に定める公立学校とはどの校種が該当するのか、学校教育法二条の該当する校種を、文部科学省、お答えください。

前川政府参考人 国家戦略特区における公設民営学校につきまして想定されております公立学校でございますけれども、現段階におきましては、地方公共団体からの提案を踏まえまして、小、中、高等学校の段階の学校を想定しております。

 ただし、具体的な制度設計は、今後、地方公共団体からの提案に基づきまして検討していくということとしております。

 なお、義務教育につきましては、これを確実に保障することは国や地方公共団体の最も重要な責務の一つでございますので、特に慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。

義家委員 公立の幼稚園は入りませんか。

前川政府参考人 公立の幼稚園が入る可能性はないとは言えませんが、現段階では想定してはおりません。

義家委員 その答弁はちょっと納得できないですね。法律に学校教育法二条二項に定める学校と書いてあるわけですから、地方からの提案があって入るか入らないかではなくて、学校教育法二条上の校種を教えてください。

前川政府参考人 学校教育法上、一条学校という中には幼稚園は入ります。

義家委員 つまり入るんですね。公立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校と全てが入るという認識でよろしいですね。

前川政府参考人 今後検討することではございますけれども、あくまで、可能性としては入っているということでございます。

義家委員 今後検討するって、学校教育法二条二項に定める学校と書いてあるんだから初めから入っているわけで、入っているものを今後検討するというのはちょっと理解に苦しむわけですけれども、それでは内閣府にお聞きいたします。

 この国家戦略特区の目的は何でしょうか。お願いいたします。

伊藤大臣政務官 お答えを申し上げます。

 成長戦略を私どもは着実に実施をしていくために、私たちの国を取り巻く国際経済環境の変化に応じて、国、地方公共団体、民間が三者一体となって取り組む有益なるプロジェクトを対象に、大胆な規制改革等を集中的に推進をしていくことが必要だと認識をいたしております。

 このような観点から、国家戦略特区は、規制の特例措置と施策を総合的かつ集中的に講ずるとともに、地方公共団体及び参加をいたします民間事業者等が、国と相互に密接な連携を図りつつ、これらの施策を活用することにより、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の実現を図り、国のさまざまな分野でこうした拠点の形成を図っていただいて、もって、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図ることを目的といたしております。

 以上です。

義家委員 つまり、これは法律にも書いてありますが、規制改革を集中的に行って産業の国際競争力を高める、これが簡単に言えば目的なわけです。

 さて、産業の国際競争力を高める目的と義務教育も含めた民間参入、民間開放というのはどのようなつながりがあるのか。

 大臣、きのうの会見でも、既存の公立学校で十分対応できない不登校や発達障害の子供たち、あるいは、スポーツとか芸術に特化した教育を受けたい子供たちに対応できる学校をイメージしているという発言をなされていますが、産業の競争力を目的としたこの法案とそれらの学校のあり方とどのようなかかわりがあるのか、大臣、お答えください。

下村国務大臣 産業の競争力強化を図っていくためには、それに資するようなたくましい人材育成をしていくことが必要であるというふうに思います。

 現在の公教育においてそれに資するような教育を一人一人に対して着目して行っているのかということを考えると、残念ながら画一、均一的な部分がありまして、先ほどちょっと答弁を申し上げましたが、全ての子供たちにチャンス、可能性を提供するような十二分な公教育が行われていない部分がある。

 具体的に言うと、発達障害児等、あるいは不登校児等、あるいは、既存の公立の学校の中で芸術とか音楽とか文化とかスポーツとか、そういうことをもっと伸ばしたい、そういう資質がさらに伸びることによって、国内だけでなく世界の中で通用していけるような人材育成をしていくという観点から、今の公立学校に対してももちろんそういう努力をさらにしてもらいたいと思いますが、今回の国家戦略特区の中で公設民営をすることによって、既存の公立学校では十分に対応できない部分について民間ノウハウや活力を導入しながら公設民営を行う、そういうコンセプトであるわけであります。

 具体的にこの公設民営の学校において想定している活動については、今申し上げましたが、一つは、不登校や発達障害の児童生徒を含め特別な学習ニーズや能力のある子供たちに対して、既存の公立学校では対応し切れない柔軟な教育活動を行う、それから国際バカロレア課程の導入など、グローバル人材の育成のための多様な教育活動を民間のノウハウを生かして実施する、こういう柔軟な、多様な教育活動の実現、これは、全体として我が国の国際競争力の強化や国際的な拠点形成にも貢献するものであるというふうに考えております。

義家委員 私はどうしても今の説明では納得できないんです。義務教育というのは、そもそも規制ではなくて国の責任であります。この国の責任をどう全うしていくかという議論が必要でありまして、そもそも、今大臣がおっしゃったような学校をつくろうとしたら、現行制度下でも可能なわけです。

 いわゆる公設民営学校、平成十七年十月、構造改革特区法の一部の改正で公私協力学校というものが可能になっております。これは、具体的には、公立の施設を使って、NPO等の協力によって、民間の手法を利用した学校運営をしていくという流れの中でつくられたものであります。

 また、特色ある教育としては、教育課程特例校制度というのが存在しまして、これは、指導要領の基準によらない特別な教育課程の編成や実施を可能とするものであります。

 つまり、学校に民間を協力的に入れて、民間のノウハウをしながら特別な教育を行うということは、現行制度でもできることであって、それを、国家戦略特区で義務教育を開放する、私、どうしても腑に落ちないんですね。

 そこで文科省にお聞きします。この公私協力校と今回の国家戦略法の公立学校への民間開放の違いは何ですか。

前川政府参考人 平成十七年に構造改革特区法の一部改正で可能になりました公私協力学校でございますが、これは、地方公共団体と民間主体が協力をいたしまして学校法人を設立する、いわば第三セクター的な学校法人を設立するということでございまして、地方公共団体が校地、校舎等を提供するなど、連携協力いたしまして学校運営を行うということでございますが、これは、形態としては私立学校としての位置づけになっているわけでございます。

 また、構造改革特区でできました公私協力学校の学校種でございますが、これは高等学校と幼稚園ということになっておりまして、義務教育段階は除かれております。

 他方で、今回、国家戦略特区で検討をすることとしております公設民営学校でございますが、これは、公立学校の枠組みを維持したまま公立学校の管理について民間のノウハウを活用するということでございまして、これはあくまでも公立学校として設置、管理されるものであるということでございます。

 そのため、公立学校としての公共性を担保するとともに、地方公共団体からの御提案では、一般の公立学校と同様の財政措置を求められているものというふうに認識しております。

義家委員 初中局にもう一つ、しっかりと明らかにしておかなければならないことがありますので質問しますが、この公私協力校はNPOあるいは私立学校等々が対象になっていますが、今回の国家戦略特区は株式会社が新たに対象に加わっている。間違いありませんか。

前川政府参考人 今回のこの公設民営の内容といたしまして、これは公立学校の管理運営を民間主体に委託するということでございますが、その民間主体がどのような形態のものであるかということにつきましては、今後検討しなければならない課題であると考えております。

 したがって、これは株式会社ということを今の段階で排除しているものではない。可能性としてはございます。

義家委員 内閣府いかがですか。

伊藤大臣政務官 ただいまもお答えのように、今後の検討の課題の一つでございますが、いろいろな選択肢の中で、問題は、国民の皆さんにとって、私たちの国にとって有益なる基盤というものをつくっていくことが大切だというふうに考えております。

下村国務大臣 今回の公設民営学校は、先ほどの局長答弁のように、以前の構造改革特区の中の公私協力学校とは位置づけが違うということはおわかりいただいたというふうに思います。

 その上で、今、局長の答弁をさらに正確に申し上げれば、公設民営ですから、これはあくまでも都道府県なり市町村がつくる学校、公立の学校ということであります。その中に民間のノウハウを活用する。その中には、御指摘のように、NPO法人とか、あるいは既存の他の私立の学校法人や株式会社も入ります。

 ただし、設立は、これは公立でございます。それから運営主体は、そういう意味で、既存の株式会社がそのまま運営するということではなく、公設民営学校の中に非営利組織としての法人を位置づけて、そこが行うという形をとる制度設計を考えていきたいと思っています。

義家委員 今の説明ですとなおさら思うわけですけれども、設置主体は都道府県、そしてきのうの大臣の会見でもありますけれども、NPOや株式会社等々が主体になるのではなく、非営利としての法人を設置して公設民営学校をするというイメージをしている。これだったら公私協力学校と一緒なわけですね。

 つまり、非営利の学校法人をつくる、今までも、会社が社会貢献で学校法人を設立して大学をつくったりあるいは学校をつくったりということは歴史的にも行われてきているわけですけれども、株式会社が仮に別の法人をつくって運営する、その別の法人というのは、つまり普通で考えたら、義務教育ですから学校法人なんだろうなというふうなイメージ。そうすると、公私協力学校でもいいわけであります。

 この株式会社の公立への参入、これはアメリカなんかでも非常に多く見られるところですけれども、例えば代表的な会社でいったら、エジソンなどという会社がかなり大規模的にチャータースクールあるいは委託学校等を行っていますが、非常に大きな問題もまたはらんでいまして、株価が暴落して撤退を余儀なくされたとか、さまざまな問題が生じてくる可能性があるわけです。

 しかし、公教育、義務教育というのは、そのようなものがなく、安定的に国がしっかりと保障できるものであるべきであるというふうに思っています。もちろん、西川副大臣のチームで一年間をかけて上がってきたものについて詳細は検討していくという内容でございますので、今後も、我々自身もしっかりと精査しながら見守ってまいりたいと思っております。

 そして、株式会社に関連する質問ですけれども、株式会社立学校について、平成十七年、構造改革特区内に限って株式会社の学校設置が可能となり、これまで、小学校が一校、中学校が一校、高校二十五校、大学七校が設置されました。

 制度導入から約十年が経過いたしますけれども、これも無償化とかかわることですが、文部科学省として、この株式会社立高校あるいは学校についてどのように評価しているか、お答えください。

下村国務大臣 その前に、もう一度、公設民営学校と公私協力学校が違うということをちょっと明確に申し上げたいんです。

 公私協力学校というのは、先ほど局長から答弁がありましたように、地方公共団体が校地、校舎等を提供して、設置主体そのものはこれは民間がするという中に学校法人を設立する。あるいはそういう御指摘の中で、株式会社が、例えば、今回の公設民営になったら実際は設置をするのではないかという危惧についてのお話がありましたが、そういうことは想定していないということを先ほどから申し上げているわけです。

 確かにアメリカの公設民営学校のチャータースクールは、これは公立の学校ですけれども、株式会社が委託を頼まれてそしてやっているという、そういう公設民営はあります。実際、アメリカではもう四千五百校以上ありますが、今回、国家戦略特区として公設民営を想定しているのは、そのアメリカと同じような公設民営、チャータースクールではなくて、あくまでも設立は公立学校で、運営委託は民間に委託をしますけれども、その法人は株式会社がするということではない。

 そういう制限を設けて、この国家戦略特区として文部科学省としては取り組みたいと考えているところであります。

義家委員 アメリカでも二種類ありまして、チャータースクールと、それから、教育委員会からの委託方式で株式会社がやる。エジソンというところは両方ともやっているわけですけれども、ですから、委託であれば、アメリカも同じような同様の制度があって、またさまざまな問題も起こっていることも、これは改めて別の機会でしっかりと検証あるいは指摘してまいりたいと思っております。

 そして、株式会社立学校、およそ十年になりますが、文部科学省の評価、お答えください。

大槻政府参考人 お答えいたします。

 株式会社立学校については、昨年の特区評価におきまして、不登校生徒の受け入れなど、特色ある教育機会を提供する場として教育の多様化が図られた例でありますとか、生徒の地域への参加ということで、地域活性化など一定の効用が見られたことなどが確認されておりますが、その一方で、学校経営面におきまして、通信制高校が、特区外の民間教育施設で添削指導を受けたり面接指導や試験を実施するなど、学校設置会社や別会社が経営する民間教育施設における活動と混然一体となって運営されている事例など、また、教育活動面においては、同じく通信制高校で、添削リポートの大部分を多岐選択式としたり、メディアを利用した場合の視聴確認や成果の確認を行っていない事例などがございます。

 また、大学におきましても、専任教員、実務家教員の取り扱いや教育課程等に関し疑義が呈される事例などがございまして、不適切な事例も明らかとなり、昨年八月に政府として制度の運用を是正するということとしたところでございまして、文科省といたしましても、これを関係の特区自治体に対し通知いたしまして、その指導に努めているところでございます。

義家委員 という問題も事実明らかになっているわけであります。これが仮に義務教育の中に持ち込まれて義務教育で同様な問題が起こったら、これは大変なことにもつながっていくわけです。

 例えば、文部科学省の調査においては、学校法人の通信制の場合は、添削においても解説を付するとか、教科書の参考ページや参考文献、アドバイスを記述したりしているところが多いけれども、株式会社立学校の場合は、択一で行う、選択で行うのみでレポートとしている等々が報告されているわけですね。私もこれは国会で質問しましたが、ある学校では、学習の成果はすぐレポートで提出、四択からクリックするだけ、マル・バツもその場でわかります、郵送なんて面倒な手間はありませんと。

 つまり私が問うているのは、責任と内容なんですよ。この責任と内容がしっかりと担保されていなければ、これは大きな問題になっていきます。

 例えば、こういうものでも高校無償化の対象になるわけですから、一度もレポートを出さずに、スクーリングも行かなくても、学校が十一万八千八百円を代理受給できるわけです。つまり、コストを削れば削るほどもうかってしまうんですよ。やるコストを削れば削るほど、教員の給料を低くして、合理化して、スマートフォンでマル・バツでピッピッと押すだけでレポートしてというふうにすれば、レポートを出しても出さなくても十一万八千八百円は学校に代理受給されるわけですから。

 本来、子供たち、生徒たちにしっかりと還元されるべきものなわけですけれども、こういう弊害が株式会社立の場合、全てとは言いません、真面目にやっている学校もあります。しかし、多くの株立学校は今度学校法人化しようと。一生懸命やっている学校ほどそういう思いが強い。そして、現実には、学校法人になるにはさまざまなハードルがあるので非常に悩んでいるという実態が存在するわけですね。

 ですから、安易な方向転換の中で検証せず導入していくということは厳に慎むべきでありますし、一番この被害をこうむるのは子供たちでありますから、そこはしっかりと透明性、そしてこれからの改善の方向性も含めて、この無償化の見直しと絡めて、発信そして指導を行っていっていただきたいというふうに思っています。

 それでは、高校無償化の各論についての質問に入らせていただきます。

 まず大臣にお伺いします。大臣は、野党時代の質問でも、まず大切なのは法律の理念なんだ、単なるばらまきではなくて、中身、この無償化の理念というものを国民にしっかりと説明して明確にすべきだ、さらに、成果や効果、こういうものがあるということも説明すべきだということをおっしゃってきました。私も全く同感でありました。

 この高校無償化改正案の理念、そして、現行制度の無償化法の成果、効果について、大臣、お答えください。

下村国務大臣 その前に、先ほどのことについてもう一度ちょっと申し上げたいと思うんです。

 まず一つは、通信制高校における株式会社立があって、いろいろな問題があることは事実です。それを文部科学省としては是正をさせていきたいというふうに思っていますが、十一万八千八百円が全部無償になるということではなくて、通信教育における授業料相当額分が引かれるということで、十一万八千八百円の通信制高校の授業料というのは実際はないということを申し上げたいと思います。

 その上で、繰り返すようですけれども、公設民営学校に株式会社参入を認めるということではないということはくれぐれも御理解していただきたいと思うんです。公設民営学校で株式会社立の学校は、既に可能なわけです、これは高校においても。それと今回の公設民営学校は全然別で、公設民営学校において株式会社立の学校を認めるということを考えているわけでは全くないということを明確に申し上げたいと思います。

 そして、高校無償化でございますが、これは平成二十二年度より導入され、現行法の附則第二項における制度施行三年後の見直し規定を踏まえ、検証を行った結果、無償化前から授業料が全額免除されていた低所得者にとって恩恵がなかったこと、私立学校の低所得世帯の生徒には授業料を中心に依然として大きな負担があること、特定扶養控除の縮減により、従来から授業料負担が小さかった生徒においては負担増となっていること、このような課題があり、低所得世帯の生徒に対する一層の支援と公私間の教育費格差の是正を図る必要があると考えております。

 厳しい財政状況のもと、限られた財源を有効活用する観点から、就学支援金の支給に所得制限を設け、低所得世帯の生徒への支援や公私間の教育費格差の是正に充てるための財源を捻出するため、制度設計を行うものであります。

 なお、高校無償化制度により、経済的理由により高校中退者の数が減少したとの実態がありますが、これについては、経済的理由による高等学校の中退者数は中退者全体の約二%であり、文部科学省としては、この増減をもって四千億円の予算に見合った成果があるかどうかは評価が分かれるところであり、これだけをとったら、私は、四千億に対して、高校中退者が経済的理由で減ったというだけであればこれは四千億を投入する意味があるのかということを野党のときに申し上げましたし、そういう観点から是正を考えているということでもあります。

義家委員 大臣の問題意識とは全く私は共通の意識を持っているんですが、私が今問うているのは、高校無償化制度改正案のこの理念は、これは時間がないので大臣の思いをそんたくして言いますが、真に公助を必要としている者たちにしっかりと教育環境を保障しよう、つまり、所得制限がありきではなくて、限られた財源の中で、真に公助を必要としている者たちにどのような手だてをするのかという議論に議論を重ねた結果、所得制限によって財源を捻出してその者たちに充てていく、希望格差はなくしていく、生まれた家や地域の中で、高校進学、その先も含めた希望の格差だけはなくしていこうという理念のもとでこの改正案がつくられたと認識しておりますが、それで間違いないですか。

下村国務大臣 おっしゃるとおりであります。

義家委員 それこそが大変意義深い見直しの理念であろうというふうに思っています。

 その上で、自民党、大臣も含めて我々は、民主党政権時代、恒久的な制度には恒久的な財源が必要だ、特定控除上乗せ分の廃止だけでは到底足りない額じゃないかということをずっと指摘してきましたが、法律に定める必要な施策に対する恒久的財源は担保されていると考えてよいでしょうか。財務省、お願いいたします。

古川副大臣 お答えいたします。

 新しい施策を創設するに当たりましては、もう委員おっしゃるとおり、財政規律を確保するという観点からも、恒久的な財源、これは非常に重要なことだと考えています。

 政府としましても、中期財政計画の中で、「歳出増又は歳入減を伴う施策の導入・拡充を行う際は、歳出削減又は歳入確保措置により、それに見合う安定的な財源を確保することを原則とする。」との方針を決定しているところでございます。

 奨学のための給付金の創設のことだと存じますけれども、これは、与党の間でも、この財源の捻出についてさまざまな議論があったということ……(発言する者あり)ですから、ペイ・アズ・ユー・ゴーということは基本原則だと考えております。

義家委員 これは影響がもろに今度は子供たちに波及するものですから、やはりこれはしっかりと恒久的に財務省にも御理解いただきたいと思います。先ほどの奨学金については後ほど質問いたします。

 では、民主党政権時、制度導入とともに行われた特定扶養控除の削減によって、特別支援学校等に通う生徒たちは逆に負担増になった。具体的には、通信制、定時制、特別支援学校に通う生徒たちは実質負担増になりましたが、そもそもの理念である真に公助の必要な者への負担増、これを具体的にこの改正案ではどのように見直すことになっているのか、大臣、お答えください。

西川副大臣 義家委員には、本当に教育に関する熱い情熱で語っていただいて、いつもありがとうございます。

 ただいま御指摘の特定扶養控除の縮減による負担増という点に関しては、特に、特別支援学校高等部の生徒、定時制、通信制高校の生徒に対しては、特別支援教育就学奨励費の拡充という形で支援していきたいと思っております。

 その中で、特に、具体的ではありますが、ICT機器等を購入した場合の保護者負担の軽減、それから、交通費の補助対象範囲の拡大による保護者負担の軽減、それともう一つ、高校を中途退学した人が再び定時制、通信制高校でよしもう一回やるぞという形で学び直すときに、制度が、特に私学対私学の間で、三十六カ月で切れてしまう、その辺のところもきちんと担保して、受給期間を、最高二年を上限としてさらに卒業までの間、継続して授業料支援をしっかり支援していきたいと思っております。

 以上です。

義家委員 これは非常に重要な見直しであるというふうに思っています。

 まず、真に公助の必要な、特別支援学校等に通う者たちが負担増になっていた。これは厳に是正されなければならないことで、速やかに是正の方針を出していただいたことを感謝いたします。

 また、私、先ほども申し上げましたが、全国から中退生、不登校生が集う北の小さな学校で働いていたんですけれども、かわいそうなことが起きたんですよ。やり直しをかけて編入した、でも、通算三十六カ月を超えると学費を払わなきゃいけない。同じようにやり直しの中で補助が出ている者と学費が変わってきてしまうんですね。

 その意味では、今、西川副大臣がおっしゃったように、三十六カ月を超えても支給できる、再チャレンジを支援していくという形に制度の見直しを行っていくという御答弁もいただきました。感謝いたします。

 続きまして、以前の法律では、外国人学校の生徒が無償化の対象になっているにもかかわらず、日本の各種学校や海外の日本人学校は対象となっておりませんでした。これも再三指摘したことですが、改正案ではこれをどのように見直すのか、お答えください。

西川副大臣 確かに、日本国内にある外国人の学校の生徒に支援があって、日本人である海外の子供たちに支援がなかったり、非常に矛盾したことが起きていたのは事実でございます。

 御指摘のとおり、日本の外国人学校の生徒は対象になっていた、一方で、海外の日本人学校や、外国人学校以外の例えば各種学校等の生徒も対象になっていなかったという、この問題はずっと課題でありました。

 今回、見直しにおいては、この不均衡を是正するということで、海外の日本人学校等に通う日本人高校生を今回新たに支援の対象にいたします。そして、それとともに、制度的に高等学校の課程に類する課程であることが担保できる、いわば国家資格、これに結びつく教育を行っている専修学校、これは一般課程ですが、及び各種学校についても、新たに就学支援金制度の対象とする方針でございます。

 これは、特に文科省が、今まで全員が割合普通高等学校、四年制の大学ということだけではなくて、もっといろいろな多様な方向性があるだろう、そういう中で、これから専門学校や各種専修学校、これにもっときちんと支援を入れて、本当に、物づくりとかそういうものに対して国家としての意思を示して、そういうことに進む子供たちが誇りが持てる方向に行こうという方向性ともリンクして、そういうものに対してもきちんと支援をしていくということでございます。

義家委員 私も同感であります。例えば、中学卒業を基礎資格としている調理師であったり、准看護師であったり、理容師であったり、そういう選択をする生徒、若者たちにもしっかりとした支援の輪を広げていく、また、海外にいる日本人もしっかりと応援の対象にしていく、非常に的確な見直しであると思っております。

 さて、さらにお尋ねいたします。

 今回の制度改正によって所得制限がかけられるわけですが、これは繰り返しますが、低所得者により手厚い支援を目指すものであります。そのため、捻出した財源で授業料以外の、授業料は一律ですけれども、授業料以外の最低限度の教育費も給付すべきであると考えております。

 子どもの貧困対策の推進に関する法律がさきの国会で成立しましたが、具体的なデータをもとに、近年、低所得者層の家庭が増加していると言われていますが、実態はどうなのか。文部科学省、お答えください。

清木政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省の国民生活基礎調査、これは三年ごとの調査でございますが、子供の貧困率は、平成十五年に一三・七%、平成十八年に一四・二%、平成二十一年に一五・七%と上昇しており、低所得者層の家庭が増加傾向にあると承知をしております。

義家委員 ありがとうございます。

 高校の教師時代、家が低所得者で、修学旅行に行きたいけれどもどうしても行けないというような生徒が私の受け持ったクラスにもありましたし、また、授業料が残りの部分どうしても払えないといって卒業を延期になった生徒もいました。これはやはり子供たちにとっては非常に重要な問題であって、安心して学校生活を行えるようにする、親の所得に関係なくしっかりと学校生活を全うできるようにするということは、大切なことであろうと思います。

 さてその上で、義務教育段階では、就学補助という制度がございます。給付金の性格が所得の低い層への支援ということであれば、現在制度のない高校版の就学援助制度のようなものが今議論している給付型奨学金なのかどうなのか、大臣、お願いします。

下村国務大臣 義家委員御指摘のように、今回の高校授業料無償化の見直しというのは、低所得者の家庭の高校生たちの就学のチャンス、可能性を減じないような形をとっていくということの中で、その一つの手だてとして、奨学のための給付金を考えております。

 これは、義務教育負担の軽減として行われている義務教育段階における就学援助の制度を参考として、経済的観点から低所得世帯への支援として創設するものでありまして、文部科学省としては、御指摘のように、いわば高校版の就学援助制度のようなものとして考えております。

義家委員 もう少し概要について。給付金の対象者や支援の内容については現時点でどのように考えていらっしゃいますか。

西川副大臣 文科省といたしましては、八月二十七日の与党合意を踏まえまして、所得制限により捻出された財源を活用いたしまして、年収二百五十万円未満程度の世帯、これは生活保護を除きますけれども、に対して、教科書費それから教材費、学用品等としては、公立の学校には年額十三万円、私立は年額十四万円の低所得者層に対する給付金を都道府県に対して国庫補助事業として創設したい、そういうふうに考えております。

義家委員 ありがとうございます。

 しかし、この部分の見解や調整が財務省とついていないというところが非常に大きな問題でありまして、財務省古川副大臣にお聞きいたします。

 この所得制限によって捻出する財源で給付金を創設することは、これは与党間で既に合意されていることであります。この合意をしっかりと履行していくことが必要であると考えておりますが、財務省の見解、お答えください。

古川副大臣 お答えいたします。

 与党間でそのような合意がなされたということは承知しておりますし、それは十分に尊重したいと考えております。

 一方、そこで捻出された財源という言葉が先ほどからあるわけですけれども、そもそも、この高校無償化自体が、さまざまな財源を捻出する中で創設されたものでございました。こういうこともしっかりと踏まえていく必要があると思っております。

 いずれにしましても、十分文部科学省とも調整をしながら、年末に向けて予算編成過程の中で検討してまいりたい、こう思っております。

義家委員 副大臣の前向きな答弁、それは感謝いたしたいと思いますけれども、再三繰り返しますが、これは、影響があるのは子供たちなんですね。予算をめぐる大人の問題とは全く別個で、今学校に行っている子供たち、若者たちが希望格差を埋めて、真に公助の必要な者たちが、安心して、最低限支給されながら学校生活を行うというものであって、無限にばらまくとかそういう性質のものでは全くなくて、義務教育にある就学援助と同様の援助をしっかりと行っていくということで合意されて、文部科学省でも検討し、与党内でも検討して出したところであります。

 ですから、ぜひ副大臣には、我々の思いも受けとめていただいた上で財務省内でしっかりと発信し、そして、目的は何なのか、きょうの議論も踏まえた上で、財務省の中で発信し調整していっていただきたいと心から願います。

 では、もう一つ更問いいたします。

 子どもの貧困対策の推進に関する法律がさきの国会で成立したことも踏まえて、我々としては、少なくとも非課税世帯について、政府として法律を具体化する施策の対象にすることが必要だと考えております。これについて、財務省の副大臣の認識を問いたいと思います。

古川副大臣 お答えいたします。

 子どもの貧困対策の推進に関する法律の趣旨につきましては、よく理解をしていますし、十分に尊重したいと考えております。

 しかしながら、予算編成の過程において、他の歳出分野のそれぞれ課題がありますので、それを全体的に見ながらこの編成作業の中で検討していくべきものと考えておりますから、その趣旨で頑張っていきたいと思っております。

義家委員 この子供の貧困に対する、対象とする歳出とほかの歳出とは、私は、同じ土俵で議論してはならないことだというふうに思っているんです。この事業は無駄なのか無駄じゃないのかとか、多過ぎるのか多過ぎるんじゃないのかとかの歳出の議論と、貧困状況にある子供たちが安心して、今はもう九八%が高校に行っている中でありまして、さらに、およそ五割が大学に進学して、専門学校も入れたら七割、八割という状況の中で、安心して未来に手を伸ばすために最低限の支援を国としてしていこうという、私は、これは自由民主党のまさに公約そのものであると思っています。自助、共助、公助、真に公助を必要とした者は断固として守っていく、これが自由民主党の主張であったわけであります。

 ですから、ぜひ、ほかの歳出の状況と同じ土俵で考えるのではなくて、この給付型奨学金が何のためにあって、どのような規模で、そして、我々の政治姿勢としてどのように手当てしていくのか、こういうことをしっかりと議論した上で別個で考えていただきたいというふうに思うわけですけれども、副大臣いかがでしょうか。

古川副大臣 お答えいたします。

 冒頭に、ペイ・アズ・ユー・ゴーについて強く委員も主張なさいました。一方で、るる、委員の主張しておられます新しい制度の趣旨についてもお聞きしておりまして、私も、なるほどと思う部分はございます。

 しかし、この予算ということにつきましては、これから年末に向けて予算編成作業を具体化してまいります。その過程の中で、他の歳出分野のそれぞれの課題とあわせて総合的な見地の中で編成作業を進めていきたい、こう考えております。

義家委員 下村大臣、意気込みと決意をお願いいたします。

下村国務大臣 民主党政権のとき、この高校授業料無償化は、先ほど義家委員から指摘がありましたように、三月三十一日に成立をして四月一日からスタートした。しかしこれは、地方自治体や高校生たちの立場からすると、全員が享受されるということで、手続上、次の日からということであっても、地方自治体が対応したわけでございます。

 今回は、所得制限を設けて、そこから捻出した資金をもってより低所得者のための厚い手当てをするということについては、地方自治体からすると相当な準備期間がかかるということで、本来、これは予算関連法案ですから通常国会に出さなければならない法案ですが、通常国会に出すと、民主党政権のときと違って、今回は対象から外れるということもあるものですから、スムーズに四月一日から導入は難しいという時間的な経緯がございました。

 二十七年度からという声も与党の中にもありましたが、再三義家委員から御指摘のように、議員立法で、さきの通常国会で子ども対策貧困法という法律案を通したわけでございます。国会で通していただいたわけですから、政府としては責任を持ってより早くそれに対して対応する必要があるということの中で、義務教育期間と同じような、高校期間における給付型奨学金、低所得者に対する手だてを考えるということは、子ども対策貧困法に対して政府がきちっと対応しているということでもあるというふうに考えまして、二十七年度でなく、二十六年度からこれを実施したい。

 そのために、異例の異例で、予算関連法案を臨時国会で出すということは過去ほとんど国会においてはあり得なかった法案でありますが、これを財務省を説得して出したということでございまして、先ほどの危惧については、私も財務省に何回も乗り込んで、そして話をしておりますので、今の副大臣の立場からすると、今のこの状態の中で確約するような答弁はなかなかできないことは承知をしておりますが、しかし、必ずこれは実現できるというふうに私は確信しております。

義家委員 先ほど西川副大臣の方からもありましたが、地方への補助事業としてこの給付型奨学金を、これも非常に重要なことでありまして、地方の経済状況や生徒の居住地によって受けられる最低限の支援に差が生じてしまうということは、これもまた、我々の主張の趣旨からすると大きな問題になります。私なんかは、国が責任を持って全額国費で措置すべきと思いますけれども、財源の問題もあると言うならば、最低でも、地方への補助事業として全ての都道府県で実施することが必要であるというふうに考えております。

 私は個人的に古川副大臣を尊敬していますし、そして信頼もしておりますけれども、この問題、ほかの歳出と全く別に、真に公助を必要としている、希望格差をなくすために、彼らに対して当たり前の国としての責任を果たしていくという趣旨のものですから、ぜひそれを受けとめて、しっかりと財務省内での調整で活躍していただきたいというか、汗を流していただきたい。

 これは政治家のためとか官僚のためではなくて、今現在苦しんでいる子供たち、若者たちのため、そのためにも、ぜひとも古川副大臣のリーダーシップを省内でも発揮してしっかりとこれを実現していただきたいと心から思いますが、何か一言あれば。

古川副大臣 委員にお答えをする前に、先ほど大臣の方からも御紹介がありました。何度か大臣御本人が直接財務省にお出かけいただきまして財務大臣にいろいろ御相談をいただいたということについては、私も聞いております。大変熱心に取り組んでおられるということも承知しておりますけれども、しかし、何度も申し上げますとおり、予算編成というのはこれからであります。そして、歳出分野というのは多岐にわたります。これを総合的に検討し調整をしていくのはこれからでございます。

 それから、今いただいた御質問ですけれども、一般に、学校の設置、運営に要する費用につきましては、学校教育法に基づきまして、管理責任を負う学校の設置者が負担するのが原則でございます。

 こうした原則等を踏まえまして、幼稚園から高等学校までの生徒等に対する就学支援につきましても、全ての生徒等を対象とした義務教育の授業料不徴収等及び高校無償化を除きまして、公立学校の設置者である地方が支援内容を決める仕組みとなっております。これが原則だというふうに考えております。

 いずれにしましても、与党の合意というものがございます。よく承知しております。これを十分に尊重しながら今後検討してまいりたい、こう思っております。

義家委員 という、質問でも明らかになっているように、まだちょっと浮いているというか、かちっと決まっていない、しかしながら非常に重要な問題があります。今後とも、与党の議員として、しっかりと私は大臣の後押しをするために汗をかいてまいりたいと思います。

 多少厳しい質問もいたしましたが、この無償化改正の真意というものが少しでも明らかになればと思って質問させていただきました。

 本日はどうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、中根一幸君。

中根(一)委員 自由民主党の中根一幸です。

 時間もありませんので、早速質問をさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 先ほどの義家議員の質疑で明らかになったように、高校無償化制度については、平成二十二年度に導入されたときから多くの課題があったと考えております。限られた予算を有効に使うという観点から、所得制限により捻出された財源を低所得者の支援、また公私間の教育の格差の是正のために施策を行うという今回の改正は、大いに賛成するところでございます。

 ただ、新制度を運用するのは、高校の設置者であります地方自治体、そして私学の学校法人でありますので、私からは、地方自治体や学校法人との関係について何点か質問をさせていただきます。

 地方自治体からの意見でございますが、全国知事会から、当初は、平成二十六年度からの導入は期間が短いという関係上難しいという申し入れがございました。現在の自治体の準備状況をまずお伺いいたします。よろしくお願いいたします。

西川副大臣 中根委員、ありがとうございます。

 確かに、今御指摘のとおり、設置者である各地方自治体からは、時間的にまず無理だと全国知事会からの申し入れもございました。その中で、要は、授業料徴収条例、これはいわば廃止されていたわけですから、これのさらなるまた法案化、あるいは授業料徴収システムの整備、こういうところに時間もかかるし、かなり無理だよというお話はありました。

 その中で約十都県が特に無理だと厳しい御意見を頂戴しましたので、これに対応いたしまして、八月以降、平成二十六年度からの導入課題があるとする都道府県、主にこの十県について、担当の審議官が全部現地に赴きまして、訪問させていただいて、しっかりとした御説明、そして具体的な課題についての聴取をいたしました。そしてその後、九月十三日には、文部科学省から全都道府県に対応状況を確認させていただきましたところ、まあ何とか、対応できないと言った県はなかったというのが現実でございます。

 その中で、十月初旬には早速、制度の改正案についての都道府県に対する説明会を開催しております。その中で、担当者その他の方がお集まりでございますが、ホームページやリーフレットなどの方法も周知いたしまして、現場に混乱のないように、本当に迅速かつ丁寧に情報の提供をしてまいりたいと思っております。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 今回の見直しは自民党の選挙公約でもありますし、今、西川副大臣が述べていただいたように、自治体の準備が整うのであれば、低所得者世帯の子供たちの進路選択が広がるように、速やかに新制度を実施することが望ましいと考えております。そのためには、先ほどお話ししておりましたが、今まで以上に自治体と十分連携を図っていく必要がございますし、親切丁寧な自治体への情報提供、そしてまず、やはり受験者、保護者への周知をしっかり行っていただきたいと思っております。

 私ごとで恐縮ですが、私も四人の子を持つ親で、一人、来年受験をするわけなんです、私の家はどうでもいいんですけれども。やはり、周りの受験生の親たちは、この新制度についてどうなるのかということを大変注目しております。そういったことからも、親切丁寧な自治体への情報提供、そして、保護者への周知をしっかりと行っていただきたいと思います。

 現実に、この十一月から私学の高校単願の申し込みも始まっていくわけでございますから、もう待ったなしでございますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 さて、所得制限の導入に伴って、生徒の家庭の収入を把握しなければなりません。現在も私立高校では、二百五十万円世帯、そして三百五十万円世帯の就学支援金の加算を行うために所得の確認を行っております。これが新制度になると、公立高校の生徒も含めて、所得制限の基準以下の生徒たち、つまり全体の約八割の生徒の家庭の収入の所得確認が必要となるわけでございます。当然、事務負担が大変膨大になることが予想されるわけでございます。

 所得確認を含めて就学支援金の支給は法定受託事務になると思うので、ぜひこのことも、自治体の意向を十分踏まえて財政措置も十分行うべきだと考えますが、大臣のお考えをお伺いいたします。

下村国務大臣 まず、今度の制度が導入されますと、中根委員は残念ながら所得制限にひっかかって対象から外れてしまうということについては、ぜひ御理解をいただきたいと思います。(中根(一)委員「はい、わかっております」と呼ぶ)

 御指摘のように、新制度では、所得確認の事務など、地方自治体での事務負担がふえることが想定されます。地方の事務負担については、学校現場や地方自治体の意見をお伺いしながら、可能な限り手続の簡素化を検討してまいりたいと思います。

 また、事務に係る経費については、地方自治体の状況に応じ、予算の範囲内で必要な支援を行ってまいりたいと思います。

 さらに、マイナンバー制度が導入されれば、早ければ平成二十九年の七月からですが、これを導入されれば都道府県等が所得情報を確認することが可能ですので、保護者からの所得情報の提供はしなくても済むということにもなってまいります。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 私の家はともかくとして、周りの家庭から大分お話が、どういうことになっているんだというのがあったということを話したかったんですね。

 きょうはお忙しい中、先ほど来お話しいただいておりますが、財務省から古川副大臣もお見えでございます。先ほど大臣から、マイナンバーの、早ければ平成二十九年七月からというようなお話もございましたが、今現状ではやはり十分な財政措置というのが必要だと思っております。それについて同じ質問をさせていただきます。

古川副大臣 中根先生にお答え申し上げます。

 就学支援金に関する事務の執行に要する費用につきましては、地方自治体の状況に応じまして、必要な支援について予算編成過程で検討してまいりたいと思っております。

 所得確認の事務ということになりますと、地方自治体の事務負担も大変大きくなるということなんですが、これは文部科学省においても手続の簡素化等の検討がなされているものとお聞きしておりますから、そういうことの結果もまたお聞きしたいと思っております。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 これも、八月の与党合意で「見直し後の制度の実現のために必要な措置を講ずる。」とされておりますので、新制度が円滑に実施できるよう、政府は責任を持って事務体制の整備を行っていただきたいと思います。

 さて、地方自治体では、無償化制度を導入する前から、独自に行ってきた授業料の減免制度がありますね。その財政力によって地方自治体に格差が生じております。

 幾つか事例を申し上げますと、例えば、平成二十五年度の私立高校への減免補助制度の各都道府県の状況を見ますと、京都府では年収が九百万円までの人が授業料減免補助を受けられるのに対して、大分県や鹿児島県などは年収が二百五十万円程度の方しか授業料の減免補助が受けられないということになっております。ちなみに、東京都では年収が七百六十万円未満、私の住んでいる埼玉県では年収が六百万円程度の方ということで、このように、地方自治体の財政力によって支援の格差が生じているんですね。

 どこの都道府県に生まれても、家庭の経済状況によらず進路選択が自由にできるようにやはりこの支援の都道府県格差を縮小する必要があると考えますが、いかがお考えでしょうか。

下村国務大臣 現在、全ての都道府県で、私立学校に通う生徒の経済的負担を軽減するための授業料減免制度が設けられてはおりますけれども、御指摘のとおり、文部科学省としては、各都道府県の支援の状況には、格差が御指摘のような状況であるというふうに我々も把握をしております。

 文科省としては、所得制限によって捻出される財源によって、一つは年収三百五十万円未満の低所得者層への就学支援金の加算を拡充すること、そして中間所得者層、これは子供のいる世帯の収入のおよそ中央値である年収五百九十万円世帯でありますが、ここまで加算の対象を広げることを考えております。これによりまして、私立学校の教育費負担軽減における都道府県格差をもっと縮小したいというふうに考えております。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 就学支援金の加算を低所得者だけでなくて中間所得者層まで広げられるということでございますが、そうなると、これまで自治体が行ってきていた授業料減免と対象者が重複するケースがあるわけですね。その場合には、この重複する部分に充てられていた自治体の財源が結果的に浮くということになります。私は、そのこと自体は悪いと思っておりません。国の責任として一定程度まで都道府県間の格差のないようにしっかりと支援するということは、大変重要なことであります。しっかりと一律に支援をした上で、そしてその上で自治体が実情に応じてそれぞれの支援をしていくということが本来あるべき姿であると考えております。

 ですので、就学支援を拡充した部分について、単に国が予算をつけかえたということではなくて、自治体においても、支援の幅を広げることによって家計の教育費負担の軽減を図っていただく必要があるんだと私は考えますが、大臣はどのように考えておられますか。

下村国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。

 今回の制度改正で、文部科学省としては、国からの就学支援金の加算を拡充する方針であることを踏まえまして、都道府県で授業料減免に充てていた財源はさらなる低所得者層への支援や中間所得者層の就学支援の拡充等に充てていただくよう、各都道府県に要請してまいりたいと考えております。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 国と自治体がそれぞれの役割を果たしながら、結果、家計の教育費負担の軽減を図っていくということが重要であると私も考えます。ぜひ文科省から自治体に対して、浮いた地方財源が確実に教育費負担の軽減のための施策に充てていただけるよう、しっかり要請していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 就学支援金の拡充や地方自治体の授業料減免制度の拡充によって、いわゆる公私間の教育費の格差が今までの流れでは縮小されたと考えられるわけでございますが、それでもまだ私自身この公私間格差というのはあると思っておりますし、また、私学に進学する場合の家計の負担というのは公立に比べれば非常に大きいと思っております。

 先日、上野政務官からの答弁で、高校教育において私学の果たしている役割は大きく、しっかりと支援を行っていく必要があるとのお考えを述べられておりましたが、この就学支援金の充実とは別に、私学助成の観点からもしっかりと私立高校を支援していく必要があると考えておりますが、いかがでしょうか。

西川副大臣 ありがとうございます。

 特に私学の高校に関しては、東京、大都市部はともかくとして、地方では本当に公立の足らない部分を私学が補っているという部分がありまして、単に選択権として私立高校に行くというのではなくて、本当に必要であるという状況があると思うんですね。そういう中で、今回の公私間の格差是正というのは、そういう方向ができて本当によかったなと個人的にも思っております。

 その中で、私学助成というのは以前からもちろんあるわけですが、三割が通う私立高校の果たす役割の重要性、これに鑑みまして、私学助成のそもそものある条件として、教育条件の維持向上、もう一つは修学上の個人負担の軽減、それともう一つが、やはり、私学の経営の健全性の向上を図る、こういう意味であるのが私学助成金です。

 ですから、今回のこの就学支援金があるから、これができたんだから私学助成の方はまあまあいいんじゃないかというような理論はちょっと違うと思います。あくまでも、私学の大事さ、健全性を保つ、そういうことに鑑みましても、私学助成金はさらに充実させていくべきものだと考えております。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 同じ質問を、古川副大臣、お願いいたします。

古川副大臣 同じ質問をということですから。

 私学、私立高校の重要性については、私も同様に認識しております。ただ、委員は恐らく、同じ質問というよりも、もっと国の支援を強めろという趣旨で御質問いただいたんだろう、こう思うわけですね。

 しかしながら、国が私学の、私立高等学校の振興に努めていくということは全くそのとおりでございますけれども、一方でその自主性というものもございますから、この自主性を尊重する必要ということも考えながら、国の関与というものがどの程度であるべきものなのかということについては考えていかなきゃいけない問題だ、こう思っております。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 昨今の私学、教育面のあらゆる方面で大変目覚ましい活躍をしておりますね。もちろん、その教育の内容、成果、また大学の進学実績率、またスポーツに至るまで、公立に比べても非常に頑張っているなという私学がたくさんあるのは皆さん御承知のことだと思います。

 二十年ぐらい前までは、私立は公立高校受験の滑りどめというような風潮すらあったわけでございますが、今の私学というのは、私が言うまでもなく大変頑張っておりますし、結果も出しておりますね、実績もたくさん出しているわけでございます。

 今の財政状況やこれからさらなる少子高齢化のためにかかる費用、また、これから財政再建しなきゃいけない、いろいろな財務省としてのお考えもあると思いますが、もちろんそれもわかるんですが、やはり、教育というのは国家百年の計に値するものでございます。

 この教育予算に関しまして、先ほど来お話がありますが、古川副大臣を私も尊敬しておりますので、ぜひ財務省の方でしっかりと主張していただいて、そして、特に私学についても、先ほど来お話がありましたように、就学支援金の充実とは別に私学助成の観点からも財政措置をお願い申し上げまして、そろそろ時間が参りましたので、私の質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 先ほど来、義家議員そして中根議員からももう既に質問がございまして、私の質問は一部重複する点があると思いますけれども、確認の意味も含めて質問をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、財源確保について、施策の恒久化に向けた考え方について大臣にお伺いをさせていただきたいというふうに思っています。

 今回の法改正により、所得制限によって生み出された財源、これは高校生等の教育費の負担の軽減に必要な経費に充てる、このようになっておりますけれども、本法律案成立後、所得制限の基準額についてこれは政令で定めることとしている、このように予定ということで聞いておりますけれども、捻出された財源によるさまざまな措置というのは、これは当然、今後、平成二十六年度の予算編成の過程において、先ほど来、財務副大臣等の議論もありましたけれども、財務省との折衝である、このように認識をしております。

 そもそも高校無償化の財源として充てられてきたものを高校生の教育費負担の軽減経費として恒久的に扱うのであれば、これはしっかり法案に明記して担保すべきではないか、このような意見もございます。この点、どうお考えなのか。

 それからもう一点あわせてお聞きしたいのは、予算編成過程、これは先ほど来の議論にありましたけれども、この予算の確保について、大臣も大変な汗を流して頑張っておると承知しておりますけれども、どのような方針で臨まれるのか。この点について大臣の所見をお伺いします。

下村国務大臣 低所得者支援として検討している奨学のための給付金については、国が予算補助制度を設けることによりまして、地方自治体の事業として全国的に展開することが可能であるというふうに考えております。

 所得制限によって捻出された財源を奨学のための給付金等の低所得者支援及び公私間格差の是正のための支援策等に充てることについては、八月の与党間合意で明記されているところでございます。

 本来、この法律案は予算関連法案でございますから、先ほどもちょっと申し上げましたが、通常国会で出す法案ということでありますが、しかし、通常国会に出していると、来年四月からの地方自治体の条例改正なりあるいはシステム開発なり準備が整わないということで、例外の例外としてこの臨時国会に出させていただいた法案ということでございます。つまり、明記をするということについて、そういう中での拘束があるということについては御理解をいただきたいと思います。

 ただ、文部科学省としては、今後の予算編成についてこれらの施策の実現に最大限努力してまいりたいと思いますし、また、それは必ず実現できるものと確信をしております。

稲津委員 来年度から実施ということで、タイトなスケジュールの中では、法案の明記ということについてはなかなか難しいものがあるということのお話がございましたが、そこのところはよくわかるんですけれども、ただ、そもそも論として、財源確保を含めて負担軽減措置をすると言うのであれば、やはり明文化というのは自然なことだろう、こういうことを指摘させていただきたいと思います。

 いずれにしても、今大臣からの予算化に向けての決意の一端を紹介いただきましたが、ぜひその予算確保の方針実現のために最大の努力をしていただきたいことをお願い申し上げておきたいと思います。

 次に、奨学のための給付金について数点伺ってまいりますが、まず、義務教育における就学援助制度との関係性についてお伺いをさせていただきます。

 当然のことですけれども、高校教育というのは授業料以外にもさまざまな経費がかかる。入学金、制服代、クラブ活動、修学旅行費等々ありまして、年間およそ二十万円程度の負担がある、このようにも言われておりますけれども、本委員会でもこの点については審議の中で指摘がされてまいりました。

 特に、授業料の無償化以前に経済的事情で授業料を免除されていた家庭、ここは無償化によっては支援拡充になっていないというのがございます。ただ、都道府県が独自に行ってきた私立高校への授業料の減免制度、就学支援金導入により拡充をした自治体もあるので一概にこれは言えませんけれども、少なくとも公立高等学校の中では拡充されたというふうには認識しておりません。

 ここで、義務教育の場合について少し申し述べさせていただきたいと思いますが、その上で質問をさせていただきます。

 義務教育では、生活保護世帯に対する教育費の扶助だけではなくて、生活保護を受けられない世帯でも、生活保護法に規定する要保護者とそれに準ずる程度に困窮していると認められる準要保護者に対して、学用品、それから修学旅行費、学校給食等、これらの費用を援助するための就学援助制度がある、これはこれまでの議論でも触れておりました。

 市町村が要保護者に対して行う事業は国が補助し、準要保護者に対しては、平成十七年度に自治体への財源移譲を行ったため国の補助はなくなったが、各自治体においてそれぞれのメニューで行っている。しかし、高校段階では、生活保護世帯に対し平成十七年から高校就学費が支給されましたが、義務教育における就学援助のような、いわゆる就学支援はなかったわけでございます。

 そこで、義務教育で就学援助を受給している児童数はどのくらいいるのか、これを調べましたら、簡単に出てまいりましたけれども、平成二十三年度の実績で、要保護者が十五万人、準要保護者が百四十二万人、合わせて百五十七万人にも上っている。近年の不況下の影響も受けて、これが少し年々ふえてきている。文科省の調べ、平成二十三年度は過去最高人数で、児童数全体に占める割合は一五・七%だったということ。

 それでは、高校段階ではどうだろうかということなんです。現状、繰り返しになりますけれども、義務教育に準ずるような就学援助制度はない。例えば、各自治体で行っている貸与型の奨学金の二十三年度の実績、約十六万人で全体の四・七%にすぎないということ。義務教育での就学援助受給者とその比率を考えると、高校段階でもそうした就学援助を必要としている生徒は、当然ですけれども同程度の割合で存在しているということが言えると思います。

 無償化によって支援できたといっても、無償化によって恩恵を受けられるのは、繰り返しになりますが、授業料を払っていた世帯であって、無償化以前に経済的理由で授業料が免除されていた世帯にはその恩恵がない。約九八%が高校に進学するような現在の中で、義務教育段階で就学援助を受けていた世帯はどのようにこの年間二十万円程度と言われている費用をこれまで負担してきたのか、この辺の実態について、文部科学省としてどのように把握をしてきたのか。少し説明が長くなりましたけれども、この点をお伺いさせていただきたいと思います。

前川政府参考人 御指摘のように、義務教育段階におきましては、要保護及び準要保護世帯への教育費負担の軽減といたしまして就学援助制度があるわけでございますが、高等学校段階でのそういった制度は現在ないということでございまして、そういった世帯につきましては、高校へ進学した時点で支援が途切れるという事態にどうしてもなるわけでございまして、その負担感は大きいというふうに承知しております。

 高校段階における就学に必要な授業料以外の経費をどう支援するかということにつきましては、現在は、都道府県が実施しております貸与による奨学金事業があるのみでございます。

 各都道府県におきましては、それぞれ貸与月額や貸与要件を定めて奨学金事業を実施しているところでございますけれども、その実績額といたしましては、貸与者数が約十五万九千人、貸与総額が約四百十六億円となっているところでございます。

稲津委員 そうした状況からも、私ども公明党はかねてから、経済的困窮家庭に対する給付型の奨学金、これを主張してまいりました。いよいよ今回の改正で実現をするという運びになっておりますけれども、ここで確認をしておきたいのは、この奨学のための給付金で、義務教育で就学援助を受けてきた世帯を今回の制度でどこまでカバーができるのかということです。

 年収二百五十万未満世帯に、公立で年間十三万円、私立で十四万円支給するとして、どのくらいの人数で、高校生全体の何%なのか、この点を簡潔にお伺いさせていただきたいと思います。

前川政府参考人 義務教育段階の就学援助の受給者につきまして試算したところ、一学年当たり約十七万四千人程度であろうというふうに考えております。

 一方、現在考えております奨学のための給付金、これは年収二百五十万円未満程度の世帯、これは住民税非課税の世帯でございます。そのうち生活保護を受けている世帯は除かれるわけでございますが、こういった者に対して支給することを考えております。

 その受給の予定数としては、一学年当たり約十二万人を想定しているところでございます。

稲津委員 今の答弁をいただきまして、十七万四千人と十二万人ということで、ここの乖離があるわけなんですね。制度が創設されたことは、これは評価をいたしたいと思います。ただ、しかし、義務教育課程における就学援助者の開きがあると言わざるを得ないわけで、金額的にも拡充すべき点もあるかと思います。

 全ての高校生に対して四・七%、平成二十三年度実績は十五万九千人が受けているこの貸与型の奨学金、これもそもそも貸与型であるので、当然返済しなくてはならなくて、滞納者も多いというふうに聞いております。今回創設された奨学のための給付金で義務教育段階における就学援助者をきっちりカバーして、金額的にも授業料以外の負担がしっかり賄える程度まで拡充をして、全ての経済困窮家庭の支援ができるような制度の拡充を目指していっていただきたい、このように考えておりますけれども、今後の方向性についてお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 基本的には、おっしゃるとおりだと思います。その方向をぜひ目指したいと思います。

 今回の法案が成立した際には、十二月までの予算編成過程において、奨学のための給付型奨学金の実現に向けてまずは努力していきたい。その上で、来年度以降、奨学のための給付金制度の実施状況や経済状況を勘案しつつ、今後の制度のあり方について検討してまいりたいと思います。

稲津委員 ぜひ、実施とあわせて、今後の方向性についても十分な検討をお願いしたいと思っております。

 あわせて、財源の確保について伺っておきますけれども、今回のこの奨学のための給付金は、補助事業となっているということで、国の負担が三分の一、地方の負担が三分の二となっている。都道府県による給付事業の確実な実施、これをいかに担保するのかということも大事なことでございまして、そのための取り組みについてお伺いしたいと思います。

西川副大臣 稲津委員、ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、この奨学のための給付金制度は国の補助事業として想定しておりますが、そのときの地方負担分について、いわば現行の公立学校授業料不徴収制度を就学支援金に変えた、その中での間に出てくるわけですね、その際に生じる差額が。その辺の差額分、これは約三百億円余と把握しておりますけれども、これをぜひ地方の財源に充てていただくようにと考えております。

 その際、これはあくまでも地方の判断になるわけでございますので、これが着実に貧困家庭の子供たちの支援に行き届くようにこの趣旨を十分地方にも文科省としても御説明させていただいて、奨学のための給付金制度が全ての都道府県に創設されるように、今後一層の理解を求めてまいりたいと思います。

稲津委員 地方への働きかけ、説明、これは本当に大事なことですので、その点はもうしっかりとお願いをさせていただきたいと思っておりますけれども、関連して、貸与型の奨学金についてもお伺いしておきたいと思います。

 この制度は、平成十七年度から、日本学生支援機構から都道府県に移管をされました。収入基準、特に成績要件のありなしなど各自治体によって違いがありまして、負担の軽減、それから教育の機会の均等、こういう観点からすると、私は、国としても一定の働きかけをするのは必要性がある、このように思っておりますが、この点どうでしょうか。

西川副大臣 今までありました貸与型の奨学金事業、これはいわば、旧日本育英会、日本学生支援機構がやっていたわけですけれども、御承知のように、平成十七年の一括交付金制度のあれによって全部地方に移管されたわけですね。

 その中でどれだけ国が関与できるかというのは大変いろいろと難しい問題もあると思いますが、今回の高校生に対する支援制度の趣旨にも鑑みまして、私たち文科省といたしましても、国の奨学金の原資として、平成十七年度から一定期間、十年から十五年の間に総額二千億円を順次交付、渡しているわけですね。

 その中でやはり、学力も含めた支給要件の緩和、この問題についても都道府県にもう少し適切にきっちり判断してもらいたい、そういう助言なり指導、それはしっかりとやっていきたいと思っております。

 そして、今後とも各都道府県に対して、運営状況や情報提供、そして助言、安定的な奨学金事業が運営されますようにしっかりと留意してまいりたいと思っております。

稲津委員 これも非常に大事なことで、今副大臣に非常に前向きな御答弁をいただきましたので、これから大変いい方向に向かっていくのかなと思っています。

 もちろん、各都道府県が大変な御努力をしているのは十分わかっております。ただ、その上で、特に成績要件等について各県に違いがあるということが果たして今後このままでいいのかどうかということについて、やはり議論の余地があると思っていますので、ぜひ、各都道府県に対する情報の提供、それから助言等をしっかり行っていただきたいということをお願い申し上げます。

 次に、特定扶養控除の縮減に伴う負担増への対応について伺ってまいります。

 まず、特別支援教育就学奨励費拡充について、こういうことで伺っていきたいと思いますけれども、特定扶養控除の縮減により負担増となった世帯があるということ。これは、現行制度導入のときに本委員会の中で議論がありまして、我が党からも指摘をさせていただきました。当時かなり問題になった案件だと認識しております。

 当時、公明党、我が党の富田茂之議員がこの問題を取り上げまして、高校無償化の実質的な財源となった特定扶養控除の見直しが、きょうもお話がありましたが、定時制、通信制、また特別支援学校に通うお子さんたちを持つ親御さん、ある意味、本来であれば一番手当てをしてさしあげなければいけない、そういう世帯に負担増を強いるような制度設計は一体どういうことなんだ、こういう指摘が繰り返されました。

 平成二十二年三月十二日の当時の議事録を見てみますと、当時の大臣はこう申し上げております。教育現場の実態等を踏まえつつ、実際に家計に影響を生ずる平成二十三年末に向けて、文部科学省が主体的に取り組める方策は、給付型奨学金が一番大きな効果をもたらすものであると認識しており、御指摘のこともしっかり受けとめて、二十三年末に向けて進めてまいりたい。本委員会における答弁で約束をしているわけでございます。

 特定扶養控除縮減の影響が出る二十三年末、もう二年前、とっくに過ぎておりますけれども、文部科学省としてこれまでどういう取り組みを行ってきたのか。検討状況、これをお伺いしたいと思います。

前川政府参考人 御指摘のように、特別支援学校の高等部につきましては、従来から授業料を徴収していなかったという事情がございますものですから、無償化の導入によって具体的に授業料減免のメリットはなかったということでございます。一方で、特定扶養控除の縮減によりまして税負担の増が生じたということで、それが問題とされたと承知しております。

 こういった特別支援学校の生徒に対する対応といたしまして、平成二十三年度の概算要求におきましては、特別支援教育就学奨励費の拡充を要求するとともに、特別支援学校高等部の生徒も対象に含む給付型奨学金事業の要求をいたしましたが、いずれも予算計上には至らなかったということでございます。

 一方、特別支援学校の高等部の生徒も含む、特定扶養控除の見直しにより負担増となる世帯の生徒に対する経済的な負担の軽減を図るという観点からは、別途高校生修学支援基金についての制度改正を行いまして、平成二十三年の四月から、各都道府県において奨学金の貸与額の増及び返還減免制度の導入を行った場合には基金の取り崩しの対象となるような見直しを図ったところでございますが、十分活用されていないという状況でございます。

稲津委員 今これまでの検討状況をお伺いして、努力の跡はあったのかもしれませんけれども、ただ、いずれにしても、今回こういう形で具体的な取り組みに入っていくということは、一定の評価はしたいと思っています。

 今回の所得制限によって捻出する財源の支援策、これで特別支援教育就学奨励費を拡充する、特定扶養控除の縮減で負担増となった特別支援学校の生徒を支援する方向で検討される、これは非常に喜ばしいことですけれども、具体的な制度設計、先ほども若干答弁がありましたけれども、多分、その御答弁と重なる点があることはいたし方ないと思いますが、年末の予算編成過程で決定されるものと認識をしている。

 この制度を設計していく過程で、負担増となった世帯のどこまでの範囲をカバーできるのか、このことも大変重要な鍵だと思いますが、その辺の検討状況について伺っておきたいと思います。

前川政府参考人 特別支援学校の高等部におきましてどのような負担増が生じているかということでございますけれども、平成二十二年度の特定扶養控除の見直しによりまして、推計収入額が約四百万円の世帯につきましては二万四千五百円の税負担増が生じている、また、約六百万円の収入の世帯につきましては三万七千円の負担増が生じている、また、約八百万円の世帯におきましては六万二千円の負担増が生じている、こういう状況になっております。高所得者層ほど負担増が多いというのは所得税の累進率によるものでございます。

 一方、現在検討しております、予算要求しております特別支援教育就学奨励費の拡充が認められた場合におきましては、まず、学用品の購入費の拡充といたしまして最大五万円の加算が行われることになります。また、交通費の補助対象範囲などの拡充によりまして増額支給がなされる。これは、交通費はそれぞれの生徒によって実費が違いますので、この増額分についてもそれぞれ違いが出てくるということになります。

 これらによりまして、例えば学用品といたしまして五万円のICT機器を購入した場合、推計が約六百万円の世帯、これは先ほど申し上げたとおり負担増が三万七千円だったわけでございますけれども、その三万七千円を超える五万円の便益が得られるということで、この負担増が解消されるというふうに考えております。

 さらに、交通費の増額支給、これは増額の額によって違ってくるわけでございますけれども、従来負担増となっていた世帯についてもその解消が見込まれるわけでございまして、八百万円世帯においてもその解消が図れるという可能性は出てくるというふうに考えております。

稲津委員 特別支援学校の実態にきちんと即した対応をしていただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思うんです。

 この特別支援学校については、高等部、ここは特別支援学校の中等部からの進学者に加えて、通常の中学校の特別支援学級にいた生徒が毎年数多く入学をされております。

 特別支援学校の数が限られているという状況から、これも本来何とかしなきゃいけない大事な問題だと思うんですけれども、例えば、何時間もかけて通学をする生徒、それから家を離れて寄宿舎生活をする、それから帰省をする、こういうところにも、今交通費の話もありましたけれども、やはり相当な負担があります。したがって、ぜひ実態と現場意見を反映した対応をお願いさせていただきたいと思います。

 次に移ります。

 次は、私立高校の授業料の減免制度の都道府県格差について、これも先ほどありましたが、確認の意味で質問させてもらいます。

 特別支援教育のところと同じように、定時制、通信制、ここも同じ状況だった。特に通信制の生徒は、文科省の調べで、二十五年度の速報で全国で十八万五千人。中身を見ると、公立よりも私立が上回っている。ここは、現場のこととしては、いわゆる学び直しの生徒も多いということ、それから、少しニーズが変わってきまして、資格取得ですとか個別指導を受けられる、こういうことを利点に現在通信制の高校についてもニーズが広がって、いわゆる多様な教育のニーズを受ける受け皿になっているということも言えると思います。

 通信制などの高校においては、スクーリング等で出費がかさむ、こういうことも実態としてありまして、そこらに対する直接的な支援策はこれまでなかったわけです。そうした中で、その課題を支援するのが私立高校に対する就学援助金、それのいわゆる各都道府県の上乗せ部分のことです。

 ただ、実際には自治体によって指摘のとおり支援内容に違いがあって、言葉をかえると格差があるとも言えると思います。どこの地域に住んでいるかによって教育の機会に差が出てくるというのは、これはいかがなものかというふうに思っておりまして、文科省として、これをどのように認識して、今後どのように対応していくお考えなのか、この点を大臣にお伺いして、質問を終わりたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、都道府県の支援の状況には格差があります。今御指摘の、特に広域通信制課程の生徒に対する補助も、全日制課程と区別なく補助をしているところもあれば県内生に限って補助をしているところもあるし、あるいはそもそも補助していないというふうに、ばらばらでございます。

 文部科学省としては、所得制限によって捻出された財源によって、一つは、年収三百五十万円未満の低所得者層への就学支援金の加算を拡充する。そして中間所得層、これは子供のいる世帯の収入のおよそ中央値である年収五百九十万円世帯ですが、ここまでの世帯について加算の対象を広げることを考えております。

 これによりまして、私立学校の教育費負担軽減における都道府県格差を縮小してまいりたいと考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 これで終わらせていただきたいと思っておりますけれども、今回のこの法律の改正、ぜひ成案をいただくこととあわせて、この中身の充実、きょうも議論させていただいていますけれども、このことを大臣初め皆様に要請させていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

小渕委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 では、早速質問に入らせていただきます。

 一つは、先ほど来質問が出ております、特定扶養控除の見直しに伴い負担増となる家計への対応についてでございます。先ほども稲津理事の方から、特に特別支援学校の生徒への支援措置、具体的にどうか、こういう具体的な質問がございましたけれども、特別支援学校の生徒以外にも、定時制あるいは通信制に通う生徒、こういう生徒についてもこの扶養控除の見直しに伴って負担増となる家計が出てきたということで、何らかの対応が必要であると考えております。

 これに対しては、どのような支援を行う予定なのか、西川副大臣にお伺いをいたします。

西川副大臣 中野委員、御質問ありがとうございます。

 先ほども同趣旨の御質問はありましたけれども、改めましてお答えさせていただきます。

 特に、定時制や通信制に通っていらっしゃるお子さん、今、割合、不登校とかいろいろな問題を抱えた中で、しっかり頑張って元気にもう一回学校に行こう、そういう非常に前向きな、大きなきっかけとなる子供たちに対応する、これが対応できていなかったということでございますので、そこをしっかりと今回対応したいということで、今回の見直しによりまして、高校中退者が再び定時制、通信制高校において学び直す場合に、今までは三十六カ月、これが限度であったわけです。特に、私立高校から私立高校に行くというときは制度がなくて完全に切れるということがありましたので、これをさらに二十四カ月延長して支援を続けていく方針でございます。

 それから、このように定時制、通信制高校で学び直しをする生徒については、現行制度に比べて支援する期間が延びることによって支援の総額がふえますので、特定扶養控除の縮減により生じた負担増の解消に資する効果が見込まれると思っております。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

中野委員 西川副大臣、ありがとうございました。

 定時制、通信制の生徒たち、先ほど副大臣からも御答弁ございましたけれども、さまざま大変な状況がある中で頑張っておりますので、これからもしっかりと応援をしていっていただきたい、このように御要望させていただきたいというふうに思います。

 さて、これに関連いたしまして質問をさせていただくんですけれども、定時制の生徒といえば、働きながら学校に通っている、こういう生徒もいるわけでございます。若年層の就職、これについては依然として大変に厳しい状況が続いているということで、この後押しをしっかり政府としてもしていく、これは非常に重要なことである、私はこのように考えております。

 それに関して、最近よくお話を伺うのが、企業が若年層、若い人たちを採用する、あるいは採用した後もしっかりと育成をしていく、こういう積極的な企業であるかどうか、こうした情報を事前にいろいろ欲しいんだ、こういう御要望を伺うわけでございます。

 最近、俗にブラック企業、こういう言葉もいろいろ出ておるような状況でございますけれども、私は、こういう言葉のレッテル張りをするのではなくて、客観的な情報、こういうものをしっかりと公開していって、それで就職をする人が選択をしていく、こういうことが大事なんではないかというふうに思いまして、例えば離職率という数字がございます。採用された人が何年かの間にどのくらいその職場を離れるのか、こういう数字は大変参考になる、こういうふうに思うんですね。

 そこで、まず質問でございますけれども、最近の高卒者の三年以内の離職率について、全体の傾向としてどういう形で推移しているか、また、どういう理由でそういう推移をしているか。

 本日、厚労委もあるところ、大変お忙しい中、佐藤茂樹厚労副大臣に来ていただきましたので、お伺いをしたいというふうに思います。

佐藤副大臣 中野委員の御質問にお答えいたします。

 最近の傾向といたしましては、高校卒業者の離職率というのは、平成二十一年までは年々下がってきておりました。しかし、平成二十一年が三五・七%だったのが平成二十二年に三九・二%に、三・五ポイントふえたわけでございます。しかしながら、翌年の二十三年度には三〇・八%。二十三年、二十四年、この数字はまだ三年たっておりませんので出ておりませんけれども、いずれにしろ、直近の平成二十二年度では数字が少し、三・五%ふえた、そういう状況がございます。

 これは我々も注視しておるんですけれども、特に、平成二十二年三月卒業生の就職活動がリーマン・ショック後の厳しい就職環境のときと重なったこともありまして、規模の小さな企業や離職率の高い業種に就職した者の割合が増加していることが影響している、そのように考えられます。

 というのは、平成二十年九月にリーマン・ショックがあったんですけれども、既に平成二十一年三月の卒業生は採用計画が、もともと企業も決めていましたので、そんなに影響は出なかったと思うんです。翌年の二十二年三月の卒業生に大変な影響が出たというように我々考えておりまして、そういった方々が、最近の雇用情勢の改善に伴って、三年たって転職を考え離職したことにより離職率が増加した、そのようにも考えられます。

 このような結果を踏まえ、厚生労働省としても、職業経験の蓄積、職業能力の向上に資するよう若者の職場への定着を図っていく必要があると考えておりまして、例えば、安易な早期離職防止のため就職後の定着支援を進めていくとともに、雇用のミスマッチを減らすように就職活動の際に就職関連情報の提供に努めてまいりたい、そのように考えております。

中野委員 ありがとうございました。

 副大臣が最後におっしゃられた就職関連情報の提供、これは若年層にとって非常に大事だというふうに思います。最初に選んだ企業、そこでどれだけの経験を積めるかというところで、それからの社会人の人生にとって大きな影響があるわけでございますので。

 例えば、先ほど私が申し上げた離職率のような数字が、就職活動をするときにそれぞれの企業ごとに、この企業はどのくらい定着をしている企業なんだろう、この企業はどのくらい離職率があるんだろう、こういうことがわかれば、では、この企業はしっかりと自分を育ててくれるんだな、あるいは、この企業に就職をしても割とすぐやめる人が多いんだな、こういうことがわかる。

 就職をする側にとってもそういうメリットがございますし、採用する側の各企業にとっても実際にその数字を見られるわけでございますから、では、労務管理についてやはりもっと考えていかないといけないな、しっかり若者を育てていかないといけないな、労務管理をしっかり見直そう、こういう自主的な動きも私は期待できるのではないかな、こういうふうに思っております。

 この三年以内の離職率という数字でございますけれども、現在、私がお伺いをしたところ、高卒用、高卒の皆さんがハローワークに行くときの求人票、この求人票には企業の採用者数、離職者数を記載する欄がある、このように聞いておりまして、高校生が就職活動をするときにこれが非常に参考になるんではないかなというふうに思います。

 そこで、佐藤副大臣、私は、この情報をしっかりともっと高校生に周知をしていくべきであるというふうに思いますし、今後は、今高卒の求人票というところには記載をされているということなんですけれども、それ以外の部分、例えば大卒用のものも含めて広くこういうのを記載していって、若年層の就職を考える際にこうした情報をしっかり入手できるようにすべきではないかというふうに考えますけれども、副大臣、いかがお考えでございましょうか。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

佐藤副大臣 今御指摘の、若者が就職活動を行う上で必要な就職関連情報の公開を促進することは、雇用のミスマッチを減らす上でも重要と考えておりますし、特に、御指摘ありましたように、今若者を使い捨てにするような企業が社会問題化している、そういう状況もありますので、きちっとした情報を厚生労働省としても提供できるような、そういう方向に進めてまいりたいと思います。

 そのため、今年度より、若者応援企業宣言事業を活用いたしまして、企業の魅力発信や離職状況等を含めた就職関連情報の開示を進めているところでございまして、この事業に八月末現在、今年度から始めたんですけれども、三千四百七十七社参加していただいております。

 もう一つは、今御指摘いただきました求人票、御指摘のとおり高校卒業生の求人票については、直近三年間の応募者数、さらには就職者数、離職者数、この項目が、任意の記載事項でありますけれども書けるようになっているわけであります。しかし、今までは大学卒求人票にはありませんでした。

 ですから、今委員の御指摘のとおり、大学求人票においても、企業が任意でこの離職者数を記載することは、若者が適切な職業選択ができるようにする観点からも有効と考えておりまして、できるだけ早期に大学求人票にもこのような数字がきちっと記載できるように、実現できるように、精力的に検討してまいりたい、そのように考えております。

中野委員 副大臣、ありがとうございます。

 以上で終わらせていただきます。本日はありがとうございました。

小渕委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 大臣、まず私がお伺いしたいことは、政権を交代させていただいて、大臣ともいろいろな委員会で議論を行わせていただき、当時、私も与党の筆頭理事の立場でこの無償化制度の導入の法律を成立させることができました。

 まず大臣にお伺いをしたいのは、今回、所得制限をかけるというこの改正案でございますけれども、公立高校と言っていいんでしょうか、そもそも、この高校無償化制度自体をこれからも続けていく、維持をしていく、廃止をするつもりはないというようなお考えに立って今回この法案を提出されたのかどうか、その点をまずお伺いをしたいと思います。

下村国務大臣 民主党政権になって高校授業料無償化を導入されたということは、教育費の負担軽減を図るという意味では、私は、率直に言って、大変な第一歩を歩まれたというふうに思います。大学まで含めてできるだけ貧困の連鎖を遮断するためには、教育費を負担軽減することによってチャンス、可能性を広げていくということは、大切なことだというふうに思います。

 ただ、同じ四千億という財源の中で、より低所得者にとって公正公平な、全体的なバランスのとれた、限られた財源の中でよりよくそれをどう効果的に使うか、そういうことから考えると課題があったのではないかということを、当時、野党のときからも申し上げておりましたし、今回、政権交代を図ったことによって、それを実現していきたいというふうに思っております。

 そういう意味で、理念そのものはそのとおり維持をしたいということでございます。

笠委員 ただ、大臣、今回のこの法案の名前というか、私どもは公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律ということで、公立授業料無償化と、私立に通われる生徒さんへの就学支援金という二本立てになったものを、今回、それを一つにして高等学校等就学支援金の支給に関する法律と。

 つまりは、そこには無償化の理念というのは、この法律名一つとっても、まさに名は体をあらわすではございませんけれども、言ってしまえば、給付型の奨学金を広く支給していくんだというようなことで、私は、これはもう無償化とは呼べなくなっているんじゃないかと思うんです。その点はいかがですか。

下村国務大臣 そもそも民主党政権のときの無償化というのも、厳密に言えば公立高校における無償化であって、私立高校においては無償化ではなかったということですから、正式な意味では公立高校無償化法案だったというふうに思うんですね。

 現行制度で、今申し上げたように、公立高校については授業料不徴収、そして私立高校については就学支援金という、そういう二本立ての法律として法律名も二本立てを実際は使っていたわけでございます。

 今回の改正は、この公私間の制度の違いを解消し、生徒個人への授業料への支援制度としてその支援に所得制限を設けるものであり、二本立ての制度を一本化するため、法律名も変更するものであります。

笠委員 今大臣がおっしゃったことが、私も、間もなく議員になってちょうど十年を迎えますけれども、実は、当選一回のときにも下村大臣とはイギリスにサッチャー教育改革の検証をしに行ったりということで、これまでも、超党派の中でもさまざまこの教育改革に取り組ませていただき、また御指導もいただいたと思っております。

 その中で、やはり大臣も我々共通の思いは、義務教育はもちろんなんですけれども、この高等学校の支援、さらには、その次に就学前段階、今は幼児教育の無償化ということでスタートをされていますけれども、あるいは、高等教育に対する家計の負担というものをやはり縮減していこうという大きな目指すべき方向は、私は共通の認識があるんだというふうに思っております。

 ただ、私どもも確かに、今は大臣おっしゃったように、高等学校の無償化といっても公立じゃないかということで、私も自分自身がいろいろな話をするときには、当時も、公立学校の無償化である、そして、私学には建学の精神もございますし、その全てを無償にすることはできないけれども、低所得者を中心にしながらさらに対策をとっていこう、あるいは公私間格差というものは、同じ学校に通う生徒さんの、あるいは通わせる親御さんの立場に立てば、そこの格差というものをどうやって是正をしていこうかということでは、全く方向は一緒だと思っています。

 ただ、私たちは、今大臣は四千億四千億ということをおっしゃいますけれども、公立学校の高等学校の無償化を維持しながら、さらに低所得者への対策や公私間格差の是正に、政権全体として、やはり教育予算というものを増額させて制度をさらに高めていこう、充実をさせていこう、私は大臣にはそういう選択をしていただきたかったし、本音では大臣もそういう思いがあるんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

下村国務大臣 おっしゃるとおり、民主党が導入した公立高校の授業料の無償化、それから、それに対応した私立学校の授業料の軽減措置、それにさらに上乗せできる形で低所得者層や、あるいは公私間格差、また、給付型の奨学金を導入できれば、それはそれの方がより望ましいというふうに思います。

 ただ、教育全体のバランスの中で、我々は幼児教育の無償化というのも野党のときから選挙公約で訴えていて、そしてまた大学においても、これはかなり個人の負担が高くて、高等教育については、OECD比でいえば、国の公財政支出は半分しかないんです、平均に比べて。この〇・五を一にするだけでも、実際は対GDP比ですから二・五兆円の財源が必要。つまり、トータル的に、ある部分だけを特化してよりそこに資金を投入するというよりは、全体的にやはり、バランスの中で考えていかなければならないという大局観があるというふうに思います。

 それから、政府全体の話ですが、残念ながら今は財政的に非常に厳しい中、さらに赤字国債を発行してまで教育について予算をふやすということについての国民的な理解はまだ得られないというふうに思いますし、これから自然増収等で税収が上がってくる、あるいは、これは今文部科学省の方で私が先頭に立って考えておりますが、教育目的税のような形で新たな財源を明示して、事前に国民の皆さんに理解をしていただいて、そして教育投資をするということは考えられると思いますが、高校については、限られた財源の中で、所得制限をすることによって捻出してこのような対応をせざるを得なかったということでございまして、これは、一つの過渡期における第一歩であるというふうに考えております。

笠委員 それでは大臣、確認したいんですけれども、今は過渡期のと、今の厳しいこの財政状況を鑑みるとやはり今のやり方がベストであるというような思いを大臣は今おっしゃったんだと思うんですが、この教育財源というものが、それは、例えば私は個人的には、教育目的税というものを先ほどの二・五兆円分ぐらいは確保しないとなかなか教育財源を充実させるということは現実には非常に困難だというふうに思っています。

 ただ、そういう財源がきちんと確保されるのであれば、高校のこの無償化というもの、所得制限というものは、本来かけなくても、それは望ましい姿であるというふうにお考えですか。

下村国務大臣 六月に閣議決定された第二次教育振興基本計画、これは、当初、第二次ですから、五年後にOECD並みの教育公的支援を目指すということを私は書き込みたかったんですが、なかなかこれは、政府全体の中での判断ということで、財務省がそこまで認めなかったということでございます。

 もし、五年後にOECD並みの公的教育投資をするということであれば、今の三・八%を五・八%にする、つまり、二%というのはこれは十兆円ですけれども、文部科学省トータル的な予算がことし五・四兆円程度の中、プラス十兆円ということになれば、これは高校だけでなく、大学の私学まで含めて全ての学生が無償に近い形で教育を受けられるチャンス、可能性が提供できるということでありますし、今後の将来の日本を考えたら、教育というのは未来に対する先行投資ですから、私は、そこまできちっと考えるということは必要なことだと思います。

 ただ、五年以内にということでいえば、確かにそれは、今の財政状況の中で非常に厳しいということで書き込むことについては断念せざるを得ませんでしたが、しかし、そういうあり方をぜひ目指していきたいと考えております。

笠委員 であるならば、私も同じだと思うんですよ。

 ですから、そういう立場に大臣がお立ちになるのであれば、これは四千億の中の話でございますので、ですから、公立の高校の無償化、つまりは私たちは、これからこの少子高齢化と人口減少の時代に、未来への投資は、やはり教育、特に人づくりに予算を集中して、他を削ってでもしっかりとそこに投資をしていく必要があるという思いに立って、そして同時に、親の所得等々に関係なく、やはり全ての子供たちに社会総がかりでしっかりと子育てを支援し、また、学ぶ機会というものを保障していこうという立場のその理念に立って、公立高等学校の無償化の制度というものを導入させていただきました。

 だったら大臣、低所得者への対策だとか、あるいは公私間格差を若干埋めていこうとか、一歩一歩でもいいんですよ、まずはその枠をしっかりと、枠の中で何かを削ってということではなくて、さらにその枠を少しずつでもいいから広げていくというような努力をもう少ししていただきたかった、私はそのように考えておりますけれども、いかがでしょうか。

下村国務大臣 笠委員の立場からすれば、民主党政権になって導入した政策ですから、それを守りながらという思いを持って、追加してほしいというのは気持ちとしてはよくわかりますが、しかし、今申し上げたように、全般的にはバランスの中で、教育は高校段階だけではなくて、もっと幅広い段階で教育課程というのが存在する中で、その中で、トータル的な中でのバランスを考えると、高等教育だけをプラス教育費として大幅な予算計上するということが、財政的に残念ながら今は許される状況でないということを判断せざるを得ないということであります。

笠委員 それではちょっと私はお伺いしたいんですけれども、今、幼児教育の無償化の方を先にスタートをさせてという、これは、優先順位のつけ方というのは、就学前教育の無償化を、かつての教育基本法の改正のときに私どももそのことを我々の民主党案の中でも打ち出しておりますし、全く同じです、将来的な課題としてやるべき課題としては。

 ただ、就学前の、今の政府では幼児教育ですね、の無償化については、これは所得制限はかけていくんですか。

下村国務大臣 そもそも自民党の選挙公約では、三歳から五歳までの幼児教育時期は無償化するということを選挙公約にしておりまして、その財源が七千九百億円必要であります。

 政権奪還をしたわけですから早速それに着手したいわけでありますが、高校無償化も、先ほどのような経緯の中で所得制限を設けて捻出しなければならないという中で、この財源確保というのは非常に難しいハードルがございまして、これは、幼稚園関係の文部科学省、保育園関係の厚生労働省、少子化担当の内閣府、三大臣とそれから与党自民党、公明党の実務者協議を積み重ねてきた中で、とりあえず来年から、幼稚園における、保育園の保護者負担と同等の負担にするようにまずは解消しようということで、第二子については二分の一、それから第三子については全額これは無償化にしていくということを決めました。

 ただし、対象が三歳から九歳までの間にいる第二子、第三子ということでございますので、その財源そのものは三百億円程度でございますけれども、これを捻出するのも相当大変な話でありまして、それが実際に来年度の予算の中で認められるかどうかというのはこれからの戦いでありまして、つまり、それぐらい結構大変なことなんですが、しかし、間違いなく来年から幼児教育の無償化に向けた第一歩をスタートしたいということでございますので、所得制限を設けるか設けないかというのはその先の話でございますので、まだ今の段階では明確には申し上げられません。

笠委員 いや、大臣、それが私はやはり矛盾していると思うんですよ。それは考え方の違いだから、我々は、高等学校についても所得制限というものは、もちろん今の義務教育とは違います。しかしながら、この普通教育、もう今は九八%の子供たちが高校に進学をするという中で、これは、所得制限をかけずに、経済的なさまざまな状況にかかわらず全て無償化していっていいし、そして、我々がもし就学前の段階で、これは財源のことを考えれば時間はかかるでしょう、しかし、やはりやるときには、同じようにそこに所得制限はかけない、教育については。

 ただ、大臣が財源財源、わかります。だったら、幼児教育の段階であっても、高等学校と同じように、低所得者やいろいろな方々への配慮がまず最初に優先なんだということであれば、やはり基本的な方針として、所得制限をそちらもかけるというのが一貫した姿勢ということになるんじゃないですか、いいとか悪いじゃなくて。

 その点を大臣がどのように考えておられるのかということを私はお伺いしているんです。

下村国務大臣 まず、枠組みがあるかないかということがまずあるということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 高校授業料無償化については、これは先ほどから申し上げていますが、民主党政権になって導入した、より近い無償化に向ける第一歩だということでこれは評価したいと思いますし、この理念はぜひ継承していきたいというふうに思います。今回は、その上における、さらなる、より公正公平に向けた制度設計の見直しだということです。この財源は、これはそういう意味では死守したい。

 しかし、そもそも論として、財務省的にすれば、この高校授業料無償化そのものも全部廃止しろ、こういう意見があるぐらいなんです。そういう中で財源を確保するという中で、これは残念ながら所得制限を設けて、その中でそういう低所得者に対する配分を考えるという意味での財源の確保というところから所得制限の九百十万円ということも決まったことでございます。

 それから、幼児教育の無償化については、そういう意味では枠がまずない。ない中では、それは、できるだけより多くの方々に所得制限がない形で無償化ができれば一番いいわけですが、ただ、先ほど申し上げましたように、来年度からもまず第一歩がその程度のスタートしか残念ながらできないということですから、残念ながら、今の状況を考えると、幼児教育における所得制限も考えながら一歩、二歩進めていくということもあり得る話だと思います。

笠委員 今大臣が、財務省の中には、公立高等学校の無償化自体を、この枠自体を廃止しろという、私は今の政権にいるわけじゃないので、中でどういう議論があるのかはわかりませんけれども、ちょっときょうこのことは通告していないんですけれども、せっかく古川副大臣がおいでになっているので、そういう議論が本当に財務省の中であるのかどうか、教えてください。

古川副大臣 私の知る限りにおいて、そういう議論を直接見聞きしたことはございません。

笠委員 大臣、どういうところにそういう声があるのか、私は野党だから大臣ほどの情報はないです。しかし、少なくとも高等学校の無償化のこの枠組み自体については、もちろん財務省的にいうと、財源のことを考えたときにいろいろと思うところはあるでしょうけれども、かなり財務省でも、教育にどういう投資をしていくのかということについては、理解してくれている人も多いんだと思っています。

 ただ、この後ちょっとお伺いしますけれども、低所得者への支援としての給付型の奨学金等々については、むしろ、なぜそういうことをやる必要があるのかという懸念がかなり強いというふうに私は認識をしておるわけでございます。

 この給付型の奨学金、先ほど来議論でもありました。古川副大臣にお伺いしたいんですけれども、改めてだけれども、必ずやっていただけますか。やりますか。

古川副大臣 与党の合意を十分尊重しながら、今後の予算編成の中で十分検討していきたいと思っております。

笠委員 私、古川さんのことは同期としても非常に信頼をしているわけでございますけれども、我々の政権のときもそうなんですよ。財務省の政務三役が来ると、今は一方でというのがなかったからいいんですけれども、大体そういう答弁になるわけです。本当にしっかりとこれはやっていただきたいと思います。

 大臣、大事なことは、確かに、予算を伴う法律なので今の段階で確定はしていないといっても、本来であれば、これは大きな制度の見直しなんですよ。

 今現在、中学生の中には、もちろん受験というのはこれからです、推薦入学にしても、あるいは本番の試験にしても。しかし、例えば九百十万で線を引くといっても、その中にはいろいろな、家計に勘案をしながら、私学に進もうかあるいは公立にしようか、そういった進路というものについては、本人も、あるいはその保護者、家庭の中でもいろいろなことをもう考えている子供たちがいる。そういう子供たちが、これはやはり進路変更を余儀なくされる人たちだって出てくるわけですよ。

 ですから、私は、これだけ大きな制度を見直すに当たって、なぜ来年度からというところにこだわられるのかということが理解できません。

 やはり、こういう四千億の枠の中でしっかりと給付型の奨学金も確保できるんだというところまできちっと詰めてから議論しないと、法案は、今は衆参ともにもうねじれが解消して与党が多数を持っていますから、最終的にそれは決をとれば通すことができるでしょう。しかし、その後に、給付型の奨学金についてはいややはり無理でしたといったときには、そのお金というのはどうするんですか。

下村国務大臣 来年度からこれをぜひ導入したい。

 こだわる理由というのは、さきの通常国会で、議員立法として子ども対策貧困法を成立をしていただいた。これに対して政府は、誠実にそれを実行していく責務があるというふうに私は思います。文部科学省としては、それに対して最大限努力をしていきたい。

 そのためには、再来年でなく来年からぜひ実行すべきであるということで、先ほどもちょっと申し上げましたが、この法案は予算関連法案ですから、本来は、臨時国会ではなく来年の通常国会に出すべき法案でありますが、しかし、来年の通常国会に出していたら、来年四月スタートが、地方自治体の準備上、条例改正も必要になってまいりますから、間に合わないということで、間に合わせるために今国会で御審議をしていただいているわけでございます。

 審議をしていただいている以上、成立したら、これは給付型奨学金も含めてこういう制度設計になるということについては、文部科学省の方では、各自治体に対して、あるいは関係の方々に明示をしていきたいというふうに思います。

 ただ、財務省的にいえば、予算関連法案ですから、予算審議をしない前にそういうことは約束はできないという立場があるということですが、しかし文部科学省としては、これは、私は大臣の責任として、給付型奨学金の創設について、明確に国民の皆さんにわかる形でお知らせしながら、その準備ができるようにしていきたいと思います。

笠委員 いや、もちろん子供の貧困対策というのは、私たちも、これはしっかりと、できる限り急いでやらなければいけないということは理解はできます。

 しかし、やはりこれだけ都道府県あるいは学校の現場、そして何よりも大事なことは、当事者になる子供たち、生徒に対する影響というものを考えれば、二十六年度に、何が何でも来年度からスタートをさせなければいけないということよりも、まずは、その制度自体がどういうふうにしっかりと変わっていくのかということを、これは丁寧に、十分にやはり議論をして、そこの枠組みを確定させてからスタートをさせていくということでも私は全く問題ないと思うんです。

 まさにそこを来年の通常国会で、予算編成を踏まえて、その関連法案として議論を進めていくというのは、これを来年度からやらないと、貧困対策の法案ができたから、大臣が急ぎたいという気持ちはわかりますよ、我々もある意味では、これも自民党さんから、当時、四Kの一つとして批判を受けました。ただ、私は、ほかの三Kはちょっと別として、高等学校無償化がなぜこの四Kの中に入ってくるのかということは全く理解はできなかったわけでございますけれども、そういったことで、また政権がかわって、少しでも早く新しい制度にしたいというお気持ちはわかりますけれども、やはりそこは丁寧に、しっかりと段階を追ってやっていかなければ、結局、そのいろいろな影響を受けるのはまさに生徒自身です。

 ですから、そういったことについて大臣にはもう少しやはり配慮していただきたいと思うし、そこあたりを、気持ちが前に前に行くのはわかりますけれども、そこまで焦られる必要はないということをまず御指摘をしたいと思います。

下村国務大臣 全く気持ちが焦っているつもりはありません。それから、十二分に配慮しているというふうに思っております。

 これは、今回の法律案を出す前に、先ほどからの答弁でありましたが、四十七都道府県全てに対して確認をして、そして、この秋に国会でこの法律案を通していただければ、それぞれの自治体で、十二月からの地方議会等で条例改正案を提出することもできるし、また、来年四月からのこのシステムの開発等に対しても間に合うということを全ての自治体に対して確認をしておりますし、それから、私学関係団体に対しても、事前にお聞きしましたら、この秋にこの法律案が通れば、それは十分に周知徹底できるということでございますので、急いでいただく必要はありますが、迷惑をかけない範囲内で着実に実現することは十分可能であるというふうに思っています。

笠委員 大臣、もう一点伺いたいんですが、きょうはこの後同僚議員がまた各論について詰めていくと思いますけれども、やはり、同じ学校の中であるいは同じ教室の中で、親の年収によって、まさに支援金がもらえる子ともらえない子が出てくるわけです。このことが子供たちにどういう精神的な影響を与える、あるいは、そういうことはあっちゃいけないけれども、そのことによって何かいじめられるとか、いろいろなことだって起こり得る可能性というのは、私はこれはあり得ると思っているんですけれども、大臣、その点についての懸念についてはどのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 これは笠委員、お忘れになっているわけじゃないと思いますが、現行制度においても、私立学校等の生徒に対する就学支援金の加算申請の際に所得確認を行っているわけです。

 保護者から所得確認書類の提出に当たっては、封をした封筒で行う、事務室などの、他の生徒の目に触れにくいところで行う、それから、学校への郵送で受け付けるなど、生徒、保護者への配慮を現行でも行っておりますけれども、それをさらに徹底して最大限行うように、今度はそれが公立学校で導入されるわけですから、改めてそれについては、都道府県に対してきちっとした指導をしていきたいというふうに思っております。

 この新制度においても、所得確認書類の提出に当たって、引き続き、生徒が親の収入を意識することがないように、そのような配慮を私立学校に対しては既にもうされていることであるし、それは今特に問題があるとも聞いておりませんが、都道府県に対しても十分な配慮を求めていきたいと思っています。

笠委員 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますけれども、またちょっとその点についてはしっかり議論をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉田泉君。

吉田委員 民主党の吉田泉です。初めて文科委員会で質問をさせていただきます。

 文科行政、先ほど予算の話もございましたが、防衛と国土交通と並んで予算規模の特別大きい分野、かつ、国の将来のかかった重要分野だという認識でしっかり対応してまいりたいと思います。よろしくお願いします。

 きょうは法案審議ですけれども、その前に一つだけ、私の地元の課題について、大臣の見解、決意をちょっと確認をさせていただきます。

 先日、民主党の細野議員が取り上げた問題です。福島県双葉郡における中高一貫校の新設の問題でございます。これはなぜ一貫校が今地元で熱望されているのか、その辺の状況を若干申し上げたいと思います。

 御存じのようにこの双葉郡、今、まだほとんどの方が原発事故から避難中。当然のことながら、今までこの郡内に五つの高校がありましたが、全て郡の外で今授業をやっているという状況です。この間、もう二年半余りたちましたが、だんだん生徒が減ってまいりました。この五つの高校の中で一番歴史のあるのは双葉高校、これは創立九十周年がこの間行われましたが、その高校でいうと、今現在一年生が十四人ということでして、数年後に双葉郡から高校生がいなくなるという危機感が関係者の間で急激に高まってまいりました。

 そして出た結論が、インパクトのある一貫学校というのがやはり必要だ、そして、今まであった五校は当面これを休校にする、一つの学校に子供たちを集中的に集めたいと。そして、この五つの学校がいずれ復活する暁には、また一貫校からそちらへバトンタッチしてもいいんだろうと思うんですが、そういう趣旨で今提案がされて、予算も、事項要求の予算をとっていただいたということであります。

 この間、双葉高校の九十周年の集まりでいろいろ先輩方の話を聞きましたが、この九十年の歴史のある学校が休校にされるということに対してそのOB会の中で大変複雑な思いがあることも事実ではあるんですが、私は、この双葉から高校生をなくさないためにはこれしかないというふうに思っております。

 先日の答弁で大臣からも全面的な国のバックアップということはお約束いただきましたが、この高校は、エネルギーとか芸術、スポーツ、この辺に特色を持たせたいと。そうすると、何か国として非常にインパクトのある先生方をそこに紹介していただくとか、そういうこともお願いしたいと思うんですが、改めて、その御決意、御所見を伺いたいと思います。

下村国務大臣 昨年暮れに就任をいたしまして、私が最初に視察に行きたいと思っていたところが福島でございまして、いわき市に参りました。これは、お正月が明けて三学期がスタートしたその日にいわき市に行って、いわきの子供たちや教育関係者の方々と一緒に最初に懇談をさせていただきました。

 安倍政権は、福島、東日本大震災の復旧復興を一番重要な政策テーマだと考えておりますし、私も、ぜひ、被災者の方々に寄り添った教育を実現していくために最大限努力をしてまいりたいというふうに思いますし、そういう決意で最初にいわき市にも行ったところでございます。そのときに、いわき市内に、双葉郡の中にあるサテライト校も視察をさせていただきました。

 その後何度か双葉郡内を行く中で、首長の方々から中高一貫校に対しての御要望をいただき、また、文部科学省の方にもこの双葉郡の教育委員長の方々が要請に来られました。

 この双葉地区教育長が主催する福島県双葉郡教育復興に関する協議会、これは、文部科学省が最初から幹部を送り込んで一緒にこの協議に参加をさせていただき、そして、ことしの七月に教育復興ビジョンを取りまとめたわけでありますし、そういう協力もさせていただいているというふうに思っております。

 これを踏まえて、現在、福島県教育委員会において、新たな県立高等学校の平成二十七年四月開校に向けた検討が進められるというふうに承知しております。福島県教育委員会としては当面高等学校の設置を先行させる方針と聞いておりますが、引き続き、教育復興ビジョンも踏まえながら、中高一貫校の設置の取り組みを進めることが重要であるというふうに考えております。

 また、文部科学省としては、この平成二十七年四月開校に向けて速やかな準備が進められるよう、前回も細野委員からこの質問が出ましたが、我々としては、この新たな高等学校の設置に必要な経費の助成を検討するだけでなく、教員の加配等も踏まえまして、特色ある学校づくりに対して、県立学校とはいえ、国としても最大限支援をしていきたいと考えております。

吉田委員 被災地においては、やはり、次世代が立派に育つというのが最大の希望だと思います。何とか格別の御支援を引き続きお願いしたいと思います。

 それでは法案審議に入りたいと思います。今行われている高校無償化制度に所得制限を入れようという法案でございます。

 まず、無償化が実施されて今四年目に入っておりますが、この間、この制度に所得制限を導入すべきだという国民の声がどの程度どこから上がったのか、お聞きします。

前川政府参考人 今回の高校無償化制度の見直しに当たりまして、本年一月でございますけれども、各関係団体から意見を聴取したことがございます。その際には、一層の低所得者支援や公私間格差の是正が必要であるというような課題が挙げられております。特に、いわゆる給付型奨学金の創設を望む意見が多く寄せられております。

 また、文部科学省が行いました、これは本年二月でございますが、高校生の保護者向けのインターネット調査がございます。そこで、低所得者支援や公私間格差の是正の財源を捻出するために所得制限を導入することについて意見を聞いたわけでございます。

 その結果といたしまして、所得制限を設けてそういう財源を捻出すべきだという御意見が四四・一%、設けることもやむを得ないという回答が三九・二%、合わせまして八三%に上ったという数字がございます。

 そこで、厳しい財政状況のもとで限られた財源を有効に活用するという観点で今回の見直しをしているということでございます。

吉田委員 低所得世帯への支援とか公私間の格差の是正、これは大変重要な問題と思いますが、そのための財源を所得制限という手法でもって賄うかどうかということは、これまた別な話だと思います。両者一体である必然性は論理的にはないというふうに思います。

 結局、所得制限をやるべしという国民の声は、この四年間、私はそんな大きな声はなかったと思いますが、今の答弁でもそのように了解をいたしました。

 一方で、たった今、笠議員の方からも議論になりましたけれども、幼児教育について、政府としては、こちらも無償化を段階的に進めようという方針が出されたわけです。まず、来年度から第三子においては完全無償化する、つまり、所得制限なしで全ての第三子については無償化ということが決まりました。

 先ほどの大臣の御答弁で、その先、第二子、第一子についてはまだ明確にはお話しできないというような御答弁もあったと思いますが、少なくとも今の段階では、高校における所得制限導入と幼稚園の第三子における所得制限撤廃、方向に矛盾があると言わざるを得ないんじゃないんでしょうか。

西川副大臣 吉田先生、御質問ありがとうございます。

 幼児教育の無償化、これは、全ての子供たちに質の高い教育をというそういう理念のもとにこの無償化ということが始まったわけでございますけれども、本年六月、幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議、この会議におきまして、今後の取り組みの基本的な方向性が取りまとめられました。

 その中で、無償化に関する環境整備、それと、財源確保を図りつつ、まずは五歳児を対象として無償化を実現する、こういうことにおきまして、平成二十六年度から段階的に無償化の方向に取り組むということになっております。

 この基本方向を踏まえまして、幼稚園と保育所のまずは負担の平準化、これが大きな目的の一つになります。この平準化を図る観点から、幼稚園就園奨励費補助において、低所得世帯、多子世帯の保護者の負担について保育所と同様の軽減措置を行うこととして、今回、第三子の無償化もありますが、所得撤廃もありますが、二十六年度の概算要求を行ったところでございます。

 その中で、やはり幼児教育の無償化について、今後早ければ二十七年度には本格的に施行する子ども・子育て支援新制度の実施状況も踏まえながら、どのような対処方法とするかは、これから、所得制限を導入するか否かも含めまして、総合的に検討してまいりたいと思っております。

吉田委員 幼稚園と保育園は、高等学校と違って、今までも所得に応じた負担を父兄はしていたわけですよ。これを段階的に無償化しようというときに、所得制限を一体どうするのか。大変複雑な私は問題だと思います。したがって、何か大きな原則論からやはり入る必要があるんじゃないかというふうに思っております。

 せんだって、東大の武川正吾先生という福祉社会学の先生のお話を伺う機会がございました。いろいろな社会サービスに所得制限をつけるかどうかという議論は、学問の世界でいうと、従来から、選別主義でいくのか普遍主義でいくのか、こういう論争があったということでございます。

 選別主義というのは、要するに、資力調査を行って、先ほどから出ていますが、真に必要な人だけにそのサービスを給付した方がいいんだというのが選別主義でございます。一方で普遍主義というのは、資力調査は行わずに、全ての対象者にサービスを給付した方がいいんだ、そして所得格差については、例えば累進的な所得税で対応すればいいんだ。こういう議論が昔から社会政策論の上であったということでございます。

 今回の法改正は、政府としてこのうちの選別主義によって立った、そういうふうに理解してよろしいですか。

前川政府参考人 私どもは選別主義、普遍主義という言葉をもともと承知しておりませんものですから、どちらかに立ってこの見直しをしたということではございませんが、現行の高校無償化制度につきましては、無償化以前から授業料が全額免除されていた低所得者にとりましては恩恵がなかったという問題点、それから、私立高等学校の低所得者世帯の生徒には授業料を中心に依然として大きな負担があるという課題がある、こういったことから、低所得者世帯の生徒に対する一層の支援と公私間格差の是正を図るという必要があるという問題意識に立ちまして、先ほど来大臣も申しておりますとおり、厳しい財政状況のもと、現行予算をより効果的に活用し、低所得者支援及び公私間格差の是正を図るために、高所得者に負担をお願いして現行制度に所得制限を導入する、こういった見直しをするということでございます。

吉田委員 やはり議論がうまくかみ合わないように思うんですよ。

 そこでちょっと大臣に確認でございますが、先ほど申し上げたように、私は、原則的な話をここでよくしておかないと、この幼稚園、保育園の問題は、非常に複雑な問題、なかなか対応できないということで今こんなお話をしているんです。選別主義、普遍主義というような言葉の使い方は政府の中では余りしていないようですが、原則的に考えると、この二つの概念、さあどうするということをじっくり考えた方がいいと思うんです。

 御存じのように、八〇年代の土光臨調というのがありましたが、ここでは、真に必要な人にのみ給付すべきだと。いわば、学者が言う選別主義が重視されたという事実がございます。言うならば、小さな政府論だというふうに思います。それ以来、そういう考え方が国民の根強い支持を受けている事実もあると思います。

 あると思いますが、大臣に確認したいのは、前政権は一応普遍主義という考え方で制度をつくった。これを、四年たとうとしている今、ひっくり返そうということになるわけですが、なぜ今この選別主義を選ばなくちゃいかぬのか、その辺の理由、背景を改めてお願いします。

下村国務大臣 その選別主義と普遍主義という言葉自体、私は非常に違和感があるんですね。教育現場においてそういう言葉が適切なのかどうか。学問的にはあるのかもしれませんが、教育現場において、一律に選別主義だ、普遍主義だと言うことについては、相当の議論をする中での定義づけをしていく必要があるのではないかというふうに思います。

 私は、その言葉、定義とは別にして、やはり、教育における負担軽減は図るべきであるというふうに思います。これは、家庭の経済状況にかかわらず、本人の意思によって、高校だけでなく、大学や大学院、あるいは留学まで含めて自由に進路選択ができるよう、できるだけ教育の無償化に向けた政策を展開したいと考えております。

 その上で、今回の改正法案、先ほどからも申し上げていますが、これは、財源に限りがないのであれば所得制限を設ける必要はないと考えますが、文部科学省としては、厳しい財政状況のもと、現行予算をより効率的に活用し、効果的な成果を上げる、そのためには、低所得者支援や公私間格差を是正するために、今回、現行制度に所得制限を導入したということでございます。

吉田委員 選別主義という語感に問題があるということであれば、真に必要主義と言いかえてももちろんいいんですが、この真に必要主義のデメリットを、武川先生は六つほど挙げております。

 一つは、所得の正確な把握が基本的に非常に難しいという問題。それから、そのための資力調査に非常にコストがかかるという問題。それから、貧困のわなと言っていますけれども、九百十万の間を挟んで、この制度を導入することによって最終所得が逆転しますよね。そういう部分が出てきてしまう。それから四つ目は、スティグマ、恥辱感と言っていますが、資力調査をやることによって、何か国民の中に恥辱感を植えつけるようなことにならぬか。それから五つ目は、その結果、社会の階層分化が進むんじゃないか。

 そして六つ目のデメリットは、これが最大だということなんですが、真に必要な人に給付を限ろうとすると、真に必要な人への給付が届かなくなる場合が出てくる。例えば、今言ったようなスティグマのようなことで自分はもう申請したくないとか、それから、申請する暇もないぐらい就職活動に大変なんだというような方もおられる。いろいろな理由があって申請してこないかもしらぬ。申請をしてこなければ無償化にはなりませんよね。

 今、六つほどのデメリットを申し上げましたが、こういった指摘されているデメリットにどういうふうに対処されるおつもりなのか伺います。

西川副大臣 吉田先生には大変ユニークな御意見を頂戴いたしまして、ありがとうございます。

 真に必要な主義、そこまで言い切れるかどうか私にもよくわかりませんが、要は、自助、共助、公助、これがやはり基本理念だと思うんです。文科省の場合はもちろん義務教育全部にきちっと義務を果たすということですが、社会保障制度においても、自助、共助、公助というのは、いわゆるどの考え方の立場に立つ人にとっても、やはり共通の思いのような気がします。そういう中で、本当に限られた税金という予算をいかに効果的に本当に必要なと思っている人に届けるか、これがやはり政府のスタンスだと思っております。

 その中で、今御指摘をいただきました、所得を正確につかむのが大変だ、それに調査コストがかかる、この辺の御指摘に関しては、事務の負担が増大するということは現実にあることは確かだと思いますので、学校現場や地方自治体の御意見をしっかりお伺いしながら、可能な限り手続の簡素化を検討するとともに、事務に係る費用については予算の範囲内でしっかりと支援していきたい、そう思っております。

 そして、所得制限前後で逆転現象が起こる、これはある意味ではどの制度でも起こる話でございまして、これは、今までの就学支援金の加算額あるいは現行制度でも、年収二百五十万、三百五十万の基準前後の生徒は同様の問題がありました。そういう中で、生徒の保護者に対しては、所得制限を行う新制度について十分な周知を行ってまいりたいと思っております。

 そして四点目、五点目、現行制度において高等学校就学支援金の加算申請の際、子供たちがいろいろな差別感を抱くんじゃないかとかそういう御指摘があるんだろうと思いますが、この辺に関しましては、現在も、提出先の学校の事務室や都道府県の事務局には郵送による提出を認めたり、個人情報の取り扱いに関しては、最大限の生徒や保護者への配慮を行っておりまして、そういうことを都道府県にもしっかりと指導しているところでございます。

 引き続き、生徒あるいは親が格差を意識することにならないように、各自治体へも指導を徹底してまいりたいと思っております。

 そして六点目の、今回の制度改正は低所得者への支援を重点的に行うための制度でありまして、むしろ、本当に低所得者の方々の支援をさらに充実したいという思いから、限られた財源の中で所得制限を設けて財源を捻出したという経緯がありますので、それは御指摘には当たらないと思っております。

 以上です。

吉田委員 自助、共助、公助、私も大賛成です。ただ、公助のときに所得制限を入れるかどうかという問題ですよね。

 いろいろ対応は考えておられるようですけれども、基本的な問題点がこの所得制限にはあるということを踏まえて、外国では所得制限なしの高校無償化が圧倒的と聞いておりますが、確認をしてください。

前川政府参考人 文部科学省で現時点で把握しておりますのは、諸外国の国公立の学校、高等学校における状況でございますが、その範囲で把握している限りにおきましては、高校の授業料に所得制限をかけているという国は承知しておりません。

吉田委員 授業料不徴収、私の見た資料では十五カ国ほどで行われておりますが、全て所得制限なしというのが世界の現実でございます。そういうことを考えると、今回、日本はちょっと世界的には突出したことを何かやろうとしているようなイメージを私は持つわけでございます。

 それから、国際人権規約の問題でございますが、これは、昨年二十四年の九月、日本は、この人権規約の漸進的無償化条項の留保を撤回しました。今回の所得制限の導入というのは、その方向に逆行することにならぬか、国際的な批判を浴びることにならないか。いかがでしょうか。

西川副大臣 御指摘の国際人権A規約第十三条におきましては、「中等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、」「すべての者に対して機会が与えられるものとすること。」が規定されております。日本もこの規約を導入したわけですけれども、今の御指摘は、それに所得制限をすることで、今回、きちんとしたことがまた逆行するんじゃないかという御指摘だと思います。

 今回、この所得制限を高校無償化制度に導入いたしましても、教育費負担の軽減に努める、その方向性はしっかりと担保されているわけでございまして、いわば、国際人権規約の方向に沿ったものであると認められるものであれば人権規約に違反するものではない、私たちはそう思っております。

 むしろ、今回のこの見直しによりまして、より効果的にいわば低所得者の人にさらに支援を深めるということの本制度を実施する観点からも、人権規約の趣旨をさらに前進させるものだ、私たちはそう解釈しております。

吉田委員 時間の関係で幾つか飛ばして、最後に、大臣からちょっと総括的なお話を聞きたいと思うんです。

 先ほど、吉田の言い方はユニークだというような副大臣の答弁もありましたが、私は、原理的に考えよう、原則論でいこうとすると、普遍主義がいいのか選別主義ないし真に必要主義がいいのかということになってくるというふうに思っているんです。

 それで、例えば、いろいろ脇の方からも御意見がありましたが、義務教育とか、それから保健、年金、医療、介護、この辺までは、サービスを供給するときに資力調査というのを何もしませんから、これは普遍主義に立ってやってきている。一方で生活保護というのがありますよね。これは資力調査をがっちりやって、真に必要な人だけにやろう。

 こういう両方の分野があるんですが、今回議論になっている高校無償化とか、それから児童手当というのもありますが、その中間なんですね、中間にある分野。ここで、さあ普遍主義の方がいいのか選別主義がいいのかというのが、今回の議論の本質じゃなかろうかというふうに私は思います。

 私は、今までの議論を踏まえて、真に必要主義というのは、一見わかりやすいです、わかりやすいですけれども、幾つかのデメリットがある。国際的にも全く採用されていない。いわば、三十年前に出された考え方に余りにも固執しているのではないか。広く言えば、小さな政府論に余りにとらわれ過ぎているんじゃないかという印象を持ちました。数年で根本的な政策理念が変わるということは、一番大変なのは父兄ですよ。国民です。もらったりもらえなかったりするのが家計の管理上は一番大変なことでございます。

 改めて私は本法案の撤回を求めたいと思いますが、大臣の御答弁をお願いします。

下村国務大臣 そもそも、今回の法案について選別主義とか普遍主義ということで一刀両断に割り切れることなのかどうかということについては、これはそうは言えないのではないかと私は思います。

 その上で、国際的にも採用されていないという話がありますが、これは、そもそも無償化をされているということです、大学教育まで含めて。あるべき方向性はそのとおりだというふうに思いますし、ぜひ日本もそういう方向性を目指していきたいというふうに思います。

 その中で、今回の見直しというのは、限られた財源の中で、真に必要な、つまり、低所得者世帯の生徒に対する一層の支援と、そして公私間格差を是正するという視点からの法律改正案でございます。

 今回の改正でも、もし財源に限りがないということであればこれは所得制限を設ける必要はないと考えますが、実際、文部科学省としては、厳しい財政状況のもと、現行予算をより効果的に活用し、低所得者支援及び公私間格差の是正を図るためには現行制度に所得制限を導入せざるを得ないということで、来年四月から速やかに新制度を実施して、より国民の方々に広く享受できるような制度設計にしたいと考えております。

吉田委員 終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。菊田真紀子君。

菊田委員 民主党の菊田真紀子でございます。

 大臣、大変御苦労さまでございます。午前中の質疑に続きまして私も質問をさせていただきますけれども、幾つか同僚の議員からも指摘させていただいた問題点等々ございました。質問の中身が重複するかもしれませんけれども、お許しをいただきたいというふうに思います。

 まず、我々民主党政権で導入しました高校授業料の無償化制度は実施から三年たったわけでありまして、この制度が果たしてきた社会的、教育的、そして経済的効果がどのようなものであったか、まずはその検証がしっかりとなされた上で、必要ならば見直しが行われるべきというふうに私は考えますが、政府としてこのような検証をなされたかどうか、お伺いしたいと思います。

下村国務大臣 さまざまな角度から検証を行ってまいりました。

 現行制度は、高校生の教育費負担の軽減に資することになったことは評価できると思います。その一方で、低所得者世帯の生徒に対する支援はいまだ十分でなく、公私間の教育費格差も大きいなどの課題があると思います。

 このため、厳しい財政状況のもと、限られた財源を有効活用する観点から、就学支援金の支給に所得制限を設け、低所得世帯の生徒への支援や公私間の教育費格差の是正に充てるための財源を捻出すべく、このたび、制度改正を行うことで法案を出させていただきました。

菊田委員 自民党そして公明党は、高校授業料無償化制度に対して大変激しく、これはばらまきだ、ばらまき四Kだという批判をされてきました。

 政権交代直後に直ちにこの制度を廃止しなかった理由をお聞かせください。

下村国務大臣 直ちに制度見直しを図るということで、きょうに至っているわけでございます。

 基本的に、教育費の負担を軽減することは、どのような家庭環境の子供にとっても就学機会を確保し子供たちの可能性を広げていくということでは、先ほど申し上げましたように望ましいことでありますが、高校無償化制度についても、教育の機会均等に寄与するものであり、教育費負担を軽減する政策の一つとして考えております。

 しかし、現行制度では、先ほど申し上げましたように低所得者支援、それから公私間格差の是正、こういう観点から、見直す必要があると考えておりました。

 その結果、これは政権交代前からでもありますけれども、この制度見直しについて、実際、三年前にこの制度が導入されたときから、自民党は現在のような対案で反対をしながら議論をしてまいりました。ですから、実際の制度設計はもう五年ぐらい前から、この制度設計をつくったときから用意をしていたものでありますが、政権交代の後、制度見直しを政府として改めて行うということの中で、直近で来年度、二十六年度から新制度を実施するということで、直ちに着手をしても制度設計上はそれぐらいのタイムラグは出てくるということでもございます。

菊田委員 大臣は先ほど、民主党政権下で行った高校授業料無償化制度の成果について、検証したこと、そしてその成果についてお話をいただきました。

 経済的理由による高校の中退者が半減をしております。平成二十年で二千二百八人だった高校中退者が、平成二十二年、千四十三人ということで、五二%減っておりますし、それから、高校の中退者がいわゆる学び直し、再入学をするということでは、五%ではありますけれどもこれがふえているということでありますし、それから、家庭が負担する学校の教育費というものも、公立、私立においても減っているわけであります。それから、国際人権A規約の留保も撤回することができました等々、我々民主党としては一定の成果があったというふうに受けとめておりますが、余り大臣はこういうことをおっしゃっていただけないというのは大変残念でございます。

 私も、この間、さまざまな方々にいろいろなお話をお聞きしましたけれども、やはり高校生をお持ちの御家庭の方からは、本当にこの制度によって助かったということで、大変な評価、御賛同をいただいたこともぜひこの場でお伝えをさせていただきたいと思います。

 下村大臣は以前、ある新聞のインタビューで、四千億円の投資に見合った成果がないというふうにお答えになられておられましたけれども、投資に見合った成果とはどのようなことなのか、教えていただきたい。そもそも費用対効果で一概に評価できるのかどうかということもあわせて、大臣の見解を伺います。

下村国務大臣 きょう、午前中から答弁させていただいておりますが、いろいろな意味で漸進的な進歩があったことは事実でありますし、いろいろな成果があったことは事実であります。

 ただ、新聞報道の中で四千億円の投資に見合った成果がないと答えた部分については、民主党政権のときのこの効果として当時の大臣が言われていたことについてのコメントを申し上げたんですが、それはどんなことを言われていたかというと、今もちょっとお話しになっておりましたが、例えば、平成二十三年度の高校中退者が五万三千八百六十九人おりました。これに対して、経済的な理由による高校中退者が九百四十五人なんですね。これは、平成二十二年度、前年度が千四十三人ですから、あるいは当時の大臣は平成二十一年度の数字を使われていましたが、平成二十一年度の経済的な理由による高校中退者が一千六百四十七人なんですね。これを引いて、つまり、一千六百四十七人から九百四十五人で、今のお話のように半分ぐらい減った、五〇%削減されたと言われたけれども、実際は、高校中退者そのものは五万三千八百六十九人いるわけだから、それだけの理由では、それだけの理由で当時大臣が言われたものですから、それに対して、四千億を投入した費用対効果で考えれば、その数字について、つまり高校中退者全体からいうと二%にしかすぎないんですね。二%にすぎないことに対して四千億円の国費の投入に見合うかどうかについては、それだけを考えたら効果がなかったんじゃないかということを申し上げたわけであります。

菊田委員 それはちょっと私どもとの見解の違いだと。わずかであるかもしれないけれども、この流れを変えたということについては、私は自負をいたしております。

 先ほど午前中の質疑の中で、諸外国における高等学校の授業料についての質疑がございました。アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ドイツ、フランスなど大変多くの国で既に無償となっておりまして、OECD加盟三十四カ国中三十一カ国が無償を実現しているということであります。

 このことに関しまして、所得制限をかけている国はないというようなお答えがありましたけれども、それはどのような理由か。もしおわかりでしたら、これは大臣でなくても結構ですが、お答えいただければと思います。

前川政府参考人 それぞれの国にそれぞれの理由があるかもしれませんけれども、私どもとしてその理由を調査して把握したということはございませんので、お答えできないところでございます。

菊田委員 我が国の状況は私は大変おくれているというふうに思っておりまして、その点について、おくれているんだから早く追いついていきたいということで、一生懸命やっているわけであります。

 各国それぞれ理由があるというのは当然でありますけれども、そのことについて調査をしない、関心を持たないということは、私はいかがなものかというふうに思いますが、大臣にもお答えをいただきたいと思いますし、そして今回、法改正をして公立高校の授業料の不徴収制度を廃止するというのは、時計の針を戻すことにならないのか。このこともあわせて大臣に見解を伺います。

下村国務大臣 御指摘のように、OECD加盟三十四カ国中三十一カ国が無償。我が国もこれから教育無償化に向けて目指すべきだというふうに思います。貧困の連鎖をカットするためには、子供に対してしっかりとした教育におけるチャンス、可能性を提供するということが、そこから離脱するためには大変重要なことであるというふうに思いますし、高校だけでなく大学も含めてできるだけ私的負担を軽減することによって、無償化に近い道を歩むように方向性をとるということをぜひ目指していきたいと思います。

 その上で、今回、時計の針を戻すことにならないのかということについて、客観的、冷静的にちょっと考えていただきたいと思うんですが、我々はこの四千億を減らすという話を申し上げているわけじゃないですね。高校授業料無償化をなくしてゼロにするという話を言っているわけではないわけです。同じ財源は生かすと。

 しかし、民主党政権における高校授業料無償化というのは公立高校における無償化のみであって、私立高校においては、その相当額分を就学支援金として減らしてはいましたが、無償になっていたわけじゃないわけですね。それはよく御存じのことだというふうに思います。

 それに対して我々は、限られた同じ四千億という財源の中で、もっと公正公平に、つまり、真に必要な人たちに対してそれをさらに厚く手当てする必要があるのではないかということが低所得者層に対するさらなる厚い支援でありますし、また、今申し上げたような公私間格差をなくすための支援ということでありまして、トータル的な財源を減らすという話ではありませんから、将来の無償化に向けたより公正公平なバランスの中で見直すということでありますから、これは時計の針を戻すということじゃなくて、今の真に困っている世帯や子供たち、学生に対してより的確な判断をした中での制度設計であるということについては、ぜひ認識を持っていただければと思います。

菊田委員 大臣から、トータル的な予算を減らすということではないというお話がありました。

 我々は、トータル的な予算をふやすための努力をしてまいりました。さまざま御批判もありましたけれども、民主党政権としては、不要不急の大型公共事業費を削減して、政府全体の予算を見直して、そして、何とか教育予算全体のパイをふやそうということで努力をしてまいりました。

 現政権におきましては、国土強靱化のような政策が何だかほかの政策、教育政策よりも優先されているのではないかというふうにも見えるわけでありますけれども、大臣はどのようなお考えでしょうか。

 公立と私立の格差是正、そして、中所得者、低所得者への支援を拡充することについては我々も同じく賛同いたしますけれども、そのための財源は、高校無償化制度に所得制限を導入して確保するというやり方ではなくて、国家予算全体を見直して、教育予算にこそ重点配分すべきではないかというふうに思うわけであります。大臣の御見解を伺います。

下村国務大臣 今おっしゃったことは本当にそうでしょうか。もともと、民主党政権がスタートしたときに、予算を再編成することによって少なくとも一割以上の無駄のカットをすることができる、十六兆円を超える財源を浮かすことによってそれを例えば高校授業料無償化等に回すということでありましたが、実際は、生活保護にも影響が出てくるような特定扶養控除のカット等によって財源を確保したというところもあったわけであります。ですから、ほかの予算を削減して高校授業料無償化したということについては、もっと客観的な検証をしていく必要があるのではないかと思います。

 文部科学大臣の立場からすれば、教育、科学技術関係に対してはもっと予算をふやすべきである、率直に言って、私もそのとおりだというふうに思います。

 ただ、限られた財源の中で、また、今我が国における財政の置かれている状況の中で、同時に、アベノミクスもそうですが、経済再生をすることによって、まずはこの国を活力ある国にしていかなければならない。その上で、それを支える人材育成という意味で、安倍内閣の最重要課題が経済再生と教育再生でありますが、これからいよいよ経済再生を支えていくための、科学技術イノベーションを支えていくための人材育成としての教育費予算を十二分に確保していかなければ、日本の経済成長を支えていくことはできないというふうに思っております。

 私が文部科学大臣になってから、現在三十八項目の教育再生改革工程表をつくって、今準備をしております。その中で、来年の通常国会だけでも十本を超える法律改正案が今想定をされておりますけれども、ぜひ、これから教育再生へ向けることによって、予算も十分確保して、一人一人の人材が生きていくような、そういう教育改革をしてまいりたいと思います。

菊田委員 我々民主党は、政権与党になって、予算の使われ方を見直して、無駄をできるだけなくして、そして財源をつくっていきたいということで努力をしてまいりましたけれども、もちろん野党時代の予測が大変に甘かった、こういうこともございました。言いわけだと言われるかもしれませんけれども、震災も起こりました。思ったようにいかないことがたくさんありました。志半ばであるということは事実です。

 しかし、こういう取り組みを、わずかな期間ではあったけれども一生懸命取り組んできたということについてぜひ御理解をいただきたいというふうに思っておりますし、現政権においても、ほかに優先してこの教育予算、人への投資をしっかりやるんだということを国民の皆さんにお示しいただきたいというふうに思っております。

 所得制限について伺いますけれども、世帯年収九百十万円以上を妥当とした理由についてお聞かせをいただきたいと思います。

 就学支援の対象から外れる生徒数はどれぐらいありますか。そして、仮にですけれども、所得制限を九百万円以上に設定するとした場合、この支援対象から外れる生徒というのはどれくらいあったんでしょうか。

前川政府参考人 高校無償化制度の見直しに当たりましては、所得制限の基準額を考えるに当たりまして、低所得者層への支援や公私間格差の是正、特定扶養控除縮減への対応など、支援の充実策及びそれに要する財源、これが一つの考慮の要素でございます。一方で、負担をお願いできる世帯の範囲、これがもう一方の考慮の要素でございまして、その二つの間のバランスを考慮したものでございます。

 具体的には、現行の私立の就学支援金制度で低所得者として加算支給を行っている世帯、これが約二割に当たる。今回、負担をお願いできる年収の上位の階層、これを同じく二割程度が適当だと考えたところでございます。

 また、現行の都道府県の授業料減免支援制度でございますけれども、これを見た場合に、最も高い収入の世帯まで支援を行っているところで九百万円内外、特に京都府では年収九百万円世帯までの支援を行っている、こういう事実がございます。また、学生支援機構の無利子奨学金の所得制限の基準額というのがございますけれども、これが八百九十万円である。こういった例を十分に勘案いたしまして、本制度の基準額としては、九百万円を超える額が適当であるというふうに考えたところでございます。

 また、先ほど申し上げました支援策の充実ということを考えました場合に、就学支援金の加算につきまして、低所得者層に加えて中間所得者層、すなわち、子供のいらっしゃる世帯の収入のおよそ中央値である年収、これが五百九十万円でございますが、その五百九十万円の世帯まで支援の対象を拡大することが可能な財源が生まれる額、こういうことを勘案いたしまして、所得制限の基準額としては九百十万円が妥当であると考えたところでございます。

 これによりまして就学支援金の対象外となる生徒数が、約七十九万人でございます。仮に、所得制限の基準額を年収九百万円以上と十万円下げた額で設定した場合には、対象外となる生徒数は約八十二万人と試算しております。

菊田委員 所得制限というのはどこかで線引きをしなければならないということは私も承知しておりますけれども、例えば、今言った九百万円以上とそして九百十万円以上、この十万円の差で就学支援の対象になる生徒とならない生徒に分けられてしまうということでありまして、そのちょうど境目にある御家庭、世帯にとっては不公平感というものが生じないかという懸念もあるわけでございます。

 当事者の方々に御納得いただけるかどうか、大臣の見解を伺います。

下村国務大臣 今回の所得制限の基準は一つだけでありまして、これは九百十万円です。ですから、九百十万円を超えているところについては所得制限の対象になって、今回の就学支援金の対象にはならないということで、そこで引かれているということですね。

 その上で、現行制度においても、私学の就学支援金の加算額について、やはり同様に年収二百五十万円あるいは三百五十万円、こういう基準は設けられているわけでありまして、今の御指摘でいえば、この基準前後の生徒に同様の問題が今でもあるわけですね。また、ほかの所得制限を設けている制度についても同様のことが言えるわけでございます。

 そういう意味で、生徒や保護者に対しては、所得制限を行う新制度については十分な周知を行い、御理解をいただくように努力をしていきたいと思います。

菊田委員 今回所得制限を導入することによって捻出される財源は幾らでしょうか。そして、その財源はどのように使われるんでしょうか。

前川政府参考人 九百十万円を基準額として所得制限を設けた場合、そこで捻出される額は約八百九十億円でございます。

 捻出した財源につきましては、本年八月二十七日の与党間合意を踏まえまして、低所得者支援と公私間の教育費格差の是正などの施策に充てたいと考えております。

 具体的には、奨学のための給付金制度の創設、私立学校の就学支援金の加算の拡充、特定扶養控除の縮減により負担増となった特別支援学校、定時制、通信制高校の生徒への支援、海外の日本人学校、在外教育施設の生徒への支援、外国人学校以外の各種学校、高等学校相当の学校の生徒への支援、その他新制度の円滑な実施のために必要な経費、これらの財源とする方針でございます。

 なお、捻出した財源の使途につきましては、最終的には十二月までの予算編成過程において決定されるものでございますけれども、これらの施策の実現に向けて文部科学省として努力してまいりたいと考えているところでございます。

菊田委員 午前中も財務省から古川副大臣が来て御答弁いただいておりますけれども、きょうは大変お忙しい中、私も山本政務官に来ていただいております。

 返済不要の給付型奨学金を創設する、文科省としてはぜひやりたいということでありますけれども、高校でこういうことをやるというのは初めてのことでありまして、これは子供の教育にかかわることでありますから、一度始めたら、これがすぐまた何年かたって財源の問題でできなくなる、あるいは規模が縮小されるということになってはならないというふうに思っております。ぜひ実現をしていただきたいというふうに思っていますし、どれくらいの規模でこれはスタートするのかということも大変関心を持っているわけであります。

 財務省におかれまして、この平成二十六年度予算編成におきまして、財源確保の見通し、先ほど古川副大臣の答弁は聞いておりますけれども、私は、山本政務官、公明党さんは公教育は公費で実施すべきだと一生懸命この問題に取り組んでいただいていると思いますが、ぜひ御答弁をいただきたいというふうに思います。

山本大臣政務官 菊田委員にお答え申し上げたいと思います。

 高校無償化の所得制限の水準を決める過程に当たりまして、与党間でさまざまな御議論がございました。所得制限により捻出される財源、今ございました約八百九十億円でございますけれども、奨学のための給付金を創設する等の合意がなされたわけでございます。それを踏まえまして、文部科学省からは来年度予算編成に向けまして予算要求があったところでございます。

 財務省といたしましても、関係者の御議論を十分に尊重する必要があると考えております。

 他方、奨学のための給付金の創設につきましては、国が義務教育段階で実施をしている支援策とバランスがとれたものになっているかどうか、こういう論点等につきましても、よく文科省と詰める必要があると考えております。また、そもそも高校無償化の財源につきましては歳出全体の見直し等で捻出したところでございまして、こうした経緯も踏まえまして進める必要があると思います。

 いずれにしても、他の全ての歳出分野における施策と同様に、所得制限の導入により得られる財源の使途につきましては、予算編成過程で十分に検討してまいりたいと思う次第でございます。

菊田委員 午前中の古川副大臣の御答弁とほとんど同じでございまして、何か、多分答弁書が全部一緒になっていると思うんですけれども。

 財務省におかれましても、優先順位はどこなのか、ぜひ、子供たちの育みのために有効な財源をきちっと予算をつけていただきたいということを御要望したいというふうに思います。

 それから、もう幾つか質問を用意していたんですが、時間が参りました。今回、現場において無用な混乱、あるいは子供たちに心理的な悪影響を与えてはいけないと私は大変懸念をいたしております。

 親御さんが収入の状況に関してさまざまな個人情報を提出する際に、これがふとしたことで生徒間に知れ渡ってしまったり、あるいは外部に流出してしまったり、あるいはほかに悪用されるようなことがあってはならないというふうに思っておりまして、情報の管理というのが非常に大事であります。

 これまでも私立においてはそういう手続をやっていたという御答弁が午前中にありましたけれども、今度はもう規模が全然違うわけでありまして、公立高校全体の七八%がこれは対象になるということでありますから、膨大な個人情報が動くわけであります。

 こうした情報の管理についてお聞かせをいただきたい。万一、情報が流出した場合の補償とか、あるいは責任の所在についてもお考えになっておられるでしょうか。

下村国務大臣 今御指摘があったように、私立学校では既にこれは行っているわけですね。今までの経緯の中で、今の危惧のようなことは現在も起きていないということは承知をしております。しかし、今御指摘のように、公立学校まで広げるということですから、確かに大変な量、数にもなってくるわけでございます。

 その上で、保護者からの所得確認書類の提出に当たっては、封をした封筒で行う、事務所などほかの生徒の目に触れにくいところで行う、学校への郵送で受け付けるなど、生徒、保護者への配慮を最大限行うよう、改めて都道府県に対して指導していきたいと思います。この新制度においても、所得確認書類の提出に当たっては、引き続き、生徒が親の収入を意識することにならないよう、都道府県に対して十分な配慮を求めていきたいと思います。

 一方で、在学生については、今回の制度改正を念頭に置いて入学したわけではありませんので、今の高校一年生以上は従前の制度を引き継ぐ。新高校一年生からこの制度導入の対象にしていきたいと思っています。

菊田委員 今大臣から御答弁がありましたけれども、子供たちが親の所得を気にしたり、自分と友達との境遇の違いを比べたり、教室の中に変な空気といいますか亀裂が生じてしまうようなことがないように最大限の配慮をしなければならないというふうに思っておりますし、そもそもそういうことが起こる心配があるから、私はこの所得制限を導入するということに対しては慎重にすべきだという考えでございます。

 最後に、今回の制度変更に伴いまして、学校そして地方公共団体では多大な事務作業が発生するというふうに思われますけれども、学校なんかもお聞きしますと、現在の人員ではとてもこのような事務作業はできないというような声も聞いております。

 こうした地方自治体、そして学校現場に対するさまざまな手当てをしっかりしていく必要があると思いますが、このことについて御答弁をいただきたいと思います。

下村国務大臣 繰り返すようですけれども、現行制度でも、私学においてはこれはあったんだということについては、ぜひ認識をしていただきたいというふうに思います。

 その上で、しかし、さらに所得制限も設けるわけですから、事務手続上それだけ人数が必要になってくる部分は、私学においても、それから当然県においては出てくるというふうに思います。

 そういうふうな事務手続に係る費用も含めて、国の方できちっと担保できるように努力をしてまいります。

菊田委員 終わります。

小渕委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 それでは、高校授業料の無償化の見直し法案について質疑をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、その質疑をさせていただく前に、我が会派の遠藤議員が、一般質疑のときに全国学力テストについて質問をさせていただきました。その関連で少し全国学力テストについて質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 全国学力テストのあり方をめぐっては、私の地元であります静岡県では、静岡県知事の行った措置が大きな波紋を呼んでいるところでございます。

 小学校六年生の国語テストAが、静岡県が全国で最下位だったということで、知事は、それを教師の責任であるというふうに主張されまして、教師の責任を明確にするために、下位百校の校長の氏名を公表すると表明をされました。実態は、私が思いますに、静岡県知事の思いつきのお粗末な措置に尽きるということだと思いますけれども、これを単なる空騒ぎにしてはいけないと質問をさせていただくものであります。

 もちろん、私の質問は静岡県知事を個人的に攻撃するものではございません。当然のことですが、全国学力テストをより効果的なものにするため、テストの公表のあり方をただすものでございます。よろしくお願いいたします。

 まず、事の経過を簡単に説明させていただきます。

 小六国語テストAが、静岡県が全国で最下位、最低になったことを受けて、マスコミ報道によれば、九月九日に知事は、この結果は教師に責任がある、校長の責任は大きく、反省材料にしてほしいということで、成績下位百校の校長の氏名を公表すると記者会見で表明をされました。

 当然、県の教育長は、全国学力テストの実施要領に反するとして、何とか知事を説得しようということで、その経緯が地元の新聞には大きく連日出ていたわけであります。

 なお、実施要領では、自治体による学校別結果の発表をさせないということになっているわけであります。

 しかしながら、知事は、学校名と校長名は異なるとして公表を譲りませんでした。知事の主張は、学力テストは教師のテストである、校長の責任は大きく、反省材料にすべきと。

 知事のこうした考え、手法に対しては、当然のことでありますけれども、内外からの批判が大きくて、下村大臣も九月十日の記者会見で、懲罰的な校長名の公表は好ましくないというふうに批判もされております。

 そんなことを受けまして、一転して知事は、下位百校ではなく上位八十六校の公表に転換をしました。全国平均を上回った上位八十六校の校長の氏名を公表するとして、実際に公表をしたわけでありますけども、今度は、その理由は、上位八十六校の校長先生また教員を褒めるために公表すると。まさに取ってつけたような理由でありますが、実際にそういうふうに言われているわけです。

 一連の経緯を振り返ってみると、今回の騒動は単なる知事の思いつきのお粗末な方針に振り回されたということでありますけれども、その中でも特に、教師が悪い、校長が悪いというのは、私の考えですけれども、余りにも浅い認識ではないのかなというふうに思います。思いつきですから説明もころころ変わる。県民の多くが、あきれて、眉をひそめているのではないかというふうに思うわけであります。

 そこで、質問でありますが、小学六年学力テストの狙い、目的はどこにあるんでしょうか。文科省、よろしくお願いします。

前川政府参考人 全国学力・学習状況調査の目的でございますが、第一に、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握、分析いたしまして、国の施策、あるいは教育委員会の取り組み、その成果と課題を検証し、その改善を図るということでございます。また、第二に、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善に役立てるということ。第三に、このような取り組みを通じまして、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立すること。こういったことを目的といたしまして、平成十九年度より、小学校六年生と中学校三年生を対象にして実施しているものでございます。

鈴木(望)委員 狙い、目的はわかりましたけれども、結果として低い順位となった学校の原因、理由はどこにあるのか。県知事は教員にあると主張されているわけですけれども、果たして単に教師のみの責任にしていいのかどうか。地域の課題であるとか家庭の課題、そんなものについてどういうふうに認識をされているのか。文科省にお尋ねいたします。

前川政府参考人 学力調査の正答率がそれぞれの学校の教職員の取り組みをそのままあらわすとは必ずしも言えないと考えております。それぞれの地域性というのがございますし、さまざまな家庭の事情というものを抱えている児童生徒も多いということでございます。

 また、それぞれの教職員が頑張った成果があらわれるという場合に、成績が下位の学校であっても改善が大きく見られるというケース、これはやはりそれなりに評価する必要があると考えておりますので、絶対数としての正答率のみをもって評価することは難しいと考えております。

鈴木(望)委員 そのとおりだというふうに思いますし、地域であるとか家庭のことにも少し触れておられましたけれども、例えば地域では、過疎地域で複式学級にせざるを得ないというようなところはそれなりの事情が当然ありますし、私どもの地域でも、昔からの城下町のところで、地域を挙げて子弟の教育に熱心な地域があります。逆に言えば、そうじゃない地域も当然あるわけでして、そんなことも含めて、地域にはそれぞれの課題であるとか特色もある。それが小六の学力テスト、例ですけれども、国語に反映しているということは十分考えられるわけであります。

 また、家庭の課題というものも当然あるわけでして、日ごろから本であるとか新聞であるとか、そういったものに親しむような環境にある家庭とそうでない環境というものも大きな違いが当然出てくるわけでありまして、テストの成績が悪かった、その成績の順位を云々することはいろいろ問題があるというのは当然のこととして、これは教員だけに責めを負わせて終わる問題ではないんじゃないのかなというふうに思うわけであります。

 次に、校長の氏名の公表は、実質的に学校の公表になってしまうというふうに思うわけでありますが、どうでしょうか。そうなると、実施要領違反ではないんでしょうか。文科省にお尋ねします。

前川政府参考人 本年度、平成二十五年度の実施要領におきましては、都道府県及び市町村は、個々の学校名を明らかにした公表は行わないことといたしまして、各学校の結果の公表は各学校の判断に委ねるということとしております。

 静岡県知事が全国平均以上の平均正答率であった学校の校長名を公表したということは、学校名を明らかにした結果の公表を行ったということと事実上同じことになると考えておりまして、平成二十五年度の実施要領の趣旨からは逸脱しているというふうに考えております。

鈴木(望)委員 違反という言葉が妥当なのかどうかわかりませんが、逸脱をしている、明らかに実施要領に反しているということだと思いますが、それについて、全国的な教育方針について文科省は適切に行われるように対処する方針があると思うんですが、どういう対処をしたんですか。

前川政府参考人 静岡県に対しましては、教育委員会に対しまして、今回の学力調査の結果の公表につきましては実施要領を遵守するよう要請をしてまいったところでございますけれども、残念ながら、そのような結果にはならなかったということでございます。

鈴木(望)委員 文科省の対処方針にどうも生ぬるいところがあるんじゃないのかなというふうに思います。

 成績下位百校の校長氏名を公表するとした、これは当初の方針でありますが、公表自体は、当然のことながら、文科大臣も言われておりますように懲罰的であって、また、結果について、教師のみの責任ではないというのは当然のことだと思うんです。そういうことを考えますと、下位百校の校長氏名を公表する、これは批判を受けて転換したわけなんですが、これについては文科省はどういうふうにお考えでしょうか。

前川政府参考人 現実に、下位百校の校長の氏名が公表されたというわけではないわけでございますけれども、個別の学校の事情にかかわらず下位の学校の校長名をそのまま明らかにしたということを仮定した場合には、それ自体は本年度の実施要領にはそぐわない行為であるということであります。また、教育上の効果につきましても疑義があるというふうに考えております。

鈴木(望)委員 もう言わせていただきましたけれども、その後、知事は八十六校の校長名を公表しましたけれども、今までの質疑でこれに何の意味もないことは明らかでありまして、教師を褒めるためとしているが、成績全国最下位の静岡県の上位八十六校の校長名を公表して何の意味があるのか。これは当然のことであります。

 私としましては、校長名の公表を最初に表明してしまった知事のメンツを保つだけの措置ではないのかと勘ぐりたくなりますし、税金の無駄遣いそのものじゃないのかなと思うわけであります。

 一連の措置を振り返ってみますと、本来真面目に取り組むべき学力テスト問題が、知事の思いつきに振り回されただけの茶番劇、どたばた劇になってしまった。いたずらに静岡県の教育に混乱をもたらしたことを知事は強く反省し、対象となった校長や県民に謝罪をすべきであるというふうに私は思いますけれども、この問題について文科大臣はどうお考えになるでしょうか。

下村国務大臣 この件に関して、鈴木委員と全く同じ認識でございます。

 静岡県知事の今回の校長名公表に関する対応は、本年度の実施要項の趣旨から逸脱するものであります。また、このような公表を行うことによる教育上の効果について、これは疑義があると思います。関係者に不安や混乱をもたらしているということに対しても危惧を感じますし、このことによってどんな教育的な成果、効果を期待していて、またそれが実際にあらわれたということについては、鈴木委員のおっしゃるとおりだというふうに思います。

 ただ、来年度以降の、二十六年度以降の取り扱いについて、この全国学力・学習状況調査の結果の公表については、これはさまざまな意見がありますので、改めて文部科学省として検討しているところでございます。

鈴木(望)委員 ありがとうございます。

 実はそのことについてお聞きしたいと思いますので、またお答えをいただければありがたいなと思うわけですけれども、考えてみますと、今回のテストの結果をめぐって静岡県で起こった一連の騒動というものの一番の原因は、もう先ほどちょっと言われましたけれども、今の御答弁でもありましたけれども、テストの結果の公表が不十分である、そこにあるんじゃないのかなと思います。

 この際、学校名を公表したらどうかということを提案させていただきたいなと思います。もちろんテスト結果に一喜一憂すべきではないことを念押しした上で、成績の悪かった学校は、何が原因なのか、教師の取り組みがよくなかったのか、それとも地域全体としての、小学校区全体としての取り組みが不熱心、不十分だったのか、それとも家庭内の取り組みがよくなかったのか。

 そういったものを反省材料として今後の取り組み方針の参考にするということで、個人のプライバシーという問題も当然ありますけれども、教師の名前を出す、校長の名前を出すというんじゃなくて、学校名を出して、小学校区全体の一つの今後の取り組み材料としていったらいかがというふうに思うわけでありますけれども、重複になるかもわかりませんが、文科大臣の御答弁をお願いします。

下村国務大臣 平成二十五年度の実施要項におきましても、市町村教育委員会が当該市町村の結果を公表すること及び各学校が自分の学校の結果を公表すること、これは可能でありまして、保護者や地域と一体となって学力向上に取り組むため、調査結果について積極的に情報提供することは重要であるというふうに考えます。

 一方で、調査結果の公表のあり方でありますが、今回の静岡県知事の公表の仕方もそうだと思いますが、結果的に、学校の単なる序列化とか、それから過度な競争による弊害とか、そういうことが生じないような公表の仕方というのをやはり配慮する必要があるのではないかと思います。

 平成二十六年度以降の学校の公表の取り扱いについては専門家会議において今議論をしていただいておりまして、この調査は貴重な予算を使って教育改善のために実施していくことなどを踏まえまして、平成二十六年度の実施要項において、今月末をめどに、改めて二十六年度以降についての公表の仕方については決定をしていきたいというふうに思います。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。ぜひ、悉皆調査で行われることになった全国学力テストを効果のあるものに常にしていくように、御努力をよろしくお願い申し上げます。

 次に、高校の授業料のこの法案について質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、見直しの目的について質問をさせていただきます。なぜ見直したのか、無償化の効果の検証も含めて文科大臣にお伺いしたいと思いますが、この問題につきましては、きょう朝からずっと何回も御答弁があったかというふうに認識をしておりますが、改めて御答弁をよろしくお願い申し上げます。

下村国務大臣 平成二十二年度より導入された高校無償化制度については、無償化前から授業料が全額免除されていた低所得者にとって恩恵がなかったということ、また、私立学校の低所得世帯の生徒には授業料を中心に依然として大きな負担があること、それらの課題があり、低所得者世帯の生徒に対する一層の支援と公私間の教育費格差の是正を図る必要があるというふうに考えました。

 厳しい財政状況のもとで限られた財源を有効活用し、高校等における教育に係る経済的負担の軽減を適正に行う観点から、就学支援金の支給に所得制限を設け、低所得世帯の生徒への支援、それから公私間の教育費格差の是正、これに充てるための財源を捻出するため、所得制限を設ける制度改正を行うものでございます。

鈴木(望)委員 ありがとうございます。

 私ども日本維新の会の基本的な立ち位置からして、私どもは、見直しそのものについては反対はしておりません。私どもは、自立した個人、自立した地域、自立した国家を標榜しておりまして、特に、国民のあるべき姿として自立した個人というものを掲げているわけでございます。

 私ごとで大変恐縮でありますけれども、私の父親、もう十数年前に亡くなりましたけれども、典型的な昭和のお父さん、普通の庶民でありました。家庭の中では若干唯我独尊で、自分の考えを貫き通して私ども家族に迷惑をかけたこともありましたけれども、一方で、妻や子供は自分が守る、体を張ってでもそのために頑張る、そんな気持ちを当然の心構えとして持っていたわけであります。

 そんな父親が、私も含め子供四人をそれぞれ田舎から都会の大学に入れ終わったときに、何とか御先祖の田んぼを売らずに子供を育てることができたというふうにつぶやいていたことを今でも鮮明に記憶しております。今さらながら、本当に、大した能力もないのに頑張ってくれたな、ありがたかったなというふうに思うわけであります。

 そういった観点からしますと、子供のころ、父親が病気で倒れたときは家族一同青くなりました。その当時は、今のように社会保障制度その他が整っていなかったからであります。今は、社会保障制度が整った分、自立の心構え、気概が薄れてしまったように思えてなりません。

 父親が生きていればちょうど百歳になりますけれども、高校授業料無償化を何と評価するのか、こういう立場につきましたので非常に興味があります。いろいろ自分なりに考えてみたんですが、多分、何とか頑張っている自分たちはいいから、本当に困っている人たちにお金を回してほしいというふうに言ったんじゃないのかな、勝手な臆測かもわかりませんが、私はそう思っているところであります。

 普通に頑張っている、自立している個人には、古代ローマ時代のパンとサーカスのようなサービスは無用、そのかわり、失業や病気などで社会的に困難な立場に立たされたら十分な温かな支援の手が差し伸ばされる、そういう社会になっていかなくちゃいけない、これが私たちの、自立した個人の理念であります。

 その観点から考えますと、高校授業料無償化は、午前中、また今までのさまざまな議論、質疑から、それなりの理屈、理論はもちろん理解できるところであります。当然理解できますが、一方で、困ってもいない国民にまで授業料を無償化するばらまき施策の一面を持っているのではないかと私ども考えておりまして、ばらまき施策は自立した個人をだめにし、社会や国そのものを衰退させていく、これは歴史が証明するところであります。その観点から、所得制限を導入した今回の見直しを、方向としては私どもは支持をするわけであります。

 ところが、所得制限基準をめぐる動き、額の決定過程をマスコミ報道等で聞くに従いまして、これは一体何だろうかと、正直そういった不信の念がむくむくと沸き起こってきたところであります。

 当初、七百万円という数字が自民党から出ておりました。これは、平成二十四年二月二十八日、自民党の機関紙「自由民主」に出ておりますし、このような法案が出された今でも、自民党のホームページにも掲載をされているようであります。だから、そういう意味では、七百万円という数字は何なんだと。

 そして、いよいよ検討が本格化した時点では、これはマスコミ報道等で聞いたところという前提をつけさせていただきますが、最初九百万円、その次に九百三十万円、そして最終的に九百十万円で与党間の調整が決まったというふうに仄聞をするところであります。はたから見ておりますと、まるでバナナのたたき売り、理念がまるで私には感じられないところであります。

 国会のこういう場はただすということでありますので、まずは最初に、七百万円の根拠、これは何なのかということを文科省は当然把握しておられると思いますので、お聞きをしたいと思います。よろしくお願いします。

前川政府参考人 今回の無償化制度の見直しにつきましては、各政党間でもさまざまな御議論があったわけでございます。具体的な所得制限の基準額の設定について、幾つかの案が検討されてきているものと承知しております。

 御指摘のありました七百万円とする案でございますけれども、これは、高校無償化に関する政策効果の検証と必要な見直しの検討についての三党実務者協議、これは平成二十四年の二月十七日以降行われたものでございますが、その中で自由民主党案として提示されたものと承知しております。

 その理由といたしまして私どもが承知しておりますのは、給付型奨学金の創設を初め、低所得者層を中心とした支援金の拡充のためには、高校生がいる世帯の約五〇%を所得制限の対象とする必要がある、こういう理由であったというふうに承知しております。

鈴木(望)委員 七百万円の根拠については、多分、子供のいる世帯の平均収入額というところから七百万、それで、五〇%ぐらいが対象になり五〇%ぐらいが対象から外れるというところから出たのかなというふうに思います。それなりに、素朴にそうかなというような感じを受けるわけでありますし、そこから二千億円の財源が捻出され、それが低所得者層の方に回って、本当に必要なところに教育費が回されるという意味では、どこの党がどうというわけじゃないんですが、妥当かなという感じもするんですが、それがどうして九百万という数字が出てきたのか、また九百三十万円、これはどうしてなのか。そして、それの折衝の過程の中で九百十万となったというのはどういうことなんでしょうか。そこについて、文科省の御説明をお願いいたします。

前川政府参考人 高校無償化制度の見直しに当たりましては、低所得者層への支援や、公私間格差の是正、特定扶養控除縮減への対応など、支援の充実策とそれに要する財源、これが一つの考慮事項である。一方で、負担をお願いできる世帯の範囲、これがもう一方の考慮事項であるということで、その二つの考慮事項のバランスが必要であるというふうに考えております。

 与党間の御協議の詳細について私が御説明する立場にはございませんけれども、九百万あるいは九百三十万などの額を含めまして協議が進められまして、最終的に九百十万とすることが適当とされたものと承知しております。

 ただ、その基準額を九百十万とする理由につきましては、これは明確な説明ができるわけでございまして、現行の私立の就学支援金制度で低所得者とされている世帯が約二割であるということから、今回負担をお願いできる年収の上位層を約二割と置くことが適当であるという考え方が一つでございます。

 もう一つは、現行の都道府県の授業料減免支援制度に照らした場合に、最も高い収入の世帯まで支援している京都府で年収九百万円世帯まで支援している、これを上回る額が適当であるというふうな配慮。

 また、基準額を九百十万円とすることによりまして生まれる財源で、私立高校の就学支援金の加算につきましては、中間所得者層、子供のいる世帯の収入のおよそ中央値でございます年収五百九十万の世帯まで支援対象を拡大することが可能である。

 こういったことから、この九百十万という額になったというふうに承知しているところでございます。

鈴木(望)委員 九百十万について明確に説明ができるという説明を今されたんじゃないのかなというふうに思いますけれども、例えば、就学支援金の対象が二割で、今度その対象から外れる人が二割。二割、二割ということで数字は合っているわけですけれども、それが果たして何の意味があるんですか。何となく説明として納得できるような感じもするけれども、よくよく考えてみると何の意味もないというふうに私は思うんですが、どうでしょうか。

下村国務大臣 鈴木委員から御指摘があったように、最初、民主党政権下における三党間実務者協議の中に私も入っておりましたし笠さんも入っておりまして、その中で自民党で提示した額は七百万でした。それは、御指摘のように、ちょうど真ん中ぐらいですね、中間よりも上の所得の家庭の子供は所得制限でこれは授業料を払っていただいて、下に厚くというトータル的なバランスということが当初の自民党の案でございます。

 その後、もともとこの平成二十二年度から高校授業料無償化を導入するときについても、これは三年たって見直すと法律にもう明記されておりましたから、その中で、見直しをするにしても、ドラスチックな見直しというよりは、これからの見直しも含めて、既にこれはもう導入されて享受されている方々がたくさんおられる、ある意味では既得権者の方々がおられるので、やはりできるだけ激変緩和するような制度も考えるべきではないかということの中で、今御指摘がありましたが、都道府県によって相当格差があるんですが、特に京都府の場合は、年収九百万までの中で、これからお願いするようなことについて独自に既にやっているということで、四十七都道府県においては京都府が九百万で設定している。都道府県よりは上にする必要がある、つまり九百万以上にする必要があるということが一つ理由であります。

 それからもう一つは、九百三十万ということについては、これをすると、中間所得層までの支給や加算拡充を行うには今度は財源が足らなくなるということでございまして、ぎりぎり、九百十万で設定すると、今まで申し上げていたような公私間格差の是正や、低所得者層に対するさらなる厚い手当て、あるいは給付型奨学金等を賄うことができる。給付型奨学金は、一応考えているのは、公立高校が年間十二万円、私立高校が年間十三万ですが、この給付型奨学金がさらに加算されれば、低所得者層に対するより公平感を持った制度設計ができるのではないかというところの判断で、九百十万円になったという経緯がございます。

鈴木(望)委員 文科大臣、御丁寧な説明、ありがとうございます。

 大体同趣旨の説明を私ども会派の部会でも聞かせていただいて、結論としましては、どう考えても九百十万円という基準額になかなか納得はできないな、おなかにすとんと落ちるということはちょっとできないなということであります。

 そこで、少し原理主義的になって恐縮ですけれども、維新の理念として、自立した個人と。本当に困っている人に厚くするんだという考え方からすれば、夫婦、子供二人の場合の地方税非課税の二百五十五・七万円の所得制限を課して、それ以上の人には支給しないという、余りにも原理主義的な考え方でありますけれども、そういう考えも当然あるわけです。

 それでは余りにも極端じゃないのかということであれば、例えば、これは一世帯当たりの平均所得額、平成二十四年、五百四十九・六万円、五百五十万円ですね。また、自民党が従前提示されていた、私はベースになったのかなとも思うんですけれども、児童のいる世帯の平均所得額、平成二十四年ですけれども、これが六百九十七・三万円、約七百万ですね。

 そういった個別の数字に依拠した方が、今のような、都道府県の最上位の金額がどうであるとか、二割に対応した上位二割の人を省くんだとか、いろいろと苦しい説明をするよりもいいんじゃないのかなと思います。そして、本当に困っている人に対する支援策を厚くすべきだというふうに考えますが、大臣の御見解がありましたら、よろしくお願いします。

下村国務大臣 所得制限の基準額の設定に当たり、これまでも幾つかの案が検討の対象となり、また、御指摘のようにさまざまな観点から基準額を設定することは考えられることでありますし、今も御指摘いただきましたが、自民党は当初七百万にしたというのは、御指摘のように、児童のいる世帯の平均所得六百九十七・三万円ということも一つの目安になっていたことは事実でございます。

 しかし、先ほど申し上げましたように、初めてこの提案をしたのは、導入時期、平成二十二年のときですから、最初からであればこれはぜひ、七百万というのが自民党の主張でありましたしそのとおりだと思うんですが、既にこれは制度が導入されてもう三年たっているということでありまして、既にこれを享受されている方がたくさんいらっしゃるということで、制度設計については、できるだけ激変緩和というのは一方で考えていく必要がやはりあるのであろうというふうに思います。

 そういう点で、この支援の充実策及びそれらに要する財源と負担をお願いできる世帯の範囲とバランスを考慮した中で、与党間において総合的な検討が重ねられた結果、今回基準額を九百十万円にしたところでありますが、これも今後また見直しの中で柔軟に、国会の判断によっていろいろと制度設計については考えることも十分あり得ることではあると思います。

鈴木(望)委員 今、今後見直すことも十分あり得るという含まれた御答弁をされたわけでございますけれども、やはり、これだけの大方針を転換して、また、大臣も言われたように、影響するところが非常に大きい。そういう意味では、効果またマイナスの影響、もろもろのことを判断して、一定期間後に見直すということは当然必要であるというふうに思います。

 いろいろ立ち位置は、私どもの会派とほかの会派とも違うにしても、影響等を見定めて見直すということは非常に必要なことと思いますが、これについて、一定期間後に必ずきっちりと見直すということを、もう一回大臣に御答弁いただければというふうに思います。

下村国務大臣 現時点では、今提案をされているものがこれはベストな選択だというふうに思います。

 ただ、これから年数を重ねる中で、さらに改善策が国会議論の中で出てくるのであれば、それはそれで謙虚に耳を傾けたいということで申し上げました。

鈴木(望)委員 わかりました。

 それでは、この所得制限の裏側に、裏側という言い方がどうか、語弊があったら言い直しますけれども、捻出された財源をいかに使うのかというのは極めて大きな問題だというふうに、午前中からの質疑でも言われております。私もそういうふうに考えるわけであります。

 限られた資源の有効活用の観点から、所得制限の導入で、単年度ベースで八百九十億円が出てくる。これは一方で、激変をする、制度が大きく変わるということの一つ前提として、低所得の方々の子弟の教育の充実など、教育の充実に当然振り向けるべきでありまして、そういうことを再三御答弁されておられます。まずその前提として、国の財政状況も余りよくないということを財務省の副大臣以下、御答弁もされているわけですが、日本の教育予算というのは足りているのかどうか。

 OECDの例等を大臣、引き合いに出されていろいろ言っておられますが、足りていないということであるのだったら、どのような点、分野でもっともっとふやす必要があるとお考えなのか、具体例とともにまずはお示しをしていただいて、議論を進めていければなというふうに思います。よろしくお願いいたします。

下村国務大臣 この公財政教育支出の対GDP比は、OECD諸国の平均が五・八%であるのに対して我が国は三・八%と、諸外国に比べて低い水準にとどまっておりまして、例えば教育費負担が大きいなどの課題があらゆる部分で、高校だけでなく幼稚園、大学、まあ義務教育についても授業料は無償ですが、それ以外教育費がかなり、実際のところはかかっております。こういう問題点があります。

 少子高齢化により生産年齢人口が減少する中で今後も我が国が成長を続けていくためには、国民一人一人の能力を最大限伸ばして、個々の人の生産性を高めること、これが不可欠であるというふうに思います。

 このため、先般閣議決定した第二次教育振興基本計画を実行し教育再生の取り組みをさらに加速するため、教育予算の充実を最優先課題として取り組むことが必要であると考えます。

 第二次計画期間中における教育投資の方向性としては、協働型、双方向型の学習など質の高い教育を可能にする環境の整備、また、家計における教育費負担の軽減、安全、安心な教育研究環境の構築などを中心に充実を図っていきたいというふうに思います。

 さらに、OECD諸国並みの公財政教育支出を目指し、教育投資を充実していくためには、その財源の確保が重要な課題であり、税制によるものも含めさまざまな方法も考えていく必要があるということから、今後、有識者に加わっていただきながら検討していきたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、三・八を、これはOECD諸国平均ですけれども、平均にするにしても五・八ですから二%。しかし、これは対GDP比ですから十兆円ということになります。文部科学省のことしの予算が五・四兆円ですから、プラス十兆円ということは相当野心的な数字で、もし総額十五兆円を超えるような教育、科学技術関係に対する予算が計上されたとしたら、教育費は大学や大学院や留学まで含めてほとんど無償に近い。それから、科学技術費についても今の数倍の予算を計上するということであるわけでございます。

 今の財政状況、今の財務省の状況から、これは簡単に認められるものではないと思っておりますので、しっかりと、プラス即十兆円ということではありませんが、より有効的な形で、教育目的税や税制改正等を行いながら、教育に対する資金をもっとふやすための、つまり教育への投資、これをぜひ、個人及び社会の発展の礎となる未来への投資として、文部科学省全体として、また私が先頭に立って取り組んで、教育予算の充実に向けて活動してまいりたいと思います。

鈴木(望)委員 今、教育予算一般について下村大臣の認識が示されましたけれども、全く私も同感で、最後の方で言われた、教育は未来への投資であるという観点からしても、この投資を惜しんだら将来日本の国というのは衰退していくだけじゃないのかなというようなことも思います。そういう意味で、全体としてもっともっと教育に予算を振り向けるべきである。それは、ここの場におられるほとんどの人がそういうふうに思っているというふうに思います。

 それから、一転して急に小さい話になりますが、八百九十億、所得制限によって捻出された財源を文科省はどういうふうに活用しようとしているのか、具体的にお答えをよろしくお願いいたします。これは、菊田委員の質問と重複しますけれども、よろしくお願いいたします。

前川政府参考人 捻出された財源につきましては、本年八月二十七日の与党間合意を踏まえまして、低所得者支援と公私間の教育費格差の是正などの施策に充てたいと考えております。

 具体的には、奨学のための給付金制度の創設、私立学校の就学支援金の加算の拡充、特定扶養控除の縮減により負担増となった特別支援学校、定時制、通信制高校の生徒への支援、海外の日本人学校、在外教育施設の生徒への支援、外国人学校以外の高等学校相当の各種学校の生徒への支援、その他新制度の円滑な実施のために必要な経費の財源としたいと考えております。

 なお、捻出した財源の具体的な使途につきましては、最終的には十二月までの予算編成過程において決定されるものでございますが、文部科学省といたしましては、これらの施策の実現に向けて努力してまいりたいと考えております。

鈴木(望)委員 日本の予算が決定するシステムとして、当然、文科省から財務省の方に要求がなされて、そこでいわゆる査定が行われて、そして一つの形になって出てくる。

 だけれども、私も常々思っているわけですけれども、その査定のプロセス、全部言えとかということじゃなくて、どういう点を議論し、どういう点で査定をするのか、場合によってはつけ増しするのかというような、大まかなところは当然公表して国民の判断を仰ぐということが必要じゃないのかなとも思うわけです。プロセスの過程であっても、当然、公表してしかるべきものは、筋というものは、方針というものがあると思うんです。

 そういう観点でお答えをお願いしたいと思いますが、具体的に文科省からどのような要求がなされて、どう査定しようとしているのか、財務省にお答えをお願いしたいと思います。

葉梨大臣政務官 お答えいたします。

 文科省からの要求につきましては、今文科省の前川局長から御説明があったとおりでございまして、年収二百五十万未満の世帯に対する奨学のための給付金の創設、あるいは私立高校の生徒に対する就学支援金の拡充など、この八百九十億円の財源を高校生向けに使いたいというような形で要求をいただいております。

 査定の公表ということは、これはまさにこれから文科省の方々と詰めて検討をしてまいるわけですけれども、観点については、当委員会でも、さきにも副大臣、山本政務官からも答弁があったかと思いますが、一つは、例えば奨学のための給付金の創設については、国が義務教育段階で実施しております支援策とのバランスがとれたものとなっているかというような論点がございます。また、就学支援金の拡充については、既に各都道府県が独自に私立高校に対して授業料減免補助を相当程度実施しております。低所得者の負担軽減という政策効果がどの程度期待できるかといった論点がございます。

 このような論点について、今後、文部科学省とよく詰めて査定をしてまいるということになってまいります。

 いずれにしても、この所得制限の水準を決める過程では、最前来御議論ありますように、関係者間でいろいろな議論があったことは承知しております。こうした経緯も踏まえながら、予算編成過程でしっかり検討してまいりたいと考えております。

 以上です。

鈴木(望)委員 八百九十億は、当然のことながら教育関係に確保していただけますよね。確保しなかったら、何のために今回制度改正するのか。

 私どもも賛成しようと思っているんですけれども、八百九十億がどういうふうに使われていくのか。全体としては教育予算は足りない、もっともっとふやそうという中で、細かい、ミクロ的なところでああでもないこうでもないと言って結果として減ったような格好になっていたといったら、私どもは反対せざるを得ない。これは本気でそう思っているわけですけれども、ぜひよろしくお願いいたします。

 もう時間もなくなってきましたけれども、具体的な八百九十億の振り向けの中で、一つ二つだけ聞かせていただきたいと思います。

 子どもの貧困対策法が前国会で成立しまして、ちょっとだけですけれども私もそれに関与もさせてもらいまして、本当に下村大臣の熱意の後押しでこの法案ができたというようなこともございます。そんなことも考えますと、奨学のための給付金の創設について少し、この際質問をさせていただければというふうに思います。

 まずは、繰り返しの御答弁になるかもわかりませんが、なぜ奨学のための給付金の創設なのか、また、額はどの程度を想定しているのか。内容について、また全体の予算規模について、改めて御答弁をお願いいたします。文科省、よろしくお願いします。

前川政府参考人 奨学のための給付金につきましては、義務教育段階において行われております要保護及び準要保護世帯への教育費負担の軽減でございます就学援助の制度を参考といたしまして、経済的な観点から、低所得世帯への支援といたしまして、成績要件等が定められている現行の貸与型奨学金とは異なる制度として創設したいと考えているところでございます。

 貸与型の奨学金におきましては、将来の返済に不安を持つ者が申請をちゅうちょするおそれがあるということが言われております。高等教育機関へ進学することで奨学金の返済が積み重なり、将来に負担が先送りされることなどから、心理的な負担感につながりまして、貸与率は高校生の四・八%にとどまっているという実態でございます。授業料以外の、最低限必要な、不可欠な教育費を支援するためには、返済のない給付金を創設する必要があると考えているところでございます。

 その支援の内容につきましては、年収二百五十万円未満程度の世帯、そのうち生活保護世帯は除くわけでございますが、これらの世帯に対しまして、教科書費、教材費、学用品費等といたしまして、公立高等学校の生徒の場合ですと年額約十三万円、私立高等学校の生徒の場合ですと年額約十四万円を都道府県が支給する、国庫補助率三分の一の国庫補助制度を創設したいと考えております。

 なお、最終的には十二月までの予算編成過程において決定されるものでございますので、その実現に向けて努力してまいりたいと考えております。

鈴木(望)委員 これは目玉の一つだろうというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いをしたい、実現していくように御努力いただきたいと思います。

 もう一つ、もう時間もないものですから、あと一つだけ個別の事項についての質問をさせていただいて終わりにしたいと思いますけれども、公立と私立間の格差是正のための高等学校等就学支援金の拡充について、制度の概要と拡充の内容、狙い、その要求しているところの予算規模について、よろしくお願いします。

前川政府参考人 私立高等学校等の生徒に対しましては、現行制度におきましては、高等学校等就学支援金といたしまして年額十一万八千八百円を支給するということによりまして、教育費負担の軽減を図っております。

 現行の制度におきましても、年収二百五十万円未満の世帯、また、年収三百五十万円未満の世帯につきましては、それぞれの率で加算の支給を行っているところでございますけれども、私立高等学校に関しまして、低所得者層においては授業料が依然として大きな負担となっているということがございます。また、低所得者層のみならず中間所得者層におきましても、教育費の負担感が大きいといった現状がございます。これらを踏まえまして、今回の制度改正によりまして、高等学校等就学支援金の加算の拡充を行いたいと考えているところでございます。

 具体的な加算の増額については、これは政令事項でございますけれども、また、予算編成過程を経て十二月末の予算案として決定されることになるわけでございますが、文部科学省として考えておりますのは、与党間合意で所得制限を九百十万と試算した前提に基づきまして、年収二百五十万円未満の世帯までは、現行は二倍でございますけれどもそれを二・五倍まで拡充する、年収二百五十万円から三百五十万円未満の世帯につきましては、現行は一・五倍の加算ですがこれを二倍の加算にする、また、年収三百五十万円から五百九十万円未満のいわゆる中間所得者層までの世帯につきましては、現行は一律一倍の支給でございますが、この層に関しましては一・五倍の加算を新たに行う、こういう拡充をいたしたいと考えております。

 その予算額としては、約三百億円が必要になってくるというふうに考えております。

鈴木(望)委員 先ほども下村大臣が言われましたけれども、教育は未来への投資。安倍首相も、さまざまな場面で、教育再生は経済再生と並ぶ日本の国の最重要課題、強い日本を取り戻していくためには、日本の将来を担っていく子供たちの教育を再生することが不可欠というふうに述べておられるところでございます。

 教育はまさに未来への投資でありまして、確かに財政状況は苦しいけれども、日本の歴史を振り返ってみると、経済的には今よりもはるかに貧しかった明治時代に、近代化の先陣を切って取り組んだのが義務教育の導入でありまして、苦しくても、将来への投資ですので、教育への投資をけちってはいけないというふうに強く思うわけであります。

 今回の所得制限の導入は、教育予算のばらまきをやめて効率化を図るという側面からすれば一つ効率化であると思いますが、教育予算の削減ということでは決してあってはならないと思うんですね。その点を再度強調させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、三宅博君。

三宅委員 日本維新の会の三宅博でございます。

 うちの党の鈴木委員に引き続きまして、私の方からも今回の法律案につきましていろいろとお伺いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今回の私学の就学支援金、授業料助成の内容なんですけれども、今回の法律案に先んじて、大阪府では非常に充実した内容を従前から実施されておられました。そういったことに対して国の方もそれなりの大きな刺激を受けて今回の動きになったのかなというふうな思いもするんですけれども、大阪の私学関係者は、今回の私学助成金、これを非常に肯定的といいますか、喜んでおります。

 今、大阪では、これは橋下さんの一連の教育改革の成果でもあるんですけれども、大きな、公私を含む学校間の競争をやっておりまして、そういった中で、一部のトップの私学を除いてほかの私学の多くは、どちらかというと公立高校の併願校化しているんです。そういった中で授業料は高いとなってきますと、存続そのものも危ぶまれるといいますか、運営そのものに今後非常に大きな不安を覚えているような状態でありまして、そういう中で今回の法律案につきましては、私学関係者は、何といいますか、非常に歓迎をしておるということです。

 大阪の内容ですと、六百十万までの親の所得までは五十八万円までこれを補助する。それを超えた場合は学校負担でやっているわけなんです。これは、就学支援推進校という指定を大阪府がしまして、その指定された学校が五十八万を超える授業料については負担するというふうなことなんですけれども、そういう非常に充実した制度が、橋下さんのもとで、そして今現在の松井知事のもとで取り組みがなされている。

 これに対して文科省の方の認識と評価、これをお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 大阪府におかれては、特に公私間の教育費の格差是正の観点から、今、三宅委員から御説明がありましたが、他県に比べて充実した取り組みが行われているというふうに評価したいと思います。

 他方、都道府県における私立高等学校の授業料減免補助事業については、都道府県によって支援の格差が見られるところであり、今回、文部科学省としては、都道府県格差を可能な限り是正し、低所得者世帯の生徒への一層の支援と、そして公私間の教育費の格差是正の観点から、現行制度を見直すものであります。

 その際、大阪府や京都府のように授業料減免の支援水準が高い自治体の事例を、所得制限の基準額の設定に当たって参考にさせていただいたところであります。

三宅委員 私立高校の授業料につきましては、非常に大きな格差もあるんです。さっき言いましたように、大阪で五十八万円までは府が支援をする、それを超えた分については学校の負担とするということなんですけれども、ただ、授業料が高い高校になってきますと、五十八万円を超える分が学校負担となると、とてもじゃないけれども学校の運営そのものもやっていけないという学校もちょっと一部ございまして、大阪の場合ですと、私立高校が九十六校あるんです。ただ、そのうち一校だけはこの府の就学助成金を断ったといいますか、就学支援推進校の指定を断った学校もあるんです。そこは、やはり授業料が百万以上するんです。その学校は、何といいますか国際高校みたいな感じで、帰国子女を多く受け入れて、非常に独自の教育を実施されていらっしゃる。

 そういう学校があるんですけれども、私学については、そういうふうな授業料の格差というものも非常に多くある。この辺のところも留意しておかなくてはならないんじゃないかなというふうに思います。

 それから、こういうふうな授業料の支援等ももちろんこれは必要なんですけれども、特に、今は中学の卒業生の大半が高校へ進学する。言ってみれば、もう義務教育化しているわけなんですね。ただ、その中で多く中途退学がやはり実際に出てきている。この辺のところも、単に授業料の支援だけじゃなしに、当然文科省としてもそれなりに取り組んでおられると思いますけれども、より一層の取り組みをちょっとお願いしたいなというふうに思います。

 橋下さんに始まりました大阪府の教育改革、これの一番最初の動機は、先ほど来ちょっと議論の俎上にのっておりました全国統一学力テストなんです。

 これが実施されて、非常に大阪府の結果が惨たんたる状況だったんですね。全国の中でも最下位グループに入っている。北海道とか沖縄とか高知、大阪、こういうところが最下位グループを形成していたということで橋下さんが激怒されまして、何としても府の学力の向上をさせていかなくてはならない、これは単に公立高校だけじゃなしに、私学も含めてやっていかなくてはならないというふうなお考えで、今の高校一年生ですと、この春の入試では前期、後期という二期制の入試をされました。来年の春の入試からは、今度は学区制を撤廃するということなんです。

 以前は、もともと大阪府ですと九つの学区がございました。それが、平成十九年まで九つの学区だったんですけれども、それ以降は四つの学区に分かれておりました。しかし、来春の入試からは、学区の廃止、もう大阪府下の中学生は、どこの従前の学区の高校も受験できるようにされたわけです。

 それは、府下全域で競争するようなやはり地盤をつくっていかなくてはならない、しかもその競争は、公私含めた競争をやっていかなくてはならないというふうな理念なんです。

 その中で、特に公立高校、もともと旧制中学校からあった学区のトップ校、これを十校選びまして文理学科というのをつくったんです。これは、私立高校でいうところの特進クラスみたいなものです。難関大学に多くの合格者を出したい、そういうふうな考えのもとで文理学科を四クラスつくられたんです。これが前期の入試に文理学科は当てはまる。その他の、四クラス以外のクラスの生徒は後期の試験も受けられるというふうなことなんです。

 ただ、そういう中で、トップテンの大阪府下の高校に対して非常に熱意のある先生方を集めて、府下で難関大学の入試実績をつくろうと。私学の中で、大阪でも一部の学校は非常に難関大学校に多く入学者を出している学校もあるんですけれども、その他の私学ではやはりそういう実績の少ないところもある。そういう中で、さっきお話ししましたように、私学の関係者は非常に危機感を募らせていたわけですね。

 しかしながら、この全国統一学力テストの惨たんたる結果を受けて橋下さんは、大阪府下全域で学校間競争をして大阪府下の生徒の学力を向上させていきたいんだというふうな思いでこの一連の取り組みをされたんです。

 これに対しまして評価といいますか印象を持たれておりましたら、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 大阪府の教育委員会において、これまで、府立高校の特色づくりを推進するため、今数々のお話をしていただきましたが、進学指導特色校の指定、それから大阪府教育センター附属高校の新設、それから、今お話があった、ことしから始まった普通科等における入試の二期制化、また、来年から始められるということで今お話がありましたが、大阪府の公立高校の通学区域の府内の全域化、さまざまな取り組みが行われているということについては、大変意欲的だというふうに思います。

 大阪だけでなく、全国的にも、このような高校教育の多様化に向けたさまざまな取り組みが進められておりますけれども、保護者や生徒の多様なニーズを踏まえて、多様な選択肢や教育の機会を提供するために高等教育の改革を進めるということは大変重要であるというふうに思いますし、ぜひ、大阪においても積極的な教育改革を進めていただきたいと思います。

三宅委員 そこで、今回の高等学校等の就学支援金のことに話を移していきたいと思います。

 今、多様な教育というふうに大臣はおっしゃいました。そういった中で、公立と私立高校との教育内容の違いといいますか特色、こういったものをどのように捉えていらっしゃるのか、ちょっとお聞かせいただきたいんですけれども。

上野大臣政務官 今御指摘いただきました私立学校の件ですが、私立学校は、独自の建学の精神に基づいて、個性豊かで多様な教育研究活動を展開しておるところで、我が国の学校教育の発展に重要な役割を果たしてまいりました。現在も果たしております。

 私立学校の教育理念や学校運営方針については、私立学校みずからが生徒やその保護者等に対して明らかにしつつ、その責任のもとで教育活動を行っているものと認識しております。

 なお、高校以下の私立学校については、都道府県知事が所轄庁となっておりますので、私学の自主性を尊重しつつ、必要がある場合には、その運営状況の把握等が行われているものと承知しております。

 よって文科省としては、個々の私立学校に対しての運営状況については、現在のところ、把握等はしておらない状況でございます。

三宅委員 たしか、上野政務官も私学の運営に携わっておられたというふうに仄聞しております。

 私立の学校ですと、宗教系といいますかミッション系、これが数多く存在しておりまして、そのミッション系の学校は、やはりそれなりの独自の特色、教育内容、建学の精神、運営理念、こういったものを持たれていると思うんです。その辺の、特色とそれに対する評価をちょっとお聞かせいただきたいんです。

 これは、ミッション系の学校は憲法上の疑義があるとか、私、決してそういうふうな観点から言っているんじゃないので、それは誤解のないようによろしくお願いします。

上野大臣政務官 三宅議員にお答えします。

 私がいました私学も、ミッション系ではなく、ごく普通の建学精神にのっとって建学してもう百年がたつという学校でございますが、創設者のその理念に基づいて、私が勤めておりました学校では、朝、国旗掲揚から始まり、そして、国旗が掲揚された前で生徒も教員も一礼をして学校の授業に入る。また、放課後の時間、まだ運動をやっている子供たちもおりますが、四時半になりますと君が代の音楽が鳴りまして、どこにいても国旗の方に体を向けて一礼をする。そういう学校でございますので、いまだにその建学の精神は延々とつながっておるというところでございます。

 そういう特徴がある学校が多々あると思いますが、それぞれに個性的に残っていらして、頑張っているんじゃないかなと思います。

 以上でございます。

三宅委員 さすがは上野政務官のかかわっておられる学校だなというふうに、本当に心から敬意を持って今は聞かせていただきました。国旗・国歌とともに生徒の一日が始まり、終わるというふうなこと、これはすばらしいことですね。

 私が大阪で親しくしております私学も、非常によく似た経営理念といいますか学校運営方針を持っておられて、国の役に立つ人材を育てるのが我々の使命だというふうな思いでずっとされているんです。そこは非常に進学実績も高い学校でして、やはり、立派な理念は立派な結果につながるんじゃないかなというふうに思います。上野先生の学校の方も相当そういうふうな実績も残されていると思いますけれども。

 ただ、私立の中では、一部、そうでもない学校もあるのかなと思ったりもするんです。やはりそういうところは、授業のもとになる教科書等、そういったものも非常に偏向色の強いような教科書を使っているんじゃないかなというふうに思うんです。東京都の教育委員会で、もともと使用しておりました実教出版の教科書が問題になった。これが飛び火して大阪でも問題になって、大阪ではもうかなり減りまして、今、公立高校で百六十四校中五校だけ使っているだけなんです。

 そこまで把握されているかどうかわかりませんけれども、こういう実教出版の日本史教科書の利用率というのは、把握されているのであればちょっとお聞かせいただきたいなと思うんですけれども。

上野大臣政務官 お答えいたします。

 御存じのように、検定を合格した教科書の中からいずれの教科書を採択するかを決定する権限は、私立学校であれば校長にあります。私立学校の校長がいずれの教科書を採択しても、問題があるとは文科省としては言えない状況でございます。

 しかしながら、現在使われております教科書の中には、一面的な記述、偏った記述が見られるのではないかとの御指摘もあるというのを承知しております。よりバランスのとれた教科書で子供たちが学ぶことができるように、教科書制度の見直しの検討を速やかに取り組んでまいりたいと思います。歴史を学んでいる子供たちが日本という国を誇りに思って、みずから日本人であることに自信が持てるようなそういう歴史教科書をつくらなければならないと思います。

 現在は、歴史教科書を学びながら日本が嫌になってしまうという中学生も出てきているというお話も聞いております。

 以上でございます。

三宅委員 政務官は今、学校長に採択権限があると。ところが、ほとんどの私学は、教科の担任の方がこれを決めて、校長が追認するというふうな形が実態なんです。

 さっき名前を出しました実教出版の教科書がなぜ東京都の教育委員会で問題になったかと。これはまさにその国旗・国歌の取り扱いについて、一部自治体では強制の動きがあるとかいうふうな、国旗・国歌を尊重し、日々これを子供たちに教える義務のある教員が、強制というふうな、言葉のすりかえみたいな、この部分がまさに問題になったんです。

 国旗・国歌の取り扱いとなりますと、これで非常に多くの悲劇が生まれてきているんです。皆さんよく御存じのように、平成十一年、広島県立世羅高校の石川校長という方が、卒業式の前日、自宅で首をつって亡くなられた。それは、学校の教職員会議で組合の教員が、国歌の斉唱なんかはしないんだ、県の教育委員会からの命令があってもそんなもの関係ないというふうなことを苦にして亡くなられた。このことを契機にして、その年の夏に国旗・国歌法も制定された。あるいは現行の教育基本法も、このことを一つのかがみとしてつくられたというふうに思います。

 ですから、やはり教科書というのは非常に大事なものもあるんじゃないかなというふうに思います。

 特に広島の場合は、当時、国会でも問題になりましたけれども、単に教職員組合だけじゃなしに、広島県の部落解放同盟が広島県の教育を壟断しているというふうな、その結果、非常に多くの悲劇も出てきたというふうなことであったと私自身も覚えております。

 次に、ちょっと人権教育の方に話を移りたいと思います。

 私立高校で実施されている人権教育の実態なんですけれども、どういうふうな内容の教育の実施がされているのか、これをちょっと聞かせていただきたいと思います。

上野大臣政務官 人権教育についてですが、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律に基づいて、「国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう」にすることを旨として行われております。

 これを踏まえて文科省では、都道府県の人権教育担当者を集めた会議などを通じて、法律の趣旨の周知を図るとともに、人権教育の指導法等に関する調査研究やモデル事業などを実施しているところでございます。

 人権教育は、各地域や学校において、児童生徒の発達段階や地域の実情を踏まえながら、各教科や道徳教育、さらには特別教育など、学校教育活動全体を通じて実施されているところであって、文科省としては、私立学校も含めてその具体的な状況については、残念ながら把握していないところでございます。

三宅委員 人権教育の大切さ、これはわかるんですけれども、学校現場で実施されておりますのは人権教育ですけれども、これは非常に問題のある人権教育が多いんですね。

 代表的なものが、やはり同和教育、それから在日外国人問題とか、この部分にかなり偏っているんです。しかも、それは非常に反日色の強い思想によってその授業の内容というものが彩られて、そういうふうに運営されているんです。

 本来、人権教育というのは、そういうふうな政治的な偏りがあってはいけない。普遍的な観点からやはり人権教育というものの内容が実施されていかなくてはならない。にもかかわらず、極めて反日色の強い、偏向した人権教育が、これは小学校もそう、中学校もそう、高校もそうですけれども、大学もそうですよ、非常にそういったものが日本全国の学校現場でされて、それが放置されている。

 今は政務官がおっしゃったように、文科省としても十分その具体的内容を把握できていない。これは文科省だけじゃなしに、学校長でさえできていない。教室で一部の教員がとんでもない内容の人権教育をしていても、学校長がそれを把握していない事例も数多くあるんです。東京都ですと、あれは養護学校でしたか、変な過激性教育等も行われて、子供に対して、発達段階を無視したようなとんでもない教育もされていた。

 これは、人権教育のそういうふうな問題点というものを、やはり、その大切さからそれを把握をし指導していただきたいというふうに思います。

 そこで、上野政務官もそうですね、それから大臣もそう、胸にブルーリボンバッジをつけていらっしゃいますよね。これは、安倍総理以下多くの自民党の先生方もつけておられ、内閣の大臣もつけていらっしゃる。私も、ちょっと形は違うんですけれども、ブルーリボンに日の丸がついたバッジ、これも、拉致の特定失踪者問題調査会がつくったバッジをずっとつけているんです。

 日本最大の人権侵害といいますと、これはまさに拉致問題なんです。これを上回る人権侵害の問題というのはないと思う。(発言する者あり)だから、猪木さんはどういうふうなあれでしているのか私もわからないんですけれども、学校現場でこの拉致問題を本来もっと取り上げるべきなんですよ。同和問題やら在日外国人問題に偏ったような授業内容も、一部それは必要なものもあると思いますけれども、拉致問題を学校の授業で取り上げなくてはならない。

 全国の中学校に「めぐみ」というDVDを配付されました。ところが、ほとんど学校でそれを子供たちに視聴させていないんです。

 これは、過去の経緯、特に日教組の影響もかなりあると思います。日教組が所属しておりました旧社会党、これは北朝鮮とは非常に親密な関係があって、その北朝鮮が拉致をするということはそんなのあり得なかったんだと最初言っていた。

 ところが、今は現実の問題として、ただ自分たちの過去の至らなさがこれによって露呈するのをやはり回避したいんでしょう、そういう意味もあるのかなと思うんですけれども、拉致問題をやはり人権教育の中でやっていっていただきたい。

 その部分について文科省はもっと強力な指導をやっていただきたいと思うんですけれども、その実態と、これに関しましてお話があれば、大臣、もしよかったらちょっとお答えいただけますか。

上野大臣政務官 先ほども三宅議員にお答えしたように、人権教育・啓発に関する基本計画というのを文科省はつくりまして、その中で、どういう人権の問題を課題にするかという、例えば、(1)女性、(2)子どもとか、(3)高齢者、障害者、そして同和問題、アイヌの人々とか外国人とか等ありますが、その十二番目に、北朝鮮当局による拉致問題等もつけ足されることになりました。

 そして、今お話にありました映画「めぐみ」そしてアニメ「めぐみ」ですが、これは、映画の方が二〇〇六年、七年前に、そして、アニメ「めぐみ」の方が平成二十年に完成しまして、以降、文科省では全国の小中高の学校の方に配付することになっておりますが、まだ全部には回っておりません。そして、これを個人的に欲しいという学校には、また配付も追加でしているところです。

 議員もごらんになったと思うんですが、アニメの方は二十五分程度で短目ですので、こちらの方は小学校とかで見てくれる学校も大分ふえまして、現在、配付した中の百九十三校が、済みません、これは高校でしたね、高校は百九十三校、小学校は百七十五校、そして中学校は百六十七校となっていまして、ごめんなさい、これは映画の方です。映画の方は、九十分と長いのでなかなか見てくれない。それでも高校の方は百九十三校。アニメの方は短いので、小学校でも随分浸透してきたということです。

 文科省としては、この「めぐみ」アニメを見た後の学校においてのその後の感想等をまとめてアンケートとして文科省の方に戻してほしいという事業をしていますが、大変いいことが書いてありまして、このアニメを見たことによって子供たちが、家族とのきずなの大切さを実感した、また、人権問題というものがあることを初めて知ったとか、拉致問題というものが絶対にあってはならないということを実感した等の声が返ってきております。

 さらに、また来年度に向けて事業を行っていく一環で、まだ配付していない学校へも配付していきたいと思っております。

 以上でございます。

下村国務大臣 昨年暮れ、文科大臣に就任した直後、ことしの一月ですけれども、早々に古屋拉致担当大臣と私と連名で、このアニメ「めぐみ」の活用について、各都道府県の教育委員会や都道府県知事宛てに配付をいたしました。これは全ての学校でぜひ見ていただきたいと。残念ながら、今御指摘のように余り見ていないということで、もう一度、再調査を古屋大臣と私の連名ですることになっております。

 また、拉致問題についてのポスターは、第一弾と第二弾、今、第二弾は俳優の津川さんのポスターですが、それも、八〇%ぐらいの教育関係機関に配付して張ってもらうということで、文部科学省の方でも先頭に立って、人権問題にもつながってくると思いますが、対応していきたいと思います。

三宅委員 これは文科省の方からも各学校に通知をされていると思うんです、拉致問題をもっと積極的に取り上げなさいと。ところが、高校の教育現場もそうなんですけれども、多くの教育現場でなかなか拉致問題はやはり取り上げられていない。

 さっき政務官が、十二番目に拉致問題、拉致問題は一番に持ってくるべきですよ、これは本当に。これにまさる人権侵害問題というのは日本にないんですよ。これは最大の人権侵害です。だから、拉致問題の解決は政府の最重要課題であるというふうに政府も言っているんですから、そういうふうによろしくお願いします。

 もう時間も来ましたから最後に、下村大臣は、教育につきまして非常に熱い思いを持っていらっしゃってずっと文科行政にかかわってこられた。そういう中で、過去の教育の問題点、これからあるべき日本の教育の理想像というものをお考えになっていらっしゃると思うので、もしよかったら、その辺、最後にちょっとお聞かせいただければと思います。

下村国務大臣 ちょっともう時間がオーバーしていますので簡単に申し上げたいと思うんですが、日本青少年研究所が、日本、中国、アメリカ、韓国の青少年の意識調査をしているんです。この中で、日本の高校生、自分はだめだ、自分はだめだと時々思うことがある、これにイエスと答える高校生が、二〇一二年には何と八四%もいるんですね。この子供たちが大人になったときに、未来に日本はあるのか。ないと思います。

 ですから、全てこの国に生まれた子供たちも、自己肯定感を持って、自分もすばらしい人間で、世の中に、社会に、国に貢献でき得る人間なんだと自信と誇りを持てるような、そういう教育にぜひ変えていきたいと考えております。

三宅委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。

 以上です。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。

 私は、初めて文部科学委員で質問をさせていただきます。ぜひ、御指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

 私は心臓専門の内科医で、厚生労働委員会も兼任をさせていただいて、いろいろと興味が、厚生労働分野と文科省の分野と周辺領域が重なることも多うございます。きょうは、高校無償化を中心にして、その辺の周辺領域に関しても質問をさせていただければと思います。

 上野政務官、御就任おめでとうございます。地元が栃木県で同じということで、政務官の昔いらっしゃった高校の出身者、実は私の周りにもいっぱいいらっしゃいます。すごく真面目ないい子ばかりで、まさに政務官の教育のたまものかなというふうに思います。

 それでは、早速質問させていただきます。

 九百十万円を境にしている。その額は今までさんざん議論がございました。この額はともかく、所得制限をつけるというところの根幹にあるものは、やはり、所得捕捉をどれだけ正確に国がしているのかと。九百十一万の人は受けられない、九百十万円の人は受けられる、その一万円の差で大きくまた所得が変わってくるところ、これは仕方がないことだとは思うんですが、しかし、そのよって立つところの所得捕捉が、やはり、かなり厳峻なものでなければいけないと思うんです。

 そこで、厚生労働行政では、生活保護の問題を議論するときに、必ずこの所得捕捉の問題、避けて通ることはできません。

 一枚目の資料なんですけれども、「所得捕捉率の主な推計」、財務省にこの資料を出してくれと言いましたら、当然、所得捕捉率は一〇〇%だからないということでございました。ただ、二〇〇一年、経済産業省から出している所得捕捉に係るデータに関しましても、やはり、職業によってはかなり所得捕捉率が低いなというものがございます。

 今回の高校無償化に関しては、我が党は賛成をいたします。賛成をいたしますが、やはり、この所得捕捉にかかわる大臣の御認識、御見識をしっかりとお聞かせ願って、その心を固めたいと思います。よろしくお願いします。

下村国務大臣 収入や必要経費の把握が公正であるかどうか、これが課題であるというふうに思いますが、あくまでもこれは税務執行上の課題であるというふうに思いますし、これからも、できるだけ早く是正をしなければならないことであるというふうに思います。

 しかし、これを待っていたらなかなか制度改革は進まないわけでございまして、この新制度における所得確認については、サラリーマンや自営業者などの職業にかかわらず、課税証明書等で市町村の市町村民税所得割額を確認するということになっております。

 児童手当など他の給付制度でも、基本的には課税所得により判断しているところでありまして、文部科学省としても、市町村民税所得割額で確認する方法が現時点においては最も公平であると考えております。

柏倉委員 やはり、所得が多い少ないでこの給付が受けられないという状況がある以上、それを文部大臣の方からも当局にしっかりと所得捕捉、これをさせてほしいという旨を伝えていただきたいと思います。

 我が党は、我田引水になりますが、歳入庁というものをつくって捕捉率一〇〇%を目指すんだということを常々訴えております。その歳入庁の設置等々に関して、今後ともまたほかの委員会で議論させていただくとは思いますが、大臣にも、念頭に置いていただいて、そのときは御協力、御審議いただければと思います。

 次は各論で申しわけないんですが、いろいろと私も実際にこの制度について質問をされることがございました。どうしても私ではわからないという部分も、各論ではございますが、質問をさせていただきたいと思います。

 今回、先ほど大臣がおっしゃった、親、保護者の所得証明ということから収入をきっちりと捕捉するということでございました。これは根本的なことなんですが、なぜ、世帯別ではなくて親、保護者の所得で判断をするのか、お聞かせください。

前川政府参考人 今回の制度におきます所得制限に係る所得の把握の方法でございますけれども、これは、保護者の収入の総額をベースにした課税所得、それを基準としたいと考えております。

 これは、それぞれの家庭で家族構成は異なるわけでございますけれども、個々の家族の状況をつぶさに把握することの困難さ、また、他の給付制度における所得の把握の方法、また、制度全体を円滑に運用するための事務負担などを考慮した上で、この方法が適当であるというふうに考えたところでございます。

柏倉委員 当然、かなりの世帯を対象とする調査ですから、生活保護の調査のようにはいかないというのはよくわかります。

 そこで、現行のいろいろな制度との兼ね合いないし、脱税と言うとちょっと言葉は悪いんですが、そういうことがあった場合どうするのかということもお聞きさせていただきます。

 まず、これから、教育資金優遇ということで、お孫さんに一千五百万円は課税なしで贈与できるということになります。

 そういう場合、こういう例は現実にあるかどうかわかりませんが、親は所得が物すごく低い、二百五十万いかない、しかし、おばあちゃんはいっぱいお金を持っている、おじいちゃんはいっぱい持っている、それで千五百万円を相続する、非課税、そういうケースがあるかもしれません。

 そういう場合でも、やはり親の収入によって無償化していくんでしょうか。

前川政府参考人 この所得制限における所得の把握に当たりましては、先ほど申し上げたところでございますけれども、現行の高等学校等就学支援金における低所得者加算の際の所得の把握と同様に、親権者でございます保護者の市町村民税所得割額を使用するということを考えているわけでございます。

 仮に教育資金の一括贈与が行われた場合、本件贈与につきましては、主に祖父母から孫へという形の贈与であるわけでございますが、その際、親権者である保護者の市町村民税の所得割額には反映されないわけでございまして、こういった個別の事情を考慮することはなかなか制度上難しいということで、保護者の市町村民税所得割額で判断するということで、本件の所得制限にはこの一括贈与は影響はないということになると考えております。

柏倉委員 教育が国の投資であれば、親が幾らお金を持っているかは全く関係なく教育を充実させるということなんでしょう。それで言えば、親の収入というのは関係なく、やはり、完全に無償化するという方がスマートなのかなというふうには思います。

 あと、もし、例えは悪いんですが、脱税を親がしてしまった、九百万円で申告したけれども実際は一千万円あった、それが翌年ないしその次の年に発覚した、そういう場合、子供は無償化が確保されているわけです。そういう場合は、これは遡及してお金を納めるんでしょうか、それとも納めなくてもいいんでしょうか。

前川政府参考人 仮に脱税などの不正受給があった場合につきましては、これは、法令の手続に従いまして、遡及して返還していただくことになると考えております。

柏倉委員 非常に事務手続も煩雑になるかと思うんですが、どこまでいっても所得でそういった差が出るということですので、やはりきっちりとした対応、これを心がけていただきたいし、現状、そういったケーススタディーがある程度されているのであれば、しっかりとそれを国民に伝えていただきたいと思います。

 やはり、サービスを受けられない側の人たちというのは非常に敏感になっているのも事実でございまして、サービスを受けられない四分の一の方、そういった方へもしっかり情報を流していく、これはやはり政府の責務だと思います。よろしくお願いします。

 続きましては、奨学金について質問をさせていただきます。一部は高校、そして一部は大学の奨学金にわたりますが、御容赦いただきたいと思います。

 まず最初に、神奈川県では非常に独創的な高校の奨学金を設けております。我が党の松沢前神奈川県知事も携わった奨学金制度なんですが、これは、頑張った人は返さなくていい、そういう奨学金でございました。

 所得が三百十二万円以下というそういう縛りは当然あったんですけれども、平均評定値が四・六、非常に高いんですけれども、学業で頑張った人、そして部活で頑張った人、そして特別活動で頑張った人、そういう人は返さなくていいよ。そして、高校ですから卒業して働く人もいる。例えば、介護福祉士で頑張った人、助産師、看護師、保健師で頑張った人、そして養護教諭で頑張った人、こういう人たちは、頑張ったということで返さなくてもいいよという奨学金が神奈川にございます。

 私の知る限り、こういった頑張った人が報われる奨学金は、高校においては神奈川県だけなのかなと思います。

 もちろん、今回は制約された財源の中での話ですので、これはエクストラの財源になってしまいますので議論に限界があるのは承知しておりますけれども、もし財源のめどが今後つくようなとき、やはり頑張った人が報われる、自助努力が報われるこれは奨学金ということだと思うんです。こういった奨学金をやはり国は地方自治体の独創性に任せるだけじゃなくて、国も後押ししていくべきじゃないかと思いますが、その辺の御見解をいただければと思います。

上野大臣政務官 柏倉議員にお答えします。

 奨学金制度については、高等学校の場合、高等学校奨学金事業がございまして、平成十七年度以降、日本学生支援機構から都道府県に移管されて、それが各都道府県における奨学金事業の円滑な実施のために、国としては、奨学金の原資として、平成十七年度から一定期間として、十から十五年間にわたり、総額約二千億円を交付しているところでございます。

 今、国としてやっているのはその移管しての交付ということでございますが、この奨学金事業というのは、現在は各都道府県の事業として実施されているところであり、私も神奈川の事例を見させていただきましたが、御指摘のような制度がありましたらすばらしいと思いますが、返還のいわゆる免除も含めた支給の要件について、各都道府県において適切に判断して実施されるべきものと考えております。

 給付型奨学金というもの、なくてはならないということを私自身もずっと考えておりまして、特に、児童養護施設等で進学できないで、また、この奨学金をもらって進学しながら、返す当てもなく途中で断念するようなお子さんもたくさん見てきておりますので、国としても、何とかしていける方向に検討していきたいとは思っております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 今、児童養護施設の話も政務官から出ました。この後、その話をさせていただきますので、よろしくお願いします。

 次は、授業料の大学の減免制度等についてお伺いします。先ほどからも話には出ておる話題ではございますが、改めて議論をさせていただきたいと思います。

 二枚目の資料にグラフが二つございます。上が、「両親年収別の高校卒業後の進路」というものがございます。年収二百万円以下の人というのは、四年制大学、短大を合わせても、それよりもやはり就職する方の方が多い。こういう現状になっております。本当に希望がそうなのかわかりません。類推の域を出ませんが、できれば、やはり進学したいんじゃないでしょうか。この二八・二%、三五・九%、数値目標を掲げるのは大変難しいと思いますが、具体的には、これを逆転させていくために国がいかに取り組みをしていくかということが大切ではないかなと思います。

 それで、次の下のグラフを見ますと、これは年収別に高校卒業後の進路をやはり書いてあるんですが、今度は、短大、私立大学、国立大学、こういった別で書いております。どの層をとってみても、やはり私立大学の方が多いですね。

 国立大学は、どの層でもある一定のパーセンテージ、大体一〇%前後におさまっています。やはり国立大学というのは、その授業料減免の制度、これが非常に整っているということの証左であると思うんです。

 私立大学は、当然経営もあります。当然、そうでない、しっかりと整っている大学もあるのは承知しています。しかし、平均的に、やはり私立大学におけるそういう給付型の奨学金サポートがこれは足らないということのあかしであると思います。

 現実に、学力、あと、自分の将来的な希望ですね、それによって私立大学に行かれるとは思うんですが、低所得で私立大学に行かれる方、こういった方にやはりもっと給付型の奨学金、ないし、非常に率の低い奨学金というものを国は考えていくべきなんじゃないでしょうか。

上野大臣政務官 柏倉議員にお答えします。

 経済的理由により、低所得世帯の子弟も含め学生等が進学を断念することがないように、議員と同じ問題意識で、経済的支援を充実することは重要な課題であると国も思っております。

 現在、国立大学の授業料の標準額は約五十四万円、私立大学の授業料の平均は約八十六万円ということで、かなり差があります。

 日本学生支援機構の奨学金の貸与月額については、現在、国立大学よりも私立大学の方が、ややですが、高く設定している状況でございます。

 また、加えて平成二十六年度概算要求においては、国として、無利子奨学金の貸与人員の大幅な増員や私立大学の授業料減免の充実、また、延滞金の賦課率の引き下げなど、本当に困っている奨学金返還者への救済措置の充実を図っていく予定でございます。

 安心して奨学金の貸与等を受けて大学等に進学できる環境を整備すること、本当に大事だと思って実感しております。

 また、学生等への経済的支援を充実するために、本年四月から、より効果的な経済的支援のあり方について検討しているところであり、今後とも、国立大学だけでなく、私立大学にも、低所得世帯の子弟も含め学生等が進学できるよう、教育費負担の軽減に努めてまいりたいと思います。

 このことについては、本当に下村大臣、一生懸命に取り組もうという意欲を見せてくださっていますので、一緒に頑張りたいと思います。

柏倉委員 ありがとうございます。

 次の質問は、大臣、済みません、お願いいたします。

 いろいろな奨学金のあり方があるかと思うんですが、海外のいろいろな奨学金、主に大学ですね、それを比較しますと、アメリカでは三階建てになっていて、低所得者用に奨学金もしっかりある。イギリスもそういう形になっている。

 特異的なのが、オーストラリアの奨学金が、行きたい人はみんな行ってくれ、お金は全部払いますよという奨学金なんです。それで、行って卒業したら、年収に応じて返しなさい、所得がない人は払わなくていい。当然、そういう毀損する部分はあるとは思うんですが、教育というのが投資であれば、残念ながら返せない人、そういった人たちの毀損部分はやはり甘受して、私は、国がしっかりとこの奨学金制度を牽引していくべきだと思うんです。

 私、大臣のホームページ、ずっと見させていただきました。素人の私でもわかる、そして情熱が伝わってくる非常にすばらしいもので、そこに、オーストラリアの大学進学率が九五%、六%だというふうに書いていらっしゃいました。

 ここまで高いといろいろな弊害もあるのかもしれません。しかし、やはりできるだけ多くの方に、収入によらず、学問をする、教育を受ける機会を与えようと思えば、収入ですとかいろいろなバロメーターで所得制限をつけるよりも、ぼんとわかりやすく、みんな行けるんだ、そういう制度にするのも一つの考え方なのではないかなと思いますが、大臣の御所見をお願いいたします。

下村国務大臣 柏倉委員から貴重な提言をしていただきまして、ありがとうございます。

 先ほどの神奈川の方式も、私は、すばらしいアイデアだというふうに聞いていて思いました。ああいうふうなことをすることによって、もっと頑張ろう、そのことによって奨学金を結果的に返さなくてもいいということは、プラスの動機づけになると思いますし、ぜひこれは活用すべきだというふうに思います。

 このオーストラリアの事例も、収入に応じて大学の授業料を返還するような方式というのは、私は知りませんでした。ですから、これは本当にすばらしいことだと思います。

 実は、オーストラリアの方式は知らなかったんですが、同じことを考えていたんです。文部科学省の中で、きょうも午前中からいろいろと質問が出ておりましたが、財務省任せでは、百年たっても教育公的支援はもうふえません。ですから、みずから財源確保を考えていかなければならないという中で、先ほども申し上げていたプラス十兆円というのは、余りにも額が大きいし、それを税制上で導入するとしたら相当大変な話ですから、一気にそこまではいかなくても、しかし、いろいろな制度設計を使う中で、実は所得税の中に、例えば大学を卒業した人は、その所得税に応じてプラス教育目的税の負担額を、年収三百万以上は例えば一%にするとか、一千万いけば五%にするとか、累進課税的な形で所得税の中にプラス教育目的税のようなことを省内では検討していたところでありました。

 その中で、オーストラリアで既にそのようなことが行われているということはきょう初めて私も存じ上げたということでありますので、ぜひこのオーストラリアのことを参考にしたいと思います。それはやはり、世界で一番の大学進学率がオーストラリアで、九六%だということですね。

 大学進学率だけが全てではありませんが、しかし、これから日本が経済成長を遂げていくためには、それを支えるための優秀な人材をやはり育てていく必要があると思います。優秀な人材というのは、高度な教育力を身につけることによって優秀な人材になるわけですし、高度な教育力を身につけるためのチャンス、可能性というのは、やはり、大学がどの程度充実したものがあるのかどうか、そして、その大学の中でそれだけを身につけられるチャンス、可能性が経済的に担保されているのかどうかということは大変重要なことだと思いますので、改めて、省内でこのオーストラリアの事例を研究させていただきたいと思います。

柏倉委員 恐縮でございます。大臣もお疲れのところ、どうもありがとうございました。

 次は、先ほど上野政務官の方からお話しありました児童養護施設の教育体制に関して質問させていただきたいと思います。

 光のないところにも光を当てて、やはり貧困の連鎖を断ち切らなきゃいけない。私は、手前みそですが、子どもの貧困防止法の、野党の方でしたけれども、提案者の一人に加えさせていただきました。

 五百八十五、全国で児童養護施設があって、約三万人の入所者がいらっしゃる。そういった人たちが、よるすべもなく、施設の職員さんたちは非常によく見てくれているのは私も知っております。しかし、やはり実の親ということになりますと違ってまいりますし、この三枚目の資料ですけれども、「進学、就職の状況」というところがございます。児童養護施設児が千五百四十三人、平成二十三年度末ですけれども、卒業して大学に行ったのが一一%、百六十九人ということでございます。これは低くてもいいんだということではなくて、現在の平均である五三・九%にいかに近づけるかという議論をやはりすべきだというふうに思います。

 では、実際にどういった受験体制といいますか学習環境に置かれているのかというところが、非常に我々には見えてきません、話を伺ったり見学させていただいても。実際、通年で、そして、小中高といった流れでどういった学習体制、進路指導をされているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 児童養護施設に入所している児童ができる限り一般の家庭の児童と同じスタートラインに立っていけるように学習支援を充実していくことは、これはまさに、先生御指摘のように、重要なことだと思っております。

 その中で、今の施設の指導の実態でございますけれども、これは、各施設がいろいろ創意工夫を凝らして実施をしております。

 基本的には、施設の職員が勉強を教えたり、あるいは、大学生などのボランティアを活用して取り組みをしているということでございます。

 特に、大学の進学を希望しておられるお子さんにつきましては、各施設が高校と連携をして、最大限児童の希望を尊重できるように、例えば、先ほどからございます奨学金の御紹介とか、そういったことも含めてきめ細かな進路指導を行っているというふうに承知をしております。

柏倉委員 だが、実際にこの一一%という数字なわけですよ。奨学金の紹介はしますということなんですが、当然、奨学金をもらって、アルバイトもして卒業しなきゃいけない。残念ながら、中途退学される方も当然多くなるわけです。この児童施設を出られた方の一割弱は生活保護に行ってしまうというデータもあります。やはり、自分の学ぼうとする意思、そして大学で勉強すること、それをいかに後押しするかということの具体的な支援策、現状はよくわかりました。

 ただ、やはり多くの入所者さんたち、施設にいらっしゃる方は迷っていらっしゃる。私、次の資料につけてありますけれども、ネットで見つけました。これはヤフーの知恵袋ということなんですが、「児童養護施設のこどもの進学について質問です。」というものです。

 今は児童養護施設で暮らしている新高三です。経済面で大学に行けるかどうか心配です。状況は、両親はいますが、不仲により児童養護施設にいます。バイトをして卒業までに三、四十万円たまります。卒業時には施設から二十万円くらいもらえます。しかし、どうやっていいかわからない。最悪、全額無料にしてくれるある大学に行かざるを得ない。

 やはり、そういうような悩みをネットでつづるこの子の気持ちを考えますと、なぜそれを直接聞いてあげられる体制にないのか。そして、ここに出てくる三、四十万、二十万を足しても六十万、五十万ですよ。それでは私立の入学金、授業料を払えないです。こういうやはり非常に経済的に、そして、これはアドバイスしてくれる家族環境も非常に劣悪な状況の中で、必死に自分の力で一人前になろうとする子供たちの支援体制が全然見えてきていないんですね。

 ただ、一方では民間は、やはり基金を創設したり、ゴールドマン・サックスというような会社は、お金を出して大学卒業までを見据えた支援を行っている。次の資料にそういったことが書いてございます。

 これは、数は少ないとはいっても、今回、低所得者に対する教育充実を掲げているわけです。この子たちにとっても、該当はしないかもしれない、お金は全部出してもらっているから。しかし、お金を出してもらっている以上に、やはり受験でチャレンジしていく、未来への夢を自分でつかみ取っていく、そういう状況とはほど遠い状況に置かれているわけです。

 こういう子たちをいかに国は支援をしていくのか、ないし、こういった民間の支援する動きと協調していくのか、そういったところをお聞かせいただければと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省といたしましては、大学への進学を希望するお子さん、この方々が経済面あるいは生活面の不安で進学できないといったことではなりませんので、まずは、高校の在学者に対しまして、進学のために必要な講習の経費、それから、進学をされるときの学用品等の準備経費、こういったものについて支援をさせていただいております。

 それから、大学に進学した後も、先生御指摘がありましたように、生活が不安定で引き続き支援が必要だ、こういうお子さんもいらっしゃいます。こういう方につきましては、十八歳を超えても二十まで入所施設に引き続き入所できる、こういった仕組みがございますので、こういったものを現場とよく相談して活用していただくように、都道府県にも通知をしているところでございます。

 それから、二十六年度の予算要求におきまして、授業料の支援、これは今高校まででございますけれども、これを大学まで広げるということ、それから、先ほど申しました学用品などの準備費用、これにつきまして、今、大学に進学すると同時に施設を退所した場合だけに限っておりますけれども、在学中に退所をした場合、つまり、大学に入学してから施設を出る場合、これも、自立支援としてこういった学用品の支援ができるようにといった要求を行っているところでございます。

 それから、今先生御指摘のように、民間でもさまざまな取り組みをしていただいております。こういった取り組み自体につきまして、子供たちに対する物心両面での温かい支援ということはもちろんでございますけれども、社会の理解の醸成、支援の輪を広げるということもございますので、大変意義深い取り組みだと思っております。

 私どもとしましては、こういった方々とよく緊密に対話をいたしまして、国としてどういった支援ができるのか、あるいはどういった役割分担でこういった支援を進めていけるのか、そういったことにつきまして引き続き検討を深めてまいりたいと思っているところでございます。

柏倉委員 もっと手厚く、特別にというわけじゃありませんけれども、常に、こういった子たちがいて、制度設計に残念ながら組み込まれない状況である、しかし我々は忘れてはいけないんだというところを政府はきっちりと真剣に受けとめていただきたいと思います。

 そもそもなぜこの議題をさせていただいたかといいますと、赤ちゃんポスト等々で、今、子供を育てられないということで乳児院に預けられる方が約三万、そういうようなお話がございます。トータルでそれぐらいあるということなんです。

 ただ、そういった数の中で、ちゃんと里親が決まる、養子縁組が決まるという方は、残念ながら日本では一〇%ちょっとなんですね。九割近い方はやはり乳児院から児童養護施設に移って、親に会えないまま、養子縁組もできないまま、一人で世の中を渡っていかなきゃいけないわけです。我々が親から受けたような愛情も受けることなく、一人で格闘しなきゃいけない。当然、厚生労働省は、里親というものの制度、もう少し進めて欧米並みにするというふうに言っておりますけれども、なかなかその解決策が見えない。

 とするのであれば、やはり文科省さんにも参加いただいて、そういった弱い立場にある施設の方がしっかりと自分が望む教育を受けられるような、そういう下地を国としても考えていただきたいという思いで質問をさせていただきました。ぜひ前向きに御検討いただければと思います。

 もう時間がございませんが、最後の質問でございます。ちょっと趣が変わりますけれども、今度、矯正施設内での高卒認定の問題でございます。

 光の当たらないところに光を当てると先ほど申しました。こういった、直接無償化とは関係ありませんけれども、学習意欲のある、そして前向きに更生をしていこうとする人たちがやはりいて、そこのところの補助を国はやっていかなきゃいけないということでございます。

 私びっくりしたんですが、いわゆる刑務所と言われている矯正施設から毎年数百人の高卒認定試験の合格者が出るということなんですが、正確な数字を教えてください。

清木政府参考人 お答え申し上げます。

 刑務所や少年院などの矯正施設における高卒認定試験につきましては、平成十九年度から、法務省と連携いたしまして、受験希望者のいる施設内で実施をしているところでございます。

 平成二十四年度におけます状況を申し上げますと、全国で百一の施設の八百七十八人が受験をいたしまして、二百五十人が全科目合格者となっております。また、平成十九年度からこれまでに合計四千六百四十九名が受験し、千四百五十八名が全科目合格者となっているところでございます。

 平成十九年度の開始年度に比べまして、平成二十四年度では倍以上の受験者数という状況になっているところでございます。

柏倉委員 多いか少ないか議論は分かれますけれども、やはり、これだけ前向きに生きようとする人たちがいるんだということだと思います。

 そして、最後の資料につけていますけれども、公立の中学校も刑務所にあるところもございます。そして、しっかりとした学力、最低限の義務教育のレベルの学力をつけて社会に出よう、再犯をしないんだ、そういう非常に前向きな意志のあらわれで、国はこれをしっかり後押しすべきだと思います。

 それで、最後にお伺いします。高校です。公立中学校があるのは、松本にあるとわかりました。高校も、定時制ですけれどもあるというふうに伺っているんですが、どれぐらいあるんでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 受刑者及び少年院の在院者、これは、中学卒業はしておりましても高校中退の者が多くございますので、高等学校卒業の学歴を有していない者というものが多うございます。

 具体的に申し上げますと、平成二十四年の新受刑者、これは新たに刑務所に入った受刑者でございますけれども、この六五・三%、少年院の新収容者、これも同じく少年院に新たに入院した少年でございますけれども、これの九五・九%が高校卒業の学歴を有していないということでございますので、そこで、刑務所と刑事施設におきましては、盛岡、松本、奈良の各少年刑務所に地元県立高校の通信制課程を置いておきまして、それに編入学をさせまして、在所中に高等学校の卒業資格を取得させているところでございます。

 また、少年院では、栃木県にございます喜連川少年院というところにおきまして、希望する在院者を地元県立高校の通信課程に編入学させているという状況でございます。

柏倉委員 喜連川というのは私の選挙区でございまして、地元の高校というのは私が卒業した高校でございまして、そういった縁もございまして、ただ、お話を伺ったら、少年院の通信教育は男性の教育しかないということなんですね。ぜひこれは女子刑務所でもやはりきっちりとつくっていただいて、全国的に、意欲ある受刑者の方々、これはしっかり学習してもらうということは進めていただきたいと思います。

 きょうは、大臣、政務官、どうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 二〇一〇年から民主党政権が実現した高等学校授業料の無償化法案は、二〇一〇年の通常国会に提出され、三月の五日から当委員会で審議入りをいたしました。三月十二日には、民主党・無所属クラブ、公明党及び日本共産党の三会派共同提案により三年後見直しを内容とする修正案を提出し、それも含めて本院で修正可決となったものであります。その点では、成立した法律には、私もいわば与党的立場で責任を負っております。

 あれから三年たって、よもやこのような、授業料の不徴収を廃止して再び授業料を復活させるような改悪案が政府によって提出されるなどとは、夢にも思ってはおりませんでした。

 まず、そのことについて確認をしたいと思うんです。

 現在、七割の高校生が学ぶ公立高校では、授業料の徴収について、第三条でどのように書かれておりますか。

前川政府参考人 現行法の第三条におきましては、「学校教育法第六条本文の規定にかかわらず、公立高等学校については、授業料を徴収しないものとする。」と規定されております。

宮本委員 この第三条の授業料の不徴収という規定は、改正案では一体どうなるか、お答えいただけますか。

前川政府参考人 今回の改正案では、公立高等学校の授業料不徴収制度の廃止を行い、私立高等学校と同様に就学支援金制度とするということで、制度の一本化を図るということにしておりますので、現行法の第三条は削除することになっております。

宮本委員 今回の修正案の最大のポイントはここなんですね。少なくとも公立高校には、二〇一〇年度から導入されている授業料の不徴収、すなわち授業料無償制度をなくし、有償制に戻すという中身なんです。

 しかし、文科省自身、この間、多くの国で後期中等教育を無償としており、高校無償化は世界的にも一般的なものとなっているとはっきり認めてきたはずであります。

 そこで、これも文科省に聞くんですが、OECD三十四カ国で、公立高校の授業料を徴収している国、していない国はそれぞれ何カ国になっておりますか。

前川政府参考人 文部科学省におきましては、OECD三十四カ国の授業料徴収状況の詳細につきまして網羅的には承知しておりませんが、イタリアや韓国など一部の国では授業料を徴収しているものと承知しております。

宮本委員 先ほど、三十一カ国は不徴収であるという答弁を別の質問者にしておられたように思うんですが。三カ国が徴収ということは、三十四カ国から引けば三十一カ国が不徴収。

 きょうは、資料の一に、私が国立国会図書館で調べていただいた結果の一覧表をつけておきました。資料一を見てください。

 有償の三カ国というのはどういう国か。イタリア。イタリアでは、年間授業料が十五ユーロとされておりますから、日本円に換算すれば年間わずか二千円。これはイタリアです。

 韓国では、約百四十五万ウォン、日本円で十一万六千円の授業料が徴収されてきたんですけれども、実はここに、七月三十一日KBSワールドのニュース記事を持ってまいりました。

 韓国では、来年から、高校の授業料の無償化を段階的に進めていくことになりました。これは、朴槿恵大統領が昨年末の大統領選挙の際に公約した政策の一つで、大統領府青瓦台と与党セヌリ党が三十日に合意して決めたものです。それによりますと、来年から僻地所在の高校の授業料を無償化した後、二〇一七年までに全国の高校にまで拡大することになっています。いよいよこれから韓国も、全国的に授業料は不徴収、無償、こうなっていくわけです。

 スイスという名前もある。これは三角形になっておりますけれども、有償は一部の州であって、他は無償ということになっております。

 国際人権規約でも、このことが確認をされております。

 社会権規約の十三条二項(b)には、「中等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。」こういう条文が掲げられて、教育は人間が人間として生きていく上で不可欠なものであり、子供たちが学ぶことは社会の財産である、こういう理念が国際人権規約でも示されているわけです。

 これは文科大臣に再確認しますが、日本はこの条項を承認しておりますね。

下村国務大臣 承認しております。

宮本委員 そこで、外務省にきょうは来ていただいておりますので、確認をしたいと思います。

 この経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約十三条二項(b)の「特に、無償教育の漸進的な導入により、」ここに日本政府は拘束されると既に外務省はホームページでも書いておられますが、この「無償教育の漸進的な導入により、」という場合の「無償教育」の意味とはどういうことか。授業料無償がこの中に含まれることは当然だと思うんですが、外務省、お答えいただけますでしょうか。

山崎政府参考人 御指摘の、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約におきまして「無償」という文言が使われておりますけれども、これは授業料の不徴収の意味であるというふうに解しております。

宮本委員 社会権規約委員会が一九九九年に採択した教育権に関する一般注釈第十三号及び十一号というものがありますけれども、この中にこの「無償教育」ということの中身についての詳しい注釈が与えられているわけです。フィーズ、授業料はもちろん、私学の施設整備費など、その他の直接的経費も、権利享受への行動抑制につながるし、その実現を危うくする。それらはまた、実際にはしばしば退行措置、リグレッシブとなる。それらの除去は、要請された行動計画で記述されなくてはならない問題である。

 つまり、授業料及び直接的経費も除去されなければならない。それは行動計画でちゃんと、どうなくしていくかを記述されなければならない。そこまでこのゼネラルコメント、一般的注釈というものははっきりと述べているわけです。

 ですから、これも外務省に改めて確認しますが、少なくとも授業料の無償化を進めるという拘束を日本政府は受けている、これは間違いないですね。

山崎政府参考人 御指摘の社会権規約第十三条二項(b)に付されております「無償教育の漸進的な導入」という規定がございますが、我が国はそれに拘束をされております。

宮本委員 昨年の九月、日本政府は、実に三十三年ぶりに、この国際人権規約十三条二項(b)、(c)もあわせてですけれども、留保を撤回いたしました。

 しかし、その翌年にはたちまち無償制度を廃止して有償に戻す。大臣、これはいかにもおかしい話だと思いませんか。

下村国務大臣 まず、OECD諸国のように、我が国においても教育の無償化、これは高校だけではありません、大学教育まで含めてこれから漸進的に目指していくべきことであるというふうに思います。

 その上で、よくおわかりになって御質問を宮本委員はされているわけですけれども、これは、公立高校については無償化ですけれども、私立高校については無償化になっているわけではないわけですね。それでも今回、この国際人権A規約第十三条ついて、民主党政権になってから人権規約として締結をしたという理由は、「中等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、」「すべての者に対して機会が与えられるものとすること。」という規定のもとで、この方向性に沿っているということで、今、パーフェクトの無償化ではないけれども、しかし、この方向性に沿っているということであるわけです。

 同じように、今回の高校授業料無償化の所得制限の導入についても、教育費負担の軽減に努める方向で維持され、かつ、実際の施策が中長期的に見てその方向に沿ったものであると認めるものであれば、人権規約に違反するものではないわけでありまして、むしろ我々は、今回の見直しについては、文部科学省として、より効果的に本制度を実施する観点から、現行予算を活用し、低所得世帯への支援を重点的に行う等の改善を行うものであり、これは人権規約の趣旨をさらに前進するものであるというふうに考えております。

宮本委員 低所得家庭への援助を手厚くすることに大賛成ですよ。あるいは、給付制奨学金の議論がありましたけれども、我々だって求めてきたわけです。

 ただ、今回の法案は、授業料の不徴収となっていた公立高校から徴収するというふうに復活をさせたということを私は指摘したわけでありまして、それは結局、高校生支援の予算の枠をふやさないという狭い土俵で、こっちを削ってこっちへ回すという議論をやるからそうなるわけですよ。

 だから、改めてここで問われるのは、政府と子供たちとの間の約束ですよ。

 そもそも、この制度に踏み出したときに、一体政府はどう言ってこの制度を始めたか。皆さんの手元に、これも資料をつけました。二枚目です。

 これは、公立高校の授業料無償制を導入したとき、文科省が全高校生に配ったチラシの表紙なんです。「社会全体であなたの学びを支えます」「家庭の状況にかかわらず、高校生等のみなさんが安心して勉学に打ち込める社会をつくるため、国の費用により、公立高等学校の授業料を無償とし、家庭の教育費負担を軽減します。」実は今でも、文部科学省のホームページをあければこれが掲げられていますよ。子供たちとのこの約束をほごにする結果になることが子供たちに悪影響を及ぼすということ、大臣、そうお思いになりませんか。

下村国務大臣 まず、現在でもホームページに載っているというのは、これは法案がまだ改正されて成立しておりませんから、それまでは載っけるというのは、これは文科省としては当然のことであるというふうに思います。

 「社会全体であなたの学びを支えます」という見出しは、これはもうそのとおりだと思いますね。これは全く変わっておりません。ただ、その中で、この何行目かのところの「公立高等学校の授業料を無償とし、」ここだけが変更になる、それ以外は全く変更ないということでございまして、もちろん、財源があれば、それは現行制度にのっとって、さらに低所得者層に対する厚い支援や公私間格差を是正する、あるいは給付型の奨学金もさらに導入するということを当然したいと思っておりますが、残念ながら、トータル的な我が国における今の財政状況の中では、今の限られた枠の中で改正案を提出するしかないという段階であるということについてはぜひ御理解いただきたいと思います。

宮本委員 限られた財源論というのはもう少し後で議論したいと思うんですけれども。私は、子供たちの気持ちということをしっかり考える必要があると思うんです。

 ある私立高校の生徒は、こう書いておられます。私たちの学びや成長をたくさんの人たちが支えようとしてくれていることを肌で感じ、だからこそ、自分もまた人々や社会の役に立っていきたいと考えるようになりました。これは支援金制度、無償化制度が入ってですね。以前はいじめの問題など一人で悩んでいた自分ですが、今は大学で法律の勉強をし、それを生かして、社会的に弱い立場にいる人、苦しんでいる人のためになる仕事を将来できたらいいなと思っていますと。

 子供たちは、親の貧富に関係なく社会全体で支えられている、このことを受けとめて、学んだことを社会に今度は役立てよう、社会にお返ししよう、こういう気持ちになるわけですよ。それだけに、始めたばかりの無償制を廃止して有償に戻すというのは、私はやるべき政策じゃないと思うんです。

 公私間格差の是正といいますけれども、ことしの六月九日に開催された「学ぶ権利」の平等について考える全国私立高校生集会、ここで私立の高校生たちが発したアピール、これは高校生がつくったものですけれども、こう結ばれております。「私たちが主張する平等な教育とは、低所得者だけが救われるというものではなく、お金持ちの人もお金持ちではない人も、外国人も隔たりなく本当の意味での平等な教育です。 就学支援金に所得制限をつけないで、教育にかける予算を増やしてください。」

 これが子供たちの願いだと思うんですよ。現場の先生たちも、同じ教室で払う子供と払わない生徒が出ることはと、大変心配をしておられます。

 大臣、こういう子供たちの思いに照らして、教育に悪影響が出ないと言い切れますか。

下村国務大臣 まず、前半の高校生の考え方は大変すばらしいと思いますね。全ての高校生がそういう前向きな発想を持ってもらえると大変ありがたいことだというふうに思います。

 そもそも、今宮本委員が言われた、あるいは後半言われた平等というのが、本当にそれが平等なのかという、私は本質的な部分がまずずれているというふうに思います。つまり、一律的に同じようにお金を、ばらまくというふうに我々は野党のとき申し上げておりましたが、それが本当に平等なのか。今生きている社会の中で、実際格差があるわけですね。先ほどの養護施設の例もありましたが、行きたくても行けないという子供も実際いるわけです。大学進学率が一一%のところもあるわけです。

 どんな子供に対してもチャンス、可能性を与えるということについて、同じように全ての子供に対して均等にお金を出すということが私は平等だというふうには思っておりません。それぞれ能力と志があって、しかし、経済的なハンディキャップがあってなかなかそれが実現できない、そのことについては、少なくともスタートの経済的なハンディキャップをできるだけ是正、改善するための措置を図る、これは国がやるべきことだというふうに思います。

宮本委員 最初に確認したように、まさに諸外国では、そんな所得制限を設けずに、全てに平等に教育費を社会が支えるというのが世界の常識になっている。国際条約でもそれが確認されて、我が国も受け入れている、そこから話が始まっているわけですよ。

 おっしゃるように、格差がある、そのことが学習のアクセスへの障害になっている、これを救わなきゃならないという点では大賛成だ、必要だと言っているじゃないですか。しかし、そのためにこういう格差を持ち込むことが、子供たちに悪影響が出るんじゃないかということを私は指摘したわけです。

 下村大臣も、答弁を聞いておりまして、高校無償化の意義を頭から否定しておられないと思うんです。この法律の審議の過程でも、野党時代の自民党下村博文筆頭理事は、当委員会で、「この高校無償化法案というのは、財源さえ確保されれば、これは望ましい方向性であることは事実です。」こう言われましたし、その後も、答弁でも、きょうも繰り返し、これが維持できるならばその方が望ましいという答弁がございました。

 これは非常に重要な答弁でありまして、先ほどばらまきという言葉を使われましたけれども、ただ単に有償化する方がいいという話じゃなくて、もしも財政的な余裕があれば、やはりそれは全ての子供たちを無償にしていくことが望ましい、これはそういう立場でしょう。

下村国務大臣 そのとおりです。

 ただ、無償化の仕方として、公立高校の授業料相当額を均一に私立についても出すということが、これが無償化だとは思いません。

宮本委員 先ほど、教育予算が抜本的にふえるならば、高校どころか大学も、あるいは幼児教育も全て無償にできるとおっしゃった。そういう大きなベクトルでいえば、それは大臣もその方が望ましい、方向としては望ましいとお考えになっていると思うんです。

 問題は、そういう枠内で議論している限りこれは本当に一歩も出ない。きょうの大臣と私との意見の違いというものは、それは埋まらないのは当然でありまして、私はやはり抜本的に教育予算をふやす必要があるということをまず申し上げなければならぬと思うんです。

 それで、OECDは、加盟国の教育状況の調査結果を「図表でみる教育 二〇一三年版」という形で発表しております。二〇一〇年の日本のGDPに占める教育機関への公的支出の割合は、比較可能な三十カ国中で最下位でありまして、これはもう四年連続最下位であります。大臣も何度もおっしゃっているとおりです。

 これは文科省にまず数値をはっきり確認しておきたい。公財政教育支出総額のGDP比は、我が国とOECD諸国の平均では、それぞれどういう数字になっておりますか。

清木政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一〇年、平成二十二年度の公財政教育支出総額のGDP比につきましては、奨学金等の教育機関以外に対する支出を含めた数字で見ますと、OECD諸国の平均が五・八%であるのに対しまして、我が国は三・八%となっているところでございます。

宮本委員 GDP比でまさに二%の差がある。我が国の国内総生産、GDPはざっと五百兆円でありますから、額にして十兆円、これはおくれているわけです。

 だからこそ、大臣も、第二期教育振興基本計画策定の過程では、OECD並み、二%、十兆円という数値目標を盛り込むことに意欲を示してこられましたし、その後も記者会見や国会答弁で、できるだけ早くOECD並みの公的教育投資を達成すべきだと思うと述べておられます。これは間違いないですね。

下村国務大臣 そのとおりです。

 それで、ぜひ宮本委員にもお願いしたいと思うんですが、私も文部科学大臣になって十一カ月近くたとうとしている中で、教育における公的投資をするということに対しては、本当に財務省の厚い岩盤があります。

 私は、国会におけるこういう委員会の答弁も自分の判断で答弁しておりますけれども、役人が答弁する場合、こういう財政的に関係することについては実は財務省のチェックが必要なんですね。つまり、文科省の役人に勝手なことを言わせない、こういうものがあるわけでございます。

 これがある限り、百年たってもこの国は変わらないというふうに思っておりまして、そのために、文部科学省が毎年毎年概算要求してぜひお願いしますレベルでは、これはもう解決しません。つまり、今おっしゃったOECD諸国並みの五・八%というのは、これは達成できません。

 ですから、今省内でも、みずから、教育財源や税制改正を含めた財源確保についての考え方をぜひまとめていきたいと思っておりますが、それだけでも変わりません。同時に、ぜひ衆参の文部科学委員会、これは党派を超えて、心ある、つまり教育というのは未来に対する投資だ、今この時期に我が国がしっかりとした子供たちに対する教育投資をしなければこの国の未来はないという正しい危機感を持った、党派を超えた議員がきちんと集まってやらない限りは変えられないのではないかという危機感を持って、もうその政策とそして財源論と理念づくりを今省内でやっておりますので、ぜひ御協力をしていただきたいと思います。

宮本委員 いや、六カ月前には二%、十兆円、こうおっしゃっていたわけですね。それは、十兆円を来年度予算でとれるかどうか、そんなことは私も、それは可能かどうかよくよくわかっておりますよ。

 ただ、二%、十兆円でできるだけ早くと言っておられる大臣が、来年度予算で、これは高校一年だけ所得制限を導入して浮かせる金額が三百億円、この三百億円の算段で所得制限を入れなきゃならぬというのは、余りにも私は落差が大き過ぎるんじゃないかと。三年分やったって、わずか九百億円ですよ。十兆円に比べたら一%にも満たないわけですね。

 我々も、さらに手厚い低所得家庭への支援拡充は大賛成でありますし、公私間格差の是正は喫緊の課題だと考えます。給付制の奨学金、これはもう繰り返し私も求めてまいりました。

 しかし、その財源を、世界の流れに反して、子供たちの中に分断が持ち込まれるような無償制の廃止というやり方でつくるべきではないと思うんです。

 先ほど大臣も税制改正にまで言及されましたから、私どもが考えるには、高額所得者に適正な負担を求めると言うのであれば、例えば大資産家優遇の税制を改めて、年収三千万円以上の高額所得者への課税を一九九八年の水準に戻せば約一千億円の所得税が捻出できる。所得の再配分というのであれば、こうしたやり方こそ適正な経済的負担のあり方だと私どもは考えますが、大臣、いかがですか。

下村国務大臣 今の案は魅力的な案だと思います。

 今回の、所得制限を設けることによって財源を浮かして低所得者や公私間格差を是正する、つまり四千億円という枠の中での話だということについても、財務省と文科省の役人同士では、文科省の役人が何十回言っても全くこれは歯牙にもかけない、相手にされない。今の宮本委員の話からすればたかだか三百億かもしれませんけれども、そのために私が直接財務大臣のところに直談判に何回も行って、やっとこの法案を今回出すことを認めてくれた、その程度の話なんですね、実際のところ。ですから、相当大変な話です。

 今回のことについては、もしそれを教育目的税にするということを政府が認めるトータル的なコンセンサスが得られればぜひ進めたい話でありますが、それとはかかわらず平成二十七年度から四五%に見直すということでございます。現在四〇%、もともと、最初の一九九八年のときは五〇%でしたから、半分はそれだけ財源が出てくるということですが、教育目的税として使えるように、共産党でもぜひ支援をしていただきたいと思います。

宮本委員 そういう名前にするかどうかは別ですが、私どもはこういう提案を、我が党としてはお示しをした次第です。

 大臣は繰り返し、安倍内閣の最重要課題は経済再生と教育再生ですと語っておられました。ならば、それにふさわしい公財政の支出を求めるのが当然だと思うんです。ところが、経済再生なるものをめぐっては、大企業の納める復興特別法人税九千億円というようなものを一年前倒しして廃止して、減税してやろうという議論をやっているわけですよ。その一方で、高校生には、その十分の一、わずか九百億の増額も要求できない。子供たちの一部の家庭から取り上げる改悪をやろうとしております。私は、これは本末転倒も甚だしいと申し上げなくてはなりません。

 このような改悪は国会において徹底的な議論が必要です。それを、なぜこうして通常国会を待たずに今国会に提出したのかといえば、子どもの貧困対策法ができて、低所得者対策を急ぐ、給付制奨学金も早くやりたい、こうおっしゃいましたね。大いに賛成ですよ。その三百億は先に出してやればいいじゃないですか。しかし、その三百億の段取りができない。

 三百億なら、我が党は一切受け取ったことはありませんが、我が党以外の政党が毎年毎年山分けしている政党助成金はちょうど三百二十億円ですよ。来年は要らない、高校生の低所得者支援と公私間格差是正に使ってくれと我が党以外の党がみんな言えば、たちどころに来年分は出てくるわけですよ。

 その程度の決断もできない政党がこのような改悪をするのには断じて賛成できないということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 本日もよろしくお願いいたします。

 公立高校授業料の無償化ということで、これは民主党政権で成立をいたしました。今この審査が行われているということをどれだけの人が知っているかなというふうに大変懸念をいたしております。

 先ほどから、低所得者への支援が薄かったのでそれを手厚くするんだというふうに御答弁があるんですけれども、当時、民主党政権では控除から手当へということで、控除といいますと納税者を対象にしておりますので、高額であればあるほどその控除のまた恩恵もあるということで、控除から手当と、直接手当てをして、低所得者にも手厚くなるように、全国国民により公平に支援ができるようにということで、高校授業料の無償化ですとか子ども手当ですとか農業者戸別所得補償あるいは高速道路の無料化等々を目指したわけであります。戸別所得補償については名称が変わり、そして子ども手当は児童手当に戻りました。高速道路の無料化については実験段階で凍結をいたしております。

 最後のとりでが、この高校授業料の無償化という感がしております。ある程度これは浸透しているなというふうに思っていたものですから、今度この制度が変わることについては、生活の党といたしましても大変残念な思いがいたしております。これが民主党政権の目玉政策であったがゆえにこの最後のとりでが崩されるのではないかという感も若干否めないわけでございますが、よもやそのようなことはないというふうには信じますけれども、その辺が大変懸念をしているところでございます。

 この間、政権が一回、二回とかわりまして、大変国民も混乱をしている部分もございます。特に、教育ですとかあるいは社会保障、こうした性質のものは、政権がかわるごとにその理念や制度が変わるのではなくて、やはりしっかりとした議論を踏まえて、この時代に合った、ある程度その見通しの立つ中身に議論を尽くしてその結論を得るということが大変大事ではないかというふうに考えております。

 今、この法案についてはパブリックコメントもしておりませんし、広く一般の国民に聞いていないという現状にございます。そして、地方自治体では、これを来年度から実施するとなると十二月の議会で条例改正をしなければならない、また、全国知事会に至りましても、これまで数回にわたり申し入れなどを行って、拙速な制度の改正に反対をされているという御意見も伺っているところでございます。

 先ほどの下村大臣がおっしゃった財務省の壁ということについて、私はまだよくわからない部分がございますけれども、それを打ち破るためにも、ぜひ世論を喚起して、もっと広く国民の意見を集約していくという作業が大事なのではないかなというふうに思うわけでございます。

 下村大臣は決してこの無償化自体を否定はしていないということでありますので、また来年度の通常国会では、冒頭いろいろと、十項目でしたでしょうか、さまざまな法案の審査が控えているということでもありますし、いろいろな重要な制度改革も控えているわけでございますから、それらを含めて、この高校授業料の無償化についてもまた議論を尽くしていく、そういう方向性について、その可能性について、現在、下村大臣のお考えをぜひ伺わせていただきたいと思います。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

下村国務大臣 高校無償化は最後のとりでだというふうにおっしゃいましたが、やはり財源なき中での四Kというところが問題があったというふうに思うんですね。

 ですから、今回も財源があればこれは今のまま制度維持しながらさらに加算をするということは当然あり得る話ですけれども、限られた財源の中でより効果の上がる政策、そして公正公平な政策は何なのか、真に必要な教育効果は何なのかということをやはり考えなければならないのではないかと思います。政権交代のたびに政策が変わるという話が今後はないように、我々政権は謙虚に、交代することがないように、これから取り組んでいきたいというふうに思っております。

 その上で、今回の高校授業料無償化についてはいろいろな危惧があったことは事実ですが、しかし、今おっしゃったような危惧は全部解決できたと思っていますし、だからこそ、今国会にこういう形で法案を出させていただいているわけでございます。

 都道府県の知事会の了解も得られ、そして、この国会でこの法案が通れば、システム開発等、来年四月からスタートするということでは、四十七都道府県全てが間に合うということを言っていただいておりますし、また私学関係者の方々に対しても了解をとっていることでありますし、あとは早く、今国会で野党の理解をいただきながら、成立についてぜひ御協力をしていただきたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。謙虚に臨んでいくということは大変重要な姿勢だというふうに思っております。

 ただ、教育環境が財源を視点として語られるというのは大変残念な気がしてなりません。OECD先進国においては、ほとんどが当たり前のように所得制限を設けない無償化というものが導入されている中で、なぜ日本だけがこんなにおくれているのかということを率直に考えるわけでございます。ぜひ、下村大臣におかれましては、そのリーダーシップを発揮していただいて、財務省の壁を本当に打ち破っていただきたい、これは国民の、また子供たちの声でもあろうかというふうにも考えております。

 質問をかえさせていただきますが、重なりますけれども、先ほど来、授業料無償化導入による成果について御質問が続いておりました。退学者の減少という成果について私も質問させていただきたいと思います。

 下村大臣、私も東京の選出でございますので、東京都の数字で申し上げますと、東京都教育委員会高等学校指導課の数字によりますと、導入前、二〇〇九年、四十二名の退学者、中退、退学した生徒数でありました。それが導入後、二〇一〇年に四人に減少いたしております。四十二人がこの制度の導入によって四人に減りました。

 これをどう捉えるかなんですが、先ほど来費用対効果というようなお話もありますけれども、四千億に対して意味があるのかどうか、政府内でも見解が分かれているところだということでございましたけれども、四十二名が四名に減ったということについて、大臣の御所見を再度お伺いさせていただきたいと思います。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

下村国務大臣 東京都の調査では四十二名が四名ということで、一定の効果があったんだろうというふうに思います。

 全体的に見ますと、高校中退者数の推移は、平成二十一年度が五万六千九百四十七人が、平成二十二年度五万五千四百十五人、平成二十三年度が五万三千八百六十九人という推移でございます。そのうち、経済的理由による高校中退者数については、平成二十一年度が千六百四十七人、二十二年度が千四十三人、二十三年度が九百四十五人ということで、平成二十三年度の経済的理由による高校中退者は、高校授業料無償化制度導入前の二十一年度と比べると、七百二人減っているわけでございます。

 これは先ほども答弁で申し上げましたが、かつて民主党の文科大臣が、この数字をとって、つまり五〇%削減されている、減っているというので、効果が上がったのではないかということですが、トータル的な数字の五万六千九百四十七人の半分が減っているということであればそれは四千億に対しての的確な評価があったと思いますが、その五〇%というのは千六百四十七人に対する七百二人ですから、その数で四千億円、それだけではないわけですが、そのときの理由はそういうふうにおっしゃっていましたが、それだけを考えたら、費用対効果という考えからしていかがなものか、そういうことを申し上げたわけであります。

青木委員 費用対効果というのは大変なじまない、何となくそういう言葉、響きに感じるわけですけれども、経済的な理由ばかりではないとは思いますけれども、四十二人が四人に減ったということは、私は大変な成果があったというふうに考えています。

 我が子であれば、自分にとっての一人の子供でありますので、それは本当に愛情を持って育てるのは当たり前でありますけれども、やはり政治の視点は、こうした子供たちを我が子のように、社会の子供を育てるという視点で、やはりある意味の情とそして覚悟を持って一人一人に手を差し伸べていくというのが政治の視点であるはずなわけです。

 ですので、費用対効果とか、四千億に対して意味があるなしというふうに政府の中でいろいろな御意見があるということなんですけれども、この後、残された四人をどうしていくのか、一人残さずどうしていくのかというのが政治の考える方向性なのではないかなというふうに思っております。

 そういう意味では、この無償化が導入されたことで、四十二引く四ということで三十八人、三十八人がまず経済的理由で学校に行けなかったけれども行けるようになった、三十八人の子供が、人間が救われたということは、大変大きな喜ぶべき成果であったというふうに思います。これも一つの側面ではありますけれども、この成果が本当に後戻りしないかと大変懸念をしているところでございます。

 先ほど大臣がいろいろと、知事会等々も、自治体の方も環境は整ったというふうにおっしゃってはおられるんですけれども、私、この就学支援金というものの計算方法が複雑で、いろいろ御説明いただいたんですけれども、何度も繰り返し説明をしていただいて、もうページをあっちこっちめくりながらようやくそのときはわかったんですけれども、今見ると、もしかしたらまたわからないんじゃないかなというくらい複雑でございました。

 この就学支援金の計算方法なんですけれども、どういうふうに計算をするのかというのを、ちょっと事例を挙げて御説明をいただけたらというふうに思うんですけれども。

前川政府参考人 就学支援金の額は、ベースは年額十一万八千八百円でございます。公立学校の生徒の場合ですと、その十一万八千八百円が支給されるかされないかということでございまして、その境目が保護者の所得で九百十万円ということなんですが、この九百十万円というのは具体的には何で判断するかというと、これは市町村民税の所得割額で判断することになります。

 これは、九百十万ということですと、市町村民税の所得割額で三十万四千二百円という額、それが基準になるということで、自分のところの収入に対する市町村民税の税額、所得割額の税額が三十万四千二百円以上であるか未満であるかということで、支給されるかされないかということが確認できるわけでございます。

 これは私立学校につきましても同じように、所得制限の額は同じでございますのでその点は同じでございますけれども、私立学校につきましては、年収が三百五十万未満のケース、それから二百五十万未満のケースでそれぞれ、現行においても加算がございます。

 さらに、今回、それに加えまして、五百九十万未満三百五十万以上の世帯につきましても加算をしていこうということで、これは文部科学省として今考えている仕組みでございますけれども、最も低所得の世帯の、二百五十万未満の年収の世帯、これは夫婦二人子供二人のケースを考えているわけですが、そのうち一人が高校生、一人が中学生以下というケースですが、それで二百五十万未満、これはいわゆる非課税世帯でございます。ですから、税金がゼロという世帯でございます。その世帯につきましては、今、十一万八千八百円掛ける二倍、約二十四万円出ておりますけれども、それを二・五倍にするということで、約三十万円支給されるということになります。やはり複雑でございますか。

 私立学校の場合ですと、支給されない人、それから一倍の人、一・五倍の人、二倍の人、二・五倍の人、そういう段階ができてまいりますので、そこはそれぞれの境目がございます。それはいずれも、何で判断するかといいますと、市町村民税の所得割額の額で判断するということですので、いずれにしても、市町村民税所得割額を見ていただければ、自分のところがどの支給に当たるのかというのはおわかりになるはずだと。

 これは、制度が発足することが明らかになりました時点で、十分周知してまいりたいというふうに思っております。

青木委員 局長がおっしゃるように本当に複雑でありまして、公立は二分割ですか、私立が四分割か何かになっているということで、もともとの市区町村民税所得割額というのはどうやって出すのかということもありますし、そもそもそれが何なのか。また、所得割額によっては一・五倍になったり二倍になったり、子供の数によってその基準が変わったりということ。

 大変複雑なこの計算を親御さんがしなくちゃいけないんですよね。

前川政府参考人 まず、支給の対象になるかならないか、これを判断するためには、三十万四千二百円、この数字だけ覚えていれば大丈夫でございます。

 市町村民税所得割額と申しますのは、総収入、全体の収入からさまざまな控除を引きまして、その残った部分がこれは課税所得でございます。課税所得に、市町村民税ですので六%の税金がかかるわけですけれども、それを掛けたもの、大ざっぱに言うとそういうことでございます。それが三十万四千二百円であるかどうか、それ以上であるかそれ未満であるかということで、支給の対象になるかならないかということがわかります。

 ですから、これはもう家族構成がどうであろうと、子供が何人いようと、母一人子一人の世帯であろうと、夫婦それから子供が五人という世帯であろうと、この三十万四千二百円という数字は変わりません。ですから、それだけ覚えておいていただければ、所得制限にかかるのかかからないのかということはわかるはずでございます。

 その点につきましては、制度発足に当たっては十分周知してまいりたいというふうに思っております。

青木委員 今聞いても大変複雑なんでございますが、これを各御家庭のお父さん、お母さんが本当に計算をきっちりして、そして申請ができるかどうかというところをすごく懸念いたします。

 これは、申請ができない場合は授業料を払いなさい、十一万八千八百円支払いなさいということになるわけですよね。

前川政府参考人 所得の確認ができなければ、これは授業料を徴収する対象になってしまいますので、しっかりと申請をしていただく必要があると思います。

青木委員 やはり、原則が有償に変わってしまって申請制にしたがために、本当に低所得者の方々にとって無償が確実なものとなるのかどうかというのは、大変これは懸念をいたすところであります。

 そして、万が一、申請ができずに支払えと言われ、支払えない場合はどうなるのでしょうか。学校の先生が徴収をするのでしょうか。

前川政府参考人 授業料の徴収につきましては、これは各都道府県がそれぞれのシステムをつくっております。通常は、それぞれの保護者の口座からの自動引き落としという形で毎年度一定の時期に納入がされるという形になりますが、そのためには電算システムが必要になってくるということでございます。

青木委員 親御さんが申請ができない場合は十一万八千八百円を支払うということになります。支払えない場合は、その生徒さんはどうなるのか、また、学校の先生がその窓口に当たるというふうにも伺っておりますが、また煩雑な事務作業等々に追われる日々になるのではないかということで、本当に健全な教育現場が保たれるのかどうか、本当に懸念をするところでございます。

 質問をかえさせていただきますが、こちらも先ほど来質問が繰り返されていますけれども、幼児教育から高等教育までの無償化の整合性についてであります。

 政府・与党、本年六月六日、今後の幼児教育の無償化に向けての基本方針をまとめました。

 この中では、環境整備と財源確保を図りつつ、まずは五歳児を対象として無償化を実現することを視野に置き、平成二十六年度から段階的に取り組むものとして、幼稚園と保育所の負担の平準化等、幼児教育に係る保護者負担の軽減に取り組むものと御答弁をされておりますが、一方で高校の授業料については有償にして、そして幼児教育は無償にする、この整合性、筋はどのように御説明されますでしょうか。

下村国務大臣 有償制にするといっても、所得制限が九百十万円だということについては念頭に置いていただきたいと思います。ですから、対象になるのは約二割ぐらいということですね。つまり、九百十万以上の方々が対象ということであります。

 幼児教育は、まず、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、御指摘ありましたが、六月の幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議の取りまとめを踏まえまして、文部科学省としては、平成二十六年度概算要求において、幼稚園と保育所の負担の平準化を図る観点から、低所得世帯、多子世帯の負担軽減を行うため、幼稚園就園奨励費補助の拡充要求をしているところであります。

 つまり、今まで、保育園の父母負担よりも幼稚園、私立幼稚園の父母負担額の方が大きかったんですね。大きかったんです。それを保育園の父母負担並みに合わせた、それが平準化ということであります。

 この幼児教育の無償化については、さきの取りまとめとして、「まずは「五歳児」を対象として無償化を実現することを視野に置いて、平成二十六年度から「段階的」に取り組む」、段階的に取り組むというのは、先ほど申し上げましたが、保育園の父母負担額に合わせるということで、第二子については半額、第三子は無償、ただし、子供が三歳から九歳までの間に二子、三子がいなければ対象にならないということでありますが、それは保育園並みにするということであります。そういう制度設計を二十六年度から段階的に取り組むということになりました。

 今後、どのような対象、方法をすることが適切かどうか、所得制限を導入するか否かも含めて、総合的に検討してまいりたいと思います。

 今回の二十六年度だけでも財源が三百億で、これも相当、今後財源を探してくるのには大変これは苦労する話でもあるんですけれども、要求したから財務省が自動的にオーケーというふうにはまだなっていない中で、これから財源をどう確保するかということは、我々としては最重点項目として位置づけても、なかなか厳しい状況がございます。

 ましてや、幼児教育の無償化を全部実現するためには七千九百億円ですから、これは大変なことで、それだけの額を考えると、今時点で所得制限を導入するか否かもまだはっきり決められない状況ではあります。

 一方、高校無償化制度の所得制限の導入は、先ほどから申し上げていますが、現下の厳しい財政状況のもと、より効果的に本制度を実施する観点から、現行予算を活用し、低所得者世帯への支援を重点的に行う等の改善を行うもので、ある意味、幼児教育無償化と高校無償化の方向性は矛盾するものではないと考えております。

青木委員 九百十万で線引きされているということでありますけれども、先ほどの計算式からしても、低所得者が本当に無償になることが担保されているかどうかというのは大変懸念に思っているものですから、その点が一点。

 幼児教育も、本当に無償にしていただければこれにこしたことはないというふうに思っておりまして、これは自民党の目玉政策であろうかと思いますが、三歳から五歳までを対象とすると七千九百億をつけて実施するんだという意気込みを感じておりますけれども、この高校の授業料無償化については四百九十億あれば所得制限を設ける必要はないわけでありますので、七千九百億とともにこの四百九十億の、どこかほかのところからこの財源を持ってくるというところのやはり努力が、文部科学委員会にその努力が必要なのかなというふうに思っております。

 民主党は高校授業料無償化でやりましたけれども、自公政権は幼児小中高一貫無償化みたいな、そんな大胆な何か打ち出し方をお考えになりませんでしょうか。

下村国務大臣 今、教育再生実行会議で、六・三・三・四制、学制のあり方について議論をスタートしていただいております。

 その中で、義務教育期間をどうするか、現行の九年間をどうするかということと、それから、義務教育期間と別に無償期間をどうするか。つまり、義務教育と無償期間が重なる必要はないのではないかという前提と、それから、そもそも六・三・三・四制そのものがこれからの時代に適応できるのかどうかという論点から今議論していただいております。

 そういう意味で、財源論も、責任を持ちながら、できるだけ無償化に近い層が広がっていくような教育公的支援のあり方についてぜひ検討していきたいと思っております。

青木委員 ありがとうございます。その点につきましては、ぜひ前向きな御議論をお願いしたいと思っております。

 一点だけ確認をさせていただきたいと思いますが、在外教育施設への支援の拡大でありますけれども、日本人学校等とあるのですけれども、この等の中身はどうなっているのかを一点お聞かせいただきたいと思います。

 今、日本人学校ではなくても、高校生のうちから語学学習等々で海外留学をする高校生が大変ふえておりますけれども、こういう高校生に対する支給というのはあるのでしょうか。

前川政府参考人 在外教育施設で日本人学校等といっておりますのは、いわゆる日本人学校、これは、それぞれの都市におきます在留邦人の方々が力を合わせてつくった学校でございまして、こういうタイプの学校で高等学校段階に当たるものとしては、現在、上海にあるものが一校あるだけでございます。

 そのほかに、日本の学校法人が主体となって海外につくった高等学校段階の学校が数校ございます。例えば、早稲田渋谷シンガポール校でありますとか、立教英国学院でありますとか、慶応ニューヨーク学院でありますとか、そういった学校でございますけれども、こういったものを含めまして、日本人学校等あるいは在外教育施設と呼んでおります。

 こういったところに通う生徒のうち所得制限にかからないものについては、今後この支援の対象にしてまいりたいと考えておるところです。

青木委員 日本人学校にほぼ限られるということだと思いますけれども、やはり、グローバル社会で活躍する人材育成をという方針を打ち出されているわけですので、ぜひその枠を超えて、留学高校生についての支援もいろいろな角度からまた御検討いただければというふうに思っております。

 今回の、この授業料無償化が抜本的に変えられるということには、大変残念な思いであります。何とか議論の余地はないものかというふうに思っているところでございます。

 どうしても、教育について財源の視点からの議論ということは、考え方としてすごく貧困というか、大変せこい感じがしてしまうんですけれども、例えば、高額所得者から四百九十億ですか、二割の方から捻出をいただいて低所得者に充てていくということで、先ほどからお話があります、教室の中で支払っている支払っていないという差のみならず、何か支援をされて教育を受けているというような、そんな気持ちにならなければいいな、そんなことも考えるわけであります。

 いずれにいたしましても、やはり文部科学省の役割は大変大きいと私は思っています。一つは、人類としての進化である科学を担い、そして一つは、人格形成にもかかわる教育を担っているという、教育と科学、この二つを担う文部科学省は本当に国の根幹を担っていると思っているわけでございまして、ここに予算がつかないというのは本当におかしいというふうに思っています。

 教育再生を掲げ、グローバルな人材育成を目指している自公政権、また、その先頭に立つ下村大臣にぜひとも実りある財務省との交渉をお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社民党の吉川元です。

 本日最後の質問ということで、他の委員の方の質問とダブるところもあるかとは思いますが、御答弁の方を何とぞよろしくお願いします。

 それで、当委員会で少しお話を聞いておりまして、まず最初に大臣の方に確認をさせていただきたいことが一点あります。

 といいますのも、昨年の衆議院での総選挙の自民党のいわゆる公約、自民党政策バンクですか、それからあとJ―ファイル、二〇一二、二〇一三とそれぞれあります。その中でこの高校無償化についてどのように記述をされているか。全部は言いませんが、要は、「所得制限を設け、真に「公助」が必要な方々のための政策に転換します。」という、若干文言は違いますけれども、こういう書き方をされています。

 一方で、今ほど大臣の御答弁を聞いておりますと、財政がきちんとあれば、高校無償化、今回所得制限を設けているけれども、これは入れることはなかったんだというようなこともお話をされております。

 自民党の公約で書かれている、真に公助が必要な方々のために政策を転換するということと、今大臣がずっと言われていた、財政上の制約の中で、いわゆる政策上効果があるかないかというようなお話もありましたが、その中でやったんだということを聞いておりまして、若干違いがあるのではないかというふうにも感じたんですが、この点について大臣のお考えをまずお聞かせください。

下村国務大臣 御指摘のように、自民党のJ―ファイル二〇一三の中で、高校授業料無償化については、所得制限を設け、低所得者のための給付型奨学金の創設や公私間格差、自治体間格差の解消のための財源とするなど、真に公助が必要な方々のための制度になるように見直しますということでありまして、つまり、今の高校授業料無償化は、真に公助が必要な方々に対して均等に、これは公私も含めてですが、十一万八千八百円が配付されているということで、低所得者や、あるいは、特に私学の低所得の方々に対して必要な就学支援が十二分に届いていない。それをもっと加算する必要がある。その加算する必要があるということが、真に公助が必要な方々ということであります。

 そのための財源として、所得制限を設けてそこにプラスをするということでありますが、今の段階で先ほども申し上げた財源があればというのは、今現実にはないわけですから、ないからこそこのような法案を出させていただいているわけですけれども、ただ、いつまでもないないと言っていて百年たって解決できるのか、解決できないだろうと。

 これは、文部科学省が財務省に対して財源をどこかから探してくれということを期待するのではなくて、みずから財源確保まで考えていかなければ、これは教育における公的支援は全く深まっていかない、広がっていかない。これから我が国が目指すべき方向性として、やはり、教育における軽減策をとっていくということは、将来の日本を考えると絶対必要な施策だと思いますから、そのために、しっかりと戦う文科省になるための財源確保もみずから今検討しているということを申し上げたわけでございます。

吉川(元)委員 ちょっとまだよくわからないんですが、自民党のこのいわゆる二〇一三でも結構ですが、読みますと、真に公助が必要な方のためにと書いてありますけれども、読み方を変えると、財源があったとしても、真に公助が必要じゃない方にはやりませんというふうにも読めなくもないんです。

 そういうことをずっと言われているのかなと思ったら、きょうの大臣の答弁はどうもそうではないというようなことも言われておりますので、その点は、きょうの大臣の答弁の方がお考えであるということでよろしいんでしょうか。

下村国務大臣 理想論と現実論を一緒に話していますので、一緒に聞こえている部分はあるかもしれません。

 まず現実論から申し上げれば、財源が限定されている中で、真に必要な方々へ対する措置を行いたい。しかし、理想論的に言えば、財源を確保して、教育における無償化等の枠をぜひ広げていくことを目指していきたいということを申し上げているわけです。

吉川(元)委員 前向きに認識をさせていただきたいというふうに思います。

 それで、ここからは、通告している質問にも少し触れていきたいというふうに思います。

 他の委員の方からも触れられておられましたけれども、OECD三十四カ国中三十一カ国が高校授業料は無償になっている。それから、対GDP比で、教育への公的な財政支出というのはOECDの平均に比べても大変低い。教育予算に関して、OECDの中で日本というのは後進国だ、大変おくれている国だということの御認識はあるのか。まず伺います。

下村国務大臣 教育においては大変な後進国だと思います。

吉川(元)委員 これは、ことしの三月、本委員会で尋ねたんですけれども、当時、所得制限が入るというようなお話もちらほらと、マスコミベースですけれども、報道ベースですが、聞こえておりました。その際に私の方から、これもずっと議論になりました国連人権A規約の第十三条二項、これの後退ではないかというふうにただしましたが、その際に、制度の改善に向けた対応だということで、大臣の方からは否定をされました。

 ただ、無償化という言葉、不徴収ですけれども、不徴収という言葉が消えたことというのは、漸進的な導入ということからいうと、やはり私は後退ではないかというふうに思うんですが、大臣の見解をお聞きします。

下村国務大臣 国際人権A規約第十三条において、「中等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、」「すべての者に対して機会が与えられるものとすること。」が規定されているわけであります。

 高校無償化制度へ所得制限を導入しても、教育費負担の軽減に努める方向が維持され、かつ、実際の施策が中長期的に見てその方向に沿ったものであると認められるものであれば、人権規約に違反するものではないと思います。

 ですから、今回、この高校授業料無償化を廃案にする、そして財源はもう別のところで使うということであれば御指摘のような危惧ということは当然あるわけでありますが、今回の見直しは、文部科学省としてより効果的に本制度を実施する観点から、現行予算を活用し、低所得者世帯への支援を重点的に行う等の改善を考えているということでありますので、この人権規約の趣旨をさらに前進させるものであるというふうに考えております。

 なお、大学教育以降については、無償教育が行われているわけでは今ないわけでありますけれども、しかし、授業料減免や奨学金の拡充など、経済的負担軽減の状況を踏まえてこの留保撤回がなされているということも御参考になると思います。

吉川(元)委員 これは見方の違いだと言われてしまうとあれなんですけれども、やはりこれは私自身は後退だというふうにも思いますし、また、財政のこともずっと言われておりました。

 前回のこの委員会でも、大臣が、いわゆる教職員の定数の問題で財務省の議論について、「教育がこの国にとっていかに大切かということを全く認識していない中での、目の前の財政だけを考えた、非常に短絡的な結論だ」というふうに考えているというような御答弁がありました。

 まさに、この高校無償化、公私間の格差であるだとか、あるいは低所得者へのさらなる支援であるだとか、そういうことは私も全く否定をいたしませんし、拡充をしていかなきゃいけない。その場合には、やはりパイ全体を大きくしていくことが必要なんだろうというふうにも思いますし、現行の予算の枠の中でのやりとり、その中でのやりとりということでは、やはり、制度の前進とは私は言えないのではないかというふうにも思います。

 次に、所得制限の九百十万についてお尋ねをいたします。

 既に与党内では九百十万円で合意されたというようなお話も聞いております。

 そこで、この九百十万円の根拠というのは一体何なのか、それをお聞かせください。

西川副大臣 吉川先生、御質問ありがとうございます。

 先ほど来、ずっと繰り返し申し上げておりますけれども、今回のこの高校無償化の制度の是正、これは、公私間の格差、あるいは特定扶養控除対策、あるいは低所得者へのさらなる支援、こういう問題を抱えた中で、財源をやはりこの制度の中で何とかということからもこの九百十万というところに落ちついたわけですが、その負担をお願いできる世帯の範囲のバランスということで考えさせていただきました。

 その中で、低所得者として今回加算支給を行っている世帯が約二割なんですね。そういう意味では、今度その負担をお願いさせていただく高所得者の方のつり合いとバランス、そして二割、これをお願いして、現実には二二%の方々です、そこが九百十万の一つの根拠。

 それからもう一つ、実は地方自治体でそれぞれいろいろな支援策を独自にやっていらっしゃるところがいっぱいあるんですが、その中で、京都府が年収九百万世帯まで支援を行っている。ここを下回るとやはり非常に混乱が起きるということで、九百万は上回らないとまずいだろうという判断がもう一つですね。

 それから、この基準、九百十万までいたしますと、就学支援金の加算で、私立のいわば低所得者層に加えて、中間所得者層、子供のいる世帯の収入のおよその中央値である年収五百九十万円の世帯まで支援を拡大できる、そういうことも試算いたしました。

 今回、そういうことを総合的に勘案いたしまして、所得制限を九百十万にしたというのが根拠でございます。

吉川(元)委員 割合でやられたということですけれども、九百十万円、これは両親の収入を合わせたものとして九百十万円ということで、低所得者に対して高額所得者というような言葉を聞きますが、これは決して高額所得者とは私は言えないんだろうと思います。

 といいますのも、ちょっと今たまたま手元にあるのが、平成二十三年の、国税庁が毎年まとめております民間給与の実態調査というものがございます。

 これを見ますと、九百十万円というのは区切りがないので、九百万円超で何%ぐらいの方がいらっしゃるかといいますと、五・五%です。二二%のところまで割合をふやしていきますと、大体五百五、六十万ぐらいのところまで、夫なのか妻なのかわかりませんけれども、高い方の収入がそこぐらいまで落ちるわけです。

 実際、そこまでいかないと二二%という割合が出てこないわけで、果たしてこの九百十万円というものが高額の所得者だというふうに言えるのかどうなのか。そのあたりの認識はいかがですか。

下村国務大臣 高額所得者ではありませんが、高額世帯、上位二〇%ですから、一応そういうところには該当すると思います。

吉川(元)委員 共働きの家庭でいえば、いろいろなパターンがあるとは思いますけれども、例えば子供が二人いるあるいは三人いる、将来の教育費も含めて共働きをしなきゃいけないという中で共働きをされている世帯もたくさんあると思います。そういう世帯というのは、今言いましたとおり、九百十万円というのは比較的容易に超えるということが実際に私は起こり得るんだろうというふうに思います。

 ですから、本来の意味での高額所得者に負担をいただくというのであれば、私は、いわゆるこの制度の枠の中でやるべきではなくて、きちんと、税制を含めてその中での再分配ということを考えるべきだろうというふうにも思います。

 そこで、一点確認させていただきたいんですけれども、今回の所得制限、世帯収入九百十万ということで設けられますけれども、これについては、いわゆる所得の再分配というふうに考えておられるのでしょうか。

西川副大臣 一言で申し上げてしまいますと、教育の機会均等を実現するためということでございまして、今回の高校無償化の見直しに伴う所得制限の導入については、厳しい財政状況のもとで、やはり現行予算をより効果的に活用いたしまして低所得者への支援を重点的に行う、そして教育費負担の適正化、この辺から実質的な教育の機会均等を目指したものとして、今回、御指摘のような所得の再分配ではないと思っております。

吉川(元)委員 所得の再分配ではないということではございますけれども、ただ、言われているのは、支援を必要としないというか、所得が高いところから低いところに制度の中で回すんだということですから、どうしてもその側面というのは否定はできないだろうというふうに私は思います。

 これは先ほどからの議論にありましたけれども、子供の教育については社会全体で支える。今回の改正案でいいますと、子供を持っている世帯の中だけでやりくりをするという形になっていて、私も子供はおりませんけれども、実際に子供のいない家庭、世帯はたくさんあると思いますが、そこが全くかかわらない。そういうことを考えた場合には、やはり税制の中できちんとお金の確保、予算の確保をしていくべきだというふうに考えますけれども、この点についてはどうですか。

下村国務大臣 高校授業料無償化については、自己完結的な形の財源の中で今回は改正案を考えたということですが、今の御指摘のように、教育費の公的支援をもっとふやすということに関して言えば、それは、税制改正とか抜本的な改革を考えていかなければならないと思います。

吉川(元)委員 続いて、実は先日、新聞を見ておりますと、高校無償化についての記事が飛び込んでまいりました。大学の教授、山田教授という方が、「高校授業料の無償化に、所得制限が加えられるという。これで、日本の少子化はますます加速すると確信した。」そういう記事が載っておりました。

 山田教授は、国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査に触れながら、夫婦が理想として持ちたい子供の数よりも実際に持つ子供の数が下回っている理由として、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからという答えが不動の一位になっている点を重視されております。

 先ほどから言いましたとおり、年収九百十万円、一人で九百十万円というのは確かに比較的高い層になると思いますけれども、夫婦合わせて九百十万円というのは決して私は高いというふうに思いませんし、高校授業料の支援に所得制限がつくということであれば、大学まで子供を行かせるということも勘案したときに、どうしても親は、子供は三人は欲しいけれども、でも二人にしようだとかあるいは一人にしようというふうになっていくのではないかという指摘もされております。この指摘に対してはどのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 その山田先生の指摘は、十分状況を把握されていない中での指摘としか思えません。

 それというのも、今回の高校無償化制度の見直しは、低所得者世帯への支援を重点的に行い、実質的な教育の機会均等を実現しようとするものであります。

 むしろ、今回の改正によって、低所得世帯を中心に子供の教育費に係る支援を手厚くするという意味で少子化対策に沿うものであるというふうに思いますし、そもそも、少子化対策をもっとトータル的に考えると、大学ということであれば、これは、今回、給付型の奨学金というのを初めてぜひ高校において創設したいというふうにお願いしているところでありますが、今後、大学においてもこのような給付型の奨学金等々、もっと幅広い公的な教育施策をとっていくというトータル的なことによって少子化対策に資するようなことはできるというふうに思いますが、この高校無償化対策は、今回の改正は、より現実に沿ったものであるというふうに考えております。

吉川(元)委員 やはりその認識といいますか、九百十万円をどうとられるのか、世帯としての収入の九百十万円というものが決して飛び抜けて高いわけではないですし、また、数からしても、二二%ということですから、大体五分の一から四分の一ぐらいの世帯が今回の法案によって高校授業料無償化から除外をされてしまう。

 私は、何度も言いますように、もちろん所得の低い方への支援が不要であると言っているわけではありません、手厚く支援をすべきだと。ただ、そのために二〇%を超える方について無償化から外すということは、やはりこれは、少子化対策ということからも逆行していくのではないかというふうにも思っております。

 ほかにもいろいろと、なぜ所得割なのか、利子割はなぜ入らないのかだとか、あるいは、地方税の場合は過年度の課税ですから、この四月からでいうと二年前の所得に当たります。果たしてそれが実態に適しているのか等々ただしたいことはたくさんあったんですけれども、時間が来ましたので、きょうはこれで終わりたいと思います。

小渕委員長 次回は、来る八日金曜日午前八時三十分理事会、午前八時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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