衆議院

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第4号 平成25年11月8日(金曜日)

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平成二十五年十一月八日(金曜日)

    午前八時四十分開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    井野 俊郎君

      池田 佳隆君    小此木八郎君

      大岡 敏孝君    神山 佐市君

      神田 憲次君    菅野さちこ君

      木内  均君    工藤 彰三君

      熊田 裕通君    小林 茂樹君

      桜井  宏君    新開 裕司君

      武井 俊輔君    冨岡  勉君

      永岡 桂子君    野中  厚君

      馳   浩君    比嘉奈津美君

      福山  守君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君    菊田真紀子君

      細野 豪志君    吉田  泉君

      遠藤  敬君    椎木  保君

      三宅  博君    中野 洋昌君

      井出 庸生君    柏倉 祐司君

      宮本 岳志君    青木  愛君

      吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   参考人

   (日本私立中学高等学校連合会会長)        吉田  晋君

   参考人

   (全国専修学校各種学校総連合会常任理事)

   (全国高等専修学校協会会長)           清水 信一君

   参考人

   (京都造形芸術大学芸術学部教授)         寺脇  研君

   参考人

   (千葉大学名誉教授)   三輪 定宣君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月八日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     武井 俊輔君

  桜井  宏君     神田 憲次君

  新開 裕司君     福山  守君

  野中  厚君     井野 俊郎君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     野中  厚君

  神田 憲次君     桜井  宏君

  武井 俊輔君     大岡 敏孝君

  福山  守君     新開 裕司君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     池田 佳隆君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、日本私立中学高等学校連合会会長吉田晋君、全国専修学校各種学校総連合会常任理事、全国高等専修学校協会会長清水信一君、京都造形芸術大学芸術学部教授寺脇研君及び千葉大学名誉教授三輪定宣君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位から一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 それでは、まず吉田参考人にお願いいたします。

吉田参考人 ただいま御紹介いただきました、日本私立中学高等学校連合会の会長をしております吉田でございます。本日は、このような場をいただきましてありがとうございます。

 早速ですが、本題に入らさせていただきます。

 現行制度におきましては、低所得者でも私学を選択しやすくなったことは事実ではございますが、公立高校が無償という表現がされた分、ほぼ同額の支援が私学に実施されましても、感覚的には無償の公立高校を選択しやすくなった面もあるように感じております。

 そういう意味では、現行の制度は、国公私立を問わず、高校生全員に原則として一律同額を支給するものでございますので、今回の所得制限を導入することにつきましては、本来であれば、現行制度に上乗せする形で就学支援金を充実していただけるのが一番望ましいものとは思うのですが、現在の我が国の財政状況に鑑みれば、高所得者には授業料を御負担いただき、その財源を、文部科学省が提案しております公私間格差の是正や低所得者支援の施策に充てるということは、低所得者層や中所得者層でも私学の授業料負担が軽くなることから、受験生の学校の選択肢が広がることになると思い、大変ありがたいことと思っております。

 そういう意味でも、ぜひ、可能な限り早期の実現をお願いするところでございます。

 文部科学省は、就学支援金の加算分につきまして、現行の加算限度額三百五十万円を超えるところにも、私学に通学している、例えば年収五百万円、六百万円くらいの中間所得者層までは、家計に対する負担が大きく苦しい、そういったことを御理解いただき、いい方向にかじを切っていただけたものと感謝申し上げます。

 また、現行制度におきましては、この就学支援金に対する各都道府県が実施しておりますさらなる加算分についてかなり大きな格差がございましたので、今回のこの国による加算制度によって、その都道府県格差の是正を図れるものと期待しているところではございます。

 ただ、今回の加算制度によって、この都道府県単位で実施されておりました独自の加算部分の経費が、言い方は悪いかもしれませんが、浮くことになると思いますので、政府、文部科学省におかれましては、今回の法改正の趣旨に鑑み、その浮いた経費部分を、さらなる独自の支援の充実並びに私学振興のさらなる充実に資していただきますよう御指導をお願いしたいと思っております。

 この制度の実施に伴いまして、所得の確認作業におきましては、その対象生徒数が、現行の二〇%強から八〇%前後まで増大されることが予想されます。また、新制度発足当初は、現行制度との二種類の事務処理が必要となります。これに対する各学校の事務量の増大はもちろんでございますが、現在の個人情報保護の時代におきまして、各学校がほとんどの保護者の最大の秘密事項とも言えます所得を確認することになりまして、学校という教育現場にふさわしい状況とは言えません。また、生徒が親の収入の格差を意識するような事態が生じないよう、その取り扱いには多くの問題があるものと考えております。

 そういう意味でも、極力学校がこういった個人情報にかかわらずに済むような方策を実施していただきたく存じます。例えば東京都におきましては、その外郭団体でございます東京都私学財団に委託し、学校が具体な保護者の所得状況を知る必要のない制度が実施されております。

 ぜひとも、安全で、かつ合理的な方法の確保をお願いしたいところでございます。

 さらには、この支援金は、各学校が代理受領し、保護者の皆さんが納付される授業料と相殺される制度となっておりますので、所得の確認作業がされるまでは全ての生徒に授業料全額を納付していただく必要があり、支援金の振り込み時期によっては、各保護者に学校がかわって返金をしなくてはならないような状況も発生いたします。

 こうしたさまざまな事務的な問題もしっかりと国の御指導で進めていただきますように、重ねてお願いするところでございます。

 さて、本法案が成立されたとしましても、この具体の支援策が確定されるのは年末の予算編成過程においてであると承っておりますが、ぜひともこの文部科学省案の関連支援策を原案どおりに予算編成において確保していただきますように、改めてお願いするところでございます。

 また、私立学校におきましては、既に明年度の受験生や保護者への授業料等の説明が始まっております。少しでも早くその内容が確定されますことによって学校選択の枠が広がるものと思いますので、法案という壁、予算編成という壁もあるかとは存じますが、一日も早く、この新たな支援策及び関連施策の具体案につきまして、文科省、そして自治体、またマスコミ等を通じて、可能な限り速やかにかつ詳細に周知していただくことを、ぜひ御協力をお願いしたいと思っております。

 最後に、私ども私学といたしましても、先生方の深い御理解のもと、この制度の趣旨にも鑑み、保護者負担を少しでも軽減する、そういう意味で学費の増額は抑えております。にもかかわらず、既に県によっては、この支援金が増額するということに伴い、私学への補助金はふえているのだから経常費補助を削減するなどという方針を立てていると言われております。今回の支援策によって保護者負担が軽減されることは非常に望ましいことではございますが、各学校の教育条件を改善するための運営費の増加に直結するわけではございません。

 改めまして、私学振興助成法の目的でもある父母負担の軽減はもちろんのこと、私立学校の教育条件の維持向上、そして私学の経営の健全性を図るという点も鑑みていただき、私立高等学校等経常費助成費補助金の拡充につきましても格段の御配慮をお願い申し上げまして、私立の中高の意見とさせていただきます。

 どうも本日はありがとうございました。(拍手)

小渕委員長 ありがとうございました。

 次に、清水参考人にお願いいたします。

清水参考人 私は、全国専修学校各種学校総連合会の常任理事、並びに、その下部組織であります全国高等専修学校協会の会長を務めております清水でございます。どうぞ本日はよろしくお願いいたします。

 先生方におかれましては、日ごろより職業教育並びに専修学校の振興に御理解と御指導を賜り、厚く御礼申し上げます。

 私ども専修学校は、昭和五十一年にできた新しい学校群でございます。その中にある高等課程は、昭和五十一年誕生後、一条校の高等学校との格差是正のための活動を今日までしてまいりました。具体的には、JRの定期の割引率の問題、高体連への参加の問題、公共職業安定所の取り扱い格差、また、財政支援等々の格差是正の活動をして現在に至っております。

 そういう格差是正の活動の中で、今回の就学支援金が最初から高等専修学校を対象にしていただけたということは、とかく新しい施策が発表されますと、どうしても我々高等専修学校は、数が少ないものですから、その対象にならないとか忘れられる傾向がございまして、そういう状況の中で新しい格差が今回生まれなかったことは最高の喜びでございますし、まして、学ぶ子供たちが経済的な理由により高等専修学校を中途退学するという率も減りましたし、また、滞納者も減っております。そういった効果も出ております。

 本日は、せっかくですので、高等専修学校の制度と現状についてもお話をさせていただこうと思います。

 専修学校は、学校教育法の百二十四条に規定されております。一般の方は、専修学校と申しますと、すぐに、イコール専門学校というイメージを強く持たれる方が依然として多くおられます。しかし、専修学校は、入学条件によって三つに区分をされております。高卒が入学資格の専門学校、そして学歴不問の一般課程、そして、中卒が入学条件の高等専修学校ということになります。

 高等専修学校は、高等学校と同様の一定の科目の履修等を満たす三年制の卒業生に関しましては、大学入学資格を国から付与されております。具体的に、高卒にはなりませんけれども、この付与により、高卒求人票での就職も可能でございます。また、公務員試験も高卒同等の試験となっております。また、大学、短大、専門学校へも、受験というハードルさえクリアすれば、進学することも可能になっております。

 現在、専修学校高等課程、高等専修学校は、全国で四百四十三校、約四万人が学んでおります。十五歳人口の急増期の「十五の春を泣かすな」の合い言葉のもとの平成元年、これがピークで、八百六十九校、約十二万人が学んでおりました。ですから、この二十五年間でここまで減少しているのが実態でございます。

 実際にどのような生徒が学んでいるかと申しますと、実際に将来の職業人を目指して、例えば調理師になりたいとか美容師になりたいとか、そういう志を持って学んでいる子たちが多数でございますが、本協会独自の実態調査によりますと、在校生のうち、不登校生徒が全体の一七・七%、高校中退・既卒者が二・七%、また、発達障害のある生徒が一一・五%、これは、高等学校は約二・二%ですので、五倍となっています。

 家庭環境に関しましては、生活保護家庭が一〇%、非課税の家庭を合わせますと二四・四%が経済的困窮家庭であり、母子、父子、一人親の生徒、さらに、両親のいない生徒が二五・九%在籍をしております。

 ですから、このような状況の中で就学支援金制度は、経済的に非常に厳しい子供たちも数多く学べるようになったという成果もございます。

 今回の見直しに関しましては、先ほど中高協会の吉田先生の御発言もありましたが、私学側は全く同じ意見でございます。

 ただ、まだまだ高等専修学校で学ぶ子供たちの中には、経済的に厳しい家庭が非常に多くございます。ぜひ給付型の創設については急いでいただければ、学べるチャンスがさらにふえていくんじゃないかなというふうにも思っています。

 もう一つは、公私間の学納金の格差の解消、こちらにつきましては、私立学校に対する支援拡充措置を強くお願い申し上げます。

 問題点といたしましては、我々高等専修学校は小規模校が非常に多いです。ぎりぎりの教員体制で学校運営をしております。ですから、事務処理に関しましては、できるだけ簡素化への御配慮をいただければありがたいというふうに思います。

 もう一つ、私立高校には就学支援金が支給されるけれども、高等専修学校に就学支援金が支給されるというイメージが、中学校の保護者、中学生になかなかまだ持っていただいておりません。こちらにつきましては、国の制度でございますので、さらなる周知徹底、高等専修学校もその対象なんだというところで周知徹底をしていただければ大変ありがたいというふうに思っております。

 生徒に対する格差についてはおかげさまで解消されておりますけれども、学校にはこのような現象が出てまいりました。

 先日、ある高等専修学校が生徒募集の停止を決定し、ホームページ上でこんなコメントを出しております。少子化の進展と高校教育に対しての就学支援金の支給を初めとする後期中等教育機関の準義務教育化の流れは、私学教育に大きな変革を迫る事態になっていますというコメントがございます。

 つまり、高校全入時代に、公立高校の無償化を初め、今や後期中等教育機関の学校選択のポイントは、この経済状況の中では、授業料等のまずお金、かかる経費であって、教育そのもので学校を選ぶ時代ではなくなってきているのではないかと私は感じております。公立高校の無償化では私立学校は対抗することはできません。

 このような状況下で、大阪府では独自の施策で、無償化にあわせて、私立の高等学校、高等専修学校も無償化となっております。

 教育で学校を選ぶ素地ができ上がった大阪では、高等専修学校の実態としまして、生活保護家庭が二五・三%、非課税の家庭を合わせると四二・九%が経済的困窮家庭であり、なおかつ在籍数もふえているという報告が大阪府の協会の方から上がってきております。

 つまり、個性に合った教育そのもので学校選びができる、ある意味で高校中退者の減少にもつながるのではないかというふうにも考えているところです。

 私ども高等専修学校は、学校教育法の一条校ではございません。一条校ではございませんので、私立学校振興助成法対象外の学校でございます。ですので、各学校への財政支援に関しましては、一条校の私立高校さんと比べると、わずかな財政支援で教育を行っているのが現状でございます。

 お手元の資料の五ページに全国の一覧が載ってございます。お時間のあるときにお目通しいただければ幸いです。

 私ども、この状況で、今実施している職業教育をこのままの状態で維持することは、今や既に、財政的にもマンパワー的に見ても限界が来ているというふうに感じております。

 この機に、若年層のニート、フリーター問題の解決のためにも、さまざまな個性の生徒を職業教育、キャリア教育により実社会に送り出しております高等専修学校へのあわせて財政支援を、強く要望させていただきます。

 そして、生徒の個性に合った、教育そのもので後期中等教育機関の学校選びができるような、学びのセーフティーネットの構築をお願い申し上げます。

 最後に、本日はこのような機会を頂戴いたしまして、さらには、専修学校高等課程、高等専修学校の現状を聞いていただき、本当にありがとうございました。どうぞ、いろいろな個性を持つ子供たちの将来のためにお力をかしていただければ幸いです。

 本日はありがとうございました。(拍手)

小渕委員長 ありがとうございました。

 次に、寺脇参考人にお願いいたします。

寺脇参考人 私は、特に何かの団体を代表しているという立場ではございません。きょう恐らくこの委員会にお招きいただきましたのは、私は、昭和五十年に当時の文部省に入省いたしまして、三十年余り文教行政に携わってまいりました。その経験からこのことについてどう考えるのかという意見を述べるために呼んでいただいたと思っております。

 私が文部省に入りましてすぐ配属されましたのは、当時の初等中等教育局の教科書管理課という課でございました。現在は教科書検定課と統合されて教科書課になっておりますが、当時は、教科書無償制度を担当する部署でございました。

 御存じのように、昭和三十八年以来、義務教育学校における教科書無償配付制度というものが現在に至るまで続けられているわけでございますけれども、このことについても、ちょうど私が入ってすぐ直面いたしましたのは、所得の多い家庭にまで無償配付をするのはおかしいではないかという御意見が財政当局や各所から出てきた。教科書無償制度についても、所得制限というか、段階を設けるべきではないかという話がございました。

 私はまだ大学を出たばっかりの新米の役人でございましたので、なるほど、それは一つの理屈だよなというふうに思ったわけでございますけれども、いろいろ議論していく中で、素朴に、当時の富豪の代表といえば松下幸之助さんだったわけですが、松下幸之助さんの孫にも無償で渡すのかみたいな議論がありました。

 勉強してみますと、もともとこれは、憲法二十六条に、全ての国民が能力に応じてひとしく教育を受ける権利を持っている、また、義務教育はこれを無償とするという考え方のもとに立って行われている。素人考えというか学生の考えだとどうしてそういうことをするのかなと思うけれども、なるほど、これは、全ての国民にまず義務教育というものを保障していくんだ、義務教育はもちろん無償ですが、教科書についてもそれを無償にしていこうという当時の国会のお考えでそういうことになったのか、それではこの制度をやはり守っていかなければならないというふうに考えるところが、私の役人人生のスタートだったわけでございます。

 この義務教育の範囲というのは、当然のごとく小中学校というふうには考えられておりますけれども、実は、憲法は義務教育の範囲というのは法律にそれを委ねているわけでございますので、現在では学校教育法で小中学校が義務教育ということになっておりますけれども、可能ならばそれをさらに拡大していく。

 戦後間もないころは、小中九年の教育を保障するということがまずとにかく火急の仕事だったわけでございましょうけれども、だんだんに高校進学率が拡大をしていきまして、今申し上げました、私が文部省に入った昭和五十年には既に現在とほぼ同じ九六%に達しているということの中で、その範囲をでき得ることならば高校まで広げることができればいいのではないかというのが私たちが願うところであったわけでございますけれども、なかなかそれは、もちろん財政問題とかかわってくることでございますから、非常に難しいことと当時は考えておりました。

 その後、昭和五十九年に、当時の中曽根内閣で、国会で臨時教育審議会設置法という法律ができまして、臨時教育審議会が議論を始めました。昭和五十九年から六十二年まで三年間、これからの日本の教育がどうあるべきかという議論をいたしました。

 これは、当時、文部省には任せられないと言われて、総理直属の機関を法律によって設置をして、そこで議論をする、そこで決まったものを、文部省と言わず政府全体で実施をしろという趣旨で設けられたものだと理解をしておりますけれども、その結論として出ました臨時教育審議会答申というのが、昭和六十二年の八月に出たわけですが、そこの中で定められましたのは、これからの日本の教育体制というものを、生涯学習社会を構築するためにやっていけ、生涯学習社会をつくっていくためにいろいろなことを進めていけということでございました。

 国民の皆さんにわかりやすく伝える言葉で言うならば、いつでも、どこでも、誰でも学べる社会をつくるようにということでございましたし、その答申を受けて同年十月に閣議決定がなされまして、政府全体でこれからの教育改革というのは、この、いつでも、どこでも、誰でも学べるという方向で進めていかなければならないということになったわけでございます。

 そこで、当時の文部省としても、中央教育審議会などの議論をさらに経て、この方向で進めていこうではないかということで諸制度を改革していったわけでございまして、例えば、学校種別によっていろいろな違いがあるべきではないというようなことで、例えば進学をするときに、高等学校と高等専修学校、種別は一条学校とそうでない学校というふうに違うわけでございますけれども、どういうルートからでも大学に行けるルートをつくっていこうとか、さまざまな意味でルートをつくっていき、また、社会人が高校や大学に入るというようなこともスムーズにできるようにとかいうような、制度上の整理をどんどん進めていったわけでございます。

 しかしながら、財政的な、いつでも、どこでも、誰でも学べる仕組みづくりというのはなかなかやはりこれは難しい問題だということで、前に進まない部分もございました。

 一九九九年に中央教育審議会で、初等中等教育と高等教育の接続についてという答申をその年の十二月に出したわけでございますけれども、それは、もともと課題でございます、高校から大学に行くときの仕組みをどうするのかというような議論もあったわけでございますが、同時に、各学校段階の役割というようなことも一つの大きな議論になりました。

 そのときに、大学に誰でも入れるようにするべきなのかどうかという議論がある中で、では、高校はどうなのかという話が大きな議論になりました。

 その中で、確かに大学は、入るための適格があるかどうかということについて、やはり入学試験のようなものの中で選別していかなければならないという結論になったわけでございますけれども、高等学校については、可能な限り受け入れていく、可能ならば全ての子供を高等学校に受け入れていくという考え方、もちろんこれは高等専修学校も含めてでございますけれども、受け入れていく。

 その際に、では、なぜそうなのかと。小中学校が全ての子供を受け入れるというのは、当然、義務教育と規定しているのだから当たり前ということですけれども、高等学校についてまでどうしてそうするのかというときに、それは、本来だったら義務教育の範囲というのを高校まで広げたいのだけれども、財政上その他の理由があって、残念ながら中学までがそうなっているという整理を中教審の議論の中でもしたわけでございます。

 そういった長年の懸案が、高等学校無償化制度というものが、あるいは私立に対する補助制度というものができる中で、まだ義務教育に位置づけるというところまではいきませんけれども、一歩、大きく前進をしたということでございます。

 これに所得制限を設けるということにつきましては、学校現場でもいろいろな話を私も今聞いておるわけでございますが、生徒の間の心理的な問題とか、公立学校における徴収業務の煩雑化みたいな話が出ておりますけれども、それ以前に、全ての子供に高等学校教育を受ける権利を保障する、憲法の教育を受ける権利というのは、イコール学習する権利だと思います。

 前の安倍内閣で改正されました教育基本法第三条には、「生涯学習の理念」ということが定められて、「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習すること」ができるような「社会の実現が図られなければならない。」と書かれております。

 確かに、所得にいろいろな違いはあると思います。しかし、現実を見ると、親の所得が高くても、おまえは高校に行く必要がないというので、子供を高校に行かせない親もいないわけではありません。

 また、無償化制度ができたことによって、高校生の中には、自分は親に行かせてもらっているんじゃなくて、自分が高校に行けているのは社会全体の皆さんのおかげだから、自分は大人になったら社会全体にこれを還元しなければいけないという考え方も出ております。

 ただ、残念なことに、この制度が始まりましたときに、当時の民主党政権下の文部科学省がその制度を発進させたときに、高等学校現場、教師や子供たちに対して、この制度はそういう趣旨なんだということの徹底が十分できていなかったことが、これはばらまきでやったんじゃないかというような国民の皆さんの中からも疑念を湧かせることになり、今回のような、では、やはり所得制限をかけるべきではないかという世論につながっていったと思うわけでございまして、私は従来の制度を守るということが必要だとは思いますが、ただ、やはり不十分だったのは、そのことについての趣旨、なぜそうするのかということ、高校がただになったよというふうな話で終わってしまうことなく、なぜそういう制度をつくっていったのかということを考えていかなければならない。

 実は、所得が多い人で子供が無償になるんだったら、セットで寄附税制の税制改正がなされて寄附がしやすいような制度になっている、それならそういうところは寄附に持っていくというようなアピールというのもなされていない、単に高校が無償になりましたよということで終わってしまっていたことについては、仮に、この議論の結果、改正せずにこれまでの制度でやっていこうというようなことになる際には、そのことを十分に考えませんと、この制度の趣旨というものが子供たちに伝わっていかない、あるいは学校現場に伝わっていかないということになるのではないかと思っております。

 以上が私の意見でございます。(拍手)

小渕委員長 ありがとうございました。

 次に、三輪参考人にお願いいたします。

三輪参考人 意見陳述の機会を賜り、ありがとうございます。

 私の専攻は、教育行政学、教育財政学でございます。現在、千葉大学名誉教授、高校現場との関係では、新名学園旭丘高校の理事、同私学教育研究所の所長を務め、教育費問題の社会的活動では、奨学金の会、国民のための奨学金制度を拡充し、無償教育をすすめる会の会長の任にあります。

 過日七月十九日の、日高教、全教、全国私教連等の五十六団体による所得制限反対の共同声明記者発表では代表を務めました。二〇一〇年の現行法成立時は、本委員会で法案賛成の意見を陳述しましたが、本日は、改正案反対の立場で申し述べます。

 その理由の第一は、高校の教育現場の深刻な問題を悪化させ、困難を助長することです。

 二〇一一年度の文科省の問題行動調査によりますと、高校の暴力行為一万一千九百三十二人、いじめ認知件数六千二十六件、不登校五万六千二百九十二人、中途退学者五万三千九百三十七人、自殺百五十七人、教育相談件数三万六千六百四件、これらは、高校教育現場の困難を浮き彫りにしていると思います。

 ユニセフ、国連児童基金の二〇〇七年の調査報告書、豊かな国の子供の幸福度の概観によりますと、日本の高校生十五歳の孤独と感じる割合は、断トツのトップの二九・八%、OECD二十五カ国平均が七・四%で、二位のアイスランドが一〇・三%など、幸福度の低さが顕著です。

 なお、一三年調査では、日本はデータの欠損が多くて、評価対象外にこの報告書でなっております。

 国連児童の権利委員会は、二〇一〇年六月、「最終見解:日本」で、「高度に競争的な学校環境が、」「いじめ、精神障害、不登校、中途退学、自殺を助長している可能性がある」とし、「学校及び教育制度を見直すこと」を勧告しています。

 高校就学支援の所得制限はこれに逆行し、学校の競争的、選別的環境を悪化させ、問題行動の新たな温床となります。家庭の所得格差を可視化すれば、競争教育や学校格差に苦しむ、また、思春期のデリケートな時期の高校生の人間関係、一体感、連帯感を損ない、優劣の差別感を助長するなど、人格の完成を困難にいたします。

 直接影響を受ける前高校生、現在大学一年生の意見を資料二枚目に例示いたしましたので、参考にしてください。

 生徒は、貧富にかかわらず、将来、社会の利益や発展に貢献するのであり、その学びを公費により社会全体で支えることは当然です。高校の授業料は、義務教育同様、一律無償とし、高所得者層の優遇との批判には、累進課税等の租税政策で対応し、教育の場に露骨な格差を持ち込むべきではありません。

 また、世帯年収の証明事務や各種システム整備も教職員や自治体の大きな負担です。膨大な事務やトラブルが教育活動を妨げます。

 第二の反対の理由は、国際人権A規約、社会権規約十三条に違反することです。

 同規約は、一九六六年、国連総会で採択され、日本政府は一九七九年に批准しています。その際、第十三条二項(b)、(c)、中等、高等教育の無償教育の漸進的導入を留保し、三十三年後の昨年、二〇一二年九月十一日、ようやく閣議決定により留保が撤回されました。

 規約締結国は百六十カ国、その中で同(b)、(c)を日本とマダガスカルは留保し続け、国連社会権規約委員会は、二〇〇一年八月、日本政府に、二〇〇六年六月までの期限を付し、留保撤回の検討を勧告し、約十年後にそれに応えました。

 留保撤回後も同委員会は、ことしの五月、日本政府の報告に対し総括所見、勧告を採択し、漸進的導入とは、迅速かつ効果的に達成する義務を課するものであると念を押しています。

 同十三条の無償教育は、所得制限を想定せず、一律無償化が理念です。低所得者層等には、別途、(e)で適当な奨学金の設立を規定し、所得格差の是正、調整措置を定めています。また、無償の範囲は、授業料など直接の費用のほか、修学に必要な学校納付金など間接の費用を含むと解されています。これは社会権規約委員会の解釈基準でございます。

 この条約を誠実に遵守、憲法九十八条のとおりするには、学費、授業料を一律無償とし、学校納付金に優先順位をつけて計画的に軽減、無償化し、別途、給付制奨学金を確立することなどが必要です。十八歳、つまり高校生以下を対象とした子どもの権利条約二十八条も、無償教育の導入を規定しています。

 第三の反対理由は、高校教育の財政措置が極めて不十分なことです。

 高校授業料無償は世界の大勢で、OECD加盟国三十四カ国で二十六カ国を数えますが、改正法は、二〇一〇年度からの授業料無償化の流れを後退させます。日本の教育予算の割合、教育機関に対する公財政支出の対GDP比、二〇一〇年ですが、OECD平均五・四%に対して三・六%、データのある二十八カ国で最低です。これは、「図表でみる教育 OECDインディケータ(二〇一三年版)」の数字です。

 問題の後期中等教育、つまり高校レベルでは、公費、私費合計の対GDP比、これが平均一・三%で、日本は〇・八%。つまり平均の六一・五%、しかも最低です。平均並みにするには、今より公費を一・六倍増にする必要があります。このため、授業料無償のほか、四十人学級など、教育条件全般が停滞しています。

 各党も政府も目指している教育予算の欧米並み確保ならば、予算増八・五兆円、所得制限による捻出財源推定九百億円はその一・一%にすぎません。八・五兆円の財源は、近年膨張を続ける大企業の内部留保二百七十二兆円(二〇一二年度)に求め、教育予算の組み替えではなく、予算増によるべきです。

 特に、高校は久しく義務教育並みに普及し、二〇一二年には進学率九八・三%ですが、既に約四十年前の一九七四年に九〇・八%でございます。つまり、社会全体の発展の基盤となっており、自己責任や受益者負担に委ねず、義務教育並みに授業料は無償にすべきです。既に、戦後初期、新制高校は無償が理念とされていました。

 公私格差は深刻で、学費の保護者負担では一対二・四なのに、公費補助のそれは二・六対一、公立が百十八万円、私学が四十六万円です。私学も、公教育で社会的役割は大きく、公費補助の大幅拡充により、公費で運営される公費私学への転換が必要です。学費に依存する独立私学は、高校ではOECD平均五%、日本三一%、大学でそれぞれ一五%、七五%であり、日本は極端に高く、私学への公費助成のおくれが顕著です。

 保護者負担は自公両党合意の実施でもなお多額であり、二百五十万円以上の世帯の学校に一律に納付する費用は、公立で二十四から三十六万円、私立では五十七万から八十一万円です。二百五十万以下の低所得層では、私立高校の場合、三十七万円の負担が残ります。

 これは三枚目の資料に掲載してございますので、御参照ください。

 また、不登校や中退者の学習の公的保障も課題です。

 十年程度の計画で高校、大学教育の無償化や給付制奨学金を段階的に実施することは、財政的に決して無理難題ではありません。それによってあらゆる分野の発展の基礎を確立し、少子化にも歯どめをかける、政治の最優先課題と考えます。

 二十一世紀に予見される福島原発事故のような文明の暴走を制御するには、教育の力の飛躍的向上、そのための財政基盤の確立が不可欠であることを最後に訴えさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

小渕委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本ともひろ君。

山本(と)委員 皆様、おはようございます。自由民主党の山本ともひろです。

 本日は、参考人の皆様、大変早い時間から、またお忙しい中、当文部科学委員会にお出ましいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は私がトップバッターで質問させていただきますので、まずは、余り具体的なところではなく、高校無償化の改正に対する少し大きな質問を全員の皆様にお願いをしたいなと思っております。

 この高校無償化というものは、我々自民党が下野をしている間に、他党の前政権が実施をした。当然、我々とは政治哲学、信条が違う政党が実施をされた政策なので、私自身は余りしっくりこなかったんです。何といいますか、義務教育ではないのにもかかわらず無償化をするというのは、どういうことなのかなと。行く自由もあるし、行かない自由もある。義務教育が終わってからまた一生懸命勉強したいなと思う人間は、高等学校に行って、学費を納めて学びの機会を得る。もう学校には行かなくていい、勉強はせずに自分は手に職を持って職人の道を歩むんだという決断をした人間は、中学を卒業してからどこかに弟子入りをするなり、自分の職場の環境を求めて社会に出ていくという選択肢もある。

 そういった中で高校無償化をするというこのそもそも論として、参考人の皆様はどう思われたのか、そして、その功罪、あるいはメリット、デメリット、そういったところで皆さんがどういうふうなお考えをお持ちなのか、お聞かせいただければと思います。どうぞ四人の方、順次よろしくお願いいたします。

吉田参考人 三年前のことでございますけれども、突然三月三十一日に法案が決まって、四月一日からの実施ということでした。そういう中で、私立学校にとりましては決して無償化ではございませんでした。ですから、逆に言えば保護者負担が軽減されたということで、少しでも私立学校を選択する枠が広がったという受け取り方をさせていただきました。

 義務教育でもないのに無償ということについては、私学の中でもいろいろと意見があったことは事実でございます。

清水参考人 私どもも私立学校ですので、今、吉田先生のお話と全く同じでございますが、ただ、デメリットとしましては、さっきお話しさせていただいたように、学校選択が、公立学校の無償化に伴って、私立側はやはりお金で学校を選ぶという保護者層があるということで、なかなか教育そのもので学校を選んでいただけない現実が生じてしまったというのは大きなデメリットであると思っております。

寺脇参考人 確かにおっしゃるとおり、全ての子供が行くわけではない。でもそれは、今は小中学校も同じ状態ですよね。

 実は、昭和五十年代に、高校まで義務制にしたらいいじゃないかという議論がありました。ただ、当時は、実は私自身も勤めている文部省自身も、義務教育というのは必ず全員が行かなきゃいけないところだ、小中学校は必ず全員が行かなきゃいけないところだ、高校は、委員がおっしゃるとおり、行っても行かなくてもいいんだという考え方でしたから、高校まで無理やり行かせるのはどうなのかという議論はございました。

 ただ、それが、さっき申し上げましたように、生涯学習という考え方に転換していくときに、いつでもどこでもいろいろなやり方があるじゃないかということで、現在でも、義務教育学校に実質的には通わずに、フリースクール等に、つまり、義務教育学校に行けばもちろん無料なんだけれども、別途お金を払ってフリースクールに行くというようなことも、そういうルートも認めているという意味において、従来の考え方のように小中学校は全員が必ず行くところで高校はそうでないんだということじゃなしに、道を選ぶという形が出てきているんじゃないか。

 ですから、高校というのも、行く子と行かない子と確かにあります。だからそこについては、義務教育無償の原則によってやっているというわけではないけれども、いわば学ぶための支援みたいな考え方の中で、高校が無償化というか、公立は無償化、そして同じような額を私立にも保障していくということは、学ぶ機会を広げていくという意味でそこが行われているということだと思います。

 付言すれば、先ほど私が申し上げました教科書の無償というのも、あれは義務教育だから無償ということじゃなくて、別途法律措置をつくって、例えば小学校でも、普通の教材は教材費という形でお金を払いますけれども、教科書はいわゆる授業料免除と別にやるよというような、だから、この高校無償化というのは、小中学校が無償ということとは違う意味で就学援助が広がっていったものというふうに理解をしております。

三輪参考人 私は教育学研究者でございますが、歴史的に推移をたどってみますと、平均寿命の大体四分の一は、義務教育の年限の最高になっています。ですから、人生五十年であれば十二、三歳くらいですが、人生八十年代になりますと、それは二十歳くらいになるんですね。

 そのように、社会全体がいろいろな意味で発展してまいりますので、そこを生き抜く力を養成するには、国民的教養として高い水準がだんだん求められていくというのが、歴史のいわば法則でございます。

 したがいまして、高校の義務化というのは当然なことでございますし、その義務を果たすために、設置者がそれを受け入れる義務をしっかりと整える、そのための無償制などは、当然の最優先の課題だというふうに思っております。

 憲法も義務教育は無償と明記しましたけれども、その義務教育は、小中学校だけには限らないで、高校までを含めた幅の広い規定でございます。

 したがいまして、義務教育は無償ということは、準義務教育になった高校については、準無償あるいは無償制にするというのが当然だと思います。

 以上でございます。

山本(と)委員 四人の参考人の皆様、ありがとうございました。

 おのおののお立場、考え方によって、お話を伺っていますと、推進した方がいい、あるいはデメリットもややあるのではないか、いろいろな御意見をいただいたということは、大変貴重な機会になったなと思います。ありがとうございます。

 また次の質問も四人の皆様全員にお答えいただきたいなと思っているんですが、先ほどから参考人の皆様からも何度か出てきたキーワードがございました。公私間の格差ということです。

 この公私間の格差におきましては、大体二つの意見があると思うんです。一つ目は、公私間の格差はよくないので是正をすべきだという意見。もう一つは、公私の違いがあるんだから、別に格差があっても問題ないんじゃないのかなという御意見。

 それで、この公私の格差があってもいいんじゃないかという意見の中には、大別すると二つまた意見があると思うんです。公立よりもはるかにいい環境を持っていて、公立よりもさらに進んだ教育を施そうと思う私学。あるいは一方で、公立高校に行きたかったんだけれども、学力的な問題で行けなかった人たちが行く私学。

 前者の方の私学は、当然それなりの費用負担をして別に行けばいいじゃないかという意見。後者の方は、少し乱暴な言い方になるかもしれませんが、公立に行きたくても行くだけの学力がなかったにもかかわらずやはり勉強したいと言うんだから、それなりの学費を納めればいいんじゃないかという意見もあります。

 こういった公私間の格差ということに対して参考人の皆様はどうお考えになっているのか、お教えください。

吉田参考人 公私間格差につきましては、いろいろ考え方があると思います。

 ただ、実際問題として、まず基本的には、成り立ち。私立学校は、先達たちの思いによって、その学校の独自の教育をしたいという思いで、寄附行為によって成り立っています。

 片や公立学校の方は、日本の国民の教育力を上げるということで、特に戦後、高等学校の設置というのはふえまして、公立学校の数もふえ、そして、当初は学区制がしかれておりまして、学区においてその地域に根差した高等学校、つまり教育の平準化ということが目的で始まってきておりましたので、ある意味、そこにおいて公私の教育の格差というのは大変大きかったと思います。

 それがだんだんと公立学校の方向性が変わってまいりまして、今では、公立の中高一貫校も含めて、私立学校がやってきた教育、それを同じような形で実施している。変な言い方かもしれませんけれども、特化した教育をする、私学に似た教育をする学校というのも出てきております。

 そういう意味でいいますと、公私間格差というよりも、公立学校の中でも、本来なら、高等学校という義務教育でない場であれば、その受益者が負担すべき部分について若干格差があってもおかしくないのではないか。

 そういう意味では、公私間においても、基本的な部分までの共通の部分、そして、それプラスの部分、特化した部分について受益者負担するという論理が成り立つのではないかというふうに思っております。

清水参考人 御質問の格差というところで、私ども、さっきお話しさせていただいたように、違った意味の格差是正の運動を、この二十七年間、展開をしてまいりました。

 それは一条校の高等学校との格差というところで、一条校の高等学校であればこういう支援があるのに、何で百二十四条の高等専修学校では支援がないのかという格差是正の話が、どうしても私の中には格差として大きくあります。

 具体的に、例えば財政支援の方でお話しさせていただきますと、全国の数字はさっきお話ししたようにお手元の資料に載っておりますが、平均でいきますと、私立高校には約三十三万円の経常費補助が出ております、生徒一人単価。我々は、高等専修学校は地方自治法に基づく独自の補助金制度になりますので、平均しますと六万円になります、生徒一人当たり平均六万円。都道府県によってはゼロというところもあります。これが私どもの言う格差でございます。

 また、障害児教育に目を転じてみますと、特別支援の経常費補助ですけれども、私立高校で一人の障害のある生徒を教育してまいりますと、約百三十六万円ぐらいの経常費補助金が出ます。我々は百二十四条ですから、はっきり申し上げてゼロというところの格差。

 この格差を我々は埋めていただきたいというところで、ちょっと御質問の趣旨とは異なりますが、どうしても格差と言われるとそちらのイメージになるものですから、そのようなお答えをさせていただきます。

寺脇参考人 御指摘のとおり、高等学校の私学の場合にはいろいろな形がございますよね。小中学校ですと、普通小中学校があって、それと違う特別な教育をするところだというのが一般的な位置づけだろうと思います。

 先ほど来議論しておりますように、もう高等学校はほとんど全員が行くようになってきた。その段階までの教育を保障することは常識的にも普通じゃないだろうかと思ってきたときのその公立高校と私立高校の問題というのを、もう一度きちんと議論していただく必要があるのではないか、国会でも十分御議論をいただいて。

 従来の考え方は、先ほど来私も申し上げておりますように、小中学校は必ず行かなきゃいけないけれども、高校は行きたい者が行くところだというような考え方からみんなが行くということになってきたときの、ただ、そうはいいながら、私立高校にも、委員がおっしゃいましたように、非常に特別な付加価値をつける教育を行っているところと、普通なら公立高校がもっとたくさんあればそっちに行くんだけれども、それがないがために行くというところがある。そこの違いをどういうふうに位置づけていくのか。全部を私学というふうに一律に考えていくのではないやり方があるのではないのか。

 現実には、都道府県では、従来は私学だったところが、経営が難しくなってきたのを公立に移行するとか、そういうことも可能なわけですので、要するに、公立は無償化、私立には援助していくという考え方、これは、就学を容易にしていくという根本的な考え方に立って公立と私立にどのような役割分担をしていくのかということについて、従来の私立高校という概念を変えていく必要がある時期に来ているのではないかと考えております。

三輪参考人 現状では、公費格差は、先ほども申しましたように、公立には公費が百十八万円、私立には四十六万円という大きな差があります。同じ教育を受けながらもこのように待遇に差をつけるというのは、明らかに私は、政治レベルにおける教育の差別だというふうに厳しく見なくてはなりません。

 私学には、確かにいい環境があって、そういう方を選ぶ場合にはお金を出していってもいいのではないかという考えもありますけれども、しかし、私学は、校風やあるいは伝統において大変長い歴史があり、すぐれた実績を重ねています。そういういい環境は、では、お金がなければ選べないのかという問題が出てまいります。

 どんな私学でもやはり公平に公立並みに公費を助成して、そして、選ぶ生徒の方はどれでも選べるような状態にしてあげる、これは当然なことだというふうに私は思っております。こんなに格差があるというのは、私学における社会的な役割を軽視したことではないかと思います。

 私学を卒業した方も、社会や歴史の前進や進歩のために、利益のために立派な役割を果たしてくださっております。社会全体でそれを支えるのは、私は当然なことだというように思います。

山本(と)委員 皆様、ありがとうございました。

 公私間の格差に関しても、やはりおのおののお立場、所属されている組織によってややお答えのニュアンスが変わってきたのかなと思っております。

 私自身は、今回、この改正で九百十万円という所得制限をかける、これも、我が党の中でも、幾らのところでかけるんだと、いろいろな議論がありました。では、年収八百万、七百万ある家で高校に行きたいといった子供たちの学費が果たして納められないのかという話もありますし、九百十万というのも、私の感覚では、高額所得者というのはやはり一千万円以上だろうという意識もありますし、そういった意味合いでは、先ほど来、参考人の皆さんもいろいろお話しいただきましたが、これは私個人の思いではありますけれども、実際無償化するという話になるのであれば、こういった細かな議論ではなくて、思い切って高校を義務教育にしてしまえばいいのではないかと私などは思っているんです。

 ただ、先ほど申し上げたとおり、いや、もう勉強はいい、自分はもっと腕を磨いて職人になりたいんだという、恐らくそういった大志を抱いている少年もいるだろうという思いもありますので、これは相当難しい問題だなと私も思い悩んでいるところではございます。

 きょうは、参考人の皆様をお招きをして、他の委員もたくさん後に控えておりますので、私は以上をもちまして質問を終わらせていただきたいと思います。

 きょうはまことにありがとうございました。

小渕委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 きょうは、四名の参考人の皆さん、本当に、朝から当委員会においでをいただきましたこと、私からも感謝を申し上げたいと思います。

 まず四人の皆様方にお伺いをしたいのは、我々が政権を担わせていただいて、確かに、三月三十一日の法案成立ということで、現場の方々にはやはりいろいろな御迷惑もかけた点はあろうかと思います。ただ、二十二年度から今四年目にこの無償化制度あるいはこの就学支援金制度というものが入っているわけですけれども、この率直な評価というものをそれぞれの参考人の方々にいただきたいと思います。

 大前提として我々は、もちろん、今回、低所得者へのさらなる支援であるとか、あるいは公私間格差をさらに是正していく、そういう課題というのはしっかりと私どもも共通にしております。ただ、我々の立場としては、そこはこの四千億の枠の中ではなくて、やはりしっかりとこの制度を維持した上で、さらなる教育予算を確保しながらそういった拡充をしていくべきではないか、さらにこの制度をいいものにしていくべきではないかという立場に立っております。

 最初に、先ほど申し上げた、この三年間、この制度はもう四年目に入っておるわけですけれども、その評価を順番にお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。

吉田参考人 先ほど冒頭でも申し上げましたように、現行制度におきましては、低所得者でも私学を選択しやすくなったという事実はあると思っております。

 ただ、現実に公立高校が無償化とはっきり打ち出されたことが、それによって私ども私学には、感覚的には、無償の公立高校を選択しやすくなった面の方が目立って、私立に来た生徒の方が格段にふえたというような感覚はございません。

 それから、基本的に一律で同額が支給されたわけでございますので、公私間格差が是正されるということにはなりませんでした。

 ただ、所得制限のおかげで、低所得者の方が負担が減ったということは事実でございます。

清水参考人 高等専修学校も、先ほどお話しさせていただいたように、今まで学びたくても学べなかった層の子供たちが入学してくるようになりました。そして、授業料による経済的な問題で中退という数も減ってきております。また、滞納者も減っているということは事実でございます。

 格差というところでは、平成二十一年の九月に民主党さんの方でのこの施策が発表になったときに、すぐに私どもは、我々高等専修学校も置いていかないでいただきたいという要望をしたことを今思い出しました。

 あのとき要望し対応していただいたことに関しましては感謝申し上げますし、また、もっともっと支援していかなきゃいけない子供たちがまだいっぱいおるということは御承知おきいただきたいと思います。

寺脇参考人 高校無償化という話を聞いたときに、本当にそんなことができるのかと率直に言って思いました。長年、文部科学省で国の財政状況も十分知った上で思っておりましたので、高校授業料にこういう無償化とか就学援助ということができるようになるのは、率直に言えば、私が生きている間に起こることだとは思っておりませんでしたので、こういうことができるというのは、やはり政治の力というのは大変なものなんだなということを改めて思いました。

 しかしながら、それになったのはいいんだけれども、先ほども申し上げましたように、そのことの意味というのが十分国民にも伝わっていない。学校現場や子供たちにも伝わっていない。あの無償になった年の入学式に、全国の高等学校の校長がそのことの意味について入ってくる子供たちに伝えるというようなことができなかった。そのことが、今日のように、もうこういうばらまきはやめて所得制限をかけたらいいじゃないかみたいな国民の考え方につながってきていると思います。

 これは生涯学習政策であって、要するに、国民の何かいわゆる福祉的にやっていくというのとは違うんだということを、そのときに、聞いた瞬間すごいことだなと思いつつ、それがちゃんとできるのかなと危惧をしておりましたけれども、今、この審議なさっている状況を見ると、その危惧が、恐れたとおりのことになりつつあるのかなと思っております。

三輪参考人 この四年間の無償措置の評価ということでございますが、失われたこの二十年と言われますように、やはり、国民生活全体が格差、貧困の中で疲弊しております。そういう中で、この措置は、教育を受ける権利の保障にとって絶大な効果があったというふうに思います。

 国際水準にも一歩近づきまして、今まで大変おくれていた高校教育に光が当たり始めたということを内外に知らせるメッセージにもなり、そのことによって、国際人権規約十三条の留保撤回の手がかりにもなりました。

 それから、私、高校現場にも多少関係しておりますけれども、そこで聞く子供たちの考え方も、社会全体のために学ぶんだ、今までは、自分のお金を出してくれた親のために、自分のために、非常に私的な利益を追求するという方向の学習観に閉じこもっていたのが、社会全体のために自分たちは学ぶんだというように、学習観が大きく転換した。

 特に富裕者層の子供ですね。専らそういう家庭の中だけで育てられたという視野から大きく解放されて、もっと社会のために自分たちはこれから生きるんだ、学ぶんだ、そういう方向が見えてきたということは、大変私は教育論的にはすばらしい評価を得たというふうに思っております。

 文科省も、翌年には文部科学省白書で数十ページの教育費特集を組んで、そして、無償にしたこの公費は働く人たちの努力によって支えられているんだ、だからそれを十分自覚して学んでください、そういうメッセージを送っているわけです。そういうメッセージがこれから途切れてしまうのでしょうか。その子供たちの混乱も私は十分配慮していただきたいというように思います。

笠委員 ありがとうございました。

 今、特に寺脇参考人からのお話は、我々も本当に謙虚に、しっかりと反省もしないといけないというふうに思っています。

 もともと我々も、生涯学習という理念のもとで、誰もがしっかりとした学ぶ機会というものを、親の所得に関係なくこれは本当に確保していくということで、そのことによって子供たちが感謝をし、そしてまた社会に還元をしていくという、この好循環をしっかり教育の中でつくっていかなければならないと思っております。

 次に吉田参考人の方にお伺いをしたいんですが、きょう、一番学校の現場を預かるというお立場から、先ほどのお話の中で、学校が所得の把握、個人情報にかかわることを、非常にこれは扱いが難しいという御指摘がございました。

 これまでももちろん、低所得者の方が若干支援金が多かったりというような、私学の方では先行してこの事務的な作業をやっていただいていたわけですけれども、今度、就学支援金が九百十万円以上の方はもらえないという、要は、同じ学校の中に支援金がもらえる生徒さんともらえない生徒さんが出てくるわけですね。その点についてどのように御懸念があるのかどうか、そのことが一つ。

 もう一つは、先ほどの、事務的な個人情報にかかわる問題というものに対する懸念、もう少し具体的に教えていただければと思います。

吉田参考人 ただいまの御質問でございますけれども、実際に私学の方は、それこそ四年前から所得制限がございました。そういう中で、まずスタート段階においては、所得の確定というものが六月になります。といいますことは、六月以前の部分とそれから六月以後の部分で基準が変わってくる生徒が出てまいります。それの実態把握ということにも時間がかかります。

 そしてそれとともに、当初は親の方も、出す書類というもの一つとりましても、何を出すと言われても、今まで経験のないことをしなきゃいけない。そういう意味では、トラブルがあったことも事実でございます。そして今度は、それをもとに各学校が基本的には確認をするということになります。

 これが私ども一番懸念しておりますのは、今は二割でも、実際に生徒、保護者に声をかけて、所得がそういう人には、プラス部分があるので書類を事務所にとりに来てくださいとやる学校もあるし、逆に、無駄になっても全員に同じ書類を配る学校もある。そしてまた書類に関しても、保護者に学校に届けさせている学校もある、生徒にそのまま持ってこさせる学校もある。いろいろなやり方があります。

 ただ、そういう中でどこの学校も常に気をつけなければいけないのは、それによって子供たちが傷ついたりすることのないように、例えば、うちの親の所得を初めて知ったなんて子も出てきちゃうかもしれません。ですから、そういうことで考えると、非常に難しい選択があったことは事実でございました。

 ただ、それがまだ二割程度であったものが今度は八割になってくる。そうすると、今度は八割の中で、極端な言い方をしたら、五百九十万円以上の人と二百五十万円以下の人というのは、またここでも倍以上の格差があるわけです。ところがそれは、ある意味、一律に書類を出すということは同じわけですから、そういう部分で心配していることは事実でございます。

 さらに、これを確定して、そして、確定することによって都道府県の方で今度は最終的な確認があります。そして、それから初めて支援金が支給される。

 支援金に関しましては、御承知のように、我々は代理受領という形で授業料と相殺する形になっております。そうしますと、その支援金が入った段階で初めて授業料から減額していくという形になりますので、その時期がずれればずれるほど、保護者は、当初、各学校の学納金を納めなきゃいけない、そしてそれがいつ戻ってくるかわからないという状態にもなります。これは、私立学校にとっては、保護者の皆さんに非常に負担をかけるというマイナス面があることも事実だと思っています。

 実際に、初年度はまず四月一日から始まりました。ただ、このときに一つだけよかったことは、全員が一律の額がございました。ですから、その部分についてはある程度学校で確定することができました。でも、県によりましては、十一月までその確定した額を支給してくれなかった県とか、そういうところもございましていろいろトラブルがあったことも事実ですし、また、文科省の方からのソフトが対応できなかったりとか、そういうトラブルが初年度はございました。

 それが今、二年目、三年目、四年目となくなってきたわけですけれども、今回はまた違った種類のそういう枠が広がってくるわけですので、それをどのように対処するかということを今検討しているところでございます。

笠委員 寺脇参考人にお伺いをしたいんです。

 これは今度、法律名も変わります。ある意味では、全ての高校生に対して給付型の奨学金が所得制限を設けて配られるのかなというような、これはもう公立高校の無償化ということを言えないんじゃないか、そういうふうに大きな制度の転換だと思っておりますけれども、公立の高校において、授業料が無料であるという子とそうじゃない子がまさに同じ教室の中で、同じ学校の中でこれは一緒に学んでいくということになるわけですけれども、その点の懸念とか、我々がどういった点に留意をしていかなければならないのか、そこをちょっとお聞かせをいただければと思います。

寺脇参考人 おっしゃるとおり、教育上の懸念というのは大きく出てきますけれども、同時に、憲法で保障されている教育を受ける権利、これはもう学習する権利というふうに憲法を改正していただきたいぐらいですけれども、そういうふうにすればはっきりしますが、それは全ての個人にその権利が認められているということなので、だから今、小中学校でも、それは小中学校だって、公立の小中学校で物すごく所得のある人は授業料を払ってもいいじゃないかという議論もあるかもしれません。でも、そうではなく、全ての子供が小中学校の授業料は無償である、それから教科書も無償であるというようなことをやってきている。

 もちろん、今、奨学金などをもらうときには、所得に応じてもらえる子ともらえない子がいることは事実ですけれども、一律にみんながやっていることについて所得制限がかかるというのは、公立においては初めてのケースですので、こういうことが何をもたらすかというのは非常に重要な問題だと思っています。

 ですから、もちろん所得が高い人にまでそんなことをやる財政的余裕はないよというのであれば、それは別のところで整理をしてもらえばいい。小中学校が全て無償だというのは、別のところで所得の違いというのは整理をされている。例えば所得税とかそういうところで整理されているから、これは無償である。

 では、高校だけは何で親の所得によって違ってくるのかという理念、つまり、何のための学習権なのか。教育を受ける権利です、今の憲法で言うならば。何のための教育を受ける権利なのか、誰のための権利なのかということを揺るがすことになるのではないか。だから、非常に重大な問題だと考えます。

笠委員 今のに関連して三輪参考人にお伺いをさせていただきたいわけです。

 先ほど、準義務教育というようなお言葉をお使いになったと思うんですけれども、我々も、この義務教育の期間をどうするのかということは、憲法を受けて、ちょうど平成十八年のときの教育基本法の改正において、これは私たち民主党案も同じ立場に立っておりましたけれども、九年という期間をあえて明記をしなかった。これは、高等学校へ広げていくのか、あるいは就学前へと下に広げていくのか、今後この学制の見直しということもやっていかなければならないというようなそれぞれの考えもあって、九年というのを教育基本法からはなくしたわけです。

 こういった中で、やはり準義務教育化というような形で例えば高校段階をやった方がいいのか、あるいは、これから就学前の例えば五歳をどうするのかというような議論も出てこようかと思いますけれども、それとも、先ほど四分の一というお考えをお示しされていましたけれども、もう義務教育にした方がやはり制度としてはわかりやすいのか、そこをちょっと御確認をさせていただきたいと思います。

三輪参考人 実態として就学率の面では義務教育に接近しておりますので準義務教育というふうに申し上げたのですが、ただ、設計をして具体化していくにはいろいろな面での準備が必要でございます。

 ですから、当面、概念としては準義務教育ということを国民的な合意としてしっかり押さえて、その過程の中で、義務教育に向けて着実に、財政措置を初めとして準備をしていくというステップではないかというふうに私は思っております。

 諸外国では、十七歳から十八歳、十九歳、二十歳へというように義務教育年限も延びておりますので、そういった国際的あるいは世界史的な視野も念頭に置きながら、即刻そういう方向に向かってかじを切るということではないかと思います。

笠委員 きょうは、四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。

 私どもは、何とかやはり教育の予算を政府全体の中でしっかりとさらに確保をして、本来こういう所得制限というような議論が出てこなくていいような理念をもっともっとしっかりと打ち出しながら、取り組ませていただきたいと思います。

 またこれからもそれぞれの参考人の皆様方にはいろいろと御指導いただきたくお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 日本維新の会の鈴木望と申します。

 きょうは、四人の参考人の皆様方、本当に朝早くからわざわざお出かけいただきまして、貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。

 先刻から、さまざまな観点から参考人の御意見をもう一回いろいろな角度で正確にという意味合いでお聞きしておられますので、私は、もう少し角度を変えて、個別の話に入っていければなと思います。

 ただし、当然、視点としましては、三年間、この実績はどうなのか、その反省はどういう反省があるのか、そういうものを含めまして、評価としてどういうふうに考えておられるのかという観点からお聞きをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、吉田参考人と清水参考人にお聞きをしたいというふうに思います。

 三年前にも吉田参考人は参考人として文科委員会に来られまして、そのときの議事録を読ませていただいたわけでありますけれども、三年前も、やはり公私間の格差についての懸念というようなことを表明されておりました。

 それで、そのときの議事録を読み返してみますと、公立高校は全て無償化、私立高校では就学支援金の支給ということで、その就学支援金ということの額に限度があるということで、どうしても公と私の差というのがあるのではないのかというようなことであったかというふうに思います。

 ここで議論したいのは、実際に、どのように三年間の例えば志望者であるとか入学者であるとか進学実績、そういったものに影響を与えたのかどうか。

 同じような観点で清水参考人にも、三年間でどのようにこの無償化の影響があったのかをお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

清水参考人 この三年間を振り返ってみますと、先ほどもお話しさせていただきましたように、生徒数は激減の一途でありましたが、就学支援金が導入された年度から、わずかですけれども入学者がふえております、高等専修学校は。今まで減り続けていたグラフが上がったのが三年前でございます。ですから、今まで学べなかった子たちが学べるようになったというのは確かであると思います。

 特にやはり大きかったのは、大阪府の数が伸びたということで全国の数が伸びたというところなんですけれども、確実に成果は出ていると思います。

 あとは、事務的なものでは、さっきもお話しさせていただきましたように、やはり我々、小規模校ですので、本当に簡素化していただかないと、教師として子供たちの前で教科指導をしたいんだけれども事務処理の時間をとらなきゃいけないという悪循環になります。こちらは何とか改善をつけていただきたいなというふうに思っております。

吉田参考人 私学の状況で申しますと、この公私間格差につきましては、先ほど申し上げましたように、一律九千九百円が支給されたわけですので、その格差は埋まりませんでした。ただ、三百五十万円以下の方に対しての負担は減ったということは事実です。

 今、清水先生の方からもお話しありました。大阪は確かにふえました。ただ、大阪の場合は、六百万を上限として独自のプラスアルファ分がございました。それによって六百万円以下が基本的に五十八万円まで無償化という状況があったものですから、これは確かに大きな影響があったと思います。

 ただ、その他の地域で見ますと、若干、私立学校全体で〇・二%とか、そういうふえ方はしておりますけれども、極端にそれによってふえたということは言えないのではないかというふうに思っております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 まず、吉田参考人の今のお話に関して再度ちょっとお尋ねをさせていただければなというふうに思います。

 公私間格差は、実際上は、確かに今言われたように、今回改正しようとしていることによってなくなるということは法律上はないんじゃないのかなという感じはするんですね。

 ただ、今回の場合、所得制限を課すことによって浮いた約九百億のお金を、例えば、今のところ私どもが聞いているところによりますと、文科省の財務省に対する予算要求では、年収二百五十万円未満程度の世帯に現行二倍を二・五倍にする、年収三百五十万円未満程度の世帯に現行の一・五倍から二倍、年収五百九十万円未満程度の世帯に一・五倍を支給するという格好でもって低所得者に就学支援金を厚くするというような措置を、所得制限で浮いたお金でもってそちらに回すということを、ぜひこれは実現してもらわなきゃいけないなと思っておりますが、そういうことを予算要求もしているようであります。

 そんなことを考えると、今回の一連の、所得制限を課してその分を低所得者の方に回すということの影響ということについてはどういうふうにお考えでしょうか。

吉田参考人 今回、今までと違いまして、三百五十万円以下から五百九十万円と枠が広がりました。これは、先ほどのお話でも申し上げさせていただきましたけれども、実際、私立学校に子供を通わせている保護者、その生活からいいますと、三百五十万円以下はもちろんでございますけれども、五百万、六百万ぐらいの収入の方も大変厳しい。

 そこで、そこに今おっしゃいました九百億の分から上乗せをしていただけるということでございますので、基本的には、これは我々私学にとっては大変大きな影響があるものというふうに思っております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 それでは、時間もありませんので、もっと聞きたいところでありますけれども、清水参考人の方にちょっとお聞きをさせていただきたいと思います。

 就学支援金の範囲の話ですけれども、高等専修学校に、今回、浮いた財源でもって国家資格養成課程を受けているものに拡大をするというようなことを予算要求をしている。実現したらということだろうと思うんですけれども、そのことについてどういうふうに考えておられるのかということ。

 また、実は私の選挙区に、在来工法、平たく言いますと大工さんを、実際に実習を主にして研修をしてもらうというような学校があります。これは文科省の所管のものではないわけですけれども、そういう意味で、文科省の予算でそういうところまで今回就学支援金を出せということはなかなか制度上言いにくいのかなと思いますが、各種学校の中には、例えば、音楽関係であるとかダンススクールであるとか、いろいろあろうかと思うんです。

 これは、今のところ、国家資格というようなことの資格がない。だけれども、そういう方面で一生懸命頑張って自分の技能を高めたいというような子供さんもたくさんいる。そういう受け皿になっていると思うんですが、そこら辺にまで本当は拡大してもいいんじゃないのかなということを、私、個人的には思うんですが、その点も含めてどうお考えになっておられるのか、お聞きをしたいと思います。

清水参考人 拡大のお話でございますけれども、国家資格の方の課程への拡大に関しましては、准看護師の学校であれば、残念ながら私どもの全専各連の会員校ではないものですから、情報収集が全くされておりません。

 原資があるのであれば、そういう志を持っている方々まで広げていただくということは、これもまた一つ格差が埋まることであるとは思いますが、それ以上の情報がないものですから、私の方ではお答えできかねるということで御容赦いただければと思います。

鈴木(望)委員 今、ダンスとか、ちょっと極端にも聞こえるようなことを言いましたけれども、それ以外にもまだいろいろな、芸術分野、その他情報分野、国家資格はないんだけれども、そういうところで頑張りたいというその需要が出てきていると思うんです。

 その点についてもいろいろと団体としても御意見をまとめられて私どもの方にぜひぶつけて、しっかりと世の中の情勢を見据えた対応をできればなというふうには思っているところでございます。ありがとうございました。

 次に、寺脇参考人にお聞きをしたいなと思います。

 実は私も、寺脇参考人のお話で出てきた臨教審に事務局の一員として加わっておりまして、そのときに生涯学習ということが打ち出されたというのは、大きなエポックメーキングだったんじゃないのかなというふうには記憶をしております。

 ただし、どうしてもちょっと寺脇参考人の御意見にひっかかるのは、義務教育というのは、確かに、生涯にわたって学ぶ権利という側面とは別に、国民として最低限このレベルはきちんと教育として受けてもらいたいという義務の側面があるんじゃないのかなというふうに思うわけでありまして、義務教育をどこまでにするのかというのは、これは実は大問題じゃないのかなというふうに思います。

 九八%の高校進学率だから義務教育を高校まで延ばしていいというふうに言っていいのかどうかというのは、やはりここはきっちりと、どこまで国民に義務として教育を課すのかという側面、権利ではなく裏腹の面ですけれども、これはしっかりと議論をすべきではないのかな。

 逆に言いますと、義務教育からそれ以上の高校、大学ということになってくると、それは、当然独自性というものを入れて自由にどんどんいろいろな形態の、また、いろいろな内容の高校、大学があってもいいという議論にもつながると思いますが、義務である以上は、やはり共通で、しかも、きちんと義務を課す以上はその費用についても保障するということで、義務というのは一つ重要なポイントじゃないのかなというふうに考えるわけでありますけれども、その点についてもう一回、寺脇参考人の御意見を聞ければと思います。

寺脇参考人 もちろん御案内とは存じますけれども、義務教育というのは、子供に義務があるわけではなくて、保護者や社会全体に義務を課しているんだと理解をしております。

 その義務教育は何年の年限かということについては、法の定めるところによりというので、学校教育法で定まっているということです。

 そうはいいながら、小中学校で学ぶことについて各学校が勝手なことをしていいよというふうになっていないのは、これは、また別途、小学校とはこういうのをやるところだ、中学校はこういうのをやるところだということで、学習指導要領等を定めてやっていっている。

 では、高校は何でも自由にやっていいかというと、そうではなくて、高校にもやはり学習指導要領は適用されているわけですから、日本で高校という看板を提げていれば、大体こういうことをするんだということは決まっている。そういう意味では、高等学校だからといって、小中学校と余り性格が違うとは考えない。

 大学は、もちろん学問の自由がございますし、いろいろなことがなっていますから、この大学とこの大学で同じことをやっているとは限らない。

 それが、さっき申し上げました中教審で議論をしたときに、高校まではどういうものをやるのかということを国がコントロールしている部分があるよ、大学はそうじゃないんだよということですので、どこまでを義務教育と定めて無償にしていくかというのは、財政的な問題とか社会的な問題を勘案しながら決めていくことでしょうけれども、小中は義務にできるけれども高校はできないということではないと思っております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 これについては、また場を変えていろいろと御議論もさせていただければ本当にありがたいなというふうに思います。

 次に、三輪参考人にお聞きをしたいなと思うんです。

 三輪参考人も、平成二十二年の文科委員会の参考人ということで御出席いただいておりまして、そのときの御意見を私も見させていただきまして、教育にかける情熱といいますか、そういうのは本当に敬服するところでございます。

 その中で、一つキーポイントとなることで、無償化とは何かということについて、私読ませてもらって、ちょっとそこのところを再度聞かせてもらえればなというふうに思って御質問をさせていただきます。

 先生、無償化というのは、「基本的には、学校教育が一律に徴収する場合には、それはある種の授業料である」というふうに言われておりまして、議事録にはそう書いてありますけれども、学校納付金という形であれば、本を買ったり、修学旅行に行ったり、クラブ活動の経費を捻出したりというようなことまで含めて、それは基本的に無償化ということでやっていければいいのではないかというような御意見かなというふうにお伺いをしたわけであります。

 そうすると、無償化という名のもとに際限もなく広がっていくんじゃないのかという、また逆に、非常に相対的なものであって、無償化といっても、財政に余裕があれば無償化してもいいよ、財政に余裕がなかったら無償化はだめだねという議論にもなりかねないんじゃないのかなと思いますが、その点について、無償化とは何なのかということについて御意見をいただければありがたいなと思います。

三輪参考人 無償化の範囲は、狭く意味する授業料と、それから施設設備費等の学校納付金というふうに分けることができるかと思いますが、学校教育活動で誰もが使用して教育効果を上げるための経費というのは、これはやはり公費で保障する。ということは、言いかえれば、無償化の対象になるだろうというように思います。

 義務教育でも、教科書が無償になりましたし、学校給食も非常に低価格になっておりますし、そういういろいろなケースによって、一挙に進められるということではありませんけれども、特に必要な経費から優先順位をつけて、財政との相談もありますけれども、次第に無償にというように進めていくのが、これが基本的な方向だと思います。

 先ほども申しましたように、国際人権規約における無償の範囲も、直接の費用という授業料だけではない、間接の費用が含まれるし、場合によっては高価な制服もその対象に含まれるということを公的な見解として、解釈基準として述べておりますし、そういうことでないと、やはり貧富によるさまざまな格差もその部分で出てきてしまいますので、教育を平等に保障する、権利を保障するという観点からしますと、学校教育の効果を上げるためには、そういうみんなが必要とする費用についてはなるべく公費で補助をするというのが、国際人権規約の理念のように、私は当然であろうというふうに思っております。

鈴木(望)委員 きょうは、それぞれ教育について識見の深い、造詣の深い四人の皆様方の御意見を聞かせていただきまして、私にとっても本当にありがたく思っているところでございます。

 できれば、ちょっと時間が短くて、教育の無償とは、義務とかというようなことについてもいろいろ議論もして、今回の所得制限を課したということにどういう意味合いがあり、それはどういうことなのかということについても議論をさせていただきたかったんですが、時間がありませんので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。

 各参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中、きょう御参加いただいて、先ほど来貴重な御意見また御提言をいただいておりますことに、心から厚く御礼申し上げる次第でございます。

 私の方からは、まず最初に、基本的なことを各参考人全員にお尋ねしたいと思います。その上で個別具体的なことをお伺いしたいと思っているんですけれども、まず、参考人から、全員にお答えいただきたいと思うんです。

 今回のこの改正案の一番大きなポイントというのは、御案内のとおり所得制限を設けたということ。あわせて、これは前回この法を定めたときにも大変議論になりました、附帯決議も付されました、いわゆる奨学のための給付金、これが今回一つ入っているということ。それからもう一つは、特別支援教育就学奨励費、これを拡充するという方向になっているということです。

 これらの今回の改正の一番肝になっている部分ですけれども、そのことについてどのような御所見をお持ちなのか。先ほど来の質疑の中でも触れられていただいておりますけれども、改めて、確認の意味も含めてお伺いしたいと思います。

吉田参考人 先ほど来、たび重なるかもしれませんが、やはり、所得制限の限度額、三百五十万円が五百九十万円まで上がったこと、これは大変大きいものと思っております。

 そして、高所得の方が自己負担をしなきゃならなくなったということがあるわけでございますけれども、それは、それなりのやはり負担をしていただくということは、私どもとしてはいいのではないかというふうに思っております。

清水参考人 私どもも、九百十万円の所得制限に関しましては、財源が確保できないのであればいたし方がないかなというふうに思っています。そして、給付型を早急に創設していただいて、もっともっと多くの子が学べるような環境をつくっていただければありがたいと思います。

寺脇参考人 給付型のものがふえるということはまことにいいことだと思いますが、公立学校において所得によって違いを生じせしめるという事態が起こるというのは極めて重大なこと、今までの公立学校の考え方を根幹から揺るがすようなことにもなりかねないと思っております。

三輪参考人 低所得者層を中心にして給付制奨学金を拡充するということは、これは大変重要な課題で、従来、その点が非常に停滞していたと思います、高校、大学を含めて。

 国際人権規約は、実は、一九七九年に日本政府は批准をしましたが、そのときに留保したのは中等、高等教育の無償制の部分でありまして、適切な奨学金の設立という(e)項については批准しているんですね。ですから、それから既にもう数十年たっておりますけれども、その間、憲法上の履行義務である条約を履行するという義務に反して、実際に批准した適切な奨学金の設立、給付制を意味するわけですけれども、それが高校、大学で実施をされてこなかったという点では、大変なおくれであったと思います。

 ですから、今からそういう条約を誠実に遵守するという立場で、早急に、高校、大学を含めて、給付制奨学金を、これを皮切りにしまして、それは制限された財源ではなくてもっとほかから、基本的に、教育を再建するんだという視点でやはり財源は措置をされていくべきだ。

 そういう制限された部分から回すということになりますと、学校の中で、クラスの中で、俺たちのお金がそちらに回っているんだとかいうような関係がまた出てきてしまって、教育的には確かに救われたとは思っても、そのことが逆にまたいろいろな複雑な心理的な問題を引き起こすということはございます。

 ですから、もっとそれは一般的な財源で、予算増によって措置をしなくてはいけない、そのように思います。

稲津委員 どうもありがとうございました。

 それぞれの御見解をいただいて、また明確にお答えいただきまして、大変参考になりました。ありがとうございます。

 それでは、今度は少し個別具体的なことについて何点かお伺いしたいと思っているんですけれども、まず、清水参考人にお伺いをしたいと思います。

 先ほどの冒頭のお話の中でも、高校全入時代にあって、多様な生徒のニーズですとかあるいは個別の対応等も含めて、大変重要な教育を担っているというふうに私は思っておるんですけれども、そういう中で、いわゆる専修学校、各種学校の中で、授業料もそうですけれども、それ以外にさまざまな負担が結構あるなというふうに認識しているんです。

 例えば研修費ですとか教材費ですとか、ここのところは余り今まで多く議論されていなかったのかなと思うんですけれども、その現状を少し教えていただきたいのと、あわせて、今回、一部支援拡充になりますけれども、そのことについてどのような御認識でおられるのか。この点についてお伺いしたいと思うんです。

清水参考人 授業料の今の現状からしますと、非常に高等専修学校の年間納入金は幅がございます。上の方でいきますと、やはり製菓の学校とかは非常に、年間の、初年度納入金が今百二十何万円ぐらいになっていると思います。下の方にいくと、私立高校さんの下の方の金額と大体同じぐらいの金額まで広がっています。

 ですので、授業料以外の教材費とか、この問題に関しましては、総額を分割支払いにするとか、その子供たちの家庭に応じた対応をするような小回りのきいた納め方をしていただくような工夫は全国の高等専修学校はしているかと思います。それはなぜできるかといいますと、マンモス校がないものですから、小さな学校ゆえに一人一人の家庭環境を見ながら小回りのきいた対応ができているというふうに思っております。

稲津委員 ありがとうございました。

 次に、吉田参考人に二点ほどお伺いしたいというふうに思っております。

 先ほどの冒頭のお話の中でもございましたし、若干質疑の中で触れていただいた件になるかなと思うんですけれども、東京都で独自で行っている授業料の軽減補助制度、これに関連して、いわゆる公益財団法人東京都私学財団というんでしょうか、ここが事務手続等について一括して申し込みを受けているということ、そのことに触れていただきました。このことについて少し掘り下げてお伺いしたいと思うんです。

 これまで、私立における就学支援金、これは学校経由で手続をするということで、このことが一つ、やはりちゅうちょする御家庭もあったというふうには伺っております。今回の改正で所得制限が導入されたことによって、今後は全ての家庭が収入証明を出さなくてはいけない。そういう意味では証明書を出しにくいという状況にはならないと思うんですけれども、逆に学校の負担というのは相当ふえてくるんだろうと。

 そこで、また戻りますけれども、東京の私学財団、公益財団法人がその手続を行っている、これを地方の方に、道府県の方に展開していくとなったときに、ちょっと現状では十分できるのかなという若干の不安もあるんですけれども、この点についてどのような御認識をお持ちなのか、また、あるいはこういうことに方向転換すれば、手続すればそれは解消されるとか、そういうお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。

吉田参考人 ありがとうございます。

 ただいまの公益財団法人東京都私学財団でございますけれども、ここはもともとが私立学校の振興とそして退職金給付、それをやっている団体でございました。それが東京都の授業料軽減補助制度、支援金制度ができる前から授業料軽減で所得の低い方への補助を全て窓口としてやっていましたので、そのノウハウを利用しまして、東京都の方では、今回、この就学支援金の部分について、所得の制限に伴う確認作業とかそれからその支給作業までを一括してやるようになりました。

 各学校では、そのチラシを生徒に、保護者に配り、希望者は書類をもらって、それを自分で封筒に入れて財団の方に送る。ですから、学校の方は、どの子が出したかは全くわかっていない。そして、確認がされますと、各学校宛てに、例えばの話が、何々さんが二百五十万以下の二・〇倍ですとかこの方は一・五倍ですというリストが来まして、それに合わせて振り込まれ、そしてそれを授業料と相殺するという作業であって、親の所得が幾らだからどうなったかとかいうことではないシステムでございます。

 そういう意味では、学校にとっては非常にありがたいし、その振りかえの作業とかいろいろあるにはありますけれども、みずからが確認してもしそこでミスがあったらとかいうことを考えますと、非常に各学校にとってはありがたい制度になっております。

 地方においてどうかと申しますと、こういった私学財団のようなものが、今、四十四だったと思いますが、ほとんどの都道府県でございます。ただ、それも公益法人化できたところとできないところとあるわけですけれども、そういう団体は基本的に退職金事務を扱っていた部分が大きいですけれども、そういうところが振興会と合併しまして、今できております。

 ただ、そこが実際に東京都のようなことができるかどうかということは、つまりは東京都からの補助がない限りそれができないわけですから、各道府県がそういった資金的なバックアップをして、そういう事務をしていただけるようになればベストだと思いますが、かなり難しいのかなと思っております。

稲津委員 ありがとうございました。

 そのことに関連するかもしれませんけれども、もう一つ吉田参考人にお伺いしたいと思います。

 それは、都道府県が独自で行っている授業料の減免、施設整備費、これに活用できる高校生修学支援基金、御存じのように、これはかなりそれぞれの都道府県で差があって、国の制度に上乗せしたようなところもあれば、逆に最大九百万円のところまで授業料の減免、支援を行っているというところもあります。かなり差があると思っています。

 この高校生修学支援基金の制度について、これは就学支援金との関係でどのように今後整理されるべきものなのかということなんですけれども、平成二十六年度までの措置でありますから、二十七年度以降も継続する必要性があるのか。ある意味、これがなくなれば、都道府県が独自で行っている各種の支援事業、これに影響が出てくるのではないのかな、こういう懸念もあります。

 そういうところから、これは残すべきだという意見もあったりいろいろしているところなんですけれども、この高校生修学支援基金についてどのようなお考えをお持ちか、お伺いしたいと思います。お願いします。

吉田参考人 基金につきましては、おかげさまで大変大きな価値を見出しているというか、プラス部分をつけていただいているのも事実でございます。ただ、今回のこの改正によりまして、今基金でカバーしている部分が、ある意味、二・五倍ので、例えば〇・五倍分は基金でやっていたところがその分がなくなるというような形であるかもしれませんが、多分、それは各都道府県でその上乗せ措置ということが始まってくると思っております。

 二十六年まででこの基金がなくなるということにつきましては、私ども私学としましては、少しでも続けていただきたい。そして、その基金によって都道府県独自の上乗せというものをしっかりとしていただいて、さらに子供たちが学校選択を自由にできるような、そういう環境づくりをしていただきたいというふうに願っております。

稲津委員 また吉田参考人に質問で申しわけございません。どうしても今回の法改正の中では私学のところにかかわるものが多いものですから、お許しいただきたいと思います。

 今回の法改正で、私立高校への支援というのが具体的に拡充される。これはある意味これからの議論になるかもしれませんけれども、大事なことですので御意見をいただきたいと思うんですが、義務教育の課程である私立の小中学校の生徒に対する支援をどうするかということなんです。

 例えば、私立の中高一貫教育をやっている学校においては、前半の方の三年間、中学のところですね、ここの授業料あるいはさまざまな教材等も含めてかかる費用と、それから今度は後ろの方の三年、高校の方ですね、ここであわせて整理していくと、中学のところの三年間の方が負担が大きくなってしまうような、そういう可能性もなしとは言えないというふうに思うわけなんですね。

 この私立の小学校、中学校における授業料等々のあり方について、例えば、もう少しここはこういうふうに支援を拡充していただいた方が結構じゃないかとか、いろいろな意見があると思うんですけれども、参考人はどういうようなお考えをお持ちなのか、お伺いしたいと思います。

吉田参考人 私立学校にとりましては、先生のおっしゃることはもう願ったりかなったりと申しますか、実際に、公立学校で今中高一貫校がたくさんできてきております。その中で、当然ながら、義務教育でもない高等学校は無償になり公立の中学校は無償というような形がございますので、必然的に、私立学校の中高一貫校にとっては大きな打撃が来ているのも事実です。

 それから、逆に今公立の小中一貫校というのも始まってきております。最初のうちにちょっとお話しさせていただいたかもしれませんけれども、公立学校の目的と私立学校の目的を考えたときに、やはり私立学校は、特化した部分があったから、ある意味受益者負担というか、授業料が発生しているという部分があったわけですが、同じような教育がなされてくる中で、子供たちが学校選択をする段階においては、小学校、中学校においても、この就学支援金といいますか授業料軽減みたいな制度をつくっていただけるということは、大変お願いしたいところでございます。

 実際に、今、鳥取県だけ、中学校に対する就学支援金のようなものが発生していることは事実でございます。

稲津委員 時間がほぼ参りましたのでこの辺で終わらせていただきますが、きょうは、四名の参考人の各先生方にお越しいただきまして、さまざまな角度から御議論をいただきまして、本当に感謝しております。しっかり、いただいた御意見を参考にしながら、今後の施策、今回の法改正も含めて対応させていただきたいと思っています。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 みんなの党、信州長野県の井出庸生と申します。

 きょうは、四名の参考人の皆様、本当にお忙しいところお越しいただきまして、心から感謝を申し上げます。よろしくお願いをいたします。

 この高校の無償化につきましては、できることだったら高校教育にも幅広い支援をしていこう、今回所得制限を設けるという方向性にはなっておりますが、これまでの議論の中で大臣も、できることだったら一人一人の生徒さんに支援をしていくという方向はやっていきたいんだ、そういう旨のお話もあって、その方向性については私も思いを同じくするところがあるんです。

 ただ、私が一つ問題意識として持っておりますのは、高校に今九八%、ほとんど一〇〇%お子さんが進学をする中で、事実上の義務教育、実態的にはそうなっているのかなと感じるところもあるんですが、それが逆に、高校で学ぶことの意義、目的意識、何となく高校に行ってしまう、そういった問題意識を少し持っているんです。

 それはなぜかといえば、最近、ここ数年、就職した若い人たちが三年で三割退職してしまう、そういうことがずっと言われていて、学生のうちから将来の自立のことを、自分がどうやって自立して生きていくのかということを少し考えなければいけない、その取っかかりがやはり高校ではないのかなという問題意識を持っております。

 そういうところで何点か御指導いただければと思うんですが、まず三輪参考人に一つお伺いしたいのですが、冒頭のお話の中で、所得格差の可視化というものが、いい影響はないだろう、そういうお話がありました。私も地元の学校からそういう話は聞いておるんですが、そこをもう少し詳しくお聞かせいただければと思うんです。よろしくお願いいたします。

三輪参考人 その点を当事者である生徒に聞くということがある意味では一番わかりやすいのかなと思いまして、実は私、この二枚目の資料に、大学一年生、無償化の時代ちょうど三年間を、そういう体験のある前高校生ですので、そういう人の意見が示唆を与えるのではないかという観点で、ちょっと資料に出させていただきました。

 やはり、お互いに、家庭のことというのは親の問題ですので、そのことで自分が影響を受けるということについては非常に抵抗感があるんですね。ここにも少し例が述べられておりますけれども、「お金の問題は友人関係をこわすことにつながりました。」というように、これまでは、あんたの家は貧乏だとか豊かだとかというふうなことがそれほどはっきりしない中で、お互いに同じ仲間として友情を温め合ってきた関係なんですが、それがはっきり今回のことによって明確になっていくと思います。

 四十人いましても、数名は九百十万以上とか、それから何名かは二百五十万以下とか、そして、こちらのお金がこちらに行っているとかということになって、用紙の、書類の提出の仕方についても、子供たち同士ではいろいろ話し合ったり議論があったりしますので、そうなりましたら、やはり、クラスの人間関係、学校全体の集団活動、仲間づくりにも非常に根底的な影響を与えるということが危惧されます。

 なるべく平等な環境の中で学ぶということを大事にしてあげたいのが先生方の配慮だと思いますけれども、そういう努力にもかかわらず、これが非常に支障を来すということになっていくのではないかということで、所得格差の可視化が教育の混乱に拍車をかける。そうしてまた、人間形成の面でも、自分は払っているんだ、自分はもらっているんだという意味での、ある種の優劣でしょうか、そういう感情を助長していくのではないか。

 いじめとかさまざまな問題が非常に社会問題としても深刻になっている中で、一番悩み多い高校生の時代に、そうした環境を、仕組みをなるべく解決してあげるのが大人あるいは社会の配慮ではないかというふうに思うんです。その点から、大変疑問を持っております。

 舌足らずではございますが、ここを読んでいただくと、少しリアルに伝わるかと思います。

井出委員 ありがとうございます。

 今回所得制限を設けることで、引き続き全体で見ると八割の方は支援の対象になって、二割の方が外れるということで、三輪参考人の今おっしゃった懸念が、この二割という数字の割合を見ると、確かにそうかなと今私も思うところであります。

 今度は寺脇参考人にお伺いをしたいのですが、寺脇参考人は、高校無償化が始まったときに、社会のおかげで高校教育を受けられるんだよというPRが足りなかったというお話がありました。

 私は、その当時、全てをただにするから逆にそのありがたみがなくなってしまったんじゃないかなと。私は、所得とかそういったものにかかわらず、奨学金を希望者に対してもっと拡充をして、無利子であるとか、場合によっては返済をしなくていいとか、そういった奨学金を中心に物事を考えていけば、社会への感謝ですとか、もっと言えば学習意欲につながったのかなと思うんです。

 今回のその全て一律に平等にするというものが少し逆の効果に出てしまったんじゃないかなと私は思っているんですが、そのあたりはいかがでしょうか。

寺脇参考人 委員の御懸念はよくわかります。

 私も、大学を無償化するということにはちょっと疑問を持っているんですね。

 大学に通うのに、欧米は無償だから日本も無償にしろみたいな議論があります。もちろん無償にすることは悪いことではないですけれども、ただなら行くかみたいなことになるのがまずいという、多分おっしゃっていることだと思うのですが、それは、大学レベルだとそうだと思います。そういう懸念も重要だと思います。大学は特に、やはり自分が授業料をアルバイトで払っている場合も多いですし、そういうことの中で、無償ではなくて奨学金の方の拡充というのは、私は、今大学で教えている身として、大学生や高校生とつき合っていますけれども、大学生の場合にはおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、高校の場合は、ほとんど、九十数%が行っているということ、それから、自分で払っているという意識が余りない。親が払っているわけですから、実際のところは、無償化したからといって、子供自身が何か今までやっていたアルバイトをやめてもいいなんという場合は余りないわけですよね。

 だものですから、むしろ、そうはいいながら、実は今までは親が払ってくれていると思っていたのが、社会がみんなでやってくれているんだよ、例えば、自分とは全然関係ないおじいちゃん、おばあちゃんたちの税金も使われているんだよということをわかってもらう方が、先ほどおっしゃいましたような、親から出してもらっているんだから行っているんだというより、社会全体がそういうことで考えてくれているんだ、だから勉強した方がいいな、もっと真摯に。さっきもおっしゃいましたように、高校時代というのは、自分が社会の中で将来何をやっていこうかということを漠然と考え、そしてそのためにどういう学びを次の大学や専門学校でやっていくかということを考える場ですから、そのときに、社会という概念が頭の中に入ってくるということの意味があると思うんです。

 ただ、先ほども申し上げましたように、学校現場で現実にそのことが反映されているかというと不十分なところがあるのではないかと思うので、むしろ、全員が無償を維持するならば、これが、所得制限を設けた上で、親の所得がここから下の子は社会がやってくれるけれどもこっちは親がやってくれるんだよというようなことになるとまたちょっと別の反応が出てくるのではないかと思いますけれども、一般的には、今申し上げたようなことを感じております。

井出委員 ありがとうございます。

 もう一つ寺脇参考人にお伺いをしたいんです。

 たしか、ことしの四月か五月の教育関係の文献の中で、自民党政権の評価として、教育以外の予算に少しシフトしてしまうんじゃないかというような御懸念を示されていたことがあったかと思うんですが、その後、半年近くたっておりますし、今回は同じ予算枠の中でやりくりを変えていこうということなんですが、今の段階での評価というものはどのようなものをお持ちか、お聞かせいただきたいんですが。

寺脇参考人 どういうふうに申し上げればいいかとは思いますけれども、民主党政権の時代と自民党政権の時代とどう違うのかななんというのは、外から見ていると思うわけですけれども、やはり一般的には、教育に力を入れていこうというお考えだなと思って、そのことはとてもいいことだし、それは当然予算にもはね返ってくることなんだろう。政権がかわって最初の予算というか、完全に最初から編成する予算というのは今回が初めてですから、どういう形になるのかなと思って見守っております。

 ただ、全体がふえるというのはとてもいいことだと思うんですけれども、つまり、今回の場合、ここの財源をこっちに持っていく。確かに、給付金がふえるということはいいことではあるんでしょうけれども、九百十万円以上の人のところをなくしたから持っていくということになると、一般的には、子供たちの間で、俺の金でおまえが給付金をもらっているんだろうみたいな話には私は余りすぐはならないと思うのですが、ただ、今回のようなことだと、あからさまに、この部分がこっちに行きますよという説明がいろいろなところで出てきていますので、あれを見ると、やはり、自分のうちが九百十万円以上の家庭の子供から見ると、自分のところから持っていってこっちへ行くんだなというふうに見えてしまうというのは、ちょっと問題があるのではないかと感じます。

井出委員 どうもありがとうございます。

 次に、吉田参考人にお伺いをしたいのです。

 私、先日この委員会の議論で文部科学大臣とちょっとお話をさせていただいたときに、個別に見れば本当にケース・バイ・ケースなんですが、私立学校が、過去にベビーブームのときに、たくさんのお子さんがいた時代の中で、その受け皿と言ったらちょっと語弊があるんですが、たくさん各地に新設された時期があった。

 当然、独自の教育、建学の精神というものを各校が尊重されていることも承知はしております。しかしながら、ベビーブームのときにそういった学校の数ができてきたという中、その後、今この少子化の時代の中で、明らかに時代が変わってきている。

 これからの私立学校の位置づけといいますか、今の、これからの社会の中で、私立学校というのはどういうあり方を目指していけばいいとお考えか、お聞かせいただきたいんですが。

吉田参考人 今、文科大臣がおっしゃったということですけれども、ベビーブーム、第一期の生徒急増期、それから第二急増期という時代がございました。

 その当時、実は、私立学校は、基本的には学校はそんなにふえておりません。ふえたのは公立学校です。公立学校がふえるまでの間、できるまでの間、私立学校が臨時定員増というような形で生徒を収容して、今では考えられないことですけれども、一クラス六十人なんというクラス編制をして学校運営をしてきた。ですから、私立学校の数というのは、基本的にはほとんど変わっておりません。公立学校がその分ふえております。

 そして、今、今後の私立学校のあり方ということですが、やはり私は、私立学校というのは、一つ一つの学校が、それぞれの建学の精神のもと、そのもとというのは何かといえば、創立者の思い、創立者たちの思いのもと、みずからの財産を寄附して、そしてつくった学校。そしてそれを我々その後の人たちが、みんな、その私学の思いとして受け継いで、その学校を存続しております。

 そういう意味では、今も基本にある建学の精神、そしてそれにあわせて時代の変化、それをいかに適合させて新しい教育をやっていくか。ただ、そのもとには、やはり建学の精神というか学校の理念というものをしっかりと持った教育をしている、それが私立学校だというふうに思っております。

 今後とも、そういう形で各学校が、私立の場合はその学校がなくなれば卒業生たちの母校もなくなります。そして、もちろん、その運営ということによって生徒が来なくなって潰れるのはしようがないかもしれませんが、そういう中でしっかりと自分たちの学校を守っていく、それが私立学校だと思っております。

井出委員 ありがとうございます。

 済みません。ベビーブームのときに私学がふえたというのは大臣の御発言ではなくて、私の地元は長野県なんですが、今、県内に私学は十五ありまして、いずれもその時期にその多くができましたよというのを地元の私学関係者から説明をいただいたものですから、私の方からそういう発言をさせていただいたので、ちょっとそこだけ、申しわけございません。失礼しました。

 公立、私立への支援というところでもう一点お伺いをしたいんですが、私は、先ほどほかの委員からも少しお話があったかもしれませんが、私立の新しい教育、独自の教育、環境が整っているところで、お金を払ってでも受けたいという学校もふえてきていると思うんですね。

 ただ、そういう話も、この間少し委員会で話をしたときに、生徒一人当たりへの公的支援の平等性というものがあるというお話が大臣からありまして、それは確かに一つそのとおりだなと思ったんです。

 もう一方で、今、公立校が、小規模校がどんどん地方で統廃合になっていく。高校だったら、一学年三クラスが維持できないようであれば、もうこれはかなり現実的になってくる。なかなかそういうところに、いかんせん子供も少ないですしアクセスも悪いですし、ほかの学校に入ってきてもらうわけにもいかないという状況の中で、公立と私立のあり方、特に、公立においては、学校数も確保していくというのが一つこれから必要にはなってくるんじゃないのかなという問題意識があります。

 そうすると、限られた予算の中で、公立と私立の関係というものをまた見詰め直さなければいけないのかなというような問題意識も持っているんですが、そのあたり、公立の学校減というものをどう受けとめていらっしゃるかというところだけ、最後、吉田参考人にお願いいたします。

吉田参考人 公立と私立の生徒の収容の問題というのがございます。これは、毎年の中学校卒業生を公立、私立でどう受け持つか、そのために公私連絡協議会というのが各都道府県で行われているわけですが、そういう中でそういう話し合いをさせていただいています。

 実際問題として、私立学校も、本当に経営が立ち行かなくなって、言い方は変ですけれども潰れていっている学校もあるのも事実です。それから、今回の震災によって、宮城県では一校、今年度いっぱいで廃校になる学校もあります。それから、実際に過疎になって、千葉あたりでも一校大変厳しくなって、そこは急遽ほかの方が支えてくださいましたけれども、それでも入学生が十人いないなんという学校が今出てきています。そういう中で、やはり、公私がいかに協調していくか。そして、地域的な問題もございます。

 ですから、我々は、やはり、それぞれの学校、私立学校としては当然ながらその学校の建学の精神、歴史というものを考えて、何があっても残さなきゃいけないという部分はあるんでしょうけれども、ただ、そうはいっても、生徒に来てもらえないような学校、それから、子供がいなくなっちゃった地域ということになれば、当然存続はできなくなると思います。

 ですから、その辺のところをお互いに協力しながら、県の教育、国の教育というものを考えて、高校教育がどういうことをこれからしていかなきゃいけないか、それを話し合った上で検討していくことが重要だと思っております。

井出委員 どうもありがとうございます。

 本当にきょうはお忙しいところ、また、貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

 終わります。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、四人の参考人の先生方、まことにありがとうございます。

 まず、三年前も参考人質疑でお話をお伺いした吉田参考人にお伺いをいたします。

 高等学校教育を担っている私学の役割は極めて重要でありまして、低所得家庭への支援の拡充や給付制奨学金の創設、公私間格差の是正、これは私どもも取り組むべき課題だと当然考えております。

 先ほども参考人は、現行制度に上乗せする形で公私間格差の是正ができれば望ましかったがというふうにお話がありました。私どもは、現行の制度の中で予算を抜本的に拡充して、私学への支援を充実させることを求めてまいりました。

 今回の改正は、公立も含めて就学支援金に一本化する。所得証明の提出を義務づけるということになってくるわけですね。現行でも、私立学校では、就学支援金を受け取るためには申請が必要で、就学支援金の加算を受けるには所得証明が必要となってまいります。

 そこで、就学支援金の申請、所得証明の提出には、多分、私学の現場ではさまざまな御苦労もあろうかと思うんですね。所得証明の提出がなかなかできない家庭もあるんじゃないかと思っております。その御苦労をぜひお聞かせいただきたい。

 また、そのために学校に必要になっている人の配置、事務経費の負担というものも心配されるというお話がありましたけれども、この制度変更で、さらに負担がどの程度ふえると見込んでおられるのか、もしおわかりでしたら御紹介いただきたいと思います。

吉田参考人 具体的には、幾らかかるとか何人かかるとかいうことはわかりません。

 ただ、四年前にスタートした際には、学校によっては大変大きな負担がかかったということでしたが、ここ一、二年は、今、それもなれてきたようで、二割ぐらいの生徒でございますので、割とスムーズに動いているようでございます。所得の確認も、新一年生だけは四月から六月と六月以降とに二度分かれますが、二、三年生は継続ということでございますから、そういう部分ではいいように思っております。

 新制度が導入されますと、今度はここで、新しい一年生と現行の二、三年生との違いがまた出てくるという部分で、きっと最初は戸惑うものと思っております。それに対して、各都道府県で、私学担当部署がいかにそれを支援していただけるかということになるのではないかと思っております。

宮本委員 申請書類の提出での御苦労など、もしあれば。

吉田参考人 済みません、私、実際、東京でございますので、先ほど申しましたように、私学財団に全てやっていただいています。

 よその県で伺いますと、最初、始まるときは、例えば、名前だけ出して、県の方の情報で、税務署で所得の一覧をつくってもらえば簡単にできるじゃないかとかいろいろな話があったようですが、やはりそうはいかなくて、各個人が提出するという形になりました。

 その形でやっていますので、日付が間に合わないとか期日がどうのとかありますけれども、やはり、年に何回かその申請もずらせるような体制をつくったり、そういうトラブルが起きないように県と学校が話し合いをしながらうまく何とか回しているという現状でございます。

 できれば、東京都方式のようなことができるのがもちろん一番ベストだと思いますが、ここにまた給付型のものが加わったりしてきたときにどういうふうになるのかとか、いろいろな心配があることも事実でございます。

宮本委員 ありがとうございます。

 私立高校には、授業料のほかに、多くの学校で施設整備費というものがございます。学校によってそれぞれの金額がいろいろありまして、中には、授業料は全国平均の金額よりも低いけれども、施設整備費が授業料と同じ程度かかるなどの例も実際にあると思うんですね。

 私学の学費負担全体を軽減するためには、授業料はもちろんですけれども、この施設整備費なども含めて負担軽減、無償化を進めるべきだと私たちは考えております。

 そこで、国の就学支援金の加算の拡充はもちろんですけれども、これは今聞いても授業料のみだと聞かされておりまして、これを授業料のみならず施設整備費にも拡大する、このことについてのお考え、吉田参考人、お聞かせいただけますか。

吉田参考人 私立学校の保護者の立場になれば、その負担が軽減されることは喜ばれることだと思います。

宮本委員 ありがとうございました。

 次に、清水参考人にお伺いしたいと思うんです。

 今回、各種学校も就学支援金の対象として拡大されることは私たちも大賛成であります。中学を卒業した若者が学ぶ場を積極的に支援していくことが大事だと思うんですね。各種学校や高等専修学校、専修学校の高等課程が高校からの中退者の受け皿にもなっているというふうに聞いております。

 ただ、御承知のように、就学支援金の支給は三十六カ月、三年に原則として限定をされておりまして、これは私立高校も同様でありますけれども、若者の学びを支えると言うなら、これは支給月数を限定することなく、対象となる学校に学ぶ全ての人に就学支援金を支給すべきだと私たちはかねてから求めてまいりましたが、このことについて御意見をお伺いしたいと思うんです。

清水参考人 おっしゃるとおりでございまして、こんな例が本校にございます。ある私立高校を不登校になり、中退をし、本校に入った男の子の実例ですけれども、やはり集団の中でやっていけないということで、一学年下げての本校への編入学です。そのときに、学校が就学支援金の説明をいたしました。前任校で就学支援金はもう一年間いただいている、本校に移った場合にはあと二年間はいただける、でも、三年生になったとき、本校で三年生になったときはいただけないわけです、三十六カ月オーバーですので。そういう子供たちもおりますので、そこは少し拡大をしていただくと助かる子供たちは多くいるんではないかと思います。

宮本委員 ありがとうございます。ぜひ、そういう点はしっかりとやってまいりたいと思うんです。

 次に、寺脇参考人にお伺いいたします。

 先生のお出しになった「コンクリートから子どもたちへ」という本も、私、読ませていただきました。先生はその中でも、学習権ということもおっしゃっておりますし、そして授業料無償化を単に教育費負担の軽減として捉えるのではなく、教育を受ける権利保障の問題として捉えることが大事だ、こういう強調もされております。

 私は、こういう考え方が我が国が昨年留保撤回した国際人権規約の理念にも合致をしている、これが世界の方向だというふうに思っておりますけれども、先生のこの点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

寺脇参考人 おっしゃるとおり、できるだけ多くの学習権を保障するという生涯学習の考え方というのは、世界的にその方向に向かっているというふうに思います。だからといって、財政的な問題もありますから、何でもかんでも無料というわけにはいかないとは思いますけれども、そのことをできるだけ広げていく。

 ただ、それが、恩恵的に広げていくという考え方ではなしに、学ぶ権利が保障されているということは、自分の中に学ぶ意欲を持たなきゃいけないという能動性につながっていかなければならない。だから、まだそこのところが私たちの社会は完全な生涯学習社会になっていないのかな。所得が多い人は自分でやればいいじゃないかという話になってしまうのは、やはり一人一人の個人に学習権があるという考え方にまだ至っていないのかなというふうに感じます。

宮本委員 ありがとうございます。

 同じテーマを三輪参考人にもお伺いしたいと思うんですが、今、私たちの社会はそういう学習権というところまでまだいっていないのではないかという寺脇参考人の御意見もございました。これは同じく三輪参考人に、国際人権A規約第十三条二項(b)、(c)の留保撤回、これに触れて、権利を保障していくための無償教育の導入、授業料無償化の意義を人権保障という観点からぜひ語っていただきたいと思います。

三輪参考人 国際人権規約十三条は、あらゆる段階の教育の無償化を規定しておりますが、しかし、その十三条の第一項に大変重要な条文がございます。それは、教育についての全ての者の権利ということをまずしっかりと据えまして、それは、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向する、あるいは、人権や基本的自由の尊重を強化するとか、社会参加とか、国民諸集団の理解、寛容、友好、平和などを目指す、そういう権利だということを、非常に方向性を明確にしておりまして、そして、その次に、この権利の完全な実現のためにという言葉が入っていて、そこから初等、中等、高等教育の無償制の漸進的導入が始まるわけです。ということからもわかりますように、なぜ無償化するか。これは全ての者の教育への権利、教育を受ける権利だという考え方でございますね。

 そして、無償教育だけではない、その後に続くことは何かというと、これは、無償だけでは十分な学習権が保障できませんので、したがって、適当な奨学金を設立する、これが第二点。これがないと学習権は空洞化してしまいます。全て無償になっても、大学の授業料が無償になっても、それでも学校に行けないという人が出てきます。だから、二つ目の柱は、適当な奨学金、ローンとかそういう借金のような奨学金ではないということでございますね。

 もう一つ、この条約が明確に世界の各国に向かって義務づけているのは、教育職員の物質的条件を不断に改善すること、この三つでございます。幾ら教育を受けようとしても、マスプロ教育、すし詰め教育で、十分に教育が受けられない条件であったら、それは権利の名に値しない。人格の完成やあるいは人格の尊厳の意識を培うには、そういう条件では実現できない。だから、三つの柱をしっかりと教育を受ける権利の原則として明示しております。

 それくらい、ただ字面で書いてあるだけではなくて、それを補うための財政的な条件を明記しているところが、国際人権規約の画期的なところであるというように思います。

 こういうところで申し上げるのはちょっとはばかられますけれども、やはり人間は教育的動物でございます。教育を通して人間になります。教育が人間をつくります。ほかの動物は本能で能力が発現しますので、メダカの学校とかスズメの学校とかということは必要ございません。しかし、教育が人間をつくるんです。だから、全ての者にこれは権利でなくてはならないということで、フランス革命の時期に、教育を受ける権利と無償制が一体で提起をされて、そして今日に至っております。

 考えてみますと、今大きな時代の転換期ですけれども、猿から人間へと七百万年進化してくるその九九・九%は、実は、狩猟採集社会という中で、共同体が少人数で、無償の関係で、寄ってたかって愛情や知恵を注いで子供を育ててきた、いわば人類の無償の教育が人類を進化させた、つくり上げてきたと言ってもよいほどのものでございます。

 しかし、二十世紀の半ばになりますと、有償教育が頂点に達してきます。階級社会が発生し、資本主義が広がるとともに、お金の切れ目が縁の切れ目のような、教育の領域でそういう問題が起こってくる。その二十世紀の真っただ中で実はこの国際人権規約が制定されたことの人類史的な意義というものを、私はもう一度かみしめる必要があると思います。

 人間が人間に向かって、もう一回再起動をして、そして新しい羅針盤のもとに二十世紀を生きていく、そういう国際的な約束事としてこの条約が制定されました。

 残念ながら、日本は大変この点ではおくれておりますので、高校無償化という画期的なことをさらに前進させるために、もっともっと教育の重要性を社会が理解して、そのために、教育の世界だけのお金のやりくりではなくて、全力で財政を支援する、そういう世論づくりの先頭にぜひこの委員会の皆さんも立っていただきたい。その具体的なあかしとして、まずは高校の無償化、そして大学の無償化から給付制へ、そういう方向に流れをぜひつくり出していただきたいというように思います。

 失礼しました。

    〔委員長退席、丹羽(秀)委員長代理着席〕

宮本委員 先日、この法案の審議をやりまして、今、三輪先生がおっしゃったことというのは大臣もある意味ではお認めになった。できることならば無償制を維持したまま公私間格差の是正、低所得者対策をやれればよかったけれども、財政的限界がと。一方で、日本が、非常に教育支出が外国に比べておくれている、OECD平均と比べても、GDP比で二%、十兆円のおくれがある、これはもう党派を超えてみんなでその増額のために頑張ろうじゃないか、ここまで実は大臣もおっしゃったわけですね。

 先ほど三輪先生は、高校への公費、私費の対GDP比、これで見ても、OECD諸国平均一・三%に対して日本は〇・八%、一・六倍にする必要があるというふうにお話しになりました。この点、もう少しお聞かせいただけるでしょうか。

三輪参考人 実は、教育予算が世界主要国で最低であるということは、日本の教育条件が大きくおくれをとっているということでございますが、ここは、問題は、後期中等教育、高校レベルの議論でございます。そのために、今御紹介いただきましたように、後期中等教育の公費、私費の合算でも実は諸外国の六割程度であるということを申し上げました。

 そのことがどういう問題を引き起こしているか。今本当に高校教育、義務教育もそうですが、困難を抱えております。社会の激動期、変動期、そこで育つ子供をしっかりと未来に向かって成長させてあげる、そういう専門的な仕事というのは、本当に骨の折れる、日夜格闘してくださっていらっしゃるわけです。ところが、そのための支えの条件が非常に悪い。それは、お金がないからそういうことができないということでございますね。

 例えばクラスサイズ。前期の中等教育、中学校のレベルでは、実はOECD平均は二十三・四人です。日本の場合は、だんだん中学校レベルでは規模が小さくなってきていますけれども、三十二・六人ということで、非常に多いですね。後期中等教育はこちらのOECDのデータにも掲載されておりませんが、実は、高校は大体四十人で学級編制しますので、四十人をちょっと下がったところがクラスの平均サイズでございます。

 そうしますと、欧米の場合は、傾向としまして、小学校より中学校、中学校より高校のクラスサイズが少ないんです。というのは、思春期になりますと一対一で丁寧に対応するということが特に重要になってくるものですから、だから、さっきのOECDの中学校レベルの二十三よりは、調べると二十人くらいだと思います。二十人くらいなのに、日本は四十人くらいで格闘していらっしゃるというこの現実ですね。

 それから、法定勤務時間というのがございます。これはOECDのデータにも出ておりますけれども、OECDの平均は千六百時間台です。年間千六百六十九時間。EU、ヨーロッパだけに限りますと、千五百八十五時間です。ところが、日本の場合は千八百八十三時間なんですね。ということは、OECD比では二百十四時間、一日八時間だと何と二十七日も、一カ月分丸々オーバーワークをしていらっしゃるという状況です。多い。EU比ですと二百九十八時間ですので、四十日近く働いているという過密な勤務条件の中で、しかも物すごいオーバーワークをしている。

 先日、全教が勤務時間の調査をされまして、そこで、一カ月の平均時間外勤務という項目がございましたけれども、平均勤務外です、勤務外の時間で六十九時間三十二分です。約七十時間、一カ月でオーバーワークをしている。法定の時間がこんなに長い上に、さらにオーバーワークをして教育をしてくださっているというこの現実、これを考えますと、ちょっとやそっと就学支援金を出してそれで満足というふうな事態では到底ございません。

 もっともっと、これは高校教育を抜本的に財政改革をする必要がある、そのことを強調させていただきたいと思います。

    〔丹羽(秀)委員長代理退席、委員長着席〕

宮本委員 もう時間が参りましたので、終わらせていただきます。

 四人の参考人の先生方、まことにありがとうございました。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 きょうは、四名の参考人の皆様の貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございます。生活の党の青木でございますが、どうぞよろしくお願いをいたします。

 公立高校の授業料の無償化というのは大分世の中で浸透していたというふうに思っておりましたものですから、この法改正は大変残念に思っておりまして、反対の立場でいるわけなんです。

 政府の答弁を聞きますと、公私間の格差の是正ですとか低所得者対策だということなんですが、確かに、今回、私立ですとか専修、各種学校に支援が拡大するのはまことに結構なことなんですが、まず、公立と私立の役割はそもそも違うのではないかと思っているんです。役割分担といいますか、その辺についてまずお伺いをできればと思います。四名の参考人に伺わせていただきます。

吉田参考人 先ほど来申し上げておりますけれども、公立学校と私立学校は成り立ちが全く違います。そういう意味では、公立学校の役割というものは、先ほど来の義務教育の延長云々という感覚で話すのであるとすれば、より平均的な教育をする場所であり、私立学校は、それぞれの学校の独自の建学の精神に基づいた特色のある教育をやる場だと思っております。

 ただ、それが近年、いろいろな意味で、中高一貫から何から含めて、公立の私学化という部分が進んできている。そういう中で、今、公立と私立の役割というものが若干おかしくなってきているんじゃないかなという気はいたしております。

清水参考人 公私の役割でございますが、今、吉田先生からお話がございましたとおりで、公立の私学化が今顕著に東京では行われております。

 具体的なお話をすると、過去、都立高校には不登校の生徒は入学できませんでした。オール一の内申では入れませんでした。しかし、今、都立高校の中で、不登校の生徒、オール一でも入学できる学校が各地域にできてきております。ですから、十五歳人口が多い時代に、その子たちが我々高等専修学校にやり直しの場を求めて入ってきていました。その教育の形態を公立学校も少しずつ導入して現在に至っております。

 もともと私学は建学の精神に立ち独自の教育を展開してきているわけですが、今お話ししたように、公私間の役割はちょっとぶれてきているのかなと思うところがございます。

寺脇参考人 役割は、むしろ教育内容よりも存在としての役割だと思います。

 小中学校の場合は、日本じゅう津々浦々学校は全部整備をされていて、その上で私学を選ぶ。でも、高校の場合は、残念ながら、特にベビーブームの時代などに、あるいは高校進学希望者がふえた時期に公立では対応できなかったという事態があって、公立が全部整備されているのに私立があるという小中学校とは意味合いが違うということがまず大前提としてあると思います。

 教育内容については、高等学校というのは、特色ある教育をしていくというのは、公立でもそれはある程度の使命がある事柄でございます。小中学校の場合は、北海道の小学校と鹿児島の小学校でそんなに違うことをやるということではないけれども、高等学校の場合には公立においても特色を出していくわけなので、私学の出していく特色と公立の出していく特色とそれぞれがあると思うのですが、確かに、中高一貫校みたいな、これは教育の内容というよりは仕組みの方ですよね、その仕組みまで公立に求めることがどうなのかという問題は残ると思います。

三輪参考人 公私の基本的な役割の相違についての御質問でございますが、公立高校、都道府県や市町村立の高校は、それぞれの自治体の要請やニーズに基づいて、自治体の、地域の発展のためにどのような人を育てるかという役割が基本的にあるかと思いますので、それぞれの地域によって公立学校のカリキュラムとかあるいは目標とかが当然異なるのだと思います。しかし、日本の公立高校は、さらに、もっと大きな役割としては、高校が存立する地域そのものへの役割が求められていると思います。

 つまり、欧米ですと、ほとんどの国では、高校も小学区制です。その地域の範囲の中で青年を育てて、そして、その中で青年が地域のために何ができるかということを学ぶ、そういうシステムになっておりますが、日本の特徴としては、地域に根差す公立高校づくりが非常に困難になって、自治体レベルで広域的になったりしています。その点は、公立高校の役割として、もっと、自治体よりは、さらに地域に根差す高校づくりという方向が求められているのではないかというように思います。

 私立高校は、やはり、戦前からの学校もございますが、建学の精神があり、そして長い伝統や校風があり、公立高校とはまた別の枠、ある意味ではそういう学区を超え、都道府県を超えて、そして独自の特色ある教育を行う。公立学校一辺倒ではない、そういう選択肢があるということが、公教育全体を豊かにすると思います。

 そういう、ある意味ではより自由な役割を果たしているのが私学だと思いますし、そういうところを自分は選択したいという生徒がいれば、当然、学費にかかわらず進学できるような、そういう基盤づくりを行政はする必要があるというふうに思います。

青木委員 ありがとうございます。大変参考になりました。

 やはり、どのような環境にあってもあらゆる子供たちが教育を受ける機会を保障するというのが公立の高校の役割なのかなというふうに思っておりまして、そういう意味では、今回の公立高校の授業料の無償化ということが、大変後ろ向きになっているのが残念であります。

 それぞれお立場はあるかと思うんですが、今回の改正によって影響を受けるのは公立の高校でありますものですから、公立高校の授業料が有償になって申請制度になるわけですけれども、そのシステムが変わることによる子供や親や教師にとってのメリットは何だと思われますか。四名それぞれ違うと思いますけれども。公立高校ということで。

吉田参考人 影響があるのは公立だけじゃなくて、私立も九百十万円以上は同じでございます。ですから、そういう意味では高所得者に影響が来るのかもしれません。そういう中で、下の方に手厚くなるということによって、私立にとってはある意味学校選択がしやすくなる。

 公立の方は、それ以下の方は従来どおりでございますので、そういう意味では、私はどうなるかということに関してはわかりません。済みません。

清水参考人 私も全く同じ考えでございます。

 私立の立場から言わせていただくと、今の吉田先生と同じでございますが、ただ、学校選択というところでお話しさせていただくと、先ほど来からお話しさせていただいているとおりに、やはりまだ公立学校に行った方が総費用がかからない、授業料等かからないというところは、後期中等教育機関の学校選びの選択肢ではまだ公私の格差は残るのかなというふうに思っております。

寺脇参考人 問題は子供の問題だけだと思います。もちろん、親は懐の問題はあるとは思いますが。

 というのは、もともとは有償だったわけですね。だから、今までずっと無償だったのが九百十万円以上の人が有償になるわけじゃなくて、もともとは有償だったものが無償になっていたということです。

 問題は、つまり生徒の側が、公立高校の生徒たちにとって、さっきも申し上げましたけれども、所得制限によって、日本の公立学校制度の中に初めて所得による違いというものが生じてくるわけですから、このことがどのような影響をもたらすかというのは、始まってみないとわからないところも多いですけれども、少なくともよい影響を与えることはない、悪い何かが起こる可能性は高いと考えなければならないと思います。

 私学も、御経営の立場からすれば、低所得層の補助金が出ることはいいことだとは思いますが、私学においても、子供の間ではやはり九百十万円というラインができてくるということなんでしょうが、公立と違って私学の場合は今までもいろいろなことが、所得による違いが出ている部分がかなりありましたから、公立ほどではないのだろうと思います。

三輪参考人 やはり、公立学校の場合には、無償制が有償制になったということによる影響はまた非常に大きいと私は思います。

 特に、先ほども申しましたけれども、せっかく公費によって社会全体で学べる条件づくりができたということがまたほごにされて、親のお金で自分は学ぶという、学ぶ基盤自体が非常に私的なものになってしまった。そのことが、学ぶ意欲やあるいは展望、方向というものに大きな規制になって、本来の人格の形成を妨げる、そういう条件になるのでないかというように思います。

 受益者負担で、受益が自分にあるからそれでお金を払うんだという思想がずっとこれまで底流にあって高校の有償制も維持されてきたと思いますけれども、そういう考え方がまた強くなって、もっと教育を私的なものに考えてしまう、そういった条件へと、教育の基盤の問題として変質していくということが、今後また高校生の人格形成に大変大きな影響を及ぼすのではないかというふうに思います。

青木委員 参考人の皆様の御懸念、本当にそのとおりだというふうに思うんです。

 無償を有償に変えて、申請をした人は無償、何かの理由で申請できなかった人に対しては年額十一万八千八百円、これを支払いなさいよということなんですよね。これは低所得者対策だというふうに言っているんです。九百十万以下の人は変わらないと言っているんですけれども、私は、これは実は変わるんじゃないかなというふうに思っていまして、そこを大変懸念しています。

 政府が九百十万以下の家庭に対しても本当に無償でいいんだと思っているのであれば、わざわざ有償にして申請制度にして、皆さんのすごく手間をいただくようなことにわざわざ切りかえなくても、所得制限については何か考えがあるのかもしれませんけれども、そこは私たちも反対ではありますが、所得制限については考えるとしても、九百十万円以下のここの部分は無償のままでいいんじゃないかと思うんです。政府もそういう方針だと思うんですよ、九百十万以下は無償にすると。

 なので、何でそこをわざわざ有償にして、申請をして、日本全国の親御さんも、そして教師の皆さんも大変な事務作業に当たらなきゃいけないのかなと率直に思うんですけれども、何かいい方法はありませんでしょうか。

吉田参考人 私どもがそういうことを考えて何でも実行できるんだったら、教育も何もそうさせていただきたいと思います。

清水参考人 私どもは、親御さんの負担減を望んでいるわけで、それ以上のことは申し上げられませんが。考えておりません。

寺脇参考人 おっしゃるとおりでしょう。

 私学は、過去も有償、今も有償、今後も有償なんですよね。公立は、有償だったものが無償になって、また有償になる。それは何のためか。いや、その二割の人たちから授業料を取るためにしたんだということですよね。

 これは実は、今、高校生たちだっていろいろな情報を持って考えますから、大人はまことに変なことをするものだ、この社会というのはまことに変なことをするものだ、九百十万円以上の人の税金を高くすればいいじゃないかと考えると思います。

 だから、そのことが、政策としてそれはあり得る話だと思いますよ、格差をつけるというのはあり得る話だと思いますが、方法としてこういう方法をとるというのは、非常に、公立学校としてのあり方にもかかわってくる問題になりはしないかと危惧をいたします。

三輪参考人 所得制限の導入の是非はとにかくとおっしゃいました。確かにそこは一番今回問題ですが、それを除いても、今まで公立高校は授業料が無償制でした。不徴収でした。それが有償になって、その分を支援金で賄うということになりますと、この理念が根本から崩れるわけですね。無償教育の導入というのが国際的な趨勢ですが、日本は逆流しているというイメージ発信を、メッセージを送ることになると思います。

 また、高校生たちも、無償であるということではなくて、有償なんだ、親が払って、若干国がそれを援助してくれるという関係に戻ったんだ、そういう捉え方になると思いますね。

 ですから、所得制限を導入した、そういう問題以上に、やはり、公立高校から始まった授業料の無償制、不徴収という流れがここで大きく変わってしまったということが、これが大変問題だというふうに私は思います。

青木委員 大変ありがとうございました。

 まず、やはり子供のことを考えなければならないわけですけれども、子供にとってのメリットはそうそう見つからないということで、むしろ精神的な悪影響の方があるのではないかという懸念の声もいただきました。

 まだまだこの制度を変えるということに対しては議論の余地が十分にあろうかというふうに思います。また質疑時間があろうかと思いますので、きょうの参考人の皆様方の御意見をもとにまた質疑の方に当たらせていただきたいと思います。

 大変貴重な御意見、ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 きょうは朝早くから、四人の参考人の皆様、本当にありがとうございます。質疑の方は私が最後でございますので、あと二十分、ぜひおつき合いをいただければというふうに思います。

 それで、まず三輪参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 今回の、九百十万円を境にして有償にしていく、無償化をやめるということでございますけれども、当委員会でただしましても、文部科学省の方としては、これは漸進的な導入、漸進的である、そういう答弁をしばしばいただきました。今回の無償化制度の廃止ということ、もちろん、低所得者の皆さんに対してより手厚くさまざまな支援を行うということは是といたしますが、今回の制度の改変について、これは果たして漸進的な導入と言えるのか。

 先ほどの最初の意見開陳の中でも、漸進的導入とはということでお話がありましたので、その点に関しての御意見をぜひ伺いたいと思います。

三輪参考人 授業料の無償制を、おっしゃるように、実質廃止したということになりますので、これは、従来三年間継続してきたものが逆流をするという点では、漸進的導入ではなくて漸進的逆行ですね。

 ですから、これはやはりそういう形で解釈することは無理で、国連の社会権規約委員会も日本政府に対して改めて、その危惧が感じられるものですから、迅速かつ実効ある措置を講ずる義務づけをしているわけですね。この点では、やはり、国際的な批判に私は耐えられないと思います。

 ですから、漸進的導入というものの一環だという形ではなくて、それはもう私たちはその理念に違反しているということで、これを認めないで、これまでの政策を拡充して、まだまださまざまな課題がありますので、公私の格差とか、あるいは、多少の就学支援金があったとしても実際の教育費は膨大なものがあります、そういうものを無償化に向かって一歩一歩進めるとか、非常に大きな課題が横たわっていますので、そこに向かってこれから進めていく。

 今回、従来の授業料無償制と就学支援金、それはそれとして土台にしながら、さらにその上に課題を追求していくということが政府の責務ではないかというふうに思います。

吉川(元)委員 続きまして、寺脇参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 これも委員会の中でしばしば、きょうも若干出ましたけれども、義務教育との関係ということだと思います。今、後期中等、いわゆる高校は義務教育ではないという中で、有償、無償という議論もしばしば行われます。

 先ほどからもお伺いしておりますと、義務教育を拡張していくという考え方が一つあるということと、もう一つは、やはり、参考人がずっと強調されております学習権の保障という考え方が一つ大きくあるんだろうと。

 この義務教育ということと学習権の保障ということの考え方の関係といいますか、についてどのようにお考えなのかというのをお聞かせいただければと思います。

寺脇参考人 学習権というのが憲法や法律に明記されていないということにも混乱の理由が一つあると思いますけれども、学習という立場に立てば、それを無条件に保障してくれるものが小中学校義務教育ということなんですけれども、では、それ以外のところは保障しないでもいいのかというと、でき得る限り保障するということなので、それは当然、財政的な制約もある中でやっていくものだろう。

 だから、それは高校だけじゃなくて大学だって、あるいは社会に出てから学ぶところだってそういうことを考えていくべきなのでしょうけれども、そこには限りがある。限りがあるところで、どこで線を引くのかという問題を義務教育以外の部分については議論をしていく必要がある。だから、こういう法律をつくったり変えたりしていくんだろうと思います。

吉川(元)委員 次に、九百十万円というライン引きについて、これは四人の参考人の方にそれぞれお聞きをしたいと思います。

 これは当委員会でも少し質問させていただいたんですけれども、今回の九百十万円というのは、いわゆる世帯の、両親の収入を合わせたものとして計算をする、標準世帯に割り戻して計算をするということでございます。

 民間の給与の実態調査を見ますと、今回、上位二二%までを見るということになりますと、実際に民間給与の実態調査をずっと、どこまでいけば二二%になるか。もちろん、これは公務員も含まれていませんし自営業者の方も含まれておりませんから正確ではありませんけれども、おおよそでいうと、大体五百万円台中盤から後半ぐらいまでの所得の人まで網羅をする。もちろん、共働きの結果として世帯としては九百十万を超えるにしても、一人一人、例えば、お父さんが五百万円、お母さんが四百十万円、標準世帯として計算するとこれも含まれるという形になります。

 果たして、この九百十万円というのが、少し議論もありましたけれども、高い所得というふうに考えてよいのかどうなのか。この点について、各委員の皆さんの御意見を伺いたいと思います。

吉田参考人 申しわけございませんけれども、私どもにはその判断はわかりません。

清水参考人 吉田先生と全く同じで、私どもがお答えできる問題ではないと思っております。

寺脇参考人 額が高いか低いかという問題ではなくて、そこに線が引かれるということの問題だと考えています。

三輪参考人 どういう金額であろうと、やはりそこに所得格差を導入するということがあってはならないと思います。そのことが教育的にさまざまな問題を助長するということは明らかでございます。

 したがいまして、こういう問題は、最初にも申しましたように、累進課税等で、租税政策などさまざまな形で全体として改善、解決すべきでございまして、それを、こういう形でラインを引いて、そしてこちらからあちらへ渡すというふうなそういう措置は、極めて教育条理に反する、非教育的な、後世にやはり恥ずかしい政策だというように私は思います。

吉川(元)委員 私も、ラインを引くこと自体について強い違和感を感じますし、また、所得に関して言いますと、これはいわゆるつり鐘型の正規分布ではなくて、世間で言われる高所得の人に負担をしてもらうということではなくて、中所得程度のところまで来てしまうという問題点もやはりあるんだろうというふうに私は思います。

 それともう一点、これも皆さんにお聞きしたいと思います。時期の問題です。

 この法案がもし成立すれば、来年四月から実施をされるということになります。もちろん、一つあるのは、その準備期間等々も少しお話がありましたが、万全の準備をしなければいけないということで、なるだけ早くということもお話がありました。一つは、準備期間という問題がありました。

 それともう一点、私が非常に危惧をするのは、来年の四月に消費税が五%から八%に引き上げられます。これは政府も、公式といいますか、総理も含めて、四、五、六の景気というのは恐らく後退をするだろう、その後、さまざまな経済対策等々を打ってもう一回成長軌道に戻すんだというふうに言われておりますが、経済は水ものでありまして、その後どのようなことが起こっていくのかというのは、ちょっと予想がしづらいところもございます。

 言うまでもなく、今回の所得の制限を設けるというのは、地方税の所得割に基づいてその判断をしていくということになります。所得割、地方税の場合は、前年の収入に基づいて地方税が計算をされ、五月に明らかになっていく、各個人に対してこれだけの地方税を払ってくださいということが明らかになっていくわけです。そうしますと、実際に、例えば四月以降に経済的に大きな落ち込みが発生をして、その結果として事業がうまくいかなくなる、あるいは給与が下がる、倒産をする、失業をするというようなことも十分に考えられることだろうというふうに思います。

 間違いなく、来年四月に大きな経済的な変化、悪い方への変化が起こるというのはもう明確ですので、あえてその変化が起こるその時期に合わせてやるということについては、私は非常に危惧を持っておりますが、この点について、先ほどの準備の時間も含めてということもありますが、それぞれ参考人の方から御意見を伺いたいと思います。

吉田参考人 準備の件につきましては、私ども私学は四年前から所得制限がありまして、所得の確認その他の事務を行っておりますので、国の方で四月一日から実施するということになれば、すぐにやれるように対応させていただくつもりでございます。

 それから、後段の部分につきましては、私どもからすれば、それを私どもに質問されることが逆にわかりません。それがもしわかっているのなら、私学にもっと生徒が来るようにしたいなとも思いますし、そして、それとともに、家計急変など、そういった制度等もございますし、また、所得の確認も六月ということもありますので、いろいろな方策があるのではないかと思っております。

清水参考人 四月導入に関しましては、冒頭の意見の中で述べさせていただいたように、私ども、小規模校が多いものですから、やはり、事務量をしっかり精査していただければ、四月から導入できると思っております。

 以上でございます。

寺脇参考人 景気の問題は私たちが想像できることではないですが、準備期間という意味では、やはり十分な準備期間が、もし変えるならば必要だと思います。

 でも、それは、導入するときも準備期間がなかったんですね。それはなくなる話だからいいんだろうみたいなことではなく、やはり、その導入時にも十分な準備期間が必要だっただろう。そこはやはり、この制度が十分国民の理解を得られなかった、あるいは、子供たちにまでその思いが、全ての高校生に届くということが本当は必要であったわけで、その準備期間は導入時にも必要であったと思いますが、今度はもっと必要なことになるのではないか。つまり、子供たちの間の混乱をなくすというのだったら、時間がかかることだと思います。

三輪参考人 せっかく定着したこの制度が新年度の一年生からまた変わってしまうというような、こういう朝令暮改的なことは、大変教育的な影響が及ぶと思います。保護者や生徒に十分に説明できるのかどうか。二年生や三年生のお兄さん、お姉さんには、それはただであったけれども、あなたから、これからは授業料が必要になったよということについて、それが本当に説明できるのかどうか。多少の援助があったとしても、そういう仕組みの不条理さというものも、やはり、十分納得するということが必要ですから。ですから、その点では、もう論理的にこれは困難だと思います。四月からのスタートは、特にそういう点ではさまざまな混乱を引き起こしますし、事務処理でも大変ではないかと思います。

 ですから、四月というふうに特に期限を切るのは、二十七年度からとか、いろいろこれまでも議論はございましたけれども、いずれにしても、特にこの四月からスタートするということは、これはやってはならないというふうに私は思います。

吉川(元)委員 次に、吉田参考人にお尋ねをいたします。

 子どもの学習費調査の結果等々を見ますと、就学支援金を含めて八十万円ぐらいの費用負担が行われております。今回、年収二百五十万円未満の世帯には給付型の奨学金も含めて手厚く支援が行われるということではありますけれども、依然として、平均から比べると、やはり三十万円強は負担が残るという形になります。

 年収二百五十万ということでいいますと、一割を超える部分が負担として残るということでございますので、今後どのような施策というものが必要になっていくのかということについてのお考えをお尋ねいたします。

吉田参考人 まだ確定じゃないようでございますけれども、そういうために給付型の奨学金ができるというふうに承っております。

吉川(元)委員 次に、清水参考人に伺います。

 今回、各種学校、専修学校等々に対しても就学支援金の対象となっている。これの効果というものがどういうふうにあらわれていくというふうに今考えておられるのか、また、今後さらに必要な施策としてはどのようなものが必要だというふうに考えておられるのかをお尋ねします。

清水参考人 効果については、学べる子たちがふえるというのは絶対的に効果としてはあると思います。今現在でも、冒頭でもお話しさせていただきましたように、経済的理由での中退者の減少または滞納者の減少というのは現実に出ております。

 申しわけございません、あと一つ、何でしたっけ。(吉川(元)委員「今後必要な施策」と呼ぶ)それはもう給付型です。やはりまだまだ、学べない、学びたくても高等専修学校で学べない子たちが多いんですね。

 これは、実際に今、私立高校さんも全く同じですが、この時期、我々私学の教員は生徒募集のために公立中学を回っております。そうしましたら、ことし回っている本校の教員の感触を聞くと、非常にことしは都立志向が強いと。やはり、突っ込んだ話ができる先生とお話ししていると、いや、この子は本当は職業教育で高等専修学校へ行った方が幸せなんだけれども、授業料の話になるとどうしても親御さんが都立の方を希望してしまうんだよということで断念するケースがあるということですので、給付型がもっともっと手厚くなっていくことを願っております。

吉川(元)委員 時間ももうそろそろ来ますので、最後に、寺脇参考人の方にお伺いをしたいと思います。

 もう既にいろいろお話を伺いました。今回の制度改正というのは、これは、抜本的なといいますか、基本的な考え方の大きな変更なんだろうというふうにも思います。

 私自身はいわゆる高所得者というふうにはとても思えないんですけれども、そこでラインを引いて、そこのお金を回すということ、これはやはり教育を社会が支えるということからの大きな後退ではないかというふうに考えます。

 この点について、最後に寺脇参考人の方からお話を伺っておきたいと思います。

寺脇参考人 おっしゃるとおり、教育をどこまで社会が支えるかという問題だと思うのですが、何度も繰り返しになって恐縮ですけれども、導入するときに、社会がやるんだという考え方が徹底していなかったためにこのようなことになってしまい、かつ、これも何度か申し上げましたように、公立学校において所得の線引きが行われるというような事態が起こってしまうということについて、私たち社会全体として反省しなければいけないところがあると考えます。

吉川(元)委員 きょうは、長時間本当にありがとうございました。大変参考になりました。またさまざまな機会でいろいろな御意見をいただければというふうに思います。

 以上で質問を終わります。

小渕委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る十三日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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