衆議院

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第6号 平成25年11月27日(水曜日)

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平成二十五年十一月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    秋本 真利君

      池田 佳隆君    岩田 和親君

      小此木八郎君    神山 佐市君

      菅野さちこ君    木内  均君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    桜井  宏君

      新開 裕司君    冨岡  勉君

      永岡 桂子君    野中  厚君

      馳   浩君    比嘉奈津美君

      前田 一男君    牧島かれん君

      宮内 秀樹君    宮澤 博行君

      山下 貴司君    吉野 正芳君

      菊田真紀子君    細野 豪志君

      山口  壯君    吉田  泉君

      遠藤  敬君    椎木  保君

      三宅  博君    大口 善徳君

      中野 洋昌君    井出 庸生君

      柏倉 祐司君    宮本 岳志君

      青木  愛君    吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学副大臣      西川 京子君

   財務大臣政務官      葉梨 康弘君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 戸谷 一夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            田中  敏君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 加藤 重治君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            木村 陽一君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十七日

 辞任         補欠選任

  小此木八郎君     吉野 正芳君

  永岡 桂子君     山下 貴司君

  宮内 秀樹君     秋本 真利君

  宮川 典子君     宮澤 博行君

  中野 洋昌君     大口 善徳君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     宮内 秀樹君

  宮澤 博行君     牧島かれん君

  山下 貴司君     永岡 桂子君

  吉野 正芳君     小此木八郎君

  大口 善徳君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     前田 一男君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 一男君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

十一月二十一日

 学費の負担軽減、高等教育予算増額を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第六四号)

 障害児学校の設置基準策定に関する請願(宮本岳志君紹介)(第一四一号)

 私立学校の保護者負担軽減、教育環境改善のための私学助成充実に関する請願(稲津久君紹介)(第一四二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件

 東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律案起草の件

 東日本大震災に係る原子力損害の被害者に対する賠償の適切かつ確実な実施に関する件


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、日本維新の会所属委員に対し、御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長前川喜平君、高等教育局長布村幸彦君、研究振興局長吉田大輔君、研究開発局長田中敏君、スポーツ・青少年局長久保公人君、国際統括官加藤重治君及び資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長木村陽一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細野豪志君。

細野委員 おはようございます。

 きょうは、これから参議院の方で、例のあの高校の無償化の問題についての法案が採決をされるというふうに聞いております。順番を変えていただいて私の方から大臣に質問させていただくということで、御配慮いただいたことに感謝申し上げます。

 法案の質疑にも私は立たせていただいて、私どもの考えていることと今の政府のやっておられることということでいうと、どうしてもやはり違いがあるというふうには思います。

 ただ、一方で、きょう採決をされる、可決をされるであろうということですので、私自身も、この状況に至っては、考え方を切りかえて、教育現場に混乱がないようにしっかりやっていただきたい、そんな思いで、まずその点について若干聞かせていただきたいと思います。

 十三日、先々週の私の質疑の中で、就学支援金を受け取るのに課税の証明書が必要なんだけれども、法案でいうならば第六条の三にある「やむを得ない理由」によりまして出せない場合の判断の主体、判断基準について大臣にお伺いをいたしました。そうしましたところ、大臣は、そういった場合というのは法律をもって担保したい、予算についてですね、そういう答弁をされたわけですが、私は、聞いてちょっとあれっと思ったんです。やはりこれは法律によっては必ずしも担保されていない、だからこそ質問をしたという思いがあったものですから、そこは事実としてやや大臣の認識の違いがあったのではないかというふうに思うんですが、改めて、こういった場合にどのように対応するのか、確認で答弁をお願いしたいと思います。

 まず、大臣が答弁された件ですので、後ほど局長には聞きます。

下村国務大臣 おはようございます。

 失礼いたしました。御指摘のように、法律によって担保していきたいということでしたが、御質問は家計急変の際の対応でありますけれども、今まで私立については対応策があったわけですが、公立学校においても国が二分の一の負担をする、そういうふうな形で、緊急の変化に応じた対応についてこれは財源によって担保するということで訂正させていただきたいと思います。

細野委員 今大臣から答弁がありましたように、状況がいろいろ御家庭によって変わるという中でそれぞれ教育現場では対応しなければならなくなるわけです。つまり、前年度に所得が九百十万を超えていた場合でも、今年度になって、例えば会社が倒産をするであるとか、さらには、主要な家計を支えていた親が亡くなるであるとか、そういう事情があったときには現場で対応しなければならなくなるわけですね。

 そこで、きょうは前川局長にもここは御答弁をいただきたいと思うんですが、私が問題にしたいのは、そういう就学支援金のこのやりとりをする際には膨大な事務が発生をする、それに対応できるような体制が本当にできているのか、この点なんです。

 大臣の方からは都道府県がやるんですというお話があったんですが、現実的には、県立高校はたくさんあるわけですから、都道府県が、県庁の職員が対応できるというのは、これは無理ですよね。ですから、実際は学校の方で対応することになるだろうと。

 改めてちょっと数を計算してみたんですが、大変な事務だと思います。これまで私学で就学支援金の加算を得ている生徒の数というのは、高校で三学年合わせて二十二万人です。今度、公立が対象になることによってどれぐらいになるかと計算をしますと、一学年で九十三万人、これが三年後には三学年になるわけですから、三百万に近い方が就学支援金の対象になるので、その課税証明書を全部チェックしなければならない、出さなければならない。状況が変われば、課税証明書を出せない子供についてはどうするのかということについても、現場で判断しなければなりません。

 これは局長、現実的には学校で対応することになると思うんですが、その体制というのは本当に整えられますか。

前川政府参考人 各都道府県において生じる事務につきましては、これまでも、各都道府県と情報交換なり相談なりをしてきておるところでございます。各都道府県も状況は十分承知しておりますので、これから新年度に向かいまして、十分な準備を整えていただきたいというふうに思っております。

 先生御指摘のとおり、この所得確認の事務はかなり量の多い事務になるわけでございますけれども、これは都道府県が確認をするという立場にあるわけでございますが、現実には、公立学校の場合におきましても私立学校の場合におきましても、学校の現場に委任してやっていただくということは十分考えられるわけでございます。

 学校におきましては、基本的には事務体制を整えてそれに対応するということになると思いますけれども、この所得確認の事務というのは、新一年生については四月に生じる事務でございます。四月から五月にかけてその確認作業が行われると思います。七月から改めて、これは、一年生から三年生まで三学年についての所得の確認の事務が生じるわけでございます。

 したがいまして、この事務は一種の時期的な事務でございまして、一時期にかなり多くの事務が生じる、こういうタイプの仕事でございますので、各都道府県のこれは御判断ではございますけれども、臨時に職員を配置してその事務に当たる、あるいは臨時に非常勤の職員を任用して事務に当たる、そういうようなことが考えられます。

 そのためにはさまざまな経費がかかってまいります。特にその職員の人件費などがかかってまいりますので、この点につきましては、各都道府県の要望を踏まえながら、予算の範囲内で十分な措置をとってまいりたいと思っております。

 こういった事務は現在も私立学校には生じているわけでございまして、そのための事務費といたしまして国として四億円程度を交付しているところでございますけれども、新制度になりましたら、公立学校も含めまして四十億円から五十億円、この事務費にかかるだろうと考えておりますので、この点につきましては、十分予算措置ができるように鋭意予算折衝してまいりたいというふうに考えております。

細野委員 以前も答弁ありましたけれども、四回、課税証明を子供たちに出させるわけですね。初めは一年生、四月に出させて、しかし、四月に出せるものというのは前々年のものになりますから、それでは十分ではない。六月か七月ですか、前年のものが出るのが。ですから、一年生のときに二回課税証明書を出させる。二年生になったときに、果たして所得が九百十万を超えているかというのを確認をしなければならないので、二年生になったときにはまた六月か七月には前年のものを出さなきゃいけない、それで三年生でも出すという、四回その手続が発生をするわけですよ。

 ですから、局長は民主党政権の時代も教育行政を充実させるために頑張っていただいて、極めて有能な、そして、当然官僚の皆さんですから政権には忠実にやられる方ですので、そういった意味で、前にやったことと今回とでいろいろ御苦労されながらやっておられるのはよく承知をしながらなんですけれども、やはりその事務をやり切る体制を、政権として法案を出すからには、相当てこ入れをしてやらないといかぬと思いますよ。

 特にお願いをしたいのが、やはり、家庭急変の場合というものはどういうものかということで混乱が出てくる可能性があると思うんです。ですから、その家庭の状況を把握する責任は都道府県にあると言うんだけれども、それは無理ですよ。どの子供が、例えばお父さんの会社が潰れてしまったのかとか、死別もあるでしょう、離婚もあるでしょう、さらには、ドメスティック・バイオレンスのような形で実際は親が金を出さないというケースも、不幸ですけれども、中にはあり得ますよね。

 その状況をしっかりと学校が把握をして判断を迷わないように、すなわち、この場合は就学支援金を出すケースで、この場合には一旦これはもう少し検討するケースでこれは出せないんだというところを相当整理をして、都道府県はもちろんですけれども、学校現場にもそういう判断基準を示さない限り、混乱が必ずどこかで生じると思うし、それは、先生にとっては、家庭のプライバシーにもかかわることだから、場合によっては非常につらいことをいろいろ調べたり聞かなきゃならない、もしくは、丸投げをしてしまったら、判断も学校でしなければならないということになりかねないわけですよ。それはさせない。

 すなわち、国家としてこういう制度を導入する以上は、現場の混乱はさせないし、生徒たちにももちろんですけれども、先生たちにはそういうつらい思いはさせないということをやり切る責任はやはり文部科学省にあるし、担当局長として非常に重いものがあるというふうに思いますよ。

 その辺、マニュアルを示すことも含めて、私学のマニュアルでは私は全く十分ではないと思います、規模からいっても状況からいっても違いますから。そこはしっかりやっていただきたいと思うんですが、御答弁いただけますか。

前川政府参考人 御指摘のとおり、生徒の家庭の事情につきましては、さまざまなものがあり得るというふうに考えております。

 スムーズに申請書が出てくるケースについては問題はないわけでございますけれども、申請書が出てこないという場合は、まずは所得制限以上の収入があるものと推定されるわけでございますが、しかし、その中には、実はさまざまな事情で申請書類が出てこないというケースがあるということが考えられますので、そこを丁寧に見ていく必要がある。その部分の事務も、これはなかなか無視できない量になるのではないかというふうに思っております。

 個々のケースに応じての対応が必要になってくるわけでございますけれども、例えばドメスティック・バイオレンスがあるとか、あるいは児童虐待であるとか、やむを得ない理由によって保護者の所得の証明書類が提出できないというようなケースにつきましては、その事情を明らかにした上で、例えば本人の所得のみで判断する、本人に所得がないということであれば所得はゼロということで判断する、こういうことも必要になってまいりますので、その辺の考え方の目安というようなものは、よく都道府県などとも相談しながら周知してまいりたいというふうに思います。

 一方、家計が急変しているという場合につきましては、これは、今回の就学支援金の支給という、この法律のもとで行われる法定受託事務ということではなく、各都道府県がそれぞれの判断で自治事務として行っていただくものでございます。

 それに対しましては、文部科学省として予算上の補助制度を設けていきたいというふうに思っておりますけれども、この家計急変についての考え方は、各都道府県ごとに異なってくるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、この家計急変についても、これは、各都道府県がどのような取り扱いをするかということが各学校できちんと了知され、理解され、きちんとした対応がなされなければならないというふうに考えておりますので、この点も含めまして、学校現場でこの事務に遺漏がないように、また判断に誤りが起きないように、指針のようなものを考えてまいりたい。

 現行制度のもとでも実施要領というものを定めておりますけれども、その実施要領について見直しまして、さらに書き込むべきことがあれば書き込み、また、それについて十分な周知ができるように取り計らってまいりたいというふうに考えております。

細野委員 実施要領は詳しく書いてください、都道府県と相談をしながらということですけれども。私は、これは国が導入した制度ですから、相談しながらというよりは、文科省としてしっかり書かれた方がいいと思います。

 もう一点、ちょっと気になったんですけれども、家庭の急変については都道府県に丸投げをするんですか。つまり、都道府県に丸投げをするといっても、都道府県もなかなか決め切れないでしょうから、学校に丸投げするんですか。大臣、本当にそれでいいんですか。

 つまり、きちっと丁寧に家庭の状況を見て、急変している場合には出すというふうに考える学校や都道府県もあれば、一方で、そんなものは無視して、前の年の状況を基本的には尊重して、ちゃんと書類を出してこいと待っていて、子供たちの中で、証明できる子は出してもらえるけれども、親が非協力的で出してくれないところは、今の話だと都道府県によってはやらないかもしれませんよ。これでいいんですか。

下村国務大臣 まず、きょう参議院でこの法案を可決をしていただいたら、直後に、チラシを用意しておりますけれども、「高等学校等就学支援金について」、これは都道府県を通じて、新高校一年生になるであろう対象者関係の方々に配付をしていただくような形で、周知徹底を文部科学省として先頭に立ってやりたいというふうに思います。

 それからあと、平成二十九年七月から早ければマイナンバー制度が導入されることになるわけです。このことによって、保護者からの所得情報の提出を受けなくても都道府県等が所得情報を確認することが可能になるというふうになってまいりますので、いろいろな手続上の問題等、相当簡素化にはなってくるのではないかと思います。

 今の急変の御質問でありますが、基本的には、第一義的には、まずは親御さんの問題であるというふうに私は思います。やはり子供については、あの新しい教育基本法の中でも第一義的責任はこれは保護者にあるわけですから、保護者がしっかりしてほしい。

 ただ、今のお話は、そうでない保護者の場合にはどうするのかということでありますが、これはしかし、では、国が実際一人一人どの程度の情報があって関与できるかというところになると、率直に言ってできないわけでありまして、学校現場がその子供の状況を聞きながらフォローをしていって、相当そういう意味では学校の先生方に御理解をいただきながら、実際困っている子供に対してどう対応していただくのかということについては、現場対応していただく必要がやはりあるのではないかというふうに思います。

 その辺は、丁寧に文部科学省として都道府県の教育委員会を通じて学校現場の先生方にも理解をし協力していただきながら、そういう困っている子供がいたら対応できるような体制をつくっていくようにフォローアップをしていきたいと思います。

細野委員 私も、現実的には学校でやらざるを得ないと思うんです。私が申し上げたいのは、家計急変のケースについても、その判断基準については、基本的にはやはり文科省の側から示さないと現場は相当苦労するんじゃないかということなんですよ。ですから、先生方がやっていただかなきゃならないのは、この制度が導入された以上、これは必要だと思いますよ。

 考え方については、これは文科省としてお示しになる、そういうふうにはお考えになりませんか。これは大臣にお伺いします。

下村国務大臣 当然、文科省として、考え方については明示をいたします。

 ただ、これは、所得証明書等の具体的な申請書類が明らかでないと家庭急変かどうかも事実関係がわからないわけでありまして、やはりそういう書類上の対応は関係の家庭にはしていただく必要があると思いますが、学校の先生方には十分周知徹底をするようにしたいと思います。

細野委員 家庭急変についても文科省としてしっかり考え方を示すという御答弁をいただきましたので、そこはしっかりと対応していただきたいと思います。

 次に、文化芸術政策についてお伺いしたいと思います。

 大臣のこの国会の冒頭でなされた挨拶を聞かせていただいて一つ印象に残りましたのは、文化、スポーツの振興についての御発言でございました。「文化芸術立国の実現のため、」これは最近ずっと使っている言葉だと思いますが、「我が国が世界に誇る有形無形の文化財を保存、活用していくとともに、実演芸術やメディア芸術等の幅広い芸術を振興し、それらのための人材育成を強化します。」これはいいと思います。「そして、我が国の文化力を計画的に強化することで、」次なんですが、「二〇二〇年には、日本が世界の文化交流のハブとなることを目指します。」

 つまり、オリンピックのときには、世界から、スポーツ選手はもちろんですが、お客さんがたくさん来られるでしょうから、そのときには日本がハブになっていて、文化についてもいろいろないいところを皆さんに見ていただいたり、すばらしい経験をしていただいてまた帰っていただく、そういう趣旨だと思うんです。

 これは大臣、どのようにハブとしての実現を図っていくのか、そこについてのお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、二〇二〇年をターゲットイヤーにしていきたいと思います。これは単に五輪開催の年ということでなく、日本は現在、明治維新、終戦に続く第三の社会変革のときとして新しい日本を創造するスタートにしていきたいと考えておりまして、文化政策については、二〇二〇年を新たな飛躍のチャンスと受けとめたいと思います。

 そのために、現在、私のもとで文化芸術立国中期プラン、これを検討中でございまして、これは、意欲的に、二〇二〇年、七年後までに今の予算も倍増するという中で、今年中にこのめどについての取りまとめをする予定でございますが、具体的な現時点における方向性としては、世界に誇る日本各地の文化力、すなわち、各地域が主体となり実績を積み重ねつつある文化芸術活動や、あるいは各地域で長年受け継がれてきた有形無形の文化遺産を活用した取り組み、また、日本の文化力の海外発信、世界との交流を目指した国際イベント、このようなものを実施することによって、日本各地の地域資源を積極的に活用しつつ、全国の自治体や多くの芸術家等関係者とともに、世界に日本の文化プログラムの提供を行うことについて検討していきたいと思っております。

 それを実現するために、文化芸術で創造力豊かな子供を育てる。そのための人材育成に関する施策、地域の文化資源を生かした町づくりの推進などの地域を元気にする施策、そして、伝統工芸、芸能、生活文化、これは衣食住全ての分野でもありますが、海外発信の強化など、世界の文化交流を推進する施策などによりまして、文化の力の計画的な強化を図ることが必要であるというふうに考えております。

 同時に、二〇二〇年には世界じゅうからトップアスリートが約一万人訪れますが、世界じゅうからトップアーティストも一万人、これは東京だけでなく、日本全国、今申し上げたような地域の文化芸術のいろいろな行事にも一緒に参加をしていただいて、そこに海外の観光客も一緒に参加していただくような形で、ハブ、拠点で、これは前の文化庁近藤長官が、かつての長安のような、その長安というのは実際見てきたわけじゃないのでよくわかりませんが、しかし、そのときは世界じゅうの文化芸術関係の人が長安に訪れる、そういう時代だったということを言われていて、そういう意味で、これからの日本が、文化芸術については世界じゅうの人たちが、人も含めて一度は訪れる、そこからまた新たな文化が発信し広がっていく、もともと日本の持っている伝統文化を生かしながら、それと連動させる、そういうことをぜひ考えてやっていきたいと思っております。

細野委員 日本が世界の文化交流のハブとなるという、これはすばらしい目標だと思うんです。ただ、日本の今の文化政策などを見ていると、ちょっと大見えを切ったなという感がしなくもないんですよ。

 というのは、文科省がよく使っている資料ですけれども、予算の規模でいうならば、日本の場合には大体文化関係の予算、いろいろ集めても一千億ちょっとですよ。GDPや、国家予算比で見ると〇・一%。フランスなんかの場合は、一%を超える予算が配分をされています。

 ちょっといろいろ資料をいただいて見てみたんですけれども、工夫をして文科省としてはいろいろやっておられるのは理解をしつつも、やはり予算の枠そのものが非常に限定をされていて、正直言うと、予算の配分もかなり細かいという感じがしなくもないんですよ。

 さらに、私は演劇を見るのが好きで、東京もそうなんですけれども、地元の静岡なんかでも足を運ぶんです。東京は、国立劇場もありますし、文科省が支援をしているところとしては、サントリーホールとか東京芸術劇場とかは非常にいい劇場ですよ。そういうところもあって、まだそういう機会に恵まれている。

 静岡の場合は、SPACという劇場がありまして、これは県立で劇団を持っているので、そこは直接支援していただいて非常にありがたいんですけれども、地方になってくると、なかなか演劇とか、ましてや日本の芸能みたいなものに関しては、触れる機会は極めて限られている。

 ですからそこは、二〇二〇年にこれだけやるということで大見えを切られたのであれば、相当努力しない限り、なかなかそれだけの場になりにくいという現状があると思うんですが、その辺の意識は、大臣、どのように持っておられますか。

下村国務大臣 これはおっしゃるとおりだと思います。文化庁だけの発想では、現在の課題を充実させるということは、できるかもしれませんし、しかし、これから本当に文化芸術立国としてのハブ化ということになると、まさにオール・ジャパン的な、あるいは、日本国内だけでなく、世界からのいろいろな提言を受けながら考えていく必要があるのではないかというふうに思っておりまして、私は二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの担当大臣兼務ということでもありますので、今までの枠だけでなく、さらに日本を文化芸術立国にしていくための、オリンピックを活用した、いろいろなオール・ジャパン的な取り組みをすることによって、大見えという話を言われましたが、そうでないようなものをこれからクリエーティブな形でつくっていきたいというふうに思っておりますし、事実、過去十年間、対前年度比一億とか二億とか、その程度しか実際は文化予算というのはふえていないんです。

 ですから、今、文化庁の中でも、同時に、例えば公共事業費の一%は文化芸術について必ず使うようにするような法案の準備とか、それから、これは超党派の議員連盟の中で、IR、カジノを用いた国際観光産業としての、その中の収益の一部を文化予算に特化してお願いするとか、いろいろな形で、今までにない、財源も確保しながら新たな取り組みについてしっかり考え、対応していきたいと思います。

細野委員 被災地に行きましても、また地域あちこちに行きましても、やはり文化がそこにしっかり根づいているところというのは、地域のつながりも強いし、復興についても前に進めていくことが可能になっているという現状があると思います。

 ですから、文化というのは、決して金持ちだけのものでももちろんないし、ましてや東京だけのもので絶対あってはならなくて、社会全体に非常に不可欠なんだという前提に立って、本気で取り組んでいただきたいと思います。

 一点だけお願いは、舞台芸術とか、あとは伝統芸能とかの予算を見ていて感じたのは、被災地にいろいろ配慮してつけていただいているんでしょうけれども、拠点がないこともあって、ややそういう面では不足をしている部分があるのかなというふうにも思うんですよ。ですから、そこはもう一度二〇二〇年に向けて見直していただいて、特に被災三県に配慮した予算を組んでいただきたいというふうに思います。

 時間がなくなってまいりましたので、最後に一つだけ。

 児童養護施設のことを二回について聞いてまいりまして、そのたびに大臣から御答弁をいただいたんですが、これまでの答弁は、文科省としてこれまでやってきたことをよりやっていきますと。つまり、高校の無償化についても、児童養護施設の子供の場合には明らかに所得が低いわけだから、そこについては上乗せをしますとか、そういう御答弁だったんですね。

 大臣、ちょっとここで一歩踏み込んでいただきたくて、児童養護施設に行きますと、例えば、中学生ぐらいの子供が小学校ぐらいの学力の宿題を一人でしていたりするケースが多いんですよ。やはり、親がネグレクトをしていたりもしくは虐待をしていたりしますから、意欲を持ちにくい、さらには、勉強が根本的におくれているという現状がある。その中で高校中退者も物すごく多いし、大学進学は一割。意欲を持つところからやはり相当ケアをしない限り、この状況は改善しないと思うんです。

 大臣は同じく冒頭の御挨拶の中で、「意欲と能力のある学生が経済的理由により学業を断念することがないよう、」というふうにおっしゃいました。ぜひ一回、文科省の施設ではないですが、厚労省の施設ではあるんだけれども、児童養護施設の中で子供たちの学習がどうなっているのか、それを文科省としててこ入れすることができないか、ぜひちょっとやってみていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 児童養護施設に入所する子供たちを含め全ての子供たちが意欲を持って学習できる環境づくり、これは大変重要な課題であるというふうに考えております。

 委員御指摘のように、児童養護施設は厚労省の所管ということでありますが、私も改めて委員から質問を受けたということで、厚労省がどんな児童養護施設に対しての子供の教育支援を行っているかということを調べてみましたら、例えば、学習塾に通いたいという場合にも厚労省関係で対象者には負担しているとか、部活活動費も実費で出しているとか、いろいろな取り組みはしているようでありますので、相当文科省関係の部門を厚労省が今までやっていたという部分はありますが、そういう御指摘もありますので、一度私自身が児童養護施設を視察に行って、自分の目で見て、文部科学省としてできることは何なのかということを実地で見ながら、厚労省と相談しながら、文部科学省として主体的にやるべき部分についてあれば、しっかり対応していきたいと思います。

細野委員 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 みんなの党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 本日は、地方の公立高校の減少傾向について、その公立高校のこれからのあり方について質問をさせていただきます。

 先日、高校無償化の議論のときに大臣の方から、公立、私立を問わず、お子さん一人一人に均等、平等な公的支援をしていくというスタンスが重要である、そういうお話があって、その際、私の方から今後の課題として、問題意識として、地域の、特に人口減少の著しい地方の公立学校が減っているということにも意識を持っていただきたいということを申し上げたんですが、そのことで何点か伺います。

 平成二年と平成二十四年、高校生の人口がピークだったときと最近の状況を比べてみますと、学校数は全国で八%減っております。

 この八%、五千五百十八校から五千百十三校に減っているのですが、まず、そのうち公立の高校は、四千百八十二から三千六百九十六と実は四百八十六校減っております。逆に私立を見ますと、千三百十九校から千四百二校に八十三校ふえているという数字があります。こういった数字を見ても、公立高校の減少は明らかである。

 また、平成二年、平成二十四年で比べたときに、北海道は三百四十校から三百二校に三十八校、この減少数というのは、ほかの都道府県で見ますと、東京都で四百七十校が四百三十六校になっているという数字がありますが、東京都と北海道の人口また面積等を勘案すると、この北海道の減少の数字というものは、その地域社会に与えている影響というのは、東京都と比べればかなり大きなものがあるのではないかと思っております。

 ただ、その一方で、生徒数を見てみますと、平成二年と平成二十四年では、五百七十九万人から三百五十五万人と実に四割減少しております。

 子供が四割減少している中で学校が八%減っているという数字を比較すれば、減少傾向ではありますが、比較的その減少を抑えてきているという見方もできるのではないか。

 ここは非常に評価の難しいところですが、しかしながらも、私の地元、長野県の県立高校でいえば、八十九校ピーク時にあったものから平成三十年度までに七十九校にしていく、小さな県立高校であれば、生徒数が百二十人を切るような状況が二年連続続けば統廃合や分校化、そういった県独自の基準もあります。

 まず大臣にお伺いをしたいのは、公立の高等学校、きょうは高等学校を例にお話をさせていただきますが、中学校、小学校もそんなに変わらないのではないかと思っておりますが、地域の公立校の減少傾向について、大臣の現状認識を伺います。

下村国務大臣 確かに、御指摘のように、平成二年から平成二十四年の二十年間で公立学校の生徒数が約四〇%減っている。公立高校は、私のデータですと一二%学校数が減っているということで、生徒数の減少から比べると高校の減少の数はそれほど極端ではないわけでありますが、それぞれの、特に過疎地域の公立学校については、大変に御苦労されているのではないかというふうに思います。

 我が国の残念ながら少子化の中で、教育現場においてそのような状況が、これは全国的にどこでも見られるということであるわけでありまして、公立高校の設置、廃止については、これは基本的に各都道府県や市町村の判断で行われるものでありますけれども、各設置者においては、生徒や保護者のニーズ、進学動向、それから生徒の通学の便、また、学校の規模等の地域の実情等を十分に配慮しつつ、再編整備が進められるものと考えております。

井出委員 今お話しありました、特に通学時間が長くなっていく。そういった地方におきましては、私の地元でもそうですが、公共交通機関、電車が一時間に一本ですとか、バスもなかなか本数がない。そういったところを私としてはかなり懸念をしております。

 今、基本的には都道府県の判断だというお話がありました。事前にちょっと調べていただいたのですが、昭和三十六年、公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律というものが出ておりまして、大臣がおっしゃったように、「都道府県は、高等学校の教育の普及及び機会均等を図るため、その区域内の公立の高等学校の配置及び規模の適正化に努めなければならない。」とあります。

 ただ、昭和三十六年当時は、私が想像するところ、まだ日本が高度成長の中にあって、これから人口がふえていく。そういった中で、人口がふえていくものに対して教育環境をしっかりと都道府県で整えてほしいという意味合いでスタートしたのではないかと推測をしております。

 今、この少子化の時代の中で起こっていることはまさにその逆の傾向であって、学校が減っていく。私は減らざるを得ないというところもあるとは思っております。大臣のお話の中で、学校の規模ということで地域、地元の皆さんが学校の統廃合を望んで、複数の学校を一つにするといった事例もかなり聞いております。

 ただしかし、この学校の減少に対してこれまで政府対応がどのようなものがなされてきたのか、また、政府のスタンスが示されてきていないのではないかと私はちょっと疑問を持っておるんですが、その減少傾向に対する今の大臣のお考え、政府のスタンスを改めてお伺いをいたします。

下村国務大臣 今、委員から御指摘があった昭和三十六年の公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律、この中の第五条の中に、「公立の高等学校における学校規模は、その生徒の収容定員が、本校又は分校の別に従い、本校にあつては二百四十人、分校にあつては政令で定める数を下らないものとする。」ということで、要するに二百四十人というのが数だったです。ですから、これに該当しない過疎の高校というのは、かなりの数、恐らく長野県でもあるのではないかというふうに推測いたします。この第五条を平成二十三年度に廃止して、つまり、公立高校の生徒の収容定員の基準を事実上はなくしたということであります。

 ですから、この二百四十人ということにもうこだわることなく、「都道府県は、高等学校の教育の普及及び機会均等を図るため、その区域内の公立の高等学校の配置及び規模の適正化に努めなければならない。」という位置づけの中で、これはつまり、生徒や保護者のニーズとか進学動向とか、それから生徒の通学の便、学校の規模等、かといって余り小さくなると、今度は教育上の成果、効果が上がるのか、そういう問題も一方であるわけでありますが、地域の実情を十分考慮しつつ、結果的には、これは設置者である地方公共団体が適切に判断できるようになったということですので、都道府県によってそれぞれ判断は違いますが、長野県は長野県なりの地域の事情の中で独自に判断できるようになったということであります。

井出委員 今、二百四十人の基準をなくしたと。また、各都道府県においては、これまでの学区制を、今は各学区をなくして全県一学区にするなどさまざまな工夫がされていると思いますが、学校だけではなく、そもそも市町村合併も進んでおりますし、少子化というものがなかなかその流れをとめられない。

 しかしながら、例えばある町に、先日もちょっと例に挙げたかもしれませんが、私の地元に小海町というところがあって、小海町に小海高校がある。そうした町の名前がついた公立高校があって、そういったものを守っていきたいという思いを持っている方も多数いらっしゃるかと思いますし、私は、地域の高校というのは、今、地元の方もいろいろな形で支援をされたりして、学校の質を上げるような取り組みも、例えばその小海高校ではありますが、地域の財産、核であると思っております。

 そういった意味で、できるだけ何とかこの問題を考えていきたいと思っております。

 先日の高校無償化の議論、私が冒頭にさせていただきました、生徒さんお一人お一人に平等な公的支援をしていくという一つの基準、それは非常に大切なものだと思っておりますが、ただ、それだと、その地域の特に過疎化の学校の自然淘汰というものには残念ながらちょっと手が打てないのかなと、そういう思いがあるのですが、その点について大臣のお考えを伺いたいと思います。

下村国務大臣 義務教育について、つまり中学校までは、国が全国どこでも公正公平、平準的な教育条件を整えるということについては責任を持つべきであるというふうに思いますが、公立高校については、これは設置主体は都道府県あるいは市町村ですので、基本的にはその判断だということをまず御理解いただきたいというふうに思います。

 私は十八歳までは群馬で育ちまして、その当時は、長野県というのは教育県だというのですごく評判の県の一つだったんです。その当時の、長野県は教育県だというイメージは、最近やや聞かれなくなったところもあるのではないかというふうに思います。

 ですから、長野県が長野県全体の県立高校をどうするかということについては、これはぜひ県で考えていただきたい。その部分で国が、文部科学省がフォローできる部分があればしっかりフォローさせていただきたいと思います。

 先ほどの御質問ですが、今までの国あるいは地方自治体の教育費については、設置者に対して税金を投入するということによって、これは高校無償化のときの話ですが、例えば都立高校ですと、生徒一人当たり年間約百二十万円、税金が投入されているんです。これは、私立高校ですと私学助成金という名目で税金が一人当たり三十八万円なんです。

 ですから、同じ高校生であっても、私立に行くか都立に行くかによってそれだけ税金投入額が違うということについては、今度は設置主体に対してではなくて、生徒一人当たりという視点から考えて同じ税金投入額をする、それがいわゆるバウチャー制度ですけれども、例えばそういう考え方もあっていいのではないかということを、これは個人的に考えているわけであります。

 その中で、しかし委員御指摘のように、これを全国一律にするというのはいろいろな難しい問題があります。つまり、公立でも私立でもどこに行っても子供負担額は同じだということについては、たくさん選べる学校がないと成り立たないんですね。

 ですから、都市部においてかなり限定して、ある意味では特区のような形で、公立でも私立でも基本的に税金投入額は同じだ、それ以外の、私立でしたらプラス個人負担は公立よりは多くなる。それは前提ですけれども、税金投入額を同じにしたらいいのではないかというのは、都市部での、たくさん高校がある、私立もそれから公立もある中での前提条件ということはやはりあるでしょうから、過疎においては、そのバウチャー制度と同じ形をとると、今度はそれは立ち行かなくなる。

 過疎は過疎なりにさらにその負担等を、均等ではなくて加算額等を考えていかないとこれはなかなか難しいというのは、おっしゃるとおりだと思います。

井出委員 ありがとうございます。

 もう一つちょっと関連でお伺いをしたいのは、先日、高校無償化のときに、特に私立学校の関係者に参考人に来ていただきまして、私立も大変厳しい、そういうお話を伺いました。私は、私立の建学の精神、独自の教育、そういった私立に頑張っていただいて公立と切磋琢磨をすることが教育においては非常に重要なことだと思ってはおりますが、ただ、平成二年と二十四年でその数字を見ますと、公立の学校が減少のほとんどだ。私立は、私がさっきお示しした数字ですと微増の状況。

 そういった数字を見ると、やはり公立の自然淘汰についても、今、過疎の地域についての加算というお話もありましたが、国として少し問題意識を強めていただきたいと思います。改めて見解を伺います。

下村国務大臣 私立学校の設置基準については、これは、基本的には都道府県の私学審議会等が一緒になって判断することになるわけです。

 ただ、その前提としての基準というのがあって、その基準をクリアしていて都道府県の審議会等で了解を得られれば新規に開校することができるということで、少子化とはいえ、一切新規参入は認めないということではないわけです。

 ですから、やはりそれぞれの高校が公私問わずいい教育をすることによって、いい教育というのは、そこに通っている子供にとってさらに伸び行くような競争を健全な意味でやることによって、結果的に公立学校が人気を博すといいますか生き残っていくという手だてがやはり必要であって、その結果自然淘汰されるのであれば、それは、より教育の成果、効果が上がる前提の中ではやむを得ないというふうに思うんです。

 ただ、それとは別に、過疎は過疎として、その一校しかない学校が廃校になるかどうかという話で、違う学校を選択できるという話ではありませんから、それは都道府県等設置主体がそれぞれの地域のニーズに応じて、これは適切に判断していただきたいと思います。

井出委員 きょうは、そういった過疎地域の学校に対しての貴重なお話をいただけたと思っております。

 私も、基本的には学校の設置については都道府県の判断または地元の判断だと思っておりますが、そうした地元、都道府県の今後の学校再編計画、決断に資するような、その参考となるような議論をぜひ政府内、国会でも深めていければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 きょうはありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 先日、当委員会で足立区第四中学校の夜間学級を視察いたしました。さまざまな事情から義務教育未終了の方々に学びを保障する場である夜間中学校は、今日かけがえのない役割を果たしていると思います。

 ことしの八月の六日に、夜間中学校問題の全党派が参加する院内シンポジウムが開かれ、私も含む当委員会の理事会メンバーのほとんどが呼びかけ人になっております。シンポジウムで、まさに足立四中の卒業生の訴えもございました。

 埼玉在住のその女性は、父親一人に育てられ、中学一年のときから近所に手伝いに行ったり仕事に追われ、結局中学校を卒業できなかった。しかし、就職をするに当たっても、履歴書に中学卒業といううそを書かねばならない。その重圧に押しつぶされそうだったと述べておられました。

 五十八歳のときに、仕事をやめ、御主人から、もう一生懸命働いたのだから何か自分のしたいことをしたらと言われ、学校に行きたい、こういう言葉が出たというんです。足立四中に入って勉強するようになって、学校へ行ってよかった、こんなにも楽しいことがあるんだ、漢字が読めるようになった、数学がわかるようになった、それは少しずつ自分が生きていく自信になりましたと語っておられました。この女性はその後、春日部高校の定時制にも進学をしておられます。

 まず大臣、この話を聞いて、今日夜間中学が果たしている役割について、大臣の御認識をお伺いいたします。

下村国務大臣 中学校夜間学級、いわゆる夜間中学は、戦後の混乱期の中で、生活困窮などの理由から、昼間、就労または家事手伝い等を余儀なくされた学齢生徒が多くいたことから、これらの生徒に対して夜間において義務教育の機会を提供するため、昭和二十年代初頭から中学校に設けられている特別の学級であるわけでございます。

 実は、私の義理の父が夜間中学についての本を著しておりまして、また、私も夜間中学の関係者の方々からお話を聞いたことがありますが、さらにこれらの方々に加えて、現在、中学校夜間学級では、外国人を含め、不登校などさまざまな理由により義務教育未終了のまま学齢を超過した方々の学習ニーズに対応しており、このような方々に対しても教育の機会を提供する、これは大変重要なことであるというふうに認識しております。

宮本委員 ところが、この夜間中学が、東京や大阪を初め八都府県に三十五校しかありません。残りの三十九道県には一校もないわけです。

 その結果どういうことが起こっているか。先ほどの女性は、五十八歳で学校へ行きたいとなって、現在住んでいる春日部の市役所に電話をした。そうしたら、春日部には夜間中学はありませんと言われた。次に埼玉県に電話した。そうしたら、埼玉県でも夜間中学は置いてありませんと言われた。それで、いつも乗っていた東武線に夜間中学設立校とあった足立区の第四中学校の看板を思い出して、電話をかけて、思い切って学校に行ったら、東京に勤めているか在住していなければ資格がないと言われ、それならと、東京でパートの仕事を見つけて足立四中に入った、こういうことなんです。

 そこで、文科省に聞きますが、なぜ全県につくらないんですか。

前川政府参考人 義務教育未終了のまま学齢を超過した方々の学習ニーズにどのような形で応えていくかということでございますが、基本的には、住民に最も身近な自治体でございます市町村の教育委員会が判断するということがこれまでの建前でございます。

 その際、中学校の夜間学級、これは学校教育法施行令の二十五条の第五号の二部授業として行えるわけでございますけれども、これを設置するかどうかにつきましても、市町村の教育委員会がそれぞれの市町村の状況を勘案して判断するということとされているところでございまして、その結果として、いわゆる夜間中学校が設置されていない県も多数あるという現状でございます。

宮本委員 これまでそういう答弁が続いてきたんです。

 しかし、既に日弁連は、二〇〇六年八月の十日政府に提出した「学齢期に修学することのできなかった人々の教育を受ける権利の保障に関する意見書」で、憲法及び教育基本法、国際人権規約及び子どもの権利条約に基づいて、「自己の意思に反し、又は、本人の責めによらずに義務的かつ無償とされる普通教育を受ける機会を実質的に得られていない者については、学齢を超過しているか否かにかかわらず、国に対し、合理的な教育制度と施設等を通じて義務教育レベルの適切な教育の場を提供することを要求する権利を有するものというべきである。」と認定をしております。

 そこで聞くんですけれども、高校無償化法案でも議論になってまいりました国際人権A規約、社会権規約でありますけれども、その十三条二項の(d)にはどのように定められているか。そして、日本はこの条文に拘束されているか。文科省、お答えいただけますか。

加藤政府参考人 委員お尋ねの国際人権A規約、いわゆる社会権規約の十三条二項の(d)でございますけれども、この条項では、「基礎教育は、初等教育を受けなかった者又はその全課程を修了しなかった者のため、できる限り奨励され又は強化される」というふうに規定されてございます。

 我が国はこの国際人権A規約を昭和五十四年に批准してございますので、日本政府はこの十三条二項(d)に拘束されているものでございます。

宮本委員 この十三条二項(d)についても、この前紹介したように、社会権規約委員会のゼネラルコメント、一般注釈十三号に詳細にその内容が定められております。

 パラグラフ二十二、第十三条二項(d)によって、初等教育を受けなかったり全期間を終了していない人々は、基礎教育への権利、ザ・ライト・ツー・ファンダメンタル・エデュケーション、ないし、万人の教育に関する世界宣言で提起される基礎的教育を受ける権利がある、こういうふうに定められているわけです。拘束されているわけですよ。

 この精神に立って本当に全ての人に基礎教育を保障しようと思えば、まず、学齢期を過ぎながら義務教育を受けられずにいる人々が日本にどれほどいるかを把握することが必要不可欠だと思うんです。

 文科省、義務教育未終了者数を掌握しているか、それは何人なのか、お答えいただけますか。

前川政府参考人 義務教育未終了の方々の人数の全体の数につきましては、承知してはおりません。

 が、小学校に在学したことのない人または小学校を中途退学した人、これは、国勢調査におきまして未就学ということで調査されております。平成二十二年度の国勢調査では、この未就学とされた方が約十二万八千人に上っているということでございますが、この中には、小学校を卒業したけれども中学校を卒業していないという方が入っておりませんので、現実に義務教育を未終了の方というのはこの十二万八千人以上になるはずであると考えております。

宮本委員 そうなんですね。未就学者はわかるんだけれども、義務教育未終了者がわからない。小学校を卒業していないか入学していない人というのはわかるんだが、小学校を卒業したが中学校は卒業していないという人はわからないわけです。ですから、はるかに義務教育未終了者は多いわけですけれども、それを調査する機会というのは国勢調査になるわけですけれども、現在の質問項目では未就学者しかわからないわけです。

 実際に調査項目についての議論があることは、私はわかっております。しかし、とにかく実態がわからなければ対策の立てようがないわけです。それで、この日弁連の意見書は、とにかく一度は政府による全国的な実態調査が必要だと言っているわけですよ。

 だから、国勢調査で行うかどうかはともかくとして、やはり、義務教育未終了者がどれだけ全国にいるかを、きちっと政府によって、政府の責任でつかむことは必要だと思うんですけれども、これは大臣の御見解をお伺いしたいと思うんです。

下村国務大臣 国勢調査において、小学校に在学したことのない人または小学校を中途退学した人については、今の局長答弁のように、調査を行っているわけですが、中学校を終えていない人については調査対象となっていないわけでございます。

 御指摘の義務教育未終了者の把握について、国勢調査の調査項目の、記入するということに対して、国民のプライバシーの問題ということで抵抗感が大きく、項目の細分化は困難でできなかったという経緯があるというふうに聞いております。

 では、文科省が単独でということになると、全ての国民を対象に大規模な調査を行うということについては、予算も含めて極めて困難なことであるというふうに思いますが、ただ、委員御指摘のように、一度はやはり調査すべきであるというふうに私も思います。

 その辺で、国民の抵抗感といいますかプライバシーの問題がありますが、国勢調査については総務省が行っているわけでありますが、文部科学省として、改めて総務省に、この調査項目に義務教育未終了者の把握についても入れてほしいということについては要望していきたいと思います。

宮本委員 しっかりとお願いをしたいと思うんです。

 足立四中でも、昼の中学校では不登校だったが、夜間中学に入学して生き生きと学校に通っている女子生徒からも話を聞きました。

 昨年度の学校基本調査によると、全国の、三十日以上の長期欠席した小中学生は十一万二千四百三十七人、中学校で九万一千七十九人となっております。

 学校現場では、長期不登校の生徒で義務教育終了の実態には欠けても、その子の将来を考えて卒業証書を出すのが普通だと聞いております。しかし、一度卒業証書をもらってしまうと、それが逆に障害になって、先ほどの女性のように、五十八歳になって夜間中学校で学びたいとなっても、逆に入学資格に欠けることになります。

 夜間中学のある県では、不登校の子供や保護者に対して、卒業証書を受け取るか、それとも夜間中学という選択肢もありますよと示して、選択をしてもらっていると聞きました。現に足立四中の女子生徒は、それで選択して夜間中学に入ったわけであります。

 これまで歴史的には戦後の混乱期の生活困窮、在日外国人などの義務教育未終了者への義務教育の機会提供が大きな役割であった夜間中学が今後果たすべき役割の一つが、不登校の子供たちの受け皿、あるいは学び直しにあるというふうに思うんです。しかし、北海道や東北地方、四国や九州等のように一校たりともなければ、そのような選択肢すら示し得ないということになります。

 そこで、大臣、夜間中学のこういった新たな役割にも照らして、やはり各県一校、例えば定時制高校に併設するというような案もあるでしょうけれども、着実に充実をしていくべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 夜間中学の充実については、随分以前から我が党の馳委員も関心を持っておられて、私もその紹介で関係者の方々に、これは大臣になる前の話ですが、お会いしてお話をお聞きしたこともございます。

 足立区のように、市町村がそれではつくると言っても、その市町村の範囲内に対象者になる人がどれぐらいいるかということになるとそれほどいないということで、結果的には困難というふうになってしまっている状況の中で、今の御指摘のように、基本的には義務教育ですから設置主体は市町村ですけれども、この発想を変えて、今、都道府県が中高一貫学校をつくっているという事例もあるわけですね。ですから、既存の都道府県の定時制高校に併設のような形で定時制中学といいますか夜間中学、それを市町村が受け皿として考えて、そして、それぞれの県内の生徒をこの夜間中学に対応できるようなことを市町村じゃなくて都道府県が考えれば、十分可能性はあるのではないかというふうに思います。

 具体的に、世論調査等で、それぞれの都道府県でどれぐらいの対象者がいるかどうかということもまず把握する必要があると思いますが、そういう方々が多い都道府県に対しては、そういう取り組みについては文部科学省の方でも提案をしてまいりたいと思います。

宮本委員 ありがとうございます。しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 次に、原賠時効特例法に関することをお伺いしたいんです。

 東京電力福島第一原発の事故によって避難を余儀なくされたり、健康被害が生じたり、業務への支障、倒産、不動産価値の減少など、被害をこうむった被害者を文科省は一体どれぐらいいると認識しておられるか。これはひとつ大臣にお伺いできますか。

田中政府参考人 お尋ねの件でございますけれども、現在、福島県全体で避難をされておられる方は約十四万人、避難指示区域から避難をされておられる方々は約八万人と承知しております。

 また、東京電力に対するさまざまな損害の請求は、個人の方から五十一万四千件、法人から二十二万件、このほか、自主的避難については百二十九万七千件というふうになっているところでございます。

宮本委員 百万人規模で被害を受けているわけですね。

 そこで、損害賠償請求、今直接請求の話が出ましたけれども、同時に、原発ADRセンターへの和解仲介申し立てでそれぞれどれだけあるか、これも数字を出してください。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 東京電力に対しまして直接なされた損害賠償請求の件数は、十一月二十二日の時点でございますけれども、個人の方々からの御請求、これが五十一万四千件、法人及び個人事業主の方々からの請求が二十二万件というふうになってございます。

 また、原子力損害賠償紛争解決センター、ADRでございますけれども、への和解仲介の申し立て件数、これは昨日の十一月二十六日時点でございますけれども、八千六百六十五件ということでございます。

 なお、このうち既済件数が六千百四十九件でございますものですから、現在進行中の件数というのは二千五百十六件という状況になってございます。

宮本委員 百万人を超えるような被災者に対し、全体で七十万件。これから損害賠償請求に進むという被害者がまだまだ少なくなくおられることを示していると思うんです。

 さらに聞きますけれども、請求をしている被害者であっても、損害の項目によっては未請求で、今後順次請求していくことになるという場合があると思うんですが、確認していただけますか。

田中政府参考人 今回の事故に関します損害賠償ということにつきましては、避難等のための費用、精神的損害、財物の損害、営業損害、就労不能というようなさまざまなものがございます。これらにつきましては、原子力損害賠償紛争審査会の指針にも明示されているところでございます。

 これらのうち、例えば東京電力は、避難費用につきましては二十三年の九月に賠償請求の受け付けを開始いたしましたけれども、財物損害ということについてはことしの三月から受け付けを開始してございます。このように、請求項目によって受け付けの時期ということは異なっているというような状況でございます。

 こうした状況もございまして、これまで幾つかの損害項目に関する請求をしている被害者の方々であったとしても、他の項目については今後請求をされるということがあろうかなというふうに考えているところでございます。

宮本委員 つまり、まだ請求もできない、請求をしていても全てを請求できる段階にないというのが現状なんです。

 損害賠償請求は、まさにこれからの課題であります。事故から間もなく三年を迎えようとするとき、民法第七百二十四条前段の三年の短期消滅時効の適用は避けるべきだというのが、まさにオール福島の声であります。

 五月の原賠ADR時効特例法案の審議でも、私は短期消滅時効の適用を除外する修正案を提案いたしましたが、あのときは残念ながら実りませんでした。本日、この後、同趣旨の立法提案が委員長からなされようとしております。やっと国会がオール福島の声に応えることになったことを大いに歓迎し、私の質問を終わります。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木でございます。本日も、どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、科学技術研究開発の分野について、この間視察に伺ったところを中心に一つ一つ質問させていただきますので、御見解を伺わせていただきたいと思います。

 まず、海洋立国である日本の海洋開発についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 日本は、四方を海に囲まれた小さな島国国家でありますが、東京の南千キロメートルの太平洋に浮かぶ小笠原諸島や、そこからさらには南西へと千キロメートルのところにある沖ノ鳥島、そして九州から台湾の手前まで点在する南西諸島がございます。そのために、日本の排他的経済水域、四百四十七万平方キロメートルということで、国土のおよそ十二倍に相当し、世界六位の広さであります。また、広さだけではなくて、全体の六割以上が水深三千メートル以上となっておりまして、海水の体積も世界四位というボリュームを持っております。

 せんだって、小笠原西之島に新しい島が海底火山の噴火で誕生いたしております。気象庁の発表がございました。これから活動がさらに続いた場合は、この島もさらに大きくなる可能性もあり、それによってまた領海が広がることも考えられるわけであります。海洋立国日本として、この海をこれから活用していく潜在的能力がまだまだ秘められているというふうに考えています。

 この閉会中に、新造船の新青丸、そして海底探査船の「ちきゅう」を視察させていただきました。

 この「ちきゅう」が一躍脚光を浴びたのは、一つには、メタンハイドレートの掘削に成功したという発表がございました。現在「ちきゅう」は、南海、東南海沖の震源予想区域の深海底調査の任務についているとお聞きをいたしています。

 また、新青丸は、東北マリンサイエンス拠点形成事業として、震災による東北沖の海洋生態系の変動などを調べて、研究成果は被災地に還元をし、漁業振興につなげる方針だと伺っております。

 このような地震、地殻変動のメカニズムの解析や、あるいは予知、気候変動、メタンハイドレートなどエネルギー資源開発、さらにはレアメタルやレアアースなどの資源発掘、さらには豊富な魚、貝、海藻など安全な食料供給等も含めて、こうした大きな役割を担う海洋研究開発、これは、資源小国と言われる日本にとって最も重要な分野であると考えています。島国の利点を最大限に生かした、海洋国家としての海洋政策を積極的に推進していく必要があると考えています。

 そのためには、何よりも人材の育成確保であり、技術の開発が重要だと思われます。海洋に関すること、海底の地質に関すること、陸上にも増して多岐にわたる人材が必要であろうかと思います。

 視察の際に、海洋工学に関する学部が大変少なく、人材不足であるというふうに伺ってまいりました。このような海洋開発の現状と、そして成果を踏まえて、日本の今後の海洋研究、海洋資源開発に関する可能性、開発推進にかかわる法整備、また予算的な措置、人員のあり方などについて御見解をお伺いできればと思います。

下村国務大臣 青木委員御指摘のように、世界第六位の広さを誇る我が国の領海及び排他的経済水域には、メタンハイドレートや海底熱水鉱床などさまざまな資源の存在が確認をされております。また、洋上風力発電など再生可能エネルギーの開発も期待されており、これらを最大限に活用していくことは国家的課題であると考えます。

 このため、我が国は、地球深部探査船「ちきゅう」などの世界最先端の海洋研究開発基盤を駆使し、海洋の持つポテンシャルの把握や利用技術の開発に努めてきているところでもございます。

 最近では、南鳥島周辺で通常鉱山の十倍の濃度のレアアースを含む泥の存在を確認したほか、関係機関と協力して、メタンハイドレートの海洋産出試験を実施するなどの成果が上がってきているところでもございます。

 今後とも、大いなる可能性を秘めるフロンティアである海洋分野の研究開発を進めることによりまして、その成果を社会につなげていき、官民を挙げて海洋立国の実現を目指していきたいと考えております。

青木委員 ありがとうございます。下村大臣の海洋における開発に向けての意気込みを伺えて、まず大変よかったなというふうに思います。

 まだまだ探査もほんの一部しか行われておりませんので、どれだけの可能性があるのかというふうに本当に夢が膨らむわけでございます。ぜひ、引き続きの積極的なお取り組みをお願い申し上げておきたいと存じます。

 今、大臣からも海洋の風力のお話がございました。続いての質問はそちらとも関する質問でありますけれども、これはいろいろな先生方が恐らく視察にも伺っていらっしゃると思いますし、政党によっても取り上げている課題でありますけれども、洋上浮き島式メガフロートを使ったエネルギーファームの開発、これは九州大学が行っている研究でありますけれども、今、世界的にエネルギー問題、CO2削減を背景に再生可能エネルギーの開発に注目が集まる中、原子力発電の安全性の認識、今後の展開が抜本的に見直されつつある現在におきまして、この再生可能エネルギーの有効活用に真剣に取り組むべきときが来ているということであります。

 九州大学では、新型の高出力レンズ風車を含む新エネルギー開発に取り組んでおられるとのことです。この取り組みは、日本の広範な海域を利用した浮体式の複合発電ファームの実現を視野に入れています。

 洋上に設置した浮体メガフロートに、風力、太陽光、そして潮力、波力、アンカーケーブルに働く張力といったエネルギー源を利用した複合的な発電システムを備えたファームでございます。国家が打ち出す大型の浮体洋上風力に比べて数メガワットタイプで中規模でありますが、日本の沿岸、漁港の近くに多数普及することを期待するものであります。

 ところが、浮体洋上風力の技術だけでは事業性が成立をいたしません。ですので、養殖業と合体をさせて、漁業組合が運営の主体ともなって事業を展開することが考えられます。コスト的にも、漁業権の問題、環境アセスの問題も解消しますし、今少子化でなかなか後継ぎもいない、また、所得も減収をしている漁業といたしましても、先進的な漁業の形態のアイデアの提供ということからも、九州大学が今頑張ってこの提案をしているわけであります。

 沿岸ばかりではなくて、少し外洋に出ますと、魚も締まって大変生きがよいということであります。発電も風が出て効率がよくなるということでございます。台風が来れば、メガフロートでありますので移動して避難もできる。

 このような海上の沖で行われる太陽光や風力発電は、陸まで電線を引くのではなくて、海水を電気分解してまず水素をつくり、その水素を陸に運んでから燃料電池などで発電するという構想だそうです。将来は、ガソリンスタンドは当然ですが、コンビニでも電気を購入できる時代が来るのではないかと、この研究をなさっている大屋教授がおっしゃっておられました。関係する研究者の方々は、背水の陣で開発に臨むことを決意されています。政府では国家戦略特区構想を検討されています。また、JSTという科学技術振興機構と文科省関係の産学共同実用化開発事業というものにもチャレンジをされているそうであります。

 このメガフロート、浮き島式洋上発電設備についての見通しと御見解をお聞かせいただければと思います。

木村政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、海の活用の観点からは、再生可能エネルギーにむしろポテンシャルがあるのではないかというふうに考えてございます。

 我が国では、今後三年間で最大限再生可能エネルギーの普及を加速するということにしてございますが、この中で、まずは特に洋上での風力発電に私どもとしては注目をしておるところでございます。

 洋上風力の導入は、陸上風力に比べまして、立地制約から解放される、あるいは、風況のよいところを選んで立地できますので発電効率が高まるといったメリットがあると考えてございます。

 経済産業省といたしましては、まずは福島県沖で現在、これはメガフロートではございませんけれども、浮体式の洋上風力について実証事業を行っておりまして、本事業は、本格的な事業化を目指した世界初となる取り組みでございます。日本の浮体構造物、風車、鋼材、あるいは電線やケーブルといった、その一線級のメーカーが結集した世界最先端の技術開発、実証を進めておるということでございます。

 御指摘のような複合ファームにつきましても今後視野に入れながら、いずれにいたしましても、海洋エネルギーについてしっかり目配りをしていきたいと考えておりますし、それから、御指摘いただきました水素をそのまま用いた再生可能エネルギーの貯蔵といいますか、そういったものについても大きな可能性があると考えてございまして、私どもとしては、そういった面にも目配りをしていきたいと考えてございます。

青木委員 ぜひ積極的なお取り組みを私からもお願いさせていただきたいと存じます。

 続きまして、若い世代の研究者への支援という視点から御質問させていただきます。

 ユーグレナを御存じかと思います。ミドリムシのことでございますが、ことしの八月、このユーグレナを社名に持つ会社の研究室をお訪ねいたしました。東京大学の敷地の中に研究室がございました。まず驚きましたのは、このユーグレナ社を共同で立ち上げた研究開発者の鈴木さん、またその取り巻くスタッフの方々の若さでございました。

 日本におけるユーグレナの研究は、これは藻の一種でありますけれども、一九七〇年代から活発に行われてきたそうで、一九九〇年代には環境技術としての研究が主だったようです。具体的には、火力発電所等から排出される二酸化炭素をユーグレナの培養槽の中を通して光合成させることで二酸化炭素を削減させて、培養槽で成長したユーグレナを食料としても利用することを検討していたというふうに伺いました。

 ユーグレナは、食品として、含有する栄養素の種類が多く栄養価が高いこと、消化吸収を妨げる細胞壁もないので消化率も高いと伺っています。その特徴を生かしたお菓子や健康食品も製品化をされているということで、ミドリムシクッキーもいただいてまいりました。

 また、培養方法次第では、ジェット燃料への加工が可能なワックスエステルという脂質を多く含有させることができるそうで、ミドリムシでジェット機が飛ぶ時代が来るかもしれないという夢も語っておられました。つくり出すエネルギーの視点ということからも、大変可能性が広がるのではないかというふうに思います。

 この研究のように、大学連携の強みは、イニシャルコストが軽微で済むこと、また、不足する経営資源については、東大とは藻類の脂質成分の研究、近畿大とは藻類の遺伝子の研究、さらに大阪府立大とは食品、化粧品の機能性の共同研究を進めることができたそうです。

 今後は、環境やエネルギー分野の共同研究で大企業とのパートナーシップを強めていくということで、この日も大手企業との研究の進捗状況の話し合いの場が持たれていました。

 こういった一例を御紹介しますのも、教育そして研究は、途方もない道のりを経て、努力が報われるのはほんの一部かもしれませんけれども、こうした研究、特にこういう若い方々の可能性について、国を挙げて支援する体制も必要なのではないかというふうに思ったからであります。

 このような若い研究者、起業家に向けての支援体制の構築について、またユーグレナの研究者の方々についてもし具体的に御存じであれば、今後の文科省としての御見解についてもお伺いできればと思います。

田中政府参考人 ただいま先生御指摘のユーグレナ、ミドリムシでございます。葉緑体を持ちながら動き回るという、大変ユニークだろうと思いますけれども、それにつきましては、まさに夢のある技術というふうに考えてございます。

 生物機能ということを工業製品の生産に活用できるのではないだろうかというようなことからその重要性は認識してございますけれども、一部商品化をされているというところもございますけれども、全体としては、まだ少し基礎的な段階の研究等々を積み重ねる必要があるのではないだろうかというふうに考えているところでございます。

 このため、文部科学省といたしましては、科学技術振興機構の研究支援制度、具体的には、戦略的創造研究推進事業、その中の先端的低炭素化技術開発、これはALCAというふうに言っておりますけれども、あるいは新技術創出、これはCRESTというふうに言っておりますけれども、こういうような制度を通しまして、ミドリムシの生物的機能を利用した研究開発ということを官民挙げてできるようなということで、支援を申し上げているところでございます。

 文部科学省といたしましては、大学を中心としてこういう基礎研究がどんどん進んで、基礎研究を進みながら、あるいは人材の育成に貢献がされるということを注視していきたいというふうに考えているところでございます。

青木委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 時間がありませんが、最後に一点だけお伺いをさせていただきます。iPSについてでございます。

 これは科技特の方でやはり京都大学に視察に伺いまして、山中伸弥先生から御講義をいただきました。その中で、再生医療用のiPS細胞のストックがこれからの課題であるというお話がございました。患者御本人からiPS細胞をつくれば拒否反応を回避できるのですが、そのためにはお金と時間がかかります。一人一人あらかじめストックできればベストではありますが、ドナー一人当たり五千万から一億円、これはアメリカの試算でございますが、費用がかかるとのことでございました。

 そこで、iPS細胞のストックが必要となります。拒絶を減らすには、HLAという細胞の血液型でございますが、の一致が重要であるとのことでした。HLAは血液型とは違って何万ものタイプがあり、親子でも兄弟でも違うんだそうです。ただ、まれに何百人に一人の割合で、父母、父、母それぞれから同じ型のHLAを受け継ぐ場合があり、その方はHLAホモドナーと呼ばれ、このホモドナーが百四十名いれば日本人の九〇%をカバーするiPS細胞のストックができるとのことでございました。ただし、そのためには約二十万人のHLAを調べる必要があり、一人調べるのに約三万円、二十万人で六十億円必要になるとの試算を提示されていました。これを高いと見るか必要と考えるかでございますが、現在は、日赤や骨髄バンクなどとそのストックの協力が進められているということでございました。

 概算要求を拝見しますとiPS細胞のストックの構築というふうに明記をされておりますので、前向きに進んでいるのかなというふうには思いますけれども、このiPS細胞ストックの必要性、また、今後についてお聞かせをいただければと思います。

下村国務大臣 iPS細胞に関しては、いち早い再生医療への実用化が期待されているところでございます。

 安全性の高い再生医療用iPS細胞の製造には非常に高い技術やコストを要するため、研究機関ごとに作製するのではなくて、中核となる機関が集中的に樹立、ストックした上で、iPS細胞を用いた再生医療の臨床応用を実施する大学、研究機関に提供する体制を構築することが必要であるというふうに認識しております。

 このため、京都大学iPS細胞研究所におきまして、再生医療用iPS細胞の樹立、ストックに向けた取り組みを進めており、文科省としては積極的にこれを支援しております。

 今後とも、iPS細胞を用いた再生医療がいち早く患者のもとに届けられるよう、関係府省とも連携して取り組んでまいります。

青木委員 ありがとうございました。

 ぜひ下村大臣におかれましても、この科学技術研究開発の分野におきましても御尽力いただきますようお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 本日は、原発事故の賠償で時効延長を図る法案が後ほど委員長提案されるということでございますので、それに関連して幾つかまず御質問をしたいというふうに思います。

 先般、本委員会において原子力損害ADR時効中断法案について審議をした際に、多くの委員の皆さんからも、損害賠償の請求漏れが生じるのではないか、そういう指摘がされておりました。大臣、あるいは参考人として出席された東電の山口取締役も、被害者をきめ細かく把握するために丁寧な対応に努めるとも述べておられました。

 ただ、現在でも十四万人の方々が避難生活を行っております。これから土地や建物の賠償が本格化すると言われる中、避難生活を送っておられる被害者の方々にとってみれば、事故が起きた当時の居住地の詳細な被害を算定するということは大変な労力が必要になります。この点、実は請求権があるのに知らなかったり、あるいは被害を算定できないために請求を諦めたりしている未請求者がいまだ多く存在しているのではないかと危惧をいたしております。日弁連の方からは、未請求者について、百万人程度存在するのではないかというようなことも指摘をされております。

 そこで、文科省としてどのようにこの未請求者の問題について取り組みを行おうとしているのか、お聞かせください。

下村国務大臣 今回の原子力事故で生じた原子力損害については、被害者の方々が迅速かつ正確に賠償を受けていただけるようにすることが重要であるというふうに認識しております。

 このためには、東電と自治体とが緊密に連携していくことが重要であり、未請求者の方々の状況を把握するべく、東京電力が保有する未請求者情報の自治体への提供や、自治体が保有する住民情報と東電の請求者データとの突合を行うための準備を進めているところであります。

 また、政府広報等を通じて、原子力損害賠償紛争解決センターの周知や、未請求者の方々に対する請求の呼びかけを実施しております。

 さらに、簡易迅速な紛争解決手続を被害者の方々がより活用しやすくなるように、ADRセンターに関して、福島県内に五カ所の事務所及び支所を設置するほか、人的体制の強化を行っております。

 このような対応をしっかり行うことにより、被害者の方々に対して迅速かつ確実な賠償がなされるよう努めてまいりたいと思います。

吉川(元)委員 時効延長が図られれば、請求権を持つ被害者の方をより多く救済することが可能になります。ぜひ、今ほど大臣の方も、周知等々を含めてやっていくということでございますので、東電に対して、未請求者の把握や賠償の周知に一層努力するように指導していただければというふうにも思います。

 そこで、福島原発事故の損害賠償ですが、被害者が東電に直接請求をした場合に、ともすれば大変低い賠償額が提示されるといったことをよく耳にいたします。そういう意味でいえば、今ほども少しお話がありましたが、裁判と違って手数料がかからず短期間で解決できるというふれ込みのこのADR、大変重要な役割を果たさなければいけないというふうに思っております。ただ、なじみのなさもあって、東電に直接請求して合意される件数の方が圧倒的に多いのだろうとも思います。

 そこで尋ねますけれども、これまでADRに申し立てがされた件数並びにADRを利用して和解に至った件数についてお聞かせいただければと思います。あわせて、ADR時効中断法、先般の通常国会の中で成立いたしましたけれども、それ以降の申し立て件数に変化があったのか、それもあわせて尋ねます。

田中政府参考人 お尋ねをいただきましたADR、原子力損害賠償紛争解決センターの申し立てにつきましては、昨日、十一月二十六日時点で八千六百六十五件でございます。このうち、既済件数、終わったというものは六千百四十九件という状況になってございます。

 また、ADR時効中断特例法が施行されました本年六月以降の申し立て件数及び処理実績の傾向ということでございます。

 その後でございますが、一カ月当たり、申し立て件数は平均約三百五十件、既済件数が平均約四百件ということでございます。傾向としては、ADRに対する申し立ては漸次若干増加傾向にある、つまり、ADRにいろいろな方々から申し立てがされておられるという状況にあるというふうに認識してございます。

吉川(元)委員 若干増加傾向にあるということでございますけれども、数字を見ますと、それほど大きな変化がないということでありますので、今後もしっかりと周知をしていただければというふうに思います。

 本来であれば、東電と被害者との間で納得できる条件で賠償の合意ができれば一番よいのですけれども、本委員会でも取り上げました風評被害の賠償打ち切りの案件のように、被害者が納得できない事案、これも今後多く出てくると予想されます。その意味ではやはり、今ほども申し上げましたが、ADRのさらなる周知をお願いしたいと思います。

 そこでお聞きしますが、ADRの特徴として、迅速、スピーディーな解決という点が挙げられております。しかし、当初、申し立てから和解案の提案まで平均七カ月、半年を超える程度の期間を要していたというふうにも聞いております。その後、人的な補強といいますか、仲介委員や調査官の体制を厚くして現在に至っているわけですけれども、現在、和解案の解決に至るまでどの程度時間を要しているのか、お教えいただければと思います。

田中政府参考人 ADRにつきましては、迅速ということの処理ということが極めて大事だというふうに認識をしてございます。このため、ADRにつきましては、順次、体制の強化ということを図ってございまして、現在は六百名を超える人員でございます。

 先生御指摘のADRの時効特例法案の成立前と後ということでございますけれども、特例法の成立以前は、大体七から八カ月ぐらいかかっていたということでございます。現在は、六カ月ということで、若干短縮をされているという状況にございます。

吉川(元)委員 訴訟という方法を除けば、ADRは被害を公正に評価してくれる最後の手段ですので、迅速な処理が進むよう、文部科学省としても体制の整備に力を入れていただければというふうに思います。

 それから、あと、避難生活で被害の立証が難しい被災者に対して、お話を聞くと、東電側が必要もないような詳細な証拠の提出を求めたりしているということがこのADRでの紛争処理に時間を要している一因だ、そういう指摘もされております。原発事故の損害賠償は、被害者に寄り添い、負担をかけず、納得していただくことが最優先だと思いますので、東電側の誠実な対応が必要だと考えております。

 そこで、十一月一日の本委員会で指摘させていただいた茨城県内での風評被害賠償の打ち切り案件について、その関連でお尋ねいたします。

 下村大臣は、風評被害賠償打ち切りの手続において、東電側の対応は不誠実であると指摘をされておられました。また、十一月二十日の、これは別の委員会、決算行政監視委員会ですけれども、そこでこの問題を取り上げた際にも、茂木経産大臣も、「親身、親切な賠償という観点から不適切だ」というふうに答弁をされております。大臣お二人から東電の対応に厳しい指摘をしてくださったことは、これは大変心強い限りです。

 そこで考えますのは、損害賠償の認定も大変重要なわけですけれども、もう一方で、その賠償の打ち切りの仕方、これも非常に重要だというふうに思います。

 とりわけ風評被害に対しては、個々のケースに応じて、それぞれいろいろなケースがあるわけですから、それぞれに応じた丁寧な対応が求められるわけで、この間、東電がやってきた半年以上放置しての突然の打ち切り、そういうことがあってはならないというふうに思います。

 打ち切りに際しての最低限のルール、例えば、事前協議はもちろんのことですけれども、打ち切りの検討に入っている場合には早い段階でその旨を被害者の方に連絡するとか、そういうルールづくりが必要だというふうに思いますが、この点、大臣いかがでしょうか。

下村国務大臣 これは吉川委員おっしゃるとおりだというふうに思います。

 今般の原子力事故により被害に遭われた方々に対して、被災者の心に寄り添って、迅速、公平、適正な賠償がなされるということが重要であるというふうに思います。

 風評被害がいつまで賠償の対象になるかについて、東京電力が一方的に決めて被害者に通知を出すような、そういうものではなくて、東京電力と被害者の話し合いにより、合意されて行うべきものであるというふうに思います。東京電力が被害者に対して十分な説明を行う、そういう必要があるというふうに私も考えます。

 前回お尋ねがあった後の対応について、担当部局が東京電力にさらに連絡し、確認をいたしました。一方的に通知するのではなく、電話による説明や、ほかに個別の事情がある場合には改めて事情を伺う旨を書面で連絡するなどの対応を徹底して、それから行うことにしたということでございます。

吉川(元)委員 この委員会でも指摘させていただきましたけれども、風評被害というものはなるたけ早くなくなった方がよいということはもう間違いありませんし、いつまでも続けることはかえってよくないことだというふうにも思います。

 ただ、何度も指摘させていただいておりますけれども、半年間放置をして突然打ち切り、しかも半年間の分は支払わないということは、事業者の方にとっても資金繰りも含めて大変な苦労をされておられるわけですから、より東電に対してきちんとした指導をしていただければというふうにも思いますし、また、できればそういうルールをきちんと明確にしていただければというふうにも思います。

 これに関連して、きょう葉梨財務大臣政務官の方においでいただいておりますが、課税措置について若干お聞きをしたいというふうに思います。

 現在、避難生活等による精神的被害や避難、帰宅費用など、心身の損害や資産の損害に対する賠償金は非課税となっております。しかし、営業損害のうち減収分に対する賠償金、あるいは、就労不能のケースで給与の減少分に対する賠償などは課税対象になっております。

 営業損害や給与の減少分に対する賠償は、もちろん事故がなかった場合には本来課税対象になるという考え方は十分理解できます。ただ、今回の原発事故が与える影響を考えますと、損害賠償を受けたからといって、容易に生活再建やあるいは事業の再建が済むわけではないことは誰でも想像できることです。また、収入から本来控除されるべき経費等について、事故が収束していない現状では、正確な数字を被害者がはじき出すことというのは非常に困難をきわめることだろうというふうにも思います。

 ここは、もちろん前提はわかるんですけれども、政策的な判断として、原発事故損害賠償金の全てについて非課税とする措置が必要なのではないかというふうにも考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

葉梨大臣政務官 先生御指摘のとおり、東電の賠償、大半は非課税でございますけれども、今ありました営業損害などのうち減収分に対して支払いを受けるものなどについては課税となっておる。

 ここのところは非常に難しいところなんですが、税の世界というのは、やはり他との均衡を非常に重視するものですから、例えば、ほかの民間企業が支払う損害賠償金の課税関係との均衡ですとか、あるいは、被災者であっても事業継続や転業、転職による収入を得ている方との均衡、そういったものを考えますと、そこまで非課税としてしまうのは、税の世界ではなかなか難しいのかな。

 ただ、しかしながら、やはり東電の原発の被害者の方々に対しては十分な配慮をしていかなければいけないことはそのとおりでございまして、雑損控除、住宅ローン控除等々の各種の税制上の特例措置によってまた税負担を軽減しておるところでございますけれども、今後の被災者に対する税制上の支援についても、その実態を十分に踏まえて、引き続き検討をしていかなければならないものと考えております。

吉川(元)委員 ぜひ前向きに検討していただければというふうに思います。

 次に、国家戦略特区に関して何点かお聞きをしたいというふうに思います。

 既に衆院通過ということになっておりますが、その中で、国家戦略特区法案に盛り込まれていた公立学校の民間開放、いわゆる公設民営化について何点かお聞きします。

 この規定は、附則第二条の第四項にありますけれども、今後一年以内に検討して必要な措置を講ずるとされているわけですけれども、具体的なイメージがないまま法案に盛り込まれて、果たして適切なのかというふうに疑問に思わざるを得ません。

 この国家戦略特区法案のもとになっている日本経済再生本部による検討方針、これを見ますと、この戦略特区というのは、成長の起爆剤となる世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出するためにこの特区の具体化を進めるというふうに明記をされております。

 教育の主人公は紛れもなく子供たちです。ところが、国家戦略特区の考え方というのは、成長の起爆剤とかあるいは一番ビジネスがしやすい環境といったように、企業経営や企業収益、もっと言えば市場原理、競争原理の観点に立ったものであり、教育の主人公たる子供たちの側に立ったものではないということは明白ではないかというふうにも思います。

 このようないわゆる出発点のところで極めて公共性が高い公立学校の民間開放を進めることに強い違和感を感じますが、大臣はこの点についてどのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 国家戦略特区法案では、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進を図る観点から、地域の特性に応じた多様な教育を実施するため、公立学校の管理を民間に委託することを検討するということになっているわけでございます。

 この国家戦略特区の中で、グローバルな発想で世界に伍していくような、産業競争力を支えるような、産業に資する人材育成という意味では、これから、既存の公立学校ででき得ない部分について、よりグローバルな発想で取り組むということの中で公設民営化が入ってきたものであるというふうに思います。

 その際、しかし、公立学校の教育水準の維持向上及び公共性の確保を図る、これは前提条件でありまして、こうした点を踏まえながら、個別具体的な提案について、今後、上がってきたものについて検討を進めていきたいと考えております。

吉川(元)委員 グローバルな人材育成等々、教育の観点からということで大臣は御答弁されているんですけれども、やはりこの国家戦略特区というものは、いわゆるマーケットを拡大するだとか新しい市場をつくるだとか、そういうところからできてきているものだろうと。そうすると、どうしても違和感を感じるのは、教育がもうけの対象になるようにしていこうというふうにも読めないわけではないわけで、この点についてはやはり強い違和感を感じますし、やはり公教育の点からしっかりと今後検討していただければというふうに思います。

 もう余り時間が残されておりませんので、あと一点お聞きをします。

 公立学校の業務については、入退学の許可や成績づけ、進級の認定など公権力の行使が伴うこと、あるいは学校設置者である自治体の公の意思の形成に基づいて教育が行われていることから、公立学校の業務を包括的に民間に委託することは困難だというのがこれまでの前提、当然の法理だったはずです。今回、特区とはいえ、公立学校を民間に開放することはこの大前提に抵触するのではないかというふうにも思われるんですが、この点についてはいかがでしょうか。

下村国務大臣 当然のことながら、公設民営学校がもうける、そういう対象としてはこれは全くあり得ない、そういう設定にはもちろんしないということは明言をしたいというふうに思います。

 そして、御質問ですが、従来は、公権力の行使を伴う業務や公の意思の形成への参画となる業務に携わるためには、いわゆる当然の法理において公務員であることが前提とされ、これらの業務を民間委託することは困難であるとされてきたところでございます。

 一方で、近年、公権力の行使に係る業務であっても、法律の根拠等を設けることにより民間に委託することを可能とする事例もあることを踏まえまして、今後、委託の具体的なあり方については検討していきたいと思いますが、冒頭申し上げたことが前提条件でございます。

吉川(元)委員 もう時間が来ましたので終わりますが、本来であれば、教育に関する問題については当委員会でやはり議論をすべき事柄だろうということを最後に指摘をさせていただいて、質問を終わります。

    ―――――――――――――

小渕委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房長戸谷一夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 おはようございます。日本維新の会の遠藤敬でございます。

 本日は、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに関しての御質問をさせていただきたいと思っております。

 下村大臣も、招致活動の先頭に立たれ、招致成功に関して多大な貢献をされたことを高く評価いたします。今後は、東京都、JOCのみならず、政府、財界などが積極的に関与するオール・ジャパン体制で大会開催成功に向けての諸準備に全力を傾注する必要がありますが、五輪・パラリン担当大臣として、下村大臣が強いリーダーシップを発揮されることを切に期待しております。

 そこでお尋ねしたいことは、二〇二〇年五輪・パラリン大会のメーンスタジアムになる国立競技場の建てかえ問題であります。

 最近、一連の報道によれば、新しい国立競技場の建設に係る総工費が、数字がころころ変わってきているのではないかという印象を受けてしまいます。初めは千三百億円、次は三千億円、さらに今回は千七百八十五億円という数字が出ております。担当の独立行政法人日本スポーツ振興センターがしっかりとした体制になっているのか心配になりまして、この点につきまして文部科学省から説明を求めたいと思います。

久保政府参考人 国立競技場の総工費につきましてでございますけれども、事業主体であります独立行政法人日本スポーツ振興センターが、昨年、新しい国立競技場の工事費概算として約千三百億円程度と見込みまして、国際デザインコンクールを実施いたしました。その結果、最優秀賞にザハ・ハディッド氏のデザインを選定したところでございます。

 その際に、選定されたデザインをそのまま忠実に実現する形での経費試算額が見込み額を大幅に上回るものとなりましたために、デザインを生かしながらも、改築に係る経費につきまして、これを適正なものとするように、当初の計画から規模を縮小すべく検討を進めまして、その状況につきまして、同センターが昨日開催いたしました国立競技場将来構想有識者会議におきまして、現在の建設工事費の概算額は約千八百億円を見込んでいるとしたところでございます。

 先生お尋ねの件につきましては、この間、センター内部での検討のさまざまな過程が報道されたものでございまして、このこと自体は同センターが金額を変更しているものではございませんし、センター自身はしっかりと仕事をしているということを御理解いただければと存じます。

遠藤(敬)委員 それでは、報道では、下村大臣が都知事と協議した結果、総工費約千八百億円のうち、約千五百億円を国が負担し、残り約三百億円を東京が負担するという方向に合意したとされておりますが、この点につきまして、事実関係や整備の方針を大臣自身から御説明をいただきたく存じます。

下村国務大臣 御指摘のように、今までJSCがこの国立競技場についての改築を主体的にしてまいりましたが、先ほどの局長答弁のように、誠実に着実にそのデザインを生かして建てると三千億円になる。これは当初の一千三百億円から比べると膨大な予算アップになるわけでありまして、これは国民の理解が得られないということで、これは、もっと私が先頭に立って、国民に納得をしてもらう国立競技場のあり方について検討していく必要があると思います。

 一千八百億というのは、その幾つかのシミュレーションの中の最低予算額ということで、少なくともその程度以下にはおさめなくてはいけないという前提の中で、その中で、しかし、今までの経緯の中で東京都にも負担をしていただくということがあったものですから、国立ですから、本体そのものは国が責任を持ってつくるべきものであるというふうに私も思っておりますが、ただ、周辺部分については、東京都にも協力をしていただきたいということでお願いを申し上げました。

 額については、総額がそのような形で今後もまだ明確ではありませんので確定しているわけではありませんが、東京都にはもうちょっと負担をしてもらいたいということを、率直なところを申し上げているところでございます。

 予算ですので、今後、東京都は都議会にも諮る必要がありますので、都議会や第三者委員会等から見て、東京都が明らかに負担すべきものであるという相当部分については負担をしていただけるということを猪瀬知事にも了解をいただきましたので、具体的な負担内容とかその額については、今後のことでございます。

 現在、東京都と文部科学省の実務者において詳細の調整を行っているところでございます。

遠藤(敬)委員 私といたしましては、新しい国立競技場に極端に多額の予算を投入することはいかがなものかとは思いますけれども、他方、二〇二〇年五輪・パラリンのメーンスタジアムに相応しい観客収容能力、ホスピタリティー、スペースなどの諸機能を持つべきだとまた思っております。それがしっかり担保される規模の必要な予算である千五百億円程度は積極的に投入すべきだと思っておりますし、しかも、建設主体である日本スポーツ振興センターは、いわゆるサッカーくじの運営主体でもあるため、それなりの自己収入もあると聞いております。

 国の財政状況が厳しい中で、サッカーくじからの財源についても、新しい国立競技場の建設資金の一部に充当することによって国の税金の投入をできるだけ節約すべきだと考えますが、大臣のお考えをお示しください。

下村国務大臣 御指摘のように、昨日開催した国立競技場将来構想有識者会議におきましても、八万人規模の本体そのものについては維持しながら、周辺部分を縮小し、より予算の軽減等を図るべきではないかということを議論したというふうに聞いております。

 その上で、さらに御指摘の、スポーツ振興くじの財源の一部を新しい国立競技場の改築に充当するということは非常に重要だというふうに認識しております。本年五月に、議員立法によりスポーツ振興投票の実施等に関する法律等が改正され、スポーツ振興くじの売り上げの一部を国立競技場の改築等の財源に充てることができることになりました。

 文部科学省としては、この改正に基づき、多様な財源の確保を図りつつ、国民の理解が得られる形で、しかし、国際大会にふさわしい、オリンピックにもふさわしい、そのような国立競技場の改築を進めてまいりたいと思います。

遠藤(敬)委員 新しい国立競技場の当初の計画では、天井に開閉式の屋根をつけて、スポーツイベントのみならず、さまざまなコンサートなどの文化イベントを確実に実施できるようにして収益を上げていこうとされていましたことも承知しております。これに対して、開閉式屋根は無駄であり、計画から外すべきだといった議論がなされているとも聞いております。

 今のデザインであれば開閉式屋根の取りつけは比較的容易に思えますし、今後、新しい国立競技場を管理運営していくに当たり、きちんと自己収入を上げて収益性を確保していくことが不可欠である以上、初期投資は惜しまず、開閉式屋根をつけることが必要と考えておりますが、大臣の見解をお示しください。

下村国務大臣 きのうのあの国立競技場将来構想有識者会議でも、この開閉式屋根は、設置すべきであるという結論になったということを聞いております。

 これは、一方慎重に考える必要があるというふうに考えております。オリンピック・パラリンピックのための国立競技場における屋根というのは、実際は開会式等で雨が降ったときは必要になってきますが、競技そのもののときには屋根はオープンにしておくというのが、競技をする前提になっております。

 ただ、なぜ屋根をつけるかというのは、現在、国立競技場は屋根がないために、周辺の騒音等の問題があって、年に一度しかコンサートが開けないという前提条件がございます。今度、屋根を設けることによって、コンサート等の文化活動等多目的な利活用が可能となって、結果的にそのことによって収益が上がって、そして、国立競技場がそれ以降の維持管理においても赤字にならないという前提がつくのであれば、逆に開閉式屋根を設置した方がいいということにもなるわけでございまして、そういうことを含めて、今後の検討については、費用対効果を見きわめて、設置するかどうか判断するというポイントになってくるのではないかというふうに思います。

 このため、現段階で、客観的な根拠となるデータをスポーツ振興センターと協力して集めるように指示しているところでございまして、そのようなデータが全部上がってから、改めてこの国立競技場将来構想有識者会議にも提案をしながら、国民に納得していただく形をとって最終的に判断する必要があると思います。

遠藤(敬)委員 それで、この新しい国立競技場のデザインが発表されたとき、私はそれを見て、巨大な宇宙船が神宮外苑に着陸しているのではないか、そのような印象も受け、そのインパクトの強さを感じておりました。

 このデザインは、先ほども御説明を賜りましたけれども、イギリスのザハ・ハディッドという世界の五指に入る女性建築家のものによるそうですけれども、このデザインはどのようなプロセスで、どのような理由で選ばれたのか、お教えいただければと思っております。

久保政府参考人 新しい国立競技場のデザインにつきましては、事業主体であります独立行政法人日本スポーツ振興センターが、国立競技場将来構想有識者会議での検討におきまして、昨年、新国立競技場基本構想国際デザイン・コンクールを実施いたしまして、昨年十一月十五日開催の有識者会議での審議を経て、決定されたところでございます。

 このコンクールでは、当初、国内十二点、海外十八カ国三十四点、計四十六点の応募がございました。その後、審査委員会において、一次審査では、デザイン性、機能性、実現性といった観点から検討を行いまして、四十六作品の中から十一作品を選出いたしました。この十一作品をさらに二次審査で、未来を示すデザイン性、技術的なチャレンジ、スポーツイベントの際の臨場感、施設建設の実現性等の観点から詳細にわたって議論を行いまして、最優秀賞、優秀賞、入選の各一点、計三点の候補作品を選出したところでございます。

 有識者会議において最終審議を行い、各賞を選定したところでございますけれども、最優秀作品となりましたザハ・ハディッド氏の作品につきましての選定理由といたしましては、「スポーツの躍動感を思わせるような、流線型の斬新なデザインである。極めてシンボリックな形態だが、背後には構造と内部の空間表現の見事な一致があり、都市空間とのつながりにおいても、シンプルで力強いアイデアが示されている。とりわけ大胆な建築構造がそのまま表れたダイナミックなアリーナ空間の高揚感、臨場感、一体感は際立ったものがあった。この強靱な論理に裏付けられた圧倒的な造形性が最大のアピールポイントだった。」と評価されたところでございます。

遠藤(敬)委員 それでは、せっかくなので、同じ女性でもあります西川副大臣にお尋ねしますけれども、世界的な女性建築家であるザハ・ハディッドの仕事ぶりやこの作品についての評価を少しお聞かせいただければと思います。

西川副大臣 先生、ありがとうございます。

 本当に大変恐縮で、不明にして私は、今回、このザハ・ハディッドさんのデザインが新競技場のあれに決まるまでは存じ上げなかったんですね。その後、デザインの写真集を拝見させていただいたりスマホで調べたりいろいろいたしまして、すばらしい建築家だということは、もうよく存じ上げております。特に、年代的にも近いということで、大変うれしい話だなと思っております。

 彼女は、二〇〇四年に建築界のノーベル賞と言われているプリツカー賞も女性で初めて受賞されたということで、この賞は日本の丹下健三さんや槇文彦さんたちも受賞されているそうですけれども、こういう分野で女性が活躍してくださるというのは本当にうれしいことだと思っております。

 日本の建築界でも最近女性の建築家の建造物が結構出てきておりますので、日本女性も、ぜひ第二の受賞者を目指して頑張っていただきたいと思っております。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

遠藤(敬)委員 それでは、最近の報道で、このデザインをベースとした新しい国立競技場の設計で、巨大過ぎて神宮外苑の森の景観を損なうのではないか、スタジアム規模の縮小をすべきではないかといった意見が、著名な建築家を中心に出されていると聞いております。

 まずは、どのような団体、グループからどのような意見が出されているのか、教えていただきたいと思います。

久保政府参考人 新国立競技場の建築につきましては、槇文彦氏を中心といたします建築家団体など四つの団体から要望書をいただいているところでございます。

 要望の主な内容といたしましては、外苑の環境と調和する施設環境、形態とすること、成熟時代にふさわしい計画内容とすること、計画策定の経緯や結果を公表することなどのほかに、現在の競技場を改修、リデザインすることなどでございます。

遠藤(敬)委員 新しい国立競技場の建設に向けては、国立競技場を含む神宮外苑地区一体の規制緩和について東京都の都市計画審議会での審議を経ており、明治神宮を含む関係地権者も合意している以上、法的には適正に進められていると聞いております。そうなると、新しい国立競技場が神宮外苑の森の景観を損なうかどうかは、一体誰が判断すべきなのでしょうか。

 有名なエッフェル塔は、今では、パリを代表する立派な建築物としてパリの景観の一部になっています。しかし、百年以上前にエッフェル塔建設計画が出たときに、一部の人たちから、パリの景観を害するといった強い建設反対運動があったとも聞いております。

 そこで、私が思うところ、このような新しい象徴的な建物についていつの時代にも景観論争が起きますが、結局は後世の人たちが判断すべき事柄なのではないでしょうか。この点についても大臣の所感をお尋ねいたします。

下村国務大臣 冒頭、遠藤委員が指摘されたように、この神宮の伝統の森に、UFOのような、あるいは自転車競技のヘルメットのようなというふうに言う人もいますが、いきなりできるということが果たして景観に合うのかというような意見もありますが、今までのような、先ほど局長が述べたような手続によってこのデザインが決まったわけでございまして、それを縮小することは当然考えるべきことだと思いますが、デザインそのものをほかのものに変えるということはあり得ないわけでございます。

 また、現在の国立競技場は一九五八年に竣工して既に五十五年たっているわけでございまして、そういう意味で、新しい競技場についても、建築後五十年を超える長いスパンで神宮外苑の森に存在するということのイメージの中で、景観との調和ということも考えていく必要があるのではないかというふうに思います。

 周辺規模の縮小等は考えながら、このデザインを生かしながら、地域にうまくはまるような形での設計ということの中での建築を考えていただくことによって、やはりおっしゃるとおり、長いスパンで考えるべきことだと思います。

遠藤(敬)委員 実は、この新しい国立競技場の建設スケジュールを見ますと、完成時期は、二〇二〇年東京五輪・パラリン開催の前年である二〇一九年三月であると計画されています。

 これは、二〇一九年秋、我が国で初めてラグビーワールドカップが開催される予定でして、そのメーンスタジアムとしても活用される予定であると聞いておりますけれども、今の国立競技場の建物自体は来年夏ごろから解体され、実際に新しい国立競技場の建設が開始されるのが二〇一五年からとなると、十分な建設期間がとれず、期限どおりに完成しないのではないかと不安になっておりますけれども、この点について文部科学省から御説明を求めます。

久保政府参考人 新しい国立競技場の建設スケジュールにつきましては、独立行政法人日本スポーツ振興センターにおきまして、工事の着工から竣工まで四十二カ月を見込んでいるところでございます。

 これは、ほぼ同規模の日産スタジアムと同様の工期でございまして、予定どおり、二〇一五年、再来年十月に着工するといたしますれば、二〇一九年三月に竣工できるものと考えておりまして、ラグビーのワールドカップには十分間に合うものと考えているところでございます。

遠藤(敬)委員 国立競技場とは別に、日本スポーツ振興センターは代々木体育館も管理運営しております。この代々木体育館も、国立競技場と同様に一九六四年東京五輪の会場となりましたが、今回、二〇二〇年五輪・パラリン大会でも会場となると聞いております。

 そこでお尋ねしますが、この代々木体育館も改修とか改築をして二〇二〇年の大会に臨まれるのでしょうか。本件も文部科学省にお尋ねいたします。

久保政府参考人 代々木体育館に関しましては、東京大会の立候補ファイルによりますれば、ハンドボールの会場として使用される予定でございます。

 この競技場は、近々耐震改修工事を行うことを検討しておりますけれども、大会の開催に当たりましては、ハンドボール競技の運営に必要な仮設設備等の設置のための工事以外には、恒久工事としての改修、改築は予定していないところでございます。

遠藤(敬)委員 この関係では最後の質問といたしますけれども、さきに触れました二〇一九年のラグビーワールドカップについてお尋ねします。

 我が国で初めて開催されるこの大会を成功させるためにも、周到な準備を重ねることに加えて、本番で日本代表チームがよい成績をおさめることだと思っております。

 しかし、大会準備活動が必ずしも順調ではないという話を仄聞しておりますけれども、現在の大会準備状況と日本代表の強化方針について、文部科学省から改めて御説明を求めます。

久保政府参考人 二〇一九年に初めて日本で開催されますラグビーワールドカップ、大変大きな意義を持っておりますけれども、ニュージーランドや英国のようなラグビー強豪国以外の国でワールドカップが開催されることは初めて、アジアでも初めてでございまして、日本ラグビーフットボール協会自体も、大会開催の準備にややなれていない面があるのは事実でございます。

 このため、国際ラグビー評議会の指導を密接に受けながら、大会組織委員会には、暫定最高執行責任者として、第五回のオーストラリア大会を成功に導かれたマット・キャロル氏を招聘したところでございますし、文部科学省といたしましても、組織委員会の評議員会、理事会及び会場選定方針会議等に必ず出席いたしますとともに、月一回の事務的な打ち合わせも継続して行っていくなど、組織委員会の活動を支えているところでございます。

 加えまして、組織委員会には財界からも御参加いただきますなど、スポーツ界のみならず、国、経済界が一体となって支える体制をつくっているところでございます。

 本年十月には、試合開催会場を決めるための都市ガイドラインも公表したところでございまして、二〇一五年三月の開催都市決定に向けた準備を進めているところでございますし、キャンプ地の決定や大会のプロモーション活動など、計画に沿ってさまざまな準備作業も行われていると聞いているところでございます。

 また、代表チームの強化につきましては、日本ラグビーフットボール協会におきまして、日本独自のラグビースタイルを構築するという方針を掲げております。具体的には、世界一のフィットネスによる、パスを多用するスピーディーなラグビースタイルを目指していると聞いておりまして、世界トップレベルの指導者の招聘、世界の強豪チームとの強化試合、海外遠征、世界で一番の練習量の確保に取り組まれているところでございます。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

遠藤(敬)委員 私は、別にラグビー協会に言え言えと言われてやっておるわけじゃございません。ラグビーのワールドカップが事前に行われるということで、積極的に国民全てで応援をしていきたいなというそういう思いで御質問をさせていただきました。

 続きまして、留学促進キャンペーンについてお伺いをしたいと思います。

 グローバル人材の育成のための留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」の話に移ります。

 去る十一月四日、羽田空港で、下村大臣が主導され、大臣御自身も参加された留学推進イベントをニュースで拝見をいたしました。そこには、去る九月にブエノスアイレスIOC総会でプレゼンをされた滝川クリステルさん、太田雄貴さん、佐藤真海さんも再集結し、大いに盛り上がったようですが、彼らのような国際的に活躍できる人材を育成するためには、高校生や大学生といった若い時代に海外留学の経験をすることはとても重要なことと思いますし、その必要性を彼ら自身に語ってもらったこのイベントは、とてもすばらしい企画だったと思います。

 そこで、まず大臣にお尋ねします。この「トビタテ!留学JAPAN」の目指すところは何か、大臣のお考えを教えてください。よろしくお願いいたします。

下村国務大臣 遠藤委員もバッジをつけていただいて、ありがとうございます。文部科学委員の皆様方には、議員会館にバッジをお持ちしておりますので、ぜひつけていただければ大変ありがたいと思います。

 現在、少子化が進行し、社会や経済が急速にグローバル化している我が国において、一人一人の能力を高め、世界で活躍できる人材を育成することが喫緊の課題であるというふうに思います。本年六月にまとめられた日本再興戦略等において、日本人の海外留学を二〇二〇年までに倍増することを目標に、政府としても取り組みを強化することが盛り込まれました。

 我が国だけが海外に行く留学生が減っているという現状がございます。文科省としては、ぜひ、より多くの若者が海外留学への関心を高めるため、御指摘のように、去る十月二十九日から留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」を開始し、十一月四日は羽田でも行ったところでございますし、十二月においては、早稲田大学において、四十二大学共同でこの留学キャンペーンもしていきたいというふうに思っております。

 これは官民ファンドで、民間からも資金協力をしていただいて、海外留学への機運を高め、高校生、大学生が積極的に海外にチャレンジする、かわいい子には旅をさせろというのがありますが、海外に行くことによって、日本のすばらしさや、また、自分の人生の目標や、学習意欲もさらに高めるというそういうきっかけになるのではないかと思います。

 私に二人の子供がいますが、二人とも中学生や高校生のときに留学をさせたということが、親の教育がなくても、直接しなくても、もっとはるかに子供たちがたくましくなったという実体験がありますので、そういうことを、奨学金を給付型にすることによって、ぜひ、日本の子供たちが海外に飛び立つようなそういうバックアップをしていきたいと思っておりますので、文部科学委員会の委員の方々の御協力もぜひお願い申し上げたいと思います。

遠藤(敬)委員 このバッジを私頂戴いたしまして物すごく興味深く見ておりまして、これは思いやりと書いているのか友達と書いているのか、目が悪かったのでよくわからなかったんですけれども、「トビタテ!留学JAPAN」と書いてありますけれども、上についているのは、これは飛行機でしょうか何でしょうか。どんな鳥なんでしょうか。

下村国務大臣 これは国鳥であるキジでありまして、キジのように、これは国鳥ですから、日本から飛び立つとか、あるいはたくましく飛び立つとか、そういうイメージでございます。

遠藤(敬)委員 恐縮なんですけれども、キジは飛べないんです。キジは飛べないので僕は気になって、文科省の皆さんに聞いたときにキジだと聞きまして、キジは飛べないんですけれどもねということで、いや、サギにならないように、ぜひこのキジを何とか鶴か何かにかえていただければいいかなと思いました。

 このバッジを見て留学のキャンペーンを質問させていただこうと思いまして、国鳥であるキジということのお話でございましたので、ぜひ飛び立てるように、ともに頑張ってまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。

 本日はありがとうございました。

小渕委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 前回に引き続きまして、私は、学生の就職活動、これを中心に質問をさせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

 私、公明党の方では学生局長という立場で活動をさせていただいておりますけれども、最近、ここ一カ月ぐらいの間に、まさに現役の学生の皆様とさまざま懇談をさせていただく機会を何度か設けさせていただきました。これは、大学一年生から大学院生まで、かなり幅広い立場の学生の皆さんと意見交換をさせていただきましたけれども、皆様、関心が非常に高かったテーマとしては、学ぶ上での経済的な負担が大きいんだ、こういうお話は、やはりいろいろな方から幅広い御意見をちょうどいただいたところであります。

 前回の質問でも取り上げさせていただきまして、下村大臣の方からも大変前向きに御答弁をいただいたテーマでございます。奨学金を有利子から無利子の方にどんどん持っていく、また、将来的にはやはり給付型の奨学金というか、こういうものもしっかり導入をしていくようなことも含めて、やはりこの部分、さらにさらに力を入れていかないといけないな、こういうことを痛感させていただいた次第でございます。

 こうした経済的な負担というものは、就職活動についても当てはまるのではないか、私、このように思いました。

 先日、NHKでこういうデータが出ていたのを私見たことがあるんですけれども、民間の調査会社が調べたところによりますと、関東の学生、この関東の周辺の学生が就職活動に使っている費用というのは、約十二万円程度使っている。しかし、これに対して例えば西日本の学生、これはもちろん首都圏に来て活動するときもあるわけでありますけれども、中国、四国あるいは九州、沖縄、こういう学生がどのくらい就職活動にお金を使うのか、この額が約二十二万円である、大変に大きな開きがある、このように報道されていたのを私見たことがございます。

 私が話を聞いたのは首都圏の学生でございましたけれども、しかし、その首都圏の学生の方の中でも、地元で就職をしたいと考えている、こういう方もいらっしゃいまして、Uターンをして就職をする、そうすると当然帰らないといけないということで、これも交通費が大変な負担である、こういうお話も伺ったところでございます。

 こうした、例えば地方の学生が都心に行く場合、あるいはいろいろなケースがあるとは思うんですけれども、就職活動での経済的な負担、これを緩和するために国としても何らかの措置をしていくべきではないか、私はこういうふうに考えるんですけれども、文部科学省の見解を伺いたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、学生が就職活動を行う際に、例えば地方から首都圏の企業説明会に出席するための交通費や宿泊費などが必要となるなど、経済的な負担が大きくなっているという実情にございます。

 これらの就職活動を行う学生の経済的負担の軽減のため、文部科学省としては、一つには、日本学生支援機構の有利子の奨学金の貸与額の増額が可能であるということ、あるいは、JR各社が行っております鉄道やバスの乗車券の学生割引が利用できること、そして、国立オリンピック記念青少年総合センターによる低廉な宿泊施設の提供がなされていることなどにつきまして、各大学に周知をし、学生への周知をお願いしているところでございます。

 また、各大学におきましては、独自に、大都市に向かうためのバスの借り上げですとか、交通費、宿泊費に係る一定額の金銭補助などの支援を行っている大学もあるというふうに承知しております。

 今後とも、地方の学生が就職活動を行う際に、地理的条件による不利益が生じないよう、必要な取り組みを行ってまいりたいと考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 もちろん、全体的な経済状況にも大きく左右されるわけではありまして、景気全体を上げていく、これが一番大事なことであるとは思いますけれども、こうした声も依然としてあるわけでございまして、引き続きの御対応、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、就職活動時期、これを今までよりも後ろ倒しにする、この点について質問をさせていただきたいと思います。

 これは、グローバル人材を育成をするという観点から、例えば留学をしても就職に不利にならないようにする、あるいは、学生に三年生のときまでしっかりと学業に集中をしてもらう、さまざまな目的がございますけれども、現在、安倍政権として、この就職活動を今までの時期より後ろに倒す、こういう政策を進めているわけでございます。

 具体的に申し上げますと、今の大学二年生の就職活動、今の二年生の方が就職活動をするこの時期について、広報活動は三年生の三月から開始をする、採用選考活動は四年生の八月以降に開始をする、こういう形で後ろ倒しをする、こういうことを経済界を含め要望しているところでございます。

 今の大学二年生、就職活動を開始するまで、もう余り実は時間は残されておりません。あと一年三カ月程度の時間でございます。就職活動に当たってはさまざまな時期が気になるわけでありまして、例えば公務員試験がいつになるのか、あるいは、自分の学業とのスケジュールと就職活動の兼ね合いがどうなっていくのか、こういうところが早く決まっていかないといけない。

 御承知のとおり、日本の就職活動というのは新卒一括採用というものが中心でございまして、今の大学二年生が新卒として現役のときに活動するというのは一回でございます。政策が変更したことによって、今の大学二年生が非常に混乱をしてしまってこの就職活動というものがうまくいかなかった、こういうことが起きてはやはりいけない、私はこのように思うわけでありまして、就職に向けたスケジュールというものをなるべく早く確定をさせる必要があるというふうに考えております。

 現在、政府としてこの点についてどのように実施に向けた準備を進めておられるのか、状況の方を伺いたいというふうに思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 学生の就職活動時期につきましては、学生が学業に専念をし、また、留学等の多様な経験が得られる機会を確保するため、本年四月十九日に安倍内閣総理大臣から経済三団体に対しまして、平成二十七年度卒業・修了予定者、現在の大学二年生から、広報活動時期が卒業・修了年度に入る直前の三月一日以降に開始をし、採用選考活動については卒業・修了年度の八月一日以降に開始することを御要請いただき、日本再興戦略において、政府方針として閣議決定をいただいたところでございます。

 これを踏まえて、日本経済団体連合会が採用選考に関する指針を九月十三日に策定をし、一方、大学側におきましても、申し合わせの策定を九月二十七日に行ったところでございます。

 こうした就職活動開始時期変更の趣旨、目的が学生の修学時間の確保、グローバル人材育成のための留学等の促進にあることにつきまして、経済三団体以外の外資系企業ですとか中小企業などを含めた企業団体に周知徹底をし、就職活動開始時期の変更を円滑に実現していくために、先般十一月二十二日に、主要経済・業界団体など計四百四十七団体に対しまして、四府省、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣、そして内閣府担当大臣の連名によりまして文書で要請を行ったところでございます。

 また、各大学におきましても、今般の就職活動時期変更の趣旨、目的につきまして、これまでも文部科学省などから通知などにより周知、理解促進を図っているというところでございますけれども、加えて、就職・キャリア支援担当者のさらなる理解を深めるべく、十二月十九日には、文部科学省において説明会を開催する予定でございます。

 これらを通じて、学生にも周知が図られるよう各大学をさらに促しをしてまいりたいと思っておりますし、引き続き、関係府省と連携をし、経済団体、業界団体や政府広報、大学ハローワークなどを通じまして、総理が要請された趣旨につきまして周知徹底を図るということとともに、大学におきましてのさらなる取り組みを促してまいりたいというふうに考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 スケジュールに関しまして、やはりなるべく早くわかるということが大事だと思いますので、引き続き取り組みを進めていただければというふうに思います。

 この就職活動時期の変更に関しまして、もちろんさまざまなメリットがございますけれども、他方で、デメリットもある、こういう声ももちろんあるわけでございます。

 私、現役の学生の皆様とお話をして非常に感じましたのが、やはり、就職活動が始まって、直前になって、ではどうしようということで進路を決めたという方が多いなというふうに思いました。急に決めないといけなくて大変だったという話もありましたし、活動を通じてまたいろいろ考えて進路を変えていったりとか、そういう話も伺いました。

 就職活動が後ろに倒れますと、今までは三年生の十二月からやっていたということですので、就職活動の期間がそのまま短くなる、こういうことで、例えば、大手企業が決まってから中小企業が本格的に採用を始めるわけでありますけれども、この採用活動に支障が出るという御意見もありますし、あるいは、就職ができないまま卒業してしまう学生がふえてしまうんじゃないか、こういう御懸念の声ももちろんございます。

 私は、就職活動時期を変えるためには、こうした懸念の声にもしっかりと対応していく必要がある、このように考えておりまして、具体的に申し上げますと、やはり、キャリア教育をなるべく早い段階から開始することが一つの大きな解決策なのではないかなというふうに思います。

 学生時代の早い段階からさまざまな進路についていろいろな情報を得る、将来のキャリアを意識しながら、逆に、そうすることで学びに対する意識も変わってくる、高まってくるのではないか、こういうふうに考えております。

 就職活動時期が変わっても、キャリア教育に力を入れることによってしっかり対応ができるのではないかというふうに考えますけれども、この点について下村大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。

下村国務大臣 キャリア教育やインターンシップについて、御党そして中野委員が熱心に進められ、また、私どもの方に対しても今までも積極的な提言をいただいていることを、本当に感謝申し上げたいと思います。

 御指摘のとおり、就職活動に費やす時間を短縮しつつ、学生が将来の職を意識した準備を円滑に進めるためには、早い時期からのキャリア教育の充実が重要であるというふうに思います。

 このため、先般四月二十二日に私の方から大学等関係団体に対し、インターンシップを初めとした初年次からのキャリア教育、職業教育の充実について、要請をいたしました。

 文科省も、平成二十二年、大学設置基準等の改正を行いまして、このときから、学生の社会的、職業的自立に関する指導等の充実を図るための制度改正を行ってきたところであり、初年次に進路指導に関する教育を行っている大学数が既に七割に達するなど、各大学において取り組みが進みつつあります。

 また、インターンシップの一層の推進を図るため、インターンシップに関する学生への情報提供や企業と学生のマッチングを行うための体制を整備することが重要であるというふうに考えております。

 さらに、隗より始めよということで、文部科学省で、従来は二週間程度のインターンシップを実施してきておりましたが、ことしから中身をさらに充実をして、効果的なインターンシップを推進しようということで、新たに、学期期間中に三カ月程度の受け入れを行う長期インターンシップを実施いたしました。

 この事例を検証して、学生にとっても就職活動等大変にマッチングで効果があるということであれば、これを全ての省庁に広げていくように文部科学省が先頭に立ってやっていくことによって、企業にもこれはぜひ伝えていきたいというふうに思っております。

 今般の就職活動時期変更を踏まえまして、改めて、各大学等におけるキャリアガイダンスやカリキュラム等を通じて、早い段階から学生に多様な進路の選択肢を示すとともに、学生によって適切なタイミングでキャリア教育が実施されるよう、取り組んでまいりたいと思います。

中野委員 大臣、ありがとうございます。

 制度というか時期の大きな変更でございますので、やはり、これに伴って現役の学生さんが本当に混乱することのないようにさまざまな手を打っていっていただきたい、こういう御要望をさせていただきます。

 少し話題がかわりますけれども、中学校給食についてお伺いをしたいというふうに思います。

 今までも我が党は中学校給食の推進に力を大変注いでおりまして、公立中学校では、現在九〇・八%の学校が給食を既に実施をしているという状況でございます。

 最近要望の多い声といたしましては、アレルギー問題についての対応、こういうこともございまして、例えば、昨年十二月に、東京の調布市で給食のアレルギー反応で児童が死亡するという大変痛ましい事故がございましたけれども、こうした食物アレルギー事故を決して起こさない、こういう思いで国としても対応を強めていく必要があるというふうに考えております。

 私の地元の兵庫県の尼崎市では、大変残念なことに、市の財政の状況等々がございまして、まだ中学校給食というのは実現はできておりませんけれども、現場では、コストの面がどうか、アレルギーの対応の面でどうか、いろいろ悩みながら議論をしている、こういうふうにも伺っておりますし、中学校給食に対応できていないほかの自治体も、こうした悩みに直面しながら、財政的な面も含めて苦労しながらやっている、こういう形であるというふうに思います。

 国といたしましても、こうしたアレルギー問題への対応も含めて、今後、中学校給食をさらに推進をしていくためにやはり支援を拡充をしていっていただきたい、このように思いますけれども、文部科学省の方から御意見を伺いたいと思います。

久保政府参考人 学校給食におきますアレルギー対策に関しましては、平成二十年に学校のアレルギー疾患に対して取り組みガイドラインをつくりまして、それを講習会等を通じて周知徹底を図ってまいったところでございますけれども、昨年十二月の調布市の事故を受けまして、今年度に新たに有識者会議を設けまして、さらなる方策等について具体的な検討を行っております。今年度中に最終報告を取りまとめる予定でございます。

 また、来年度概算要求におきましては、このガイドラインをさらにわかりやすく示した資料を作成、配付するなど、教職員の理解促進を図る事業を要求しておりまして、アレルギー対策のさらなる充実を図っていきたいと考えております。

 中学校における学校給食の実施に向けた取り組みといたしましては、これまで、各自治体に学校給食の意義などについて周知、促進を図ってきたところでございますけれども、施設整備の国庫補助金につきましては、従来から行ってまいりましたけれども、来年度以降、アレルギー対策も含めた助成、補助面積の拡充についても検討を行っているところでございます。

 今後とも、こうした食物アレルギー対策の充実あるいは中学校給食のさらなる促進のために、ソフト、ハードの両面におきまして支援を図っていきたいと考えているところでございます。

中野委員 ありがとうございます。

 ソフト、ハード含めて充実をさせていきたいという前向きな御答弁でございまして、しっかりと私としても応援をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 最後でございますけれども、スペシャルオリンピックスについて伺えればというふうに思います。

 実は私、前回の質問でも、スポーツ庁の設置の関連でスペシャルオリンピックスについては取り上げさせていただいたんですけれども、もう一度、少し違った話題として取り上げさせていただきたいと思います。

 念のため御紹介をさせていただきますと、知的障害者の国際大会、これがスペシャルオリンピックスでございます。オリンピックのような国際的な開催に加えて、日常的にも成果を発表する場ということで、地元でいろいろな競技会を開催しておりまして、これが、スペシャルオリンピックスという複数形の形になっているゆえんでございます。日本では、二〇〇五年に長野で冬季大会がまさに開催をされたこともございました。

 スポーツ庁が設置をされるということで、こうした障害者スポーツの振興に力を入れていっていただきたいという御要望を前回させていただいて、大臣からも大変前向きな御答弁をいただいたところでございますけれども、先日ニュースで、二〇一九年のスペシャルオリンピックスの夏の世界大会について、スペシャルオリンピックスの日本本部が東京を開催都市として申請した、こういう報道を見ました。

 私は、二〇二〇年、東京でオリンピック・パラリンピックが開催をされる、このタイミングと合わせて、二〇一九年、もう既にラグビーワールドカップは招致が決まっておりますけれども、これとあわせてもしスペシャルオリンピックス、これも東京で開催されることが決まったならば、障害者スポーツの認知度を上げていく、こういう上でインパクトが相当大きいものがあるのではないかということで大変に期待をしておるわけでございます。

 この実現に向けてはまだまださまざまな調整が必要である、こういうふうには承知はしておりますけれども、国としてもしっかりとこの誘致について応援をしていただきたい、このように思うんですけれども、下村大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。

下村国務大臣 御指摘のように、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて、障害の有無にかかわらず、スポーツ振興を図っていくことは大変重要であるというふうに思います。

 二〇一九年のスペシャルオリンピックス夏季世界大会について、公益財団法人スペシャルオリンピックス日本が東京への招致応募書をスペシャルオリンピックス国際本部に提出したということは承知をしておりまして、趣旨としては大変すばらしいものであるというふうに思います。

 ただ、後で聞いたところによりますと、開催都市の東京都との事前了解といいますか、調整をしないで届け出たということでございまして、これは東京都の負担も相当かかるということで、今後、この競技施設や運営体制とか、財源等でまずは東京都と、開催都市と調整してもらうということが前提条件になるのではないかというふうに思います。

 これが、具体化が進んで御相談があれば、その内容に応じてバックアップをしてまいりたいと思います。

中野委員 以上で終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、池田佳隆君。

池田(佳)委員 愛知三区の池田佳隆でございます。

 客観的な事実に基づく質問を幾つか下村大臣そして西川副大臣にさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。

 唐突で恐縮でございますが、大臣が退席されなければいけない時間も近づいておりますので、客観的な歴史認識、史実についてお尋ねをしたいと思います。

 日本は無条件降伏をしたのでしょうか、していないのでしょうか。下村大臣に明確にお答えをしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

下村国務大臣 済みません、間もなく参議院の本会議がありますので、途中で失礼することをお許し願いたいと思います。

 事実上の無条件降伏だったと思います。

池田(佳)委員 今大臣から、事実上の無条件降伏をしたというお話がありました。それは多分、八月十五日以降の事実上の無条件降伏のような形のことを言われていると思うのでございますけれども、私が聞いているのは、八月十四日の御前会議で日本国政府がポツダム宣言を受諾するということが無条件降伏であったのかどうか、そのことについてお尋ねをしているわけでございます。どうか下村大臣、明確に御答弁をお願いいたします。

下村国務大臣 無条件降伏のそもそもの定義でありますけれども、一般的に、降伏とは戦闘行為をやめ敵の権力下に入ることを意味し、その際に条件づけのない場合には無条件降伏と称されることがあると承知しておりますが、文脈等にもよるものでありまして、お尋ねの定義について一概にお答えするということは困難であるというふうに思います。

池田(佳)委員 日本は、八月十四日、御前会議においてポツダム宣言を受諾し、降伏をいたしました。そのポツダム宣言は配付資料のとおりであります。

 下村大臣、大変申しわけありませんが、この第五条をお読みいただけますでしょうか。お願いいたします。

下村国務大臣 第五条、「吾等ノ条件ハ左ノ如シ 吾等ハ右条件ヨリ離脱スルコトナカルヘシ右ニ代ル条件存在セス吾等ハ遅延ヲ認ムルヲ得ス」。

池田(佳)委員 大臣、大変ありがとうございました。

 つまるところこれは、「吾等ノ条件ハ左ノ如シ」と言って条件を明確に掲げている、その宣言を受諾したものだ、そのように理解をするのが一般的だと思われます。

 このまま下村大臣にはしっかりとお答えをいただきたいというところでございますけれども、今、参議院本会議が入っているということでございますので、西川副大臣のお言葉は下村大臣のお言葉ということで、この先御質問を続けさせていただきたいと思います。

 下村大臣、どうぞ御退席ください。ありがとうございました。

 私は、長年、戦後レジームの根源とも言える戦後教育に関する諸課題について取り組んでまいりました。日本に生まれた子供たちや、我々日本人から自信や誇りを奪ってきた自虐史観の払拭、義務教育、公教育で展開されている自虐史的歴史観を不必要に植えつける教育の改革の必要性、そして、私たち日本人の祖先が粛々と築き上げてきた伝統や文化、社会規範を再認識する教育を取り戻さねばならない、精神の貧困から抜け出すための道徳教育の再興が必要であると、声を大にして訴えてまいりました。義務教育課程に三人の子を持つ親として、NPOやPTA、そういった活動の中で運動するも、なかなか教育行政は動くことはありませんでした。本日、日本の教育行政のトップ、大臣並びに副大臣に御質問させていただきますこと、本当に幸せに思っております。

 平成十八年十二月、昭和二十二年制定以来初めて教育基本法が改正されるに至りました。教育基本法改正に関する特別委員会において、参考人として意見陳述をさせていただいた私としては、改正基本法に、道徳心の醸成、並びに愛郷心、愛国心の育成が教育目標として取り組まれたこと、今も今も高く評価をさせていただいているところでございます。

 下村大臣並びに西川副大臣におかれましては、今までの政治家としての御活動、御言動、歴史認識に対する御発言、そういったことを非常に尊敬させていただいている者の一人として、この先の質問を続けてまいりたいと思います。

 もう一度お尋ねをさせてください。

 くどいようでございますが、日本はポツダム宣言を受諾して降伏をしましたが、これは無条件降伏だったのでしょうか、それともそうではなかったのでしょうか。お答えください。

西川副大臣 この無条件降伏か否かというのは、いろいろ学説があると存じ上げております。ただいまの立場では、大臣と同じ認識をお示ししたいと思います。無条件に近い降伏であったということだと思います。

池田(佳)委員 今、無条件に近い降伏であったと。ということは、無条件降伏ではないという発言ともとれますが、いかがでしょうか。副大臣、お願いいたします。

西川副大臣 さまざまな意見があることを承知した上での発言でございます。

池田(佳)委員 これは、戦後教育にはびこる非常に重要な根幹の部分でありますので、先日も、教科書改革実行プラン、非常にすばらしいプランが出されたところでございますので、あえてお尋ねをしているのであります。

 つまるところ、配付させていただいた資料の中に、見てもらえばわかると思いますが、日本の無条件降伏という記述がされている教科書もあれば、そうではなくて、条件つき降伏だ、降伏の条件を示した降伏であった、それを受け入れた降伏であったんだと。記述がばらばらなんです。

 つまり、検定を通った教科書を読んだ子供たちが、そして、採択された教科書を読んだ子供たちが理解をするに別々の理解がされてしまうような、そんな教科書が現行使われております。その中にあって、日本が無条件降伏をしたか否かというのは非常に重要な話でありますので、お尋ねをしているんです。

 再度お尋ねをします。

 くどいようでございますけれども、このポツダム宣言に書かれている五条、この条件が記されたポツダム宣言を受諾したことが無条件降伏なのでしょうか、否でしょうか。

西川副大臣 この問題は大変大きな問題だと思います。正直申し上げて、文部科学省だけで発言していいとはちょっと思えませんので、政府見解その他が決まった時点でお答えさせていただきたいと思います。

池田(佳)委員 この記述は、現行教科書で、子供たちが学んでいる教科書の記述でありますので、誰が読んでもわかりやすく示すのは当たり前なんです。この学校で採択されている教科書で読んだ人は、日本が無条件で政府がバンザイをしたと習う。そうではなくて、例えばほかの教科書で習った人は、条件つき降伏だったんだ、その条件を勉強しようと思う児童や生徒が生まれる。そういう差が出るんですよ。教科書というのは非常に重要なんです。

 そういった意味で、検定を見直そう、そして採択すべき機関を見直そうとしているときに、何をもってして検定するのか、採択をするのか、その基準が政府の中で曖昧なままでは困るんです。そういうことでありますから、ここのところはしっかりと今確認をしたいということで御質問をさせていただいたのでありますが、なかなか明快な答弁が得られませんでした。

 続いて、戦後レジームの根幹に、東京裁判というものがありました。この戦後レジームの底流に流れている東京裁判史観、これが強烈な影響をもたらしていることは言うまでもないことであることは、皆さん御案内のとおりだと思います。

 極東国際軍事裁判、通称東京裁判は、四月の二十九日、いわゆる昭和天皇のお誕生された日に戦争犯罪容疑者が起訴をされました。それから二年半、昭和二十三年の十一月十二日に結審をし、その年の十二月二十三日、現在の今上天皇のお誕生日に、二十八人、A級戦犯として起訴されたうちの七名が巣鴨プリズンで死刑執行をされたわけであります。

 現行の教科書では、この裁判が罪刑法定主義をとる国際法に違反した事後法裁判であったという客観的な事実について、記載している教科書とそうでない教科書、バランスを欠いた教科書と混在をしているわけでございますが、A級戦犯、今では最も悪い人というようなイメージで現代日本人に定着している昨今において、また、いわゆるA級戦犯とされた方々が靖国神社に祭られていることでさまざまな意見が散見される昨今において、この東京裁判のいびつ性というものを正しく子供たちに伝えること、教えることが大変重要だと私は考えておりますが、西川副大臣の御見識、御見解をお聞かせ願いたいと思います。

西川副大臣 東京裁判に関しては、それぞれ、まさにそれぞれの意見がございます。その中で、インドのパール判事が、いわば戦勝国が敗戦国を裁くというのは国際法違反だ、そういう見解もあります。そういう中で、東京裁判というものに関して教科書がさまざまな書き方をしている。それはやはり、安倍総理もおっしゃいましたが、まさに戦後レジームの中で、ややもすると一方的に日本が悪かったという立場での記述が多かったこともまた事実でございます。

 そういう意味で、今回の教科書改革プランにおいては、政府見解にのっとったもの、あるいは学説がはっきりと確定していないものに関しては記述を控える、そういう一つの見解が出たところでございますので、これから、教科書の検定については、まだまだ皆様の御意見を頂戴しながら、一つの、まさに中立的な、公正な記述にしていくようにしていきたいと思っております。

池田(佳)委員 今、西川副大臣から御答弁ありましたように、教科書改革実行プラン、私、非常に高く評価をさせていただいておりまして、この改革実行プランが実行されれば、いわゆる曖昧な記述、うその記述、バランスを欠いた教科書というものが子供たちの手元には届かなくなるんだろう、そのように確信をいたしているところでございますが、再度、西川副大臣にお尋ねをしたいと思います。

 検定を受けて採択を受けた教科書、この学校、あの学校、どの学校でも同じ認識、知識を得られるような教科書検定、採択になるとお約束していただけますでしょうか。

西川副大臣 先日、文科省といたしましては、教科書改革実行プランというものを発表させていただきました。これは、いわゆる教科書の編集、検定、そして採択の各段階において必要な制度の改善を行おうとするものでございまして、先ほど委員もおっしゃったように、バランスのよい教科書にしていくということで、今回の改革プランが発表されました。

 まず、教科書の編集段階におきまして、各教科書編集者より、今回の改正された教育基本法の目標を意識して編集する、そういうことが、検定申請時に書類を提出させるということで改善をしてまいりたいと考えております。

 次に、教科書の検定段階におきましては、教科書検定基準、これを改正いたしまして、いわば通説的な見解がない事柄、いろいろな、ばらばらの学説がある場合に、片方の学説だけを意図して記述するようなことがないようにバランスのとれた記述にすること、そして、政府の統一見解や確定した判例がある場合には、それらに基づいた記述が取り上げられる、このことが大事だということでございます。

 そして、第三番目として、教科書の採択段階においては、次期の通常国会に教科書無償措置法の改正案を提出いたしまして、共同採択地区内で教科書が一本化できない事態、いわば竹富の問題が今あるわけでございますが、これが発生した場合に、防止するために、構成市町村による協議ルールの明確化を図る。それとともに、採択権者に責任を持たせるということで、教科書採択を行ってもらうための採択の結果、理由などを公表するように促進するということを考えております。

 それから、今度は、教科書改革プランの実施に向けて、平成二十六年度に行われる中学校用教科書の検定と平成二十七年度に行われる中学校用教科書の採択に反映できるように取り組んでまいりたいと思っております。

 そして、その他個別な、具体的なことはまた少ししっかりとその場で判断させていただきたいと思いますが、おおむね、こういう大きな方向性を示したところでございます。

池田(佳)委員 西川副大臣、ありがとうございました。

 教科書改革実行プラン、下村大臣、そして西川副大臣のリーダーシップでしっかりとこれは前進をさせていただいて、早急に、教科書の中身、子供たちが、この国の未来、そして自信と誇りを持てるような、そんな子供たちがすくすくと育つような、そんな教科書をぜひともつくり上げていただきたい、そのように思います。

 そして、何度も申しますが、日本国政府が降伏で受諾したのは、ポツダム宣言であります。ポツダム宣言は、第五条に「吾等ノ条件ハ左ノ如シ」と、無条件ではなくて条件つきの降伏を私たちは受け入れました。そのことを明確に子供たちに教える、伝えることは本当に重要なことだと私は思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 最後の質問になります。

 昨日の新聞に、中教審の答申素案の記事が出ておりました。地方教育行政の最終的な意思決定権を持つ執行機関を、戦後レジームから脱却して、民意によって選ばれた自治体の首長にするのか、それとも、戦後教育の現行どおり、非常勤の教育委員会の皆さんに最終意思決定権を持たせるのか、そのことで中教審の中でいろいろ御意見が分かれている、そのような記事でございました。

 そこで、西川副大臣にお尋ねをしたいと思います。戦後レジームからの脱却、そのための教育再生を果たすために、どのような教育委員会制度の改革が必要であると御見識をお持ちか、お答えを願いたいと思います。よろしくお願いいたします。

西川副大臣 今回の教育委員会制度の改正は、いわばこの発端となりましたのは、多分、いじめ問題に対する責任体制が明確化されない、非常に無責任体制が続いているという印象をどうしても私たちは持たざるを得なかった。そういう中で、教育委員会制度、まさしく昭和二十三年の、公選の教育委員会を設置する旧教育委員会法が制定されて、それ以来、昭和三十一年に実は旧法を廃止して現行法が制定されまして、政治的中立性の確保ということは保たれてきたんだと思っております。ただし、責任体制が明確ではない、いろいろな問題もありまして、今回、教育委員会制度、今、中央教育審議会、教育再生実行会議の中でも議論されているところでございます。

 本年四月の教育再生実行会議の提言においては、首長が任命する教育長を地方教育行政の責任者と明確に位置づけるとともに、教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保するための制度上の措置を講ずるとされておりまして、この提言の実現に向けて、現在審議中の中央教育審議会の答申を踏まえ、次期通常国会に関連法案の改正案を提出したいと思っております。

 今、教育実行会議の方で議論されておりますのは、いわゆる教育長を首長の補助機関とするとともに、首長が最終責任を持つということで、教育委員会が首長の附属機関とする案、いわゆるA案といいます。それから、教育長を教育委員会の補助機関とするとともに、教育委員会を性格を改めた執行機関とする案、これがB案でございますが、今、中央審議会の議論に余り影響を与えてはいけませんのでここで意見を申し上げることは差し控えたいと思いますが、政治的中立性を保ちつつ、首長の命ずるところにより教育長が最終責任をとるという方向性で、権限と責任を明確にする形で成案が得られる模様だと考えております。

池田(佳)委員 大変ありがとうございました。

 これにて私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

小渕委員長 次に、東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、吉野正芳君外十名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党、みんなの党、日本共産党、生活の党及び社会民主党・市民連合の八派共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおり、東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律案の起草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。吉野正芳君。

吉野委員 趣旨の説明をいたします。

 東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律案の起草案につきまして、提案者を代表して、その趣旨及び内容を御説明いたします。

 この起草案は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故による災害が大規模で長期間にわたる未曽有のものであり、当該事故による原子力損害の被害者のうちに今なお不自由な避難生活を余儀なくされ、そのこうむった損害の額の算定の基礎となる証拠の収集に支障を来している者が多く存在すること、個々の被害者に性質及び程度の異なる原子力損害が同時に生じ、その賠償の請求に時間を要すること等によりこれらの賠償請求権の行使に困難を伴う場合があることに鑑み、これらの被害者が早期かつ確実に賠償を受けることができるようにするための体制を国が構築するために必要な措置について定めるとともに、今般の原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例を定めるものでありまして、以下、その要点を申し上げます。

 第一に、国は、今般の原子力損害の被害者が早期かつ確実に賠償を受け取ることができるよう、国の行政機関におけるこれらの原子力損害の賠償の円滑化のための体制の整備、紛争の迅速な解決のための原子力損害賠償紛争審査会及び裁判所の人的体制の充実、原子力損害賠償支援機構による相談体制及び情報提供体制の強化その他の措置を講ずるものとすることとしております。

 第二に、今般の原子力損害に係る賠償請求権に関する民法第七百二十四条の規定の適用については、同条では「三年間」とされている消滅時効の期間を「十年間」とするとともに、同条では「不法行為の時から二十年」とされているいわゆる除斥期間を「損害が生じた時から二十年」とすることとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

 どうぞ御賛同くださりますようお願いを申し上げます。

    ―――――――――――――

 東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小渕委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 お諮りいたします。

 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 この際、吉野正芳君外十名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党、みんなの党、日本共産党、生活の党及び社会民主党・市民連合の八派共同提案による東日本大震災に係る原子力損害の被害者に対する賠償の適切かつ確実な実施に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。笠浩史君。

笠委員 ただいま議題となりました東日本大震災に係る原子力損害の被害者に対する賠償の適切かつ確実な実施に関する件につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明いたします。

 案文を朗読し、趣旨の説明にかえさせていただきます。

    東日本大震災に係る原子力損害の被害者に対する賠償の適切かつ確実な実施に関する件(案)

  政府は、東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律の施行に当たり、東日本大震災に係る原子力損害の被害者に対する賠償の適切かつ確実な実施を図る観点から、当該原子力損害の状況及び当該原子力損害の賠償の請求その他の賠償の実施の状況について定期的に確認し、その結果等を総合的に勘案して、必要があると認めるときは、当該原子力損害の賠償請求権に係る時効に関する法制上の措置を含め所要の措置を講ずること。

  右決議する。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

小渕委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして、西川文部科学副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。西川文部科学副大臣。

西川副大臣 ありがとうございました。

 ただいまの御決議につきまして、その御趣旨に十分留意いたしまして対処してまいりたいと思います。

小渕委員長 お諮りいたします。

 本決議の議長に対する報告及び関係各方面への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

小渕委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 文部科学行政の基本施策に関する件、特に二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に関する諸課題等について調査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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