衆議院

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第7号 平成26年3月26日(水曜日)

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平成二十六年三月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      小此木八郎君    神山 佐市君

      菅野さちこ君    木内  均君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小島 敏文君    小林 茂樹君

      桜井  宏君    新開 裕司君

      冨岡  勉君    中谷 真一君

      中山 展宏君    永岡 桂子君

      野中  厚君    馳   浩君

      比嘉奈津美君    福山  守君

      藤原  崇君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君    菊田真紀子君

      中川 正春君    細野 豪志君

      吉田  泉君    遠藤  敬君

      椎木  保君    田沼 隆志君

      三宅  博君    中野 洋昌君

      柏倉 祐司君    井出 庸生君

      宮本 岳志君    青木  愛君

      吉川  元君    山口  壯君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学副大臣      西川 京子君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   政府参考人

   (内閣法制局第二部長)  林   徹君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          前川 喜平君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十六日

 辞任         補欠選任

  桜井  宏君     藤原  崇君

  新開 裕司君     中谷 真一君

  比嘉奈津美君     福山  守君

  吉田  泉君     中川 正春君

  三宅  博君     田沼 隆志君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     新開 裕司君

  福山  守君     小島 敏文君

  藤原  崇君     桜井  宏君

  中川 正春君     吉田  泉君

  田沼 隆志君     三宅  博君

同日

 辞任         補欠選任

  小島 敏文君     中山 展宏君

同日

 辞任         補欠選任

  中山 展宏君     比嘉奈津美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第二部長林徹君及び文部科学省初等中等教育局長前川喜平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川正春君。

中川(正)委員 おはようございます。民主党の中川正春です。

 今回、法律改正をしたいということで出てきているんですけれども、趣旨としては、採択地区協議会の組織運営について政令ではっきりと定めていきたいという思いであるとか、あるいは、採択地区の設定単位が市町村でできるよというふうにしたい、あるいは、その議論の過程というのをオープンにしていくということ、この趣旨はよくわかるんですけれども、なぜこういう改正をしなければならないか、この改正の裏にある理由、ここのところをしっかりと説明をしていただけませんか。まずそこから始めていきたいと思います。

下村国務大臣 おはようございます。

 平成二十三年の十月に、当時、中川文部科学大臣のときに、私が竹富町の教科書採択の問題で中川文科大臣にお聞きしたことがありました。そのとき、中川文科大臣は適切な判断をされたのではないかというふうに私は思います。これは、竹富町が違法状態だということを国会の場で認められたわけですね。

 ただ、無償措置法によって新たに別の教科書を採択するというところまで法令上禁止されていないということでしたが、逆に言えば、採択された教科書は使ってほしいということを、当時、明確にもっと言っていただきたかったなというふうに私は思っておりますが、そういうふうに、近年、沖縄県の八重山採択地区における問題を初め、共同採択に当たって協議が難航する事例が生じております。

 沖縄県の八重山採択地区においては、何を無償措置法に基づく協議の場とするかについて混乱が生じたこと、採択地区協議会における最終的な意思決定の方法が規約に定められていないとの主張が竹富町教育委員会からなされたこと、竹富町教育委員会が、採択地区協議会の協議の結果は各市町村教育委員会の採択権限を拘束しないと主張したことが事態の混乱を助長したと考えておりまして、このため、教科書無償措置法第十三条を改正し、協議により規約を定め、共同採択に係る協議の場として採択地区協議会の設置を義務づけること、また、規約で議決の方法等について定めておくべきことなど、採択地区協議会の組織及び運営に関し必要な事項について政令で定めること、さらに、採択地区内の市町村教育委員会は協議の結果に基づき同一の教科書を採択すべき旨を明記することなど、共同採択地区における市町村教育委員会の協議の方法に関する規定の整備を行い、あらかじめ協議のルールを明確化しておくことによって、採択地区内での同一の教科書とならないという事態の再発を防止したいと考え、このような法案を出したものでございます。

中川(正)委員 私の問題意識というのは、あの時点で、恐らく、文科省の事務方がどう対応していくかという混乱の中で考えていった問題意識と、全体を眺めて、最終的には何を基本にしていかなきゃいかぬのかあるいは何が大事なのかということを観点として考えていったときの問題意識、いわゆる方法論と、それから、この法律の目的あるいは教科書採択を含めて教育のあり方そのものの認識というところ、これの違いがあるんですね。恐らくこれはロジから出てきた話だと思うんです、今回のその話は。

 もっと根本にさかのぼって考えていった場合に、大臣、どう思われますか、教科書は誰が決めていったらいいのか、誰がどの教科書を採択していくかということについて責任を持って決めていったらいいのかということになると、大臣自身はどう思われますか。

下村国務大臣 学校教育の主たる教材である教科書の重要性に鑑み、学校の設置者として学校の包括的な管理を行い、当該地域の教育に対して責任を負っている教育委員会が教科書を採択することが重要であることから、地教行法第二十三条第六号に基づき、公立学校の教科書採択は当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会が行うこととしているわけであります。

 また、私立学校、国立学校については、教科書発行法第七条第一項に基づき、当該学校の教学の責任者たる校長が採択するということになっております。

 特に、公立の小中学校における教科書の採択については、地教行法第二十三条第六号に対する特別の定めとして教科書無償措置法第十三条第四項の規定があり、共同採択地区内の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科書を採択しなければならないということになっているわけであります。

 教科書採択は、教科書無償措置法のルールに従い、教科書採択権者の権限と責任において適切に行うことが必要であるというふうに考えております。ですから、基本的には教育委員会、しかし、地教行法の例外的な特別な措置としての無償措置法があるわけですから、共同採択地区においては共同採択した教科書を使うべきであるというふうに考えております。

中川(正)委員 基本的には教育委員会、あるいは将来、この法律の設定を横に置いておくと、学校現場とかあるいは教職員そのものの責任の中でということも考えられるんだと思うんです。

 一番大事なところというのは、いわゆる教育の質あるいは方向性というのを規定していく教育の指導要領という基本が恐らくそれぞれの現場現場でまず中心にあって、それを具現化していくためにどの教科書を使っていったらいいのか、あるいは、どんな教材を活用して、工夫をそこに加えていきながら指導要領の目的を達成していくというふうなことが今の体系になっているんだろうと思うんです。

 そういう意味では、教科書採択、特に、国のある程度の検閲というか範疇で幾つか選択肢をつくって、その検閲そのものも、先進国ではほとんどやっていないんですよ、もう日本のモデルが残っているぐらいのことで、それを参考にしている韓国とか、あるいは中国もあるのかもしれない、そういう国の体質を持ったところが残っているだけで、ほとんどの先進国というのは、そこは指導要領を中心にしながら、その現場の創意工夫、あるいは、教育委員会あるいはその地域の特色をその中に加味していって教育体系をつくっている。そういうことが今のいわゆる近代的な教育観というものなんだろうというふうに思うんです。

 そんな中で地教行法が、さっきのお話のように、教育委員会が主体になって教科書は決めていきますよというふうにこれは決めているんですよ。

 私がわからないのは、グループになって採択協議会というのをつくって、それで決めたことにどうしても従わなければなりませんよというふうな形で特措法でそれにかぶせているのか、この趣旨が私にはわからなかったんです。

 事前にこの問題を議論したときに、なぜこの法律があるんだと。基本的には教育委員会が決めていきますよということを地教行法で決めていて、その地教行法で決めたそれぞれの教育委員会の主体性というのを、例えばコンセンサスができればいいけれども、コンセンサスができない場合には、混乱させて立ち往生させるようなそんな中身の法律がかぶさっているということ、これはなぜこういう構造になっているんだということ、これを問いかけたんですけれども、なかなか私納得できないですよ、この部分は。

 改めて、この理由、これは相当昔にできた法律なんですけれども、その時代にできた理由というのが今に合っているのかどうか、もう一回確認をしたいので、説明してもらえませんか。

前川政府参考人 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律第十三条第四項におきましては、「採択地区が二以上の市町村の区域をあわせた地域であるときは、当該採択地区内の市町村立の小学校及び中学校において使用する教科用図書については、当該採択地区内の市町村の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない。」と規定しているということなんでございますが、これは、地教行法第二十三条第六号で定めております、一般的に採択権限は学校の設置者である市町村の教育委員会にあるという規定に対する特別の定めであるという関係でございます。採択地区内の市町村教育委員会は、その採択権限を行使するに当たって、教科書無償措置法のルールに従わなければならない、こういう関係になっております。

 この共同採択制度の趣旨、意義でございますけれども、まず、教科書の採択に当たっての調査研究に地区内の多くの教員等が参加でき、教科書内容についての綿密な調査研究が可能となるということ、また、地区内の教員が共同で同一の教科書を使って教材研究や授業研究を行うことが可能になる、こういった意義があることからこの共同採択の制度が設けられているということでございます。

中川(正)委員 そこを聞いているんじゃなくて、この措置法というのは、研究して、それに結果を出して、その結果に対してそれぞれが、いわゆるそれに参加したメンバー、教育委員会それぞれが従わなければならないという規定になっているんですよ。なぜなのか、なぜそうなのかということ、そこの理由です。

下村国務大臣 まず、先ほどの御発言ですが、つまり、ヨーロッパ等ほかの先進国は、教科書採択といいますか、教材採択がもっと自由に行われているのではないか、日本は、教育委員会採択、さらに、無償措置法によって共同採択というのはあたかもおくれているような御発言がありましたが、これは中川先生も文科大臣をされておられるので諸外国の事情をよくおわかりになって御発言されているのだというふうに思いますが、我が国がそうせざるを得ないというのは、これは一つには、やはり私は組合の問題があるというふうに思います。

 諸外国は、組合にイデオロギーとか政治的なものを入れ込まない、あくまでも職域的な組織としての組合の位置づけということで、そういう意味で、教育現場にそういう政治やイデオロギーを導入しないという分け方をすることによって、結果的に、教師が教材や教科書を選ぶということに対してそういう意味で信頼されているという前提があるわけでありまして、我が国においても今後そういうことをクリアすれば可能だというふうに思いますが、その問題があるということで、これは別に日本がおくれているということではない、そういう違いがあるということだというふうにまず思います。

 それから、無償措置法の中での共同採択の問題でありますが、やはり、かつては地方自治体が三千以上あって、特に市レベルで大きい自治体であれば、それだけ小中学校もたくさんあるし、また、共同教材研究も教員もたくさんいますからできるわけでありますが、郡レベルの、つまり市町村レベルは郡レベルになるわけですけれども、単独の村やあるいは町でやるということになると、これはもう先生も御承知のように、小学校、中学校だけで、全ての教科、教材を読み込むだけで百数十冊あるわけです。

 それを考えると、やはり採択地区をもっと広げることによって、つまり、共同採択地区によって一緒に教材研究、教科書研究をすることによって同じ教材が使われる、同じ教科書が使われるということが望ましいということから、現場の声の反映によって、共同採択地区が、そういう町村等狭いエリアの自治体に対してそのようなことがなされてきたのではないかと思います。

 今回の改正案というのは、当時と違って今は市町村合併等によって郡も相当変わってきて、あるいは飛び地になっている部分もありますから、今の実態に合った共同採択地区に分ける必要があるのではないかということもこの法案に入っているわけであります。

中川(正)委員 あえて組合のことを出されたので改めて確認しますけれども、それはどういうことを根拠に言われたんですか。大臣、これは大臣の発言ですから、非常に重い発言ですよ。ただ偏見と大臣の思い込みの中でこんな発言があるとすれば、それは非常にゆゆしき問題であると思います。根拠があって私は発言されたんだろうというふうに思います。何なんですか、その根拠は。

下村国務大臣 思い込みで発言しているわけではなく、当然根拠があって申し上げているわけであります。

 具体的に一つは、フィンランドに行ったことがありました。フィンランドは……(中川(正)委員「日本のことです」と呼ぶ)いや、関係している話ですから。行ったときに、学校現場が非常に信頼されている。そして、その教材等も先生が独自に判断できる。

 理由というのは、フィンランドにおいては、かつて組合は、イデオロギーや、あるいは政治闘争としてのものも持っていたけれども、今はそういうことは一切排除して教職員の職務改善等に特化することによって、学校現場における国民の信頼が得られて、そしてそのような採択ができるようになった、学校現場が直接教科書採択等もできるようになったというふうに聞いているわけでありまして、そういう事例はほかにもいろいろとありますが、そういう根拠を持って申し上げているわけであります。

中川(正)委員 いや、その根拠じゃなくて、日本の現状に対して、組合があるからこうした法律の措置を続けていかなければならないという発言をされたんです、日本の現状に対して。その根拠は何かというのを聞いているんです。

下村国務大臣 いや、組合があるからとは申し上げていません。諸外国の組合の実態と日本の組合の実態が違うところがあるということをまず申し上げました。

 我が国においては、組合問題がある云々ではなくて、学校設置者である教育委員会が教科書採択については責任を持つべきだというふうに申し上げているわけです。

中川(正)委員 ちょっとニュアンスが変わったようですが、いずれにしても、このところで迷い込んでいては議論になりませんので進めますけれども、だからこそ、さっき大臣の発言のように、教育委員会というのがあって、そこが中立性を保ちながら学校教育に関して責任を持っていく。恐らく、また地教行法の改正をこれから出されてくるんだろうと思うんです。その中でも、やはり教育委員会、あるいは、教育委員会の中でも教育長あるいは首長が教育について責任を持っていくという主体にしていこうじゃないか、そういう趣旨がここで出てくるんだろうというふうに私も期待をしているんです。

 そういう中で、この措置法について、教育委員会の主体性を認めるのであれば、さっきの話、共同研究とか、あるいは、それぞれチームを組んで読み込むような作業そのものも含めて人が要るというそういう現状の中で、小さな町村であればなかなか十分な研究はできないからということで、広域にこういう協議会あるいは研究会というのを組んで研究をしていくということ、私は、そういうことはあるんだろうと思う。

 だけれども、私がこだわっているのは、そこで一つに決めて、それぞれまた独自の教育委員会の判断があるにもかかわらず、どうしてみんな一緒にしなきゃいけないんだ、統一にしなきゃいけないんだ、そこまでどうして必要なのかということ、この理由が出てこないんです。

 だから、過去にはいろいろな法律のつくり方があったんだろうと思うんだけれども、ここの法律をつくったときに、地方分権とか、あるいは、それぞれの教育に対する責任という体系の中で誰がそれに責任を持っていくんだというその整理ができないままに、便宜的に、いや、小さなところはやはりまとまってこれをやっていくということの方が合理的だからというところだけの判断で、そこで決めたことまでそれぞれの教育委員会が採択をしていかなければならないという、そこはのりを超えちゃったんじゃないか。

 だから、言いかえれば、研究はいいんですよ、そこでいろいろな議論をするのはいいんです。だけれども、最終的に決めるのはそれぞれの教育委員会で決めるという形で法体系をつくったらよかったじゃないかということを言っているんです。さっき大臣も、私は共通することがあるんだと思います、責任を持って決めるのは教育委員会ですねということをさっきの答弁の中でもみずからおっしゃっている。

 だから、今回法律を整理していくのであるとすれば、私がひっかかったのはそこのところなんです。私が大臣のときにひっかかったのはそこのところで、この根本的な問題を基本に返って整理をしないと、同じようなことが起こったときにコンセンサスがとれなかったら、またそこで立ち往生、こういうふうに手続を決めても立ち往生ということには変わりないんです。その教育委員会が、いや、うちは独自のこの教科書をとっていくんだと言って最後まで頑張ったら、もうそれだけのことなんです、この法律を変えても、手続があってもということを申し上げたいんです。

 大臣どうですか、この際、そこのところに立ち返った法律の改正をしませんか。

下村国務大臣 基本的な認識が二点、私は異なっていると思います。今の危惧を解消するために今回の法律改正をそもそもするわけであります。そして、今、中川先生みずからおっしゃったように、共同採択のための研究等は必要だということをおっしゃっておられました。

 基本的にはこれは地方分権ともつながってくるかと思いますが、地方自治体が統廃合等をすることによって一定規模の自治体になったときには、これは無償措置法による共同採択エリアが必要でなくなるという可能性もありますよね、自治体のその規模によっては。あくまでもこの共同採択というのは、これは、市町村というふうに、小さな自治体が対象ということであるわけでございます。

 ただ、問題なのは、教科書の調査研究の結果は、採択の基礎資料となるものとしての共同研究、共同のための研修をしているわけです。この教科書の調査研究は、教育委員会や採択地区協議会の採択方針に基づき行われることによって、初めて全体として責任ある教科書採択が実現するものと考える。つまり、どの教科書がこの地域で使うのが一番望ましいのかというための教科書調査研究を行っているわけですから、当然それについては、別の教科書が決まれば、それを採択するのは、逆に言えば当然のことである。

 つまり、教科書の調査研究と採択とが一体で行われなかったら、そもそも一緒に調査研究する意味がないわけですね。そのための調査研究として行うわけですから、当然、教科書採択も一体化で行われるということは、これは逆に当たり前のことだというふうに思います。

中川(正)委員 諮問委員会と、そこで決めていく協議会、ここの性格の違いがあるんだと思うんです。

 だから、この協議会で決めるんじゃなくて、決定権というのはそれぞれの教育委員会ですから、だから、そこを尊重する形で、それこそ地方分権と言われるのであれば、そのまま法律をつくったらいいということなんです。

 だから、協議会は、そこの決定機関ではなくて、諮問する、それの基礎データというのを挙げてくる、そういう協議会であっていい、最終的に結論を出すのはそれぞれの教育委員会でいいということが、一般的には、あるいはまた地教行法の中では想定されているんだろうというふうに私は思うんです。

 そういう問題意識を、実は、中央教育審議会の初等中等教育分科会ですか、これの十二月二十六日の「意見のまとめ」で最後のところ、「今後の検討課題について」というので出ているんですよ。同じ問題意識を持っているんです。

 例えば、採択のための教科書の研究は共同で行いつつ、採択自体はそれぞれの市町村教育委員会において行う、もしくは、市町村教育委員会の希望に応じて共同採択を選択できるようにするなど、現行の共同採択制度と市町村教育委員会における単独採択とする制度との折衷的な考え方もできるんじゃないかと。

 これは、恐らく委員の中で議論がさまざまにあって、その中で、基本に返れば、こうした教育委員会の主体性というのをやはり整理していくべきだねという方向性に沿った検討課題の抽出なんだと思うんです。

 だから大臣、そんなにこだわることはないと思うんです。恐らく、大臣がこだわればこだわるほど、何だ、自民党政権というのは、あるいは下村大臣というのは、中央集権的パターナリズムで地方分権をかき回してくるというか、そういうようなイメージになってしまう。そうではないと私は思うんですよ。そうではないと思う。そういうことではなくて、この本質について十分に考えておられるところまでいっていないんじゃないかというふうに思うんです。だから言っているんですよ。

 だから、そんなにこだわらずに、ここは素直に変えて、それでそれぞれの市町村が、いや、自分たちはグループで決めていく方がいいんだと言うんだったらそういうふうにしてもらったらいいし、いや、うちはみんなで相談したけれども、どうもそこはちょっとほかのところと考え方が違うということだったらそれでもいいし、いずれにしても教科書というのは、検定の中で、国がこの辺で決めたらどうだという枠組みの中でみんな決めるわけですから、何をそんなにこだわらなきゃいけないんだということだと思うんですよ、客観的に見てこの話は。

 その大臣のこだわりは、恐らく、役所の中で大臣に気を使って、ここまで法律を変えるということはどうも下村大臣の意向と合わないんじゃないかということに気を使って、このロジだけを、だから手続論だけを変えてきたということによるんじゃないかというふうに、私はいい方に解釈しているんです。

 だから大臣、それはこだわらずに、基本に返って変えるということをやはりここは考えていくべきだ。特に、地方分権ということを考える、あるいは、またこれから出てくる法律、教育委員会のあり方、これを見直していこうという中でそれぞれ責任というのははっきりさせていこうということをこれから出してくるわけですから、それに整合性を持った形でこれも整理をするとすれば、この措置法の方を、決めるまでいかない、参考意見でいいんだよというところで変えていったらいいということだと思うんです。

下村国務大臣 中川先生は元文科大臣ですので発言は重いと思いますので、私はきちっと反論させていただきたいと思います。

 まず、先ほどの中教審の事例を取り上げて、あたかも中教審の結論が中川先生がおっしゃるようなことではないかというような発言がありましたが、それは全く事実と違いますので、申し上げておきたいと思います。

 それは、ある委員がそういうことをおっしゃったことは事実でありますけれども、これは裁判で言う主文に対する傍論としての発言であって、中教審のメーンの意見ではないということについては明確に申し上げたいというふうに思います。

 そして、今回については、これは今のお話ですと、そもそも無償措置法そのものをなくしてもいいのではないかということにも受けとめるわけでありますけれども……(中川(正)委員「いやいや、そんなことないですよ」と呼ぶ)いや、受けとれるようなふうにとれましたが、無償措置法の中の共同採択地区の問題です。

 共同採択地区というのは、先ほどから申し上げているように、小さな自治体の中でやはり調査研究等の中で共同採択しようということが無償措置法の中に入っているわけですね。そのことについては、それだけのことをするんですから、逆に言えば、その教科書を採択するというのは、共同採択地区でつまり統一の教科書を採択するのは、当たり前の話だと思います。

 それが明確になかったということで今のような誤解も含めて発言もあるし、多くの国民の方々も同じようなことを思っておられる方もおられるので、今回の改正案の中で、共同採択地区内での同一教科書がきちっと採択されるような法律改正をすることによって明確化する。

 ただ、この共同採択については、改めてエリアをどうするかはそれぞれの都道府県で判断をし、また、共同採択地区のエリアの中で判断することになりますが、地勢的な条件の中で新たな共同採択地区については決定していただきたいということであります。

中川(正)委員 時間が来たので言いっ放しにしますが、さっきの中教審の話は、「今後の検討課題」という欄の中に「例えば、」という形で出ているんです。だから、一人の委員が言ったという話ではなくて、報告書として出ているということ。だから、これは恐らく大臣の認識が違うんだというふうに私は思います。

 それからもう一つは、いわゆる統一して決めたものを採択しなければならないというところにこだわっているんです。共同研究するのはいいんですよ、これは。大いにそれぞれの主体性の中で共同研究をやったらいいということです。

 だから、そこのところをなぜこだわるのかということについて、なかなかしっかりとした考え方、整理が出てこなかったということ、これについては指摘をしておきたいというふうに思いますし、そんなにこだわらずに、これは自然の摂理に赴くままに変えるところは変えたらいいということだと思うんです。ぜひ御一考をいただきたいというふうに思います。

 以上です。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 通告に従いまして順次質問してまいりますが、質問に入ります前に、改めて、今回の改正の主な理由について私なりに整理してお話し申し上げたいと思っています。

 一つ、教科書の採択の採択権について、これは地教行法の二十三条六号の、「教育委員会の職務権限」として「教科書その他の教材の取扱いに関すること。」これが定められている。一方で無償措置法の中の十三条四項では、「採択地区内の市町村教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない。」こうされているわけでございまして、このことが、採択権をめぐる法解釈についてのいろいろな考え方が出てくる。そういう意味で今回のこの法改正の案が出た。

 それからもう一つは、先ほど来大臣からも何回か御説明がありますけれども、平成の市町村合併によりまして、これまでの採択地区に変化が生じてきている。特に、行政単位の郡というものの性質が大きく変わってきている。

 これらのことが今回の改正の要因になっている、このように承知をしております。

 私もこのことは十分理解ができているつもりなんですけれども、ただ、その上でなお明確にするべき点が幾つかあると思っておりますので、順次聞かせていただきたいと思います。

 まず最初は、共同採択地区における協議会の規約についてお伺いをしたいと思っています。

 法案では、採択の地区が二以上の市町村の区域をあわせた地域であるときは、当該採択地区内の市町村の教育委員会は協議により規約を定めることとしておりますが、私が思うには、現状でも規約を定めているのではないか、このように思っております。

 今回、全国統一的な規約を定めることになるのか、また、その必要性はあるのかということを、まず大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、現在においても全ての共同採択地区で、今三百十六あります、採択地区協議会が設置され、その全てで規約が定められているというふうに承知をしております。

 しかし、全体の約四分の一の協議会では、その規約において、選定する教科書の決定方法について定めていないなど、その内容に不十分な点があることから、今回の改正では、共同採択地区内の市町村教育委員会は協議して規約を定めることとするとともに、政令で規約を定めるべき事項を定めることにより、協議のルールを明確化したいと考えております。

稲津委員 四分の一の協議会の中でも、なお決定方法については明確になっていない、その辺についても明らかにしていきたいというお話でございました。

 ぜひ、今回の改正の主たる、いわゆる協議会の規約を明確にするということでございますので、ぜひその辺の周知をしっかりやっていただきたいということをまず申し上げておきたいと思います。

 次は、市町村教育委員会の意見を踏まえた採択地区の設定についてということでお伺いをさせていただきたいと思います。

 都道府県教育委員会が採択地区を設定するに当たりましては、市町村教育委員会の意見を尊重すべきである、私はこのように考えております。これは当たり前のことですけれども、無償措置法の中の「採択地区」の第十二条二項にも、「都道府県の教育委員会は、採択地区を設定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ市町村の教育委員会の意見をきかなければならない。」このようにございます。

 改めて、市町村教育委員会の意見を尊重すべきということを申し上げたいと思いますけれども、この点について大臣はどのような御所見をお持ちでしょうか。

前川政府参考人 採択地区の設定につきましては、都道府県の教育委員会が地域の自然的、経済的、文化的諸条件等を吟味いたしまして、教科書無償措置法が共同採択制度を採用している意義を十分に踏まえて行われるべきものと考えております。

 また、教科書無償措置法におきましては、御指摘のとおり、都道府県教育委員会が採択地区を設定し、または変更する場合においては、あらかじめ関係する市町村教育委員会の意見を聞かなければならないということになっておりまして、その意見を尊重しなければならないことは当然でございます。

 今回の改正におきましてもこのような趣旨は変わるものではございませんので、引き続き、市町村の教育委員会の意見を十分に尊重して採択地区を設定するよう周知してまいりたいと考えております。

稲津委員 今の答弁の最後のところを少し明確にさせていただきたいと思いますけれども、ということは、施行通知等でこれは明記するということでよろしいですね。ぜひそのことをお答えいただきたいと思います。

前川政府参考人 今回、採択地区の設定の単位が市郡から市町村に変わるということもございますので、現行の規定につきましても、改めまして施行通知において周知してまいりたいと考えております。

稲津委員 ぜひよろしくお願いをさせていただきたいと思います。

 次に、採択の結果及び理由の公表についてお伺いしたいと思いますけれども、法案では十五条で、採択した教科用図書の種類の公表、これが示されております。「採択した理由その他文部科学省令で定める事項を公表するよう努めるものとする。」このようにあります。

 一つは、なぜこのような規定を設けたのかということ、それから、これは当然、採択の透明性を高めて、その上で信頼性を確保するということであると思うんですけれども、そういう理由であれば、むしろ努力義務ではなくて義務規定にすべきという考えもあると思うんですが、この辺についてはいかがでしょうか。

下村国務大臣 確かに、稲津委員が言われていること、そのとおりのところもあるんですが、ただ、例えば特別支援学校においては、児童生徒の障害の状況等に鑑みて、検定済み教科書や文科省著作教科書の使用が適切でない場合には、ほかの一般の図書を教科書として用いることができますが、こうした図書の採択理由まで個別に公表を義務づけることは、つまり、特別支援学校においても児童生徒によって異なっている場合もありますので、プライバシーを侵してしまうというおそれがある。

 また、私立学校については、建学の精神に基づき多様な人材育成を行う教育機関であるとともに、学校単位で教科書の採択を行っており、基本的に地域単位で採択を行っている教育委員会とは、教科書の調査研究能力や、採択について説明責任を負うべき対象等の点において異なっているという状況がございます。

 このように、学校種や学校の設置主体の特性等によって採択に関する情報の公表のあり方は異なってくるということから、一律に義務とせず、一般的な努力義務規定と課した上で、個々の状況に応じ取り組みを促していくこととすることが適切であるというふうに判断したものでございます。

 教科書の採択権者が教科書採択に関する説明責任を果たすということは、これは当然のことであり、特に公立の小中学校における教科書の採択は、地域の関心も高いものでありますから、採択結果、理由等の公表を、これは強く促してまいりたいと思います。

稲津委員 ぜひそこのところは丁寧に対応していただきたいというふうに思います。

 それで、これに関連してもう一点伺いたいと思うんですけれども、採択した教科書のバリアフリー化、この対応状況についても公表すべきじゃないか。ぜひ通知等でこの辺もお示しいただければと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。

下村国務大臣 教科書のバリアフリー化への対応状況等採択理由の具体的観点について省令で規定し、その公表を求めることは、自治事務である教科書採択について国が一定の制約を設けることになることから、困難であるというふうに考えます。

 しかし、教科書の採択に当たって各採択権者が、それぞれの教科書が視覚障害や発達障害などさまざまな障害のある児童生徒にとって読みやすいものであるかどうかなど十分に調査研究して採択を行うことは、これは大変重要なことであるというふうに考えます。

 文科省としては、各都道府県教育委員会等に対し毎年発出している教科書採択に関する通知等によりまして、採択に当たって、教科書のバリアフリー化への対応状況について十分に調査研究を行うよう各採択権者に求めるとともに、各種会議においてその周知に努めることとしたいと思います。

稲津委員 ありがとうございました。

 このことについては私ども随分議論してまいりまして、ここはしっかり大臣に御答弁いただきましたけれども、この手の確保は非常に重要であると思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。

 この後、二点ほどお伺いしたいと思うんですけれども、採択地区の設定の単位ということで、もう一回、採択地区の設定のところについて、戻ってお伺いしたいと思うんです。

 まず一点目は、平成二十一年三月三十一日の閣議決定の中で、規制改革推進のための三カ年計画、こういうことの中に、教科書の採択については、「将来的には学校単位での教科書選択の可能性を視野に入れて、採択地区の小規模化を検討する。」このようにあります。それから、学校現場に行けば、これは学校別の採択をすべきじゃないか、そういう希望の主張もございます。

 この点についてどのようなお考えをお持ちなのかということ、これは将来的なことも含めてで結構でございますので、ぜひ、この時点での考え方をお示しをいただきたいと思います。

西川副大臣 この採択地区の、学校単位でも将来的にはというお話がありますが、おっしゃるとおり、平成二十一年に再改定されたんですね。平成十九年六月にそもそもは閣議決定されておりまして、「将来的には学校単位での教科書選択の可能性も視野に入れて、教科書採択地区の小規模化を検討する。」ということとなっております。

 この趣旨を受けまして文科省といたしましては、各都道府県の委員会に対して、「採択地区がより適切なものとなるよう不断の見直しに努める」、そういう立場で指導してきたところでございます。

 現実に、平成八年度は四百七十八地区であった採択地区が、平成二十五年度、今年度ですが、五百八十六にふえております。小規模化が進行しているということでございますね。

 一方、共同採択制度については、教科書の採択に当たっての調査研究、先ほどから議論いただいておりますが、地区内の大勢の教員の方々が参画しながら綿密な調査が必要である、そういうこともまた一つの現実でございます。その中で共同で教材研究や授業研究を行うということがより可能になるということもありまして、全国町村教育長会からも、今の制度存続を要望するという意向が示されております。

 そして、その中で共同採択制度を含めた教科書制度のあり方については、先生がおっしゃいますように、学校教育の自主性、多様性を確保するという観点とともに、適正かつ公正な採択を確保するという点もまた重要でございますので、市町村教育委員会の意向を十分に聞きながら検証、検討していくべき課題だと思っております。

稲津委員 小規模化は進行しているというお話でございましたので、そこは理解できるんですけれども、やはりさっきの話に戻りますが、ぜひ、市町村教育委員会の意向、意見というのを十分聞いていただきたい、より現場に近いということでございますので、そこのところは詰めていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、これは市町村合併に伴うことですので改めてここでお伺いしたいと思うんですけれども、第十二条一項の改正については、「市若しくは郡の区域又はこれらの区域をあわせた地域」を「市町村の区域又はこれらの区域を併せた地域」に改正をする、こうなっています。

 今回の改正の理由として、私冒頭申し上げましたけれども、市町村合併によって郡を構成する市町村の数が減ってきているということ、そういう意味で、行政単位、郡というものの性質が大きく変わってしまったということは、これはそのとおりなんですけれども、一方で、近年、過疎化が非常に進行していく中で、例えば人口が著しく減少してしまっている市、そういうのもあります。その人口が著しく減った市の中の学校数が、これもまた当然極端に少なくなっている。

 そういう市もあるわけでして、こうした現状に法案はどのように対応しているのか、このことを最後にお伺いしまして、質問を終えたいと思います。

西川副大臣 確かに、市町村合併が進んだ結果として、先生のおっしゃっているような状況は、あちこちで見られることは事実でございます。その中で、本当に小さな自治体が独自で教科書の採択、研究が十分にできるのか、そういう問題はあると思うんです。

 だからこそやはり、県の教育委員会等が市町村の意見を十分に聞きながら採択地区を設定し、採択地区内の教育委員会といわば共同をしながら教科書の選定に当たる、そのことが非常に大事なことなのではないかなと思っております。

 そういう上で、なおかつ、各市町村、その地域の意向を尊重しながら円滑に採択が行われるということが一番大事だろうと思っております。

 今回、この制度も法改正で変わることはありませんので、教育委員会制度、変えることとしておりますけれども、基本として教育委員会の専権事項でございますので、この採択制度はそのまま変わることはないということで、各教育委員会に、十分な教科書の調査研究に基づいて責任ある採択をしていただきたいということでございます。

稲津委員 終わります。

小渕委員長 次に、宮川典子君。

宮川委員 皆様、おはようございます。自由民主党の宮川典子でございます。

 きょうは質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 限られた時間ですので早速質問に入りたいと思いますが、まず、今回の法律案を一部改正したポイントとその経緯について簡潔に御答弁いただきたいと思います。

前川政府参考人 近年、沖縄県八重山採択地区における問題を初めといたしまして、共同採択に当たって協議が難航する事例が生じてきているという現実がございます。

 特に八重山採択地区におきましては、何を教科書無償措置法に基づく協議の場とするかについて混乱が生じた、また、採択地区協議会における最終的な意思決定の方法が規約に定められていないという主張が竹富町の教育委員会からなされた、また、竹富町教育委員会が、採択地区協議会の協議の結果が各市町村教育委員会の採択権限を拘束しないと主張した、このようなことが事態の混乱を助長したと考えております。

 このため、教科書無償措置法の第十三条を改正いたしまして、まず、協議により規約を定め、共同採択に係る協議の場として採択地区協議会の設置を義務づけるということ、また、規約で議決の方法等について定めておくべきことなど、採択地区協議会の組織及び運営に関し必要な事項について政令で定めることとすること、また、採択地区内の市町村教育委員会は協議の結果に基づき同一の教科書を採択すべき旨を明記すること、こういったことを定めまして、共同採択地区における市町村教育委員会の協議の方法に関する規定の整備を行いまして、あらかじめ協議のルールを明確にしておくことによりまして、採択地区内で同一の教科書とならないという事態の再発を防止したいと考えているところでございます。

宮川委員 ありがとうございます。

 今回、採択地区協議会の決定に法的拘束力がついたということは大変評価すべきだというふうに思いますけれども、その前の段階で、やはり竹富町のロジックでいくと、自分たちが誰かが買った教科書を無償で子供たちに提供しているのだから問題がないということで、今まで教育にかかわる法律というのは、運用のところで実はグレーゾーンが大変あるというふうに思っております。

 ですので、きょうは、この運用についてぜひともちょっと突っ込んで質問をしていきたいなというふうに思っております。

 まず検定教科書のことについてですが、そもそも、教科書がどのような選定基準で検定されているのか、検定教科書となるのか、その基準が大変曖昧だというふうに思います。

 例えば、愛国心を涵養するというような文言がしっかり書かれている教育基本法にもしもしっかりと基づいて検定が行われているのであれば、今、現場でさまざま問題になるような、例えば歴史教科書の中の自虐史観の問題であるとか、そういう問題というのは限りなく小さくなってくるんじゃないのかなというふうに思いますが、私にとっては、この基準が大変曖昧だというふうに感じております。

 検定教科書を選定するに当たっての明確な基準があるのかどうか、また、参考までに、どういう方が選考委員として選ばれているのか、登用されているのか、御答弁いただきたいと思います。

前川政府参考人 教科書の記述は、教育基本法、学校教育法、また学習指導要領等にのっとって、バランスよく記載されることが大事でございます。

 こういった観点で教科書が作成されるということが基本でございますけれども、バランスよく記載された教科書で学べるようにするために、昨年十一月に、下村文部科学大臣から教科書改革実行プランが発表されたところでございまして、これに基づきまして、本年一月十七日に教科書検定基準の改正をいたしました。

 この検定基準の改正におきましては、特に社会科につきまして、まず第一に、未確定な時事的事象について記述する場合に、特定の事柄を強調し過ぎていたりするところはないこと、第二に、近現代の歴史的事象のうち、通説的な見解がない数字などの事項について記述する場合には、通説的な見解がないことが明示され、児童生徒に誤解を与えないようにすること、また第三に、閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解や確定した判例がある場合には、それらに基づいた記述がされていること、こういった内容を新たに盛り込んだところでございます。

 この改正後の検定基準につきましては、平成二十六年度に行う中学校用教科書の検定から適用するということになります。

 今後、改正された新しい検定基準に基づきまして、バランスのとれたよい教科書となるよう、しっかりと検定に取り組んでまいりたいと考えております。

宮川委員 今後の教科書の採択に関しては新しい基準が適用されるということでありますので、しっかり私たちもチェックをしていかなければいけないというふうに思っております。

 きょう、委員の皆様のお手元にお配りした資料の一枚目から三枚目をごらんいただきたいと思います。

 先ほど、検定基準というのは改められて、今度、二十六年度から適用されるというお話がありました。

 しかし、三枚目を見ていただくとわかるとおり、検定教科書の点数の多さというのが私は大変ひっかかるところがございます。小学校では二百八十冊、中学校では百三十一冊の検定教科書があります。しかし、これ全てに、採択にかかわる調査員、選考委員、また協議会の委員の皆さんが目を通しているとは到底考えにくいものがあります。また、それぞれの市町村で行われている、協議会の地区内で行われている教科書の展示会においてもこれだけの点数の教科書がしっかりと展示されたのを、少なくとも私は一度も見たことがありません。

 つまり、ここで起きるのが、実は、教育委員会やある一部の人たちの恣意的な考え方による絞り込みだと私は考えております。

 一枚目、二枚目を見ていただければわかりますが、これはあくまでも私の地元の山梨県の例でありますけれども、絞り込みをしているからこそ、毎年毎年、こうやって同じ教科書がずっと過去二十年にわたって使われているのではないかなという感じが私自身はしております。ずっとこうやって、誰かが決めた、絞り込まれた教科書の中から、どれがいいのかなというふうに決めてきた。

 つまりは、どれだけ教科書が改訂をされても、そこにしっかりとした研究や協議がなされていないというような危惧をするわけですけれども、こういう心配を極力減らすためにも検定教科書の数の適正化を図っていくべきかと思いますが、御答弁をいただきたいと思います。

前川政府参考人 まず、先ほど宮川先生の御質問にお答えしていなかった部分につきましてお答え申し上げます。

 教科用図書検定調査審議会の委員につきまして、これは、各年度において検定が実施される学校種、例えば今年度でありますと小学校と高等学校でございますが、そういう学校種でありますとか、また、各専門分野ごとのバランスを配慮しながら文部科学省におきまして人選を行いまして、最終的に文部科学大臣が任命しております。その際に、現在供給されている教科書の著者、これは除外されるということでございます。

 具体的には、当該分野に詳しい現任の委員、あるいは教員であれば、教育委員会の推薦等に基づきまして総合的に判断して人選を行っているということでございます。

 ただいま御質問のございました件でございますけれども、公立義務教育諸学校における教科書の採択、これは、当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会がその責任と権限において行うべきものであるということでございますので、それぞれの教育委員が、その責任を自覚して、教育委員会として決定していただくということが大事でございます。

 その教育委員会が教科書採択の参考とするために、教科書を調査研究させる調査員あるいは選定委員会などを置く、これは現に行われていることでございますが、これらの調査員あるいは選定委員会におきまして調査研究が行われた結果を参考として教育委員会が採択を行う、こういうことになっているのが実態でございます。

 その場合、調査員等からどのような形で報告を求め、また、それをどのように受けとめるか、これも含めまして、教育委員会がその権限と責任において自主的に判断すべきことであるということでございます。

 文部科学省といたしましては、採択権者である教育委員会の責任が不明確になるようなことがないように、引き続き、採択手続の適正化、透明化を図るように指導してまいりたいというふうに考えております。

宮川委員 ありがとうございます。

 今、調査員や選定委員がしっかりと調査研究をした結果を教育委員が選んでいくというそのプロセスのお話がありましたけれども、例えば、例えばというか、都道府県が設置する義務教育諸学校に関しては、しっかりと教科用図書選定審議会というものがあります。これには明確に本法律の施行令第十条に規定が決まっておりますけれども、実は、市町村の教育委員会が教科書を選定するに当たっては、調査員も選定委員も、また採択地区協議会の委員も自由選定になっております。

 私はここは大変疑問だというふうに思っています。この調査員というのは、基本的に現場の先生たちが一般的に配置されることがありますけれども、ここで正しく、バランスよく教科書を見ることができる人がいればいいですが、実際、教職員組合の方であるとか、偏った歴史観だとか考え方によってその調査の結果を出す方もいらっしゃるというふうに思います。

 ここが大変重要なところで、しかも、私たち日本というのは、義務教育課程においては国民皆学、みんなに平等に、子供たちに正しい知識と史実とそして能力をつけるということを目的にしてこれまで義務教育をやってきたにもかかわらず、そこにかかわる教科書の採択にかかわるところが自由選定というのは、これは大変無責任ではないのかなというふうに私自身は思っております。

 義務教育の責任を果たすためにも、この自由選定がなぜこのまま継続されてきたのか、その経緯について御答弁いただきたいと思います。

前川政府参考人 公立の義務教育諸学校の教科書の採択、これにつきましては、法律上、教育委員会がその権限と責任において決定するということなのでございますけれども、それ自体は自治事務でございまして、一義的には、地域の住民に対して責任を負う地方公共団体の教育委員会において行うということになっているわけでございます。

 この採択権者である教育委員会は、教科書無償措置法が定める枠組みの中で、その中でどのような具体的なルールのもとで方針を立て採択を行うかということにつきましては、教育委員会自身がやはり責任と権限を持って決定していくということとなっているところでございまして、私どもとしては、その前提に立って指導してきているということでございます。

宮川委員 正しくそれぞれの地方公共団体また教育委員会が責任を持ってこの選定に臨んでくれればいいわけですが、しかし、今までそれがなかったがために、今回の竹富町の問題も、教科書にまつわる問題も今まで起きてきたということをしっかり認識をして、今後、この選定委員、調査員をどのように設置していくかということも厳しく検討していかなければいけないというふうに思っております。

 今まで教科書の話をしてきましたが、私は、現場にいた者として、もう一つ大きな問題があると思っております。それは副教材の問題であります。

 教科書を今しっかり選定をしようということで国もこうやって法改正に臨んでいるわけですけれども、どういう副教材を使うのか、どういう副教材が使われているのかということに関しては、正直、余りチェック機能が働いていないというのが実感であります。

 教科書会社は、教科書を採択してもらっても、大体それは全部で四百億円ぐらいの予算措置であります。なぜ教科書会社が一生懸命営業するのかといえば、莫大なその副教材を買ってもらいたいから現場で一生懸命営業するわけですね。でも、この副教材が本当に教科書に準じているものかどうかということは、ちゃんとつまびらかに検討しなければいけない面があると思います。

 例えば、私たちが望むような、しっかりと子供たちにこれが正しいと思うような教科書を採択したとしても、その教科書に準じない副教材を使っていたりとか、あとは、よく社会の先生でおりますけれども、自分でつくったプリントだけで、教科書を一切使わずに授業をやっている人たちもたくさんいます。そこに自分たちの主張、思想、信条や恣意的な考え方を入れて子供たちの教育をゆがめてきた、これが偏向教育の現場の現実だというふうに私自身は思います。

 だとするなら、教科書だけではなくて、この副教材を使う、また、教科書をどのように現場で使わなければいけないのか、こういうことに関しても、国として、文部科学省としてしっかりとした指導をしていかなければいけないと思いますが、その点について今後どのように検討されるのか、ぜひとも強い御答弁をいただきたいと思います。

西川副大臣 宮川先生、現場を経験された先生からのお話というのは大変重いと思います。しっかりと受けとめさせていただきたいと思います。

 基本的に教科書は、これは使用義務があります。教科書を一切使わないで教員をやるということは言語道断でございまして、学校教育法第三十四条第一項で、検定を通った教科書を使用しなければならないと明確に法律で規定しておりますので、これは絶対に使っていただきたい。そのことをきっちりと、教員の服務を監督する立場にある校長、あるいは指揮監督権を有する教育委員会のまさに権限と責任において、適切に管理されるべきものだと思っております。

 副教材に関しても、実は、きちんと副教材は教育基本法、学校教育法、学習指導要領等の趣旨に従っていること、そして、児童生徒の発達段階に即したものであること、政治、宗教について不公正な立場のものでないことなどについて十分留意するということは決まっておりますので、それにきちんとのっとったものであるかどうかを、実は地教行政法の第三十三条第二項に、教育委員会に事前に届け出をさせて、それで承認を受けるということになっておりますので、本来はそういう不適切な副教材が使用されていること自体非常に問題でございまして、今回何のために教育委員会改革をしようとしているか、今回この教育委員会改革がきちんとされることによって、本来のこの法律を守らせるということをしっかりと教育委員会が管理する、徹底させる、そのことをぜひ期待したいと思います。

宮川委員 私も副大臣と同じ気持ちでございます。

 今回、教育委員会制度の改革をしたのには、やはり、中で現場のことがわからない職員さんと、あとは、組合活動を一生懸命やって出世のために教育委員会をステップにしている、そういう人たちが今までそのチェック機能をしっかり果たしてこなかったということに関して現場でたくさんの問題が起こってきたというふうに思います。せっかくこれだけ一生懸命に政府を挙げて教育委員会制度改革をするのであれば、今回、こういう問題に関しても、細やかな問題ではありますが、しっかりと取り組んでいかなければいけないというふうに思います。

 そして最後に、今、副教材のちょっと悪い面を私はお話ししましたけれども、最後にいい事例というか、ぜひとも政府としてもエールを送っていただきたい事例を御紹介したいと思います。

 私も所属している我が党の青年局、四十五歳以下の国会議員と地方議員、また一般の人たちで構成されているこの青年局で、今、正しい日本地図を普及させようということで、全国運動を始めております。これでありますけれども、ぜひ委員の皆さんにもごらんいただきたいと思います。

 子供たちにしっかりと領土のことに関して認識を持たせよう、今、自分たちの日本という国がどこにあって、そして、どういうふうに領土、領海がなっているのかということを真摯に受けとめてもらうために、これを学校に全配付しようということで、各地域で運動が始まっております。

 実は、これは西川副大臣も深く御縁のある熊本県からスタートしたところでありますけれども、我々の中央常任委員会の溝口幸治議長が一生懸命県議会で始めて、今、皆様のお手元の四枚目にあります資料のように、各地方議会で、今回の二月議会、三月議会でも質問がなされております。

 こういうふうに、正しいものを副教材として入れようという動きというのもあちらこちらにあるわけですが、やはり、先ほど来あるように、教育行政というのは地方分権が非常に進んでおります。だとするならば、地域の都道府県の教育委員会、市町村の教育委員会を地方議会がしっかりチェックをして、正しく国と足並みをそろえて教育改革を行っているのかどうか、それを今後国としても応援し、また、チェック機能をどうやったらもっとより働かせることができるのか、支援をしていく、また指導をしていく必要があると思います。

 それについてどのような御方針を持っていらっしゃるのか、答弁をいただきたいと思います。

 そして最後に、大臣がせっかく戻られましたので、私から最後のお願いでございます。

 こうやって我々政権が、しっかりと政府が進めようとする教育再生を、小さな歩みからではありますけれども、地方から支えている、全国で頑張っている、本当に真に子供たちを愛している仲間に対して、ぜひ大臣から熱いエールを送っていただきたい。そのお願いを申し上げまして、私の質問を終わりにしたいと思います。

西川副大臣 宮川委員の大変熱い御質問に私もしっかり対応しなければいけないという思いを新たにしております。

 実は、熊本県の溝口議員は、本当に一緒に勉強会を開いた仲間でございまして、そういう中で、今、日本の正しい地図を全国に配付をするという自民党青年局とのキャンペーンと相まって、一つの大きな果実が実ってきつつあるということは、本当に文科省としてもありがたいことだなと思っております。

 日本の東西南北の最端を明記し、日本の領域全体が表記された地図、これを県立高等学校全学級数分配し、教室への掲示や教科書指導への活用を指導している例、これは多分熊本県のことだろうと思うんです。それから岐阜県では、来年度から、世界地図や日本地図を全県立高等学校等に配付することを予定している。こういう動きが各県にそれぞれどんどん広がっていくといいと思います。

 学習指導要領の解説のところでも今回改訂をいたしまして、日本の国境をしっかり明記する、あるいは、不法に占拠されているという事実をしっかり教えるというような、今回の指導要領の解説の変更も文科省としてはしているところでございます。

 こういうことで、各学校、教育委員会において決定するものではありますが、文科省としても、現場の創意工夫のある取り組みについても、適切に情報を提供しながら、お互いに日本の領域についての理解をしっかりと深めていきたい、そういう思いで頑張ってまいります。

下村国務大臣 領土を明確にした日本地図、関係の皆さんが大変御努力をされていることに対して、本当に敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 今、西川副大臣が答弁をしましたように、このたび、尖閣、竹島、日本の固有の領土であるということを明確に全ての教科書の中で位置づけるように改訂もしたところでありますし、しっかりと受けとめながら、領土教育において、子供たちに正しい知識を学ぶ環境をつくってまいりたいと思います。

宮川委員 質問を終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、菊田真紀子君。

菊田委員 おはようございます。民主党の菊田真紀子でございます。

 義務教育において使用する教科書というのは、全ての児童生徒が使用する最も重要な教育文書であります。また、義務教育における教科書無償化制度は、憲法の第二十六条に掲げる義務教育の無償の精神にかかわる重大な問題であります。

 本件改正法案はこうした教育行政の根幹にかかわる重要法案と認識をさせていただきながら、質問をしてまいります。

 教科書を採択する権限を有するのは教育委員会です。これは地方教育行政法第二十三条六号に示すとおりであります。ところが、教科書無償措置法上の共同採択地区においては、地区内の教育委員会は、協議をして同一の教科書を採択することになっています。

 沖縄県八重山採択地区の教科書問題について質問いたします。

 中学の公民の教科書の選定に当たり、石垣市、与那国町が育鵬社の教科書を採用したのに対し、竹富町が東京書籍版を採用し、地区内教育委員会の対応が分かれています。

 これは、地方教育行政法第二十三条六号と教科書無償措置法第十三条第四項という二つの法律による矛盾によって生じているのであり、特別法が想定していない場合、いわば法の欠缺がある場合には、一般法に立ち返って評価することが法解釈の常道ではないかというふうに私は思うのですが、政府の見解をお伺いします。政府参考人と法制局にもお答えをいただきたいと思います。

前川政府参考人 御指摘のとおり、地教行法の第二十三条第六号によりまして、公立小中学校において使用する教科書の採択につきましては、当該学校を設置管理する地方公共団体の教育委員会が行う権限を持っているということとされております。

 また、教科書無償措置法第十三条第四項におきまして、共同採択地区におきましては、採択地区内の市町村の教育委員会が協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならないと規定されております。

 この教科書無償措置法第十三条第四項は、教科書採択の権限を定めております地教行法第二十三条第六号に対する特別の定めであるということでございまして、共同採択地区を構成する市町村教育委員会は、その採択権限を行使するに当たっては、教科書無償措置法に従い、協議して種目ごとに同一の教科書を採択しなければならないという関係にあるということでございます。

林政府参考人 お答えいたします。

 教科用図書の採択についての教育委員会の権限につきましては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条第六号が、教育委員会が管理し執行する事務として教科書その他の教材の取り扱いに関することを規定し、一般的に、公立小学校及び中学校等において使用する教科用図書の採択については、当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会が行うこととしております。

 一方、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律第十三条第四項は、同法第十二条第一項の規定に基づいて設定された採択地区が二以上の市町村の区域をあわせた地域であるときは、当該採択地区内の市町村立の小学校及び中学校において使用する教科用図書については、当該採択地区内の市町村の教育委員会が協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならないとしており、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条第六号が規定する教科用図書の採択の権限の行使についての特別の定めをしているところでございます。

 以上でございます。

菊田委員 共同採択の意義についてなんですけれども、先ほども御説明がありましたが、文科省は以下のように説明をしています。

 まずは、教科書内容の綿密な調査研究を可能にすること、地区内の教員が共同で授業研究等を行えること、転校による学習上の不便を軽減すること、教科書の円滑供給、価格低廉化が期待できること、こういうことであります。

 まず、調査研究を共同でやったり、教員が授業研究を一緒に行えるということは利点としてあると思うんですけれども、それが共同採択の必要条件なのかどうか。

 それから、転校よる学習上の不便を軽減するというふうに言っているんですが、今や、日本全国どこでも児童生徒が転校するケースは、もう当たり前に、普通にあるわけであります。

 そして、価格の低廉化ということをおっしゃっていました。きょうは資料をちょっと出させていただいておりますけれども、少子化で昭和五十年代から児童生徒数というのはかなり減少しているんですけれども、教科書の予算額、これはずっと横ばいになっておりまして、価格が低廉化されているというようなふうには全く見えないんですけれども、その点について御説明をいただきたいと思います。

前川政府参考人 共同採択制度の意義でございますけれども、先生が御説明くださいましたとおり、まず、教科書の採択に当たっての調査研究におきまして、地区内の多くの教員などが参加でき、教科書の内容について綿密な調査研究が可能となるということでございます。

 百冊を超える教科書の調査研究を、小さい自治体だけで調査研究を行う、また、それに基づいて採択を行うということは非常に難しいという事情があるということでございまして、そのようなことから共同採択制度が設けられているのが一つの意義でございます。

 また、地区内の教員が共同で教材研究や授業研究を行うことが可能になる、これも一つの意義でございまして、近隣で開催される公開授業の研究会等におきまして、教科書が同一であることによりまして、より具体性を持って研究内容を理解することができ、その効果も高まる。

 また、公立学校の教員人事が教育事務所の管区内で行われることも多いわけでございますけれども、人事異動した場合においても同じ教科書を使用して指導することができるということで、教員の教材研究や授業研究の蓄積を効果的に活用できる、そういうメリットがあるわけでございます。

 また、転校のケースでございますけれども、周辺市町村への転校によって教科書が変わるという不便を最小化するということでございます。転居先についてのデータがございますけれども、同じ市区町村内で転居するというケースが約五割、四七%以上ございますが、同じ都道府県の他の市区町村に転居する、これが二七・八%という、これは人口移動調査の結果としてそういうデータもございます。他の都道府県や外国に転居するというのは二割程度である、こういうデータもございますので、転校の際の不便を軽減するという意義はあるというふうに考えています。

 また、教科書の円滑な供給、それから教科書価格の低廉化ということでございますけれども、市町村がそれぞれ単独に採択するということになりますと、教科書の供給の煩雑化でありますとか、供給コストの増大が懸念されると考えております。

 市町村が個別に採択をした場合の課題といたしまして、例えば教科書供給協会からは、作業スペースの確保や仕分け作業の煩雑化、在庫点数の増加などによる保管場所の確保などの問題が生じて、供給コストの増大のおそれがある、こういう意見をいただいているところでございます。

菊田委員 すごく丁寧に御答弁いただいてありがとうございます。だけれども、時間がないので、もうちょっと簡略に答えてほしいんです。済みません。

 さっき私が質問した、少子化で生徒が減っているけれども予算額はずっと変わっていない、これを説明してください。

前川政府参考人 コストが変わらないということでございますけれども、物価の影響、これはございます。また、固定費がございますので、子供の数に比例するというわけでもないという部分がございます。また、指導要領の改訂に伴うページの増減がございますので、これによって影響されるという点があるということでございます。

菊田委員 余り説得力がないというふうに思いますけれども、次の質問に移ります。

 政府はこれまで、「その設置する小学校及び中学校における教育について一義的な責任を負う市町村において、国による無償措置によらず、自ら教科用図書を購入し、これを児童生徒に無償で給与することは、無償に関する法律の趣旨に反しているとはいえず、無償措置法によっても禁止されるものではない」と答弁してきたはずなんですが、これは閣議決定された政府見解で間違いないでしょうか。

前川政府参考人 平成二十三年十一月八日付の、質問主意書に対する答弁書におきまして御指摘のような答弁をしているところでございます。

菊田委員 だから、これは閣議決定されたもので間違いないですね。

前川政府参考人 そのとおりでございます。

菊田委員 この政府見解は現在変わったんでしょうか、法的評価が変わったんでしょうか。これは法制局も答えてください。

林政府参考人 お答えいたします。

 ただいま文部科学省から御答弁ありました、御指摘の質問主意書に対する答弁書は、平成二十三年十一月八日に閣議決定されたものであり、政府として答弁したものでございます。

 一般論としてお答えすれば、閣議決定の効力は、原則としてその後の内閣にも及ぶというのが従来からの取り扱いであると承知しているところでございます。

 以上でございます。

菊田委員 政府は、竹富町がみずから教科書を購入して無償で給付することは法律上ぎりぎり許容していたんです。それを一転して、なぜ異例の是正要求を出せるんでしょうか。

前川政府参考人 この政府答弁が閣議決定された時点におきましても、竹富町が教科書無償措置法の規定に違反している状態であるという前提の認識は変わっておりません。その点につきましては、その当時と現在においても変わっていないわけでございます。

 したがいまして、違法であるということの前提のもとで、さはさりながら、児童生徒に教科用図書が行き渡らないという事態を避けるためには、竹富町において教科用図書を購入し、これを無償で給与する、このことについて教科書無償措置法によっても禁止されるものではない、こういう見解を述べたものが御指摘の答弁でございます。

菊田委員 そうなんです。無償措置法によって禁止されるものではない、こういう政府の見解のもとに竹富町は今のような状況になっているわけでありますけれども、たとえ政権がかわったとしても、大臣がかわったとしても、教育の分野において政治的な中立性あるいは安定性、継続性というのが担保されることが大事だと思うんですが、それについて政治的中立性、安定性、継続性が担保されているというふうにお考えでしょうか。

前川政府参考人 中学校公民教科書の採択におきまして竹富町教育委員会が行った採択が教科書無償措置法の規定に反するという認識におきましては、平成二十三年当時から一貫しているわけでございます。

菊田委員 竹富町教育委員会は、地教行法上の権限を行使して東京書籍の教科書を採択しました。これを違法状態として地方自治法に基づく是正要求を行った文科省の今回の対応は、私は明らかに行き過ぎではないかというふうに思っています。

 改めて確認したいんですけれども、法制局は、地教行法上の権限を行使した竹富町教育委員会は違法だという認識でしょうか。

林政府参考人 お答えいたします。

 個別の問題につきましては、当局といたしましては、前提となる事実関係を承知しておりませんことから、答弁は差し控えさせていただきたいと存ずる次第でございます。

菊田委員 では大臣に質問します。

 竹富町が無償措置法に違反していると言うのであれば、教科書を統一できていないもう一方の石垣市、与那国町も同じく違法状態と言えるのではないでしょうか。そして、是正要求を出すなら、竹富町だけでなく、ほかの二市町も同じように扱うべきではないでしょうか。

下村国務大臣 当時の文科大臣である中川先生がいらっしゃいますから、中川先生に事実関係をぜひお話をしてもらいたいぐらいでありますが、当時から、民主党政権のときから、竹富町のこの方法は違法状態だということは、中川当時文科大臣がこの委員会でも明言されていたことであります。

 ただ、違法状態の中で、一方で児童生徒に教科用図書が行き渡らないという事態を避けるために、竹富町において教科用図書を購入することについては教科書無償措置法によって禁止されるものではないというふうには答弁されていますが、禁止されてはいませんけれども、しかし、本来違法状態だ。違法状態を放置していること自体、法治国家として私はこれは望ましいことではないというふうに思うわけであります。

 そして、これは石垣、与那国も違法状態ではないかと御質問がありましたが、これは、教科書無償措置法第十三条第四項においては、共同採択地区内では、関係市町村が協議して種目ごとに同一の教科書を採択しなければならないとまず定めております。

 沖縄県八重山採択地区においては、教科書無償措置法第十三条第四項の規定による協議を行うための組織として、関係市町村教育委員会の合意により規約を定めて八重山採択地区協議会が置かれており、八重山採択地区協議会の規約に従ってまとめられた結果が教科書無償措置法第十三条第四項の規定による協議に当たると認められるわけであります。

 石垣市及び与那国町の各教育委員会は、この結果に基づいて教科用図書を採択しているわけでありまして、同項の規定による採択を行ったと見られることから、教科書無償措置法により、国がその採択に係る教科用図書を無償で供給することができると考えておりまして、つまり、石垣、与那国はまさにルールに従って行ったわけでありまして、これは違法状態ではないわけであります。

菊田委員 大臣は三月十四日に記者会見をされておられますけれども、その中でこういうふうにおっしゃっています。日本全国で必ずしも教科書を全部読み込んで採択に臨むという教育委員会は非常に少ないのではないか。形式化している部分もあるのではないか。特に議論になりそうな、問題になりそうな教科については、全ての教育委員の皆さんに、ぜひ自分の目で全て読み込んで、どの教科書が一番いいか、みずから判断してもらいたい。こういうふうに述べられていますけれども、私、これは問題だと思うんです。

 子供たちの大事な教科書を決める人たちが実はその教科書の中身をよく読んでいなかったということを大臣は認識していて、そして形式化しているということについても認めておられるんでしょうか。さらには、たくさんの教科書を読むのは大変なので、特に議論になりそうな、問題になりそうな教科はぜひ読み込んで判断してほしいとも述べられていますけれども、こんなことで本当に責任ある教科書採択と言えるのかというふうに私は思うんですが、御説明いただきたいと思います。

下村国務大臣 そのような教育委員会だからこそ問題があると思うんです。ですから、今国会で教育委員会抜本改革案をぜひ提出させていただきたいと思います。

 本来は、教科書は全て教育委員が選ぶことになっているわけでございます。しかし、先ほどからの議論の中でも出てまいりましたように、小学校で百三十一、中学校で二百八十の教科書、実際、これを全国教育委員会の中でどの程度の教育委員会が読み込んでいるかというと、実態的には、なかなか読み込んでいる教育委員会の方々は、これは八重山地区だけではありません、ほかの教育委員会においても非常に少ないのではないかと思います。

 そのために、調査員が絞り込んで、そして、それは教育委員会によってそれぞれ工夫は違いますが、数冊、二冊程度に絞り込んで、その中から最終的に教育委員が判断をして選ぶ。最終的には教育委員が判断していますけれども、しかし、教科書そのものを読み込んでいないということは、やはり実態としてはどこの教育委員会においても全国的に見られる傾向であります。

 ですから、これは、教育委員会が教科書採択をするのであれば、教育委員みずからが教科書を読み込んでいただきたい。少なくとも、話題になるような教科については読み込んでいただきたいというのは今も思っていることでありますが、今後、教育委員会制度が改革される後においては、できたらぜひ教育委員がみずから教科書をとってもらって、どの教科書が一番そこの自治体にとってふさわしいかということを、みずから読み込む中で判断していただきたいと思います。

菊田委員 この八重山地区協議会の採択の件ですけれども、石垣市の教育長、与那国町の教育長、竹富町の教育長を初めとするこの協議会の委員というのは、どの教科書が子供たちにとって一番よいのか判断する上で、全ての教科書を読み比べていたんでしょうか。

下村国務大臣 済みません。先ほど、教科書の数で、小学校の方が二百八十、中学校の方が百三十一でございますので、訂正させていただきます。

 それから、八重山採択地区協議会のそれぞれの委員がどれだけ教科書を読み込んでいたのかということでありますが、これは、協議会における協議の詳細について逐一承知しているわけではありません。

 一般的には、教育委員会や採択地区協議会の委員が全ての教科書を読み込むことが、このような教科書の数が多いということで困難であるということから、都道府県教育委員会が作成した選定資料や調査員が作成した調査研究資料も参考にして議論が行われているというのが実態であるのではないかと思います。

 いずれにせよ、八重山採択地区協議会における結果は、協議会の規約に従ってまとめられた協議の結果であると認識しておりまして、竹富町教育委員会は、この協議の結果に基づいて教科書を採択しなければならないわけであります。

菊田委員 読み込んだかどうかは把握していない、こういうことでありますけれども、先ほどから、ルール違反をしている竹富町はけしからぬと。しかも、今回、異例の是正要求を直接竹富にやっているわけです。だけれども、本当にこれは教科書を読んだか読まないかもよくわからない、文科省としては把握していない。ちょっと私は違和感を感じます。

 この八重山地区協議会ですが、もともとは、二〇一一年八月にリストになかった育鵬社を多数決で選んだんです。しかも、それに先立つ六月の協議会総会においては、石垣市の教育長が、事前に諮ることもなく委員から学校関係者を外すなど、規約の変更を主導していたんです。教科書を読んだかどうかもわからない人たちが、私から見れば非常に強引な手法で決めたとすれば、やはり竹富町が反発するのは当然だというふうに思います。

 このような背景からしましても、竹富町教育委員会のみを違法状態として是正要求するというのはおかしいのではないかというふうに思いますが、下村大臣は御自身の政治信条から何が何でも竹富町に育鵬社の教科書を使わせようとしているのではないか、教育への政治的介入だという批判も沖縄からは聞こえてきますけれども、御見解を伺います。

下村国務大臣 まず、それぞれの委員が教科書を読み込んだか読み込まないかということであれば、それは本来読み込むべきことであるというふうに思います。

 しかし、それと今回は次元の違う話でありまして、今回問題になっているのは、八重山採択地区協議会における結果、これは協議会の規約に従ってまとめられた協議の結果なんですね。それを守らないという、法治国家としてルールはルールとしてあるわけですから、法律は法律として。その中で決められたものについて一つだけ守らなくてそれを看過するということは、これは認められないということであります。

 そういう意味で、竹富町の教育委員会への教科書採択に関する事務は、これは教科書無償措置法に明らかに違反しているわけであります。これは民主党政権のときからそういうふうに実際に指摘し、指導をしていたということについては、ぜひ理解をしていただきたいと思います。

 竹富町の教育委員会への是正要求は、このように平成二十三年から沖縄県教委を通じてずっと指導していたのにもかかわらず、今日まで何の是正も図れていないということにおいて、この違法状態を解消するためにやむなく行うものでありまして、これは、政治介入との御指摘は全く当たりません。

菊田委員 それでは、何度も是正要求をするように、監督指導するようにというふうに沖縄県教育委員会に働きかけても、沖縄県教育委員会は全く動かなかったんでしょうか。これは政府参考人でいいです。

前川政府参考人 昨年の十月に沖縄県教育委員会に対しまして、地方自治法に基づきます是正の要求の指示をしたところでございます。その内容は、竹富町の教育委員会の採択につきまして竹富町教育委員会に対して是正の要求をするよう、県の教育委員会に対して文部科学大臣から指示をしたというものでございます。

 それに対しまして県の教育委員会の方は、勉強の時間が必要であるとか、あるいは検討のために時間を要する、あるいは文部科学省に対していろいろ質問を投げてこられまして、それに対する回答を待つ、そのようなことで、結局、指示に対して従わないという意思決定をしているわけではないんですけれども、事実として指示に従う行動を起こしていない、こういう事態が五カ月近くにわたって続いたということがございまして、そういったことから直接の是正の要求に至ったという経緯でございます。

菊田委員 いや、これまでの経緯からしても、これは竹富の言い分もあるし、石垣、与那国の言い分もあるし、だから、沖縄県教育委員会としても困っているわけですよ。もう少し様子を見て、そしてまとまるものならまとまった方がいい、余り対立とか分裂につながらないようにしよう、そういういろいろな配慮もあったと思うんですけれども、国の是正要求という非常に強権的なやり方に非常に私は違和感を感じています。

 二十四日に竹富町教育委員会は、この国の是正要求には従えないとする方針を確認しました。今後、国はどう対応するつもりなんでしょうか。

下村国務大臣 まず、我々は突然そのようなことをしたわけではなく、これは先ほども申し上げましたように、もう民主党政権のときからこれは違法状態だということで指導をし続けていたわけです。そして自公政権になってから、これは、当時、義家大臣政務官が直接竹富町に赴いて、違法状態であるから是正してほしいということについては丁寧に説明をいたしました。それに対して改善が見られないので、沖縄県の教育委員会教育長が文部科学省に来て、そして今後対処したいということも、県教委の方も明確に言われたまま今日に至っているということであります。

 それから、竹富町教育委員会が国の是正要求に従えないということについては、報道では承知しておりますが、竹富町教育委員会からは、今回の是正の要求を受けた後の対応についてまだ報告を受けておりません。

 地方自治法の規定に基づき是正の要求を受けた市町村は、違反の是正のための必要な措置を講ずる法律上の義務を負っているわけでありますから、竹富町教育委員会においてもこれに反する決定がなされたとすれば、これは大変遺憾なことであるというふうに思います。

 竹富町教育委員会においては、このような法律上の義務をきちんと果たしていただきたいと考えておりまして、今後の対応については注視をしていきたいと思います。

菊田委員 八重山地区のこの混乱からわかりますように、透明性の確保それから説明責任の強化というのは極めて重要でありますが、今回のこの法律案の中で第十五条、新設することは評価しますけれども、内容的には全く不十分だと思います。

 子供たちの大切な教科書がどういう議論のもとで決まっているのか明らかにされるべきでありますので、政府案の「公表するよう努めるものとする。」というのでは弱過ぎるというふうに思います。なぜしっかり義務づけないのか。公表するものとするとすべきだというふうに思いますし、その上で、公表対象には採択地区協議会の議事録を加える必要があるというふうに考えますが、これは政府参考人にお答えいただきたいと思います。

前川政府参考人 採択の結果や理由の公表について努力義務規定とした理由でございますけれども、例えば特別支援学校におきましては、児童生徒の障害の状況等に鑑みまして、検定済みの教科書や文科省著作教科書の使用が適切でないという場合に、他の一般の図書を教科書として用いることができることになっています。こうした図書の採択理由まで個別に公表を義務づけるということになりますと、児童生徒のプライバシーを侵してしまうというおそれがある、こういう問題が一つございます。

 また、私立学校におきましては、学校単位で教科書の採択を行っておりますが、基本的に地域単位で採択を行っている公立学校のケースとは採択についての説明責任を負うべき対象が違う、こういった問題もございます。

 このような、学校種でありますとか学校の設置主体の違いによりまして採択に関する情報の公表あるいは説明責任のあり方が異なってくるということから、一律に義務とはせず、一般的な努力義務規定を課した上で、個々の状況に応じて取り組みを促していくことが適切であるというふうに判断したものでございます。

 一般の公立学校につきましては、公表に努めるよう強く指導してまいりたいというふうに考えております。

 また、公表に努めるべき事項については省令で規定するということにしておりますけれども、この省令につきましては、採択に当たって作成した研究資料でありますとか、採択について議論した教育委員会の議事録、御指摘の議事録でございますが、こういったものも、採択の理由を実質的に補足するような資料として公表すべき事項として規定することを現在想定しております。

 採択地区協議会に関する規定は平成二十七年の四月一日から施行することと考えておりますところ、採択地区協議会の議事録について公表事項として含めることにつきましては、それまでの各自治体における情報の公表状況等を踏まえまして検討したいというふうに考えております。

菊田委員 終わります。

小渕委員長 次に、遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 おはようございます。

 菊田委員、大変お世話になっておりますけれども、真逆の質問になります。本当に申しわけないなと思っております。私自身は、竹富のこの問題、まさに、下村大臣、リーダーシップをとっていただいて、強い指導を行っていただきたい、こんな立場で御質問を申し上げたい、このように思っております。

 私自身も長年取り組んできました教科書問題でありますし、きょうも多くの先生方、同志で教科書改善運動ということでやってまいりました。たびたび大阪の中でも、全国でも、教科書改善運動、教科書を題材にしたタウンミーティング、講演会、勉強会とやってまいりました。大変、国民の皆様は、強い不満、民意が届いていないといった形で思われている方々が多くおられるのも事実であります。

 しかし一方で、十年余り教科書問題についてやってきましたけれども、我々も民間という立場ではありましたけれども、余りにも偏った形で、強い口調で、表現ぶりを言ってきたこともあるのかなと最近反省していることもあります。いわゆる強硬的な表現の方法で今の教科書の悪いところを指摘してきたということもあって、今ごろになって、もうちょっとやわらかいイメージで教科書の改善運動を行ってきたらよかったかなというふうに思っているところでございます。

 要するに、いじめや教師の能力問題ばかりか、例えば、中国が領空、領海侵犯などを繰り返しているのに日本の領土の主張が教科書にきちんと書かれていない。河野談話では、調査段階から慰安婦証言に多くの疑問があったにもかかわらず、今の教科書では、兵士の性の相手である慰安婦として動員したとまで強制的な動員をしたかのように書いてあります。

 かつて、平成二十四年の二月のことですけれども、私が大阪で開催しましたタウンミーティングで、安倍総理にも御登壇いただきましたけれども、戦後レジームからの脱却をしなければ日本の真の独立はあり得ないというのが私の信念だとおっしゃりました。そして、日本の子供たちが学校で、日本の国や日本人がおとしめられている、自分に自信が持てなくなる、かつて平成八年に従軍慰安婦の記述が中学歴史教科書に全部載りました、自民党や保守勢力の強い地区でさえそうした教科書が使われたと強い危機感を安倍さんが示されました。

 にもかかわらず、第二次安倍政権になっても、慰安婦強制連行説の教科書がいまだに学校で教えられている。日本人の自信や誇りを失うような教科書がいまだに学校で主流を占めており、国家の税金や教育制度を使って日本人をおとしめる教育が行われているのが現実であります。しかも、検定で文科省がそれをパスさせている。もちろん、河野談話の検証すら国会でも進んでいないわけですから、文科省がこれをパスするのも仕方がないというふうにも思っております。

 このように文科省の検定が当てにならない以上、今度は地方の採択で、そんなにおかしな教科書を採択しないようにすべきなのであって、実際、東京や神奈川県の教育委員会では、高等学校段階でありますけれども、ある教科書の採択を拒否しました。民意がきちんと地方の教育に反映されていればそういった教科書は採択されないはずですが、しかしながら、現状では、下村大臣もよく御存じのように、大多数の地域ではそうはなっておりません。

 どうして東京や神奈川のように、おかしな教科書の採択を阻止することが全国でできないのでしょうか。

 そこでお尋ねします。まず、教科書検定制度の問題について下村文部科学大臣の見解をお伺いいたします。

下村国務大臣 教科書は、子供たちの教育にとって極めて重要な役割を果たしている主たる教材であり、子供たちによりよい教科書が提供されるよう、教科書検定や採択等の制度、運用の改善を図っていくことは最も重要な政策課題の一つであるというふうに考えております。

 特に、歴史については、光と影の部分があり、影の部分だけでなく光の部分も含めてバランスよく教えることによって、子供たちが我が国の歴史について誇りと自信を持つこと、それが重要であるというふうに考えます。

 このような問題意識に立ちまして、昨年十一月には、今後の教科書改革に向けた総合的な政策パッケージとして、教科書改革実行プランを発表いたしました。これは、教育基本法にのっとってバランスよく記載され、採択権者が責任を持って選んだ教科書で子供たちが学ぶことができるよう、教科書の編集、検定、採択、各段階におきまして必要な制度改革を行おうとするものでございます。

 この教科書改革実行プランについては、平成二十六年度以降に予定している中学校用教科書の検定、採択から適用すべく、さまざまな制度改正に現在取り組んでいるところでございます。

遠藤(敬)委員 大臣のおっしゃった問題の解決策の実効性を高めるにはどのようなことを考えておりますか。具体的な方策をお聞きいたします。

 今回の法案は教科書無償措置法の改正ですので、採択についての問題などを指摘しながら伺っていきたいと思っております。

 平成二十三年十二月六日、産経新聞の一面の、ほかの紙面にも大きく掲載されましたけれども、石川県の中学校の歴史、公民採択で重大な問題が起こりました。一つは加賀市であります。ある教科書を支持した教育委員二人に対して、市教委の幹部が、会議の休憩中に、そんな教科書を採択して責任がとれるのかとの圧力をかけたものであります。

 それでは全く政治的な中立でも何でもないということでございますけれども、今、教育委員会改革で、首長主導の教育制度にしたら政治的な中立は保てないと盛んに言っておられますけれども、教育委員会の役人の中にも政治的中立でない方が多くおられるというのも現実であります。

 そこで、文部科学省にお尋ねをいたします。

 教育委員会事務局や教員の政治性については、どのような実態を把握した上で政治的中立を確保し、一般人の、つまり特定のイデオロギーの勢力以外の民意を反映する中立的な教科書の採択につなげていくのか、文部科学省の見解をお伺いしたいと思います。

西川副大臣 先生御指摘の件は、平成二十三年、石川県で起きた教科書採択についての件だと思いますが、新聞報道によりますと、小松・能美地区について、事務局が主導して育鵬社版の教科書が不採択となった、それとまた、加賀地区については、教育委員会の幹部職員が育鵬社版の教科書を支持する教育委員に圧力をかけたという報道がなされていたということは承知しております。

 その中で、今回、教育委員会改革を行うこととしておりまして、やはり首長の権限と教育委員会の執行権と両方しっかりと、教育委員会改革の形になったわけでございますけれども、その中でやはり、採択権限を有する教育委員会の権限と責任において、採択地区協議会、先ほど大臣の御答弁にもありましたが、四分の一弱がまだきちんとしたそれをつくっていないという現実もありますので、いわばそれをまずしっかりしていただいた中で、違法、不当な働きかけを排除するために、静ひつな環境で採択をするということが大事な項目でございます。

 その中で、やはりこの教育委員会制度がしっかり機能することによって、非常に透明性を持って、採択のことをきちんと検証していただきたいと思っているんですね。そういう意味での各教育委員会の取り組みをこれから積極的に促していきたいと思っております。

遠藤(敬)委員 先ほど菊田委員からも調査研究、共同採択についての御質問もございましたけれども、私からも教科書の調査研究についてお伺いをしたいと思います。

 共同採択が維持される大きな理由の一つに、全教科書の調査研究は小さな教育委員会では無理であり、だから共同研究とともに共同採択が必要なんだと意見がございます。ならば、調査研究と採択は今後は切り離して、調査は共同採択地区で行うけれども採択は各教育委員会で行うということが、中教審が先日出した教科書改善についての意見の取りまとめにも書いてあります。

 つまり、今後は、都道府県教育委員会に向けて、調査と採択は切り離して、たとえ共同で教科書調査を行っても、採択は単独で行えるように、文部科学省でそういう通知を出して十分な周知をさせるというのはいかがでしょうか。

 そこでお尋ねしますけれども、採択地区が異なっても共同で教科書の研究がスムーズにできるように、十分に周知が行われるよう、また、調査資料を、教育基本法や理念、目標がいかに反映されているか客観的に判断できるような調査資料として、それを採択の指針、方針とすべきと思います。今後、文科省から採択に際しての通知を出す機会にこれを加えていただくことは不可能でしょうか。これは文部科学省にお伺いをしたいと思います。

前川政府参考人 教科書の採択に当たっての調査研究につきましては、採択と調査研究とが有機的に関連づけられているということが大事であるというふうに考えております。

 調査研究に当たりましては、まず採択権者における採択の方針というものを踏まえた調査研究が行われ、またその調査研究の結果を踏まえた採択が行われるべきものであると考えておりますので、単独で採択地区となっている市の場合でありましても、あるいは共同採択地区におきましても、その採択に当たっての調査研究はあくまでも採択のためのものであるということで、採択と調査研究とが一致しているということが大事であると考えております。

 その上で、採択地区が異なっていても合同で調査研究を行うということは可能でございますので、こういった取り組みが必要であれば行っていただいて結構であるというふうに考えております。

 調査研究の資料に教育基本法の理念でありますとか目標の反映状況に関する視点を加える、これは一つの有効なお考えであるというふうに考えております。

 調査研究の関係につきましては、一義的には教科書の採択権者が検討すべきものであると考えておりますので、文部科学省として指針を示すかどうかにつきましては、慎重に検討してまいりたいと考えます。

遠藤(敬)委員 実際、この問題をきちっと進めることによって、ある程度精査はできますし、民意も反映できると思いますので、ぜひ進めていただきたいなというふうに思っております。

 そして、教育委員会制度の改革がこれから行われますけれども、昨年でありますが、平成二十五年九月二十七日、読売新聞のアンケート調査結果が公表されております。このアンケートは、政府の教育再生実行会議の提言した改革案に対するもので、都道府県と政令市の首長、教育委員長、教育長、計六十七自治体の二百一人が回答をいただきました。

 その内容ですが、首長に教育長の任免権を与える改革案に対して、どちらかといえば賛成派が百十人、五五%、賛成した首長は四十四名、教育委員長三十四名、教育長三十二名、このように賛成派の割合が高く、「教育行政において、より首長がリーダーシップを発揮でき、住民の声を反映しやすくなる」などの意見があったとしております。

 このアンケート調査において、首長に多くの賛成者がいることはわかりますけれども、教育委員長や教育長の中にも、首長に教育長の任免権を与えることに賛成の人たちがかなりいることも注目しなければならないと思っております。このことは、首長のリーダーシップの発揮を多くの教育行政の関係者が望んでいる結果だと存じております。そのような観点から、協議会のあり方についても首長のリーダーシップを考慮したものとすべきであると考えております。

 教科書採択のための地区協議会の委員に関しては、現在全く規定がありませんが、実際は各教育委員会の委員がついているのが現状であると思っております。実際、そうであります。その教育委員会の委員というものの資質については、人格が高潔で幅広い識見を有するとされておりますけれども、最近は、教育委員の構成に関して、年齢、性別、職業等に著しく偏りが出ないように配慮するとともに、保護者が含まれるようにしなければならないなどのいろいろ考慮すべきことがふえてまいりました。

 今後行われるであろう教育委員会改革において首長のリーダーシップが十分発揮されるようにしていくとともに、学校で使用する教科書採択のあり方についても、多くの人々が納得できるよう、結果が出るようなものにすることが望ましいと考える次第であります。

 教科書の採択に当たって、教育委員会事務局から横やりを防ぐこと、また、採択地区以外でも教科書の調査研究ができるようにすることは当然でありますけれども、これよりも、首長のリーダーシップがきちんと浸透した、しっかりと判断のできる協議会とするため、メンバー人選こそ重要であると考えております。

 そこでお尋ねいたしますけれども、協議会のメンバーについて求められる資質は何であるか、文科省の見解をお伺いします。

西川副大臣 今回の教育委員会制度の改正に当たって首長の関与が大きく求められることになりますけれども、これはやはり、住民の意思で、選挙で選ばれている首長が教育に何らかの関与をするということは当然だと思えることだと思いますので、そういうことにのっとった教育委員会制度の改革だと思っております。

 その中で、今回、採択地区協議会での構成員のあり方、これは当該地区の教科書採択について大変重要な要素だと文科省でも認識しております。採択地区の協議会の組織及び運営に関する事項については政令で定めることとしておりますが、この中で、規約に定めるべき事項として、委員の選任方法を規定することを想定しております。

 ですから、この具体的な内容についてはやはり各教育委員会が協議して定めることになっておりますが、委員の選任方法を規約に定める事項としてきちんと決めていただく、そういうことを文科省としてもしっかり促していきたいと思っておりますし、学校教育に関してやはり識見と常識、そして専門性、そういう資質を備えたしっかりとした委員さんが選ばれることを文科省としても期待しております。

遠藤(敬)委員 教科書採択について、十年来さまざまな地方自治体の状況を確認したり、教育委員会の中身などを知れば知るほど、政治的中立という状況にはないなというふうにも感じておりました。我々は民間でありますので、民間でできるだけ、少しでも子供たちが日本の誇りを失わないような、そんな取り組みをするための教科書改善運動だと思っておりますし、そのように信じてやってきましたけれども、まさにやればやるほど奥が深いといいますか、教育委員会の問題だけではなくて、教科書採択の協議会のメンバーに、どれだけ教科書の深みといいますか我々の願いというのが、民意が届かないかということを深く実感した次第であります。

 そこがこの教科書改善運動の難しさでもありますし、それぞれのイデオロギー対立というようなことを超えて、本当の、これからの子供たちに必要な教科書を提供していかなくてはならないと改めて最近感じております。

 先般の予算委員会でも申し上げましたとおり、大阪の中学校で、下村大臣もお聞きいただいたと思うんですけれども、靖国神社へ行く人は悪い人、そういう指導をする教師が実際にいるんです。ほんま辛抱できなかったのでちょっと声を荒げまして学校へ行ったんですけれども、それは普通に日常化しているといいますか、うちの娘だけの問題じゃなかったんですけれども、あちこちから、そんなのは普通に言っているよという話でありました。

 私学なんですけれども、私学だから仕方がないのかなという思いの保護者もおられましたけれども、そういう教育を、教師がそれを強制して、子供はそうなのかなと思うらしいんですよね。帰ってきて、うちの娘は、いやあお父さん、靖国神社へよく行っているけれども悪い人なの、こう言うんですよね。そう言われるともうたまったもんじゃないといいますか、政治的中立なんてあり得ないなと。それが社会の先生なんですね。うまく入り込まれて、その事実を確認して、また子供に一々我々が説明する、何のための仕事なのかなと思うんですね。

 ですから、こういう是正というのは、ある意味イデオロギーというよりも、当たり前のことを当たり前に教える教師があったらいいんだなというふうに思いますから、ぜひ、こういう教師の問題であり教科書の問題であっても、きちっと日本人らしい教育を受けていただく環境を我々はつくっていかなくてはならないな、そのように思っております。

 いろいろと申し上げてきましたけれども、教科書採択について、制度や運用を変えても、要するにしっかりとした検定済みの教科書ができていれば、教科書を採択するに当たっての大きな問題はなくなります。文部科学省においては今後の検定をしっかり行ってもらいたいと思っておりますし、教科書検定に対する下村文部科学大臣の決意をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 福島の原発事故が起きてから原子力村ということがよく言われましたが、同じように、やはり教育村的なところが我が国においてあると思うんですね。御指摘があったように、一般国民の感覚と学校現場の感覚がずれているところがある。そういう意味での教育の正常化を図っていくということは、非常に重要なことであるというふうに思います。

 そのために、検定のあり方についてもやはり抜本的に考えていく必要があるということで、新しい教育基本法にのっとった、バランスよく記載された教科書で子供たちが学ぶことができるようにする、このために、昨年十一月に教科書改革実行プランを公表しました。そして、ことしの一月十七日に教科書検定基準を改定いたしました。

 改正後の新しい検定基準は、平成二十六年度に行う中学校用の教科書の検定からすぐ適用するようにしてまいりたいと思います。

 また、ことしの一月二十八日には中学校、高等学校学習指導要領の解説を改訂し、竹島や尖閣諸島など領土に関する記述や、自然災害における関係機関、自衛隊等の役割、これも記述をするということについての充実も図ったところであります。

 今回改訂された学習指導要領解説を参照して作成された教科書が、教科書検定を経て、中学校では平成二十八年度から、高等学校では平成二十九年度から使用されることになります。

 今後、改正された新しい検定基準に基づき、改訂された学習指導要領解説も踏まえ、バランスのとれたよりよい教科書になるように、しっかり検定に取り組んでまいりたいと思います。

遠藤(敬)委員 今までるる御答弁を賜りましたけれども、教育委員会制度のあり方を根本的に見直すということが、教科書採択の問題もしっかりと前進し、確固たるものになるものだと思っております。まさに子供たちが自信と誇りを持てる、そんな教科書であり、教師、先生方の姿勢であったり、本当に、この十年間やってきた中で、我々もちょっと言い過ぎたかもわからない、偏った表現にとられたかもわからない、そんな思いで、今この教科書の改善、また竹富町の問題についてもそうだったと思うんですけれども、余り強権的な表現方法で、これがいいんだ、悪いんだということも、余りやり過ぎると逆に固まってしまうということを最近思うようになりました。

 ぜひ、イデオロギー対立ということではなくて、きちっと近現代史の歴史認識を検証していただいて、きちっとした形で子供たちに伝えていただくことをぜひとも我々も一緒に頑張ってまいりたいと思いますので、下村大臣初め文部科学省の皆様方にもどうぞよろしくお願い申し上げます。

 続いて、うちの田沼議員が僕よりもきついことを言いますけれども、皆さんお聞きいただきたいと思います。本日はどうもありがとうございます。

小渕委員長 次に、田沼隆志君。

田沼委員 御紹介にあずかりました、日本維新の会の田沼隆志でございます。

 別にきついことはございませんので、私も、下村大臣は本当に尊敬する先輩、同志でありまして、昨年もお話しさせていただきましたけれども、安倍内閣で入閣されて本当によかったと、今でも本当に思っております。

 この採択の改革、この無償措置法の改正も私個人としては非常に大賛成でありまして、ぜひ推進をしていただきたいと思っておりますし、竹富町の問題もぜひ改善をしなくちゃいけないと本当に思っております。

 ただ、ちょっと画竜点睛を欠くというか、もう一息欲しい部分もなきにしもあらずなものですから、そこの部分をぜひ議論させていただきたいと思っておりまして、文章でいうと第十五条関係の、特に採択理由の公表の部分について主に議論をしていきたいと思います。

 私、千葉市議会でもずっとこの教科書問題をやってきて、教科書の田沼と言われていましたので、もう二回に一回は教科書問題を扱う、採択がない時期でも扱うぐらいに熱心にやってきたんです。その意味で、この第十五条、採択理由の公表をするようにというのは大変画期的であると思っておりまして、これはブラックボックスになりやすいんです。もちろん、無償措置しているわけですからその採択理由を公表するということは当然でもあり、非常に筋の通った改正であると思うんですけれども、実態的にはなかなか厳しいかなと思っています。

 この法案としても、採択結果及び理由等を「公表するよう努めるものとする。」になっているんですよ。皆さんのお手元にあるでしょうか。この「努める」という努力規定になってしまっていることにちょっと心配をしております。もっと言うと、現場はやらない可能性も多分にあるのではないかというふうに感じます。

 いただいた今までの資料だと、県の教育委員会は結構きちんと、結果はもちろん採択の理由も公表している。四十七都道府県のうち三十五県は結果をすぐに公表している。理由の方も十九県はすぐに公表している。請求に応じて公表するというのも入れればほぼ全部がちゃんと。県はやっているんですけれども、私は千葉市出身ですが、政令市の千葉市でも実は大変でした、この公表をさせることに。もっと小さな一般市はもっと厳しいですという実態をぜひお伝えしたいんです。

 お手元の資料で、ちょっと1234の順番がそのとおりでなくて申しわけないんですが、3の「平成二十三年千葉県内全市町村教育委員会の、教科書採択についての教育委員会会議録公開状況」、これはそのままでして、全県、千葉県は五十四市あるんですけれども、たまたま私は千葉市ですから千葉県を調べたんですが、県教委にまず公開状況を確認したら、資料がないと。もうしようがないから、一つ一つの市に当たっていきました。

 そうすると、五段階あって、この黄色い部分、上の部分を見ていただくと、議事録をきちんと公開しているのは五十四市のうち十市なんですね。だけれども、教科書の部分は非公開というのが2です、十七市あるんです。概要のみでそもそも議事録はありません、もちろん理由もありませんは3、五市。ホームページはあるけれども議事録はないというのも六市。そもそもホームページはなくて、市教委に聞いてもよくわからないというのが十六市。つまり、左側の1しかきちんと公表はしていません。だから、一八・五%しかしていない。

 この2のところも、きちんと公表をしているかもしれないなと思ったものですから、連絡、聞き取りができた自治体をその十七市のうちから、下の表ですね、九市ほど直接電話したんです。

 そうすると、傍聴人、要は、その会議の場で傍聴ができるかどうかですね、そうすれば状況がわかりますから、採択の理由も。その傍聴ができるかというと、全部だめなんです。この網かけで黒くなっていますけれども。

 真ん中の、議会という部分です。議会にこの採択の理由を、議事録を公開しているかというと、していないところが多いんですよ。これはほとんど黒い網かけがかかっていますね、この真ん中の列。

 それから、情報公開請求とか申請があればするというところは、白いのだと五個です。でも、しないというのは四つあって、この2の列の十七の自治体でも非常に手ごわいです。その3以降はもう全然手ごわい。

 これは、小さい自治体というのももちろんあるんですけれども、教育委員会のスタッフとして機能が十分ではない、だから共同採択というのもあるんでしょうが。というのはあるんですけれども、基本的に、この会議録の公開、教科書採択理由を公表するというのは、非常に現場は嫌がります。

 これは、大臣も本当に教科書問題のプロフェッショナルなので御存じと思うんですが、一つに、手間がかかります。全科目の採択理由を、何でこの会社の教科書を選んだんだというのは大変だと。

 それからもう一つは、静ひつな環境です。この静ひつな環境というのが、過去この国会でも何度も議論になったと思うんですけれども、この静ひつな環境を非常に求めています、今でも。なので、理由を公表するのを嫌がる教育委員さんたち、教育委員会としても、右から左からいろいろやんややんやと言われて、何でそんな教科書を選ぶんだということでファクスが百枚、千枚送られてきたりとか、そういうのがもう嫌でしようがないというのがあって、なかなか採択理由の公表というのはされてきませんでした。

 これは、多くの、特に保守系の自民党さんとか皆さんも大体おわかりと思うんですが、そういう現状にある中で、この今回の法案で採択結果及び理由を公表するように努めるというのは、大きな前進だと思います。ただ、「努める」だと逃げられるかもしれないという思いがあって、これはもう率直に言って、義務にした方がいいんじゃないかと思っております。

 もう一つ、お手元の資料だと4の方なんですが、これは先ほど宮川委員も同じような御質問をされたようですけれども、私は、さらに半世紀ぐらいの過去の千葉市の採択の結果を持ってきました。これは内部資料だったんですけれども、もらったものを持ってきました。これを見ていただくと、「中学校教科書採択一覧表 千葉市」とありますが、大体十五科目ぐらいですかね、ほとんど変わらないんです、これを見ていただくとわかると思いますけれども。

 例えば、よく議論になる社会の歴史、地理、公民は東京書籍、東書と書いて、これは四十年ぐらい続いていますね。ごめんなさい、左側のは昭和と平成です。採択期間は四十一から始まっていますが、これは昭和四十一年から。一番下の列が二十七です、これは平成二十七年。採択期間の四年間のことを出しております。

 これを見ていただくとおわかりと思うんですが、社会にかかわらず、どの科目もほとんど全然変わらない。一番左の国語は光村です。光村さんは平成九年から変わりましたけれども、そのほか、書道ですとか社会、地図帳は帝国書院、数学は平成十八年に啓林館に変わりましたけれども、理科は記録が残っているときからずっと大日本図書です。それから、音楽もそう、器楽もそうですね、美術もそう、みんな同じ会社です。英語だけ最後に三省堂に変わっていますけれども、ずっとこんな感じなんですよ。

 本当に大臣には釈迦に説法なんですが、ほとんど変わりません。これは皆さんのほとんどの自治体も同じと思います。ずっと安倍総理もこの教科書問題に非常に詳しい方で、安倍総理の地元の下関もこの状況ですよ、私が調べた限りですと。

 ですので、この採択というのは非常に硬直化している現状があり、その大きな原因として、やはり採択理由の公表というのがない、だから検証もできない、PDCAもできないという原因があると思っています。

 ですので、先ほど言いましたが、やはり努力規定ではなくて、これは必ず義務として採択理由を公表するというふうにすべきでないかなと思うんです。あるいは、せめてそういう通知を出すべきでないか。手段はお任せしますが、大臣、ちょっと御見解をお答えいただければと思います。

下村国務大臣 ほかの委員の方からも同様な質問が出て、既にお答えもしておりますが、努力義務規定にした理由というのは、例えば特別支援学校においては、児童生徒の障害の状況等に鑑みて、検定済み教科書や文科省著作教科書の使用が適切でない場合には、ほかの一般の図書を教科書として用いることができるが、こうした図書の選択理由まで個別に公表を義務づけることは、児童生徒のプライバシーを侵してしまうおそれがあるということ。また、私立学校については、建学の精神に基づき多様な人材育成を行う教育機関であるとともに、学校単位で教科書の採択を行っており、基本的に地域単位で採択を行っている公立学校とは、教科書の調査研究能力や、採択について説明責任を負うべき対象等の点において異なっている、こういう問題があります。

 このように、学校種や学校の設置主体の特性等によって採択に関する情報の公表のあり方はおのずと異なってくるということから、一律に義務とせず、一般的な努力義務規定と課した上で、個々の状況に応じた取り組みを促していくこととすることが適切であると判断をいたしました。

 いずれにせよ、教科書の採択権者が教科書採択に関する説明責任を果たすということは当然なことであるというふうに考えておりますし、特に公立の小中学校における教科書の採択は、地域の関心も高いということがありますから、採択結果、理由等の公表について、特に公立の小中学校については、強く教育委員会に対して公表を促してまいりたいと思います。

田沼委員 ありがとうございます。

 強く促すということですので、ぜひお願いをいたしたいと思います。

 敵と言うとちょっと言葉は適当かわかりませんが、相手は手ごわい相手だと思っていますので、ちょっと敵という言葉はあれですが、ぜひ、力強い、通知ぐらいでばしっと出していただきたいなと思います。

 ちょっとくどいようで、もう一つなんですが、私たち維新の会も責任を明確化することを常に党の理念としていますので、今大臣が、きちんと公表を求めていくと。では変な話、公表を、自治体、採択区でもいいですが、自治体に求めました、何回指導した、だけれども相変わらずこことこことここは公表しないということを公開してしまった方がいいんじゃないかというふうに思うんです。採択区でも六百ぐらいでしたか、そのうち、こことこことここはなぜかわからないが説明をしないということを明確にする。

 それで、採択理由の公表状況は、県とか採択区はあるんですけれども、名前がわからない。バイネームがわからないので、バイネームまで出してきちんと、私たちが住んでいる自治体は採択理由を言わない自治体だ、私のところはわかる、私のところでもやはり理由を公表していないというのが手にとるようにわかるようにすることは、同じことをやっていても、非常にいい意味でのプレッシャーができるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、そこについてはどうでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のように、静ひつな状況を確保するということは、これは、右からも左からも相当いろいろと圧力がかかってくるということを教育委員会が避けるために公表については消極的だという部分があったことは事実でありますが、しかし、御指摘のように、各教育委員会の採択結果それから理由等の公表状況を調査して、そして公表していくということについても、これは有効な手段だというふうに思います。

 具体的に都道府県別に公表するとかあるいはそれぞれの市町村教育委員会名で公表するとかいうことは、先ほどの静ひつな状況等によって、地域によっていろいろなプラスマイナスもあるというふうに思いますが、しかし、基本的には公表する方向で考えるべきことであるのは当然だと思いますので、具体的なあり方については今後検討してまいりたいと思います。

田沼委員 力強い答弁、ありがとうございます。ぜひお願いいたします。

 次に移りまして、また資料の今度は1なんですけれども、同じく公表に関してですが、私はちょっと疑い深過ぎるかもしれませんけれども、千葉市の中で徹底的にやって、やり返されてきましたので、ちゃんと公表してほしいというのもあります。

 この1の資料は「教科の目標への適合」ということで、これは選定委員会の方の資料です。千葉市の教育委員会の実際の採択会議のときにも使われています。

 これを見ていただくと、教科の目標への適合度合い、ほかにも十四項目ぐらい教科書ごとに評価の観点がある。評価の観点十四項目の中で、特に教育基本法第二条、教育の目標にかかわる内容が教科の目標に置きかわるんです、各科目ですから。この教科の目標にどれだけその会社の教科書が沿っているかというのを全部出すんですよ、社会に限らず全部。それに対する選定委員会の、要は事務方の調査報告書があるんですけれども、それを抜粋したものです。これは歴史の教科書。

 これを見ていただくとわかるんですけれども、これは平成二十一年のときの採択なんです。九社ありますけれども、そのうち、上の東京書籍から日本書籍新社まで、教科の目標への適合度合いがほぼ同じなんですよ。このときも、千葉市もよくあるパターンで東京書籍になっちゃったんですが、東京書籍だけちょっとだけ長いんですけれども、青い字のとおり、ほぼ同じなんです、上の五社。

 逆に、下の二社はちょっと保守系のあれです、扶桑社と自由社。これはやはり結構似ているんですよ。「歴史上の人物や文化遺産を多く取り上げ、人物コラム・読み物コラム等で歴史に対する理解や関心を深めるよう配慮されている。」これは自由社もほとんど同じです。

 これだけで、どの教科書が教育基本法に沿っているか、教科の目標に沿っているかと評価できますかね、皆さん。どう思いますか。

 これはないだろうというのが私の市議会のときの教育委員会さんに対する訴えで、私でもわからないんだから、教育委員さん、一応レーマンコントロールで六人、教育長を抜けば五人の皆さんにこの資料だけぼんと出して、それで教育基本法にどれだけ沿っている教科書ですというのを判断できるかといったらできないですよというのを言ったんですけれども、ちゃんとやっていますという答弁が来ちゃうんです。

 なので、何が言いたいかというと、今回、この法案の改正で、採択理由を公表するということを努力規定として定めたとしても、ほかの教科書じゃなくてこの教科書、ほかの会社じゃなくてこの会社なんですという理由がはっきりわかるかどうか、極めて疑わしいと私は思っています。

 これは平成二十一年で、二十三年採択のときはもう少し改善されたんですけれども、この九社の中から例えば、このときは東京書籍だったんです。東京書籍を選んだ理由というのは、この一番上の列がただ公表されるだけになったらまるでわからないわけですよ、我々からすれば。何で東京書籍になったのかの理由は、きちんと議事録をまず公開しないといけないし、しっかり、ほかの教科書と比べてこれがいいというのを端的に出してもらわないといけない。

 かつ、それが教育基本法第二条の教育の目標、あそこにどれだけ資するものかというのをやはりきちんと明示してもらわないと、官僚的な、違いのわからないような理由をまた挙げてきてしまうとたまったものじゃないという思いがあるものですから、公表方法についても、具体的に、なぜほかの会社じゃなくてこの会社なんだというのがわかるように指導が必要じゃないかなと思うんですけれども、それについて、大臣、御見解があれば。

下村国務大臣 確かに、この資料を見させていただいて、東京書籍がなぜ選ばれたかというのはわからないですね。

 ですから、それぞれの教育委員会で選ぶときには、やはり地域の方々から見ても選ばれた理由というのが明確にわかるような記述にしていく必要があり、それを公表するということは当然求められるべきことだというふうに思います。

田沼委員 さっきの答弁でも、わかるように指導していくということでしたので、かなり具体的に出すようにというところを強調していただいて、あと、そのチェックもしていただきたい。

 ちょっと私が恨み過ぎかもしれませんけれども、だから教育委員会廃止法案などを私たちもやっているんですけれども、かなり教育委員会さんにスルーされてきた部分がありますので、御検討いただければと思います。

 次に、今度は資料でいうと2、「三分野の選定結果」という資料をお渡ししていると思いますが、こちらに移りたいと思います。

 これは絞り込みのことです。この絞り込みについてもさんざん国会でも議論されてきていると思いますが、今回の竹富の例でも、今まで、研究員が教科書を調査研究して推薦リストをつくってきた、その中から協議会の委員さんが選ぶのが慣例だったんだけれども、その推薦リストは何社かに絞ったんでしょうね、その中にない育鵬社さんを協議会が選んだということで竹富町の教育委員会が反発しているというふうに記事がありました。

 これは本当に変な話、おかしな話で、推薦する方がおかしいのであって、採択権者は協議会の委員さんなんだから、推薦リストにあろうがなかろうがとにかく決めるのは協議会なんだから、竹富町の言い分は全くおかしいと私は思います。むしろ慣例の方がおかしいと思います。

 ただ、私もそういう人間ですが、実態としてはこの慣例は全国各地にあるというふうに思います。

 それでこの資料なんですけれども、これも千葉市の、これは平成二十三年ですね、この間の採択ですけれども、やはり絞り込みをしています。していないと言うんです、教育委員会は。だけれども、しています。

 というのは、絞り込みは絶対だめだという議論は今まであったわけですよ、大臣もよく御存じ。だから、六人の委員さんの誰かから調査研究員の方に、特に推薦するものは何ですかというふうに質問させたんですよ。それに答える形で、お尋ねですのでお答えしますが、例えば歴史なら、七社のうち三社が推薦です、その中で特に東京書籍がいいと思いますというふうに、質問に答えるという形で推薦をしていました。これは議事録を見ればわかる。皆さんもぜひ自治体、公開されていれば見ていただきたいんですけれども、公開されていないところも多いんですけれども、結局、推薦しています。

 名前を挙げて推薦されちゃうと、やはり、これは先ほど宮川委員も言われたと思うんですが、事務方が、現場がそういうふうに言っているんだからというすごい圧力があるんですね、教育委員さんとしては、非常勤ですから。しかも、十何科目もあって、それで五冊も十冊もどかっと送られてきて、それは一定の期間に見てと。百冊以上段ボールに入れられて、それを見ていかないといけないので、しかも現場を知らない教育委員さんが。

 なので、やはり、調査研究員の発言があると、かなりそれに抵抗するのは難しいという実態があります。よほどの意思がある方でないと、推薦、特に推薦、この場合は東京書籍です、千葉市の歴史でしたら東京書籍ですが、それに抵抗しての違う教科書会社を選ぶのは難しいのが実態です、大臣には本当に釈迦に説法ですけれども。

 これは社会だけじゃなくて、全部ほぼそうです。この調査研究員が特に推薦をしてきた会社にほぼ決まっているんです。千葉市はまだ議事録を公開しているからそれがわかりますけれども、公開していない自治体ですと、何がされているかわからないし、調べた限りですと、事務方がこれでいいですかと挙げてきて、はい、いいですで終わりという採択会議が非常に多いんです。なので、これはもう十分に機能しているとはちょっと言えません。

 ですので、少なくとも絞り込みは絶対にやめさせる。この七社のうちどれが推薦、どれが特に推薦というのはもう絶対禁止だということも改めて徹底すべきじゃないかと思うんですけれども、御見解をいただければと思います。

下村国務大臣 基本的には、これは教育委員会で教科書採択をするわけでありますから、共同採択地区は共同採択協議会で採択するということが決まっているわけですから、当事者の方々がどの教科書がいいかは選んでもらいたいというふうに思います。

 ただ、先ほど申し上げましたように、小学校で二百八十、中学校で百三十一の教科書全て教育委員が読み込むということは大変な状況もあるかもしれないということで、県教委等が絞り込みリスト等を、推薦リストといいますか、つくってきているという経緯がありますから、これを禁止するというのはなかなか難しい話だと思いますが、しかし、みずから教科書採択権者が責任を持って選んでもらうというふうなことは当然のことだというふうに思いますし、そのようにぜひ進めたいと思います。

田沼委員 禁止は難しいがぜひ進めたいということで、現実的には、短期間で百冊を超える教科書を読み込むというこの流れ自体がこのままでいいかという議論が必要なんだと思いますが、にしても、現場主導でほぼ決まっているという実態はやはり正していくという不断の決意が必要だと思いますので、ぜひ御検討いただきたい。きょうはこれはこれで終わりにしますが、お願いしたいと思います。

 ちょっと時間があれなので次に移りまして、最後に、協議ルールを決めるという今回の法案の一番の趣旨でありますけれども、この協議ルールを決めるということはとても大事なことだと思います。ただ、これは、そこにおられますけれども、うちの党の椎木保議員は十三年間教育委員会に勤められていましたので、その椎木議員の思いだと、協議ルールを決めるというだけだとちょっと曖昧である、やはりこれは多数決で決めるということを明文化すべきじゃないかというふうに言っておりました。

 今は、この共同採択区の協議会というのは、全会一致を求めることが実態としては非常に多いというふうに言われております。私もそう存じております。

 ですので、それだと、全会一致がうまくいかないからもめたりするということがあったり、決めたのに今回従わないというのが竹富の問題ではありますけれども、これはやはり、協議ルールを決めてというのは、各協議会に任せるということで一見いいことというふうにも聞こえるんですが、ただ、きちんとここはもう明文化した方がいいんじゃないかという現実もあるわけでして、そこについて、明文化に関して、大臣、御見解があればいただければと思います。

下村国務大臣 改正後の教科書無償措置法第十七条に基づく政令においては、採択地区協議会における議決の方法など規約に定めるべき事項等を規定することを想定しておりますが、具体的な協議会における議決の方法など各事項の具体的な内容については、各教育委員会が協議して規約において決定するものでありまして、政令で一律に規定することは現在考えておりません。

 なお、この協議会の議決の方法については、採択すべき教科書が確実かつ最終的に一つに定まるよう各採択地区において定めていただく必要があると考えておりますが、その方法は必ずしも多数決に限られないのではないかというふうに思います。

田沼委員 確かに、多数決に限られないということも一つの御見解と思いますけれども、ここで書かなくてお任せですという形になると、大丈夫かなという不安もやはり少し残るわけでありまして、今回はやらないという御答弁でしたけれども、ぜひ不断のチェックをしていただいて、二度とこういう竹富のような問題が起こらないようにするのは当然ですし、実態としても、全会一致を求め過ぎていないかとか、そういった部分もチェックをぜひしていただきたいなと思います。

 もう一つ、私が千葉市議会のときに、やはり教科書採択で、千葉市は単独採択区ですので千葉市教育委員会だけなんですけれども、非常におかしいなと思ったのは、先ほどの資料2でいえば、こういう教科書を選ぶ会議があるわけですけれども、どの教科書を誰が選ぶかというのがわからないんです。

 一番右ですと、教育委員会投票結果という水色の箱の部分で、東京書籍五票、育鵬社一票とか、公民、東京書籍六票とかありますけれども、これが、無記名か記名かが自由なんです。私が無記名にしたらいいんじゃないかと言ったら、すぐその場で変わったんです。なんですけれども、私が過去千葉市議会で言ったのはちょっと過ちだと思っていまして、やはり、責任と権限の一致からすれば記名投票を義務化するべきではないかと思っております。教育委員会教科書採択会議の中での各採択権者である教育委員さんがどの教科書を選んだのかというのをしっかり記名にしてはっきりする、そうでないと議会で追及できませんので。誰がどれを選んだのかわからないんですよ。

 なので、記名投票を義務化すべきじゃないかと思うんですが、最後に御見解をいただければと思います。

下村国務大臣 基本的には話はよくわかりますが、過去の経緯の中で、やはり静ひつな状況をなぜつくらざるを得なかったかというのは、結果的に教育委員の方が命も狙われるような状況が過去あった、そういう経緯がありました。そこまでリスクを持たせながら責任を押しつけるということについていかがなものかという経緯の中で現在があるわけでございます。

 ですから、静ひつの条件が担保されているという前提であれば今の委員の御提言も受けとめられると思いますが、それは地域によって相当状況が異なっている部分もありますので、国が政令やあるいは法令等を一律に決めるということによってかえって危うくなるようなことがあり、そのことによる教育委員会の委員の辞退者が出るようなこともあってはならないと思いますし、その辺は、全体的なトータルの中で個々に判断すべきことではないかと思います。

田沼委員 その静ひつな環境をとにかく言いわけにしてくる可能性が随分、言いわけとは失礼な言い方ですが、ことが多いので、ぜひチェックをしていただければと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いいたします。

 本法に対しては、我々、原則賛成をさせていただきたいというふうに思っておりますが、やはり教育委員会制度改革とも相関する問題でございます。教科書選定のあり方そのものを通して、どのようにいい教育を子供たちに受けさせるか、これは根本的な問題でございますので、しっかり議論をさせていただきたいと思います。

 どういう教科書がその地区地区で採択をされるのか、それはやはり地域特性を加味して勘案していかなければいけないものだというふうに思います。現場の判断を尊重すべきという考えでございます。

 特に、竹富町の問題でございますが、沖縄というところは、やはり太平洋戦争中、本土で唯一の戦闘地域だったということで、多くのとうとい人命が失われている。特に、集団自決の記載については、やはりデリカシーが要求されているということは間違いのない事実だと思います。

 一方で、尖閣に近いということで、中国の脅威に対して断固たる姿勢で臨む、そのことを感じさせる記載を教科書に盛り込むべきであるというような気持ちもやはり大いに理解できます。沖縄という独自性の強い文化そして歴史、様々な県民感情そしてイデオロギー対立、こういったものが問題を複雑化しているというふうに思います。それこそ、沖縄県の教育委員会にイニシアチブをとってもらって、調整役を期待したいというふうに思っております。

 さて、国の教科書無償供与は、無償措置法で定義されている共同採択地区での協議による同一教科書の採択を前提としておるわけでございますが、その前提は、そもそもこの教科書の無償制度は、教育の機会均等、義務教育の無償、この憲法二十六条に基づいているというふうに思われます。その後に採択地区の同一教科書の問題、どの教科書を使用するかの議論があるわけで、決してその逆ではないという考えもあります。

 しかるに、この八重山地区に関しましては、石垣市、与那国町の教科書は無償措置、しかし、竹富に関してはそれを適用しなかったということです。実際には、四十冊程度の教科書で、竹富の町民からの寄附で賄ったということでございますが、私は、この当時の国の判断にはやはり疑問が残ると思います。もちろん、この共同採択地区採択に応じなかった竹富町の姿勢は許されるものではありません。是正されるべきものというふうに考えております。

 そこで、当然、当時の政権は民主党政権で、大臣も最初に質問された中川元文部大臣だということは重々承知をしております。その上で下村大臣にお伺いしたいんですが、いかなるときも義務教育の教科書は無償であるという前提に立ち返れば、このときも、竹富町にも、たとえ東京書籍の教科書でも無償供与しなければいけなかったのではないかという意見もございます。その意見に関して、大臣の御所見を賜りたいと思います。

下村国務大臣 国が教科書を無償給与するに当たっては、その手続を定めた無償措置法に基づかなければなりませんが、同法第三条は、国は、同法第十三条の規定により採択されたものを購入し、義務教育諸学校の設置者に無償で給付するものと規定をしております。

 八重山採択地区においては、八重山採択地区協議会の規約に従ってまとめられた結果が無償措置法第十三条第四項の規定による協議の結果に当たるものでありまして、当該協議の結果と異なる教科書を採択するということであれば、同法に従った採択を行ったとは認められず、無償措置法に基づく、国が無償給付をすることはできません。

 なお、憲法第二十六条第二項の「義務教育は、これを無償とする。」との規定は、授業料不徴収の意味と解することが相当でありまして、教科書の無償措置は憲法の直接規定するところではない、これは昭和三十九年の最高裁の判決によって定まっております。

 義務教育無償の精神をより広く実現するものとして教科書の無償措置を行っておりますが、それは無償措置法に従って行われるものでありまして、国が教科書を無償給与するに当たっては、その手続を定めた同法に基づかなければならず、同法に従った採択を行ったとは認められない教育委員会に対しては無償措置を行うことはできないということであります。

柏倉委員 答弁、ありがとうございます。

 私も、今の大臣の御答弁、理解をさせていただきました。やはり、今後こういった議論が二度とないようにするための法律であるというふうに私も認識しております。しっかりと進めていただきたいと思います。

 続きます。

 さて、前段に、沖縄県教育委員会にその役割を期待したいということを申し上げました。しかし、この八重山の問題、私も自分なりにいろいろな、八重山日報ですとかそういった地元紙の資料を取り寄せて検証をしました。そうしますと、ちょっとやはり県の教育委員会自身が竹富町の判断を後押しするというような印象もございました。そういった県の教育委員会のあり方そのものも、少しやはり国は考えていけないのかなという経緯があったと思います。

 そこでなんですが、もし本法が可決すれば、今度は市町村単位で採択ができるようになるというふうに理解をしております。理論上、採択地区として認めるのは県の教育委員会ですが、もし竹富町だけが採択地区として認定をされるようなことがあれば、当然竹富町が独自の教科書を採択するということになるわけでございます。そういうことも法律上あり得るわけですけれども、それに関しては、国はこの法律にのっとっているということでやはり是とするんでしょうか。大臣の御所見を伺いたいと思います。

下村国務大臣 市町村の教育委員会の意見をあらかじめ聞くということは当然必要なことでありますが、共同採択地区は、都道府県の教育委員会が設定をするということになります。その場合は、地域の自然的、経済的、文化的諸条件等を十分考慮して、教科書の採択に当たっての調査研究に地区内の多くの教員等が参画でき、教科書内容についての綿密な調査研究が可能となる、また、地区内の教員が共同で教材研究や授業研究を行うことが可能となる、こういった共同採択制度の意義が十分に発揮され、同一の教科書を使用することが適当と認められるかどうか、慎重に検討して設定すべきものであるというふうに考えます。

 現在一つの町村で採択を行っている採択地区については、このような共同採択制度の趣旨を十分に踏まえ、慎重に検討した上で設定されるものであるべきものだと考えます。

 今回の改正案というのは、市町村合併によってかつての郡が飛び地になってしまったり、あるいは最初に決めた共同採択地区と実態が伴わなくなってきているということで、自然的、経済的、文化的諸条件に合わせて改めて共同採択地区を決めるべきではないかということでありまして、八重山については、市町村合併と関係なく、今までの地域的なエリアからすると一体的なものであるのではないか。端的に言えば、石垣市の中に、竹富町の町役場がそこにあるということからも、共同採択地区としては一体的なものであろう、そのように認識しております。

柏倉委員 今大臣がおっしゃられた、自然的、文化的な背景も考慮して県の教育委員会が決めることであるというふうに私は理解いたしました。

 そうであれば、当然、そういった常識に照らせば、現状、八重山の共同採択地区、それが竹富町だけ抜けるというようなことは考えづらいというふうに大臣はお考えでしょうか。済みません、御答弁をお願いします。

下村国務大臣 八重山地区については、これまでと同様、共同採択地区、エリアであるべき場所ではないかというふうに思います。

柏倉委員 沖縄県教の判断を待たざるを得ないわけですけれども、この法律ができた意味というのは、将来的には学校単位の教科書採択というのも考える人はいるようですけれども、しっかりとある程度のやはりスケールというものがないと、ちゃんとした調査そして採択というのは私もできないと思っております。そういったところを今後、私もしっかりと注視をしてまいりたいと思います。

 では、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 本法は、改正前は、教科書採択というのは、二つ以上の地区にわたる場合は、当該地区内の教育委員会が協議をして教科書を採択するということになっていると思います。今回の改正では、協議会を設け、協議会の結果に基づき、教育委員会が同一の教科書を採択するということになっております。先ほど、協議会のあり方、運営方法、人選等は維新の先生が質問をいたしましたので私はそこは質問はいたしませんが、教育委員会と協議会、これは必ずしも、八重山のように、うまくいっていないと言うと語弊がありますが、やはりぶつかるときも多々あるように思います。そのときに、人的構成はリンクはしているとはいえ、どちらの採択権限というのに重きを置いていくのか、それはやはり真剣に考えていかなければいけないと思います。

 そこでお伺いしますが、教科書採択に関しては、協議会、教育委員会、どちらに決定権というのをより持たせていくのか、政府のお考えを聞かせてください。

西川副大臣 今回の教科書の無償措置法の改正案においては、第十三条を改正いたしまして、共同採択に係る協議の場として、採択地区協議会の設置を義務づけました。そして、さらに、規約で議決の方法等について定めておくべきことなど、採択地区協議会の組織及び運営に関し必要な事項について政令で定めるとしております。当然、その中で、採択地区内の市町村教育委員会は協議の結果に基づき同一の教科書を採択すべきものと明記いたしました。

 ですから、当然、各教育委員会の決定は、採択地区協議会の決定に基づき行わなければならないということで、採択地区協議会の決定が優先するものと思います。

柏倉委員 私もその方がいいと思います。実際、八重山のときも、今まで教育委員会の意見をダイレクトに反映するような採択システムだったのが、このときに、協議会の人選をしっかりとやって、教育長、教育委員会代表、学識経験者、PTAといったもの、やはり私は、教師の意見も大事ですが、より普遍的な目を持った教科書採択というのがより大事だと思っております。その意味で、八重山モデルといいますか、こういった協議会のあり方、そういったものをぜひ推進していただきたいと思います。

 次なんですが、領土問題の記載に関して質問させていただきたいと思います。

 これは、先ほど自民党の宮川委員が質問をされておりました。その中で、領土問題の記載に関してはしっかりと徹底をしていくということを大臣はおっしゃったように思います。

 私も、領土問題というのは原則日本には存在しないという認識でございます。

 ただ、教科書ではかなり濃淡があるのは事実です。ことしの八重山の教科書、そのところを引っ張り出してきました。もちろん、これはきっちり記載は両方してあるんですが、より育鵬社の方が、日本の領土である、中国が自国の領土だと主張し始めた、しかし、国際法上有効な論拠とは言えないと外務省は明確に反論しているとしっかりと書いてあるのに対し、東京書籍は、日本の領土ですが、中国がその領有を主張していますというふうに書いております。

 確かに、読む人が読めば内容は同じということなんですが、やはり小学生、中学生が読むものでございます。量といった問題、あとはやはり地図の大きさ等々の問題ですね。それはやはりデリケートなゆえに、しっかりと一貫性を持たせて、教科書発行には配慮していただきたいと思います。

 そこで質問をしたいんですが、この領土問題に関しての記述、記載に関して、どのように各教科書発行部署、会社に徹底をしていくのか、政府の見解を聞かせてください。

前川政府参考人 領土に関する教科書の記述状況につきましては、小中学校の社会科や高等学校地理の全ての教科書において北方領土についての記述が行われているということ、また、昨年度から使用している全ての中学校地理の教科書において竹島の記述がなされているということ、また、今年度から使用されている全ての高等学校地理の教科書において竹島や尖閣諸島の記述がなされているというのが現状でございます。

 このような教科書を用いてこれまでも各学校において領土に関する教育が行われてきたところでございますが、その一層の推進を図るため、本年一月二十八日付で中学校及び高等学校の地理、歴史、公民の学習指導要領解説を改訂し、特に竹島、尖閣諸島について、より明確に記述することといたしました。

 例えば、竹島については我が国の固有の領土であることなどについて明確化するとともに、尖閣諸島については従来学習指導要領解説に記述がなかったわけでございますけれども、今回、「我が国の固有の領土であり、」「解決すべき領有権の問題は存在していない」ことなどを記述しております。

 今回改訂いたしました学習指導要領解説を参照して作成された教科書が、教科書検定を経て、中学校では平成二十八年度から、高等学校では平成二十九年度から使用されることとなります。

 文部科学省といたしましては、今回の改訂の趣旨の周知等に努めていくことによりまして、各学校における指導の充実や教科書の改善に向けた取り組みを図ってまいりたいと考えています。

柏倉委員 ぜひ徹底をしていただきたいと思います。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。次は、拡大教科書に関して伺いたいと思います。

 二〇〇八年、教科書バリアフリー法というものが成立しました。それで、通常の学級に在籍する児童生徒にも点字や拡大教科書が無償で提供されるようになったわけです。義務教育段階では全ての出版社から拡大教科書が提供されるようになっております。さらに、高校では、盲学校の高等部が採用している教科書は、拡大教科書が用意されておるということです。

 しかし、一般の高校に通う視覚不自由の生徒さんに関してはその限りではない。確かに数は少ないんですが、やはり一生懸命普通の高校で頑張っている視覚不自由の生徒さん、こういった人たちをしっかりと後押ししていくというのも忘れてはいけないわけであります。

 でも、なぜこの拡大教科書が普通の一般高校で普及をしないかといいますと、やはりコストがかかり過ぎるということなんですね。当然、そういう生徒さんは数が少ない。発行部数が少なければ当然単価は上がっていきますし、しかも、拡大教科書、これは単純拡大だけの問題ではなくて、レイアウトもしっかり考慮しなきゃいけない。そのデザインも非常にコストがかかるというのが現状のようです。

 このバリアフリー法では、ボランティア団体さんなんかがしっかりとデジタルデータの提供を受けて拡大教科書をつくることは可能にはなっているんですが、やはりこの労力といいますか手間はかなりなものがあるということで、残念ながら供給実績は余り多くないわけです。

 普通高校に通う拡大教科書が必要な生徒さんに対して、やはりさらなる国の後押しが必要になっていくと思うんですが、政府の見解を聞かせていただきたいと思います。

前川政府参考人 高校に在籍する生徒に向けた拡大教科書の普及に資するための取り組みといたしましては、これまで文部科学省といたしましても、教科書発行者による高等学校用の拡大教科書の発行を促進するための標準規格の策定でありますとか、拡大教科書を製作する団体等に対する教科書デジタルデータの提供範囲を高等学校等へ拡充する取り組みでありますとか行ってきたところでございますけれども、御指摘のとおり、現状といたしまして、高等学校段階の拡大教科書の発行が十分でないと考えております。

 このため、文部科学省といたしましては、高等学校の拡大教科書の発行の促進につきまして教科書発行者に要請をいたしますとともに、平成二十五年度より、タブレット型情報端末の活用も含めまして、高等学校等における拡大教科書の普及促進等に関する調査研究を実施しております。その成果も踏まえまして、今後とも必要な施策に取り組んでまいりたいと考えております。

柏倉委員 今、タブレット型の教科書普及ということで、デジタル教科書、そういったものを使うとすぐに字も大きくできますから、非常に使いやすいという意見も伺います。

 文科省のホームページを見ますと、高校生になったら、これは視覚補助具を利用することにもなれていかなきゃいけないということが書いてあります。それはそのとおりだと思います。しかし、一方で、そのときに必要な学習というものが促進されるのであれば、柔軟にデジタル教科書も使っていける、そういった環境をしっかりと整えていくべきだというふうに思いますので、ぜひ、デジタル教科書の使用も含めて、拡大教科書、どんどんどんどん、漏れがないように進めていただきたいと思います。

 次は、道徳教育に関してです。

 教科書に関するということで、私は今持参しておりますけれども、「私たちの道徳」というのが大臣肝いりでこれから使われるということでございます。「心のノート」のときも、私は分科会で大臣には質問させていただきました。小学校低中高学年用と中学校用、合計四冊、それに全部目を通させていただきました。随分と力が入っているなというふうに思います。そして、読みやすくなっておりますし、人ですね、イチローですとか高橋尚子さんだとか、私は内科医なんですが、順天堂の天野篤心臓外科学教授が載っていたり、非常に読んでいても楽しめる内容だなというふうに思います。

 そこで、こういったいいものがやっとできたということで、やはりせっかくつくったものですから、どんどんどんどん使うべきであるという立場に立って質問をさせていただきたいと思います。

 実際、「心のノート」のときには、それを使っていますと言っているところ、アンケートをとると小学校、中学校でも九割ぐらい使っているということだったんですが、しかし、実際に現場の声を聞きますと、配付をしているのと使っているのとはやはりちょっと違うようなんです。本当に使っているのか。恐らくこういった調査はなかなか難しいと思いますが、これはあくまで印象ですけれども、配られているけれども開かれざる教材、副教材であった可能性もあるのかなと非常に私は心配もしております。

 そういったところをなくすためにも、しっかりとこれが使われるような政府の後押し、取り組みを真剣にやっていかなきゃいけないと思いますが、政府の考えをお聞かせいただければと思います。

下村国務大臣 「私たちの道徳」の教材をこの委員会に持ってきていただいて、お広めいただいておりますこと、感謝申し上げたいと思います。

 今までの「心のノート」よりは、内容は相当充実した内容にしたつもりでございますが、ただ、今御指摘があったように、これが使われなければ意味がないわけでございます。そのために、「私たちの道徳」の冊子が確実に児童生徒に配付され、各学校の教育活動はもとより、家庭、地域においても有効に活用されることが重要であるというふうに考えます。

 このため、文科省では、「私たちの道徳」の配付に合わせまして、ことし二月に各都道府県教育委員会等に通知を行うとともに、三月には、全国の道徳担当指導主事等を集めた協議会において、積極的な活用について要請を行ったところでございます。また、各学校における効果的な活用を一層促進するため、平成二十六年度には、「私たちの道徳」の教師用指導資料を作成し、各学校に配付するとともに、各都道府県におきまして、「私たちの道徳」の活用など、道徳に係る指導方法等の改善を図るための研究協議会を新たに開催するということにしております。

 文科省としては、「私たちの道徳」という教材が全国の小中学校において有効に活用されるよう、その状況について教育委員会等から情報収集を行いながら、適切に指導し、活用を全ての生徒ができるように図ってまいりたいと思います。

柏倉委員 御答弁、ありがとうございます。

 やはり、開かれざる教科書ではなくて、手あかですり切れるような使われ方を全国でしてもらえるような、そういった後押し、ぜひぜひよろしくお願いをいたします。

 次ですが、今は道徳の時間ということでございます、今度は道徳を教科に格上げする、こういったことを道徳教育の充実に関する懇談会は報告をしているということでございます。

 文科省も、二〇一五年度から一部実施をしていくことを検討しているということでございますが、やはり教科となるとなかなか難しいのがこの道徳だということもやはりこれまた明らかでございまして、評価の方法、確かに難しいです。そして先生、どういう先生が教えるのか。やはり、こういったところをきっちり議論をしていただきたいと思います。

 そこで、きょうは、道徳教育推進教師という、この教師の制度についてちょっとお伺いしたいんですが、学習指導要領の中で、校長先生の方針のもと、この道徳教育推進教師が学校全体の道徳教育の充実に努めるべしということを促しておるわけですけれども、しかし、実際に生徒に教えるのは担任の先生だということなんですね。

 九九%の学校でこの道徳教育推進教師を配置しているとは答えておりますが、現実的に、悪い言葉で言えば、これは充て職になっているところも多いと聞きます。やはり、道徳を本当に教科化していくのであれば、道徳教育を学校でつかさどる先生、ここでいえば道徳教育推進教師の役割を明確に定めて、しっかりと働けるような環境も同時につくっていかなきゃいけないんであろうと思います。

 教育そのもの、内容を吟味するということもありますし、校長先生とあと担任の先生、そこの調整役も果たしていかなきゃいけない。

 こういった道徳教育に係る非常に重要なポジションにいます道徳教育推進教師、この役割、そして今後の充実に関する政府の考えを聞かせてください。

前川政府参考人 道徳教育推進教師は、校長の方針のもとで、全教師が協力して道徳教育を展開するための中心的な役割を担う教師であるということで、平成二十年に改訂されました学習指導要領において初めて導入されたものでございます。

 各学校における道徳教育の充実を図るためには、道徳教育推進教師に高い指導力を持つ教員を充てることが重要であることは御指摘のとおりでございます。

 道徳教育の充実に関する懇談会の報告、昨年の十二月の報告でございますが、この報告におきましても、道徳教育推進教師の意義を一層有効なものとするため、道徳教育推進教師が担う役割を明確にし、学校において中核的な役割を果たす力量のある教員を配置することや、全教員の参画、分担、協力のもとに機能的な協力体制を確立する必要があるということについて提言がされております。

 この報告も踏まえまして、現在、中央教育審議会におきまして、道徳を特別の教科として位置づけることなど、道徳に係る教育課程の改善等について検討をいただいているところでございます。道徳教育推進教師の役割やその資質向上のための方策などにつきましても、中央教育審議会におきまして専門的な議論が進められる予定でございます。

 文部科学省としても、それを踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。

柏倉委員 ぜひ機能的な道徳教育推進教師の制度を突き詰めていただきたいと思います。

 時間ですので、終わります。

小渕委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 私は、今回の法改正の中身、その一部においては評価できるところもあるなと思っているんですが、そもそも、まず大きな問題意識として、法改正の必要が今回あるのか、そこのところをまず伺いたいと思います。

 これまでの議論でもありましたが、やはり沖縄の八重山地区の問題が今回端を発していると。私の地元で共同採択をやってきているところに聞けば、うまくいっているし何の問題もないと。一体どういう枠組みでこの共同採択の地区が決まったんですかと聞いてみても、さあ、ちょっと昔の話で、県が決めたからなと、それぐらい何も問題なくやってきている。逆に一つ懸念として、国の方から、県の方から、これをしなさい、これをしなければいけない、そういうことがもし一つでもまたふえるようなことがあると、少し現場としては困るなといった声も聞いております。

 まず、一つの共同採択地区、一つの自治体の対応をめぐって、法律を改正するまでの必要があるのかというところを大臣に伺います。

下村国務大臣 今回の教科書無償措置法改正案は、沖縄県八重山採択地区における問題を初め、共同採択に当たって協議が難航する事例が生じている現状を踏まえ、共同採択地区における市町村教育委員会の協議の方法に関する規定の整備を行うことをその内容の一つとしております。

 もちろん、大方の共同採択地区においては、うまくいって特にトラブルもないというのは承知をしておりますが、やはり違法状態であるということが、それぞれの立場によって解釈が違うということがあってはならない、法治国家としては、誰が読んでもそのとおりに読み込めるということでなければならないというふうに思いますし、そういう意味で、これから本改正によりまして、採択地区内での採択する教科書が同一とならないような事態が再発する、その防止のためにより明確にするということでございます。

井出委員 過去にも、共同採択が難航して話し合いの末にまとまった、話し合いはまとまったけれども、その後、地区が分かれたといった事例も過去にはあったようです。

 これまで、国の方でも、八重山地区、竹富への働きかけというのはされてこられたとは伺っておりますが、いま一度、その話し合いがもう少し尽くせる道はないのかというところをお伺いしたいんですが、いかがでしょうか。

前川政府参考人 八重山地区の教科書採択に関しましては、平成二十三年八月の時点で、採択地区協議会の協議の結果に反する採択を竹富町の教育委員会が行っているということになっていたわけでございまして、それ以来、継続的に県を通じて、あるいは直接、その是正を求めて指導してきたわけでございます。

 しかしながら、その是正の結果が得られないという事態に当たりまして、昨年の十月でございますけれども、県の教育委員会に対しまして、地方自治法に基づく是正の要求の指示を出した。それに対してまた県の教育委員会が対応して行動を起こしてくれないという状態がございましたものですから、新しい年度も迫ってくるという事態に当たりまして、この三月に、文部科学省の方から直接竹富町の教育委員会に対しまして是正の要求をした、こういうことでございまして、なかなか、これはもう当事者の間で解決するということができない状態になっているというふうに認識しているものでございます。

井出委員 なかなかその当事者の間では難しいというお話が今ありましたが、最近の報道を見ておりますと、竹富町の方は今回の是正も受け入れがたいというようなことが報道されておりますが、先ほどの議論の中で、もし国との見解が異なるときは、国地方係争処理委員会への申し立てですとか、まだそういった手続が、もし本当にだめだというのであれば、違法確認の訴訟ですとか、尽くす道はあると思うんです。

 大臣は、きのう、竹富町の是正に対する反応に対して大変遺憾であるというようなお話をされたやに聞いておりますが、例えば、この係争処理委員会に町が不服を申し立てるかそこの判断を待つというのも、話し合いの協議の一つではないかと思うんですが、大臣いかがでしょうか。

下村国務大臣 井出委員、話し合い、協議じゃないんです、これは。明らかに違法なんですね。それに対して改善しないので是正要求をしているわけであります。

 これはもう既に是正要求しているわけですから、竹富町の教育委員会がどう受けとめるかというのは、もうボールは投げています、そのボールをどう受けとめるかということは、竹富町の教育委員会の判断です。

 その対応によって文部科学省として適切な対処をしていきたいと思いますが、話し合いとか協議とかというのはとっくに超えた、ぎりぎりの、最後そうせざるを得ないということでの是正要求をしているわけです。

井出委員 話し合いや協議という表現が、少し私の表現が優し過ぎたのかもしれませんが、ただ、そういった不服があるときは申し立てができる、そういう手続があるのですから、その手続を厳格に守るというのも、それは国としての一つの選択肢ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 先ほどから申し上げていますように、文部科学省としては是正要求をしました。それに対して、どうそれを受けとめるかという返事がまだ来ていません、竹富町の教育委員会から。返事が来て初めて対応できることでもあると思います。

井出委員 私がそういう質問をしましたのは、竹富町も、また、その地区の石垣市、与那国も、子供たちに教えたいことがあるという思いは一緒じゃないかなと思うんです。尖閣諸島があるから領土のことをしっかり教えたい、そういう意図もわかりますし、基地の問題を厚目に扱っている教科書を取り上げたいという地域性も私は理解をできるんですが、ただ、共同採択のルールもある中で今の状態に陥っている。だから、今、竹富が違法状態にある。

 しかし、それはその立場が逆になったりのケースもあったりですとか、ほかの地区でもこれからあり得る話だと思うんですけれども、まだ、今回のこういった事例は、採択結果と違うものを選んだという事例は初めてだと聞いております。初めてのもので、竹富町がルールを守っていない。ルールを守っていない批判の声もかなりあることも知っておりますが、たった一つの事例でルールを変えるのではなくて、ルールをやはり守ってもらうように手続を最後の最後まで踏んでいくというのが一つ道としてはあるんじゃないかと思うんですが、もうそれはやはり限界なんでしょうか。

下村国務大臣 今までの経緯をおわかりになって質問されているのかいないのかよく承知しませんが、これはもう民主党政権のときから、つまり平成二十三年九月から、中川元文科大臣が先ほど御質問されましたが、そのときから、沖縄県教育委員会を通じてこれは文科省としてそういう指導をしてきたんです。ことしはもう平成二十六年ですから、それだけ手間暇かけて、午前中も申し上げましたが、自公政権になってからは、当時の義家文科大臣政務官にも実際に竹富町に行ってもらって、直接国の意向をお話ししました。

 これは解釈の問題ではなくて、やはり、法律の中で明確に書かれていることに対して守っていないということが違法状態だということは、政権がかわってもかわらなくても同じなんです。法治国家として、それは自分たちはこうしたいから、子供たち、現場にも迷惑をかけていないからそうしてくれということであれば、法律はあってもなくても同じだということになるわけです。

 ただ、その竹富町の主張について、採択協議会のあり方について規約等明文にされていないことによって、今までいろいろなトラブルといいますか、まとまってこなかったという今日の経緯がありますから、やはり共同採択についての規約については明確化し、採択したことについては共同採択エリアの教育委員会は必ずそれを守るということを法律の中でさらに明記することによって、法律上、解釈における疑義等が生まれないように整理をしたいということでの改正案であります。

井出委員 国の方が八重山、沖縄県教委、竹富に対してさまざまな働きかけをされてきたことは私も十分承知をした上で申し上げているんですけれども、ルールを守らないところが一つあるからルールを変えてしまうというところへの、私はそこはどうしても疑念が拭えない。

 この法律は平成二十七年から施行の予定だと聞いております。それは次の教科書の採択に向けてのスケジュールなのかなと私は考えているんですが、そうであれば、もうしばらく手続をしっかり見守っていく猶予は残されているんじゃないかと思いますが、もうだめなんでしょうか。

下村国務大臣 これはルールを変えるのではありません、ルールを明確化するわけです。それが一点。

 それから、教科書採択そのものは、来月から新しい教科書を使うわけです。ですから、来月から、つまり新学期から新しい教科書を使うためのぎりぎりの判断として、今月、直接国が竹富町に対して是正要求したということでありまして、実際はこの四月からの話だということについては御理解いただきたいと思います。

井出委員 今、ルールを変えるのではない、ルールを明確化するんだという話がありましたが、例えば、ルールを明確化すれば、今回の問題が竹富に関して違法状態が解消をされるというその確かなものはあるんでしょうか。

下村国務大臣 今回の法律案の中で、今の話の中でのルールというのは、これは、共同採択におけるその規約のルールについて、今それに絞って話をしていますから、ほかの改正案もありますけれども、改正案の中、ルールを変えるという部分もありますが、私が申し上げている今の経緯というのは、より明確にするという意味であります。

 明確化することによって、今後、竹富町のような問題はもう起こり得ないというふうに思います。

井出委員 現在の法律でも、共同採択したものを使わなければいけない、そういうふうにはっきり書かれておりますし、そこの文言というのは改正になった後も変わらないと思うんですが、特に何か罰則がつくわけでもありませんし、私は、そういうことをやったらちょっとどうなのか、さらに議論が必要かなとも思いますし、共同採択されたものを使わなければいけないという文言は変わらないので、竹富のようなことが起こり得ないという今の大臣の御発言は、果たしてそうとも言い切れるのかなというところは疑問なんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 これは印象じゃなくて法律改正案ですから、ぜひ、法律のどこにそういうふうな思いを持っておられるのかということを具体的に質問していただきたいと思うんです。

 今回の改正案というのは、共同採択地区内の市町村教育委員会は、採択地区協議会の協議の結果に基づいて採択すべきこと、これが法文上明白になるわけです。このことによって地教行法と教科書無償措置法の関係は一層明確になるということで、採択地区協議会が選んだものについては、これは、そこにおけるエリアに属する各教育委員会は必ずそのものを使わなくちゃいけないということを法律上より明確化にするということですから、これはより明らかになるということであるというふうに思います。

井出委員 今、この法改正の端緒となっている竹富の問題について、その事例からお伺いをしたんですが、次に、教科書採択の権限、教科書採択のあり方、方向性というもう少し大きなところから質問をしたいんです。

 平成二十一年三月三十一日に閣議決定をされている規制改革推進のための三カ年計画(再改定)というものの中で「教科書採択地区の町村単位の設定の容認」という項目がありまして、その中で、

  公立小・中学校の教科書は、市若しくは郡の区域又はこれらの区域を合わせた地域を採択地区として設定することとされているが、適正かつ公正な採択を確保しつつ、学校教育の自主性、多様性を確保することの重要性も踏まえ、将来的には学校単位での教科書選択の可能性も視野に入れて、教科書採択地区の小規模化を検討する。

  よって、町村のニーズ等を踏まえ、町村単独での採択地区の設定を含め、採択地区の小規模化について検討し、結論を得て、所要の措置を講じる。

この閣議決定の、将来的に学校単位での教科書選択の可能性も視野に入れた検討をする、この方針は、今の政府、文部科学省、大臣におかれても堅持されているのか、生きているのかをお伺いします。

下村国務大臣 教科書の採択地区については、平成八年に行政改革委員会から意見が出されて以来、平成二十一年、御指摘ありましたが、閣議決定された規制改革推進のための三カ年計画まで、累次にわたりまして小規模化等に関する指摘がなされております。

 これを受け、文科省ではこれまで、各都道府県教育委員会に対し、「市町村教育委員会の意向等を的確に踏まえ、採択地区がより適切なものとなるよう不断の見直しに努めること」について指導してきたところであり、採択地区数におきましては、平成八年度の四百七十八地区から平成二十四年度には五百八十五地区と増加しておりまして、採択地区の小規模化が進行しているものと考えております。

 今後とも、各都道府県教育委員会に対する指導に努めてまいりたいと思います。

 ただし、これはむやみに採択地区の小規模化を促してきたということではなくて、共同採択制度の趣旨を踏まえた上で、適切な採択地区となるよう指導した結果でもあります。

井出委員 今のお話で、小規模化が図られていると。確かに数字の上でいえばそうかなと思うんですが、平成の大合併もあって、市町村の規模が拡大をしている。実際に一つの市郡が採択地区となっているところは、その五百数十のうち、ここ十年で見れば百九十七から二百七十三にふえていて、複数の町村や郡がまとまって採択している地域というのは、多少ばらつきはありますが、減少傾向にある。

 その実態は、市町村合併等によって、市町村単独で採択でもいいんですけれども、採択のところの一つの市が合併するケースもありますし、私はその実態の規模は大きくなっているんじゃないかと思うんですが、そのあたりの御認識はいかがでしょうか。

下村国務大臣 先ほど千葉市の例が出されておりましたが、都道府県や市町村によっては、必ずしも共同採択エリアではありませんが、やはりその地域は同じ教科書にした方がしやすいということで、割合集中して一つの教科書会社が採択されてきたという経緯もあるのではないかというふうに思います。

 ただ、採択地区については、先ほど申し上げた数字であることは事実でありまして、数はふえているということは、それは数字で証明されていることだと思います。

井出委員 数の上ではそうですが、市町村合併で自治体の規模が大きくなっているところも御留意いただければと思います。

 先ほどの閣議決定なのですが、将来的には学校単位の教科書選択の検討という話があったりですとか、また、そもそも今の法律でも、教科書の採択をするのは、学校の設置者、市町村の教育委員会だ。共同採択というのは、まず、膨大な教科書を選ぶ過程において必要なものだと私はそう思っているんですが、将来的にはやはり学校や市町村が、その閣議決定にもありますけれども、そちらの方向で議論を進めていくべきだと私も思います。

 そういう意味からしても、共同採択のところのルールの明確化をしていくというのは、教科書採択権のあり方という本質の議論からいえば、今回のはちょっと脇にそれているんじゃないかとそういうふうに考えるんですが、そういうことはないですか。

下村国務大臣 何が脇にそれているか、ちょっと具体的に御指摘いただければと思いますが、採択地区をもっとふやすということは、つまり、それだけ規模的には選択しやすくするということについて、実態に沿った採択エリアについて考えるということであります。つまり、市町村合併によって郡が飛んだりしているところがありますから、生活圏とか、それから文化圏、経済圏が重なったところについては、共同採択エリアにすべきではないかということがまず一つあります。

 それから、将来的には、各教育委員会さらに各学校現場がより小規模的に教科書採択ができるようにすべきではないかという話がありましたが、これは、町村教育委員会がぜひ共同採択については残してほしいという要望が出ているというのは、つまり、町村単独で教科書採択ということになると、先ほどから答弁させていただいているように、相当膨大なあの教科書を読み込む中で独自に判断するという意味では、それぞれの小さな市町村、特に町村教育委員会においては、その容量も超えてしまっているところがあって、それで、共同採択エリアをつくることによって調査研究を一緒にしながら、より望ましい教科書を採択したいという意向が町村教育委員会にあるからこそ、そういう要望が出ているというふうに思うんです。

 ですから、閣議決定はされていますが、一方で、町村教育委員会にとって一番望ましいことは何なのかということも文部科学省として判断しながら、トータル的にバランスの中で、現場の方々にとっても望む方向については十分配慮する必要があるというふうに思います。

井出委員 私は、共同採択で膨大な教科書を研究していくということは、特に小さい市町村にとって大変必要なことだと思うんですけれども、竹富ですとか、その地域内で教えたいことが違ってしまうようなケースの場合、どちらも、竹富もそうですし石垣も、それなりに教えたいものへの思いがあるからこういう結果になると思うんです。ですから、共同採択を共同で研究をする、ただ、その採択は市町村なり学校がする、そのときに、今回の法律にあるような、採択の理由であるとか、そういったものを明らかにしていくのが一番いいのではないかと思うんです。

 今の法律ですと、将来的には、学校、小規模化も検討の中にある。現在の法律では、学校の設置者や教育委員会が教科書を選ぶのが原則になっている。だけれども、今回の法律は、共同採択のその結果というものを学校の設置者と同等ぐらいに引き上げるようなことになるのではないか、そういう懸念もありまして、この法律改正が本当に必要なのかと考えているんです。

 将来的には、学校に採択する権利を持っていく、その共同研究の結果や理由を公表する、今回の法律、私はそこはいいと思っているんですけれども、そういう仕組みがいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 現場の教育委員会がそういう方向性についてどう判断するかということについては、丁寧に聞いていく必要があるというふうに思います。現場で本当に学校単位で教科書選択を希望している人たちがどれぐらいいるかどうかということも判断する必要があるのではないかと思います。

 それから、地教行法と無償措置法が二つある。教科書採択については、エリアの問題ですけれども、単独で教科書採択できる教育委員会はいいわけですが、町村の場合は共同採択にしなければいろいろな問題が出てくるということで、これは無償措置法の中で特例としてしているわけですから、これは法律的には相矛盾する話ではそもそもないわけです。

 ただ、無償措置法の共同採択の規約、規定の仕方をより明確にしなければ、今回のような竹富町の問題は、第二、第三が起きたとき、これは違法状態であることは事実なんですが、そのまま放置せざるを得ないということがあってはならないということで、法律によってより明確化するということでございます。

 今回も、竹富町がどうしても例えば東京書籍で子供たちを教えたいということであれば、共同採択としての教科書は、これは育鵬社の教科書ですけれども、それを使いながら、一方で町民の寄附によって東書を使うということであれば、二つ使ったらどうかということを私は記者会見のときに申し上げたことがありますが、その中で子供たちが、これは例外の話ですけれども、メーンは無償措置法としての育鵬社でありますが、東書も住民の寄附によって既にあるのであれば、広く教科書によって違いは何なのか、領土問題とか、あとは自衛隊の問題とか、沖縄の置かれている状態、教科書を読み比べることによってより深く学ぶことができるということもできたのではないかというふうに思います。

井出委員 今、教科書を二つ副教材として使うという話なども一つの解決の道としてあるのではないかなと私もお話を聞いていて感じたんですけれども、そのあたり、まだ話し合いの余地があるのかないのか、最初の答弁ですとないということなんですけれども、私は、一つのルール違反をもってルールそのものを変えてしまうというところに少し疑問を感じているということを改めて申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 沖縄県八重山地区の教科書採択問題で、文部科学省は十四日、竹富町教育委員会に対して教科書を選び直すよう、地方自治法に基づく是正要求を出しました。国が市町村に直接是正要求を出すのは初めてのことであり、厳しく抗議したいと思います。

 八重山地区では、二〇一一年、採択地区協議会が、調査員による調査結果を踏まえない育鵬社版の採択を答申したことが混乱の出発点であります。石垣市、与那国町、そして竹富町の三市町教育委員長が協議し、二〇一一年九月八日に、沖縄県教委の助言、指導のもとで三市町教育委員全員による協議を行って、一致する選定が行われました。

 ところが、文部科学省は、石垣市教育長、与那国町教育長の一方的な、無効であり協議を拒否する判断に肩入れをし、竹富町のみが法律に違反しているとして、昨年十月に地方自治法第二百四十五条の五第二項に基づく是正の要求を沖縄県教委に対して行い、さらにことし三月、下村文科大臣が直接竹富町教育委員会宛てに是正要求を行うという、前代未聞の事態となったわけであります。

 竹富町教委は、一昨日の定例会議で、現場に混乱はないとして大臣の是正要求に従わない方向で一致したと報じられているが、当然のことだと私は思います。我が党は、三市町教委の主体的な解決を阻害し、現状で何ら問題の起きていない教育現場にかえって混乱を持ち込むような是正要求を直ちに撤回することを求めたいと思います。

 その上で、本改正で、採択地区協議会を法定化し、あらかじめ規約を定めることになっております。規約の内容等は政令に委ねられておりますけれども、どういう内容を予定しているのか、これは文部科学省からお答えください。

前川政府参考人 政令におきましては、委員の構成等に関する事項あるいは協議会における議決の方法など、規約に定めるべき事項などについて規定することを想定しております。

 委員の選任の方法や協議会における議決の方法など、各事項の具体的な内容につきましては、各教育委員会が協議して規約において決定するものでございまして、政令において一律に規定することは考えておりません。

宮本委員 あらかじめ規約に協議方法を定めることを求めるというわけですけれども、是正要求まで行った八重山採択地区協議会も、役員会での再協議も行われ、九月八日には、先ほど申し上げた、沖縄県教委の指導、助言のもと全教育委員による協議が行われました。そこでついに同一教科書の採択に至りました。しかし、石垣市や与那国町の教育長が決定は無効と主張して、以降の協議を拒んできたわけであります。

 大臣、その一方に国が肩入れをし、一方を違法だと決めつけることで、国や文部科学省自身が協議を妨げてきたというのが実態ではありませんか。

下村国務大臣 まず冒頭、宮本委員が、現場が今うまくいっている、混乱はない、問題ないからいいのではないかと言うことについては、今までの宮本委員の発言からするとこれはいかがなものかと。

 違法状態であるということは、別に政権交代の後決めたことじゃなくて、民主党政権のときからこれはもう指摘されたことでありまして、違法状態であるにもかかわらず、現場がいいと言っているからいいんだということは、これは法治国家としては成り立たない理屈だということをまず申し上げたいと思います。

 沖縄県八重山採択地区においては、教科書無償措置法第十三条第四項の規定による協議を行うための組織として、関係市町教育委員会の合意により、規約を定めて八重山採択地区協議会が置かれております。また、九月八日に開催された三市町の全教育委員による協議については、関係市町教育委員会の合意がなく無効であり、八重山採択地区協議会の規約に従って平成二十三年八月にまとめられた答申及び再協議の結果が、教科書無償措置法の規定により行われた協議の結果であります。

 教科書無償措置法では、関係市町村教育委員会が協議して同一の教科書を採択しなければならないと定めておりまして、同法に違反している竹富町教育委員会に対して教科書無償措置法違反の是正を求めているというものであります。

宮本委員 今大臣が説明されたそういういきさつは百も承知で聞いているんです。

 なるほど、九月八日のこの決定が無効だとしたのは、けさ質問に立たれた、当時民主党政権下の中川正春文部科学大臣でありました。私は、そのときにも中川大臣と当委員会で議論をやりました。

 違法違法とおっしゃるんですけれども、採択地区協議会の答申と違う教科書を採択した例というのは、これまでも幾らでもあるんですね。

 例えば、平成二十一年、愛媛県今治地区の教科用図書採択協議会、ここは東京書籍を選定したわけですけれども、実際に採択された各教育委員会での決定は扶桑社を採択している。このときは何ら問題になっていないわけです。なぜかというと、それは全部そろって同一の扶桑社を採択したから。つまり、答申と採択が食い違っても同一ならば違法でないという説明に、このとき、二〇一一年十月二十六日のやりとりで出ているわけですよ。

 端的に聞きますけれども、答申と採択の結果が食い違っているのが違法とおっしゃる中身なのか、同一でないということが違法とおっしゃっている中身なのか、どちらですか。

下村国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、教科書無償措置法では、協議して同一の教科書を採択しなければならない定めになっている。それを竹富町は守っていないということで、教科書無償措置法違反であるということであります。

宮本委員 だからおかしい話になる。このときも私は言っていますけれども、同一になっていないというだけでいえば、竹富町もそうかしらないが、石垣市や与那国町も同一になっていないんですよ。それを、片方が違法で片方が違法でないと片方に肩入れするから、問題が混乱して今日まで来ている。

 なぜそうかと聞くと、協議会の答申と違う採択をしたからだとこう言うから話がおかしくなって、違う採択をした事例というのは、今治地区で既にあったんだ。このときは、全く違っていても問題になどなっていないわけですよ。そういう点では、私は、今回のあなた方の措置というのは、筋が通らないと言わざるを得ないと思います。

 そもそも教科書採択は、子供の最善の利益の立場に立って、その地域、学校の子供たちの学習に最もふさわしいものを教育の観点から選んでいくことが何よりも大事だと思います。子供のための最善のものを選ぶということを考えれば、現場で教えている教師が積極的な役割を果たさなければなりません。これは国際的な大原則であります。

 具体的には、一九六六年十月五日に、日本政府代表も賛成して採択をされたユネスコの教員の地位に関する勧告に、教員が専門職として果たすべき役割が述べられております。このパラグラフ六十一にはどのように定められているか、文部科学省、お答えいただけますか。

前川政府参考人 御指摘の条項には、次のように規定されております。

  教員は、職責の遂行にあたって学問の自由を享受するものとする。教員は、生徒に最も適した教具及び教授法を判断する資格を特に有しているので、教材の選択及び使用、教科書の選択並びに教育方法の適用にあたって、承認された計画のわく内で、かつ、教育当局の援助を得て、主要な役割が与えられるものとする。

 以上でございます。

宮本委員 こういう原則が国際的には確立をされております。

 ここで改めて、では世界ではどのようになっているかということを確認しておきたいんです。

 国立教育政策研究所の調査研究で、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、フィンランドでは教科書採択の権限は一体どこに存在しているか。これも文部科学省、お答えいただけますか。

前川政府参考人 国立教育政策研究所が行った平成二十一年三月の調査によりますと、教科書採択の権限は、アメリカ、ドイツでは学校、イギリス、フランスでは教師、フィンランドでは学校と教師にあるということになっております。

宮本委員 先ほど紹介したユネスコの教員の地位に関する勧告というのは、アメリカでもドイツでも、イギリス、フランス、フィンランドでも、やはり教師のところに、あるいは学校にしっかり選定の権限があるというふうに具現化されているわけです。

 それで、日本においても、いい教科書を選ぶために、実際に教えている教師が役割を果たす、とりわけ学校の役割ということが強調されてまいりました。

 二〇〇九年三月三十一日に閣議決定された規制改革推進のための三カ年計画(再改定)では、教科書の採択についてどのように言われているか。これも文部科学省、お願いいたします。

前川政府参考人 御指摘の閣議決定におきましては、次のように述べられております。

  公立小・中学校の教科書は、市若しくは郡の区域又はこれらの区域を合わせた地域を採択地区として設定することとされているが、適正かつ公正な採択を確保しつつ、学校教育の自主性、多様性を確保することの重要性も踏まえ、将来的には学校単位での教科書選択の可能性も視野に入れて、教科書採択地区の小規模化を検討する。

 以上でございます。

宮本委員 「将来的には学校単位での教科書選択の可能性も視野に入れて、」こういう文言が入っているわけですが、こういう検討課題は一体いつから閣議決定されておりますか。

前川政府参考人 平成九年三月二十八日に閣議決定されました、規制緩和推進計画の再改定からでございます。

宮本委員 平成九年、一九九七年からこういう決定がされているわけですね。

 それで、文部科学省としてはこれまでどのような検討を進めてきたか、検討内容をお答えいただけますか。

前川政府参考人 教科書の採択地区につきましては、平成八年にまず行政改革委員会から意見が出され、先ほどの平成九年の閣議決定がございました。それ以来、平成二十一年に閣議決定された規制改革推進のための三カ年計画まで、累次にわたり、小規模化等に関する指摘がなされております。

 これを受けまして文部科学省におきましては、これまで、各都道府県の教育委員会に対しまして、「市町村教育委員会の意向等を的確に踏まえ、採択地区がより適切なものとなるよう不断の見直しに努めること」を指導してきたところでございまして、採択地区数につきましては、平成八年度の四百七十八地区から平成二十四年度には五百八十五地区と増加しておりまして、採択地区の小規模化が進行しているものと考えております。

 ただし、これはむやみに採択地区の小規模化を促してきたものではございませんで、共同採択制度の趣旨を踏まえた上で、適切な採択地区となるよう指導しているものでございます。

宮本委員 今、確認をしてきましたように、国際的には学校採択が主流であり、ヨーロッパでは、ユネスコの勧告どおり、教員が教科書を選択しているわけです。

 先ほど採択地区の小規模化という話もありましたけれども、求められているのは、現場の教員の調査研究結果をきちんと尊重することがやはり必要だというふうに私は思うんです。

 これは、この間、文科省が出している累次の通知を見ても、十分な調査研究に基づき適正かつ公正に採択、こういうふうに強調されているわけでありまして、大臣にこれは聞くんですけれども、やはり、十分な調査研究に基づいて、とりわけ調査員の調査結果に基づいて教科書採択がされることが大切だ、これは異論がなかろうと思うんですが、いかがですか。

下村国務大臣 学校教育の主たる教材である教科書の重要性に鑑み、地域の教育に対して責任を負っている教育委員会が教科書を採択することが重要であり、地教行法第二十三条第六号に基づきまして、公立学校の教科書採択は当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会が行うこととしております。

 このような趣旨に照らせば、教科書の採択に当たっては、調査員の意見等についても十分に踏まえた上で、あくまでも、教科書採択権者である教育委員会が権限と責任において適切に行うことが必要であると考えます。

宮本委員 十分に調査結果を踏まえた上で、当然、教育委員会の権限でとおっしゃるわけですけれども、現に通知を見ると、「教職員の投票によって採択教科書が決定されるなど、採択権者の責任が不明確になることがないよう、採択手続きの適正化を図る」という文言も同時に入れているわけです。

 こういうふうにわざわざ通知に書くから、もちろん、投票によって、人気投票のようなことで決めていいと私は言うつもりはないんですよ。しかし、わざわざこう書くものだから、今度は逆に、調査員の意見を完全に排除して採択するという事態が起こっているわけですよ。

 これは、当然、十分に調査結果を踏まえた上で、独自の権限によって採択するというのは当たり前であって、この点でのしっかり原則に立った運用をお願いしたいと思っております。

 本法案は、大臣が昨年十一月に公表した教科書改革実行プランがもとになっているわけであります。このプランでは、採択だけではありません、編集、検定の段階においても重要な変更がされることになっております。しかも、この四月からの中学校用教科書の検定を前に、既に矢継ぎ早に実施をされております。

 そこで、この教科書改革実行プランについても聞きたいと思うんです。

 まず、これまでの教科用図書検定審査要項では、合格または不合格の判定方法として、まず、検定意見相当箇所の数が百ページ当たり何カ所あるかという具体的な基準を二つ示した上で、3として、「教科用図書としての基本的な構成に重大な欠陥が見られるものや一単元や一章全体にわたる極めて重大な欠陥が見られ、適切な修正を施すことが困難と判断されるもの」が挙げられております。

 まず確認するんですが、この3に該当する教科書は、1とか2とかで規定されているような個々の記述の適否を見ないで、もう一括して不合格にする、こういう理解でよろしいですか。

前川政府参考人 教科書検定におきます申請図書の合格または不合格の判定方法につきましては、教科用図書検定審査要項に示されておりまして、検定意見相当箇所の数による判定方法のほかに、教科書としての基本的な構成に重大な欠陥が見られる場合などには検定審査不合格と判定する旨が定められているのは、御指摘のとおりでございます。

 これは、ある申請図書について、検定基準に照らして教科用図書として不適切な箇所とその内容を特定していく調査審議の流れにおいて、仮にそういった検定意見相当箇所の数は不合格となるべき数を超えない場合であったとしても、例えば、学習指導要領に示す事項を全く取り上げていなかったり、教科の目標に一致していないというように、記述の欠陥が基本的な構成に及び、重大であると評価される場合には、検定意見相当箇所の数による判定方法によらずに、不合格と判定するという趣旨でございます。

 この重大な欠陥が見られるかどうかの判断につきましては、今も申し上げましたような調査審議の流れの中におきまして、個別の申請図書の記述の欠陥に即して判断していくことになるということと考えております。

宮本委員 これは再度確認しますけれども、1や2で掲げられている百ページ当たりでの検定意見相当箇所の数にかかわらずということは、それも見ずに、全体として構成に重大な欠陥があると判断すれば不合格にする、こういう理解でよろしいですか。

前川政府参考人 そのとおりでございます。

宮本委員 これまでに、この3が適用されて不合格になった教科書がございましたですか。

前川政府参考人 これまでに事例はございません。

宮本委員 私は当たり前だと思うんです。教科書としての基本的な構成に重大な欠陥が見られるというような教科書が教科書会社から申請されてくるということは、もうほとんどあり得ない話であります。

 ところが、今度はこの3の中に新たに、教育基本法の目標等に照らして重大な欠陥がある場合を検定不合格要件として明記する、こうしております。

 ということは、今度は、教育基本法の目標等に照らして重大な欠陥があるとみなされれば、教科書としての基本的な構成に重大な欠陥などがなかったとしても、個々の記述の適否を見ないで、門前払い、不合格にする、こういうことですね。

前川政府参考人 教科用図書検定審査要項の改正につきましては、今後開催されます教科用図書検定調査審議会で決定されることになると考えておりますが、教育基本法に示す教育の目標等に照らしまして、明らかにこれに反するものであるというような重大な欠陥が見られるかどうかの判断につきましては、教科用図書検定調査審議会におきまして、提出された申請図書の内容の全体を確認した上で、個別の申請図書の記述の欠陥に即して判断していくことになると考えております。

宮本委員 いやいや、答えてもらっていないんですよ。

 この3のところに教育基本法の目標等に照らして重大な欠陥がある場合というものを入れた場合には、先ほど来冒頭で確認したように、1、2で問題になるような百ページ当たりの検定意見相当箇所の数にかかわらず、一括して不合格にする、こういうことですね。

前川政府参考人 おっしゃるとおりでございます。検定意見相当箇所の数等によらずに判断するということでございます。

宮本委員 まさに、この判断によってそういうことが行われる。これは審査会で審議すると言うわけですけれども、最終的に不合格の判定を下すのは文部科学大臣であります。

 ですからこれは大臣に問うんですけれども、下村大臣がこの申請図書は教育基本法の目標に照らし重大な欠陥があると判断すれば、もう個々のページをチェックすることなく不合格にできる、こういうことじゃないですか、大臣。

下村国務大臣 教科書検定は、教科用図書検定調査審議会における専門的、学術的な調査審議の結果に基づいて文部科学大臣が検定の合否を決定するものでありまして、教育基本法に示す教育の目標等に照らして重大な欠陥があるかどうかについても、教科用図書検定調査審議会での審議の結果に基づいて判断するということになります。

宮本委員 恣意的な判断はしないというふうに受けとめますけれども、この点も重大だと思います。

 さらに、この間、検定基準も改訂をされております。審議会での議論を二回立て続けに開催し、パブリックコメントも、通常三十日かけて行われるところを、わずか二十日に短縮してまで急ぎに急いで手続を進めてまいりました。

 まず事実を確認しますが、二十日間に短縮したパブリックコメントでは何件の意見が寄せられましたか。

前川政府参考人 今回の教科書検定基準の改正につきましては、昨年十二月二十五日から本年一月十四日の間、パブリックコメントを実施いたしまして、総計六千四百七十八件の御意見をいただいたところでございます。

 いただいた御意見の内容につきましては、賛成意見がおおむね三割、反対意見がおおむね三割、その他がおおむね四割でございました。

宮本委員 二十日間で六千五百件ですから、この問題への国民の関心の高さが示されていると思うんです。

 そこで、この検定基準の改定でありますけれども、閣議決定その他の方法により示された政府の統一的見解や最高裁判所の判例がある場合には、それらに基づいた記述がされていること、こうされております。

 ここで言う「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」というものの中身でありますけれども、ここには質問主意書に対する答弁書も入る、こういうことでよろしいですか。

前川政府参考人 質問主意書に対する答弁書は、閣議決定を経て質問者に回答されるものでございますので、検定基準に示す「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」に該当するものと考えております。

宮本委員 質問主意書に対する答弁書は閣議決定されているので入る、こういう御答弁でありました。

 では大臣にお伺いするわけですけれども、この「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」の中に、いわゆる日本軍慰安婦についての河野官房長官談話、あるいは一九九五年の村山首相談話、これは入りますか。

下村国務大臣 改正後の検定基準における「政府の統一的な見解」は、現時点で有効な閣議決定等に示されたものを指すということであります。村山内閣総理大臣談話、河野官房長官談話自体は閣議決定されたものではありません。検定基準における「政府の統一的な見解」には当たらないものであります。

宮本委員 驚くべきことだと言わなければなりません。一方で質問主意書に対する政府答弁書が入りながら、安倍内閣が変更しないと国際社会に公約した河野談話や村山談話は入らない、こういう答弁でありました。

 河野談話というのは極めて重要なものであります。この間、自民党総裁特別補佐が新しい事実が出てくれば新しい談話を発表すればいいと発言しただけで官房長官から注意されるぐらい、重大なものであります。村山談話は、外務省のホームページに、日本語とともに、英語、中国語、韓国語で掲載されている。これが政府見解でないと言って誰も納得しないと言わなければなりません。

 大臣、そうじゃありませんか。いかがですか。

下村国務大臣 私は事実関係を申し上げているわけでありまして、閣議決定されていないということは、これは事実であります。

 ただし、それらに示されている基本的な立場については、安倍内閣においても継承している旨、質問主意書の答弁においては、これは閣議決定はされております。

宮本委員 私は、この点でも検定基準の内容も全く恣意的で、しかも事実上の国定教科書化の道を進むことになりかねないと言わなければならないと思うんです。

 こういうやり方は断じて許されないということを指摘して、私の質問を終わります。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木でございます。

 早速質問に入らせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今回の教科書無償措置法改正案提出の契機となりました沖縄県八重山採択地区の問題は、教科書の採択について地方教育行政法と教科書無償措置法の規定に不備があることにございます。

 すなわち、地方教育行政法第二十三条第六号では教科書取り扱いの権限を教育委員会にあると規定をしているのに対し、教科書無償措置法においては採択地区内の市町村の教育委員会は同一の教科書を採択しなければならないと規定しており、採択地区内の各教育委員会の間で意見が異なった場合、採択地区内の決定と各教育委員会の採択権のどちらが優先されるのか、そこが明らかではないという問題だと認識をしております。

 地方の教育行政の組織と運営の基本を定める地方教育行政法と、教科書の無償措置の手続を定めるにすぎない教科書無償措置法のいずれが上位法なのかということだと考えます。

 この件について、両法の趣旨をそのまま素直に読めば、教科書の採択権は各教育委員会にあり、教科書の無償給付に関しては教科書無償措置法により採択地区の決定に従うと解釈するのが自然でございますが、この解釈でよろしいのでしょうか。

前川政府参考人 教科書の採択に関します教科書無償措置法の規定でございますが、これは、単に教科書無償措置のための条件としてのみ規定されているわけではございませんでして、それ自体必要なこととして規定されているということでございます。

 現行法のもとでは、共同採択地区内では、関係市町村が協議して種目ごとに同一の教科書を採択しなければならない、これは教科書無償措置法の第十三条第四項で定めているわけでございますけれども、一般的に、採択権限は学校の設置者である市町村の教育委員会にあることを定めました地教行法の二十三条第六号の定めに対しましては、この無償措置法十三条四項は特別の定めをしているものという関係にございます。

 したがって、共同採択地区内の市町村教育委員会は、その採択権限を行使するに当たって、無償措置法のルールに従わなければならない、こういう二つの法律の関係でございまして、この二つの法律の関係には矛盾があるというわけではございません。

青木委員 そういう二つの法律の関係だということで、採択権は教育委員会にあり、無償給付については無償措置法によるという素直な解釈なんだろうというふうに思いますが、要は、お伺いをしたかったのは、解釈の変更があったのかどうかということをお伺いしたいのであります。

 この件について、今回の文科省の対応と、民主党政権時における中川元文科大臣の対応に違いがあるものですから、そこのところをお伺いしたかったのですが、解釈を変えたのでしょうか。

下村国務大臣 これは午前中から答弁させていただいているように、当時、中川文科大臣のときの対応と今の対応、法律解釈は全く変わっていないんです。当時から、違法状態だということについては中川大臣は言われていたわけですね。ただし、竹富町が共同採択以外の教科書を独自に使うということについて、それは違法ではないというふうなことは言われてはいましたが、本来は共同採択地区で選んだ教科書を使うべき、使われていないことについて違法状態だと言われていることについては同じであります。

 ですから、当時から政府としては、沖縄県教育委員会を通じて、この違法状態について解消するよう指導してきたという経緯の中で今日があるということでは、流れは、これは一貫していることであります。

青木委員 ありがとうございます。

 解釈は変わらない、同様に違法状態のまま今日まで来ているということでございますが、先ほど来それぞれの委員の先生方から御指摘があるように、無償措置法の方の同一でなければならないというそこの部分の違法とするならば、それは竹富だけではなく石垣、与那国も同様ではないかという立場に私も立つわけであります。

 竹富は地教行法の方の合法性を根拠に今も独自の教科書を選んで使っているわけでありまして、特措法、一方の法律を捉えてそれは違法だと言うのも、そこまでは言い切れないのではないか。中川元文科大臣も、教育委員会の採択権をしんしゃくすると、強制的に育鵬社版を使え、そこまでは言えないという解釈においてこの案件について取り扱ってこられたかと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

下村国務大臣 先ほども前川局長が答弁をさせていただいているんですが、地教行法と教科書無償措置法が同等の法律だという前提で質問されているとしか思えないんですけれども、そうではないんですね。

 メーンは地教行法としてあります。しかし、共同採択については、これは特別の、教科書無償措置法における特別の定めによって共同採択地区を設けているということなんですね。ですから、これは法律上は、特別の定めによる共同採択地区のルールを守るということが、法律上はそれが優先されるべきことなんです。共同採択以外についてはそれぞれの教育委員会が独自に判断するということでありまして、共同採択エリアについては、これは無償措置法が優先する、そのことについて民主党のときから違法状態だということを言っていることについては、そのとおり、当時から現在も変わっていない、それが法律解釈であります。

青木委員 下村大臣のおっしゃる御答弁を解釈いたしますと、無償措置法の方が上位にあるということなんだろうというふうに解釈をいたしますけれども、これからいろいろ質問を続けていく中でまた御答弁をいただきたいと思いますが、無償措置法の方は、いわゆる無償のための条件といいますか、教科書の無償措置の手続を定めているようにしか思えないものですから、憲法の定めも含めて、義務教育の無償という理念と照らし合わせたときに、どちらが上位法なのかということもやはり真摯な検討をお願いしたいなというふうにも思うわけでございますが、追ってまた質問させていただきますので、続いての質問に移らせていただきます。

 質問が重なりますけれども、下村文科大臣から竹富町の教育委員会に対して、今おっしゃられているように、教科書無償措置法に反するとして、地方自治法に基づく是正要求の通知が発出をされております。

 そもそも、繰り返しになりますけれども、教科書の採択権は竹富町の教育委員会にあることは、これは間違いない法律の定めであります。少なくとも、独自に教科書を自治体で財源を確保して給付している以上、ただ違法だといって是正要求をするのはちょっと行き過ぎているのではないかというふうに思うわけでございますけれども、今後、竹富の取り組み、考えに耳を傾けて、撤回まではいかずとも、そういったお考えはないものなんでしょうか。

下村国務大臣 青木委員に申し上げたいと思うんですけれども、これは法律のたてつけでございます。

 もう一度説明を申し上げたいと思います。共同採択地区内では、関係市町村が協議して種目ごとに同一の教科書を採択しなければならないと定めた教科書無償措置法第十三条第四項は、一般的に、採択権限は学校の設置者である市町村の教育委員会にあることを定めた地教行法第二十三条第六号の特別の、先ほども申し上げていますが、特別の定めであり、共同採択地区内の市町村教育委員会は、その採択権限を行使するに当たって教科書無償措置法のルールに従わなければならないという、これは法律上のたてつけがあるわけでございます。ですから、これは不当な政治介入とかそういう問題ではまずないということでございます。

 沖縄県の八重山採択地区では、竹富町教育委員会のみが協議の結果に基づいた採択を行っていない、教科書無償措置法に違反した状況が現在まで継続している状態であります。

 今回の竹富町教育委員会に対する是正の要求は、地方自治法第二百四十五条の五第四項に基づきまして、教科書無償措置法違反を是正するため、必要な措置を講ずべきことを求めたものでありまして、法治国家として違法状態を是正するということは、これは政府にとって当然の責務であって、それを放置するということであれば、それはまさに無政府状態ということになるわけであります。

青木委員 今御答弁がございましたけれども、無政府状態という、これは、先ほどから質問させていただいているように、同一の教科書を使わなければならないというのがその無償の条件だとすれば、それは竹富だけではなくて、石垣とか与那国も同様な立場にあるのではないかというふうに捉えているわけでございますが、引き続きの質問に移らせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 採択地区の設定についてお伺いをさせていただきます。

 現行制度におきまして、採択地区の設定については、都道府県が市町村の意見を聞いて設定することとされています。

 そもそも教科書採択地区を設定する主な理由といたしましては、午前中にも議論がございましたけれども、近隣地区で共同で授業研究が行えること、同一採択地区内での転校であるならば教科書を継続して使える、教科書の供給コストが安価になる、採択に当たっての調査研究が分担して行えることが挙げられていますが、いずれの理由も、特段説得力のある理由とは思えないわけでございます。

 比較的必要かと思われる共同授業研究と採択の際の分担調査につきましても、IT化も進んでおりますし、クリアできる課題ではないかな、少なくとも、各教育委員会の採択権を脅かすほどの理由とはなり得ないというふうに思うわけであります。

 採択地区の設定は、主に効率性を理由としていますが、本来であれば、地域の自主性を尊重し、教育委員会ごとに、あるいは学校ごとに教科書を採択できるようにするべきではないでしょうか。もちろん、従来どおりで問題がない地区はそのままで結構ではございますが、教科書採択については、今回の無償措置改正案よりもさらに柔軟な制度とすることが必要だと考えております。

 そこで、まず、学校ごとの採択について、これも質問が重なりますが、平成十年の規制緩和推進三カ年計画におきまして、将来の学校単位の教科書採択に向けて法整備を検討すると閣議決定がなされております。その後、検討はされたのでしょうか。この閣議決定において教科書採択が取り上げられた背景、理由とともに、これまでの検討結果をお聞かせいただければと思います。

前川政府参考人 教科書の採択地区につきましては、平成八年に行政改革委員会から意見が出されて以来、平成二十一年に閣議決定された規制改革推進のための三カ年計画まで、累次にわたり、御指摘のような小規模化等に関する指摘がなされているわけでございます。

 この背景、理由といたしましては、採択地区が小規模化すれば、市町村教育委員会の意向がより反映されることになると考えられるという考え方、また、学校単位の採択となれば、一般の公立学校についても各学校の特色が発揮できるようになるだろうという考え方、このような考え方があるものと承知しております。

 文部科学省におきましては、共同採択の必要性を堅持するとともに、これまで、この累次の指摘を受けまして、各都道府県の教育委員会に対しまして、市町村教育委員会の意向等を的確に踏まえ、採択地区がより適切なものとなるよう、不断の見直しに努めるよう指導してきているところでございます。

 採択地区の数につきましては、平成八年度の四百七十八から平成二十四年度は五百八十五と増加しているわけでございまして、結果として採択地区の小規模化は進行してきております。

 ただし、これはむやみに採択地区の小規模化を促してきたというものではございませんでして、先ほど申し上げましたように、共同採択制度を堅持し、その趣旨を踏まえた上で、適切な採択地区となるよう指導してきているというものでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 ただ、今回の改正案におきまして、採択地区の決定の権限が都道府県にございます。しかし、教科書の採択地区というものは、その構成員となる市町村の合意のもとで決めることが本来あるべき姿だと考えております。その権限が都道府県にあるという以上、その仕組みが残る以上、今回の八重山採択地区のような問題は今後も起こり得るのではないかというふうに懸念をいたすものでございます。

 都道府県はあくまでも市町村の調整の役割にとどめ、採択地区の決定は各市町村の合意に基づく仕組みとすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

前川政府参考人 現行制度におきましても、共同採択地区内におきましては、関係の教育委員会が協議をして、そこで意思を一致させた上で、協議の結果を踏まえて、それに基づいて同一の教科書を採択する、こういうことで、当事者間の協議、そしてその結果に基づく採択という仕組みになっているところでございます。

 これが仮に順調にいかなかった場合、そのような場合には、現行制度におきましても、都道府県の教育委員会が指導をする、こういう場面は想定されております。

 その上で、やはり関係市町村の間で決着をしていただくというのが現行法の建前でございますので、市町村教育委員会の主体性を前提とした仕組みになっているということでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 ぜひそのように、採択地区の決定におきましては、各市町村の意見をもとに、合意に基づく仕組みにしていただきたいというふうにお願いをさせていただきます。

 次に、また質問が重なりますが、教科書無償の要件として、同一採択地区同一教科書でなければならないということの妥当性について、再度お伺いをさせていただきます。

 教科書無償措置法によりまして義務教育の教科書は無償となっておりますけれども、竹富町では無償措置が行われない状態となっています。教科書の無償の理念は、憲法の義務教育無償の原則、これを拡充するものであって、採択地区の決定に従うか否かという問題は、この理念の前では瑣末なものというふうに私は考えます。採択地区の決定と異なるからといって教科書の無償措置を行わないというのは、義務教育を充実し、子供たちとその親の負担を少しでも減らすという法律の趣旨に反するのではないかと考えるからです。

 教科書の無償措置、そして教科書の採択、これは全く別の問題であって、両者をリンクさせるべきではなく、ましてや無償化の条件とすべきものでもないというふうに考えています。今回の無償措置法改正案におきましても、この点に変更がございませんでしたけれども、教科書の無償措置とそして採択、これは全く関係しないように改めるべきではないかと考えます。

 大切にしなければならないのは、やはり地域の自主性と義務教育の無償の理念、この二つが両立できるように最大限法整備等取り組むことが国としての姿勢ではないかというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。

下村国務大臣 青木委員の意見でいえば、共同採択そのものもする必要はないんじゃないかということにもなってくるのではないかと思います。

 この共同採択制度は、教科書の採択に当たっての調査研究に地区内の多くの教員等が参画でき、教科書内容についての綿密な調査研究が可能となること、また、地区内の教員が共同で教材研究や授業研究を行うことが可能となる、このような意義があるほか、教科書の調査研究と採択が一体的に行われることにより適正な教科書採択を確保する観点からも意義あるものと考えます。

 このため、現行の教科書無償措置法においても、第十三条第四項において、共同採択地区内では、関係市町村が協議して種目ごとに同一の教科書を採択しなければならないと定めているわけであります。

 これは、一般的に、採択権限は学校の設置者である市町村の教育委員会にあることを定めた地教行法第二十三条第六号の特別の定めであり、共同採択地区内の市町村教育委員会は、その採択権限を行使するに当たって教科書無償措置法のルールに従わなければならないということでありまして、共同採択をするということによって、共同研究とその教科書が同じであることによって初めて成果、効果もあらわれるものであるというふうに認識しております。

青木委員 地区内の綿密な教科書調査研究を合同で進めていきたいところはそれはもちろん進めればいいですし、先ほど来、その研究はなかなか進んでいないのではないかという現状を訴える質問もございました。ですので、特段そこにこだわるということもどうなのかな、現実に即していないのではないかということもありながら、竹富のように、独自で選びたいんだということで、その時間の中で懸命に、一生懸命その研究を施した中で教科書を選ぶ、そういう自主性も一方でやはり認めてあげることも必要なのではないかというふうに考えるわけです。

 今回の改正で、市郡単位を町村単位に改めるということであって、これは合併によるさまざまな状況を見てということであって、意図は異なるかもしれませんけれども、町村単位の教科書採択が可能になることによって、これは一歩前進なのではないか、最初この法案を見させていただいたときにそのような見方も私はできたわけなんですけれども、この間、下村大臣の竹富に対する是正勧告等々の様子を見ますと、やはりそれはまた違う意図なんだなというふうに解釈をしているわけなんです。

 実際、町村単位に変わることによって、竹富町がこの採択地区から分離するということは可能になるのでしょうか。

前川政府参考人 今回の改正は、共同採択制度を維持し、その趣旨を踏まえた上で、共同採択地区の設定の単位を見直すというものでございます。共同採択の設定の単位が現在市郡であるところを市町村として、より合理化するということでございまして、共同採択制度そのものの趣旨が変わるものではございません。

 共同採択地区の設定につきましては、都道府県教育委員会が判断するわけではございますが、その際には、地域の自然的、経済的、文化的諸条件を十分吟味して、教科書無償措置法が共同採択制度を採用している意義を十分踏まえまして、調査研究の能力が十分であるかどうかというようなことも踏まえて設定すべきものであると考えております。この点については、現行法と変わりはないということでございます。

 現行法におきましても、市と郡を分離することは可能でございます。八重山のケースでございますと、石垣市と八重山郡とを分離するということは現在でも可能でございまして、現に、石垣市の中からは分離独立したいという意向も示されているというふうに聞いておりますが、現在、沖縄県の教育委員会では、八重山は一つの採択地区であるべきものだ、そういう判断のもとで一つの採択地区として指定している、設定しているという現状でございます。

 文部科学省といたしましても、この八重山地区に関しましては、その自然的条件あるいは社会経済的条件からして一つの採択地区であるべきものと考えておりまして、そのようにこれまでも都道府県の教育委員会に対して指導してきているところでございます。

青木委員 そうしますと、沖縄県教委が竹富の考えに合意をすれば、それはそれとして分離も可能であるということでよろしいんでしょうか。

前川政府参考人 論理的に、不可能であるということは言えないと思っておりますけれども、文部科学省の考え方といたしましては、八重山については一つの採択地区であるのが自然である、当然であるというふうに考えております。

青木委員 それは、文科省のそうした意向というのは通用するものなんでしょうか。

下村国務大臣 今回の改正案は、先ほどから答弁をさせていただいているように、市町村合併によって、当時の郡とそれから今の郡、町村が相当エリア的に変わってきているという今の実態に合わせた新たな共同採択エリアの設定でございます。そのときには、各都道府県教育委員会が新たな採択地区を設定するについては、当然、市町村教育委員会に対してあらかじめ意見を聞くということは必要であります。その上で、地域の自然的、経済的、文化的諸条件を十分に考慮して採択地区を決めるということでございます。

 ですから、先ほどから答弁がありますが、八重山地区は、本来であれば、石垣市は石垣市として、市ですから単独で採択できるわけですね。竹富町、与那国町、それぞれ町ですから、これは郡になりますので、これは共同採択しなければならない、そういう地域になるわけです。しかし、八重山地区そのものが、石垣市も入れて一体的に、まさに自然的、経済的、文化的諸条件に合っているところであるというのは、これは文科省が決めるということではなくて、客観的事実としてあるんだろうというふうに思うんですね。

 ですから、当然、文科省の意向とかいうことではありませんが、沖縄県の教育委員会もそのように判断されるだろうというふうに思います。

青木委員 ありがとうございます。時間でございますので。

 やはり守るべきものは、義務教育無償の理念と地域の自主性の尊重、これに尽きると思います。手続にすぎないというふうに私は捉えておりますが、その目的を忘れて、それを誇大視してはならないというふうに考えています。今回の無償措置法改正案は、問題の根本的な解決にはつながらず、意に沿わない自治体を何とか無理やりに変えさせようとしているように映ってなりません。

 ぜひ、文部科学省といたしまして、もう一度原点に立ち返ってもらって、問題の解決のために真摯に検討していただきたいと思います。ぜひ、竹富町の主体性、自主性を尊重していただきまして、また、今大臣からもさまざま御答弁がございましたけれども、自然的、経済的、文化的なというまた別のくくりがあって、それも客観的な事実というのを誰が捉えるのか。やはり、ただ現場で子供と向き合って教壇に立っている教員の考えにぜひ真摯に向き合っていただきますように心からお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。失礼いたしました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 本日、最後の質問ということになります。どうしても前の先生方、委員の皆さんと質問がダブるところはあるかとは思いますが、そこはぜひ御容赦いただければというふうに思います。

 まず最初に、今ずっと話題になっておりました沖縄県竹富町教育委員会に対する是正要求について尋ねます。

 三月十四日、文科省は、地方自治法に基づき、竹富町教育委員会に是正要求を出しました。市町村に対する国からの直接の是正要求というのは初めてのケースだと伺っております。

 市町村に対する是正要求について定めた地方自治法第二百四十五条の五の四項によれば、市町村の事務の法令違反の場合、あるいは適正を欠いて公益を害している場合において、特に緊急を要するときに是正要求を可能としております。今回の是正要求は、この条文の何を理由として出されたものなのでしょうか。

下村国務大臣 地方自治法第二百四十五条の五第四項では、市町村の事務の処理が法令の規定に違反していると認められ、かつ、緊急を要するときその他特に必要があると認めるときに、各大臣が市町村に対して是正の要求ができるということになっております。

 竹富町教育委員会は、八重山採択地区協議会の規約に従ってまとめられた結果と異なる教科書を採択しております。これは、共同採択地区内の市町村は協議して同一の教科書を採択しなければならないと定めた教科書無償措置法第十三条第四項に違反をしております。

 また、昨年十月には、沖縄県教育委員会に対し、竹富町に是正の要求を行うよう指示したところでありますが、五カ月近く経過してもなお是正の要求が行われないまま新年度が迫ってきたことから、特に必要があると判断して、直接竹富町教育委員会に対して是正の要求を行いました。

 この四月からのぎりぎりの逆算で、三月の十四日ぐらいがもうぎりぎりの、是正を国が直接要求する最後の日数であるというふうに判断したわけであります。

吉川(元)委員 竹富町の場合、残念ながら教科書は国によって無償配付されておりませんけれども、教育現場では実際、混乱は生じておりません。

 これは琉球新報に出ておりましたけれども、竹富町の教育長は、「なぜ今さら是正要求するのか。子どもたちには何の教育的不足もない。」この後ですけれども、「指導計画書は既に出来上がっている。これを変えるとなると大変な混乱」になると。

 ぎりぎりのところ、三月十四日はぎりぎりだと言われましたけれども、もう現場は既に採択している教科書に基づいて計画を立てているわけで、かえって是正の要求というのは現場に混乱を生むのではないかと思いますが、この点についていかがですか。

下村国務大臣 吉川先生も、ここはもう立法府なわけですね。法律をつくるところが国会なわけです。ですから、我々はいろいろな、信条はそれぞれ立場も違うし、考え方も違うかもしれませんが、やはり立法としてのルールは守るというのは前提条件だというふうに思うんですね。ですから、違法状態であっても現場がよければいいじゃないかということになったら、法治国家としては成り立たないわけです。

 実際、無償措置法に違反しているという状態について、放置するわけにいかないということでのぎりぎりのタイミングでの指導であります。

吉川(元)委員 竹富町の教育長のお話は、本当にこれは切実だと思います。今から変えろと言われたって、もうあと二週間しかないという中で、これは非常に現場に混乱を生むというのは事実だと思います。

 その上で、今回、是正要求ということですけれども、これも既にほかの委員の方が言われましたが、地教行法の二十三条の六のところでは、教科書の取り扱いを教育委員会の職務権限と明記しております。地教行法によれば、竹富町教育委員会のケースというのは、地教行法上は法令違反は犯していないというふうにも言えるわけです。

 これについて少し尋ねますけれども、二〇一一年の十月二十八日、我が党の照屋寛徳議員から質問主意書が出されております。同年の十一月八日に答弁書が策定をされております。

 答弁書では、竹富町の教育委員会が採択地区協議会の結果と異なる教科書を採択するのであれば、国が無償で教科書を給付することはできないというふうにしつつ、どういうふうに答弁書に書かれているかといいますと、結構長いんですけれども最後だけ読みますと、「国による無償措置によらず、自ら教科用図書を購入し、これを児童生徒に無償で給与することは、無償に関する法律の趣旨に反しているとはいえず、無償措置法によっても禁止されるものではないと考える。」というふうな答弁書が出ております。

 これについて、この答弁書、変更はないということでよろしいんでしょうか。

下村国務大臣 無償措置法を無視して、自分たちが勝手に違う教科書を使っているということであります。これについては、禁止はできないということですが、しかし、違法状態であることは事実ですから、これは無償措置法にのっとって、本来採択すべき教科書を使ってもらいたいというのは国の考え方であります。

 今回の竹富町教育委員会に対する是正要求は、無償措置法違反を是正するため必要な措置を講ずることを求めたものでありまして、これは矛盾するものではありません。

吉川(元)委員 これはほかの委員の方からも質問が少し、意見表明といいますか、ありましたけれども、無償措置法というのは、目的を読みますと、「教科用図書の無償給付その他義務教育諸学校の教科用図書を無償とする措置について必要な事項を定めるとともに、当該措置の円滑な実施に資するため、義務教育諸学校の教科用図書の採択及び発行の制度を整備し、もつて義務教育の充実を図ることを目的とする。」これが目的なわけです。

 確かに、共同採択、これは見解の相違だとは思いますけれども、この法律に違反しているというふうに言われますけれども、違反をしているがゆえに、国は無償で教科書を提供していないわけじゃないですか。もちろん、私自身は、先ほどの委員と同じ意見で、違っていたとしても無償で国が出すべきだというふうに思いますけれども、竹富町の方は無償で出せというふうに言っているわけではないわけです。自分たちでお金を出し合って無償で教科書を子供たちに配付している、給与している。

 これについては禁じていないというふうに答弁書が出ているわけです。それなのに、なぜ、是正要求という非常に強い、初めてのケースでここまで強いことを言わなければいけないのか。この点はちょっとやはり理解ができないんですが、この点についてはどうお考えでしょうか。

下村国務大臣 これは見解の相違とかいうレベルではないんですね。

 政権が交代しても、民主党政権から今日に至るまで、政府側は、これは違法状態であるということはずっと変わっていないんです。無償措置法に違反しているということで、当時から、平成二十三年から指導をしているという継続性がずっとあるわけです。にもかかわらず、竹富町教育委員会はそれに従っていない。沖縄県教育委員会を通じてでありますけれども、従ってこなくて今日に至っている。

 無償措置法に違反をしながら、一方で自分たちは別の教科書を、篤志家の人たちに浄財を出してもらって使っている。だから、学校では教科書を使っているじゃないかということで、問題ないんじゃないかということを主張されているわけですが、それについて禁止はしていません。禁止はしていませんが、しかし、本来使うべき教科書を使っていない違法状態が続いている一方で、違う教科書を勝手に使っている。それについて禁止はしていないというだけであって、それ自体を放置するわけにはいかないということであります。

吉川(元)委員 無償措置法に基づいていないと。だから、国は無償で教科書を出していないわけですよね。そのことについて、竹富町は無償で出せというふうに国に対して要求を仮にしているとすれば、だったらこれを守ってくださいよと言うのは理解できます、もし仮にそうであれば。だけれども、竹富町の場合はそういうことではないわけです。

 これはあくまで無償で教科書を給与するために、こういういろいろな決まりがあります、これを守ってもらわないと無償で給与できませんと。だけれども、もし仮にそうでなければ、では有償で、教科書を義務教育で子供たちが買うのかというんだったらそれはまずいでしょう。だから町として無償で、今言われていた浄財で提供しているわけです。

 だから、確かに、国は言えばいいと思うんです、だから無償ではできません、国は出せませんと。そこまでの話だと思うんですけれども、この点はどうですか。

下村国務大臣 無償措置法の精神というのはそういうところはあるかもしれませんが、ここで問題になっているのは無償措置法の中の共同採択の問題なんですね。共同採択の中で、共同採択で決めた教科書についてはそれを使わなくちゃいけないというのが無償措置法の中に書かれているわけです。その法律について違法状態のまま放置されているという法律違反であるわけです。

吉川(元)委員 これは続けてもなかなか一致点は見出せないかなというふうに思うんですけれども、例えば、勝手な教科書を使っていると言いますが、これは検定に通った教科書を使っているんです。例えばほかの採択地区においてはこれを採択されているという教科書を使っているわけです。だから、要は、国が無償で払うということについてはひっかかるけれども、教育上においてはそれは何の支障も来していないんだというふうに私は思います。

 もう時間が余りありませんので、次の質問に移らせていただきます。

 以前、地方分権推進法が参議院の行財政改革・税制に関する特別委員会で採決をされた際の附帯決議では、自治事務に対する是正要求というのは、自治体の自主性、自立性に極力配慮し、限定的、抑制的に発動すること、こういう附帯決議がつけられております。

 ましてや、これは既にもういろいろ議論がありましたけれども、大臣もよく御存じだと思いますが、八重山地区の採択協議会による教科書採択をめぐる経緯というのは、調査員の推薦リストにない教科書が採択リストに加えられるなど、竹富町教育委員会はその手順に対しても異議を唱えているということです。これも私は一理あると思うんです、竹富町教育委員会の話も。聞くべき内容を含んでいると思うんです。

 そういう中にあって、先ほど言いました附帯決議も含めて考えた際に、やはり是正要求というのは、しかも一方だけに対する是正要求というのはやはりバランスを欠いているのではないかと思わざるを得ません。

 地教行法の第四十八条に従って、これは既にやってきたと言われるかもわかりませんけれども、引き続き、指導、助言、援助の範囲内での権限行使にとどめるべきだと思いますけれども、いかがですか。

下村国務大臣 文部科学省としては、関係教育委員会の取り組みによる自主的な解決を促すため、平成二十三年九月以降二年以上にもわたり、繰り返し指導を行ってまいりました。

 また、昨年四月には、沖縄県教育委員会から、この問題の解決に向けた取り組みを積極的に行う旨の報告、文科省まで来られました。そういう報告も受けました。沖縄県教育委員会の指導による解決を期待して、その取り組みも我々は見守ってきたところであります。

 しかしながら、昨年九月、平成二十六年度の使用教科書についても同一の教科書の採択に至らなかったとの報告があったことから、昨年十月、沖縄県教育委員会に対し、竹富町に対し是正の要求を行うように指示をしたところであります。

 その後、是正の要求の指示に従って沖縄県教育長に対し直接指導をしたり、沖縄県教育委員会からの質問状に対して迅速に回答したりするなど丁寧に対応してまいりましたが、五カ月近く経過してもなお沖縄県教育委員会が是正の要求を行わないままに新学期が迫ってきたことから、竹富町教育委員会に対して直接是正の要求を行ったものであります。

 このように、文科省としては、関係教育委員会の自主性や自立性に極力配慮した丁寧な対応を行ってきたものと考えておりますが、それでも違法状態が是正されず、法令上の要件を満たすためには、国として、適正な教科書採択事務の執行を確保するため、是正の要求を初めとする措置をとることも必要であると考えているわけであります。

吉川(元)委員 この間やってきたということではあるんでしょうけれども、やはり是正要求は初めてのことでもありますし、これについてはもう少し指導あるいは助言、援助という範囲にやはりおさめるべきではなかったかというふうに思います。

 次に、ちょっと法案についてお尋ねをいたします。

 今回の改正では、教科書の共同採択地区においては規約を定め、協議の結果に基づき、種目ごとに同一の教科書を採択しなければならないとしております。さらに、採択地区協議会の組織や運営に必要な事項は政令で定めるとしておりますけれども、予定している政令の内容、とりわけ共同採択地区協議会における教科書採択の議決をどうするおつもりなのか、お聞かせください。

前川政府参考人 政令におきましては、委員の構成等に関する事項でありますとか協議会における委員の選任の方法や議決の方法など、規約に定めるべき事項等を規定することを想定しております。

 協議会における議決の方法など各事項の具体的な内容につきましては、各教育委員会が協議して規約において決定すべきものであると考えておりますので、政令でこのことについて一律に規定することは考えておりません。

吉川(元)委員 続いて、小規模化、これも議論が行われました。

 例えば、これも既にお話が出ておりましたが、二〇〇九年の三月、規制改革推進のための三カ年計画、閣議決定されておりますけれども、学校教育の自主性、多様性を確保する観点から、将来的にはですけれども、学校単位での教科書選択、採択地区の小規模化の検討や町村単位での採択地区の設定が検討事項とされております。

 この後、この閣議決定の内容をどう検討されてきたのでしょうか。また、現状では、大臣はこの閣議決定についてどのような認識をお持ちでしょうか。

下村国務大臣 教科書の採択地区については、平成八年に行政改革委員会から意見が出されて以来、平成二十一年に閣議決定された規制改革推進のための三カ年計画まで、累次にわたり小規模化等に関する指摘がなされており、これを受け、文科省ではこれまで、各都道府県教育委員会に対して、市町村教育委員会の意向等を的確に踏まえ、採択地区がより適切なものとなるよう不断の見直しに努めることについて指導してきたところでありまして、採択地区数については、平成八年度の四百七十八地区から平成二十四年度には五百八十五地区と増加しており、採択地区の小規模化が進行しているものと考えております。

吉川(元)委員 確かに、小さいところということになると、なかなか教科書の研究を含めて大変だというのは、これは事実としてあると思います。ですから、今回のような、竹富町教育委員会のようなケースを踏まえれば、なおかつ、無償措置法と地教行法との関係を整理するということでいえば、教科書研究については共同で行えるように措置しつつ、採択については、やはり地教行法に書かれてあるように、市町村教育委員会の職務権限とするということの方が私は合理的ではないかというようにも考えます。

 先ほど、午前中の中で、多分この件だったと思いますけれども、昨年十二月二十六日の中教審の初等中等教育分科会が取りまとめた「教科書採択の改善について」という中でも同じような内容のことが「今後の検討課題」、恐らくこれについて傍論だと言われたんだと思いますけれども、間違いなく「今後の検討課題」として設けられているわけで、この点についてはどのようにお考えなのか、お聞かせください。

下村国務大臣 教科書無償措置法が採用している共同採択制度は、教科書の採択に当たっての調査研究に地区内の多くの教員等が参画でき、教科書内容についての綿密な調査研究が可能となること、また、地区内の教員が共同で教材研究や授業研究を行うことが可能になるなどの意義がありまして、また、全国町村教育長会から制度存続を要望する意向も示されていることから、その見直しについては考えておりません。

吉川(元)委員 検討課題という中で、今回の混乱、こういうことが起こらないようにするためには、やはりこの検討課題を真剣に検討していただくということが私は大切だというふうに思います。

 時間が来ましたので、これで質問を終わります。

小渕委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。菊田真紀子君。

菊田委員 民主党の菊田真紀子です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、政府提出の義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。

 民主党が本法律案に反対する理由は、市町村の教科書の採択方法まで国が法律で一律に定める必要に対して疑義があり、とりわけ、教科書無償という理念にそぐわないものと考えるからであります。教科書採択は、現在の広域採択から、段階的に市町村や学校単位での採択へと移行していくことこそ望ましいと考えます。

 国は、あまねく教育環境の整備に力を注ぎ、その教育の内容については、でき得る限り学校現場、自治体に委ねることこそ、あるべき教育の姿であり、教科書無償と引きかえに、教育への国の介入、統制を強めることには大いなる危惧を感じます。

 麻生内閣においても、平成二十一年には、「将来的には学校単位での教科書選択の可能性も視野に入れて、教科書採択地区の小規模化を検討する。」ことを閣議決定していることを忘れてはなりません。

 それにもかかわらず、今回の政府改正案では、共同採択地区における協議会の設置を義務づけ、その結果に基づいた教科書を各市町村に強いる設計としていることは、過去の閣議決定と真逆の方向を示すものであり、共同採択の意義についての政府の説明は矛盾に満ち、説得力を欠くものと言わざるを得ません。

 仮に、小規模市町村が単独で教科書の調査研究をできないと判断するのであれば、教科書の共同研究を二つ以上の市町村で行い、採択は各市町村に任せるということも考えられますが、政府案のように、教育における地方分権の流れに反するかの制度改正には賛成できません。

 今回の改正案は、いわゆる八重山教科書問題を契機としていると認識し、さきの文科省による竹富町に対する是正要求とも絡む問題と考えますが、国の考えを正当化し、国の主張の裏づけとなる制度改正を目指すという姿勢が正しい教育行政と言えるでしょうか。むしろ、安倍内閣が国家主導の教育を押しつけようとしていることに強い危機感を覚えます。

 教育には、地域の実情に合わせた学校の特色ある取り組みを国が応援していく観点こそ必要不可欠です。国家の考えを強要し、統制しようという教育行政では、この国の未来を切り開くことはできません。

 以上、本案に反対する理由を申し上げ、反対討論といたします。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 私は、結いの党を代表して、議題となりました義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案に反対の立場から討論をいたします。

 今回の法改正は、沖縄県八重山地区の教科書共同採択をめぐって、採択の結果と実際に自治体が選択をした教科書が異なってきたという問題に端を発しています。こうした事例はまた、初めてだとも言われております。この初めての一つのルール違反に対して、法律そのものを、ルールそのものを変える対応というものが正しいのかどうか、疑問と言わざるを得ません。

 国がこれまで当該自治体や沖縄県教委などにたび重なる働きかけをしてきたことは承知しています。また、国が今月、当該自治体に対して是正要求をしたことが極めて異例だという声もありますが、法律そのものを変えて対処することは、極めて異例といった範囲には到底とどまらず、慎重な議論が求められると考えます。

 まだ国地方係争処理委員会への不服申し立てという手続も残っております。さらには、この違法状態、自民党政権、さきの民主党政権も違法状態ということを言ってきておりますが、違法かどうかを最終的に確認するのは裁判という道があります。そうした手続を慎重に考えていただきたい。

 沖縄県八重山地区の教科書採択の問題は、それぞれの自治体が子供たちに教えたいことがあるという強い思いに端を発した問題ではないでしょうか。尖閣諸島を念頭に領土のことを教えたい、また、基地問題について教えたい、こうした思いはどちらも否定されるものではありません。

 国も、教科書採択の地区単位については、「将来的には学校単位での教科書選択の可能性も視野に入れて、教科書採択地区の小規模化を検討する。」と過去に閣議決定をしております。自治体のニーズに応えること、また、学校教育の自主性、多様性を確保する必要性は今後さらに高まっていくのではないでしょうか。

 こうしたことを踏まえれば、教科書の採択権限は市町村、また将来的に学校に与えることを念頭に、共同採択の教科書研究の部分は、町村からの要望も踏まえ堅持をした上で、その研究結果を今法改正に盛り込まれたような公表する仕組み、また、教科書を選ぶ側も選択の理由を公表していく制度設計を議論することが大局的観点から必要だと考えます。

 以上のことから、今回の法律を改正する必要はないと考えますので、反対を表明して、私の討論を終わります。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 私は、日本共産党を代表して、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。

 義務教育教科書無償措置法の目的は、憲法第二十六条の義務教育無償の原則を実現することです。教科書の無償供与によって義務教育の場における児童生徒の学習条件を同一とし、教育の機会均等を保障しようというものであります。無償措置を教育への国家介入のてことすることは許されません。

 教科書の採択、選定は、憲法の精神に立って行われるべきであり、大事なことは、学校現場で実際に教育実践に当たっている教員による十分な調査や研究を踏まえ、地域住民の意見も尊重し、地域が自主的に決めることです。これが本来のあるべき方向だと考えます。

 ところが、今回の改正は、無償措置法が採択手続として定める広域の共同採択地区においては、採択地区協議会を設置することを法律で義務づけ、教科書採択権を持つ各教育委員会に対して、採択地区協議会の協議の結果に基づき、同一の教科書を採択する責務を課そうというものであります。

 これは、憲法の義務教育無償の原則を実現するという無償措置法の本来の目的を逸脱し、共同採択地区の協議でまとまらなかった場合に、同一教科書を各教育委員会に押しつける仕組みを強化するものです。地方教育行政の自主性を踏みにじり、教育の国家統制を招くものであって、到底認められません。

 本法案の契機として、二〇一一年の沖縄八重山採択地区での中学校公民教科書の採択問題が挙げられています。

 八重山の教科書採択問題は、地区協議会会長が、特定の教科書を選定しようとして、独断的な規約改正や運営を行い、調査員の調査で最もマイナス点の多かった教科書を議論もなく選定したところに問題の根本があります。それに対して、文科省が地方教育委員会の権限に属する採択方法にまで立ち入って介入したことが、問題をこじらせた原因です。今回、竹富町教育委員会に直接是正要求をするという強権を発動したことは、異常としか言いようがありません。

 改めるべきは文科省の介入であり、法まで変えて介入を正当化することは本末転倒も甚だしいと指摘しなければなりません。

 八重山の問題は、当該教育委員会の話し合いと努力に委ねるべきであり、現にそうした努力が続けられてきました。文科省は不当な強権的介入を直ちにやめることを重ねて強く主張し、討論を終わります。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党・市民連合を代表し、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置法改正案に対し、反対の立場から討論を行います。

 冒頭、教科書採択をめぐり、文部科学大臣が沖縄県竹富町教育委員会に発出した是正要求について、撤回を求めます。

 地方教育行政法第二十三条は、教科書の取り扱いを教育委員会の職務権限と明記しており、その点から見れば、竹富町教育委員会による教科書採択に何ら違法性がないことは明白です。

 是正要求は、教育の自主性、多様性に対する国の介入であり、竹富町の教育現場に混乱をもたらすだけのものです。文科省が行うべきは、竹富町教育委員会に是正要求を出すことではなく、八重山採択地区協議会の運営をめぐる経過を正確に把握し、疑義をただすことにあると考えます。

 さて、本改正案は、教科書の共同採択地区における協議の規定の整備、採択地区の市郡から市町村への変更などを盛り込んでいますが、教科書の取り扱いを教育委員会の職務権限とした地方教育行政法と教科書無償措置法との間の矛盾は、何ら整理されていません。

 共同採択地区の市町村への変更自体を否定するものではありませんが、本改正案をもって共同採択地区における教科書採択のあり方を強制しようとするのであれば、参加する市町村教育委員会の間で教科書採択の判断が異なった場合、無用な混乱とあつれきをもたらすことは明白です。

 八重山採択地区で起きた教科書採択をめぐる事案を念頭に置くのであれば、教科書研究については共同で行い、採択に当たっては市町村教育委員会の判断を可能とする法改正こそ必要だったのではないでしょうか。

 また、過去に閣議決定されている学校単位での教科書採択や、採択地区の小規模化の検討が進められてきた形跡が見られないことも問題です。

 以上の観点から、本改正案に反対することを申し上げ、私の討論といたします。

小渕委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中根一幸君外一名から、自由民主党及び日本維新の会の二派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。鈴木望君。

鈴木(望)委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 政府は、採択地区協議会の協議結果に疑義が生ずることを防ぐため、関係市町村教育委員会が協議して定める採択地区協議会に係る規約が明確なものとなるよう、採択地区協議会の組織及び運営に係る政令の整備に万全を期すること。

 二 政府は、採択地区協議会における充分かつ慎重な協議を確保し、採択手続の透明性が高められるよう、市町村教育委員会が教科用図書を採用した理由等の公表を促進するための方策を講ずること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

小渕委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

小渕委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

小渕委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五分散会


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