衆議院

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第10号 平成26年4月4日(金曜日)

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平成二十六年四月四日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      小此木八郎君    神山 佐市君

      菅野さちこ君    木内  均君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    桜井  宏君

      新開 裕司君    末吉 光徳君

      田中 英之君    武井 俊輔君

      冨岡  勉君    中川 郁子君

      中山 展宏君    永岡 桂子君

      野中  厚君    馳   浩君

      福山  守君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君    武藤 貴也君

      菊田真紀子君    中川 正春君

      細野 豪志君    岩永 裕貴君

      遠藤  敬君    椎木  保君

      田沼 隆志君    三宅  博君

      中野 洋昌君    柏倉 祐司君

      井出 庸生君    宮本 岳志君

      青木  愛君    吉川  元君

      山口  壯君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   国立国会図書館長     大滝 則忠君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 渡辺 克也君

   政府参考人

   (文化庁次長)      河村 潤子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月四日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     田中 英之君

  新開 裕司君     末吉 光徳君

  永岡 桂子君     武藤 貴也君

  比嘉奈津美君     福山  守君

  吉田  泉君     中川 正春君

  遠藤  敬君     岩永 裕貴君

  椎木  保君     田沼 隆志君

同日

 辞任         補欠選任

  末吉 光徳君     新開 裕司君

  田中 英之君     中山 展宏君

  福山  守君     武井 俊輔君

  武藤 貴也君     永岡 桂子君

  中川 正春君     吉田  泉君

  岩永 裕貴君     遠藤  敬君

  田沼 隆志君     椎木  保君

同日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     中川 郁子君

  中山 展宏君     池田 佳隆君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 郁子君     比嘉奈津美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官渡辺克也君及び文化庁次長河村潤子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。おはようございます。

 先日に引き続いて質疑をさせていただくこと、感謝を申し上げたいというふうに思います。

 ちょっと本論に入る前に、もう一つ、済みません、これも事前に通告はしていないんですけれども、もう一回だけ聞かせていただきたいんです。教科書の無償給与の話なんですけれども、参議院の方に今民主党の方から、修正案といいますか、対案を出させていただいています。

 中身は、グループで決めていくということにこだわらずに、それぞれの教育委員会の主体性の中で、ということは、地教行法の基本的な考え方に基づいてこれを決めていくということ。もう一方で、必要があれば共同で研究をしたらいいじゃないか。研究をするということについては、妨げないといいますか、必要のあるところは大いにやったらいい。けれども、最終的に決めていくのはそれぞれの教育委員会ですよということ。

 その意味合いは、これからまた地教行法の改正、教育委員会をどうするかという議論に移っていくわけでありますが、そのときに、政府の方も、あるいは自民党の方も、責任といいますか、教育委員会にしっかりとした責任権限というものを付与していくというか、はっきりさせていく。それも、教育長だけじゃなくて、首長も含めた形で地方自治体が責任を持っていくというような、そういう流れにしていくんだということ。

 これは、細部にわたってはいろいろ違いは私たちとはあると思うんですが、基本的な流れについては、私もそれで正しいと思いますし、そういうことで地方自治体自体が教育に責任を持っていくという体制をつくっていくんだと思うんです。

 そういう意味からいうと、余り今回のいわゆるロジスティックの改正にこだわらずに、基本的なところで今ちゃんとした形態をつくっていく、教育委員会が基本的には教科書の決定権を持っていくんだというふうに整理をしていくということがいいんだと思うんですよ。

 そういう意味で、参議院の方でせっかくそういう提起をさせていただいておりますので、政府の方も、どうですか大臣、今回一緒に乗っていただいて、改正してしまうというところで踏み切っていただくということ、このことを改めて要望したいんですけれども。

下村国務大臣 おはようございます。

 今の教科書採択の問題は既に衆議院で可決をしていただいているわけでございますから、参議院でどのような修正案が出てくるかということはまだ承知しておりませんので中身についてはぜひお聞かせ願いたいというふうに思いますが、しかし、無償措置法そのものの存在を問うような今の御質問といいますかお話にもなってくるのではないかと思いますから、これは、にわかに前向きにというわけにはやはりいかないというふうに思います。

 ただ、今回の改正案においても、共同採択地区については、これは都道府県の教育委員会が判断をする。もちろん個々の市町村の教育委員会の意向を受けてということでありますから、当然これは、都道府県の教育委員会と市町村の教育委員会で共同採択地区についてどんな対象にするかどうかということは議論して決めるということでありますから、相当、地方自治体の意向を反映した共同採択地区になってくるというふうに思いますし、それはもうそれぞれの都道府県教育委員会、市町村教育委員会にお任せをするということでいいのではないかと思います。

 法律そのものを修正するということは、これはもう本院で可決をしていただいたことですので、政府としては考えておりません。

中川(正)委員 残念な答弁だというふうに思いますが、余りこだわらずに、やはり筋の通るところはどんどん一緒にやっていくという政府の姿勢というのをこれからも求めていきたいというふうに思います。

 それでは本論の方に移りたいと思うんですが、先日に引き続いて、特定の出版物に係る権利の部分でまず質疑をしていきたいと思います。

 特定の出版物に係る出版権設定を認めた場合に、その物権的効力の及ぶ範囲は当該契約に係る特定の出版物限りということになるために、同一著作物について複数の、一号出版権、二号出版権を設定できるということになるものと思われますが、そのような理解でいいのか。前回もちょっとやったんですけれども、受けとめ方がちょっと十分でなかったということもあるので、改めて聞かせていただきます。

河村政府参考人 出版権につきまして、現在の法文上に書いてある規定よりさらに細分化して設定できるかというお尋ねかと存じます。

 これについては、複製権等がどこまで分けられるかというその可分性に応じるという考え方になろうかと存じますが、利用態様としての区別が明確ではなく、また、権利を分割することによって実務などに混乱が生ずるおそれがある場合にまでは、出版権の内容を細分化して設定することを認めるのは適当ではないと考えております。

 ただ、ここで例えばということで申し上げさせていただきますと、認められる出版権の分割の例を申し上げてみるとすれば、第八十条第一項第一号の権利を、紙媒体による出版権とCD―ROM等による出版権とに分けるということは考えられると存じます。このような場合においては、同一の著作物について複数の、第八十条第一項第一号の出版権が設定されることになるものと考えます。

中川(正)委員 次に、二号出版権が複製権を含んでいないというところの意味合いについてお聞きをしていきたいと思うんですが、二号出版権について、当該複製に係る権利を専有させないこととしたというのはなぜなのかということですね。

 出版関連小委員会報告書においては、電子書籍に対応した出版権の内容として複製権及び公衆送信権が適当であるというふうにされていると私は認識しているんですけれども、この形にしないで、複製権を専有させないということに法律ではなっている。この理由を教えてください。

河村政府参考人 今回提出の法律案の構成についてのお尋ねかと存じます。

 まず、現在の紙媒体の出版について申し上げたいと存じます。

 出版権は出版者と著作権者との間を調整する制度としてつくられているわけでございますが、紙媒体の出版に当たっては、一般に、著作物を複製して頒布、譲渡するということが行われます。

 現行法においては、当事者間の契約によって確保することができる権利に加えて、出版者が対抗要件を備えて独占的な出版を確保するとともに、有効な海賊版対策を行うに当たって必要となる、いわゆる準物権的な権利というものを特別に専有させるという観点から、頒布を目的とする複製権を出版者に専有させることといたしております。

 そうしますと、現行出版権の内容には譲渡権というものは含まれていないわけでございますけれども、出版権者は契約によって譲渡権についても許諾を得るということが想定されております。

 現に、日本書籍出版協会が作成しておられます契約ひな形では、出版権者は、頒布目的の複製権に加えて譲渡権についても専有するということが盛り込まれていまして、このひな形も用いられているという実態がございます。

 今回、インターネット送信による電子出版についての規定を設けるわけでございますけれども、この電子出版に当たりましては、著作物を公衆送信目的で複製し、公衆送信が行われるということでございます。

 これに関する規定をつくるに当たりましては、現行著作権法の規定ぶり、先ほどちょっと申し上げましたけれども、これを踏まえまして、改正案についても、出版者が対抗要件を備えて独占的な電子出版を確保するとともに、有効な海賊版対策を行うに当たって必要となる準物権的な権利を特別に出版権者に専有させるという観点から、公衆送信権のみを専有させる、こういうつくりといたしたものでございます。

 そうしますと、この改正案において、電子出版に対応した出版権の内容に複製権は法律の中には含まれていないということになりますけれども、出版権者が契約によって公衆送信目的の複製についての許諾を得るということは当然に想定をされておりまして、今後、例えば契約ひな形などにおいて出版権者は、公衆送信権に加えて、公衆送信目的の複製権についても専有するといったようなことが盛り込まれて用いられていくのではないかと考えているものでございます。

中川(正)委員 先ほどの答弁でも、公衆送信に必然的に複製が伴うということだと思うんですよ。だとすれば、自然の考え方というか、そういう形でいけば、公衆送信権と電磁的記録としての複製権をセットにして初めて必要最小限の権利と言えるのではないかというふうに思うんですけれども、公衆送信権だけ取り出してしまうということは、この必要最小限にすら満たないことになるのではないかという懸念といいますか見方ができるかと思うんですけれども、これについてはどうですか。

河村政府参考人 お答え申し上げますが、少し繰り返しになってしまうかとは存じます。

 紙媒体の現在の出版に当たっては、著作物を複製して頒布、譲渡することが行われておりますけれども、現在の法文上では、特に専有するものとしては、複製権ということでの規定となっているわけでございます。

 同様に、公衆送信による電子出版に当たりましても、公衆送信目的の複製と公衆送信ということが行われるわけでございますけれども、現在の著作権法の規定ぶりを踏まえまして、特に出版者、出版権者に専有させる観点の権利として、公衆送信権を専有させることといたしたものでございます。

 実態としては、法律で全てを書き切るということではなくて、契約との組み合わせで実際の出版活動というものが行われてまいるわけでございますので、全体としてこれは機能していくというふうに考えるものでございます。

中川(正)委員 この話は、次の設問の中で、いわゆる海賊版対策に関連をしてきます。

 二号出版権について電磁的記録としての複製権を専有させないとした場合に、公衆送信については差しどめ可能であるものの、その前提となる電磁的な複製行為、データのコピー等に対しては対抗できないということになりまして、海賊版対策としてこれで十分と言えるのかということ。

 もっと具体的に言えば、電子の場合、一度公衆送信されてしまえば、事後的に差しどめを行っても効果は乏しいということから、予防的差しどめが不可欠であるということだろうと思うんです。たとえ公衆送信について予防的な差しどめを行ったとしても、複製行為自体について差しどめができないのであれば、差しどめを受けた者以外の者を通じて容易に公衆送信が可能になってしまう、そういう可能性があるということ。

 それからもう一つは、公衆送信権のみでは、DVDだとかあるいはUSBメモリー等の記録媒体を用いた違法な複製、頒布について一切差しどめができないということとなってしまうということです。

 こういうことから、海賊版対策の観点からこれは支障が出てくるのではないかということが懸念されます。それについてお答えをいただきます。

下村国務大臣 公衆送信を行う前の複製の段階で海賊版を発見することは、極めてこれは困難であると考えます。

 仮にそのような海賊版を発見した場合には、出版権者は公衆送信目的の複製に対して公衆送信権の侵害予防のための差しとめ請求が認められ得るため、結果的に、海賊版対策に何ら支障はないというふうに考えます。

中川(正)委員 違法配信目的のスキャンについては、常に公衆送信権を侵害するおそれがあるとして複製段階で差しとめが可能であるという、そういう理解でいいということですか。

河村政府参考人 先ほど大臣からもお答えを差し上げましたけれども、公衆送信を行う前段階での複製行為というものは、通常、公然とは行われないわけですので発見することは大変困難であると存じますが、仮に発見できた場合には、著作権法第百十二条によりまして、公衆送信目的の複製に対して、公衆送信権の侵害予防のための差しとめ請求が認められ得るということでございます。

 その目的が認定されるかどうかということについては、これは個々の事案によるというお答えになろうかと存じます。

中川(正)委員 次に、一号出版権のみを設定した場合の海賊版対策について聞いていきます。

 頒布の目的を持った電磁的な複製行為、これはスキャン及びそのデータのコピー等ということになりますけれども、これについては第一号出版権者において差しどめることができるという理解でいいのか。

河村政府参考人 第八十条第一項第一号に規定される紙媒体等での出版に関する権利は、頒布の目的を持った複製行為に広く及んでまいりますので、御指摘のような電磁的な複製行為についても、頒布の目的を持って行われるものについては、出版権者がみずからの権利に基づいて複製行為を差しとめることができると解しております。

中川(正)委員 それでは、ネット配信目的での電磁的な複製行為についてはどうなりますか。

河村政府参考人 第八十条第一項第一号に規定される紙媒体等での出版に関する権利は、頒布の目的を持った複製行為に広く及ぶものでございますが、公衆送信目的での複製行為に及ぶものではありません。

中川(正)委員 頒布と公衆送信、この目的が違うからできないんだ、こういうことですが、そうすると、海賊版対策という観点からは端的に公衆送信を差しどめることが非常に重要だと思うんですけれども、一号出版権のみでは、実際に公衆送信されてインターネット上にアップロードされているにもかかわらず、出版者においても何もできないということになり、今まさに行われようとしている違法な公衆送信について未然に防ぐことさえできないということになってしまうわけですが、これは海賊版対策としてなかなか十分と言えないのではないかということです。ここはどうですか。

下村国務大臣 改正案において電子出版についての出版権を設定することが可能となることから、インターネット上の海賊版対策については、これを十全に活用することが肝要であると考えます。

 すなわち、著作権者が紙媒体の出版を希望し、当面電子出版を見合わせたいという場合においても、インターネット上の海賊版対策を適切に行う上では、当事者間において義務を柔軟に設定し、電子出版についての出版権を設定することが有効な方策であると考えます。

中川(正)委員 中には、紙媒体等による出版のみをしたいと考えている著作権者において現実的にこのような契約を締結するのがどうか、一つの疑問が残ります。

 それから、仮にそのような出版義務を柔軟に設定するということで一号、二号双方の権利が設定されたとしても、形だけやって、あと出版しないということ、いわゆる塩漬けの問題がそこからまた出てくるという可能性があるということでありますので、そこについての問題はやはり残るんじゃないかというふうに思うんですが、どうですか。

河村政府参考人 著作権者が紙媒体の出版を希望し、当面電子出版は見合わせたいと考える場合におきましても、インターネット上の海賊版の対策を適切に行う上では、当事者間において義務をさまざまな形で柔軟に設定していただき、電子出版についての出版権を設定することが有効な方策であると考えております。

 多様な読者層への対応ということを考えましても、適切な海賊版対策ということを考えましても、同じ出版者に八十条第一項第一号と第二号の両方の権利が設定されることが有効な契約パターンであると考えますので、その中でもまた幾つかのパターンは考えられるかと存じますが、十分に私どもとしても、良好な契約慣行の形成に資するための趣旨徹底などをさせていただきたいと思います。

 先ほどお尋ねの中で、例えば、著作権者が柔軟に義務を設定して、いよいよ電子書籍の出版をしたくなったというときに、塩漬けのままになってしまうのではないかという御懸念をおっしゃられたわけでございますけれども、それは、例えば契約の中で、著作権者が電子出版を希望する場合には出版権者と協議し期日を定めることができるといった規定を入れておくことも一つの方策であると存じますし、また、著作権者が第三者から電子出版を行う場合は最初に設定いたしました出版権の設定契約を解除することができるといったような、その著作権者の意向も尊重される規定を入れていくということも方策として考えられるのではないかと考えております。

中川(正)委員 どこまでも契約でということをベースに言われるんだろうと思うんですが、ここもこれまでの経緯の中で議論があったところで、やはり、みなし規定というのを置くことによって、逆に契約そのものが柔軟になっていくというメリットが出るわけです。これも課題としてあるなということを指摘をしておきたいと思います。

 そして次に、この電子出版権の創設というのは第一ステップでありまして、最終的には登録管理制度及びナショナルアーカイブに向けて、日本のクリエーターがそれこそ世界に出ていくような基盤をつくっていくということが私たちの目標だというふうに私は思っています。

 そういう意味で、登録管理制度を一つつくり上げていく、今のものではなかなか不十分であるのでつくり上げていくということと同時に、国立国会図書館を中心にしてアーカイブ化していく、それをどう活用するかということについても新しいシステムをつくっていくということ、これが次の目標だというふうに思います。

 そこについて文化庁としてあるいは文部科学省としてどのようにコミットをしていこうとされていくのか、あるいはまた、どういう舞台といいますか、法律の整理も含めてこれをつくっていこうとされるのか、改めてお聞きをしておきたいと思います。

河村政府参考人 まず登録制度でございますけれども、登録制度は、例えば権利の二重設定などが行われるような場合に、取引の安定を確保するためにつくられているのが制度趣旨でございます。

 この登録制度について、さらにもっと使いやすい、活用しやすい環境にしていくということは一つの重要な課題と考えておりますので、今後、出版権について改正された場合に、新しい出版権についても、さらに使いやすくなるにはどこを見直すべきかということは検討してまいりたいと考えております。

 一方、ナショナルアーカイブについてのお尋ねでございます。

 歴史的、文化的価値のある文化関係資料のアーカイブの整備ということは、文化の次世代への継承を図るとともに、新たな文化を創造する基盤ともなるものでございますので、国として、これを推進していくことが重要と認識をいたしております。

 文化庁としては、例えば、音楽あるいは写真フィルムなどのモデル分野の調査研究を進めてまいりましたが、二十六年度、今年度からは、関係機関や有識者の参加も得て、さらにより幅広い分野にわたる文化関係資料のアーカイブのあり方について、総合的な検討を開始したいと考えております。

 この文化関係資料と申しましても、例えば図書のアーカイブにつきましては、図書及びその他の図書館資料の収集を任務とされる国立国会図書館が中心になるのではないかと考えております。

 文部科学省、文化庁として、国としてのアーカイブのあり方を検討する際には、このような国会図書館を初めとする関係機関とも十分に協力、連携を図りながら、取り組みを進めてまいりたいと存じます。

中川(正)委員 文化遺産全体のアーカイブ化というのは、いろいろなレベルがあると思うんです。どこに何があるかということを整理してデータ化するということから始まって、そのもの自体をアーカイブ化していく、本であればデータベース化していくということなんですが、そのときに、電子媒体ということが改めて時代の波になってきたわけで、電子媒体でアーカイブ化していくことが非常に社会を変えるというか、大きな変革の第一ステップになっていくんだろうと思うんです。

 そういう意味合いで、ひとつ、そのアーカイブ化の議論を進めていただきたいというふうに思います。

 それから同時に、もう一つ私の夢がありまして、日本のコンテンツ、特に書籍というのは、日本語なんですよね。英語だとかヨーロッパ語にある程度変換はされていますけれども、例えば、インドネシア、フィリピン、あるいはタイとか、そうした世界それぞれの言語にこれが翻訳されて届けられるというふうなことがあったときに、恐らく、日本の今クリエーターがつくり上げているコンテンツというのはすばらしい可能性に広がっていくんだろうというふうに思うんです。

 この際、クール・ジャパンという方向性もありますから、こうした翻訳機構みたいな、人材バンクも含めてベースをつくって、その上で、紙だとそれぞれリスクもありコストもかかるんですけれども、電子書籍という形で全部アップロードすれば、これはまた違った意味合いがここから出てきて、新しい戦略がつくれるんだろうというふうに思います。

 そんな機構もひとつぜひつくっていきたいなというふうに思っておりますし、政府の方も、そうした意味合いでぜひ構想を練っていただければというふうに思います。

 そんな提起もさせていただいて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 改めまして、おはようございます。

 それでは、前回に続きまして質問をさせていただきたいと思います。

 前回の質問では、インターネット時代になっても日本の出版文化を守っていく必要があり、出版行為の中の中核ともいうべき企画、編集、校閲等の機能を守っていく必要があるのではないかという観点から質疑をさせていただきました。その関連で、まず巨大プラットフォーマーと伝統的な中小の出版業者とのかかわり合いについて質問をさせていただきたいと思います。

 最初に、今から五年ほど前に、グーグルがアメリカの主要大学などの図書館と提携をしまして、蔵書を著作権者の許諾を得ずにデジタル化、データベース化した事例がありました。いわゆるグーグルライブラリー、グーグルブック検索騒動というふうに言われているようでありますけれども、欧米各国で相当大きな話題となったわけであります。

 その際も、長い伝統文化の蓄積を誇りますドイツやフランスは国が厳しくそういった行為を指弾したわけでありますけれども、これはまさしく、プラットフォーマーが世界を股にかけて巨大な力を持っているということを改めて世に示した事例であろうかというふうに思います。

 そこで、どういう行動形態をとったのかということを私ども十分認識しておく必要があるんじゃないのかなと思うんですが、まず、グーグルはどのような理由、根拠をもってこういったデータベース化というふうなことを、ただ単に金もうけしたいんだということだけではないと思うんですけれども、独善的ではあっても、根拠、理由があったかと思うんです。そこら辺についてはどういうふうに認識をしておるのか、文化庁にお尋ねをしたいと思います。

河村政府参考人 グーグル社は、二〇〇四年末にグーグルプリントプロジェクトを打ち出しまして、その中で、プリントライブラリープロジェクトとして、世界の大規模な図書館の蔵書をスキャンしてデジタル化し、インターネットで全文検索できるデータベースを構築する仕組みを打ち出しました。これが後にグーグルブックサーチ、現在ではグーグルブックと呼ばれている事業でございます。

 グーグル社がこの事業を行おうとした理由でございますが、グーグル社のホームページによれば、この事業の目的は、出版社及び図書館と連携し、全ての書籍の包括的で検索可能な仮想カタログを全ての言語で作成することであり、最終的には、ユーザーが新しい書籍を発見しやすくなることや、出版社が新しい読者を獲得しやすくなることを目的にしていると述べております。

鈴木(望)委員 私がちょっと調べてみた範囲では、グーグル社は、平たく言いますと、アメリカで、いわゆる本屋がないような地域で、本を手にとって見ることができない、どういうものかよくわからないような人に対しても、きちんと書籍を手にとって見ることができるというような機会を提供するということが自分たちの使命であるというような理由をもって、こういうグーグルライブラリーというようなことをやろうとしているんだというような記述があったかと思います。

 それはそれとして非常に一面の論理ではあるんですけれども、一方では、著作権者の権利であるとか出版社の今までの努力を全く無視していいとこ取りをグーグルがするという側面もあるわけで、そういう側面からすると、極めてひとりよがり、自分の考えが世界の常識であると思っている、思い上がりも甚だしいというふうに私は思います。

 それでは、そういった行為に対して日本の著作権者、出版権者はどのような対応をしたのか、可能だったのか。例えば、名前を出していいのかどうかわかりませんけれども、日本経済新聞の出版局また出版社が、自分が関与しているところで数千件のいろいろな書籍、書物がグーグルライブラリーで無断に複製をされたというような記述もあるわけでありますけれども、どういう対応を日本の出版権者、著作権者はしたのかどうか、お答えをお願いいたします。

河村政府参考人 グーグルブックサーチについては訴訟となったわけでございますが、そのグーグルブックサーチ訴訟に関して二〇〇八年十月に当事者間でまとまった和解案は、その効力が交渉に参加していない国内外の関係者にも及ぶものであったことから、我が国の著作権者や出版者からは異論が唱えられたと承知をいたしております。具体的には、日本文藝家協会、日本ペンクラブ、日本写真著作権協会、日本出版者協議会といった団体からグーグル社に対して和解案に抗議や反対の意思の表明があったと承知をいたしております。

 なお、日本国政府としても、二〇〇九年十一月に、在米日本国大使館から外交ルートを通じて、本件は、日本の著作権者等にも大きな影響が及ぶ可能性があり、我が国の活字文化、出版文化のあり方にも深くかかわる問題であって、日本の著作権者等についても公平、公正な扱いが確保されることが必要であるという観点から状況を注視していること、本件が、著作権に関する条約に沿う形で解決されることが重要であると考えていることを伝えるとともに、新たな和解案の内容等について日本の著作権者等に対する速やかかつ十分な情報提供が行われること等が望ましいということを伝達いたしました。

鈴木(望)委員 無断でデジタル化した書籍のデータの削除要求みたいなことをしたんじゃないんですか。今、協会というか一般的なそういった権利を持つ人々の団体が抗議声明を出したとかなんとかと言っているんですけれども、具体的に、無断でデジタル化した書籍データの削除要求をしたのではないかと思うんですが、どうでしょうか。

河村政府参考人 恐縮でございますが、お尋ねのことについては、私ども十分に把握をいたしておりません。(鈴木(望)委員「済みません、何と言いましたか」と呼ぶ)把握をいたしておりません。

鈴木(望)委員 その事実がどうのこうのということよりも、ちょっと私もそこのところはもう少し調べてみたいと思うんですけれども、仮にその削除要求をしたとしても、私はしたと思うんですけれども、グーグルという巨大な力の前では、結局和解でいくしかない、和解でいった方が得策だというような考えも一つあったんだろうと思うんです。そういう格好で、いろいろなことを要求したり何かしても結局は無視をされてしまう結果になってしまったというのがこの事例ではないのかなというふうに私は認識をしております。

 そういう意味では、一号出版権、二号出版権という格好で今回著作権法が改正されたということで、日本の出版権者はこのような巨大企業と直接に対応していかなければならない。従来のままの対応では、巨大プラットフォーマーにとても太刀打ちができないおそれが当然あるわけでありまして、巨大プラットフォーマーにどう対応していけばいいのか、いくべきであるのか、そのためには国はどのような支援をすべきであるのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。

河村政府参考人 このたびの電子出版についての出版権の設定ということが可能になりますと、出版者の電子出版を行う地位が、主体となることができるようになりますので、法的に強固なものになると考えております。

 著作者にかわってとか、著作者の意向を受けて代理のような形でやるという手続ではなく、出版者がみずから独占的に電子書籍を制作、配信するだけでなくて、権利者として主体的にプラットフォーマーと電子出版に係る各種の契約交渉ができるようになるわけでございます。

 ですからその点を、私どもとしても、改正法の趣旨、内容の中核となるところだということで、中小の出版業者の方々を含め、出版者、著作権者の関係者に対して十分周知をし、契約パターンなども含めて新たな出版権制度が効果的に活用されるように取り組んでまいりたいと考えております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 直接交渉しなくちゃいけないというのはある面では一つの進歩かもわからないんですが、私は、そうなった場合に、我彼の力量の差というか資本の差というか、また、世界を股にかけているか股にかけていないかという一つの大きな事実の前に、直接対応することができるようになったということがどれほどの意味を持つのかなという感じがしないでもないんですね。

 そういう観点からいいますと、日本が非常にバブルで沸いていた一九八〇年代後半、その当時、日本が大幅な貿易黒字ということで、アメリカから日本の市場開放が要求されたというようなことがございました。その当時、さまざまな規制があるから日本になかなか輸出ができないんだというアメリカの主張がありまして、規制の撤廃という中で、大店法の規制撤廃もあったわけであります。その結果が、現在のシャッター商店街、特に地方都市で著しいわけですけれども、地方都市における商店の疲弊、商店街が寂れてしまったということを招いた、これは結果として事実だろうと思うわけであります。

 これは規制撤廃によって地域の商店街が疲弊をしてしまったという一つの事例でありますが、事柄は違うんですが、今回の法改正によって、日本の出版業界が日本の地域の商店街のような格好でもってどんどん衰退をしていくというようなことが起こるんじゃないのかなという懸念がどうしても拭えないわけであります。

 そういう意味で、国は断固として既存の出版業界を巨大なプラットフォーマーから守らなければならない、それが日本の文化を守っていく一つの方策でもあるというふうに考えているわけですが、このままでは、日本の出版業界というのは遅かれ早かれだんだんと衰退の道をたどっていってしまうんじゃないのかなという危惧の念が私は消えないわけであります。行政としてそれでいいというふうに思っているわけではないと思います。

 先日、週刊新潮の掲載記事を出させていただきました。その中に無策というふうに文化庁のことを非難してありますが、要するに、何とかしてくれという要望のちょっと反対側の表現が非難という格好で来ているんじゃないのかな、裏側には何とかしてほしいという気持ちがあるんじゃないのかなというふうに思うんです。

 国として支援する方策、そこのところで名指しで問われている文化庁、どんなことを考えておられるのか、御答弁をお願いします。

河村政府参考人 我が国の多様で豊かな出版文化を支えてきた出版界がさらに発展していただきたいと考える気持ちは切なるものがございます。

 現在増加している電子書籍だけではなくて、紙媒体の書籍の果たす役割も大変重要でございますし、日本の紙の書籍というものは、大変丁寧につくられた、非常に内容があり、また美しいものも多々あるわけでございます。紙媒体の書籍と電子書籍の双方が共存して発展していくということが望ましいと考えております。

 今回の改正案では、出版権者がみずからインターネットに出回っている海賊版差しとめが可能になるわけでございますので、その点では、紙媒体による出版文化の継承、発展、また健全な電子書籍市場の形成が図られていくということでございますので、まずはこの改正案をフルに活用していただければというふうに考える次第でございます。

 また、出版界全体に対しては、例えば海外発信についての事業を私どもが主宰して行うといったような幅広い施策は、もちろんこれからも発展的に講じていくつもりでございます。

鈴木(望)委員 最初に言わせていただきましたが、次長が今表紙がきれいだとか装丁がいいとかというようなことを言われましたが、あくまでも守るべきは、本が出るまでの、書籍が出るまでの企画、編集、また校閲、そういったことをきちんと守っていく、その結果として、今次長が言われたようなすばらしい本が出てくるということになってくるんじゃないのかなと思います。

 次に、著作権者の権利保護について質問をしていきたいなというふうに思うわけでありますけれども、この点については、さきの中川先生の質問が非常に核心をついていて、同じようなことを質問しようとしておりますので、ちょっとはしょって質問をさせていただきたいと思います。

 今回の改正で、一番大もとの著作権は、先ほど八十条の一部または全部の解釈のところでいろいろと議論がなされましたけれども、非常に複雑な契約形態に対応していかなきゃいけないという感じがするわけであります。

 そこで、ちょっとはしょりまして、例でお答えをいただければというふうに思いますが、例えば、非常に小規模の、公衆送信業務をする能力がないしまた意思もない、そういう小さな出版社が第一号出版契約しか結ばなかった場合に、違法な公衆送信行為に対してどのように権利が守られていくというふうにお考えでしょうか。

 また、もう一つ例として、同じように非常に小さな出版社、公衆送信業務をする能力も意思もない小さな出版社が、次長も大臣も言われているように、第一号出版契約、第二号出版契約をワンパックでしたといった場合に、この場合において違法な送信行為に対してどういう対応が、可能性としてできるというだけでは私は困ると思うんです。

 実際に有効に対応していくにはどういうふうにすべきか、また、それに対して公がどういう支援をしていくのか、その点についてどういうふうにお考えでしょうか。

河村政府参考人 これまでのお答えでも出てきたかとは存じますけれども、出版権設定の契約のときに、直ちに電子出版を行う意思がない場合においても、当事者間の契約で義務を柔軟に設定して、電子出版についての出版権の設定を行うことは可能でございます。

 また、その出版権を設定するという場合、これは現在の紙媒体の場合についてもそうでありますけれども、出版のプロセスの全部をその会社がひとりで負わなければいけないわけではございません。御指摘がありましたように、企画し、編集し、校閲をし、それから、版をつくり、印刷をし、製本をし、あるいは取り次ぎなどを介して実際に読者の手元に届く書店まで行くという、その全体のルート、全体のプロセスの中で、日本の出版社はさまざまないわば外注を行っておられるのが実態でございます。

 ですから、電子出版に関しましても、そのプロセスの一部を第三者に委託して行うということについては、紙媒体の出版についての出版権の場合と同様に可能でございますので、そうした方法がとれると存じます。そのような一部の委託を受けるというような機構が、出版界あるいは政府の後押しも一部ありましてできているというふうに存じます。

 このような形で、電子出版についての出版権ということを第三者の力もかりながら設定するということで、小さな出版社でありましても、その主体となって海賊版に対応することが可能であろうと存じます。

 それからまた、これは著作者から期間限定の譲渡を受けるといったような方法ももちろん可能でございまして、このような対応も考えていくということは著作者団体からも表明があったことというふうに承知をいたしております。

 それから、もう一つのお尋ねでございまして、一号出版権、二号出版権の両方を有することになったとしても、大変規模の小さい出版業者では現実の違法な行為に対する権利行使が難しいのではないかということについてでございます。

 これについては、中小の出版社で構成される日本出版者協議会におかれましても、文化審議会のヒアリングの場では、今とにかく訴訟の当事者になれない点が問題なのであって、まずその主体、少なくとも個人である著作権者に任せるよりは、まず出版社で組織的に対応することが有効であるということもお話しになっておられたと承知をいたしております。

 こういうことで、中小の出版社においてもさまざまな工夫での海賊版対策を御期待申し上げるわけですけれども、もう一つ付言して申し上げますと、出版権の侵害は刑事罰の対象にもなりますので、民事的なさまざまな差しとめ等の請求を行っていくということに加えまして、刑事罰の対象となりますので、例えば告訴をする、またそれも大変だということであれば、私どもとしても、刑事罰の対象になるということについて今後の法施行までの間に周知を行っていくことで抑止力を働かせるということは、一つの考えられる方策ではないかと存じます。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 今次長はいろいろと可能性について等々言われたわけでありまして、問題の所在が現実にどこにあるかについては、多分認識は共通しているんじゃないのかなというふうに思います。

 非常に、一方ではなかなか捉えどころのない公衆送信、また、プラットフォーマーは巨大な力を持っている、そういったものに対して、著作権者なり小さい出版社が対応していかなきゃいけないということで、可能性云々という問題ももちろん今御説明いただきました。

 それと同時に、実際上、そういった既存の著作権者、出版社が今後健全に、十全に権利を行使して活躍していく、発展していくためには、例えば契約の標準様式の早期の整備であるとか、またADR制度、またこの著作権法の出版権について活用をするであるとか、もうちょっと一歩進んだところの登録制度、ナショナルアーカイブ制度的なものを整備していくことによって、全体として日本の出版文化を守っていくということだろうというふうに思うんですが、その点について、文化庁の今後の方策、方向性について御見解をお伺いします。

河村政府参考人 出版権制度は、基本的には著作権者と出版者との設定契約を基礎とする、そういう制度でございます。ですから、今後は、著作権者と出版者双方が信頼関係のもとに協力して、新たな出版権制度を踏まえた契約慣行が形成されていくように努められるということが極めて重要であると存じます。

 ですので、御指摘のように、まずはその改正法の趣旨、内容についての周知とともに、著作権者に対してその契約の範囲を明確に説明して契約上明示していくという出版界の役割、それから、著作者団体と話し合いながら、契約ガイドラインを作成したり、また、紛争処理のための仲裁機関を設けることを出版界として前向きに取り組んでいかれるということで聞いておりますので、こうした取り組みについて、私どもも、必要に応じて、協力を惜しまないつもりでございます。

鈴木(望)委員 出版文化の源というのは、日本だけでなく、歴史や文化のある国々がそれぞれ培ってきたいろいろな作業、例えば出版についていいますと、企画、編集、校正ということを何回も言わせていただきましたけれども、そういったさまざまな作業であるとか行為の中にあるんじゃないのかなというふうに思うわけであります。

 これは、出版という明治以降の話だけじゃなくて、日本の場合、江戸時代にさかのぼってみますと、例えば、浮世絵の喜多川歌麿などは版元の蔦屋という存在がなくしてはあり得なかったわけであります。浮世絵のさまざまな企画を考え出し、喜多川歌麿を売り出したのは蔦屋というわけでありまして、時の幕府が喜多川歌麿を風紀を乱したかどで罰した際には、蔦屋重三郎も同じ手鎖の刑に処せられているわけであります。

 それほど著作権者と出版社というのが相互の関係を持って発展してきたのが日本の出版文化じゃないのかなというふうに思うわけであります。

 企画、編集、校正、一つの例として言っているわけですけれども、そういった出版文化の源、中核部分をどのように守り、伸ばしていくのか。また、巨大プラットフォーマーから日本の出版業者を適正に守るために、これは大げさに言うと日本の出版文化を守るために、今こそこういういい機会に知恵を絞っていかなきゃいけないんじゃないのかなというふうに思います。その点について、文部大臣のお考えをお聞かせいただきまして、質問を終わりたいと思います。よろしくお願いします。

下村国務大臣 世界に誇る日本文化は大きな資産であり、我が国最大の強みであるというふうに思います。その中でも、出版文化は、我が国の文化や知識を創造、普及し、これを次世代に継承するに当たり重要な役割を担い、我が国の活力ある社会の実現に寄与してまいりました。

 改正案によりまして、出版権者は、みずからインターネットに出回っている海賊版を差しとめること等ができるようになりまして、紙媒体による出版文化の継承、発展と健全な電子書籍出版市場の形成が図られ、我が国の多様で豊かな出版文化のさらなる進展が期待されるところでもございます。

 そのため、文科省としては、改正法の趣旨やあるいは内容等におきまして、著作権者や出版者に対して十分周知し、新たな出版権制度が効果的に活用されるよう取り組んでまいりたいと思います。

 また、文部科学省においても、出版文化を振興するため、改正案のほかにも、読書活動の推進、学校図書館の充実、日本の文学や漫画等の海外発信等、文字、活字文化の振興に努めてきたところでありますが、これらの取り組みをさらに引き続きしっかり推進していくことを通じまして、出版文化の振興に努めてまいりたいと思います。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。質問を終わります。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いをいたします。

 著作権法の一部を改正する法律案についてですけれども、水曜日に参考人質疑をさせていただいて、この著作権に係る諸問題への携わり方に関しては、出版者そして研究者、著作権者で同じところもありますけれども、やはり多様なところもあるなという印象がございました。

 出版といいますと、私も冨岡先生と同じ医者なんですけれども、教科書が、医学書というのは一冊三万、四万するものもありまして、どうやってつくっているのかな、どこにお金がかかっているのかなと疑問に思うところもあったんですが、なるほどそれだけ編集、校正、こういったところに時間がかかっていればこれぐらいの高い値段も仕方ないのかなというような印象もあります。

 その一方で、当然日本人ですから漫画なんかも結構読むことがありまして、「ゴルゴ13」なんかも麻生大臣がお好きだということで、私もそういうコメントが出てから全巻読ませていただきましたが、非常に勉強になるということで、今度、外交、安全保障の質問に立たせていただきたいというふうに思うわけでございます。余談でございます、失礼いたしました。

 著作権者と出版者の協調関係が何よりも法の前に大切だと瀬尾さんはおっしゃっていました。日本文化の土壌である、契約の前に人間関係というものをやはり大事にして争い事をなくしていくということ、これは非常に大切なことだと思います。

 一方で、黒船的にメガプラットフォーマーが出てきて、完全に出版業界も何らかのパラダイムシフトは起こっていくだろう、そう予感せざるを得ないのも一方ではございます。そういう、近い未来というか、今、現実起こっているそういったものに対する細微な法的備えを加速していかなければいけないんだなというふうに、参考人質疑では痛感をいたしました。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 若干前回の鈴木先生の質問とかぶるんですけれども、瀬尾参考人の意見に、現在出版業者が三千七百以上日本にはある、すみ分けをしているというかしっかりと役割分担があって、専門分野があってそれだけの数になっているということだと思うんですが、これは世界的にはなかなかない構造だということです。自然淘汰が極めて緩やかであって、日本型の出版業界はアジアンスタンダードなんだ、このアジアンスタンダード、これはこれでやはり価値がある、この業態を守っていくのが一つの国の役割なんだというようなこともおっしゃっておりました。

 確かにそれは日本の文化だと思います。ただ一方で、本を買う方からすれば、一円でも安くて、そして質がいいものであればその方がいいなと思うのも、これは購買層からいえば当然のことでございます。

 そこでまず伺いたいんですけれども、対人口比で結構ですけれども、世界と比較して、日本の対人口比での出版社数、そして本等出版物の平均価格、これを世界と対比して説明をしていただきたいと思います。そして、アジアンスタンダード、この業態を堅守していくために政府は努力をしていくのかどうか、そこについての政府の見解をお願いします。

河村政府参考人 出版年鑑二〇一三という資料を参照いたしましたところ、日本の出版社数は、二〇一二年に三千六百七十六社ということでございます。これは、人口との対比で見ますと、約三万五千人に一社という割合となります。

 諸外国はなかなか比較ができる数が多くないんですけれども、イギリスの一年前の例ですと二万九千人に一社、ドイツは二〇一二年で約二万三千人に一社というデータとなっております。

 また、価格は、これも大変比較が難しゅうございます。二〇一二年に日本で出版された、これは学術図書から文庫本などまで全部含んだものの図書約八万点の定価を単純平均した価格ということになってしまうのですが、約二千三百円という額が出ております。

 これに対しまして諸外国の例は、なかなかまた種類や分野の配分といいましょうか分布が一律ではないと考えられますので、一律比較は難しいのですが、例えば、二〇一一年、ドイツで平均約二十五ユーロ、換算しまして約三千二百円。アメリカでは全ての図書を通した平均価格がちょっと得られていないんですけれども、一般的な八十一ドル未満のハードカバーの平均価格が約三十四ドル、三千三百円と申し上げておきますけれども、そのようなものでございます。イギリス、二〇一二年の場合は、書籍の総売上額を総販売部数で割った平均価格となっておりますが、約七ポンド、約千百円ということでございます。

 ちょっと全体の状況を捉えて特徴を申し上げるのが難しい状況ではございますが、一般に、日本の出版社は大変多種多様であって、また、小規模なものでも特徴のあるところが多くあるといったようなことを出版に関する評論などをされる方々がおっしゃっているということは、承知をいたしております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 数字を比較するのはなかなか難しいというのは私もわかります。ただ、具体的に出てきた数字を見ると、そう日本の本が、出版会社が、極端に多いとか極端に高いということはなくて、世界標準に近いものなのかなというふうな印象もあります。

 ただ、微に入り細にわたった編集技術というものも担保されて、なおかつこの価格、この会社があるということ、まさしくこれはアジアンスタンダードということを言ってもいいのかなという印象もあります。やはり、文化的価値の高い領域であるということもわかりましたので、そこのところをしっかり、これは合理的に、やはり極端な保護は私はいけないと思っています。消費者に資するようなところをまず一義的に考えていただいた保護をとっていただければというふうに思います。

 次に、土肥参考人からお話しいただいたのが、日本は著作権を守るように版元が努力をする。要は、一括で版権をアメリカのようにぼんと買って、それを債権のようにとは言いませんけれども、全ての権利を一つのパブリッシャーが持つ。だから、余りそんなに著作権に係る法改正というのは頻繁に行われないんだというような説明がございました。なるほどなと。簡単にぼんと一括して版権というものが移動できるようなそういったシステム、これは極端だと思いますけれども、ただ、一つ参考になるやり方なのかなと思います。

 そこで伺いますけれども、デジタルに関する事項を最初から包含するように、アメリカのように版権の一括売買、こういったようなシンプルな制度、慣習を日本が取り入れるということも将来的には考えるのかどうか、政府の見解を伺います。

河村政府参考人 著作権の譲渡の制度化ということでのお尋ねかと存じます。

 実は、現行の著作権法でも第六十一条で、「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。」とされております。したがいまして、現在の法律のもとでも、著作権の全部譲渡を行うことは可能でございます。

 そのような方式、仕組みというものを当事者間で取り入れるか、あるいはその業界で取り入れるかということであろうかと存じます。

柏倉委員 ありがとうございます。

 では、実際に著作権の全譲渡というのはかなり頻繁にやられていることなんでしょうか。

河村政府参考人 全部譲渡ということに当たるかどうかわかりませんが、例えば学術書の出版、学術論文の刊行という場合には、出版の許諾とか出版権の設定ではなくて、著作権譲渡の形で行われている例はあると承知をいたしております。

柏倉委員 印象からいいますと、欧米に比して当然そう多くはないんだと思いますけれども、余りそれは活発じゃないような印象も今受けました。そこのところ、どれぐらい著作権の完璧な譲渡が行われているのか、こういったことに関してぜひ一度調査をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 そして、これは再三話題になっておりますメガプラットフォーマーからどうやって日本の出版業界を守っていくかということなんですけれども、小委員会の団体ヒアリングの中で、議事録を読みますと、アマゾン、グーグルなどの公衆送信者のみの場合には、著作権者と出版者間のトラブルを考えた場合、出版権を与えない方がいいというような意見も散見されておるようでございます。

 これはどのようなトラブルが実際に想定をされたのかお聞かせいただきたいということと、今後はこの法律に基づいて、特に制約なく著作権者がメガプラットフォーマーと電子出版に関して契約を進めていくのを見守っていくのかも含めて、答弁をしていただきたいと思います。

河村政府参考人 今回の新たな電子書籍に関する出版権の設定については、従来の紙媒体に係る出版の場合と同様に、電子書籍の出版を引き受ける者、それは、先ほど来お話がありましたように、企画、編集、校正等を通じ、電子書籍、その著作物が仕上がるまでの作成にも大きくかかわり、そして、その後の世に伝達するところまでについても、全体を見通して責任を持つという役割を担う者が電子出版に係る出版権の設定を受けることが制度趣旨にかなうという考え方での設計となっておりますが、この制度の趣旨は、具体的に著作権者とプラットフォーマーの間で何かのトラブルが生ずるということから今のような法律の設計にしたということではないと考えている次第でございます。

柏倉委員 わかりました。

 ということは、メガプラットフォーマーと著作権者との間でのやりとり等々に関しては、特に政府が何か干渉するというようなことはなく、まず見守るということというふうに理解してよろしいんでしょうか。

河村政府参考人 電子出版に関する出版権を引き受ける者としては、繰り返して申して大変恐縮でございますけれども、企画、編集、校正等、著作者との共同作業をしていきながら、世に伝達する、読者に届くまでのところを全体を見通して計画する者が出版権の設定を受けるということが、制度趣旨にかなうものと考えております。

 ですから、その一部だけ、例えば電子書店のところだけをやる、そういう役割を担うとかその一部だけを行う者というのは、出版権者から契約で、ある一部の注文を受けるというか外注を受けるという立場になろうと存じます。

 ですから、もしおっしゃっているプラットフォーマーというのがある書店の分だけの役割をするとか、企画、編集から読者に届くまでのある一部分を担う者ということでございますと、それは今の出版権の考え方からしますと、出版権を引き受けた者からある仕事を委託される、そういう立場になるというのが私どもの基本的な理解でございます。

 ただ、出版の多くのプロセスや役割分担は非常に多種多様でございますので、法律の中では、現在書かれている文言で規定をすることにしたという経緯でございます。

柏倉委員 何となくおっしゃっていることはわかります。

 やはり、メガプラットフォーマーが進出してくると、いろいろ想定されない諸問題がこれから出てくると思います。そういった中で、予想されるものに関しては、しっかりと政府も対応策を練っていただきたいというふうに思います。

 それでは、次は、この法にまとまるまでの議論に関してのことなんですけれども、具体的に、さきの小委員会で、電子書籍の出版権の問題に関する解決策としてのいろいろな選択肢が挙がっていると思います。四つ挙がっていると思うんですが、一つは著作隣接権の創設だったわけです。二つ目が電子書籍に対応した出版権の整備。三番目が訴権の付与。四番目が契約による対応ですね。

 これは確かに、それぞれにそれぞれの立場からメリット、デメリットがあってこういった選択肢になったと思うんですが、簡潔に、この四つの方策のメリット、デメリット、政府の認識をまず聞かせていただきたいんですが。

河村政府参考人 それぞれの方策のメリットとしては、共通して申し上げますと、出版者が自己の名でインターネット上の海賊版に対して差しとめ請求が可能になるということであると存じます。

 一方、それぞれのデメリットについて申し上げますと、まず一番目、著作隣接権の創設については、著作権者の意思に反して権利行使される可能性があること、権利者の数が増加いたしますので、権利処理についてコストが増大すること、また、漫画家が制作する原稿などと著作隣接権の対象として考えられる版面との区別が困難であることなどがデメリットでございます。

 また、訴権の付与、これは独占的なライセンシーへの差しとめ請求権の付与の制度化ということでありますけれども、出版社がビジネスを進めていく観点からは、訴権の付与の方策は実務上の契約交渉等においては十分な制度とは言えないということや、独占的な利用許諾契約というのは出版契約というものに限られないので、制度論としてまだ詰めなければいけないという問題がございます。

 そして、契約による対応については、出版者が著作権者から権利の譲渡を受けるといったやり方が考えられるわけでございますけれども、先ほどもお話がありましたように、著作権者から出版者に著作権を譲渡するということは現時点では一般的な慣行となっていないので、これをもって直ちに方策ということは難しいのではないかということでございます。

柏倉委員 ありがとうございます。

 一番目にある著作隣接権なんですけれども、著作権者の権利を守るという観点からはそぐわないということで今回見送られたと思うんですけれども、これは今後必ず、守らなければいけないというか活性化していかなきゃいけない出版業界から、やはり継続的にこういった要望は上がるのではないかなというふうに思います。

 この著作隣接権に関して、今後とも政府は懸案事項として検討していくのかどうか、その姿勢をお聞かせください。

河村政府参考人 先ほどのお尋ねのお答えで申し上げましたけれども、著作権者の意思に反して権利行使される可能性ですとか、対象となる版面というものをどう構成するかということでの困難性など、文化審議会の委員会の中では反対意見が多く示されまして、関係当事者が集まった場で立法化に向けた合意形成にならなかったわけでございます。

 今回の改正案では、電子出版についての出版権が設定できるようになりますので、出版者が権利者として独占的に電子出版することができることに加えて、出版者がみずからインターネット上の海賊版に差しとめ請求ができることとなります。したがいまして、まずはこの改正案による新しい出版権制度が混乱なく適切に運用されることに努めてまいりたいと考えております。

柏倉委員 業界からの意見ということなんですけれども、やはり、あちらを立たせばこちらが立たずというようなところになっているのかなと思います。

 著作権者の権利を守っていくということは私も大賛成でございます。ただ、持続的に確実にこれは議論をしていく、議論を避けて通ることはできない案件だと思いますので、やはり広く意見を聞いて検討を続けていただきたいと思います。

 次なんですけれども、著作権者の相対的地位に関して、簡単に言えば、今度、著作権者が電子出版の出版権を別のプラットフォーマーと契約できるようになるわけです。

 現状ほとんど、出版者を介在して全てやっている、やっているものに関してはやっているわけですけれども、今度新しくできた電子出版者との契約、別のパートナーシップを著作権者が求めたいという場合、なかなかこれでも自由にはできないんじゃないかなと思います。

 なぜなら、本当に大御所の作家、作者の方は出版者と対等の立場で契約、話ができるわけですけれども、ただ、やはりそうじゃない大多数の、これを力がないと言うと語弊がありますが、余り出版者と対等関係にない、ないしは依存してしまっている、そういう作者にとっては、別のプラットフォーマーと電子出版権に関して契約を結ぶということがなかなか難しいのも現状じゃないかと思います。

 こういった現状を踏まえて、文藝家協会も「電子書籍の時代に対応するあらたな出版契約に向けて」という声明を三月十四日に出しているわけですけれども、この新たな出版契約に生じるであろう問題解決に、政府が積極的に取り組みや支援を行うべきだと思います。ここの部分での政府の見解を聞かせていただければと思います。

河村政府参考人 お話がありましたとおり、三月十四日に日本文藝家協会から、電子書籍の時代に対応する出版契約に向けて著作者と出版者で話し合い、具体的な作業を進めることを提案する声明が出されております。

 再三お話しいただいておりますように、出版権制度は著作権者と出版者の設定契約を基礎とする制度でございますから、著作権者と出版者双方が協力して新たな出版権制度を踏まえた契約慣行が形成されるように努められることは、大変重要になると考えております。こうした観点から、日本文藝家協会の発表されました声明は時宜にかなったものでございますし、今後、著作権者と出版者の話し合いが行われる場合に、その趣旨が十分に生かされることが望ましいと考えます。

 文部科学省、文化庁といたしましても、その当事者間の契約慣行のよりよい形成に資するために、法律の趣旨、内容等についての御説明、十分な周知ということを著作権者、出版者の関係の皆様方にさせていただきたいと考えております。

柏倉委員 これから新しい法律ができて当然生じるであろう問題、もう文藝家協会の方から提示されている部分もあるわけですから、しっかりとそこは対応していただきたいと思います。

 時間もございません。最後の質問にさせていただきたいと思うんですが、ちょっと著作権のこの改正案とは少し若干趣が異なります。電子出版がもたらす社会的な影響について、最後、大臣にちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。

 現在、電子書籍、これはもう飛躍的に需要も供給も拡大している。そこで、紙媒体の書籍からこの電子書籍へ移行していく中で、政府は、教育及び文化、社会環境、生活環境の中でどういった変化があるのか、これはもう総論になりますけれども、それを予想しどのように対応していくのか。今後の紙媒体の書籍と電子書籍のすみ分けについてどのようになるかも含めて、ぜひお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 改正案では、電子書籍に対応した出版権を整備することにより、出版者の電子出版を行う地位が法的に強固なものとなり、出版者がみずから独占的に電子書籍を制作、配信するだけでなく、権利者として主体的に第三者と電子出版に係る契約交渉を行ったり、インターネット上の海賊版に対して権利行使をすることができるようになると考えております。

 これによりまして、紙媒体による出版文化の継承、発展と健全な電子書籍市場の形成が図られ、我が国の多様で豊かな出版文化のさらなる進展が期待されるところであります。

 我が国の多様で豊かな出版文化をさらに発展させる観点からは、電子書籍のみならず、紙媒体の書籍と電子書籍の双方が共存して発展していくことが望ましいと考えます。また、双方の関係については、紙媒体の書籍は電子書籍に取ってかわられるというものではなくて、それぞれの特性や作品の種類等に応じ、利用者により紙媒体の書籍と電子書籍を使い分けられることになると考えられます。

 なお、アメリカでは、電子書籍の普及により書籍販売額そのものも増加しているということでございまして、紙媒体の書籍と電子書籍が相互によりよい環境を与えるようになることを期待したいと思います。

柏倉委員 御答弁ありがとうございます。

 電子書籍を読むということになれていない人が、全員なれてもらえればいいんですが、年齢とともにやはりそういった率は減ると思います。日本独自の文化である緻密に製本された本、これとこれから拡大していくであろう電子書籍におけるニーズ、やはりこのすみ分けをしっかり戦略的に政府としても立てていただいて、そして示していただきたいと思います。

 ではこれで終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 きょう、著作権法の改正について、大臣、また、きょう総務省と国会図書館の大滝館長にも来ていただいて、少し関連するお話を伺ってまいります。よろしくお願いをいたします。

 まず、これまでの議論でも出てまいりました海賊版の対策について文化庁にお伺いをしたいのですが、これまでの議論でも、差しとめ請求の件数などは一万件というような数字も出ておりました。実際そこから訴訟に発展するようなケースというのは把握していくのがなかなか難しいかと思いますが、インターネットの普及、特に、本をスキャンして取り込んで海賊版として出回るというようなことが本当に多くなってきてからその差しとめ請求というものが飛躍的にふえてきているということを、確かな事実としての御認識があるかどうかというところをまず、いま一度伺います。よろしくお願いいたします。

河村政府参考人 日本書籍出版協会に照会したところでございますけれども、紙の出版物しかない時代には海賊版に対する差しとめ請求訴訟はほとんど行われていないということでございます。これは、実態として海賊版がそんなに大きく目立たなかったということなのか訴訟に至らなかったのかは特にそこで分けておりませんが、実態としてほとんど行われてこなかったということでございます。

 一方、インターネットが普及するに従いまして、大規模な態様での海賊版というものが出てくるようになったということもございまして、実際の差しとめ請求訴訟の件数は把握はされていないものの、著作権者が出版者の協力を得ながらインターネット上の海賊版に対する差しとめ請求訴訟を提起している実例があるということでございます。

 ですので、差しとめ請求訴訟になるケースというものは、インターネット上に海賊版が出回るようになった、あるいはインターネットが大きく普及していくような状況になってから増加したというように私どもとしては受けとめております。

井出委員 訴訟の数字などはなくても、これだけ海賊版というものが広まっていればやはりそれに対処しなければいけないこともふえている、それは大方の理解だと思います。

 ただ、しかし、実際に差しとめの請求をする、そこから訴訟に移っていくとなると、その訴訟の費用ですとか、決着がつくまでの時間もかかりますし、私の個人的な思いとしては、まずその差しとめ請求の段階できちっとそれが効果を上げていくようにしていくというのが一つの方向性かなと思いますが、そのあたりの御認識について、文化庁にもう一度伺います。

河村政府参考人 確かに、実際に出回ってしまうとその被害が大きくなるということから、差しとめができるようにしていくということは一つの大きな方策であるというふうに存じます。

井出委員 前回の参考人質疑のときに、出版業界の代表の方からのお話であったのですが、現状ですと、差しとめ請求の手紙を送っても、封筒すら、中身も見ることなく向こうから返送されてくるというようなお話もありました。

 海賊版対策、海賊版を発見する監視とかその辺のことは今も出版者はそれぞれされていると思いますし、そこを急に、この法律ができたから監視体制の人員を二倍にするとか三倍にするとかということは急には無理かと私は思うんですが、この法律ができることによって、出版者側がする差しとめ請求の威厳というか効力というか、そういうものは上がってくると私は期待しておりますが、そのあたりのお考えを文化庁にもう一度伺います。

河村政府参考人 今回の改正案によりまして電子書籍に対応した出版権というものが整備をされるということでございますので、出版者の電子出版を行う地位が法的に強固なものになるということでございます。

 この法的に強固になるということは、出版者が独占的に電子書籍を制作、配信することができるということだけでなく、権利者として主体的に第三者と電子出版に係る契約交渉を行ったり、それから、今御指摘のありましたインターネット上の海賊版に対して権利行使をみずから行うことができるようになるということがございます。つまり、あなたは本当に権利者なんですかというそこの証明で非常に手続や時間のコストがかかるというところが、今回の法律改正によりまして、みずからの主体性、みずからの名前で権利行使ができるようになるということが大きな改善だと考えております。

井出委員 私も、この法律の改正で、現場の差しとめ請求の場において本当にきちっと実効性が上がってくる、周知がされてくることを期待いたします。

 次に、電子書籍の広がりというものは、どなたが考えても今その普及拡大は明らかなところなんですが、今回の法改正の議論の中で、先日の出版者の参考人の方が、これから電子書籍の海賊版対策として、もう今も、まず本を出したら同時に電子書籍も出さなければいけなくなっているんだけれども、それが対策にも効果的だ、本物は電子版としてここにありますよということを周知することが必要だというお話があって、そのお話を聞いていても、これからますます電子書籍というものがふえていく、今回の法改正もその一つのきっかけとなるかなと私は思っておりますが、電子書籍の広がり、これからの出版業界における位置づけについて、大臣のお考えを伺いたいと思います。

下村国務大臣 我が国における電子書籍の販売額としては、平成十四年度の十億円から平成二十四年度の七百二十九億円と大きく増加をしております。しかし、書籍や雑誌等の販売額の減少を補うには至っていない状況でもございます。

 今後も電子書籍が普及していくことは当然考えられるわけであります。我が国の多様で豊かな出版文化をさらに発展させる観点からは、出版業界においても、電子書籍のみならず、紙媒体の書籍と電子書籍の双方が共存して発展していくことが望ましいと考えます。

 また、今回の改正案では、電子書籍に対応した出版権を整備することによりまして、出版者の電子出版を行う地位が法的に強固なものとなり、出版者がみずから独占的に電子書籍を制作、配信するだけでなく、権利者として主体的に第三者と電子出版に係る契約交渉を行ったり、インターネット上の海賊版に対し権利行使をすることができるようになると考えます。

 これによりまして、紙媒体による出版文化の継承、発展と健全な電子書籍市場の形成が図られ、我が国の多様で豊かな出版文化のさらなる進展が期待されるところでもあります。

 そのため、文科省としては、法改正の後、その趣旨、内容について著作権者や出版者に対して十分周知をし、新たな出版権制度が効果的に活用されるよう取り組んでまいりたいと思います。

井出委員 今、紙の本と電子書籍の共存というお話がありましたが、これまでの議論の中で、電子書籍がふえていく、また海賊版対策をしっかりやっていく、そういうことを考えると、小規模の出版社ですとか、その後の仕事として出てくる小規模の本屋さんですとか、そういったところがこれからいや応なく対応を迫られたり、場合によっては淘汰をされていくというような不安を私自身も感じていますし、同じ思いを感じている方も少なからずいらっしゃると思うんですが、そうした小規模ながらに頑張っておられる書店、出版社に対して、大臣の思いを一言いただきたいと思います。

下村国務大臣 出版文化は、我が国の文化や知識を創造、普及し、これを次世代に継承するに当たり重要な役割を担い、我が国の活力ある社会の実現に寄与してきたわけでございます。小規模出版社、小規模書店も、この出版文化を支えてきた存在であるわけであります。

 デジタル化やネットワーク化の進展や社会情勢の変化に伴い、書籍の制作や普及のあり方についても今後多様化が進んでいくものと考えます。そのような中にあっても、個性を持った出版社や書店が創意工夫をして書籍の制作や普及に取り組むこと、これは規模にかかわらず我が国の出版文化を支えていくことを期待していきたいと思います。

 我が国においては、他国に比べて本屋さんが多いというふうに聞いたことがあります。街角に本屋さんがある。街角の本屋さん、小規模書店、それから小規模出版社、そういうところが日本の文化そのものを支えている存在でもあると思いますので、創意工夫をしながら、日本らしい文化がぜひ残っていくように頑張っていただきたい。期待をしたいと思います。

井出委員 ありがとうございます。今、書店に対するお話をいただきました。

 次に、総務省にお伺いをしたいのですが、きょうは渡辺大臣官房審議官に来ていただいております。

 紙と電子書籍の共存ということもありますが、これから出版で、とりあえず電子媒体で出してみよう、その後、紙にすることを考えようとかそういったケースもふえてくることを考えますと、インターネットを情報のツールとして、今一番国民が情報のツールとして利用しているのは私はテレビじゃないかなと思っているんですが、かつてラジオであったり、そういう意味で、インターネットを国民が活用していく重要性、少し大きな枠組みでの話になりますが、ここもまた一層の必要性が出てくると思います。

 インターネットを使うことができない、それは経済的な事情だったり御高齢、障害をお持ちであったり、そういったケースもあるかと思いますが、そういったことに対する対策もより一層重要性を増してくるかと思いますが、総務省の御見解を伺います。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のインターネットの関係でございますが、平成二十四年度末のインターネットの利用者数でございます。これは、日本で大体九千六百五十万と言われておりまして、人口的な普及率で見ますと約八〇%、七九・五%というふうな状況になっております。また、今御指摘の高齢者の方々、例えば六十五歳以上のインターネットの利用、一部で進んでいる状況にはございますが、六十五歳から六十九歳までは約六割、また七十歳以上に関しましては五〇%以下のインターネットの利用率になっているということもございまして、そういった意味では、御指摘のとおり、世代間の格差というのはかなり存在しているなというふうな状況にあろうかと思います。

 そういった状況から、御指摘のとおり、やはり高齢者の方々、障害者の方々も含めて、誰でもがインターネットを利用できてその利便性を享受できる社会を実現するということは、今後非常に重要な課題だろうというふうに私ども認識しております。

 そういった観点に立ちまして、総務省では、高齢者の方々あるいは障害者の方々が使いやすいキーボードですとか端末とか、あるいはサービスを行うそういった民間企業への支援というものに今取り組んでおりまして、また、実際インターネットを使うに際してのセキュリティーの問題等を含めたICTのリテラシーの向上、こういったことも図ることが重要だと思っていますので、そのためのモデルシステムの開発といったことにも今取り組んでいる状況でございます。

 総務省としましては、これらの取り組みを通じまして、誰でもがインターネットの利便性を享受できるような環境整備に引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えております。

井出委員 私、何年か前にテレビがデジタル化になったときに、大きな環境の変化だなと思ったんです。そういった変化は急に望めるとは思ってはおりませんが、インターネットの引き続きの世代を超えた普及についても御尽力いただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。

 質問の順番がちょっと前後するんですが、先にナショナルアーカイブについて伺いたいと思います。

 先日の参考人のお話でも、ナショナルアーカイブの必要性、また、一つ踏み込んで、日本のナショナルアーカイブを整備することで、それが海外との交流、情報の交流にしても非常に大切になってくるというお話がありました。

 まず、ナショナルアーカイブについて、その必要性など、大臣のお考えを伺いたいと思います。

下村国務大臣 先日、日曜日に、私は醍醐寺に行きまして、醍醐寺が今度、国宝が七万点近く認められたんですね。それまで東大寺の国宝が一万点近くで最高でしたから、圧倒的な数でありますが、それは文化庁が助成して倉庫をつくって、そして七万点の国宝をそこに保管するということですが、保管をすることだけで精いっぱいで、それを一般国民にオープンにするというだけの余力が醍醐寺の今の体制ではほとんど不可能に近い。

 ですから、まさに宝の持ち腐れのような状況をこのまま続けていくということは本当に国宝としてそれを生かすということになりませんから、これは日本国内だけではなく、世界に対してぜひ発信するというためには、おっしゃるとおりアーカイブ、ナショナルアーカイブの存在というのは非常に重要だということを最近も直観したところでございます。

 文部科学省は、これまでも、我が国の貴重な文化関係資料が散逸、消失することのないよう、例えば楽譜などの音楽関係資料、それから写真フィルム、テレビ、ラジオの脚本、台本など、モデル分野におけるデータベースの作成などの実践的な調査研究は進めてまいりました。

 さらに、平成二十六年度からは、有識者等の参加を得まして、それ以外のさまざまな分野における文化関係資料のアーカイブのあり方に関する総合的な検討を開始するということにしておりまして、現在、関係者のヒアリング等を実施するなどの準備を進めているところでございます。

 文科省としては、国立国会図書館など関係機関とも十分に連携しながら、我が国の貴重な文化関係資料のアーカイブの構築に向けまして、しっかり取り組みを進めてまいりたいと思います。

井出委員 今お話しのありました国会図書館、きょう、大滝館長に来ていただいておりますので伺いたいと思います。

 国会図書館は、本は全てそろっている、また、所蔵物の電子化についても、平成二十一年の著作権法の改正等があって円滑化も図られたやに聞いておりますが、電子データの収集、また、電子データでないものの電子データ化についてのこれまでの取り組み、今後の取り組みのお考えを伺いたいと思います。よろしくお願いします。

大滝国立国会図書館長 お答えいたします。

 これまで、国立国会図書館でいわゆるナショナルアーカイブに関する取り組みは、大きく五つの分野で進めておるところでございます。

 第一は、所蔵資料を大規模にデジタル化して、現在まで二百三十五万点、デジタル情報として利用可能とし、そのうち四十八万点をインターネット上で提供しております。

 第二に、国及び自治体の公的機関のウエブサイトを定期的に収集する制度を平成二十二年四月から実施しております。

 第三に、インターネット上で民間から発信される電子書籍、電子雑誌につきましては、無償で技術的保護手段がとられていないものを対象に、昨年七月から制度的な収集を開始しております。

 第四に、全国の図書館を中心に、博物館や公文書館、さらに民間のデータベースなどの協力を得まして、多様な電子情報コンテンツを横断的に検索できます国立国会図書館サーチというポータルサイトを平成二十四年一月から提供しております。

 第五に、東日本大震災に関するあらゆる記録を横断的に検索できることを目指して、官民学の関係機関と連携いたしまして、東日本大震災アーカイブというポータルサイトを昨年三月から提供しております。

 今後でございますけれども、ナショナルアーカイブズに関するさまざまな御議論が始まっているところでありますので、国立国会図書館といたしましても、その御議論に参画させていただき、どのような役割を果たすべきか、国立国会図書館の監督機関は両院の議院運営委員会でございますので、その御指導をいただきながら検討を進めていきたいと思っておるところでございます。

井出委員 ありがとうございます。

 さまざまな取り組みのお話を伺いまして、私も、そんな近くに国会図書館がありながらと、もう少し利用させていただかなければと反省をしておるところです。

 これからさらに電子データの収集またデータの電子化を進めていく上で、今、端的に課題だと感じられているところを伺えればと思います。

 一つ、今回、出版権が電子書籍にも広がっているということも少なからず何か影響が出るのかな、そういう疑問もちょっとあるんですが、現状、電子データ化を進めていく、電子データの収集を進めていく点についての課題、忌憚のないところをお話しいただければと思います。

大滝国立国会図書館長 図書館の活動といたしましては、この著作権法の改正に基づく新たな仕組みの中で社会全体が動くということを大前提といたしまして、引き続き、国立国会図書館として果たすべき取り組みをしていきたいと思っております。

 それで課題といたしましては、当面、商業的に流通しております電子書籍、雑誌の収集という課題がございますが、これにつきまして、権利者団体、出版界等の御理解を得ながら、国としての制度のあり方ということを、引き続きその検討に取り組んでまいるところでございます。

 それから、デジタル化で全体としてデジタル資産をふやすということにつきましては、まずは財源の課題がありますが、そのほか、著作権者が不明である、いわゆる孤児著作物の問題がございます。この点、既に現行の著作権法上の文化庁長官による裁定制度ということを活用しておりますが、一方、引き続き権利関係に十分に配慮しながら、さらに広く孤児著作物を社会的に利活用できるような制度の整備が社会的に進むことを期待しているところでございます。

井出委員 最初にお話しのあった電子書籍の収集のところですか、権利者団体との協議、そういったお話がありましたが、出版者の方も商売でしょうし、そこのところ、話し合いというのはいろいろあるかと思うんですけれども、電子書籍に出版権が広がるということは、何か直ちに影響するとか、収集において影響が出るとか、そういった御懸念とかは特にございませんか。

大滝国立国会図書館長 結論的に申し上げますと、何らそこの点では影響ないというところで、制度のもとでさまざまな御協議、御相談を重ねさせていただいて、国としての仕組みというものを、御理解いただきながらつくっていくということでございます。

井出委員 今、国としての制度のあり方と、そして、電子書籍でないものを電子化していく上で財源の問題もあるという話もありまして、私もそこはそのとおりだと思います。

 通告をしておらないのですが、再度大臣に、今の国会図書館の取り組みについて一言、国としての御支援、お気持ちをお話しいただければと思うんですが。

下村国務大臣 これは先ほど館長から答弁がありましたように、両院によってできているわけでありますから、ぜひ衆議院においてその辺は配慮していただければと思います。

井出委員 ありがとうございます。よく受けとめました。

 最後に、通告していたものに戻りまして、出版のADR、これも参考人からお話しあったことなのですが、出版のADRをやらなきゃいけないということは業界としても感じているというお話が出ておりまして、出版ADRについて、大臣のお考え、また、国として協力できる部分があるかを伺いたいと思います。

下村国務大臣 出版権制度は、著作権者と出版者との設定契約を基礎とする制度であるということでございまして、著作権者と出版権者、双方が協力して、新たな出版権制度を踏まえた円滑な契約慣行が形成されるよう努められることが極めて重要であると考えます。

 出版権をめぐる紛争が生じた場合の対応については、出版界は、出版契約に関する著作者と出版者間での問題を解決するための仲裁機関の設立を検討していると表明をしているわけでございます。

 文科省としては、実効性のある仲裁機関が設立されれば契約に関する当事者間の不安解消につながることが期待されるということから、出版界による仲裁機関設立に向けた取り組み等につきまして継続的に注視するとともに、必要に応じて協力してまいりたいと思います。

井出委員 ありがとうございます。

 著作権法は、インターネットの普及でこれまで何度も改正が近年相次いでおりますが、また今回の改正が日本の文化の健全な発展に資することを願って、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうはまず、視聴覚的実演に関する北京条約にかかわって質問したいと思うんです。

 実演家を保護する最初の国際条約は、一九六一年、ローマで作成されたローマ条約、実演家等保護条約であります。実演家の権利の国際秩序を見直す動きが、一九九三年から、レコード製作者の権利の見直しとともにWIPOで始まりました。視聴覚実演に関する保護と音の実演に関する保護が議論されてまいりましたが、音の実演については、一九九六年、WIPO実演・レコード条約、WPPTが作成されたものの、視聴覚実演は条約作成が取り残されてまいりました。

 その後、二〇〇〇年にジュネーブで外交会議が開かれ、WIPO視聴覚実演条約作成が期待されましたが、合意に達せず、二〇一二年の今回の北京外交会議に至ったものであります。これによって、視聴覚実演の保護に関する国際ルールが十二年の歳月を経てようやく合意に達し、映画など視聴覚実演に関する国際秩序が五十年ぶりに新しくなりました。

 そこでまず大臣にお伺いするんですが、この北京条約の意義について大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

下村国務大臣 近年、情報関連技術の発達に伴い、著作物等の複製やインターネットを通じた送受信が容易に行われるようになったわけでございます。

 本条約は、こうした状況に対応し、既存の国際条約で規定されていなかった視聴覚的実演に係る実演家の人格権や、デジタル化等の進展に対応した権利保護について、国際的な規範を確立するものであります。

 我が国が本条約を締結することは、このような視聴覚的実演に係る実演家の保護のための国際的な取り組みに貢献する観点から、重要な意義を有するものと考えております。

宮本委員 実演家保護の国際的な取り組みに我が国が貢献する、こういう意義があるという御答弁でありました。

 では、北京条約では、俳優、舞踏家など視聴覚的実演家についてどのような権利が規定されているのか、これは文化庁次長にお答えいただきたいと思います。

河村政府参考人 視聴覚的実演条約においては、視聴覚的実演に係る実演家の権利、俳優、舞踊家の人たちの権利として、一つには、氏名表示権及び同一性保持権を内容とする人格権、それから二つに、生の実演の放送、録画等を許諾する権利、さらには、DVD等の視聴覚的固定物に録画された実演の複製、譲渡、放送やオンデマンド送信等を許諾する権利が規定されております。本条約の締約国は、他の締約国の国民である実演家に対し、これらの権利を保護する義務を負うこととされております。

 また加えて、視聴覚的実演に係るコピープロテクション等の技術的手段の回避や、電子透かし等により付加された権利管理情報の改変等を防止するための法的な措置について定めなければならないこととされております。

宮本委員 そこで改めて現状を聞きたいんですが、我が国著作権法上、実演家の人格権は明確にされております。しかし、歌手など音の実演家と、俳優などの映画、映像の実演家では財産権においては違いがございます。文化庁次長、どのような差異がございますか。

河村政府参考人 音の実演については、実演家に録音権や放送権等が付与されており、また、実演家の許諾を得て録音されている商業用レコードを用いて行われる放送や有線放送について実演家が報酬請求権を有するほか、商業用レコードの貸与について排他的許諾権や報酬請求権を有することとなっております。

 これに対しまして映像の実演については、実演家に録画権や放送権等はございますものの、実演を一旦固定したものの二次利用に関する一般的報酬請求権等はないということがございますし、また、映画の著作物については、映画の円滑な流通を図る観点から、実演家の許諾を得て実演が一旦録画された場合には、実演家の録画権や放送権等に関する規定が適用されないこととなっております。

宮本委員 同じレンタルショップで音楽CDを借りれば、歌手には報酬請求権がございます。しかし、映画のDVDであれば、出演している俳優には何も権利がない。こういう現状になっているわけです。

 そこで文化庁は、二〇〇二年四月の段階で、将来、映像の実演家の方に権利を付与するということを前提にして検討を進める、こういう答弁をしておられますけれども、これは間違いないですね、次長。

河村政府参考人 二〇〇二年、平成十四年ということでございますが、その当時の世界知的所有権機関において、映像の実演についても音の実演と同様の権利を付与することについての新たな条約、これがすなわち視聴覚的実演に関する北京条約となったわけでございますが、その検討が行われておりました。

 この時期、国内においては、映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会が開かれて、映像の実演家に権利を付与する前提となる契約システムのあり方について検討が行われておりました。

 このような当時の検討状況を踏まえ、今お話しのありましたような答弁が行われたと承知いたしております。

宮本委員 映像の分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会というものが当時開かれていたと。

 では、映像の実演家の財産権についてこれまでどのような見直しを進めてきたのか、その後の経緯をお話しください。

河村政府参考人 実演家の財産権につきましては、国際条約に対応して権利の充実が図られてまいりました。

 具体的には、実演・レコード条約の締結のための法改正として、これは、平成九年法改正でまずは実演家に送信可能化権を付与するとともに、平成十一年法改正で、コピープロテクション等の技術的保護手段を回避して実演を録音、録画することを防止するための措置の導入や譲渡権の創設等が行われました。なお、平成十四年の法改正では、実演家に対する実演家人格権の付与が行われております。

 実演・レコード条約につきましては、実は、音の実演のみの保護が求められていたわけでありますけれども、我が国においては、映像の実演についても権利の充実の対象としたものでございます。

宮本委員 いやいや、権利の充実の対象としたのでございますとは言うものの、権利に大きく違いがあるから今ここで議論しているわけです。

 端的に聞きますけれども、映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会は、その後どういう検討を進めてまいりましたか。

河村政府参考人 映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会は平成九年に設置をされました。この懇談会では、作業部会として、実演家の権利の在り方検討グループを設けまして、世界知的所有権機関、WIPOにおける映像の実演に関する新たな条約の検討状況を踏まえつつ、映像分野における実演等の保護のあり方について検討を行ってまいりました。

 当時、この映像の実演に関する新たな条約は、実演家の権利を我が国の著作権法による保護以上に強化する方向での国際的な検討がなされておりましたが、結局、その点については国際的な合意が形成されませんでした。そして、一昨年の視聴覚的実演条約の成立に至ったわけでございます。

 我が国としても、このような国際的な検討の経緯を見守ってきたという認識でございます。

 国内の検討においては、平成十五年一月の懇談会の会合において、実演家団体及び映画製作者団体から、それぞれ契約システムに関する案というものが示されまして、それぞれの案をもとに検討が進められたのではございますが、双方の合意には至らず、現在に至っているという状況でございます。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

宮本委員 では、平成十五年一月を最後に開かれていないわけでありますけれども、双方の合意に至っていないことは重々わかっているんです。しかし、合意を目指して協議の必要性、その促進のために頑張りたいと言ったものが、平成十五年以来の十年以上にわたって、そういう場を設定することすらやられていないのはどういう理由ですか。

河村政府参考人 この懇談会の検討は、映像の実演に関する新たな条約の国際的な検討ということも念頭に置いての検討となっておりましたけれども、先ほど申し上げましたけれども、この条約に関しては、我が国の著作権法の保護以上の強化ということでは合意が形成されませんでしたので、その懇談会に関しましても、それ以上の検討が進められない状況で置かれているという認識でございます。

宮本委員 これはなかなか驚くべき答弁でありますけれども。

 それではあれですか、国際条約で我が国の著作権法以上に実演者の財産権を保護する方向で検討されそうだったから検討したわけであって、北京条約では実際そうならなかったのでもう検討の必要はない、こう文化庁が考えておられるというふうに理解してよろしいですか。

河村政府参考人 著作権法はさまざまな立場の人たちのその権利義務にかかわってくる法律でございますので、その検討の過程では、やはり、関係当事者の合意が形成されながら進めていく必要があるものと考えております。

 先ほどはその国際的な状況ということを御説明申し上げましたけれども、この懇談会の検討状況そのものについても、実演家団体と映画製作者団体から契約システムの案が示されましたものの、それ以降の合意に至らなかったということも踏まえての懇談会の状況ともなったということでございます。

宮本委員 冒頭、大臣からも、実演家保護の国際的な取り組みに我が国は貢献する、こう御発言があったわけですから、国際条約がどうあれ、しっかり検討が必要だと思うんです。

 念のため確認しますが、平成十五年、二〇〇三年、これは十一年前のことでありますけれども、その前年の平成十四年六月にこの議論が国会で交わされております。このとき、「現在、文化庁が映像懇等で進めております検討も、映像の実演の財産権の実現に向けての合意形成の促進ということ」だと答弁をされております。現状でもこの立場に変わりはない、これは確認していただけますか。

河村政府参考人 映像の実演に音の実演と同様の権利を付与するということの検討についてでありますけれども、関係者の合意形成の状況や円滑な利用への影響等を踏まえつつ、今後、必要に応じて検討を行っていくべきものと考えております。

宮本委員 本当に変わらないのであれば、この十年間、一体何をしてきたのかと言わなければなりません。確かに、今回の北京条約で我が国の著作権法上の規定が決して問題になるわけではありませんけれども、条約において、国際的に実演家の財産権が明確にされたことは事実であります。

 そこで、聞くところによると、協議が膠着して進まない原因の一つに、映画会社側が、映像の実演の財産権の問題は北京条約で決着済みだ、こういう態度で協議にも応じようとしないという話も聞いております。

 そこで、念のために文化庁に確認しますが、確かに、北京条約は第十二条で権利の移転について定めております。しかし、この条項の意味するところは、国内法の定めるところにより、複製権からインターネット送信権に至る権利を映画製作者に移転することができるということであり、国内法、つまり、我が国著作権法の改正等によって映像の実演の財産権の実現を図ることは決して妨げられるものではないと思いますが、これはそういう理解でいいですね。

河村政府参考人 この条約は、視聴覚的実演に関する実演家に関して、各締約国が共通に保護しなければならない権利の水準について定めたものでございます。この条約によって求められる水準以上の権利の取り扱いについて、各国において規定することは可能でございます。

 我が国著作権法は、文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図るということでございまして、もって文化の発展に寄与することを目的としておりますが、そうした考え方のもとでの検討ということになろうかと存じます。

宮本委員 そこで大臣にお伺いしたいと思うんです。

 北京の外交会議には、日本芸能実演家団体協議会の野村萬会長も出席をし、次のようなメッセージを述べたと聞いております。

  世阿弥は「能の出でくる当座に、見・聞・心の三つあり」という言葉を残しています。視覚美による成果、聴覚に訴える成果、感覚美を超えた内面性による成果を挙げ論じたものですが、現代に敷衍してなお、芸能のすべてを包含し、その真髄を的確に言い得たものとして、広く芸能に関わる者の傾聴すべき論であるように思われます。「見」を主とする芸能、「聞」を主とする芸能、その主眼とするところは異なろうとも、所詮「心」なくしては成り立つべくもなく、はたまた、その比重はともかくも三者具備してこそ真の芸能というべきではなかろうかと思うのです。

  このことを条約に転じて考えると、一九九六年には「聞」に関するWPPTが成立しており、今回の外交会議で「見」に関する条約が生まれると、今度は「心」が課題になりましょう。「心」は国内法にあります。この三者具備することこそ実演家にとって肝要であります。

野村会長は、心は国内法だと言っております。国内法の一層の再検討が必要になっている。文化芸術振興基本法には、芸術家の地位向上も規定されております。

 今こそ実演家の財産権の付与について検討を進めるべきだと考えますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 お聞きしていて、世阿弥の例えは、大変に説得力がある例えを使われているなというふうに思いました。

 今、例えばCDなどに録音されている歌手の歌などの音の実演と、それから、DVDなどに録画されている俳優の演技などの映像の実演について、その取り扱いには差異が設けられているわけでございます。

 具体的には、CDなどに録音されている音の実演については、これを複製、販売したり放送などで利用する場合には、歌手などの実演家の許諾を得るか、報酬の支払いが必要であると。これに対して、映画の著作物に録画されている俳優の演技などの映像の実演については、当該録画物をさらに録画する場合や放送などで利用する場合には、実演家の許諾や報酬の支払いは必要ないとされているわけでございます。

 これは、映画の著作物は、通常一つの著作物に多くの実演家による実演が含まれている場合が多いということで、当該映画の著作物の二次利用について、個々の実演家の許諾を不要とすることで映画の著作物の円滑な利用を図り、実演家は、最初の録画の際に、その後の二次利用も含めて対価を得ることとしたものであります。

 この対価が適切かどうかというのは議論があるところでございますが、そういうふうに、映像の実演と音の実演、同様の権利を付与するということについては、先ほどから次長から答弁をさせていただいていますが、まずは関係者の合意形成、その状況、それから円滑な利用への影響、そういうことを踏まえながら、必要に応じて検討を行うべきものであると考えておりまして、そういう部分から、今後しっかりと注視しながら、対応について検討を考えていきたいと思います。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

宮本委員 十年間とまったままというのはゆゆしきことですから、しっかりと進めていただきたいと思います。

 映画については、実演家だけでなく、著作者である映画監督にも同様の問題がございます。

 映画の著作物については、著作権法上、プロデューサー、監督、撮影監督、美術監督など、映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者が著作者となります。

 これも次長に確認しますが、では、映画の著作物については、著作者の権利のうち、財産権はどのような取り扱いになっておりますか。

河村政府参考人 今、著作者についての御説明を頂戴いたしましたが、映画の著作権は、著作者が映画製作者に対してその映画の著作物の創作に参加することを約束しているときは映画製作者に帰属するものとされております。

 これは幾つか理由がございまして、従来から、映画製作者と著作者との契約により映画製作者の権利行使にゆだねられていた実態があったことや、映画は、映画製作者がその製作に巨額の製作費を投入し、企業活動として製作、公表するものであること、また、映画監督以外にもプロデューサーや撮影監督など著作者と認められる人々が多数あって、これらの者全てに権利行使を認めるという形にすると円滑な市場流通が阻害されるという事柄が理由となっていると承知しております。

宮本委員 映画会社が外部の監督等に依頼して映画をつくった場合に、映画の著作物については、もちろん監督も著作権者でありますけれども、その著作者の権利のうち財産権の部分が自動的に監督等の著作者から映画会社に移る、これは著作権法第二十九条の規定でありますけれども、映画会社が財産権を持ち、監督等は著作者人格権のみしかないということになっております。

 映画の場合は、俳優などの実演家、著作者である映画監督も、これは財産権がないという非常におかしな状況になっているわけです。

 これもやはり、少なくとも財産権を付与することも含めて、きちっと当事者間の協議を先ほどの問題と同じように進めるべきだと私は思うんですが、これも大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 映画監督は映画の著作者としての地位を有してはおりますが、映画の著作権は、著作者が映画製作者に対してその映画の著作物の創作に参加することを約束しているときは映画製作者に帰属するものとされているわけでございます。

 このように、映画製作者に著作権を帰属させているのは先ほど次長から答弁があったとおりでございますが、映画製作者の権利行使に委ねられていたというこれまでの実態が、つまり映画製作者と著作者との契約等にあって、今までの経緯、それから、映画は、映画製作者がその製作に巨額の製作費を投入し企業活動として製作、公表するものである、また、映画監督以外にもプロデューサーや撮影監督など著作者と認められる者がたくさんいて、これらの者全てに権利行使を認めると円滑な市場流通が阻害される、そういう理由だったわけでございます。

 今後の映画の著作物の著作権を映画監督に与えることについてでありますが、関係者のそういう意味でのやはりこれは合意形成の状況、また、映画の円滑な市場流通への影響、こういうことを踏まえながら、今後必要に応じて検討を行うべきものであるというふうに考えます。

宮本委員 先ほどのワーキンググループがつくられていたときには、映画監督の権利に関する法制、契約システムの整備のための協議の場というものも置かれておったわけです。これもとまったままになっています。しっかりそういう場を設けるように求めておきたいというふうに思うんです。

 今回の法改正とは直接関係ないんですが、先日の参考人質疑で、写真家の瀬尾参考人と写真の著作権の問題を取り上げてやりとりがあったので質問しておきたいと思います。

 写真の著作権をめぐっては、保護期間が文芸作品に比して短くなっております。特に、現存者の一九五六年以前の著作権が消滅する事態が生じているという問題があります。一昨日の参考人質疑でも、私が我が党の山原健二郎議員のかつての質問を紹介して、日本写真家協会の田沼武能会長が、この作品は著作権が切れているので使用料は払いませんと言われ、私はまだ生きているんだよ、ただで使われちゃたまらないとおっしゃったというエピソードを紹介してお聞きしたら、瀬尾太一参考人も、これは引き続き強い要望だと答えておられました。

 写真の著作権の保護期間、特に、現存者の著作権が消滅する問題について権利として確立することが必要だと思いますが、これは文化庁次長、これについてはどういうことになっておりますか。

河村政府参考人 写真の著作物の保護期間については、平成八年の著作権法改正によって公表後五十年から著作者の死後五十年に延長されましたが、旧著作権法下、旧著作権のもとで創作された写真の著作物であって、現行法施行前、これはつまり、昭和四十六年一月一日施行日ですので昭和四十六年一月の施行前ということですが、このときに既に著作権が消滅していたものについては現在の法律による保護は与えられないという整理となりました。

 この、一旦消滅した写真の著作権を復活させるべきかどうかという問題については、平成十一年の当時の著作権審議会において検討が行われましたが、一度権利が消滅したものについて保護を復活させるということについては、既存の定着した利用関係に重大な影響を与えることなどの理由から、著作権の保護を復活させるという結論には至らなかったものでございます。

 この結論は今も尊重されることになろうかと存じます。

宮本委員 レコードの場合は遡及が行われたわけでありますから、決してやってできないことではないんです。引き続き検討を求めておきたいと思います。

 今回は、この問題だけでなく、当然、新たな出版権の整備ということでありますけれども、紙媒体の書籍だけでなく、電子書籍がこれだけ急増しているわけですから、同時に、違法な複製、違法配信といった海賊版被害も増加をしております。こうした状況に対応した新たな出版権の整備自体は必要なことだと考えておりますし、これには賛成をしたいと思っております。

 最後に大臣、きょうのやりとりを聞いていただいて、やはり実演家の権利を一層拡充する必要がある、この点についての大臣の御決意をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。

下村国務大臣 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、これはぜひ、我が国は文化芸術立国として、あわせて世界に発信をしていきたいと思います。そういう意味では、文化芸術関係の方々を大切にしているということを国として示していく必要があるというふうに思います。

 先ほどの宮本委員のあの問題提起については、関係者間の合意等いろいろな課題はありますが、国としては、文化芸術関係の方々を大切にするような施策を進めるという方向については、ぜひこれからも進めてまいりたいと思います。

宮本委員 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 よろしくお願いいたします。

 まず、権利処理の円滑化のための権利者間の連携についてお伺いをさせていただきます。

 今回の改正案におきまして、複製と公衆送信に関して別々に出版権を設定できることとされています。

 出版関連小委員会の報告書を拝見いたしますと、「一体的な権利として制度化する場合と別個の権利として制度化する場合との差異は特段ない」、「本件について関係者の意見に隔たりがあるのは、電子出版についての契約慣行が十分に確立していないことが一因」とした上で、「著作権者と出版者との間に信頼関係が構築されれば、」「紙媒体での出版と電子出版に係る権利が、おのずと同一の出版者に一体的に設定されていくことが想定」されるというふうにございます。

 本改正案の意図としますと、著作権者等に配慮をして、複製と公衆送信は別々に出版権を設定できるといたしましたが、海賊版対策等を考慮いたしますと、今後一体的な設定が望ましいというふうに考えているということの御報告ということでよろしいのでしょうか。

河村政府参考人 紙媒体での出版の権利と電子出版の権利を一体の権利とするか否かについて文化審議会での審議が行われたのは、今お話しをいただいたとおりでございます。

 この議論では、いずれをとりましても、制度面では、例えば消滅請求のあり方とか、それから、出版権を設定するといったときに、出版権といっただけではやはり何が含まれているかわからないので、しっかりと、紙と電子の両方なのか、あるいはいずれかなのかということを契約の中で明示すべきだということで合意がされておりますので、制度的な意味では、一体かそうでないかということでの特段の差異はないのではないかということになったのでございます。

 そうではありますけれども、出版者がこれまで果たしてこられた社会的な役割や、出版、電子出版の実態を踏まえて、具体的な立法の方法は政府で検討するようにということが報告内容でございました。

 それを受けとめて今回の改正案では、電子出版の権利を紙媒体での出版の権利と同じ出版権の中に包含をいたしております。現行の出版権制度、著作権法の第三章に書かれております制度は、出版を引き受け、企画、編集等を通じて出版物を作成し世に伝達するという出版者の役割の重要性に鑑みて特別に設けられたものでありまして、改正案の意図としても、その趣旨は従来から変わっておりません。

青木委員 さらに今回の改正案では、出版権者が他者に複製または公衆送信の許諾ができることとなっています。

 このことによって、よい意味で柔軟なビジネス展開が可能になろうかというふうにも思うわけでございますが、この点についてのこの改正の狙いについて、お聞かせいただきたいと思います。

河村政府参考人 現在でも、実は、出版権が設定されている著作物について、著作権者及び出版権者が出版権者以外の者に文庫として出版することを許諾するというような実態がございます。

 また、今後は、出版権の目的となっている著作物について、出版権者みずから公衆送信を行うだけでなく、第三者にも公衆送信を行わせるということも考えられるわけでございます。

 そこで、本法案では、出版権者が第三者に対し複製または公衆送信を許諾することができることといたしております。

 これにより出版権者は、みずから出版や電子による出版を行うだけではなくて、著作権者の承諾のもとに第三者からも著作物の伝達を行うことが可能となるため、委員御指摘をいただきましたように、幅広いビジネス展開を行うことができるようになると期待をいたしております。

青木委員 改正案の第八十条三項によりまして出版権者が他者に複製等を許諾できるということになっているわけでございますが、第三者から見た場合、この権利関係が現状よりさらに見えにくくなるという懸念も一方でございます。

 そもそも、出版に際して関係者間で明確な契約が交わされない例も多々あるというふうに伺っています。コンテンツ産業振興の点からも、この著作物の権利関係を明確にして、第三者にもわかりやすくあらわす必要もあるかというふうに考えています。

 その点で、出版権の登録制度というのがございます。大変有効な制度と考えておりますが、著作権法に規定がありながら現在余り活用されていないと伺っておりますが、この登録制度が活用されていない今の背景と、今後のその活用の取り組みについてお聞かせをいただきたいと思います。

河村政府参考人 現行法では出版権の設定などについて登録制度というものが設けられておりますが、これは、二重設定が行われたような場合、例えば、著作者の人が一者に出版権を設定し、また別の方とも出版権を設定してしまったというような二重設定が行われたような場合において、その優劣を決するための対抗要件を付与するもので、財産権としての出版権について取引の安全を図るという意義を持つものでございます。

 ですから、登録をしなければ出版権そのものの効力が発生しないとか、侵害に対する請求ができないというものではございません。

 改正案では、現行の紙媒体についての出版権と同様に、電子出版についての出版権の設定についても、登録の対象となるということで設計をされております。

 出版権登録制度がそれほど利用されていないのではないかということでございますけれども、これは、登録免許税が一件三万円かかるということがありましたり、また、申請書の内容についてもう少し何か変えてもらえないかといったような要望も一部いただいております。

 これから出版者が登録制度を活用しやすくするような環境の整備ということは重要であると考えておりますので、今後、出版者からの要望の把握などにも努めてまいりまして、必要があれば、改善をしっかり図ってまいりたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。

 今御答弁にありましたとおり、やはりどこの出版者がどの著作物の出版権を持っているのかということを把握しておくことが、新たな契約をする際に、誰と契約をすればよいのか等々大変わかりやすくなるだろうなというふうに思います。出版権者がまた第三者にこの許諾ができるということになりましてますます契約関係が複雑で見えにくくなるものですから、御指摘をさせていただきました。

 次の質問は、日本書籍出版協会の資料によりますと、世界で出回っている漫画の海賊版の元データ、ほとんどがこの日本国内でスキャンされているということでございますが、この海賊版対策の点から考えまして、別々に出版権が設定された場合などには、権利者や許諾を受けた者など、関係者の連携が大変重要であろうかというふうに思いますけれども、文化庁といたしましてどういった支援を今後考えていらっしゃいますでしょうか。

河村政府参考人 出版権の制度は著作権者と出版者の設定契約を基礎とする制度ですので、今後は、著作権者と出版者双方が協力して新たな出版権制度を踏まえた契約慣行が形成されるように努められることが、まずは、関係者の連携を強化する観点からも極めて重要と考えております。

 文化庁としては、このような契約慣行の形成に資するために、改正法の趣旨、内容等について、施行までの間に、著作権者、出版者等々関係者に対して十分に周知してまいりたいと考えております。

 また、新たな出版権制度が効果的な海賊版対策に活用されるということも期待されますので、海賊版対策に有効な出版権設定契約のいわばパターンといったものも関係当事者に御説明して、連携を促進できればと考えております。

青木委員 ありがとうございます。

 そして、著作権者と出版者の間にしっかりとした信頼関係が構築されるような、公正な契約慣行の確立にもぜひ御尽力をお願いをしておきたいと思います。

 次に、小規模出版社の対応について若干お伺いをいたしますけれども、改正案第八十一条におきまして、従来と同様に、電子出版につきましても、原則として六カ月以内に発行する義務が出版権者に課されております。

 著作権者の権利の保護の点からは大変望ましいことと考えておりますけれども、大手出版社はともかくといたしまして、小さな出版社が複製と公衆送信について一体的な出版権の設定を行おうとする場合、電子書籍の編集の手間がふえる、一方で当該書籍の売り上げは余り変わらないであろうというふうに考えられることから、大変大きな負担になるのではないかというふうに考えます。

 この電子出版に関しまして、小規模な出版社などにはどのように対応されていくおつもりか、お伺いをさせていただきます。

河村政府参考人 出版につきまして、企画、編集、校正から世に出るまでにさまざまな過程があるわけでございますけれども、出版権の設定を受けた出版者がそれを全て全部自前でやらなければいけないということではございませんで、外部の力を委託その他の契約によってかりていくということは、十分実態としても、また法制度上もあり得るわけでございます。

 そのような、例えば中小の出版社の方々が力をかりる場として、一つには、出版界からもお話がございました出版デジタル機構といったようなところもございますので、そうした機構の活用なども通じながら、電子書籍市場が発展していけばということを期待をいたしております。

 このような全体としての、国内の電子書籍を含めたビジネスの発展に向けた民間事業者の取り組みにつきまして、私どもも継続的に注視をし、関係省庁とも連携をしてまいりたいと思います。

青木委員 済みません、最後に大臣の御所見を伺って質問を終えさせていただきたいと思います。

 我が国に四千社あると言われる出版社でございますが、本好きの国民性ですとか再販制度に守られまして、世界に誇る、多様な書籍文化を築いてまいりました。近年、書籍全体の売り上げが右肩下がりの中で電子書籍の売り上げは伸びておるわけでございますが、今後、電子書籍の出版、流通に関しましては、ダンピングや、また、今御答弁の中でもちょっと懸念する部分は、やはり寡占化の懸念もあろうかというふうに思います。著作者や出版者の利益、ひいては書籍文化の衰退のおそれもあろうかというふうに思います。

 政府は、知的財産推進計画二〇一三におきまして電子書籍の本格的普及促進を後押しをしています。我が国の多様な書籍文化をいかに守っていくかについて最後にお伺いをさせていただきます。

下村国務大臣 世界に誇る日本文化、大きな資産であり、我が国最大の強みであるというふうに思います。

 その中でも書籍等の出版文化は、我が国の文化や知識を創造、普及し、これを次世代に継承するに当たり重要な役割を担い、我が国の活力ある社会の実現に寄与してまいりました。

 改正案により出版権者は、みずからインターネットに出回っている海賊版を差しとめること等ができるようになり、紙媒体による出版文化の継承、発展と健全な電子書籍市場の形成が図られ、我が国の多様で豊かな出版文化のさらなる進展が期待されるところであります。

 そのため、文科省としては、改正法の趣旨や内容等について、著作権者や出版者に対して十分周知をし、新たな出版権制度が効果的に活用されるよう取り組んでまいりたいと思います。

 文科省においては、出版文化を振興するため、改正案のほかにも、読書活動の推進、学校図書館の充実、日本の文学や漫画等の海外発信など、活字文化の振興にさらに努めることによりまして、出版文化の振興にさらに努めてまいりたいと思います。

青木委員 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 本日最後の質問ということでありますし、また、重なる部分も確認も込めて質問させていただきますので、答弁のほどよろしくお願いをいたします。

 既に当委員会でもいろいろと議論されましたが、日本の漫画についてであります。海賊版は相当数に出回っているという現状にありますし、また、その被害額というのは年間二百億を超えるというようなことも、そういう試算もあるというふうにも聞いております。

 そういう中で、今回の改正案八十条との関係でありますけれども、海賊版、特に海外の関係ですけれども、版面をスキャンして、せりふを外国語に入れかえる、そういうことも行われております。八十条を読みますと、「頒布の目的をもつて、原作のまま」というふうになっておりますが、今回の法改正で、こうした、せりふのみをいわゆる外国語に変えてやられた場合に対応可能なのかどうかについてまず伺います。

河村政府参考人 漫画作品でせりふ部分だけを外国語に入れかえてネット配信する行為は、電子出版についての出版権の侵害になり得ると解しております。電子出版についての出版権を設定すれば、出版者みずから海賊版に対応することが可能となると考えております。絵の部分については包含ということがなされておりませんので、少なくとも、そこの部分を捉えて出版権侵害が成立するものと考えております。

吉川(元)委員 絵の部分とせりふの部分を分け、そして、その絵の部分が原作、いわゆる八十条に規定をされているということだろうというふうに思いますので、そういう形での対応が今後可能になるというふうに理解をいたします。

 次に、電子出版物の違法コピーが問題になっており、文化審議会で議論も行われ、今回の法改正につながっていったということだろうと思いますけれども、ネットを見ておりますと、正々堂々と漫画や週刊誌あるいはアニメをアップロードしているサイトも多数存在をしております。参考人の質疑の中でも、公的な機関でチェックというようなことも言われました。

 もちろん、これは中身はなかなか大変難しいところで、親告罪という、そういう法律の中身でもありますので簡単にはいかないと思いますけれども、あえてサイト名は申し上げませんが、利用者への充実したサービスの提供を掲げ、極めて挑戦的な態度で漫画を次々と発売日前だとかにもアップされているところもございます。

 この行為自体、今回の法律では規制をされるということになると思いますけれども、やっている側は、我々はサイトを提供しているだけであるというようなことも言われておりますが、今回の法改正、これに対しては有効な対応はできるのでしょうか。

河村政府参考人 漫画を無断でアップロードするということは、現行法においては、まず、言わずもがなかもしれませんが、著作権侵害には該当しておりますので、それによる差しとめ、損害賠償等の請求を行うことは可能でございます。

 また、改正案によりまして電子出版についての出版権設定が可能になりますので、週刊漫画雑誌などに掲載されている著作物について、電子出版についての出版権設定を受けた出版者は、無断のアップロード者に対して、出版権侵害として、差しとめや損害賠償等の請求を行うことが可能でございます。仮に前からやっているという人でありましても、継続的にずっと送信行為が行われているということでございますれば、電子出版の出版権侵害となるわけでございます。

 それから、先ほどの御質問で外国ということでおっしゃられましたので、ちょっと私の御説明が足りなかったかもしれませんが、海外における著作権侵害への対応である場合には、基本的にはその侵害行為が行われた国での法律に基づくことになりますので、国内法で出版権を整備し、日本で出版権が整備されて、出版権者が今度は海外の海賊版を差しとめられるかどうかはその国の法律によるということを付言させていただきたいと存じます。

 著作権者は、条約関係があればもちろんその対応が可能でありますし、私どもとしては、アジア諸国との二国間協議などで、個々の権利保護に向けての努力を続けてまいりたいと思います。

吉川(元)委員 海外の問題については、しっかりと各国と協議をしていただければというふうに思います。

 違法なそういうサイトにアップしている方は、結構年齢が若い方がたくさんいらっしゃいます。未成年の方もたくさんいらっしゃるようですので、このあたりはやはり、著作権とは何なのかということについても、しっかりと教育の中で教えていくということも必要なんだろうというふうに思います。

 次に、これもちょっと確認のための質問ということになりますけれども、八十四条の関係について伺います。八十四条、これは、恐らく法律用語ということで非常に厳密に書かなければいけないということなんですけれども、これだけ読むと非常にわかりづらいということでの、その確認のための質問です。

 紙媒体と電子書籍の出版権を一体で保有している出版者が、紙媒体あるいは電子書籍のどちらか一方について、慣行に従い、義務として定められている六カ月以内の書籍販売を怠った場合、権利の喪失ということになるわけですけれども、紙媒体、電子書籍のどちらか一方だけに権利消滅がとどまるのか。例えば、電子の方を出していなければ電子の方の権利が消滅をするというふうに理解してよろしいんでしょうか。

 八十四条を見ますと非常にわかりにくく書いてありますので、この点についての確認をお願いします。

河村政府参考人 御指摘の点についてお答え申し上げます。

 改正案では、紙媒体の出版と電子出版の両方の権利を持ち、両方の義務を負う出版権者が一方のみの義務に違反した場合、例えば、紙は出したけれども電子出版をしなかったという場合には、著作権者は、義務の違反に対応する権利のみ、つまり、今の場合ですと電子に関する権利のみの消滅を請求することができることといたしております。

 審議会の議論の過程では、一方の義務を履行している場合でも、もう片方に義務違反があれば、両方の義務について著作権者から消滅請求を認める制度案というのもあり得るという御意見もございましたが、審議会の場で、出版者、著作権者双方から反対意見が示されまして、採用に至りませんでした。

吉川(元)委員 次に、これも参考人の方がおっしゃられておりましたが、紛争処理のための仲裁機関ということについてお尋ねをいたします。

 今回の改正、電子書籍の出版権の設定に当たり、紙媒体の出版権者と電子書籍の出版権者が異なった場合や、あるいは義務と権利喪失の関係、紙媒体と電子書籍が異なる再販維持制度の適用などによって、少なからずトラブル、ないにこしたことはないんですけれども、やはりそうしたトラブルが起こる可能性もあります。もちろん、最終的には司法の場で争われるということになるんでしょうけれども、著作権者やあるいは中小の出版社にとってみれば、大変重い負担になるということが十分これは予想されるわけです。

 このようなことを踏まえれば、出版契約にかかわる相談、苦情、紛争処理のための仲裁機関、いわゆるADRのような機関の必要性が指摘をされているところですけれども、この点についてのお考えを尋ねます。

河村政府参考人 出版権制度は著作権者と出版者との設定契約を基礎とする制度でございますから、双方が協力して円滑な契約慣行が形成されるように努められることが大変重要になると考えております。

 この関係での紛争が生じた場合の対応について出版界は、出版契約に関する著作者と出版者間での問題を解決するための仲裁機関の設立を検討していると表明をしておられます。

 私どもとしても、実効性ある仲裁機関が設立されれば、契約に関する各当事者の不安の解消につながることが期待されますので、出版界による仲裁機関の設立に向けた取り組みなどについて、継続的に注視をしながら、必要に応じて協力をしてまいりたいと存じます。

吉川(元)委員 それでは次に、出版権登録についてお尋ねをいたします。

 今、電子書籍の違法コピーあるいは海賊版対策については、今回の出版権を創設することによって対応できるということだろうと思いますし、出版権登録は必ずしも必要なわけではありません。ただ、権利の移転あるいは流通において権利の明確性が確保できるメリット、先ほど、意義については第三者に対する対抗要件というようなお話もございましたが、これからますます、出版権の登録ということの制度の整備が必要だろうというふうに考えます。

 現行の登録制度、昭和四十六年から平成二十四年までの間でわずか二百九十三件、大変少ない、余り有効に活用されていないというふうにも思われます。これはさまざま業界の中の慣行等々もあるかというふうには思いますけれども、ただ、一方でやはり、登録料、これは三万円というふうに聞いておりますが、これからこれを有効活用していかなければいけないといったときに、これが非常に大きなネックになるのではないかというふうにも思っております。

 この点、制度の整備も含めてどのようにお考えなのか、尋ねます。

河村政府参考人 改正案におきましては、現在、紙媒体についての出版権と同様に、電子出版についての出版権の設定等についても登録の対象となるという設計となっております。

 この登録制度について、出版者が制度をより活用しやすい環境にしていくための整備を図ることは重要であると考えております。

 今後、出版者の方々の要望もよくお聞きをしまして、申請書等の見直しなど、必要な改善を行っていきたいと存じます。

吉川(元)委員 登録料ということでいうと、文科ではなくて、やはりまた財務省が出てきます。戦う文科省として、また戦う文化庁として、この出版権登録の制度が使いやすくなるように、ぜひ、登録料の引き下げ等々についても働きかけをお願いしたいと思います。

 最後に大臣の方に伺います。これももうほかの委員の方から質問がありました。書籍とそれから電子の関係でございます。紙媒体の書籍と電子の書籍の双方がやはり共存し発展していくということが必要だろうというふうにも思っております。

 これはこの間からずっと私は何度か言っておりましたけれども、ただ単に紙の本というだけではなくて、やはり、それを販売する書店も含めて全体が発展をしていかなければいけない。ピーク時に比べると四割ぐらい書店は潰れているそうでございます。今後ますますそうした傾向に拍車がかかるようなことはあってはならない。ふらっと時間ができたときに立ち寄った本屋でたまたま見かけた本、あるいは買おうと思っていた本の隣にあった本に興味を引かれて、そこからいろいろな知識がふえていくということも、私自身も多々経験をしております。

 そういう面でいうと、紙媒体の書籍の発展ということもあわせて考えていかなければいけないと思いますし、また、前回の委員会での質問の際に公取に尋ねましたが、再販制度、電子と紙媒体、これでは全く異なる状態になっております。聞くところによると、フランスなどでは電子書籍価格規制法というようなものがつくられて、際限のないいわゆる価格競争にならないように、そして書店が生き残れるような、そういう法律もつくられております。

 紙媒体の書籍の発展について大臣はどのようにお考えか、最後に確認させていただきます。

下村国務大臣 もう時間が過ぎておりますし、また、ほかの委員にお答えをさせていただきましたので、ちょっと簡単に申し上げたいと思います。

 文部科学省としては、成立させていただければ、この法改正の趣旨や内容を改めて著作権者や出版者に対して十分に周知して、そして、新たな出版権制度が効果的に活用されることによって、既存の書店等もこのことによってさらに頑張っていただけるような環境づくりのために努力をしてまいりたいと思います。

吉川(元)委員 以上で終わります。

小渕委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、著作権法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)

    ―――――――――――――

小渕委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中根一幸君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、結いの党、日本共産党、生活の党及び社会民主党・市民連合の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。中川正春君。

中川(正)委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 少し長くなるので恐縮ですが、案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 我が国の「知の再生産」や「日本文化の創造と伝搬」に貢献してきた日本の多様で豊かな出版・活字文化を、グローバル化やデジタル化が進展する新しい時代においても一層発展させ、著作者の権利を保護しつつ、多様な著作物を多様な出版形態でより多くの国内外の利用者に届けていくことが重要であることに鑑み、真に実効性ある海賊版対策の実施など、本法により拡充された出版権制度の更なる利用促進に向けて必要な対策を講ずること。

 二 我が国が世界に誇る出版・活字文化は、著作者と出版を引き受ける者との間の信頼関係に基づく企画から編集、制作、宣伝、販売という一連のプロセスからなる出版事業がその基盤にあることを踏まえ、本法によって設定可能となる電子出版に係る出版権の下でも従前の出版事業が尊重されるよう、その具体的な契約及び運用の在り方を示して関係者に周知するとともに、その実務上の効果について一定期間後に具体的な検証を行い、必要に応じた見直しを検討すること。

 三 電子出版の流通の促進を図るためには、契約当事者間で適切な出版権設定を行いつつ、関係者の協力によって有効な海賊版対策を行うことが必要不可欠であることから、これまで出版権設定が進んでこなかった雑誌等、複数の著作物によって構成される著作物などについても出版権設定が可能であることについて周知に努めるとともに、具体的な契約モデルの構築について関係者に対する支援を行うこと。また、物権的に細分化された出版権が設定された場合に、当該出版権が及ばない形態の海賊版が流通した場合には効果的な海賊版対策を行うことができないため、効果的な海賊版対策を講ずる観点から適切な出版権が設定されるよう推奨すること。

 四 効果的な海賊版対策を講ずる観点からは、著作者が契約締結時において電子書籍を出版する意志や計画がない場合であっても、紙媒体の出版と電子出版等を合わせて一体的な出版権の設定がなされることが推奨されるが、その後、電子書籍の出版を希望するに至った場合において、著作者の意図に反して出版が行われず放置されるといったいわゆる塩漬け問題が生ずることのないよう、適切な対策を講ずること。

 五 電子的な海賊版については、ひとたびインターネット等で公衆送信が行われればもはや完全に差し止めることは困難であり、甚大な被害が生じてしまうことから、電子出版に係る出版権しか持たない出版者においても、違法配信目的で複製がなされた場合には、第百十二条第一項の「出版権を侵害するおそれがある場合」としてその段階で差止請求を行うことができることを出版者に対し周知すること。

 六 出版権者及び著作権者による海賊版対策の取組の状況を踏まえ、紙媒体の出版についてのみ出版権の設定を受けている出版権者であっても、インターネット上の海賊版又はDVD等の記録媒体等による海賊版に対し差止請求を行うことができる契約慣行の改善や「みなし侵害規定」等の制度的対応など効果的な海賊版対策について検討すること。

 七 海賊版については、日本国外での被害が圧倒的多数であることから、その対策強化を図るための国際的な連携・協力の強化など、海外での不正流通取締対策に積極的に取り組むとともに、出版物の正規版の海外流通の促進に向けて官民挙げた取組を推進すること。

 八 本法によって、多様な形態の出版権設定が行われる可能性があることから、著作物における出版権設定の詳細を明らかにするため、将来的な利活用の促進も視野に入れつつ、出版権の登録・管理制度等を早急に整備するため、具体的な検討に着手すること。また、当事者間の契約上の紛争予防及び紛争が発生した際の円満な解決の促進を目指し、出版契約における裁判外紛争解決手段(ADR)を創設すべく、必要な措置を講ずること。

 九 教科用拡大図書や副教材の拡大写本を始め、弱視者のための録音図書等の作成においてボランティアが果たしてきた役割の重要性に鑑み、障害者のための著作物利用の促進と円滑化に向け、著作権法の適切な見直しを検討すること。特に、障害者の情報アクセス権を保障し、情報格差を是正していく観点から、障害者権利条約をはじめとする国際条約や関係団体等の意見を十分に考慮しつつ、障害の種類にかかわらず全ての障害者がそれぞれの障害に応じた形態の出版物を容易に入手できるよう、第三十七条第三項の改正に向け、速やかに結論を得ること。

 十 視聴覚的実演に関する北京条約や関係団体等の意見を十分に考慮しつつ、俳優、舞踊家などの視聴覚的実演家の権利に関し、契約及び運用の在り方や法制上の在り方も含め検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願いを申し上げます。

小渕委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。(拍手)

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

小渕委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

小渕委員長 次回は、来る九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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