衆議院

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第18号 平成26年5月16日(金曜日)

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平成二十六年五月十六日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      小此木八郎君    鬼木  誠君

      神山 佐市君    菅野さちこ君

      木内  均君    工藤 彰三君

      熊田 裕通君    小林 茂樹君

      小林 史明君    小松  裕君

      佐々木 紀君    桜井  宏君

      新開 裕司君    冨岡  勉君

      永岡 桂子君    野中  厚君

      馳   浩君    比嘉奈津美君

      堀井  学君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君    菊田真紀子君

      細野 豪志君    吉田  泉君

      遠藤  敬君    椎木  保君

      田沼 隆志君    中田  宏君

      三宅  博君    中野 洋昌君

      柏倉 祐司君    井出 庸生君

      宮本 岳志君    青木  愛君

      吉川  元君    山口  壯君

    …………………………………

   議員           吉田  泉君

   議員           笠  浩史君

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          前川 喜平君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     小林 史明君

  桜井  宏君     堀井  学君

  永岡 桂子君     鬼木  誠君

  馳   浩君     佐々木 紀君

  遠藤  敬君     田沼 隆志君

  三宅  博君     中田  宏君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     永岡 桂子君

  小林 史明君     神山 佐市君

  佐々木 紀君     小松  裕君

  堀井  学君     桜井  宏君

  田沼 隆志君     遠藤  敬君

  中田  宏君     三宅  博君

同日

 辞任         補欠選任

  小松  裕君     馳   浩君

    ―――――――――――――

五月十五日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(宮本岳志君紹介)(第八一三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八四〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第八八五号)

 同(新谷正義君紹介)(第八八六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八八七号)

 同(丹羽秀樹君紹介)(第九一一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第九八九号)

 学校司書の法制化に関する請願(桜井宏君紹介)(第八一四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八一五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八四一号)

 同(志位和夫君紹介)(第八八八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八八九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第九九〇号)

 教育費負担の公私間格差をなくするための私学助成に関する請願(船橋利実君紹介)(第九八五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)

 地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外三名提出、衆法第一六号)


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び笠浩史君外三名提出、地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長前川喜平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。義家弘介君。

義家委員 自由民主党の義家弘介です。

 これまで当委員会で議論してきた地方教育行政法改正案、実に五十年ぶりの抜本改正案であります。これは今国会で始まった議論ではございませんで、私も主体的に九年間、この改正については取り組んできましたし、第一次安倍内閣の教育再生会議、官房副長官として、そして現在、文部科学大臣としてこの歴史的な大改正に踏み込んだということについて、心から敬意を表したいと思っておりますし、まさに歴史に残る大改革をなし遂げていただいた大臣ということで、私も大変尊敬しております。

 これまで、さまざまな教育委員会の機能停止あるいは無責任な問題が起こり続けてまいりました。そのたびに、このままの教育委員会制度ではだめだという世論も起こってきました。恐らくこの委員会でも、今の教育委員会制度でいいと思っていらっしゃる方はおられないと思いますし、また、国民も同様であろうと思います。

 私も、授業やあるいは講演会、討論会、テレビなどで幾度となく、教育委員長と教育長、この違いをどう考えますかと言ったとき、およそ五年ぐらい前までは、ほとんどの人が答えられないという状況でありました。レーマンコントロールと言いながら、レーマンが制度さえ理解していないままコントロールしようというのですから、本末転倒と言わざるを得ません。

 常勤の教育長を合議体執行機関の教育委員会の責任者とし、責任の所在をまずは明らかにする、さらに、首長が主宰する総合教育会議を必置とし、教育の中立性、安定性、継続性を担保しつつも、住民の選挙によって選ばれた首長の選挙公約や意見も教育行政に明確に反映できるようにするという今回の抜本改正は、まさに時代の要請であったというふうに考えております。教育をパフォーマンスに使ってはならない。教育は常に子供たちに対して目を向けていかなければならない。その意味で、非常にすぐれた改正案であるというふうに思っております。

 さて、ここでまず、最後の質疑になりますのでしっかりと確認しておかなければならないことがあります。この委員会でもおよそ四十時間にわたって議論がされてきたわけですが、実は、野党の皆さんからも出てきた意見は、この九年間議論に議論を重ねた中の一つでありまして、傾聴に値するものもありましたけれども、これまで我々が主体的に議論してきた内容、意見の範囲を出ていないものでありましたが、改めて、まず責任体制について質問したいと思います。

 特に、この抜本改正の契機となったいじめ自殺事件等重大事件に対しての教育委員会のあり方、無責任に対して、最後に明らかにしておかねばならないことがあるので質問させていただきます。

 当委員会でも大津のいじめ事件における対応が何度も指摘され、先般は、実際、大津市長も当委員会の参考人として意見を開陳いたしました。その中で大津市長は、今回の政府案では、首長が議会の同意を得て選任する、ただし、罷免の場合は現在と同じであり、心身の故障や職務上の義務違反に限定されている、実質上何もできないし、首長が主宰する総合教育会議では重大事案発生時において教育長の暴走をとめることができない等の意見が出されました。

 私は実は違和感を持ってこれを聞いていたわけですが、そこで質問いたします。まず事務方がお答えください。

 昨年成立したいじめ防止対策推進法第二十八条そして第三十条に定められている、いわゆる重大事案が発生したときの対応について説明してください。

前川政府参考人 お答え申し上げます。

 公立学校でいじめによる重大事態が発生した場合でございますが、まず、学校は教育委員会を通じて重大事態が発生した旨を地方公共団体の長に報告するとともに、学校の設置者、すなわち教育委員会または学校は、速やかに、当該学校の設置者またはその設置する学校のもとに組織を設け、事実関係を明確にするための調査を行い、さらに、調査結果を地方公共団体の長に報告することが必要でございます。

 また、調査結果の報告を受けた地方公共団体の長は、重大事態への対処または当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるときは、附属機関を設けて調査を行う等の方法により、学校の設置者または学校が行った調査の結果について調査を行う、いわゆる再調査を行うことができる。

 それらのことが、いじめ防止対策推進法第二十八条及び第三十条、さらに、法に基づきます国のいじめ防止基本方針において定められているところでございます。

義家委員 ありがとうございます。大津の事件と違い、立法府、多くの政党が知恵を持ち寄って成立させたこのいじめ防止推進法、これによって一つの道筋ができておりますが、ここで大臣にお伺いします。

 もし仮に、これらの重大事案について教育委員会が首長に報告しない、ないしは事実を隠蔽するなど行っている場合は、地方教育行政法上の罷免要件である職務上の義務違反に該当すると考えるか否か、お答えください。

下村国務大臣 おはようございます。

 まず、義家委員が、今回の地教行法改正、長い間にわたって終始中心的、主体的に法案作成に向けて今日を迎えたということに対して、心より敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 その上で、御質問でありますが、いじめ防止対策推進法上の重大な事態が発生した場合は、学校はその旨を教育委員会を通じて首長に報告しなければならないわけでありますが、教育長が隠蔽を図り、みずからの判断で首長に報告しないような場合には、職務上の義務違反となることもあり得ます。

義家委員 これも民主、維新の皆さんはさんざん質問してきましたが、こうなんです。重大事案が起こったとき、我々がつくり上げたいじめ防止法に照らし合わせて、隠蔽を行ったり事実を報告しなかった場合は、当然、地方教育行政法上の職務上の義務違反に該当するんです。つまり、罷免要件が満たされるということになるわけです。子供たちを守るために緊急の必要がある場合、そういう措置がとられていることをまず御理解願いたいと思っております。

 また、いじめ防止推進法第三十条二項、先ほど前川局長がおっしゃっていましたが、教育委員会が行った調査に疑義がある場合、改めてその調査に対して調査を行うということがいじめ防止推進法で明記されていますが、再び大臣に質問させてください。

 仮に、首長が附属機関を設置して再調査するときに対して、教育長あるいは教育委員会がその再調査に対して、資料も出さない、協力もしない、隠蔽も続ける等々の悪質な状況が続き、事実関係の解明、対応ができないというような状況になったとき、これもまた罷免要件である職務上の義務違反に該当するか否か、お答えください。

下村国務大臣 御指摘のように、いじめ防止対策推進法上の重大な事態への対処または同種の事態の発生の防止のため必要がある場合には、首長は教育委員会の調査の結果について再調査を行うことができますが、教育長が、法第二十八条に基づき実施された調査結果があるにもかかわらず、意図的に首長に一切報告をしない、あるいは虚偽の事実を報告するような場合には、職務上の義務違反となることもあり得ます。

義家委員 つまり、この部分についても、首長が重大事案の対応について権限と責任を明確に有しているということが今の答弁でも明らかですし、我々も、こういう危機事態のとき、子供たちを守るために何をすべきかを徹底して議論してきた上でのこの法改正だったということを改めて付言しておきます。

 続きまして、総合教育会議で協議、調整のもとで決定した大綱の実施についての質問でございます。

 調整がついた大綱に基づいて、首長の権限に属するものは首長が、そして、教育委員会の権限に属するものは教育委員会が責任を持って執行していくということになりますが、そのときは、法律にも明記されているとおり、尊重義務が課されます。とはいえ、一〇〇%計画どおりに全ての大綱が決定されるとは我々も考えておりません。財政の問題や、あるいは、調整がおくれた場合においてその大綱どおりに全てが進むとは考えておりませんが、しかし、一方で尊重義務がございます。

 そこで質問です。仮に、首長がその大綱どおりできなかった場合あるいは教育委員会ができなかった場合、そのままではなく、総合教育会議において、互いになぜできなかったのかの説明責任があると思いますが、この辺、大臣、いかが考えられますか。

前川政府参考人 大綱におきまして首長と教育委員会が協議、調整を経たものにつきましては、首長と教育委員会の双方に、それに対する尊重義務が生じるわけでございます。

 この場合において、大綱を尊重して職務に当たるということが義務づけられるわけでございますけれども、結果としてそのとおりにならないということはあり得るということでございます。

 しかしながら、本来、この大綱に則して執行することが期待されているものでございますから、仮に計画どおりに達成できなかったという場合におきましては、総合教育会議で、お互いに報告し、どのような方策を講ずるかについて協議するということが当然期待されているところでございます。

義家委員 ありがとうございます。

 その上で質問いたします。その調整がついた事項に対して、執行できなかった、あるいはされなかった、あるいは明らかに異なる執行が行われた理由が、例えば教育委員会あるいは教育長の明らかなサボタージュや暴走によるものである場合は、職務上の義務違反、すなわち罷免要件に該当すると考えるか、お答えください。

下村国務大臣 大綱は、教育委員会と十分に協議し調整を尽くした上で首長が策定するものであります。一般的に言って、このようにして作成された大綱を尊重せず、全く無視するようなことがあれば、職務上の義務違反となることもあり得ます。

義家委員 ありがとうございます。

 というふうに、首長の権限、首長のリーダーシップというものもこの法律にはしっかりと規定されているわけです。重大事案が起こったとき、首長は何もできない。違います。総合教育会議で決定した事項に対して教育委員会が言うことを聞かなかったときも、あるいは双方と違うことをしたときも首長は何もできない。これも違うんです。

 民主主義国家ですから、しっかりと、合意に基づいて、その権限と責任の限りでそれぞれが子供たちのために果たしていく。例えば、政治家のパフォーマンスによって教育が揺れるようなことがあっては絶対にならないんです。だからこそ、抑制的に、それぞれが責任と権限をしっかりと理解し合いながら物事を進めていくことが大切であろうと思います。

 そして最後の質問になりますが、改正地教行法では、十一条に、教育委員の服務規定において、教育行政の運営に当たって、生徒児童の教育を受ける権利の保障に万全を期すという文言が新たに加えられています。

 そこで、例えば竹富町でありますが、教科書無償措置法に基づかない教科書を採用し、結果、国からの教科書の無償措置を受けられず、篤志家からの寄附によって子供たちに教科書が配られている、これが今の現状であります。しかし、この寄附というのは大変流動的なものでありまして、必ずその寄附が集まる保証はどこにもありません。

 つまり、子供たちの教育を受ける権利の保障に万全を期すと定められているからには、このような違法な決定を教育委員会が行うことは明らかに間違っているというふうに考えますが、大臣の御見解をお願いいたします。

前川政府参考人 御指摘のとおり、教科書無償措置法第十三条第四項におきましては、共同採択地区内では、関係市町村が協議して、種目ごとに同一の教科書を採択しなければならないと定めているところでございます。しかし、竹富町教育委員会は、八重山採択地区協議会の規約に従ってまとめられた結果とは異なる教科書を採択しており、教科書無償措置法に違反していることから、ことしの三月には、竹富町教育委員会に対して、地方自治法に基づく是正の要求を行ったところでございます。

 今回の地教行法改正におきましては、第十三条第八項におきまして、教育長及び教育委員は教育を受ける権利の保障に万全を期して教育行政を運営する必要がある旨を明記したところでございます。教科書採択に当たっても、この条項を踏まえることが当然求められるわけでございます。教育委員会が違法状態を改善しないということは許されないということでございます。

 この規定の趣旨を踏まえまして、今後、各教育長及び教育委員は、一層、児童生徒のために強い責任感を持って教育行政に取り組んでいただきたいと考えております。

義家委員 つまり、このような揺れる状況になったら今度は服務違反という形になっていくわけですから、しっかりとその責任と服務のあり方を理解した上で教育委員そして教育長は教育行政をしていかなければならないという重い条文を加えていただいたこと、これにも心から感謝したいと思います。

 教育再生、この前提として教育正常化が問われます。また、日本は法治国家であり、教育行政は法律に基づいて行われなければなりません。教育委員のさらなる意識改革、委員会への積極的参画、教育委員会事務局の抜本改革、議会のしっかりとしたチェック、それらを総合的に正常化し、再構築していかねばなりません。

 この改正は教育再生の新たなるスタートであります。今後とも、大臣を強烈に支援しながら、しっかりと我々も与党の責任を果たしてまいることをお約束して、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 通告に従いまして質問をさせていただきます。

 四月十六日に審議入りしたこの法案でございます。大変に長い議論を重ねてまいりました。与党また野党の皆さんも含め、大変真摯な議論を積み重ねてきた、このように認識をしております。私自身も今回は質問四回目でございますし、参考人質疑また地方公聴会の場でも質問をさせていただきました。

 非常に感じましたのは、教育行政において、やはり、どういう方向性を決めていくかという平時の議論の場合でも、あるいはいじめのような緊急の対応が必要な、あるいは重大な事案の場合でも、どういう制度がいいかというのは、それぞれのお立場によってさまざまな御意見がございます。そうして我々は、教育は国家百年の大計というふうに申しますけれども、長い目で見て果たしてどういう制度が今一番望まれているのか、こういうことを考えていかなければならない。改めて感じさせていただいたこの審議でございました。

 そして、私は、先日の参考人質疑等々も含めて、改めて、御指摘があった点について今回の制度改正によってどのように対応していくのか、これを今回確認をさせていただきたい、このように思います。

 まず一つ目でございますけれども、いじめ対策について今週水曜日も質問をさせていただきましたけれども、いじめ防止対策推進法案が施行された施行の状況を確認をいたしました。基本方針がまだできていない都道府県、策定中の都道府県もある。機関の設置についても、まだできているところ、できていないところがある。これを今、施行をしっかり体制を整えていく、こういうことを御要望申し上げました。

 いじめ防止対策推進法の施行後においても、いじめのような重大事案の際に、第三者も含めてこの委員会を設置する話でございますとか、あるいは関係者の御家族の方に対して適切に情報提供を行っていくでありますとか、いろいろなことを議論したわけでございます。

 ただ、大変残念なことに、報道を見ますと、私も個々の事案について細かく現場の情報を承知しているわけではございませんけれども、御家族の方から大変不満の声が上がっているような事案も散見をされるわけでございます。

 この防止対策推進法の施行後の体制についてどう評価するのか、あるいはこうした不満の声に対してどのように対応していくのかということを、改めて文部科学省に確認をしたいというふうに思います。

前川政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省におきましては、いじめ防止対策推進法が求める組織の設置でありますとか重大事態の調査のあり方などにつきまして周知徹底を図るため、学校関係者や教育委員会担当者等を集めた説明会や研修会を実施いたしましたり、各地の教育委員会等が開催する説明会におきまして文部科学省職員を講師として派遣する、あるいは、各地域の取り組み状況を調査、公表することを通じてさらなる取り組みを促進するといった取り組みを実施しているところでございます。

 これによりまして、各地域において重大事態の調査や遺族への情報提供について積極的な取り組みがなされるよう、意識改革が進んできているものと考えております。

 また、こうした取り組みを通じまして、例えば都道府県、政令指定都市の取り組み状況につきまして見た場合、昨年十二月末の時点と本年四月一日現在の時点の比較で見ますと、地方いじめ防止基本方針が策定済みである自治体、これは六十七都道府県、指定都市のうち六地域から四十五地域に増加しております。また、教育委員会に置く附属機関が設置済みである自治体、これは一地域から二十五地域に増加しているわけでございます。

 このように、法の施行以降、各地域のいじめ防止等に対する取り組みは確実に推進されてきていると認識しております。

 文部科学省といたしましては、引き続き、重大事態の調査を初めとするいじめ防止対策推進法を踏まえた必要な対応が各地で適切に実施されるよう、よりわかりやすい資料の作成、研修資料や自殺の背景調査の指針の見直し等でございますが、こういったものや、説明、研修の積極的実施等によりましてしっかりと取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

中野委員 引き続きしっかりと対応していただきたいと要請申し上げます。

 もう一点御質問をさせていただきたいのは、市町村の教育委員会、あるいは都道府県の教育委員会、この権限の関係について質問をさせていただきます。

 これも、前回の参考人質疑でもございました、また、その前の参考人質疑でも地方公聴会でも、さまざまな場面で御指摘があったというふうに私は認識をしておりますけれども、例えば人事権、都道府県の教育委員会が市町村の部分についても持っている、この権限の関係を市町村にしっかりやらせた方がいいんじゃないか、こういう意見があるというふうに承知をしております。

 他方で、もちろん小規模な市町村については配慮しないといけない、こういう議論もあることから、今回、権限移譲については行っていない、こういう認識であります。

 例えば私も、地元は兵庫県尼崎市でございますけれども、一定規模の市町村も当然あるわけでございまして、こうしたある程度の規模を備えたところというのは、やはりこの権限というのは、移譲していくということもしっかりやっていくべきなのではないか、私はこのように考えております。

 国として今後どのような方向性で臨まれるのかということを確認をさせていただきたいというふうに思います。

前川政府参考人 公立小中学校の教職員の人事権につきまして都道府県教育委員会から中核市等の教育委員会へ移譲するということにつきましては、平成二十五年三月の閣議決定におきまして、「検討を行い、」「結論が得られたものから順次実施する。」という方針が立てられているところでございます。

 文部科学省におきましては、昨年四月に、今般の地方教育行政のあり方につきまして中央教育審議会に諮問を行ったところでございますが、その際には、この県費負担教職員の人事権の移譲の問題につきましても御審議をいただいたところでございます。

 その中で、都道府県に人事権があることにより、教職員を育成すべき市町村の当事者意識が薄らぐという意見でありますとか、人事権を移譲し、市町村で教職員をみずから採用するということによりまして責任と権限を一致させるべきであるという意見などがあったところでございます。

 ただ一方で、離島や中山間地では管理職の不足など広域人事が必要となる状況があるでありますとか、あるいは、小規模の自治体で採用試験の業務を行うのは困難ではないかというような意見もあったところでございます。

 こうした議論を踏まえまして、昨年十二月の答申におきましては、「引き続き、小規模市町村を含む一定規模の区域や都道府県において人事交流の調整を行うようにする仕組みを構築することを前提とした上で、小規模市町村等の理解を得て、中核市をはじめとする市町村に移譲することを検討する。」とされているところでございます。

 今後とも、引き続き検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

中野委員 大変重要な問題であると思います。小規模市町村への配慮ということでどういう形があり得るのかということ、地元でもしっかり検討してまいりたいと思いますし、国としてもしっかり後押しをしていただければというふうに思います。

 続きまして、水曜日の参考人質疑で京都市の門川市長が来られまして、地元の取り組みを紹介をされました。

 その中で主張されておられましたのが、やはり教育委員会としての力、教育委員会力とおっしゃられておられたと思いますけれども、これを力をつけていかないといけない、事務局の体制も含めて、しっかりと現場のいろいろなニーズに対応できるような形にしていかないといけない、こういう御主張であったというふうに思います。

 教育委員会の事務局の職員の専門性をより高めていくべきではないかという指摘、ございました。なるべくそのプロパーに近い形というか、そういう形でやっていった方がいいんじゃないか、こういう御指摘もございましたけれども、これについてどう取り組まれるのかをお伺いをしたいと思います。

前川政府参考人 お答え申し上げます。

 教育長や教育委員を支える事務局職員の資質の向上に向けて、教育委員会におきましては、教員出身者のみならず、教育行政の専門性を有する行政職員の計画的な育成が重要でございます。そのため、一般行政部局との人事交流も含めまして、適切な人材育成が行われる工夫が必要であると考えております。

 御指摘の京都市教育委員会の取り組みは大変有効なものではないかと考えているところでございますが、文部科学省といたしましても、市町村教育委員会に対する必要な助言や情報提供等を通じまして、小規模な市町村においても適切な人材確保や研修が行われるようにするということ、また、都道府県教育委員会を通じて指導するとともに、国としても、研修体制の充実を図り、大学等の取り組みも支援してまいりたいと考えているところでございます。

中野委員 もう一点ございましたのが、指導主事などのスクールリーダーの能力、資質の向上、こういう指摘もございました。

 ただ、研修等が行われているともおっしゃっておられましたけれども、この研修の実態が自治体によってかなりばらばらなのではないか、こういう指摘もございまして、私は、やはり場所によって、どういう育成をするか、研修をするかというのに余り差があってはならないというふうに考えますけれども、今後どのような取り組みを行われるのかというのを御質問したいと思います。

前川政府参考人 都道府県の教育委員会等におきましては、指導主事として必要な専門的知識や指導技術の習得のために、例えば新任の指導主事を対象とした研修でありますとか、事業改善など都道府県の重点施策にかかわる研修、また、都道府県教育委員会、教育事務所、市町村教育委員会の指導主事を対象とした教科別の研修などを行っております。

 文部科学省といたしましても、独立行政法人教員研修センターにおきまして、指導主事等を対象とした研修を実施してきておるところでございます。

 今後とも、このような取り組みをさらに強めてまいりたいと考えているところでございます。

中野委員 最後に大臣にお伺いをしたいんですけれども、先日の参考人の質疑で門川市長がおっしゃられておられましたのが、地域と学校とのかかわり、地域が学校を支えていく、こうした姿勢が非常に大事なんだ、こういう指摘がございました。私もまさにそのとおりだなというふうに思います。

 今回の制度改正も含め、今後、学校に対して地域のかかわり、これがどのように深まっていくのか、これについて大臣に最後にお伺いをしたいというふうに思います。

下村国務大臣 門川市長は、教育長のときからコミュニティースクール等の実績が評価されて市長にもなられた方でありまして、京都のコミュニティースクールの取り組みについては、大変に評価できるものであるというふうに思います。

 今回の改正案で設置される総合教育会議におきまして、協議を行うに当たって必要があると認めるときは、関係者または学識経験を有する者から意見を聞くことができることとしておりまして、具体的には、学校運営協議会委員やPTA関係者、地元の企業人等からの意見聴取が行われることも想定をしております。

 また、教育委員会において地域の多様な民意が反映されるよう、例えば学校運営協議会や学校支援地域本部の代表を教育委員に選任するなど、地域の幅広い関係者から教育委員を人選する工夫を一層進めることも有効であるというふうに考えます。

 一方、学校運営の地域住民への参画については、保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って学校運営に参画するコミュニティースクールの導入が望まれるところでありますが、文部科学省としては、平成二十八年度までに全公立小中学校の一割、約三千校に拡大することを目標としておりますが、なかなかその導入促進がまだ十分でないというところも事実であります。

 文科省としては、新たな改正案を成立をさせていただければ、こういうふうな施策を通じてさらに地域住民の声を教育行政や学校運営に反映していくことによって、地域が学校を支えていく姿勢についてさらに体制フォローをしてまいりたいと思います。

中野委員 ありがとうございます。

 冒頭も申し上げましたとおり、国家百年の大計、教育は非常に大事な分野でございます。どのように子供たちを育てていくのか、大変重要な政策が短期的な視点でころころ変わるようなことがあってはいけないというふうに思いますし、他方で、子供の生命身体に影響があるような緊急の事態、これに対応できないような無責任な体制であってもならない、このように思います。

 このバランスをとらないといけない、大変に難しい課題ではございますけれども、日本の将来、子供の将来について、やはり我々はしっかり責任を持った議論をしてまいりたい、このように思いますし、日本の教育をよくしていくために引き続きしっかり尽力していくことをお誓い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 おはようございます。

 この地教行法をめぐる議論も、いよいよ終局の段階を迎えたわけでございます。

 この間、何度か私も大臣とも議論させていただきましたけれども、本来であれば多くの政党が、野党も賛成をできるような、そういったものになればなということを本当に個人的には思っていたわけですけれども、なかなか、最終的な責任、権限というものを、私どもは、やはりこれでは明確になっていない、首長にもっと明確に持っていくべきだというようなところでの溝が埋まらなかった点については、非常に残念なことだというふうに思っております。

 きょう、先ほど義家委員も、罷免について、あるいはいじめ等々の重大事案が起こったときの首長の責任、そういったことについての質問をされていましたけれども、私も、引き続きちょっと確認の質疑を幾つかまず行わせていただきたいと思います。

 大臣、先ほど答弁がございましたけれども、まず大綱ですね。大綱については、協議、調整がついたものを仮に教育委員会、教育長がやらなかった場合には、これは教育長職務上の義務違反になることもあり得るということを答弁されました。

 しかしながら、協議が調わずに、調整がつかなかったにもかかわらず大綱に盛り込まれるものがあったときに、それが執行されなかったとしても、これは守る必要はない、義務違反には当たらないということで、そういうことでよろしゅうございますか。

下村国務大臣 結論から言うと、御指摘のとおりであります。

 大綱は、首長と教育委員会とが協議し、調整を経たものは尊重義務が生じることとされているため、教育委員会及び教育長には、大綱に沿った教育行政運営が期待をされます。しかし、調整がつかなかった事項については、その尊重義務はないということになるわけであります。

 したがって、例えば、学校選択制の導入について、教育委員会と首長との間で調整がつかなかったとかいうような場合があったとして、これは尊重義務ではありませんが、しかし、これは首長が選挙公約等で掲げたものである、そのために、総合教育会議を開いて、大綱にぜひ盛り込みたいということについては、十二分な協議、調整を行うことによって、首長のリーダーシップによって教育委員会においても理解をしてもらうような、そういう努力を同時にしていただく必要もあるのではないかと思います。

笠委員 今大臣が例えば学校選択制ということで、私も実は、具体例でということでございましたので昨日通告をしておったわけですけれども、今非常に、教育というものが、選挙のときに多くの有権者の皆さんが関心を寄せられる。そういう中で、マニフェストというか政策の公約の中には、大体ほとんどの首長の選挙の中ではやはり教育についての言及はあります。

 こういった中で、どちらがいいのか悪いのか、まさに議論が二分するような問題をやろうとしたら、どうしてもこれは選挙で掲げて戦う。そして、選ばれた首長が、しっかりと事を実現ができるようなリーダーシップ、今大臣おっしゃいました、やはりリーダーシップを発揮することが望まれると。ですから、やはりそのリーダーシップを首長が発揮できる体制というものをきちっと明確にしておくということが大事だというふうに思っています。

 もちろん、総合教育会議が今回新設されることで、今まで以上に首長と新しい教育長を含めた教育委員とのいろいろなコミュニケーションも密になっていくこともできますし、首長がそういった中で自分の政策の意向をしっかりと反映させていくということも、仕組みとしては今まで以上に私は前進はすると思うんです。

 ただ、やはり議論が二分するようなときに対立をするという可能性もあるわけですから、そのときには首長が確実に、みずからが選挙で掲げ、公約で掲げ、そしてやることを約束した政策というものが実行できるような改正案でなければいけないんじゃないかというふうに私は考えております。

 先般ちょうど大津の越市長も来られた中で、そのときに大事なことが、まさかのときに、あってはならないけれども対立をしたときに、やはり首長がリーダーシップを発揮して政策実現するためには、どうしても教育長の罷免をするということが、その権限があれば、かなりそのリーダーシップを発揮することができると。

 例えば、今度、新しい教育長は物すごい力を持ちます。任期は三年、これは、きょうはもう三年がどうだという議論はいたしません。ただ、越市長もおっしゃっていたように、この罷免権があれば、それが四年であれ何年であれいいんだ、しかし、この罷免権がない中で、罷免をすることができない中で三年というのは、首長の任期が四年ということを考えれば、これはやはり一年、二年、非常に短ければ短いほどいいんだということを市長はおっしゃっていました。

 その点について、大臣の感想をちょっと伺いたいと思います。

下村国務大臣 私も、実際大津に行きまして、そして大津の教育長等の話を詳しく聞いたこともあります。当時の教育長ですね、もうおやめになってしまいましたけれども。それから、越市長には随分前に、このいじめ問題が起きた直後、第三者の報告書が出た後ですけれども、私のところにも来られて、いろいろと詳しく説明を聞いたことがあります。

 ですから、越市長の主張も主張としてはよくわかりますが、それが客観的に絶対的に常に正しいのかどうかということについてはいろいろなやはり考え方はあるのではないかと思うんですね。その中で、しかし、思いとしてはよくわかる部分もあるわけでございます。

 その辺、今までと比べて、今回の政府案においては、総合教育会議を設けるということによって、首長の教育委員会あるいは教育長に対する思いというのはより確実に伝わる、協議、調整ができるということでありますから、それはまさに制度の問題と人の問題ということになってくるかと思いますが、しかし、首長のリーダーシップは確実に今度の政府の案によって増して、そして、今まで以上に実行できるということになってきているのではないかというふうに思っております。

笠委員 首長が仮に罷免権を持ったとしても、これはもうあくまで教育長は議会の同意を得て任命をし、そしてまた、罷免をするにしても議会の同意がなければ、何か首長が勝手にできるわけじゃないですよね、やめさせることができるわけじゃないわけですから。やはりそこはある程度、そういうことは本当にやらないにこしたことはないんですよ、しかし、最悪の事態が起こる、あるいは、首長が本当にこだわってやらなければいけない政策が教育長との対立の中で前へ進まないという事態に陥ったようなときには、やはり首長が最終的には責任を持って判断ができる体制にきちっとしておくということは、これは重ねて私は必要なことだというふうに思っております。

 それで、先ほど義家委員が、いじめ防止対策推進法、このことについて違反をするようなことがあったり、そういったことについては明らかにこれは職務上の義務違反である、それは明確であるということで大臣も答弁をされたわけでございますけれども、これは本当にいじめだけじゃないんです。

 ですから、私は改めて、総合教育会議の中で、少なくとも、先ほど大綱については、調整がきちっと整った上で盛り込まれたものとそうではないものについての教育長の責任というものは明確に答弁されましたけれども、やはり「児童、生徒等の生命又は身体に現に被害が生じ、又はまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合等の緊急の場合に講ずべき措置」、せめてこのことについては、最終的には首長が責任を持って判断し、そしてしっかりとした対応をするというようなことを何らかの形でやはり明確にしておく必要があると思いますけれども、大臣、せめてそこは大臣の答弁で、ぜひともこの委員会の質疑の中に大臣の思いというものをおっしゃっていただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

下村国務大臣 まず、ちょっと整理を申し上げたいと思うんですが、現行法第七条第一項において規定されている教育委員の罷免要件としての職務上の義務違反については、例えば、職務上知ることができた秘密を漏らすこと、政党その他の政治団体の役員となり、または積極的に政治活動をすることなどと解されております。

 新教育長については、常勤の職であり、他の委員と比べて幅広い職務を担当するものであることから、負っている職責に応じて、職務上の義務違反と判断されるのはさまざまなケースがあると考えられます。一般的に、法令違反の場合などはこれに該当し得るものとして考えられ、今、笠委員から指摘がありましたように、いじめ防止対策推進法上のいじめによる重大事態が発生した旨の学校からの報告を教育長がみずからの判断で首長へ報告しない場合、あるいは首長と教育委員会の調整のついた大綱の記載事項を尊重せず、正当な理由なく全く無視した場合などが義務違反として該当し得るわけでございます。

 先ほど義家委員のときの答弁にも申し上げましたが、新たに、いじめ防止対策推進法の中で、緊急事態において、これは首長の思いに対して教育長がきちっと対応していないという場合には義務違反になるということはあり得るわけでありますから、つまり、いじめ防止対策推進法の中で、今のような緊急事態においても対応はできるというふうに思います。

笠委員 いや、大臣、私が聞いているのはそうじゃなくて、いじめについてはそうなんですけれども、まさに今回規定された第一条の四の中の緊急事態、いじめも含めてですよ、こういった場合、総合教育会議の中で扱う、協議する、調整を図るテーマの中で、ただ、こういった場合には本当に限られた時間の中で最終的な判断をしなければならない場面も想定されるので、せめてこういうときには、例えば首長と教育長が対立をしたとしても、そこで合意が、調整ができなかったとしても、最終的には首長がしっかりと責任を持って判断するということがやはり望まれるんじゃないかというふうに私は思っているんですが、そこについてはいかがでしょうか。

下村国務大臣 何をもって緊急事態かというのは、やはりいろいろケース・バイ・ケースがあるというふうに思うんですね。

 ただ、総合教育会議における主宰は首長が行うということであります。その中における緊急事態について、どんなことかという項目による部分もあるかというふうに思いますが、総合教育会議において、学校現場の管理責任を負う教育委員会と、それから住民の安全確保について広く責任を負う首長とが協議、調整を行うことにより、一層適切な判断が行われるというふうに考えることが望ましいことであるというふうに思います。

 ですから、先ほど申し上げたような、例えばいじめ等の緊急事態の第一義的な責任者は、これはやはり教育長でありますので、首長の意向を踏まえつつ、最終的には教育長が判断するというのが法律のたてつけでありますが、しかし、総合教育会議そのものを主宰するのは首長ですから、当然、首長の意向の中で協議、調整する中で、教育委員会の判断についての部分は、最終的には教育委員会、教育長が判断するということになるわけであります。

笠委員 そこが私たちとのやはり埋まらないところなんですよ。

 やはり、首長がリーダーシップを発揮できるようにしていこうということまでは多分同じ思いだと思うんです。そのために総合教育会議を今回新設する。せっかくその総合教育会議をわざわざ設置する、屋上屋じゃないかというようないろいろなこともあろうかと思いますけれども、わざわざそれを首長が主宰していくということであれば、本来、せめてこういう緊急事態だけでも、やはり首長がもう最終的には判断をするんだということを明確にすべきだということを、これはもう答弁は結構でございますが、私はやはりそうすべきであるということだけは申し上げておきたいというふうに思っております。

 それで、次に、これも先ほどありましたけれども、ちょっと大臣に答弁をお願いしたいと思いますが、やはり、今回の地教行法、地方の教育行政のあり方を考えるときに、どうしても、都道府県教育委員会と実際に学校を設置管理、運営する市町村の教育委員会のばらばらというものの最大の問題は、やはり人事だと思うんですね。

 政令市には今この人事権というものが移譲されておりますけれども、私どもも、やはり将来的には市町村の方にしっかりとこの権限を移譲して、そして、それぞれの市町村が独自に教員を採用する、あるいはさまざまな育成をしていくというようなことが、あるいは人事を行っていくということが望ましいんじゃないかということで、検討規定の中に、我々はこの議法の中には盛り込ませていただきました。

 もちろん、規模の小さな市町村等々は、広域の組合をつくったり、あるいは都道府県の支援を受けたりということも含めてですけれども、都道府県から市町村へと人事権を移譲していくということについて、大臣としてはどういう形でこれから進めていこうとされるのか、その率直な思いをお聞かせいただければと思います。

下村国務大臣 これは、安倍政権も考え方は、今、笠委員が御発言された内容の方向性と全く同じであります。

 小中学校の教職員の人事権を都道府県から市町村に移譲することは、平成十七年十月の中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」で提案されて以来、検討課題というふうになっておりますが、平成二十五年三月の義務づけ、枠づけの第四次見直しの閣議決定におきまして、中核市への人事権移譲について、「教育行政の在り方についての検討状況や、」「事務処理特例制度の運用状況を踏まえつつ、広域での人事調整の仕組みにも配慮した上で、中核市に権限を移譲する方向で検討を行い、小規模市町村を含めた関係者の理解を得て、平成二十五年度以降、結論が得られたものから順次実施する。」ということになっております。

 市町村への人事権の移譲については、都道府県に人事権があることから、教職員を育成すべき市町村の当事者意識が薄らぐという意見や、人事権を移譲し市町村で教職員を採用することにより、責任と権限を一致させるべきであるなどの意見があるわけでございまして、そのとおりであるというふうに思います。

 一方で、離島、中山間地域におきましては管理職の不足など広域人事が必要となる状況がありまして、町村単位で人事を行うことは困難である、小規模の自治体で採用試験の業務は困難ではないか、人が集まらないのではないか、そういう意見もあります。

 平成二十五年十二月の中教審答申においては、「引き続き、小規模市町村を含む一定規模の区域や都道府県において人事交流の調整を行うようにする仕組みを構築することを前提とした上で、小規模市町村等の理解を得て、中核市をはじめとする市町村に移譲することを検討する。」とされたところでありまして、そういう意味で、市町村への人事権の移譲については、これは都道府県も含めてですけれども、コンセンサスの得られたところから、移譲することについて検討してまいりたいと思います。

笠委員 大臣、これはもうやるということでやはりリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

 もちろん、そういう離島だとか一部本当に小さなところで、それは都道府県がきちっと責任を持ってそういうところはやっていけばいいと思いますので、そこはもうやっていくんだということを決めていかないとなかなか進んでいかない点もあります。どこもが主体的に、積極的なところは採用したい、あるいは自分たちでいい教師を養成していきたい、そういうところばかりでは確かにないかもしれません。ただ、教職員の人事も含めて一元化をしていくということがやはり非常に重要なことだと思いますので、その点はしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 それで、三つ目に、今回の審議、いろいろな参考人の方にもおいでをいただきました。また、地方公聴会等々、二カ所にわたって行わせていただいたわけですけれども、本当に大変貴重ないろいろな御意見をいただいたわけですが、この中で特に多くの方から指摘されたのは、いわゆる教育における中立性、教育行政の中立性といったもの、あるいは安定性といったものを、もちろんこれは首長さんの問題だけではなくて、学校現場であり、あるいは教育委員会で行われているさまざまな議論も含めた透明性、情報公開、こういったことが必要だ、それを住民がしっかりとチェックしていくということが教育行政においては何よりも求められているというようなことを、これは何人かの参考人の方がおっしゃいました。

 私もそれは本当にそうだなというふうに思うわけですが、その中で、学校評価というものの必要性についての言及もございました。現在は、言うまでもなく、自己評価と学校関係者でやる評価と、そして第三者評価というものがあるわけでございますけれども、私は、特にちょっと一つ懸念は、自己評価、ほぼ一〇〇%当然ながら行っています。しかしながら、この自己評価の公表というのは、これは義務づけられていますね、義務づけられているにもかかわらず、公立学校の公表率が九〇・三%。約一割の学校は公表していないんです、義務づけられているにもかかわらず。

 このことについてどうお考えなのか、そして、今後どういうふうな対策をとっていかれるのかをお答えいただければと思います。

下村国務大臣 おっしゃるとおり、学校評価については、平成十九年の学校教育法の改正により自己評価の実施とその結果の公表とを義務づけたものでありますが、平成二十三年度間における公立学校の自己評価結果の公表実施率は九割にとどまっている状況でありまして、これはやはり問題だというふうに思います。

 各学校が適切に説明責任を果たすとともに、学校、家庭、地域の連携協力による学校づくりを進めていく上で、保護者や地域住民等に対し学校評価の結果を適切に公表していくことは、これはもう絶対条件になりつつあると思います。

 このため、文科省では、従来より評価結果の公表等の徹底について通知の発出等により促してきたところでありますが、今後、さまざまな機会を通じ、公表が進んでいない教育委員会等に改善を促すなどを行いまして、一層公表が進むように、これはしっかり徹底してまいりたいと思います。

笠委員 私も、個々の学校のどこが、やらなければいけない、義務づけられたにもかかわらず公表していないのかというところまではちょっと承知していないのでわからないんですが、恐らくは、私は、公表していないのは教育委員会単位なのかなと。想像するに、同じ教育委員会のもとで公表しているところとしていないところがあるというのは余り考えにくいなというふうに思っておるんですけれども、やはり、義務としてしっかりやらないといけないことを公立の学校ですら一割やっていないというのは、もう本当に、大変これはあってはならないことだと思います。

 そして、学校関係者の評価というのは、いわゆる保護者や地域の住民の方々にも加わっていただいて、自己評価の結果を踏まえて行うものです。これもたしか今もう九割近いですかね、実施されているのが。恐らくかなり、公立で、九割を超える学校で既に行われております。これは、公表というのは努力義務になっているんですけれども、今地域住民の参加というのは非常にどんどん進んでいっておりますし、関係者の評価というものもきちんと公表していくということで、現在これは努力義務になっているんですけれども、このこともやはり義務づけていくということが大事だと思います。

 それと同時に、第三者評価、これは今の自己評価、学校関係者評価を踏まえて、さらに第三者の、有識者の方々含めて評価を行っていこうということですけれども、残念ながら、実施率が公立で四・六%、国公私立全体でもまだ五・一%というふうになっているわけです。いろいろ理由はアンケート調査等々でも出ていますけれども、やはり、こういった第三者による評価というものも推進していく必要があるんじゃないか。

 そして、そういったことをまた生かしながら、何もこれは評価をして優劣をつけようとかそういうことじゃなくて、やはり、適切な評価によって、しっかりとその学校での学びの場が充実をしていくためにみずから生かしていくということが私は大事なことだと思いますので、この第三者評価というものも、ぜひこれはもう少し推進できるように体制をとっていく必要があると思いますけれども、その点についての大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 これもおっしゃるとおりだというふうに思います。

 学校評価については、平成十九年の学校教育法上の改正によりまして、自己評価、学校関係者評価の実施、公表、評価結果の設置者への報告に関する規定が設けられておりますが、第三者評価については制度上位置づけられておらず、まずは自己評価、学校関係者評価の充実等を通じ、学校運営の改善を図ってきたところであります。

 その後、第三者評価の試行的な実施や有識者の議論等を踏まえ、平成二十二年に学校評価ガイドラインを改訂し、第三者評価のあり方に関する記述を充実したところであります。

 第三者評価は、専門的視点から学校運営の状況について評価を行うものとして、専門的な分析や助言により、学校の課題と改善方策が明確となり、具体的な学校運営の改善に踏み出すことができるなど、そういうことが期待されるところであります。

 一方、第三者評価の実施に当たっては、専門性を有する評価者の確保など、教育委員会や学校の負担も少なくなく、同ガイドラインにおいては、教育委員会等が第三者評価が必要であると判断した場合に行うものとされてきたということから、その実施率が、現在のところ、御指摘のように非常に少ない、小さい数字にとどまっているということがあります。

 この第三者評価については、昨年十二月の中教審、今後の地方教育行政のあり方答申において「更に検討することが必要である。」とされているところでもありまして、御指摘のように、第三者評価を含む学校評価のあり方について今後さらに検討を進め、実効性ある学校評価の推進に、これは積極的に取り組んでまいりたいと思います。

笠委員 そこはしっかりとまたやっていっていただきたいというふうに思います。

 そろそろ時間でございますので最後に一点申し上げたいと思いますけれども、先ほどの学校評価の、義務づけたものですら一割もそのことがやられていない。ですから、今回我々は、総合教育会議の議事録の作成と、そして公表というものを義務づけるべきだということを再三主張してまいりました。なかなかこれを修正することはできませんでしたけれども、大臣、ぜひこのことは確実になされるように、新しいこの総合教育会議、やはりここの透明性というもの、そこで何を議論されたのかということをきちんと知らせていくというのは当然のことだと思いますので、そこは万全の措置をとっていただきたいというふうに思います。

 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 地教行法の議論もきょうが採決ということですので、大詰めを迎えております。私も、この法案で四回目で、皆さんに御配慮いただいて、随分時間をとらせていただいて質問してまいりました。

 いろいろ法案の違いがありましたので、やや大臣と激し目のやりとりもいたしましたけれども、きょうは最後でございますので、少し、できるだけ、お互いに折り合えるところはどこなのか、一致できるところはどこなのか、そんなことも含めて議論をしてまいりたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、私どもは法案を提出しておりますので、吉田提出者の方にお伺いしたいと思います。

 先日の大津市長の陳述というのは非常に印象的でありました。二〇一一年に大津でいじめ事件があり、当時、私は原発事故に対応しておりましたので正直そのことにかなりかかり切りになっておったんですが、私自身が滋賀県出身ということもありまして、あの大津でああいうことがあったんだということが非常に印象に残って、ああいうことをもう起こしてはいかぬなという思いを非常に強く、そこだけはかなり関心を持って見ていたという経緯もあるんです。

 そこで、吉田提出者も越市長の発言を聞かれて非常に印象的だというふうにおっしゃっていましたけれども、あの大津の事件を受けて、今回さまざま議論をした中で出てきた衆法の方、権限をできるだけ首長がしっかりと行使できるようにというふうに出したということになったわけでありますけれども、その辺、それをどう解決しようとしているのか、どういうふうにそれが結果として法案に反映をされたのか、そこを少し御説明いただけますでしょうか。

吉田議員 我々の野党案は、今おっしゃられた大津の事件を踏まえて、関係者の方々の御意見をよく聞いて、地方教育行政における権限と責任の所在を明確にすべきだ、これを最大の眼目に法律案をつくったということであります。つまり、住民による選挙で選ばれた首長が、みずからの責任で民意を酌み取り、地方教育行政を運営していくべきである。これによって、現行の地方教育行政よりもより民意が反映されたものになって、地域の主体性というのもそこにあらわれてくるというふうに考えております。

 このように教育に関する権限を首長に一元化するという考え方につきましては、教育行政の中立性を損なうのではないかという御懸念が多々ありました。しかしながら、大津市長もこの間の参考人でおっしゃっておられましたけれども、そもそも一番肝心な教育内容というのは、国の学習指導要領等によってもう決定されていると。したがって、首長へ権限を一元化するから教育の中立性が損なわれるという危険性は、我々も乏しいものであるというふうに考えたところでございます。

 そして、さらには、首長が暴走するということへの御懸念もあるわけですので、それをチェックする仕組みも法案に織り込みました。まず、事前のチェックとしては、首長が教育の振興に関する総合的な施策の方針というものを策定して、これをあらかじめ議会に提出して議決を経なければならない、さらには、事後のチェックとして、教育行政に対する評価、監視機能を確保するため、教育監査委員会というのを設置したということでございます。

 この教育監査委員会について少々触れますと、これは首長の部局から独立した機関ですので、第三者的な立場から、なれ合いを排して、より効果的な評価、監視を行うことができるというふうに考えております。

 現行でもこの評価、監視機能というのはあるのですが、執行機関である教育委員会がみずから点検、評価する機能を持っているという仕組みが現行法では採用されておって、今回の改正でも、政府案の方では特にその仕組みは変えられておりません。

 したがって、先ほど申し上げたような理由によって、野党案の評価、点検の仕組みの方がより実効的ではなかろうか、こう考えているところでございます。

細野委員 今、吉田提出者の方から御説明がありました監査委員会なんですけれども、この監査委員会がしっかりチェック機能を果たすというのは衆法の基本的なたてつけだと思うんです。

 一方で、首長の暴走という観点からすると、この監査委員会の権限というのは勧告にとどまる、つまり強制力がないわけですね。党内でもそこはいろいろ議論がありました。そこは最終的な判断は首長なんだとしたこのたてつけが果たして暴走を許すことにならないのかという疑念については、与党の委員の皆さんからも質問が出ていました。

 これについて吉田提出者はどうお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。

吉田議員 野党案では、教育行政の執行権というのは首長に持たせるということになっておりますので、よそからその権限を侵害する、ないしは強制的に変更させるということは不適切であるわけでございます。したがって、教育監査委員会は、そういうことはできないということになっております。

 ただし、おっしゃった勧告権というのは大変重い権限であるというふうに考えております。すなわち、勧告があった場合、これは議会に報告されます、かつ、一般的にも公表されます、かつ、首長は、それに関連してとった措置を今度は監査委員会に報告せねばなりません。

 そういう仕組みですので、民意に敏感であるべき首長が、教育監査委員会の勧告を軽視する、あるいは無視するということは、実際上は極めて難しい、あり得ないというふうに考えているところでございます。

細野委員 当然尊重されるべきものだと私も思います。

 また一方で、もう一つの視点は、冒頭の答弁の中で吉田さんも言っておられましたけれども、民意をどう反映するかというところの最後のとりでは、首長の場合はあるわけです。つまり、リコールであるとか、当然選挙というものがありますから、そこで最後に責任を持てる首長の判断は、もちろん監査委員会の判断は尊重されるべきだけれども、最後の最後の判断は首長がする、そういう仕組みに今回の衆法の場合はなっているんだろうと私は思います。

 そこで次に大臣にお伺いしたいんですが、私も、総合教育会議というのができることによって首長の判断が尊重されるようになってくることを期待しますし、今の教育委員会の仕組みからすると、前進をした制度だと思うんです。

 ただ、当初皆さんが考えておられたことからすると、やはりどうしてもちょっとそこはやや徹底されていない部分があるのではないかというふうに、最後まで私はその印象は拭えませんでした。大臣自身、教育立国論という本を書いておられて、これを読ませていただきましたけれども、非常に現場を重視するということを書いておられて、教育委員会を廃止するということも書いておられる。

 安倍総理の発言を見ると、総裁選挙などでは、教育委員会はなくすのはしないんだけれども、教育長が直接権限を行使して、教育委員会を諮問機関にするという、総理が総裁選挙で訴えかけられたことは我々が提案した監査委員会とかなり近い制度なんです。

 その辺も、最後ですので、当初お考えになっていた、執行はできるだけ首長に近くして、教育委員会を廃止もしくは監査的なものにするという考え方からここに至った経緯をちょっと率直に、それはそれで一つの考え方だと思いますので、少し聞かせていただければ幸いなんですが。

下村国務大臣 率直にということですから率直に申し上げますが、私も、政府案が一〇〇%全てよくて野党案は評価するものはゼロだというふうには全く思っておりません。それぞれの制度設計の中で、これはどんな制度でもそうですが、この制度にしたら一〇〇%全てよくなるということはないわけで、やはりいろいろな課題はどんな制度であっても出てくることがあるわけですね。ですから、野党案についても、一つの考え方であるし、一つの見識であることは事実だというふうに思います。

 そして、これは野党の方々が言われているわけですけれども、そもそも中教審のA案に近い案ではないかということを主張されているわけですし、そのとおりだと思います。

 もともと中教審のA案というのは首長に権限を持たせるということであったわけでありますが、そのときにもやはりずっと課題になっていたのは、教育における政治の中立性や継続性、安定性をどう担保するかということについては、確かに中教審のA案についても課題があるということは中教審の答申の中でもやはり書かれていたことであって、それでB案というのも併記して書かれてきたという経緯がございます。

 この中で、与党、自民党、公明党の中で与党協議をした結果、結果的に今回の政府案になったわけでありますが、それは、先ほど越市長のことを通じて、いや、実際に首長に権限を持たせても政治的中立性、安定性、継続性は担保できるのではないかと。つまり、学習指導要領についてはそのとおりだというふうに思うんですね。

 しかし、学習指導要領以外で、例えば過去起きたことで、国立市における日の丸・君が代問題や、あるいは福岡県における、首長がかわったことによってスト権の処分問題を事実上解消させる、こういうような問題については、これは、教育委員会を廃止して首長に権限を持たせるということは今後もそれがさらに起き得る可能性が加速されるという問題がやはり一方であると思うんですね。

 これについてどう担保するのかということの中で与党で議論した結果、やはり教育委員会は執行機関として存続をさせて、しかし、今までのような曖昧な体制でなくて、新しく教育長について明確にすることによって、そしてなおかつ総合教育会議を設けることにより、首長がよりそこの自治体における教育の思いが実現できるような体制整備を図るということでございますので、今の我が国の状況を考える中では、より現行制度よりは改善され、そして教育長に、あるいは教育委員会に対しても首長の思いがより伝わる、そして、首長の選挙における公約等が実現しやすい、そういう環境整備の中における法案のたてつけになってきているのではないかというふうに考えております。

細野委員 今の大臣御答弁は、与党内の協議も踏まえて、過去の経緯を非常に丁寧に御説明いただきました。我々の出している法案と方向性が全く違うとは思いません。やや最後のところの制度の設計は違いますが、方向性として首長に、しっかりと判断できるのを努力したんだという御趣旨も含めて、受けとめたいというふうに思います。

 もう一点、最後にお伺いしたいのが、やはり、大臣自身が御著書の中で書いておられるとおり、学校現場ができるだけ責任を持って、主体性を持ってやっていくことが、本当の意味で教育をよくするんだ、ここは変わらないと思うんですね。三鷹の貝ノ瀬教育委員長、参考人で述べられました。また、京都市長さんもそのことを非常に強調されておられました。

 大臣も先ほど、コミュニティースクールを三千校までふやすんだというようなことを答弁されていましたね。法案の中にそれが何ら書かれていないのでちょっと残念ですが、それはとりあえずおきましょう。どうやってそれをやっていくかなんです。

 一つの課題は、やはり、もちろん首長の意向というのは強く反映するんですけれども、学校運営協議会を組織するところまで、なかなかそこまでに至らない小さい町村のようなケースです。予算の問題もあるでしょう。行政側の一定のキャパシティーの問題。

 もう一つは、学校の現場で学校運営協議会をやって地域の皆さんの意向を聞くのは、私も幾つかのコミュニティースクールを見学させていただいて現場を随分見せていただいたけれども、かなり手間がかかる、大変なんです。そこの部分について相当の配慮をしていかないと、目標だけ立ててもなかなかそれは実現しないんだろうと思うんです。

 そのあたりでもう少し具体的に何か国としてできることがないのかどうか、大臣、御所見をお伺いしたいというふうに思うんです。

下村国務大臣 文部科学省としては、学校運営協議会が適切に機能し、成果を発揮していく上で、学校、教育委員会、地域住民の理解が深まり、協働が進むようにすることが重要であるというふうに考えておりまして、地域の実情を踏まえつつ、制度の意義を丁寧に説明した上で、理解が得られた地域から順次指定をふやすように努力をしてまいりました。

 私自身も、私の選挙区は板橋区という一つの単独区なんですね。人口は五十四万ですから、これはやれないわけではないということで、今まで文部科学大臣の地元でコミュニティースクールが一校もないというのはけしからぬ、という言い方はしませんが、ぜひつくっていただきたいと首長や教育長に何度も話をしました。なかなか理解が得られないので、先ほどお名前が出ましたが、貝ノ瀬さんに直接行っていただいて、教育長に対して説明をしました。

 しかし、いまだにできていないというところが問題で、それは、その自治体のサボタージュというよりは、やはり学校現場も、それから教育委員会の立場から考えたら、コミュニティースクールにできるような学校における地域コミュニティー、住民参加の意識がまだ十分に成熟していないから、形だけつくっても機能しないことについて教育委員会として責任を持てない、教育長として責任を持てない、多分そういう判断でいまだにペンディングになっているのではないかというふうに思うんですね。

 ですから、民意が相当高くて、この学校は自分たち地域が一緒に参加してつくっていこう、そういう醸成する仕組みを自治体の教育長や首長が先頭に立って、住民参加意識をどうつくるかということを自治体が一体となって考えながら、それでも結構地域差というのはありますから、できる学校からつくっていくということについては、これは自治体の努力も必要ではないかと思います。

 今、実態的には千五百近くのコミュニティースクールができておりますけれども、先ほど申し上げましたように三千にする、約一割にする、一割程度はこれはぜひつくるべきことであるというふうに考えておりまして、引き続き、教育委員会や学校、地域の関係者に対し、成果の普及、理解を図りながら、コミュニティースクール、学校運営協議会制度の一層の拡大と充実に向けて、文部科学省として積極的に取り組んでまいりたいと思います。

細野委員 私の地元の静岡県も、実は余りコミュニティースクールがないんです。余り押しつけがましく言うのは好ましくないと思いまして、私も首長さんにお会いするたびに控え目に、しかし、ぜひやりましょうということで言ってきましたら、最近うちは幾つかできまして、ですから、そういう取り組みも、やはり個別にやっていくことも極めて重要だろうと思うんです。

 私は、三鷹市に行って、貝ノ瀬当時は恐らく教育長さんだったと思うんですが、説明を伺って、地域の方のいろいろな動いておられる姿も拝見をしたことがありまして、非常に感銘を受けましたのは、三鷹も、もともと物すごく強い共同体が地域にあってそれがそのままコミュニティースクールにつながったとは必ずしも言えないようなんです。

 三鷹というのは本当に大きな町ですから、近郊の町なので周りから来た方ばかりで、もともと住んでいる方も少ないです。むしろ、コミュニティースクールをつくることによって地域の共同体を再生するんだ、そのことによっていろいろなつながりが強化をされて、地域の安全とかお年寄りの見守りとかにもつなげていくんだ、三鷹なんかは、そういう地域再生のきっかけにコミュニティースクールを反映して、今は全ての学校でそうなっているという経緯なんですね。

 ですから、そこまでの意識を持ってもらうためには、相当文科省が工夫をしながら、強制はしないんだけれども促していくということをぜひやっていく必要があるし、それは教育問題だけではなくて、下村大臣は保守の政治家を自認されていると思うんです。私も共同体論者なんです。やはり共同体がないと人間は幸せにならないという強い信念を持っていまして、そういうきっかけにぜひしていきたいし、そういう意識でやっていただきたいというふうに思います。

 この点について、衆法の方には附則の中に、基本的に全てのところにということで書かれていますけれども、私の方ではかなり自分の思いは勝手に申し上げてしまいましたけれども、そういうふうに至った思いをぜひ提出者の方からもお伺いしたいと思います。

吉田議員 教育の分権を推進する、さらには、学校の運営に今御指摘の地域共同体の意向を反映する、大変重要なことだと思っております。

 そこで野党案では、まず、地域住民の代表である首長に教育行政の責任を一元化しようということになったわけであります。また、さらには、学校運営協議会の設置を大いに進めるための条項を附則に入れたということでございます。

 現在、学校運営協議会の仕組みがあるわけですが、御指摘のようになかなか広がらない。そして、今回の政府案では、特にそれを現行法のままとしているわけでございますが、野党案では、将来的には全国各地においてこれを設置すべきだという趣旨から、この施行後できるだけ速やかに、原則として地方公共団体の設置する全ての小学校及び中学校に学校運営協議会が置かれるようにすることに向けて検討を加え、必要な措置を講ずるという規定を置きました。

 せんだって京都市長さんが参考人として来られて、大変先進的な京都モデルを紹介していただいたと思います。例えば、学校運営協議会を評価するための検証委員会もつくるんだ、それから、さらには、企画推進委員会というものをつくって、そこに安全部会とか学習支援部会とかそういうものを置いて、地域全体として教育への参画を支援していくというようなモデルがもう既に実行されていると。

 ぜひ、こういうモデルを全国的にPRしていけば、協議会の設置というのを大いに促進できるのではなかろうか、こういうふうに考えております。

細野委員 これは恐らく、この委員会に所属をする議員としては、進めていくということに関しては一致をできるところではないか。ですから、確かに大臣も言われたとおり、一割という目標はちょっと寂しい感じもしますよね。ですから我々は全てにということで法案の中に書きましたけれども、それに向かって努力をしていきたい、改めてそう思います。

 そろそろ時間も少なくなってきました。ちょっと法案から離れたところでの質問で恐縮なんですけれども、きのう集団的自衛権に関する懇談会の報告書が出ました。私も、きのうは帰りまして夜中まで、これに一応全部目を通しまして、これをどうこれから我々として受けとめて議論していくかというようなことについて随分、夜中まで一人で考えていたんです。それぐらい非常に大きな節目のいろいろな判断を我々議会にいる者自体が迫られているんだろうなという思いで、非常に節目の日だと思いましたので、読ませていただきました。

 大臣、担当ではないのでこれまでコメントされる機会は余りなかったと思うんですが、どう受けとめられているか、少し簡潔に感想をお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 これはいろいろな思いがありまして、ちょっと簡潔に言えない部分もあるんですが、これは、細野委員も担当大臣をされておられたので思いがあると思いますが、今週の月曜日、私は福島第一原発の現場に行ってまいりました。汚染水問題や廃炉問題について東京電力側からも要請がございました。文部科学大臣の所管として、科学技術分野における廃炉や汚染水問題について対応したい。また、先日はケネディ大使も行かれたということでありますが、アメリカに行ってもロシアに行っても、外国に行っても、どこの国からもぜひこれは協力したいという話があります。

 そういうふうに、科学技術においては、一国単独でやれるということではなくて、まさに人類の英知で力を合わせて汚染水問題や廃炉問題について対処するということに対して、日本が積極的にそういう仕組みをつくりながら、いい部分についてはどんどんお願いするということをしていくということは、これは当たり前の話だと思うんですね。

 それと同じように、安全保障においても、一国単独で守れない部分というのが出てきているというところがあります。

 そういう意味で、この集団的自衛権の見直しというのは、ある意味で、今の国際社会における政治的な流れの中で考え得るべき方向性として、安倍総理が国民の生命と安全を守る観点から熟慮の末判断をされたものとして理解をしておりますし、私もそのとおりだというふうに思います。

 今後、総理の示された検討の基本的方向性、それがきのう発表されたわけですが、それを踏まえて与党協議が行われるというふうに聞いておりますし、その与党協議の結果、その後の対応を決定していくというふうに理解をしておりますが、そういう今の国際社会における状況において、単独、一国平和主義的な考え方では通用しないという部分についてはぜひ、そういう時代認識というのを国民全体も持つときに来ているのではないかというふうに私自身は思っております。

細野委員 私は、安全保障については徹底した現実主義に立って対応すべきだという考え方を持っています。

 少し古い話になりますけれども、私が議会に送っていただいた直後に有事法制の議論が始まりまして、当時は、民主党の中では有事法制については非常に消極的な意見が多かった時期もあったんですが、やはりそこは対応すべきじゃないかということで随分党内で議論して、当時は小泉政権でしたけれども、小泉総理自身もこれは与野党でやるべきだという考えを持っておられて、たしか法案の採決を一年先延ばしをして随分議論して、そこは合意を得て成立をさせた。国民保護法制も次の年に成立をさせました。私も、その法案も担当させていただいた。

 ですから、現実論に立って、脅威が具体的に今回提示をされていますので、必要なことについては対応できるようにすべきだ、私もそう考えています。

 一方で、きのう報告書を見ながらふとちょっと思い出しておりましたのは、大臣が余りお好きでない日教組の先生なんですけれども、私も何人か記憶にありまして、正直言いましてそういう教育を受ける中で首をかしげたり、ちょっとやりとりをしたこともあるんですよ。でも、その中で、ある教師が言った言葉というのは、ふと思い出したのは、戦争というのは、ほとんどのケースは自衛権の名のもとにやるんだ、第二次世界大戦でも、日本は自衛権の名のもとに、それは満州の拡大なんかも含めてやってきたという経緯があるので、そこはいかぬのだという話を盛んにしていた先生がいまして、そこだけはまあそうだなと思った記憶があるんです。

 歴史に対する反省も含めて、やはり日本は戦争をしないんだということをしっかり明確にした上で、私はそこの歴史に対する反省みたいなところで安倍総理のお考えが本当にどうなのかというところにやや疑念を持っていまして、そこを踏まえた上で、戦争はしないんだ、その中で現実的な脅威があるのだとすれば、どう自衛権というのを定義していくべきなのかというアプローチをすべきなのかなというようなことを感じたという、これは感想を最後に述べさせていただきたいと思います。

 教育問題とも非常に深くかかわるテーマでもありますので、また議論の機会があるというふうに思いますが、最後に大臣にぜひお考えをお聞かせいただきたかったのと、一言私の思いを申し上げたかったので、こうした質問をさせていただきました。

 いろいろ立場は違いましたけれども、私は、いろいろな方の議論を聞かせていただいて、教育に関する真摯な議論が行われてきたというふうに思っておりますので、これをさらに日本の教育をよくすることに生かしていきたい、そんな思いを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 日本維新の会の椎木保でございます。

 前回の質問のときには、この後ろの席に同僚議員が入れかわり立ちかわりたくさん来まして、背中を押されながらの質問だったんですけれども、きょうは、もうこれが私の質問の最後だと思いますので、私なりに真摯に大臣に質問したいと思います。よろしくお願い申し上げます。

 まず、下村大臣、この地教行法の審議も、これまで本当に、審議を通して、政府案、我々民主、維新案、それぞれその中身についての問題点とか不明確な点があぶり出されてきたと思います。そうした経緯を踏まえて与党側と修正協議も行わせていただきましたが、残念ながら、合意には至らなかったという結果になりました。

 本来、修正協議の趣旨というのは、お互いが歩み寄るためのものだという私は認識でいるんですけれども、我が党の主張に対して与党側が政府案の文言修正には何一つ受け入れていただけなかったという結果になったことについては、本当に、率直に残念な気持ちではおります。

 とはいえ、ここがちょっと私も同僚にいつも維新の良心と言われているんですけれども、これは私の人柄でもあると思うんですけれども、その修正協議に真摯に与党側が向き合っていただけたということについては、本当に心から感謝しています。理事の鈴木先生の方からもいろいろ状況は聞いていますし、前政務官の義家先生の御苦労も本当に心から感謝しています。

 また、前回の私の質問が若干ちょっとふだんの私らしくなかったかなと思うんですけれども、下村大臣の本当に丁寧な答弁をいただけたことについては、本当にこれも重ねて感謝しておりますので、今後とも本当に一緒に力を合わせてやってまいりたいなという気持ちには変わりありませんので、その点は改めてお伝えさせていただきたいと思います。

 本日は、私自身が、本来は、政府案と民主、維新案、このいいところといいところを組み合わせて、お互いに与野党力を合わせてコーディネートして、いい法案として賛成したかったなというのが正直なところなんですけれども、それはそれとして現実を受けとめて、現時点で今私のできる最後の思いを込めて、きょうは大臣に本当に幾つか確認させていただいて終わりにしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 まず一点目なんですけれども、去る五月九日の審議における私の質問に対して、大臣の答弁で、「教育長は、実際の教育行政における人事や教科書採択については最終決定者である。」と答弁されておりますけれども、最終決定者は教育長ではなく教育委員会ではないかということが共産党の宮本委員の方からも質問あったかと思うんですけれども、この点について改めて、答弁の方をお願いしたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、五月九日の椎木議員の質疑におきまして、教育長は教育行政における人事や教科書採択については最終決定者であるとの答弁は、宮本委員が今いませんが、共産党の特に宮本委員を中心に、誤解を招く答弁であったと思います。

 私の真意は、質疑の中で、総合教育会議における協議、調整について首長と教育委員会のどちらが責任者であるかという観点から、人事や教科書採択については教育委員会側に最終決定権があるという趣旨で、その代表者である教育長と答弁したものでございます。

 すなわち、地教行法改正案の第二十一条に規定する教育に関する事務の管理、執行については教育委員会が執行機関として最終責任者であり、教育長は、合議体としての教育委員会の意思決定のもとで具体的な事務の執行を行う第一義的な責任者であるということでございます。

椎木委員 では、一点だけちょっと確認させてもらいたいんですけれども、今の大臣の御答弁は、前回の議事録は修正せずに、真意を、趣旨を今御答弁いただいたということでよろしいでしょうか。

下村国務大臣 これは椎木委員は理解していただけるのではないかと思いますが、その五月九日のときの議論というのは、総合教育会議における首長を第一人称で申し上げていましたから、第一人称に対する首長として第一人称としての教育長という言い方を申し上げたわけですが、しかし、実際の、もちろん教育委員会が合議体として、それが執行機関でありますから、正確に言えば、それは教育委員会の合議体の結論があるわけでありまして、それが教育委員会における事務の管理、執行においては執行機関としての最高責任者ということでありますが、首長の一人称に対する対象として教育長という言い方を申し上げたわけでありますが、教育委員会に権限がなくて教育長だけが権限があるというふうに申し上げたわけでは全くないわけでございます。

椎木委員 ありがとうございました。

 私も本当に長く教育委員会に勤めていましたので、大臣のその趣旨といいますか真意は私も理解しておりますので、この件につきましては、時代劇ではありませんけれども、一件落着ということで私も受けとめたいと思いますので、よろしくお願いします。

 次の質問なんですけれども、これも私、ちょっと毎回質問させていただいたんですけれども、議事録の公開が努力義務になっている点なんです。これも本当に修正合意には至りませんでしたので、現行の政府案の中で確認したいということです。

 具体的には、五月九日に大臣の方から、私が議事録の公開を求めたその質疑の中で、「この法律案が成立した場合におきましては、施行通知や説明会等の機会を利用して、可能な限り議事録を作成し、公表するよう、文部科学省としてはしっかり指導してまいりたいと思います。」と御答弁いただいています。

 この答弁の趣旨といいますのは、法案の修正には至っておりませんけれども、加えて、努力義務でありますけれども、極力議事録を作成して公表するということについては、各教育委員会に対して通知し指導するということの理解でよろしいでしょうか。

下村国務大臣 おっしゃるとおりであります。努力義務にとどめているということは、特に、事務局の人数が少ない市町村教育委員会などにおいて過大な事務負担となるという配慮でありますが、このことによって公表しなくていいということにはもちろんならないわけでありまして、議事録等の公表については、これは積極的に教育委員会は努力をするべきことであるというふうに思います。

 そういう意味で、この法案が成立した場合には、前回も申し上げましたが、施行通知や説明会等の機会を活用して、可能な限り議事録を作成し、公表するよう指導してまいりたいと答弁したわけでございまして、それでもどうしても人数が少ない市町村教育委員会で過大な事務負担となって大変だというところについては、事情を聞きながら、これは首長のリーダーシップによって、前回もどなたかが、ほかの部局から加配要員的な形で対応できるのではないかという話もあったわけでありますが、これはそもそも公表するということが前提だということの中、各教育委員会に対しては、しっかり対応するように文部科学省としては指導してまいりたいと思います。

椎木委員 本当に明確な御答弁、ありがとうございました。本当に期待どおりの答弁と思っております。

 改めてなんですけれども、本来、これは順番が逆かと思うんですけれども、きょう、政府参考人で来ていただいています前川局長、局長がやはり事実上の事務方のトップなわけですから、今の大臣の答弁の確認とあわせてですけれども、その前川局長も、四月十六日に同様の私の質問に対して、「努力義務にするということは、これは議事録の作成、公開が望ましいということでございますので、私どもといたしましても、極力公開するよう指導してまいります。」この極力というのはもうぎりぎりまで力の限りを尽くすということですから、今の大臣の答弁で十分私は理解したところなんですけれども、事務方のトップとして再度確認させてください。

前川政府参考人 大臣の答弁で尽きているわけでございますけれども、私どもも、大臣と一心同体のつもりで極力頑張ってまいりたいと思っております。

椎木委員 ありがとうございました。

 もう少し何か、天地神明に誓ってぐらいがあるのかなと思って期待していたところなんですけれども、前川局長のいつも非常にコンパクトな答弁ですので、ありがとうございます、十分理解しましたので。

 これで私は最後の質問にさせていただきたいと思います。

 午前中の質疑の中で、義家先生の方からも、具体的な事例を挙げて罷免について質問があったと思います。大臣の答弁を私も聞いていまして、大変わかりやすいといいますか、現行の、罷免はできないけれども、罷免もあり得るんだよということではきちっと理解はさせていただきました。

 重ねてなんですけれども、例えば、罷免について法案の修正にはこれも至らなかったんですね。大臣の前回の答弁にもありましたように、首長と教育長とで調整がつかなかった場合、事実上、首長が教育長の辞任を求めたり、教育長が自発的に辞任するということは、当然これはあり得るというような理解でよろしいんでしょうか。

下村国務大臣 これも整理として申し上げたいと思うんですが、地方公共団体に置かれているさまざまな行政委員会の委員の罷免要件については、首長から独立した委員会を設置した趣旨に鑑み、身分保障という観点から、要件が限定されているわけであります。

 このため、教育委員会の構成員となった新教育長の罷免要件についても、現行の教育委員や他の行政委員会と同様に、心身の故障の場合や職務上の義務違反その他教育長たるにふさわしくない非行がある場合に限定するものであります。

 ただし、実際には、御指摘がありましたが、総合教育会議における議論等を通じて首長の基本的な方針に教育長がどうしても納得できないという状況になった場合には、教育長がみずから辞職したり、首長がそれを促すということもあり得ると考えます。

椎木委員 ありがとうございました。

 きょう私が聞いた質問、大きく三つあったかと思うんです。一つは五月九日の審議の内容、これについては私も、大臣の真意、趣旨は理解しました。議事録の公開、これは、前川局長も含めて、現行の努力義務の法案の中で最大限努力するということも本当に理解させていただきました。

 それで、最後の罷免のところ、きょう午前中の義家先生の質問で私も何か胸をなでおろす思いも若干生まれましたし、また、私の今の質問に対して、そういうケースも当然あり得るんだという御答弁をいただきましたので、今回のこの法案での質疑に対する質問は、これで私の役割は終わりだなというふうに思います。次、我が党のエース中田宏先生が控えていますので、私は少しでも時間を先生の方にお譲りしたいと思うんです。

 我が党は、特にこの教育分野においては、大臣、与党側とほとんど認識はずれていないんじゃないかなと思っています。本当に、大臣の教育観、教育理念についても理解している議員も多いです。今後とも、そういう意味では建設的にやっていければというふうに切に願っています。

 また、最後に加えてですけれども、今回、民主党さんと共同提案させていただきましたけれども、私たちも本当にいろいろな面で大変勉強になりました。やはり政権を担った政党ですし、教育分野に本当にたけた先生方も多いですし、教育問題というのは諸課題が多いと思うんですけれども、今後また本当にみんなで力を合わせてやってまいりたいと思いますので、ひとつ今後ともよろしくお願いしたいと思います。本当に、重ねていろいろとありがとうございました。

 以上で終わります。

小渕委員長 次に、中田宏君。

中田委員 おはようございます。

 文科委員会における地教行法の改正、この戦後の大きな共通の課題がだんだんと議論においては終局を迎えつつあるということを私も前提としまして、最後のつもりで大臣にお伺いをしていきたいというふうに思います。

 私たちも、実は本当に真摯な議論を重ねて、教育委員会廃止法案というのを出しました。既にもう昨年から、教育の大改革については政府でも議論が始まっていたと思います。中教審からも、議論があった上での答申が出ました。そして、その上で今国会におけるこの法案ということになりました。私たちは、それに先立って、我々の案というものについて相当これは議論の時間も使いましたし、その上で、何とか政府の案が早く出てきてほしい、こう願って、水を向けてもおりました。

 私も、何だかんだ、教育の、地教行法と言ってもいいこの議論で質疑に立つのはもう七回目です。この文科委員会だけではなくて、大臣には予算委員会でもお聞きをしました。そして、予算委員会では、まだこの法案が出てきていませんでしたけれども、とにかく早く出して、そして、一刻も早く教育の現場の現状を変えるべく力を合わせていこうではありませんか、そう申し上げたわけであります。

 我々はもう既に対案も出しました、その感想もお伺いをしたり、また、大臣にも、例えば中教審のその後出ていた議論として、A案、B案、こういった議論の中でぜひA案でやっていただけるんだったら、我々も一緒になってこれは議論ができるからお願いをしたいというようなことも水を向けて、とにかく足を引っ張るんじゃなくて、日本の教育をよくするために一緒になって力を合わせていきたいという姿勢は、もうにじみ出してきたつもりなのであります。

 とはいえ、私たちの案についても御議論をいただいて、与党からも御質問をいただいたりして、それは完璧なものではないかもしれません、人間が使う制度でありますから、その運用というのはこれから次第ということは、私たちの案だってそうであります。

 一方で、政府の案についても、私たちは、問題視するところを指摘をさせていただいたり、まだまだ見解が分かれるところについて指摘をさせていただいたりということで、政府の案も、お出しになっているお立場からすれば、いや、これがベストなんです、こういう姿勢であることは十分承知をしていますけれども、まだまだこれはやってみないとわからないというところも正直あるというふうには思っておられることと思いますし、私たちもそう思っています。

 とはいえ、この議論の中では、そうした問題点というものを問いただすことに私たちはエネルギーを注いできましたけれども、この機会ですから申し上げますけれども、今回の政府案、大きな前進ですよ。そのことは私たちは質疑の中でも何回か触れてきましたし、いま一度そのことは申し上げておきたいと思います。大きな前進であるけれども、幾つか残る疑問については問いたださせていただいてきた、こういうことであります。

 大きな前進とは何か。それは、あまたある日本の行政の中において、そして、現場を抱える地方の行政の中において、責任者が不明確である、責任の所在が不明確である、これは教育だけなんです。今までの日本の法体系の中で、もう教育だけと言っていいですよ。私も市長をやりましたけれども、全て目の前の現実は、全部地方行政が必ずどこかでかかわっています。ところが、責任者がいないというのは教育だけなんですね。

 そういう意味では、責任の所在を明確にしよう、そして、その肝は、単にどこに責任があるということだけではなくて、責任者という人物をはっきりさせようではないかということが私たちの問題意識でありました。その意味において政府案も、申し上げたとおり、大きな前進です。

 今までは、教育委員会、非常勤の合議体、これが責任の所在であった。そこに教育長というつかさを直接首長が任命できるようにし、そして首長自身も、私も何度も繰り返してきた、総体的な、全体的な責任を持てるようにしようじゃないかという意味においては、総合教育会議を設けて、そして教育委員と日ごろ議論をできるようにし、また、いざというときには、常勤である教育長と首長がこの総合教育会議をすぐに首長側が主宰をできるようにしたということなども、これは私は大きな前進だと思いますし、申し上げてきたように、責任ということを考えれば、責任の所在そして責任者についてもかなり明瞭になってきたというふうに評価をいたすところであります。

 そういう意味では、最後になる機会だというふうに考えたときに、これからその運用を考えたときに、もう一回確認をしておきたいということについて、幾つかお伝えをしてまいりたいというふうに思います。

 我が党が主張してきたことにおいては、総合教育会議の場において首長と教育長の調整が整わなかったという場合は、これはどうなるんだということはかなりしつこく大臣に聞かせていただいてまいりました。

 大臣の答弁ということについてかいつまんで申し上げれば、それは、例えば四月二十五日の大臣の答弁では、総合教育会議にて方針が教育長と首長と異なる場合についてどうかという問いに対して、教育委員会が最終責任者である、第一義的には教育長がもちろんですから責任者なんですというふうに、こういう答弁がありました。

 あるいは、同じような質問、これは先ほどの椎木委員の質問でありますが、首長と教育委員会の協議が調わない場合、責任者の上位はどちらなのかということに対して、協議、調整する中で意見が対立して調整できないということは基本的にはあり得ないと思う。首長も執行機関、教育長も執行機関、首長は予算編成等における責任者、教育長は教育的な中立性における執行機関としての責任者というような答弁が大臣からなされているわけでありますが、このことも私は十分理解をしているつもりですし、申し上げたように、前進だと思います。

 だって、大臣が何度もおっしゃってきたように、教育長は首長が任命をする、その首長と教育長がしっかりと会って、そして、最少人数はその二人ででも議論をできる、それが総合教育会議なんだから、よくよく話し合えば、それはそうしたそごが出るということはないでしょうという、このことは単なる楽観論ではなく、現実にはそのケースが多いというふうに、私もこれは思っています。

 ただ、前回の質疑のときにも私は言いましたけれども、制度というのは、仮にそうならなかった場合、最後はどっちなんだということは、ここはひとつはっきりさせてもらいたいんだ、こう申し上げてきたところであります。

 首長のリーダーシップは確実に高まる、このことは大臣がきょうの質疑の中でも言っておられたところで、私もそれは認めます。そういう中で、今申し上げた、最後、見解が分かれた場合、これは首長が総合教育会議の主宰者であるということを考えれば、首長が責任を持つ、こう理解をしてよろしいかということを確認したいんです。全体としてです。総合的にということです。首長が何でもやるということではありません。

 そうではなくて、この主宰者という観点から捉えれば、これは首長が責任者ということで理解をさせていただいてよろしいかということを大臣にお伺いをしたいと思います。

下村国務大臣 まず、今回の地教行法の改正は、先ほどから、大津の事件をきっかけにということでお互いに質問、答弁、それぞれ答えているわけでありますし、質問もされていますが、そのとおりなんですが、でも、それだけでは実はないわけでありまして、大津の事件の問題と、大阪における、教師によるいじめに近い体罰、それによる自殺事件、このことに対して、これは大津の教育委員会だけでなく大阪の教育委員会においても、事前に情報が行っていたにもかかわらず対処できていなかったという部分もきっかけであるということで、まさにこれは維新の会の発祥の大阪のその事例からも含めて、この教育委員会改革がやはり必要なんだということが当初のスタートからあるということについては申し上げておきたいというふうに思います。

 そして、大阪の事例も解決するためには、今のような現行制度では、首長さんが強いリーダーシップがありますから相当されてはいますけれども、しかし、制度設計上もより首長が権限を持てるところは持つということが必要なんだということでの、今回、地教行法の改正であるわけでございます。

 そして、この総合教育会議でありますけれども、この改正案においては、首長が教育委員会と調整して大綱を定めることとされております。大綱を定めるに当たっては、首長と教育委員会の間でぎりぎりまで調整を行うこととなるわけでありますが、調整がつかない場合であっても、大綱は首長が定めるものと規定されておりますので、首長が策定権者して大綱を定めることができるというものであります。

中田委員 現実には、見解が分かれたとしても、二つの大綱が出るというわけではないと思うんです。そういう意味では、今、首長が定めるというふうにおっしゃった。このことは、首長の責任において最終決定する、こういうことですよね。

下村国務大臣 総合教育会議における大綱における策定者は首長であるということであります。

中田委員 そうですというふうに言っていただくと気持ちがよかったわけでありますが。責任者は首長であるということをここはまずはっきりしないと、では、教育長が何をもとにその後の執行をするんだというところが、いや、ここは私は同意していませんというような話になっていくと、これは教育現場が混乱をしてくる、そして教育現場の被害者は子供たちになっていく、こういうことでありますから、今の大臣の答弁によって明瞭であると思いますが、それは、首長が全体に対しての責任を持ってしっかりと方向は一致をさせて策定をし終えるということだと思います。

 その上で、さて教育長なんです。先ほど既に議論にも出ていましたけれども、首長の暴走ということはもうさんざん言われます。政治家の暴走というのは何なのか、何を懸念するのか。私には拡大解釈のように思えてなりません。

 私もそうですが、例えば選挙のときに、英語教育に力を入れていこうとか、子供たちの体力ということをもっともっと考えてスポーツに力を入れていこうとか、あるいは、昨今言われている、人と人とのコミュニケーションはなかなかしづらくなってきている中において、そうしたコミュニケーションというものをもっと学校の中でとれるような課題というものに力を入れていこうとか、それは一般論として首長が口にすることは当然ありますし、ましてや、政策課題として、例えばスポーツのことについて、その充実のために施設を整えていくことなどを言及していくことというのは、当然、これは首長の選挙においては言うわけです。

 だけれども、そのことをもって、教育の政治的介入だとか中立性とかということは余り言われません。仮に、政治家が、首長が口を挟むこと自体がそうであるとするならば、このことも本当は批判をされてしかるべきです。

 要は、政治家が中立性を損ねるということは何なのかといったら、何かありていに言えば、右翼だ左翼だというような、そういった思想的な観点から教育に対して何らかの方向づけを強要するというようなことなどが、これは、政治的中立性というものを私たちが厳重に警戒しなければいけないところだというふうに思うわけでありまして、このことは、まさに中立性の、その原点たる法的な意味としてももう既に明瞭だと思います。

 ただ、それがどんどん拡大解釈されていって、何やら首長に教育を発言させれば危ない事態、さらには、首長に責任を持たせること自体がいけないことだというふうに議論がどうも拡大、発展をしてきているのが、今の教育現場における私たちの議論となってしまっている感があると私は思います。

 しかし、それも歯どめはあるんです。何かといえば、選挙です。

 レーマンコントロールというのは、もともと、民意を受けて、そして、教育の中の一面的な当事者だけではない人がここはしっかりと責任を持っていこうというのがレーマンコントロールの考え方だというふうに平たく言えば思いますけれども、その意味において、今、日本の中でレーマンコントロールだという話になれば、首長はレーマンコントロールに当たるんですが、さて、教育長が暴走した場合はどうするんだという議論は、これはなかなか出てこないんです。

 教育長の暴走というのは、やりたい放題教育長がやることを指しているのではありません。例えば、先ほど大臣もお触れになった大津のいじめ事件などもそうですけれども、情報をしっかりと上げてこないというようなことなどが、今までもう何度も教育現場において見られたわけです。

 これは、子供たちが危険な目に遭っているというそうした情報だけではありません。例えば、私も報告を受けて嫌気が差しましたけれども、教育現場における教職員の不祥事もあるわけです。こういったものも、身内の恥、身内のかわいさという観点から、公表されないまま隠蔽体質の中に入っていってしまう、眠っていってしまうということなどは、私自身もこれは本当に何度も味わいました。何でもっと早く報告しないんだ、こういうやりとりを私自身も経験しました。

 いやあ、教職員にもそれはいろいろいるんですよ。新聞沙汰になっているのは、言いたかないけれども、氷山の一角です。それは、学校の外で、出来心で、魔が差したということで、万引きしちゃった、痴漢やっちゃった、そうしたこともこれは上がってこないというケースもありました。

 飲酒運転、教職員もなかなか車でしか通えない学校もある。車で通った、その後で、まあこのぐらいならという中で運転をしてしまった。十分酔いはさまして、一回学校に車だけとりに行って夜出したはずなんだけれどもということで、それでも飲酒運転でぶつけた。ぶつけたから事故になり、事故になったから発覚した。警察の方から初めて情報が出てくるというような、こうした事態もあるわけです。

 そういう意味では、やはり人間社会ですから、そうした隠蔽体質等々、隠蔽だけではありません、教育長が職務というものを十分に機敏にこなさなかった等々もいろいろあると思います。ここに対して教育長を罷免できるようにするということは、私たちは重要なポイントだと思ってきました。

 罷免と言うと言葉は強いです。だけれども、いわば配置転換です。ほかの部局だったらみんなそうですよ。どの行政の部局だって、これは対応が悪かった、この人はちょっと二件、三件と立て続けに間違ったジャッジをしてきたよね、こういう場合はどうするかといったら、それは、年に一回の人事異動においてはほかの部局に回ってもらう、あるいは、年に一回を待てない場合は、それは途中でも人事異動をさせます。その一人だけが目立つ場合は、それは内閣改造と同じで、何人かほかのポストも含めてそして異動させたりなんということも、これは工夫してやるわけです。

 ところが、教育長だけはできないというのでは、これはいささか問題、いささかじゃない、大問題だということを私たちは言ってきました。

 この教育長の罷免、いじめの件などはちょっと具体的にお聞きしたいですけれども、この罷免ということ、この言葉だけにとらわれずに、やはり首長がリーダーシップを持って教育長をかえていくことができるようにするということについて、大臣、総括的な御見解というものを踏み込んでお願いをできないでしょうか。

下村国務大臣 まず、今のお話をお聞きしていて、本当にそれは教育長だけの責任なのかということについてやはり問われるんじゃないかと思うんです。ですから、教育長を罷免すれば全て解決できるということには多分ならないだろうという前提で御質問もされているのではないかと思います。

 せっかくの時間ですので中田委員にもぜひ申し上げたいことがあるんですが、いわゆる教育村的な隠蔽体質ですね。私、これは隠蔽ではないんですけれども、教育村的なことを最近感じたことがありまして、先週、実際の名前は言いませんが、ある東京の二十三区にある区に……(発言する者あり)板橋区ではないんですけれども、天皇皇后両陛下の防災教育の行幸啓がございまして、そこに同行させていただきました。そのときに、待機する場所があって、そこで待っていた。その待機した場所が、学校の、ある学年のクラスの教室だったんです。

 そこで見ていましたら、四月から道徳の教材として「私たちの道徳」という教材を使うことになっているんですが、それが生徒の人数分だけそのまま置きっ放しで置いてあるんです、教室に。これはびっくりしまして、別にいわゆる日教組が強い自治体ではないんです。にもかかわらず、道徳の教材だけ置いてある。これは、ほかの教科書と同じように無償配付で、全ての生徒の人数分だけつくって、十億円もしたわけです。そして小中学生全員に配付をするようにして、都道府県の教育委員会を通じてそれはお願いしているわけです。

 これはびっくりしまして、私のフェイスブックに、こういう事例がある、ほかに自治体でもしあったらぜひ調べてほしいと言いましたら、私のフェイスブックですからやや偏向があるかもしれませんが、それでも、七割が実際に親が見ていない。つまり家庭に持っていっていないんです。それは学校にとめ置きのところが実際はかなりある。そもそもそれを子供たちに配っていないという自治体もある。これは、個々の学校の先生の判断とか個々の学校の判断というよりは、そこの教育委員会における判断によるところがやはり大きいのではないかと思います。

 実際にそういうものをつくっているにもかかわらず、ぜひこれは親に見てもらいたい、親にも見てもらって、家庭で一緒に、道徳というのは学校の一授業だけで成立するだけではないですから、やはり親御さんにも見てもらって、家庭でも道徳というのは何なのかということを理解してもらうために見てもらいたいということをお願いしているにもかかわらず、生徒が持ち帰っていないというところの方が実は多いかもしれない。これは非常に問題だというふうに思いました。

 そういう意味でも、教育委員会を含めた教育現場における教育村的な体質は改善する必要があるというのは中田委員がおっしゃるとおりだというふうに思います。その象徴として、首長が教育長に対する罷免要件をもっと強化できないか、そういう御質問だというふうに思いますが、今までも答弁申し上げておりますが、教育委員会というのは行政委員会でありますので、これは非常に限定しているわけでございます。

 その中で、しかし、今回の新教育長については、現行法第七条第一項において規定されている教育委員の罷免要件としての職務上の義務違反について、例えば、職務上知ることができた秘密を漏らすこと、政党その他の政治団体の役員となり、または積極的に政治活動をすることなどが解されておりますが、新教育長については、さらに、常勤の職員である、他の委員と比べて幅広い職務を担当する者であるということから、負っている職責に応じて職務上の義務違反と判断されるものについて、さまざまなケースがありますが、きょうも朝、義家委員から、いじめ防止対策推進法上の重大な例えば事案について、学校はその旨を教育委員会を通じて首長に報告しなければならないが、教育長が隠蔽を図り、みずからの判断で首長に報告しない場合には、職務上の義務違反となることもあり得るということを含めて、本来の行政委員以上に職務上の義務違反を負う部分がこの教育長はあるわけでありまして、その中に応じて、それが即罷免になるかどうかということについては、個別具体的な事例を判断する必要がありますが、そのような職務上の義務違反というのは、負っている部分がほかの行政委員に比べて多いということで、それをぜひ新教育長は理解をしていただく必要はあると思います。

中田委員 新教育長については、これまでの職務上の義務違反ということについて、ある意味では他の委員よりも実態上広がるということの御説明だったと思いますし、その意味においては罷免ということも、これは程度にもよるけれども、あり得ますよということの答弁をいただきました。

 私も、それでしっかりとガバナンスがきくという、そうした教育の行政になっていくということを期待をいたしたいというふうに思います。

 今大臣から例示のありました、道徳の教材が配られていないというようなことなども、やはりそれは各現場の判断というようなことだけで語られることではなくて、国として、少なくともこういうことに予算をつけて、そして広く子供たちに、あれは何も偏向したことが書いてあるわけではないものですよね、それをしっかりと教材として与えて、そして親も一緒になってそのことに学びを得ようということについて、予算もかけてやっているのに、それがそのままたなざらしになっているなどということを、仮にこれは教育長が知りましたというときに、やはりこれは教育長はしっかりと各学校に指導していく必要がある。そしてその指導を、では、しない教育長がいて、こんなのいいんだよ、各学校の判断だ、いや、もっと言うならば、各学校の判断どころじゃない、あんなのはいいよ、俺は賛成しないね、こういう教育長だった場合は、先ほど来申し上げているように、やはりガバナンスがきくようにしておかないとだめだと思うんです。

 そういう意味では、今の答弁も含めて、しっかりと教育長に対するガバナンスがきくようにするというそのことのためには、単なる、議論をすればわかりますという話なのではなくて、最後のやはり人事権というものを首長が持つということが、これは極めて重要なことだろうというふうに思います。

 政府案の第二十五条三項ですが、教育長は、教育委員会規則で定めるところにより、委任された事務または臨時に代理した事務の管理及び執行の状況を教育委員会に報告しなければならないものとすると明記されています。また、第十一条第八項には、教育長及び委員は、その職務の遂行に当たっては、基本理念及び大綱に則して、かつ、児童生徒等の教育を受ける権利の保障に万全を期して当該地方公共団体の教育行政の運営が行われるよう意を用いなければならないものとすることと明記されています。

 すなわち、教育長が、今大臣がおっしゃった例、そしてそれを今度は仮に教育長が、あれはもう眠らせたままでいいんじゃないかというような判断をした場合、あるいはサボタージュをした場合、こういった場合です。

 いじめなどの場合は、もう既にきょうあった議論の中で、いじめ防止法とあわせて罷免ということもあり得るという議論がありましたけれども、今申し上げたように、サボタージュをしている、ちゃんと動かないという場合も、これは程度の差はありますが、しっかりと教育長に対して人事権を発動して、そして最終最後は罷免をすることができるということについては、それは程度の差は申し上げたとおりあるにせよ、最後、それはあり得るんだということについて明快な答弁をいただければと思います。

下村国務大臣 法律のたてつけとして、教育においては、予算執行等は首長、そして、事務的な教育における部分については教育委員会、その教育委員会を代表して教育長がいるということですから、全てにおいて首長が教育長に対する罷免権を持っているということではこれはありません。独立した行政機関ということであります。

 ただ、その中での、行政機関における職務上の義務違反に該当する部分については、それは罷免に該当する部分が出てくるかというふうに思いますが、首長との関係においては、例えば、総合教育会議の中で大綱をつくった、その大綱については、これは協議、調整した結果、教育委員会、教育長も了解した上で大綱をつくった、それについて、今の御指摘のように、サボタージュしてそれを守らない、やらないというようなことについては、これは職務上の義務違反となるということもあり得るわけでありまして、何をもってかというのは、職務上の義務違反にどれが該当するかどうかという個々具体的な事例ということになってくるかと思いますが、そういう制度の中での首長との関係については、より今までよりは明確化されてきているのではないかと思います。

中田委員 より明確化されているということはそのとおりだと思います。

 私たちの案もそうなんですけれども、これは、首長が全体に対する責任は負いましょう、ただし、そのことの権限ということについて首長が常に行使をし続けて、そして、教育そのものに日々集中をすることはかないません。これは、ほかの行政分野も全てそうです。全体に対する責任というものを首長が負っていくということになります。

 例えば、何か道路の工事、橋の工事などについても、首長が直接これは許可、認可みたいなものを出すわけでもありませんし、現場を確かめに行くなどということもなかなかできません。そこは、現実にはそれぞれの行政の長というものがしっかりと責任を果たしてもらうということです。しかし、では、道路が不備で、橋が不備で事故が起きて人がけがをしたという場合は誰が訴えられるのかといったら、これは首長なんです。損害賠償、それは首長が訴えられるんです。

 では、首長が現実に、橋をこの角度でかけちゃいかぬとか、これは手抜き工事じゃないかとか、これはおかしいじゃないかとかと口を挟んでいたのかといったら、それは挟んでいないですよ。そうですよね。それは現実には無理ですよ。だけれども、訴えられるのは首長なんです。

 教育も同じです。教育も、現実には現場に口を挟むわけではありません。だけれども、訴えられるのは、これは首長になるわけです。

 では、そこまでは一緒だけれども何が違うのかといったら、責任の所在というものは最後は首長にあり、首長は、一つ一つの事業に対する実行の責任というものは何で担保しているのかといったら、人を配置することで担保しているんですよ。しっかりと、おかしな工事にならないように許可を出すようにということを人を充ててそれで担保をしているから、首長が訴えられたときに、その現場は、知らない、私は見ていないと責任逃れしてもしようがないわけであって、それはある意味においては、人事においてしっかりとした人物を充てていなかったことをもって責任としなければいけないし、そして、その後の改善策ということについては、しっかりと、二度とそういうことが起きないようにというミッションを与えて人を配置していくということが、そのときにやるべきことになるわけです。

 そういう意味では、責任の所在ということを我々は再三言ってきたわけでありますけれども、ここは本当に、大臣が今おっしゃっていただいたように、程度の問題、一つ一つの事例、ケースというものに即して考えなければいけないということでありますけれども、これまでよりは大きく一歩も二歩も前進、ただし、まだ首長が全体に対する責任、その所在をしっかりと明確にしていますよ、首長が責任者ですよ、かつ、その実効としては人事権は首長が持っていますよということを明快に答弁をいただくところまでは、なかなかこれは本法案審議ではいきませんでした。また、今の答弁をお聞きをしても、どうしてもその部分は残ります。

 そういう意味では、先ほど来申し上げているとおり、大きな前進であることは認めますから、ぜひいい運用になるように、例えばこれから先、省令だとか通達だとかいろいろな形で文科省もこの法律にさらに魂を入れていく、そうした行政展開をしていくものと思いますから、この点についてはしっかりと、これは新たにつくった法律ですから、やってくれることを期待をしたいと思います。

 通達等によって、例えば、既に議論になっている総合教育会議の議事録、あるいは議事概要でもいいと思うんですけれども、こういうものを明らかにしていくことなど、こうしたことは、大臣、お考えいただけないですか。

下村国務大臣 今までと、首長と教育長との違いというそのことにおいては、任命責任が明確化になったというところが大きな違いだと思うんです。今までは、実際は、中田横浜市長のときも多分教育長は市長の意向であったとは思いますが、しかし、法律上は教育委員会の互選によって教育長を決めるということであって、法律上、直接首長が決めるということにはなっていなかったわけでございます。

 今回は、首長が教育長に対する任命責任を持って誰が一番いいかということを、首長の判断で教育長を任命することができる、三年に一度ということでありますけれども、また、新首長になってすぐその場ということにはならないタイムラグ的な部分はありますが、しかし、直接任命できるという意味では、大きな改正の一つだというふうに思うんです。

 その中で、任命責任の中で、首長は教育長に対してそれだけの、任命権者という立場からの影響力というのは当然出てくることであるというふうに思いますし、その上での信頼関係の中でぜひやるべきことであるということで、罷免権を行使するということがなくても、事実上は、首長が教育長に対してそういう立場で影響力を持つということは十分できることだと思います。

 職務上の義務違反ということについては、これは、いじめ対策防止法についても、児童生徒の緊急の場合における対処の仕方について、教育長が十分な対応をしなかった場合における首長はそういう権限をさらに持つということも含めて、今回の法律の施行において、改めて首長と教育長の関係、それから、教育長における職務上の義務違反等重要なことについては誠実に対処してもらう必要があるという法律の趣旨の徹底が、この地教行法と、それからいじめ対策防止法との両方含めて、よく教育委員会に対して理解徹底をできるように、文部科学省の方からも指導してまいりたいと思います。(中田委員「質問は、議事録とか通達等とか、そこが質問です」と呼ぶ)

 議事録は、先ほど同僚の椎木委員にもお答えをいたしましたが、これは努力義務ではありますけれども、文部科学省として改めて周知徹底をして、公表するように指導していくようにしてまいりたいと思います。

中田委員 ありがとうございます。

 最後にしたいと思いますけれども、文科省の皆さんを責める気持ちはありませんけれども、やはり、文科省ほど先を見て物事を考えていってほしい役所はないなと最近つくづく思うんです。

 なぜならば、民間企業が日本の経済を支えてきた。その民間企業というのは、常に自分たちにとって、どういうふうにマーケットを生かしたり、制度を生かしたり、さらには、諸外国や新たな技術を生かしたりというような事例というものを、情報を収集しながらどんどん自分たちで考えていくんですね。

 ところが、教育というのは、未来の子供たちを育てていくという極めて重要な、国の唯一のと言ってもいいぐらい、日本にあふれている資源をどれだけ高めていくかということをしなければいけないんですが、私は、これまで本当に後手後手に回ってきた官庁だなというふうにこれは思います。

 今回、大津のいじめ自殺事件、大阪の体罰自殺事件、こういった不幸な事例、これは不幸という二文字では本当に心苦しい、胸詰まる思いの、若い子供がみずから命を絶っているというような事例が起きて初めてこういう動きになる、これが一つのきっかけで動きになっていくというのは不幸です。

 私は横浜市長をやって一番最初に思ったのは、五百校を超える小中学校、高校、養護学校等々を全部一つの教育委員会で見るというのは、これはどういう行政だと思いました。予算委員会でも言いましたけれども、山口県の教育委員会の数と横浜市の教育委員会の数、学校数は同じなのに横浜市は一つしかない。山口はと言ったら、それは幾つでしたか忘れましたけれども、幾つもあるんです。

 こういうのをとってみても、全国一律と、そして機動的に動けていない、何か問題が発生しなければだめであるというこの状況というものは、本当に改めてもらいたいと思うんです。

 私は、今回の政府案が可決されて成立して、そして施行されたとしても、大きな前進だと思うけれども、まだまだ不備が露呈をする可能性はあると思います。そういう場合には、お互いまた議論をして、不断の見直しをしていくことをやっていくべきだと思いますし、この点については、大臣にも、ぜひ今後そうした示唆というものを文科省内にも徹底しておいていただきたい。

 また、国会議員として、大臣には、そうしたこと、すなわち、この法律を運用した結果を必ずまた検証して見直す時期というものを設けようじゃないか、そういうタイミングはお互い胸襟を開いてやろうじゃないか、ここについては、大臣、最後、御見解をお伺いして私の質疑を終わりたいと思います。

下村国務大臣 まず、前半の部分はおっしゃるとおりだと思っておりまして、きのうも省議で、中田委員と同じように、文部科学省の名前を未来省に変えたいぐらいだ、教育、文化、スポーツ、科学技術はまさに未来を決める、そういう自覚を持ってやろうということを、省議、文部科学省の幹部に話をしたばかりでございます。

 そして、どんな制度でもパーフェクトな制度というのはあり得ないわけでありまして、それは、いろいろな不備がもし出てくれば、そのときそのとき謙虚に見直すという姿勢を柔軟にとることによって、子供、生徒を第一義として、教育委員会、地方教育行政改革をしていくということは重要なことだと思います。

中田委員 終わります。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いいたします。

 四十時間を上回る審議を、お時間をいただきました。その中で、議論をすればするほど、やはり議論が尽くされたという以上に、さらに深掘りしたいろいろな観点からの議論が必要であるという意識自体も深まったんだと思います。ただ、限りがありますので、きょうの終局質疑、今まで質問させていただいたこと、これで我が党としてやはり肝だというふうに考えていることを中心に、大臣そして参考人にお伺いしたいと思います。

 まず、責任所在について、先ほど中田委員、前横浜市長からもありました。これは首長経験者、鈴木先生もそうですけれども、首長経験者からすると、この損害賠償請求、訴訟、民事に関しては首長に訴求されるというこのジレンマ、やはり大いにお抱えになっていらっしゃるなというふうに感じるわけでございます。

 その一方で、我が党にはいないので間接的にほかの首長さんにもこの責任所在の問題をお伺いすると、これはもう首長業務の一環だから仕方ないんだよという非常にドライな捉え方の首長さんもいらっしゃるんです。

 教育の重大案件に係る賠償の事案、親御さんもかなり深刻な思いを持って裁判に臨まれているわけですけれども、これは、大臣がおっしゃった財務の統一的な処理の観点から首長がどうしても訴訟になってしまうということだったんですが、やはり、どうしてもそういった現場の責任との乖離がありますと、首長自身の意識が、当事者意識がかなり希薄になる、これは憤りを覚える方もいらっしゃいます。逆に、今申し上げたとおり希薄なので、どうしても流れ作業的にこの裁判に臨んでいく、処理をしていってしまうという、非常に残念な裁判姿勢というのもやはり育まれてしまうのかなという危惧を持っております。

 これに関しては、もう先ほど中田委員初め議論が出ておりますので、民事に関してはお伺いしません。

 一方で、行政訴訟の場合、これも大臣、本会議で答えていただいております。新教育長が責任者になるということだったと思います。ただ、執行権限は教育委員会にやはり留保されておるわけでございます。責任は新教育長だけれども執行権限は教育委員会。これはやはり、旧態依然たるリスク分散型の運営、運用のように私は思えます。

 そこでお伺いしたいんですが、司法制度の、行政訴訟に関して、直接は訴えられるのは教育長、しかし執行権限は教育委員会が持っている、このあえて言いますといびつな構造、これをどのように今お考えになっていらっしゃるのか、これを今後改正、修正をしていくそういったお考えがあるのか、お伺いしたいと思います。

前川政府参考人 私の方から制度の説明をさせていただきたいと存じます。

 行政処分の取り消し等を求める行政事件訴訟におきましては、教育委員会が当該地方公共団体を代表するということでございまして、行政事件訴訟法に基づきまして、行政庁の公権力の行使に関する不服がある場合、その取り消し等を求める訴訟でございますが、この相手方というのは処分または裁決をした行政庁ということでございまして、これは、地方における教育に関しましては教育委員会になるということでございます。

 教育委員会が当該地方公共団体を代表するということであるわけでございますけれども、実務上は教育長が責任を持って対応するということになると考えているところでございます。

柏倉委員 それでは確認ですけれども、実務としてしっかりと責任を持って行政訴訟に対応する責任者は、新教育長ということでよろしいんでしょうか。

前川政府参考人 法律上責任を負うのは教育委員会、実務上の責任は教育長になるというふうに考えております。

柏倉委員 先ほどの損害賠償のときのお話とやはり同じだと思います。法律上、形式上と実務上の乖離、どこまでいっても誰が一体責任があるのかやはりわからない。司法制度とのバランス感覚が非常にわかりにくい、曖昧だということ、これは、議論を深めていけばいくほど、やはりそういった思いを呈さざるを得ないというふうに思います。やはりしっかりと責任者が訴訟対象になる、この一対一対応、これを今後の修正等におきましてしっかりと政府も勘案していただきたいと思います。

 それでは、次なんですけれども、総合教育会議におけるいじめの調査機関に関してです。

 これは、私、取り上げさせていただきましたけれども、大津事件でもそうだったと思います。そして、奈良県の橿原市の案件もそうでした。実際に、学校の中でのいじめの内部調査と現実に判明したいじめの実態、これが、一方ではない、一方ではあると、やはりかなりばらつきがあったんです。どちらが本当なのか、真剣にどっちも調べると言っているとはいえ、情報ソース、これはやはり親御さんの方があるんだと思います。実際に、LINEでかなり陰湿ないじめを受けていたという事実も露呈したというわけなんです。

 これは、今後総合教育会議で首長さんがこのいじめの緊急対応もやっていくわけです。何に基づいて対応するのか、やはりこれは、実証的な調査結果に基づいて、正確な対応をしていかなきゃいけないんです。これは言葉は悪いですけれども、内部調査ですとどうしてもお手盛り、こういう調査にならざるを得ない。やはり予定調和がありますから、組織ですから、それはそこの限界があると思います。それをやった人間がどうだこうだと責められる問題ではなくて、組織そのもの、このあり方に問題があると思うんです。

 そこで、この総合教育会議におけるいじめの緊急対策においては、やはり第三者機関による調査、これが絶対的に必要だと思います。この第三者機関の設置義務づけに関してどのように政府は考えているのか、答弁をお願いします。

前川政府参考人 昨年成立いたしましたいじめ防止対策推進法及び同法に基づく国のいじめ防止基本方針におきまして、公立学校でいじめによる重大事態が発生した場合、まず、学校の設置者、すなわち教育委員会でございますが、または学校が、いじめ防止対策推進法の第二十八条に基づきまして、速やかに、当該学校または教育委員会のもとに組織を設け、事実関係を明確にするための調査を行わなければならないということになっております。また、その調査結果につきまして、地方公共団体の長、首長に報告しなければならないということになっているわけでございます。

 この教育委員会または学校の、組織を設けて行う調査、これは法に基づく義務でございますので、必ずその組織を設けなければならないということになっております。

 一方、この調査結果の報告を受けた首長でございますけれども、この首長におきましては、いじめ防止対策推進法第三十条におきまして、重大事態への対処または当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるときは、附属機関を設けて調査を行う等の方法により、この学校の設置者または学校が行った調査の結果について調査を行う、すなわち再調査を行うことができるとされているところでございます。

 この首長による再調査は、首長の判断によって行うか行わないかということが決まるわけでございますので、再調査をすること自体が義務ではございません。しかし、学校あるいは教育委員会の行った調査の結果が不十分である、あるいは不正確である、あるいは不適切であるというような判断を首長が行った場合には、再調査を行うということが想定されるわけでございます。

 その際には、総合教育会議の場を活用いたしまして、首長が、教育委員会あるいは教育長から調査の結果についての報告あるいは説明を求めるというようなことが想定されます。この際に、先ほど申し上げた第三十条でございますけれども、「附属機関を設けて調査を行う等の方法により、」となっているわけでございます。

 この附属機関につきましては、また別途このいじめ防止対策推進法におきまして、第十四条第三項でございますけれども、「地方いじめ防止基本方針に基づく地域におけるいじめの防止等のための対策を実効的に行うようにするため必要があるときは、教育委員会に附属機関として必要な組織を置くことができるものとする。」とされておりまして、同様に、首長が附属機関を設けるということも想定されております。この場合の附属機関につきましては、これは条例で設置することが原則であるというふうに考えているところでございます。

柏倉委員 首長が必要であると認めれば第三者調査機関を設置できる、それに基づいて総合教育会議でいじめ対策というのを勘案することができるという理解でよろしいんですね。

前川政府参考人 首長が再調査を行う必要があると認めた場合には、首長の判断で組織を設けるということでございますが、これが地方自治法上の附属機関だということになりますと、これは条例設置になるということでございます。

柏倉委員 条例をつくらなきゃいけないということになると、かなり時間的にも、やはりオンタイムでそういう精査もできなくなるんじゃないかなというふうに思います。そういった法的な手順というのはもちろんあるんでしょうけれども、それをいかに簡素にするかということも私は行政の役割だと思っております。

 あと、視点として足らないのは、もしいじめの自殺というものが起こった場合、被害者が多分なる重大な身体的、死亡も含む被害をこうむった場合は、やはり、両親、本人の希望があれば、第三者機関、調査委員会の設置、これはしっかりと義務づけるべきだと思います。現行はそういった声を首長が聞いて判断をするということだと思いますけれども、やはり、特に死亡の案件は、親御さんが求めているのは客観的な事実なわけでございます。この客観的な事実をどうやってしっかりと調査をするか、検証するか、そして、もうそのことが二度と起こらないように予防策を講じていくか、これもやはり私は総合教育会議の役割だと思っております。

 首長の判断で設置する、これはいいんですけれども、もっと広く意見を取り入れて、いじめの第三者機関をできるだけ設置する方向の調整をぜひ今後はしていただきたいと思います。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 レーマンコントロールをいかにきかせるか、これはもうどの制度に関してでも議論を尽くさなきゃいけないところだと思います。

 そこで、再三再四、教育委員会の議事録公開に関しては維新の会の皆さんからかなり突っ込まれておりましたし、私の質問にも、事務的な手続、事務的な労力が少ないから公開できないんだという答弁があったかと思います。そういったことはやはり許されない理由だと思っております。レーマンコントロールをきかせるためには、絶対的に、情報開示できる部分はしなければいけないと思います。

 教育委員の身体的な危機を招くような事案に関する議事録、これはオープンにしないという選択肢もあると思うんですが、そういったものは本当に何%あるのか、ほとんどないと思います。やはり、レーマンコントロールをきかせるためには住民の皆さんにしっかりと情報開示をしていく、この姿勢、私どももしっかりとそれは要請をさせていただきます。

 この議事録の公開にプラスアルファとして、いろいろなレーマンコントロールをきかせる仕組みというのがあると思うんですが、例えば、教育委員会の事務の管理及び執行状況に関する点検、パブリックコメント、公聴会、こういったものをやはりまめにどうやって行っていくか。これは、今からもう立案していかなきゃいけないものだと思っております。そこの現状の認識、計画等も含めまして、政府の答弁を求めます。

前川政府参考人 教育行政の透明性、公開性は大変重要なことだと考えております。

 教育委員会の会議は現行法におきましても原則公開するということが法定されておりまして、この点につきましては、引き続き変更はございません。

 さらに、改正案におきましては、御指摘のとおり議事録の作成、公表を努力義務化しているところでございまして、教育委員会は、その権限に属する事務の管理、執行の状況につきまして点検、評価を行うに当たりまして、学識経験者の知見の活用を図るものとされておりまして、この場合におきまして、保護者や地域住民の声を聞くということも大変有効であると考えております。

 また、教育委員会におきまして、保護者や地域住民の意見、要望、苦情などを聴取いたしまして意見交換を行う機会を設けているというケースも多々あるところでございまして、こういった取り組みをさらに進めるよう促してまいりたいと考えております。

 あわせて、教育委員会におきまして、多様な地域の民意が反映されるようにするためには、例えばコミュニティースクールでありますとか学校支援地域本部の代表を教育委員に選任するなど、地域の幅広い関係者から教育委員を人選するという工夫が求められるところだと考えております。

 一方、学校現場サイドの学校運営への地域住民の参加につきましては、保護者や地域住民が一定の権限、責任を持って学校運営に参画する仕組みとしてのコミュニティースクール、学校運営協議会制度の導入が望まれるところでございまして、文部科学省におきましては、その導入促進に鋭意取り組んでいるところでございます。

柏倉委員 ありがとうございます。

 端的にもう一度お伺いしますけれども、パブリックコメント、公聴会の開催というのは、今のところは予定していないんでしょうか。

前川政府参考人 各種行政におきましてパブリックコメントの仕組みを活用するということは、非常に効果的だというふうに考えております。

 それぞれの自治体におきまして、それぞれの条例等に基づきまして実際にそのような実践が行われていると考えておりますので、私どもも、その点につきましても公開性を高めるための努力を促してまいりたいと考えております。

柏倉委員 自治体の判断にということなんでしょうけれども、六十年に一度の教育改革ですから、この点検作業は絶対に、地方に委ねるというのではなくて、国が率先をしてこれはもう義務づけていくという姿勢がやはり必要なんじゃないでしょうか。

 附帯でもいろいろな案件が盛り込まれているようですけれども、今後、この法律施行後どうやって、微修正になるか大きな修正になるかわかりませんけれども、常に地域地域、地方地方の声を吸い上げる。これは、地方が地方のためにやるのではなくて、国が地方のためにやらなきゃいけない姿勢だと私は思います。ぜひ国が率先をしてやっていただけるように要望させていただきます。

 続きまして、我が党が訴えております教育委員会の必置義務見直しに関してお伺いしたいと思います。

 これは常々、特区でもなぜできないのかという議論をさせていただきました。これはいろいろな理由があって、大方針的に、こっちにはあってこっちの自治体にはない、これは非常にバランスが悪い、いっせいのせでなくすリスク、その地域全体の多くの子供たちがリスクをこうむる可能性がある、それは避けなければいけないという大臣の御答弁がありました。それは我々もなるほどと納得をしているところではございますが、かといって、では、その芽を完全に摘んでしまってはどうなのかという思いがあるのもこれまた本音のところでございます。

 政治的中立性を保てなくなるから特区はいかぬというような、前川喜平局長、答弁をされたかと思うんですね。五月九日に答弁されています。私が五月十四日の審議で、では、政治的中立性を保つ機能があるのは教育委員会だけなのか、そういう質問をさせてもらいました。前川局長は、学習指導要領と中立確保法という二つの、それ以外の政治的中立性の大枠を保つシステムがあるというふうに答弁されていますね。これはやはり、いろいろなものが相まって政治的中立性が保たれているというのが実際だと思うんです。

 我々は、やはりこの教育委員会が果たしてきた役割は何なのかという検証なくして、教育委員会は絶対なきゃいけないんだという、そこの前提に立った法改正というのはどうしても容認することができないんです。

 そこで、改めてお伺いします。

 教育委員会ありきの制度改革では、目指すべき方向、その道程に私はゆがみが生じるというふうに思っております。教育現場の自発的改革を後押しするためにも、教育委員会の必置義務を数年後に見直すべきと考えますが、政府の見解を伺います。

下村国務大臣 どの地域においても責任ある地方教育行政を構築する観点からは、統一的な教育行政の仕組みであることが必要であり、こうした考えから、今回の改正案においては、選択制とせず、全ての地方公共団体において同様の仕組みとしており、選択制とすることについて見直しを行うべきではないと思います。

 ただ、基本的に、教育は地方自治に属する部分でありますから、これから今回の政府案を成立させていただければ、今まで以上にそこの首長の創意工夫によって、教育については今でもやろうと思ったら相当やれるところがあって、実際それに取り組んでいる地方自治体も実は結構あるんですけれども、今まで以上に、より柔軟性を持った首長のリーダーシップによって、教育について現場の活性化につながるようなものはできるというふうに思いますし、まずそういう工夫をしていただきたいと考えております。

柏倉委員 答弁ありがとうございます。

 これは繰り返しお尋ねしてきたことでございます。その返答もやはり大臣が今までおっしゃってきたことを今回述べていただいたと思うんです。

 先日の議論で、イギリスの実情に関して大臣に説明をしていただきました。教育委員会そのものはNPOとか民間委託しているところもあるよということでした。私もその後、イギリスの教育制度をちょっと調べたんですが、これは一致するかどうかわかりませんが、アカデミーという制度もあったりして、そこは一〇〇%政府出資だけれども公益法人が学校を運営している、そういうものもあるということなんです。

 結局、これはいろいろな、どれが理想形なのかやはりどこの国も今模索している状態だと思うんです。特に、教育の国イギリスは、できるだけ多くのそういうスタイルを担保して、実証主義的に理想形を追求していこうという姿勢があるわけなんです。

 先ほど大臣おっしゃったような理由で、構造特区でも教育委員会をなくすなくさないの判断は、なかなかなくすという判断はできないということをおっしゃっていました。

 日本には国立の小中高もあるわけですね。この国立の小中高、これの一校でもそういった試みをするというのも、私は非常に価値があることではないかと思うんです。それは、教育委員会の制度の、必置見直しも含めてさまざまな、今イギリスでやられているような取り組みも含めて、やはり、国立の学校というものの位置というのは、進学率を高めたりそういったこと以外にも、こういう実験的なところにもしっかりと参加ができるということだと私は思うんです。

 そこのところ、一校でもいいから、ミニマムのトライでいいので、まずしていただけないでしょうか。そこの御所見をよろしくお願いします。

下村国務大臣 その一校というのは、どういう学校という趣旨がちょっと今よく理解できなかったんですが、これは、構造改革特区において教育委員会における必置義務を外すということについてはできませんが、しかし、この構造改革特区によって学校を特徴ある学校にすることは、現行法においても十分可能であります。

 ですから、どういう学校をつくりたいかということについてぜひそれぞれの自治体がチャレンジをしていただいて、そして、それが今後の教育改革における大きな突破口になるのであればそれは当然認める方向になると思いますが、どういう内容なのかということについては、構造改革特区の中でぜひ提案をしていただきたいと思います。

 そして、イギリスの事例については、笠委員等とこれは超党派で、サッチャー改革に学ぶイギリス教育改革という本も共著で出したぐらい、視察に行って学んだことがありますが、それぞれの国がそれぞれの教育改革について日々見直しをしながらよりよいものを目指しているということについては、我が国も、特にこういう時代の大きな転換期の中で、教育については積極的に取り組んでいく必要が国としてもあるというふうに思いますし、今、私のもとでも四十七項目の教育改革工程表をつくって、文部科学省でも進めていますが、地方自治体でも積極的にぜひ取り組んでいただきたいと思います。

柏倉委員 ありがとうございます。

 一校でもと申し上げたのは、一校でも、教育委員会を民間委託したり、そういったいろいろな試みをきっちりと国のサーベイのもとやれないかという意味で申し上げたところでございます。

 ぜひ、このキックオフされた新教育委員制度、大臣に先頭に立っていただいて、よりよきものにしていただきたいという希望を最後に申し上げて、終わりにします。

 ありがとうございました。

小渕委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 慎重な審議を求めてまいりました私としては、きょうが最後となるのは大変残念ではあります。これまで私は、政府案は、新教育長、教育委員長が教育長に一本化をする、また、総合教育会議によって連携を深めていく、これが、教育委員会と首長部局の一体化が逆にお互いのその独立性を失ってしまうのではないか、教育委員会が形骸化、弱くなってしまうのではないかという観点から、教育長を中心にこれまで質問をしてまいりました。

 きょうはまず総合教育会議のあり方について伺いたいのですが、総合教育会議を設置していくということは、これまでの答弁でも、法律の目的である連携の強化、そういうところに当たると思いますが、総合教育会議は、原則として、全ての教育委員が教育長を含め出席をする。ただ、場合によっては教育長のみ出席をして首長と話し合いを行う。

 教育長のみが首長と総合教育会議で協議をした場合に、教育委員会は合議体でありますので、教育長としては、当然、教育委員会としての結論をその会議の場では出すことはできないと考えられるんですが、その点はいかがでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のように、緊急の場合など教育委員が参集できない場合は、首長と教育長のみで総合教育会議を開き、協議することも可能であります。

 その際、教育長は、合議体の教育委員会を代表して会議に臨むことになるわけでありますが、事前の対応の方向性について教育委員会の意思決定がなされている場合、あるいは対応を一任されている場合は、その範囲内で調整、決定を行うことができます。

 一方、協議、調整の内容について改めて教育委員会に諮る必要がある場合は、総合教育会議においては一旦態度を保留し、持ち帰って教育委員会において再度検討した上で、改めて総合教育会議において協議、調整を行うことも、御指摘のように、考えられます。

 なお、緊急の場合においては、教育委員会の了承を得る時間がないときは、教育委員会規則の定めるところにより、教育長が臨時代理として、これは改正法案第二十五条第一項でありますが、総合教育会議において調整、決定し、教育委員会に事後報告を行うことも可能であります。

井出委員 あらかじめ議題がわかっていて、教育委員会でそれに対する意思決定がなされている、その上で教育長がその発言をその場でしに来て進めていくというのであれば、今大臣おっしゃったように、それはそれで結構なことではないかと思っております。

 ただ、今もう一つおっしゃられた一任というところは、ケース・バイ・ケース、一任のぐあいにもよるんですが、本来の合議制というところから考えると、若干の疑問を感じざるを得ない。

 確認になるのですが、総合教育会議の場で教育長のみ出席された場合、また、教育委員がいる会議でも結構なんですが、そこで初めて聞かされるような新しい提案が首長側からなされたとき、また、首長と教育委員会の見解の異なるような問題が議題となったときは、教育委員会の判断、意思決定というのはその会議でできるのか、一度持ち帰るのか、どういうことが想定されるのでしょうか。

下村国務大臣 先ほどのお話ですけれども、緊急の場合においては、教育委員会の了承を得る時間がないとき、これは、首長と教育長で総合教育会議を開くということは緊急の場合はあり得るわけです。その場合は、教育委員会規則の定めによって、教育長を臨時代理にするという決まりをつくってあります。

 ですから、総合教育会議において調整、決定し、緊急ですから、そこで決めなかったら会議を開く意味がありませんから、決めて、そして教育委員会に事後報告を行うということは可能だということをまず申し上げておきたいと思います。

 そして、一般的には、総合教育会議を首長が招集するに当たっては、総合教育会議における協議、調整が円滑に進むようあらかじめ協議題を明示して、教育委員会は事前に方針を申し合わせた上で会議に臨むことがやはり望ましいと思います。

 総合教育会議の場で、事前に調整された協議題以外に首長から教育委員会の見解と異なる提案や新しい提案が行われた場合、教育委員会による合議体としての判断、意思決定を総合教育会議の場において行うことも可能であるというふうに考えております。しかし、総合教育会議の場において教育委員会としての意思決定がその場ではできないという場合には、一旦持ち帰って教育委員会会議において再度検討し、改めて総合教育会議に臨むことも考えられると思います。

井出委員 確認をさせていただきたいのですが、教育長のみが出席をする総合教育会議というのは緊急の場合に限られるということでよろしいんですか。

 例えば、総合教育会議を今度開く、教育委員会、教育委員も全員出席する、その前段、打ち合わせ的に首長と教育長が話をすることもあるのかなと。ですから、緊急でなくてもそういう二人だけの総合教育会議というのはあるのかなと私は思っていたんですが、緊急のときのみということでよろしいですか。

前川政府参考人 お答え申し上げます。

 教育長が教育委員会を代表する形で首長と二人で総合教育会議を開くというケースは、その協議題が緊急の議題であるという場合に限られるわけではございません。これは、教育委員会からの委任を受けて教育長が協議をするということも当然起こり得るというふうに考えております。

井出委員 大臣が先ほどの御答弁でおっしゃられた二十五条の、教育長が代理を務めて教育委員会に事後報告をするというのは、それはさすがに緊急のときのみなんですよね。そこはよろしいですか。

下村国務大臣 基本的に総合教育会議の原則は、首長と教育委員会のメンバー、テーマによっては有識者が加わるということですから、一般的には、総合教育会議は首長と教育委員会のメンバーが、つまり委員が全員加わるということだというふうに思います。

 ただ、緊急の場合には、これは二十五条によって、教育委員会は、教育委員会規則で定めることにより、その権限に属する事務の一部を教育長に委任し、または教育長をして臨時に代理させることができるということでありますから、今、前川局長から答弁があったように、これは事前に教育委員会として全員が集まる必要がないというふうな判断と、首長もそういうふうに判断して、教育長と首長だけで総合教育会議を開くということも、これはあるというふうに思います。

井出委員 ありがとうございます。

 では、緊急の場合ということで伺いたいのですが、これまでも伺ってきたんですが、大津の事件のように、いじめでお子さんがみずから命を絶ってしまったケースです。そこに至らないように努力をすることがもちろん大切であることは最初に申し上げておきますが、大津のような事件が再び起こった場合のことについて伺います。

 これまでの私の質問へのいただいてきたお答えですと、お子さんが、子供がいじめで命を落とした、まず迅速に教育長が対応をして、必要に応じて総合教育会議を、教育長のみなのか教育委員会全員参加なのかはケース・バイ・ケースだと思いますが、開かれることもあると。私が前に質問をしたときに、子供が亡くなった、その最初に総合教育会議を開いた、これは非常に緊急であると私は思うんですが、そのときに教育長しか来ない、前に伺ったときに、では、その会議を公開でやっていくのか非公開でやっていくのかと。

 これは、これまでにいただいている答弁ですと、その会議として判断をする、そういうお話だったと思うんです。教育長しかいない、緊急である、そこでその会議を公開するかしないかというのは非常に重要なところであると思うんですけれども、ここにその教育委員会の意見というものが反映されないのではないか、私はそういう問題意識を持っているんですが、その点はいかがでしょうか。

前川政府参考人 緊急の場合に、教育長が教育委員会を臨時の代理をする形で総合教育会議に出席するというケースにつきましては、教育長が教育委員会を代理する形でございますから、その会議の公開、非公開につきましても、教育長と首長とで決めるということは可能であるというふうに考えております。

井出委員 いじめで子供さんが命を落としたときに、まず初動、迅速な対応は教育長がやっておりますよね。ですから、教育長はその中身がよくわかっていらっしゃってそこの会議に臨むと私は思うんですよ。ですが、教育委員の方の考えは、そういう重大事態があったときこそ、まあ教育委員というのは、教育長ほどふだん教育行政に日常的にはかかわっておりませんから、緊急事態があった、子供が命を落としたようなときこそきちっと公開の場でやるべきではないかと考えるケースもある。だけれども、教育長はもうそのいじめに迅速な対応をしている分中身を知っているから、公開できない、そう考える教育長もいらっしゃると思うんです。

 そういうときに、それが本当に教育委員会の合議体としての意思決定で公開、非公開が決められるのか。教育長が出て、先ほどの二十五条にのっとって事後報告をしたとしても、それはやはり教育委員からすれば異論の出る話ではないかと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

前川政府参考人 総合教育会議につきましては、公開が原則であるということで、非公開というのは例外的なケースでございます。

 特に、いじめを起因とする自殺事件などが起きた場合の対応について議題とするという場合につきましては、個人情報が扱われるというようなケースにつきましてはやはり非公開とすることが適切であるというふうに私どもも考えておりますし、その場合には、緊急に、総合教育会議に出席した首長と教育長の間で、公開すべきか非公開とすべきかの判断をしていただく必要があると考えております。

 ただ、そのことにつきましては、事後的には教育長は教育委員会に対して報告する義務、これも今回の法案の中に入っているわけでございまして、この報告をした上で、教育委員会の方で、それが適切であったかどうかの判断はそこでまたされるだろうと考えております。

井出委員 お子さんが命を落としてしまったときの最初の総合教育会議というのは、恐らく、詳細な、教育長が迅速に当たったこれまでの経過報告もあることは当然想定されると思います。そうすれば、おっしゃったような個人情報は当然入ってくるから、普通に考えれば非公開なのかなと私は思っておるんです。

 そうしますと、運用としては、では、もう事前に、集まれない教育委員に非公開でというようなそういう合意形成をとる方が正しいのではないか、事後報告よりですね、そういう考え方はあるかな、私だったらそうするんじゃないかと思うんですけれども、そこの運用のところはどのようにお考えですか。

前川政府参考人 総合教育会議の運営のあり方については、総合教育会議において定めるというそういう規定も今回の法案に盛り込んでいるところでございますけれども、議事の公開、非公開につきましても、あらかじめ首長と教育委員会との間で、どういうケースについては非公開にするというようなことを決めておくということは考えられます。

井出委員 いじめでお子さんが命を落としてしまうようなケースというのは、本当にこれからあってはならないと思うんですが、ただ、年間三百人前後の小中学生が命を落としている。そのうちの何件がいじめと言えるのかどうかというのは全くわかりませんが、その時々によると思うんですが、年間三百人前後という数字に対してしっかりと教育現場は検証をしていく必要があると思っておりますので、この部分にこだわっているんです。

 きょうの午前中に義家委員の方から御質問があった、首長の再調査について伺いたいのです。

 いじめ防止対策推進法では、三十条の再調査は、首長の権限で、首長の責任で行っていくと。きょうまず伺いたいのは、最初に教育委員会、学校側が調査をします。その後、もう一度調査をする必要があるとあれば再調査が行われる。その二つの調査というものは、どちらがその後の対応として重きを置かれるものなのかということをお聞かせください。

下村国務大臣 その前に、先ほどの、前川局長が答弁したとおりでありますけれども、総合教育会議は基本的には公開ですから、そして主宰するのはこれは首長ですから、ですから、首長ともどもにいじめのための緊急会議を開くとき、結果的にそれが隠蔽になるというようなことは基本的にあり得ない、そういう前提だと思いますので、公開、非公開については、相当プライバシーの問題等があるとき、首長も含めて判断するということがあり得るのかもしれませんが、基本的には公開だということですので、危惧されるような点というのは、総合教育会議においては、教育委員会ではありませんから、総合教育会議においては首長が主宰ですから、今後はなくなるというふうに思います。

 そして、いじめの問題でありますが、公立学校でいじめによる重大事態が発生した場合、教育委員会または学校は、速やかに、組織を設けて調査を行い、調査結果を地方公共団体の長に報告することが必要であり、調査結果の報告を受けた地方公共団体の長は、重大事態への対処または当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるときは、教育委員会または学校が行った調査の結果について調査を行うことができることとされております。これは第三十条の二項に書いてあります。

 どちらの調査も法定された措置でありますが、首長による再調査は、教育委員会または学校による調査結果では不十分であると考えた場合などに首長の判断で行うことができるものであります。

 また、首長の再調査の結果を踏まえて教育委員会は、みずからの権限及び責任において必要な措置を講ずることが法により求められております。これは三十条の第五項であります。

 加えて、再調査を行った場合、首長はその結果を議会に報告しなければならないこととされております。これは三十条の第三項であります。

 このような意味で、両方法律には書かれておりますけれども、首長による再調査は重みを持つものであるというふうに考えます。

井出委員 去年、そのいじめの法案をつくったときも、再調査というものはすごく重みを持つものだろうと思って私もその議論に参加をしていたんですが、私の問題意識としては、今大臣がおっしゃった、教育委員会の調査が不十分だったときに再調査をする。ですが、最初の調査に当たって教育委員会と首長が総合教育会議等で連携をしていれば、そういう再調査の必要性も少なくなるのではないかという問題意識はまだ残っております。

 私が感じているのは、大津の越市長のとった対応というのは、越市長の姿勢、教育行政についてその全てをよしとするところではないんですが、あの最終報告、第三者委員会の調査のよかったところは、教育委員会と徹底的に距離をとって、独立した立場から調査をされたことが結果としてああいう最終報告書をつくって、我々にも多くの示唆を与えてくださったと思うんです。

 今回の政府案は、いじめ、緊急事態があったときに、総合教育会議等で教育委員会と首長が、一体となると言えばすごく前向きなんですが、逆に、独立した立場から再調査の必要性を判断できるのかというところ、大変疑問が残っておるんですが、その点についてお願いいたします。

下村国務大臣 最初に井出委員がおっしゃったように、基本的には、この政府案を成立させていただければ、このいじめ防止対策推進法に書かれているような再調査はする必要はなくなる場合の方が大きいと思います。

 それは、総合教育会議が設けられることによって、首長と教育委員会が一緒になってこのいじめ問題について対処できるということでありますが、一方で、今回の改正案では、教育における政治的中立性、安定性、継続性を確保する観点から、首長から独立した行政委員会としての教育委員会を引き続き執行機関として残すことが必要だというふうに判断したわけでございます。

 その上で、民意を代表をする首長が教育行政に連帯して責任を果たせる体制を構築しているわけでございまして、総合教育会議の設置も、そのことによって一定の前進がかなりあり得ると思いますが、一方、総合教育会議の中で納得できないという部分がやはりあった場合には、それは、第三者委員会をつくるということもこれはあり得るというふうに思いますし、排除されていないわけであります。

井出委員 独立した執行機関を残して、でもお互いが連帯をしていくというのは、その独立と連帯というのは非常にバランスをとるのが難しくて、私はここをずっと疑問を感じて質問してきたんです。時間が来たので終わりますが、きょうの後もまた運用についてもいろいろ議論もあるかと思いますので、またそちらの方で議論させていただければと思います。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 前回の質疑で私は、大臣は法の趣旨そのものを理解しておられないのではないかという指摘をいたしました。それは、本法案で新たに設置される新教育長が教育行政における人事や教科書採択についての最終決定者であるかのような答弁があったからであります。その後の理事会では、こんな答弁を放置したままでは審議が進められないという議論になりましたけれども、まず、この点について大臣の答弁を求めたいと思います。

下村国務大臣 きょう午前中、椎木委員から、このことについての確認がありました。残念ながら宮本委員が出席されておられませんでしたが、質問された椎木委員は納得をされたわけでございます。

 五月九日の椎木委員の質疑において、教育長は「教育行政における人事や教科書採択については最終決定者である。」との答弁は誤解を招く答弁であった。その真意というのは、質疑の中で、総合教育会議における協議、調整について、首長と教育委員会のどちらが責任者であるかという観点から、人事や教科書採択については教育委員会側に最終決定権があるという趣旨で、その代表者である教育長と答弁したものであります。

 すなわち、地教行法改正案の第二十一条に規定する教育に関する事務の管理、執行については教育委員会が執行機関として最終責任者であり、教育長は合議体としての教育委員会の意思決定のもとで具体的な事務の執行を行う第一義的な責任者であるということで、質問された椎木委員は、きょう納得を、理解をされております。

宮本委員 誤解を招く答弁であったということを今お認めになりました。しかし、この部分を訂正するだけでは済まないんですね。

 十四日の質疑で、総務省の門山自治行政局長は、地方自治法上、独任制の執行機関は選挙で選ばれた首長だけでございますと答弁し、初等中等局長も私に、「あくまでも執行機関は合議体である教育委員会でございます。」と答弁いたしました。局長、間違いないですね。

前川政府参考人 そのとおりでございます。

宮本委員 ところが、同じく五月九日の質疑で椎木委員が、総合教育会議で首長と教育長の意見がぶつかり合って対立したとき、最終的な責任者はどっちなのかと問うたのに対して大臣は、その一問前の問いに対してですけれども、「それぞれが、首長も執行機関、教育長も執行機関です。」と答弁されました。

 大臣、「それぞれが、首長も執行機関、」これはいいでしょう、独任制の執行機関は首長だけだということで。しかし、「教育長も執行機関です。」これは明確に誤った答弁だと思いますが、これも撤回いたしますか。

下村国務大臣 さっきも撤回なんか全然していません。誤解を与える答弁だったということで、より詳しく説明を申し上げたわけでございます。

 その中で、先ほど申し上げたとおりでありますけれども、首長というのを第一人称として使ったという経緯の中で、教育委員会が執行機関であるということは、ほかの場所でもきちんと私は答弁を何回もしております。その中で、第一人称的な形で、教員委員会を代表する立場として教育長ということを申し上げたわけでありますが、当然、それは執行機関は教育委員会であります。

宮本委員 誤解を招くという点では、では、大臣も、執行機関はそれは教育委員会でございますとたった今述べられましたから、そうしたら、「教育長も執行機関」というのは、これは誤解を招く答弁だということはお認めになりますか。

下村国務大臣 それは、質問している椎木委員も納得されたことでありますが、対比としての中の話でありまして、その中でその前後をもうちょっと読んでいただくとわかりやすいと思うんですが、総合教育会議の場での話だったと思うんです。そのときに、例えば、教育長と首長だけの総合教育会議の場という意味での話の中の流れとしてそれが出てきたことだというふうに記憶をしております。

 そういう意味での教育長というのは、教育委員会の代表という位置づけの中での話であって、もちろん教育長一人で全て決められるというわけではなくて、あくまでも決めるのは教育委員会という合議体であるということは、これは当然の話であります。

宮本委員 私が大臣が法案の趣旨を理解しておられないのではないかと申し上げるのは、実はここなんです。執行機関、執行権限がどこにあるかというのは、この法案のまさに肝に当たるところなんですよ。

 それで、教育再生実行会議で第二次提言でまとめられた段階では、これは、なるほど、合議体じゃなくて、新教育長に教育行政の責任を持たせるという案が出されておりました。しかし、現に今ここに提出されている法案はそういうものではないんです。これは、旧地教行法二十三条、二十四条は全く変わっていない。したがって、しかるべき執行権限、執行機関は、合議制たる教育委員会なんです。

 ですから、大臣が教育長が責任者、責任者とおっしゃるその責任者という意味は、最終決定者でもなければ、そういう意味での執行機関でもないんですよ。あくまで執行機関、最終決定機関は合議体たる教育委員会であって、その代表者ということなんですね。

 ところが、どうしても答弁ではそういう答弁が出てくる。はっきりこれは「教育長も執行機関」というのは、言葉どおり言えば全く間違いですから、先ほど大臣自身も、執行機関は教育委員会だとおっしゃったわけですから、議事録にはその言葉どおり出ているわけですから、これはどう考えても誤解を与えるものだと私は思いますが、そう思われませんか。

下村国務大臣 宮本委員がどうとられるかということは宮本委員の判断なのかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、真意は、質疑の中で、総合教育会議における協議、調整について首長と教育委員会のどちらが責任者であるかという観点から、人事や教科書採択については教育委員会側に最終決定権があるという趣旨で、その代表者である教育長と答弁したものでありまして、繰り返すようですけれども、総合教育会議の位置づけの中での教育長と、そして、首長の位置づけの中での話なわけです。

 これは、地教行法改正案の第二十一条に規定する教育に関する事務の管理、執行については教育委員会が執行機関として最終責任者であり、教育長は、合議体としての教育委員会の意思決定のもとで具体的な事務の執行を行う第一義的な責任者だ、そういう位置づけでずっと答弁をしております。

宮本委員 つまり、大臣のおっしゃりたいことは、ここは、首長も執行機関、教育委員会も執行機関です、こう言うべきであった、そういう趣旨であるということですね。

下村国務大臣 いや、意図的にねじ曲げているとしか思えない。私は、総合教育会議の中での話です、総合教育会議の中で二人が出ている場合は、第一人称的に首長とそして教育長、それぞれが執行機関という言い方をしているわけです。

宮本委員 いや、執行機関が教育委員会というのは明瞭ですから、まあまあいいでしょう。では、そういうふうにおっしゃるわけですね。

 これだけではありません。

 次に、ではお伺いするんですが、教育委員会と首長、二つの執行機関、どちらが上かという議論が本委員会でも繰り返されてまいりました。整理をする意味で、これは初中局長に聞きたいと思うんです。

 どちらが上ということがあるのかないのか、また、首長が教育長に対して職務命令を出すことはできますか。

前川政府参考人 上か下かというアバウトな表現ではこれはお答えはできないわけでございますが、首長と教育長の間に職務命令を発することができる関係にあるかということであれば、首長が教育長に職務命令を発するということはできないということでございます。

宮本委員 首長から教育長に職務命令を出せないことは明らかだという答弁でありました。

 ところが、大臣は、本委員会、四月二十五日、日本維新の会の田沼委員に対して、「首長と教育長が、任命するに当たってどういうふうな職務命令を教育長に対して通達しているかどうかということも問われる」と、まるで首長が教育長に職務命令が出せるかのような答弁をいたしました。これは明らかな誤りで、撤回すべきではないかと思いますが、いかがですか。

下村国務大臣 御指摘の答弁は、四月二十五日、田沼委員に対する答弁ですね。途中からでありますが、ちょっと読みますと、

  田沼委員のおっしゃっている理屈はそのとおりだとは思うんです。つまり、首長が期待に応えられないような教育長をいつまでも在任させていいのか、それが地域住民にとってプラスなのかという視点においては、それは問題だというふうに思います。そういう意味では、これは、同時にやはり首長の任命責任そのものがそもそも問われることではあるというふうに思うんです。

  そして、私は、教育振興基本計画も含めて数値目標を明確にすることは、これは、第三者から見て、どの程度達成しているのか、していないのか判断する上においても重要なことだと思いますが、ただ、そのときに、教育長一人に責任を持たせることでいいのかどうかということは、同時にやはり問われることだというふうには思います。

  その辺で、

のところのその後を御指摘ですが、

 首長と教育長が、任命するに当たってどういうふうな職務命令を教育長に対して通達しているかどうかということも問われると思いますし、同時に、首長が任命されたことについての議会の同意についても、

云々、ここのところですね。

 ですから、これは正確に言えば職務命令ではありませんので、職務ということについては撤回いたします。

 ただ、首長が教育長を任命するに当たって、自分の選挙公約はこうだ、あるいは、住民に対しての自分の考えている教育政策はこうだということをきちっと伝えて、そしてあなたを任命したいということの意味で申し上げましたが、正確には、職務とは、これは言うべき言葉ではないということで、この言葉自体は撤回いたします。

宮本委員 撤回が確認されましたけれども、大臣、これは、あなたがみずから文科大臣に任命されたときの体験を念頭にこういう答えになっているんじゃないかと僕は推測するんです。なるほど、文科大臣は総理の指揮監督下にあります。したがって、任命時に指示書というものを総理から渡されたはずであります。

 しかし、教育長は全く違うんです。そういうものではありません。教育長に対する指揮監督権限は首長ではないわけですから、そういう職務命令というようなものは発することはできないはずであります。そういう点では、ここもやはり非常に不正確な理解だということを私は指摘せざるを得ないと思います。

 誤解を招くという点では、まだございます。

 同じく四月二十五日、田沼委員の質問に大臣は、「教育委員会における執行機関としての権限については、最終的には教育長が判断する」と述べられました。つまり、「最終的には教育長が判断する」、こういう答弁なんです。

 教育長は最終決定者であるというこの前の椎木委員の質問に対しては誤解を招くものとお認めになったんですから、「最終的には教育長が判断する」というのも、これは誤解を招くものであるのは私は明瞭だと思いますが、そうじゃないですか。

下村国務大臣 何をもってかということで、法律上、一般論としては、教育長だけが判断できるものではありません。

 ただ、先ほども質問で出ておりましたが、例えば総合教育会議を緊急に開く、この場合に、首長と教育長だけで開くということはあり得るわけです。このときには、教育長に対して教育委員会の代理として委任をするということはあるわけで、そのときに、事後承諾として、こういうことを決定したということを教育委員会に報告するということはあるわけでありまして、そういうことについてはあるわけですから、全くないとは言えませんが、基本的には、教育委員会は合議制ですから、教育委員会の合議制の中で決めるということであります。

宮本委員 首長と教育長と二人で開くことがあるということを繰り返し答弁された。前回も、そういうことがあるから最終決定者と言えるんだとおっしゃるから、僕はむしろそれが大問題だということを申し上げた。

 先ほども、二人でやる場合にその場で判断するとおっしゃるけれども、もちろんその判断は、一応教育委員会を代表して出ている教育長がその場での一定の判断はあるにしても、これは、もちろん合議体としての教育委員会に諮ってここで決定すべきものでありますから、首長が独任制の執行機関として総合教育会議でその場で判断するというのと、全然意味合いは違ってくると思うんです。

 それはそういうことでしょう。

下村国務大臣 それはいろいろなケースがあり得ると思います。

 基本的には、事前に教育委員会に諮って、総合教育会議における調整、協議内容について、教育委員会の意向をもって教育長が代表して一人で首長と総合教育会議の中で議論をするということ、つまり二人でということはあり得るというふうに思いますが、一方で、いじめ等緊急の場合には、事前に教育委員会に諮れないということはあり得る話です。

 そういう場合において、では、事前に教育委員会で合議していないから決められないのかということではない。これは委任として教育長に判断をしてもらうということで、しかし、事後の報告はしてもらうということですから、その場で教育長が全て持ち帰らなければ判断できないということではないということであります。

宮本委員 前回も議論しましたけれども、大綱その他基本的な事項とか人事とか、そういうものはそもそも教育長に委任することは認められていない。今回の改正案でも委任はできないんです。だから、そういうものについてはもちろん持ち帰って合議体で確認する。もしも、あらかじめ事前に案が示されて、あらかじめ合議体で決めて臨んでいる場合は、それはいいですよ。でもそれは、判断は教育委員会がやったというわけであって、判断をやったものを代表して持ってきたというだけの話であって、最終的な判断者ということにはそれはなりません。

 大臣は、先ほどの田沼委員とのやりとりでは、繰り返し、判断ということについて教育長が判断するということを述べておられまして、もう少し後のところでも、「教育委員会における執行機関としての権限については、最終的には教育長が判断する」、こう述べているわけです。最終的には判断すると述べているわけです。最終的にはですよ。

 私、これは非常に疑問の余地のあるというか、誤解の余地のある御発言だと思っておりまして、教育委員会で例えば反対があったとしても、また、教育委員会の大勢が反対したとしても、最終的には教育長が判断するかのごとき誤解を与えると思いますが、そういう趣旨じゃないですね。

下村国務大臣 基本的には先ほど申し上げているとおりでありますが、教育委員会は合議体ですから、合議体として判断するということであります。

宮本委員 幾つかきょうは挙げましたけれども、こういうふうに本当に大臣自身が、合議体としての教育委員会、今回の法案では、確かに新教育長というのは教育委員長と教育長とを一体化したものとしては置かれているけれども、そして、それをあなた方は責任者と呼んでいるけれども、当初教育再生実行会議が打ち出したような、合議体としての教育委員会を横に置いた上での、独任制の執行機関のような強力な新教育長の責任者という意味とは全然違うんです。責任者という意味は、これまでの教育委員長と教育長とを一体化させたということなんです。

 もともと教育委員長というのは、独任制の執行機関でも何でもないわけです。教育長というのも、事務の責任者ではありますが、これはもちろん独任制の執行機関でも何でもありません。

 そういう教育委員長とそういう教育長を足してみても、突然、新教育長がそのような強力な独任制の執行機関に成りかわるような権限を持つことはあり得ないわけですよ。だから、せいぜい、代表をするとか、あるいは事務の責任者である従来の教育長の権能を受け継ぐとかという範囲のことなんです。

 だって、地教行法の教育委員会と首長との権限を定めた現行二十三条、二十四条、改正案で二十一、二十二条というのは一切変わっていないわけですから、やはり、そこははっきり垣根があるわけなんです。そこがごっちゃになって、至るところでこういう不正確な答弁が出ている。

 だから私は、大臣は法案を理解しておられないのではないかということを御指摘申し上げた次第なんです。

 けさの理事会で、私の反対を押し切って与党及び理事会派は、本日の質疑終局、採決を決められました。しかし、きょうの質疑でも明らかになったように、そもそも大臣自身が、みずから提案している法案の内容に誤解を生むような答弁や、あるいは撤回、きょうも撤回という言葉を使われましたけれども、そういうことが必要なような答弁に終始しているわけです。

 しかも、立法趣旨さえ疑わしいと私は言わねばならないと思っています。

 日弁連は、去る四月十八日、「教育委員会制度改革に関する意見書」を発表いたしました。そこでは、あなた方の責任の所在の不明確さという指摘について、そもそもその趣旨が不明であると述べ、教育委員会、教育長並びに教育委員長の権限及び責任は地方教育行政法において明確に定められていると指摘した上で、そもそも改革の必要性を裏づける立法事実の検証が十分になされているとは言いがたいと断じております。

 現に十四日の質疑で私が、責任体制を明確にすると言うけれども、現行と新しい法案と全く同じではないかと問うたのに対して、大臣は、わかりづらさについての整理を行っただけだ、こう答弁をされました。掲げた立法趣旨さえ疑わしいと言わなければなりません。

 そして、責任と権限の所在は何の変更もないにもかかわらず、実体的には教育委員会の権限を弱め、首長の教育行政への政治介入を進めようというよこしまなたくらみではないかと指摘せざるを得ないのです。だから大臣は、新教育長を最終決定者だとか、首長が教育長に職務命令を出せるとか、法案とさえ矛盾するような誤った答弁を繰り返してきているわけであります。

 このような法案は断固廃案以外にないということを申し上げて、私の質問を終わります。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木愛でございます。

 まず、これまで質問を繰り返してまいりました、教職員の任命権とセットであります教職員の給与のあり方について、義務教育国庫負担のさらなる充実を図る必要性について、下村大臣の御所見を再度お伺いをしたいと思いますが、若干話がそれますけれども、今、私はユニセフ議員連盟に所属をいたしておりまして、過日、ユニセフ事務局長のアンソニー・レーク氏が来日をされ、総会が開かれました。ユニセフと子供たちの防災について非常に重要視しておられ、日本の子供たちが、日ごろから防災訓練などに参加をし、防災意識を培っていることを高く評価しておられました。来年三月には、宮城県仙台市で国連防災会議が政府主催で開催される予定だと伺いました。

 この会議は、ユニセフの親善大使であります黒柳徹子さんも参加をされておられまして、黒柳さんは一九八四年からの就任で、ことしで三十年になるそうです。就任時に世界で貧困が原因で亡くなる子供たちが一千四百万人いる、世界の人々に支援のお願いをして、貧困によって亡くなる子供たちを半分にしたいと思ったそうです。その願いどおり、現在、貧困によって亡くなる子供たちが六百六十万人に減少したそうであります。

 黒柳さんはこの間に約三十カ国を訪問されて、訪問先の貧困や飢餓に苦しむ子供たちの実情をこの総会の中でお聞かせをくださいました。

 その中で大変印象に残った話がございまして、避難民施設を黒柳さんが訪問した際に、幾人かの子供たちが、お願いしたいことがある、聞いてほしいと言われて、何でもいいからどうぞと紙に書いてもらったそうです。一人目の子供の紙にはピースと書いてあったそうです。二人目の子供の紙にはスクール、三人目の子供の紙にはグッドティーチャー、よい先生と書いてあったそうです。悲惨なことも横行している大変な状況下で、子供たちの、教育に対する意識の高さに感動いたしました。

 日本は、そうした状況と比較しますと大変恵まれた環境と言えるかもしれません。それでも、前回の参考人質疑で門川参考人からも指摘がありましたが、今、日本においては、家庭の事情、地域の財政力によって子供の学習成果に大きな格差があります。さらに門川参考人は、成長戦略は子供を育てることだともおっしゃいました。これは経済の成長のことを言っているわけではなく、日本の成長、世界の成長、人類の、そして地球の未来、これは子供たちの中にある、子供に対する教育が全ての成長につながるんだということをお述べくださったと私は理解をいたしました。

 制度的なことに目を転じますと、義務教育の財源として交付をされていますこの貴重な財源が、地方の自主財源で何に使われているか把握ができていないということは、この避難民の子供たちのことを考え合わせたとしても、こんなにぜいたくな話はないなと率直に思うところでございます。

 地方の財政状況が逼迫をしていることを考え合わせたとしても、やはり、教育のかなめである教師、よい先生の確保、これは国の最大の責務だと考えます。

 この教職員の給与のあり方、義務教育国庫負担のさらなる充実を図る必要性について、まず下村大臣の御所見を伺わせていただきたいと思います。

下村国務大臣 残念ながら我が国は、一億総中流意識というのはもう随分前の話で、今は格差社会が進んでいる。子供の貧困率もOECD諸国の中で非常に高い。特に一人親家庭における子供の貧困率は、もう七〇%近い。これは先進諸国の中でも最悪の数字なわけです。

 そのことによって、この経済的な格差が教育的格差につながっていて、さらに貧困の連鎖を生んでいる。つまり、勉強したくても進学できないということからステップアップできないという、その固定化がさらに格差としてつながっているという現状がある中で、昨年の通常国会で子ども対策貧困法をつくっていただいたわけでございます。

 ぜひ全ての子供たちに、どんな家庭の子供であってもチャンス、可能性をきちっと保障する、そういう国であるべきことはこれから特に力を入れなくちゃいけないことであるというふうに思いますし、その中の基本であります義務教育国庫負担についても、義務教育は国の責務であると憲法にも書いてあるわけでありまして、このことに対して、国がより充実した義務教育について考えていかなければならない。

 それから、教員においても、かつて以上に学校現場は多様化、複雑化し、また、モンスターペアレントとか言われますが、いろいろな、教師に対するクレームとか苦情とか相談とか、日々のアンケートも含めて、一人一人の子供と向き合う時間が少なくなってきているという多忙感というのは、確かにふえているのではないかと思います。

 少子化だから、それに合わせて学校の先生の数を減らせということではなくて、よりきめ細かな教員における配置をすることによって我が国において教育の充実を図っていくということは大変重要なことであるというふうに考えますし、そういう意味で、教師の質と量を充実させるための財政的な支援、それから、義務教育国庫負担に対する国のさらなる充実した施策、これをぜひ目指していきたいというふうに考えます。

青木委員 大変御丁寧な、そして心強い御答弁、ありがとうございました。

 続きまして、この法案の質問に残しておりました三点について伺わせていただきたいと思います。

 午前中にもこの点については十分もう御答弁もあったところでございますが、確認の意味で再度御質問させていただきます。

 第三者評価のあり方でございますが、現行の二十七条で、「教育委員会は、毎年、その権限に属する事務の管理及び執行の状況について点検及び評価を行い、その結果に関する報告書を作成し、これを議会に提出するとともに、公表しなければならない。」とありますが、実際、点検、評価、公表は行われているのかどうか、改めて現状をお伺いさせていただきます。

前川政府参考人 御指摘の、教育に関する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価でございますが、現行法の第二十七条に規定されておりまして、これは改正法案では第二十六条となっているわけでございます。

 この条文によりますと、「教育委員会は、毎年、その権限に属する事務の管理及び執行の状況について点検及び評価を行い、その結果に関する報告書を作成し、これを議会に提出するとともに、公表しなければならない。」ということになっているわけでございまして、これは法律上の義務として課されているものでございますので、全ての教育委員会がこれを行わなければならないということになっております。

青木委員 たしか午前中の質疑の中で、この点検、評価がなかなか実施されていないところもあるという御指摘があったかというふうに思います。平成十九年度から教育委員会の活動状況の点検、評価が制度化されているわけですが、今回の改正におきましては、内部においてしっかりと教育長や事務局の事務執行を評価していただかなければならないわけであります。

 特に教育委員会は、権限が強化される教育長の事務執行を、より住民目線による第三者的な立場からチェックをするという視点が必要でないかというふうに思いますが、この点について、おざなりの、形式だけの点検、評価では意味がありませんので、その点検、評価の内容の質の向上について、より具体的なお考えをお伺いしたいと思います。

前川政府参考人 午前中の質疑で、第三者評価について、全ての学校で行われていないということ、また、自己評価についての公表が義務づけられているにもかかわらず一〇〇%になっていない、こういう御討議がございました。これは、あくまでも学校教育法に基づく学校評価の問題でございます。

 今御質問の件は、これは地方教育行政法に基づく教育委員会の事務の管理、執行の点検、評価のことだと承知しておりますが、これにつきましては、改正法案の二十六条、現行の二十七条の第二項におきまして、教育委員会は、その点検、評価を行うに当たって、「教育に関し学識経験を有する者の知見の活用を図るものとする。」となっておりまして、学識経験を有する者の活用を図らなければならないというこれは義務づけ規定でございますので、こういった観点で、きちんとした専門的な見地からも点検をするということが法律上の仕組みとして盛り込まれているというものでございます。

青木委員 次に、学校運営協議会制度についても確認をさせていただきます。

 学校を設置する地方公共団体の教育委員会の判断により指定されるこのコミュニティースクールが、平成二十五年四月現在、一千五百七十校が指定されています。平成二十五年六月に閣議決定されました第二期教育振興基本計画において、コミュニティースクールを全公立小中学校の一割、約三千校に拡大することが目標に盛り込まれています。

 また、地域住民等による学校支援ボランティア等の参加をコーディネートする学校支援地域本部、平成二十五年八月現在で三千五百二十七本部、公立小中学校の約二八%という現状でございます。

 こちらも、京都市長の門川参考人から、現在、全国の一千五百余りのコミュニティースクールのうち二百強が京都でありますということでございました。京都に対する評価とともに、偏りがあることに大変驚きました。また、京都では、来年度中に全ての小学校に設置をするということでございまして、進んでいるところはどんどん加速して、いい状況がつくられていく、一方、なかなか進まない、進めない自治体もあるという現状であります。

 小松参考人からは、学校運営協議会が進まない理由として、設置者である教育委員会のやや消極的な姿勢がある、特に人事について、保護者や地域住民から意見を聞くことに消極的である、また、校長初め教職員の理解不足や多忙感が背景にあるなどの指摘もなされたところでございます。

 なぜこの学校運営協議会が伸び悩んでいると思われるか、現状をどのように分析されていますでしょうか。

前川政府参考人 多様な、地域や子供の実情に応じた質の高い学校教育の実現に向けて、保護者や地域住民の参画を得ながら、学校運営の改善や学校支援の充実を図るということは大変重要であると考えております。

 いわゆるコミュニティースクールございますが、学校運営協議会を置く学校のことでございます。この制度は、平成十六年に地方教育行政法の改正で設けられたものでございます。

 文部科学省におきましては、保護者や地域住民が権限と責任を持って学校運営に参画するというこの仕組みにつきまして、その拡大に取り組んでいるというところでございます。当面、全ての公立小中学校の約一割、約三千校を目標にいたしまして導入の促進に取り組んでいるところでございますけれども、まだ必ずしも十分とは言えない状況にあると言わざるを得ません。

 特に、先生も御指摘のございましたとおり、コミュニティースクールに対する取り組みにつきましては、大きな地域差が見られるところでございます。

 その理由といたしましては、先ほど御紹介のございました小松参考人の御意見は大変もっともなものだというふうに思っておりますけれども、当該市町村あるいは周辺市町村で、学校運営協議会を設置した学校における成果を実際に実感したり、あるいは、取り組みの導入や拡大に積極的な市町村、そういったものがあるのは確かでございますけれども、一方で、取り組みの目的や成果等への理解の不足でありますとか、周辺に好事例がないというようなこと、そういうことによりまして、導入に消極的な市町村があるということも事実でございます。

 特に、これも先生御指摘のとおり、学校運営協議会が学校の教職員の人事について意見が言えるということについて抵抗感を覚える関係者は確かに多いのではないかというふうに私どもも感じているところでございます。

 このようなことから結果として地域差が生じておりまして、これは平成二十五年四月現在千五百七十校ございますけれども、市町村の数でいいますと百五十三にとどまっているわけでございまして、非常に、市町村間の取り組みの大きな違いが見られるということでございます。御指摘のございました京都市などは、大変熱心に早くから取り組んでおられるということでございます。

 一方で、全くコミュニティースクールがないという都道府県も昨年の四月現在では五県あったわけでございまして、地域的な取り組みの差が大きい。学校数だけで見るとそこそこの学校数があるという都道府県であっても、実は、その内実は一つ二つの市でしかないというようなことがございます。

 一方で、例えば山口県のように、たくさんの市町村で取り組みが行われているという県もございます。これは、実は山口県の教育委員会が音頭をとって非常に熱心にそれを進めている、そういう状況がございまして、市町村間のばらつきが比較的少なく、全体としてコミュニティースクールへの取り組みが進んでいる、このような状況の都道府県もございます。

 文部科学省といたしましては、コミュニティースクールが適切に機能し成果を発揮していく上で、学校、教育委員会、地域住民等の理解が深まり、協働が進むということが非常に大事なことだというふうに考えております。

 こういったことから、導入に向けた体制づくりなど未導入の地域に対する支援ということが大事でございますので、こういった支援を講じるとともに、教育委員会の担当者に対する説明、また、多くの有識者の協力を得まして全国各地で説明会やフォーラム等を開催するなどによりまして、成果を上げている事例を紹介し、意識の啓発を図ってまいりたいと考えております。

 引き続き、教育委員会や学校、地域の関係者に対しまして、この理解の促進を図りながら、コミュニティースクールの一層の拡大と充実に向けて積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

青木委員 ありがとうございます。

 コミュニティースクールは教育委員会の判断で指定されますので、今後、教育委員会に課せられた大きな課題になっていくかと思います。

 門川参考人からは、コミュニティースクールも含めて、保護者、地域、経済界、そして大学、どんどん参加をしていただいているということでございました。そのときに、モチベーションを高めるためには、創意工夫が生かせるよう、京都市の教育委員会が画一的な指導をしない、可能な限り現場に委ねることが大切だという、大変参考になるお話もございました。

 そして、小松参考人が、現在、京都市のコミュニティースクールの評価委員会の委員長をお務めだということでございました。小松参考人は東京の足立区でもお務めになった御経験があって、足立区は物づくりが大変盛んでありますので、企業と提携をしながら子供たちに物づくりの学習の機会を提供したということで、全体的な学習の成果も上がったというお話も伺ったところでございます。

 こうした、すばらしい、特色を持った各学校の取り組み、先行事例を、保護者や地域はもちろんですが、今御答弁にありましたとおり、全国に広めていく取り組みが必要かと思います。また、小松参考人のような教育のプロの方に全国を現在のようにぜひ回っていただいて、積み重ねられた経験をまた新しい現場に反映していただいて、またさらにその地域に新たな特色も引き出していただく、全国にこうした好循環をつくっていくことも大切なことではないかと思いました。

 国といたしまして、今後のコミュニティースクールや学校支援地域本部等の未設置の地域に対する支援、また、マネジメント力向上に向けた地域人材の資質の向上、その点についてあわせてどのような対策をお考えか、お伺いできればと思います。

前川政府参考人 コミュニティースクールの仕組みにつきましては、先ほど申し上げたようなさまざまな取り組みによりましてその意識の啓発普及に努めているところでございますけれども、関係者によります研究協議の場というものを、私どもが主宰して設けております。こういったところでそれぞれの取り組みの成果を発表し合い、学び合うということを通じて、またそれぞれのコミュニティースクールの現場においてさらにその活性化が図られるということが期待されているところでございますし、また、これからコミュニティースクールを設置しようかと検討しているような地域の関係者もそこに参加することによりまして、コミュニティースクール設置に向けた動機づけがまた強まっていくのではないかというふうに考えているところでございます。

青木委員 ありがとうございました。

 三点目として確認をさせていただきますが、地教行法第五十条の国の指示にかかわる見直しについてでございます。事案発生後においても、同種の事案の再発防止のために指示ができるということを明確にしたものと認識をいたしております。

 地方教育行政の第一義的な責任は地方公共団体にあるが、児童生徒の生命身体や教育を受ける権利を守るために、国がしっかりと公教育の最終責任を果たせるようにすることが必要である、私もそのように考えております。

 その運用に当たりましては、これまでの国会審議において何度も確認をされているように、地方公共団体の自主性及び自立性が損なわれることのないよう、地方自治の原則を踏まえ、国の関与は限定的、最小限とすべきことに留意する必要があるかと思いますが、その点について確認をさせていただきます。

下村国務大臣 御指摘のように、地方自治法第二百四十五条の三において、国から地方への関与について規定を設ける場合には、「その目的を達成するために必要な最小限度のものとする」こととされております。この規定を踏まえ、平成十九年改正において、第五十条として国から地方への是正、改善の指示の規定が設けられたところでありますが、今回の改正は、国の関与を強化するものではなくて、発動要件を明確化するものであります。

 第五十条の指示の発動については、現行法と同じく、「他の措置によつては、その是正を図ることが困難である場合に限る。」とされておりまして、また、平成十九年改正の附帯決議において、「文部科学大臣が是正の要求や指示を行うに当たっては、十分な情報に基づいた、慎重な運用に努める」とされていることから、発動については慎重に判断することが必要であると考えます。

青木委員 ありがとうございました。以上、三点を確認させていただきました。

 最後になりますが、このたびの法案審査は、これまでの教育委員会を中心とした地方教育行政に対し、権限と責任の所在の不明確、審議の形骸化、地域住民の意向の反映が不十分、多様化する教育への要望に十分に応え切れていないなどの課題を初め、いじめ等の重大な事案に適切に対処できず、子供の生命や身体を危険にさらす事態を生じさせるなど、危機管理能力の不足などさまざまな問題が指摘されてきたことを契機といたしております。

 このたびの政府案におきましては、教育長と教育委員長を一本化し、また、首長が主宰する総合教育会議において大綱の策定を通して首長の意向も反映させることなど、責任体制をより明確にしながら、一方で、教育は、子供の健全な成長、発達のため、学習期間を通じて一貫した方針のもとで安定的に行われることが必要であり、首長の交代とともに教育方針が急激に変わることのないようにすることが必要なことから、戦後六十数年にわたり教育委員会制度が果たしてきた教育の政治的中立性、継続性、安定性の確保や地域住民の意向の反映という趣旨を継承させている点において、現場におけるより現実的な対策としての前進と受けとめ、政府案の趣旨に賛同するものです。

 あわせて、生活の党としましては、現行制度の運用において国と地方が互いに責任を押しつけ合う無責任体制を指摘し、それぞれの役割を明確にすることの必要性を述べてまいりました。

 国が義務教育の最終責任を負い、国が教師の身分を保障することとともに、教育の地方分権を一層推進し、地方がそれぞれの創意工夫によって特色ある教育を展開できるようにすることが重要であることから、教育の機会均等と教育水準の維持向上のため、県費負担職員の任命権に関しては、地域の実情に配慮しつつ、より現場に近いところに権限を移していくこととともに、全国的な見地からその人材が確保されるよう、義務教育国庫負担制度をさらに充実した制度とすることを主張し、質問を終わります。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 前回に引き続き、教育長が事故または欠けた際の対応についてお聞きします。あの後いろいろ調べますと、これは非常に大きな問題をはらんでいるのではないかというような気がしております。

 最初に、確認をさせてください。

 前回、教育長が欠けたとき、十三条二項の規定に従い、あらかじめ教育長によって指名されていた教育委員がその職務を行う、つまり、新たな教育長になるのかという質問をした際に、局長の方から、あくまで教育長の職務代理者だと答弁をされております。しかし、前々回、九日の委員会では、教育長の代理だというふうな答弁がされております。

 職務を代理するだけなのか、それとも教育長の職責を代理するのか、果たしてどちらなのか、この点をまず明らかにしてください。

前川政府参考人 第十三条第二項は、「教育長に事故があるとき、又は教育長が欠けたときは、あらかじめその指名する委員がその職務を行う。」ということでございます。

 五月九日の答弁で、教育長の代理と答弁しているわけでございますけれども、一般に、行政法規における法令用語としての代理というのは、行政長の権限を他の者がかわって行使することを意味するものでございますので、教育長の代理と答弁したのはその意味でございますが、その意味するところは、先ほど読み上げました十三条第二項の「あらかじめその指名する委員がその職務を行う。」ということと同義でございまして、一般に、こういう形で教育長の職務を行う者、これを職務代理者と称しているということでございます。

吉川(元)委員 非常に、ただでさえわかりにくいので、答弁の際には十分丁寧に答弁をしていただければと思います。

 そうしますと、これも前回少し聞きましたが、あらかじめ教育長によって指名されている教育委員が教育長の職務代理者であり、職務を代理するだけであるとしたら、いわゆる教育長というのは不在だということでよろしいんですか。

前川政府参考人 この法案第十三条第二項に該当する場合、この場合に職務代理が置かれるわけでございますけれども、職務代理が、代理者がその職務を執行することになるわけでございますが、その場合というのは、「教育長に事故があるとき、又は教育長が欠けたとき」と規定されております。

 教育長に事故があるときというのは、病気、旅行その他の理由のために職務を行うことができない場合など、教育長が在職中ではありますけれども、実際に職務を行うことができない状態にあるという場合でございまして、この場合には、教育長という人は在職しているわけです。

 一方、教育長が欠けたときというのは、これは、死亡、辞職、失職、罷免等の原因によりまして、既に教育長である者がいなくなっているという場合でございます。この場合には、職務代理者がいても教育長は空席になっているということでございまして、職務代理者が職務を行うケースというのは、教育長がいる場合もあれば、いない場合もあるということでございます。

吉川(元)委員 今の答弁でいいますと、欠けた場合においては、教育長はその時点ではいないということの答弁だというふうに理解をいたします。これについては非常に大きな問題をはらんでおります。後ほどまた少しお聞きをしますが、その前に、もう一点確認をさせてください。

 教育長の職務代理者、これはいわゆる非常勤の委員ということになります。前回も聞きましたが、二十五条の四項を根拠規定として、教育長の権限に属する事務の一部を常勤の事務局職員等に委任することができる、そのように局長は答弁をされております。

 しかし、そもそものこの規定というのは、あくまで、教育長が存在しているときに、教育長が行う職務が膨大な場合、その一部を委任できる規定、つまり、平時の規定にすぎないのではないか。実際に、現行法においては、まさに平時のときに全ての事務を教育長が全部行うというのは物理的にも不可能ですから、その一部を委任するということは行われるわけで、そのための根拠になっている法案だというふうに思います。

 その法案を使って、いわゆる教育長が欠けた場合、いない場合、ある意味でいうと非常事態ですけれども、非常事態において、この条文を使って職務を事務局に委任することができるというふうにするというのは、これはかなり乱暴なやり方ではないかと思いますけれども、この点いかがですか。

前川政府参考人 改正法案二十五条第四項に規定してございます事務の委任の規定でございますが、これは、先生御指摘のとおり、本来の教育長が本来の業務を執行する上におきまして、その事務の一部を事務局の職員あるいは学校その他の教育機関の職員に委任することができるということを想定した条文でございます。

 職務代理者が置かれた場合に、この職務代理者は法律上教育長の権限に属する一切の職務を行うということになるわけでございまして、法律上教育長の権限とされている事務につきましては教育長の職務代理者が行うということになるんですが、この二十五条四項につきましても教育長と同様に適用されるということでございまして、この二十五条四項が例外になるわけではございません。

 したがいまして、教育長が欠けた場合等において、あらかじめ指名された教育委員は、現行の教育長が行っております具体的な事務の執行等の職務につきましては、通常の教育長と同様にこの規定を用いて事務の委任をすることができるわけでございます。

 教育長の職務代理者から事務局の職員、通常教育次長などになると思いますけれども、そういった職員に委任することができるわけでありますし、また、実際上そういう委任が行われるであろうということが想定されるわけでございます。

吉川(元)委員 先ほど、充てられる委員の方は教育長ではないという答弁でございました。

 この条文を見ますと、「教育長は、」「委任し、」「臨時に代理させることができる。」と書いています。教育長でない者がなぜそれができるのか。そして、これは前回も聞きましたが、では、臨時で代理で行われる場合、服務規定の一から八まで全て当てはまるのですかと言ったら、いや、これは当てはまらない、注意を払わなければいけない等々の義務についてはこれは当たらないんだというふうに言われております。ですから、教育長とは違うわけですね。その方がなぜこの「教育長は、」ということでこのことができるようになるのか、その根拠を教えてください。

前川政府参考人 教育長の職務代理者と指名された人は、教育長が欠けた場合あるいは事故があった場合に教育長の職務を行うということになっておりまして、教育長と同じ立場で仕事をするということになります。

 この事務の委任についての規定も職務代理者に適用されるということでございまして、職務を行うに当たって教育長に適用される条文は全て適用されるということでございますので、職務代理者が事務局職員等にその事務を委任するということは当然に可能になるということでございます。

 一方、服務に関する規定に関しましては、教育長が常勤の職であるということと教育委員が非常勤の職であるということの違いはやはりどうしても生じてくるわけでございまして、教育委員が教育長の職務を代理する場合、職務は一時的に代理するということになるわけでございますけれども、身分が教育長になるということではございませんので、教育委員としての立場のままあくまでも教育長の職務を一時的に代理するということでございます。したがって、教育長としての服務をそのまま引き継ぐということにはならず、引き続き教育委員としての服務が課されるということになります。

 特に、教育長には課されているけれども教育委員には課されていないという部分は、非常勤の教育委員が別にお仕事を持っておられるということを想定している部分でございまして、職務専念義務、これが、改正法案十一条の第五項でございますけれども、勤務時間及び職務上の注意力の全てをその職務遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責めを有する職務にのみ従事しなければならないという、これは常勤の教育長の身分に応じた服務でございますので、非常勤の教育委員には当てはまらないということでございます。

 また、営利企業の従事制限についての第七項でございますが、これもやはり営利事業を営んでいる教育委員が前提となるわけでございますので、これを適用するわけにはいかないということで、この部分につきましては、教育長には適用されるけれども教育委員には適用されていない、こういう関係になっているものでございます。

吉川(元)委員 職務を代理をするわけですよね。そうすると、今言われているのは、まさに第十一条の第五項に、勤務時間というのはこれはもちろん入らないかもわかりませんが、職務上の注意力の全てをその職務遂行のために用いなくてよいということになりますよね、当然のごとく。どうですか。

前川政府参考人 教育委員が教育長職務代理者としての指名を受けて、実際に教育長の職務を行うという場合には、これは誠実にその職務を遂行していただく必要があるわけでございますけれども、この第十一条第五項の規定そのものは常勤の教育長に対するものでございますので、これをそのまま非常勤の教育委員に対して適用するわけにはいかないということでございます。そのために第五項は適用除外になっているということでございますので、これはどうしても、常勤の教育長である身分を持っている者と非常勤の教育委員との間の身分の違いということに起因するものでございます。

吉川(元)委員 だとすれば、当然、法文がこういうふうになっているわけですから、欠けた場合というのは起こり得るというふうな想定のもとでこういう条文があるわけで、欠けた場合にその人はどういうことをしなきゃいけないのかということをきちんと書かなければいけないんじゃないんですか。

 教育長がやることについては職務はやるんだと言いましたけれども、ではお聞きしますが、第十四条の第五項、ここはわざわざこれだけ取り出して、「教育長に事故があり、又は教育長が欠けた場合の前項の規定」というのは、これはつまり、可否同数になった場合には教育長の決するところによるという、これが前項ですけれども、これについては、「教育長の職務を行う者は、教育長とみなす。」と書いてあるわけです。ほかのことは何にも書いてないんですよ。これだけ読めば、職務代理者が教育長として権限を行使できるのはこの場合に限られるんじゃないんですか。

前川政府参考人 教育長の職務代理者である教育委員は、教育長に事故があり、または欠けた場合、教育長の職務を全部行うということになるわけでございますけれども、この第十四条第五項に関しましては、これは確認的な規定でございまして、この規定がないと疑義が生じる危険性があるということでございまして、あえてこの条文を設けてございます。

 どういう疑義が生じるかといいますと、教育長というのは、現行の教育委員長と同じように、教育委員会を主宰し、またその議決にも加わるわけでございますが、現行の教育委員長、新しい、改正法案では教育長でございますけれども、その教育長は、議決に当たって一票を持つと同時に、可否同数の場合にはさらに自分の、教育長の決するところで教育委員会の議決をすることができる、そういう立場を持っているわけでございます。

 しかるに、教育長の職務代理者は、一方で一人の教育委員としての身分も持っているわけでございまして、単に一人の教育委員としてのみの立場で議決に加わるのか、あるいは、可否同数の場合にみずからの判断で議決することができるという立場まで引き継ぐのかということにつきましては、これは疑義が生ずる危険性があるということで、あえてこの第五項で確認的に、全ての職務を引き継ぐわけですけれども、その中の一部ではあるんですが、それを確認的に規定したということで、これは紛れがないようにしたための、明確化をするための規定でございます。

吉川(元)委員 全てにおいてそれは疑義が生じるんではないんですか。だとすれば、逆に言えば、わざわざこの第五項を設けたことによって、それ以外のものについては、第十三条の二項のところではっきりと、教育長が行うことは全てあらかじめ指名する委員が行うということであれば、それだけで済む話じゃないんですか。

前川政府参考人 御指摘のとおり、十三条第二項で、「教育長に事故があるとき、又は教育長が欠けたときは、あらかじめその指名する委員がその職務を行う。」こう書いてございます。「その職務を行う。」というのは教育長の職務。この教育長の職務を職務代理者が行うということですので、その職務に限定は何もかけてございませんので、全ての職務を行うことになるわけでございます。

 その中には、可否の同数の場合にみずからの判断で議事を決する、こういう職務も含まれているということになるわけでございますが、この職務代理者は一方で一人の教育委員としての身分を持っている者ですから、そこに、いや、実はそうではないのではないかという議論が生じかねない、そういうおそれがあるということで、確認的にあえてわざわざ十四条の第五項を書きまして、誤解を生じさせないように明確化したということでございます。

 仮にこの十四条第五項がなかったとしても、これは教育長の職務をそのまま行うわけでございますので、解釈上、可否同数の場合に職務代理者の決するところによるというふうに読むことは可能なのでございますけれども、そこの部分をあえて明確化するために確認規定を置いたということでございます。

吉川(元)委員 余りもう時間がないので。まだいっぱい確認しなければいけない、聞かなければいけないことがございます。

 それで、もう一点お聞きしたいのは、職務代理の期間。どのぐらいの期間、職務代理を置いておけるのか。逆に言えば、欠けた場合にいつまでに教育長を選ばなければいけないのかということについてはどのように考えておられるのか、お聞きします。

前川政府参考人 教育長が欠けた場合におきまして、職務代理者が教育長の職務を行うということでございますが、これはそもそも例外的な措置であるということでございます。

 したがいまして、この改正法に基づきまして一本化された新教育長のもとで適切な事務がしっかりと執行されるように図るためには、ここは首長の責任になってくるわけでございますが、首長は可能な限り速やかに後任の教育長を選任するということがやはり必要になってくると考えております。

吉川(元)委員 今回の改正のきっかけになった大津の、これはぜひ大臣にもお答えいただきたいんですけれども、第三者委員会の報告書を見ますと、四月の段階ではクラスは平穏であった、六月ぐらいから少し荒れ始めた、実際にいじめが始まったのは九月の上旬から中旬にかけて、そして痛ましい自殺ということが起こったのは十月の頭です。ですから、いじめが始まってから一カ月ほどで自殺をする、そういう事態にまで一気に発展をしたわけです。

 できるだけ速やかにといいますけれども、いわゆる常勤の教育長というのは、その見識も含めて、経験も含めて、そしてまた、恐らくその方はほかの仕事を持っておられますから、その仕事は休むなりやめるなりしなきゃいけない。そうすると、簡単にはこれは決められないんです。

 実際に、今、大津市の教育長、ことしの三月三十一日付で退職をしております、健康上の理由で。それまで越市長と一緒にいじめ問題に取り組んできた教育長ですけれども、やはり心労といいますか、かなり御苦労されて、結局体調を崩してやめられた。これが、三月二十日の日にやめるというふうに辞意を表明されて、三十一日付でやめられています。

 今、教育長はいると思いますか。まだいないんですよ。やめると言ってからもう二カ月たっているんです。それは、もちろん市長は次の教育長を一生懸命今探している、いい人を探しているということはあると思いますけれども、どうしても時間がかかるんです。

 その間に、わずか一カ月の間に、子供がいじめがスタートしてから自殺まで追い込まれるという、この期間の、いわゆる新しい教育委員会の執行体制も含めた、明らかにこれは、例えば非常事態が発生した場合、異常事態が発生した場合に、教育長と総合教育会議をやる、そこに非常勤の教育長の職務代理者が出ていく、そこで果たして十分な議論ができるのか。この点、どうお考えですか。

下村国務大臣 吉川委員、これは第一義的に、まずは学校現場じゃないでしょうか。やはり学校の先生、担任の先生、それから校長先生、教職員、一番子供のいじめの実態については把握する立場ですから、まずは、教育長云々というよりは学校現場でもっと事前に把握していれば解決できたこともあったのではないかということを、この大津の問題でも私は感じております。第一義的には、これは学校がきちっと解決すべきことだと思います。

 それについて十分でない部分について教育委員会が対処するというときに、教育長がずっと欠けているという状態は望ましくありませんから、速やかにぜひ決めていただきたいと思いますが、しかし、教育長がいつもそろっていればそれで済むという話ではなくて、第一義的には、子供の一番そばにいるのは、やはりそれは学校現場、先生ですから、校長ですから、そこがしっかりまずはしていただきたいと思います。

吉川(元)委員 もう時間が来ましたので終わりますが、今回の法改正の出発点は何だったのかといったら、それは、大津のいじめに対して教育委員会がきちんと対応できなかったからじゃないですか。今のお話だと、法改正する必要はないじゃないですか。学校でまずやれば大丈夫なんだというお話であれば、今回の法改正のそもそもの理由がなくなるんじゃないんですか。

 何度も繰り返しますけれども、欠けた場合に、例えば、教育長と同じように次長を、私はそれはいいとは思いませんけれども、あらかじめ首長が任命をして、議会の同意を得て次長を置いておくというんだったらわかりますよ。それを非常勤の教育委員に代理させる、職務代行させるということは、だからそのときには学校で頑張ってくれという話は、やはり私は筋が通らないというふうに思います。

 まだまだ、本来は衆法の方もお尋ねしたかったんですけれども、もう時間が来てしまいました。この後採決ということになりますが、まだ十分な議論ができていないということを申し上げて、採決についてはすべきではないということを申し上げ、私の質問とさせていただきます。

 以上です。

小渕委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 この際、内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対し、柏倉祐司君から、みんなの党提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。柏倉祐司君。

    ―――――――――――――

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

柏倉委員 ただいま議題となりました地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨説明をさせていただきます。

 教育委員会の形骸化が叫ばれ久しい状況、本法案は六十年ぶりの大改革であり、待ちに待った改革とも言えます。教育における責任所在の明確化、行政の効率化、透明性の確保を目指す、この趣旨には大いに賛同いたしますが、教育委員会が実際に果たしてきた役割は何であったのか、この検証が極めて不十分と言わざるを得ません。

 教育委員会堅持論、廃止論、コミュニティースクール推進論等々さまざまな意見が現場においてそれぞれ圧倒的多数を得ることなく混在している現在の状況は、画一的制度設計が時期尚早であることの証左です。

 教育委員会必置ありきの改革ではなく、地域の自主性、選択権を尊重した地域主権の配慮が必要です。地域が自助努力で教育制度を最適化していくことを妨げないためにも、政府には、一種類の制度に固執することなく、数種の制度類型を許容する姿勢が必要です。

 予想される適正化プロセスを前提に教育委員会必置義務の撤廃等の柔軟な制度設計が可能となる余地を残すべく、政府案に対し修正を求める次第です。

 以下、案文の朗読をさせていただきます。委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

    地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案

  附則に次の一条を加える。

 第二十三条 政府は、教育行政において地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにする観点から、地方公共団体における教育行政の組織及び教育行政に係る職務権限の配分に関し、教育委員会を設置するかどうかを地方公共団体の決定に委ねることを含め、地方公共団体が地域の実情に応じた制度を選択することができるようにするための制度の在り方について検討を加え、その結果に基づき、この法律の施行後三年以内に、必要な法制上の措置を講ずるものとする。

以上です。

小渕委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。丹羽秀樹君。

丹羽(秀)委員 自由民主党の丹羽秀樹でございます。

 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました政府提出の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の立場から討論をいたします。

 政府提出の法律案は、地方教育行政における責任体制の明確化、迅速な危機管理体制の構築、地方公共団体の長と教育委員会との連携の強化を図るとともに、地方に対する国の関与の見直しを図る等、必要な見直しを行うことにより、教育委員会制度の抜本的な改革を行うものでございます。

 我が国の地方教育行政制度は、これまで約六十年にわたって、教育の政治的中立性、継続性、安定性の確保を制度的に担保しつつ、地域の多様な立場の人たちの視点を反映する観点からも重要な役割を果たしてきたと考えております。

 しかしながら、今日、大津市におけるいじめ事件が契機となり、教育委員長と教育長のどちらが責任者かわかりにくい、いじめ等の問題に対して必ずしも迅速に対応できていない、地域の民意が十分に反映されていない、地方の教育行政に問題がある場合に国が最終的に責任を果たせるようにする必要があるなど、現行の教育委員会制度について、従来から課題とされてきた点を抜本的に改革をすることが必要となってきていると考えております。

 政府提出の改正案において、政治的中立性、継続性、安定性を確保するため、教育委員会を引き続き執行機関として担保しつつ、従来の教育委員長と教育長を一本化した新たな教育長を地方公共団体の長が直接任命することとすること、地方公共団体の長が教育の振興に関する総合的な施策の大綱を策定するものとすること、地方公共団体の長と教育委員会によって構成される総合教育会議を設置すること、現行の文部科学大臣の是正の指示の要件を明確化することとされており、これらにより、地方教育行政における責任体制の明確化、迅速な危機管理体制の構築、地域の民意を代表する首長との連携の強化、いじめによる自殺事案等の問題に対して国が最終的な教育行政の責任を果たせるようにすることが図られることと考えております。

 この政府提出の法律案につきましては、本委員会において約四十時間を超える慎重な審査を行ってまいりました。その際、三回の参考人質疑、二カ所の地方公聴会を行いました。特に、地方公聴会においては、地方公共団体の長、教育委員会関係者、学識経験者からの意見聴取や学校現場を視察するなど、地方教育行政の現状把握に努めたところでございます。このような充実した審議の結果、本法案が私はベストであると確信いたしております。

 教育は、この国の未来を左右する重要な課題でございます。教育再生は、安倍政権の大きな柱でもございます。私としては、今回の改正により教育再生の基盤が築かれることを期待して、賛成の討論といたします。

小渕委員長 次に、吉田泉君。

吉田委員 民主党の吉田泉です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、政府提出の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に反対、民主党、日本維新の会提出の地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案に賛成の立場から討論を行います。

 今回の地方教育行政改革で求められていたことは、教育における責任の所在の明確化だと思います。しかし、政府案は、与党内での調整の結果、中教審の答申からも大幅に後退し、責任の所在の明確化という観点からはほど遠く、政治的妥協の産物となってしまったと言わざるを得ません。

 特に大きな問題は、教育委員会を残しつつ、教育委員長と教育長を新教育長に一本化、首長と教育委員会の連携強化のための総合教育会議を新設するという点であります。

 下村大臣は委員会審議の中で、首長と教育委員会が連帯して総合教育会議を通じて責任を負うと繰り返し答弁をされました。しかし、総合教育会議で策定をする大綱をもとにそれぞれが事務執行し問題が起きた場合に、問題のたらい回しが起き、むしろ責任の所在がさらに曖昧になるのではないかと危惧するところであります。

 さらに言えば、首長の関与強化をするのであれば、その首長が学校現場の声をきちんと吸い上げる仕組みとセットで検討すべきだったのではないでしょうか。下村大臣もできる限り現場に近いところでの判断を大事にしたいとおっしゃっておられますが、今回の制度改正でそのことを担保し得る学校運営協議会の充実が盛り込まれなかったことは残念であります。

 一方、民主党、日本維新の会提出の法律案は、教育の分権を進め、地域が創意工夫を発揮できる教育環境を整備するものであります。政府案とは対照的に、教育委員会は廃止をし、首長を教育行政の責任者と明確に位置づけ、権限と責任の所在を明らかにしております。その上で、教育の中立性を確保するための教育監査委員会の設置、学校運営協議会の全校設置や県費負担教職員制度の市町村への移行検討など、単に首長の権限強化だけに着目するのではなく、総合的にボトムアップで教育改革を目指す内容となっております。

 最後に、今回の審議で参考人の方からも御指摘いただいたように、本来であれば、教育に関することは与野党で十分に議論して、お互いに歩み寄りながら、より多くの党が合意できる内容とすることが望ましいと考えておりましたが、それが実現しない以上、政府案に賛成することはできないということであります。

 以上、政府案に反対、民主、維新案に賛成の理由を申し上げ、討論といたします。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、田沼隆志君。

田沼委員 日本維新の会の田沼隆志です。

 会派を代表して、ただいま議題となりました政府・与党提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に反対、日本維新の会と民主党共同提案、地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案に賛成、また、みんなの党提出の修正案に反対の立場で討論を行います。

 現行教育委員会制度は、大津いじめ事件に見られるような隠蔽体質、責任逃れを許す責任の所在の不明確さ、事なかれ主義が強く指摘されており、その抜本的改革が求められていました。しかし、政府案ではこれらの体質を完全に払拭することは不可能と考えます。誰が最終責任をとるかが依然不明確だからであります。これが最大の問題点であり、委員会審議を通じてもその疑念を晴らすことはできませんでした。

 当初、政府・与党では、教育委員会の廃止、執行機関の首長一元化を検討されたと伺っていますが、結局は、協議の結果、教育委員会を執行機関としたままの中途半端な法律案になってしまいました。大変残念であります。このままでは、再び同じような事案が起きた場合、有効に対処できるとはとても思えず、今後も悲惨ないじめの事例が出てくると判断せざるを得ません。

 対して我が党は、民主党と共同で、教育委員会を廃止し、責任の所在を首長と明確化し、一方で、議会と教育監査委員会の設置によって首長に対する歯どめとする法案を提出し、委員会審議を重ねました。大臣も、責任についてはこの法案の方がより明確であるとお答えいただきました。そのエッセンスだけでも与党には取り込んでいただきたかったですけれども、結局は一文字も修正なし。大変無念であります。

 ただし、幾つかの前進もありました。

 本日の質疑において、総合教育会議で協議、調整した大綱に教育長が違反した場合、尊重義務違反となり、職務上の義務違反に問われることもあり得るとの大臣答弁や、いじめ防止対策推進法にある緊急事態のときは、首長は調査できる、教育長が隠蔽したときは、やはり職務上の義務違反に問い得るとの御答弁がありました。これはすなわち、その結果としての罷免も可能であるという意味であり、この大臣の答弁は首長権限の半歩前進であり、高く評価をいたします。

 ただし、法文上はそれが明確に規定されておりませんし、運用状況も見きわめなければならないため、現時点では今法案に賛成はできませんが、今法律施行後、数年の後に、不備は柔軟に見直すというまた大臣の御答弁もあったこともあり、今後の改善をぜひとも期待いたします。

 以上から、私たちは、政府案に対して半歩前進は評価しつつも反対せざるを得ないこと、そして、我が党及び民主党共同提出法案がよりすぐれており、賛成であることを表明いたします。

 なお、みんなの党提出の修正案に対しては、その趣旨は理解しますけれども、今回は議論不十分のため、現時点では反対いたします。

 以上、日本維新の会を代表して、討論といたします。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。

 議題となりました政府提出の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に反対、民主党、日本維新の会提出の地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法案に賛成の立場から討論をいたします。

 政府案は、首長が教育行政にかかわる度合いを深め、また、現行制度から移行しやすいことなど、一定の評価があります。しかし、現行制度から移行しやすいことは、言いかえれば、現状と変わらないという見方もあります。

 かねてより言われ、今回、法改正の議論でもありました教育委員会の形骸化は、教育委員会が首長に対し独立した立場から意見を言わない、独立性を保っていないことに原因があり、その背景は、首長と教育委員会の間にある教育長を筆頭とする教育委員会事務局が実態として大きな権限を有してきたからであります。

 政府案は、教育委員会の教育委員長をなくして教育長に一本化し、総合教育会議の開催、大綱の策定等を通じ、首長と教育委員会が連帯して教育行政に責任を果たせる体制を構築するとしています。一本化、連帯と言えば前向きに聞こえますが、実態は、教育委員会を残したものの、これをさらに形骸化させ、首長、教育委員会事務局の力を大きくするおそれが考えられます。

 特に、いじめで子供が命をみずから絶つ大津事件のような事態が再び起こってしまったときに、首長と教育委員会はなれ合うのではなく、独立して互いの責任を果たすことが、いじめ防止対策推進法三十条に定められた首長の再調査を明確にする上で極めて重要です。

 首長と教育委員会が一体化した結果、きょう下村大臣が発言されたように、再調査が少なくなる場合が多いとおっしゃられるような制度改正では、果たして深刻ないじめの真相解明、再発防止が図れるのか疑問が残ると言わざるを得ません。

 これに対し、民主党、日本維新の会提出の法案は、教育監査委員会が首長から独立をきちっとしていれば、緊急事態においてその効力は大きなものとなります。教育監査委員会について議論の残るところもありますが、首長部局から独立を担保した趣旨は評価をいたします。

 また、多くの人が賛同する学校運営協議会の普及など、教育の権限、裁量を地域、学校へ移す改革の姿勢を明確にしております。

 首長の責任のもとに地域の実情に応じた教育がなされることも可能であり、議論を続けていくに値する明確な改革精神を示したと捉え、賛成をいたします。

 なお、みんなの党提出の修正案につきましては、一定の評価はできるものの、検討にとどまることなどから、反対をいたします。

 以上で討論を終わります。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 私は、日本共産党を代表して、内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、民主、維新提出、地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案、みんなの党提出の修正案、いずれも反対の立場から討論いたします。

 内閣提出法案は、教育行政の責任の明確化と称して、教育委員長と教育長を一本化し、首長が直接任命する新教育長を教育委員会のトップにしています。一方で、教育委員会の教育長に対する指揮監督の権限は奪われます。

 さらに、地方自治体の教育政策の方針となる大綱を首長が決定するとしています。大綱には、学校統廃合を進める、愛国心教育を推進するなど、教育委員会の権限に属することまで盛り込むことができ、教育委員会に大綱の具体化をさせる仕組みです。

 これでは、教育委員会を首長任命の教育長の支配下に置き、教育行政への首長の介入に道を開くことになりかねません。

 この法案の狙いは、侵略戦争美化の安倍流愛国心教育の押しつけと異常な競争主義を教育に持ち込むことであります。

 質疑でも明らかにしたように、この間、安倍政権・自民党は、歴史教科書を安倍流愛国心に沿って改めさせる圧力を加え続けています。太平洋戦争をアジア解放のための戦争と教える歴史逆行の特異な教科書を教育基本法に最もふさわしいと賛美し、全国の学校で使わせようとしています。しかし、多くの教育委員会はこうした教科書を採択していません。そのため、教育委員会を弱体化させ、国と首長の政治的圧力で歴史逆行の特異な教科書を採択させようというのです。下村大臣が教育勅語を至極真っ当と評価したことは、偶然ではありません。

 そもそも教育は、子供の成長、発達のための文化的な営みであり、教員と子供との人間的な触れ合いを通じて行われるものです。そこには自由や自主性が不可欠です。だからこそ、戦前の教訓も踏まえ、憲法のもとで、政治権力による教育内容への介入、支配は厳しく戒められているのです。

 ところが、法案は、教育委員会の独立性は大きく損なわれ、国や首長が教育内容に介入する仕組みをつくり、憲法に保障された教育の自由と自主性を侵害するものであり、断じて容認できません。

 民主、維新提出の法案は、教育委員会制度そのものを廃止し、教育行政の責任者を首長としており、到底賛成できません。

 みんなの党提出の修正案も、見解を異にいたします。

 日本共産党は、教育委員会改悪法を許さず、安倍政権のたくらみを打ち砕き、教育と教育行政の自主性を守るため全力で奮闘することを表明し、討論といたします。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党・市民連合を代表して、政府提出の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正案に反対、民主、維新の会提出の地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案に反対する立場で討論を行います。

 冒頭、質疑時間が全く不足していると言わざるを得ません。戦後の地方教育行政のあり方を大幅に見直しする法案審議でありながら、かくも拙速に採決をすることに強く抗議します。

 政府案自体も、与党協議が終わって急いで法案化したことから、そのたてつけや構成には欠陥が見受けられます。このままでは、現場で頑張っていらっしゃる教育関係者の期待に応えられないばかりか混乱を来すのではないかと、強く危惧するものです。

 政府案に反対する第一の理由は、参考人質疑や地方公聴会において、現行制度のもとで教育行政の充実は可能だと多くの方が指摘されたように、教育委員会制度を大きく変更する立法事実に欠けている点です。

 第二に、首長による教育行政への介入、関与が強化される点です。首長が策定する大綱は、合意に達しなかった内容については教育委員会に執行の義務はないとしながらも、大綱への記述は妨げられません。また、総合教育会議では、予算権に少しでもかかわる事項は協議、調整の対象とされ、結果、首長による教育委員会所掌事務への関与が強まる懸念が払拭できません。

 第三の理由は、絶大な権限を有する教育長や事務局に対するチェック機能が不十分な点です。大津市のいじめ事件で隠蔽を主導してきた教育委員会事務局のあり方に何らの手だてが講じられていないことは、極めて大きな問題です。さらに、絶大な権限ゆえに、教育長が欠けたとき、教育委員会の機能が大幅に低下する疑念も払拭されておりません。

 他方、被害が発生するおそれの段階で文部科学大臣が是正指示を行えるよう法改正することは、いじめ事案を理由として国による地方自治への関与を強めるものとして、容認できません。

 以上が反対の主な理由です。

 なお、民主、維新の会提出の法案につきましては、教育行政事務に対するチェック機能を強化し、県費負担教職員制度やコミュニティースクールのあり方について検討規定を設けた点は評価をいたします。しかし、政治的中立性を担保する観点から、地方教育行政は首長や議会から独立して執行されるべきとの考えから、反対いたします。

 最後になりますが、必要なことは、縦系列の教育行政システムを是正して教育委員会の再生を図ることです。そのために、地域住民、保護者など、地域単位で教育内容や学校運営に直接かかわることのできる措置を充実させるべきです。この点を強く訴え、討論といたします。

小渕委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより採決に入ります。

 まず、笠浩史君外三名提出、地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、柏倉祐司君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、萩生田光一君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党及び生活の党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。笠浩史君。

笠委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 本法施行後、教育の政治的中立性等を確保した上での地方教育行政における責任体制の明確化、迅速な危機管理体制の構築、地方公共団体の長と教育委員会との連携の強化等の状況について、必要に応じて検証を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

 二 都道府県における広域人事交流の調整などにより、一定水準の人材が確保されるような仕組みを考慮しつつ、県費負担教職員の人事権については、義務教育費国庫負担制度を堅持しつつ、市町村に属するものとするよう検討を加えること。

 三 学校現場に民意を反映していくため、保護者や地域住民の参画を得ながら学校運営の改善や学校支援の充実を図ることができるよう学校運営協議会の設置の促進に努めること。また、地方公共団体の財政状況による格差が生じないよう、財政措置も含め学校運営協議会の設置及び運営に係る支援策を講ずること。

 四 地域住民の教育に対する信頼と期待に応え、開かれた教育行政を推進する観点から、教育委員会や新設される総合教育会議の議事録の作成・公表が確実になされるよう万全を期すこと。

 五 地方公共団体の長は、総合教育会議における協議に当たっては、主宰者として主体的な役割を果たすこと。また、教育委員会とともに、いじめ事案など重大かつ緊急な対応を要する事案に適切かつ迅速に対処し、住民に対して教育行政における責任を果たすこと。

 六 教育委員会は、権限が強化される新教育長による事務執行を、住民目線による第三者的立場からチェックするとともに、過去の基本的な施策が住民の期待に応える成果となっているのか、取組の方法が効果的なのか、といった観点から点検・評価を行うこと。

 七 新法第五十条の文部科学大臣の指示の明確化については、自治事務に対する国の関与は限定的であるべきという地方自治の原則を踏まえ、国の関与は最小限とすべきことに留意して運用すること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

小渕委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

小渕委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

小渕委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五分散会


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