衆議院

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第19号 平成26年5月21日(水曜日)

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平成二十六年五月二十一日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      神山 佐市君    菅野さちこ君

      木内  均君    工藤 彰三君

      熊田 裕通君    小林 茂樹君

      桜井  宏君    新開 裕司君

      冨岡  勉君    永岡 桂子君

      野中  厚君    馳   浩君

      比嘉奈津美君    藤井比早之君

      船橋 利実君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君    八木 哲也君

      菊田真紀子君    細野 豪志君

      吉田  泉君    遠藤  敬君

      椎木  保君    三宅  博君

      中野 洋昌君    柏倉 祐司君

      井出 庸生君    宮本 岳志君

      青木  愛君    吉川  元君

      山口  壯君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学副大臣      西川 京子君

   総務大臣政務官      松本 文明君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            小松親次郎君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           高島  泉君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  熊田 裕通君     八木 哲也君

  桜井  宏君     藤井比早之君

  宮内 秀樹君     船橋 利実君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     桜井  宏君

  船橋 利実君     宮内 秀樹君

  八木 哲也君     熊田 裕通君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長前川喜平君、高等教育局長吉田大輔君、研究振興局長小松親次郎君、スポーツ・青少年局長久保公人君及び厚生労働省大臣官房審議官高島泉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桜井宏君。

桜井委員 おはようございます。自民党の桜井宏です。

 初めて質問しますので、ちょっと資料を補足するところがありますので、おわびして補足いたします。

 資料一のところ、左側の資料は、旺文社情報センターウエブサイトからとった資料です。それから、右側は文部科学省の資料で、それは日本学術振興会のウエブサイトからとったものです。加筆をお願いいたします。ありがとうございます。

 私は、大学、大学院等で土木の教育を受けまして、特に、コンクリート、あるいは原発の設計とかそういったところの専門技術者としてゼネコンの大成建設におりまして、それから、国立大学の北見工業大学で、土木の、コンクリートあるいは道路、鉄道の教官をしてまいりました。

 そのような経験から、国立大学の改革の目的、それから、国立大学の研究の予算、実績、今後の増加の可能性、それから、各大学の先端研究と文部省の支援のあり方、それから、学生の、特に院生の修学の支援と奨学金、それから、留学の支援について質問させていただきます。

 まず、資料一の方からごらんください。

 ここには、一番左側の左上ですけれども、国立大学が法人化されてから大学のいろいろ交付金等、非常に少なくなっておりまして、それで、下村文部大臣が就任されて初めて上向きになった。これは、国立大学あるいは高専等、大変な期待をいたしております。

 それで、その下なんですけれども、それは日本の研究者の一人当たりの研究費の額でございます。

 やはり、日本の研究、非常に力を入れているといっても、左側の黒いところ、アメリカだとかあるいはドイツ等々に比べて非常に低い額でございます。また、中国、韓国に迫られております。これは今から二年前のデータなので、かなり近いところに中国、韓国は来ているというふうに考えられます。

 右側は予算の推移で、これは文部省の科学研究費、大学の基幹となる研究費の一つですけれども、それがなかなか、一番右側は基金化したので額がふえているように見えていますけれども、頭打ちになっております。

 このように、これから日本が物づくり、あるいはそういった人材の育成をしなきゃならないところに、非常に厳しい状態になっております。

 それで、下村文部大臣にいろいろ、非常に大学の改革等に御熱心で、例えば、昨年の五月六日、日経新聞で下村文部大臣は、世界を見れば、この二十年に経済発展を遂げたのは、いずれも高等教育、大学教育に力を入れてきた国だ、日本の社会経済を支えるには、より高度な人材を多数育成する必要があるというふうにおっしゃっています。それから、学生に勉強させないといけないと。私、大学の教官をやっておりましたけれども、課題を与えたりレポートを課さないと試験の前しか勉強しないという学生さんが多いかと思いますので、これはもっともなことだというふうに思います。それから、日本は教育に対する公財政支出、それが大変少ない、国内総生産の三・八%だ、一方、OECDは五・八%で、これを大きく下回っていると。このような課題がいろいろ山積しております。

 また、東大の佐々木元学長は、法人化してからかえって大学のランキングが下がった、それは、大学のいろいろ、運営交付金が削られていることもあるだろうし、それから、外部的な資金を獲得するために教官がそれの書類をいっぱい書かなきゃならない、そうすると、教育と研究に回す時間がなくなって、学生の人材育成もままならない、そういったところを改革しなければならないというふうにおっしゃっております。

 そこで、下村文部大臣にぜひ、国立大学の改革、改革の改革でしょうか、これからやっていくことになるかと思いますけれども、そこの目的と方針についてお話しいただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。

下村国務大臣 おはようございます。

 桜井委員が大学の先生として実績を踏まれた上で、今度国会議員として知見をさらに発揮されるということに対して、ぜひ期待を申し上げたいと思います。

 国立大学改革の目的でありますが、我が国は、急速な少子高齢化、グローバル化、新興国の台頭による競争激化など、社会の急激な変化に直面しておりまして、持続的に発展する活力ある社会を目指してさまざまな改革の実施が今急務で求められているところであるというふうに思います。

 大学力は国力そのものであると考えており、国立大学は社会から、人材育成や学術研究、産学連携などを通じまして我が国の成長と発展へ積極的に貢献することが強く期待をされております。

 このため、世界最高水準の教育研究の展開拠点たる大学、また、全国的な教育研究拠点たる大学、そして、地域活性化の中核的拠点たる大学等々の形成など、国立大学の有する機能の強化を図る改革にスピード感を持って取り組んでいく必要があると考えております。

 現在、文部科学省では、昨年十一月に策定した国立大学改革プランに基づき国立大学の機能強化に取り組んでいるところであり、さらに、今度、大学ガバナンス法案を近々に衆議院でも議論していただきたいと思います。

 ぜひ今国会で成立をしていただいて、大学ガバナンスを含め、世界の中で我が国の国立大学がしっかりとした活力ある教育が行われるように、国としてもバックアップをしてまいりたいと思います。

桜井委員 ありがとうございます。

 質問の機会をいただきましたので、私のもと勤めていた北見工業大学、学位等々指導を受けた北海道大学、地元の三重大学、そして、今、航空宇宙議連の幹事をやっておりますので、航空宇宙の盛んな室蘭工業大学、その学長先生あるいは副学長先生、それから教授陣にいろいろお話を聞きました。

 資料二は、三重大学の例でございます。これは、世界で活躍する博士人材を育成しよう、それで、大学で工学部と医学部がありますので、それの両方の技量を身につけた人材を海外に派遣する。トビタテ・ジャパンとかそういう制度が今度ありましたので、三重大学の学長先生も大いに期待しております。

 それから、右は北大の例です。北大は、もともとボーイズ・ビー・アンビシャスの建学精神で、実践的なリーダーの人材を養成しよう、これは工学のみならず医学あるいは獣医学、そういった面で人材を養成する。

 それから、医工連携の取り組みとして、北見工業大学で、日赤看護大学あるいは旭川医大と共同で、地域の大学でそれをやろうとしています。将来は医工連携特区を考えております。

 あと、室蘭工大、これは、超音速の実機、それをモデルを飛ばしまして、あるいは超音速のエンジンを開発している。これは、産業にかかわっている人も携わって非常に有力な開発を行っております。

 そちらのところに対していかに支援いただけるか、大臣の方から御答弁をお願いいたします。

下村国務大臣 各国立大学の強み、特色を生かした教育研究を伸ばしていくためには、教育研究活動の基盤を支えている国立大学法人運営費交付金の確保が特に重要であるというふうに考えております。

 この国立大学法人運営費交付金については、法人化した平成十六年度から昨年度まで減額が続いていた中、先ほど御指摘していただいたように、今年度予算においては対前年度三百三十一億円、三・一%増の一兆一千百二十三億円を計上し、各国立大学の強み、特色を最大限に生かした教育研究の実施などの機能強化に取り組む大学に対して、重点支援を行うとしたところであります。

 文科省としては、引き続き、各大学の強み、特色を伸ばす取り組みに対して支援するため、運営費交付金の確保に努めてまいりたいと考えております。

桜井委員 どうもありがとうございました。各大学、このほかにも非常に頑張っておりますので、よろしく御支援をお願いいたします。

 それから、資料の四番目と五番目。四番目は、大学院生、日本の科学あるいは教育を担っていく学生が非常に大変だと。私たちのときは授業料が三万六千円とか十万ぐらいの時代だったので、今、アルバイト料はそんなにふえないのに、大学の授業料が相当高くなっている。特に、私立の院生にしては、大体百万ぐらいの授業料。それから、学生がローンとして大体数百万のローンを背負う、中には、博士課程まで行くと一千万のローンを背負う。そして、ドクターの学生の就職口が確保されていない。また、学生生活を行うのに、それの生活費、授業料、あるいは学会等に出る研究費、そんなものが足りないというふうな悲鳴が上がっております。ぜひ御支援をよろしくお願いします。

 また、当時は、私の学生のころは、海外留学、短期で行くのは自分でできましたけれども、アルバイト料も相当高かったので測量のアルバイトをちょっとやればできましたけれども、今、国内で勉強するのもままならないので、なかなか外国に行けない。

 トビタテ・ジャパンという制度がありますけれども、ぜひそれを活用していただいて、ただ、学生にとっては単位の互換がないとまた一年留年してしまうということで、それに当たっては、各大学との提携を結んでいただいて単位の互換がスムーズになって、トビタテ・ジャパンで海外へ行って、それから日本に戻ってきてもすぐ就職に飛び立てるようにしていただければというふうに思います。

 特に、最近中国、韓国の留学生が非常にふえて日本の留学生がさっぱり見えないというふうに、コロンビア大学の篠塚教授、副大臣等訪問しましたけれども、日本の留学生をふやしていただくようによろしくお願いします。その点についてお答えをお願いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まず、経済的な困難を抱えている学生等に対する奨学金事業の充実の関係でございますけれども、日本学生支援機構の大学等奨学金事業につきましては、平成二十六年度予算におきまして、無利子奨学金の貸与人員の増員あるいは海外留学のための奨学金制度など、改善充実を図ってきているところでございます。また、成績の優秀なる大学院生につきましては、奨学金の返還免除制度もあるところでございます。

 海外留学支援の関係でございますけれども、官民が協力した海外留学支援の新たな取り組みを始めるということにしております。

 まず、国費の面につきましては、国全体で必要となるグローバル人材を幅広く支援するために、平成二十六年度予算におきましては、海外留学に係る派遣人数を倍増、これまでの一万人から約二万人にしたところでございます。また、新たに民間資金を活用した官民協働海外留学支援制度として、「トビタテ!留学JAPAN」日本代表プログラムを設定いたしまして、民間からのニーズも踏まえた実社会で求められる資質能力を有する人材の育成に集中的に支援をしていきたいと思っております。

 また、こういった留学を成功させるためには、先ほど御指摘のような単位互換という制度についても注目する必要がございます。

 我が国の大学が海外大学との連携強化ということの拡大に今取り組んでおりますけれども、外国の大学との単位互換協定を締結している大学は、平成二十年度の二百四十六校から平成二十三年度には三百三十六校に増加をしているところでございます。

 文部科学省でも、大学の世界展開力強化事業、あるいはグローバル人材育成支援事業等々の事業を通じまして、外国の大学との単位互換を伴う学生交流プログラムの開発、実施を支援しておりまして、引き続き、こういった点について努力をしてまいりたいというふうに考えております。

桜井委員 ありがとうございました。日本の学生は大変優秀なので、よろしくお願いします。また、入ってくる留学生、研究者に対しても支援をよろしくお願いします。

 ありがとうございました。質問を終わります。

小渕委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 一般質疑は久しぶりでございますけれども、しっかりと質問してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず冒頭でございますけれども、今、来年度に向けて新しい成長戦略をどのようにしていくか、いろいろな場面でこういう議論がなされております。これについて一言申し上げたいんですけれども、どうしてもこの文部科学の関係で成長戦略といいますと、グローバルな人材を育てよう、とにかくグローバルだ、留学促進、もちろん、これはこれでしっかりやるべきだという思いはございます。

 ただ、余りにもグローバルという点が強調され過ぎますと、私自身としては、普通の大学、いわゆる高等教育をいろいろな若い方がしっかりと受ける機会を得ることができる、こういう底上げをしていく、こういう通常の高等教育をしっかり皆さんが受けてそこで勉強するということも、私は、十分に、日本の成長をしっかりと支える大事な成長戦略だというふうに思いますので、グローバルという観点も重要でございますけれども、国内であっても、意欲ある、そして能力ある若者が経済的な理由で勉強を諦めるようなことがないように、しっかりと応援をしていくことも大事なのではないか。

 そういった意味では、こういう経済的な支援、奨学金など、もう何回も質問させていただいておりますけれども、しっかり充実をさせていくことも成長戦略として大変大事ではないか、こういうことを冒頭申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 その上で幾つか質問をさせていただきたいんですけれども、私、ことしに入りまして、平均をしますと大体月に二回ずつぐらい現役の学生の皆さんと意見交換をしてまいりました。いろいろな意見が出ております。必ずしも精緻に私の方でデータをとったわけではありませんので、ある意味、学生の生の意見をぶつけるという形になるかもしれませんけれども、お伺いをしたいというふうに思います。

 通常の四年間の大学の方ともお話をしましたけれども、先日、専門学校、専修学校の専門課程ですね、専門学校に通う皆さんといろいろな意見交換をする機会がございました。お話を聞くと、この専門学校に通われている方というのは、なかなか経済的に苦しい方が多いというか、そういう印象を少し受けました。

 確かに、四年間ではなくて二年や三年で卒業して、そのまま資格を取って就職に直結をする、そういう課程も多いものでございますので、とにかく早く仕事をしよう、こういう方もいらっしゃいますし、また、なかなかお金がなくて、ずっとアルバイトを週に何回もやりながら通っています、こういうお話もいただきました。そういう意味では、普通の四年制の大学の方ももちろん苦しい方も少しいらっしゃいますけれども、なかなか専門学校生の方の経済的な状況というのも厳しいのかな、こういう印象を受けたわけでございます。

 この専修学校の中でもいわゆる専門課程という部分に通われる方は、数にするとかなりいらっしゃるわけでありまして、私もデータを少し見ましたら、全体で約六十万人弱ですか、五十九万人近くいらっしゃる。学生全体でいうと日本は二百八十、九十万人ぐらいだということですので、かなり多い方が専門学校に通われているなということでございます。

 大臣、この専修学校に通う方々をめぐる経済的な状況というのは近年どのようになっているか、把握されているのか、あるいは今後どういう形で支援をされていくのか、この辺についてまず冒頭お伺いをしたいというふうに思います。

下村国務大臣 御指摘のように、専門学校は、社会の変化に即応した実践的な職業教育によりまして高い就職率を誇る教育機関として、重要な役割を果たしているというふうに認識をしております。

 専門学校生の家庭の経済状況については、今お話しありましたが、大学生と比較をして、低所得者層の学生が多く、また、家庭からの給付が少ないということで、アルバイト等にも大きく依存せざるを得ない状況が一般的にあるというふうに認識をしております。

 これまで日本学生支援機構による奨学金の支援を充実してきたところでありますが、全くまだ十分ではないという中で、専門学校生の経済的支援の充実が必要との観点から、専修学校で学ぶ意欲と能力のある者が経済的理由により修学を断念することなく安心して学べるよう、有識者検討会におきまして、授業料等減免補助事業を含めた経済的支援のあり方について議論を開始したところでもございます。

 今後、経済的支援の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。

中野委員 今政府の方でも検討されているということで、しっかりと支援のお願いをしたい、このようにお願いを申し上げます。

 私、また、経済的に大変だなというふうに意見交換をしていて思いましたのは、やはり夜学の学生の皆さん、もちろん、経済的に大変であるからお昼に働いて夜学に通われている、こういう方が多いわけでございますけれども、実は、私の選挙区の先輩であります冬柴鉄三先生も関西大学の夜学の法学部の出身でございまして、その後、弁護士の資格を大変御苦労なされて取られた、こういうエピソードも昔伺ったこともございます。

 私、夜学の方はお昼にどういう仕事をされているんですかというのも聞いたんですけれども、フリーターというか、やはりアルバイトのような形が多いんじゃないかということで、そうすると、収入にしてもそんなに多くはないわけです、年間でいうと百何十万とか。そんなに収入もすごく足しになっているというわけでもない、大変厳しい、こういう話も伺いました。もちろん、夜学そのものは授業料自体も安かったりはするんですけれども。

 この夜学の学生についてという意味では、近年経済的状況がどうなっているか、また、今後の支援という意味ではどのように検討されているのか、これもお伺いをしたいというふうに思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 夜間部、いわゆる二部学生でございますけれども、二部学生の経済的状況につきましては、日本学生支援機構が行いました平成二十四年度学生生活調査によりますと、年間の平均収入が約百五十九万円でございまして、昼間部の学生に比しまして約四十万円少ないということがございます。

 一方、先生御指摘のように、授業料等の学費につきましては、年間平均約六十五万円と、これは、昼間部と比べまして約五十二万円安いという状況になっております。

 ただ、この二部学生も含めまして、経済的に困難な学生が経済的理由によって修学を断念することがないように努めていくことは重要でございます。

 このため、平成二十六年度予算におきまして、日本学生支援機構の奨学金事業では、無利子奨学金の貸与人員を増員するなど奨学金制度の充実を図っておりますけれども、その際、運用におきまして、各大学等に対して、家計状況が特に厳しい世帯の学生等を優先して推薦するよう依頼をしておりまして、この中に、二部学生も含め、低所得者世帯の学生等が優先的に無利子奨学金を貸与できるよう運用をしているところでございます。

 また、授業料減免等につきましても、二部学生を含めた支援を充実してまいりたいと思っております。

 今後とも、経済的支援の一層の充実に努めてまいる所存でございます。

中野委員 もう一点お伺いをしたいのが、私、これもデータが正直なかなか手持ちがないものではありますけれども、首都圏の方に聞いても、被災地から来られている被災三県の方で結構経済的に苦しい方が多い、こういう話は伺うわけであります。新聞ですとか報道で、やはり、家計が厳しいので進学を諦めて働きに行ったとか、エピソードとしてはいろいろ伺うわけであります。

 では、実際のデータとしてどうなんだろう。私、個人的にもいろいろ調べたんですけれども、被災の地域なので進学率が下がっているとか、そういうマクロのデータとしてはなかなか把握ができていない部分ではありますけれども、ただ、個々の声として聞くことがございますので、大変気になりまして、今回質問をさせていただきたいんです。

 そういう意味では、被災三県の方々のそういう進学の状況ですとか経済的な状況はどうなっているのか、あるいは、今はどのように支援をしているのか、これについてお伺いをしたいというふうに思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まず、被災三県の高校生の大学等への進学率につきましてでございますけれども、私どもの方の統計では、これは専門学校も含めましてでございますが、各県ともほぼ六〇%を超えるような状況が、少しでこぼこがございますけれども、横ばい状態で、最近は少し上昇傾向もあるということで、大きな変化は見られていないというところでございます。

 ただ、いまだ多くの方々が避難生活を送っている中で、学生等の経済的負担軽減に関する要望というのが寄せられております。被災した学生等が経済的理由によって修学を断念することがなく、学業を続けられるよう支援することは重要でございます。

 学生支援機構の大学等奨学金事業では、平成二十六年度予算におきまして、復興特別会計を活用し、被災学生等を含めた無利子奨学金の貸与人員を増員しております。また、被災学生については、優先的に無利子奨学金の貸与が受けられるような運用をやっているところでございます。

 また、授業料減免につきましては、平成二十六年度予算におきまして、被災した学生を含めまして、修学機会を確保するために必要な経費として四百十七億円を計上し、支援をしているところでございます。これは、被災地にございます東北大学とか岩手大学のみならず、首都圏にある大学におきましても、被災者向けの授業料減免の制度を設けているところが多くあるというふうに承知をしております。

 今後とも、被災地でのニーズや実情を踏まえまして、経済的支援の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。

中野委員 引き続きやはり小まめに状況を把握して、必要であればさまざまな支援をしていただきたいというふうに思います。

 二部の学生にしても被災地の方にしても、通常の今ある経済的な支援というのを優先的にしっかりやっていっていただく、こういう話でございましたけれども、今の支援の範囲内でしっかり優先的に採用するというお話でございましたので、やはり今後は、これをさらに深掘りをしていくというか、経済的に困窮している人に対しては、さまざま御要望させていただいている。例えば給付型の奨学金でございますとか、いろいろな形で支援をさらに手厚くしていくことも必要なのではないかなというふうに訴えをさせていただきます。

 最後に一つ御質問をしたいのが、就職の関係でございますけれども、昨年度の大卒の就職率というのは九四・四%ということで、三年連続で上昇いたしました。大変にいい結果だというふうに思います。

 しかし、この九四・四というのは、あくまで就職活動している人のうちで就職した人ということでございますので、実は大学生全体で見ると、例えば、子ども・若者白書というのが今度出ますけれども、これを見ると、大学生全体のうち、進学もしていない、就職もしていない、こういう方は一三・六%、全体の一割強実はいらっしゃいますし、中退をしている方というのは途中でデータには出てこないわけでありまして、例えば、厚生労働省に聞きますと、都内の学生に調査を行ったことがあるということで、大学を中退した人のうち六一%の方がフリーターになっている、こういう状況もあります。

 なかなかそういうしっかりとした収入がないような形になっている、キャリアアップが進んでいかないなというふうに思いまして、こうした卒業してしまった方あるいは中退をしてしまった方、大学にいれば、就職のキャリアセンターなどもありますし相談をするところもありますけれども、こうした、大学から出ていってしまうと、国がハローワークとかいろいろ就業支援をしておりますけれども、ではここにたどり着くかというと、なかなかたどり着いていないという現状もございます。

 私といたしましては、大学をやめられる方、あるいは就職しないまま卒業される方、こういう方々についても、例えばわかものハローワークですとか地域若者サポートステーションとか、今国がやっているようないろいろな施策、こういうものがあるというふうに通知、情報を上げるだけでも大分変わってくるんじゃないかなというふうに思います。

 こうした切れ目のない支援を行うために大学側としてもさまざま努力をしていっていただきたい、このように思いますけれども、いかがでございますか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、厚生労働省所管の労働政策研究・研修機構が平成二十三年度に実施いたしました第三回若者のワークスタイル調査によりますと、大学等を中途退学した直後の就業状況は、アルバイト、パートが六一・七%という形になっております。

 こういった状況に対する対策といたしまして学生等の就労支援といったものを強力に進めてまいらなければなりませんけれども、私どもとしては、厚生労働省を初めとする関係省庁や関係機関との連携を進めることが非常に重要だというふうに認識をしておりまして、昨年六月には、各大学等に対しまして、地域若者サポートステーションあるいはハローワークとの連携強化を図る旨の文書を発送したところでございます。

 文科省としては、今後とも、関係省庁と一層の連携を図りながら、大学等において、中途退学者に対しても就職情報の提供や就職相談等の支援が適切に行われるよう、大学等に対して周知を図るとともに、適切な対応を求めてまいりたいというふうに考えております。

中野委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 おはようございます。民主党の笠浩史でございます。

 きょうは一般質問ということで、まず一つは、実は四月二十四日に、ここの委員の方、理事の方にも、理事の方はほとんど役員なんですが、超党派の夜間中学等義務教育拡充議員連盟というものを発足させることができました。

 昨年の十一月、当委員会の理事で足立区立第四中学校に視察に参りまして、みんなで、これはこれまでも大臣も随分熱心に取り組んでこられたというふうに承知をしておりますけれども、とにかく義務教育の未終了者に対する支援はやはり国の責任としてしっかりとやっていかなければならないということで、今後、この議員連盟の中でこういった支援に向けての議員立法なども検討していこうということで、馳議員が会長で、私も事務局長を務めさせていただいております。

 その立場からきょうは幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 ちょうど昨年、臨時国会のときに、共産党の宮本委員の質問に対して下村大臣がかなり前向きに、実態調査の点でありますとか未設置県への対策、こういったことについて答弁をされておりますので、約半年たちましたので、少し進捗状況等々を確認させていただきたいというふうに思っております。

 それで、三十年前、当時の中曽根総理の質問主意書に対する答弁書で、果たしてどれぐらい義務教育を終えていない方がおられるのかというのは、政府としてはこの七十万人という数字がいまだに公式見解だというふうに承知をしております。ただ、いろいろな団体の皆さん方の推計では、いや、百万人以上いるんじゃないか。

 どういう対策を立てるにしても、その実態というものがわからなければ、具体的な施策を展開していくということにはつなげていくことがなかなか難しいわけでございまして、大臣の方も、この実態調査はやりたい、一回はやらなきゃいけない、ただ、文科省単独では予算のことも含めてなかなか難しいんじゃないかということをおっしゃっておりました。

 やはりこれは国勢調査というのが、大がかりなものは大体十年に一度ぐらいでございますけれども、これを活用して工夫ができないかということで、総務省にも要望していくということをおっしゃっていたわけでございますけれども、まず大臣、総務省とは、要望し、具体的な調整に入っているのかどうか、その点をお伺いをしたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、国勢調査においては、小学校に在学をしたことのない人または小学校を中途退学した人について調査を行っておりますが、中学校を終えていない人については対象となっておらず、これまで、義務教育未終了者の人数について把握できておりませんでした。

 このため、文科省では、義務教育未終了者について、次回の国勢調査の項目に追加していただけるよう、調査を所管する総務省に対して要望を行ったところであり、次回の調査に向けて検討課題とするという旨の回答をいただいているというふうに聞いております。

笠委員 きょうは、忙しい中、松本総務大臣政務官、おいでいただきありがとうございます。

 それで、政務官の方に、今、大臣から要望があったということで、それに対して総務省としてどのように検討し、また、これは二〇一五年には簡易調査ですよね、ですからそこにはなかなか教育の項目が入っていないので、あとは時間的な点からもちょっと難しいと思いますけれども、二〇二〇年、平成三十二年の次の大規模な調査では、この未就学者の実態が把握できるような項目というものをぜひ入れていただきたい。

 その点について明快な答弁をお願いをしたいと思います。

松本大臣政務官 まず最初に、文部大臣の方から総務省の方にしっかり検討するようにという強い要望がありましたことを、総務省としてお答えをしておきたいと思います。

 その上で、先生お話しのとおり、十年ごとに大規模調査をやっておりまして、その大規模調査の中に教育関係の調査というのが入っております。したがいまして、次の大規模調査ということになりますと平成三十二年ということになります。この調査において、文科省を初め、先生方、国会の皆さん、関係各位の期待に応えられるように、しっかり今検討を進めようということでスタートしたところであります。

 以上です。

笠委員 これは具体的な教育の問題も含めて、大体来年ぐらいから、その項目等々、どういう形での調査をやっていくのかという作業に入っていくのではないかというふうに思っておりますけれども、ぜひ政務官、検討して、何らかの形でしっかりとやっていく。文科大臣がしっかり要望をされている話ですし、これは単に文科省だけの問題ではなくて、憲法で保障されている義務教育、普通教育を受ける権利というものをやはり守っていく責任というものは、これは政府としてある、あるいは我々議会としても応えていかなければいけないことだと私思いますので、ぜひ実態調査、もう一つ踏み込んで、何らかの形でしっかり検討した上でやるということでお答えをいただきたいと思います。

松本大臣政務官 国勢調査の調査事項というのは、企画段階で、当該調査事項の必要性、記入の正確性、それから、御協力をいただく国民の御負担の観点から、有識者の皆さんで統計委員会というのをつくっていただきまして、その統計委員会で総合的な検討というのが行われるという制度になっております。

 また、学歴について、記入に際して抵抗感の大きい項目でありますし、最終卒業学校を小学校と中学校に細分化する場合、三十二年調査の企画段階で、結果の正確性の観点というのを担保して始めなければならないという、大変難しい検討課題が数多くございます。

 また、地方公共団体、それぞれの教育委員会といったところの御意見もその中に反映をされなきゃならないということもこれありでございまして、そういった多くの検討課題を一つずつクリアをして、期待に応えられる調査そして調査結果を導き出したい、そういう思いで検討しておりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

笠委員 政務官、ぜひその点は、私は、必ず何らかの形で二〇二〇年、このときに調査が行われるというふうに理解をしたいと思いますので、そこはいろいろな具体的なやり方というのは専門家の知見というものも必要だと思いますけれども、とにかくその点はよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 お忙しいところをありがとうございます。どうも、政務官の方は御退室いただいて結構でございます。

 それで大臣、確かにこの二〇二〇年、東京オリンピック・パラリンピックの年にもなるわけでございますけれども、調査はこの国勢調査を活用する形で、文科省と総務省の方で、今、教育委員会という話も総務省の方からもありましたので、ぜひ連携をしながら実現をさせていただきたいというふうに思っておりますけれども、今、何か文科省として、全国的な実態調査は今の国勢調査に任せるにしても、少し先駆けて、例えば地域ごとであったり、どこかの地域を少し選んで、今どういうような状況にあるのか等々、何か調査をするようなお考えがあるのかどうかをお伺いしたいと思います。

前川政府参考人 文部省におきまして、総務省が行っております国勢調査に準ずるような形で、全ての国民を対象とした大規模な調査を行うということは、これは事務的に大変困難ではございますが、文部科学省といたしましても、これまで、未就学者、義務教育を終了していない方々の実態を十分把握してこなかったということは認識しておるところでございまして、未就学者が多い自治体などから個別にヒアリングを行うなどいたしまして、今後、都道府県と連携しながら、どのような実態把握が可能かを検討してまいりたいというふうに考えております。

笠委員 今の、都道府県と連携しながらということ、私は非常に大事だと思いますし、国はもちろん一番の最終的な責任があるわけですけれども、都道府県、市町村も含めて、義務教育の未就学の皆さん方の学び直しというものを、しっかりとその機会を提供していくんだという意識の共有というものが物すごく重要じゃないかというふうに思っております。

 平成二十二年の国勢調査で、先ほど大臣がおっしゃいましたように、現在も、小学校に在学したことがない、または小学校を中途退学した、こういう、小学校を卒業されていない方は十二万八千余おられるわけです。しかしながら、今ある公立の夜間中学あるいは自主的な民間の夜間中学、そういったものを含めても二千人ぐらいですよ、学んでおられる方というのが。

 そういう中で余りにもこの数字がかけ離れているわけで、それで、都道府県別の二十二年の国勢調査の未就学者数というものを見ても、本当に、千人単位、あるいは六千人、大阪のように一万人を超えているところもありますけれども、少なくとも小学校を卒業できていない方々がかなりの人数おられるという実態は、これはもう現実に今明らかになっているわけです。

 ですから、今、都道府県に少なくともやはり一カ所は何らかの形でこの夜間中学というものを、何もこれは新しく校舎をつくってやるという話じゃありませんし、現に今はいろいろな空き教室を利用したり、あるいは、自主的な施設があればそこに対する公的な支援をしていくとか、そんなにお金をかけずに工夫をしていくことは、方法は幾らでもあるのではないかと思います。

 そうした中で大事なことは、一つも夜間中学がないところというのは、恐らくその県の教育委員会にしても市町村の教育委員会にしても、もう一度学び直しましょう、そういう機会が、場所があるんですよというような意識というものが余りないと思うし、広報だってできませんよね。ですから、そういった需要がないのではなくて、そもそも、夜間中学という最後の学び直しの場があるということを知らない方々もたくさんいるんじゃないかと思うんです。

 ですから、そういったところに対する対策というもの、広報というものをどのようにしていくのかということについて文科省としてのお考えがあれば、お聞かせをいただきたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、未就学者、平成二十二年現在で十二万八千百八十七人、これは、昭和三十五年の調査を実施したときは未就学者が百四十八万八千三百人、それがどんどん減ってきて、相当今は、少なくとも義務教育は基本的には受けるあるいは行くということになってきていると思いますが、それにしても、未就学者が十三万人近くいる中で、今御指摘のように、夜間中学の在籍者、一千八百七十九人ということで、非常に少ない数字でございます。

 これは、現在、中学校夜間学級が八都道府県二十五市区三十五校のみに設置されているだけで、受け皿が必ずしも十分でない、それから、御指摘のように、夜間学級の存在が広く知られていないということもあると思いますし、また、そもそも未就学者御本人の希望もさまざまあるということもあるというふうに思います。

 今御指摘があったように、少なくとも各都道府県ごとに一つぐらいは設置することによって、学びたい方々にそのチャンス、可能性が提供できるような仕組みということをやはり考えていく必要があるというふうに思いますし、また、これからもっと広報の徹底をすることによって、多くの方々が、特に未就学者の方々が、今後、夜間中学校に対してどんな期待を持っておられるか、あるいは、そもそも行きたいけれども、そういう学校がないから行けないのかというような調査をしながら、未就学者が学べるような環境づくりのために、国としてもしっかりバックアップをしてまいりたいと思います。

笠委員 今、大臣から本当に力強い答弁をいただいたと思います。

 局長、ちょっと一点、確認なんですけれども、今現在、これは公立の中学校を活用しての夜間中学でいいんですけれども、夜間中学に入学されている方、そこで学んでおられる方はおられますよね、あるいは卒業された方、そういう皆さんが何によってこういう公立の夜間中学の存在を知ったのか、あるいは、こういった学び直しの機会があるんだということで、動機づけというか、そういったことというのは把握をされていますか。

前川政府参考人 中学校の夜間学級、夜間中学校でございますが、これを設置する自治体、市町村におきましては、ホームページに夜間学級の情報を載せるとか、あるいはリーフレットを作成して配布するとか、自治体の広報紙に夜間学級の生徒募集の情報を掲載する、そのようなことを行って広報しているということは承知しております。

笠委員 局長、これはちょっと提案なんですけれども、多分、ホームページをなかなか見れない方々も多いと思うんですよ、こういう今は義務教育を終えられていない方。あるいは、よく我々も生の声を聞く中で、文字が読めるようになった、読み書きができるようになった、読書ができる喜びというものを本当に感じた、そういった声をたくさんいただきます。

 だから、中には、そういう活字を、あるいはインターネットにアクセスできないような環境の方もたくさんおられると思いますので、やはりそういったことを少し考えていただきたいことと、あと、今は学校の数というもの、残念ながら、先ほど大臣は三十五とおっしゃり、今は三十一になったんですよ。これは、この四月から横浜が統合しましたので。それで、八都府県三十一校ぐらいしかない。今通われている皆さん方が、何で夜間中学の存在を知り、あるいは学び直そうというふうに思ったのかというあたりも、負担にならない形で、ぜひ少し、そこあたりの実態を踏まえた調査というものも協力をいただきながらやっていただければと思います。

 それと、都道府県の教育委員会の皆さん方とやはりお話をする機会、さまざまあろうかと思いますので、この未就学者の皆さん方が本当にぜひ学びたい、しかし、そういう場があるんだということを知らない方がたくさんいると思うので、そういったところをどのように改善していくのかということを、また一度、いろいろなヒアリングも何かの機会に行っていただきたいというふうに思いますけれども、局長いかがですか。

前川政府参考人 夜間中学校をこれからどうつくっていくか、設置していくかという問題とあわせまして、夜間中学校の存在について広く広報していくということは課題であるというふうに考えております。現在の各自治体の取り組みだけでは必ずしも十分ではないのかもしれないと思っております。

 今後は、さまざまな民間団体のネットワークなどを活用することも含めまして、国、都道府県、市町村が連携し、どういった方法で広報を充実させていくことができるか、関係者の意見も伺いながら、十分検討してまいりたいと考えます。

笠委員 ありがとうございます。

 私どもも、小渕委員長も幹事長でございますし萩生田筆頭も幹事長代理ということで、これは本当に全党で、みんなでこの議員連盟としてしっかり、どういうことが後押しになるのか、また、そこは大臣の御協力もいただきながら、何とかこの未設置県に対する夜間中学という場を一カ所は必ずつくっていこうということにつながるような、また、議員立法というものもしっかり検討していきたいというふうに思っておりますので、また、実態調査も含めて、ぜひ大臣にもリーダーシップを発揮していただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、実は、今週月曜日十九日に、私どもの民主党の視察団が沖縄県の八重山地区のあの教科書の採択問題に関して、県あるいは石垣市、竹富町の教育委員会関係者などと意見交換をしてまいりました。当委員会でも質問した中川元文科大臣を団長にしながら行ってきたわけで、ちょっと私は参加できなかったんですけれども。

 それで、ちょうどきょう十五時から沖縄県の定例の教育委員会が開催をされて、八重山地区を含めて幾つか、これは、いろいろな事情があって採択地区の見直しがこの八重山を含めて行われるというふうに承知をしております。

 先般の法改正でも、これは当然ながら県教委に権限があるわけですけれども、この間、文科省としていろいろな指導をしてきた経緯もございますが、最終的な権限は県にあるという中で、きょうどういった結論が出るのかということは、地元の新聞なんかでいろいろと報じられてはおりますけれども、いずれにしても、この県の結論というものを文科省としては尊重するということでよろしいんでしょうか。

下村国務大臣 採択地区の設定については、都道府県の教育委員会が権限を有しております。それが今回の改正案の法のたてつけでございます。

 一方で、採択地区の設定は、地域の自然的、経済的、文化的諸条件及び教科書の調査研究体制の有無等を考慮して行うべきものでありまして、このような法の趣旨については、適正な採択地区の設定を促す観点から、先月二十二日に沖縄県の教育長を文部科学省に呼びまして、初等中等教育局長から指導したところでございます。

 八重山採択地区については、竹富町が離脱を希望している一方で、きのう、文部科学省の方に石垣市の教育長がこれはみずから来られまして、上野大臣政務官がお会いをいたしましたが、石垣市の教育長は、八重山地区というのは自然的、経済的、文化的に一体のあるところなので、ぜひこれは、竹富町が離脱をするということでなく、一体となった共同採択地区にすることが望ましいということを、文部科学省にきのうわざわざ来られて改めて表明をされていたというのを、上野大臣政務官からその後報告も聞いております。

 採択地区の設定については、最終的には、今御指摘がありましたように、沖縄県の教育委員会において、関係市町村の意見を聞きながら、法律の趣旨にのっとった責任ある判断をするということが必要であるというふうに考えておりますが、今、報道で既にいろいろなところで情報が出ているということでありますが、これはやはり、長期的に見て判断が間違いなかったと思われるような、いっときの、そのときの状況ではなくて、長い目で見たときにどうなのかということについては、ぜひ沖縄県教育委員会は判断をしていただきたいというふうに期待をしております。

笠委員 今、石垣市の教育長のお話がありました。私も報告をきのう視察団からちょっと受けたんですけれども、石垣市の教育長は、八重山は一つという合い言葉で進めてきており、石垣市側から採択地区を分けるという話はできない、ただ、共同採択地区については、これは当たり前ですけれども、県が決めることであり、石垣市に権限はないんだという説明があったというふうに報告を受けております。

 前川局長、今は大臣からもありましたけれども、四月二十二日に県教委の諸見里教育長を文科省に呼んで指導をしたという経緯がございますけれども、これは具体的にどういう指導をされたのか、ちょっと改めてその点をお聞かせください。

前川政府参考人 先月、四月二十二日に沖縄県の教育長に文部科学省に来ていただきまして、私の方から以下の点につきまして指導したわけでございます。

 第一点といたしまして、その五日前になりますけれども、四月十七日に文部科学省から沖縄県竹富町の慶田盛教育長に対しまして、是正の要求に従うべきことなどを指導したということを伝えまして、これを踏まえまして、沖縄県教育委員会としても適切に竹富町教育委員会を指導すべきであるということ、これが第一点でございます。

 第二点は、今般の教科書無償措置法の改正によりましても共同採択制度の趣旨が変更されるものではないということ、したがいまして、引き続き、地域の自然的、経済的、文化的諸条件及び教科書の調査研究体制の有無等を考慮して採択地区を設定すべきであるということ、これが第二点でございます。

 第三点といたしまして、文部科学省としては、この法律の趣旨に照らして、八重山地区は一つの採択地区として設定すべきものと考えているということを伝えたわけでございます。

 これにつきまして教育長からは、教育委員会に持ち帰って検討するとの回答があったところでございます。

笠委員 今、そういったことを指導されたということだけれども、そういったことも踏まえて、きょう、沖縄県教委が結論を出すわけですよ。先般の法改正はそのためにやったわけじゃないんですけれども、結果として、今、市町村ごとに単独採択地区の選択ができるということになったわけですよ、郡をなくしていくという中で。

 その中で今伝えられているのは、恐らく県教委は、竹富を単独採択地区にというようなことを判断するのじゃないかということが伝えられております。

 大臣、もう一回確認なんですけれども、きょうどういう結論が出るかわからないけれども、もし、そういった竹富を単独採択地区にするということに、これはもちろん採択については来年度からのあれになりますけれども、そうなると、それはもう文科省としても、それは仕方がない、これは県教委の権限であるということになるということでよろしゅうございますか。

下村国務大臣 まず、本日の沖縄県教育委員会の会議はこれからでありますから、予断を持った答弁はここですべきことではないというふうに思います。その結果については、あす、沖縄県の教育長から初等中等教育局長が直接報告を受けるということになっております。

 仮に、今御指摘がありましたが、この採択地区の見直しを行うということであれば、これは、教科書の調査研究体制をどうするかなどの点については、まずは基本的な考えを確認する必要があるというふうに思います。教科によっては竹富町にその教科の先生が全く存在していない、そういう教科も複数あるというふうに聞いておりまして、担当の先生がいないのに教科書採択ができるのかということがやはり問われてくるというふうに思うんです。

 そういう観点から、文部科学省は、今後の対応については、あすの報告の内容を踏まえて検討していきたいと考えております。

笠委員 今、大臣から、もちろんきょうこれからのあれなので、大臣が予断を持ってということは私も理解します。ただ、調査研究、確かにこれがきちんとできる体制を整えられるのかということは、私も、それは大きなやはりポイントだろうと思っています。

 八重山の中で、これから単独になるのにそれは一緒にやるというわけにいかないし、それはまあ恐らく石垣だって、ほかのところは、それはもう勘弁してくれということになるでしょう。そのときに、では竹富が単独でやるだけの力が本当にあるのかどうか。

 そして、県教委がもしそういう判断をするのであれば、ちょっと前川局長、あれですけれども、その点についても指導されたんですよね。今の調査研究の点についても先ほど言及がありません。ちょっと確認させてください。

前川政府参考人 私から県の教育長に対しまして、採択地区の設定に当たりましては調査研究体制の有無というところについてもきちんと判断するようにと、これは指導したところでございます。

笠委員 実は、ここは私どもの視察団も、当然ながら、やはり今おっしゃったことは当然なことでして、それはやはり子供たちに責任を持たなければなりませんから、それであれしたところ、その竹富町の教育長の私案としては、管理職校長そして退職教員も採択調査員に加えていく、それと、いや、私も実は今回初めてあれだったんですけれども、各島ごとに幾つか学校があって、原則、学校ごとに一教科ごとの割り振りをしていくという案を考えているということを何か私どもの視察団にはおっしゃったらしいです。

 ただ、それが本当に、人員確保が竹富の範囲の中でできるのかどうか、そこを沖縄県教委はどういうふうにまた支援を仮にしていくのかというところは、私も詳細はわかりません。あすですか、そこはどういうふうな形で文科省に対する回答があるのかどうか。

 それで、この調査研究を、これは文部科学省が指導しておりますから、当然重く受けとめていると思うんですよ、県の教育委員会にしても。ただ、そういう中で、やはり具体的な提案が恐らく行われると思うんですよ、もし県教委が単独採択を選択する場合には。この提案について、妥当であるのかどうか、本当にできるのかどうか、そこあたりの判断というものは、局長、どのようにその後していくことになるわけですか。

前川政府参考人 沖縄県教育委員会が沖縄県の中の採択地区の設定についての権限を法律上有しているわけでございますけれども、これはあくまでも教科書無償措置法の趣旨にのっとって行われなければならないということでございまして、この法律の趣旨につきましては、私どもから累次にわたって指導しているということでございます。

 この沖縄県の教育委員会の採択地区の設定につきましては、その判断に至った経緯あるいはその根拠となる実態といったことにつきまして、十分聴取する必要があるだろうというふうに思っております。

 文部科学省の権限といたしましては、地教行法上、調査を行う、あるいは地教行法の四十八条に基づきまして指導助言、援助を行う、こういった権限はもともとあるわけでございますので、この権限の範囲内におきまして、無償措置法の趣旨にのっとった採択地区の設定がちゃんと行われているかどうか、これは沖縄県に限ったことではございませんけれども、必要に応じまして、指導助言、援助などの措置をとってまいりたいと考えております。

笠委員 時間が参りましたので終わらせていただきますけれども、いずれにいたしましても、きょういずれかの結論が出て、そして、当然県教委が、これまでの経緯がございますので、しっかりとそこに対する回答が、きちっと我々はこうやって責任を持ってやるんだというようなものがあったときには、やはりそこは、何か国と沖縄あるいは竹富が対立をするというような構図にならないように、指導すべきはしながらも、しっかりそこはやはり助言をしていく。

 あるいは、どういうふうな形で竹富あるいは八重山地区での採択が行われることが、本当にやはり地元も、住民の人たちも、感情的な対立を招くようなことになってはそれは一番不幸だと思いますので、ぜひその点はまた賢明な判断をしていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 それでは質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、小保方氏のSTAP細胞問題について質問をさせていただければというふうに思っております。

 この問題は、何といっても、ことし前半の最大の話題でございました。若い女性が世界的な大発見をする、それが一転していろいろな疑義が生じたということで、いろいろなマスコミの話題をさらう属性をいろいろと備えていたという、喜ぶべきか悲しむべきかよくわかりませんけれども、そんなことでことし最大の話題になったわけでありますが、そこからさまざまな課題が出てきたのではないのかなというふうに思います。

 例えば、STAP細胞という、世紀の大発見と言われるようなものが本当に存在するのかどうかという問題もございます。そこから起因しまして、小保方氏が、特に若手で女性であるという研究者が、そういう若手、特に女性の研究者がこれから活躍するような研究環境、もっと大きく言うと、社会環境をつくっていかなければいけないというのは、ここにおられる文科委員会の委員の先生方の総意だろうというふうに思うわけでありますけれども、そうなってはいないのではないかというようなことがおぼろげに浮かんでまいりました。

 その他、学術研究のあり方、理研のあり方等さまざまな問題が出てきておりまして、やはりこの問題は、衆議院の文部科学委員会できちんと一回議論をすべき問題であるというふうに認識をしております。

 そういった意味で質問もさせていただくわけでありますけれども、申すまでもなく、日本は資源も何もない国でありまして、科学技術研究立国を目指すしかないだろうというふうに認識をしております。そのために多額の公費を投入している。下村文科大臣以下、みんなそういう方向でもって最大限の努力を傾注しているわけでありますけれども、しかしながら、そういった努力に水を差すことのないように、この問題にきちんと対応していかなくちゃいけないんじゃないのかなと思います。

 そんな観点から質問をさせていただくわけですが、一つ、どうしても前提を置かないといけないなと思うんです。私は、そういった科学技術のことについては疎い、文科系の人間でございます。普通の一般人、素人である。これはもう最初にお断りしておかなければいけないわけでありまして、普通の一般人が質問をさせていただくというのが前提でございます。

 そういった前提を置いてこの問題をちょっと考えてみますと、小保方氏の論文に重大な過誤があったことは、どうも動かしがたい事実だろうというふうに思います。例えば、論文の剽窃ということで、コピー・アンド・ペースト、コピペが行われていた、また、写真の切り張りも行われていた等々が報じられております。これがよくないことはわかるわけであります。わかりますが、これでSTAP細胞自体が否定をされたことになるのかどうか、どうも、そこら辺以上のことになってくると素人にはわからない。

 そこで、もう問題を単純化してお聞きをしたいと思うわけですけれども、短答式じゃないんですけれども、そういうふうに大ざっぱに割り切ってお答えをいただかないとよくわからないという意味で、ぜひお答えいただきたいんです。

 一つは、STAP細胞は、論文の過誤にもかかわらず存在すると証明されたのかどうか。二択目として、STAP細胞は今回の論文では存在を証明できなかった。三択目としては、STAP細胞に関する小保方氏を中心とする論文は論文として失格なんだ、だから、STAP細胞の存在は、あるかないかということはこの論文では不明である。

 この三択のどれかになっていただくとよくわかるわけですけれども、以上の、私が言いました、存在すると証明された、存在は証明ができなかった、三番目として、STAP細胞の存在は依然として不明、四番目として、その一から三のどれでもない、その中のどれというふうに現時点で当局は御判断しているんでしょうか。お答えできる範囲でお答えいただければと思います。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの御質問の趣旨、直接に関係を持たない、あるいは知識的にもそういった専門の知識をお持ちにならないという方々にもわかりやすくという趣旨に沿って、整理して説明させていただきたいと思いますが、お話を一応二つに分けさせていただきます。

 一つは、STAPに関する論文につきましては、理化学研究所において調査の結果、改ざん、捏造という研究不正が認められるという結果になっておりまして、その結果として論文の取り下げ勧告もなされているという位置づけにございます。

 それからもう一つは、一方でSTAP細胞が存在するか否かについては、論文の問題とは別に、科学的な検証が必要な状況ということでございます。

 先ほどお示しいただきました言葉の中で、例えば失格とかそういう言葉がなじむかどうかとかそういうことはちょっとわかりませんので、番号何番という言い方はちょっと控えさせていただきますが、おっしゃられた趣旨に明確にお答えをするとすれば、今申し上げたような論文の位置づけと、それから、STAP細胞の存否については、科学的な検証が必要な段階という二つであるということを答えさせていただきます。

 なお、二つ目の問題につきましては、現在、理化学研究所においておおむね一年の計画で科学的検証を進めるということにいたしておりまして、外部機関の研究者、第三者による検証にも積極的に協力して必要な情報を提供していくというふうなことをいたしておりますので、今後、このような取り組みを通じて、STAP細胞の存否をめぐる状況が科学的に明らかにされていくものというふうに考えております。

鈴木(望)委員 いろいろ言われると、はっきり言ってよくわからないわけです。

 今、私も真剣に聞いて整理をさせていただくと、要するに、論文としては、失格という言い方がどうかわからないですが、不備であるとか、論文としてはSTAP細胞があるだとかということを証明するようなレベルの段階にまでは至っていない、だから、STAP細胞があるのかどうかということも当然わからないというふうに理解をしてよろしいですね。

小松政府参考人 そのように理解いたしております。

鈴木(望)委員 ついででありますけれども、STAP細胞が存在するということが理研の検証でわかったとか、また、外国の科学者がそれを証明したということになった場合には、STAP細胞を最初に発見した、証明したというのはどなたになるんですか。

小松政府参考人 どなたの成果に帰するかということは、その発見の過程や発表の寄与度によって分かれますので、今直ちにこの人ということを言うのは難しいんですけれども、一つ申し上げますと、この論文が、先ほど申し上げましたように取り下げ勧告も出ておりますし、それから、聞き及ぶところでは掲載誌でも検討しているということになりますので、もしこの論文が取り下げられるというようなことになりました場合には、新しくそれを証明された方に帰することになります。

 この論文が取り下げがなかったというようなことで有効性がある場合に、それがどの程度の寄与度になるかということについては、その新しく出てきた事実関係と照らし合わせて判断されていくことになると思われます。

鈴木(望)委員 よくわかったと言うわけにはいかないんですが、今の御答弁はそれはそれで了解いたします。

 それで、その背後にある問題について話を進めていきたいと思うわけですけれども、小保方氏が仮にSTAP細胞を発見したという証明をしたということであれば、世界的な大発見だろうというふうに素人でも認識をします。

 それに比べて、いろいろとマスコミから漏れ聞こえてくる、報道される話、情報では、極めてお粗末な研究態度であるだとか研究体制の整備、小保方氏の研究ということですけれども、要するに、研究者としての基礎的な素養についての訓練を受けていなかったんじゃないのか。

 例えば、研究ノート等の研究記録の作成のあり方、そもそも、写真を切り張りするということについて余り認識がなかったようなことも言われているというようなこともありますし、文科系でも論文のコピペというのは、これは、やる以上はちゃんと出典をはっきりさせるとかというようなことを当然言われているわけですが、それについても余り認識がなかったような情報が漏れ聞こえてくるわけです。

 要するに、そういったことを、いやしくも研究を目指す研究者として、基礎的な素養的なことはきちんと誰かが指導すべきだろうというふうに思います。

 そこら辺の体制が理研ではどうなっていたのか、また、どの範囲で行われているのか。どの範囲ということで言いますと、具体的には、小保方氏は若くてもユニットリーダーという位置づけであるわけですけれども、ユニットリーダーという位置づけであるような人に対しても行われるのか、行われないのか。また、そういうことと関係なしに、そういった基礎的素養の訓練というようなことはどういうふうにやっているのか。お答えをお願いいたします。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 理化学研究所におきましては、まず、新規に入所する職員につきましては、この研究所で研究を行う上で必要な基本的な規定等のルールその他を周知するために、それぞれ、入ります中心の各事業所において、入所時にオリエンテーション、説明を行っているというふうに承知をいたしております。

 それから、今お尋ねの中にございました、研究室をいわば主宰する立場になる方々、この方々に対しては、研究不正の防止のためのルール等を含めて、研究室運営に係る研修の実施や、それから、研究室運営に必要な事項をまとめたコンプライアンスブックというものをつくっておりまして、これを配付しております。

 このコンプライアンスブックについては、きちっと読んだ場合には、署名をして、これを読んだということを申告するということになっております。

 こうした取り組みを通じまして、研究活動を行うための基本的なルールを周知し、各研究室における適切な研究活動が実施されるよう指導しているということでございます。

 ただ、今回、現にSTAP細胞に係る研究論文について研究不正が認定されたということから、外部有識者委員会を立ち上げまして、このままでいいのか、こうした事態の再発防止策の検討を行っているところでございます。

 この中で、研究不正や過失の防止に係る規程や運用の改善はどうか、あるいは、若手研究者が最大限に能力を発揮できるための体制の整備という観点からはどうかということも論点に上がって検討が進められていると聞いておりますので、文部科学省としても、そうした取り組みを着実に取り進めていくようにということを求めてまいりたいと考えております。

鈴木(望)委員 STAP細胞があって、そして希望とすれば、日本の若手女性研究者がその存在を最初に証明したということになれば、本当に私ども門外漢にとってはうれしい限りだなというふうに思うわけであります。

 その若手研究者の研究環境、育成ということでも、今回の騒動で一つ論点として新たに浮かび上がったというふうに思うわけであります。

 ノーベル賞級の大発見等は、自然科学の分野では大体二十代とか三十代のときにそういうものを発見している、それを証明したりなんかしながらノーベル賞に至るというふうに聞いているわけであります。

 その意味で、若手を育成して若手、女性の研究者に活躍の場を与えていくということは、これは私どものやるべきことじゃないのかなというふうに思うわけでありますが、それが現状では、有期雇用の不安定な身分に置かれている。そのために、何とか成果を出さなきゃいけない、成果を求めて前のめりになって、その結果の一つが今回のような騒動になったというふうにも思えるわけであります。そういう指摘もあるわけであります。

 ほかにもちょっと質問したいことがありますのでちょっとはしょらせていただきますが、若手の研究者が大量に不安定な身分に置かれている。その原因の一つは、まずは、例えば大学の先生になるというようなことが今の日本の現状では一つ研究者の道としてあるとは思うんですけれども、大学というものが非常に閉鎖的で、大学の教授に仮になったら、なった人は一生身分が安定していて、それから論文は一個も出さない、教授会にもほとんど出席しないというようなことがあっても身分は安泰、これは私も実例としてよく知っております。もちろん少数だろうと思いますけれども、そういった先生もいる。

 つまり、有能だったら大学の教授になる、有能じゃない人は、例えば欧米のように、十年なら十年、五年なら五年という有期の期間でもって、それまでの功績、研究評価というものをきちんとして入れかえをするというような制度が日本では全然ないし、機能もしていない。だから若手の人の登用というのがうまくいっていないんじゃないのかというのが、乱暴な議論ですけれども、私、思うところであります。

 もう一つは、これはもっと乱暴な議論かもわかりませんが、不必要にポスドクが生み出されているんじゃないのかなと。

 その原因は、大学の方の存立とか生き残りということで、大学に箔をつけるために、高等教育をきちっとやっているよということのために、本来は余り必要でもないのに、大学院を設けて生徒を募集して、そして、いわゆる博士なり修士なりという人をどんどん生み出しているんじゃないのかなと。だから、社会の需要と供給のギャップから、不必要な供給によってそういうふうな人たちが生み出されているんじゃないのか。これはそうじゃないことを願って言っているわけですけれども、そこら辺にもまた一つ原因があるんじゃないのかなというふうに思っております。

 もしそれについて当局の方で何か御見解があるんだったら、お願いをいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 大学ということに関しまして、その教育研究を発展、継承していくためには、若手人材が安定して教育研究活動に専念できる環境を確保していくことが重要でございます。

 文科省の方では、今、大学改革ということで、国立大学を初めといたしまして、急ピッチで改革を進めていただくようにお願いをしているところでございます。

 その中で、教育研究組織の不断の見直しというもの、これは、国立大学の場合におきましては、ミッションの再定義ということで、どういうふうな機能を高めていくのか。いわゆる強み、特色、そういったものを生かして方向転換を図っていくということを推奨しているわけでございますけれども、その中では、当然のことながら、やはり教員組織の見直しといったものも必要になってくるわけでございます。

 そういった組織再編と連動もさせながら、年俸制の導入など、いわゆる人材の流動化を高めるための政策も今進めているところでございます。

 そういったことを通じまして、若手人材が積極的に活用できるような環境の整備に努めてまいりたいと考えております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 重なるかもわかりませんけれども、文科大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 現状は、有能な若手研究者が有期雇用の身分不安定の中で研究を一生懸命やっているということが一つ大きな課題でありました。一方では、若手の研究者、女性の研究者にもっともっと自由に才能を開花してもらいたいというふうにも、当然これは国家的な要請だろうと思いますけれども、そこら辺について、今言った課題と改善方策について御所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、科学技術イノベーション、これは大変重要であり、安倍内閣の成長戦略も、その重要な柱の一つとしているところでございます。

 我が国が成長を続け、新たな価値を生み出していくためには、これを担う若手研究者を含めた多様な科学技術人材の育成、確保が、これはもう大変重要な課題であるというふうに思います。

 若手研究者は、有期雇用契約を繰り返しながら多様な研究経験等を積み重ね、能力の向上を図る傾向にあり、雇用を安定させつつ、いかに競争的環境にいられるか、そういう構築が課題であるというふうに考えております。

 これに対して文科省は、これまでも、みずからの研究活動に専念するための研究奨励金の支給、それから、産業界も含めた多様なキャリアパスの整備を図るための取り組みなども講じてきたところでありますが、まだまだ不十分であるということの中で、さらに、昨年十二月に公布された改正研究開発力強化法及び任期法におきまして、大学等の研究者などが労働契約法の特例の対象となり、無期労働契約に転換するまでの期間が十年に延長されたことを受け、若手研究者等が契約期間中にまとまった研究業績を上げ、適切な評価を受けやすくすることなどによりまして、安定的な職を得ることになるのではないかというふうに期待をしております。

 また、平成二十六年度予算におきまして、新たに、科学技術人材育成のコンソーシアムの構築として、複数の大学等が、企業等とも連携をして、研究者の流動性を高めつつ、安定的な雇用を確保しながらキャリアアップを図る取り組みを行うこととしております。

 これらの新たな制度や事業等も活用しつつ、引き続き、若手研究者の育成や雇用の安定などの処遇の改善を図り、活躍促進に努めてまいりたいと考えております。

鈴木(望)委員 ぜひ、今大臣が言われたことが成果を発揮するように私どもも期待をし、また同時に、全面的に協力をしていかなければいけない課題であるというふうに認識しております。

 それでは次のテーマに移らせていただきます。

 去る三月十九日、当文科委員会でメディカルスクールのことについて質問をさせていただきました。ずっと私もこの問題を追いかけていきたいなというふうに思っております。

 その段階で質疑させていただいたことは、まず、医師としての適性を大学の医学部への選抜試験できちんと判断しているというふうに言えるだろうか、どうだろうかということで、ネガティブな答えであったというふうに私は理解をして、また、速記録を見てもそういうふうに理解をします。

 例えば、大臣の御答弁でも、私も今の大学入学試験、選抜の仕方は非常に問題だと思っている、学力だけで選ぶことに対してどういう意味があるのか、もちろん学力も必要だという前提のもとでそういうことも言っておられるし、トータル的な入学試験に抜本的に変えていかなければ患者が求めるような医師の養成にはならないのではないかというような御指摘もなされておりまして、私と同じような考えだなということを認識したわけですが、それでは、現状では、医師としての適性をきちんと判定する選抜システムにどうしたらいいのかということまでは議論はいかなかった。

 私自身は、結論を先取りにしますと、全ての選抜システムをメディカルスクール方式にすべきだとはもちろん言っているわけではなくて、一つ違ったような選抜システムも入れてはどうだろうかということを私は思っているわけであります。

 そして、もう一つ論点としては、我が国の医師数は足りているのかどうかということで、これについてももうちょっと議論をしなくちゃいけないなと思うんですが、お答えでは、二〇二五年に医師数は三十二万から三十三万という必要数を満たすというふうにお答えをしております。議事録でも確認はさせてもらいました。

 それに対して私は、こんなことを言わせてもらったわけです。

 一つは、医療の専門分化化によって、必要とする医師数は格段にふえているのではないか。例として、脳神経外科が、外科ということであっても、盲腸の手術をすることは、もはや自分はやったこともないしできない、そういう医師もいるということは、昔のように、一人の医師がオールラウンドにいろいろ診るということはもうできなくなっているということが一つ。

 第二に、これは大きな要素だと思うんですけれども、女性の医学界への進出ということで、もう既に医学部入学段階で女性の割合は三二%になっている。全体の中の医師の割合では二〇%ということであります。

 ただ、女性に、男性、特に往年の男性のような働き方を要求するというのはこれは無理でありまして、当然、女性の属性として出産とかということもある。また、そもそも、猛烈人間的なことを、赤ひげ先生的なことを男であれ女であれ医師に要望するというような、当然だというようなこと自体も、本当に社会の中での職業のあり方としていいのかなという感じも当然いたします。

 そんなことを考えると、また、女性の進路でも、そのときお答えありましたけれども、行く進路が、例えば眼科であるとか、そういうところに進路先が非常に偏っていて、重労働を伴う外科的なものにはほとんど女性は進んでいないということもございます。

 そんなことを考えて、しかも、女性にも医学界にどんどん進んでもらわなきゃいけない、これは当然のことだろうと思うんです。日本の人的な財産をうまく活用するという意味では当然のことだろうと思うんです。

 そんなことを考えると、医師の必要とする数字というのは、私は、昔の数字ではじいたものよりもずっとずっと多いんじゃないのかなというふうに思いますが、私自身は医師は足りていないと。特に、現状でも、僻地などの地域については不足しているという実態があります。

 これについて政府はどういうふうに認識をしているのか、もう一回お尋ねをさせてもらいたいと思います。

高島政府参考人 お答えいたします。

 前回もお答えしましたが、二〇二五年度には三十二万から三十三万人必要ということでございまして、供給につきましても推計をして、二五年には必要数を満たすというのが今の推計でございます。

 しかし、委員御指摘になりましたように、医療の情勢、刻々と変化をしております。近年の医療が高度化しているという話とか、それから女性医師の増加、それから勤務医の負担が非常にふえている、こういった医療を取り巻く環境の変化、こういうものを踏まえまして、需給をしっかりやっていかなくてはいけないというふうに考えております。

 今年度の厚生科学研究ということで、医療需給に関する研究を行っております。この中でも、キャリアパスを含めた女性医師の状況だとか、在宅医療の関係だとか、そういったものを踏まえて今後どう需給予想をすべきか、そういった点を検討しているところでございます。

鈴木(望)委員 それでは、時間も来ていますので、当然今から大臣に御答弁をお願いしたいなと思っているわけですが、今のような答弁があって、引き続き研究をしていくということを踏まえて、私は、不足しているだろうというふうに思っているわけです。不足しているんだったら、新たな医師の養成ということについても考えてもいいんじゃないのかなと。

 その場合に、もちろん現在の選抜方法を否定するわけではありません。それはいい点もいろいろある。だけれども、欧米であるとか韓国その他相当多くの国が実施をしているメディカルスクール方式というものを取り入れて、多様な人材、本当にもっとやる気のある人とか、一回大学で薬学部に行ったけれども、もう一回考え直して医学部の方に行ってみたいな、医師になりたいなというような人、文科系からだってそういう人はいるわけですので、そういった人をもう一回、人生再チャレンジじゃないんですけれども、やってもらうようなシステムを取り入れていくということは重要じゃないのかな。

 ちょっと主張ばかり言って申しわけありませんが、その観点で、平成二十三年十二月に政府は論点整理をして、結論には至っていない、だから研究もするということでありますけれども、その結論はいつごろ出すのか。それ以外のことを含めてメディカルスクールについて文科大臣に御質問をして、終わりにしたいと思います。よろしくお願いします。

下村国務大臣 時間がオーバーしていますので端的にお答えしたいと思いますが、厚労省や日本医師会は、今のままいけばいずれはカバーできるということでありますが、鈴木委員が御指摘のような感覚の方が、私は、国民感覚に合っているのではないかなと率直に思います。

 そのために、東北地区において一校、医学部新設を三十六年ぶりに認めることにしたというのもその一環でありますし、また、国家戦略特区の中で、既存の医学部では対応できないような先進的な国際医療の視点から、国家戦略特区の一つの指定になっているというのも今後の課題だというふうに思います。

 そして、メディカルスクールの件については、結論は出ておりません。その中で私が思っているのは、やはりアドミッションポリシーです。

 例えば、東大医学部というのが日本の医学部の中で最も難しいとされているところでありますが、百年以上たって、医学部出身者で例えばノーベル賞受賞者はゼロである。この間、利根川進さんというノーベル賞受賞者が私のところに来られまして、シカゴ大学は東大医学部ほど実際入るのは難しくはない、しかし、学部卒業者だけでノーベル賞受賞者が六十九人いると。

 そういう意味で、入学のときからどういうアドミッションポリシーをするのかが今後の大学の課題だということで言えば、医学部の入学試験のあり方も、そういう視点から考えていく必要があるのではないかというふうに思います。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。引き続きの御検討をよろしくお願いいたします。

 終わります。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いいたします。

 きょうは、まず、官民一体型教育に関してお伺いしたいと思います。

 先般、四月十七日に佐賀県武雄市の樋渡市長等が文科省の記者会見室で、公立学校と民間学習塾による官民一体型の小学校を来年四月に創設するという記者会見を行いました。知識重視から、対話力や問題解決力を鍛える教育への転換を目指すということで、何と、児童は校区への居住を条件に全国から募集するという非常に斬新な発想でございます。遊び感覚で数学的思考力を身につける、読書と作文を中心に国語力を伸ばすということなんですけれども、おもしろいなと思ったのが、一緒に参画する学習塾の花まる学習会というものがございます。

 この教育コンセプトが、受験一辺倒ではなくて、飯が食える大人に育てる。非常にわかりやすく、親をもってこれぐらい納得せしめるようなキャッチフレーズはないんじゃないかと思うような言葉でございます。

 この官民一体型教育、今までは、タブーではありませんがなかなか進んでこなかったのが現実です。特に、自治体ベースが推進をするという話は今回が初めてということでございます。

 民間学習塾と公教育とが連携をする、そして質の高い教育を行う、この官民一体型の学校経営をどんどん私は支援して推進すべきだと思います。大臣の御見解を賜ればと思います。

西川副大臣 柏倉先生、御質問ありがとうございます。

 今までの公教育の中で、一般的に、大学の受験体制、これからいろいろ変わっていくと思いますが、それに鑑みて、もう塾に行っていないと受験がなかなか達成できないというようなそういう風潮がかなりある中で、塾に行くという子供たちの割合というのはかなり多いのは事実です。そういう中で、公教育が塾はけしからぬというような、ある意味ではお互いに否定し合うようなそういう関係はあったと思うんです。その中で、今回、佐賀県の一緒にやっていこうというこの試み、私はすごくいいと思っています。

 そういう中で、実は今の公教育が、ある程度家庭の力が一体的に低下していく中で学校というのが児童の生活まで含めたあらゆるものを請け負っているという実態がありますから、いわば教えるところの、本当の一番大事な授業のところの技術力というんでしょうか考え方、そういうことが、むしろそこだけに特化してやっている民間の塾の方がある意味では創意工夫にすぐれているというのはあると思うんです。

 ですから、そういうところを、一つの垣根を取り払ってお互いに協力し合って、子供の教育のために一番いい教え方は何か、そういうことで協力していくことというのは、私はむしろいいことだと思いますので、この武雄市の試みは文科省としても、多様で質の高い教育を提供するということが一番重要でございますので、子供たちの学力向上のために、これからも情報提供をいただきながら温かい目で見守ってまいりたいと思っております。

柏倉委員 ぜひ政府としても支援をしていただきたいと思います。

 いろいろな教育の形がこれから模索されてくるんだと思います。先日まで議論をした教育委員会、教育行政、これも地域で多様なものがあると私はずっと言っておりましたし、やはり、どういったものが最高の教育なのか、これはもう釈迦に説法ですが、どんな地域でも試行錯誤している。これも一つの、ある意味魅力的な類型だと私は思うんです。

 これは自治体から発信するというところでも地に足がついているものというふうに確信をしておりますので、ぜひ政府も注視をしていただいて、しかるべき支援、今後検討していただければと思います。

 それでは次、またこれは佐賀県武雄市の話題なんですけれども、反転授業、これを積極的に活用していく、反転授業をやっていくということでございます。

 反転授業というのは、わかりやすく言えば、今までの学校で授業を習ってそれで家で復習をするという形式から、タブレットなんかを有効活用して、まずおうちで授業の前に予習をする。最大限ICTの技術でわかりやすく説明されている動画等を使ったカリキュラムで予習をして、その後授業を受ける。この授業も、互いに知恵を出して、わからない問題なんかに関して自分一人、先生とマンツーマンではなくて、議論をしながら解決策を模索していく、出していくという非常におもしろいやり方なんです。

 もう二〇〇〇年代から米国ではかなり広く行われているというやり方のようですけれども、これを佐賀県の武雄市でやはり今後またやっていくということでございます。今まで教員個人が取り組んだ例はありますけれども、自治体単位でこの反転授業を取り入れるというのも、この佐賀県武雄市が初めてのようでございます。

 この共同学習の観点というものも大事にした反転学習、これをぜひ政府にも推進していただきたいと思いますが、政府の御見解を賜ればと思います。

西川副大臣 私たちも子供のときにいわば予習、復習というのをよく言われました。確かに、実際には小学生のときにそこまでしっかりやる子というのは余りいなかったと思いますけれども。予習と言われてもどういう、教科書をせいぜい読むくらいという中で、タブレットで具体的に授業の、ある意味ではかいつまんだポイントをしっかりと画面で見せるというのは、子供にとって非常にやりやすい、わかりやすい予習方法だと思うんです。

 そういう中で、実際は、先生が一方的に教えるということでなくて、日本の児童、子供たちは、やはりディベート力とか言葉でしっかり自分の意見を言うとか、そういう能力がやや欠けている部分というのはあると思いますので、そういう意味で、ある程度の知識を持った上で、実際の授業では、疑問点とかそういうことを集中的に先生にお聞きしたり、みんなで話し合って問題点を探していく、理解を深めていくというのは、大変効果のある授業形態だと思っております。

 そういう中で、今回、四月に設置したICTを活用した教育の推進に関する懇談会におきまして、ICTの特徴を生かした教育方法の一例として、この反転授業、大変効果的だという評価もいただいていることでございますので、この武雄市の新しい取り組み、全国で多分いろいろと初めてのことなんだろうと思いますが、文科省としてもしっかりと見守ってまいりたいと思いますし、より共同型の授業ということもこれからしっかり考えていきたいことだと思っております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 このタブレットを使った反転授業、アメリカでは急速に拡大をしていて、その効果のほどもある程度実証済みだというところもあると思います。

 これは、やはりどうしてもネックになるのは、ICTのタブレット、iPad、それをどうやって普及させるかというところなんだと思います。この観点からこの委員会で質問をさせていただくこともあるんですが、文科省さんは非常に積極的だというふうに私認識しております。

 私も予算委員会で麻生大臣にもお願いをしたんですが、ぜひこのタブレット、これをできる限り配付して、読み書きそろばんだけじゃない今の教育、クリエーティビティー、こういったものも創造すべく、その教育推進のためにもこのiPadをぜひできるだけ多くの小学生に配付してほしい。これはどうしても財源的な制約で、残念ながらできないというところがあるんだと思います。

 たびたび伺って恐縮なんですが、ぜひ大臣、今後このICT教育、進めていくんだというその御決意のほどをいま一度お聞かせいただければと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、教育においてICTを活用することは、子供たちの学習への興味、関心を高め、わかりやすい授業や子供たちの主体的な学びを実現する上で効果的であり、確かな学力の育成に資するものであるというふうに考えております。

 文科省では、昨年度まで、学びのイノベーション事業として学校におけるICT活用の実証研究を実施してきたところでありまして、ICTを活用した指導方法やデジタル教材を開発するとともに、ICT活用の教育上の効果について検証を行ったところでございます。

 教育の情報化については、平成二十五年六月十四日閣議決定された日本再興戦略において、二〇一〇年代中に一人一台の情報端末による教育の本格展開に向けた方策を整理し、推進するとともに、デジタル教材の開発や教員の指導力の向上に資する取り組みを進めるというふうにしているところでございます。

 財源問題がありますが、先日、ICT関係の業者の方々と話をしたとき、アメリカではそういうのを寄附してもらってそして広げているという話がありました。

 ですから、まずはそういうタブレット等、自治体によって既に進めているところもありますが、ぜひ民間とあわせて、また、情報ノウハウも自治体だけではちょっとつくれないというふうに思いますし、まさに武雄市のような事例の情報教育版というのをもっと大がかりにやるということは、結果的にはそれは民間のICT関係にとっても将来的にはソフトの部分でプラスになる話でありますから、トータル的な取り組みを戦略的に考えていくということは非常に重要であるというふうに思います。

 財源がないからできないということじゃなくて、財源がない中でいかに早く促進するかということについて文部科学省として主体的にそういう仕組みを、「トビタテ!留学JAPAN」のような形で、官民ファンドのような、そういうことも含めて考えていくべきだというふうに思っております。

柏倉委員 非常に前向きな御答弁をいただいてありがとうございます。やはり、この領域、いろいろな制約がある中、今大臣がおっしゃったような創意工夫で、文科省主体でぜひ進めていっていただきたいと思います。

 最後の質問ですが、これは日本文化に関することです。今回は相撲に関して質問させていただきたいと思います。

 もう五月場所も終盤にかかってまいりまして、いよいよ優勝レースも絞られてきた感がございます。私も、私のことながら恐縮ですが、昔から、小さいころから相撲が好きでずっと見てまいりました。

 私のころは北の湖と輪島時代でございまして、北の湖は嫌われていたんですが、私は基本的には北の湖は大好きで応援をしておりました。その後、いろいろな、千代の富士時代から若貴時代、そして、朝青龍ひとり勝ちの時代から、今、白鵬の時代ということになっております。

 大臣の御地元、御実家ですか、群馬県でもすばらしい力士が多数輩出しておりまして、私は基本的に琴錦が大好きでして、サインももらったことがあるんです。

 日本というのは相撲に対する価値観はそれぞれ違うんですが、やはり日本固有の文化ということで、日本の国技が相撲だというのは、恐らくかなりの方は認識しているんだと思います。

 そこで、今外国人力士が非常に元気で頑張っております。読み上げますと、これは幕内ですけれども、白鵬、日馬富士、鶴竜、碧山、旭天鵬、魁聖、玉鷲、照ノ富士、大砂嵐、貴ノ岩、臥牙丸、時天空、旭秀鵬、蒼国来、荒鷲と十五人が、四十二人中十五人が外国人力士なんですね。

 私は、これはこれで、力ある者が上に行く、こういう世界だからいいんだろう、しかも国際色豊かになって開かれた相撲界、これはいいんじゃないかと思う一方、このままいくと日本人力士が幕内からいなくなってしまうんじゃないかという不安にとらわれて、夜寝られないこともあるわけでございます。特に、NHKの深夜のダイジェストなんかを見ていますと、やはりなかなか、外国人力士、元気なのはいいんですが、日本人力士はちょっと寂しいなと思うこともしばしばなわけです。

 そこで、今後このまま基本的にはやっていくしかないと思うんですが、外国人力士が多いというこの日本の国技、この現状に関する大臣の御所見を賜ればと思います。

下村国務大臣 七年前私も、官房副長官のとき、内閣総理大臣杯を優勝者に渡すということで四回行きましたが、四回ともモンゴル出身の力士でありまして、日本人に渡せなかったというような残念な思いが率直に言ってあります。

 御指摘のように、大相撲で多数の外国人力士の活躍というのは、日本の伝統的な競技、文化の一つである大相撲がある意味では国際的に普及しているというあらわれで、前向きに評価する部分もあるというふうに思います。

 一方、本場所における日本人力士の優勝が平成十八年一月場所の栃東関以降なくて、日本人横綱が平成十五年一月の貴乃花関の引退を最後に十年以上誕生していない状況を見ると、非常に寂しい思いがいたします。

 最近では遠藤関など若手日本人力士の活躍等によりまして入場者数も増加しているということでありますが、日本人力士の方々には、大相撲が日本の伝統的な競技、文化であることに誇りを持ち、外国人力士と切磋琢磨しながらますます大相撲を盛り上げていっていただくことによって、若い人たちが自分も関取になりたいと思うようなムーブメントをぜひつくっていただきたいと思いますし、また、学校で相撲ができるような環境整備について、文部科学省としては支援をしてまいりたいと思います。

柏倉委員 もう時間が過ぎました。

 これも私はライフワークとして取り組んでいきますので、今後ともぜひよろしくお願いいたします。

 これで終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いいたします。

 きょうは、初等中等教育における大学への進学ですとか大学進学実績、こういったものについて伺いたいのですが、私も地元で学校の卒業式に出させていただくと必ず進路先の資料というものを渡されて、それが国立大学、有名な私立大学の順に並んでいる。中には、学校の廊下にきれいな字で、生徒さんがどこの大学に入ったか、有名な大学順にそういったものが張り出されている学校もある。私は、こうした大学進学実績が非常に重視されている傾向に疑問を感じておりまして、まず大臣にその意識を伺いたいのです。

 大臣は群馬県の高校をお出になっていると聞いておりますが、大臣は、例えば自分の母校は東大に何人入ったとか、県内のほかの高校より進学実績が上がってきたとか、そういったことをお気にされたことはございますか。

下村国務大臣 率直に言って、非常に気になります。選挙区は東京の板橋で、東京に住んでいる方がはるかに長いですけれども、母校を含め群馬の高校が、どんな大学実績が、昔から比べて今変化があるのかというのは関心があります。

井出委員 それは恐らく多くの方がそうなのかなと思うのですが、私は、大学の進学実績ですとかそういったものが余りクローズアップされ過ぎてしまうと、教育の内容よりも成績評価の方に重きが置かれてしまって、進学したら内容を忘れてしまう、社会に出たときに、就職に学生時代の勉強がつながっていくのかなというところに疑問を感じております。

 まず、今、日本の教育において大学進学実績、そういったものを重視していくことが重要なのかどうかというところの御所見を伺いたいと思います。

下村国務大臣 結論からいって、それは非常に重要だと思います。

 この二十年間経済成長してきた国々を見ていると、高等教育に力を入れている国がやはり経済成長しているんですね。これは大学進学率だけでなく、高等教育ですから専門、専修学校を含めてでありますけれども、やはり教育によってスキルを高めて、そして、より社会に高度な人材力を送り出すということでは、大変重要なことであるというふうに思います。

 ただ、御指摘があったように、大学に入ればいいということではなくて、残念ながら、今は日本の大学生、高校生もそうですが、アメリカの大学生、高校生に比べると、家での学習時間が二分の一ぐらいしか勉強していないというのが実態なんですね。これは、日本の高校生、大学生が怠けているというよりは、日本の高校、大学のシステムが、入るだけで満足してしまって、その後いかにきちっと勉強して社会に送り出すということについて、大学側の教育の仕方については大いなる課題があるというふうに思います。

 ぜひ、高等教育まで受けるわけですから、有為な人材を、大学側はきちっと育成を今まで以上にすることについて考えていただいて、そして社会で本当に必要な人材育成をさらに大学側は努力をしていただく必要があるのではないかというふうに思います。

井出委員 もちろん大学の努力というものが大切なのは言うまでもないんですが、私は、大学進学実績が重視をされる、大学に入ることが目的化してしまっているのは、一つ、社会の考え方の責任もあるのではないのかなと。

 週刊誌を見れば毎年必ず有名大学合格者ランキングですとか、各都道府県においても大学の進学実績を、ことしはこっちの学校の方がよかったとか、昔はこの学校はよかったけれども今は全然だめだよねとかそういうことが言われておるんですが、そうした社会の考え方、風潮についてはいかがお考えでしょうか。

下村国務大臣 昔は私はすごく関心を持っておりましたが、最近はどこの高校からどんな大学に何人ぐらい入っているかということについては率直に余り関心はありませんが、同様に、多分昔はもっと週刊誌等がいろいろなところでいろいろ出してもっと売れていたのではないか、今はそれほど売れなくなってしまっているところもあるんじゃないかなというふうに思いますから、物差しがそれだけでないというような社会になっていることは言えるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 ただ、週刊誌等でランキング表を出しているかどうかということは別にして、できるだけ大学に行かせたいと思っている親がたくさんいるということは、これは事実なわけですね。行くのであれば、できるだけ名門といいますか、そういう大学に行かせたい、あるいは本人も行きたいと思っていることも、これは事実だというふうに思います。

 なぜかというと、これは厚生労働省が二〇一三年に調べた調査なんですが、高校卒業と大学卒業における平均的な生涯獲得収入が、トータルで九千万も開きがあるんですね。つまり、大学四年間行ったか行かないかによって結果的に生涯獲得収入が九千万開きがあるのであれば、それはやはり高卒よりは大卒の方で行かせたい、あるいは進学させたいというふうに思うのは、これは社会の常であるというふうに思いますし、問題は、何を学ぶかということが今は問われているというふうに思います。

 私はできるだけ、大学に行きたいという人に対してチャンス、可能性が広げていけるような、奨学金制度や学費の負担軽減がそうですけれども、ぜひそういうことをこの国はもっと気を配るといいますか配慮する、チャンス、可能性を潰さないような環境をつくっていくということが必要だと思います。

井出委員 今、将来の収入のこととかを考えればそういったことを希望される方も多い、それはもっともだなと思うんですが、大学に行くことが目的化をしてしまう、そうすると、せっかく各高校で特色のある教育をやっていても、その特色が生徒にとっても余り意味をなさなくなってしまうのではないか。

 一つ、私が落選中に家庭教師をやっていたときに、地元の農業高校に進学をさせたお子さんがいたんですが、私は、農業に関心があるならいいじゃないかと。ところが、彼は学校と相談して、余り勉強は得意じゃない、農業学校だと英語の授業時間が少ない、英語は苦手だ、どうもそういうところで希望校を決めたようなんです。

 私は、専門学校とか農業高校、高専とかそうした将来の職業に結びつく学校への進学ですとか、また、働きながら学ぶことのできる定時制の高校ですとか、そういったそれぞれの学校の目的、本質をもっと世の中が評価しなきゃいけないと思っていて、その必要性を強く感じていて、現状はそうした意識が余りないと考えているんですが、そのあたりの問題意識はどのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 それは教育再生実行会議でも重要なテーマになっておりまして、高専は非常に人気がありますが、農業高校を含めた専門高校、そういう学校に対して、普通高校に入れないからそういうところに行くというような、受け皿としてのそれぞれの特徴ある学校では、存在理由そのものがやはり問われてくるというふうに思うんですね。

 一方で、そういう職業高校というのは、やはり現実的な問題を抱えておりますので、来週月曜日は、都内の商業高校それから工業高校を視察に行って、現場の生の声をぜひ教育再生実行会議の委員の方々と一緒に視察をしてきたいというふうに思っております。

 そういう職業高校に行った高校生が、その後それがステップアップになっていくような、例えば、大学に入ってさらに学びたい、その職業をさらに専門的に、高度に学びたい、あるいは就職するときの問題等含めて、改めて、かつての職業高校はそれなりのプライドと存在とまた価値があった。それが今やや、農業高校は結構また違う視点から見直しがされていて、人気の上がっている学校も大分出てきていますけれども、改めて、職業高校のあり方についてはしっかり国も検討しなければならない、今そういう時期に来ているというふうに思います。

井出委員 ぜひ、その学校の特色を見てそこに進学を希望する生徒さん、また、学校の先生の方も、その学校の存在意義を見て自信を持ってそこにしようと生徒さんに薦められるような、そういう方向で検討していただきたいと思うのです。

 あともう一つ。大学の進学実績に社会の思いが偏っていて私が問題だと思うのは、大学の進学実績の対象となっている大学が全て国内なんですね。

 昔は、私のころはほとんど周りにはいなかったんですが、最近ですと、日本の高校を出てそのまま海外の大学、日本の大学を選ばないで海外に進学する方も結構私の周りでも話を聞くようになってきまして、そうした、日本の高校から海外の大学に直接進学する生徒さんがふえているのかどうか。また、こうした海外の大学に直接進学していくということを文部科学省としても推奨するべきなのかどうなのか。そのあたり、どのような御認識なのかを伺いたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、近年、日本の高校卒業後、外国の大学への進学を希望する若者がふえているというふうに言われております。文科省としては、正確な実態の把握はしておりませんが、海外の難関大学を目指す高校生が増加傾向にあることや、予備校等による海外大学の受験に対応した専門コース開設の動き等が報じられているということから把握をしております。

 これから国際バカロレアを二〇一八年までに二百校にするという予定でありますし、さらに、ことしからはスーパーグローバルハイスクールを五十六校指定いたしましたが、二百五十校を超える高校から応募がございました。

 こういうことを通じて、もうフィールドは日本国内でなく、海外も含め自分に合ったすばらしい大学を選択する、そういう時代になってきているというふうに思いますし、そういう視点から、海外にチャレンジして学ぶ、そういう学生に対しては、文部科学省としては積極的に支援をしていきたいと考えております。

井出委員 ぜひ支援をしていただければと思います。

 冒頭、大臣は、自分の母校の進学実績も気になるということで、ちょっと私と思いが違うのかなとも思ってしまったんですが、これから少子化が進んでいく中で、いい学校、いい大学にたくさんの人を輩出すればというこれまでのそういった考え方も、少し、もっと一人一人の子供が自立できるように、教育の内容、学校の特色、そういったものが表に出てきてほしいなと私は思っております。

 ぜひこの問題、これからも一般質問の際にさせていただきたいと思いますので、またよろしくお願いいたします。きょうはありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、国立霞ケ丘競技場の問題についてお伺いをいたします。

 国立競技場の改築スケジュール、予定というものを見せていただくと、三月末までに基本設計を終えるという計画であったはずなんですけれども、ずれ込んでまいりました。

 これは局長に確認しますが、なぜ基本設計がずれ込んでいるんですか。

久保政府参考人 新しい国立競技場の基本設計につきましては、本来、昨年九月にオリンピック・パラリンピック東京大会が決定して以降十月から設計に入る予定でございましたけれども、十二月までの間、建設規模ですとか経費の節減の検討を行っておりましたため、スタート時期が一月にずれ込んでおりました。

 まずそこで日程がタイトになっておりましたことに加えまして、ことし二月の首都圏における記録的な降雪があったことを踏まえまして、開閉式屋根部分の安全性に関し改めて検証する必要が生じたため若干ずれ込んでおりますけれども、現在作業を行っておりまして、今月中を目途に作業を完了する予定であると聞いております。

宮本委員 スタートもずれ込んだが、大雪を体験して、開閉式屋根の強度についての検討を行っているという御答弁でありました。

 それで、大雪の影響はどういうふうにクリアすることになりましたか。

久保政府参考人 具体的な基本計画の報告をまだ受けておりませんので詳細を承知いたしておりませんけれども、開閉式屋根の部分につきまして、若干その構造を見直して強化を図る等によりまして安全性を強化したいというふうな検討を行っていると聞いておるところでございます。

宮本委員 こういうふうに、雪一つでも構造や設計を再検討せざるを得ない。そうなれば、三月末というスケジュールも今お話があったように五月中とずれ込んでいるわけですから、計画というのは慎重に検討することが必要だと思うんです。

 五月十八日付東京新聞によると、「二〇二〇年五輪会場について都が行う環境影響評価の計画に関し、巨大すぎると批判されているメーンスタジアムの国立競技場と、自然を破壊すると危惧の声が上がるカヌー会場の葛西臨海公園に集中して八十二件の意見が寄せられた。」と報じられております。「国立競技場は、「観客八万人収容時の周辺への騒音・振動の影響を十分に調査すべきだ」「競技場がある神宮外苑の歴史的経緯も踏まえて景観の調査を行うべきだ」などの意見が寄せられた。」こうも報じられております。

 これも文科省に確認しますが、こういう声を承知しておりますか。

久保政府参考人 この二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会実施段階環境影響評価につきましては、東京都におきまして本年三月に調査計画書を策定した後、本調査計画書に対する意見のパブリックコメントが行われているということは承知いたしております。

 その具体的な中身につきまして、文科省が報告を受けたわけではございませんけれども、この中で、先生御指摘のような、観客八万人収容の影響、それから、神宮外苑の歴史的経緯も踏まえて景観の調査をすべきだという意見が寄せられたとの報道は承知しているところでございます。

宮本委員 報道にあるように、景観や環境に対する不安や懸念が寄せられております。

 私は、昨年十二月四日の当委員会の質疑でも、一九九九年にIOCが採択したオリンピックムーブメンツアジェンダ21の「自然か人工かを問わず、地域状況に調和して溶け込むように建築、改装されるべき」、あるいは「施設は、地域にある制限条項に従わなければならず、また、まわりの自然や景観を損なうことなく設計されなければならない。」という条項も紹介をして、広く専門家の意見をよく聞いて、再度設計の見直しを図り、国民や東京都民の納得する計画に変更することを求めました。

 去る四月の十八日、東京都議会で我が党の都議が、広く専門家の意見もよく聞いて、国民、都民が納得する計画に変更すべきではないかと都に問いますと、都は、建設に当たりましては、国及びスポーツ振興センターが国立競技場将来構想有識者会議を設置し、その中で有識者や各分野の専門家による具体的な検討を行ってきている、こう答弁をされております。それは国の仕事ですから、都はそう答弁するのは当然だと思うんです。

 そこで、これも局長に聞きますけれども、国立競技場将来構想有識者会議では、景観や周辺環境に与える影響などについて、都の答弁のとおりきちんと調査や検討を行っておりますか。

久保政府参考人 日本スポーツ振興センターの中で具体的にどういう形で検討が行われたか、つまびらかにまでは承知しておりませんけれども、国立競技場将来構想有識者会議のもとに置かれまして具体的な施設整備のあり方を検討いたしました施設建設グループの中には、環境、景観の専門家が参画しております。

 具体的には、例えば、内藤さんは都市景観の専門家でありますし、安岡さんは建築環境工学の専門家でありますので、この方々がさまざまな専門的な見地から検討を行っていただいているものだと考えております。

宮本委員 その検討結果というのは公表されておりますか、局長。

久保政府参考人 その結果が具体的な全体の建築計画の姿になってきたものでございまして、その検討結果の過程につきまして、細かい事項までは公開されてはいないと思います。

宮本委員 やはりその中身を少し見せていただかないと、どういう検討がなされたかがよくわからないんですね。ぜひその検討内容の公表を求めておきたいと思うんです。

 環境の問題は、私も提案者となって全会一致で可決、成立したスポーツ基本法でも大事なコンセプトの一つであります。

 第十九条「スポーツに係る国際的な交流及び貢献の推進」でも、「環境の保全に留意しつつ、国際相互理解の増進及び国際平和に寄与するよう努めなければならない。」と定められておりますし、第二十七条の、オリンピック・パラリンピックなど「国際競技大会の招致又は開催の支援等」でも、「環境の保全に留意」することが特に強調されております。

 これは大臣に、基本的な事項ですから当然のことながら確認しますが、国はもちろんこのスポーツ基本法の条項と精神を尊重する、間違いございませんね。

下村国務大臣 尊重いたします。

宮本委員 ならば、当然、都の自主的なアセス任せにするのではなくて、国として独自に景観や周辺環境に与える影響などについて調査すべきではないか、こう思うんですけれども、スポーツ・青少年局長、いかがですか。

久保政府参考人 今回東京都が行っております環境影響評価自体が、環境影響評価法に基づくものというよりは、IOCに対しまして特にいろいろな影響がないことを数字的に保証するために、東京都がみずからの発案で立候補ファイルに記載して調査を追加的にやろうというものでございます。したがいまして、建設実施段階での環境影響評価を行うことによりまして、全体、国も加えました各施設の評価が行えるものだと思っております。

 ただ、この環境影響調査というのは、実際に建築を行うときですとか、あるいはオリンピック開催期間中の影響とかが主でございますので、それ以後につきましては、さまざまな法律に基づきまして、国及び自治体が適切に問題ないかどうかを確認するという姿勢も大事だと思いますけれども、そういう観点では、国としても今後とも騒音等の影響につきましては配慮に努めていくことは必要だと思っております。ただ、現時点で直ちに調査を行う必要があるとまでは考えていない状況でございます。

宮本委員 もう一つ聞いておきたいことがあるんですけれども、多く私どもに寄せられている意見、これは利用料のことも寄せられております。

 それで、現国立競技場は、老朽化しているとはいえ、今回のポール・マッカートニーの公演とか嵐のコンサートのように営利目的の利用料はともかく、現在の一日利用料はイベント形態によって異なっております。客席をメーンスタンドのみ使用する自治体のスポーツ大会あるいは学校の運動会など営利目的でなければ、五十万から百万円で借りられておりました。千七百億円もの建設費を考えると、新しく建てかえたら利用料が高くなって、自治体や学校などはもう手を出せなくなるのではないか、そういう声も寄せられております。

 利用料はどういうふうになるのか、局長、お答えいただけますか。

久保政府参考人 具体的な利用料につきましては、建てかえ後の施設が実際に利用に供される二〇一九年度以降に利用料金の規定が改定されることになると思いますけれども、現在の国立競技場で使われている精神、つまり、アマチュアのスポーツ利用の料金は低廉な価格に維持するという事柄につきまして、その基本的な考え方は引き継がれるものと考えているところでございます。

宮本委員 ぜひ、手が出ないというようなことがないようにお願いしたいと思うんです。

 それで、新国立競技場の改築をめぐっては、予定地に隣接する東京体育館の設計者でもあり世界的な建築家の槇文彦氏が、巨大過ぎるとの疑義を出してこられました。それに続いて、建築のノーベル賞とも呼ばれるプリツカー賞を受賞された建築家の伊東豊雄さんが、このほど改修の可能性を示した案を発表されました。建てかえ案と同じ約八万人の収容人員で、陸上トラックも九レーンにつくりかえる案で、工事費は建てかえ案の半分程度で済むのではないかということであります。ザハ・ハディッドさんの案のみに固執して、一切聞く耳持たずという態度では困ると思うんです。

 私、有識者会議の議事録も読ませていただいたんですけれども、有識者会議の中で議論されている中に、先ほどのワーキンググループではなくて全体の有識者会議の議事録を読むと、ブレーキ役や慎重派というのはほとんどいらっしゃらなくて、とにかくどんどん進める、そういう発言ばかりなんです。

 私は決して建てかえるなと主張しているわけではありません。しかし、現国立競技場を解体してしまえば、もはや改修という選択肢はなくなるわけです。七月に解体工事が始まれば、もうどうしようもなくなるわけですね。基本設計だって、三月末と言われたものが二カ月間延期してこうして検討しているわけでありますから、やはりしっかりこういった方々の声に耳を傾けて、御納得をいただくということが大事だと思っております。

 これはもう最後の質問になりますが、大臣にお伺いしますけれども、現国立競技場が五十年、今度新しくしてさらに五十年、合わせて百年間のレガシーをつくる、そう言うわけですから、どれだけ広く国民、都民の納得を得るかというのが私は非常に大事だと考えます。

 これだけ世界的に著名な建築家の方々あるいは建築関係五団体などから厳しい批判が寄せられているわけですから、聞く耳持たずというようなやり方で突っ走るのではなくて、少なくとも解体については、しばらく延期してしっかり意見を聞くべきだと私は思いますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 御指摘がありましたが、国立競技場の整備については、日本スポーツ振興センターが設置した国立競技場将来構想有識者会議及びその下に置かれたワーキンググループ等におきまして、有識者の意見を踏まえ、オリンピック・パラリンピックの主会場にふさわしい規模や機能を取りまとめ、国際デザインコンクールを実施し、その後は、可能な限り規模や経費の縮減を行いつつ、現在は設計作業を進めているところであります。

 また、その間、専門家の方々からの意見に対しては、日本スポーツ振興センターにおいて改築計画の考え方等を説明してきております。

 仮に、今から改修する案を検討した場合、これまで検討に要した期間をさかのぼってまた一からやり直すことになりまして、二〇一九年春の竣工には間に合わないという日程になってしまいます。

 文科省としては、今後とも、さまざまな御意見も踏まえながら、国立競技場がオリンピック・パラリンピック会場にふさわしいものとなるよう、また、その整備を着実に進めてまいりたいと考えます。

宮本委員 時間が参りましたから終わりますけれども、ぜひ、検討内容の徹底的な開示ということと、それから、七月までの間でもまだ時間があるわけですから、こういう方々としっかり言葉を尽くして議論をしていただくことを求めたいと思います。

 大臣が担当大臣として二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックをオリンピックムーブメンツアジェンダ21の精神に立って真に成功させたければ、むしろ、しっかりと国民的な合意をかち取る努力と民主的な手続を踏んでいただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わります。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 この週末、地元北区のわんぱく相撲大会の開会式に出席をしてまいりました。小学校一年生から六年生までの男女の力士約八百名が参加をし、東京都大会そして全国大会を目指して熱戦が繰り広げられておりました。かわいらしい中にも大変気迫のある相撲で、笑いあり涙ありの対戦でございました。

 御承知と思いますが、このわんぱく相撲は、一九七六年に東京青年会議所が、遊び場の少ない東京の子供たちにスポーツの機会をより多く提供し、心身の鍛錬と健康の増進を目的に、身近に行えるスポーツである相撲を取り上げて、翌一九七七年に東京二十三区全域に展開したことに始まります。

 その後、東京青年会議所と日本相撲協会が連携をし、ルールを作成し、全国の市町村教育委員会と青年会議所に配付し、全国への普及を行いました。全国各地区で行われるわんぱく相撲は、両国国技館で行われるわんぱく相撲全国大会を目指し、全国で約四万人が参加をする小学生力士の晴れ舞台となっています。

 このような歴史ある大会でありますが、近年は、さまざまなスポーツの普及とともに、学校や地域での相撲大会や練習の場が激減したということも事実であります。学校体育の場では、ダンスが必修科目になるなど、環境は大きく変化をしております。

 先ほども質疑にございましたが、相撲は日本の誇る国技であります。大相撲において、日本人の横綱は十年以上誕生していないという先ほど大臣からの御答弁もございました。外国人力士が活躍することも大変望ましいことではありますが、日本人力士の活躍がこの相撲界をぜひ盛り上げてほしいと願うものであります。

 若貴も中野区のわんぱく相撲の参加者であったと伺っています。相撲に親しむ裾野を広げていく必要があるのではないか、先日、都議の方からも御示唆をいただいたところでございます。

 今、北区には小学校一校に土俵があるだけです。学習指導要領の改訂に伴って、二〇一二年から中学校で武道が必修になりました。土俵のある小学校がふえれば、子供と相撲の距離が縮まり、競技人口の増加にも結びつく可能性もあると考えるわけですが、小学校に土俵を設置していくということについて、ぜひ大臣の御所見をいただきたいと思います。

下村国務大臣 質問ありがとうございます。

 私は、東京青年会議所の出身でございまして、わんぱく相撲を主催した一人でもありまして、それが今、全国青年会議所、JCで広げていただいているというのは、東京JC出身としては大変ありがたいことだというふうに思っております。

 今御指摘がありました、小学校に相撲場が設置されているところは全国に八百二十四校、それから、中学校について三百四十一校でございますが、学校や地域の武道場の整備については、従前より国庫補助やスポーツ振興くじ助成により支援を行ってきておりまして、平成二十四年度からは、老朽化した地域のスポーツ施設の耐震化についても国庫補助の対象としたところでございます。

 地方自治体においては、こうした補助制度を活用していただき相撲場の整備を図るとともに、施設が有効に活用され、学校体育や運動部活動あるいは地域でのスポーツ活動におきまして、より一層相撲が取り組まれるというふうに期待をしたいと思います。

 また、スポーツ振興くじ助成においては、助成事業である旨の表示を助成の条件としておりまして、施設整備助成については、掲示板を設置する等、広報がなされております。

 文科省としても、相撲場の整備を引き続き支援するとともに、対外的な説明に努めてまいりたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。

 まさに下村大臣が主導してこられたということで……(下村国務大臣「主導じゃない」と呼ぶ)JC主催で、本当にアイデア盛りだくさんの大会でございまして、大変地域を盛り上げていただいていました。これからも、文科省としてもさまざまな角度からの支援を、私からもお願いさせていただきたいというふうに思います。

 次に、総合型地域スポーツクラブについてお伺いをしたいと思います。

 文科省が、一九九五年から、総合型地域スポーツクラブの育成事業を実施してきました。子供から高齢者、初心者からトップレベルまで、競技だけではなく、それぞれの目的で、それぞれのレベルに合わせてスポーツを楽しめるのが特徴であります。全国の市区町村に少なくとも一カ所は育成するという方針でスタートしたと承知をいたしております。その後、二〇一一年にスポーツ基本法が施行され、翌二〇一二年にはスポーツ基本計画が策定されました。総合型地域スポーツクラブの意義と目的がさらに明確に示されたものと思っております。

 これらを踏まえて、政府と地方公共団体、また民間団体が、しっかりとその趣旨を把握し、現在でも連携をされているのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

 私の地元では、クラブハウス、場所の確保が難しいという、スポーツに親しんできた高齢者の方からの御要望がございました。これは、地元の学校の統廃合がその一つの理由にもなってはいるんですけれども、日本全体として、今この総合型地域スポーツクラブの現状がどのように実行されているのか、また、具体的なよい事例があればぜひ教えていただきたいと思います。

久保政府参考人 住民が主体的に参画いたします地域のスポーツ環境の整備は大変重要でございまして、文部科学省では、子供から高齢者までの誰もがいつでもどこでも気軽にスポーツに親しめ、住民が会費や寄附金で自主的、主体的に運営する地域密着型のスポーツクラブであります総合型地域スポーツクラブの育成を図ってきているところでございます。

 スポーツ基本計画に定められております目標は、「各市区町村に少なくとも一つは総合型クラブが育成されることを目指す。」ということでございます。

 現在は、クラブ数でいけば、昨年七月現在でございますけれども、三千四百九十三。それから、市区町村設置率の推移につきましては、十年前、平成十六年の二二%から、二十五年度には約八〇%というふうに上がってきております。

 その達成に向けましては、スポーツ振興くじ助成等を通じまして創設支援を行っているところでございまして、今後とも、その増加に向けたさまざまな支援をしていきたいと思っているところでございます。

 総合型地域スポーツクラブの好事例といたしましては、幾つかございますけれども、例えば愛知県半田市の総合型クラブでは、中学校の体育館を兼ねて、市立の地域スポーツ施設を学校内に建てまして、その指定管理者として総合型クラブが運営を預り、学校や地域と連携した活動を行っておられるところもございます。

 また、それらのニーズも踏まえながら、いろいろな事業も文部科学省として進めてきているところでございまして、二十三年度からは、文部科学省の事業を活用して、トップアスリート等によります周辺地域のスポーツクラブや学校体育に関する活動等を支援する事業にも取り組んでいるところでございます。今年度からは、総合型クラブ同士のネットワークづくりも行っているところでございます。

 今後とも、各地域の総合型地域スポーツクラブのニーズも踏まえながら、地域のスポーツ環境において重要な役割を担い、コミュニティーの核となる総合型クラブへの支援を充実させてまいりたいと考えておるところでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 これから二〇二〇年に東京オリンピックを迎えます。トップアスリートと障害者の方々のスポーツにも注目をしながらも、広く国民がスポーツに親しめる環境をさらに充実をしていくということは、予防医学や福祉の面からも大変重要だというふうに考えます。

 子供からお年寄りまで参加できる総合型地域スポーツクラブ、数は伸びているということでございました。また、好事例もぜひ広く広めていただきたいというふうに思いますし、このスポーツクラブを再認識し、文科省としてもさらなる取り組みの充実を図っていただけるようにお願いをさせていただきます。

 次に、話はかわりますが、女性が輝く社会をつくる、これは安倍政権の最重要政策の一つで、二〇二〇・三〇ということで、二〇二〇年までに、指導的立場の女性が占める割合を三〇%にしようという国の目標を掲げられています。

 私の地元北区の区役所の職員の約三割が、今、女性が占めています。既に積極的に取り組まれている自治体もございます。

 予算委員会の安倍総理の御答弁で、そのために、保育の受け皿について、二十五年度と二十六年度の二年間で二十万人、五年間で四十万人つくる、そして待機児童という言葉をなくしていくという方針だという力強い御答弁がございました。二年間で二十万人、あと一年を切っているので、現状でどこまで進んでいるのか、大変気にかかるところでございます。

 そして、さらに政府は、これに続いて、小学生の放課後対策を子育て支援の第二弾と位置づけて、いわゆる学童保育の定員枠を約三十万人拡充するという方針を固め、この六月に見直す成長戦略に放課後子ども総合プランとして盛り込む方針だということでございます。

 平成十九年から実施されてきた放課後子どもプランでは、厚労省所管の放課後児童クラブと文部科学省所管の放課後子供教室を連携して進めてきたと思いますが、このたびのいわゆる学童保育を三十万人拡充するという方針に向けて、文科省としてはどのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

下村国務大臣 その前に、先ほどのわんぱく相撲ですが、ちょっと誤解を与えたかもしれませんが、東京青年会議所が中心となってスタートさせたということで、その中心を私がしたわけではないということでありますが、しかし、日本JCの会頭をされた池田さんの時代にはさらに日本JC全体で広げるように努力をしていただいたのではないかということで、ちょっと御紹介もしておきたいと思います。

 それから、放課後児童クラブ、放課後子供教室の件でありますが、御指摘のように、女性の活躍推進のため、いわゆる小一の壁打破が重要であり、三月の産業競争力会議において、厚労省と文科省が協力し、放課後児童クラブ等の拡大に向けたプランを策定するよう安倍総理から指示がありました。

 現時点では、報道であったように政府としての数値目標を固めたという状況ではまだありませんが、待機児童解消のための放課後児童クラブの拡充を目指し、厚労省と協力して新たなプランの策定に向けた検討を進めておりまして、その中で、放課後子供教室と放課後児童クラブの一層の連携方策について検討しております。

 具体的には、一つは、一体型を中心とした放課後子供教室と放課後児童クラブの計画的な整備を行う、二つ目に、学校の余裕教室等の活用促進を行う、三つ目に、全ての子供たちを対象とした学習支援や多様なプログラムの充実などを図ってまいりたいと考えております。

 また、現在国会で審議中の地教行法改正案において設けることとしております総合教育会議を活用し、総合的な放課後対策について、首長と教育委員会が十分に協議することも期待できるところだと思います。

 今後とも、厚労省と一層の連携を図りつつ、放課後対策の一層の充実に向けて検討を深めてまいりたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。

 報道によりますと、国が二十七年度に始める子育て支援新制度は、約四百億円を学童保育の指導員の待遇改善などに充てる計画であったが、財源のめどが立たず二百七十億円まで縮小されたという報道もございました。

 具体的な目標を立てることは大変大事だというふうに思いますし、ぜひどちらも達成させなければならないと考えておりますので、厚労省とも一体となり、下村大臣のリーダーシップのもとでやり切っていただきたいということを切にお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 先週の十六日の日に、教育委員会制度を見直す地教行法改正案が本委員会で採決され、また、昨日の本会議で衆議院を通過いたしました。これからは参議院の方での審議ということになるかというふうに思います。

 残念ながら、質問時間が足りずに、法案審議の際にお聞きしようとしたんですけれどもできなかったことも幾つかございます。その中で、今回は、法案の中身というよりも、地方教育行政の今後についてどのようにお考えになっておられるのかということについて質問をさせていただきます。

 まず最初に、県費負担教職員の人事権、そして、給与負担のあり方についてお伺いをいたします。

 県費負担教職員については、市町村職員の身分でありながら、人事権と給与負担は都道府県にあるということでございます。このことによって、先生が地域に根差す意識を持ちにくい、あるいは、研修などによって地域との結びつきを強めてもらおうとしても、いずれ人事異動で他の市町村に移ってしまう、そういうことも指摘をされております。

 そこで、より教育現場に近いところに権限を移す、つまり人事権と身分を一致させるべきとの指摘は、二〇〇五年の中教審答申、「新しい時代の義務教育を創造する」と題されたこの答申でも出されているところであります。

 また、二〇〇八年の中教審答申、「教育振興基本計画について」では、今後五年間に取り組むべき施策の一つとして、県費負担教職員の人事権の移譲が検討事項として盛り込まれております。この二〇〇八年の答申から、このときは五年間にということだったんですけれども、既に五年以上が経過をしているわけでして、今回の改正で、その方向性やあるいは基盤整備のあり方、これも法に明記すべきではなかったかなというふうには私も思っております。

 今回、参考人あるいは地方公聴会含めてかなりさまざまな方からお話を伺いましたが、その中でも、例えば福岡の地方公聴会では、九州大学の大学院教授である元兼陳述人から、県費負担教職員については、本来的には市町村レベルに任命権を委ねることが合理的であり、また、基礎自治体のレベルに人事や予算を移していくことは分権の流れに沿うものだというような御指摘もされておりました。

 さらには、参考人質疑で、千葉大の名誉教授である新藤参考人からは、日本の教育行政の特徴が縦の行政系列にあるんだ、この行政系列を断ち切ることが重要だというふうにも指摘されております。都道府県教育委員会が市町村教育委員会の上位に位置し、教員の目が都道府県教育委員会に向いてしまう、指導助言が学校現場に容易に浸透するのは教育人事権を都道府県教委が握っているからだ、だからまず教育人事権を市町村に移譲すべきだというようなことも著書の中で訴えておられます。

 同様の指摘は越大津市長からもされていたかというふうに思いますし、私もこの点についてはかなりの程度思いを同じくするわけですけれども、この県費負担教職員の人事権、移譲すべきとの指摘、あるいは、今後どのようにお考えなのかについて、まずお聞きをいたします。

前川政府参考人 御指摘のとおり、県費負担教職員制度は、市町村の公務員でございます小中学校の教職員の給与につきまして、これを都道府県が負担し、その人事権も都道府県教育委員会が握っている、こういう制度でございます。

 これは、財政力の弱い市町村ではなく都道府県にその給与負担をさせることによりまして、すぐれた人材を安定的に確保するということ、また、広域的に都道府県の中での人事を行うことによりまして、人材の偏在をなくし、適正な配置を図る、こういったことが目的であるわけでございますけれども、この制度につきましては、市町村、特に中核市等から、教職員が、設置者である市町村ではなく任命権のある都道府県の方を向いてしまうというような意見、あるいは、中核市につきましては既に初任者研修等の研修の義務がおりているわけでございますけれども、市で研修して育てた教職員が県による人事異動でほかの市町村に異動してしまう、そういうことについての不満が表明されているところでございます。

 御指摘のとおり、平成十七年十月の中教審の答申におきまして、小中学校の教職員の人事権を都道府県から市町村に移譲するということについての提言があったわけでございますけれども、これは引き続き検討課題になっているということでございます。

 昨年三月の義務づけ、枠づけの第四次見直しについての閣議決定におきましても、中核市に係る教職員の任命権、また給与負担、定数の決定、学級編制基準の決定等につきまして、「広域での人事調整の仕組みにも配慮した上で、中核市に権限を移譲する方向で検討を行い、小規模市町村を含めた関係者の理解を得て、平成二十五年度以降、結論が得られたものから順次実施する。」とされているところでございまして、これを踏まえて現在検討しているところでございます。

吉川(元)委員 やはり、地方分権の流れの中で、地方に権限を移していくということは、これは大変重要なことだろうというふうに思います。まさに今局長の方からもお話がありました財政力の問題等々というのは、これはやはりきちんと措置をしていかなければいけないというふうにも思います。

 その点に関連いたしまして、県費負担教職員の人事権を移す場合に、給与負担のあり方をどうするのか、あるいは、関連をいたしまして、教職員の標準定数をどうするのかという問題について、やはり整理を図ることが必要になるんだろうというふうに思います。

 十六日の委員会採決の附帯決議では、義務教育国庫負担制度を堅持しつつ、市町村に人事権を移譲させるよう検討することが盛り込まれてもおります。人事権を市町村に移した場合に、給与負担あるいは教職員の標準定数をどのようにしていくのが妥当だというふうに考えておられるのか、この点についてお聞かせください。

前川政府参考人 県費負担教職員制度のもとにおきましても、これまで、指定都市につきましては、給与負担は都道府県ではありますが、人事権につきましてはこれを指定都市の教育委員会が行使する、こういう仕組みになっておりました。

 この指定都市につきましても、人事権と給与負担は一致させるべきだという議論がもともとございまして、これは平成十七年の中教審の答申にも指摘されているところでございました。

 今般、この国会に提出されております地域の自主性及び自立性を高めるための改革を図るための関係法律の整備に関する法律案、これによりまして、これが成立いたしますと、指定都市立の小中学校の教職員の給与負担が指定都市に移譲されることになります。

 これによりまして、指定都市に関しましては、人事権も給与負担も、また、給与負担に伴いまして、定数を決定する権限、学級編制の基準を決める権限、これも指定都市の教育委員会におりるわけでございます。これによりまして、指定都市は、設置者として、また給与負担者、人事権者として一貫した権限、責任を負うということになります。

 指定都市につきましてこういった形で制度の見直しができますと、次なる課題といたしましては、やはり中核市以下の市町村について、人事権あるいは給与負担をどう移譲するのかということが検討課題になるわけでございます。

 一つの方法といたしましては、人事権をまず移譲する、また、給与負担については改めて検討するということもございますし、やはり人事権と給与負担は一致させることが望ましいという観点からいきますと、これを一括しておろすということも考えられるわけでございますが、給与負担を移譲する場合には、やはりこれに伴いまして、教職員定数の決定、また学級編制基準の決定、これは給与負担と一緒に移譲するのが適当であろうというふうに考えております。

吉川(元)委員 ぜひ検討を進めていただければと思いますし、また、小さなところはなかなか、まずは中核市をどうしていくのかということですけれども、小さなところも含めて、先ほど少しお話しありましたが、広域ということも含めて検討をしていただければというふうに思います。

 次に、今回地教行法の改正について非常に焦点になったのが、民意をどう反映させていくのかということだったろうと思います。

 私自身は、前回までの委員会等々でも言わせていただきましたが、選挙で選ばれた首長が全て白紙委任をされているわけではありませんし、とりわけ、教育については、中立性の維持という観点からも、首長が全てということにはならないだろうというふうにも思っております。

 ただ一方で、民意の反映ということについて言えば、これはやはり反映をさせていかなければいけないという考え方自体については私自身も全く同じ意見でありますし、そういった場合に、むしろ、地域の住民や保護者、あるいは学校現場の教職員が直接に教育行政や学校運営にかかわれるようにしていくことが肝要だとも考えております。

 この点については、京都市の門川参考人の方からは、徹底した現場主義と学校裁量の拡大、これは御自身の経験から強く訴えておられましたし、あるいは、常葉大学の小松参考人の方からは、教育行政の再生を言うのであれば、教育課程編成や人事、予算面での一定の権限を校長に委譲するような改革が必要だというようなことも指摘をされております。

 また、昨年十二月に取りまとめられました中教審答申でも、教職員配置や予算面での学校裁量、校長のリーダーシップのもとでの自主的な学校運営の必要性も盛り込まれております。

 こうした点について、文部科学省として今後どのように対応していくお考えなのかをお聞かせください。

前川政府参考人 多様な地域や子供の実情に応じた質の高い教育を実現し、また、保護者や地域住民の参画を得ながら学校運営を進めるということが大事だというふうに考えております。

 このため、校長が地域住民あるいは保護者の方々に対する説明責任をきちんと果たしながらリーダーシップを発揮し、その権限、責任において学校運営を進めるという体制を整えていくということが非常に大事なことではないかというふうに考えております。

 昨年の十二月の中教審の答申におきましても、教職員の配置に対する校長の意向を反映させる取り組みや、予算面における学校裁量を拡大し、校長のリーダーシップのもとで自主的、自律的な学校運営ができるようにすることが必要であるということが指摘されているところでございます。

 これを踏まえまして、文部科学省といたしましては、校長が自校の求める人材をホームページで募集する教員公募制の取り組みなど、教職員の配置に対する校長の意向の反映でありますとか、また、学校の企画や提案に基づいた予算の配分や、使途を特定しない裁量的経費の措置など、予算面における学校裁量の拡大などの取り組みにつきまして、説明会やフォーラム、広報誌等を通じて事例の紹介や啓発に努めるとともに、また、今年度新たに、学校裁量経費の拡大を促すための教育委員会における実践研究にも取り組んでいるところでございます。

 今後とも、自主的、自律的な学校運営の促進、また、校長による説明責任を果たすための仕組みづくりといったことにつきまして努力してまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 それでは、もう時間の方もありませんので、最後に、いわゆるコミュニティースクールについてお聞かせいただければと思います。

 委員会の中でも、地方公聴会でも実際の現場を見させていただきましたし、また参考人の皆さんからもいろいろなこの制度のよい点についてのお話もございました。数等々についてはもう既に委員会の中でも幾つか質疑がされておりますので、今回は、権限等々それから今後のあり方についてお聞かせをいただければと思います。

 今、コミュニティースクールということでいいますと、設置は教育委員会の指定、あるいは、委員も教育委員会の任命で、役割としては、校長の作成する学校運営方針の承認、さらには、学校運営についての校長や教育委員会への意見具申、あるいは、教員の任用についての都道府県教育委員会への意見提出ということが行われております。学校運営や教育内容についてもかかわることはできますけれども、その意味でいうと、意見具申あるいは意見提出という点に今のところとどまっております。

 これはいろいろなメリット、デメリットということがございますけれども、今後、この学校運営協議会の権限等々についてどのようにされていこうとしているのか、この点について最後にお聞きをいたします。

前川政府参考人 御指摘がございましたとおり、現在の地教行法上の学校運営協議会につきましては、学校運営について教育委員会または校長に意見を述べるということ、また、校長が作成する学校運営の基本方針を承認する権限を持つということ、また、教職員の人事に関しまして教育委員会に意見を述べることができる、また、それは教育委員会によって尊重されるべきことが法律制度上明確にされているわけでございます。

 学校運営協議会を設置する学校が着々とふえているわけではございますけれども、まだその数は限られております。今後それをふやしていくということは私どもの大きな課題だと考えております。

 あわせまして、学校運営協議会の機能につきまして見直しをしていくということも課題だというふうに考えております。現状におきまして法律上の責任とはされておりませんけれども、例えば、学校評価について学校運営協議会が行っているというケースは多々見られるところでございます。また、学校と地域との教育活動上の連携のためのコーディネート機能といったものをこの学校運営協議会が負っているというケースも非常に多いということでございまして、文部科学省で別途行っております学校支援地域本部事業と重なる機能を持っているというケースが多いわけでございます。

 こういったところにつきまして、学校支援地域本部事業との関係もにらみ合わせながら、今後、学校運営協議会の仕組み、すなわちコミュニティースクールのあり方につきましてさらに検討し、改善の方途を考えていくことが必要ではないかと考えております。

吉川(元)委員 しっかりと教訓を酌み取っていただいて、よりよきものにしていただくことをお願いして、私からの質問とします。

小渕委員長 次回は、来る二十三日金曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十五分散会


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