衆議院

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第22号 平成26年6月6日(金曜日)

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平成二十六年六月六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      小此木八郎君    鬼木  誠君

      神山 佐市君    菅野さちこ君

      木内  均君    工藤 彰三君

      熊田 裕通君    小林 茂樹君

      今野 智博君    桜井  宏君

      新開 裕司君    冨岡  勉君

      永岡 桂子君    野中  厚君

      橋本 英教君    馳   浩君

      比嘉奈津美君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君    菊田真紀子君

      寺島 義幸君    細野 豪志君

      吉田  泉君    遠藤  敬君

      椎木  保君    三宅  博君

      中野 洋昌君    柏倉 祐司君

      井出 庸生君    宮本 岳志君

      青木  愛君    吉川  元君

      山口  壯君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     今野 智博君

  小此木八郎君     橋本 英教君

  宮内 秀樹君     鬼木  誠君

  吉田  泉君     寺島 義幸君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     宮内 秀樹君

  今野 智博君     池田 佳隆君

  橋本 英教君     小此木八郎君

  寺島 義幸君     吉田  泉君

    ―――――――――――――

六月五日

 大幅な私学助成増額に関する請願(馬淵澄夫君紹介)(第一一七八号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(田嶋要君紹介)(第一一七九号)

 同(武村展英君紹介)(第一二一〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一二四九号)

 学校司書の法制化に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一二一一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一二五〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、萩生田光一君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会及びみんなの党の四派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。笠浩史君。

    ―――――――――――――

 学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

笠委員 ただいま議題となりました修正案について、提出者を代表いたしまして、その趣旨及び内容の概要を御説明いたします。

 政府提出法律案は、各大学が教育研究機能を最大限に発揮していくため、学長のリーダーシップの確立等のガバナンス体制の構築が不可欠であるという観点から、副学長や教授会等の職や組織の規定を見直すとともに、国立大学法人の学長選考の透明化等を図るものであり、一定の評価はできるものと考えております。

 しかしながら、政府提出法律案は、教授会が学長に対し意見を述べる事項について、「学生の入学、卒業及び課程の修了」と「学位の授与」の二項目のみを明記しており、その他の事項については、学長が意見を聞くことが必要であると認めるものに限定しております。

 教授会が専門的知見を持った教員によって構成される審議機関であることや、これまで大学の教育研究に果たしてきた役割等を考慮し、学長が大学運営を行うに際しては、教授会の意見を聞きながら行うことが望ましいと考えるものであります。学長が必要であると認めるものとすると、例えば、教育課程の編成等、大学の教育研究において重要な事項について教授会の意見が聞かれることになるのか、懸念があります。

 そこで、本修正案では、学生の入学、卒業及び課程の修了と学位の授与のほかに、学長が教授会に意見を聞くことが必要な事項を学長があらかじめ定めることといたしました。

 これらの事項には教育課程の編成や教員の教育研究業績の審査等が入ることが想定されますが、そのような事項をあらかじめ定めることにより、教授会としっかり協力しながら大学運営を行うことができると考えます。

 以上が、修正案の趣旨及び内容の概要でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

小渕委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省高等教育局長吉田大輔君及びスポーツ・青少年局長久保公人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳ですが、修正案について大臣に確認答弁を求めたいと思います。

 政府案についてまず読みます。第九十三条第二項第三号です。「学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」、ここでは主体が「学長が」と明確になっておりますので、学長の主体性が明確になっております。「教授会の意見を聴くことが必要である」と認めつつも、最終権限において教育研究に関する重要事項の最終決定権限を持つと非常にわかりやすく表現された政府案の文章であると思っておりますし、ここのところが実は今回の法案の肝だというふうに考えております。

 ところが、修正案では、「教授会の意見を聴くことが必要なものとして学長が定めるもの」という修文になっておりまして、「学長が」という主体性のある言葉が、主体性を薄めるような形で、文章における「学長が」という言葉の位置が変えられているんです。

 老婆心ながら申し上げますが、これでは、「教授会の意見を聴くことが必要なもの」という前提条件がないと重要な事項を決定できないのではないか、こういう裏読みもできます、私の性格が悪いのかもしれませんが。

 こういう読み方もできるとした場合には、この条文を根拠に置いて、教授会が、重要な事項を、必要なものとして学長と合意しなければ、合意しなかったことについては重要な事項ではないから決められないという、こういう攻撃を受けることもあるのではないかと心配をして、大臣に確認答弁を求めたいと思っています。

 なぜかというと、施行通知案を取り寄せて伺いましたら、こういうふうな文章になっているんですよ。「学校教育法第九十三条第二項第三号の「教育研究に関する重要な事項」には、教育課程の編成、教員の教育研究業績の審査等が含まれており、その他学長が教授会の意見を聴くことが必要である事項を定める際には、教授会の意見を聴いて定めること。」

 ということは、教授会の意見を聞かないと定められないんじゃないの、こういう見方もできるんですね。これが裏読みです。

 そこに私どもは、政府・与党一体としてこの案を練り上げた肝が骨抜きにされてしまうのではないかという不安を感じますが、私の指摘に対して大臣は、そうではないと明確に答弁をいただきたいと思っています。

下村国務大臣 おはようございます。

 さすが元国語の先生で、主語、述語について非常に厳密に捉えておられる質問だと思いますが、主語が変わっているわけではありません。あくまでも「学長が」ということでありますが、述語が「認める」から「定める」に変わったわけでございます。

 これは、御指摘のように、この修正案第九十三条第二項第三号において、「教育研究に関する重要な事項で、教授会の意見を聴くことが必要なもの」を定めるのは学長とされているわけであります。

 学長が定めるに当たっては、その権限と責任において行うことが必要であり、当該事項を決定するに当たって、教授会の意見を聞くことはあっても、あくまでも学長の責任において定めるべきものであるという点は全く変わることではなくて、御指摘のような御懸念の、結果的にこのことによって学長の手足を縛るということは全く考えておりません。

馳委員 改めて確認します。

 教授会の意見を聞くことは、学長が重要事項を定めるに当たっての前提ではないということでよろしいですか。

下村国務大臣 学長が、教育課程の編成それから教員の教育研究業績の審査等について教授会の意見を聞くことは、これは定めてもいいと思いますが、最終的に決定権者は学長があるということであります。

馳委員 私も、前回、細野委員の御指摘はごもっともだと思いましたし、また、事前に教授会の御意見を伺うことは重要だというふうに大臣が答弁されたことも妥当だと思いました。

 ところが、この文章だけでは、まさしく私のような性格の悪い者にとっては、裏読みができて、前提となる重要な事項について、教授会との協議がないと、調わなければ、それを定めることについて学長も教授会側も合意しなければ定められないんだから、定められないことについては決定権はないんだ、こういうふうな指摘が来るんじゃないかと、こういう心配を持つんです。

 そういうことはない、大前提ではないと。でも、話を聞くことは大事だよ、話を聞くことについては、こういうこととこういうことは一応聞きますよ、しかし、その聞きますよということを、協議が調わなかったら学長には決定権限はありませんよというふうに指摘されないようにしておかないとだめなんじゃないかなと思いますが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、学長が責任において定めるということであります。

 ただ、定めるに当たっては、これは教授会等の意見を聞くこともあってもいいということでありまして、事前に教授会と何の分野においてというか、具体的には、教育課程の編成それから教員の教育研究業績の審査がその定める範囲内ということでもあるでしょうけれども、教授会の方でこれを明確に定めるということが、教授会の意見をそのまま学長が聞くという前提条件ではないというのは当然のことであります。

馳委員 何回も言いますが、定めが学長と教授会で協議が調わなかった、だから学長には決定権限はない、こういう主張を教授会がしたときに、それは違うよと言えますね。

下村国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、学長が決定権者であります。

馳委員 あとは法文上のことなので、「定める」と「認める」との違いというのはどういうふうに理解したらよろしいのか、吉田局長にお伺いしたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 政府提案では「認める」という言葉を使っております。学長が、必ずしも事前に定めることなく、「教育研究に関する重要な事項」について随時教授会の意見を聞くことができるようにしているということがございます。

 一方、今回の議員提案のように「定める」というふうにした場合には、「教育研究に関する重要な事項」の中から教授会の意見を聞くことが必要な事項を学長が決めておくことになるというふうに考えています。

 「認める」と「定める」のいずれも、「教育研究に関する重要な事項」で、教授会の意見を聞くことが必要なものを学長が決めるという点では共通はしておりますけれども、「定める」と変更した場合には、教授会との関係で、限定された形で確定をするというところが違ってこようかと思います。

馳委員 終わります。

小渕委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 きょうは、これまでの質疑をもう一度まとめるような意味合いも持って、確認すべきことを質問させていただきたいと思っています。

 まず初めに、これも何回も議論をしてまいりましたが、大学自治と大学のガバナンスの関係において教授会はどういう位置づけであるのかということについて伺っておきたいと思います。

 少し昔のことを振り返ってみますと、教授会の規定というのは、戦前は帝国大学や官立大学だけに設けられていた、しかし、さきの大戦後、学校教育法の制定によりまして、いわゆる公立あるいは私立の大学にも適用する一般的な仕組みとして導入をされた、このように認識しております。背景には、戦前の滝川事件とか天皇機関説事件など、いわゆる国家による大学への介入の歴史、その反省から導入された、このように認識をしているところです。

 今回のこの学校教育法改正に反対する意見として、一つは、大学自治を侵害するものだとか、人事と予算に関する教授会の審議権の否定というのは学問の自由を脅かすものだ、こういう声も聞くわけなんですけれども、しかし、中教審の審議のまとめでは、このように記しております。

 「しかしながら、「大学の自治」の趣旨は、公権力から大学への不当な介入を排除するものと解されており、大学運営の範疇にある事項に、学部に所属する全ての教員が、意思決定に関与しなければならないということを意味するものではない。」

 そして、その注釈を見ますと、「例えば、甲南大学事件は以下のように判示している。「…人事に関する大学の自治は、寄附行為の定めるところにより業務決定機関である理事会に委ねられているのであって教授会にはその権限がなく、また学問の自由は各教員に保障されているとはいえ、そのことを根拠に、当然に、教員の解雇については教授会の解任決定が必要且つ有効要件であって、この決定が理事長の前記任免権限を羈束すると結論づけることは到底できない。」」このように記してあるわけでございます。

 これはもう本当に基本的な確認になりますけれども、大学の自治と大学のガバナンスの関係において教授会とはどういう位置づけであるか、どのように整理すべきか、そもそも論になって大変恐縮ですけれども、ここのところの理解について開きがあるとも思えておりますので、この点についてまず質問させていただきたいと思います。

下村国務大臣 大学の自治とは、大学における教授その他の研究者の研究と教授の自由を内容とする学問の自由を保障するため、教育研究に関する大学の自主性を尊重する制度であるというふうに理解されており、教育基本法第七条第二項におきましても、大学の自主性、自律性を尊重することが規定をされております。

 今回の改正は、大学において決定権を有する学長と、教育研究上重要な役割を担っている教授会との関係を明確にしようとするものでありまして、教育研究に関する大学の自主性を制約するものではありません。

稲津委員 ありがとうございました。

 次に、これも確認事項ですけれども、教育公務員の特例法についてということで伺っておきたいと思います。

 平成十六年の国立大学の法人化は、これは国立大学改革の大きな転機点であったというふうに思っております。

 法人化前までの国立大学の教授会は、憲法の保障する大学自治の観点から、公務員法制の特例として教員人事に関する教授会の決定権を認めていたわけでございますが、それでは、なぜ、公務員である国公立大学の時代においては教員人事について教授会に決定権を認めていたのか。反対に、法人化によって非公務員化されるところでなぜこの適用がなくなることになったのか。

 これも繰り返しの基本的な質問で恐縮でございますが、明確にしておきたいと思います。よろしくお願いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 法人化前の国立大学におきましては、国立大学の教職員の任命権を有する文部科学大臣との関係において、教員人事の自主性を保障するという理由から、教育公務員特例法において、特に教員の採用や承認等の人事に関する事項について、教授会の議に基づき決定するという仕組みが制度として設けられておりました。

 しかし、国立大学が法人化された後は、教員の任命権自体が文部科学大臣から学長に移行し、文部科学大臣が教員人事に関与することがなくなったという事情の変化がございます。

 したがいまして、教員人事について大学の自主性を尊重する観点から、具体的な選考手続を法律において定めていなくても、国との関係において教員人事に関する自主性は十分担保されるという状態になったということでございます。

稲津委員 もう一点、確認をさせていただきたいと思います。

 それは、大学における教授や教員の人事についてということでございますけれども、結局、この非公務員化によって、国公私立問わず、学校教育法における教授会の規定はいわば全く同じになったということだろうと思います。

 現行法の九十三条の、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」という規定、では、なぜ現行法では「重要な事項を審議する」ことにとどめ、それ以上の規定は設けられていないのか。それは、各法人、各大学のいわば自主性、自律性尊重の観点から、内部組織についてできる限り法令等で規定しない、そういう精神だったというふうに思っております。

 しかし、規定していないからといって、法の趣旨というものはあるわけでございまして、そもそも学校教育法は、教学面を規定する法律であり、国立大学法人法あるいは私立学校法のように経営面について規定する法律でない。ということは、学校教育法に基づいて設けられている機関である教授会は、当然のことながら、教育研究に係ることを審議する機関であるということになってくるというのが、これが中教審の審議まとめで示されているということでございます。

 そこで、ここで確認でお伺いしたいのは、現行法においても、またこの改正案においても、法律上の規定において、教授会が教授や教員の人事を行うことは法律上認められているのかどうか、このことを最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。

吉田政府参考人 教員人事につきましては、中央教育審議会の審議まとめにおいても示されておりますけれども、教員の配置とその選考に分けて考えるべきものでございます。

 教員をどのポストに配置をするかということにつきましては、学長が全学的な視点から判断すべき事柄でございます。一方、そのポストに誰を選考するか。これは、各学問分野に関する専門的な知見を有する教員組織において候補者の教育研究業績等を十分に審査することが重要でありますが、その上で学長が最終的に決定すべき事柄であるというふうに考えます。

稲津委員 終わります。

小渕委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 水曜日、九十三条について質問をさせていただいて、それを受けまして、今回修正案が各会派から提出されたということを評価したいと思います。

 特に、局長答弁を聞いておりまして改めて感じましたことは、仕組みとして、最終決定権は学長にある、これは教育研究に関することでも同様である、しかし一方で、特にこの教育研究に関することについては、教授会から幅広く意見は聞いた上で、最終的に学長が判断をする。その仕組みが、局長の答弁を含めて、最後は大臣が訂正をしていただきましたけれども、やや不明確なところがあったというふうに思っています。今回の修正は、そこを非常に明確にするものというふうに考えております。

 そこで大臣にお伺いしたいんですが、九十三条二項三号の「教育研究に関する重要な事項」について施行通知を出されるというふうに聞いております。先ほど既に馳委員の方からは発言がありましたけれども、これは大臣から御発言いただくことの意味というのは非常に大きいと思いますので、この部分についてどういう施行通知を出されるのか、まずそのことについて御答弁をいただきたいと思います。

下村国務大臣 これは、修正案がもし可決された後の想定ですから施行通知案でありますけれども、「学校教育法第九十三条第二項第三号の「教育研究に関する重要な事項」には、教育課程の編成、教員の教育研究業績の審査等が含まれており、その他学長が教授会の意見を聴くことが必要である事項を定める際には、教授会の意見を聴いて定めること。」でございます。

細野委員 確認ですが、その施行通知は、法案が、修正案が、仮定の話でありますが、可決をされたら速やかに出されるということでよろしいでしょうか。

下村国務大臣 前回も答弁させていただきましたが、修正案も含めて本法案が国会で議決をしていただければ、その後すぐ文部科学省として有識者会議を開いて、そして、この法案の趣旨にのっとった、各大学における内規とか規約とかがありますので、それも含めた、どのような法の趣旨かということも含めた有識者議論をしていただき、そこで整理をしていただき、誤解のないような形で各大学が内規、規約等の改正に向けた作業が進むようなことを含めた施行通知をあわせて発出したいと考えております。

細野委員 それはさまざまな要素があるでしょうから、いろいろな要素が入った施行通知ということですので、それは結構です。ただ、この部分については今御発言された通知がそのまま発出されるということなのかということが一つ。もう一つは、当然参議院でのさまざまな議論も経てということでありますけれども、議決された後どれぐらいの期間でこの通知というのが発出されることを考えておられるのか。この二点、お伺いしたいと思います。

下村国務大臣 まず、なかなか、参議院の民主党がこの法案に対しては非常に厳しい姿勢であるということを聞いておりますので、ぜひ、民主党、党としてのガバナンスとして、衆議院の民主党の意思を参議院の方にもよく伝えていただいて、ぜひ法案については今国会で成立をしていただくように、私の方からまず民主党さんに対してお願いを申し上げたいと思います。

 その上で、今国会でもし成立をしていただければ、すぐ有識者会議を開いて詳細について議論を詰めていきたいと思いますが、今申し上げた施行通知は、そのままこの部分については、当然ですけれども、これは変更しないで掲載をいたします。

 しかし、先ほど申し上げましたように、ほか、それ以外のことも入りますので、これは有識者会議に議論を委ねたいと思っておりますので、いつまでにということはちょっと申し上げられませんが、できるだけ早くまとめていただくようにお願いを申し上げたいと思います。

細野委員 これは、修正をしていただいた、受け入れていただいたということ自体非常に重たいことだというふうに思っておりますので、民主党として責任ある対応をしてまいりたいし、我が党において衆参に溝は全くありませんので、しっかり連携してやってまいりたいというふうに思っております。

 少し具体的に、今、有識者会議でいろいろ議論されるということですけれども、およそのちょっとイメージをつかむために、私の出身である京都大学の規則を持ってまいりましたので、少しそのことを題材に、大臣と最後にやりとりをさせていただきたいと思うんですが、お配りをしましたのは、京大の組織に関する規程、これは極めて基本的なものなんですが、大臣、これの四ページ目をごらんいただけますか。

 ここに教授会の審議事項について書かれています。審議という言葉は今回使わないのかもしれません、意見を述べるということですから、ここの言葉はいろいろ変わり得るのかもしれませんが、対象としてということで見てまいりますと、例えば、十八条の(一)のところの教育課程の編成、また、入学などの事項、研究科長の選考、これも重要事項に当然入ってくると思います。あとは、(四)のところは、どちらかというとその評価に関するところ。

 およそこういう審議事項でやるということを、学長と教授会の間で議論してこういうものが定められれば、こういう規程自体は各大学で議論をして定めることができるということでよろしいんでしょうか。私はこれが全部そのまま守られるべきだということを申し上げているわけではないんですが、こういったものが定められれば尊重されるという理解でよろしいのかどうか、そこを確認させていただきたいと思います。

下村国務大臣 今回の改正の趣旨は、教授会が教育研究に関する事項を審議すること、また、学長が大学における最終的な決定権者であり、教授会は学長に対して意見を述べる関係にあることを明確化するものであります。各大学におきましては、改正の趣旨を踏まえて、内部規則やその運用の点検を行い、必要な見直しを求めていきたいというふうに思います。

 そして、私も手元にこの京都大学の組織に関する規程をいただきましたが、これは各大学、相当大学によって内容が異なっております。その中でも、京都大学のこの規程は相当詳細にわたっているものでありますので、今回の、もし改正案が成立をさせていただいた後、この関連性という部分では、やはり大学関係者の方々に、先ほどの有識者会議ですが、入っていただいて、それが各大学の規程のどの部分と関連するのかどうか。その場合、それぞれの大学に対する、規程に対する詳細なコメントとか指導ということではありませんが、基本的なガイドラインといいますかフォーマット、これは目指すべきことがやはりあるのではないかと、共通事項としてですね、ありますので、委員から別に指名されているわけではありませんが、京都大学の関係者にも入っていただいて、有識者会議については、そういう観点から議論をしていただきたいと思っております。

 具体的に、この京都大学の内部規則については、これは大学における規則の解釈、運用等を踏まえる必要があることから、私の方からどの部分どの部分と詳細についてはまだ言うべき時期でもないし、また、そういう立場ではないというふうに思いますが、いずれにしても、今回の法改正の趣旨を踏まえて、必要な見直しをそれぞれの大学においても行っていただきたいと思います。

細野委員 わかりました。そういったプロセスを踏むんだろうと思います。

 ただ一点だけ、もう一度、済みません、しつこいようで恐縮ですが、教育課程の編成、さらには教員の教育研究業績の審査、これは通知の中に入っているわけですね。ですから、その通知内容をそのまま反映するものについては、当然こういった形で書くことは認められるということは、もう通知の中身そのままですから、それについては書いても大丈夫ということでよろしいですね。

下村国務大臣 施行通知の内容には、教育課程の編成、それから教員の教育研究業績の審査等が含まれておりますから、当然それは入ります。ただ、その中身云々については、それはそれぞれの大学が、学長が最終的には定めるということですから、詳細についてはそれぞれの大学によって違ってくると思いますが、ジャンルとしては当然入るということは前提であります。

細野委員 今大臣から、それぞれの大学によって詳細については違うという御趣旨の答弁がありました。私はそれも大事な視点だと思います。大まかな方向性であるとか中身については、当然そういう有識者の方々で議論するということでいいと思いますが、それぞれ、やや大学について個性もありますし、当然サイズによってかなり運営の仕方も違うわけです。ですから、そこはある程度の自主性が確保されることは重要であると思います。

 次に、ちょっとこの十八条の(四)のところをごらんいただきたいんですが、大臣、ごらんいただけますか、(四)ですね、ちょっと済みません、網がかかっていて見にくくて恐縮なんですが、(四)の二行目のところに、京都大学教員就業特例規則というのが書かれています。これについても、教授会の審議対象になっているんですね。

 この就業特例規則を、その次のページからつけておりますので、ごらんをいただけますでしょうか。ここに、下の方、五ページの後段のところですけれども、降格及び解雇についての規定が京大の場合には非常に詳細に書かれているんですね。教育研究評議会で審査をするであるとか、そういったことが非常に細かく書かれています。ここは一つちょっとポイントだと思うんです。

 といいますのは、先ほど稲津委員の方から御質問もありましたけれども、大学の教員の場合は、普通の公務員と違って、法的には身分というのは非常に不安定な状況に置かれています。つまり、国家公務員法の規定は当てはまりません。また、教育公務員特例法も、これも法人化をした時点で該当しない形になりました。つまり、法律では、大学の教員というのは身分は守られていないんです。大学の判断となっている。そして、その判断の最終権限は学長ということになるわけです。

 ただ、そんなことはないと信じたいですが、学長がいろいろ運営のあり方などについてある特定の教員と非常に関係が悪くなった場合に、その学長の意向で簡単に大学の教員が首を切られるというのは、これは非常に問題が多いというふうに私は考えます。

 そこで、こういう解雇に関するプロセス、ここは教授会そのものには決定権はありません、それは私も承知しています。ただ、教授会がきちっと、大学の先生として学業の中身はどうなのかということについて意見を言うことは非常に大事だし、そして、解雇があるとすれば、それについてはどういうプロセスがあるべきなのかというのは、この京大の例にあるような形できちっと書いておくことは極めて重要だというふうに私は思うんですが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 国立大学法人や公立大学法人、私立大学に在籍する教員の解職、免職等につきましては、各法人の就業規則等において定められているわけでありますが、教員の解職、免職等の理由としては、非違行為に基づくものや教育研究業績が不十分である場合などさまざまな場合があることから、各大学において懲戒委員会や人事審査委員会、教授会など多様な組織において調査審議した上で、任命権者である学長や理事会が就業規則に基づいて決定するものでありまして、その仕組みそのものが変更になるということではありません。

細野委員 今の答弁で確認ができたことはよかったと思います。

 大臣は滝川事件というのは御存じですよね、これは教科書にも書いてありますから。京都大学で起こった事件なんですけれども、滝川教授というのが、思想的に政府からもしくは国会からにらまれるような見解を出して、それが学長、総長から首を言い渡されて、大もめにもめたけれども、これは最後に、結局は滝川教授は大学を追われる形になった。これが日本の大学の自治なり学問の自由を侵害する決定的な事件になったわけです。

 実はその前に、京都大学では、一九一三年に沢柳事件というのが起こっています。これはもしかしたら大臣は御存じないかもしれない。京大にいるとこの事件は時々耳にするので、私は事件は知っていたんですが詳細は知りませんでした。これを改めて見ますと、このときも、沢柳学長という方が特定の教授の首を切ろうとしたわけですが、大学の教授の中でこれはおかしいということで辞表を出したのがいっぱいいて、大もめにもめて、最終的には文部大臣が登場して、学長の方を退職させておさめた。

 つまり、一九一三年には、そういう大学の民主主義的な動きが機能することによって何とか土俵際で踏みとどまったんだけれども、滝川事件が起こったのは一九三二年。時代も大分変わっています。そういう中で、結局こういう形で首を切られて、学問の自由が実質的にそこで非常に死に近い形になった。滝川教授というのは後に復学されていまして、京大の学長までなられている方なんですが、そういう極めて典型的な事例なんです。

 ですから、学長の権限が強化されることによってガバナンス改革がしっかりと行われること、そして、いろいろな決定がスムーズになされることはいいことだと思います。しかし一方で、この部分についてはしっかり守っていくんだという強い決意がないと、間違うとこれは大変なことになり得るということだけは申し上げておきたい。

 ちょっと時間もなくなってきたんですが、大臣に、そこは、実はこういう問題というのは、こんなことはもう現代においてはあり得ないだろうと思われがちかもしれないけれども、仕組みを変えてやるといつかそういうことが起こる可能性があるという危機感だけはぜひ持っていただきたいというふうに思うんですが、一言御感想をいただきたいと思います。

下村国務大臣 いわゆる暴走する学長をどうチェックするかということだと思います。

 まずは、監事による監査や学長選考会議による業務執行状況の評価等が適切に機能することが必要でありまして、そのために、まず監事については、今国会で国立大学法人の監事機能を強化する法案を別途提出しておりまして、これは近々に通る予定だというふうに聞いておりますが、このことによって監事機能の強化が図れる。

 それから、学長選考会議の業績評価についても、中央教育審議会取りまとめにおきまして、学長選考会議が学長の業務執行状況について恒常的な確認を行うことが求められていると。今までは、学長選考をした、それだけで事実上は何もしなかったということについて、それ以降も事後チェックはきちっと恒常的に行う必要があるということについて、この点についても施行通知等において周知を図りまして、各大学において、学長に対するチェックもきちっと機能できるような仕組みについてはしっかりと体制をつくってまいりたいと思います。

細野委員 時間がなくなりましたが、最後にもう一問だけ。

 本会議でも質問をさせていただいたんですが、大学に行けない子供たちがいる。特に、親が経済的、社会的に厳しい状況で、児童養護施設に行っているであるとか住んでいるであるとか、里親とか、そういう子供についての対応をぜひ文科省としてもやっていただきたいと思います。

 今度、法律に基づく貧困対策に対する大綱、それが出されると聞いておりますが、そこにぜひ前向きなものを入れていただきたいと思いますので、簡潔で結構ですので、ぜひ御答弁をお願いします。

下村国務大臣 簡潔にということですので、私も児童養護施設の視察に行きましたし、上野政務官も視察に行っていただいて、文科省としてもしっかり取り組んでおります。

 今回、子どもの貧困対策の推進のための大綱案に関する議論においても、児童養護施設に入所する子供への支援も含めた検討が重要であると考えておりまして、そこの有識者会議の中でも、児童養護施設の子供も対象に含めた議論をしていただいていますので、その大綱の中にぜひ入れていただきたいと考えております。

細野委員 以上で質問は終わりますが、法案の修正という中で、大臣はもとより、本当に、この委員会の皆さんに大変な御努力をいただいたことに心より感謝を申し上げたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 それでは、水曜日に引き続きまして質問をさせていただきたいと思います。

 その間、細野委員の質問に端を発したというような形になっておりますが、ここに集っております多くの委員の方々の一つの疑念というか疑問が修正という形で直されたということにつきまして、私自身の疑問も相当程度解消したという面もございます。したがいまして、その点については触れないで、また九十三条のところにつきまして引き続き、確認の意味も含めまして質問をさせていただければというふうに思っております。

 まず一つ、九十三条の二項の一、二、三号ということで、三号が何を意味するのか。

 それは、「大学のガバナンス改革の推進について」という中教審の大学分科会の審議まとめの三と四の部分について、明確になっていないんじゃないかということで、今回修正案で明確になったわけでありますが、そういったものも含めまして、中教審の審議まとめでは、「教授会の審議を十分に考慮した上で、」という文言で、教授会の審議といいますか協議といいますか、協議したものの取り扱いについての位置づけをしているわけであります。

 そういう意味で、法案での「意見を述べるものとする。」ということと、教授会の審議を十分に考慮してというのは、教授会における役割であるとか、権限、重みが全く異なるんじゃないのかという気持ちがいたします。

 それについてはほかの委員の方々からも質問がありまして、確認の意味も含めまして、意見を述べるという文言であっても、教授会の審議を十分に考慮してということと同等の意味合いがあるというような御答弁であったかと思うんですが、その点をもう一回確認させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、中教審の審議のまとめでは、教授会が審議すべき重要な事項について、「教授会の審議を十分に考慮した上で、学長が最終決定を行う必要がある。」というふうにしております。

 このことにつきまして、学校教育法改正案の九十三条第二項では、教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聞くことが必要であるものについては、学長が決定を行うに当たり教授会が意見を述べるというふうに、このような形で規定をさせていただいておりますけれども、ここでは、教授会が述べた意見の取り扱いについて、この改正案では学長決定に際してあえて教授会が意見を述べるということとした趣旨を踏まえますと、これは、その当該意見については十分に参酌されるべきでございますし、そういう意味では、中教審のまとめでありました「十分に考慮した上で、学長が最終決定を行う」、そこの意味を踏まえたものというふうにお考えいただければと思います。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 ぜひ、教授会の審議を十分に考慮するという、それは教授会の意見を尊重するということだろうと思うんですけれども、そういった趣旨を施行通知にきちんとわかるように書いていただきたいと思いますけれども、それについてはいかがですか。

吉田政府参考人 これは、先ほど来大臣の方から御答弁がありますように、この法律が成立した暁には、速やかに有識者会議を設けて、そこで施行通知の内容についても御審議をいただくというふうなことを予定しておりますので、その中で、今委員御指摘の趣旨についても、それを十分踏まえて施行通知の内容を固めてまいりたいと思います。

鈴木(望)委員 次に、九十三条の三項について質問をさせていただきたいと思います。

 教授会の、審議をして意見を言うというものが、改正案では九十三条の第二項と第三項に書き分けてあるわけですけれども、第三項の、教授会は、前項に規定するもののほか、学長等がつかさどる教育研究に関する事項について審議をし、及び学長等の求めに応じ、意見を述べることができるということで、この「教育研究に関する事項」というものが具体的にどういうものを意味しているのか。

 他の委員からも質問がありまして、具体例も出て、ある程度認識をしているわけでありますけれども、例えば、これはもう確認はさせていただきましたけれども、大学の移転、学部の名称の変更、また学部の新設、そこから波及していきますと、私思いますのに、そういった典型事例についてはある程度認識もしておりますけれども、例えば学部の移転ということになってくると、そこから派生しまして、八王子がいいのか、例えばもうちょっと遠くの方が土地が安くていいのかどうかという、経営判断とも非常に密接に関係するようなところが出てくるかと思うんですね。

 では、そういった土地の選定みたいなものについてはどうなんでしょうか。ちょっとお答えをお願いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 前回のこの質疑でもキャンパス移転の関係についての御質問がございまして、その際、教育研究に関する重要事項の中にキャンパス移転は含まれるというふうにお答えをさせていただきました。

 確かに、キャンパスの移転とした場合に、新しいキャンパスでどういった教育研究体制を構築していくのかということ、これはやはり大学の教育研究に関する重要な事項ということになりますので、これについては、二項の三号の重要事項として大学として捉えるべきだろうというふうに考えております。

鈴木(望)委員 一方の意図として、そういった問題については、これは教育研究に関する重要な事項である、ただし、九十三条の三項で、そういうものについてはある程度具体的な事例によっていろいろな差異がありますので、大学によって事情も違うし、大きい大学、小さい大学、いろいろあるから、そこは大学そのものの良識にお任せをして、「学長等の求めに応じ、意見を述べることができる。」ということで、できる規定にしておくという趣旨は理解はします。

 理解はいたしますが、でも、ちょっと考えてみると、一つの例として言わせてもらいますけれども、どこに学部を新設するのか。山梨県に新設するのか東京都に新設するのか、八王子は当然東京都ですので。済みません、八王子に住んでおられる方、別にとかく言っているわけじゃないんですけれども、学生が東京志向というのがあって、集まる学生の質とか量とか、受験生とかは物すごく影響してくると思うんですね。

 そういうようなことも考えてくると、私の意見では、大学によっていろいろ差異があるけれども、やはり教授会の意見は必置として聞くというようにしてもいいんじゃないのかなと思うんですけれども、そうしなかったことについて、もう一回、済みませんが、非常に重要な話だと思いますので、よろしくお願いいたします。

吉田政府参考人 九十三条二項三号のこれらの重要事項ということで、この中に教育課程の編成ですとか教員の教育研究業績の審査などが入るということは先ほど来も確認をされたところでございますし、また、先生御指摘のようなキャンパス移転といったものもこれに十分入ってくるだろう、こういうふうに思います。

 ただ、そのあたりはまさに大学のそれぞれの実情に応じて変化する部分がございますので、それを一律に法律上義務づけるということはいかがなものかということもございまして、そこのところは各大学の判断というものに委ねている部分がございますが、先生おっしゃるように、キャンパス移転というのは、教育研究、学生の確保、そういった意味では非常に重要な意味を持っているということは御指摘のとおりだろうと思います。

鈴木(望)委員 大学そのものが学問の教育研究機能を有していて、大学の運営とか経営というものもそれと切り離して議論をするというのは実際上はなかなかできないんじゃないのかな、私はそういうふうに思います。

 そういう意味で、確かに、狭い意味での教授会の自治というのを盾にとって、本来行うべき大学の改革というものが運営に関して阻まれていた、これは厳然たる事実もあるというふうに私は認識をしております。

 ですから、そういった意味で今回の改革というのは一つの意味があるなと思いますが、一方で、今言ったように、大学そのものの役割、また、教育研究という機能を果たす上で教授会が果たしてきた役割というものが損なわれるようなことがあったら、長期的な観点からすると今回の法改正は非常にマイナスだったというような評価が下らないとも限らないという危惧の念も私は覚えますので、そこら辺のところはきちっと、やはり学問の専門家の集団であり教育研究の中核である教授会の果たす役割というものをきちんと十全に発揮できるように運営をやっていってもらえればなというふうに、私の一つの希望でございますけれども、言わせていただきます。

 それでは、一応通告にありまして全然質問させていただかなかったということで、きょうも来ていただいておりましてまことに恐縮です。国立競技場の建てかえの件について、この問題も非常に大きな問題だと思いますので、質問をさせていただきたいと思います。

 昨年の十二月四日に、私、国立競技場の建てかえについて質問をさせていただきました。その質問は、昨年の十一月二十六日に、JSCの国立競技場将来構想有識者会議第四回で基本設計条件案が報告をされたわけであります。そのときに、改築工事費概算額は千八百五十二億円でございました。

 そして、今回、五月二十八日に、JSCが国立競技場将来構想有識者会議を開催して国立競技場の設計案が承認をされたということで、翌日の五月二十九日の新聞記事では、景観に配慮して五メートル低くなったとか、いろいろ書いてあります。

 しかし、子細に昨年の十一月二十六日の基本設計条件案を見てみますと、七十五メートルから七十メートルに低くなったというのは変わっておりませんし、変わっているのは、千八百五十二億と昨年の段階では言われておりました改築工事費の概算額、それが今回示された案では千六百二十五億円に変わっているわけであります。

 とかく、この国立競技場の改築の問題につきましては、世間の関心も強いし、また、額が、toto法案のときに千三百億円ということで、それがいっとき、経過の過程であるということは理解いたしますけれども、三千億円の工事費がかかると。それが千八百五十二億、今回は千六百二十五億というふうに変わってきておりまして、やはりそこら辺について一番重要なのは、みんなから祝福されてああいった建物ができていくということは非常に重要だと思います。

 その観点では、情報公開ということが必要だと思いますので、あえてそこら辺の経緯についてこの場で質問をさせていただいた次第です。お答えをお願いいたします。

久保政府参考人 国立競技場の改築計画につきましては、今先生おっしゃられました、事業主体であります独立行政法人日本スポーツ振興センターが昨年十一月二十六日に基本設計条件案を取りまとめましたが、これをさらに、文部科学省において改築工事費のさらなる縮減の検討を行ったところでございます。

 具体的には、開閉式屋根の開閉機構の仕組みの見直し、それから、周辺整備の内容見直しなどのほか、自民党無駄撲滅プロジェクトチームからの御意見等も踏まえまして、同センターが試算いたしました改築費用千八百五十二億円について、千六百二十五億円、これに解体費を加えますと千六百九十二億円に圧縮したところでございます。

 その後、この基本設計条件をもとに、同センターにおきまして、本年一月に基本設計に着手し、先月二十八日に基本設計案を取りまとめたところでございまして、今後、これをもとに財務省と協議をいたしまして、実施設計に移っていくというような計画になっているところでございます。

 基本設計の完了時期につきましては、当初計画では本年三月を予定しておりましたけれども、この計画の見直しがございましたものですから、着手の時期が十月から一月にずれ込んだこと、さらに、本年二月に首都圏における記録的な降雪がございまして、複雑な開閉機構を有する開閉式屋根部分の安全性に関しまして検証に時間を要したことなどから、先月までに期間を要することとなったところでございます。

鈴木(望)委員 わかりました。

 また今後も、なるべく情報公開という、みんなに広く検討結果も含めてお知らせをして、みんなが喜んでくれるような形でもって建設されるようによろしく御検討をお願いしたいと思います。

 質問を終わります。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いいたします。

 本法案に関しては、やはり時代の要請に応えるべくしっかりと練られている、九十三条の問題も、この議論の中でかなり整理されてきたなというふうに思います。

 そこできょうは、総括的な質疑ということで、今まで何度かお伺いしていることを、また確認の意味も含めまして、更問いも含めてやらせていただきたいというふうに思います。

 まず一つ目が、副学長の役割に関してなんですけれども、今回、副学長にある一定の責任、権限を与えて、一つのプロジェクトないし部門を統括させるということもできるようになったというふうに認識しております。ただ、現在の副学長というのは、ほとんどが教員と兼任している者が多いわけでございます。必ずしも学長業務を献身的にサポートするというような現状にない副学長の方が多いのかなというふうに思います。

 今回の改正後は、我が国でも、沖縄科学技術大学院大学、ここはもうアメリカのプロボストとほぼ同じような立場で、予算、人事、組織再編の調整権も持って、献身的に学長を支えるプロボストがあるわけですけれども、今回の法案によってこの副学長、プロボスト的な副学長を設置することを国立大学に義務づけるものなのかどうなのか、そこをお願いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 副学長の設置につきましては、学校教育法第九十二条第二項では、大学には副学長を置くことができる、こう規定しておりまして、任意で設置される職でございます。また、どのような業務を副学長に分担させるかということについては、これは各大学の判断に任されております。

 プロボストというのは、先生御紹介いただきましたように、これはアメリカの大学などでは一般的ではございますけれども、大学の予算、人事、組織改編の調整権を持って、学長を総括的に補佐する副学長ということでございます。

 最初に申し上げましたように、副学長は任意で設置される職であるということでございますし、また、今回、特にこの米国のようなプロボストを一律に義務づけるという趣旨のものではございません。

柏倉委員 では、ちょっとまたお伺いしますけれども、もし学長が本当にこのプロボストを、かなりの権限を持った副学長をつくりたいという場合は、では、国の方は認めるんでしょうか。

吉田政府参考人 副学長にどのような権限を与えるかというのは、これはある意味では学長の判断ということになりますので、今御指摘のような、アメリカのプロボストのような権限を副学長に与えるという判断はあってもしかるべきだと思います。

柏倉委員 もう既に文部科学省の管轄じゃないかもしれませんが、沖縄科学技術大学院大学ではそのようなことがあるわけです。

 そこのところの評価、必ずしも日本の土壌にそれがなじむかどうかというのは、検証をして進めないといけないというふうに思っています。ただ、もう既に一つキックオフされているところがありますので、沖縄科学技術大学院大学、ここのところの精査、評価、これをしっかりとやっていただきたいんです。所轄は違うかもしれません。しかし、研究に係る大きな機関、大学院大学ですので、これはしっかりと注視をして、まさしく公平公正な評価、これを加えていただきたいと思います。

 次は、ハラスメント処理に係る質問をさせていただきたいと思います。

 これは何回も質問させていただきました。やはりハラスメントというのは非常に内向きな事案でございます。教授会が積極的に対策をなかなか講じ得ない。これは当然事後的な対応になっていますので、積極的な対策を講じるのはなかなか難しい領域だと思います。

 ただ、名古屋大学では、総長直属の独立の学内機関としてハラスメント相談センターというのをしっかり置いていて、臨床心理士、精神保健福祉士の資格を持った相談員がいたり、弁護士もいたりして、大きな事案になる以前に相談に乗るということもできる。平たく言えば、前さばきもできるということで、非常に存在感を出している、そういうハラスメント相談センターというのを名古屋大学がもう既に設けております。

 これとは対照的に、学長、副学長を学部長が訴えるというような、非常に混沌としている、ハラスメント処理が全くできないような国立大学も実際にあったりして、こんなばらばらな対応、学内の案件だからそれぞれ大学の自治に委ねるんだということでいいのかどうか。やはり被害者が当然出てきます。刑事的な案件になる可能性もあるわけです。そういうことを考えますと、私は、国のハラスメント処理に係る一定のガイドライン、そういったものも必要なんじゃないかなと思います。これに関しての政府の見解を聞かせていただければと思います。

吉田政府参考人 ハラスメント事案につきまして、基本としましては、これは学内倫理の維持向上という観点から、各大学でみずからの責任で適切に対処すべき問題であろうかと思います。ただ、各大学におきましては、恣意的な判断がなされないように、中立的な調査、対策機関等が事案の処理に当たっているものと承知をしております。

 私どもの調査では、これはセクハラだけではなくて、いわゆるアカハラあるいはパワハラというものも含めてでございますけれども、そういったハラスメント等の問題に関する相談窓口を設けております大学は、全体として九八・四%という形にもなっております。また、問題が生じた場合の調査、対策機関、これを設けているところも九八・八%という形になっておりますので、各大学ではハラスメント関係の体制整備は進んできているとは思います。

 文部科学省としては、平成十一年に、文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程というのを設けました。当時は国立大学も法人化される前でございましたので、この規程については国立大学についても当然適用されるというふうなことになりますし、また、私立大学についてもその規程を参考にして体制の整備をお願いした、こういう経緯がございます。

 その後も、先ほど紹介をいたしました相談窓口あるいは調査、対策機関の設置、そういうものにつきましては、そういった体制整備状況について毎年フォローアップをさせていただいているということがございます。

 そういう観点で、今後も引き続き、各大学において適切なハラスメント対策が講じられるよう指導を続けてまいりたいというふうに思っております。

柏倉委員 今、セクシュアルハラスメントに関しては、一定の国の指針というのをしっかりと作成して通達をしておるということですが、アカハラ、パワハラ、特に大学ですから、これはアカハラという非常に定義の難しいようなハラスメント、これもやはり大きな問題になっていると思います。

 そのアカハラの対処、定義、そういったものに関しての通達というのはまだ行っていないんでしょうか。

吉田政府参考人 先ほど申し上げた調査は、いわゆるセクハラだけではなくて、アカハラ、パワハラ、こういったものもそれに対応した体制が整備されているかどうかという意味で調査対象に加えておりますので、それについても私どもは注目してフォローアップを続けているというところでございます。

柏倉委員 それでは、現在調査中ということでよろしいんですね。それは時間がある程度かかるのかもしれません。特に、アカデミックハラスメントというのは、大学等教育機関に属さない方々には社会通念上もなかなか共有しづらい概念ですので、具体的な定義づけ、そしてその処理に関しても、これはやはり文部科学省がしっかりと先頭に立ってやっていただかなければいけないというふうに考えております。

 ハラスメント処理も、大学大学でかなりさまざまな様相を呈しております。大学に任せるという姿勢も必要かと思いますが、しっかりと調査をして、一定程度の指針、これをしっかりと出して、通達をして指導をしていくということもぜひやっていただきたいと思います。

 それでは次の質問に移らせていただきたいと思います。

 次は、国立大学学長の罷免について伺いたいと思います。

 今回、国立大学の学長の権限が明確化された、再定義されたということで、より教授会の持つ権限が実質的に移譲されているというふうに考えておりますが、ただ、学長もやはり完璧な人間ではありませんし、これは、何か事件を起こせば当然責任ということはあるんでしょうけれども、そうじゃない、国の指針、方針と相入れないような、そういう学長が出てくることもあると思うんです。例えば、こういう研究をやってくださいと国が要請をしても、いや、それはできないというようなことを言い出す学長もいるかもしれない。

 これは具体的な事案を挙げろと言われると非常に難しいんですが、もし国の指針、方針に従わない、そういう学長が出た場合は、これは学長の罷免というのはあり得るんでしょうか。政府の見解をお願いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 憲法第二十三条で規定をする学問の自由、あるいはそれを保障するための大学の自治に鑑みまして、一般に、大学の教育研究に関する自主的な決定は尊重されるべきであるというふうに考えております。

 お尋ねの、学長の解任ということについては、例えば国立大学法人法においては、国立大学の業務の実績が悪化した場合など、一定の要件に該当する場合には学長を解任することができる規定が設けられておりますけれども、一般論として、政府の方針を受け入れないことのみをもって学長を解任することはできないと考えております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 業務の悪化という、今、一つ案件として出てきましたけれども、具体的にどういうような業務を想定しているんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 国立大学法人の場合には、中期目標、中期計画というものが定められておりまして、それを達成すべく、学長が先頭になって大学に取り組んでいただくということになります。そういった目標なり計画なりがもう著しく達成できないような状況になっているというふうなことになりますと、この解任事由に該当する可能性は出てまいります。

 もちろん、それは、そういう状態に至らないように、さまざまな形で努力を促していくということをいたしますけれども、具体的にどういう業務がということではなかなか仕切れないんですけれども、大学の業務は大変多うございますので、そういう意味では、先ほどの中期目標や中期計画が著しく達成できなかった場合などが想定されるかと思います。

柏倉委員 中期目標といいますと、三年、五年というようなタームだと思うんですけれども、学長選というのが必ず三年おき等にありますので、そういう意味でいうと、学長選で再任されたからそれはいいんだというロジックも成り立つかと思うんですね。学長選で再任されれば、中期目標、それに著しく到達しないような業績悪化も許されるのかなというような疑問も今湧いてまいりました。

 それで、これに関してちょっと最後に伺いたいんですが、この評価、著しく目標に達していないという評価、これはどこがやるんでしょうか。

吉田政府参考人 まずは、各大学において自己点検・評価といったものが大事になろうか、こう思います。その際に、学長選考会議が有する役割というのは非常に大きいものがあろうか、こういうふうに思います。

 学長選考会議の役割については、中教審の取りまとめにおきましても、学長選考会議が学長の業務執行状況について恒常的な確認を行うということが求められておりますので、この点については、この法律成立の暁には、この施行通知等において周知を図り、各大学における取り組みを促してまいりたいと思います。

 また、監事というものも置かれておりますので、その監事さんが業務執行状況について監査をする過程でそういった評価を下していくということも制度的にはあるということでございます。

柏倉委員 今の御説明ですと、学長選がやはりみそぎになるということもあり得るわけですね。学内での評価をまずということですから、学外の評価はしない、当然文部科学省でするということは想定していないということだと思います。それであれば、この解任規定は有名無実化するのではないかなという危惧もあります。

 と同時に、その監事、これは私は非常に重要だと思っています。

 なぜなら、今回、学長の権限が再定義された、強くなったということ。やはり権限が強まれば、必ずその責任もきっちりと定義をして、これはチェック・アンド・バランス、参考人質疑でも田中参考人が、チェック・アンド・バランス、これが大事なんだということを言っていました。この監事の役割も、今後、ぜひぜひこれは考えていただきたいと思います。

 九十三条の議論も非常に深まったと思いますが、この監事の議論、これが今後肝になってくるのではないかなというふうに私は思います。

 それでは、最後の質問をやらせていただきます。

 グローバルランキングについてこの前も質問させていただきました。全部の国立大学に、ランキングすべく、可能性を持たせるのかという質問をさせていただきましたが、今回、グローバルランキングそのものについての評価、もともと、グローバルランキングというのは、英米圏の大学、理系に強い大学のランキングということが主眼とされてつくられたものです。留学生の比率ですとか、外国人教員の比率ですとか、そういったものも当然大きな加点要因としてあるわけです。

 とすれば、必ずしも、日本の目標を、この大学ランキング、グローバルランキングに固執する必要もないのではないかという声もあります。実際、独自の大学ランキングをつくっているところもあるわけでして、中国の上海交通大学では、自分でつくっているということです。

 こういう、ある一つの基準に向かって努力するというのは大切なことだと思いますが、やはり、独自の基準も国はつくるべきなんじゃないでしょうか。スーパーグローバル大学創成支援が目標とする世界大学ランキング、タイムズ・ハイアー・エデュケーション、これのボードに必ずしも固執する必要はない、そのようにも考えますが、独自の基準をつくる今後の政府の見通しをお聞かせください。

下村国務大臣 世界から優秀な外国人留学生や研究者を獲得するためには、我が国の大学の徹底した国際化を推進し、国際競争力を高めていくことは重要であります。

 そのため、今年度から新たに、世界大学ランキングトップ百を目指す力のある大学や、先導的試行に挑戦し、我が国社会のグローバル化を牽引する大学、スーパーグローバル大学として三十校選定し、徹底した国際化への取り組みを重点支援する事業を開始することといたしました。

 世界大学ランキングは、我が国の大学の国際的な評価や課題を知る上で参考になるものでありますが、外国の民間企業等がそれぞれ独自に設定する評価指針に基づき作成しており、御指摘のように、英語圏の大学や理系に有利である等の指摘もあります。大学の評価はさまざまな視点や指標があり得るところでありますが、国が世界の大学をランキングづけすることは適切でないと考えますが、さらに、日本も含め、世界のさまざまな主体により、信頼性の高い多様な評価が行われることが望ましいと考えます。

 今後とも、日本の大学が世界の中で一層プレゼンスを高め、外国人留学生にとっても魅力ある留学先となるよう、大学の国際化を加速するための施策の充実に努めてまいりたいと考えております。

柏倉委員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 プライドを持ってしっかりとやるというところの前提として、やはり基準、そういったものをしっかり定める。国が定めるのは私もいかがなものかと思います。ただ、ある意味、欧米の価値基準に全て合わせる必然性もないのかなというような疑問も私はあるわけでございます。

 今後、この研究、ぜひ下村大臣のもとで、日本もしっかりと世界に伍していけるだけのいろいろな整備、尽力をいただきたいと思います。

 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。よろしくお願いをいたします。

 初めに、修正案のところから伺いたいのですが、先に質問に立たれた委員の皆様からもお話がありまして、私からも伺いたいと思います。

 修正案の九十三条二項の三に係るところで、政府案は「学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」と。そこの記載が、修正のところでは「教授会の意見を聴くことが必要なものとして学長が定めるもの」と。

 先ほどの質疑の中で、「認める」と「定める」はどう違うんだというお話もあったかと思います。私も、「定める」というものはあらかじめ決めておく、「認める」というものは随時必要に応じて認めていくのかなというとり方をしていたんですが、私は、まず大前提として、この修正案によって、教授会が学長に意見を述べるものを決めていくに当たって、学長と教授会のコミュニケーション、意思疎通がより図られるようになったと修正案を御提示いただいたときに感じたんですが、その意思疎通がより図られるようになったという解釈でよろしいかどうかをまず伺います。

萩生田委員 御答弁します。

 今、井出委員が御発言をされたとおり、当初の政府案では、とりようによっては、学長が必要と認めないものについては一切教授会の声を聞かないのではないかという危惧が各委員の質疑の中でも指摘をされてまいりました。もちろん、良識ある学校経営の現場でありますからそんなことは想定はしないんですけれども、しかしながら、大事をとって、やはり、重要な事項については、現場感覚のある教授会の皆さんの御意向も踏まえてきちんと学校経営をしていただくことが大事だろうということで、今回この修正を提出した次第であります。

 このことによって、学長と教授会の信頼関係はさらに深まり、お互いの意思疎通が図られるものだというふうに期待をしているところです。

井出委員 今御答弁があったこと、私もそれは大変よいことだと思うのですが、一点、修正案で「必要なものとして学長が定める」と。これは、あらかじめ学長と教授会で相談をして決めておくと。ただ、その一方で、懸念として、それ以外に何か必要なものが出てきたときに、話し合いを持って、またそこに意見するべき項目が追加されるのか。そういった随時のコミュニケーションの部分が欠けることのないようにと私もお願いをしたいのですが、そのあたり、随時のコミュニケーションについてはいかがでしょうか。

萩生田委員 先ほどから下村大臣も答弁をされておりますけれども、これからこの法案がお認めいただくということになりますと、施行通知を出すことになると思います。その中で、確かに、確実に聴取をされるのかと聞かれれば、これは最終決定権は学長にあるということは繰り返し政府側も答弁をされておりました。私どももその認識でおります。

 しかしながら、やはり必要に応じて、教授会の皆さんが意見具申をしたときに、それは学長が良識の判断でこれはなるほど必要だということであれば、さらなる項目に加えることも当然可能であるということは認められるものだというふうに認識をしております。

 他方、法のたてつけとして、今回の法改正というのは、学長のリーダーシップを高め、また責任感を持ってもらうことに大きな視点があるやに思っておりますので、そういう意味では、何でもかんでも教授会の皆さんがのべつ幕なし意見を申し上げることが可能になるという意味での修正ではないということも、あえてつけ加えておきたいと思います。

井出委員 六月の四日に参考人の質疑があった際に、政府案を評価されるお立場の意見を述べられた大阪大学の総長の平野参考人の御発言の中で、大学運営を円滑に進めていくためには、トップダウンとボトムアップの双方からの発想が不可欠であります、両者がよい意味での緊張関係に立ちながら、それを、対立構造ではなく、未来に向けて活力へと転換していくことが大学の発展のために重要だ、そういうお話がありました。ぜひ、そうした趣旨に立った方向に持っていっていただきたいと思います。

 次に、大学の学長のリーダーシップが大事になってくる、そういうことで、さきの委員の方からも話がありました、学長の評価や、何かおかしなことがあったときの解任、罷免。責任が大きくなる以上、何か問題があったときにきちっと責任をとる、また日常のチェックをしていくというところについて伺いたいと思います。

 私の地元、長野県の信州大学の状況を見ますと、信州大学では、学長の選考の規程と選考会議の規程、また、その解任の規程、これをつくって、しっかりと公表をしております。

 解任の規程に当たっては、大学の経営協議会の発議や教育研究評議会、教授会ですね、教授会の発議、また学長選考会議の五人以上の委員の発議がされたときに、学長選考会議の議長が選考会議を招集し、審査を行わなければならない、そういう仕組みをきちっとつくっているということの説明は受けました。

 実際どうなのですかと信州大学の方に聞いたところ、監事と経営協議会によるチェック、意見交換、そういったものは定期的、随時、学長の任期中に行われていると。ただ、その一方で、では選考会議はどうなんだ。さきの参考人の中で、名古屋大学の名誉教授の池内参考人から御意見があったんですが、これからは選考会議も年に一度ぐらいはチェックをするべきではないかというお話があったんですが、信州大学に聞いたところ、選考会議は余り日常的な学長に対するチェックはない、ただ、学長の再任がかかってくるときになると、かなり詳細にわたった評価が行われるという話を聞いております。

 私は、この学長選考会議が主体性を持って学長を選任するというからには、学長選考会議のチェック機能についても、より積極的にチェックをしていく、そういう運用が必要ではないかと考えておりますが、その点について御意見を伺いたいと思います。

下村国務大臣 学長に対しては、一つは監事による監査、それから自己点検・評価、認証評価等の評価、理事会や学長選考会議等の学長選考組織による業務執行状況の評価等、このことによってチェックするという仕組みが存在をしております。

 先ほども答弁申し上げましたが、今国会で国立大学法人の監事機能を強化する法案を別途提出しておりまして、これは近々通る予定だというふうに聞いておりますが、このことによって今まで以上に監事による監査もできる。

 それから、今御指摘があった学長選考会議も、学長を選考した時点でもう休眠状態といいますか、機能していないという大学がほとんどだというふうに聞いております。御指摘のように、この学長選考会議が有機的に機能するということが大変重要だというふうに思いますので、施行通知等の中で、学長選考会議がより常態的に機能できるような、そういうフォローをしてまいりたいと思います。

井出委員 学長選考会議に求められることというのはかなり高くなってくると私も思っておりますので、ぜひそういう方向で、私もまた見守っていきたいと思っております。

 その学長選考会議の学長選考についてもう一つ伺っておきたいのですが、前にも伺ったことなんですが、意向投票です。

 意向投票をすること自体は何ら否定するものではないと大臣もおっしゃっておられましたが、意向投票はあくまで参考である、意向投票イコール学長ということでは学長選考会議の存在意味がない、そういう御答弁があって、選考会議がしっかりと学長の資質を明示したり手続を踏んでやるのであれば、私はそれは主体性のあるものだと思っております。

 きょう一つ伺いたいのは、これも信州大学の事例なのですが、信州大学は意向投票をやっています。ただ、信州大学の意向投票は、候補者を一人にはしない、絞り込み、三人までに絞り込むというような規程があって、最後は学長選考会議でその三人から一人を選ぶという規程になっております。

 実際、三人候補者が出るのかどうか、運用のところはさまざまケースがあるのであれなんですが、意向投票によって絞り込みをして、最後に学長選考会議が決めるよということであれば、これは大臣から見ても、学長選考会議の主体性ある選考という事例として理解してもよろしいかどうか、伺いたいと思います。

下村国務大臣 今回の法改正におきまして、学長選考会議による主体的な選考を促進するため、学長選考は学長選考会議が定める基準により行うこと、また、この基準や選考の結果等を公表すること、これを義務づけているわけであります。

 そのためには、意向投票そのものを排除するわけではありませんが、しかし、意向投票に拘束されれば学長選考会議そのものの主体的な選考が行われないということで、今回の法の趣旨にも反するものでありますから、これはたとえ三人に絞られたとしても、それは学長選考会議を拘束するようなものであってはならないというふうに思います。

井出委員 そうしますと、複数人に意向投票で絞り込むというのも余り望ましくない、例えば信州大学でしたら、選考の規程を見直す必要が出てくるということなんですか。

下村国務大臣 先ほどから答弁申し上げていますように、意向投票そのものを排除するわけではない。ですから、これから意向投票はもうやめるべきだということを国が言う考えはありません。

 しかし、あくまでも学長選考は学長選考会議が主体性を持ってやるものでありますから、意向投票については拘束されないというのが前提ですので、それを何人に絞り込んだから参考にするとかしないとか、そういう問題ではないということであります。

井出委員 私がこの意向投票についてこれまで質問をさせていただいてきたのは、実態として、国立大学で見れば、多くの大学が意向投票をやってきている。そうでない十九の大学があるということも聞いておりますが、ぜひ、現場のこれまでやってきたこと、また、法律の趣旨を踏まえて現場がとっていく対応を尊重していただくような、そういう運用をしていただきたいなと思いまして、これが、法律ができて、今までやってきたことががらっと劇的に変わるようであると現場も少し混乱があるのではないかなという思いで、この点について質問を重ねてきたところなんです。

 さきの参考人の大阪大の平野さんの言葉をかりれば、平野さんは、大学運営については多様性と持続性が特に大事だと。多様性というのは、大学の多様性であり、部局の多様性、学問の多様性を意味すると。多様性があるからこそ持続性があり、逆に、持続性があることにより多様性が確保できるというお話、私、これは非常にすばらしいお話だなと思って聞いておりました。

 私は、大学の運営に対する国のかかわりというものは、基本的には大学中心にやっていただきたい。今回は、運営の組織のあり方を明確にするという方向での法改正だと思うんですが、私は、ざっくばらんに申し上げると、義務教育であれば義務教育の水準、質を確保していくというようなことが国においても大切なのかなと思うんですが、大学の多様性を確保していくという意味においては、端的な、はっきりとしたちょっと荒っぽい言い方をすれば、国は大学に金は出すけれども口は出さないぐらいの、そのぐらいの思い切った感覚が必要ではないか。

 大学の現場を見ても、一つのゼミを見ても、学生と教授での運営がある中で、例えば卒業生とかOB、同窓会が何か口を出すようなことがあれば現場としては非常にやりにくいということも、私も学生のとき経験したことがあります。

 ですから、私はやはり、金は出すけれども口は出さないぐらいの、そういうスタンスが望ましいのではないかと思っているんですが、その点について大臣の御意見を伺いたいと思います。

下村国務大臣 我が国の高等教育の発展を図るためには、大学の多様性を尊重し、各大学における自主的、自律的な教育研究活動が展開されるということは、これは極めて重要なことであるというふうに思います。

 このような大学の自主的、自律的な教育研究活動を支える上で、財政基盤の確立と基盤的経費のめり張りある配分を行うことが重要であります。

 このため、文部科学省としては、国立大学法人運営費交付金や施設整備費補助金、私学助成の安定的確保に努めているところであります。

 今回御審議いただいている法律改正によりまして、各大学において学長のリーダーシップの確立が図られ、それぞれの大学の特色を生かして運営や教育内容の改革が推進されるようなことが必要でありまして、結果的に、旧態依然たる大学は国立大学であっても今後は淘汰されるかもしれない、そういうグローバル社会の中で、厳しい中でのあるべき大学のあり方は何なのかということについて常に希求する大学に対しては、国はきちっとしたフォローをしてまいりたいと思います。

井出委員 グローバル化ということで、さきの委員の方からも時代の要請に応じた改革というお話もありましたが、私は、あくまでも大学の多様性、最初に大臣も尊重されるという、答弁の冒頭に多様性というお言葉がありましたが、多様性を大切にしていっていただきたいということを最後にお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 前回に引き続き、きょうは学長の選任について質問をいたします。

 日本において大学の自治に関する最高裁判所判例をもたらした事件に、東大ポポロ事件がございます。東京大学の公認学生団体ポポロ劇団が演劇発表会を行った際に、学生が会場にいた私服警官に暴行を加えたという事件であります。一審も二審も、被告人学生の行為は大学の自治を守るためのものであるがゆえに正当であるとして学生を無罪といたしましたが、一九六三年五月二十二日、最高裁大法廷は、原審判決を破棄し、審理を東京地裁に差し戻しました。

 ここにその最高裁の判決を持ってまいりましたけれども、判決はこう述べております。「大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている。この自治は、とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される。」

 これは局長に確認しますが、この判決は承知しておりますね。

吉田政府参考人 今言及されました最高裁判決については承知をしております。

宮本委員 東大ポポロ事件は被告人学生が敗訴した刑事裁判でありましたけれども、同時に、その判決は、大学の自治は、「とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される。」こう判示したわけであります。

 大臣に聞きたいと思ったんですが、大臣はいらっしゃいませんか。そうですか。では、また後で聞きましょう。

 憲法二十三条が定める「学問の自由」を保障するために大学の自治が認められているわけでありまして、前回、大臣も私に、この自治を「最大限に尊重するのは当然だ」というふうに答弁をされました。その自治の内容というのは、まさにこの判決に示された、学長、教授その他研究者の選任が大学の自主的判断に基づいて行われなければならないという、ここにあると言わなければなりません。

 その点で、我が国の大学では、大学の自治を形成する中で、学長は選挙で選ぶ、こういう民主主義の制度が根づいてまいりました。国立大学では、二〇〇四年の法人化により、学外者が参加する学長選考会議が学長を選ぶ仕組みに変えられましたけれども、教職員の意向投票は多くの大学で残っております。

 そこで、これも事実を聞くんですが、現在、国立大学の学長を選任する際に学長選挙はどれぐらい残っているか。文科省が調べた二〇一三年六月の速報値を答えていただけますか、局長。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 先生が言及されました二〇一三年六月の速報値では、国立大学の九五%が学内選挙及び選考会議の議を経て学長を選考し、また、残り五%が選考会議等の議のみによって決定をしているということでございます。

宮本委員 大臣、先ほどいらっしゃらなかったので、冒頭、私は東大ポポロ事件を紹介して、大学の自治の内容というのは、この判決によると、特に教授や研究者の人事、大学の学長、教授や研究者の選任が大学の自主的判断に基づいて行われなければならない、こうなっておりますけれども、この判決の趣旨はもちろん大臣もお認めになりますね。

下村国務大臣 そのときにはおりましたが、承知しております。

宮本委員 先ほど局長から答弁があったように、文科省の調査でも、国立大学の九五%が学内選挙及び選考会議の議を経て学長の決定をしております。

 これは単なる人気投票ではありません。多くの大学では、所信表明書や履歴書等を学長選考会議に提出をして、それに基づいて意向投票が行われております。教職員組合などが立会演説会のようなものを企画して、そして、学長選挙を通じて、求められる大学改革を議論して選挙を行っているところもございます。これは、伝統的に形成されてきた大学の自治のあり方だと思うんです。

 ところが、今回の法案は、国立大学の学長は、各大学のミッションに沿った学長像など、基準を定めて選考するとしております。しかも、その基準を決めるのは、学外者が半数を占める学長選考会議ということになっております。

 これは、大臣、学長選考会議に学外者を引き入れることによって、投票結果にかかわりなく、国立大学のミッションの再定義など、政府、文科省の方針どおりの大学改革を進める人物を学長に据えようということではないか、ポポロ判決に言う大学の自主的判断がゆがめられるのではないか、私はそう思いますが、いかがですか。

下村国務大臣 国立大学法人の学長選考は、学内のほか社会の意見を学長選考に反映する仕組みとして、学内者、学外者が同数となることを原則として各国立大学法人に設置される学長選考会議の権限と責任のもとで選考されるものであり、今回の法改正におきまして、学長選考会議が定める基準により選考を行うことを義務づけることとしております。

 学長選考会議委員のうち学外者については大学が自主的に選任するものであり、また、具体的な基準については、学長選考会議が各大学の特性やミッションをみずから検討、勘案しつつ主体的に定めるものであり、文部科学省が定めるものでは当然ないわけであります。

 このため、大学の自主的判断がゆがめられるのではないかという御指摘は当たらないと考えます。

宮本委員 では、本当にそうかを見てみたいと思うんです。

 全国的に、国立大学法人の学長選考会議の学外委員に政府関係者、中央省庁の経験者が何大学、何人入っているか、経営協議会の学外委員には政府関係者、中央省庁の経験者が何大学、何人入っているか、これをぜひ局長、お答えいただけますか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 文部科学省としては、国立大学法人の学長選考会議の学外委員及び経営協議会における政府関係者、中央省庁の経験者ということになりますと把握をしていないんですけれども、学長選考会議委員の学外者における文部科学省出身者は、三十一大学、延べ三十三人、また、経営協議会委員の学外者における文部科学省出身者は、四十五大学で延べ五十人となっております。

宮本委員 三十一大学三十三人が学長選考会議に学外委員として加わっている。経営協議会には四十五大学五十人もの政府関係者、元中央官庁経験者が学外委員として選出されておる。

 こういう形になっていることによって、大学の自主的判断というものは阻害されていると私は思うんですけれども、大臣、これは全く問題ないという立場ですか。

下村国務大臣 多数派を占めているということであれば問題があるというふうに言えると思いますが、一人いるからといって、それほど影響力があるというふうなことは考えられないと思います。

宮本委員 では、個別具体のことを聞きたいと思うんです。京都大学の総長選考会議に入っている政府関係者について聞きたいと思います。

 京都大学の総長選考会議に入っている政府及び独立行政法人関係者は、一体どなたとどなたですか、局長。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 現在の京都大学の総長選考会議の委員となっている者のうち、政府及び独立行政法人の関係者としましては、お一人は独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター副センター長の有本建男氏、また、独立行政法人日本学術振興会理事長の安西祐一郎氏の二名でございます。

宮本委員 有本建男氏は元文部科学省科学技術・学術政策局長、そして安西祐一郎氏といえば、まさに中央教育審議会の現会長であります。

 安西氏は、国立大学法人化後、まず東北大学の学長選考会議の学外委員に入りました。そこで、二〇〇五年一月には学長選挙の廃止を行いました。さらに、昨年六月に京都大学の総長選考会議の議長についた後、会議の議事録は非公開にいたしました。その後、秘密裏に意向投票の廃止が検討されてきましたけれども、昨年末にそのことが明らかになり、学内外から批判が広がり、結局、総長選挙制度は存続するということになりましたけれども、学外委員によるこうしたまさに大学自治の動きは、極めて重大だと言わざるを得ないと私は思います。

 大臣、これのどこが問題ないと言えるんですか。いかがですか。

下村国務大臣 個別具体的な、安西さんが中教審の会長ということでの指摘かもしれませんが、それは別に文科省が大学に対して要請したわけではなく、京都大学等がみずから選任したことでありまして、何ら政府が影響力を行使しようと思って得られた人選ではこれはないわけであります。

宮本委員 では繰り返して言いますけれども、この安西祐一郎氏は、まさに中央教育審議会の会長でありますね。本法案のもとになったこの「大学のガバナンス改革の推進について」という審議まとめは、その中教審の大学分科会がまとめたものであります。この中をみんな読んでいると思うんですが、審議まとめでは学長選考について、「過度に学内の意見に偏るような選考方法は適切とは言えない。」というふうに述べて、意向投票をまさに敵視をしている中身も出てまいります。

 安西氏は、みずから京都大学の総長選考会議の学外委員、さらには選考会議の議長として、この政府方針を先取り的に京都大学でやろうとしたと言わざるを得ないんです。学内から、「自治、民主主義のないところに京都大学の自主性すなわち創造力の源泉は存在しなくなる」、「教職員の投票権剥奪の暴挙に出ることをわたくしたちは絶対に容認しない」という声が上がったのは、当然のことだと思います。

 大臣、中教審の現職会長が国立大学の総長選考会議に学外委員として入って、ましてやその会議の議長になって、そして総長選挙の廃止を策動する、こういうやり方にいささかの問題もないと大臣はお考えになりますか。

下村国務大臣 それは、京都大学が自主的、主体的に人選もされているわけでありますが、私は、京都大学の取り組みは、これからの未来を見据えた大学教育なり経営を的確に考えて、ほかの大学においても参考になるような事例をたくさん先導的につくっている、すぐれた大学改革をしている、我が国を代表する大学であるというふうに評価しています。

宮本委員 中教審の会長が大学の選考会議に入り、学長選挙廃止の策動をしても問題ない、こういうことであれば、政府関係者が学長選考会議に学外委員としてどんどん入って、政府の方針に沿う学長を選ぶような基準をつくっても構わないと言っているのと等しいですよ。

 基準は学長選考会議が自主的に決めると言うけれども、学長選考会議の判断が大学の自主的判断などと言える保証はどこにもないと言わなければなりません。現に、政府関係者が三十三人も学外委員として入っているじゃありませんか。学長選考が政府の意向に左右されかねないということが明確になったと私は思います。

 しかも、あなた方は、さらなるおどし文句まで用意してあります。法案の附則には、「施行後適当な時期において、」「学長選考会議の構成その他国立大学法人の組織及び運営に関する制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とあります。

 文科省、これは局長に聞きますけれども、これは、学長選考会議の学外委員の割合を現在の半数から、今後の検討によっては過半数へ、あるいは三分の二へとふやすことも排除されないということですね。

吉田政府参考人 御指摘の法案の附則の意味合いでございますけれども、これは、今回の改正法の施行後一定の期間の経過後に、その施行状況や社会経済情勢の変化等を勘案して、学長選考会議の構成を含めて国立大学法人の組織や運営に関する制度について政府として検討を行い、検討の結果、必要性が認められる場合には制度上の措置を講じる、こういう意味でございます。

 学長選考会議についてあらかじめ何か結論があるというものではございません。

宮本委員 学外者の比率をふやすということを排除しませんね。

吉田政府参考人 先ほど申し上げましたように、あらかじめ結論があるわけではございません。

宮本委員 これは、実はふやすことをあらかじめ想定した話なんです、そういう場合には。

 昨年五月八日に開催された第七回教育再生実行会議に三菱重工取締役相談役の佃和夫氏が資料として提出した「産業界の立場から大学に望むこと」というペーパーがあります。この六ページ、「4.大学の制度改革の実現」の「(2)学長を中心としたガバナンス体制の構築」の一つ目には何と書いてありますか、局長。

吉田政府参考人 御指摘の資料の中では、このように記述がございます。

 ・大学における学長の権限と責任を明確化し、学長が十分にリーダーシップを発揮するために、現在の実質的に教員(又は教職員)による意向投票で学長を選ぶ仕組みを見直す必要がある。学長選考会議のメンバー構成を見直し、学内:三分の一、学外有識者(産業界、評論家・文化人、他大学関係者など):三分の二とした上で、学長の選考は名実共に学長選考会議が行うこととすべきと考える。なお、学長の権限強化に対応し、役員会の業務執行チェック機能に加え更に何らかの監査権限を持つ組織を新たに設置することも検討する必要がある。

と記述されてございます。

宮本委員 まさに、三分の二にふやせということをここで言っているわけです。まさに産業界の要望そのものだと言わなければなりません。

 そして、法改正後も従来型の意向投票重視の学長選挙を続けていたら、今度は、半分どころか、学外者を三分の二にふやしてでも財界の意向どおりの学長を選ばせるぞというのがこの附則の意味だと言わなければなりません。

 結局、あなた方の意図は、大学を財界が望む方向に大改造することにある。安倍首相は、五月六日、OECDの閣僚会議の基調演説で、経済成長とイノベーションのために高等教育改革を行うという立場を表明した上で、学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な職業教育を行う、そうした新たな仕組みを高等教育に取り込みたいと考えていますなどと発言をいたしました。そのことは、私はこの間の経緯からも明瞭だと思うんです。

 法案の提案理由として学長のリーダーシップの確立ということが語られますけれども、法案のもととなった中央教育審議会大学分科会の審議まとめの二ページ、上から六行目を読みますと、「社会の各方面から」「学長がリーダーシップを発揮して、機動的な大学改革を進めていくことを期待する声が出されている。」こういう記述がありますけれども、これは、注釈によると、具体的には一体誰からの声だということになっておりますか。

吉田政府参考人 この審議のまとめでの声というのは、まさに社会の各方面から出ているわけでございますが、今委員御指摘の、いわゆる注というところについては、そのような社会の声の例の一つとしまして、「公益社団法人経済同友会による「私立大学におけるガバナンス改革 高等教育の質の向上を目指して」(平成二十四年三月)」という資料を挙げております。

宮本委員 「私立大学におけるガバナンス改革 高等教育の質の向上を目指して」、二〇一二年三月の経済同友会の提言、まさに実物はこれであります。

 この経済同友会の提言では、学校教育法九十三条の改定を求めております。「検討すべき法改正等」の「4教授会の役割・機能の明確化」では、学教法九十三条について、この同友会の提言はどのような提案を行っておりますか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の箇所につきましては、「学校教育法九十三条一項「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」を削除し、「大学には、教授会を置く。教授会は、教育・研究に関する学長の諮問機関とする。」に変更する。」と記載されております。

宮本委員 九十三条一項を削除して、「大学には、教授会を置く。教授会は、教育・研究に関する学長の諮問機関とする。」これに変更せよというのが、この同友会の提言が述べていることです。まさに、政府の法案と基本的に一致をしていると言わなければなりません。

 大臣は繰り返し、教授会は審議はするけれども、決定権限は学長にある、これまでもそうだと言っているわけですけれども、まさに審議だけを行う諮問機関に明確にすべきだということを求めているわけです。

 財界の要望に沿った大学の改革が目的ではないかと私は繰り返し指摘してきましたが、まさにこれは事実で示されているんじゃないですか、大臣。

下村国務大臣 まず、基本的な認識が幾つも間違っていることについて私は指摘を申し上げたいと思います。

 まず一つは、先ほど京都大学の事例をおっしゃっていましたが、京都大学の名誉のためにあえて私が申し上げると、これは別に国が例えば安西さん等を押しつけたわけではなく、まさに大学側が主体的に選考しているわけでありますから、そういうことは、それはまさに言いがかりとしか言えないと思います。

 それから、同様に、本来、この教授会の位置づけでありますけれども、現行法の「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」というその法の趣旨そのものが、これは言葉で言えば審議的なものであって、決議決定機関ではないということでありまして、それを法の上で今回明らかにするという意味の改正案でありまして、これは、経済界から押しつけられたとか云々というレベルでは全くない話であります。

宮本委員 言いがかりでも何でもないですよ。

 では、大臣の今おっしゃったことは、大学の自主性を侵すことはないとか、大学が自律的に学長を選ぶということは、今もそうだし、これからも変わらないと言うけれども、安西氏が京都大学でやった程度のことは、別に全国の大学で行い得る、今、三十三人OBが学外委員として加わっているけれども、こういう人たちがそういうことをやったとしてもそれは構わないとおっしゃっているのと等しいわけであって、私は、そういうことを続けるならば、冒頭の言明にも反して、東大ポポロ事件判決がはっきり述べているような、大学の自律的なまさに人事ということがやれなくなるということを指摘せざるを得ないと思うんです。

 重ねてもう一つ聞きたいと思うんです。

 文科大臣は、五月二十三日、自民党中根委員への答弁で、「今回の大学ガバナンス法案、当初は省令改正の予定だった」と答弁しておられます。当初省令改正の予定だったものがなぜ法律改正案を今国会に提出することになったんですか、大臣。

下村国務大臣 繰り返すようでありますけれども、大学に対して国が強制的に理事等を送り込んでいるわけではない、大学側が主体的に判断してそのような人選をされているということを申し上げておきたいと思います。

 今回の、省令をなぜ法令に変えたのかという話でありますが、当初は、現行法でも学長の権限や教授会の役割等について規定されていることを踏まえ、曖昧な点は省令で明らかにすることを一つの選択として考えておりました。その後、中教審での審議や、大学関係者、与党などからさまざまな御意見を伺う中で、広く関係者に趣旨を徹底するためには法律そのものを改正することが最も重要であるとの認識に至り、法律改正案を国会に出させていただいているものであります。

宮本委員 大臣が繰り返しおっしゃる、権限と責任のあり方が明確でないとか、意思決定に時間を要し、迅速な対応ができていないとか、学内の都合の方が先行して、十分に地域や社会のニーズに応えるような大学運営が行われていない、繰り返しそういう指摘をしているのは、つまり財界なんですよ。

 中央教育審議会の大学分科会でも、省令の改定なのか法律改正なのかが議論になりました。昨年の十二月二十四日の第百十六回大学分科会で法律改定を求めたのは、経済同友会終身幹事の北城恪太郎氏でありました。

 北城氏は、全私学新聞二月三日によると、ことし一月二十八日に開かれた自民党の日本経済再生本部と教育再生実行本部の合同会議で、学校教育法九十三条を改定して教授会は教育研究に関する諮問機関であることを明記することなど、さきの経済同友会の提言の中身とまさに同じ法律改定を提案しております。

 大臣、結局、当初、省令改定で進めるつもりだと一旦は雑誌でもそのようにお書きになった。それが学校教育法等の法律改定に踏み切ったのは、まさに、北城氏など財界筋の要求に応えた結果ではありませんか。

下村国務大臣 何か財界が悪の権化のようなイメージで語られておりますけれども、私は、社会認識においてこれからの我が国における大学はどうあるべきかということについては、例えば、日教組の団体であっても共産党を支持する団体であっても、適切なものであったら、政府は法案改正の中で入れることは当然のことだというふうに思います。

 財界に言われてとかいうことではなくて、私自身が世界のいろいろな大学の学長等に会ってきた中で、このままでは日本の大学はもう衰退化してしまうという危機感を覚えたわけであります。そういう中で、財界に言われて法律改正をつくったというような受け身ではなく、これは、私を含め文部科学省、もちろん議院内閣制ですから、与党にも相談する中、主体的に判断したことでありまして、財界に言われてやっているなんということは全くありません。

宮本委員 あなた方は否定するわけですけれども、客観的にはそうなっているということを申し上げているんですよ。

 財界の要望に沿って大学のガバナンス改革の方針をつくり、財界の要望どおりの中教審審議まとめを出させ、そこではまだ省令改正も選択肢に入っていたものを、財界の要望に沿って法改正案を提出した。そして、中教審の会長は、京都大学で先取り的にその意向に沿って既に動いている。

 財界からの要望は、経済同友会だけではありません。この日本経団連の提言では、国立大学の運営費交付金を中長期的には全て競争的配分に移行させること、教員の年俸制への移行とともに、ガバナンス改革と称して、学長選挙の見直し、教授会の役割の見直し、そして、やはり学校教育法九十三条の改定を求めております、経団連も。

 そしてあげくの果てには、国立大学授業料の自由化、国立大学授業料の収入の料金設定の自由度向上という項目がここにありますよ。これを見ますと、「授業料の設定の自由度を更に向上させる」。もっと高い授業料を取れるところは、国立大学でも高く取ればいいんだ。今みたいに一二〇%なんということを言っていずに、天井知らずに、高くても来ると言うんだったらやればいいじゃないかと、そこまで財界筋は求めているわけです。

 そんなことをやったら、大臣とはもう随分学生の貧困問題をやってきたけれども、今でさえ高い学費が進学の妨げになっているというときに、一層学生たちにその深刻な被害が及ぶと言わなければならないと思うんです。

 大学自治を破壊し、大学を政府、財界言いなりの機関に変える、このような重大な法案は廃案以外にないと私は思います。徹底審議、審議続行を求めて、私の質問を終わります。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木でございます。本日もどうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、これは報道の限りでございますが、このたびの、今春と昨春の都立高校入試での採点ミスについてお伺いをしなければなりません。現段階でどのような報告を受け、また御指示を発せられているのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

 報道によれば、実質一日で採点を求められ、また、国立大学の二次試験の対策のためにも生徒指導をしなければならないと、業務の大変さを多くの校長先生が口をそろえておられるのもまた報道で聞いているところでございます。年明けからの受験シーズンは、特に学校現場の作業がピークになるのだというふうに思ってもおります。

 今後、さまざまな視点からの対策が必要ではないかと思いますが、この点について、まず下村大臣の御所見を伺っておきたいと思います。

下村国務大臣 報道及び東京都からの連絡によりまして、東京都の公立高等学校入学者選抜の学力検査におきまして採点ミスがあったことは承知をしております。

 東京都は、今回の採点ミスの原因として、学校や教員がなれ過ぎていたのではないか、また、点検の甘さ、それから、御指摘のように採点期日の短さ等を挙げておりまして、今後、有識者による調査委員会を中心に、徹底した原因究明と再発防止改善策を検討するとのことであります。

 高等学校の入学者選抜は、生徒の立場を第一に考え、ミスのない実施がなされるべきものであります。

 文科省としては、今後、早急に東京都から詳細な報告を受けるとともに、各都道府県等の高校入試の担当者を集めた場におきまして、各都道府県の採点ミス防止の取り組みに係る情報を共有するなどいたしまして、全国的な注意喚起を促してまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

青木委員 それでは法案審査に入らせていただきます。

 まず、グローバル化の中での大学のガバナンスについてお伺いをいたします。

 現在、グローバル化の進展の中で、国際的な大学間の競争が激化をしております。優秀な教員や留学生は、国籍を問わずその獲得を争うという状況も生じているかというふうに思います。日本の大学は、現状におきまして、外国人の教員比率も、また外国人の留学生の比率も低いと承知をいたしております。

 政府はそれぞれを上昇させるための政策を実施しているところと伺っておりますが、今後の我が国の大学のガバナンスのあるべき姿を考える際には、こうした教員や学生等構成員の多国籍化、また流動化の観点からも検討する必要があるかと考えますが、その際に具体的に留意すべき事項等、政府の御認識をまずお伺いをしたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 大学は、学術の中心として真理を探求し、新たな知見を創造する場であり、本来、多様性がその重要な要素であると考えております。とりわけ、社会経済のグローバル化が進み、世界の大学が優秀な学生や研究者の獲得にしのぎを削る中、日本の大学も、海外から優秀な人材を引きつけるだけの実力や魅力を備えていくことが必要でございます。

 しかしながら、我が国の大学は、例えば世界大学ランキングによる評価でも、外国人留学生や研究者の比率など、国際面での評価が低い傾向がございまして、国際化の推進というのが大きな課題であるというふうに認識をしております。

 このため、これまでの施策の成果も踏まえつつ、今年度から新たに、徹底した国際化を推進し国際競争力の向上を図ろうとする大学をスーパーグローバル大学として三十校程度選定し、重点支援をすることとしております。

 各大学が時代のニーズに的確に対応して改革を進めていく上でも、大学のガバナンスの強化というのは重要でございまして、今回の法改正はそれに資するものであるというふうに考えております。

青木委員 グローバル人材は英語を話せることではないとよく言われますが、私も、真のグローバル人材は、我が国の伝統や文化に根差した教養を身につけているものだというふうに認識をいたします。経済界の目先の利益にかなう人材の育成だけではなく、学生が高等教育を受けた者としてふさわしい教養を身につけられるように、真のグローバル化につなげていただきたいと願うものでございます。

 グローバル人材を内から支える知的基盤の構築に向けた大学教育のあるべき姿について、政府の認識を確認しておきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 グローバル人材の捉え方についてはさまざまなものがございますけれども、例えば、平成二十三年に文部科学省の産学連携によるグローバル人材育成推進会議が取りまとめた報告では、グローバル人材とは、「日本人としてのアイデンティティを持ちながら、広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間」というふうにしております。昨年五月の教育再生実行会議第三次提言におきましても、「日本人としてのアイデンティティと幅広い教養を持ち、世界に打って出たり、外国人を迎え入れて交流したりすることのできる人材」の育成の重要性が提言されているところでございます。

 これらの提言でも指摘されているとおり、これからの時代に生きるグローバル人材には、日本人としての幅広い教養が不可欠であるというふうに考えられます。

 このため、文部科学省としては、学生の主体的な学びを促すための大学教育の質的転換に取り組む大学への重点支援を行いますとともに、大学の国際化に関する事業を進めるに当たりましても、我が国の歴史、伝統文化等への理解を深めるなど、日本人としてのアイデンティティーを育む教育の充実を通じて、世界で活躍できる人材の育成に取り組んでいるところでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 次に、学長のリーダーシップの強化に向けた資金面からの支援についてお伺いをさせていただきます。

 大学にはイノベーション創出の役割も期待されていますが、その役割を果たすために、研究投資を行おうとする際に、資金面での困難が生じていると伺っています。

 まず、基盤的経費であります国立大学運営費交付金や私立大学運営費補助金は削減傾向にあります。国立大学法人の経常収益に占める運営費交付金の割合は、法人化直後の平成十六年の四六%から平成二十四年度では三六%と、一〇%も低下をいたしております。

 競争的資金については、資源配分主体が多くの提案の中からよいものを選んで交付することで資金利用の効率性は高まったと思いますが、近年、間接経費が削減される傾向があり、学長の資金配分の自由度は下がってきていると伺っています。

 そこで、今後は、基盤的経費や間接経費を拡充し、いわゆる学長の裁量経費をふやすことで、資金面からも学長のリーダーシップ強化を支援すべきではないかというふうにも考えますが、政府の御見解をお伺いをいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 各大学におきまして学長がリーダーシップを発揮して大学改革を進める上で、学長が全学的な見地から学内資源配分を適切に行えるようにすることが極めて重要かつ有効でございます。

 例えば、国立大学では全ての大学において学長裁量経費が設定されているところでございますが、さらにこうした経費を充実するため、国としては、基盤的経費や競争的資金の間接経費を確実に措置することが重要な方策の一つと考えております。

 こうした中、文部科学省としても、厳しい財政状況の中ではございますが、大学の基盤的経費の確実な措置に努めておりまして、平成二十六年度予算におきましても、国立大学法人運営費交付金や私学助成の増額を図ったところでございます。

 また、競争的資金の間接経費につきましては、第四期科学技術基本計画において「全ての競争的資金制度において、直接経費を確保しつつ、間接経費の三〇%措置を実施するよう努める。」とされているところでございまして、文部科学省の所管する競争的資金の全てにおいて、大学への間接経費三〇%を確保しているところでございます。

 今回の法案により、学長の補佐体制の強化や学長と教授会の権限の明確化を図るとともに、各大学が学長裁量経費を充実できるよう支援することにより、各大学でそれぞれの特性を生かした改革が学長のリーダーシップによって進められるよう、文部科学省としても、その環境醸成にしっかりと努めてまいりたいと存じております。

青木委員 ありがとうございます。

 それでは、大学生の授業料負担にかかわる件についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 政府は、平成二十四年、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、社会権規約の留保の撤回を行ったことにより、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」という条文全体に拘束されることになったと承知をいたしております。

 一方、去る五月三十日付の財政審が公表いたしました「財政健全化に向けた基本的考え方」の中で、「教育研究組織や学内資源配分の見直しを行う大学や、寄附金の獲得、授業料引上げによる自己収入の増などの教育研究環境充実に向けての自助努力を率先して行う大学については、重点的な支援を行う。」とございまして、授業料引き上げが奨励されているように見受けられます。

 学生及びその保護者は、下宿費等の生活費、または受験料等の負担は大変大きく、経済的な理由により大学で学ぶことを諦める者も多い中で、この財政審の方針は学生にさらにしわ寄せをするもので、到底受け入れられないものと考えております。

 学生や保護者の経済的負担軽減に向けて、この財政審の方針に打ちかつための下村大臣の決意をぜひここでお伺いをしておきたいと存じます。

下村国務大臣 これはおっしゃるとおりでありまして、あの財政審の指針は到底受け入れるわけにはまいりません。

 国立大学の授業料については、国において、標準額と、その一定の範囲内で各大学が標準額を超える授業料を設定することができるよう、省令で定めております。

 これは、法人化後におきましても、国立大学は、学生が経済状況に左右されることなく、学生の能力、適性により進学をすることを可能とし、教育の機会均等等の確保といった重要な役割を担っていることを踏まえたものでありまして、先ほど宮本委員から、何か経団連が言っているから文科省がすぐにでもそれに沿って上げるかのような指摘がされましたが、全くそういう考えは持っておりませんし、これ以上、国立大学においても授業料を上げるということになれば、これは、学生の機会均等を特に貧困家庭において奪うということになりかねないわけでございまして、文部科学省としては、各大学における授業料の具体的な額の設定に当たっては、現行の趣旨も踏まえながら、学生や保護者、社会に対して説明責任を果たす観点からも、負担のないような配慮については、十分対応していく必要があると考えております。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

青木委員 大変心強い御決意を伺ったというふうに思います。ありがとうございます。(発言する者あり)

 それでは、この九十三条二項第三号につきまして、修正案の提出者にまずお伺いをいたしたいと思います。

 この学長が定めるものの対象として、あらかじめ、この「教育研究に関する重要な事項」の中に、教育課程の編成と教員教育研究業績の審査、この二点が含まれるということをどのように確実なものとするのか、まずお伺いをいたします。

笠委員 まず、修正案第九十三条の第二項第三号の「教育研究に関する重要な事項」には、中央教育審議会大学分科会の審議まとめにあるように、今委員から御指摘のあった、教育課程の編成や教員の教育研究業績審査は含まれると考えております。

 そして、これを徹底していただくために、先ほど下村大臣も御答弁をされましたけれども、施行通知の中でこのことをしっかり政府としても徹底していただきたいというふうに考えております。

青木委員 もう一点、この二点とともに、施行通知案の中でございますが、「等」とあるわけでございます。この「等」には何を含むということを考えておられるのか。

 例えば、学校教育法施行規則第百四十四条にあります退学、転学、留学、休学、あるいはキャンパスの移転ですとか学部の廃止等々、さまざまその対象は考えられるんですが、この「等」に含まれるものとしてはどのようなものを考えておられるのか、現時点でわかる中でお伺いをさせていただければと思います。

笠委員 今御指摘の学生の退学であるとか転学、留学、休学については、一般的には含まれるものもあろうかと思われますが、具体的には、各大学において教授会の意見を聞いて学長が定めていただくことになるというふうに考えております。

青木委員 それでは政府にお伺いをいたします。

 修正案にあります「学長が定めるもの」、これを今後どのように各大学に周知徹底をされていくのか、最後に確認をさせていただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 修正案にある「学長が定めるもの」につきましては、これまでも何度かお話がございましたけれども、そのほかの条文の解釈等とあわせて、施行通知等で各大学に対して周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

青木委員 質問を終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 まず質問に入る前に、先ほど大臣が青木委員の質問の際に、他の委員の意見について言及をされました。実は、参議院で、今はもうやめられましたけれども、小松法制局長官が、我が党の委員の質問の際に別の委員の質問について言及をしたということがございました。こういうことは厳に慎むべきだというふうに思っておりますし、また、機会があればちょっと理事会の中でも検討していただければというふうに思います。

 それでは、早速ではありますけれども、質問の方に入っていきたいというふうに思います。(発言する者あり)

 委員長、その点、よろしくお願いいたします。

小渕委員長 理事会で協議いたします。

吉川(元)委員 まず最初に、前回も質問いたしましたが、学校教育法の九十三条の改正について伺いたいというふうに思います。

 五月二十三日の委員会で民主党の吉田委員が、明治大学の学則だと思いますけれども、十一項目にわたる事項が教授会の議決案件になっていることを紹介され、今回の法改正によってこの内部規定が見直しの対象になるのかどうかということを大臣に質問されております。

 それに対して大臣の方からは、前提として、教育研究に関する事項や、学長、理事長から諮問された事項、これについて議決されているということで、議決についてはそういう前提条件があると聞いている、前提条件があるということであれば、一概にこれだけをもって違反とは言えない趣旨の御答弁をされております。

 まず確認なんですけれども、どのような前提条件がある場合に教授会が議決を行うことが可能となるのでしょう。

下村国務大臣 まず、冒頭の話でありますが、一方的に主張されて反論もできないというのは、これはいかがなものかというふうに思います。

 それで、小松さんの話を出されましたが、私は、青木委員の先ほどの質問と関連していることで申し上げていることであって、青木委員の質問と全然違うことで宮本委員の質問に対して答弁したわけではなくて、関連の中での言及でありますから、それさえ一切言うなということについては、理事会で協議をしていただきたいと思います。

 さて、五月二十三日の委員会での吉田委員の御質問に対して、教育研究に関する事項や、学長、理事長から諮問された事項について議決するという前提条件があれば、一概に違反とは言えないと申し上げました。

 その際の前提条件としては、学校教育法の趣旨にのっとり、学長や学部長に決定権が認められており、教授会は学長や学部長が決定を行うに当たって審議を行い意見を述べる関係にあるといった、両者の関係が規定上明らかであることが必要であるというふうに考えております。

吉川(元)委員 先ほどの件はちょっと時間がないのでもう触れませんけれども、しっかりと理事会の中で協議していただきたいと思います。

 今ほど、大臣の答弁ということでいいますと、例えばこの明治大学の学則でいいますと、第三条の二項に「学長は、本大学を代表し、本大学の教育理念に基づき、校務をつかさどり、」というふうな文言がございます。あるいは、「学部長は、学部に関する校務をつかさどる。」こういう文言があることによって、これが前提条件ということになるということでよろしいのでしょうか。

吉田政府参考人 申し上げます。

 先ほども大臣の方からお話もございましたけれども、今回の学校教育法の改正の趣旨といたしましては、学長や学部長に決定権が認められており、教授会は学長や学部長が決定を行うに当たって審議を行い意見を述べる関係にあるといったこの両者の関係が規定上明らかである、これが前提条件になろうか、こういうふうに思います。その上で、教授会として審議をした結論を得るために議決を行うということについては、法の趣旨には反しているとは言えないと存じます。

吉川(元)委員 ちょっと次の質問のところの答弁になっておるんですが、もう一回確認させてください。

 前提条件があるということは、前提条件というのは、先ほど言った、「校務をつかさどる。」というふうに明治大学の学則の中では規定されている、これをもって、これは前提条件であるということでよろしいんでしょうか。

吉田政府参考人 前提条件の一つ目の、学長や学部長に決定権が認められている、それは「校務をつかさどる。」というところでございます。

吉川(元)委員 そうしますと、少しそれとの関連ですけれども、今は明治大学の学則の話ですけれども、幾つかの大学の教授会規程あるいは教授会規則などは、ホームページで公開されているものもございます。それで、教授会の審議事項が掲げられており、その上で議決要件を定められているものも少なくありません。学長が大学運営に関する事項の最終決定者であり、教授会は審議機関であるとしても、教育研究に関する事項についての審議の取りまとめとして議決を行って結論を下すということは、これは至極当然のことだというふうにも思います。

 教授会の審議の結論として、議決のあり方を教授会規程などに盛り込むこと、これ自体は今回の法改正の趣旨には反していないというそういう理解でよろしいでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど先走ってお答えしましたけれども、先ほど来申し上げておりますように、学長や学部長に決定権が認められており、教授会は学長や学部長が決定を行うに当たって審議を行い意見を述べる関係にあるといったこの両者の関係が規定上明らかであって、その上で、教授会として審議の結論を得るために議決を行うということについては、法の趣旨に反しているとは言えないと考えております。

吉川(元)委員 それでは、今のお話でいいますと、九十三条二項の第三号についてはそうだと思いますが、これは第三項についても同じということでよろしいんでしょうか。

吉田政府参考人 それは構造としては同じでございます。

吉川(元)委員 次に、前回の委員会で質問したことに関連してお聞きをいたします。

 前回の委員会で、吉田局長、これはキャンパス移転というのを例にとっての質問で、それに対する答弁でありましたけれども、キャンパス移転といった案件は、九十三条二項三号に定められた「教育研究に関する重要な事項」に当たると答弁する一方、実際に学長に意見を述べることになるかといえば、それは学長の判断次第というような趣旨の答弁がされておられます。

 さらに、九十三条二項三号と九十三条三項は別物としながらも、キャンパス移転という重要な事項について学長が教授会の意見を求めなかった場合は、今度は九十三条三項に該当するので、教授会は審議できる旨の答弁がされました。

 これでは、キャンパス移転という事案というのは、客観的に見て、九十三条二項三号の「教育研究に関する重要な事項」なのか、それとも九十三条三項の「教育研究に関する事項」に該当するのか、極めて不明確だと言わざるを得ません。

 そこで、「教育研究に関する重要な事項」と「教育研究に関する事項」とは何をもって区分をされるのか、説明をお願いいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 学校教育法改正案の第九十三条二項第三号に定める事項といたしまして、これは先般もいろいろと御議論させていただきまして、キャンパスの移転なども入ってくるというようなことを申し上げました。

 九十三条の二項は、学長が、この各号に掲げられているものにつきましては、決定をするに当たって必ず教授会の意見を聞かなければいけないものというのを定めているわけでございます。その必ず聞かなければいけないものについて、事項としては、この委員会でも何度か御議論がありましたけれども、教育課程の編成ですとか、あるいは教員の教育研究業績等の審査、それから先般のキャンパス移転、こういったものが入ってくる、それを最終的に学長が判断をしていく、こういうことになるわけです。

 それで、九十三条の三項の方でございますが、ここで前段の部分は、教授会が審議をするという形になっています。審議というのは、よく物事を議論、検討をする、こういう意味でございます。その対象としましては、これは、「重要な事項」の方に該当しないようなもろもろのことを含めていろいろな審議を行うことができるわけでございまして、審議事項にそこは制限はないわけでございます。

 そういうふうに区別をしていただければと思います。

吉川(元)委員 聞けば聞くほどよくわからなくなるんですけれども、今の説明ですと、「教育研究に関する重要な事項」以外のもろもろのものが「教育研究に関する事項」というふうなことでよろしいんでしょうか。

吉田政府参考人 失礼いたします。

 教育研究に関する重要事項と教育研究に関する事項、これはそれぞれ違うわけでございます。意味合いが違います。

 ところが、九十三条の三項で、教授会が審議をする、この審議というのは、先ほど申し上げましたように、よく物事を議論、検討するということですが、そういう意味合いでの審議事項としては、これは三項に書いてありますけれども、前項に掲げるもののほか、「教育研究に関する事項」について審議をする、このようになっておりますので、そこのところは、ある意味では、「教育研究に関する事項」であれば幅広く審議の対象になるということでございます。

吉川(元)委員 私の頭が多分悪いのだと思いますけれども、ちょっともう一回、「重要な事項」以外のもろもろのものが「教育研究に関する事項」だというふうに先ほど言われましたよ。それでよろしいんですね。「重要な事項」以外の教育研究に関するもろもろの事項がこの三項の方だということでよろしいんですね。

吉田政府参考人 九十三条二項の世界では、三号で、教育研究に関する重要事項と書いてございます。九十三条の三項の方では、教育研究に関する事項というのを書いてございます。

 それで、教育研究に関する重要事項の中に、これまでいろいろな議論が出ました、こういうものが入るというのがございますね。そこで、学長は、これは教授会に意見を聞くことが必要だと認めたもの、これは九十三条の二項で、学長が必ず教授会の意見を聞く。これは、九十三条の二項というのは、学長と教授会の関係の中で学長が決定権を持っているんだけれども、その決定をするに当たって教授会の意見を聞かなければいけない事項、これを整理しているわけでございます。

 今度は、九十三条の三項の方は、それに当たらないものも含めて、審議をするということについては、これは教授会の機能として、教育研究に関することであれば認められるということでございます。

吉川(元)委員 ちょっと、聞いていることに答えてください。「重要な事項」と「研究に関する事項」というものは別のものだというふうに理解してよろしいんですね。

吉田政府参考人 「教育研究に関する」という意味では共通性はあるんですけれども、そこで「重要な事項」なのかそうでないのかという意味では区別しているわけです。(吉川(元)委員「区別」と呼ぶ)区別しているわけでございます。(吉川(元)委員「区別をしているんですね」と呼ぶ)はい。

吉川(元)委員 だとすると、前回の委員会の中で、今は修正案が出されておりますからこの後どうなるかというのはありますけれども、閣法の方でいいますと、「教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」というものが二項の方に入ってくるということです。そうすると、別物であるのであれば、なぜここで外れたものが第三項に入ってくるんですか。

 前回の答弁では、九十三条の二項の第三号の重要事項で、いわゆる学長が意見を聞くことが必要であると認めなかったものは、これは別物であるにもかかわらず三項に移っていくわけなんですか。そうすると、それは重要なことではなくなるということなんですか。

吉田政府参考人 お答えをいたします。

 九十三条二項の方の構造は、委員御承知のとおり、重要事項というのがあって、そして教授会の意見を聞くかどうかというところの判断権は学長が今回は定める、こういうふうなことになってくるわけでございます。

 ですから、そこのところは、では具体的にどの事項がというのはそういったプロセスの中で決まってくることでございますけれども、では、そこに該当しなかったものについて教授会は何も審議もできないのかということになりますと、そういうことではなくて……(吉川(元)委員「いやいや、それはわかっています」と呼ぶ)だから、それは九十三条の三項のところでも十分審議することはできると。(発言する者あり)何ですか。(発言する者あり)

吉川(元)委員 先ほどの話でいうと、「重要な事項」と重要がついていない「事項」というのは、これは別物だというふうに先ほど最初に答弁されましたよね。

 そうしたら、第三項を読むと、「前項に規定するもののほか、」云々かんかんで、「研究に関する事項について審議」をするとなっているんですよ。もしここに、仮に、法文上規定するもののほか教育研究に関する重要な事項その他事項について審議をしというのであれば理解できます。だけれども、ここには、明確に違うというふうに言っている、これとこれとはカテゴリーが違うんだと言っているものしか、片方のカテゴリーしか書いていないわけですよ。それでなぜそれが移ることができるんですか。

吉田政府参考人 移るという表現がどうかという感じがいたします。そこは区別をされているということだと思います。

吉川(元)委員 前回の答弁はこういうふうに言っているんです。ただ、そのところで、仮に学長がその事項として取り上げなかった場合におきまして、これは二項三号ですね、三項の方は、それ以外のことに関しまして、「教育研究に関する事項」について審議することができますので、その中に入ってくることは十分に考えられます、こう答弁されているんですよ、局長自身が。

吉田政府参考人 これは、九十三条の二項と九十三条の三項の適用関係を考えた場合に、九十三条二項の対象にならないものが、ここは区別されて九十三条三項の適用関係に入ってくるということはある、こういう意味でございます。

吉川(元)委員 もう余り時間がないのでこればかりやっているわけにいかないんですけれども、もう一回だけ聞きます。

 「教育研究に関する重要な事項」と重要がついていない「教育研究に関する事項」は別物だと先ほどからずっと言われているんですよ。今言っているのは、二項三号で協議できなかったものは三項でできますよというふうに答弁しているんです。だけれども、三項には「重要な事項」についてというものはついていないわけです。単なる教育に関する事項としか書かれていないのに、なぜこれができるのかと聞いているんです。

吉田政府参考人 そこはもう学長の判断によるということです。

吉川(元)委員 そうすると、教育に関する重要な事項というのは学長が判断するということですか。

 それは、細野委員が前回の委員会の中で質疑したときに、これは大臣答弁の方が正しいというふうに、これは理事会の場でも確認された事項なんですけれども、今言われたのは、学長が判断すると言ったんですよ。

下村国務大臣 これは、法案を素直にそのまま読んでいただければそのとおりの法案なんですけれども。

 九十三条の二項の第三号で、「教育研究に関する重要な事項で、教授会の意見を聴くことが必要なもの」、これは今回の修正案ですから、では原案の方で説明しますけれども、「教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」でありますから、これは「教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」ということが「教育研究に関する重要な事項」であります。

 ですから、三項については、学長は「重要な事項」としては認めなかったけれども、しかし、「教育研究に関する事項」で審議し、学長の求めに応じ意見を述べることが、これは教授会はできるということが三項に書いてある。そういう整理であります。

吉川(元)委員 「重要な事項」というのは、前回、教育課程の編成であるだとか、あるいはキャンパス移転もそうでしょうが、業績の評価であるだとか、これは「重要な事項」だというふうに大臣はたしか答弁されていますよね。

 ところが、今言われたのは、学長はそれを「重要な事項」と認めなかったというふうに答弁をされたんですけれども、これは「重要な事項」なんですか、重要ではないんですか。

下村国務大臣 その御指摘について局長が「重要な事項」でないということは言っていないと思いますよ。(吉川(元)委員「今大臣が言われた」と呼ぶ)言っていないですよ、言っていない。「重要な事項」です。「重要な事項」ということを、つまり、キャンパス移転も含めて「重要な事項」ということを答弁しているわけです。

吉川(元)委員 ちょっと時間がないので、ほかにも幾つも質問の用意をしておりますのでこれでやめますけれども、非常に曖昧といいますか、曖昧模糊としていて、まだ全然はっきり理解ができません。それは移っていくとか、あるいは、「重要な事項」であると学長が認めなかった場合はそれは「重要な事項」なのかどうなのか、これも含めて非常に曖昧だというふうに思います。

 それで、時間がありませんので関連してですけれども、これも細野委員から質問された際に言及されたことですが、九十三条の二項の中では「意見を述べるものとする。」とあります。それから、第三項の方では「意見を述べることができる。」というふうに、書きぶりが変わっております。これについては何がどう違うのか。

 例えば、両方とも、「意見を述べるものとする。」と「意見を述べることができる。」どちらにしても意見を聞くわけですけれども、その聞いた際に学長は、二項に基づくものと三項に基づくもので受けとめ方の違いというのが出てくるんでしょうか。

吉田政府参考人 九十三条二項と三項の話はちょっとおいておきまして、九十三条第二項の方につきましては、学長が決定をするに当たりまして教授会は意見を述べなければならないというふうにしておりますから、これは当然、学長の方もその事項については必ず意見を聞く、また、教授会に意見を述べさせる、そういう義務を負っている。三項の方はそういう義務づけというものはないというところが違いがございます。

吉川(元)委員 これは絶対聞かなきゃいけないというのと、もう一つは、聞きたければ聞いてください、聞いてもいいですよという話の違いだということで今の説明があったと思うんですが、その際に、言われたことについての受けとめは、同じなのか、それとも、やはり二項の方で言われた方が尊重する、義務とまでは言えるかどうかわかりませんけれども、その度合いが強いのか、弱いのか、同じなのか。

吉田政府参考人 二項の方に掲げておりますことは学長は必ず教授会の意見を聞くべきものと整理されますから、そこの規定に乗っかって述べられた教授会の意見というのは、やはり重みがあるんだろうと思います。

吉川(元)委員 わかりました。

 それで、ちょっと関連してですけれども、九十二条の四項で、今回、これまでの「副学長は、学長の職務を助ける。」から、「命を受けて校務をつかさどる。」というこの一言が入っております。「つかさどる」ということに関して言うと、決定権が含まれるんだというようなことも前回の委員会の答弁の中で行われています。

 そうしますと、副学長は校務の決定権者たり得るのかということについて、ちょっと教えていただけますか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 これはもちろん、最終決定権者は学長にあるわけでございますけれども、その学長から命を受けて、一定の範囲の業務について副学長が校務をつかさどる形になって、その範囲内で一定の処理を行うことができる、そういう関係になるわけでございます。

吉川(元)委員 これまで副学長は職務を助けるというところでありましたから、実態からすると、いろいろ伺いますと、名誉職的な方もいらっしゃるというふうなお話も聞いております。

 今度はそうではなくて、本当に学長の右腕として、そして実際には、ある範囲に限ってではありますけれども、決定権者たり得るというお話であります。

 実は、前回、天下りのお話、出向のお話をさせていただいた際に、四百九十五人の副学長のうち、今、五・三%が文部科学省から出向している人たちだというお話を伺っております。

 これまでは、どちらかというと事務局長の方が専断をするという状況が多々ございましたが、これだと、今後、副学長に出向といいますか、私から言わせると天下りだと思いますが、そのことによって文部科学省の専断というのがふえていくのではないかというふうに危惧をせざるを得ません。

 もう時間がありませんので、次に、学外委員のお話が少しございましたので、これについても少しお話をしたいと思います。

 今回、国立大学法人の経営協議会の構成変更で、現行は二分の一以上の学外委員にするよう規定されておりますが、今回の改正で過半数に改める。要するに、学外委員と学内委員の同数はだめで、学外委員の数が必ず学内委員を上回るような改正になっております。

 審議まとめでは、「経営協議会には学外委員が多いことから、経営に関する重要事項が必要なタイミングに審議されない可能性」があるとか、「学外委員が大学に関して十分な情報を持たない」といった問題点が指摘をされています。

 まずお聞きしたいのは、十分な情報を持たずに、会議に欠席することもあり得る学外委員の実情には手をつけずに、経営協議会の構成を学外委員優先にする理由というのは何なんでしょうか。これは、学内の教職員による委員の意見が優先してはだめということなんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 経営協議会の中に学外委員を含めているということにつきましては、これは、社会の多様なニーズを踏まえた大学の経営を確保する、そういう視点からそういった構成をとっているわけでございます。

 先ほど、審議の取りまとめのところで、十分な知識を得ないとかという、確かにそれは審議のまとめの中で指摘がございます。これは、経営協議会の中に学外委員を入れる趣旨は趣旨としながらも、実際の運用をしていく際に、経営協議会の学外委員に対しまして、十分な情報提供なり、あるいは会議出席についての日程上の便宜なり、そういったものをより確保して、経営協議会の学外委員がその経営協議会において期待されている役割を十分に果たし得るようなそういった工夫をすべきだ、そういうくだりでございます。

 そういった指摘も踏まえまして、私どもとしては、まず、大学の実情を踏まえた適切な学外委員を各大学においては選任していただくこと、そして、学外委員に対する積極的な情報提供を行っていただくこと、また、多くの学外委員の出席が可能となる会期日程の設定をしていただくこと、また、欠席された学外委員に対してはきちっとその会議情報のフォローアップをしていただくことなど、各国立大学法人における経営協議会の運営の改善を促しつつ、同時に、経営協議会の学外委員がより主導的かつ積極的に審議に参画できるように、今回、経営協議会における学外委員の割合を過半数とする提案をさせていただいているところでございます。

吉川(元)委員 私は学外委員を一人も入れるなというふうに言っているつもりはありません。一定程度の方がいろいろな社会の考え方を学校の中に反映させていくということは、これはもちろんあり得ます。ただ、なぜ過半数を超えなければいけないのか。

 実際にお話を聞きますと、今は非常勤の方ですから、たまの機会に予算の説明を聞いてもよくわからない。学外の方がどういうふうに言われるかというと、教授会、とりわけ学部教授会でよく議論をしてほしいというようなことは言われるそうです。これは何も無責任でこういうことを言っているのではなくて、やはり、会社組織の経営とも大きく異なります。株主も存在しないという国立大学法人の経営について非常勤の学外委員の方に責任ある議論をしろというのは、これは非常に無責任なのではないかというふうにも思っております。

 もう時間がありませんので終わりますけれども、非常に対照的なのは、今、衆議院を通過して参議院の方で会社法の改正が審議をされております。閣法の方では社外取締役を義務化しておりません。民主党さんの方から、これは一人です、最低一人置けというそういう対案が出されておりますが、これは一顧だにされていないというような話も聞いております。そういう面でいうと、これは経営者団体が強く反発をしたので入らなかったというお話を聞いておりますけれども、余りにもこれはダブルスタンダードではないかというような気がしてなりません。

 もう時間が来ましたので終わりますが、まだ審議は十分尽くされていないということを指摘して、私の質問を終わります。

 以上です。

小渕委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。宮本岳志君。

宮本委員 私は、日本共産党を代表して、学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案並びに修正案に対し、反対の討論を行います。

 まず冒頭、けさの理事会で、数々の論点が残されているにもかかわらず、私の反対を押し切って質疑終局、採決を決めたことに強く抗議いたします。

 また同時に、大臣が別の質疑者への答弁で私に対する反論を行ったことはフェアでなく、断固抗議いたします。

 反対する理由は、本法案が、大学の自治の土台である教授会を骨抜きにし、学長のリーダーシップの確立と称して学長独断の大学運営を許す大学自治破壊法案だからであります。

 本法案は、教授会が審議できる事項を、学生の入学、卒業及び課程の修了と学位の授与に限定し、教授会の審議権を大きく制約しています。これでは大学自治の組織上の保障がなくなり、学問の自由が脅かされます。修正によっても審議事項を学長が決めることに変わりはなく、到底賛同できません。

 さらに法案は、国立大学の学長選考に当たって、大学のミッションに沿った学長像など、基準を定めて選考するとしています。学長は、教職員の支持を得たかどうかではなく、この基準に合うかどうかで選ばれることになります。つまり、文科省の方針に沿った人しか学長にさせないということです。

 これでは、学長独裁ともいうべき上意下達の運営がまかり通り、大学から自由と民主主義が失われ、教育研究への教職員の主体性や活力が低下し、教育研究の質さえも危うくしかねません。

 私が質疑で指摘したように、安倍内閣が大学自治の破壊を進めるのは、財界の強い要望があるからです。幾ら否定しても、政府、財界言いなりの大学に変えるのがこの法案の狙いにほかなりません。

 財界は、大学が産業競争力強化に貢献する人材を育成すべきだとして、大学の再編統合、企業経営の論理を大学に導入することを求めてきました。さらには、国立大の学費設定の自由化まで主張し、学費の際限のない値上げまで要求しています。そのようなことになれば、最大の被害者は大学で学ぶ学生にほかなりません。

 学問研究と教育は日本社会の未来を支える大切な営みであり、大学は教育研究を通じて社会の進歩に貢献すべき国民共有の財産です。大学は、政府、財界言いなりではなく、憲法に基づき国民のために教育研究を行う機関です。

 国がなすべきは、大学自治の破壊ではなく、学問の自由を保障し、大学の多様な発展に必要な条件整備を行うことです。そのためには、世界で最低水準の高等教育予算を抜本的にふやすことこそ急務ではありませんか。

 日本共産党は、安倍内閣の大学自治破壊を許さず、貧困な大学予算の抜本的拡充に全力を尽くすことを表明し、討論といたします。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党・市民連合を代表し、政府提出の学校教育法並びに国立大学法人法改正案に反対、自民、民主、維新、みんな提出の修正案に反対する立場で討論いたします。

 政府提出の学校教育法改正案は、教授会による過度な大学運営への関与が大学改革を阻害していることを立法理由に挙げるものの、法改正をしなければならない立法事実が極めて希薄だと言わなければなりません。教授会による大学運営への関与を制約することは、憲法二十三条が定める学問の自由を保障する大学の自治を脅かすものであり、「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。」と定めた教育基本法第七条二項の精神とも相入れません。

 また、国立大学法人法の改正では、学長の選考に当たって、学内選挙の結果にのみ従って学長を選考している事例は皆無であるのに対し、学長選考会議が主体的に選考を行っているとは言いがたい事例があるとして、大学構成員の学長選考への関与を縮小させようとしています。さらに、経営協議会の学外委員が学内委員よりも必ず多くなければならないとした法改正も、大学運営に関して大学構成員を軽視するものと言わざるを得ません。

 国立大学法人については、独立行政法人化から十年を迎え、大学運営交付金の額が当初より一割近く減少し、外部資金や競争的資金の獲得競争で大学間格差が拡大しています。また、大学の教職員は、評価書の作成等の膨大な事務作業に追われていると指摘されています。喫緊に取り組むべきは、学長の権限を高めるためのガバナンス改革ではなく、独法化以降の十年を検証し、大学間格差や教職員の多忙化の現状をどう解消していくかにあるのではないでしょうか。

 今回の法改正によって、権限を強められた学長が、目先の結果を求められ、企業や経営側が望む研究や教育分野を重視していくことになれば、大学教育の多様性が失われることになる。その結果として、参考人のお言葉をかりれば、ちっぽけな仕事、どうでもいい論文ばかりがふえることになることを強く危惧するものです。

 以上が、政府提出の二法案に反対する理由です。

 なお、修正案につきましては、教授会が審議し、学長に意見を述べる重要事項を明確にした点で政府案の欠陥を是正した点は評価するものの、今回の法改正全体を貫く問題を解消するに至っていないと判断し、反対するものとしました。

 以上、討論といたします。

小渕委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、萩生田光一君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、笠浩史君外二名から、民主党・無所属クラブ、結いの党及び生活の党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。笠浩史君。

笠委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 憲法で保障されている学問の自由や大学の自治の理念を踏まえ、国立大学法人については、学長のリーダーシップにより全学的な取組ができるよう、学長選考会議、経営協議会、教育研究評議会等をそれぞれ適切に機能させることによって、大学の自主的・自律的な運営の確保に努めること。

 二 私立大学の自主性・自律性・多様性、学問分野や経営規模など各大学の実態に即した改革がなされるよう配慮すること。

 三 学校教育法第九十三条第二項第三号の規定により、学長が教授会の意見を聴くことが必要な事項を定める際には、教授会の意見を聴いて参酌するよう努めること。

 四 国立大学法人の経営協議会の委員の選任や会議の運営に当たっては、学内外の委員の多様な意見を適切に反映し、学長による大学運営の適正性を確保する役割を十分に果たすことができるよう、万全を期すこと。

 五 学長の業務執行状況のチェック機能を確保すること。

 六 教育の機会均等を保障するため、国立大学の配置は全国的に均衡のとれた配置を維持すること。

 七 国のGDPに比した高等教育への公的財政支出は、OECD諸国中最低水準であることに配慮し、高等教育に係る全体の予算拡充に努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

小渕委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小渕委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

小渕委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

小渕委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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