衆議院

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第24号 平成26年6月18日(水曜日)

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平成二十六年六月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      今枝宗一郎君    岩田 和親君

      小此木八郎君    神山 佐市君

      菅野さちこ君    木内  均君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    桜井  宏君

      新開 裕司君    末吉 光徳君

      冨岡  勉君    永岡 桂子君

      根本 幸典君    野中  厚君

      馳   浩君    比嘉奈津美君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      八木 哲也君    菊田真紀子君

      細野 豪志君    吉田  泉君

      遠藤  敬君    椎木  保君

      三宅  博君    中野 洋昌君

      柏倉 祐司君    井出 庸生君

      宮本 岳志君    青木  愛君

      吉川  元君    山口  壯君

    …………………………………

   議員           山下 貴司君

   議員           古屋 範子君

   議員           井坂 信彦君

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            田中  敏君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大西 康之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁廃炉基盤整備総合調整官)    藤原 正彦君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  豊田  硬君

   参考人

   (独立行政法人理化学研究所理事長)        野依 良治君

   参考人

   (独立行政法人理化学研究所理事)         坪井  裕君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役副社長)       石崎 芳行君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十八日

 辞任         補欠選任

  桜井  宏君     根本 幸典君

  新開 裕司君     今枝宗一郎君

  比嘉奈津美君     末吉 光徳君

  宮内 秀樹君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     新開 裕司君

  岩田 和親君     宮内 秀樹君

  末吉 光徳君     八木 哲也君

  根本 幸典君     桜井  宏君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     比嘉奈津美君

    ―――――――――――――

六月十六日

 公認心理師法案(河村建夫君外八名提出、衆法第四三号)

同月十三日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一六三五号)

 同(うえの賢一郎君紹介)(第一七一一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一七七五号)

 教育費負担の公私間格差をなくするための私学助成に関する請願(佐藤英道君紹介)(第一六三六号)

 奨学金被害をなくし、真に学びと成長を支える奨学金制度を求めることに関する請願(小宮山泰子君紹介)(第一六三七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一六三八号)

 同(漆原良夫君紹介)(第一七一二号)

 同(階猛君紹介)(第一七一三号)

 同(桜井宏君紹介)(第一七七九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一七八〇号)

 同(吉川元君紹介)(第一七八一号)

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(桜井宏君紹介)(第一七七六号)

 教育無償化を進め給付制奨学金を実現することに関する請願(桜井宏君紹介)(第一七七七号)

 同(吉川元君紹介)(第一七七八号)

同月十六日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(谷川弥一君紹介)(第一八二八号)

 同(中根康浩君紹介)(第一八二九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一八三〇号)

 同(今村雅弘君紹介)(第一九一二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一九一三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一九一四号)

 同(山本有二君紹介)(第一九一五号)

 学費の負担軽減、高等教育予算増額を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第一八三一号)

 障害児学校の設置基準策定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九〇〇号)

 同(大畠章宏君紹介)(第一九〇一号)

 同(笠井亮君紹介)(第一九〇二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九〇三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一九〇四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一九〇五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一九〇六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九〇七号)

 同(中根康浩君紹介)(第一九〇八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一九〇九号)

 同(務台俊介君紹介)(第一九一〇号)

 同(柚木道義君紹介)(第一九一一号)

 学校司書の法制化に関する請願(笠浩史君紹介)(第一九一六号)

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(笠浩史君紹介)(第一九一七号)

 奨学金被害をなくし、真に学びと成長を支える奨学金制度を求めることに関する請願(武正公一君紹介)(第一九一八号)

 同(山井和則君紹介)(第一九一九号)

 同(笠浩史君紹介)(第一九二〇号)

同月十七日

 学校に正規の現業職員を必ず配置するよう法制化を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第二〇二四号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二〇二五号)

 同(笠井亮君紹介)(第二〇二六号)

 同(志位和夫君紹介)(第二〇二七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二〇二八号)

 同(郡和子君紹介)(第二二〇九号)

 同(東郷哲也君紹介)(第二二一〇号)

 同(中根康浩君紹介)(第二二一一号)

 同(原口一博君紹介)(第二二一二号)

 同(神田憲次君紹介)(第二三三一号)

 同(玉城デニー君紹介)(第二三三二号)

 同(中谷元君紹介)(第二三三三号)

 同(永岡桂子君紹介)(第二三三四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二三三五号)

 教育格差をなくし、全ての子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第二〇二九号)

 学校司書の法制化に関する請願(青山周平君紹介)(第二〇三〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二〇三一号)

 同(笠井亮君紹介)(第二〇三二号)

 奨学金被害をなくし、真に学びと成長を支える奨学金制度を求めることに関する請願(漆原良夫君紹介)(第二〇三三号)

 同(宮崎政久君紹介)(第二〇三四号)

 同(阿部知子君紹介)(第二二一四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二二一五号)

 同(中野洋昌君紹介)(第二三三七号)

 障害児学校の設置基準策定に関する請願(青柳陽一郎君紹介)(第二〇三五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二〇三六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二〇三七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二〇三八号)

 同(杉本かずみ君紹介)(第二〇三九号)

 同(田嶋要君紹介)(第二〇四〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二〇四一号)

 同(野間健君紹介)(第二〇四二号)

 同(吉川元君紹介)(第二〇四三号)

 同(郡和子君紹介)(第二二一六号)

 同(左藤章君紹介)(第二二一七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二二一八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二二一九号)

 同(秋葉賢也君紹介)(第二三三八号)

 同(小川淳也君紹介)(第二三三九号)

 同(柿沢未途君紹介)(第二三四〇号)

 教育の無償化を目指して全ての子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(寺島義幸君紹介)(第二二一三号)

 同(井出庸生君紹介)(第二三三六号)

 教育予算の増額に関する請願(郡和子君紹介)(第二三三〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 公認心理師法案(河村建夫君外八名提出、衆法第四三号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人理化学研究所理事長野依良治君、独立行政法人理化学研究所理事坪井裕君及び東京電力株式会社代表執行役副社長石崎芳行君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長前川喜平君、高等教育局長吉田大輔君、高等教育局私学部長常盤豊君、研究開発局長田中敏君、スポーツ・青少年局長久保公人君、厚生労働省大臣官房審議官大西康之君、資源エネルギー庁廃炉基盤整備総合調整官藤原正彦君及び防衛省人事教育局長豊田硬君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田佳隆君。

池田(佳)委員 おはようございます。自由民主党、池田佳隆でございます。

 今国会、くくりの貴重な質疑の時間をいただきましたこと、萩生田筆頭理事初め関係各位の皆様方にまずはお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。

 さて、第二次安倍内閣成立後、下村文部科学大臣におかれましては、いじめ防止対策の推進、新しい高校無償化制度の確立、教育委員会制度の改革、大学統治機構の改革、道徳用教材「私たちの道徳」全国無償配付、ゆとり教育からの脱却と土曜授業の推進、国民的アイドルグループとのコラボダンスなどなど、十年、いや、二十年はかかるかもしれないと言われる教育再生、教育改革を義家前大臣政務官らとともに次々と実行し、なし遂げられてこられました。

 国家百年の計は教育にあり、教育再生こそ国家最高の基盤中の基盤であると考え、衆議院議員総選挙に出馬させていただいた私にとりましても、下村大臣の覚悟に満ちあふれたそのお姿には、心からの敬意を表させていただきたいと思います。

 ただ、教育再生はまだ道半ばでございます。今後、日本が世界に伍して成長を続け、国民一人一人が豊かな人生を送るためには、まさに、未来への投資である教育の充実が今後さらに必要であると考えます。

 そこで下村大臣にお尋ねしたいのですが、これからの日本の教育改革は、何を求め、何を実行していけばよいとお考えでしょうか。大臣の思うところ、その所感をお聞かせ願えればと思います。よろしくお願いいたします。

下村国務大臣 おはようございます。

 今回は、重要な閣法、衆議院文部科学委員会の皆様方のお力をいただいて全て法案を通していただき、大学ガバナンス法案は今は参議院で審議をしていただいている最中でございますが、多分通していただけるのではないかと期待をしているところでありまして、御協力、心から感謝申し上げたいと思いますし、また、池田委員におかれましては、日本JCの会頭のときから、我が国の教育に対して大変力強い応援と、それから、そもそも問題意識を持って活躍をされ、国会議員として引き続き教育を中心として活動されていることに敬意を申し上げたいと思います。

 これから、二〇六〇年、五十年後、我が国は、少子高齢化の中で、一人当たりの労働生産力も下がり、また、労働可能人口もこのままいったら約二分の一になってしまうということの中で、ほっておいたら日本の活力はもう衰退化しかないという方向でありますが、しかし、唯一それを変えられるのは、やはり人、人材であると思います。人づくりが国づくりであるし、そして、教育によってしか、この日本の活力を取り戻すということはできないのではないかと思います。

 全てこの国に生まれた人が自分にはチャンス、可能性がある、そしてそれは世界のどこの国以上に日本に存在をしている。一人一人の潜在能力をどう引き伸ばすかというのは、まさに教育によってしかできないというふうに思いますし、それが、今は残念ながら格差社会が固定化しつつあったり、また、発達障害等、チャンス、可能性が閉ざされてしまっているような画一、均一教育の問題がやはりあるのではないかと思います。これまでの教育を否定するつもりはありませんが、しかし、延長線上で未来があるわけではありません。

 ぜひ、これから、新しい時代にのっとった、そういう教育改革をさらに積極果断にしていくということが、結果的に、一人一人の生きてきた、生まれてきたその潜在能力を引き出すチャンスを教育によって提供するということになってくるというふうに思いますし、我が国は、そういう意味では、たゆまぬ努力を教育からもしっかりしていかなければならないというふうに考えているところでございます。

池田(佳)委員 大変わかりやすいお話、ありがとうございました。

 さて、一九八九年、平成元年の大納会、三万八千九百十五円八十七銭、史上最高の株価を記録してから二十五年余り、バブル経済の崩壊のみならず、資本主義を脅かすデフレ不況に陥ってから十五年以上の歳月を経てまいりました。その間、隣国中国にはGDPで抜かれ、世界第二位から第三位へ、そして、一人当たりのGDPも世界第一位から第五位まで下がり、日本の国際的な地位は、存在感は低下をしてしまいました。また、経済格差から子育て不安も増大、子供の貧困率は年々悪化の一途をたどってきたわけであります。

 日本人から自信と誇りが霧散してしまったと言っても過言ではない状況に、大臣もよく御答弁でお話しされておりますように、子供たちも、自分たちはだめな人間だ、そのように思う率がこの三十年で三倍にも膨れ上がってしまいました。

 そこで私は、この危機的な状況を打破するために、もちろん教育環境の危機のみならず、日本の危機的状況を打破するために、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックは、天啓とも言うべき日本飛躍の好機であると捉えております。

 自信と誇りを取り戻す、そんな転換点二〇二〇年に向けて、日本再生、特に教育戦略として、教育再生戦略として何をすべきとお考えでしょうか。下村大臣の御所感、お聞かせ願えればと思います。

下村国務大臣 おっしゃるとおり、三・一一東日本大震災があって、我が国は、非常に困難な状況の中、みんなで力を合わせて、和の精神、東北の被災地の方々が努力をされ、また、それを支える、それが世界の中でも大変評価されている部分がありますが、さらに、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックが東京で開催されるというのは、まさにこれはおっしゃるとおり、天啓だというふうに思います。

 これをチャンスとして捉えて、日本人が力を合わせて、オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典ですけれども、それだけでなく、それをターゲットイヤーとして、夢ビジョンJAPAN、今、文部科学省でも中堅、若手がそのために、教育、文化、スポーツ、科学技術、あらゆる部分で日本を世界に発信していきながら、また、一人一人の日本人の自信と誇りだけでなく、やる気を取り戻すような、そういうビジョンをつくって進めているところであります。

 ぜひ、東京だけでなく、日本全体が元気になるような、文化芸術の部分から、もちろん教育においても、先進諸国の中で留学生の数が減っているというのは日本だけでありまして、特に、これからの若い人たちにとっての自分のフィールドは、日本だけでなく地球全体だということの中で、世界にみずから行って自分の夢や志を実現するような、そういう意欲をどう教育の中で培っていくか。

 自分はだめな人間だと思う高校一年生が八四%もいるような日本というのは、やはり異常だと思うんです。そういう閉塞感を打ち破って、どんな人にでも、生まれてきた意味そしてまたかいがあるんだと日々思ってもらえるような、そういう教育をぜひ実現をしてまいりたいと思います。

池田(佳)委員 大臣、ありがとうございました。

 さて、先日、御案内のとおり、下村大臣の新しい著書が上梓をされました。この本には、下村大臣御自身の幼少時代の貧困の危機、そして胃がんという生命の危機を克服して、それでも教育改革に立ち向かってこられた下村大臣の半生が赤裸々に記されておりました。

 私自身、読み進めていくうちに目頭が何度も熱くなったわけでございますが、政治家下村博文として、そして一人の日本人として、一人の父親として、みずからの命を賭してでも挑み続けるこの教育改革への熱き思い、信念をぜひお聞かせ願えればと思います。よろしくお願いいたします。

下村国務大臣 本のPRをしていただきまして、ありがとうございます。

 もともとその本は、教育を変え、日本を変えるというテーマで出したいと思っていたんですが、そんな本の題名では売れないということで出版社が勝手に本の題名を変えたんですけれども、今回書いた理由というのは、先ほど申し上げたように、八四%近い子供たちが自己肯定感を持っていない、自分はだめな人間だと。

 そんなことはない、今は毎日、不登校になったりいじめられたり、つらい思いをしている、そういう子供たちに、例えば文部科学大臣というのは、順風満帆の中、人生恵まれてなっているんだろうというイメージがあるんですけれども、そうではなくて、私も九歳のときに父が交通事故で亡くなって、極貧の中から、新聞配達をしたり、いろいろな苦労があった中で今があるということで、赤裸々な、一〇〇%全部事実でありますけれども、それを出すことによって、若い人たちに生きる勇気をぜひみずからの体験の中で語りたい、そういうふうに思って本を出したところでございます。

 それもやはり、教育によってこの国を変えていくということにつながってくるのではないかというふうに思いますし、ぜひ若い人が、若い人だけではありませんが、日本に住んでいる全ての人が自分も頑張ろうと思ってもらえるような、そういう教育施策またはそういう生き方を通じて伝えられればというふうに思っております。

池田(佳)委員 大臣、ありがとうございました。

 この本は、政治家の皆さんに読んでほしいのはもちろんのことでございますけれども、ぜひ子供たちに読ませたい、読んでほしい、そのように心から願うところでございます。

 ただいま、下村大臣の教育改革に挑まれてきたその思い、覚悟、ひしひしと伝わってきたわけでございます。ぜひとも文部科学省の皆様方におかれましては、日本の人財を育てていることの重み、責任を改めて御認識いただいて、これからの日本のいやさかに貢献していただきたい、そのように思います。

 そしてまた、先ほど大臣も言われました、国づくりは人づくり、天は人の上に人をつくらず、しかしながら、それは学問の機会が与えられてこそ成り立つ世の中であると、かの福沢諭吉塾長もおっしゃっておられました。もちろんのことでございますが、言うまでもなくその学問は、正しい知識を教えるものでなくてはなりません。

 特に日本史の授業に関して言えば、前回御質問させていただいたように、現在使用されている教科書では、さまざまな部分に自虐的表現や、史実を正しくあらわしていないもの、編集者の偏った評価が記述されたものも多々散見されております。これも、日本人としての自信や誇り、矜持をなくしてしまう原因に思えてなりません。歴史は史実のみを伝えるのみ、評価は子供たちがするものだと考えます。

 あえて申し上げれば、世界じゅうの自国の歴史教科書は、国史なる名称の教科書で教えているのが通例、一般的であります。しかしながら、我が国では、戦後、日本史という、アメリカ史やイギリス史と並ぶ、地球上にあるどこかの国の歴史という位置づけになっているように思えてなりません。何か他人事のように思えてならないわけであります。

 そのような点も含め、文部科学省におかれましては、ぜひとも今後の是正検討課題として留意されたいという意見を申し述べまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 おはようございます。公明党の中野洋昌でございます。

 今国会の文部科学委員会では最後の質問になると思いますので、しっかり質問させていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

 私、今回、大きく二つ質問をさせていただきたいと思うんですけれども、一つは、子ども・子育て支援の新制度についてお伺いをしたいというふうに思います。

 と申しますのも、今、認定こども園という新しい制度もできまして、実は、私の地元の兵庫県というのは、認定こども園の数でいうと、四月一日現在で百十八ということで、何と、東京都を超えて日本で一番認定こども園が多いという、新しい制度にどんどん進めていこう、こういうことに取り組んでおるわけでございます。

 この子ども・子育ての支援制度、新制度へ移行するということで、今、意向調査をやっている。来年度から新制度に行きます。六月四日に事務連絡が来て、これからどうしていきますか、経営判断をそれぞれの園にお願いをしている、こんな状況であるというふうに伺っております。

 ただ、この経営判断のところでよく地元から聞きますのは、今はどういう状況かといいますと、認定こども園というのは、幼稚園の部分がありまして、保育園の部分もありまして、幼稚園の場合は、今は私学助成で私立だとやっておったりしますので、幼稚園の部分は全く新しく制度が変わる。保育園は、一人幾ら補助が出るとか、一人当たりの単価というものが決まっている。これが新制度になりますので、どちらも一人当たり単価というのが新しく国から提示をまさにされたわけであります。五月に仮単価ということで出されまして、やっているんです。

 ただ、幼稚園の部分が、要は、幼稚園の単価というのは出ているけれども、幼稚園というのは、別に授業を教えて終わりではなくて、その後延長で預かったりもしておりまして、この一時預かり部分の単価がまだ出ていないというふうに聞いております。

 実際、仮単価を見ますと、認定こども園の仮単価というのは、幼稚園の部分というのは、実は一人当たりの単価は結構安くて、保育園部分の単価は一人当たり単価が高いということで、どれがどのくらいいらっしゃるかによって経営判断が全然変わってくるという状況だというふうに聞いておるんです。

 この一時預かり事業の国の基準が決まらないと経営判断ができないじゃないか、こういうお声が上がっておりまして、今は意向調査が来ていて、どうすればいいんだ、こういうお声も伺います。

 この一時預かり事業の基準、可能な限り速やかに決めていただきたい。そうしないと、秋ぐらいには募集をかけるわけでありますから、一体、ではどうするのか、どうすればいいのか。新しい制度になってみたはいいけれども、これはどうすればいいのか。こういう、本当にそうだなというふうに私も思うような声が上がっておりますけれども、いかがでございましょうか。文部科学省から伺いたいと思います。

前川政府参考人 現在、多くの私立幼稚園におきましては、都道府県からの私学助成を受けて預かり保育事業が実施されているケースが多いわけでございますが、御指摘のとおり、新制度施行後は、施設型給付を受ける幼稚園の場合には、市町村事業の一類型である一時預かり事業として引き続き取り組んでいただくことが基本になるわけでございます。

 この一時預かり事業の基準あるいは補助単価等につきましては、御指摘のとおり、まだ公にしていないところでございまして、関係省庁と連携しながら、現在、鋭意検討を行っているところでございます。

 文部科学省といたしましても、私立幼稚園が新制度に移行するか否かを検討するに当たりまして、一時預かり事業の基準や補助単価等が判断要素の大きな一つになると認識しているわけでございますので、これらを可能な限り速やかにお示しできるように、鋭意検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

中野委員 今までの私学助成でありますと、どうしても県の方とやりとりをすることも多く、今回、新事業で市町村が窓口になるということで、県と市町村と、また国との連携をしっかりしないといけない、また、丁寧に説明をしないといけない、こういうお願いを我が党からもさせていただいておりました。

 現状、しかし、このまま一カ月で何の追加的な説明もなく、一つ大きな判断を考えてくれというのは、私は非常に酷なことなのではないかなというふうに思います。国から必ずしも丁寧な説明も受けていないんだ、こういうお話も伺っておりますので、今は意向調査をかけているわけでございますので、国からの直接の説明も含めて、しっかり丁寧にぜひ御説明をしていただきたい、こう御要望申し上げますけれども、いかがでございましょうか。

前川政府参考人 幼稚園等に対する子ども・子育て支援新制度への移行に関する意向調査につきましては、国におきまして、六月四日に都道府県等を対象とした説明会を開催した際にお示しし、各園に対する周知を依頼したところでございます。

 この意向調査の実施を含めまして、子ども・子育て支援新制度の内容の詳細につきましては、これまで都道府県、市町村に対し、各種会議等を通じて周知、説明を行ってきているところでございます。

 また、幼稚園を含む事業者に対しましては、関係団体が主催する研修会等に職員を派遣いたしまして周知、説明を行うとともに、都道府県等が主催する、事業者等を対象とした説明会にも国から職員を派遣するなどその対応を図っているところでございますが、なかなか周知が十分でないという御批判もいただいているところでございますので、これに加えまして、引き続き、この意向調査を含め、子ども・子育て支援新制度に対する各自治体の担当者や事業者の理解が一層進むように、さらに丁寧に働きかけてまいりたいと考えているところでございます。

中野委員 よろしくお願いします。

 恐らく、その丁寧な説明がなかなかないんだというお話の中には、連絡や説明はあるけれども、不確定な要素が多くてどう判断したらいいのかわからないということも私は多々あるんじゃないかなというふうに思います。それも含めてしっかりと対応していくべきだと思いますし、せっかく認定こども園という新しい制度に頑張って移行しようということで県全体としてやっておりますので、新しい制度になった結果、今回のその新しい新制度にさらに予算が組み替わるときに経営判断がなかなかできないと、なってはみたものの、一体どうすればいいんだ、こういうお声が上がっておりますので、せっかく国が推進をしている新しい制度に乗ってやっていこうということで頑張っていただいている皆さんでございますので、混乱がないようにしっかりやっていただきたいと要請をいたしたいというふうに思います。

 もう一つ、私、今回お話を伺いたかったのは、これから教育再生ということで日本の教育をしっかりやっていくんだということで、本当に今国会も大臣を中心にさまざまな改革をしていただきましたけれども、やはり、少子化に入っていきますので、教育の質をいかに高めていくのか、これをもっともっと突き詰めて議論をしないといけないなというふうに思っています。

 その中で、ちょっと何点か問題意識があるのでお伺いをしたいんですけれども、これから教育で教えないといけないこと、そして身につけないといけないスキル、これが変わってくる、こういう説明をよく伺います。やはり、物事、知識を詰め込むだけではなくて、自分で考える、答えがないことに対して課題を見つけて自分で解決をしていく、こういう力を身につけていく、こういうことはよく伺うんですけれども、やはりこれをしていくためには、私は、教育の、教え方自体も変えていかないといけないんじゃないか、こういう問題意識がございます。

 三十五人であるとか四十人であるとか、一クラスでやはり集まって、先生方がずっと板書をして知識を伝達していく、こういうやり方は大事でありますけれども、やはりもっと双方向の、例えばアクティブラーニングのようなことも最近行われているわけでありますけれども、新しい取り組みというのをしっかり取り入れて教え方を変えていく、こういう発想が必要なのではないかなというふうに思いますけれども、これについてどのように今後考えておられるのかを文部科学省に伺いたいというふうに思います。

前川政府参考人 グローバル化でありますとか少子高齢化あるいは産業構造の変化、そういった社会の進展に対応いたしまして、次代を担う子供たちには、基礎的、基本的な知識、技能の習得とともに、みずから課題を発見し解決する力、主体的に学び続ける力、こういった力を育てることが今後重要であると考えております。

 このため、これからの教育では、一方的に教えられる受け身の教育ではなく、子供たちが課題の解決に向けて主体的また協同的に学ぶ教育への転換を図り、能動的な学習、これは先ほどおっしゃいましたアクティブラーニングでございますが、能動的な学習を促していく必要があると考えております。

 現行の学習指導要領におきましても、知識、技能を活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等や学習意欲を育むことなどを特に重視して、各教科等において、説明、論述、討論などの、児童生徒の主体的な言語活動の充実を図ることを示しているわけでございます。また、各教科等、また、総合的な学習の時間におきまして、問題解決的な学習や探求的な学習に主体的、創造的、協同的に取り組む態度の育成を重視しております。

 各学校におけるこうした取り組みを充実できるように、文部科学省といたしましても、指導事例集の作成やモデル事業の実施等を通じまして支援しているところでございますが、今後とも、こういった能動的学習を促す課題解決型、協同型の学習の実現に向けまして、体制整備を図ってまいりたいと考えております。

中野委員 もう一点ございますのが、日本以外の国の例を見ますと、学校の先生以外に、専門的なスタッフがもっといっぱいいらっしゃるわけでございます。その人たちが連携をして、学校全体として子供を育てていくという姿勢もあると思います。

 日本も、スクールカウンセラーなど専門的なスタッフを学校の中に入れていくということは始められておりますけれども、やはり、先生一人一人にかかる負担も大きくなってまいりますし、問題も複雑になってまいりますし、こうした、学校全体として子供を育てていく、こういうやり方も私は大事だというふうに思いますけれども、これについてどうお考えか、お伺いをしたいと思います。

前川政府参考人 我が国の学校は、職員のうち教員の占める割合が約八割でございますが、諸外国では約五割から六割という例が多いということと比べますと、教員の比率が非常に高い構造になっているということが言えます。

 さらに、学校を取り巻く状況が複雑化、困難化する中で、我が国の教員は諸外国の教員と比べて非常に幅広い業務を行っているという実態がございまして、そのために、授業等の教育活動に集中しづらいという状況も生じていると考えております。

 このため、教員以外のスクールカウンセラーでありますとかスクールソーシャルワーカー等の専門的な知見を有するスタッフを活用いたしまして、多様な課題に対して学校がチームとして力を発揮できるように学校の構造を転換していくことが必要であると考えておりまして、教育の充実を図るために、多様な人材に学校に参画していただくことを推進するとともに、必要な検討も行ってまいりたいと考えているところでございます。

中野委員 二つお伺いをさせていただきました。

 そして、最後に大臣にお伺いをしたいと思うんですけれども、やはり教育の質を高めるということで、今、骨太とか成長戦略の議論もまさにしている最中でありますけれども、一部、少子化になっていくから学校の先生はどんどん減らしていけばいいんだ、こういう御意見もあるわけでございます。

 私は、先ほど質問させていただいたような、教え方も変えないといけない、いろいろなことにどんどん対応していかないといけない、こういう状況を考えると、やはり、学校の教職員の質を上げるという議論はもちろん大事で、ただ、それに加えて、体制をしっかり確保していくというか整えていく、こういう部分も、どちらもこれからの教育の質を高めるという点では大事なのではないかなというふうに思います。

 今後、来年度以降、より長期的な議論になってくるとは思いますけれども、教育の質の向上ということに向けて、大臣がどのように取り組まれていかれるのかという御決意をぜひ最後にお伺いをしたいというふうに思います。

下村国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、一人一人の自己実現を可能にするとともに、我が国がグローバル化や少子高齢化社会の中で成長、発展をしていくためには、これまでの一方的に教えられる受け身の教育から、子供たちが課題の解決に向けて主体的、協同的に学ぶ教育への転換が求められているというふうに思います。

 このために、養成、採用、研修を通じて教員の資質能力を高めることが重要でありますが、学校を取り巻く状況が複雑困難化し、教員に求められる役割も拡大化する中で、今後求められる教育への転換や、困難な課題に対応するために指導体制の充実も必要であり、教員数の充実も図ることが重要であると考えます。

 教育は人なりという言葉のとおり、教育の質を高めるためには何よりも教員が重要であることから、教員の質と数の一体的な強化を図っていくことが不可欠であるというふうに考えております。

中野委員 我が党としても、しっかりと教育の質を高めるということで応援をしてまいりたいというふうに御決意を申し上げます。大臣の力強いお言葉もいただきまして、しっかり頑張っていきたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 きょうは本当にありがとうございました。

小渕委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 おはようございます。民主党の笠浩史でございます。

 ちょうど先週でしたけれども、六月十二日に、STAP細胞に関する小保方さんの論文についての第三者から成る研究不正再発防止のための改革委員会の提言が出たことを受けて、きょうは、お忙しい中、野依理事長の方にもおいでをいただき、ありがとうございます。きょうは、理事長と、そしてまた大臣に、幾つか確認の質疑をさせていただきたいというふうに思っております。

 特定国立研究開発法人にも理研をというようなことで、これが今回の問題で先送りをされたわけですけれども、やはり今後、しっかりとした組織自体のガバナンスをこの際本当に一から見直していくということで、私は、理事長にはリーダーシップを発揮していただきたいということを大前提にしながら質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の報告はよくまとめていただいたなと。厳しい内容になっています。しかし、本当に本質的な部分が指摘をされているというふうに考えておりますけれども、細かい、例えば処分の問題だとかそういうことは、それはもう組織の中でやっていただければいい話なんですが、今回、繰り返しこの中で、組織の構造的な欠陥があったんだという厳しい指摘がなされております。

 こうした中で、今後この提言に対してどれだけ真摯に対応していく覚悟がトップとしてあるのかということ、その点についてまず理事長にお伺いをしたいと思います。

野依参考人 ありがとうございます。

 第三者から成る改革委員会からの研究不正防止に向けた提言については、大変重く受けとめております。

 提言につきましては、高い規範を再生するための糧として真摯に受けとめ、公正な研究の推進に向けて組織的に取り組むとともに、研究不正を防止するための実効性ある体制をつくり上げたいと思っております。

 理研が我が国を代表する研究所であるための第一の条件は、高い倫理性の確立にあるというふうに考えておりまして、そのために、必要な取り組みをしっかりと進めてまいりたいと思っております。

笠委員 提言の中で、今回の一つの問題となった組織、CDB、発生・再生科学総合研究センターの解体、あるいはSTAP現象の有無を明らかにするための再現実験をもっとしっかりとやれ、あるいは、外部調査委員会による論文の検証の徹底、さらには、理事長直轄の、これは研究公正推進本部というんでしょうか、新たな組織の新設、そして、外部有識者による理化学研究所調査・改革監視委員会の設置など、具体的な、幾つかの柱になる提言が出されております。

 これらについては、しっかりと実現をしていくということをお約束いただけますか。

野依参考人 お約束させていただきます。

 今回の事案は大変厳粛に受けとめております。一方で、理研はこれまで、国内の研究機関の中では先駆けて国際水準で外部評価等を導入して、透明性を高めて運営してきたということでございます。改革委員会の提言を、責任を持って実効性あるアクションプランを策定するのは、私自身を本部長とする研究不正再発防止改革推進本部の役割であるというふうに考えております。

 なお、これをより適切な内容とするために、項目に応じましては、外部の専門家からの意見、指導を仰ぎまして、また、文部省とも十分に相談しながら完成してまいりたい、そういうふうに思っております。

笠委員 理事長、今の約束をしていただいたということは私は評価をいたしますけれども、その後の、これまで理研は国際水準の云々ということは、やはりおっしゃらない方がいいですよ。

 確かに、かつて二〇〇四年に不正の問題があって監査・コンプライアンス室を設置して、現在、九名の方が所属をしているというふうに承知をしております。あるいは、二〇一二年に研究不正防止規程も定められております。このとおりにやっていれば、今回のこうした問題は起こっていないんですよ。あるいは、確かに、研究リーダーのためのコンプライアンスブックを作成して配付したりという、いろいろな取り組みを先駆けてやってこられたということは、私はそれはおっしゃるとおりだと思う。

 しかし、それが徹底されていなかったわけでしょう。今回だってそうじゃないですか。結局、いろいろなことを義務づけたりなんたりしても、形だけで、多くの理研の職員、研究者、そのことを認識していなかった人たちがいたということが今回の報告書の中で明らかになっているわけです。

 ですから、理事長、それはやはりおっしゃらない方がいい。私は、そこに本当に大きな問題があるというふうに考えておるわけでございます。

 今回、自浄作用が全く機能しない非常識な体質があるということまで厳しく指摘されているんです。今回のこの提言書の中で、こういった報告がございます。「いかなる提言も理研がこれを真摯に受け止め、実行しなければ意味がない。」「STAP問題の背景には、規程などを作ったもののその実行が伴わなくても漫然放置される理研の体質、このような自らの問題点に自覚的でない理研のガバナンスのあり方があり、ゆえに本委員会は、理研が本委員会の提言に基づいた改革を十分に実行しないのではないかと、危惧を感じている。」これほど厳しい指摘がなされているんですよ。

 ですから、理事長の覚悟は、そのことは私は受けとめますけれども、これからやはりこの提言を一つ一つ実行していくに当たっては、今、理事長の方から、理事長をトップとする研究不正再発防止改革推進本部で実効性のあるアクションプランを策定していくということ、そのことを理事長はおっしゃっています。しかし、この改革推進本部のメンバーは全て理研の人じゃないですか。

 ですから、例えば今回の提言の中で、これから新たに調査・改革監視委員会、どうやってこの提言を実行していくかということもチェックをしていく組織をきちっとつくりなさい、あるいは、これは少し先になるのかもしれませんけれども、こういった不正な研究というものが行われないような研究公正推進本部というものを理事長のもとにしっかりとつくりなさい、本当に、新たな新組織に対する提案まで今回提言がされている。

 これからこの改革に向けたアクションプランを策定するに当たって、今、外部の方の意見を聞くということはおっしゃったけれども、ぜひ、今回のこの有識者、例えばこの改革委員会のメンバーの方だっていいですよ、それはお任せします、やはりそういう方に、理事長が率いるこの改革推進本部にきちっと入っていただくべきですよ。それできちっとしたアクションプランをつくっていく。いかがでしょうか。

野依参考人 ありがとうございます。

 アクションプランは、第三者から成る改革委員会が取りまとめた提言に沿ってまとめる実施計画でございます。改革委員会の提言を最大限に尊重するために、アクションプランの策定に当たって、私自身が本部長として、責任を持って研究不正再発防止改革推進本部において作成していかなければいけないと考えています。

 この本部は、私以下十一名から成るものでございますけれども、理事等だけでなくて、四名の有力な研究者たちも含んでおります。もちろん、この過程で、アクションプランをより適切な内容にするための方策の一つとして、第三者の意見を取り入れることも大変有意義であるというふうに考えております。

笠委員 理事長、そうじゃないんです。今回、この理事の皆さんも含めてもう入れかえろという意見まで出されているんですよ。この人たちじゃないですか、メンバーは。

 ですから、研究のことをよくわかっている理研の皆さん方が本部長のもとに、理事長のもとでやっていただくのはいいんだけれども、そこにやはり外部の方にも、意見を聞くだけじゃなくて、きちっと入っていただいてやるべきじゃないかということを私は理事長に提案しているんです。いかがですか。

野依参考人 第三者を別に排除しているわけでございませんで、さまざまな項目が提言されておりまして、その項目に応じて外部の方に御参加いただき、その御指導を仰ぐ、そういうふうに考えております。

笠委員 それでは理事長、一点お伺いしますけれども、これから本当の意味で改革が進むのかどうかというこの外部機関、いわゆる調査・改革監視委員会というものは、先ほど、これは立ち上げるということはおっしゃいましたけれども、これはいつ立ち上げられるんでしょう。

野依参考人 改革委員会の提言を踏まえまして、外部識者により構成される組織において、理研の改革、つまりアクションプランですけれども、この実施状況をモニタリングし御意見をいただく仕組みについて検討を進めているところでございます。

 具体的な体制につきましては、検討が進んだ段階でまた明らかにしてまいりたいと思います。

 いずれにしましても、理研の改革にしっかりと取り組める体制をつくっていくことをお約束させていただきます。

笠委員 メンバー等々は、きょう別にここでどうだこうだ、まだやはりこれは検討があれでしょうから、明らかにしていただく必要はありません。

 しかし、今申し上げたように、このアクションプランをこれから策定をしていく本部の中に有識者を入れないのであれば、では、この監視委員会というものをできる限り速やかに立ち上げていただき、きちっとそこのチェックも受けながら、あるいは意見も受けながら、そして両輪として進めていくというやり方でも私はいいんだと思っています。

 そういう意味においては、もう一週間たつわけですから、人選等々は、それはどういう分野の方々に入っていただくか等々は私は慎重な検討も必要だと思うけれども、この組織、本当に速やかに立ち上げていただきたいというふうに思います。その点だけ端的にお答えください。

野依参考人 できるだけ早く立ち上げて、実効性ある改革をしてまいりたいと思います。

 また、文部科学省とも相談させていただいて、これも実効あるものにしてまいりたいと思っております。

笠委員 今、理事長がおっしゃったように、やはり今理研が求められていることは、多くの研究者たちが頑張っている、そして、これから恐らくこのCDBについても、ある意味では解体的な出直しということになるわけですけれども、そこで行われているいろいろなすばらしい研究があることも承知をしております。そして再生医療の分野についても、これはやはり成長戦略の柱でもあります。あるいは、その研究が進むことを本当に心から願っている患者さんたちもおられるわけです。ですから、これはしっかりと、例えばこの提言の中でもあるように、京都大学の山中先生らiPSのそういった研究所と一緒にやっていくというようなことも、これはもう専門家の皆様方で考えていただければいいことだと私は思いますけれども、いずれにしても、やはりこれからこの改革を進めていく上で、第三者によるチェックと、そしてさらには透明性、情報公開そのものをしっかりと行いながら、国民の皆さん方に対してその信頼回復に努められるような改革を、そして、この提言に書かれた内容の実行を強く求めさせていただきたいと思います。

 そこで、下村大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 大臣自身も、先週、野依理事長から報告を受けた後の記者会見ですか、必ずしも理研だけでは解決できないガバナンスについての提言も入っているので、文科省としてもしっかりとしたサポートをしていくということをおっしゃって、タスクフォースがもう早速立ち上がったというふうに承知をしておりますけれども、これは、ある意味、第三者的な有識者の方々のいろいろな御意見もいただきながら、そして、ここはやはり強く文科省としても指導監督をしていくという大事な局面だというふうに思っておりますけれども、その点についての大臣の認識をお伺いをしたいと思います。

下村国務大臣 基本認識はおっしゃるとおりでございます。

 ただ、基本的にはやはり、独立行政法人としての理化学研究所としての主体性を持ってみずから取り組むということがなければ本当の意味での改革にはつながらないというふうに思いますし、まず、その視点を理研としても押さえることは必要だと思います。

 文部科学省としては、今後の理研における研究不正再発防止やガバナンス強化の取り組みが確実に進められるよう、しっかりそれを踏まえながら指導していく必要があると我々も考えております。

 このため、文科省では、省内に理化学研究所の研究不正防止、改革に係るタスクフォースを六月十七日に立ち上げたところでありまして、このタスクフォースにおいて所要の事項について検討を行い、理化学研究所において実効性ある対策が迅速に策定、実施されるよう指導助言を行ってまいりたいと考えております。

笠委員 今、理研の理事長、そして理事の方が五名おられるわけです。その中の理事の方のお二人は文科省からの役員出向という形で、きょう、一名の方はおいでになっておりますけれども、そして、もうお一方の文科省から出向されている理事の方はコンプライアンス担当なんですよ。今回、やはり本当に問われているのは、このコンプライアンスの部分だと思います。

 私は、もちろんタスクフォースも大事ですけれども、独立行政法人ということはあるけれども、こうやって実際理事に文科省から出向しているというような今の状況もあるわけですから、本当にきちんとした形で、人を入れてでも、ある一定期間、やはり文科省と理研とが一緒になって、そして第三者の皆さん方のきちっとした意見も聞きながら、体制を本当に見直していくというような、大臣にはそういうリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

 もちろん、野依理事長が当事者としてやっていただくことはそうなんですけれども、やはり今回、自分たちの組織の中だけでは本当に難しいんじゃないか、それぐらい理研に対して厳しい目が注がれているということをやはり認識をしていただき、大臣におかれても、そういったいろいろなあらゆる形での文科省としての、こういうときはやはり指導していく必要がありますので、その点をもう一度お伺いをしたいと思います。

下村国務大臣 おっしゃるとおりでありますが、理研だけでは対応できない行政的な事項、これを、文部科学省でタスクフォースをつくることによって、理研における改革取り組みの指導助言に必要な事項、検討することによるサポートをしていきたいと思います。

 具体的には、法令との整合性、それから中期目標、中期計画との整合性、また予算要求等における所要の対応、こういう部分については、文部科学省の中でもしっかりタスクフォースをつくって指導助言、アドバイスをしながら、理化学研究所が一日も早く国民の皆さんに信頼され得るような組織形態になるようなバックアップ、支援をしてまいりたいと思います。

笠委員 大臣、その点はよろしくお願いをしたいと思います。

 きょうは厳しいことを申し上げましたけれども、やはり日本の科学技術、まさに理研の存在というものが極めて大きなものだけに、世界の三大不正の一つに考えられているというようなことまで言われるような状況を招いているということを自覚をしながら、組織の抜本的な見直し、再生に努めていただけるように強くそのことはお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

小渕委員長 次に、吉田泉君。

吉田委員 民主党、吉田泉であります。

 私からは、まず福島第一原発事故の東電の賠償問題について何点か御質問をいたします。

 昨年の十二月末でしたけれども、原子力損害賠償紛争審査会から中間指針第四次追補というものが出されました。そのときの説明では、これで大きな項目については指針が出そろった、今後は必要があれば検討することになるでしょう、こういうお話を伺いました。

 一方で、現在全町避難中の双葉郡浪江町、町民の約七割に達する一万五千人が、これは昨年の五月ですけれども、町を代理人として、原子力損害賠償紛争解決センターの裁判外紛争解決手続、いわゆるADRと言われていますが、そこに対して申し立てを行いました。現在、避難中の方々に精神賠償月額十万円が出されておりますが、これを二十五万円増額して三十五万円にするよう求めた申し立てであります。

 そして、ことしの三月二十日、この件に関する和解案が示されました。浪江町はそれを、一万五千人が関係している件ですから、公開をいたしました。それによりますと、内容は、ことし二月までの二年間、一人当たり月五万円の増額、つまり、五万円掛ける二十四カ月ですと百二十万円を支払うようにという和解案が出されたわけであります。浪江町は、その一万五千人の方、いろいろ相談の上、この和解案を受け入れようという方針が出されました。

 東電はまだ回答していないというふうに受け取っておりますが、まず、文科省として、この和解案の内容、それからその後の状況をどのように把握しているのか、お伺いします。

田中政府参考人 先生御指摘の浪江町の集団申し立てについて、先生今御指摘のとおり、三月にADRセンターから和解案が提示され、その和解案に対して、五月には申立人側から受諾するという旨の回答がございました。その後、東京電力から回答期限の延長ということの申し出があり、現在、和解仲介の手続が引き続き行われているというふうに承知をしてございます。

 和解案の内容ということにつきましては、現在和解仲介の手続が進められているという段階でございますものですから、コメントするということについては差し控えさせていただきたいというふうに思いますけれども、和解仲介の手続が終了した段階におきましては、その結果の概要等につきましては、公表をするということについて検討させていただきたいというふうに考えているところでございます。

吉田委員 文科省の方ではなかなか公表できないということでしたが、浪江町が公表していますので、それをベースにお伺いしたいと思います。

 一方で、今度は双葉地方町村会、八カ町村でつくっております町村会が、この五月二十二日、文科省に対して要望を行いました。この和解案を中間指針に反映していただきたいと。つまり、和解案が認めた避難生活の長期化とか生活再建の難しさという問題は、これは浪江町だけのことではない、浪江町以外の多くの被災者にも当てはまるわけですから、申し立てをするしないにかかわらず、被災者ひとしく賠償が増額されるように原賠審の指針を見直すべきではなかろうか、こういう要望がなされたところでございます。私は、避難者の中で不公平感が出るというのは地元にとっては非常に問題ですので、首長さん方にとっては当然の要望だったというふうに思います。

 新聞は、応対した冨岡政務官は指針の見直しに前向きな姿勢を示したと書きました。この指針見直し要望に関する政府の見解を、きょうは政務官に来ていただいています、よろしく御答弁願います。

冨岡大臣政務官 吉田委員の質問にお答えいたします。

 委員御指摘のように、八カ町村の首長さん方と五月の二十二日にお会いしまして、いろいろ御要望をお伺いいたしました。その中で指針についての見直しにも要望いただいたわけでございますけれども、原子力損害賠償紛争審査会が策定する指針は、類型化が可能で、一律に賠償すべき損害の範囲や損害項目の目安を示したものであり、指針に明記されていない損害についても、個別具体的な事情に応じて、事故との相当因果関係があれば賠償の対象となることが確かに明記されております。

 ただ、ADRセンターにおける和解の仲介については、指針の趣旨を踏まえ申立人の個別具体的な事情に応じて行っているものであり、現状においては、直ちに指針の見直しを行う状況にあるとは、政府見解としては認識していないという立場でございます。東電の方も、まだこの和解案を受け入れておりません。

 したがいまして、文部科学省としては、引き続き、賠償の状況等をしっかりと把握しつつ、関係省庁と連携して、被災地に寄り添ったような形で、公平かつ適切な賠償が迅速に行われるよう取り組んでまいりたいと考えております。

吉田委員 直ちに指針を見直すことはなかなか難しいという御答弁だったと思いますが、一方で、紛争解決センターの中に総括委員会という組織があります。そして、個別のいろいろな和解仲介パネルをここが総括している。そして、既に八回にわたって総括基準というのを示しております。つまり、いろいろな申し立てがありますが、多くの申し立てに共通すると思われる問題点に関しては一定の基準をこの総括委員会が示す、そして、仲介委員がそれを参照しながら仲介する、こういう仕組みが既に動いているわけであります。

 この浪江町関連のADR申し立てについても、これは似たような申し立てがよその町からも出される可能性がありますが、そういう場合に、この総括基準という仕組みを使う、総括基準を示すという可能性はあるように思いますが、大臣、いかがでしょうか。

下村国務大臣 ADRセンターでは、原子力損害賠償紛争審査会が定める指針を踏まえ、和解の仲介を行う際に円滑かつ効率的に手続を進めるため、多くの申し立てに共通する問題点に関して、御指摘のように、総括基準を策定しているわけでございます。

 浪江町の集団申し立てについては、現在ADRセンターにおいて和解仲介の手続を進めている段階であるということでございますので、今後の取り扱いについては、現段階でコメントする状況ではないというふうに考えます。

 和解仲介の手続が終了した場合においては、その結果の概要等の公表について検討するなどいたしまして、公正かつ適切な賠償が迅速に行われるよう取り組んでまいります。

吉田委員 ありがとうございました。

 浪江町のADRというのは、東電が今回答保留ですが、東電がもし歩み寄った場合には数百億円というオーダーのお金が動く、大変広範な影響をもたらす件であります。先ほど申し上げたように、不公平感が生ずるということが極めて社会的な問題になりますので、それに対する適切な対応を今からよくよくお願いしておきたいと思います。

 それから、今度は次の、二つ目の質問に参りますが、高温ガス炉という、原子炉の第四世代の一つとされてきた炉の開発の状況、それから、これからの可能性等についてお伺いしたいと思います。

 三年前に事故を起こした福島第一原発は、これは御存じのように軽水炉でございました。そこでは、地震で制御棒が入って原子炉は停止されたわけですが、津波によって電源が喪失され、崩壊熱が除去できなくなった。それで炉心溶融、さらには水素爆発で放射性物質の放出という事故になってしまったというふうに理解しております。

 一方で、もう五十年前から研究、検討されてきた高温ガス炉というのは、制御棒を入れなくても自然にとまる、さらには、冷却材がなくても自然に冷える、こういう炉であると聞いております。つまり、原発で今一番心配な部分をそもそも初めからクリアしている、そういうタイプの炉だと聞いております。

 そこでまず、軽水炉と比べたときの高温ガス炉の特徴、廃棄物とかコストパフォーマンスも含めてお伺いしたいと思います。また、さらには、これからの課題のようなこともお願いします。

田中政府参考人 先生ただいま御指摘がございました高温ガス炉につきましては、現在の軽水炉、これは冷却材あるいは減速材に水を使ってございます。世界全体の約八割以上が今の軽水炉というところでございますけれども、冷却材としては、化学的に反応しにくい気体であるヘリウムを使うという点、また、減速材につきましては、熱容量が大きい黒鉛ということを使用してございます。また、燃料の被覆につきましても、耐熱性にすぐれましたセラミックスを使用しているため、燃料と水との反応ということによって発生をいたします水素あるいは水蒸気ということによる爆発の可能性が極めて低いという炉でございます。

 また、原理的には、三十メガワットという中規模でございますけれども、その出力以下につきましては、先生今御指摘いただきましたとおり、制御棒が未挿入であっても自然に原子炉出力が低下をすること、崩壊熱除去のための炉心冷却設備が作動しない場合にも自然に冷却をするということが可能であるということの、固有の安全性というふうに申し上げていますけれども、そういう安全性を有しているということでございます。

 また、同じ電気出力を想定した場合、燃料の燃焼度を高くするということができますものですから、軽水炉に比べ燃料装荷回数あるいは一回の装荷量とも半分ぐらいにすることができるんではないだろうかというようなことから、使用済み燃料の量の発生という観点からも、軽水炉に比べると低減できるんではないかというふうに考えているところでございます。

 また、熱エネルギーの取り出しということにつきましても、軽水炉が三百度ぐらいということに比べますと、高温ガス炉では、日本では九百五十度というような高温の熱を取り出すことができるという特徴も有してございます。

 現在、日本原子力研究開発機構において研究炉段階の研究を進めているところでございますけれども、今後の課題ということにつきましては、やはり建設コストをいかに低減をするのか、燃料を高燃焼化するという技術をどうしていくのか、また、三〇%まで現在出力確認済みでございますけれども、一〇〇%出力時での安全性の確証試験、あるいは水素製造の試験、そういうことにつきましては、着実な研究開発を今後進めていくことが必要だろうというふうに考えているところでございます。

吉田委員 三十メガワットという上限があるようですけれども、ほかは大変注目すべき性能だろうというふうに私は思います。

 この高温ガス炉、もう五十年前から、当時は原研と言われていたところで概念検討が始められたと聞いておりますけれども、その後の研究開発の状況、そして、今後の進め方をお伺いします。

田中政府参考人 高温ガス炉の開発の状況について御説明を申し上げます。

 国内におきまして、日本原子力研究開発機構の大洗の研究開発センターで、高温工学試験研究炉、HTTRというふうに言っておりますけれども、平成三年から建設に着手をいたしまして、平成十年に初臨界、そして、平成十六年には原子炉出口温度で九百五十度を達成してございます。また、平成二十二年には、原子炉出口温度九百五十度で連続五十日間の運転ということを達成してきているところでございます。

 現在は定期検査中ということでございますけれども、今後、新規制基準への適合審査ということを経て、運転を開始したいというふうに考えてございます。

 今後につきましてでございますけれども、本年四月十一日に閣議決定をされましたエネルギー基本計画において、「水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれ、固有の安全性を有する高温ガス炉など、安全性の高度化に貢献する原子力技術の研究開発を国際協力の下で推進する。」と位置づけられてございます。

 これを受けまして、文部科学省としては、本年五月二十三日に、大臣の諮問機関でございます科学技術・学術審議会原子力科学技術委員会の中に高温ガス炉技術研究開発作業部会ということを設置いたしまして、今月末には第一回を開催する予定でございます。

 この委員会で、高温ガス炉技術の研究開発について、今後のあり方ということについて議論を進める予定でございまして、これらの検討を踏まえ、高温ガス炉技術の研究開発にしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

吉田委員 この高温ガス炉の開発状況を今お聞きしましたが、国際的に見てこの日本の開発状況が抜群であるというふうに聞きますが、その点はいかがでしょうか。

田中政府参考人 先ほど御説明申し上げたとおりでございますけれども、高温ガス炉につきましては、我が国のほかに、中国、韓国、あるいはカザフスタン等々で研究が進められてございます。日本原子力研究開発機構が達成をいたしました出口温度九百五十度というようなこと、これは世界最高ということでございます。また、この高温ガスということにつきましては、水素製造、海水淡水化ということについて利用が期待をされているところでございます。

 また、放射性物質の高い閉じ込め性能を有しますセラミックスを用いた被覆燃料ということの製造する技術、あるいは高強度であり、高熱伝導あるいは耐照射性を持った高品位の炉内黒鉛構造物、これを全て国産で日本はできるというようなことから、これも日本が優位性を持っているということだろうというふうに考えてございます。

 さらに、平成二十二年、先ほど申し上げたとおりでありますけれども、三〇%出力での安全性実証試験ということを行ってございます。ここでは、制御棒挿入なしで自然現象のみで冷却できるということも確認をしているところでございまして、この点についても国際的に高い評価を受けているというふうに考えているところでございます。

 今後とも、このような優位性を生かしながら、高温ガス炉技術の研究開発ということに着実に取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

吉田委員 ありがとうございました。

 この原発問題というのは、賛成か反対か、マルかバツかという議論がずっと続いておりますが、基本的には、現在の軽水炉という炉を前提にして議論がされているように思います。

 きょうお伺いしたこの高温ガス炉というものの可能性が広く認識されれば、この原発問題の議論もまた別な展開が可能になる、つながるんじゃないか、そんなふうにも思います。

 関係各位の一層の御努力をお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 日本維新の会の椎木保でございます。

 今国会も残りわずかということになりましたけれども、下村大臣におかれましては、これまで数多い質疑の中で本当に懇切丁寧に御答弁いただけたと感謝申し上げます。

 先般、衆議院でも可決、成立しました地教行法、これについても、我々は大津の御遺族のお気持ちを代弁する形で、民主との共同案で出させてもらいましたけれども、結果的には政府案が国会を通ってと。ただ、これはこれとして、やはり反対の立場はしましたけれども、私は、この法案にかかわった一議員として責任を持って施行後もかかわっていきたいなと思っています。

 我が党は、小渕優子委員長が委員長報告で登壇するとき異様な歓声と拍手が沸き起こりまして、これは毎度のことなんですけれども、ただ、私は、大臣がこの地教行法の可決、成立したときの深々と一礼する姿、あれに、本当に言葉には言いあらわせないそういう思いを感じました。本当に、そういう意味で、今後とも大臣にも御活躍いただきたいと思いますし、野党でありますけれども、我々も、何度も申し上げていますけれども、協力していきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 きょうの質問なんですけれども、時間も短いですから、コンパクトに一、二点と思っています。

 最初に御質問したいところは、私が再三、臨時免許状、免許外教科担任制について御質問させていただいてまいりました。大臣からも、指導するという答弁から始まりまして、質問のたびに、本当に問題意識も共有していただいたと思っています。

 しかし、今回、その調査結果を楽しみにしていたところなんですけれども、文科省の方からいただいた調査結果が、何と平成二十四年度の結果。私は、これは二十五年の四月十五日の予算委員会の第四分科会から始まりまして、十一月一日、そしてことしの四月九日と三度にわたって質問させていただいているんです。その中で前向きに御答弁いただいたと思っていますし、調査も実施していただきました。にもかかわらず、結果的に二十五年度の調査をしていないということはどういうことなんでしょうか。御答弁をお願いします。

前川政府参考人 御指摘のとおり、私ども、直近の資料として把握しておりますのが二十四年度の状況でございます。

 教員免許状の授与件数等の調査につきましては、都道府県教育委員会及び文部科学省の教員免許に関する業務状況を考慮いたしまして、毎年十一月から十二月ごろにかけて調査依頼を発出いたしまして、二月ごろに回答を回収し取りまとめ、翌年度の五月に調査結果を公表する、こういうサイクルでやってきております。

 したがいまして、二十四年度の調査につきましては、昨年の十一月から十二月にかけて依頼を発し、ことしの二月にそれを回収し取りまとめ、この五月に調査結果を公表するということになったわけでございますけれども、御指摘を踏まえまして、二十五年度以降の調査につきましては、都道府県教育委員会の業務状況等も考慮しながら、日程の前倒しができるように努めてまいりたいと考えております。

椎木委員 この委員会の先生方は私の質問でも理解いただいたと思いますし、もともと学校の先生の御経験のある委員さんもいらっしゃいますから余計理解は深めていただけると思うんですけれども、臨時免許状、要するに、本来の免許状を持っていない人が臨時的に、応急的に対応する免許です。免許外教科担任制というのは、本来自分が持っている免許じゃない教科を教える。そういう数が、先ほど私の手元に二十四年の資料をいただいていますけれども、小学校の臨時免許だけで三千一人、中学校で二千三百三十一人、高校で二千八百四十九人、合計で八千百八十一、この数が大体例年そんなに変わらないんです。そういう中で、一刻も早く教員免許を有する者を教壇に立たせる、そういうことを私は切にお願いしてきた。切に。

 昨年のデータでも、これも私も何度もお示ししましたけれども、二十四年の教員採用の受験者が全国で十八万二百三十八人、採用者数が三万九百三十人です。いいですか、十八万人を超える数の受験者で三万人しか採用されていない。それで、これだけの数が引き続き臨免そして免外申請で教壇に立っている。免外申請の数も、中学校で八千百十二、高校で四千百二十九ですから、これは本当に膨大な数なんですよ。

 これについて大臣も、私のその質問に対して、まず、四月十五日の予算委員会の第四分科会では、本当に指導するということの御答弁をいただいて、実際、文科省の方も去年の九月に各都道府県に通知依頼しているわけですね、各学校にも配付するという内容で。十二月にもさらに通知をしてもらっている。それで二十四年度の調査結果しか出さないというのは、非常に、私の質問に対しての軽視といいますか、実際、だって大臣も御答弁してくれているんですよ……(発言する者あり)大臣、本当にありがとうございます。

 私は、やる気がないとかそういうことは申し上げたくありませんけれども、これは大事な問題なんですよ。教員免許状を持っている人が採用されないんですよ。数が足りないから臨時免許状ならわかるんですよ。あえて採用しないで、臨免、そして自分の教科じゃない教科を免許外で教える。これは本当に一刻も早く改善すべき課題なんですよ。

 これは二十五年度、早期にというようなお話がありましたけれども、これは具体的に本当にいつぐらいにやっていただけるんでしょうか。答弁をお願いします。

前川政府参考人 二十五年度についての調査につきましては、早急に検討いたしまして、できるだけ早期に実施できるように考えてまいりたいと考えております。

椎木委員 では前川局長にお伺いしますけれども、私の十一月一日の質問で、こう答弁されているんですよ。安易な授与がなされないよう、法律上、教育職員検定において、受検者が免許状を与えるにふさわしい人物かどうか、各都道府県教育委員会において責任を持って審査する、一方で、臨時免許状の安易な授与により教育の質の低下を招かないよう適切な審査を行っていただけるよう、その方向で今後とも指導してまいりたいと。では、これはどういう責任を持って審査をこれまでされたのか。さらには、その方向で今後とも指導してまいりますというのは、今日までどういう指導をされたんですか。答弁をお願いします。

前川政府参考人 文部科学省におきましては、昨年来、各都道府県教育委員会に対しまして、臨時免許状の授与に際して行う教育職員検定の審査基準でありますとか、また、臨時免許状を授与するケースについて情報提供を求めまして、全国の状況把握に努めてきたところでございます。

 教育職員検定の審査基準につきましては、各都道府県教育委員会におきまして、卒業証書や成績証明書の提出を求めているわけでございますけれども、こういった形で教員の能力の確認が行われているわけでございますが、これに加えまして、都道府県の中には、大学において教科に関する科目を一定単位以上修得しているということを条件にしている場合でありますとか、また、大学の成績証明書につきましても、一定程度のすぐれた成績であることを条件にするケース、あるいは、大学を卒業していない場合でございますが、そういう場合には、学力検査や一般教養試験を実施する、このような都道府県教育委員会もございます。

 一方、臨時免許状を授与するケースといたしましては、僻地や離島などの学校のケース、あるいは、全国的に教員免許状所有者が少ない、例えば技術とか看護とかといった分野、こういったやむを得ない場合に授与するということが本来の姿でございます。

 一方、外国籍の者を外国語教育担当の講師として採用するというようなケースも見受けられるわけでございますけれども、こういったものの中にはむしろ特別免許状の授与を検討すべきだというものもあると考えられますので、臨時免許状を授与するケースと特別免許状を授与するケースとは分けていくように指導してまいりたいと考えております。

 平成二十五年の十二月十九日に、文部科学省から各都道府県教育委員会に通知を発出いたしまして、臨時免許状の安易な授与は行わずに、授与要件を満たす者には特別免許状を授与するなど、最適な制度を活用するように依頼しているところでございますが、今後とも、各都道府県の教育委員会の免許担当者を対象といたしました会議を開催するなどいたしまして、適切な機会を捉えつつ、十分に意見交換をし、また、制度の適切な運用について周知してまいりたいと考えているところでございます。

椎木委員 全く私の質問に答えていないと思います。

 大臣にもちょっとお伺いしたいんですけれども、十一月一日、下村大臣は私の質問に対して、これは四月の話ですから、現在いる先生については、途中でかえるということについては、それはかえって教育現場の混乱になるような状況もあるでしょう、指導の結果は来年以降明確になってくると期待している、そういう御答弁をいただきました。さらに、改めて、ことし九月に、臨時免許状は普通免許状を有する者を採用できない場合に限り、法の趣旨に照らして運用するように指導する、こういう御答弁をいただきました。

 さらに、同じ私の四月九日の質問で、西川副大臣も、先生の御意向に沿った、なるべく各教育委員会等に対しても、この臨時免許状あるいは免許外教科担任を出す場合には、本当に真に必要なときに限るよう指導はしっかりと行ってまいりますと。

 そして、最後に、ことし四月九日の大臣の答弁では、先ほど西川副大臣が答弁をしましたが、実際に都道府県に対して昨年の十二月十九日に調査依頼を発出したところでありますから、これを受けて委員にはお示しをさせていただきますと。調査結果が出たらですね。

 これで二十五年度の結果を私はずっと待っていたんですよ、四月九日にはもう出ているものだと思って。まだ出ていません、出たらすぐにお示ししますと大臣からも答弁をもらっているんですよ。

 恐らく、大臣も二十五年度の調査は取りまとめて公表するものだと多分御認識されていたんじゃないかなと私は思うんですよね。そういう意味では、文科省が何でこれをやらなかったのか。この点について、大臣の方の認識をちょっと聞かせてもらいます。

下村国務大臣 なぜやらなかったのかというよりは、今まで毎年定例的にしていたということの中で、きちっとやりますということだったと思いますが、委員の御指摘も踏まえて、二十五年度については、今、前川局長から、例年のパターンよりも前倒ししてしっかり対処したいという局長答弁でありましたので、私もそれについてはしっかり進めるように指導してまいりたいと思います。

椎木委員 ありがとうございます。

 今回は例年のケースとは違うはずなんですよ。私も現場でこういう経験をして、みずからが当事者で、それで問題を提起したつもりなんですよ。それに対して下村大臣も、私が質問するたびに、本当に理解をいただく、共通認識を図れる、そういう御答弁をいただいてまいりました。前川局長にも同じように、指導するとか調査するとか、繰り返しそういう答弁をしていただいているんですよね。ですから、今までのケースと違うというのは、もうこれは明らかなんですよ。それを今までと同じように、二十六年の今になって二十四年度の調査結果しか出ないというのは、これは本当に私は残念でならないですよ。

 今の大臣の御答弁もいただけましたので、何とか前川局長の方のリーダーシップで、二十五年度、文科省の通知依頼がどのぐらい本当に改善に向けて成果が出ているのか、これについては本当によろしくお願い申し上げたいと思います。

 次に、これはちょっと大臣にお聞きするかどうか私も若干迷ったんですけれども、一応確認の意味で質問させていただきたいんです。

 昨年十一月一日に、私の大臣への質問に対して大臣からいただいた答弁なんですけれども、要するに、普通免許状を有する者、教員免許を持った先生よりも臨時免許状を持っている先生の方がトータル的に見て優秀だという判断をするケースもあるということを、大臣の方からある県の事例としてお聞きしたんですけれども、これをちょっと読ませていただきますと、「ある県の事例として私は聞きましたが、なぜ臨時免許状の人を、正規免許状があるにもかかわらずそちらの方を優先したのかというのは、それは、臨時免許状の人の方がトータル的に、正式に免許状を持っている人以上に現場の教師としての能力がすぐれているということを」教育委員会が判断したことだと。

 私は、これは、文部科学行政の長である大臣がもし同じ認識であるとすれば、今の教員養成制度、これを何か否定したような発言だと思いますし、なおかつ、免許状を持っている人よりも臨時免許状にて教壇に立っている人の方が優秀だ、専門性も高いような、そういう教育現場の、教員免許状の、何と言ったらいいでしょうかね、現在の教育職員免許制度を根底から覆すような事例の御発言だったと思うんですけれども、この真意をちょっと確認させていただきたいと思うんですけれども。

下村国務大臣 まず、臨時免許状の所有者を普通免許状所有者に優先して採用している事例でありますが、例えば、聾学校において聴覚障害者と同等レベルの手話技術を有する者を採用する場合、これは東京都でありますが、それから、専ら外国語で授業を実施する学校において外国人を講師として採用する場合、これは千葉県とか神奈川県の事例があります。

 こういうことでありますが、この後者のケース、外国語ですね、この場合において、都道府県の教育委員会において教育職員検定を実施し、当該者に教員としての十分な力量があるとする判断を行った場合には、これは臨時免許状ということでなく、積極的に特別免許状の授与を行うということの方が、委員の御指摘もありますが、筋が通るということでいえばそのとおりであるというふうに思います。

 このため、平成二十五年十二月十九日から文部科学省から各都道府県教育委員会に対し通知を発出いたしまして、臨時免許状については安易な授与は行わないこと、また、臨時免許状の授与を受けた者が特別免許状の授与要件を満たす場合には積極的に特別免許状を授与することなど、教員免許制度の適切な運用について依頼をしているところであります。

椎木委員 真意を確かめたかった趣旨でございますので、今の答弁で理解はさせていただきました。

 最後に、改めて文部科学省の方に私は繰り返し切にお願いして質問を終わりたいと思うんですけれども、質問の途中でもお話ししましたけれども、二十四年度、教員採用の受験者が十八万二百三十八人ですね。採用者が三万九百三十人。文科省の方からいただいた二十四年度の臨免、免外の数が合計で二万四百二十二人。不採用が十四万九千人もいて、なおかつ、臨免と免外で二万人以上が採用されている、教壇に立っている。

 これは非常に、子供たちの教育の質といいますか、やはり正規に教職課程を経て免許状を持っている人をこの二万四百二十二人にかえるべきだというのが私の教育観でもあるんですけれども、この辺の数の不合理性といいますか、この辺は本当にきちっと法の趣旨に照らして、本当に、療養休暇とか、年度に入って不測の事態が起きたときに臨時免許状で対応するとか免外申請で対応するとかということ以外は、やはり正規に教員免許を持っている者を採用する、そういう姿勢で今後とも指導していただきたいと思います。

 本当に、次の臨時国会には私も文部科学委員会にいられるかどうかわかりませんので、これがきょう最後かなと思って質問させていただきました。文部科学省の皆さんの御苦労もわかっているつもりではおりますので、ひとつよろしくお願いします。

 大臣、本当にどうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、三宅博君。

三宅委員 日本維新の会の三宅博でございます。

 日本維新の会の議員として質問するのは恐らくきょうが最後になるかもわかりませんので、やはりちょっと一抹の寂しさというものを覚えながらさせていただきたいと思います。

 時間が二十分しか与えられておりませんので、早速本論に入っていきたいと思います。

 これは以前この委員会でも問題になったんですけれども、四月九日付の産経新聞の大阪版、これで、大阪市の公立中学校、ここでは選挙管理委員会というものを立ち上げて学校内の人事を決めている。これは、主導しているのは組合の教員ですね。日教組の教員が中心になってこういった人事権を行使している。府においては、人事委員会という名のもとに同様にやっていると。

 ここで、生徒指導主事とかあるいは学年主任、教務主任とか、主事、主任というふうな学内の重立った人事をずっと組合がリードしてやっているというふうな実態が明らかになって、その後、大臣はこれを、それでは全国調査すると。これは単に大阪だけじゃなしに、他府県でもいろいろなそういうふうな実態が明らかになってまいりましたけれども、その全国調査を今されまして、今現在におけます実態というのはどのようなものか、ちょっとお聞きしたいと思います。

下村国務大臣 学校教育法に基づき、校内人事は、校長がみずからの権限と責任において定めるべきものであり、教員の選挙等によりまして校内人事を決めること、これは法令に違反し、極めて不適切であるというふうに考えております。

 前回答弁を私が申し上げたのは、この大阪だけの問題なのか、他の都道府県でも問題なのかということは、十二分に文部科学省としても事情を聴取する必要があると思いますというふうに答弁させていただいたわけであります。

 この大阪市の教育委員会からヒアリングを行いました。その結果、その周辺にも同様のことがあるということがわかりましたので、現在、全国的な実態の把握をどのように行うか検討していたところでありますが、近日中に全国的な調査を実施したいと考えております。

 法令に違反するような学校運営はあってはならないことでありまして、文部科学省としては、このような状況の是正のため、厳正な対応を行ってまいります。

三宅委員 これは、実態として非常に明白な法令違反だと思うんです。もちろん学校教育法にも違反する。何よりも、やはり組織として成り立たなくなるんです。

 一般の会社で、社長が人事権を行使して、そしてまた、会社全体の方針も立てる。ところが、人事というものが、末端の組合、しかも特定の思想に、偏向した思想によって動いている連中が人事を壟断するとなりますと、偏向教育を現場でしていても、それをチェックすること自体もできないんです。こういったことも、結果的にですけれども、いろいろと偏向教育、反日教育の暴走をとめられなかったんじゃないかなという大きな原因だと思うんです。

 これは、さまざまな教育関係における法律を制定しても、現場で全くそれを無視したような、あるいは違背するような行為がずっと種々行われてきた中で、そういうふうな現場の暴走あるいはとんでもない教育というものがまかり通ってきた非常に大きな原因であろうと思うんです。

 単にこれは義務教育の現場だけじゃなしに、あるいは大阪だけじゃなしに、いろいろなところで法の趣旨を無視した、あるいは法令に違反するような行為が次々と行われてきたんじゃないか。戦後、日本の教育現場というのは、こういったものがずっと氾濫していたんじゃないかなというふうに思われるんです。

 これは、大臣そのものも非常にその辺の認識も深く持っていらっしゃるし、また、現場の実態にも精通しておられると思いますので、共通した認識の中でこういうふうな質問のやりとりができると思います。

 そこで、きょう私がちょっと問題にしたいのは、せんだってこの委員会で参考人にお越しいただいて、大学の学長の権限を強化する改正案ですね、あのときもちょっとお話ししたんです。

 当日、名古屋大学の名誉教授も来られまして、その池内先生は、やはり大学の学長の権限強化というのは反対だ、ひょっとして変な学長が出てきて、それが大学をほしいままに運営した場合、とんでもない、やはりそこには教授会のチェックというものが必要だから、今以上に大学の学長の権限を強化することに反対だとおっしゃったんです。その名古屋大学なんですけれども、なぜ、参考人、池内先生のそういうふうな発言が出たか。一つのベースには、名古屋大学における名古屋大学平和憲章というものが大きくこれに作用しているんじゃないかなというふうに思います。

 今、皆さんの方に参考資料として行っていると思うんですけれども、名古屋大学平和憲章、これは、昭和六十二年、一九八七年の二月五日制定なんですけれども、ここでいろいろなことがずっと書かれているんです。「大学は、戦争を肯定する学問を生みだし、軍事技術の開発にも深くかかわり、さらに、多くの学生を戦場に送りだした。」とか、あるいは下段の方では、「大学は、政治的権力や世俗的権威から独立して、」というふうなことがずっと記されているんです。まさに階級闘争史観そのものの文言じゃないかなと。

 共産党の方からするとこれは非常に立派な文章になるというふうに思うんですけれども、私らからするとこれは非常に大きな違和感を感じるんですね。(発言する者あり)いや、そう思うよ。そのとおりとちゃうの、これ。階級闘争史観そのものとちゃうの。(発言する者あり)こっちで質問するけれども。

 それで、次にこの二番、この第二条、これがあれなんですね。

  大学は、戦争に加担するというあやまちを二度とくりかえしてはならない。われわれは、いかなる理由であれ、戦争を目的とする学問研究と教育には従わない。

  そのために、国の内外を問わず、軍関係機関およびこれら機関に所属する者との共同研究をおこなわず、これら機関からの研究資金を受け入れない。また軍関係機関に所属する者の教育はおこなわない。

と、とんでもないことを名古屋大学憲章でこれは書かれているんです。

 今、この話を、説明をお聞きになって、大臣の御感想をちょっと聞かせていただけますか。

下村国務大臣 その前に、先ほどの人事の面、これは法令違反ですから、事実関係を把握して、文部科学省としてきちっと対処いたします。

 法令違反ではない事例として、やはり教育村の問題があるのではないかと最近私は感じたことがありまして、これは道徳の教材で「私たちの道徳」というのを、文部科学省が新しく「心のノート」の全面改訂版をつくって、この四月から小中学校に配付をして、その中で、教育委員会を通じて、ぜひこれは親御さん、家庭の方々にも読んでいただきたいということで、家に持ち帰ってぜひ読んでいただきたいとお願いをしたわけでありますが、ある調査によれば、九割が実際は家に持ち帰っていないということがありまして、再度お願いしたことであります。

 せっかくつくっても、どう活用されるかどうかは、これは教科書ではありませんので、その先生方の判断でありますが、しかし、家に持ち帰るということは、別に国が強制することではないというふうに思うんですね。

 やはり道徳というのは、子供一人だけの、あるいは学校だけの問題でなく、社会全体で、特に家庭教育において非常に重要なことですから、結果的にそれが、九割がそういうふうにしていないということは、やはり教育村といいますか、社会常識とかけ離れている教育分野の関係者の意識というのはあるというのを最近実感したところでございます。

 強制はできませんが、ぜひお願いをしたいと思っていますが、ぜひ三宅委員の選挙区においても、子供たちが親と一緒に読めるような環境づくりのために御協力をいただきたいと思います。

 この名古屋の御指摘ですが、名古屋大学の平和憲章、これは、名古屋大学が発表したものではなく、昭和六十二年当時、名古屋大学の教職員、学生、名古屋大学消費生活協同組合の職員等の一部の者が集まり、私的立場で発表したものと聞いております。このため、名古屋大学からは、本憲章によって大学運営に影響は生じていないというふうに報告を受けております。

三宅委員 今、ちょっと大臣が言及されましたので、道徳教育の教材のこと、そっちの方もちょっとお話をさせていただきますけれども、これは自主教材というものですね、学校現場における教員が勝手につくる自主教材。これがとんでもないものが多いんですよ。道徳の時間を使って反道徳的なことをずっと子供たちに、児童生徒に教えている。

 しかも、今大臣は、教材を家に持って帰っていただいて、これは強制はできないけれども、親と一緒に読んでもらいたいと。ところが、その手の確信犯的な教員は生徒にどう言うかというと、これは家に持って帰るなよと言って、家に持って帰って親に見られたら大きな批判が寄せられるのをわかっているから。

 そんなようなとんでもない自主教材を使って道徳の時間に反道徳的なことをやっているそういう実態、その内容というのは本当にとんでもないですよ。家族をばらばらにし、子供たちの自主決定権、こういうようなことを言うんですね。それで、何でも自分で決めたらいいんだと。中には、学校の校則、こういったものに我々学生は、児童生徒は何もそんなことを守る必要ないんだ、子供たちの自主決定権があるんだ、こんなことを教えているんですよ、これは本当に。そのような教材がありますよ。大臣、御希望でしたら持っていきますので、また一度読んでください、本当に。

 今の名古屋大学の、これは私的なあれだ、だから、こんなことは、大学はそれに全く拘束されていないというふうにおっしゃいました。そうであったらいいんですけれども、どうもそうじゃないんですな、これが。

 私の知り合いのある方が、おととし、今一般の企業に勤められている、この方は京都大学を出られた方なんですね、それで、名古屋大学の大学院に入ろうとしたんです。そのときに、名古屋大学の大学院に入るとともに、予備自衛官にも自分は応募したいというふうな思いを大学当局に伝えたんです。名古屋大学の平和憲章があるのでこれに抵触をして入れてもらえないんじゃないかなというふうな御心配をされて、名古屋大学に問い合わせされた。

 それは学部によって対応はまちまち、いろいろなんですけれども、一つは、こういうこともありました。経済学部の方は、平和憲章に抵触しますかと言ったら、いやそれは大丈夫です、抵触しませんと。なぜですか、平和憲章では軍関係者はだめとなっているんじゃないんですかと言ったら、いやそれは大丈夫ですよ、なぜなら理由は、自衛隊は軍隊ではないからですというふうに言っているところもあるんです。

 あるいは、文学部はどうだったか。文学部に対してこういうふうに、予備自衛官も現役自衛官も入学に問題ないと回答する旨は監査室から出ていると。ところが文学部の方は、名古屋大学平和憲章に名古屋大学は拘束されるんだとか、あるいは、経済学部は、私は予備自衛官にも応募する、しかし名古屋大学の大学院に入りたいけれどもどうしたらいいんですかと言ったら、やはり事前に調べる必要があるので、ちょっと書類を送ってくれと、事前審査みたいなことをやっているんですな。そういう学部もある。だから、学部によってばらばらなんですね。

 さっき言いましたように、私的な取り決めだから大学は全くこれによって左右されない、影響されないとおっしゃっているけれども、実態はそうじゃないんですよ。大学関係者は、やはりこの存在というものを非常に重く受けとめているんですよ。

 これを今お聞きになって、どう思いますか。

下村国務大臣 事実関係として、先ほどの平和憲章というのは大学そのものがつくったものではないということですので、これを破棄させるとかいうことはできる話ではないと思います。

 ただ、各国立大学が、今、自衛官、自衛隊の関係者の入学云々のお話がありましたが、そういうことで差別されることがあってはならないというふうに思いますし、公正公平な立場から各国立大学は入学選抜をして、より優秀な学生をきちっと選んでいただきたいと思います。

 今回、大学ガバナンス法案を通していただきましたので、改めて、大学ガバナンスという視点から学長にはそういうリーダーシップをしっかりとってもらって、各大学が、時代に合った、活性化した運営が行われるように、ぜひ、これは参議院でも通らないと法案が成立することにはなりませんが、期待をしたいと思います。

三宅委員 今の話なんですけれども、文学部の対応者、これは電話ではだったんですけれども、名古屋大学平和憲章に名古屋大学は拘束されるんですというふうなことを答えているんですよ、はっきりと。だから、普通、大体、電話でまず問い合わせしますよね。インターネットでまずいろいろと閲覧してから電話で問い合わせる。その対応者がこういうふうにはっきりと答えている。それを問い合わせた人が、では大学の当局の担当者が言っているんだからやはりそういうふうになっているのかと、誤解して当たり前でしょう。

 これは一遍実態調査してくださいな。名古屋大学の平和憲章というものは名古屋大学の公的な指針かどうか、あるいは、これに影響され拘束されているのかどうか。これは一遍実態調査をしていただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

下村国務大臣 今お話をお聞きして、多分実態調査をしても出てこない可能性もありますが、改めて、学長を通じて、平和憲章に大学は拘束されていない、あるいは、そもそも大学がつくったものではないということについて、名古屋大学の方ではっきりしてもらうようにお願いしたいと思います。

三宅委員 ありがとうございます。

 次に、防衛省の方にもちょっとお聞きしたいんですけれども、今の一連の話をお聞きされて、どのようにお考えになっているかということなんです。

 以前、沖縄県のある自治体で、自衛隊の子弟の住民票登録を我々は受け付けないんだというようなことが相当前にあったと思うんです。これはとんでもない憲法違反といいますか人権侵害事例なんですけれども、まさに名古屋大学の平和憲章が、今申しましたように名古屋大学の入学といいますかあるいは大学院の受け入れ、こういったものに大きく左右したとしましたら、防衛省関係としては、一方の当事者ですよね、どのように思われますか。

 こんなことはあってはならぬ、私はそれを信じたいんですけれども、どうも現実的に、実際に大学に問い合わせた人に、我々名古屋大学は平和憲章に拘束されておりますからと。相手がこない言っているんですから、とんでもない話やけども、このことを、もしそういうふうなことがあった場合、防衛省関係、防衛省としてはどのようにお考えですか。ちょっとお聞かせください。

若宮大臣政務官 お答えさせていただきます。

 今、三宅委員御指摘の名古屋大学の平和憲章につきましては、私ども防衛省といたしましてはその内容につきましてはコメントは差し控えさせていただきますが、職業が仮に自衛官である、あるいは、先ほど三宅委員の方がおっしゃっておられましたように予備自衛官を志しておられる、そういったことを理由として大学側の方が入学を拒否するという行為等は、おっしゃるとおり、憲法等の見地からも許されないことだというふうに考えております。

 過去、昭和四十年代、大分前のことでございますけれども、一部の大学におきましては、自衛隊の自衛官がその職業を理由として入学を拒否されたという事例が発生したことは正直ございます。ございましたが、当時の防衛庁が文部省に対しまして厳正に対処を要請いたしまして、適切に対処してきたところだというふうに承知をいたしているところでございます。

 現在、もう三宅委員におかれましても御存じのとおり、防衛省・自衛隊の任務は世界各国からも非常に高い支持をいただき、また、国内でも、災害派遣でも、国民の皆様方からも非常に高い、九〇%を超える、信頼できる皆様だということで御支持をいただいているところでもございます。

 自衛官である、あるいは予備自衛官である、それにかかわる仕事についている、あるいはつこうとしているということを理由に大学の入学の拒否の事例があるということは、現在私どものところでは承知をいたしていないところでございますが、仮に今後そのようなことが発生するようなことがあれば、関係省庁とも緊密に連絡をとりまして、協力をしまして適切に対処させていただきたい、このように考えているところでございます。

三宅委員 自衛隊関係者のなお一層の御奮闘を願いまして、質問を終わります。

 以上です。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いいたします。

 この通常国会におきまして、大臣並びに委員長そして関係各位の皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。

 来る臨時国会におきましても、恐らく、我が党、みんなの党の党員として、議員として質問させていただけるというふうに思っておりますが、一寸先は闇のこの世界でございます。ひょっとしたらこれが最後になるかもしれません。そういうことがないように祈ってはいるんですけれども、なかなか厳しいなとこの半年間感じ入っているところでございます。

 それはさておき、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 つい先日、先日というのは五月八日ですか、日本創成会議がストップ少子化・地方元気戦略というものを公表いたしました。その公表された文書には、二〇四〇年、全国の八百九十六市区町村が消滅の危機に直面するという試算結果を報告しまして、メディアの注目を集めたということでございます。

 この分科会は、地方の崩壊、自治体運営の行き詰まり、その懸念をこういった形で表明をしたものということでございますが、この消滅可能性、これをしっかりと文科行政にも反映させた、微に入り細にわたる配慮が今後も必要になってくるというふうに私は考えております。

 そこで、まず質問させていただきたいんですが、この試算結果、この分科会の提案において、どうやって地方へ若者を呼び込むかという観点からなんですけれども、教育関係の提案、提言もなされております。そこに、「まず初等・中等教育段階においては、子どもの学習能力・意欲に応じた教育を塾に頼らず公立学校で提供するようなシステムを作ることにより、地方への呼び込みを図る」という提案をしております。

 以前、私、佐賀県の武雄市で取り組んでいる官民一体型の教育について取り上げさせていただきました。この教育に関しては、非常におもしろい、今後見守っていきたいという、恐らく西川副大臣だったと思うんですけれども、御答弁をいただいたと思います。その趣旨とこの提案、見ようによっては真逆にも見えるわけでございます。

 この官民一体型教育、いわゆる塾の位置づけも含めまして、公立学校の充実、塾に頼らない、そういったものを若者を呼び込む一つの教育体制として設けるんだというこの提案に関する政府の見解を聞かせていただければと思います。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

前川政府参考人 公立学校におきまして、子供の学習能力や意欲に応じた教育を提供するということは重要であるということでございます。

 そのため、文部科学省といたしましては、補充的な学習でありますとか発展的な学習、習熟度別指導など、個に応じたきめ細やかな指導の充実、また、各教科等における説明、論述、討論など、児童生徒の主体的な言語活動を通じた思考力、判断力、表現力等や学習意欲の育成、さらに、観察や実験、体験的な学習などを取り入れ、児童生徒の興味、関心を高め、達成感や成就感を味わわせる授業の充実、こういったことに取り組んでいるところでございます。

 こういった取り組みを充実させるに当たりまして、一つの方策として、学習塾のノウハウを生かして取り組んでいるという学校もあると承知しておりまして、これは一つの方法であると考えております。

 いずれにいたしましても、文部科学省といたしましては、公立学校が学校外のさまざまな知恵にも学びながら、多様で質の高い教育を提供することが重要であると考えておりまして、今後とも、地域の実情に応じたきめ細かな取り組みを促してまいりたいと考えております。

柏倉委員 もう一度お伺いしますけれども、この分科会の提案に関して、塾に頼らない、公立学校で子供の学習能力、意欲に応じた教育を提供するシステム、これで地方への呼び込みも図るということなんですけれども、この提案に対する文科省の取り組みというのは、積極的に協力していくのか、それとも、やはり距離を置いて、官民一体型教育というものも大切にしながら注視していくのか、どちらなんでしょうか。教えていただきたいと思います。

前川政府参考人 日本創成会議の分科会の御提言の趣旨をつまびらかにしているわけではございませんけれども、学校と塾とそれぞれが併存する状況において、塾に行かずに学校で学ぶということで十分な教育ができるように、こういうことを提言しておられるのかなと思うわけでございますけれども、私どもとしては、学校において十分な教育ができるように努めてまいりたいと考えているわけでございますが、その際に、塾のノウハウを生かすというような方法は一つ考えられるのではないかと考えているところでございまして、その意味では、塾との連携あるいは塾のノウハウを生かす方策といったことは、考慮に値するのではないかと考えているところでございます。

柏倉委員 私がお伺いしたかったのは、官民一体型教育というものに対する文科省の姿勢を明確にしていただきたいというところと、やはり、こういった人口減少をどうやって食いとめるかというような発想での公教育のあり方、こういった視点でもどんどんこれから教育問題というのは論じられるわけでございます。

 そういう意味で、ある一方で真逆の政策、提案が出てくるわけです。そこの整合性をどうやって図っていくのか。その事実をしっかり文科省は確認しているのか。その潜在的な調和というものもしっかり前もって文科省に図っていただきたいと私は思うんです。

 やはり子供の教育を考える上では、子供の教育の質というものと同時に、子供の人口、これのバランスというのをどうやってとっていくかというのが今後の教育の本質になってくると私は思いますので、ぜひ文科省にも、先ほど私が指摘した視点、論点に立って今後も公教育を考えていただきたいと思います。

 それでは、次の質問をさせていただきたいと思います。

 やはりこの分科会での提案、もう一つ、若者を地方へどうやって呼び込むかというところで、こういった提案がありました。「大学や研究機関を地方に誘致するとともに、現在の地方大学の機能強化を図る。例えば、地方中核都市を支える地方大学を強化するため、地方の国立大学と公立大学の合体も含めた再編強化を進める、」そして、地方自治体や経済界による地方大学への円滑な投資ができるよう、「地方大学を核とした研究組織や産業を育成する」ということが提案をされております。

 地方の大学を強くするため、スケールメリットをある程度追求して合併をしていく、そして、大学の魅力を打ち出して産学連携を促す。これは、就職とも潜在的にはリンクさせるような産学連携をつくっていく、それで人口流出抑止を図っていくという観点だと思います。

 この大学を合併していくということに関してまずお伺いしたいんですけれども、この提案である大学合併、国立大学と公立大学を合併するというものに対する文科省の見解を聞かせてください。

 そして、現在、文科省は各国立大学の役割を検討しているということだったと思います。その検討なんですが、地域活性化、少子化という観点からも検討しているのかどうか。

 この二点、答弁をいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 地方における大学の活性化という御質問をいただきました。各都道府県における大学進学につきまして、平成二十五年度の県内流入と県外転出の状況を見てみますと、四十七都道府県中三十七道県で県外へ流出する者の数が上回っておりまして、多くの地方で、大学進学の時期に若者が県外に流出している状況があるということがわかっております。

 このような実態を見れば、先ほど御紹介のありました日本創成会議の報告にもあるように、地方活性化を図る観点から、各地方において大学段階の教育を充実する、強化することは大変重要なことだというふうに考えております。

 その際、各地方におきまして、大学進学の機会を、若者を都市に流出させず、むしろ地方に若者を呼び込む機会として積極的に捉えた対応をしていくためには、大学教育を学生にとって魅力あるものにしていくことが重要でございまして、例えば、地方が主体となって大学等を誘致し、地域の産業と連携した特色ある教育研究を行ったり、地域内の大学間連携を強めて、より質の高い教育を確保したりすることが有効な方策でございます。

 御質問のございました大学の統合という観点でございますけれども、大学がその経営基盤や教育研究機能を強化するために他の大学と統合するということは一つの有効な手段ではあると考えられますけれども、ただ、それはやはり各大学の主体的な判断によるべきものでございます。

 文科省としては、その大学において具体的な構想があれば、積極的に相談に応じるなどをしてまいりたいと思います。

 一方、文部科学省では、国立大学を含めまして、地域コミュニティーの中核的存在としても大学の機能強化を図ることを目的として、平成二十五年度から、地(知)の拠点整備事業、いわゆる大学COC事業を開始しておりまして、これは、自治体等と連携して、地域の拠点として全学的な教育研究、社会貢献活動を行う大学を支援する、そういった事業でございます。

 特に国立大学につきましては、国立大学改革プランを踏まえまして、十八歳人口の減少や地域活性化に対する期待の高まりなど、社会経済状況の変化を踏まえつつ、各大学がみずからの強み、特色、社会的役割といったミッションを明らかにした上で、地域活性化の中核的拠点としての役割についても、機能強化の一つの方向性として、各大学の強み、特色を生かした取り組みを進めていくこととしているところでございます。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

柏倉委員 ありがとうございます。

 この消滅可能性について今まで議論してきたわけなんですけれども、先般、教育委員会の問題もここで議論させていただきました。ただ、この消滅可能性という観点が欠如していたのかなという思いが私はございます。消滅可能性を鑑みて、やはり今後、教育委員会組織の簡素化ですとか教育委員人材の地区外採用、こういったものも現実的に、二〇四〇年ですからもうすぐでございます、そういったものを考えていかなければいけないのではないのかなというふうに思います。

 この問題に関する大臣の御見解を伺わせていただければと思います。

下村国務大臣 現在でも既に小規模の市町村は多く存在し、平成二十三年五月一日時点で教育委員会事務局の職員数が十人以下の市町村が四百九十三あり、このような市町村では、事務体制が脆弱であるため、学校指導などが十分に行き届いていないことや教育委員の人選が課題となっております。

 そういう意味で、今委員から御指摘があった人材登用等、その自治体以外からも優秀な人を集めるということが必要だと思いますが、一方で、簡素化ということが結果的に教育委員会の形骸化になってしまったら、今までの教育委員会制度改革のときも議論がありましたが、それが今後実現しないということになってしまうわけでありまして、私としては、周辺の市町村が一緒になって、できるだけ教育委員会を広域の教育委員会にシフトさせるとか、そもそも、市町村を統廃合しなければなかなか市町村そのものが存続しないということも出てくると思いますから、それに連動させる形になるということもあり得ると思いますが、そういう意味での広域的な地方教育委員会等も考えながら、できたら私は、簡素化というよりは、やはり教育委員会については、しっかり充実をすることによって、その自治体における教育については教育委員会が執行機関として自負と責任を持って対処する、そういう思いを教育委員の方々には持っていただきたいというふうに思います。

柏倉委員 御答弁をありがとうございます。

 やはり、いろいろな人口動態で教育そのものの本質、制度設計というのも今後かなり変わってくるのかなというふうに思っております。今の大臣の御見解は私も納得をいたすところがございます。

 最後、本当は日本相撲協会と神道とのあり方について質問をさせていただこうと思ったんですが、もう時間が参りました。もし私も運がよければ、次、また臨時国会でこの質問に関してはやらせていただきたいと思います。

 どうも長い間ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 きょうは、今国会で何度か伺ってきました原発の賠償のことについて伺いたいと思います。東京電力の石崎副社長にはたびたびお越しをいただきまして、感謝を申し上げます。よろしくお願いをいたします。

 まず、先ほど民主党の吉田委員からもお話がありましたADRの件について文科省に伺います。

 ADRは、今さら言うまでもありませんが、裁判に至る前に、迅速、公正に和解の手続を仲介していくということでこれまでやってまいりました。その中で、東京電力もこのADRについては、和解仲介案を尊重する、それを「三つの誓い」として国に特別事業計画を提出し、公的資金を受けて賠償を進めてきているということは、今ここで言うまでもないことです。

 ことしの二月に私が、ADRの示した和解案について、これを東京電力側の意向で拒否をした、東京電力がこの和解案はのめないと言って拒否をした件数が何件あったかとお尋ねしたときに、十五件あったと。ただ、この十五件は、被災された当事者が全て東京電力の社員またはその家族に限定されている、そういう実態を御答弁いただきました。

 その最新の数字と、また、被災されている方の当事者のお立場について、現在の数字を文部科学省に伺います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力損害賠償紛争解決センター、ADRセンターが申し立ての受け付けを開始いたしましたのは二十三年九月でございます。その九月から昨日までの間に、ADRセンターが示しました和解案を東京電力が拒否し、それによって打ち切りになった件数は三十三件でございます。

 これらの申し立ては、全て東京電力の社員あるいはその家族の方々からの申し立てであるというふうに承知をしてございます。

井出委員 今説明のあったとおり、これまでの間に、東京電力の意向で和解案を拒否して賠償が打ち切りになったものは、全て東京電力の社員またはその家族が被災をされている、その現状が今も続いているということははっきりいたしました。

 東京電力の社員や家族が被災者であっても、こうした和解を東京電力が拒否するということは私は問題があると感じておりますが、ここへ来て今度は、東京電力の社員や家族が被災したケースでない、これを一般の被災者と呼ぶのも、被災者に色分けをするのも私としては本意ではないのですが、一般の被災者の和解事案についても和解の拒否の可能性のあるような、ひいては、ADRの制度の存在意義が問われるようなことが起こっております。

 きょう御紹介をしたいのは、福島県飯舘村蕨平地区の百十一人が集団でADRに申し立てをしている件です。

 お配りをしている資料なんですが、飯舘村の蕨平地区というところは、一枚目の地図の下の方、赤で長泥地区とありますその右隣が蕨平地区です。長泥地区というのは帰還困難区域であって、蕨平は居住制限区域だった。

 端的に申し上げますと、この蕨平地区は、資料の二枚目、これは飯舘村が独自に放射能を測定してきた結果なんですが、例えば宅地の平均線量、また年間空間線量、そしてもう一つ右、年間被曝線量、この数字を見ると、帰還困難区域の長泥よりも高い線量が出ている。当然、帰ることも除染もままなっていないというような状況で、百十一人の賠償は、長泥地区に準ずるというか、同程度の賠償を求めているわけであります。

 この件につきましては、ADRがことしの三月二十日に住民側の申し立てをある程度認める和解案を提示して、東京電力はことし五月二十七日にその和解案の一部を拒否するとADRに回答していますが、東京電力石崎副社長、この拒否をしているということは事実かどうかについて伺います。

石崎参考人 お答えさせていただきます。

 今御質問の点につきましては、結論的に言いますと、事実でございます。

 ちょっと経緯をお話しをしますと、平成二十五年の一月二十五日に飯舘村の蕨平地区の皆さんから申し立てがございました。平成二十六年に入りまして、三月二十日に和解案が提示をされました。その後、四月十七日及び五月二日に当社から回答の延伸をまず上申をいたしまして、五月十六日に一部受諾、一部保留回答を実施をさせていただきまして、先月、五月二十七日に全体の回答をさせていただいたということでございます。

 先生御質問の点につきましては事実でございます。

 以上でございます。

井出委員 きょう資料を添付しております三枚目からの三枚、これが東京電力がADRに示した回答書で、象徴的なところは、一枚めくっていただいて、赤線を引いてあるのですが、象徴的な理由としては、「現行の賠償実務に混乱を生じさせ、迅速かつ公平な賠償実務の実現を阻害するおそれがある」と。これは、帰還困難区域と蕨平地区が指定をされている居住制限区域、この区域の違いによって賠償に差があるのですが、そこの線を超えてしまうと迅速かつ公正な賠償の実現を阻害するおそれがある、趣旨はそういうことだと思うのですが、これに対して、この資料のさらに二枚めくっていただいたところにADRが示している和解案提示理由書というのがありまして、ここは一枚目に赤線を引かせていただいているんですが、私が冒頭申し上げたような、帰還困難区域の長泥地区よりも高い放射線量が検出されている、現時点では除染は着手されておらず、除染が終了する見通しすら立っていないという蕨平地区の個別の事情を踏まえた和解案を提示しております。

 今度の進行協議は六月三十日に行われると聞いております。ADRの和解仲介業務規程によれば、「和解仲介手続の打切り」というものがその仲介業務規程の中に規定としてありまして、三十四条の二になるのですが、「当事者が和解仲介手続において和解により解決する意思がないことを明確にしたとき。」仲介委員がそういう判断をすれば和解は打ち切りになる。

 そうしますと、私が申し上げましたように、一般の住民の申し立てで東電側の意向でもし和解が打ち切られれば、これはもう初めてのケースということになりますが、私からは、ぜひこの六月三十日、東京電力に真摯な態度でこの協議に臨んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

石崎参考人 お答えさせていただきます。

 今、議員御指摘の、六月三十日に期日があるというのは事実でございまして、その中で、私どもも呼ばれておりますので、そこで会社としての考えを述べさせていただく予定ではございます。

 以上でございます。

井出委員 ADRとしても、一度和解案をまとめて、東京電力がその和解案に難色を示すこともあれば、逆に被災者の方が難色を示すこともありますし、そういう中でADRの仲介委員はこれまでもさまざま努力をされてきたのかと思います。ただ、その一方で、ADRというものは、公正、迅速にその手続を進められるということも一つのメリットであるかと。

 そこで文部科学省に伺いますが、この蕨平の案件は、先ほど石崎副社長がおっしゃいましたように、平成二十五年の一月に申し立てが始まっていて、もう既に一年半が経過をしております。また、和解案が提示されてからも三カ月になろうとしておりまして、ADRの仲介委員からは、結論を出すのが遅いのではないか、遅延の賠償も支払うようにと、その手続の遅さも問題視をされていますが、迅速な賠償という観点から、今回の蕨平のケースが過去の事例と比べてどのような長さがかかってしまっているのか、また、ADRは、和解の仲介の解決にどのぐらいの期間で解決していくという目標設定でやってきたのかを伺います。

田中政府参考人 先生今御指摘の点について御説明申し上げます。

 ADRセンターの和解仲介手続に要します期間につきまして、全体の平均ということを申し上げますれば、ADRの審理期間、発足当初は八カ月でございました。現在は、体制整備ということを順次進めてきておりますので、おおむね半年以内ぐらいに短縮をしてございます。

 しかしながら、事件の内容ということについて所要期間に長短があるということも、これも事実でございます。一年半を超えているという例も中にはございます。数十件あるというふうに報告を聞いてございます。

 ただ、迅速な賠償という観点からは、目標ということにつきましては、大体四、五カ月ぐらいで審理期間を処理するということを目標として設定をしているということでございます。

井出委員 大臣に伺いたいのですが、私は、このADRの和解案というものは、そもそも、これを尊重することを前提にやってこられたものだと思います。それが、東電の社員、そして今回、一般の住民の申し立てが東電側の意向で拒否される可能性もなきにしもあらずだと。私は、このこと自体、大きな問題だと思っております。

 また、もう一つ、迅速な賠償という観点から見ても、今、研究開発局長からお話があったような、平均ですとか目標から大きく逸脱した長期間の時間がかかっていることは私は問題だと考えますが、大臣の見解を伺います。

下村国務大臣 今般の事故に係る原子力損害賠償については、原子力損害賠償紛争審査会が策定した指針を踏まえ、基本的には東京電力と被災者との直接交渉により賠償が行われるということでありますが、直接交渉が難航する場合などでも、被災者の方々が簡易かつ迅速に賠償を受けられるよう、原子力損害賠償紛争解決センターを設置し、和解の仲介を実施しているわけであります。

 御指摘のADRセンターが提示した和解案を東京電力が拒否し打ち切りとなった案件に関しては、申立人が東京電力の社員またはその家族という案件のみでありまして、東京電力が個別事情をよく把握できるという特殊な状況でもありまして、また、その数も全体の〇・四%というふうに承知をしております。

 また、委員の御指摘の蕨平の申し立て案件についてでありますが、現在、ADRセンターにおきまして和解仲介の手続が進められている段階であるため、現段階でのコメントは差し控えるべきだというふうに思いますが、一般論で申し上げれば、東京電力におきましては、みずからが表明している和解案の尊重の趣旨に鑑み、無用に審査期間を引き延ばすことがないよう、誠意ある対応をしていただきたいと考えます。

 全体としては、ADRセンターにおける和解仲介は、昨日六月十七日時点の状況で、既済件数八千九百二十三件のうち約八割に上る七千二百四十九件の和解が成立しておりまして、当初約八カ月要した審理期間もおおむね半年以内まで短縮するなど、その役割を果たしているものと考えておりまして、今後とも、被災者に寄り添い、公平、適切な賠償が迅速に行えるよう、しっかりと取り組んでまいりたいと考えます。

井出委員 今、全体として八割が和解成立をしてきている、私もその数字は承知をしているんですが、私は、この蕨平地区の問題は、報道でも取り上げられていることもあって、まさに、六月三十日に向けて非常に大事な場面ではないかなと思っております。

 しかし、私は、これは氷山の一角と言ったらちょっと言い過ぎかもしれませんが、きょう一つ御紹介をしたいのは、文部科学省のホームページ、ADRのホームページなんですが、その中に、原子力損害賠償紛争解決センター活動状況報告書というものが二十三年、二十四年、二十五年とありまして、その二十五年の報告の中に、東京電力のことについて、二十五年の段階でも、繰り返し指摘をされてきたことではあるが、東京電力が、中間指針に具体的な記載があるものしか賠償の対象にしない。東京電力の賠償に対する姿勢が被害者の早期救済の障害となっており、改善が望まれる。もう一つ、ADR、当センターへの申立人に対する差別的な取り扱い、当センターに申し立てをした被害者に対して、請求書用紙を交付することを拒否する差別的な事例が二十五年度も発生を続けていると。

 和解の成立の件数は八割ということもあるのですが、やはり私は、二十五年の報告書にこういうものが明記されているというものを踏まえれば、東京電力の賠償対応というものが果たして本当に誠実なものなのかと。もう一度文部科学省としてしっかりと見ていただきたい。

 国がこの制度をやってきたということは、そのホームページの本当に一番頭にもあるのですが、「中立・公正な国の機関が仲介します。」ということが大きな文字で書かれておりますし、今大臣のおっしゃられた、被災者に寄り添った賠償という観点から、このADRの賠償の実態についてもう一度文部科学省としてもよく検証していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

田中政府参考人 先生御指摘がございましたADRセンターの報告書、これは五月十九日に出ているわけでございますけれども、文部科学省としては、そこで指摘を申し上げた事柄、これは前回も同じようなことを申し上げたという経緯もございます。

 したがいまして、この報告書で指摘をいたしました事項について東京電力においてきちんと状況を対応ということを検討の上、この二十六年の八月十九日、三カ月後でございますけれども、までに当省まで報告をいただくよう、強くお願いを申し上げた次第でございます。

井出委員 前回も申し上げたというお話があったんですが、前回、そういうお話をいただいて、改善が見えないから質問を重ねさせていただいているのであります。

 六月三日、参議院の経済産業委員会で櫻田副大臣が賠償の指針やADRの役割について話をされていて、指針というものは、類型化が可能で、一律に賠償すべき損害の範囲や損害項目の目安を示したものだ、指針に明記されていない損害についても、個別具体的な事情に応じて事故との相当因果関係があれば賠償の対象としていることが明記をされている、ADRセンターにおける和解の仲介は、指針の趣旨を踏まえ、申立人の個別具体的な事情に応じて和解の仲介を行っているものというお話をされているんです。

 私は、東京電力の社員、家族に賠償を拒否した案件を質問させていただいたときに、先ほど大臣からもお話がありましたが、その個別の事情がよくわかるんだ、そういう説明が東京電力からもあったと思います。社員だからよくわかりますと。そして、その一方で、今回の蕨平のその和解案の拒否の内容を見れば、公正な賠償、その実務に混乱を生じるおそれがあると。指針をとって、公平というところに力点を置いて拒否をする理由を述べているんです。

 私は、この二つの案件を見れば、個別的事情と公平という言葉を東京電力はちょっと都合のいいように使い過ぎているのではないか。櫻田副大臣の趣旨を踏まえれば、まず、指針という目安に沿って個別の話し合いをするのがADRなんだから、やはりADRの出した案というものは、東京電力も「三つの誓い」でおっしゃられているように、尊重して、それを受け入れるのが筋ではないかと思いますが、石崎副社長、いかがでしょうか。

石崎参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の、私ども、賠償につきましては誠心誠意やるということが必要だという御趣旨かと思いますけれども、もう先生のおっしゃるとおりでございます。

 私どもは、ことしの一月に新・総合特別事業計画を発表いたしまして、そこで、賠償につきまして「三つの誓い」というものを申し上げました。その中の一つとして和解案の尊重ということも挙げております。私どもは、まず、やはり紛争審査会の中間指針の考え方に基づいて、それをベースに和解案の尊重も行うというのが基本でございます。

 さらには、私ども、今、社員だけでは足りなくて、一万人以上の体制をとって賠償業務に当たっておりますけれども、これからも、やはり被害に遭われた方に寄り添って、しっかりと個別の事情をお伺いした上で、賠償業務を公正公平に、そして迅速に進めることが基本だと考えております。

 以上でございます。

井出委員 石崎副社長には、きょうで二度目のお越しをいただいているんですが、私は、一度目の質問をさせていただいた後に一冊の本に出会いまして、「記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞」という門田隆将さんの書かれている角川書店の本なのですが、その中で石崎副社長が登場されている。

 石崎副社長は、第二原発の所長をされて、送別会のときにも最終の電車に地元の方がお見送りに来てくださった。また、地震があった後も、安心安全と言ったじゃないか、そういうきつい言葉を投げかけられたこともあったけれども、それでもあなたのことを信じている、そういう被災者の声を聞いて石崎さんは、福島のために一生をかけてやっていくというようなことを誓ったというようなことがここに書いてありました。

 私は質問をここで何度かさせていただいてきましたけれども、私の福島に対する思いよりも石崎副社長の福島に対する思いの方がはるかに重いものであるということはわかっております。それから踏まえれば、これまでるる質問をした中で失礼な言葉もあったかと思うんですが、ぜひそのお心を、これから賠償という形の中で、東電として被災者に向き合う中でその姿を示していっていただきたい。

 また、文部科学省、また我々国会もそうですが、こういった賠償の案件というのは必ず長期化をしてきますので、長期化してくることから見れば、この三年というものはまだ短い時間、始まったばかりで、最初が非常に肝心だと思っておりますので、また私も問題意識を持って引き続き取り組んでいきたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、学生のアルバイトについて聞きたいと思います。

 実は今、学生のアルバイトに異変が起きております。若者を使い潰すブラック企業のような違法、無法な働かせ方が学生アルバイトにも広がっているわけです。この間、メディアでも取り上げられまして、産経は、若者を標的にしたブラック企業が社会問題化する中、違法な働き方でバイト学生を使い捨てにするブラックアルバイトが新たな問題として浮上していると報じました。また、読売にも、違法行為が横行し、学業に影響するほどの長時間労働を強いられるケースもふえているなどと取り上げられております。

 まず文部科学省に聞きますけれども、このようなブラックアルバイトの現状を承知しておりますか。

吉田政府参考人 文部科学省では、学生のアルバイトの実態を網羅的に把握するための調査は実施はしておりませんけれども、今委員御指摘のように、法令に反してアルバイトに従事せざるを得ないような状況に学生が置かれ、大学での学業にも大きな影響が生じているということが、新聞その他の報道で指摘されたことは承知しております。

宮本委員 日本共産党としても、去る六月二日に、「ブラックバイトから学生生活を守ろう」と題したアピールを発表いたしました。きょうは委員の皆さんにも資料として配付をさせていただきました。

 かつては、学生バイトといえば、あくまでも正規雇用の補助、低賃金だが責任は軽く、テスト前には休むことができ、バイト先も比較的自由に選べる、それが学生バイトの従来の一般的なイメージでした。しかし、現在はそうしたイメージが通用しなくなっております。低賃金、低処遇にもかかわらず、正社員並みの過度な責任やノルマを課されるという例が数多くあります。

 ブラックバイトの命名者であるとされる大内裕和中京大学教養学部教授は、ブラックバイトの定義を、低賃金であるにもかかわらず、正規雇用労働者並みの義務やノルマ、重労働を課されるアルバイトのこと、非正規雇用労働の基幹化が進む中で登場した、残業代の未払いや異常な長時間労働など、法令違反を伴うことが多いとしております。

 私たちが全国で行った調査によりますと、例えば、シフトの連絡が直前、予定があるのにシフトを急に入れられる、これはファストフード店でありますけれども、あるいは、テスト期間なのに、頑張ってシフトに入ってくれと言われる、結婚式場の事例でありますが、こういう無理なシフトを組まれるという事例です。

 あるいは、やめたいが、いろいろ言われてやめさせてもらえない、居酒屋。バイト最年長という立場からシフトを無理に入れられ、深夜にも呼び出される、やめるなと念を押される。やめたいと言ったら、求人広告費分として給料から四分の三を差し引くと言われた、これは飲食店でありますけれども、こういうふうに、やめられない事例が後を絶たないわけですよ。

 さらには、学生、働く人間としての権利も無視したような働かせ方、あるいは売れ残りを買い取らせる、ただ働きや罰金などの違法、脱法行為まで学生バイトの間に広がっている。これは新聞記事で、産経にも読売にもそういう報道がされております。

 その結果、大学教員からも、授業中もバイト先からの連絡が入り、授業に集中できない、シフト変更がききにくく、ゼミ合宿の日程が決められないなど、告発の声も広がっております。

 中には、バイトと学業を両立できず、留年や大学中退に追い込まれる深刻なケースまであり、ブラックバイトは学生生活と大学教育の障害となっていると言わなければならないと思います。

 今は二紙挙げましたけれども、その他の一般紙も全部、この間、ブラックバイトというのは一つの社会問題だというふうに報じておるわけですけれども、まず大臣、このような状況を放置しておいていいとお考えでしょうか。

下村国務大臣 今お聞きしていると、それはもう我々の学生のころとは全く違う世界が今は学生の前にあるのかなというふうに思いました。

 この御指摘のブラックアルバイト、法令に反してアルバイトに従事せざるを得ないような状況に学生が置かれ、大学での学業にも大きな影響が生じる、これであれば教育上ゆゆしき問題であるというふうに思います。

 このブラックアルバイト対策については、厚労省とも連携しながら、大学における取り組みを促してまいりたいと思います。

宮本委員 ぜひ、委員の皆さんにも問題の本質を御理解いただきたいと思うんです。

 現状は、学生がお金欲しさに、学生の本分を忘れてアルバイトにのめり込んでいるという問題ではないんです。本人は、試験だから行かせてくれ、休ませてくれ、授業だから授業に行かせてくれと言っているのに休ませてもらえない、休めないという現状がまかり通っている。

 なぜかといいますと、かつてであれば、それぞれアルバイト先には正社員がいて、その人に休ませてくれとお願いするという関係だったのが、今はアルバイトが店をやっているわけです。そして、学生自身がアルバイトリーダーという形で、シフトも含めて本人が組んでいるわけで、休ませてくれと言う相手がいないわけです。そういう現状が広くある。これはもうまさに、正規労働者がどんどん減らされて、非正規だけで回っているという店がうんと広がってきていることの影響でもあるわけです。

 学生であろうがなかろうが、フリーアルバイター、フリーターの低賃金という問題は、既にワーキングプアということで問題になってきたわけですけれども、この問題はそれとも違って、ブラックアルバイトというのは、学業と両立しない、これが学生のブラックアルバイト問題の本質、重大さということだと思います。

 きょうは厚生労働省に来ていただいております。端的に幾つか確認したいと思います。

 アルバイトは、法律上、短時間労働者であります。契約期間や勤務条件、職責などが正社員より緩やかに定められておりますけれども、雇い主との法律上の関係は正社員と変わりません。労働基準法や労働安全衛生法など労働関係法令は当然アルバイトにも適用されますね。端的にお願いします。

大西政府参考人 委員御指摘のとおり、アルバイトの方であっても、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者であれば、労働基準関係法令は適用されます。

宮本委員 当然、アルバイトでも労働関係法令が適用され、これに反すれば刑事罰をもって罰せられるということになります。

 労働日、労働時間は雇用契約の基本中の基本でありまして、労働基準法で書面での明示が義務づけられております。契約にない日や時間にシフトを入れるためには、働く人との合意が大前提となります。これを企業側が一方的に押しつけたり、パワハラ的な言辞で強制することは許されないはずでありますけれども、これも間違いないですね。

大西政府参考人 労働契約法におきまして、労働契約は労働者と使用者の合意により変更することができるとされております。

 委員御指摘の労働契約に定める労働日や労働時間の変更などに際しては、事前に使用者と労働者の間で話し合うことなどにより、合意のもとに変更することが求められていると考えております。

宮本委員 サービス残業、未払い残業が違法であることは明瞭です。法に照らせば、着がえや引き継ぎ、掃除などの時間も一分単位で賃金を請求できるはずであります。一日八時間を超えて働いた分あるいは午後十時以降の深夜勤務については、割り増し賃金を支払うべきことも定められております。これも厚労省、間違いないですね。

大西政府参考人 労働基準法では、法定労働時間を超えて労働させる場合や深夜に労働させる場合にはそれぞれ割り増し賃金の支払いが義務づけられておりますので、賃金不払い残業は違法でございます。

宮本委員 本人が退職を希望しているにもかかわらず、やめさせない、やめるなら求人広告費を払えと迫る、過大なノルマを与え、売れ残った分は学生に買い取らせる、あるいは賃金から差し引き、商品で渡す、故意でないミスについて弁償を迫るなどは、全て労働基準法違反ではありませんか。いかがですか。

大西政府参考人 個別の事実関係を踏まえて判断することとなりますが、一般的には、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約を締結すること、あるいは、法定の除外事由等がなくて賃金の一部を控除して支払うなどにつきましては、労働基準法違反となると思います。

宮本委員 労働関係法令がアルバイトにも適用されるということは、当然、有給休暇など労働者の権利についても学生バイトにも保障されることになります。半年以上同じところで働いていれば、アルバイトにも有給休暇がある、これは事実ですね。

大西政府参考人 アルバイトの方でありましても、労働基準法第三十九条に定める要件を満たしておれば、年次有給休暇を取得することができます。

 なお、一日の所定労働時間が短い方、あるいは一週間の所定労働日数が少ない方については、それぞれ、通常の労働者の所定日数と比較して考慮された日数の年次有給休暇が付与されます。

宮本委員 これが実は事実なんですけれども、そういったことが学生たちには本当に知らされておりません。私たちがそういう話をすると、えっ、そうだったんですかと目を丸くして驚く学生がほとんどであります。

 そして、ブラック企業やブラックバイトは、学生の社会経験の未熟さや労働法、雇用ルールについての知識の乏しさにつけ込んだ違法、脱法行為で成り立っていると言わなければなりません。

 本来は、高校までに労働法の基本や雇用のルールなどをきちんと身につけてもらう必要があります。しかし、今はそれがほとんど行われていない以上、大学における取り組みが極めて重要だと思います。

 大学で、労働法の専門家や弁護士、労働組合などと協力して、アルバイトについても適用される労働法の基本などについてセミナーやガイダンスを開く、あるいは相談窓口を設けるなどの取り組みを、文科省、しておりますか。

吉田政府参考人 文部科学省におきましては、平成二十四年八月に厚生労働省から、大学生等への労働法制の基礎知識の普及に関する取り組みについての協力依頼も受けまして、同月に各大学等に通知を発出し、各大学において学生に対して労働法制の周知を図るセミナーや講義を実施する場合には、各都道府県労働局とも連携をして取り組むよう促してきたところでございます。

 各大学における取り組みの全体を把握しているわけではございませんが、例えば三重大学におきましては、労働局の担当者の講演などを通じて、学生に対して労働法の理解を促進する取り組みを行ったと承知をしております。

宮本委員 今や、学生であるということを尊重しないような働かせ方がまかり通っておりまして、学業そのものと両立しない例がふえている。各大学の状況をしっかりつかんで、ぜひとも進めていただきたいと思うんです。

 そこで厚生労働省に聞くんですけれども、厚労省は今年度予算で、若者の使い捨てが疑われる企業等への対応策を強化していると聞いております。その中で、大学等での法令等の周知啓発予算というものが組まれておりますけれども、それはどういうものであるか、予算額は幾らか、今どこまで進んでいるか、お答えください。

大西政府参考人 若者の使い捨てが疑われる企業等への対応策でございますけれども、大学生等を対象とした労働条件セミナー事業を実施する予定でございます。

 事業の内容でございますが、労働関係法令に余りなじみのない大学生などの若年者を主な対象として、実際に働くに当たって有用な労働関係法令等の知識の周知啓発を行うセミナーを、これは全国で開催することを予定しております。

 予算額でございますが、関連する労働条件相談ダイヤル事業、労働条件相談ポータルサイト事業と合わせて約二億円でございます。

 事業につきましては、現在、セミナー用の研修テキストや講演内容等の具体的な内容を検討中であり、実施に向けてしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

宮本委員 文科省、今既に学生に被害が出ているわけであって、やはり文部科学省としても、厚労省の取り組みだけに任せるんじゃなくて、大いに全国の大学の状況をつかむ、労働法や雇用ルールなどの知識を付与するセミナーの実施、それから、大学にもブラックバイトの相談窓口を設置して厚労省と連携して取り組みを進めていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 将来社会に出て働くことになる学生に対しまして労働法制の基礎知識を付与する取り組みを行うことは、大変重要でございます。

 現在、大学では、約八割におきまして学生相談室等の相談窓口を設置しておりますけれども、今問題となっておりますようなブラックアルバイトのように、違法な労働条件でアルバイトに従事することを余儀なくされ、大学の授業等に支障を来すような問題が生じた場合について、この学生相談室等での相談を受け付けるように促してまいりたいと思いますし、また、必要に応じまして、労働局の総合相談コーナーや労働基準監督署等の連携を図るとともに、先ほど厚生労働省から御紹介がありましたような事業との連携も促してまいりたいというふうに思っております。

 そのあたりにつきまして、一層の取り組みを大学に促してまいりたいと思っております。

宮本委員 大臣、この問題を根本的に解決するためには、学生がこれほどバイトに追われなくとも、お金の心配なく学べ、希望を持って大学を巣立っていける状況をつくる必要がある。これは言うまでもないことです。

 何度も大臣と議論してまいりましたけれども、日本の大学の初年度納付金は、国立で八十二万円、私立で平均百三十一万円。高校入学から大学卒業までかかる費用は、一人平均で一千万円を超えております。それにもかかわらず、我が国には、大学生向けの給付制奨学金は支援機構には一切なく、奨学金とは名ばかりの、大半が利子つきの借金が主流になっております。世界でこういう国は本当にないという議論をやってまいりました。

 大学を出ても、低賃金で不安定な非正規雇用や、若者を使い捨てにするブラック企業が横行しております。奨学金の返済があるから、ブラック企業とわかっていてもやめられないというような声まで伝わってくるありさまです。奨学金の返還が滞れば、ブラックリスト、一括請求、法的措置、自己破産と、私がこの間明らかにしてきたような現実がございます。

 奨学金を借りても、将来返す当てがあるのかという不安から、今度は逆に、奨学金を借りずに、あるいは借りる額をもできるだけ抑えて、アルバイトで何とかしよう、こういう学生がふえつつあるわけであります。そして、ブラックバイトにひっかかると、休めない、授業に出られない。

 大臣、昨日も参議院の委員会で、日本の学生がアメリカの学生に比べて学習時間が短い、レジャーランド化しているというふうに答弁されておられましたが、しかし、私が今紹介したようなこういうブラックアルバイトの現状でいえば、それこそ勉強する時間などとれないということになってしまいます。

 大臣、奨学金の借金を何百万と背負って、返済のためならブラック企業にでも就職するか、それが怖ければ、奨学金を敬遠してブラックアルバイトで学業も続けられなくなるか、未来を担う学生にこんな悪魔のような選択を迫るようなことで日本の未来はない。これはもう全く意見が一致だと思います。

 日本は、高校や大学の教育を段階的に無償にする、こう定めた国際人権規約の条項も既に受け入れました。大学生向けの給付制奨学金制度の創設は、自民党の総選挙公約でもございます。大学の学費負担の軽減、奨学金はせめて無利子とし、将来的には給付制を当たり前にするなど、今日学生が置かれている深刻な状況を根本から改善するために、今こそ政治がその役割を果たすべきときだと思うんですけれども、最後に大臣の決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

下村国務大臣 奨学金に関しては宮本委員と意見は全く同じでありまして、経済的な理由によって学生が修学を断念することがないように、経済的支援の充実を果たしていくことは大変重要なことだというふうに思います。

 二十六年度からも、授業料減免の充実とか、それから無利子奨学金の貸与人員の増員に着手いたしましたが、本来、有利子があってはならないと思いますし、できるだけ早くのうちに有利子を無利子にすることをしていかなければならないと思いますし、また、御指摘のように、ことしから高校は給付型奨学金をまずスタートいたしましたが、大学における給付型奨学金、それももっと拡充することによって、どんな経済的な家庭の子供であっても安心して学べるような高等教育機関の充実に向けて、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

宮本委員 ありがとうございました。終わります。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木愛でございます。

 きょうは、スポーツを中心に質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 以前、委員会でも質問をいたしましたが、総合型地域スポーツクラブについて伺わせていただきます。

 子供から高齢者まで誰もがいつでもどこでも気軽にスポーツに親しめ、そして、住民がみずから、会費や寄附金で自主的、主体的に運営をする地域密着型のスポーツクラブでありまして、各市町村に少なくとも一つはこの総合型地域スポーツクラブを育成するということが、スポーツ基本計画に定められた目標でございます。

 クラブの数は、昨年七月現在で三千四百九十三、設置率が約八〇%という御答弁をいただいたところでございます。ただ、システムはできつつあるものの、本来の趣旨に照らしますと、その機能が十分に至っていないという現場の声もございます。

 平成二十一年の有識者会議がまとめた七つの提言を参考に質問をいたします。

 まず、活動拠点の確保でございますが、活動拠点については、学校開放を含む借用施設が八七・三%ということで、借用施設での活動が中心になっています。実際、ほかの団体とも同一の施設を利用するために活動場所の確保は困難だということで、いつでも誰もが親しめる環境にはなりにくいという意見がございます。

 総合型地域スポーツクラブの趣旨を実行し得る活動拠点についての御認識と、クラブがこの拠点を独自に活用する、また所有できるための支援状況はどのようになっているか、まずお伺いをさせていただきます。

久保政府参考人 今御指摘ございましたように、総合型地域スポーツクラブの自己所有率はかなり少ないという実態がございます。

 これに関しましては、大部分のクラブは地域住民が主体的に設立し運営を行っておりますので、運営財源の確保を課題としておりますことから、自前の施設の所有にまで至っていないということによるものと考えております。

 この提言の中では、クラブの活動場所が十分に確保されるようにどういうことが必要かという意味で、施設を円滑に確保できるような、施設管理者が調整することが大事だ、それから、コミュニティー体育館や多目的運動広場などのスポーツ施設の整備、あるいは廃校となった学校施設や余裕教室をもっと活用することが必要だ、さらに、学校施設などに夜間照明設備を設置し、利用可能時間を拡大することが必要であるなどが指摘されているところでございます。

 こういったことを踏まえまして、具体的に活動場所を所有するための支援策なりでございますけれども、総合型地域スポーツクラブの中には、施設の所有までは至っておりませんけれども、例えば、中学校の敷地内に市立体育館として整備された施設の指定管理者として入って、学校と地域住民の利用に関する業務を主体的に担うことを通じてクラブの活動場所を主体的な立場で確保している事例、それから、民間企業が地域貢献の一環として整備された体育館の管理運営業務を担うことによりましてクラブの活動場所を確保している事例などがございまして、文部科学省といたしましては、こうした先進事例を集めてその普及啓発を図っていきたいというのが一つでございます。

 それから、加えまして、総合型地域スポーツクラブの地域コミュニティーの核となる機能を充実強化しますために、スポーツ振興くじの助成を通じまして地域住民の交流の場となるクラブハウスの整備も支援しているところでございまして、年間数件でございますけれども、こういったものの充実も今後図っていければということを考えているところでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 今後さらに魅力ある地域スポーツ空間となるために、温水シャワーや、今御答弁にございましたクラブハウス、そして会議室や託児所などの整備も望まれています。

 特に、地域住民の交流の場となりますクラブハウスの併設が大変求められているかというふうに思っております。二十一年度のデータではございますが、今併設をされているスポーツクラブは五六・四%ということです。

 そして、ここで言われているクラブハウスが単なる事務所となっているケースも多々あるということで、スポーツの合間、またスポーツの後に仲間たちと余暇を過ごすための地域コミュニティーとしての機能が果たされていないという現場の声もございます。ヨーロッパのスポーツクラブでは、飲食を含んで、ビールなどもいただきながら余暇を過ごすという位置づけでクラブハウスが併設をされています。

 日本国内の中で、このようなヨーロッパ型のスポーツクラブ、クラブハウスのような位置づけで運営をしているクラブはございますでしょうか。

久保政府参考人 御指摘のとおり、欧州のスポーツクラブでは、地域を基盤としたスポーツクラブにおきまして、余暇活動も含めスポーツライフを満喫していると聞いております。

 我が国の総合型地域スポーツクラブにおきましては、スポーツ活動を行う場の提供はもとより、クラブ会員同士あるいは地域住民の交流の場を提供する役割も担っているところでございまして、御指摘のような場を整備するというのは大事なことでございます。

 具体的に、国内におきましては、例えば愛知県半田市のNPO法人ソシオ成岩スポーツクラブなどにおきましては、クラブハウス内に会員がスポーツ活動の前後に団らんできるカフェスペースが設置されたりしております。また、そのカフェ内には食堂やカウンターバーも併設されておりまして、飲食しながら一階アリーナのスポーツ活動の様子を見ることが可能となっているところもございます。

青木委員 ありがとうございます。

 そして、中でも高齢者の方が、スポーツクラブあるいはクラブハウスで一日のどれだけの時間を過ごしていらっしゃるのか、もし把握されているデータがあれば教えていただきたいと思いますが、スポーツを福祉として捉えるクラブ活動の広がりも今期待されておりまして、実際に福祉施設との連携プランを持っているクラブもございますが、このような視点について今後どのようにお考えをお持ちか、伺わせていただければと思います。

久保政府参考人 総合型地域スポーツクラブは、子供から高齢者までの誰もがいつでもどこでも気楽にスポーツを楽しむことができる地域密着のスポーツクラブでございますので、このクラブの活用によりまして、高齢者の健康増進、地域住民の交流の活性化などの効果が大変期待されているところでございます。

 今御質問がございました具体的な割合等についてまだ詳細な把握はしておりませんけれども、平成二十五年に文部科学省が総合型クラブに対して行った調査の中では、クラブを設立した効果といたしまして、約五割が、元気な高齢者が増加した、それから、約六割が、地域住民間の交流が活性化した、そして、約七割が、世代を超えた交流が活性化したなどの回答をいただいております。また、約三割のクラブにおきましては、行政の健康福祉部局から受託して地域住民の健康づくり事業を実施していると回答しております。

 今後とも、スポーツ活動を通じた地域住民の健康増進や地域コミュニティーの活性化に重要な役割を担う総合型クラブへの支援を行ってまいりたいと考えております。

青木委員 さらに、質の高い指導者、また、経営能力を有するクラブマネジャーの確保も課題に上がっております。

 総合型地域スポーツクラブの五二・九%がスポーツ指導者の確保をクラブ運営の課題と挙げておりまして、クラブマネジャーを配置しているクラブは六一・四%ということでございます。クラブマネジャーを職業として確立させていくことや、体育指導委員がクラブマネジャーとして活動できるような研修の機会、こうしたことをこれまで求められてきたかというふうに思っております。

 また、全国四十三都道府県に六十あります広域スポーツセンターに対して、スポーツ指導者、またクラブマネジャー等の派遣または紹介を期待する声が四一・六%ある一方で、この広域スポーツセンターを利用したことがないクラブが七六・六%と、この支援体制の連携が図られていないという現状がございますけれども、今後、スポーツ指導者、またクラブマネジャー等の派遣また育成についてどのように対策を打っていかれるのか、お伺いをいたします。

久保政府参考人 クラブマネジャーは、総合型地域スポーツクラブなどで核となってさまざまな運動を展開する欠かせない方でございますので、その確保、質の向上というのは大変重要な課題であると思っております。

 具体的な例といたしましては、神奈川県川崎市の総合型クラブでは、中学校の校舎や体育館を活用しながら、さまざまなスポーツ教室の開催や学校イベントへの参画など、学校や地域と密着した活動を行ったりしている例もございます。そういう意味で、さまざまな事業をマネジャーが活用していただく余地なり、工夫の余地はいっぱいあるわけでございます。

 私ども、その辺のクラブマネジャーに関する課題につきましては、毎年実施している調査を通じまして一定程度把握しておるところでございまして、クラブマネジャーの設置につきましては、スポーツ振興くじ助成でその補助を行いますとともに、今年度からは、総合型クラブ同士のネットワークをつくってスポーツ指導者の共有化を図る取り組みを支援しているところでございます。

 できる限りいろいろな工夫をしながら、クラブマネジャーの質と、それから場をつくるような工夫をしてまいりたいと思っているところでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 クラブ運営といたしますと、適切な会費設定を基本としながら、多様な財源の確保を図る視点も重要で、地域の商店街の協賛ですとか、スポンサーや寄附金の獲得、また特産品の販売など、さまざまな工夫が民間に求められています。また一方で、スポーツ振興くじや各省庁の多様な助成金なども、また国としてできることがあるというふうに思っております。

 いつでもどこでも仲間たちとスポーツを楽しむことができる、これは当然のことながら、クラブハウスでは会話や飲食などでくつろいでクラブハウスを満喫できるような、魅力ある地域スポーツ空間になるように、今後とも地域住民と、そして行政、民間企業、関係団体が協議の場を設置するなど、十分な連携を図ることも大切だというふうに思っております。

 地域の活性化をスポーツからも発信できるように期待をしておりますので、ぜひ今後ともお取り組みをよろしくお願い申し上げます。

 それでは、質問をかえさせていただきまして、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けまして、関係者の皆様は大変準備に御努力をしているというふうに思っております。先日、舛添知事がオリンピック会場全体についての見直しを表明されました。この見直しの中身とこれまでの経過、そして今後の運び等について、御所見をまずお伺いさせていただければと思います。

下村国務大臣 六月の十二日に行われました組織委員会の調整会議におきまして、出席者は森組織委員会会長、それからJOC会長、JPC会長、私でありますが、舛添都知事の方から、東京都に関係する施設についての見直しに着手したいという話がございました。

 この調整会議において、二〇二〇年東京大会の質のさらなる向上を目指すこと、それから、よりよいレガシーを残すこと、また、都民、国民の生活への影響、それから、建築資材等の整備コスト、こういう観点から、立候補ファイルの段階で作成した会場計画を改めて検討し、見直しが必要であるとの認識で全員一致したところであります。

 このような観点から見直しが行われるものということでありますが、これは東京都の関係でございまして、国立競技場については既にもう見直しに着手しておりますので、その見直しにのっとって建てかえをしてまいりたいと思います。

青木委員 この見直しについては、仮設ですとか既存施設の活用、あるいは環境に配慮をした見直しなど、私自身もこの計画の見直しには賛成の立場でございますが、やはり立候補ファイルの重みを理解しながら、関係機関、団体への説明も必要でしょうし、また、拙速な協議の中で意思決定がなされることのないよう、よりオープンな形で進められることをお願いしておきたいというふうに思います。

 そして、あわせて、地元の建設業界の方から御意見をお伺いしたのですが、今の建設業を取り巻く環境は、消費税アップもありながら大変厳しく、仕事はあっても薄利でもうからない、資材や関連機器の納品に時間がかかる、人手不足の解決策が見つからないなどという現況をお聞きいたしました。

 東日本大震災の復興と相まって、今後も公共工事の需給のアンバランスは厳しさを増して、今全国的にその影響が及んでおります。特に、地元の中小零細企業にも配慮をした公共工事の受注システムを早期に確立しなければ、末端の作業を請け負う方々がますます疲弊するというふうに思われるのでございますけれども、この施設整備のあり方の基本的な考え方について、下村大臣の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

下村国務大臣 先日も、国立競技場の取り壊し工事につきまして、事業主体である日本スポーツ振興センターが先般行った入札において、契約の相手方を選定するには至らなかった、入札不調であったというふうに報告を受けております。

 これは、今御指摘のように、建築関係分野の資材それから労務コストが非常に高騰しているということであります。また、東京都が見直しをすることになった理由というのも同様の理由で、予想よりも相当、トータル的に言うとコストもかかる、それだけではなく、もちろん環境問題とか地盤の問題等、トータル的な中からもう一度見直すべきだということであります。

 受注、発注については、これは文部科学省で決めるということではありませんが、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックの関連施設が、日本は余裕を持って、二〇一九年には例えば国立競技場ではラグビーのワールドカップもあるわけでありますし、また、選手の、アスリートの、パラリンピアン、オリンピアンの訓練、練習等を考えると、一年以上前から整備し完成しているということが重要でありますから、その前提の中で、より発注や受注についてスムーズな方式でいくよう、関係機関にも働きかけをしてまいりたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。

 建築にかかわる人手不足が大変心配されますので、地元中小零細企業にも配慮したシステムについてもまたぜひお考えをいただきたいというふうに思っております。

 東京オリンピック・パラリンピックが、ブラジルのワールドカップで報道されたような施設工事のおくれがないよう万全の体制で臨まれることを願いまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 まず最初に、東京女子医大病院の問題について伺いたいと思います。

 東京女子医大病院で、使用禁止の条件に反して、小児患者に麻酔薬プロポフォールを投与していた疑いが持たれている案件について、この問題では、ことし二月に二歳の男児がプロポフォールの大量投与後に亡くなられた、既に警視庁が捜査を始めているというようなことも伺っております。

 これとは別に、二〇〇九年から昨年末まで、プロポフォールを投与された六十三人の子供さんのうち十二人が三年以内に死亡していることが、東京女子医大の理事長の会見で明らかになりました。こちらも厚労省あるいは東京都が立入検査をしておりますから、この事案の事実関係や違法性などについてはこの場では聞くつもりはございません。お聞きしたいのは、理事長が六月の十二日に記者会見をした数時間後に、学長らの教授グループが理事長ら経営者の姿勢を厳しく批判し、経営側約三十人の総退陣を要求している点です。

 学長らは、二月の二歳児の死亡事故後に、理事長の方に記者会見を行うようにというふうに求めていたようですけれども、新聞報道等を見ますと、再三の要望にもかかわらず、見解の相違ということで記者会見を開いてこなかったというようなことも報じられております。学長ら教授グループは、こうした経営側の隠蔽体質というものも厳しく批判しているところであります。

 経営側と学長ら教授グループが対立していると思われるこの現状について、まず、文科省としてどのような認識をお持ちなのでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 本年二月に、東京女子医科大学病院におきまして、禁忌薬剤の投与により男児が死亡したという医療事故があり、また、その後の大学の調査において、男児のほかに、過去五年で六十三人の子供に同じ薬剤が投与され、因果関係は不明としておりますが、そのうち十二人が死亡しているという事実が判明をいたしました。

 この医療事故への対応等をめぐりまして、同大学の学長が全ての役員等に対し退陣要求を行っているという事態については、学校法人の理事長から説明を受けているところでございます。

 また、理事長は、六月十二日に記者会見を開き、医療事故について説明を行い、今後、十二人が死亡した件について外部の専門家を加えた調査チームで因果関係を調べるとしております。

 今回の医療事故等への対応をめぐりまして、理事会と学長側とが対立の状況にあるとのことでございますが、文部科学省といたしましては、まずは医療事故への対応を第一として、しっかり対応していただきたいという旨の指導を行っているところでございます。

吉川(元)委員 理事長らのこの間の、これは学長からの発言ではありますけれども、言動を見ておりますと、事故の隠蔽を行い、また責任を感じていないようにも感じられます。そうなると、被害に遭われた方に対して本当に申しわけない思いがいたします。

 先般、学長らのリーダーシップを強め、大学経営のガバナンス強化を図るとした学校教育法並びに国立大学法人法の改正案、この場でも審議をし、今参議院の方で審議をされているというふうに思います。

 今回の東京女子医大の案件、事実関係が現段階で調査中ということでありますので、はっきりしたことは言えません。しかし、麻酔投与によって二〇〇九年から十二人もの子供さんが亡くなられているということにもかかわらず、また、因果関係があり死亡事故が起こったにもかかわらず長い期間放置をされてきたというのは、これは明確な事実です。

 しかも、理事長ら経営側が学長ら教授グループの進言を受け入れてこなかった経緯も問題なしとはできません。トップのリーダーシップを強めることは、このような弊害を生み出すことにもつながります。これに対する一番のチェック機能というのは、やはり学内の教職員なのではないでしょうか。この点、教授会の権限を抑制するような法改正、やはり私は問題があると言わざるを得ません。

 さて、この通常国会では、私立学校法の改正も行われました。私立学校法人に対し必要な措置命令などを行う規定も整備されておりますが、理事長や理事会内部で起きた不祥事や問題にどのように対処していくのか、さらに検討が必要になってくるだろうと思います。

 とりあえず今回の事案に関して文科省として何らかの対応を行う考えがあるのかどうか、お聞かせをください。

下村国務大臣 まず、今回の事案は、大学ガバナンス改革とは全く別次元の話であるということを申し上げたいと思います。

 この東京女子医科大学への法的な措置についてのお尋ねでありますが、現段階では、法令に基づく対応が必要か否かを問うていく段階ではなくて、まずは医療事故への対応を第一として、しっかり対応していただきたいと考えております。この点について、文科省としても引き続き学校法人に対し指導を行ってまいります。

 一般論として、学校法人の運営について、私立学校法に基づく措置命令等は、理事会において必要な意思決定ができず、教育研究活動への支障や学校法人の財産に重大な損害が生じている場合など、学校法人の運営に重大な問題が生じている場合に講ずることができるということでありまして、現段階において、理事会が機能しておりますから、措置命令等を行い得るような事態に立ち入っているとは考えておりません。

 まずは、そのようなことよりは、東京女子医科大学においては、医療事故への対応を第一として、しっかり、患者さん、それから今までの患者さん、関係者の方々に対する説明責任を含めた医療事故の解明を第一として対応していただきたいと思います。

吉川(元)委員 私も、今回の医療事故をきちんと検証し、そして説明責任を果たしていただいた上で、こうしたことが二度と起こらないようにしっかりとやっていただかなければいけないというふうに思いますし、また、文科省の方としても、そういう立場でしっかりとチェックをしていただければというふうにも思います。

 ただ、やはり私自身は、今回の理事長と学長の対立ということを見たときに、私は、これはまだ調査は出ておりませんけれども、やはり非は理事長側にあるように思えてなりません。そういう点でいいますと、学校教育法並びに国立大学法人法の改正についてやはり疑義があるということを改めてつけ加えさせていただきます。

 次に、就学援助についてお聞きします。

 昨年度から段階的に生活保護の基準額が引き下げられています。文科省は、基準額の引き下げに伴う就学援助への影響について、九日に調査結果を発表いたしました。残念なことに、全国七十一の市区町村で就学援助が縮小される可能性があることが明らかになりました。

 大臣も記者会見で触れられていますが、この調査結果に対する認識をまずお聞かせください。

前川政府参考人 事実関係の御説明を申し上げます。

 生活扶助基準の見直しに伴う他の制度への影響につきましては、政府全体といたしまして、それぞれの制度の趣旨や目的、実態を十分考慮しながら、できる限りその影響が及ばないよう対応することを基本的な考え方としているわけでございます。

 地方単独事業でございます準要保護者に対する就学援助制度への影響につきましては、この政府全体の対応方針に基づきまして、文部科学省として、適切に御判断いただくよう依頼をしてきたところでございます。

 文部科学省が従来実施しております就学援助実施状況調査の内容を一部前倒しいたしまして、千七百六十八の教育委員会等に調査を実施いたしまして、政府の対応方針を踏まえた各自治体における対応等を確認したわけでございますが、その中で、御指摘のとおり、生活扶助基準の見直しに伴う就学援助制度への影響への対応を直接的には行っていないという回答をした自治体が七十一自治体、全体での四・〇%でございますが、あったわけでございまして、一方、こういった自治体におきましても、経済的に困窮している児童生徒に対する取り組みはさまざまやっているわけではございますけれども、これらの自治体の名前も含めまして、調査結果を公表したところでございます。

 文部科学省におきましては、六月の十日付で通知を発出いたしまして、この調査結果を各市町村教育委員会に対しまして情報提供いたしました。これを踏まえまして、引き続き、生活扶助基準見直しに伴いまして他の制度に生じる影響につきまして、政府の対応方針に基づきまして、各自治体において適切に御判断いただけるよう依頼したところでございます。

吉川(元)委員 総理も含めて、政府は、生活保護の支給対象の所得基準引き下げに伴い、影響が出ないように、ないように対応するというふうに発言をされてまいりました。生活保護基準の引き下げ、段階的に引き下げられていくということですけれども、ことし就学援助の水準を据え置いた自治体でも、今後、これは自治体の持ち出しで対応しておりますから、このまま放置をしておけば、来年度以降就学援助の水準が引き下げられる可能性というのは否定できません。

 昨年、子どもの貧困対策推進法が成立をいたしました。第十条では、自治体にとどまらず、国も「就学の援助、学資の援助、学習の支援その他の貧困の状況にある子どもの教育に関する支援のために必要な施策を講ずるものとする。」とされております。

 現在、森担当大臣のもとで子どもの貧困対策に関する大綱策定の作業が進められているものと承知をしておりますが、文科省としても、就学援助の水準が下がることのないよう、国が責任を果たす方向で強く関与すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 これは、おっしゃることは当然のことだと思います。

 御指摘の、平成二十六年一月に施行された子どもの貧困対策の推進に関する法律第十条において、教育の支援として、国及び地方公共団体は就学の援助等のための必要な施策を講ずることとなっているところでありまして、これは議員立法でつくっていただいたわけでありますが、私の方で、あしなが育英会の前副会長という立場で、そこの奨学生たちがこれを中心的に取り組んでいたという経緯もあります。

 そういう意味で、担当は、森内閣府特命担当大臣のもとで、子どもの貧困対策に関する検討会、就学援助制度の充実について大綱に向けた議論がされているところでありますが、文部科学省関係において、この子どもの貧困対策に対する大綱における就学援助等の充実等、あらゆる部分でできるだけしっかり入れ込むことによって、経済的なハンディキャップで進学が厳しいということがないような対応について、文部科学省としてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。

吉川(元)委員 ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 次に、国立大学法人教員について尋ねます。

 国立大学法人の教員の年俸制あるいは有期雇用、昨年十一月に策定された国立大学改革プランにおいて、一万人規模で年俸制、混合給与の導入を図る旨が盛り込まれておりますが、まずこの目的についてお聞かせください。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 昨年十一月に策定いたしました国立大学改革プランにおきましては、人事・給与システムの弾力化を図ることとしておりまして、その一つの方策として、一万人規模で年俸制、混合給与を導入することとしております。

 この年俸制、混合給与の導入は、能力や実績に応じた給与体系を構築することを通じまして、大学の教育研究組織の活性化ですとか、あるいは、海外を含めた優秀な人材の確保などに資するとともに、また、教員の給与に対する納得感や意欲の向上にもつながるものと考えております。

吉川(元)委員 それでは、ちょっと大臣にお聞きしたいんですが、流動性を図る等々と言われておりますが、やはり、それが不安定な雇用や不安定な収入につながっていくようでは、大学における教育研究が安定するとは思えません。

 昨年の研究開発能力強化法と大学教員の任期法を改正した際、研究者等の雇用の安定を図るよう、雇用形態のあり方について検討を行うべしとする附帯決議が付されております。とりあえずこの附帯決議における検討を今どのように進められているのか、お聞きします。

下村国務大臣 文科省においては、改正法の附帯決議を踏まえ、若手研究者等の雇用の安定を図るため、今年度から新たに、科学技術人材育成のコンソーシアムの構築により、複数の大学等でコンソーシアムを形成し、企業等とも連携して、研究者の流動性を高めつつ、安定的な雇用を確保しながらキャリアアップを図る取り組みを行うこととし、近々公募を開始する予定であります。

 さらに、科学技術・学術審議会人材委員会におきまして、複数機関でのコンソーシアムの充実のあり方や、産業界も含めた社会の多様な場における研究者等の活躍促進等について検討しているところであります。

 文科省としては、引き続き、研究者等の育成や雇用の安定を図り、その活躍促進に努めてまいりたいと考えます。

吉川(元)委員 時間が来ましたので、これで終わります。

     ――――◇―――――

小渕委員長 次に、河村建夫君外八名提出、公認心理師法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。山下貴司君。

    ―――――――――――――

 公認心理師法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山下議員 ただいま議題となりました公認心理師法案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 近年、我が国においては、みずから命を絶っている者が年間三万人近く存在しているといった現状があることに加えて、東日本大震災の発生を受けて、被災者に対する心のケアの重要性が改めて認識されたように、心の問題は、国民の生活にかかわる重要な問題となっており、学校、医療機関、福祉機関、司法・矯正機関、警察、自衛隊、その他企業を初めとするさまざまな職場における心理専門職の活用の促進は、喫緊の課題となっております。

 しかしながら、我が国においては、心理専門職の国家資格がなく、国民が安心して心理的な支援を利用できるようにするため、国家資格によって裏づけられた一定の資質を備えた専門職が必要とされてまいりました。

 そこで、本案は、近時における国民が抱える心の健康の問題等をめぐる状況に鑑み、公認心理師の資格を定めることにより、その業務の適正を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与しようとするものであり、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、公認心理師とは、登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析等を行うことを業とする者をいうこととしております。

 第二に、公認心理師として必要な知識及び技能について、主務大臣が一定の受験資格を有する者に対して試験を実施することとしております。なお、主務大臣につきましては、文部科学大臣及び厚生労働大臣としております。

 第三に、公認心理師においては、信用失墜行為を禁止し、及び秘密保持義務を課するとともに、業務を行うに当たっては、医師、教員その他の関係者との連携を保たなければならず、心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治医があるときは、その指示を受けなければならないこととしております。

 第四に、公認心理師でない者は、公認心理師の名称または心理師という文字を用いた名称を使用してはならないこととしております。

 第五に、施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日としております。なお、既存の心理職資格者等に係る受験資格等については、所要の経過措置を設けることとしております。

 以上が、本法律案を提出いたしました理由及び内容の概要でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

小渕委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十二分散会


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