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第5号 平成26年11月5日(水曜日)

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平成二十六年十一月五日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 西川 京子君

   理事 櫻田 義孝君 理事 冨岡  勉君

   理事 萩生田光一君 理事 福井  照君

   理事 義家 弘介君 理事 中川 正春君

   理事 鈴木  望君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      石原 宏高君    神山 佐市君

      川田  隆君    菅野さちこ君

      木内  均君    工藤 彰三君

      熊田 裕通君    小林 茂樹君

      桜井  宏君    清水 誠一君

      新開 裕司君    鈴木 憲和君

      中川 俊直君    中村 裕之君

      野中  厚君    馳   浩君

      前田 一男君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君   山本ともひろ君

      菊田真紀子君    松本 剛明君

      笠  浩史君    遠藤  敬君

      小熊 慎司君    椎木  保君

      中野 洋昌君    田沼 隆志君

      中山 成彬君    柏倉 祐司君

      三谷 英弘君    赤嶺 政賢君

      宮本 岳志君    青木  愛君

      吉川  元君    山口  壯君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   文部科学副大臣      藤井 基之君

   文部科学大臣政務官   山本ともひろ君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 吉利君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            田中  敏君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           土井 良治君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      多田 明弘君

   参考人

   (東京電力株式会社常務執行役)          木村 公一君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月五日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     前田 一男君

  木原  稔君     中川 俊直君

  比嘉奈津美君     清水 誠一君

  遠藤  敬君     小熊 慎司君

  柏倉 祐司君     三谷 英弘君

  宮本 岳志君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  清水 誠一君     中村 裕之君

  中川 俊直君     川田  隆君

  前田 一男君     池田 佳隆君

  小熊 慎司君     遠藤  敬君

  三谷 英弘君     柏倉 祐司君

  赤嶺 政賢君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  川田  隆君     鈴木 憲和君

  中村 裕之君     比嘉奈津美君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 憲和君     木原  稔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 原子力損害の補完的な補償に関する条約の実施に伴う原子力損害賠償資金の補助等に関する法律案(内閣提出第二七号)

 原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)


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     ――――◇―――――

西川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、原子力損害の補完的な補償に関する条約の実施に伴う原子力損害賠償資金の補助等に関する法律案及び原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として東京電力株式会社常務執行役木村公一君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として、外務省大臣官房審議官中村吉利君、外務省大臣官房審議官下川眞樹太君、文部科学省研究開発局長田中敏君、経済産業省大臣官房審議官土井良治君及び資源エネルギー庁電力・ガス事業部長多田明弘君、以上の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本剛明君。

松本(剛)委員 おはようございます。

 二案についての質疑ということでありますが、まずは、原子力損害の補完的な補償に関する条約について理解をすることが両案の審議に必要なことではないかと思いますので、条約も含めて議論をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 条約そして法案の是非に当たる前に、まず、条約の解釈について、二点ほど確認をさせていただきたいと思います。

 条約の一条の一項の(e)に施設国という記載があって、四条の一項の(c)にも施設国という記載があります。英語で見ると、一条の方は引用符がつけられて、定冠詞のない施設国、四条の方はthe施設国ということになっていますが、この両者の施設国、内容からすれば同じ施設国ではないと思いますが、この解釈を確認させてください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今、松本委員から御指摘のございましたCSC条約第一条でございますが、これは定義について示したものでございまして、施設国につきましては、「原子力施設が自国の領域内に所在する締約国」などと規定をしております。

 一方で、御指摘のございましたCSC条約第四条、こちらは拠出金の計算について記しているものでございます。そこにございます第一項(c)でございますけれども、施設国につきましては、文脈によりまして、この施設国の中でも、原子力事故を起こした施設国、すなわち、原子力事故を起こした原子力施設が自国の領域内に所在する締約国といったものを示していると解されております。

 この点につきましては、IAEAが編さんをいたしましたCSC条約に関するコンメンタールにもその旨の記述がございまして、関係国間でも一定の認識が共有されているものと考えております。

 以上でございます。

松本(剛)委員 おっしゃるとおり、途中からというか、一定の部分では、施設国というのは事故を起こした施設国、それ以外の部分では施設国全体というふうに解さざるを得ない。

 我が国の法律を皆さんがおつくりになるときは、定義を決めたら、かなり厳密に定義を使っていると思うんですが、先ほどもあえて申し上げたように、定冠詞のtheがついていたりとかいうこともあれば、日本語訳をつくられるときも、もし可能であれば、「その」とか、何らかの形で区別がつくようにされた方がいいのではないかと御提案だけ申し上げて、少なくとも解釈としては違うということが条約締約国間の共通の理解だというお話でありました。

 二つ目、お聞きをしたいと思います。

 条約の十四条で準拠法の定めがあると思います。この条約によれば、事故が起こると、事故が起こった国の裁判の管轄になる、その裁判の管轄する国の法律でいわば裁判が行われる、こう書いてあるんですが、我が国の法律に、法の適用に関する通則法という法律があります。この法律によると、不法行為が起こった場合は、損害が発生をした場所の地の法による、こう書いてあるわけであります。

 そうすると、我が国で事故が起こって、外国、我が国以外の国で損害が発生をした場合、我が国の法律によると、我が国の裁判所で、しかしその損害の起こった場所の法律で裁判が行われるというふうに、この通則法の十七条を解釈すればそういう理解になりますが、このあたりはどういうふうに整理されているんでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 CSC条約につきましては、締約国における原子力損害の賠償ですとか補償の請求の訴えにつきましては、原則として、権限のある裁判所が属する国の法の抵触に関する規則、一般に抵触法と言ってございますが、これによりまして準拠法を特定することを定めております。

 我が国が裁判管轄権を有する場合には、委員御指摘のとおり、法の適用に関する通則法によって準拠法が決定をされるというような形になってまいります。

 このCSCの考え方に従いまして、具体的にどの国の法律が準拠法になるかにつきましては、個々の訴訟において個別具体的な事情を踏まえて裁判所が判断するということになってくるかと考えております。

 その上で、あえて申し上げますと、CSC条約は、それぞれの締約国に対し、例えば無過失責任の確保などを初めといたしまして法律上の立法義務を課しているということなどに鑑みますれば、この条約につきましては、条約上の原子力損害について、条約の趣旨を踏まえた法令の適用を想定しているというものだと思います。

 具体的に申し上げますと、我が国におきましては、被害者は、原子力損害賠償法のもとで事業者の過失を立証することなく、法律で定めます賠償措置など救済が得られるということになっております。

 このほか、被害が発生地国における事情も考慮した上で、我が国で原子力事故が発生をしまして他国に越境した損害が発生をした場合に、準拠法は当該他国の法、先生今御指摘のございました通則法の十七条ではなくて、通則法の二十条にございます、より密接な関係がある地の法、こちらの方が適用、すなわち、我が国の原子力損害賠償法を適用することも条約の趣旨に適合するということで、やはり排除されない場合もあるのではないかというように考えているところでございます。

松本(剛)委員 今政府から御答弁があったことを整理しますと、通則法の十七条の例外規定として二十条があって、これによって日本の国の法律を適用する形で裁かれるというのが条約の趣旨ではないか、こういうお話でありましたが、御答弁でも、断定的な表現を若干緩めた形でそうなると御答弁をされたように、場合によっては、裁判でここは争う余地が出てくる可能性がないわけではないと思います。

 このCSCでは、今おっしゃったように、趣旨からすれば、日本の裁判管轄で、日本の法律で裁くというのが基本的な趣旨だとすると、この法の適用に関する通則法についても、この条約に関する適用に関してはきちっと整理して、今回の立法を行うときには何らかの整理をして立法措置を行うべきではなかったかという考え方もあろうかと思いますが、この点の検討をされたのでしょうか。もし可能であれば御答弁ください。

中村政府参考人 失礼いたしました。

 条約上、通則法という考え方がございましたので、我が国においてどのようなものが適用されるのかということについての検討は行いましたが、その検討を行った結果として今のような考え方に至っているということではございます。

松本(剛)委員 十七条、二十条、あわせて解釈をする形で整理をされておられるという御説明でありましたけれども、この条約の趣旨からすれば、立法すべきところはきちっと立法して整理をしておくべきではなかったかという点を、指摘だけさせておいていただきたいと思います。

 それでは、条約及びこの法案にとって、この法案が行われることによって、いわば関係する方々にとって、プラスとマイナスというと変ですが、それぞれ、どういう形になるのかということを整理していきたいと思います。

 まず、原子力の事業者にとって一定のメリットがあるかのような理解をされている方もいらっしゃらないわけではないようにもお聞きをしますけれども、どの程度のものであるのかということをきちっと整理しておきたいと思います。

 今回の法案、条約が締結されて、法案が成立するということになると、原子力事業者は、いわば他国の事故に拠出するための拠出金に充てるものとして、一般負担金ということで、毎年一定の負担をすることになると理解しています。その分は、言うなれば原子力事業者も負担をするということになる、こういう理解でよろしいでしょうか。

田中政府参考人 先生ただいま御指摘がございました制度でございます。

 条約に定めます拠出金制度に基づきまして、他の締約国の原子力事業者が事故を起こした場合、我が国は約四十億円の拠出金を拠出するということになります。

 この当該拠出金に要する費用に充てるための一般負担金というふうに申しておりますけれども、その金額については、詳細は政令で定めることとしておりますけれども、当該拠出金に要する費用に充てるため、我が国では、現在三十社ある原子力事業者の合計額として、毎年約一億円強の一般負担金を徴収するということを見込んでございます。

 この一般負担金は、条約の締結に伴い生じるものでありますから、原子力事業者にとりましては、新たな負担ということになろうというふうに考えてございます。

松本(剛)委員 新たな負担が利用者の負担につながるかどうかは、前回の委員会で、たしか青山委員が御議論をされていたと思いますので、割愛をしたいと思います。

 いわば、原子力事業者が、あってはならないことですけれども、万一、当該事業者のところで事故が発生をした場合、この場合は、他国から受け取る拠出金、それから、当該国がいわば事業者に対して渡すお金、その両方があると思います。

 御説明では、他国の分は受け取って、自国の、いわば国が事業者に対してというか、賠償に充てるために事業者に対して渡すお金については、特別負担金ということで事業者から取るということでお聞きをしておりますが、そうすると、他国から来る分だけは、事業者にとっては、メリットと言うと語弊がありますけれども、その分だけはいわば負担が軽減される、こういう理解でよろしいんでしょうか。

田中政府参考人 我が国の原子力事業者が万々が一国内で事故を起こした場合、当該原子力事業者が原子力損害について賠償責任を全て負うということになってございます。

 その上で、条約の定める拠出金制度に基づいて我が国に締約国から集まる拠出金については、当該原子力事業者が賠償に充てるための費用の一部として国が当該原子力事業者に補助をするということになります。

 具体的には、我が国が負担をする拠出金、これは約七十億円というふうに考えてございますけれども、これに加えまして、先生御指摘のように締約国からの拠出金約七十億円ということで、合計百四十億円が補助金として当該原子力事業者に交付するということとなります。

 このうち、我が国が負担をするという拠出金分約七十億円につきましては、原因者負担あるいは受益者負担の考え方から、特別負担金として、当該事故を起こした原子力事業者から徴収するということとしてございます。

 このため、事故を起こした我が国の原子力事業者にとって、賠償に充てるための費用については、他の締約国からの拠出分約七十億円ということの支援が得られることとなり、その分の費用負担ということは軽減されることになろうというふうに考えてございます。

松本(剛)委員 負担の話ですので、ちょっと順番を変えてお聞きをいたします。

 国民の、国にとってというんでしょうか、いわば費用でいけば国民の税金ということになると思いますが、これは他国で事故が起こった場合は、我が国は定められた拠出金を予算を立てて支出をしなければいけない、その分は、我が国にとって、言いかえれば国民の税金にとっては負担になる、こういう理解でよろしいんでしょうか。

田中政府参考人 CSCが定める拠出金制度に基づきまして、先生御指摘のように、他の締約国の原子力事業者が事故を起こした場合、我が国が負担する拠出金については、締約国からの要請に応じまして国が拠出をするということになります。

 我が国が負担をいたします拠出金に要する費用に充てるため、我が国としては、受益者負担及び原因者負担の観点から、全ての原子力事業者に毎年、一般負担金を納付するということを義務づけてございます。

 これにより、一時的には国庫から拠出金を支出することがあったとしても、最終的には必要額は原子力事業者が納付する一般負担金によって賄われるというふうに考えてございます。

松本(剛)委員 最終的には一般負担金で賄われるかどうかということになると、事故発生の確率とか事故の大きさというのをどう見るかということになるので、一概に賄われると言い切っていいかどうかということは新たな議論を生むと思うので、条約に入る以上は我が国として一定の負担をする、それ以上に、後ほど議論しますけれども、賠償ネットワーク構築などの責務があるということではないかというふうに私は思います。

 これは念のため確認をしますけれども、万一のことではありますけれども、我が国で事故が起こった場合は、我が国全体としては他国からの拠出金の支援を受けることができるという意味ではメリットがある、プラスがある、こういう理解でよろしいんでしょうか。

田中政府参考人 全体としてはそういう理解でよろしいかなというふうに考えてございます。

松本(剛)委員 それでは、原子力に関連する産業の事業者、いわゆる原子力機器のメーカーであるとかプラントであるとか、そういった方々にとってこれはメリットがあるのではないかといったような指摘も見られますけれども、この点について確認をしてまいりたいと思います。

 いわばメーカーとかプラント事業者等にとっては、原子力事業者に責任が集中する、こういう仕組みになるということは、関連産業の事業者というふうに私は今申し上げていますけれども、関連産業の事業者にとっては、例えば輸出をする際には事業者側に責任が集中するんだからリスクが少なくなる、そういう理解は、これで正しいのでしょうか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論としてでございますけれども、原子力発電事業者に責任集中、これが制度として定められますことは、メーカーにとりましては、賠償責任を負わなくなるということで、リスクの軽減につながり得るものではございます。

 ただし、この分野におきましては、世界の多くの国におきまして、原子力発電事業者に責任集中をするということが原則となっておりまして、今回のCSCの責任集中の規定によって明文化することでリスクの明確化にはなる、こういうふうに考えますものの、メーカーのリスクがさらに軽減されるものではないかと思っております。

 むしろ、今回明文化されます原子力発電事業者への責任集中といいますものは、被害者が賠償請求をする際の請求相手、これを明確化するということで、被害者の迅速な救済を図る上で大変重要な仕組みになる、このように認識をしております。

松本(剛)委員 原子力事業者への責任集中は対被害者の点で極めて重要な問題であるということで、おっしゃったように、責任集中はいわば世界の流れという意味からすると、今回、このCSCによって急に何かメーカーが新たなメリットを一遍にたくさん受けるわけではないという御説明だったというふうに理解をしました。

 メーカー等の原子力関連産業事業者、これについては、原子力事業者への責任集中という言葉が、逆に、関連する産業の事業者、メーカーやプラントの関係者は全くこれで責任がなくなるというような一部の理解が出ているように思いますが、実際には、原子力事業者との関係とかで、やはりきちっと責任は負わざるを得ないのではないかというふうに考えますが、国際的にまたこれまでの例とかがもし把握されている部分があれば、どうなっているでしょうか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、全てのといいますか、具体的な事例をつまびらかに掌握しているわけではございませんけれども、メーカーと原子力発電事業者との間では、当然のことながら、契約というものが結ばれることになるかと思います。したがいまして、原子力発電事業者が、被害者に対しまして賠償が支払われた後の、求償関係と申しておりますが、こうした求償関係につきましては、原則として、原子力発電事業者とメーカーとの間で結ばれますそうした契約の中で、個別に特約という形で規定されているものと承知をしております。

 したがいまして、一般論でお答えすること、申しわけございませんけれども、原子力発電事業者がその特約に基づきましてメーカーに求償をいたしまして、その結果メーカーが負担をする、こういったことは当然あり得ると考えております。

松本(剛)委員 現段階では一般論でしか御答弁いただけないのかもしれませんけれども、報道をずっと見ていると、一部の理解では、今おっしゃったように、事業者がメーカーに求償するというのは特約。特約というのは、特別にいわば契約をするというだけであって、そのことが特殊なことかどうかということとは違う話だと思いますが、一部では、その特約という言葉で、大変例外的にはそういうこともあるというような理解をされているような報道も見受けられて、その結果、この責任集中が行われるとメーカーは何にも責任を負わなくなるのではないか、非常にメーカーに有利な話ではないかと。

 私は、それは一般のビジネスの社会の常識からいくと、かなりむしろ異例なことであって、一定程度の責任を負わされる形でビジネスというのはお互いに行っていくのがやはり通常の形ではないかというふうに思います。

 その意味では、ですから、今おっしゃったように、制度として、特約という形で通常のビジネスにかなった、いわば求償権の特約を認めているということは今御理解をいただきましたが、全体、一般のビジネスとしてどうなっているかということについて、ある程度、仄聞をされている範囲でもおっしゃっていただくことというのはできませんか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 十分なお答えにならないかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、この分野におきまして、世界の流れといたしましては、原子力発電事業者に責任を集中する、こういう原則が普及している、こういう状況でございます。

 先ほども申し上げましたけれども、当然のことながら、原子力発電事業者としても、そのルールの中で、自分のところに責任が集中するという大きな原則の中で実際にプロジェクトをやっていく、原子力発電を行っていく、その中でメーカーから原子炉を納めてもらう、そしてそれをメンテナンスしていく、そうした事業の中でどうした責任をメーカーの方にも分担していただくのか、こういったことについては、あらかじめ、当然、契約の中で明らかにしていくことだと思っております。

 ただ、その中で、先生が御指摘の、大きな中で特約が定められる場合が多いのか少ないのか、こういったことにつきましては、大変申しわけございませんけれども、私どもとしては、そこまでは掌握していないというのが現状でございます。

松本(剛)委員 承知をしていないということであれば、これ以上お聞きのしようがありませんが、やはり、この条約、そして関係する法律は、大臣も先日の委員会で答弁でおっしゃったように、国際的な賠償ネットワークの構築というのが、そして、それにかかわっていく責務が我が国にはあるということが一番のポイントだというふうに私は思います。

 結果として、これがいわば輸出産業の人にメリットがあるというような報道がかなりなされていますが、それがどのぐらい大きいのか、そうでないのかということをやはり全体として見ていかないと、ひょっとすると、この条約、この関連法案に対する間違った批判とか間違った理解とかいうことを受けることにもなりかねないので、そういう意味では、関連する省庁がきちっと、把握できる限りは、個別の会社の契約を言えと私は申し上げているわけではないので、全体としてどういう傾向にあるかといったようなことはやはりぜひ把握をして、説明ができるようにしていただくことが、誤解を解いて正しい理解を広げるためにも必要なことではないかということで、今後もまだこのことについては議論される可能性はあるので、ぜひそのことはお願いをしておきたいと思います。

 外務省の方にもお聞きをしたいと思います。

 先ほど、原子力事業者への責任集中というのが大きな流れだということでありましたけれども、我が国が原子力協定を締結している国、これは賠償条約に加入をどのぐらいしているんでしょうか。しているということは、これはCSCだけではなくて、パリ、ウィーンも含めてで結構ですが、していれば、責任集中は条約に基づいてされているということになろうかというふうに思います。加えて、賠償条約に入っていない国においては責任集中の制度があるのかどうか、把握をされていれば御答弁をいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国が二国間の原子力協定を締結している国の中で、いずれの条約も締約をしていないという、原発保有国ということに限って申し上げますと、中国と韓国というところが挙げられるというように考えております。

 韓国につきましては、責任集中の制度があるというように承知をしておりますが、中国につきましては、明確に今のところ承知をしていないところでございます。

松本(剛)委員 中国を除けば、今我が国がいわば原子力機材を授受することができる原子力協定締結国は責任集中の制度がある、こういうお話であったかというふうに思います。その意味でも、先ほど経産省からも御説明がありましたが、新たなCSC条約で、いわば今の原子力関連機材を取り扱っている業者の環境が急に変わるわけではない、こういう理解をさせていただきたいと思います。

 なお、この条約の締結によって、東京電力福島第一原子力発電所事故の廃炉そして汚染水対策などを促進するに当たって、外国の企業の協力を求めるのにはメリットがある、こういう御説明がありましたけれども、これは、今申し上げたような責任集中という観点でいけば、既に我が国がやりとりをしている多くの国等は制度が整っていると思いますが、どういった形で新たなメリットがあるとお考えになっているんでしょうか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 福島第一原発の廃炉・汚染水対策につきましては、前例のない困難な作業でございまして、放射性物質の取り扱いなどに関しまして豊富な知見、経験を有する海外企業等の参画を期待しているところでございます。

 一方、例えば、ポテンシャルを持っておりますアメリカの企業の中には、このCSCが未発効の段階で仮にこの廃炉の作業に参画をして、その後、仮に福島で今後トラブルが生ずるといった場合に、例えば今の責任集中のことで申し上げますと、世界の一般的なルールはそのようになっているわけでありますが、我が国においてみずからが損害賠償の請求を受けるおそれがあるのではないか、さらには、これは裁判管轄権の問題でございますけれども、日本ではなくアメリカで訴訟を起こされるおそれがあり得るのでないか、こういった点を懸念しておりまして、廃炉・汚染水対策への参画をちゅうちょする、こういった向きがあるというふうに承知をしております。

 これらにつきまして、このCSCを締結すれば、原子力事業者に損害賠償の責任は集中いたしますし、また、事故国、つまり日本に裁判権が集中するということで、アメリカの企業がアメリカで訴訟を受けるといった懸念は完全に払拭される、こういうことになろうかと思います。

 実際にアメリカ側からはこれらの点を指摘されているところでございまして、このCSCの締結というものは、アメリカの企業などによります福島での廃炉・汚染水対策への参画について促進をするといった効果がある、このように承知をいたしております。

松本(剛)委員 このCSCの条約を締結することで、廃炉・汚染水に協力をする中で万一事故が起こった場合の裁判管轄権が日本に集中をするということで米国で裁判を起こされる懸念が払拭される、こういう御説明であったかというふうに思いますが、このCSCの条約は遡及はしないですよね。

 そうしますと、その上で、この福島第一原子力発電所における事故の廃炉・汚染水対策で、起こるべきことではありませんけれども、何らかの事故が発生をした場合に、いわば条約にとっての新たな事故なのか、それとも、福島のもともと事故があったから起こってきたことなので一連のものなのか、これは解釈の余地は残るんじゃないですか。

中村政府参考人 条約の解釈に係ることでございますので、私の方から御答弁申し上げます。

 委員御指摘のとおり、福島の事故に関しましては、基本的に遡及をされないということでございますが、今後新たな事故と認識されるものが起きました場合には、仮に日本がその時点で締約国になっていた場合にはCSC条約の適用がございます。一連のものであると認識されます場合には遡及適用されないという効果が発生をしてくるということで、適用は引き継ぎされないということでございます。

松本(剛)委員 だから、新たと認識されるかどうかということが、争う余地が出てくるのではないかということを申し上げたわけであります。

 その意味では、まず廃炉・汚染水対策で、我が国だけではなくて世界じゅうの知見を活用して、とにかくこれを早く進める必要がある、そのことについては私もぜひそうすべきだと思います。そのために、一定の技術、知見を持つ企業の協力を得る環境を整える必要があるという意味では、私自身も、そのことにメリットがあることは行うべきだというふうに思います。

 その上で、今、払拭をされると言ったけれども、特に米国の場合は、損害賠償では巨額の賠償額が請求をされる可能性がある、もしくは判決がおりる可能性があるということで、米国企業は特にこの点を気にするのかもしれませんが、私が見る限りでは、抗弁が一つふえるということであって、完全に払拭されるかどうかというのは、若干まだ議論の余地が残るのではないかというふうに思います。

 もうこれは今の外務省、経産省の御答弁をあわせればそういう解釈になろうかと思いますが、それでも企業側の方が、企業側も米国の企業の場合は法務関係者もついているでしょうから、今申し上げたことはよくわかった上で、それでも抗弁がふえる方がメリットがあるということで出てこようとするのであれば、その点は一定のプラスというふうに考えられるのかもしれません。

 それでは、もう一つ。今度は、損害賠償を請求する人にとって、この条約を結んで、この法律が施行されることによってメリットがあるのか、デメリットがあるのかということであります。

 まず、これによって、今進行中の事故の賠償はもちろんのこと、我が国の制度としての賠償の制度というのは基本的に変わらない、こういう理解でよろしいんでしょうか。

田中政府参考人 基本的に、我が国の原子力損害賠償制度は、事業者の無過失責任、責任集中等々を定めてございます。

 CSCは、原子力事業者の無過失責任、責任集中の原則をとるということと同時に、原子力事業者が負います原子力損害の賠償責任の額については、原則として三億SDR、日本円にすると約四百七十億円以上が確保されているということであれば、無限責任であるのか有限責任であるのかということも問わないということになってございます。

 したがいまして、CSCは、我が国の原子力損害賠償法体系と基本的な仕組みにおいてそごはないというふうに考えてございますし、我が国として、本条約の締結に当たりまして、原賠法の、例えば無過失責任、無限責任あるいは責任集中といった原則を変更するということは考えてございません。

松本(剛)委員 法律ですから今後のことだけに絞ってお話をしますが、今後も起こってはならないことですけれども、万一、原子力の損害賠償が必要になったケースでも、少なくとも、この条約を今回締結して、この法律を成立させたことによって、今後の新たな賠償を請求する者がこれまでと何か変わるということでは基本的にはない、こういう説明をいただいたというふうに理解をいたしたいと思います。

 さて、そこで、他国での事故の場合でありますけれども、裁判管轄の話が先ほどありました。我が国の損害賠償を請求する側の方にとっては、逆に、裁判管轄が整理されることによって、我が国で訴訟を起こす、これは今までは選択肢として残っていたものが、この選択肢はなくなる、こういう理解でよろしいのでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 締約国間におきましては、条約上の基本的な考え方といたしまして、事故発生国で裁判管轄の集中が行われるということでよろしいかと存じております。

松本(剛)委員 他国での事故に関して賠償を請求する我が国の国民にとっては、管轄が整理をされる前であれば、当該の国で裁判を起こすか日本で起こすかという選択肢があったのが、向こうの国で起こすしかなくなる、こういうことで、一つ選択肢を失うということになるのは事実だと思いますが、では、この失う選択肢というのがどのぐらいのデメリットだというふうに判断をされたかということを御答弁いただけますでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 仮に外国での原子力事故によりまして我が国への越境損害が生じた場合は、我が国で訴訟を提起するということは可能でございますが、この場合、我が国の原子力損害賠償法は外国の原子力事業者には適用がございませんので、民法に基づいた不法行為責任を追及するということになるのではないかと考えております。

 この場合は、原子力損害賠償法に基づきます無過失責任が適用されませんので、被害者は、外国の原子力事業者の過失を主張して立証しなければならないということになってまいります。

 一方で、原子力は、高度に科学的、専門的な分野でありますことや、証拠は外国の事業者側に偏っているということから、原告が事業者の過失を特定して、それを立証するのは極めて困難ではないかというように考えておりまして、訴訟の長期化ですとか敗訴のリスクを招きかねないというように考えております。

 さらに、仮に国内の裁判で勝訴の判決を得たといたしましても、この判決に基づいて、外国にある被告の事業者に対して当然にそれが執行できるというわけではないと承知をしております。

 こういった面でも、CSCは、裁判管轄権を集中させた上で、無過失責任の原則のもとで内外公平な賠償を確保する仕組みを設けることとしておりますので、被害者救済の観点からも合理的であるというように考えているところでございます。

松本(剛)委員 そうすると、損害賠償請求をする者にとっては、我が国での場合は制度に変更はない。他国の場合は、従来であれば我が国で訴訟を起こすことができたということが、この条約締結によって訴訟を起こすことはできなくなるが、実際には、そういった場合に我が国で訴訟を起こしたとしても、失われるその選択肢であるところの我が国での訴訟提起によって勝訴をし、かつ執行するというのは相当高いハードルである、こういう認識だというふうに理解をさせていただきました。

 やはりマルチの条約でありますが、今お話をお聞きすると、責任集中がそもそも世界の流れであるという大前提からいくと、一定のメリットがメーカーやプラントの関係者にはないわけではないけれども、極端にこれで何か状況が大きく変わるというわけではないというふうに私は理解をいたしました。また、賠償を請求する方にとっても、ある程度実効的な部分では権利はしっかり確保されているというふうにも理解をいたしました。

 我が国の拠出金四十億、それから、外国から受け取る負担金七十億を大きいと見るか小さいと見るかは議論のあるところだろうと思いますが、このあたりは、一応、差し引きのプラスマイナスはあるということを理解させていただきました。

 その上で、途中でも申し上げましたが、この条約、そして法制定の最大の課題は、やはり国際的な賠償ネットワークを構築するということにあり、事故当事国としての、これは我が国としての責務であるというのが下村大臣の先日の御答弁の中での表現でもあったかと思います。私も同様に考えているところでありますが、今の国際的な状況について教えていただきたいと思います。

 原子炉、原子力事業所を保有している国で、未加入の国というのはどこがあるかというのを把握されているんでしょうか。賠償条約に未加入ですね、三系統のどれかで結構ですけれども。

 そして、そのうち、我が国の近隣の中韓はまだまだ入っていないというふうに理解をしています。この点については後ほどお聞きをします。

 まず、未加入の状況だけ教えてください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、原発を保有している国は三十カ国になります。このうち、いずれの三系統の原子力賠償条約も締結をしていない国は、我が国、中国、韓国を含めまして八カ国ということになってございます。

 それと、あと一点、先ほど、中国に関しましては、事業者の責任集中は承知していないと申し上げましたが、中国においても責任集中の原則は保有しておりますので、改めて申し上げさせていただきます。

 以上でございます。

松本(剛)委員 八カ国ということでしたけれども、たしかパキスタンとかイランとかが入ってくるのではないかと思います。それぞれの国に対する印象はそれぞれお持ちだと思いますから、個別にはコメントをいたしませんけれども、八カ国明示をしていただければ、やはり残された国の中で、我が国は先頭になってこの賠償ネットワークに入るべきだという認識を国民の皆さんと共有していただけるのではないかというふうに思います。

 それでは、中山政務官にお見えをいただいております。

 今も話がありました、中韓にやはり入ってもらわなきゃいけないという議論は、これまでもこの委員会でもありました。私はそう簡単なことではないと思いますが、今後の考え方。

 それから、我が国が原子力協定を結ぶときに、これまで追加議定書の締結というのを強く求めてきたことは私も承知をしていますが、賠償条約にもし入っていない国と原子力協定の締結の交渉をするとすれば、賠償条約への加入もすべきであるというのを求めるのが我が国の原子力協定締結交渉の姿勢としてあるべき姿ではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。

中山副大臣 七年前に政務官を無事終了させていただいて、副大臣を拝命しております中山でございます。また先生、元外務大臣として、御指導よろしくお願い申し上げます。

 御質問ありがとうございます。

 まずは、中国や韓国のCSCへの加入の見通しについて予断することは差し控えたいと思いますけれども、両国も加盟する国際原子力機関、いわゆるIAEAの原子力安全行動計画や原子力安全決議等におきまして国際的な原子力損害賠償制度の構築の重要性がうたわれており、このことは中韓初め各国が認識しているものと理解をいたしております。

 中国や韓国も、IAEA主催の原子力損害賠償にかかわるワークショップに参加するなど、CSCを含む国際的な原子力損害賠償制度の状況につきまして関心を示しているところと承知いたしております。

 また、我が国としましては、CSCを早期に締結し発効させるとともに、中国や韓国を含む近隣諸国等に働きかけ、アジア地域等における国際的な原子力賠償制度の枠組み構築にしっかりと努めてまいりたいと思います。

 また、今後は原子力損害賠償条約加入も求めていくのかという御質問に対しまして、今、政府、我が国といたしましても、福島第一原子力発電所事故の当事国として、国際的な原子力安全の向上のみでなく、国際的な原子力損害賠償制度の構築に対しても大きな責任を有していると考えております。したがいまして、二国間原子力協定交渉に際しては、相手国の国内原賠制度の整備状況等を勘案しつつ、原子力損害賠償条約に加入していない国に対してはCSCへの加入をしっかりと働きかけてまいりたいと考えております。

 また、我が国としては、CSCを早期に締結し、特に原発保有国や原発導入国を含む近隣諸国等に働きかけを行い、アジア地域等における国際的な原子力損害賠償の枠組み構築に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

 ありがとうございます。

松本(剛)委員 政務官にはあと二点、お願いだけさせていただきたいと思います。(発言する者あり)副大臣。大変失礼をしました。全くの勘違いです。ごめんなさい。先立ってのところから訂正をさせていただきたいと思います。おわびを申し上げます。

 二つお願いというのは、一つは、先日の委員会で冨岡委員もお話ししていましたが、やはり三系統の条約があるというのを、どこかで将来に向けては一本化をする努力というのを我が国が先頭に立ってすべきではないかということが一つお願いです。

 それからもう一つは、中韓のお話がありました。台湾も原子力発電所を持っています。これは、この条約に限らず、国としてどう交渉するかという問題が残っているわけでありまして、この点については、例えばFTAも結んでいる国があるわけですから、ぜひ研究をしていただきたい、そして早期に動けるようにしていただきたいということの二つだけ、お願いをするということでよろしいでしょうか。

 では、ぜひこれは改めてお願いをしたいと思います。政治のリーダーシップが必要な場面ですので、副大臣にぜひお願いをしたいと思います。

 最後に大臣に、原賠法の抜本的見直し、これは先日の委員会で中野委員も、やはり議論をしていくべきだ、こういうお話であったかと思いますし、国会ではそういう共通理解だと思いますが、先日、この抜本的見直しについて、政府、担当の省庁の側からは、現在進行している賠償の皆さんに影響を与えてもいけないしといったような趣旨の御説明もありました。

 少しうがった見方かもしれませんが、こういう説明が来るときは、やらない理由を探しているようにも聞こえなくはないわけで、やはりこういう見直しについては、ぜひ政治のリーダーシップが必要だと思いますので、大臣にリーダーシップを発揮していただいて、今後のための抜本的見直しに取り組んでいただきたいと思いますが、その点を求めて私の質問を終わりたいと思います。

西川委員長 松本剛明君の質疑時間は既に終了しておりますので、簡潔に御答弁を、大臣、お願い申し上げます。

下村国務大臣 簡潔にお答えいたします。

 CSC以外の原子力損害賠償制度の課題については、現在進行中の福島の賠償の実情等を踏まえつつ、中長期的なエネルギー政策も見通し、内閣官房副長官が主宰し、関係副大臣などから成る原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議におきまして検討を進めてまいります。

松本(剛)委員 終わりますが、やはり、大臣がやれと言わないとこういうものは動きませんので、ぜひそのことを期待を申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

西川委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 維新の党の小熊慎司です。

 私、常日ごろは外務委員会に所属しているんですけれども、きょうは差しかえで質問に立たせていただきます。

 冒頭申し上げます。これは外務でも条約そのものがかかっているんですが、外務委員会はきょうお経読みで、来週質疑なんですね。これはやはり、条約と同時か、条約が先に委員会で結論が出てから国内法ということが本来的にはいいんですけれども、これは大臣のあれではないんですが、少し順序が整理をされなかったことが残念だなというふうに私自身は思っていますし、私は、この後引き続いてすぐ外務委員会でも、きょうは一般的事項ですけれども、このCSCについても議論をさせていただくことにもなっていますので、この国内法の整備について、条約の方にも連動しながら議論していきたいなというふうに思っています。

 今ほど、さすが、やはり元外務大臣の質問もなるほどなというものがいっぱいありましたけれども、ざっくり言えば、この条約、この国内法の整備を含めて期待される部分というのは、私も地元は福島県でありますから、廃炉の作業に関して国際的な協力が得やすいようになるという点はよかったなというふうに思っています。

 ただ、ざっくり言うと、これは一方で、中東ヨーロッパとやっているようなパリ条約、ウィーン条約と比べると、例えがいいのかわかりませんが、ハードルが低い、逆に入りやすいというところはあるわけです。ハードルが低いというのは、開発する方、原発事業者の方からするとハードルが低い。

 逆に、いざ何か起きたときに賠償を受ける側からすると、ちょっとパリ条約やウィーン条約と比べると、除斥期間が短かったり賠償の限度額も決まっていて、それ以上はそれぞれの国内法ということですが、今、福島県内でいろいろな原発事故災害のさまざまな予算、ざっくり言うともう五兆円ぐらい使っているわけですよ。そうすると、今回のこの賠償の金額をいろいろ見ると、とてもレベルが違う話で、これで本当に何かあったときに大丈夫なのかというやはり不安が生じているのも事実でありますから、これは、与野党ともに一つ一つ説明をしていかなければいけないというふうに思っています。

 そこで、先ほどの松本委員の質問にもありましたけれども、福島の原発事故に関しては、遡及はしないんですけれども、新たな事故が起きればこれはまたこの対象範囲になるということで、同一の原因による一連の出来事でない場合と言うんですけれども、具体的に、また地震が起きて津波が来て、その廃炉作業中の何か事故が起きて損害が出た場合というのは、これは一連の出来事ではないと見るんですか。ちょっと具体的に確認をしたいんですけれども。

藤井副大臣 お答え申し上げます。

 今先生の御指摘になられました個別のケースがどのような形になるかということを想定することはなかなか難しゅうございまして、その場合どうなるかという答えになりませんが、ただ、先生の御懸念の関係の点から申し上げますと、今回のCSCの関係でいうと、先ほど来からお話がありますように、いわゆる金額の上限が規定されている問題、それが今までの原賠法の国内における問題との差が大き過ぎるという話がございましたが、これは先生御案内のとおりでございますけれども、このCSCは、いわゆる締約国の原賠制度、これが額については三億SDR、約四百七十億円という金額になるわけでございますけれども、その金額以上のものであれば、その国において、おのおのの制度において無限責任制度をとるか有限責任制度をとるかということは、それにかかわりなくこれは締結できる、そういう条文があるわけでございまして、私どもとしましては、現在の原賠法の無限責任制度を維持する、そういう前提のもとにこのCSCに加盟することは、今の制度との矛盾点は存在しないようになる、そういうふうに理解をしているところでございます。

小熊委員 今言っていた、無限責任を維持していく、これは非常に重要なことでありますから、いい答弁だったというふうに思いますけれども、パリ条約とかウィーン条約、ヨーロッパは国境を接していて、損害も多国にわたっていくことがあるからあれだけ厳しいものになっているというふうに思います。

 今回の東電の福島の事故は、国内の被害で科学的にはおさまっているということになっていますけれども、他国で起きたときでも、国境を越え、海を越え損害が起きる場合も深刻な事故の場合は想定されるということであれば、今言ったとおり、条約の中の責任もあるんですけれども、国内法でしっかりやっていく、日本は無限責任だからしっかりやっていくんだということはあるんですが、先ほど松本委員が言っていたとおり、条約にしっかり入るということもありながら、近隣諸国にも飛び越えて損害が出たときにどう日本として対応していくのかというのも、これは想定をしていかなきゃいけないんですね。

 そうするとやはり、額としてこれは非常に低いなという意味では、被害者側よりはメーカー側にとってはこれはいい条約になっているなというのは、これが一般的な印象なんです。だから不安が出ている。

 一方で、先ほど大臣の最後の答弁にもありましたけれども、国内の原発の賠償のぐあいを見ながらこれはやっていかなきゃいけない、また、基本的には日本の国内の原賠法もしっかりもう一回抜本的に見直さないとこれはいけないというふうに思っています。

 そういう中で、先日も、ちょっと県内の町村長会の会議がありまして浪江の町長さんとお会いしましたけれども、私の県議会時代の同期であるんですが、原子力損害賠償紛争解決センター、ADRの和解案を今東電が拒否しています。いろいろな申し入れをしました。我々も福島県内の国会議員として超党派で申し入れもしましたけれども、ほぼゼロ回答です。

 こういう状況でしっかり無限責任を果たしていくと言っても、ここは、だからその信頼がないんですよ。不安になっているんですね。今回のCSCがしっかりしたものですよと言っていても、今起きているこの損害賠償に関して方向性も見出せていないんです。

 ADRのこの和解案について今東電が拒否しているということに関して、まず大臣、見解を求めたいと思います。

下村国務大臣 今般の事故に係る原子力損害賠償については、原子力損害賠償紛争審査会が策定した指針を踏まえ、基本的には東京電力と被災者との直接交渉により賠償が行われますが、直接交渉が難航する場合などでも被災者の方々が簡易かつ迅速に賠償を受けられるよう、原子力損害賠償紛争解決センターを設置して、和解の仲介を実施しているわけであります。

 御指摘の浪江町の住民の方々による申し立て案件につきましては、ADRセンターにおいて和解仲介手続が進められている段階であるため、現段階ではコメントすることは差し控えますが、一般論として言えば、東京電力には、みずからが表明している和解案の尊重の趣旨に鑑み、誠意ある対応をしていただきたいと考えております。

 文科省としては、引き続き、ADRセンターにおける和解仲介手続を初め、公正かつ適正な賠償が迅速に行われるよう、しっかりと取り組んでまいります。

小熊委員 地元の願いとしては、これは政府がつくったADRですよ、そこで和解案を示したわけですよ、いろいろなやりとりの中で。被災者側もこれはある意味譲歩している部分もあっての和解案です。それがもう全くのゼロ回答ですよ、東電は。ここでやはり国が前面に立ってやるというのは、この福島の復興、原発事故災害への対応なんです。

 和解案ができるまではそれは客観的な視点でやっていかなきゃいけないんですけれども、でき上がったものに関してこれは政府がもっと前面に出て、東電、これはのんだらとやれないんですかね。あくまでもやはり、一歩引いた形で様子を見るということになっているんですかね。

 先日、浪江の町長とお話ししたときには、近々最終的な回答が東電から来るみたいだけれども、やはりゼロ回答だ、何の譲歩もない、これ以上どうするんですか、どうしたらいいんだと聞かれました。これは政府がもう少し前に出ていっていいんじゃないですか、東電に対して、和解案を受け入れしてもらえるように。そこはあくまでも客観的な立場を貫くんですか。ここはどうですか、大臣、今後の対応。

下村国務大臣 今、小熊委員がみずからおっしゃったとおり、東電として最終決定しているというふうには承知しておりません。

 和解仲介手続が今進められている段階でありますので、東電に対しては、和解案の尊重の趣旨に鑑みて誠意ある対応をしていただきたいということでありますが、最終的に東電がどう判断されるかというようなことを踏まえて、必要に応じて政府の方でも対応策について考えていきたいと思います。

小熊委員 これは仮定の話には大臣も答えられないでしょうけれども、先ほどお話しさせていただいたとおり、今水面下では、浪江町長は、やはりゼロ回答のようだと聞いているというふうに言っていましたので、和解案を拒否となれば、ADRの存在そのものが、今後どうしていったらいいのかというのは、県民からも被災者からもこれは不信は持たれますし、その存在意義自体が問われてくることになってきますし、原賠法の中で処理できない、いつまでも平行線だという課題を残すということになってきます。

 そうした意味でも、今回のこの条約そして国内法の整備というのは、あくまでもまだステップであって、やはり、国内の原賠法そのものにもまだまだ抜本的に改良の、改正の余地があるということのまさに問題点が浮き彫りになっているというふうに思います。

 そうした意味で、今回の和解案拒否、その最終決定を受けた後の政府対応もしっかり求めたいとは思いますけれども、原賠法の抜本的改正の取り組みについては、大臣どうでしょうか。

下村国務大臣 現在、東京電力による賠償の総額は、先ほど御指摘ありましたが、約四兆四千七十二億円、これは平成二十六年十月三十一日現在で達しております。

 ADRセンターにおける和解仲介手続は、平成二十六年十月三十一日現在で、和解仲介手続を終えた一万八百三十一件の約八二%に当たる八千九百二十六件で和解が成立をしておりまして、現行の枠組みにおいてADRセンターの役割はそれなりに果たしているというふうに考えております。

 文科省としては、このような観点から、現在におけるADRセンターそのものを見直す考えはありませんが、しかし、被災者に寄り添った、そして公正かつ適切な賠償が迅速に行えるように、フォローアップをしてまいりたいと思います。

小熊委員 数字はそうですけれども、個別的にいくと、私も聞いている話、実際、直接聞きましたけれども、泣く泣く和解している人たちもいるんですよ。まして、震災直後は東電の人も頭が低かったですけれども、今や、例えば会津の場合、実害というよりは風評被害でいろいろな賠償をもらっていますけれども、ちょっと払い過ぎだったから遡及したいとまで東電の社員が言っているんです。そんな実態ですよ。東北の人も福島の人も優しいから、泣く泣く和解に応じているというのもあるんですね。

 それは八十何%になっていますけれども、実際これは、浪江町は集団のものですよ。面の話です。これが成るか成らないかは、その機関の問題にもかかわってきます。個別の案件はそれぞれの判断でやったでしょう、和解を受け入れたというのは。でも、これはある意味、個別ではなくて、町民の総意みたいなところの訴えの和解案です。個別案件ではなくて、まさに行政としての意思でもあるわけです。

 これが和解案を全く拒否ということは、これはだからパーセンテージの問題ではなくて、意味合いとしては非常に大きな問題ですから、大臣、東電が最終決定をしたときに拒否ということであれば、政府としてこの福島の問題に対しては前面に立つと言っているわけですから、それを具体的にしっかりと行動で示していただきたいというふうに思いますし、また、そうした状況を踏まえて原賠法の抜本的見直しもしていただきたい。

 また、原賠法だけではなくて原賠審の中間指針も、このADRが出した和解案の考え方、こうした哲学をベースに見直すべきだと思いますけれども、この中間指針に関しての見直しといったことに関してはどう取り組んでいきますか。

下村国務大臣 まずは、現在、浪江町の住民の方々からの申し立て、これはADRセンターにおいて和解仲介の手続が進められている段階でありまして、まだ結論が出ているわけではありませんから、仮定の設定についてはお答えできる立場では現段階においてはないというふうに思いますが、しかし、文部科学省としては東京電力に対して、和解仲介のADRの趣旨にのっとった対応をしっかりやっていただきたい、被災者の方々に寄り添った対応をしていただきたいということについては再三再四申し上げておりますが、これからも、東京電力に対してはそういう視点から指導していきたいというふうに思います。

 今後については、トータル的な中で検討をしていくということでありまして、指針そのものを今すぐ見直すという段階ではございませんが、十分トータル的な対応の中で適切に判断していきたいと思います。

小熊委員 今は大臣、再三再四というのは、直接東電に言ったことはありますか。確認させてください。

下村国務大臣 文部科学省の方から直接何度も東京電力については言っております。

小熊委員 その際の東京電力の返答というのはどんなものでしたか。

下村国務大臣 事前通告していただければお答えをできましたが、私自身が直接やっているわけでなく文部科学省としてしておりますので、担当者に確認しませんと、東電がそのときどんな答弁をしたかについては、今詳細にお答えすることはできません。

小熊委員 これは大事な話ですから、政治家がやはり先頭に立つべきですよ、省庁がやっていますということじゃなくて。今のお話を聞いたら浪江の人は、非常にがっかりだな、大臣が直接やってくれていないんだな。省がやっている、そんな話ではないので、これは、最終決定が出たときには、大臣として東電に対しての対応をぜひお願いをいたします。

 なおかつ、今回の法改正については、前段として、先ほど副大臣が答弁したとおり、これ以上の損害賠償については国内法で対応するということです。その国内法がやはり今まだ十分でないという、福島県の被災者からすると認識でありますし、今回の条約の締結による国内法の改正ということは、それはそれで別に否定するものではないんですけれども、全体の原子力損害賠償という意味では足りていないし、一部でしかありませんから、この福島の事故、今まだこの事故は現在進行形の損害でもありますから、これをしっかり現実の法律に生かしていけるように、抜本的な改正、これは状況を見ながらやらなきゃいけないというのは大臣の言うとおりですけれども、そこがあってこそ、今回の法改正というのがその一部として私は了とせざるを得ないというふうには思いますけれども、全体的にはこれでいいということではなくて、全体を見渡せばもっとやるべきことがしっかりあるということでありますから、ぜひ、原賠法の見直し、指針の恒常的な見直し、チェック、より充実化していくことということは不断の努力でしていただきたいというふうに思いますし、また、この和解についてはそれぞれ進めていかなければいけない課題でありますから、これはもっと政治家が、大臣が先頭に立って対応をしていただくことを求めて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 それでは、小熊委員に引き続きまして質問をさせていただきます。

 この件につきましては論点が相当絞られているのではないかなというふうに思います。そういった意味で、重複した質問になることをどうぞお許しいただきたいと思います。

 まず最初に、パリ条約、ウィーン条約と原子力損害の補完的な補償に関する条約、CSCの三系統のうちCSCを日本が選択した理由を、ほかの委員からの質問で御答弁いただいているとは思いますけれども、改めてまたお願いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員御指摘のとおり、原子力損害賠償条約といたしましては、パリ条約、ウィーン条約、そしてCSC、この三つ存在いたしますが、この中で最も新しいCSCにつきましては、今後の展望ですとか被害者の救済、我が国の原賠制度との整合性などの観点からも、我が国にとって最も望ましい条約となっていると認識をしております。

 パリ条約につきましては西ヨーロッパ諸国、ウィーン条約は、ロシアを含む中東欧、中南米諸国を中心に締結あるいは署名をされております。一方、CSCは、環太平洋地域を中心に締結、署名をされておりまして、将来的に、アジア太平洋地域に共通の原子力損害賠償制度となることが期待をされているところでございます。

 また、CSCは、パリ条約、ウィーン条約の締約国も参加することができますし、国際的な原子力損害賠償制度の構築の観点からも最適であると言えると考えております。

 さらに、現在発効しております条約との比較におきましても、最低賠償措置額、あわせて拠出金制度が設けられているということによりまして、被害者保護に手厚いものであるということが挙げられるかと考えているところでございます。

 以上でございます。

鈴木(望)委員 パリ条約は十五カ国が締結国、ウィーン条約は三十四カ国が締結国というのに対しまして、CSCにつきましては、締結国が五カ国、しかも、今言われた五カ国の中にモロッコであるとかルーマニアであるとかアラブ首長国連邦というそういう国々が入って五カ国、しかも条約は未発効、それでもCSCに加盟しようとする理由が私にとってはいま一つ胸にすとんと落ちない。

 確かに、我が国にとってCSCが一番望ましいということを御答弁いただきましたけれども、それについて少し質問をしていきたいなというふうに思います。

 先日の審議の際に自民党の青山議員が質問をされましたけれども、平成二十年に設置をされた文科省における原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会においては、その時点では国際的枠組みに参加すべき状況にないという認識であったということでありますが、その理由を三つほど、文科大臣御答弁をいただきました。

 その三つについて、現状ではそれがどのように変化をして今回締結するということになったのか、文科大臣に御答弁をいただければと思います。

下村国務大臣 原子力損害賠償制度につきまして、文部科学省に設置された原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会において、御指摘のように、平成二十一年の原賠法改正に向けた第一次報告書におきまして、一つには、被害者保護の観点から高い水準の国内制度が既に整備されていること、二つ目に、我が国が他の原子力利用国と陸続きではなく、越境損害の対応に関する問題が顕在化していなかったことなどから、直ちに原子力損害賠償の国際枠組みに参加しなければならない状況にはないというふうにしておりました。

 他方、従来から、原子力損害賠償制度の国際的枠組みに関しては、アジア諸国が参加する可能性や我が国原子力損害賠償制度との整合性等を踏まえて、三系統ある条約のうち、CSCを最も有力な候補として加盟に向けた検討も行ってきたという経緯がありました。

 そうした中で、特に福島第一原子力発電所事故後におきまして、事故の当事国として、原子力損害に関する国際的な賠償制度の構築に貢献することが我が国の責務であり、CSCの発効後は、近隣諸国等に働きかけを行い、アジア環太平洋地域等における国際的な原子力損害賠償の枠組みの構築に努めていくことが必要であるということが認識されたため、我が国としても、早期にCSCを締結する必要があると考えたところであります。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 要すれば、一つは、既に日本は原子力先進国としてふさわしい水準の国内制度を有している、また、陸続きで国境を接していない、三番目として、周辺諸国の姿勢が必ずしも明確ではないという御答弁であり、それが福島の原発事故によって、やはり枠組みを早く整備しなきゃいけないというところに至ったというふうに私大ざっぱに理解をするわけであります。

 先ほどの小熊委員の発言の中にもありましたけれども、福島での賠償額、約五兆円に上ろうとしていると比較すれば、条約の賠償措置額三億SDRに各国からの拠出金、約七十億円と言われておりますけれども、を加えたとしても、条約において補償される額は微々たるものである。日本にとって、その意味では、福島の事故が起こった、だから各国相互の保険制度を早急に整えなければならないという言い分の割には、補償額五兆円、一方で、五百億円程度しか相互保険でお金が集まってこない。

 このような小さなお金で、実際事故が起こっても保険制度としては余り意味がないんじゃないのかなというふうに私は思いますが、その点についてはどのようにお答えになりますか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、CSCにおきましては、各国に現在三億SDR以上の賠償義務を課しているとともに、損害額がこの額を超える場合には、全ての締約国が拠出金を負担して賠償を補完するという制度になってございます。

 このCSCの最低賠償措置額ですとか拠出金の額の大きさにつきましては、発生した原子力事故の規模ですとか原子力損害の総額に応じてさまざまな評価があり得るのだろうと考えています。

 他方で、過去の原子力事故、例えばスリーマイルアイランドの原発事故により生じた損害への賠償額と比較をしてまいりますと、CSCの規定に基づく最低賠償措置額及び拠出金の額が必ずしも小さいというわけではないことを御理解いただければというように考えております。

 さらに、CSCが発効し締約国の数がふえてまいりますれば、各国の拠出金の総額がふえ、我が国で事故が万々が一生じた場合に、我が国が受け取る拠出金の額もふえてくるということもあわせ申し上げたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

鈴木(望)委員 今御説明を聞いて、言われた範囲では理解をする部分もあるわけですけれども、それにしても、私、現時点で加入をする理由として、福島の事故、そのための国際間の賠償の保険制度を設ける、だから急がなきゃならないという理由にはどうしても理解がいかない点があるわけであります。

 一方で、拠出金の出し方の点について考えてみますと、現在、日本では原発がとまっているわけでありますね。とまっていて動いていないにもかかわらず、原発の基数に応じた拠出金ということになっているわけであります。

 締結をしようという中で原発の基数は、日本が入れば日米でほとんどを占めているわけであります。アルゼンチンは三基、モロッコはゼロ、ルーマニアは二基、アラブ首長国連邦はゼロ、それに比して、アメリカは百基、日本は四十八基ということで、それに比例して分担金を出さなきゃならない。

 この制度に入って、実際上の原発事故に対して百分の一ぐらいのそういう保険のお金が入ってこないにもかかわらず、出す拠出金の方については、入れば日本が過分に分担金を出さなきゃならないというふうに考えるわけでありまして、事故が起こった際の実質的な保険の機能を果たすことはできていない。一方で、保険料に当たる拠出金については日本に大きな負担がある。

 現実を見れば、ここで加入をした場合に、CSCが果たす役割というのは余りない。理念的なものはまた別だと思いますけれども、理念的なものをこちらへおいておきますと、そういうふうにしか捉えることができなくて、さまざまなマスコミの論調の中の一つに、これは実質的にCSCに今入る意味はなくて、入る意味は一つ。これは、事業者責任を明確にすることによっての反射的効果、副次的効果によって、原発メーカーに輸出の道を開く効果しか期待できないんじゃないのかという指摘もあるわけであります。

 そのことについて文科大臣、どのようにお考えになるのか、御答弁をお願いいたします。

下村国務大臣 原子力事故は決して起こしてはいけないものでありますが、万々が一起こった場合の国際的な体制を整備することは、原子力事故を起こしてしまった我が国としての国際的責務として問われると思います。

 CSCにつきましては、我が国の締結により発効するため、国際的な原子力損害賠償制度の実現ということから、我が国がCSCを締結することは十分意義があることであると考えます。

 また、我が国の原子力損害賠償制度が国際標準に適合したものであることが海外にも認知されることで、福島原子力発電所事故の廃炉・汚染水作業に外国企業が参入するに当たっての活動環境が明確になることにもつながっていくと考えます。

 拠出金制度も、現行の原賠法の原子炉の運転等について備えている損害賠償措置を補完するという意味で、締結の意義はあると考えます。

 また、国際的な拠出金制度の枠組みが構築できれば、他国で発生した原子力事故によって我が国の国民が損害をもし受けた場合においても、この備えができるという意義があるというふうに思います。

 これらの点を総合的に考慮すれば、我が国にとって、CSCを締結する意義は十分あると考えます。

鈴木(望)委員 御説明は理解できるところであります。確かに、原子力事業者の責任の明確化、裁判管轄権を事故発生国に集中するといった各国共通の枠組みを定めるということに意義があるというふうに私も理解するわけでありますけれども、しかし、実際現実的に、今ここで締結した、さあ、この条約が締結されたから原発輸出に道が開かれたということがあってはいけないんじゃないのかなというふうに私は思います。

 少なくとも、福島原発事故の原因が究明されていない現状では、原発輸出は控えるべきであると強く言わせていただきたいと思います。

 次に、事故があった際に日本が一番影響を受ける中国、韓国は締約国ではありません。そういう意味では加入の効果は限定的であると思いますけれども、中国、韓国が締約する見込みについてお尋ねいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、CSCが我が国が締結すれば発効いたしますので、このことによりまして、条約の発効がこれら近隣国を含む各国の締結の促進につながることを期待をしているところでございます。

 また、政府といたしましては、CSCに近隣諸国が加入をするという重要性を従来から認識をしておりまして、IAEAが主催するアジア地域を対象としたワークショップにおきまして、この地域におけます原子力損害賠償制度の構築の必要性を訴えるなどの取り組みを行ってきたところでございます。

 我が国といたしましては、CSCを早期に締結し発効させるとともに、御指摘のありました中国や韓国を含みます近隣諸国に働きかけを行いまして、引き続き、アジア地域等における国際的な原子力賠償制度の枠組みの構築に努めてまいりたいと考えているところでございます。

鈴木(望)委員 三十一日のこの委員会におきましても、大臣から、近隣諸国に働きかけを行って、アジア環太平洋地域等における国際的な原子力損害賠償の枠組みの構築に努めていくことが必要であるとの御発言があったところで、それらをあわせて考えてみると、一方で、国際的な枠組みをつくるということは必要である。しかし、近隣の諸国である韓国とか中国がこの条約に仮に締結を働きかけでもってするということになりますと、裁判管轄権が事故発生国に集中することに当然なるわけでありまして、私が言うわけではないんですけれども、そういうことはあってはいけないんですけれども、巷間、事故が発生するとしたらどこで発生する可能性が大きいか、大きいのは中国であり韓国じゃないかというマスコミの論調もあるわけであります。

 仮に中国、韓国で原発事故が起こったらその被害が我が国に及ぶということはもう明らかでありまして、そうなった場合に、その被害が例えば九州であるとかそういうところで発生をしたと。被害が発生したにもかかわらず我が国で訴訟を提起できなくなって、損害賠償による救済に大きな影響を与えるというふうに考えます。

 これはさっきの民主の松本委員が質問したところに関連をしますけれども、どうしてもその点が懸念として拭えないわけでありますけれども、その点について文科大臣、どのように考えておられるでしょうか。

下村国務大臣 そういう懸念があることはおっしゃるとおりだと思います。逆に、締結をしていない近隣諸国が、今御指摘のような国でもし万々が一そういう事故が起きたときに、日本に被害があって、日本国内で訴訟して実際に被害者の方が勝ったとしても、それを受け入れてくれるかどうかはまた別の話になってまいりますので、そういうことを考えると、CSCを締結することによって、事故が起きた当該国できちっと一体的にやるということが国際上のルールとしてより明確になることによって、もしそういうことがあったとした場合ですが、我が国の救済によりつながるというふうに考えます。

鈴木(望)委員 時間が来ましたのでこれで質問を終わりますけれども、CSCの締結、理念としてはうなずける面が大きいとしても、締結したときに、まだ福島事故の原因究明もなされていないときに、例えば原発輸出、我が国のメーカーにその道を開くのではないかというような懸念であるとか、では、この枠組みに韓国、中国が入ってきたときに、事故が起こったら日本はプラスになるのかマイナスになるのか、いろいろ問題があろうかと思います。

 そういった条約締結に伴う周辺の課題に対してぜひきちんと対処をしていかなければならないと思いますし、そういったことについての対処についての要望をきちんとさせていただきまして、質問を終わりたいと思います。

西川委員長 次に、中山成彬君。

中山(成)委員 次世代の党の中山成彬でございます。

 引き続き、CSCについて質疑をさせていただきたいと思います。

 この前から与党、野党の方々が質疑しておられますけれども、野党の中にも、なぜ今という疑問の声が出てきているわけです。反対する理由がないときによく、なぜ今という言葉は出るんですけれども、私も、いろいろ説明を聞いても、いまいち、すとんと落ちないところがありますので、そういったことを中心にして質問をさせていただきたいと思います。

 まず、素人っぽい質問でございますけれども、パリ条約、ウィーン条約、このCSCと、いろいろですよね。パリ条約などはEC諸国が中心ということで、地域的なそういうもので納得できるんですけれども、なぜこんな三つもあるのか。このことにつきましてはIAEAが主導的に指導しているはずなんですけれども、なぜこういうようなことになっているのか、教えていただきたいと思います。

中山副大臣 中山先生、ありがとうございます。お答え申し上げます。

 原子力損害賠償の関連条約の作成の経緯につきましては、御存じのとおり、原子力の平和利用を進める国がふえつつあった一九六〇年代に、欧州経済協力機構、現在のOECDにおいてパリ条約が、また、IAEAにおいてウィーン条約が採択されました。

 また、一九八六年のチェルノブイリ原子力発電所の事故後に、原子力損害の賠償について再検討する機運が高まったことを受けまして、より充実した国際的な原子力損害賠償の枠組みを構築することを目指しまして、IAEAにおきましてCSCの起草作業が始まった。一九九七年に採択され、現在の三系統が存在することとなったというふうに考えております。

 パリ条約は西欧諸国、ウィーン条約はロシアを含む中東欧、中南米等を中心に締結、署名をされている一方、CSCは環太平洋地域を中心に締結、署名をされており、将来的に、アジア太平洋地域に共通の原子力損害賠償制度となることが期待をされております。

 また、CSCは、パリ条約、ウィーン条約の締結後も参加しやすい仕組みとなっております。

 以上です。

中山(成)委員 説明を聞いてもよくわからないんですけれども、我々が入ろうとしているCSC、五カ国というけれどもばらばらですね。地域地域でやるんだと。確かに、事故が起こったとき、損害が及ぶのはそういったところだということはわかるんですけれども、もう少しIAEAも指導力を発揮してもいいんじゃないかなと私はそう思うので、その辺のところは、ひとつ外務省、文科省、通産省もそうでしょうけれども、そんなところも力を合わせて、国際条約ですから、どうせやるなら一緒になってほしいなということを要望しておきます。

 それから、このCSC加入につきましては、福島の原発の事故以前から検討されている、こういうふうに聞いておりますが、もし福島原発前にCSC条約が発効していたとすれば一体どういうことになっていたのか、教えていただきたいと思うんです。

中山副大臣 CSCがもし発効していれば損害賠償事案が多発していたかどうかという点に関しては、仮定に基づくお話であり、お答えすることは困難であると考えております。

 その上で申し上げますれば、仮に、福島原発事故当時、我が国がCSCを締結し、CSCが発効していたのであれば、CSCの拠出金制度の活用が可能となっていたことのほか、裁判管轄権の集中により、事故発生国である我が国以外の締結国で事業者が提訴されることはなかったなどの違いは生じていたと考えられるところであります。

 もっとも、CSCは、被害者救済等の観点を踏まえ、事業者の無過失責任及び責任集中等の基本原則を定めておりますけれども、我が国の原子力損害賠償法もこれらの諸原則に基づいて制定されており、福島事故当時にCSCを締結していたとしても、これらの諸原則の適用が変わることはないというふうに考えております。

 また、先ほどの質問の答弁に対します後にも先生から今御言及をいただきましたIAEAに関しても、原子力損害賠償責任に関する一つの国際的な制度を構築することにおきましては、二〇一一年九月に国際原子力機関の総会におきまして全会一致で承認されたIAEA原子力安全行動計画において提言されているほか、IAEAの原子力安全決議等におきましても、国際的にその重要性が累次にわたり確認をされていると認識しております。

 我が国としましても、CSCを何とか締結し、その早期発効に寄与するとともに、近隣諸国等に働きかけをし、原子力事故による損害についての国際的な賠償制度の構築に貢献していきたいと考えております。

 また、IAEAの場においても、原子力損害賠償責任に関する一つの国際的な制度の構築の促進についての議論がなされているところ、我が国としても、こうした議論に積極的に貢献してまいりたいと考えてございます。よろしくお願いいたします。

中山(成)委員 仮定の話なんですけれども、もしこの条約に加入しておれば、どこかよその国から訴えられるということがあったのかどうか。具体の名前を出して悪いんですが、韓国などは、海産物か何か、輸入停止というようなこともやりましたけれども、もしそういうふうなことになっていたら、あるいは訴訟が多発していたのかなと。あるいは、そういう状態じゃなかったんだ、こういうふうなことかということを考えるわけですけれども、それについては、誰か事務方、わかりますか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど副大臣の方から御答弁申し上げましたとおり、CSCがその時点で、福島の事故の当時発効していれば、損害賠償事案が多発をしていたかどうかという点につきましては、仮定に基づく話でございまして、お答えすることは困難でございますが、仮にその時点でCSCが発効していた場合、他の締約国との関係では、我が国において訴訟が集中をして行われることになりますし、非締約国との関係では、CSC条約の有無、あるなしにかかわらず訴訟が行われるということは、これは現状と当時と変わらないというように御認識いただければと考えております。

中山(成)委員 福島原発でも、先ほども話がありましたけれども、五兆円に近い損害賠償が払われているわけですけれども、そういう意味では、これで三億SDR、それぐらいの金額のものでございまして、微々たるものなんですね。ですから、こういった事故については日本は国内で処理できるわけで、こういったことをやると、むしろ外国から狙われるんじゃないか。日本人は余りよその国に行ってまでいろいろ訴訟を起こすことはしませんが、逆に、よそから狙われて訴訟が多発するんじゃないか、私はそういうことも実は心配しているわけでございます。

 しかし、仮定の話を言ったってしようがないので、そういう疑念を持っておるということを御理解いただきたいと思っています。

 それから、今回、この条約を締結することについてアメリカから随分強く言われているんだという話も仄聞するわけなんですけれども、その辺はどうなんでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカからCSC条約の締結に関しまして働きかけが従来からございましたことは、委員御指摘のとおりでございます。

 他方で、今般、我が国といたしましてCSC条約を締結するという判断に至りましたのは、先ほど御答弁申し上げました、IAEAの中で国際的な原子力損害賠償制度の構築に各国は努めるべしというような動きですとか、あとは、アジア太平洋諸国にも原発が多くなってきたといったような状況などなどを勘案して決定をしたということで御理解いただければというふうに考えているところでございます。

中山(成)委員 アメリカからの要請もあったということだと思うんです。

 先ほど、この条約を発効しても遡及はしないというふうなことでしたけれども、これからもし事故が起こればという話なんでしょう。しかし、汚染処理とか廃炉に向けて、いろいろな知見、いろいろな方々の協力が求められていると思うんですけれども、その中で、アメリカからもかなりの技術者といいますか研究者が日本に来ているんでしょうか。

土井政府参考人 お答えいたします。

 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策の現場作業におきまして、現在、米国から直接参入し、廃炉・汚染水対策について現場作業を行っております企業は一社でございます。その技術の内容は、セシウムやストロンチウムの浄化処理技術というふうに認識しております。

 また、現場におります技術者の数につきましては、十月以降、一日最大六人のアメリカ人が従事しているというふうに東京電力から聞いております。(中山(成)委員「何人」と呼ぶ)一日最大六人の米国人が従事しているというふうに東京電力から聞いております。

中山(成)委員 六人ということですけれども、やはりアメリカの方々は、日本に行くと、まだそういう条約も結んでいないということで、日本に来ることをちゅうちょしている人たちもいるということでございましょうか。

土井政府参考人 お答えいたします。

 現在でも、福島第一の廃炉・汚染水対策につきましては、確かに一部の米国企業が参入しております。ただ、これは、個別の企業が廃炉・汚染水対策の参画のリスクにつきまして考慮した上で参画を決めたものでございまして、実態といたしましては、参画できる企業と参画をちゅうちょする企業があるというふうに聞いております。

 実際に、仮に福島で今後トラブルが生じた場合に、CSC未発効の段階では、日本ではなく米国で訴訟を起こされるおそれがあり得るというようなことを理由にしまして、廃炉・汚染水対策の参画をちゅうちょするという米国企業の声があるというふうに聞いております。

 今後も、福島第一原発の廃炉・汚染水対策は我が国の最優先課題でございますので、また前例のない困難な事業でもありますから、すぐれた技術はすべからく活用していくべきであると思っております。

 したがいまして、国内外の英知を結集して取り組む必要があります中で、CSCの締結は、こうした知見がありながらも参画をちゅうちょしている米国企業等が、福島第一原発での廃炉・汚染水対策に参加しやすい環境の整備に大変資するものというふうに考えております。

中山(成)委員 私も以前から日本のエネルギー政策の推進にかかわってまいりまして、原発についてもその推進の一翼を担ってきた、その中でこういう事故が起こったということについて非常に責任も感じていますし、また、東京電力ももう少ししっかりやってくれればよかったのにな、そういう思いが本当に強いわけでございます。

 しかし、今、脱原発とか、原発に対して非常に反対が強いという中で私が心配していますのは、これからの若い方々が、原子力関係、そういったものに進もうという人が少なくなっているんじゃないか、そういう研究者も少なくなっているんじゃないかなということを懸念しているんですけれども、その辺の状況について教えていただけませんか。

下村国務大臣 文部科学省では、名称に原子を含む学科等の学生動向の調査を行っておりまして、現在、大学三学科、大学院九専攻が開設をされております。当該学科等への応募者数、入学者数は、東日本大震災以降減少傾向にありましたが、平成二十六年度の調査においては、前年度に比べて、応募者数で約三割、入学者数で約一割の増加となっております。

 ことし四月に閣議決定されたエネルギー基本計画では、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉等におきまして高いレベルの人材が必要とされており、文科省では、中長期にわたる同発電所の廃止措置等に係る人材の育成、確保を行う廃止措置等基盤研究・人材育成プログラムや、産学官連携による幅広い原子力人材の育成を行う国際原子力人材育成イニシアティブなどを実施しているところであります。

 私としても、六月に公表した福島第一原子力発電所の廃止措置等研究開発の加速プランの中で、中長期的な人材育成機能の強化を掲げておりまして、国内外の英知を結集し、東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置を確実に実施していくためにも、幅広い分野の人材育成、確保について、各方面とも連携しつつ、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

中山(成)委員 今、下村文部大臣の発言を聞きましてちょっとほっとしたところでございますが、引き続き、やはり日本は原子力に関しては世界のトップを走っているんだ、そういう自負を持ってこれからも頑張っていただきたいなと思っています。

 実は私、この連休に、川内原発の近くのさつま町というんですか、旧宮之城町に同級生がいるものですから、そこに遊びに行っておりましたら、経産大臣、宮沢大臣が来られて、川内原発の再稼働についていろいろな動きがあったわけでございます。それを見ていまして、地元の方々といろいろ話をしたんですけれども、地元の人は、早く再稼働してくれ、何をしているんだという気持ちを非常に強く訴えたのが印象的でした。

 私自身も、今原発がとまっているという中で、一日百億円の国民の貴重な国富というんですか、流失している、こういう事態、これは大問題だと。家庭の負担もふえているでしょうし、何より、これ以上上がっていきますと、経済産業活動に与える影響が非常に大きいな、こう思うものですから、ぜひこの再稼働について早く促進してほしい。一部に、いろいろなことを言いまして不安をあおる向きもあるんですけれども、しかし、本当に真剣に考えますと、地球温暖化の問題とかさまざま考えても、私は、原発は当分進めていくべきじゃないかな、こう思うんです。

 しかし、それでもやはりこの原子力発電というのは危険も伴うものですから、そこで思い出すんですけれども、今からもう十年前になりますか、私が文部大臣のとき、ITER計画というのを推進しました。いろいろな反対もあったんですけれども、ロシアに行きまして締結したのは、フランスのカダラッシュというところにつくりましょう、こういうふうなことだったんですね。その後も、私も浪人なんかをしていましたので、今どうなっているかなと。

 福島の事故が起こったとき、一番最初に頭に浮かんだのがこのITER計画の進捗ぐあいだったんですけれども、今どういうことになっているのか、ちょっと説明いただきたいと思うんです。

下村国務大臣 中山大臣のとき、私も政務官をさせていただいておりまして、当時、中山大臣がこのITER計画、決断をされ、進めようという英断に対して、心より敬意を申し上げたいと思います。

 現在、ITER計画は、将来のエネルギー問題と環境問題を根本的に解決できると期待される核融合エネルギーの実現でありますので、これは我が国だけでなく、国際的にも大いに期待されておりまして、必ず成功させなければならないものであるというふうに考えております。

 そのような背景で、現在、ITER計画は、世界七つの国と地域、これは日欧米ロ中韓印の協力のもとで、建設サイトであるフランス・カダラッシュにおきまして装置本体を設置する建屋の建設等が、加盟各国においては、それぞれが分担する機器の製作等が精力的に進められているところであります。

 核融合分野においては世界最高水準の技術や経験を有している我が国として、他国と緊密に連携協力しながら、ITER計画の成功に向けて主導的役割を発揮し、最大限の力を尽くしてまいりたいと考えております。

中山(成)委員 私がそのときに懸念しましたのは、各国が協力して、拠出してやるのはいいんだけれども、研究施設も、カダラッシュにおいて各国からいろいろな機材といいますか、いろいろなものを持ち寄ってやるというスタイルがいいのか、本当ならば日本が受けられればいいのになと思ったんですけれども、そういう意味で、ちょっと聞きましたところ、大分おくれているという話があったんです。

 私があのとき聞いた話では、四十年後に実用化という夢でございましたけれども、あれから十年がたちましたから、もう三十年後には原発にかわる新しいエネルギー、簡単に言うと地球上に小さな太陽をつくる、こういうふうな話だったんですけれども、その辺のところはどうなったんでしょうか。ちょっと心配なものですから、お聞きしたいと思うんです。

下村国務大臣 御指摘のように、ITER計画の全体スケジュールについては、一部に遅延が生じているというふうに承知しておりますが、現在、遅延を少しでも回復するよう、ITER機構と関係国が精力的に努力しているところであります。

 我が国としては、調達責任を有する機器の製作を、全体スケジュールを見据えて引き続き進めるとともに、関係者の努力によりまして遅延が最小限にとどまることを期待しているところであります。

中山(成)委員 そういう意味で、ブローダーアプローチとして、青森県の六ケ所村ですか、あそこに日本の施設をつくった。それは私は非常にいいことだと思っているので、ぜひ、あそこを中心にして、全体としてのITER計画を日本が中心になって進めていただきたい、こう思っています。

 先ほど話がありましたけれども、十年前、一緒に教育改革に取り組みました。その後、本当に下村大臣が一生懸命頑張っていただいて日本の教育改革が進んでいるということを大変うれしく、心強く思っているんですけれども、ぜひ科学技術関係につきましてもリーダーシップを発揮していただきたい、そのことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いをいたします。

 きょうは原賠法ということで、きょうはこの部屋に現大臣と元大臣と合わせて三人も大臣経験者がいらっしゃるということで、私も気合いを入れてやらせていただきたいと思って、きのうかなり徹夜に近い形で質問を考えさせていただいたんですが、みんなの党の順番に回ってくるまでにみんな出てしまうというような冗談を言った人がおりまして、実は、その冗談が少し当たっている状況でございます。

 若干、通告と違う形で聞かせていただきます。そういったところ、関係各位には、まず冒頭おわびをさせていただいて、御協力を願えればと思います。

 我々、我が党は、脱原発ということを訴えさせていただいているわけでございます。その上で、事故後の廃炉、そして予定廃炉、これも速やかに原子炉等規制法に従って、四十年をめどにして着々と廃炉していくべきだというところの観点から議論をさせていただきたいと思います。

 まず、原賠法そのものについてなんですけれども、これも鈴木先生から、中国原発、韓国での事故のときにどうなるのかというような話がございました。そこで、一点ちょっと確認をさせていただきたいんですが、現在の中国での原発の増加の現状、知り得る限りの事故報告、そこの原発の受注国、あと、その原発の管理運営主体はどうなっているのか、教えてください。

    〔委員長退席、櫻田委員長代理着席〕

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 中国の原子力発電所の状況についての御質問でございますが、まず、基数につきましては、二〇一〇年以降、毎年新規に原発の運転が開始されるなど増加傾向にあるというふうに承知しておりまして、現在は二十二基の原発が稼働しているところでございますが、中国はさらにエネルギー発展第十二次五カ年計画というものを策定いたしまして、石炭による発電割合を低下させ、天然ガス、原子力の割合を上昇させるという方針のもとで、さらに二十七基の原発が建設中であるというふうに承知しているところでございます。

 次に、事故でございますが、IAEAが出しております国際原子力事象評価尺度、INESのレベル4以上が事故というふうに定義されているところでございますが、中国においてレベル4以上の事象が発生したことは今のところないというふうに承知しております。

 次に、中国におけます原子力発電の製造メーカーでございますが、中国国内の企業がつくっておるのに加えまして、ロシア、フランス、アメリカ等の企業が供給しているものというふうに承知しているところでございます。

 最後に、運営体制でございますが、管理運営体制につきましては、中国国務院国有資産監督管理委員会の管理下にございます中国核工業集団公司、CNNC、中国広核集団有限公司、CGNが、株式保有を通じて多くの原子力発電所を管理しているものと承知しているところでございます。

柏倉委員 今、二十二基があって二十七基が製造中であるということで、かなりアグレッシブにつくっているなという印象です。中国の管理がずさんだとは言いませんけれども、やはり危険性というのはかなり高いと仄聞をしております。

 こういった中で、やはり中国をCSCにどんどん入れていく方向で恐らく国際協調していくんだと思いますけれども、今後どのように中国、韓国に対してCSC加盟に向けて積極的な働きをしていくのか、方針を聞かせてください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 CSCにつきましては、我が国が締結することによりまして発効する見込みでありまして、政府といたしましては、条約の発効が、中国、韓国を含む各国の締結の促進につながるということを期待しているところでございます。

 また、従来から政府としてはCSCに近隣諸国が加入をするという重要性を認識しておりまして、アジア地域を対象としたIAEA主催のワークショップにおきまして、この地域における原子力損害賠償制度の構築の必要性を訴えるといったような取り組みも行ってきたところでございます。

 今後、CSCが我が国として締結をし発効しますれば、中国、韓国を初めとする近隣諸国等に働きかけを行いまして、アジア地域等における国際的な原子力賠償制度の枠組み構築に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

柏倉委員 これも維新の党の鈴木先生の御指摘ですけれども、中国で日本企業が活動したときに生じた原発事故というのがもし起これば、これはもう中国での裁判になるわけですよね。そのときに、やはり補償額というのが読めない。ひょっとして、これは青天井になる可能性もあるわけですね。そういうところをこれは真剣に検討してやはり進めるべき条約だと思います。

 まあ、たらればの状況で、なかなか現実的に物が進まないというロジックかもしれませんけれども、これは、たらればよりも可能性の高い、ある意味、蓋然性に基づいて議論、試算をしていくべき問題であるということを一点指摘させていただきたいと思います。

 あと、これは確認なんですが、このCSCに加盟することによって、各事業者が国に拠出金を出すということで、その拠出金というのは、当然、原価総括方式に含まれるというふうに聞いております。これは民主党の松本先生も確認をされていますけれども、再度確認させてください。拠出金というのは原価総括方式に反映されるんでしょうか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 事業者が実際に値上げの申請をするかどうかは別でございますけれども、この法律に基づきまして、一般電気事業者を含む原子力事業者は、毎年一般負担金を納付する義務が生ずることになります。

 この義務的に生ずる負担につきましては、料金原価に算入することには合理性はあるものと考えております。ただし、申し上げましたとおり、値上げを実際に事業者がするかどうかは別の問題だと思っております。

柏倉委員 このCSCが締結して発効すれば、必ず各事業者はその拠出金を国に出すわけですよね。これは例外ないわけですよね。原価総括方式に反映させるかさせないかも含めて、それをどのように拠出するかというのは各事業者の判断に任せられるということでよろしいんでしょうか。

    〔櫻田委員長代理退席、委員長着席〕

多田政府参考人 御指摘のとおりだと思います。

柏倉委員 まず間違いなくこれは、今までもそうでしたので、原価総括方式という形でやはり国民から間接的に拠出するという形になるんだと思うんですね。であれば、このCSCというのが、かなりのメリットがなければいけない条約なわけでございます。

 ただ、これも維新の鈴木先生御指摘のとおり、福島原発では五兆円という賠償金が発生をし、政府のお金が十一兆円東電に注入をされている、そういうお金のバルクの量と比較しますと、まあ、こんな言い方は適切ではないんでしょうけれども、ちょっとしょぼいのかなという気はします。

 これは、額ではなくてスキームが大切だということなんでしょうか。政府の見解を聞かせてください。

田中政府参考人 先生御指摘のとおり、CSCのメリットということについては、原子力損害に関する国際的な賠償制度、枠組みづくりに対しての貢献ということでございます。また、原子力事故の賠償の充実あるいは被害者の迅速かつ公平な救済ということがございます。

 他方、デメリットも幾つかございますけれども、我が国としては、福島の原子力発電所事故を起こしてしまったということから、国際的な責務として、CSCということについての枠組みづくりに主体的に貢献をすることが大事だというふうに考えているところでございます。

柏倉委員 やはり、この額というところでいいますと、首をかしげざるを得ないのが一般的な印象だと思います。

 このスキームが大切だということだと思うんですけれども、先般から議論しているとおり、中国、韓国を積極的に後押しするのかどうか、これのところが私は一番大事なところになってくると思いますので、しっかりと議論をしていただきたいと思います。

 それでは次に、原発処理、廃炉に係る日本の方針についてお伺いしたいと思います。

 原子炉等規制法では、原発の運転期間は原則四十年ということになっているわけです。国内の原子炉五十基のうち約三分の一が運転開始から三十年を超えているという状況の中、四十年運転制限の原則に従えば、近い将来廃炉ということになるわけでございます。

 これは、福島原発のように事故後の廃炉というのは、各国の英知を結集して速やかに廃炉処理をする、汚染水処理をするということは当然だと思います。しかし、予定廃炉ということになりますと、これは膨大なお金が発生するわけです。しかも五十基ある。やがては五十基全部が四十年にかかるわけですから、膨大なお金が発生して、しかも五十基もある。どれぐらいのお金がかかるのか。これは、それの試算に基づいて、やはり国が何らかの戦略を立てて日本が廃炉技術のトップを走る、こういう形を、流れをつくっていかなきゃいけないと思うんですね。

 海外に参入させるなとは言いません。ただ、やはり、原発プラント輸出を日本がやっている現状があるわけです。我々は脱原発ですからそれすら反対ですが、ただ、現状、そういうことがある。やがては、そういったところも廃炉を求める。そのときに、やはりそこのところまで提供できなければ、私は責任ある産業とは言えないと思います。

 そこで、若干質問をかえさせていただきますけれども、原発一基の廃炉の費用というのはどれぐらい見込まれるんでしょうか。平均何年ぐらいかかると考えているでしょうか。これは通告していなかったので、答えられれば答えていただければと思います。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 規模によって異なるわけでございますけれども、廃炉につきましては、数百億円単位のお金、オーダーがかかると思います。

 それから、要する期間でございますが、これは二十年から三十年程度はかかるというふうに言われております。

柏倉委員 これは記事レベルですけれども、試算すると、全部廃炉をすると一兆円から一兆五千億円ぐらいかかるんじゃないかというような試算も出ているわけですね。ビッグビジネスと言うと不謹慎かもしれませんが、ただ、予定廃炉に関しては、私は、これはしっかりと日本が主導した市場にしなきゃいけないというふうに考えています、もう厳然としてあるわけですから。

 そこで、先ほど中山先生の方からも御質問がありました、どのように海外の企業とかかわっていくのか。特にアメリカ企業の現状はどうなのかというところもやはりしっかりと認識をして、日本はイニシアチブをとっていかなきゃいけないわけでございます。

 基本的には、日立、東芝、こういったものが福島第一原発の廃炉に積極的に当然かかわっている。今回、汚染水処理に関しては、凍土遮水壁に関しては鹿島建設等々ゼネコンが絡んできている。国内で総力戦で今廃炉をやっているわけですけれども、どんどんどんどん海外のメーカーも絡んできているのは事実ですね。

 ただ、こういう声もあるわけですね。国内原子炉メーカー、あるメーカー幹部によると、やはり日本企業の方が海外よりも顧客対応にすぐれているし、かゆいところにも手が届く、何といっても、海外企業は言葉の壁等もあってバックアップ体制が弱い。あと、現実的には、汚染水処理のところで、アレバとキュリオン社のシステムがたびたび故障した、こういう事実もあるわけです。そうなりますと、あらゆるリスク管理の面からも、やはり日本企業に前面に立って廃炉を頑張ってもらわなきゃいけないんじゃないかという声もあるわけでございます。

 そこで、この当該領域、現状を、日本企業と海外のメーカー、これは概論で結構です、比較優位の部分、政府はどのように認識をしているのか、答えていただけますか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。廃炉・汚染水対策の分野における技術力についてでございます。

 私ども、何か数値的な比較というものはいたしておりませんけれども、例えば、放射性物質による汚染に対するすぐれた浄化技術でございますとか、海水中の放射性物質の除去技術、あるいは建屋内の線量測定などに活用できますロボット技術、こうした分野につきましては、極めて高度な知見、技術を有するアメリカの企業などがあるというふうに認識をしております。また、そのほかの分野につきましても、ヨーロッパの企業にもすぐれた技術があろうかと思っております。

 私どもといたしましては、日本の技術力、先生御指摘いただきましたように、現場力、こうしたものについては非常にすぐれた力を持っているかと思っております。

 したがいまして、この廃炉・汚染水対策、前例のない非常に困難な事業でございますので、国の内外を問わず、企業の国籍を問わず、英知をすべからく活用して、何とかこの困難な作業を乗り切りたい、このように考えているところでございます。

柏倉委員 ロボット技術等々、これは、かなり原子力の根本的な原理の研究、そして軍事技術の応用というものが重なって、原子力処理というのはやはり経験もありますから、アメリカがかなり進んでいるということだと思うんですね。

 やはり、これは比較優位をちゃんと検討して、どこの部分が日本が弱いのか、これはコラボレーションして、現状の事故処理を一日も早く、この原則をしっかりと保ちながらも、日本の弱いところをしっかりと磨いていく、それで世界に伍していくというところの認識が必要かと思います。当然、選択と集中をしなければいけないわけですけれども、やはり原子力を輸出している現状、そこのところは、世界のトップを走るという自負といいますか、責務があると私は思っていますので、ぜひ、そこの細かいところの分析は政府にしっかりとやっていただきたいと思います。

 そこで、どうやって国全体として、廃炉技術、世界をトップで走るための戦略をつくっていくのか、これを考えなきゃいけないわけなんですけれども、具体的にそれが見えてこないわけですね。

 確かに、今回、世界でも類を見ない、炉心が溶融して、溶け出て、地面に、建屋に出てきているわけですから、スリーマイルよりもひどいわけですよ。チェルノブイリに関しては、原状保存しか実質していない現状、処理をしていないわけですから、確かに世界で類を見ない事故後の処理なわけです。非常にこれはチャレンジングな状態ですけれども、それがゆえに、やはり日本がここでノウハウを磨く、そういうチャンスだと思うんですね。

 そこで、日本が廃炉技術でトップを走るための国家戦略、これをどのように策定していくのか、政府の見解を聞かせてください。

下村国務大臣 これは来年四月からスタートする準備をしております。

 ことしの五月に東京電力福島第一原子力発電所に視察に行ったときに、東京電力側からも、当時、汚染水処理等で作業員が五千人ぐらい毎日働いていまして、東京電力としてはこれでもう手いっぱいだけれども、廃炉対策を考えていかなきゃいけない、しかし、これはもう東京電力だけではできないので、ぜひ政府が前面に立って支援をしてほしいといいますか、やってほしいという話がありました。

 戻ってまいりまして、すぐ安倍総理に相談をし、来年四月から廃炉国際共同開発センターを設置して、ここで、国内外のトップレベルの技術者、ノウハウ、人材をそこに集めて、そして今、柏倉委員から御指摘があったように、ピンチをチャンスにしていくという意味では、日本から世界に対して、廃炉研究をすることによって、そしてほかの国に対しても、ほかの国でもいずれは原子力発電所は廃炉になるわけでありますから、この貢献と、そして、この分野における世界で最先端の研究開発をしながら、人材育成。

 そのために、これはロシアに行ってもアメリカに行ってもやはり心配をしていただいているんですが、同時に、それぞれの国でも、そういう人材とか技術が要るので、人を出したい、一緒に共同研究したいということも言われておりましたので、福島において世界トップレベルの廃炉共同開発センターを来年四月からスタートして、着実なものにしてまいりたいと思います。

柏倉委員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 我が党の立場は脱原発ということで、原発再稼働には反対でございます。

 ただ、あるものをどうやって平和的に、そして経済的にも成長戦略に資するような形で淘汰していくかというところは、これは避けて通れないので、今大臣おっしゃったような共同の国際センターをおつくりになるという取り組みは非常にすばらしいと思います。やはり廃炉をするには日本人研究者でなければだめだ、日本人技術者じゃなければだめだというような、それぐらいのブランド力をぜひつけていただきたいと思うんです。そうすることによって原子力行政も、これは我が党としては速やかに収束していくという期待もございます。

 原子力の開発と廃炉、これは技術的にはコインの裏表なのかもしれません。政治的には二律背反なのかもしれません。ただ、廃炉に関しては、何度も申し上げますが、日本がトップを走る、これは日本の責務だというふうに確信をしておりますので、ぜひ大臣、突破力で先頭に立っていただければと思います。

 きょうはちょっと少し早いんですが、これで終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木でございます。

 質問が重なるところが多々ございますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 このたびの原子力損害の補完的な補償条約、CSCの加盟は、今後、日本のメーカーの原発輸出の後押しにつながる可能性があることや、また、今後の原発事故に対する補償額を減らす口実につながりかねないこと、また、近隣諸国、特に中国、韓国などが締結をしていないことなどを勘案しますと、なかなか賛同しがたい現状と考えておるところでございます。

 先ほども質問がございました平成二十年の十二月に出されました文科省の検討会の報告書、これによりますと、我が国は、原子力損害賠償に関する国際条約に直ちに加盟しなければならない状況にはない、むしろ参加すべきではないという報告の中で、その理由が三つ挙げられておりました。

 一つは、我が国は既に原子力先進国水準の原子力損害賠償制度を有していること、二点目として、ほかの原子力利用国と陸続きで国境を接していないこと、三点目といたしまして、近隣アジア諸国等が国際条約に加盟していないことを挙げております。

 この報告書当時から状況には変化はないというふうに思いますが、福島の原発事故を起こしたということが唯一挙げられるかとは思いますけれども、今あえてこのCSCに加盟しようとする理由について、私からもお伺いをさせていただきます。

田中政府参考人 先生今御指摘の報告書でございますけれども、原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会、文部科学省に設置されたものでございます。

 平成二十一年の原賠法改正に向けた検討ということを行ったわけですけれども、その中で三点、まさに先生今御指摘のところを挙げて、こういうような理由から、直ちに原子力損害賠償の国際的枠組みに参加しなければならない状況にはないということが、平成二十一年当時指摘をしてございました。

 他方、これまでも御説明申し上げているとおりでありますけれども、従来から、原子力損害賠償制度の国際的枠組みに関しては、アジア諸国が参加する可能性、あるいは、我が国原子力損害賠償制度との整合性などを踏まえまして、三系統ある条約のうち、CSCを最も有力な候補として加盟に向けた検討を行ってきたところでございます。

 そうした中で、特に福島原子力発電所事故後におきましては、国際的な責務ということを感じている我が国、あるいは近隣諸国、アジア環太平洋地域においての国際的な原子力損害賠償の枠組みの構築に努めていくことが必須であるというようなことが認識されていることから、早期にCSCを締結する必要があるというふうに考えているところでございます。

青木委員 福島原発事故を起こした日本の責務というところは理解をするところではございますが、五カ国の加盟と総熱出力が要件で、日本が加盟することによって発効されるということでございますが、外務省の資料によりますと、既に五カ国の締結と十三カ国の署名に至っているというふうに承知をいたしております。また、この署名国の中には、残念なことですが、原子力利用を急速に拡大しようとしている国もございます。

 今後、日本におけるエネルギー基本計画におきましては、原発の依存度を可能な限り低減をしていくということは約束をされているというふうに思っています。

 今後、本条約内における我が国の重要性は低下をしていくのではないか、また、我が国にとってもまた意義が薄れていくのではないかというふうに予想いたしますけれども、御見解を伺います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今後原発依存度低下が予見されるというような状況はあるかと思いますが、原子力事故に対する備えといたしましては、廃炉が終了するまで実施することが不可欠であるというように認識をしているところでございます。

 また、他国で発生をした原子力事故によって我が国の国民が損害を受けた場合への備えとして、国際的な原子力損害賠償制度を構築するということは大変重要なことであるというように認識をしているところでございます。

 このため、国会の御承認をいただきまして、我が国がCSCを締結することを引き続きお願いをしてまいりたいというように考えている次第でございます。

青木委員 事故に対する備えということをおっしゃられたわけではございますが、先ほどからそれぞれの委員の先生方からも指摘がありますように、仮に日本で事故が発生した場合、他の締約国から得られる拠出金は数十億円という単位でございます。福島第一原子力発電所事故の損害賠償額は、被災者に対する損害賠償や汚染水対策など全て含めて十一兆円という試算も出されております。一たび過酷事故が起きますとその賠償額は、条約による拠出金、また国内法の賠償措置額千二百億、これらを足したものでは到底賄えるものではありません。

 そこでまず第一点、お伺いをさせていただきますが、国内で再び原発事故が起きた際の被災者への損害賠償の減額、あるいは除染にかかる費用などの減額にこの条約締結が口実に使われる可能性があるのではないかという指摘もあります。この点についてはいかがでしょうか。

田中政府参考人 我が国の原子力損害賠償制度は、原子力事業者に無限責任を課してございます。したがいまして、仮に原賠法の賠償措置あるいはCSCの拠出金によって賄うことができないような場合であっても、原子力事業者が賠償を全て行うということは変わりがないというふうに考えているところでございます。

青木委員 ありがとうございます。無限補償は変わらないということを確認させていただきました。

 二点目といたしまして、政府は、外国が持つ汚染水対策や廃炉等にかかわる技術導入ということを目的としているのだということを指摘しておられますけれども、アメリカだけではなくて、アレバなど、フランスなどヨーロッパ諸国の知見や技術導入というものも必要ではないかというふうに思っておりますけれども、これについてはどういう枠組みで考えていらっしゃるのでしょうか。

多田政府参考人 お答えを申し上げます。

 事故後、現状でございますけれども、フランスあるいはイギリスといったヨーロッパの企業の技術を用いて浄化装置などを利用しております。

 私どもといたしましては、この前例のない困難な作業、アメリカのみならず、ヨーロッパを含めて、我が国の企業も含めてでございますけれども、内外の知見を集めて、そしてこの困難な作業をしっかり乗り切っていきたい、このように考えております。

青木委員 そうしますと、ヨーロッパ諸国の技術導入については、条約等の締結の必要性についてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、ヨーロッパにつきましてはCSC条約には参加していない、こういう現状にございます。

 アメリカの企業の方からは、実際にこのCSCが未発効の段階で仮に今後福島でトラブルが生じた場合につきまして、裁判管轄の問題あるいは事業者への責任集中の問題、こうしたことについて懸念があるということで、実際の廃炉・汚染水対策への参画をちゅうちょする向きもあると聞いておりますが、他方で、フランスの方からは、同じようなリスクを懸念しているという声は、私どもの耳には現在入ってきていない、こういう状況にございます。

青木委員 フランスなどからは入ってきていないということでございますけれども、そうした中でも技術導入に対する協力はいただいているということでよろしいですか。

多田政府参考人 御指摘のとおりでございまして、フランスの企業あるいはイギリスの企業から、廃炉・汚染水対策事業について既に参画をいただいております。

 一言補足させていただきますと、アメリカの企業にも参加をいただいているところはございます。

 他方で、ポテンシャルを持っている、つまり技術を持っているにもかかわらず、まだ私どもの方に、例えば説明会などには参加をしていただけるんですけれども、公募という形についてはまだちゅうちょされて手を挙げてきてこられない、こういった企業がアメリカには存在する、こういったことも現状にございます。

青木委員 やはり、世界各国の英知を結集していただくというのは本当に必要なことだというふうに思っておりますけれども、その辺のちょっと不整合な感を否めないというところがございます。

 三点目といたしまして、一番懸念をしている点でございますけれども、政府の説明する条約の加盟の理由として特に国際貢献ということをおっしゃってはおられるものの、やはり、その背景には原発の輸出促進という側面があるのではないかというふうに考えておりますが、その点について御見解をぜひお伺いをさせていただきたいと思います。

田中政府参考人 CSC締結の目的ということについてでございます。

 原子力事故は決して起こしてはいけないという強い信念を持って進めておりますけれども、万々が一起こった場合の国際的な体制を整備するということにつきましては、原子力事故を実際に起こしてしまった当事国としての責務だというふうに考えてございます。CSCの締結により、我が国の原子力事故に対する姿勢ということを国際的に明確に示すことになるというふうに思ってございます。

 また、我が国の原子力損害賠償制度が国際標準に適合したものであるということが海外にも認知されるということで、福島原子力発電所事故の廃炉あるいは汚染水作業に、外国の企業、特に、米国企業が参入するに当たっての活動環境ということが明確になるということにもつながるというふうに考えてございます。

 こうした点に鑑みて、CSCの締結及び関連国内法の整備ということを行おうというふうに御審議いただいているところでございまして、原発輸出の促進ということを目的とするということではございません。

青木委員 政府は、今回CSCを締結しようとする理由といたしまして、原子力事業者への責任集中、この制度が我が国の原子力賠償制度となじむということを挙げておられます。そして、原発メーカーの免責を含むこの条約の締結というのは、やはり、日本からの原発輸出の環境整備を行うものにほかならないというふうに考えられるわけであります。

 そもそも、日本におきましても原発メーカーを免責する制度を採用しております。そのことによって、実態として、現在、被害者の救済の程度を下げてしまっているのではないかというふうに考えております。日本が民間の責任保険や政府補償等の制度を設けてはいるものの、やはり賠償の措置額が低過ぎるというふうに考えております。

 原発メーカーにも応分の負担をしてもらうという形でこの賠償措置額を上げていくべきではないかというふうにも考えるのですが、その点についてはいかがでしょうか。

田中政府参考人 原子力損害が発生した場合に原子力事業者に賠償責任を集中させるということは、現行原賠法あるいはCSCその他の国際的な原子力損害賠償に関する共通のルールになってございます。

 これらは、賠償請求の相手方ということを容易に認識することができるという点において被害者の保護ということに資するものであることから、原子力損害賠償制度としては合理的なものであろうというふうに考えているところでございます。

青木委員 そのような制度の中でありますと、原発のプラントのメーカーさんは責任が逃れられるといいますか、免責されているという状況の中でこうした条約を締結して参加をしていくということは、やはりどうしても原発の輸出ということを疑念として感じざるを得ないわけでございますが、この条約締結とは直接関係がないとおっしゃいましても、原発の輸出ということについてはどのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか、そもそもとして。

多田政府参考人 お答え申し上げます。原発の輸出の一般論でございます。

 我が国の原子力発電に関する技術は非常に高いレベルを世界の中でも保有しております。したがいまして、先般の福島第一の事故後であっても、世界各国から我が国の原子力技術を求める御要望は届いてきているところでございます。

 今回の事故の経験も踏まえ、原子力発電という、原子力の平和利用という形で我が国として世界に貢献していく一つの手段であるというふうに認識をいたしております。

青木委員 この原発輸出ということについてはぜひ下村大臣にもその御所見をお伺いをさせていただきたいというふうに思っておりますが、今、日本が行うべきことは、このCSCの締結に応じた国内法の制度の小手先の手直しではなくて、やはり、日本の原子力損害賠償制度そのものの抜本的な改正ではないかというふうに考えております。今指摘をいたしましたように、賠償措置額の拡充を図るためには、やはり、原発メーカーも巻き込む形で進めることも一案ではないかというふうに考えているところでございます。

 そして、もう一点お伺いをしておきたいのは、これは条約加盟を前提とした質問で、あえて質問させていただきますけれども、我が国が、原子力事業者に無限責任を負わせた上で政府が必要な援助を行うという制度を採用しております。それに対してCSCでは、事故発生国が定める義務的な賠償措置額と加盟各国からの拠出金を超える部分は事故発生国の制度によるものとされています。

 拠出金は、加盟国が我が国を含む六カ国であれば、最高でも数百億円規模のようでございます。事故発生国が三億SDRぎりぎりの賠償措置額と拠出金以上の責任は誰も負わないという制度を採用している国があったとして、総額で一千億円に満たない程度の原資の中でしか賠償されないということになると思います。

 福島の経験と責任を負っている日本といたしまして、仮に条約を締結するのであれば、単にでき合いのこの条約に参加をするという姿勢ではなく、世界の人々が被害を受けてはなりませんけれども、仮にその場合があったとして、そのときに適切な賠償がなされるように、他国にも日本のような事業者の無限責任と政府の支援というその制度を導入させるような条約の締結ということも考えられるのではないか。それくらいの覚悟が持てなければ、逆に言えば、原発の安全を保証できないということだというふうに思います。

 この点についてはいかがでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 CSCにつきましては、何度か申し上げておりますけれども、環太平洋地域を中心に締結、署名をされておりまして、将来的にアジア太平洋地域に共通の原子力損害賠償制度となることが期待をされているものでありますけれども、ほかの条約と比べましても、最低賠償措置額ですとか拠出金制度といったもので被害者保護にも十分配慮をしているというように考えているところでございます。

 CSC条約につきましては、特に、事業者が負う賠償責任額の上限を決めているものではございません。原子力事故による損害額が賠償措置額と拠出金の合計額を上回った場合には、各国の国内法に従って対応がなされるということになると承知をしております。

 したがいまして、締約国の原子力事業者の責任に上限がないこともCSCは許容しているというように考えているところでございます。

青木委員 最後に、特に原発輸出ということについてぜひ下村大臣の御所見をいただきたいというふうに思います。

 今伺ってきたその制度設計の中で、決して日本として無責任な態度はとれないというふうに思っております。福島原発事故を起こした日本として、世界に対して責任があるということは十分理解をいたしております。ただ、どのように責任を果たすのか、その国際貢献のやはり中身が問題だというふうに考えます。

 まずは福島原発の収束。現存する原発についても、廃炉とごみの処理の技術、これをまず確立することが責任を果たすことの一点だというふうに思います。

 そして、もう一つは原発の再稼働。これもごみをふやしていくだけであります。

 ただ、この再稼働以上にやってはならないことが、やはり原発の輸出だというふうに考えております。いまだ事故の収束も、そして被害者の救済もめどが立たない中で、世界を同じ危険に巻き込む可能性がある原発をみずからの利益のために輸出をするということはあってはならないし、たとえ他国がその輸出を望んだとしても、日本の現状を伝えて、同じ轍を踏ませない、そうした役割、使命が日本にあるのではないかと率直に思うわけでございますけれども、ぜひ、教育問題をつかさどる、そのトップにおられる下村大臣の御所見を伺わせていただきたいと存じます。

下村国務大臣 先ほど政府参考人から答弁があったとおりでありますが、最も世界の中で安全確認の基準を高めて、そして世界から信頼をされる、そういう中、要望があった国に対して我が国は適切な対応をするということは、これは必要なことであるというふうに考えております。

青木委員 ただ、やはり原発の絶対安全ということはあり得ないことであります。まだ福島の事故の収束はできておりません。どのようにこれをおさめていくかという、まだこれから世界の技術と英知を結集して取り組まなければならない状況にある中で、その事故を経験した、起こしてしまった日本が、事故が起きた後に何の保証もない中で原発の輸出をしていくということは、これは教育的観点からももう少し下村大臣にもお考えいただきたいなと。

 常識的に考えて、自分の利益のために、まだ日本がこの現状の中で世界各国をまた同じ惨禍に巻き込むのか。事故の後、あれだけ怖い思いをし、そして今でも苦しんでおられる方がいる中で、むしろ日本はそうした現状を伝えていくべきなのではないかというふうに考えます。

 東洋思想を持つ日本は、やはり、自然との共生、調和というものをその理念として捉えているわけであります。今、地球環境あるいは自然との共生という観点からも、たしか数千万種類の生物が生きているというふうに思いますけれども、そうした生物にとりましては、この条約というものは人間の世界でやっていることであって、日本といたしましては、西洋的な考え方ではなくて、やはり東洋の思想をもう一度その原点に立ち返って、日本こそが地球環境や自然との共生という観点からも、原発さらには原発の輸出ということについてもう一度考えていきたいなというふうに思っております。

 大変まとまらなくて申しわけありません。質疑時間が終了いたしましたのでこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。

西川委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 本日は東京電力から木村常務執行役においでいただいております。大変忙しい中、ありがとうございます。

 早速でありますけれども、改正案に関連してまず東京電力にお聞きをしたいと思います。

 先日の当委員会でも井出委員の方からも質問されていましたが、東京電力は、福島県浪江町と飯舘村蕨平地区住民による集団申し立ての案件で、原子力損害賠償紛争解決センター、いわゆる原発事故ADRの和解案の中心部分を拒否をされております。

 おのおのの案件について、拒否の理由を簡潔にお答えください。

木村参考人 お答えいたします。

 本事故によりまして被害を受けられました方々は極めて広範囲に及んでおりまして、適正な賠償を行うためには、公平性、透明性の確保に最大限留意する必要があると考えております。

 このため、弊社といたしましては、国の紛争審査会が公開の場での審議を経て定めていただきました中間指針に基づき賠償をさせていただくことを基本としております。

 中間指針に類型化されていない損害や損害の程度についてしんしゃくすべき個別の御事情がある場合についても、指針の趣旨を踏まえて、おのおのの御事情に応じて合理的かつ誠実に対応していくこととしておりまして、これは、ADRセンターの手続においても、このような考え方のもと、和解案の最大限の尊重ということをお約束させていただいているところでございます。

 しかしながら、浪江町、飯舘村蕨平地区の問題につきましては、一律での賠償を行った場合に、中間指針に基づき賠償を受けられているほかの方々との公平性を著しく欠くことになるため、本事案の和解案につきましてその内容を丁寧に検討をさせていただいた結果、一部のみの受諾回答とさせていただいたものでございます。

 しかしながら、本件につきましては、解決に向けて何度もやりとりをさせていただいておりまして、今現在も話し合いが続けられている段階でございまして、引き続き真摯に対応させていただきたいと考えております。

 以上です。

吉川(元)委員 参考人は御存じかどうかわかりません。私は以前、本委員会で東京電力の茨城県内の風評被害補償の打ち切りの案件について取り上げました。その際、東京電力について大変不誠実であることを指摘し、また、下村大臣も同様のお考えを示されました。今、答弁を聞きましても本当に変わっていないなというふうに思いますし、ADRの和解案をこうも真っ向から拒否する東京電力の姿勢は驚きすら感じます。

 続けてお聞きします。八月四日、原発事故ADRの総括委員会が今回の東電の対応について所見を述べています。これを読みますと、和解仲介手続とは、仲介委員が当事者双方、すなわち被害者と東電の双方の立証や主張で認められる具体的事実をもって、相当因果関係が認められる損害を賠償の対象とし、和解案を出している。したがって、損害賠償の中間指針から乖離した和解案など存在していないのだ、こう指摘をされております。さらにつけ加えると、東電の姿勢は、原発事故ADRの役割を阻害し、原賠法が定める損害賠償システム自体の信頼を損ねるものだ。大変厳しい口調で非難をしております。

 この総括委員会の所見、どのように受けとめておられるのか、お答えください。

木村参考人 お答えいたします。

 八月四日にADR総括委員会の方からお示しいただいた所見を、私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、和解仲介案につきまして最大限の尊重というお約束に沿って、これまで、和解の早期成立に向けて対応させていただいております。ほとんどの申し立てにつきましては、全部和解として解決を図ってきております。

 弊社といたしましては、おのおのの御事情に応じて誠実に対応させていただくことをお約束しておりまして、仲介委員からお示しいただいた和解案あるいは和解手続自体を軽視しているということは決してございません。基本的に、ADRセンターの和解案を否定するということではなく、中間指針に明示的には賠償の対象とされていないものでも、個別具体的な御事情がある場合には、その御事情に応じて賠償の対象となり得るというふうに考えてございます。

 一方で、浪江町、飯舘村蕨平地区の事案のように一律での賠償を行った場合に、先ほど来の申し上げたとおりでございますけれども、中間指針に基づき賠償を受けられているほかの方々との公平性を勘案いたしまして、和解案をそのままお受けすることが難しいというふうに考えたわけでございます。

 しかしながら、その件につきましても、個人あるいは各世帯から受けられた損害におきましてしんしゃくすべき個別の御事情があるという場合には、お申し出に応じて、一律の賠償を求める本事案とは別に協議、対応させていただきたいと考えております。

 いずれにいたしましても、被災された方々に少しでも早く御帰還をいただき、もとのような生活を取り戻していただけるよう、和解案を尊重するというお約束のもとで、円滑かつ迅速なADR手続に資するよう最大限尽力させていただきたいと考えております。

 以上でございます。

吉川(元)委員 軽視をしていないというようなことを言われておりますが、実態として軽視をされている。当のADRの総括委員会が非常に厳しい口調で非難をされているわけです。他の方との公平性と言って他の方を出してきて、自分たちは正しいんだということは言わないでいただきたいというふうに思います。

 端的にお聞きしますが、今回の和解案について受諾する方向で再度検討するお考えはあるのかないのか、イエスかノーでお答えください。

木村参考人 お答えいたします。

 本事案に関しまして、解決に向ける努力といったものを継続させていただきたいと考えております。今現在も、和解仲介手続の中で何度もやりとりをさせていただきながら話し合いが続けられております段階でございますので具体的な回答は差し控えさせていただきますが、解決に向けて真摯に努力してまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 先ほど言いました茨城県での風評被害の補償打ち切りの案件でも指摘をさせていただきましたけれども、東京電力は原子力損害賠償機構との連名で、新・総合特別事業計画、ことし一月に政府からも認定を受けております。ここで、賠償のあり方として「三つの誓い」を打ち出しています。「最後の一人まで賠償貫徹」、「迅速かつきめ細やかな賠償の徹底」、そして三番目が、今ほど何度も言われておりますが、「和解仲介案の尊重」です。

 この「和解仲介案の尊重」で何というふうに書いているか。先ほども少しお話がありましたが、「中間指針第四次追補においては、東電に対して、指針で賠償対象と明記されていない損害についても、指針の趣旨を踏まえ、合理的かつ柔軟な対応と被害者の方々の心情にも配慮した誠実な対応を求めている。東電としては、かかる指針の考え方を踏まえ、紛争審査会の下で和解仲介手続きを実施する機関である原子力損害賠償紛争解決センターから提示された和解仲介案を尊重する」、こうはっきり書いているじゃありませんか。

 もっと言いますと、「原子力損害の賠償」の頭の部分では、「東電と被害者の方々との間に認識の齟齬がある場合であっても解決に向けて真摯に対応するよう、ADRの和解案を尊重する。」こう明記をされております。

 今回の事案、東電は和解案の主要部分を拒否し、和解案を全く尊重していないではないですか。この新・総合特別事業計画、みずからが約束されたことをみずからが破るんですか。

木村参考人 お答えいたします。

 先ほど来申し上げておりますけれども、当社といたしましては、当社の原子力発電所に起因したこの事故におきまして避難を余儀なくされている方々の損害賠償につきまして、とにもかくにも賠償を貫徹するということで、少しでも早くもとの生活にお戻りになれるよう最大限の努力をしていく所存でございます。

 したがいまして、このADRセンターの問題につきましても、中間指針に明示されていないものであっても、個別に御事情をお伺いし、個別にお取り計らいするべきものがあるとすれば、それは真摯に対応してまいりたいというふうに考えているわけでございます。

 以上でございます。

吉川(元)委員 真摯に対応していないから、ここに来ていただいてお話をしているわけでありまして、ちょっと大臣の方に伺いたいというふうに思いますが、申し立てをしている方々は被害者であり、東電は加害者です。長期避難で家族ばらばらの生活をしている、ストレスがたまる一方の方々に、もっと言うと東電は、文句があるなら裁判に訴えろという姿勢すら感じますし、大変ゆゆしき問題だろうというふうにも思います。

 先ほど他の委員からも質問がありました。ADRの和解案に対し、賠償水準が低い、応じられぬと被害者の方々がおっしゃるのであればこれは理解をできます。そうではなくて、総合特別事業計画で和解案を尊重すると言いながら、加害者が拒否できる制度にしてしまったら、被害者は、日常の苦痛に加えて、さらに裁判の負担が重くのしかかることになります。東電のお話を聞いておりますと、羊頭狗肉もしくは面従腹背ではないか、そうとすら感じます。

 大臣、これまでのやりとりをお聞きをして、東電が新・総合特別事業計画に沿ってADRの和解案に対応しているというふうにお思いですか。御認識を伺います。

下村国務大臣 原子力損害賠償紛争解決センター、御指摘の八月四日の総括委員会所見においても、東京電力に対して非常に厳しい指摘が所見としてもされたわけでございます。

 個別具体的なことについては、今、和解仲介手続が進められている段階でありますからコメントは差し控えますが、一般論で言えば、東京電力においては、みずからが表明している和解案の尊重の趣旨に鑑み、誠意ある対応をしっかりしていただきたいと思います。

吉川(元)委員 しっかりと文部科学省としても指導していただきながら、あくまで被害者に寄り添った補償をしっかりしていただきたいというふうに思います。

 時間がもう余りありませんので、少し質問を飛ばしながら質問させていただきたいと思います。

 今回、損害賠償が誠実に行われていない原因の一つとして、原子力損害賠償法が実はあるのではないかというふうにも私は思います。

 昨年五月の本委員会でも指摘をさせていただいたのですが、現行の原子力損害賠償法、いわゆる原賠法は、原発事故に対する被害者補償を目的とした、それだけではなくて、文を読みますと、「もつて被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的」としております。つまり、賠償リスクを原子力事業者に集約し、国が原子力事業者を支援することで原子力事業者の法的安定性を担保する、そういう色合いが強いと言わざるを得ません。

 その意味では、徹底的な被害者救済を目的にした法制度となるように原賠法の抜本的な改正が必要だ、そのように私は考えております。大臣御自身も五月の委員会で、私のこうした指摘に対して、「確かに、御指摘のような疑問というのはあり得るかなと私も思いました。」こう述べられておられます。

 今回、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法制定時の附則に盛り込まれた原賠法の早期の見直しが見送られ、CSC条約に沿った条文整備に限定されたこと、これは極めて残念であります。

 福島原発事故から三年以上が経過し、なぜ原賠法の抜本改正に至らないのか、その理由をお聞かせください。

下村国務大臣 これまでも、政府において原子力損害賠償制度の見直しについてさまざまな取り組みは行ってまいりました。

 具体的に、原子力損害賠償紛争解決センターの整備や時効特例法の制定、昨年末に閣議決定された福島再生加速化方針におきまして、今回の福島第一原発事故に伴う賠償費用等の負担や事故収束への関与について国と事業者との役割分担を明確化し、さらに、さきの通常国会で改正された原子力損害賠償・廃炉等支援機構法におきまして、事故が生じた場合に、賠償と事故収束の両面から事業者を支援する枠組み等を整備したところでございます。

 CSC以外の原子力損害賠償制度の課題については、現在進行中の福島の賠償の実情等を踏まえつつ、中長期的なエネルギー政策も見通し、今まで、このCSCの締結について内閣官房副長官が主宰をする関係副大臣会合で議論をしてまいりましたが、この副大臣等会合で引き続き検討を政府として進めていくこととしているところであります。

吉川(元)委員 しっかりと早期に検討を進めていただき、被害者救済を目的とした法制度となるように強く強く要望したいというふうに思います。

 余り時間がありませんので、次に、今回のCSC並びにその国内法の整備ということでありますけれども、輸出の促進が目的ではないかというような懸念、これはほかの委員からも出されておりますが、この点についてお聞きをいたします。

 まだ事故の原因もはっきりしていない中で政府が原発輸出に前のめりになっていくこと、これはもう非常に理解しがたい行為であります。

 CSC条約というものは、原賠法の問題点と同様、責任集中主義のもとで原子炉メーカーなどが免責とされております。したがって、CSC条約に加盟すれば原発輸出を促進することになるのではないか、条約加盟は原発輸出促進を目的にしたものではないかという指摘がありますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。端的にお答えください。

田中政府参考人 CSCの締結ということでございますけれども、原子力事業者への責任集中というのは、被害者の方々が原子力事業者に対してわかりやすくするというようなことがあろうかというふうに思っておりますし、国際的なスタンダードだというふうに思ってございます。

 CSCの締結によって原子力事業者というところの責任集中等について変更するというような考えは、持ってございません。

吉川(元)委員 輸出を目的にしたものではないのかというふうに聞いているわけです。

田中政府参考人 恐縮でございました。

 CSC締結の意義というのは、これまで申し上げているとおりでございまして、国際的な原子力損害賠償制度の構築への貢献、あるいは、被害者の方々が公平かつ迅速な補償が実現できるようなこと、あるいは、原子力損害賠償に関して適用されるということの法律についての予見性が向上するということでございまして、原発輸出の推進ということを目的としたものではございません。

吉川(元)委員 今、目的としたものではないというふうにおっしゃいました。

 平成二十三年十一月十五日付で文部科学省原子力損害賠償対策室が原子力委員会に、ある資料を提出しております。事故から八カ月後に出された資料であります。その中で、「CSCに加入した場合に考えられる主要な意義」、今、田中政府参考人がおっしゃられたことも書かれております。

 しかし、そのトップに何と書いてあるか。「原子力事業者への責任集中」ということで、「我が国メーカーが海外にプラント輸出する場合、輸出先国がCSC締約国であれば、当該国で原子力事故が発生した場合、その原子力事故の責任を免除される。」これが意義なんだと。一番最初に、意義の一番トップにこれを書いてあるわけです。

 それなのに、なぜ今そのことについて言わないんですか。

田中政府参考人 文部科学省としては、原子力損害賠償制度の検討ということについては、平成二十年度に、先ほども申し上げましたけれども、原子力損害賠償制度のあり方についての検討会というのを開催して、そこについての検討を行ってまいりました。

 原子力損害賠償に関する国際条約への対応ということについてもこの検討の一環として行われまして、当時は、越境損害をこうむった我が国国民の保護に真に資するか、あるいは、原子力産業の国際展開の支援につながるかといったような点について幾つかの結論が得られたということでございますけれども、今回のCSC締結ということについては、再三申し上げているとおりでございまして、原発輸出を推進することを目的としたというものでは考えてございません。

吉川(元)委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、文科省自身が資料として一番最初に挙げているのが、プラント輸出の場合、「責任を免除される。」こういうふうに原子力委員会に資料を提出しているんですよ。それを、今になってこれを外すというのはちょっとおかしいんじゃないか、そういうふうに思わざるを得ません。

 ほかにも、無限責任が曖昧なのではないか等々いろいろな疑問がまだまだあります。もっと質問をしなければいけない点もあるということを最後に言い添えまして、私の質問を終わります。

西川委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 原子力損害賠償関連二法案について質問をいたします。

 本法案は、原子力損害の補完的な補償に関する条約、CSC加入に伴う国内法整備が目的でありますけれども、我が国はこれまで原子力賠償に関する国際条約には加入してきませんでした。

 これはまず大臣に前提をお伺いするんですが、今回なぜこのCSCに加入することになったのか、お答えいただけますか。

下村国務大臣 原子力損害賠償制度について、我が国としては、被害者保護の観点から高い水準の国内制度が既に整備されていること、また、我が国が他の原子力利用国と陸続きではなく、越境損害の対応に関する問題が顕在化していなかったことなどから、直ちに原子力損害賠償の国際枠組みに参加しなければならないという状況にはなかったわけでございます。

 他方、従来から、原子力損害賠償制度の国際的枠組みに関しては、アジア諸国が参加する可能性や我が国の原子力損害賠償制度との整合性等を踏まえて、三系統ある条約のうち、CSCを最も有力な候補として加盟に向けた検討を行ってきたという事実もあります。

 そうした中で、特に福島第一原子力発電所事故後におきまして、事故の当事国として、原子力損害に関する国際的な賠償制度の構築に貢献することが我が国の責務である、また、CSCの発効後は、近隣諸国等に働きかけを行い、アジア環太平洋地域等における国際的な原子力損害賠償の枠組みの構築に努めていくことが必要であるということが認識されたため、我が国としても、早期にCSCを締結する必要があると考えたところであります。

宮本委員 今お話しになった原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会です。原子力賠償にかかわる条約には、今大臣の答弁にございましたように、改正パリ条約、改正ウィーン条約、そしてこのCSCと三つの条約がございます。二〇〇八年に設置された先ほどの在り方に関する検討会では、この三条約をそれぞれ検討をしております。

 そこでこれは研究開発局長に聞くんですけれども、この検討会の報告書で、仮に条約の締結を想定した場合の我が国の選択肢としてどのように述べておりますか。

田中政府参考人 ただいま御指摘がございました原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会ということにつきまして、三系統について議論をしてございます。

 その議論の中身を御説明申し上げますと、主な締約国が、パリ条約はEU諸国とスイスであること、また、ウィーン条約は中東欧、中南米の国であって、我が国との地理的な関係が薄いということに対して、CSCは、他の条約に対して免責事由などの条件が緩やかであること、あるいは拠出金制度を用意していることなどから、アジア諸国も含めて広く参加が見込めること、あるいは、我が国の原子力産業等と密接な関係を有する米国がCSCを批准していること等を踏まえて、国際条約の締結を本格的に検討する場合の選択肢としては、CSCを念頭に置くことが現実的であるというふうに考えているところであります。

宮本委員 先ほど来、輸出ということについて否定するような答弁が出ておりましたけれども、私は端的に申し上げて、このCSCに加入する狙いは、アメリカとの関係で、ともに原発輸出を進める国際的な枠組みづくりを進めるものだと断ぜざるを得ないんです。

 それは勝手に言っているわけじゃなくて、現にことし六月に開催された民生用原子力協力に関する日米二国間委員会第三回会合、ここに結果概要をお持ちいたしましたけれども、この中では、「原子力損害賠償に関し、日本と米国は、原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)に対する支持を再確認した。日本は、二〇一四年中に国会にCSCを提出するとともに、CSCへの加入を他国に働きかけることを通じて、国際的な原子力賠償の枠組みを構築し、それによりIAEAが採択した原子力安全に関する行動計画の主要な目的を達成するために、米国と協働する意図を再確認した。」とはっきりあけすけに、つまりアメリカと約束をして、そしてこのCSCというものを稼働させるといいますか、これ自身が動くようにするために、二〇一四年中には国会にこれを出すんだということまで確約をしている。

 先ほど、社民党の吉川議員の質問に輸出ということではないという否定の答弁をされましたけれども、原子力産業の国際展開に資するということももちろん答弁の中にあったわけですから、当然そういうことを排除するものではない。これはよろしいですね、局長。

田中政府参考人 結果としてそういう環境が整えられるということだというふうに理解してございます。

宮本委員 結局、原発輸出をにらんだ条約締結だと言わざるを得ません。

 原発の輸出は、相手国及び周辺国に回復不可能な人命と人権の侵害、環境破壊の危険をもたらすものであり、断じて行うべきでないと申し上げなくてはなりません。

 我が国がなすべきは、全ての原発の稼働を停止し廃炉に進むこと、福島の皆さんへの完全補償を行うことであります。

 原子力損害賠償の現状は、東京電力の対応については、昨年の当委員会で私も問題にいたしました。しかし、その後も東京電力の対応は全く改善されていないと言わなくてはなりません。

 まず東京電力、きょうは参考人で来ていただいておりますが、東京電力に確認いたしますけれども、東京電力は、新・総合特別事業計画に原子力損害の賠償として「三つの誓い」というものを掲げておりますけれども、この「三つの誓い」とはどのようなものですか。

木村参考人 お答えいたします。

 被害者の方々に早期に生活再建の第一歩を踏み出していただくための「三つの誓い」ということで掲げさせていただいたものでございます。一つは「最後のお一人まで賠償貫徹」、二つ目は「迅速かつきめ細やかな賠償の徹底」、三つ目は「和解仲介案の尊重」でございます。

 以上です。

宮本委員 この「三つの誓い」の冒頭には、「今後は、被害者の方々に早期に生活再建の第一歩を踏み出していただくために、これまでの「五つのお約束」を包含し、さらに充実・拡充していくことをより明確な意思として示すため、」に三つの誓い、約束から誓いにグレードアップするということまでおっしゃっているわけです。

 それで、全町避難を強いられている浪江町の町民は、被害実態にふさわしい損害賠償を求めて、町民の七割を超える一万五千人以上が昨年五月に原子力損害賠償紛争解決センターに集団申し立てを行いました。

 原子力損害賠償紛争解決センターは、この申し立てを受けてどのような対応をしているのか、研究開発局長、お答えいただけますか。

田中政府参考人 原子力損害賠償紛争解決センターにおける和解の仲介ということにつきましては、原子力損害賠償紛争審査会が策定をいたしました指針を踏まえ、申立人の方の個別具体的な事情に応じた和解の仲介ということが行われているところでございます。

 先生御指摘がございました、浪江町の住民の方々から昨年五月にADRセンターへ申し立てがあった件につきましては、個別具体的な内容を御説明するということは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、ことしの三月二十日、ADRセンターから申立人と東京電力に対し和解案が提示をされ、五月二十六日には申立人から和解案を受諾する旨の回答がございまして、六月二十五日、東京電力から、ADRセンターの和解案の一部を受諾し、その余は受諾できないとする回答があったというふうに承知してございます。

 八月二十五日に、ADRセンターから東京電力に対して和解案の趣旨などに対しての補充書ということを提示したものの、九月十七日、東京電力から回答を変更しないということの回答がなされ、現在、先ほど東京電力からも御説明ありましたけれども、ADRセンターにおいて協議が継続されているというふうに承知をしているところでございます。

宮本委員 今御答弁あったとおり、東京電力は、回答期限を延期した上、受け入れを拒否し続けているわけです。

 東京電力に聞きますけれども、なぜこの受け入れを拒否しているんですか。

木村参考人 お答えいたします。

 弊社の基本的な考え方は先ほどお答えさせていただいたとおりでございますけれども、浪江町の事案のように、いわゆる一万五千人の方のお申し立てでございますけれども、一律での賠償ということになろうかと思いますが、これは、中間指針に基づきまして賠償を受けられている方々、ほかの市町村の方々との公平性を著しく欠く結果となってしまうということでございまして、本事案の和解案につきましてその内容を丁寧に検討させていただいた結果、一部のみ受諾回答とさせていただいたものでございます。

宮本委員 ADRから示された仲介案をその趣旨に沿って受け入れるということがなぜ公平性を欠くことになるのか。あのADRの仲介案は公平でないということをおっしゃっているわけですか。

木村参考人 今現在、この浪江町の件につきまして、何度もやりとりをさせていただきながら話し合いを進めておるところでございますので、個別の内容につきましては御回答を遠慮させていただきたいと存じますけれども、一律ということになりますと、今まで避難を余儀なくされている方が受けられている賠償金額との乖離が出てしまうということでございます。

 以上でございます。

宮本委員 「中間指針やその考え方から乖離している、」こういうふうに東電は主張しているわけです。あるいは、「相当因果関係が明らかに認めがたい」、こういうことも、これはホームページでも繰り返し説明しておられます。

 これは研究開発局長に聞かなければなりません。紛争解決センターが示している和解案というものは、中間指針やその考え方から乖離しているんですか。

田中政府参考人 ADRセンターが八月四日付に公表している総括委員会の所見というものを御紹介を申し上げたいと思います。

 その所見によりますと、和解仲介手続において仲介委員、これはADRの者でありますけれども、仲介委員が提示する和解案に中間指針等から乖離したものあるいは客観的事実からすると原発事故との相当因果関係が明らかに認めがたいものは存在しないということが、この所見において明らかにしているところでございます。

宮本委員 今は文科省からも、中間指針等から乖離したものは存在しない、また、原発事故と相当因果関係が明らかに認めがたいものは存しない、こういう答弁もあったわけですが、東電はそれでも、乖離している、認めがたい、こうおっしゃるわけですね。

木村参考人 お答えいたします。

 相当因果関係というのは、私どもの原子力発電所の事故との関係でございます。したがって、浪江町の皆様が避難に伴いまして精神的避難をされているということにつきましての損害賠償は、相当因果関係があるわけでございます。

 しかしながら、中間指針でお示しをいただいたもので、福島県の避難をされている方々に賠償されている金額と、今回はさらに上乗せをした和解案の御提示をいただいて、その点につきまして今話し合いを進めているというところでございます。

宮本委員 再度、東電が明らかにしている新・総合特別事業計画、全文ここにありますけれども、戻るんですけれども、先ほども少し言葉が引用されておりました。「東電と被害者の方々との間に認識の齟齬がある場合であっても解決に向けて真摯に対応するよう、ADRの和解案を尊重する。」と明文で書かれているわけですけれども、明確にこの明文に反するんじゃないですか。

 何か言い分はありますか。

木村参考人 そのように書かれておりまして、私どもの方でも、まさに解決に向けて、そして、浪江町の皆様がいち早く御帰還されるように努力してまいる所存でございます。

宮本委員 いや、答えになっていないですけれども。そごがある場合でも和解案を尊重すると言いながら尊重していないじゃないかと申し上げているので、頑張りますと言っていただいても、現実に尊重していないわけですから。

 これはどうするんですか。

木村参考人 本事故により被害を受けられました方々は極めて広範囲に及んでおりまして、適正な賠償を行うためには、公平性、透明性の確保に最大限留意する必要があると考えております。

 このため、弊社といたしましては、中間指針に基づき賠償することを基本としているわけでございますけれども、中間指針に類型化されていない損害や損害の程度について個別の御事情がある場合につきましては、誠実に対応していくこととしております。

 紛争審査会のもとにございますADRの手続におきましても、このような考え方のもと、和解案を最大限尊重してまいります。

 いずれにいたしましても、被災された方々に少しでも早くもとのような生活を取り戻していただけるよう、円滑かつ迅速なADR手続に資するよう、今後とも最大限尽力してまいります。

宮本委員 それは、誠実に対応するのは当たり前なんですよ、専らこの事故の原因は東電にあるわけですから。

 しかし、ADRの和解の手続を尊重する、和解案を尊重すると言いながら、現にこういう状況が続いている。浪江町だけじゃありませんよ。飯舘村の蕨平地区の集団申し立てについても東電は和解案を拒否しております。これはもう、東電対応をこのまま放置することは許されないと思うんですね。

 ずっと大臣も、東電と私のやりとり、また研究開発局長の答弁も聞いていただいて、こういう東電の姿勢に対して沈黙を続ける政府の姿勢に不信と怒りの訴えが寄せられ始めております。浪江町の集団申し立ての参加者のうち、七十五歳以上の高齢者は二千五百名以上おられまして、九月までに二百三十三人も亡くなっておられるわけです。

 東電による和解案の受け入れ拒否は、損害賠償請求を円滑、迅速かつ公正に解決するための中立公正な国の機関として設けられた原子力損害賠償紛争解決センターの存在意義を否定するものだと言わなければなりません。

 大臣、これはもう東電に対して、誠意ある対応を期待しているだけじゃなくて、踏み込んで、和解案を受け入れるよう強く指導すべきではありませんか。

下村国務大臣 政府は、文部科学省は、沈黙をしているということは全くありません。これはぜひ訂正をしていただきたいと思います。

 それから、その前に、先ほど日米の話をされていましたが、質問がなかったので答弁する機会がなかったんですが、私自身がアメリカでモニーツ・エネルギー長官とその話をいたしました。これは、先ほどから、CSCによって我が国が海外に原子力発電所を輸出するための締結ではないかということが繰り返し言われているので、そうでないということについて、ちょっと明確に私の方から答弁をさせていただきたいと思います。

 これはあくまでも、福島第一原子力発電所事故後において、事故の当事者国として、原子力損害に関する国際的な賠償制度の構築に貢献することが我が国の責務であるというふうに考えて締結することにしたわけでありまして、もし原子力発電所を海外に輸出するという戦略があるのであれば、とっくにこのCSCは進めていたわけであります。そういう背景については御理解いただきたいと思います。

 それから、浪江の件については、今、和解仲介手続が進められている段階であり、個別具体的な例については、これは現在においてコメントをする状況ではまだないというふうに思いますが、しかし、東京電力においては、みずからが表明している和解案の尊重の趣旨に鑑み、適切な対応をするように、文部科学省、国としても強く指導してまいりたいと思います。

宮本委員 そもそもは、精神的被害については、避難が長期化し帰還が困難になっている地域住民の被害の深刻な実情を踏まえて、精神的損害に関する追加の指針の策定も進めるべきだという声が出ております。

 これは大臣、そういうことをちゃんと検討すべきじゃないですか、精神的被害に対する指針。

下村国務大臣 ADRセンターにおける和解の仲介については、指針の趣旨を踏まえ、申立人の個別具体的な事情に応じて和解の仲介を行っております。

 御指摘の、浪江町の住民の方々からの申し立てについては、現状においてADRセンターにおいて和解仲介の手続が進められている段階であり、注視をしてまいりたいと思います。

 原子力損害賠償紛争審査会の指針については、今後、類型化が可能で、一律に賠償すべき損害の範囲や損害項目の目安について新たな状況が発生した場合に見直されるものと承知しており、本件を受けて直ちに見直しの議論が行われる状況にあるとは認識しておりません。

 文科省としては、引き続き、公正かつ適切な賠償が迅速に進められるよう取り組んでまいります。

宮本委員 私は、東電がこのADRの和解案を受け入れることは当然だと思うんですけれども、こういう事態が起こっている以上、やはり和解案への拒否ということを再発させないために、センターの和解案の原則受諾を義務づけるなど、片面的裁定機能をきちっと法定化するということも視野に検討を進めるべきだと考えますけれども、大臣、これはいかがですか。

下村国務大臣 仮に、東京電力に対し、訴訟手続を経ずにADRセンターの和解案の受諾義務を課すとすれば、裁判を受ける権利との関係で、法的に困難な点が大きいと考えます。

 東京電力は、国が認定した新・総合特別事業計画において、和解仲介案を尊重し、迅速な和解の実現に努めることをうたった、先ほど御指摘ありましたが、被害者の方への「三つの誓い」を徹底することを明記しておりますので、文科省として、被害者の方々に対して迅速、公正、適正な賠償を実現するための取り組みについて、東京電力に対してしっかり対応を指導していきたいと思います。

宮本委員 もちろん、裁判を受ける権利を奪ってしまえということは言っていないんですけれども、裁判に訴えない限りは受諾しなければならないという形をやはりとるべきだという提言も弁護士会から出されているわけです。

 私は、やはり政府は福島第一原発事故の完全賠償を進めるために全力を傾けるべきであるというふうに思うんです。そのことを強く指摘をして、本日の質問を終わります。

西川委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十二分散会


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