衆議院

メインへスキップ



第6号 平成26年11月7日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十六年十一月七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西川 京子君

   理事 櫻田 義孝君 理事 冨岡  勉君

   理事 萩生田光一君 理事 福井  照君

   理事 義家 弘介君 理事 中川 正春君

   理事 鈴木  望君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    池田 道孝君

      池田 佳隆君    石崎  徹君

      石原 宏高君    小田原 潔君

      大西 英男君    金子万寿夫君

      神山 佐市君    菅野さちこ君

      木内  均君    木原  稔君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    桜井  宏君

      新開 裕司君    瀬戸 隆一君

      野中  厚君    馳   浩君

      藤丸  敏君    細田 健一君

      前田 一男君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君   山本ともひろ君

      渡辺 孝一君    菊田真紀子君

      階   猛君    松本 剛明君

      笠  浩史君    岩永 裕貴君

      遠藤  敬君    椎木  保君

      中野 洋昌君    田沼 隆志君

      中山 成彬君    山内 康一君

      宮本 岳志君    青木  愛君

      吉川  元君    山口  壯君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   財務副大臣        宮下 一郎君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   文部科学大臣政務官   山本ともひろ君

   国土交通大臣政務官    大塚 高司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山崎 重孝君

   政府参考人

   (内閣官房地域活性化統合事務局長代理)

   (内閣府地域活性化推進室室長代理)        富屋誠一郎君

   政府参考人

   (内閣官房2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室長代理)

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 上冨 敏伸君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          河村 潤子君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          小松親次郎君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       川上 伸昭君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            田中  敏君

   政府参考人

   (文化庁次長)      有松 育子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           山崎 伸彦君

   政府参考人

   (観光庁観光地域振興部長)            吉田 雅彦君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月七日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     大西 英男君

  木原  稔君     前田 一男君

  新開 裕司君     藤丸  敏君

  比嘉奈津美君     渡辺 孝一君

  宮内 秀樹君     小田原 潔君

  宮川 典子君     細田 健一君

  菊田真紀子君     階   猛君

  遠藤  敬君     岩永 裕貴君

  柏倉 祐司君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     宮内 秀樹君

  大西 英男君     神山 佐市君

  藤丸  敏君     新開 裕司君

  細田 健一君     石崎  徹君

  前田 一男君     木原  稔君

  渡辺 孝一君     金子万寿夫君

  階   猛君     菊田真紀子君

  岩永 裕貴君     遠藤  敬君

  山内 康一君     柏倉 祐司君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     瀬戸 隆一君

  金子万寿夫君     池田 道孝君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     比嘉奈津美君

  瀬戸 隆一君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

十一月六日

 平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法案(内閣提出第二九号)

 平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法案(内閣提出第三〇号)

同月七日

 公認心理師法案に関する請願(小川淳也君紹介)(第四八号)

 公認心理師法案一部修正に関する請願(小川淳也君紹介)(第四九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法案(内閣提出第二九号)

 平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法案(内閣提出第三〇号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

西川委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、内閣官房地域活性化統合事務局長代理兼内閣府地域活性化推進室室長代理富屋誠一郎君、法務省大臣官房審議官上冨敏伸君、文部科学省生涯学習政策局長河村潤子君、初等中等教育局長小松親次郎君、高等教育局長吉田大輔君、科学技術・学術政策局長川上伸昭君、研究振興局長常盤豊君、研究開発局長田中敏君、文化庁次長有松育子君及び観光庁観光地域振興部長吉田雅彦君、以上の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 おはようございます。民主党の階猛です。

 本日は、質問の機会をいただきましてありがとうございます。

 きょうは一般質疑ということで、私の方からは、国際リニアコライダー、ILCについて取り上げさせていただきたいと思います。前国会でも、参議院の決算委員会でこのテーマについて文科大臣が御答弁されたようなんですが、この委員会では余りそういうことはなかったようですので、ちょっと私の方から簡単に説明させていただきます。

 まず、お手元の資料一をごらんください。

 ILCとは国際リニアコライダーの略称ですけれども、何ぞやということなんですが、この資料一の上の方を見ていただくと「ILCとは」とありまして、全長三十一キロから五十キロの地下トンネルに建設される電子・陽電子加速器を中心とした大規模研究施設、地下トンネル内の中央部で電子と陽電子を衝突させ、ビッグバンとほぼ同じ高エネルギーの反応をつくり出し、宇宙創成の謎、時間と空間の謎、質量の謎に迫りますという説明があります。

 図がその下にありまして、ごらんになっているように、左の下の方から右上の方にずっと長いトンネルが伸びております。これは途中で切れておりますけれども、トンネルの真ん中あたりに粒子測定器というものがございまして、ここで電子、陽電子の衝突の様子を測定するということであります。その両端から電子、陽電子を発射させて衝突させるということで、全長五十キロにも及ぶという壮大なものです。

 そこで、この施設を建設する意義ということなんですが、まず、建設の過程で必要とされる技術、それから、この施設ができ上がった後に研究がなされたその成果、これによって高い成長力を持つ新たな産業が生まれたり、施設周辺の地域に世界から多くの研究者、技術者やその家族が集まり、多文化が共生する国際色豊かなコミュニティーが形成されたりというメリットも想定されるんですが、もっと重要なことは、そうした成長力の低下や地域社会の衰退がもたらす日本の閉塞感を打破するということだけでなく、宇宙創成の謎、時間と空間の謎、質量の謎といった、根源的かつ壮大で、子供たちが興味を持つような探求を推進するプロジェクトであるということです。理科好きな子供をふやしたり、次代を担う科学技術人材の育成につながると考えております。

 文科省としても、科学技術分野の人材育成にしっかり取り組むという観点から、この計画の検討も積極的に行うべきではないかと考えますが、大臣の御見解を伺います。

下村国務大臣 おはようございます。

 階委員がおっしゃるとおり、科学技術イノベーションは安倍内閣の成長戦略の重要な柱の一つであり、我が国が成長を続け、新たな価値を生み出していくためには、これを担う多様な科学技術イノベーション人材の育成確保が重要であるというふうに認識しております。

 特に、少子化が進み、研究の担い手の総数が減少していくことが予想されている中、基礎科学、応用科学を通じ、創造性豊かな若手研究者の育成が大切であります。

 御指摘のあったILC計画につきましては、ことし五月に文部科学省に外部有識者による検討会議を設置し、その実施の可否判断に向けた検討を行っているところであります。

 今後とも、こうしたプロジェクトに関する検討を含め、これは、日本単独ではなかなか規模が大き過ぎてできない部分がありますので、国際社会の動向等を踏まえながら、私自身も、アメリカに行ったときにはモニーツ・エネルギー省長官と二回にわたって、このILCの取り組みについて国際社会の中でぜひ推進していこうという話し合いもしているところでありますが、我が国としても、科学技術イノベーション、人材育成それから研究開発に取り組んでまいりたいと思います。

階委員 今大臣からは、文科省の検討状況それから国際的な連携について全体的なお話がありましたけれども、局長の方にお尋ねします。

 今の点を敷衍して御説明いただきたいんですけれども、資料二をごらんになってください。

 これは、「国際リニアコライダー計画に関する所見」ということで日本学術会議が昨年九月三十日に発表したものであります。二枚ほどめくっていただきますと、「要旨」ということで作成の背景などを書かれておりますけれども、そもそもこのペーパーは、文科省の研究振興局長から日本学術会議会長宛てに平成二十五年五月二十七日付でILC計画に関する学術的見地からの検討を求める審議依頼が寄せられたということで、それを受けての回答ということであります。

 中身なんですけれども、このページの下の方からるる書いておりますが、要は、ILCの学術的意義は認められるということは書いておりますけれども、次のページ、通し番号でいうと五ページ目ですが、真ん中よりやや下に「ILC計画の我が国における本格実施を現時点において認めることは時期尚早」というふうに書かれております。そしてその上で、その下あたりに、日本学術会議は、「ILC計画の実施の可否判断に向けた諸課題の検討を行うために必要な調査等の経費を政府においても措置し、二〜三年をかけて、当該分野以外の有識者及び関係政府機関も含めて集中的な調査・検討を進めること、を提言する。」というくだりになっています。

 この後段に書かれています調査検討に関する文科省の取り組みについて具体的に御説明いただけますか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 ILC計画につきましては、今御紹介のございました日本学術会議の提言を受けまして文部科学省において外部有識者による会議を設置いたしまして、実施の可否判断に向けた諸課題の検討を進めているところでございます。

 具体的には、第一回の有識者会議をこの五月に開催いたしまして、より専門的な事項について検討を実施するために、素粒子原子核物理作業部会及び技術設計報告書検証作業部会という部会を設置させていただいたところでございます。

 この二つの作業部会のうち素粒子原子核物理作業部会におきましては、巨額の投資に見合います科学的な意義に関する検討、技術設計報告書検証作業部会におきましては、技術設計報告書に示されているコストや人材の集積見込み等の検討をそれぞれ進めているところでございます。

 今後、十一月十四日に第二回の有識者会議を開催いたしまして、この二つの作業部会における議論の概要について進捗報告をしていただく予定でございます。

 引き続き、実施の可否判断に向けました諸課題の検討を進めてまいりたいと考えてございます。

階委員 今のところ検討は順調に進んでいるというふうに理解してよろしいかどうか。

 それからもう一点、先ほど引用したところの前段部分で、ILC計画の実施の可否判断に向けた諸課題の検討の実施に必要な調査等の経費を政府において措置するよう提言していますが、この提言を受けて今年度は五千万円の予算が計上されたというふうに理解しておりますが、来年度以降もこの経費は計上されるのか。

 以上二点、お聞かせください。

常盤政府参考人 文部科学省における検討につきましては、ただいま申し上げましたように、有識者会議のもとで二つの部会を設置いたしまして、それぞれほぼ月一回ぐらいのペースで検討を重ねておりまして、そこでの検討状況をまたこの十一月十四日には有識者会議本体の方に御報告するということで逐次進めているという状況でございます。

 また、調査に関する経費のお話でございますが、二十六年度予算におきましては、国際リニアコライダーに関する調査検討費といたしまして、文部科学省で五千万円を計上いたしております。その中で、具体的には、技術的、経済的波及効果、あるいは世界各国における素粒子原子核物理学分野の将来構想等について調査を進めております。

 また、二十七年度につきましても、概算要求において、この検討経費をさらに増額することも含めて要求をさせていただいているところでございまして、コスト面であるとか、あるいは技術的フィージビリティーに関する調査等を進めることを検討しているところでございます。

階委員 今の答弁で、月に一回のペースで精力的に検討はされている、それから、予算の措置についても文科省として前向きにやっているということは理解しますので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。

 その上で、先ほど引用したのは、通し番号の五ページの真ん中やや下のあたりですけれども、その下もちょっと見ていただくと、「ILCの我が国への誘致の判断には、本回答が提示する諸課題や懸念事項について十分な調査・検討が行われ、建設、運転、高度化、最終処理にわたる経費の全容とその国際分担、人材や管理運営体制の問題など課題事項に対して明確な見通しが得られることが必須」とありまして、先ほど来議論しております「調査・検討」と、「並行して海外主要国・地域の研究機関や資源配分機関との協議を行い、国際分担等に関する見極めを行うべきである。」というのが学術会議の提言であります。

 そこで文科大臣にお尋ねいたしますけれども、国際分担等に関する見きわめを行うための海外の主要国、地域の研究機関や資源配分機関との協議という部分についても文科省としてしっかり取り組んでいくべきではないかと思っておりますが、この点について御所見を伺います。

下村国務大臣 御指摘の点については、日本学術会議の所見でも国際分担が重要と認識されており、文部科学省としても、加速器分野における国際協力は重要と認識しております。

 また、ILC計画についても、先ほど申し上げましたが、私も、米国でエネルギー省の長官との間で二回にわたって意見交換も行っております。事務レベルでは、欧州合同原子核研究機関、CERN等とも意見交換を行うなど、国際的に情報共有を図っているところでもあります。

 国際協力については、文科省に設置された有識者会議における検討項目の一つとして挙げられているところでありまして、この会議における検討状況も踏まえ、文科省として、ILC計画の実施の可否判断に関する検討を進めてまいりたいと考えております。

階委員 そろそろ時間でございますのでまとめますけれども、そもそも、このILCというものが重要な意義を持つということはこの学術会議での提言でも言われているわけでありますが、実際に進めていく上ではやはりさまざまな課題について調査検討を進める必要があるということで、二、三年をかけて調査検討の段階に今あるということで、その上でいざできるということになれば、今度は立地場所という話になっていくわけであります。

 きょうの資料一にもお配りしていますように、私も東北の出身なものですから、東北地方では、やはり、子供たちに夢や希望を与えるILCというものをぜひ誘致したいという思いがありますが、一方で、ほかの地域でもそういう希望はあると伺っております。やはり、オールジャパンで推進していくために余り地域の誘致ということを最優先で言わない方がいいのかなと思いますけれども、きのうも私のところに地元の経済団体の方がお越しになって、ぜひこれはやりたいんだという熱い思いを語られました。

 ぜひ大臣にもそのあたりもお酌み取りいただきながら、ILCをオールジャパンで進めていただくよう重ねてお願いを申し上げまして、私からの質疑とさせていただきます。

 きょうはありがとうございました。

西川委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 おはようございます。

 続けて議論をしていきたいというふうに思います。

 教育再生実行会議で全体の論点の取りまとめのようなものが大体出てきて、これからさらに次のステージに向けてという議論をされておるということ、これを理解しております。なかなかいい議論が進んでいるなというふうに思っております。

 その上で、何回も何回も出てくる言葉に、グローバル人材であるとか国際化ということ、こうしたキーワードというのが出てくるんですけれども、グローバル人材あるいは国際化に向けて私たちもしっかりかじを切らなければいけない、これはコンセンサスとしてはあるんでしょうけれども、この中身についてはどこまでそれぞれイメージがしっかりしたものがあるかというと、ちょっとまだ議論が足りないし、ともすると、具体的な施策になると、英語が話せる日本人をつくればいいんだということだけで終わってしまうようなそんなふうな形になってしまっているということ、これがあるのではないかと思うんです。

 文科省でこの言葉を使う場合に、どういう定義なんだ、どういう人材をイメージしているんだと係の人たちに聞いても、なかなか出てこないんですよ。

 大臣、大臣なりの定義としては、要諦ですね、これをひとつここでお話しをいただきたいと思います。

下村国務大臣 グローバル社会の中で特に求められる力として、第二期教育振興基本計画におきまして、未来への飛躍を担うための創造性やチャレンジ精神、リーダーシップ、また、国境を越えて人々と協働するための英語等の語学力、コミュニケーション能力、さらに、日本人としてのアイデンティティー、異文化に対する理解などがグローバル人材として位置づけられております。

 また、教育再生実行会議第三次提言におきましては、日本人としてのアイデンティティーと幅広い教養を持ち、世界に打って出たり、外国人を迎え入れて交流したりすることのできる人材の育成の重要性が提言されております。

 私としては、このような資質能力を備えた人材がグローバル人材であると考えております。

中川(正)委員 私も、ポイントとしては二つあるんだと思うんです。

 さっきお話に出てきました日本人としてのアイデンティティー、私たちがしっかり自分というものに自信を持って人格をつくり上げるということ、あるいは国の文化というものをつくり上げるということ、これはもう基本にあるんだと思うんですが、それをもって、国際化という形で海外に出ていく、あるいは海外を受け入れる、その部分というのは、やはりオープンな、自分が自信があるだけに外に対してもしっかり耳を傾けて、異文化あるいは違った価値観というものに理解をしていく広い心といいますか、また、それを吸収するという意味もあるだろうし、こちらから向こうと交流をしていくという、そこからまた新しい文明なり文化が生まれてくる。そういう意味で、やはり心が開いていないといけないということだと思うんです。

 私もちょっと懸念するのは、最近の風潮からいくと、アイデンティティーというものについては非常に日本の国民は今目覚めてきているんだろうと思うんです。それは、裏返して言えば、一方で自信がなくなってきているというか、人口が減少してきて経済の状況も昔のような勢いがなくなってくる中で、次のライフスタイル、次の価値観というのをつくり上げていくのにちょっと揺らいできている。だからそれだけに、自信を持って生きられるような我々のアイデンティティー、日本人としての意識をつくっていきたい、ここが今出てきているんだろうと思うんです。

 その基本が、どこかで自信を失ってきているだけにどうも内向きになって、外から入ってくるものに対して耳を傾ける余裕がなくなってきている。こちらが自分の主張を一方的に打ち出していくだけで、相手の主張を酌み取ってそこから話し合いを始めていく、あるいは、理解というものが大事だというオープンな心というのをつくり上げていく、そこの部分というのが非常に大事なんだろうと思います。そこが欠けている状況というのは非常に私は懸念をしているんです。

 言葉というのは、そこのところを理解するための一つの手段なんだろうと思うので、この道具がなければ理解もできないということも一つで、しかし、そこは二次的なもので、心が開いているということ、これが非常に大事なことだというふうに思います。

 その上で、ここからが本論なんですけれども、この間、フランスとドイツの間で共通の教科書ができたという話をしました。ヨーロッパの場合は、国際化というのをもろに、EUで一つのコミュニティーをつくっていこう、一つの国としてEUを育て上げていこう、そういう流れが既にできていて、そのコンセンサスの中で新しい実験をやっているというか、国づくりに向かって進んでいる。そのコンセンサスがあるから共通教科書ができてきているんだというふうに思うんです。

 しかし、その状況というのは、これからのアジアにとっては非常に参考になる部分だというふうに私は思うんですが、この間、教科書を持っていかれました。目を通していただいたというふうに思うんですけれども、どのように感じられましたか。

下村国務大臣 まず、中川委員が前段おっしゃった、今自信がなくなっているというのは、中川委員がおっしゃるとおり、やはりアイデンティティーというのを日本人がきちっと根っこの部分でしっかり持っていないというところだというふうに考えまして、八月には中川先生の地元にあります三重県の伊勢神宮に行って、これをきっかけに、今度、日本文明が二十一世紀いかに世界に求められるかという本を出すことにしているんですが、日本は、最も和の精神、共生の精神、それは自然との共生だけでなく、他文化や他文明とも共生しながらうまくそしゃくしている。その日本人の持っているアイデンティティーをしっかり日本人が持つということが、自信を持つということと、世界に対して、あるいは近隣諸国とうまくやっていく、そういう根っこの部分の根本だと思います。

 御指摘の独仏の歴史教科書は、先日お貸しいただきましたが、ちょっと忙しくて詳細は読んでおりません。

 ただ、目を通して、高校生が学ぶにしては相当レベルが高い、日本よりはるかにレベルが高いのではないかというふうに思いました。一つ一つ、フランスの主張それからドイツの主張と書かれているようですし、これを詳細に学ぶということは、両国の将来、つまりドイツとフランスの将来にとっても大変重要な、そういう位置づけとして歴史教科書を考えておられるんだろうな、そういうふうに感じておりますが、詳細はゆっくり時間があるときに読みたいと思っております。

中川(正)委員 実は、前回のこの議論をしたときに、日韓議連がその後あるんだということをお話ししました。

 実は、その日韓議連で、このヨーロッパの例を引き合いに出しながら、日本と韓国の間、これは歴史認識問題でこれだけスタックしているというか、そこで非常に大きな壁をつくってしまっているわけでありますが、政治家同士あるいは国のトップ同士の話を解決しようと思ったら、これはやはり、国民の間でそうしたお互いの広い認識があって、その上で相互の理解を深めていくというプロセスがないと、お互いが自分の主張を声高に主張しているだけで相手の主張を聞こうとしない、あるいは、相手が何を考えているかということに対しても耳を傾けないという状況ではだめなんだろうというふうに思うんです。

 そういう話をしながら、一度、日本と韓国の間でも、子供たちの教科書で歴史をお互いがどういう認識をしているかということ、これを理解していく努力をしないかという提案をさせていただきました。

 いろいろな議論がありましたけれども、結果的には、共同宣言の中に、共通教科書を将来つくっていくような努力をしていこう、そのために、それぞれの教科書を相手の言葉で翻訳して活用するというようなことから始めていったらどうかというふうなことが、あの共同の宣言の中に一項目組み込むことができました。これは一つ大きなきっかけにしていきたいというふうに思うんです。

 いずれにしても、翻訳するのは民間の出版社で既にもうできていますし、幾らでもそういう形というのはつくれるんですが、要は教育現場でこれをどう使うかということ、ここが大事なんだと思う。しかも、片方の国だけが使うんじゃなくて、この際、お互いが意識しながら両方の国の教育現場でこれを使おう、そういうことが始まってこないと本物にならないということだと思うんです。

 そのためにも、文部科学省として、あるいは文部科学大臣としてぜひひとつリーダーシップを発揮していただいて、韓国のカウンターパートと、韓国の文部科学大臣とここの点について一度話し合っていこうじゃないかというふうなそういうリーダーシップをぜひ期待したいんですけれども、どうでしょうか。

下村国務大臣 日韓議連の共同声明で、共同の教科書を将来つくるという提言は、私は一つの見識だというふうに思います。ただ、現実問題として今できる状況かというと、課題がたくさんあるというふうに思います。

 そのために幾つかいろいろな段階を経ていく必要があるというふうに思っておりまして、御指摘のように、今、ユネスコESD世界会議が岡山県岡山市で開催されていますが、日曜日からは今度名古屋に移ります。そのときに私も、日月は国会がありませんので出席をして、日曜日には韓国の教育大臣がトンボ返りで参加されるということですので、韓国の教育大臣に私の方から、今まで二回、日韓歴史共同研究をしているんですね、共同研究の第三弾をしませんかと。

 ただ、近現代史については対立点が余りにも多過ぎるので、古代史、あるいは中世の時代とか、例えば元寇の役の時代とか、そういう部分から、もう一度テーブルに着いて専門家の間で第三次の共同研究をぜひしましょうという提言はしていきたいというふうに思います。

 先ほどの御提言の、日本の教科書と例えば韓国の教科書を両方の国でそれぞれ一緒に勉強するということは、お互いに合意がとれれば必要なことだと思いますが、単純に読み合わせると、かえってお互いに、よく言えば愛国心によって逆に批判が出てくる可能性もありますから、どう活用するかということが準備段階にないと中川委員の思いとは逆のことになることもあり得ると思いますので、その辺の準備をしていく必要がやはりあるのではないかと思います。

 教科書として活用するということについては、相当幾つか越えなければならないハードルがあると思いますが、少なくとも、専門家による共同歴史研究をするということについては、これは着手可能であるというふうに思いますし、そういうところからしながら日韓関係の改善に向けた努力をしてまいりたいと思いますし、また、十一月の二十九、三十は日中韓文化大臣会合があります。こういうレベルでも、韓国は教育大臣と文化大臣は違う方ですけれども、文化大臣にも話をしていきたいと思います。

中川(正)委員 ありがとうございます。ぜひひとつこれは取り上げていただきたいと思います。

 実は、韓国は黄祐呂大臣なんですが、私も韓国に行ったときに会う機会がありまして、この話をしましたら、向こうも同じようなお話で、具体的にできることから一つ一つやっていくという努力をしていきたいというふうなお話もありましたので、ぜひまとめていただきたいと思う。

 そのときに、さっきお話しのように、共同研究については、これはもうすばらしいことだと思います。ぜひひとつ進めていただきたいというふうに思うんですが、もう一つ、現場でどうそれを展開していくか、使うかというのは、お互い、いわゆる教育者としての専門家たちの注意深い話し合いといいますか、お互いの国の話し合いというのが要るなと思うんですが、できればそういうコミッティーみたいなもの、共同の委員会みたいなものを一遍現場サイドでつくってみようかというふうなところから具体案として進めていただければありがたいなというふうに思います。

 ぜひ期待をしておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 次に公設民営なんですが、これまで、株式会社という形で新しい形態が入ってきました。あるいは、そのほかにもフリースクールで新しい教育形態を考えてみようじゃないか。これは、下村大臣も非常に積極的にここの部分を今考えておっていただくんだろうと思うんです。

 こういう形態に加えて、これまでの私学、私立の学校、あるいは学校までいかなくても塾、この塾の影響というのは非常に大きいものがあるんだと思うんです。そういういろいろな形態があるんですけれども、そういうものに対してこの公設民営学校というのは、どういう特色を持ってこれをつくろうとしているのか。

 これは、特に大阪からこういう形態で学校をつくらせてほしいという話が出てきたんだと思うんですけれども、そこの意図、これがもう一つ私はわからないんだけれども、改めて説明してもらえますか。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 株式会社立学校、これにつきましては、私立学校の設置者は学校法人とするという法制の特例といたしまして、構造改革特区において株式会社という形で学校を設置するということを認められた、こういうものとまず整理されます。

 あと、通常の私学は、もちろん私人が財政を投じて、したがって、建学の精神ということを核にして多様に展開するということになっております。

 このほかに、今おっしゃられたフリースクール等については、こうした法人形態にはこだわらず、志のある方々が運営されるさまざまなもの、そして、これには地方公共団体等とさまざまな形で連携するものがある。

 こういう今は現状でございますが、これに対しまして、今回法案に出ております公設民営学校は、一つは、まず設置者が地方公共団体である、公費によって運営される、こういう意味では公立学校という位置づけになります。

 ただ、国家戦略特区の法案の目的に照らして、特色ある教育を行うという観点から、その学校の管理につきまして設置者が直接行うという制度の特例を設けまして、地方公共団体の方針に基づいて学校の管理を非営利法人に行わせる、こういう形で新しい形の学校の管理というものをできるようにする、こういう関係にございます。

中川(正)委員 さっき申し上げたように、一本の体系だけではなくて、さまざまな選択肢を教育の課程の中でつくっていこう、あるいは、そうした教育の類型というか、時と場合によっては学校に行かなくてもいいんだよということも含めて類型をつくっていくということ、これは正しい方向だと思うし、もうここまで成熟した私たちの社会の中での教育ということであれば、さまざまにやっていかなきゃいけないんだろうというふうに思うんですよ。

 特にこれは一条校になっていくんだというふうに思うんです。そうすると、学校の持っている基準、特に指導要領の基準を一つはしっかりと満たしながらさまざまなバリエーション、こういう形態でしか今は考えていないんです、文科省は。しかし、これは非常に非現実的なことになっていく、無理があるという結果になっていかないのかなということを危惧します。

 特に国際バカロレアがこの話の背景にあって、バカロレアの体系を全うするとすれば、それで完結させるぐらいの気持ちを持ってこれを受け入れないと、あるいはこれを発展させていかないと、それが一つの類型ですよという形にしないと、片方でもう一回日本のがちがちの指導要領を満たして、その上でバカロレアの認証を取っていけ、それは逆に、バカロレアを指導要領の方へ向いて曲げて使えというようなそんな議論を今はしているように思うんです。

 そこは非常に無理があるし、そういう教育を受ける子供にとってはいい迷惑だという形になっていかないのかなというのが私の懸念なんです。

 ですから、ここでこういうことを考えていくとすれば、これは特区ですけれども、これからさまざまな類型が出てくるんだろうと思うんです。それだけに、指導要領をもっと弾力的に運用するような方法を考えるか、あるいは、指導要領とは別の類型の国際類型みたいなものもあってもいいと思うので、そういう類型の指導指針みたいな形のものを考えるか。ここは一つ、日本の教育システムそのものが大きな転機に来ているんじゃないかなというふうに思います。

 大臣、そこはどういうふうに受け取られますか。

下村国務大臣 これはおっしゃるとおりだと思います。

 中川大臣のときですか、二〇一八年に国際バカロレアを二百校にするという目標をつくられたということは。当時は随分向こう見ずな設定だなと見られた部分もあったと思いますが、実際、今回は国際バカロレアは日本語コースも導入されるということで、十分可能であるということでこれはきちっと継承して、二〇一八年までに二百校、文部科学省としても支援していきたいと思います。

 その中で、御指摘のように、国際バカロレアの教育プログラムを導入している学校において、教育課程特例校として指定を受けた上で、英語を用いて授業を行うとともに、学習指導要領に示された内容に国際バカロレア固有の内容を上乗せした、新たな学校設定科目を設定して開校したりするなどの対応がなされているところであります。

 文科省としては、今申し上げましたように、国際バカロレアの導入をさらに促進するため、一部日本語による教育プログラムの開発、導入を進めるとともに、国際バカロレアと学習指導要領の双方を履修した際に、カリキュラムが生徒の負担とならないよう、履修内容の軽減を図るための特例を設けることなども含め、検討してまいりたいと思います。

 また、ほかの多様な類型化といいますか多様な教育という意味では、学習指導要領そのものを否定するわけにはいきませんから、学習指導要領はきちっと明確にする中、教育課程特例校というような形で柔軟に対応できるようなことによって、結果的に子供に負担をかけない、一方で多様な教育についても認めるということについては、御指摘のような点を踏まえて、これから柔軟に、しかし、原則は原則として筋を通しながら対応してまいりたいと思います。

中川(正)委員 指導要領も満たしてバカロレアも満たすというのは、子供にとってはこれは非常に大きな負担であるし、時と場合によっては両方が中途半端になっちゃう可能性というのは、これは専門家の間でも指摘をされているところですけれども、それだけに、思い切った形で日本の教育類型を一度整理をしていただきたいというふうに思います。バカロレアだけじゃなくて、また新しい類型がさまざまに出てきておりますから、それも含めてよろしくお願いをしたいと思います。

 最後に科学技術の関係なんですが、トータルな民間投資と公的な投資合わせて、そちらから聞く予定だったんですけれども、大体十六兆円ぐらいだというふうに聞いています。そのうちで国の投資が三兆円ぐらい。それを考え合わせて、例えば民間から国、あるいは民間でもいいんですけれども、研究施設、大学等々へ向いて国内に投資が回っている部分というのは、その規模の中でどれぐらい、共同研究という形、あるいはこれはオープンイノベーションなんですが、そういう意味で日本の金というのは動いているか。マクロでちょっと数字だけ入れてください。

川上政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、官民合わせての日本の研究開発投資額は十七兆三千億円であるわけでございますが、民間企業から国内の大学等、ここに対しての研究開発投資がどのぐらい動いているかということでございますが、平成二十四年度で三百四十一億円というデータが、文部科学省が実施をいたしました大学等における産学連携等実施状況調査において得られているところでございます。

中川(正)委員 三百四十一億円ですよ、十七兆円トータルであって。これは恐らく経産省レベルではこの問題を非常に指摘していて、各企業が自分のところで抱え込んでしまって、自分のところの研究体系をつくろうとする傾向が日本の企業にはある。これをやっていたら行き詰まる、だからオープンイノベーションなんだ、外へ持っていきなさい、それでお互いの共同研究とお互いの持っているものをつなぎ合わせて一つのものをつくっていきなさい、これが方向性として出ているんですよ。

 ところが、文科省サイドからはこのオープンイノベーションというのは言葉さえもありませんねというのが実は報告書に出ていまして、ここは一つ、文科省の意識としてしっかり持たなきゃいけないところだと思うんです。

 予算をふやせふやせというのは、これはもう当然です、科学技術については。しかし、合わせて十七兆円、民間でこれだけ金が動いているわけですから、このお金を一緒にやろうよというその機運を大学にも研究所にもつくり上げていく。そのスキームといいますか、そこでリスクをうまく管理をしていって、そこから新しいものをつくっていったときにその利益配分をどうするかというようなその仕組みをつくってやらないと、大学サイドやあるいは研究所サイドでそれをつくってやらないとこの金はおりてこないということ、逆に、海外へ相当この資金というのは流出をしてしまっているという現実があるということ、これを指摘しておきたいと思います。

 大臣に頑張ってもらいたいんですが、その上でコメントをお願いします。

下村国務大臣 これもおっしゃるとおりだと思います。

 この三百四十一億円というのは、私も聞いたときに少ない額だなと思いましたが、役人がつくった答弁書の中には、過去十年間で二倍以上にふえたんだ、これは大変なアップなんだということで書いてありますが、事実、ちょっと諸外国の事例も調べましたら、決して日本が低いわけではないんですが、でも御指摘のとおり、これから、大学だけでなく民間企業が産学連携をより行うような、大学と人的ネットワークの形成を目的とした新たなバックアップをつくっていくということが必要だと思います。

 文科省としては、産と学が同じ拠点内で例えば常住し、日常的に密に連携しながら革新的イノベーション創出を目指すセンター・オブ・イノベーション・プログラム等を推進したりしておりますが、さらに促進をさせる。

 今後とも、民間企業と大学等の積極的な連携によるイノベーションの創出、御指摘のようにしっかり推進してまいりたいと思います。

西川委員長 中川正春君、既に超過しております。

中川(正)委員 はい。

 これをオープンイノベーションというらしいんですよ。文科省からこの言葉が出てこないという指摘がありますから、頑張ってください。

 終わります。

西川委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 維新の党の椎木保でございます。

 きょうは二十分ということなので、早速質問に入らせていただきます。

 まず初めに、幼児教育無償化についてお聞きしたいと思います。

 これまで、幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議、回数を重ねてきたと思います。私も、この幼児教育の無償化は肯定する立場で、なおかつ、やはり全ての子供に質の高い幼児教育を保障するという意味では、非常に早期に実現したい政策だというふうに常日ごろから思っていまして、これに対しては私以上に大臣も思い入れが強いかという認識でいるんですけれども、これまでの経緯と今後の方向性について、現段階で大臣から御所見をいただければと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、幼児教育の無償化については、平成二十五年三月に幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議を設置し、検討を行ってまいりました。

 平成二十五年六月のこの会議の取りまとめにおきまして、幼稚園と保育所の負担の平準化等の観点を踏まえ、平成二十六年度から低所得世帯、多子世帯の負担軽減など無償化へ向けて取り組むとされたことを受けまして、保育所と同様、生活保護世帯の保護者負担の無償化を行うとともに、第二子は半額、第三子は、無償の保護者負担軽減について所得制限の撤廃を行ったところであります。

 また、平成二十七年度については、平成二十六年七月の同会議の取りまとめにおきまして、環境整備と財源確保を図りつつ、五歳児から段階的に無償化に向けた取り組みを進めることとし、その対象範囲や内容等については予算編成過程において検討するとされました。

 文科省としては、この取りまとめを踏まえ、平成二十七年度の予算編成過程におきまして、無償化の対象範囲や内容等について、関係省庁と連携しながら、財源とあわせ検討してまいりたいと考えております。

椎木委員 ありがとうございました。

 幼児教育は、一見、今の時代、保育というふうに見られがちなところが非常にあると思うんですけれども、これはやはり学校教育の中の立派な教育なんですね、幼児教育というものは。だから、そういう意味では、今の大臣の御答弁のような経緯、そしてこれからの方向性を踏まえて本当に一つ一つ整理をしていただいて、これはくどいようですけれども、やはり、一つは低所得者世帯も含めた保護者の負担軽減も図って、質の高い幼児教育を保障するというところを着陸点として今後も進めていただければと思います。

 私も、これは地方の教育行政にかかわっていたときから、何とか本当に国の方で進めていただけないものかと常日ごろ思っていた政策なものですから、もう本当に、私個人も思い入れもありますし、ぜひ力強く推進していただければと思います。

 一点、細かいところでお聞きしたいんですけれども、なぜ五歳児からのスタートなのか、この理由についてお聞かせいただければと思います。

小松政府参考人 幼児教育の無償化でございますけれども、まず前提といたしまして、今委員御指摘のように、幼児教育が生涯にわたる人格形成の基礎を培うという非常に重要なものであることに鑑みまして、全ての子供に質の高い幼児教育を保障するということが目指す目標と理解いたしております。

 それで、一方、与党実務者、関係閣僚の会議におきましては、幼児教育無償化を実現するためには環境整備と財源確保を図りながら進めていくことが必要であるということで、段階的に取り組む必要もあるということになっております。

 この二つを考えまして、幼児教育無償化ということでございますから、三歳から五歳児を念頭に置くわけでございますけれども、一つには、幼児教育が小学校以降の教育の基礎を培うという学校教育体系への反映の問題、それから、小学校教育との連続性、一貫性等の観点から、子供が幼稚園から小学校へ円滑に移行できるように幼児教育の内容、方法等の充実を図る、これは先ほど御指摘の点でございます。

 こうしたこととあわせまして、充実を図っていくためには、五歳児に幼児教育の機会を保障することが、まず第一に取り組む、検討を進めていく、そういう次第になるというふうに考えているところでございます。

椎木委員 ありがとうございました。

 私の予想では、多分財源的な問題かなとは思っていたんですけれども、そういう御答弁であれば、あえて私も申し上げたかったことは、私は、五歳児というのは非常にいいスタートだと思います。

 幼児教育というのは、私の時代は四歳児、五歳児の年中、年長だったんですけれども、今は三歳児から、年少、年中、年長と。これは、地方に行けば行くほど、保護者も、三歳児、四歳児は比較的お母さんがみずから自分の手で家庭教育をしたい、ただ、五歳児、来年小学校に上がるんだという前の年になりますと、幼児教育を学ばせたい、やはりそういう考え方は非常にニーズも高いですね。そういう意味では、この五歳児からのスタートというのは、財源的な問題は別にしまして、考え方としては、非常に初等教育に接続しやすい、いい視点だというふうに私は思っています。

 ですから、そういう意味で、これも前回も質問しましたけれども、国民の皆さんとか保護者の皆さんの誤解を招かないように、要するに、財源確保が難しいから五歳児しかできないんだというんじゃなくて、まずは五歳児が一番重要な政策の出発点なんだというような視点で進められた方が、多分国民的な理解もあると思いますし、私は、下村大臣もこの政策は非常に進めやすいんじゃないかなというふうに思います。

 あと、もう一点が、先ほどもちょっと触れましたけれども、やはり幼児教育というのは教育なんですね、くどいようですけれども。

 私は、集団教育の意義というところを、やはりもう一回文部科学省の方で各市町村に指導いただいて、どうしても、何と言ったらいいでしょうか、共働き世帯がふえているので、保育園のように長時間子供を預けたいというような時代の変化といいますか、これが実情だと思うんですよ。ただ、本来の目的というのは、幼児教育は、四時間から四時間半の保育をして、午後の一時から一時半ぐらいで御家庭に帰して、半日は御家庭でお母さんのもとで家庭教育を学ばせるというのが本来の趣旨だと思うんですよね。

 ですから、そういう原点に立ち返っていただいて、初等教育につなげるための五歳児が最初の出発点、幼児教育そのものというのが集団教育なんだというところも打ち出しながら、あくまで教育なんだというところで全面的に進めていただければ、これは非常に効果的な、国民的にも理解の得られる政策だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 関連して、一点だけ私の方でお願いしたいところは、私も教育行政をやっていたときに就園奨励費補助金というのを取り扱っていまして、これは、公立、私立それぞれに、保護者の負担軽減を図るために補助をしている。国が三分の一で、市町村が三分の二ですかね。当然、公立、私立の格差も是正するという目的でやるんですけれども、これは、私は、事務としては非常に苦労した事務なんです。

 残念だったことが、国の補助が三分の一入っているにもかかわらず、取り組んでいない市町村があるんですよね。私が教育行政にかかわっているときは年々そういう市町村がふえてきていて、理由は、一言で言うと財政的に厳しいと。ただ、私は、幼児教育の無償化を進める中で、やる自治体とやらない自治体があっては、やはり質の高い幼児教育というのは確立できないと思います。

 そういう意味では、今後の検討の過程で、全ての市町村が取り組める、そういう対策というのを検討していただきたいと思うんですけれども、これについて何かあればお願いします。

小松政府参考人 幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議の取りまとめを踏まえまして、本年度から、幼児教育無償化に関する環境整備として、就園奨励費補助事業の拡充をしているところでございます。これによりまして、低所得世帯、多子世帯の負担軽減などの取り組みを無償化へ向けて進めているわけでございます。

 御指摘の点、一つは、幼稚園就園奨励事業は各市町村が自治事務として実施しているものでございまして、文部科学省としては、可能な限り全ての自治体で実施いただけるようにというふうに考えておりますけれども、事務の性格等も踏まえた上で、実は、事務連絡など文書を発出いたしまして、趣旨や内容をもう一回説明させていただきまして、必要な財源の確保に努めているというところでございます。

 それで、今後につきましては、ことしの七月の、先ほど申し上げました連絡会議の取りまとめにおいて、環境整備と財源確保を図りつつ、五歳児から段階的に無償化に向けて取り組みを進めるということにしておりますけれども、その具体的な方向につきましては、対象範囲や内容等について、先ほど大臣の答弁にもございましたように、予算編成過程において検討するということで、今現在は事項要求としているところでございます。

 そこで、平成二十七年、来年四月の施行を予定しております子ども・子育て支援新制度、こちらの方も今準備に向けてさまざまな取り組みをいたしております。この実施状況等も踏まえながら、どういう方法、対象とするのが一番適切かということを総合的に検討していきたいというふうに考えます。

椎木委員 ありがとうございました。

 これは本当に市町村の裁量、財源の問題もありますので、限界もあると思いますけれども、最大限、文部科学省の方でも指導していただければと思います。引き続き、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、奨学金制度の質問に移らせていただきたいと思います。

 私も、奨学金、当時の日本育英会を借りながら大学にやらせていただいた一人なんですけれども、当時は私立大学に通う私の経済的な事情からいくと本当に助かった制度でありまして、今の制度がどういうものかというものを、私もいろいろこの間振り返ったんです。

 私がきょう質問で一番お聞きしたかったのが、不測の事態、要するに保護者の失職、会社の倒産、リストラ、あるいは災害、こういったときに、家計が急変したときに緊急的に奨学金が貸与できるのか。私たちの時代というのは、年一回の審査とか、そういう期間が決められていたんですけれども、要は、在学中の子供たちのそういう不測の事態に対して緊急的な措置がこの奨学金制度の中であるのかということで、私もそれをずっと質問したいと思って調べていたんですけれども、ちょっと私の勉強不足で、非常にいい制度が現状ありまして、通常の奨学金制度に加えて、こうした緊急時の、緊急に対応できる奨学金制度があるということについては、繰り返し、私も本当に勉強不足で申しわけなかったんですけれども、大変、本当にありがたいと思っています。

 ただ、こうした中で、私も一つ改めてお聞きしたいのは、やはり奨学金を申し込むときに一番苦労するのが連帯保証人なんですよ。そもそも、経済的に厳しい家計ということは、お父さん、お母さんの収入が極めて厳しい、仕事が不安定。そういう中で連帯保証人を学生みずからができる、そういう制度というのが今あるのかどうなのか、それについてお聞きしたいと思います。

吉田(大)政府参考人 お答えいたします。

 日本学生支援機構の奨学金制度の関係では、確かに、委員御指摘のように、いわゆる個人保証といいましょうか、その制度が従来ございましたけれども、近年、機関保証ということで、一定の保証料を払うことによって、親族などに頼らなくてもその機関が保証する、こういった制度を導入してございます。

椎木委員 では次に、返還です。今度、学生が返還するときに、三百万円以下の所得の方は無期限に返還が猶予されるという制度があると思うんですけれども、これはいろいろ私も調べてみましたら、ほとんどの学生の皆さんがこの制度を知らないんですよね。ですから、こういう三百万以下の所得の方については無期限に延期できる、こういうものをもう少しわかりやすく発信してもらいたいなというのが一つ。

 もう一つは、例えば、今、私立学校の四年生の、自宅から通っている学生は五万四千円なんですね。これが四年間二百五十九万二千円。これが今の制度だと、一律で月幾らの返済なんですよね。それを、学生が卒業したときに、それぞれの所得に応じた返済額に変えられるような、これなら、ある程度無理がないと思うんですね。そういう制度改革的なもののお考えがあるか、これについて答弁をお願いします。

吉田(大)政府参考人 今委員御指摘の、現行の所得連動返還型無利子奨学金制度につきまして、二十五年度の適用者数というのは全体の三六・九%、およそ三分の一強という形でございます。

 ただ、今委員御指摘のように、この制度の趣旨ですとか仕組みですとか、そういったものについては引き続き周知を図っていかなければならないだろうというふうに考えております。

 その先でございますけれども、この制度を平成二十四年度から導入しておりまして、家計の厳しい世帯、これは年収三百万円以下相当の世帯でございますけれども、卒業後一定の収入、年収三百万を得るまでの間は返還期限を猶予する、こういう制度になっております。

 ただ、これにつきましても、その期間が終わりました後は一律の金額でということになりますので、その点について、さらに所得に連動した柔軟な制度に変えていく必要があろうというふうに思っております。

 そこで、所得把握が容易になる社会保障・税番号制度、いわゆるマイナンバー制度でございますけれども、これへの移行を前提にいたしまして、私どもとしては、平成二十九年度進学者からの適用ということを目指しまして、所得連動返還型奨学金制度というものに改善を図っていきたいというふうに今検討を詰めているところでございます。

 平成二十七年度におきましては、詳細な制度設計を進めるとともに、システムの開発、改修に着手するための経費などを概算要求させていただいているということで、着々と進めてまいりたいと考えております。

椎木委員 ありがとうございました。

 今の御答弁の内容が、まさしく私がお願いしたい内容そのものでありますので、学生のついた職業の所得に応じて返済額が連動するような、そういう形をとれば今後延滞者というのはやはり減少していくと思いますし、社会に出た若者の精神的な負担も軽減されると思いますので、引き続きお願いしたいと思います。

 私も、本当に今の奨学金制度は、思っていた以上に非常に充実して、幅広く取り組まれていると思っています。これをもっともっと各学校に周知徹底していただいて、多分、私の過去の同僚の教員に聞いても、ほとんど知らないですね、進路指導の先生は当然知っていますけれども。ですから、やはり、担任の先生方はもちろんですけれども、教職員がより理解した上で取り組んでいただければ、これは中途退学者の軽減にも大きく貢献できると思いますので、制度そのものは本当に私も大変評価していますし、ありがたく思っていますので、こういった発信をどんどん御家庭にしていただけるように取り組んでいただければと思います。

 時間が来ましたので、最後、一言だけちょっと言わせていただきます。

 前回の、前回というのは大分前ですけれども、四月九日の私の質問のときも、下村大臣が、子供の貧困政策について、最後にこういう答弁をしてくれているんですね。幼児教育の無償化に向けた低所得者の保護者の負担の軽減、さらに、高校生の奨学生のための給付制度のさらなる充実、こういったものを含めて、「今後とも、経済状況にかかわらず、誰もがいつでも希望する質の高い教育を受けられる社会の実現に向けて、全力で取り組んでまいりたい」と。

 まさに四月から、きょう十一月ですけれども、大臣、この答弁のとおり取り組んでいただけていると思います。引き続き、よろしくお願いしたいと思います。私も本当に一生懸命お支えしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 維新の党の鈴木望と申します。

 それでは、通告に従いまして順次質問をさせていただきたいと思います。

 私は、世界遺産の問題、特に保存の観点から質問をさせていただければというふうに思っております。保存と観光、あるいは保存そのものについての問題点について質問をさせていただきたいと思います。

 近ごろ、世界遺産に登録されたものがブームを呼びまして、多くの観光客がその施設そのもの等に押し寄せているというような状況がございまして、昨年は富士山、そしてことしは富岡製糸場、いずれもウイークエンドには観光客が倍増しているというような状況でありまして、これは一面では非常に喜ばしいことだなというふうに思います。

 ただ、世界遺産の本来の目的とあわせて、当然、多くの方々に観光で来てもらう、世界遺産を見てもらうということは、私ども日本人にとっても誇らしい。特に、外国の方に見てもらうというのは誇らしいことでもありますし、観光を振興するというのは、日本の振興にも大きくつながるという意味でいいことではあろうかと思うんですけれども、問題もあるんじゃないのかなというふうに私思いまして、そういう観点で質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、富士山と富岡製糸場の場合、いわゆる登録をされた前と後でどのような状況になったのか、それとあわせて、問題点をどういうふうに感じているのか、観光庁の方からお願いいたします。

吉田(雅)政府参考人 お答え申し上げます。

 世界遺産に登録されたことによる観光への影響につきましてお尋ねがございました。

 富士山につきましては、昨年六月に世界文化遺産に登録されまして、平成二十五年の富士山周辺地域の観光客につきましては、例えば、山梨県の富士・東部圏域におきましては対前年比で約一三%増の約一千三百万人、静岡県の富士地域におきましては対前年度比で約四%増の約三千二百万人となっております。

 また、富士山の登山者数でございますけれども、登録前の平成二十四年は約三十一万九千人、登録後の平成二十五年は約三十一万一千人、二十六年は約二十八万五千人と減少しております。これは、二十五年にマイカー規制を強化したことや、二十六年の残雪による登山道開通のおくれなどによるものと承知をしております。

 富岡製糸場と絹産業遺産群につきましては、本年六月に世界文化遺産に登録されました。世界遺産登録により、富岡製糸場の入場者数は、登録後の七月から九月の三カ月間で約四十四万七千人と、前年同時期の約五・二倍と大幅に増加しております。

 世界遺産に登録された地域の登録後の観光客の推移につきましては、順調に増加している地域がある一方で、登録直後は急激に増加したものの、その後減少した地域、登録の効果が余り見られない地域などがございます。観光客が急激に増加する場合は、周辺住民への影響や、自然、環境への影響、受け入れ環境整備などの課題もあると考えております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 デメリットについてもあえてお答えをいただいたわけでありますけれども、世界遺産は単に観光の目玉として登録するわけではないというふうに認識をしているわけです。そういう観点も含めて両立はさせていかなければいけないんですけれども、世界遺産と観光についてどういうふうに考えているのか、改めて御答弁をお願いいたします。

吉田(雅)政府参考人 お答え申し上げます。

 観光庁といたしましては、我が国経済の成長と地域の活力のため、観光は大変重要な分野だと考えております。

 こうした認識のもと、本年六月に省庁横断的に策定いたしました観光立国実現に向けたアクション・プログラム二〇一四に従い、訪日外国人旅行者数二千万人の高みを目指し、政府一丸となって推進をしております。この中で、観光地域づくりに関しましては、国内外に通用する多様な広域観光ルートの開発や地域観光資源の磨き上げなどによります、世界に通用する魅力ある観光地域づくりに取り組んでおります。

 我が国には、富士山や富岡製糸場も含めまして十八の世界遺産があり、これらの遺産は世界にも認められた自然文化資源でございます。これらの保全にも配慮しつつ、観光資源として活用することは、訪日外国人観光客の増加や地域振興を推進する観点からも非常に重要であると承知しております。

鈴木(望)委員 そこで、文科大臣にお尋ねをしていきたいというふうに思いますけれども、富士山はユネスコが二〇一三年六月二十六日に登録をしたということで、私も地元の人間ですけれども、私も含めて、非常にうれしくなりました。地元は、当初は花火を上げて祝うような大喜びだったわけであります。地域の活性化にもつながる、観光の振興にも大きく寄与するというふうに受けとめておりました。

 しかしながら、先ほどの数字をお示ししていただいたように、だんだん保存に向けた責務が大きな負担だなという認識が広がりまして、例えば入山料を課す、マイカー規制を課すというようなことで、保存の方に重点を置いていかなくちゃいけないということが明瞭になってきたわけであります。

 そういう意味で、よくも悪くも世界遺産の登録というのは国民的な関心を呼んでいて、どこが世界遺産に登録されるんだという、地元の振興だけから普通の方々は見ているんじゃないかなというふうに思うわけでありますが、そういう観点から、もう一回原点に立ち返って、世界遺産登録の趣旨、目的について、文科大臣、担当大臣としてどういうふうに認識をしておられるのか、お答えをいただきたいと思います。

下村国務大臣 文化遺産や自然遺産は、一国にとどまらず、人類全体にとって貴重な、かけがえのない財産であります。これらが損壊、消失することになれば、世界の全ての人々にとっての損失になるわけでありますので、国際社会全体の任務として保護を図っていくため、一九七二年、ユネスコ総会において、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約が採択をされました。

 同条約に基づいて設置された世界遺産委員会が定めた世界遺産条約履行のための作業指針によれば、「条約の目的は、顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産を認定し、保護、保全、公開するとともに、将来の世代に伝えていくこと」とされております。

 我が国としても、この目的に賛同し、一九九二年に同条約を批准しているところであり、世界文化遺産への登録を推進することによりまして、文化財の保護、活用を通じた地域活性化のための取り組みの充実に資するものと考えております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 それでは、保存の問題に入っていきたいというふうに思いますけれども、ある意味で、世界遺産の登録というものが、どこが登録されるのかということが、よくも悪くも国民的関心事になっておりますので、その登録に向けた候補の国内選定の過程等について、若干お尋ねをさせていただきたいと思います。

 巷間、明治日本の産業革命遺産というものと、長崎の教会群とキリスト教関連遺産、この二つが次の世界遺産に登録をされるということがマスコミ報道等でも出ておりました。そして、どちらかというと、長崎の教会群とキリスト教関連遺産の方が先に推薦をされるんじゃないのかということが言われていたわけです。一年に一個とか、これはマスコミ情報で非常に不確かですけれども、一個ずつぐらいしか登録されない。そういうことになると、先に日本から推薦があった方が当然一年先になるということになって、この順番についても相当大きな国民的関心を呼んでいるというふうに思います。

 そういう観点でお尋ねするわけですけれども、結果は、マスコミ等の予測とは違って、明治日本の産業革命遺産の方が先に推薦をされたということで、そこの経緯等について御説明をよろしくお願いします。

富屋政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、お尋ねの「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の手続について申し上げます。

 この産業資産につきましては、文化財のほかに、八幡製鉄所や三菱重工長崎造船所、三池港といった、民間企業が現に産業活動を継続する資産を含む産業遺産群でございます。こうした稼働資産の保護措置につきましては、景観法、港湾法などが用いられますので、所管が文化庁以外の複数の省庁にわたっております。

 このため、稼働中の産業遺産またはこれを含む産業遺産群を世界遺産の登録に向けて推薦する場合、その手続を定めました平成二十四年五月の閣議決定では、文化審議会を初め関係審議会の意見の提出を経て、内閣官房に置く有識者会議が選定を行い、閣議了解の上で推薦を行うという手続をとるということにしたところでございます。

 さらに、お尋ねの、長崎の教会群とキリスト教関連資産との関係でございますが、この長崎の教会群とキリスト教関連資産につきましては文化審議会にて、また、明治日本の産業革命遺産につきましては、先ほど申し上げましたように、内閣官房の有識者会議において、それぞれ世界遺産の推薦に値する案件と判断されたところでございます。

 しかしながら、世界遺産条約に基づく世界遺産委員会におきましては、現在、毎年各国からの推薦の件数を文化遺産は一件と制限しておりますので、政府部内の調整の結果、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」に絞ることとなったところでございます。

 この件につきましては、内閣官房長官が、文化審議会の部会長、有識者会議の座長、あるいは担当省庁からも状況をお伺いした上で、最終的に官房長官が御判断をされたという経緯でございます。

鈴木(望)委員 文化審議会と内閣官房の有識者会議との関係については、確かに稼働資産を含むというようなこともあって、こういう仕分けがあるというのは理解いたします。

 その上で、優先順位に関してですけれども、どのような基準でもって政府として最初に明治日本の産業革命遺産が選ばれたのかについて、その優先順位の基準についてお尋ねをしたいと思います。

 私自身は、明治日本の産業革命遺産と長崎の教会群とキリスト教関連遺産、このどちらもすばらしいといいますか、どちらが最初にしていいのかどうかというのは、はっきり言ってよくわかりません。だからこそ、どのような基準でもって優先順位がつけられてこういうことになったのか。最終的に判断するのは官房長官というふうにおっしゃられましたけれども、優先順位があってもいいんじゃないのかなと。優先順位の基準、そこら辺についてお答えをいただきたいと思います。

富屋政府参考人 お答え申し上げます。

 今の二つの候補につきましては、いずれもそれぞれに固有の価値が当然ございまして、甲乙つけがたい面があったというふうに評価をされておりますけれども、先ほど申し上げましたように、一件というふうに制限されている中で調整を行った際の考え方として、最終的に明治日本の産業革命遺産というところが選定された考え方につきましては、一つは、日本が物づくり大国となる基礎をつくった歴史を物語るものでございまして、地元関係者のみならず、地域を超えて産業関係者の方からも広く期待が寄せられているとともに、海外の専門家からも高く評価されているということ、また、二つ目として、釜石の遺産を含んでおり、復興支援に大きく貢献すると考えられたこと、三として、世界的にも例のない稼働中の民間企業による大規模な工業関連施設の登録は文化遺産の保全の新たなモデルを提示するということでございまして、本分野に対する国際的な期待に応えることになるものと考えられるということなどを踏まえて推薦が決定されたと承知をしております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 もうこれでやめますけれども、いずれにしましても、世界遺産の登録につながる推薦、国内選定ということにつきましては、国民的な関心事でもありますので、そこのところの推薦過程は透明化が必要じゃないのかな、みんなが納得できるような理由をきちんと説明して推薦をしていくということが求められるんじゃないのかなと思います。そのことを指摘させていただきまして、保存の方に移りたいと思います。

 実は、七月の十六、十七日で、私も一緒に連れていってもらいまして、長崎の教会群とキリスト教関連遺産と、長崎にある明治日本の産業革命遺産を視察させていただきました。そこで保存について大きな危惧を抱いたわけであります。

 一つは、小菅修船場を見させていただきました。はっきり言って、そこら辺の壊れかけた施設がちょっとあって、レールも、何かもうなくなるというか、そのまま壊れてなくなってしまうような状況でありまして、説明を聞くと、確かに、日本で最初に蒸気機関を使って船をレールに乗せて引っ張り上げて、それで本格的に修理をすると。だけれども、これが世界遺産として登録すべきものなのかどうか、私は非常に、仮に登録をする世界遺産になるんだったら、このまま自然に朽ちるままのような、自然崩壊にさらしておくようなことでいいのかどうかということを強く思ったわけであります。

 小菅修船場を、もし仮に世界遺産となるのだったら、例えば全体を屋根で覆うとか、そんなことをするんですか。どういう保全をしていくのか、お尋ねをしたいと思います。

有松政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の小菅修船場跡でございますが、これは昭和四十四年に史跡に指定されているものでございまして、現存する日本最古の近代洋式スリップドックとして大変貴重なものでございます。れんがづくりの巻き上げ小屋とか、巻き上げ機械、ドック、護岸の石積みなどが良好に残されている史跡でございます。

 この小菅修船場跡につきましては、長崎市が策定いたしました保存管理計画に基づいて遺構の保存方針が定められておりますけれども、先生御指摘ございましたけれども、この遺構の保存について、この計画上、特段の大きな課題は生じていないというふうに考えております。

 具体的に、例えば、先生ごらんになった巻き上げのチェーンの劣化というようなこともお感じになったのかと思いますが、調査を確認いたしましたところ、チェーン、さびはしておりますけれども、それについて、そのさびへの対応を、腐食防止剤等で対応するというような計画も持ってございますので、今のところ特段の大きな課題は生じていないと認識しておりますし、今後も必要に応じて適切な措置を講じてまいりたいと思っております。

 もとより、文化財をこうした自然の劣化からどのように守っていくかということは極めて重要な課題でございます。文化財の種別等によりまして、その規模や材質、そして財政事情など、いろいろな要因があることにもなりますけれども、文化庁といたしましては、それぞれの文化財の本質的な価値が損なわれることのないように、万全を尽くしてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(望)委員 次長は小菅修船場を見られたんですか。私は、今の答弁を聞いて、非常に疑問に思いましたね。言葉だけはきれいでも、あれはひどいですよ。本当にひどくて、あれをドームか何かで全部覆わないと、残しておく意味が本当にあるのかどうか、私は非常に疑問に思いました。

 次の軍艦島の方に質問を移していきたいと思いますので、その点だけはぜひ、今答弁された文言のとおりに、もし世界遺産として登録を目指すんだったら、そこら辺の保全の計画についても考える必要があるんじゃないのかなということを指摘させていただきたいと思います。

 もう一つ、軍艦島はもっとひどいわけであります。遠くから見ると、海に浮かぶ軍艦の風情があって非常にいいわけですけれども、上陸して中のところを見させていただいた印象では、瓦れきの島ですよね。そして、台風が来る、潮風が来る、そういうものでどんどん劣化をしている。言葉で言うと日増しに劣化をしているというような状況で、これをどうやって保存するのか、保全するのかというのは、それこそ島全体をドームで覆うとか、そうでもしない限り無理じゃないのかなと。このままいったら、二十年、三十年の間に、それこそもとの姿に返ってしまうんじゃないのかなという危惧感さえ感じるわけであります。

 それを、先ほど言いましたように、観光で、どこか東アジアの、台湾ですか香港ですか、あそこを無人の島の、何か映画の舞台にして観光を図るとかなんとかと言っていますが、今でさえも一部しか、もう危険だから立ち入りできないというような状況で、どうやって保存を図っていくのか。はっきり言って、これはひど過ぎるなというのが私の率直な感想です。

 どうやって保存していくのか、お答えをいただきたいと思います。

有松政府参考人 お答え申し上げます。

 端島炭坑、いわゆる軍艦島でございますが、この軍艦島の保存、活用方策につきましては、長崎市が設置いたしました高島炭鉱整備活用委員会におきまして現在検討が進められておりまして、平成二十七年度までに一定の結論を得る予定と聞いております。

 文化庁といたしましては、先般、この軍艦島を含む高島炭鉱跡を国の史跡に指定したところでございまして、長崎市における検討結果を踏まえまして、専門的観点からの指導助言や財政的な支援など、その保存、活用のための適切な措置を講じることとしております。

 なお、昨今、この軍艦島につきましては、鉄筋コンクリートづくりの居住施設の風化が指摘されているところでございますけれども、世界遺産としての顕著な普遍的価値につきましては、こちらは大正時代以降に建設されておりまして、こうした大正時代以降の建設によります居住施設ではなくて、明治時代に建設されました生産施設部分に世界遺産としての顕著な普遍的価値があるというふうに考えられておるところでございます。

 また……(鈴木(望)委員「短くしていただけますか、もう時間もないので」と呼ぶ)はい。先ほど申し上げましたように、国として史跡として指定したものでございますので、長崎市の検討結果を踏まえて、文化庁としても指導助言、支援をしてまいりたいと思っております。

鈴木(望)委員 最後にもう一回言わせていただきたいと思うんですけれども、保全計画がきちっとして、国として保全することが可能である、できるということがはっきりしてから世界遺産の登録申請をしたらどうでしょうか。お答えをお願いします。

有松政府参考人 この軍艦島につきましては、従来から長崎市におきまして、調査、保全の検討が平成二十二年以降行われてきたわけでございます。その中で、文化財としての価値づけや保存管理のあり方は既にそのころから検討がされておりまして、この結果、平成二十五年三月には、その保存調査検討委員会の取りまとめが行われました。

 その委員会では、この軍艦島の施設の保存につきまして、生産施設については原則として現状保存という方針が示されました。また、居住施設についても、代表する建物の保全は行う方向ということで、その時点で、計画として、方針が二案に絞り込みが行われていた段階でございます。

 そうした状況の中で、文化庁として本年史跡に指定して、これからは、国の史跡として保存計画の実施について国も指導助言、財政支援をしていきたいというところでございます。

西川委員長 鈴木望君、既に質問時間が終了しています。

鈴木(望)委員 終わりますけれども、ぜひ、次長にも軍艦島を見に行っていただいて、中に入ってもらって、本当に十年先、二十年先、保全ができるのかどうか。あの台風とか潮風で今でもどんどんどんどん壊れていて、危ないですよ、もう本当に。ということを指摘させていただきまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、田沼隆志君。

田沼委員 またお時間をいただいて、ありがとうございます。次世代の党の田沼隆志でございます。

 まず、大臣、先日の私の質疑に関しての御訂正をいただきまして、ありがとうございましたというのかわかりませんけれども、御訂正に、誠実なる対応に感謝を申し上げます。

 特に、共同採択制度に関して私は何度も御質問させていただいている次第であり、そして、大臣の御答弁が訂正をされたことを受けて、やはりもう一回やり直しをしなければいけないという思いできょうは臨ませていただきたく思います。

 まず、先日の二十九日の質疑で、共同採択地区設定の必要性に疑問を私は表させていただき、大臣からは、特にその三点目と四点目、転校に対応するとか低廉化の部分は削除するというはっきりとしたお言葉を賜りました。御礼というか、感謝申し上げます。

 しかし、あとは、第一点目と第二点目、調査研究及び授業研究、ここの意義があるがゆえに共同採択制度を維持するべきだというお考えと思いますが、そこで私の御提案になります。

 調査研究や授業研究は共同採択地区でそのまま実施していただいて、ただ、採択は各自治体でする。まさに大臣の御答弁だったんですけれども、その仕組みの方がいいのではないか。ただ、現行制度ですと、共同採択地区で調査研究し、採択まで行ってしまって、例えば八重山地区だったらこの教科書とかいって、後は、各自治体の教育委員会はそれを踏襲するというたてつけになっておりますけれども、私はやはり、それこそ大臣の御答弁のとおり、共通の採択協議会、各市町村をまたぐ協議会は調査研究、授業研究までにして、実際の採択は自治体でやるというふうにすべきじゃないか。

 その方が、地方分権、また各自治体、各教育委員会がみずから教育政策を決めるという趣旨に沿っていると考えますので、その御提案について再度御意見を賜れればと思います。

下村国務大臣 教科書の共同採択制度については、教科書の採択に当たっての調査研究に地区内の多くの教員等が参画でき、教科書の内容について綿密な調査研究が可能となること、また、地区内の教員が共同で教材研究や授業研究を行うことが可能になるなどの意義があるものと考えます。文科省としては、さきの通常国会で改正した無償措置法を踏まえて、共同採択制度が適切に運用されることが必要と考えております。

 前回は、田沼委員の趣旨にのっとって丁寧に説明をして、逆に言葉、法律そのものを曲解した言い方になってしまいましたが、趣旨としては、沖縄の八重山地区の事例を申し上げましたが、最初から教科書採択が違う方向性であるということであれば無理に共同採択地区に設定をしなくても、もちろん最終的には県教委の判断でありますけれども、共同採択地区についても、何が何でも自治体の意向と違う形でエリアが決まっているということではない。そういうそれぞれの教育委員会の独自性が、共同採択地区を決定するときに、県教委との相談の中で、最終的には県教委の判断にしても、沖縄の八重山地区のような事例があるということを申し上げたかったわけであります。

 ですから、田沼委員の趣旨が、法律は法律としてありますが、その前の段階としてそういう創意工夫というのはあり得る話だということを前回も申し上げたつもりだったんですが、そういうことだと思います。

田沼委員 よくわかりました。

 その意味だと、大臣が今言われた、最終的には県教委の決定ではあるけれども、ただ、各自治体、市町村と県教委で相談の上で、各自治体の意向を酌むというお答えだと思うんです。

 ちょっとこれはテクニカルな御質問ですが、では、そういった各自治体から、自分たちの地域は単独で採択をしたいという要望というのは来ているんでしょうか。それはどれぐらい来ているんでしょうか。あるいは、その管理の仕組みはあるんでしょうか。

下村国務大臣 現段階では調査をしておりません。

田沼委員 局長、今、手を挙げられようとしましたが、何かわかりますか。

小松政府参考人 申しわけございません。調査のデータがあるかどうか今確認をしようとしたんですけれども、大臣の答弁いたしましたとおり、調査がございません。

田沼委員 前も質疑でも申し上げましたけれども、私の知り合いの市長さんなので、サンプルは一ですけれども、ただ、単独化要望を出した市町村はあります、県教委に対して。それで、酌み上げられませんでした。ということは、そういうことは恐らく全国でもある程度はあると思います。

 ですので、先ほど大臣が言われた、結局県教委の決定ではあるけれども、各自治体の意向と違うわけでもないというのは、そうあってほしいという言葉だったらわかるんですが、実態がそうかはわからないんじゃないでしょうか。だって、管理していない、把握していないんですもの。

 だから、各自治体がどれだけ単独化してほしいという要望を持っているかを今は国は管理していない、情報は知らない、だけれども、県教委と相談の上うまくやってくれていると思うというふうに聞こえるんですね。これは問題なんじゃないかと思うんですが、どうでしょう。

下村国務大臣 それは、先ほど八重山地区の問題について、まさにその実例があるんじゃないでしょうか。

田沼委員 八重山地区はそうだったと私も思います。ちなみに、八重山の決定、もちろん文科省の決定は正しいと私は思っておりますが、今後の話をしておるんですね。

 各自治体からの単独化要望がどれだけあるかわからない。ただ、たてつけとしては、県教委と相談の上、納得のいく分担になっているというふうに御答弁ですけれども、それではやはり真実はわからないと言わざるを得ません。

 共同採択制度の意義も、私が何度も再三御提案申し上げているとおり、調査研究、授業研究は必要ですけれども、採択は各自治体でいいんじゃないかということを申し上げているわけですが、それならば、原則、各自治体が単独で採択をする、ただし、共同で採択の協議会を設定してほしい場合はそうしてもらうというふうに、基本をまず市町村単位まで落とすべきではないかというふうに思います。

 というのは、なぜそうしないといけないかというと、ある市町村の自治体は単独採択を希望したけれども、かなわなかったからです。これは県教委が決めることになっちゃっているんですね。だけれども、県教委がちゃんと意向を酌めているかがわからない。国もそれを知らないわけです。これは制度的な欠陥に聞こえるわけですね。

 ですので、やはり御提案申し上げたいのは、もう一度言いますが、基本、市町村が単独採択をする、ただし、希望があるならば共同採択にするというふうに逆転させるべきではないかと考えるんですが、御見解をお尋ねします。

下村国務大臣 さきの国会で成立をさせていただきました教科書無償措置法において、都道府県教育委員会が採択地区を変更する場合には、あらかじめ関係する市町村教育委員会の意見を聞かなければならないこととしており、その意見を尊重しなければならないことは当然であります。

 しかし、仮に、市町村教育委員会の意向のみに基づいて採択地区を設定することとした場合、小規模な自治体が共同採択を希望していたとしても、近隣の市町村教育委員会の意向により共同採択を行うことができなくなることも考えられます。

 したがいまして、文科省としては、採択地区の変更に当たっては、市町村教育委員会からあらかじめ十分に意見を聞いた上で、最終的には、都道府県教育委員会が共同採択制度の趣旨を踏まえ、地域の自然的、経済的、文化的諸条件等を考慮し行うべきものと考え、そのような法律案が通ったわけでありまして、今後さらなる議論をするということについてはやぶさかではありませんが、まずは現行制度の中でこれを徹底していくということが文部科学省の方針であります。

田沼委員 今後の議論はやぶさかでないという御答弁をいただいたので、それはそれで。

 ただ、もう一問だけお聞きしたいのは、今の御答弁ですと、確かに、小さな市町村が私のところは単独でやりますと言ったときに、平たく言えば、周りの、近隣の市町村が困るというふうに御理解しましたし、そのとおりと思います。

 ただ、個別の市町村が共同採択じゃなくて単独で採択したいというふうに、離脱という表現がいいかわかりませんが、もし単独でいきたいと言ったら、当然、今共同でやっている、例えば竹富とほかの町とか、そういうほかの町にも相談すると思うんです。それで、その共同採択地区の中にある各教育委員会の合意が十分とれたならば、つまり、市町村同士で決めたならば単独化していいというふうにすればいいんじゃないかと私は理解しました、今の大臣の御答弁に対して。

 しかし、今の現行制度ですと、県の教育委員会が決めるとなっている。県の教育委員会は、実質、県によっては、全然その採択地区の細分化をしていない地域もありますね。している地域もあります、大分ふえましたのでね、五百以上に。ただ、していない地域もあります。だから、これは県の教育委員会のやる気次第になってしまっているのではないかという疑念が私は払えません。

 ですので、やはり県教委を通すのではなくて、各市町村同士の合意ができれば、その採択協議会から単独化に移ることもできるというふうにしても何も問題はないんじゃないか、むしろその方がいいんじゃないかというふうに考えるんですけれども、御見解はいかがでしょう。

下村国務大臣 そもそも、この教科書無償措置法における共同採択地区というのは、地域の自然的、経済的、文化的諸条件を考慮して行うものとしての共同採択地区という法の趣旨でありますから、その趣旨にのっとったときは、普通は、やはり共同採択エリアというのは、そもそも合意のもとで成立するものであるというふうに思いますから、八重山の場合は、これは例外の例外で、逆に言えば、よく県教委が認めたなということにもなるわけであります。

 そういう意味では、やはり、そこの県教委と関係市町村の教育委員会がよく話し合って、それぞれが納得できるような形で進めるということが、実際は今の無償措置法の中でもできるわけでありますから、柔軟な対応は県教委の判断によっても可能でありますし、また、県教委がそれでも、つまり、市町村のいろいろなそういう要望とか要求があったとしても、最終的に県教委が判断するということであれば、県教委としての、そのエリア、その都道府県内における適切な判断のもとでの決定であるというふうに文部科学省としては考えます。

田沼委員 では、県教委の決定が適切であると考えるということでありますけれども、本当にそうかというのは、やはりいろいろな議論も、当然ですけれども、右から左まで、意見という意味ではたくさんあると思いますので、ぜひその実態を踏まえていただきたいと思うんですね。今、実態を把握していないと聞こえますので、やはり。

 それは、今回、市町村単位に柔軟化、採択地区を設定された、とてもいいことだと思っておるんです。基本的には応援の質問のつもりなんですが、やはり、実態がまだわかっていない、それで、本当に県教委の決定が正しいのか、納得のいっているものなのかというのが、よくよく管理されているのかが、ちょっと疑問も抱かざるを得ない部分がありますので、ぜひ、これからのそういった部分での文科省さんのリーダーシップとチェックをお願いいたしたいと思います。

 もう一問だけ関連して、これも先日の質問で、この採択のときにかかわる協議会のメンバーは、四割は教育委員さんじゃない人が決めているというお話がありました。保護者ですとか課長さんとか、そういった人が採択協議会の採択メンバーですから。今の各自治体は一〇〇%教育委員さんが決めています、当たり前ですけれども。ですが、採択協議会ですと、四割はそうじゃない人が許されているという状況であります。

 先日の大臣の御答弁ですと、結局は自治体が決めているから問題ないんだという御答弁でしたけれども、それは訂正いただいたわけですね。基本的にはやはり、協議会で決めたことを、自治体は、教育委員会は踏襲するというのが本来なわけですから。

 そうするとやはり、実態上はこの協議会のメンバーに六割しか教育委員さんがいない、四割はそれ以外の人が決めているというのは、おかしいんじゃないでしょうか。教育委員さんが本来は決めるということに何で例外があるのか。しかも、その採択協議会で決めたものは、もう基本的に、各自治体、教育委員会は、言い方は悪いですけれども、逆らえないわけですから、これは非常におかしいですよね。これは制度の矛盾じゃないかとすら思うんですが、いかがでしょう。

小松政府参考人 共同採択の場合につきまして、一番根本的には、地教行法で、各市町村の教育委員会がまず権限を持っているということでございます。

 実際に適切に採択するために、法律としては改正教科書無償措置法ということがございまして、この二つの関係については、一般法と特別法として整理をされているわけでございますけれども、そういう意味においては矛盾がないんですが、そこで実際にどういう運用をするかということにつきましては、採択地区協議会の規約をまず各市町村教育委員会が協議して定める、これは法定されております。そして、その委員構成についても規約において定められるということになります。

 そういう中で、決定していくプロセスとしては、教育委員以外の方々が有する知見を有用なものとして活用するということが考えられるということから、各市町村教育委員会の判断によって、教育委員会以外の者が採択地区協議会の委員になることもあり得るという仕組みにいたしております。

 したがいまして、そこで矛盾が生じるというような形にはならないような法的な調整が行われているということでございます。

田沼委員 矛盾していると思いますけれどもね。

 規約でそういうふうになっているというのはわかりましたよ。特別法と一般法が違うというのもわかりますよ。でも、実態の話をしているんです、今。

 六割しか教育委員がいなくて、四割の人がかかわっているわけですよ、協議会の採択に。その決定がほとんど逆らえないわけですよ。それでいいんですかという質問ですよ。いいか悪いかをお答えいただきたいです。

小松政府参考人 制度的な矛盾があるかどうかという問題、それから、実態としてどれが適切であるかという問題、それぞれよく考えながらやらなければいけないというのは、そのとおりだと思います。

 ただ、現時点におきまして、この割合、現時点の割合が法の趣旨に反して不適切であるということは言えないというふうに我々としては考えております。

田沼委員 いや、では、それはつまり、今のままでいいということですよ、局長の御答弁は。

 質問していないけれども、まあいいや。では。

小松政府参考人 制度の運用としては、この割合ならいいとか悪いということを、今現在の状況を見て片方に決めてしまうということにはなかなかならなくて、それぞれの参加される教育委員会の自主的な判断によってそういうふうに決められているという認識で見るということでございます。

田沼委員 いい悪いというか、おかしいかおかしくないかで聞けばよかったかもしれませんが、同じことです。各教育委員会が出しているメンバーで規約上決まって、この構成員が決まっているということなんでしょう、だからいいということなのかもしれませんが、実態は教育委員さん以外がやはり決めているわけですよ。それだったら、教育委員さんが採択するという制度がもう形骸化しちゃうじゃないですか。これはおかしいと思いますよ、私は。

 ですので、だから私は、何度も大臣にも、本当にしつこくて申しわけないんですけれども、そもそも、採択協議会制度自体は調査研究に絞って、採択は各教育委員会にしましょうよとしたらどうでしょうか、そうしたら矛盾が生じませんよ、今の採択協議会は四割が別の人がやっているんですから、ということを申し上げているわけであります。

 いつもなんですけれども、また水かけ論みたいになっているのでやめますけれども、やはり大臣、これは市町村の教育委員会でも単独でやりたいという声もございますので、ぜひ、そういうことを覚えておいていただいて、忘れずにいただきたいということだけ御要望させていただきます。(下村国務大臣「今のいいですか」と呼ぶ)

 それで、次の質問に移り……

西川委員長 手を挙げているので、いいですか。

田沼委員 では一言。

下村国務大臣 今の御質問の御指摘は、思いは同じですけれども、しかし、制度そのものに問題があるというよりは、人選を含めた、そこの教育委員会の運用、人選の問題だと思いますよ。

 ですから、どんな人を選ぶかによってこれは変わってくるわけで、本当に教育委員だけで選べるのかということを考えると、これは膨大な、一教科だけじゃありませんから、全ての教科について全ての教材を読み込んで適切に判断するということを考えると、なかなか教育委員の方だけでは難しいという教育委員会もあることは事実なんですね。

 ですから、外部の人をどういう人を選ぶか、そういうことについての教育委員会の見識が問われると思います。

田沼委員 そのとおりなんですけれども、ただ、一方で、採択協議会のない単独自治体ではやはり各教育委員さんだけで決めているわけですから。だから、ほかの四割の人がかかわることはその各教育委員会の識見だということはそのとおりなんですけれども、でも、だからといって、四割もの人が、実態上は教育委員さん以外の人がかかわっているということは、やはり私は問題だと思います。これはぜひ御検討いただきたいというふうに思います、運用の問題ですけれども。

 六問用意していたんですが、あと時間がちょっとしかないので、次に、外国人教職員についてという御質問に移りたいと思います。

 私、子供のとき、千葉市の小学校、中学校ですが、外国人の教職員さんはいなかったんですが、最近いますね。私も地元の学校の評議員もしているので見に行くと、います。常勤講師ということでいるようです。

 そういえば変わったなと思って、何で外国人の方がいるんだろうなと思ったら、よくよく調べると、平成三年に文科省が通知を出しておられますね。「在日韓国人など日本国籍を有しない者の公立学校の教員への任用について」という平成三年三月の通知がある。基本的には、公務員というのは日本国民、国民なんですが、これで、日本国籍を有しない者にも公立学校採用選考試験の受験を認める、そして、選考に合格した者は任用の期限を付さないというふうに指導をしています。これは、日韓三世協議という、日本と韓国との外交的な協定の中での協議から生まれたというふうに御説明をいただきました。

 私、非常に違和感があるのは、日韓三世協議で、何で韓国人だけが、「在日韓国人など」と通知にも入っているんですけれども、名前が挙がってくるのか。しかも、科目としては、大体これは英語の教師を想定しているんじゃないのかなと。英語圏の人ならまだわかるんですけれどもということで、非常に違和感を抱きました。

 まずお尋ねしたいのは、外国人教師の国籍ごとの分布は今どういった実態になっているんでしょうか。

小松政府参考人 国籍別の分布については、データを把握いたしておりません。

田沼委員 それはまずいんじゃないでしょうかね。全体としてやはり把握するべきですよ。

 この後、本丸なんですが、我が党の三宅博先生が八尾の出身、大阪八尾で、八尾市では、小中学校とか進学校の教職員が千三百九十人、そのうち十二人が外国籍だそうです。この外国籍の教員の方が、八尾教組の組合の幹部になっている。非常に民族教育、反日教育をしているということで、大変憤られておるんですね。

 実際、八尾の教育委員会にもらいました。ごめんなさい、ここしかないんですけれども、八尾教組の副委員長に、今、外国籍の方がいますね。あと、書記長もそうですけれども。この副委員長の趙さんという方は、二年前は委員長だったそうですね。

 もちろん、学校現場の教職員は、管理職に外国人の方はなれないですけれども、組合はなれちゃうんですよ。これでしかも反日教育をしているという話を聞くと、非常に違和感を感じるんですけれども、このままでいいんでしょうか。大臣、御見解をいただければ。

下村国務大臣 まず、基本でありますが、我が国政府は、従来から、公務員に関する当然の法理として、公権力の行使または公の意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とするものと解しております。

 公立学校の管理職や教諭は、校務の運営に参画することにより公の意思の形成への参画に携わることを職務としているため、公務員に関する当然の法理の適用があり、日本国籍を持たない者を任用することはできないとされております。

 文部科学省としては、各教育委員会に対し、通知等により、その趣旨を徹底してきたところであります。各教育委員会においては、この公務員に関する当然の法理を踏まえ、日本国籍を持たない外国人の任用について適切に対応していただいているものと認識しております。

 なお、講師については、校長の行う校務の運営に補助的に関与するにとどまる職であることから、公務員に関する当然の法理の適用がある職とは解されないので、日本国籍を持たない者を任用することができるものであります。

 ですから、外国人籍の人は講師となっておられるのではないかと思います。その人が組合の中でどういう立場であるかどうかということは、承知をしておりません。

田沼委員 もう時間がないのであれですが、これは非常に重要な問題だと思っています。

 大臣の御答弁も知っていますけれども、一方で平成三年のこの通知がある。その後、平成四年から採用試験に、日本国籍を有しない者も実際にもう採用の道が開かれているんです。しかも、組合の幹部にもなれてしまう。こっちが特に問題ですね。この実態をやはり我々は看過してはならないと思います。

 それはまた今後議論させていただくとしまして、きょうはこれで終わります。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 きょうは、最初に世界大学ランキングについて質問したいと思います。

 政府の日本再興戦略という文書の中で、今後十年間で世界大学ランキングトップ百位以内に日本の大学十校を入れるということを目標に掲げております。どういう背景で、どういう理由でこの世界大学ランキングというのが国の政策の目標として選ばれたのか、お尋ねしたいと思います。

吉田(大)政府参考人 お答えいたします。

 大学ランキングにつきまして、これはさまざまなものがございますけれども、世界的に学生、教員、研究者の流動性が高まってきております。各種の大学ランキングは、これらの者が大学を選ぶ際に参照される重要な情報の一つとなっております。また、大学ランキングでの評価指標を向上させる各大学における改革的な取り組みは、我が国の大学の国際通用性を増すことに直結をしております。

 そのため、このたび開始いたしましたスーパーグローバル大学創成支援事業等の事業におきましては、この世界大学ランキングにおける評価の向上を目指す取り組みを促進することとしております。

山内委員 ありがとうございます。

 それで、世界大学ランキングといっても、複数のものがあります。その一番有名なのはイギリスのタイムズ・ハイアー・エデュケーション、あるいは、同じくイギリスの、QSと言われている、クアクアレリ・シモンズという非常に発音しにくい会社の指標、それから中国の上海交通大学、この三つが最も知られているランキングです。

 いろいろなランキングがある中でどのランキングを政府は採用していらっしゃるのか、質問したいと思います。

吉田(大)政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、今は三種類のランキングを御紹介いただきましたけれども、それ以外にもさまざまなものがございます。こういった各種の大学ランキングは、複数の外国の民間企業などが、それぞれ独自に設定いたします評価指標に基づき作成をしているものでございます。

 文科省としては、特定の基準に偏ることがないよう、今御紹介がありました、例えばタイムズ・ハイアー・エデュケーション社の世界大学ランキングや、あるいはQS世界大学ランキングなど、複数の大学ランキングにおいて我が国の大学の順位の向上を目指すこととしておりまして、特に特定のものに限っているということではございません。

山内委員 複数の大学ランキングを用いるということなんですけれども、それでは、百校中十校というものの、どのランキングを用いるかによって全然結果が違ってきてしまうんです。評価の尺度がぶれてしまう。

 きょうお配りした資料を見ていただくともう明らかなんですけれども、タイムズ・ハイアー・エデュケーションのワールド・ユニバーシティー・ランキングだと日本の大学は百校中二校しか入っていません。ただ、同じくタイムズ・ハイアー・エデュケーションの別のワールド・レピュテーション・ランキングというのだと五校入っています。あるいは、QSのワールド・ユニバーシティー・ランキングでも日本の大学は五校入っています。既に五校入っている指標をとるか、二校しか入っていない指標をとるか、それだけでも政策資源をどう投入するか、全く変わってくるわけです。それから、どの指標をとるかによって、どこに資源を投入すべきかも全然変わってくるわけです。

 そういった意味では、複数のランキングを使うというのは、その時点で何だかおかしいなという気がするわけです。

 例えば、政府で全省庁統一的にやっている政策評価のガイドラインというのがあります。政策評価の実施に関するガイドライン、平成二十四年三月二十七日に最終改訂されたものです。その中ではこういうふうな表現があります。「目標や指標については、指標の測定のための情報・データの入手が過重な負担を生ずることのないように、あらかじめその入手方法について検討し、対象となる政策の特性に応じて適切に設定する。また、それらを用いた考え方や根拠、目標を達成する手段、費用等をあらかじめ明示する。」ということがうたわれております。

 大事なのは、あらかじめどの指標をとるか、そして、その指標をなぜ選んだのか、そういったこともきちんと公表しましょうねというのが、恐らく総務省の行政評価の部署がつくったガイドラインですけれども、そのガイドラインに出てくることです。

 だから文科省も、やはり政策目標を決めるんだったら、どの指標を使うかぐらい最初から言っておく必要があると思います。あるいは、複数使うんだったら、これとこれと二つ使うけれども、その両方の指標で百校中十校を目指しますとか、そういう政策評価をやるときに、後で後出しじゃんけんにならないように、事前に、あらかじめ政府の言葉を使う、あらかじめ決めておくことが大事だと思います。

 そういった点についてどうお考えでしょうか。改めて問います。

吉田(大)政府参考人 お答えいたします。

 委員御紹介の、例えばタイムズ・ハイアー・エデュケーションの場合の指標としては、教育、論文引用、研究、国際的な側面、それから産学連携、こういったものにつきましてそれぞれウエートづけいたしまして、その総合評価として大学ランキングを出してきているわけでございます。

 一方、QSランキングの場合には、これは、世界各国の学者による評価といったものがウエートとして一番高い形になっております。また、タイムズ・ハイアー・エデュケーションのレピュテーション評価の部分、これも、同様に世界各国の学者、研究者による評価といったものが大きなウエートを占めるということでございまして、それぞれの指標が着目している観点というのがそれぞれ違っております。

 そういうことで、委員御指摘のように、あらかじめどういった指標でということは大事ではございますけれども、私どもとしては、特定の基準に偏ることがないように、さまざまな指標の基準、そういったものを総合的に判断をして評価をしてまいりたいと考えております。

山内委員 何も決めないで総合的に判断というのも難しいと思います。大学評価、この三つの、今、私の資料の中で例示した中でもかなり結果がばらばらです。

 例えばQSの上位百校を見ると、非常にイギリスの大学が多いなという印象を受けます。アメリカの大学が二十八、イギリスの大学が十九です。イギリスとアメリカがいい勝負をしているんですけれども、分母を考えると、人口が三億人のアメリカと人口が六千万のイギリスで、人口が五倍ぐらい違うのに、大学評価でいうとイギリスの大学が非常に高い評価を受けている。これは、QSがイギリスの会社だからじゃないかなと勘ぐりたくもなります。

 それから、上位をずらっと見ると明らかなことは、英語圏の大学が圧倒的に有利であるということ、これはもう昔から言われていることです。英語圏の大学、あるいは旧イギリス領のシンガポールとか、そういう国の大学が評価されやすい。当たり前です。英語の論文で評価しているんだから、英語で論文をたくさん出している大学が評価されるのは当然です。

 他方、見ていて思うのは、例えば、これも一つの指標でしかありません、ノーベル賞の受賞者数、これは非常に確立した評価かなと思って出させていただきましたが、例えばノーベル賞をたくさんもらっている国でいうと、ドイツあるいはフランスといった国がありますが、フランスの大学とかは意外に低いんですね。百校中二校しか入っていない。

 ドイツも、ドイツは比較的多いんですが、百校中六校とか三校。六校といっても、余り上位には多くないんですね。百校中の上位にはそれほど入っていない。

 あるいはロシア、もう全然入っていないです。しかしロシアなんか、日本と同じく、ノーベル賞受賞者を二十人も出している。ロシアの科学技術あるいは宇宙開発、こういったものを見ると、ロシアの大学がそんなにレベルが低いとはとても思えません。

 要するに、ドイツとか日本とかフランスとかロシアとか、英語圏じゃない国の大学が圧倒的に不利になるというのがこの指標の特徴であって、さっきからグローバル化と言いますけれども、グローバル化というか、大学の英語化を進めればいい成績が出る、そういう偏った指標でしかないと思わざるを得ないと思います。

 そういう指標を、国家の、日本国の目標として掲げるのが本当にいいのかなということを一つ思います。

 それから、この指標、偏りがほかにもたくさんあります。例えば工科大学が大体有利になります。日本でも、大体、百位以内というと東工大は入ってくるんですが、一橋は入らない。なぜかというと、恐らく社会科学系の論文というのは余り評価されにくい。評価されにくいし、英語にも余りなっていないということがあります。

 実は、このことはアメリカの学者も言っています。アメリカの政治学者も文句を言っています。こういうランキングは大体理系が有利で、政策研究とか社会政策を研究しているものはほとんど評価されにくいということがあります。例えば、フォーリン・アフェアーズという非常に権威ある雑誌がありますけれども、ああいう雑誌は論文にカウントされないんですね。

 そういう社会科学系あるいは人文科学系が不当に低く評価されるのがこの世界大学ランキングですから、だから一橋はなかなか優秀な大学の輪に入れないということもありますし、世界ランキング上位も、アメリカの中でも工科大学が結構上に来やすい。カルテクとか、いつも上の方に来ますね。

 そういう偏ったランキングを使っていると、文部科学省が資源配分するのもそういう大学に偏ると思うんです。恐らく、理系にもっとお金をかけろということになると思います。

 それから、外国人の留学生の数と外国人教員の数、これが日本の大学の一番弱いところですけれども、そこに重点的に予算をつければ、必ずこのランキングは上がると思います。

 ただ、そんなむちゃなやり方、そんな偏った指標に基づくランキングを上げるために資源配分することは、本当に日本の大学教育の質を上げるために望ましいことかというと、私はそうは思いません。

 それから、ほかにも偏りはあります。よく言われているのは、研究に力を入れている大学は評価されるけれども、教育に力を入れている大学は余り評価されにくい。なぜなら、研究は論文の数で見やすいんですけれども、教育の成果というのは、これはなかなか数量では評価しにくいという側面がありますから、教育に一生懸命力を入れているアメリカのリベラルアーツカレッジなんかはこのランキングにはほとんど入ってきません。たくさん論文を書くよりも学生を指導することに力を入れている先生たちが余り評価されない、そういう仕組みでもあります。

 こんな世界ランキングは、プラス、マイナス、両方ありますが、私は害の方が大きいんじゃないかと思います。その点について政府の御見解と、もしよろしければ大臣の御感想をお聞きしたいと思います。まずどちらからでも結構ですが。

下村国務大臣 端的に申し上げると、相当誤解を持った質問だというふうに思います。

 別に、この世界ランキングだけで文部科学省が大学に対する予算等を決めているわけでは全くありません。一つの目安として使っている部分としての一つの世界として、グローバル化の部分から、これは、昨年閣議決定した日本再興戦略において、我が国の大学の国際競争力を一層強化する観点から、今後十年間で世界大学ランキングトップ百に我が国の大学が十校以上入ることを目指すとの目標を掲げております。この中で指摘されていたのは現在二校ということでしたから、この資料では、タイムズ・ハイアー・エデュケーション、ワールド・ユニバーシティーのこの資料を多分使ったのではないかと、日本再興戦略において。

 文部科学省としても、今年度から開始したスーパーグローバル大学創成支援におきまして、世界大学ランキングトップ百を目指す力のある十三大学、トップ型を含む三十七大学の採択を決定したところであります。特にこれらの大学においては、海外の卓越した大学との連携や大学教育の国際標準化など、徹底した国際競争力の強化が進むことを期待しております。

 さらに、双方向の留学生交流や大学間交流の推進などを通じて大学の国際化を促進し、世界における我が国の大学のプレゼンスの向上を目指していきたいと考えておりまして、この部分についても予算計上しておりますが、文部科学省の全体の中の大学に関係する予算計上としてはこれはごく一部でありまして、今、山内委員が指摘されたような、多面的な角度からいろいろな形で各大学についての支援やあるいは助成等を行っているわけでありまして、この大学ランキングだけにのっとって政策的な予算を決めているわけでは全くありません。

山内委員 誤解に基づく質問とおっしゃいましたが、私も別に大学ランキングだけで決めていると言っているつもりはありません。いろいろな指標の中で、この大学ランキングという指標は余り有効ではないということを指摘しているだけです。

 しかし、このスーパーグローバル大学等事業という、ちょっとネーミングのセンスもいかがなものかと思うこの事業にしても、やはり世界大学ランキング入りというのが非常に前面に出ているわけですから、かなりの程度、この世界大学ランキングという指標が重視されているのは間違いないと思いますので、そんなに私が誤解しているとは思いません。

 そういった指摘をした上で、次の質問に移りたいと思います。

 次に、大学入試に英語の外部試験の活用を検討するということで文部科学省の有識者会議が報告書を出していると報道されております。英語の外部試験というと、私は、外部試験の導入というのはかなり問題もあるので、慎重になるべきだと思っております。

 その理由の一つは、まず、例えば一番有名なのはTOEFLだと思いますけれども、このTOEFLというのはそもそも、アメリカの大学に入学する、要するに、基本的にはアメリカの大学でネーティブの英語のスピーカーと同じように学ぶことを想定した試験ですから、相当高度なものになります。

 しかし、日本の学習指導要領では高校までで大体三千語ぐらいしか習わないわけですが、アメリカの大学で勉強しようと思ったら、それこそ六千、八千、あるいは一万ぐらいは語彙が最低限必要じゃないかと言われていますから、TOEFLの得点をちゃんととろうと思ったら、高校で真面目に勉強するだけじゃ無理です。

 そういう、高校で教えてもいないことで大学入試を行うというのは、そもそも余り望ましいことではないと思います。一部の大学が個別の政策でTOEFLを使うというのは、それは構わないと思うんですけれども、国として、余り外部の試験を使えということを旗振る必要が本当にあるのかなというと、私は疑問に思わざるを得ません。

 それから、外部試験というのは高いです。IELTS、TOEFL、二万円を超えます。例えばIELTS、文部科学省からもらった資料によると、受験料が二万五千三百八十円。消費税がふえればもっと高くなります。それから、TOEFLは二百二十五ドルというふうに記載がありました。円安になってさらに高くなっています。そういう、高校生ぐらいの子供を持つ親御さんの負担がかなりのものになります。

 しかも、TOEFLでもIELTSでもそうですが、何度も何度も受けると、なれてだんだん点数がよくなります。ということは、お金持ちの子供は、十回ぐらい受けたらだんだん場なれしていって、点数が上がっていくということもあると思います。実際の英語力が上がるというよりは、テストなれして上がるという要素が非常に多いと思います。そうすると、裕福な家庭の子供ほど高い点数がとりやすいということがあると思います。

 さらに、四技能をはかるというのは、実はお金がかかるかもしれないと思います。ライティングとスピーキング、この二つは、相手が外国語のネーティブスピーカーであったり、あるいは相当英語力のある人が文章を添削したり、あるいはしゃべる相手にならなきゃいけませんから、その四技能のうちスピーキング、ライティングを上げようと思うと、高校だけじゃ足りなくなって、予備校に行こうとか英会話学校に行こうとか、そういう方向に進んでしまうと思います。

 そうすると、さらに塾通いが加速していくとか、あるいは、親の所得が高くてこういう学校にたくさんやれる子供はどんどん有利になりますが、そうじゃない家庭の子供は不利になる、そういう傾向もきっと出てくると思います。

 その点、センター試験みたいな試験であれば、学校できちんと勉強していればちゃんと点数がとれるいい試験だと私は思っております。わざわざそういうかなりいいレベル、まあ、センター試験をもうちょっとレベルを上げるとかもうちょっと精度を上げるということができると思いますが、いきなりIELTSだTOEFLだといったような外部試験をどんどん導入していくことは、弊害の方が多いと思わざるを得ません。

 それについて文部科学省の見解をお尋ねしたいと思います。

小松政府参考人 まず、今後の英語教育のあり方として、今までの実績等を踏まえながら四技能について力をつけていくという方向を目指すということ自体につきましては、御指摘の有識者会議でも指摘をされ、また、私どもとしても、方向としては重要なことだと考えております。

 この有識者会議の報告の中では、外部試験の活用ということも提言されているわけでございます。

 あわせまして、ではどのように今後取り進めていくのかということに関連をいたしまして、この報告では、学校、これは大学とか高校とかそういったものでございますが、その関係者、それから資格試験関係方面の方々、あるいは専門家といったものから成る協議会を設置して、高校生が受験しやすくするというような方法を協議し取り組んでいくということが提案されております。

 そこで、私どもといたしましても、こうした方向にのっとりまして協議会をつくりまして、そして、受験機会、受験料、あるいは地域バランスなども提言されておりますけれども、こうした点につきまして取り組みを進めまして、指針などもつくって取り組んでいきたいというふうに現在考えているところでございます。

山内委員 各大学が、ユニークな、個性のある入学試験のやり方をやるのは結構だと思いますが、私は、国としてそういう外部試験がいいことだという方向に持っていくのはいかがなものかというふうに思っております。そのことを申し上げて、次の質問に移ります。

 今、小学校での英語教育というのがさらに導入される方向なんだと思いますが、その体制について伺いたいと思います。

 そもそも小学校では、これまで英語を教えるというのは当たり前のことではなかったわけですから、英語を教える先生は最初はいなかったはずです、いろいろなところで英語活動をやっているところは出てきていると思うんですけれども。そういう意味では、これから小学校で英語を本気でやるんだったら、相当力を入れて教員の養成とか教材の開発をやらないといけないと思います。

 大体、外国語というのは、最初に習う先生というのがかなり大きなインパクトを持ちまして、私もこれまで幾つもの外国語に挫折してきた経験がありますが、最初に習った先生がだめだと大体だめというパターンが、何となく自分の経験則としてあります。

 そういった意味では、最初に英語に接する先生というのはとても大事で、もし小学校でやるんだったら、高校よりもむしろその先生の方が重要じゃないかと僕は思います。裏を返せば、そういういい先生が確保できないんだったら、小学校で英語教育を今やるのは本当に必要なことなのか、必要ないんじゃないかというふうに個人的には考えております。

 また、英語教育を導入するということは、恐らくほかの科目を減らすことにもなると思います。そういうデメリットもあることを考えると、英語教育の導入、今どういう準備をやっているのか、それから、実際にうまくいく公算があるのか、政府の見解をお尋ねしたいと思います。

小松政府参考人 英語教育の今後のあり方につきましては、先ほど御指摘の、この秋、九月の英語教育の在り方に関する有識者会議の報告で取り上げられておりますけれども、先生方の問題はとても大事な問題でございますが、前提といたしまして、小学校で英語教育を行うことにつきましては、どういう形、あるいはどういう部分、水準で行うかということにもよろうかと思います。

 今現在考えられておりますのは、中学年から外国語活動を開始し、音声になれ親しませながらコミュニケーション能力の素地を養っていく、高学年で、基本的な表現によって聞く、話す、読む、書くの態度の育成を含めてコミュニケーション能力を養うように、学習に系統性を持たせるという形で教科にするということが提言されているところでございます。

 それを進めていきますには、文部科学省といたしましても、その英語を教える先生の指導力の向上、それから、音声等とも絡みますので、小学校の先生とチームティーチングを行うことになると予想されます、外国語の指導に当たられるALTの方々、この量の問題もございますけれども、質の確保などが重要になってくると考えております。

 そこで、本年度から、小学校の先生方につきまして、外国語指導助手とのチームティーチングに関してどのようにやったらいいのかという研修、あるいは、JET―ALTなどに対しまして、来日時に授業の実演など実践的な研修を実施するというようなことを開始しているところでございまして、こうした形でティーチングスタッフの充実を図っていくという取り組みを進めていくという必要があると考えております。

 なお、小学校における英語教育につきましては、授業時数や位置づけなどを考えていかなければいけないこと、御指摘のとおりと考えます。

 次期学習指導要領の全体の改訂に向けた審議が現在予定されております。この教育課程全体の議論の中で、専門的にその全体の位置づけを検討していく中で、他の教科等との授業時数の関係を含めまして整理をしていきたいというふうに考えているところでございます。

山内委員 文部省からいただいた資料によると、公立中学校で十分な英語力がある英語の教師、TOEICだと七百三十、英検だと準一級、そういう外部試験ではかって十分な英語力がある公立中学の英語の先生は三割程度、公立高校だと五、六割程度、要するに、中学、高校の英語の教師でさえ十分な英語力がないというのが今の日本の英語教育の現状ですから、そういう現状をほったらかしておいて新たに小学校で始めるというのは、私はいかがなものかと思います。

 まずは、中高でしっかり英語力をつけられるように英語の先生を強化していく、そういう地道なことから始めていただきたいという要望を申し上げまして、質問を終わります。

西川委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうはまず、前回の一般質問に続いて、十月二十七日の財政審の財政制度分科会における財務省の主張について取り上げたいと思います。

 財務省主計局の主張で、まず何よりも学校現場や保護者から余りにもひどいと怒りの声が上がっているのは、やっと始まった小学校一年生への三十五人学級を四十人学級に戻せと主張していることであります。京都新聞は一昨日十一月五日付社説で、「教育現場の現状を無視した説得力を欠く方針であり、財務省は撤回すべきだ。」と厳しく指摘をしております。

 きょうは宮下財務副大臣に来ていただいておりますのでまず確認をいたしますが、きょう配付した資料、財務省主計局が十月二十七日の財政審に提出した資料の八ページ、下のグラフあるいは表、ここには「小学校における問題行動の発生件数の小一が占める割合」というものがついておりますけれども、これが、小学校一年生の三十五人学級には効果がないと財務省が主張する根拠になっているわけですか、副大臣。

宮下副大臣 お答えいたします。

 まず初めに宮本先生にお話しを申し上げたいのは、日本の財政状況は極めて厳しく、歳出の効率化を図らなければ、結局、子供たちに借金を負わせるという格好でツケ回しになる。そういう視点もあり、教育予算につきましても、やはり他の政策分野と同様に、政策効果についてはきちんとチェックしよう、そういうことでいろいろな切り口で分析をし、財政審にも、こういう面もありますよということで資料を提示したということであります。

 それで、今回御指摘の提出資料でありますけれども、この小一、三十五人学級は、いわゆる小一プロブレムの対応のために導入されたというふうに理解しておりますけれども、それで、その政策効果としてそれが効果を上げているのかどうなのか見る必要があるということで、今回、ある前提を置いて分析をしてみたということであります。

 相対的に小学校一年生に……(宮本委員「端的に、短く」と呼ぶ)済みません。小学校一年生に手厚い配置ということですので、そこで小学校一年生の比率が下がっていてくれているんじゃないかということで、全体に占める小学校一年生の問題件数の割合を出してみたんですけれども、残念ながら有意な差がないということで、必ずしも当初の目的という面で十分な効果を上げていない面があるのではないか。

 そういう意味で一つの示唆をさせていただいたということであります。

宮本委員 いや、事実にだけ答えてくれたらいいんですよ。この表が一つの根拠になっているんですね。イエスかノーかだけ。

宮下副大臣 根拠というか、そういうペーパーですね。

宮本委員 配付した資料一を見ていただきたい。右下のこの表というのが、財務省がここで述べている根拠なんですね。

 この中身を見ますと、つまり、件数の増減にかかわらず、とにかく小一の件数を小学校全体の件数で割って割合を出して、それぞれを、平成十八年から二十二年、これが四十人学級の時代、それから三十五人学級導入後は平成二十三年、二十四年、それぞれの平均をとったというものでありまして、実は、この計算のもとになった表というのは文科省に出していただきましたけれども、資料二におつけいたしました。「財政制度等審議会が指摘する小学校における不登校・いじめ・暴力行為の推移」、これが、このグラフなり表なりの根拠になった表なんです。

 これは一見していただいたらわかるように、例えばいじめの全体件数は、平成二十三年から二十四年にかけて三万三千余りから十二万近くへと四倍近くにふえております。これは、前回、民主党の笠先生が指摘になった、大津いじめ自殺事件が起こって、教育現場ではとにかくいじめを見逃さないという取り組みをやったものですから、このときは非常に敏感になって認知件数がはね上がったということなんです。

 こういうばらつきが非常に大きい指標を、小一が占める割合だけをとって、しかも、三十五人学級の実施前は五年間、実施後はわずか二年間の平均をとって比較をする。こんなやり方は、三十五人学級の効果の検証という点では不適切だと私は思いますが、文部科学省、いかがですか。

小松政府参考人 学級編制の標準につきましては、学校教育の特質に鑑みますと、今御指摘になりましたいじめ、あるいは表にございます不登校等、一定の条件のもとで数値が得られるというものとあわせまして、児童、教員の心理面など、そういう形での測定が困難なものと、多様な要素を総合的に勘案して判断し検討すべきものと考えます。

 この一定条件につきましては、いじめ等の問題行動の件数については、その変動要因は、私どもの考えでは大変多面的でございます。家庭や地域の状況、あるいは子供一人一人に目が行き届く指導体制の整備、それから、今の教育上の関心、社会的関心の高まり等から、いじめを積極的に把握していこうとするような考え方が浸透する、こうした多くの要素に影響を受けるものでございます。

 したがいまして、私どもとしては、問題行動の件数に占める小一の割合をもって少人数学級の効果をはかるということについては、難しいのではないかと思っております。

宮本委員 当然ですね。

 大体、財務省は、いじめ認知件数がふえているということから、小一、三十五人学級に明確な効果がなかった、あったとは認められないという結論を引き出しているんです。

 財務副大臣に聞きますけれども、財務省は、いじめ認知件数が少なくなった方がよい、こうお考えですか。

宮下副大臣 御指摘のように、また、今の御答弁にありましたように、いじめ認知件数の増加に関しましては、実際の発生件数がふえている可能性ももちろんありますけれども、認知率が上がっているという可能性ももちろんあって、そこら辺は変動が大きい数字だというふうに思いますが、一方、暴力行為とか不登校についてはかなり外形的にわかる話でありまして、その点について言えば、比率はほとんど変わっていないということは言えるのではないかということであります。

宮本委員 いや、質問に答えていないですよ。いじめ認知件数が減っていない、つまりふえているということをあなた方は論じているわけですから。

 これは、我々教育を担当している者であれば、いじめ認知件数がふえているということは、いじめは決して許されることではありませんけれども、どの学校でもどの子供にも起こり得るものだということで、私たちは随分、これをしっかりいち早く把握し迅速に対応するということを心がけてきたわけです。その結果、認知ということがされるようになった、こういう面があるわけです。

 大臣に改めてこの原則論を聞きますけれども、いじめ認知件数がこうやってふえるということが財務省の言うように悪いことなのか、ぜひ大臣から御答弁いただきたいと思います。

下村国務大臣 文部科学省では、大津市の中学生が自殺した事案を受け、平成二十四年八月に、従来の調査とは別途、いじめの緊急調査を行うとともに、その結果を踏まえて、いじめの早期発見や十分な対応等について、学校や教育委員会に対して改めて指導を行いました。

 こうした中で、文科省が従来実施している問題行動等調査において、小学校におけるいじめの認知件数は、平成二十三年度の約三万三千件から平成二十四年度に約十一万七千件と大きく増加したわけでございます。

 その要因について文科省が都道府県教育委員会等に聴取を行って分析したところ、学校において、ささいなことでもその訴えに積極的に対応したり、アンケート等の工夫、改善を行った、また、教育委員会において、より積極的な対応を学校に指導した、さらに、社会的な意識の高まりにより子供や保護者から学校への相談がふえたなど、平成二十三年度以前と比べて、学校、教育委員会等において、いじめを積極的に認知していこうとする考えの方が浸透したということがうかがえると思います。

 いじめは決して許されないことでありますが、どの学校でも、どの子供にも起こり得るものであります。文科省としては、ささいなことでもその訴えを認知し、早期に対応することが重要と考えます。

宮本委員 当然のことだと思うんです。財務省の論拠は、教育現場の常識から考えても、全く根拠が薄弱だと言わなければなりません。

 一方、不登校については、なるほど副大臣おっしゃるとおり、これは発生件数なんです。いじめは気づかないとか見て見ぬふりをするということが可能でありますけれども、不登校は発生件数が数としてはっきり出てきます。不登校に気づかないとか見て見ぬふりをするということは不可能であります。

 このように考えると、財務省が示した今回の資料、数値は全く逆のことを示しているとも言えると私は思うんです。いじめの件数がふえているのは認知が進んだということでありまして、小学校一年生のクラスでは、三十五人学級の導入によりクラスサイズが小さくなって、いじめや暴力行為がちゃんと教員の目にとまり、発見、認知できるようになった。そして、発生件数である不登校については、わずかでありますけれども、減っているということが示されております。

 これは文部科学省に聞くんですけれども、全国的に定着した小学校一年生の三十五人以下学級は、子供たち一人一人に目が行き届くきめ細やかな指導が可能になるし、教員と児童との関係が緊密化するとともに家庭との緊密な連絡が可能になるという点で、いじめなど子供の問題を見過ごさず、発見、認知する上で効果を発揮していると私は思うんですけれども、そうじゃないですか。

小松政府参考人 現場においてさまざまな取り組みが行われているところでございますが、例えば全国連合小学校長会が調査をしたもので、私どもの手元のものを見ますと、学級担任の先生方からは、きめ細かい指導の面が充実したというのが九八・三%、校長先生からは、教員と児童の関係が緊密化した、あるいは家庭との緊密な連携が可能となったというようなことが、いずれも九割台の高い数値であらわれております。

 個別の案件も含めまして申すべきかもしれませんけれども、数値的にいいますと、そういった非常に高い比率で変化が認識されているというふうに理解しております。

宮本委員 現場からはこうしてほぼ一〇〇%の方々が、きめ細かな指導ができるようになったとこう語っているわけですよ。一方で財務省は、認知件数がふえたということをもって、三十五人学級に明確な効果があったとは認められず、こんなペーパーを出しているわけですよ。

 副大臣、これは全く事実誤認じゃないですか。いかがですか。

宮下副大臣 いじめについての認知については、大臣からの御答弁もありましたように、やはり、新たな取り組みがこういう結果をもたらしているという面は十分あると思います。

 その上で、総合的に、当初の目的でありました小一プロブレムに対して効果があったのかないのか、もちろんこれは一つの切り口でありまして、これだけでなく、総合的に判断をしていく、議論をさせていただくというのが必要ではないかなと考えております。

宮本委員 いや、もう本当に撤回すべきだと。それは、ここでもう一度あなたに撤回するかと聞いて、撤回すると答える権限は持っていないんでしょうけれども、撤回すべきだということは申し上げておきたいと思うんです。

 わずか八十六億円の金を浮かせるために、せっかく始まった三十五人学級まで子供たちから取り上げる。それも、自分たちの都合のいいように数字を解釈して、無理やり自分たちの理屈をこじつける。牽強付会というのはこういうことを言うんですよ。

 大臣、大臣はこの財務省の方針が明らかになった直後の大臣会見で、こういう財源論だけでこの国を誤るようなことをしてはならないとおっしゃいました。これは当然のことだと思います。

 しかし、私は大臣にも一言申し上げなくてはなりません。

 昨年、私は大臣と、予算折衝で財務、文科両省間で取り交わされた確認文書について議論をいたしました。私が確認文書の三項目に「国・地方の財政状況等を勘案し、」という文言があることを指摘して、財源論で少人数学級が左右されてはならないと質問をすると、大臣は、「項目としては財政状況等も入っておりますが、これは確認的に記載したということで、これについては、麻生財務大臣との話の中で、私は、拘束されないというふうに認識をしたい」と答弁をされました。

 その後、予算委員会でも重ねて私が問うたにもかかわらず、それでも大臣は、「最初から、財政状況があるから少人数については一切だめということでなくて、まずは学力それから学習状況の結果を踏まえてということですから、これは何ら問題ない」とまで答弁されたわけです。

 今日、このような財務省の主張が出てきているわけですから、私は、あなたの言明に反してやはりこういった姿勢が、何ら問題ないどころか大きな問題だったのではないかと思うんですが、大臣いかがですか。

下村国務大臣 それは適切なお考えではないと思います。

 財務省からすれば、財政状況というのは考えなければならないというのはそのとおりですが、何を優先順位にするかということの中、教育においても、削減していいのかということについては根本的な哲学の問題として間違いであると私は思っております。

 今回策定した新たな教職員定数改善計画において、文部科学省としては、十年後の学校のあるべき姿を見据え、今までの教育的なやり方ではなく、アクティブラーニング等の教育の質の向上や、教員に加えて多様な専門性を持つスタッフを配置し、一つのチームとして学校の教育力と組織力を最大化することを目指し、必要な教職員定数を盛り込んでおります。

 文科大臣として、教育政策としてあるべき姿を描いて必要な予算を要求し、粘り強く財務省と折衝を行い、実現に向けて最大限努力という姿勢は、これからも従前と変わりなく進めてまいります。計画的な指導体制の整備を図ることができるよう、各方面の理解を得つつ、財政当局と折衝し、教職員定数改善計画の実現に向けても最大限努力をしてまいります。

宮本委員 二言目には財務省財務省と言うんですけれども、財務省の姿勢も大問題だと思いますが、財務大臣も文科大臣も同じ安倍内閣の閣僚なわけです。少なくとも、総理にはこの問題をきっちり判断する権限があるわけですよ。

 下村大臣は、二〇二〇年のビジョン、私は大風呂敷だと思うけれども、こう言ってそういうものを打ち上げる。財務省は、ふやすどころか削り込めと号令をかける。この両方で二手に分かれてあれこれいつまでもやっているというのでは、まさに茶番だと言われても仕方がありません。きちっと内閣として、やはり教育にしっかり金をかける、こういう立場で統一して進めていただきたいと思うんです。

 さて、残る期間で私はカジノ議連のことについて聞きたいと思います。

 去る十月十六日、参議院文教科学委員会で、我が党の田村智子議員にカジノはばくち、賭博であるという認識はあるかと問われて、大臣は「そのとおりだと思います。」とお認めになりました。これは間違いないですね。事実ですね。

下村国務大臣 そのようにお答えしました。

宮本委員 その後の議論を見ておりますと、青少年に対する悪影響を排除している、あるいは、依存症の人や犯罪歴のある人は入れないという言い分が繰り返されております。

 私は、青少年がどうこうと言う前に、そもそもばくちというものを、大人に対してであっても文部科学大臣が推奨すべきものなのかというのがこの問題の中心問題だと思うんです。

 きょうは法務省に来ていただいておりますが、十月八日の参議院予算委員会で、我が党の大門実紀史議員がそもそもなぜ賭博は刑法で禁じられているのかと問うたのに対して、法務大臣はどう答弁しておりますか。

上冨政府参考人 御指摘の答弁におきまして法務大臣は、

  お尋ねの現行の刑法の趣旨について答弁いたします。

  賭博行為は、勤労その他正当な原因によらず、単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであります。そして、国民の射幸心を助長し勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれすらあることから、社会の風俗を害する行為として処罰することとされております。

と答弁しているところでございます。

宮本委員 国民の射幸心をあおり、勤労の美風を損ない、国民経済に悪影響を及ぼす、これは、賭博の、法務省がそのとき答弁した答弁なんですね。

 大臣、きょう私は、青少年への悪影響が排除できるかどうかを論じているんじゃないんです。大臣自身が賭博であると認め、その賭博行為は、「国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、」つまり、「健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害する」とこれは最高裁判決でも確定判決が出ているわけですけれども、こういうものであるということを大臣はお認めになりますか。

下村国務大臣 IRの件であるというふうに思いますが、これは世界百カ国以上導入している中で、なぜ導入されているのかということについては、今の懸念もありますが、それをさらにクリアするような社会的なセーフティーネットなり工夫する中であるからこそ百カ国以上で導入されている。

 我が国においても、そのような創意工夫を行うことによって青少年へのマイナス影響がないような工夫はできると思います。

宮本委員 いやいや、そらさないでくださいよ。青少年に悪影響を及ぼさないようなセーフティーネットという話はもう聞いたんですよ。幾らどんなふうに防御しても、そのど真ん中でやられているその行為自身が、法務省答弁あるいは最高裁大法廷判決にあるように、「勤労の美風を害する」、つまり刑法で禁じられているような行為なんだということは、判決もあるんですから認めざるを得ないと思うんですが、いかがですか。

下村国務大臣 いや、それは、先ほどの答弁のように、参議院でもそういうふうにお答えしています。ただ、工夫の仕方があるということを申し上げているわけです。

宮本委員 大臣、私と大臣では道徳に対する考えは、それは大きく違います。しかし、子供たちに伝えるべき市民道徳については、つまり青少年に悪影響を及ぼしてはならないものについては、もちろん大人自身も守り、範を示さなければなりません。文科大臣が、まさに最高裁が「怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害する」と言っているようなことを推奨していたのでは、私は、子供に示しがつかないと思うんです。

 だからこそ、安倍総理も去る十月八日の参議院予算委員会でカジノ議連について、御指摘もごもっともかもしれないので最高顧問はやめさせていただくと答弁をした。にもかかわらず、その直後に下村大臣は、総理とは別の機会にシンガポールに行って見てきた、こう述べた上で、顧問をやめるつもりはないと開き直ったわけですよ。

 これはまさか、総理がやめると言ったのはおかしいと総理の判断に異を唱えるおつもりがあったということじゃないと思うんですが、そうですね、異を唱えるつもりはないですね。

下村国務大臣 それは、総理には総理のお考えがあり、私には私の考えがあるということです。

宮本委員 ならば、じっくりと考える必要があると思うんですよ。しっかり検討する必要がある。

 先日の参議院文教科学委員会でも大臣は、顧問はそんな大したポストではない、そういう答弁もされているわけです。

 いや、大したことがないと言うのであれば、幾ら悪影響を広げないようなセーフティーネットをやっても、そのど真ん中で現に大人がやることについても、まさに法務省の答弁、あるいは、最高裁の判決ではそれは勤労の美風を損なうものだとこれはもう確定しているわけですから。別に、一議員がそういうことを検討しようと言うんだったらいいですよ。文部科学大臣ともあろう者が、それを進めていいんだ、総理もそういう御指摘もごもっともなのでやめると言っているものを、別に異を唱えるわけではないが、私は私で検討すらしないというようなことは僕はおかしいと思うんです。

 しっかりとやはりこの際検討する、検討すると言うぐらいは当然だと思うんだが、いかがですか。

下村国務大臣 ちょっと経緯が違いまして、最高顧問というのは、総理なり総理経験者のポストという認識で議連がつくられたので、つくられたというか、それの最高ポスト、最高顧問ということで位置づけたんだと思います。

 顧問というのは、私が別に文科大臣であったから顧問ということではなくて、もともと議連の役員をしておりましたが、内閣に入ったので役員から外れて全く何もないということに対しては、私に対してちょっと遠慮もされて、顧問という名前だけつけたのではないかと思います。

 それは議連の判断でありますから、あえて私の方からやめると言うようなポストではないということを申し上げているわけであります。

西川委員長 宮本岳志君、既に質問時間は終了しておりますので、よろしくお願いします。

宮本委員 はい。

 いや、これだけ申し上げても検討するともおっしゃらないのは、私は本当に驚きですね。これだけ指摘しても一顧だにしない、勤労の美風を害するような賭博の推進にかかわり続けると言うのであれば、大臣には道徳を説く資格はないということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

西川委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木愛でございます。

 まず、前回質問いたしました高等学校等就学支援制度について、二点ほどお伺いをいたしたいと思います。

 前回の御答弁で、小松局長より、就学支援金の辞退者数、また申請書の未提出者数については、母数が確定して、その中の何%という計算ができないので、その数自体は示すのは難しいという御答弁がございました。

 何もパーセンテージではなくて、届け出書も、また確認書も辞退書も何にも提出をしていない未提出の数というのは、学校で把握ができて、また県の方で集約することも可能ではないかというふうに考えております。

 といいますのも、やはり、こうした未提出者の中にこそ、本来、手当てが行くべきところに支援金が届いていない生徒がいる、そういう実態があるわけでございます。ぜひ、この制度を改善するためにも、やはり実態把握は必ず必要だというふうに考えますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、櫻田委員長代理着席〕

小松政府参考人 前の御質問に対しまして御答弁いたしましたとき、公立高校では、今年度から、授業料不徴収制度から就学支援制度に変更したということから、生徒が就学支援金を受給する場合には申請を行っていただく必要があるということから生ずるお話として御説明を申し上げたところでございます。

 それで、例えば今の話で考えますと、全員の中から、原因はわからないけれども出していらっしゃらない方を一つの数値としてつかまえて、それをもとに何らかの政策を立てるということになりますけれども、実際には、これを、公の財政負担を伴う政策との関係で使用しようといたしますと、もう少し詳しく見なければいけない点が出てくると思われます。

 例えば、この中で、高額所得、高額というか、この基準にはまらないだけの所得があるので出さなかったという方はどう数えるか。かなりの数いらっしゃいますけれども、そういうことを除いて、そして残りの生徒さんについて、場合によっては個別の事情をまた聞いていかなければいけない。これは、現場で申し上げますと、プライバシーなどのことも含めまして、なかなか難しい点があるなというふうに思っております。

 しかしながら、先生御指摘のように、生徒の家庭の事情等を把握しながらやっていくということが重要だというのも、そのとおりだというふうに私ども認識をいたしております。この事情を最もよく把握していただいている、適切に対応していただける、あるいはいただいているのは、現場の先生であるということも事実でございます。

 それらを考えますと、いわゆるその把握のための数値の調査というようなことで全国的に事務を生じるよりは、今後とも、どうした事例があるかということをよくお聞きしながら、これも一つの把握の方法だと私ども思うのでございますが、そういったことが生じないように、そういったことというのは、受け取れるはずの方が受け取れないような事案が生じないように、工夫をして丁寧に申請を受け付ける、あるいは、それが難しい場合は、学校から都道府県にも私どもにも必要に応じて御報告をいただいて、随時御相談にも乗っていくというような対応でしていくのが一番いいのではないかというふうに考えております。

青木委員 やはり、この制度の改善のためには、実態把握というのは必ず必要だというふうには考えておりますが、政府、文科省の方でも、さまざま是正、工夫をしているということも伺っています。

 この申請主義というところに問題はありますが、最終的に本人の申請で構わないということでありまして、その際、本人の所得証明が必要になりますが、高校生でなかなか所得を得ているというのは考えにくいわけでございまして、その本人の所得証明があれば、これは確実に受け付けていただけるものなのか。

 例えば、両親が、その所得制限以上の高額の収入が仮にあったとしても、本人が本人の所得証明をつけて申請をすれば、それは受け付けていただけるのでしょうか。

小松政府参考人 ただいまの御疑問は、収入の捕捉の問題だと考えますけれども、御両親なり親権者の方が高額所得であるということで、それが家計をともにしているというようなことが、事実があるということをわかっている場合は、これは、御本人が自分に収入がないといってもそれは難しいというのは御理解いただけると思います。

 御指摘のことは、従来の御質問にもございますけれども、御家庭にさまざまな事情がございます。一番極端な例は、ドメスティックバイオレンスとか養育放棄とかそういったことで、手続が現実問題として困難であるというようなことが最も極端な例だと思いますけれども、こうした場合につきましては、その方々を所得確認の対象外とすることができるようにしております。そういった場合において、では、生徒本人の所得により判断をする。これは、今おっしゃられたように、その所得の証明によって判断することができる。

 さらに、つけ加えて言わせていただきますと、先ほど申し上げましたように、さまざまなケースがありますので、担任の先生とか学校が一番その状況を把握しておりますから、生徒本人の所得により判定する場合にも、本人が就労していない、収入がないということが確認できれば、課税証明書等の提出も不要としてそれを支出できるというような取り扱いにして、これを文書で地方公共団体に発出しているところでございます。

青木委員 そうなんですよね。もしかすると両親が養育放棄で子供との連携が図れていない場合、申請書が両親から出されない場合、本人の判断で自分の所得証明書をつけて申請するということが、この制度のいい面だというふうには思うんです。考えられている面だとは思うんですけれども、一方、両親の所得が制限以上か以下かというのはどこで判断をするのか。後でわかった場合、例えば裁判とかという状況になってしまうのかどうか。

 中には所得制限以下の子供も当然いるわけでありますので、最終的にはその子供をどうやって救えるのかというところがあって質問させていただいたんですけれども、その辺はどうでしょうか。

    〔櫻田委員長代理退席、委員長着席〕

小松政府参考人 ただいまの御質問は、さまざまな実態を持ちます個別事例の運用に係ってくる面がございますので、ちょっと一般的、抽象的にはお答えしにくい面がございますけれども、ポイントは、公の財政をもってこの制度に支出するということについて、最低限のきちっとした確認は責任を持って行われなければならないけれども、他方で、個別の事例、とりわけ教育や生徒の発達段階、そういったさまざまな状況を勘案して、要は、この制度の本来の目的である教育の機会がきちっと確保されるということに資するような方向で事柄を解釈するということが望ましいと考えられます。その両者のバランスの中で、できるだけ柔軟に解していくということが至当かと考えます。

青木委員 私も、今後のさまざまな現場の状況等もお伺いしながら、また質問させていただく機会はあるかと思いますけれども、実態把握はやはり必要だというふうに申し上げておきたいと思います。

 この点についてもう一点だけお伺いをしたいのは、この申請書なんですけれども、各都道府県によって形式が異なっております。中には、この期間の授業料を納付しますといった誓約書のような形式をとっている自治体もあります。

 国として、今後、できれば統一した形式にする方がいいのではないかというふうに考えますし、少なくとも、保護者に対する精神的な圧迫を与えるようなものにしてはならないというふうに考えますが、この点についてお伺いをいたします。

小松政府参考人 御指摘のようなケース、実は、私どもの方にも、申請手続の際にそうした様式について問題があるのではないかというような報告がございました。

 具体的にそういうところへ、都道府県にお伺いをしてみますと、意図といたしましては、申請漏れが生じないようにするために生徒全員に対して意向確認をする、それが確実だし、かえって本人のためにもいいということで行っているということでございましたけれども、他方、その様式ややり方につきましては、物によって生徒あるいは保護者の方の御負担になる、そういうことがあるということも事実でございますので、方法としては、その辺は慎重にしていただくように、私どもとしても要請したところでございます。

 それぞれの実態を見まして、引き続き、都道府県、学校に対しましては、同様の事案が生じないよう、あるいは、そういうものがあります場合は改善が図られますように、周知に努めてまいりたいと存じます。

青木委員 ぜひ、さまざまな面から改善を図っていただけますように、不断の御努力をお願いしておきたいというふうに思います。

 次に質問を移らせていただきますが、ICT教育についてお伺いをいたします。

 平成二十五年の六月十四日に閣議決定をされました「日本再興戦略 JAPAN is BACK」では、世界最高水準のIT社会を実現するとしておりまして、そのために、二〇一〇年代に一人一台の情報端末による教育の本格展開に向けた方策を整理し推進するとともに、デジタル教材の開発や教員の指導力向上に取り組むとしています。

 情報技術の飛躍的な進歩によりまして、教育分野においても、デジタル媒体を活用したあり方が、既に実証研究等が行われているところでございます。そこでは、子供たちの学習に対する興味や理解が深まるといった有用性、また、不登校や遠方に通う生徒が遠隔授業を受けられるなどの利点が示される一方で、また課題があることも指摘をされております。その点について何点か質問をいたします。

 まず、自治体によっては、既に先進的な取り組みといたしまして、タブレット等を活用した教育の推進が行われています。推進に当たっては、機器操作の習熟はもとより、デジタル教材等の準備、また作成は不可欠でございます。相当の体制がなければ、現行の体制に機器だけを持ち込むということだけでは、なかなか現場の教職員の対応がし切れないという声が上がっておりまして、本来の目的を達成できないと考えられます。

 そこで、今後、このICT支援員を初め、教職員の配置等をふやす計画は想定されていますでしょうか。まず、その点からお伺いをいたします。

下村国務大臣 学校におけるICTの活用を普及、定着させるためには、御指摘のように、ICT支援員を配置し、情報端末等のトラブル及びネットワーク障害への対応等の技術支援や、教員に対する、ICTを活用した授業支援等を行うことが効果的であると考えます。

 第二期教育振興基本計画では、地方公共団体に対しICT支援員の配置を促すこととしており、所要の経費について、地方交付税措置が講じられていることとされております。

 文科省としては、ICT支援員の配置が促進されるよう、地方公共団体に対し、地方交付税措置の内容の周知も含め、積極的な活用を促してまいりたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。

 ある県の県立高校で、生徒にタブレットを導入するに当たり、保護者に五万円の負担を強いているという実態が報告をされています。

 五万円というのは、大変その負担は大きいというふうに考えておりますけれども、それでなくても教育における私費負担の割合が高いと言われている我が国において、国が進める政策であるにもかかわらず、結果として保護者に負担を強いる政策になっているということは、やはり避けなければならないというふうに思います。

 ICT教育の推進にかかわる人件費ですとか、あるいは施設整備を含めた経費というのは、少なくとも国が措置すべきであって、保護者負担の軽減を図るということを同時に進めていかなければならないと考えますが、この点について御所見を伺いたいと思います。

下村国務大臣 教育の情報化について、昨年六月に閣議決定された、御承知、御指摘のように、日本再興戦略において、「二〇一〇年代中に一人一台の情報端末による教育の本格展開に向けた方策を整理し、推進する」こととされました。

 また、第二期教育振興基本計画においては、計画期間の平成二十九年度までに、教育用コンピューター一台当たりの児童生徒数を三・六人までに進めること等を目標としており、現在、段階的に整備を進めているところであります。

 このため、現在、教育振興基本計画に定められた目標水準を達成するために必要な所要額として、単年度一千六百七十八億円、四年間、これは平成二十六年度から二十九年度まででありますが、総額六千七百十二億円の地方交付税措置を講じることとされているところであります。

 文科省としては、今後とも、各地方公共団体が地方財政措置を活用しながらこの目標水準を達成できるよう、それぞれの取り組みを促し、教育の情報化の取り組みを積極的に推進してまいりたいと考えております。

青木委員 地方に丸投げではなくて、国としても交付税という形で予算を組んでいるということでありますが、今お話をしたとおり、一方の地域では、副教材だからといって、その負担を保護者に任せているという実態があり、一方で、例えば東京などは、比較的潤沢な財政事情があって、無償で提供しているということでありまして、自治体によって国が進める教育方針の中で個人負担の違いがあって、地域の中で格差があってよいのかという点なんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

下村国務大臣 御指摘は佐賀県でありますけれども、今年度から県立高校一年生全員を対象にタブレット端末を活用した教育を開始するに当たり、端末を個人で所有するため、保護者から五万円の負担を求めているというふうに承知をしております。

 タブレット端末等の導入に当たり、保護者負担にするかどうかについては、保護者や住民の理解を得ながら、学校の設置者である地方公共団体において判断いただくことであります。

 今回の佐賀県の取り組みについて、これは実際は八万円ぐらいかかるところを、県の方も負担をされているというふうに聞いております。ICTの活用による新たな学びの実現のため、佐賀県が判断されたことであるというふうに思いますが、国としても、できるだけ早く一人一台タブレット端末が子供たちに行き渡るような施策という意味では、先進的な取り組みの自治体はそれぞれの判断でありますが、個人負担をできるだけない形で努力をしていく必要があると考えております。

青木委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 大臣から先ほど御説明がありましたように、交付税、四年間で総額六千七百十二億円ということでございまして、交付税でありますので、自治体の判断で使える財源ではございますけれども、やはり国が方針として示していることでもありますので、先ほどお話をいたしましたICT支援員や、またこの施設整備費等々、自治体の中でしっかりとそのために使われるように、本来の目的が、成果が出るように計画を進めていく必要があるのではないかなというふうに思っておりますので、ぜひ国としても、また現場への目配りも忘れることなく、取り組んでいただきたいというふうに思います。

 もう一点、このことについて、子供の健康への影響についてお伺いをしておきたいと思います。

 スマートフォン等の普及と相まって、子供たちのネット依存が指摘をされています。平成二十三年度から二十五年度にかけて、学びのイノベーション事業という、全国二十校のモデル校を指定して、実証研究が行われたと承知をいたしております。電磁波ですとか、姿勢、視力、中毒など、子供たちの健康への影響について、どのような指摘がなされているのかをお伺いしたいと思います。

河村政府参考人 今御言及のありました学びのイノベーション事業の成果の一つとしまして、「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」というものを平成二十五年度末に作成いたしております。

 その取りまとめに当たりましては、実証校における調査結果を踏まえていろいろな分析をしておりますけれども、眼科や脳科学の専門家の委員からは、現在の学校の授業の中での使用のような短い時間であれば特段の影響が使用後に生じてはいないというふうに考えられるけれども、一方で、もし長時間集中してタブレットPCなどを見続けるということがありますと、ドライアイになりやすくなるというような、目に障害を及ぼすおそれもあるという、健康面への影響についての知見が得られたところでございます。

青木委員 ありがとうございます。

 例えば、小学校一年生で午前中いっぱい使用した場合の検証なども行われているかと思うんですけれども、こうした成長段階また発達段階に応じた適正な授業時間の設定等々、具体的なガイドライン的な対策というものは国の方で用意をしておられますでしょうか。

河村政府参考人 このガイドブックにおきましては、全般的な注意事項として、例えば、遮光カーテンの使用や照明環境の工夫によって、状況に応じて教室内の明るさを調整することや、机や椅子の高さ、適切な姿勢への配慮、それから、長時間にわたり画面を注視することにならないような授業の実施方法を工夫するということを、全体の教育指導に対して指摘、助言しているところでございまして、個別に、何学年ではこうというような示し方はいたしておりません。

 また、ICT使用による児童生徒への健康面の影響に対する配慮につきましては、ガイドブックでも触れていることでございますけれども、学校における取り組みだけでは十分ではなくて、家庭との連携が重要ということもあるわけでございます。

 そのために、少し付言して申し上げますと、文部科学省では、ことしの四月に、当時の西川京子副大臣、この委員会の委員長でいらっしゃいますけれども、西川副大臣を主査として、子供のための情報モラル育成プロジェクトチームというものを設けまして、スマートフォンの利用について、スマートフォンだけではございませんが、そうしたIT機器の利用について家族で考えるということを提案するスローガンとロゴマークを作成いたしました。ちなみに、そのスローガンは「考えよう 家族みんなで スマホのルール」というものでございます。

 現在これを、教育委員会や関係団体、民間企業等と協力をいたしまして、子供たちの情報モラル育成を図る取り組みをどんどん進めようという状況にございます。先般も、全国の全ての小中高校にポスターを配付いたしますとともに、十一月の三日、お休みの日でございますけれども、Jリーグの協力のもと、スタジアムにおいて普及啓発活動も行ったところでございます。

 以上、御報告申し上げます。

青木委員 御丁寧な御答弁、ありがとうございました。

 時間になりましたので終わりますけれども、やはり今後、単に機器を活用することのみを目的とするのではなくて、教育における地域間また社会的格差が生じないように、ぜひ教職員や子供たち、また保護者の声を聞きながら慎重な導入に努めていただきたいとお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 先日の委員会、CSCの質疑をさせていただきました。ちょっと時間の関係で、もう少し聞かなければいけない点がありましたので、まず最初に、きょうはその点についてお聞きをしたいと思います。

 前回、CSC条約の締結というのは原発輸出の促進を目的としたものではないかという質問に対しまして、田中研究開発局長の方からは、CSC条約締結の意義というのは、国際的な原子力損害賠償制度の構築への貢献、あるいは、被害者の方々が公平かつ迅速な補償が実現できるようなこと、あるいは、原子力損害賠償に関して適用されるということの法律についての予見性が向上できるということであって、原発輸出の促進ということを目的としたものではございません、そう答弁をされました。

 やはりどうも腑に落ちませんで、先般の委員会の場では口頭で述べさせていただきましたが、きょうは資料を配付させていただいております。これは、平成二十三年十一月十五日に開かれました第四十五回の原子力委員会に、文部科学省原子力損害賠償対策室が提出した資料です。配付した資料、参考もつけて四ページだったと思いますが、きょうは三ページ持ってまいりました。

 そのうちの、真ん中の二ページ目をごらんください。その中に、二ポツとして、「CSCに加入した場合に考えられる主要な意義」ということで四点挙げられております。その黒ポツの一番最初の「原子力事業者への責任集中」として、「我が国メーカーが海外にプラント輸出する場合、輸出先国がCSC締約国であれば、当該国で原子力事故が発生した場合、その原子力事故の責任を免除される。」そう明記をされております。

 意義という言葉はどういう意味があるか。辞書を引きますと、その事柄にふさわしい価値、値打ちというような、そういうものが出てまいります。

 そういたしますと、この文科省の資料の当該部分は、CSC条約を締結すれば原発プラント輸出でメーカーは事故責任を問われない、だから原発輸出をする場合にCSC条約は価値があるという意味になるのではないか、そのようにも思います。みずからCSC条約の締結は原発輸出にとって価値があると明記をしておきながら、今回、原発輸出は目的ではないというのは、これは詭弁ではないでしょうか。

田中政府参考人 原子力損害は決して起こしてはいけないというものでありますけれども、万々が一起こった場合の国際的な賠償制度の構築に貢献するということは、原子力事故の当事国としての我が国の責務である。

 CSCについては、これは我が国が締結することによって発効するということ、国際的な原子力損害賠償制度の実現ということから、我が国がCSCを締結することは十分な意義があるということでございます。

 また、CSCの締結に当たっては、前回もるる御説明をしたとおりでございます。CSCの締結ということは、これらを踏まえて行うものだということを再度御説明を申し上げたいと思います。

 本日、先生から御提出がございましたこの資料でございますけれども、これは平成二十三年の十一月、まさに福島の事故が起こった半年後くらいでありますけれども、原子力委員会が、国際的な原子力損害賠償についてどういうような検討を進めていくのかというようなことの御質問があり、当時、事務方として、原子力損害賠償制度については三つのものがある、あるいはこういうような論点がある、こういうような課題があるといったようなことを網羅的に御説明をしたときに使用した資料でございます。

 その場のやりとりということも、議事録でももはや公表されておりますけれども、今先生がおっしゃったような指摘のやりとりというようなことは、この場でも出ておらないということを申し上げたいと思います。

吉川(元)委員 私が聞いているのは、輸出促進の意義があるんだ、そういう価値があるんだということを、まさに資料として提出されているのではないんですかということです。

 議事録を見ていただいてもと言いますけれども、では、議事録を読ませていただきます。

 前後のやりとりがありますので、その部分だけ抜き取りますが、成長戦略の話については、これは当時菅内閣でありましたけれども、成長戦略と新成長戦略として原発の輸出ということも掲げられておりました。成長戦略の話については、我々も、これは文科省が言っているんですよ、我々もそのような意識を持っており、その意義をしっかりと捉える必要がある、加入していくことの意義は、それなりに意識しながら考えていくことだと思う、こう述べているんですよ。何も議論にならなかったというのは違うんじゃないですか。

田中政府参考人 原子力損害賠償の国際的な枠組みについての目的というようなことについて、やりとりということではなくて、この原子力委員会にお出しをした資料は、それぞれの国際的な枠組みについて、こういう論点がある、こういうようなことが検討の中に入ってくるというようなことについて、網羅的に御説明を申し上げたというときに使った資料だというふうに認識してございます。

吉川(元)委員 資料に、もう一度見ていただくとわかるように、二ポツで「主要な意義」と書いております。三ポツで「主要な課題」というふうに書いております。これはそれぞれ、私が読むには、この「意義」というのは価値がある、「課題」については、これはちょっと今後考えなきゃいけないという課題だというふうに解せられます。

 実際、説明の際にも、これも議事録に残っておりますが、検討する場合には、この意義と課題というのを両方とも勘案した上で、どう考えていくか、引き続き検討を続けていかなければならない、こう述べられているわけです。

 つまり、ただ単に課題がこれとこれとこれがありますよということではなくて、明らかに最初の四つについては、これは価値があるんだというふうに言っているとしか思えないんですけれども、私の日本語の理解というのはおかしいんですか。

田中政府参考人 「CSCに加入した場合に考えられる主要な意義」の項目の中に、原子力事業者への責任集中、事故の際の締結国からの資金的援助、裁判管轄権の明確化、国際的枠組みの充実に貢献というようなことが考えられるということでお示しをしたものでございます。

吉川(元)委員 もう余り時間がないので、余りこういう問答をしていても意味がないと思うので。

 では、ちょっと質問、趣旨をかえますが、この資料を原子力委員会に提出した時点、平成二十三年十一月十五日ですけれども、その時点では、文科省の原子力損害賠償対策室は、CSC条約締結は原発プラント輸出にとって価値のあるものだ、今ではないですよ、当時、価値のあるものだと考えていたのか。それはお認めになりますか。

田中政府参考人 原子力事業者への責任集中ということは、CSCに加入した場合に考え得る主要な意義の一つだろうというふうに考えてございました。

吉川(元)委員 いや、原発の輸出に関して価値があるというふうに当時考えていたのかどうかということを聞いているんです。

田中政府参考人 考えられる範囲の中の一つとして、効能としてそういうことがあり得るのかなというふうに考えていた可能性がございますけれども、これからとしては、明確には現段階で申し上げるというわけにはいきません。

吉川(元)委員 未来の話をしているんじゃなくて、過去のその時点でどう考えていたかという話を聞いているのであって、非常に理解できないです。

 もう時間がないのでこれ以上質問いたしませんが、この対策室というものは、そもそも三・一一の後につくられた、そういう機関といいますか組織であります。恐らく、三・一一で大きな被害が出た、原発の被害が出ているという中で、被害者に対してどう補償していくのか、損害賠償していくのかということが主な役割。その対策室が、よくわからないと言いますけれども、明らかに、読む限りにおいては、原発プラントの輸出に有利だというような、こういう資料を提出している。

 先ほどお話がありましたが、事故から八カ月、半年ちょっとがたっておりますが、当時の野田総理が、原発事故の冷温停止状態に至ったとして、いわゆる収束宣言を出したのが十二月の十六日です。ですから、文科省が提出したときには、私はあれは収束したとは思っておりませんが、政府としても収束したとも言っていない、まさにまだ事故が続いているという中で出した資料であります。また、政府が、この事故を受けて、今後エネルギーの環境政策を決定するためにどうしていくのか、討論型の世論調査を実施するのは翌年になります。

 要するに、当時の政府は、今後のエネルギー政策のあり方についてどういうふうにしていくのか、国民に問う形で政府が模索をしているまさにその最中であって、その中で、まさにその足元で原発輸出を肯定、促進するような文書が、しかも、よりによって文科省から、損害賠償対策室というところから出てくるというのは、もう本当に驚きを禁じ得ません。

 いずれCSC条約締結というのは、私は、原発輸出の促進がその目的の一つであるというふうに受けとめざるを得ないということを指摘して、次の質問に移っていきたいと思います。

 もう余り時間が残されておりませんが、次に、国家戦略特区についてお聞きしたいと思います。閣議決定をされ、国会に提出をされております。

 本来、この問題については、もしかすると他の委員会での質疑ということになろうかというふうにも思うんですが、本来であれば、この文部科学委員会で議論すべき非常に重要な中身が含まれております。他の委員会に私の党、社民党の方は委員がおりませんので、少しこの場でお聞きをしたいと思います。

 まず最初に、公設民営となる対象校ですが、法案の十二条の三の第一項を読む限り、既存の公立小学校、中学校については除外をされているという認識でよろしいんでしょうか。また、そうした場合、なぜそうなっているのかということについて、理由をお聞かせください。

小松政府参考人 まず、法案が対象といたしておりますのは、通常の、いわゆる市町村に設置義務が課せられ、就学指定の対象となるような小中学校は入っておりません。今回の公設民営学校については、国家戦略特別区域法の趣旨、目的を実現するため、それに沿った、極めて特色のある教育を行うという場合について定めた特例でございまして、学校の対象としては、併設型の中学、いわゆる中高一貫のもの、それから高等学校、中等教育学校といたしております。

 なぜそのようにしたかということにつきましては、ただいま申し上げましたような国家戦略特区法の目的に合致するような形で、その公立学校を設けます設置主体が、通常の、現在の制度実態に照らしてなかなか実現がしがたい、特色のある教育を行うという場合のために道を開くものでございますので、通常の、義務教育のための市町村の設置義務の学校等は対象とならないということでございます。

吉川(元)委員 私自身は、この公設民営学校の考え方には違和感を感じておりますし、通常の、義務教育である小中学校が外れたということについては理解をいたします。

 次に、公立学校の教育内容は設置者である地方自治体の公の意思の形成に基づいていること、それから、入退学の許可、進級、卒業の認定には公権力の行使が伴うことから、これまでは公立学校の包括的な民間委託は困難とされてきました。

 この点は昨年十一月の本委員会でも大臣にお尋ねしたわけですけれども、改めてお聞きしますが、この点はどのようにクリアをされたのでしょうか。

小松政府参考人 行政機関、とりわけ公立学校の管理につきましては、公権力の行使や公の意思の形成にかかわるというものでございまして、高い公共性を持って公正中立に行う必要がございますため、学校の設置者である地方公共団体が直接管理をするということが原則でございます。

 一方、行政事務の民間への委託につきましては、行政事務の処理に当たっての公正さ及び判断の中立性を担保する措置、それから、行政庁による監督体制を確保する措置を講ずることを前提として可能とする道が開かれておりまして、例えば、地方自治法に基づく指定管理者制度などが設けられております。

 そこで、今回の公設民営学校の特例につきましては、従来は指定管理者制度の範囲程度のイメージを持っておりましたけれども、行政庁の監督体制に加えまして、管理を行わせる法人の要件をまず限定し、それから、条例によりまして公設民営学校の管理の基本方針や入学等の処分の手続、基準等を定めるというようなことを法定いたしまして、公立学校の管理の中立性、公正性を確保するための方策を追加的に講じ、民間に学校の管理の部分を委託できることを可能とすることとしたものでございます。

吉川(元)委員 法案を設けたことについては承知をしております。既に民間委託が進んでいる刑務所の運営でも、構造改革特区から始まって全国展開し、公共サービス法律上の根拠を与えて、民間委託を可能としたことも承知をしております。しかし、それでも、実力行使や受刑者の処遇決定などの行為については刑務官が行うこととなっており、全面的、包括的な民間委託とはなっていません。

 教育委員会制度のもとで、公の意思あるいは公権力の行使のかかわりが極めて強い公立学校において、議会を関与させて法律上の根拠を与えていかに民間人をみなし公務員というふうにしたところで、包括的に学校運営を委ねることというのはやはり無理があるのではないかというふうにも思います。特色ある学校づくりを模索するのであれば、私学助成をしっかりとしながら私立学校で対応する、あるいは、現存する公私協力学校の枠組み、これを利用すればいいのではないかというふうにも思います。

 続けてお聞きをいたしますが、公設民営学校があくまで公立学校であるとした場合、当然のことですけれども、教育委員会の執行権限に基づいて教育内容が定められ、教科書採択も行われるわけですが、公設民営学校と教育委員会との関係というのはどのように整理をされているのでしょうか。

 今ほども言いました教育内容、教科書採択もさることながら、例えば、いじめなどの事案が発生した場合の責任体制も含め、教育委員会とのかかわりは極めて重要だと思いますけれども、説明をお願いいたします。

小松政府参考人 まず、公設民営学校の管理は、委託されているという点におきまして、一義的には地方公共団体が指定する非営利法人が行います。この公設民営学校は、地方公共団体が設置する公立学校の、その部分を委託したということでございますので、管理の最終的な責任は設置者としての教育委員会にあるという整理でございます。

 次に、教育内容につきましては、学校教育法に定めるいわゆる一条学校として学習指導要領が適用され、そして、先ほどの教科書の採択につきましても、他の公立学校と同様に、各教育委員会が採択するという整理でございます。そして、条例で定める学校管理の基本的な方針において教育内容の基本的な指針を定め、設置者の教育委員会の方針に基づいて教育活動が行われることになります。

 この管理の状況につきましては、定期的に受託者から設置者である教育委員会に報告され、また、随時に必要に応じて教育委員会が報告を徴し、実地に検査をし、指示を行い、その指示に従わないなど継続が不適切な場合は取り消しができるという関係でございます。

 いじめが生じたときのことのお尋ねでございますが、いじめが生じたとき、先ほど申し上げましたような意味で、まずは学校の管理委託をされている法人が対応いたしますけれども、教育委員会は、必要に応じて、いじめ問題への対応の報告以下、再発防止等の指示をして行うことになります。

 なお、いじめ防止対策推進法における学校と教育委員会の関係は、そのまま適用されるということでございます。

吉川(元)委員 今出ましたけれども、特色ある学校と言いながら、普通の学校と何が違うのか。本当に、それであれば、私立学校あるいは公私協力校の、それを充実させることの方がより目的にかなっているというふうにしか私は思わざるを得ません。

 もう時間がなくて、あといっぱい質問を用意しておりますが、最後に一点だけ。先ほど、取り消しのお話がありました。

 取り消しが、「業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。」というふうになっておりますが、その場合に、その学校にいる生徒はどのように処遇をされるのか、その点だけ最後にお聞きして、質問を終わります。

西川委員長 質問時間が過ぎておりますので、明確にお願いいたします。

 小松初等中等教育局長。

小松政府参考人 今回の法案は、設置者が直接学校を管理することの例外規定として管理を委託することができるという規定になっておりますので、それが解除されることがあり得るわけですけれども、その解除されたときは本則に戻りまして、そのまま学校が直接の公立学校としての管理下に移ります。したがいまして、生徒の身分等につきましては、直接の影響を受けないという仕組みでございます。

吉川(元)委員 もう終わりますが、身分の問題ではなくて、突然学校が、今までやっていたのが廃止される。それが生徒にどういう影響を与えるのか。それはもう答弁は求めません、もう時間が来ましたので。

 いずれにいたしましても、これは非常に大きな問題であります。ぜひ、この文部科学委員会の中でも質疑ができるようなふうにお取り計らいを、最後に委員長の方にお願いいたしまして、私の質問を終わります。

西川委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

西川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法案及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。下村文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法案

 平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

下村国務大臣 このたび、政府から提出いたしました平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法案及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 まず、平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法案について御説明申し上げます。

 昨年九月、平成三十二年に開催されるオリンピック競技大会・パラリンピック競技大会の開催地が東京都に決定いたしました。

 政府といたしましては、オリンピック競技大会の招致に当たり、平成二十三年十二月に閣議了解を行っているところであり、さらに、開催決定直後に東京オリンピック・パラリンピック担当大臣を任命するとともに、本年四月には、東京オリンピック競技大会及び東京パラリンピック競技大会に係る重要問題を協議し、行政各部の所管する事務の連絡調整を行うため、全ての国務大臣を構成員とする閣僚会議を設置するなどの対応をとってきたところであります。

 今回の法律案は、これらの大会の円滑な準備及び運営に資するため、このような政府による支援の一環として、必要な特別の措置を講じようとするものであり、その内容の概要は、次のとおりであります。

 第一に、この法律案の趣旨は、これらの大会が大規模かつ国家的に特に重要なスポーツの競技大会であることに鑑み、大会の円滑な準備及び運営に資するため、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部の設置及び基本方針の策定について定めるとともに、国有財産の無償使用等の特別の措置を講ずるものとしております。

 第二に、内閣に東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部を置くこととともに、その所掌事務、組織、設置期限等について定めております。

 第三に、内閣総理大臣は、これらの大会の円滑な準備及び運営に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るための基本的な方針を作成し、閣議の決定を求めなければならないこととしております。

 第四に、国は、一般財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会がこれらの大会の準備または運営のために使用する施設の用に供される国有財産を、組織委員会に対し無償で使用させることができることとしております。

 第五に、お年玉付郵便葉書等に関する法律に規定する寄附金付郵便葉書等について、組織委員会が調達するこれらの大会の準備及び運営に必要な資金に充てることを寄附目的として発行することができることとしております。

 第六に、組織委員会は、これらの大会の準備及び運営に関する業務のうち、国の事務または事業との密接な連携のもとで実施する必要があるものを円滑かつ効果的に行うため、国の職員を組織委員会の職員として必要とするときは、その派遣を要請することができることとし、当該要請があった場合、任命権者は派遣の必要性等を勘案して、国の職員を派遣することができることとするとともに、組織委員会の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなすこととしております。

 第七に、内閣法の一部を改正し、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部が置かれている間、国務大臣の数の上限を一名増員することとしております。

 次に、平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法案について御説明申し上げます。

 平成二十一年七月、平成三十一年に開催されるラグビーワールドカップ大会の開催国が日本に決定いたしました。

 政府といたしましては、同大会の招致に当たり、平成二十一年四月に閣議口頭了解を行っているところであり、さらに、開催決定後、本年四月に設置された二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会等に関する閣僚会議において、東京オリンピック競技大会及び東京パラリンピック競技大会とラグビーワールドカップ大会との一体的な準備に配意しつつ、重要問題の協議等を行うこととしているところであります。

 今回の法律案は、大会の円滑な準備及び運営に資するため、このような政府による支援の一環として、必要な特別の措置を講じようとするものであり、その内容の概要は、次のとおりであります。

 第一に、この法律案の趣旨は、ラグビーワールドカップ大会が大規模かつ国家的に重要なスポーツの競技会であること、並びに、ラグビーワールドカップ大会の準備及び運営がその翌年に開催される東京オリンピック競技大会及び東京パラリンピック競技大会の準備及び運営と密接な関連を有することであることに鑑み、ラグビーワールドカップ大会の円滑な準備及び運営に資するため、必要な特別の措置を講ずるものとしております。

 第二に、お年玉付郵便葉書等に関する法律に規定する寄附金付郵便葉書等は、公益財団法人ラグビーワールドカップ二〇一九組織委員会が調達する同大会の準備及び運営に必要な資金に充てることを寄附目的として発行することができることとしております。

 第三に、組織委員会は、同大会の準備及び運営に関する業務のうち、国の事務または事業との密接な連携のもとで実施する必要があるものを円滑かつ効果的に行うため、国の職員を組織委員会の職員として必要とするときは、その派遣を要請することができることとし、当該要請があった場合、任命権者は派遣の必要性等を勘案して、国の職員を派遣することができることとするとともに、組織委員会の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなすこととしております。

 以上が、これらの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

西川委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

西川委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として、内閣官房内閣審議官山崎重孝君、内閣官房2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室長代理兼文部科学省スポーツ・青少年局長久保公人君及び厚生労働省大臣官房審議官山崎伸彦君、以上の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳浩です。

 委員長に一言申し上げておきたいことがあります。

 昼休み、十五分しかないじゃないですか。大臣はお昼御飯を食べていないんですよ。限られた時間でありますから、与野党ともに質問時間を守って、休むときはしっかり休む、お願いしたいと思います。

西川委員長 大変貴重な御助言、ありがとうございます。

 質問をよろしくお願いいたします。

馳委員 招致はオールジャパンでやりました。準備もオールジャパンでやりましょう、そういう趣旨のもとで、きょうは、私ども自由民主党は賛成という観点から幾つか質問させていただきます。

 さて、これは局長にお聞きしたいと思いますが、過去の三回のオリンピックやサッカーのワールドカップ、こういうふうな特別措置法案をつくりましたか。そして、今回御提出いただいた法案と何か違うところはございますか。

    〔委員長退席、櫻田委員長代理着席〕

久保政府参考人 特別措置法案等につきましては、五十年前の東京五輪、札幌五輪、長野冬季五輪、ワールドカップサッカー大会、四回ございまして、いずれも、各大会の円滑な準備及び運営に資するための特別措置法を制定いたしております。

 中身につきまして異なる点でございますけれども、まず今回は、オリンピックだけでなく、パラリンピックの準備及び運営も対象としておりまして、法案の名称にも東京パラリンピック競技大会とまず明記いたしております。

 それから、規定内容につきまして異なる点といたしましては、まず、大会の円滑な準備及び運営に関する施策を総合的かつ集中的に推進するためのものといたしまして、東京オリンピック競技大会・パラリンピック競技大会推進本部の設置、あるいはその基本方針に関する規定を置いたところでございます。

 二点目といたしまして、専任の大臣を置くために、内閣法が定める大臣の上限数を一名増員する改正規定があるといったところが挙げられるところでございます。

 なお、国の職員を組織委員会の業務に従事させる際に、従来は退職出向形式をとっておりましたが、今回、国家公務員の身分を有したまま派遣できるようにすると規定しているところもあるところでございます。

 以上でございます。

馳委員 法案の説明資料をちょっと拝見してグラフを見たら、国庫補助がないんですね。つまり、大会の運営、また、結果赤字が出ても国庫補助はしない、そういうことでよろしいですね。

久保政府参考人 基本的に国庫補助は念頭に置いておりませんが、オリンピック招致のときに、政府保証書の中で、赤字が出た場合には一義的には東京都がそれをカバーする、それがない場合には政府として何らかのサポートをするというところまでは言っておりますけれども、補助金を出すというのは確約などまだいたしていない。

 基本的に、放映権料等で、あるいは寄附金等で賄うということが前提になっております。

馳委員 世論的な見方で申し上げます。

 私、実は昨年十二月にギリシャに行ってまいりました。アテネ・オリンピックが終わった後の施設が正直お荷物になっていました。そして、残念ながら、オリンピックまでは強化予算が各競技団体に配られたのに、終わった後に、赤字がでかいものだから競技力強化にまで予算が回らず、強化の現場から、馳さん、聞いてくれ、ギリシャの国会議員がちゃんとこういうところまで見通していなかったから競技力強化の現場は大変だ、こういうふうな、私にまで苦情を言うような、あるいは、東京はそういうことはないよねというふうな言い方でアドバイスをいただきました。

 したがって、今、久保局長がおっしゃったように、一義的には東京都、しかし、国が支援するということは政府保証が入っております。ここに余り過大な期待を寄せてもいけないし、同時に、やはり適切な運営を組織委員会にも求めなければいけないし、終わった後、万が一のことも想定しておかなければいけない、こういう二次方程式のような大会の運営と後始末、このことがやはり想定しておかれるべきと思いますが、大臣としてどのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 ギリシャの場合は、国家財政そのものの問題も重なっておりましたから、特別な事情があったのではないかというふうに思います。

 直近のロンドンにおいては成功している、そういう心配はないというふうに聞いているところでありますが、馳委員の御懸念がないような対応をする必要があると思いますし、そもそも組織委員会そのものも、いざとなっても国家に頼るようなことがないような資金調達について考えておられますのでその辺は心配ないと思いますけれども、しかし、何かあったときには国も保証するという体制の中で、万全を期しながら、しかし、国民の無駄な税金が投入されることがないような、十分な配慮をしながらやっていく必要があると思います。

馳委員 この特措法によって政府に推進本部がつくられて、総理が本部長、そして官房長官と担当大臣が副本部長ということになり、そして基本方針がつくられるという、ここがやはりポイントになると思います。

 この基本方針のところで組織委員会との連携をしながら、東京都そして組織委員会をうまくバックアップ、サポートしていく、計画の見直しが必要なら、常にやはり早目早目に取り組んで納税者に不安感を与えないようにしていく、こういうマスコミコントロールというんでしょうか、こういったところも配慮しながら進めていきますよという、ここら辺がやはりリスクコントロールとして必要だと私は思いますので、大臣はおわかりのようでありますし、ぜひまたお願いしたいと思います。

 では次の質問に入りますが、過去、オリンピックのために専任の大臣が置かれたことはありますか。

山崎(重)政府参考人 お答え申し上げます。

 昭和三十九年の、前の東京オリンピックの際に専任の大臣が置かれておりました。

馳委員 それで調べてみたら、二年間ほどなんですね。ところが、今回は、この国会で法案を成立させていただければ、何と、六年間の長きにわたる専任大臣ということになるんですよ。

 ここはやはり下村大臣にお伺いいたします。今、文部科学大臣と兼任でお務めでありますが、やはり専任にした方がよいなという思いはあると思いますが、大臣としての御所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 二〇二〇年オリンピック・パラリンピックまで残された期間はもう既に六年を切っておりまして、今後、大会の準備が本格化し、多数の関係省庁、自治体、さまざまな団体との連携、調整や重要事項の企画立案等、ますます複雑かつ困難になっていくと予想されます。

 大会の開催までの限られた期間内に省庁横断的な課題に効率的、効果的に対応していくため、個別の事務事業を実施する各省庁から離れて、全体の進捗状況を見据えながら関係省庁間の総合調整を行う専任の担当大臣を置くこと、これは、今度二回目でありますから、一九六四年の東京オリンピックのような、基盤整備を中心とした、高度経済成長に乗るための、どちらかというとハード整備から、今度は成熟国家としてソフト、そして、東京だけでなく日本全体を活性化するためには文化、あらゆる部分で今までのオリンピック・パラリンピックの枠を超えた、相当これはかなりクリエーティブな、企画的な、そういう能力を問われる中で設置をすることによって、ただオリンピック・パラリンピックを開催するというよりは、オリンピック・パラリンピックをきっかけに新しい日本をつくっていく、そのためにありとあらゆることをやるという意味では、専任の大臣を置くことによって、それをさらに権限をいろいろな部分で発揮できるような場をつくるという意味で、専任の方がより望ましいというふうに思います。

    〔櫻田委員長代理退席、委員長着席〕

馳委員 そこで、オリパラという表現をさせていただきますけれども、オリパラ担当大臣にはどのような職務権限が与えられますか。予算編成や法案提出などの権限はありますか。

山崎(重)政府参考人 まず、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部は、基本方針の案の作成、基本方針の実施の推進、大会の円滑な準備及び運営に関する施策で重要なものの企画立案、総合調整を所掌事務としておりまして、担当大臣は、本部長である内閣総理大臣を助ける副本部長としてこれらの業務を主導する立場になります。

 それから、内閣官房における予算編成や法案提出の権限は、法律上は内閣総理大臣にあるわけでございますが、担当大臣は、内閣総理大臣の命を受け、予算要求や法案の企画立案等、国会対応等に実質的に深く携わるということになると思います。

 以上でございます。

馳委員 ここは雑感で申し上げますけれども、深く携わるとするならば、今後、今文科省内でも検討中のやはりスポーツ庁、スポーツ行政にかかわり、他省庁横断的な政策方針を示し実行していく部隊といったものは必要になってくると私は思っています。

 ただ、これは今の一つの政治課題でありますので、スポーツ庁についてはこれ以上深く追及しませんが、この担当大臣が決まり、最終的にどんな権限を持たされるんですかということは各省庁の方も注目していると思うんです。連絡、調整、助言、法律の条文には「助ける」という表現があります。しかし、より強くなった命令とか、どうでしょう、指導とか勧告とか、多分そこまではいかないんだろうなと思います。ここがやはり、政治家同士、大臣なり、各省庁を所管している者同士の必要な連携の部分だと思われるんです。

 できる限りオリンピックに関してはオリンピック担当大臣が主導的な役割を果たせるように協力し合うことが必要ではないか、こういうふうに思いますが、大臣いかがでしょうか。

下村国務大臣 それはおっしゃるとおり、今は石破大臣が地方創生担当大臣として活躍されておられますが、これも、縦割り行政的な各省庁の権限に固執していたら地方創生はできないと思います。

 そういう意味で、省庁横断的に縦割り行政を排してしっかりやるということは、これはオリンピック・パラリンピック担当大臣も全く同じことが言えると思いますので、できるだけフリーハンドで、もちろん、関係省庁の理解、協力が必要でありますが、進めていく、そういう仕組みをつくっていくことが必要だと思います。

馳委員 さて、今回の法律によってオリパラ大会推進本部が平成三十三年三月三十一日まで設置されますが、その人員規模や官職や、それに伴う給与など、今現在決まっていることはありますか。焼け太りになる懸念はありませんか。スクラップ・アンド・ビルドの行革の基本方針の議論は政府内でなされているのでしょうか。お伺いします。

丹羽副大臣 本法案につきまして、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部を設置することといたしております。本部を支える事務体制の規模につきましては現在検討中でございます。

 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会の準備業務が適切にしっかりと推進できるような十分な体制を今後構築していきたいというふうに考えております。

 その際、馳先生のおっしゃるように、行政ニーズの変化に的確に対応できる、簡素で効率的な行政組織を確立することを留意していきたいと考えます。

馳委員 丹羽副大臣、だめですよ、そんな曖昧な答弁じゃ。ここを突っ込みたかったんですよ。

 法案の第十九条第二項を読むと、ありゃ、ちょっとこれは抜け道じゃないかなというふうに私は思えてならないのは、組織委員会に国家公務員を派遣できるようになるんですよ。本来、給与は国庫から支払わないことに基本的になっているんですよ。

 ところが、第十九条の第二項を読むと、ちょっと読みますね。「派遣職員には、その派遣の期間中、給与を支給しない。ただし、組織委員会において特定業務が円滑かつ効果的に行われることを確保するため特に必要があると認められるときは、」云々、「支給することができる。」となっているんですよ。大体こういう抜け道を用意してくるんですよ、役所というところは。内閣官房、ここを抜け道にしちゃだめですよ。曖昧だと思いませんか。

 私、もう一回読みますよ。「ただし、」大体、法律の条文でただしの後が怖いんですよ。「組織委員会において特定業務が円滑かつ効果的に行われることを確保するため特に必要があると認められるときは、」どこに具体性があるんですか。

 丹羽副大臣、あなたに改めて質問したいと思います。

 今現在、決まっていないんですよ、検討中なんですよ。だから、この法案審査の段階で厳しく言っておきたいんです。政府の行革の方針はスクラップ・アンド・ビルドですよ。大臣が一人必要だ、重要性は私たちは認識しています。しかし、組織として焼け太りになるようなこんな曖昧な基準で、第十九条第二項、給与を支給できるんですよ。「支給することができる。」となっているんですよ。

 これは注意していただかないといけないと私は思って、特に丹羽副大臣にお聞きしますが、いかがですか。

丹羽副大臣 馳先生がおっしゃるように、我々も十分に注意していきたいというふうに思っています。

 特に、本年七月に閣議決定されました国の行政機関の機構・定員管理に関する方針を踏まえ、やはり、焼け太りになったと言われないような形で、またしかも、業務体制がしっかりとカバーできるような形で頑張っていきたいと思います。

馳委員 答えになっていないじゃないですか。

 でも、これは我が党も抜かっているのは、よくこれを行革担当の河野太郎がこの条文を認めたなと思いますよ。ここは本当にぎちぎちと詰めていかないといけないですし、検討中であるならば、改めて内閣官房の方と、これは我が党は党としてやるべきだと思っておりますが、こういう抜け道が行革の観点に反することのないように、私は注意喚起をしておきたいと思います。

 このことを、担当は加藤勝信官房副長官だと思いますから、厳しくやはりお伝えいただきたいと思いますが、内閣官房審議官、答弁してください。嫌そうな顔をしないで。

山崎(重)政府参考人 運用におきまして、適切に円滑な派遣が行われるようにしっかり考えていきたいと思っております。

 また、副長官にもきちっと伝えておきます。

馳委員 さて、次の関連質問で、パラリンピアンのサポートについて申し上げたいと思います。

 パラリンピアンは、現状において、障害者として年金などの福祉的、公的助成を受けている選手がいます。さらに今後、公的資金で競技力強化費が個人に拠出されるようになれば、その選手は所得制限にひっかかるのではないか、そして減額されるのではないかと心配しています。

 この心配をパラリンピアンやJPCの関係者が持っているということを御存じですか。

山崎(伸)政府参考人 勉強不足でまことに恐縮でございますが、お尋ねのパラリンピアンやJPC関係者の方々の御認識につきましては、私ども厚生労働省の方では承知いたしていないところでございますが、現在、パラリンピアンの方々に対する競技力強化費について、文部科学省の方で検討されていると伺っているところでございます。

馳委員 私、前々からお伺いしていて、たまたまきのう、園遊会でJPCの山脇理事ともお会いして、何か不都合ございますかと聞いたら、実はこのことを、私が思っていたことをそのままおっしゃって、とても心配していますと。

 そこで、私が申し上げたいことを今から言います。これは公的資金に関してのダブルスタンダードではありませんよ、そういう確認をしたいんです。

 障害者年金と競技力強化予算と、次元の違う公的資金のはずではありませんか。パラリンピアンは、ただでさえ苦しい生活環境で競技力強化に取り組んでいます。生活資金として必要な福祉的給付と、競技力強化にかかわる公的資金とは分けて考えるべきではありませんか。いかがでしょうか。

山崎(伸)政府参考人 お答え申し上げます。

 障害年金に関してお答え申し上げますと、障害年金は、国民年金や厚生年金の被保険者期間中に傷病を負った場合で、一定程度の障害の状態に該当するなどの条件を満たせば、基本的に所得にかかわらず支給されるものでございます。

 ただし、被保険者になり得る以前の二十前に傷病を負った方の障害年金につきましては、本人が保険料負担をしておらず、その財源は国庫負担と他の加入者の方の保険料で賄われるものであるということから、受給者本人の所得に応じた支給制限が設けられているところでございます。

 その場合に、年金が支給停止となる所得につきましては、受給権者の方の前年の所得が平均的な伸びであった場合に翌年も引き続き受給できるようにするという考え方に基づいて設定されておりまして、実態といたしまして、この二十前障害年金の受給権者の方々のうち全額支給されている方の割合は約九九%ということで、大部分の方は停止を受けていないというのが実態でございます。

 また、二十前障害年金の所得制限は、収入から必要経費や税制上の各種控除を差し引いた所得で判断するということになっておりまして、御懸念の点につきましては、この強化費の課税上の取り扱いがどのようになるかということも大きくかかわってくるものというふうに考えております。

馳委員 そこの答弁を受けまして、文部科学省としても、今後、競技力強化に当たって、パラリンピアンに対して、サッカーくじや文科省からの公的助成の考え方、この基準についてやはり整理しておく必要があるのではないでしょうか。まさしく、トップレベルのパラリンピアンが安心して大会に、また日常生活に臨むことができるようなそういう仕切りをしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックが決定する前に、私、大臣になってすぐ、当時の田村厚労大臣に、障害者スポーツは今まで厚労省でありましたが、スポーツという意味ではもう一本化したいので文部科学省で全部引き受けたいということで、障害者スポーツについて、あるいはパラリンピックについて、これは文部科学省の所管になったという経緯がございます。

 その中で、驚いたことに、例えば金メダルをとっても、オリンピアンとパラリンピアンでは、その後の叙勲もそのレベルが違うんですね。これを今度同じ叙勲対象にしてもらうようにしましたし、それから、メダルによって賞金も違う。これはJPCとかJOCがそれぞれ集めた資金の中ですから国が助成できる話ではありませんが、いずれにしても、オリンピアンとパラリンピアンでかなりそのハンディキャップがあるということでありましたので、できるだけ平準化、平等化する必要があるというふうに思います。

 これまでのパラリンピックの選手強化は、競技団体が実施している活動費に対する支援はありましたが、個人への活動助成は実施しておりません。独立行政法人日本スポーツ振興センター、JSCにおいて、現在、スポーツ振興基金助成で実施しているオリンピック選手への個人助成と同様、来年度からパラリンピック選手も対象とすることを検討しているというふうに承知をしております。

 その際には、御指摘のとおりさまざまな課題がありますので、文部科学省においては、厚生労働省と十分連携をとりながら、その課題の解決に向けて努力をしてまいりたいと思います。

馳委員 パラリンピアンへの支援について二点だけ、提案を改めて申し上げておきます。

 パラリンピアン自身に対する公的資金による強化費の助成、うまく調整をして、安心して競技に臨むことができるようにまずお願いしたいのが一点。

 その際に、やはりオリンピアンと違うところは、トレーナーとかコーチ、サポートスタッフの人件費などなんですね。要は手弁当でやっていただいているんですよ。この辺もやはり、メダル獲得を狙うような競技や選手についての配慮をお願いしたいのが一点と、アジア大会から今般初めてスタートしましたマルチサポートは、パラリンピックの大会にもなされるようになり、大変好評をいただいているというふうに報告もいただいております。今後さらにここも充実していただけるように、今、一言申し上げたいと思います。

 では次の質問に入りますが、オリパラ大会の成功には、強化、やはり日本代表選手に頑張ってメダルもとってほしいし、実力を発揮してほしい。

 そういう中で、競技力強化の公的資金一元化について、まず大臣の所見を伺います。

 toto、それから国庫補助、スポーツ振興基金、これを効果的に配分するために一元化の動きがあります。とりわけ、スポーツ庁が設置された場合の重要な課題となっていますが、文部科学省もJSCも、組織上、法的根拠のもとで予算配分の説明責任、結果責任を果たしています。JOCの強化本部もこの配分権限を担っておりますが、その効果や結果責任について、情報開示や説明責任を十分果たしているのか疑問に思いますが、大臣の所見を伺います。

下村国務大臣 JOCにおきましては、これまでも競技大会の配分方法等を対外的に説明していたとは考えておりますが、民間団体でありまして、国や独立行政法人と同じよう説明責任を果たしてきたかという御指摘もあるというふうに考えております。

 このことを踏まえ、今後の選手強化につきましては、しっかり説明責任等が果たせるような制度設計を行うことが重要と考えております。

馳委員 行政は常に外部からの評価を受けます。予算委員会や決算委員会で税金の使い道も厳しく指摘されますし、時には会計検査院の検査も入ります。自民党の行政レビューでも、河野太郎行革本部長が鬼のような顔をして厳しくチェックしています。

 今後、オリンピックの成功に向けて競技力強化が国家的課題となりますが、そうなると、競技力強化の公的資金の配分について、JOCを含めてその体制を検討すべきである、こういうふうに思っておりますが、大臣の所見を伺います。

下村国務大臣 今後の選手強化につきましては、メダル獲得数の向上に向けた戦略を立てた上で、その成果が得られるような制度とすることが重要であると考え、選手強化費を一元化する新たな選手強化事業については、戦略性を持った選手強化となるよう、PDCAサイクルを強化させることが重要であるというふうに考えております。

 具体的には、文部科学省におきましてJSCやJOC等の関係者も入れた競技力向上タスクフォースを設置し、戦略性を持った基本的な強化、配分方針の策定及び事業後の全体評価等を行う、また、JSCとJOCが連携を図りながら、国の配分方針に基づき競技団体への配分決定及び事業評価等を行うことなど、新しい制度を検討しておりまして、この手法によりPDCAサイクルを強化することで、従来より効果的な選手強化を行っていきたいと考えております。

馳委員 私は、JOCの応援団として、改めてJOCのウイークポイントを申し上げておきたいと思います。

 強化本部の皆さん方はボランティアなんですよ。プロではないんですよ。十分な経験はお持ちではありますけれども、公的資金を適切に配分をし、その結果責任を負う、そのための情報公開をし説明責任を負うというこの観点については、残念ながら余り認識が深くありません。一生懸命やっていただいておりますが、やはり報酬を得てやっているわけではありませんから、組織のルールに基づいて指名をされて強化本部の人間となって、これまでの知見に基づいてやっているという、ここにこれから税金もtotoの助成金もスポーツ振興基金も公的資金として入れていく以上は、そこに透明責任、説明責任、結果責任が求められてまいります。ここをサポートしていく上での連携が私はやはり必要だと思っています。

 同時に、私は日本レスリング協会の副会長もしておりますが、協会の運営において事務体制はあっぷあっぷです。専門的な職員を抱えていますが、オリンピックでメダル獲得有望種目であるレスリングですら、やはり、日々の運営のために専門的な事務職員を雇用するので精いっぱいです。ほかの競技団体は、十分に事務体制を整えるところはありません。

 そう考えれば、JOCなのか日体協なのか、あるいは文部科学省やJSCも協力をして競技団体の運営を安定的に運営をしていくことができるようなバックアップオフィスをつくってもらって、自己責任をしっかり果たしてもらうというサポートも必要なのではないか、こういうふうに思っております。

 ここの部分の体制を整えてあげないと、二〇二〇年が終わった後に、もう今までのように公的資金は来ませんよ、先細りになってしまいます。そうならないように、各競技団体の運営を適切に行えるような事務体制のバックアップ、そういうことの議論もしなければいけないと思っています。

 私はそういう意味でスポーツ議員連盟などの活動においても取り組んでおりますが、大臣御承知だと思いますが、これからの競技団体の運営を支えていく、ここにもやはり行政と連携が求められるということについての御所見をお伺いして、私の質問を終わります。

下村国務大臣 これまでも、JOC関係の団体の使途不正の問題等がかなり出ました。しかし、今後さらにオリンピック・パラリンピックに向けて国が公金のバックアップをするということの中で、同様のことがあってはならないわけであります。

 そういう経緯の中で、そもそもJOCそのものも組織として人員が不十分である。ましてや、その傘下のそれぞれの競技関係団体、あるいはJOCに所属していない競技団体も含めてのお話が今ありましたが、そのような課題があるということを承知しておりますので、今後、関係団体、国との関係でいえば、特にJSC等がリーダーシップをとってもらう必要もあるかと思いますが、JOCやJPCの皆さんとよく相談をしながら、それぞれの競技団体がベストの状況でオリンピック・パラリンピックに向けて対応できるような、そのようなことについて取り組んでまいりたいと思います。

馳委員 終わります。どうもありがとうございます。

西川委員長 次に、浮島智子君。

浮島委員 公明党の浮島智子でございます。

 本日は、平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法案及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法案について御質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 昨年の九月七日、招致が決まりました。開催都市が決まりましたけれども、あの感動的なIOCの総会から早くも一年と二カ月がたってしまいました。

 私は、二〇一六年と二〇二〇年、この二回の招致活動に携わらせていただきました。その二〇一六年の招致のときのあの悔しい思い、そして、さまざま勉強させていただき、今回の二〇二〇年の招致活動にも携わらせていただいたところでもございますけれども、実は、最後の日のロビー活動のときに、スペインの方々から、東京、頑張ってねと笑顔で言われました。私はそれがすごく悔しくて、すぐ間髪を入れずに、東京は、日本はオールジャパンで最後の一分一秒まで全員で戦って、そして結果を必ず出しますとお伝えをさせていただいたところでございますけれども、本当に、オールジャパンで今回は最後の最後まで戦ってかち取った招致だと私は思っております。

 そのときから既に一年がたってしまいましたけれども、この二〇二〇年の開催まで、まだ六年あると言う方もいらっしゃると思いますけれども、私はもう六年しかないという思いでいっぱいでございます。そんな観点から、おもてなしの準備を着々と進めて、世界のアスリート、そして友人たちを迎える体制をしっかりと進めていかなければならないと、今、正直焦っています。

 そんな観点から、この開催準備がどんどんどんどん本格化していく中で、競技会場の整備、輸送の手段の整備、治安対策の強化等々、対応すべきことが山積をしております。

 先ほども大臣の方からもございましたけれども、東京だけではなくて、このオリパラをきっかけに新しい日本をつくるというお話がございました。そして、こうやってどんどんどんどん準備を進めていくに当たりまして、極めて重要かつ広範な教育文化行政をつかさどる文科大臣にオリンピック・パラリンピックの担当大臣を兼務していただくということは、私は、業務の質と量を考えると限界があるのではないかと考えておりました。

 そこで、公明党、自民党として、十月の三日に安倍総理に対しまして、時限措置としてオリンピック・パラリンピック大臣を一人増員し、専任のオリンピック・パラリンピック担当大臣とすること、そして、政府全体で総合的、計画的に準備、支援を進めるため、内閣にオリンピック・パラリンピック推進本部を設置することということを要請させていただいたところでございます。

 そこで、改めて、政府として専任大臣を置くということの必要性そして重要性をどのようにお考えになったのかということをお伺いさせていただきたいと思います。

山崎(重)政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に当たりましては、政府として取り組むべき事項が非常に多数にわたると考えております。

 例えば、一九六四年の東京オリンピックの際は想像もできなかったようなサイバーセキュリティーの問題、爆発的に増加した来日外国人の円滑な入国手続、無線LANなどの通信環境の整備、感染症対策、テロ対策、各種インフラ整備等が必要になってまいります。また、オリンピック・パラリンピックの開催を契機としまして、地域の活性化、海外との交流等も推進していく必要がございます。

 大会まで残り六年を切った中でこのように省庁横断的な課題に迅速かつ的確に対応するためには、個別の事務事業を実施する各省庁から離れまして、全体の進捗状況を見据えながら、強いリーダーシップを背景とした企画立案、総合調整を進めることが必要になっていると考えております。

 一方、既存の大臣の皆様方は既に多数の業務を行っておられまして、増大する事務をこれ以上担っていただくことにつきましては、他の担務にも大きな支障を来す可能性が高いと考えております。

 このため、時限を区切りまして大臣を一名増員し、オリンピック・パラリンピックの円滑な準備、運営に専任で一体的に対応する体制を整えることが不可欠であると考えております。

 以上でございます。

浮島委員 せっかく専任の大臣を置く以上、今現在十数名しかいないと言われる、内閣官房に置かれた推進室をしっかりと拡充していく必要があると私は思っております。ロンドン・オリンピックのときも、テロ対策一つとっても数百名の体制を組んでいたと伺っているところでございます。

 そこで、この内閣官房の事務体制の規模を充実させるべきだと考えておりますけれども、どの程度のものをお考えになっているのか。先ほど馳委員の方からもありました、焼け太りになってはいけないということもありましたけれども、どの程度をお考えになっているのか、教えていただきたいと思います。

久保政府参考人 失礼いたします。

 新たに設置いたします東京オリンピック・パラリンピック競技大会推進本部の業務は、今、山崎審議官が申されるように、たくさんございます。この業務を適切に支えていくために、内閣官房の事務体制の整備も必要だと考えてございます。

 現在、具体的な規模については検討中でございますけれども、膨大な、ふえ続ける本部の業務を支える事務体制を、十分に支える体制を整えることが必要であると認識しているところでございます。

 二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会関係の準備業務が適切かつ円滑に推進できるよう十分な体制を構築してまいりたいと考えております。

浮島委員 しっかりと無駄がないようにやっていきたいと思いますので、我々もしっかりとウオッチをしていきたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

 また、二〇一九年、オリパラの前年に開催されるラグビーワールドカップ大会、これはアジア初の大切なワールドカップであります。

 そんな観点から、先ほどの提案理由にもございましたように、オリパラ東京大会と密接な関連を有することであるということも先ほどございました。新たに置かれるオリパラ担当大臣というのは、この両者の成功のために直接的にかかわるべきではないかと考えておりますけれども、その関係はどういうふうになるのでしょうか。

山崎(重)政府参考人 御指摘のように、ラグビーワールドカップ二〇一九は、オリパラ東京大会の前年に開催される大きなスポーツイベントでございます。その準備につきましても、セキュリティー、輸送、外国人の受け入れなど、翌年のオリパラ東京大会の準備と共通する課題が極めて多うございます。そういうことから、現在開催しております二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会等に関する閣僚会議においては一体的に取り扱っているところでございます。

 今回の担当大臣は、あくまでオリンピック・パラリンピックの専任の大臣として置くものでございますけれども、他方、ラグビーワールドカップ二〇一九については、先ほど申し上げた現在の取り組み状況も踏まえまして、任命権者である総理が最終的に御判断されるものと考えております。

 以上でございます。

浮島委員 一体的に扱っているということで今御答弁ありましたけれども、積極的にかかわってくださるということに理解をさせていただきたいと思います。

 また次に、パラリンピックの関係で質問させていただきたいと思います。

 パラリンピックというのは、私はオリンピックの成功の鍵を握っていると言っても過言ではないと思っております。また、オリパラの同時開催二回目というのは東京が初で、いわば世界初でございます。オリンピック単独でロンドンは三回開催をしておりますけれども、オリンピック・パラリンピック同時開催というのは我が東京が初で、世界初ということでございますけれども、パラリンピックの機運をしっかりと盛り上げていく必要があると思っております。

 先日、仁川の方でアジアパラ大会が開かれておりましたけれども、聞くところによりますと、なかなか盛り上がっていなかったというふうに伺いました。そして、ロンドンの大会では、民放のチャンネル4ですか、そこでいろいろ力を入れて、メディアが大きく取り上げたということもありましたけれども、メディアが大きく取り上げるということもとても大切だと思いますけれども、私は、特に学校において、子供たちや、また若い大学生たちに対して、パラリンピックに対しての理解を深めていくことが必要であると思っております。

 もう六年しかないというパラリンピックの機運を盛り上げていくために、文科省としてはどのようなことを取り組まれて、どのようなことをお考えか、伺わせていただきたいと思います。

下村国務大臣 パラリンピック競技大会は、スポーツを通じて障害者の自立と社会参加の促進を図るとともに、広く障害者への理解を促進する等の目的で開催されるものであり、みずからの障害と向き合いながら無限の可能性に挑戦する選手の姿は、国民に大きな夢と感動、勇気を与えるものであると思います。

 夏の大会としては史上初めて同一都市での二回目のパラリンピックとなる二〇二〇年東京大会を成功させるためには、御指摘のように、パラリンピックの価値や理念、障害のある方々への理解を深めるとともに、パラリンピックへの関心を高めていく取り組みを今の段階からしっかりと行っていくことが必要であると考えます。

 このため、学校や地域におけるパラリンピアンとの交流授業、パラリンピック競技の体験やオリンピック・パラリンピック教育の実施等を二〇二〇年に向けて幅広く展開し、オリンピック・パラリンピック・ムーブメントを全国へ波及させる取り組みを推進してまいりたいと思います。

 私のところにも主要団体の幾つかが、オリンピック、パラリンピックのうち、パラリンピックに特に特化して協力をしたい、ボランティア活動をしたい、あるいは、そういう方々のその後の職業のあっせん等、関係企業でフォローアップをしたいというような話も出ております。

 ぜひ、パラリンピックが活性化するような取り組みをしっかり取り組んでまいりたいと思います。

浮島委員 ありがとうございます。

 パラリンピックに対しての、知っていただく、子供たちが見て聞いて、いろいろなことを心で学んでいってもらうという教育がとても必要だと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 また、パラリンピックの大会の関心を高めていくには、パラリンピアンがメダルを多くとること、これも重要だと思っております。

 ただ、パラリンピックの選手強化、これはなかなかできていないのが私は現状ではないかと思っております。というのは、選手をバックアップするための拠点の整備が必要であると思います。オリンピック競技とともにパラリンピック競技を強化するために、NTCの拡充の整備、これをしていくことが重要だと思います。

 ただただメダルをとれとれと言われても、プレッシャーだけになります。メダルをとるためには、競技する方々が安心してそれに打ち込んで練習できる、そのようなところを整備する、これが重要であると思いますけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

下村国務大臣 二〇二〇年東京大会の開催に向けて、オリンピック、パラリンピックともに選手強化を推進していくことが重要であると考えます。

 文科省では、御指摘のように、ナショナルトレーニングセンター、NTCや、国立スポーツ科学センター、JISSの機能強化を図るため、ことし五月に外部有識者から構成される有識者会議を設置し、八月に中間報告を取りまとめたところであります。

 この中間報告では、オリンピック競技とパラリンピック競技におけるトレーニング方法、指導方法等につきまして、さまざまな相乗効果が期待されるとともに、効果的、効率的な施設活用の観点から、同じトップアスリートとしてオリンピック競技とパラリンピック競技がNTC及びJISSを共同利用することによりまして、NTC及びJISSの機能強化を図ることとされております。

 また、中間報告では、現在のNTCの利用者数、稼働率が増加傾向にある中で、二〇二〇年東京大会に向けて競技団体の強化活動が一層活発になることにより、利用者数のさらなる増加にNTCが対応できず、強化活動に支障を来すことが予想されるということから、厳しい財政状況も踏まえ、財源確保のあり方を検討しつつ、NTCを充実、整備することが期待されるとされております。

 文科省では、この中間報告を踏まえまして、平成二十七年度の概算要求におきまして、NTCの拡充整備に必要な基本設計料等に要する経費を計上しているところであります。

 文科省としては、この中間報告も踏まえ、パラリンピック競技の強化のための方策として、関係機関と密接に連携しつつ検討してまいります。

浮島委員 ぜひとも検討してNTCを拡充しまして、パラリンピアンが練習がしっかりとできるよう応援をしていただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。

 また次に、バリアフリーについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今、私も電車に乗ったりしますと、バリアフリーは、今まで公共機関のスペースでありますと、駅を建てるときに後からつけたということが多くございまして、駅のホームの一番端っこにある等々とかでなかなかわかりにくい。そして、私もよく歩いていますと、エレベーターはどこにあるのかなといってずっと探されている方も多く見受けられるのが今の現状でございますけれども、利用者にとっては今は本当に便利とは言えないのではないかなというふうに思っております。

 しかしながら、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催時には、パラリンピアンだけではなくて、観客の中にも、御高齢の方だったり障害のある方が多数来日されると思っております。そこで、この環境を整備していく、つくることが大切であると思っております。環境をよくしていくということは、我々日本に住んでいる人々にとっても、車椅子あるいはベビーカーなどの使用にも利用しやすいし、暮らしやすい環境の実現であると私は思っているところでございます。

 そこで、国交省にお伺いをさせていただきたいと思います。

 現在、バリアフリー化する移動のルートにつきましては、それぞれの駅や地域で一つのルートを想定して整備を進めてきたと思って理解をしております。でも、それで果たして十分なのか。複数のルートあるいは二つのルート以上の確保の検討、整備を進めていくべきではないかと私は考えておりますけれども、いかがお考えかということと同時に、また、整備する場所ですけれども、一定の利用者数を想定する、この整備の水準があります。しかし、その多くが、多くの方がたくさん利用するということで、今のこの水準のキャパで十分なのかという検証をしていく、見直しが必要ではないかと私は思っておりますけれども、国交省としてどのようなお考えか、お伺いをさせていただきたいと思います。

 あともう一点、国交省には、国交省のされている心のバリアフリーの推進というのがございます。

 これは、物理的に移動しやすいことはもちろんですけれども、周囲にいる人が自然にさりげなく気遣う、この心のバリアフリーですね、その推進をしてくださっているということで、先日、櫻田前副大臣も冨岡前政務官も成田と羽田から車椅子でいろいろしていただいたというふうに私も伺っておりますけれども、櫻田前副大臣にお伺いしたところ、道だけではなくて、車椅子の幅も広くしなくてはいけないのではないかという実際のお話もいただきました。

 これは、国交省だけではなくて、文科省そして厚労省等々、いろいろなところと連携が必要になってくることとも思いますけれども、今、国交省としてどのように取り組んでいるのか、そして今後どのような取り組みをしていくのかということをお伺いさせていただきたいと思います。

大塚(高)大臣政務官 二〇二〇年に東京で開催されるパラリンピックに向けては、交通分野のバリアフリー化が図られることが大変重要だと考えております。

 それを踏まえて、国土交通省ではバリアフリー法に基づく対策を進めてきておりますが、二〇一一年三月に同法に基づく基本方針を充実強化させ、二〇二〇年度を目標として計画的に対策を進めているところでございます。

 現状では、先ほどお話がございましたように、二〇一三年度末現在では、例えば、一日の乗降客数が三千人以上の鉄軌道駅の約八三%で段差が解消されておりますが、一〇〇%の目標達成に向けて着実に推進を進めてまいりたいというふうに考えております。加えて、特にパラリンピックでは一度に多くの障害者が移動することから、駅や空港における複数ルートのバリアフリー化など、さらなるバリアフリー化を推進してまいります。

 また、先ほど御指摘がございましたように、ハード面の整備とあわせて、いわゆる心のバリアフリーの推進も重要と考えております。実際には、先ほど櫻田先生のお話もございました、障害者の感覚を体験していただくバリアフリー教室の開催等を通じて、障害者への理解や協力の推進に積極的に取り組んでまいります。

 また、国土交通省といたしましては、東京オリンピック・パラリンピック開催を機会にバリアフリー化を加速させていくために、省内に副大臣を座長とするワーキンググループを発足させたところでございます。

 今後とも、文部科学省など関係省庁とともに密接に連携を図りながら、ハード、ソフト両面におけるバリアフリー化にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

浮島委員 ぜひとも全力で取り組んでいただけるように、お願いをさせていただきたいと思います。

 また次に、ラグビーの関係でお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、済みません、その前に国交省の方にもう一点なんですけれども、ごめんなさい、これはお願いなんですけれども、表示の仕方ですね。表示の、今、すごくわかりにくい、駅に行っていても、すごく私もわかりにくいと思うんです。

 他国のいろいろな方が来られるので、例えば英語だ、中国語だ、韓国語だとか、そういうので表示するのも必要かもしれませんけれども、これはイラストでもリフトというのは表示ができるものだと思いますので、その表示の仕方、場所、そして工夫をしていただければと思いますので、お願いをさせていただきたいと思います。

 これまで、過去に日本で開催されたスポーツの競技会では、特別措置法を制定したのは、先ほどもありましたけれども、三回のオリンピック、そして二〇〇二年のワールドカップサッカー大会のときだけでした。今回のラグビーワールドカップ大会についても特別措置法を制定するという法案が今提出されておりますけれども、なぜラグビーのワールドカップについて特別措置法を整備するのでしょうかということをお伺いさせていただきたいと思います。

久保政府参考人 ラグビーワールドカップ大会は、オリンピックやサッカーワールドカップに次いで大規模な競技会でございます。約二百万人の観客動員数や約二十万人の訪日外国人を見込みますとともに、全国の十から十二都市で約七週間の長期にわたり開催されますことから、全国的な広がりがありまして、国民生活や社会経済に与える影響も大変大きいものがございます。

 このため、平成二十一年四月にラグビーワールドカップ大会の招致を政府として支援することを閣議口頭了解いたしますとともに、労働の許可、関税の免除、安全保障などの広範囲な政府保証を行いまして、政府保証を通じて大会の成功を国際社会に約束してきているものでございます。また、ラグビーワールドカップ大会の翌年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。

 したがいまして、新たに建設される新国立競技場をメーン会場とするなど、両大会の設備、準備、運営はかなり重複する部分が多うございまして、密接に関連するものでありますことから、政府に置かれました二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会等に関する閣僚会議におきましても、両大会の一体的な準備に配意しつつ、重要問題に関する協議等を進めることとなっているところでございます。

 このようなことから、ラグビーワールドカップ大会につきましても、オリンピックと同様に特別措置法を制定し、国の職員の派遣等の特別の措置を講ずることとしたところでございます。

浮島委員 ワールドカップの成功なくして次のオリンピック・パラリンピックにつながらないと思っておりますので、ぜひとも全てに対して全力で取り組んでいただきたいとお願いをさせていただきます。

 最後になりましたけれども、ドーピングについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 私は、このオリンピック・パラリンピックを開催するに当たりまして、ドーピングによって、このオリパラが成功するかというのも大きな鍵の一つだと思っております。

 実は私も文部科学大臣政務官をさせていただいたときに、WADAの会議に常任理事としてずっと参加をさせていただいておりました。そして、このドーピング活動にも取り組ませていただいてきたところでございます。

 そして、今回の招致活動でも、たくさんのIOCのメンバー、そしてWADAの方々からもそうですけれども、日本のドーピング体制はどうかといういろいろな御意見もいただきまして、やはりしっかりとやってもらいたいという御意見をたくさんいただいたところでもございます。

 また、今回、東京の大会に向けて、急激にドーピングの数がふえていく、増加されると思います。そんな中で、IOCやWADAからドーピングの質の向上、これが要請されているところでございますけれども、あと六年しかない中で我が国のアンチドーピングの体制をどのように整備していくかについて、また、政府として支援体制の強化が必要であると思いますけれども、お答えをいただきたいと思います。

久保政府参考人 我が国のアンチドーピング活動は、東京大会の招致におきましても高い評価を受けてきたところでございます。

 我が国では、これまで、年間約七千件のドーピング検査を実施してきておりますけれども、東京大会では、この期間中に、さらに追加で約八千件の検査を集中的に実施することが想定されております。

 さらに、検査件数のうち、二割程度を血液検査として、五割程度を抜き打ち検査とすることによって、ドーピング検査の質を上げるようにIOCあるいは世界アンチ・ドーピング機構から要請されているところもございます。

 したがいまして、ドーピング検査員の育成、検査体制の構築が急務でございまして、大会組織委員会と連携しながら、文部科学省、政府といたしましても、しっかりと整備をしていく必要があると考えております。

 これらの国際的な要請に対応いたしますためにも、文部科学省では、関係省庁及び関係機関と連携しながら、血液検査及び抜き打ち検査の増加に向けた課題につきまして、解決策の検討を具体的に進めているところでございまして、今後さらにその検討を加速させていきたいと考えております。

浮島委員 ドーピング検査というのは、とても難しいところがございます。というのは、抜き打ちで検査をしなければなりません。いついつどこに行くよということは報告できずに、そこの選手がいるところに行って検査をするという体制もとらなければなりませんので、文科省だけではなくてほかの省庁、また環境省もそうですけれども、連携を図っていかなければならないと思いますので、しっかりとしたドーピング体制をつくっていただけるようお願いをさせていただきたいと思います。

 私も、今度のワールドカップ二〇一九年、そして二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて全力で戦っていく、力を尽くすということをお約束させていただき、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

西川委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま本委員会において審査中の内閣提出、平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法案に対しまして、関係委員会から連合審査会開会の申し入れがありました場合には、これを受諾するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明または意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間で協議の上決定させていただきますので、御了承願います。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.