衆議院

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第13号 平成27年5月29日(金曜日)

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平成二十七年五月二十九日(金曜日)

    午前八時五十一分開議

 出席委員

   委員長 福井  照君

   理事 池田 佳隆君 理事 石原 宏高君

   理事 冨岡  勉君 理事 萩生田光一君

   理事 義家 弘介君 理事 郡  和子君

   理事 牧  義夫君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    秋本 真利君

      安藤  裕君    池田 道孝君

      尾身 朝子君    大見  正君

      門山 宏哲君    神山 佐市君

      工藤 彰三君    小林 史明君

      櫻田 義孝君    鈴木 隼人君

      田所 嘉徳君    谷川 とむ君

      豊田真由子君    馳   浩君

      比嘉奈津美君    船田  元君

      古川  康君    古田 圭一君

      前田 一男君    宮川 典子君

      宮路 拓馬君   山本ともひろ君

      菊田真紀子君    中川 正春君

      平野 博文君    松本 剛明君

      笠  浩史君    坂本祐之輔君

      鈴木 義弘君    初鹿 明博君

      中野 洋昌君    吉田 宣弘君

      大平 喜信君    畑野 君枝君

      吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   文部科学大臣政務官   山本ともひろ君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          小松親次郎君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  大見  正君     比嘉奈津美君

  門山 宏哲君     秋本 真利君

  鳩山 邦夫君     宮路 拓馬君

  船田  元君     鈴木 隼人君

  古川  康君     田所 嘉徳君

  宮川 典子君     豊田真由子君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     門山 宏哲君

  鈴木 隼人君     船田  元君

  田所 嘉徳君     池田 道孝君

  豊田真由子君     宮川 典子君

  比嘉奈津美君     大見  正君

  宮路 拓馬君     鳩山 邦夫君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     古川  康君

    ―――――――――――――

五月二十八日

 専任・専門・正規の学校司書の配置に関する請願(堀内照文君紹介)(第一一九七号)

 三十人以下学級実現と障害児学校に設置基準の策定など行き届いた教育を求めることに関する請願(菊田真紀子君紹介)(第一二三三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二三四号)

 同(大平喜信君紹介)(第一二四七号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一二四八号)

 同(本村伸子君紹介)(第一二四九号)

 同(大平喜信君紹介)(第一二六一号)

 同(清水忠史君紹介)(第一二六二号)

 教育予算の増額、教育費の無償化、保護者負担軽減、教育条件の改善など行き届いた教育の実現に関する請願(梅村さえこ君紹介)(第一二四三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二四四号)

 同(清水忠史君紹介)(第一二四五号)

 同(宮本徹君紹介)(第一二四六号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一二七四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)


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     ――――◇―――――

福井委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案の審査に資するため、去る二十七日、港区立小中一貫教育校お台場学園の視察を行いました。

 参加した委員は、私を初め、各党の理事、委員二十一名でした。

 この際、参加委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 お台場学園の特色は、施設一体型校舎のメリットを生かしつつ、現在の六・三制の教育課程の中で、きめ細かな四・三・二制を採用するなど、教育課程特例校ならではの取り組みを進められているとのことから、視察先とさせていただきました。

 まず、お台場学園の白石亨校長から学園の概要についての説明を聴取いたしました。

 その主な内容は、お台場学園が進める小中一貫教育の理念、九年間を四年・三年・二年に区分し、発達段階に合わせた学習態度の育成、九年間の系統性を重視したカリキュラム、ODAIBAプランの実際と検証、小中一貫教育校としての特徴的な学校行事、お台場学園が目指す児童生徒像などでございました。

 次に、小学校と中学校が一体となっている校舎内をつぶさに見て回り、小学校の児童と中学校の生徒が同じフロアで授業を受けている光景などを目にすることができました。

 その後、港区教育委員会及び学校関係者と意見交換を行いました。

 その主な内容は、小中一貫教育校としての地域とのかかわり、小中一貫教育校として開校するまでの準備過程及び九年間の一貫した教育カリキュラムを編成するまでの過程、一人の校長と三人の副校長の役割分担、中学校の授業時間が小学校の授業時間より五分長いことが教職員に与える負担感などでございました。

 今回の視察によりまして、お台場学園の小中一貫教育校としての取り組みの実情や問題を把握することができました。

 最後に、視察に当たりまして御協力賜りました方々に深く御礼申し上げ、視察の報告とさせていただきます。

    ―――――――――――――

福井委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長小松親次郎君及び高等教育局長吉田大輔君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

福井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

福井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。工藤彰三君。

工藤委員 おはようございます。自由民主党の工藤彰三でございます。

 質問の時間をいただきましたことを、まずもって感謝申し上げます。

 質疑の時間は大変短いので、早速、今回の学校教育法の一部改正案について質問させていただきます。

 このたび政府が提出しております学校教育法等の一部改正案は、中一ギャップの緩和や教育内容の充実などに資する小中一貫教育の制度化を果たすものとして期待をしているわけでありますが、この効果を全国に波及するためには、義務教育学校に対する教育関係者の疑問や不安を解消する必要があると考えます。また、当然ながら、当事者であります児童生徒や育成者にも理解をしていただく必要があるわけです。

 そこで、現場などから聞いております疑問点について質問させていただきます。各委員から既に幾つかの質問がありましたので、重なることがないよう、お尋ねさせていただきます。

 まず名称についてでありますが、既に現行制度下においても何らかの形で小中一貫教育に取り組んでいる自治体は、昨年五月の時点で二百十一市町村、取り組みの総件数は千百三十件に上っていると聞いております。

 この中には、例えば、何々学園とか何とか小中学校という名称が使われているところも多くありますが、既に定着している名称を制度化に伴い変更することは、現場や地域や卒業生に戸惑いをもたらすと考えます。このたびの制度化においては、必ず何々義務教育学校という名称を用いなければならないのでしょうか。

 それと、先日、委員会視察で伺いましたお台場学園のPTAの方から話がありました。卒業生、仮に履歴書をしっかり書く場合に、履歴書の卒業名は、お台場学園ではなく、港区立港陽小学校、港陽中学校と書かなければならないと伺いました。なぜでしょうか。お答えください。

小松政府参考人 お答えいたします。

 義務教育学校という名称は法律上の学校種の名称でございますので、個別の学校の名称につきましては、義務教育学校と付さなければならないものではございません。

 御指摘のとおり、既に現行制度のもとにおいても、地方公共団体、学校法人が設置する個別の小学校、中学校の名称においては、必ずしも小学校、中学校というものではないものも認められております。

 具体的には、設置条例で小学校、中学校等の法律上の正式な名称を明らかにした上で、教育委員会が定める学校管理規則によりまして、これらの学校を、例えば、小中一貫教育を行っている学校を一くくりにして学園とするといったようなことができるわけでございます。

 これらはいずれも法令に違反するものではなく、義務教育学校についても同様に扱うことができるということになります。

 なお、履歴書の件につきましては、条例でどのようにそうした学校種が定められているかということと、それから、学校管理規則とかで正式に認められているものであるかということによりまして恐らくそういう指導が行われているものと思いますけれども、法律上において、履歴書にこちらの名称を書かなければいけないというような義務は発生をいたしません。

工藤委員 局長、答弁ありがとうございました。名前を使えるということで、ほっとしているかと思います。

 続きまして、教育課程の区分等についてお尋ねいたします。

 小中一貫教育の取り組みでは、学年段階の区切りを、六・三制ではなく、四・三・二制や五・四制などで区切っている例も見られます。一方、今回制度化する義務教育学校では、その課程を、前期六年、後期三年に区分すると規定されています。

 現行制度下で行われている柔軟な学年段階の区切りは、それぞれの地域、児童生徒が抱える課題に対応するため、よい取り組みと考えますが、前期課程六年、後期課程三年の区分と、四・三・二制や五・四制のような弾力的な教育課程の区分との関係はどのようなものになるのか。また、このことによりましていわゆる中一ギャップは解消できると大臣はお考えでしょうか。お尋ねいたします。

下村国務大臣 これまでの運用上、小中一貫教育に取り組んでいる学校での成果を踏まえれば、いわゆる中一ギャップの緩和のため、児童生徒が小学校段階から中学校段階へと円滑に移行できるようにするための取り組みを行うことが有効であるというふうに考えております。

 具体的には、例えば、小学校高学年と中学校一年生の合同行事を行ったり、小六の担任に引き続き中一を担任させたりすることや、中学校段階の教育の特徴である教科担任制や定期考査、それから制服、部活動等など、小学校高学年から段階的に導入すること、あるいは、こうした取り組みを行う上で、例えば、今御指摘もありましたが、四・三・二とかあるいは五・四など、小学校の段階と中学校の段階の間に便宜的な区切りを設けて、小中の連続性を意識した指導を行うといった取り組みにより効果を上げていることが報告されております。

 今後、小中一貫教育に取り組む各学校においても、このような事例を参考に、児童生徒の状況を踏まえつつ、工夫することを期待をしたいと思います。

 文科省としては引き続き、全国のさまざまな取り組みを収集、分析した上で、各地域や学校の実態を踏まえた取り組みを後押しできるよう、きめ細やかな情報提供に努めてまいりたいと考えております。

工藤委員 下村大臣、ありがとうございました。

 それぞれ地域性がその地区によってありますので、ベストミックスとは言いませんけれども、ベストマッチ、見合ったものを選んでいただいて、それをまた何かあれば指導していただきたい、そんな思いでございます。

 続きまして、コミュニティースクールとの連携についてお尋ねいたします。

 教育再生実行会議の第六次提言において、コミュニティースクールと小中一貫教育の取り組みを連携して進めることが効果的であると指摘されております。私の地元愛知県や名古屋市でもコミュニティースクールの数は増加してきているところでありますが、一貫教育制度化はコミュニティースクールと一体的に導入そして推進するべきでないかと考えておりますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

下村国務大臣 基本的には御指摘のとおりだというふうに思います。

 学校運営に地域住民や保護者等が参画するコミュニティースクールは、地域ぐるみで子供を育てるという観点から有効な方策であり、特に小中一貫教育の場合には、九年間を通して子供の成長、見守り、支援していく仕組みとして大いに活用が期待されるところであるというふうに我々も考えております。

 現在、中教審におきまして、今後のコミュニティースクールのあり方と推進方策等について御審議いただいているところでありますが、その中で、小中一貫教育等におけるコミュニティースクールのあり方についても検討いただく予定となっております。

 文科省としては、その議論等も踏まえつつ、社会総がかりで、子供たちの豊かな学びと成長を実現できるよう、小中一貫教育も含めて、コミュニティースクールの一層の拡大、充実に努めてまいります。

工藤委員 ありがとうございました。

 コミュニティースクール、大切だと思います。去年、参考人の貝ノ瀬先生にも尋ねたことがありますので、ぜひとも連携を図っていただきたいと思います。

 時間がもうありませんので、最後に要望を、私の考え方を少し述べさせていただきます。

 今回の法改正はすばらしいことだと考えております。改革の一歩を踏み出している感があります。ただし、今回の視察の車中で各委員ともいろいろ議論させていただいた中で、一方、考えがありまして、現在まで地域と公立学校と連携してきた関係に若干距離ができるような気もします。

 低学年の、例えば小学校一年生、二年生の子が、小学校区のくくりだったのが中学校まで通う距離が出た場合の交通事故、交通安全の確保の件や、既存の校舎の設備などについて、また、地元ではサッカーで全国大会二回優勝した公立の中学校がありますので、クラブ活動はどうなるのか、それとか、学校名廃止で学区がもめた地区も名古屋にはありました。そのことも踏まえて考えていただきたいと思います。

 地域連携が希薄にならないように、地域の区政協力委員、PTA、そして地方議員の皆さんや、そして私もしっかりと頑張ってまいりたいと思います。休日、夜間のグラウンド開放の問題もあります。制服の問題、PTAの問題等がありますが、頑張ってクリアしたいと思います。設置者がこれは各自治体でありますので、法律上の明記では、教育上有益かつ適切であると認められれば設置ができることになっております。先日、参考人でお見えになった新潟県三条市の國定勇人氏のような立派な市長さんであれば、通常ならば何ら問題ないと私は考えております。

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 そういうことをしっかり努力することをお誓い申し上げまして、質問を終了いたします。

 ありがとうございました。

福井委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 今般の学校教育法の一部を改正する法律案、本法案の意義について、先週の我が党の中野洋昌委員の質問で、今回の義務教育という制度を改めて導入した理由について下村文科大臣からおおむね、一番、小学校、中学校が別々の組織として設置をされているため、それぞれに校長や教職員組織が存在し、意思決定や意思統一に時間がかかる、二番、組織が一体でないことから、人事異動などで人がかわると取り組みが定着しにくい、三番、教育課程の編成や年間指導計画の作成を初め、小学校、中学校ごとに取り組むことが想定されている事務が多く、九年間を通して一体的に遂行することが難しい、加えて四つ目、特例的な教育課程の編成に当たり、研究開発学校制度や教育課程特例制度を活用する場合には個別に文科大臣の指定が必要となり、迅速な取り組みが難しいという御答弁がございました。

 また、先日伺わせていただきました港区のお台場学園におきましては、校長先生は、小学校の校長先生と中学校の校長先生を兼務しておられました。現行学校教育法のもと、区の小中学校の行政事務というのは独立して行われております、小中一貫という教育を前提にしていないということで。校長先生はそれぞれの立場で、小学校の先生の立場それから中学校の先生の立場で仕事をこなしていかなければならなくて、学校にいる時間も極端に少ないという話がございました。

 したがって、こうした制度の壁を乗り越えまして、校長先生初め副校長、教職員の皆様も懸命に生徒さんのために激務をこなしておられる、そういった印象をお受けいたしました。

 そういった意味におきましても、先ほどの下村大臣の御答弁の趣旨を実現すべく、義務教育学校の導入に私も賛成するものでございますけれども、この中野委員の質問を少しだけ掘り下げる形で、一点だけ私は確認をさせていただきたいのです。

 先ほど申し上げました四番目の点ですが、義務教育学校制度が導入されれば、これまで文科大臣の指定が必要であった研究開発学校制度や教育課程特例制度、この教育課程特例制度はお台場学園の方でも採用をされているようでございましたが、この二つの制度というのは設置者の判断で活用することができるようになる、そのような理解でよろしいのかどうか。文科省から、念のため確認をさせていただければと思います。

小松政府参考人 御説明申し上げます。

 現行制度におきましては、研究開発学校制度や教育課程特例制度等につきまして、これを活用して小中一貫教育に取り組むという場合には個別に文部科学大臣の指定を受ける必要がある、御指摘のとおりでございます。

 今回の義務教育学校の教育課程につきましては、前期課程及び後期課程にそれぞれ小学校と中学校の学習指導要領を準用するということを省令において定めるとともに、教育課程の特例や配慮すべき事項については、文部科学大臣告示において具体的に示すという形にして、わかりやすく利用ができるようにしたいと思っております。

 この告示の詳細は、今後、法案が仮にお認めいただけました場合に検討してまいることになりますが、現時点で考えておりますのは、一つは、学習指導要領に示された内容項目はきちっと網羅をしていただくこと、それから、各教科等の系統性や体系性に配慮すること、さらに、児童生徒の実態を十分踏まえ、負担過重にならないようにすること、こうした前提を置いた上で、小中一貫教育の円滑な実施に資するものとして、小中一貫教育の軸となる、例えば郷土科のような独自教科の設定、あるいは学年段階を超えた指導内容の一部移行などを、従前のように個別の大臣指定によるのではなく、設置者の判断で可能とする教育課程の特例を創設するということを予定しているところでございます。

吉田(宣)委員 丁寧な御答弁、本当にありがとうございます。

 時間がないのでちょっと急がせていただきますが、この義務教育学校、私も今回お台場学園を見させていただいて、決してそこのお台場学園がエリート校化しているというような印象は全くお受けしませんでしたけれども、一方で、エリート校化してしまうのではないかというこういった御心配も、少しほどですが、お聞きをするところでございます。

 その上で、ちょっと一つまた確認だけなんですけれども、文科省の説明によると、この義務教育学校、国の方でも設置主体となり得るというふうな説明をちょっとお受けしたところでございますが、国の方でこの義務教育学校を国立という形で設置するような御予定はございますでしょうか。文科省からお聞きしたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年四月現在で、国立大学の附属学校といたしまして小学校七十二校、中学校七十三校が設置されておりますけれども、現時点におきまして、各国立大学法人から、義務教育学校の設置について具体的な予定は聞いておりません。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 国の方で今のところ予定がないのかなというふうな感じでございますけれども、となると、やはりこの義務教育学校の設置及び運営の主体というのは、これは主に市町村になってくるのかというふうな理解でございます。

 そこで、どのような国の取り組みでも、新たな施策を一つの自治体というのがこれを運営していくとなると、運営が安定してくるまでなかなか時間がかかるというか、こなれてこないというふうな印象がございます。その意味におきましても、今回の義務教育学校の制度も、一たびこれをやりたいという自治体が取り組み始めたときにも、いろいろとやはりこなれないところというのは出てきてしまうのかなというふうな心配が少しあります。

 そういった意味におきましても、これから、よい制度だからしっかりこの義務教育学校に取り組んでいきたいという自治体も出てくるかと思いますけれども、そういった自治体に対して試行錯誤の段階で、だからといってそこに生徒さんはいらっしゃるわけで、そういった生徒さんが戸惑いがないような運営というものをやはり求めたいと思いますし、そういった意味におきましても、国の方では、これからやろうという自治体に関しては、きめ細やかなアドバイスといいますか、特にソフト面におけるそのバックアップというものをお願いしたいと思うのですけれども、文科省のお考えをお聞かせください。

小松政府参考人 小中一貫教育につきましては、現行制度のもとで、運用上の工夫によって相当数の自治体あるいは学校が取り組んでいることをたびたび数値等で御説明をいたしておりますけれども、この中で、さまざまな課題やその解決策、あるいは長所や成果といったものについても積み上がっているところでございます。

 そこで、文部科学省といたしましては、去る二月に、教育委員会あるいは学校法人、国立大学法人を対象にフォーラムを行いまして、こうした取り組み事例等を共有したりしておりますけれども、法案が成立いたしました場合は、施行通知や説明会等について改めて丁寧に説明するほか、モデル事業や事例集の作成等を通じて、運営、教育課程等についても十分な周知を行って、お取り組みになる設置者の方々が有意義な教育が展開できるよう、義務教育学校制度が適切に運用されて児童生徒の教育に支障が生じないよう、総合的に取り組みを進めてまいりたいと存じます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 今般の法律改正のもう一つの柱である、高等学校専攻科の修了生が大学へ編入学する、この点について質問をさせていただきます。

 高等学校専攻科というふうな卒業生が大学に編入学するということでございますが、これはどのようなニーズがあるかについて、文科省の方からお聞かせいただければと思います。

小松政府参考人 高等学校専攻科でございますが、主に看護学科や水産学科など、専門高校に設置されております。平成二十四年度に、専攻科を置く高等学校に調査をいたしましたところ、五四・六%の学校から、編入学ニーズが、大いにある、またはややあるという回答があるところでございます。

 具体的には、例えば看護の分野では、助産師や保健師などの受験資格を取得するための課程が主として大学や大学院に置かれておりまして、今後、専攻科修了生に対してこの大学への編入学が認められますと、初年次に改めて入学するよりも短い年限で各国家試験の受験資格を得ることが可能となります。

 このほかのさまざまな職業的なステップアップなどにもニーズが考えられるところでございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 今御説明された意義から申し上げても、今回の編入学の制度の導入に関しては私もそのまま賛成を申し上げる次第でございますけれども、ただ一点、一般の大学は、入学するとすぐ専門に入るのではなくて、教養課程というものを経て専門課程に上がるというふうな段階で、私も、大学に入学してすぐ教養課程で勉強をさせていただきました。

 決して私の価値観を押しつけるわけでも、そういった趣旨は毛頭ないんですけれども、私の経験ですけれども、この教養課程における勉強というのは、私の今の人生でも大変に役に立っております。本当にいろいろな勉強をさせていただいて、そのときの大学の教科書なんですが、よく持ち歩いて、何度も繰り返し読むような良書にもめぐり会うことができましたし、そういった学問というのが、今、私のライフワーク的な学問の対象になったりもしております。

 そういった意味におきましても、これからこの専攻科を卒業されて編入学されてこられる、大学に入学されてこられる生徒さんへの対応と申しますか、今般の改正を行う前提として、この接続の部分というのが非常に重要になってくるのかと私は思いますけれども、この点に関する下村文科大臣の御所見をお聞かせいただければと思います。

下村国務大臣 御指摘のとおり、大学における教養教育を通じて、深い教養を身につけ、幅広い視野から物事を捉えることができる人材を育成することは重要でありまして、近年、いわゆるリベラルアーツについて、文系、理系に分かれている中で、広い意味でのそのような教養が不足しているのではないか、もっと充実させる必要があるのではないか、そういう指摘もなされているところでございます。

 編入学においても、既に編入学が認められている専修学校専門課程からの編入学者につきましては、大学において編入学者が二年次や三年次に教養科目を履修できるプログラム等も提供されているところでもあります。

 このようなことを踏まえまして、仮に法案をお認めいただくということになれば、文科省として大学に対して、高等学校専攻科から編入学した学生のそれぞれの実態に応じて、教養教育の面なども含め必要な教育プログラムをきめ細かく提供するなど、編入学者が大学教育に円滑に移行し、主体的な学びを実現でき、また、多方面の教養教育がしっかり受けられるような、そういう配慮ができるように促してまいりたいと思います。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 質問したい内容が終わりましたので、ここで終わらせていただきます。ありがとうございました。

福井委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 おはようございます。民主党の笠浩史でございます。

 大臣、先般、ちょうど先週の質疑の中で、今回この小中の一貫校、これは教育再生実行会議でも、義務教育学校は全ての自治体、全ての学校を対象にやっていくのが望ましいと。そして大臣自身も、当委員会において、私は、目指すべき方向として、全ての自治体において、全ての小中学校において、この義務教育学校に該当するような、そういう制度設計についてぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思っているということを答弁されております。

 私、この法案が成立したとしても、果たしてそのように本当に広げていくことができるんだろうか、いささかそういう不安を感じているところでございます。

 今、既に小中一貫校の取り組みというものはいろいろな自治体でも行われているんですけれども、これを全国に広げていくためには、こういった現在の取り組みの検証や、その課題も含めてしっかり対応していかないと、法律の改正が実行されたとしてもなかなかうまくいかないんじゃないかという懸念を持っておりますけれども、これを全国に広げていく上での一番の課題というか、これを端的に、大臣自身の思いをまずお伺いをしたいと思います。

下村国務大臣 平成十八年の教育基本法の改正それから平成十九年の学校教育法改正によりまして義務教育の目的、目標が定められたことなどを踏まえれば、御指摘もありましたし、私もそのように考えておりますが、全ての自治体において小中学校の連携を強化して、そして、義務教育九年間を通じた系統性、連続性に配慮した教育に取り組むことが望ましく、小中一貫教育はその有力な方策となると考えております。

 これまでも、運用上、小中一貫教育の取り組みがなされてきたところでありますが、今回の義務教育学校の制度化によりまして、従来、小中学校が法令上別の組織であったことに起因する課題が解消されるということになります。また、九年間を通した効率的なカリキュラムや教材の開発、教員の協力体制などについて、各学校や教育委員会等での取り組みがさらに進むことが期待をされます。

 文科省としては、法案が成立した場合には、施行通知や説明会等を通じて制度化の趣旨を丁寧に説明をしていきたいと思いますが、これは、先ほども質問で出ていましたし、また、笠委員も熱心に進められているコミュニティースクール、これは、小中一貫の九年間、つまり、義務教育学校等が最も地域と一体となったコミュニティースクールとして、より教育的な成果、効果、地域ぐるみ、チーム学校としての位置づけとしても、より成果、効果が上がるのではないかと思いますし、こういうものを連動させることも大変に重要なことであるのではないかと私は思います。

 まず基本的には、法案が成立した場合には、施行通知や説明会等を通じて制度化の趣旨を丁寧に説明するとともに、これまでの先行事例、先ほどのコミュニティースクールもそうですが、こういうすぐれた取り組みの事例を周知することによって、全ての自治体でぜひ取り組みたいと積極的に思っていただけるような、そういう支援体制をつくっていきたいと思います。

笠委員 昨年の五月時点でこの小中一貫の取り組み件数が千百三十件、小学校においては二千二百八十四校、中学校が千百四十校ということですけれども、昨年、文科省が初めてこの実態調査を行っております。

 未実施の千五百三十二市区町村の検討状況ということの中で、その六割は特段の取り組みなし、あるいは、国や他の市町村の状況を注視しているが約三割、今後実施予定や検討中とした前向きな自治体はわずか一一%にとどまっているというのがこの調査で明らかになっております。

 確かに今大臣が、この法改正がなされた後、文科省として丁寧にしっかりと説明をしていくということ、これはもちろん大事なんですけれども、大方の自治体の皆さん方は、この小中一貫の取り組みということについては、その成果、あるいはその必要性、教育関係者は大体わかっているところはあると思うんです。

 そういった中で、こういう前向きな自治体が少ない。本当に今回の法改正によって、今までは考えていなかったけれども、では今後は検討していこうというところがふえていくのかというと、私はやはり、その環境づくりをむしろしていかなければなかなか難しいんじゃないかというふうに思っております。

 それで、これは四十七の都道府県で見ても、小中一貫教育については非常にばらつきがございます。ゼロ、一件もないというところが四県、あるいは一件だけ取り組んでいるところも四県、あるいは二件だけ取り組んでいるところが五つの県など、なかなかこれが進んでいない。都市部を抱えているようなところでは、東京もそうです、私の神奈川もそうです、割とそういったところでは取り組まれているんですけれども、地方を中心になかなかこの広がりを見せていないということについて局長の方でどのように分析をされているのか。

 あるいは、これまで小中一貫教育に消極的、あるいは、検討したけれどもなかなか難しいというところもあるんでしょう。そういったところをどのように分析して今回の制度設計に生かしていったのか。

 その点をお聞かせをいただきたいと思います。

小松政府参考人 現行制度下における小中の連携の取り組み状況の数値につきましては、私どもの調査、ただいま委員御指摘のとおりでございます。

 それで、これまでも、一つは、運用上の工夫によってさまざま取り組みは行われておりますものの、取り組んでいる現場から聞こえてきます声あるいは要望というものにつきましては、小学校、中学校は別々の組織として設置されている、学校の種類も異なっているということから、教育の主体あるいは教育活動、学校マネジメントといったものの一貫性についてはなかなか取り組みにくい面がある、これについてはぜひ解消してほしいというような意見を聞いております。

 まず、今回の制度化そのものが、そういった点につきましては問題を相当程度解消できるというふうに思っております。

 この制度化を受けまして、そのメリット等につきましては、制度化の趣旨として、モデル事業、あるいは事例集、あるいは説明会、通知等でよく周知徹底を図って取り組みやすいようにすること、それから、特色のある取り組みにつきましては、今でも、例えば教職員定数の確保、あるいは、先ほどお話にも出ましたけれども、特例制度や研究開発学校といった新しい試み、こういったものがやりやすくなっているわけでございます。

 これら制度やリソースの面で総合的に取り組んで、積極的に取り組みが各自治体等で進むように支援をしてまいりたいというふうに考えております。

笠委員 この小中一貫の取り組みについては、施設が一体型、あるいは施設の隣接、あるいは分離型と三つに分けられると思うんですけれども、この中で、今は施設一体型というのが全国で百四十六件ですか、圧倒的に多いのは施設の分離型、現状の小中学校をそのまま活用しての取り組みというのが八百八十二件ということで圧倒的に多いんですけれども、この一体型と、あるいは隣接、分離型といったときのこの効果の違いというものについてどのように分析されているのか。

 あるいは一体型が、私が聞くところでは、何校か私も行ったことはありますけれども、他の分離型よりはやはりその成果があらわれているというふうに感じておりますけれども、その点、文科省としてどのように把握しているかをお聞かせください。

小松政府参考人 文部科学省におきましては、平成二十六年度に実施をいたしました実態調査において、施設一体型、あるいは施設隣接型、施設分離型といった、小中一貫教育に取り組む施設の形態と小中一貫教育による成果に関するクロス分析を行っております。

 この結果を見ますと、どの施設形態においても、例えば、学力の向上やいわゆる中一ギャップの緩和といった成果が報告されております一方、全体の傾向として見ますと、施設一体型、施設隣接型、施設分離型の順に大きな成果が報告をされるという傾向が見られるところでございます。

 このことは、小中学校の施設の一体性が高いほど、小中一貫教育の特色を生かした教職員の交流や児童生徒の交流が行いやすいということに一般的には起因しているものと考えられますけれども、施設分離型校舎を活用した小中一貫教育の取り組みの中でも顕著な成果を上げている例も見られること、また、地域の実情も多様であることから、文部科学省としては、こうした調査結果も踏まえながら、地域の実情によってどのような施設形態であっても効果的に小中一貫教育を実施できるよう、また、積極的に取り組めるよう、きめ細かく支援をしてまいりたいというふうに考えております。

笠委員 本来であれば、施設一体型をふやしていくということが私も望ましいんだと思います。ただ、現実的には、財政的な面を考えると、そんなにどんどん新しい学校を施設としてつくっていくということは、これは一歩一歩しかできないというふうに思っております。

 そういう中でやはり課題としては、分離型、あるいは隣接型でもいいんですけれども、特に分離型の中でどのように広げていくか、そのことが、この小中一貫校、義務教育学校を全国に展開できるかの大きな鍵だと私は思っています。

 そのときに、どうしてもこの一体型以上に、今もありましたけれども、分離型の場合には教職員も含めたさまざまな負担がふえてくるというような中で、この文科省の調査の中でも、やはりこうした教職員の負担増から、教職員の定数上の措置であったり、あるいは学校の施設整備のための財政措置、これが国に期待されているところで最も多い結果になっているわけでございます。

 これはまた改めてこの点については議論は別途させていただきますけれども、そういうことでいうと、大臣、先般の財務省、今後十年間で小中学校の教員を約四万二千人削減するという定数合理化計画が一方で打ち出される。一方で、小中一貫、この義務教育学校を、大臣もさっきおっしゃったように全国に広げていこう。教職員の加配も含めた定数の拡充というものをしっかりやはりやっていかないと、現実には私、なかなか難しいと思います。

 その点についての大臣の率直な思い、お聞かせをいただければと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、財政審における財務省の試算は、今後の児童生徒数の減少によって機械的に教職員定数を削減すれば四万二千人削減できるというものでありまして、学校現場を取り巻く課題が複雑困難化し、教職員が多忙化している現在、全く実態になじまない削減計画であるというふうに考えております。

 文科省としては、いじめ対応や特別支援教育、貧困による教育格差の解消など、学校が対応しなければならない教育課題はむしろ大幅に増大しており、特に、現場の課題に対応する加配教員を削減することは、これは学校の教育力の低下に直結するものであると思います。

 また、グローバル社会に対応する主体的、協働的な学びであるアクティブラーニング等は、より今のクラスよりも少人数で実施しなければその指導体制が十分に対応できないということにもなるわけでありまして、財務省の試算は到底認めることができず、むしろ、定数の戦略的充実が必要であると考えております。

 ぜひ衆議院の文部科学委員会におきましても、これは与野党を超えて危機感を共有していただいているのではないかと思いますが、御協力いただきますようにお願い申し上げたいと思います。

笠委員 その点は、本当に定数合理化計画なんてふざけた話でして、我々は定数改善計画をやはりきちっとつくっていこうというのは、これは党派を超えた思いだと思いますので、その点はまた委員会の方でも、今、委員会決議を含めて検討されているということで承知をしておりますけれども、やはりこの制度が、義務教育学校をぜひ推進しましょう、こういう使い勝手がいいんですよ、あるいはこういうことができるようになったんですよということを皆さんが説明していっても、その一方で、必ずそれはやはり教職員をしっかりと拡充させてほしい、そのための国の支援がないとなかなかやはり難しいんだということは全国から恐らく要望として出てくるかと思いますので、そういう逆行するような政策が進まないように、その点はぜひ大臣には頑張っていただきたいというふうに思います。

 それと先ほど、コミュニティースクール、私も、実はこの小中一貫校を普及させていく中、あるいは財源的な制限がある中では、やはり地域の力をいかに活用していくか、このことがもう一つのポイントになると思っておりますが、現在の千百三十件の取り組みの中でコミュニティースクール化されている件数というのが何件かをお答えください。

小松政府参考人 文部科学省が行いました実態調査の結果によりますと、平成二十六年五月一日時点で千百三十件ある小中一貫教育の取り組みのうち、コミュニティースクールをあわせて導入している取り組みが一五%、百七十二件となっております。

笠委員 コミュニティースクールを推進していくということは、これは大臣も本当にずっと取り組んでこられましたし、我々もそのことを進めてまいりました。ある意味では、今回の小中一貫義務教育学校の制度化というものがこのことの起爆剤になっていくと非常にいいなというふうに私も思っておるわけでございますけれども、そういったことを、特に今後、この法案が成立をした際、それ以降、やはりそことあわせてしっかりとセットでやっていくことが、いかに子供たちにとってもあるいは学校運営にとってもいいのかということを、私は強く大臣にはやはり全国に説明をしていただきたいし、そのことをやはり推奨していただきたいし、また、コミュニティースクール、いろいろなところへ私も行っています。やはり、少しでもいいから、それを導入するに当たっての財政的な支援をもう少ししてもらいたいという声が必ずあるんですね。

 そういったところの、今回の小中一貫で、そしてコミュニティースクールもあわせてその制度も導入していくというようなところに対しては、何らかの支援をしていくというようなお考えはあるでしょうか。

下村国務大臣 まず、昨年、国会で成立をさせていただいた教育委員会制度改革、これは、総合教育会議の中で首長と教育委員の方々が協議してその地域の大綱を定めるということの中で、今まで、教育委員会だけですと、地域からコミュニティースクールをぜひつくったらどうかという提案があっても、どうしても広がっていかない、地域の住民の方々の声が直接教育委員会に届かない、そういうようなところがたくさんありましたが、今度は首長とも一緒に大綱はつくるということですから、今まで以上に地域の声を、学校の中に協力体制としてつくるという意味では、恐らく、教育委員会制度改革が行われたということによってコミュニティースクールも促進されるのではないかというふうに今期待をしているところでございます。

 その中で、今回、この小中一貫教育における義務教育学校が成立をさせていただければ、笠委員がおっしゃっているとおりに、この小中一貫義務教育学校とコミュニティースクールを組み合わせるということは、これは、教育成果、効果上も大変大きなものが得られるのではないかと思います。

 今現在、中教審において今後のコミュニティースクールのあり方と推進方策について御審議いただいていて、その中で小中一貫教育におけるコミュニティースクールのあり方について検討していただいているところでもございますので、文科省としては、その議論も踏まえ、また、今は笠委員から何らかのインセンティブというような話がありました。これは、中教審の答申を受けながら、そのインセンティブについてどんなことができるか、文科省としても今後、検討要因として取り組んでまいりたいと思います。

笠委員 教職員定数の改善、本当にしっかりと財務省と戦っていくこと、そしてまた、今おっしゃったように、やはりコミュニティースクールを広げていくためにも何らかの、今大臣がインセンティブということをおっしゃいましたけれども、ぜひ具体的なものを打ち出していただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

福井委員長 次に、菊田真紀子君。

菊田委員 おはようございます。民主党の菊田真紀子でございます。

 きょうは最初に、大変お忙しいところ、内閣府の大臣政務官、小泉政務官に御出席をいただきました。

 経済財政諮問会議という会議がありますけれども、この会議はいかなる会議であるか。安倍政権における経済財政諮問会議の位置づけについて、お聞かせをいただきたいと思います。

小泉大臣政務官 おはようございます。

 御質問をいただきました経済財政諮問会議についてでございますが、経済財政政策に関する重要事項について、有識者等のすぐれた識見や知識を活用しつつ、内閣総理大臣のリーダーシップを十全に発揮することを目的として、内閣府に設置された合議制の機関であります。

 出席のメンバーでありますけれども、総理を議長として、官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、総務大臣、経産大臣、日銀総裁、有識者議員四名により構成されておりまして、経済全般の運営の基本方針、いわゆる骨太の方針、そして財政運営の基本、予算編成の基本方針その他の経済財政政策に関する重要事項についての調査審議を行っております。

 開催実績としましては、平成二十五年は二十七回、平成二十六年は二十一回、平成二十七年はこれまでで七回開催となっております。

 なお、教育関係につきましては、昨年、一回議論を行っております。

 以上であります。

菊田委員 政務官、ありがとうございました。議論を聞いていただきたいんですけれども、もしもうお時間がおありでしたら、どうぞ御退席ください。ありがとうございました。

 今、政務官から御説明がありましたとおり、非常にこれは内閣において重要な会議であるわけでございます。教育現場の実態に即した教職員定数の充実につきまして、今ほども笠議員からもお話がありましたとおり、当委員会におきましては与野党を問わず多くの議員が問題意識を持っております。繰り返しになりますが、さきの財政制度等審議会財政制度分科会における教職員削減に関する機械的な試算については、ここにおられる多くの議員が危機感を持っているわけであります。文科省としてはここは踏ん張りどころでありますし、下村大臣には、最前線に立って真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 そこでお伺いいたしますが、今、政務官からお話がありましたとおり、昨年この経済財政諮問会議、二十一回開かれているけれども、教育が議事、議題、テーマになったのはわずか一回でありました。昨年の五月二十七日に第九回の経済財政諮問会議が開かれておりまして、今申し述べましたように、教育分野における歳出分野の重点化・効率化・教育再生がテーマとなっております。この会議に下村大臣は出席されましたでしょうか。

下村国務大臣 昨年の五月二十七日の経済財政諮問会議については、私は出席せず、西川副大臣が出席をいたしました。

菊田委員 大臣はなぜ欠席されたのでしょうか。ほかにもっと重要な公務があったのでしょうか。そして、その時間帯、下村大臣は何をされていたでしょうか。

下村国務大臣 経済財政諮問会議は、個人としてということではなく、文科省の大臣としての立場でありますが、同日その時間帯は、私の他の用務があったということで、省内で日程を調整した結果、西川副大臣が出席をするということでお願いいたしました。

 ただ、これは個人ということではありませんから、当然、会議への提出資料は、私のもとで省内で何回も議論をして資料をつくり、また、私の名前で提出をしておりますので、説明内容については西川副大臣と事前に十分に打ち合わせをし、そのときに担当スタッフと一緒に想定問答集もつくって、そして、ある意味では、誰が出ても文科省としてのスタンスそして明確な意見が出せるような万全たる体制で、西川副大臣に出席をお願いしたということであります。

菊田委員 この日の十七時からでありますけれども、国会木鶏クラブという会合が開催されています。大臣は、この会の発起人であり会長であられるというふうにお伺いしておりますが、こちらに出ておられたんでしょうか。それは政務ではありませんか。公務よりも優先させた理由について、まず事実関係から御説明いただきたいと思います。

下村国務大臣 昨年の五月二十七日の件ですので詳しくは覚えておりませんが、そういう指摘であれば、そうであったかもしれません。

 ただ、これは、先ほど申し上げたように、私個人というよりは文部科学省としての明確なスタンスということでも呼ばれておりますので、先ほど申し上げましたように、しっかりと私のもとで、この経済財政諮問会議に対する文科省としての資料、発言内容、それから想定問答も含めて、万全たる体制で対応しているというふうに確信をしております。

菊田委員 私は、これは質問要旨として提出をしております。会議にもし出席されていなかったのならその理由、同日同刻何をされていたのですかと事前に通告しております。

 この日の夜七時から、博文若手政策研究会第八十五回定例会として、下村大臣の還暦を祝う会がオテル・ドゥ・ミクニで開催されています。これは大臣のフェイスブックにもあります。

 思い出していただきたいんですが、この経済財政諮問会議が開かれた日、夕方の五時から、この国会木鶏クラブに出ておられたという記憶はありませんか。

下村国務大臣 先ほど申し上げたように、菊田委員がそういうふうに調べられたのであれば、その会に出ていたというふうに思います。

菊田委員 私は、これはやはり政務よりも公務が優先されるべきだと思いますし、年に一回、教育がテーマになるという大事な経済財政諮問会議に大臣自身が出席をされなかった。私は、大臣と副大臣では存在感が違うと思うんです。やはり迫力が違います。本気度が問われるというふうに思うんですが、見解を伺います。

下村国務大臣 私自身は、御指摘のように、できるだけ政府全体の重要な会議には出ていく必要があるというふうに思っておりますし、ほかの大臣と比較したことはありませんが、重要な会議には、私みずから出るのは当然のことだと思います。

 当日は、そういう個人的な見解云々ということを発言する場ではなくて、文部科学省としての立場で資料も用意をする、また発言するということもあったということで、最終的に私がそういうふうに判断したということだと思います。

菊田委員 この会議の後、六月二十四日に閣議決定をされた経済財政運営と改革の基本方針二〇一四について伺います。

 ここには、文科省が従来から主張していた、教育の質向上とともに教員の数の充実も必要という、この文言が盛り込まれませんでした。教育の質をより重視した取り組みを強化するという文言になっています。これは、財務省や民間議員の主張そのままです。西川京子副大臣は精いっぱい頑張って主張されたと思いますけれども、残念ながら、その後の閣議決定では、文科省として西川副大臣が主張したことが盛り込まれなかったということであります。

 平成三十六年度までに約四万二千人の教職員の合理化が可能であるというような機械的な試算が昨今示されたことを見るように、今後、この削減の流れを変えるというのは容易ではありません。

 ところで、ことしの経済財政諮問会議、五月二十六日に開かれた会議には、下村大臣自身が出席をされております。

 西川副大臣が出席された前年の会議において、文科省が作成をし提出をした資料には、「教員の「質」向上とともに教員の「数」の充実も必要。教員の「質」と「数」の一体的強化が必須。」という文言がしっかりと赤線、太字で強調され、明記をされておられました。

 ところが、今回の下村大臣みずからが出席された会議の資料を調べますと、「教職員定数の充実が必要」という書きぶりになっていて、昨年のような強調はされていないという印象を持ちました。

 また、この会議の後、甘利大臣が記者会見をされておりますけれども、その記者会見の要旨からも、主な意見として取り上げられておりません。まだ議事の要旨が、記録が公開されておりませんので、下村大臣がどのような発言をされたのか、我々にはわからないわけであります。

 改めて、下村大臣がこの会議でどのような主張をされたのか、従来の主張を一貫して曲げずに主張されたのか、御説明をいただきたいと思います。

下村国務大臣 菊田委員も政務官の御経験があるから御承知だと思いますが、こういう会議で、個人的にその場の思いつきでそれぞれ発言するということは全くないわけでありまして、事前に、先ほど申し上げましたように、役所全体でどんな資料をつくるか、また、どんな発言をするか、また、想定問答で、もし質問がされたときはどんな答弁をするかということは全てつくってある中で、そしてやるわけです。ですから、文科省の誰かが行って違う発言をするとか、あるいはしないとかいうことはあり得ないということが、まず役所としての、あるいは政府としての各省の当然のスタンスでございます。

 御指摘の御質問ですが、新たな教育への転換、それから、複雑困難化する教育課程への対応のためには教員の質と数の充実が必要であり、この基本的な考え方は昨年もことしも何ら変わっておりません。

 ただし、経済財政諮問会議における指摘事項が昨年とことしで変わっているため、文部科学大臣として提出した資料においても、指摘内容に応じて的確な反論を行うということでなかったら通りませんから、そのための的確な反論ペーパーをつくったところであります。今回の資料提出におきましても、教職員定数の戦略的充実が必要であるというふうに強調したペーパー、またはその発言もしております。

 また、五月二十六日の会議の場におきまして、具体的には、国会でも答弁している内容でありますが、いじめ対応や特別支援教育など、学校が対応しなければならない教育課題はむしろ大幅に増加しており、きめ細やかな対応がこれまで以上に必要となっていること、また、グローバル社会に対応する主体的、協働的な学びであるアクティブラーニングを実施するための指導体制の充実が必要であることなどから、教職員定数の戦略的充実が必要であると主張いたしました。

 後でまた議事録が出てくるかと思いますが、これについては麻生財務大臣から、日本の特に初等中等教育は非常に質が高いという中でさらに充実をさせる必要があるのか、もう十分な財政的な支援等がしてあるのではないかというような御意見があった中で、何度か、今までの延長線上でこれからの教育がそのままできるような状況ではないという詳しい説明と、それから、先ほど申し上げたようなアクティブラーニング等、二十一世紀の新たな時代に応じた教育。そもそも教育というのは、コストではなくて未来に対する先行投資だと。国会でも何回も議論になっておりますが、例えばペリー就学前教育のように、きちっとした社会保障としての教育の位置づけをすることが、中長期的に見れば結果的に社会保障やあるいは社会の治安等を含めた財政のコストダウンにもつながっているということが実証的に証明をされているデータが幾つもある。それも今回の資料の中に、配付をして説明いたしましたが、そういう形で経済財政諮問会議の中で主張したところであります。

菊田委員 私も外務大臣政務官を務めさせていただいたのでわかるんです、どの会議に誰が出席をするか。やはり、この会議は大臣でなければならないという会議があると思うんですね。

 私は、年に一回の教育がテーマになった経済財政諮問会議で、下村大臣が、当委員会の委員がいつも問題視を持って、みんなで、教育の充実のために、教育予算を減らさないために頑張ろうということを言っているわけですから、ぜひ最前線に立って言っていただきたかったというふうに思っております。

 また議事録も確認をさせていただきますけれども、ぜひその主張を曲げずに、一貫して大臣に最前線に立っていただきたいというふうに思います。

 それでは、本法案の質問に入らせていただきます。

 民主党といたしましても、今回の改正に当たりまして、つくば市の春日学園というところを視察させていただきました。ここは、平成二十四年度に開校したばかりの新しい学校でありましたけれども、施設一体型であります。非常に恵まれた教育環境が整っておりまして、教員の方々も張り切っておられましたし、また、生徒さんも生き生きと学んでおられました。入学希望者が市内外から、県外からも大変多く来られる、あるいは教職員の方もぜひこの学校に勤めたいといって来られるというようなお話もお聞きいたしまして、理想的な姿だというふうに思いました。

 視察に行って、課題や問題点は何ですかとお聞きしましても、ううんと言ったきり、ちょっと考えないと見当たらないというぐらいに非常にうまくいっているという事例でありました。

 また、この五月二十七日に当委員会といたしまして、港区立小中一貫教育校お台場学園の視察が行われたわけでありますけれども、残念ながら私は参加できなかったのでありますが、視察をした同僚の議員にお話をお伺いいたしましたら、第一学年から第六学年までのいわゆる前期課程では、それぞれの学年に二クラスずつあるわけでありますが、しかし、第七学年になりますと急に生徒数が減って一クラスになっている。七学年は十八人の生徒数ということでありました。ちなみに、第八学年になりますと、これも一クラス、二十八人が在籍している。卒業の年度であります第九学年は、一クラス、二十一人だということであります。

 この学園は、小中の九年間を四・三・二に分けて一貫教育を行っているというわけでありますが、現実には小学校の前期課程を修了すると多くの児童がほかの中高一貫校などに転校してしまって、そのまま残って後期課程に進むのは四割程度だというお話も聞きました。これでは、何のための九年間を一貫した系統的な教育課程なのかと正直疑問にも思うわけでありますけれども、現実にこういう現象が起こっております。

 とりわけ、中高一貫教育が進んでいる都市部ではこういう現象が少なくないというふうに私は想像するんですけれども、当然、文科省は、こうした実態を把握されていると考えますけれども、何らかの対応が必要と考えるかどうか、そもそもこれで九年間の一貫校と言えるのか、見解を伺いたいと思います。

小松政府参考人 御指摘のように、都市部を初めといたしまして、地域によりましては、小学校段階から中学校段階に進学する時点で、児童の希望などさまざまな事情によりまして、ほかの中学校へ転校するという実態があるというふうに聞いております。こうした地域で小中一貫教育を行うに当たりましては、一つは、一貫教育のメリットがしっかり出るように工夫をしていく必要がございます。

 これらにつきましては、先ほど来御紹介をいたしております小中一貫教育等についての実態調査等を見ますと、学校等によりましてさまざまな工夫の成果がございます。こうした点の好事例等をしっかり普及していく、あるいはモデル事業等で育てていく、工夫によりましては、さまざまな手段を使って財政支援策を講じる、こういった総合的なプッシュが必要だというふうに考えております。

 それと同時に、さまざまな地域事情やそれぞれのお子様方、御家庭の考えによって、転校なりそういった流動性があるという地域があることも事実でございますので、それに対しましても、転校によって学習内容に欠落が生じたりすることのないようにきめ細かに対応する。それから、中学校で、一年生時点で生徒集団の人間関係が大きく変わるということによる影響、これも考えなければなりません。

 こうした点についての指導上の問題が生じないように十分な配慮を行っていただく、この点を強調して周知をするとともに、ノウハウ面などでもさまざまな支援をする必要があろうかというふうに考えているところでございます。

菊田委員 ぜひ実態をよく把握されて、それぞれに工夫されていると思うんですよ、いろいろな工夫も努力もされていると思うけれども、四割しか残らない、六割の人はもう別のところに行ってしまう、こういう現実があるわけでありますので、理想的な、先駆的な、すばらしい事例だけじゃなくて、そうじゃないところの実態の把握、そして、それに対するフォローアップというのをぜひやっていただきたいというふうに思います。

 改めて、今回、本法律案できちんと制度化をするということの意義、目的について政府参考人に確認したいと思います。

 現行においても、制度上の活用、運用上の工夫によって全国で既に千百三十校の小中一貫校がある中で、今回、制度化を目指すということでありますが、文科省としては、小中一貫校をさらにふやしたい、積極的に推進、奨励をしていくということなのでしょうか。

小松政府参考人 御説明申し上げたいと思います。

 今回の法案における義務教育学校の制度の意義でございますけれども、平成十九年の学校教育法改正等の中で、学校教育法に設けられました義務教育の目的に係る規定、これは新設規定でございますけれども、そういったものに沿って、「義務教育として行われる普通教育を基礎的なものから一貫して施すことを目的とする。」こういう学校種類を法的に位置づけるということが意義でございます。

 この背景につきましては、委員御指摘のように、さまざまな、現行制度下での同じ方向を志向する事例がふえ、またそれが積み重なっているということがあり、その中で、ぜひともさまざまな支障や不便な点等を取り除く上で制度的に対応してほしいという要望が出ている。こういったことも関係をいたしております。

 そこで、制度の仕組みといたしましては、義務教育学校の設置については、各自治体において、地域の実情や児童生徒の実態など、さまざまな要素を総合的に勘案して主体的に判断できるようにするということで、既存の小学校、中学校に加えて、制度的選択肢をふやすという形にしているわけでございます。

 しかしながら、今回の法制化につきましては、その背景につきまして、教育再生実行会議の提言、あるいは中央教育審議会の答申等々ございます。これらの趣旨に沿いまして、小中一貫教育のメリット、意義が生かされますように、それぞれの設置主体、自治体等に、小中の連携、一貫の九年間、義務教育全体を見通した教育への取り組みを求めてまいりたいと思います。

 この中で、こうした新しい学校制度についても、しっかりとした取り組みができるように支援をしてまいりたいという考えでございます。

菊田委員 局長は、決して、さらにふやしたいんですとか、文科省としてはぜひ積極的に推進、奨励していきますということをおっしゃらないんですよね。

 これは、私たちの民主党の部会に来て法案の説明をしたときもそうだったんです。あくまでも地域で主体的に判断してもらう、ただし、その周知はしっかりと行っていきますという言いぶりでありました。

 しかし、五月二十二日の委員会で、先ほども笠先生が取り上げておられましたけれども、大臣ははっきりおっしゃっているんですね。「この義務教育学校は、全ての自治体で全ての学校を対象にそういう方向に持っていくことが望ましいということであります。」というふうにおっしゃいました。また、「都道府県に対して、ぜひこの義務教育学校については積極的に取り組んでもらいたいということを、これは積極的に大臣として申し上げたいと思います。」というふうに述べられておられます。

 したがって、私は、大臣はこの義務教育学校の設置をとにかく先頭に立って奨励し、普及促進していくというお考えなんだなというふうに思いましたが、さっきの局長の答弁とやはり温度差といいますか、差異があるなというふうに思うんです。これは統一見解をお聞かせいただきたいんですが。

下村国務大臣 統一見解といいますか、基本的な方向は全く同じであります。

 そもそも、これは既に一千百三十校あるわけでありますけれども、法律で義務教育学校を今回お願いしている、法制化するということは、当然、義務教育学校がそれだけの成果、効果が上がっているし、評価しているし、また、今問題になっている中一ギャップの解消とか、それから、少子化時代における子供の社会性育成機能の強化とかということを考えれば、このような義務教育学校の制度ということが対応できる新たなスキームであるということを考えて、国会に法案として出しているわけであります。

 ですから、私としては、ぜひ、各自治体で少なくとも一つはこの義務教育学校をつくっていただきたいと思いますが、局長が言っているスタンスというのは、基本的に、これは国が強制できることではありません、法律上は。設置主体は、それぞれの教育委員会で判断するということでありますから、国が強制できることではない。やはり最終的には、それぞれの自治体が、教育委員会が、義務教育学校をつくるかどうかについては判断するということでありますが、私は大臣としてこの法律を出させていただいているわけですから、大臣としてはぜひお願いしたい。

 そういう姿勢の違いはあるかもしれませんけれども、基本的な思いは全く同じであります。

菊田委員 局長はいかがですか。

小松政府参考人 私の方で御質問に対して御説明を申し上げます点、上程しております法案の仕組み、それからその成り立ち、そういった点について、実務的に、正確に御理解をいただくという観点から、その枠組み、フレームワーク等について中心に説明をいたしました。

 大臣からは、その背景、バックグラウンドに至る大きな政策的枠組みとして、大臣としてこういうふうにお考えになっているということでございます。

 その間には、そごがあるとは思っておりません。

菊田委員 中教審は、義務教育学校のほかに、小中一貫型小学校・中学校、これは仮称となっておりますけれども、この制度化もすべきであるというふうに提言をしておりますが、文科省としてどのように検討しているのか、お尋ねいたします。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 中教審の答申を踏まえた小中一貫教育の制度化に当たっては、現行制度下で取り組まれている小中一貫教育の形態が多様であること等に鑑みまして、新たな学校の法律上の種類となる義務教育学校のみならず、組織上独立した小学校、中学校が義務教育学校に準じた形で一貫した教育を施す形態、これを正式に位置づけるというふうに考えております。

 小中一貫型の小中学校ということになりますけれども、これにつきましては、法律的には、通常の小学校と中学校が存続して連携をするということになりますので、学校教育法を改正する事項には当たらないわけでございますけれども、小中一貫した教育課程やその実施に必要な学校間の総合調整を行うという観点からは、仕組みの上で、組織運営上の措置等に関する具体的な要件を整理して、これを明らかにしなければいけない。

 そういたしますと、法令レベルで申しますと、省令等において、こうしたものを整理し明らかにして、取り組みやすいようにするということをあわせて行わなければいけないというふうに考えているところでございます。

菊田委員 省令で整理をしていくということであります。

 今回の法改正によりまして、既存の小中一貫校のうち、複数の小学校と一つの中学校から構成をされ、かつ、施設一体型ではない、施設が隣接している隣接型、施設が分離をしている分離型、こういう小中一貫校は義務教育学校に移行するのでしょうか。それとも、今お話がありました、省令での小中一貫型小学校・中学校に移行するとの理解でよろしいのでしょうか。確認をさせてください。

福井委員長 小松初等中等教育局長、手短によろしくお願いいたします。

小松政府参考人 今回の制度化では、施設の件は、一体、分離を問わず設置できることになっておりますので、今キャンパスが分かれているというものが、必ずどちらかになるであろうという予測はちょっと立てがたいと思っておりますが、現実に照らしますと、比較の問題としては、施設一体型でやっているところに比べますと、施設が分離されているところが義務教育学校へ移行するという判断をするケースは、相対的には少ないのではないかと考えます。

菊田委員 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

福井委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 学校教育法の一部を改正する法律案について質問いたします。

 小中一貫校の今回の法制化ですが、政府は、それを考えるに当たって、小中一貫教育の実施校のほとんどが顕著な成果を認識しているということを挙げています。成果が客観的であったかどうかではなく、実施した側の認識、主張の問題だと思うんです。しかし、実施側の主張をそのまま信じてエビデンスにして本当によいのか。

 我が党の大平議員もさきの質問で、お金をかけて新校舎をつくってもらった、貴重なお金がかかっているんだから、数字、結果は右肩上がりにしないといけない、こういう現場の様子が紹介されました。

 私も現場の教職員の方から、一貫校になったら成功しないといけない、失敗はできないという大変なプレッシャーがかけられる、子供もプレッシャーを受けているという話を受けました。ですから、長時間過密労働になったり、メンタル、ここに体調を崩して若い人が本当に病気になっていく、朝六時に行かなくちゃいけない、こういう実態も聞いてまいりました。

 義務教育の根幹にかかわる制度設計をするならば、推進している側の認識ではなく、客観的な、子供についての調査に基づかなければならないと思います。

 そこで、まず伺いますが、国として、文部科学省として、小中一貫校と普通の小中学校とを同一条件で比較した調査はありますか。

小松政府参考人 内容によるかと思うんですけれども、それぞれの違う学校で同一の条件ということはなかなか難しいので、そこで、私どもといたしましては、時系列で一つの学校についてその変化を問うということをいたしております。

 お尋ねの趣旨に沿っているかどうかはわかりませんけれども、私どもが議論のために行った、全ての地方自治体、それから全ての国公私立の小中一貫教育に取り組む学校を対象とした調査によりますと、それは導入前と比べての比較でデータが出てまいります。これを使っているというのが現状でございます。

畑野委員 そうしますと、確認ですけれども、同一の条件で科学的な、学問的な研究というのは国としてはしていらっしゃらないということでよろしいですか。

小松政府参考人 ただいま申し上げましたように、同一の条件というものをどう理解するか、あるいは学問的というのをどう理解するかによると思いますけれども……(畑野委員「同一の条件について」と呼ぶ)同一の条件という意味が、もし、例えば同じ先生で同じ授業時間でというようなことであるならば、それはございません。

畑野委員 お答えになっていないんですが、同一の条件でということの設定の仕方はあるにしても、それぞれの学校で検討できる条件を立ててやっているということはお答えになりませんでしたので、ないという確認でいいですか。もう一回です。

小松政府参考人 もう一度確認させていただきますけれども、同一の条件というのは、一つ一つの学校で違いますし、教師でも違いますので、それを全く同じにしてやるということは、実験のような形になって実際には現実的ではないと思いますので、時系列で同じ学校の中でやっているということでございます。

畑野委員 つまり、一貫校と普通の小中学校を比較した研究、調査はないということですよね。同じ学校での時系列の調査であって、別々の体系を調査したものはないと。確認です。

小松政府参考人 時系列ではなくて、同時に小中別々の学校と小中一貫校との試みについて比較調査をしたというものはございません。

畑野委員 わかりました。

 それで、おっしゃったように、何度か時間がかかりましたが、そういうふうに、小中一貫校とその他のいわゆる普通の小学校、中学校を比較した研究、調査はない、国としてはないということをお認めになりました。

 ですから、今まで言われていた、依拠してきたのは、前回の委員会でもあった、呉市ですとか、進めた側がよかったと言っている認識の調査であって、客観的な、検討に値するような突っ込んだ調査研究なしに、教育効果とデメリット、問題点が検証されていない状態のまま小中一貫校を法制化していくということは、私は重大な問題だというふうに言わなければなりません。

 一方で、研究者の皆さんは比較調査を始めています。五月二十七日の参考人質疑では、全国の施設一体型の小中一貫校と普通の小中学校を対象にした、科研費による教育学、心理学の研究チームによる第一回調査、小中一貫校の総合的研究で、仮説の段階ではあるとした上で、次のような研究結果が紹介されました。時間の関係でこれは議事録に譲るとして、やればできるという感情、こういったことは小中一貫校では低いということが指摘されて、これも制度的な問題があるのではないかということでございます。

 下村文部科学大臣に伺います。二つあるんですけれども、まず一つ目の質問です。

 中教審答申も、小中一貫校の課題として、小学校高学年におけるリーダー性や主体性の育成を問題として指摘しています。小学校高学年のリーダーシップや主体性の問題は、小中一貫校の子供にとって大きな課題になると思うんですが、その御認識をまず簡単に伺いたいと思います。

下村国務大臣 中教審の答申の御質問ですが、述べられているとおり、これは、平成二十六年度に文部科学省が行った小中一貫教育の実態調査によれば、児童生徒に与える影響に関する課題の一つとして、小学校高学年におけるリーダー性、主体性の育成が挙げられております。これは、通常の小学校であれば最高学年として大きな節目となる小学校六年生が、小中一貫教育では最高学年とはならないということから、いかにしてリーダー性等を育成するかという課題があるという御指摘だと思います。

畑野委員 今、下村大臣がお答えになりましたように、発達段階に応じて行われてきたこれまでの合理的な制度だと思うんですが、それをみずから崩して、そこから出たデメリットを何とか埋めるというのは、これは保護者や国民の皆さんにとって理解ができないことだと思うんです。

 しかも、制度を崩さない。小学校は六年制、中学校は三年制というならば、今回の法案は必要なくなると私は思うんです。しかも、実際、デメリットというのはカバーできていないというのが先ほどの研究であって、多くの現場の皆さんの実感だと思うんですね。

 例えば、品川教育委員会が行った区内の小中学校の保護者を対象としたアンケート調査があるんですが、義務教育を四・三・二のまとまりで考えることは有効であるかの問いに、思う七%、やや思う二七%に対して、思わない一八%、余り思わない四四%と、六二%の保護者の方は否定的なんです。

 この間の参考人の質疑の中でもお話がありましたけれども、小学生が、低学年それから中学年の経験の上で、自分のことだけでなく、自分の周りの社会全体がはっきり見え出すのが小学校高学年の時期だと思うんです。その時期にふさわしく、学校の最高学年としてのリーダーシップを発揮することは、大変すばらしい日本の小学校の仕組みだと思うんです。ところが、そのとき、一貫校でリーダーシップを発揮しようとしても、七年生、八年生、九年生がいる。これではリーダーシップが発揮できない。大変心配なことだと思うんです。

 そこで、もう一つ下村大臣に伺うんですが、小学校高学年のリーダーシップ、主体性の育成が大事だということで、小中一貫校でそれが損なわれてはならないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

下村国務大臣 それはおっしゃるとおりだと思うんですね。だから義務教育学校はだめだということには私はならないと思うんですね。

 つまり、どんな制度であっても、この制度改革をすればパーフェクトに全ての問題が解消する制度というのは、これはあり得ないわけで、よりいいものを改善しながら、問題点をさらに改善するという中で、完成された制度というのはないと思います。

 ですから、今の、義務教育学校にしたときの小学校高学年のリーダー性をどう養うか、そういう御指摘でありますが、これについては、小中一貫教育の先行事例において、例えば、小学校四年次、十歳のときの二分の一成人式とか、それから中学校二年次の立志式等、成長の節目を意識させる儀式的な行事の展開、それから、四・三・二あるいは、六・三とは異なるそういう区分によって、それぞれの学年集団の中での最高学年としての自覚を促す取り組みなど、さまざまな工夫による実践例を積み重ねているところでありまして、一年生から九年生になったということで、全部一貫ではあるけれども、創意工夫というのはこれは幾らでもあり得ることだというふうに思います。

 既にそういう先進的な取り組み事例ということがありますので、文部科学省としては、しっかり積極的な情報収集をしながら、また、このような成功事例に対する情報提供をすることによりまして、各義務教育学校における子供たちの発達段階におけるリーダー性とか、それから、これは別の意味でありますが、主体性を培う教育は今まで以上に必要になってくると思いますが、そういう展開がされるよう支援をしてまいりたいと思います。

畑野委員 実際に小中一貫校を体験している人たちは、小学校高学年の成長が奪われると心配しているんですね。四年生の問題は、これは別に中学年の問題ですから、違う意見でございますけれども。そういうことで、ぜひ、小学校高学年のリーダーシップの育成を保障することを、義務教育上曖昧にせずに保障する、大臣は保障するとおっしゃってくださいましたので、強く重ねて申し上げたいと思います。

 次に伺いますが、小中一貫校について、教育課程を前期六年、後期三年とした理由について伺います。

小松政府参考人 小学校、中学校は、一定の年齢層の子供を同一の方式で教育するという意義がございまして、これまで国民の間に広く定着している制度でございます。

 今回、制度的な選択肢が新しく義務教育学校という形でできますけれども、地域の実情を踏まえて、今、運用上の取り組みとして、小中学校段階の一貫した教育の取り組みを進めている自治体では、一つは、そうした新しいやり方でメリットがいろいろ得られるということを報告しているとともに、一方で、義務教育学校は既存の小中学校と併存することになります。

 そのことを考えますと、義務教育学校の前期課程修了の後、他の中学校に進学する、あるいは、小学校を卒業してこられた方が途中から入ってこられる、こういったこともございます。これらが円滑に教育を受けられるようにするためには、全体を総合的に勘案いたしまして、その課程を前期六年と後期三年の課程に区分して、小学校、中学校の学習指導要領準用に沿った形で教育が展開できるようにすることが制度的に必要だというふうに考えたものでございます。

畑野委員 結局、小学校、中学校という教育課程上の変更はない、これは当然のことだと思います。

 この間、小学校高学年の成長を含めて定着していた学制を、深い検討あるいは議論もなしに変えることはできないわけです。ここから見ても、小中一貫校で小学校、中学校の区切りを乱暴に変えてしまうということは、慎重であるべきだと私は思います。

 下村文部科学大臣に伺います。教職員の多忙化の問題なんです。

 小中一貫校の解決すべき問題というのは、今の問題も含めてですが、中教審答申が挙げているだけでも五分類十九目あるんです。その一つの、教職員の負担の問題について伺います。

 この間、教職員の多忙化の実態というのは、もう本当に深刻で、今でも深刻で、そして、小中一貫校でもさらに深刻になっているという実態を伺っているんです。

 大臣は、この多忙化の問題というのは、これまでの学校の現場でも本当にお認めになってこられていらっしゃるわけですけれども、これはどういうふうに対応されるのか、伺います。

下村国務大臣 これまでも、運用上、小中一貫教育に取り組んできた学校からは、御指摘のように、教職員の負担増が大きな課題の一つとして挙げられております。

 このうち、小中学校それぞれに校長や教職員組織が存在し、意思決定や意思統一に時間がかかることや、教育課程や年間指導計画の作成など小中学校ごとに取り組むこととされている事務等、小中学校が法令上別々の学校であったことに起因する課題は、今回の義務教育学校の制度化により解消されることとなると思います。また、例えば、校内組織や会議の一元化などにより、従来よりも業務を効率化できる面もあると思います。

 他方、小中学校の垣根を越えて九年間を見通した教育指導を行うに当たっては、各学年間の連携をこれまで以上に密にする必要があり、通常の小中学校にはない新たな業務が生じる場合もあると考えられます。これについては、校内での連携体制の構築や、あるいはコミュニティースクールなど地域の教育力の一層の活用、すぐれた先進事例の共有化などによりまして、教職員に過度の負担が生じないよう学校設置者や管理職が十分に配慮することも必要になってくると思います。

 文科省としても、負担軽減の好事例の提供や、小学校、中学校の教職員定数と同数の教職員定数の算定を確保するとともに、副校長、教頭に総括担当として一人分の加算等を通じまして、小中一貫教育に伴う教職員の負担減、あるいは負担感の軽減に取り組んでまいりたいと思います。

畑野委員 一貫校になってさらに負担がふえるんじゃないかということは先行事例でも出てきているわけですね。

 例えば、小学校の先生が、自分の授業を今までどおりこなした上で、さらに週何度も一貫校としてペアを組んだ中学校に行かなければならなくなった、あるいは中学校の先生は、今までの授業に加えて、小学校に行って教えなければならなくなったと。中学生にとっては、小学校時代の先生に来てもらって安心だとか、小学生にとっては、いつもと違う専門性のある授業に触れて刺激を受けるところがあるかもしれないんですけれども、しかし、これは、これまでの仕事をこなした上で、さらに超過する仕事をして初めて成り立つ仕事なんですね。

 私が伺いましたら、隣の学校まで十分かかるんだけれども、走っていって小学校と中学校を行き来しているという話も伺いました。最大の影響は、教材研究の時間がなくなったということを言っておられました。

 下村大臣に伺いますけれども、小中一貫校になりまして、特別な教員増というのはあるのでしょうか。

小松政府参考人 教員の配置の仕組みの話でございますので、ちょっと私の方からお答えさせていただきます。

 義務教育学校の教職員体制につきましては、端的に申しますと、前期課程は現行の小学校、それから後期課程は現行の中学校と、学習指導要領を準用して行われますので、それぞれ同等に算定することといたしております。

 校長は、そういう意味では一人になるわけでございますけれども、一方、その基準から見ますと、副校長先生あるいは教頭先生を一人加算するということになります。教職員定数としては前後同等になりますけれども、基準としてはその分を加算するということになっております。

 また今、御多忙の例示として、例えば乗り入れ授業というようなことがございましたけれども、こうした小学校の専科の授業をやるとか、そういった創意工夫に応じては、それに対応するための加配教員というような制度も持っておりますので、こうした点の充実もあわせて努力したいというふうに考えております。

畑野委員 本当に仕事がふえているというのが、この間聞いてきた実態なんですね。

 そういう点では、校長先生も大変だということで、小学校、中学校のそれぞれの校長会に出かけなければならないということも伺っています。これはどうなりますか。

小松政府参考人 小中一貫教育に取り組む学校の校長先生が、小学校長会と中学校長会の双方に出席しなければいけないということで負担増になっているというような例があるという指摘は、私どもの方でも伺っております。

 そこで、教育委員会主催の、校長先生等を対象とした会議あるいは研修等の開催方法についても、例えば、小中連携や小中一貫教育の推進を図る観点から一体的に実施をされる場合とか、あるいは、校長先生だけではなく、副校長先生の制度がございますので、その参加を認めるといったような工夫がやはり有効かというふうに考えております。

 そして、先ほど申し上げましたように、例えば、校長先生については、二つの学校が一つになれば定数が減りますけれども、総括担当の副校長または教頭を措置するというようなことになりますので、こうした点の有効活用。それから、児童生徒支援のための教職員加配等の活用というのが今いろいろ行われておりますので、これをどういうふうに配置するか。さらに、私ども、チーム学校ということで、全て先生の肩にかかってきている業務につきまして、スクールソーシャルワーカーとかスクールカウンセラーも含めて、さまざまな方によって担われるような体制なり校務というものを、今、検討したり取り組んだりいたしております。

 こうした総合的な政策によって、先生方全体のみならず、管理職の方々の負担を軽減することが必要かと思っております。しっかり取り組みたいというふうに考えます。

畑野委員 そうしますと、小中一貫校を今回構成しなければならないという理由、そうでなければできないということは何になりますか。

小松政府参考人 九年間の義務教育全体を見通した柔軟な教育課程が組めるということが一つのポイントになりますけれども、現時点では、それぞれ小学校、中学校というふうに組織が分かれているということから、その意思決定についてもそれぞれ別々にして調整をし、例えば、認定とかをとるにしても、それぞれ別々にとって、もし修正があればさらに再調整をし、地域やPTAの皆さんともまたそれぞれ別々に意思調整をし、という中でやっているわけですけれども、これが一体的に全体として見通しながら効果的にできるようになる、そういった点から、実際の実効が非常に上がりやすくなるということかと考えます。

畑野委員 そうしますと、どう考えても、法制化をしなければならないという事情がうかがえません。

 それで、ほかに理由があるのではないかと。統廃合に使われるのではないかという参考人の意見もありました。下村大臣は、学校統廃合や教育予算の削減を目的とするということでは全くありませんと答弁されたんですが、その保証は何でしょうか。

下村国務大臣 今御指摘にありましたように、この義務教育学校の制度化の目的は、これまでの各学校の主体的な取り組みによって小中一貫教育の成果が蓄積されてきた経緯に鑑みまして、設置者が地域の実情を踏まえ、小中一貫教育の実施が有効と判断した場合に、円滑かつ効果的に導入できる環境を整備するものでありまして、御指摘のような、学校統合の促進を目的とするものではありません。

 今後、少子化に伴い、学校の小規模化がさらに進むことが予想される中、十分な学校規模を確保し、子供たちにとって望ましい教育環境を整備していく観点から有効と判断される場合に、小学校、中学校を統合して義務教育学校を設置することは、一つの方策としてはあり得ますが、それはあくまでも設置者が主体的に判断すべき事項であります。

 文科省としては、法案が成立した場合には、施行通知や説明会等を通じ、制度化の趣旨を丁寧に説明するとともに、これまでの先行事例等を踏まえ、すぐれた取り組みの事例を周知することなどによりまして、各自治体の取り組みを積極的に支援してまいりたいと思います。

畑野委員 時間が参りましたので、本当に教育予算をしっかりととって、そして担任の先生が、あるいはその学年の先生が一人一人の子供たちに向き合うことができるようになる、それも正規の教職員としてきちっと確保する、そのためにも、ぜひ三十五人学級に向けて推進をしていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

福井委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 義務教育学校は、前期六年、後期三年の区切りで学習指導要領を準用するということですから、法案を読む限りは、義務教育学校と普通の通常の小中学校との間に教育内容において極端な差が生じるというふうには考えられません。

 一方、教育課程の編成においては、柔軟な教育課程の編成が認められているわけです。そして、この柔軟な編成というのは、どの程度まで及ぶのかは必ずしも明確にはなっていないというふうに感じます。

 そこで尋ねますが、現行の小中一貫校で許容されている教育課程の特例措置、恐らく、一部指導内容の入れかえや前倒し、独自教科の設定などが既に実施されているというふうに思いますが、教育の特例措置は具体的にどの程度の範囲の中で認められているのか、お聞かせください。

    〔委員長退席、義家委員長代理着席〕

小松政府参考人 これは、今度の義務教育学校に関して教育課程の特例がどの程度認められるかという御質問と理解いたしますが、まず、今回の義務教育学校の教育課程については、基本的には、前期課程及び後期課程、それぞれ小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領を準用するという考えでございます。これは省令事項でございますので、省令で定めることになります。そして、その上で、教育課程の特例あるいは配慮事項等につきましては、文部科学大臣告示という形で具体的に示すということを考えております。

 この告示の詳細は、もしこの法案がお認めいただけた場合は、その後で検討することになるのですけれども、現時点で、実務的には、学習指導要領に示された内容項目を網羅すること、それから、各教科等の系統性、体系性、これに配慮をすること、児童生徒の実態を十分踏まえて負担過重にならないようにすることなどを前提とした上で、小中一貫教育の円滑な実施に資するものとして、小中一貫教育の軸となる独自教科の設定、先行事例でいいますと、例えばふるさと科のような、そういったものなどがございます。

 それから、学年段階を超えた指導内容の、あるいは学習方法の工夫などについての一部の移行といったものを示しまして、この枠組みにおいては、従前のように個別の大臣指定によるのではなくて、設置者の判断で可能とするような教育課程の特例を認める、こういうアウトラインを予定しております。

吉川(元)委員 設置者の判断でということでございますけれども、場合によっては、その範囲、もちろん大臣告示あるいは省令等々ということでありますけれども、逸脱しているようなことが起きかねない場合もあると思いますが、そういう場合にはどういう形で誰が判断をされるのか、お聞かせください。

小松政府参考人 まず、設置者の判断によってできるようにすることにつきましては、基準というか枠組みが必要でございますので、それについて、今申し上げましたような体系でまず設けます。

 そして、もとより、まず、今おっしゃられた違反状態が生じないようにすることが一番大事でございますので、この点につきましては、法案が成立した場合には、施行通知や説明会等を通じ、特例の範囲について丁寧な周知に努めたいと思いますし、また、先行事例なども十分伝わるようにいたしたいと思っております。

 それで、都道府県教育委員会及び市町村に対しても適切に指導助言が行われるようにする、あるいは我々が行うということにいたしますが、その上で、逸脱が認められるということが問題になりました場合には、私どもとして、必要に応じてそれを指導助言しなければならないわけでございます。

 この場合は、地教行法の法令にのっとって私どもは行動しなければなりませんので、その仕組みを申し上げますと、例えば、市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導、助言、援助を行うことができるという規定がございますけれども、これに当てはまるかどうかということを吟味いたしまして法令上の措置をとることもある。もとより、法令の規定に違反するというようなことになった場合には、一定の要件下で是正の要求等を行うということも、仕組みとしてはございます。

 これらは、都道府県教育委員会とも連携しつつ、適正に進めていく必要があるわけですが、それは法令の最終的な担保ということでございまして、できるだけそうならないように、法令の趣旨が遺漏なく徹底されるように、最初からきちっと説明をして、しっかりと御活用いただくということに努めたいというふうに考えております。

吉川(元)委員 危惧いたしますのは、準用するといいながら、結果的には特例の範囲が拡大をして、例えば、今、小学校で英語というのをやっていますが、これは別に教科ではないんですけれども、これが教科として入ってきたり、前倒しで進むことや、あるいは、教育水準が普通の小中学校に比べて高くなる。実際、成果としては、学習指導上の成果ということを見ると、各種学力調査の結果の向上というのが指摘もされております。

 もちろん、学習の成果が上がることを否定するものではありませんし、そうなることはいいことだというふうに思いますけれども、例えば、義務教育学校、一貫校に行けばいい教育が受けられる、だけれども、普通の小中学校だとそうはならないんだというような、こういう格差が生まれることはあってはならないというふうに思いますが、それを避けるためにはどういうふうにこの点を考えておられるのか、お聞きします。

小松政府参考人 ただいま御指摘のような弊害に結びつかないようにするということが大事だと考えますけれども、制度の枠組みといたしましては、先ほど少し申し上げましたように、義務教育の法令上の目的に沿って、それぞれ学習指導要領を準用し、それに沿って教育を行うという仕組みでございます。当然、教科書それから教員免許等につきましても、小学校、中学校と同じ仕組みを使います。

 そういう意味では、全体としては、枠組みとして今それが逸脱するということはないような仕組みになっているわけでございます。

 あとは、実際の運用において、いびつなことにならないようにするための周知徹底は必要でございますが、このことと、せっかくつくられる制度にのっとって、九年間の一貫した見通しのもとに、委員も御指摘になりましたように、各学校の努力によって全体として学力の底上げが図られる、充実するということ、これ自体は大いに結構なことではないかというふうに考えます。

吉川(元)委員 これは、また後ほど、別の観点から少しお聞きをしたいと思います。

 心配するのは、これは参考人の質疑の際にも伺ったんですけれども、現在、全国で学力テストが行われておりますが、これは、市町村の教育委員会の判断で学校別の公表が可能になっているというのがあります。また、現在、学校選択制が取り入れられている割合でいいますと、小学校は一五・九、中学校で一六・三ということで、かなりの学校が学校選択制が可能になっているというふうになります。

 義務教育学校、そして学力テストの成績の公表、それから学校選択制というこの三つがそろってしまうと、非常にわかりやすい形で学校の序列化というのが進んでしまうのではないか。逆に、先ほども少し指摘されておりましたけれども、一貫校になったのに成績が上がらないというのは、一体何をやっているんだというふうに、それは地域の皆さんからも言われることもありますし、そういう意味でいうと、学校の序列化だとか、あるいは学校間格差を生むようになってしまうのではないかというふうにも思います。

 中教審答申において、学校選択制については、それを導入する場合においては「就学する学校によって教育上の不利益が生じないよう特段の配慮が求められる」というふうにもされておりますけれども、序列化やあるいは学校間格差を生まないような手だて、どのように考えておられますか。

下村国務大臣 義務教育学校は就学指定の対象となっておりまして、学校選択制とすることも可能でありますが、既存の小学校、中学校と同様の仕組みであります。

 学校選択制の導入については、これまでもあらゆる機会を通じて、就学する学校により格差が生じないよう配慮することが必要であることを関係者に指導しているところであります。

 また、全国学力・学習状況調査の結果の公表については、実施要領におきまして、結果の取り扱いに関する配慮事項等も定め、学校の序列化の要因とならないようにしております。

 さらに、義務教育学校は、小学校、中学校の学習指導要領を準用することとしており、学習指導要領に示された内容事項を網羅して行われるということになるため、小学校、中学校と異なる内容、水準の教育を施す学校ということではないわけであります。

 義務教育学校制度が、学校選択制や全国学力調査の結果公表と結びつき、義務教育学校とそれ以外の小中学校の間の序列化や格差につながっていくというものではないというふうに考えますが、しかし、当然、個々の学校の努力はされると思います。

 義務教育学校をつくるということによって、小中一貫的に、総合的に取り組むわけでありますが、それだけ学校全体の教育力のアップにどう資するかということについては、これは期待をすることは当然でありますが、繰り返すようでありますが、それが序列化とか学校間格差とかいうことではない。しかし、個々の学校が努力するような環境づくりをするということは大変重要なことだと思います。

吉川(元)委員 私自身は余りそういうふうには感じられません。結果的には、これは序列化につながっていくんじゃないか。実際に、学力テスト、いろいろ問題があって、公表したところもありましたけれども、そういう中でランクづけというのがされる。結果的には、さっき言った三つがそろうと、もちろん文科省がそういうことをするつもりはないというのはわかりますけれども、結果としてそういう状況になってしまうのではないかという危惧を持ちます。

 次に、子供への影響等々についてお伺いしたいと思います。

 中高一貫教育による成果やメリットも指摘をされておりますけれども、前回の質疑でも指摘しましたように、いまだ未解決の問題が残されております。あくまで、学校教育の主人公は子供たちです。したがって、子供たちに与える影響というものをまずしっかりと検証した上で、制度化の是非というものを判断すべきだというふうに思います。

 今回のメリットでよく聞こえてくるのが、当委員会でもいろいろ議論されましたけれども、中一ギャップの解消ということです。

 他方で、これもまた指摘がされておりますが、小学校高学年で形成されてくるリーダーシップや主体性、これが逆に損なわれるのではないかという指摘もされております。

 また、人間関係が九年間固定をしてしまうということ。これは実際に、先日行きましたお台場学園でも、六割近くの方が別の中学校に行く。そのうちの半分はいわゆるエリート校である中高一貫校等々に行かれるんですけれども、残りの半分の方は、やはりこの問題で、新しい環境で中学校に入りたいと。

 そういう意味では、結構、決して少なくない子供や親御さんが別の中学校を選ぶということになっておりますし、また、小中で中一ギャップがなくなったとしても、そうすると、今度は高一ギャップというのはどうなるんだというお話もあります。

 こうしたことについては、中教審の答申でも指摘をされております。これらの問題をどう認識し、どのように対応されていくおつもりなのか、お聞かせください。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のような取り組み上の課題、これは検討過程で、例えば中央教育審議会などでも取り上げられて、吟味が行われているところでございます。

 これまでの先行事例の中でその対応策が蓄積されてきておりますけれども、これがどのように実際の新しい制度でワークするかということについて、私ども、しっかり取り組みを進めていかなければいけないと思っています。

 お台場でのお話が今出ましたけれども、地域によってさまざまな変化や影響がございます。この中で、特に重立って指摘されている課題を申し上げますと、人間関係の固定化というふうなことがございます。多様な形態での異学年交流の計画的な実施や、複数の教職員による多面的な評価を行う体制の構築、こうしたことは、学年が多岐にわたることによって比較的やりやすい面がございます。

 それから、先ほど来出ております、小学校高学年でのリーダー性の育成の課題ということも指摘をされておりますが、学年段階の区切りや学校行事その他の工夫、あるいは施設面でも、校舎やフロアの区分等の工夫によってこれを進めていくというふうに、多面的にやっていく必要があると思います。

 そこで、私どもとしては、そうした積み上がっているさまざまな事例、あるいは制度の趣旨の周知とともに、こうした一つ一つの取り組みについて、できる限りのリソース面での支援も進めて、こうした指摘されている課題が克服されるように総合的に支援をしてまいりたいというふうに考えております。

    〔義家委員長代理退席、委員長着席〕

吉川(元)委員 続いて、これも本委員会で既に指摘されておりますけれども、先ほど少し特例のお話を伺いましたが、前倒しや独自教科を導入することができるということでありますけれども、その際にやはり一番考えなければいけないのは、子供が転出入する際の教育水準のギャップといいますか、差、これをどうしていくのかというのがあります。

 先日の視察の際にも、お台場学園の先生方が言われていたのは、特例が使えるということなんだけれども、この特例の範囲をどこまでやるか非常に悩ましいと。結果的に言えば、転入転出というのも含めて考えたときに、私が聞いたところで、聞き落としたかもわかりませんけれども、お台場学園では、正の数、負の数、本来中学校一年生、一貫校では七年生になるわけですけれども、ここで教えることを少し早めに、予習的に六年生で教える、そのくらいしか結果として特例は使っていないと。恐らくそうだろうというふうに思います。

 転出入に際するギャップについては、どのように考え、どのように対応されようとしているのか、お聞きします。

小松政府参考人 二つの点からそれを考える必要があると私ども考えております。

 一つは、今御紹介がございました教育課程の特例等について、そのギャップによる教育上の支障を生まないようにしていくということが必要だと思います。

 この点につきましては、前期と後期に分けて、小学校学習指導要領、中学校学習指導要領を準用して、先生の面、教材の面等もあわせて、それに合致した教育を進めていくという制度でございますので、おっしゃられますとおり、学年がそのまま前倒しになってしまうとか、そういった極端な例は生じることは想定しにくいというふうに思っております。

 今までの例で申し上げますと、例えば、ふるさと科みたいなものを設けて、小学校と中学校の間がブリッジされているとか、それから、今おっしゃられましたように、事柄によって若干の前倒しがあるとか、こういったことを先ほどの基準に留意しながら進めていくということになると思います。

 一方、特例だけではなくて、義務教育学校として一体的に見ますと、例えば中学校の先生による教科担任の教える方式を小学校の高学年に導入をするとか、あるいは、部活、学力考査にしても、定期考査といったような方法を徐々に入れていくとか、こうしたさまざまな工夫ができるわけでございます。これらで全体として、従来の六と三に分かれた学校ではなくて、一貫した教育の方法の工夫ができるということ。

 そして、先ほど二つと申しましたが、もう一つは、それでも、転出されるときに、その特例による留意点があるといたしまして、指導要録を活用して、当該児童生徒が先取りして学習した事項、あるいは学習がこれからという事項等を具体的に記載する、あるいは、通常の教育課程との違いをわかりやすく示した資料を関係者に周知徹底しておく、それから、必要に応じてガイダンスや個別指導を行うというようなことが必要になると思います。

 これら全体を整理いたしまして、法案がもし仮にお認めいただけました場合には、施行通知や説明会等において丁寧に周知をしてまいりたいと思います。

吉川(元)委員 対応されるということですけれども、子供たちにとって勉強が嫌いになるきっかけというのは、周りの子はみんなわかるんだけれども自分だけわからない、特に、一貫校で前倒しでやっている場合に転入してきた場合、もちろんそれはいろいろな形でそれを埋めるためにやられると思いますけれども、本当に小さなきっかけからその教科が嫌いになるということは十分にあり得るわけです。

 また、今ほど、指導要録等々をつくるといいますけれども、これは教員がつくるわけで、ただでさえ忙しい中にあって新たな仕事というものがふえていくということについて、私は問題だろうと思います。

 ちょっともう時間が余りありませんので、少し飛ばしまして質問をしたいというふうに思います。

 本委員会でも何度か取り上げてきましたけれども、TALISの調査結果では、日本の中学校の教員の労働時間というのはOECDの加盟国の中で断トツなわけで、それに加える形で、乗り入れによるこま数の増加や、あるいはカリキュラムの編成等々、さらに、今言われましたような形の仕事がふえてくる。これはやはり放置することはできない課題だというふうに思います。

 中教審答申でも、加配措置などによる指導体制の充実というものが求められているわけですけれども、最低限、この教職員の加配措置は不可欠だというふうに考えますが、どのように対応していかれるお考えか、お聞きします。

小松政府参考人 このたびの義務教育学校制度では、小学校、中学校の学習指導要領を準用して、全体としては同等の教育ができるということが基本でございます。

 そういう意味では、まず、基本的な枠組みは、小学校、中学校と同等の教職員定数の算定を確保するということになりますけれども、先ほど来、別の御質問でちょっと御説明いたしましたが、教頭先生ないし副校長先生を一人、その基準から見ますと加配するということになります。

 それで、そのほかに、今さまざま御指摘の特色ある取り組みというようなものを行いましたときに、それを支援するための重点的な配置として、これまでも加配措置がさまざまに講じられているわけでございます。こうしたものを活用して、過度な負担が生じないように、定数等の体制面でも努力をしてまいりたいというふうに考えております。

吉川(元)委員 次に、教員免許についてお聞きいたします。

 当分の間は、小中どちらかの、一方の免許状保有者でも可能というふうになっております。全国平均でいいますと、小学校教員で中学校教員の免許を持っている方は六〇%弱、逆は三〇・四%ということでありますが、これはあくまで全国平均でありまして、都道府県単位で見ていくと大きく差が出ております。例えば、ある県では、小学校教員で中学校の免許を持っておられる方が二九・四%、逆の場合は八・三%ということで、それぞれの県によっていろいろなばらつきがあるわけです。

 そうなった場合に、これからいずれは両方の免許といった場合に、大変大きな負担、改めて免許を取るためには、併有するためには大きな負担が生じます。先ほども言ったとおり、ただでさえいろいろな新しい仕事がふえてくる中において、また免許も取らなければいけないということについては大変大きな負担になるのではないかと思いますけれども、この点についてどのようにお考えなのか、端的にお知らせください。

小松政府参考人 今回の制度におきましては、小学校及び中学校の教員免許状の併有ということを基本に据えまして、実情に合わせて、当分の間、片方をお持ちの場合は片方の課程で教えることにいたしております。

 これにつきましては、併有がしやすい環境を整える必要があると思いますので、現在で申しますと、三年の勤務経験のある教員が免許状を併有しようとする場合の軽減措置、これをさらに改善する、あるいは、いわばパッケージ化したプログラムでもう一つの免許を取りやすいような研修を開発し普及する。

 こうした各種の方面から制度の改善を図り、それらの負担を少なくして、両方が持てるような、両方教えられるような、そういう体制を膨らませていきたいというふうに考えております。

吉川(元)委員 まだまだ聞きたいことがたくさんあるんですが、もう時間が来ましたので終わります。

 ただ、最後に一点だけ言わせていただきたいのは、今、大変成果もあるけれども課題もいっぱいあるというのが実情です。今のところ、それは学校現場に全部丸投げされている。教員免状の話もそうですけれども、負担だけふえていく。どうやってやっていけばいいのかというのが、本当に現場の教員の皆さんは大変頭を悩ませながらやっているというのも、お台場学園の視察でわかりました。

 そういう方々に、こういう形という指針的なものだとか、成果だけを出すのではなくて、課題としてこういうのがあって、こういうふうに取り組んでいるというようなことも含めて、きちんと準備をしていただきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わります。

    ―――――――――――――

福井委員長 この際、お諮りいたします。

 政府参考人として文部科学省スポーツ・青少年局長久保公人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

福井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

福井委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 維新の党の初鹿です。きょうも質問をさせていただきます。

 本日は、学校教育法の一部を改正する法律案の質疑なんですが、その前にちょっと一つ、きのうの晩に大変ショックなニュースを発見しましたので、その件について質問をさせていただきたいと思います。

 きのう夜十一時ぐらいに帰宅をしまして、今やっている平和特別委員会の状況をニュースでどう書いてあるのかなというのでヤフーのニュースを見ていたら、そこに、福岡市の中学校で柔道の部活動中に中一の女子が死亡した、そういう記事が載っておりました。大臣、御存じでしたか。

下村国務大臣 いや、存じ上げておりません。

初鹿委員 ちょっと記事を読ませていただきますが、市立中学校一年の女子生徒十三歳が二十二日、柔道部の練習中にわざをかけられた際に転倒し、その後死亡したと発表した。福岡市の教育委員会が発表したということです。この発表によると、女子生徒は二十二日午後六時四十五分ごろ、二年の女子生徒に大外刈りをかけられて転倒。後頭部や首を打ち意識不明で緊急搬送され、二十七日午前中に死亡した。練習には顧問の女性教諭と男性二人のボランティア指導者が立ち会い、事前に確認してわざをかける約束稽古をしていた。亡くなった生徒は四月に入部するまで柔道経験はなく、大外刈りを受ける練習を大型連休明けから始めたという。こういう記事なんですね。

 一般質疑で私も、柔道に限ったことではないんですが、部活動での事故の問題、安全対策を徹底してくれというような質問をしたこと、大臣も記憶あると思います。授業においては、武道が必修化された際にかなり安全対策ということを文科省さんも徹底していただいて、マニュアルもつくっていただいて、徹底できてきているんだと思います。その結果、大きな事故は起こっていないわけですけれども、では部活動はどうなのかというと、やはりこういう事故が起こるということは、まだまだ不十分なのかなということを言わざるを得ないなと感じました。

 ところで、文科省はこの事故についての詳細な報告というのは受けているんでしょうか。

久保政府参考人 本件につきましては、今先生おっしゃられましたように、二十八日に記者発表をされまして、報告によりますれば、今ちょうど福岡市の教育委員会の方で事故調査委員会をこれから設置いたしまして、事故の原因を究明する等の再発防止策を検討する、その際には保護者の意向を十分に尊重しながら誠意を持った対応をしたいととりあえずの報告を受けておりますので、今後の調査委員会の対応等、文科省の方に逐一また報告をしていただきながら、適切な対応をしていきたいという状況でございます。

初鹿委員 これから第三者委員会が設置をされてそこで検証がされるということですので、その結果を踏まえて文科省として対応されるということになると思いますので、その辺はしっかり行っていただきたいと思います。

 柔道の授業における安全マニュアルが出されていると思いますが、その中で、「柔道の授業における安全管理のための六つのポイント」というのがありまして、そこに大外刈りのことが具体的に書かれているんですよ。

 「「大外刈り」など後方に受け身をとる技については、運動部の活動などで頭部外傷の事故が報告されており、扱うとしても、受け身等を十分に習得した上で、学んでいくことが必要になります。」ということがもうここに書かれているんです。さらに、その下に「参考」ということで、「第一学年及び第二学年の段階で無理のない指導計画を立案し、取り組んでいる例」というのがあって、そこの例の中に、A中学校で、「投げ技は「膝車」「体落とし」のみ段階的に指導する」、そして括弧があって、「後ろ受け身が必要な技(大外刈り等)は指導しない。」というのが書かれているんです。これは既に書かれているものがあるんですよ。こういうのが発表されているんです。

 ところが、今回の事故で見ると、柔道経験がない中学校一年生が四月に入って、それで、四月に入ってといっても、多分二週間も部活動はされていないと思うんですよ。それなのに、連休明けからもう大外刈りの指導がされていたということでありますから、やはり、この安全の徹底というのはしっかり部活動においてもやっていかないと、こういう事故が再び起こるんじゃないかと思いますので、この辺ぜひ、この事件があったからということではなくて、さらに徹底をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

久保政府参考人 学校教育における武道の必修化後、私どもとしてもできる限りの措置をとってきたつもりでございますけれども、今回こういう事故が起きましたのは、大変残念に思っております。

 先生が言われましたように、学校体育という授業だけじゃなくて部活動におきましてもこのようなことが十分周知されるように、これからも一層徹底して努めてまいりたいと考えております。

初鹿委員 あともう一つ、この記事に書いてあることなので事実かどうかわからないんですけれども、事故が発生したのが、時間が午後六時四十五分なんですね。中学校は、大体三時ぐらいに授業が終わって、部活が始まるとしたら四時ぐらいからですよね。ということは、二時間四十五分ぐらい部活動をやられていたのかなと思うんです。実際のところはわからないのでこれは推測ですけれども。

 この部活動の活動時間を、ではどれぐらいやるのかというのもきちんと示した方がいいと思うんですよ。さすがに二時間四十五分ということは、多分七時までやる予定だったのかなと想像するんですけれども、三時間部活動を行うというのは、これは金曜日ですけれども、次の日は休みかもしれないけれども、私はいささか疑問だなと思うんです。

 しかも、夜の七時までやったら暗いですよね。その時間に女子生徒が暗い中帰る、福岡のどのぐらいのところの学校かわかりませんけれども、制服を着て帰るというのも、安全面を考えてもいかがなものかなと思いますので、この部活動の活動時間というのも、文科省として、どのぐらいの時間が望ましいものなのかということをきちんと示していただきたいなと思いますけれども、いかがでしょうか。

久保政府参考人 部活動の指導時間につきましては、これまでも、文科省のワーキンググループ等でいろいろな関係者から意見を聞きながら検討してきた経緯はございます。

 部活動の競技種目も区々でございますし、それから指導のパターンもいろいろでございますので、一律な何か基準は示せないという状況にはございますけれども、ただ、子供にとって過酷にならないように。体力的についていけないようなことにならないように、それから、それによって事故が誘発されるようなことにならないようにという話は今までしてきたところでございます。

 今回の事故につきましては、練習を開始したのが五時でございましたので、一時間ちょっと、一時間半ほど指導して倒れましたので、その辺の疲労がどの程度影響していたかというのは、今後の調査によるところになると思いますけれども、今先生がおっしゃられたように、全国的に過酷になっている要素がないかどうかは、今後の課題といたしまして我々十分に認識しながら、今後の指導方針として検討していきたいと思います。

初鹿委員 ぜひ実態がどうなっているのかも調べていただいて、適切な時間帯というのをなかなか定められないというのはわかりますけれども、でも、長過ぎるというのはこれはわかると思いますので、徹底していただきたいと思います。

 それでは本題の方に入らせていただきます。

 昨日、お台場学園を視察をさせていただきました。本当に関係者の皆様、ありがとうございました。また、委員長を初め委員の皆様もどうもお疲れさまでした。

 その際に私が一つ気になったことは、あるクラスで介助員がついているお子さんがいて、副校長先生に聞いたら、障害を持っている子だということだったんですね。その後の質疑応答のときに聞きまして、そうしたらそうだったということなんですが、中高一貫の九年の教育の中でこういう障害を持っている子の教育というのは、比較的私はプラスなのかなというのをそのときに感じたんですね。

 私が聞いたときにお答えがあったのは、六年から三年、中学に移るときに、小学校のときの先生がいることによって子供は安心感があるというのと、やはり、中学のときの先生がその子供の状況を小学校のころから見ることができていて、あと、先生方からも情報を得やすいというので、比較的スムーズに子供の状態を引き継ぐことができるというふうに私も感じました。

 ただ、そうはいっても、教員というのは異動があるわけですから、きちんとした引き継ぎが適切に行われるようにするためには、やはり、個別の指導計画、個別の教育支援計画というものがきちんとつくられていく必要があると思うんです。これは小中一貫に限った話ではなくて、全ての小学校、中学校においてなんですけれども、残念ながら、どうもこの個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成状況が必ずしもよくない、一〇〇%になっていないということなんですが、現状、小学校、中学校、それぞれどのぐらいの割合で作成されているんでしょうか。

小松政府参考人 特別支援教育の推進に当たりまして、指導目標や指導内容、方法等を盛り込んだ個別の指導計画と、それから、福祉、医療、労働等の関係機関が連携し、長期的に一貫した支援を行う個別の教育支援計画、この二つを作成して、計画に基づく指導や支援を進めていくことが重要、こういう考え方で対応いたしております。

 そして、平成十九年以降、この特別支援教育が制度化されたわけですが、作成率は増加しておりまして、先ほど申し上げました個別の指導計画は、小学校で九八%、中学校で九六%と相当進んでおりますが、他方、個別の教育支援計画につきましては、小学校で八八%、中学校八六%ということで、まだ十分とは言えない状態と認識いたしております。

初鹿委員 これは実は法律で作成が義務づけられているわけではないんですよね。ですので、やはり法律できちんと位置づけをした方がいいのではないかなということを私は感じます。

 前にも話をしたと思いますが、私は子供の放課後デイサービスを事業所としてやっているんです。福祉サービスです。この福祉サービスだと、個別支援計画というのをつくることが義務づけられているんですよ。それで、つくって、六カ月後にモニタリングをしてもう一回新たな計画を見直していくというのを、六カ月ごとにやるんですよ。小学校一年生から高校三年生まで通うことができますから、場合によっては、本当に長い十二年間、子供を半年ごとにずっとモニタリングをして計画をつくっていくということが我々事業者は義務づけられているわけですから、やはり、学校教育として国が責任を持って教育をする場でこういう計画が義務づけられていない、法律的に位置づけられていないというのはいささか問題かなと思いますので、ぜひこれはきちんとした位置づけをしていただくようにお願いしたいんですけれども、いかがでしょうか。

小松政府参考人 学校の教育課程に沿いまして教育を行っていきます場合に、そこでまた個別のその方面に関する計画を法律で直ちに義務づけることがなじむかということは、いろいろな要素を考えなければいけないと思いますが、現在、学習指導要領に位置づけがございます。

 この学習指導要領は、「例えば指導についての計画又は家庭や医療、福祉等の業務を行う関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成する」ということを掲げまして、「障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行うこと。」といたしております。

 こうしたものがきっちりと行われるように、まずしっかり指導していくということかと考えます。

初鹿委員 できれば、次の改正のときにこれを義務づけるようなことを考えていただきたいと思います。

 障害を持っているお子さんたちが、今、普通級にもかなり通うようになっておりますよね、きのうもいたわけですけれども。その子たちが、週に一回、通級学級に通っているケースというのが非常に多くあるんです。ところが、この通級というのが、自治体の中で一つあるか二つあるかしかなくて、自分の学校にない場合は、一時間の授業を受けるために一時間ぐらいかけて行かなければならないということが現状起こっているんです。

 私の江戸川区では現在たしか二つなんですけれども、私のところに来ているお子さんの話を聞くと、その日は、一時間の授業を受けるために午前中はもう全部潰してしまうということになるんですよ。障害を持っていて、よりきめ細かな指導が必要な子たちが、一時間のために三時間分の教育を受ける機会を失っているというのは、何か本末転倒なような気がするんです。

 そこで御提案をさせていただきたいのは、この通級学級については、必要な子がいる学校については全ての学校で設置をすることを進めていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

下村国務大臣 私もたまたま、私の地元なんですが、都立の志村学園に視察に行きまして、そこはもう小中高と肢体不自由児の子供たち、それから、軽度知的障害の高校生を対象にする特別支援学校に視察に行ってまいりました。

 それで、肢体不自由児の子供たちへの対応を見ていますと、本当に大変で、一人の子供について一人の先生がついている。場合によっては二人の先生がついている、あるいは先生にもう一人のサポーターがついているということで、ほとんどもうマンツーマンといいますか、一人の子供に対して一人か二人はついているという体制で、これはまあ東京都だからできる、あるいは、志村学園というのがそういう最先端の、特別支援学校のモデル的な位置づけでやっているということで、すばらしいことだけれども、これを全国、やるべきだと思いますが、財政的に相当お金もかかるだろうなということも感想として持ちました。

 それというのも、今、通級による、例えば御質問ありましたが、指導の対象となる児童生徒は、平成二十六年度には八万三千七百五十人となっておりまして、平成五年の制度化以降、約二十年間で七倍近く増加しております。

 このため、文科省としても、通級による指導に対応する教職員の加配定数を、平成五年度の四百四十三人から、平成二十七年度予算、六千二百七十六人と約十四倍に拡充するなど、支援の充実に努めてきたところであります。

 それにしてもまだまだ足らないということでありますが、ぜひできるだけ、障害のある子供一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細やかな支援を行う、通級による指導への支援の充実、これは大変重要なことだというふうに思いますし、文部科学省としても特別支援教育についてさらに促進できるように、しっかり対応してまいりたいと思います。

初鹿委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 やはり、障害を持っている子たちも成長しているんですよ。ただその歩みが遅いだけで、その成長を支えるために、取り出して個別の指導をしていく、これを繰り返していくことによって、特に小さいときから繰り返していくことによって、大きくなったときの、やった場合とやらなかった場合の差はすごく開くと思っていますので、小さいときからなるべく手をかけていけば、高校生ぐらいになったときに、障害が重い子でもある程度のことができるように変わっていくんではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それではまた小中一貫に移しますけれども、大分、先に質問された方に質問の論点を先にやられてしまっているので重複するところもあると思いますが、少し御勘弁をいただきたいと思います。

 先ほどの質疑の中でも、学校の統廃合に使われる、また、教育予算の削減に使われるんじゃないかという指摘もありました。大臣は、学校統廃合や教育予算の削減を目的にするものではありませんということを再三再四答弁をしておりますし、文科省としてはそういう意識であるのは間違いないんだと思います。でも、では自治体が全て本当にそう思っているかというと、やはりそうではない自治体も出てくるんじゃないかということは否定ができないと思います。

 例えば学校の統廃合だけを行おうとすると、かなりこれは抵抗があるわけですよね。小学校二つを一つにしようとしたときに、廃校になる方のOBやその地域の人たちからすると、自分たちの思い出の場所がなくなる、愛着のある学校がなくなるということで、簡単には進められません。

 しかし、その二つの学校の生徒が通っていた中学校も合わせてこの三校を一つの学校にする、小中一貫にするということになれば、反対をしていた方の中にも、新しいものができるんだったらいいことになるのかなというふうに、気持ちが変わる可能性は高いんだと思うんですよ。そういうことに首長さんたちがこの制度を使うようになるのは、いささか違うんじゃないかなと思うんです。

 しかし、自治体の立場からすれば、少しでも統廃合を進めて財政的な負担を減らしたい。例えば一体型をつくれるなら、中学校一校と小学校二つを一校にすれば二つの土地が余るわけで、そこを売却するなどして校舎の建てかえの費用もできるという計算をされる自治体は、ないとは言えないというよりも、必ずあると思うんですよ。

 ですので、仮にそういうことを考える自治体があったとしても、この小中一貫をやろうとしている、この九年の教育をやることのそもそもの意義というのを徹底していかないと、単に小学校と中学校の統廃合のためにくっつけて、そして予算の削減に使われる、中身は六年・三年と大して変わらないということになりかねないと思いますので、その点について御説明をいただきたいと思います。

小松政府参考人 私どもの法案提出の意図につきましては、そういうことでは全くないということは受けとめていただけているかと思いますけれども、その上で御指摘がございましたのは、それがよほどしっかり周知徹底されていないと、地方自治の中でどのように判断をされるかというそれぞれの地域の御判断がございますので、弊害を生んではいけない、こういう御趣旨と存じます。

 私どもといたしましては、この法案が成立いたしました場合には、施行通知あるいは説明会等さまざまな機会や手段を用いまして、そして今の制度化の趣旨を丁寧に説明をいたしますとともに、これまですぐれた先行事例が相当数積み重なっておりますので、こうしたものも周知をするというような方向で、各自治体が目的を逸脱した形で弊害を生むというようなことがないように後押しをしていきたいと思っております。

 なお、設置の存廃につきましては、これは条例事項でもございますので、地域住民の皆さんとのもとより丁寧なコンセンサスづくりということとともに、そうした確認なり政策意思形成を経て適正な判断が下されるというふうにお願いをしたいと思っております。

初鹿委員 それと、先ほども指摘がありましたが、小中一貫校がエリート校化するんではないかという、その指摘がございました。大臣は、この義務教育学校は就学指定の対象になる学校であるから、基本的にその地域の子供たちが通ってくる、ただ、学校選択制というものがありますよねということが指摘をされているわけです。

 中高一貫のように、適性検査のような形で、受験ではない、学力テストではないと言いながら、それよりもはるかに難しいようなテストをもって選抜されるようになるのは、やはり小学校の段階では望ましいことじゃないと思うんですよ。でも、学校選択にすれば、定員よりも多く来たときに誰かを選ぶということを絶対にしなければならなくなるわけですよね、定員がある以上は。そのときに、ではどういう選び方をするかというのは、私は非常に重要だと思うんですよ。

 このときに、中高一貫でやられているように、適性検査なのか何とか検査なのかわかりませんが、何らかの選別をするという仕方がされれば、やはりそれはエリート校化していくんじゃないかということの批判を免れないと思うんです。

 ですので、仮に、学校選択制を導入して生徒が定員よりも多く来てしまった場合のこの選定の仕方は、くじ引きとか、じゃんけんでもいいですけれども、試験とかそういうものには全くよらないような方法で決めるということを、これはきちんと文科省から市町村の教育委員会に徹底してもらいたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

小松政府参考人 小学校段階からこれは始まるわけですけれども、それについて、まず、入学者選抜は行わないという制度で考えております。

 今、中等教育学校についていろいろある御批判あるいは個別の事案等について言及ございましたけれども、これは私どももきちっと説明しなければいけないと思いますが、中等教育学校につきましては、中学校と、それからその後の高等学校という適格者主義の学校制度というものがセットになっております。そういう意味では、就学指定の対象にはなっておらないのです。

 したがいまして、入学者選抜をして適格者……(初鹿委員「それはわかっていますから」と呼ぶ)そういう意味では、制度の趣旨、基本が根本的に違いますので……(初鹿委員「それもわかっていますけれども、だから、選ばなきゃいけなくなるわけでしょうと言っているんですから」と呼ぶ)選ばなければいけない場合が生じました場合には、現在も学校選択というものはあるわけですけれども、小学校等につきましては、学力検査というものは行わない方法で、定員がオーバーしたときは入学者が決められております。

 そういったことについては、堅持をしていただくように徹底したいというふうに思います。

初鹿委員 結構重要なところですからね。ここは徹底をして、抽せんでもくじ引きでも何でもいいんですけれども、試験で選抜をするということだけはしないということをぜひ徹底していただきたいと思います。

 次に、授業の時間のことについて質問をさせていただきます。

 先日、地元の中学校の歓送迎会に行ったときに、たまたまそこの校長先生とお話をしたら、品川区が前任校で、ちょうど小中一貫校を立ち上げるときに副校長をやられていたという先生だったんですね。それで、今ちょうど審議中なのでということでいろいろ話を聞いたら、一番困ったというか大変だったのは、小学校と中学校で時間の流れが違うことですねということだったんです。小学校は四十五分、そして中学校は五十分の授業で、小学校の場合は、二時間目と三時間目の間に二十分の休み時間があるわけです。

 それで、お台場学園に行って、どうなっているのかなということを私も非常に気にしていて、チャイムが鳴っていたので、隣にいた先生にチャイムはどうしているんですかと聞いたら、小学校の時間に合わせて四十五分ごとにチャイムを鳴らしていて、中学校はノーチャイムでやられているということだったんです。

 それはそうやってクリアができるんだなと思ったんですが、グラウンドが一つですよね。グラウンドを小学校の学年が使った後に中学校の学年が使うと時間がかぶりませんかという質問をして、いや、実はかぶるんですと。どうしているんですかということを言ったら、かぶった場合には、先に授業をやっているところはそのまま活動してもらって、あいている隅の方で準備運動とかをして五分間を逃していますということをおっしゃっていました。

 また、小学校の高学年の授業に中学校の先生が乗り入れ授業をして指導に行くということもやられているんですけれども、やはり授業時間が違うために、中学校の先生が五分おくれて教室に登場したり、五分早く帰らなきゃならなかったり、そういうことになっているということなんですね。

 お台場学園は学級数が少ない学校だから何とかそれでクリアできているんでしょうけれども、もうちょっと学級数が多い学校になったら、体育館とか校庭とかを使用するのに非常にカリキュラムを複雑に組まなければならなくなって、大変なのではないかなと思うんです。

 時間の四十五分、五十分の問題なんですけれども、これは、お台場学園がやっているように別々にした方がいいと思っているのか、それとももうどっちかに合わせちゃった方がいいと思っているのか、文科省としてはどういう見解をお持ちなんでしょうか。

下村国務大臣 現在、施設一体型校舎で小中一貫教育に取り組んでいる学校の中には、小学校と中学校の授業の単位時間の違いからくる時間割りの違いにより学校運営上の支障等が生じないよう、既に具体的に、例えば授業時間を四十五分あるいは五十分どちらかにそろえるということとか、それから、授業時間が四十五分の学年の教室は一、二階に配置して、五十分の学年の教室は三、四階に配置するとかいうふうな工夫を行っている事例もあるというふうに承知しております。

 こうしたことから、文科省としては、これまでの学校現場の取り組み事例の紹介等を通じまして、小中一貫教育を実施する学校において、時間割りの違いによる課題が生じないように取り組んでまいりたいと思います。

初鹿委員 まだまだ質問したいことがあるんですが、時間が来たので終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

福井委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 維新の党、鈴木義弘です。

 時間もありませんので、すぐに質問に入らさせていただきたいと思います。

 昨年の十二月の中教審の答申の中で、子供の発達や学習者の意欲、能力に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築と題して、グローバル化の進展に伴う国際競争の激化や人、物、情報の国境を越えた流通が進んでいる。子供たちが十分な知識や技術を身につけ、十分な思考や判断力、表現力を磨き、主体性を持ち、多様な人々と協働することができることによって、子供の能力や可能性を引き出すとともに、自信を育む教育の実現が急務となっているとうたっているんです。それに基づいて小中一貫校の今回の法律の改正になったと思うんです。

 ちょっとこれは漫画チックな話なんですが、大臣にお尋ねしたいんです。失礼な話かもしれませんけれども、もし二歳、三歳の子供がいたときに、お孫さんでも構わないと思うんですけれども、公園に連れていって、砂場にアリが行列をしていたときに、その子供に対して、親である大臣が何分許容してその姿を見ていられるかということなんです。ちょっと漫画チックなんですけれども。

下村国務大臣 それは相当ケース・バイ・ケースで違ってくると思いますが、目的が、子供とか孫を公園に連れていくということが前提で一緒に行っているのであれば、多分、子供が、孫が飽きるまで見守っていると思います。

鈴木(義)委員 大したものですね。

 私、この話を地元で子供さんが小さいお母さん方に話をすると、私は五分、私は十分。文部科学省の役人さんが私の部屋に来ていろいろレクを受けるときに、結婚しているの、子供さんいるの、失礼だけれどもと前置きしてお尋ねしたときに、子供が小さかったら幼稚園に今の話をするんです。五分がいいところですね、十分がいいですねと言うのが大半です。三十分と答える人はまれ、飽きるまでと言う人は本当にまれ、私の経験ではですね。

 私たちが育ったころというのは、子供に構うだけの時間が親になかった。私はひいおじいさんに育てられたんです。小学校三年生まで、もう寝起きから何から、小遣いまでひいおじいさんにお金をもらって遊びほうけた一人なんです。でも、今の時代は子供にすごく目をかけようとするから、知らず知らずのうちに、ここで今前提で申し上げているように、子供たちが十分な知識や技術を身につけ、十分な思考力、判断力、表現力、興味が湧いていることが、親であれ、おじいちゃん、おばあちゃんも含めて大人が排除しちゃっているんじゃないかということなんです。

 学校の現場でも同じことが起きていると思うんです。親に言われる。私もPTAの会長をやりましたけれども、役員も何年も小学校でやりましたけれども、うちの学校、毛虫がいるから会長何とかしろと言うんです。うちの学校に蛇が出てくるから、子供に危害を加えるから何とかせいとPTAの理事会で言われたことがあります。こっちから蛇に構わなければ蛇はかみつきませんよと言っても納得してくれない。うちの子供が虫に刺されて三日も腫れているんですと言う親御さんがいらっしゃるんです。昔は唾でも塗っとけと言われたんですけれどもね。

 でも、それだけ大人が子供にかかり過ぎちゃっているんです。だから、小中一貫校のスタイルをつくったとしても、ここで問題になってくる学校だとか教員、親、地域社会の価値観を、昔に全て戻せとは言わなくても、もうちょっと自由に子供を育てた方がいいんじゃないかという考え方なんです。

 そこの中で興味も湧くし、思考力も育むし、判断力も少しは出てくるんじゃないかと思うんですけれども、一々親が、大人がこうしろああしろと言ったものしか子供は、それでどんどん大きくなっていくわけですね。大学生になったら主体的に物事を考えて問題解決を図るようにしろと言って文科省が何ぼ指導要綱だとか指針を出したって、小さいときからそうやって育てられているのに、判断できないんじゃないですか。

 大臣の御所見をいただければと思います。

下村国務大臣 基本的にはおっしゃるとおりだと思うんです。

 それで、今は文部科学省で「トビタテ!留学JAPAN」という、官民協力で、民間の企業にほとんど実際は資金を出していただいて、高校生、大学生の希望者に給付で全部お金を出して、数カ月から一年間、海外に留学できるという制度を始めました。

 そもそも留学について、例えばアメリカに対しては、もうピークの四割しか行っていないんですね、日本だけが。ほかの国はどんどんふえているわけです。

 要因というのは幾つもあるんですけれども、その中の結構大きな要因の一つとして、母親が反対するから留学はしない。それは、海外へ行って危険だからとか、あるいは一年留年するとか。

 二十年前の制度と違って、今は留年しなくても、その留学したこと自体が単位、ディグリーで認められたりして無駄にならないというようなこともあるんですけれども、どうしても自分の二十年前の子供のころのイメージが教育について親が持っていて、それで自分の枠にはめたというか、自分の教育観の中で子育てをしようとしているところもある親も結構いるのではないかと思います。

 しかし、これはそれぞれの親の問題ですから、国が一律にこうすべきだとかああすべきだと言えば、また国家主義であるとか何か戦前回帰の統制教育だとか批判をされますし、なかなかそういうことはできないことでもそもそもあるというふうに思いますが。

 ただ、おっしゃるとおりに、今までの受け身教育、学校教育もそうだと思うんです。教師が、これをしなさい、あれをしなさい、ノートの書き方はこうですというような暗記、記憶の教育はもう情報化社会では通用しない。これからは、それぞれの子供の持っている多様性をどう育むような教育をするかということですから、家庭教育もそうですけれども、学校教育まで含めて、指導の仕方も変わってくる。

 それが、例えば再三申し上げているアクティブラーニング、これは教師が一方的に教えるということじゃなくて、子供たちが主体的にみずから議論しながら、討論しながら、そして問題についてみんなで課題を解決していこう、そういう教育の授業の仕方、それから教科書も、そういう意味でもあり方、そういうところから変えていくことによって親の意識も、時代の変化に対応するような、理解をしていただけるような、そういう教育環境づくりはぜひしてまいりたいと思います。

鈴木(義)委員 文部大臣は言いづらいんでしょうけれども、お父さんのようになっちゃだめだよというのが何かちょっと昔にはやったんですけれども、でも、実際に現場の話です、自分がお世話になった中学校の部活動の話なんですけれども、子供が中学校に入学して部活動をやりました。ソフトテニスという、テニスのやわらかいボールでやるんでしょうか、朝早く出ていったんですね。何をやっているんだと聞いたら、朝練なんだと。それで、たまたま私が議員になる前の話だったものですから、その日夕方に帰ってきたときに、顧問の先生が来ていないから練習するなと言われたんだと。

 先日もあのお台場学園に視察に行って、小学校五年生、六年生から中学生と一緒になって部活動をやっているんですというような説明をいただいたんですけれども、小中一貫の取り組みをやったとしても、先ほど申し上げたように、安全管理が大事だ。確かに、うちの初鹿委員からも質問があったのは大事なことなんですけれども、結局、部活動を活発にやろうとすれば、朝練をやったり、あと、夜遅くなったって、何時までがいいかというのは先ほど質問をされていたと思うんですけれども、土日だって本当は練習したいんだと思うんです。でも、学校の管理上、させないということが今行われているんだと思います。

 ということは、実際に文部科学省が考えている理念と学校の教育現場とのずれがあるのに直しようがない。ここを直さない限り、やはり、もっと意欲が沸き立つような、子供たちが楽しんで部活動をやったり、勉学に励んだり、スポーツや文化活動にいそしむということができない状況になってしまっているんじゃないかというふうに思うんです。判断力や表現力を磨いて主体性を持ちながらと言いながらも、万が一の現場の責任を回避するがごとく、いつも子供の行動を制限してしまっているんじゃないか。

 それについての御所見なりお考えをお示しいただきたいと思います。

下村国務大臣 基本的にはおっしゃるとおりで、鈴木委員やあるいは私が子供のころは、顧問、監督、コーチの先生がいなくても勝手にやっていたと思うんです。朝練もそうですし、土日も、子供だけ、生徒だけ行ってやっている。後で先生が来たり来なかったりしても全然関係ない。親もクレームをそもそも言わない。

 しかし今は、何か事故があったときに監督責任が問われますから、そのときにもし訴訟になったりしたら学校は負けますので、そういう意味で非常に過敏になっているといいますか、そういうことが何回もありましたから、やはりそういうような、先ほどの朝練の事例のようなことが今行われているのではないかと思います。

 ですから、昔は臨海学校とか林間学校もありましたが、今はリスクがあることはしないというところで、それだけ子供が気持ち的に縮こまっちゃっている。今おっしゃるとおりだと思います。

 一方で教育においては、これから、課題解決に対して主体的に取り組むような能力とか、それから、クリエーティブな、創造的な、企画的な能力とかというのは、これは、授業の仕方の中で教育の発達段階に応じてやれる部分があると思いますから、そういうような能力を育む部分と、それから、社会全体で、子供が管理社会の中で萎縮して主体性がなくなってしまうというのと別の次元として考えていく必要があるのではないかと思います。

 教育については、子供の多様化の中でどう一人一人の持っている潜在的な能力を引き伸ばすような教育をしていくかということと、それから、そういう管理型社会の中における子供のあり方を別に課題として考えていく必要があると思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

 次に、ちょっと時間がないので、はしょった前置きをさせていただきたいと思います。

 ある大学の教育学部の論集の中に、「公教育制度における公共性の限界と今後の展望」と題した論文を目にしたんです。

 この中で、日本における現在の学校は一種の学校崇拝をうたっているというふうに言われています。教師が子供たちの学習方法を保護者に指導し、保護者の方は自分たちの子供の教育、しつけまでも学校に任せてしまっている。これが幾つか列記されているんですね。

 一番大事なのは、日本の教育が知らず知らず画一性、同一性なものになってきてしまっていて、我々は気づかなかったのではないかということなんです。地域社会の教育も学校に任せちゃっている。今の現状ですね。逆に言えば、学校も、任せてもらっているんだったら、余り口を出してもらわない方がやりやすいんじゃないかというのがやはりここ十数年ずっと続いてきたんだと思います。私も二人の子供の親でありますので、任せっ放しだったです。

 この方の論文の締めくくりでは、従来のような価値観の一元化による教育、文科省が一つの指針を出します、現場は、任せますと言いながらも、ほとんど縛りがあるものしかできていない。そういった公共性は価値観の一元化ではなく、多元的価値社会での共通性を意味しているんじゃないかということなんです。

 特に、今の日本の社会のように高度に発達した産業社会や国際化された社会においては、価値観の多様性を前提とした多様な教育方法を取り入れた教育が求められているんじゃないか。公共性、公教育と言われているからいたし方ないかもしれませんけれども、公共性の概念をより柔軟に捉えた公教育が必要とされてきているんじゃないか。

 小中一貫校があって、小学校、中学校は分けてもいいし、中高一貫があってもいいし、小中高一貫もあってもいいし、私立はそれができるんです。公立は、やっとこの法律の改正によって小中だけはできました。中高一貫校をやっている都道府県もあります。でも、限られた学校だけです。それをもう少し柔軟に捉えた公教育が必要なんじゃないかということを諭しているんだと思います。

 文部科学省があり、都道府県教委があって、人事権と予算権を縛られている市町村教委があるんです。小中学校の質問を県議会ですれば、それは市町村教委に任せていますからと言いながら、異動も含めて人事権と予算権、それは県が持っているんです。余り細かい話はしたくないんですけれども。

 それで、今回の学校教育法の改正の中で、多元的価値社会の共通性を基軸とした制度になり得るのかどうか。そこを現場に任せるのか。市町村教委に任せるのか都道府県教委に任せるのかということですね。

 今後もこの教育法の改正を行って、まあ、文科省は一つの大きな柱は出すんでしょうけれども、現場に任せるよという考え方でよろしいのか、お尋ねしたいと思います。

丹羽副大臣 お答えさせていただきます。

 義務教育は、各個人の能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うものであると考えております。この考えにのっとりますと、私も子供が二人おりますが、子供の可能性というのは非常に無限大だというふうに思います。

 そういった中で、国及び地方公共団体が役割分担と協力のもと、その水準を確保する必要がとても重要になってまいります。

 今回のこの学教法の改正によりまして、義務教育学校は、義務教育全体を見通して教育を行う新たな学校種として設けるものでございます。

鈴木(義)委員 先日お世話になったお台場学園の中で、一貫教育をする中で、数学というより算数のところで、私たちが小学校四年生のときに習った分数の掛け算、割り算が、記憶が間違っていなければ、中学一年ぐらい、七年生のときに教えているようなカリキュラムになっているんですね。

 ということは、結局、小中一貫校になったときに、カリキュラムの編成まで、確かに小学校、中学校はあったとしても、その地域性があります、どちらかといえばのみ込みの早い子供が多く集まっている学校であれば、どんどん教えていった方が能力が上がっていくんです。そうじゃない、私みたいに、十言っても一しかわからないような子供がいっぱいもしいたときに、では、カリキュラムを自由に編成していいのかどうかです。

 それと、なおかつ、単位制を取り入れて、ある学年のときに教えたことが履行できなかったら、一年でも二年でも下がってきちっと習得させて上に上がっていく制度をつくっていかないと一貫校の意味をなさないんだと思うんですけれども、その辺のことをお尋ねしたいんです。

 一つは、小学校でやっている担任制でやったときに、何科目も教えるんです、美術だとか体育だとか音楽は単科制になっていますけれども。それを中学、高校みたいに単科制で一つの科目だけ教えてやりくりしていくような方向に向けていく。それも現場に任せるのかどうかですね。そこのところをお尋ねしたいと思います。

丹羽副大臣 お答えさせていただきます。

 現在の義務教育学校においては、義務教育として行われる普通教育の基礎的なものから一貫して施すことを目的に、国家及び社会の形成者としての共通に必要とされる資質能力を養う学校でございますことから、高等学校のように、生徒の多様な能力や進路等に応じて教科、科目を選択させ、その修得した単位を認定する仕組み、単位制を採用するようなことは考えておりませんが、やはり、習熟度別指導の導入においては、個に応じたきめ細かな指導の充実に効果があるというふうに考えております。

 学習のおくれがちな児童生徒に対しましても、興味、関心を高め、達成感が感じられるような指導の充実に各学校が責任を持って取り組むことが重要だと考えておりまして、その趣旨の周知や、取り組み例の提供をしっかりと努めていきたいと考えております。

鈴木(義)委員 それともう一点、同じことの尋ね返しかもしれません。

 これは第五次提言というのが出されているんですね、文科省の方から。その中で、今後の学制というんですか、六・三を一貫校にしてやるんですけれども、子供の身体的成長だとか仮名文字の読みなどが、半世紀ぐらいたって二歳ほど早くなっているんだそうです、同じ年代でいったときに。

 そういうふうに、子供の身体的な能力だとか、幼稚園からいろいろ教えてもらっているのもあって、学習の内容も少し前倒ししていくような形になったときに、今回の法改正で、市町村教委が独自の学制、学年区分を導入することが可能なのかどうかということです。それをお尋ねしたいと思います。

福井委員長 小松初等中等教育局長、簡潔にお願いいたします。

小松政府参考人 今回の義務教育学校につきましては、小学校、中学校それぞれの学習指導要領を準用し、それに伴う教員免許や、教科書等についてもそれを使いますので、基本的には、小学校、中学校で習得すべきものはそれぞれその時期にきちっと習得していくということが原則でございます。

 その上で、教科上の工夫、学習、生徒指導上の工夫につきまして、それぞれの設置者が、学年の区切りを柔軟に九年全体の中で見通して設定しながら教育活動を計画的に展開していくことができるようになります。

鈴木(義)委員 最後に、義務教育というのは親に義務があるというのをぜひ声を大にして言わなけりゃならない時代に入ってきたと思いますので、最後に大臣に一言述べていただいて、終わりにしたいと思います。

下村国務大臣 親にもありますし、国も責任がありますし、設置主体である自治体、教育委員会もあると思います。トータルで、しっかり子供の教育の環境づくりのために頑張りたいと思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

福井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

福井委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。大平喜信君。

大平委員 私は、日本共産党を代表して、学校教育法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 反対する第一の理由は、本法案により制度化される義務教育学校、小中一貫校について、小中一貫校と普通の小中学校を比較研究した国の調査がなく、教育効果、問題点が検証されていないからです。

 政府は、制度化の理由に、中学校での不登校や暴力行為、いじめの増大など、中一ギャップの解消を挙げています。しかし、中一ギャップそのものが、事実というよりは印象に基づく概念であると文部科学省自身が認めています。さらに、小中一貫教育の成果として挙げられているいじめの減少や学力向上のデータは、他の要因で容易に変化するもので、成果として見ることはできません。むしろ小学校高学年期での主体性の成長が損なわれるといった弊害が指摘されている制度を性急に法定化すべきではありません。

 反対する第二の理由は、小中一貫校の制度化が学校統廃合をさらに加速させる手段となるからです。

 この十年間で、公立小中学校は三千校が統廃合されています。制度化で、小学校同士の横の統廃合に加え、小中一貫という縦の統廃合が進み、地域からさらに学校が減少することになります。

 現に、既にある小中一貫校の多くが学校統廃合とセットで実施されているほか、文部科学省がことし一月に示した学校統廃合の手引には、小中一貫教育を一定規模の学校規模の確保のためにできる工夫例として明記しており、その狙いは明らかです。

 反対する第三の理由は、多様化、弾力化のもとに、小学校段階から複数の学校制度、教育課程が設けられ、教育の機会均等が崩されるからです。

 本法案により、小中一貫校が設置される地域と、これまでの小中学校の地域が併存することになります。学校制度そのものは六・三制の原則が維持されるものの、四・三・二といった教育課程の特例を実施することで、教育内容も地域により違いが出ることになります。

 現在、小中一貫教育として、四・三・二の教育課程のもと、英語の早期導入などの教育課程の前倒しが行われています。地域によって教育内容が異なるため、転校により学習内容が保障されず、問題です。

 なお、高等学校等専攻科修了生の大学への編入学については、現行は、高等学校専攻科での学修を大学で単位認定する仕組みがなく、また大学に編入学することも認められておらず、改善が必要であることから問題とはしません。

 以上、申し上げ、討論を終わります。

福井委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党・市民連合を代表して、学校教育法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。

 反対理由の第一は、小中一貫学校を制度として新たに学校種に位置づける立法事実が見当たらないことです。ましてや、昨年実施された小中一貫教育等についての実態調査によれば、小中一貫教育のメリットと同時に、それと同じ程度の割合で課題が存在することが指摘されています。

 小中一貫教育の課題が未解決、かつ解決の道筋が不明確なまま制度化する理由はありません。現行の研究開発学校制度や教育課程特例校制度において、課題とされる点が解消されたかどうかを検証した後に制度化を検討すべきです。

 第二に、義務教育学校では学習指導要領を準用するとしていますが、教育課程の特例措置を利用することによって、既存の小中学校との間で教育水準に格差が生じかねない点です。

 とりわけ、全国学力テストの学校別成績公表や学校選択制と結びついたとき、学校の序列化に直結し、義務教育において教育の機会均等を損ねる可能性すら否定できません。

 第三に、小中一貫教育の実施に伴う負担が全て学校現場に委ねられかねない点です。

 前述の実態調査では、教職員の多忙化や負担増が問題になっているにもかかわらず、全体の二割程度しか対応を講じていないという調査結果が出ています。

 TALISの調査結果でも、日本の中学校教員の労働時間はOECD加盟国で最長に達していますが、これに上乗せする形で小中一貫教育の導入に伴う負担が教員に課せられた場合の対応策が極めて不明確です。

 さらに、今回の制度化で学校の統廃合が促進される懸念も払拭できません。

 以上の理由をもちまして、本法案に反対いたします。

福井委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

福井委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

福井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

福井委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、池田佳隆君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。菊田真紀子君。

菊田委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    学校教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 義務教育の九年間の学びを地域ぐるみで支える新たな仕組みとしての義務教育学校となるよう、市町村教育委員会は、保護者や地域住民の理解と協力を得るための場として、学校運営協議会等の設置及び活用の推進に努めること。

 二 小学校及び中学校は児童生徒に対する教育施設であるだけでなく、各地域のコミュニティの核としての性格を有することを踏まえ、市町村教育委員会は、義務教育学校の設置に伴い、安易に学校統廃合を行わないよう留意すること。

 三 義務教育学校の設置等を支援する観点から、国は、異なる学校段階間の接続を円滑にマネジメントする体制の整備や乗り入れ授業等への対応のための十分な教職員体制の整備を図り、教職員の更なる過重負担を招かないよう努めるとともに、小学校及び中学校が統合される場合においては、義務教育学校への円滑な移行が図られるよう、十分な教職員定数の確保に努めること。

 四 都道府県教育委員会は、他校種免許状の取得のための免許法認定講習の積極的な開講やその質の向上等を図ることにより、義務教育学校教員における小学校・中学校教員免許状の併有の促進に努めること。

 五 小中一貫教育の取組について、国は、各地域における実施上の課題を継続的に把握し、優れた取組事例を収集・分析した上でその情報提供に努めること。また、市町村教育委員会は、自らの方針や各学校の取組について積極的な説明に努めること。

 六 高等学校等専攻科から大学への編入学の実施に当たり、国は、大学の自主性を尊重しつつ、大学における学びの質が担保されるよう指針を示すなどの取組に努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

福井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

福井委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

福井委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

福井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

福井委員長 次回は、来る六月三日水曜日午前八時四十分理事会、午前八時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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