衆議院

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第2号 平成28年3月9日(水曜日)

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平成二十八年三月九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 谷川 弥一君

   理事 青山 周平君 理事 池田 佳隆君

   理事 石田 真敏君 理事 木原  稔君

   理事 山本ともひろ君 理事 太田 和美君

   理事 長島 昭久君 理事 浮島 智子君

      安藤  裕君    石原 宏高君

      尾身 朝子君    大見  正君

      門山 宏哲君    金子万寿夫君

      神山 佐市君    木村 弥生君

      工藤 彰三君    小林 史明君

      國場幸之助君    櫻田 義孝君

      下村 博文君    谷川 とむ君

      豊田真由子君    鳩山 邦夫君

      福井  照君    船田  元君

      古川  康君    古田 圭一君

      宮川 典子君    務台 俊介君

      菊田真紀子君    郡  和子君

      坂本祐之輔君    平野 博文君

      松田 直久君    笠  浩史君

      國重  徹君    吉田 宣弘君

      大平 喜信君    畑野 君枝君

      伊東 信久君    吉川  元君

      松本 剛明君

    …………………………………

   文部科学大臣       馳   浩君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       遠藤 利明君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    豊田真由子君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           大泉 淳一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      山下  治君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          有松 育子君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          小松親次郎君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       伊藤 洋一君

   政府参考人

   (スポーツ庁次長)    高橋 道和君

   政府参考人

   (文化庁次長)      中岡  司君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月九日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     木村 弥生君

  古川  康君     務台 俊介君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     尾身 朝子君

  務台 俊介君     金子万寿夫君

同日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     國場幸之助君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     古川  康君

    ―――――――――――――

三月九日

 教育の無償化を目指して全ての子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(篠原孝君紹介)(第七四五号)

 教育費負担の大幅な軽減を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七四六号)

 同(池内さおり君紹介)(第七四七号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第七四八号)

 同(大平喜信君紹介)(第七四九号)

 同(笠井亮君紹介)(第七五〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七五一号)

 同(斉藤和子君紹介)(第七五二号)

 同(志位和夫君紹介)(第七五三号)

 同(清水忠史君紹介)(第七五四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七五五号)

 同(島津幸広君紹介)(第七五六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第七五七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七五八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第七五九号)

 同(畠山和也君紹介)(第七六〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第七六一号)

 同(堀内照文君紹介)(第七六二号)

 同(真島省三君紹介)(第七六三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七六四号)

 同(宮本徹君紹介)(第七六五号)

 同(本村伸子君紹介)(第七六六号)

 同(志位和夫君紹介)(第八二〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八二一号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(階猛君紹介)(第七六七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第八一五号)

 同(岩田和親君紹介)(第八一六号)

 同(うえの賢一郎君紹介)(第八一七号)

 同(玉木雄一郎君紹介)(第八四七号)

 同(青山周平君紹介)(第八七七号)

 同(金子恭之君紹介)(第八七八号)

 同(坂本哲志君紹介)(第八七九号)

 同(野田毅君紹介)(第八八〇号)

 同(古川康君紹介)(第八八一号)

 学生が安心して使える奨学金に関する請願(志位和夫君紹介)(第八一二号)

 国の責任による三十五人以下学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善を求めることに関する請願(重徳和彦君紹介)(第八一三号)

 同(中根康浩君紹介)(第八七〇号)

 同(仲里利信君紹介)(第八七一号)

 同(長坂康正君紹介)(第八七二号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第八八四号)

 学校現業職員の法的位置づけに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第八一四号)

 同(黒岩宇洋君紹介)(第八七六号)

 国の責任による三十五人以下学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八一八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第八四八号)

 同(池内さおり君紹介)(第八四九号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第八五〇号)

 同(小川淳也君紹介)(第八五一号)

 同(大平喜信君紹介)(第八五二号)

 同(笠井亮君紹介)(第八五三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八五四号)

 同(斉藤和子君紹介)(第八五五号)

 同(志位和夫君紹介)(第八五六号)

 同(清水忠史君紹介)(第八五七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八五八号)

 同(島津幸広君紹介)(第八五九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第八六〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八六一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第八六二号)

 同(畠山和也君紹介)(第八六三号)

 同(藤野保史君紹介)(第八六四号)

 同(堀内照文君紹介)(第八六五号)

 同(真島省三君紹介)(第八六六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第八六七号)

 同(宮本徹君紹介)(第八六八号)

 同(本村伸子君紹介)(第八六九号)

 同(宮崎岳志君紹介)(第八八二号)

 同(吉田豊史君紹介)(第八八三号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(前田一男君紹介)(第八一九号)

 専任・専門・正規の学校司書の配置に関する請願(清水忠史君紹介)(第八七五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

谷川委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局選挙部長大泉淳一君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長山下治君、生涯学習政策局長有松育子君、初等中等教育局長小松親次郎君、高等教育局長常盤豊君、科学技術・学術政策局長伊藤洋一君、スポーツ庁次長高橋道和君及び文化庁次長中岡司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

谷川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。門山宏哲君。

門山委員 自由民主党の門山宏哲でございます。本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、オリンピック・パラリンピック強化について質問をさせていただきます。

 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、日本のスポーツ界はますます盛り上がりを見せています。国際競技大会における我が国のアスリートの活躍は、日本人としての誇りと喜び、夢と希望をもたらし、国民意識を高揚させます。また、社会全体に活力を生み出し、国際社会における我が国の存在感を高めております。

 我が国のアスリートによるメダル獲得は、その一つのあらわれと言えると思います。二〇一二年夏のロンドン・オリンピック・パラリンピックでは、日本人選手団は、金メダル七個、銀メダル十四個、銅メダル十七個の計三十八個、パラリンピックでは、金五、銀五、銅六の十六個と史上最多のメダルを獲得し、日本じゅうに感動を与えてくれました。

 メダルの数が全てではございませんが、国民意識高揚のためにも、目標を設定することは重要だと考えております。そこで、政府の基本方針では、四年後の東京オリンピック・パラリンピックでのメダル獲得数の目標について、どのように設定しておりますでしょうか。

遠藤国務大臣 おはようございます。お答えいたします。

 昨年十一月に閣議決定いたしましたオリパラ基本方針においては、日本人選手が大会において最高のパフォーマンスを発揮して、過去最高の金メダルを獲得することなど優秀な成績をおさめることを目標として掲げております。

 委員御指摘のように、ロンドン・オリンピックのときに、五十万人の皆さん方が銀座のパレードに参加をしてくれた。やはり、オリンピック・パラリンピックの成功のいろいろな条件はありますが、メダルをしっかり確保すること、これも大きな要素でありますから、そういうことを踏まえて、こうした目標を達成できるように、馳大臣のもと、スポーツ庁が中心となって、トップレベルの選手及び次世代選手の育成支援のための戦略的な選手強化等、メダル獲得に向けた競技力の向上に努めてまいります。

門山委員 トップアスリートの支援は、資金的な裏づけなしには行うことができません。スポーツ庁の創設により、二〇一六年の予算案では、過去最高の三百二十四億円のスポーツ予算がつけられており、東京オリンピック・パラリンピックに向けた競技力向上事業には八十七億円の予算がつけられました。

 過去最高額とはいえ、予算は無尽蔵にあるわけではございません。この予算配分については、どのように行っていく予定でしょうか。

馳国務大臣 おはようございます。よろしくお願いします。

 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等における日本代表選手の活躍に向けて、今後、オリンピック・パラリンピック選手の選手強化活動に対する支援を充実していくことが重要であります。このため、スポーツ庁においては、各競技団体が行う選手強化活動に必要な経費を配分する競技力向上事業について、平成二十八年度予算案は、対前年度比十三億円増の八十七億円を計上したところであります。

 この事業は、今年度から独立行政法人日本スポーツ振興センターに資金を一元化した上で、スポーツ庁において、JOC等関係団体の知見を活用しながら戦略性を持った配分方針を策定するとともに、JSCは、国の方針に基づき、競技団体への選手強化費の配分及び事業評価等を行うことによりPDCAサイクルを強化することで、従来より効果的な選手強化に取り組んでいるところであります。

 平成二十八年度においても、これらの取り組みを確実に進めていくことにより、二〇二〇年東京大会でのメダル獲得に向けた国際競技力の向上に努めてまいりたいと思います。

門山委員 昨年のラグビーワールドカップでの日本代表の活躍は記憶に新しいところでございます。また、さかのぼれば二〇〇八年北京オリンピックでのフェンシング銀メダル獲得、最近では水球男子の三十二年ぶりのオリンピック出場など、それまで必ずしもメジャーとはされていない競技においても、選手の活躍により盛り上がっております。

 一方で、水球男子の選手の多くが無職だと報じられたように、多くの競技選手が厳しい環境下で競技生活を行っております。こうした選手たちが競技力強化に集中できるように支援をすることはメダル獲得数増加に向けて特に有効だと思いますが、その点は考慮されておりますでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 競技力向上事業においては、全てのオリンピック・パラリンピック競技団体の日常的、継続的な選手強化活動を支援するとともに、これまでメダルを獲得している競技に加えて、二〇二〇年東京大会において活躍が期待できる競技に対しても重点的に強化を行っているところであります。

 今後とも、競技団体の日常的、継続的な選手強化の支援を行いつつ、メダル獲得に向けた戦略的な選手強化を図ってまいりたいと考えております。

門山委員 オリンピック・パラリンピックで選手たちが力を発揮されるようサポートされることを期待して、オリパラ強化関連の質問は終わりにさせていただきます。

 次に、科学技術イノベーションについて質問いたします。

 天然資源に乏しい我が国においては、世界トップクラスの経済力と存在感を維持していくためには、科学技術イノベーション政策を強力に推進していく必要があります。今後も人口減少が見込まれる我が国において科学技術イノベーションを強力に推進していくためには、これを担うすぐれた人材を絶え間なく育成確保していくことが不可欠です。

 ところが、我が国においては、若手研究者の活躍の場の不足や、流動性の高い人材システムの構築のおくれといった問題があると言われております。国は若手研究人材の育成支援に関する事業をこれまで進められておりますが、その成果はどのようになっておりますでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国が成長を続け、新しい価値を生み出す、そのためには、科学技術イノベーションを担う創造性豊かな若手の研究者の育成確保が大変重要でございます。

 文部科学省におきましては、これまで、若手研究者が自立的に研究を推進できる環境の整備、博士人材の、産業界も含めた多様なキャリアパスの整備などの取り組みを進めてきたところでございます。

 これらの取り組みを通じまして、例えば、各大学において若手研究者が任期つきの雇用形態で自立した研究者としての経験を積んだ後に、厳格な審査を経て、より安定的な職を得るテニュアトラック制の普及、定着が各大学で進んできているところであります。

 また、博士人材のキャリアパス多様化につきましても、インターンシップを経験したポスドクのうち、多くの方が民間企業に採用されるといった成果も見られているところであります。

門山委員 すぐれた研究をしている研究者が公正に評価を受け活躍されることが学術研究の健全な発展、ひいては国力アップにつながると考えております。今後さらに取り組みを進めていただきたいと思います。

 他方、我が国の政府研究開発投資については、諸外国と比較してその伸びは小さく、我が国の世界における地位の大幅な低下が懸念されております。この状況が続けば、我が国唯一の資産ともいうべき科学技術水準が世界から引き離され、国際競争力を失い、結果として、我が国の国際的な地位の低下を招くとともに、我が国の産業を初めとする成長基盤が大きく揺らいでいくことが懸念されます。

 そのような懸念から、本年一月に作成された第五期科学技術基本計画では、政府研究開発投資を対GDP比一%、五年間で二十六兆円にまで拡充していくことが掲げられました。今後も政府研究開発投資が増加されることを望むものでございます。

 また、科学技術イノベーション政策の推進のためには、金額もさることながら、実効性も求められます。この点について、文部科学省としてはどのように考えておられるでしょうか。

馳国務大臣 安倍政権が掲げる強い経済の実現のためには、科学技術イノベーションによる生産性革命や新しい市場の創出が不可欠であります。

 このため、これからの科学技術イノベーション政策の総合戦略として先日閣議決定された第五期科学技術基本計画においては、政府研究開発投資目標として、経済・財政再生計画との整合性を確保しつつ、対GDP比一%を目指すこととしております。文科省としても、総合科学技術・イノベーション会議のもと、本基本計画に基づき、科学技術予算の確保に努めてまいりたいと存じます。

 また、この計画においては、目標値等を定め、達成状況を把握することにより、恒常的に政策の質の向上を図っていくことが重要とされております。このため、文科省としても、科学技術・学術審議会等のもとで、こうした取り組みを通じて実効性の確保に努めてまいりたいと思います。

門山委員 政府のこれまでの取り組みに感謝し、これからのますますの取り組みを期待しております。

 次に、道徳教育について質問いたします。

 児童生徒が、命を大切にする心、他人を思いやる心、善悪の判断などの規範意識の涵養といった道徳性を身につけることは大変重要だと考えております。

 これまで、道徳の時間は、各教科に比べて軽視されがちでしたが、中央教育審議会が平成二十六年十月に道徳の時間を教科化することを答申し、二十七年三月の学習指導要領の改訂により、道徳の時間は、考え、議論することを重視する特別の教科、道徳、道徳科として新たに位置づけられることになりました。読み物道徳から、考え、議論する道徳への質的転換を図っていることは、自律心を涵養する教育として大変評価しているところであります。

 一方、道徳の教科化に当たっては教科書検定の導入を決めましたが、検定の導入を決めた理由について教えてください。この検定については、心のあり方を学ぶ道徳という教科に文科省の検定作業がなじむのかという問題が指摘されていますが、この点をどのように考えておるんでしょうか。

馳国務大臣 道徳教育については、かねてから、他の教科等の指導に流用されるなど軽視されがちであること、学校や教員によって指導の格差が大きいこと、児童生徒の発達の段階が上がるにつれ授業に対する受けとめがよくない状況にあることなどが指摘されておりました。また、文科省の調査においても、道徳教育を行う上で、適切な指導方法がわからない、適切な教材の入手が難しいということを課題として挙げる教員が多いことが明らかになっております。

 これらの課題や中教審の答申などを踏まえ、小学校では平成三十年度から、中学校では三十一年度から特別の教科、道徳と位置づけ、検定教科書を導入するなどにより、全国の小中学校において、確実に質の高い道徳科の授業が実施されるようにすることといたしました。

 検定教科書については、学習指導要領の規定に基づき、昨年九月三十日に教科用図書検定基準の改正を行い、適切な教材を取り上げることや、多様な見方や考え方ができる事柄については多面的、多角的に考えられるよう配慮することを求めており、平成二十八年度に小学校道徳科、平成二十九年度に中学校道徳科の教科書検定を行うこととしております。

 なお、道徳科については、学習指導要領上、児童生徒の「発達の段階や特性、地域の実情等を考慮し、多様な教材の活用に努めること。」と規定し、教科書以外の地域教材の積極的な活用も促しております。これらの取り組みを通し、検定教科書を初めとした多様で質の高い教材により、考え、議論する道徳へと質的転換を図り、全ての学校において充実した道徳教育が行われるようにしてまいりたいと存じます。

門山委員 自律的な道徳的実践ができる人間を育てていく道徳教育が実効性あるものになるよう、これからも取り組みをよろしくお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

谷川委員長 次に、神山佐市君。

神山(佐)委員 おはようございます。自由民主党の神山佐市でございます。質問の機会をいただきましたことに、心より感謝を申し上げる次第であります。

 早速、質問に入らせていただきます。

 最初に、国立大学法人運営費交付金についてお伺いをいたします。

 国立大学法人の財務状況を見ますと、基盤的経費である運営費交付金は、平成十六年度の法人化以降、毎年度減額され、十六年度交付額は一兆二千四百十五億円で、二十七年度は一兆九百四十五億円の交付額となり、十一年間で千四百七十億円以上の削減をされております。

 平成二十八年度につきましては、辛うじて今年度と同額の確保ができたわけでありますけれども、しかしながら、平成二十九年度からは〇・五%程度を減らした上で、その分のお金の一部で新たな補助金を創設し、民間との共同研究や組織のスリム化などを進める大学に重点配分し、各大学の改革努力を促すそうでありますが、運営費交付金の減収による国立大学の研究低下が懸念されております。

 競争原理を導入し、教育研究の質を競い合い、お互いに切磋琢磨していくことは大事なことと理解いたしております。限られた資源を有効活用するためには、全体に薄く投資するより、評価の高い、期待される領域に重点的に投資する方が、より効果的で有効的であるかもしれませんけれども、しかし、科学技術の進展には基礎となる基礎研究が重要で、そのための教育も含めた研究環境を整備することは絶対に必要だと思います。

 短期的な利益だけを追求する余り、特定分野に資金と人材を重点配分し、基礎研究やそれを支える教育まで疎んじてしまっては、かえって高等教育のあるべき姿から逸脱することにならないのかとの心配もあります。各国立大学は、それぞれの地域、分野、歴史などの特性を踏まえ、その強みや特色を生かした機能強化に精力的に取り組んでいることも御理解いただきたいと思います。

 枝を矯めて花を散らすことのないよう、国立大学に限らず、公立、私立大学も含めた大学の役割、使命を十分生かすことができるような確固たる財政基盤の確保が重要だと考えますが、この点について、馳大臣の御所見をお伺いいたします。

馳国務大臣 国立大学は、現在、機能強化のための大規模な改革を進めております。国立大学の機能を十分に発揮させるためには、また教員が安心して教育研究活動を行えるようにするためにも、基盤的経費の安定的な確保が重要であります。

 このため、第三期中期目標期間初年度である平成二十八年度予算においては、対前年度同額を計上し、各大学の機能強化への戦略的な取り組みを重点支援することとしております。

 平成二十九年度以降は、この重点支援の財源として、一定の係数により各大学から拠出された財源、毎年度約百億円程度を想定しておりますが、これを確保した上で、このうち二分の一程度の額を運営費交付金として再配分することとしております。残りの財源を活用して、人件費等恒常的な経費以外の、組織改革に必要な設備や一定期間行う事業などの初期投資費用への支援として、運営費交付金の補完的役割を果たす新規の補助金を創設し、各大学に配分することを予定しており、平成二十九年度以降は、運営費交付金と新規の補助金により基盤的経費の確保に努めてまいりたいと思います。

神山(佐)委員 よろしくお願い申し上げる次第であります。

 次に、学校施設の整備についてお伺いいたします。

 学校施設は、児童生徒の学習、生活の場であり、安心、安全な教育環境の整備が必要だと考えております。

 小中学校の耐震化については、平成二十七年の四月一日現在で九五・六%の耐震化率となっておりますけれども、改善されてきているのが事実だというふうに認識しているわけであります。

 学校の老朽化対策として予算を計上しておりますけれども、トイレ改修についてお尋ねをいたします。

 近年、生活スタイルの変化により洋式トイレが一般的になり、子供たちがいわゆる和式トイレを使えないという状況が起こっているというふうに認識しているわけであります。生徒児童たちにとってはかなり深刻な問題となっているようであります。早急に改善しなければならないと考えておりますけれども、この点につきましても馳大臣のお考えをお願いいたします。

馳国務大臣 近年、各家庭や他の公共施設におけるトイレの洋式化が進む中で、学校施設のトイレについても洋式化を望む声があることは承知しております。また、地域のコミュニティー施設や災害発生時の避難所として活用される学校施設において、トイレの環境改善は重要であると認識しております。

 このような中、トイレ改修を含めた公立学校施設整備に係る予算として、平成二十七年度補正予算で三百八十八億円、平成二十八年度予算案で七百九億円の、合わせて約一千百億円の予算を確保したところであります。

 今後とも、地方の声に十分耳を傾けながら、トイレ改修も含めた公立学校施設の教育環境の改善に取り組んでまいりたいと思います。

神山(佐)委員 よろしくお願いいたします。

 次に、文化関係資料、特に音楽関係資料のアーカイブス構築についてお尋ねをいたします。

 明治時代の終わりから戦後間もなくのころまで国内で録音、製造されたSP盤について、消失、散逸の危機が高まるとして、歴史的音盤アーカイブ推進協議会が国立国会図書館の協力を得て、二〇〇九年から二〇一二年までに約四万八千七百の音源のデジタル化が実施されてきました。

 一九五〇年代から発売されたアナログレコードEP盤、SP盤は、昭和時代の日本の音楽文化を記録する貴重な歴史的な資料と思います。しかしながら、レコード会社に残る現物は既に限定的な作品に限られ、消失のおそれがあるそうであります。

 一方で、納本制度を通じ、アナログレコードの多くが国立国会図書館に所蔵されておりますけれども、その数は、EP盤約十万点、LP盤約十七万五千点とのことであります。国立国会図書館が所蔵のアナログレコードをデジタルアーカイブ化できれば、昭和時代の貴重な音楽文化を後世に引き継ぎ、利用を促進できると考えますが、国会図書館からは、年次のアーカイブ予算の規模に照らすと、アナログレコードにすぐに着手するのは難しいとも伺っております。

 現実の問題として、実際に着手に至るころには、古い作品の知識を有する関係者の高齢化も進んでおり、体系的な整理や研究協力が得がたくなることも想定されるため、早期の着手が必要と考えますけれども、この点についてお考えをお聞かせください。

中岡政府参考人 お答えいたします。

 歴史的、文化的価値のある文化関係資料の収集、保存を図ることは、文化芸術の次世代への確実な承継を図るとともに、新たな文化の創造の基盤となるものであり、そのためのアーカイブの整備を国として推進していくことは大変重要なことであると考えております。

 文部科学省では、これまでに、文化関係資料のアーカイブのあり方に関しまして総合的に検討いたしますとともに、楽譜などの音楽関係資料、写真フィルム、テレビ、ラジオの脚本、台本等の所在情報の確認、目録の作成、公開や、ポスターや衣服などのデザイン分野におけるアーカイブの中核拠点の形成等につきましての調査研究を実施しているところでございます。

 委員御指摘のアナログレコードのアーカイブ化につきましても、我が国の貴重な文化関係資料の収集、保存に向けた取り組みとして大変重要なものと考えておりまして、文部科学省といたしましては、アナログレコードのアーカイブの構築に向けまして、国立国会図書館や関係団体と十分に連携を図りながら、必要な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

神山(佐)委員 何とか要望に沿えるように、しっかり取り組んでいただければというふうにお願いを重ねて申し上げる次第であります。

 次に、大学の教育研究水準の向上についてお伺いいたします。

 大学の教育研究水準の向上等を図るための施策として、指定国立大学法人制度を創設すると伺っておりますけれども、国からの追加的な財政支援はないと明言されておるようであります。国立大学法人制度の特例として、不動産の活用や寄附金等の運用に関し規制緩和を行うことを内容としているわけでありますけれども、この制度の目指すところにつきまして御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年六月に閣議決定されました日本再興戦略におきまして、高い経営力と自由度を有し、国内外のさまざまなリソースを呼び込むことによりグローバル競争力を高める国立大学を形成するという方向性が示されたところでございます。

 その詳細な制度設計について、文部科学省の有識者会議において検討を行いまして、その結果を踏まえまして、今御指摘の指定国立大学法人の制度を創設するということにいたしました。

 本年一月の有識者会議の取りまとめにおきましては、この指定国立大学法人について、優秀な人材を引きつけ、さらなる研究力の強化を図り、その成果が社会に創出されることで、社会から適切な評価、支援を得るという好循環を実現させることが期待をされております。

 指定を受けたことをもって、当該大学に運営費交付金等の予算を集中させることは予定しておりませんが、有識者会議では、指定国立大学法人について、改革を実行するためのスタートアップ経費の支援等を行うことが必要という意見が示されておりますので、法案について国会でお認めをいただきましたら、その後、対応について考えてまいりたいというふうに考えてございます。

神山(佐)委員 よろしくお願いいたします。

 研究費の部分で大学がうまく運営できなくならないような状況の中で、しっかりこれからも取り組んでいただきますことをお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

谷川委員長 次に、浮島智子君。

浮島委員 おはようございます。公明党の浮島智子です。本日は質問の機会をいただき、感謝申し上げます。ありがとうございます。

 早速、質問に入らせていただきたいと思います。

 馳大臣はこれまでも、チャイルドラインやいじめ防止法案の立案などに中心的な役割を果たしてこられました。そして、現在、超党派フリースクール等議員連盟、夜間中学義務教育拡充議員連盟で議論が行われております、いわゆる教育の多様な機会の確保については、座長試案をまとめてくださり、今は座長がかわり、新しい試案になり、昨日で第十九回の勉強会が行われ、さらに議論を深めているところでございますけれども、本日は、馳大臣の不登校児童生徒についての基本的な認識をお伺いさせていただきたいと思います。

 かつて、登校拒否と言われ、学校に行かないことがあたかも悪いこと、あるいは後ろめたいことと言われていた昭和から平成の初期のころの考え方から文科省が転換をし、特定の児童生徒に特有の問題があることによって起こるものではなく、どの児童生徒にも起こり得ること、不登校については、多様な要因、背景により結果として不登校の状態になっているのであって、その行為は問題行為ではないと、不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し、全ての児童生徒が安心して学べる環境の実現が必要と捉えるようになったことは大変重要なことと私は考えております。

 日本の学校は、世界の中でも、きめ細かい指導で、集団の中では個を伸ばすという点ですばらしいことだと思っております。しかし、全ての子供たちが日本の学校に合うわけではないとも思います。そもそも、学校という仕組みに違和感を感じる子、先生や同級生との関係などでどうしても学校に行けなくなってしまった子、この子供たちは、ほかの子供たちにはない感受性や感性を持っていることも少なくないと思います。その中には、日本の文化や芸術、またはスポーツ、学術に新しい一歩をしるしてくれる個性の人も出てくると私は思います。

 そこで、初中局長にまずお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、文科省として、不登校児童生徒についてどのような認識をしているのか、基本的な認識をお伺いさせていただきたいと思います。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 不登校児童生徒の捉え方、あるいは、どのような場合にどのような児童生徒に起こるかということの考え方につきましては、ただいま委員御指摘のとおりでございます。

 実際問題といたしましては、平成二十六年度の国公私立の小中学校における不登校児童生徒数は約十二万三千人でございます。ここ二年間は増加をしておりまして、教育上の喫緊の課題だというふうに捉えているところでございます。

 そのケアにつきましては、これまでも、教職員定数の充実や、あるいはスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置、地域の教育支援センターの充実といったものについて取り組んでまいりましたけれども、さらに取り組みの充実を図る必要があると考えております。

浮島委員 今御答弁にありました十二万三千人、また、この二年間ではふえているということでございますけれども、学校に違和感を持っている子、どうしても学校に行けなくなった子、この子供たちが、不登校という状況が継続して、結果として十分な支援を受けられない状況が続くということは、自己肯定感の低下を招くなど、本人の進路や社会的自立のために私は好ましくないと思っております。

 社会の中でその子なりの力や個性を生かして活躍するためには、社会性や学力を育む必要があると思います。それを育成するために人類が発明した社会制度が学校なのだから、学校に通うよう支援することは、とても大切で大事であります。学校に合わない子供たちがいるから学校はだめだとか、社会制度として存在意義を否定するのは、私は誤りだとも思います。

 しかし、他方で、学校に行くのが正常、不登校の児童生徒を学校に行かせるために、学校以外の多様な学びの場であるフリースクールなどが支援することは認めるけれども、フリースクール等が不登校の児童生徒を学校に行かせようとしないならだめだと否定するのも、私は誤りだと思います。

 憲法や学校教育法で就学義務を課しているのは、子供ではなく保護者であり、我々大人は、子供たちの学ぶ機会をしっかりと保障しなければなりません。学校という社会制度が教育の大きな柱でセンターであることは間違いありませんが、それに合わない子供、また、今現在でも無理して学校に通っている子供たち、また、行けなくなってしまった子供たちが安心して学べる多様な環境を認めることが最も大切なことであり、学校も大きな柱、センターであり続けることができると私は思います。今求められているのは、学校に合わなく、行けなくなってしまった子供たちが安心して質の高い学びを続けることができる多様な環境の整備であると思います。

 そこで、大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますが、不登校は決して異常な問題行動ではない。学校に合わない子供や行けなくなってしまった子供たちをとにかく学校に行かせて正常にするという発想ではなくて、子供たちが安心して学べる環境を整備し、その学びを通して学校に戻る子も、結果として戻らない子も含めて、社会としてしっかりと支援することが今後の国の政策の基本であるべきと考えますが、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

馳国務大臣 義務教育の段階でありますから、学校教育法に従って就学義務が保護者に課されている。そんな中で、さまざまな事情で学校に通うことができない、あるいは通わない児童生徒が、毎年、大体十二万人前後いる。私は、この現実を見るべきだと思っています。小学校一年生から中学校三年生まで、およそ一千万人ほどの児童生徒が在籍をする中での十二万人という数字を、多いとか少ないという観念で見てはいけないと思っています。

 したがって、一人一人の実情、また家庭の背景、友人関係等を考慮しながら、担任の教員とかスクールカウンセラーとかスクールソーシャルワーカーなどが丁寧に話を聞いて、そして、学校になぜ通えないのか、通わないのかということについて、十分に本人の意思、また保護者の考え、担任の教諭を通じて友人関係などの実情をつぶさに分析をしながら、それぞれ対処していく、まず、その環境づくりに取り組むことが、文部科学省として一番優先してするべきことだと思っています。

 その上で、さまざまな事情でどうしても行けないという児童生徒に対してどういう学習環境を提供することができるのか、そのことについてやはり考えていく必要があると考えています。

浮島委員 ありがとうございます。

 きのうも、ヒアリング、それと議論等で約二時間半させていただいている中で、どんな子にも必要な学びを与えられるようにしてほしいという強い要望もございました。

 今現在、いじめに遭いながら、本当に無理して笑顔で学校に行っている子もいます。でも、無理して学校に行っている子、または保健室登校、校長室登校をしている子もいますけれども、これは不登校の定義に入っておりません。なので、今、議員立法ではありますけれども、みんなを救っていこうという観点から議論させていただいておりますけれども、ぜひ、これが成立した暁、そして基本方針を定めるときには、文科大臣がしっかりと、一人でも多くの子供たちが救えるように、救われるようにしていただきたいとお願いをさせていただきたいと思います。

 次に、高校受験についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 実は、神奈川県の相模原市で、二月の十八日、インフルエンザで体調を崩した学生がそのまま高校受験をされました。そして、そこで十分に力を発揮することができず、落ち込んでしまったその学生は、家に帰ってきて命を絶ってしまいました。そして、その後、お母様も後を追って命を絶ってしまったという事件が起こってしまいました。

 そこで、まず高等教育局長にお伺いをさせていただきたいと思います。

 例えば大学の入試センター試験では、受験生の受験日直前にインフルエンザに罹患した場合、どのような対応がとられるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 大学入試センター試験におきましては、インフルエンザ等を含む病気や負傷により試験を受験できない者などに対して、本試験とは別日程、原則といたしまして本試験翌週の土日で追試験を実施しているところでございます。

 特に、インフルエンザに罹患している受験生については、他の受験者や監督者等に感染するおそれがあるため、受験案内において追試験の受験を申請するよう示しているところでございまして、本年度実施の試験においては三十一名がインフルエンザ罹患を理由として追試験を受験したというところでございます。

浮島委員 追試験が行われているということですけれども、追試験で救われ、大学に進学できた受験生も多いと思います。大学受験と高校受験では、受験生の数や試験日、また合格発表などの仕組みが違うことはもちろんですけれども、今回の件は、もし高校受験でも追試験が認められていたら防げたのではないかと私は思っております。

 そこで、今回の件のように、高校受験において受験生が試験の直前にインフルエンザに罹患した場合は一般的にどのような対応になっているのか、また、実際にインフルエンザに罹患して別室で受験を受けた受験生はどのくらいいるのか、局長にお伺いをさせていただきたいと思います。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 高等学校の入学者選抜に関する実施方法等につきましては、都道府県教育委員会等の実施者がそれぞれの判断で決定することになります。

 そういった中で、都道府県教育委員会等によるインフルエンザに罹患した生徒への対応について、詳細なところまでは把握できておりませんけれども、私どもが都道府県等から伺っているところ、把握しているところを申し上げますと、お尋ねのように、まず一般的に、全ての都道府県において本人の申し出による別室受験は実施されております。それから、都道府県の中には、追試験を行う、あるいは前期、後期に別日程で複数受験機会を確保するといったような取り組みが行われているということでございまして、実施者の判断において受験機会の確保に努めていただいているものというふうに承知をしております。

 なお、各都道府県において具体的に別室受験等を行った人数等については、申しわけございませんが、把握できておりません。

浮島委員 そこで、馳大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、今御答弁ありました、把握ができていない。

 高校受験は都道府県の教育委員会が行うことであるため、文科省としては一律に仕組みをつくって整備をしていくということは難しい側面もあると思います。でも、まず各教育委員会の実態を把握し、直前にインフルエンザに罹患した受験生の特別措置のあり方について関係者や有識者で検討すべきだと思いますけれども、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

馳国務大臣 検討いたします。

浮島委員 ぜひとも検討していただき、そして、このようなことが二度とないようにしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、先日の衆議院の予算委員会の基本的質疑において、私は、教育の投資について、とにかくエビデンスだエビデンスだという、結果を、目に見える効果が証明されないのならやめてしまえという発想で学校現場をきりきり舞いにさせるのではなくて、学校現場を多面的な角度から率直に見て受けとめ、改善すべきことは改善すべきであるということを、公教育にしっかりと投資する姿勢が必要であるということを申し上げさせていただきました。

 そのような観点から、本日は、過日、衆議院の予算委員会の分科会でも議論になっておりましたスーパーサイエンススクールやスーパーグローバルハイスクールについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、科学技術・学術局長にお伺いしたいんですけれども、日本学術振興会が天皇陛下から御下賜金を受けて、特に卓越した若手研究者に授与する育志賞を昨年受賞された早稲田大学の大学院の藤原和将さん、スーパーサイエンススクールに指定されました早稲田大学高等学院の生徒さんでありました。

 スーパーサイエンススクールの第一期生は三十歳に今達しておりまして、それぞれの分野で御活躍されておると思います。これらの卓越した若手研究者にとって、スーパーサイエンスハイスクールの経験はどのように今すぐれた研究に生きているのか、具体的に御説明をしていただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 国際的な科学技術人材育成のためのスーパーサイエンスハイスクール事業でございます。

 これまで多くの方がこの卒業生としておられるわけなんでございますが、その全数について網羅的な把握は困難でございますけれども、平成二十七年度に、事業を実施しております科学技術振興機構において、平成十四年度から十七年度に指定を受けたことがある高校を対象にいたしまして、当該高校で把握可能な範囲で卒業生の動向について調査をお願いしたところ、さまざまな分野で活躍する科学技術関係人材の事例が多数、二百件を超える報告がなされているところでございます。

 そのうちの幾つかについて御紹介申し上げますと、例えば、高校在学中に国際科学オリンピックでメダルを獲得して、その後、日本を代表する研究大学で助教等の研究者として活躍している方、あるいは、建築関係の国際的な賞やロレアル・ユネスコ女性科学者日本奨励賞を受賞し、その後民間で活躍している方、あるいは、先ほど先生御指摘のように、現在大学院において学術振興会の特別研究員として、また先ほどの育志賞を受賞された方など、独創的な研究を推進している方が多数報告されているところでございます。

 今後とも引き続き、SSHの教育を受けた人材の社会における活躍状況については把握に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

浮島委員 大変なすばらしい成果を上げられていると思います。

 このように、教育成果をはかるに当たっては、学力調査の結果や進学者数、あとは著名な受賞をされたとか、そういった数字も重要な要素ではあるとは思いますが、これらの量的な側面だけではなくて、例えばこの藤原さんにとってスーパーサイエンススクールの経験が今の卓越した研究に生きているということから、質的なことも検証する重要性があるのではないかと私は思っております。

 このように、教育の成果の検証に当たりましては、どうしても把握しやすい、量的な側面の分析に偏ってしまうところが多くありますけれども、そこに偏るのではなくて、実際に子供たちや教師、卒業生の声やエピソードを聞き取って把握できる質的な側面もしっかり受けとめる丁寧さやきめ細かさ、それが求められると思っております。

 そこで、大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、スーパーサイエンスハイスクールについても、グローバルハイスクールについても、その教育の成果の検証は把握しやすい量的側面の分析に偏るのではなくて、実際に子供たちや教師、そして卒業生の声やエピソードなどを聞き取るなどして、質的側面を重視しながら、丁寧な把握、分析を行っていただきたいと思います。

 そして、多くの学校では、藤原さんのように大きな成果を上げられているので、これらの成果を積極的にアピールしていく、そして引き続き安定的な支援が継続できるようにしっかりとした予算を増加、確保していただきたい。

 また、今後さらによくするために、方向性を具体的に示していただきたいと思いますけれども、御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

馳国務大臣 スーパーサイエンスハイスクールにしても、スーパーグローバルハイスクールにしても、現場からは、もっと拡充をしてほしいし、継続をしてほしいし、そして予算をしっかりとつけてほしいという要望が上がりこそすれ全く減ることはないという、まずこの現実をお伝えしたいと思います。

 その上で、確かに、エビデンスという観点からいえば、量的な把握を卒業生の追跡調査の結果からすることも、これも大事だと思います。

 同時に、質的な評価という浮島委員の御指摘でありますが、全くそのとおりだと思います。その後、大学、あるいは大学院、あるいは企業の研究員、あるいは国際的に活躍する人材としてどのように人生を切り開いていったか、その実情を、個別の好事例も踏まえて把握することによって、やはり教育の効果は、継続することに意味がありますし、継続することによってノウハウがその高校にも蓄積されることになります。それが校風をつくっていくことになり、よりよい教育効果を高めることになる、こういうふうに考えておりますので、今後の予算獲得に向けても、量的な面と質的な面と両方相まって、この効果を検証していく、そういうつもりで取り組みたいと思います。

浮島委員 ありがとうございます。ぜひとも日本の宝を育てるために全力を尽くしていただきたいとお願いをさせていただきます。

 次に、ちょっと順番を変えさせていただきまして、老朽化対策について、先にお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほど神山委員の方からもございましたけれども、学校は、将来を担う子供たちが学習をする、それだけではなくて、何かがあったときにはコミュニティー、皆さんが集まる災害の施設の場にもなっております。

 この耐震化を、我々公明党もずっと力を入れてきまして、公立学校の耐震化率はほぼ一〇〇%になったところでございますけれども、しかし、まだ、先ほどもありました老朽化対策、これは全く手がついていないところが多いのが現状でございます。

 私も、川崎市の学校に視察に行かせていただきましたけれども、今の時代に驚くような、先ほど水洗とかいろいろな話も出ておりましたけれども、それだけではなくて、男女入り口が一緒であり、そして女子のトイレのドアはアコーディオンカーテンであるとか、もう本当に、今この時代にこんなところがあるのかなと。子供たちは、話を聞いてみると、トイレになかなか行けない、授業にも勉強にも集中できないということでありました。

 その日は、そこの学校を見た後に、改修して既にトイレがきれいになった学校も見に行きましたけれども、そこの子供たちは、休み時間トイレに集まって、わいわいがやがやトイレで騒いで、本当に明るい。だから、やはり精神的にも、トイレがきれいになると全く違うなと思いました。

 地方では、こうした状況を改善するために、厳しい中でも一生懸命財源を捻出して、子供たちのため、また地域の住民の皆様のためという観点から、何とかして学校の施設の環境を改善しようという努力をされております。にもかかわらず、地方が要望している事業を行うための国の予算は大きく不足をしているのが今現状でございます。

 地方の事業実施に支障が生じてしまっているのが今現状でありまして、こうしたことから、公立学校の老朽化対策などの施設整備に対応するため、今まさに地方の要望に、予算を確保することによって地方創生を後押しすることにもなり、一人一人が輝く社会を築いていくことが国の責務と考えますけれども、大臣の御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

馳国務大臣 公明党の皆さんの応援もいただきまして、平成二十七年度の補正予算と平成二十八年度の当初予算案と、合わせて一千百億円近い財源を確保できたことは感謝しております。しかしながら、これでも地方自治体からの要望には十分に応え切れていないのが実情であります。

 ましてや、復興特会が平成二十七年度で終わるということを考えると、今後、平成二十九年度以降の予算措置を考えると、大変厳しい状況にあるというふうに、まずそういう実情を認識しております。

 したがって、私は、地域の拠点という位置づけ、これは、一億総活躍社会において小中学校が地域の拠点であるという位置づけ、また災害のときの避難場所という位置づけ、さらには、学校のトイレは、湿式と乾式という言い方をしますと、まだ湿式が多くて、非常に管理も十分に行き届いていない。おっしゃるように、アコーディオン型があったり、男女、上の方であいたままというふうな設備的、施設的な不備も多いというふうに認識をしております。

 こういった観点からも、何とか御理解を多くの方にもいただいて、財源をしっかりと確保して、早く改修を進めていかなければいけない、こういう強い決意で、今後とも取り組んでいきたいと思います。

浮島委員 ありがとうございます。私どもも全力で応援をさせていただきますけれども、ぜひ環境整備をよろしくお願いいたします。

 また、国立大学の老朽化対策、これもすぐにやっていかなければならないと思っております。国立大学の施設は、ノーベル賞を数多く輩出するなど、我が国を代表する重要な教育の、研究の拠点でございます。と同時に、地方発のイノベーションにより地方を活性化するなど、一億総活躍社会の実現のためにも重要な施設であります。

 しかしながら、国立大学の施設も老朽化が深刻な課題となっています。雨漏りがしたり、壁が剥がれてしまったり、また実験室、余りにも狭くて実験室の中で人がすれ違うことができない、また、必要な実験の設備が入らないなど、本当に我が国を代表する最先端の教育機関なのかなと疑問に思ってしまうようなことがたくさんあります。

 国立大学の施設整備の予算は大きく不足をしているところでございまして、必要な整備が行えない状況にあると思っておりますけれども、この世界最高水準の教育研究の環境を整備し、日本の未来をしっかりと切り開いていく投資が今こそ求められていると思いますが、大臣の御決意をお伺いさせていただきたいと思います。

馳国務大臣 昨年末、私も、ノーベル賞を受賞された名古屋大学の天野教授の研究施設を視察してまいりまして、びっくりしました。研究設備の間を学生もなかなか通り抜けすることができないような狭隘な環境で、極めて老朽化しておりまして、こういう環境の中でいわゆるノーベル賞に向けた研究が日々行われていたのかと思うとぞっといたしました。

 したがって、ちょっと調べてみましたが、昭和四十年から五十年代にかけて整備が行われた施設が多い、そして近年は耐震対策を優先的に措置してきた結果として現状老朽化が進行している、こういうことでありますので、実態を踏まえて、やはり国立大学の研究施設、設備も含めて、更新に向けて取り組みたいと思います。

浮島委員 ありがとうございます。ぜひとも全力で進めていただきたいと思います。

 またもう一点は、私立学校の耐震化、これがまだまだ国公立に比べると大変おくれていると言わざるを得ません。でも、国公立か私立か、設置者の違いによって子供たちの安全確保の状況に差があったり、それが放置されることがあってはならないと私は思っております。

 その意味から、国公立の学校の耐震化がおおむね完了したことを踏まえると、可能な限り私立学校の耐震化対策を加速化させなければいけないと思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

馳国務大臣 私立学校の耐震化率は、高校などで八三・五%、大学などで八七・六%と年々向上してきてはおりますが、国公立学校に比べるとおくれております。

 早期完了は喫緊の課題であると認識しております。可能な限り早期に耐震化が完了するように、各都道府県や学校法人とも連携して、耐震化の促進に全力で取り組んでまいりたいと思います。

浮島委員 子供たちの命に違いはありませんので、全力で取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、先般の二月五日の予算委員会で、私も馳大臣そして総理にも御質問させていただきましたけれども、所得連動返還型奨学金についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今、総理が出生率一・八とおっしゃっておりますけれども、それを達成していくためには、今現在困っている人たち、やはりそこをしっかりと何かしていってあげなければ、サポートをしてあげなければいけないのではないかと思うんですけれども、やはり現場の声を聞きますと、御結婚なさっていて、若い御夫妻で、二人とも奨学金を借りた、二人とも今返済をしなければならない、ちょうどその年代というのが子供を持ちたいという年代である、だけれども、子を持ちたいんだけれども、二人とも奨学金を返済しているので、とてもしんどくて持つことができないという、たくさんのお話をいただきました。

 そこで、先日の予算委員会でも、大臣の方も、奨学金の返還に係る不安、負担を軽減し、安心して進学できる制度となるよう検討を行ってまいりたいとおっしゃっていただきました。また、総理の方からも、奨学金事業を実施していくために財源確保がまさに課題ではあるけれども、今後とも、家庭の経済事情に左右されないように、できる限り、そういう社会をつくっていくために、これからも努力をしてまいりたいと思いますという御答弁をいただいたところでもございます。

 そこで、再度大臣にお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、現在の制度でも、所得状況によって返還の猶予が行われていると思います。でも、何らかの形で、平成二十九年度進学者以前に奨学金を貸与された方に所得連動で返還できる制度をぜひとも考えていただきたいと思いますけれども、大臣の御見解をお伺いさせていただきたいと思います。

馳国務大臣 平成二十九年度から始まる制度については今検討中でありますが、その検討課題の中に浮島委員指摘の案件も入っているということでありますので、当然、財源確保の問題等も含めて検討を進めてまいります。

浮島委員 ありがとうございました。

 検討課題に入れていただいているということでございますけれども、しっかり検討して、そして実現に持っていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

谷川委員長 次に、郡和子君。

郡委員 おはようございます。民主党の郡和子でございます。

 冒頭、東京オリンピック・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場が聖火台の置き場がない状態で設計され、そして、消防法上設置できない可能性があるということがわかった。そのことをめぐって責任のなすり合い、聖火台、誰のせいか。

 オリンピックの象徴である聖火とそれを安置する聖火台の置き場所など、これはもう設計当初から重要事項の一つとして組み込まれるべきものであると私は思っておりました。不採用だったB案には聖火台は設定されていたということであります。

 解体された旧国立競技場の聖火台は、実は今、宮城県石巻市の総合運動公園にあって、復興のシンボルとして二〇二〇年の三月まで貸与されております。このニュースが明らかになった中で、今月の六日、子供たちも参加して聖火台をきれいにお掃除して、初めてバイオメタンガス、これを燃料にした火がともされました。金メダリストの室伏選手も駆けつけてくださっています。

 石巻市は、二〇二〇年の東京オリンピックの聖火リレーの出発地として名乗りも上げております。聖火台の火をバイオガスでともした前例はないわけなんですけれども、二酸化炭素の排出削減にもなって、ぜひバイオガス聖火で被災地から循環型社会を世界に発信したいという願いもあったというふうに聞いております。ところが、肝心の競技場で聖火台の場所がなかったというのですから、子供たちの思いは大変複雑でございました。

 新国立競技場の総工費一千四百九十億円とは別に聖火台の建設費がかかるのか、そしてまた一体どこにつくられるのかなど、またしても混乱が続いております。聖火台に関するワーキングチームが立ち上がったということですけれども、問題が指摘されて慌てて後づけで検討会を立ち上げる、大変ずさんだというふうに言わざるを得ないと思います。いつこれがはっきりするんでしょうか。

 また、少し長くなりますけれども、これだけじゃないと私は思っているんです。

 新しく決まった国立競技場のことで、コンセプトは木と緑のスタジアム、スタジアムを取り囲む各階層にテラスがあって、そこにふんだんに緑が取り入れられることになっています。屋根にも多くの木材を用いている。コスト削減と工期短縮を図ったということで採用になったということのようです。

 しかし、維持管理費についても明らかになっていないんですね。選定時、採用されたA案は、維持管理費の抑制という項目で四十四点でありました。採用されなかったB案は五十点で、この点についてははるかにしのいでいたということです。維持管理費抑制は、設計上の工夫、かなり詳細にA案も書かれているんですけれども、A案には、具体的な毎年の維持管理費、長期修繕費が一体どのぐらいかかるのかということも明らかにされておりません。

 この辺について、維持管理、修繕費、どのように見積もられているのか、聖火台の今後の見通しとあわせてお答えいただきたいと思います。

馳国務大臣 三つに分けて答弁させていただきます。

 一点目、事実関係をまず報告します。

 この聖火台に関してでありますが、まず、ザハ案、従前の計画のときは、二〇一九年ラグビーワールドカップまでに完成する前提だったので、聖火台を含めて二〇二〇年東京大会のために必要な追加工事を組織委員会が検討し、実施する方針であり、したがって、ザハ案のときには聖火台に関する計画、予算積算はなかったというのがまず一点目。

 それから、今回の新整備計画以降についてのことですが、白紙撤回後の新計画では、当初は二〇二〇年春の完成見込みであったため、二〇二〇年東京大会時に必要な追加スペックを組織委員会からの要望に基づき設計段階から盛り込むこととしました。実際に、例えばオリンピック時のカメラ取材の場所となるモートなどは要求水準にも盛り込まれ、事業者からの技術提案にも含まれております。

 しかし、聖火台については、開会式、閉会式のセレモニーとも密接に関連する事柄であるため、セレモニーの内容が決まっていない設計段階では対応困難との理由などにより、技術提案の要求水準に盛り込むことは見送られ、後日検討する課題として整理をされてきたものであります。

 したがって、今後でありますが、聖火台については、先般、三月三日でしたか、調整会議を行いまして、今後、各団体が協力をし、検討し、早急に結論を得るということになりました。そのいわゆる責任者は遠藤オリパラ担当大臣でありますが、遠藤大臣のもとで、あらあらの聖火台のあり方については五月の連休前にはやはり決めようじゃないか、こういう方針にまず決まったということをお伝えしたいと思います。

 それで、維持管理などについての、二つ目のお答えではありますが、今、具体的にお示しをする数字は私の方ではまだ持ち合わせておりません。

 今後、建設をされ、そしてオリンピックが終わった後の管理運営をどうするかということについては、今、冨岡副大臣のもとで検討チームをプロジェクトチームとして発足させました。それは、ことしの八月までに、どういうふうな管理者、管理の主体、そして運営をどうしていくか、そのことについては民間からの提案も含めて検討していこうというふうになっておりますので、その検討段階において、最終的に、維持管理費、ランニングコスト、今後どうなっていくのかということについての見通しが示されるもの、こういうふうに考えております。

 以上です。

郡委員 今の大臣の御答弁で、聖火台の建設費というのが加わってくるのであろうということだと思いますし、今、ランニングコストについては全く計算ができていないということでありました。

 スタジアムを緑で装飾するというような案でありまして、新国立競技場は、オリンピック開催のためだけに建設するものではありません、できれば百年以上国民に愛用され、後世に、当時をしのばせるレガシーの役割を担う象徴的な建造物と位置づけられていたと承知しております。

 とすれば、建造物の装飾に、直截的に生物である植栽を取り入れた際に、付随して生じるであろう時間の経過に伴う変化など、構造物の将来像を類推して採用されたかどうか、こういう疑問を話される方も少なくありません。というのも、植栽した植物、これがいかなる種類の樹木であろうと、あるいは草花であろうと、スタジアムに導入するとなれば、散水や給水のシステムも組み込まざるを得ないと思いますし、また、植物付着の病原菌、昆虫、ダニ類の除去にも経年で取り組んでいかねばならないことになります。

 最近は、蚊に由来する感染症にも大変大きな関心が集まっていて、防除するのにも苦労されているというふうに思われますけれども、大勢の人が集まるところだけに心配もあります。その影響も含めて、維持管理の検討など、しっかり行っていただきたいというふうに思うんです。

 日本スポーツ振興センター、JSCでは、独立行政法人は一般的に独立採算を前提としないために、法人の業務の実施に必要な資金として、国から運営費交付金や施設整備費補助金等が措置されているとして、国立競技場の管理運営費について、赤字になった場合は国が責任を持つとしているんですよ。長期修繕費についても国の資金を当てにしているということだと思います。

 速やかに、維持管理にかかる費用、これを提出していただきたいというふうに思います。これは要望にさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 何かこの点で御発言があれば。

馳国務大臣 基本的な考え方は、私は、郡委員のおっしゃることはそのとおりだと思っていますので、先ほどもちょっと申し上げましたが、八月までに冨岡副大臣のもとで検討するプロジェクトチームでは民間の提案も含めて、また、与党自由民主党からも強く言われているのは、維持管理費等について国費を投入するということがあってはならないという、結構きつい言葉で指摘をされておりまして、したがって、民間からの提案も含めて、これは丁寧に対応していかなければいけないと思っています。

 東京都においてもあのエリアは極めて重要なエリアであるということは委員も多分御承知だと思います。現在、スポーツクラスターという構想も特区構想として検討中のようでありますから、したがって、いわゆるステークホルダーがたくさんおられる中で、十分にやはり配慮していかなければいけないのであって、建てたはいいけれども、その後の維持管理に国費が過大に投入されるようなことがあってはならないということを前提に、同時に、有効に活用されるように、またレガシーとして残っていくように整備されること、このことを基本的な考え方として踏まえて取り組んでまいりたいと思います。

 最後に申された提出という話でありますが、数字については、こういう検討を踏まえて積算をされていくものと思っておりますので、しかるべきタイミングにおいて提出できるように努力をしたいと思います。

郡委員 私たちもしっかりとチェックをさせていただきたいと思いますので、それに関する資料、随時お出しいただきたいと思います。

 それから、質問項目には入れておりませんでしたけれども、野球賭博問題で新たな事実が判明をいたしました。現役の選手、また一人かかわっていたということでございまして、首脳陣が辞任の意向も伝えているということでございます。シーズン目前のことで、またこんなことがあったのかと大変ショックを受けております。

 馳大臣からも、野球ファンの信頼をおとしめてしまったのですから、真相解明、対応についてどのようにされるのか、一言いただきたいと思います。

馳国務大臣 きょうの報道であった選手については私の高校の後輩でもありまして、大変残念に思っておりますし、申しわけないような気持ちも持っております。

 同時に、まず、球団として自浄能力が本当に働いていたのかどうかということを強く指摘せざるを得ませんので、今般の事案にかかわっている選手がまだいるとするならば、正直にやはり話をして、そして球団においても、また日本プロ野球機構においても適切な処罰がまずされるべきだ、私はそういうふうに思っています。

 私がああしろこうしろと言うのはなかなかできない関係性にはありますけれども、スポーツ振興を所管しているという文部科学省の立場からすれば、事実関係をまず明らかにし、それによって球団自身、そして日本プロ野球機構自身が、ルールがありますから、そのルールにのっとってまず処分、処罰がされる、その上において再発防止に向けて取り組む、この姿勢を示して、やはりその報告も国民に対して示していただきたいと思っています。

郡委員 ぜひ、子供たちの夢を壊さないように、御努力をいただきたいというふうに思います。

 それでは、予定していた質問に戻ります。

 教職員の数の問題を取り上げさせていただきたいと思うんですけれども、教育現場においては、臨時、非常勤の教職員が十八万四千人にもなっているという調査結果もあるようです。五人に一人が非正規。臨時、非常勤職員なしに一日たりとも教育活動が成り立たないというふうな声も聞くところです。代替要員が見つからずに教育に穴があく状況に認識を持って、実態把握と適切な対応を求めたいということをまず冒頭申し上げます。

 年末の予算折衝で、学校の統合が鍵になったようでございます。統合すれば自動的に学級数が減って、基礎定数が減っていく。来年度中にこれまでの想定よりも百五十校減少することを見越して、基礎定数は、財務省の求めよりも削減幅が大きい四千人減で合意、加配定数では、文科省の顔が立つ五百二十五人増で折り合ったということです。

 財務省からエビデンスを強く求められているようなんですけれども、そして文科省もエビデンスをどういうふうに見ていくのかという研究事業を始める方針だということですけれども、そもそも、少人数学級や教職員定数の増加による効果の評価というのは、定量的な分析だけで事足りるのかという問題があると思っています。そういう意味でも、果たしてエビデンスと言えるのかどうか。財務当局や一部の有識者の理屈でこれまでも文科省の要求をはね続けてきたわけですから、今さらエビデンスを出せというのは話の筋が通らないんじゃないかと思って私は聞かせていただきました。

 この件で聞きたいこと、言いたいこと、たくさんあるんですけれども、きょうは一問だけにさせていただきます。被災地の加配の問題です。

 阪神・淡路大震災の折は、六年で加配がストップされました。今回の東日本大震災の加配も、来年が六年目に当たります。その次、これを切るというようなことがないようにしていただきたい。今、被災地の教育現場は大変な困難がまだ続いているという認識を持っていただいて、ぜひ頑張っていただきたいと思いますが、いかがですか。

馳国務大臣 まず、教職員定数の加配措置について、これまで関係県からの申請どおり措置してきております。

 文科省としては、被災した児童生徒に対する学習支援や心のケアについては、中長期的に継続した対応が必要であると考えております。平成二十八年度予算案においても、前年と同数の一千人の加配措置を計上しております。

 今後とも、被災地からの要望などを踏まえて、息の長い支援に努めてまいりたいと思います。

郡委員 ぜひよろしくお願いいたします。私どもも大臣の後押しをさせていただきますので、お願いいたします。

 次は、奨学金の問題について質問いたします。

 報道でも取り上げられましたけれども、労働者福祉中央協議会、労福協が、二月二十九日に、昨年の七月から八月に、働いておられる方々に実施した奨学金に関するアンケート調査、この結果を発表されました。資料としてきょうお配りをさせていただいております。

 その中で、奨学金の返済が生活設計にも影響を及ぼしているかどうかについて尋ねていて、三十四歳以下で、貸与型奨学金を利用した方で見ますと、仕事や就職先の選択で二三・九%、結婚では三一・六%、出産で二一%、子育てで二三・九%、家を持つかで二六・五%というように、多くの方々が影響しているというふうに答えております。

 そのほか詳しいところは見ていただければというふうに思いますけれども、自由記入欄に記載された声もかなり深刻なものがございまして、私も、胸が痛くなるような気持ちで読ませていただきました。

 今、大学生の二人に一人が奨学金という名前のローンを利用して、数百万円の借金を背負って社会に出ていくわけです。就職できても不安定雇用や低賃金で返済に苦しんでいる。無理を重ねて返している人も結婚や出産にちゅうちょしてしまう。こういう事態が放置されれば、少子化、人口減に歯どめがかからずに、社会の持続性そのものが危惧されるのではないか。こうした認識に立って、奨学金問題の改善に本腰を入れて取り組んでいただきたいというふうに思います。

 大臣の御所見を伺います。

馳国務大臣 御指摘のアンケート調査結果については承知をいたしております。

 大学等の奨学金事業については、返還金を次の奨学金の原資として活用することにより、限られた財源の中で、奨学金を希望する学生を幅広く支援しており、貸与を受けた奨学金については返還していただくことが基本であると考えております。

 とはいいながら、さまざまな事情により卒業後厳しい経済状況に置かれ、奨学金の返還が困難な者に対しては、従来から、毎月の返還額を減額し長期間かけて返還する減額返還制度や、経済困窮による返還期限猶予制度により対応してきたところであります。また、平成二十六年度から、経済困難を理由とする返還期限猶予制度の年数制限を五年から十年に延長し、延滞金の賦課率の一〇%から五%への引き下げなどの救済措置の充実を図っております。

 さらに、平成二十九年度進学者から所得連動返還型奨学金制度を導入することを目指し、制度設計及びシステム開発を行っているところであります。

 政権も、一億総活躍社会、こういうふうに方針を示しておりますので、これまで以上に奨学金制度の拡充にまた取り組んでいかなければいけないと思って取り組みます。

郡委員 今、大臣からも、基本は返さなくちゃいけないけれども、でも、なるべく利用しやすいようにという前向きの御答弁をいただいたというふうに思っております。

 貧困の連鎖ですとか少子化に歯どめをかけるためにも、ぜひ、給付型の奨学金制度の導入ですとか無利子奨学金の拡充を前に進めていただきたい、そのように考えているところです。

 あわせて、奨学金を借りている方々の返済の負担をいかに軽減していくのかということもとても重要です。先ほど浮島先生の質問にもありましたけれども、大臣も所信で触れられていました、新たな所得連動返還型奨学金制度について質問させていただきます。

 現在、文科省では、来年の四月の導入を目指して、すなわち、ことしの四月以降、高校生の奨学金の予約募集に間に合わせるというスケジュールで、有識者会議が三月末にまとめを行うというふうに伺っております。

 私も、二月十日に公表されました第一次まとめ、素案というのを拝見させていただいたんですけれども、非常に問題の多い内容だなというふうに率直に思いました。

 一番驚きましたのは、年収ゼロでも月額二千円から三千円支払わせようという方向で検討されているということです。二千円から三千円程度だったら支払えるはずだというお考えのようですけれども、特別な資産がない限り返済することは不可能ではないでしょうか。低所得者の二千円、三千円というのは、数日の食費に相当する額であります。そうした実態や返済者の生活実感をわかって議論されているのかという問題意識です。

 有識者会議のメンバーを見てみますと、研究者と金融機関の方だけで構成されています。奨学金利用者の立場を代弁できる人は参加されておりません。返済当事者からの実情をどのようにヒアリングを行って、それが議論にどう反映された結果このような結論になっているのか、お教えいただきたいと思います。

 また、パブリックコメントに付されたということですけれども、そこではどのような意見が出ていたのでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 所得連動返還型奨学金制度につきましては、現在、有識者会議で検討を行ってございます。

 その中で、今御指摘ございましたけれども、有識者会議のメンバーにおいて検討をした今の段階でのまとめの資料につきましてパブリックコメントを行わせていただいているという状況でございます。このパブリックコメントにつきましては、二月の十日から二十三日までパブリックコメントを行わせていただきましたが、計四百三十件の意見をお寄せいただいたところでございます。

 検討事項の各論点ごとにさまざまな意見が寄せられたわけでございますが、素案の方向性に賛成される意見のほかに、例えば、返還を開始する最低年収は年収三百万円とすべきであるとか、あるいは年収が三百万円を超えるまでは申請なく期限の制限なしに猶予すべきであるとか、あるいは返還免除制度を導入すべきといった内容の意見が寄せられたところでございます。

 こういう御意見をもとにして、さらに検討を進めてまいりたいという状況でございます。

郡委員 原案を支持する意見と反対の意見がどのような比率であったのかということについては具体的に答えていただかなかったわけですけれども、利用者サイドからの実情それから意見を聞くことなく結論を出そうというのでは大いに問題だというふうに思っています。

 お配りした資料ですけれども、先ほどの中央労福協の調査では、年収三百万円未満だと返済が苦しいとの回答が、正規労働者でも五割前後、非正規労働者では六割に達しています。

 所得連動返還型奨学金制度というのは、諸外国の例を見てみますと、それ以下の所得の人には返還を求めないという閾値が設定されているのが普通で、例えばイギリスでは年収が二万一千ポンド、日本円にしますと年収三百七十八万円、オーストラリアでは五万三千三百四十五豪ドルですか、およそ五百七万円というふうになっています。

 現在の制度でも、日本でも年収三百万円以下、給与所得者以外は二百万円以下ということのようですけれども、返済の猶予が認められているのですから、この閾値というのは少なくとも三百万円以上とすべきではないでしょうか。どうでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 有識者会議の第一次まとめの素案でございますけれども、この素案におきましては、返還猶予が可能となる年収といたしまして、年収三百万円以下の方を対象とするという方向性が示されております。

 これは、返還猶予の申請が可能となる年収の基準は現行と同じく三百万円とするという趣旨でございまして、現行制度より厳しくするという方向での検討ということではございませんので、その点、御理解いただければと思ってございます。

郡委員 そもそも、この返還猶予の救済制度の認知度というのはどれぐらいだか御存じでしょうか。奨学金の利用者の中でも、驚くほど低いんですね。

 先ほどの労福協の調査でも、利用者の三割以上は返済猶予制度があることを知らずに返済していることが明らかになっています。対象を延滞者に絞りますと、さらにこの認知度は低くなっています。日本学生支援機構の平成二十六年度の調査では、延滞督促を受けてから初めて知ったというのが四四・一%、知らないの三五・七%と合わせますと、何と八割が、猶予制度があるということを知らないまま延滞に陥っているわけです。

 こうした実態の中で、申請しないと猶予しないというスタンスでは、真に救済を必要とする人ほど救済から漏れる危険性が高いというふうに思いますけれども、大臣はいかがでしょうか。マイナンバーで所得を把握する構想のようですけれども、であれば、申請をすることなく返還を猶予すべきじゃないか、そういうふうに思いますが、いかがでしょう。大臣にお答えいただきたいと思います。

馳国務大臣 まず、十分な事前の周知といったものは今まで以上に必要だと私は思っています。

 猶予制度、減免制度があるんだということを前提に、借りたら、将来の返済の計画を、やはりアウトラインをみずからが持ちながら、もちろん保護者も持ちながら借りるという、まずここの大前提が重要だ、こういうふうな認識でおります。

郡委員 それでは、局長からまた御答弁いただきたいと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 返還猶予を受けるために申請ということが必要となるわけでございますけれども、その事実関係について御説明をさせていただきたいと思います。

 さまざまな事情により卒業後厳しい経済状況に置かれまして、奨学金の返還が困難な方々に対しましては、従来から、先ほどお話ございましたが、減額返還制度であるとか返還期限猶予制度により対応してきたところでございます。

 返還期限猶予制度の内容や手続につきましては、借りた方々に対して、幾つかの段階でそれぞれそういう返還猶予制度があるということについての御案内を差し上げてございます。

 一つは、奨学金の貸与が終了した段階で、奨学金の貸与を受けた方々全員に配付する返還のてびきというものの中でお示しをしていること。それから、実際に返還が開始される、その直前に貸与終了者全員に郵送する文書がございまして、そこでもお示しをしてございます。また、毎年、既に返還中の方々に、これも全員でございますけれども、郵送する奨学金返還の振替案内というものがございますので、そこでも記載をしているというようなことで取り組んでいるわけでございます。

 ただ、一方で、今御質問にございましたように、返還期限猶予制度を認知していない者が大勢いらっしゃるという御指摘があるのも事実でございますので、文部科学省としては、先ほど大臣からお答え申し上げましたとおり、今後、さらに周知が図られるように工夫をしながら必要な取り組みを進めてまいりたいというふうに考えております。

郡委員 時間もなくなってきたので質問しておきますけれども、年収三百万円以下であれば、申請すると猶予は必ず認められるんでしょうか。

 日本学生支援機構の顧問弁護士が、猶予が不承認とされた、平成二十六年に提訴された裁判なんですけれども、その裁判で、どのような場合に猶予を認めるかについては、猶予する者、つまり学生支援機構のことですけれども、その裁量の範囲内というふうに主張しています。

 そのような裁量というのは認められるのかどうか、明確な答弁をお願いします。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 経済的困難を理由といたしました返還猶予につきましては、日本学生支援機構法第十五条第二項及び同法施行令第六条に基づきまして、文部科学大臣が認可する日本学生支援機構の業務方法書第二十四条において、「その他真にやむを得ない事由によって返還が著しく困難となったとき。」、給与所得者は年間収入金額が三百万円以下ということでございますが、返還の期限を猶予できるということが定められております。

 そういう点で、日本学生支援機構におきましては、その業務方法書において、日本学生支援機構法であるとか、あるいは民事関係法令の適用の考え方に基づいて制度を定め、運用しているという状況でございます。

郡委員 今、大臣認可の業務方法書の規則にのっとってということだと思うんですけれども、機構は、二〇一四年十二月、返済期限猶予制度の運用に関する取扱要領を理事長決裁で決めているんです。時効を主張した人や機構が法的手続をした人には延滞据え置き型猶予を利用させないこととしているんです。さきの裁判では、本人が猶予申請をしたのが十一月だったんですけれども、この十二月に決めた取扱要領を四月にさかのぼって適用するというふうにしたために、後出しじゃんけんのような運用で猶予が受けられなくなっています。

 なぜこのようなことができるのか。機構の弁護士が主張するように、機構の裁量によるということなのかどうか、改めてここを確認させてください。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申しましたように、日本学生支援機構におきましては、日本学生支援機構法、また民事関係法令の適用の考え方に基づいて制度を運用しているということでございます。

 その中で、先ほどお話がございましたように、具体的には、これは、現状を整理して、理事長決裁ということで取扱要領を定めて、その中で消滅時効が援用された奨学金に係る扱いについて定めて運用を行っているという状況でございます。

郡委員 少なくとも、日本学生支援機構の裁量による利用制限を認めず、猶予制度の利用は権利であることを法律で明確化すべきじゃないでしょうか。そして、救済制度の適用が不承認となった場合に第三者の方が審査できるなどの仕組みが必要なんじゃないかということをここで指摘をさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、救済制度があることを知って申請にたどり着いても、認められるかどうかは学生支援機構の裁量次第というのでは、救済制度として全く機能しない制度になってしまうというふうに思いますので、ぜひ再考していただきたいと思います。

 それから、幾つか質問を予定させていただいておりますけれども、ちょっと質問予定を飛ばせていただきます。

 取り上げてきた問題のほかにもたくさん課題が山積しているというふうに思っております。今回の議論で未消化な部分、検討課題で指摘されている事項などについて多くの方々から意見をお聞きになって、再度、利用者本位の制度をじっくりとつくっていくべきだと考えますけれども、大臣、いかがでしょう。

馳国務大臣 運用に当たっては、こういったさまざまな御意見、パブリックコメントも含めて検討をさせていただきます。

郡委員 いずれにいたしましても、返済困難の多くの原因は雇用の不安定化、低賃金だということだと思います。そうしたリスクを軽減して、雇用の安定化、賃金の引き上げ、これを進めない限り返済困難者が今後もふえ続けて、その救済に一定の公的支援がなければ本当に厳しい状況になるということです。人口減少、少子化、社会の存続そのものを危うくするというふうに思っているということを重ねて申し上げて、そうした観点から、この制度、さらなる予算の拡充、そして十分な議論をお願い申し上げ、質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

谷川委員長 次に、平野博文君。

平野委員 改めて大臣のもとで質問を、二回目になりますが、よろしくお願いをしたいと思います。民主・維新・無所属クラブの平野博文でございます。

 さて、きょういろいろな先生方の御質問、さらには、この国会で予算委員会等々いろいろな話を聞いておりますと、やはり共通していることは、未来を担う学生諸君の負担が非常にふえてきているんだ、家計を圧迫しているんだ、こういうことで、それに対する国の支援策を何とか考えてほしい、こういうことに共通的に尽きるような御質問が多い。それだけ国民各層がそういう思いでいるんだろうというふうに私は拝察をいたしました。

 また、きょう、郡さん、浮島さんを含めて、やはりその問題についても指摘されましたので、私もその部分については用意をしてきましたが、若干の部分に絞りまして、基本的なところを少しお話を伺いたいと思います。

 国家百年の大計というのはやはり教育にあるんだ、こういうことをよく言われてまいりました。しかし、現実の教育というのはどういうふうに今なっているのか。非常に難しい問題でありますが、百年の大計といいますけれども、では、百年先を見据えて今の教育はどうあるべきかという議論を、本当に、文科省を含めてそういうところを十分に掘り起こしてやっているのかな、これは非常に私疑問に思います。

 百年なんということは言いません、私ももう死んでおりますから言いませんが、まあ、三十年先というふうに言っても死んでいるかもしれません。したがって、馳大臣の人生観を含めて、また、今現職の文部科学大臣として、大臣、日本はこれから三十年後、どういう日本の姿になっているんでしょうか。その辺、大臣自身、どういう日本を思うから今私はこういう文科行政をやっているんだというふうに私はお聞きしたいんです。

 まず、三十年後の日本というのはどんな日本になっているかということを大臣自身は想定をされているんでしょうか。

馳国務大臣 ことしが二〇一六年でありますので、三十年後は二〇四六年。

 私は、やはり国家として教育のことを考えるという観点で御質問いただいた以上、まず、人口動態は考えざるを得ません。

 二つ目には、近隣諸国を含めた世界の情勢がどうなっているのかという尺度は必要だと思っています。

 三点目は、地球全体、環境問題を初めとして、また宇宙、海洋、こういった、なかなか日常生活においては意識はしていないけれども、放置をしておいたら大きな悪影響を及ぼしてしまったり、あるいは、人類が生き延びるために必要な知見を得られるような事柄についての基礎研究を進めながら、やはり末永く、日本国ばかりではなく、世界人類が共存共栄していけるような取り組み、こういったことは必要だと思っています。

 たまたま、先週、岡山でのG7教育大臣会合のサイドイベントであるこどもサミットに行ってまいりまして、その提言もいただいたところであります。そこで、私は、子供たちからいただいた提言も見ながら、大体僕と考えていることは同じなのかなということの理解をしたつもりでおります。

 一つには、もちろん自分の能力を教育の力によって開発をすることはもとより、他者に対しての理解を促進し、やはり平和な国家や、国と国の協力関係を含めた平和な地域、世界全体が平和であるように、こういうことを願う思い。

 二つ目は、誰もが生まれたときの状況においていろいろなハンディがあると思います。所得の差であったり家族関係であったり、さまざまでありますが。しかし、そのハンディを教育の力によって乗り越えていこうとすることができる公平な競争環境であったり、また、義務教育、基礎教育に参加することのできる環境整備、こういったことが必要だというところであります。

 あえて三点目を言えば、私も、スポーツや文化芸術活動を通じて大きなモチベーション、意欲、そして前向きな気持ちにさせてもらっています。子供のころもそうでありました。したがって、こういった活動を公的な支援によって体験することのできる環境づくり。

 これを教育の力として推進していくことが重要である、こういうふうに私は思っています。

平野委員 大臣がおっしゃられた視点、これはもう馳大臣がそう思っているということですから、中には、私もそのとおりだなというところはるるあるわけであります。

 そういう中で、視点を見たときに、一番大事なことは何なんだろうかと思ったら、やはり人口動態ですよね。これはもう明らかに、三十年後、二〇五〇年前後については、今の統計、シミュレーションでいくと一億人を切る、こういうシミュレーションになっているんですね。一億人を切ってくるということは、日本の活力というのは、人数が減るわけですから活力が落ちるということはもう間違いのない事実です。

 だけれども、活力が落ちていくということは日本の国力が落ちていくということにつながるわけですから、落とさないようにするためにはどんな人材が要るんだろうかということは当然必要になってくる。

 一方、人口動態ですから、若い人ばかりがふえている一億人なのか、いや、お年寄りがふえて、担い手となる次の若い人が少ないのか。

 今、統計的にいったらどうなんでしょうか。お年寄りを支えている現役世代というのは、三人で一人を支える、これが、二〇五〇年ぐらいになると、一人の働き手が一人のお年寄りを支える、一、一で、肩車をして支えていく。今は騎馬戦で支えているというこんな状態なんでしょう、多分、想像するに。

 そうすると、一、一で支えていくために、どんな人材が一、一で支えられるんだろうかということをやはりしっかりと私は見据えておかないといけない。そういう意味で、私は、今、三十年先を考えましたが、今度は過去にさかのぼって、三十年前はどうだったんだろうかということをずっと見てみました。

 三十年前というのは、例えば働く担い手の領域でいきますと、どのぐらい働いていたのかなということを考えますと、大体四千四、五百万人が労働人口でした、数字をちょっと調べたんですけれども。そのときに、非正規という働き方、どのぐらいの人が非正規なんだろうというふうに見てみました。そうすると、大体一五、六%でありました。

 三十年後に近い今日はどういう状態になっているかというと、労働人口で大体五千三百万人ぐらいになっていますが、非正規が大体四〇%にふえていっている、こういう状態なんですね。

 そうすると、この状態がこれから三十年後にどんな状態になっていくんだろうか。ここは、私はまだよくわかっていません。しかし、間違いなく、減るということにはならないんだろうというふうに思うんですね。その中で、正規の労働人口というのはほとんど三千万人ぐらいで、ほぼ一定ですよ。非正規が一六%から大体四〇%まで膨らんだ、このことをしっかり見ておかないといけないんだろうというふうに実は思っています。

 そんな中で、私、三十年前というのはどうなんだろうと。三十年前といったら、馳大臣、幾つのときですか、三十代ですか、三十ぐらい……(馳国務大臣「二十代です」と呼ぶ)二十代。そのころはどんな我が国だったんだろうな、こういうふうにちょっと調べてみました。ちょうど、八六年ぐらいというのは、バブルの……(馳国務大臣「バブル全盛のころです」と呼ぶ)そうですね、景気の時期でした。

 一方では、少子化が少しずつ出てきた、こういうときで、数年後の八九年ぐらいに一・五七ショックというのが出てきた時代なんですね、三十年前。

 よく財務省と文科省の闘いみたいにここはなっていますけれども、財政面で見たらどういうことかといったら、七五年ぐらいから特例公債を発行し始めたんですね。それまで発行していないんですよ。発行し始めた。それで、公債依存度がずっと高まってきたものですから、財政再建ということをうたわれたんですが、バブルが来たために公債発行がいっときはとまったんですが、また急激に膨らんでいった時代の変遷を経ているんですね。

 先ほど、大臣、いみじくも言われた、世界の状況というのはどうなんでしょう。こういうことを見ますと、ソ連の崩壊を含めてアメリカ一国の秩序、こういうところ、あるいは紛争の拡散等々がずっと、世界の動きがこの辺から動き出したことも事実です。これがちょうど三十年前ですよ。

 したがって、今いろいろな問題が起こっている要因というのは三十年前にもう芽生えている、このことをやはりしっかり踏まえておかないといけないんだろう、こういうふうに思うんです。

 一方、日本の生活様式、これも大きくやはり変わってまいりました。

 特に、きょうは文教ですから教育面について申し上げますと、その当時というのは学歴社会でしたよ。大学に行きなさい、行きなさいという発想で、進学率がどんどん膨らんでいった時代。あの当時の進学率で申し上げますと、三十数%だったんじゃないでしょうか。今、進学率は五十数%でしょう。こういう時代。また、教育部門でいったら、詰め込みではいかぬぞというので、ゆとりという概念をそこへ入れていった。ゆとりを入れたんだけれども、どうしても学力が落ちてきたので、ゆとり教育を転換してきた、こういう変遷をしていると思うんですね。

 一方、大臣が二十代とおっしゃいましたが、この三十年間、特に、公教育と言ったらいいんでしょうか義務教育と言ったらいいんでしょうか、教育というふうに言った方がいいのかもしれませんが、どのように、そういう変化の中で教育に変化を求めてきたのか、あるいは教育政策をそういう変化の中で追求をしてきたのか、推進をしてきたのか。あるいは、そのベースになる基礎教育でいきますと、カリキュラムでありますとか学校の整備の関係をどういうふうにやってきたのか。

 この三十年でどういうふうに時代が変わったのでこういうふうに教育は変えてきましたというところは、大臣から見たらこれだとあれば、長くは要りません、二、三、言っていただいたらいいと思うんですが、どうでしょうか。

馳国務大臣 三つのキーワードだけで申し上げたいと思います。一つがゆとり教育、もう一つが緩み教育、もう一つが教育再生、こういうふうにこの三十年間を私なりに総括したいと思います。

 やはり、受験戦争、受験地獄、そして受験だけが人生かと言われていた時代を振り返れば、生きる力ということに対して、総合的な学力が評価されてしかるべきだ、これがまず、ゆとり教育の一つの出発点でありました。

 とはいいながら、私は、そこで教職員も戸惑ったと思うんですよね。どういう教材でどういう教育をしたらいいのか、特に、総合科という科目の場合には、結構現場の教職員や地域に教育内容が委ねられてしまったということもあり、まあ、やゆした言葉だと思いますが、緩み教育というふうに評価されてしまった。

 そこから何か、学力が落ちたという国際的な評価のもとに、ちょっと違った方向で、また逆ねじが巻かれて、つまり、時間を戻せとか、学習指導要領の内容をもとに戻して、取捨選択させながら生きる力を身につけていこうという中から、私は教育再生というふうな言葉が出てきたんだと思います。

 ただ、教育再生という言葉がどの時代にさかのぼって再生なのかということは、私は改めて評価が必要だと思います。私なりに受けとめている教育再生というのは、やはり、一人一人が競争社会の中で自分の能力をさらに伸ばしていくことができる力であるとともに、ともにこの日本という国家において暮らしているがゆえに、競争に参加できなかったり、その競争から落後してしまったり、失敗をしてしまったり、そういう方々に再チャレンジ、また、人権を尊重し、教育の成果を得て社会参加をすることができるようにする、こういう包摂的な考え方のもとに教育再生というふうな流れが今現在できてきているんだろうな、こういうふうに認めております。

平野委員 流れは、大臣のお気持ちはよくわかりました。

 しかし、一方、やはり、国の果たす役割というのは非常に大きいと思うんですが、財政的な部分の担保で大変苦しんでいるというのが現実の実態なんですね。私も、教育を担当したこともあります。したがって、その部分でよくわかるんですが、やはり時代の大きな変化、教育現場の環境も大きく変わっているにもかかわらず、旧態依然とした発想での財政の確保しか現実できていないあり方について、私はやはりしっかりと議論をしておかないといけないと思うんです。

 先ほど、我が党の郡さんからもありました、これは被災地の問題に限定しておりましたけれども、加配というやむにやまれない制度設計で現場を支えているみたいなことはもうやめようではありませんか。

 おっしゃるように、過去三十年あるいはこれから三十年先を考えたときに、やはり、学校の、教育現場の果たす役割、あるいは、この三十年で家庭の教育力というのは、私は随分落ちてきたと思っています。それは、いろいろな要因があると思います。共稼ぎになっている、あるいはいろいろな要因でいわゆる家庭教育が落ちてきている。その部分全部、学校がその役割を担わされている。あるいは、地域社会というのは、核家族になったために、地域の横横の連携が非常に悪くなって、本当に地域全体で次の人材を育てよう、そういう意識が薄らいできている。

 こんなことを考えたときに、私は、改めて根本的なあり方をやはり考えないといけない。

 我々は、政権のときには、三十五人学級という少人数学級を提案し、一部実現をしてまいりました。過去ずっとやってみますと、いろいろやっておられるんでしょうけれども、四十人学級の編制ぐらいじゃないんでしょうか、過去の教員定数という枠組みから見たら、四十人学級を取り入れてきてやってきたというぐらいしかないんですね。

 したがって、これはもう大臣含めてここにおられる、教育にかかわっている議員の皆さん方は、三十年前とはもう全く学校の教育現場というのは変わってきているんだ、変わっているという現場の認識が余りにもずれておるために、加配によってその部分のギャップを埋めているというのが僕は現実の姿なんだろうと思います。

 改めて、私は、これからの国家百年の大計、三十年先を見据えたときに、教員の配置、いわゆる専門職、教職員を含めて、この配置のあり方を抜本的にやはり見直す、いわゆる標準定数のあり方をしっかりと見直していくための土俵づくりをやっていかなきゃいけない、かように思っていますが、またまた財政議論にはまってしまうわけですよ。

 これはもう財政の議論ではない、これからの我が国の次の人材を育てていくための教育環境を大きく変えていくんだ、そのための教員定数のあり方についてぜひしっかり議論しようではないかということを私は思っているんですが、大臣、どうでしょうか。

馳国務大臣 今、平野委員の御指摘を伺いながら、私は前回の義務標準法の改正の議論を思い出しておりました。当時は、与党民主党と野党自由民主党で、少人数学級か少人数教育かで大いに議論をしたものであります。と同時に、あるところでは折り合って義務標準法の改正がなされたもの、こういう認識を持っております。

 私は、加配定数と基礎定数の話は、与野党関係なく、全ての政党、各会派が議論をし直すべき時代であるということを思っております。

 歴史をひもとくと、この加配定数が始まったのは昭和四十五年だったと思います。当時、何人いたか、千五百人ちょっとであります。今現在、加配定数は何人いるか、六万七千人であります。そこにはやはり、時代の背景とともに、やむにやまれぬ加配への振りかえという現実論があったことも私は否定できないと思っています。

 である以上は、少人数学級、少人数教育という一つの切り分けた議論ではなくて、現場において、いわゆる教育困難な状況であったり、あるいは逆に、配置を有効に使うことによってより教育効果を高めることができるという議論のもとにおいて、はっきり言えば、加配の定数の根雪の部分から基礎定数の方に振り分けるほどの大きな議論をすべきではないかと思っております。それこそがやはり、この三十年間の時代背景、国際社会の中での我が国の役割、その中での人材の育成ということを考えたときに、よりきめ細かく、より効率的に人材育成に当たることができる、その環境整備は、突き詰めれば、義務標準法の基礎定数と加配定数の考え方の問題ではないか、私はこういう認識を持っております。

平野委員 ありがとうございます。

 私は、これはもう与野党を超えてこの問題については取り組まなきゃいけませんし、逆に、文科省的に言うと、やむにやまれず加配で手当てをしてきたという側面も現実的ですし、側面じゃなくて、そこにしかもう金が出ないんだ、したがって加配で手当てするしかないんだ、苦渋の選択としてとってきた手だてなんだろうと思います。

 しかし、それは本質論ではない。したがって、やはり本質論をしっかり、これは文科省に、大臣の頑強なリーダーシップでがっと変わるかもしれませんが、なかなか、三十年の歴史を見ていますと、自民党の政権の時代でも変わっていませんから、変わってほしいと思いますが、これはやはり、与野党国会議員が本当に体を張って財源の確保に向けてやらないといけない。

 財務省はエビデンスという言葉をよく使う。エビデンスの問題ではないんですよ、これは。当然、効果というのは要るんですし、目的というのはあるんですが、もっとこれからの日本を、これだけ人口が減っていく、人口動態も大きく変わる、その中でしっかりと担える屋台骨をつくるために、人的に先行投資をやはりするんだ、そのための環境整備、インフラを、教員の配置を含めて、今の、命を守っていくということも大事でありますし、子供さんの教育、育成をしていくというのは、現役がしっかりとそこにサポートしていくような地域環境もやはりつくっていきたいと私は思っております。

 たまたま横に遠藤大臣がおられますが、教育再生会議を主導してこられたわけであります。やはり、現場の実態に合った教育環境をどうやって、国のレベル、地域社会、学校、教員の質的向上を含めてどう配置していくか。私は、特に家庭教育、これは大事だと思っています。なかなか文科省というのは家庭教育には入りたがらない、これはよくわかります、その壁があることも事実。しかし、それを何とか全体で乗り越えて、すばらしい人材をつくっていくんだ、こういうプロジェクトを含めて、あるいはそういう法体系を、教育体系をぜひつくりたいと思っております。野党が主導していいかどうかわかりませんが、与党の皆さんの協力を得ながらしっかりとやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。

 時間が参りましたので、次の問題に行きたいと思っております。

 きょうはオリパラ大臣に来てもらっておりますが、聖火台についてちょっとやろうかなと思ったんですが、先ほど郡さんがやられましたのでもうくどくは申し上げませんが、一言。

 私から見ても、あれはやっぱりチョンボだよ。後づけ言いわけをしているんですよ。当然あれはなきゃならぬわけですから、それを、後づけでいろいろ言いわけを先ほど馳大臣はしておられましたけれども、当然そういうのは頭の中にあったということを言い切れないんじゃないでしょうか。

 遠藤大臣、せっかく来てくれましたから、言いますか。

遠藤国務大臣 お答えいたします。

 平野委員、十分内容等については御存じでありますから、弁解というのは申し上げません。

 ただ、もともと、聖火台といいますか、点火はオリンピックの開会式の最大のセレモニーでありまして、これまでは、どちらかというと一つの聖火台に一人がつけたり、あるいは弓でつけたりというようなことはあったんですが、ロンドンのときなんかは二百五の点火をして、そこで最終的に一つの形になっている。やり方はいろいろあるものですから、セレモニーとの関係で、議論はやはり最後だというふうなことで、実は、御存じのように、ザハ案のときでも聖火台についてはあえて議論はせずに、つくることはつくりますよ、ただし、最後にセレモニーとの関係でつくるということにしておりました。

 それを、私が関係閣僚会議の議長のときにも、正直、そんなに詳しく私も考えていませんでしたが、踏襲をしてあんな形になったんだろうと思っております。

 ですから、これからも、二〇二〇年の大会、七月二十四日のセレモニーのときにどういうふうな形の点火をするか、どの場所でどういう形でやるかということを踏まえて決めなきゃなりませんが、ただ、今回こうした形で議論になりましたので、まずは、内で点火をするか外で点火をするか、そういうことだけは整理させていただきたいと思っております。(馳国務大臣「委員長」と呼ぶ)

谷川委員長 馳大臣。手が挙がっていますので。

馳国務大臣 数字の訂正だけです。

 先ほどの、加配定数の制度が始まったのは昭和四十四年度からであり、今現在は六万四千二百人であります。

 以上です。済みません。

平野委員 資料がありますからわかります、大体。

 遠藤大臣、もうぜひ忘れないで。僕、絶対忘れていたと思うのよ。

 これは事務方に聞いても、いやいや大丈夫です、こんなの後で考えたらいい話ですからと言って、言いわけばかりしているんだけれども、一番、だって、東京オリンピックを開催するについてメーンスタジアムをつくろうということでしょう。当然聖火台というのはあるんですよ。だから、後でごちゃごちゃ言わんと、これについては、冒頭、聖火台についてはいついつこういうことで考えますということが最初のメッセージにあれば何も言うことはないんですけれども、今両大臣からいろいろ言ったって、後づけで言っている話ですよ。やはり完全先づけでないといけませんね、そういう話は。ぜひしっかりとやっていただきたいな、そういうふうに思うところであります。

 さて、私も、持ち時間もだんだん減ってまいりましたが、奨学金に関して少し触れたいと思うんです。

 これも、先ほど冒頭言いましたが、本当に大事なことだし、教育費の負担を軽減する、これがないと、やはり学生が今ほとんどアルバイトをしている、二人に一人は受けている、こんなことでありました。

 私は、出身は和歌山でありますが、石田筆頭と同じところの生まれでございます。選挙区は私の住んでいる実家が選挙区ですから。かないませんけれども。

 奨学金というのは、私なんかが小さいころは、きょう委員の皆さん方はどう思われるか知りません、関西特有のワードかもしれませんが、奨学金もろうてますねんと言いますねや。どうでしょうか、皆、奨学金借りてまんねんと言いません、普通一般的には、奨学金というのはもろうてますねんと言いませんか。言葉と実態と合っていないんですね。普通、奨学金借りてますねんと言いませんで、奨学金もろうてまんねんと言いますよ。

 大臣、大臣は、奨学金というのは、もろうてますねんと言いませんか。どうぞ。

馳国務大臣 私は、理解が早かったのかもしれませんが、奨学金は借りています、借りたものを返す、そういうふうな認識でおりました。

平野委員 大臣だからそう言わざるを得ないんでしょうけれども、私も大臣経験者として、奨学金ってもろうてるね、これが普通一般的にツーカーで言う言葉だと思うんですね。しかし、実態は借りている、それも、高い延滞金なんという利息をつけられて借りている。教育ローンですよね。

 だから、名は体をあらわすということですから、今、これを何とか改革しようとしておりますから奨学金でいいんですが、やはり教育ローンですよ。それの方が、大臣、正しくないでしょうか。

馳国務大臣 私は、制度を御理解いただければいいと思っているんですよ。

 やはり借りているものを返す、延滞金も払う、そして、それが新たな学生さんのいわゆる経済的負担を軽減することにつながる、これはまさしく循環型の制度ということでありますから、私は、多くの方に借りていただきたいし、そのためにも借りたものはちゃんと返していただきたい、原則はやはり守っていただきたいと思っています。

平野委員 そこで、高等教育の無償化と授業料という関係を整理しておかないといけないと思うんです。

 日本の高等教育機関というのは、もう大臣も御案内のとおり、七十数%、七五%、簡略すれば私学に依存しているんですね。二五%が国公立ですよ。そういう高等教育機関を経て人材を社会に送っているというのが実態ですよね。諸外国から見ますと、私学がこんなに、七五%も担っているんだという国というのは、日本特有の大きな、私は特有な国だと思っています。

 そういう中で、やはり授業料というのは年々上がってくるんだ、負担がふえてくる、一方、賃金が上がってこない、こういう状況で、負担だけがふえていくというのが実態であります。

 借りたものを返せって、大臣、それはおっしゃるとおりですよ。町金のあれと一緒ですよ、借りたものを返せと追い込みをかけられるのと一緒ですよ、それは。ある意味、国の施策でもってやるんですから、そんなどぎついことはしないだろうとみんな思って申し込んでいる、これがやはり実態です。

 奨学金と称する部分でいきますと、やはり、いろいろなお声がありますが、せめて無利子にしてよと。もともと奨学金は最初は無利子だった、大臣、知っていますよね。無利子ですよ、最初は。金がないからということで有利子になってきたんですよ。今、比率が、有利子が七割、無利子が三割、こういうことですよ。

 給付型、国ではなかなかできないから、民間は一部やっていますが、できないので、授業料免除でありますとか、そういう格好で別建ての給付をしているんですよ。それは、大臣が言うように、原則論ということはやはり守っておかないと崩れていきますから、こういう仕組みで、いろいろなやり方で負担を何とか軽減しようと努力いただいていることには敬意を表しますが、そもそもやはり有利子。

 人材を育てていくんだ、あるいは政策誘導していくために、財源がないんだ、何を優先するかということだけなんだろうと思いますね。

 大臣の答弁で、参議院かどこかでしたかね、十八歳で学生が奨学金を借りている、一方、十八歳の方が働いている、こちらはお金を借りて、こちらからいただいた税金で分配するんだ、こういうことで、バランスが必要なんだという御答弁が何かあったような気がいたしますが、僕は、そこはちょっと違う。国の施策として何を優先して進めていくか、こういうことだと思うんですね。

 なぜ国債を発行しているんだ、そういう議論になるじゃないですか。国債発行してでもやっていかなきゃいけないテーマは何なんだ、今、給付型にしてでもやらなきゃいけないものは何なんだという意気込みと、これからの教育にかける重要性を最優先に考えている国なのか、政府なのかということが問われておるんだろうと私は思うんです。

 そこで、時間が来ておりますから、もう一つ申し上げておきます。

 国際人権規約のA規約というのがございました。自民党政権のときにこれをずっと留保し続けてまいりました。私、大臣のときにこれを撤廃いたしました。

 大臣、この留保の撤廃をしたわけですが、これは間違いだったでしょうか。

馳国務大臣 高等教育を初め教育投資についてのそれぞれの国の制度はあると私はもちろん思っておりますし、委員も御承知だとは思いますが、あの当時、平成二十四年度だったと思いますが、撤廃したことは間違っていないと私は思っています。

平野委員 これは、中等教育、高等教育への無償教育の漸進的導入、こういう中身でございます。したがいまして、いろいろな御議論はありますが、これはやはり、我が国としても、国際人権規約を、撤廃してそういう方向を示唆するんだ、こういうことでありますので、教育にかける負担を極力なくしていくんだということをぜひ私は強く大臣に求めていきたいと思いますし、ぜひ文科省としてもそういう思いでやっていただきたいと思います。

 もう時間が参りましたからあれいたしますけれども、私ども、政権のときには、給付型奨学金の予算措置の概算要求を起こしました。特に所得が三百万以下の方々、二万人ぐらいを対象にして起こしました。結果的には、先ほどの所得連動型という方向になっていきましたけれども、改めて私は、せめて有利子はやめてよ、給付型につなげてくださいよ。

 ということと同時に、これを余り言うとお叱りを受けるかもしれませんが、最後に、留学生については給付型をやっているんですね、留学生については給付型の奨学金を出しているんです。国内の学生に給付型の奨学金を出さないというこの不公平性から見たら、やはりそれは導入していくべき行為ではないでしょうか。留学生には財源が何ぼかありました、調べましたらありますし、現実にやってございます。したがって、国内の学生は給付型の対象にならない、これは余りにも不公平ではないでしょうか。

 そういう視点を含めて、給付型の方向性と、せめて有利子を無利子にしてもらいたい。その財源はそんなに大きくかかりません、無駄を省けば必ず出てくる原資でありますから、ぜひ前向きに御検討いただきたい。このことを強く求めて質問を終わりたいと思います。答弁、ありますか。

馳国務大臣 財源の検討もありますので、今後とも、委員の御指摘も踏まえて取り組みたいと思います。

平野委員 終わります。

谷川委員長 次に、太田和美君。

太田(和)委員 民主・維新・無所属クラブの太田和美でございます。

 大臣におかれましては、教育行政のみならず、さまざまなことに、政務に励んでおられますことに、まずもって敬意を表したいと思います。

 先日五日には、千葉県市原市の約七十七万年前の地層を視察したとお聞きをいたしました。国際標準模式地として認定されれば、ラテン語で千葉時代を意味するチバニアンというふうに名づけられる見込みだというふうに聞いております。ぜひ、大臣におかれましては、初の認定を目指して頑張っていただきたいというふうに思っております。

 本日は、高等教育段階に絞りまして、質問をさせていただきたいというふうに思います。ぜひとも大臣の熱意が伝わってくるような御答弁をお願いしたいと思います。

 さて、大臣は、所信で、少子高齢化に真っ正面から挑むと、その決意を表明されました。

 平成二十五年「子ども・子育てビジョンに係る点検・評価のための指標調査」報告書では、一夫婦当たりの理想の子供数は二・四二人であるのに対し、実際には一・九六人にとどまっております。その最大の理由を、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからと六割の夫婦が答えております。そして、子育てにかかる経済的な負担として大きいと思われるものについては、大学、短大、専門学校の学校教育費、すなわち高等教育の負担を挙げています。つまり、大学に行かせたいと思う親御さんたちは、教育費の負担の重さを考えて子供の数を減らすという傾向があるということだと思います。

 大臣も、教育費の家計負担が少子化に関係していることを所信で述べられておりますが、第八次提言の参考資料の、少子化と教育投資の関係や、教育を含む公的支出の相対ウエートと出生率との相関関係を見てもわかりますように、教育費と少子化は関係しております。

 そこで、大臣に、その解決に向けての御決意をお伺いしたいと思います。

馳国務大臣 まず、平成二十八年度予算案においては、幼児教育無償化の段階的推進、高校生等奨学給付金の拡充、大学等における授業料減免や無利子奨学金の拡充等、教育費負担の軽減のために必要な経費を計上しているところではありますが、私は、太田委員が御指摘いただいた、やはり、教育費がかかり過ぎるということが、理想の子供数を持てない、持たない傾向にある一つの最大の要因である、こういうことは理解をしております。

 と同時に、では昭和二十年代、出生率はどうだったか。年金制度もない、医療保険制度も十分ではないあの時代に、どうして出生率が三から四とたくさんの子供を持っていたのか。私は、ここの時代性をやはり理解することも必要なのではないかなというふうに思っております。

 太田委員の問題意識は私は十分に理解しておりますし、教育費の負担軽減に今後とも取り組まなければいけないということは予算案でもお示しをしたとおりではありますが、なぜに、今よりも十分な公的社会保障制度が整っていない時代に、我が国の先輩方は出生率が今以上に高かったのか、そこの分析も私は改めてすべきだな、こういうふうに思っております。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 大臣は今回の所信の中でも述べられておりましたけれども、さまざまな解決策があろうかと思います。

 その一つとして、今回、委員会でもさまざま議論されておりますけれども、大学奨学金事業における無利子奨学金の拡充を行うということでありますが、これは私は、今回の予算で六千人が新たに有利子から無利子への転換が可能とされるだけで、本当の問題は、本来は無利子奨学金を受ける資格があるにもかかわらず有利子奨学金となっている人、いわゆる残存適格者が約二万四千人もいるというふうにお聞きしております。

 大臣が所信で述べられました、一つの解決策とも言えることだと思いますけれども、本当に支援を必要としている人をどう救っていくのかということを、ぜひ大臣の方に御見解をお伺いしたいと思います。

馳国務大臣 平成二十八年度予算案において、無利子奨学金の新規貸与人員を六千人増員することとしておりますが、貸与基準を満たしながら貸与を受けられない学生は、依然として約二万四千人存在していると考えられます。御指摘のとおりであります。

 貸与基準を満たす全ての学生等が無利子奨学金の貸与を受けられるように、引き続き予算の拡充に努めてまいりたいと思います。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 大臣、さらに問題なことがあるんですけれども、東京大学大学総合教育研究センターの小林雅之教授の資料によりますと、経済的な理由で進学が困難な人は給付奨学金、いわゆる返済の要らない奨学金がもらえたら進学していたとする潜在的進学者数が年間約六万人もいるというデータがございました。加えて、低所得者ほど、奨学金を申請しなかった理由に返済が不安と答え、進学を諦めてしまっている、その傾向も研究データで明らかになっております。

 確かに、日本学生支援機構が行っている大学奨学金事業で経済的支援を受けたとしても、例えば多数派の第二種奨学金の場合は、月に十万円を借りれば四年間の貸与額は四百八十万円、上限利率の三%で計算すれば返還総額は六百四十五万九千五百十円、毎月の返還額は二万六千九百十四円で、返還年数は二十年にも上ります。

 また、これらの経済的要因が大学進学率にもあらわれております。私立大学の進学率は、家計所得四百万円以下で二〇・四%、それに対し、一千五十万円以上だと四二・五%。国公立の大学進学率は、四百万円以下で七・四%に対し、一千五十万円以上は二〇・四%となっております。家計所得が高いほど進学率が高くなっている。経済的に豊かな家庭でなければ高等教育が受けられないというような社会になっているのではないかというふうに思います。大学に行ける層と行けない層が所得で明確になるようなことが本当にあっていいのかということです。

 明らかに、今教育格差が生まれている、私はそう思っております。親の所得によって子供の将来が決まってしまう、こんな社会に本当に夢や希望があると言えるのでしょうか。大臣は、これらの現状をどう考えているでしょうか。進学したくても進学できない子供たちに対してどのような策を講じるお考えなのか、お答えください。

馳国務大臣 こういう現状はよくないと思います。

 したがって、引き続きでありますが、今年度予算でも多々措置しておりますが、やはり、奨学金制度の拡充を目指して、当然、財源の確保もセットで議論をしながら進めていく必要があると思っています。

 ちなみに、実は、私は大学には一円も払っておりませんでした。スポーツ特待生ということで大学に行かせてもらいました。親に相談をしたら、地元の金沢大学に行くか、あとは就職だと言われて、嫌で、どうしたら親に迷惑をかけずに大学へ行けるかなと悩みに悩んだ末に、レスリングを頑張りまして、スポーツ特待生として、大学には授業料免除で行かせていただきました。ただ、生活費がかかりますので、食費にたくさんかかりますので、その分、親に悲鳴を上げさせたことがあります。

 しかし、どう考えても、家庭の経済状況を見て、高校以前に、もう中学校の時代に大学に進学することを諦めざるを得ないようなお子さんがいる現状は私はよくないと思っています。したがって、今現在でも給付的な、いわゆる減免制度は給付的でありますので、奨学金制度は整っていると思っておりますが、さらにやはり拡充していく、それも有利子から無利子へという流れを加速化していく必要はあると思っています。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 大臣のような、一つ得意なものを持っていれば、そういう学費を払わなくてもいいような方もおられるかと思いますけれども、現状は、今、奨学金を利用している方たちは、二〇一二年で全大学生の五二・五%と半数になっています。その理由、急増した背景には、四年制の大学の進学率が上昇したこともありますけれども、大学生の学費を支える世帯の所得が減ってきたということ、このようなことも挙げられております。

 大臣は、今御答弁で、奨学金の拡充などを講じてまいりたいというふうにおっしゃっていただきましたけれども、私は、奨学金を有利子から無利子の流れに変えるだけでは不十分である、そのように考えています。貸与型中心の制度から、返済の必要がない給付型奨学金に変えていくことが必要であろうかと思います。

 OECD加盟三十四カ国のうち、大学の授業料が高目で、かつ給付型奨学金制度が設けられていない国は日本以外にはないということです。

 ぜひとも、大臣におかれましては、今この瞬間を生きる子供たちのために早急に対策を講じていただきますよう、さらに御努力をお願いしたいというふうに思います。

 そして、今御答弁の中にもありましたように、やはり財源の確保、さまざまな委員会でも述べられていると思いますが、私は、日本の教育にかける予算が本当に、余りにも低いというふうに思います。

 諸外国と比較した我が国の教育投資について、何度もこのデータ、いろいろなところで出されておりますが、改めて私、お伺いさせていただきたいと思います。日本の公財政教育支出の対GDP比は、OECD加盟国の中で、平均五・六%をはるかに下回る、最下位の三・八%です。

 そこでお伺いしたいのが、二〇一五年に開催された世界教育フォーラムにおいて仁川宣言が採択されました。教育への公共支出を増加させ、GDPの少なくとも四から六%を効果的に措置することを国際基準として遵守することとしております。公財政教育支出の対GDP比が三・八%という中で、どのようにしてこの仁川宣言における目標を達成していくのでしょうか。大臣に御見解をお伺いしたいと思います。

馳国務大臣 今後の教育投資及び財源のあり方について、二〇一五年に開催された世界教育フォーラムの仁川宣言を踏まえ、昨年の七月に教育再生実行会議第八次提言が取りまとめられたところであります。この中で、これからの時代に必要な教育投資や、教育財源確保のための方策、国民の理解を得るための方策について御提言をいただいたところであります。

 こうした提言を踏まえ、平成二十八年度予算案において、未来への先行投資である教育再生の実現に向けて、施策の充実と予算の確保に努めているところであります。今後とも、安倍内閣の最重要課題である教育再生に全力を挙げて取り組み、教育投資の充実に努めてまいりたいと思います。

 最後は、やはり財源をどう探すかという話になると思います。当然、政府・与党の責任としてという考え方もありますし、野党の皆さん方からも提言をいただければ本当にありがたいと思っておりますし、また、財務省の昨年十一月末に出された建議にも、「教育」において、未来への先行投資という表現も使われておりまして、財務省自身も、教育に投資をすることは先行投資であると、その重要性は認識をしておるわけでありますから、いかに安定的な財源を確保していくのか、恐らく税制改正とも相まって議論されるべき課題でありますので、やはりここは果敢に、財源のあり方論も含めて議論を深めなければいけないと思います。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 大臣におかれましては、世界に向けて発した宣言を国の責任で遵守するよう、まずこの仁川宣言、GDPの少なくとも四%から六%を効果的に措置するということを宣言しておりますので、しっかりとその役割を果たしていただきますようお願いを申し上げたいと思います。

 そして、先ほど平野委員の中でも、大臣の御答弁で議論がございましたけれども、三十年後の日本をどうしていくのかということを考えたときに、るる大臣のお考えをお話ししていただきました。私は、大臣におかれましては、教育に投資を惜しまないような、教育立国をぜひ目指していただきたいというふうに思います。

 やはり、教育の話になりますと、これだけ世界と比べて日本は教育に予算を投資する額が非常に少ないと言われているのにもかかわらず、結局は最後、財源、財源と言うんですね。でも、私は、この根本的な考えを、この財源を確保するために大切なことを、そのお考えを、ちょっと一つ整理したいことがございます。

 それは、財務省とか安倍総理のお考え方の根底にも、そもそも高等教育を受ける利益は学生本人にあるのだから、その費用を学生本人が負担するのは当然であるという考え方があるのではないかというふうに私は思っております。まず、教育費は誰が負担するべきなのかということを、しっかり整理していかなければならないと思います。

 大臣は、「家庭の経済状況に左右されることなく誰もが希望する教育を受けることができるよう、教育費の負担軽減を図る」とも述べていただいております。今お話ししたように、そもそも教育費は誰が負担するべきだというふうに大臣はお考えでしょうか。そのことについてお尋ねさせていただきたいと思います。

 今、教育費の負担論は、教育財源の確保のためにも大変重要な問題ですので、公的負担か、また私的負担か。さらには、私的負担のうち、それは親が負担するべきなのか、それとも子、つまり本人が負担するべきなのか。このように大別されると思うんですけれども、大臣のお考えをぜひお願いしたいと思います。

馳国務大臣 大学の教育費については、社会全体で高等教育を支えていくという観点からの公的負担と、教育を受ける本人がその便益を享受するという観点からの私的負担により支えられております。

 我が国においては、私費負担の割合が高いと認識をしております。また、親の負担と子供の負担の割合は家庭の状況によるものと考えられますが、一般的には、家計が厳しい家庭ほど子供の負担が大きくなっているものと考えております。これらの負担割合は、各国それぞれで異なる歴史的、文化的背景や経済事情などによって現在の形になっているものと認識をしております。

 大学の教育費負担については、全ての意欲と能力のある学生等が大学教育を受けることができるよう、家計の教育費負担軽減を図るため、奨学金を初めとしたさまざまな施策について充実に努めることが重要であると考えております。

 先般来、この議論をずっといただいておりますが、高卒の方と大学を卒業した方と、生涯賃金の差や失業給付金の給付の度合いで、およそ二・四倍の差がある。つまり、高等教育を受けて卒業された方の方が社会的便益が高い。文部科学省の一つの、国立政策研究所だったと思いますが、こういうふうな研究報告もいただいているところでありますから、こういった観点も踏まえて、では、社会的な便益があるということを踏まえれば、より一層公的負担が多い方がよいのではないかと思っております。

太田(和)委員 教育は、世界的に見ても公財政で支えられております。また、我が国の将来の社会、経済、文化の発展を支える人材を育成する上で大切なことは、受益者は本人ではなくて、社会全体が受益者である、こういう考え方を持つことが大切なのではないかなというふうに思います。

 大臣も今おっしゃられましたように、日本の公私負担割合、非常に私的負担の割合が高いです。最新のOECDのインディケーター、二〇一五年版を見たんですけれども、日本の公財政支出の割合は、高等教育段階では、韓国に次ぐ、三十四カ国中、下から二番目に少ない三十二位。そして、私費負担割合については、三十四カ国中二番目に高い六五・七%。平均は三〇・三%ですね。高等教育の段階で教育費が家計の多くを占めていることが、この数字から読み取れます。

 以上からも、我が国の教育に対する公費負担がともかく低く、私費負担の割合が高いというのが明らかであります。ぜひとも、教育については社会全体で支えるという考えを取り入れていただいた上で、教育財源の確保に大臣には御尽力いただきたいというふうに思います。

馳国務大臣 先ほどから申し上げているとおりでありますが、社会全体で支えるというおっしゃり方をされますが、その社会を支えているのも私自身であると。やはり、この意識、これは公的資金の使われ方に対する国民としての姿勢ではないかと思っています。我々も、私費負担の分よりも公費負担の方をより充実すべきだというふうに、もちろん、先ほど申し上げたとおりでありますが、その社会が負担している部分、それも支えているのは私たち自身である、私は、こういうふうに認識をしながら、財源の確保についての議論を深める必要があると思っています。

太田(和)委員 堂々めぐりになってしまいますけれども、高等教育段階においても公財政支出をもっともっと高めていかなければいけない。その根拠といいますか、教育の格差が今できてしまっている。

 大学を出られたら、それによる便益は御本人が得られる。当時は、何か七千万ぐらいの生涯賃金が違うだとか、ましてやそこに、退職金とかもふえてくると本当に生涯の賃金が大きく変わってくるからというふうに言われていましたけれども、今は社会全体の四割が非正規雇用社員ということもあって、若年層の貧困化に少子化の連鎖といいますか、非常に苦しんでいる若い人たちも多いということをぜひ大臣にはわかっていただいた上で、教育の格差及び教育の均等という最重要理念について、もう一度改めて考えていただきたいんです。

 まず、その根拠としての一つは、日本国憲法二十六条、「すべて国民は、」「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と定めています。そして、教育基本法四条では、国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければいけないとあります。また、誰もが教育を受ける権利というのは、その文化的生存権である以上、これは教育予算の拡充の論拠となるというふうに私は考えています。

 さらに、現在百六十カ国が締結している国連の国際人権規約と言われる社会権規約、いわゆるA規約第十三条2(c)について、これも、先ほども委員会の中でも話題には出てまいりましたけれども、これは、二〇一二年、民主党政権のときに留保を撤回しております。

 規約ではこうあります。「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」と規定してあります。

 そこで、大臣にお伺いをしたいんですが、この条約は、十年に一回、政府報告として国連の委員会に報告することとなっております。そして、次回の報告は二〇一八年に予定されております。留保を撤回してから六年がたちましたが、何が漸進的に進んだのでしょうか、お答えいただきたいと思います。

馳国務大臣 我が国は、国際人権A規約第十三条の留保を平成二十四年に撤回したところであります。文科省では、当該条項の趣旨を踏まえ、授業料減免や奨学金事業により、教育費負担軽減に努めております。

 授業料減免については、国立大学では、平成二十四年度予算四・八万人から平成二十八年度予算案五・九万人へと一・一万人の増、私立大学では、平成二十四年度予算三・五万人から平成二十八年度予算案四・五万人へと一万人の増を図ったところであります。

 奨学金事業については、無利子奨学金の貸与人員を、平成二十四年度予算三十七万八千人から平成二十八年度予算案四十七万四千人へと九万六千人増を図ったところであります。さらに、奨学金の返還月額が卒業後の所得に連動する、より柔軟な所得連動返還型奨学金制度を平成二十九年度進学者から適用することを目指して、昨年九月に有識者会議を設置し、制度設計を進めております。

 なお、大学の授業料について、一律に無償化したり大幅に減額したりすることは、財源の確保や受益者負担のあり方などから、慎重な検討が必要であると考えております。

太田(和)委員 大臣、この社会権規約第十三条2(c)について、これが何を意味するのかと申し上げますと、留保が撤回された段階で、我が国は高等教育の無償化を漸進的に導入した、そして二つ目は、全ての者に教育の機会を与えているということを国際社会に表明したということであります。ぜひ、後退することのないように、さらなる御努力をお願いしたいと思います。

 本当に、今、教育費の家計負担が重くて、皆さん苦しんでおります。八次提言参考資料にもありましたけれども、子供二人を大学まで卒業させるために必要な教育費は、三十一歳で第一子、三十三歳で第二子を出産したと想定して、小中学校は公立、それ以外は私立とした場合、子供二人を大学まで卒業させるためには、教育費が二千六百万円かかると試算されています。また、この試算では、第一子と第二子の二人が大学に通っている時期の教育費は家計費の約七〇%も占めているというふうに言われております。

 このことを申し上げて、どれだけ家計が厳しいのか、今苦しいのかということを再度申し上げて、時間となりましたので、私の質問を終わりにさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

谷川委員長 次に、坂本祐之輔君。

坂本(祐)委員 民主・維新・無所属クラブの坂本祐之輔でございます。

 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みについてお伺いをいたします。

 馳大臣は、先日の所信の中で、スポーツには希望があり、スポーツにはフェアプレー精神があり、高い教育効果があると述べられました。私は、フェアプレー精神を学校教育の中でしっかりと教えることは子供の成長にとって大きなプラスになると確信をいたしております。取り上げていただき、感謝を申し上げます。

 オリンピック・パラリンピックまで四年余りとなりました。私は、子供たちの夢や希望をかなえるために、子供たちがオリンピアン、パラリンピアンと、全国全ての小学校、中学校、高等学校で交流を行う取り組みについて、当時の下村文部科学大臣に委員会で提案をさせていただき、前向きに御検討いただけるという答弁をいただきました。

 子供たちは、将来に向けて、みずからの夢や希望を持っております。また、自分の希望や夢が今は見出せなくても、いずれ、みずからの将来を考えるようになるでしょう。オリンピックやパラリンピックで活躍をされた方々は、みずからの目標に向かって苦難を乗り越えて成功されてこられた経験を持っています。その方々の生きざまを子供たちにお話をしていただく、そして、できることであれば、そのわざを披露していただくことは、子供たちにとっても大きな刺激になると思います。全国の学校や地域で少しでも触れ合う機会をつくり、子供たちの将来にエールを送っていただきたいと考えます。

 ここで、お伺いをいたしますが、日本には何人のオリンピアンやパラリンピアンがいらっしゃるのか。そして、全国の小中高の学校におけるオリンピアン、パラリンピアンとの交流の取り組みについて、馳大臣のお考えと文科省の取り組み状況、そして、これらの事業を推進するに対しまして、遠藤大臣の所見をお伺いさせていただきます。

高橋政府参考人 まず、私の方から数字を申し上げさせていただきます。

 これまでに開催されたオリンピック競技大会に参加した選手は延べ五千百九十二人であります。そのうち、NPO法人日本オリンピアンズ協会に入会しているオリンピアンの方は先月現在で一千百三十四人となっております。

 また、パラリンピック競技大会に参加した選手は延べ一千四百二十九人であり、そのうち、一般社団法人日本パラリンピアンズ協会に入会している方は先月現在で百九十四人となっております。

馳国務大臣 私もオリンピアンの一人でありますが、私の姿が教育的効果があるかどうか、心して今後とも取り組みたいと思います。

 そこで、オリンピアン、パラリンピアンは、アスリートとしてのパフォーマンスやこれまでの努力、オリンピック・パラリンピックでの体験など多様な経験を有しており、こうした経験を学校教育現場で活用することは重要と考えておりまして、文科省としては、二〇二〇年に向け、実践的なオリンピック・パラリンピック教育を開発するため、本年度、各地域でのオリンピック・パラリンピック教育の効果的な推進方策に関する調査研究を行っているところであります。

 また、本年度の成果を踏まえ、平成二十八年度予算案において、オリンピック・パラリンピック・ムーブメント全国展開事業を計上し、全国各地で、オリンピアン、パラリンピアンと子供たちの交流活動やオリンピック・パラリンピック競技体験を推進することとしております。

 こうした取り組みを通じて、学校教育現場や地域において、オリンピアン、パラリンピアンの活用を図ってまいりたいと思います。

遠藤国務大臣 坂本委員御指摘のように、将来の日本を担う子供たちがオリンピアン、パラリンピアンの皆さんと交流することは、チャレンジや努力をとうとぶ態度、ルールの尊重やフェアプレーの精神等を学び、スポーツへの関心の向上や積極的な参加につながることが期待されることから、大きな意義があると考えております。

 前回大会、あの六四年の大会のレガシーの一つは、坂本委員が今本部長を務めていらっしゃいますスポーツ少年団でありますが、二〇二〇年大会に向けて、そうした取り組みを通じてスポーツのすばらしさを子供たちに伝えていくことが大変重要だと考えております。

 そうした取り組みの一つとして、政府では、事前キャンプの誘致等を通じ、大会参加国・地域との経済的、文化的な相互交流を図る地方公共団体をホストタウンとして全国各地に広げる取り組みを行っております。この登録要件の一つとして、ホストタウンの子供たち、住民等と日本人オリンピアン、パラリンピアンとの交流を盛り込み、地方財政措置や関係団体と連携した選手派遣等を通じて支援していくこととしております。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 大変に前向きなお取り組み状況をお聞かせいただきました。

 地域を取り込んでいく、その中には学校もあるわけでございますので、一校で一国を応援するような、そういった支援の枠組みもとれるのではないか、将来を担う大切な大切な子供たちの夢や希望を実現させていきたい、そのためにも、オリンピックムーブメントの中で、私は、オリンピアンやパラリンピアンが果たせる役割というのは大変に大きいものがあると期待をいたしております。オリンピアンでもある馳大臣からも前向きなお言葉をいただきました。ぜひ、多くの青年たちの前に立っていただいて、大臣のメッセージを伝えていただければと願っております。

 遠藤大臣はここで御退席をいただいて結構でございますので、わざわざありがとうございます。

 続きまして、子供の貧困と義務教育費について質問をさせていただきます。

 厚生労働省の調査では、子供の貧困は、平成二十四年に一六・三%で過去最悪となり、十七歳以下の子供の六人に一人、三百万人余りが貧困状態にあるとされています。国民の平均的な所得の半分を貧困ラインと呼びますけれども、その基準に満たない、所得の低い世帯の子供たちが六人に一人もいるということで、二十四年の貧困ラインは、所得でいえば百二十二万円でございました。

 ここで、委員の皆様にも御配付をさせていただきました西日本新聞の連載記事を紹介させていただきます。「制服買えず入学式欠席」という記事でありますが、「いま、学校で」という連載記事、二ページ目でございます。ある生徒が公立中学に入学をする際、制服を購入することができず、入学式に登校することができなかった、そして、校長先生に立てかえてもらって制服を買うことができ、登校することができたという内容であります。

 実際に、中学に上がるときには、公立の中学校でも、制服や指定のかばん、そして指定の体操服など、入学時には十万円程度になる費用がかかるとも聞いております。貧困の世帯にとっては、この費用を捻出することは大変に困難であります。

 また、修学旅行にかかわる費用あるいは給食にかかる費用、これらの捻出も指摘されている中で、貧困でない世帯におきましても、我が国の今の経済状況下では、多くの子育て世代は生活に余裕がない家庭も多く、経済的負担が多いと考えます。中でも深刻なのは、母子家庭などの一人親世帯の子供で、貧困率は五四・六%、二人に一人を超えているところであります。

 「義務教育は、これを無償とする。」と憲法二十六条にうたわれています。しかしながら、実際は、義務教育課程の公立の小中学校であっても、さまざまな保護者の費用負担が発生をしています。六人に一人が貧困と言われる中で、義務教育の中でかかる費用のあり方を文科省としてはどのようにお考えになっていらっしゃるか、大臣にお伺いをいたします。

馳国務大臣 子供たちの未来が貧困の連鎖等によって閉ざされてはならず、全ての子供が家庭の経済状況に左右されることなく、希望する質の高い教育を受けられることは大変重要であると考えております。

 このため、文科省としては、平成二十八年度予算案において、幼児教育段階では、所得の低い世帯の保育料を、第一子の年齢にかかわらず、第二子は半額、第三子は無償とする等の支援の充実、義務教育段階では、経済的理由により就学困難な児童生徒の学用品や学校給食などの費用を支援する就学援助の実施、高校段階では、高等学校等就学支援金制度による授業料の負担軽減に加え、授業料以外の学用品などの費用を支援する高校生等奨学給付金について、非課税世帯への給付額の増額、高等教育段階では、無利子奨学金の貸与人員の増員や授業料減免の充実などを盛り込み、幼児期から高等教育段階まで切れ目のない形での教育費負担軽減策の充実を図ったところであります。

 これらの取り組みを通じて、子供たちが家庭の経済状況にかかわらず、それぞれの夢にチャレンジできる社会の実現に向けて全力で取り組んでまいりたいと思います。

坂本(祐)委員 貧困は、子供の学力や、その後の就職にも影響いたします。生まれ育った家庭と同じように経済的に困窮をしてしまう貧困の連鎖を生んでおります。子供の貧困は、いじめや暴力、不登校、さらには非行など、さまざまな問題につながるおそれもあります。子供の将来に大きな影響を与えるからこそ、深刻化する前にしっかりと手を差し伸べる必要があるのだと思います。

 子供に責任はありません。子供が学校に行って安心して授業を受ける、教育を受けることができるようにすることが、義務教育の果たす大きな役割ではないでしょうか。したがって、我が国の義務教育にかかる費用のあり方を考え直すときに来ているのではないかと私は考えています。

 子供の貧困は、確かに、教育支援ばかりでなく、生活支援あるいは保護者の就労支援、経済的支援、児童手当や一人親世帯に支給される児童扶養手当の拡充、医療費の窓口負担をゼロにする、こういった社会保険料や税の負担軽減など、一省庁だけで解決できる問題ではありません。まさに国を挙げて取り組んでいくべき課題だと思いますが、そのことをぜひ大臣に実現していただきたく、御要望を申し上げます。

 続きまして、幼児教育の重要性についてお伺いをさせていただきます。

 子供の健全かつ健やかな成長を考えたときに、質の高い幼児教育の確保、充実が非常に大切で、まさに教育は未来への投資であると考えております。

 先日のNHK、「私たちのこれから 超少子化」という番組の中で、世界じゅうで義務教育の年齢を引き下げようとする動きがあると報じられておりました。また、アメリカでは、幼児期にしっかりとした教育を受けると、大人になったときに一定以上の収入を得る人がふえると研究の成果が紹介をされています。

 我が国では、高齢者への財政支援に比べて、子育てや幼児教育に対する支援は大幅に少ないのが現状であります。平成二十八年度予算案の中で幼児教育の無償化に向けた予算が増額されていることは評価するところでございますけれども、まだまだ不十分だと思います。

 ここでお伺いをいたしますが、幼児教育の重要性に鑑みて、幼児教育の無償化のさらなる拡充と幼稚園教諭の処遇改善等、思い切った予算措置を行うべきだと考えますが、大臣のお考えをお伺いいたします。

馳国務大臣 幼児教育の無償化について、平成二十八年度予算案においては、多子世帯の保護者負担軽減として、年収三百六十万円未満相当の世帯について、現行の多子計算に関する年齢制限を撤廃し、第二子の保育料半減、第三子以降の保育料無償化の完全実施、一人親世帯等への保護者負担軽減として、市町村民税非課税世帯は保育料を無償化し、年収約二百七十万円から約三百六十万円未満相当の世帯は、第一子の保育料を半額、第二子以降の保育料を無償化とする措置を盛り込んでおります。

 文科省としては、今後とも、財源を確保しつつ、幼児教育の段階的無償化に向けた取り組みを進めてまいりたいと存じますし、当然、幼稚園教諭の処遇改善についても取り組んでまいりたいと思います。

坂本(祐)委員 平成二十八年度の予算案の中には、大臣がおっしゃられたさまざまな支援措置が盛り込まれております。しかしながら、先ほど来議論があるように、幼児教育の無償化を進める中においては、何といっても財源の確保が必要ということになります。

 ただいま申し上げましたように、アメリカでの研究例を取り上げさせていただきましたが、幼児教育を充実させることで、私は将来の貧困の連鎖を断ち切る可能性があるのではないかと考えているわけでありまして、まさに未来への投資のために、よくよく御検討いただきたいと思います。

 ここでお伺いいたしますけれども、やはり財政措置となりますと、幼児教育の効果やあるいは重要性を示すような研究は文科省で行われているのかどうか、お伺いをいたします。

小松政府参考人 お答えいたします。

 幼児教育、あるいは幼稚園などで行われている教育につきまして、さまざまなところへ研究委託をして行っているものが一つのジャンルでございます。それから、大学等に委託して行っているもの等もございます。国立教育政策研究所等を中心に行っている研究等がございます。

 しかしながら、今御指摘の御趣旨と思われますものといたしまして、それをさらに全国的に糾合して体系的にあるいは長期的に追いかけていくというような点については不足があるかと考えておりまして、今回の予算等がお認めいただければ、平成二十八年度から、国立教育政策研究所にそうした拠点を、さらに強化した形で設けて、しっかり進めていく体制をさらに整備してまいりたいというふうに考えております。

坂本(祐)委員 具体的には、まだそういった効果やあるいは論拠が見出せていないのだと思います。

 これははっきりと申し上げて、予算措置をして、長年かかる研究だとも思います。先ほどのアメリカの事例も四十年ほどかかったというふうにもお伺いをしておりますが、やはり、教育を受ける子供たちが将来の夢や希望を実現できるような社会をつくるには、教育を受けやすい、効果というのが必要だと思いますので、そのエビデンスを文科省がしっかりと持つことが必要だと思いますので、ぜひそれらの推進に向けていっていただきたいと思います。

 ただいま、義務教育費のあり方について、そして幼児教育の重要性について議論させていただきましたけれども、格差の拡大、そして格差の拡大に伴う子供の貧困の増加などが、我が国の経済社会構造が大きく変わる中で、保育を含む幼児教育から義務教育課程、高校、大学までの教育にかかる費用のあり方を、一貫して全体としてどうしていくか、このことを考えていくべきであろうと思います。財源の問題も含めて、抜本的に見直す段階に来ているのではないかと思います。教育には米百俵の精神で取り組むべきと考えます。ぜひ、このことにつきまして大臣から最後に御所見をお伺いいたしまして、質問を終わらせていただきたいと存じます。

馳国務大臣 実は私、自由民主党の中において、幼児教育を振興するための基本法となるべき振興法の、議員立法としての取り組みにこの二年間取り組んできたものでありまして、これは、今私は立場が大臣という立場でありますのでこれ以上言及することは控えたいと思いますが、やはり、立法措置などをいただいて、しっかりとした根拠またエビデンスに基づいて幼児教育を振興することが、国家にとっても、また一人一人の育ちにおいても、とりわけ障害児等においてもより大きな効果を発揮する、そのための公的資金の投入が必要であり、また、今、段階的な無償化の措置となっておりますけれども、これをより一層促進していくことが必要になってくると思います。

 ぜひまた、御党においてもこういう議論を深めていただければありがたいと思います。文科省としてもしっかり取り組みます。

 以上です。

坂本(祐)委員 終わります。

谷川委員長 次に、松田直久君。

松田委員 民主・維新・無所属クラブの松田でございます。

 この委員会では初めての質問になるんですが、馳大臣、遠藤大臣ともども、よろしくお願いを申し上げたいと思います。ちょっと一般的に、総論的になるかわかりませんけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 最初に、大臣の所信の中で、「教育再生実行会議では、これからの時代を見据え、日本の教育の強みは大切にしつつ、多様な個性が長所として肯定され生かされる教育への転換について議論を行う」というような発言がございました。

 そこで、質問なんですけれども、日本の教育の強みというのはどういうものであるか、まずお伺いをさせていただきます。

馳国務大臣 例えば、義務教育において、さまざまな課題はあるにせよ、学級などの集団の教育力を生かした指導や、学習指導だけでなく生徒指導等も含む全人的な教育に取り組む教員の努力に支えられ、国際的に見ても高い評価を得ていると認識をしております。

 一方で、例えば、不登校の児童生徒、発達障害のある子供たちや、日本語教育を必要とする子供たちへのきめ細かい対応など、一人一人の力を最大限に伸ばすという視点から見れば、なお課題があるということも事実であります。

 政府の教育再生実行会議においては、このような我が国の教育の現状を踏まえ、昨年十一月から、多様な個性が長所として肯定され生かされる教育への転換について御議論をいただいているところであります。

松田委員 大臣のおっしゃるように、きめ細かさとか繊細さというんでしょうか、そういうのは、僕は、現場の先生方初め一生懸命頑張っていただいておる、これは確かに日本の教育の強みなんだろう、こう思っております。

 その中で、やはり強みがあれば弱みもあるということだと思うんですけれども、逆に、弱いところというんでしょうか、やはりこれから力を入れなあかんというところはどういうことがあるか、ちょっとあわせてお伺いをさせていただきたいと思います。

馳国務大臣 先ほど、義務教育、特に学校教育においてきめ細かい教育がなされているということの強みを申し上げました。

 他方、やはり不登校のお子さんや、さまざまな事情で課題を抱えている子供に対するより具体的な支援といったものについては、スクールソーシャルワーカーとか養護教諭もそうですし、もちろん担任の教諭も含めて対応しておりますが、まだまだやはり十分ではないという認識は持っております。

 と同時に、クラスの中には、特異な才能を持っている、そういうお子さんもいらっしゃいますから、伸びようとする芽をさらに伸ばしてあげようとする面においてもやはりちょっと弱いのかなというふうに思っております。

 また、今、小中で、ことしから高校も始める予定ですが、地域未来塾という形で、そういった、課題を解決するためにより一層のきめ細かい対応をするお子さんに、学校でいわゆる補習のような形で支援をしていることもありますが、まだまだそれも十分に行き届いてはいないな。

 こういったところが弱点だと思っています。

松田委員 教育というのは、百人が百人、それぞれ思いを持っています。なかなか難しいことなんだろうと思いますが、やはり、強み、弱み、大きな観点で時々見直すということで、長所は何だろう、欠点は何だろう、そういうこともきちっと見ながら教育行政というのを進めていただきたいなというようなことで御質問をさせていただきました。

 次に、二つ目の質問なんですけれども、今回の所信前段に、「家庭の経済状況に左右されることなく誰もが希望する教育を受けることができるよう、教育費の負担軽減を図るとともに、学校、地域を通じた子供の貧困対策を推進します。」

 大変すばらしい所信でありまして、私も全く同感であります。経済理由の教育格差はなくさなくてはならないというふうに思うわけです。

 そこで、大臣に伺いますが、昨年末の中央教育審議会における三つの答申を推進するため、「次世代の学校・地域」創生プランを、馳大臣の名前を冠にして馳プランとして策定し、ことし一月二十五日に公布されています。

 さきに質問がありましたが、あえて、この馳プランでは、どのように学校、地域を通じた子供の貧困対策を考えられているのか。

 さらに、馳プランの「地域と学校の連携・協働の推進に向けた改革」の具体的施策の中で、現行のコミュニティースクールを推進されるとのことですが、馳プランのもとである教育再生実行会議第六次提言や中教審の答申において、国は、全ての公立学校がコミュニティースクール化に取り組み、地域と相互に連携、協働した活動を展開するために抜本的な方策を講じると示しているとおり、最終的には全ての学校に義務化される方針なのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

馳国務大臣 昨年末の中教審の答申三つを踏まえての取り組みについて御質問いただいた、こういう認識を持っておりますが、キーワードでいえば、やはりチーム学校、コミュニティースクール、そして教職員の資質向上、この三点セットと御理解いただきたいと思います。

 とりわけ、貧困の問題をまず挙げていただきましたが、やはり、家庭の事情、また経済的な事情、貧困が子供の学力に与える影響、日常の生活環境に与える状況、これはどういう影響を与えるのか。残念ながら、余りよい影響を与えるものではありません。

 したがって、教職員がまず連携をして取り組むこと、また、スクールソーシャルワーカーなどの福祉の観点からも取り組むこと、時には地域の皆さんと情報を共有しながら取り組むことができる体制をとること。そう考えてくると、これは一億総活躍社会の考え方とも重なりますが、学校を地域社会の拠点化することによって、日常的に地域の方が生涯学習や生涯スポーツの拠点として学校に出入りをする、管理をする。と同時に、学校の教職員と連携をとることができるような、いわゆるコーディネーターを配置することによって、地域一体となって子供たちを見守り、育てていこうとする体制をつくるということ。

 なかんずく教職員の資質向上においては、これは、学部の段階、採用の段階、研修の段階、それから免許更新の段階、一貫した哲学のもとで教職員を、常に新たな能力を身につけて、そしてより向上させていく、そして、その上において処遇も改善をしていこうという取り組み、やはりこれらが一体になって学校を支えていかなければいけないのではないか。

 こういうことからの答申であり、それを受けた、いわゆる学校の地域協働プランでありますけれども、これはぜひとも予算措置であったり法改正も含みながら進めていきたいと思っております。

松田委員 この馳プランは、今少し私も説明させていただいたように、コミュニティースクールというのが一つのベースになっていくんですよということでありますし、今大臣が言われたように、やはり地域社会を巻き込んでいく、そこで保護者の皆さん、学校現場、そういう形で、社会のいろいろな面で協力体制をしいてやっていくということ、僕は非常にいいことだと思っています。

 その中で、ではそのベースになるコミュニティースクールが今どんな状況なのかということをちょっと見ますと、十年ぐらい取り組んでいて、今、二千四百ぐらい各地にコミュニティースクールができている。地域によるといろいろ、全くゼロのところもありますし、大きな市でも、おつき合い程度に一つ、二つつくっているという状況があるんですね。

 私の経験なんですけれども、確かにこういう地域とのコミュニティースクールの考え方はいいんですけれども、簡単にできると言うと言い方が悪いかわかりませんけれども、条件の整っているところと、整っていないところというのがあるんですね。また、地方にコミュニティースクールをつくりなさいよということになったら、なるべく条件のそろったところで、まあまあ、テストパターンで、国が言ってきてるんだからやろうかという形で、要するに、もうきちっとしたコミュニティーができているところへあえていわゆるコミュニティースクールをつくっている場合というのは往々にしてあると僕は思うんです。

 ですから、今やはりできない地域、やりにくい地域、とまっている地域をどういうふうにしていくかということが僕は馳プランの一番の大きな問題だと実は思っているんです。ですから、その辺のところを、できにくいというか、そういったところをどういうふうにして推進してやっていくのかということを一遍ちょっとお伺いをしたいと思います。

馳国務大臣 今、全国で三千校余り。一つもない県は三つなんですよ、青森県、石川県、福井県。私の地元はないんです。何でかなと思いましたし、また、ある県におきましても大体五つから十というところも多くございまして、まず、私は、なぜそうなっているのかということの把握が必要だと思っています。

 ちょっと石川県のことを申し上げると、いや、今さらコミュニティースクールと言わなくても、私たちの地域は、日常的にスクールガードリーダーを初め地域の皆さんが保護者会などを通じ、また学校行事を通じ小学校、中学校の活動に参加していますので、何を今さらというふうな言われ方をすることが多々あります。それはなるほどなと思いますし、石川県も福井県も、コミュニティースクールは制度上ありませんが、学力テストをすれば毎年のように全国三番以内に入っております。

 したがって、その必要性がないんだよと言われてしまうとそこで終わってしまいますが、私はそうでないと思っておりますし、今後、できるだけ多くの、ほとんどの小中学校がコミュニティースクールになっていただきたいと思っておりますし、それを推進するための取り組みというのは、今後、こうやって馳プランを取りまとめましたから、進めていく必要があると思っています。

 その原動力というか、それは何のためなのかというのが中教審でも議論されたんですが、一例を挙げると、ちょっと差しさわりがあるかもしれませんが、川崎で中学生がナイフで首を切られて亡くなったあの事件のときにも、何で地域の人がもうちょっと連携をとって情報を共有しておれなかったかなという反省がございます。

 これは制度上の問題でもありますし、同時に、地域の皆さんがふだんからコミュニティースクールという形でかかわっていれば、コンビニの方とか飲食店や商店街の方とか、また、地域見守りハウスというような形もありますし、あるいは、犬の散歩をしているときにパトロール隊という黄色い札を下げているような地域もございます。

 常に地域の皆さんが見守っているよ、おせっかいかもしれませんが、みんなで心配をしているよというメッセージを送り続けること、これが本来の、コミュニティースクールが必要だよねと言っている本当の原動力でありますから、私は、そういったことを、教育委員会を通じて必要性を訴え続けて、やはり全部の小中学校においてコミュニティースクールを設置していただいて、地域と学校と連携、協働する、そういう委員会を作成して取り組んでいただけるようにすることが必要だと思っています。

 今後、もちろん、予算措置や法改正なども国会に提出をして、御議論いただいて、御承認もいただきながら、これはやはり丁寧に進めていきたいと思っています。

松田委員 遠慮して大臣の地元のことは言わなかったんですけれども。

 僕は、できないから悪いのかな、そんなことは思っていないんですね。

 あるところで、私の地元なんですけれども、祭りで地元の方と、要するに長老とか若い者とか学校とか、一つの祭りのイベントでみんなが集まってきて、そこで一つコミュニティーができてきて、いいんですね、若者をばっと怒ったり、いろいろなことをしてつくり上げていく。

 ですから、コミュニティースクールも、余り規格にはめてやるんじゃなくて、それぞれの地域に合った、事情に合った、そういったコミュニティースクールというものを広い意味で認める。いろいろな形があってもいいじゃないかというふうに思いますので、ぜひとも、これからこの馳プランに、そういった面で、大きな意味でこのコミュニティースクールというものを取り上げていただきたいというふうに思っています。

 少し時間がなくなったもので、ちょっと飛ばします。

 次に、先ほども坂本委員からあったんですけれども、スポーツ、文化の質問にちょっと移らせていただきたいと思います。

 大臣は、これまでスポーツマンとしてその成績で日本に希望を与えてきました。そんな実績を持つ大臣の所信では、「スポーツには希望があり、フェアプレー精神があり、高い教育効果が」ある、こういうふうに発表されています。私も全く同感なんです、同感であります。スポーツに大きな成果を残された大臣だからあえてこの言葉を使われたんだ、こう思います。

 そこで、お伺いするんですけれども、言葉尻を捉えることじゃないんですけれども、「スポーツには希望があり、」との発言は、スポーツが苦手な子供、スポーツでよい成績を残せない子供には、スポーツしか希望がないのかと不安になってしまうのではないかな。大臣と違って不得意の子供が多数だと思っています。

 また、現実のスポーツ界では、きょうも野球賭博の問題があったり、OBのいろいろな不祥事が出たり、いわゆる勝てばいいんだ、そして拝金的主義があったり、業界の体制やいろいろなことが僕はあると思うんですね、そういう風潮が。

 さらに、スポーツには「フェアプレー精神があり、」とも発言をされています。スポーツ以外にもたくさんのフェアプレーの精神があると思います。

 例えば、日本体育協会では、フェアプレー精神については、「スポーツの場面に限らず日常生活の中でも、自分の考えや行動について善いことか悪いことかを自分の意志で決められること。自分自身に問いかけた時に、恥ずかしくない判断ができる心のこと。」というような説明をされています。この説明が全てではないのですが、やはり、スポーツの場面に限らず日常生活の中でも、教育をつかさどる文科省としてこういう考え方というのは大切だ、こう思っております。

 スポーツには希望があり、こう言われた、また、フェアプレー精神があるという言葉で、ちょっと、私の今質問で物を申したことで、何か補足があれば言っていただければと思います。よろしく。

馳国務大臣 一つ、先ほどの数の訂正をいたします。

 コミュニティースクールの数は、現状、二千三百八十九校であります。私が申した三千校というのは平成二十九年度までの目標値であるということで、訂正いたします。

 さて、スポーツですが、スポーツ基本法の前文の一番最初には、こう書いたんですね。スポーツは世界人類共通の文化であるというふうに書かせていただきました。

 したがって、トップレベルの競技者のためだけではありません。そもそも、ルールは定められておりますので、体格や、あるいは国、地域、宗教などを超えて、同じルールのもとで競争をし合える、誰もが参加できるということ、そして、それを見ている人も、それからそれを支えている人も、同様にやはり感動や感激を味わうことができる。こういった一つの理念を共有し合うことによって、スポーツをしている人ばかりではなく、トップレベルばかりではなく、誰もがやはり社会的な喜びを味わうことができ、共有することができる。

 だからこそ、スポーツをする環境整備をしていく必要もあるし、強化もする必要もありますし、また、外交上にもスポーツという観点において取り組む必要もあるし、こういうふうに展開をしているものであります。

 改めて、スポーツというとどうしてもプロとかトップレベルを見がちでありますけれども、そうではなくて、世代を超えて、また地域を超えてスポーツの価値観を共有し合うことが、これは希望であり、喜びである、こういうふうに私は補足をさせていただきます。

松田委員 時間が来てしまいまして、せっかく遠藤大臣が来ていて、ちょっと要望だけさせてもらいたいな、こう思っているんですけれども。

 やはり国民の目から見たら、聖火台がなくてどんどん計画が進んでいる、どこかできちっと議論されたのかな、聖火台をどうするんだ。いやいや、こういうふうなイベント、こういう催しが、またこういうふうに開会式をするから、だから聖火台はちょっと待ってくださいというようなことがきちっと議論されていたらいいんでしょうし、また、木の屋根なんかをつくっちゃって、では聖火台をどこにつくるんだ、本当に計画されているのかなというような思いがあるわけです。

 例えば、地方ですれば、国から少し予算でももらっていたら、地方だったらどうするのかな。こういうのは、きちっと開会式が決まってからどうやって、決まってから予算をまた国にくださいなんて言ったら、多分、地方からすれば、国から怒られるようなことだ、そういう思いなんです。

 最後に、大臣のこの間の所信で、「コストをできる限り抑制できるよう、政府一体となって努めてまいります。」と書いてございます。ですから、聖火台がどこにできるのかわかりませんけれども、要するに、コスト面でしっかりとお考えをいただいて、これから聖火台をどういうふうにするかということをお決めいただきたいというふうに思います。これは要望。何か所見があったら言っていただければと思います。(発言する者あり)では、要望にさせていただきます。

谷川委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十分開議

谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大平喜信君。

大平委員 日本共産党の大平喜信でございます。

 昨年の通常国会で、公職選挙法の改正が全会一致で決まりました。選挙権年齢が十八歳以上へと引き下げられました。そのことによって、十八歳、十九歳の全ての人たちが、私たちと同じように選挙権、投票権とともに選挙運動が行えることになりました。

 そんな中、文部科学省は、昨年の十月二十九日、初等中等教育局長の名前で、「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について」との通知を発出しました。

 きょうは、この通知の内容と、この通知の発出によって現場でどんなことが起きているのか、またこれから起こり得るのかについて、馳文科大臣に質問したいと思います。

 まず、冒頭、総務省に確認ですけれども、選挙運動、政治活動とは何でしょうか。

大泉政府参考人 お答えいたします。

 公職選挙法上、選挙運動とは、最高裁判所の判例などに基づきますと、特定の公職の選挙につき、特定の候補者に当選を得させるため投票を得もしくは得させる目的を持って、直接または間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他諸般の行為をすることをいうものと解されております。

 一方、政治活動でございますが、これは、政治資金規正法などの定義規定などの表現から、一般的には、政治上の主義、施策を推進、支持し、もしくはこれに反対することや、公職の候補者等を推薦、支持し、もしくはこれに反対すること等を目的として行う直接間接の一切の行為をいうものとされております。

 この中で、公職選挙法上におきまして、政治活動とはいわば狭義の政治活動を指しまして、先ほど言いました政治活動の中から選挙運動にわたる部分を除いた一切の行為をいうものと解されているところでございます。

大平委員 公職選挙法上のという御答弁でしたが、先ほど、答弁にもあるとおり、最高裁の判決などあくまでも社会通念上の定義であり、法文上の定義ではありませんね。確認です。もう一度。

大泉政府参考人 お答えいたします。

 公職選挙法上に選挙運動という定義規定はございません。先ほど申しましたとおり、最高裁の判例などにより、先ほど申しましたとおりのことと解されているところでございます。

大平委員 法文上の定義ではないということでした。

 今の総務省の答弁の内容を、お配りしています配付資料の一枚目につけております。

 これは総務省からいただいた資料をそのまま添付しておりますが、同時に、この資料は、総務省と文科省が共同で作成をし、今、全ての高校生と教員に配付をされている副読本「私たちが拓く日本の未来」にも同じ図表と説明が載っております。そして高校生たちへの説明がこれで行われております。

 ところが、初等中等教育局長の通知で見ますと、そこに出てくるのは政治的活動という言葉であります。

 局長にお伺いします。政治的活動とは何ですか。どこで定められたもので、どういう定義なのか、お答えください。

小松政府参考人 お答えをいたします。

 通知において政治的活動についての説明が記載されております。

 特定の政治上の主義若しくは施策又は特定の政党や政治的団体等を支持し、又はこれに反対することを目的として行われる行為であって、その効果が特定の政治上の主義等の実現又は特定の政党等の活動に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉になるような行為をすることをいい、

というふうにしまして、「選挙運動を除く。」というふうにいたしております。

 今御指摘がありましたように、政治活動と政治的活動と、用語が若干異なっておりますが、こちらは教育法規の系統に沿って用語を使わせていただきました。教育基本法に政治的活動という言い方になっております、この内容を踏まえたものでございますが、ただ、教育基本法につきましては選挙運動も入った概念になっておりますので、先ほどの狭い広いということでいいますと、それを除くというふうにしているというつくりでございます。

大平委員 通知では政治的活動として説明をされており、副読本には政治的活動という言葉は一切出てこず、全て政治活動で説明をされています。先ほどの答弁ですと、ほとんど同じような趣旨、内容なのかなというふうに感じたんですけれども。

 大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、つまり政治活動と政治的活動というのは同じ定義なんですか、違う定義なんですか。お答えください。

馳国務大臣 政治活動とは、政治資金規正法における表現などから、一般的には、政治上の主義、施策を推進、支持し、もしくはこれに反対することや、公職の候補者等を推薦、支持し、もしくはこれに反対することを目的として行う直接間接の一切の行為をいうものとされており、公職選挙法上の政治活動とは、この中から選挙運動にわたる行為を除いた一切の行為をいうものと解されております。

 一方、十月二十九日の通知において、政治的活動の定義は、

 特定の政治上の主義若しくは施策又は特定の政党や政治的団体等を支持し、又はこれに反対することを目的として行われる行為であって、その効果が特定の政治上の主義等の実現又は特定の政党等の活動に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉になるような行為をすることをいい、選挙運動を除く。

ものとしております。

大平委員 先ほどの局長の答弁を繰り返しておられたんだと思いますが、同様の趣旨なのかなと思って聞きました。

 高校生たちは副読本で政治活動として教えられ、教育委員会や学校では政治的活動と、この通知に基づいて指示をすることになる。今聞いても何だかよくわからない二つの言葉が入りまじっているな。

 いずれにしても、そうした、法文上定義されていない言葉を今度の通知で改めて定義をして、高校生たちの活動を規制しようとしているのであります。

 そこで伺ってまいりますが、今度の公職選挙法の改正によって、十八歳になった高校生たちも選挙運動ができるようになった。通知ではこのことをどのように書いているでしょうか。

小松政府参考人 お答えいたします。

 通知におきましては、「第三」というところで、

  今回の法改正により、十八歳以上の高等学校等の生徒は、有権者として選挙権を有し、また、選挙運動を行うことなどが認められることとなる。このような法改正は、未来の我が国を担っていく世代である若い人々の意見を、現在と未来の我が国の在り方を決める政治に反映させていくことが望ましいという意図に基づくものであり、今後は、高等学校等の生徒が、国家・社会の形成に主体的に参画していくことがより一層期待される。

というふうに記載してございます。

大平委員 十八歳になった高校生も選挙運動ができるようになり、学校もこれを「尊重する」というふうに通知では書いてあります。

 配付資料の二枚目をごらんいただけるでしょうか。

 これは、生徒、教員に配られている副読本の十三ページのコピーをしました。ここでも、図表、わかりやすいイラストも示しながら、「十八歳になれば選挙運動が可能です。」ということをはっきりと書いております。しかし、その一方で、この通知には、高校生の構内及び構外での選挙運動や政治活動への参加を制限、禁止するという内容にもなっております。

 局長に伺います。

 紹介をしていただきたいんですが、通知の「放課後や休日等に学校の構外で行われる生徒の選挙運動や政治的活動について」の(一)では何というふうに言っているでしょうか。

小松政府参考人 お答えをいたします。

 通知の御指摘の部分に、放課後や休日等の関係のことが記載してございます。御紹介いたします。

  放課後や休日等に学校の構外で生徒が行う選挙運動や政治的活動については、違法なもの、暴力的なもの、違法若しくは暴力的な政治的活動等になるおそれが高いものと認められる場合には、高等学校等は、これを制限又は禁止することが必要であること。また、生徒が政治的活動等に熱中する余り、学業や生活などに支障があると認められる場合、他の生徒の学業や生活などに支障があると認められる場合、又は生徒間における政治的対立が生じるなどして学校教育の円滑な実施に支障があると認められる場合には、高等学校等は、生徒の政治的活動等について、これによる当該生徒や他の生徒の学業等への支障の状況に応じ、必要かつ合理的な範囲内で制限又は禁止することを含め、適切に指導を行うことが求められること。

以上でございます。

大平委員 配付資料の三枚目に、今の通知の抜粋を載せております。

 放課後や休日に学校の構外で生徒が行う選挙運動や政治的活動について、違法なもの、暴力的なもの、そのおそれが高いと認められる場合とともに、学業や生活などに支障があると認められる場合には「必要かつ合理的な範囲内で制限又は禁止する」としています。

 順番は前後したんですが、その(二)には、先ほど、一つ前の答弁で言っていただいた、選挙運動は、学校は「尊重する」というふうに書いてある。

 一方では尊重すると言い、もう一方では規制すると言う。大臣、これは矛盾しないでしょうか。

馳国務大臣 高校は学校教育法などに定める目標を達成するべく生徒を教育する公的な施設であることなどを踏まえると、高校生の政治的活動等は、必要かつ合理的な範囲内で制約を受けるものと考えております。

 通知の第三の三、(二)にあるとおり、満十八歳以上の生徒が適法に行う選挙運動が尊重されることと、違法なもの等を初め、通知の第三の三、(一)にあるとおり、一定の場合に必要かつ合理的な範囲内で制約を受けることは矛盾するものではないと考えております。

大平委員 この通知にもあるんですけれども、違法なもの、あるいは暴力的なものというのは、政治活動であろうとなかろうと当然取り締まりの対象でありますし、それは高校生であっても大人であっても当然取り締まられるべきものであり、それが政治活動全般の制限の理由に私はならないと思うんです。

 通知を読んだ高校生から私はお話を伺いました。選挙権の引き下げをしながら、選挙運動、政治活動はするなというのは意味がわからない、政府は私たちに投票に行ってほしくないんですか、そういう率直な疑問、不満を話しておられました。

 果たして合理的かどうか、この通知の内容をさらに突っ込んで聞きたいと思うんですけれども、この政治的活動というものに高校生たちの一つ一つの行いが当てはまるのか否かを、現場で一体誰がどのように判断するんでしょうか。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 生徒に対する具体的な指導のあり方等は、学校の設置者並びにその委任を受けた学校長が適切に判断するものでございます。

 個々の活動については、一般的に、学校長が個別の事情に応じて判断してまいります。その際、校長は、学校における生徒の日常の状況を観察したり、もちろん、必要に応じまして聞き取りを行うなど手段を講じまして、適切に判断をするということになります。

大平委員 では、この通知にもあります、制限、禁止の対象になる「学業や生活などに支障があると認められる場合、」というのは、どういうケースを指すんでしょうか。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 活動を行っている生徒自身の場合につきまして、「学業や生活などに支障があると認められる」ケースといたしましては、例えば、授業を欠席して自身が支持する政治団体の主催する集会に参加をするとか、あるいは、政治活動等に没頭して夜遅くまで頻繁に電話やメールをすることが続き、結果として、家庭での学習を怠り学業に影響が出たり、昼夜逆転の生活により授業への集中力を失ったりしている場合等を想定しております。

 それからまた、通知には他の生徒との関係が言及してございます。こういった点におきまして、「他の生徒の学業や生活などに支障があると認められる場合、」といたしまして、例えば、特定の政策を支持する集会への参加を要請するため、自宅にいる他の生徒に対して夜遅くまで頻繁にメールや電話をし、当該生徒の認識や社会通念を踏まえれば、当該生徒の学業や生活に悪影響が出ていると判断される場合、特定の政策に賛成する先輩が部活動での人間関係を利用して後輩に集会への参加を強要する場合というようなことが想定されます。

 これらは、先ほど申し上げましたように、学校長がその指導に当たって個別に判断をすることとなりますので、お尋ねに従いまして、一つの想定例を御紹介さしあげる次第でございます。

大平委員 先ほどの答弁にありました「学業や生活などに支障があると認められる場合、」のケースとして御紹介があった、夜遅くまで電話やメールなどをして寝不足になって、授業への集中力がなくなったりする場合だと。

 その理由が政治活動への参加かどうかをどうやって判断するんでしょうか。

小松政府参考人 個別のケースについてのお尋ねになりますと、一般論としてこの場合がそうだといったことを一律の基準として立てることにはなじまないかと思います。

 生徒に対する具体的な指導のあり方、先ほど申し上げましたように、教育上の権限を有します学校長が適切に判断をするものでございまして、個々の活動については、一般的に、学校長がそれぞれの事情に応じて判断をいたします。その判断材料として、適切を欠かないように、観察や聞き取り等適切な手段を講じて判断をするということになります。

大平委員 観察や聞き取り等を行って丁寧に対応するということだったかと思います。私も、そのとおりだと思うんですね。

 つまり、現場の先生たちというのは、こうした通知があろうとなかろうと、そしてそれが政治活動が理由かどうかを問わず、例えば、クラスの生徒の中に、寝不足が続いて授業に集中できていない子がいれば、その状況があるというふうに見れば、声をかけて、よく話を聞いて相談に乗るというふうに、どんな先生たちもやると思うんですね。

 それを、何だか、この通知でもって、政治活動だけは何かいかがわしいものかのように扱って、制限、禁止することも含めてなどとも言いながら、指導しているわけです。

 私は、結局この通知は、政治活動への参加への、高校生たちに対する、萎縮させる効果しか果たさないようなものになるんじゃないかと思うわけです。

 つまり、ここまでの答弁でも明らかになったと思います。高校生たちの一つ一つの行いが政治的活動に該当するか否か、あるいは学業への支障が政治的活動への参加であるか否かを、しかも校長が判断する、このこと自体、私はそもそも不可能じゃないかと思うわけです。

 それでも、構内の活動ならば、目の前に生徒がいるわけですから、その状況を見てわかるかもしれない。この通知がさらに制限の対象としている休みの日の構外での活動が、その学校の全校生徒の活動が、その一つ一つが政治的活動に当てはまるのか否か、これはどうやって把握し、判断するんですか。

小松政府参考人 お尋ねの趣旨、態様、程度がどの程度のどういう状況を指すかが少しわかりにくいところがございますけれども、学校において、構外、すなわち、休日あるいは放課後、それからまた場所が学校の構内でないところにおいて生徒の生活や活動が行われる中で、どのように生徒指導を行うか、あるいは構外指導も含めてどのように対応するかということは、学校教育の適切で円滑な遂行の観点から指導する、あるいは把握をする、そして指導助言をするということは日常行われるところでございまして、政治的活動についてもそれは行われるということでございます。

大平委員 ちょっとよくわからない答弁なんですけれども。

 構外での休みの日の高校生たちの活動を把握するためにということなんでしょうか、今各地で検討されているのが届け出制の問題です。高校生たちが休みの日の構外での選挙運動や政治的活動に参加する場合に、事前に学校に届け出をしなければならないというものであります。そして、それに対して、文科省も、適切な配慮をすればよしと認めております。

 一般論で結構ですが、届け出といった場合、何を学校に届けることになるんでしょうか。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論になりますが、ただ、通知や、関係のいわゆるQアンドAと言われるものによって私どももお示しをいたしておりますけれども、まず、放課後、休日等に学校の構外で行われる高等学校等の生徒による政治的活動等は、家庭の理解のもと、当該生徒が判断し行うものでございます。それと同時に、先ほど申し上げましたが、このような活動も、高等学校の教育目的の達成等の観点から必要かつ合理的な範囲内での対応という対象になると解されます。

 高校生の政治的活動等に係る指導のあり方は、個別のケースに応じて学校において判断をされることでございますので、私どもとしても、届け出を要するという措置にするか否か、また、そうした場合に必要な届け出事項はこれであるというようなことを一律に決めるということはいたしておりません。

 したがって、政府としてこれがそうだということをお示しすることは適切ではないと思いますけれども、生徒からの届け出の内容として一般的に想定されるものといえば、例えば、活動の日時とか場所とか、あるいは参加する活動や団体の名称等とか、そういったものが考えられると思います。あくまでも一般論でございます。

大平委員 日時、場所、名称などを届けるのが一般的には届け出の内容になるだろうという御答弁でした。

 大臣にお伺いしたいと思うんですが、これから夏の参議院選挙にもなれば、現実的に想定されると思います、選挙期間になって、例えば、今度の日曜日、うちの町の駅前に安倍首相が来て街頭演説を行う、それを聞きつけた高校生がぜひ聞きに行きたいと思って、街頭演説といえば当然政治的活動ですから、届け出が必要になります。学校に、今度の日曜日、駅前で安倍首相の街頭演説に行きますというふうに届け出をすることになりますかね、大臣。

馳国務大臣 私もよく選挙区で街頭演説をしておりますが、よく小学生や中学生や高校生が立ちどまって聞いておりますので、言葉を選ぶように気をつけております。

 今お尋ねの点でありますが、届け出をさせる場合の具体的な指導のあり方は、高等学校の教育目的の達成の観点から、個別のケースに応じ、必要かつ合理的な範囲内のものとなるように、各学校等において適切に判断することが必要と考えております。

 一般論としては、街頭演説を聞くことは教育上の支障がないものもあると考えておりますが、具体的な指導のあり方は各学校等において適切に判断されるものであります。

大平委員 街頭演説は政治的活動に当てはまらないのかどうか、今の大臣の御答弁は当てはまらないということなんでしょうか。では一体何が政治的活動なのかというこの定義がいよいよ曖昧であり無制限であるじゃないかということも感じるわけです。

 しかし、先ほど来の答弁にあるとおり、一義的に責任は学校長にあるということですから、学校長が判断する、街頭演説が、必要だと判断すれば当然必要になるということになると思いますね。

 しかし、選挙期間の日曜日ともなれば、先ほど大臣がおっしゃったとおりです、終日あちこちで街頭演説が行われ、皆さんもきっと行うと思いますが、その一つ一つを事前に全て学校に届け出るということはまず不可能であります。

 例えば、日曜日、家族四人が一家で買い物に出かけた、家電量販店に出かけたら、そこである政治家が街頭演説をしていた、お父さん、お母さんは当然聞いてみようということで聞く、大学生のお兄ちゃんも当然聞いてみようということで聞く、しかし、高校生である本人だけは、学校が届け出制を取り入れており、これは未届けだからということで、真面目に受けとめまして、僕だけ帰るわということになってしまいかねない。

 街頭演説一つを例にとっても、私は、この通知あるいは届け出制というのは、そんな滑稽なことを高校生に押しつけるものになるんじゃないかということを言いたいと思います。

 さらに大臣にお聞きします。これはちょっと通告していないんですけれども、自民党は何歳から加入することができるでしょうか。自民党の党員になるには何歳からなれるでしょうか、党員資格の。(発言する者あり)

馳国務大臣 申しわけありません。私は、二十から、つまり成人してからだと思っておりましたが、今ほど理事に聞いておりましたら、十八というふうに言っておりますので、そうだと思います。済みません。

大平委員 そうだと思います。私たち共産党も十八歳から加入をすることができます。

 政党に入るという行為は、これこそこの上ない政治活動、政治的活動だと思いますが、これも一例です、届け出制というのが我が高校に導入をされれば、この十八歳の高校生は、例えば自民党に入党するときに、学校に、入党する、したいと届け出ることになるんでしょうか。

馳国務大臣 一般論として、政党、政治団体への加入が直ちに学校教育に支障を来すとは私は思えませんが、例えば、同様な政党の名前をかたって勧誘するというような事案も考えられないわけではありませんので、基本的に、これは、私が大臣としてというよりも、やはり学校長が適切に判断されるというふうにすべきだと思っています。

大平委員 さまざまな例を挙げさせていただきました。

 明らかだと思いますのは、いずれにおいても、この文科省の通知を厳格に実践し、届け出制を行えば、こんなおかしなことがあちこちで私は起こると思うんです。そういう仕組みだからこそ必ず、私は、高校生たちにとって、さまざまな選挙運動、政治活動への参加が萎縮されてしまうことになる、このことをはっきり述べておきたいと思うんです。

 配付資料の四枚目、ごらんをいただけるでしょうか。これは、愛媛県の教育委員会が昨年の十二月一日、県下の公立高校五十九校の教頭らを招集し、そこで配付された、校則改定のひな形となる「政治的活動等に対する生徒指導に関する校則等の見直しについて」であります。

 ごらんになってわかるとおり、ここには、海外旅行やキャンプ、登山などに行く場合と同様に、選挙運動や政治的活動への参加の場合にも許可、届け出が必要だ、一週間前に保護者の許可を得て担任に届け出るとされています。この文書の末尾には、「以上のとおり、改訂いたしました。」との文言が既に印字をされていまして、学校長が右上の空欄のところに署名、押印をすれば、そのまま県教委への提出文書となる形態をとっています。

 こういうことが現実に全国各地で起こっているのであります。大臣、本当にこんなことを認めるんでしょうか。お答えください。

小松政府参考人 恐れ入ります。事実関係だけ先にちょっと申し上げさせていただきます。

 愛媛県の教育委員会において、ただいま御指摘のような校則改定を指示したというような報道があるということは、私どもも接しております。

 この報道された生徒心得における許可制といったようなことの意味するところは定かではありませんけれども、私どもが伺っているところでは、愛媛県では、私どもQアンドAを出しておりますけれども、これを踏まえて、再度学校現場にひな形を示しておられ、その中では、構外の活動について許可制を行うような文言は削除したものと聞いております。

 これだけ一応先に補足させていただきます。

馳国務大臣 文部科学省が作成したQアンドAでは、届け出制について、放課後、休日等に学校の構外で行われる高等学校等の生徒による政治的活動等は、家庭の理解のもと、当該生徒が判断し行うものであるが、このような活動も、高等学校の教育目的の達成等の観点から必要かつ合理的な範囲内で制約を受ける、高校生の政治的活動等に係る指導のあり方については、このような観点からの必要かつ合理的な範囲内のものとなることが必要であり、例えば、届け出をした者の個人的な政治的信条の是非を問うようなものにならないようにすることなどの適切な配慮が必要としているところであります。

 届け出制については、こうした考え方を踏まえつつ各学校等において適切に判断することが必要なものであり、その一環として生徒の政治的活動等について届け出をさせることはあり得るものと考えております。

大平委員 大臣は、所管に任せると繰り返し答弁をされています。

 こうした愛媛のような県がある一方で、幾つかの都道府県教育委員会では、構外の政治活動は、家庭の理解のもと、生徒が自主的に判断して行うものとして、届け出制は不要だと判断しているところも生まれております。つまり、ある県では届け出が必要で、例えばその隣のある県では届け出は必要ない。さらに言えば、同じ県内あるいは同じ自治体の中でも、A高校は届け出が必要で、B高校は届け出が必要ないということが当然この仕組み上起こってくるわけです。

 そうした場合、また例を出して申しわけないですけれども、A高校とB高校の友達二人組が日曜日、町に出て、たまたま何かのデモに遭遇した、内容に大きく共感したので、このデモに飛び入りで参加したいと思っても、届け出のないA高校は、参加が自由にその子の自主的判断でできて、届け出が必要だというB高校の生徒、もう一人の友達の方は、このデモに参加したいと思うが、未届けだから、真面目に実践して、参加できなかったということがこの仕組みのもとでは必ず起こり得る。

 これは余りにも不合理ではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

馳国務大臣 各学校の状況に応じ、生徒指導のあり方が異なることはあり得るものと考えております。

大平委員 余りにも無責任な答弁だと言わなければなりません。

 文部科学省が発出した通知によって、こうした届け出制を今各地で学校は真面目に検討しているんだと思うんです。そして、資料にもあるとおり、既に現実に校則にまで書き込まれようとしています。高校生たちの休みの日の過ごし方にまでこうした極めて不当な制限が加えられるようなことは断じて認めるわけにはいかないと私は言いたいと思うんですね。

 先ほどから大臣は、政治的信条の是非を問うものにならないようにという御答弁がありました。そんなことは私は当たり前だと思うんです、大前提だと思うんです。政治的にこの取り組みはよくてあれはだめだということを学校が指示するなんて許されるはずがない。

 そうではなくて、問題は、どういう活動に参加するのかということそのものを言わない自由があるじゃないかということなんです。それが、内心の自由、思想信条の自由など、憲法の規定が保障されているということじゃないでしょうか。届け出制は、この話の冒頭に答弁があったとおり、いつ、どこで、何に、日時、場所、何に参加するのかを言わなければならないわけで、その時点で内心の自由を根本から脅かすものになるんじゃないでしょうか。

 大臣のお考えはどうでしょうか。

馳国務大臣 文部科学省としては、生徒の自主的な活動を上から抑えつけるという意図は全くないところでありますが、そうしたことも踏まえつつ、高等学校の教育目的の達成等の観点から必要かつ合理的な範囲内の対応となるように、各学校等において適切に判断するものであると考えております。

大平委員 届け出制を導入したら、憲法が規定する内心の自由、思想信条の自由を脅かすのではないかという質問をしています。お答えください。

馳国務大臣 そういう意図は全くありませんし、内心の自由を脅かすものではありません。

大平委員 届け出制が導入されれば、真面目に実践しようと思えば思うほど、いつ、どこで、何に参加するのかを言わなければならないと高校生たちは思うわけです。憲法の規定と届け出制は決して両立し得ないと私ははっきり述べておきたいと思います。

 日本国憲法の規定に加え、日本も批准をしている子どもの権利条約では、十八歳未満の子供を独立した人格として尊重し、子供が自分自身にかかわることに意見を表明する権利を保障しています。つまり、子供たちが決して年齢や立場で差別されることなく、当然高校生たちも政治活動の自由が保障されるべき、この点から見ても、今度の文科省通知はきっぱりと撤回すべきだということをはっきり申し上げて、次の質問、最後の質問に移ります。

 私の地元、広島県の呉市で、先日、市立中学校が来年度から使う歴史、公民の教科書の選定時に使われた資料に誤りがあることを、市民の有志の方が公文書公開請求で資料を入手し調べる中で発見されました。二月十七日に呉市の教育委員会は会見を開き、数カ所の誤記があったことを認め、全容の把握をした上で三月三日に臨時の教育委員会議を開き、報告をすると述べました。

 三月三日の報告の概要を説明していただけますか。

小松政府参考人 お尋ねの件でございますが、報道等を踏まえまして、広島県教育委員会を通じて確認したところを申し述べますので、若干不正確なところがあれば御容赦をお願いいたしたいと存じます。

 私どもが把握しておりますところによりますと、三月三日に臨時の教育委員会が開催され、歴史、公民の、これは一冊の教科書ということではなくて全体でございますけれども、研究資料に計一千五十四カ所の誤りがあったことが報告されたということと、その上で改めて審議を行い、調査研究資料の誤りは採択結果それ自体には影響を及ぼさないことについて、教育長、教育委員全員の方々の意見が一致したところと伺っております。

大平委員 二月十七日の会見では数カ所の誤記、点検ミスと言っていたのが、全容を調べてみると何と千五十四カ所もの誤りがあったとのことでした。驚きの事実であります。しかも、発見されたのは、市民の有志の方が公文書公開請求をし、調べる中で初めてわかったことでした。

 一つ確認したいのは、情報の公表の問題です。

 教科書採択という大切な事柄がどう審議されているのかもわからないのでは、教育行政に対する信頼にかかわることだと思います。誰もが見られるように公表を促していくべきだと考えております。

 局長に確認ですけれども、今、最新の数字で、市町村教育委員会の採択にかかわる議事録、選定委員会の議事録、調査研究資料の公表をされている割合はどのくらいになっているでしょうか。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 教科書採択に当たっては、採択権者である教育委員会等によって十分な調査研究を経た上で、その地域の実情に即した教科書を採択することが必要でございますけれども、それとともに、保護者や地域住民の方々に対して採択の結果や理由等について十分な説明責任を果たし、教科書採択に関する信頼の確保に努める必要があるというふうに考えております。

 その観点から、関係の規定がございまして、通知等により、その意義、趣旨の周知に努めているところでございます。

 平成二十六年度の教科書採択状況調査によりますと、採択に係る教育委員会の議事録を公表している市町村教育委員会が全体の約四二%に当たります七百三十二市町村。選定委員会、これは必置のものではございませんけれども、設けている場合の議事録を公表している市町村教育委員会は、選定委員会を置く市町村のうち約三〇%に当たる二百十一市町村。それから、調査研究資料を公表している市町村教育委員会は、調査員等を置く市町村のうち約三六%に当たります六百十三市町村にとどまっております。全部というわけではございません。

大平委員 大臣に最後、お伺いしたいんですが、教科書採択は綿密な調査研究を行った上で適切に行われ、採択に関する保護者や市民の信頼の確保に努める必要があると文科省も繰り返し述べてこられました。

 この点で、今度の呉市教委の問題はどうだったのか。一千カ所を超えるミス、しかも、それが市民の調査で初めて発見された。私は、これでは保護者や市民の理解は得られないし、採択への信頼も揺らいでいるというふうに考えますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

馳国務大臣 教科書採択というのは法律によって定められた作業ということでありますから、私は、できる限りその情報が公開されることがやはり当然だとまず思っております。法律上は努力義務となっておりますけれども、やはり公開されることが望ましいと、まず基本的な認識を申し上げた上で、呉市教育委員会における歴史、公民の教科書に関する調査研究資料に多数の誤りがあったということに関しては、率直に申し上げて、望ましいものではないと考えております。

 広島県教育委員会を通じて確認した限り、調査研究資料の誤りは採択結果それ自体に影響を与えるものではなかったと聞いておりますが、御指摘のように、保護者や地域住民等に教科書採択に対する不信感を抱かせてしまったのであれば、採択権者である呉市教育委員会において説明責任を果たしていただくとともに、今後同じような誤りが起こることのないよう、再発防止に向けて、調査研究の方法、体制等について見直していただくことが重要であると考えており、しっかりとした対応が行われることを期待したいと思います。

大平委員 大臣におっしゃっていただいたとおり、事は、子供たちが三年間学ぶ教科書を選ぶという大変重要な問題です。こうした極めて無責任なずさんなやり方では、保護者、市民は決して納得しないということも改めて申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

谷川委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 おおさか維新の会の伊東信久です。よろしくお願いいたします。

 本日は、まず、我が党が主張しています教育無償化について、馳文部科学大臣の見解をお伺いしたいと思います。

 さて、憲法二十六条には、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」とありますが、これを受けまして教育基本法などが定められていると思いますけれども、大臣は、この憲法の二十六条の「能力に応じて」とは、どのような能力を意味するとお考えですか。

馳国務大臣 憲法第二十六条第一項及びこれを受けた教育基本法第四条第一項に言う「能力」とは、教育を受けるに足りる精神的、身体的能力の意味であり、「その能力に応じた」とは、全ての者に全く同一の教育を与えるのではなく、個人の能力に応じて異なる内容の教育を可能とする趣旨で置かれているものであります。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 平等であるか公平であるかの議論にもなると思うんですけれども、一般的に能力と言われますと、学力の話なのか、肉体的体力の話なのか、もしくは経済的な話なのかといろいろな意味で受け取れるので、ちょっと誤解を招くこともあると思うので、もともとの英文が「アビリティー」になっているんですけれども、表現を変えた方がいいのではと我々は考えておるんですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。

馳国務大臣 今、憲法の話をしておられますので、その表現を変えるということになれば、国民的な議論のもとにおいて判断されるものと考えております。

伊東(信)委員 全くもっておっしゃるとおりで、我々おおさか維新の会は、憲法の中の教育無償化ということを主張しているので、こういった御質問をしたんです。

 現在の教育の機会均等が現実的に行われていないという認識におきまして、大臣も所信の中で、「家庭の経済状況に左右されることなく誰もが希望する教育を受けることができるよう、教育費の負担軽減を図るとともに、学校、地域を通じた子供の貧困対策を推進します。」とおっしゃっていました。

 ということは、教育の機会均等が現実には今行われていないという状況であるという認識だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

馳国務大臣 家庭の経済状況にかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての子供が質の高い教育を受け、一人一人の能力、可能性を最大限伸ばして、それぞれの夢にチャレンジできる社会を実現することが必要であります。

 このため、まずは、幼児期から高等教育段階までの切れ目のない形での教育費負担軽減策を今般の予算案においても示しているところであります。

 また、子供たちがしっかりとした学力を身につけられるように、教職員等の指導体制の充実や、原則無料の学習支援、地域未来塾の拡充などにも取り組んでいるところであります。

 こういった取り組みを通じて、今後とも、教育の機会均等に向けて全力で取り組んでまいりたいと思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 子供の貧困対策という観点で、就学前の児童教育の重要性についてはよく認識されていると思います。

 その上で、本日の委員会でもたびたび、坂本議員とかも言われていましたけれども、アメリカの事例があると思います。アメリカの事例というのは、シカゴ大のジェームズ・ヘックマンのペリー就学前計画という実験結果だと思うんですけれども、一九六〇年代にさかのぼって、経済的に恵まれない三歳、四歳のアメリカ人の子供を対象に、午前中は学校で教育、午後は先生が家庭訪問、指導して、二年間この計画を続けた。

 終了後、約四十年間にわたり追跡調査をした結果、介入実験を受けた子供たちとそうでない子供たちを四十歳になった時点で比較して、実験を受けた子供は、高校の卒業率や持ち家率、平均所得が高かった、生活保護受給率、逮捕者率が低いという結果が出たということで、こういった事例があった。

 それでは、日本でも、その実態に沿って、義務教育の範囲に就学前教育を含むべきだと思いますけれども、どのように捉えておられますでしょうか。

馳国務大臣 幼児教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、家庭の経済状況に左右されることなく、全ての子供に質の高い幼児教育を受ける機会を保障することが重要であると考えています。

 こうした考えのもと、幼児教育の無償化について、平成二十八年度予算案においては、多子世帯の保護者負担軽減として、年収三百六十万円未満相当の世帯について、現行の多子計算に関する年齢制限を撤廃し、第二子の保育料を半額、第三子以降の保育料無償化の完全実施、一人親世帯等への保護者負担軽減として、市町村民税非課税世帯は保育料を無償化し、年収約二百七十万円から約三百六十万円未満相当の世帯は、第一子の保育料を半額、第二子以降の保育料を無償化とする措置を盛り込んでおります。

 今後とも、財源を確保しつつ、幼児教育の段階的無償化に向けた取り組みを進めてまいりたいと思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 就学前教育と義務教育後、つまり、高校の授業料の無償化について次はお尋ねしたいと思うんです。

 現在、九八%以上と言われる日本の高校進学率を考えると、義務教育の範囲に高校も含むべきだと我々は考えておるわけです。

 これも憲法の話になると思うんですけれども、先日、橋下法律顧問を交えてこういった議論を深めたわけなんですけれども、憲法改正による教育の無償化を我々は目指しておりまして、既に憲法二十六条二項によって、義務教育は無償とされています。憲法上の原則を、先ほどの質問の就学前の教育に、そして、今の質問である高等教育でも確立すべきと考えていまして、無償化というのは、教育の機会均等に不可欠の前提で、大臣おっしゃるように、高校を卒業された方と大学を卒業された方の平均賃金に大きな差があることからも、教育における機会均等は現状の義務教育に限られるべきではないと我々は考えておりまして、既に大阪では、橋下徹知事時代に、私立高校の授業料無償化を実施しました。

 もちろん、大阪と各地域の違いというのは十分認識しておるつもりです。その点で、大阪では、年収五百九十万未満で授業料無償、八百万円未満の世帯では授業料負担が年間二十万、三人以上を府内の私立高校に通わせている場合は、年収八百万未満世帯の負担が十万、八百万円以上九百十万円未満の世帯の負担を二十万としました。一〇〇%の完全無償化とは言わないものの、高校生のいる世帯の七割をカバーしております。

 繰り返し、大阪の実情と各地域の実情を同じであると認識はしていないんですけれども、こういった大阪の制度をモデルケースとして、今後、教育費の無償化の範囲の拡大は検討はされておられるんでしょうか。

馳国務大臣 まず、大阪府の取り組みについては、家庭の経済環境によらずに教育費の負担軽減を図る一つの政策として、評価をしているところであります。

 また、私どもと言うと、今は大臣だから、ちょっと立場は違いますが、自由民主党としても、都道府県の格差解消や公私間の格差解消、あるいは、所得による、家庭による格差解消ということを政策の目標として掲げておりましたので、方向性としては一定の理解をしているということをまずお伝えした上で、ただ、限られた財源のもとにおいて、高等学校の就学支援金の制度の拡充、それから大学における奨学金制度、これは貸与制でありますが、この制度の拡充に向けて取り組んでいるということをお伝えしたいと思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、教育の機会均等に関して、党派を超えて思いというのは一致していると思います。あとは本当に、財源の話であったり、方法論であったり、スピード感であったりすると思いますけれども、その点、またよろしくお願いいたします。

 次に、東京オリンピック・パラリンピックに向けてのお取り組みについてお尋ねしたいと思うんです。

 昨日ですけれども、テニスのマリア・シャラポワ選手の、ドーピング陽性反応のニュースがありました。日本国内において同じような不幸な結果に選手がならないように、対策というのは取り組んでいただきたいわけなんですけれども、私自身、JADAというところに所属しているドーピング・コントロール・オフィサー、ドーピング検査をする資格を持っている人間でございまして、その中でも、シニアDCO、そういった、人をまた指導する立場でもありました。

 そもそも、ドーピングというのはなぜいけないかということを国民に理解してもらう必要があると考えておりますけれども、その説明を大臣の方からお願いいたします。

馳国務大臣 ドーピングは不正そのものであり、アスリートの健康を害するだけでなく、スポーツの価値を損ない、公平かつクリーンなスポーツを愛する人々を失望させるものであり、絶対に許される行為ではありません。

 これまでの我が国のアンチドーピング活動は国際的にも高く評価されており、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に対しても、ドーピングのないクリーンな大会にするよう、IOCや世界ドーピング防止機構、これはWADAと申します、WADAから強い期待が寄せられております。

 政府としては、今後とも、公平かつクリーンなスポーツが維持されるよう、アンチドーピングの重要性を、アスリートのみならず、広く国民にしっかりと発信していくとともに、組織委員会、東京都、関係省庁及び関係機関等と協力しながら、ドーピング防止に努めてまいりたいと思います。

 また、冨岡副大臣のもとで、アンチドーピングに関する政策、立法も視野に入れて検討を深めておるということもお伝えしたいと思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 ドーピング検査というのは、試合が、競技が終わった後、無作為に人を決めて居残っていただいて、そして尿検査をするというもので、かなりの拘束時間がとられたりするわけなんですね。ほかに、ADAMSという、あっちのアダムズ式のアダムズじゃない、ADAMSというアプリがありまして、そこに選手が登録して、海外に通用する一流選手は、必ず、一時間、どこにいるかというのを報告しなければいけない義務がありまして、大体朝の五時とか六時とか、それぐらいの時間を指定するんですよ。そうすると、我々DCOも朝の五時に自宅に行って尿検査をするといった、そういったことでした。

 馳大臣もオリンピアンですので、言えないと思いますけれども、ドーピング検査をされたのかもしれないんですけれども。検査は別に無作為にやりますので。

 日本国内におきまして、DCO及びシニアDCOというのは非常に数が少ないという認識が私にあったんですけれども、現在、日本国内でDCO及びシニアDCOはどれぐらいの人数になっておりますか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国では、現在、ドーピング検査員、DCOが百六十五名、シニアDCOが百三十四名、採血者が十二名いらっしゃいます。

伊東(信)委員 やはり、これから日本がラグビーワールドカップを開催したり、東京オリンピックを開催するに当たっては、本当に、スタッフのDCO、シニアDCOの数は少ないと思います。

 そういった対策を考えていただきたいのですが、それよりも、報道ベースなので、この後、シャラポワ選手の判断というのがどうなるかというのは、WADAの判断及びロシアの判断というのはわからないですけれども、ただ、やはり、選手にとっても国にとっても不幸な結果にならないようにしていただきたいわけなんです。

 シャラポワ選手が使っていたメルドニウムというお薬は、ことしから禁止になった薬物であります。検査内容の報告というのは、我々DCOは冊子で事前にもらえるわけなんですけれども、報道ベースでは、シャラポワ選手はメールでしかもらえなかった、そのメールを見ていなかったと。もちろん、それは、選手側のミスなのか、コーチのミスなのか、いろいろな問題がありますけれども、禁止内容の変更などを選手に通達するだけじゃなく、広く関係者にも、アスリートによっては、もちろん、小学生、中学生、高校生、いろいろなところまで本当に及ぶと思います。

 本当に、一般的に治療薬としている薬もドーピング検査にひっかかってくる場合もあるんですけれども、こういった説明を、広報体制として日本はどのようになっておるでしょうか。

馳国務大臣 我が国は、従来より、アスリートを守り、ドーピングを未然に防ぐために、アンチドーピング教育を重視してきており、その成果は国際的にも高く評価されております。

 具体的には、毎年、日本アンチ・ドーピング機構を通じて、国内競技団体のアンチドーピング担当者を対象とした研修会を行い、世界ドーピング防止機構が発行する禁止表が更新されるたびに、改正のポイントを記載したアスリート向けの冊子を配付するなど、周知を図っているところであります。また、JADAにおいては、二〇〇九年から導入しているスポーツファーマシスト制度において、アスリートが服用する薬に禁止物質が含まれていないかなど、アンチドーピングの知識を有する薬剤師に電話で確認することができる仕組みを構築しております。

 このようなアスリートに対する教育研修活動はドーピング防止活動のかなめであり、ラグビーワールドカップ二〇一九及び二〇二〇東京大会に向けて、我が国からドーピング違反を出さないように、一層アンチドーピング教育を推進してまいりたいと思います。

 シャラポワ選手の件につきましても、本人が意図していようが、あるいは、例えば、こういうことがあるかわかりませんが、本人が意図せずに誰かから薬を盛られて飲んでしまったということであろうが、もちろん弁明の機会はありますが、陽性が出たら、それを再確認、もう一度確認をして、二度陽性が出たらもうアウトになるという厳しい制度でありますから、こういったことが我が国のアスリートに起こることのないように、そもそもドーピングはしてはいけない、そういう不正をしてはいけない、また、健康を害する、こういうことは徹底して教育を進めてまいりたいと思います。

伊東(信)委員 馳大臣、ありがとうございます。

 本当に、プレーフェアの観点からも、日本の選手だけじゃなくて、世界各国の選手にとってもやはりプレーフェアというのは大事なことと、あと、整形外科医の立場からすると、筋肉増強剤とかをドーピングで使うと、今度は骨粗鬆症になるんですね。骨が折れやすくなるわけです。そういった観点、もしくは心臓を傷めたりしますので、選手自身の健康、体を守る点でも、徹底的によろしくお願いしますということです。

 遠藤オリパラ大臣にお聞きしたいんですけれども、幾つか所信の中で、まずは、東京オリンピックに向けまして、地方公共団体をホストタウンとして登録して地方を活性化するとおっしゃっていました。

 この取り組みというのは、東京オリパラの前に、二〇一九年にラグビーワールドカップが開催されるのですけれども、もう既に開催地は決まっているんですけれども、ここからキャンプ地に向けての活動があると思うんですけれども、このオリンピックのホストタウンとラグビーのキャンプ地というのは、何かリンクしたり連携とかをされるんでしょうか、それともこれからの取り組みなのでしょうか、お教えください。

遠藤国務大臣 お答えいたします。

 伊東委員はかつて高校時代、花園のプレーヤーだったと承っておりますし、また、国会の超党派でつくっております二〇一九年のラグビーワールドカップの成功議連の役員もしていただいて、大変御貢献いただいておりますことに、議連の幹事長としてまずお礼を申し上げます。

 さて、ラグビーワールドカップ二〇一九との連携については、昨年十一月に閣議決定をいたしましたオリパラ基本方針においても、これと連携して準備を進めることとされており、こうした方針を踏まえて進めてまいります。

 本年一月に決定されたホストタウンの第一次登録団体の中では、例えば横浜市が、二〇二〇年大会の英国の事前合宿を受け入れ、また、二〇一九年のラグビーワールドカップの開催地であることから、ラグビー交流にも取り組んでいく。あるいは、別府市が、ニュージーランドとの姉妹都市の縁を活用して、二〇一九年及び二〇二〇年の同国のラグビーチームの事前合宿を誘致するとか、そうした形で、ラグビーワールドカップの開催会場を抱えており、また、相手国とのラグビー交流を行うといった計画を有している団体があると承知をしております。

 そうした観点から、引き続き連携して進めていきたいと思いますが、自治体がホストタウンに取り組まれることに当たっては、こうした大会との連携も念頭に取り組みを進めていただき、観光客の受け入れ体制やボランティアの育成、観光資源の掘り起こしなど、ソフト、ハードを通じた地域のレガシー創出につなげていくことが望ましいと考えております。

伊東(信)委員 大臣、ありがとうございます。

 同じく、大臣の所信の中に、これは主に東京オリンピックにかかわる話だと思うんですけれども、東京オリンピックの開催時期を考えまして、「暑さ対策に係る技術開発や熱中症対策等に係る予測技術開発等の対策を」講じるとありました。私自身もスポーツドクターをやらせていただきまして、熱中症対策というのは非常に大事な課題なんですけれども、どういったような対策を講じるのでしょうか。内容を教えていただければと思います。

遠藤国務大臣 お答えいたします。

 オリンピック・パラリンピックの開催の条件はいろいろありますが、何よりも安心、安全な運営をするということが一番大事だと思っております。

 その中で、テロ問題とかいろいろありますが、とりわけ東京大会は七月から九月の暑さが厳しい時期に開催されますから、まさに世界各国から、我が国の夏の暑さになれていない多くの外国人あるいは障害者の皆さんが訪れることを考えますと、この暑さ対策は最重要課題の一つだと思っております。そのため、東京大会において、競技者が最高のパフォーマンスを発揮し、観客が過ごしやすい環境を整備することが極めて重要であると思っております。

 政府としましては、昨年九月に、暑さ対策に係る関係府省庁等連絡会議において、競技会場の暑さ対策を初め、関係府省庁、組織委員会及び東京都等が取り組むべき対策について中間取りまとめを策定いたしました。特に医療体制の整備はとりわけ重要でありまして、大会運営における応急体制の整備、観客等の熱中症に係る救急体制の整備や、病院における外国人受け入れを含めた医療体制の整備など、対策に取り組むこととしております。

 昨年の十二月二十四日、日本医師会の横倉会長においでいただきまして、日本医師会として、専門集団としてさまざまな協力をし、大会の成功に力を尽くしてまいります、その中で、東京都医師会及び競技開催県の医師会と連携し、体制整備と医師の確保に協力いたします、このような申し出もいただいております。

 引き続き、大会の成功に向けて関係機関と連携し、暑さ対策にしっかり取り組んでまいります。

伊東(信)委員 私も救急医をやっていましたので、救急医療体制というのは非常に大事だと思うんですけれども、例えば、私は高校からラグビーを始めているわけなんですけれども、小学校、中学校は実はやっていなかったです。高校のときに夏合宿とかがありまして、かなり暑かったのを覚えていますけれども、地球温暖化の話とかはまたさておきまして、こんなに暑かったかなと思うのが一つ。

 もう一つ、熱中症という言葉がなかったわけなんですね。とりあえず、私が高校のときに、いわゆるスポーツドリンクなるものが初めて世の中に出てきまして、それで水分補給だけじゃなく塩分補給もできて、私自身は高校時代は熱中症になったことはなかったんです。

 要は、熱中症にならないための対策、施設であるとか、そういった体制であるとか、そういった対策というのはなされているのでしょうか。これからでしたら、これからで構わないので、御答弁ください。

遠藤国務大臣 私は実は大学時代に、多分そうだと思いますが、熱中症になって、あわやというときがありました。大変恐ろしい症状だと思っております。

 ただ、かつては、運動選手は、試合中あるいは練習中はそうしたドリンクや水を飲むな、こう言われておりました。しかし、今はむしろ積極的に水分を補給して、そして健康管理をしっかりしろということですから、そうしたことは、オリンピック・パラリンピックの開催はもちろんですが、まさに選手強化あるいは選手の安全を考えた上で大事なものでありますから、そこは、きょう馳大臣がいらっしゃいますが、スポーツ庁を通じて、しっかりそうした体制はとっていかなきゃならないと思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 あとは、医師会の横倉会長のお話をされていましたけれども、横倉会長も九州でラグビーをやられていた先生なんですけれども、実際、ラグビーワールドカップ、南アフリカ戦、ありがたいことに、私一人、衆議院の許可を得まして試合を現地で見せていただきまして、皆さんには感謝を申し上げる次第なんですけれども、その前に、国会議員団とイギリスの国会議員団の試合があったんですね。それ自体には間に合わなくて、日本から行った医師団にかわりに助っ人として出ていただきました。

 そのときの意見交換で、そういった、現場に来ているドクターからさえ、救急体制はどうなるんですかという質問を受けたんですね。ということは、まだ救急体制に対しての周知ができていないと思いますので、大臣の今の答弁にもありましたし、所信の中に「救急医療体制の整備」とありました。医師の総数にはやはり限りがありますので、救急医療体制の整備が本当にできているのかどうか心配しておりますので、そのあたりの体制をよろしくお願いいたします。

 質疑時間終了の紙が来ましたので、時間がなければ答弁はなくてもいいですし、もしありましたら。ありがとうございます。

遠藤国務大臣 先ほどの答弁で、おいでいただいたのは、医師会の常任理事と東京の会長においでいただいて、そして、横倉会長の名義でお申し出をいただきました。

 今お話ありましたように、そこはしっかりと取り組んでまいりますが、もう一つ、いわゆるアスリートといいますか、選手のそうした暑さ対策はもちろん大事ですが、選手の皆さん方と話をすると、私たちは最高のパフォーマンスを発揮するためにどんな条件でも合わせるように訓練をしてきます、しかし、むしろ観客の皆さんが大変かと思います、観客の皆さんの暑さ対策をしっかりしてください、そういうふうなお話もむしろアスリートの皆さんからありますから、あわせてしっかり取り組んでいきたいと思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。終わります。

谷川委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 本日は、教育予算の関連についてお話を伺いたいというふうに思います。

 きょうは大岡財務大臣政務官にも来ていただいておりますので、まず財務省にお聞きをしたいと思います。

 昨年十一月二十四日に取りまとめました、いわゆる財政審、財政制度等審議会の建議の中の教育の項目を読ませていただきました。率直に言って、非常に驚きを禁じ得ない中身でありました。

 その中にはこういう一節があります。

 「子どものため」という名目で感覚的に教育関係予算の額を増大させることに着目するのは正しい政策判断とは言えず、仮に効果の現れない施策を行えば、結局、その子ども達に借金という形でつけを回すことになる。そのことを、財政当局のみならず、教育政策の責任者は十分に認識すべきである。

このように書かれております。

 まず、お聞きしたいのは、なぜわざわざこうしたことに言及されたのか、その意図について尋ねたいと思います。

大岡大臣政務官 吉川先生にお答えを申し上げます。

 まず、先生御指摘の点につきましては、前提としまして、政策というのは一つの座標軸だけではなくて多面的な座標軸があるということを前提にこのような表現がされているものと思いますが、そうしたことを前提に申し上げますと、我が国の財政は先進国中最悪の状態でございまして、一般会計の歳出の四〇%を借金で賄っている、つまり、次の世代に負担を先送りすることで賄っているということでございます。

 こうした状況の中で、毎年の予算編成に当たりまして、無駄を徹底的に排除していくということに加えまして、効率化、選択と集中ということが非常に重要であるというふうに考えております。

 当然、教育予算につきましても例外ではございませんで、単なる金額の拡大だけを目指すのではなくて、未来を担う人材の養成、子供たちの学力、能力、人間性の向上などの観点から、どういった施策をすればより効果の高いものになるか、資源を集中させていくことで効果的、効率的な予算になるかということを考えて進めてきたわけでございます。

 財政審にいただきましたこうした建議につきましては、そうした、少し多面的に政策を捉えていただいた上で述べられたものだと考えておりまして、二〇二〇年度までの基礎的財政収支の黒字化に向けて、政府全体として取り組んでいかなければならない姿勢をお示しいただいたものというふうに考えております。

 以上でございます。

吉川(元)委員 効果がない政策に多額の予算をつけるなんていうことは、これは別に教育予算じゃなくても、全ての予算について当たり前の話であって、ましてや、例えば日本の教育費が世界の中で上から数えて二番目、三番目、上位にいるというのであれば、それでもまだ足らないというふうに思いますけれども、まだわからないわけではないです。

 ところが、実際の国際的な比較を見ますと、OECDの中で最悪です。就学前のものも含めれば五年連続で最下位でしたし、今回も、二〇一二年、これも最悪、OECDでは最低の公的な支出になっております。

 例えば、一九九五年度の一般会計に占める文教関係予算は八・六%ありました。ところが、二〇一六年は一般会計予算の五・五%です。大幅に減っております。

 それから、先ほどOECDのお話をいたしましたけれども、GDPに占める公的支出ということですけれども、一九九五年度のGDP、名目ですけれども、おおよそ五百五兆円あります。二〇一六年度、これは政府見通しですけれども、五百十九兆円になるというふうに言っております。そうすると、ますます、OECDの中でいいますと、教育予算にかけるお金は物すごく少ないという状況になっているわけです。

 きょう当委員会で、政務官がいらっしゃらないところではありましたけれども、午前中から審議をしておりますと、やはり教育予算が不十分であるがゆえに教育費が家計を圧迫している、あるいは、大学授業料の高騰や、有利子を中心とした貧弱な奨学金制度、こうしたことで多くの方が苦しんでおられます。

 私は伺いたいんですけれども、感覚的に額を増大させるのではなくて、感覚的に額を減らそうとしているのは財務省の方じゃないんですか。どこにそういうエビデンスがあるんですか。日本の教育費は非常に十分に支払われているという、それはどこにあるんですか。ぜひ教えてください。

大岡大臣政務官 先生から、教育について非常に強い思いを持っておられる再質問をいただきました。

 私どもも、当然、教育というのが非常に重要だという認識は同じく持っております。実際に、財務省の職員というのは、教育の世界で非常に頑張ってきた方々が多数おられまして、教育に対する投資の恩恵を得ている方々も多いのが事実でございます。

 そうした前提で、OECDのデータだけをもとに少しお話をさせていただきますと、OECD全体平均の子供の割合からすると、日本の子供の数というのは全人口に占める中では約七割でございます。それに対して、教育支出自体はOECD全体平均からすると八割でございますので、そういう意味では、一人当たりという見方をしますと、一定程度頑張っているのではないかというふうに考えております。

 あわせて、日本の場合は、歴史的に家庭の教育力というのも非常に高うございまして、それからすると、まず一つは、日本には金額にあらわれない教育力があるということでございます。あわせて、それだけに頼るのではなくて、家庭の一定の支出を教育に出していただきまして、この家庭の教育支出を負担と感じるか、あるいは喜んで出すべきものだと感じるかというのは人それぞれあろうかと思いますが、そうした中で日本の教育が担われてきているという認識を持っております。

 したがいまして、そうしたことを踏まえまして、文科省の方ともよく協議をしまして、どこからどこまで公的に支出すべきなのか、どこからどこまでは家庭の教育力に、やはり引き続き日本のよさとして依存していくべきなのか、こうしたことも踏まえてよく議論してまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 全く事実に目をつぶっているとしか私は思えませんし、笑止千万な話であります。

 例えば日本の大学の授業料は非常に高くなっています。一方で、国際機関に行って説明するときに、日本の奨学金をなかなか理解してくれません。みんなが言うのは、これは学生ローンだというふうに言うわけです。

 そういう実態を無視して、私はもう、これはどう考えても感覚的なのは財務省の方としか思えませんし、何のエビデンスにも基づかずに、ただ単にとにかく教育予算を減らしたいということとしか私は思えません。

 それで、ちょっと馳大臣に伺いたいと思います。

 この建議の中では、「教育政策の責任者は十分に認識すべきである。」このようなことが言及をされております。馳大臣一人が責任者ではありませんけれども、その一人である大臣として、この建議をどのように受けとめておられるのか、お聞きいたします。

馳国務大臣 この建議、いいことも書いてあるんですよ。

  国家・経済の源泉は「人」であり、教育を通じた人材育成は、未来に向けた極めて重要な先行投資である。特に、四〇%を公債、すなわち子ども達からの借金によって賄っている我が国財政においては、今の施策が将来に確実に成果を生み出すものでなくてはならず、かつ、効率的なものでなければならない。

ここでやめておけばよかったと私は思います。この後に書いてあるところは先ほどから吉川委員が御指摘をしたとおりでありますので、こういうのを上から目線というのであると私は思っています。

 ただ、やはり国家財政が厳しい状況である、公債四〇%、この数字はやはり直視しなければいけないのは与野党また政府全体の共通認識でありますから、逆に、教育投資を充実することによって経済も安定して成長させていくような国家づくり、世界平和を希求するような、安定した国民の社会状況をつくり出していく、こういうふうに持っていけばいいのであって、この「「子どものため」という名目で」云々という部分は私は大きなお世話だと。言いたい本音は余り言わないようにして、余り言わないようにしてですね。

 昨年の予算編成を通じて財務省とコミュニケーションをとりながら、我々も、例えば悉皆で学力テストや学習状況調査をしておりますし、国立の政策機関においても、どういう効果を果たすのか、こういう研究もしておりますから、そういったことを踏まえて、やはり、教育投資を増大し、特に公財政支出を充実することは国家の将来にとってよりプラスになり、国民にとって、一人一人にとってよりプラスになる、こういうふうな論陣を張ることができるように、私もより一層努力すべきだと思います。

吉川(元)委員 大変力強い大臣のお話でございました。

 私自身は、学力テストの悉皆化は必要ないだろうというふうには思っておりますが、国家財政が大変厳しい状況だからこそ教育にお金をつぎ込まなければいけない。次の世代にしっかりとつないでいくためにも教育予算というのは非常に重要だというふうに思います。

 先ほど政務官の方から、家庭の教育力あるいは家庭の支出というふうに言われました。これが限界に来ているから、子供の貧困、その連鎖が今起こっているわけです。そこら辺についてしっかりと認識をしていただきたいと思います。

 時間がどんどん来ていますので、ちょっと次に移りたいと思います。

 同じく建議の方ですけれども、「社会保障以外の歳出分野」の項目で、以下のように書かれております。「高齢化という不可避な歳出増加要因により「自然増」が存在する社会保障とは異なり、社会保障以外の歳出については人口減少を踏まえた「自然減」を前提とすべきである。」この文章に続いて、わざわざ社会資本整備、教育、地方財政がその対象に挙げられております。

 高齢化ということであれば、私も総務委員会にもおりますから、地方財政というのはますます重要になるというふうに思っておりまして、これがなぜ対象になるのかもよくわかりませんが、きょうは文部科学委員会ですので、教育について伺いたいと思います。

 総理は、新三本の矢、あるいはそれを受けて策定された一億総活躍社会では、希望出生率一・八の実現を目指すことを目標とされております。

 出生率の向上を目標として、実際に出生率が上昇すれば、当然教育予算もふやさなければならないというふうに思います。政府は出生率の上昇を目指すけれども、財政審の建議では教育予算も人口減少を前提にするというのは、これは矛盾ではないかというふうに思います。

 財務省は、政府の一億総活躍社会について、実際の予算編成過程では、とりあえずスローガンだからこれは無視しておこう、そういう姿勢で臨まれているのか、その点について政務官に伺います。

大岡大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、平成二十八年度予算の編成に関する建議におきましては、人口減少という新たな社会を踏まえまして、社会保障関係費以外の歳出の自然減を前提とすべきという御指摘をいただいております。

 それは、一つには、日本の人口が明らかに減少傾向にございまして、二〇四八年度には人口は一億人を割って九千九百十三万人となるという予測がされております。だからこそ、私ども安倍政権としましては、希望出生率一・八を掲げまして、結婚、子育ての希望を実現しにくい状況を克服する、しやすくしていくということを目標としております。

 財務省としましても、希望出生率一・八の実現という具体的な目標に沿いまして財政運営に取り組んでいるところでございまして、平成二十七年度の補正予算そして二十八年度予算につきましては、保育士の人材確保あるいは幼児教育無償化の段階的拡充といった、希望出生率一・八に直結する施策につきまして、公費ベースで七千億円を超える規模の拡大を行っているところでございます。

 その上で、将来的に少子化という流れに構造変化が生じましたら、財政審の見解というものも変わってくるものというふうに考えております。

吉川(元)委員 ちょっと大臣に伺いたいと思います。

 一億総活躍の会議に大臣も出ておられまして、その際に大臣もおっしゃられている、少子化、子供をなかなか産もうと思わないその原因というのはどこら辺にあるというふうに大臣はお考えなのか。一億総活躍の会議の場でも発言されておられると思いますので、ぜひ御発言を。

馳国務大臣 さまざまな調査でも出ておりますし、私も会議で申し上げておりますが、やはり教育費の負担が大きい、子供を持つにしても一人が精いっぱいという方が多い、こういう声をいただいておりますので、教育費の負担軽減を図っていくことが一億総活躍社会のスローガンで政策を進めていくに当たって極めて重要なポイントだ、そういう認識を持っております。

吉川(元)委員 まさに今大臣が言われたとおりだと思います。子供が実際にふえてから教育予算をふやします、だけれども、今現実に子供を産み育てよう、産みたいと思っても産めない理由はどこにあるかといったら、今、日本の教育は余りにも公的支出が貧弱だから、とても、子供二人目、三人目、産んで育てられる余裕はないんだと言っているわけです。

 そうしたら、政務官が言われる論理でいうと、いつまでたっても子供はふえませんよ。しっかり産んでください、しっかり育ててください、しっかり社会で支えます、教育にかかる、これまでかかってきた費用、しっかり公的に負担していきます、そういう政策があるからこそ子供を、二人目、三人目、産んでいこう、育てていこうというふうに思えるんじゃないんですか。その点、いかがですか。

大岡大臣政務官 お答え申し上げます。

 私どもも、もちろん、希望出生率一・八というこの政府の目標に沿って行動していくということは全く一致をしております。

 ただ、さまざまな、例えば社会保障費以外の支出というものは、今起きている現象に対して何らかの手当てをするものというのは、やはり子供が減っていくということを前提に手当てしていくということは、予算編成上、正しく予算を見積もらないといけないという必要性から、これは御理解をいただきたいと思います。

 一方で、これをふやすための予算というのは、投資というのか何というのかわかりませんが、それは引き続きやっていくつもりでございまして、先ほども御答弁申し上げましたとおり、二十七年補正と二十八年当初で七千億円を超える投資を行っております。

 これで、私たちも当然、希望出生率一・八に近づく、あるいはそれを追い越していくということを目標にして、その先を見越した予算につきましては、これは惜しまずやっていきたいというふうに考えております。

吉川(元)委員 教育の予算を見ますと、惜しんでいるとしか思えないんですけれども。

 とにかく、先ほど言ったとおり、例えば、幼稚園、保育所、小学校、中学校、高校、そして大学まで行くときに、これだけお金がかかるんだ、とてもじゃないけれども無理だというふうに思っているわけです、皆さん。そのときに、教育予算が、今子供は減っているからといって減っていけば、いつまでたってもターニングポイントは来ないじゃないですか。ぜひその点を考えていただきたいと思います。

 もう時間がありませんのでちょっと質問を飛ばしまして、きょうは政務官が来ておられますので、財務省のお考えをもう一つお聞きしたいと思います。

 財政審が財務省に提出した資料では、授業の専門家である教員をふやしてもいじめや不登校が解決できるのか、あるいは、多忙化が解消できるのかという記述が散見されます。昨年十月の財政制度分科会で、主計官の説明では、教員を教えるプロと位置づけ、授業や授業準備以外の業務については教員ではなく外部の専門スタッフ、地域コミュニティーの力をかりてはどうかなどというふうに述べられております。

 私も、教員の多忙化の解消には、スクールカウンセラーあるいはスクールソーシャルワーカーなど専門家の配置も必要だというふうに思いますし、文科省が進めるチーム学校、これも必要だというふうに考えております。

 一方で、授業や授業の準備、いわゆる教科指導のみが教員の業務と限定できる現状にあるのかどうか、また、子供たちと最も接する時間が長い教員が授業と生徒指導をセットで行っていることの意義も非常に大きいというふうに考えております。

 財務省が、教員が授業の専門家あるいは教えるプロと繰り返していますけれども、教員の業務は教科指導に限定すべきという考えに立っておられるんでしょうか。

大岡大臣政務官 お答え申し上げます。

 財務省としましては、先ほど先生御指摘いただきましたとおり、先生が総合的に子供に対して向かい合っておられるということのメリットを決して否定しているわけではございませんし、教師の業務を授業に特化する、それだけやってくれということをお願いしているわけではございません。

 むしろ、年間勤務時間はOECD諸国の平均を上回っているにもかかわらず、年間授業時間は下回っている。つまり、勤務時間は長いけれども授業時間は少ないという事実ですとか、あるいは、国や教育委員会からの調査等への対応の負担感が非常に大きいという文科省の調査、それから、授業以外の事務作業の負担が重くて、例えば、学校徴収金の未納者への対応ですとか国や教育委員会からの調査対応などを教員以外の他の職員やスタッフに任せるべきではないかという、これは連合総研からの調査などを踏まえまして、教師自身が本業と考えている生徒指導により集中できる環境を整備してはどうかと提言したところでございます。

 こうした提言に基づきまして、平成二十八年度予算におきましては、学校の事務職員や、マネジメント機能の強化のための主幹教諭など、チーム学校の推進にかかわる教職員定数の加配措置を百名増員しております。また、外部専門人材を活用することとして、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を拡充する等を実施することといたしました。

 今後もこうした取り組みを続けまして、教師の方々が本業と考えておられる業務に集中できる環境を整備することが重要だと考えております。

谷川委員長 吉川元君、時間です。

吉川(元)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、いわゆる教師の本業、本業という言い方が適切なのか私はわかりませんけれども、職務の範囲については非常に議論があるところであります。

 ちょっと大臣が一言何か言われるんですか。(発言する者あり)

 時間ということでありますので、また次回、この問題については引き続き議論をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

谷川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時九分散会


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