衆議院

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第7号 平成28年5月11日(水曜日)

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平成二十八年五月十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 谷川 弥一君

   理事 青山 周平君 理事 池田 佳隆君

   理事 石田 真敏君 理事 木原  稔君

   理事 山本ともひろ君 理事 太田 和美君

   理事 長島 昭久君 理事 浮島 智子君

      安藤  裕君    石原 宏高君

      小田原 潔君    尾身 朝子君

      大見  正君    門山 宏哲君

      神山 佐市君    木村 弥生君

      工藤 彰三君    小林 史明君

      櫻田 義孝君    下村 博文君

      谷川 とむ君    豊田真由子君

      野中  厚君    鳩山 邦夫君

      船田  元君    古川  康君

      古田 圭一君    堀内 詔子君

      宮川 典子君    菊田真紀子君

      郡  和子君    坂本祐之輔君

      平野 博文君    松田 直久君

      笠  浩史君    國重  徹君

      中川 康洋君    大平 喜信君

      畑野 君枝君    伊東 信久君

      吉川  元君    松本 剛明君

    …………………………………

   文部科学大臣       馳   浩君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    豊田真由子君

   政府参考人

   (内閣官房日本経済再生総合事務局次長)      義本 博司君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       伊藤 洋一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中山 峰孝君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  門山 宏哲君     木村 弥生君

  神山 佐市君     小田原 潔君

  福井  照君     堀内 詔子君

  船田  元君     野中  厚君

  吉田 宣弘君     中川 康洋君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     神山 佐市君

  木村 弥生君     門山 宏哲君

  野中  厚君     船田  元君

  堀内 詔子君     福井  照君

  中川 康洋君     吉田 宣弘君

    ―――――――――――――

五月九日

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(畑野君枝君紹介)(第一五八八号)

 専任・専門・正規の学校司書の配置に関する請願(畑野君枝君紹介)(第一五八九号)

 同(島津幸広君紹介)(第一六九九号)

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(大畠章宏君紹介)(第一五九〇号)

 同(原田義昭君紹介)(第一六二〇号)

 同(池田道孝君紹介)(第一六五一号)

 同(神田憲次君紹介)(第一六五二号)

 同(鷲尾英一郎君紹介)(第一六五三号)

 同(北村誠吾君紹介)(第一六六三号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一六七八号)

 同(福島伸享君紹介)(第一六八八号)

 同(小林史明君紹介)(第一六九〇号)

 同(長島昭久君紹介)(第一七三四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一七六七号)

 学費負担の大幅軽減と私大助成の増額に関する請願(菊田真紀子君紹介)(第一五九一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一五九二号)

 国の責任による三十五人以下学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善に関する請願(島津幸広君紹介)(第一六五四号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一六七九号)

 同(玉城デニー君紹介)(第一六九四号)

 国の責任による三十五人以下学級の前進、教育の無償化、教育条件の改善を求めることに関する請願(古川元久君紹介)(第一七六八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

谷川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、国立大学法人法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房日本経済再生総合事務局次長義本博司君、文部科学省高等教育局長常盤豊君、科学技術・学術政策局長伊藤洋一君及び厚生労働省大臣官房審議官中山峰孝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

谷川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林史明君。

小林(史)委員 おはようございます。自由民主党の小林史明でございます。今回は、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 早速質問に移らせていただきます。

 今回、この国立大学法人法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきますが、これから大学で学ぶ子供たちが活躍をするのは、間違いなく二〇二〇年以降の日本であります。そのころに日本はどういう時代を迎えるかというと、当面続く人口減少、そして人生百年時代の到来、もう一つは圧倒的な科学技術の進展、こういう社会の中での活躍が求められるわけであります。

 人口が減っても経済成長が可能だ、それぐらいのテクノロジーを社会に実装していく、こういう役割も重要でありますし、この人生百年時代の中で、科学技術が進展をすればなくなる仕事もある、その中で何度でも学び直してもう一度新しい職についていく、何度でもチャレンジできる時代、こういうものをつくっていかなければなりません。その時代において、高等教育機関、大学の持つ役割というのは大変大きいというふうに思っています。

 その中、日本の大学の置かれている状況、配付させていただいた資料をごらんいただきますと、まずお金の問題が大きいと思っています。日本の大学の財政基盤、これをやはり強化しないと、なかなか優秀な人材そしてすばらしい研究成果というのは出てこないんだろうというふうに思っています。

 お配りをしたのは、各国の各有名大学の収入の構成であります。パーセンテージですから横幅は同じサイズになっていますけれども、実際にこれを人数で割っていくと、今、東京大学の収入の二倍がケンブリッジ大学、スタンフォード大学は四倍、ハーバード大学は四十倍、カリフォルニア工科大学も四十倍であります。それぐらい財政基盤の差がある。

 つまり、今、さまざまな議論の中で、大学への国からの補助金が多いとか少ないとか、ふやすべきだ減らすべきだ、こういう話がありますけれども、そもそもパイを大きくしない限り成長がないわけですから、とにかく、そんな小さな話ではなくて、収入をいかにふやしていくか、稼ぎ口をどう大きくしていくか、こういうお話をするべきだと私は思っています。

 そういう意味では、今回の法改正によって、指定国立大学法人は、研究成果の活用促進のために出資対象の範囲拡大や、もしくは、余裕金、土地の運用が可能になる。これは大学の財政基盤強化に向けた取り組みでありまして、大変賛成であります。

 ただ、そもそも、各大学が目標とする収入のポートフォリオ、つまり、大学を経営する考えからすれば、どういう収入を得ていって、どれぐらいの収入をふやしていくのか、こういう目標を各大学にちゃんと提出させる、こういう必要があると思いますが、文部科学省としての見解はいかがでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法改正におきまして指定国立大学法人制度というものを設けさせていただくわけでございますが、今回の改正による規制緩和策も活用しながら、指定国立大学法人には、積極的に民間との連携を深め、質の高い教育研究活動の実施と、それに対する社会からの理解、支援の好循環を実現する中で、財務基盤の強化、多元化ということを図っていただきたいというふうに考えております。

 このことから、指定国立大学法人の指定に当たりましては、申請する国立大学法人から構想を示していただくということがございます。その審査の際に、寄附金収入をどの程度増加させ、それをどのように運用するのか、産学連携をどのように進めて、その収入をどの程度増加させていくのか、こういった目標を含めまして、どのような財務構造を目指して、それを実現するために取り組みを進めていくのかということを、そういう構想の審査という中で確認させていただくということを考えております。

小林(史)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、きっちりとチェックをしていただいて、いい経営がなされるように指導をいただきたいというふうに思っています。

 これは、お配りしている資料にも右側に書かせていただいていますが、スタンフォード大学の場合、事業収入三十九・八億ドルのうち、最も多くを占めるのは研究受託収入、約三〇%。その次が資産運用益十億ドル、二四%というふうになっておりまして、やはりここをしっかり伸ばしていかなきゃいけないというところがあると思っています。

 今回の法改正で、指定国立大学法人は、研究成果の活用促進のために出資対象範囲が拡大をされます。国立大学法人の研究成果の普及、活用促進をさらに図るという観点から、今後、ほかの国立大学法人についても出資対象範囲を拡大していくことが私は必要なんじゃないかというふうに思います。なぜなら、これから起こる社会課題をやはり地域地域で解決していくためには、地域地域の人材が必要でありますし、その中心が大学であるべきだというふうに思っています。

 そういう意味では、今後の他の大学への範囲拡大というのは、見解はいかがでしょうか。

馳国務大臣 おはようございます。

 出資に関しましては、国立大学法人の持つ公的性質を踏まえ、業務の膨張への歯どめに留意しなければならないこと、民間企業等への技術的支援や教育プログラムの提供を事業として実施していくためには大学内に質の高い研究成果が豊富に存在することが必要であることを受けて、指定国立大学法人のみを対象としております。

 一方、委員御指摘のように、出資対象範囲の拡大については、大学の研究成果を事業化し、社会における普及、活用を促進するという意義を有するものでありまして、このことも踏まえ、法律をお認めいただいた場合に、文科省としては、指定国立大学法人による出資の実績を踏まえ、全ての大学を対象として出資対象範囲を同様に拡大することを検討してまいりたいと思います。

小林(史)委員 大臣からの前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 ぜひ、この指定国立大学の取り組みを成功させていただいて、全国の大学でこういう範囲を拡大していただければ、各地域でさまざまなイノベーションが起こってくるんだろうと思いますし、それがこの国の成長につながって、まさに大学で頑張っている学生さんたちの将来を明るくするものだというふうに思っていますので、お取り組みをいただきたいと思います。

 もう一つ御質問させていただきたいと思います。

 多様な収入源の確保が必要だというお話をしてまいりました。

 先ほども申し上げたように、他の各大学では、研究受託収入というのが非常に大きくなっています。収入源としても研究受託収入というのは大きく期待をされるものですし、総理の施政方針演説でも、これからの日本のGDP六百兆円達成のためにはオープンイノベーションがテーマだと。つまりは、企業の研究を企業だけで持つのではなくて、大学、他の国の大学とも連携をしながら、広く知を集めながら新しいイノベーションを生み出していくんだ、これがテーマだというふうにおっしゃっていただきました。

 企業から共同研究に対する資金提供をふやしていくというのは大変有用だというように思いますが、これをさらに後押しをするインセンティブ設計が、後押しをする仕組みが必要だと思いますが、お取り組みの状況はいかがでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、産学共同研究の促進は、大学の収入源の確保とともに、先端科学技術を活用したイノベーションを推進するという意味でも大変重要でございます。

 しかしながら、現状を見てみますと、産学の共同研究は、総体として比較的小規模で初期段階の取り組みが多いといった、さまざまな課題が指摘されているところでございます。

 このため、文部科学省におきましては、大学と企業の組織対組織の連携による共同研究の大型化を促進していく上で、大学あるいは産業界が抱えておりますさまざまな課題とか障壁につきまして、産業界の有識者も含めて議論を行い、報告書として先ごろ取りまとめたところでございます。

 この報告書によりますと、一つは、人材、知識、技術、資金といった知的資産のマネジメントを担う経営人材の育成システムの重要性、二点目といたしまして、大学の共同研究を進める上で必要となる、企業が負担する間接経費の算定方式でございますとか、さらには、共同研究を進める際に産学双方にとってリスクとなり得る利益相反とか技術流出防止のマネジメント、こういった点について御指摘をいただいたところでございます。

 文部科学省といたしましては、今後、これらの報告書を踏まえて、制度改善が全国の大学で実施されますよう働きかけを行ってまいりたいというふうに考えてございます。

 あわせて、今のは制度面での改善でございますけれども、大学に企業から資金、人材を呼び込みながら非競争領域において産学共同研究や人材育成を行います構想を有する、そういった大学に対しまして、大学側の研究費をマッチングファンド方式で支援する産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラムというものを今年度から実施することといたしております。

 いずれにせよ、今後とも、これらの産学連携を促進するための制度改善でございますとか、あるいは支援プログラム、こういったものにより、大学の産学共同研究へのインセンティブを高めながら、産学のパートナーシップの拡大に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

小林(史)委員 ありがとうございます。

 ぜひ一つ一つの問題を解決していただきたいと思いますし、私の地域の企業さんからも、意欲的な中小企業さんからは、大学と研究したいんだけれども、どうやってその研究ネタを探していいかわからないと。このマッチング機能というのは大変重要だと思っていまして、最後におっしゃられたプラットフォームの事業、ことしからスタートということですけれども、ぜひ大きく育てていただいて、JSTさんの取り組みがノーベル賞を生んだ、こういう成果もあるわけですから、ぜひ、文部科学省さんも、成果をより大きく広げていって、日本の成長につなげていただきたいと思います。

 最後の質問であります。

 さまざまなこの収入拡大の中でありますけれども、やはり人口減少下において学生をどう確保していくかというのは重要なテーマになってきます。

 その中で、日本の大学のもう一つの問題点は、社会人の入学が非常に少ないということであります。学士の二十五歳以上の入学の比率は一・八%ということで、諸外国に比べると十倍、二十倍低い、こういう状況であります。これをしっかりふやしていって、何回も学び直しに来る、その人材が今の学生にも刺激を与えて、さらなるいい開発、研究も生み出していく、こういう状況が必要だと思っていますが、この社会人や派遣企業への経済的な負担軽減も私は必要なのではないかというふうに思います。

 厚生労働省さんにきょうお越しをいただいていますが、労働行政の観点から、指定国立大学法人も含めた高等教育機関を活用した職業能力開発や学び直し、これを進めることは有用であると思いますが、どのような支援があるか、そして、私は、より一層強化をするべきだと思いますが、見解を伺いたいと思います。

中山政府参考人 お答え申し上げます。

 労働者の職業能力開発、学び直しは、労働者本人にとりましてキャリア形成に有効です。また、社会にとって、企業にとっても生産性向上に資するものでございます。したがいまして、議員御指摘のとおり、厚生労働省といたしましても重要な課題と考えておりまして、これを積極的に支援しているところでございます。

 少し具体的にお話しさせていただきます。

 労働者個人に対する支援でございます。大学におけます社会人を対象とした実践的、専門的なプログラムとして、職業実践力育成プログラムというのがございます。このうち一定の要件を満たすものを専門実践教育訓練給付の対象と昨年十月から指定しております。こういうことで労働者の能力開発に対する支援を行っているところでございます。

 次に、企業に対する支援でございます。昨年十月から、若者雇用促進法に基づく認定企業に対する助成金の引き上げを行っております。また、今年度から、育児休業中の女性などに対する訓練の要件を緩和しております。こういうふうにして、企業が行う人材育成に対する支援を強化しているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、引き続き文部科学省との連携を強化しつつ、これらの支援制度の充実や普及促進を図るなどして、指定国立大学法人も含めた高等教育機関を活用した企業や労働者の能力開発に対する支援の取り組みを、さらに積極的に支援していきたいと思っております。

小林(史)委員 ありがとうございました。

 応援をしていただいているものの、申請の煩雑さから申請が少なかったり、あとは、女性が育休後に、産休後にもう一度学び直そうと思ったときには、実は申請の期間が短くてなかなか挑戦できない、まだまだこういう問題もあるというふうに各社から伺っています。ぜひ、これまで以上の取り組みをお願いしたいと思います。

 最後に、この指定国立大学によってさまざまないい研究が社会に出ていくというのは大事な仕組みだと思いますが、数年前、東大のSCHAFTというロボットベンチャーが、グーグルに買われてしまいました。数年後の今、グーグルの人工知能を入れたロボットが自由に雪の上を歩き回る、こういう動画を見ていますけれども、これは間違いなくSCHAFTの技術が入っているんですね。SCHAFTの技術があったにもかかわらず、グーグルに渡さざるを得なかった。これは、いいものが既にあるのに、お金を出す勇気がなかった、魂が入っていないという問題が最後には残るんだろうと思います。

 いい仕組みができてきました。ぜひ、大臣の熱い魂を込めていただいて、日本の技術がすばらしい成果を上げられるように、後押しをいただきたいと思います。

 質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

谷川委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 本日は、国立大学法人法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 行政改革の一環として平成十六年度に国立大学が法人化されてから、ことしで十二年目になります。法人化以前の文科省の大学政策では、比較的平等にどの大学も処遇をしてきた。これが、法人化前後から、それぞれの大学の機能分化、ミッションの再定義、こういったものが議論の前面に出てくるようになりました。また、これまでさまざま重層的な取り組みをされてきたことと認識をしております。

 そこで、文科省にお伺いいたします。

 今回の改正法案は、国立大学改革においてどのような位置づけで、どのような効果が期待できるのか、確認の意味で端的にお伺いいたします。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 国立大学改革につきましては、今、ミッションの再定義という御指摘がございましたけれども、各大学、学部ごとの強み、特色、社会的役割を整理するミッションの再定義が行われまして、国立大学の機能を強化する取り組みが行われてきたわけでございます。

 本年度からは、このミッションの再定義を踏まえまして、各大学が選択をするわけでございますが、地域のニーズに応える人材育成や研究を推進する大学への重点支援、あるいは、分野ごとにすぐれた教育研究拠点やネットワークの形成を推進する大学への重点支援、さらには、世界トップ大学と伍して卓越した教育研究を推進する大学への重点支援、こうした三つの重点支援の枠組みを設けまして、第三期中期目標期間における運営費交付金の配分方法として設定をし、各大学の改革を後押ししているところでございます。

 これまでも、大学の教育研究力を強化して国際的な競争力を高めるためのスーパーグローバル大学創成支援等の事業も展開してきたところでございますけれども、今回の法改正におきましては、世界トップ大学と伍して世界最高水準の教育研究活動を展開する国立大学を指定いたしまして、世界最高水準の高い次元での目標設定や社会連携活動の範囲の拡大など、制度面での特例を設けることで、我が国の大学の国際競争力の強化を期するということを期待しているものでございます。

國重委員 ありがとうございました。

 質問を五問用意しておりましたけれども、ちょっと一問飛ばしていきたいと思います。

 今、御答弁にも出ましたスーパーグローバル大学、そして本改正案の指定国立大学、このいずれも、その効果として、世界大学ランキングの上昇ということが言われております。

 ランキングの指標というのは、これは出しているところによって異なりますけれども、研究者の教育力、研究力を相互評価する、また、教員の能力をはかる、こういった項目を組み込むことで大学の総合力をはかれるように工夫がされております。

 ただ、残念ながら、日本はこの世界ランキングにおいて伸び悩んでおります。例えば、イギリスのタイムズ・ハイアー・エデュケーションのランキングを見てみますと、百位以内にランクインしているのは東京大学と京都大学の二校のみ。一方、義務教育終了段階の十五歳児を対象に行われる学習到達度調査、PISAでは、日本の成績は世界トップレベルでございます。二〇一二年の調査では、OECD加盟国中、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの全ての分野で一位か二位かという好成績をおさめております。要は、個人の持つ能力というのは高いわけでございます。しかし、それが教育、研究という方面に生かし切れていない。それが世界ランキングにあらわれているように思います。

 海外に目を転じてみますと、例えばハーバード大学では、入試はペーパー試験だけではなくてOBによる面接が行われている。面接で、個人が、それぞれが興味を持って取り組んできた事項、そういったことが評価をされて、偏差値でははかれない多様な可能性を秘めた学生が集まるということです。

 それに比べて日本では、試験は基本、ペーパーでございます。それゆえに、高校教育も、個人の関心事項というよりは、ペーパー試験を目指したものになりがちです。大学を受験する際も、各大学の特色、その大学で自分が何をやりたいのか、こういったことで進路を選んでいるというよりは、自分の偏差値を基準に大学を選んでいることが多いように思います。

 私は、研究とは、それぞれの興味、関心から始まって、それを貫いて形にしていくものだと思っております。それぞれの興味、関心、好奇心を大切にして生かす中で、すぐれた研究者も育っていくんだろうというふうに思います。

 大臣、基本的な学力、これを固めていくことは当然だと思います。ただ、それとともに、個人の個性を認めて伸ばしていく、こういう教育も必要だと思います。そのためには、大学も偏差値で選ぶというよりは、自分はこれがしたいからこの大学に行くんだというような、自分のしたい、興味、関心で選べるようにしていくということも大切でないかと思います。

 大臣は、今後、日本の教育、なかんずく大学教育をどのように進めていこうとお考えなのか、お伺いいたします。

馳国務大臣 教育において個人の個性や興味、関心が重んじられ、それが伸長されることは重要であります。同時に、その土台として、十分な知識、技能、それらを基盤にして、答えが一つに定まらない問題にみずから解を見出していく思考力、判断力、表現力、また、これらのもとになる、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度から成る学力の三要素が重要であり、大学入学者選抜、大学教育を含め、教育活動全体を通じてその育成を図る必要があります。

 このため、文科省では、本年三月に学校教育法施行規則を改正し、全ての大学において、その教育理念を踏まえ、卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受け入れの方針の、三つの方針を一体的に策定、公表することとしたほか、その参考とするガイドラインを作成したところであります。

 今後、こうした方針を参考としながら、受験者がみずからに合った大学を選択することが期待されるところでありますし、各大学においては、入学者受け入れの方針に基づき、学力検査だけでなく、調査書や、受験者本人の作成する大学入学希望理由書、各種大会や顕彰等の記録、面接など、多様な方法を活用しながら、学力の三要素を多面的、総合的に評価する大学入学者選抜へと改善を図っていくことが求められます。

 例えば、東京大学や京都大学においても、平成二十八年度入試から、一般入試とは別に、それぞれ推薦入試、特色入試が実施されているところであり、こうした取り組みを今後一層促進していく必要があります。

 また、各大学において三つの方針に基づく充実した大学教育が実施されるよう、認証評価制度についても関係省令を改正して、評価項目、方法の改善を図り、平成三十年度の評価から反映することとしております。

 今後、各大学において入り口から出口まで質保証の伴った教育活動が展開され、質の高い人材を社会に送り出すことができるように、高大接続改革の推進に努めてまいります。

國重委員 今大臣からるる御答弁ございましたけれども、今、少子化です。少子化だからこそ、一人一人の子供、若者の関心事項また個性というものを大切にした教育をぜひともよろしくお願いいたします。

 続きまして、女性研究者を応援する施策についてお伺いいたします。

 本改正案によって、指定国立大学には、役職員報酬また給与等の基準の設定の弾力化という特例が適用されることになります。海外の優秀な人材、また海外にいる日本人人材の呼び戻しが期待されております。ただ、優秀な女性研究者の人材を確保するにはそれだけでは足りません。

 科学技術指標二〇一五によりますと、日本の女性研究者数はわずか一四・六%でございます。アメリカ、イギリス、ドイツなどの欧米諸国や、アジアの韓国、台湾等と比べても低い水準にあります。

 文科省としてこれまでさまざまな施策を講じられてきた、このことについては評価をしておりますし、そのことによって女性研究者の数も割合も上がってきたこと、これについても評価はしております。

 ただ、長時間の実験や論文の執筆と家事、育児との両立の難しさ、また、出産、育児によって長時間休むことのキャリアへの影響など、家庭と研究の両立が大きなネックになっているという当事者の声というのは根強くあります。

 例えばアメリカでは、学会に参加する母親研究者にベビーシッター費用の助成をする、こういった動きも出てきております。日本も、女性研究者が研究を続けられる、さらには、ぜひ日本で研究したい、こういった思いを持てるような環境づくりが必要でございます。

 そこで、大臣、これまでの取り組みを踏まえて、今後どのように女性研究者を応援していくおつもりなのか、お伺いいたします。

馳国務大臣 文科省では、平成十八年度より、女性研究者の確保や活躍促進に向けて、研究活動と出産、育児等との両立を可能とする環境整備を行う大学や公的研究機関への支援、あるいは、出産、育児から研究に復帰する優秀な研究者への支援などの取り組みを実施しております。

 また、環境整備に対する支援については、これまでの取り組みから、大学等における組織全体としての取り組みになっていないことや、他機関への取り組みの普及が不十分などの課題も見られたことから、機関としての目標、計画の設定、公表を求めるとともに、他の機関を牽引するすぐれた取り組みを支援するなど、改善を図ってきております。

 こうした取り組みを通じて、大学における女性研究者の割合は、平成十八年の約二二%から平成二十七年には約二六%に上昇するなど成果を上げておりますが、やはり目標とすべきは、三〇%、四〇%、五〇%という目標を持って支援していく姿勢を示す必要があると思っておりますので、今後とも、女性研究者の研究環境の整備について取り組んでまいります。

國重委員 ぜひ大臣、よろしくお願いいたします。

 それでは、最後の質問に移ります。

 指定国立大学法人制度は、これまでの産学連携につきまして、個々の研究者とか個々の研究室が主流となって行ってきた、これを大学として組織的に進めるよう要請をしております。

 日本の産学連携というのは、ここ十五年ほど活発化してきたわけでありますけれども、理系を中心とした産学連携で急速に進展してきたという特徴があります。現在でも、産学連携といえば理系が花形であります。

 一方、文系の場合、教育を通じた人材育成、また地域貢献、その成果が見えづらいという特殊性もあって、なかなかこれまで認知されてきませんでした。しかし、文系学問というのは、発想とか思考を多様で柔軟なものにする、社会の見方やあり方、人間の価値の多様性を明らかにするものでございます。その知識、経験を生かすことは経済界にとっても価値あることだと思います。

 文科省として、産学連携における文系人材の活用としてどのようなイメージを持っているのか、お伺いいたします。

谷川委員長 伊藤局長。

 時間がありません、急いでください。

伊藤政府参考人 委員御指摘のとおり、これまでの産学連携というのが理系分野を中心に進められてきたことは御指摘のとおりでございますけれども、近年、科学技術が急速に進展する中で、例えば再生医療や人工知能といった新たな科学技術がもたらし得る倫理的、法制度的、社会的課題への対応でございますとか、あるいは将来のあるべき社会像などのビジョン策定、こういったことの必要性が高まっておりまして、従来のような自然科学分野の研究者のみならず、人文・社会科学分野の研究者も協働して取り組むことが大変重要になってきているというふうに認識してございます。

 このため、文科省が実施する産学連携の支援プログラムにおきましても、例えば、産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラムにおきまして、将来の社会システム、産業構造に大きな変革をもたらし得るようなシナリオを産学協同で作成するに当たりまして、経済、社会、心理、倫理といった人文・社会科学の知見を総動員して取り入れていただくことを期待しております。

 また、センター・オブ・イノベーション・プログラムにおきましても、広く人文・社会科学の知見を入れた取り組み、研究が既に実施されているところでございます。

 今後とも、先端科学技術の社会実装、こういった場面に取り組むに当たりまして、大学と産業界がともに人文・社会科学の知見を積極的に活用することを促進してまいりたいというふうに考えてございます。

國重委員 どうかよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

谷川委員長 次に、平野博文君。

平野委員 おはようございます。民進党の平野博文です。

 きょうは時間が短いものですから、簡潔に御答弁の方をお願いしたいと思いますし、余り多く質問ができないので残念であります。

 まず冒頭、大臣に、通告はしておりませんが、大学という名前がよく出てくるわけですが、これだけ一般的に大学という言葉が使われ始めましたが、日本においては大学という言葉というのはいつの時代からあったと思われますか。

馳国務大臣 通告がなかったので正確を期することはできませんが、恐らく明治時代なのではないかなと思われます。

平野委員 これはもっと古くて、私も定かではありませんが、聖徳太子の、こういう時代からあったのではないかなと思います。それほど古い歴史のもとに、この大学というのをあるべき姿として、日本というのは有史以来そのことを求め続けてきた我が国であるということを前提に、今回の法改正のことについて御質問をしたいと思います。決して変な意味で大臣に今したわけではありません。それほど歴史がある言葉でもあるしということであります。

 さて、国立大学法人法の改正ということですが、十三年前に、ちょうど法人化の審議のときに、私質問をさせてもらったことを今思い出しています。

 なぜ八十六ある国立大学を法人化するんだ、こういう議論をしてきたときがありますが、国として、今後、国立大学と高等教育をどのような姿に変えていくんですかということを、その当時、私、質問いたしました。ちょうどその当時は大臣は河村先生だったかなという気はいたしますが、そのとき、大臣の答弁は、行政改革の流れの中で国立大学を法人化するんだ、こういう御答弁があったように記憶しております。それぞれの大学が何を目指すかは自由であるということを述べておられました。

 私、そのときも指摘したんですが、国立大学は学問の自由を体現する、加えて、国立である以上は、本来、国益の実現、国策の実現もその重要な任務であると私は考えているということを申し上げたんですが、法人化するということは、より規制を取っていく、こういう流れになるんだろうというふうに御答弁されたと思いました。また、大臣は、当然、国から金を出すので、金も出すかわりに口も出すわなということもあったように思います。

 したがって、それ以来十三年たって、現状を見て、国立大学法人というのは我が国の将来を切り開いていくような研究成果と、そういう人材を輩出してきているんでしょうか、こういうところを素朴に思います。

 この社会でも国際化、グローバル化ということをよく言うわけでありますが、今回も法案の中身は、問題意識がそういう中にあっての考え方であろうと思いますが、グローバル化に対する対応一つを見ても、やはり歩みが遅い、諸外国からおくれをとっている、こういうことからの問題意識なんだろうというふうに私は思っています。

 そこで大臣に聞きたいのは、国立大学の法人化をしたということの経過の中で、我が国の高等教育におけるどのようなメリットが実はあって、どのようなデメリットが出てきたのか、この点を大臣から御答弁いただきたいな、こういうふうに思います。

馳国務大臣 まず、経緯も含めて申し上げたいと思います。

 平成十六年に実施された国立大学の法人化は、国の組織の一部であった位置づけを抜本的に見直し、自律的な環境のもとですぐれた教育や特色ある研究に積極的に取り組む国立大学の活性化を目的としたものでありました。

 そして、国立大学は、全体として、世界最高水準の研究教育の実施、重要な学問分野の継承発展、計画的な人材養成、全国的な高等教育の機会均等の確保、地域の活性化への貢献など、多様な機能を有しており、法人化後の国立大学において、これらの機能を伸ばすために、その強み、特色、社会的な役割に応じた機能強化を進めてきたところであります。

 今回の改正は、指定国立大学法人制度を創設することで、国際的な研究・人材育成拠点として我が国の高等教育を牽引する国立大学の形成を図るものでありまして、それぞれの個性を伸ばす観点から、国立大学法人制度が目指す大学の自主性をさらに拡大するものと考えております。

 今後の国立大学の改革は、その有する機能の強化にスピード感を持って取り組んでいく必要があるものと考えており、今年度からスタートした第三期中期目標期間では、各大学の強み、特色を最大限に生かし、みずから改善、発展する仕組みを構築することにより、持続的な競争力を持ち、高い付加価値を生み出す国立大学を目指していきたいと考えております。

平野委員 流れは大臣が今御答弁いただいた流れなんだろうとは思います。

 しかし、私も、ちょうど四年前ですが、文科省を担当しておるときに、これからの十年二十年を見据えて、大学のあるべき姿として、もう一度それぞれの大学のミッションを再定義しようではないか、もう一度見直そうではないか、こういうことを提案し、大学の改革プランをつくってきたわけですが、その中には、グローバル化でありましょうとか、国際人材でありましょうとか、あるいはもっと言えば、地域との連携をより得意とする大学も出てくるでしょうし、いろいろな特性を持った大学がやはりなきゃならない、そういう意味で、改めてそのミッションをもう一度見直して、それが社会の変革のエンジンなんだ、この日本を改革していくエンジンなんだということを言い続けてきたわけでありますし、私自身も今もそうあるべきだとは思っています。

 そういう中で、今回の指定法人という考え方、十三年前に私が申し上げたのは、八十六ある国立大学をフラットに法人化するんではなくて、私は、国として何としてもやっていかなきゃならないことが起こってくるので、言い方を恐れずに言いますが、少なくとも、せめて旧帝大だけは国立として残しておくべきだということを強くその当時主張したんですね。

 今回、これは指定法人で、聞いておりますと、世界ランキングの百校の中に我が国が十校ぐらい入るべきだみたいなことが言葉の中に出てくるわけですが、それであれば、ダブルスタンダードみたいなことをせずに、指定をして、十校選んで頑張りなさいというニンジンをぶら下げるよりも、改めて、国の国策として世界の中に冠たる部分をつくるというのであれば、別の組織をやはりつくっていくことの方が妥当ではないか。これは、十三年前に私はそう申し上げてきましたから、思っているんです。

 改めて指定法人と出てきましたので、なぜそうなっているんだ。その当時はフラットにします、今回は指定をします、こういうことなんですが、こういうことをすると、では、指定されない学校との間における問題というのは出てこないんでしょうか。意欲がなくなるじゃないですか。

 そういう意味では、指定をする根拠性を、私は、大臣、どういう根拠で指定をするのかというところをちょっとお聞きしたいと思います。

馳国務大臣 国立大学法人の持つ公的性質を踏まえ、業務の膨張への歯どめに留意しなければならないことや、民間企業などへの技術的支援や教育プログラムの提供を事業として実施していくためには大学内に質の高い研究成果が豊富に存在することが必要であることを受けて、指定国立大学法人のみを対象とするということにしました。

 一方、実は、出資対象範囲の拡大については、大学の研究成果を事業化し、社会における普及、活用を促進するという意義を有するものでありますから、このことも踏まえて、法律をお認めいただいた場合には、文科省としては、指定国立大学法人による出資の実績を踏まえて、全ての大学を対象として出資対象範囲を同様に拡大することを検討していきたいと思っております。

平野委員 今最後に言われたことは非常に大事なことだと思っていまして、最初、どういう状態になるかわからぬから一遍とりあえずやっていこう、その後間口を広げていきましょうということなんですが、私は思うんですが、馳大臣が指定をしたらその大学が世界ランキングにすぐ入っていくというふうには思わないんですね。

 では、どういう基準でその指定をするのか、そういう判断というのは、非常にこれは難しい判断があると思うんですが、ちまたでこの話を、文科省を含めて聞いておりますと、どうなんですかね。

 この概要の中にも「世界最高水準の教育研究活動を行う外国の大学の業務運営の状況を踏まえなければならないこととする。」、こういう表現を書かれていますよね。ということは、どこか、例えばアメリカの大学のやり方を見習わない限り指定をしませんよ、こういうふうにつながるような気がするんですが、あるいは、イギリスのどこかの大学の運営形態等々を含めた、そういうところに沿っていなければ、我が国の文科大臣が我が国の大学の指定を認めていかないようなことになりませんか。その点はどうなんですか。

 先ほどなぜ言ったかといいますと、やはり日本は歴史ある中で、大学ということの価値観、こういう認識というのはずっと共有してきました。それを誇りとも思っているところもあります。しかし一方、グローバル化した時代、日本が世界の国々と競争して、競合していかなきゃならない。そういう中で大学のあり方ということも改めて問われているわけです。

 今の指定する考え方の中には、例えば「外国の大学の業務運営の状況を踏まえなければならない。」、この言葉が非常に私ひっかかるんですね。極端に言えば、アメリカのある有名な大学と同じような考え方、やり方をしなければ指定をしないということにもつながってくるのではないかなという気がするんですが、その点はどうでしょうか。

馳国務大臣 まず、指定国立大学法人でありますから、どのように指定するのかという指定方法についてと、それに当たっての審査のあり方について、当然審査するわけですから、その基準とか、それに対する評価、その評価方法や基準、これについてちょっと簡単に説明させていただきます。

 まず、指定方法については、この法案をお認めいただいた後に、文科大臣が国立大学法人評価委員会の意見を聞きながら指定の基準をまとめる予定です。

 この基準の公表の後、各大学から申請を受け付けて審査を行います。

 審査に関しましては、研究力、国際協調、社会連携が国内トップレベルにあることを前提条件としながら、その上で、各大学に教育研究の卓越性及び社会への貢献の観点からの世界の有力大学の取り組みを参考とした目標設定を求めるということ。つまり参考とするということです。次に、その目標を達成するための人材獲得・育成、研究力強化、国際協調、社会連携、ガバナンスの強化、財務基盤の強化、この六つの柱から成る構想の提出を求めることとなります。

 それについて、文科大臣が国立大学評価委員会の意見を聞きながら審査を行い、その結果に基づき大学を指定するというふうな流れを予定しております。

 また、評価方法と基準についてですが、指定国立大学法人の評価に当たっては、指定申請の際に大学側が提案した目標や構想を適切に中期目標に反映し、社会にも明らかにした上で、その中期目標の達成状況について、まず大学自身が自己点検、評価を行うこととなります。さらに、その自己点検、評価の結果を受けて、国立大学法人評価委員会が大学からのヒアリングも行いながら、高い次元で設定された中期目標を基準として、その達成状況を専門的、客観的見地から評価し、評定を付す、こういう流れとなっております。

平野委員 今、大臣、評価委員会という言葉が出てきました。組織が現実にありますよね。評価委員会の意見を聞いて文科省が基準をつくるんですか。その基準に沿っているかどうかというのは大臣が判断するんですか、評価委員会がするんですか。非常に曖昧に聞こえました。

 といいますのは、これはあくまでも諮問機関であるという言い方を役所の方はしましたから、きょうは実はそこの委員長に来てもらおうと思ったんですが、民間の方ですからなかなか御無理なことは言えなかったんですが、要は、言いたいことは、評価するための基準をつくる、これは非常に難しいところなので、いつもこれは悩ましい判断だと思うんですね。客観的に、あるいは相対的にどういう評価が一番妥当な評価なのかというのが非常に難しいわけであります。

 といいますのは、やはり、目配り気配りをしておっても、この人がノーベル賞を受賞するかというのはなかなかわからない。つい先般も山梨大学の先生がノーベル賞をもらわれたということですが、評価をするというのはなかなか、誰が評価するんだというのは難しいものですから。

 なぜ私これを言うかといいますと、文科大臣が指定をする、馳大臣の頭の中の恣意的な部分で、この大学はいいなと思ったら指定できるのか、あるいは、しかしそうはいいながらも、具体的にこういう基準をクリアしていない限りだめなのか、あるいは、八十六ある国立大学が手挙げ方式でその機会にチャレンジすることは可能なのか。この辺が非常にわかりにくくて、今のところ、まあ大体、過去の実績からいくと四校から十校ぐらいまでの間かなみたいな曖昧なことが出てくるんですが、あらゆる大学にチャレンジの機会、少なくとも八十六の国立大学にはチャレンジの機会というのはあるのかどうか。イエス、ノーで答えてくれる。

馳国務大臣 当然チャレンジの機会はあります。

平野委員 そうするとやはり、各大学がそれにチャレンジしようと思いますと、どういう評価で、どういう基準でそのことをクリアしていくのかというのは、事前にその基準がオープンにされなければならない。その点は、いつ、どういうタイミングで出されるんですか。

常盤政府参考人 先ほど大臣からお答え申しましたように、審査に当たりましては、一つは、これはかなり客観的なものだと思いますけれども、研究力、国際協調、社会連携、こういうものが国内のやはりトップの水準にあるということがまず前提の条件としてあるというふうに考えてございます。その上で、目標の設定であるとか、あるいは構想の提出を求めて審査を行うということになります。

 そして、こうした考え方につきましては、文部科学大臣が、この法案をお認めいただいた後に、国立大学法人評価委員会の意見を聞きながら指定の基準をまとめて、そしてまた公表したいというふうに考えてございます。(平野委員「いつごろですか」と呼ぶ)

 これは、今の時点でちょっと、いつというところまではございませんけれども……(平野委員「だから、法律が通ったとして」と呼ぶ)

 この法律が通ったといたしまして、ちょっと今の時点で具体的な工程というところまでは持っておりませんけれども、この法律ができますと、十月一日からもう準備行為に入れることになりますので、そういう段階で、一つ目安として考えていければというふうに思ってございます。

平野委員 今、常盤さんも含めて言われましたが、やはり誰しもが納得できる評価基準でなきゃいけないと思いますし、チャレンジの機会も、あらゆる大学にその門戸を開いているということを前提にしてやはりやっていかなきゃいけない。

 何となく、東京大学かな、京都大学かなという、世界ランキングの中に入っているところをまず対象にして、今度、では文科大臣が取り消しをするというときの評価というのはどういうことでもって取り消しをしていくのかということですが、例えば、世界ランク、どこかのランキングで百位以下に落ちた、落ちた時点で取り消すのか、この辺が私非常にわからなくて、別に世界ランキングに載せてもらわなくても、すばらしい大学であればいいのではないかなと私は思ったりするんですが。

 その辺、今度、取り消しという、一旦指定されました、しかし成果がなかなか上がってこないという評価がどこかにあって、それを取り消す場合はどういう判断で取り消すんですか。

馳国務大臣 指定国立大学法人の指定の効果については、中期目標期間ごとに指定を行うのではなくて、一旦指定を受ければ中期目標期間を超えて継続するものとし、文科大臣が、改正法案第三十四条の四第四項の規定に基づいて、当該指定国立大学法人の指定の事由がなくなったことをもって指定を取り消すことがない限り、指定国立大学法人であり続けることとなります。

 指定の取り消しについては、原則として、国立大学法人の中期目標期間、これは六年間ですが、その終了時において検討することとし、法人法第三十一条の二第一項第三号の規定に基づく「中期目標の期間における業務の実績」に関する評価、これは確定評価でありますが、ここにおいて、外国人委員を含む国立大学法人評価委員会から、中期目標の達成状況が不十分である、中期目標の達成のためには重大な改善事項があるとの評価結果が出され、かつ、今後の改善が図られないと文科大臣が認める場合などには、指定の事由がなくなったとして指定を取り消すことを想定しております。

平野委員 一旦指定を受けると、中期ということで六年という流れの中で評価をしていきます、こういうことですが、「外国人を評価委員会の委員に任命することができる。」ということは、外国人を入れるということはどういうことなんですかね。

 例えば米国の有名な大学の方々を評価委員会の中に入れて、その方の考え方、基準を一つの柱として意見を述べる、こういうことになるんでしょうけれども、そのことが、私は、世界と競合して頑張っていくということと、我が国の国益になるのかというところとの、そうすれば必ず我が国の国益につながるというふうになっていくのかなというところに一抹の懐疑と疑問を持っているんですが、なぜ日本の方の評価ではだめなんでしょうか。外国人を入れるという一番大きな根拠性は何なんですか。簡単にお願いします。

馳国務大臣 指定国立大学法人制度は、世界の有力大学と伍して競う国立大学の形成を目的としております。海外の有力大学の業務運営に係る知見を有し、世界最高水準に照らした指定、中期目標、中期計画の策定、評価がなされるよう担保することが必要でありますから、そのような観点で、海外大学の業務運営の状況やガバナンスの仕組み等について知見を有する者を国内外から幅広く集められるようにという観点で、外国人を委員として任命することができるとするものでありますし、あくまで参考とするわけであります。

平野委員 イメージは大体わかりました。

 もう一つは、世界ランキングという言葉があるんですが、世界ランキングに入るために大学はいろいろな評価判断に基づいて行動を起こす。例えば文献が何ぼ云々というような、いろいろ評価の参考資料がありますが、それによってそれぞれの評価する機関で順位が上がったり下がったりいたしますが、そのことが目的化しないように、それはあくまでも一つの評価メジャーであって、大学の世界水準のレベルというのは、ランキングで評価されたから一番だということではなくて、あくまでも質の、中の問題である。

 少なくとも、これで見ますと、評価基準が、論文ではどうだとか、いろいろ各評価機関によって違っていますが、懸念をしますのは、ドクターの学位授与数でありますとか留学者数でありますとかいろいろな部分が入っておりますが、それも大きな軸かもしれませんが、それよりも、要は、大学の本来持つ質が世界のレベルと十分に対等できる我が国の大学にしていくんだ、ランキングというのはあくまでも参考資料なんだというふうに私は理解しておりますし、ぜひそうあってもらいたいということで、よろしくお願いをしたいと思います。

 もう一つは、出資の部分がありました。これは、出資のできる、拡大は指定法人に限るというふうにしてありますけれども、私は、あらゆる大学が研究成果を企業とベンチャーをやるなり云々ということについて、大いにこれは解禁したらいいのではないかな、こういうふうに思うんですね。

 やはり今までの日本の中で一番の問題は、研究で終わっておって、それを新たなビジネスにつなげていく、いわゆる死の谷を越えられていないということですから、それを越えていくために、大学がそういうところに対して出資をしていくんだということは、私は、投機的な運用のものとは全く異質なものだと思っていますから、大学自身が死の谷を越えていくための努力については、もっと八十六の大学が一生懸命、その地域で出資する場合もあるでしょうし、国際社会で出資する場合もあるでしょうし、そういう意味合いにおいては、出資の拡大というのは指定法人に限らずに私はやっていくべきだと思うんですが、その点はどうなんでしょうか。

馳国務大臣 私も平野委員と同様の考えを持っておりますが、まずはスタート、指定国立大学法人制度をスタートさせて、指定された大学の取り組みを踏まえた上で、最終的に全大学に拡大していきたいと考えています。

平野委員 次に、これは私は余りいい中身ではないなと思うんですが、これは全大学に、大学の持っている資産の運用、こういうことで、あいている遊休地については貸してもいいですよ、そこで収入を上げなさいよということの部分があるんですね。

 これは、不動産屋ではないんですから、大学はそんなことをするのが本質ではなくて、遊休であるならば、国立法人といえどもこれは国民の財産ですから、又貸しするような感じじゃないですか。そんなことで収入を上げていくということの方が私は本質論から外れていって、サイドビジネスを一方でしているような気がしてならないんですね。

 そのことが逆に、そこで収入が上がっていきますと、今度は財務省から、運営費交付金を含めて文科省の部分が削られていくとか、こういうふうになれば全くおかしな方向に私は流れていくと思うんですね。

 したがって、全部の大学に、土地の賃貸しとか、保有する土地、建物を貸していくんだ、収入を上げていくんだ、こういうことですが、これは、そんなに余っているんだったら国民に還元してくださいよということに僕はなりやしないかなと思うんですね。

 それと、そもそも国立大学のときには国家資産でしたが、法人になったときに国家資産を法人に移しているんですね。その移し方も不平等な移し方に私はなっていると思うんです。あるいは、東京大学であれば膨大な資産を持っています。あるいは、田舎の小さな国立大学だったら、小さいまま法人の資産になっています。そこで運用を、一律にそれぞれ頑張りなさいよと言ったって、資産運用、持っている大学と持っていない大学との物すごい格差が起こるではありませんか。それでも一生懸命運用で頑張る、頑張れ頑張れと言うのは、まず入り口から不平等さがそこにあるのではないでしょうか。

 そういう意味で、この資産運用のところについては私は本来少し違うのではないか。それだったら、先ほど言うように、投資に、あるいはベンチャーに、あるいは研究成果をもっと活用する、そこにもっと頑張るように旗振りをするのが本来文科省の仕事ではないかなと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

馳国務大臣 こういった資産運用について、実は、地方大学も含めて各国立大学からの要望を踏まえてこの制度をしたということをまず最初に申し上げておきたいと思います。

 具体的には、それぞれの大学の有する資産の状況等によって異なってくるものとは考えられますが、土地などの貸し付けによる対価の獲得や、寄附金等の運用による運用益の獲得が見込まれますし、こうした資金は、使い道を自律的に設定できて、柔軟に活用できるものでありますから、各大学の強み、特色を生かした取り組みを後押しする財務基盤の強化が図られていくもの、こういうふうに期待をしております。

 一方、国立大学は、現在、機能強化のための大規模な改革を進めております。国立大学の機能を十分に発揮させるためには、また教員が安心して教育研究活動を行えるようにするためにも、基盤的経費の安定的な確保が重要であります。このため、国立大学法人の第三期中期目標期間初年度である平成二十八年度予算では、対前年度同額の運営費交付金を確保したところであります。

 文科省としては、引き続き、運営費交付金などの基盤的経費の確保、これが重要であるということを肝に銘じて頑張ってまいります。

    〔委員長退席、山本(と)委員長代理着席〕

平野委員 基盤的経費というのは非常に大事ですが、ここ十年で大体一千六百億ぐらい経費が削減されていっているんですね。したがって、先ほど与党の方の質問にもありました、資金が非常に大事なんだということですから、やはり資金をどういうふうに獲得していくのかというのはこれから問われていくと思います。

 だからといって、余っている不動産あるいは校舎の空き室を地域に開放する、開放するのはいいんですよ、そこで収入を上げていく一つの大きなツールにしていくということは、私はいかがなものかなというふうには思っています。

 最後に、研究資金の間接経費でございますが、民間の資金を入れようと思いますと、資金が入ってくる、収入以上に大学の持ち出しがふえてくるという、相矛盾するようなことが現実的にあるように聞いております。これはでも本来あっちゃいかぬことだと思っていますし、民間の資金を借り入れる、あるいは企業の資金を借り入れる、借り入れれば入れるほど大学の間接経費が膨らんで負担になる、これでは、もともと産学連携をしなさいと勧めている立場からしますと、足を引っ張っていることにもなると思うので、今回指定されますと三〇%に拡大する、通常は一〇%だ、こういうことですが、その点についてももう少し改善をぜひお願いをし、終了いたしましたので、最後に大臣、あれば言っていただいたらいいと思いますし、なければ終わります。

馳国務大臣 間接経費の問題については着目しておりますので、実態を踏まえて適切に対応していきたいと思います。

平野委員 ありがとうございます。

山本(と)委員長代理 次に、松田直久君。

松田委員 民進党の松田直久でございます。よろしくお願いをいたします。

 まず、高等教育のあり方から御質問させていただきたいと思いますけれども、近代的な日本の高等教育制度を導入した際に、同時に二つの全く異なるモデルを採用しました。一つは、高等教育のドイツ的概念、すなわち官主導、国立型。もう一つは、私立高等教育機関に見られる、アメリカ的概念といいましょうか、民の主導の私立型。二つ、大きく分かれるんだろうと思います。大正時代の大学令によって制度化され、日本における高等教育の、国立、私立の官民二元構造として、高等教育の発展の原動力になってきた。戦後は高等教育の大衆化を進める基盤となって、現在に至っているんだろうというふうに思っています。

 ただ、高等教育を取り巻く環境が戦後日本の国力に比例して劇的に変化をし、グローバル化や少子高齢化が著しく進展した時代において、高等教育機関に、世界的な人材の育成、研究を通じたイノベーションの創出、日本経済再生、地域活性化への貢献等が今まで以上に期待をされて求められるんだろうというふうに思っております。

 そこで、改正案の趣旨である大学の教育研究水準の向上や財政基盤の強化は、国立大学だけではなくて、公立や私立大学も含めた、現代の日本における全体の高等教育機関共通のいわゆる課題であると考えると、高等教育全体の底上げにつながる施策が必要なんだろうというふうに考えます。

 文科省は、今回の指定国立大学法人制度の創設以外にも、高大接続改革、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化、地方創生のための大都市圏への学生集中是正など、さまざま高等教育にかかわる施策を時代の変化とともに進めてきていただいている。

 今後これらの施策を講ずるに当たって、改めて、日本の高等教育全体のあり方、また将来の方向性についてどのようにお考えをいただいているのか。国立大学の一部改正法案なんですけれども、やはり全体の高等教育という形の概念というのが必要だと思いますので、大臣にまずお伺いをさせていただきたいと思います。

馳国務大臣 ちょっと大きい話だと思いますので、幾つか所感を踏まえて申し上げさせていただきたいと思います。

 このゴールデンウイーク中にベトナムとインドに、視察ということで、当地の、日本の大学と連携をしている大学を視察し、お話も伺い、期待も伺ってまいりました。

 やはり、競争的な環境にあるということと同時に、大学同士の連携と、研究者、教員、学生レベルの交流をより活発化させていくことが、ベトナムやインドに限らず我が国にとっても、そして、その結果得られる知見が経済的な有益な効果をもたらし、特に環境案件などは地域の発展に、また地球温暖化対策などに貢献することになりますから、非常に大きな意味での効果をもたらすということの認識を改めていたしました。

 同時に、今回は、スーパーコンピューター「京」とかイプシロンロケットとか重粒子線がん治療装置、こういう、我が国が世界に先駆けて開発した、そして世界トップレベルのロケットやコンピューターや医療機器等についてのトップセールスもしてまいりましたが、大変大きな関心を持って受け入れられたことはまず報告をさせていただきます。

 同時に、下村大臣のころからでありますけれども、高大接続改革ということで、どのような大学であるべきか、そのためには高校教育はどうあるべきか、そのためにはつなぎの入試改革をどうすべきか、こういう大きな流れのある中で考えると、基本的な知識、教養、職業的な能力も含めて、これはやはり重要視をしていかざるを得ませんし、得られたそれらの知識や能力や技術をどのように活用していくか、応用していくか、そして競い合っていくか、この部分も高等教育の段階においてやはり発揮されていかなければいけないというふうに考えています。

 もう一点だけ申し上げますが、やはり、地方を回っておりましたら、地方の国立大学はともするとお山の大将になりがちでありますが、そうであってはいけないのであって、地方自治体とか、また、地方に行けば中小企業も多うございますので、そういった中小企業の団体等との連携を持ちながら、商品開発また専門的な人材の育成、そういったことに貢献をしていかなければいけないので、積極的に高等教育機関の経営者等が自治体や金融機関の皆さん方や、あるいは産業界の方々と十分に連携をしながら、地元の人材をこの地元の大学が育成していくんだというその方針も私は大変重要な論点だと思います。

 そういう姿勢を支えていくための基盤的な経費、これをやはり確保していくということが政府としての役割ではないかと思っています。

松田委員 非常に大事である、そして、いわゆる基盤的な財政支援も必要であるという大臣のお答えをいただいたんですけれども。

 そこで、日本の高等教育に関する公的支援の現状なんですけれども、二〇一二年現在、国立大学の運営費交付金、私立大学等の経営費の補助、大学等の奨学金事業など日本の高等教育機関に関する財政支援は、対GDP比でいきますと〇・五%なんですね。OECD加盟国の平均は大体一・一%。半分ぐらいなんですね。また、近年の推移を見ても、非常に財政が厳しいところでもかなり努力をして拡大をしている状況ですけれども、我が国は横ばいであるということなんです。

 二〇一三年六月の、第二次安倍内閣が閣議決定をしました第二期の教育振興基本計画の中で、「今後の教育投資の方向性」として、「OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考」とすると言われていまして、公的教育投資の財源確保の必要性が記されておる。

 大学は国力そのものである、大学は社会の公器との考え方に立って、高等教育機関に対する国の財政支援、せめてOECD並みに持っていくべきだ、こう思っておるんですけれども、先ほど大臣は必要だと言われましたけれども、少し数字を挙げさせていただいて、いかがお考えか、少しお尋ねをさせていただきたいと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 国立大学法人の運営費交付金でございますけれども、全体、非常に減額がここ法人化以降継続をしているということでございます。

 その中で、私どもといたしましても、国立大学の改革プランであるとか、各大学の改革を促し、また、各大学も積極的な改革に取り組んでいるということもございまして、従来、平均しますと毎年大体一%ぐらいずつの減額であったわけでございますけれども、二十八年度につきましては一兆九百四十五億円という前年度と同額の運営費交付金を確保するというようなことで取り組みをさせていただいております。

 全体としての高等教育予算の確保という点につきましてもしっかりと取り組んでいきたいというふうに思ってございます。

松田委員 今数字を挙げて、OECDの半分ぐらいだということですから、与党の皆さんも御質問がありましたけれども、どうしてもやはり先立つものがしっかり基盤に要る、大臣もそれは十二分にわかっていただいておると思いますけれども、ぜひともよろしくお願いをいたしたいと思います。

 少し時間が押してきましたので、ちょっと飛ばさせていただいて質問をさせていただきたいと思います。

 先ほども質問にございましたけれども、国立大学法人評価委員会の外国人の委員の任命について御質問をさせていただきたいと思います。

 国立大学法人の評価委員会の委員については、文科大臣は大学の運営に関して高い識見を有する外国人を委員に任命することができるということになっております。

 これまで、評価委員会の委員については、評価委員会令により、大学などに関し学識経験のある者のうちから文科大臣が任命、委員二十名以内で組織をし、必要に応じて臨時、専門委員を置くことができる、こういうふうにされています。

 現在、評価委員会は委員が二十名、臨時委員が八名で組織されておりますけれども、外国人の委員任命に当たり、定数二十名は現状のままなのか、ふやされる予定があるのか。また、大学運営に関する高い識見を有する外国人、今も質問がありましたけれども、何かその具体的な、わかりやすいような基準があればお伺いをさせていただきたいと思います。

馳国務大臣 新たに任命する外国人については、委員会の本体以外の委員として追加的に参画していただくことを想定しております。

 また、その外国人委員の人選に当たりましては、世界最高水準の研究・人材育成拠点の形成、運営といった観点から的確な意見ができる方に参画いただけるように、各方面からの御意見も踏まえて取り組んでまいりたいと思っています。

松田委員 私は、いいことではないかなと思うんですね。外国の方が、いろいろ文化も違うし、また運営方法も違うということで、ぜひともそれは大いに生かすべきではないかな、僕はこう思っているんです。

 私、三重県なんですけれども、三重大なんかは、今、日本で初めて外国人の先生が理事になられて、また副学長もやられてみえるんですけれども、非常に環境行政にも精通をされて、先般、少し大学でお話を聞いてきたら、やはりそういう考え方が、学生に対してもいろいろな面で影響が出てきているというようなことを聞いてまいりました。

 ぜひとも、その活用の方法というのを真剣に、できるということだけではなくて、どういう識見の方が必要なのかとかいうのを一遍しっかりと僕は議論してほしいな。

 今までの、外国人の枠じゃない委員のみえる中で、はっきり言って大学とは関係ないといいましょうか、民間の方もいらっしゃいます。そういった面で、大学とは違って民間の企業の方やらいろいろな方もいらっしゃるんですけれども、ここであえて外国人の方だけにそういった識見を求めておるということは、僕は、大臣、やはりそれなりの意味があるんだろうというふうに思いますので、しっかりとそこのところ、一遍考え方を整理していただいて、外国人の方々にも門戸を開いていただければというふうに思っております。

 次に、あと時間が少なくなってきましたので、国立大学等の資産の有効活用のための措置について質問をさせていただきたいと思います。

 日本再興戦略改訂版においては、指定国立大学法人は、一般の国立大学法人に比べ高い自由度による自己収入拡大を行うことができるとされていました。しかし、今回の改正案では、指定国立大学法人のみならず全ての国立大学法人等を規制緩和の対象にした。

 まず、全ての大学を対象にしたというその経緯、理由を、あれば教えていただきたいと思います。

 済みません、時間がないもので、続けて行かせてもらいます。

 現状においても、土地等の貸し付けは、国立大学法人法に規定される業務の範囲内で実施することは可能でありまして、各国立大学法人等の学内規程等に基づき行われています。改正案により新たに可能となる土地の貸し付けの事例としてはどんなものがあって、どれぐらい活用が見込まれるのか。

 また、この規制緩和は、都市部にある大学には効果的でありますけれども、地方の大学は、実際、私どものことだけで恐縮ですけれども、そんなにたくさんないんですね。だから、都会の大学だったらこういうことはあるでしょうけれども、地方の大学はなかなかそれに当てはまりませんね、そんな感想も聞いてまいりましたけれども、その点を踏まえた上でひとつ御見解をお伺いしたいと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 指定国立大学法人制度において資産の有効活用を図るための措置を全ての大学に適用する理由でございますけれども、指定国立大学法人に限らず全ての国立大学法人にとって、やはり財務基盤の強化ということは重要な課題だというふうに認識をしてございます。

 昨年六月に、文部科学省におきましては、国立大学の経営力戦略というものをまとめてございますけれども、その中でも、国による国立大学法人運営費交付金の確保を前提としつつ、各国立大学が教育研究活動の成果を広く社会にアピールするアウトリーチを重視して、民間企業との共同研究、寄附金の拡大など社会からの支援を受ける、そして、そういう形での好循環をつくっていく中で財源を多様化するという戦略をまとめているところでございます。

 また、政府の閣議決定の中でも、科学技術イノベーション総合戦略において、国立大学法人について、余裕金の運用対象範囲の拡大等規制緩和による自己収入の拡大を通じた財源の多様化を促進することが必要であるというようなことが指摘をされております。

 こういう点を踏まえて、全ての国立大学法人等を対象とするということにしたものでございます。

 また、第二点目の土地の貸し付けについてでございますけれども、事例といたしましては、具体的には、想定しておりますのは、例えばキャンパスの中の施設の一フロアを、弁護士事務所であったり会計士事務所、あるいは政府系法人、NPO、民間企業等の事業者に対してオフィスとして貸し付ける、あるいは、老朽化した職員宿舎を解体した後の土地を駐車場として活用するための民間事業者への貸し付けなどが考えられるのではないかというふうに思ってございます。

 また、地方の関係、第三点目でございますけれども、実は、私ども、昨年の七月に全ての国立大学法人を対象にアンケート調査を行ったわけでございますけれども、地方の大学全てではございませんけれども、地方の大学からも、こういう土地の活用ということについて希望したいというような規制緩和の要望が寄せられておりますので、今回、地方の大学も含めて全ての法人に適用するということで考えているところでございます。

松田委員 それぞれ自由度が高まるということは私もいいことだ、こう思っていますけれども、金融商品なんかの運用、ちょっと早口で、僕、聞き取りにくくて、お答えをいただいたのかどうかわかりませんけれども、文部大臣の認定が前提なんですね、金融商品等々。安全な運用を確保し、原資となる寄附金収入を拡大するために、運用については責任の明確化及び適切な情報公開が求められるということになっているわけでありますけれども、何か金融商品なんかの事故が発生したときの責任というのはどこが持つのか。

 また、大臣の認定が前提だということになっていますけれども、もうここまで任せたんだったら、各大学の責任に任せてやっていただいたものを、一々前提ということなんか取っ払った方がいいと私は思っているんですけれども、大臣、何かございましたら、よろしくお願いいたします。

馳国務大臣 やはり、財務基盤の健全化ということも必要でありますから、十分に、提出していただく資料等を拝見した上で、また評価委員会の意見も踏まえた上で認定という形をとりたいと思います。

松田委員 時間が来ました。

 最後に、要望といいましょうか、お願いをしたいなと思うんですけれども、各大学が努力をして土地の運用、金融商品の運用、だんだん頑張ってきたから、もう財源的にもいいよね、国の支援はいいよね、そうならないだろうなということをやはり各大学、非常に危惧をいたしております。

 ですから、努力した分はしっかりとその大学の運営に使えるような形をやはりとっていただきたいというふうに思っておりますが、要望でございますが、大臣、それに対する御見解があればお伺いをして、終わらせていただきたいと思います。

馳国務大臣 運営費交付金を初めとして基盤的経費はきっちりと確保すべき、これは政府の責任だと思っています。

 その上で、今般の法案にありますような規制緩和によって努力をされた分は、その分を自分たちの大学の人件費に使うとか、また新たな研究成果のための費用に使うとか、そういうふうにしていただくことが、私は、そういうあり方が健全な国立大学法人としてのやはり財務体質だと思っています。頑張ります。

松田委員 終わります。ありがとうございました。

山本(と)委員長代理 次に、大平喜信君。

大平委員 日本共産党の大平喜信でございます。

 きょうは、国立大学法人法改正案にかかわって、幾つか質問をしていきたいというふうに思います。

 法案では、第三十四条の六に、指定国立大学法人の「中期目標に関する特例」が設けられております。もともと国立大学の中期目標は、法律上は文部科学大臣が定めるとされていますが、憲法二十三条に由来する大学の自治を踏まえて、文科大臣には国立大学からの意見、原案ですね、これに配慮する義務が課されております。中期目標の実際上の作成主体は国立大学法人だと解されてきました。

 そこで確認ですけれども、指定国立大学法人の中期目標も同様に、文部科学大臣には国立大学からの意見に配慮する義務が課され、中期目標の実際上の作成主体はあくまでも指定国立大学法人であるということで間違いありませんね。

馳国務大臣 国立大学法人の中期目標については、国立大学法人法第三十条第三項において、文科大臣は中期目標を定め、またはこれを変更しようとするときは、あらかじめ国立大学法人等の意見を聞くこととされております。

 また、国立大学法人法附帯決議において、実際上の作成主体が法人であるとされているところでありまして、指定国立大学法人についてもこれを変更するものではありません。

大平委員 そんな中、今度の法案では、指定国立大学法人の中期目標を定めるに当たって、先ほどの第三十四条の六、「世界最高水準の教育研究活動を行う外国の大学の業務運営の状況を踏まえなければならない。」としています。

 この踏まえるというのはどういうことか。世界に名立たる外国の大学の業務運営を同じようにまねをしろということを文部科学省は求めているんでしょうか。お答えください。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 国立大学に関しましては、各大学、学部ごとに、強み、特色、社会的役割を整理いたしますミッションの再定義を行うことなどによりまして、機能強化を進めているところでございます。

 特に、今回の法制度によりまして指定を受ける国立大学につきましては、海外の有力大学と競い合える卓越した研究分野を既に備えて、その強みを伸ばしていくということが基本となると考えてございます。

 ただ、その一方で、外国大学の業務運営の状況を踏まえるといたしておりますのは、我が国の国立大学においては、やはり課題が一方でございます。新領域や学際的領域の開拓であるとか、社会連携やガバナンスの強化、こういうところは我が国の国立大学において課題であるというふうに考えてございます。

 そういうことがございますので、指定国立大学が海外の有力大学の状況について分析を行って、その内容を参考といたしまして目標や取り組み構想を策定するということを想定しているということでございます。

大平委員 この間の説明でも、指定国立大学の指定はあくまでも大学からの申請に基づくものだということや、大学みずからが伍していこうとする海外大学の取り組みをベンチマークとして設定する、そんな説明がありました。あくまでも各大学が自主的に外国の大学の状況を踏まえて検討するんだ、そんな説明だったかと思います。

 みずからが伍するとか大学が自主的に、そういうことを一方で言いながら、しかし、今度の法律で新たに、世界最高水準ということも明記しながら、細かく項目も提示して、これでなければ認めないというふうにするものであります。

 大臣、これはまさに政府、文科省が上からの関与を強めて大学の自主性を侵害するものではないかと考えますが、いかがでしょうか。

馳国務大臣 指定国立大学法人の指定を受けようとする法人には、申請に当たって、人材育成・獲得、研究力強化、国際協働、社会連携、ガバナンスの強化、財務基盤の強化の、六つの観点についての目標設定や構想の提出を求めることとしておりまして、指定された場合は、これらの内容について各法人の中期目標に反映することとなります。こうした指定や中期目標への反映の手順においては、現在の国立大学法人の中期目標の作成プロセスと同様のものとすることを考えています。

 指定は、各法人の主体的意思による申請に基づくものであります。法人の意に反して文科大臣が一方的に中期目標を変更することは考えておりません。したがって、法人の自主性を侵害するものではありません。

    〔山本(と)委員長代理退席、委員長着席〕

大平委員 大臣は、これまでと同様にやるんだというふうな答弁でありましたが、しかし、今度の法案で新たに六つの項目を具体的に並べて、海外の名立たる大学をベンチマークに設定するということも新たに述べながら、中期目標への反映もしていくんだ、こういうたてつけになっているわけです。

 そもそも、外国の大学と日本の大学では規模や歴史も違う、ベンチマークとして設定すること自体がどれだけ意味のあることなのか、私は極めて疑問を感じずにはおられません。大学がみずから高い志や目標を持つこと自体は否定はしませんけれども、それを上から押しつけるようなやり方はとるべきではない、このことはきちんと指摘をしておきたいと思います。

 先ほども大臣の答弁でありました、六つの柱というのが今回挙げられております。その一つのガバナンスの強化、学長の指導性の発揮の問題について質問を続けたいと思います。

 この問題は、既に幾度となく強調され続けてきたことであり、この間、学長裁量経費など、こうした仕組みの新設も含めて、学長の権限は大きく強められてきております。そして、今度の法案で、その強化がさらに求められているのであります。

 この点で、とりわけ現場で危惧をされているのは学長選挙の問題です。現在、多くの大学では、学長選考過程において教職員の学長選挙が行われています。

 そこで、確認ですけれども、二〇一四年八月二十九日発出の学校教育法改定案の施行通知、その中の「二 国立大学法人法及び同法施行規則の一部改正」の(一)、学長選挙にかかわる部分に何と書いてあるか、紹介していただけますか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 一昨年八月二十九日付の学校教育法及び国立大学法人法の一部改正法及び同施行規則の一部改正省令の施行通知でございます。

 今御指摘のあった部分でございますが、少々長くなりますが、記述内容を読み上げるようにということでございますので申し上げますが、意向投票に関しまして、

  学長等選考会議は、候補者の推薦への関与、所信表明の機会の設定やヒアリングの実施、質問状の公開など適切な方法を通じて、主体的な選考を行うこと。なお、選考の過程で教職員による、いわゆる意向投票を行うことは禁止されるものではないが、その場合も、投票結果をそのまま学長等選考会議の選考結果に反映させるなど、過度に学内又は機構内の意見に偏るような選考方法は、学内又は機構内のほか社会の意見を学長又は機構長の選考に反映させる仕組みとして設けられた学長等選考会議の主体的な選考という観点からは適切でないこと。

と記述されております。

大平委員 ちょっと、後半部分はまた後で取り上げたいと思いますが、つまり、確認ですが、学長選挙そのものは禁止されていませんね。確認です、もう一度。

常盤政府参考人 ただいま申し上げましたとおり、この通知の中では、選考の過程で教職員によるいわゆる意向投票を行うことは禁止されているものではないが、その場合も主体的な選考を学長選考会議が行うということを求めているものだと思っております。

大平委員 確認しました。

 そこで、さらに伺います。

 今度の法案において、指定国立大学の指定の際、また中期目標の作成の際に、六項目の一つに挙げられているガバナンスの強化の内容として、学長選挙をやめなければ指定を認めないということになるのかどうか。確認です、いかがですか。

常盤政府参考人 指定国立大学法人の指定のあり方については、有識者会議で御議論をいただいてきたところでございます。

 この有識者会議では、「教育研究環境の充実のために改革を進め、資源を最大限活用し、透明で効果的な運営を行い、学内外から信頼されるガバナンス体制を構築すること」を目指すべきとされております。そして、その際、指定国立大学が備えるべき要素として、今御指摘ございましたように、ガバナンスの強化ということが六つの柱の中の一つとしてございます。

 ガバナンスの強化に関しましては、「指定国立大学としての取組を進めていくためには、リーダーシップのある学長が安定的に大学運営を推進できるなど、当該大学の特性に応じた工夫が必要」となり、学長の「任期、選考の在り方や、学長選考会議、経営協議会及び監事を含めた学長のチェック機能の強化など、ガバナンスの強化を自律的に推進する。」ことが必要であるというふうにされております。

 こうした観点を踏まえまして、指定国立大学法人制度に申請する大学におきましては、意向投票の実施の有無は各大学の判断によるものでございますけれども、それぞれの特性に応じたガバナンス強化に資する取り組みを行って、「学長のリーダーシップの下、教育研究において強みや特色を発揮し、社会的な役割をより良く」果たしていくこと、こういうことが期待されているというふうに考えております。

大平委員 各大学の判断だということで、答弁を確認しました。

 私、大臣にも同じことを確認しておきたいと思うんです。最終的に指定国立大学を指定するのは文部科学大臣であるということです。その際に、学長選挙をやめさせるというような介入をすることはありませんね。確認です。

馳国務大臣 昨年、学校教育法が改正され、ガバナンスの改革がなされたところであります。特に学長選考においては、意向投票が学長を選ぶための実質的な選挙として機能して、票読みや教員間のさまざまな働きかけなど、国立大学のリーダーを選ぶにはふさわしくない行為が行われてはならないと考えております。

 指定国立大学法人制度に申請する大学においては、意向投票の実施の有無は各大学の判断であります。大学をリードしていくにふさわしい者が学長選考会議において主体的に選考されるよう、大学人としての見識を十分発揮されることを期待したいと思います。

大平委員 意向投票の有無は各大学の判断だという御答弁を確認しました。

 しかし一方で、この問題で私が危惧をしているのは、ある新聞で馳大臣が次のように述べておられたことです。

 学長や学部長、病院長などを決める際、組織内で意向投票をしている大学は、ガバナンスの観点から、改革の意思があるのか疑問だと。運営費交付金の問題で問われているんですが、その配分に関しても厳しく評価すると述べておられました。大学の将来を占う重大事項である指定国立大学の指定あるいは中期目標の評価と決定ということを扱う大臣の発言として、私は決して看過できないと思いました。

 そもそも、国立大学法人法案の審議の際の政府答弁でも、先ほど局長に読み上げていただきました答弁にあったような、後半の部分の制約はつけておらず、学長選考会議において定めるとしか言っていないのであります。

 そして、教職員の意向を大学の管理運営に反映させることは教育研究の発展にとっても不可欠なものである、同時に、その自治のあり方は大学によって異なるものである、それは国際的にもコンセンサスになっていると私は思っています。

 ユネスコの、高等教育の教育職員の地位に関する勧告を一部紹介したいと思うんです。

 学問の自由の適正な享受と以下に列挙するような義務及び責任の遂行は高等教育機関の自治を要求する。自治とは、公的責任、とりわけ国家による財政支出への責任の体系に沿った学術的職務と規範、管理及び関連諸活動に関して高等教育機関が行う効果的意思決定及び学問の自由と人権の尊重、これらのために必要とされる自己管理である。しかしながら、教育機関の自治の性格は、その施設の類型に従って異なるとされているわけです。

 世界のごく一部の大学のやり方に倣って各大学を画一的なものにしていくなどということは、この勧告の趣旨からも外れている。

 重ねて、指定国立大学に指定する際、海外の一部の大学で学長選挙がされていないなどということを口実に、ましてや、運営費交付金を盾に学長選挙をやめさせるなどという介入は絶対に許されないとはっきり申し上げておきたいと思います。

 質問を続けたいと思います。

 この指定国立大学制度も、この間、政府、文科省が進めてきた大学改革の一環です。この間、政府、文科省は、ミッションの再定義あるいは運営費交付金が削減される中での三類型化、重点配分化、さらには文系潰しの通知発出などを通じて、各大学を競争させてきました。こうした大学改革や指定国立大学制度というものが果たして、そもそも大学現場から上がっている要求なのか、この根本的な疑問が私はあります。むしろ経済界からの要求ではないか。

 二〇一六年二月に日本経団連が発表した「産学官連携による共同研究の強化に向けて」の中では、「政府に求められる対応」として、「運営費交付金等の重点的な資金配分。」、指定国立大学制度においては、「研究成果の社会実装の視点からの目標設定や、トップによる戦略的な資源配分を可能にする規制緩和の実現」などを求めているのであります。まさに今度の制度設計そのものだと私は思いました。

 大臣、この点、いかがでしょうか。御所見をお願いします。

馳国務大臣 国立大学については、全八十六の国立大学法人が、社会や産業構造の変化が非常に厳しい中で、それぞれの強み、特色、社会的役割を踏まえて、どのように機能を強化していくのかという議論をここ数年続けてきております。その中で、卓越した研究拠点として国際的に貢献をしていきたいという大学群が一定程度存在しているということが制度設計の基礎となっております。

 また、制度設計の詳細について検討するために文科省に設置した特定研究大学制度検討のための有識者会議においては、国立大学の学長経験者、私立大学関係者、国立大学法人制度に関する有識者などの参画も得て、議論を行っていただきました。

 その中で、我が国の大学が有する課題、大学が国内外から優秀な学生、教員を獲得する上で必要な視点、人材育成、研究力を強化するために必要な取り組みなどなど、さまざまな観点から意見をいただいて、それらを踏まえて制度の検討を行っておりまして、大学界の意向を反映したものであります。

大平委員 現場の実態がどうなっているのか、大臣は本当にわかっておられるのかと思うわけです。

 具体的な現場の声を幾つか紹介してみたいと思うんです。

 当然、大臣もお読みになっていると思うんですが、文部科学省がつくられた、ことし三月発行されている、科学技術の状況に係る総合的意識調査の定点調査、この報告書とデータ集を私も読みました。現場で必死になって頑張っておられる大学関係者の皆さんの、ある意味、悲痛の叫びともいうべき声がこもごも寄せられておりました。

 その中身の一部を紹介したいと思うんですが、二〇一一年から二〇一五年にかけてその指数がマイナス変化を見せた、つまり、この期間の中で悪化した項目、その一番トップに来ている項目とその理由、何と書いてあるか、紹介していただけますか。

伊藤政府参考人 御指摘の調査においては、回答者に対しまして、「研究開発にかかる基本的な活動を実施するうえでの基盤的経費の状況」についての認識を変更した理由を聞いております。

 その理由の例といたしましては、「学長裁量経費への重点化がなされたので、部局や各教員へ配分される基盤的研究費が減額になった 運営費交付金が経時的に大幅に減額される中で固定費まで切り込んで対応せざるを得ない 実験系の研究活動を維持するのに必要な額を下回っている等」が挙げられているところでございます。

大平委員 学長裁量経費がふえたから運営費交付金が減ったという声でした。

 この定点調査のデータ集の中でも、例えば、「運営費交付金の定期的削減に加え、学長裁量経費への一定枠の吸い上げが義務付けられ、基盤経費のさらなる削減が行われました」など、同様の趣旨の声が具体的にたくさん書かれておりました。

 運営費交付金が減る中で、各大学は競争的資金や外部資金を獲得しなければなりません。文部科学省もそうするように勧めてきました。その結果、ではどうなったのか。先ほどの定点調査の指数悪化トップテンの五番目の項目とその理由を示していただけますか。

伊藤政府参考人 御指摘の点につきましては、回答者に対しまして、「将来的なイノベーションの源として独創的な基礎研究が充分に実施されているか」について、認識を変更した理由を聞いているものでございます。

 その理由の例といたしまして、「大学における成果重視の傾向が強まり、研究分野が画一化しつつある。 大学にますます自由や余裕が無くなっている(基盤的研究費の減少、各種大学改革による疲弊、制度に振り回されている) 長期的な視点に立った基礎研究が行いにくい環境になりつつある。 独創的の評価には時間がかかるので、長期的な支援が必要等」が掲げられているところでございます。

大平委員 この項目についても、データ集ではこんなことも書かれております。「イノベーションが経済成長の脈絡で主張されており、基礎研究の多様性を阻害している」、「予算の重点化とともに、短期的な視点に触れてきている」、さらには、「各種の大学「改革」による疲弊によって大学の研究力が落ちている」、こういうものまであるわけです。結局、短期的に成果を出さなければいけないので、目先のものに追われ、長期的な研究ができないでいるのであります。

 文科省は、しきりにイノベーションのための指定国立大学とおっしゃられるんですが、こんなことをしておいて、イノベーションがどうして生まれるのかと感じずにはおられません。

 さらに、定点調査の指数悪化トップテンの八番目には、「研究時間を確保するための取り組みの状況」が挙げられており、「大学改革のための会議や、大学評価への対応、外部資金獲得の申請書書きなどで、教員、研究者がますます忙しくなっている 中期目標中期計画の策定でマネジメントなどの時間が増えている」、こうした声が寄せられているわけであります。

 るる紹介してきましたが、これらは研究環境や基礎研究など、いずれも、文部科学省が言う世界最高水準の教育研究にとって最も重要な部分です。それが現場の感覚では近年悪化をしており、そして、その理由が運営費交付金の削減と大学改革が原因だと、現場で取り組んでおられる方たちが口をそろえて述べているわけです。

 さらに伺います。

 運営費交付金の削減と大学改革の結果、国立大学や日本の学術研究の成果がどうなっているのか。

 文部科学省の科学技術・学術政策研究所が出している科学技術指標二〇一五によると、整数カウント法での論文数、トップ一〇%補正論文数、トップ一%補正論文数の順位が、二〇〇一年から二〇〇三年と二〇一一年から二〇一三年とで比べてそれぞれどうなっているか、お示しいただけますか。

伊藤政府参考人 御指摘の、科学技術・学術政策研究所が発表しております科学技術指標二〇一五によれば、まず論文数についてでございますけれども、日本の順位は、二〇〇一から二〇〇三年の平均で世界第二位でございましたが、二〇一一から一三年の平均では世界第五位となっております。また、トップ一〇%補正論文数につきましては、二〇〇一年から二〇〇三年で世界第四位であったものが、二〇一一から一三年では世界八位となっております。トップ一%の補正論文数につきましては、二〇〇一年から三年で世界第五位であったが、二〇一一から一三年では世界十二位となっているところでございます。

大平委員 いずれも軒並み下がっているのであります。明らかに運営費交付金が減ったことが最大の原因であり、しかも、それが、この間、大学間だけでなく、大学内部での重点配分ということにしてきたからであります。

 現場からこうした痛烈な意見が出ている。文部科学省自身もそう分析している。そして、実際の指標も軒並み下がっている。それなのに、今度のこの指定国立大学制度で、なお一層、それに逆行する方向を進めようとしている。

 私は、まさに文科省がやっているのは、お金は出さないが口は出すということではないかと感じずにはおられません。今何よりもやるべきことは、大臣、運営費交付金をもとに戻して、さらにふやしていくことではないか。いかがでしょうか。

馳国務大臣 国立大学は、我が国の高等教育や学術研究を牽引する重要な役割を有しているという認識を持っております。

 現在、学術研究、基礎研究の推進も含め、機能強化のための大規模な改革を進めております。国立大学の機能を十分に発揮させるためには、また、教員が安心して教育研究活動を行えるようにするためにも、基盤的経費の安定的な確保が必要であります。このため、国立大学法人の第三期中期目標期間初年度である平成二十八年度予算では、国立大学法人運営費交付金を対前年度同額の一兆九百四十五億円を確保したところであります。

 文科省としては、引き続き、国立大学の機能強化のため、基盤的経費の確保に努めてまいりたいと思います。

大平委員 運営費交付金の安定的確保が必要と大臣はおっしゃられるんですけれども、先ほど来も質疑の中でありました、実際この間の動きを見ますと、法人化以降は毎年一%ずつずっと減らされている、今年度も、重点配分で、少なくない大学が減っている、これが紛れもない事実であります。

 私の地元中国地方、中国五県の国立大学は全て減額であります。ある学長さんは、これではいずれ教職員を五十人は削らないといけないとおっしゃっておられました。こうした中で、次は学内での重点配分を進めろと。これでは一層大学の疲弊が進むのは目に見えているではありませんか。

 こうした方向に決して未来はない、安倍政権による上からの押しつけ大学改革はきっぱりやめて、運営費交付金の抜本的拡充を行うよう強く求めて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

谷川委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 おおさか維新の会の伊東信久です。よろしくお願いいたします。

 さて、今回の指定国立大学法人制度の創設の必要性についてまずはお伺いしたいと思うんです。

 先ほど来より皆さんの質疑にもありますように、今までもスーパーグローバル大学創成支援制度というものがありましたけれども、このスーパーグローバル大学創成支援制度というのがあったのにもかかわらず、今回、指定国立大学法人制度という新しい制度を設けることになったわけなんですけれども、それでは、スーパーグローバル大学創成支援制度という、今までのその成果と結果についてお教えください。

常盤政府参考人 お答えいたします。

 スーパーグローバル大学創成支援でございますけれども、我が国の高等教育の国際競争力の向上を目的といたしまして、徹底した国際化と大学改革を進める大学を重点支援するというものでございます。世界トップ百を目指す力のある大学をタイプAといたしまして十三校、グローバル化を牽引する大学をタイプBといたしまして二十四校採択をいたしまして、平成二十六年度から取り組みを進めております。

 各大学におきましては、外国人留学生や外国人教員の受け入れなど大学の国際的な展開、年俸制の導入など大学の国際通用性を高めるためのガバナンス改革、さらに、TOEFL等外部試験の外国語入試への活用などの教育改革などについて事業計画と数値目標を策定いたしまして、それを達成するための取り組みを推進しております。

 これらの数値目標につきましては、事業開始年度において既に一定の進捗が見られているという状況でございます。

 各採択大学におきましては、海外大学との戦略的な協力関係の構築、国際連携教育課程や国際共同大学院の開始など、海外の卓越した大学との連携というようなことも進めているというのが現状でございます。

伊東(信)委員 今の御答弁は、恐らく、スーパーグローバル大学創成支援制度があって、それを創設する前の答弁ではなかったのかなと思います。そうではなくて、にもかかわらず、なぜ日本の大学は世界のトップテン入りすることができなかったのか、その辺の検証なくして今回の指定国立大学法人制度を創設しても、また同じ、二の舞を舞うことになるのではないかなと思うんですけれども。

 前回のデメリットがあって、今回、何を、この指定国立大学法人制度によってそのデメリットを解消したのか、そのメリットは何かをお教えください。

常盤政府参考人 お答えを申し上げます。

 指定国立大学法人制度におきまして、これまでのスーパーグローバルの成果というものをどのように認識した上で指定国立大学法人制度の設計を考えているのかということでございます。

 スーパーグローバル大学の創成支援につきましては、先ほど申しましたように、基本的には大学の国際化ということをメーンに据えた取り組みでございます。それが、もちろん、日本の大学の一つの課題、大きな課題ということで、そういう取り組みを進めているわけでございます。

 そういうことを前提とした上で、今回、指定国立大学法人を設けるに当たっての有識者会議では幾つかの課題が指摘をされてございます。

 具体的には、やはり我が国の大学において世界のトップに進んでいくためには三つの壁があるというような指摘がございます。一つは、学内での、学部を超えた研究の共同性というようなことの学内での壁、それから、学外との社会連携などの壁、それから、国際展開、スーパーグローバルはここも主な対象としておりますけれども、そういう国際展開の壁。そういう総合的なガバナンス改革の視点も含めて、指定国立大学法人制度については、国立大学を対象とした制度の特例措置を設けるという観点から制度設計を行っているということでございます。

伊東(信)委員 その中でも、スーパーグローバル大学創成支援の交付額を見せていただきますと、やはり最初の、文科省がうたっていた予算に比べるとかなり少ない気がするんですね。

 もちろん、お金というのは勝手にふえていくわけじゃありませんから、その予算を確保して、それからの話であるということは、我々おおさか維新の会のもともとの党是でありますので、何でもかんでもお金を重点投資するというのは考えものだという考え方はわかるんですけれども、であるのならば、今回、スーパーグローバル大学でタイプAとして十三挙げていた中で、まずは国立大学に絞って数を減らして、その分重点投資をしよう、そういう意味として捉えても構わないでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 スーパーグローバル大学につきましては、国公私立を通じました予算措置ということで、これは先ほど申しましたように、タイプAについて申しますと、世界のトップ百を目指す力のある、これからそれを目指していく、そういうところを念頭に置いて、国公私立に共通した予算制度として設けたものでございます。

 そして、こういうことを進めていく中で、特に今課題になっております世界のトップ百の中でも、まさにその中でも牽引的な役割を果たしていく、例えば世界のトップ五十にあるような、まさに世界最高水準の大学を形成していくという上に当たって、今の国立大学法人の制度においてどのような工夫ができるかという観点で今回の制度設計をさせていただいているということでございます。

伊東(信)委員 恐らく、これをしつこく質問しても水かけ論になりそうな気がするんですけれども、通告にも申し上げたんですけれども、きちっと総括してください。

 午前中の質疑の中、平野先生とかきちっと質疑していただいたわけなんですけれども、国立大学法人を文部科学大臣が指定して、その指定期間、六年間終わったときに、文部科学大臣が指定を取り消すものともしているわけですね。指定して喜ばれるところはあっても、指定を消されて喜ぶところはないわけです。

 やはり、現場としては振り回されるわけにはいきませんので、いわゆるPDCA、チェック機能として、指導を含めて、トップテンに入るにはどのような方法論でやるかというのは非常に大事なんですね。今までのスーパーグローバルとかがうまいこといかなければ、今度はそれをいかに直していくかというのが非常に大事なことなんですね。

 指定をすることも指定を取り消すことも文部科学大臣の裁量権ということになっておるんですけれども、そのあたり、今までの反省を踏まえた上で、大臣、今改めて、今までの質問とかぶっているかもしれぬですけれども、指定国立大学法人の指定と、特に取り消すことにならないように、いかにチェックするかということをお教えください。

馳国務大臣 今まで局長が申し上げてきたのは、ある意味では予算面から指定して頑張ってもらおうということでありましたが、今回は、これは制度面からの支援ということが一番の肝であるというふうに認識をしております。である以上は、自主的に上がってくる構想などをしっかりと評価機関で評価をした上で、その上でまた支援をしていく。自主的な努力ではありますけれども、サジェスチョンもしたりしながら支援をしていくということが重要だと思っています。

 当然、高等教育機関として、やはり世界的な成果を上げていただくことも重要ですし、また、継続して研究を維持する研究者を育成していただくことも重要でありますから、こういった観点からの、まさしくスーパーな人材を育成する、この方針に基づいて応援をしていかなければいけない、こう考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 あさってですかね、いつもラグビーの話ばかりしておるんですけれども、オックスフォード大学のラグビー部のOBチームが来日しまして、旧帝大と試合をしたり早稲田のOBさんと試合をしたりするわけなんですけれども、オックスフォード大学、世界ランキング二位まで、MITとかカリフォルニア工科大学に続いて二位までランキングされたことがあるんですけれども、オックスフォード大学の自主性というのは、中にカウンシルをつくったりとかして、その自主性がきちっと保てるようにしているわけなんですね。

 先ほどから、法整備においてということなんですけれども、自主性を保ちつつ、かつ国が指導していくところの、法律のエッジのきかせ方がちょっといまいち私には理解できなくて、大阪大学におきましても、医工情報センターといいまして、学部を超えるための試みとかというのは既にもうしているわけですし、私はそこの招聘教授もやらせていただいているんですが、学部を超える、それはもう当然のことですし、沖縄の先端の大学院大学ではもう既にしているわけなんです。どのような法整備、方法論で、まあ、トップテン入りばかりにこだわるのも何かというような意見もあろうけれども、どのようにして戦略を持ってトップテン入りをするかというのを、もう少し具体的に教えていただければ幸いです。

常盤政府参考人 お答えさせていただきます。

 この法案をお認めいただいた後に、今大臣からも申し上げましたように、国立大学法人評価委員会の意見を聞きながら、具体的にどういう考え方、基準をもって指定をしていくのかということをまとめていきたいというふうに考えてございますが、これまでの有識者会議での議論の中では、やはり研究力とか国際協調、社会連携、こういうところで国内トップにあるということをまず前提条件といたします。

 その上で、各大学に、教育研究の卓越性であるとか社会との連携ということについての目標設定をしていただいて、今お話にございましたように、ではそれをどういうふうに具体化するのかということについて、人材獲得や育成、あるいは研究力強化、国際協調、社会連携、ガバナンス強化、財務基盤の強化、こういう六つの柱から成ります構想というものを出していただきます。

 その中で、例えば研究力を強化していくときに、学部を超えて、今、大阪大学の例を出していただきましたけれども、そういうものをどういうふうに大学として組織的にさらに進めていくという構想を持っているのかというようなことを提示していただいて、それをまた専門家の皆様方に御議論いただいて、より高い方向に持っていくということで進めていければというふうに考えてございます。

伊東(信)委員 基本的に、私は、一つのトッププレーヤーが牽引していくという発想に反対ではないんですね。そういったことも大事だとも思っております。一方で、今回の法案に関しては、学部ではなく、研究室ではなく、大学自体に指定をして、重点的にやっていくというこの発想も悪くはないと思います。

 といいますのは、私は理系ですので、科学的研究という観点にどうしても入ってしまうんですけれども、今までの、科研費も含めていろいろな研究費の予算に関してですけれども、過去の実績においてはどうしても、ノーベル賞であったりとか、ビッグネームに対しての投資に偏っていた感がありますし、今回の法案に関しまして関西の国立大学ほとんど全部にヒアリングをしたんですけれども、そのときに現役のプロフェッサーがこうおっしゃっていました。イノベーション25という長期戦略指針、閣議決定された平成十九年のイノベーション25の方針においてもこう述べてあります。全ての者が同じ方向で取り組むのではなく、ダイバーシティーを重視していくべきだ、つまり多様性を重視していくべきだ、こう明記されておりまして、少数のビッグネームに予算を集中させていた、これが過去の施策であるのならば、今回、重点投資するというのは、今の方針に矛盾するのではというような意見も出ております。

 もちろん、一つがトップランナーとして牽引していくという施策に対しては反対ではありません。ありませんが、このようにビッグネーム投資でやっていきますと、もし失敗しても、申しわけないですけれども、政府の中にもエクスキューズが、ここに投資したから仕方がないじゃないかというような一種の言いわけみたいなものがあると思うんです。そうではなくて、広く大学をボトムアップするような施策も必要だと考えておるんですけれども、いかがでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 特に国立大学に絞ってお答えをさせていただきたいと思いますけれども、今回、指定国立大学法人制度を設けるということを御提案させていただいておりますが、それの前段階といたしまして、特にここ数年間にわたりまして、先ほど平野先生の方から大学改革実行プランのお話もございましたが、その後の過程の中で、国立大学のミッションの再定義ということを行ったり、あるいは、三つの類型を示して、そこで八十六の国立大学がそれぞれ持てる強み、特色、社会的役割をしっかりと認識した上でそれを生かしていくというようなことでの取り組みもあわせて進めさせていただいておりますので、その点についても御理解をいただければというふうに思ってございます。

伊東(信)委員 いわゆる評価方法に関しては、公明党の國重先生も含めて評価方法の話とかをされていました。評価方法に関しては、有識者もおられますし、委員もつくられるということで、そのあたり、各専門家の先生がきっちりと議論していただけると思うんですね。

 国立大学に絞ってということをお話しされましたし、評価委員の中にちょうど大阪府立大学の前理事長の奥野先生もおられるということで、今回の法案は国立大学に絞っておるわけなんですけれども、少子化も含め、各大学で定員割れとか経営難に陥る話もニュースで頻繁に報道されております。であるならば、国立大学だけじゃなくて、公立や私立大学を含む日本の大学の底上げという話を私ずっとしているわけなんです。

 例えば、平成三十四年に大阪府立大学と大阪市立大学の統合に向けて、今調整が、話し合いがされているところなんですね。これは大阪の地域というよりも、例えば、私は大阪市立大学の医学部の方の大学院を卒業していて内情に関しては多分非常に承知していると思うんですけれども、医学部の研究機関、大学院の研究機関で私の直属の上司が農学部獣医学科の先生でして、メディカルドクターではないPhDだったわけなんですけれども、獣医学科というのは大阪市立大学にはないんですね、大阪府立大学にあるわけなんです。だから、大阪府立大学と市立大学がくっつくということは、いわゆる経営面だけではなく、教授陣の層の厚みや、相互の施設自体を充実するメリットが高いわけです。

 それで、公立大学の統合や私立大学の公立化などの施策は今後も進むのでしょうか。国立大学同士の統合も視野に入れたいろいろな抜本的な改革がこれからは必要だと思うんですけれども、そのあたり、いかが考えておられますか。

馳国務大臣 大学間の統合は、大学の教育研究の特性を踏まえつつ、各設置者の主体的な判断により行われるものであります。

 これまでの事例に鑑みると、大学が既存の資源を有効に活用し、教育研究分野の幅の広がりを確保したり、スケールメリットを生かして経営基盤の強化を図ったりする上で一定の効果を持つものと考えております。

 公立大学は、制度上、地方公共団体が大学のミッションを定めて設置及び管理するものであることから、大学の統合についても、設置する地方自治体が主体的に判断することが適当と考えております。

伊東(信)委員 地域の自主性も含めて、いろいろ本当に議論していただければ幸いということを申し上げ、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

谷川委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 法案の質疑に入る前に、一点だけ、ちょっと大臣に確認させていただきたいんです。

 たしか前々回の当委員会、toto法の改正の際に、国費の負担部分について、大会終了後の三年間についての用立てについて、JSCが用立てる、借金をするというお話なんですが、私、これは全くおかしな話だなというふうに思うんです。せめて利息部分だけでも国費でちゃんと予算措置をすべきではないかというふうに思うんですが、この点だけちょっと確認させてください。

馳国務大臣 さきに成立しましたJSC法の改正によりまして、平成二十八年度から三十五年度までの間、特定金額の上限割合を五%から一〇%に引き上げるなどによりまして、新国立競技場の本体などの整備に係る財源の確保が可能となりました。

 一方、新国立競技場の竣工は平成三十一年十一月を予定していることから、それまでに確保できない費用については、工事の進捗状況に応じ、JSCにおいて長期借入や債券発行を行うなどにより必要な財源を確保していくことになると想定しております。

 これら長期借入等は、改正後のJSC法附則第八条の七及び平成二十六年三月の大臣決定により特定業務に位置づけられており、利息等については特定業務勘定から支出することになりますが、その財源については、JSCを中心に、今後借入等を行うこととなった際に検討してまいりたいと思います。

吉川(元)委員 国費である以上は国としてちゃんと責任を持って措置すべきだということを指摘させていただいて、今回の法改正について質問させていただきます。

 今回の法改正、世界最高水準の教育研究活動が見込まれる指定国立大学法人制度を創設すること、それから国立大学法人全般で資産や寄附金活用の規制を緩和することが盛り込まれております。

 国立大学法人の教育研究活動を活発にすること自体、何ら否定するものではありませんが、ただ、今回の法改正で、今でも低い水準にある国の予算を重点的に投入し、そして序列化、選別化につながっていくのではないかという懸念も捨て切れません。

 そこで、何点かお聞きしたいと思います。

 まず、スタートアップ経費についてであります。

 この経費について、改革に取り組む際に、スタートアップ経費を国から受けることができるようなシステムが検討されているというお話でありますが、この算定の仕方、それからその額の見込みについてお聞かせください。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 指定国立大学法人においては、国の内外からすぐれた研究者を引きつけ、卓越した教育研究活動を行い、成果を上げることで、産業界を初め社会全体からの理解を得て、産学連携研究費や寄附金等の支援に結びつけていく好循環を実現していくということを期待しております。

 このため、指定国立大学法人に対し国立大学法人運営費交付金等の予算を集中させることは予定しておりませんが、有識者会議においては、国からの一定のスタートアップ支援が必要であるという意見が多く出されておりますので、それを踏まえた対応については検討してまいりたいと考えております。具体的な内容や額については、予算編成過程において決定していくものと考えております。

吉川(元)委員 附則を見ますと、この法律は、成立すれば、来年の四月一日、施行されるということであります。今お話を聞くと、スタートアップ、選定の仕方とか、どのぐらい金額が出るのかというのは予算編成過程ということですからことしの夏から秋にかけてということでありますが、一方で、附則を見ますと、申請についてはことしの十月一日からできるようにもなっております。

 そうすると、スタートアップ経費がどのぐらい出るのか、どういう形で算定されるのかというのが全くわからない状態の中で申請しろと言われても、言われた方は非常に当惑するのではないかと思いますが、この点についてどのように考えていますか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 スタートアップ支援の具体的な内容や額は予算編成過程において決定していくものと考えておりますけれども、各大学がスタートアップ経費の内容も踏まえて申請を行うことができるようにするということは重要だというふうに考えておりますので、具体の制度設計をこれから進めていくに当たりましては、公募の時期等につきましても十分配慮していきたいというふうに考えてございます。

吉川(元)委員 いや、今は五月十一日ですよね。十月一日から申請可能になる。もう残り五カ月ないわけで、大学側からすれば、最初の段階でどのぐらいのお金が出るのかというのがわからない状態の中で、とにかく申請できますよと言われても、これは非常に困るんじゃないかなというふうに思います。

 次に、もう時間がありませんので質問させていただきたいと思いますが、国立大学法人改革によって、各大学は、簡単に言うと、地域拠点型、特定分野拠点型に加えて、世界最高水準の教育拠点型の三類型の中で、改革の度合いによって運営費交付金の総額の一部が重点配分される仕組みが導入をされました。

 この世界最高水準の教育拠点型ですけれども、その基準というのは、「卓越した成果を創出している海外大学と伍して、全学的に卓越した教育研究、社会実装を推進する取組を中核とする国立大学」というふうにされております。

 このいわゆる世界最高水準の教育拠点型というものと、それから今回の指定国立大学法人、これはどこがどういうふうに違うのか、同じものなのか、その点について簡単に説明してください。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、指定国立大学法人制度でございますけれども、世界最高水準の教育研究を行う海外大学の状況を踏まえた中期目標の設定や社会連携活動の範囲の拡大など、現行の国立大学法人制度の枠組みを超えた特例を定める法律上の仕組みでございます。

 これに対して、国立大学法人の運営費交付金における三つの重点支援の枠組みは、国立大学の機能強化の方向性ごとに設けた三つの枠組みの中から各国立大学がみずからの判断により一つの選択をした上で、評価に基づき運営費交付金の重点配分を行うという予算上の仕組みでございます。

 この点の、法律上の仕組みと予算上の仕組み、そして、一方は、大学の申請に基づくものでございますけれども文部科学大臣が指定をする、もう一方は、各国立大学のみずからの判断により一つを選択する、こういう違いがございます。

吉川(元)委員 ちょっと関連してお聞きしたいんですけれども、指定国立大学法人に関しては、運営費交付金またはそれ以外の補助金という形で予算措置等々をする考えはお持ちなのでしょうか。

常盤政府参考人 運営費交付金や補助金は、全ての法人が継続的、安定的に教育研究活動を行うための基盤的経費でございますので、指定を受けたことによって特に運営費交付金の予算に影響を与えるということは予定をしておりません。

吉川(元)委員 少し運営費交付金のお話をしましたので、ちょっと大臣に伺いたいと思います。

 運営費交付金については、国立大学を法人化された際の本委員会の附帯決議、これは二〇〇三年の五月十六日、附帯決議が付されております。その中では、運営費交付金の算定の透明化と同時に、「法人化前の公費投入額を十分に確保し、必要な運営費交付金等を措置するよう努める」ということが明記をされております。

 ところが、これは他の委員からも指摘がありましたけれども、独法になったときの二〇〇四年度の運営費交付金一兆二千四百億円、それから今年度が一兆九百億円、これは毎年やはり一%ずつ減少して、一二%余りの減少になっております。これは附帯決議に逆行しているんじゃないか。あくまで法人化された際の運営費交付金をしっかり確保しろということが附帯決議の趣旨だと思うんですが、これは逆行しているのではないか。この点についての大臣の認識。

 それから、あと、これは財政制度等審議会、以前も議論させていただきましたが、その中で、引き続き一%ずつ削っていくというふうなことが提言をされております。OECDの調査による高等教育の私費負担割合というのは、加盟国平均が三〇・三%なのに対して、日本は六五・七%、七割近く私費負担になっている。そういう中で、この現状を放置するどころか、財政審の話でいくと、さらに悪化をさせる、悪くさせるということになりますが、この点について大臣はどうお考えなのか。

 この二点を伺いたいと思います。

馳国務大臣 簡潔に言えば、附帯決議を守っていくべく努力をしなければいけないというまず決意であります。

 二点目は、本当に財政審の建議についてはけしからぬともちろん思っておりまして、ことしは何とか昨年並みに維持をいたしましたが、来年以降もやはりこの運営費交付金は守っていかなければいけない、重要な、大切な予算の項目である、こういう認識を持っております。

吉川(元)委員 附帯決議は、「法人化前の公費投入額を十分に確保し、」となっているわけです。でも、現実には、もう一二%、法人化前のものからは減額をされてしまっている。これはやはり、私は、本委員会の附帯決議が十分に守られていないのではないかということを指摘させていただきたいと思います。

 次に、余裕金の運用について何点かお聞きしたいと思います。

 今回、余裕金についていろいろ運用ができるということでありますが、株式運用は除外されているようですけれども、デリバティブなどのような、元本割れが想定されるハイリスク・ハイリターンの商品も含まれるのかどうか、政令で検討するということになっていますが、どういったものを想定されているのかを簡単に教えてください。

常盤政府参考人 現行制度上、国立大学法人等の資産運用の対象範囲は、法人法の第三十五条において準用いたします独立行政法人通則法第四十七条の規定に基づきまして、運営費交付金、学生納付金、寄附金など、資金の性格を問わず一律に、国債、地方債、政府保証債などに限定をされてございます。

 今回の改正におきましては、これまでの元本保証のある金融商品に加えまして、他の独立行政法人の運用対象範囲や、各国立大学法人等からの要望を踏まえて、投資信託、社債、外国債券や外国預金などを、政省令で定めるところにより新たに可能とすることを予定しております。

 一方で、株式は、出資性があり、かつ投機性も高いこと、また、いわゆるデリバティブ商品は仕組みが複雑であり、大学にとって運用が困難であると考えられますことから、政省令で定める金融商品として含めることは予定をしておりません。

吉川(元)委員 二〇〇八年のリーマン・ショック、これは日本経済全体に悪影響を与えたわけですけれども、このときにもやはり、大学、まあ私学においては寄附金等を金融で資産運用しておりましたが、少なくない私立大学で多額の含み損が計上されたことが大変問題になりました。二〇〇八年十月に百五十四億円の損失処理を計上した駒沢大学では、担当理事が解任されております。そのほかにも、損切り処理をした大学、南山大学、愛知大学。また、含み損の額だけで言えば、慶応大学は評価損が二〇〇八年九月で三百億円を超えたというようなことも報道記事を目にいたしました。当時は、債券とデリバティブを組み合わせた仕組み債を保有していた大学もかなり存在していたようであります。

 このような状況に対して、文科省として、学校法人運営調査委員会が意見書を取りまとめ、注意喚起もしたはずです。

 にもかかわらず、今回、先ほど余り危険なのはだめだよということでありますが、元本割れの可能性がある金融商品の保有を国立大学法人にも認めるというのは、私は、これはちょっと無責任なのではないかと。損失を計上した場合、大学運営費交付金の原資である税金、さらには学生が負担する授業料にもこれは影響が出てくるというふうにも思いますし、不安定な金融商品を国立大学法人が保有することはやはり私は避けるべきではないかというふうにも思います。

 リーマン・ショックが私大の資産運用に与えた影響をどのように評価してきたのか、ぜひお聞かせください。

馳国務大臣 まず、リーマン・ショック後に、一部の私立大学においてデリバティブ取引による資産運用で多額の損失を計上した経緯があることは承知しております。

 原因は、例えば、資産運用を、理事会での審議を経ずに担当役員が単独で決定していたケース、資産運用のルールや方針を法人として定めないまま場当たり的に運用したケース、公認会計士や監査法人からの指摘や助言を軽視していたケースなど、総じて法人としてのガバナンスに問題があったということが当時の文科省内の調査委員会から指摘されております。

 私立大学がどのような資産運用を行うかは各学校法人の責任において決められるべきでありますが、この一連の出来事は、資産運用に当たって責任ある意思決定と適正な執行管理を可能とするガバナンスの確立が何よりも重要であることを私立大学関係者が深く認識する契機になったと理解しております。

 今般の事案に関しましても、国立大学法人などが元本保証のない金融商品を運用しようとする場合には、事前に文科大臣の認定を受ける必要があります。この認定に当たっては、当該法人の資産運用の方針や資産運用の体制等が整備されていることを確認することとしております。

吉川(元)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、これはガバナンスの問題ではないと思います。ガバナンスがうまくいっていたとしてもリーマン・ショックのときには多額の損失が出ているわけで、やはり国立大学がこういった危険な、元本割れをする可能性のある商品に手を出すということは私はおかしいということを、このことを指摘させていただいて、質問を終わります。

谷川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

谷川委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。大平喜信君。

大平委員 私は、日本共産党を代表して、国立大学法人法の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論します。

 本法案は、安倍政権が掲げる経済の成長戦略の一環として、企業の投資対象として魅力的な、グローバルな競争力を有する国立大学をつくり出すことが目的です。

 本法案で創設される指定国立大学法人制度で、文部科学省が、指定された国立大学に、特定の研究分野で海外の大学をモデルとした目標の設定を迫り、大学運営全体において、その分野を支える体制の構築、外部資金獲得や産学連携に駆り立てることとなり、その他の学問、研究分野の切り捨てにつながりかねません。

 そもそも、大学のあり方、目標の策定は大学みずからが自主的、自律的に決定すべきもので、法律で世界最高水準の海外の大学をモデルにするなどと規定すべきではありません。本法案により、大学運営全般にわたり、今まで以上に文部科学省の関与が強化され、大学の自主性、自律性がないがしろにされます。

 既に政府は、今年度からの第三期中期目標期間から、国立大学を、地域貢献、特色ある分野の教育研究推進、海外大学と伍する教育研究推進の三類型に分け、基盤的経費である運営費交付金の重点配分を始め、大学間競争を促進しています。指定国立大学を、政府、財界・大企業言いなりの大学のトップランナーにして、高等教育全体を産業競争力強化、企業の稼ぐ力を高めることに従属させるもので、容認できません。

 本法案は、国立大学の資産運用の規制を緩和することで自己収入を増加させようとしています。昨年十一月の財政審建議では、国立大学について、「民間資金の導入などを進め、今よりも国費に頼らずに自らの収益で経営する力を強化していくことが必要」と述べており、今後、運営費交付金の削減につながる可能性があります。この間の運営費交付金の削減で、人件費や基盤的教育研究費に深刻な影響が及び、国立大学としての機能を維持することが困難な状況にあります。地方の国立大学の切り捨てにもつながりかねません。

 国が行うべきは、法人化以降減り続けてきた運営費交付金の抜本的増額です。財政基盤を大学みずからに確保させることは国の高等教育に対する責任を放棄するもので、容認できないことを申し上げ、討論とします。

谷川委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 国立大学法人法の一部改正案に対し、反対の立場で討論を行います。

 国立大学の教育研究水準の引き上げを目指すことについては何ら反対するものではありません。そのためには、公的な財政支出による大学の安定的な財政基盤の確保、さらには学生が安心して教育研究に携わることができる環境整備こそ問われていると考えます。

 しかし、本法案の柱は、世界最高水準の教育研究活動が見込める大学を指定国立大学法人として指定できるようにすること、さらには、国立大学法人の土地、金融商品の運用規制を緩和することが主眼となっており、この間大幅に減額されてきた運営費交付金等の増額を図るスキームになっていないことは大きな問題だと考えます。

 その上で、本法案に反対する第一の理由は、指定国立大学法人が制度化されることにより、大学の序列化を招き、過度な競争を助長しかねない点です。

 また、現時点において、スタートアップ経費以外、指定国立大学法人に対する財政支援は検討されていないということですが、今後、何らかの形で財政面での大学間格差が拡大しかねない点も懸念材料です。

 反対の第二の理由は、改正によって、余裕金の認定特例として、元本割れの可能性を持つ金融商品の保有まで認める点です。

 かつて、リーマン・ショックの影響で、少なくない私立大学が多額の損失を計上しました。国立大学法人が資産運用に走ること自体好ましいことではなく、さらに、損失を計上した場合、学生や保護者、さらには運営費交付金の原資を負担する納税者に対する責任は重大です。しかし、損失計上した際の責任の明確化やリスク資産の保有状況の公開のあり方などが本法案には盛り込まれていません。

 以上の理由から、本法案に反対します。

 最後になりますが、OECD加盟国において、日本の高等教育費に占める公的財政支出の割合は最低水準にあります。国立大学法人の安定的な財政基盤を整備し、学生、保護者の自己負担割合をOECD水準並みに引き下げるため、馳大臣以下文科省が予算確保に尽力されることを求め、討論といたします。

谷川委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

谷川委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、国立大学法人法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

谷川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

谷川委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、青山周平君外五名から、自由民主党、民進党・無所属クラブ、公明党、おおさか維新の会及び松本剛明君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。青山周平君。

青山委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 指定国立大学法人の指定に当たっては、申請から指定に至る過程を広く国民に明らかにするなど、公正性及び透明性を確保すること。また、国立大学法人評価委員会における評価に当たっては、世界最高水準の教育研究活動を評価するための基準を明らかにするとともに、国立大学法人評価委員会の外国人の委員の選任基準等についても明確化・透明化すること。

 二 指定国立大学法人が、世界最高水準の教育研究活動を展開できるよう、他の施策とも連携を図り、その環境整備を行うこと。特に、国際的に評価される人材を育成し、また、そのような人材を獲得するために教育・研究条件の整備を図るよう、積極的な支援を行うこと。

 三 指定国立大学法人制度が、卓越した教育研究活動を展開することで我が国の学術研究と人材育成を牽引する国立大学法人の形成を図るための制度であることに鑑み、指定国立大学法人と指定を受けない国立大学法人との間において、将来的に教育研究環境や財務基盤に著しい格差が生じることのないよう配慮すること。

 四 余裕金の運用対象範囲の拡大に伴い、資産が毀損するリスクが増大するおそれがあることに鑑み、運用を安全に行う体制が整えられていることを十分に確認すること。また、余裕金の運用等によって自己収入が増加した場合、国立大学法人運営費交付金の減額等により、国立大学法人等の財務基盤強化の意欲が削がれることのないよう留意すること。

 五 地域のニーズに応じた人材育成や、地域社会の課題解決への貢献等、各地域において国立大学が果たしている役割の重要性に鑑み、産学官の連携や大学間ネットワークの構築等、その機能強化に向けた取組に対し、積極的な支援を行うこと。

 六 大学改革を進めるに当たっては、国立大学のみならず、高等教育全体のグランドデザインを示し、国民的コンセンサスが得られるよう努めること。

 七 国のGDPに比した高等教育への公的財政支出が、OECD諸国中、最低水準であることに留意し、基盤的経費である国立大学法人運営費交付金を始め、高等教育に係る予算の拡充に努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

谷川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

谷川委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。馳文部科学大臣。

馳国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいります。

    ―――――――――――――

谷川委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

谷川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十六分散会


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