衆議院

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第6号 平成13年3月23日(金曜日)

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平成十三年三月二十三日(金曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 森  英介君

   理事 吉田 幸弘君 理事 大石 正光君

   理事 鍵田 節哉君 理事 福島  豊君

   理事 佐藤 公治君

      赤城 徳彦君    遠藤 武彦君

      大野 松茂君    奥山 茂彦君

      上川 陽子君    鴨下 一郎君

      木村 義雄君    北村 誠吾君

      熊代 昭彦君    田中眞紀子君

      田村 憲久君    竹下  亘君

      西川 京子君    林 省之介君

      松島みどり君    三ッ林隆志君

      宮腰 光寛君    宮澤 洋一君

      吉野 正芳君    家西  悟君

      大島  敦君    加藤 公一君

      金田 誠一君    釘宮  磐君

      古川 元久君    細野 豪志君

      松本 剛明君    三井 辨雄君

      水島 広子君    山井 和則君

      青山 二三君    江田 康幸君

      樋高  剛君    小沢 和秋君

      木島日出夫君    阿部 知子君

      金子 哲夫君    中川 智子君

      小池百合子君    川田 悦子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      増田 敏男君

   厚生労働大臣政務官    奥山 茂彦君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長

   )            日比  徹君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  田村 憲久君     大野 松茂君

  森山 眞弓君     赤城 徳彦君

  古川 元久君     松本 剛明君

  三井 辨雄君     細野 豪志君

  中川 智子君     金子 哲夫君

同日

 辞任         補欠選任

  赤城 徳彦君     森山 眞弓君

  大野 松茂君     田村 憲久君

  細野 豪志君     三井 辨雄君

  松本 剛明君     古川 元久君

  金子 哲夫君     中川 智子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)

 経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第三一号)




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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省労働基準局長日比徹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。よろしくお願いいたします。

 我が国は、経済力で見れば既に世界のトップクラスに達しておりますが、必ずしもこれが国民一人一人の生活の豊かさ、その実感にはつながっていないかと存じます。この最も大きな理由の一つが、労働時間が長く生活のゆとりが感じられない、そういうことであるかと思います。

 労働時間、特に所定外の労働時間短縮の意義につきましては、これまで中央労働基準審議会でも指摘されておりますとおり、創造的自由時間の確保や、家庭生活を充実させ、さらに社会参加を促進させる、また健康と創造性を確保し、勤労者の働きやすい職場環境づくりなど、大変に重要な要素がございます。

 さらに、これに加えて、我が国は世界に類例を見ないスピードで少子高齢化が進んでおります。このまま進めば、経済や社会保障制度の維持に重大な影響を及ぼすことになってまいります。この総合的少子化対策として、我が公明党も、児童手当の拡充や保育所の完備、さらにはファミリーサポートセンターの設置、育児休業手当の拡充、奨学金制度の拡充等々と、総合的に取り組んできたところでございますが、これからは、働く男女が協力して子育てを行えるためにも、仕事と家庭の両立ができる適正な労働時間の確保がますます重要になってくるかと考えております。

 このような労働時間短縮促進の持つ意義を指摘した上で、本法の改正について幾つか質問させていただきます。

 まず、政府の労働時間短縮の目標であります年間総実労働時間千八百時間は、いまだ達成されていないという現状でございますが、この達成できなかった原因は何なのか、また、今後何を重点として取り組むべきと考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。

増田副大臣 お答えをいたします。

 労働時間の短縮については、労使による真摯な努力とこれに対する行政の指導援助により年間総実労働時間は減少しているものの、ただいま御発言がありましたように、政府目標である年間総実労働時間千八百時間は依然として未達成の状況にあります。

 これまで、週休二日制の普及促進については一定の成果が見られるものの、年次有給休暇の取得や時間外労働の削減については十分な成果が上がっていないことから、今後、時短促進法に基づき、年次有給休暇の取得促進と所定外労働の削減に重点を置いて施策を講じてまいりたいと思います。

江田委員 今お答えいただきましたように、今後の重要な点は年次有給休暇の取得促進と所定外労働の削減にあるということでございました。

 では、この年次有給休暇の取得促進につきましては、現在の労働時間短縮推進計画でも触れられているところであるかと思いますが、今後どのような取り組みを行っていかれるでしょうか。

日比政府参考人 年次有給休暇の取得促進につきましては、年休の計画的付与制度の活用が有効であると考えております。このため、今後は、年次有給休暇の計画的付与に取り組む中小企業事業主に対しまして、研修や診断サービス、さらには助成を行うとともに、長期休暇の導入に取り組む中小企業への助成なども行うこととしておりまして、これらを通じまして年次有給休暇の取得促進を図ってまいることといたしております。

江田委員 長期休暇の導入に取り組む中小企業への助成ということが今ございましたが、具体的にはどのように取り組まれるおつもりでしょうか。

日比政府参考人 長期休暇の点につきましては、非常に大きなものとして考えておりますのが、中小企業長期休暇制度モデル企業助成金というもの、これを予定いたしております。

 これは、長期休暇制度の実施というのは、やはり中小企業の場合にはいろいろな仕組み上の工夫等も行うことが必要でございますので、先行して長期休暇制度の円滑な導入あるいは有効活用のための取り組みを行うモデル企業というものを設定させていただきまして、一企業当たり百五十万円から五百万円程度、いろいろな形で、コンサルタントの活用措置や代替要員の雇い入れ等に要する経費等、モデル企業的にまずやっていただく、そしてその成果を他の中小企業にも広げていきたいというようなことを中心に考えております。

江田委員 それでは、所定外労働の削減につきましてはどのような取り組みになっておりますでしょうか。

日比政府参考人 所定外労働の削減でございますが、これまでは、平成三年八月に策定いたしました所定外労働削減要綱によりまして、所定外労働の削減に向けての労使の取り組みを促進してきたところでございますが、今後ともこの要綱の普及啓発に努めることといたしております。

 特に、その要綱にも盛り込まれております事項の中で、フレックスタイム制などの活用につきましては、事業の実情に応じまして、その制度の導入によって所定外労働が削減できる場合も多々あると思われますので、こうしたフレックスタイム制度というような制度面の対応も促進してまいりたい。

 また、労働基準法に基づきます時間外労働の限度基準というものが現在設定されておりますが、この基準が労使に遵守されますよう指導するというようなことによりまして、時間外労働の削減に努めてまいりたいと考えております。

江田委員 では、その所定外労働の削減のためには、もう一つ、中央労働基準審議会等の中でも論議されたことだとは思いますが、割り増し賃金率を上げることが有効であるというような意見もあると聞いております。これについてはどのようにお考えになられますでしょうか。

日比政府参考人 時間外労働の割り増し賃金率についてでございますが、この点につきましては、平成十二年十一月の中央労働基準審議会の建議におきまして、「割増率の現状にかんがみると、当面現行の水準を維持し、一定期間経過後」「見直しの必要性について検討することが適当である。」とされたところでございます。

 厚生労働省といたしましては、ただいま申し上げました建議を踏まえまして、今後適切に対処してまいりたいと考えております。

江田委員 厚生労働省では、サービス残業の解消のために通達を出される予定だということを聞いておりますが、この通達の内容はどういう内容で、今後その通達に基づいてどのような取り組みが行われていくのか、お聞きしたいと思います。

日比政府参考人 ただいまお話ございましたように、サービス残業に関しまして、近々通達を出すことを予定いたしております。

 サービス残業というものを解消するためには、労働時間が正確に把握されることがまずは必要であると考えております。現在の労働基準法の前提といたしまして、使用者は労働時間を適正に管理する義務を負っている、これが基本的な考え方でございますので、その点から、昨年十一月の中央労働基準審議会の建議も踏まえまして、働く方々個々人の始業、終業時刻の把握に関しまして事業主が講ずべき措置というものを明らかにする。その内容としましては、タイムカードやICカードの適切な利用などによる労働時間の把握の方法などをお示しする。そういう通達を発出することといたしております。

 近々予定いたしておりますが、今後におきましては、発出いたしました通達の周知あるいは遵守のために、適切な指導を行ってまいる予定でございます。

江田委員 サービス残業の解消のためということに関連して、これはちょっと通告をしておりませんが、この関連の質問ということでさせていただきます。

 使用者は労働時間を適正に管理する義務を負っている、その適正に管理する一つには、個々人の始業、終業時刻の把握であるということを今申されました。これは基本中の基本で当たり前のことだと思うんですが、それ以外に、もっと細かく、経営者側並びに労働者側に対する指導内容をどのように考えられているか、そこのところをお聞かせいただければと思います。

日比政府参考人 使用者あるいは労働者に対する具体的な内容等でございますが、これにつきましては、現在、通達内容として予定しておりますのは、先ほど申し上げた点のほかといいますか、それをもう少し砕いた言い方等も含めましてでございますが、いわゆるサービス残業につきまして非常に大きく問題となるケースといたしまして、例えばフレックスタイム制というものをやっている場合に、労働時間につきましていわゆる自主申告制による場合もございます。そういう場合につきまして、これは一例で申し上げますが、自己申告制を導入する前に、事業主としては、その対象となる労働者に対して、その自己申告の行い方といいますか、そういう点について具体的に説明を行うこととか、そのような具体的な措置の面も実は書き込んでおります。

 また、労働者の方々につきましては、その裏返しともなりますが、自主申告については、当然行うべきことはきちんと行う。きちんとといいますのは、労働時間の把握ということになりますと第一義的には事業主の責任ではございますが、問題となりますのは、労働者と事業主の間で意見が不一致といいますか、働いた時間についていろいろと問題となるということでございますので、通達ではその点も具体的に注意していただきたいことも今盛り込んでおりますし、さらに、先ほども申し上げましたが、この通達を発出した後に、いろいろな形で実地にも企業の中に入ることもございましょうし、指導の過程でいろいろ得られた情報というものをさらに指導にも用いていくというような形で考えております。

江田委員 私も昨年までは研究開発職というところをやっておりましたので、それを含めるホワイトカラー層の労働時間の管理というのは非常に難しいということはよく存じております。そういうホワイトカラーの残業の削減等について、今おっしゃいましたように、それを着実に経営並びに労働者側に通達の中で具体的に指導を行っていくということが非常に大事だと思いますし、通達を出した後に立ち入りもして調査も行う、また指導をそれによってするということ、こういうサイクルが非常に大事かと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 サービス残業について、もう一つでございますが、これは労働基準法違反であることは周知のことでございます。これに対する厳正な対応というものに関してはどのように考えられているか、御所見をお願いいたします。

日比政府参考人 いわゆるサービス残業につきましては、その多くは割り増し賃金の未払いということでございまして、それは当然のことながら、労働基準法違反でございます。今後とも的確な監督指導を実施いたしまして、その是正に努めてまいる所存でございます。

江田委員 時間がなくなってまいりましたので、最後に、労働時間短縮に向けました労働大臣の決意を伺って、終わりたいと思います。よろしくお願いします。

坂口国務大臣 千八百時間を目指してきたわけでございますが、残念ながら、そこがまだ達成される状況にございません。一刻も早くそういう状況にしなきゃならないわけでございますから、さらに労使ともにやはりいろいろと御検討をいただかなければならないというふうに思っておりますし、また、厚生労働省といたしましても指導監督を強化していかなければならないというふうに思います。

 いずれにいたしましても、働くときにはしっかり働く、しかし休みをとるときにはしっかり休んでいただいてリフレッシュをしていただくということが大事でございますし、また、最近はそうした休みの時間、休暇をとっていただきましたその時間を利用して、いろいろのボランティア活動でありますとか、さまざまな個人の活動も増加をしてきているわけでございますから、そうした豊かな生活をしていただくという面におきましても大変大事なことであるというふうに思っております。

 限られた時間の中でより質の高い労働をしていただくようにする、その一方において勤労者の生活をより豊かにしていただく、双方を確立するために大変大事なことであるというふうに思っておりますので、そのことを踏まえてこれから努力をしたいと考えているところでございます。

 おくれて参りまして、申しわけありませんでした。

江田委員 時間になりました。どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、鍵田節哉君。

鍵田委員 民主党・無所属クラブの鍵田でございます。

 私は、坂口厚生労働大臣に直接お会いしてお話しする機会が、細川内閣のときにたしか大阪に来ていただきましたときに、勤労者を代表する立場で、その一員としてお会いした記憶がございまして、本当に一日も早くまたそういうお立場になっていただきたいなというふうに待望していたものでございます。従来から、大臣というのは本当に何か粗製乱造で、久しぶりに本格的な厚生労働大臣が誕生したのではないかというふうに喜んでおる一人でございまして、そういう意味では、これからの御活躍を大いに期待したいというふうに思っておる次第でございます。

 しかし、大変厳しい政局の中でございますし、いろいろな事件もございまして、大臣には大変御苦労なことだと思いますし、またお気の毒と言うのがいいのかどうかわかりませんが、そういうふうな面もあります。そういうことで、なかなか自分のお考えをストレートに出すということもできない面もあるのかもわかりませんけれども、できるだけ、私は政治家としての坂口厚生労働大臣といろいろ考え方についてお聞きをしたいというふうに思っておりますので、きょうは政府参考人の指名もしておりません。私自身も長年勤労者の一員として働いてきた経験から本音のところを話をさせていただきたいと思っておりますので、ひとつ大臣の本音のところの話を聞かせていただければ幸いだというふうに思っておる次第でございます。

 それでは、具体的に、時短促進法につきましての今回の法案の内容につきましてお聞きをしていきたいというふうに思っておるわけでございます。

 この時短促進法というのは、昭和六十三年の五月に出されました政府の経済計画、「世界とともに生きる日本」というタイトルで出されました経済計画で、平成四年までに年間総実労働時間を千八百時間にする、こういう目標を立てられて始まったわけでございますけれども、実際はその達成が非常に厳しくて、平成四年でしたか、この時短促進法が制定をされた、こういう実態があるわけでございます。それから十三年ほど経過をしておるわけでございますけれども、今回、時短促進法そのものを単純に延長する、こういう法律でございます。

 この時短促進法によりまして、確かに統計上は労働時間は減ってきております。例えば、労働省からいただいた数字でいきますと、平成四年で総実労働時間が千九百六十八時間であったわけでありますけれども、十一年には千八百四十六時間と百数十時間減少をしておりますし、また所定労働時間も千八百四十六時間から千七百三十時間ということで、この時短促進法の法的な効果というものもやはり確かに出ておるのではないかというふうには思っておる次第でございます。

 しかし、一概にそれを喜んでおるというわけにはまいらないという数字もございます。例えば、一般労働者の総実労働時間につきましては、平成五年ぐらいからの資料しかありませんが、二千六時間から千九百九十時間ということで、総実労働時間が十数時間しか短縮をされておりませんし、千八百時間にはほど遠い数字でございます。所定内労働時間にしましても、千八百時間を超えておるというふうな実態でございます。

 先ほど言いました厚生省からいただいた毎勤統計の数字は、パート労働者とか短時間労働者も含めた数字で、非常に時短が進んだようになっておるわけでございますが、パートタイム労働者については確かに平成十一年度でも年間千百五十時間ということでございますからかなり短いわけでございますが、これはそういう働き方の労働者であるわけですから、これをトータルいたしますと先ほどのような数字で時短が進んでおるように見えるわけでございますが、一般の労働者の労働時間は相変わらずやはり長時間にわたっておるという実態があるわけでございます。

 そういうことを考えましたときに、この千八百時間という目標を、累次の経済計画で出されて、これを国際公約のようにされてきておるわけであります。私たちは、労働時間というのは、先ほども大臣がおっしゃったように、やはり個人個人が豊かな生活を享受できる、そういうこともあり、そして充実した人生を送るためにも、労働時間というのは短縮をされる、そして自己実現も十分できていく、さらには家庭との両立、一時期は父親を家庭に返せというふうなことを言われた時代もありましたけれども、私は、今は女性も男性も家庭に帰る、いわゆる家庭との両立ということも大変重要な時短の意義があるのではなかろうかというふうにも思っております。

 さらには、国際的な公正競争、こういうふうな意味からいきましても、やはり日本の場合にはまだまだ労働時間が長いわけでございます。やはり労働時間法制というのは、国際的な競争、公正競争のスタート台としての意義があるんではないかというふうにも思っておるわけでございます。

 そういうふうなことを考えていった場合に、我が国の労働時間短縮の取り組みの現状について大臣としてどのような認識を持たれており、そして国際公約でもあります年間総労働時間千八百時間をどのように達成されようとしておるのか。

 先ほども言いました短時間労働者も含めました総実労働時間という面から見ますと、ヨーロッパ諸国では既に千五百時間とか千六百時間とかいう時間にもなっておるわけでございます。そういう意味では日本の場合はまだ大変おくれておるという実態があるわけでございまして、その辺につきましての大臣のお考えをまずお聞きして、質問を始めていきたいと思っております。

坂口国務大臣 さまざまな角度からの御質問をいただきましたが、この千八百時間というのはなかなか、言うはやすくしてこれを実現するのは大変な数字であるというふうに私は思っております。

 現在、千八百四十八時間というふうに大分近づいてはきておりますけれども、しかし、これにはやはり現在の経済状況の影響というものもあるだろうというふうに思っております。もし仮に現在景気が非常によくて、非常に仕事量が多いような状況の中でもこれだけの数字が達成できているかどうかということを考えましたときに、やはり現在の景気状況というもの、産業の状況というものも、千八百四十八時間というふうに千八百時間に急に近づいてきたことの中には一つの影響する要因として含まれているのではないかという気がいたします。

 したがいまして、このままで景気がもしもよくなりましたならば、果たして現状の中でこの千八百時間というものが簡単に達成できるかどうかといいますと、私は、そこはちょっと疑問ではないかというふうに思っているわけでございます。

 国際的な状況のお話もされましたけれども、非常に日本の厳しい国際状況の中で、先進諸国の中でのいわゆる競争、同じスタートラインに立っての競争という意味では、それは先生御指摘のとおりだというふうに思いますが、いろいろの産業が開発途上国と競争をしなければならないような状況の中で、企業の側も大変厳しい環境に置かれておりますことも事実でございます。

 そうしたことも踏まえながら、これから就労時間、いわゆる時短というものを考えていかなければならないわけでございまして、よほど労使が話し合いを重ねて、そして、効率的にどう仕事をしていくか、いわゆる企業の仕事をしていくかということを、話し合いをやはりもっと深めていかなければならないんだろうというふうに思います。そして、そうした中で、やるときにはしっかりひとつやろう、効率よくやろう、しかし休めるようにするときにはしっかり休めるようにしようというようなことを、もう一歩やはり掘り下げてやっていかなければ、日本の企業は諸外国との競争になかなか勝つこともできないし、さりとて、働く人たちの働く時間を千八百時間以下にするということ、この約束も守らなければならないしということになるんではないかというふうに思っております。

 そうした中でありますから、例えば、ただ罰則を強化するとか指導監督を強化するというだけでは済まない側面がございます。とりわけ、中小企業の経営者の皆さん方とそこに働く皆さん方との間の話し合いというものを、やはり今までよりももう一歩深めていかなければならないんだろうというふうに思っております。

 統計的には、有給休暇などがとられていないというようなこともかなり影響していることが事実のようでございます。ですから、有給休暇等をどのようにとるかといったようなことにつきましてももう少し話し合いをしていくということが必要でございましょうし、そうしたことの積み重ねによって達成できるものであるというふうに思っておりますので、私は、役所の指導監督もさることながら、やはり現場における話し合いをどう進めていただくかということがより大事な今後の課題ではないかという認識を持っております。

鍵田委員 もちろん、この法律の目的というのは、労使が自主的に努力をして時間短縮を進めていくということを支援するための法律だというふうな部分もあるわけでございます。大臣がおっしゃったように、そういう自主的な努力も促していく、さらには、国際的な市場競争の中での中小企業に対する配慮ということもおありだということもよくわかります。私も中小企業の労使関係に長年かかわってきておりますから、中小企業を、法律を厳しくしてとにかく罰して犯罪人をたくさんつくればいいんだというふうな発想は毛頭ございません。

 ただし、後ほどまた時間があればお聞きをしたい、こう思っておるんですけれども、中小企業のあり方、日本の今まで持ってきた二重構造、こういうものをどのように払拭して、そして国際競争に勝っていく、そういう企業体質をつくっていくのかということを求めていくための施策はどういうものがあるのかということでいきますと、単に自主的な努力だけにまっておったのではいけないんじゃないか。やはりそこに行政がリーダーシップをとって、そしてそれらの行政を進めていくことが大切だというふうに思います。

 それで、この法案そのものが今度は延長されるということでありますが、二度目の延長になるわけでありまして、一回目のときも延長の際に私も質問をさせていただきました。それからもう間もなく五年になるわけでございます。

 この五年間に政府としてはどのような取り組みをされてきたのか、どういう問題点があるのかという認識でございますが、先ほども言いましたように、時間短縮そのものがまだまだおくれておるというふうな現状の中で、これをどのように進めていこうとしているのか。単なる延長ということじゃなしに、具体的な内容において、ではもっと一歩も二歩も進めるためにどういう施策をこれから行おうとしているのか。今までとってきたその効果なり、さらには、これからそれを見直してどのような政策を打ち出していこうとされるのか。

 また、その他のいろいろな施策も持っておられると思いますけれども、それらとの関連でこの時短促進法を実効あるものにするためにどのような取り組みをされるのか、お聞きをしたいと思います。

坂口国務大臣 総論的なことだけ申し上げて、後で具体的なことをちょっとまた補足してもらいたいというふうに思いますが、先ほど御指摘をいただきましたように、平成四年には千九百五十八時間でございましたものが、十一年には千八百四十八時間というふうに百十時間ばかり短縮したことは、数字の上では紛れもない事実でございます。

 十一年七月の「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」、これは閣議決定でございますが、ここによりますと、二〇一〇年までに「所定外労働の削減等による年間総実労働時間千八百時間の達成・定着」というふうに、「定着」となっているわけでございます。

 この改正案を成立させていただいた場合におきましては、新たに、労働時間短縮推進計画に基づきまして、平成十七年度、二〇〇五年度末までに千八百時間を達成すべき計画を作成するということでございます。

 ですから、二〇一〇年と言っていますけれどもそうは言っておれませんので、もう延長はしない、今回お願いしたこの延長の中でもう決着をするんだという決意がやはり必要だというふうに思いますし、先ほど御指摘をいただきましたとおり、労使の問題ではあるけれども、しかしそれにはやはり国も手を差し伸べなければならない、そのとおりでございまして、どういうふうにその手を差し伸べていくかという具体的な問題もここで提起をさらにしていかなければならないというふうに思っているところでございます。

 現在、諸法案、出させていただいております中にも一部含まれておりますけれども、それだけではなくて、もう少しまた、これから一段と掘り下げた内容のものもつくっていかなければならないんだろうというふうに思います。

 より具体的な問題をちょっと答弁させていただきますようお願いいたします。

増田副大臣 少し具体的なことを幾つかお答え申し上げたいと思いますが、先生のお話を聞いておりまして、広い視野で時代をよく認識しながら、しかもいろいろと具体的な御質疑をいただいている、このように理解をいたしました。

 そこで、その上に立ってお答えを申し上げるのですが、具体的には、週休二日制の普及の促進については一定の成果が見られるというものの、年次有給休暇の取得や時間外労働の削減については十分な成果が上がっておりません。そういうことから、今後、時短促進法に基づきまして、年次有給休暇の取得促進と所定外労働の削減に重点を置いていきたい、このように考えております。

 十三年度の新規事業といたしまして、まず、特に長期休暇制度の早期導入への取り組みを図っていきたい、それがために具体的に幾つかあるんですけれども。それから、労働時間制度改善の支援事業を実施していきたい。これが十三年度の事業として実は予算化されております。具体的に申し上げますと、労働時間の短縮に向けたフレックスタイム制の導入等に取り組む事業主に対しまして、研修、診断サービス、外部の専門家から助言指導を受けた際の費用の助成等も実施をしていきたい、こういう取り組みをしていきたい、このように思います。

 一生懸命頑張りますので、よろしく御支援ください。

鍵田委員 年休なり所定外の削減の問題については後ほどまたお聞きをしたいというふうには思っておりますが、今までに取り組んでこられたことで、所定労働時間の短縮、いわゆる週休二日制の週四十時間制を法制化した以外の成果というのは、今言われたようなことをいろいろやられてきていると思うんですよ、ところが実際にはその実効が余り上がっておらないために今日の実態になっておるということから私は質問をさせていただいておるわけでございまして、それらにつきましてはまた後ほどお聞きをしたいというふうに思います。

 大臣の方で、二〇〇五年末までには千八百時間を達成するためにというふうにおっしゃっていただいたので、かなり覚悟を決めてやっていただいているんだなというふうには思うわけでございますけれども、ちょっとそこらのところが、今までの法律を制定したりまた延長したりするときのお話と、そういう過去の実績と、これからの推移がどうなるのかということを考えたときに、若干懸念があるわけでございます。

 年間総実労働時間千八百時間というものが企画されてからも既に十三年ほどになるわけでございますが、それがまだ、一般労働者が非常に長時間で推移しておる。たまたま短時間労働者がふえてきたために全体のグロスの総実労働時間は短縮されておるけれども、確かに、これからもまだ短時間労働が増加する、そういう傾向はないとは言えないわけでございますから、そうなると自動的に総実労働時間は短縮されるでしょうけれども、しかしそれでは逆に全体の働き方としていろいろ問題があるわけでございますから、やはり一般の労働者がもっと時間短縮されるような施策こそ必要なわけでございます。

 この法案の延長の結論を出す中央労働基準審議会におきましていろいろ議論したときには、経営者の一部からもこの延長に対して懸念を表明された人があったというふうにも聞いておるわけでございます。私は、もう今はここにこうしてかかっておるわけですから、今さら反対と言うわけにもいかないでしょうし、まあ延長ということはやむを得ないのかなというふうに思っておるんですが、しかし、先ほど大臣がおっしゃっていただいたように、次の延長はないんだということを本当に担保するためのいろいろな施策を具体的に推進していただきたい。

 そこで、私が心配していますのは、例えばお役所の皆さんにしましても、上の方の人は大体二、三年でかわっていくわけですから、五年先には今ここで約束した人がどこへ行ったかわからないというような実態もあるわけで、その人に責任を問うわけにもいかない。大臣も、本格的な大臣でありますから私は大変期待をしておるんですけれども、昨年の臨時国会のときには、いや私は年末までの大臣だとおっしゃった大臣もいましたので、そういうことを考えますと、大臣にも、追っかけていって、これはこう言ったけれども責任はと言うわけにはいかないという部分もあるわけでございます。

 それが非常に、今の行政と政治のシステムの中で、五年たっても十年たってもそれが実現しなくてもアイ・ドント・ノーという世界であるというふうに考えますと、私は、やはりもう少し責任ある体制をぜひともつくっていただきたい。そういう継続性というんですか、行政なりまた政治の継続性、こういうものをひとつぜひとも守っていただきたい。

 そういう意味で、もう一度大臣の方のお覚悟をひとつお聞かせいただきたいというふうに改めてお願いいたします。

坂口国務大臣 確かに、ここに座っております者が五年後に座っておるかと言われましたら、座っていないわけでございまして、中には座っている人もあるかもわかりませんが、私がいないことだけは間違いがないわけでございますから、これはやはり、おっしゃいますように、継続をしていくように、そのことが後も担保されていくようにどうしていくかということなんだろうというふうに思います。ですから、全体のシステムをどう変えていくかということをやはりこれからやっていかないといけないんだろうと思います。

 それは、私のこの未熟な頭の中だけで考えていますことだけではいけないので、専門家の皆さん方、実際に企業をおやりになっている方、あるいはまた実際に労働組合の中でいろいろと御苦労をなさった皆さん方の御意見もやはり聞きながら、実践できないことを何ぼ言ってもいけませんので、実践できる、実現できるシステム改革というのは何なのかということをひとつお話し合いをいただいて、そのシステム改革のプログラムをつくって、今後、一年目二年目というふうに重ねていって、年々歳々、この千八百時間を達成できるようにしていくという段取りがやはり大事なんだろうと思います。

 そういうことをこれからやっていかなければならないというふうに思いますし、そのためには、労働問題だけではなくて、やはりもう少し広い経済全体の中で考えていかなければならないこともございますし、そうした問題も含めてこれから取り組んでいくということにしたいと思っております。

 ではそれを、いつ幾日どんな委員会を立ち上げてどうするんだというふうに詰められますと、まだそこまで詰めておりませんけれども、これからそういうふうに御指摘をいただいたことを実現する、その機構づくりというものをちゃんとしていくことが大事ではないか。そのことが、次から次へとバトンタッチをしますときに、リレーじゃございませんけれども、バトンがきちっと渡されていくのではないかというふうに思います。

鍵田委員 ありがとうございます。大変言いにくいことを言ってしまいましたし、大臣もそれを率直に受けてお答えいただきましたことに感謝を申し上げておきます。

 では、具体的な内容につきまして若干これからお聞きをしていきたいというふうに思います。

 時短促進法の第四条には労働時間短縮推進計画というのがございますが、これには、例えば労働時間短縮の目標でありますとか、時間の短縮を推進するための事業主などに対する指導及び援助に関する事項、それから指導機関における指導援助などを行うに当たっての配慮すべき事項などが挙げられておるようでございますが、それらを、閣議決定をもちまして、政府一体となってこの時短に取り組んでいくということになっておるわけでございます。

 実際にそういうことでやってきたわけですが、私の方から言わせますと、それほどの実効が上がっておらないんじゃないか。さらに、次の再延長はない、そういう覚悟で進めていくということになりますと、今までの推進計画をさらに実効性あるものに見直していく必要があるのではないかというふうに思っております。

 内容にどういうものを盛り込もうとされておるのか、いつごろからどのようなスパンで進めようとされているのかということについて、今計画を既に持っておられたらお聞かせをいただきたいと思います。

増田副大臣 お答えを申し上げます。

 まず、運びですが、改正法案成立後、新たな労働時間短縮推進計画を策定するため、時短促進法に基づきまして、先生のお話のとおりであります、労働政策審議会にその案をお諮りする等の手続を経た後、閣議決定をすること、こういう運びになります。

 その際に、最新時点の労働時間の動向や、これまでの労働時間短縮の取り組みの成果を十分踏まえた計画とすることにより、実効性のあるものにしていきたい、このような考え方で取り組んでまいるつもりであります。

鍵田委員 ということは、まだ今のところはそれほど具体的に前進をした計画を持っておられないということだと思うんですが、今までの経験を踏まえて、実効性のあるものにぜひともしていただきたい、こういうことでお約束いただけますか。

増田副大臣 御発言にもございました平成九年の改正の例もありますので、それらを十分踏まえながら、実効性をしっかりと担保できるものはとらえて頑張っていきたい、こう思います。

 以上でございます。

鍵田委員 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 それでは、所定外労働時間の削減につきまして次にお聞きをしたいと思うんですが、所定外労働時間削減要綱の見直しの問題、これも同じように具体的な問題でございますが、所定外労働時間の短縮ということがやはり総労働時間を短縮していく上において大変重要でございます。そういうことを考えますと、これは労使双方がそういうことの認識を深めていく、こういうことも明記されておるわけでございますけれども、具体的にはその施策について余り言及されておりません。

 先ほど大臣の方からも、労使が自主的にそういうことを進めていく努力をするべきだというふうな言葉もございました。

 私も、労働組合の人に言わすと、おまえちょっと言い過ぎじゃないかとおしかりをいただくかもわかりませんが、もともとこれは、三六協定がなければいわゆる所定外労働はできないわけでございますから、後ほどお伺いします例の割り増し率の問題もそうですが、時間短縮をしようと思えば三六協定のときに短くすればいいわけでありましょうし、割り増し賃金も引き上げてくれなかったら、では、それだったらもう三六協定を結びませんよと言えば、そういうふうにできるように制度的にはなっているはずでございますけれども、現実にはそうはなっておらないというのは、労使の間でのそういう機運がまだ十分でないのかな、そのために行政としてはいろいろ御遠慮をされているのかなということも拝察できるわけでございます。

 労使というのは日本の場合には企業内の労使でございますから、他の企業なり他国の企業との競争というふうなこともありますから、そういうことにも配慮をしなくてはならないという側面もあるわけでございまして、そういうことを考えますと、やはりこれは行政において、そういう企業間競争というふうなものを配慮して、むしろ行政がリードをしていくというぐらいの削減要綱の強化というんですか、そういうものが必要なのではなかろうかと思っておるわけでございます。

 これを延長した場合に、審議会などにおいて要綱を実効性あるものにするための見直しを行う考えがおありかどうか。特に今は、ワークシェアリングというふうな観点からも時間外労働をできるだけ削減していく必要もある、そういう雇用情勢のもとでございますから、ぜひともリーダーシップを持ってこれらの見直しを図っていくというお考えがあるかどうか、そういうことについてお聞きをしたいと思います。

増田副大臣 お答え申し上げます。

 所定外労働の削減につきましては、これまで、平成三年八月に策定いたしました所定外労働削減要綱の周知啓発によりまして、労使の所定外労働の削減に向けての取り組みを促進してきたところであります。

 同要綱は、所定外労働の削減について個々の労使が取り組むべきよりどころとなるものでありますが、所定外労働時間数の推移を要綱が策定された平成三年度と十一年度とで比較しますと、百七十時間から百三十四時間へとかなりの減少が見られているところであります。一定の前進は見られている、このように考えます。

 同要綱については、今後ともその普及啓発に努めてまいりまして、今後、休日労働に関する部分を拡充することを予定いたしておりますほか、要綱に盛り込まれている事項のうち、フレックスタイム制等の普及促進やサービス残業への対応も図ること等により、その実効性を高めていきたい、このように考えます。よろしくお願いいたします。

鍵田委員 この要綱によりましてかなり所定外が短縮しているというお答えでありますけれども、ただ、一般労働者の総実労働時間が短縮されておらないというのは、やはり年休の取得率とこの所定外労働時間が長いということとの二つがあるというふうに思います。そういう面では、この二つの短縮を実現していくということは大変重要でございます。そういう意味で、さらに実効性のあるものにしていただくということが大切なのではないかというふうに思っております。

 次にサービス残業のことを、先ほどもお話に出ておりましたけれども、その問題について若干お聞きをしたいというふうに思っております。

 これはちょっと確認的なあれがありますのでお答えをいただきたいわけですけれども、大体、サービス残業というのはどういう性格だというふうにお考えなのか。そして、それは実際に認められているのかどうか。そして、違法性があるということであれば、その違法の場合の罰則がどうなっているのかということについて明確にしていただきたいのでございます。

増田副大臣 いわゆるサービス残業につきましては、その多くは、労働基準法第三十七条に定める割り増し賃金の全部または一部が支払われていない違法なものと考えております。なお、労働基準法第三十七条の違反があった場合は、六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金が科せられる、このようになっております。

 サービス残業をどう考え、どうとらえているか。いわゆるサービス残業の多くは、法定労働時間を超えて労働させたにもかかわらず、労働基準法第三十七条で定められている割り増し賃金の全部または一部が支払われていない違法なものであると考えております。ただいまお答え申し上げたとおりでありますが、これに該当するもの、例等もありますけれども、罰則は前にお答えしたとおりであります。

鍵田委員 ありがとうございます。一応お答えをしていただきましたので、違法であるということが明らかになったわけでございます。もともと明らかなんですが、こういう公の場で明らかにしていただきましたので。

 しかし、それだけの罰則もあり、違法だということがわかっておりながら、現実にサービス残業がたくさん横行しておるという実態があるわけでございます。結局それが新規雇用の増加という面で非常に阻害要因になっておるということでございまして、新規雇用に頼らずにサービス残業で仕事をこなす、こういうことになっておるわけでございまして、これはやはり、現在の雇用情勢という面から見ましてもゆゆしき問題であると思います。

 大体御承知だというふうに思いますが、こういうサービス残業が行われております産業とか業種というのは、ある程度偏っておるわけですね。製造業などでは余り見かけない。しかし、例えば金融、保険、サービス業、流通業、こういうふうなところにかなり偏りがございます。これは労働組合、連合が調査したものを私ちょうだいしたんですけれども、これなんかでも非常に大きな偏りがあります。

 それで、それでは全部ないのか、ほかの産業はないのかというと、やはり若干ではあるけれども存在をしておる。しかし、大きな偏りがある。こういうこともあるわけでございますので、これは、どういう監督行政を行っていくのかということにつきまして、やはりそれなりの工夫をしていただかないといかぬのじゃないか。

 全部の事業所をシラミつぶしに調べていったら日本じゅうに監督官が要るということになるわけでございますから、そうはいかないでしょうから、やはり重点的なそういう産業に対しての監督ということがあってもいいんじゃないかなというふうに思うわけでございますけれども、そういう重点的な監督をするということと、悪質なところについては、単に告発するだけじゃなしに、その企業名を公表するぐらいの強硬手段も必要なんじゃないかというふうに思うわけですけれども、その辺についていかがでしょうか。

坂口国務大臣 確かに、サービス残業のところというのは偏っているんではないかというふうに私も思います。どちらかといいますと、いわゆる第三次産業と言われております分野、こうしたところに非常に多いことだけは事実だというふうに思います。本来やはりその仕事が、どこまでがこの仕事の範囲でどこからが違うのかということが製造業などのように明確でないことは事実だと思いますが、それにいたしましても、それをいいことにしてすべて当然だということに今までしてきたところに問題があるのではないかというふうに思います。

 平成十二年十一月の中央労働基準審議会の建議におきましてサービス残業の解消について書いているわけでございますが、始業、終業の時刻の把握について、事業主が講ずべき措置を明らかにした上で適切な指導を行うなど所要の措置を講ずることが適当である、こうここでは書いている。

 今まで、事業主が講ずべき措置として厚生労働省、旧労働省がとってきましたのは、タイムカードやICカードの適切な利用などの方法を示しますとともに、適切な指導を行うこととする通達を出すこともこれからやりたいというようなことでございます。

 また、タイムカードやICカードの利用の仕方も、もうこれは委員御承知のとおりでございますけれども、タイムカードが置かれているからそこから仕事がスタートなのかどうかという議論もまたあるわけでございまして、これも必ずしも、タイムカードが押されているから、ICカードに記録されているからその間がすべて労働時間というふうに言えるかどうかという問題も生じてくることもございますけれども、一つの目安になることだけは間違いがないわけでございますので、そうしたことをきちんとまず基礎的なこととしてやっていく、そういう指導監督というものもこれから徹底していかなければならないんだろうというふうに思っております。

 特に悪質な事業主について、司法処分も含めて厳正に対処するということも我々は考えておりますが、しかし、そういうことがないようにどうしたらいいかということを考えるのがまず行政の仕事であろう。しかし、何度言っても、どれほど言っても聞かないというようなところがあれば、それはそれなりの処分をせざるを得ないというふうに思っております。

鍵田委員 これは、全く架空のことであれば単なる議論だけで済むんですが、現実に行われておるわけでして。何十時間というサービス残業。サービス残業といったって、何かただのんべんだらりと職場におるだけで仕事なのか雑談しておるだけなのかというふうな、本当に境目がもう一つ明確でないという場合もあるのかもわかりませんが、現実に正味労働しておるにもかかわらず賃金が出ないというふうなことが大企業のそういう産業の中で起こっておるということも私は仄聞をしておるわけでございます。

 そういうことが現実にあるという実態を踏まえて、ぜひとも監督を強化し、そういう悪質なものについてはやはり強硬な手段で防止するということをやっていただかないと、これは本当に、過労死が出たりなんかしてから対策を立ててももう遅いわけでございます。そういう意味でも、ぜひともお願いを申し上げておきたいと思います。

 次に、割り増し賃金の問題。前回も実は私は議論をしたわけでございますけれども、大企業などでは若干、通常の割り増し賃金などでも引き上げられた、法では二割五分が三割になったり三割五分ぐらいまで引き上げられたりというふうな実態もあるわけですけれども、特に中小企業などでは非常にそういう取り組みがおくれておる。

 これは、労働組合の組織率が低い。したがって、労働組合もないというようなところでは余りそういう取り組みもされておらないということですから、なかなかこれは進まないわけでございますが、経営者としては、いや、うちはそのぐらい割り増しを出しても構わないよ、四割でも五割でも別に出しても構わないよ、しかし、同業他社も同じように右へ倣えしてくれるのならいいけれどもと。

 考えてみたら、新しく人を雇うと、今雇っている人が残業する、いわゆる時間外労働する五割増し、六割増しの人件費がやはり必要なわけです。人を一人雇いますと、やはりボーナスも要りますし、そのほか社会保険料の負担とかそういうふうなものも考えますとそのぐらい必要なわけですから、二割五分で一人雇ったと同じ効果を得られるとするならば、非常に安上がりの労働になるわけでありますから、ついつい、仕事の繁閑も考えますと、忙しいときは所定外労働をちょっとやってくれよということで済ませてしまう。働く者も、若干でも割り増しがあって、所定の時間だけの賃金よりも余分にもらえればローンの支払いもできるしというふうなことで、ついついそのままで働いてしまうというふうなことも実際起こっておるわけでございます。

 割り増し賃金の国際比較というのはいつも言われているんですが、東南アジア諸国の国でも非常に高いところがあるわけですし、そういう国の方が多いわけですね。私も皆一々そういう数字は示しませんが、よく御承知だと思います。

 ただ、よく言われるのは、割り増し賃金を議論いたしますと、やはり中小企業が国際的な競争をしていく上において、それだけ人件費が上がるということについては、非常に苦しくなるから、中小企業に配慮をして、本当にもっと普及率が高くなってからでないと引き上げができないということでずっと推移をしてきているわけでございます。審議会などでもいつも議論しておりますが、そのようなことで現在まで推移をしてきておるわけでございます。

 しかし、できるだけ所定外労働を抑制する、そういう効果を考えた場合に、やはり通常の時間外で五割増し、休日出勤なら十割増しぐらいの割り増しをとっておるところが先進諸国では常識でありますし、それに近い数字を東南アジア諸国でも既にもう実施しておるところがたくさんあるわけでございます。そういうことを考えますと、労働時間法制として、日本の水準は、やはり恥ずかしい水準ではないのかというふうに思うわけでございます。

 中小企業に配慮する、そういう面では確かに、国際競争上、人件費を抑制すれば競争はできるのかもわかりませんが、しかし、そんなことを言っておったら、日本の二重構造なり中小企業の体質改善というふうなことも一向に進まない。今の、金融機関の不良債権を処理しない、またいろいろな構造改革をやらないで先送りしている、これと同じようなことになってしまって、それに甘んじて、そして安い人件費で海外と競争をしてやっていく、企業の体質改善などは二の次だということになってくるわけであります。

 既に、企業の体質改善をして、海外とも、むしろ大企業とも競争ができるぐらいの体力をつくって、そして高い人件費を払ってやっておる企業もたくさんあるわけです。そういう中小企業に、逆にそういう先進的な取り組みをしておる企業に対して配慮をする必要があるのじゃなかろうか。そのことが日本の中小企業の近代化にもつながっていくわけでありますから。

 そういう意味では、いつまでも事を先送りするのではなしに、やはり行政がリードをして、割り増し賃金についても段階的にでも引き上げていくということが必要なのではないかというふうに思うわけですけれども、それらの考え方について、ひとつ大臣の方からお答えいただければと思います。

坂口国務大臣 委員の御指摘を理解した上でお答えをさせていただきたいというふうに思いますが、この割り増し率の問題につきましては、先ほど申しました、平成十二年十一月におきます中央労働基準審議会の建議でもそのことが触れられておりまして、「割増率の現状にかんがみると、当面現行の水準を維持し、一定期間経過後」「見直しの必要性について検討することが適当である。」少し持って回った言い方でございますけれども、こういう建議でございまして、役所の方はこの建議にのっとって今動いているわけでございます。

 先生の御指摘も十分わかりますが、限りある命であります私が余り出過ぎたことを言うてもいけませんので、私も慎重に発言をしているわけでございますが、こういう建議を踏まえながら今後やっていく。この建議を踏まえる期間が、一体いつまでこれを踏まえているのかということにもなるだろうというふうに思います。

 しかし、先ほど申しましたように、この千八百時間という時間を少なくともこの五年の間には達成しなければならない。そのためには、いろいろの段階もつくって、そして早くそこに到達をしなければならないという、手順を明確にしなければならないときでありますから、それに合わせて、この割り増し等の問題につきましても考えていくべき課題であるというふうに思っております。

鍵田委員 ぜひとも大臣にはあと五年はやっていただきたいなという思いを強めながら、次の質問に入っていきたいと思っております。

 有給休暇の取得促進の問題につきましては、我が党の細野議員、もうお見えになっておりますので、間もなく彼の方から質問をさせていただく。特に長期休暇などにつきまして審議会でも議論されておるようでありますし、また、いろいろ行政の方でも取り組まれておるというふうにも思うのですが、これらの問題につきまして後ほど議論をしていただきますが、ちょっと私の方から、違った観点から。

 有給休暇が、一年間経過をして残った場合には次の年に繰り越すことができる、そして当然二十日までは繰り越しができるということになっておるわけであります。これは、やはりその年に使えなかったものは来年に使えるようにということで、そういうことを考えてされておるのですけれども、毎年四十日持って、何かたくさん持って貯金ができたような気分でやっておるために一つも取得率が進まないというふうなことがあるということも考えられるので、これは全くだれとも議論したわけではないのですが、私自身は、こんなのは繰り越しをやめて、その年に発生した権利はその年に消化してしまうということが一番いいんじゃないか、権利意識も生まれてまいりますしね。

 私は、有給休暇というのは権利だ、有休というのはすぐ休暇権とか何か言って、権利だ権利だと言うのですが、私は前から、権利じゃない、義務だ、せっかく与えられた権利を使うのは義務だから、労働者にとってはこれは義務なんだというふうにずっと言ってきたわけであります。

 そういう観点からしますと、とにかく初年度から二十日間の休暇を与えましょう、そのかわり次の年に繰り越すことはできないよというぐらいの思い切ったことをやらないと、なかなか取得率は高まってこないのではないかという考え方を持っておるんですけれども、何かお考えがあれば。突然思いついたような言い方ですので、なかなか答えにくいかもわかりませんが、よろしくお願いします。

増田副大臣 御指摘のとおり、年次有給休暇は、労基法第百十五条の規定に基づきまして、二年の消滅時効が適用されております。このために、付与された年度において取得されなかった年次有給休暇は翌年度に繰り越しができることとなっております。

 そこで、この繰り越しができることが年休取得意欲を阻害するかどうか。あるいはまた、一年目から二十日やって、そうすればいいんじゃないかという御意見を今申されましたが、今までの歩みの中で、就職をするとまず第一年目は十日、それから積み上がって二十日、こういうふうに、たしか六年だったと思いますが、その期間でなっていくと理解をしております。そういった今まで積み上げてきたもの。それともう一つは、一遍にとったらどうだという意見。これは個々個人の意見がそれぞれおありかと思います。

 したがって、こう言うと変ですが、私の身近な経験からしても、今先生の御発言を聞いて初めて気づいたのですが、どうだと言って、義務と答える人はおりませんでした。おれは権利を持っている、二十日間の権利を持っている、しかし一遍に使わないんだというような意識を言われる方が、実は私の身近ではほとんどでございました。でも、義務というお言葉で置きかえてみると、味のある言葉だったなというふうに今私は理解をいたしました。

 そこで、私の方といたしましては、総実働時間の関係もありますから、ぜひ消化をしてもらいたいなということで、引き続いて、消化をしてくれるように頑張っていきたいな、こう思っております。

鍵田委員 欧米諸国、米までは言わないですか、ヨーロッパ諸国では、今大体六労働週の休暇権を与えられておるというところが多いようでございます。そういう面から見ますと日本の場合はまだ付与日数も少ないわけでございますから、そういう意味では、そちらの方もやはり一日も早く改善してほしいなと思うわけですが、今の取得率の中で余り日数ばかりふやしてもしようがないわけでございますから、やはり一日も早く取得率が一〇〇になって、その上で休暇の付与日数もふやしていくということが大事だというふうに思っております。

 まだ幾つか質問が残っておるのですけれども、またの機会ということにいたしまして、いずれにしましても、大臣の方からも、この五年以内には時短促進法の目的を達成するんだということをおっしゃっていただきましたので、私はむしろ、五年間たったら達成したということじゃなしに、やはりもう十数年たっておるわけですから、ぜひとも、一日も早い実現に向かって全力を挙げて御努力いただきますことをお願い申し上げて、質問といたします。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 民主党・無所属クラブの細野豪志でございます。

 鍵田議員に引き続きまして、時短促進法について御所見をお伺いいたします。

 まず有給休暇の取得の問題、時短における有給休暇の取得の問題が極めて重要であるという認識が鍵田議員の方から示されて、それに対して厚生労働省の方から、もっともだという御発言をいただきました。

 次にやはり考えるべきは、果たしてなぜ日本では有給休暇の取得が進まないのか、ここに問題があるような気がしてなりません。私も民間企業に勤めておりましたけれども、周りを見渡しても、有給休暇を取得している人間というのは非常に少なかったという記憶がございます。私、一年目に有給休暇を全部使って、年末、それを上司に、いやあよくとったねと、嫌みともお褒めともとれない発言をいただいたことまでございました。

 厚生労働省としては、果たして有給休暇の取得が進まない原因がどこにあるとお考えなのか、それがわからないと対策というのはなかなか打てないと思いますので、まず、その部分での御所見をお伺いしたいと思います。

増田副大臣 私の方からお答えを申し上げます。

 欧米諸国において年次有給休暇の取得率が高いのは、年次有給休暇はすべて取得するのが当然という意識が一般的であると言われております。

 これに対しまして、日本では、大体六九%の労働者の方々が年次有給休暇の取得にためらいを感じている。その理由としては、職場の同僚への気兼ねや職場の雰囲気が年次有給休暇を取得しづらいものであることが挙げられております。このほか、計画的付与を除き、労働者の要求する時期に与えることとなっていることも影響しているものと思われております。

細野委員 ちょっと待ってください。私も多分同じ調査を持っているんですが、今お答えになった、職場の雰囲気で取得しづらいというのは三六・四%で、それより、みんなに迷惑がかかると感じる、これが五八・七%、後で多忙になるというのが四二・三%、そっちの方が高くなっていますよ。認識がちょっと違うんじゃないでしょうか。お答えください。

増田副大臣 その資料は私の方も持っておりまして、同じでございます。殊さら私が強調したのは、この辺が直ってもらえればなという意味で今発言をしてきたんですが、一番の問題は、みんなに迷惑がかかると感じる、五八・七、さっきお答えした中にもあるとおりであります。それから、職場の雰囲気で取得しづらい、これが三六。二番目の間で、後で多忙になる、こういうふうにありますが、この三つが大きな柱だと思います。

 そこで、迷惑がかかる、後で多忙になる、職場の雰囲気で取得しづらい、この三つがあると思いますが、先ほどのお答えの中で一つ外しておりましたので、おわびをして、さっき二つ言ったと思いますが、三つお答えさせていただきます。

細野委員 この理由は全然性質が違うと思うんです。よく、有給休暇の取得は日本人の国民性で、要は、周りがとらないととりづらいから取得しないんだという議論がありますね。でも、このアンケート調査を見ると、実はそれは間違っていることがわかります。

 というのは、みんなに迷惑がかかる、仕事上の迷惑がかかるというのが一番上位に来ているわけですね。二番目が、後で多忙になる、これも仕事上の理由ですね。日本人の気質で有給休暇がとれないのではなくて、要は、職場の環境が有給休暇をとると仕事が回らなくなる、そういうことを言っているということを意味すると考えますが、いかがでしょうか。

増田副大臣 置きかえますと、その次の、職場の雰囲気で取得しづらいもあわせて、先生の御主張にも当然耳を傾けて、以後私もしっかりチェックして対応していきたい、このように思います。

細野委員 チェックしていただくのは必要なんですが、もう一つ、この調査で深刻な数字が出ております。

 有給休暇の取得が、日本の場合は大体五〇%ちょっとあたりで、むしろ停滞している、下がってきているという現状があるわけですね。その中で、では年次有給休暇の取得の促進をしているかどうかという問いがありまして、それに対する回答は、推進していないと答えた使用者が五四・一%、これは相当深刻な数字だというふうに私は考えます。

 この有給休暇の取得の現状、そしてそれをめぐる、実際に職場でとることができない、とることができない職場を放置しているにもかかわらず使用者側としては努力もしていない、この現状に関して、坂口大臣、どのようにお考えでしょうか。

坂口国務大臣 確かに、有給休暇をとるというのは、これはその人その人の考え方にもよりますが、職場の雰囲気にも大きく影響されるというふうに思います。これは年齢にもよると思いますけれども、私のような年齢でありますと、とらない者ほど偉いという考え方がございまして、どうしてもとらないということになるわけであります。

 私も、かつて医療機関に何年か勤めたことがございましたけれども、ただの一日もとったことはございませんでした。何かそれが偉いような気分になっていたわけでございますが、今、こうしてこの時短でございますとか有給休暇の審議をさせていただいておりますと、自分の過去のその考え方が間違っていたなというふうに思っている次第でございまして、やはり、時々はとるということが常識であるというふうにならないといけないんだというふうに思います。自分自身がその後、仕事がふえるというのは、自分で片づけるのでまだいいわけでございますが、それよりも、自分が休むことによって周囲の他の人たちに迷惑をかけるという思いが私は強いのではないかという気がいたします。

 それはお互いさまでございますから、お互いにそれをとり合いっこしながら、お互いにそこはみんなでカバーし合っていくものだという認識を持てば、それはそれで済む話でございますから、そのところまでまだ至っていない職場というのもあるんだというふうに思います。ですから、その辺の意識改革というものを行いながら、経営者と働く皆さん方との間の話し合いも進めていかないといけないというふうに思っております。

 最近ではかなり変わってきているというふうに聞いておりますし、私が勤めましたようなところでも、最近では、二十日ぐらいまとめてとって、そして外国旅行をする人がふえてきているというふうに聞いておりますから、かなり変わってきているんだろうというふうに思います。ですから、その辺のやはり意識改革をしていく。だから、若い人たちの改革はちゃんとできているんだと思うんですが、やはり取り仕切る側の、どちらかといえば年齢の高い側の意識改革がまず必要ではないか、そう思っております。

細野委員 現状が徐々によくなっているというお話がございましたけれども、確かに、個々人で見ると、海外にバカンスで出かけたり、私も新婚旅行に二週間行きましたけれども、そういうことができるようになっている雰囲気はあります。ただ、マクロで見ると、数字は明らかに取得率が下がってきているわけですね。

 今の厚生労働省の施策を見ますと、有給休暇の完全取得というのはよくうたわれるんですが、ではどうするんですかという話になると、これは労使の努力に任せましょう、そういう話になっているわけですね。果たして厚生労働省としては、完全取得とは言っていますけれども、有給休暇の取得率というのを何%ぐらいを目標に持たれているのか、また、その取得率を上昇させるために具体的に何をやったらいいのか、どういう政策を考えられているのか。この二点について、これは中心的な政策ですので大臣にお答えいただけますでしょうか。

坂口国務大臣 具体的なことをまた後から答えさせていただきたいというふうに思いますが、やはり、与えられた期間というのは全部とれるようにしていく、それが目標だと思います。

 現在のところ、勤務年限が長くなればなるほどこれはふえていくわけでありまして、今、六年ぐらいで二十日ぐらいになるんでしょうか、だんだんとふえていくことになっていく。しかし、年限がふえればどんどんとふえていくというより、ある程度上限をつくって、ある年限を勤めればそこからは大体幾日ぐらいになるという方が僕個人は望ましいのではないかというふうに思っておりますけれども、与えられた有給休暇をとっていく、それが目標だというふうに思います。ただしかし、それがとれていない。

 先ほどからいろいろなことを言いましたけれども、もう一つは、みんな、自分が例えば病気をしたときにはそれを有給休暇にしたいとか、あるいは家族でだれかが病気になったときには休みをとりたいからそれをとっておきたいとかというような思いもある。そして、結果としてはそういう必要がなかったということになる人もいるんだろう、そういうこともある。お勤めになっている人も、そういう人も私は多いというふうに思っています。

 これをどういうふうにしてとっていただくようにしていくかという、その具体的なことというのは、ちょっと事務局の方に答えさせてよろしゅうございますか。

増田副大臣 具体的に幾つかお答え申し上げますが、年次有給休暇の取得促進のために、厚生労働省では、計画年休制度の導入に取り組む中小企業事業主に対する研修や、それから相談の援助、コンサルタントの活用に対する助成を行うこととしているほか、シンポジウムの開催等による長期休暇制度の普及啓発や、先行して取り組みを行うモデル中小企業等に対し支援を行うこととしております。

 そこで、十三年度事業といたしまして、長期休暇制度の早期導入への取り組み、こう銘打ちまして、年次有給休暇と週休日等と組み合わせにより二週間程度連続する長期休暇、この普及に向けてシンポジウム開催等あるいは普及啓発、先行して取り組みを行うモデル企業には、事業主団体を対象とした助成等もしていきたい。

 モデルでありますが、そういうことで、具体的には長期休暇制度の普及と定着に関するシンポジウムの開催、それから長期休暇制度の企業経営に対する影響等に関する調査研究、それから中小企業長期休暇制度モデル企業助成金、それから四番目として、長期休暇制度基盤整備助成金、こういうようなことを行いまして、何としても促進を図っていきたい、特に中小企業の関係、上がっていきませんとという考え方もありますので、努力をしていきたいと思います。

細野委員 私の方でちょっと伺いたかったのは、長期休暇の話以前の問題として、取得率全体の話だったのですが、そこについても私の所見をちょっと述べさせていただきますと、確かに取得率というのは一〇〇%にするのは難しいというのはわかります。病欠もある、慶弔に備える人も非常に多い、あとはポカ休というのがあるそうですけれども、寝坊したりいろいろな理由で休む場合もある。そういうものに備えて、それは備える人がいてもいいでしょう。ただ、それが職場によって全然格差があるものだとは私は考えないのです。人間だれしも生活パターンがあって、当然複数の人がいれば有給休暇に関する考え方もさまざまなわけですね。ですから、明らかに有給休暇の取得率の低いところはそういう取り組みがされていなくて、高いところではされている、そういう個別の議論では済まない事情というのもあると私は考えるのです。

 私自身の、これは個人的な思いとしては、恐らく有給休暇の取得率というのは、日本では少なくとも七割から八割あたりにはならないと、どうしても備えるということには恐らく当たらないんだろうというふうに思うのです。今お答えいただいたような、助成金であるとか、ほかにシンポジウムをやるとか、そういう情報発信なども、それはやっていただいて結構なんで、重要だとは思うのですが、もう少し先に行って、実際に取得率全体を上げていくような取り組みというのは、私はそろそろ始めるべきじゃないかというふうに考えております。

 具体的な提案としては、例えば、労働基準監督署に各事業所が今有給休暇の取得率が何%ぐらいになっているか毎年報告する、それを例えばその企業に入りたい人であるとか、その企業に、労働環境を知りたいという人は請求すれば情報の開示を求めることができる。こういう制度をつくるだけでも、いわゆる企業を外からきちっとチェックしていく、そういう形が発揮し得るのではないかというふうに思うのですが、何かそういう取得率を上げていく具体的な取り組みを考えられているのでしょうか、また私の提案に対してどのような御所見をお持ちか、お答えください。

増田副大臣 私見も多少入りますが、年次有給休暇の取得率を向上させることは、啓蒙あるいは事業等によって徹底して上げていこう、この努力はお答え申し上げたとおり引き続いて頑張っていきたいと思います。かといって、とらなくてはだめだ、強制的にというような考え方は適当ではないんじゃないかというふうに実は考えておりまして、まだ行政ベースで一生懸命努力していく段階だろう、こういうとらえ方であります。

 御理解をいただきたいと思います。

細野委員 私は強制しろとは申しません。ただ、いろいろ確かにやってこられたけれども、現状、日本の有給休暇の取得率がまだ五割なんだ、その状況をしっかり認識した上で、しかもその状況がほとんど改善されていないんだというあたりを考えたときに、ちょっと厚生労働省の今の姿勢というので本当にいいのかなという気がしてなりません。

 余り時間もありませんので、ちょっと長期休暇の方にも話を移したいのですが、長期休暇に関しても二週間程度のL休暇をみんなでとろうということで、審議会のペーパーも私は拝見しました。しかし、それを見ても、みんなでそういう環境を整えていきましょうという労使の自主的な努力に任せるということになっているのですね。

 今回、時短促進法がこうして議論をされて、その中で私どもとしては附帯決議の中で、長期休暇の取得を実現する実効性のある施策をできるだけやっていこうということを書かせていただきたいなというふうなことで今努力をしております。お認めいただけるものというふうに考えておるのですが、もう少し長期休暇に関しても実効性のある施策を打つべきではないか。この点に関しまして、強制ではなく、いかに周辺から実効性ある施策を打つのかというあたりに関しての意気込みを、できましたら具体的な政策を含めて御答弁いただけないでしょうか。

増田副大臣 長期休暇は、ゆとりある生活の実現など、さまざまな効用が期待されるものであります。その普及を図っていくべきという考え方をまず持っています。昨年七月に取りまとめられました長期休暇に関する国民会議報告書をもとに、長期休暇の普及啓発を行っているところであります。

 来年度においては、長期休暇の導入に取り組むモデル中小企業に対する支援や、年休の連続取得促進等について傘下事業場に指導を行う事業主団体に対する支援の事業も予定しているところであります。

 そこで、L休暇というお話でございましたが、そのことに対して、経済新生対策に基づきまして開催されました長期休暇制度と家庭生活の在り方に関する国民会議、この会議の結果をもとにいたしまして四つのポイントを実はしっかりと把握いたしまして、一週間程度を最低単位として二週間程度の休暇が労使の負担を著しくふやすことなくとれるように、それからポイント二として、特定の時期への集中が避けられるように、ポイント三として、職場のだれもが公平に休暇がとれるように、ポイント四として、労使関係者の十分な話し合いにより実情に即したルールがつくられるように、ということで取り組んでいこうということで取り組みをいたしております。

細野委員 もうそろそろ時間がなくなってまいりましたので、そろそろ最後の質問に入りたいと思うのですが、私は、もうそろそろ日本は、この有給休暇に関してもう少し実効性のある政策をつくるために法改正が必要であるというふうに考えております。私の所見としまして考えておりますところをちょっと申し述べますと、日本の有給休暇は、とにかくまず会社に入って半年間はたたないともらえない制度になっております。しかも、八割出勤しないと、これは有給休暇がもらえないわけですね。その間に大きな病気をしてしまったりすれば、有給休暇はもらえないという制度があります。もう一つ特徴的なのは、入った年は十日間、最低付与日数ですが、そこからだんだん年功序列で休暇の付与日数もふえていくという制度になっております。

 こういう制度全体を客観的に眺めると、これは働く者の権利であるという認識よりは、むしろ、使用者から長く勤めた人に対して恩典的に与えられているものなんだ、そういう制度になっているような気がしてならないんですね。特に後者の部分、有給休暇が徐々に年功序列でふえていくという部分に関しては、今これだけ雇用も流動化していて、産業構造の転換もある程度求められているときに、長く勤めることは、もちろん、それはそれで個人の権利としてそういう方がいてもいいんですけれども、一方で、転職する人が不利になるような社会であってはならない。私は、その部分でもやはり法改正が必要であるというふうに考えます。

 済みません、時間もないのでまとめて聞きますが、あともう一つつけ加えるならば、Lホリデー、重要だとおっしゃいました。しかし、最低付与日数十日間であれば、実際Lホリデーをとるためには、週休二日だとしても、それこそ五日、五日全部とらないと、これはとれないわけですね。Lホリデー、どんなに一生懸命厚生労働省さんがうたっても、これは実際は取得することができない労働法制を我が国はまだ残しているという実情もあります。

 この部分も含めて言うと、やはり意識の面でも、そして具体的なLホリデーという政策、この部分に特化しても、これは法改正に踏み込むべきではないかというふうに私は考えるのですが、厚生労働省の御所見はいかがでしょうか。

坂口国務大臣 二つのことを主として御指摘になったというふうに思います。

 最初の方の、有給休暇の日数のことにつきましては、先ほど私の個人的見解を申し上げましたが、やはり一遍検討してもいい時期に来ているのではないかと私個人は考えております。

 それからもう一つの、ロングの有給休暇をどうとるかというのは、これは二日や三日の有給休暇もなかなか進まない状況でありますから、もう一つまた難しい話になってくるんだというふうに思いますが、やはり私は、一定期間、そういう期間を通じてリフレッシュをする、心身ともにリフレッシュをするという期間を持つとか、ただ、家族に対するサービスというのもあるでしょうけれども、次の働くエネルギーを養うための一つのステップにするといったようなことが、もう少し全体に定着してこなければならないのではないかというふうに思います。

 委員が前回、予算委員会でございましたか、温泉との関係で御指摘になったように記憶をいたしておりますが、やはりドイツなどにありますクア療法でございますとか、ああいったような形で、お互いがひとつリフレッシュをしていくといったようなことをこれから取り入れていく必要があるのではないか、私は個人的にそう思っております。

細野委員 時間が参りましたので、以上で終わりますが、本当に休暇の取得というのは、個人のリフレッシュ、経済の活性化、いろいろなプラスの面が期待できるんだ。経済にとって必ずしもマイナスではないんだ、むしろプラスなんだということで、私個人としては、また民主党としても法制化へ向けて取り組んでいきたいというふうに思いますので、ぜひとも厚生労働省の方としても御検討いただきたいということを最後に申し上げたいと思います。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、佐藤公治君。

佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。

 きょうは、また大臣の方にだけ御質問を投げかけさせていただきますので、何とぞよろしくお願いしたいかと思います。

 このたびの労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の件に関して議論、質疑をさせていただきますけれども、まず、五年間延長をするということになっておりますけれども、これがなぜ五年間なのか、大臣の方からお答え願えればありがたいかと思います。

坂口国務大臣 今まで、本来ならばもう達成をしていなければならないときでございますが、しかし、先ほどから議論がありますように、千八百時間を達成できませんでした。そして、いろいろの審議会の方では、二〇一〇年をひとつ目途にしてこれを定着させるということをうたっているわけでございます。

 この千八百時間を達成し、定着をさせるということでございますから、それまでにこれは達成をしていなければ定着ができないわけでございますし、特段の意味があるのかどうかわかりませんけれども、一応五年という、法律というのは大体そのぐらいなところをめどにして、そしていろいろの作業を進めていくわけでございますから、その中間の五年というのをとって、そして五年間では、とにかく達成をしていこうということにしたんだというふうに思います。

佐藤(公)委員 先ほど、今お話がございました「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」において、前期集中型でやっていこうということで五年と考えられているというふうにとってよろしいんでしょうか。

増田副大臣 そのとおり、前期集中で頑張ろうということです。

佐藤(公)委員 そこで、大臣と少しいろいろなことをお話し合いというか教えていただきたいかと思いますけれども、先般の質問においても、委員会においても聞かせていただきました大臣の経済に関する認識、今の現状をどうとらえているのかというのをお聞きしたいかと思います。

 大臣も今、月例経済報告等に関する関係閣僚会議とか、経済対策閣僚会議とか、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部、大変重要な経済会議に御出席になられております。私は、厚生労働関係、このいろいろな法案を見ている中、特に今回のことに関しては、労働行政のことで考えていく、話し合っていくことは当然なんですが、やはり、現状の経済がどういう状況なのかという、常に雇用問題というのは経済状況に左右されるということが当たり前だと思います。その大事な、その根底となります経済に関して、簡潔、簡単に、大臣の今の現状の御認識、そして問題点がどこにあるかということをお話を聞かせていただければありがたいと思います。

 どうか、委員の皆さん方も、この大臣の経済における認識がどういうものかというのをきちんと聞いていただく、これは大変重要なことだと僕は思います。目先の議論だけじゃない、やはりその経済がどうだということによって諸施策が存在すると僕は思います。国家のあり方もそうですけれども、どうか皆さん、委員の皆さん方、傍聴されている方々、これが大臣の経済の認識でございますので、よろしくお願い申し上げます。

坂口国務大臣 厚生労働関係のことだけを聞かれるのかと思ってここに座りますと、経済のことまで御質問になられるわけでありまして、私も面食らうわけでございます。

 とにかく、現在のこの状況というのは、一つは、やはりグローバリゼーション、グローバル化によって日本は大きな変化を受けている。そしてもう一つは、また高齢化ということによって大きな影響を受けている。日本の経済、非常に大きな影響を受けておりますが、これは中長期的に見ましても、この二つのことが大変大きな影響を与えていると私は考えております。

 その中で、国際的な問題の中で、日本はこれから雇用の問題を一体どうしていくのかということを考えましたときにも、この国際化ということを抜きにして語ることはできません。それは、諸外国、とりわけ先進国も、この国際化という中でどういう経済を行い、そして産業政策を行っていったらいいかということで非常に諸外国も苦しんできたわけでございます。

 ちょうど六年前になりますけれども、あるいはもう七年ですかね、前回私が労働大臣をやらせていただきましたときに、第一回の雇用サミットがアメリカのデトロイトでございました。そのときに、クリントンが出席をいたしまして、そして、そのときにすぐ、日本に聞きたいというので質問をいたしました。答えるのは私しかいなかったものですから私が答えざるを得なかったわけでございますが、そのときに彼が聞きましたのは、日本はアメリカ方式でいくのですか、それともヨーロッパ方式でいくのですかということでございました。それはどういうことかといいますと、アメリカのように、賃金を引き下げて、そして極力仕事の幅を広げて、いわゆる産業の幅を広げて、そしてそのかわりに失業率を下げていく、しかし、賃金はトータルで見ると若干下がる。そういうアメリカの方式をとるのですか、それとも、ヨーロッパのように、賃金は高いままで、これはおろすことができない、賃金をおろすことができなければ、そこでそれでは何が起こるかといえば、そこに高失業率を許容せざるを得ない、いわゆる賃金はおろさずにそして付加価値の高いものだけをつくるという選択をする、そのかわりに失業率は高くなる。そのフランスやドイツの行き方と、アメリカの行き方のどちらを選ぶのですかというのが、クリントンさんの私に対する質問でございました。

 私は、これは経済、どういうふうな運営をしていくかということに非常に大きな影響を与える問題だというふうにそのときに思って聞いたわけであります。しかし、私はそのときに、賃金を下げることも失業率が高まることも両方とも困るものでございますから、日本は第三の道を選びます、いずれも選びません、こう答えたわけでございます。そういたしましたら、そのときに、ヨーロッパの皆さんやあるいはアメリカの皆さんは、そんな手品のようなまねはできない、日本は数年後いずれかの道を選ばなければならなくなるであろうということを申しました。労働界の専門家の皆さん方がそこにはお集まりでございました。

 今思いますと、日本の経済、先日デフレかどうかというようなお話もあったわけでございますけれども、デフレスパイラルに陥っているわけではありませんけれども、デフレ傾向にあることは事実でございますし、私は、日本の現在の状況を見ましたときに、この国際的な流れの中でどこに日本が定着をするのかということと大きなかかわりがあると思っております。そうした意味で、日本は、アメリカ型でもないしヨーロッパ型でもありませんが、そういう方向に誘導しておるわけではありませんけれども、何となくその中間に着陸しかけているような気がしてなりません。

 すなわち、現在の経済状況の中で見ますと、正規の労働者よりもパートタイムの人たちが非常にふえてきているという、このことは、いわゆる産業界が、やはり賃金というものをどうしても抑えていかなければならないというようなことから、パートの人たちをふやさざるを得ないという状況になってきている、そして全体としての賃金の抑制をしようということを、好むと好まざるとにかかわらずそういう方向に来ているのではないかということを危惧いたしております。

 そして、一方において、失業率が四%後半でずっと続いておりますこの状況を見ましたときに、全体のそうした日本の流れが、世界の中における日本の流れがやはりこの失業率にも影響を与えている。ヨーロッパほど高くはありませんけれども、しかし、四%後半というと、これはかなりの失業率でございます。だから、何となくその中間に流れているような気がしてなりません。

 ここをどう克服していくかということがこれから最大の課題であり、日本の一番悩まなければならないところではないかというふうに思っております。賃金を上げるということを行えば、日本の企業はさらに外国にその拠点を移す可能性もあるわけでありまして、グローバル化したわけでありますから、今までのように日本の国の中でというわけにはいかないのではないかというふうに思います。

 そうしたときに、これからその賃金の問題をどうしていくか、それからきょうのこの法案にもかかわることでございますが、有給休暇等の問題もどうしていくかといった問題も絡んでくる問題ではないかというふうに思っておるわけでございまして、そうした中で、私は、日本の経済の今後というものをやはり考えていかなきゃならない。この一カ月か二カ月の動きでどうするかということではなくて、中長期的に見ました場合に、そうした中で、やはり日本の経済、とりわけこれからの産業界のことも含めて考えていかなければならないのではないかというのが私の思いでございます。

佐藤(公)委員 大臣、大変ありがたいお話、ありがとうございます。今お話を聞いていると、やはり政治家としての考え方が少し見えてきたような気がいたします。

 そこで、先ほど第三の道を選択するという方向性でのお話がございましたけれども、実際問題、私も今のお話を聞いていると、白か黒かという決め方はいいかどうかは別にしても、手品みたいな話にもなり得るのかなというのは、私も同じように考えられる部分があると思います。

 では、現状、今この経済を見て、大臣はどこに問題点があり、やはりそれを解決すべきことなのかということを、具体的にあればお答え願えればありがたいと思います。

坂口国務大臣 そこは、私のこの未熟な頭の中ではなかなか解決できない問題でございますが、やはり日本の国内だけを見ておりましては解決ができません。世界全体の中に置かれた世界の中の日本という目で見ていかないと解決のできない問題であるというふうに思っております。

 そうした中で、日本がやはりこれから先一番考えていかなければならないのは、諸外国も、先進国も悩みましたように、いかに企業というものを効率化していくかということであろうというふうに思いますし、現在、日本の企業がかなり立ち直ってまいりまして収益率も上げてまいりましたが、宮澤大臣のお言葉をかりれば、それが民需になかなか届いてきていない、すなわち個人消費に結びついていない、こう指摘になっているわけでございます。これは、不良債権の問題ももちろんございますけれども、それだけではなくて、日本の産業構造というものについてやはりもう少し考えていかないといけないのではないかという気がいたします。

 日本の産業構造の中で、三次産業の占めます割合というのはかなり高くはなってまいりましたけれども、欧米先進国の中で比較をいたしますと、まだ低い、まだ一〇%ぐらいの差があるのではないかというふうに思います。

 この三次産業をもう少し輝きのある職場にしていく。きょうのこの議論にもありますとおり、サービス残業などが第三次産業には非常に多いといったようなこともございますから、やはりもっと働きやすい、そして魅力のある職場に第三次産業をしていくということが大事でありまして、第三次産業のところをもう少しふやしていくことによって、もっと多くの皆さん方が働く道がそこに生まれてくる。ここに雇用が生まれてくれば、また、消費の拡大にもそこは結びついてくる。現在の日本のように、二次産業に余りウエートを置き過ぎますと、なかなかうまくいかない点がある。この辺の改革が、これからの日本にとりまして非常に大きな課題ではないかというふうに私は思っております。

佐藤(公)委員 大臣、大変失礼なことを申してばかりいて、申しわけございませんでした。

 私は、今の大臣のお話を聞いて、多少安心をいたしました。まさにおっしゃられるように、構造的な問題点というのがたくさんあると思います。

 今、具体的にその構造改革をどうしていくかということ、これに関しては、経済に関して、大臣は先ほど、厚生労働以外ということ、また、未熟なということをおっしゃられましたが、やはりこういう経済関係の会議において大臣の御主張を強くしていただいて、経済社会全体の構造改革、といいますのは、時短法の話をいろいろな方々から聞くに際して、やはり成果は上げているものの、行き詰まりを感じているのは、これはだれもが感じていると思います。そういう意味で、やはり社会全体、産業全体の構造を大きく変えることによって、本当にこの目的が達せられ、そしてゆとりある国民、健全な国民経済にしていくような方向性でのリーダーシップをお願いできればありがたいと思います。

 なお、もう時間もございませんので、最後に一つだけ要望だけをさせていただき、また、これに関して何かお答えがあればお願いしたいんですが、これは事前通告はしておりません。

 労働時間の短縮については、特に中小企業への政府の支援が重要と思っております。中小企業での労働時間の短縮は簡単なことではないことは、もう皆さん御承知のとおりだと思いますが、魅力ある企業をつくり、中小企業を活性化するために避けて通れない課題だと私どもは考えております。

 中小企業の中で、幾つかの業種では、十名未満のところ、週四十時間労働制の特例として、現在は週四十六時間制であり、ただ、これは四月一日からは週四十四時間制が適用されることに今なっております。政府は、これらの企業に対し、現在、労働時間短縮についての相談指導や助成金による支援を行っていただいておりますが、これにより、零細企業においても、労使の努力により、週四十時間を現実化しているところが確実に今増加しているような状況だと思いますが、今回の時短促進法改正に伴い、中小企業における労働時間の適切な短縮がますます重要な課題となってくることは、もう皆さん方御承知のとおりでございます。

 政府は、特に特例措置の対象事業所、これは中小企業のことですね、に対して、現在の相談指導や助成金を継続し、強化するよう強く要望したいと私は思います。この特例対象が全体で約四割で、特例特例といいながら、中小零細に関して、かなりのシェアを占めております。こういう部分に関して、大臣以下厚生労働幹部の皆さん方には強くお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、金子哲夫君。

金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子哲夫でございます。

 時短促進にかかわって、幾つか御質問させていただきたいと思います。

 いずれにしても、これからの五年間の時短促進の大きなかぎは、いわゆる有給休暇の取得率の向上、また時間外労働の削減にかなり大きなウエートがあるということは事実だと思います。そして、今までの論議を聞いておりますと、その多くの課題の中に、労使のいわば努力といいますか、労使の話し合いによってできるだけ進めていきたいという思いが強く出ているわけであります。

 もちろん、労使によってそういう努力がされるということは当然ですけれども、同時に、私は、やはり現行のさまざまな制度の中で、法制度上だけでこの問題がこれ以上進むのかという思いを持っておりまして、そういう観点から、幾つか意見なり質問をさせていただきたいと思います。

 最初に、有給休暇の取得の問題であります。

 平成七年度以降、有給休暇の取得率が減少しております。最高時の五六・一%に対して、平成十一年で五〇・五%に下がっておりまして、いわばもとに戻すだけで、ほぼ一日八時間の、五六・一%に取得率を上げれば、それで戻るわけであります。ぜひそれは、取得率を上げるということを、具体的なことでは、最低でもそこの数字まで上げていくということは労使の努力の中で進んでいくと思いますけれども、しかし、この十数年間にわたって取得率が五〇%台でそのままであるということは、先ほども言いましたように、労使の努力だけでは到底かなわないと思います。

 先ほど、大臣の答弁の中で、例えば年休が取得できない、残っていくような状況の中に、家族の介護の問題であるとか、そういったこともあるのではないかということを大臣がおっしゃいました。私も、その点ではそのとおりだと思っております。例えば家族の介護なり育児については、今、法制度を進めようということで、そういう法律をつくって取得できる条件をつくろうということになっておりまして、私どももそういうものを積極的に進めていきたいというふうに思っております。

 ただ、もう一つは、制度の中で私は非常に重要だと思っておりますのは、病気休暇制度の問題であります。

 今、多くの中に、年休取得できないというよりも、年休を取得されている中で、いわば病気、例えば風邪を引いたとかそういうときに年休を使っている実態というのは非常に多いと思います。私自身も働いていた経験もありますし、私の家族も現在も働いておりますけれども、そういうさまざまな職場の実態を見ても、病気のために年休をとっていくというのは非常に多いと思います。

 ところが、今、残念ながら、病気休暇制度というものは実態、制度として法的に整備をされておりません。この点について、今の病気休暇制度の企業の実態がもしわかれば、お答えをいただきたいと思います。

坂口国務大臣 平成九年当時に、有給、無給を問わず、病気休暇制度を採用しております企業の割合は、調査産業全体で二三・一%でございました。同じく平成九年に、日本労働研究機構が労働者に対して行いましたアンケート調査というのがございますが、これによりますと、病気休暇制度のあります企業に勤務をします労働者も、病気の場合、年次有給休暇をかなりの程度取得しておりまして、いわゆる私的な傷病、私傷病と言っておりますが、この私的な傷病により休んだ場合に、その九割以上の人が病気休暇制度を利用していないという結果が出ております。これは、先ほど申しました日本労働研究機構がアンケート調査で調査をしたものでございます。こういうのをつくりましても、それを利用せずに有給休暇をおとりになってお休みになっているケースが非常に多い、こういう結果が出ております。

金子(哲)委員 そのとおりで、それは病休も年休も、先ほどお話がありましたように、職場の雰囲気の問題がありましてそういう状況になっていると思いますけれども、例えば復帰前の沖縄の場合、病気休暇制度がアメリカの法律の適用によって三十日が制度として付与されていた。そのときには年休の取得もそれなりに取得があった。ところが、復帰後、病休制度はすべてなくなった。途端に年休の取得状況も減少しているという事実がありまして、先ほどのお話でも、例えば病気休暇でも二三%しか制度がない。その上に、なおかつ、例えば病休制度でも全額お金が支給されているところは四八%ぐらいですよね。

 つまり、実際には、今の病気休暇制度というのは、しかも法的に整備をされていない状況ですから、私は、やはりこの病気休暇制度というものについて法的に整備を進めていくという方向で、これは今企業の努力によって進められているわけで、やはり法的にその制度というものを検討していくことが年休の取得の中でも非常に重要ではないかというふうに思っておりますけれども、改めてもう一度お聞きしたい。

坂口国務大臣 せっかく病気のときの休暇制度をつくりましても、それをおとりにならない方が多いというのは、一つは、今御指摘になりましたように、休んだらその日は無給であるというのも中にはあるんだろうと思うんですね。無給といいますか、例えばパートの人なんかの場合ですと、それは無給になる。あるいはペナルティーということはないでしょうけれども、休むことに対して何かマイナス面があるといったようなことがありますためにおとりになる方が少ないのではないか。これは私の想像でございますけれども、そう思います。

 やります以上は、やはり、それが正規に堂々ととれるようにしなければいけないんだろうというふうに思いますが、今議論をされております有給休暇の問題とそれとは別枠で、病気になったときの休暇制度というのを一体どうするのかといったような問題、それから家族が何か病気になったときの、今度は介護の問題につきましては、今回また法律等も整備をさせていただいているところでございますが、そうした問題もある。これらの問題をそれぞれ別々にしていった方がいいのか、それともそれはトータルで考えて、そして、それらを全部含めた有給休暇という形でしていったらいいのかということについてのいろいろな議論というのは、これはちょっとしていただかなければならないんだろうという気がいたします。

 先生の御指摘になりましたのも一つの選択肢、私は、そういうこともあるんだろうと思います。個々に分けていくというのも一つの選択肢ではあるというふうに思いますが、私は、そういうふうに個々になっていた方がいいのか、それともそうではなくて、一つの有給休暇という丸めた形の方がいいのかというのは、これまたおとりになる側も議論がある側ではないかという気がいたしますので、ここは少し議論をしていただく必要があるのではないかというのが私の現在の考え方でございます。

金子(哲)委員 ぜひ議論をしていただきたいと思いますけれども、そのお話を延長すれば、例えば、その討論の中でぜひ考えていただきたいと思いますけれども、今、いわば日本人の仕事に対する意識の問題とか、先ほどの討論の中でもいろいろ、なぜこの取得率が上がらないかという問題が討論されて、上げなきゃいけないということはお互いがわかっているわけですけれども、なかなか上がらないという実態もあるのは事実なわけですね、十数年努力をしてそれがいかないわけですから。

 私は、この率がそのまま変わらないとしたら、年休の取得状況を上げるとすれば、あとは、いわば私が働いているとき、三十年前から変わらないこの二十日間というものが本当に妥当なのかどうかということをやはり考えてみる必要があるんじゃないか。年休の付与日数を上げれば、例えば五〇%であったとしても当然ふえてくるわけですから、今の意識状況がもし変わらない、企業努力を一生懸命やってもこの状況で五〇%しか取得率がないということであれば、思い切ってそれは二十五日なり三十日なりに年休の年間付与日数をふやしていくという発想も含めて検討していく、年休取得の方法の中で、私は一つの方法としてあるんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 今御指摘になりますように、平成十一年、平均いたしまして十七・八日が有給休暇の日数でございます。しかし、取得をしておりますのは、平成四年以降おおむね九日台前半でございます。ですから、半分ちょっとというところでございましょうか、半分ちょっとといいますか、約半分ぐらいな程度になっているわけでございます。

 これは、私は原因はいろいろあるというふうに思いますが、一つは、日本の中の企業がかなり職場の人数を制限し、そして効率化をした中で大量の仕事をしているということと大きな関係があるのではないかという気が私はいたします。

 私も医療機関に勤めておりまして、医療機関などというのはふだんから忙しいわけでありますから、一人休みますとその忙しさは当然のことながら倍増するわけであります。そういたしますと、人が休みましたときのその苦しさというものが身にしみてわかっているわけでありますから、そうしますと、自分が休むとあのときと同じようにほかの人に迷惑をかけるというような思いが自然のうちに芽生えて、そしてみんなが何となくとりにくい雰囲気というのが出てくるという気が私はいたします。

 ですから、現在の産業界のこの状況というものがかなり私はこのことに影響しているのではないかという気がいたします。そこのところを乗り越えて、そして、これは今までにも議論になりましたように一つの権利、一つのと申しますか、これは当然権利なんだから、そこは遠慮をせずに消化できるという体制をどう組むか、どう意識改革をしていくかということをより具体的にプログラムとしてやらなければいけないと思うんですね。

 だから、そこをただ単に指導監督を強化するというだけでもいけません。これは企業の皆さん方のお考えをもそういうふうに変えていただかなければならないというふうに思いますし、また働く人たちもそういうふうに安心をして休んでいただけるようにしなければいけないというふうに思いますから、それは一つどこかが中心になってやれば済むという話でないことだけは事実でございますので、総合的にここを進めていく対策というのをこれから立てていかないと、この五年間でそれを完成する、千八百時間を完成するというのもなかなか難しいし、有給休暇の問題も含めてなかなか難しいのではないかというふうに思っています。だから、そこに知恵を絞る必要があるというのが現在の私の認識でございます。

金子(哲)委員 精神論ばかりお話しになっても、具体的に今まで全然実効が上がっていないわけですから、やはり法制度全体として、今までの既存の法制度、制限、そういったものを超えて制度に変えていかなければ、これは絶対解決しないと思うことを申し上げておきたいと思います。

 時間がありませんので、時間外労働についてお伺いをしたいと思います。簡単にお答えいただきたいと思いますが、時間外労働が今二五%割り増しになっておりますけれども、これは事業にとっては、採算ベースからいうとプラスですか、マイナスですか、常用雇用者を雇用するときのパーセントとしては。

日比政府参考人 常用雇用を別に雇う場合との御比較ということであろうと思いますが、現在の二五%というものと、残業を全面的にカットしてそのかわりに人を雇うとき、その比較につきましては、新規雇い入れ分、どの程度の割り増し率になればそれが見合うのか、しかとわかっておりません。ただ、残業手当の二五%というもの、残業時間数次第ということもございますが、恐らく残業手当の二割五分を払っていることの方が、一般的に申し上げますと新たに雇い入れるよりも有利ではなかろうかと推測いたしております。

金子(哲)委員 私はそのとおりだと思います。

 具体的な数字で申し上げますと、例えば今企業主が負担をする雇用保険や年金の問題は、十数%、もうこれで既に企業主が通常の、いわば所定内の給与に対して支払わなければなりません。それで、そのほかに、いわばボーナス等もありますから、当然二五%をはるか超える時点でこれは支払っているわけですね、一月当たりのものは。にもかかわらず、二五%というのはいつまでもある。これは、新規雇用という問題でなくて一人の人が常用雇用のときの状態で考えますと、明らかに企業にとっては時間外労働をさせておいた方が金銭的には有利になるというのが、先ほど民主党の委員からも質問がありましたように、私はそのとおりだと思うんですね。

 その数字がいつまでも二五%で放置をされているというのが、どうしても納得いかないといいますか、これを変えていく。時間外労働をさせた方が企業にとっては不利なんだ、収益上からも不利なんだということをやはりやっていかなきゃいけない。休日の場合は三五%に上がったわけですから、通常の時間外労働も当然、三五%に上げる、五〇%に上げるということができて当たり前だと思うんですね。

 企業が今のように時間外をできるだけたくさんやらせておいた方が有利だというような制度、最低でもそんな制度だけは早くクリアをして、これは政令でも二五%から五〇%の間で時間外の割り増し率が決定をされるわけですから、早期に改善すべきだと思いますけれども、いかがですか。

増田副大臣 割り増し率については、平成十二年十一月の中央労働基準審議会の建議におきまして、割り増し率の現状にかんがみ、当面現行の水準を維持し、一定期間経過後、見直しの必要性について検討することが適当であるとされているところであります。

 御発言の趣旨はよく理解いたしますが、厚生労働省としては、この建議を踏まえ、今後適切に対処してまいりたい、このように思います。

金子(哲)委員 そういう明らかに企業にとって有利になるような制度がこのまま放置をされて、時間外労働を減らしましょうというようなことを幾らお題目のように唱えてみても、実態上として、やはり制度上やっていかなければこの時短促進法だって有効に私は働かないというふうに思いますので、できるだけ早急に検討して、これは、二五%というのはここ一年、二年始まったことじゃなくて、長い期間、四十年も五十年も二五%で一律いったわけですから、諸外国と比べても、お話もありましたようにもう既にかなり低い数字になっておりますから、ぜひ改善をする方向でお願いしたいと思います。

 最後に、そういうことから考えますと、これから時間外労働にかかわる、例えば今上限三百六十時間ということになっておりますけれども、こういったものをもっと引き下げていく、また、先ほど言いました有給休暇の日数をふやしていく、そういった観点からのやはり労働法制上の、労働時間にかかわる法制度をさらに改善していく、そういう方向を、労使間の努力と同時に法制度の改革を通じてやはり時短というものを、これで千八百時間でいいということでないわけですから、進めていくためにはそういうことが必要だと思いますが、最後にそのことだけお聞きをして、終わります。

坂口国務大臣 これから男女の働き方の問題もきちっとしていかなければなりません。そうしたときに、現在の女性の百五十時間といったような問題もあるわけでございまして、これらをこれから同じようにどうしていくかということを、議論をこれからやるわけでございますから、そのときにやはりそうした問題もあわせて行う必要があるというふうに思っております。

金子(哲)委員 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 政府目標である年間総労働時間千八百時間が依然として未達成の現状にある今日、時短促進法を五年間延長することは当然のことと思います。政府は、平成十一年度には年間総労働時間が千八百四十八時間となり、労働時間短縮が着実に進んできていると言っていますが、これは一般労働者にパートタイム労働者を加えて算出した数字であります。一般労働者だけのそれは、平成十二年度で二千二十六時間であります。ぜひ政府は、この実態を直視して、一層、時短促進のための施策を進めることを求めておきたいと思います。

 そこで、きょうは、私は、実際の時短促進のためにも大事な課題の一つであり、隠れた労働時間とも表現できる、いわゆるサービス残業の根絶問題について質問したいと思います。

 サービス残業は、労働基準法三十七条違反であり、同法百十九条一号に該当する犯罪行為であります。これを根絶することは労働行政上の最重要課題の一つだと考えますが、厚生労働大臣の基本的な認識をお聞きいたします。

坂口国務大臣 いわゆるサービス残業につきましては、その多くは賃金未払いという問題でありまして、労働基準法第三十七条において罰則をもって禁止されているものであると認識をいたしております。

木島委員 それで、厚生労働省としてはその根絶のためにどうするんだという基本的な認識を実はお聞きしたわけでありますが、次の質問に移りましょう。

 厚生労働省は、今日、我が国におけるサービス残業の実態をどのように把握しておりましょうか。過去十年間の労働基準法三十七条違反件数について御答弁願います。

 委員長のお許しをいただいて、資料を配付させていただきたいと思います。

 御答弁願います。

日比政府参考人 いわゆるサービス残業でございますが、サービス残業と言われているもの、いろいろあろうかと思います。私ども労働基準行政といたしましては、どこまでも労働基準法の問題としてとらえますので、サービス残業のその多くは賃金の未払いがあるもの、したがいまして、私どもは、労働基準法第三十七条に関しましては、割り増し賃金の未払いというものでとらえております。したがいまして、例えば、御配付いただきました、平成十一年、基準法三十七条違反事業場数一万一千五百二十四となっておりますが、この中でいわゆるサービス残業と言われているものがどの程度かということについては、詳細は把握いたしておりません。

 ただ、先ほど申し上げましたように、割り増し賃金の未払いというものがこれだけあるわけでございますので、これについては指導もしていかなければいけませんし、また、いわゆるサービス残業につきまして、近々それに関しまして通達もし、今後、その三十七条違反ということに加えまして、次第に、それ以上に実態を把握できれば、そういう努力はいたしたいと思っております。

木島委員 労働基準法第三十七条というのは、割り増し賃金を払うべきものを払わなかったというものですね。一般的に賃金未払いと違いますね。この数字が、お手元に配付しておりますように、平成十一年は一万一千五百二十四件、平成二年は七千百三十四件であった。以後、平成三年から平成十年までの数字をずっと並べてあります。

 では、サービス残業という概念も問題ですが、いわゆるサービス残業以外の三十七条違反というのは何があるんですか。

日比政府参考人 いわゆるサービス残業という言葉につきまして明確な定義でお述べいただいている論評、論文等必ずしも多くはないと思いますが、仮に、いわゆるサービス残業と言われているものの中に、職場にはとどまって何らかのことをやっているが使用者の支配従属という形になっていないというものもサービス残業と呼ぶのであれば、それは賃金の未払いの問題からは遠いかもしれない、そういう意味で申し上げました。

木島委員 よくわからぬ答弁でありますが、要するに三十七条違反は、割り増し賃金を払うべきものを払っていない。この条文はそれ以外に休日労働とか深夜労働で払うべき賃金を払わないものも入るんでしょうが、基本は、残業、割り増し賃金を払うものを払っていないという数字であろうかと思います。

 そこで、では次に聞きますが、平成十一年で一万一千五百二十四件厚生労働省が把握したわけですが、これ自体大変な数字でありますが、これはどんな調査で把握したものなのか、御答弁願います。

日比政府参考人 この一万一千五百二十四という数字は、労働基準監督署が現実に監督指導した件数、これが、ここにございませんが、総数十四万六千百六十、この中でこの一万一千有余の違反があった。これは監督指導件数の内数でございます。

木島委員 その具体的な中身、日本に総事業所数が幾つぐらいあって、幾つぐらいの事業所に対して調査、監督指導したのか、その内訳を答弁してください。

日比政府参考人 平成十一年で申し上げます。

 労働基準法のいわば監督対象となります事業場数、総数が四百五十五万七千六百二十六、そのうち、定期監督を実施した事業場数が先ほどの十四万六千百六十でございます。

木島委員 そうすると、この一万一千五百二十四件というのは、定期監督を実施した十四万六千百六十、その事業所から見つけ出された、基本的にそう聞いていいんですか。

日比政府参考人 そのとおりでございます。

木島委員 そうしますと、事業所総数が四百五十万ある、それで大体十四万六千事業所を調査した、その結果、一万一千五百二十四件の労働基準法三十七条の違反が見つかった、そして監督指導したと。事業所総数は実際三十倍ですね。そうすると、これから、数字の上で逆推測いたしますと、三十倍、大体三十四万数千件、三十万以上の労働基準法第三十七条違反事業場があるのかもしらぬ、そういうすさまじい数字になるんですね。驚くべき労働基準法三十七条の遵守状況だと私は思うんです。

 さて次に、それでは、この三十七条違反事業場数のうち、労働基準法第百十九条違反として司法処分に付された件数は幾つか、資料も配付しておりますが、厚生労働省から御答弁を願います。

日比政府参考人 三十七条違反ということで送検した件数は、平成十一年の場合九件でございます。

 なお、先ほど三十倍というお話がございましたが、先ほども申し上げましたように、これは要するに監督指導した事業場数のうちでございまして、私ども、監督指導は無作為抽出で事業場を選んでいるのではございませんで、基準法違反が多いだろうというところ、そこにできるだけ絞ってやっておることを申し添えたいと存じます。

木島委員 しかし、定期監督という言葉を先ほどあなたは答弁しましたね。ですから、全く無作為に抽出じゃないのは理解はしても、実際に定期監督で入ったらこれだけの数字をつかまえたというわけですから、まあ単純に三十倍というのはともかくとして、これ以外に莫大な法三十七条違反の案件があるということは否定できないことだと思うんです。まあ局長も首を立てていますから答弁は求めませんが。

 これだけの数の労基法三十七条違反がある。これは百十九条違反として刑事罰が付せられるべき違反だ。しかし、実際に厚生労働省が、労働基準監督署が司法処分に付した件数が、平成十一年で九件、一覧表に書かれておりますように、平成二年八件以後、三件、六件、十一件、六件、六件、九件、九件、六件です。第一枚目の配付表にあるように、違反件数は、平成二年から平成十年まで大体七千件、六千件から多くて一万件。余りの落差の大きさに私は愕然とするんですが、なぜ司法処分件数がこんなに少ないんでしょうか。どんな基準で司法処分に付しているんでしょうか。

日比政府参考人 ただいま、実際の送検の数、比率、非常に低いじゃないかということが前提になっておられると思いますので、これはまず、違反状態に対しましては、私ども、労働者の権利救済をまず第一に考えますので、行政指導としまして、使用者に対して、割り増し賃金の支払い等について法違反状態の是正をまず求めております。その上で、法違反を是正することなく同じような違反を繰り返すとか、悪質な事業場に対しましては司法処分に付する、つまり送検をするということにいたしておりまして、その関係で司法処分の件数と監督指導の違反件数については乖離がございます。

 なお、この乖離も、三十七条違反である場合と他の例えば賃金支払いそもそもの違反では、実は送検率は非常に大きく異なっておりまして、例えば平成十一年ですと、三十七条違反のものの送検率は〇・〇七%にとどまりますが、賃金支払い、二十四条違反ですと三四・一%になっております。これは、賃金支払いですと、倒産その他、後の救いようがなくなる、是正を求めても現実是正が行われないというようなことにつきましては当然送検というようなことを考えますが、割り増し賃金の場合には、比較的といいますか、もともと未払いをやっておるわけですから擁護する必要は毛頭ございませんけれども、是正されていることが比較的多いというようなことを反映していようかと思っております。

木島委員 今の答弁の姿勢こそが、私は問題ですね。賃金未払い事件の送検率三四・一%。一方、三十七条、残業ですよ。そうでしょう。決められた労働時間を超えて残業をする、その残業に対して賃金が払われない、割り増し賃金が払われない。それに対する送検率が〇・〇七。理由にならぬと思うんですね。

 今局長は、繰り返しやったもの、それから悪質なものと二つだけ言いましたが、基準、もっときちっと言ってください。どんな基準があるんですか。そういうマニュアルはあるんでしょう。

日比政府参考人 司法処分を行うというのは、私どもでは、一つは重大な法違反、二つにはたび重なる法違反、それから三つには、明らかに故意に行われた法違反、そういうものについて、その事案に応じますが、司法処分に付しているところでございます。

木島委員 もう時間が迫っていますから、質問、これでこの問題は打ち切りますが、ぜひ、そういうマニュアルがあるはずですから、当厚生労働委員会に提出されんことを求めておきます。後で、委員会で取り計らっていただきたい。いいですか。

鈴木委員長 理事会で協議いたします。

木島委員 昨年十一月三十日、中央労働基準審議会は、労働時間短縮のための対策について建議を労働大臣に提出しました。サービス残業の解消については、「始業、終業時刻の把握に関して、事業主が講ずべき措置を明らかにした上で適切な指導を行うなど、現行法の履行を確保する観点から所要の措置を講ずることが適当である。」と指摘されております。厚生労働大臣は、三月十五日の衆議院本会議での私の質問に答えて、近々通達を出すと答弁をいたしました。いつどんな通達を出すのか、明確なる答弁を求めます。

坂口国務大臣 厚生労働省といたしましては、この建議を踏まえまして、使用者が労働者の労働時間を適正に把握する責務があることを改めて明確にしまして、使用者が講ずべき措置として、タイムカードでありますとかICカードの客観的な記録により、労働者の労働日ごとの始業、終業時刻の確認及び記録をすることについて通達を出したい、そしてその通達は、まず四月上旬、四月初めというふうに思っております。

木島委員 その本会議で、私は、サービス残業の解消を本当に実現できるか否かのかぎは、企業による就業時間管理、始業、終業、就業時間管理が正確に行われるかどうか、行われたかどうかを労働者がチェックできる仕組みをつくることだ、こういう質問をして、厚生労働大臣の答弁を求めたんですが、残念ながら、さきの本会議ではその部分についての答弁はありませんでした。企業の時間管理に対して労働者がチェックする仕組みをつくること、それがかぎなんだということを私は主張したんですが、改めてここで答弁を求めたいと思うのです。

日比政府参考人 先生御指摘の労働者がチェックする仕組みということでございます。

 私ども、建議を受けまして考えておりますのは、まず適正な時間管理、適正に時間を把握するというのは、使用者の義務といいますか責務であるというふうに考えております。したがいまして、始業、終業時刻の把握に関しまして、使用者が講ずべき措置ということを徹底いたしまして、先ほど申し上げました、使用者は労働時間を適正に管理する義務を負っているということ、これをきちんと果たさせる。そういうことになりますと、結果といたしましては、労働者がわざわざチェックする、そのチェックするのが悪いと言っているわけじゃございませんが、わざわざチェックする仕組みをつくらなくても問題が起こらないようにする、それだけの責任を使用者に果たしていただく、これが基本であろうと思っております。

木島委員 もう時間だから終わります。しかし、今の答弁のように、使用者の責務だけを主張していたって事態は前進しない、改善されないというところに問題がある。

 最後に私は、では、サービス残業根絶のために次の五つを緊急にやるべき課題として提唱します。もう答弁は求めずに終わりたいと思います。

 一つ、労働者の事業場への入退室を正確に把握するために、今答弁ありましたが、タイムカードの設置を義務づけること。二つ、タイムカードが労働の実態を正しく反映するように事業者への指導を徹底すること。三つ、労働者による事業者の労基法三十七条違反に対する労働基準監督署への申告を勧奨するために、奨励するために、監督署にサービス残業一一〇番をぜひ設置すること、設置してほしいということ。そして四つ目に、監督署による調査を徹底して行うこと。そして五つ目に、三十七条違反に対しては是正措置の徹底を図ることは当然です。しかし、それにとどまらず、これは刑事罰に係る違法なんですから、司法処分をきちんと求める。そのために、現在の司法処分を求めるマニュアルが不十分であれば、それを厳しく改正するということも含めて、毅然とした対応をサービス残業根絶のためにとるべきことが今求められているんじゃないか、そのことを申し上げまして、時間ですから終わりにしたいと思います。

鈴木委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、本案に対し、森英介君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。鍵田節哉君。

鍵田委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさえていただきます。

    労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、累次の経済計画における国際公約ともなっている年間総実労働時間千八百時間が未だ達成されていないことも踏まえ、一日も早く国民がゆとりと豊かさを実感できる社会を実現できるよう、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 政府目標である年間総実労働時間千八百時間を実現するため、関係省庁間の連携・協力を一層強化し、本法に基づく実効性ある労働時間短縮推進計画を策定し、政府の強い指導により労働時間短縮対策を総合的に推進すること。

 二 時間外労働を削減するため、限度基準に基づく指導に努めるとともに、「所定外労働削減要綱」について、実効性を高めるよう見直しを行い、これに基づく周知を行うこと。また、いわゆる「サービス残業」は違法であることから、労働時間管理の徹底を指導するなど、監督行政による重点的な監督指導を行うこと。

 三 男女共同参画社会に向けた新しい働き方の実現のための時間外労働の限度基準の見直し、並びに、時間外・休日及び深夜労働の割増率の水準の見直しについて、検討を行うこと。

 四 年次有給休暇の取得率向上に向けて、長期休暇制度の普及促進等実効性ある施策を行うこと。

 五 本年四月一日より一週四十四時間に短縮される特例措置対象事業場を含め中小零細企業における労働時間短縮の促進のための環境整備その他必要な援助等を行うこと。

 六 変形労働時間制、及び裁量労働制の運用にあたっては、長時間労働にならないよう適切な監督指導を実施し、制度の趣旨を踏まえた適正な労働条件の確保を図るものとすること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

鈴木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。

坂口国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鈴木委員長 次に、内閣提出、経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

坂口国務大臣 ただいま議題となりました経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 現在、雇用情勢は依然として厳しい状況にあり、産業構造の転換等経済社会の変化が進む中で、労働者が離職を余儀なくされる場合の円滑な再就職を可能とするとともに、労働者個人の自発的な能力開発を促進するなどにより、職業生活の全期間を通じてその職業の安定を図ることが重要となっております。

 そのため、政府といたしましては、必要な施策を整備充実するため、本法律案を作成し、ここに提出した次第であります。

 次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。

 第一に、特定不況業種等関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法の廃止であります。

 特定の業種にかかわらず離職を余儀なくされる労働者について円滑な再就職を促進するための施策を講ずることを踏まえ、同法を期限どおり平成十三年六月三十日をもって廃止することとしております。

 第二に、雇用対策法の一部改正であります。

 事業規模の縮小等を行おうとする場合に、事業主は、再就職援助計画を作成し、公共職業安定所長の認定を受けなければならないものとするとともに、政府は、認定を受けた計画に基づき対象労働者の再就職援助のための措置を講ずる事業主に対し必要な助成及び援助を行うこととしております。

 また、特に中高年齢者の再就職を促進するため、事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときは、労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努めなければならないものとすることとしております。

 第三に、職業能力開発促進法の一部改正であります。

 労働者の職業生活の設計に即した自発的な職業能力開発を促進するため、関係者の責務及び事業主が必要に応じて講ずる措置を定めるとともに、技能検定試験に関する業務を行わせることができる民間試験機関の範囲及び当該民間試験機関に行わせることができる業務の範囲の拡大を通じて、職業能力評価制度を整備することとしております。

 第四に、雇用保険法の一部改正であります。

 雇用安定事業として、離職を余儀なくされる労働者の再就職を促進するために必要な措置を講ずる事業主に対して、必要な助成及び援助を行うことができるものとすることとしております。

 第五に、地域雇用開発等促進法の一部改正であります。

 地域の主体性を最大限に生かしつつ、就職の促進その他の地域雇用開発を図る観点から新たに整理した雇用機会増大促進地域等四つの地域区分について、都道府県が策定する計画を厚生労働大臣が同意し、当該計画に基づき対策を講ずる方式に改めることとしております。

 第六に、特定不況業種等関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法の廃止に伴い必要となる経過措置を定めるとともに、その他所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律は、一部を除き、平成十三年十月一日から施行することとしております。

 以上、経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律案の提案理由及びその内容の概要について御説明申し上げました。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

鈴木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十七分散会




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