衆議院

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第9号 平成13年4月6日(金曜日)

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平成十三年四月六日(金曜日)

    午前九時四十分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 谷畑  孝君 理事 森  英介君

   理事 吉田 幸弘君 理事 大石 正光君

   理事 鍵田 節哉君 理事 福島  豊君

      奥山 茂彦君    上川 陽子君

      鴨下 一郎君    木村 義雄君

      北村 誠吾君    熊代 昭彦君

      田中眞紀子君    田村 憲久君

      竹下  亘君    西川 京子君

      林 省之介君    松島みどり君

      三ッ林隆志君    宮腰 光寛君

      宮澤 洋一君    森山 眞弓君

      吉野 正芳君    家西  悟君

      大島  敦君    加藤 公一君

      金田 誠一君    鎌田さゆり君

      釘宮  磐君    古川 元久君

      三井 辨雄君    水島 広子君

      山井 和則君    青山 二三君

      江田 康幸君    樋高  剛君

      小沢 和秋君    木島日出夫君

      阿部 知子君    中川 智子君

      小池百合子君    川田 悦子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働大臣政務官    奥山 茂彦君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 木村 幸俊君

   政府参考人

   (国税庁調査査察部長)  金井 照久君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  三井 辨雄君     鎌田さゆり君

同日

 辞任         補欠選任

  鎌田さゆり君     三井 辨雄君

    ―――――――――――――

四月三日

 確定給付企業年金法案(内閣提出第三四号)

同月五日

 社会保障の拡充に関する請願(土屋品子君紹介)(第一〇二〇号)

 同(中沢健次君紹介)(第一〇二一号)

 同(大谷信盛君紹介)(第一〇七二号)

 同(堀之内久男君紹介)(第一〇七三号)

 同(水島広子君紹介)(第一〇七四号)

 同(大森猛君紹介)(第一一六二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一六三号)

 同(吉野正芳君紹介)(第一一六四号)

 食品の安全を確保するための、食品衛生法の改正と充実強化に関する請願(浅野勝人君紹介)(第一〇二二号)

 同(植竹繁雄君紹介)(第一〇二三号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第一〇二四号)

 同(久保哲司君紹介)(第一〇二五号)

 同(菅原喜重郎君紹介)(第一〇二六号)

 同(滝実君紹介)(第一〇二七号)

 同(菱田嘉明君紹介)(第一〇二八号)

 同(前田雄吉君紹介)(第一〇二九号)

 同(奥野誠亮君紹介)(第一〇七五号)

 同(川崎二郎君紹介)(第一〇七六号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第一〇七七号)

 同(木村隆秀君紹介)(第一〇七八号)

 同(木村義雄君紹介)(第一〇七九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇八〇号)

 同(左藤章君紹介)(第一〇八一号)

 同(達増拓也君紹介)(第一〇八二号)

 同(中村哲治君紹介)(第一〇八三号)

 同(西川公也君紹介)(第一〇八四号)

 同(蓮実進君紹介)(第一〇八五号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第一〇八六号)

 同(前田雄吉君紹介)(第一〇八七号)

 同(水島広子君紹介)(第一〇八八号)

 同(粟屋敏信君紹介)(第一一三六号)

 同(河村建夫君紹介)(第一一三七号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第一一三八号)

 同(黄川田徹君紹介)(第一一三九号)

 同(小林憲司君紹介)(第一一四〇号)

 同(中林よし子君紹介)(第一一四一号)

 同(前田雄吉君紹介)(第一一四二号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第一一六五号)

 同(岸本光造君紹介)(第一一六六号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第一一六七号)

 同(田村憲久君紹介)(第一一六八号)

 同(前田雄吉君紹介)(第一一六九号)

 同(増原義剛君紹介)(第一一七〇号)

 同(森岡正宏君紹介)(第一一七一号)

 無認可保育所への公的助成等に関する請願(鍵田節哉君紹介)(第一〇三〇号)

 保育・学童保育予算の大幅増額に関する請願(原陽子君紹介)(第一〇三一号)

 視覚障害者のパソコンと周辺機器・ソフトの購入への公的助成に関する請願(遠藤武彦君紹介)(第一〇三二号)

 同(田村憲久君紹介)(第一〇三三号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一〇三四号)

 同(阿部知子君紹介)(第一〇八九号)

 同(金田誠一君紹介)(第一〇九〇号)

 同(上川陽子君紹介)(第一〇九一号)

 同(川田悦子君紹介)(第一〇九二号)

 同(熊代昭彦君紹介)(第一〇九三号)

 同(谷畑孝君紹介)(第一〇九四号)

 同(古川元久君紹介)(第一〇九五号)

 同(三ッ林隆志君紹介)(第一〇九六号)

 同(水島広子君紹介)(第一〇九七号)

 同(宮腰光寛君紹介)(第一〇九八号)

 同(森山眞弓君紹介)(第一〇九九号)

 同(鍵田節哉君紹介)(第一一四三号)

 同(木村義雄君紹介)(第一一四四号)

 同(小池百合子君紹介)(第一一四五号)

 同(吉田幸弘君紹介)(第一一七四号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(安住淳君紹介)(第一〇三五号)

 同(遠藤武彦君紹介)(第一〇三六号)

 同(尾身幸次君紹介)(第一〇三七号)

 同(鹿野道彦君紹介)(第一〇三八号)

 同(鍵田節哉君紹介)(第一〇三九号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第一〇四〇号)

 同(川田悦子君紹介)(第一〇四一号)

 同(岸本光造君紹介)(第一〇四二号)

 同(久保哲司君紹介)(第一〇四三号)

 同(小池百合子君紹介)(第一〇四四号)

 同(小西哲君紹介)(第一〇四五号)

 同(今野東君紹介)(第一〇四六号)

 同(左藤章君紹介)(第一〇四七号)

 同(佐藤静雄君紹介)(第一〇四八号)

 同(佐藤敬夫君紹介)(第一〇四九号)

 同(坂本剛二君紹介)(第一〇五〇号)

 同(田村憲久君紹介)(第一〇五一号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第一〇五二号)

 同(近岡理一郎君紹介)(第一〇五三号)

 同(土屋品子君紹介)(第一〇五四号)

 同(徳田虎雄君紹介)(第一〇五五号)

 同(虎島和夫君紹介)(第一〇五六号)

 同(中川正春君紹介)(第一〇五七号)

 同(中田宏君紹介)(第一〇五八号)

 同(原田昇左右君紹介)(第一〇五九号)

 同(細川律夫君紹介)(第一〇六〇号)

 同(前原誠司君紹介)(第一〇六一号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一〇六二号)

 同(御法川英文君紹介)(第一〇六三号)

 同(水島広子君紹介)(第一〇六四号)

 同(宮腰光寛君紹介)(第一〇六五号)

 同(山口俊一君紹介)(第一〇六六号)

 同(山井和則君紹介)(第一〇六七号)

 同(山元勉君紹介)(第一〇六八号)

 同(稲葉大和君紹介)(第一一〇〇号)

 同(大森猛君紹介)(第一一〇一号)

 同(金田誠一君紹介)(第一一〇二号)

 同(上川陽子君紹介)(第一一〇三号)

 同(木島日出夫君紹介)(第一一〇四号)

 同(熊谷弘君紹介)(第一一〇五号)

 同(熊代昭彦君紹介)(第一一〇六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一〇七号)

 同(佐藤剛男君紹介)(第一一〇八号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一〇九号)

 同(島聡君紹介)(第一一一〇号)

 同(達増拓也君紹介)(第一一一一号)

 同(津島雄二君紹介)(第一一一二号)

 同(西村眞悟君紹介)(第一一一三号)

 同(野田聖子君紹介)(第一一一四号)

 同(萩野浩基君紹介)(第一一一五号)

 同(原口一博君紹介)(第一一一六号)

 同(春名直章君紹介)(第一一一七号)

 同(日野市朗君紹介)(第一一一八号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第一一一九号)

 同(藤井孝男君紹介)(第一一二〇号)

 同(藤木洋子君紹介)(第一一二一号)

 同(細川律夫君紹介)(第一一二二号)

 同(堀之内久男君紹介)(第一一二三号)

 同(松島みどり君紹介)(第一一二四号)

 同(松宮勲君紹介)(第一一二五号)

 同(村田吉隆君紹介)(第一一二六号)

 同(持永和見君紹介)(第一一二七号)

 同(森山眞弓君紹介)(第一一二八号)

 同(八代英太君紹介)(第一一二九号)

 同(山崎拓君紹介)(第一一三〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一一三一号)

 同(甘利明君紹介)(第一一四六号)

 同(遠藤和良君紹介)(第一一四七号)

 同(大畠章宏君紹介)(第一一四八号)

 同(木村義雄君紹介)(第一一四九号)

 同(黄川田徹君紹介)(第一一五〇号)

 同(谷垣禎一君紹介)(第一一五一号)

 同(谷本龍哉君紹介)(第一一五二号)

 同(江田康幸君紹介)(第一一七五号)

 同(加藤紘一君紹介)(第一一七六号)

 同(北村誠吾君紹介)(第一一七七号)

 同(古賀正浩君紹介)(第一一七八号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第一一七九号)

 同(高橋嘉信君紹介)(第一一八〇号)

 同(古屋圭司君紹介)(第一一八一号)

 同(吉川貴盛君紹介)(第一一八二号)

 同(吉田幸弘君紹介)(第一一八三号)

 介護保険の改善と高齢者の医療費負担増の中止に関する請願(大幡基夫君紹介)(第一一六一号)

 介護保険と国民健康保険の改善、医療保険の改悪中止に関する請願(小沢和秋君紹介)(第一一七二号)

 年金制度の改善、安心して暮らせる老後の保障に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第一一七三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 確定給付企業年金法案(内閣提出第三四号)




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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、確定給付企業年金法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 確定給付企業年金法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

坂口国務大臣 ただいま議題となりました確定給付企業年金法案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 我が国は、少子高齢化の進展、産業構造の変化等、社会経済情勢が大きく変化しており、公的年金に上乗せして給付を行う年金制度につきましても、このような変化に対応することが要請されております。

 この法律案は、確定給付型の企業年金について、給付の保護等を図る立場から、労使の自主性を尊重し、統一的な枠組みのもとに制度の整備を行うものであります。これにより、公的年金を土台として、確定拠出年金とともに国民の自主的な努力を支援する仕組みとするものであります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、確定給付企業年金は、事業主が、労使で合意した規約に基づき、信託会社、生命保険会社等と年金資金を積み立てる契約を締結するか、または、事業主とは別法人の企業年金基金を設立することにより実施することとしております。

 第二に、給付は、加入者が老齢になった場合及び脱退した場合に支給するものとしているほか、障害を受けた場合または死亡した場合にも支給することができることとしております。

 第三に、加入者の受給権保護等を図る観点から、将来にわたって約束した給付が支給できるよう、約束した給付に見合う積立金を積み立てなければならないものとするとともに、企業年金の管理または運営にかかわる者の責任や行為準則を明確化するほか、年金規約の内容を従業員に周知し、企業年金の実施状況について加入者に情報開示することとしております。

 第四に、確定給付企業年金相互や、厚生年金基金、確定拠出年金との間での移行ができることとしております。

 最後に、確定給付企業年金に係る給付、掛金及び積立金について、各税法で定めるところにより、税制上必要な措置を講ずることとしております。

 なお、この法律の施行日は、一部の事項を除き、平成十四年四月一日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決していただきますようお願いを申し上げたいと思います。

鈴木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省大臣官房審議官木村幸俊君、国税庁調査査察部長金井照久君及び厚生労働省年金局長辻哲夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小池百合子君。

小池委員 おはようございます。

 確定給付企業年金法につきまして御質問をさせていただきます。

 私は、この企業年金ということに大変興味を持って、これまでもさまざまな勉強もさせていただいてまいりました。このたび、この確定給付企業年金、そしてこの後で確定拠出企業年金ということで、結果的に国会運営の立場から個々に審議が行われることになったわけでございますが、本来は、給付と拠出は非常に密接に関係があり、お互いに補完し合うものでございますので、本当は質問者といたしましてもまとめて御質問をさせていただきたかったというのが正直なところでございます。

 いずれにいたしましても、米国の場合ですと、ERISA法というものから全体的な包括的なシステム設計があり、その中で給付と拠出とそれぞれの考え方、さらにその二つそれぞれのシステム設計がありということでトータルに進んでいるわけでございまして、その意味で、今回、ともに企業年金の改革がトータルで行われたということは大変喜ばしい、まずは新たな出発点に立ったのかなというふうに考えておりまして、これまでのこの積み重ねに対しての御労苦に心から敬意を表したいというふうに思っております。

 ということで、まずこの企業年金の問題に、私自身も非常に驚いたといいましょうか、惨たんたる状況について興味を持った、古くは平成六年の日本紡績ですか、ここの企業年金の破綻と申しましょうか、そういったことから次々とまるで小さなぼやがあちこち燎原の火のように広がって、そして、企業年金の限界と申しますか、それを露呈してきた。さらには、株価の低迷そして超低金利ということで、二重三重の問題を抱えているのが現状だと認識をいたしております。

 そしてまた、最近の個人消費の低迷。きょうは新聞に、子供たちがキレるだけでなくて四十九歳の年齢の人が一番キレる、犯罪が一番多いなどという記事も載っておりましたが、これら消費の低迷、そしてこういった社会秩序の不安定さ、こういったものは、やはり将来に対しての漠然たる不安というのがそこの根っこにあるということはだれもが今感じているところでございます。

 その意味でも、産業構造が変わり、そしてこれまでの終身雇用制度が変わり、さらには永遠にあるであろうと思われた企業そのものが倒産をしていく、そしてまた合併をする、再編をする、本当に大変流動的な時代になった。

 そういった意味で、拠出の部分ですと特にポータブル化、今回の給付でもポータブル化ということも進められている。幾つかのポイントが今回の改正ということに含まれているわけでございますが、まず、せっかくきょうはトップバッターに立たせていただいておりますので、この企業年金改正、特に給付ということにつきまして大きな目的とねらい、そしてまた、一番のポイントは受給権の保護でございますけれども、それに対しての改革について御説明をちょうだいできればと思います。

辻政府参考人 まず、法案の目的、ねらい、受給権保護、こういったポイントについて御説明を申し上げます。

 現行の確定給付型の企業年金、これは、厚生年金基金、適格退職年金、この二つのタイプがございますが、近年の今御指摘のような厳しい経済環境のもとで、企業倒産の際に年金資金が十分に確保されていないといった事例も出てきておりまして、受給権保護のための制度整備が必要であるという背景のもとで、積み立て義務を中心といたします受給権保護を図るための措置を今回統一的に定める、そして確定給付型の企業年金を再編成し、国民に信頼される制度として再構築しようとするものでございます。

 特に、御指摘の受給権保護につきましては、まず、将来にわたって確定給付ということで約束した給付が支給できるように、年金資産の積み立て基準を設定いたしまして、積み立て不足の場合には掛金の追加拠出を行って一定期間内に不足金の解消を図るといったルールを整備いたしまして、そして、そのもとでの企業年金の管理運営にかかわる者について、加入者に対する忠実義務などの責任、あるいは利益相反取引の禁止といった行為準則を明確化して的確な管理運営を行っていただき、なおかつ、事業主等は年金規約の内容を従業員に周知して、財務状況について加入者への情報開示を行う、こういったことにより受給権の保護を図ろうとするものでございます。

小池委員 受給権保護、つまり、これまで参加していてももらえないんじゃないかというような大変な恐怖というか、これまで積み立てをしている意味がなくなるというようなことにまでつながるわけでございますが、その意味で、今回の改正がこの受給権の保護、それを第一に考えておられるというのは、これはもう当然必要なことかと考えています。

 そして、先ほども少し述べさせていただきましたけれども、今回のこの給付の部分と拠出の部分とで、そして全体の設計の中でということでございますけれども、私は、この拠出年金、給付がだめだから拠出があるさということには、そう話は簡単なことではないということは承知をいたしております。

 また、先に既に始めているアメリカなども、きのうはナスダック、そしてニューヨーク市場、それぞれ大変な上げを演じたわけでございますけれども、これも大変不確定という中で、四〇一kの参加者にとっては、急にそこから退場できないだけに、冷や冷やどきどきといったようなことでもあろうかと思います。

 しかし、いずれにせよ、選択肢をふやすという意味で、また、さらには特に新しい産業を始めるに当たりまして、こういった年金制度をきっちりするということがよき人材の確保にもつながるという企業側の論理もございますし、また一方で、勤める側といたしましても、これだけの企業合併等々が頻繁に起こるような中では、そのポータビリティーというのが大変重要だということで始まっているわけでございます。

 今回の企業年金の改革、そしてまた今申し上げました確定拠出年金の導入、これはともに必要な改革だと思うわけでございますけれども、こうして上乗せの年金制度を充実する、そして整備をするということで、老後の所得保障の基本であります公的年金の一層の水準の引き下げ、これを意図しているんじゃないかというようなうがった見方もあるかと思います。この辺のところを改めて確認だけさせてください。

辻政府参考人 まず、公的年金についてでございますけれども、少子高齢化が大変進んでいく中で、将来世代の過重な負担を防ぐとともに確実な年金を約束するという考え方のもとで、昨年、公的年金制度の長期的な安定を図るための年金改正を行っていただいたところでございます。

 今回提出いたしております二法案は、その上乗せの私的年金の整備充実を図ることを目的としておりまして、公的年金の縮小や水準切り下げといったものは全く意図されているものではございません。

小池委員 そうあるべきというか、そうしてもらわないと困るわけでございます。

 そしてまた、この年金制度、これまで大変複雑でございました。それを主管する官庁も縦割りでございましたし、そしてまた、受け取る側も、受け取る側とすれば年金で将来の保障ということにつながれば、それはどういうものであっても同じことではございますが、非常に複雑で、三階建てというふうな形になっていたわけでございます。

 全国民共通である基礎年金、そして報酬比例に対応した厚生年金、共済年金、そして厚生年金の上乗せ部分としての年金基金という三階建てであるわけでございますけれども、ずっと経済戦略会議の文章をフォローいたしておりますと、将来の年金制度といたしまして、公的年金は基礎年金に限定して、それ以外は民営化すべきだというような御意見を明確に述べておられます。これまでも、厚生省の審議会の方では、幾つか、五つぐらい併記したり、それで一体どうなんだという結論が見えていない。多くの部分は政治がそれを判断するということを迫られているというふうには思うわけでございますが、今申し上げました経済戦略会議でのやりとりでございますね、つまり、それ以外の部分は民営化すべきという案、これについてはどういうスタンスでおられるのか、伺わせてください。

桝屋副大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 最初に、大臣が実は国会の対策でちょっと席を外しております。おわびを申し上げたいと思います。

 厚生労働省といたしまして、やっとこの年金の二法のうち一つの審議に入っていただいたわけでありまして、委員初め理事の皆様の御努力に心から感謝を申し上げたいと思います。

 今委員からお話がありました公的年金につきましては、高齢者の生活の基本部分を終身にわたって確実に支えるということが公的年金の役割であります。委員からもお話がありましたように、老後生活の基礎的費用を賄う基礎年金を全国民共通の給付として保障する、あわせまして、被用者に対しましては、退職後に賃金収入がなくなるわけでありますから、これを配慮しまして、報酬比例の年金を保障する、両者を合わせて、公的年金として、現役世代の手取り年収のおおむね六割を確保するということで公的年金が動いているわけであります。

 委員からお話のありました経済戦略会議の報告、この中で、公的年金を基礎年金のみにする、そして報酬比例部分は民営化したらどうだ、こういうお話でありますが、民営化した年金では、物価や賃金の変動に対応しまして実質的な価値を維持した給付を終身にわたって保障することはなかなか難しい、困難ではないかという点もあります。それから、企業年金のない中小企業などに勤めるサラリーマンの高齢期における所得保障、これが基礎年金のみになりかねない、こういうこともあるわけでありまして、大きな問題があるというふうに考えているところであります。

 私ども厚生労働省といたしましては、将来の年金制度につきましては、高齢者の生活の基本部分を将来にわたり確実に支える役割を担う公的年金については、社会保険方式を基本としながら、保険料負担と国庫負担を適切に組み合わせて、その安定的な運営に努めていきたいとともに、これを補完し、多様化する老後のニーズにこたえる企業年金など私的年金の普及、育成にも努めることによりまして、将来にわたって安定し、安心できる年金制度の構築に努めていきたい、このように考えているところでございます。

小池委員 今最後におっしゃいました私的年金を進めていくということですが、具体的にはどういうことを考えておられるのか、伺わせてください。

辻政府参考人 私的年金の概念でございますが、公的年金は世代間扶養といった考え方のもとでの仕組みのものであるのに対しまして、私的年金、すなわち私的な積み立てたもの、そして積み立てたものが運用されて給付に回る、こういった私的な原理に基づく年金ということで、現時点においては、先ほど申しました二つのパターンの企業年金、そして御指摘のあります、もう一つ新たなものとして、確定拠出の企業年金、こういったものを指しております。

小池委員 その私的年金の中での今回の改正でございますけれども、規約型とそして基金型の二つのタイプの創設ということでございます。そして、将来的にはこの規約型と基金型、そして今の厚生年金基金の三つの存在ということになるわけでございますけれども、最初に申し上げた二つの新規のタイプの創設の意義、そしてこの三つが併存するということ、それぞれの役割について整理をしてお答えください。

辻政府参考人 まず、今回の新企業年金、いわば今回の法案に基づきます新たな企業年金、規約型企業年金、基金型企業年金がございます。

 規約型企業年金は、まず労使が合意した年金規約に基づきまして、事業主と信託会社、生命保険等の資産管理運用機関との間で契約を締結いたしまして、事業主、母体企業の外で年金資産を管理運用し、年金給付を行うものでございます。一方、基金型企業年金、これは、母体企業とは別の法人格を持った企業年金基金というものを労使合意に基づいて設立した上で、その基金において年金資産を管理運用し、年金給付を行うものでございます。

 この規約型と基金型の関係でございますが、規約型は、単独の企業が企業年金を実施するには適しておりますが、例えば、中小企業の一定の集団を母体として企業年金を実施する場合のように複数の企業が集まって実施する場合、事業主全員の同意が必要であるといったことなど、意思決定手続で大変煩瑣、非効率な面が出てまいります。このため、母体企業とは別の法人格で、理事会、代議員会などの意思決定の仕組みを持った基金型企業年金が必要として設けられたものでございます。

 一方、御指摘の厚生年金基金でございますが、これは、厚生年金の、終身にわたって給付するという終身年金の給付に上乗せして一定以上の水準の給付を一体的に行うものでございますが、やはり、老後の生活設計という面では、この終身年金を基本とする厚生年金基金についての信頼感は大きいものがあると考えます。

 このようなことから、企業独自の年金として終身年金を行うという特徴を持った、そして厚生年金の代行を行うということによってスケールメリットもある、こういった厚生年金基金についてはなお意義があるものと考え、この三つの形というものを用意いたしまして、このような選択肢について、個別企業の事情などに応じて適切な選択ができるようにしようとするものでございます。

小池委員 これまでの企業年金、厚生年金基金の形態はさまざまでございました。大きな一社で運用する、そしてまた組合で、組合というか同業の人たちで運用するといったような形でございますが、今回、そういった意味で、プロがもっと入ってくるということになってくる。ただ、最近、そのプロというのが、どうもプロ自身がこけたりもしておりますので、それも非常に、どこまで信頼ができるのか、このあたり言い出しますと全く切りもないわけでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、これまでの企業年金、年金基金の担当者たるものや、中には本当に大丈夫かしらというような部分もございましたでしょうし、また、担当者がころころとかわるといったようなこともあったかと思います。目的は、将来みんなでお互いに保障し合うというような部分の意味でこの給付があるわけでございますから、冒頭にありました受給権の保護ということを達成できる最善の方法ということを、これからもよくバックアップしていくための法律になればというふうに思っております。

 また一方で、今回のこの法案の中にも情報開示という点がございました。いきなり突然、積み立て不足で解散しますと言われると、これは大変な騒ぎでございます。また、よく生命保険とかそういったものについては、大体規約というのはほとんど読めない字で書いてあって、ただやっていますよという証拠を残すためぐらいの不親切さがございます。今それぞれの運用がどうなっているのか、そして今後、これからこの組合についてはどうなんだ、基金についてはどうなんだという、本当に、情報開示をしっかりやることがある意味では安心につながる。その結果として、もっと不安になったりするかもしれませんが。しかしながら、情報開示の義務をより明確にしたという点では、今回の改正というのはまさに必要な事項を盛り込んでおられると考えるわけでございます。

 この情報開示をさらに強化されるというその目的、そして効果ということについて伺わせていただきたいと思います。

辻政府参考人 これまで、受給権保護に関しまして、制度によりましては、制度の積み立て状況はどうなっているか、あるいは、場合によっては制度を廃止したかどうかといったことさえ知らされないといったことがございました。その点、今回、企業年金におきまして、従業員が自分の会社の制度の内容をまず十分あらかじめ理解している、そして企業年金の実施状況について十分な情報を得るということが保障される、そういうような義務規定が入っております。

 具体的には年金規約ということで、先ほど申しました。年金規約に基本的な権利関係はすべて載せておるわけですけれども、この規約の内容を事業主は従業員に周知しなければならない。それから、御説明申しました積み立て基準に対してどのようになっているかといったチェックを含めた財政状況などにつきましても情報開示を、従業員、そして加入者、受給者の方に周知するようにするという義務づけが入っております。

小池委員 先ほど申し上げましたように、これまで、そういったことをやりますと、ちゃんと法律で定められたことはこなしていますよ、やっていますよという、まるでアリバイづくりのように、細かい、読めない、そういう説明がついていたわけでございますが、そういった責任逃れではなくて、やはり、受給者が安心して参加できる、その目的を果たすような方法を徹底されるようにお願いをしたいと思います。

 いきなり、青天のへきれきなんですね。積み立て不足で解散せざるを得ないなんというのが突然出てくる。大体うまくいっていないときというのは、担当者というのは往々にして隠したがるものでございます。そうではなくて、やはりその経過も明確にしていかなければ、ふたをあけてみればバケツの底があいていたということでは困る。

 さらには、今回いろいろと問題が出てきているのも、時価会計導入ということで会計システムが変わってくると、退職金の取り扱い等々によっては大きく会社の企業業績にもかかわってくる。アメリカの場合を見ておりましても、拠出というのが入ったときも大体それが大きなプレッシャーとなったということも、産業構造の変化、そしてまた人材の流動化というのがアメリカでこれまで以上に高まったということからも、それらを背景に出てきているものと考えております。

 ところで、次に伺いたいことは、積み立ての義務に関してでございます。これはまさに受給権保護措置の中でポイントとなるわけでございますけれども、この積み立ての義務を課すということ、これを具体的に御説明を伺わせてください。

辻政府参考人 積み立ての義務、具体的内容を御説明申し上げます。

 この法律によります新企業年金におきましては、これまでの厚生年金基金と同様、毎事業年度末の決算時におきまして、給付に充てるべき積立金の積み立て状況が一定の基準を満たしているかどうかを検証することを義務づけております。

 具体的には、その積み立て基準には二種類ございます。

 その一つは、制度が今後も継続することを前提として、将来にわたって得られる掛金収入と、将来の給付を賄うために現時点で保有しておくべき積立金、制度的に責任準備金と呼んでおりますが、これが積み立てられているかどうか、すなわち、作成した長期計画どおりに積立金が積まれているか、そして掛金を取ることになっているかということを検証するものでございます。

 そして、もう一つの基準は、仮にそのときに制度が終了した場合に、各加入者または受給者に係る、その時点での加入者の既に入った期間に見合った給付を行うために最低限保有すべき積立金が積み立てられているかどうか、これは最低積立基準額と称しておりますが、この点についても、あるかどうかをチェックする。そして、これらが不足する場合は一定期間に穴を埋めるように計画を立てることを義務づけるものでございます。

小池委員 穴はあかない方がいいのでございますが、将来いろいろな要素がこれからも、または、考えられないような要素も出てくることがあると思います。その意味で、積み立て義務、これは受ける方からすれば大変重要でございますが、一方の企業とすれば、現状を考えますと、企業もなかなか青息吐息といったところがあるわけでございます。

 こういった中で、いろいろと企業側の方も存続をかけているような状況にあったとき、この積み立ての義務というのが重荷になる、そしてかえって全体をおかしくする。つまり、企業そのものがもうお手上げというようなことにも陥りかねない。この辺は本末転倒になるかと思いますけれども、このあたり、企業に対しての重みといいましょうか、積み立て義務の負荷、これをどのように考えておられるのか、伺います。

辻政府参考人 特に積み立て義務というものが新たにかかる、すなわち、今申しましたような義務を満たしていないことのあり得る仕組み、すなわち適格退職年金でございますが、この適格退職年金について、今回のこの制度により、受給権保護のための今言ったような規制がかかるわけでございます。

 まず、これにつきましては、円滑な移行が図られますように十年間の移行期間を設けて、しかも積み立て不足について、必要な期間について一定の経過措置を講ずる、あるいはまた、移行先につきましても、適格退職年金から新制度への移行、新企業年金への移行以外に、確定拠出年金への移行、あるいは中小企業退職金共済制度への移行、こういった各方面への移行も可能というふうに制度的に用意しております。

 そのような意味で、企業の負担、大変な面もございますけれども、それが過剰なものになることはないというふうに考えております。

小池委員 そうあってほしいと思うんですが、最近の経済状況というのはなかなか、なかなかどころではない、大変厳しいものがある。

 ちょっと話が前後するようでございますけれども、最近、積み立て不足で解散する基金が一体どれぐらいあるのか、この辺ちょっと数字的に教えてください。

辻政府参考人 最近の解散の状況を申しますと、平成九年度で十四基金、平成十年度で十八基金、平成十一年度で十六基金、そして平成十二年度、直近でございますが、最多の二十九厚生年金基金が解散いたしております。

小池委員 数にすればそれぐらいなのかもしれませんが、そこにかかわっている従業員の数たるや大変広がりがあるわけでございます。その意味で、冒頭から申し上げております受給権保護ということを達成するためのあらゆる施策をとらなければならないということを、その数字を聞いて改めて感じた次第でございます。

 しかし、積み立て義務を課すということでございますけれども、では、本当に財政運営は確実なものになるのか、一体本当に改善されるのか、その辺は大丈夫なんでしょうか。

辻政府参考人 今申しましたように、あらかじめ、各年度末、年度末でチェックをいただきまして、その都度計画を立てて、その都度対応する。これまでは、大きな問題が出ましたものはずっと放置されておった、そしてある一定の大きな変動のときに行き詰まってしまったということでございますが、これからは刻一刻と、毎年度でございますので。そのような、あらかじめの拠出義務、そしてそれについても長期間予定を立てて償却するとしつつ、足元、足元から始める、こういうことでございますので、今後このような、突然なくなって大変だといったことは起こらないようになるというふうに私ども願って、この法整備をさせていただいているところでございます。

小池委員 その意味で、繰り返しになりますけれども、情報開示ということは大変重要なポイントだと思います。突然死なんていうことになりますと、これは受ける方からすれば本当に卒倒するようなものでございますし、会社がつぶれるというだけでなく、その前に積み立て不足でバンザイだなどということになりますと、本当に不安になるわけでございます。不安が不安を呼ぶという悪循環、これをぜひとも断ち切るきっかけとなればと私も願っているところでございます。

 次に、代行返上ということでございます。

 実は、この年金の問題、代行の返上というのは非常に大きなテーマであったことは周知のとおりでございますけれども、今回、この代行返上を認めるに至った経過、そしてその効果のほどについて伺わせてください。

辻政府参考人 代行返上、この部分を返上いたしますときに、それに対応するいわば資金というものを返上するわけでございますが、返上する場合、払い込みは基本的にはまず金銭で行うことが原則でございます。しかしながら、代行返上ということを行いますときに、いわば返上したものをまた運用するわけでございますので、運用するときに、またもう一度、売ったものを買うということになりますと、むしろ株価等に不必要な変動が生じまして運用にマイナスになるといったような支障が生じます。

 そのようなことから、一定の条件のもとに現物による返上といった道も開くような形での代行返上というものを認めるといういきさつで今回の法案は成っております。

小池委員 私もその経済対策プロジェクトチームの一員といたしまして、この部分、いろいろと経過もございましたけれども、こういった代行返上も認めざるを得ないというような立場に立ったところでございます。

 それから、この年金に関連いたしまして、この後スムーズに確定拠出年金法案の審議にお入りいただいて、そして、一日も早くこの新しい選択肢、これはこれまでの、いわゆる給付の部分の、毀損をされていて、もうこれはだめだ、だからこれまでのところはもうなかったことにして新しく始めるにはちょうどいいやなどという簡単なものではございませんで、私は、むしろ新規産業を立ち上げる際のバックアップの選択肢としてつくるべきだという、基本的なスタンスはそこに持ちたいというふうに思っております。

 そういった意味で、こういった廃業であるとか失業がふえる中で、新しい産業を育てて、そして新しい人材マーケットをつくるというのも、実はこれが一番重要な点でございますので、一日も早く確定拠出年金についての審議、そしてまたそれを成立させていくというのも大きな経済対策、そして社会保障の新たな形ということにつながると信じておりますので、これは委員の皆様方の御同意も得て進めていければ、またそのために最善の努力をせねばと思っているところでございます。

 それで、ちょっと話は違う側面でございますが、最近は、労働というか人材の移動が激しくなるのとはほとんど関係ないと思いますが、離婚もふえてきております。そういった中で、やはり女性が抱える問題というのは、この年金の問題でも、離婚した場合にいろいろな面で受けられない、不利である等々、そういったマイナスの点があろうかと思います。

 ということで、私は、女性ももっと個として明確な対象とすべきではないかと考えているわけでございますけれども、例えば、こういった離婚した女性が年金を、私的並びに公的でございますけれども、この問題点について厚生労働省としてどうお考えになっているのか、まずそれを伺いたいと思います。

桝屋副大臣 離婚の増加というお話であります。それから、あわせて、恐らく女性の年金をどうとらえていくかということ。これは、今ずっと議論されておりますのは、個別に年金受給権を持った方がいいという議論あるいは保険料負担の義務も持ってもらいたい、そういう声もあるわけでありまして、なかなか悩ましい問題でありますが、実は、昭和六十年の年金法の改正によりまして、女性の年金権というのは基礎年金の部分では相当整理をされたというふうに思っております。

 したがいまして、妻自身が国民年金の第一号被保険者あるいは厚生年金の被保険者として保険料を納付してきた場合には、それを根拠に年金が計算をされる、あるいは、妻が国民年金の三号被保険者であった場合についても、離婚後も保険料納付期間としての取り扱いは変更されないということでありまして、私は六十年の基礎年金のあの形、三号被保険者が入ってきたことが一つの大きな一定の成果であったというふうに思っております。

 恐らく委員は、近年の離婚の増加等に伴いまして、個人の年金権をさらに確立するという観点も大事ではないか、基礎年金の給付に加えて厚生年金についても年金権をどう考えるかというような、こんな御議論かというふうに思うわけでありますが、私もこの職に来る前もずっとそれを研究してまいりました。

 しかしながら、我が国において、夫婦の結婚期間中に取得した財産の半分は妻のものかどうかということが果たして定着をしているのかどうかということもありますし、あるいは現行民法が夫婦別産制となっている、あるいは離婚時の妻の財産権は個別の事情に応じて司法手続で行われるというようなことを踏まえると、なかなか難しい問題も課題もあるなと思っております。

 これはいつもお答えをしているのですが、昨年七月に設置しました女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会、ここでそうしたさまざまな角度から女性と年金という問題も検討していただいておりまして、この論議もしっかり見ながら厚生労働省としても検討を進めていきたい、このように思っております。

小池委員 この厚生年金基金、これは業種によって違いますけれども、一体だれが一番拠出というかお金を出してきたかというと、実は若い女性、OLさんたちでありまして、彼女らは、要は勤めている期間が短い、結局それでやめちゃう、もしくは他に移るというようなことで、しっかりと積み立てに協力はしておきながら、その恩恵に一番あずかれない人たちでございます。といった意味で、拠出の方で一つ道をつけるべきというのは、そういう女性の側の感覚ということも含めて言っているわけでございまして、数年間で、厚生年金基金分だけお金を出さされる、働く、そしてその条件を満たす以内にやめてしまうという女性の働きぶりとリターンとのことはもう一度やはり考えるべきじゃないかなというふうに思うんですね。そういった意味で、先ほどの離婚をした女性の権利等々も含めて、これは女性と年金という立場でもう少し我々も考えていかなければならない時期が来ているというふうに思っている次第でございます。

 これから長い目で見れば、大変今は失業も高い、そしてまた女性がいつも景気の調節弁として使われるといったようなこれまでの流れからいいますと、いつも後回しにされがちなのでございますけれども、これからの長い目で見て、女性こそ労働のというか、もっと正当に活用されるべき日本に残された唯一の資源ではないかと思うわけで、その意味で、この年金、今回の給付の問題のみならず年金全体でございますね、公的、私的あわせて、女性の立場ということを踏まえた年金設計を包括的に考える時期がもう既にとっくに来ているというふうなことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 御答弁ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、松島みどり君。

松島委員 自民党の松島みどりでございます。おはようございます。

 具体的な質問をさせていただく前に、これは桝屋副大臣に、私は、感想と質問を、この法律の名前についてちょっと申し上げさせていただきたいと思っております。

 この確定給付企業年金法というのは、こういう熟語を幾つも並べるような法律の名前は確かに非常に多いのですけれども、私は、法律の言葉ですとか官庁用語をできるだけ普通の日本語に近づけるべきじゃないかといつも思っております。

 この確定給付企業年金、非常に難しい、何のことを言っているのかなという感じでありまして、どうせならもうちょっとシンプルに企業年金法と言いましたり、あるいはもっと丁寧に言うのでしたら給付額を確定した企業年金に係る法律とか、ちゃんと言ってあげないとというような感想を持ったものですから、ちょっと一言お言葉をいただきたいと思います。

桝屋副大臣 委員の御主張には賛同いたします。

 今回、年金二法案、きょうは確定給付型でありますが、確定拠出もあわせて審議をぜひともということでお願いをしているわけであります。

 たまたまこの三階部分の年金のありようということで、確定給付、確定拠出、一般の国民の方にもなかなか御理解がいただけない部分もあるかなという気がしますが、今から議論をし、国民の皆さんに理解をしていただく意味では、確定給付、確定拠出という言い方はなかなか言い得た表現ではないかなと思っておりますが、ではどうなのかというと、なかなかすぐには御理解をいただけない。比較してみるとよくわかるのかな、こう思ったりしておりますが、大臣にも伝えまして、もう少しいいネーミングがないのかどうか、しっかり研究をしたいと思います。

松島委員 ありがとうございます。せっかくでございますので、私も確定給付とか確定拠出という言葉をしっかり世の中に広めるように努力してまいりたいと思います。

 本題に入らせていただきます。

 国民年金や厚生年金といった公的年金に対しまして、今回の年金法が対象としています厚生年金基金そして適格退職年金は私的年金でございます。もともと、私的年金、これは企業が退職金の一部を年金の形で払うとか、そういう発想で生まれた部分が各企業から見るとかなり多いのじゃないか。そして、それは人手不足の時代にはセールスポイントになって、福利厚生の一環として人集めに役立った、そういうような性格のものじゃないかと思っております。

 そういうことを考えますと、この企業年金というのは、終身雇用制度そして会社主義というこれまでの従来型の日本的経営風土の中にすっぽりとはまっている、そこに合致して成り立ってきた、そういう年金であると思います。最近のように、みずから転職したり、あるいはリストラという名前の希望退職に応じる、そして解雇される、もっとひどい場合には会社が倒産してしまう、そういった状況のときには企業年金の持つ意味が薄れていくのじゃないか、そんな気がいたしております。

 この私的年金への政府のかかわり方、いわば日本国民の老後を支えるものとして、その中で私的年金をどれだけ当てにするかといいますか、そういった部分についてちょっと質問させていただきたい。

 そして、さらに言いますと、私的年金というのは基本的には労使が納得して決める、そういう性格のものであると思います。それについて政府がいろいろな規制とか基準を設けるのは果たしていいのかどうか、そういったことについてちょっと伺いたい。ここまでは桝屋副大臣にお願いしたいと思っております。

桝屋副大臣 お答えを申し上げます。

 公的年金と私的年金、そうした役割はどうかというような、そういうお尋ねかと思いますが、老後の所得保障の基本は、高齢者の生活の基本部分を終身にわたり確実に支える公的年金があるわけでありますが、個人や企業の自助努力による私的年金は、今申し上げた公的年金を基盤とした上で、その上で多様化する老後ニーズにこたえ、より豊かな老後生活を実現するという役割を担っているというふうに思っております。今後、その充実がますます求められているというふうに考えているわけであります。

 こうしたことから、現行の確定給付型の企業年金につきまして、積み立て義務などの受給権保護を図るための措置を講じるとともに、公的年金の上乗せの年金制度の新たな選択肢として確定拠出年金を導入することによりまして、今申し上げました公的年金と相まって国民の老後の所得確保の一層の充実を図ることとしているわけであります。

 こうした企業年金の普及、育成に厚生労働省としても取り組んでいきたい、こういうことでございます。

松島委員 ありがとうございます。

 雇用環境、労働環境の変化ということで申し上げますと、新しい企業年金、これは受給資格は最長、受給資格というのは各企業年金が決めればいいわけですけれども、法律的には、二十年がぎりぎりで、それよりもっと長い、二十年以上というような、例えば二十五年以上勤めないともらえないとか、そういうことは決めちゃいけないというふうにこの法律でなっております。

 この二十年という数字なんですけれども、かつての終身雇用の発想でいきますと二十年ぐらい勤めるのは当たり前でございますが、今これだけ会社を移るということがふえているとき、そしてまた、先ほど小池委員が質問されました、私は、女性にとっての企業年金ということは本当に大事な視点だと思うのですが、その中にありました、若いOLが、企業年金の負担はするけれども、給付を受ける対象にならないまま、出しっ放しで終わる人が本当にたくさんいるというお話がございました。

 これに関連して申しますと、以前ですと女性も結婚前にほんの数年勤めただけ、二、三年とか五年ぐらいでしたら、三、四年勤めただけだったら、まあこれはもらえなくてもあきらめがつきますけれども、最近は結婚年齢も上がっている、あるいは結婚しても子供ができるまでは頑張って働く、三十歳とか三十四、五歳ぐらいまでとにかく働くという人がかなり女性でもふえています。そういうときに、例えばこれが十年以上とか十五年以上勤めたらというところまでしか、最長それぐらいしか法律で認めないということでしたら、企業の決まりがそういうことでしたらカバーされる人はかなりふえるのですけれども、二十年ということですと四十歳前後までは勤めなきゃいけない。男性、女性にかかわらず、結構ちょっと長過ぎるんじゃないか、もう少し短縮していくことも考えなければいけないんじゃないかということを思うのですが、いかがでございましょうか。

辻政府参考人 まず、現行制度がどうなっているかからちょっと御説明をさせていただきたいと思います。

 まず、老齢給付の受給資格期間につきましては、現在、まず厚生年金基金の上乗せ部分におきましては受給資格期間が二十年を超えないこと、むしろ二十年を超えてはいけないとしているのに対しまして、適格退職年金においては二十年未満としてはならないという基準になっております。

 現状はどうかと申しますと、このような状況のもとで、現行の企業年金におきましては、労使の合意のもとで二十年という受給資格期間を設定している例がかなりあるというふうに承知いたしております。

 今回、適格退職年金を新企業年金に移行させますというときのこの確定給付企業年金における老齢給付の受給資格期間のあり方としまして、こうした現在の企業年金の実態を踏まえまして、その上でできる限り多くの従業員が年金に結びつくようにということで、二十年を超えないという基準を用いております。これ以上短くすることは当面困難でございますが、ただ、労使の合意によりまして受給資格期間を二十年より短い期間とするということは当然認められますので、そのような形で見守ってまいりたいと思います。

松島委員 現行についての御説明がございました。適格退職年金というのは、現在法人税法に基づいて、つまり税制の立場でできていますから、そんなに軽々しい、簡単なものだったらちゃんと税制で優遇はしないということで、二十年を超すということになっているんだと思います。その一方、厚生年金基金の方は、一応、厚生省所管で、年金としての性格で考えているので、その年数の上限の方が決められているんじゃないかと思うのですけれども、今回新しい法律で、折衷したような、セットにしたような形で二十年という数字が出てきたかと思います。これから、現実にはいろいろな企業が従業員の福祉のためにといいますか、労使交渉の結果もっと短い期間のところも結構あると思いますけれども、せっかくつくるのでしたら、やはりいろいろな人がカバーされるように、これからの、男性も女性も含めた、大企業でも特に若い世代についてはかなり勤続年数が短くなっている、そのような実態調査に合わせて、今後法律の整備というか見直しも進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 さて、厚生年金基金の解散が続いているわけでございます。先ほどの答弁の中で、平成九年度が十四件、十年度十八件、十一年度十六件、そして、つい最近三月までの平成十二年度におきましては何と二十九件、厚生年金基金の解散があったということでございます。非常にふえている。

 質問なんですが、この中で、原因として母体企業の倒産、それから運用成績の悪化、加入者の急激な高齢化、いろいろな事情が複合的に絡み合っているのですけれども、主な原因、原因別に見るとどういうことが多いのだろうかということ、そしてまた、特に平成十二年度の中でも景気が急激に悪化しておりますことしの年明け以降、一月、二月、三月というこの増加ぐあいというのがどういう状況であるかということをちょっと伺いたい。これは厚生年金基金の方でございます。お願いします。

辻政府参考人 まず、解散に至っている主な事情でございます。

 御指摘ございましたが、母体企業の業績悪化、あるいはリストラ等による加入員の減少等ということが大きな理由でございまして、これはいわば産業構造の変化により経営が悪くなったということの影響が、母体企業の、まずそういう経営状況というものが影響した解散が主なものでございます。ただ、最近では、退職金前払い制度の導入ということで、母体企業の退職金制度そのものが根本的に見直されて、それで解散を選択するといった新しい流れの解散も出てきているという状況でございます。

 ちょっと、一、二、三月、今手元に細かく集計しておりませんが、確かに年度末に向けてふえている、私は決裁などいたしまして、ふえているという実感を持っております。

松島委員 今厚生年金基金のことを伺ったのですけれども、現行の適格退職年金は、厚生年金基金に比べますと、一般論で言いますと小さ目の会社が多いというようでございます。こういうこともありまして、適格退職年金の場合は解散じゃないですね、破綻というか解約というか、これはどういう状況でふえているのか、どういう状況かちょっと伺いたい。これは国税庁の方になるのでしょうか。お願いしたいと思います。

金井政府参考人 先生の御質問でございますけれども、私どもの適格退職年金契約、これは解約の数字ということで申し上げさせていただきたいと思いますが、直近三年間の解約件数を申し上げますと、これは信託協会、生命保険協会及び全国共済農業協同組合連合会が取りまとめました件数で申し上げさせていただきたいと存じますが、平成十一年度それから平成十年度ではそれぞれ約四千五百件、そして平成九年度では約三千六百件となっておるところでございます。

松島委員 非常にふえているようなんですが、ちょっと基本的なことで質問なんですが、適格退職年金というのは、現行の数ですとかあるいは解散の数というので今伺いましても、信託協会とか生保協会ですとか農協系の協会の方から聞いているという形なんですが、企業として何社が導入しているというのを会社単位に、厚生年金基金の場合はどの会社が入っているかという形で捕捉していると思うのですよね。この適格退職年金の場合は、そういう形のとらえ方はできないで、受けている方の生保とか信託からヒアリングしてやっとわかるというような状況、そういうとらえ方なんでしょうか。

金井政府参考人 これは、適格退職年金の契約の形態でございまして、それぞれの企業が複数のところと契約するとかいろいろな状況がございまして、私どもは件数としてとらえさせていただいておるというところでございます。私ども、税務の観点から法令に基づいて執行するという立場でございますので、件数ということで整理をさせていただいているということを御理解ちょうだいいたしたいと存じます。

松島委員 つまり、性格づけとして、何社が適格退職年金を活用しているというか、何社がこういう制度を持っているかという形じゃなくて、ダブりを含めて何件、そういう契約が世の中に存在するという形でしかわからない、そういう性格のものなんでしょうか。

金井政府参考人 したがいまして、私ども、これも各協会等が取りまとめた件数で申し上げさせていただきますと、平成十二年三月末の適格退職年金契約の実施企業数は約九万六千社でございまして、この契約におきます加入者の数は約一千万人となっておるものでございます。

松島委員 どうもありがとうございます。

 先ほど厚生年金基金の解散の数の非常に増加ということを伺いました。これに関連してなんですが、厚生年金基金の場合は、厚生年金基金連合会がすべての基金に対して加入を実質的に義務づけています支払い保証制度というのを持っております。実際に倒産企業の従業員に対して支払い保証が適用された実績というのは、件数とか対象人数とか金額というのはどれくらいあって、どういうような状況であるかを教えていただきたいと思います。

 そしてまた、それに関連してですが、今後も支払い保証制度というのは制度としてもっていくのか、つまり、これぐらい解散しちゃうところがどんどんふえるんだったらこういう制度として機能していくのかということを伺いたいと思います。

辻政府参考人 厚生年金基金連合会は支払い保証制度を持っておりまして、これは、母体企業の倒産などにより厚生年金基金がやむを得ず終了する場合において、その際に積み立て不足があれば、それをあらかじめ積み立てた各厚生年金基金からの拠出金によって補てんすることにより、厚生年金基金の加入者、受給者の権利保全を図ろう、こういうことで、既に連合会で任意の事業でございますけれども平成元年から実施しておりまして、まず、これまでの適用実績でございますけれども、十基金に対して総額三十億円の保証を行っております。

 十一年度末の資産額は百六十五億円というところでございまして、この制度のより適切な運用につき連合会の方でもさらなる検討を行っているところでございます。

松島委員 これから支払い保証制度がもつだろうかという質問についてよくわからなかったんですが、残高が百六十五億円あるからいいということなのか、それとも、だんだんと支払い保証制度にお金を納め続けるのがばからしいというような企業もひょっとしたら出てきているのか、そのあたりの今後の展開、展望はどうなるだろうか、そのあたりについて伺いたいと思います。

辻政府参考人 今申しましたような積立金がございまして、当面の運用におきましては万全な運用ができる、事業運営ができるという見通しでおります。

松島委員 そうであっていただきたいと思います。

 新しく今度つくられます新企業年金、これには支払い保証制度がないと思いますが、それでは、会社が倒産して積立金が足らないというとき、そのときのことを考えますと、受給権は保護されないのじゃないか。そうすると、結局、最初に私が申しました確定給付という話ですが、いざというときに受給権が保護されない場合、確定給付の企業年金とは言えないんじゃないかということを、これは年金局長の方に伺いたい。

 そしてさらに、もし会社が倒産したときに、これは企業年金の積立金というのはもちろん積立金であるわけだけれども、会社が倒産したらいろいろなところから債権の差し押さえがやってくる、その中で優先順位というか、ちゃんと従業員の方がそれを押さえておいてきちっと積立金を戻してもらうことができるのかどうか。これはどちらかというと財務省なのか、国税は関係あるのか、ちょっとそのあたりについて伺いたいと思います。

辻政府参考人 このたび審査いただいています新たな確定給付企業年金につきましては、結論から申しますと、支払い保証制度というものが含まれていないわけでございます。

 まず、新たな企業年金制度の対象には、これまで申しました積み立て義務を課されていた厚生年金基金からの代行返上によって移行してくるグループ、それからもう一つは、積み立て義務がなく、各企業の判断に積み立てについてはゆだねられておった適格退職年金から移行するグループ、この二つのグループに対して新制度が適用されるわけでございます。

 当面、おのおのの、各企業年金の積み立て状況にかなりの違いがございます。申しましたように、厚生年金基金につきましては、これまで積み立て義務を課してそのときそのときにチェックしてまいりましたのに対して、適格退職年金の方はそのような形になっておらなかった。こういった観点から、現時点で統一的な支払い保証制度を創設するということになりますと、積み立て度の違いがあるということから、負担について公平な観点から合意できないといったような状況、そしてまた、そもそもこのような状況で支払い保証制度を設けた場合に積み立て不足を放置するようないわゆるモラルハザードを招くのではないかという基本的な意見もございまして、現時点におきまして、本法案には支払い保証制度を盛り込まず、今後の検討課題としているものでございます。

 なお、確定給付という名に値しないのではないかという御指摘がございましたが、これはあくまでも確定給付の概要は企業が従業員に給付を約束しているという概念を申したものでございまして、結果として支払い保証がついているかどうかということまでその概念の意味の内容には含まれていないという理解でございます。

 例えば倒産しました場合のことでございますが、この新企業年金基金につきましては別法人でございますので、これは、本体の企業の資産に対するさまざまな債権者とは関係なく、別の法人の基金で資産は保全されます。そのような整理になっております。

松島委員 わかりました。別建ての法人なのでほかの債権の取り立ての人がやってきて持っていっちゃうことがないというのは伺いまして、一安心しました。

 しかし、確定給付というのは企業の概念で支払いを約束している、そういう気持ちの問題だったら、そういう温かい気持ちがあるのはいいんですけれども、それだけだとちょっと何か心もとないというか、確定給付といっても今の時代に心配だな。

 ただ、支払い保証制度は、確かに預金保険機構みたいな互助組織としてみんなまとめてつくるのは難しいと思うんですけれども、今までの経緯の違いがありましたら、これから最初に持ち出しで出すときの金額を違えるとか比率を違えるとか、何かの方法でこういう支払い保証制度に近いものをつくるべきではないかという気もしております。また御検討いただきたいと思います。

 それで、今回の法律でできる新年金というのは、いわばこれまでルーズだった適格退職年金にいろいろな制約を設けて受給者を保護する規約型という年金と、そしてもう一方は、厚生年金基金が厚生年金の代行部分を国に返して身軽になって出直す基金型、その二種類があると思います。返上という言い方は、お国に代行を返上するという、何かお上がやはり偉いようで返上という言葉は私は好きじゃないので返すとか戻すとか言わせていただきますけれども、その基金型の二種類がありますけれども、代行部分を国に返す、戻す方ですが、どれくらいの厚生年金基金が戻す、基金型の新年金にかわることを希望すると見込まれるでしょうか。

 そしてまた、それによってそこから戻ってくる運用額、国がやらなきゃいけない運用額はどれぐらいふえると推測されるんでしょうか。

 そして、これらの基金が代行部分を国に戻すというのは、もう今は利回り悪いし大変だしやっていられないということで戻すわけですから、厄介者を戻された国の方というか、運用額がふえることについて御感想はどうかな、大変だなと思うんですけれども、そのあたり、局長。

辻政府参考人 まず、代行を、言葉が適切かどうか、返上するという意向をどの程度が示しているか、どの程度になるかということについて、私どもとしての調査はまだしておりませんが、民間機関が実施した調査によりますと、調査対象となった百十六基金のうち、三分の一に当たる三十八基金が代行の返上というのを考えているというような調査結果がございます。ただ、これがどのような額になるかにつきましては、私ども、現時点ではまだ推計はできておりません。

 なお、代行返上によって国に代行部分に相当する基金が返還され、それによって国の年金積立金が増加することは事実でございます。

 この年金積立金につきましては、長期的な運用を前提にいたしまして、安全確実かつ効率的な運用を行うという基本的スタンスに立ちまして、この四月から年金資金運用基金が発足いたしまして、そこで厚生大臣が、関係審議会の分科会の審議を十分に経まして、長期の運用の基本方針を立てまして、それに基づきまして的確な運用をし、長期的に所期の収益が上げられるように努力してまいる所存でございます。

松島委員 私、予算委員会の分科会でも質問させていただいたんですが、この運用というのは非常に難しい問題がある。利回り、もちろんこれぐらい回っていかないとやっていけない、そういう必要に迫られた予想利回りを先に立てちゃって、それに合わせようというのは非常に難しいものだと思いますし、また、いろいろな、日本の経済を全体として買っていく形とはいうものの、日本国内の株そして外国の株、外国の債券に運用をかなりの割合、三割を任せるということで、私、不安を感じておりますが、何とぞ安全で確実な運用をやっていただきたいと思います。

 それから、あと、税制についての質問でございます。

 新しい企業年金の税制、これは拠出と運用と給付、これを受け取るときの三段階にかかわるわけでございますが、運用段階におきまして、特別法人税が国税一%、地方税〇・一七三%の税率で、個人拠出分を除く運用資金総額全体にこの税がかかることになっております。一方、厚生年金基金は税の優遇措置があって、これはバランスを欠いているなと一つは思っております。

 そして、新企業年金の一・一七三%の税率、運用した収益の部分だけにかかるならともかく、全体にかかるというのは非常に重いということで、特に今のような運用利回りの悪い時期に大変だということで、平成十一年度から凍結という形になっております。この前の税制改革、この間国会で通りました税制でも、平成十三年度そして平成十四年度もこれは凍結することになっております。

 ただ、凍結という概念は臨時措置的なものでございますから、その後、平成十五年度以降どうしていくのか。もちろん、経済環境のいろいろな問題があると思いますし、私たち自民党の税制調査会でも議論する問題ではございますけれども、経済環境を別といたしましても、運用総額全体にこの税率でかけるということ、これについてはどうかということを伺いたいと思います。

 税負担がつらくて新企業年金を始めるのをちゅうちょする、今適格退職年金に入っていらっしゃるところで、新企業年金に移行するときも、やはりいろいろ考えると大変だなと税負担のことを考えるところもあると思いますので、そのあたりについて財務省からお考えを聞きたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 風邪を引いていまして、ちょっとお聞き苦しいかと思いますが、お許しいただきたいと思います。

 ただいま先生の方から特別法人税の問題の御質問がございました。これはよく先生御承知のところでございますが、特別法人税というのは、従業員が企業から経済的利益を受ける、その場合には、それを得た時点でまず給与所得課税を受けるのが税法の基本的考え方でございますし、一方、企業の方ではその部分が損金になるというわけでございます。それで、企業が従業員の年金のための掛金を負担した場合にも、したがってその時点で従業員に対しては給与所得課税を行うということが本来であるわけでございます。

 ただ、年金の問題につきましては、従業員の年金のために事業主が負担する掛金につきましては、その支出時においては従業員に対する給与所得課税を行っておりません。したがいまして、年金受給時に課税するということですから、その間課税が繰り延べられるということでございまして、その課税の繰り延べの対象というのは、まさに企業が損金で落としました掛金全体になるわけでございます。その遅延利息相当分という形で特別法人税の負担を求めているわけでございますから、したがって、課税の公平の観点から、今の現行制度のような形で負担をお願いするのが必要だと考えているわけでございます。

 また、御承知のとおり、今お話にありましたとおり、十一年度の税制改正におきまして、また、今回、十三年度の税制改正におきましても凍結を二年間延長しているわけでございます。現在、課税が停止されているわけでございます。

 今後の問題でございますが、ただいま私が申し上げましたように、この特別法人税自体というのはまさに税制の基本的な仕組みにかかわるものでございますので、基本的には課税をお願いすることが基本だろうと思っております。

松島委員 わかりました。ただ、これが結局、新しい企業年金の阻害にならないかということはやはり気になるところでございます。

 そしてあと、今少し申し上げましたが、適格退職年金、比較的小さい会社がたくさん入っている。これから新しい規約型の新企業年金に移りますと、いろいろな条件が加わって企業側の負担がふえてまいります。中小企業の場合は、この負担というのは非常に重いわけです。従業員の福利厚生に役立てたい、しかしながら、これだけの積み立てとかいろいろな制約を受けて負担が大きい。これは、どういうふうに例えば促進策を考えていくか。これは厚生労働省、それから税については財務省の問題かと思いますが、どちらかというと厚生労働省ですけれども、副大臣からお願いします。

桝屋副大臣 適年を確定給付企業年金に移行する場合のお話でございます。特に先生は中小企業の皆さん方のことをおもんぱかって心配をされておられる、よくわかるわけであります。しかしながら、今新しい確定給付企業年金を用意しておりますけれども、やはり中小企業たりといえども新制度の受給権保護のための規定が原則どおり適用されることがまずは望ましいというふうには思うわけであります。

 しかしながら、先生御心配のような点もあるわけでありまして、確定給付企業年金の積み立て義務あるいは給付設計の基準の中には、適格退職年金ではこれまで導入されていないものもあるわけでありまして、したがいまして、十年間の移行期間を設けるとともに、円滑な移行が図られるような適切な経過措置を講じていきたい、このように考えているところでございます。

松島委員 ぜひ中小企業、中堅企業においても、会社がつぶれちゃったら元も子もないわけでございますから、特段の御配慮をいただいていきたいな、そういうふうに思う次第でございます。

 それから、今企業合併というものが非常にふえている時代でございます。いろいろな業界、同じ一つの業界の中で合併が進んだりあるいは他業種にわたる合併、非常に盛んになっております。そういう時代におきまして、この法律のメリットというもの、新しい時代に、企業合併にとりましてこの新しい法律がどういう意味合いを持つかということについて質問させていただきたいと思います。

桝屋副大臣 合併が盛んな時代になった、新法はどういう役割を持つのかというお話でございますが、実はこれまで制度上、厚生年金基金から適格退職年金への移行が認められていなかったということがありまして、厚生年金基金を実施している企業と適年を実施している企業が合併をした場合、合併後の企業は厚生年金基金しか採用できなかった、こういうこともあったわけであります。

 今回の法案は、適格退職年金を新企業年金に移行させることを含めて、確定給付型の企業年金について統一的な枠組みを設けたところでありまして、これによりまして新企業年金と厚生年金基金相互での移行、あるいは新企業年金や厚生年金基金から確定拠出年金への移行ができるということにしているところでございます。このため、今回の法案によりまして、異なる種類の企業年金を実施している企業が合併した場合でも企業年金制度を容易に統合することができるようになるわけでありまして、企業合併がより円滑に行えるようになるというメリットがあるというふうに考えているところでございます。

松島委員 わかりました。

 以上で質問を終えさせていただきますけれども、年金の全体の体系の中、そしてまた年金というのが退職後の所得、退職後の暮らしをどういうふうに支えていくか、そういうことであると思います。その中で、例えば税制においてもしかりでございますし、そしてまた、さっき申しました、企業がいざというとき、つぶれたときの保証、債権の保全ということに関しましてもそうですけれども、退職金、退職一時金そして公的年金、私的年金である企業年金、さらには今老人向けマル優制度というのが預貯金にあるわけですけれども、そういうものをトータルにとらえまして、これからの高齢者がより豊かに安心して暮らしていけるように、役所の壁を越えて、今回二つの役所にまたがっていた法律がやっと一つになるみたいな部分がございますけれども、これからも進めていっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 質問を終わらせていただきます。

鈴木委員長 次に、福島豊君。

福島委員 桝屋副大臣、大変御苦労さまでございます。

 今回のこの確定給付年金法は、厚生年金基金の抱えている代行の返上という課題、そしてまた適格年金の抱えている積み立て不足といった財政状況の悪化、こういう課題というものを解決するために新しい年金の枠をつくろうという方向であるわけでして、私どももぜひ早期の成立を図っていただきたい、そのように思っております。

 厚生年金基金にいたしましても適格年金にいたしましても、その制度が創設された当時と経済状況というものが大変大きく変わってきております。雇用慣行というものも変化をいたしております。そういう社会の変化に対応するような、そしてまた、二十一世紀において安定して運営のできるような制度でなければならないだろうというふうに思います。

 また一方では、先般も政府・与党社会保障改革協議会から社会保障改革の大綱が出されましたけれども、二十一世紀の年金制度を考える場合に、公的年金とそしてまた企業年金はお互い補完をする関係にあるわけでございます。支給開始年齢の引き上げというものが始まったわけでございますけれども、その期間どのような形でこれを支えていくのかということを考えたときに、企業年金が果たす役割というものは極めて大きいと言わざるを得ません。

 そして、今国会におきまして、昨国会から継続いたしております確定拠出年金法、これも審議をする予定になっております。

 私どもは、この確定給付年金と確定拠出年金と一緒に審議をしていただきたいというふうに申し上げておりました。なかなか委員各位の御理解を得るに至らなかったわけではございますけれども、本来的には一緒に議論すべき法案であろうというふうに思います。そしてまた、両方の年金制度というものが、企業年金として、両輪としてうまく社会の中で機能していくということが必要であろうというふうに思っております。そういう意見をまず初めに述べさせていただきまして、個々の課題というものについてお尋ねをいたしたいと思っております。

 まず初めに、先ほどから各委員からの御指摘もございますけれども、厚生年金基金、これが解散がふえている。昨今の株式市場の動向、基金の運用成績というものが非常に悪いというようなことも一つあるでしょうし、そしてまた、先ほども御説明ございましたが、むしろ雇用のあり方そのものの変化、報酬制度のあり方そのものの変化というものに対応して、労使の合意のもとに解散を決定されたところもあるやに伺っておりますけれども、厚生年金基金の解散の状況につきまして、再度御説明を賜りたく思います。

辻政府参考人 解散の状況でございますが、過去十年で見てみますと、平成三年度から五年度まではなしでございました。それが、六年度に一件、七年度に一件というふうにふえ始めまして、九年度が十四件、十年度が十八件、十一年度が十六件、そして十二年度は二十九件、二十九基金が解散したということでございまして、十二年度末の厚生年金基金の数は千八百一となっております。

 主な理由でございますけれども、いわゆる資金運用の状況もさることながら、母体企業の業績悪化、あるいは、リストラ等による加入員の減少という経済構造そのもの、産業構造そのものが変わったということ、あるいは今御指摘ございましたように、退職金前払いといったような全く新しい労使の話し合いが出てきた、こういったことによる動向というものがポイントでございます。

福島委員 現在、政府・与党において不良債権の最終処理ということが議論されているわけでございます。十年間不況が続いた後に、いよいよ不良債権というものをきちっと最終処理しなければ、なかなか日本経済の潜在成長率そのものが回復しないのではないかという認識に立ち至ったのではないかというふうに思っておりますけれども、今後も企業の倒産等が増大をする可能性というものは十分にあろうかと思っております。そういう意味で、厚生年金基金の状況というものに対して、所管庁として、その実態の把握というものをきちっとやっていただきたい、そのように思っている次第でございます。

 また、先般の新聞報道でございますが、運用成績が悪いという御指摘でございましたけれども、これは日経新聞の三月三十一日付でございますけれども、運用利回りが初のマイナスである、二〇〇〇年度は資産一割、八兆円の減であると。これは、株式市場がこれだけ低迷をいたしておりますから当然の結果のようにも思いますけれども、そのような報道がなされていたわけでございます。そしてまた、こうした資金運用の実績の急速な悪化ということが解散の急増をもたらすのではないかというような見出しが躍っておりました。

 この厚生年金基金の運用状況につきまして、承知しておられるところを御説明いただきたいと思います。

辻政府参考人 厚生年金基金の十二年度の運用状況、現在調査集計中でございますので具体的な数字は申せませんが、しかし、相当に悪い。十一年度は一三・〇九%という収益率を上げ、相当株もよろしかったわけでございますが、例えば日経平均で見ますと、十一年度末が二万三百三十七円であったものが、十二年度末が一万二千九百九十九円。あるいは十年国債の利回りを見ますと、十一年度末が一・七七五%であったものが、十二年度末は一・二七〇%。こういったような大変な十二年度の運用環境の変化からしますと、十二年度は相当悪いものと確かに見込んでおります。

 具体的に、では個々の姿はどんな形かということでございますが、まず十一年度の状況をお話ししてそれから、相当悪いというような形でしかちょっと今は説明できないわけでございますが。

 現在把握している最も直近の決算である平成十一年度決算では、そのときは千八百三十四基金ございましたが、千八百三十四基金のうち約八割の千五百五基金につきましては剰余がございました。そして、二割の三百二十九基金で積み立て不足が生じている状況でございました。また、十一年度決算でございますけれども、剰余のあった基金の剰余の合計額は三兆八千八百億円、そして、不足のあった基金の不足合計額は五千七百億円ということでございました。

 そういうことから、十一年度末における厚生年金基金の積立金の額は、今申しましたように、十一年度末は株価も相当な水準でございましたので、前年度比一六・五%増の五十七・六兆円という現状でございましたが、十二年度におきましては、国内株式が悪化する、金利はさらに下がるといったことで、大変厳しい環境でございますので、今申しました数字が相当悪いものとして十二年度は出てくるものと見込んでいます。

福島委員 そういうお話をお聞きしますと、ますます経済対策、今検討しておりますけれども、しっかりと取り組まなければいかぬという思いがいたします。

 また一方では、この数字だけをとりますと、やはり年金というのは危ないのではないかという話にまたなるわけでございますが、しかし、株式市場でございますから、上がるときもあれば下がるときもある、一〇%以上の利回りになるときもあればそうでないときもある、もう少し長い目で見て考えるということが恐らく必要なのだろうというふうに思いますし、そしてまた、本来はそういうものなのだろう。十年、二十年という長い単位で物を考えなければいけない。年金資金のような長期の運用を図るものについては、そういう冷静な見方も一方では私は必要だというふうに思っております。

 ここまで下がればあとは上がるのだろうというふうに私は率直に思っておりますから、来年、再来年は運用というのは回復するに違いないだろう、またそうさせなければいかぬ、そのように思っております。

 そして、この積立金の不足につきまして、ただいま御説明がございました。不足の解消ということは、当然企業がきちっと行わなければならない責任であると思っております。

 この積み立て不足の解消ということで、新しく、有価証券を拠出するということが可能になったわけでございます。これは経済界からの要請も大変強かったというふうに伺っておりますけれども、実際問題といたしまして、この制度がどのように使われておるのか、有価証券の拠出の状況というものはどうなっているのか、御報告をちょうだいしたいと思います。

辻政府参考人 厚生年金基金の掛金について、有価証券すなわち現物での拠出ということが積み立て不足の円滑な解消を図るために認められたということで、掛金として現物株式を拠出するということが認められたわけでございますが、現時点において実際にこれを活用している事例は今のところございません。

福島委員 しかしながら、今後、運用実績の悪化ということから積み立て不足が拡大をするだろうというふうには容易に想像されるわけでございます。そのときに、現金の拠出がなかなか難しい、やはり手持ちの有価証券、株式でそれを拠出したいというふうに考える企業が多数出てくる可能性はあるだろうというふうに私は思っております。

 ただその場合に、こういう制度のメリット、デメリットは当然あるわけでございまして、逆に、そういう有価証券による拠出によって運用のポートフォリオそのものがゆがむといいますか、低下するという危険性も当然あるんだろうというふうに思いますが、この点についてはどのような歯どめがかかっているわけでしょうか。

辻政府参考人 今申しました母体企業からの株式による掛金納付につきましては、厚生年金基金の資産運用の健全性が維持されることを前提にその仕組みを認めたところでございます。

 具体的に申し上げますと、株式による掛金納付が認められる場合として、これはあくまでも厚生年金基金の積み立て不足を解消するためだけである、一般的には認めない。

 それから、もとより厚生年金基金の同意が必要であるということ。

 それから、個別銘柄の価額につきましては、基金の資産総額に対する上限を五%と設定いたしまして、個別銘柄としては五%を超えてはならない。

 あるいは、当該基金にとって最適と認められる基本ポートフォリオが既に策定されておりまして、そして、この納付された株式によって基金の基本ポートフォリオをゆがめることのないように、必要な場合は適切なリバランス、いわば資産ウエートの再調整を行わなければならないということを条件にしておりまして、これによりまして厚生年金基金のポートフォリオがゆがむことのないよう、すなわち基金の資産運用の健全性が維持されるように、そういう大前提で認めているものでございます。

福島委員 きちっとした枠組み、ルールというものがあるという御説明でございました。現場における適正な運用というものが図られるように対応していただきたい、そういうふうに思っております。

 そして、今般のこの確定給付年金法でございますが、厚生年金の代行の返上を認めることになっております。この点についても確認でございますけれども、代行返上すると見込まれる基金の割合、そしてまた返上される積立金の規模、こういうことについて現在の見通しを御説明いただきたいと思います。

辻政府参考人 私どもとしてはまだ調査ができていないわけでございますが、民間機関が実施した調査によりますと、調査対象となった百十六基金のうち約三分の一に当たる三十八基金が代行返上を考えているという結果でございまして、その程度考え得るわけでございますが、しかし、規模となりますと、現時点ではまだ想定というのは難しいというふうに考えております。

福島委員 これは定性的な議論で通告いたしておりませんが、局長の御見解をお聞きしたいと思っておるのですが、代行返上するところとしないところ、これはどういうふうに分かれるのだろうかということなんです。

 基金の規模が小さい場合に、代行部分があってある程度の資金がプールされて初めて、運用のメリットといいますか、規模のメリットというものが出てくる場合がある。そういう場合は、苦しくても、やはり代行を返してしまうとやっていけないというような話も聞いたことがございます。

 返上する場合、しない場合というのは、基金の性格としてどういう判断でこれはなされていくのかということについて、御見解をお聞きできればと思うのですが、よろしゅうございますか。

辻政府参考人 代行をどのような視点から返上するかどうかというのは、これはあくまでも企業の労使の話し合いによって行われますので、私どもからあらかじめ申せる立場ではございませんが、ただ基本的には、長期的に見て代行部分の持っているメリット、今御指摘ございましたけれども、今本当に厳しい時期でございますけれども、やはり十年二十年、基本的にはもっと長い数十年ということを念頭に置きますので、このメリットというものは長い目で考える必要がある。そしてそういう中で、代行部分と上乗せ部分を合わせて終身という年金を守っていく。

 そのことがいわば、例えば総合型の基金の場合など、やはりその業界分野において一定の人材を確保していきたい、そのときにやはり業界としては魅力のあるものを持ち続けなければいけない、こういったような人材確保の観点から、やはりここはしっかりと据えて頑張ろうというような考え方もございましょうし、そこはむしろ労使の間の話し合いで、上乗せ部分にもっと特徴的な年金制度をつくろうという政策的な判断をする企業もありましょうし、そのあたり、私ども、この影響というものを見守ってまいりたいと考えております。

福島委員 あくまで労使の合意のもとで、年金基金としてどういう方針で運用していくのかということが大切だということではないかと理解させていただきました。

 次に、代行返上を現物株式で行うことができるということがこの制度に盛り込まれているわけでございます。これは先ほどの積み立て不足の有価証券による拠出ということと軌を一にするあり方であるというふうに思うわけでございます。

 先ほど、三分の一の年金基金がその代行返上ということを希望するのではないかという民間の調査報告がございました。となりますと、全体としますと二けたの兆の単位になるだろうということが想像されるわけでございます。この場合に、どういう形で株式で返納されるのか、先ほどの御指摘で言いますと返上ではなくて返還ですね、ということは極めて大切だと思います。それは厚生年金の積立金の運用の健全性というものを保つ観点から極めて大切だというふうに思っております。

 この積立金の運用の安全性ということを考えた場合に、この代行返上そのもの、返還そのものについて、どのような規定のもとに行われるのか、御見解をお聞きしたいと思います。

桝屋副大臣 委員が御心配をされておられるのは、きょう先ほどから出ておりますけれども、代行返上を現物でやる、株式等の現物で行う場合、委員は今二けたの兆という話がありましたけれども、それが大きな影響を与えるのではないか、こういう御心配であります。

 先ほどから局長も答弁しておりますけれども、株式等の現物資産による代行返上がどのような時期にどのぐらいの規模で、あるいはどのような資産で行われるのか、これを現時点で予想することはなかなか難しいわけであります。委員からは、今の厚生年金の運用資産、約六十兆円以上ありますけれども、それを、三分の一というお話もありましたけれども、二けたを超えるのではないかという話もあったわけでありますが、そこはまだなかなか予想は困難であります。

 ただ、その開始の時期は、早くとも関係規定が整理をされる二年半後の平成十五年の秋以降ではないかというふうに思っているところであります。

 その時期は、積立金の運用に係る基本ポートフォリオをいよいよ実現するという時期になるわけでありまして、資産構成割合を調整する移行期に当たるということで、例えば国内株式について言えば、その割合を現在の四%から一二%にふやすという時期であります。このため、現物資産による返上部分についても、新規に増加する資金などで何とか調整できるのではないかというふうに考えておりまして、悪影響ということの御心配もわかるのでありますが、何とか調整できるというふうに考えているところであります。

福島委員 基本ポートフォリオの中で、運用方針にのっとって代行返上というものは行ってもらうんだという基本方針は理解をさせていただきました。

 ただ、その場合に、だれがそれを確認するのかといいますか、それは厚生労働省が責任を持って確認をするというお話になるのかなというふうに思いますけれども、そこのところの仕組みといいますか、点検と言ったらいいんでしょうか、なかなか一つ一つの銘柄どうだこうだというのは私たちにはよくわからぬわけでございます。例えば、一定の、非常に経営が悪化している業界というものがございますね、大手の企業というのもあります。そういうところの厚生年金基金がまとめて自社の株を持ってこられたりすると大変困るということもあるかもしれませんけれども、そういう細かな点検というのは一体どういう仕組みでなされるのかということについてお教えをいただきたいと思います。

辻政府参考人 まず、代行返上の中身が法的にどのように決められるかということを申し上げたいと思います。

 株式等の現物資産による代行返上に当たっては、まず、当該資産について、市場で評価された時価による客観的な評価を行う。逆に、市場で評価できる資産であって、その客観的な時価による評価を行うということ。

 それから、代行返上がいわば年金資金の積立金の運用にマイナスの影響を及ぼしてはならないわけでございますから、現物返上を認める資産については公的年金の積立金の運用方針に沿ったものでなければならない。

 時価で評価したものであり、かつ運用方針に沿ったものでなければならない。

 では、具体的にはその運用方針に沿ったものとはどういうことかと申しますと、年金資金運用基金におきましては、例えば、ただいま株については一二%に向けて徐々に徐々に四%からふやしていくということを申しましたが、その株も、いわば一定の政策のもとで持つべき株しか持たないということでございまして、これは俗にパッシブ運用という言葉を使っておりますが、通常、TOPIX連動、いわば市場のウエートと価格に連動させて持つ。いわば市場の動きに対応して株価が変動する、株の資産価値が動いていくというような、市場と受動的な形での運用を行うという基本方針でございますので、それと合ったような形の銘柄のものをパッケージで持ってきていただく。こういうことを法令上定めておりまして、そのような要件に沿ったもののみ受け入れるということにしております。

 その時価評価、そしてその受け入れにつきましては、私ども、実際は資金を運用している運用基金に入れられるということになると思いますが、その受け入れの時点で十分チェックをさせていただきたいと思っております。

福島委員 ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 次に、支払い保証、先ほどから指摘がございますけれども、今回新しい確定給付年金法というものをスタートさせたときに、どういう考え方で支払い保証というものが実現をするのかということについて、御認識をお聞きしたいと思います。

桝屋副大臣 きょう朝から支払い保証の問題が出ておりますけれども、厚生年金基金につきましては、現在既に、将来にわたって約束をした給付が支給できるよう年金資産の積み立て基準が設定をされているところであります。また、新たな確定給付企業年金についても、厚生年金基金と同様の積み立て基準を設けることとしておりまして、これによりまして年金給付等の確実な支払いが確保されるというふうに考えているところでございます。

 いろいろ御心配もおありだと思いますが、先ほどからの議論でお答えをしておりますように、企業年金の運営状況につきましても毎年チェックをしながら、その結果積み立て不足等がありましたら、掛け金の引き上げ等について、一定期間内に掛け金を引き上げるなどの指導をしていくということでありますから、支払いの保証は確保されるというふうに考えております。

福島委員 積立金を保証する、きちっと積み立てますというところに、この保証の理由といいますか原理を求めているわけでございますが、これは企業が元気でもうかっているときはよろしいわけでして、そうでないときはなかなかうまくいかない。そもそも、うまくいかないときにどうするかということを考えるから支払い保証なんだというふうに私はむしろ思うわけでございます。

 ですから、要するに積立金をどうするかというのは企業に責めを負わせるという話ですね。それがそもそも危機に瀕しているときの保証を考えるのであれば、やはりそれは、個々の企業と離れた形で支払い保証制度というものは当然考えられるべきではないか、そのように思うわけでございます。

 新しい確定給付年金法にいたしましても、二十年たったときにどうなっているのかというのはなかなかわかりません。私もさっぱりわからぬわけです、日本の経済そのものがどうなっているのかという話がございますので。先ほど冒頭に申したように、厚生年金基金にしても、こんなふうになるとは最初つくった人はなかなか思っていなかったんだろうと私は思います。もっとハッピーだった時期もあったわけでございますけれども、今は余りハッピーではないわけですね。だから、同じことが言えるんじゃないかというような気もいたします。

 そういう意味からは、外のものとして、個々の企業のものではなくて横断的な制度としてやはり支払い保証制度というものを考える必要があるのではないかというふうに思うわけでございますが、改めて厚生労働省の御見解をお聞きしたいと思います。

桝屋副大臣 支払い保証制度、重ねてのお尋ねであります。

 委員からもお話がありましたように、母体企業の倒産ということもあるわけでありまして、そうした場合を想定し、あらかじめ積み立てた企業からの拠出金によって穴埋めをする、こういうことで企業年金の加入者あるいは受給者の権利保全を図ろう、そういう新しい支払い保証制度を外側として考えたらどうか、こういうお話であります。

 これも先ほどから議論が出ておりますけれども、今回の新しい新年金制度を検討する中で、そういう支払い保証制度を設けることによりまして積み立て不足を放置するようないわゆるモラルハザードが出てくるのではないか、こういう意見。あるいは、強制の制度としてそうした支払い保証制度を考える場合に、だれがその運営をするのかという運営主体の問題。それから、拠出金をだれからどのようにいただくのかというような問題があるわけでありまして、なかなか合意が得られなかった、こういうことがございます。

 新たな企業年金制度の対象には、もう一点の問題でありますが、これまで積み立て義務を課せられていた厚生年金基金からの移行グループ、それからもう一つは積み立て義務がなかった適年からの移行グループもあるわけでありまして、現時点で統一的な支払い保証制度を創設するというのはなかなか公平の観点から難しいということもあったわけでありまして、本法案におきましては支払い保証制度は盛り込まれていないわけであります。

 今後の検討課題ということで整理をさせていただいたところであります。

福島委員 再度、個人的な意見を申し上げますと、モラルハザードというのは本当に起こるんだろうか。

 アメリカの企業年金におきましては支払い保証制度がある。アメリカでモラルハザードが頻発しているという説明は、どこでも余り聞いたことがないんですね、なぜかとはお聞きしませんけれども。ですから、基本的には受給権というものの概念がきちっとしているんだろうと思うんです。それは、加入者のといいますか、被用者の権利として受給権というものの概念がしっかりしているのだろう。私は余りそのあたりの法制度について詳しくございませんけれども、どうもそこのところがあいまいだからそのお話、議論が進んでいかないというような気がいたしてならないわけでございます。

 この点については、ぜひとも今後とも精力的な検討というものを進めていただきたい、そのように思っております。

 そして、今回の確定給付年金法には税制適格年金も移行してくる。積み立て義務がないというので、実態としては随分格差があるという話がございました。この確定給付年金への移行というものはぜひともスムーズに行われなければならないだろうというふうに思います。

 そしてまた、移行するに当たってのコストというものが非常に重たくて、逆に移行するのではなくて廃止をしてしまうというような選択肢もあり得るわけでございまして、もしそのようなことが広がるのであれば、労働者の視点からは大変好ましくないという話にもなるわけでございまして、移行をスムーズに進めるためのさまざまな支援を行っていただく必要があるだろうと思います。この点についての御見解をお聞きしたいと思います。

辻政府参考人 適格退職年金から確定給付企業年金への移行ということについての、円滑な移行を図るための措置でございますが、まずもって十年間という移行期間を設定するということと、その場合に積み立て不足をどう満たすのかというのが大きな問題でございますので、なおかつその上に積み立て不足を解消するために相当必要な経過期間をさらに置くというようなこと。

 それから、給付設計等で受給資格期間の御指摘がございましたが、従来の税制適格年金の受給資格期間といったものについて、新制度はより厳しくなるわけですが、これを直ちに適用いたしますとかわれないというようなものもあるということで、所要の給付設計等における経過措置も設けるといったできる限り弾力的なことをして、丁寧な措置をとりながら円滑に移行していただくということ。

 それから、それ以外の道といたしまして、確定拠出年金制度へ、あるいは中小企業退職共済といった制度へ、こういった、それぞれの労使の話し合いでございますけれども、企業の状況に応じて丁寧に丁寧に、いろいろな形で後につなげるようなそういった措置を考えているところでございます。

福島委員 ぜひ丁寧な御対応をしていただきたいと思いますし、何よりもかによりも、やはり景気がよくならないとこういうことはうまくいかないのだろうなという気が私個人としてはいたしておりまして、しっかりとこの二十一世紀の初頭、景気対策というものをして、日本の経済の構造改革を進めて、一つ一つの企業が元気になるように頑張らなければいかぬだろう、そのような思いがいたしております。

 一方、先ほど若干質問の順番をかえさせていただいたのですが、厚生年金基金については、先ほども申しましたように、その代行返上、返還と言った方がいいかもしれませんが、への仕組みが導入された。しかしながら、それだけで果たして厚生年金基金の抱えている課題というのが解決されたのだろうかというような指摘もあるのではないかと思います。

 先ほど参考人の局長の方からちょっと御説明がございましたが、私も地元で総合型の厚生年金基金の方にいろいろとお話をお聞きしました。中小企業がたくさん集まっている、運送業界でございますけれども。運送業界は、最近、中小企業の倒産が非常に多いのですね。構成している企業の出入りも非常に激しい。積み立て不足なんですが、なかなか掛金を引き上げるというのも大変だ。引き上げるくらいだったらわしはもうやめるよというようなところも中にはたくさんある。

 先ほどの代行返上の話もそこにつながってくるのですが、ここで代行返上などできるわけがないというわけですね。状況が悪いので、逆になかなかできない。ということは、そういう状況が悪いところに代行をしてもらっておき続けるということは本当にいいのか悪いのかという話も一方ではあるだろうというふうに思うのです。

 この調査室の資料にもございますけれども、業界によっては、経済の構造改革の中で大変厳しい状況に置かれているところもあります。これからもそれは続くのだろうと私は思っておるのですけれども、そういう厚生年金基金の対応というもの。実際に彼らは困っているわけです、どうしたらいいのかと。確定拠出に移行するのが一番いいのではないかというふうに私は言うのですけれども、なかなかそれもすっとはいきませんね。いずれ国が何とかしてくれるのではないかというかつての神話のようなものがまだあるわけでございまして、そんな何もしてくれませんよ、それは自分でするしかありませんと私は申し上げておるのですけれども。

 ただ、しかしながら、資産運用にしましても、年金制度というのはなかなか難しいわけですね。普通、企業を経営しておられても、なかなかそういうことについて十分理解をしておられるわけでもない。また、今から勉強しなさいというわけにもなかなかいかぬのだろうな。そういう中小企業の経営者の方が集まって議論をしても、なかなか結論が出てこないというような状況があるようでございます。

 こういった厚生年金基金一つ一つの実態というものを踏まえて、これからどういう選択をしていったらいいのかということについて、適切な方向性というものを指し示していただきたいなという思いがいたしておりますけれども、厚生労働省の御見解をお聞きしたいと思います。

桝屋副大臣 委員から今お話がありましたように、まことに厳しい経済状況の中で、積み立て不足を解消するために掛金の引き上げもできないということで大変に苦労されておられるということも、我々も理解をしているところであります。

 一つは、厚生年金基金の財政状況。これは、先ほどから申し上げておりますように、毎年度決算報告を受けておりまして、財政状況が悪化している基金に対しては、厳しい言い方になりますけれども、掛金を引き上げていただくように御指導しなければならぬと思っておりますが、それもままならないという御指摘も今あったわけであります。

 では、確定拠出ということで指導すればいいではないか、こういうお話もあったわけでありますが、ただ、確定拠出年金で行うか、あるいは確定給付型の企業年金でいくのか、またその組み合わせでいくのかというのは、あくまでもそれぞれの企業の実情に応じて労使が主体的に判断をしていただくということが必要だろう。厚生労働省といたしましては、今回の企業年金改革あるいは確定拠出年金の導入によりまして選択肢がそろったのではないか、あとはそれぞれの企業の実情に応じて御検討いただくということだろうと思っているのですが。

 一定の方向をというお話もございましたが、私たちも御相談があれば可能な限り適切に対応していきたいと思いますし、何よりも、先ほど委員おっしゃったように、景気がよくなるということが一番でありまして、政府を挙げて景気がよくなるように努力をしていきたい、このように思っているところであります。

福島委員 以上で、通告をいたしました質問につきまして御答弁をちょうだいいたしました。

 大臣がお戻りになられましたので、若干時間が残っておりますので、二十一世紀の年金制度ということで、企業年金について、いかなる役割を果たすものであるのか、確定拠出型年金も含めまして大臣の御見解をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

坂口国務大臣 参議院の本会議がございましたので、大変御無礼をいたしました。

 この企業年金でございますが、今福島議員のお話をずっと聞いておりまして、経済状態がこういう状況が続いておりますと、現状から企業年金の状況も立ち直らせることがなかなかでき得ない状況にある、しかしやめるわけにはいかない、立ち直ることもできないという状況が今続いているというふうに聞かせていただいたわけでありますし、私もそういうことになっているところがかなり多いのではないかという気がいたします。

 今、ここをどうしよう、こうしようといってもなかなか私は難しいのではないか。したがって、この次景気が一遍回復をするときまでは、申しわけないけれども、このままで、現状でいっていただく以外にないのではないか。今の時点でこの内容をもっともっと改善をするということは難しいですから、厳しければ厳しい状況の中で、現在のままでいっていただいて、経済状態がこの次に回復をした事態のときに今後のことも含めてどうするかということを提案するということではないかという気がいたします。何か半分無責任な話のようにも聞こえますけれども、しかし、それしかちょっと手がないのではないかという気がいたします。

 しかし、全体としてこの企業年金のことを考えれば、基礎年金があり、そして一般の皆さん方であれば厚生年金、共済年金がありということで、一階、二階があって、しかしそれでは将来に対して不十分である、やはりもう少し将来を確実なものにしたいというふうに思われる皆さん方にとっては、このいわゆる三階部分と申しますか、この企業年金の部分というのは大変重要な役割を果たすであろうというふうに思います。

 しかし、ここは、かなりすぐれたと申しますか、優秀な企業にお勤めの皆さん方が可能であって、中小企業にお勤めの皆さん方にとりましては、望みましてもなかなか望めない皆さん方もお見えになるわけでございますから、一律にはいかないところでございますけれども、一部の皆さん方にとりましては大変これは意味のある年金であるというふうに思っております。

 しかし、そこが、この現在の経済状況等で大変な行き詰まりを来しているということも事実であります。ここを打開する、打開できる経済状況になったときに打つべき手というものを国が示すということであって、今、こういうふうにしてほしい、ああいうふうにしてほしいということを現在の段階で申しましても、それはなかなか絵にかいたおもちになってしまう可能性があるのではないかという気がいたします。

 経済の回復を待ちながら、しかし、そのときにどうするかということを今から考えておかなければならない、私はそんな思いをいたして今お聞きをいたしておりました。

 当たっておりますかどうかはわかりませんけれども、そんな所感でございます。

福島委員 大変ありがとうございました。

鈴木委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十六分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古川元久君。

古川委員 民主党の古川元久でございます。

 本日は、今後この確定給付企業年金法案を審議するに当たりまして、その議論をより深めていくための前提といたしまして確認しておきたいことを質問させていただきたいと思います。今後の質疑の進みぐあい、そして、我が党のこの法案に対する対応を決める上でも重要な意味を持ってまいりますので、ぜひとも誠実で真摯な御答弁をお願いしたいと思います。

 まず最初に、公的年金と私的年金との役割分担についてちょっとお尋ねしたいと思います。

 年金制度というものは高齢期の所得保障の大きな仕組みであるというふうに考えておりますけれども、そのうち、この法案で規定する企業年金部分というものは、年金制度の中で、いわゆる一階、二階、三階という言い方がありますが、そのうちの三階部分、私的年金に当たるというふうに思います。

 ですから、この三階部分を考えるに当たりましては、当然、一、二階の部分すなわち公的年金部分と、この三階部分に、どのような役割があって、その分担をどうしていくのか、そうした全体像が明らかになってこないと、一、二階のことをほうっておいて三階を議論してもそれはやはり十分ではないと思います。そういった意味では、全体の姿、その中で公的年金と私的年金がどのような役割分担をしていくのか、そういうことの、全体の姿をぜひ教えていただきたいと思うわけでございます。

 その点については政府としてどのように考えておられるか、御答弁をいただけますでしょうか。

坂口国務大臣 今お話しいただきましたように、一般的な言い方として一階、二階、三階という言い方がございますが、いずれにいたしましても、基礎年金部分というのはこれはもう全国民共通部分でございますから、この部分はやはり最も基礎的な年金というふうに位置づけるのが当然ではないかというふうに思います。

 しかし、国民年金で見ました場合には、それが四十年正式に掛金をいたしましても六万七千円でございますか、そうした額でございます。夫婦合わせましても十三万四千円ということになるわけでありますから、それだけで基礎的な生活が十分にできるかといえば、それはやはり十分ではないというふうに思いますが、最も基礎的な部分として基礎年金。そして、もう少し人間らしき生活をしていくためにはその上に厚生年金というのをやはり重ねていかなければならないというので、厚生年金ができ上がってきたというふうに思います。

 この厚生年金の部分までを公的年金というふうに言うのか、中には、二階建てのところは若干、公的年金だけではないではないかという御意見の方もありますけれども、私は公的年金の部分に入れていいのではないかというふうに思っております。

 この二階の部分を入れまして、厚生年金の部分を入れて、現役時代のおおむね六割、もう少し正確に言えば五九%というような数字が出たりもいたしておりますが、おおむね六割という数字が出ておりますから、それで一応老後をということになっているというふうに思います。

 この一階、二階の部分がいずれにいたしましても私は必要な年金というふうに考えておりますが、しかし、それではまだ十分でないという考えもあるわけでございますから、ここから上は企業年金という形が生まれたゆえんであろうというふうに思いますけれども、これはいわゆる退職金との絡みもございますし、ここはいろいろの考え方があるのだろうと思うんです。これはやはり年金としてした方がいいというお考えが一方で生まれてきた。企業年金ではありますけれども、そこを三階建てとして年金として位置づけていくということになれば、それはやはり年金の範疇として位置づけて、そうして国の方もある程度しっかりとそこに目を据えて、そこが国民の皆さん方にお約束ができたとおりいけるようにしていかなければならないということになってきたというふうに思っております。

 したがいまして、一階、二階が普通の生活を行うに足り得る年金、そしてさらにゆとりある生活をするための三階の年金、こういうことになるのではないかと私は思っております。

古川委員 今の大臣のお話を聞いておりますと、そうしますと、一、二階の部分で先ほど勤労所得の大体六割という話がございましたけれども、やはりその部分はしっかりと保障するといいますか確保した上で、その上に三階が乗っていく。そういった意味では、今後とも公的年金の給付水準というのは今大臣が言われたようなところでやはりちゃんと守っていくんだ、そういう御決意というふうに受け取ってよろしいんですか。

坂口国務大臣 そこはやはり守らなければならない線だというふうに思っております。

古川委員 わかりました。

 そうした視点をもとに、では次に、企業年金の性格について御質問をさせていただきたいと思います。

 先日、我が党の大島議員の代表質問の中でも企業年金の性格について話があったと思うんですけれども、大島議員は、私もそのとおりだと思うんですが、企業年金の性格については基本的には退職金の支払いの一形態ではないか、そういうふうに考えるのが妥当ではないかというように御指摘をさせていただいたと思います。それに対しまして、大臣の御答弁の中では、退職金を年金化したケースが多いのは事実というような、そういう事実関係を述べられただけでございまして、企業年金の性格についてどのように考えておられるのか、そうした大臣のお考えはそこでは明らかになっていなかったような気がいたします。

 企業年金の性格をどう見るかで、今回提案されております制度の内容も当然決まってくるものじゃないかな、それに対しての私どもの考えも決まってくるものじゃないかなというふうに思いますので、企業年金について、私どもの大島議員が指摘したような、これは基本的には退職金の支払い方の一形態だというような考え方として企業年金の部分を見ておられるのか、あるいはそうではないというふうに見ておられるのか、その辺についての大臣の御見解をぜひお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 現実問題といたしまして、退職金の一形態と申しますか、退職金と年金とを両にらみにしたような形での企業年金というのが存在することは、私は事実だと思います。そうではなくて、退職金とは全く別個に、退職金は退職金としてお支払いをする、企業年金は企業年金として積み上げる、こういう年金も存在することも事実でございます。しかし、どちらが多いかといえば、やはり退職金と関連をした企業年金というものの方が、私は正確な統計数字を見たわけではございませんが、私の感じといたしましては多いんではないかという気がいたします。

 ですから、そういう、退職金とそして年金とを正確に立て分けてやっております企業年金もありますし、そして退職金と企業年金とが込みになっていると申しますと言葉が適当かどうかわかりませんが、そういう年金と、私は両方あるという気がいたします。

 そこで、この性格は、そういうことでありますからなかなか性格づけも難しくなるわけでございますが、しかし、その中でなぜ年金が生まれてきたのか、退職金なら退職金で出せばそれでいいではないかということですが、それが年金という形になぜなってきたかということにつきましては、国民の皆さん方の多くの方が、やはり年金形式というものに賛成をされる方もかなり多かったのではないかという気がいたします。そうしたところから企業年金という形のものが生まれてきたのではないかというふうに私は思っております。

 そういたしますと、年金という形にしてほしいというふうに皆さん方が御主張になります以上、年金としてそれはお守りをしていくというか、年金がちゃんと支払いができるようなことをやはり国の方もある程度守っていかなければならないということになってくるのではないか、そういうことで今日を迎えているというのが私の認識でございます。

古川委員 まことに申しわけありませんが、ちょっと大臣のおっしゃっている意味がよくわからないのでございますが、年金形式を望むという声が多いから年金になったということであれば、それはつまり、退職金として一時金でもらうかわりに年金という形にしたんじゃないか。そうなると、これは退職金の一形態ということなんじゃないでしょうか。

 だから、そこのところ、企業年金部分が退職金の一部なのか……(発言する者あり)退職金というのは、今後ろから声が上がりましたけれども、給与の後払いという性格があるわけですよね。そうであるか、そうじゃない、退職金は退職金であってその上にまた積み重なるものかどうかによって、当然、それをどれくらい保護していくかということは、その性格をどう位置づけるかによって決まってくると思うんですね。

 ですから、先ほどの大臣のお話で、今存在している企業年金には退職金的な性格のものもあればそうでないものもあるということになったら、その性格によって、例えば受給権の保護とかその強さは、当然私は本来違ってきてしかるべきじゃないかと思うんです。それが、今回その両方のものを、性格が違うものがあるというのに同じに扱うというのであれば、それは私は若干の問題があるのじゃないかと思いますし、また、そうでないのであれば、今大臣がおっしゃった感じだと、やはり企業年金というのは退職金の一部というふうにその性格を大臣も見ておられるのかなと思うんですが、その辺の性格づけというものを政府としてどう考えておられるのか。

 こういう制度をつくるわけですよね。当然、ではどういう方向にこういう年金制度というものを位置づけていったらいいのか、やはりそこの部分を、方向性というものをちゃんと持たれた上で制度というものを提案していただかないと、いや、世の中に今存在している企業年金には退職金型のものと年金型のものとあります、年金型というのは勤労者の人たちが望んだから年金型になったんですとなると、聞いていてわけがわからないわけです。

 ですから、ただ事実としてこうだというだけじゃなくて、こういうもので企業年金というものはあるべきだ、そういう性格を政府としてどう認識しておられるか。やはりそういうものがちゃんと明らかになった上で、だからそういう形としてとらえているからこそこういう制度を提案したんですと、そういったものが言われて、我々はなるほどということになっていくわけなんですね。

 とりわけ、今度この一月から厚生労働省になったわけでございまして、そういった意味では、昔ですと、いやそれは、退職金の話は労働省ですといって、お役所が分かれて、役所がばらばらでということだったかもしれませんが、今は一つの役所になっているわけですから、働き始めてからずっと、最後退職して、その後まで、勤労者の人たちの一生をトータルとしてやはり見ていく、ビジョンといいますか、そういうものがなければ勤労者も本当に安心して働くことができないんじゃないかと思います。

 もう一度大臣に御確認したいと思うんですが、どういうふうにこの性格を見ておられるのか。

坂口国務大臣 そこはそれほど明確に答えられないところに難しいところがあるわけでございますが、退職金の場合には、退職金をただ年金化したというのではないと思うんです、これは。退職金と年金とが一元化されたような形というのは、やはり退職金だけをもらうよりもプラス企業年金ということの方が額からいきましても平均して多くなるんだろうと思うんです。だから、単なる退職金を年金に割ったというのでは決してない。そこは私は、単なる退職金を年金として分割をして出すということとはかなり違うというふうに思っております。

 ですから、企業年金の場合には完全に、先ほど申しましたように、退職金と年金とを分けている部分もある。しかし、退職金が一部入ってくる部分がありますけれども、しかし、そこは退職金プラス年金ということになっているところの方が多いのではないかというふうに私は思います。

古川委員 もうちょっとこの辺で少し聞かせていただきたいんですが、そうなりますと、今の大臣のお話ですと、例えば形態として、概念的なお話を申し上げますと、退職金の一部を年金という形にした、純粋にそういう形式と、退職金の一部にプラス付加部分がついたような、それが一番多い形態じゃないかと思いますが、そういう部分と、純粋にもう退職金とは全く分かれた、純粋の年金としての付加部分がある、そういう三種類が概念的に言えば存在するというふうにお考えなんですか。

辻政府参考人 今大臣のお答えになりましたことにつきまして、数字をもちまして少し説明をさせていただきたいと思います。

 今、この法案の前提となります厚生年金基金、これは明らかに厚生年金の年金ということでございますけれども、もう一つ、税制適格年金、これはこのたび新確定給付年金法の対象となるということで大きな議論になるわけでございますが、この税制適格年金につきまして、信託契約という形でやるものについてのデータがございますので見ますと、これは……(古川委員「僕は数字を聞いているんじゃないのよ」と呼ぶ)はい。退職金と全く調整なく年金であるというのが一部ございまして、それ以外、退職金と調整があるという税制適格年金があり、退職金が全部移行したものと一部移行したものがあるという意味で、退職金と年金がそのような関係を持っているということでございまして、あくまでも年金化された税制適格年金というものは年金でございますので、年金としての保護が必要であるという整理になっておるわけでございます。

古川委員 私が聞いているのは、法律上の扱いが年金になっているから年金だとか、そういうことじゃないんですよ。

 私が聞いていることは、この年金としてもらう部分のところが全体として、別に法律上の名前が退職金だとか年金だと言っているそのことを聞いているわけじゃないし、事実としてこういうのがあるとかそういう話を聞いているんじゃなくて、つまり、その性格として、この企業年金の部分というのはそういう退職金的な性格を帯びたもので、その一環の中で、流れの中で出てきたものだとそういうふうに考えておられるのであれば、そこから当然私は、受給権の保護とかそういったものも、そこの性格によって当然制度としてあらわれてくるものがある。それは年金の保護という形で制度上あらわれていいんですよ、別に退職金を保護するという形であらわれる必要はないと思いますが。しかし、そういったものを、背景となるところの性格をどうとらえておられるか、そこによって初めて制度として出てくるところの妥当性というものも審議ができると思っているから、そこの性格について聞いているわけでありまして、事実がこうなっていますとか、数字がこうです、法律上これは年金に分類されていますというのは、それは私が聞いていることと全く違う話なんですよ。

 ですから、ちゃんとそこのところを、どういうふうに性格をとらえているのか、別に法律上どうだとか数字はどうなっているじゃなくて、どういうふうにとらえているかというのを答えてください。

辻政府参考人 法律上の観点から申しますと、現実に存在する今問題となっている企業年金につきましては、税制適格年金ということで、法人税法に根拠がありまして、一定の年金形式で給付がなされる、それを前提として掛金拠出がなされるものを法的に位置づけられたもの、それを私ども保護すべき年金と考えているわけでございます。

 それが、今申しましたように、沿革的には、退職金との調整がなされるという形で、いわば昭和三十七年、年金という実体物として成長し、発展してきたものである。そのような意味において、退職金が移行したという形態を持ったものであるというふうな位置づけと考えております。

古川委員 要は、そういう企業年金の背景のところには、退職金が変化をしてきているので、やはりそういう性格があるということは認識した上でやっていらっしゃるということでいいんでしょう、大臣。

坂口国務大臣 そこは、私はそれはそうだと思うんですね。

 いわゆる退職金というものを、単なる退職金ではなくて、そこにプラスアルファ、そのプラスアルファがどれだけかということはそれぞれ違うんだというふうに思いますが、年金化をしているということになっていっておりますから、退職金が全然別個のものというものではない、そこに退職金とのかかわりはあるということだと私は思いますね。

古川委員 最初からそうやって一言答えていただければ次に進めたわけでございますが、要は、やはりそういう性格づけがあるというところを認識した上でこの制度設計というものはやっていかなきゃいけないと思いますし、またそういう議論も、きょうそういうところは確認できましたので、また次回以降、私ども、その辺のところからの質問をさせていただきたいと思います。

 それでは次の方に行きたいと思うんですが、今度は企業年金。

 仮に本法案とそしてまた今国会に提案をされております確定拠出年金法案というものが成立するということになると、企業年金のあり方としては、確定給付年金と、そして今回の中で適格退職年金は十年後には廃止ということですから、その後で残ってくる厚生年金基金と、そして確定拠出年金というものが、将来的には、仮にこの法案が通るとすると、存在するということになるわけでございますが、この年金相互間の企業年金における位置づけといいますか、そして役割分担というものをどのように考えておられるのか、その点について御質問したいと思います。

坂口国務大臣 今古川議員が御質問になっているのは、確定給付企業年金と確定拠出年金との間の連携ということでございますか。(古川委員「あと厚生年金基金」と呼ぶ)それと厚生年金基金、この三つの公的年金がどのように絡み合っているかということをお聞きいただいたんだろうと思うんです。

 この確定給付企業年金というのは現在の確定給付型の企業年金でありますから、これは積み立て義務など、いわゆる現在行われておりますものとして、受給権の保護を図るための措置を講じていかなければならない性格のものだというふうに思います。国民に信頼される企業年金制度を構築していきますためには、受給権保護というものをやはりどうしてもここはやっていかなければならないというふうに思っています。

 ところが、厚生年金基金につきましては、厚生年金、終身年金の給付に上乗せをして、一定以上の独自の給付を一体的に取り扱うべきもの、そういう性格のものだというふうに思います。

 確定拠出年金は、公的年金の上乗せの新たな選択肢のものである。

 ですから、確定給付企業年金と確定拠出年金とは、これは並列的に論じるべきものと思うんですね。そして、今までの厚生年金基金は、確定給付企業年金にも確定拠出年金にも移行することもできるし、移行しなくてもいい、こういう性格のものだというふうに思います。

古川委員 何かよくわかったような、わからないのでございますけれども。

 これは厚生労働省がつくったものじゃないかなと思うんですが、要は、確定給付企業年金と確定拠出年金の二つの形に企業年金というものはまとめていく方向で考えている。そのどっちにするかというのは、各企業とかあるいは労使の話し合いで選択をしていく。そういう位置づけなのか。

 例えば、そうではなくて、厚生年金基金もここにもう一つ横に並ぶような形で存在していくようなもので、まあ今のお話を聞いていると、どうもこの後ろあたりに厚生年金基金がくっついている。後ろといいますか、どっちにも行き得るという話だとどういうふうになっているかよくわかりませんが、ちょっと並列とは違うのかなという感じがしますが。

 それについてちゃんと、局長さんでいいですから、説明してもらえますか。

辻政府参考人 まず、今大臣が申されました確定給付企業年金、これは、今御審査いただいております確定給付企業年金法に基づく新企業年金というもので、今ごらんいただきました資料は、それが一つの体系としてある。そして、確定給付型の企業年金の中で厚生年金基金に基づきます年金というのは、この法案とは別に、現に厚生年金保険法に基づいてある。この二つは別の法形式のものでございますが、しかし、確定給付年金という意味で性格が共通いたしておりまして、それぞれの法律に基づいて、それぞれの受給権保護の規定が入っているというものでございます。

 そして、新確定給付企業年金と今の厚生年金基金の関係はどうかといえば、年金の性格が少し違う。それは具体的には、厚生年金基金は、厚生年金本体の代行給付の上乗せ部分として、しかも終身年金としての性格を持っておるというのが一つ異なる特徴でございます。

 そして次に、確定拠出年金法案は、これは内容として、確定給付ではございませんで、あらかじめ給付内容を約束するという年金ではなくて、拠出額が確定されて、そして確定された拠出額をいわば加入者たる従業員の指図によって運用して、その範囲内のものが年金化されるということで、確定給付と確定拠出と全く性格の異なる、しかしながら三階の私的年金であるということで、別法の体系で、確定拠出年金法案ということで御提案をさせていただいている。

 この三つの関係は以上でございます。

古川委員 性格が異なっていることはよくわかっているんです。要は、私が聞きたいのは、その性格の異なっているものを、では、それぞれの年金を、どういう役割というか、位置づけをしておられるのかというところなんですね。

 今、厚生年金基金の話がありました、これは別の法で定められています、終身ですと。では、この確定給付企業年金ができた後も、厚生年金基金を採用するような企業とかがどんどんこれから出てくるというのを想定しているんですか。それともこれは、今あるもの、それをすぐに移行するとかまとめることができないから、やむを得ずそのまま存置するのか。厚生年金基金というものはどういう形で今後生き残っていくものなのか。

 そしてまた、当然、確定給付と確定拠出なんかでは役割が違うわけですね。では、どういう役割を確定給付のところには求め、確定拠出の方には求めているのか。その辺の役割分担のところをちゃんと御説明いただけますか。

辻政府参考人 まず、確定給付間の役割分担、すなわち厚生年金基金と新企業年金の関係について申し上げます。

 このたび、税制適格年金、いわゆる適格退職年金というものについて受給権保護をより図るために新企業年金法をつくったわけでございますけれども、これにつきましては、厚生年金基金とはまた別のものでございます。そして、厚生年金基金というものの位置づけといたしましては、厚生年金の本体部分の代行給付の上乗せのプラスアルファ部分を一緒に行うというものでございますが、これは終身年金であるということに私ども非常に大きな特徴を置いております。適格退職年金は、通常、有期年金でございます。

 終身年金の企業年金というのは、やはり長い長い間その企業にお勤めになって、その企業でいわばキャリアを積み、そして優秀な人材を育てていくといったようなことを期待する企業にとってふさわしい制度として、今後ともその役割は意義のあるものとして、さまざまな議論がありますのであり方そのもののこれから議論が必要でございますけれども、存続すべきものと考えております。そして、厚生年金基金も、しかしこれからは、むしろ雇用状況の変わる中で、有期年金といった形の企業年金だけでいいという場合は、このたび代行返上ということを認めることとして、厚生年金基金から企業年金に移行できることといたしました。

 次に、確定拠出年金との関係でございます。

 今言いました確定給付年金は、いずれにいたしましても給付を約束するということでございますので、例えば積み立て不足が生じたときには企業に拠出義務が追加的に生じるというようなことで、どうしても中小の企業にはそこまでやり切れないということで、現実に確定給付の年金が導入しにくい場合が多うございます。一方において、中小企業におきましては、これからは長期間の雇用ではなくて、中小企業を渡り歩くというような新しいタイプの雇用形態も出てきておりまして、そのような、確定給付を持てない企業にとりまして、そしてまた、ポータビリティーを求める、いわゆる企業を渡り歩いても年金がつながってほしいということを求めるような、いわば新しいニーズに対して確定拠出はこたえられるということ。その点、確定給付と確定拠出の間にはまた異なるニーズ、性格がある。

 そのような意味で、新しい選択肢ができて、その三つのものを自由に選択するというような形で法体系が組まれております。

 ただし、移行規定といたしましては、確定拠出から確定給付には技術的に移行ができませんので、移行規定がありませんで、それ以外の移行関係はすべてこの新しい法体系に入っております。

古川委員 私が聞きたいのをもう一回言いますと、今のお話ですと、厚生年金基金も何かここの横並びになるような気がするんですよ、今のお話をするんだったら。それも終身年金として大事な役割だと。ところがこれを見ると、そちらでつくった資料ですよ、厚生年金基金というのは、こっち側に従来の企業年金とあって、国が行う厚生年金の代行であり制約が多いというので、何かこの二つにまとめていくような図があるわけですよ。

 それから、今のお話聞いていると、何か、ではこれからも厚生年金基金というものができてくるのかな、新しい基金ができてくるのかなという思いがありますが、実際にそういうものもやはり想定をしておられるんですか。

 それとも、さっきも申し上げたように、事実上やはりもうこれは確定給付企業年金に統一をさせていきたいんだけれども、しかし、今実際に運用している基金もあるし、一気に代行を返上しようといっても返上できないようなところもあるだろう、そういうことで、やむを得ず残していくというものなのか。

 それとも、今のおっしゃるようなことであれば、ここに三つ、もう一個厚生年金基金として、今と同じような仕組みで代行もあって、そういうものが並ぶものなのか。

 そこのところを、役割としてどう考えているのか聞きたいということです。

辻政府参考人 厚生年金基金につきましては、さきの年金改正の際に厚生年金保険本体の保険料が凍結されたということから、本体の保険料と連動しております、厚生年金基金の免除保険料率と呼んでおりますけれども、これもそれとの関係上凍結せざるを得なかったという事情がございます。

 そんなことから、厚生年金基金について、いわば保険料率についての今後のあり方というものについて、凍結された部分がありますことから、率直に申しまして、少し今、厚生年金基金についてこれからどうするんだという議論が現状にあるのは事実でございます。しかし、そのような本体の保険料の凍結といったものをなるべく早く解除していただく必要があると私どもは思っておりますけれども、そのこととあわせまして、やはり今申しました、終身年金としての特性を持ち、そのような制度が老後の生活設計にとっては非常に意義のあるという制度でございますので、そのような今後の検討とあわせて、この制度については、なおこの制度のあり方を、意義というものを前提としてあり方を議論すべきものと考えております。

古川委員 最後はやはり大臣に答弁いただいた方が、お役所答弁になってしまうので、いいのかなと思ったりもしますが、要は、将来的な方向性というものが見えてこないといけないと思うのですよね。何か最初の話を聞いていたら、将来的にはこれは何らか統合する方向なのかなと思ったら、今のお話だと、でもやはり意味があるとかいって、ではどっちなのかよくわからないわけなんですけれども。

 やはりそこのところも、この法案を審議していく際には、将来的には、例えば別に確定給付企業年金だって、その中でもし今の終身年金というのが必要であるならば、終身年金の形というのを労使でつくったっていいわけでしょう、できるわけですよね。厚生年金基金というのは、結局、代行部分があって、この代行制度というものがもう今や大変に重荷にもなっているし、うまくいかないということがあるわけですから、それであればやはり将来的な方向としてはもう確定給付企業年金、その形に、まあそれは確定拠出でやっていくものもあるかもしれませんけれども、大枠としては今回提案されているものに収れんしていくという、そういう方向性があるんじゃないかと思って私は聞いているのですけれども、今の話を聞いていると、何か、あるのかないのか、どっちかよくわからない。

 適格退職年金についてはこれはもうちゃんと十年で廃止ということがわかっているわけなんですけれども、やはりそこの厚生年金基金については、それは今お話しになっているような技術上の問題とか物理的な問題とかいろいろな問題があって、今回は、代行返上もできるけれども、そうじゃないというのもあるよ、そういうことなのか。そうじゃなくて、やはりここは、これはこれとしてずっと今後とも残していく制度として大事なものだというふうに考えていらっしゃるのか。

 その辺のところを確認させていただきたいと思いますので、ぜひそこを、大臣から明確な答弁をお願いします。

坂口国務大臣 これからの雇用形態がどういうふうにして進んでいくかということにも大変影響されるというふうに思いますが、今局長が答弁をしましたように、厚生年金基金というのはこれからも生き続けるであろうというふうに思います。ただ、先ほど私申しましたように、厚生年金基金から今度できますところの確定給付型年金の方に整理をしようと思えば移行はできますよ、逆の方向はできません、こういうお話でありまして、これからもここは生き続けていく年金である。

 しかし、これから先、雇用形態が、現在のような長く終身雇用のような雇用形態がだんだんと少なくなっていくというようなことになってくれば、主流がどちらに移っていくかということはあるだろうというふうに思いますけれども、今までのような雇用形態がこれからも日本の中に根づいていくということになれば、私は、今までの厚生年金基金も生き続けていくであろうというふうに思います。

古川委員 そうなると、それは世の中の流れに任せるということで、余り意図はないということなんですかね、大臣のお話を聞きますと。その辺をどういうふうに考えていらっしゃるかということは、そもそも今回わざわざ新規にこういう立法をすることの意味にもつながってくると思うのですね。

 どんどんと時間がなくなってしまいますから、次の質問に流れていく中で御質問をしたいと思うのですけれども、今のようにおっしゃるのであれば、私は、現行制度、現行法を改正するような形でも何らかの手続というものはとれたんじゃないか。わざわざ新規立法で対応する理由というものは、今のようにお答えになるのであれば、明確じゃないんじゃないかと思うのですね。

 先日の大島議員の質問の中で、企業にとって加重な負担になっている厚生年金基金の代行部分の返上を認めることや、税制適格退職年金から厚生年金基金への移行に伴う措置は現行法の改正で可能じゃないかという問いに対しては、法律上、制度上の技術的な問題で対応できないから、だから新規立法したんだというようなお答えがあったと思うのですが、ただ単に今回の問題というのはそういう技術的な問題なんですか。

 それとも、もう少し私が本当は聞きたい、何だか今の大臣の言われたように世の中の流れに従っていきますわというふうじゃなくて、何らかの、こういう方向に企業年金というものを進めていって、誘導していって、そういう中でちゃんと守るべきことを守っていく、そういう意図があって出されたものなのじゃないんですか。

 そこはやはり、この前の答弁のように、個別法の対応では法技術上できないから新規立法にしたということなんですか。

坂口国務大臣 技術的な面はこの前お答えをしたとおりだというふうに思うのですが、ただ世の中の流れに任せるということではなくて、世の中が非常に多様化をしてくる、その多様化に対して対応をしていかなければならないということではないかと思うのですね。

 それで、企業によりましては、その職種によるというふうに思いますが、今までのような終身雇用制を維持していけるような企業も存在するでしょう、私はあると思います。しかし、そうはなかなかいかないような企業も存在をする。生まれてすぐに消えていかなければならないような、そういう運命の企業も出てくることも考えられる。

 そうした多様な企業の今後の状況ということを考えますと、今までの一本調子の行き方ではやはり皆さん方の年金というものをなかなか守っていけないのではないかということで、今回こうした、一見見ますと甚だ複雑な感じになりますけれども、確定拠出型の年金でありますとかあるいは給付型の年金でありますとか、そうしたものもつくりながらそしてそれに対応をしていこう、こういうふうにしているというふうに御理解いただければと思います。

古川委員 今の多様なということであれば、では何で適格退職年金をもうやめてしまうということにするのかなという気が私はするのですね。もし今本当にそういうことであれば、それこそ最初の話に戻るのですけれども、三階建ての部分は私的年金として、要は公的年金で生活の水準は保障しながら、それに付加的な部分だということですよね。それであれば、できる限り、労使にとっても、両方にとって使いやすい制度というものはいろいろな形であってもいいんじゃないかと思うのです。

 適格退職年金なんというのは、そういった意味では、これは税法上にしか規定されていないわけでありますけれども、結構使いやすい制度だったのですね。だからこそここまで広がったんだと思うのですが、今のお話で、多様性ということであれば、何もこれを十年で廃止してしまうということをやらなくてもいいんじゃないかと思うのです。これも一つの選択肢として残せばいいんじゃないか。そこで必要な措置はとればいいんじゃないか。

 だから、中にはうがった見方をする人がいまして、これはもともと国税庁の権限であったものを厚生省がとってきた、そういうことを言う人もいるわけでありますよね。ですから、今のようなことを言われるのであれば、そういう疑念を差し挟まれることのないような形の、いろいろなバラエティーのあるような仕組み、三階建ての部分ですからね、やはりそういったものがあってもいいんじゃないかというふうに思うわけなんです。

 何か今のお話を聞いていると、一方ではそういうふうにおっしゃりながら、使い勝手のよかった適格退職年金はもう十年でなしよと。そうなりますと、適格退職年金、今までもかなり解散が相次いでいるわけでありますけれども、それをもっとある意味で制約の厳しい確定給付型の方にかわれといって、かわれるのかどうか。かわらないと、どんどんなくなっていってしまったら、今よりも状況が悪くなって、選択肢も少なくなってしまう。経営者にとっても、そして雇用者にとっても、雇われている者にとっても、勤労者にとってもそういう選択肢が少なくなってしまう。それでは今大臣がおっしゃったような趣旨に合わないんじゃないか。

 ですから、そこのところがどうも、ちゃんとした、今回立法することの意思。私は、欲目で見れば、年金というものについては厚生労働省が全体として責任を持ってちゃんとやっていきますという意思のあらわれとして、責任のとれない国税庁じゃなくて厚生労働省がちゃんと、それは賃金の部分も含めて、労働省も一緒になったわけですからトータルとして見て考えて、そういう中で責任を持ってやっていかれる。そういう意思のあらわれかなというふうに欲目で見れば思ってもみたんですが、どうもきょうのお話を聞いていると、将来はその後の社会状況の変化によりましてという話で、何かこれでは、本当にこういう形で厚生労働省に年金のところをみんな任せていいのかなという気になるんですが、そこについてはちゃんとした御決意があるんですか。

坂口国務大臣 ここは局長にお答えしていただくわけにいかないと思いますから、私がお答えをしなければならないというふうに思います。

 適格退職年金は、なるほど使い勝手がよかったかもしれないけれども、しかし、なかなか使い勝手がよかったがゆえに今度は逆にもらえないというようなことも起こったことも事実であります。そこで、年金というふうに名がつきます以上は、ちゃんと皆さん方に正確にお届けのできるような制度を守っていかなきゃならないということなんだろうと思うんですね。そうした意味で、我々は、受給権保護措置というふうに呼んでおりますが、それをやはり明確にしておかなければならないというので、今回そこを明らかにしたわけでございます。

 ですから、世の中の流れがどちらへ行くかわからないからそれに身を任せてというので大丈夫か、こうおっしゃいますけれども、そこはある程度は、今後どういうふうに進んでいくか我々の予測をしがたいところもあるわけでありますから、いかなる方向に進んでいったとしてもそれに対応できる体制、システムをつくり上げていくというのが、皆さん方に最も信頼される年金制度を確立するということではないかと私は思います。

古川委員 余りここのところだけやっていると次に行かないので、これ以上はまた次回以降もう少し深く詰めさせていただきたいと思いますけれども、では、もうちょっと別の観点から、今回のこの法案について御質問をしてみたいと思います。

 今回、今のお話で、受給権保護という立法趣旨のお話がございましたけれども、では、本当にこの法案が出てきた背景は、そういう受給権保護を求める声がすごく強くなってきたから出てきたのかなと思うと、どうも何かそうじゃないんじゃないのかなという感じもいろいろな客観的状況から見えてくるんですね。

 例えばこれは先日の日経新聞ですけれども、「企業年金 運用利回り初のマイナス 二〇〇〇年度 資産一割、八兆円減」なんという話も出ていました。今のお話もありましたけれども、厚生年金基金また適格退職年金に巨額な積み立て不足があるというふうなことが言われていました。ですから、今回のこうした法案が出てきた背景には、実はそういう現行の制度の状況ではもう立ち行かない、やはりそういうことが背景にあるんじゃないですか。

辻政府参考人 現実に、非常に株価が低迷する、そして長期金利も下がっているという状況で、税制適格年金あるいは厚生年金基金というのが厳しい環境にある中でこの法案が出た、そのことが、そのような状況のためではないかといった見方が成り立つという客観的状況にあるのは事実でございますが、ただ、企業年金のあり方をめぐりましては、もとより、これから三階部分の年金というのが非常に大切になるという状況のもとで、やはり受給者保護という観点の体系を確立しなくちゃいけないということは、最近の著しく厳しくなる前からずっと検討してきております。

 あくまでもこの法律というのは受給権保護を図るための法体系の整備を行うというのが目的でございまして、逆に言えば、今のような状況に対応するためのところが本当に全部入っておるかといえば、現実には例えば支払い保証制度といったものがまだ検討課題ということで残っておるとかいった形でございまして、私どもも、まず今の時点で、環境が厳しいところでございますけれども、厳しい中にも何とか受給権保護というものが図れるように、ぐっと立ちどまってそこのところを守れるようにという気持ちで出させていただいた法案で、今の状況に対応しようとしてこの法案が出てきたというような関係にはないと考えております。

古川委員 言葉じりをとらえるようで悪いんですけれども、ないと考えている。考えているだけなんですか。

 こういう状況というのは別にここ一、二年に始まったわけじゃないですよね。バブル崩壊からもう十年以上たっているわけですから、相当前からあらわれているわけであります。それこそ今のお話で、いや、今回のではそうした今の状況に対応できるかわからないなんというお話がありましたけれども、私から言わせれば、こういう状況というのは別に急にきのうおととい出てきたわけじゃなくて、もう数年前から明らかになっているわけでありますから、新しい仕組みを出すのであれば、当然その中に今の現状にちゃんと対応できるようなものまで含まれて出てきて初めてそれは意味のあるものじゃないか。今の現状まではこれで対応できるかどうかはわかりませんけれども、とりあえずまず第一歩というのでは、これは私は政府として非常に無責任な姿勢じゃないかというふうに思うわけであります。

 特に今回の中で見ますと、今私がなぜそんな、巨額の積み立て不足の状況というのが原因じゃないか、背景にあるんじゃないかということを質問させていただいて、裏にあるのは、今回の制度の中では厚生年金基金の代行返上というものをできることになっているわけですね、そのときには要は株券なんかを物納することも可能だということになっているわけなんですね。株券で物納して代行返上した。では、その株が下落した場合、そもそもとるときにどういう評価をするかということもありますけれども、それ次第によっては厚生年金の方に穴があくということがあり得ますよね。

 そうなりますと、先ほどの話から最初の話にまた戻っていくわけでありますけれども、厚生年金基金というのが、要するに、一、二階の最低限の生活レベルをちゃんと保障していく、そこの部分に付加された部分であると言われながら、ここの年金基金のところでちゃんと本来は賄われなければいけない積み立て不足とかそういったマイナス部分を、二階の部分で、厚生年金全体の中でこれを消化してしまうということにもつながりかねないおそれを、今回提案されている仕組みを使うと秘めているわけですよね。

 そうなりますと、これは普通の人から考えますと、どちらかといいますと厚生年金基金なんかがあるような企業というのは大企業が中心で、勤労者の中でも恵まれた人たちなわけですよ、普通の中小企業に勤めている人に比べれば。企業としても規模は大きいわけですね。ですから、そこの部分で出た穴はそこで埋めてもらうのが原則のはずです。かつまた、代行制度というのは、もとをただせば、企業の側が大きなボリュームで運用すればそれだけ利ざやが稼げて、右肩上がりの中で運用が非常にうまくできる、そういう環境の中でむしろ利益を上げる制度として使われてきた部分もあるわけです。

 にもかかわらず、それが逆になって、代行部分が重荷になって、しかもそこで大きな穴があいて、それをここに来て物納して、その後のリスクは厚生年金の方でとってちょうだいよということでは、では損失が出た場合にどうそれをちゃんと、基金、返上したところが担保するのかとか、そういったものがはっきりして見えてこないと、これは、厚生年金に加入している加入者からして見れば、何か自分たちがツケを回されてしまうのではないか、やはりそういう不安を持つことは明らかじゃないかと思うのです。免れないんじゃないかと思うのですね。

 ですからその点について、そうした疑念を抱くような形になっているんじゃないか、見方によってはそう思うわけでございますけれども、その点は大丈夫なわけですか。

辻政府参考人 今回の代行返上に伴って、どのように措置をしているのかということにつきまして御説明申し上げたいと思います。

 このたび、代行返上を行いますときに、その代行部分につきましては国に移換するということになるわけでございますが、これにつきましては法律に相当細かく明記しております。

 例えば厚生年金基金を解散して連合会に代行給付部分を移換する場合、これは、ごく普通の責任準備金を移換するという形でその必要額がきちっと計算に書いてありますけれども、これと全く同じ額の所要額をきちっと国に移換するというふうにして国に代行分の部分を責任を持って移換していただくと同時に、上乗せ部分につきましては、今度は新たな確定給付企業年金法に移るわけでございますので、この確定企業年金に権利義務は移行する。そして、そのときの権利義務はそのまま上乗せ分として次の確定企業年金法による受給者保護のための規定のもとに置かれる。

 したがいまして、受給者につきましては、その新たな権利保護の規定のもとで今の上乗せ部分の権利義務関係はそのまま承継されるという形で、過不足なく新しい法体系に移るということになっておりまして、いわば代行返上前の法体系、法秩序がこれによって何か動いて、だれかに不利益がその前と違って移るといったような形の内容は一切ございません。

古川委員 一切ないと言いますけれども、こういう細かい話になってきますとそれは次回以降にしますが、物納を認めるということは、現金じゃないわけですから、株券で物納したものは市場で幾らで売れるかわからないわけですから、評価したものと実際に市場で売ったときとの差額が出た場合にそれをどこで補てんするのかとか、やはりちゃんとそういったことの損失負担のルールとかそういうものが明らかでなければ、これは私は、そういう損失を今回の制度改正の中で隠ぺいしようとしているのじゃないか、そういった疑惑というのはぬぐい去れないと思います。

 そういった意味では、こうしたスキーム、今の厚生年金基金とか適格退職年金から移行ができるようなスキームがあるわけですから、これは、現行制度のちゃんとした情報の開示と、移行するときのスキームというものをきっちりと明確にやはりこの法案を審議する際には提示をしていただかないと、この法案自体に対しても私たちどういう対応をしたらいいのかというのは最終的にはやはり決められないと思うのです。ですから、今から申し上げることをぜひ次の審議までには具体的に提示をしていただきたいと思うのです。

 まず現行の厚生年金基金と適格退職年金についてですが、ぜひ情報開示をしていただきたいのは、一点目は、各厚生年金基金の積み立て不足の実態。それから、厚生年金基金連合会、これは第二の住専ということを言う人もいるわけですね、そうなっているわけですから、この厚生年金基金連合会の積み立て不足の実態。それから、適格退職年金に関する積み立て不足の実態。これはちゃんとみんな把握しているわけですか。

辻政府参考人 まず御指摘の厚生年金基金、厚生年金基金連合会、積み立て不足の実態を含めまして、これにつきましては、各基金の決算の結果は報告を受け、集計、公表をいたしておりますし、連合会につきましても、決算については大臣承認となっているとともに、連合会みずから官報によって決算結果を公表しておりますので、これはもう明らかになっております。

 そして、適格退職年金につきましては、これは財務省の御所管でございますけれども、決算を行政に報告する制度にはなっていないという事実関係にございます。

古川委員 本当は適格退職年金についてもちゃんとその辺は把握していないと、今回のこういうことは、では実際にその適格退職年金がどうやって動くのかということもわからないわけですから、やはりそこは本来把握してもらいたいわけでありますけれども、今持っている情報についてはぜひちゃんと出していただくということをお願いしたいと思います。

 あと、厚生年金基金から企業年金への移行に伴う代行返上のスキーム、これは計算式も含めてしっかりと示していただきたいと思いますし、また、先ほど申し上げましたけれども、代行返上の際の物納に係る評価の方法についてもちゃんと我々が理解できるように資料を出していただきたいというふうに思います。ありますね、それは。

辻政府参考人 今御指摘の点、法律に明記されておりますことを含めまして、できる限りの資料を先生に提出させていただきます。(発言する者あり)

古川委員 これは別に私一人ではなくて、みんなが委員会審議の中で使うものですから。ぜひ提出をしていただきたいと思います。

 時間になってしまいましたのでこれで終わりたいと思いますけれども、きょう御質問しましたのは、最初に申し上げましたように、今後審議をしていく上で基礎的な指標といいますか、考え方としてただしておきたいことをたださせていただきました。今後そうした点をもっと深く次回以降審議を進めていきたいと思いますので、ぜひとも御協力いただきますようによろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時五十七分散会




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