衆議院

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第17号 平成13年6月5日(火曜日)

会議録本文へ
平成十三年六月五日(火曜日)

    午前九時十五分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 谷畑  孝君

   理事 森  英介君 理事 吉田 幸弘君

   理事 大石 正光君 理事 鍵田 節哉君

   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君

      奥山 茂彦君    上川 陽子君

      鴨下 一郎君    木村 義雄君

      北村 誠吾君    熊代 昭彦君

      佐藤  勉君    田村 憲久君

      竹下  亘君    西川 京子君

      野田 聖子君    林 省之介君

      原田 義昭君    松島みどり君

      三ッ林隆志君    宮腰 光寛君

      宮澤 洋一君    吉野 正芳君

      家西  悟君    岩國 哲人君

      大島  敦君    金田 誠一君

      釘宮  磐君    古川 元久君

      三井 辨雄君    水島 広子君

      山井 和則君    青山 二三君

      江田 康幸君    樋高  剛君

      小沢 和秋君    木島日出夫君

      阿部 知子君    中川 智子君

      小池百合子君    川田 悦子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働大臣政務官    佐藤  勉君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局東京証

   券取引所監理官)     三國谷勝範君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官

   )            田口 義明君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委

   員会事務局長)      五味 廣文君

   政府参考人

   (総務省郵政企画管理局長

   )            松井  浩君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 木村 幸俊君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   牧野 治郎君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    村上 喜堂君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  篠崎 英夫君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  冨岡  悟君

   参考人

   (日本経営者団体連盟専務

   理事)          福岡 道生君

   参考人

   (一橋大学教授)     高山 憲之君

   参考人

   (年金実務センター代表) 公文 昭夫君

   参考人

   (ILO客員研究員)

   (立正大学教授)     渡部 記安君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  加藤 公一君     岩國 哲人君

同日

 辞任         補欠選任

  岩國 哲人君     加藤 公一君

    ―――――――――――――

六月一日

 社会保障の拡充に関する請願(江崎洋一郎君紹介)(第二二八三号)

 同(江崎洋一郎君紹介)(第二三〇六号)

 同(田端正広君紹介)(第二三七六号)

 食品の安全を確保するための、食品衛生法の改正と充実強化に関する請願(児玉健次君紹介)(第二二八四号)

 同(藤井孝男君紹介)(第二二八五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二三〇七号)

 同(金子恭之君紹介)(第二三〇八号)

 同(河合正智君紹介)(第二三〇九号)

 同(北村直人君紹介)(第二三一〇号)

 同(白保台一君紹介)(第二三一一号)

 同(野田毅君紹介)(第二三一二号)

 同(林田彪君紹介)(第二三一三号)

 同(荒井聰君紹介)(第二三二七号)

 同(一川保夫君紹介)(第二三二八号)

 同(奥田建君紹介)(第二三二九号)

 同(佐藤公治君紹介)(第二三三〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第二三三一号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第二三三二号)

 同(馳浩君紹介)(第二三三三号)

 同(望月義夫君紹介)(第二三三四号)

 同(吉田幸弘君紹介)(第二三三五号)

 同(鍵田節哉君紹介)(第二三五四号)

 同(志位和夫君紹介)(第二三五五号)

 同(土田龍司君紹介)(第二三五六号)

 同(中村正三郎君紹介)(第二三五七号)

 同(中山正暉君紹介)(第二三五八号)

 同(浜田靖一君紹介)(第二三五九号)

 同(二田孝治君紹介)(第二三六〇号)

 同(臼井日出男君紹介)(第二三七七号)

 同(漆原良夫君紹介)(第二三七八号)

 同(鍵田節哉君紹介)(第二三七九号)

 同(桑原豊君紹介)(第二三八〇号)

 同(佐藤敬夫君紹介)(第二三八一号)

 同(実川幸夫君紹介)(第二三八二号)

 同(田端正広君紹介)(第二三八三号)

 同(東門美津子君紹介)(第二三八四号)

 同(永田寿康君紹介)(第二三八五号)

 同(野呂田芳成君紹介)(第二三八六号)

 同(林幹雄君紹介)(第二三八七号)

 同(御法川英文君紹介)(第二三八八号)

 マッサージ診療報酬(消炎鎮痛処置)の適正な引き上げに関する請願(加藤公一君紹介)(第二二八六号)

 同(阿部知子君紹介)(第二三一五号)

 同(古川元久君紹介)(第二三七二号)

 同(樋高剛君紹介)(第二三九〇号)

 中小自営業の家族従業者等に対する社会保障の充実等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二二八七号)

 同(石井郁子君紹介)(第二二八八号)

 同(小沢和秋君紹介)(第二二八九号)

 同(大幡基夫君紹介)(第二二九〇号)

 同(大森猛君紹介)(第二二九一号)

 厚生労働省における家族労働問題・家族従業者の労働実態調査等の緊急実施に関する請願(木島日出夫君紹介)(第二二九二号)

 同(児玉健次君紹介)(第二二九三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二二九四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二二九五号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二九六号)

 中国帰国者の老後生活保障に関する請願(木島日出夫君紹介)(第二三一四号)

 介護保険制度と介護職員の処遇の改善に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二三二五号)

 同(山口富男君紹介)(第二三二六号)

 安全で行き届いた医療・看護実現のための国立病院・療養所の看護職員増員に関する請願(今野東君紹介)(第二三五三号)

 同(阿部知子君紹介)(第二三九四号)

 同(池田元久君紹介)(第二三九五号)

 同(一川保夫君紹介)(第二三九六号)

 同(植田至紀君紹介)(第二三九七号)

 同(古賀一成君紹介)(第二三九八号)

 同(島聡君紹介)(第二三九九号)

 同(田中慶秋君紹介)(第二四〇〇号)

 同(東門美津子君紹介)(第二四〇一号)

 同(中西績介君紹介)(第二四〇二号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第二四〇三号)

 同(葉山峻君紹介)(第二四〇四号)

 同(原陽子君紹介)(第二四〇五号)

 同(原口一博君紹介)(第二四〇六号)

 同(藤村修君紹介)(第二四〇七号)

 同(前原誠司君紹介)(第二四〇八号)

 同(松本龍君紹介)(第二四〇九号)

 同(山田敏雅君紹介)(第二四一〇号)

 同(横光克彦君紹介)(第二四一一号)

 同(渡辺周君紹介)(第二四一二号)

 労働時間の男女共通規制の実現と育児・介護休業制度の改善に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二三六一号)

 同(木島日出夫君紹介)(第二三六二号)

 同(児玉健次君紹介)(第二三六三号)

 同(志位和夫君紹介)(第二三六四号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二三六五号)

 同(中林よし子君紹介)(第二三六六号)

 同(春名直章君紹介)(第二三六七号)

 同(藤木洋子君紹介)(第二三六八号)

 同(松本善明君紹介)(第二三六九号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二三七〇号)

 同(山口富男君紹介)(第二三七一号)

 視覚障害者のパソコンと周辺機器・ソフトの購入への公的助成に関する請願(阿部知子君紹介)(第二三八九号)

 じん肺根絶に関する請願(東門美津子君紹介)(第二三九一号)

 同(中西績介君紹介)(第二三九二号)

 同(日森文尋君紹介)(第二三九三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 確定拠出年金法案(内閣提出、第百五十回国会閣法第二一号)




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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 第百五十回国会、内閣提出、確定拠出年金法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、日本経営者団体連盟専務理事福岡道生君、一橋大学教授高山憲之君、年金実務センター代表公文昭夫君、ILO客員研究員・立正大学教授渡部記安君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の皆様方から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。

 それでは、まず福岡参考人にお願いいたします。

福岡参考人 御指名をいただきました、日本経営者団体連盟の専務理事をいたしております福岡でございます。

 鈴木委員長を初め委員の諸先生方には、常日ごろから、日経連を初めといたします経済団体の活動に格別の御理解を賜っておりますことに、この場をおかりいたしまして厚く御礼申し上げます。また、本日は、当厚生労働委員会で審議中の確定拠出年金法案につきまして、発言の機会をいただきましたことに感謝申し上げます。

 この場で私からは、産業界として、法案に賛成の立場で、私見を交えながら、この法案についての意見を述べさせていただきます。

 現在、予想をはるかに超える少子高齢化の進行、経済基調の変化、グローバルな競争激化などによりまして、年金を初めとする社会保障制度は大きな転換点に立っていると思います。日経連では、かねてよりそのような認識に立って年金改革を訴えてまいりました。その基本的な考え方は、自助、共助、公助のバランスに配慮しつつ、負担と給付が長期的に均衡安定する年金制度の確立を目指すということでございます。

 現在、公的年金は老後の所得保障におきまして大きな役割を果たしております。公的年金はもちろん大切でございますが、一方で、私的年金、なかんずく企業年金に対する期待にも非常に高いものがございます。

 日経連では、そうした認識に立ちまして、平成十年五月に「今後の企業年金のあり方についての提言」を発表いたしております。その提言で、企業年金に対する基本的な考え方について、次のように主張しております。

  公的年金の負担と給付の見直しが行われる中で、個人の自助努力に加え企業年金が一定の役割を担うことも重要であり、その意味で、企業年金の一層の普及・充実を図ることができる仕組みの整備が必要となってきている。そのためには、税制面からのインセンティブと自己責任原則に基づく労使自治を前提とした柔軟な制度運営を確保することが不可欠である。さらに、企業年金の給付設計を、企業ニーズの多様化や個人ニーズの多様化に柔軟に対応できるようにすることが重要である。

 ここで日経連として強調したいのは、労使自治ということでございます。企業年金の当事者は企業と従業員でございます。企業年金制度を健全に運営していくためには、企業の置かれた経営環境や経済情勢を十分に考慮し、柔軟な対応を図っていくことが必要であります。そのためには、労使による真摯な話し合いが重要であると同時に、多様な選択肢が用意されていることが必要でございます。

 現状では厚生年金基金や適格退職年金といった確定給付型の年金制度しか認められておりませんが、これは労使の選択肢を狭めている大変不合理なものと言わざるを得ません。この確定拠出年金法案は、この委員会でさきに御審議いただきました確定給付企業年金法案ともども、二十一世紀の企業年金改革にとって欠かせない車の両輪であると考えております。ぜひ労使の選択肢の幅を広げる確定拠出年金法案につきましても今国会で成立させていただきたいと切望いたしております。

 そこで、まずこの確定拠出年金法案の意義について申し述べたいと思います。

 確定拠出年金制度は、第一に、先ほども申し上げたように、雇用形態や従業員の意識、ライフスタイルの多様化の中で、労使に新たな選択肢をもたらすものでございます。

 第二に、従来の確定給付型の制度では、中小企業などでの制度導入が難しい状況にあります。その理由は、現行の確定給付型の企業年金では遠い将来の給付を約束することになりますが、現在のように先の見えない経営環境の中では、中小企業などでは採用に慎重にならざるを得ないと思われるからでございます。この点、確定拠出年金であれば毎年度の負担が明確でありますから、従業員福祉向上のために中小企業などでも採用しやすいと考えます。したがって、確定拠出年金制度は中小企業やベンチャー企業などでの導入が大いに期待できると私は考えております。

 第三に、確定拠出年金制度は、離職、転職の際に年金資産をスムーズに移換することができるというポータビリティーにもすぐれております。雇用の流動化が進んで離職、転職が増加しております現在では、労働移動に際して権利が確保される、ポータビリティーにすぐれた確定拠出年金制度の方が好まれる場合が多いと思っております。制度の内容をよく御理解いただければ、労働組合などの御理解も十分に得られるものと思っております。

 第四に、確定拠出年金制度は、年金債務がその場で確定し、第三者に資産の管理がゆだねられ、本人の意思で運用が行われる制度であります。このため、従業員が別の企業に移っても年金の権利が確保され、万一、企業倒産といったような場合でも、受給権は完全に確保されます。

 このように、確定拠出年金制度は、従来の確定給付型とは異なる特徴やすぐれた点を持つものでございます。産業界は、かねてより、このような確定拠出年金制度の導入を強く要望してまいりました。一日も早くこの法案を今国会で成立させていただきたいと考えております。

 以上申し上げましたように、私どもは、この法案に全面的に賛成の立場に立っております。この上で、この制度の今後の普及発展を願う観点から、将来改善を御検討いただきたい項目もございますので、将来に向けた要望事項として若干付言させていただきます。

 まず第一は、特別法人税の問題でございます。

 法案では、積立金に対して特別法人税が課税されることになっております。御承知のとおり、平成十四年度までは租税特別措置法によって課税停止となっておりますけれども、この特別法人税の課税というのは大変大きな問題でございます。

 産業界は、かねてから、年金積立金に対する特別法人税の撤廃を要望してまいりました。しかしながら、確定給付企業年金法案に基づく新企業年金制度でも、また、この確定拠出年金法案の企業型、個人型の制度でも、積立金に特別法人税が課税されることになっております。極めて残念なことでございます。特別法人税の課税は、国際的にも例がなく、企業年金制度の充実発展を阻害するものだと考えます。ぜひ今後撤廃する方向での御検討をいただきたいと考えております。

 第二に、拠出限度額の問題でございます。

 企業型は、企業が拠出の全額を負担するものでございます。このような企業型の場合に、月額三万六千円という限度額は低過ぎるのではないかと考えます。この水準でございますと、確定給付型の企業年金制度と均衡のとれた選択肢としては必ずしも十分でないというふうに考えます。さらに、既存の企業年金などに加入している場合には、一律に半分の月額一万八千円が限度とされております。こういった複雑かつ天井の低い制度では確定拠出年金制度の設計を行う上での制約が生じますので、将来的には、この限度額のあり方や水準についても見直しをしていただきたいと考えております。

 このほか、企業拠出と個人拠出とを峻別するということではなくて、企業拠出に従業員が追加拠出したり、従業員拠出に企業が補助拠出したりすることもできるというふうなこともお認めいただきたいといった要望事項もございます。

 しかしながら、こういった今申しましたような点につきましては実際の制度の活用状況を見ながら改善することも可能でございますから、今はまず何よりも新しい器、新しい制度を早急につくっていただきたいというのが産業界の願望でございます。

 この法案は昨年の通常国会に提出されましたが、衆議院の解散に伴い廃案となりました。産業界では、その後も、昨年九月十四日に経済四団体で早期成立を求める総決起大会を行うなど、早期成立に向けての要望を重ねてまいったところでございます。この法案は前の臨時国会からの継続審議の案件でございますので、ぜひ一刻も早く成立させていただきたいと切望しております。

 お手元に配付させていただいておりますとおり、経済四団体は、さきに御審議いただきました確定給付企業年金法案と今般の確定拠出年金法案につきまして、今国会での早期成立をお願いするための要望を取りまとめております。この場で朗読をさせていただきたいと思います。

 お手元にある資料でございますけれども、経済団体連合会会長今井敬、日本経営者団体連盟会長奥田碩、日本商工会議所会頭稲葉興作、経済同友会代表幹事小林陽太郎の名前で、「確定拠出年金法案ならびに確定給付企業年金法案の今国会での早期成立についてのお願い」ということでございますが、

  本格的な高齢社会の到来を目前に控え、国民の老後生活の安定を図る上で、私的年金制度を充実し、個人や企業の自助努力を促すことが焦眉の課題となっています。また、企業は、国際競争の進展に対応して、企業組織の機動的な再編を推進しており、企業年金制度についても、労使合意を基本としつつ、より柔軟な運用を可能とすることが急務となっています。さらに、雇用の流動化や就業形態の多様化に対応できるよう、ポータビリティを確保することも重要な課題となっています。

  このため、企業年金改革の一環として、今通常国会に継続審議扱いとなっている確定拠出年金法案について、産業界としては、一日も早い成立を願っております。是非ご高配を賜りますよう、お願い致します。

  あわせて、今通常国会に提出された受給権保護等を目的とする確定給付企業年金法案に関しても、われわれは、その早期成立を強く期待しております。

  つきましては、両法案を早期に審議していただいて、二法案とも今通常国会で一刻も早く成立できるよう、格段のご尽力をお願い申し上げます。

 日経連の奥田会長は、人間の顔をした市場経済という考え方を提唱いたしております。この人間の顔をした市場経済というのは、人間尊重の理念と市場経済の原理との両立を目指すものでございます。この考え方の根本は、社会の主役は人間であるということでございます。その主役である人間が、自由な市場での競争を通じ、自己の能力を十分に発揮することによって、生きがい、働きがいを持てる社会を実現する必要があります。そのためには、あらゆる領域で多様な選択肢を準備し、機会の均等を確保することが重要でございます。

 その意味で、この新たな選択肢でございます確定拠出年金法案の成立は、さきの確定給付企業年金法案ともども、企業年金改革において欠かせないものであるというふうに考えております。ぜひとも今国会で成立させていただきたく、重ねてお願い申し上げます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

鈴木委員長 どうもありがとうございました。

 次に、高山参考人にお願いいたします。

高山参考人 一橋大学の高山でございます。本日は、当委員会にお招きをいただきまして、大変光栄に存じております。

 確定拠出年金法案について意見を述べます。

 まず、法案には、基本的に賛成でございます。

 その主たる理由は二つございまして、第一は、税制優遇措置つきの新しい掛金建て制度であること。第二に、従来の給付建て制度は転職者に不利な面が多々ございました。しかし、新制度では、ポータビリティーを高めるという点で一定の前進が図られております。新制度創設により、総じて選択肢が広がることになります。この点はプラス評価に値すると考えております。

 次に、給付建て制度ではリスクを事業主が負担する一方、掛金建て制度ではリスクを従業員本人が負担するという見方が一部にございます。しかし、これは皮相的であり、現実的な見方だとは言えません。

 給付建て制度のもとで未積み立ての年金債務の償却を優先しますと、ボーナスのカットや月給の引き下げ、あるいは従業員解雇が行われがちでございます。結果的に従業員もリスクの一部を負担することになります。一方、掛金建て制度のもとでも、事業主が元本または最低利回りを保証するというケースがございます。いずれも労使間の交渉が先にございまして、双方の合意に基づいた形で具体的な内容が決められるということでございます。表面的に制度の違いがありましても、リスク分担ということに関する限り、両者に大差が生じるとは考えられません。

 今後の課題として、以下、七点を指摘しておきたいと存じます。

 第一点目、特別法人税問題でございます。

 現在、年金課税につきましては、拠出時非課税、運用時非課税、給付時課税が望ましいということになっておりますけれども、日本では給付時課税を徹底することが容易ではございません。また、運用時非課税の問題で申し上げますと、他の金融商品は運用時課税ということになっておりまして、それとどうバランスをとるかということが問題になります。これら二つの点を考慮いたしますと、税務当局がおっしゃっているように運用時課税を残すということには一定の理解を示さざるを得ません。

 ただ、現行のように特別法人税がストック課税という形をとっていることは適正だとは思っておりません。むしろ、フロー課税すなわち運用収益課税に切りかえることが、今後の方向として、セカンドベストではありますが、望ましいというふうに考えております。

 第二点目、非課税拠出枠の年齢別設定の問題でございます。

 日本の企業の退職給付は、御案内のように給付建て制度に偏り過ぎております。昨今、運用環境が厳しい中で、日本の企業財務を直撃させている大きな要因となっております。それが企業の前向きな対応をおくらせて、結果的に日本経済の自律回復ということがなかなか思うに任せない状況になっているというふうに判断をしております。やむなく日本の企業では退職給付債務の一部または全部を掛金建てに切りかえようとしております。それが私の事実判断でございます。

 この掛金建てへの切りかえを容易にするためには、非課税拠出枠を年齢別に設定し、高年齢の人ほど非課税拠出枠を高くすることが必要になります。しかし、法案では、この点に関する限り、非課税拠出枠は年齢にかかわりなく一律という形になっております。現状、このような法案の形が仮に施行されますと、掛金建てへの切りかえというものがそう簡単には進まないというふうに予想されまして、これは日本経済界が求めていることには必ずしも、それを満たすことにならないというふうに考えている次第でございます。今後の検討課題として非課税拠出枠をどう設定するか、この問題を改めて検討なさっていただきたいというふうに存じます。

 第三点目、ハンドリングコストの節約問題でございます。

 掛金建て制度の成否を決めるのは、一つは税制でございますけれども、もう一つは、ハンドリングコストをどこまで低く抑えるかという問題でございます。各国で大変頭を痛めている問題でございますが、日本では、法案の審議あるいは制度を設計する際にほとんどこの点の議論がなかったというふうに思います。

 ちなみに、イギリスでは、新しくステークホルダー年金というのをことしの四月から導入することになっておりますけれども、ハンドリングチャージを積立金の一%以下に規制することになりました。日本でも、ゲームのルールとして、何%にするかは別としまして、このハンドリングチャージをかなり低目に抑えるような方向の規制を考えることが私は望ましいというふうに思っております。

 金融機関が商売を広げるということは確かに大事なことかもしれませんけれども、新しい企業年金制度あるいは老後所得の安定に向けた制度をつくることの趣旨は、やはり老後の所得の厚みというものを一段と万全なものにする、それが最大の眼目であったはずでございまして、そのような目的に照らしまして、ハンドリングコストを低目に抑えることは非常に重要な課題だというふうに考えております。これはアメリカでも盛んに議論をされておりますし、オーストラリア等でも全く同じでございます。この点の検討をぜひお願いしたいということでございます。

 四点目、マッチング拠出の容認でございます。

 現在の法案では、このマッチング拠出は一切認めておりません。しかし、非課税拠出枠の範囲内であればマッチング拠出を認めてよいのではないかというふうに考える次第でございます。

 第五点目、六十歳前の中途取り崩し問題でございます。

 これは同様に、今回の法案では認めておりません。しかし、ペナルティータックスを支払うことと引きかえに六十歳前に中途取り崩しを認めてよいのではないかというふうに考える次第です。

 第六点目、ポータビリティー問題。

 今回の法案、新しい年金制度をつくるに当たっての一つの眼目、それはポータビリティーを確保するということにあったのですけれども、これが必ずしも完全ではございません。その一つの例ですけれども、仮に、掛金建ての制度が用意されている企業から、そういうものが用意されていない、従来の給付建ての企業年金制度しかない企業に転職をいたしますと、掛金建て制度に拠出し続けることができなくなるという形になっております。新しい制度が日本人全員に開かれたものにはなっていないためにこのような問題が起こるわけでありまして、このような制約は取り除くことが望ましいというふうに考えております。

 第七点も似たり寄ったりの論点でございますけれども、公務員や専業主婦につきましても、新しい掛金建て制度を利用できるように早急に検討する必要があると存じます。

 以上でございます。(拍手)

鈴木委員長 どうもありがとうございました。

 次に、公文参考人にお願いいたします。

公文参考人 御紹介いただきました公文でございます。

 早速ですが、今国会に提案をされている確定拠出年金法案について、基本的に反対であるという立場で意見を申し上げてみたいと思います。

 言うまでもないことですが、この確定拠出年金法案は、全国民がひとしく加入している公的年金ではなく、私的年金、企業年金にかかわる課題であり、いわば従来型の企業年金の中に新しい選択肢を加えるものとされています。

 本案の提案の理由では、社会経済情勢の変化に伴って、国民の生活の安定と福祉の向上に寄与する制度の創設が目的だというふうにうたわれております。大変結構な理由で、今の企業年金に加入する人たち、それから、今国会でもし成立するとすれば新しい制度に加入する人たちを含めて、よりよい制度がつくられる、より豊かな老後保障が確保されるということなら多くの人たちの賛同が得られると思います。

 ところが、今回提案されている確定拠出年金法案は、確かに大企業を中心にした企業主には大きな利益をもたらすと思われますが、肝心の加入者である雇用労働者には、利益どころかさまざまなデメリットしかないと言わざるを得ません。

 以下、その問題点を八点ほど挙げて、皆さん方の御審議の御参考にしていただければ大変幸いだと思います。

 まず第一点ですが、企業主の受けるメリットというのは極めて大きい。年金資産の運用に関するまず責任がなくなる、あるいは積立金不足の問題が発生しなくなって負担の責任もない。どうなろうと労働者個人の自助努力、自己責任でやっていけばいいんだということですから、全く笑いのとまらない話だろうと思います。

 第二点ですが、ところが、企業年金に加入する大多数の労働者、それから自営業者の皆さん、御承知のとおり、今現在でも厚生年金基金に加入している人たちは約一千百七十万人、それから適格年金の加入者が約一千万人、それからいわゆる国民年金加入者が約七十六万九千人、これは資料の百八十五ページに載っておりますけれども。この人たちにとっては、この確定拠出年金を選択すると、定年退職時あるいは年金受給時になってみなければ一体幾らの年金あるいは幾らの給付額になるかというのは全くわからないわけですから、老後の設計がまず成り立たない。あらかじめ年金額が明示されている確定給付年金と違いまして、老後の計画が立たないという、ますます不安定なものになる要素の方が強いのではないかというふうに思います。

 第三点ですが、この法案の趣旨はみずからの才覚による自主運用の利点を掲げていますが、よく言われているように、ハイリターンと背中合わせのハイリスクについては全く説明も強調もされない、当然失敗した場合はすべて自己責任ということになります。率直に言って、大変危険なマネーゲームの提唱としか言いようがない。

 それに対して、いや、そうではなくて、資産運用の選択肢がふえるから安全なものを選べばよい、これは二十三条にかかわる部分だと思いますけれども、そういう言い方もありますが、現在多くの労働者が御承知のとおりリストラのあらしにさらされて、サービス残業で労働強化を強いられているという方々が多い中で、どうして十分な投資教育を受けたり、あるいは個人でじっくり研究して選択するなんという余裕があるでしょうか。もし損をしないで何とかもうけようと思う人がいたとしたら、間違いなくマネーゲームに熱中して、仕事に専念できないということだって出てくると思います。優秀な人材を求めたいと思っている企業にとっても、こうした事態は決して望ましいことではないと思います。

 今申し上げましたように、素人では適切な選択ができないというのが多数の加入者の実情であるとなると、選択先の金融機関の言いなりに商品を買わされるという事態が必ず生まれてきます。法案では、金融機関が運営管理とそれから資産管理の両機関を兼ねることができるようになっています。先ほど第三者の監督というお話がありましたけれども、事実上はそうならないのであって、そうなればますます金融機関主導の企業年金になってしまいます。このことは、企業がみずから運営管理機関の業務を兼ねることができるという問題にも連動するのであって、年金資産を分離して保全するという原則があいまいになるということも大変大きく危惧されるところです。

 第四点ですが、確定拠出型の年金だったらポータビリティーができるというお話がありました。これも非常に多くの方々から説明をされているところですが、しかし、転職しても次の転職先に持っていけるということになっているようですけれども、それは転職先にも確定拠出型年金、企業型の年金があればの話であって、ない場合は個人型に加入して本人の負担で継続するしかないということになるわけです。

 ポータビリティーを大きく評価するというのであれば、現在の確定給付型年金の改正をすれば事足りるのであって、何か、ポータビリティーという利点を取り上げるということは、まず最初に確定拠出型年金をつくるということが前提になっているということで、つけ足しの利点の説明でしかないだろうというふうにしか思われません。

 第五点ですが、いずれにしても、個人投資の対象ということになりますと、投資信託か株が主流になると思います。当然のことですけれども、これにかかわる金融機関が一斉に動き出しております。もしこの法案が成立し実施されることになれば、こうした金融機関には莫大な手数料と報酬が入ってくることはもう常識です。この利潤をねらっているのは日本の金融機関だけではありません。アメリカを初めとした多くの外国の機関も手ぐすね引いてこの法案の成立を待ち構えているという現状があります。まさに裸でオオカミの群れの中にほうり出される労働者あるいは自営業者の皆さんが、どういう結果が出てくるか、大変不安です。

 第六点ですけれども、こうした金融機関のもうけの裏側には、現行の確定給付型よりも拠出型にした方が、手数料、報酬を含めて事務費などのコストが高くなるという問題があります。これはもう常識ですが、単純なシステムで済む一括運用型に比べて高くなるのは明白です。高くなるコストの補てんは、当然のことですが、運用上のハイリスクを促すとともに、加入者である労働者がひっかぶることになると思います。

 とにかく、今日の金融不透明それから不安、低金利の持続の中で、効率的、効果的な個人の資産運用などできるわけがないと私は思います。さらには、こうした不安定な機関に労働者の老後保障の一部を託することなど、とんでもない話だと思っております。確実にもうけだけが確保されるのは当該金融機関だけ、多くの国民を犠牲にした新型の金融機関支援策としか言いようがありません。

 第七点ですが、さらに多くの労働者の不安をかき立てるのは、確定拠出年金の選択に伴って起きてくる退職一時金の合理化の問題です。話によれば、企業型の場合、企業拠出の掛金限度額が月一万八千円というふうに言われておりますが、これでは大変貧弱な年金にしかなりません。当然、退職一時金の全部または一部の取り崩しという移行、あるいはさらにこの新しく出発をする確定拠出年金との間の調整措置がさまざま出てくると思いますけれども、その際、退職一時金の乗率の切り下げなど、既得権、期待権の後退が発生する可能性があります。この問題についてどうするのかということについても、明確な方向性は出されていないと思われます。

 第八点ですが、個人型では掛金限度額が月六万八千円などと言っておりますけれども、これだけの金額を拠出できる人がどの程度出てくると考えておられるのでしょうか。

 個人型の対象とされている一号被保険者は御承知のとおり今約二千万人、うち、先ほど申し上げましたように八十万弱が国民年金基金の加入者です。大部分が基金加入などできないし、していない。現実に、これはもう皆さん方、釈迦に説法ですが、国民年金の一号被保険者の掛金は、今一人月一万三千三百円です。この掛金でさえ払えない方々が免除者という形で約四百万人いらっしゃいますし、それから、いわゆる未納者が約二百八十万人、これは厚生省の調査、社会保険庁の調査でも、そのうち三割は公的年金不信から払わないという人であり、七割は経済的理由で払えないという人たちです。さらに、その上に未加入者が百万人。合わせますと、八百万人近くも国民年金の掛金が払われていない、あるいは払うことができないという実態に置かれています。

 提案理由で言う「国民の生活の安定と福祉の向上に寄与する」ということが主目的だというなら、まず何よりも優先して、大多数の一号被保険者の年金改善に全力を挙げるのが政治の責任ではないかと思います。

 まずは、全与野党一致して決めている基礎年金の国庫負担の割合を三分の一から二分の一に増額をして、負担の軽減と年金額の引き上げを図るべきだと思います。これは、今は厚生労働省ですが、厚生省時代に、三分の一から二分の一に増額することで国民年金の掛金は月三千円減らすことができるという試算も発表されておりますので、大変大きな国民生活安定への寄与ができるのではないかと思っています。

 こういった空洞化を解消して、土台である公的年金の改善を行った上で、さらにそれにプラスアルファの個人型年金をどう乗せるかという議論をなさるということであれば、これは当然のことだと思いますし、その前提をきちっとさせるということがまず優先すべきだというのが筋だと思っております。

 最後に、言うまでもないことですけれども、企業年金を持っていない労働者は、今でも一千万人いるわけです。確定給付型が拠出型になったからといって、小零細企業の方々が中心だと思いますが、その事業主や労働者たちにプラスアルファの企業年金、高い掛金をかけて創設をするなどということは到底考えられません。ますます、年金という制度を通して、大中企業と小零細企業の労働者の年金格差、これは老後の生活保障の格差となりますけれども、拡大されることにしかならないと思います。

 簡単に挙げただけでも、さまざまな問題があります。したがって、小零細企業の労働者も含めて労働組合をつくっている日本の代表的な中央労働組織である連合あるいは全労連といったところ、さらには国民年金の一号被保険者の皆さん方を多数加入させている中央社会保障推進協議会などは、一致して、賛成できない、反対の意思を鮮明にしていらっしゃいます。当然のことだと思います。この組織だけで組合員、会員は一千万人を超えるわけですから、発言の場のない未組織の労働者や企業年金のない小零細企業の労働者の意思をそんたくするならば、少なくとも過半数の労働者、すなわち確定拠出年金法が対象にしている人たちの多くが法案に賛成していないという推測もできると思います。

 そうした意味で、議員の皆さんの十分な御審議をいただいて、ぜひこの法案については今国会見送って、廃案にしていただくということをお願いしまして、私の意見を終わりたいと思います。(拍手)

鈴木委員長 どうもありがとうございました。

 次に、渡部参考人にお願いいたします。

渡部参考人 渡部記安と申します。

 では、資料に基づいて簡潔に御報告いたします。

 一、初めに。

 本法案は、米国の四〇一k型企業年金プランをベースとしている。しかし、国際化、情報化の今日にもかかわらず、米国の実態を全く歪曲した前提に基づいており、受給権保護のみならず、円滑な労務対策面からも非常に問題がある。そこで、公私年金制度の国際比較研究の観点から、直接米国政府資料に基づき、またILOを含む世界の最新動向を踏まえて、本法案に関する私見を簡潔に述べさせていただきます。

 二、二十一世紀の社会保障政策、新しい理念確立の必要性、本法案の位置づけ。

 ケインズ的福祉国家の崩壊とシュンペーター的ワークフェア確立の必要性が出てまいりました。福祉政策への国民の能動的参加の時代であります。ペンションガバナンスに基づく、民主性、公平性、効率性、連帯性に富む公的年金制度の再構築が急務であります。公的年金制度の補完的機能としての多様な企業年金の重要性が叫ばれております。

 三、そのような観点から、まず、企業年金基本法制定の緊急性を訴えます。

 アメリカでは一九七四年にERISA法を、ドイツはアルテル・レンテン・ゲゼッツを制定し、年金給付支払い機構等の創設を実施し、そして健全な企業年金の育成に貢献してまいりました。しかし、現在では、我が国は企業年金基本法さえ未制定であります。

 例えば、これがERISA法ですが、ライフル銃で撃ち抜かないといけないぐらい、非常にばっちりと受給権の保護をしております。そして、このようなERISAの前提に基づきまして、受給権保護体制下で一九七八年に四〇一k型を導入したわけであります。

 四〇一k型は、米国考案の新制度か。

 四〇一kは、旧欧米植民地諸国に百年前から存在する公的年金であるプロビデントファンドの一形態であります。決して新規な制度ではありません。先進諸国の金融情勢により国民の引退用貯蓄額が非常に大きく変動し不安定で、しかも運営管理手数料が高いため、各国は非常に苦慮しております。そして、現在は確定給付型へ逐次移行中であります。

 五、米国が四〇一kを一九七八年に導入した理由。

 導入理由はわずか二つであります。米国民の趨勢的な低貯蓄率と米国の企業年金税制にあります。低貯蓄率は、皆様御存じのとおり。ベビーブーマーの引退用貯蓄制度として導入しました。しかし、我が国の貯蓄率は非常に高く、個人金融資産は一千四百兆にも達しております。

 b、ここがポイントでありますが、米国の企業年金税制は、先進諸国の中で非常に特異な存在であります。企業年金給付は賃金の後払いとの原則が法律的、経済的にも確立しており、労働者拠出金には税制優遇措置を認めず、あくまでも課税後拠出が大原則であります。いわゆるTET方式であります。ベビーブーマーの引退用貯蓄制度として伝統的原則に唯一の例外を認め、労働者拠出金に非課税としたのが、内国歳入法四百一条k項の新設であります。

 要するに、米国の特異な企業年金制度を例外的に日本方式に修正したのが四〇一kであります。伝統的に労働者拠出金に税制優遇措置を認めている日本で、なぜ健全な企業年金制度が発展しないのか、そこが問題であります。

 六、米国で確定給付型が本当に減少しているのか。

 この法案の審議を見ておりますと、アメリカでは確定給付型がどんどん減り、確定拠出型がどんどんふえておるという前提で議論を進めておりますが、これは、米国政府の資料に基づきましても全く相反するものであります。

 まず、確定給付型がどうか。

 a、確定給付型は全体として健全である。FORM五五〇〇に基づいております。加入者数規模で二百五十名以上の年金基金はほとんど減少していない、一千名以上になると皆無に近い状態であります。加入者規模で五十名未満の年金基金、これが減少しておるわけです。特に十名未満の確定給付型年金基金の減少が、減少の九割以上を占めております。

 皆さん、その下の図表をごらんください。これは縦線が加入者規模数であります。二から九名から、二万名以上。そして横軸が基金のマイナスとプラスであります。くしくも、減少の方に確定給付型が載り、プラスの方に確定拠出型が載っております。ですから、これをトータルで見れば、確定給付型は減少しており、確定拠出型は増大しております。

 しかし、その中身を見れば、今申し上げましたように、確定給付型の減少は、その九割以上は十名未満の年金基金である。そして確定拠出型。確定拠出型の増加は加入者数規模で二百五十名未満での増加であり、増加年金基金数の九割以上は百名未満であります。そして、確定拠出型の平均加入者数は百名未満で、七五%は加入者二十五名未満の年金基金であります。

 では、米国経営陣は、なぜ確定給付型を大黒柱的企業年金として堅持しておるのか。

 冷徹な資本の論理、コーポレートガバナンスの観点から企業年金政策は決定しております。日本のような甘っちょろい、社会のためとか、そういうものではありません。冷徹な資本の原理から。企業経営の目的は何か、株主配当の極大化である。そのためには何をすべきか、利益の極大化である。そのためには何をすべきか、よき人材確保と長期雇用。そのためには確定給付型と確定拠出型のどちらが大黒柱としてすべきか、それは確定給付型であるということであります。

 アメリカには確定給付型のほかに確定拠出型がたくさんあります、五つ、六つ、七つ、八つと。ですから、一つの企業に企業年金が五つ、六つ、七つ、八つある。十万円もらうとしますと、そのうち八万円が大黒柱の企業年金からもらい、あとの二万、三万を幾つかの、五つ、六つ、七つの企業年金からもらっておるわけですから、何が大黒柱かどうかという観点から物を見ないと、全く実態を把握しないことになります。このように、米国経営陣の労務、賃金、企業年金政策は実に健全であります。

 目先の動向に左右される日本の経営陣と政府。時価評価主義導入対策として、厚生年金基金や適格年金の百兆円とも言われる積み立て不足債権隠しに四〇一kを悪用しようとしておるのでしょうか。

 労組も、反対だけで、長期的展望に欠ける。なぜ、オランダのような業界ベース、フランスのような全国ベースの強制設立型企業年金を提案し実行しないのか。

 確定給付型は本当に雇用主負担が大きいのか。

 景気循環。きれいに景気循環が波を繰り返す前提としますと、例えば最近十年程度では、金融市場の活況のため、負担実質ゼロの企業主が非常に多い。景気がきれいなサイクルを描くとしますと、プラスマイナスでほとんど負担が少ない。日本ではこの負担ばかりが強調される。アメリカ経営陣はきちんとそれを堅持し、連邦政府はそれに対してきちんと保護政策を与え、年金給付支払い機構で保護しておるわけであります。

 四〇一kが発展している本当の理由。

 これは、米国税制の大原則を日本式に改めたから大発展したわけであります。そして、資産運用収益は非課税であります。日本では、この法案でも課税であります。そして、年金会計がきちんとし、時価評価主義の徹底。法的整備。伝統的受託者責任をさらに修正し、厳格な受託者責任を創設したのがこのERISAであります。確定給付型には、年金給付支払い保証制度を強制適用し、四〇一k等の確定拠出型の運用収益の不安定さを中和しております。

 さらに、産業構造面では、新興ベンチャー企業の勃興と発展。金融政策は、金利政策を含め、透明で効率的。受託金融機関は、安定的に高い自己資本比率と高い収益力。金融市場は、ここ十年来の活況。

 他方、我が国は、金融システムの崩壊の危機にあり、四〇一k発展の前提はほとんど欠如している。なぜ、早期導入を急ぐのか。だれのための導入論か。

 米国は、我が国と異なり、企業年金の種類が非常に多様です。

 時間がありませんから、十三番の方に参ります。

 大黒柱的企業年金か補完的企業年金かの視点からアメリカの企業年金を分析しないと、全く無意味であります。

 企業年金が多数存在するため、それが果たして大黒柱的存在か補完的存在かを判断した上で分析しなければ、米国の正確な実態把握は不可能。確定給付型は、大企業、中堅企業の大黒柱的企業年金として、ばしっとあるわけです。そして、確定拠出型は、大企業、中堅企業のプラスアルファの補完的企業年金として存在し、また中小零細企業の大黒柱的企業年金として存在します。

 しかも、企業年金普及率は四七%、過半数の労働者は企業年金、四〇一kさえない。当然、ポータビリティーもありません。もしもポータビリティーを強調するならば、健全な公的年金制度の確立がまず急務。企業年金制度では、企業ベースの任意設立型ではなく、フランスのような全国ベース、オランダのような業界ベースの強制設立型の企業年金を我が国へ導入すべきであります。これは四〇一kの問題ではありません。

 十四番、四〇一kの実態。このように、四〇一kは、中小企業の従業員が非常に多く加入しておりまして、何と八七%が、四〇一kだけが企業年金という中小企業向けになっております。

 そして十五番。資産構成は、株式が六八%、そのうち勤務先企業が一八%。つまり、金融市場が暴落すれば老後資金も職場もともに喪失する可能性が強いわけであります。

 十六、では四〇一kの個人勘定残高は幾らか。これはわずか四万七千ドル、日本円で五百万程度であります。

 加入者二百五十名未満では、わずか三万ドル。三百万ちょっとぐらいですと、日本の中小企業でも退職金は払っております。加入者一万名以上の年金基金でも六万六千ドル。つまり、一万名以上の大企業の連中にとっては、ばしっと確定給付型の企業年金が二十万、三十万というのがありますから、六百、七百万ぐらいでも十分なわけであります。年金基金数で見れば、わずか〇・四%の一万名以上の年金基金が総資産の四七%を占めております。

 このように、米国では、企業年金制度を通じて労働者の貧富格差が増大しております。

 四〇一k型の投資収益率は高いのか。

 次のページのグラフをごらんください。これも米国政府の資料であります。急いだものですから翻訳しておりませんが、実線が確定給付型、点線が確定拠出型、これはほとんど四〇一kが代表しております。このように長期的、趨勢的に見ましても、日本で喧伝されるように四〇一kが投資収益率が高いなんというのは全くの事実誤認であります。しかも、これはあくまでも総利益でありますから、これから運用管理費コストを差し引くわけです。

 二十番をごらんください、二十のb。とにかく、ILOがよく引用しますように、運用管理手数料が、公的年金は一・四%、確定給付型企業年金は四・四%、確定拠出型企業年金は二一・二%であります。一般の確定給付型企業年金の五倍のコストがかかる。これは米国でもチリでも英国でも非常にそのとおりでありまして、各国はいろいろ運用管理手数料の法的規制に乗り出しております。運用管理手数料は、投資運用収益から控除する方式を導入すべきであります。

 運用管理手数料の最大の原因は、マーケティングコストであります。

 二十一番のb。ILOも認めるように、一般労働者は明確な長期的視野も金融知識も乏しく、その場限りの利益に左右されやすく、受託金融機関の宣伝広告に押され、簡単に乗りかえ契約を行います。民営化の限界、政府の責任の問題であります。

 去年の五月にILOが、画期的な「ソーシャル・セキュリティー・ペンションズ」、二十一世紀の公的年金政策の本を出しまして、現在私がこれを翻訳しておりますが、ここで繰り返し繰り返し強調しておるのが、確定拠出型の不安定さと運用管理コストの問題であります。健全な競争といいますが、いろいろな文献でも、健全な競争はない、ほとんど商品内容が同じで囲い込みで過当な競争をする、ほとんど労働者の利益になっていない。

 民営化の限界としてマックスウェル事件があります。三月末にEUの年金会議がありまして、ロンドンに行っておりましたちょうどそのときに、英国政府がマックスウェル事件報告書、こんな分厚いのを二冊発表いたしまして、各国は非常に真剣に企業年金改善に取り組んでおります。

 二十三番、自己責任とは何か。市場は万能か。自己責任という美辞麗句で国民の貴重な老後資金を大きな危険にさらしてよいのか。

 二十五番、では日本に確定拠出型は存在しないのか。財形年金、掛金建て適格年金、中退共、既に存在します。その発展しない実態の究明と改善策の策定実施もないまま四〇一k導入論、何と愚かなことでありましょうか。隣の庭に生えている可憐な花が美しい、しかし、腐敗した土地に移殖しても美しい花は決して咲きません。

 二十七のb、問題を内包する公的年金制度、既存の企業年金制度の抜本改革が急務であります。

 企業年金関係では、厳格な受託者責任を規定する基本法制定、代行制即時撤廃、年金給付支払い保証制度の確立と徹底適用。年金給付支払い保証制度を解約しようとするようなら、もう厚生年金基金連合会を即時撤廃して、通算制とがっちりした支払い保証をやる制度をつくるべきであります。官僚に資産運用が不可能な事実は世界的に実証済みであり、ポリティカルリスク、官僚リスクの最たるものであります。受給権保護以外の規制は撤廃すべきです。

 ペンションガバナンス、年金制度における民主制、公平性、効率性の確保が急務であります。

 このような緊急課題を先送りし、金融システムそのものが危機に陥っており、累増する不良債権下で金融機関が続々と破綻し、さらに生命保険業界も既契約者に確約した保証利率さえ引き下げようと検討しているこの時期に、なぜ四〇一kの早期導入に狂奔するのでしょうか。だれのための四〇一k導入論であるか。

 二十八、結論。

 本法案には、国際比較的観点から見れば、法律、金融、労務政策上などの問題が非常に多く、二十一世紀の引退後所得保障制度を展望した行政理念に乏しく、公私年金制度の比較研究者としては、この制定には絶対反対であります。

 b、課題が山積している中での四〇一k早期導入は、企業年金行政の失態隠しと評価されてもいたし方ありません。

 c、米国経営陣は営々と確定給付型を堅持しているにもかかわらず、我が国経営陣は時価評価主義導入に基づく積み立て不足隠しとして四〇一kを悪用しようとしておるのでしょうか。

 d、世界に類を見ぬ二十一世紀の超高齢社会において、労働者の貴重な老後資金を、生産性が低く破綻に瀕した受託金融機関に対し長期安定的な収益源として提供するのが本法案であると評価されてもいたし方ありません。さらに、日本の受託金融機関の収益力が乏しいために、これはほとんど欧米の金融機関に持っていかれます。国益にも反する。

  新世紀理念乏しき立法で金融機関栄えて国民滅ぶ

 以上です。(拍手)

鈴木委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮腰光寛君。

宮腰委員 自由民主党の宮腰光寛でございます。

 きょうは、参考人の先生方には大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。大変重要な法案でありますが、大変時間が限られておりますので、重点的にお聞きをさせていただきたいと思います。

 まず初めに、高山参考人にお伺いをいたしたいと思います。

 高山先生の方からは、法案には基本的に賛成だ、ただ、七つの問題があるというふうにおっしゃっておいでになりました。

 以前、高山先生の産経新聞への寄稿を拝見いたしました。昨年の六月二十二日の記事、夕刊でありますが、それによりますと、現行の公的年金は行き詰まっている、確定給付年金は必ずしも望ましい制度ではない、新たな選択肢となる確定拠出年金は短期勤務者、転職者にもメリットがある、労組の抵抗感は確定拠出年金が従業員個人に運営上のリスク負担を強いている点に根差している、恐らく日本でも拠出型と給付型のよいところを組み合わせたハイブリッド型が検討されるであろうなどと述べておいでになります。

 そして最後に、公的年金の保険料引き上げも増税も不可能とすれば、これが、これというのは掛金建てというのか、確定拠出年金の導入ということだと思いますが、これが唯一の切り札と信ずるというふうにおっしゃっておいでになります。日本版四〇一kの登場によって、金融ビジネス、個人のリスクに対する意識、金融資産の形態、公的年金と私的年金の組み合わせなど、すべてに大きな変化が生じるが、どの変化も自然の流れである、この転換点で私たちは知恵を試されているのではないかと最後に結論づけておいでになるわけであります。

 この確定拠出年金を唯一の切り札と評価されていることにつきまして、高山参考人にもう少し詳しく御意見をお聞きいたしたいと思います。

高山参考人 お答えいたします。

 先ほど時間の制約なんかで余り詳しく申し上げることができませんでしたけれども、日本の企業年金制、特に今、企業年金といいましても事実上退職給付でございまして、一時金払いが圧倒的に多いわけでございます。その給付設計は、いろいろな理由はあるんですが、主として税制上の理由によりまして、給付建て制度に圧倒的な部分がなっているわけであります。かつてはこれで余り支障はなかったわけでございますけれども、昨今の運用環境、こういう中で、非常に企業を痛めつけている、日本企業を痛めつけているわけです。日本経済停滞の一つの原因とさえなっていると私は思っております。

 やはり、日本経済の自律回復、あるいは将来に向かってもう少し日本人全体が元気になるために何が必要であるかということをいろいろ議論しなきゃいけない、そうした中で、現在の退職給付のあり方が本当にこれでいいのかということが問われているわけであります。

 給付建ての制度、いろいろ問題がございまして、特に新会計基準の導入等ございました。あるいは、未積み立ての債務の償却を優先的に求められているということもございまして、それはとりあえず第一次的には事業主の責任になっておりますけれども、結果的には従業員もその責任の一端、リスクの一端を背負わされているということでございまして、先ほど申し上げたとおりでございます。ボーナスが減らされてしまう、月給も下がってしまう、あるいは中には失業というところに追い込まれてしまった人も多々いるわけでございます。

 事業主だけがリスクを負担しているわけではないということにぜひ御理解をいただきたい。従業員も、この給付建てに偏っている企業は退職給付制度の中で非常に苦しんでいるということでございます。その苦しみの一部を軽減する可能性があるものとして、掛金建ての制度を活用するということが当然のことながら検討されていい。

 これは労使の話し合いが前提になっておりますから、すべての企業がやるということが義務づけられているものではございません。労使があくまでも議論した上で、こちらがいいというふうに合意した上で初めて制度が導入されるものであります。

 私自身は、労使合意を容易にする方法はむしろハイブリッドだというふうに考えておりますけれども、ハイブリッドは既に衆議院で先日来議論されました確定給付企業年金法案の中に含まれておりまして、これも成立する方向だというふうに私は理解しておりますけれども、ただ、選択肢として、純粋プロトタイプの掛金建ての制度があってもおかしくないというふうに思っております。これが活用し得る余地はある。

 アメリカでも、制度をつくったのは一九七八年ですが、実際に大きく活用が広がったのは九〇年代の後半からでございます。株式市場が活況を呈した中で、ここに対する注目が高くなったということでございます。

 日本経済もこれによって株価が上がるということは私は基本的にないと思います。日本経済が元気になった上でこの制度が活用されるということの方がむしろ大きいという面があるとは思うのですけれども、とにかく今の日本の企業を痛めつけている、あるいは従業員が困るところに追い込まれているところを少しでも解決する、その一つの器として新しいこの掛金建て制度があるというふうに私は理解しているわけでありまして、これこそが、いわば今の日本経済の苦しみ、なかなか公的年金は保険料を上げられるような状況になっておりません、ただし、企業の自助努力あるいは個人の自助努力という中で、その辺の状況を転回し得る一つのきっかけがこれで与えられるというふうに思っているというのが私の基本的理解であります。

 以上でございます。

宮腰委員 ありがとうございました。

 次に、福岡参考人にお聞きをいたしたいと思います。

 現在、少子高齢化の進行あるいは産業構造の変化、労働移動の拡大ということで、既存の年金の仕組みが国民に大きな負担を与えている。やはり、このままの既存の年金制度だけでこれからの社会に対応できるかどうかということからこの確定拠出型年金が出てきたのではないかなと思います。

 ただ、この確定拠出年金の制度をつくれば、例えば今高山参考人の方からおっしゃっていただいた、つくっただけで株が上がるわけではない、しかし、つくったときは株式市場が活性化をするのではないか、あるいは国際会計基準の導入への対応ができるのではないか、あるいは確定給付型の企業年金の積み立て不足の問題の解決が期待できるといったようなことが、検討の過程でそれが強調され過ぎておりまして、そのことが導入の阻害原因になったということも否定はできないのではないかなというふうにも思っております。

 あくまでもこれは老後の所得保障のための新たな年金制度としてとらえるべきだと思っておりますが、確定拠出年金制度がスタートをした場合、既に企業年金を持っている企業、あるいは中小企業あるいは零細企業などにおきまして、この新制度がどのように普及をしていくかという、その見通しをお聞かせいただきたいというふうに思っております。

福岡参考人 お答えします。

 御指摘のとおりだと思うのですが、日本の企業年金といいますか、これは、もともと退職金がスタートになりまして、確定給付というものがありまして、退職金そのものの水準は、これは世界に例が余りないと思うのですけれども、非常に高いわけですね。かつ、それが転換しました確定給付の制度でございますので、レベル的にはかなり高い。

 ただ、問題は、かなり先の、二十年も三十年も先のことを約束しなきゃならぬ制度でありますから、今個人も価値観が多様化している面もありまして、転職だとかということもありますけれども、企業そのものも、今の大企業がいつまでも大企業であるかどうかという保証ももちろんありませんし、そういう意味では、二十年も三十年も先のことが本当に約束できるのかという問題も一方で出てきているわけであります。

 一方、確定拠出の場合でございますと、これはもちろん労使合意が大前提でございますが、労使合意は大前提の上で、そこの場で債権債務が確定いたしまして、それを第三者に預託できるわけでございまして、自分が運用指揮を行うことができるということでございますので、そういたしますと、仮にその企業が運悪く倒産するというような場合でも保全されるということがあります。

 そういった意味で、一つは、何といっても選択肢をふやすという非常に大きな問題と、今言ったような問題。

 それから、現実の問題として、残念なことではございますけれども、例えば適格年金で申しますと、この三年間に一万件消滅しているというような実態もあるわけでございまして、特に中小企業、零細企業の場合ですと、そんなに二十年も三十年も先の約束が今できるかということになってまいります。だけれども、確定拠出でありますと、その場で債権債務が確定して第三者預託ということになりますから、そういう意味で、中小企業で福祉政策としてやりたいと思っていても、今まではできない、だけれども今度はできるということになるわけでございまして、そういう意味では非常に大きな展開力を持つ制度である。

 かつまた、何も確定給付を私ども決して否定しておるわけでも何でもないわけで、確定給付は確定給付として立派にあればいいわけですが、ただ、そういう経済の実態というものが果たしてそんな長期のものをだんだん許さなくなってくる場合の、労使双方にとってよりベターな一つの保全策というものも用意しておく必要があるんじゃないかということで、強く要望しているところでございます。

 以上でございます。

宮腰委員 車の両輪でありますとか、あるいは労使双方にとってベターな制度であるというお話でありまして、そのとおりだと思っております。

 既存の確定給付型の年金の制度を補完するという意味で極めて大事だと思いますが、この給付型から拠出型への移行ということについて、大体どのような形で移行するといいますか、その移行の見通しについて福岡参考人に最後にお聞きいたしたいと思います。

福岡参考人 私どものアンケートで、大体確定拠出ができるとどういう感じになるかということを調べてみたのですが、これはちょっと古いので、去年の十二月時点で、退職金・年金に関する実態調査報告ということで調べてみましたところ、大体七割の企業が、この確定拠出年金の導入について関心がある、やりたいという気持ちを持っているようであります。これは、もっと確定拠出というものの中身が理解されてくればくるほど上がるものというふうに私は考えております。

 実際に、今先生御指摘の移行の問題、この見通しについては、私ども今確たるアンケートその他の実証をちょっとしておりません。いずれにしても、これは労使自治、労使が決める話でございますから、労使が合意しなければ移行しないし、合意すれば移行するということになる話でございますので、これも私は、確定拠出に対する正確な理解というものが進めば、大いに進むものというふうに考えております。

宮腰委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小池百合子君。

小池委員 保守党の小池百合子でございます。

 参考人の皆様方、御多忙のところ、本日はありがとうございます。

 私は、基本的にこの確定拠出年金、賛成でございます。今の日本経済、いろいろな問題点を抱えておりますが、また緊急経済対策にもかかわっている人間といたしまして、今の日本経済の問題点、以前から私は、これは日本経済エコノミー症候群であるというふうに申し上げております。じっと座っている間に血瘤がたまって、そしてそれがどんどん血圧を下げてデフレになる、そしてお金のめぐりがよくならないで、そしてどんどんと経済力が低下していくという現象であり、また個人個人として見れば、いつリストラされるのかわからないといったような恐怖心が個人消費を冷え込ませている。そういった悪循環が今あるものと考えております。

 その意味で、この年金という極めて重要な、また長期にわたり自分の将来の生活の安心を与える材料であるにもかかわらず、給付型の方におきましては、年金基金の解散が相次ぐ、もしくは料率が下がる等々、非常に不安をかき立てるような状況が次々と起こっている中で、今回の日本版の四〇一kと言われる確定拠出型年金の導入というのは、先ほどから出ておりますが、選択肢となるという意味では大変大きいポイントになると思っております。転職ということが、ある意味で幸か不幸かよく起こる状況となってまいりました中で、ポータビリティーの確保ということも二番目の大きなポイントであるというふうに考えているところでございます。

 そういったことを踏まえまして、福岡参考人、高山参考人の方に伺っていきたいのですが、この確定拠出を導入するに当たりまして、今申し上げました中で、どうも確定給付の方じゃうまくいかない、そしてまた時価会計の導入等いろいろな面で現実が迫ってきている、今後の若い従業員がふえる当てもない、ではここでいっそのことというふうなことになりますと、やはりこれまでやってきた企業の責任というものもきっちりと明確にしておかなければ、今後拠出型を導入するにしても、労使の方の合意がなかなかできないのではないかと心配もするわけでございます。

 そういった意味で、給付型年金がうまくいかなくなった理由、そしてそれに対しての企業側の責任についてどのように考えるべきなのか、この点について、お二方に伺いたいと思います。

福岡参考人 確定給付についてうまくいかなくなった理由ということですけれども、これは一つには、今の経済情勢というものが非常に厳しくなってきているということ、それから、先ほど申し上げましたように、もともとこの確定拠出というのは、退職金から始まって、その退職金のレベルというのは非常に高い。これはもちろんいろいろな差はございますけれども。

 ところが、人口構成が想像もしない鋭角的な角度で、世界に例を見ない高齢化が急速に始まってきているというのが今の現実であります。そうしますと、いわゆる退職金に近い人の負担ということと若い人がもらう期待権ということとの関係で、かなりギャップが出てくる可能性が今非常に大きくなっている。かつまた、企業環境も非常に厳しいものですから、これが形を変えました適格年金についても、先ほど申しました、あるいは先生も御指摘になったように、残念なことに、これを解散せざるを得なくなってきているというような状況感が随分出てきているというふうに思っております。

 ただ、いずれにしましても、確定拠出の場合におきましても、これは確定拠出のいわゆる企業型で申しますと、負担は全額企業が負担するわけでありますから、決して企業が年金に対する支払い義務を怠っているということにはならない。確定拠出の場合の企業型は、全額企業負担でございます。そういうことで、決して怠っていることにはならない。

 それから、今回の確定拠出年金法案におきましては、加入者保護につきまして、加入者の保全を図る観点から、企業、国民年金基金連合会、運営管理機関、資産管理機関は、法令、確定拠出型年金規約を遵守し、加入者などのための忠実に義務を遂行する責任を負うなどを法令上定めるとしておりまして、受託者責任にかかわる忠実義務や行為準則についての措置が行われております。かつまた、情報提供等についても規定されておるわけであります。そういうことでございますから、その点の保全は十分行われているというふうに考えておるところでございます。

 私からは以上でございます。

高山参考人 お答えいたします。

 確定給付がうまくいかないということでございますけれども、私は、確定給付という言葉を使っておりません。給付建ての制度だというふうに言う。給付自体は確定していないのですね。労使の交渉によって給付自体が変わってしまうということであります。どうしてこんな言葉が使われるようになったかよくわかりません。もともとこの業界では、給付建てと掛金建てという適訳があったはずなんですけれども、いつの間にかマスコミの皆さんがこれを確定給付だとか確定拠出だという言葉に変えてしまったことは非常に残念だというふうに私自身は思っております。

 基本的には、給付建ての制度をうまくやるためには、ある程度の運用環境がないといけないということだと思うのですけれども、経済は変動きわまりないものでございまして、そこのところがうまく担保できなかったということが大きな理由だというふうに考えております。

 ただ、企業の責任という問題になりますと、企業はいろいろな意味の責任を負っているわけでありまして、退職給付の保全だけが企業の責任ではないわけです。企業は、その従業員に高い賃金を払い、やる気を引き出し、日本経済全体を元気にするというところの方がむしろ大きな責任なはずなんですね。

 給付建ての年金制度であくまでも従来約束したものにこだわるということはどういうことかといいますと、基本的に、退職直前にある中高年の従業員の給付はそれで保全されるわけですけれども、そのためにいろいろな犠牲が伴うということなんです。月給が上がらない、新規に新しい人が雇えない、あるいは場合によっては失業者が出てしまう、ボーナスが下がってしまうというような形になるわけですね。これが若い従業員のやる気を失わせているわけです。あるいは、有能な女性職員のやる気も失わせているわけです。

 企業全体に活力を取り戻すためには、中高年の人たちが自分の退職金は保全されているからこれで安泰だということだけで企業は元気になるわけじゃないのですよ。要するに、企業に与えられているお金は一定でありまして、それを有効に使うためにはどうしたらいいのか。退職直前の従業員にも少し遠慮してもらうことが場合によっては全体として必要になるということが、労使の総合的な判断の中から出てくることは大いにあるわけです。それが現に退職給付規程の引き下げということにつながっているわけでありまして、これは現に労使の合意の上でやっているわけですよ。

 ですから、確定給付といいながら実態はそうなっていない。労使はそれを承知の上で中身を変えているわけです。労使にとって今何が重要なのかということを真剣に議論しているということでありまして、確定給付という名前だけに踊らされてこういう問題を議論すべきではないというふうに私自身は考えております。

 以上でございます。

小池委員 ありがとうございました。

 確定給付とこの委員会でもずっと使っていたのですが、どうやら不確定給付という部分もあるというお話だったかと思います。

 拠出型になりますと、自己責任という言葉に象徴されますように、従業員の方にもいろいろな責任が生じてくるわけでございますが、その意味で一番重要なポイントが教育だと思います。そして、特に日本人の場合、日本の場合、こんな超低金利でも貯蓄をしているというのは私は信じられないといいながら、それしかできないわけでございますけれども、金融機関が護送船団であったと同様に、国民の方も護送船団でチョイスもなかったところに突然この確定拠出年金の導入ということになると、なかなか迷うところがあると思うのですね。ましてや、最後は自己責任だと言われてしまう。となりますと、従業員教育というのが欠かせないポイントになってくると思います。

 福岡参考人に伺わせてください。導入されますと、それぞれ、企業がどのような教育をして進めていくべきなのか。経団連の方で何かそういう指針なるものをおつくりになっておられるのか、その中身がもしありましたらお伝えください。

福岡参考人 お答えします。

 今先生御指摘のように、日本人の特性みたいな感じのものがないわけじゃないと思うのですが、いずれにしましても、世界がグローバル化してくる、それから、この問題にかかわりませず、いろいろな、ある意味では共通の金融あるいは証券市場の知識というのは、個人としてもだんだん不可欠になってくるだろうと思います。

 それはさておきまして、この法案の第二十二条では、事業主は資産の運用に関する基礎的な資料の提供などの努力義務が課されているわけであります。具体的には個々の企業の状況に応じて投資教育が行われることになると思いますが、コンサルタントの積極的な活用やインターネットを中心としたIT技術が広範に用いられることが期待されますし、また、そうしなきゃならないというふうに思います。これは、各企業はある意味でこういう努力義務がありますので一生懸命やると思いますが、ただ、これをまた画一的にやるかどうかという問題は一つございます。

 それからもう一つは、あくまで自己責任にかかわる問題でございますから、こういう知識を一生懸命授ける、あるいはいろいろなことをあれする、ただ、ゆめ誘導的になっちゃいけないということもありますので、公平公正な知識を与えるように。そういう意味では、私ども産業界としても、ぜひそういう公平公正な知識が極力与えられるよう、企業の方を指導といいますか、そういうことに導く努力をしなきゃいかぬというふうに思っております。

 以上でございます。

小池委員 ぜひよろしくお願いをいたします。最後に自己責任と言われても困ってしまう場合も往々にしてございます。

 最後に、高山参考人に質問させていただきます。

 意見陳述の中の五点目に、六十歳前の中途取り崩しで、ペナルティータックスを支払うことと引きかえに六十歳前の取り崩しを認めてもよいのではないかという御意見が書いてございますけれども、こうなってしまいますと、ペナルティータックスを払うというのはアメリカの制度でも同じでございますけれども、どうも貯蓄と年金との差が出なくなってしまうのではないかというおそれもあるのですが、その点いかがでしょうか。この質問で終わらせていただきます。

高山参考人 お答えいたします。

 この制度が年金か貯蓄かを、税の取り扱いをめぐって大論争になったというふうにお伺いをしておりますけれども、私は、年金といってもこれは特別の貯蓄だと考えるしかないというふうに考えているのですね。貯蓄か年金かというのは、何か哲学論争だったというふうに思っております。これは特別の貯蓄だというふうに割り切るしかない、それを税制上優遇するかどうかだけだったのではないかというふうに思います。

 なぜこの点を私は指摘したかというと、現在の税制適格年金制度、これは中小の企業で広範に利用されているわけですけれども、その一部の関係者にとって、この新しい制度に部分的に制度を切りかえようとするときに恐らく最大の障害になっているのが、この中途取り崩し問題だというふうに私自身は理解しております。

 この中途取り崩しができないために、新しい器ができても切りかえが進まない、そこに二の足を踏まざるを得ないという中小企業関係者が多いのではないかというふうに思っているわけでありまして、選択肢がふえるといいながら、事実上その選択を許さない形になっている、そこが問題だろうというふうに考えております。

 以上です。

小池委員 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。本日は、参考人の先生方、貴重な御意見を伺いまして、大変にありがとうございます。

 確定給付年金に加えまして確定拠出年金を公的年金の上乗せ年金として認めることによって、企業年金の選択肢をふやして、中小企業の従業員が上乗せ年金制度の加入者となることを容易にし、また、雇用の流動化に対応して、離転職が年金制度上不利となることのないポータビリティーのある制度の導入を図る必要性が高まっていることなどから、この確定拠出年金制度の導入が提案なされております。

 私も、次のような理由で、それは必要かと思っております。

 一つは、確定給付年金制度の問題は、経済環境が悪化して運用利回りが予定利率を下回ると、未積み立ての年金債務が発生し、企業がその償却に追われることになります。未積み立ての年金債務は、累計総額で六十兆円とも八十兆円とも、その域に達しているとの試算結果もあります。企業年金債務は、今、日本企業の財務を直撃しているような状況でございます。これに対して、確定拠出年金では未積み立ての年金債務は発生しない、中小企業も参加しやすいという利点を持っていることから、この確定拠出型の年金制度の導入が必要であるかと思っております。

 また、若年層とか女性を中心として転職意識が変化しつつある一方で、国際競争の激化や産業構造の変化の中で、労働移動が加速しております。この円滑な労働移動、適材適所の労働移動というのが、新産業を創出して国際競争に勝つ足腰の強い日本経済をつくる上でも必要であると私は思っております。

 このような意味で、本制度の導入が必要ということで考えております。

 そこで、本制度制定の論点になっております基本的な課題について、さきの質問と多少重なるところがあるかと思いますが、質問をさせていただきます。

 まず、運用面で幾つか質問をさせていただきたいのです。これは高山参考人それから渡部参考人にお聞きします。

 一つは、確定拠出年金制度が導入され、確定給付年金や退職一時金が確定拠出年金に移行すれば、これまで企業が負担していた運用等のリスク及びコストが加入者に転嫁されることになり、適当でないとの懸念がございます。しかし、確定拠出年金制度のもとでも、事業主が元本保証したり、最低利回り保証をしたりするケースが少なくございません。労使交渉を踏まえた労使合意に基づいて規約が定められるからでありますが、この場合、市場リスクの一部を事業主が引き受けることになり、その一〇〇%を加入者が引き受けることにはならないとの意見もございます。これについてはどのようにお考えになられるか、お伺いしたい。

高山参考人 お答えいたします。

 私は、労使交渉が前提である以上、労働側、組合側の賛成なしに物事は決まらないというふうに思っております。いずれにしても、予期せぬ形で元本割れが起こってしまったというような場合に、使用者側の責任において何らかの工夫をする、それを労使交渉に提案するということは大いに期待できるというふうに考えております。

 したがいまして、それは個別企業によって状況は違うと思いますけれども、何らかの最低利回り保証あるいは元本保証ということをするケースは十分考えられるというふうに思っておりまして、一〇〇%従業員がそのリスクを負うというのは極めて皮相的な理解であるというふうに思っております。

 以上です。

渡部参考人 渡部でございます。

 大変的を射た御質問だと思います。確かに、アメリカでも、一〇〇%従業員にリスクを持たせるというのが多うございます。そのほかの国にも多うございます。しかし、アメリカにおきましても他の国におきましても、一定の利回りを保証するとか一定の額を最低限度保証する、そういう制度を導入している企業も国も多うございます。

 私は、この法律の不足な点を幾つか考えておるわけでございますが、最低利回り保証を労使に任せるなんということは、やはりそこに力関係もありますし、むしろ、福祉国家における国家機能を放棄するようなものでございます。なぜ立法をするか。国家の責任があるからそういう企業年金立法をするわけですね。その中にばしっと、最低これだけ保証するとか、十年物の長期国債の利回り保証をするとか、そういうことをぜひ入れるべきだと思っております。

江田委員 その延長上の質問でもございますが、運用についてでございます。高山参考人また渡部参考人にお聞きしたいと思います。

 確定拠出年金では、加入者ごとに持ち分を管理して、それらにかかわる運用指図を個々の加入者が行うことになる。このため、運営管理コストが相対的に高くなるとの指摘が今もあっております。

 これは、先ほどから渡部参考人が、アメリカの例でしょうけれども、公的年金一・四%に対して、拠出型は二一・二%と非常に高いんだということを例に言われましたが、投資選択の自由度が高いということは、加入者から見れば、一見するとよいことのように思える。しかし、それはハンドリングコストを高くしてしまいやすい。オーストラリアでは、投資選択の自由を制限して、コストを低くする努力をしていることもございます。また、イギリスでは、ハンドリングコストを積立金の一%以下に抑えるように政府が規制しているということを、これは高山参考人の著書で読みました。

 日本の本制度ではこの規制は一切ない、金融機関の競争で決まるということのようでございますけれども、これがいいことなのかどうか、その点についてお二人の意見をぜひお伺いしたいと思います。

高山参考人 ハンドリングコストの問題は、余りこの間議論されなかったことを私は大変残念に思っております。

 先ほど来申し上げておりますけれども、下手をすれば結構高いものになってしまう。チリ等のケースを見ますと、金融機関の競争に任せている、あるいは特殊なハンドリングチャージシステムのために掛金の二〇%程度を当初取ってしまうということが現にあるわけです。マーケティングコストだとかファンドマネジャーに対する報酬というものに大半のお金が消えているという実態でございます。九〇年代のチリにおけるパフォーマンスを見ますと、予想されたものよりもかなり悪いということですね。結果的に年金資産の目減りさえ発生しているということでありまして、何としてもそのような事態は避けるように、あらかじめいろいろな工夫をする必要があるというふうに思っております。

 あの金融機関が発達しているアメリカにおいても、この議論は今盛んに行われております。金融機関の競争だけにゆだねて本当にこのコストというのは下がるのかどうかということでありまして、それに対する疑問も幾つかあるという中であります。

 あるいは、イギリスも金融市場が発展している典型的な国だと思いますけれども、その国においてさえ、今度新しく導入されるステークホルダー年金については、これは掛金ではありません、分母は積立金なんですけれども、その積立金の一%以下にコントロールしなさい、その中で競争しなさいという話になったわけですね。勝手に、好き勝手にハンドリングコストをそれぞれの年金基金に対して要求してはいけませんというふうになったわけです。

 オーストラリアは企業年金なんですね。全額事業主拠出の制度であります。ここでも、勝手に、好き勝手に投資選択をしていいですよという形になっておりません。

 投資の自由度が広がるのは顧客サイドから見れば満足度を高める要因なんですけれども、それにはやはりコストがかかるということなんですね。結果的に元も子もなくなってしまうケースが想定されることをかんがみまして、いや、それであれば投資機会を一部制限しよう。あるいは従業員教育といっても、これも残念ながら非常にお金のかかる話であります。そういうものをできるだけ制限するために、いろいろな工夫を当初からするということであります。こういう議論を日本でもぜひなさっていただきたいというふうに思います。

 残念ながら、この法案にかかわる制度は二元管理になっておりまして、厚生労働省マターと金融監督庁だと私は理解しておりますけれども、金融監督庁の影がほとんど見えない形なんですね。ここの厚生労働委員会での議論になっておりまして、金融監督庁はどういう形でここに関与しているのかがよくわからないわけです。その辺の議論が欠けていることを非常に私は残念に思っております。

 以上です。

渡部参考人 渡部です。お答えいたします。

 今の御質問は、本法案における二つ三つの非常に重要な点の一つであります。運用管理コストの問題は、ILOも繰り返し繰り返し強調しておる問題であります。どういうふうに言っているかといいますと、確かに従業員の選択権が拡大するんだ、しかし、それはうまくいった場合です。ところが、ほとんどの従業員、労働者は特定の知識がありませんから、結局、乗りかえの対象になる。運営管理コストのほとんど三割は、ILOによれば、マーケティングコストであります。ですから、これをどのように抑えるかということであります。

 私の考えは、そしてこれはかなり世界の学者もおられますが、投資運用収益から差し引くべきである。受託金融機関が投資運用に失敗すれば、リスクは従業員だけじゃなくて、運用管理コストも徴収できない、そういうふうにすべきなんですね。ですから、運用管理コストは年金資産投資運用収益の中から差し引く。また、それを何割にするかということもあるでしょうけれども、そういうようにしなくては、損をすればすべて加入者の責任、しかし運用管理コストはきちんとキャッシュでいただきますというのは、余りにもこれは不公平であるというわけであります。

 そして、この法案では何も触れておりませんが、世界的に、こういう個人勘定ベースの運用管理コストの決め方は、勘定ごとの固定管理コストが非常に高いのです。十万の人も百万の人も同じ一口座幾らというのが非常に大きなウエートを占める、年金資産残高比例よりは。ですから、貧しい人ほど、この運用管理コストは非常に大きな負担となるわけです。

 ですから、受託金融機関が全く安全な場所におって、リスクは全部加入者、しかし手数料はがっぽりいただきます、それは余りにも不公平である、正義に反する。ですから、私は、投資運用収益からコストは取るべきであるというふうに思います。

 しかし、まずそこまでいかなくても、イギリスの新しい法律、そういうふうなものを参考にする、このILOのいろいろな提言も参考にする。

 それと同時に、先生にぜひ御理解いただきたいのは、この投資運用コストの最大要因は乗りかえ契約。マーケティングコスト、その最たるものは乗りかえなんです。チリでも年間に四割以上の人が乗りかえておる。イギリスでも乗りかえ契約が多くて、ほとんど似通った契約内容です。それで、結局、受託金融機関は商品内容の競争よりは囲い込みの競争ばかりしておるじゃないか、これははっきりILOは言っておることなんです。そのコストがかかる。ですから、乗りかえ禁止をきちんと条文に盛り込むべきだったわけですね。例えば一年に一回にするとか、二年に一回にする、そして、それに対してはイギリスはきちんとペナルティーを科しています。資産の幾ら取るとか、そういうふうにきちんとペナルティーを科すべきだと思います。

 もう一遍申しますと、運用管理コストの規制方法というのは、まず投資収益から取ること。そして、年金資産の何%という方法。そして、拠出金の何%という方法。幾らでもやり方はあるわけであります。

 以上。

江田委員 時間になりましたのでこれで終わりますが、今の二点については十分に検討していく必要があるということで理解させていただきました。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、古川元久君。

古川委員 民主党の古川元久でございます。参考人の皆様方におかれましては、大変に貴重な御意見をお寄せいただきまして、ありがとうございました。

 私から、まず福岡参考人にちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、先ほど来の参考人の御意見の中でも、ほとんどの企業年金というのは労使合意を基本としてというお話が出てきています、高山先生のお話の中にもあったわけでありますが。労使合意を基本としてこの確定拠出型の年金制度を組んでいくんだという話なんですが、残念ながら、そういう労使合意を基本という、こういう私的年金の部分であれば、ここの法案というこの形に出てくる前に、何らかの形でこういう枠組みの導入についての労使間での最低限の合意というものがあってもよかったんじゃないかなと思うんですが、残念ながら、今のところ、ここの法案が出てくるところに至っても、はっきりと企業側と労働者側に意見の大きな対立があるわけですね。

 私がちょっと疑問に思うのは、この法案が導入されたからといって本当にちゃんと労使合意が成るのかどうかということの危惧もするわけでございますけれども、事前の労使間のこれまでの話の中でどうしてこの制度自身についての基本的な最低限の部分での合意ができなかったのか。その辺についての事情といいますか、経緯がおわかりになりましたら教えていただけますでしょうか。

福岡参考人 事務レベルでの話だとかいろいろありますが、大きな会合レベルでの話といたしましては、特に労働組合の方でも、いろいろな組合、単産がございます。私どもが、もちろんいろいろな形で話をやりますが、しかしどうしても、雇用問題であるとか、緊急的な極めて重要な雇用問題であるとか、あるいは春季労使交渉になりますと、どうしても春季労使交渉の問題であるとかいうことに、トップ懇談会ということになりますと話が行きまして、こういう問題について、そういう大きなトップのレベルでの話し合いというのはなかなか持ち得ないというか、そういうことも実はあるんです。

 ただ、労働組合の中にも、これは、仄聞した話と直接私が指導部の方と懇談した話と両方あります、ですけれども、かなり意見があるようでございます。もちろん、いろいろな条件、多面的な問題でございますから条件もついた話もございますが、例えば金属労協の、これは一番大きな労働組合の中核だろうと思うんですけれども、幾つかの条件はありますけれども方向としては、この確定拠出について認める方向だというふうに私どもは理解しております。

 それはどういうふうに理解されるかということですが、私どもはそういうふうに理解しているということは御承知おきいただきたいというふうに思います。

古川委員 どうも双方の理解が何か食い違っているようなところもあるようでございまして、これは、もともと私的年金、企業年金の部分ですから、法律である意味で制約するのは、前提の部分のところでそういう公的に法律という形で縛らなければいけない部分についてちゃんとやるという部分であって、その前提の部分がやはりちゃんとしていることが私は大事なことだと思いますので、ぜひそこは経営者側の方も、引き続き、しっかりと、その大前提の部分の合意をとるような努力を今後ともしていただきたいということをお願いしたいと思います。

 次に、もう少し各参考人に御質問したいんですが、とりたてて参考人のきょうのお話の中では出なかったんですけれども、ちまたでは、この確定拠出型年金は特に株式市場対策として大変な期待をされているところがあるわけなんですね。とにかく、緊急経済対策なんかでも必ずこの確定拠出型年金の導入というのが、今回企業年金の改革というのは先日法案が通りました確定給付型企業年金基本法とかあるわけですけれども、そういう部分は出てなくて、この確定拠出型年金だけが、景気対策といいますか市場対策、株価対策というので出てきているわけなんです。そういう面からこの確定拠出を入れようというのは、ちょっと本旨からそれるんじゃないのかなという気がいたすんですね。

 また、そういう部分がどんどんと一般に、私たちの耳に聞こえてくるものですから、何かこれは、純粋に確定拠出型年金を選択の一つとしてということじゃなくて、どうも株式市場に金が、需給関係のバランスをよくするために、金を入れるためには確定拠出型を入れなければいけないんじゃないかみたいな、そういうよこしまなといいますか横道からの話が何か先に行っているような感じもするわけでございます。

 ただ、私、個人的に見てみますと、果たして今度のこの制度を入れて、しかもこのボリュームで本当にそういう株式市場対策というものになり得るのか。そして、そんな緊急経済対策なんかの項目に入れるような即効的な効果というものが出てくるというふうに思っておられるのか。それぞれの参考人の方から御意見を伺いたいと思います。

福岡参考人 私は、この確定拠出年金制度というのは、従業員、勤労者福祉対策だというふうに基本的に思っております。

 株式対策というような考え方がいろいろ紹介はされております。それから、言えば、いわゆる普通の市民社会、普通の近代社会というものを前提にしたときに、日本の人が余りにも株式市場に関心がなさ過ぎるということについてやはり考え方を少し切りかえるべきではないかということは、個人的には私は思っておりますが、この制度が基本的に従業員福祉政策が根本であるということは変わらない。

 しかし、確かに、ある意味で株式市場というものも関与してまいりますから、いい方向に向けばそれは結構なことだというふうに思っております。

高山参考人 直ちに株価を上げるような効果は全く期待できないというふうに私自身も思っております。これは、アメリカが八〇年代の終わりに制度をつくったんですが、直後に株価が上がったかというとそうなっていないわけでありまして、それをごらんになれば明らかだというふうに思っております。

 ただ、問題は、この新しい器ができることによって日本経済がどう変わるかということだと思うんですね。今、いろいろな意味で日本経済は苦難を抱えているわけですけれども、その苦難を少しでも解消する力があるということであれば、中長期的に株価が上がる形になるかもしれません。結果論であります。日本経済が元気になって、株式も結果的に上がるということでこれが間接的な機能を有することはあり得るというふうに私自身は理解しています。

公文参考人 委員の御指摘のとおりだと私は思っております。大変よこしまであるし、基本的な解決などにはならないだろうというのが率直な感想です。

 同時に、意見の中でも申し上げましたけれども、確定拠出が出てきた背景というのは、これは明らかに、いわゆる積み立て不足、それから新会計基準、そういったものからどうやって逃れるかということが一つと、同時に、千三百兆円と言われている国民の資産をどうやって引っ張り出すか、そういう視点で組み立てられて、それが一つは株式対策ということにもつながってくると思うんですけれども、もっと根本的な経済対策、そして経済成長を目指していくという基本的な政策のもとで解決すべき問題であって、今回の確定拠出をそういうものに利用するなんということは到底許されないというふうに思っております。

渡部参考人 非常に重要な御質問でございます。

 まず、株価とは何か。理論的に言えば、一株当たりの企業収益でございます。ですから、企業収益が上がらなければ株価が上がるはずはありません。新しい年金資金を投入したら株が上がるわけではありません。企業収益が上がらなければ上がりません。

 ですから、企業収益が低迷して金融システムが危機に瀕している現在、年金資金をそこに投入するというのは、まさに年金資金を、非常に大切な貴重な労働者の年金資金をどぶに捨てるようなもので、結局、運用手数料として金融機関を救済するだけに終わってしまって、株価対策などは全く論外である。企業経営の効率化、高収益化こそが株価アップの要因であって、新しい年金資金を入れるなんというのはとんでもない議論であると思います。

 私の資料の二十六番をごらんください。これでは日本の個人金融資産は千三百兆と書いていまして、千三百九十兆円ですが、アメリカと日本を比較しまして、アメリカは株式二三%、日本は九%、アメリカは投信一一%、日本は二%。結局これが日本の金融システムの脆弱さ、破綻に瀕していることを象徴しているわけでありまして、これをアメリカのように二三%とか一一%になるように改善し、その上で企業年金の資金を入れるとすれば、市場に投入すべきであります。

 今私が翻訳している、ILOも、今のこのリスク問題を相当強く気にしております。十分に発展した資本市場でさえも相当なリスクを有する。巨大で十分に発展し、かつ合理的に十分規制された株式市場を有する米国においてさえも、一九五〇年から九〇年の間に、SP指数は十八カ月ごとに一〇%以上下落し、七十八カ月ごとに平均二〇%以上下落しておる。こういうふうに警告を発しておるわけです。そして残念なことに、日本についても、日本は何と六割下落してしまっておると。だから、金融市場に任せるというのは、非常に大きなリスクがあるということであります。

 以上です。

古川委員 もう時間がなくなりましたので、もう一点だけ各参考人にお伺いしたいと思います。

 まず、この法案に基本的に賛成のお二人の参考人に対しましては、今回のこの枠組みの中で、いろいろ先ほどから問題点の指摘がありましたけれども、最大の問題でこれを早急にやはり直さなければいけないと考えていらっしゃる部分はどこか、その点を、賛成の意見を表明されたお二人にはお伺いしたいと思います。

 また、反対の御意見を表明されたお二人は、それならば、どういう条件が整えばこの制度がいいというふうに考えておられるのか、そもそもこういう制度というのは未来永劫だめだというふうに考えていらっしゃるのか、その点について簡潔にお答えをいただければと思います。

福岡参考人 お答えします。

 私は、特別法人税、これをぜひ廃止していただきたいということを将来課題の緊急一番にしていただきたい。

 というのは、この十年度までは特別措置法によりまして停止されておりますけれども、これは確定拠出のみならず確定給付に関しても同じなんですが、やはり世界に例のない制度でありまして、私どもは、要するに、積み立て時それから運用時までは非課税、給付時に課税されるという形にやはり整理すべきだというふうに思っておりますので、これはぜひ廃止を強く今後とも要望したいというふうに思っております。

高山参考人 特法税の問題、非常に大切だと思っております。ただ、現在執行停止状況が続いておりまして、二〇〇三年四月以降またどうするかが改めて議論されると思いますけれども、このような運用環境が仮に継続するということであると、その執行停止がさらにまた延長されるということではないかと思います。

 早くこの点を決めてほしいというふうに思いますが、やはり、それと並んでハンドリングコストをどうするか。実際には、ハンドリングコストとハンドリングチャージは違うわけですね。各金融機関等、もう大変な投資をなさっておりますが、これはすぐに償却しなければいけないコストではありません。むしろ、チャージをどうするかということの議論を早くやってほしいというふうに思います。

 以上です。

公文参考人 私は、まず、この年金の問題について、解決をしなければいけないといいますか、優先的にやらなければいけないことについてぜひ申し上げたいのですけれども、やはり、全国民が共通に加入をしているのは公的年金制度であって、先ほど渡部先生からも、ポータビリティー問題に絡んでいえば公的年金の充実しかないのだというお話もありましたが、全くそのとおりであって、まず基礎的な国民年金、そして、その二階建て部分になっている厚生年金、公務員の共済年金を含めて、十分に国民の納得がいく形での充実、改革というものを僕は先行させるべきだと思っています。

 ここで議論をされている給付建てあるいは拠出建ての企業年金、これはあくまでも企業年金であって、国民年金に加入している七千万人を超える労働者、国民のうち二千万人が企業年金つまり厚生年金基金と適格年金に入っているということになっておりますが、多いといえば多いし、また、そういうものを持っていない人がやはり五千万人を超えるという現実を考えれば、これはもう当然、公的年金の補足的なものという性格にならざるを得ないと思うのです。

 したがって、その基本になる部分のとにかく急いで改革をしなければならない諸課題が山積をしている以上、その辺をきちっと整理をした上で、それではその上に補足的なものとして乗っかる企業年金についてはどういう改善を進めるべきかというふうにやはり改革は進めていくべきではないかなと思っています。

渡部参考人 八点ございます。

 一、三年延期すべきである。私は、何も未来永劫に反対ではありません。やはり、それなりの金融システムを完備し、金融市場を完備した上でこういうものは実施すべきであります。

 二、企業年金基本法をきちんと制定し、年金給付、支払いを唯一の目的とするようなきちんとした受託者責任を定めてから実施すべきである。

 三、伝統的確定給付型企業年金制度を抜本的に改正すべきであります。そして、それにはすべて、一〇〇%、年金給付の支払い保証をつける。その保証があれば、確定拠出型を導入してもリスクは中和されるわけであります。

 四、資産運用課税の撤廃。

 五、運用管理コスト。運用管理コストは資産運用利益から控除すべきである。そうすると、一生懸命受託金融機関も励みます。

 六、乗りかえ禁止。これはもう世界的に見ましても、乗りかえ禁止で随分苦労し、そして、マックスウェル事件なんかも含めて、イギリスは一九九五年法で禁止もしておる。この世界的動向を把握すれば、これの乗りかえの弊害は一目瞭然であるにもかかわらず、何ら触れていない。乗りかえ禁止を一年に一回とか二年に一回。それはあたかも従業員の選択のチャンスを縛るようですが、現実には、受託金融機関の囲い込みで、余り知識がない、主体性がない一般大衆はころころと乗りかえしておるのが世界の現状なのです。だから、乗りかえ禁止は必ず入れるべきです。

 そして、七、最低利回り保証。これは必ず入れるべきです。

 最後に、女性と年金の問題で、離婚した場合にどうするかということもやはり入れればいい。そうしたら、非常にこれはインパクトもあります。例えば、アメリカがやっておりますように、法律上正当な十年以上の婚姻関係がある妻は年金給付の五〇%の権利を有する、そういうようなことをばしっとうたうべきであると思います。

 以上です。

古川委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。

鈴木委員長 佐藤公治君。

佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。

 本日は、お忙しい中、参考人の皆さん方には時間をとっていただきまして、心から感謝を申し上げます。もう大分いろいろな質問が出ておりますので、ダブることは避けさせていただいて、簡単簡潔にお話しし、また、いろいろと教えていただけたらありがたいと思います。

 私ども、この確定拠出のことを党内議論していく、年金のことに関して議論していくと、必ずやはり根底にございますのは、基礎年金の部分が今後どうあるべきかということ、今の状態でいったら、財政状況を含めて、これはもう皆さん方御存じのとおりだと思います。そういう中で、私ども自由党として主張していることは、消費税の福祉目的税化ということで、基礎年金、介護、老人医療の三分野に関しては、やはり消費税の福祉目的税化ということをしていくべきだということを主張させていただいております。これはもう皆さん方よく御存じだと思います。

 そこでお聞きしたいんですけれども、まず福岡参考人にお聞きします。

 私どもが主張しておりますこの消費税の福祉目的税化に関して、御意見をお聞きしたいと思います。

福岡参考人 私ども、これほど急速な高齢化の進行、言えば、かつて日本の年金制度が非常にうまくいってまいりましたのは、ピラミッド形で小さな三角形を大きな台形で支えたわけでありまして、小さな負担で大きな福祉ができたということでありますけれども、今みたいにずんどう形になってくる、後には逆になってくるということになると、到底大きな頭を小さな胴体で支えることはできないわけでありまして、これはどうしても広く浅く全体で負担するということに変えざるを得ないというのは、一つの物理現象であります。

 そういう物理現象を前提にいたしまして、私ども日経連といたしましては、一階の基礎年金については目的間接税でやるべきだ、二階については積立方式に転換すべきだということをかねて一貫して主張してまいっております。

 以上でございます。

佐藤(公)委員 そこで、福岡参考人にお聞きしますが、私どもも先々というよりも早い時期にそうすべきだということを主張しておりますが、そういうことになった場合に、このたびの確定拠出年金という年金制度が果たしてプラスになるのか、早いうちに足かせ手かせ、足を引っ張るようなことがあり得るのかどうか、その辺いかがでしょうか。

福岡参考人 お答えいたします。

 私どもは、自助、共助、公助、この三つのバランスを考えながらこれからやっていくべきだということを基本にしているわけでありまして、かつまた、公的年金の果たす役割の大きさというものは、やはり依然として大きいというふうに考えています。しかし、それだけではいけないので、特に私的年金、その私的年金の中でも企業年金というものをやはり充実させていかなきゃいかぬというふうに考えているわけであります。

 私は、今申しましたような公的年金については、さっき申しました、経済基調が大きく変化していくこと、人口構成が大きく変わってくる中で、やはりみんなが安心して将来不安を持たない制度にするためには、どうしても、さっき申し上げたような公的年金の、特に一階問題、あるいは二階問題についての一つの方向をきちっと出すべきだ、それも早く出すべきだということを言っております。

 それにさらに横の柱としてあります企業年金ということでありまして、この企業年金についても、実はそういった問題の影響を受けているわけでありますから、そこを、もちろん確定給付はそれとしていいんですけれども、やはり保全というか、これを大きくカバーするものとして、車の両輪と私は思っているのですが、選択ができる仕組み、しかも労使合意を前提に選択ができる仕組みとして確定拠出というものもやはりきちっと位置づけておく必要がある。

 そういういろいろな選択肢を用意していることで、しかも労使自治、それから本人が決めるということ、これが一つ大きな前提として、制度的な整備をしておくべきではないかというふうに考えております。

佐藤(公)委員 ありがとうございます。

 続きまして、高山参考人に、やはり同じことを聞かせていただければと思います。

 基礎年金の部分。やはり、上の部分が幾ら整ったとしても、基礎年金の部分がきちんと、今の状態のままでいったらば、家でいえば、窓枠、ドアをどんなに立派なものをつくっても、その屋台骨のところが今の状態だったら、とても私ども国として成り立っていかない。その辺を含めて御意見、またそれを前提にした上でのこのたびの確定拠出年金というもののお考え、また聞かせていただければありがたいと思います。

高山参考人 お答えいたします。

 公的年金を一層基盤を充実させたものにすることの必要性は、論をまたないというふうに私自身も思っております。残念ながら、今のままですと、一階部分、公的年金、基礎年金は空洞化が一段と進むおそれが強いということでありまして、これは制度本来の趣旨に全く反する方向に進むのではないかということであります。

 私は、従来から、財源切りかえが必要であるということを申し上げてきました。消費税でいいかどうかは議論が分かれるところだと思いますけれども、現在の保険料自体、事実上目的税そのものなんですね。

 別の意味で今道路目的財源が議論の対象になっておりますけれども、あれは需要に比べて供給が大き過ぎるところから問題になっているのですけれども、目的税がいけないという議論をするのであれば、どうして今、年金保険料も目的税でやっているのにあれがいけないという議論にならないのか、健康保険料も目的税のはずですけれども、事実上機能として目的税ですけれども、なぜあれがいけないという議論にならないのかという、そこの議論、バランスを欠いているというふうに私自身は思っております。

 公的年金が大事、特に一階部分が大事だという場合に、その一階部分の基盤を強化するために今何が必要なのか、従来の財源でいいのかということが今問題になっているということだと思います。

 私は、広く浅くといいますか、年金受給者を含めてオール・ジャパンで財源を拠出する、そういう制度に切りかえた方がいいというふうに思っておりまして、消費税をその中に入れていく、私は目的税化した方がいいというふうに思っておりますけれども、その点は大変重要なことだというふうに思っております。

 ただ、では高齢者の医療も介護もすべて消費税でやるべきだ、全額そうすべきだというふうに考えるかどうかは、これはまたそれぞれ皆さんがぜひ検討していただきたいと思います。

 消費税、非常に大切な財源であります。地方自治体もこれを主要な財源として期待しておりますし、あるいは国全体にとっても、本当に福祉だけでいいのか、福祉だって中身は広うございます、なぜ老人医療と介護と年金だけに限定するのか、では子育て支援にはこの金を使ってはいけないのかという問題もあるわけでありまして、何に使うかというものはもう少し幅広く議論した方がいい。あるいは教育関係のお金にこれは使ってはいけないのかという問題もあると思います。ただ、公的年金が大事だ、そのときに、今のような財源の形では立ち行かないという中で、消費税を入れることをぜひ真剣に検討していただきたいということであります。

 二点目に関しましては、福岡参考人と私、全く同一の意見でございますので、つけ加えるべき点はございません。

 以上でございます。

佐藤(公)委員 そこで、高山参考人にもう一つお聞きしたいのですけれども、高山参考人の方のいろいろと先ほどのお話の中で、やはり皆さんもおっしゃられておりましたけれども、税のことに関して、税制に関しての話というのが非常に多かったのが印象的なんです。

 大変大きな話にもなりますし、また国の基本的な問題にもなってくるのですけれども、社会保障全般の基本的考え方、まさに抜本的見直しの話にもなりますが、年金税制のあり方というもの、公的年金、私的年金を総合的に構築する必要があると思われますが、正直言いまして、今税制をやっても、私ども考えるに際しては、何かびほう策というか、目先のことばかりになりますが、本来どういう、税制全体の話にもなってしまいますが、御所見等ございましたら、ちょっとお聞かせ願えればありがたいと思います。

高山参考人 税制改革では、直間比率の見直しということで、所得税、法人税の相対的なウエートを下げ、間接税、主として消費支出に課税ベースを求めるものを拡大するという方向であったと思います。

 ただ、どういうわけか、社会保障につきましては、この話がほとんど議論されていないのですね。政府関係者、特に厚生労働省や財務省の関係者は、依然として従来の保険料に財源を、主たるものは保険料である、これを、できればすぐさま上げなきゃいけないということを盛んに強調なさっているわけですね。

 ところが、将来の収支バランスを図るためにはもう保険料を上げるしかないんだというふうに盛んにおっしゃっているわけですけれども、これから、現役の人たちの数は減る一方であります。従来のように、賃金が上がり続ける人が多数派になるかわかりません。そうした中で、賃金等を主たる徴収ベースとするものに主要財源を求めること自体が将来不安の原因になっているわけです。

 あるいは、保険料を上げ続けることで若者の年金不信や社会保障制度に対する不信を強めているわけでありまして、政治の世界では、まさに若者が安心して将来を展望できるような制度をつくることが求められているわけですね。年金保険料を上げ続けますというメッセージを発することによって若者にどういう影響を与えているのか、ここのところをぜひ真剣に考えていただきたいというふうに思います。

 今やもうオール・ジャパンで、年金受給者も含めて財源を拠出する体制へ持っていかざるを得ないのが今の状況だというふうに考えております。

 以上です。

佐藤(公)委員 そこまでお話をされたのであれば、もう一つだけ高山参考人に聞かせてください。

 何が邪魔をしているというか、うまくそれが進まない理由になっているのでしょうか。

高山参考人 一つには、消費税にはまだ強いアレルギーが残っているということだと思います。

 特に益税問題を初めとして、私は技術的な処理で解決可能だと思っているのですけれども、まだ国民にとっては非常にわかりやすい不満の対象であります。こういうものをやはりとりあえず除かないと、消費税に対する理解が深まらない。あるいは、何に使っているかわからない、そういう批判も多うございます。あるいは、逆進性問題等ありますので、消費税に対する理解を一層深めるのが一方で必要だということだと思います。

 それからもう一点は、高齢者自身に負担を求めることに対してまだ非常に慎重論が多いということだと思うのです。

 私は常々最近申し上げているのですけれども、では、今の若い人たちはそんなに財源を拠出するだけの余力があるかということですね。先ほど来私は申し上げております、ボーナスは現に減らされております、月給も減らされております、失業の憂き目に遭っている人も少なくありません。これを、現在の年金受給者は、みんな自分の子供や孫を通じて御存じのはずなんですね。社会保障給付は別に天から降ってくるわけではないのですね、だれかが負担している。自分たちがお金を出さないとすれば、自分の子供や孫が負担していると考えるしかないのです。あるいは、将来の世代が負担するというふうに考えるしかないのです。

 この辺は、もう少し具体的な話をしていただければ、高齢者の皆さんすべてとは申し上げませんけれども、かなりの人たちが納得してくれる話だと思うのですね。ぜひ勇気を持って、政治家の皆さんに、高齢者にも具体的な語りかけをなさっていただきたいということだと思います。

 以上でございます。

佐藤(公)委員 どうもありがとうございました。

 済みません、公文参考人、渡部参考人に聞きたいことがあったのですけれども、時間がなくなりまして聞くことができなくて申しわけございません。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鈴木委員長 小沢和秋君。

小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。参考人の皆さん方には、きょうは大変御苦労さまでございます。

 まず、公文参考人にお尋ねをしたいと思うのです。今度の国会で、御存じのとおり、確定給付型、今度は確定拠出型と、次々企業年金の問題を審議しているわけです。そして、私どもに言わせると、むしろ企業年金の中身そのものがまた後退していくような内容じゃないかと思っているのです。

 私は、高齢化がこれだけ急速に進行していく中で、こういうことが今一番重要な問題なんだろうか。年金制度全体、老後の保障ということを考えたときに、もっと国会として議論しなきゃならないことがほかにあるのじゃないかという気がしてならないのです。この高齢者に対する保障、とりわけ年金の問題で、今こういうことを中心的に取り組むべきだという点についての御意見をまず伺いたいと思います。

公文参考人 小沢委員の御指摘は、大変大切な問題だと思います。意見の中でも申し上げましたけれども、繰り返しになりますが、国民全体が加入をしている公的な年金制度の充実こそ優先的にやるべきだ。特に、先ほど意見の中でもちょっと触れましたけれども、空洞化問題というのが日本の年金制度の土台を揺り動かしかねないような重大な時期に来ている。そういう内容、実態になっているということを真剣に考えるべきじゃないかというふうに思っています。

 先ほども申し上げましたけれども、免除されている方の免除率はもう毎年のように、この五年間の間に人数にして百万人も免除されている方がふえて、現在三百九十九万八千人、一番新しい数字ですが。同時に、先ほども申し上げましたけれども、社会保険庁がことしの五月十一日に発表をしていた未納者の実態なんですが、二百六十万人だったかと思いますが、意識調査をやってみると、その二百六十万人のうちの六四%の方が、現在月一万三千三百円という掛金を経済的な理由で払うことができない。経済的な理由で未納している、つまり滞納しているという現実がある。これは二年間にわたって払えないという状態です。残りの三十数%の方々は、今の年金は全く当てにならないという、つまり公的年金への不信感が非常に広範に広がってきている。

 このいわゆる経済的な理由で払えないというのは、極端なことを言いましたら、もう国家的な年金制度として破綻をしていると言っても言い過ぎでないぐらいの状況に追い込まれていると思うのです。したがって、今先生の御指摘になったように、こういう破綻寸前に追い込まれてきている公的な年金制度の抜本的な改革をどうするかということをまずやるべきだと思うのです。

 長くなりますから一言だけつけ加えておきますと、空洞化解消のためには、先ほど自由党の委員の方も御指摘になっていたと思うのですけれども、基礎的な部分、つまり基礎年金を、現在の国庫負担三分の一をできるだけ早く全党一致して決めている二分の一に拡大をする、そのことによって負担の軽減と給付の引き上げも可能になってくるというのが一つです。

 同時に、これはそのまま拡大をして、全額国庫負担、つまりこれは税方式と言いかえてもいいと思いますが、に持っていくべきだと私は個人的に思っています。その場合の財源は、やはり消費税値上げに直結するような福祉目的税化には反対ですし、それから、当然のことながら、一般財源で賄っていくという財源の調達の方式をとるべきだろうと思っています。

 このことがまず急がれるべきであって、その上に、先ほども申し上げましたが、プラスアルファを乗せるという企業年金の改革についていろいろ御議論をし、そして方向を出していくということはあってもいいと思うのですが、今やるべきではないというのが結論です。

小沢(和)委員 ありがとうございました。

 次に、渡部先生にお尋ねしたいのです。

 先ほどから国際的な企業年金の知識をいろいろ披露していただいて勉強になったのですが、アメリカなどの経験でお尋ねしたいのですけれども、いわゆる手数料、これがアメリカでは全体を合計すると一・三%ぐらいというような話をこの前から伺っているのですが、日本ではそれよりも高い手数料にならざるを得ないのじゃないかというふうに私は思うのですが、先生はどう見ておられるか。

 そうすると、今のような非常に不況が長期化して利回りが低いという状況の中でそういう高い手数料を払った場合に、元本保証型というようなものは必ず入れなきゃいけないのですが、それを比較してみても赤字というようなことにだってなりかねないのじゃないだろうかという点を私は考えるのですが、いかがでしょう。

渡部参考人 お答えします。

 管理運用手数料を一般論で論ずるというのはちょっと危険だと思います。ちょうど先ほど申しましたように、確定給付型は減少した、確定拠出型がふえたと言っていますが、確定給付型は二十五名とか三十名のところでぼんとふえて、二百五十名以上なんかでは減っていないわけですね。

 ですから、この数字も、今の一%とか一・五%といいますのはアメリカの平均でございまして、ですから、加入者規模が百名ぐらいでどれぐらいかとか、五百名規模、一千名規模、一万名というふうに持っていって検討すべきだと思います。

 これはアメリカ政府もきちんとした数字は出しておりませんけれども、大体今言われたのが平均のレベルですが、百名とかそれぐらいの水準の規模のところを言っておるわけですね。ですから、千名とか一万名に対して一・五とか一・三なんというのは、非常に高い水準になるわけです。ですから、ILOも強調していますように、管理運用コスト、これが非常に大事である。だから、それを規制することなく、ほとんど議論することなく、この法案を審議するのは危険だと思います。

 ILOが言っていますのは、さっきのオランダのあの統計と、そしてもう一つは、確定拠出型の場合は掛金の大体一〇%から二〇%、こういうふうに言っています、企業規模、加入者規模によりますから。それぐらいコストがかかっておるわけですね。それをどのように、それこそ私は規制は撤廃すべきだと思うのですが、こういう管理コストの規制は入れるべきなんです。入れるべき規制をしなくて、何もしなくていいところに規制するのが今のやり方で、非常に危険だと思います。

小沢(和)委員 重ねて渡部先生にお尋ねしたいのですが、先ほど、手数料は収益からしか取れないような仕組みをつくるべきだというようなお話があったと思うのですが、アメリカなどで実際そういうような仕組みがあるのでしょうか。

渡部参考人 アメリカでは、受託金融機関の力が強うございまして、そういうことはありません。しかし、ILOとかISSAの先生方、そのほか外国の年金学者の方々は、そういうことを真剣に議論しています。やはり、運用利回りが非常に低くて、運用管理コストを引いたらゼロとかマイナスになるにもかかわらず、手数料だけはがちっと取るということは、余りにも正義に反するというわけであります。

小沢(和)委員 ありがとうございました。

 次いで高山参考人にお尋ねしたいのですが、先ほどからのお話の中で、掛金建て制度のもとでも事業主が元本または最低利回りを保証するケースがあり得る、こういうふうにお話をされたわけであります。私は、もしこういうような保証ができれば、これは、実際上、拠出制の危険性ということが問題になっている、その危険性を否定してしまうという点で大変関心を持ったわけです。

 確かに、考えてみますと、今度の法律でも、労使の間でこういう約束をしてはいかぬということはないと思うのですが、先生がこういうようなことはあり得るというふうに言われるのは、例えば海外にそういうような例があるとか、何か根拠を持ってこういうことを言われたと思うのですが、いかがでしょうか。

高山参考人 先ほど渡部参考人の方からも御紹介があったと思うのですが、アメリカで現にそういうケースがあります。それからオーストラリアでも、最近運用収益が非常に好調なものですから余り表に立っておりませんけれども、議論の中では時々こういう問題が真剣に議論されておりまして、労使交渉、労使双方が納得するということを踏まえるという形になっているものですから、結果的にはこうならざるを得ないというふうに思います。

 ただ、御案内のように、日本でも、労働組合率が必ずしも高くないという事実がございます。あるいは、十人なり三十人規模の企業というのがございまして、労働組合さえ結成されていない、あるいは従業員にそういう力が備わっていないというところでは、労使交渉を前提にするといっても、なかなか思うに任せないことがあり得るわけであります。これは可能性を指摘しているだけでありまして、全部がこうなるというふうに私は申し上げるつもりはありません。

 ただ、いずれにしても、従業員にとって余り不利益が及ばないような工夫はいろいろな形でしなきゃいけない。一つはハンドリングコストの問題ですし、あるいは、こういうふうな低収益になった例、マイナスの収益になったような場合にどうするかということをいろいろな形で決める。ただ、基本は、この制度のもとは労使合意ですから、そこの精神だけは大事にしなきゃいけないというふうに思っております。

 一部に、最低利回りは国の責任において決めるべきだという意見があるように思いますけれども、これは労使の任意の交渉によってできるものでありまして、強制的につくれというふうに国が言っている制度ではないのですね。国がやっている制度は公的年金の世界であります。公的年金の世界は、例えばスライドにしましてもそうですし、いろいろな形で、従業員の老後所得保障に向けてかなり厚い手だてが講じられているわけですね。プラスアルファとしてのこういう制度にそこまで政府が規制することがいいのかどうかというふうに私自身は考えております。

小沢(和)委員 ありがとうございました。

 次に、福岡参考人にお尋ねをしたいと思います。

 私は、この確定拠出型、いわゆる四〇一k型というのが大きな問題になってきたいきさつを見てみますと、今まで企業がやってきた確定給付型が膨大な積み立て不足に悩まされているというような状況の中で、その一つの解決策としてこれが浮上してきたのではないかというふうに歴史的には見ておるわけです。

 そこでお尋ねしたいと思うのですが、先ほどは、この二つの企業年金制度を車の両輪と考えているというお話がありましたけれども、今のようないきさつを考えてみますというと、この積み立て不足の問題を解消していくためには、全体としては、むしろ確定給付型を確定拠出型に転換させていきたい、こういうふうなお考えがあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

福岡参考人 諸外国にも全部確定拠出型というのは見られるわけでございまして、そういう意味で片落ちといいますか、制度として片落ちなものですから、確定給付型と同時に確定拠出型というものもあるべきだという考え方。

 それからもう一つは、こういう先行きが非常に見通しが難しい時代になってきて、前からこれはあったのですけれども、中小企業、特に零細な企業の中では、こういう年金制度をつくりたいんだけれども、残念なことに、十年先、二十年先、三十年先を約束しろと言われてもそれはできない、したがって年金制度ができない、こう言っていたわけであります。底流としてはずっとあった問題で、特に市場経済が進展してくる中でクローズアップしてきたものがこれで、しかも、拠出が確定して、仮に倒産だとかあるいはいろいろなことが起こっても、その権利はずっと継続して保存されるという利点があるわけでございまして、これが確定拠出型の極めてすぐれたところなんです。そういうことに対して、そういう希望というものが強くなってきたというふうに考えております。

 そういう意味で、両方選択できる、どっちを選択してもいい、これは労使合意でございますからどっちを選択しても構わないわけで、そういう意味で、私は、車の両輪としていろいろな選択肢を用意しておく必要があるのじゃないか、これが近代社会ではないかというふうに理解しております。

小沢(和)委員 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子と申します。

 本日の参考人四方には、大変長時間御苦労さまでございます。私の質問で最後でございますので、いましばしおつき合いをよろしくお願いいたします。

 きょう一日の議論を拝聴いたしまして、実は私、この同じ時刻に財務金融委員会での審議も重なっておりますのですけれども、先ほど高山参考人のお話にもございましたが、この確定拠出型年金をめぐって、本来であれば金融財務の部門でも、緊急経済対策の大きな柱ともなるやもしれないこの法案が、もっとしっかり論議されてしかるべきであると本当に心から思うものです。

 実は、RCC、整理回収機構を三年延期する法案が自民党の皆さんを中心とした議員立法で出てございますけれども、私は、この法案こそ実は、私どもで参考人としてお願いしました渡部教授のお話にもございましたように、少なくとも三年待てという結論を持っております。基本的には論議されるべきことがきちんと尽くされずに、そして、勤労者の年金受給権ということもあいまいなままに本法案が成立するということは、本当にこれから日本が二十一世紀、安心と安全ということをもとにして生きていける国か否かと問われたときに、非常に不安でございます。

 ですから、きょうの論議を初めとして、緊急な、法案を通すというふうなことでなく、骨太な年金論議がぜひとも私は始められてしかるべきと思いますし、本日御出席の各委員にもそういうお呼びかけをしたいとまず一点思います。

 引き続きまして、質問に入らせていただきます。

 まず、もう皆さんいろいろお聞きになってくださいましたので、私が確認的に論をちょっと進めさせていただきますが、一点目は、公的年金にかかわります現状認識でございます。

 この点、経団連の御発言の方以外は、高山先生初め公文先生、渡部先生、公的年金の部分が非常に問題があり、その問題を是正する方策はおのおの違いがございましたが、認識は共通にしてございましたと思いますが、福岡参考人にお伺いいたします。経団連の皆さんのお話の中で、日本における公的年金の仕組みについて、現状認識はどのようになっておるのかということをまずお話をお聞かせください。

福岡参考人 お答えします。

 経団連とおっしゃっていただきましたが、経団連と来年の五月に統合することにはなっておりますが、ただいまは日経連でございますので、そういうことでよろしくお願いいたします。(阿部委員「ごめんなさい、謝ります」と呼ぶ)

 私ども、公的年金の特に一階の部分に関して、今非常に危機感を持っております。したがいまして、私ども、私も年金審議会の委員の一人でございますが、一貫して特に空洞化問題については、今の各先生、各参考人からお話があったとおり大変な危機感を持っておりまして、早くこれは私どもとしては、先ほどちょっと申し上げましたように、これはもはや――もちろん年金に対する不信感から始まっている世界もあるわけで、その不信感のもとは何といっても人口構成の、先ほど申しました小さな三角形と大きな台形が大きなシャッポになってきて、若い人じゃ支え切れない、おれたちの時代になったらもらえないんじゃないか、こういった不信感が始まってきているわけで、これはしかし物理現象でありますから、だれも避けて通れない。

 さっきの高山先生のお話にありましたように、お金が天から降ってくるわけじゃございませんから、広く浅く全員で、みんなで負担するような目的間接税でやるべしということを私どもは強く主張しておりまして、かつ、二階の部分についても賦課方式はやめて、むしろ積立方式に明確にすべきだということを申し上げているところでございます。

阿部委員 ありがとうございました。

 では、公的年金部分についての改革が必要であるという前提に立った上で、今の福岡参考人並びに高山、公文参考人は、一応、税方式について、特に間接税、消費税等々の御意見があり、公文参考人は一般財源からの税補てんというお話でございましたが、渡部教授におかれましては、公的年金部分、基礎年金部分についての改革の御私案はどのようにお持ちでいらっしゃいましょうか。

渡部参考人 国民年金の問題は、国民年金制度の問題と財源の問題に分けて考えております。

 国民年金そのものは、やはり貧困防止用制度として徹底すべきであると考えております。ですから、今の日本のように全国民から同一の保険料を取って同一の給付を与える、こういう制度は世界に例を見ないわけですね。やはり貧困防止用に徹底して、これは一般財源で財源を賄い、そして給付は、ミーンズテストといいますか資力調査で裕福な人にはカットする、そういうふうに持っていくべきだと思います。

 そして、福祉目的税のことでございますが、私は、目的税というのは、消費税もそうでございますが、非常に逆進的要因が強くて貧しい人に厳しい税金である、だからこれは一般税で賄うべきだと考えております。

阿部委員 ありがとうございます。

 引き続きまして、現在の給付建ての制度に対する評価についての違いをお伺いいたします。

 高山教授の御意見にもございましたが、ここの文面を拝借いたしますれば、退職給付は給付建て制度に偏り過ぎているという御認識をお持ちで、この点に関しては福岡参考人も同じなのかどうか、ちょっと私聞き漏らしましたが。公文参考人並びに渡部参考人にあっては、むしろこの給付、確定給付という呼び方をしていることも含めてですが、給付制度というものが日本の勤労者の退職後、老後を賄うにあってまだまだ不十分だというふうに私は承りました。

 その点について、福岡参考人並びに、高山参考人は給付制度に偏り過ぎているという御指摘でしたので、具体的に現状認識にかかわる数値でのお示しを福岡、高山両参考人にはお願いいたします。

 例えば、日本の勤労者の老後において何%は給付的なものの割合で賄われており、はたまた何%は。あるいはまた、勤労者の中で給付的なものをお持ちでない方もおられると思うんです。給付に偏り過ぎているということは、現状が非常にそこに寄りかかっている、ないしは多数がそこで恩恵を受けているということでございますから、お二方にはその点についてお伺いいたします。

福岡参考人 お答えします。

 退職金の水準といいますか、退職金制度自体、これは世界的に見ますと、日本みたいな高額の退職金制度というのはむしろ奇異な制度であるというふうにはっきり申し上げていいと思うんですね。今、具体的に数字で云々とおっしゃって、これはなかなかちょっと私も答えられませんが、今の確定給付型年金というのは退職金制度から移行した制度であるというのが大宗を占めているわけでありまして、もちろんそれだけではないとは思いますが、大宗を占めているという意味では、確定給付型の水準自体もかなりのレベルになっているというふうに考えてよろしいんじゃないかと思っております。

高山参考人 お答えします。

 手元に具体的な資料を持ち合わせておりませんので、正確な数字を申し上げることができませんけれども、大ざっぱな私の理解を申し上げたいと思います。

 退職給付制度は、日本の場合、基本的に退職一時金です。退職一時金制度は、日本企業における普及度合いは全体の九〇%です。日本企業の中で退職給付規程のない企業というのは一〇%しかないんですね。日本は企業年金の普及割合五〇%とかそういう数字を世界的に公表しているようですけれども、実は、退職給付ということであれば九割がその制度を持っているわけですね。厚生年金基金や税制適格年金等はその内枠なんですね。退職一時金の中の内枠で、その一部を賄うために、主として税制面の恩典を受けるために活用されているだけなんです。年金という名前がついておりますけれども、実態は退職一時金です。

 この退職一時金、退職給付規程の大半は、実はすべて給付建てなんですね、日本の場合。それは、主として税制上の理由だと私は思います。要するに、掛金建てにすると税制面の恩典が受けられない。

 例外的にあるのは、私が知っている限り、財形貯蓄年金あるいは中小企業退職金共済あるいは特退共と呼ばれているもの、これも掛金建てというふうにみなすことができるかもしれません。極めてマイナーな制度です。要するに、積立金に占める割合というものは、多分一〇%以下でしょう。退職給付全体の中で特退共だとか財形年金の占める割合、私は正確な数字をここに持ち合わせておりませんけれども、一〇%以下だと思います。

 要するに、税制面の恩典がついていない。要するに、税制上は給付建てを優遇して掛金建てを冷遇しているというのが今までの制度です。それは、掛金建ては貯蓄だから。マル優廃止等ありまして、貯蓄は税制上優遇しないというのは税制当局の基本的な考え方なんです。ただし、特別の年金の場合は税制上ある程度の優遇措置を講ずるという形になっていたわけですね。そういうような事実を踏まえまして、各企業はすべて給付建てでこの制度を設計しているということです。

 今回の新しい法案は、その評価は分かれますけれども、掛金建ての制度に税制上の優遇措置を講じましょう、従来の給付建ての制度とも余りにもアンバランスであった税制上の措置を、バランスを少し回復させるようにしましょうというのが趣旨だというふうに私自身は考えているということです。

 以上です。

阿部委員 確かに、年金と申しましても退職金イコールであるという御指摘をお二方からいただきまして、そのことが私はとても重要だと思います。

 そして、福岡参考人が、自覚というか、現状を認識かどうかこれも存じませんが、必ずしも現在の我が国の勤労者は十分な退職金というものを、特に中小の方ほど取っていらっしゃらない。その退職金にも等しい企業型年金、職域年金がいわゆる拠出型になる。ある種のリスク、運用リスク、ギャンブル化するということについて、社会がセーフティーネットを失うということを私は非常に強く懸念いたします。

 そして、最後に一点、お教えくださいませ。高山参考人並びに渡部参考人にでございます。

 高山参考人の文章の中に、確定拠出は専業主婦層への恩典も考え得るという御指摘がございました。ここについて、一言コメントを。

 それから、渡部参考人にでございますが、先ほど、女性の離婚問題等々で、今の専業主婦。日本の中では、年金制度、実はいろいろに言われますが、現実には夫に付随する形ですべての厚生年金部分を失う形になってございます。この点について、年金改革の大きな柱と思いますので、御見識をお願いいたします。

渡部参考人 年金と女性は、日本で非常におくれている問題の一つでございますが、他の先進諸国では大いに議論されており、また具体的立法もございます。

 公的年金だけじゃなくて、公的年金を補完する企業年金におきましても、やはり専業主婦、今御質問のとおり、片一方の配偶者が営々と三十年、四十年働いてもらう年金、それにはやはり内助の功として他の配偶者の支援があるわけですから、やはり十年とか十五年とか二十年、いろいろそれは決めようはございますが、それだけ寄与した元配偶者には、五割とか、何らかの受給権をきちんと法律で明記すべきである。

 企業年金は確かに労使で話し合うべき点も多いかと思いますが、しかし、それでは力関係でおかしくなる。福祉国家の、国家の機能として、国家の責任として、大枠をがっちり骨組みをつくるのが企業年金基本法であり、世界各国は、先進国はやっておることです。ですから、その中に、ばしっと離婚配偶者の問題を明記すべきだと思います。

 ただ、再婚した場合とかそういうところが難しゅうございまして、大体私は、再婚した場合はまた向こうでもらう可能性もあるわけですから、御遠慮いただくとか、せめて十年以上貢献した配偶者には一定の受給権を付与すべきだと考えております。

高山参考人 女性は男性に比べて離職の機会が多うございます。現在の給付建ての企業年金制度、退職給付制度のもとでは、実は不利益をこうむっている最大の被害者です。新しい掛金建ての制度が導入されてメリットを受けるのは、私はこういう転職の多い女性だと思っています。先ほど、何か、三年待つべきだというようなお話があったんですが、むしろこれを待ち焦がれている女性が少なくないというふうに私自身は理解しております。

 それから、今回の法案は、専業主婦になった途端に拠出することが認められない形になっておりますが、これは非常に残念なことだと思います。あるいは、夫婦連生年金というものを退職給付というか企業年金の中に認めるという方向もあるかと思いますので、ぜひ、この点、真剣に検討なさっていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

阿部委員 ありがとうございます。

 現状のままでは女性にもメリットのない年金と思いますので、さらに論議を重ねられることをお願いして、終わらせていただきます。長時間、済みませんでした。

鈴木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十一分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、第百五十回国会、内閣提出、確定拠出年金法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局東京証券取引所監理官三國谷勝範君、総務企画局参事官田口義明君、証券取引等監視委員会事務局長五味廣文君、総務省郵政企画管理局長松井浩君、財務省大臣官房審議官木村幸俊君、理財局次長牧野治郎君、国税庁課税部長村上喜堂君、厚生労働省健康局長篠崎英夫君、年金局長辻哲夫君及び社会保険庁運営部長冨岡悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮腰光寛君。

宮腰委員 自由民主党の宮腰光寛でございます。

 きょうは、午前中に参考人質疑もありまして、ようやくこの確定拠出年金法案について審議が佳境に入ってきたということだと思っております。昨年の通常国会に提出をされて以来一年たっておりまして、これを早く成立をしてほしいという期待が極めて強いわけでありますので、ぜひ今国会で成立するように願って、質問に入りたいというふうに思います。

 まず、大臣にお伺いをいたします。

 少子高齢化の進展、産業構造の変化や労働移動の拡大などによりまして、既存の社会保障の仕組みは国民に大きな不安を招いております。一方で、年金の支給開始年齢の段階的引き上げなどによりまして、六十歳から六十五歳までの所得保障をどうするかという差し迫った問題も出てきているわけであります。既に確定給付年金につきましては衆議院を通過いたしまして、今参議院で審議中でありますが、この既存の企業年金等を補完する確定拠出年金という新制度は、これらの問題に対しどのようにこたえようとしているのか。制度導入の意義、必要性について、まず坂口厚生労働大臣にお伺いいたしたいと思います。

坂口国務大臣 確定拠出年金につきましては、確定給付年金とともに、いわゆる年金の三階部分として今回御提案をさせていただいたわけでございます。いずれにいたしましても、公的年金と企業年金とがセットになりまして、そして国民の皆さん方に安心していただける、安定して提供のできる年金体制を確立していかなければならないというふうに思っているわけでございます。

 特にその中で、企業年金の方につきましては、最近の全体の経済状況の中で、今まで右肩上がりと言われておりました時代に余り問題にならなかった年金が、最近におきましては非常にさまざまな話題を提供するといったようなことになってまいりました。そこで、企業年金をもう少し国民の皆さん方に確実に提供できる体制につくり直さなければならないということもございまして、今回、先般議論をしていただきました確定給付企業年金と今回のこの拠出型の年金とを御提案申し上げているところでございます。

 とりわけこの拠出型年金につきましては、それぞれの企業の中で、例えば中小企業のようになかなか給付型の年金は掛けることができないというふうに言われますようなところにつきましても、拠出型につきましては採用をしていただきやすいということもございますし、また、もし仮に企業ができない場合には個人ででも参加をできるというメリットもあるわけでございますので、拠出型の年金というのは非常に選択肢の広い年金であるというふうに思っているわけでございます。

 また、今日のように、非常に雇用が流動化をいたしておりますときでございますから、働く人たちがさまざまな労働を求めて働く場所を変えられますようなときにもこの年金はそのまま持ち運ぶことのできる年金といいますか、そうしたことでも大変今までの年金とは特徴があるというふうに思っている次第でございます。

宮腰委員 これまでと違って中小企業あるいは個人も対応できる新たな仕組みであるということでありますが、この年金をつくる際の議論の中で一番問題になりましたのは、この年金が単なる貯蓄ではないのかという議論がありまして、そうではなくて老後の所得保障のための年金制度ということをはっきりとしなくてはいけないということで検討がされたと聞いております。

 この検討を始めた当初、税務当局から、個人貯蓄に対するさらなる優遇税制ではないのかといったことを言われたわけでありますが、この法案では老後の所得保障のための年金制度であるということが具体的にどのように担保されているのか、年金局長に伺いたいと思います。

辻政府参考人 貯蓄ではないという点をどのように配慮しているかということでございますが、具体的に申し上げますと、まず公的年金の上乗せという位置づけでございますので、この加入者は、自営業者等国民年金の第一号被保険者それから厚生年金の被保険者等の第二号被保険者として、加えまして第一号被保険者にあっては保険料を納付していない者は掛金が拠出できないということで、あくまでも公的年金の上乗せでない限りはこれは加入できない。そして、その掛金につきましては、拠出限度額を設けるとともに、高度障害や死亡の場合を除いては六十歳に至るまで引き出しができない。

 単なる貯蓄ではなく、老後の所得確保のための制度だということが明確にされておりまして、このようなことから、税制におきましても一般の貯蓄と異なった取り扱いがなされているところでございます。

宮腰委員 次に、副大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 今回、新たに個人型というのが創設をされました。企業年金のないサラリーマンにつきましては、これまでは本人の拠出によりという形にはなっていなかったわけでありますが、今回初めて加入できるということになったわけであります。このことは、企業の支援がない中小零細企業のサラリーマンにも老後の所得保障に対する公的支援の道を初めて開いたということで、年金制度上、画期的なものというふうに評価をいたしたいと思っております。

 しかしながら、この制度の中では、企業年金のないサラリーマンの個人型の拠出限度額は月額一万五千円と、制度全体の中でも最も低いものとなっております。この限度額の算定根拠はどのようになっているのか、なぜこの程度の限度額になっているのかということでありますが、この程度の限度額で果たして老後の保障として十分なのかどうか、どう考えておいでになるのか、伺いたいと思います。

桝屋副大臣 宮腰委員の質問にお答えをいたします。今、今回新しく導入する個人型の内容についてお尋ねがございました。

 公的年金の上乗せの年金制度につきまして、企業の従業員については事業主拠出が基本だということでございますが、企業の支援を受けていない者に限って今お尋ねの個人型年金に加入できるというふうにいたしまして、その老後の所得確保を支援するということにしているところでございます。

 そこで、拠出限度額のお尋ねでありますが、こうした経緯があるものですから、その際の拠出限度額につきましては、既存の制度でございます厚生年金基金における事業主掛金の拠出実態、具体的には大部分の、約九割以上、九割ぐらいだろうと思いますが、厚生年金基金におきまして上乗せ部分の事業主掛金の額が今まさに委員お話のありました月一万五千円の範囲内であるというこの実態を踏まえて設定をさせていただいたものでございます。

 したがいまして、現時点においては、この水準というのは、事業主からの支援を受けている従業員と比べても、老後の所得確保を図るという点で遜色のないものではないかというふうに考えているところでございます。

 いずれにしても、最初に委員お話がございました税務当局ともいろいろ議論をしながら、こうした内容にさせていただいたというところでございます。

宮腰委員 企業拠出型の三万六千円という金額に比べますと半分以下ということでありまして、現在の実態がそうだということでありますけれども、ぜひこれは見直しの際には改めて検討していただきたいというふうにお願い申し上げておきたいと思います。

 午前中の参考人質疑の中でこの新しい年金制度の普及の見通しについていろいろお伺いをしたんですが、なかなかはっきりとしたお答えはなかったわけであります。現在は七割が導入に関心を持っているというアンケートの結果がある、しかしはっきりとしたことはよくわからない、あるいは、後ほどお伺いいたしますが、この制度移行、いわば給付型から拠出型への制度移行についても、どれぐらい関心を持っておいでになるかという数値もなかなかわからないということでありました。

 厚生省といたしましては、この確定拠出年金はどの程度普及をするというふうに考えておいでになるのか、伺いたいと思います。

辻政府参考人 まず、確定拠出年金の対象として特に期待されているという分野といたしましては、やはり企業年金がない中小零細企業の従業員の方々、それからもう一つは、今後労働の流動化が高まる業種の企業の従業員の方々、こんなところがこの制度にいわば適合する、最も期待されている分野だと思っております。

 これがどの程度普及するかという点につきましては、私ども、まず新たな選択として制度の導入をし、皆様に検討いただくということは早く急がなければなりませんが、具体的な普及につきましては、まず普及ありきではなくて、加入者に十分理解いただいて、納得して定着していくことを願っております。

 しかしながら、今私どもの手元にある予測といたしましては、民間調査機関では将来八百万人から一千二百万人が加入されるというような予測も出されておりますけれども、米国の例を見ますと、一九七八年にいわゆる四〇一kプランが導入されてから二十年を経過しまして、ようやく確定拠出プランの資産残高が確定給付プランの資産残高とほぼ同じ規模までなったということで、相当時間がかかって徐々に拡大している。こんなところを見ましても、我が国におきましても、十年、二十年といった長い目で、着実に、納得された形で普及されていくということを期待いたしております。

宮腰委員 確定給付型の企業年金からの移行についてでありますが、午前中の参考人質疑の中では、退職給付に関して掛金建てに切りかえる企業が現実には多くなってくるのではないか、その際に、非課税拠出枠がちょっと低過ぎる、これも細かく考えてもらいたいというような御意見もありました。

 実際には既存の確定給付型の企業年金から労使合意のもとで移行するということになるわけでありますけれども、移行の条件というのはどのようになっているわけでありますか。

辻政府参考人 確定給付型の企業年金あるいはお話しの退職一時金からの移行、こういった移行が考えられるわけでございますけれども、この資産を移換する場合の要件といたしましては、まず、確定拠出年金に資産を移換すること自身についての労使合意が得られていること、それから、確定給付型の企業年金から移行しますときには、積み立て不足がないことなどを考えております。

 一言で言えば、積み立て不足がなく、かつ従業員が労使で十分納得して、こういった形での権利保護に十分配慮した上で移行するということを想定いたしております。

宮腰委員 今回、公務員と第三号被保険者が対象外だということになりました。特に女性と年金の問題で、いわゆる専業主婦などの第三号被保険者を対象外にしたわけでありますが、この点についてなぜなのか、お伺いをいたしたいと思います。

辻政府参考人 確定拠出年金につきましては、国民年金の第三号被保険者、いわゆる専業主婦を対象としないこととしたところでございます。これは一般的に税制上の措置を前提とした仕組みであることも含めまして考えますと、所得がないというところで優遇措置がとれないといった税サイドの観点からも含めて、この点、今回対象とされなかったという経過がございます。

 ただ、公的年金制度における女性と年金の問題につきまして、私ども厚生省サイドに置いていただいております関係者による検討会で総合的な検討を行っておりまして、そもそもこの第三号被保険者の方々が負担をしないという位置づけがよいのかという根っこのところでの議論も行われているところでございまして、今後この検討状況も踏まえまして必要な対応について検討してまいりたいと考えております。

宮腰委員 この三号被保険者の問題は極めて大きな問題だろうと思いますが、今ほどは公的年金における女性と年金の検討を踏まえてさらに検討するというお話だと思いますが、やはり学生から徴収をしているということを考えれば、専業主婦からもきちんと保険料を取るべきではないかと私はいつも思います。

 年金権を保障するという観点からは、サラリーマン家庭の専業主婦であっても基礎年金を受けられるようにするということは、これは当然でありますけれども、専業主婦の分の保険料は夫の加入する各年金制度の加入者が全体として共同で負担をしているということでありますから、言いかえれば、働いている女性が働いていない専業主婦の年金保険料の一部を負担しているということになるわけであります。これはどう見ても不合理である。税理論としてはいろいろあるんだと思いますけれども、お互いに共助といいますか、そういう精神からすると、これはどうしてもやはり不合理である。

 例えば、保険料を納めている収入のない学生がサラリーマンと結婚した場合に、これは専業主婦の扱いになる。同じ学生の身分であっても、結婚していない状態の場合は保険料月一万三千三百円を払う、しかし結婚した途端に払わなくてもよくなる。実は、私も大学生の娘が二人おりまして、月々払っておりますけれども、もし結婚すれば払わなくてもよくなる。早く一緒になってくれと言いたいぐらいのものでありますが、そういう不合理もある。

 やはりここは、税理論の観点からばかり議論するのはよくないということでありまして、ぜひ、基礎年金に対する国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げる際には、それにあわせて、三号被保険者の保険料免除の仕組みをしっかりと見直すべきであると思いますが、これは副大臣にお願いいたしたいと思います。

桝屋副大臣 三号被保険者、サラリーマン世帯の専業主婦について種々お話をいただきました。

 このサラリーマン世帯の専業主婦につきましては、昭和六十年改正前は、個別の負担を求めず、老後の生活も夫に支給される厚生年金によって対応するということが基本でありました。したがいまして、国民年金には任意加入ということであったわけでありますが、六十年改正で、三号被保険者制度を創設したということでございます。サラリーマン世帯の専業主婦も国民年金に強制加入ということにいたしまして、給付につきましては、夫の厚生年金の定額部分などを夫と妻の基礎年金に編成がえをした、負担については、通常収入のない専業主婦から独自の負担を求めることとはせずに、従来どおり夫の加入する被用者年金制度において対応するというふうにいたしたところでございます。

 今、委員からさまざまにお話をいただきました。私も子供が、大学生二人おりまして、まさにそういう事例になったら結婚してもらった方がいいなと思ったりするわけでありますが、ただ、まさに今委員から事例をいただきましたけれども、夫の給付と負担に密接に関連をしてきたサラリーマン世帯の専業主婦の問題と学生の問題を同一に論じていいのかなどうなのかなというのは、今の議論を聞きながら私も悩んでおります。

 そんなこともございまして、先ほども話が出ましたが、この三号被保険者の問題、これはやはり現行の年金制度の大きな課題であるというふうには思っております。女性の年金のあり方についてさまざまな問題が今議論されておりまして、先ほど話の出ました女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会、これにおいて御議論をいただいているところであります。最大のテーマではないかというふうに私も感じているところでございます。

宮腰委員 見直しというのはタイミングが大事だというふうに思いますので、大きなタイミングでないとこのような大きな問題の見直しはできないのではないかということでありますから、ぜひ、三分の一を二分の一に引き上げる際に、あわせてしっかりと検討し、見直しをしていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。

 次に、大臣にお伺いをいたします。

 坂口大臣は、四月末のNHKの「日曜討論」で、国債費を三十兆円以内に抑えるという小泉総理の公約に関連をいたしまして、社会保障関係の事務費が全体で一兆円程度あり、このコストを引き下げていく、そういうニュアンスの発言をされたように記憶いたしております。

 確定拠出年金では、民間がレコードキーピングに関するシステムを開発いたしまして、手数料などの運営コストが運用利回りよりも高くならないような準備をしているというふうに聞いております。同様に、公的年金など社会保障全体に係る運営コストを、ITなども活用していただきまして、しっかりと引き下げていくための目に見える改革が必要と考えますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 保険料の徴収につきましては、現在も各年金それから健康保険、ばらばらになっているものですから、ここは一つにまとめて社会保障全体の保険料を徴収することができないだろうか、現在の社会保障関係のところで最も節約できるのはもうここ以外にないのではないかというふうに私は思っておりまして、ここに改革を加えて、ここからもっと簡潔に集める方法をつくり上げて、そして財政的にもそこにゆとりをつくり出すということが私は大事ではないかというふうに思っております。

 しかし、これもなかなか、私はそう言うのですが、厚生労働省の方も抵抗も多いようでございまして、大きな声では申しませんけれども、なかなか難しい問題でございます。しかし、ここはかなりやらないといけないというふうに思っているわけでございます。

宮腰委員 期待をさせていただきます。

 社会保障分野は減らせない、小泉総理はそうおっしゃっておいでになりますが、果たしてそれだけでいいのか。減らせる部分については、国民の皆さん方に迷惑をかけないようにというよりも、一本化していただいたら支払う側の方は逆にやりやすいということになるわけでありますから、ぜひ大臣がおっしゃった方向でしっかりと御検討を推進していただきたいというふうに思っております。

 基礎年金番号というのがあります。一昨年、住民基本台帳法の改正によりまして、行政サービスの効率化を図るための個人番号、住民票コードが導入されたわけであります。現在のところ、個人情報の利用を、恩給や共済年金の支給、不動産鑑定士の登録など十六省庁九十二事務に適用を限定しております。既に基礎年金番号制度が導入されておりますけれども、この住民票コードを活用すれば、年金、医療、介護など社会保障関係の事務を一層効率的に行うことができるのではないかと考えますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 この住民基本台帳法ができ上がりますときに、かなり苦労をいたしました。やはりここでできるものというのは必要最小限度の住所、氏名、年齢、男女別、この四項目以外はこの中には入れないという約束のもとにこの案をつくり上げたわけでございまして、それが現在進行いたしておりますが、ここをだんだんと広げていきますと、あのときの約束は間違いではなかったか、約束違反ではないかといってしかられる可能性もございますし、ここは非常にデリケートなところでございますので、私も、ここは慎重にいかなければならないというふうに実は思っております一人でございます。

 ただ、年金につきましては、社会保障番号と申しますか年金番号と申しますか、既に存在をいたしておりますし、この年金を中心といたしました整理の仕方ということをこれからも進めていって、そしてこの年金に、あるいは健康保険といったようなものもそれにプラスさせてもらうということは、それはよろしいのではないか。社会保障の中で、年金番号の中に統合をさせてもらって同じように扱っていくというようなことは、これは許されるのではないかというふうに私は思っている次第でございますが、それをさらにまたすべてのことに拡大をしていくということになりますと、さまざまな意見になりまして、これは元も子もなくなってしまうという可能性もございますので、ここは慎重にいかなければならないというのが私の基本的な考え方でございます。

 しかし、御指摘をいただきます、これからの進め方として、いろいろのことを考えていかなければならないということは、そのとおりだろうというふうに思っております。

宮腰委員 すべての年金に共通する課税原則ということで局長に伺いたいと思いますが、午前中の参考人の質疑の中では、例えば特別法人税などを廃止した方がいいんだという御意見もあれば、特別法人税は運用時課税ではあるけれども、ストック課税よりもフロー課税、すなわち運用収益課税に切りかえた方が望ましいのではないかというような御意見も実はありました。年金によって課税方式が違うということはよくないと思いますので、私自身は、特別法人税を廃止いたしまして、拠出時及び運用時非課税、給付時課税という原則をきちっとした方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

辻政府参考人 まず、国民年金や厚生年金などの公的年金に係る税制の現状でございますけれども、本人が拠出する保険料につきましては、その全額が社会保険料控除により課税対象から除かれております。受給する年金については、課税対象となっております。こういう前提で、ただし、公的年金等控除や老年者控除等によりまして相当部分が受給する段階で課税対象から除かれている、こういう現状があるというのが一点でございます。

 そして、御指摘の厚生年金基金や適格退職年金が保有する積立金につきましては、厚生年金基金にあっては一定水準を超える部分に対して、適格退職年金にあっては全体に対して特別法人税が課税されるという原則になっておりますが、今は現下の低金利の状況のもとで十四年度まで特別法人税の課税が停止されている。

 こういったことで、大きく申しまして、私どもも、この特別法人税の課税のあり方が企業年金制度をめぐりまして大変重要な問題であり、現にまた大きな議論になっている、それから、公的年金等控除につきましても議論を行われている、こういった状況で、基本的に税務当局そして政府税制調査会等の各方面におきまして、拠出、運用、給付の各段階を通じた総合的な検討が行われるという方針が既に出ていると承知しておりまして、私どもとしては、各方面における検討状況を踏まえながら対応してまいりたいと考えております。

宮腰委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、岩國哲人君。

岩國委員 岩國哲人でございます。民主党を代表しまして、本日の議題であります確定拠出年金、また、それを取り巻く年金一般の問題について質問させていただきたいと思います。

 確定拠出年金については、仕組みそのものと、またスタートするタイミング、そしてだれがどういう役割をするのか、あるいはこれから資金運用のマーケット環境はどうなのか、非常に大きな問題を含んでおりますけれども、まず最初に、こうしたアメリカで成功したその環境と日本でこれからどうなるか、マーケットそのものを比較するという意味で、今日の日本の株式市場についてどういう状況にあるのか。

 今まで、内閣の支持率と株価というのは並行してプラスの相関関係を持っておりました。小泉政権発足以後は、プラスの相関関係ではなくてマイナスの相関関係、マーケットが下がって内閣の支持率は上がる、こういう関係がありますけれども、まず最初に金融庁にお伺いいたします。きょうのマーケットはどんな状況ですか。日経ダウでどれぐらい上がっているのか。

三國谷政府参考人 先ほどまでは、本日はちょっと下がっておったかと承知しております。

岩國委員 ということは、内閣の支持率はまた上がるということでしょう。株価が下がれば内閣の支持率は上がる、こういう新しい相関関係に入っておりますけれども、きょうは、既に前場で一万三千円を一時割るという騒ぎになってきておりまして、小泉内閣発足以来、マーケットはその水準からさらに下がっている、今、森内閣の時代の下げ底を目がけて挑戦している、こういう状況にあります。マーケットの環境は非常に厳しいと言わざるを得ないと思います。

 次に金融庁にお伺いしますけれども、その前に厚生労働省にお伺いいたします。

 厚生年金の運用資産の健全性について、三日前の朝日新聞だったでしょうか、六百億円の焦げつきというトップ記事が出ておりました。これは、運用資産の健全性が大きく損なわれてきておる、市場での運用だけじゃなくて、貸し付けにおいても大きな問題ができているということじゃないかと思いますが、この六百億円の焦げつきということについて実態はどうなのか、回収の可能性はどうなのか。そうした民間で騒がれている不良債権に相当するものが、この厚生労働省関係でもかなり、何兆円の規模での不良債権というのが今発生しつつあるんではないのか。その点について状況を端的に、どれぐらいの規模を今心配しておられるのか、お答えいただきたいと思います。

辻政府参考人 お尋ねの厚生年金、国民年金の年金積立金の原資から融資というものが行われておりますが、それについて焦げつきといいますか、不良債権化しているという状況をどのように認識しているかというお尋ねかと存じます。

 先日の朝日新聞に六百億円の焦げつきといったことが出ました。年金につきましては相当多額の住宅ローンの融資をいたしておりますが、その中で六百億円が焦げついているんではないか、こういう記事でございます。これにつきまして、時間の関係上、端的に申させていただきますが、仕組みといたしまして、年金原資を旧年金福祉事業団から承継いたしました年金資金運用基金というところでその事業を承継いたしておりまして、そこから、いわゆる転貸法人と申しておりますけれども、公益法人を介して、そして年金加入者の方々に住宅ローンを転貸しております。そのプロセスで六百億円が焦げついているのではないかという指摘でございます。

 この六百億円につきましては、実は、資金運用基金から転貸法人に貸しました債権につきまして、金融機関が連帯保証人で入っております。したがいまして、仮にこの債権というものがこれから不良債権化いたしますときには、全額金融機関が債権保証いたしておりますので、その点、相当合致した仕組みになっておりまして、年金の資金本体にはその不良債権というものは影響を与えない。したがいまして、転貸ローンにおける今伝えられていることにつきましては、年金財政そのものにはマイナスの影響は出ない、こういう認識をいたしております。

岩國委員 六百億円は国民の損失にならない、ツケは回ってこないということで、安心していいということでありますけれども、それならば、なぜ、この五十三の転貸法人のうち十九法人が取引停止をしておるわけですか。十九協会については融資を行わない、新規融資が行えなくなっている。回収が安全であれば、何も新規融資を停止する必要はないじゃありませんか。お答えください。

辻政府参考人 新規融資を停止いたしました背景でございますが、記事にあるこの案件というものは、この十九法人につきまして、年金福祉信用保証株式会社という会社がこの十九法人に係る転貸事業についてローン保証をいたしております。そのローン保証における保証会社のいわば状況が悪くなったために、ローン保証がいわば正確にできなくなった、したがって、将来に向けてローン保証がしっかりしていないのでとめた。みすみすそれを貸し付けますと、今度、転貸法人に貸している基金が、その貸しているものについて金融機関から一〇〇%保証を受けることになるわけですけれども、ローン保証の会社の状況が悪いのに、それを知っていてみすみす貸すわけにはいかない、そういうことでございます。このローン保証会社につきましては、いわばほかのローン保証会社と比べまして、非常に体制が脆弱であったということが理由でございます。

岩國委員 五十三の転貸法人のうち十九がもう融資を受けられなくなっているということは、こうした今までの貸付業務そのものが随分ずさんだったということじゃありませんか。五十三分の十九というのは三件に一件ということで、これはかなり高い比率だと思わざるを得ませんし、結局、こうしたことはどんどん公的資金、つまり、国民のお金が不良債権化している、そういうことになる心配が非常に強いと思います。

 次に、市場での運用について質問させていただきますけれども、こうした年金をいろいろな専門的な金融機関に資産運用を委託しておられます。委託された結果、どうであったのか。満足しておられるのか、満足しておられないのか。いただいた資料によりますと、マーケットの平均にも達しないようなところがかなり多い。要するに、マーケットの平均より、せいぜい上がって一%、中にはマイナス四%、マイナス六%、こんなのが大半じゃありませんか。

 そういったようなことについて質問させていただきますけれども、この五年間の運用実績、その中でワーストファイブの業者というのはどういうところだったのか。全然だめだったところ。例えば、私がさっと見た中で、クレディ・スイス信託、これは二つのタイプを受けておりますけれども、このクレディ・スイス信託の運用実績、過去四年間、マーケットに対して、二つのタイプのもの、それぞれ幾らだったのか、プラス幾らだったのか。どれぐらい専門家としての腕を発揮したのか、八つの数字を紹介してください。

辻政府参考人 まず、年金運用資金における全体の運用実績につきましては、ベンチマークと呼んでおりますけれども、いわば市場の平均収益率と全体としては劣っていないということでございますけれども、しかし、分散で各運用機関に運用を委託しておりますので、そこで悪いところは平均よりも劣っているというのは御指摘のとおりでございます。(岩國委員「答えを早く言ってください」と呼ぶ)

 クレディ・スイスだけにつきまして申せばよろしいでしょうか。クレディ・スイスにつきましては、いわゆるバランス型運用というのをひとつお願いしておりますが、これはいわゆる市場平均のベンチマークを一・九〇%バランス型の場合は下回って、六・五四%の収益率というのが、これは過去五年の平均でございます。(岩國委員「過去四年間、それぞれにお願いしましたけれども。八つの数字を」と呼ぶ)恐れ入ります。個別の会社につきましては、今現在平均値だけしか手元にございませんので、恐らくこれは、平均値から見まして、相当連続的に悪かったのではないかと推測いたします。

岩國委員 私が資料請求し、そちらからいただいた資料によりますと、結果は、過去四年間、二つの型それぞれについて、一遍もマーケットを上回ったことはないんです。四打席連続三振ですよ。右バッターに立っても、左バッターに立っても、両方で四打席連続三振でしょう。

 そして、この四年間にどれだけの報酬を支払われたんですか。

辻政府参考人 個々の企業についての報酬について、ちょっと今手元にございませんが、報酬そのものにつきましては、十一年度に年金資金運用基金が運用機関に支払った運用手数料は、運用受託機関四十九社に対して三百八十六億円、運用元本に対して平均残高比で〇・一六%でございます。

 ただ、これは、経年的にはこの比率は下がっておりまして、例えば、平成五年度におきましては〇・二一%でございました。あるいは、平成二年度は〇・二六%ぐらいでございました。徐々に資産が大きくなっていることから、それは決して単純に評価はできませんけれども、ウエートは下がってまいっております。

岩國委員 そうした多額な報酬を払った割には、結果的には、こういう専門家といえどもいい成績じゃなかったわけです。私は、適正な報酬を払うということについては、必要なことだし、また、そうしたいい仕事をしてもらうためには適正な報酬というのは必要だろうということはよくわかっておりますけれども、しかし、最近のマーケット、そして恐らくはこれからのマーケットも、払う報酬の割には、専門家でさえもなかなか運用の結果が厳しいということは皆さんよくわかっていらっしゃるでしょう。個人がやればなおさらのことだろうと思います。

 そうした支払い報酬について、三百八十六億円という大きな数字をいただきましたけれども、この運用成績、先ほどのクレディ・スイスについては四年間連続アンダーパフォームしておる、マーケットを下回った成績しかやらない。専門家でなくてもその程度のことはやれたかもしれません。

 しかし、そうした難しい環境の中で、一生懸命世界的な金融機関が努力してもなかなかマーケットの平均の上をいくことができないという環境をよく承知して、私たちは、この四〇一kというものが一般大衆に安心して、そして良心のとがめなしにお勧めできるものかどうかを、我々国会議員はもう一回振り返って考えるべき必要があるのではないでしょうか。

 次に、金融庁にお願いします。

 生命保険会社といえば資産運用の専門家ということになっておりますけれども、この生保の運用実績について、読売新聞五月二十九日は、相当大きな逆ざやになっている、こういうトップ記事がこれも出ておりました。最近三年間の実績、三つの数字だけ、どれぐらい利ざや、逆ざやと言われているものがあったのか、教えていただけませんか。

田口政府参考人 お答えいたします。

 生保各社は従来から、利差損の生じている保険契約で費差・死差配当額を充当してもなお差損額が発生している各契約の当該差損額の合計額を、逆ざや額として公表しております。その額は、主要公表二十七社におきまして、概数で申し上げます、平成九年度一兆五千億、平成十年度一兆六千億、平成十一年度一兆六千億というふうになっております。(岩國委員「それだけの利益だったのか、損したのかということが一番大事なことです」と呼ぶ)差損額でございます。

岩國委員 黙って聞いていれば、それだけの収益が上がったかのごとく聞いていらっしゃる方もあるかもしれませんから。まるでこの委員会の中では、もうそういう大手の金融機関は損をするものだという認識がこれだけ充満していますから、驚く人が一人もいないんです。専門家と言われる保険会社でさえ毎年一兆円から二兆円の損失を出している。こういう環境の中でどうやって、個人に運用指図をさせるとか、その上手数料まで払う、私は、こういう発想はおかしいんじゃないかと思います。

 次に、もう一つ金融庁にお伺いします。

 生命保険会社と並んで、もう一つの専門家と言われる証券会社、これが株式投資信託を運用しておりますけれども、株式投資信託について、一番大きいところの例を挙げて質問したいと思いますけれども、一番大きい株式投資信託は、野村の戦略ファンド。この野村の戦略ファンドというのは、鳴り物入りで一兆円近い規模で発足いたしました。これがその一年間の間にどれだけ収益を上げたのか、端的に答えていただけますか。

田口政府参考人 御指摘のございました、純資産残高が最大のノムラ日本株戦略ファンドでございますが、昨年二月に設定されまして、その運用実績でございますが、設定時の基準価額一万円に対しまして、本年一月以降、おおむね六千円台で推移しております。

 それから、先ほど御答弁申し上げました生保会社の逆ざや額につきましては、公表額を先ほど申し上げましたが、若干補足させていただきますと、先ほど申し上げましたのは利差損益につきましての公表の逆ざや額でございまして……(岩國委員「お伺いしたのはそれですから結構です。ほかの収益と一緒にしないで、利差だけ」と呼ぶ)利差の部分に関する逆ざやでございまして、他の死差、費差と合わせました合計の、会社全体で見ますと黒字基調で推移してございます。

岩國委員 生保会社の場合には、そういった、ほかの事業で幾らもうけたか、あるいは死差益、人の死亡年齢を勝手に短く、あるいは長く想定して、それでまた死差益を操作しておる、そういうこともありますから、一番信用ができるのは利差益、先ほどいただいた数字だと思います。

 それから、最大の株式投資信託として運用成績が注目されたのが、一年間で三〇%マイナスでしょう。一年間黙ってたんすの中に入れていれば三割損をしなかったところを、専門家に運用を任せたために、そして、その一年間の間に支払った報酬は百五十億円、百五十億のお金を払って運用をお願いして三割資産を減らしている、これが今のマーケットなんです。これが今の金融機関の実績、能力なんです。それを、個人にリスクを負わせます、あるいは、もっと自由にします、企業の自由が広がります、そして選択の自由が広がります、自由とか選択は広がるという、これはきれいな言葉です。しかし、自由は必ずしも幸せをもたらさない。転換、選択権が広がったということは必ずしも利益につながらない。これは、こういう運用実績を見ていれば、その危険はひしひしとおわかりになるのじゃないかと思います。

 ウォール街にしても同じです。最近はそうした人員の制限ということでもって、日本の銀行は当てにならないから、ではアメリカに頼もう、アメリカに頼んでも、そういうリサーチ部門あるいは資産運用部門のスタッフをどんどん減らしているときですから、今まで以上のサービスが得られるとは私は思いません。

 専門家でさえこういうさんざんな結果になっている資産運用を個人が指図するとかできるということはもちろんのこと、政府でさえも運用機関の選定に失敗しているではありませんか。政府が失敗していることを個人のサラリーマンの人が成功できるという保証はどこにありますか。

 強制ではなくて選択できる自由を付加する、そういうふうにおっしゃっていますけれども、これは、自由を与えるというきれいな言葉のもとに、結局は企業の責任を逃れる道を大きくあけて、そして、雇用者と被雇用者の自由な選択と言いながら、実態としては、四〇一kを選択しないと採用されない、あるいは四〇一kしか選択できない制度にこれからなっていくわけですから、そういう環境のもとに、自由選択ではなくて、結局は強制選択の流れをつくり出して、安心の源であるべき企業年金の実質的な劣悪化をこの環境の中ではもたらすと私は思います。

 この四〇一k、確定拠出年金はどれぐらいの人が利用する、そのようなシミュレーションあるいは想定をしておられますか。

辻政府参考人 確かに、御指摘のように、確定拠出年金は、これまでの企業年金などと異なりまして、加入者が自己責任で運用するという全く新しい制度でございますので、これがどのように普及していくか、これはなかなか予測に難しいところがございます。

 今までの予測ではアメリカが一つの参考になるわけでございますけれども、アメリカの場合も、四〇一kプランが導入されて二十年を経過して、ようやく確定拠出プランの資産が確定給付プランの資産と残高ベースで同じ規模まで来た。

 しかも、私ども、今の資金運用基金の実績についてお尋ねがございましたが、クレディ・スイスにつきましては実は最下位でございまして、もう対象から外しておりますし、上位の企業はむしろ市場平均値から二%以上アウトパフォームしておりまして、全体では上回っております。そして、それは株式を組み入れた長期運用をいたしておりました。

 しかるに、確定拠出年金の方は株式を入れる必要はないわけでございまして、全部安全資産だけでもよいという運用方針を立て得ることになっております。そして、現にアメリカの場合は、四〇一kも当初はむしろ元本確保資産から運用が始まったと聞いておりまして、私ども、確定拠出年金につきまして当初から株式を組み込んだような運用がどんどん進むというようなことは、アメリカの例からも想定いたしておりませんし、そのような意味で、徐々に徐々に、しかも安全なものからこれが普及していくものと考えております。

岩國委員 アメリカの例をいろいろと引用されますけれども、この問題について、アメリカと日本とは全く比較にならないぐらい条件が違っているのです。一つも、二つも、三つも、四つも違っています。

 もう一つの例を挙げましょう。

 日本では、個人が株式を持っている比率は一〇%ぐらいしかないでしょう。アメリカでは四十何%の株式が所有されています。日本では、限りなく企業が支配している株式市場なのです。社会主義みたいなものです。大衆、一般個人が持っている株式はほんの一割。アメリカでは四五%を個人が支配しています。企業に支配されている株式市場で企業に従属する従業員が、どこをかいくぐってそこで運用の幅を広げることができるのですか。マーケットは企業が支配、そして雇用関係は企業が支配、そういうマーケットと、労働の流動性が高くて、そして企業が資本市場を支配していない、そういう自由な資本主義、こちらは企業が支配する不自由な資本主義、全くこれは環境が違うのです。それを、向こうで育ったから、向こうの種をこっちへ持ってきたらちゃんと育つのじゃなかろうかと。私は、そんなに簡単なものじゃないと思います。

 例えば、もう一つ。日本のSECとアメリカのSEC、この辺の違いも私は挙げておきたいと思います。マーケットが透明で、公平で、公正で、信頼できるマーケットかどうか。それは、日本のSECとアメリカのSECとの規模を比較してみればわかると思います。

 金融庁にお伺いします。アメリカのSECと日本のSECの人数と予算、その比較を教えていただけませんか。

五味政府参考人 お答えいたします。

 私ども証券取引等監視委員会の年間予算でございますが、平成十三年度におきまして、人件費を除いたところで五億円でございます。人件費につきましては、金融庁全体一括計上でございますが、あえて監視委員会の仕事に従事する者の分を分けてみますと約十二億円程度かというふうに考えられます。

 それから、同じ予算についてアメリカのSECでございますけれども、米国のSECの予算は、二〇〇一会計年度、二〇〇一年九月期でございますが、これで四億二千二百万ドル、人件費が含まれておりますので、便宜人件費を除いたベースで見ますと一億二千六百万ドルでございます。

 人員でございますが、証券取引等監視委員会は、地方の財務局において監視業務に従事する者も合わせましたオール・ジャパン・ベースで、平成十三年度末定員二百六十五名でございます。アメリカSECは、同じく二〇〇一年九月期で三千二百八十五名でございます。

 なお、岩國議員御承知のとおりでございますが、アメリカのSECと私ども証券取引等監視委員会では、その守備範囲に大きな違いがございまして、必ずしも単純に比較はできないということでございます。アメリカのSECは、企画立案あるいは行政処分権、こういったようなものもあわせ持っているということでございます。

岩國委員 今いただいた数字、ニューヨーク市場のマーケットとこちらの市場のマーケット、規模において今大体三対一です。規模に必ずしも比例する必要はありませんけれども、しかし、今伺った数字、人数において、アメリカのSECは十二倍、予算において三十倍。いいですか、規模においては、わずかと言ってはおかしいのですが、三対一なのに、人数においては十二対一、予算においては三十対一。確かに、今答弁にありましたように、権限、範囲が違うでしょう。しかし、逆に言えば、アメリカのSECは、権限も、財源も、人間も、三ゲンセットで強力なやつがあるわけです。

 日本には不公正取引が多過ぎる、だからこういうSECをつくろう、ということで平成四年にでき上がりました。そのときの趣旨は、取引の公正の確保を図り、市場に対する投資家の信頼を保持するため。九年前にうたわれた取引の公正の確保は実現していますか、あるいはマーケットに対する投資家の信頼は回復しましたか、九年間で。権限、財源、人間、それをそろえたきちっとしたSECをつくるべきだ、そういう議論は当時はあったんです。日本版SECをつくれと。ところが、でき上がったのは、日本版SECじゃなくて日本的SECです。権限の独立性もなければ、予算も小さくて、要するに、どこかの機関に言われたら捜しに行く。日本版SECをつくれといった議論がいつの間にか日本的SECに横道にそれている。そして、今のありさまです。

 では、捜査実績を少し教えてください。昨年一年間でアメリカのSECはどれぐらいを告発に踏み切ったんですか。日本的SECは何件告発したんですか。

五味政府参考人 刑事告発についてのお尋ねでございますが、私ども、事務年度を七月から六月で整理しております。昨平成十一事務年度、すなわち平成十一年七月から平成十二年六月までの間で刑事告発をいたしました件数は七件。また、本事務年度、昨年の七月から現在まででございますが、まだ途中でございますが、告発をいたしましたのは五件ということになっております。

 それから、米国におきますものでございますが、SECが一九九九年度で刑事手続を行いました件数が六十四件。この刑事手続の中には、いわゆる刑事手続のほかに捜査当局に対します情報提供件数というものが含まれておるということでございますが、この告発と情報提供の内訳は公表をされておりません。

 以上でございます。

岩國委員 今の告発件数は、いわゆるインサイダートレーディングに関するものだけではなくて、その他の不透明な価格形成も全部含めた数字を答弁していただいたと思いますが、それで間違いありませんね。

五味政府参考人 インサイダー取引以外の嫌疑によるものも含めております。

岩國委員 特にマーケットで問題になるのは、内部取引、最近の金庫株の議論についてもそうですけれども、売り手もインサイダー、買い手もインサイダー。そういう金庫株を私が認めるべきではないと主張する根拠は、売り手も買い手もインサイダー、結局ダブルインサイダーになるからです。今、片っ方だけでも年間に七千件から一万件ぐらいが東京マーケットの中ではインサイダー取引の疑いがあると言われています。その中でわずか〇・一%にも満たない告発件数、千件に一件ということです。千件に九百九十九件は疑惑を持たれながらも告発されることもない。これだけ不透明なマーケットになっている。そこへきれいな、個人の、老後の楽しみのお金を、そういうマーケットへ出ていきなさい。

 坂口労働大臣、いかがですか。大臣の良心は痛みませんか。

坂口国務大臣 株の話で岩國先生にやられては、私も手も足も出ませんが、今お話を聞いておりまして、確かに、現在の日本におきます株式市場を初めとして大変難しい環境にあることはよく理解ができます。

 こうした中で、一体、この四〇一kなる企業年金ができて、そしてそこでの個々人がどんな対応をするかということは、これは御指摘のように大変難しいことなんだろうというふうに私も率直にそう思いますが、先ほどちょっと局長の言葉にもありましたように、必ずしも株を選ばなくてもいい、例えば預貯金と十年国債と二十年国債とというふうに非常に手がたいものだけを選んでおいても別にいいわけでありまして、今のような岩國先生のお話を聞いて私がもしもやるんだったら、もう預貯金と十年国債と二十年国債というのを選ぶ、こういうことになるんだろうというふうに思いますが、それはやはりそういういろいろの情報提供をしてその中で皆さんが選んでいただく。

 外国では個人が大変大きなシェアを占めているし、日本は企業が多くのシェアを占めている、この状況も、これもこのままで置いておいていいかといえば、これもやはり徐々に変えていかなきゃならないんだろうと思うんです。だから、そういう意味からして、どこかでは何らかのトレーニングを皆やらないことにはそうはなっていかないわけで、やはり一つの勉強の機会になれば幸いである、そういうふうに思いますが、そう言うとまたしかられるかもわかりませんからこのぐらいにしておきますから、ひとつよろしくお願いします。

岩國委員 私は、四〇一kというのがアメリカで育ち、またアメリカの議会も良心のとがめることがなかったのは、強力なSECがあること、そして株式が十分に民主化されて大衆にも広く持たれている、支配権そのものも透明である、監視機関も強力なSECがいる、そして大衆も四五%それを持っているというその親近感、そしてアメリカにおけるいろいろな法律で規制された運用機関がそういったお金を運用しておるという安心感、そういう株式に対する親近感があるから、どの投信がいいのか、既に一定の教育期間が長年の月日をかけてもう終わっておるわけです。

 今まで株式を買ったことのない人がたくさんいます。そして日本的SECはアメリカのように強力な存在にはまだなり得ていない、依然として年間七千から一万件の不公正な取引が行われておる、加えてアメリカの景気見通しに比べて日本の景気見通しは暗い、そういう難しい条件を余りにもそろえ過ぎている今だからこそ、私は、個人の、知識のない人にとっては危険なマーケットだと。

 私は、永久に危険だと、そんなことを言ったつもりはありません。私も三十年間そういう世界におりましたから。しかし、私は、株式を一株も買ったことはありませんでした。私は、自分の能力に自信がなかったからです。ですから、私は、三十年間株式というものは一遍も買ったことがありません。決して自慢するわけではありません。能力がなくて、お金がなければ、株式というものは買えないわけですから。

 そういう難しいマーケットをにらみながら、専門機関でさえも失敗の実績をこのように死屍累々と重ねているときに、なぜ今日本のサラリーマンが、リストラの不安におびえているときに、今度はお金の、老後の不安にまでおびえなきゃいけないんですか。今リストラの不安におびえている一般労働者に一番必要なのは、老後の安心を与えることが、坂口大臣、あなたの使命ではありませんか。職の不安におびえている人に今度は財布の不安まで押しつける、そして企業は楽をする、これが福祉国家日本の大臣ですか。私は、そうであってほしくはないと思います。

 公明党は常に大衆とともに、すばらしい言葉です、今でも新鮮な言葉です。私もそのような政治家の一人でありたいと思います。にもかかわらず、大衆が失業の不安におびえているときに、そして専門家でさえ失敗するそういう寒風吹きすさぶ中に、しかも、緑の芝生ならともかくインサイダーのとげがいっぱい植わっているところへ裸で出なさい、靴も履いてはいけません、そういうふうな方向へ今この企業年金制度を大きく変える時期では私はないと思うのです。

 再度御答弁をお願いします。

坂口国務大臣 これは個々人にお任せをするということもございますが、しかし、それはその企業企業にゆだねる場合もございましょうし、あるいはそこの労働組合と企業とがお話し合いになって、どうするかをお決めになる場合もあるのだろうというふうに思います。そのときに、どういう選択をされるかということは、それはいずれにいたしましても年金のことでございますから、そういう難しい選択を選んで、そして一か八かの勝負にいつも出るというようなことは私はないのだろうと思うのですね。私は、皆さんが賢明な選択をされるというふうに思います。

 したがって、そういうふうにいろいろのことはやれるようにはなっておりますけれども、そういう日本の中で危険だということであるならば、皆さん方は安心できる方法をお選びになるだろうと思います。半ば冗談ぎみに私は申しましたけれども、私ならば預貯金と国債とでいく、こう申しましたのはうそではございません。私がもしもその中に、私も拠出型の年金に入る資格はございませんけれども、もし入れるとすれば私はそうしたいと思います。

 そういうふうに、いろいろの選択肢があるわけでございますから、確かに、今おっしゃるような、非常に難しい大変な株の世界というのがあることを今聞かせていただいて、しかし、そういうところにみんながそう飛び込むとは私は思わない。そういうことをよく情報を集めながら、それぞれの企業、それぞれの労働組合、そしてそれぞれの人がやはり私は賢明な判断をされるだろう。中には、それはひとつ一発やってみるかという山気のある人もいないとは限りませんけれども、しかし、多くの人は、将来の年金のことでありますから、それは堅実に堅実に私はいかれるのではないかというふうに思います。

岩國委員 雇用者と被雇用者との力関係というのが十年前、二十年前の、採用される者の立場も結構強かった、そういう社会環境と今では条件が違ってきているのではないでしょうか。どちらかといえば、採用される者は確定給付型が欲しい。そういう会社に入りたいと思っても入れない。確定給付型が欲しい。労働組合は既に中に入っていますからまだ意見が言えます。しかし、これから採用してもらいたいたくさんの若い人たちは、個々の企業に対して意見を言うことは当然不可能です。与えられた条件、ということは選択肢が結果的にない確定拠出型、それを受け入れなければ採用してもらえない、これからそういうケースがどんどん広がっていくということです。

 午前中、経済界を代表された方の御意見を聞いていました。なぜ経済界がこれを欲しがっているのか。それは、財務的に楽になりたいからです。要望書にはっきりとそれは書いてあります。経営的に楽になりたい。自分の会社の財務内容をよくしたい。リスクから逃れたいという場合には、そのリスクをだれに押しつけるか。国に押しつけることができなかったら従業員です。それが今の四〇一kの大きな背景になっているのです。

 そういう採用される者が対等の立場で意見を言う、あるいは交渉することができないような環境というのも、私はこの四〇一kの創設にふさわしくない環境だと思うのです。これから職を求めるそういう人たちをかわいそうだとは思われませんか。今までだったら、確定給付型の年金がもらえた。にもかかわらず、大きなもう一つの選択肢という美名のもとに、結局は拠出型の方に誘導されてしまう。日本の企業にとってはよくても、それが働く者の立場を強くする、守る、老後を幸せにしていくことには、これは決してなっていないと私は思います。タイミングが悪過ぎます。もっと条件を幾つも整備する必要があるのではないでしょうか。

 条件を整備して、本当にどちらでも自由に選べる、そしてどちらの道を行っても、緑豊かな幸せな老後が待っている。そのような環境を整備するためにまだ政府としてやらなければならないことは、さっきのSECのことも言いました。あるいは、証券の民主化、もっと株式そのものを多くの人が持って、企業支配の市場から脱却すること。何よりも景気見通しをもっとよくすること。四番目に、そうした労働環境というものにもう少し明るさを見せること。幾つもやらなければならないことが政府としてはあるのではないでしょうか。それを、痛みは先に、楽しみは後に、これが政府のやることでしょうか。私はそうは思いません。

 五十年前、戦後の日本はすべてを失った。資源もない日本は、経済の運営、復興のために何を選ぶか。共産主義を選ぶか、社会主義か、資本主義か。私たちの先輩は資本主義を選んだのです。

 資本主義のよさというのは、人間も働く、報酬は自由に使える。お金も働ける。両方働くから早く豊かになれる。人間が病気をする、年をとる。そのような万一のときにはお金がかわりに働いてくれる。一緒に働けるから早く豊かになれる。万一のときには、お金がかわりに働いてくれるという安心。早く豊かに、万一のときは安心。だから、資本主義はすばらしい。それが選択の理由でした。

 今、豊かで安心できる社会が私たちの目の前に広がっていますか。その私たちのおじいさん、おばあさんが選んだ資本主義はどうなっているのか。今日本では、お金に給料を払わなくなりました。お金が失業しています。人間より先に、お金の方が先に失業してしまっているのです。

 万一のときどうするか。人も働けない、お金も働けない、これは資本主義ではありません。マルクス、レーニンが説いた見事な共産主義の優等生は世界の中で日本だけです。労働しか価値がないのですから。だから、今働く人はその労働の不安に、失業の不安におののいているのです。日本という国で失業するのではなくて、ロシアという国で失業する、そのような恐ろしさを感じているのは、今の日本の労働者です。

 今まで資本主義社会だと思って学校で勉強し、働いて、そう教えられて、そして戦後五十何年たって、今私たちが迎えたのは、見事な共産主義の社会です。そして、セーフティーネットも全くない。

 そういう環境の中で、貸付残高を見ても、今いろいろな投融資は四五%は公的機関からの貸し付けです。その上、民間の銀行の貸し出しですけれども一〇%は、大臣御承知のように、公的な保証がついている。合わせて五五%は、日本の貸付業務そのものも、民ではなく公的機関によって。これは社会主義の国です。日本は共産主義と社会主義の真ん中ぐらいにあるのです、経済の世界でいえば。

 そこで、お伺いいたします。社会主義か共産主義の国で四〇一kをやっている国はどこですか。

辻政府参考人 私どもの調べました限り、アメリカはもとより、イギリスといった国に例はございますけれども、御指摘の共産主義あるいはいわゆる社会主義と言われる国々では、私どもとしては、例は見出しておりません。

岩國委員 皆さん、おわかりになったでしょう。今日本の政府は世界のどこもやったことがないような壮大な挑戦をしようとしているのです。経済的な実験を年金のマーケットで。

 資本主義の国でやった例を私は知っています。私自身もそういうのを担当しておりました。しかし、社会主義の国で共産主義の国で、四〇一kを、自己責任を押しつけて、こんな国はどこにありますか。独裁国家ならあるかもしれません。しかし、私たちは、日本は福祉国家だと信じて育ってきたのです。

 今、いろいろな新聞の川柳なんかにも言われています。「一生をかけた会社に先立たれ」、私たちは、大学を卒業したときには、自分がどうかなることはあったとしても、会社は大丈夫だ。最近どうですか。あっちでも倒産、こっちでも倒産。トウサン、トウサンで母さんがいない。「一生をかけた会社に先立たれ」。

 もう一つは、介護問題。「介護より解雇が先に来て寝込み」、こういう人もたくさんいらっしゃると思います。介護問題、六十五歳から先どうしようかと思っているときに、六十五歳どころの話ではない。五十歳、五十五歳で解雇されて、介護ではなくて解雇で寝込んでしまった。

 昔は、親が子供の職業を心配していました。「親が子の子が親の職心配し」、このごろは子供がお父さんの仕事を探している。そういう事例もたくさん皆さんの周りにあるでしょう。これだけ会社に勤めることにいろいろな不安があるときに、財産、老後の幸せのリスクまで押しつける環境に日本はないということを私は重ねて申し上げたいと思います。大臣の御所見、よろしくお願いします。それでもなお強行されるかどうか。

坂口国務大臣 各方面からの、川柳までも交えての先生のお話を聞かせていただきまして、確かに現在の日本の置かれております環境が非常に難しい環境でありますことはよく理解をできました。よく勉強もさせていただきました。

 しかし、これからの日本のことを考えていきますと、高齢化社会の中で、公的年金だけではなくて、やはり私的年金あるいは企業年金というものも育てていかなければならないことも事実でございます。

 その企業年金につきまして今御提案を申し上げているわけでございますが、企業年金は、幾多の選択肢のあるものを提起申し上げて、そして皆さん方の関心も持っていただきたい。それは選択の仕方によりましては危険もあるかもしれませんが、しかし、選択の仕方によりましては大変今まで以上にプラスの面も存在することも事実でございますから、それらのこともよくわきまえてやっていただく。年金というものに御自身で、自分の意思というものをその中に投げ込んでおやりいただくというのは今までになかったことでございますから、こうしたことを通じて、年金というものに対してより関心をお持ちいただき、そして新しい年金を育てていただくことができればと私は思います。

 もちろん、今御指摘をいただきましたように、危険な面、マイナス面ということがありますこともよく理解をいたしますが、だからといって、何もしないでじっとしているというのでは、これからの高齢化社会を乗り切ることができない。やはり一歩一歩、一つ一つ何かをやりながら、そしてそのことをお互いにひとつ勉強しながら前に進んでいくということでなければならないのではないかというのが私の考え方でございます。

岩國委員 大臣も、そうした勉強をしなきゃならぬ、訓練もしなきゃいかぬ、それはいつか日本もそういう時代を迎えるだろうと思います。しかし、それがなぜ今でなければならないのかというのは、我々が政治家として判断しなきゃならないことです。国民の代表として。制度だけつくりました、判断はあなたに任せます、後どういう結果になるのか。かなりイバラの道、あるいは労使の力関係の面からいって、そうしたリスクの多い方向へ、多い方向へと誘導されるような道を、この悪い環境の中であえて国会が道をつける必要があるのかということを私は何度もお尋ねしているわけです。

 例えば、サラリーマン、勉強しなきゃいかぬ、では、これから投資について、毎日一生懸命仕事をしながら、インターネットか何かで、仕事をしているふりして毎日毎日眺めている、株価を眺めたり、為替を眺めたり、そんな社員がふえてきたら、日本の生産性はどうなりますか。今でさえも国際競争という激しい戦いにあるときに、インターネットで株価を見たり為替を見たり、自分の老後の資産、大した金額でもないのに毎日毎日眺めないと気が済まない、そういうふうな慣習が出てくる。そのような社員がふえるのは、アメリカの社会を見ていて私は知っています。

 自分の国家に対する義務の計算ならともかく、例えば申告納税制度、これをどの程度知っていますか。勉強するというのだったら、私は、まず国民がタックスペイヤーとしての納税の義務がどれぐらいあるのか、そっちの義務の方から勉強に入るべきじゃないでしょうか。義務の方は人事課に全部任せておいて、自分がどれだけ年金をもらえるか、そのもらう方の計算ばかりする、それをもらうハザードというのです。

 義務教育という以上は、やはり義務の勉強から始める、それが大事じゃないでしょうか。申告納税制度で、私ははっきり言って、日本の会社にいたときに、自分で計算できませんでした。そんな方はほかにもたくさんいらっしゃると思います。全部人事課が勝手にやってくれて、それを一〇〇%信用して、私は自分でどれだけ税金を払っているのかわからないような大学卒だったのです。

 今、大学を卒業していても、では来年からあなたやりなさいといって自分でできる人がどれぐらいいるのですか。国家に対する義務、納税義務の計算さえできない国民に、投資のリターンが幾らあるか、そっちの教育から始めるのですか。義務ではなくて権利の教育から始めるのですか。日本の戦後教育は、義務教育といいながら全部権利の教育ばかりしてきたでしょう。だから、社会に対する奉仕、そんなことは全然しないで、自分が国から何をしてもらえるか、そういう世代がどんどん育ってきたのです。

 私たちは、教育の面でもこれから変えていかなければならないと思います。義務を果たした人間だけが権利を主張できる、それが本当の常識であり、良識だということ。もらう計算ばかりするような、そのような会社が次々と広がっていくこと、戦後の教育は義務教育といいながら権利だけ教えてきたこと、この年金の世界でもそれを絵にかいてみせるようにやろうとおっしゃっているのですか。どうぞお答えください。

坂口国務大臣 年金のお話も、それはこの三階の企業年金のところだけを見ればそういうふうにも見えるかもしれませんが、しかし、企業年金は一階、二階の公的年金があって初めて企業年金ができるわけであります。一階、二階の公的年金のところはお互いの助け合い、自分が今掛金をしているのは今の高齢者の人のため、そして、自分が将来高齢化をしまして高齢者になりましたときには、若い人たちの掛金によって自分は年金をいただくことができるという相互扶助の精神を理解することによって公的年金は成り立っているわけでありますから、その上での企業年金でありますから、その基礎になっているところが理解ができずに、三階の年金だけがあるわけではありません。

 だから、そこを抜きにして議論をしてもらうとややこしくなってしまうわけで、基礎のところにはそういうことがちゃんとあって、その上に三階の、今回のこの企業年金というものをつくらせていただきます、その中には確定給付年金のような形の年金も今までの延長線上としてつくらせていただきますということを言っている。

 そして、しかしそれだけではなくて、きょうのテーマであります確定拠出年金もここにはつくることにいたします。それは、今までは給付年金の方はそれがなかなかできないような企業もありましたから、こちらの方はそれを、給付年金のないようなところで拠出年金をおやりいただいても結構ですよということでこちらへつくらせていただく。あるいは、御自身でお入りいただいても結構ですよ、そういう選択肢をつくらせていただく。

 だから、そこを全部それをやれというわけでは、それはやりたくなければやらなければいいわけでありますから、全部に、そのことを国民の皆さんに押しつけているわけではありません。だから、選択をしていただこうと思えば選択をしていただくところがありますよということを申し上げているわけです。

岩國委員 制度の趣旨は私はもちろん理解しておりますけれども、今の環境、今のタイミング、こういう条件の中でそういうリスクのあるものを今まで教育のない人たちに押しつけるような形、それは選択の自由があるとおっしゃいますけれども、結果的に雇用の現場では必ずしも選択の自由というものになっていかないということを私は懸念しているわけです。

 基礎が大事だ、基礎が大事だとおっしゃいますから、では木曽の御岳山の話でもしましょう。山高ければ谷深し、リターンがあれば、当然損失もあります。こうした給付が幾らになるかわからない、そういうものはもともと年金とは言えないものじゃないでしょうか。それは貯蓄ではないかと思います。よその国でこの仕組みを説明したら、だれも年金とは呼んでくれないと思います。それは、インベストメントかセービングです。ペンションとは言われないものだと思います。年金というのは、老後の安心をしっかりと保障してくれるという性格、つまり確定支給、確定交付でなければ、私は年金と呼ぶべきではないと思います。企業年金の改革と称してそこに年金でないような枝をつける、これは私は大衆をミスリードすることになると思います。

 この確定拠出の場合にミニマムチャージというものは禁止されていると私は思いますが、その点を一言確認していただきたい、報酬について。ミニマムチャージを取る、最初は少額のものについては幾らということはなくても、例えば預金なんかでも、毎月どれだけの残高がないとこれだけ口座維持料をいただきますよといった口座維持料で結局は少額の利用者にとっては高いシステムになる。ミニマムチャージははっきりと禁止されているかどうか、それが一つ。

 二番目に、福祉国家であるならば老後の保障は確定給付で保障すべき、そのためにはミニマムリターンというものをはっきりと打ち出すべきではないか、私はそのように思いますが、いかがですか。

辻政府参考人 まず、私ども、ミニマムチャージという意味を理解しているかどうか、ちょっと間違いであったらおわびしますけれども、基本的に、まずリターンが一番低く、恐らくコストとの間で一番きつい関係になるというのは預貯金と存じます。

 預貯金につきましては、結局、例えば市中銀行に預けますときには、市中銀行で一つ一つのコストが全部かかっているということでそのコスト控除後の金利しか得られないのを、このたびは、運営管理機関で一括してまとめまして、大量に一定の金融機関に預けて運用する。そういうことから、コストがその分落ちまして、逆にそれに相当する利子が出てまいります。そのようなこと。もちろん、運営管理機関のコストが落ちますので、その点イーブンでございますけれども。

 そのようなことから、最もリターンが低い預貯金につきましてコスト割れをしないという前提で、この制度を設計しております。したがって、最も低いリターンは、いわば預貯金といいますか、一番足の短い預金だと思います。そして、私ども、元本を確保した商品を必ずこの商品の中に入れるということが法律の条件でございます。

 以上でございます。

岩國委員 時間がなくなりましたけれども、それは、三つ四つの中に元本保証型が一つあったからといって全体の安心をカバーするものではない、それはおわかりで答弁していらっしゃると思いますけれども。

 私は、四〇一kじゃなくて四八〇kというのを導入したらどうかと思っています。四十年間、四百八十カ月、一万円、企業も一万円、両方でマッチングすれば、六十五歳になれば永久に終身二百万円ずつ毎年もらえる、そういう分割払い込み型の、ポータブルの、そして受給権が確保されている国債、分割払い込み型年金国債というものにこの仕組みを変えた方がはるかに私は安心につながる、ぜひ御検討いただきたいということをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 佐藤公治君。

佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。

 私は、最初の第一問目を事前通告させていただいていたわけでございますけれども、きょうの委員会を聞いていても、自分自身疑問に幾つか、ふと思いまして、改めて大臣にお尋ねをさせていただければと思います。

 本当に、考えるところで結構でございますので、一体全体、年金の定義というのは何なんだろうなと。年金というのは、実際問題、大臣のお考えになられるところで、どういうことを年金というふうにお考えになられているのか、またその中でこの確定拠出年金が、先ほどからもお話が幾つかございましたけれども、簡単にもう一度御確認をさせていただければありがたく、よろしくお願いしたいかと思います。

坂口国務大臣 公的年金というふうに言いました場合には、やはり世代間の相互扶助、これが先行するというふうに思います。

 現在のお年を召された方々のために今私たちは掛金をする、そして将来、自分たちが高齢になりましたときには、私たちの後に続きます若い人たちにまた掛金をしてもらう。やはり、そういう世代間の相互扶助ということによってこの年金というものを成り立たせる。このことが公的年金の基礎であろうというふうに思っておりますが、加えて、それはそういう相互扶助の精神とあわせて、やはり個。その結果として、老後、自分たちの生活に安心ができる、その状況をつくり出すということであろうかというふうに思います。だから、どちらが先かと言われれば、私は、相互扶助、世代間の相互扶助ということが先行するというふうに思っております。

 ただし、今回御審議をいただいておりますのは、これは企業年金でございますから、若干、公的年金と意味合いは異なるだろうというふうに私は思います。

    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕

佐藤(公)委員 わかりました。ちょっとまだまだわからないことがあるんですけれども、またおいおい、追って聞かせていただければと思います。

 きょう大臣の方に御質問をさせていただきたいと思う最初の質問ですけれども、大臣、思い出されるかもしれませんが、五月二十八日での予算委員会において、我が党の中塚氏の質問に関しての答弁についてお聞きさせていただければと思います。

 私も、この委員会におきますやりとりにおいて、どうもはっきりしない、またよくわからないことが幾つかあるんですが、中塚氏は前段におきまして、小泉内閣の公約でもある構造改革、財政改革とか、財政再建の国債発行三十兆円の枠組み、天井、シーリングをはめてしまうというか抑制をすることに関して、ちゃんと具体的なことを考えておやりになっているのかとの質問に対し、塩川大臣が、社会保障制度の部分に関して、経費についても一部の削減、見直しというような御答弁をいただきました。その後、塩川大臣の記者会見等もありましたが、坂口大臣は、このことについて同じ内閣として、そのときも坂口大臣が御答弁をされているんですけれども、非常に漠然とした話が多かったと私は記憶をしております。

 そういう中で、実際、やはりこの三十兆円の天井、枠組みに関しまして、社会保障制度として大臣がどのようにお考えになられているのか、具体的にいろいろとあらわしていただけたらありがたいと思います。そのときの答弁の中でも、模索をしているというような表現もしくはやらなきゃいけないところはやる、こういうお話はすべて一応聞いておりますので、できることなら具体的なことを、いろいろとお考えになっていることをお話し願えればありがたいと思います。

 また、あとやはり私どもが疑問に思うことは、小泉内閣、小泉総理の思われている一つの方向性というものと塩川大臣のお思いになられていること、そして坂口大臣がお思いになられていることが一体全体一致した上で進んでいるのかどうか、非常に疑問を持つところも多くございます。

 その辺、十分なお時間の中でお答えになっていただいて結構でございますので、よろしくお願いしたいかと思います。

坂口国務大臣 三十兆円に国債を抑えるというこの大前提の中で一体どうしていくのかということに今なっているわけでございますが、その中で、厳しく切り込まなければならないところもあるし、そして、ところによってはある程度の猶予を持ってと申しますか情状酌量をしながら切り込むところもある、こういうことだろうと思うんです。

 どちらかといえば、この社会保障の分野は、高齢者がふえてきているわけでありますから、自然増もどんどんと進んできている中であります。ですから、年間七千億も八千億もふえてまいりますこの社会保障の中で、これをほかの分野と同じように平等に切り込みをされたら、これはやっていけないことはだれが見ても明らかでありますから、社会保障については十分な考慮をするというお考えがあるというふうに私はお伺いをしているところでございます。それは総理も、それから財務大臣も、そのようにお考えになっているだろうというふうに思います。

 先日、国庫負担の三分の一から二分の一への引き上げの問題につきましては、財務大臣の御発言が若干違った面もございましたけれども、これは、三分の一から二分の一に引き上げることは決定をされておりますし、いつか私が、できれば来年度からこれをやってほしいという私の希望を述べたことを受けまして、できればそうしたいという御発言がございましたけれども、現在のところはそこまでは至っていないことは事実でございます。

 そして、三十兆に抑制をするということが明確になりましてから、来年からやれるかどうかということはなかなか難しい状況に来たことも私は事実だというふうに今認識をいたしております。しかし、お約束でございますし、二〇〇四年までにはこれは実現をしなければならないわけでありますから、それまでに一体その財源をどうするかということを煮詰めていかなければならないというふうに思います。

 いよいよこれから来年度予算に入っていくわけでありますが、その来年度予算に入っていきますときに、来年度予算だけではなくて、そうした社会保障の大きな枠組み、これから目指そうとしております大きな今後の方針、そうしたことも加味をしていただいて、一年間だけの、来年だけのことではなくて、二年、三年先のことも考えの中に入れていただいて、やはり検討をしていただかなければならないというふうに思っている次第でございます。

 我々厚生労働省といたしましても、年金なら年金の分野を一体どうしていくか、先ほどからいろいろ出ておりますように、年金につきましても改革を加えなければならない点も多い。そうした点をそのときに一緒にやるのか、それともそれはやらずにいくのかといったようなことも検討をしなければなりませんし、この三分の一から二分の一の問題は大変大きな問題でありますだけに、私たちとしては、この旗はおろすことなく掲げ続けていかなければならないというふうに思っております。

 ただし、今先生に、来年から必ずこういうふうにする決意だ、あるいは来年からこういうふうにする予定だとはっきりと申し上げられるほど、それが明確になっているわけではないということでございます。

佐藤(公)委員 本当に大臣の正直な答弁だったと思います。

 大変難しいというのは、これはもう皆さん方御存じのように、実際、もしも来年から国庫負担を上げて、そうすると二・五兆円ぐらい、その上にやはり三・三兆円の国債の発行を抑制しなければいけないということになったら、六兆円という大変な莫大なお金をどうしていこうかという議論だと思います。でも、そういうことを本当に考えていくと、まさに今幾つかの、小泉内閣と言われる総理含めた皆さん方の公約の、そういうことがほとんど無理だ、できないのではないかというようなことで、私どもも非常に心配していることが多くございます。

 こういう部分に関して、今大臣は大変正直な気持ちであり、現状を認識されておっしゃられているということを私は感じますが、本来ならば、その辺をきちんとやはり国民の前で説明をする必要が早い時期であると思いますが、大臣、いかがお考えになられますでしょうか。

坂口国務大臣 そんなに遅くならない、ことしの、どうでしょうか、いつもいわゆるシーリングと言われます時期が八月の末ぐらいでございましょうか、ことし、そのシーリングもどうなるかはわかりませんけれども、例年でございましたら、そのときには我々が来年考えますアウトラインを描かなければならないわけでございますから、そのころにはやはり私たちも明確にしていかなければならないというふうに思っております。

佐藤(公)委員 できることなら、七月に参議院選挙がございますので、その前にちゃんと正直なことを国民の前で説明することを私はお願いをしたいかと思います。

 また、この確定拠出年金法案の実行時期ということで、私どももいろいろと考えているところがございます。ただ、今の小泉内閣の公約でもある構造改革、特に経済対策、不良債権処理、緊急経済対策とか諮問機関等でいろいろな議論もされておりますが、大変大胆な政策によって構造改革をしていこうということが、少しずつ感じるところ、また見えるところもあるというふうに私は思います。結局、不良債権処理ということをかなり強硬にやるに際して、もうこれは大臣御存じのとおりだと思いますが、金融機関、金融業界そしてやはり市場というものに大きな影響を与える可能性というものがあると思います。

 構造改革ということで、まさに労働力の流動化とか企業負担とか、これからの時代に合わせたことでの、本当に変わっていこうというときに、やはりこの確定拠出年金がなおさら必要だという考え方もあることは私ども十分承知しているつもりですが、逆に言えば、そういう構造改革的なきちんとした政策を行って、多少物事を見てからこの確定拠出年金というものを導入したとしても、一年、二年のおくれということになりますが、先にもう少し様子を見てから入れた方が、より多くの方々に対して、リスク、危険が少なくて済むんじゃないかなというふうに思う、また、考える意見も幾つかいただいております。

 その辺の、導入の時期に関して、普通の状態だったら、普通の政策、内閣、政治であればまだいいのですけれども、今ここは本当に大きな転換期、激動期を迎える中、これを、少し前を見て、それから、少し考えてから導入をすべきという意見に対して、大臣、いかがお考えになりますでしょうか。

坂口国務大臣 変化というものが、今大きな変化を来していて、そしてやがては平穏無事な日々に戻っていくというのであるならば、それはそういう考え方も私はあるというふうに思いますが、かなり大きな変化というのが次から次へと私はしばらく続いていくんだろうというふうに思います。きょうも変化、あすも変化というふうに変化が続いていく中でありますから、そのすべての変化が過ぎ去るまですべてのことを待っているというのでは、これは乗りおくれてしまいますから、やはり現在、この変化は行われている最中ではございますけれども、それにおくれをとらないようにして我々の体制も整えていかなければならないというのが我々の考え方でございます。

佐藤(公)委員 確かに、これはもっと早くからやっておかなければいけないということもあったかもしれませんが、ただ、今この構造改革という、金融市場を含めた、本当に健全な日本のマーケットをつくっていくに際して本当に大きな波が押し寄せる、そのときに、この導入をするということには大変危険な可能性もございますので、その辺は十分、大臣以下、厚生労働省の方でも監督、監視をして見ていく必要性があると思いますので、何とぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 この法案の中で、私ども思うことは、公務員や専業主婦についても新しい掛金建ての制度を利用できるように早急に検討する必要があるのではないかということも考えるわけでございますけれども、先般、委員会におきまして、辻政府参考人の方から御答弁がございました。公務員の今後をいかに考えていくかというようなお話があったかと思います。民間企業における企業型年金の普及の程度を見きわめた上で検討することが必要だという結論になりましたという御答弁を聞かせていただいておりますけれども、これをもう少し詳しく御説明を願えればありがたいと思います。どれぐらいの期間で、どれぐらいの内容というか普及の程度を見きわめるのか、その辺のお考えをいかがか教えていただけたらありがたいと思います。

辻政府参考人 あくまでも公務員制度は民間企業における状況を踏まえた上のものであるということから、民間の状況を見きわめる必要があると申し上げたわけでございますが、この確定拠出年金がどのように普及定着するか。好んで不必要なリスクをとるような選択がなされてはならない、現に私ども自身もそう思ってこの運営に携わりたいと思いますし、しっかりと議論がなされて、いわば徐々に徐々に定着していくというようなしっかりした定着度合いを図りたい。こういった認識から見ますと、相当この普及状況というものについては、このくらいということを断定して言えないものがございます。

 そういうことから、なかなか具体的な見通しを申し上げることは困難でございますけれども、いずれにしろ、よく公務員の制度についての担当省とも十分きめ細かな状況をとり合いながら、公務員においてどう考えるかということを今後とも検討させていただきたいと思います。

佐藤(公)委員 ちょっと答弁の方が、もう少し具体的な期間とか状況というものを教えていただければと思いますが、多分いろいろと模索をしているんだと思いますので、またはっきりしましたらきちんと教えてくださいませ。

 続きまして、また、この前の委員会でも、これは福島先生からの御質問に対して、確定給付年金から確定拠出に移行に際しての細かい条件ということで話がございました。確定拠出年金の資産の移換に当たっては、従業員の受給権が不当に侵害されることがないよう、その権利保護に十分配慮することが必要だというふうに思っておりまして、そうした方向で今検討を進めているところでございます。

 検討はしているとはいうものの、実際問題、この法律というのはどんどん前に進んでいる部分がございます。今、やはり多くの方々が心配している部分の一つとしては、給付から拠出にどんどん移行されてしまうんではないかという部分で非常に心配を持たれている方々というのが多くいらっしゃると思いますが、そういう方々を安心させる意味でも、今、現段階検討を進めているところでございますという検討の部分をできるだけ詳しく御説明を願えたらありがたいと思います。お願いします。

辻政府参考人 この移行の要件につきましては、これは非常に重要なことでございますので、具体的に私ども整理をいたしておりまして、まず、現行の企業年金等から確定拠出年金に移行するケースといたしましては、将来に向けてのみ、確定給付型の企業年金に係る掛金を減らしたり廃止をして、その分で確定拠出年金に振りかえていくというようなこととか、それから、過去からの確定給付型の企業年金の資産の全部または一部を過去の分も含めて確定拠出年金に移換して、あわせて将来へ向けて確定拠出年金に持っていくとか、こういった二つの、将来に向かってのみ、過去も含めてというパターンが考えられます。

 いずれの場合につきましても、確定拠出年金を実施するに必要な要件として、まず、従業員の過半数で組織する労働組合があるときは当該労働組合、過半数で組織する労働組合がないときは過半数を代表する者、この同意が不可欠ということでございます。

 それから、企業年金等において積み立ててきた資産を確定拠出年金に移しかえて確定拠出年金として今度は実施するという段に至りまして、またそれについても手続がございまして、厚生年金基金からの移行の場合であれば、移しかえに係る加入員の二分の一以上の同意を得ることといった、確定拠出年金に資産を移換することについて労使合意があるということ。それから、確定給付型の企業年金においては、積み立て不足がない、積み立て不足をあるまま持っていくと不公平が起こりますので、これもないといったように相当厳格な要件を掲げておりますので、いずれにしましても、確定給付型から確定拠出に移るときには、労使で徹底的な議論をして納得をなさらない限り、これはできない。逆に言えば、そのような十分な議論をして選択をいただきたいと考えております。

佐藤(公)委員 その十分な議論というのが、一言で言ってしまえば簡単なことですけれども、やはり現場の方の方々からしてみれば余りにも枠をはめることはいいことだとは思いませんが、また、安心できるような方向性での厚生労働省としての検討を今後もいろいろと進めていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 ところで、受託者の定義というのを、これはERISAや何かとの比較優劣ということは前の委員会でもいろいろと出ておりますけれども、もう一度、受託者という定義が日本の場合どういう定義になっているのか、御説明をお願いしたいかと思います。

辻政府参考人 この確定拠出年金におきまして、受託者責任は極めて重要でございます。まず、受託者の概念と責任の内容のそれぞれについて申し上げます。

 まず、確定拠出年金は、企業型の場合であれば事業主が実施するわけでございます。労使の合意のもとで規約をつくって、事業主が実施する。それから、個人型の場合は国民年金基金連合会が実施するわけでございますが、まずこれが第一番目に登場する受託者でございます。

 この実施者は、加入者の立場に立ってのみ行動する。裏返していくと、自分のためや第三者のためにと判断されるような行動をとれば、これは忠実義務違反ということで、そのことだけで法的責任を問われます。それから、加入者や受給者の個人情報を適正に保管して目的外の使用を禁ずる個人情報保護義務というものが、今の両者にかかっております。それから、加入者や受給者以外の者の利益を図る目的を持って運営管理業務の委託等を行ってはならないなどの忠実義務規定のさらに具体的な内容を規定した禁止行為の明確化、こういった厳しい責務を規定しております。

 次に、確定拠出年金につきましては、通常、実施者が運営管理機関に委託をして、そこでさまざまな運営管理についての商品の提示、それから指図を受けて運用するということが行われるわけですが、この運営管理機関につきましては、現在述べました忠実義務や個人情報保護義務のほかに、大変重要なことでございますけれども、運用商品の選定に当たっては専門的知見に基づいて行わなければならないという、運用商品選定に当たっての専門家としての注意義務を払って、加入者に対してそれを示さなければならない、そういう注意義務を払った上で、加入者に加入者自身の判断で選択してもらうようにしなければならない。それから、加入者に対して特定の運用商品を推奨してはならない、特定のものを具体的に勧めたらこれは禁止行為に触れる、あくまでも最終的には加入者の判断によらなきゃならない、こういった受託者責任を定めております。

 こういったことで、これらにつきましては、これに違反した場合は民事責任を負うというのは当然のことでございますし、行政処分や一部違反行為については罰則を科するといった規定も、これはERISA法より厳しゅうございますが、入れておりまして、受託者責任は相当厳しいものになっております。

佐藤(公)委員 見方と考え方にもよってなんですけれども、やはりERISAの方と比べると、一つには、逆に言えば、厳しくすることで何かすごく限定的な部分で見られるようなことがあるような気もするんですが、また、ERISAの方は割と解釈的な部分で、状況によっていろいろと違う部分もあるかと思いますが、その辺は特にそういう問題はございませんか。

辻政府参考人 ERISA法は、たしか一九七〇年代だったでしょうか、そういうようなときにできた法律でございますが、私ども、その後、相当アメリカのERISA法も勉強いたしましたし、今日本でさまざまな確定拠出年金の実際の運用についての御懸念というものが各方面から示される中で、むしろ、本当に、不用意にリスクをとるというような選択がなされないように、あえて申せば、やはり加入者保護といった面を相当丁寧に明文化したという点、しかし、それは必要なことであるし、基本的にはアメリカと変わりません。

佐藤(公)委員 ところで、やはりこの確定拠出年金法案というのはどうしても、今おっしゃられたように、アメリカの方の勉強をしながらつくられている、また組み立てられているかと思いますけれども、アメリカにおいて今までどんな事例が、どんなトラブルが発生をし、統計的にあり得るのか、ございましたら、お答えを願えたらありがたいと思います。

辻政府参考人 今申しましたように、アメリカのERISA法を研究した上で、日本の状況を踏まえて受託者責任を具体化したわけでございます。

 アメリカは、違反した場合には、日本のように行政処分や罰則がございませんで、民事責任が問われることのみとなっていると理解しておりますけれども、そのような状況のもとで、私ども、確定拠出年金そのものに関するトラブルが民事責任というようなことで争われているというのは、現時点では承知はしておりません。

 ただ、米国において、運用商品を提供する運用機関が破綻する、これは、私どもがいろいろ通常の商品を購入するときにその会社が倒れるということと同じでございますけれども、こういう事例があると聞いておりますけれども、このようなケースにつきましては、今回の法案では一般の預金保険機構等の保護措置が適用されるということで、これは他のものと変わりはないという整理でございます。

佐藤(公)委員 ありがとうございます。

 一応時間が来ましたので、この後の続きはまたあした以降にさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

谷畑委員長代理 木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 最初に、大臣から、確定拠出年金の本質にかかわる部分について確認をしておきたいと思うんです。

 確定拠出年金は、老後の年金給付が、加入者本人の指図に基づく企業が積み立てた積立金、これの運用次第で左右される、その結果、老後の年金額等の受給の保障がない、我が国のこれまでの企業年金制度でかつてなかったものだ。

 要するに、企業は、積み立て責任はある、掛金を支払う責任はあるが、運用責任、給付責任が免除される、運用結果の責任はすべて労働者、加入者本人に負わせる、そういう仕組みなんだ、これが確定拠出年金の本質的な、中心的な中身なんだ、このように確認をしてよろしいでしょうか。

坂口国務大臣 それは、大筋においてそのとおりと思います。

 それで、退職金も、現在の企業年金と同様に給付額が約束されるものでありますけれども、会社の経営状況次第では減額されたり、あるいは、倒産の場合には支払いが困難になったりすることがございます。確定拠出年金は社外積み立てでありますから、毎月、掛金の拠出の都度、拠出額が確定されますとともに、会社倒産の場合でもこれは保全をされるということになります。また、転職の際の年金資金の移換、すなわちポータビリティーが十分に確保される、労働移動に対応しやすいといったような利点があることも、これはもう委員先刻御承知のとおりでございます。

 ただ、そういう利点があります一方において、今御指摘になりましたように、運用次第におきましては、いわゆる年金額にマイナスを生じることも起こる場合があるわけでございまして、しかし、そこは自己責任でおやりをいただこうということでございます。よろしゅうございますか。

木島委員 実は、私がこういう質問を冒頭しなければならなくなったのは、午前中に参考人として陳述をされました一橋大学経済研究所の高山憲之教授が、こういうことを述べたんです。法案には基本的に賛成するという立場からでありますが、述べたことをはっきり私、繰り返します。

 給付建て制度ではリスクを事業主が負担する一方、掛金建て制度ではリスクを従業者本人が負担するという見方が一部にあるが、これは皮相的であり現実的な見方だとは言えない、こう論じて、掛金建て制度のもとでも事業主が元本または最低利回りを保証するケースがあり得る、こうはっきりと断言したんですよ。これは確定拠出年金の基本にかかわることなんです。今、大臣の答弁も確認いたしました。こんな見方がこの委員会で賛成論者から、学者から言われたということは、私は重大だと思うんです。

 それで、大臣に確認しますが、確定拠出年金をやるということで労使が合意をいたしました。規約を結びます。その規約は、法案によりますと、第四条で厚生労働大臣の承認が必要なんです。高山教授が言ったように、掛金建て制度、いわゆる確定拠出年金の規約でも、その規約の中に事業主が元本または最低利回りを保証する、そういう約束をしたら、それは、厚生労働大臣、そういう規約を認めるんですか。

辻政府参考人 制度の仕組みの技術的な事項にかかわりますので。

 まず、この制度自身は、あくまでも加入者が自己責任により運用する仕組みでございますので、事業主が元本割れした分を補てんしたり、一定の利回り保証をするということは、基本的にはこの制度の加入者の自己責任により合理的な運用を行うということ自身を崩していくという根本的なおそれがございまして、確定拠出年金法案ではこのことは認めておりませんし、したがって、もしそのような内容を規約に盛り込んでいるときには、それは規約は認められません。

木島委員 そうすると、賛成論者の、きょう午前中にこの委員会で述べた学者の言い分は間違っていると。これは賛成論者ですよ。確認していいですね。

辻政府参考人 この御提出している法案については、今の御指摘のことは含まれておりません。

木島委員 では、立ち入って聞きましょう。この法案のどこにそれが表現されていますか。

辻政府参考人 条文としては、確定拠出年金法第四条第一項第三号で、事業主掛金についての規定がございます。「事業主掛金について、定額又は給与に一定の率を乗ずる方法その他これに類する方法により算定した額によること」とされておりまして、これは逆に言えば、利回りの補てんといったことが考え方としてこれに含まれておりませんで、それを禁じるという趣旨も含まれているものでございます。

木島委員 私もこれを読みました。四条を読みましたが、禁ずるというふうにこれは読み込めないんですね、この法律の表現だけからしますと。そして、四条一項第六号には、「企業型年金の給付の額の算定方法が政令で定める基準に合致していること。」政令に委任されているんですから。高山教授が言うように、法律はこういうので、明文上は禁止規定がないんだ。

 では、政令でどんな基準が出てくるのかわからぬけれども、労使の合意で、事業主としては元本利回り最低保証をやりましょうというような約束が、この四条一項六号の政令で定める基準のつくり方によっては許されるという余地もあるのかなと思って、そこは大事なところですから、私は重ねて質問します。そういう余地はないのですね。

辻政府参考人 確定拠出年金につきましては、毎月の拠出限度額が定められて、そのもとで税制上の優遇措置もとられ、公平に運営をするということになっておりまして、これに元本補てんや利回り保証を受けるということになりますと、税制上の優遇措置に不公平が生じます。そのような法体系の趣旨から見ましても、そのようなことを政令で定める考えはございません。

木島委員 ここまで明確な答弁がありますから、そういうものだと私も理解をして、それを前提にして大臣に質問したいと思います。

 今明らかになったように、確定拠出年金の本質というのは、企業主は、積立金、掛金を出すだけが責任である、その後の運用責任や給付責任は完全に免除される、その結果、責任はすべて労働者、加入者本人がしょうという本質であります。

 そんなものを我が国の労働者は今望んでいません。ですから、最大のナショナルセンターである連合も反対していると思うのです。もちろん全労連も反対しております。連合と全労連が一致して反対しているということは、日本の勤労者はほとんどすべてがこんな制度に入り込むことには反対だということの意思の表明だと思うのです。それにもかかわらず、こんな制度をなぜ今つくらなければならぬのか。

 さっき大臣は先回りして一定の理屈を述べたようでありますが、納得できません。なぜ、一番利害関係を持つ加入者の労働者たちがこうやって反対しているにもかかわらず、今これを強行して創設しなければならぬのでしょうか。これは大臣に。

坂口国務大臣 連合の皆さんを初めとする大きい労働組合の皆さん方が一番これに関与をされるのか、それとも、この部分は、あるいはもっと中小の零細企業の皆さん方がより多く関与をされるのか、これは今後の状況を見ないと私はわからないと思います。私は、大きい企業の皆さん方よりも、むしろ中小零細の小さな企業の経営者、あるいはまたそこに働かれる皆さん方がこの拠出型を選ばれることの方が多いのではないかという気がいたします。

 今まで大きい企業におきましては企業年金、今回におきましては、先般お願いをいたしました確定給付型の企業年金の方が優先をされるのではないかというふうに思いますが、中には、あわせてこちらの方を採用されることもございましょうし、あるいは、拠出型の方は採用をされないこともあるのだろうというふうに思いますが、やはり中小零細企業の方は、拠出型しか選択のできないところもございますから、そこは大変新しいそういう選択肢ができるということになるのではないかというふうに思っております。

 ですから、これは個々人にそういうふうにゆだねられますから、これは問題だという方もあれば、しかし、そういう新しいところもあるから、新しい試みとしてそれを御期待になっているところもあるというふうに私は理解をいたしております。

木島委員 加入者に提示をされ、加入者が運用されるという方法は、法案によりますと、信託会社への信託あるいは有価証券の売買、いずれにしろ元本が保証されない、元本割れすら引き起こすわけであります。三つのうち一つは元本保証のものだと盛んに答弁、私も聞きました。法案も読んでいます。

 しかし、中心的にはそこじゃないと思うのですね。これは趣旨説明にありますように、とても国民の高齢期にある生活の安定と福祉の向上に寄与するどころか、全く逆に、国民生活を不安定に陥れるものじゃないか。極言をしますと、先ほど岩國委員からも指摘が厳しくありましたが、働く国民の皆さんをすべてカジノ経済に巻き込んでしまう、そういうおそれを持った仕組みだと言わなければならぬと思うのです。

 私たちは、変額保険でだまされ、長年にわたって蓄積してきた老後の生活を支える資産を一瞬にして失ってしまう。私も弁護士です。裁判で今もたくさんの人たちが係争しているのを承知していますよ。そういう高齢者がたくさんいる。現にいる。この確定拠出年金というのは、こういう被害者を一層拡大することになるおそれがあると思うのですが、厚生大臣、どうでしょうか。答弁がありましたが、それでは、日本の本当に中小零細の企業で働く労働者、そこで組織している労働組合がこういう確定拠出型の年金制度をつくってくれ、そういう要求が厚生労働大臣あるいは政府の方に殺到しているのですか。

辻政府参考人 まず、運用商品についての基本的な理解をどうしても御説明させていただきたいと思います。

 と申しますのは、リスク、リターンの異なる三つ以上の運用商品を選定し提示するということになっておりますが、これは、大臣仰せのように、預貯金と十年物国債、二十年物国債の三種類でもようございまして、そのようなリスクのある商品を入れることを前提とはいたしておりませんということが一点。

 それから、もとより中小企業の場合は確定給付も導入できないというところで、むしろこの確定拠出があるのであれば、導入できるのであればという声は寄せられております。そしてまた、二〇〇〇年三月とちょっと古うございますが、東京商工会議所の調査結果などからも、その段階でも導入というものを考えてほしいといった声も統計的に見られますし、私ども、そのような確定給付がないところにおいては、むしろこれが欲しいといったことも含めまして、現実に選択肢としてこれが求められていると考えております。

木島委員 それは、基本的には中小零細企業の企業家の方の声じゃないのでしょうか。

 いろいろ言いましたけれども、元本保証のある金融商品と元本保証のない金融商品が同時に提示されるわけですね。三つ以上提示される。当然、経済法則として、元本保証のないものの方が利回りがいいのだということで説明されるでしょう。先ほども答弁あったでしょう、銀行の預金などが一番利回りが低いと。それは当たり前ですよ。

 そうしますと、私も株の経験がありませんし、知識もありません。いわゆる日本の、我が国の労働者、加入者、こういう金融商品取引の知識経験は乏しいでしょう。それで、目先の宣伝に惑わされるでしょう。安定した元本が保証される銀行預金では今ほとんど金利つかないよ、株式投資あるいは信託なら少々危険があっても利回りいいよ、そういう宣伝に惑わされていきますと、結局夢見て元本保証のない方を選択して大損すること、これは大いに心配されるのじゃないでしょうか。どうですか。大臣、答弁避けましたが、私は大臣に聞いているのですよ。

坂口国務大臣 それは、人によりましていろいろの選択肢があると私は思います。リスクはあるけれども一遍ひとつやってみようかという人も、それは中にはいるかもしれないと私は思いますが、やはり、将来の年金ということを考え、将来のことをお考えになる人はそんな危険なことをそれほどおやりにはならない、そんなふうに私は思います。

木島委員 先ほど来から大臣は、もし自分が当事者になったら絶対元本保証がないようなものは選ばないとおっしゃいましたが、そんな大臣がこの法案を提出する資格は私はないと思うんです。

 では、もうちょっと聞きましょう。

 元本保証のないものは金利が低いです。今の日本の銀行預金を見ればわかります。そして、運営経費がかかるんです。運用経費がかかるんです。手数料もかかるんでしょう。それが引かれると、そんな元本保証があるような、今の日本の金融の、銀行の預金の金利状況を見ましたら、プラスなんて出てこないんじゃないですか。マイナスになるんじゃないですか。

 それで、きょう、午前中の参考人から、手数料と運用利回りのお話がありました。そこでオランダの例が指摘されていたんです。どのくらいの費用がかかるか、オランダの場合の数字として、公的年金手数料が一・四%、確定給付型の手数料が四・四%、私これはびっくりして本当かどうか確認したいんですが、確定拠出型の場合二一・一%というんですが、これは本当かなと思ってびっくりして聞いていたんです。こんな数字であったら、とてもじゃないけれども、大臣が選びたいとおっしゃった今の元本保証があるような銀行預金ではとても、金利は手数料、運営費の金額まで出てこない、元本割れになってしまうと思うんです。保証がないじゃないですか。

辻政府参考人 私ども特にヨーロッパの実態というのは承知いたしておりませんが、少なくとも日本におきまして私どもが現在認識していることを申し上げたいと思います。

 最も金利の低いものについてコストとの逆転は起こらないのか、あるいはコストをちょっとしか上回らないんじゃないかというのが大きなポイントになるわけでございますが、それは預貯金でございます。預貯金につきましては、結局今の市中金融機関の預貯金の金利が非常に低くて、それと比べたら、いわば記録管理等の手数料が出てこないんじゃないか、こういった見方で御心配をよく受けておりますけれども、今の市中金融機関の大変低くなっております預貯金は、市中金融機関における全手数料を引いております。

 これは、広報経費から口座の管理費用、それから通帳の発出費用、さまざまなシステム費用、金融機関ごとに全部大きなコストを引いております。それを少なくとも我が国におきましては運営管理機関ごとに大きく束ねまして、大きく束ねた上で金融機関に一括運用をしてもらいます。したがって、運用する金融機関におきましては、そのようなもろもろの窓口費用は要らないということで、そのコストがない分いわば利回りとして高いものが戻ってまいります。それと一括して行いますところのいわゆる管理費用と比較いたしまして、これはプラスになる。

 このような今の状況においても、その点で逆転はしないし、それなりの、一般の金融機関と比べて遜色のない金利が出るということを私ども関係者から今聞いておりまして、そのような意味で、コストが割れてしまうということはございません。

木島委員 いろいろお話を受けましたが、元本保証のある金融商品を提示されてそれを選択しても、今述べたような理屈で、運営管理機関の手数料は下回るんだ、逆転はないんだと説明を受けましたが、その保証はあるんですか。法律上の保障、制度上の保障はあるんですか。

辻政府参考人 まず、この確定拠出型の年金につきましては、最初に規約を定めることになっておりまして、その規約におきましては、そのような運営管理機関や資産管理機関に係る手数料の額等についてあらかじめ定めることになっております。その点でいわばその確認が行われるということで、今の私どもが得ている情報でもそのようなことでコスト割れしないという前提で検討がなされており、また、現実にその規約でそのようなことが、割れるようなことでは規約は定められないわけでございますから、その点そこで担保ができると考えております。

木島委員 今答弁されたのは、手数料の方については規約であらかじめ定められているというだけであって、提示される金融商品はその時々の経済情勢で変わるんでしょう。金融機関が大体どんなぐらいの定期預金の場合の金利を出すかというのは、その時々の金融情勢で変わってしまうんです。そっちの方がどういう数字が出されるか、それは変化するんでしょう。片っ方の手数料だけは規約で定まったって、提示される金融商品の元本保証のある金利がどのくらいなのかというのが変化するんですから、制度上も運用上も保障はそういう面ではないんじゃないですか。

辻政府参考人 今申しました管理手数料と申しますか、それが最も利回りの低いものとも逆転しないということを申し上げましたが、複数の運用商品の中で別途手数料を取ることが考えられておりますのは、いわゆる投資信託と言われるような分野でございます。

 これについては、個々に手数料というものが運営機関で提示されますときに、個別のそのような手数料が示されまして、それがいわば利回りとの関係で合理的な関係かどうか、これはすべて規約に基づいて運営管理機関を委託者として定めるときに全部チェックをいたします。これは基本的には自由競争のもとで行われますので、競争で相当手数料の低いものを、運営管理機関の示す手数料が低いものを選ぶということになっておりますし、もとよりこれは運営管理機関が確定拠出年金を実施する事業主、それに対して必ずそれを示さねばなりませんので、そのときに競争が起こる、そして分の悪いものは選択されない、そういう形で淘汰される、そういう形で合理的な手数料が定められるものと考えております。

    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕

木島委員 私の指摘した問題提起に正面からの答弁にはなっていないと思うんです。

 結局、提示される金融商品で少しでも手数料よりは利回りのよいものを選んで、自分の取得できる将来の年金をふやそうと思ったらリスクの大きい方を選ばざるを得ないということが言えると思うんです。

 では、具体的な、この法案による運営管理機関の運用の方法についてちょっと立ち入って質問したいと思うんです。

 二十三条と二十五条の問題でありますが、運営管理機関は運用の方法を提示し加入者は運用の指図をすることになる、その具体的な手順というのはどういうものなんでしょうか。法案によれば、最低三カ月に一回は行い得るものとすることということが書かれているだけでありますが、例えば株式なんかの買い付け、売り払い、売却というようなことをやることを想定したときの具体的な手順はどうなるんでしょうか。

辻政府参考人 まず、運用商品に関しましては、大もとは企業型年金規約というものを労使で決めるわけでございますけれども、そこで提示する運用商品の基本的考え方というものをまず枠組みとして決められます。そこでどの程度のリスクをとる商品をこの各企業型年金規約で定めるのかという第一のフィルターがかかります。例えばここで申しましたように、リスクをとるのはやめよう、当面安全なものからいこうというときは、今言いましたような元本保証商品だけでいこうということも規約に定められます。

 では、その次に、そうではなくて、元本保証型を入れるというのは必須でございますけれども、それ以外に例えば株式も組み入れる投資信託を入れるということをもし規約で合意したといたしますと、その合意した運用商品の基本的考え方の範囲内に沿って今度は運営管理機関が商品を具体的に提示することになります。それは例えば非常にリスクをとらない市場連動型の株式投信とか、そういったさまざまな今度は考え方のもとで選ばれることが一般かと思いますが、その範囲の中で、今度は運営管理機関が商品を具体的に提示し、その中で加入者が選択して指図していくというプロセスでございますが、そのときに、これは私ども非常に厳格な手続が入っておりまして、運営管理機関が運用商品に関して一定の情報提供をしなければならないという二十四条の規定がございまして、そのときに、予定利率などの利益の見込みは確実か、いわば元本保証か。それとも利益の見込みは不確実か。そのときの損失の可能性はどの程度あるのか。そして、過去の長期間にわたる当該商品の利益や損失の実績はどうだったのか。こういったことをすべて運営管理機関が情報提供しなければならない。そして、それを説明した上で判断していただくようにしなければならない。しかも、特定の商品を具体的に推奨した場合は、それは禁止行為、義務違反になります。

 そういった非常に厳格な手順を経て指図を受けるプロセスに入っておりまして、私ども、この点については大変大きなポイントでございますので、今申しましたようなプロセスを経て、本当に理解をした上でのみ指図がされるように運用を行ってまいりたいと思います。

木島委員 ですから、それを具体的に聞きたいのですよ。

 株式という商品を提示される。では、それは具体的なわけでしょう。トヨタ自動車の株を提示される。しかし、もう株式の世界は時々刻々変化するわけでしょう。そういう変化の中で、リスクも出るし、利益もうまくすれば出る。そういう性格を持った商品でしょう。ですから、そういう商品、しかも東京証券取引所だけで何千という銘柄がある。提示されるのはそのほんの一部なんでしょう。そうしますと、個々の加入者から見ますと、自己の希望する銘柄の株式を、自己が希望する日時に売りまたは買いの指図が具体的にできないのでしょう。

 そうしますと、結局、この仕組みというのは、年金運営管理機関の提示する非常に極めて狭い枠の中でしか選択できないということを本質的に抱えているのではないでしょうか。今局長がおっしゃったような厳格な手続を踏んでいれば、そのタイミングも何日かかかるのでしょう。そんなことをやったら、株式や有価証券の売買の世界ではないでしょう。時間が勝負だ。要するに、これは本質的に加入者が自主的に運用できないということを示すのではないでしょうか。本質的に加入者が自主的に、この株を何月何日の前場何節とかいう、そういう株を買いたいというときに、自主的に決められない。ということは、運用結果責任を加入者本人に押しつけるということは、本質的な誤りではないかと思わざるを得ないのですよ。どうですか。

辻政府参考人 まず、今のは個別銘柄の株式について指図をするというようなパターンを前提の御指摘かと存じますが、もともとこの確定拠出年金制度は、六十歳まで運用して六十歳から受けるということでございますので、一般的には、運用商品に関する基本方針のもとで、株式投信でありますとか、そういった特定の指定銘柄の運用ではなくて、投資信託とか生命保険商品とか、こういった運用商品の類型を提示するというのが一般的でございまして、個々の株式を運用商品として、これは場合によれば、企業が倒産した場合は資産がゼロになるわけですから、個々の株式を運用商品として提示することが適切かどうかについては、制度的には可能でございますけれども、労使で十分議論する必要があると考えております。

 また、運営管理機関への参入を予定している多くの金融機関からは、個別株式は多種多様であるので、実際に個別株式を運用商品として加入者に提示することは考えていないという話を聞いております。そのように、基本的にはやはり安定性のある商品を前提とした運用方針を前提と私ども考えております。

 しかし、仮にそのような労使の合意があって、個別株式を入れたいというようなこととなった場合に、その指図につきましては、いわば運営管理機関はすべてコンピューターシステムを持っておりますので、指図による売買のタイミングについては、タイムラグはほとんど問題にならないものでございます。

 ただ、私ども申し上げたいことは、つぶれたらゼロになるようなといった個別銘柄によるそういう商品選択というものは、一般的には想定していないし、現に運営管理機関もそのようなことを準備していないという現実があるということを申し上げたいと思います。

木島委員 時間ですから終わりますが、次回にまた質問できたら続行したいと思うのです。

 要するに、この制度というのは、安定的な元本保証されるような金融商品を選ぼうと思ったら手数料が高くて割に合わない。では、リスクを冒して株でひとつもうけようと思っても、自分が本当に欲しい株を取得することができない。自由がない。そういう自由がない加入者に対して運用結果責任を押しつけるのはやはり問題、根本的な制度の欠陥だということだけは指摘しておきまして、質問を終わらせていただきます。

鈴木委員長 阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子と申します。

 私の本日の審議に入らせていただきます前に、法案審議の前に、まず、坂口厚生労働大臣にお願いがございます。

 実は、ハンセン病の熊本地裁判決に際しましても、前々回でしたか、厚生労働委員会の場で多数の委員から控訴せずの御判断をという要望が次々相次ぎまして、また坂口厚生労働大臣も深くお考えいただきまして、ハンセン病にあっては控訴せずという方針が固まり、旧ハンセン病の方たちも大変喜んでおられたし、国の政治も大きく一歩前進したものと高く評価しております。

 そして、あわせてでございますが、既に、坂口厚生労働大臣も御承知おきのように、六月一日、大阪地裁で、いわゆる在外に居住する被爆者についての被爆援護法の適用について、居住地を問わず被爆という事実をもって被爆援護法の適用をなすべきであるという地裁判決がおりました。

 四月には、同じ大阪で水俣病の認定の判決がおり、しかしながら、残念ながら、これは環境省によって控訴をされております。そして、先ほどの五月十一日、ハンセン病の熊本地裁判決は、坂口厚生労働大臣の御英断で、これが全体に内閣を引っ張って、控訴せずの判断に至ったものと思います。

 さて、今回の被爆者援護法における在外に居住する被爆者についての大阪地裁判決、本当にこれは控訴せずという方針を強く望むものでございますが、残念なことに、きょうの委員会では、まず私がこの件を言い出しただけで、実は前回、三月十六日、我が党の中川智子議員が厚生労働大臣並びに桝屋副大臣にかなりこの件で粘りまして、御答弁をお願いした経緯もございます。

 その時点と現在では、また大きく進歩したものがございます。この大阪地裁判決という事実、このことにのっとって、いわば投げられたボールをどのように厚生の行政担当者が返していくかという時期に差しかかっておると思います。

 まず、この地裁判決につきまして、坂口厚生労働大臣のお考えをお教えくださいませ。

坂口国務大臣 大阪地裁の被爆者に対する法律につきましての判決が出ました。それで、結論から先に申しますと、まだ省内、そして他の省庁との検討というものをまだいたしておりませんので、ここでその結論を申し上げることはできません。

 この裁判は、原告の方は韓国の方でございますが、被告の側になっておりますのは大阪府知事そして法務大臣でございます。ただ、厚生労働省といたしましては、やはり法律がこの厚生労働省にかかわります法律でございますだけに、看過できないものがございます。まだ皆さんに相談をするところまで至っておりませんで、一度早く相談をしなければならないというふうに思っております。

 そうはいいますものの、昨夜も、この前の、平成六年の十二月にできました被爆者援護法をもう一度持ち帰りまして、そして夜少し読み直してみたところでございます。その審議の内容等をずっと読ませていただきましたら、その中で、共産党の岩佐委員が御質問になっておりまして、そして、外国に居住する方にも同じように扱うべきだという御趣旨の御発言をなすっているわけでございます。それに対しまして、谷さんという政府委員が、この法律は外国に居住する人は含めていないということをそこで答弁をいたしております。共産党さんの方から修正案が出されまして、そしてそれが否決をされているというような経緯もございました。あるいは参議院であったかもしれませんが、そういう経緯がありました。

 そういう経緯がございまして、それを見ますと、この法律の中には明らかに書いてはありませんけれども、その議論の中におきましては、外国に居住する人は対象としないということはそこに答えておりまして、いわゆる立法府としての意思というものはそこである程度明らかにはしているというふうに思ったわけでございます。

 ただし、法律そのものが正しいかどうか、そして全体で考えた場合にどうかということをこれから議論をしなければならないわけでございまして、いましばらく、少しお時間をちょうだいしたいというふうに思っております。

阿部委員 まだ結論が出ていないということで、私の方から幾つかの指摘をさせていただこうと思います。

 坂口厚生労働大臣もこの被爆者援護法の前文をまずお読みくださいました由で、やはり一九九四年に法律ができました前文を読んでみますと「国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の」云々という一文がございまして、あわせて、国として原子爆弾によるこの健康被害あるいはその個人救済、特に高齢化の進行にかんがみて、全般的な措置をとるというふうに明記されているものでございます。

 ここで、私はこの前のハンセン病のときも申し述べましたが、政治の基本が何であるかということにおいて、やはり非常に大きな岐路に日本の政治が立っておる、このことをまさに坂口厚生労働大臣は認識されて、前回のハンセン病判決控訴せずの判断に立たれたと思いますが、被爆者援護法にうたわれている骨格は、一つには国の責任の明示であり、もう一つは人道、人の道、人がなすべき道とは何かということでございます。

 そしてあわせて、被爆という属性は個人に属します。ある方が被爆したか否かという事実は、その個人に属しております。その方がどこに歩いて移動されようと、国境をまたごうがまたぐまいが、また国籍が何であれ、この法律は、その個人に被爆という属性を規定したものであると思います。

 そのことをあらわすものの中に、いわゆる法文の第二条に、被爆者健康手帳の申請において居住地がない場合は、その申請の現住地、現在いる場所で申請をできる。居住地がないということは、居住しておられない場合でもこの申請が可能性であるというふうに逆にこれは解釈ができるものと思います。

 また、いわゆる戦病者の遺族のいろいろな救援、救護法におきましては、海外に在住しても給付が受けられます。このことは、遺族である事実というのは、海を渡ろうが渡るまいが一貫して続いているということでございます。

 先ほど坂口厚生労働大臣のお答えにございました、共産党の岩佐議員への当時の答弁がそこでとどまっておるということでございますが、あわせてこの条文をよくお読みいただきまして、また、戦後補償のさまざまな遺族の救援、救護法では海を渡ってもなお現実に適用されておるということもお考えくださいまして、ぜひとも前向きな御進言をお願い申し上げます。

 と申しますのも、先ほど坂口厚生労働大臣がおっしゃいましたように、これは直接には外務省と大阪府が被告になっておるものでございます。本当にありていに言えば、坂口厚生労働大臣が直にかかわっていないものには不安がございます。先ほどの環境省の水俣病判決の控訴もそうでございます。政治の道を大きく人道という方向に向けていただけますように重ねてお願いいたしまして、私の本来の質問に入らせていただきます。

 きょうの午前中、参考人の皆様方から、いわゆる確定型拠出年金についての御意見を拝聴いたしました。その中で私が一番強く印象に思いましたのは、そしてこれまでのこの場での論議もあわせて考えますことには、やはり公的年金部分、特に国民年金部分の危うさということをどなたも案じられ、また、問題と思っておられるということでございました。

 そして、朝の参考人の公文氏のお話の中にもございましたが、公的年金の空洞化ということでございます。このことについて厚生省内の関係の部局はどのように認識しておられるのか、まず一点目お伺いいたします。

冨岡政府参考人 国民年金全体の加入者は七千万人を超える規模でございますが、空洞化と言われます中には、未納者が多いのではないかとか、または免除者が多いのではないかとか、実際にそういう方がふえることによって将来無年金になる人がおられる、そういったことで言われているのではないかと思っております。

 調査によりますと、まず未加入者の方につきましては、最近の調査で九十九万人ということで、従前よりもかなり減っております。これは、若い方に対しまして、二十に到達すると市町村が住民基本台帳で年金手帳をお送りし、納付書をお送りし入ってもらう、こういう対策をとったからでございます。

 一方、未納者は前の調査よりも大分ふえまして、二百六十五万人と九十二万人ほど増加しております。これは、先ほどのようなことで加入してもらった方が必ずしも納付に結びつかなかったといった点があるわけでございますが、年齢別に見ますと、やはり若い方が未納が多い。それから、大都市の方が比較的未納が多い。逆に、年金が目前に迫ってきております年代になりますと、例えば五十代の方は極めて未納者が目に見えて少なくなる、こういったような状況にございます。

 ただし、こういった状況でございますが、七千万人という全体の規模から見ますと、今申し上げました未加入者、未納者の方の割合は五%程度ということでございまして、七千万人全体で支える国民年金全体の将来的な安定といった点から見ますと、言われているような不安はないものと承知しております。

 以上でございます。

阿部委員 けさの参考人のお話をぜひ聞いていただきたかったと思いますが、その認識が大きくずれますところに、こうした政策的な方向性も見誤る、極めて不確かな確定拠出年金の提案があるのだと思います。空洞化の内実、それを空洞化と認識しておらないということ自身が、非常にもう行政の根本の怠慢でございます。

 先ほど未納者二百六十五万人とおっしゃいました。若い人には多いけれども年齢を経るごとに少なくなるというふうなお話でございましたが、やはり客観的なデータを持ちまして分析していただきたいのと、実際に、若い方の未納ということももちろんございますが、これは、お払いになれない、今の国民年金でもお払いになれない方々も大勢おいででございます。私が午前中承りました数値によりますと、この二百六十五万人のうちの六四%はむしろ経済的な負担から未納であるというふうに分析されております。分析するデータが違えば結果が違ってまいります。

 そして、けさおいでになった四人の方々は、おのおのいろいろなエリアから年金についての御発言でございましたが、どの方もひとしく、これからの日本の公的年金、特に国民年金の未来を案じておられました。これは国民がもっと案じていることでもございますが、そこにおいて今のような御答弁しかない担当省庁というのは、私はこれは国民の将来や命を預けるには極めて問題が多かろうと思います。

 また、きょうはデータ表示はお時間等々で私も要求いたしませんので、次回、何%が、特に若い人の未納率が減っておると申しますが、これは若い人の数が減っておりますから、その中での比率の減少であるのか。特に今若い方は将来自分が年金が受け取れる保証がほとんどないというふうにお考えで、私の身の周りでは非常に未納はふえておると思います。数値によって減っていても比率においてふえておれば、これはまたお話が違いますので、その件はまた追って、明日にでも私が引き続き空洞化の問題を質問いたしますので、資料提示の上、お願い申し上げます。

 そして、けさの四方の御指摘の中で、特に国民年金、これは五%が未納率で、七千万人分の五%だから低いと見るか、むしろ国民年金に対しての国民的信頼が薄れていっている。特に世代間の格差という問題で、若い人たちが負担に耐えられないというふうに思っている。事実はどうかはまた違うと思いますが、そうした背景をかんがみたときに、けさの四方の御提案の中では、まず国民年金において、二分の一で、税できちんとした施策をするというところが第一であるというのが四方とも共通の御見解でございました。確定拠出にしろ、確定給付の方がまだ安心と思いますが、一階の部分、下の部分がしっかりしなければ、すべてが、これからの国民の将来、本当にギャンブル化いたします。

 私は、この時間の裏側で財務金融の方での審議をしておることを先ほども申し述べましたが、非常に邪推すれば、これは金融部門への大きな、いわゆる今までの退職者がもらっているような退職金を株式を初めとする直接金融へ持っていくための施策である、そのための緊急経済対策ではないかと思われるような部分すらございます。それほどに無理がございます。何が無理かというと、一階部分の不確かさということについて長期的なきっちりした方針がないということでございます。

 そして、午前中の参考人の御発言の中では、お二方が消費税をもってこの部分を二分の一まで引き上げるべし、あとお二方が一般財政の中での税のやりくりで行うべしという御発言でございました。今の認識がそのようなものでは考えているかどうかもわかりませんが、この基礎年金の部分、国民年金部分の充実に関しまして、例えば国民年金という、目的をある程度明確化した上での累進課税による補てんということについてはいかがお考えでしょうか。これは担当の方でも、厚生労働大臣でも、桝屋副大臣でも。

桝屋副大臣 今の委員の議論をずっと聞いておりまして、どの分野でお答えをすればいいのかちょっと悩むところであります。

 まだ午前中の参考人の議事録に目を通しておりません。違うことを言うかもしれませんが、委員の今の御指摘は、やはり基礎年金、一階、二階部分が大事だ、これをきちっとしなきゃならぬということから、空洞化という議論もされました、五%、多い少ないの議論もありましたけれども、やはり少しでもそこを広げる、そこを充実する、確かなものにするという観点でのお尋ねではないかと。そういう意味で、所得に応じた累進的な負担、それでもって年金制度を支えるということはどうかというお尋ねかというように思うんですが。

 まず一つは、今の年金そのものが、もちろん基礎年金は全国民で公平に負担をするという観点になっておりまして、二号、三号は、御案内のとおり、保険料は報酬に比例をした応能負担になっておる。それから、一号被保険者については、これはなかなか所得の把握が難しいということで定額の負担になっているということでございます。

 さらに、税というお話をされました。まさにきょうの午前中の、今御指摘があったように、公費負担を三分の一から二分の一に引き上げる、大臣も今それを一生懸命お考えになっているわけでありますが、その財源をどうするかという観点で申し上げますれば、これは今の段階で言うことはなかなか難しいわけでありまして、安定した財源確保を図るというそれと一体的に公費負担を上げるということを今議論しているわけでありまして、社会保障改革大綱等、今ワーキングチームでも作業が始まりましたけれども、その中で今鋭意検討しているという点を御理解いただきたいと思います。

阿部委員 長い質問をして申しわけございませんでした。物には順番があるということを指摘したかったのが一点です。

 やはり、二〇〇四年に向けての基本的な論議のところがなされないまま、そしてもう一つ、金融市場が極めて不安定なまま、現在この確定拠出型を導入することというのは極めてリスクが高過ぎる、高いではなくて高過ぎるということをまず指摘したかったこと。

 それから、どこに税源を求めるかということももっと大胆に踏み込んで国民に提示しない限り、やはり合意は得られない。これからの高齢化社会、みんなが納得して支えなければ支えられない。小泉さんは痛みを分け合うとおっしゃいますが、これも大きな痛みの一つでございます。ただし、やはりある程度透明性とそして安心感があるものでないと、極めて国の施策が社会を不安定にさせていきます。昨今の出来事を見ますと非常に不安な社会を反映したことが多うございますから、恐れずひるまず、財源論にも立ち入っていただきたいと思います。私どももまた提案させていただきます。

 もう一つの不安定要因、女性と年金ということについてお伺い申し上げます。

 きょう皆様のお手元に、先ほど理事の了承を得まして配らせていただいている資料には、男性と女性の受け取られる年金の大きな差が明示されてございます。これは平成十一年度に老齢年金の支給を受けられた方の平均月額のグラフでございますが、女性と男性では一目瞭然、極めて差がございます。いろいろな原因、背景はございますでしょうが、まず、この事実についてどういう認識をお持ちで、どのように改善していかれるふうにお考えか、これも担当部局にお伺いいたします。

辻政府参考人 現実問題といたしまして、男子に比べまして女子の年金が平均的にも分布的にも相当低いという客観的事実は御指摘のとおりでございます。この理由は、大きく申しまして、一つは男子に比べて女子の報酬が低いということ、それから年金の前提となる加入期間につきましても、女子の方が男子よりも加入期間が短いということ、この二つによってこの年金の差が生じております。

 ただ、これについて年金制度としてどう評価するかでございますけれども、年金制度は、いわば一階の基礎年金、二階の報酬比例年金、こうなっているわけでございますが、説明が長くなって恐縮でございますが、一階の基礎年金につきましては定額になっておりますことから、所得の低い方についてはむしろ援助を受け、所得の高い方は所得の低い方へ保険料を援助するという再分配構造が基礎年金の部分には含まれております。ただ、報酬比例は再分配構造はなく、報酬に比例して額が決まる。したがいまして、ちょっと適切な表現ではございませんけれども、年金額が低いということは、基礎年金のウエート、割合が高いということで、女性に関しましてはそのような、結果として再分配構造がきいているということから、年金制度としてはそのような、賃金の低さをカバーしているということはそれなりの配慮が行われていると考えております。

 そのような状況を将来に向けてどう考えるかでございますが、年金制度そのものの本質は、現役時代にどれだけの所得水準でどれだけの生活をしていたか、それが高齢によって所得を失ったときに大幅に落ちないように、それを防ぐというのは、私どもは年金の機能、本質だと考えておりますので、どうしても年金のときのいわば報酬水準というものに連動したものにならざるを得ないということから、どうしても現役時代のいわば賃金に年金が規定される。それを年金制度だけで克服するということは、相当限界があるのではないかと考えております。

 ただ、では現役時代の、女性の年金の適用問題についてはどうするかということを含めまして、女性と年金をめぐる問題につきましては、さまざまな問題が指摘されております。そのようなことから、パートの適用とかそういったことも含めて、三号被保険者問題が指摘されておりますので、その点につきましては、現在、女性のライフサイクルの変化等に対応した年金のあり方に関する検討会、これを私ども、専門家に集まっていただいて議論いただいておりまして、そのようなところでこの問題も含めて御議論いただければと考えております。

阿部委員 事実としてこれだけの年金格差がある国というのは、先進諸国の中では日本は際立っておると思います。

 そして、今の御説明で、基礎年金部分についてはある程度低い負担で、むしろ給付がいい状態にもなっているというふうな御発言でしたが、実はこの年金額ではとても暮らせる年金ではございません。暮らせる年金でないということをしっかり自覚した上で今の御発言があったならばまだ余地がございますが、実は、ここから介護保険料も取られますし、これから医療においても自己負担を取るというお話でございますから、もう一度大きく女性と年金問題、特に高齢社会は女性が多うございますから、お考え直しいただきたい。

 そして、特に今おっしゃいました二つの要因分析、賃金格差と加入期間ということに関しましては、実は育児期間中の女性を積極的に加入期間として算定し直すような仕組みを国が取り入れるべきであると思います。ドイツでは、例えば一番末子、末の子が九歳になるまでの育児期間を年金を払っているものとみなすようなシステムもございます。これは少子化問題とも関係いたしますし、もちろん子育ては女性だけがするものではございませんが、現実に女性に負担がいき、加入年月を低くしている。また三号被保険者の問題もございます。

 今のは提案ですから、お返事を用意いただければと思いますが、ここで一つ最後に、女性の年金においての二分二乗、午前中問題になりましたが、離婚されたら厚生年金がもうないという現実もございます。夫の報酬比例部分も含めた年金の二分二乗方式について、これは個人単位の年金に向けた検討でございますが、この件に関しても、現段階の到達点をお教えください。

坂口国務大臣 先ほどお配りをいただきましたこのペーパーを拝見して、やはり私は感じましたことは、日本の年金制度が個人単位になってないということを物語っているというふうに一つは思いました。

 そして今、二分二乗方式のお話が出ましたが、二分二乗方式をどうするか、私、結論はまだ正直なところ出ておりませんけれども、やはり女性の年金というものをもう一度考え直さなければならないことだけは間違いがないわけで、次の年金改正のときにはぜひここを入れなければならないだろうというふうに思っております。

 そして、これから社会で大きく活躍をしていただきます女性に対して、お報いのできる年金にしていかなければならないというふうに思いますし、御提案がございました育児の期間中の保険料等の問題は大きな今後の検討課題であると私も思っております一人でございまして、ぜひ検討させていただきたいと思っております。

阿部委員 前向きな御答弁、ありがとうございました。以上で終わります。

鈴木委員長 次回は、明六日水曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十六分散会




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