衆議院

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第20号 平成13年6月11日(月曜日)

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平成十三年六月十一日(月曜日)

    午後三時一分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 谷畑  孝君

   理事 森  英介君 理事 吉田 幸弘君

   理事 大石 正光君 理事 鍵田 節哉君

   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君

      大島 理森君    奥山 茂彦君

      上川 陽子君    鴨下 一郎君

      木村 義雄君    北村 誠吾君

      熊代 昭彦君    佐藤  勉君

      田村 憲久君    竹下  亘君

      竹本 直一君    西川 京子君

      野田 聖子君    林 省之介君

      原田 義昭君    松島みどり君

      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君

      望月 義夫君    吉野 正芳君

      家西  悟君    大島  敦君

      加藤 公一君    金田 誠一君

      川内 博史君    釘宮  磐君

      古川 元久君    三井 辨雄君

      水島 広子君    山井 和則君

      青山 二三君    江田 康幸君

      武山百合子君    小沢 和秋君

      木島日出夫君    阿部 知子君

      中川 智子君    小池百合子君

      川田 悦子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   法務副大臣        横内 正明君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働大臣政務官    佐藤  勉君

   衆議院法制局第五部長   福田 孝雄君

   政府参考人

   (法務省大臣官房訟務総括

   審議官)         都築  弘君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  篠崎 英夫君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局国立病

   院部長)         河村 博江君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十一日

 辞任         補欠選任

  原田 義昭君     大島 理森君

  宮腰 光寛君     望月 義夫君

  三井 辨雄君     川内 博史君

  樋高  剛君     武山百合子君

  木島日出夫君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  大島 理森君     原田 義昭君

  望月 義夫君     竹本 直一君

  川内 博史君     三井 辨雄君

  武山百合子君     樋高  剛君

  瀬古由起子君     木島日出夫君

同日

 辞任         補欠選任

  竹本 直一君     宮腰 光寛君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律案起草の件




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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 まず、本日、ハンセン病関係者から聴取した意見の概要について、委員長から御報告申し上げます。

 最初に、ハンセン病国賠訴訟全国原告団から意見陳述がありました。

 まず、冒頭、原告団の代表の方から、出生から発病に至るまでの経緯、発病後の病状、出身地における入所勧奨の模様、入所当日の状況について、その時々の心情を交えたお話がありました。

 続いて、我が国のハンセン病対策や療養所内の実情について発言がありました。

 九十年間のハンセン病対策は、公共の福祉の名のもと、患者を人里離れた療養所に隔離し、その基本的人権を拘束してきたこと、プロミンの治療効果が明らかになった後も、昭和二十六年、参議院厚生委員会での当時の長島愛生園長の、らい対策は将来も引き続き絶対隔離をとり続けなければならない等の発言に基づき、昭和二十八年にらい予防法が成立したこと。

 また、療養所では職員の定数を最小限に抑制し、軽症患者の労働力を活用したため、軽症患者が二十四時間体制で重症患者の食事、着がえ、包帯の交代などの世話をし、さらに、し尿処理から療養所内で亡くなった患者さんの火葬まで行うなどの重労働を強いられ、その結果、手足に障害を抱える者も多くいたこと等の発言がありました。

 続いて、今後のハンセン病対策について、

 一、当局による責任の明確化と謝罪

 二、名誉回復措置

 三、恒久対策として療養所での生活の保障あるいは退所者に対する年金給付等

 四、医療、看護、福祉、環境の整備の拡充

 五、真相究明と再発防止

 六、継続協議の場の設定

の六項目の要望が行われました。

 続いて、退所者代表の方からは、昭和四十年代以降療養所への入退所を繰り返し、国の世話を受けず、隠れて生活してきたとの指摘があり、これまで社会のハンセン病に対する偏見により種々のいわれなき差別をこうむったことについてお話がありました。

 国に対する要望としては、

 一、親にとって子供が差別、偏見の対象となることは耐えられないものであり、ハンセン病は完全に治る病気であることをメディアを使って繰り返し大々的に報道し、正しい知識の普及と啓発を図ること

 二、退所者は隠れて生活していたこともあって医療、年金、福祉等で国の施策を十分に受けることができなかったため、退所者に対する年金の充実、葬祭費の支給等施策を拡充すること

の二点の指摘がありました。

 なお、原告団からは、今回の熊本地裁の判決を高く評価するとともに、控訴を断念した坂口厚生労働大臣、小泉内閣総理大臣の英断に対し謝意が述べられ、また、隔離政策の誤りを認めた衆議院の決議や補償法案の策定に超党派で取り組まれたことに対し、感謝の意が述べられました。

 次に、全国ハンセン病療養所入所者協議会の会長からは、法案に関連して、

 一、療養所に入所しなかったハンセン病認定患者に対する救済の措置

 二、社会復帰者に対する支援

 三、法案第十一条の「名誉の回復等」についての具体的な内容の明確化

について発言がありました。

 続いて、事務局長から、判決は生涯の中で最高の喜びであり非常に感激した、死を迎える前に真の完全な人間回復ができるよう努めていきたい旨の発言がありました。

 これに続き、入所者の平均年齢は七十四歳と高齢化しており、早期の全面的かつ抜本的な解決が必要であるとして、

 一、責任の所在の明確化と謝罪

 二、名誉回復の措置と損害賠償

 三、医療、介護、看護、福祉、環境整備に関する恒久対策

 四、ハンセン病に対する差別と偏見の解消

 五、真相の究明、再発の防止、政府当局における徹底的な検証

 六、多磨全生園にある高松宮記念ハンセン病資料館の永久的保存と充実

 七、政府における協議の場の設定

との七項目の要望がありました。

 また、政府との協議に当たっては国会議員がこれを十分に注視し、見守ってほしいとの希望が述べられました。

 なお、ハンセン病療養所入所者協議会からも、国会決議を厳粛に受けとめ、感謝するとともに、法案の早期成立を希望しており、また、今回の坂口厚生労働大臣、小泉内閣総理大臣の控訴断念の決断には国会議員の支援によるところが大であり、心から感謝しているとの発言がありました。

 次に、法律案の起草についてでありますが、本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 本案は、ハンセン病の患者であった者等の置かれていた状況にかんがみ、ハンセン病療養所入所者等のこうむった精神的苦痛を慰謝するとともに、ハンセン病の患者であった者等の名誉の回復及び福祉の増進を図り、あわせて、死没者に対する追悼の意を表しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、本案には、特に前文を付し、らい予防法廃止に至るまでの経緯、悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて深刻に受けとめ、深くおわびするとともに、ハンセン病の患者であった者等に対するいわれのない偏見を根絶する決意及び本案の趣旨を明らかにしていること、

 第二に、国は、ハンセン病療養所入所者等に対し、その者の請求により補償金を支給するものとし、その請求は施行日から起算して五年以内に行わなければならないこと、

 第三に、補償金の額は、ハンセン病療養所入所者等の区分に応じ、千四百万円から八百万円とし、昭和三十五年一月一日から昭和四十九年十二月三十一日までの間にハンセン病療養所等から退所していたことがある者に対する補償金は、ハンセン病療養所入所者等の区分及び退所期間に応じた額を控除した額とすること、

 第四に、本法案による補償金の支給を受けるべき者が同一の事由について国から国家賠償法による損害賠償等を受けたときは、国は、その価額の限度で、補償金を支給する義務を免れるものとし、また、国は、補償金を支給したときは、同一の事由についてその価額の限度で、国家賠償法による損害賠償の責めを免れるものとすること、

 第五に、国は、ハンセン病の患者であった者等について、名誉の回復及び福祉の増進を図るとともに、死没者に対する追悼の意を表するための必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとし、これらの措置を講ずるに当たっては、ハンセン病の患者であった者等の意見を尊重するものとすること

等であります。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、お諮りいたします。

 本起草案について、本日、政府参考人として厚生労働省健康局長篠崎英夫君、健康局国立病院部長河村博江君及び保険局長大塚義治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 本起草案について発言を求められておりますので、順次これを許します。西川京子君。

西川(京)委員 自由民主党の西川でございます。よろしくお願い申し上げます。

 今回、このハンセン病対策に関しまして、私ども、委員長提案ということで、超党派でこの法律案がまとまりましたこと、本当によかったと心からそう思っております。

 ここに至るまでの経緯には、あの小泉総理の控訴断念という形に至るまでも、大きな苦しみがあったと思います。もちろん当然、行政側、そして私たち国会議員の責任も問われるという中で、本当に大きな大きな苦しい経過があった中で、この小泉総理の大英断が行われたわけでございます。

 そして、これに伴って私たちが議員立法をするという経緯の中で、与党、野党、本当にさまざまな思いが交錯いたしました。そういう中で本当に超党派でこの法案がまとまったこと、私も心からよかったと思っております。

 その中で、この熊本地裁の判決、当然国家賠償を求めた判決を踏まえて出たわけでございますけれども、委員長提案でまとまりましたこの議員立法が果たして実際どういう性質のものなのか、私どもにも実際にはよく把握できないところがあるような気がいたします。賠償なのか、補償なのか、あるいは福祉なのか、その辺のところがちょっと私も定かではありませんので、法制局の方の御見解を聞かせていただけたらありがたいと思います。

福田法制局参事 お答えさせていただきます。

 ただいま先生の御質問でございますが、この法案の前文でも述べられておりますように、ハンセン病の患者や患者であった方々は、らい予防法による隔離政策のもとで多大な苦痛、苦難をこうむってこられたわけでございます。

 そういうことで、この法律案による補償金につきましては、熊本地裁判決の考えを念頭に置きつつ、このようなハンセン病療養所入所者等の方々がこうむった精神的な苦痛を慰謝するために補償金を支給するというものでございます。

 また、これにあわせまして、ハンセン病の患者や患者であった方々の名誉の回復等の措置も講ずることとしておるところでございます。

西川(京)委員 ある意味では、国家賠償の判決が出て、それに合わせて細かな細部にわたって議員立法をしていくということは、今回初めてのケースではなかったのかなと思います。そういう中で、この対応が非常に複雑で難しい問題があると思います。

 実は私は、熊本県水俣市の隣の津奈木町というところに住んでおりますが、水俣病の問題を長い間見続けてまいりました。その中で、平成七年のあの村山内閣のときに、自社さ政権で、本当にそれまで長い間悩みに悩んだ水俣病という問題を、ある意味ではもう疫学的ないろいろなことは完全に立証できない、そういう中で、その折にも大きな英断だったと思うのですが、政治的決着という本当に大きな決着を見ました。そして、その後から、大阪の方ではまた別に裁判があっているという現実があります。この大阪の方の水俣病の訴訟に関しては、やはり国の方は上告という手段をとりました。

 そういう中で、こういう背景のいろいろさまざまな国が抱えている厳しい訴訟問題の中で、このハンセン病の問題が控訴断念という大きな判断が出たわけです。ですから、それに対応して、私たちもこれは初めてのケースだったということ、そして、国会の不作為の問題も問われたり、あらゆる意味で、国会議員にとってもかなり初めての経験であったようなことと思います。ですから、今回の議員立法に関しては私たちも本当に勉強して、患者さんと一体となってこの解決の方向に向かうことが大事だと思っております。

 その中で、余り具体的に細かいことを聞いても意味がないのかなという気もしますが、二、三気になる点がございますので、ちょっと押さえさせていただきたいと思います。

 一つには、熊本地裁の判決では沖縄の問題が、要するに沖縄の軍政下においては日本の国内のハンセン病、らい予防法とは同じような扱いになっていない、ある意味では患者さんが強制隔離というような形ではなかったという現実があるわけで、熊本地裁では沖縄の方々への入所期間の算定などをしていないで補償制度の中に入っていないという現実がありましたが、この議員立法の中ではこの問題はどういうふうに扱われているのか、よろしくお願いします。

福田法制局参事 復帰前の沖縄の問題でございますけれども、この法案では、補償金支給の対象となりますハンセン病療養所等は厚生労働大臣が定めることとされておりますけれども、厚生労働省の方では、その中に、復帰前の沖縄における療養所も対象とするという方針と聞いておりますので、熊本地裁判決では対象としていない復帰前の沖縄における療養所入所期間も、本土の場合と同様に、補償金の算定期間とするということとなるものと思います。

西川(京)委員 ありがとうございました。

 本当に多大な精神的苦痛を伴ったらいの患者さんたちすべての方々を救済するというのが目的ですので、当然の判断だったろうと思います。

 それともう一つ、ちょっと気になる点が、第三条のところの、「国は、ハンセン病療養所入所者等に対し、その者の請求により、補償金を支給する。」となっておりますけれども、この場合、患者の方々が大変御高齢化していらっしゃるという中で、例えば、言葉は余りよくありませんが、痴呆の方とか、そういう本人の意思確認が困難な状況の場合、どういう対応があるのでしょうか、お願いいたします。

篠崎政府参考人 御指摘の件でございますが、補償金の対象となる方の中には、痴呆などにより本人による申請が困難な方が少なからずいらっしゃることは承知をいたしております。このような方につきましては、民法の成年後見制度の活用などによりまして必要な手続をとっていただけるよう配慮してまいりたいと考えております。

西川(京)委員 ありがとうございました。

 それで、私も、これから一番本当に大事なのはまさにこれからのことだろうと思います。

 きょう私も午前中、そこの衆議院の下の会議室で、患者さんの代表の、ハンセン病訴訟全国原告団の代表の方お二人と、全国ハンセン病療養所入所者協議会の代表のお二人の方のお話を伺わせていただきました。改めて生のお声、お話を聞いてみると、本当に私たちが、ある意味では知らなかったという、その何も知らなかったという、差別をする罪はもちろんですが、何も知らなかったという罪もあるような気がいたします。私自身、東京の出身ですが、現実に身の回りにそういう問題をほとんど全く意識しないで育ってしまいまして、こちらの熊本に住むようになって初めて、自分の県に菊池恵楓園というものがあることでこの問題に興味を持ったわけでございますけれども、そういう中で、本当にこの患者さんたちの生のお声を聞かせていただきました。

 そういう中で、本当にこれから名誉の回復の問題と、まさにこれから現実に、では人間らしく、人間の回復だとおっしゃっていらっしゃいましたが、人間的な生活を行うための今後の状況をどうするのか、この問題が一番の課題だろうと思います。

 その中で、ある意味では、私は、こういう言い方はよくないのかなとは思いながらも、このらい予防法があるがために生活ができた、そういう患者さんの声もありました。らい予防法がなぜ今まで長い間廃止されなかったというのは、まさにその現実があったのだろうと思うのですね。これがなくなって、では果たして生活の保障はどうなるのだ、その不安があったがために、この法律がかくも長く続いたのだろうと思います。

 そういう中で、今回の議員立法の中では、当然、廃止した後もきちんと生活保障をしていきますよというあれが盛り込まれたわけでございますけれども、その中で一番の問題は、施設に入っていらっしゃらない方々の生活保障ということが、患者さんの伊藤さんという方からも、この問題が一番不安だというお話を伺いました。そういう意味で、退所者の方への給付金なりなんなり、そういうお考えは厚生省の方ではお考えになっていらっしゃるのでしょうか。お願いいたします。

篠崎政府参考人 小泉総理大臣談話の中にも掲げてございました福祉措置の一つでございますが、退所者の方々に対しての給与金をどのような形で新しく創設していくかということにつきましては、今後設けられます協議会の場などで、患者及び元患者さんの皆様方の御意見を聞きながら、その創設に向けて努力をしてまいりたいと思っております。

西川(京)委員 実は、これはある意味で、本当にこのらい予防法の撤廃ということに対する自己矛盾のようなところがあるわけですね。結局、本当に人間らしい生活をするには、当然、施設から出てきちんとした生活をしなければいけない。しかし、それには、現実に今となっては生活の糧がないというその中で、療養所の中にいればある意味では衣食住が足りて、さらに何がしか、八万三千幾らでしょうか、給付金があるという現実があるわけです。

 ですから、これはある意味で大変失礼な言い方かもしれませんが、患者さん一人当たり国の今使っているお金は、いろいろな施設から何から換算したら、お一人当たり一千万近くなるという数字もある意味で聞きました。そういう中で、本当に、入っていない方に対する国の政策というのもやはりある程度充実してあげるべき方向に行くと思いますので、ぜひ前向きに御検討していただけたらありがたいと思います。

 それから次に、退所者の、まあ給付金というのが、それが生活基金の創設というような形で出ておりますけれども、その辺についてのお考えは何か厚生省の方でお持ちですか。

篠崎政府参考人 先ほど申し上げましたのが退所者給与金(年金)の創設でございますが、その他といたしましては、具体的には先ほど申し上げました、今後皆さん方との協議の場の中で議論をさせていただくということを考えておりますが、今までの施策の中では社会復帰に対する支度金というような制度はございましたし、その件についても当然議論が今後されていくものだと思っております。

西川(京)委員 この福祉の問題に関して、私たち日本人という言い方は大きい言い方過ぎるかもしれませんが、この福祉というものを充実すればするほど、ある意味では福祉を受ける側の人間の自助努力をそぐという面はあると思います。しかし、それは、その立場にない人間のやはり見方であると思うのですね。そういう中で、国がどこまできちんと整備をしていくのか、そして、どこまでがやはりこれから本当に、本来一人の人間として自分で努力していかなければいけないのか。そういう兼ね合いというのが、この福祉行政の中で一番大切なことだと思います。そういうものの集約した形が、このらい予防法の中にも入っているような気がいたします。

 結局、国立療養所の中にいれば生活が保障されるし、あれだ。ましてや、もう御高齢の方々は、今のこの安定した生活がこのまま続けられればありがたい、そういう患者さんたちもたくさんいらっしゃる中で、片方では、退所して自分の生活をきちっとしたいけれども、それには体力もない。今までのいろいろな状況の中で、きちんとしたお仕事も見つけられない。そういう中で、私たちは本当に何の保障もないという現実、このあたりを今後厚生省の方でどう拾っていくか。大変厳しい問題だと思いますが、ぜひ前向きに御検討いただけたらありがたいなと思います。

 私の質問はここまでなんですけれども、ちょっとまだ時間があるようですので、二、三質問させていただきます。

 例えば資料館の整備というような要求も出ておりますが、今多磨全生園の方には高松宮の御努力による資料館がありますが、先ほどお聞きした患者さんの要求の中では、それとはまた違った意味の、国立のということなんでしょうか、その辺は私もちょっとよくわからないのですけれども、この資料館の充実整備ということ、お考えは持っていらっしゃいますか。

篠崎政府参考人 このハンセン病資料館の充実ということにつきましても、総理大臣談話の中でも触れられておりますし、また、かねてから入所者の方々の御希望でもございました。

 今は一つ、全生園の中に建物としてございますけれども、手狭になってきたというようなこともございますし、さらに今、今回のことを一つの契機としてさらに充実してほしいという御要望がございますので、その辺もあわせて、協議会の場で御意見を賜りながら、その充実強化に努めてまいりたいと考えております。

西川(京)委員 ありがとうございました。

 私は、ちょっと前に申し上げましたが、水俣病という病気の患者さん、そして会社の対応、そして一般市民の対応、これを何十年、割合に身近で見てまいりました。本当に複雑な、さまざまな思いが交錯した中での政治決着だったわけでございます。まさに人間は、その立場に置かれた人間でないとわからないという現実があります。しかしまた、行政としては、そうでない人たちも含めた全部の方々の生活の安定ということを考えなければいけない。そういう中で、この差別意識という問題は本当に深くて、長くて、本当に厳しいテーマだと思いますが、まさにこれから患者さんたちの戦いが始まるのかもしれないという気がいたしております。

 私たち自身まさに、もちろん行政も問われました、国会議員も問われましたけれども、ある意味では国民全体が問われたのだろうと思います。私は、マスコミも含めてこの問題に全く今までタッチしてこなかった、そして訴訟ということで初めて脚光を浴びた現実があると思いますので、私たち全員の、人間の問題としてやはり認識して、一緒に考えていく問題だという認識を持ちました。

 大変あれでございましたが、以上で質問を終わらせていただきます。

鈴木委員長 次に、江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。

 今回、小泉首相の大英断と、その陰にあって控訴断念を訴え続けられました坂口厚生労働大臣の人道、人権への熱意とにより、ハンセン病訴訟が控訴されず、全面解決に向けて、ハンセン病の患者、元患者の皆さん全員への補償を目的とした本補償法案が成立するまでに至ったことに対して、改めて敬意を表したいと思います。

 今回、長年とられてきました隔離政策により多くの患者が受けた苦痛と苦難に対し、深く反省し謝罪の意を表明するとした国会決議を受けて、本法案が与野党合意の上で提出されるに至ったことは、まことに喜ばしいことだと思います。本法案の前文でうたっておりますように、いやしがたい心身の傷跡の回復と今後の生活に資することを希求して、精神的苦痛を慰謝するとともに、名誉の回復及び福祉の増進を図り、あわせて死没者に対する追悼の意を表するため、この法律が制定されるわけでございます。

 ハンセン病の患者、元患者の方々が長年受けられてきた筆舌に尽くしがたい苦痛と苦難に報いるためにも、この法案制定の目的を実効性のあるものにすることが大変重要かと思います。そこで、今後の全面解決に向けた必要な施策も含めて、幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、患者の皆さんの名誉の回復のためには、真相究明と差別撤廃が重要でございます。

 五月二十九日のハンセン病問題に関する集中質疑で、私は、強制隔離の必要性と人権侵害の事実に対する厚生労働省の認識について質問させていただきました。その際、お答えとして、強制隔離については、判決では少なくとも六〇年以降その必要性がなかったとされる、厚生労働省も多剤併用療法が定着したと言われる一九八一年以降と年代認識の違いはあるにせよ、強制隔離は必要なかったと認められました。また、人権侵害についても、強制堕胎や強制断種などの優生手術が、昭和四十年代以降は適正に、本人の同意を得て行われてきたが、それ以前はいわゆる半強制的な優生手術が行われてきたと認められました。

 このように、強制隔離が必要なかったことや人権侵害の事実を認められていながら、なぜ九十年間にわたってそれが続けられ、改められることがなかったのか。改めて、現段階で厚生労働省としてはどのようにお考えなされているかをまずお聞きしたいと思います。

篠崎政府参考人 施設入所施策の転換のおくれなど、私ども厚生労働行政としても反省すべき点があることは率直に認めなければならないと考えております。しかしながら、なぜ九十年間にわたってそれが続けられたかということでございますが、社会一般のハンセン病に対する恐怖心などがなお深刻であり、らい予防法の改正について社会的基盤が成熟しているとは言えない状況にあったために、このように見直しに至らなかったものと考えております。

 いずれにいたしましても、今後、ハンセン病問題の解決のために、この問題の歴史を集大成することといたしておりまして、さまざまな点について改めて検証してまいりたいと考えております。

坂口国務大臣 今、局長からも意見がありましたけれども、ハンセン病だけに限ったわけではありませんが、やはり何らかの病気を持った人、その人に対して、その病気が治っている、治っていないということを一つの基準にして、隔離する、隔離しないということを強制的にするということは問題があるだろう。急性の伝染病で隔離をしなければならないということはこれはあるでしょう。しかし、それ以外の場合には、たとえその病気が治っていなかったとしても、隔離政策を続けたということには問題があったというふうに私は思っております。

 したがいまして、にもかかわらずそれがなぜ続いてきたかというのには大きな疑問がつきまとうわけでございますが、今、答弁にもありましたように、やはり社会全体にそうしたことをはねのけていく力が生まれてこなかった。それは政治の世界にも、行政の世界にも、そしてそれを担当する医療の世界にも、そうした問題が生まれてこなかった。それは一体なぜなのか、そこを検証しなければならないのだろうというふうに思います。

 一生懸命治療をしていた、一生懸命慰問をしていた、それでその皆さんに一生懸命お世話をしていた、そういうふうに思っていたけれども、よく、後で気がついてみたら、それは加害者の側に回っていたというその事実をお互いに認めなければならない。そこをこれからよく検証をしていかなければならないというふうに思っております。ただ、厚生省なり政府の中だけで検証するということだけでなくて、やはり第三者の立場の皆さんにもお入りをいただいて、あるいは、むしろそこが中心になっていただいて、そして我々のことも含めて検証をしてもらわなければならない、そう思っている次第でございます。

江田委員 ありがとうございます。

 それにかかわる質問でございますが、厚生労働省では、この隔離政策がなぜ九十年も続いたのか、患者さんに対する人権侵害の実態も含めて、歴史的な検証を行う検証機関の設置を決められたと聞いております。このような悲惨な歴史を二度と繰り返さないために、また患者、元患者の皆さんの名誉回復のためにも、徹底した歴史検証が必要と考えますが、この検証機関というのはどのようなメンバーで、どのような検討項目で、またどのように進められていこうとしているのか、これについてお伺いできればと思います。

坂口国務大臣 決めたというふうにここで申し上げれば一番いいんですけれども、まだ実はそこまで至っておりません。

 今決めようとしているわけでございますが、先ほど申しましたように、厚生労働省の中にそういう機関をつくって、そうして自分たちでそれを検討するのではいけないというふうに思っています。先ほど申しましたように、第三者に中心になっておやりをいただくというのがよろしいのであろうというふうに思っています。

 したがって、その中にどういうメンバーに入っていただくかにつきましても、その中には元患者であった皆さんにもお入りをいただかなければならないんでしょうし、あるいは弁護士の皆さん方にもお入りをいただかなければならないんでしょうし、あるいはまたマスコミ関係の皆さんにもお入りをいただくのが大事でしょうし、あるいはまた医療関係の人たちにも入っていただくのが大事でしょうし、政治、行政に携わる人間もその中に入ることが大事でしょうし。

 そうしたことを、どういうふうなメンバーで、どういうふうにしていくかも含めて、これはそれを取り仕切ってきた厚生労働省が決めるというよりも、どこにお願いをするかにもよりますけれども、どこかにお願いをして、そうしてそのお願いをしたところでひとつしっかりと決めていただくということが大事ではないかというふうに思っている次第でございまして、そうしたことを今進めようとしているやさきでございまして、それ以上のことをちょっとここできょう申し上げることができないのは大変残念でございますけれども、そういう現状にございます。

江田委員 たびたび、直接、厚生労働大臣みずからお答えいただいておりますので、次の質問は、私の考えとして申し上げさせていただきます。

 この真相究明と差別撤廃に関することとして、ハンセン病は、よく皆さんも御存じのように、医学的にもインフルエンザ、チフスといった伝染病に比べてはるかに伝染力が弱くて、遺伝もしない。しかし、この病気ほど偏見を持たれて差別された病気はなかった。人権侵害も甚だしいものがあるわけでございます。なぜこの病気だけが偏見を持たれて差別されてきたか、このことについて、最近、厚生労働大臣が本質に迫る話をされておりました。これはなるほどなと私思いましたので、皆さんに御紹介しておきます。

 大臣いわく、これは明治からの国家主義、民族主義、すなわち大和民族の血を汚すものは排除すべきであり、ハンセン病はその最たるものとして、これを一掃するために隔離されたものではないか。戦後の基本的人権を尊重する新しい日本国憲法下でも、当時の吉田内閣は、一九五三年、らい予防法を制定して、隔離政策は九六年まで続きました。こうしたことが続いた背景には、戦後なくなったとされる国家主義とか民族主義とか、そういうものがいまだに人々の心に残って、これに対して人々が鈍感になっていたのではないか。これが、先ほど大臣が言われました、社会もその力を失っていたということではないかなとも思います。

 この問題の背景にあるこうした国家主義、民族主義に決着をつけて、ハンセン病に対するいわれなき偏見と差別をなくしていかなければ、本当の意味で今回のハンセン病問題が示している解決にはならないということを大臣はおっしゃられておったのを読みました。まさにハンセン病問題の本質をついた話であるかと思います。

 今後、ハンセン病の患者、元患者さんに対する偏見や差別を社会から取り除いて、本当の意味で皆さんの名誉が回復されて、患者家族の皆さんが社会で安心して堂々と生きていくためには、このような本質に迫る議論を、国民的な議題として、国民全体の中で行わなければならないのではないか。一人一人の反省というか、そういう考えが問われているのではないかと私は思います。

 最後の質問になるかもしれませんけれども、次の質問に移らせていただきます。これは、遺族の方への補償ということでお聞きをしたいわけでございます。

 本法案では遺族は補償されない、すなわち、生存している患者、元患者の皆さんだけでございます。現段階では、遺族に対して法律で一律に補償することの難しさがあることは、十分私も理解はしております。しかし、今までに差別と人権侵害に苦しんで亡くなっていった方がたくさんいらっしゃいます。そして、その患者さんを支えた遺族が生きていらっしゃいます。

 私の友人の中に、御主人が発病する前に結婚して、子供さんがいた方がいらっしゃいます。私は、きのうその方にお会いしてきました。御主人がハンセン病になったからといって別れることもせず、けなげにも御主人が亡くなるまで療養所のそばで暮らして御主人を激励し続けて、苦楽をともにしてこられた方でございます。患者と全く同様に差別を受けて、生活に苦しみながらじっと耐えてこられたわけでございます。あす食べるものがないような生活でも、意地でも生活保護は受けず、働いて働いて子供も育ててこられました。

 お手紙の中にこうありました。

 子供も患者の子といじめられ、そのために家を何度もかわりました。その日暮らしで年金も十分に納められず、普通の人の三分の一しかもらっていません。内職をして暮らしています。もう七十近くになれば仕事もあろうはずもございませんし、できません。今でも主人のことが近所に知られないかと不安の日々を送っております。私も皆と同じ人間です。人間らしい暮らしをしたいのです。こんなつらい思いをして暮らしている遺族には何の補償も救済の手もないものでしょうか。死んでいった主人が余りにもふびんでなりません。だれに話すべくもなく心を痛めています。

 そう私への手紙には書かれておりました。その方とお会いしてきました。その苦しみというのは、患者本人と全く同じものでございました。

 このような遺族に対して、何らかの補償や生活支援は本法案以外にないものなのか、そこをお聞きしたいと思うのです。

 また、この法案の中にある、死没者に対する追悼の意をあらわすための措置というのは、具体的にどういうことが考えられるのか。また、名誉回復及び福祉の増進を図るには、遺族に対してはそのようなことはなされないのか。ここをあわせて伺いたいと思います。よろしくお願いします。

坂口国務大臣 今回おつくりいただきましたのは、国会でおつくりをいただいた法案でございますし、今回おつくりいただいたのは、現在生存をしておみえになります患者さん、元患者さんの皆さん方、その皆さん方に対する、今までの、いろいろ苦難あるいはまた苦痛をお与えしてきた、それに対する気持ちを込めてつくられたものというふうに思っております。

 しかし、今御指摘になりましたように、それを支えておみえになりました御家族の皆さん方もおみえになりますし、差別、偏見という意味では、御本人と同様にその厳しい差別、偏見の中で生活を送っておみえになった皆さんもお見えになることは事実でございます。そうした皆さんのことを一体どうしていくか、そうしたこともこれから考えていかなければならないことの一つだというふうに思います。

 いわゆる名誉回復、福祉問題と一口に申しますけれども、その内容はさまざまであろうというふうに思いますし、これからもそうしたいろいろな問題が出てくるのであろうというふうに思いますが、そこを整理させていただきながら、これから患者、元患者の皆さん方の代表とお話をさせていただきながら、そうしたことも、御家族の問題もどのようにしていくか、やはり考えの範囲の中に入れて考えていかなければならないと思っているところでございます。

江田委員 大臣、ありがとうございます。考えの中に入れていくということで、大変ありがたいと思います。先ほど言いました徹底検証の機関の中で、できれば議題にしていただいて、そして考えを進めていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 時間がなくなってまいりましたので、これはもう質問ではございません。

 先ほど西川先生の方からも言っていらっしゃいましたが、退所者の生活に関しては非常に厳しいものがあるというのは、先ほど原告団の代表の方々、また全療協の代表の方からお伺いして、身に迫るものがございます。

 入所者については、患者給付金、月額八万四千円が払われております。でも、退所者にはありません。退所準備等資金が百万円上限である、また社会生活訓練支援として百五十万が上限としてある、二百五十万を上限として退所されていく。しかし、年金は、その方が障害者として認定できれば障害者年金の分だけは払われるかと思いますが、ほとんど外傷等がない場合においては、年間二十万、三十万ぐらいしかもらわれていないということも、私、回る中で聞きました。

 ですから、らい予防法が廃止されて五年になりますけれども、四千四百人の入所者のうち、退所して利用した人はわずか十七人でございます。これはやはり、退所して独立して生活することが困難なことを物語っているわけでございまして、人権侵害とか差別に苦しんだ方々が自由に今後の生活を選択できるようにしなければ、本当の意味での解決にはつながらないと思うのですね。

 療養所にいなければ生活できないから療養所にいるという状況は、ある意味ではやはり問題だと思います。そういう意味でも、退所者が安心して生活できるように、退所者に対する新たな給付金制度でしょうか、そういうものを、先ほどの遺族の方々と同様に、しっかり厚生省の方でも患者の皆様と協議をされながら詰めていっていただきたいということを最後にお願いいたしまして、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小池百合子君。

小池委員 保守党の小池百合子でございます。

 今回の熊本におきます判決、これを踏まえまして、厚生大臣そして小泉総理の大変な御英断で、そして本日こうやって立法の上審議をしているわけでございますが、私も政策責任者会議のメンバーといたしましてこの立法にかかわらせていただきました。

 こういった法律に前文をつけるというのは極めて異例ではございますけれども、法律用語となりますと、どうしても無機質になってしまうということで、この前文のところで、私どもの思い、これは国会の思いと言って結構だと思いますけれども、このところに我々の、国会の不作為を問われた私どもの思いをここに書かせていただいたということでございます。

 そして本日は、この法律が成立した後に、政府としてどのようなことをしっかりとやっていただけるのかどうか。行間を埋める意味で御答弁をいただきたいと考えているところでございます。

 まず本日も、委員長の名のもとに、原告団、そして全療協の皆様方からもヒアリングをさせていただきました。その中で、やはり一番心に訴えるというか、やはりそのお立場の方々が今一番欲しておられるのは人間回復であるという、この点でございました。

 中では、例えば患者さん、元患者さんのお子さんたちがちょうど結婚の時期を迎えておられる。御自分もそうだったけれども、差別、偏見によってなかなか結婚ができない。そして、次の世代の方が、また同じようにこの病気のために差別を受けて、そして結婚もできないということでは大変悲しいという旨をおっしゃっていたわけでございます。

 第九条にこの名誉回復措置のことが記されているわけでございますけれども、これも私どももいろいろな思いを込めての九条ということになっているわけでございますが、では、一体どのような形で、どういう具体的なことをこれから国としてお進めいただけるのか。名誉回復、先ほどの差別、偏見といったことを取り除くためにも、どのような方法を考えておられるのか、伺いたいと思います。

坂口国務大臣 名誉回復ということが、今回の中で、ほかにも大事な問題はたくさんありますけれども、その中で一番大事なのはやはり名誉回復、この差別、偏見をなくすることだというふうに私は思っております。しかし、これがまた一番難しい仕事だというふうにも思っています。

 先日もここでお答えをいたしましたように、人間というのは、一度そういう考え方を持ってしまいますと、人間の頭というのは非常に保守的にできておりまして、なかなかそれが変わらないというところがございます。したがいまして、そこを変えていくということは、かなり時間を要することだというふうに思います。繰り返し繰り返しこの問題に取り組んでいかないと、一度や二度、あるいは一時的にキャンペーンを張りましても、それだけで終わりになったのでは、この問題に決着をつけることはできないだろうというふうに私は思っております。

 私も、どういうことでこれを解決したらいいのか。先日来、ずっと頭を悩ませているわけでございますが、やはり特効薬的にこれを一つやればそれで解決がつくという方法はないのだろうというふうに思います。

 だから、一つは教育の問題で、小学校であれ中学校であれ、そうした教育の中にこれをどういうふうに取り入れていただくか。今も入れていただいているところもあるようでございますけれども、これからさらにどういうふうに取り組んでいただけるか。あるいはまた、医学教育の中でどう取り組んでいっていただけるようにするか。そうした問題が大事ではないかというふうに思いますし、そして、マスコミの皆さん方にもお願いをして、あらゆる機会を通じて、繰り返し繰り返し、やはりいろいろな場所にそうしたことを書いていただくということが大事ではないかというふうに思っております。

 そうした中で初めて、この問題は、紙をはがすように、一枚一枚なくなっていく問題ではないか。だから、積極的にそれをずっと持続して続けるということこそ、一番大事なことだと思っている次第でございます。

小池委員 ありがとうございました。

 教育の観点、これは非常に重要だと思います。また、即効性がないという点も御指摘がございましたけれども、やはりキャンペーンをしっかり張っていただいて、今こうやって立法ができ、そしてこの問題が社会的な問題として取り上げられている今だからこそ、鉄は熱いうちに打てではございませんけれども、集中的にやはりその点をやられることの方が効果的ではないかなというふうにも思うわけでございます。

 それから、立法の過程におきまして、第四条の請求の期限、ここが最終的に与野党間で残った論点であったわけでございますけれども、補償金の支給の請求を、「施行日から起算して五年以内に行わなければならない。」という法律案になりましたけれども、私どもは、最初二年ということを申し上げさせていただきました。

 対象者がある程度限られているという点。それから、今回の控訴を断念した最大の理由として、立法の不作為の問題もございますけれども、やはり対象者が高齢者であるという点。そういった意味で、余りのろのろとということよりも、スピーディーにこの問題を、全面解決という言葉にあるような解決の方法を図っていこうという思いで、二年であったわけですけれども、結局五年とさせていただいた。

 これは、ヒアリングの中でも、いろいろ請求というか補償金の支給の請求をされるのを、いわゆる申し出型にさせていただいたわけでございますけれども、この辺、対象者に対する呼びかけ、これはなかなか難しいものも実質的にあると思うのですね。もう余りさわってほしくないという方々もおられる。一体どのような形で対象者に呼びかけていかれるのか。この点、伺います。

桝屋副大臣 今、委員の方から、まさに第四条の請求の期限のお尋ねをいただきました。委員の方から、今回この補償金の支給等に関する法律案、この法律案をおまとめいただく与野党間の協議でありますとか、あるいは立法の趣旨でありますとか、趣旨をお話しいただきました。

 そうしたことを十分踏まえながら、今回の法律が成立した暁には、ハンセン病患者、元患者への補償金の支給に関する広報に最大限努めていかなければならない、このように考えさせていただいております。

 具体的には、入所者に対しましては、各療養所を通じまして周知を行う。そして、既に退所しておられる方もあるわけでありますから、新聞等のマスメディアあるいは地方自治体の広報誌などを通じまして、周知徹底を図っていきたいというふうに考えております。

 また、あわせまして、公開講座の開催など、名誉回復のための啓発事業を積極的に行うことによりまして、補償金を請求しやすい環境づくりということにも努めていかなければならぬというふうに感じておる次第でございます。最善を尽くしてまいりたい、このように決意させていただいております。

小池委員 どうぞ、それぞれ患者さん、元患者さんの置かれた環境等々を理解してさしあげて、そのあたりでそっとしておいてほしいという方々まで掘り起こすということは、かえってマイナスの部分もあろうかと思います。どうぞ、細心の注意の上で、この点を履行していただきたいと思います。

 先ほど私、名誉回復のところで第九条と申し上げましたけれども、第十一条の間違いでございました。

 それから、三点目にお伺いしたいのは、前回のこのハンセン病に関する質疑の際に、検証をすべきではないかということを提言させていただきました。この前の御質問にもあったかと思いますが、私は、たまたまそのとき見たNHKの検証の番組も、結構古い年代にまでさかのぼって、だれがどの時点で何を言ったかということまで調べ上げて放送をされていたわけでございます。

 ですから、それぞれ、これは国会も不作為まで問われているわけでございますから、ある意味ではみんな同じ責めを負わざるを得ないとは思いますけれども、今後こういった問題を起こさないためにも、やはり正確な歴史的な検証は、ここで手を抜いてはいけないと私は思うわけでございます。

 その質問のすぐ後に、省内で委員会をおつくりになるというような新聞報道も見ているわけでございますけれども、どういった形で、いつごろまでに、何をなさるのか。ぜひとも、この歴史的検証という点を進めていただきたいという思いで伺っておりますので、御答弁の方をよろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 最初は省内に委員会をつくってという話もあったわけでございますが、いずれにいたしましても、省でずっと担当してきたことでございますし、やはりこの歴史的な検証をしますのは第三者にここはお願いをして、そしていろいろの角度から、いろいろの立場の皆さん方にもお入りをいただいて、お願いをすることの方がいいのではないかということに今なりつつございます。

 省内につくるといいますよりも、第三者を中心とした、できれば第三者機関にお願いをしてというふうに申し上げた方がいいのかもしれません。そしてマスコミの皆さん方にもお入りをいただく、元患者の皆さん方にもお入りをいただくといったことにして、そのメンバーの選定等もそれはお任せをすることにして、もちろん、その中には厚生行政に携わってまいりました者もそれは加えていただくことになるんだろうというふうに思いますけれども、そうした中でさまざまな角度から検証をしていただくといった方が、より正確にこの検証をしていただけるのではないかというふうに思っている次第でございます。

 そうした中で、一日も早くこの問題の解決をし、そして次の一歩へ進めていきたいと思っておるところでございます。

小池委員 省内ですと、言ってみれば、先輩方が何を言い、何をしてきたかということをある意味で暴くというようなことになってしまう、それに対してちゅうちょをされるという意味もわからないでもないですけれども、第三者機関でも私は結構だと思います、なされるべきことがなされるのならば。

 ですから、だれが悪いという犯人捜しという意味ではなくて、やはり歴史的なこれまでのそれぞれの、単に厚生省だけでなくて、その時代、日本を取り巻いた環境ということもございましょうし、そういった大きい目できっちりと一つ一つとらえていくということが、このような問題を起こさない最大のストッパーになるというふうに思うわけでございます。既にもうマスコミでもそうやってやっておられるわけですから、それをみずからができないというのは大変、これはまた不作為の行動ということになってしまうかと思います。

 ぜひ、この歴史的な検証については、しつこいようでございますけれども、しっかりとやっていただくことも、患者、元患者の方々に対する一つの大きな償いにもなるのではないかというふうに思うところでございます。

 さて、与野党、全党でこの法律をつくったわけでございますけれども、最後に、坂口大臣に伺わせていただきたいと思います。

 今回は、最終的に、やはり政治の力というのが大きいということを知らしめてくれた判断であったと思います。また、言ってみれば、先ほどの外に第三者機関としてつくるというのも、その一つのあらわれだと思うのですけれども、役所というのはやはり、ずっとこれまでやってきたことをいきなり変えるというのが、なかなかできないところなんだろうというふうに思っております。ですから、厚生省の皆様方も労働省の方々も、最後は政治にというお気持ちがどこかであったのではないかなということを勝手に思うわけでございます。

 最後に、大臣に、今回こうやって、おくればせながら立法措置がこのようにできるところまで来た、そしてそれに対して政治家として関与なさったこと、御自身の心の揺れなどを、今振り返ってみてどのようにお感じになっておられるのか、最後に伺わせていただきたいと思います。

坂口国務大臣 今回、国会におきまして各党の皆さん方に立派な法律をつくっていただいたことに、私は感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 私は、この問題、熊本地裁の判決が五月十一日にあるということを知りましたのは、ことしの一月でございました。それまでは私、全然存じませんでした。ことしの一月に、元厚生省の局長でありました大谷さんという方、今このハンセンのこと、らい予防法の廃止に一生懸命になられた方でございますが、この方が私の部屋に来ていただきまして、そして、坂口さん、五月十一日にはこの判決がある、そのときに多分国は負けるでしょう、こうおっしゃいました。ほかの人は全部、そんな負けるわけない、こう言っておりましたけれども、その人だけはそうおっしゃいました。

 それで、そのときのために坂口さん、いろいろと勉強してほしいと言って、何冊かの本を私の机の上に置いて帰ってくれました。私は以来、この一月から、大谷さんが置いていってくれましたその本を中心にしまして、折に触れ実は勉強をしてきたわけであります。KSDをやっておりましたときにも、一方で、その本を見ながらやっていたわけでございます。

 それで、だんだんと日は近づいてまいりますし、これはなかなかえらいことだな、これは大変なことだなと。そのときに思いましたのは、いずれにしても、この判決の結果がどうであれ、この際に何とかしてひとつ、この今まで続いてきました差別、偏見というものをこの際もうこれで決着をつけるような方法はないだろうか、そういうふうに一生懸命思っていたわけでございます。しかし、なかなか具体化をするいい方法が見つからずに判決を迎えたわけでございます。

 判決を迎えて、いろいろの意見をお聞きして、やはり控訴をしないということでなければそこへ到達しないということがはっきりしたものでございますから、私はその決断を総理に申し上げた、そういうことでございます。今日を迎えて、本当にここまでようやく来たなという気持ちでございますが、しかし、これからの道のりの方がまだいかに大きいかということを、今実感として持っている次第でございます。

小池委員 ハンセンの患者さんたちは結局のところ、ある時期からは意味なく隔離をされてしまったということで、人権問題ということになるわけでございますが、実は私、きのう、例の池田小学校の、亡くなった、殺されたお子さん方のお葬式にも行ってまいりました。ある意味でこれはまた違う、被害者の人権をどうやって守るかというのは、これまでの犯人の病歴等々を見ますと、これはまた厚生労働委員会の大きなマターであるなというふうに感じているところでございます。

 今回は、こうやって意味なく隔離されてしまった方々に対しての法律でございましたけれども、これからも、そういった意味で、またこの大きな問題を抱えていかなければならないというふうに感じ取っているわけでございます。

 以上をもちまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内博史と申します。

 発言の前に、まず、国会に身を置く者の一人として、これまで国の誤った強制隔離政策を許してきた国会の責任というものを重く受けとめ、筆舌に尽くしがたい人権侵害を受けてこられたすべてのハンセン病の患者、元患者の皆様方及び隔離の壁の中で無念の死をお遂げになられた二万三千七百余名の療養所入所者の皆様方、そしてその家族、御親族に心より深くおわびを申し上げさせていただきたいと思います。

 また、坂口大臣におかれましては、熊本地裁の判決を受けまして、政府の控訴断念を総理に強く強く御進言をいただいたこと、そして原告団の代表の方々に対して明確に謝罪をされたということに関しては、心よりの称賛、敬意の気持ちをあらわさせていただきたいというふうに思います。

 私は、超党派の議員で組織をしておりますハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会事務局長を務めさせていただいてまいりました。微力ではございますけれども、長年にわたるこの苛烈な人権侵害であるハンセン病問題の全面的な、あるいは最終解決に向けた政治的なサポートというものに取り組んでいるところでございます。

 この補償法の成立は、ハンセン病問題の最終解決へ向けてのあくまでもスタートである、これからが始まりだという見地から、本日は、大臣の御所見を承りたいというふうに思っております。どうかよろしくお願いを申し上げます。

 まず、この補償法案がなぜ議員立法という形で提出をされたのか。

 五月二十五日付で出されております総理の談話の中では、「全国の患者・元患者全員を対象とした新たな補償を立法措置により講じる」というふうな談話が発表されております。これを踏まえるのであるならば、補償法案は、当然総理の責任において内閣提出ということになるのが筋だと私は考えますが、結果として玉虫色で決着をした国会決議に関して、かたくなに立法不作為の責任を盛り込むことを拒み続けた与党のリードでこの補償法案の作成が進んだということについて、釈然としない思いを私は持っております。

 聞くところによりますと、この総理談話を受けて、坂口大臣が会見の席で、この補償法案は議員立法でやるんだというようなことをお話しになられたところから、この補償法案が議員立法で提出をされるということが進んでいったという経緯を聞かされております。

 大臣に、なぜ議員立法でなければならなかったのか、あるいは、なぜ会見の席でこれは議員立法でやるんだというような御発言をされたのか、内閣の責任が問われているのだから内閣提出でやるというふうに、なぜ御自分の責任でおやりにならなかったのかということに関して、まず一言御所見を賜りたいと思います。

坂口国務大臣 最初、これは内閣でやらなければならない法律だというふうに思っていたことは間違いございません。そうこういたしておりますうちに、これはなかなか内閣でやっておりますと時間がかかるし、この国会中になかなかできないということがあってはいけないから、議員立法の方が皆さんにも早くお話し合いをしていただいて早いではないかということになったように記憶しております。

 そして、議員立法でやるというお話をいただいたものでございますから、私は、記者会見におきましても議員立法でおやりをいただくようですということを申し上げたわけでございまして、私が言いましたからそうなったのではございませんで、そういうお話を伺ったものですから私が申し上げたわけでございます。

 国会の方で手がけた方がよかったというお話でございますが、その辺も、私は御意見は十分わかります。御指摘になりますことは十分に理解できるわけでございますが、ただ、それは今国会中に、我々がやります場合には、補償だけではなくて、いわゆる福祉の問題でありますとか名誉回復の問題でありますとか、そのほかのことも我々としては考えなければならないわけでございますので、我々の方でやるということになれば、ほかのことも検討をして一緒にということに多分なってきたであろうというふうに思います。

 そうしますと、だんだんおくれてきて今国会にはできないということになってくるものですから、とにかく議員立法でやるというふうに言っていただいたわけでございますので、補償の方だけは先行して議員立法でお願いを申し上げる。そうしてその後、これから福祉の問題や、それから差別、偏見、その他の名誉回復の問題もすべて含めまして、そうした問題でまた法律としてつくらなければならない問題は何なのか、そして、そうではなくて福祉の問題としてやっていくものは何なのか、選別をしながら、我々としてはやっていきたいというふうに思っている次第でございます。

川内委員 事情はよくわかりました。

 今大臣から、この補償法案以外に、福祉やあるいは名誉回復措置等についても省として全力を挙げて取り組んでいくという御決意が示されたように思いますが、まず、全国ハンセン病療養所入所者協議会、全療協から強い要請が出ている、身体の不自由な入所者の方々の介護等に十分に対応するために、看護婦の増員による職員の三交代勤務の実現に向けて早急な取り組みが必要というふうに考えますが、その点についての御所見はいかがでございましょう。

坂口国務大臣 この問題につきましても、私、多磨全生園にお邪魔をいたしましたときに、その中でもお聞かせをいただきました。そして、とりわけ不自由棟とおっしゃいましたか、不自由棟の皆さん方が大変お困りになっておるというお話もございまして、そうした問題もお聞きをしてまいっておりまして、担当のところでぜひともひとつ検討してもらいたい、検討しますということで持ち帰らせていただいているところでございます。

 多磨全生園だけではなくて、ほかのところにも恐らく同じようなことがあるのだろうというふうに思っておりますが、全体としてどういうふうにしたら一番皆さん方におこたえができるのか、これも考えていかなければならないことでございますので、今いろいろと検討を続けているところでございます。早く結論を出したいというふうに思っています。

川内委員 五月二十九日衆議院厚生労働委員会集中審議、五月三十一日参議院厚生労働委員会集中審議で、今の問題に関して厚生労働大臣は全く同じ答弁をしていらっしゃいます。今検討している、これから検討する。しかし、それから約十日たっているわけでありますが、事務方でどのような検討がされているか、事務方の方から答えてください。

河村政府参考人 ハンセン病療養所におきましては、従来より、入所者の方々の高齢化なり合併症の増加の実態にかんがみまして、障害の程度に応じました看護職員、介護職員の増員計画を立てて実施をしてきておるところでございます。現在、入所者のうちで約二千人の方々が不自由者棟に入居されておりまして、不自由者棟には看護婦約百七十人、介護員約千百人、合わせますと、二千人の入所者の方々に対しまして千三百人の看護、介護の方々が配置されて、夜間におきましては夜間当直制によって対応しておるところでございます。

 不自由者棟におきます夜間の対応につきましては、一方で三交代制看護を実施いたしております病棟との関係も含めまして、施設全体として、医療の必要性に応じた適切な看護、介護のあり方というものを十分検討させていただきたいというふうに思っております。

川内委員 今のは局長さんですか。

鈴木委員長 病院部長。

川内委員 病院部長さん。全く集中審議のときの答弁と一緒です。何ら変わっていない。忙しいのはわかりますけれども、そういう態度が結局、らい予防法の廃止もおくらせたし、おくれてしまったし、この隔離政策を必要なくなってからもずっと続けてきたということにつながるんじゃないですか、大げさな言い方のようですけれども。

 やるのか、やらないのか。全療協から強い要望が出ているというのは、十三の園から全部出ているということですよ。看護婦さんをふやしてくださいと。大変に皆さん高齢になられていて、だれも気づかれないうちにお亡くなりになる方もいらっしゃるわけですから。検討します、検討しますと十日前も同じことを言っていて、またきょうも同じことを言って、大臣、さっき同じことを言っていますよと言ったら、事務方も何か変えるのかなと思ったら相変わらず同じことをおっしゃる。一体どういうことなんですか。

 いつまでに、どういうふうに検討をして、どういう結論を出すのか。答えてください。

坂口国務大臣 急がれるお気持ちはわかりますけれども、これは予算の伴う話であります、人の話でありますから。ですから、これはふやしますよ、ちゃんとしますよと言えば、それはどこかで、予算編成をするなり来年度予算なり、ちゃんとしなければならない話になります。したがって、そう途中で変更するわけにはいかない話でありますから、それはひとつ御理解をいただかなければなりません。

 それからもう一つは、事務局に申しますと、全体として見れば職員の数は十分にある、こういうふうに言うわけです、入所しておみえになる方に対する職員としては。だけれどもそれは、各十三の療養所もございますし、そして、その中でも不自由棟、そうでない棟、普通の方のところもありますし、幾つにも分かれている。不自由棟の中で、ばらばらになっている。もうおみえにならない、亡くなられたりしてあいているところもあって、そしてすき間がたくさんできている。それを、広いところを一人で見るというのが見にくいような状況になったりもしているところがあるので、そこは何とかして、少しまとまってお願いできないかというような地域もあるようでございます。

 そのときには、しかし、せっかく住みなれたところをかわるのを嫌だというふうにおっしゃる皆さんもおみえになったりして、そこは皆さん方の御理解も得ないといけないといったようなこともあったりして、ここは自治会の皆さん方とよくお話をさせていただいて、そして、夜お困りになるような皆さん方のところを少しどこかに、不自由棟の中でもお集まりをいただいてというようなところで、そして、そこにはそのかわりに夜間の勤務をする人を、これは当直者ではなくて夜間にちゃんと勤務をする人をつけてといったようなことにしていくことが私は大事ではないか。その辺のところを早く詰めてくれということを今私は言っているわけでございます。

川内委員 今、るる大臣の方から御説明をいただきましたけれども、それであれば、検討をする、あるいは検討をこれからするんだとか検討をしているという言い方ではなくて、最大限に要望に沿うように早急に対処するという言い方に変えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 早急に対処するように頑張ります。

川内委員 それでは、全療協から出ている要望については、これはもう自治会最大の要望事項でありますから、今、静かな大臣が強い決意で、ちょっと大きな声でおっしゃられましたので、国立病院部長もぜひこれをテークノートしていただいて、早急に対処していただきたいというふうに思います。

 次に、もうあと五分しかございませんので、この補償法について一点確認をさせていただきたいと思います。

 在日の外国籍の元患者の方々に対する補償金の取り扱いについてはどのようになるのかということに関して、御確認をさせていただきたいと思います。

篠崎政府参考人 対象については、ほかの方々と全く同じでございます。

川内委員 よろしくお願いいたします。

 それから、隔離の壁の中で無念の死を遂げられた御遺骨ですね、いまだ療養所の納骨堂にお眠りになられていらっしゃるわけでありますが、その名誉回復の第一歩として、この御遺骨をふるさとへ帰すという措置が絶対に必要であるというふうに恐らくすべての皆さんがお考えになっていらっしゃると思いますけれども、今後どのようにお取り組みになられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

篠崎政府参考人 現在、国立療養所の納骨堂におきましては、およそ二万柱のみたまが祭られていると承知をいたしております。

 療養所において亡くなられ、納骨された方々のみたまを慰霊するための方策について、具体的にどういうものがあるか、患者、元患者の方々と協議しつつ、十分検討してまいりたいと考えております。

川内委員 もう一点。

 各県、地方公共団体も、かつては無らい県運動という形で、強制隔離政策の推進というか、その一翼というか、責任を当然とっていただかなければならない部分があると思うんですけれども、それぞれの自治体では、県知事さんが独自で談話を出されたり、あるいは療養所を訪問されたり、患者、元患者の皆さんにおわびをされたり、それぞれ問題意識を持っていらっしゃる知事さんたちはそのような動きをしていらっしゃるようであります。

 やはり、ハンセン病問題というのは、すべての国民の皆さんに私はその歴史を語り継いでいかなければならないというふうに考えますので、各地方公共団体の首長あるいは議会の議長に対して、反省あるいは謝罪の声明なり決議なり、そういう取り組みというのが、当然、国だけでそれをやるのではなくて、地方公共団体レベルでもそういう運動というものを広げていかなければならないというふうに思うんですけれども、今後、国として、地方公共団体に対してどのような指導あるいは支援をされるおつもりなのかを、最後にお聞きをさせていただきたいと思います。

坂口国務大臣 今までから都道府県や市町村との話し合いの場はあったようでございますが、それは、特に療養所がありましたところを中心にしてあった。あるいはまた、各都道府県や市町村とは、患者さんあるいはまた元患者の皆さん方が出たときにそれをどうするかといったようなことについての話し合いであって、これから、今問題になっておりますように、今までのことを反省をし、そして、これをどうしていくかということについての話し合いというのはまだなされていないわけでございますので、これから各都道府県の関係者、その代表者の皆さん方をひとつ集めてと申しますか、集まってもらって、そして国もそこに参加をして、これからこの問題をどういうふうに取り組んでいくかといったことを一つ一つ丁寧にやりながら、ひとつ話し合いを詰めていきたいと思っております。

川内委員 大臣、ありがとうございました。感謝します。

 終わります。

鈴木委員長 次に、家西悟君。

 家西君、お座りになったままで。

家西委員 まず冒頭、せんだって起きました大阪府池田小学校の事件においておけがをされた方々、またその御家族、またお亡くなりになられた方々に対して、お悔やみを申し上げたいと思います。

 それとあわせて、もう既に厚生労働省としてもいろいろ派遣をされているみたいですけれども、全力を挙げてこの問題、心のケア、子供たちの問題、しっかりと支えていただきますよう心よりお願い申し上げまして、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず冒頭、一九六〇年、WHOが隔離政策を否定し外来診療を提言したにもかからわず、国は患者の管理を続けてきたことについて、なぜWHOの勧告を無視し続けたのかについて、理由をお尋ねしたいと思います。

坂口国務大臣 こうしたところを歴史的に検証しなければならないんだろうというふうに思います。

 先般も申し上げましたが、日本の国内におきます国際らい医学会なども含まれて、そしてそこでもいろいろのことが議論をされた。しかし、その結果が、そこで、この日本の行政あるいは医療の場にそれが生かされなかった。そうしたことも含めて検証をしなければならぬ。WHOでも決定をされている、そうしたことがなぜ素通りしてしまったのかといったようなことを含めて検証をしなければならないというふうに思っている次第でございます。

家西委員 それについて、私は、立法府にも立法不作為の責任があると私自身は考えています。そして、一九五三年の新法制定以降、国会としてやるべきことは多くあったと思いますが、何もできないまま今日まで至ったわけですけれども、そこで今、私たち、また厚生労働省としておやりになることは、一つはやはり情報の公開ではないのか。

 そして、先ほど来、坂口厚生労働大臣の方から前向きの御答弁もいただいているわけですけれども、そして総理の談話の中にもあります、過去の歴史に目を向けてというようなこともしっかり言われているわけですから、ぜひとも、ハンセン病に関しての資料、そういったものをお探しになるおつもりはありませんでしょうか。大臣にあわせてお伺いいたします。

坂口国務大臣 厚生省にありますハンセンにかかわります資料は、裁判にもかなりたくさん提出をいたしておりますし、今後いろいろのところで検証されると思いますし、それは情報公開としてすべて公開をしたいというふうに思っております。

 ただ、個人のプライバシーにかかわりますものをどうするかという問題は残るだろうというふうに思いますが、エイズの場合と違いまして、このハンセンの場合には、企業とかそうしたところにかかわるものは一切ございません。患者さんとの対の問題だけでございますので、そうした問題は、皆さん方からの、皆さん方と申しますか、その検証する場ができましたときに、そこから御依頼をいただきましたら、そこに提出をして、皆さん方に公開をしたいというふうに考えております。

家西委員 では、あわせてお伺いします。

 検証する場合に、そのような要請があったというときにはというふうに言われますけれども、どういった資料があるのか、どういったものが残されているのかということについて、そのファイルなり、そういったものがあるということも含めて公開していただけるんでしょうか。まずそれがない限り、何があるのか、何がどうなのかというのがわかりません。その点については、大臣、どうなんでしょう。

坂口国務大臣 それはお知らせできると思います。どういったものが厚生省にはあるのかということは、それは目次としてお出しをすることができると思います。

家西委員 ぜひともそれは目次としてお出しいただきたい。そうしないと、また漏れたような話になってきてもいけません。

 薬害エイズの場合でも同じです。これ以上はないというふうに厚生省はおっしゃいましたけれども、検察側の家宅捜索によってテープが出てくるとか、そういったようなことがあって、そのときに申し上げたときには、いかように言われても仕方がないという事務方の答弁がありました。そういったことのないようにお願い申し上げたいと思います。

 続きまして、協議機関の設置をされるということについても、先ほど来各委員からも御指摘あったと思いますけれども、そしてその中で、第三者機関を設けてというふうな大臣の方からの具体的な御提言もありましたけれども、その中には当然患者さんやらも入れるというふうに言われましたけれども、この機関は、これは大臣のもとに置かれるんですか、厚生労働大臣のもとに置かれてやられるんですね。総理大臣のもとではなくて、厚生労働大臣のもとに置かれて、その協議機関は行われるということと認識してよろしいんでしょうか。

坂口国務大臣 最終的に決めているわけじゃございませんが、厚生労働大臣のもとにということにしたいというふうに私は思っております。

家西委員 それでしたら、ぜひともそのようにお願いしたいと思います。

 本来ならば、私は、内閣総理大臣があそこまで発言されている以上は、総理のもとに置いてもいいぐらいではないかと思いますけれども、大臣の方がそのようにお答えいただいている以上、そのようにするのが一つなのかなというふうにも思いますので、ぜひともよろしくお願い申し上げます。

 それと、この協議機関はいつごろ設置されるんでしょうか。先ほど来出ていますけれども、具体的にどのような内容についても含めて協議をしていかれるのか、お答えいただければと思います。いつごろ設置されて、どういったものを含めておやりになるのかを御答弁いただければと思います。

坂口国務大臣 申しわけありませんが、きょうはちょっと日時までここで申し上げるほど詰まっていないものですから、国会が間もなく終わりますが、その終わりました直後に行動開始をすぐいたしますから、そんなにお待ちいただかなくてもいい時間に決定をしたいと思います。

家西委員 ぜひとも間をあけずにおやりいただければと思います。これは間があくと非常におかしな話にもなりかねないし、世論的にも忘れ去られていく、時間がたてばそれだけそういったものは過ぎ去っていってしまうということも含めて、やはり今、小池百合子議員も先ほど来おっしゃいましたけれども、鉄は熱いうちに打て、このことは重要ではないかというふうに思いますし、関心が高い間にやることが名誉回復にもつながる一歩ではないかというふうにも思います。

 そして、私自身、九十年間に及ぶハンセン、らい予防法、そういったものについて行われてきた差別、偏見というものについて、これを払拭する作業というものは、膨大な時間、また膨大な費用を費やすものだと思います。安易にできるような話では決してないと私は思います。それだけ多くの問題をはらんでいる、また大きな問題であったということだと思います。

 そういったことを含めて、どうぞ、大臣の方に何かその点について御所見がありましたら、御決意でも結構です、お答えいただければと思います。

桝屋副大臣 今、検証機関についてお尋ねをいただきました。私、副大臣でここでお仕えをしておりますが、先ほどから大臣は、それこそ精いっぱいの答弁をしておりまして、どうやってお支えをするのか、私、副大臣として悩んでおるのでありますが、検証機関については、できるだけ早くというふうに申し上げました。

 それから、今委員の方から、これを検証するということは大変に労力が要る、期間と、場合によってはお金もという御指摘をいただきました。多分、委員は、HIVの事例も念頭に入れておっしゃっておられると思います。まさに委員の御指摘のとおりでありまして、二度と再びこういうことがないように検証するわけでありますから、相当これは時間もかかるのではないか。ただ、これを検証する、そして発表する、その過程をまた国民の皆さんにぜひ御理解をいただかなければならないということもあわせて今考えておる次第でございます。

家西委員 そこで出た結果については、ぜひとも、厚生労働省としてもしっかりと受けとめていただきたいし、ただ単に、そういう結論が出ましたとかそういうような話では終わらせないでいただきたい。そこで出た結論においては、しっかりと受けとめて、今後の施策に反映するということをお誓いいただければと思います。

 次に、恒久対策についてお伺いしたいと思います。

 今後の退所者の給与金、年金について、厚生労働省としてどのようにお考えなのでしょうか。それとあわせて、今回、法が決まれば、この年金の支給、そういったものについてのプライバシーについてどうなんでしょう。例えば薬害エイズのように友愛財団を使用するとか、そういったプライバシーに対しての配慮というものは絶対に私は必要だと思っていますけれども、その点についてどういうような措置をとっていこうとされているのか。もし具体的に決まっているようでしたら、お聞かせいただければと思います。

桝屋副大臣 退所者給与金、いわゆる年金でありますが、これも先ほどから御答弁を申し上げておりますように、総理大臣談話にありました、早急に検討を進めるという旨が盛り込まれたわけであります。こうしたことを踏まえまして、何よりも患者、元患者の方々の御意見を伺いながら、さらには今委員から御指摘のありましたプライバシーの保護ということも念頭に置いて、具体的な内容について検討を鋭意進めてまいりたい、このように考えております。

家西委員 今回の法案では、あくまでもこの法律が施行された以降、その時点で生きておいでの方のみしか対象とされていません。私は、やはり亡くなられていかれた方々について、また御遺族に対しても何らかの措置を講ずるべきではないかというふうにも思います。

 それとあわせて、先ほど来、川内議員からも出ました御遺骨の問題、ふるさとへ帰さなきゃいけないことを御決意いただいたわけですけれども、それとあわせて、中絶された、そして標本、ホルマリン漬けにされておかれた中絶された子供さん、そういった人たちに対して手厚く私は供養すべきだと思います。

 そして、この御遺骨、そういった子供さんの御遺骨はどうなっているのかというものも調査をすべきじゃないのでしょうか。行方不明になっているとか、もう時間がたち過ぎていてわからないとかいうふうに終わらすのではなく、私はある人からこういう話も聞きました、そういったものを、らい予防法施行後かそれ以前に、不十分な管理のもとだめになったものについては火葬したり、また園の片隅に埋めたであろうというようなお話も聞いています。こういったものを再度調査されて、手厚く供養されていくおつもりはございませんでしょうか。

坂口国務大臣 九十年に及ぶ歴史の中でございますから、さまざまなことがあったであろうというふうに思います。そして、いわゆる堕胎といったことが行われたことも事実でございますし、その結果がどういう状況であったかということが完全に明るみに出ていない部分もあることも事実でございます。

 これから皆さん方の療養所における生活を明るいものにしていく中で、そうした過去の問題につきましても整理をし、そして今までの問題について、まとめて考えなければならない問題はもう一度またそれを見直していくことが大事だろうというふうに思います。その中の一つの問題ではないかというふうに私も考えております一つでございます。

家西委員 ぜひとも、そういうものを捜査されるなりしていただきたい。調査をして、そして手厚く供養をしていただきますよう心よりお願い申し上げたい。私も、一人の父親として、そういうところに非常に心を痛める部分があります。どうぞ、そこは御理解いただいて、徹底的に調査をいただきますよう心よりお願い申し上げたい。

 そして、もう一点。

 ハンセン療養所の患者、元患者さんたちにC型肝炎の割合が三割というような報道があります。注射針の使い回し、またメスなどの使い回しによって、不衛生な医療行為が原因でということで、高いところでは六割というようなことがありますけれども、これについて実態調査をされるおつもりはありませんでしょうか。御答弁いただければと思います。

坂口国務大臣 現在既に寄せられております療養所からのデータを拝見いたしましても、今御指摘になりましたように、非常に高いところは六割近く、低いところでも二〇%程度、そのぐらいな感染率があるようでございます。

 これらのデータが、その中で全員についてお調べになったものなのか、それとも、それぞれその一部の人たちをお調べになったものなのか、そうしたこともよく検討をさせていただいて、今後、もちろん皆さん方の健康診断も行わなければならないというふうに思いますから、その健康診断にあわせまして、この肝炎の問題も取り上げていかなければならないというふうに思っているところでございます。

家西委員 これが最後の質問になると思いますけれども、私自身、C型肝炎の問題は非常に問題だと思います。隔離されていた施設においてこのような感染率が高い。どの程度お調べになったのかわからないというふうに言われる以上は、しっかりと調査をしていただきたい。そして、感染されている方々について、その治療体制、医療体制というもの、そういったものもしっかりとやっていただかないと、これはおかしな話になるのじゃないでしょうか。

 隔離をし、そしてほかからの感染源というものはまず考えられない、その療養所内においてでしか考えられない。なぜならば、まず、感染し慢性肝炎化していった場合は、感染後二十年から三十年で肝硬変、肝がんへと移行するということを考えれば、ここで感染しているとしか思えない人たちですので、一体これは何だったのかという原因も含めて調査をし、公表していき、そして、今既に感染している人たちに対してしっかりと医療体制を確立されることを切にお願いしたいと思いますが、その点について御答弁いただければと思います。

坂口国務大臣 患者さんによりまして入所された期間も違うというふうに思いますし、また、それまでの生活様式と申しますか、入所されるまでの医療とのかかわりの問題もあるというふうに思いますから、一概にその人の状況というものをその療養所の中だけの問題というふうにすることは難しいというふうに私は思いますけれども、しかし、そこで長く、二十年ないし三十年という長い間そこで生活をされた皆さん方であれば、その療養所内での影響が次第に大きくなってきていることだけは間違いがないわけでございます。

 とりわけC型肝炎は血液とのかかわりでうつる病気でございますので、特に静脈注射等々、そうしたことが頻繁に行われたということとの関係、それは当然のことながら考えていかなければならないだろうというふうに思っている次第でございます。

家西委員 時間が来ましたので終わりますけれども、マスコミ報道を見ますと、同省国立病院部は感染率が高いことは知っていたということもマスコミに言われているわけですから、ぜひともその調査をし、そして感染している人たちに対して、もうこれ以上余分な病気を持たさないというか、治療に専念できるような環境を整えていただきますよう心よりお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、金田誠一君。

金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。あらかじめ申し上げてあった質問と多少順序が狂ったり、一部飛ばしたりというものがございますので、お許しをいただいて、順次質問させていただきたいと思います。

 熊本訴訟の原告番号二十五番という方がいらっしゃいます。この方は本年三月二十五日、宮古南静園、沖縄でございますけれども、ここに在園のまま死亡されてございます。判決では、沖縄の本土復帰前の入所期間が算定されていない関係で、立法による補償よりも四百万円ほど少ない損害額が認定されております。ところが、この原告は他の死亡者とは異なり、判決確定による既判力のため、司法上の手続を利用することは困難でございます。また、法案によれば法の施行時生存していることが請求要件であるわけでございまして、本法による差額支給の道もないということになります。これは、他の亡くなられた原告の方に比較をして、沖縄の施設であったということによって著しく不平等になるのではないか、こう考えるところでございます。

 先ほど来答弁の中で、施設に入所されない、在宅で御苦労された方々、こうした方々、法によらない措置も含めてという御答弁もございましたけれども、この熊本訴訟原告番号二十五番の方、非常に特異な例でございますけれども、何らかの個別的な対応により手当てができないものか、そうでなければ、復帰前の沖縄ということがそのまま残ってしまうことになるわけでございまして、この点についての御配慮をお願い申し上げる次第でございます。

篠崎政府参考人 御指摘の方につきましては、法施行後までもし生存されてこの補償金の請求をされていれば、復帰前の療養所入所期間を考慮して、判決より、先ほどおっしゃいました八百万よりも高額の補償金を支給できた可能性があるという点で、割り切れなさは残るものでございます。

 しかしながら、本法の補償金は療養所入所者等御本人に専属するものと考えておりまして、法施行前に亡くなられた方については、大変お気の毒ではございますが、この補償金の対象にはならないものというふうに考えております。

金田(誠)委員 そのことは理解をしておるわけでございます。したがって、何らかの形ということで御検討をお願いしているわけでございます。

 この法に照らせば適用除外になる等々、いろいろある方であっても、何らかの措置が必要な方、在宅で御苦労された方等々いらっしゃるわけでございまして、そういう観点から御検討いただけないものかという趣旨でございますが、いかがでございましょうか。

坂口国務大臣 先ほども少し御答弁申し上げたわけでございますが、さまざまな方がおみえになるだろうと思うのです。

 今局長が答弁しましたように、ただいま提案されました、与野党で合意をしていただきましたこの法案によりますと、これは該当しないということはもう御存じのとおりでございますが、今後、いろいろな形で、亡くなられた方の中にもいろいろな形の方がおみえでございますし、そしてまた、先ほどから御提案ございました、御家族の方にもいろいろな方がおみえである。そうした問題、御家族の問題でも、みんな同じに処理をするというのもなかなか難しい問題だろうというふうに思います。

 先ほどの江田さんのおっしゃったように、生涯付き添ってお世話をなすった方もあれば、もう一切寄りつかなかった人もあるわけでございますし、それはもう全然違うわけでございますが、そうしたいろいろの、さまざまな問題がありますそうしたことも含めながら、これらの人たちの問題をどう解決していくかということを、トータルでひとつこれから話を進めていきたいというふうに思っているわけでございますから、完全にそういう人たちを除外していくということではなくて、含めながら、どうしたらいいかということを、話を進めていきたいというふうに思っております。

金田(誠)委員 ありがとうございます。大変難しい問題だとは思うわけでございますが、全体の中でぜひお考えをいただければと思う次第でございます。

 次に、入所期間による逆転現象、多少事務的なことになって恐縮でございますが、これについてお尋ねをいたします。

 計算例を三つほどあらかじめお示しをいたしてございます。一々申し上げませんが、一番わかりやすい一つだけ申し上げますと、一人の方は昭和四十年から四十三年まで四年間入所されて、四十四、四十五、四十六年と三年間退所されて、さらに四十七年から四十九年まで入所されたという方がいらっしゃいます。こういう方は、本来、入所年から照らしますと一千万円なわけでございますが、退所月の関係で二百万円減額されて八百万円ということになります。最初の入所が四十年から四十三年、それで一たん退所して四十七年から四十九年という方でございます。

 これに対して、この方の後からの入所月、四十七年から四十九年だけ入所した方、後の入所月だけ同じく入所した方は、途中の退所期間がないものですから、一千万円そのまま支給を受ける。

 長く入所されて途中で退所した方が少ない金額、途中の退所期間がなくてその後の部分だけ入所された、短い入所期間の方が多い金額という逆転現象が生まれます。これが一つの例でございまして、幾つかのケースによってこのような状態が生じます。

 この逆転現象は調整する必要があるのではないか。調整というのは、短い人より長い人が少なくなるというようなことがないように、短い人に合わせるしかないのではないか、こう思うわけでございますが、その辺いかがでしょうか。

篠崎政府参考人 この今回の補償の仕方につきましては、熊本地裁の判決の認容額を基本にして設定をされております。それで、入所時期によっても、もともとは千四百万円というのが最初にありまして、その後、昭和三十五年以降、時期によりまして、そこから額を引いていくという算定のやり方でございます。詳しいところは、判決でございますので、私ども推察でやっておるわけでございますが、そのような、今先生の御指摘のようなものも、退所する時期がいつだったかによって引く額が変わってまいりますので、退所期間だけではないという意味で、御指摘の点があるのかもしれません。

 私どもといたしましては、今後、認定審査会というようなものをつくっていこうと思っております。それによって、その中でいろいろ議論をしていただいて、なるべくそういう不公平が起きないような形で対処していきたいと考えております。

金田(誠)委員 ここまで具体例に即して計算をした判決では恐らくなかったのだろう。その判決を受けて法律ができているということでございます。こうした逆転現象が起こるというのはあり得ないことでございまして、ぜひその調整についてその委員会の中でよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、またこれは事務的なことで恐縮でございますが、第十二条、省令への委任でございます。補償金の請求の手続その他必要な事項が省令への委任事項になっているわけでございますが、大変な人数でございまして、順次請求作業の方も準備にかからなければならないという状況の中でございます。

 できることなら、どのような手続になるか、概要だけでも早目にお示しいただけないかという要望があるわけでございますが、いかがでしょうか。

篠崎政府参考人 補償金につきましては、支給を受ける方からの請求により支給をすることといたしておりまして、具体的な請求手続につきましては公布日までに厚生労働省令において定めるというのは、今先生御指摘のとおりでございます。

 まだ詰まっているわけではございませんけれども、具体的には、現在療養所に入所している方につきましては、申請書を入所している療養所に提出していただくということを考えております。既に退所している方でございますが、この方につきましては、厚生労働本省に直接申請書を提出していただくこととして、かつ、その後、入所されていた療養所に私どもから、厚生労働省から、プライバシーのこと等ございますので十分配慮しながら照会をするなどいたしたい。

 また、支払いにつきましても、できるだけ迅速な対応を行いたいというふうに考えております。

金田(誠)委員 申請に必要な添付書類など、どの程度を考えておられるか等々含めて、概要がわかるような形を早急にとっていただければありがたいと思いますので、重ねて御要請を申し上げておきたいと思います。

 そこで、大臣、あらかじめ通告していなかった点、一点ございます、恐縮でございますが。

 先ほど江田委員の方からの質問に大臣の言葉が引用されておりました。このハンセン病問題の本質は、民族浄化といいますか、民族主義といいますか、排外主義といいますか、そういうことが根底にあるということを大臣が講演で話しておられたと、感銘を受けながら聞かせていただいたところでございます。まさに本質を言い当てていらっしゃるなというふうに思いました。

 その同じ御答弁の中で、なぜこれが途中で是正されなかったのかという同じく江田委員の質問に大臣答えて、私、このようなメモを、ちょっと違うかもしれませんけれども、状況をはねのける力が出てこなかったのではないか、それは政府や国会だけでなく、医療やマスコミも含めてのことだということを大臣はお答えいただきました。これまた感銘深く聞かせていただいたところでございます。

 私、かねがね思っておりましたのですが、なぜこの現状を変える力が出てこないのか。医療の世界あるいはマスコミの世界のことまでこの場で申し上げるつもりはないのですが、少なくとも政府部内のこと、あるいは国会内部のこと、その中でかなりの方が恐らく、強制隔離政策このままでいいのかと疑問を持っていらっしゃったと思います。

 政府部内では大谷藤郎先生などという立派な先生もいらっしゃって、心を砕いていらっしゃった。にもかかわらず、それがらい予防法廃止という形で移されたのは相当後になってからでございます。国会内でも、実は先般橋本前総理が、国会の不作為はある、自分は非常に努力をしてきたんだがという話を議連の集会でされておりました。多くの方がそういう思いを持ちながらも、それをはねのける力が、大臣おっしゃるように出てこなかった。この仕組みを解明しなければ、本当の意味で反省したということにはならぬのではないかというふうに私思いながら聞かせていただいたところでございます。

 そこで、私かねがねこの問題について考えていることが一点あるわけでございます。

 といいますのは、例えば国会の場合、衆議院だけでも五百人、その中で何人がその思いを持つか。過半数がこの思いを持つというのは至難だと私は思うわけでございます。近くに療養所があるとか、何らかの形で直接触れたという経験でもなければ、なかなかそういう気持ちは持ち得ない。

 そこで、例えば、一人でも二人でもそういう思いを持った国会議員がいれば、例えばらい予防法廃止法案というものを一人でも二人でも提案できる仕組みというものが国会にあれば、また別な展開があり得たのではないか。今は提案もできません。国対の判こというものが要る。党議決定というものが要る。これが国会の機能を縛ってきたのではないのかな。

 提案をして、それが審議され採決に移されるかどうかわかりませんが、少なくとも一人一人の国会議員の良心に基づく行動、これを保障する国会のシステム。大臣、国会議員のお一人として、感想だけでも構いません。

 それともう一つ、あわせて申し上げるとすれば、政府部内でも恐らく、現場の施設長さんなり本省のどなたかなり、これに心を砕いた方もいらっしゃったと私は思う。しかし、局長さんであってもこの現状を変えるということは実際至難だと私は思うのです。私がもし担当の局長だったとして、本当に変えられるだろうか。恐らく二年程度しかその職にもとどまることはないでしょう。非常に至難だ。

 今のシステムの中に、この現状を変える、大臣、力がそこまでわいて、力が出てこなかったということは、システムの問題。一人一人の思いはあってもシステムがそれを許さなかったのではないか。恐らく一般の民間会社でも、そういう現場の声なりに反応して変えられる会社が伸びる会社で、お客様の声をキャッチしても実際の行動に移せない会社というのは、私は衰退する会社ではないのかな。今、国会のシステムも政府のシステムも、この衰退するシステムになっているのではないか。

 思いがあれば、それを実行に移すルート、チャンネル、こういうものが整備され保障される国会には、先ほど申し上げたとおり。政府部内でも、そういう検討がされてこそ再発を許さないという仕組みになっていくのではないかな。

 通告したことと別なことを申し上げて本当に恐縮でございますけれども、大臣、感想をお聞かせいただいて、できることなら御検討いただければありがたいと思うわけでございます。

坂口国務大臣 昔は、個人がいわゆる議員立法を出すということは、議員立法を出して通るということはもうほとんどなかったわけでありますから、議員立法をやるということは通らないということを前提にしてやる、そんな意味合いがこもっていたと思いますし、一人の人が思いましても、それはなかなか党全体でなければ出せなかった、三十人ですか五十人ですか、ずらっと名前を並べて出さないといけないというようなことがあったりいたしました。

 そうではなくて、今おっしゃるように、ほかに賛成者がなくても、自分一人でも、例えば金子法案なら金子法案という名前で一人出したらそれでいい、そういう行き方ができるようになるのは、それはそういうふうにするのも一つの方法だと私も思います。

 いずれにいたしましても、やはりもう少し議員立法ができやすくしなければならないことだけは間違いがない。今の行き方ではなかなか議員立法もできにくいことはもう間違いがございませんので、そこはやはりお互いに考えていかなければならないことではないかというふうに思っています。

 それでもう一つ、私は非常に罪の意識が深いということをこの前も申し上げましたが、私の場合にはもう一つ、医学のこともある程度、今は忘れましたけれども、学んできたわけでございますから、それはある程度のことを知っていたわけ、知っていたにもかかわらず、それをしなければならないというところまでいかなかった、これはもう本当に、私も罪の意識を持っているわけでございます。本当に申しわけなかったと今思っております一人でございますが、やはり、療養生活を送っておみえになる皆さん方のために何かすればいいぐらいに思う、そういうふうに思っていたのが悪かった、それが逆に皆さん方を苦しめていた、その人たちの手助けをしていると思っていたら加害者の側であったという、そこのところを解明しないといけないという気が私はいたしております。

金田(誠)委員 ぜひひとつ、これから、大臣、そういう思いを持ちながら法改正まで至らなかったこの仕組みを変えるために、ぜひ力を合わせて一緒に仕事をさせていただければありがたいなと思いますし、政府部内でもぜひ御検討いただきたいと思います。ちなみに、私は金田誠一でございますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 最後に一言だけ。現状を変えるというのは至難でございます。しかし、変えられるときもあるわけでございます。そのときに果敢に決断をすることが求められているというのが今回の教訓でございます。そういう意味で、申し上げたいことは、在外被爆者の郭さんの控訴断念の問題でございます。今週金曜日が期限でございます。御答弁は求めませんけれども、大臣ひとつ、くれぐれもよろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、お諮りいたします。

 本起草案について、政府参考人として法務省大臣官房訟務総括審議官都築弘君及び民事局長山崎潮君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、武山百合子君。

武山委員 自由党を代表しまして、質問したいと思います。

 私は、ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会の世話人の一人としまして、自由党から代表でこの議連に加わりました。それまで私は、正直言いまして、ハンセン氏病に対する理解は、いわゆる「砂の器」、それから「ベン・ハー」で出てきた、その程度だったんですね。それで、私は議懇の代表になりまして、これでは大変と思いまして、実は岡山の長島に視察に参りました。

 何しろ初めていろいろな状況に出会いまして、ショックと、それから私自身がもし患者だったら、あの長島のがけの上から飛び込んで自殺していたなという思いに駆られて実は帰ってまいりました。九十年の歴史の中には言葉ではあらわせぬいろいろな、行政の立場、また患者の立場、また社会の一人一人のそれぞれの思い、これがまさに今の現状だと思います。

 それに対して、このたび熊本地裁で判決があったわけですけれども、この熊本地裁の判決の中で、国家賠償という言葉と、それからこのたび私たち立法府が補償という形の法律をつくったわけですけれども、国民の側から見ますと、国家賠償そして補償、それからまた国会では決議としてうたっているわけなんですけれども、複雑ですっきりしない部分があるわけなんですね。それで、国家賠償とは何か、補償とは何を意味してどういうことなのかということを、やはり国民に対してわかりやすい言葉で大臣から御説明をいただきたいと思います。

横内副大臣 お答え申し上げます。

 国家賠償と補償の違いはどうかということでございます。

 国家賠償といいますのは、国や地方公共団体が公権力を行使する場合に、特定の人に対して違法にその人の権利を侵害したというような場合に、国や公共団体がその損害を賠償するというのが国家賠償でございます。

 これに対して、補償というのは、公共事業なんかにおける土地収用のように、公権力の行使によって加えられた財産上の特別の犠牲に対してその損害を補てんするというのが補償でございます。

 つまり、ある行政作用、行政行為によって国民に損害が生じたときに、その行政行為が違法に行われた場合にはこれは損害賠償になるわけでございます。違法か適法かというのは問わずに、政策的にあるいは人道的にそれを放置してはいかぬ、そういう判断でその損失を補てんする場合が損失補償ということになると思います。

武山委員 損失補償という形でしたということですけれども、では、国家賠償、私が聞いているのは国家賠償なんですね、それから補償、どう違うかということ。損失を認めるというんでしたら、補償でも国家賠償でも同じだと思うんです。そこの違いはどうなんでしょうか。今の説明ではわかりません。

横内副大臣 国または地方公共団体の行為が、違法な行為が行われたときに、違法な行為が行われたときにその損害を賠償するというのが損害賠償でございます。

 それに対して、損失補償というのは、その行為が違法か適法かを問わずに、しかし、国なり地方公共団体の行為によってある一定の損害が発生をした、その場合に、違法か適法かを問わずに、それを放置しておくのはやはり行政的あるいは政策的な判断として好ましくないという場合に、その損失に対して補てんをするというのが損失補償ということでございます。

 したがって、行政庁の行為が違法な場合には損害賠償である。違法かどうか、そこのところを問わないで、政策的あるいは人道的な判断でその損失を放置してはいかぬ、そういうときに政策的な判断でその損失を補てんするというのが損失補償という、大変わかりにくいんですけれども、違いはそういうことだというふうに思います。

武山委員 ということは、わかりましたけれども、大体は。

 では、今のお話ですと、国家賠償と損失補償とイコールということになるわけですね。

横内副大臣 行政庁の行為で国民に損失があるいは損害が発生したときに、その行政庁の行為が違法なとき、行政行為をする公務員が故意または過失で違法な行政行為をした、その場合にその損害を補てんするというのが損害賠償なわけです。

 一方で、行政庁のある行為によって損害が発生したわけですけれども、しかし、それは違法とか適法とかそういうことを問わないで、政策的にそれを放置するのは好ましくない、そういう判断から政策的にその補てんをする、それが損失補償だというふうに理解しております。

武山委員 損失補償イコール今回の補償立法ということになるわけですね。

横内副大臣 今回の法律は、考え方としては損失補償ということだというふうに思います。

武山委員 先ほど損失補償イコール国家賠償だと先に言っておいて、今また損失補償イコール補償だと言うので、非常にわかりにくいんですね。それ自体がわかりにくいわけですから。

 国家賠償は、国の責任を認めて、行政府が違法性があったということに対してと同時に、立法府のすなわち不作為に対して違法性があったということに対して、国が賠償しなさいよということだと思うのですね。賠償しなさいよというそのもとになっている法律に対して、提訴している方にはこれで償います、しかし、提訴していない人には補償という形で立法をしますというふうに解釈していますけれども、あなたの説明だと非常にわかりにくいです。

横内副大臣 損害賠償ということですと、裁判で負ければ、別に法律をつくらなくても、損害は賠償しなきゃいけないわけでございます。

 今回の場合には、したがって、損害賠償とか、国の行為が違法かどうかということは問わずに、今回のそういう損失を放置することは政策的あるいは人道的によくないということから、法律をつくって、政策的にそれに対する補てんをするということですから、考え方としては、やはり損失補償、損害賠償というよりは損失補償というふうに考えるべきではないかなというふうに思います。

武山委員 補償という立法の方、今回議論する予定の方はわかりました。

 では、国家賠償、賠償の方はどういうのでしょうか。もう一回説明してください。

横内副大臣 同じことを申し上げることになるのでございますけれども、損害賠償というのは、もうはっきり、行政行為をする公務員が故意または過失で違法な行為をやった、それによって国民に損害を与えたというときに国が賠償するというのが損害賠償だということでございます。

武山委員 副大臣は、国民に対して自分が納得して言っているのかどうか、非常に疑問です。説明が非常にわかりにくいです。

 国民は、国家賠償というのは、国が責任を認めて、すなわち、それに対する損害に対して国家賠償、補償というのは、それ以外の人たち、提訴していない人たちに対して、人道的に、また今までの状態に対して補償するというのが補償という意味だというふうに理解しているのですけれども、非常にわかりにくい説明だと思います。損害賠償、損害補償、すなわち、両方にかけているというふうに言っているわけですね。

 そうしますと、国家賠償に対して、控訴しないという総理大臣の英断があったわけですけれども、これで国は敗訴したのでしょうか、それを御説明いただきたいと思います。

横内副大臣 裁判は確定したわけでございますから、敗訴したということだと思います。

武山委員 その言葉をお聞きしたかったわけでございます。

 次に、これは国民の感情として私自身はお聞きしたいと思うのですけれども、このたびの国家賠償に対する熊本地裁の判決に対して、弁護士費用のことでお尋ねしたいと思います。

 まず、いろいろな隔離入所期間に対して、一千四百万から八百万までの範囲があるわけですけれども、それに対して、弁護士費用というのは一〇%、訴訟費用として一〇%、国民の税金を払うわけですね。

 ところが、私は最初、一人一人の賠償金額、その中に入っていて一〇%というふうに理解しておりましたら、それはそれで原告団に行く、しかしプラス一〇%が弁護士に行く、それは国民の税金を払うということを聞いております。

 そして、国民の感情として聞きたいのですけれども、そうしますと、弁護士費用、一人約二千万ぐらいになる。その費用に対して、私は国民の一人として、原告団の今までの苦労に対する、隔離政策に対する、いろいろなものに対する費用、すなわち国家賠償として支払う金額よりも高いと聞いているのですね。それが約二千万だというふうに聞いたものですから、それは、実態は本当なんでしょうか。

横内副大臣 委員のおっしゃるとおりと承知をしております。

 具体的に申し上げまして、今回の熊本地裁の判決は、原告が百二十七名、この百二十七名に対して、損害賠償金として十六億五千八百万円の支払いを命じております。と同時に、これに対応する弁護士費用の支払いを命じておりまして、一億六千五百八十万円の弁護士費用の支払いを命じているということでございます。一般的に、損害賠償訴訟の場合には、一割程度の弁護士費用の支払いが命じられることが多いというふうに聞いております。

武山委員 私は、国民感情として、私自身の感情としては、原告一人の補償額よりも大きい金額というのは、これは本当にどういうことだろうと思わざるを得ないわけですね。そして、先進諸国では、いろいろな弁護士活動の中でそういうふうな報酬を得た場合は、社会貢献などをして、寄附をしたり、また患者のいろいろな団体に役立てたりするわけですので、私は、ただ一言、この二千万という弁護士費用に対して、国民感情として、国民の一人として、高いということをお話ししたいと思います。

 次に移ります。

 法律の第十一条の中身に対してですけれども、これは、熊本地裁判決では、都道府県を含めた地方自治体の責任があるのではないかと思うのですけれども、なぜ地方公共団体を含めなかったのか、その辺の経緯をお聞きしたいと思います。

福田法制局参事 お尋ねの十一条でございますが、福祉の措置という条文でございますけれども、十一条におきまして地方公共団体を規定しなかった理由といたしましては、らい予防法を廃止しましたらい予防法の廃止に関する法律におきまして、入所者等の福利増進に関する責務を国のみに課しまして、地方公共団体に課さなかったというような均衡もございまして、今回の法案には地方公共団体の責務を書かなかったというふうに理解しております。

武山委員 差別、偏見の解消、また社会復帰や遺骨の里帰りなどは個々の現場でやはりしなければならないことだと思うのですね。そうしますと、なかなか実現するのは難しいと思います。それから、いわゆる広報活動、これは啓蒙活動ですね、正しい知識の普及などは地方公共団体を除外しますとなかなかできない。

 それでは、都道府県における協力体制はどのように構築していくのでしょうか。

桝屋副大臣 これは地方公共団体との連携という話になりますが、先ほどのこの委員会でもいろいろ議論が出ているところでございます。

 先ほど大臣の方からもお話をいたしましたが、青森県でありますとかあるいは鳥取県の知事さん、既にマスコミに報道されておりますように、さまざまな対応をされておられるということも既に承知をしているところでございます。

 これからハンセン病対策について、今委員の方から、啓発でありますとか、あるいは今まで既に地元もやっておられる里帰り事業、慰問事業など、それぞれ地方公共団体がおやりになっていることも含めて、ひとつしっかり国としても連携をしながら、しっかりと取り組んでいかなければならぬというふうに思っているわけであります。

 いずれにしても、患者、元患者の方々の御意見をしっかり伺った上で、今委員から御指摘のありましたPR活動でありますとかあるいは福祉事業、さまざまな対策について連携をしながら進めていきたいというふうに考えております。

武山委員 ハンセン氏病療養所は全国に十数カ所散らばっているわけですので、やはり協力体制をつくっていかなければ、現実的に、隅々まで啓蒙活動というのは難しいと思います。

 それでは、名誉の回復についてお聞きしたいと思いますけれども、これは謝罪広告なども含めて考えてよいのでしょうか。

坂口国務大臣 そういう御要請も参っておりますし、そのことも含めて今検討いたしております。

 我々も、そうしたことも含めて、どんな形でさせていただくのが一番効果があるのかということを今検討いたしておりますが、いろいろのことの組み合わせでいかないといけないだろう。一つのことだけで名誉回復ということをなかなかできないだろう。しかし、はっきりと私たちのそういう意思を表明するのには、やはりマスコミのそうした広告等を用いるというのもそれは方法だというふうに私たちも思っておりまして、それも含めて今検討しておるところでございます。

武山委員 今まさに答えはいろいろと出ておりまして、あと選ぶのを、優先順位をどうするかということだと思いますので、皆さん高齢ですので、まさに坂口大臣のリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

 それから、時間がもうなくなってしまいましたが、先ほど金田議員の質問の中にもありましたけれども、死没者に対する追悼の意とありましたけれども、これはまず具体的に必要な措置ということですけれども、慰霊祭とか一時金の支給などもここに入るかと思いますけれども、これはどんなことを想定しているかということをお聞きしたいと思います。

坂口国務大臣 これも、これから患者、元患者の皆さん方とのお話し合いの最も重要な課題の一つになってくるだろうというふうに思いますが、今のところ具体的にこれこれをしましょうということを決めているわけではございません。また、私たちの方でこういうふうにしますということを先に申し上げるのも失礼でございますので、これはお話し合いの中で決めさせていただきたいというふうに思っておるところでございます。

武山委員 私は、それこそ、よいこれを先にしますということであれば、国民は望んでおると思いますので、よいこれということがあれば、それは坂口大臣のリーダーシップで先にすることも、国民はよいことであれば大いに認めると思いますので、ぜひスピードを持ってやっていただきたいと思います。

 それから、最後になりますかと思いますけれども、法案の方に「福祉の増進」と書いてありますけれども、具体的にどのようなことか、また社会復帰の促進のためには住宅政策、介護等における特別の配慮も必要かと思いますけれども、具体的にその辺のフォーカスをお聞きしたいと思います。

桝屋副大臣 先ほどから大臣も御答弁を申し上げておりますが、この内容についても、一義的にはこれから患者、元患者の方々のお話も十分伺って検討していきたいと思います。

 いずれにしましても、今委員から御指摘がありました、介護あるいは住宅というような点を御指摘いただきましたけれども、やはり最初は患者、元患者の方々から大変要望のある退所者給与金、年金でありますが、この創設を中心といたしまして、介護、住宅等の福祉的な措置まで視野に入れて、可能な限りの措置を講じていきたいというふうに考えているところでございます。

武山委員 九十年に及ぶこの隔離政策に対して、国民は税金を使うことに恐らく異論はないと思います。あとはスピードを持って、高齢の、平均七十四歳の方々に対して実行していただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小沢和秋君。

小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。

 五月十一日に、熊本地裁で、九十年以上続いたハンセン病患者に対する隔離絶滅政策の誤りが断罪されました。その判決からちょうど一カ月目のきょう、ハンセン病補償法案の審議にこぎつけることができました。控訴断念から国会決議、この法案取りまとめまで、多くの方々の努力にまず感謝をいたします。

 この法案は、原告団や弁護団、全療協、野党の意見もよく取り入れていただいております。立派な法案ができたと思います。

 ただ、一点だけ意見を申し上げておきますと、それは補償金の退所期間相当分の減額の問題であります。けさの会合でも、退所者の方がハンセン病にかかったことを隠してどんなに苦しい思いで一般社会の中で暮らしているかが話されました。こういう苦労を聞きますと、退所した期間は補償しなくてよいとも言えないのではないか。今後の検討課題として一言申し上げておきます。

 さて、きょう、私がまず取り上げたいのは、全国に先駆けて、最初に訴えを起こした鹿児島県星塚敬愛園九名、熊本県菊池恵楓園四名の皆さんの問題であります。

 全国の先駆けとなった、この十三名の方々に、この機会に心からの敬意を表したいと思います。その中に何名かの日本共産党員が含まれていることを私は心から誇りに思います。

 私が問題にしたいのは、裁判を起こした当時の十三名の原告たちに対する園長などの強圧的な態度であります。

 私が初めて両園を訪問したとき、原告たちからこもごも訴えられたのは、園長から、弁護士にだまされるな、世間は君たちを相手にせぬ、裁判をやるなら出ていけと言われ、以後、園長は原告たちにあいさつもせず、公共施設を使わせないなどの嫌がらせを続けたといいます。裁判所が出張尋問を行ったときでさえ、公会堂を使わせないなど、あるいは傍聴を妨害したなどとも聞いております。

 国が訴えられたとしても、園長が裁判に対し中立の態度をとるのが当然ではなかったのか。こういうことは今まで余り問題になっておりませんが、この際、このことについても誤りを認め、謝罪をすべきではないかと思いますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

坂口国務大臣 長い期間のことでございますからいろいろのことがあったのだろうというふうに思いますが、今小沢議員が御指摘になりましたことがどういう過程で起こったのかということを、今私も初めてお聞きをしたことでございます、こうしたこともよく一遍調べて、そしてはっきりさせていかなければならない問題だと思っております。

小沢(和)委員 けさ、私のところに鹿児島県奄美和光園の山本さんという方から、園の一部幹部が患者、とりわけ原告に対して、今私が言ったような行為がまだ続いているというような訴えが参りました。私がいただいたのは、坂口大臣あての訴えの写しと書いてありますので、政府の方にも届いていると思います。事実関係を調査し、適切な措置をとられるようお願いしておきます。

 さて、原告、患者たちの一番の願いは、国会や政府の謝罪と名誉回復措置だと思います。残念なのは、政府声明が出され、控訴はしないが、立法不作為、除斥期間の二点で、こちらにも言い分があるという姿勢を示したことであります。本来なら控訴すべきだが、原告らの高齢などを人道的立場で配慮し、断念するというのでは、本当の心からの謝罪とは言えないと私は思いますが、大臣は、これでもやはり誠意ある謝罪だというふうにお考えでしょうか。

坂口国務大臣 先日もこの衆議院でございましたか、いろいろ議論がございましたが、控訴断念と言わずに、総理が控訴せずというふうに言われた、それは控訴断念ではなくて控訴せずと言ったところに意義があるということを御指摘をいただきましたが、私もそう思っております。

 したがいまして、政府としての言い分、それは法律上の問題ですから、全部が全部、わかりました、おっしゃるとおりでございますとは言えない部分もある。そこは明確にしながらも、しかし、この問題については従いますということを明確にしたわけでありますから、それを、小泉総理は控訴断念と言わずに、控訴せず、こう言ったわけでございますから、その辺の気持ちは、温厚な小沢議員でございますから、御理解をいただけるものと私は思います。

小沢(和)委員 五月二十九日に、本委員会のハンセン病問題集中審議がありました。私が驚いたのは、厚生労働省にはほとんど反省がないことであります。

 ここに会議録を、これは未定稿でありますが、持ってまいりました。篠崎健康局長は、判決の問題点は政府声明にのみ限られるものではなくて、過去のハンセン病対策にかかわる事実認定につきましては今回の判決で示された内容に争いがないわけではございませんと、立法不作為、除斥期間以外にも多くの点で争い、つまり異論があることを明言しております。これでは、心から謝罪する気にならないはずだと思うんです。

 もっと具体的に言ってみますと、篠崎局長は、その一つとして、隔離の必要がなくなったのは、多剤併用療法が定着したと言われる一九八一年以降であると発言しております。多剤併用療法が定着したということは、ハンセン病が最終的に、だれでも一〇〇%治るようになったということだと思いますが、それまで隔離をどうしても続ける必要があったのでしょうか。既に、敗戦後間もなく、特効薬プロミンによる治療が開始され、多くの患者が治り、一九五一年には退園第一号が出て、盛大に祝われております。以後、一九六四年までに、千四百七十二人が治って、退園しております。しかも、ハンセン病の伝染力が極めて弱いことは戦前からよく知られております。どうして一九八一年まで、これでも隔離が必要だったのか。

 これでは、判決が、遅くとも一九六〇年までには隔離政策はやめるべきだった、らい予防法を廃止すべきだったと指摘しているのを認めないという立場だと思います。これでは、判決の核心ともいうべき部分を真っ向から否定しているのではありませんか。

坂口国務大臣 今回の判決に対する姿勢は、先ほど申し述べたとおりでございます。したがいまして、政府声明として二つの点につきましては出しましたけれども、それは先ほど申し上げたとおりでございまして、篠崎局長が申し上げたのは、それは、先ほど委員も御指摘のとおりの、いわゆる薬ですね、ハンセン病に対する薬の状況を申し上げたわけでありまして、昭和で申しますと、五十年代になってこの併用療法というものが定着をして、そして全員治るようになったということを申し上げたわけであります。

 しかし、私がかねてから申し上げておりますように、治るようになったから隔離政策はやめるようにしたんだ、やめてもいいんだというのではない、病気が治る治らないは別にして、隔離政策を続けていたということ、このことがやはり問題であったということを私は言っているわけでございますから、そのことと篠崎局長が言いましたこととは別の問題でございます。

 篠崎局長が言いましたのは、昭和二十年代から三十年代にかけましては、その当時の薬はサルファ剤で、これは静菌作用のあった薬であった、しかし、四十年代後半になりまして、殺菌作用の薬が出てきた、それで、やめても再発しなくなった、それまでは、やめると一五%くらいの人が再発をしていた、それがなくなったということを言っているわけで、五十年代になって多剤併用というものが行われるようになって、それからはもう出なくなったということを言っているのでありまして、それまで隔離を続けていたのがよかった、それは認められるべきだということを言っているわけではないと私は思います。

小沢(和)委員 多剤併用療法が実施されるようになってから完全に治るようになったということは、私は承知しているんです。しかし、篠崎局長の発言、では、もっと正確に引用しましょう。こう言っているんです。「少なくとも、隔離の必要性がなくなったのは、サルファ剤それから抗生剤などを組み合わせて療法として用いる多剤併用療法が定着したと言われている一九八一年以降であるというふうに考えております。」この発言を正確に理解していただければ、隔離の必要性がなくなったのは八一年以降であると発言していることは明らかじゃないですか。

 では、これは真意を伝えておらない、撤回をすべきだというふうに大臣もお考えになるでしょうか。

坂口国務大臣 それは、今まで裁判におきまして厚生省がそういうふうに言ってきたということでございまして、現在におきましては、隔離政策というのをずっと続けてきたということを反省をしているということでございますから、その意味合いは違うと思います。

小沢(和)委員 だから、この部分はそうすると取り消すという趣旨ですね。

坂口国務大臣 本人がおりますのに、私が取り消すか取り消さないかと言うことは失礼でございますけれども、そこは少し言葉が足りなかった、私はそう思います。

小沢(和)委員 もう一つ取り上げたいのは、断種、中絶の問題であります。

 局長は、先日の答弁で、優生手術につきましては、遅くとも昭和四十年代以降は、適正に本人の同意を得て行われてきたと述べております。優生保護法では、ハンセン病患者の断種や中絶は、もともと本人の同意を得て行うことができることになっております。四十年代以前でも、法律上は拒否できたが、事実上強制されてきたわけであります。それ以後は恐らく同意書をとるようにしたということだと思うのですが、そんなことで適正だったと言えるのか。

 そのころといえば、ハンセン病はますます確実に治るようになり、およそ断種や中絶の必要など全く考えられなくなっていた時期だと思います。それなのに平成に入ってからも、優生保護法廃止まで、平成八年まで計五十二名の胎児が生まれるべき命を奪われております。

 大臣、こんな残酷なことが本当に本人の合意のもとで行われたと思いますか。本当に本人たちが自由に意思表示できたのであれば、産んだ人もたくさんいるはずです。四十年代以降、療養所で子供が生まれた実績がありますか。

坂口国務大臣 データを私持っておりません。しかし、そういったことも含めて、歴史の見直しを行わなければならないということを言っているわけでございます。

小沢(和)委員 今のことは、私は、質問をするから大臣にその数字を教えておいてくれ、ここまで通告したんですよ。大臣はそれを聞かれてないんですか。武士の情けで、それ以上は聞きません。

 私が原告や元患者の人と話をして胸を打たれるのは、中絶されたときの無念の思いであります。中には、既に九カ月になっていた胎児を取り出され、手足を動かしている我が子を見せられ、男の子だよと言われながら、うつ伏せにして殺されたなどという訴えまでありました。私も原告と同じような年になっておりますので、この人たちが、今あの子が生きてくれたらと嘆き、子や孫が一人もいない寂しさを訴える気持ちはよくわかります。

 大臣、この人たちの心情を逆なでにするような局長の発言、これもこの機会に取り消すべきではありませんか。

坂口国務大臣 先ほども申しましたとおり、堕胎がどんな形で行われたということのデータというものは、私の手元にございません。恐らく、これから先、そうしたことも検証されるでございましょう。また、しなければならないことだとも思っている次第でございます。

 いずれにいたしましても、そうしたことが、各療養所で行われたことが全部、局長の手元にどれだけあったか、私もわかりません。局長はそれぞれの療養所から上がってまいりますデータを中心にしてお答えを申し上げていたんだろうというふうに思いますが、そうしたことも含めてこれから検証をしていかなければならないと言う以外に私のお答えする道はありません。

小沢(和)委員 今厚生労働省に厳しく求められていることは、大臣も言われましたけれども、無条件で判決を受け入れた上で、なぜ戦後、基本的人権を保障した憲法のもとで、戦前と同じハンセン病患者の人々への隔離絶滅政策が続けられてきたのかということについての歴史的検証だと思います。

 戦前は確かにハンセン病は治療法はなかったわけでありますが、しかし、戦後は特効薬プロミンが劇的な効果を上げ、確実に治る病気になったわけであります。なぜ、そういう中で政府が、国際機関の勧告さえ無視して、世界に例がない隔離絶滅政策を続けたのか、ぜひ厳しく検証していただきたい。これは、患者の名誉を回復し、社会の偏見を一掃するために一番大切だと思います。

 そのために、今ある資料をまずすべて公開していただきたい。そして、原告、元患者なども交えた第三者による調査機関をつくって、これまでの経過を明らかにすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 情報公開の問題につきましては、先ほども他の委員にも御答弁を申し上げたとおりでございまして、情報公開の法に従いまして、私たちはすべて公開をしたいと思っております。

小沢(和)委員 情報公開と、もう一つ、第三者機関、元患者や原告なども含めた調査機関をつくるべきではないかと申し上げております。

坂口国務大臣 第三者を中心といたしました検証委員会、第三者による検証委員会と申し上げた方があるいはいいかもしれないし、ちょっとこれは、これからやることでございますからそこはお任せいただきたいというふうに思いますが、第三者を中心としたというふうに言っておきましょう。

 第三者を中心とした検証委員会をつくりまして、そこですべてのことを検証していきたい。その中には、いろいろの立場の皆さん方、元患者の皆さん方も含めまして、マスコミの皆さん方も含めて、その皆さん方によって検証をしていきたい、してもらいたいというふうに思っております。

小沢(和)委員 どうも時間が来たようですからこれで最後にしますが、私は、ハンセン病問題の歴史的検討は決して後ろ向きの作業ではないということを強調したいと思います。

 ここ数年の間に、エイズ、ヤコブ病など、厚生省が重要な情報を得ながらこれを放置したために被害を大変拡大したというような苦い事件が次々に起こっております。もっと国民に責任を持つ立場で、どうすれば機敏な行政ができるか、厚生行政の姿勢を根本的に転換するよい機会であると思います。

 我が党は、この歴史的検証は政府だけの仕事ではなく、立法不作為の責任を問われている国会の任務でもあると考えます。国会内にもそのための調査機関をつくるべきだということをこの機会に提案して、発言を終わります。

鈴木委員長 次に、中川智子君。

中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。

 五月十一日のあの熊本地裁の判決からちょうど一カ月目のきょう、この補償立法の審議ができるということに対して万感胸に迫る思いがございます。立法府に身を置く一員として、この不作為、これに対して、まず、元患者の方々に心からおわびを申し上げたい、そのように思います。

 私どもは、まずやはり反省があり、そして謝罪があって、最終解決に向けて前進するというふうに考えております。総理も謝罪しました。坂口厚生労働大臣も本当に心からの謝罪をされました。国会も決議をし、謝罪しました。

 行政、官僚はどうでしょうか。篠崎局長にまず伺います。私は、テレビで何度も大臣が謝罪するところを拝見しましたが、皆さんは胸を反らしたまま立っていらっしゃいました。一度たりとも元患者の皆さんに頭を下げましたか。謝罪しましたか。伺います。

篠崎政府参考人 私は、今まで原告団の方々及び弁護士の方々、そしてまた全療協の方々に対して、心から反省し、おわびを申し上げているところでございます。

中川(智)委員 全然目に触れていませんでしたので知りませんでしたが、そうしたら、きっちりした形でおわびしたと。

 では、どこでそれをされたかちょっと教えてください。一度もこちらは確認しておりませんが。

篠崎政府参考人 公式な場面では、坂口大臣が原告団及び原告団の弁護団の方々とお会いになりました。そのときに同席しておりまして、私も心から謝罪をしたわけでございます。

中川(智)委員 一度きっちりと言葉にも残し、謝罪をしていただきたいと思いますし、先ほどの金田委員の質問の中にあったように、システムそのものがやはりこのような結果を生んでしまったと立法府の方も検証し直すならば、行政府もきっちりした形での今後の検討作業の中で結論を明確に出していただきたい。それをまずお願いいたしますし、公式な場で、みんなに見えるように、聞こえるように謝罪をしていただきたいと思います。

 続きまして、確認をいたしたいと思いますが、本法案の中で第二条、ここにおきます「その他の厚生労働大臣が定めるハンセン病療養所」に、旧法適用時のみの入所者、琉球政府時代のみの入所者及び私立療養所の入所者が含まれるかどうか、この点、はっきりと御答弁をお願いします。

篠崎政府参考人 まず、沖縄の問題につきましては、熊本地裁の判決ではそうでございませんでしたが、今回の補償法の中につきましては、国内と同じような対応をするということにいたしております。

 それからまた、私立のらい療養所につきましては、それも含めて同じ考え方で対応するということにいたしております。

中川(智)委員 今、旧法の御答弁がなかったんですが、三一年のらい予防法適用時のみの入所者、この分と、もう一度、あわせて、「厚生労働大臣が定める」というのはいつどのような方法で定めるのか、この二点、お願いします。

篠崎政府参考人 新法というのが昭和二十八年にできたもの、旧法というのが今先生御指摘の昭和六年にできたものだといたしますと、旧法も含まれるということでございます。

 それから、政令につきましては、この法律の施行日までに整えて、そこに明記するということになろうと思います。

中川(智)委員 それでは、続きまして、第六条によりますと、法施行後、請求前に死亡した場合にはその遺族は本法に基づく補償金の請求はできないということでしょうか。これはイエスかノーかでお答えください。

福田法制局参事 先生のお尋ねどおり、本法施行後、請求前に死亡された場合は、その遺族は本法による補償金の請求はできないということになっております。

中川(智)委員 そうしますと、現在、療養所の中にいらっしゃる方の中で一割近い方が痴呆状態になっているという事実がございます。健康状態に不安がある人は直ちに請求する必要があるわけですが、非常に数が多い。その方たちの手続を一挙にしなきゃいけないという状況になります。また、この一割の方々に関しましては、成年後見制の選任手続を経ないと請求する機会すら与えられないということになります。

 この間に死亡すれば、本人にとっては請求する気持ちがある、でも手続上できないというそのすき間の部分に関しては非常に不安が残りますし、その機会すら与えられないままに補償の機会を失うということも出てまいります。これは非常に不当なことだと思いますので、手続中、手続申請したいけれども現実的にまだその間の期間に関しては仮申請など何らかの方法を考えていただきたい。

 特別の配慮が必要だと考えますが、そこに対しての御答弁をお願いします。

篠崎政府参考人 先生が今御指摘になりましたことにつきましては、残念ながら、法施行日に生存されておられる方ということが前提となろうと思います。

 もう一つ御質問がございました痴呆の方等につきまして、成年後見制度でございますが、そういうものも時間がかかることがないように、そこについては鋭意迅速に対応できるよう検討してまいりたいと思っております。

 それから、先ほど、ちょっと私、政令と申し上げましたのは、大臣告示の間違いでございました。失礼しました。

中川(智)委員 告示ですね。

 それでは、検討していただくという御答弁を伺いましたが、これは各家庭裁判所、療養所のあります家庭裁判所と医師そして成年後見人という三者の連携というのが非常に大事になりますので、ぜひともそこの協力体制もしっかりとしていただくように要望をいたします。

 それでは次に、資料の請求をいたしたいと思います。

 ほとんど今やみの中という状況の中で、きょうの午後の質疑の中で、しっかりとした歴史的な検証が必要だということが御答弁で何度もございました。一九五三年の資料で、なぜこの隔離政策が必要なのかという旧厚生省のガリ版刷りの資料など、省の方に都合のいい資料は古くても出されているわけですが、もう古いのでということで都合の悪い資料はほとんど出されていないのが現実です。

 ここにたくさんの、究明のために必要な資料というのをリストアップしてお持ちいたしましたので、これに対してしっかりと資料を請求いたしますので、下さい。大臣に手渡しで……。

 大臣、今お渡しいたしましたその資料に対しては、できるだけ早い時期に、ほとんど集められるものだと思いますので姿勢だけでも、私に対する、今走っていった、そして愛を込めてお渡ししたそれに対して、大臣、資料をちゃんと提出していただくことをお約束をお願いします。

坂口国務大臣 今まだ読んでいる最中でございますので、ちょっと拝見をさせていただいて、そして、この中、これがあるのかどうか、それで省に渡したいと思います。

中川(智)委員 あるはずでございますし、隠れているものもいろいろあると思いますので、暗やみの中に光を当てて探してください。よろしくお願いいたします。

 次は、控訴、やはりこのハンセン病の問題は、私は、その判決を十一日に受けて控訴断念までに至る十二日間というのは本当に生きた心地がしませんでした。これは、元患者、原告、弁護団、支える市民の方たち、そして大臣、議員みんなで力を合わせてかち取った大きな英断だとは思いますが、いま一つ、六月一日に判決がございまして、大阪地裁で全面勝訴をいたしました在外被爆者の方たちの控訴期限が六月十五日に迫っています。きょう、あすじゅうに坂口厚生大臣の英断で、これもまた人道的な大きな日本の歴史の一歩を踏み出すことになると思っております。

 きょうから厚生労働省の前で座り込みをしております。あすは被団協、被爆者の方々もその健康を押して、本当に体の調子が悪い方たちも全国から集まって厚生労働省の前に座り込み、控訴断念を大臣に訴えます。

 大臣は今本当に苦慮している状況だと思いますが、ぜひともわかっていただきたいのは、この判決は、被爆者援護法も社会保障と国家補償の性格を併有する特殊な立法と言うべきものである。さらに、同法が被爆者がこうむった特殊の被害にかんがみ被爆者に援護を講じるという人道的目的の立法であることに照らすならば、我が国に居住も現在もしていない者を排除するという解釈を導くことは困難というほかない。被爆者援護法は、被爆者が今なお置かれている悲惨な実情にかんがみ、人道的見地から被爆者の救済を図ることを目的としたものであって、在外被爆者排除は、同法の根本的な趣旨、目的に相反するものと言わざるを得ない。解釈に基づく運用は、日本に居住している者と日本に現在しかしていない者との間に、容易に説明しがたい差別を生じさせることになるから、憲法十四条に反するおそれもある。このように判決は述べています。

 原告の郭さんはもう七十六歳です。大臣は先週会っていただきました。各党の党首にも会っていただきました。これは、今の法律を通達などでねじ曲げるのではなく法のとおりにやれという判決でしたし、私どもも強くそう思います。

 大臣の御英断をぜひとも伺いたい。よろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 この問題につきましては、現在、各省庁と協議をしている最中でございます。総理初め各大臣とも協議をさせていただきまして最終結論を得たいというふうに思っているところでございます。

中川(智)委員 大臣、大臣は会っていただきまして感謝しておりますが、総理ともお話し合いをなさるのならば、ぜひとも総理に会わせていただきたい。何度も官邸の方に議員懇談会や当事者の方々からお願いをしておりますが、総理並びに官房長官は会ってくださいません。大臣のお力添えをお願いしたいのですが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 この問題は、厚生労働省が中心になります法律でありますことはもちろんでございますから、私が一番勉強をしなければならないことはもちろんでございます。土曜日、日曜日、この大阪地裁判決そしてまた広島地裁判決、両方の判決文をよく勉強させていただいたところでございます。かなり勉強をさせていただきました。したがいまして、そうしたことも踏まえながら最終判断に入りたいというふうに思っているところでございます。

 総理や官房長官に私がどうのこうのと言うのも大変失礼でございます。ひとつ、そちらの方はそちらの方でお話しをいただきたいと思います。

中川(智)委員 大臣の御決意が、今度は総理が従うというような形になると思いますので、本当にこのたびも人道的な御決断をぜひともお願いしたいと思います。

 今おっしゃった、広島の裁判の勉強もされているということですが、広島の裁判と大阪の裁判は明らかに違っております。これは、在韓被爆者が原告になっているという点では同じなのですが、中身は全く異なっています。

 広島地裁では、韓国にいる被爆者に手帳を取得することから丸ごと被爆者援護法を適用するように求めた裁判です。でも、こちらの大阪地裁の裁判は、日本に来て被爆者援護法の適用を受けた在外被爆者が日本を一歩出ると被爆者でなくなるのはおかしい、これに対して明確な判決をしておりますので、これは比較対照のものではないということを申し上げておきます。

 確認しなければいけないことがもう一点ございまして、ハンセン病の問題でございます。

 これは質問通告をしておりませんので、私も細かい数字を問うつもりはございませんが、第二次世界大戦中、占領下の朝鮮半島での隔離政策による元患者に対しても同等に扱うべきだと私は思いますが、その当時の実態を厚生労働省は把握しているのか否か、これから調査しなければいけないとお考えかどうか。桝屋副大臣にお伺いいたします。

桝屋副大臣 きょうはずっとこの委員会で、ハンセン病一連の九十年の歴史というものをしっかりと検証してもらいたい、こういう強い要請をいただいております。

 今、私の頭にあること以上のことを委員はおっしゃいまして、韓国の状況もまたつまびらかにしてもらいたい、こういう御要請をいただいたわけであります。検証するための委員会、この活動の中で考えていくべきことだというふうに私は思っております。

 突然伺われまして、戦時中における韓国でのハンセン病の実態というものはどういうものか、私もつまびらかにはしておりません。

中川(智)委員 ぜひともこれも真相究明の大きな一つとして実態調査、そしてそれに対する対応を図っていただきたいと思います。

 最後の質問になりますが、注射の使い回し、そしてメスなどの消毒が完璧じゃなかったということで、隔離政策が生み出したC型肝炎の発症がとても多い。報道によりますと、高いところでは六割、低いところでも二割。普通は一%から大体二%ぐらいです。これほど高いというのは隔離政策が生み出したもう一つの大きな不幸だと思います。今回の原告団の国本さんもC型肝炎、そしてそのことを告げられたときのショックを語っていらっしゃいました。

 肝がんでの死亡はどれだけいるのかということを調べたかどうか、そして今回、九二年、九八年、療養所の所長さんがその療養所の中の実態を調べましたが、どうしてそのときに省としては手を打たなかったのか、それを伺いたいと思います。

河村政府参考人 九二年あるいは九八年の調査で一部のハンセン病療養所の入所者を対象にC型肝炎の抗体検査を行いまして、御指摘のとおり、陽性反応が出た患者の割合が高いという結果が出ております。

 感染の原因につきましては、各感染者の入所までの生活実態がよくわかっておらないということもございますし、それから、それぞれの入所者の入所の時期、これは使われております薬とも当然関係をするわけでございます。例えば、昭和二十年代にプロミンが普及していったわけでございますけれども、これは注射による服用ということでございましたけれども、その後の昭和三十年代にDDSという薬、あるいは昭和四十年代にリファンピシンという薬、これは飲み薬でやってきておるわけでございます。その入所の時期でありますとか治療の内容もそれぞれの時代時代に応じて異なるということもございまして、特定することはなかなか困難でありますけれども、九二年あるいは九八年の報告では、そういう注射針の使い回しあるいはメスの衛生的処理が十分ではなかったのではないかというような御指摘があることは事実でございます。

 現在、感染の判明しております入所者に対しましては、各療養所の主治医のもとで、インターフェロン治療を含みまして治療が適切に行われておるわけでございますし、それから、ハンセン病療養所全体におきます肝炎対策の充実のために、既に全療協、入所者の団体と協議を開始したところでございますけれども、今後、希望者すべてに対しましてC型肝炎ウイルス検査の実施を含みまして感染の実態把握を行いまして、発生予防などの対策を講じてまいりたいというふうに思っています。

 それから、肝がんの発症率については、ちょっと今データの持ち合わせがございません。お答えできません。御容赦願いたいと思います。

中川(智)委員 またもや責任回避をするような御答弁です。本当に死に絶えるのを待っていたという姿勢がよくわかりました。

 また別の機会に質問いたします。ありがとうございました。

鈴木委員長 以上で発言は終わりました。

 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。

坂口国務大臣 ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律案につきましては、政府としては異議はありません。

 ハンセン病問題の全面的な解決に向けての本格的な取り組みは、これから始まるものと認識をいたしております。今後、今回の法律案に基づき、適切な補償を行うとともに、名誉回復及び福祉増進のために可能な限りの措置を講じるほか、患者、元患者の方々の抱えているさまざまな問題について十分に協議し、その早期解決に向けて全力を尽くす決意でございます。

鈴木委員長 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております草案をハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十三日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二十一分散会




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