衆議院

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第4号 平成14年3月20日(水曜日)

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平成十四年三月二十日(水曜日)
    午後二時四十七分開議
 出席委員
   委員長 森  英介君
   理事 鴨下 一郎君 理事 鈴木 俊一君
   理事 長勢 甚遠君 理事 野田 聖子君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君
      岩倉 博文君    岡下 信子君
      木村 義雄君    北村 誠吾君
      小西  理君    後藤田正純君
      左藤  章君    佐藤  勉君
      自見庄三郎君    田村 憲久君
      竹本 直一君    棚橋 泰文君
      西川 京子君    林 省之介君
      福井  照君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      谷津 義男君    山口 泰明君
      吉野 正芳君    家西  悟君
      大島  敦君    加藤 公一君
      鍵田 節哉君    金田 誠一君
      五島 正規君    土肥 隆一君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    西  博義君
      樋高  剛君    小沢 和秋君
      木島日出夫君    阿部 知子君
      中川 智子君    野田  毅君
      川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   厚生労働大臣政務官    田村 憲久君
   政府参考人
   (内閣法制局第四部長)  山本 庸幸君
   政府参考人
   (総務省行政評価局長)  塚本 壽雄君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   審査局長)        上杉 秋則君
   政府参考人
   (消防庁長官)      石井 隆一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 角崎 利夫君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         木村 政之君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局国立病
   院部長)         河村 博江君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            澤田陽太郎君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           真野  章君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君
   政府参考人
   (社会保険庁次長)    小島比登志君
   政府参考人
   (社会保険庁運営部長)  冨岡  悟君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月二十日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     左藤  章君
  後藤田正純君     小西  理君
  竹下  亘君     岩倉 博文君
  棚橋 泰文君     山口 泰明君
  桝屋 敬悟君     西  博義君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     竹下  亘君
  小西  理君     後藤田正純君
  左藤  章君     福井  照君
  山口 泰明君     棚橋 泰文君
  西  博義君     桝屋 敬悟君
同日
 辞任         補欠選任
  福井  照君     上川 陽子君
    ―――――――――――――
三月二十日
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げ中止に関する請願(金田誠一君紹介)(第八二二号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第九〇〇号)
 同(藤木洋子君紹介)(第九〇一号)
 同(大島敦君紹介)(第九三八号)
 同(不破哲三君紹介)(第九三九号)
 患者負担引き上げ中止に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第八二三号)
 同(児玉健次君紹介)(第八二四号)
 同(前田雄吉君紹介)(第八二五号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第八七五号)
 同(木島日出夫君紹介)(第八七六号)
 同(児玉健次君紹介)(第八七七号)
 同(穀田恵二君紹介)(第八七八号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第八七九号)
 同(志位和夫君紹介)(第八八〇号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第八八一号)
 同(中林よし子君紹介)(第八八二号)
 同(春名直章君紹介)(第八八三号)
 同(不破哲三君紹介)(第八八四号)
 同(藤木洋子君紹介)(第八八五号)
 同(前田雄吉君紹介)(第八八六号)
 同(松本善明君紹介)(第八八七号)
 同(大島敦君紹介)(第九二一号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第九二二号)
 同(不破哲三君紹介)(第九二三号)
 同(山井和則君紹介)(第九二四号)
 同(海江田万里君紹介)(第九六一号)
 同(川田悦子君紹介)(第九六二号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第九六三号)
 同(中川正春君紹介)(第九六四号)
 社会保障を拡充し、将来への安心と生活の安定に関する請願(赤羽一嘉君紹介)(第八二六号)
 同(井上和雄君紹介)(第八二七号)
 同(仙谷由人君紹介)(第八二八号)
 同(手塚仁雄君紹介)(第八二九号)
 同(中津川博郷君紹介)(第八三〇号)
 同(中林よし子君紹介)(第八三一号)
 同(西川太一郎君紹介)(第八三二号)
 同(春名直章君紹介)(第八三三号)
 同(松原仁君紹介)(第八三四号)
 同(池田元久君紹介)(第八八八号)
 同(北側一雄君紹介)(第八八九号)
 同(穀田恵二君紹介)(第八九〇号)
 同(吉田公一君紹介)(第八九一号)
 同(伊藤忠治君紹介)(第九二五号)
 同(大出彰君紹介)(第九二六号)
 同(菅直人君紹介)(第九二七号)
 同(志位和夫君紹介)(第九六五号)
 同(葉山峻君紹介)(第九六六号)
 同(保坂展人君紹介)(第九六七号)
 児童扶養手当の抑制案撤回に関する請願(金田誠一君紹介)(第八三五号)
 同(北川れん子君紹介)(第八三六号)
 同(水島広子君紹介)(第八三七号)
 同(北川れん子君紹介)(第八九五号)
 同(菅直人君紹介)(第九二九号)
 同(北川れん子君紹介)(第九三〇号)
 同(北川れん子君紹介)(第九六八号)
 児童扶養手当抑制案の撤回に関する請願(北川れん子君紹介)(第八三八号)
 同(菅直人君紹介)(第九三二号)
 開業助産婦の存続に関する請願(土肥隆一君紹介)(第八三九号)
 無認可保育所への公的助成等に関する請願(土肥隆一君紹介)(第八四〇号)
 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(小渕優子君紹介)(第八四一号)
 同(志位和夫君紹介)(第九六九号)
 医療費の患者負担引き上げ中止に関する請願(北川れん子君紹介)(第八四二号)
 保育・学童保育予算の大幅増額に関する請願(水島広子君紹介)(第八四三号)
 同(大島敦君紹介)(第九三四号)
 国立病院・療養所の院内保育所の存続・拡充に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八四四号)
 同(大石尚子君紹介)(第八四五号)
 同(児玉健次君紹介)(第八四六号)
 同(藤井裕久君紹介)(第八四七号)
 同(水島広子君紹介)(第八四八号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第九三五号)
 同(樋高剛君紹介)(第九三六号)
 同(三井辨雄君紹介)(第九三七号)
 医療への国庫負担を増やし、患者負担引き上げの中止に関する請願(吉井英勝君紹介)(第八六二号)
 医療保険制度改正に関する請願(池田元久君紹介)(第八六三号)
 同(川端達夫君紹介)(第八六四号)
 同(桑原豊君紹介)(第八六五号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第八六六号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第八六七号)
 同(伴野豊君紹介)(第八六八号)
 同(日森文尋君紹介)(第八六九号)
 同(細川律夫君紹介)(第八七〇号)
 同(山内惠子君紹介)(第八七一号)
 同(伊藤英成君紹介)(第九四〇号)
 同(伊藤忠治君紹介)(第九四一号)
 同(今川正美君紹介)(第九四二号)
 同(大出彰君紹介)(第九四三号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第九四四号)
 同(小林守君紹介)(第九四五号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第九四六号)
 同(城島正光君紹介)(第九四七号)
 同(土井たか子君紹介)(第九四八号)
 同(中沢健次君紹介)(第九四九号)
 同(中西績介君紹介)(第九五〇号)
 同(永田寿康君紹介)(第九五一号)
 同(大石尚子君紹介)(第九七〇号)
 同(大畠章宏君紹介)(第九七一号)
 同(海江田万里君紹介)(第九七二号)
 同(仙谷由人君紹介)(第九七三号)
 同(土井たか子君紹介)(第九七四号)
 同(葉山峻君紹介)(第九七五号)
 同(平野博文君紹介)(第九七六号)
 同(保坂展人君紹介)(第九七七号)
 同(山元勉君紹介)(第九七八号)
 国立病院・療養所の院内保育所の改善に関する請願(原陽子君紹介)(第八七二号)
 児童扶養手当の減額、支給期間短縮などの改悪中止に関する請願(加藤公一君紹介)(第八七三号)
 同(大島敦君紹介)(第九五二号)
 働くルールを確立することに関する請願(大森猛君紹介)(第八七四号)
 介護保険制度の緊急改善に関する請願(小沢和秋君紹介)(第八九二号)
 同(藤木洋子君紹介)(第八九三号)
 介護保険と国民健康保険の改善、医療保険の改悪中止に関する請願(中林よし子君紹介)(第八九四号)
 公的年金制度を改革し最低保障年金制度の創設に関する請願(木島日出夫君紹介)(第八九六号)
 健保・共済本人三割負担等の患者負担引き上げ中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八九七号)
 安全で行き届いた看護の実現に関する請願(穀田恵二君紹介)(第八九八号)
 移行教育の早期実現と看護制度一本化に関する請願(穀田恵二君紹介)(第八九九号)
 国民の医療と国立病院・療養所の充実・強化に関する請願(植田至紀君紹介)(第九一八号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第九一九号)
 同(松本龍君紹介)(第九二〇号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第九七九号)
 同(石井郁子君紹介)(第九八〇号)
 同(今川正美君紹介)(第九八一号)
 同(小沢和秋君紹介)(第九八二号)
 同(大出彰君紹介)(第九八三号)
 同(大幡基夫君紹介)(第九八四号)
 同(大森猛君紹介)(第九八五号)
 同(鹿野道彦君紹介)(第九八六号)
 同(川田悦子君紹介)(第九八七号)
 同(木島日出夫君紹介)(第九八八号)
 同(古賀一成君紹介)(第九八九号)
 同(児玉健次君紹介)(第九九〇号)
 同(穀田恵二君紹介)(第九九一号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第九九二号)
 同(志位和夫君紹介)(第九九三号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第九九四号)
 同(島聡君紹介)(第九九五号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第九九六号)
 同(土井たか子君紹介)(第九九七号)
 同(中川正春君紹介)(第九九八号)
 同(中林よし子君紹介)(第九九九号)
 同(楢崎欣弥君紹介)(第一〇〇〇号)
 同(葉山峻君紹介)(第一〇〇一号)
 同(春名直章君紹介)(第一〇〇二号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第一〇〇三号)
 同(不破哲三君紹介)(第一〇〇四号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一〇〇五号)
 同(保坂展人君紹介)(第一〇〇六号)
 同(松本善明君紹介)(第一〇〇七号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第一〇〇八号)
 同(山口富男君紹介)(第一〇〇九号)
 同(山井和則君紹介)(第一〇一〇号)
 同(山元勉君紹介)(第一〇一一号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一〇一二号)
 社会保障拡充に関する請願(亀井善之君紹介)(第九二八号)
 介護保険の改善、医療保険改悪計画の中止に関する請願(不破哲三君紹介)(第九三一号)
 介護、医療、年金制度の拡充に関する請願(不破哲三君紹介)(第九三三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)
 平成十四年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律案(内閣提出第一九号)


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     ――――◇―――――
森委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案及び平成十四年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第四部長山本庸幸君、総務省行政評価局長塚本壽雄君、公正取引委員会事務総局審査局長上杉秋則君、消防庁長官石井隆一君、外務省大臣官房審議官角崎利夫君、厚生労働省大臣官房総括審議官木村政之君、医政局長篠崎英夫君、健康局国立病院部長河村博江君、職業安定局長澤田陽太郎君、社会・援護局長真野章君、年金局長辻哲夫君、社会保険庁次長小島比登志君及び社会保険庁運営部長冨岡悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金田誠一君。
金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。
 年金に関連をしまして、二項目にわたって質問させていただきたいと思います。
 まず一点目でございますが、国民年金法、厚生年金法を初め各年金制度には、年金額の自動改定、こういう条項があるわけでございます。物価スライドと通常言われている条項でございます。
 しかし、今回の法案の提案理由説明によれば、現下の経済情勢にかんがみ据え置くということになっているわけでございまして、今回の措置で三年連続となるわけでございます。
 これでは、実質的には、物価の低下に関しては自動改定条項は空文化をしたと言ってもいいと思うわけでございますけれども、この空文化した理由を解明したい、こう思うわけでございます。
 こういう立場から、以下質問をさせていただきます。
 まず、既裁定年金の金額について、最新の数字をお示しいただきたいと思います。厚生年金について、既裁定年金の最高額、最低額そして平均額、同じく国民年金について、最高額、最低額、平均額、この最新の数字をお知らせをいただきたいと思います。
冨岡政府参考人 お尋ねの、厚生年金の老齢年金受給権者は、平成十二年度末現在で九百一万人でありますが、平均年金月額は十七万五千八百六十五円となっております。個々人の方の年金額は、それぞれの平均標準報酬月額や加入期間の違いによりまして差がございますが、私どもが把握しております月額階級別の統計によりますと、年金月額が五十万円以上の方は五百三名おられます。一万円未満の方は四人というのが、上と下の方の分布でございます。
 次に、国民年金の老齢年金受給権者は、平成十二年度末現在で千六百六万人でございますが、その平均年金月額は五万九百十八円となっております。月額階級別の統計によりますと、年金月額は、七万円以上の方は七十五万一千三百五十人おります。また、一万円未満の方は八万八千九百九人でございます。
 以上でございます。
金田(誠)委員 厚生年金の方は、この金額には基礎年金も含んだ金額ということになりますでしょうか。
冨岡政府参考人 そのとおりでございます。
金田(誠)委員 いずれにしても大変な開きがあると思うわけでございます。厚生年金については月額五十万円超、大変な金額でございますし、一方では一万円にも満たないという状況でございます。国民年金については七万円超あるいは一万円にも満たない。そして、大臣も御承知だと思うわけでございますが、この最低の金額あるいはこの最低金額に近い年金額で、それだけで生活をしておられるという方もいらっしゃるわけでございます。私の身の回りにも現実にそういう方は結構多いわけでございます。
 この最低年金額や、それに近い年金額で生活をしておられるお年寄りに対して、大臣、物価スライド、物価が下がったからといって何%か下げるということは現実におできになりますでしょうか。私は、普通の感覚を持った人間であれば、五十万超みたいな方は物価の下落を超えて減額していただいてもいいのかなという気もしないわけではないですが、一万、二万、三万なんという金額の方に、物価が下がったから何%か下げますよ、こんなことは人間なら言えたものじゃないと思うわけでございますが、大臣、いかがでございましょうか。
宮路副大臣 今委員御指摘のように、年金受給者の中には、例えば国民年金制度の発足時に既に高齢であった方とか、あるいはサラリーマンの専業主婦で任意加入しておられなかった方といったような方々につきましては、年金の受給額が低い水準になっておること、御指摘のとおりであります。
 このように、年金の額は個人それぞれの年金の加入歴によっていわば異なっておるわけでありまして、一方、物価スライドでございますが、これは、年金の額の高い低いにかかわらず、物価に連動して年金額を改定して、そのことによって、受給者一人一人について年金の実質的な価値といいますものを、つまり購買力と言いかえることができるかと思いますが、それを物価の変動に合わせて維持していく、こういう趣旨で導入されている制度でございますので、個々の年金額の高い低いによってスライド制の適用があったり適用がなかったりというような、そういうことにはなっていないところでございます。
金田(誠)委員 副大臣、御答弁いただいてありがとうございますが、聞いていることはそういうことではございません。
 大臣に改めてお聞きをしたいと思います。
 私は、物価下落に伴う年金の物価スライドについては実質できない、空文化している、この理由は何なのか解明したいということで質問しているわけでございます。今一万円、二万円、三万円という年金額の方が現実にいらっしゃる、その理由は今副大臣おっしゃったとおりでございますけれども、そういう中で、物価が下がったからといって年金額を下げるなんという状況があるのか、下げられるわけがないだろう。ここに物価下落に伴う引き下げができない理由があるという立場でお聞きをしているわけでございます。
 大臣、どうですか。一万円、二万円、三万円、まあ四万、五万でもいいですよ、そういう方に、物価が下がったからといって、普通の人間なら連動して下げますということを言えますか。
坂口国務大臣 厚生年金におきましても一万円以下の方があるというのは、私も今初めて知ったわけでございますが、今御指摘いただきますように、制度は制度といたしまして、心情的に申しますならば、一万、二万の皆さん方に物価が下落したからこれで下げますよということは、それはなかなか言いにくい話であることだけは間違いがございません。
金田(誠)委員 率直なお答えだと思いますし、普通の感覚であれば、それはもう当然だと思うわけでございます。ここに日本の年金が物価スライドで引き下げできない根本的な理由があると私は思います。
 大臣も恐らく同調していただけると思うのでございますが、そう考えるならば、ここでパネルをお示しいたしますけれども、これはスウェーデンの公的年金制度を図にしたパネルでございます。
 スウェーデン型の最低保障年金、この黄色で色塗りしている部分でございますが、こういう最低保障年金の仕組みを導入するということを真剣に考えるべきではないか。大臣、いかがでございましょうか。
坂口国務大臣 スウェーデンの仕組みというものを私は十分に理解しているわけではございませんけれども、負担能力がなくて保険料免除を受けた期間については、国庫負担に相当する三分の一の給付を日本は保障しているということでございます。
 スウェーデンの場合にはどういうふうになっているかよくわかりませんが、日本の場合には負担能力が低い方の皆さんには国庫負担で三分の一の給付を保障していることになっておりますから、それと同じ形にはならないと思いますけれども、若干似たようなシステムはとっているというふうに思っております。
 未納がない限り、基礎年金額の三分の一は最低保障されているというふうに考えております。最低保障年金として保険料の拠出と無関係に一定の保障を行うことは、これは保険料を滞納した人にも一定の給付を保障するものでありますから、結果としては滞納を助長したり、社会保険方式の根底に触れることになりますことから、なかなかそこは困難だというふうには思いますけれども、低いところに何らかの措置をしなきゃならないという御指摘ならば、それは私もそのとおりではないかというふうに思います。
金田(誠)委員 このスウェーデンの制度でございますけれども、日本の制度と比較して違うところは、日本はこの黄色い部分がないということだと思います。したがって、厚生年金でいうと、月額でいえばゼロから五十万円超まである。
 よく、日本の年金制度を図でかいた場合に、一階建て、二階建てということで言われまして、一階の基礎年金部分がずっと平行線でかかれることが多いわけですね。しかしそれは、年金保険料を満額払い込んだ場合の図であって、現実には今、数字を先ほど聞きましたとおり、一万円以下の年金もあるという状態、あるいは無年金という方もいらっしゃるわけですから、このスウェーデンの年金制度から黄色の部分を取り除いた、これが日本の年金制度なわけです。そして、こういうゼロの年金者もいるという制度は、私は、いわゆる先進国ではそう例がない制度ではないかな、こう思っております。
 ちなみに申し上げると、イギリスでは、一昨年実は訪れる機会があったんですが、ペンションクレジットという名前で、これも全額国庫負担、ミーンズテストつきだそうですけれども、名前はペンション、年金なわけですが、実質、生活保護に近い形でございます。そういう形でこの最低保障がなされている。あのサッチャーさん、福祉の嫌いなサッチャーさんの時代でさえも、それだけは残ったということを伺ってまいりました。あるいはドイツでも、低所得の方とか障害者の方とか、そういう方にはかなり手厚い制度がされているというふうに伺っております。
 年金制度だけ調べて出てこなくても、生活保護と連動する形で、かなりの国がこういう実質最低保障年金を給付しているという実態があると思うわけです。日本は、それがない。
 したがって、一万円とか二万円という年金で、それだけで暮らしている方もいらっしゃる。だから、法律上は、物価が下がったら年金も下げるんだよと規定はされているけれども、実質空文化している。そんなこと、できもしないわけですよ。寝ている病人の布団をはがすような話ですから、できもしない。そういう年金制度に日本がなっているのは、根本的な問題は、この最低保障年金という部分がないから、この最低保障年金という思想がないからだと思うわけでございます。
 ちなみに、我が国においても、年金審議会の答申などで、いわゆる無年金障害者の方々、この方々には福祉的な措置で年金を給付するようにという答申が何度か出ていると思うんですね。しかし、いまだに実現をしていない。
 繰り返しますが、スウェーデンのこの最低保障年金部分は、全額国庫負担、保険制度の枠外でございます。イギリスのペンションクレジットも同じでございます。こういう仕組みをこれから導入していかなければ、こういうゼロから五十万円超までというような年金制度というのは余り世界にも例がないし、物価スライドで引き下げることになっている今の仕組みが機能できないような、三年連続して特例法をつくらなきゃならないような、そんな状況になっている。
 大臣、よく御理解いただけると思うんですけれども、いま一度このスウェーデン型、あるいはまた別な日本型というのもあるのかもしれませんが、いずれにせよ、最低保障年金という考え方を導入する、これはもうぜひ前向きに検討すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。再度、大臣、お答えをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 後でまた詳しいことを局長が話をすると思いますが、そうした意味で、日本の場合にも基礎年金制というのができ上がっていて、そこだけはちゃんとひとつ確保しましょうよということになっていると思うんですね。
 だから、先ほどの一万円というのは、どうして出てきたのかちょっと私もよくわからないんですけれども、年金をかなりの期間おかけにならなかったといったようなことがあったので、そういうふうになったのではないかというふうに思います。
 したがって、制度としては、日本の中にも、その基礎年金だけは確保ができるような形になっているわけでありますから、その枠組みに当てはまるように皆さん方に御努力をいただけるかどうかということにかかっているわけでございます。それでも、なおかつそこにお入りをいただけない人たちに対してどうするかという話はまた別途の問題として出てくるだろうというふうに、私も率直に言ってそう思いますが、お入りをいただく以上は、そうはならないということになっているというふうに私は思います。
 もう少し細かな数字、局長から。
金田(誠)委員 いや、いいです、時間がないものですから。
 大臣、年金を、掛金を掛けていれば、国民年金でもこの最低保障ぐらいのところまでは給付になるわけです。スウェーデンでも、所得比例年金というのはあるわけです。ですから、これで一定レベル以上になっている方には問題ないわけで、それはイギリスも同じなわけですよ。
 しかし、若いころ、どういう事情があったにせよ、例えば無年金障害者という方もいらっしゃいますけれども、いずれにしても、最低の生活レベルを年金が下回るような状態のときに機能するのが最低保障年金という制度。これは諸外国、かなりやっているということでございます。ここに踏み込まないと無年金障害者の問題も解決しないんじゃないかというふうに思って、今回わざわざ、もう百も御承知だと思うんですが、この中身をパネルにして持ってきたところでございます。またいずれ、機会を改めて、この点については議論をさせていただきたいと思います。
 次の質問に移らせていただきます。
 これはお手元に資料で配らせていただいております、二枚紙でございます。これは、月の末日付で仕事を退職した人が、退職の翌月分の年金一カ月分をもらえなくなってしまったことについて質問をするわけでございます。
 例えば三月三十一日で退職した方でございますが、この図の方でございます。これは一番上、平成六年改正以前は、年金は五月分から支給をされておりました。三月末で退職、五月分から支給、四月分はもらえないというのが仕組みでございました。それが平成六年改正によって、年金は四月分から支給されることになったわけでございます。
 こういう形で、大変いい改正をしていただいたわけでございますけれども、さらに平成十二年改正によって、もとの五月分からの支給に戻されたということでございます。これが、法律の条文についても、次の資料に添付をいたしてございます。それぞれ、こういう形の中で、一たん四月からもらえるようになったものが、五月からにまた戻されてしまった、こういう実態でございます。
 大臣、今申し上げましたこの経過について、これで間違いないと思いますが、御確認をいただきたいと思います。
宮路副大臣 今の御指摘の点でありますけれども、三月一日に退職をされた方に対する年金の支給につきましては、平成六年の改正の前後を通じ、また、その後、平成十二年にも法改正をやっておるわけでありますが、いずれも一貫して、私ども厚生労働省としては、五月分の年金からその方には支給を行う、そういう取り扱いで今日まで至っているところでございます。具体的な経過、あるいはその運用の解釈、法律の解釈については、政府参考人から説明をさせていただきたいと思います。
 失礼しました。三月一日とさっき答弁申し上げたようですが、三月三十一日に退職した者でございます。
辻政府参考人 いま少し、経過につきまして御説明申し上げます。
 このお配りいただきました条文に即して経過を御報告いたしたいと思います。
 このお配りいただきました条文、一番上に厚生年金保険法三十六条、附則十一条というような規定がございますが、厚生年金で六十歳で例えば受給権が発生している、しかしながらお勤めであるというときには、お勤めでありますので負担能力がありますので、十一条に基づきまして支給停止がなされます。そして、お勤めをやめましたときに、いつから支給停止が解除されるかということが三十六条に書いてあります。そのような規定のもとによりまして、この一枚目にあるような、例えば三月三十一日退職につきましては、五月から支給停止解除がされる、五月からもらえるようになるという解釈で行われてまいりました。
 問題は平成六年の改正でございますが、六年の改正で、この「平成十二年改正前(平成六年改正)」という中段をごらんいただきたいと思いますが、三十六条の規定を十一条の七で一定の場合には適用しないというふうにして、そして、今の在職者の支給停止の根拠の十一条を改正いたしております。その結果、実は、五月から支給停止の解除があるんじゃなくて、四月から支給停止解除、すなわち四月から支給ができるようになったんではないかという考え方があるということについての御指摘かと存じます。それについては、結論から申しますと、私どもはそのように解釈いたしておりません。
 具体的には、恐れ入りますが、詳しく御説明させていただきますと、なぜ十一条をこのように改正したかということでございますが、通常、支給停止の根拠というのはさまざまございます。他の年金をもらっているから支給停止するとか、それから、今言ったようなときだから支給停止するとか、さまざまな支給停止の根拠の規定と、そして、その根拠に基づいて動き始めたときにいつから停止するという規定と、二つに分かれて入っているのが普通でございます。
 ところが、平成六年に、この十一条に関しましては、一つは、支給開始年齢の延長が行われまして、例えば六十一歳までは報酬比例年金、六十一歳に到達しますといわゆる厚生年金の定額部分と報酬比例年金といったように、年金の種別が変わる、一方において被保険者資格はずうっとつながっている、こういう今までの規定ではきちっとうまく読めて動かないような状況が出てきた。あるいは、平成六年の改正におきまして、在職中の給与だけではなくて、もらう年金額と合わせて、その総額によって支給停止をどうするかという仕組みに変えました。
 そうなりますと、これは、月々単位で支給停止を行うということを、この二つの規定ではなくて、一つの十一条の規定で書かなければなかなか条文上の整理がつかないということで、支給停止の仕方を、原因も、それから支給停止の月もすべて十一条に書いたものでございます。したがいまして、十一条の七で三十六条は適用しないとしたわけでございます。
 詳細省きますけれども、十一条の解釈として、私ども一貫して、やはり同じように五月から支給停止解除である、四月分はもらえないという解釈をとっておりまして、十二年改正でそのことを入念的に明らかにするために改正をいたしました。したがって、十一条の七で三十六条を適用しないという規定があるままで、やはりきちっと五月分から、すなわち四月はもらえないという運用をしております。
 内容的には、もし月末退職だけに関して四月から支給するということにいたしますと、結論から申しますと、在職している間、保険料負担しております。保険料負担するような月々は負担能力があるので支給停止するということで、保険料負担した月と支給停止する月が合うように仕組まれております。ところが、月末に退職した人だけ仮に御指摘のような解釈をとりますと、月末に退職した人のみ保険料負担をした月数よりも支給停止をされる月数の方が短くなって、一カ月もうかることになります、ちょっと不適切な言葉でございますが、得をすることになります。
 したがいまして、私ども、そのような解釈は到底公平な年金制度の運用としてはとれないという実質的な意味も持ちまして、このような解釈については一切変えておりません。
 以上でございます。
金田(誠)委員 厚生労働省が平成六年改正において、このように支給を四月に繰り上げて一カ月早く支給するという意図がなかったという意図については今局長がおっしゃったとおりなのかなという気もいたします。しかし、その意図によってつくられた法律の条文は、どこをどう読んでも四月から支給されるという条文になっているわけでございます。
 局長、答弁長いものですから、質問時間、もうほとんどなくなってしまって、これは次にまた引き続いてやらなければならないかなと思っているんですが。これは、意図と違う条文に結果的になってしまった場合の後始末の問題、これは意図がそうでなかったんだからそれで通すんだということでは、私は通用しないというふうに思うわけでございます。
 これはもう政府として、内閣として、今後のこともありますから、きちっと整理をしていただかなければならないと思うんですが、内閣法制局であれば、文理上、私の指摘しているように読めるということはきちっとお認めいただけると思うんですが、いかがでしょうか。
山本政府参考人 お答えいたします。
 平成六年の厚生年金保険法の改正によりまして、確かに附則十一条一項が改正されております。お手元にありますから読み上げませんが、この中で、「被保険者である日」というものの解釈がポイントでございます。
 厚生年金保険法を所管されております厚生労働省におかれましては、先ほどの年金局長の御説明がありましたように、保険料徴収月数と支給停止月数とを同一にするという前提のもとに、この規定の「被保険者である日」というものを資格取得日から資格喪失日までと解釈して、従前どおり運用されているもの、そう解釈しております。
 この点、内閣法制局といたしましては、厚生年金保険法十四条の規定によりまして、被保険者の資格喪失日は退職日の翌日であるということになっておりますので、この附則第十一条第一項を見ますと、資格喪失日については被保険者ではないとの疑義が生じたということもやはり否めない事実でございます。そこは先生のおっしゃるとおりでございます。
 しかしながら、法律の解釈そのものは、その条項の制定の背景、それから法律全体の基本的考え方を踏まえて解釈すべきものでございまして、この場合は、とりわけ保険料徴収月数と支給停止月数とを同一にする、その前提がやはりあるものではないかと思っております。
 いずれにせよ、こうした解釈上の疑義が生まれるということは余り好ましくございませんので、その意味で平成十二年に改正がされて、その点は措置されたというふうに承知しております。
金田(誠)委員 平成十二年に改正をしなければならないような条文であったということなわけですから、この平成六年改正は、私の指摘したような内容の改正であったということは確かだと思うんですよ。そうでなければ十二年改正というのは必要ないわけで、まさに語るに落ちるということだと思います。
 さらにそのことを裏づける根拠として、平成九年八月二十九日付神奈川県社会保険審査官の決定というものがございまして、その中でも、現行の法令のもとでは平成八年四月分から行われるべきものと思料される、それは平成六年改正法附則三十一条四項の規定により適用される平成六年改正法附則第二十一条を参照するように、こういう指摘でございます。
 したがって、条文上では私が申し上げたとおりです。それは意図と違うとおっしゃるかもしれませんが、でき上がった条文というのはそういうことですから、この整理というのは、大臣、どうでしょうか、きちんと一回政府部内で検討をされて、この種問題、どう対処するのかという見解を明らかにすべきだと思いますが、いかがでしょう。
坂口国務大臣 週刊誌にもこの話が出ましたときに、局長にも私説明を受けたわけでございますが、忙しい忙しいで聞くものですから、なかなかよく理解ができなくて、今改めてまた局長の話を聞いたわけでございまして、いわゆる立法者の趣旨としてはそういうことだったのだろうというふうに思っております。
 しかし、今法制局のお話にもございました、そうしたことも踏まえまして、今後誤りなきようにひとつしていきたいというふうに思っております。
金田(誠)委員 時間が参りましたから、また別の機会に質問をさせていただきたいと思います。終わります。
森委員長 次に、大島敦君。
大島(敦)委員 民主党の大島敦です。
 国民年金法の質問に入る前に、何点かお伺いさせてください。
 まず一点は、雇用保険財政について確認したいと思います。
 昨年の十一月の二十一日の当委員会で、雇用保険財政について、弾力条項の発動について坂口厚生労働大臣に伺わせていただきました。その際の大臣の御答弁は、弾力条項の発動については考えていらっしゃらない、決めていらっしゃらないとの答弁でございました。
 ちょうど今月で年度が閉まります。そして、雇用保険の財政についても、実態、本当の実数が出てくるのも近々であると思います。そうしますと、今の雇用保険の財源でいいのか、あるいは弾力条項を発動した方がいいのか、あるいは根本的に雇用保険制度自体を見直した方がいいのか、そろそろ議論を開始する時期だと思うわけでございます。
 そうしますと、これで影響を受ける会社側そして従業員側も、厚生労働省の、国の方向というのを改めて知っておいた方が、事前に知っておいた方がいいと思いますので、そのところを、簡単な内容で結構でございますので、坂口大臣の方から伺わさせてください。
坂口国務大臣 雇用保険の弾力条項の発動の見込みということにつきましては、先生にも前、昨年の十二月でございましたか、御質問をいただいたことを記憶いたしております。そのときにも申し上げたというふうに思うんですが、さまざまなことを検討しながら、四月ぐらいな段階になればいろいろのことを考えなければならないのではないかというふうに申し上げたと思っております。三月も半ばになりまして、桜も咲いてきたわけでございますから、少し全体を整理しなきゃならない時期が近づいてきたというふうには思っております。
 前回もあるいは申し上げたかもわかりませんが、この十三年度におきまして、なお積立金が四千九百八十七億円あるわけでございます。十二年度は八千億からあったわけでございますが、これも取り崩しをいたしまして、現在、四千九百八十七億円でございます。
 これは、平成十四年度の経済動向がどうなるかということによって雇用状態もかなり変化するだろうというふうに思いますけれども、昨年並みの雇用状況であるというふうに仮定をいたしますと、これだけの積立金がありますので、平成十四年度はしのぐことができ得る状況にある。しかし、それ以後のことを展望いたしましたときに、それでは、もう積立金なしで、それからはその日暮らしになるのかというふうにいえば、それはそういうわけにもいかないんだろうというふうに思いますから、ことしの経済の展望だけではなくて、もう少し将来のことも念頭に置きながら、どうするかということを決めなければならない時期が近づきつつあるというふうに私も思っている次第でございます。
大島(敦)委員 次の質問に移らさせていただきます。
 次の質問というのは、BSE関連の質問なんですけれども、先月の二月の二十七日の当委員会で、自由党の樋高委員の質問に対して、農林水産省の宮腰政務官より、BSE対策の一つとして、牛一頭一頭につけた一つの番号で農場から食卓まで牛肉の流れを管理する、あるいは流れをトレースすることができる仕組みの導入を検討しているとの発言がございました。
 この仕組みはフランス等で実現されており、確かに理想的なシステムとは思うんですけれども、一頭の牛から細かく分割される牛肉等の食品の管理を流通が複雑な日本で果たして実現できるのか、できるのであればいつごろとお考えなのか、また、実現するためには結構多額なコストがかかると思うんですけれども、その点は大丈夫なのか。厚生労働省の具体的な意見をお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 ここのところは、これは農林水産省の方でひとつイニシアチブをとっていただきたいというふうに思うわけですが、こうすることによって明確になることだけは間違いないと思うんですね。どの牛がどのように飼育され、どのような経過をたどって、そして屠畜されるか、そういう一連の経過ということが明白になることだけは間違いがない。いわゆる戸籍がはっきりするということだけは、これはもう紛れもない事実でございますから、それはそれなりに意味があることというふうに思っております。
 しかし、だからといって、屠畜されてしまいました後も大丈夫かということになりますと、屠畜されてしまって耳が切り落とされました後は、これはわからないわけでございますから、その後のことはそれではわからない。その屠畜をされるまでの間はそれがはっきりするということだろうというふうに思っておりますので、意味は私はあるというふうに思いますが、ただ、これを行いますのにどれぐらいの費用がかかるものなのかとかどうかというようなことを私ちょっと存じませんので今お答えすることができ得ませんけれども、屠畜までの間の意味はあるだろうというふうに思っています。
大島(敦)委員 そうしますと、屠畜されるまでの牛一頭一頭のバーコード管理についてはされるということなんですけれども、屠畜された後、食卓にのるまでの牛肉の個別の管理ということについては、現状では国としては無理であるというような考え方でよろしいでしょうか。
宮路副大臣 確かに、屠畜、屠殺の段階で耳標はなくなるわけでありますが、その耳標の持った番号をずうっと最終の小売の段階までどういうぐあいに担保していくか、そのことについては農水省の方で今検討をいたしておるところでありまして、私ども厚生労働省としても、その検討会に一緒になって参加して協力していくということで今取り組んでいるところでありますので、そういう可能性を追求しながらやってまいりたい、このように思っているところであります。
大島(敦)委員 もう一つ、BSE関連の御質問をしたいんです。
 今回の、トレースがもしもできるシステムが確立しても、売り場で表示がごまかされてしまってはどうしようもなかったり、特に昨今、食品の表示についての問題が多々ございますので、そのところの、日本での食品表示に関する法律というのが全部で四本あると思います。JAS法、食品衛生法、景品表示法、不正競争防止法、四本あって、管轄する省庁も、農林水産省、厚生労働省、公正取引委員会、経済産業省と四つございます。そのため、食品表示においてもいわゆる縦割りの行政の弊害があり、今回のような食品の不正表示の横行につながった原因の一つとも考えられていると私は考えます。
 やはり、ヨーロッパ諸国のように、法律も行政も一本化して、効率よく強力に監視するシステムが日本では必要でないかと思っておりまして、前回、BSEの調査検討委員会の最終報告の中では、基本法なり、あるいは食品安全庁のような行政組織の設置を提言する方向と伺っているんですけれども、そのような方向について厚生労働省としては具体的にどうお考えでしょうか。
坂口国務大臣 まだ決定をするところまで至っておりませんが、そうした御意見もあるということを私たちもお聞きいたしております。
 今までの経緯を振り返りましたときに、そうした食料につきましては一カ所で行政としても扱っていくということが大変大事だということは私たちもよくわかっておりますが、それでは、私の方の食品衛生の方をやっておりますところがそちらの方へ例えば行く、そうすると、BSEに関しましては農林省と厚生省の間のタイアップがうまくいく。しかし、例えばO157みたいなのが今度発生をしましたときに、そうすると今度は感染症との間の、食品衛生との間の問題が起こってくる、そうすると、その問題は今度は、片や厚生省、片や、そういう新しいのがどこにできるかわかりませんけれども、内閣府なら内閣府ということになってしまって、またそこに亀裂が生まれてくる。
 だから、これは、いずれに分けたといたしましても、いずれを統合するといたしましても、そういう問題は将来ともについて回ることだというふうに思っております。したがって、そこは、そういう行政のあり方、分け方ということだけではなくて、どういうふうに分かれておりましても、ふだんから、いわゆる縦割りではなくて横割りの感覚をどう持つかということが大事だろうというふうに思っております。
 ですから、この前も少し申し上げたんですが、縦割りだけの予算ではなくて、こういう食品衛生なら衛生の場合には、もう少し横割りの予算みたいな形の考え方はないのかというようなことも言ったわけでございますが、そういう横割りの考え方でこれからどう対応していくか、常に連携を密にしていかなければならないということなんだろうというふうに思っています。
 だから、今までだったら、これはよその範囲だからというので全部言うことを控えてきたわけです、これは農林水産省のことだから、こちらが言うのは少し控えようじゃないかと。やはり、それはいけないので、我々は我々としてこう思うということを明確に言わなきゃならない、そのことが一番大事なことだというふうに思っている次第でございます。
大島(敦)委員 ありがとうございました。
 ともすると縦割り行政でございますので、そこのところを政治主導で、横の連絡を密にとりながら、国として一番安全な食品行政を進めていっていただきたいと思います。
 BSEに感染して起こるとされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病がヨーロッパで確認されていることから、現在、イギリスなどヨーロッパ十カ国に六カ月以上滞在したことがある人は献血できないことになっております。しかし、日本でもついにBSEに感染した牛が確認されました。感染例は多くないんですけれども、未発生だった状態とは大きく状況は変化していると考えます。
 今後の対応について伺わせてください。
坂口国務大臣 英国の場合には十八万頭から出ているわけでございますから、日本の三頭出たのとは大分話は違うというふうに思いますが、これから日本ももう少しBSEの発生が進んでくるというようなことになれば、それは、私はやはり分けているのも余り意味がなくなってくるなという気がするわけでございます。
 しかし、ヨーロッパにおきます今までのBSEの発生状況、並びに、そこからさらに人間への変異型ヤコブ病が発生をしてくる、そういう経過を見てみますと、やはりヨーロッパと日本との間では、それは質的な違いではなく程度の差にはなったかもしれませんけれども、この程度の差は現在のところはかなり大きいというふうに理解をいたしております。
 したがいまして、ヨーロッパと日本との差をつけて、そういうふうに今やらせていただいておりますが、このことはもう少し現状のままで続けさせていただいて、そして、将来のいろいろな動向もまた勘案したいと思っているところでございます。
大島(敦)委員 国民年金法について質問をさせていただきます。
 昨年の三月十六日の厚生労働委員会で我が党の古川委員が質問いたしましたように、完全自動物価スライド制がある以上、年金制度について不安を持っている現役世代、そして若い世代に納得がいく説明、特に国民年金の財政の問題について現実味ある見通しをすることが必要でありますし、また、これも古川委員が指摘したように、完全自動物価スライドができない理由の一つに少額受給者の問題があります。早急に基礎年金部分の改革をしなければ、また来年も再来年も据え置きということになりかねないと思うのですけれども、いかがでしょうか。
 そして、昨年、古川委員の質問に対して坂口大臣は、物価スライドの問題は本年までに決着をつけなければならない話だと思うとの答弁がございましたけれども、その点はいかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 確かに、昨年御質問をいただきましたときに、私はそう答弁をしたというふうに思っております。そのときの私の頭の中は、少なくともさらに物価が下がっていくということはないんだろう、横ばい、または少しは上向いてくるのではないかという思いがございまして、もし多少でも上向いてくるということになれば、それと今までとの間のを帳消しにすると申しますか、そこで埋め合わせをするという方法もあるのではないかというふうに思っていたわけでございますが、少し見通しが甘うございまして、さらにまた下がるということが続いてきたわけでございまして、同じようなことを皆さん方に御提案申し上げなければならなくなったわけでございます。
 法律をつくっておきながら、毎年こういうことを出させていただかなければならないというのは余り格好のいい話ではございませんで、私もじくじたるものがあるわけでございますけれども、先ほどからお話がございますとおり、諸般の事情を考えましたときに、年金生活者の皆さん方に対しまして、やはりここで引き下げるということはどうしてもできないという結論になったわけでございます。
 現在の経済状況のこともございますし、また公務員の給与につきましても、据え置かれはいたしましたけれども、年々歳々の引き上げは行われるわけでございますので、こうしたことも影響したというふうに思っておりますが、そうしたことも念頭に置きまして今回の決定をさせていただいたということでございます。
大島(敦)委員 最後に、年金関連でもう一つ質問をさせてください。
 昨年の日本版四〇一k、確定拠出年金の法案が通りまして、もう施行されていると思います。今の現状がどうなっているかというところと、ことしになってから、アメリカのエンロン社の破綻によって非常に影響を受けた方が多かったという報道がございました。特に、今回の日本版四〇一kでもそうなんですけれども、企業、自社株をファンドの中に組み入れることが可能でございますので、その点のリスクについてどのようにマネジメントしていけばいいのか。
 この法律の一条には、「自己の責任において」という言葉がありましたので、それはもうすべて自己責任で仕方がないという割り切りもできると思うんですけれども、やはり老後のことを考えると、ある程度の制約は必要だと私思うんですけれども、いかがでしょうか。
宮路副大臣 今御指摘の確定拠出年金でありますが、これは去年の十月から委員御案内のとおり施行されているところであります。
 そして、その中で、企業型年金につきましては、最近の時点で私どもが把握しておりますところは、四十三社の企業について規約を承認いたしております。それから個人型年金でございますが、現在までのところ、二百四十八名の方につきまして国民年金基金連合会において受け付けをさせていただいて、加入が認められているところでございます。
 そこで、エンロンが破綻したときに、エンロンの社員の皆さんが、その確定拠出年金の運用先として自社株を相当持っておられたということで、そのことが大変不幸な目に遭ったということでありますが、私ども承知いたしているところでは、エンロンの場合は、四〇一kにつきまして、企業の拠出分について従業員が五十歳になるまでは自社株で運用するようにという制限を設けておったとか、あるいは、会社の経営状況について正しい情報提供が社員の皆さんに必ずしも行われていなかったといったような、そういうことがああいう結果にどうもつながったようであります。
 ところが、我が国の確定拠出年金制度におきましては、企業が加入者に対して自社株を含めて特定の運用商品を推奨したり、あるいは制限することは御承知のとおり一切禁止をいたしておるところでありまして、したがって直ちにエンロンの場合と比較できない、そういうようなしっかりとしたリスク管理についての歯どめがしてあるというふうに私ども理解をいたしております。
 また、自社株についてはそうしたリスクが非常に伴うということを徹底して加入者に情報提供するように、企業に対して私ども指導をいたしておるところでございますので、現在のところは今のような制度の仕組みでいいのではないかなというふうに思っております。
 自社株を含めて、加入者の本人の運用先商品についての選択をこれ以上今のところ制限することは必要ではないのではないかなというふうに、両方比較してそう考えておりますが、いずれにしましても、今度のエンロンのこういった問題の経過等を十分念頭に置きながら今後の制度の運営に当たってまいりたい、このように思っておるところであります。
大島(敦)委員 ありがとうございました。
森委員長 次に、山井和則君。
山井委員 本日は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の審議でありますが、冒頭に、今非常に問題になっております救急救命士の業務拡大について、坂口大臣の御決意をお伺いしたいと思います。また、石井消防庁長官にもお越しいただいております。ありがとうございます。
 この問題につきましては、民主党の今井澄議員、山本孝史議員、そして大臣のおひざ元であります公明党の渡辺孝男議員や、また自由党の森ゆうこ議員、そして、自由民主党でも昨日この問題に対するワーキングチームが発足したというふうに聞いております。
 そういう意味では、全党挙げた本当に緊急の課題ということになっているわけで、それに対して坂口大臣からも前向きな答弁が出ているわけですが、一日も早く制度の改正が必要な問題でありますので、そのことを、その時期のことについてお伺いしたいと思います。
 まず最初に除細動についてなんですが、一分一秒を争う行為で、医師と救命士が連絡をとっている間にタイミングを逸して手おくれになって心停止状態になってしまった、そのような問題も起こっております。医師の指示なしでできるようにすれば救命率はアップするということがもう現場の一致した意見であります。実際、機械も進歩しまして、アメリカなどでは訓練した一般の人もやっておりますし、日本でも飛行機の客室乗務員ができるようになりました。また、きょうお配りしました資料三にありますように、平成十二年の報告でも、「必ずしも同時進行性の指示に限る必要はないと考えられる。」というふうな結論も出ているわけであります。
 今井議員の質問に対して坂口大臣は結論を急ぐと答弁しておられますが、この急ぐということ、一日も早くこういうことは可能だと思いますが、告示改正の時期について坂口大臣にお伺いしたいと思います。また、消防庁の御見解もお伺い申し上げます。
坂口国務大臣 救急救命士の問題につきましては、これはこの法律ができますときから、どうすべきかという懸案であったというふうに私も聞いているわけでございまして、結論を急がなければならないというふうに思っております。
 この問題は、いろいろな立場があっていろいろなことをおっしゃいますけれども、しかし、救急救命を受けなければならない患者さんの立場を中心にして、ぜひひとつこれが必要かどうかということの判断をしなければならないというふうに思いますし、もしも必要でありますならば、それはどういうときに必要なのかといったことも決めなければならないというふうに思っております。
 また、それをもしも行う人がふえるということになれば、その人たちに対する教育はどういうふうにあるべきかというようなことも考えなければならないというふうに思っておりまして、それらの点につきましては、今急いで、それこそ急いで検討をしていただいているところでございます。
 いつまでにという、日を切ってもなかなか申し上げることができませんけれども、救急救命の問題でございますから、内容が内容でございますから、やはり急いで結論を出さなければいけないというふうに思っている次第でございます。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 今坂口厚生大臣からも御答弁ございましたように、指示なしで除細動を行うというようなことにつきましては救急救命士制度発足の当時からの懸案でございましたけれども、平成十二年三月にまとめられました私どもの救命効果検証委員会、これは委員長が当時の日本医科大学の理事長の大塚先生でございますが、この報告書におきましても、心肺停止の状況を発見してから除細動の実施までに要する時間が短いほど救命効果が高いということが実証されております。
 また、お話に出ましたように、現在使用されております半自動式除細動器は、除細動器が心電図の波形を解析した上で除細動が必要であるという旨を表示しまして、救急救命士はこれを受けて除細動実施のボタンを押すという仕組みになっておりますので、医師の具体的な指示がなくても除細動を行うことができるんじゃないか、そのために特に新たな研修を追加する必要もないのではなかろうかと考えておりまして、私どもとしましては、今大臣からも御答弁ございましたが、できるだけ早期に実現していただくように今後とも要請してまいりたいと思っております。
山井委員 大臣、救急救命のことなので急いで検討するということですけれども、私のきょうの資料にもありますように、これを見てください、平成二年の、今からもう十二年前から「早急に結論を得る必要がある。」ということで出ているわけですね。そして、もう十二年間もここにありますように検討会に検討会を重ねてやっているわけです。そして、はっきり言って、それがおくれたせいで失われた命もあるわけですよね。
 もし大臣が時期を明示しないんだったら、だれがどこで決めるんですか。検討会に時期まで決めさせるんですか。大臣こそがリーダーシップをとって、いつまでにするということをやはりここは判断しないと、一番重要な命にかかわることを厚生労働省や検討会に任せるというのはおかしいのじゃないですか。大臣、政治決断をよろしくお願いいたします。
坂口国務大臣 だから急いでいるというふうに言っているわけです。今までから結論を出さずにどういうふうにしたらいいかということを検討していただいてきたわけでありますが、今度は結論を出して実施するのにどうしたらいいかということで検討してもらっておるわけでありますから、同じ検討でも中身が違う、そういうふうに御理解をいただきたい。
山井委員 ここにありますように、平成三年の覚書で早急に検討を行うということが出ているわけですね。
 それで、今おっしゃるならば、例えば年内にこの除細動に関しては可能じゃないですか。早急早急と言いながら十年たっているわけですから。早急がまさか五年ということはないわけですよね。大臣、もう一回お答えください。除細動に関しては年内にいけるんじゃないですか。十年間も検討をやっているんですから。
坂口国務大臣 年内というのは、この平成十四年の話を言っておみえになるんでしょうか。(山井委員「そうです」と呼ぶ)そういう意味ならば、年内に結論を出したいと思っております。
山井委員 ありがとうございます。
 とにかく、遅くとも年内ですから、一日も早くやっていただきたいと思います。一日一日、これは一分おくれたら救命率が二%から一〇%下がると言われているわけですね。
 この除細動の問題と、もう一つ問題になっておりますのが、気管内挿管についてであります。気管内挿管についても、最も効果的な気道確保の方法として、選択肢の一つとして、もちろん研修や条件整備を前提として、救命士が行えるようにすべきだと考えます。気管内挿管によって救える命が確実にあるわけで、気管内挿管によってしか気道の確保ができないケースがあります。
 また、この気管内挿管については、強心剤などの薬剤投与とセットで行うことで救命率向上の効果が高いことがわかっており、薬剤投与の権限拡大も急務だと考えます。
 坂口大臣は、今井議員の質問に、改正を前提に早急に検討すると答弁をされています。そしてまた、この薬剤投与に関しては、気管内挿管とのセット、それについても非常に重要だと考えますが、この気管内挿管に関しても、早急に検討するという時期について御答弁をお願いしたいと思います。
 また、消防庁についても、気管内挿管の問題と薬剤投与の問題について御見解をお伺いします。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
坂口国務大臣 さっき私がお答えしておりましたのは、気管内挿管のことだと思ってお答えをしていたわけでございますが、だから、それも含めてことしじゅうに結論を出しますということを申し上げているわけでありまして、除細動の問題につきましては、それはもっと早く結論を出せると思いますよ。だから、それを総体的に含めて、早く結論を出しますということを言っているわけでございます。
石井政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほども申し上げました私どもの救命効果検証委員会の報告書によりますと、病院到着前に心拍が再開した場合は救命効果が高い。また、薬剤投与や気管内挿管ができますドクターカーの方が一般の救急車よりも救命効果が高いということが実証されておりますので、今後、薬剤投与、気管内挿管につきまして、ぜひ救命救急士の処置範囲を拡大していただくことが必要ではないかと思っております。
 ただいま坂口厚生大臣から大変前向きの御答弁もあったように受けとめておりますが、消防庁といたしましては、できるだけ早期に実現しますように、今後とも厚生労働省初め関係方面に御相談してまいりたい、かように思っております。
山井委員 坂口大臣から、除細動、気管内挿管について、ことしじゅうに改正をするという本当に前向きな答弁をいただいて、現場の方々は本当に喜んでおられると思います。
 ただ、もう一つお伺いしたいのが、今消防庁長官からもお話ありましたように、強心剤などの薬剤の投与というもの、気管内挿管の問題とは切っても切れない問題なわけですけれども、この三点セットと言われる薬剤投与の業務の拡大について、坂口大臣いかがでしょうか。
坂口国務大臣 私は、その薬剤投与というのが一番難しいような気がする。難しいというのは、判断が難しいという意味、それをゆだねるかどうかが難しいということを言っているわけではなくて、それを使用した方がいいかどうかの判断をすることがなかなか難しいという気がいたします。
 例えば、心臓ならば心臓が調子が悪いときに、どういう薬剤を用いたらいいかということは、表面から見ましたその患者の状態だけで判断がなかなかできにくいものもあるわけですね。薬を飲ませたら逆効果であったということも当然起こり得るわけでございますから、どういう薬を飲ますかということにつきましては、なかなか難しい面もあるなという気は率直に言ってするわけでございます。しかし、そのことも十分あわせて検討をしたいというふうに思っています。
山井委員 ありがとうございます。
 確認なんですけれども、気管内挿管と除細動だけにして、薬剤のことに関しては検討しないということではないですね。薬剤も検討していただけますね。確認をお願いします。
坂口国務大臣 そう考えております。
山井委員 ありがとうございます。
 この問題は、ほかでもありませんが、命がかかっておりまして、十年以上放置されているという、本当にそういう切実な問題です。今回、また何だかんだ言って先送りになったら、また十年間ほったらかしになるのではないかというすごい危機感が現場にございますので、坂口大臣、どうかよろしくお願い申し上げます。
 そして、それに続きまして、戦傷病者の関係の援護法についてなんですけれども、それに関連しては、ちょっと時間の関係もありますので、三つまとめて質問を申し上げたいと思います。狩野副大臣、よろしくお願いいたします。
 今回の改正については、社会情勢的には、物価も下がって賃金も下がっているという、そんな中であえて引き上げということが、私もいま一つ納得ができません。その理由と金額の根拠についてお答えください。
 そして、続けてお伺いしますが、戦没者の方々のうち、いまだに百万を超す方々の遺骨が未収集となっております。まず遺骨収集をきちんと行うのが国の誠意というものではないでしょうか。今後の遺骨収集の予定についてもお答えください。
 そして、遺骨は遺族へ返すのが原則だと思いますが、身元が判明しながら遺族に返せない遺骨も、きちんと故人がわかるように埋葬すべきではないでしょうか。
 また、身元確認の手段として、DNA鑑定が非常に有用というふうに聞いております。そして、十四年度も調査検討の予算がついていますが、プライバシー等に配慮しながらも合理的な活用が必要だと思います。このDNA鑑定の状況についてお答えください。
 まとめて御答弁、よろしくお願い申し上げます。
狩野副大臣 今回の援護年金の引き上げの理由ということでございますけれども、御承知のように、援護年金は恩給の額の改善に準じて額を設定しているところであります。
 恩給については、平成十四年度は、公務員給与が据え置かれたこと、消費者物価がマイナスであるにもかかわらず公的年金においては年金額を引き下げないことなどを総合的に勘案して、基本額は据え置かれるが、低額恩給の改善及び遺族加算額の引き上げを行うこととされております。したがって、援護法の遺族年金額についても、恩給の額の改善に準じてその引き上げを行うものであります。
 それから、戦没者の遺骨の未収集のことでございますけれども、戦没者の遺骨収集については、昭和二十七年度から開始し、海外戦没者約二百四十万人のうち、これまで約百二十四万柱を本国に送還したところでございます。
 未送還遺骨の中には、海没その他の自然条件により収集困難なものもありますけれども、中国、インドなど相手国側の事情により遺骨収集が認められていないもの、また、遺骨収集は認められているものの治安が悪化したために中止を余儀なくされているというところもございます。
 それから、海外において収集した遺骨について、一日も早く遺族の手元に遺骨が返るべきだという、DNA鑑定の活用ということでございますけれども、海外戦没者の遺骨を収集し御遺族にお返しすることは国の責務であるということは考えております。
 戦没者遺骨のDNA鑑定については、平成十一年度から、御遺族が自費で鑑定を受けられる場合に備えて、遺骨の一部を焼骨せずに持ち帰り、当時の埋葬図などから見て特定の戦没者であるということの確率が高いと判断された場合に、指定された鑑定機関へ検体を持ち込むなどの協力を行っております。
 このようなDNA鑑定は、遺骨の身元特定に有力な方法の一つと考えていますが、これも国が行う一般的な方法として採用するには、遺骨からどのように有効なDNA情報を抽出するかという技術的な問題、そして、戦没者の尊厳やプライバシーをどのように保護していくかという倫理上の問題など、あらかじめ整理すべき問題がたくさんあると思います。
 このため、現在、戦没者遺族を含む有識者による戦没者遺骨のDNA鑑定に関する検討会を設置し、鋭意専門的な検討をしていただいているところであります。その結論を待って必要な対応を検討していきたいと思っております。御理解いただきたいと思います。
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
山井委員 ちょっと、今お聞きして確認なんですが、DNA鑑定、今、自費で鑑定というふうにおっしゃったわけですか。といいますのは、こういう国の戦争で亡くなられた方の遺骨を適正に御遺族に返すというのは、当然国の責任であるわけですよね。それは自費なんですか、その鑑定は。やはり当然国の費用でやるべき性格のものなんじゃないですか。そこはいかがですか。
狩野副大臣 御遺族からDNA鑑定を国費負担により行うべきという御要望があることは承知しておりますけれども、まずは、戦没者遺骨のDNA鑑定の技術的問題や倫理上の問題について検討会において整理を終えることが喫緊の課題であると考えております。費用負担のあり方については、その結論が得られ次第、検討してまいりたいと思っております。
 そしてまた、一柱でも多くの遺骨を本国に送還することは関係遺族の強い願いであるとともに、遺骨収集団の派遣や外交ルートを通じての働きかけなど、今後とも鋭意取り組んでいきたいと思います。
山井委員 ちょっと改めてなんですけれども、自費でお願いするという根拠は、どういう根拠になるわけですか。私は、当然にそれは国費でやるんだと思っていたわけですけれども。別にこれは個人の責任の問題ではないですよね。
狩野副大臣 特別な場合にのみ今のところ自費でお願いをしているということでございまして、身元特定の一般的な方法としては、国でまだ採用するということには至っていないということでございます。
山井委員 よろしくどうかそれはお願いします。
 坂口大臣、最後に要望だけになりますが、本当に、今マスコミでも報道されていますように、特に気管内挿管の問題、今まで使っていたケースがあった、それで救われていた命が確実にあった、しかし年末の通達によってそれが使えなくなった。こういう問題は、やはり十年間ほったらかしておいた国の責任であると思います。そういう意味では、先ほど年内に改正ということをおっしゃいましたけれども、一日も早くその改正をしていただきますように、最後に改めてお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
森委員長 次に、釘宮磐君。
釘宮委員 きょうは、さきの十五日の参議院の予算委員会において我が党の高嶋議員が国立病院の談合疑惑について質問をいたしておりますが、それについて、若干この件については私はこれまでかかわってきましたので、数点質問をさせていただきたい、このように思います。
 この談合疑惑については、三月中に十カ所の国立病院の入札予定がありまして、その落札予定業者のリストが実はここに、これはもう二月の上旬に私の手元に参ったわけでありますが、現実に、三月十二日に三件行われて三件が、また三月十四日には四件の入札が行われましたが、やはり四件、このリストにある業者がそのまま落札をいたしました。これについて坂口大臣は、高嶋議員の質問に対して、事前にそういうペーパーが出ていて、そのまま決まっていくとすれば大問題だ、入札は全部白紙撤回にしたいというような答弁をなさっておられます。
 この件について、実は私は高嶋議員にこれまでの経過については説明をして質問に臨んでもらったんですが、これまでの経過について若干確認をしておきたいと思うんです。
 実は私のところに、一月の下旬に、これはサンデー毎日の二月三日の記事なんですけれども、全国で何件かの国立病院関係工事の入札が行われる、核心から言おう、このうちの数件の発注先は既に圧力談合で決定している。そして、その一つの実例を挙げよう、熊本国立病院の工事にまつわる百六十億円談合をまとめたのは、何とH元首相の秘書Kという、彼が山下設計という設計事務所の役員と組み、同事務所の設計、鹿島の施工という形に仕立てたというのだ。これは実際にもう出ています。これは名前を言ってもいいんですが、あえてきょうはアルファベットでしておきます。
 実はこれと同じような、同時期に私のところに、これは全く別なんですが、四国のがんセンターを大成JVが落札する、O元厚相の秘書をしていたSが動いていると。これも実名は私のところには来ている。私は戸苅官房長にこれを、こういうのが出ているから、これは事実だったら大変だよということを忠告いたしました。
 その後、二月上旬に、実はこの十件のペーパーが私のところに舞い込んできました。これには、全部、この十件、どこが落とすかということが書いてある。これは大変だ、こんなペーパーが流れているんだから、これは調査した方がいいよというふうに木村審議官に私は申し上げたんですが、その際、木村審議官は、ペーパーは持ち帰るわけにはまいらない、メモだけさせていただきたいということで帰りました。二月中旬に、木村審議官と河村国立病院部長それから金井首席営繕官三名で見えまして、調査をしている、ほかに情報があればまた知らせてほしいということでありました。
 私とすれば、今外務省問題や業際研、いろいろな問題が起こっているときだから、厚生省ももしこんなことが起こったら大変だということで、大変私は心配をしてこれを忠告したんです。特に私は三月十一日には、十二日に入札が三件あるんですね。だから私は、十一日の日にわざわざ、あした落札業者がこうなるようなことはないだろうな、くれぐれも注意するように伝えたんですが、十二日に落札した業者は先ほど申し上げたとおりであります。そして、さらに十四日に四件の入札が行われましたが、この件についてもリストどおりの業者が落札した。
 そこで、私はまず問いたいんですが、河村病院部長はリストの具体的な内容は把握していないという話でありますが、私の情報を省内ではどのように処理したんですか。
木村政府参考人 去る二月の四日でございましたが、釘宮先生のところにお邪魔をいたしまして、そのような資料を私、拝見いたしております。そのときの記憶では、そこには病院名とか担当の地方局名、それから前施工の業者名とか、それから設計事務所名とか書かれておりました。そのほかに、手書きの何かメモが入っていた、そういう資料と記憶しております。
 私は、直ちに国立病院部長に連絡をとりまして、先生から示されました資料の概略を伝えるとともに、二月八日に国立病院部長と首席営繕専門官と一緒に先生のところをお訪ねし、この問題の取り扱いについて相談をさせていただいたという経緯でございます。
釘宮委員 いや、ですから、私のところまで来たまではわかっているんですよ。それから先、省内でどういうふうな取り扱いがなされたのか、ここが一番大事なんですよ。
河村政府参考人 談合情報につきましては対応のルールというものは確立しておるわけでございまして、本件の場合につきましては、官房長からも四国がんセンターについてそういう情報があるということをお聞きしておりましたし、それから総括審議官からもお聞きしていまして、実際に釘宮先生にもお会いもしたということでございます。
 それで、参議院の予算委員会で、大臣まで報告したのかという御質問がございました。こういう対応のルールが確立しておる本件の場合、談合情報があったからといって直ちに大臣まで報告すべきとは思わなかったわけでございます。しかしながら、事前の情報と、実際に入札をやってみて、十二日、十四日という形で入札が行われたわけでございますけれども、その入札結果がこのように符合してくるということになりますと全く話は別でございまして、十二日、十四日の入札結果を踏まえまして、十五日の参議院予算委員会の直前、レクかたがた、大臣に御報告させていただいたところでございます。
釘宮委員 河村部長は、参議院の高嶋議員の質問に対して、数件の談合情報が入ったから、それをもとに公正取引委員会の方に通報した、それで問題なしということでやったということであります。
 この中には、一片のはがきによる情報についても公取に持っていっているんですね。国会議員の私が出したものはどうしたんですか。公取に持っていったんですか。
河村政府参考人 先ほど木村総括審議官よりお話ございましたように、釘宮先生から国立病院の工事にまつわる談合の疑惑があるというお話を伺ったということを木村総括審議官からお聞きいたしまして、二月八日に木村総括審議官と私とで釘宮先生のところにお邪魔をしました。その際……(釘宮委員「いや、そんなことは聞いていないんだよ、公取にどうしたかと聞いているんだよ」と呼ぶ)
 先生から教えていただきました四国がんセンターの件につきましては、公取に通報し、それから入札予定業者について事情聴取をいたしております。
釘宮委員 いや、七件のうち三件というのは、私は、七件のうち七件、全部これを見せていますよ。
 それから、ちょっと、いいです。まず、私がこれを見せたときにこれを持って帰らないということ自体、私は不思議でならなかったんです。要するに、持って帰れば、これは責任とらなきゃならない、これは何とかしなきゃならない、そういうことでしょう。要するに、これを持ち帰らなかったということ、そしてメモだけで持って帰るということは、いよいよになったときは、私は知りませんという話ができるからでしょう。
 こういうふうに考えると、これは厚生労働省も一緒になってやっている、そういうふうに思われたって仕方ないじゃないですか。大臣、どうですか。
坂口国務大臣 いろいろ経緯があるんでしょうけれども、私がこのことを知りましたのは、高嶋さんが質問をしていただくというときのレクチャーを受けましたときに、そんなにたくさんあるということは知らなかったんですが、三、四件談合疑惑があって、そのことをお取り上げになるという話を聞いたわけでございますが、まことに、監督不行き届きといえば私の責任でございますが、そのときに初めて知って、そして、あの質問の中で高嶋さんが釘宮先生のお名前もお挙げになり、前々からこのことは知らせているというお話をそのときにされた。
 そして、高嶋議員は、一覧表があるということをそのときにおっしゃった。一覧表があるといいますことは、そしてそれが、結果が皆同じになってくるということであるならば、それはすべてが、どこかが中心になってコントロールされているとしか言いようがないというふうに私はその場で判断をいたしました。
 したがいまして、決まっているものにつきましても、これからのものにつきましても一度白紙に撤回をさせていただきますとその場で申し上げた次第でございます。
釘宮委員 それでは、公取はきょう来ていますか。伺いますが、今回の情報が入って、どういうふうに処理しましたか。
上杉政府参考人 お答えいたします。
 ただいま御指摘のような資料につきまして、厚生労働省の方からいただいております。
 私ども、談合情報という場合、一般的に、あらかじめ落札者はだれかという情報がありまして、札をあけてみればあらかじめの情報どおりの者が受注をする、こういうのを談合情報ということで、非常に多数の情報が我々のところに寄せられるわけでございます。これらの情報は独禁法違反を摘発する上では非常に貴重なものでございますけれども、この情報から直ちに独占禁止法違反に結びつけるというのは極めて困難ということでございます。
 どういうことかと申しますと、独占禁止法違反に問いますためには、私どもの法律、独占禁止法第二条六項に定める要件を満たすものである必要がございまして、一般的には、個別の物件に関する談合情報、私が申し上げた意味での談合情報から違反の端緒にするということは極めて困難であるということでございます。
釘宮委員 これはマニュアルがあると言っていますけれども、これは実際問題、ここにも内部告発、まだ幾らでも私のところに来ているんですよ。この中に、現地で事情聴取があった、サンデーでこんな記事が出たので集まってもらったということだった、しかし、これはもう名前は言えませんが、Kという者に押さえ込まれているのでだれも何も言えない、事情聴取が終わったので予定どおり入札ということで、これは入札をするようにもうなっていた。
 要するに、国会でもし私が高嶋議員に質問させなかったら、これはこのままいっていますよ。これはだれもやっていないじゃないですか。そうでしょう。私がこれをやらなかったら、みんな、全部、だれも知らないまま終わっちゃうんですよ。公取はとにかく自分のいわゆる役割でできなかった、それから厚生労働省はとにかくアリバイだけはつくった、こういう状況であったということを私は問題にすべきだと思うんですね。
 私は、大臣に、そういう意味では、これは内部の調査をぜひやってもらいたい。大臣は公取にこの問題について調査を依頼したということを記者会見で申しておりましたけれども、これは内部の問題。
 要するに、ここにも、これは、内部告発の文書には、厚生省OB、これは国立病院部のOB、もうここに実名まで出ているんですよ。これが動いて、先ほどの秘書のKだとかSだとか、そういう人たちとつるんでこういう構図をつくっているということを告発文で書いてあるんです。これは地元の中堅ゼネコンの社員の方。これはもう構造的な談合ですよ。そういう意味で、この問題については極めて根が深いというふうに私は思います。
 ちょっと大臣に聞く前に、厚生労働省から、今ゼネコンに国立病院部を中心にどれぐらい天下りが行っているか、ちょっと教えてください。
河村政府参考人 平成十四年の一月の現在で、建設会社に再就職している元国立病院部営繕技官は十三人でございます。
釘宮委員 十三人のOBがゼネコンに天下る。それで、今回十件の工事合計額が六百億を超すんですよ。ゼネコンに行った人たちと、それと厚生族と言われる人たちの秘書が、元秘書がこれにもし加担をしてやっていたとすれば、これは業際研と全く一緒じゃないですか。大変ですよ、こんなことは。私は、厚生労働省でこんなことが起きたら、大臣、医療保険改革なんてだれもできません、こんなものは。
 最後に、大臣に決意を聞かせてもらいたい。
坂口国務大臣 今御指摘のとおり、これから医療制度改革の御審議をお願いしなければならないときであり、そしてまた国民の皆さん方にも応分の御負担をお願いしなければならないと申し上げているときでありますから、一銭たりともむだ遣いがあってはなりませんし、不明な点があってはならないと思います。省内も含めまして、毅然とした態度でこの調査に臨みたいと存じます。
 そして、今後の、この十件だけか、あるいはまた、そのほかにもあるかもわかりませんしいたしますが、厚生省がかかわりますところの、どこにこれを落札するかということにつきましては、先日も電子入札の方法を検討しろということを申しております。これは、私は横須賀にも一度お邪魔をいたしまして現場を拝見してきた経緯もございます。そうしたものを導入いたしまして、そして不明が今後一切ないように、ひとつ取り仕切りたいと考えております。
釘宮委員 最後に、大臣、今回の問題は、厚生省内部の責任体制なり、また情報の伝達、こういうようなものにも大きな教訓を与えていると私は思うんですね。外務省でもそういうことが取りざたされましたけれども、やはり大臣が最終的な責任をとらなきゃならぬわけですから、その辺はぜひ今回の教訓を生かしていただきたい。このことを最後に申し上げて、質問を終わります。
森委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党、佐藤公治でございます。
 きょう一時から議運において、鈴木宗男議員の議員辞職勧告に関する決議が否決をされた。正確に言えば動議打ち切りということで、委員会においてつぶされたという言い方が正確なのかもしれません。当然、自由民主党、保守党、公明党という三党、与党によってこれがつぶされたわけでございます。
 今、鈴木宗男議員のことで国会が、永田町が、霞が関が、そして日本じゅうが、いろいろな疑惑を、また問題を抱えているような状況でございますが、小泉総理は、先般も、国民にわかりやすい形でと抽象的な御発言もあったと聞いております。また、内部的には、具体的にはこの決議を受け入れることも指示したような話もあったといううわさも聞きます。どうか坂口大臣におきまして、このたびのこの決議を反対された政府・与党、そして公明党、内閣、議員としてどうお思いになられるのか、お答えを願いたいと思います。
坂口国務大臣 党でそういうふうな経緯があったということは先ほどのニュースで、私もお昼のニュースで見たわけでございますが、一応、党のことは党にお任せをする以外にないというふうに私は思っております。
 いずれにいたしましても、問題は、そうした、国民の皆さん方からごらんをいただいて、いろいろの疑惑を招くような政治のやり方ということがやはりそもそも問題でありまして、そうしたことにつきましては、反省すべきところは徹底的に反省をして、そういうことがないようにしなければならないというふうに私も思っている次第でございます。
 ただいま釘宮議員からもお示しいただきましたが、こうした問題につきましても、これはもう徹底的に解明をして、そしてやはり国民の皆さん方に御理解をいただけるようにしなければならない、それは政治の場におります者の責任であるというふうに自覚をしている次第でございます。
佐藤(公)委員 ひとつ、イエスかノーかで答えていただければありがたいと思いますが、大臣は、党がお決めになられたこと、これはいたし方がないことがあります、ありますが、大臣はこの決議に個人的には賛成をしたいとお思いになられているか、思っていないか。いかがでしょうか。
坂口国務大臣 これはもう議運という場で決議をされたことでありますから、私はその場にいないわけでございますしいたしますから、それは党の皆さん方にお任せする以外にないと思っております。
佐藤(公)委員 これは鈴木宗男議員のことでの話だけではなくて、先ほど坂口大臣もおっしゃられたように、まさに釘宮委員が話をしたことと相通ずる、全く今、日本社会の政官業という癒着構造の中での問題、これは何も鈴木宗男議員のことだけではないと私は思います。
 大臣は、決算行政監視委員会、二月二十日の日の私ども自由党、塩田委員とのやりとりは覚えていらっしゃると思います。
 その中で、まさにこの二月二十日の段階で、塩田委員が、厚生労働省の予算というのは社会保障関係費を中心として非常に大きな金額に膨れ上がっており、これを適正に、公正に使っていくというようなことにおいて、原則に関してきちんとやられているのかどうか、これを大臣に聞かせていただいたかと思います。それに対して大臣は、きちんと一般競争入札を原則とした契約方式によっておりまして、公正な競争のもとにやっているというふうに思っている次第です、こういうこともおっしゃっていただきました。
 まさにこういうことが二十日の段階であり、最後に塩田委員は、「具体的なことは、きょうはもう時間がありませんので申し上げませんが、」ということで締めくくりをさせていただいております。このとき塩田委員が何を言わんとしていたのか私も正確にはわかりませんが、何か、まるで今、釘宮委員がきょう話をしたこととつながっているような気もしないでもございません。
 こういうことがこういう形で委員会で議論があるにもかかわらず、大臣の方まできちんと報告が行っていなかったということは、大変な問題なんじゃないかなというふうに思う部分があります。どうかこれに関しては、大臣、本当に、これからの僕らの日本の社会、日本を考えた場合に、今こういったことを一つ一つ断ち切って直していただきたく、これは本当によろしくお願いをいたしたいと思います。
 さて、このたびの法案に関して少し質問をさせていただきたいと思いますが、前回のときもちょうど、この法案においていろいろな問題がありました。まさにKSDという問題があった。何か、この法案を議論する前には必ず大きなそんな政官業の癒着構造の問題が起こるのかなという気もいたします。
 去年も質問させていただいているんですけれども、毎回毎回、書いてあることは同じなんです。経済状況にかんがみということで、前回のときも聞かせていただきました。どんな経済状況と分析をし、大臣が現在の経済状況をどうとらえているのか。そして、去年のときは、それは塩川財務大臣が答えるべきことであって、私などが答えるべきではないということだったんですが、そういうことでは本当に、私たちの年金を預かる庁としてそういうことでいいのかなというふうにも思います。
 先ほど大島委員の質問に対する大臣の答えを聞いていると、何か力が抜けるような、がっくりくるようなものを感じてしまいます。私もきょうはかなり力を入れて質問をしたいと思っていたんですが、ちょっと力が抜けております。大臣、本当に政治家の言葉が軽くて無責任になっちゃったんですよ。ここをもう一回本当に考えていただきたい。
 そういう意味で、もう一度ことしも聞きます。経済状況にかんがみ、どんな経済状況と分析し、大臣が現在の経済状況をどうとらえているのか、簡単にお答えくださいませ。
宮路副大臣 私の方から答弁させていただきます。
 昨年は、ちなみに我が国の経済の状況、去年据え置かせていただいたそのときは、平成十二年の経済の状況を見てみますと、GDP、〇・三%のアップという数字が出ておりますが、今回の判断のもとになりました十三年を見てみますと、GDPは、一―三月はちょっとよかったんですが、後は押しなべてずっと三角が立っておるわけでありまして、十二年に比べて十三年はもっと状況がよくなくなっている、そういうことが言えるわけであります。
 そして、委員御案内のように、そういった景気の状況をまさに反映して、個人消費も依然として回復の兆しが見えない、横ばいの状態が続いておりますし、また雇用につきましても、私ども厚生労働省、この問題で今大変悩ましい局面に立たされておるわけでありますが、雇用の情勢も、かつてない厳しさ募る状況に今置かれておるわけでありまして、失業率も、御案内のとおり五・三。率そのものはやや下がったとはいえ、なお、雇用の数あるいは新規の求人の数等々、いずれも今いわば最悪の状態を呈しているというのが目下の我が国の経済あるいは雇用の情勢じゃないかな、こう思っております。
 そういった中で、デフレに直面しておるわけでありますが、このデフレがさらにデフレスパイラルに陥りはしないかという懸念を皆さんお持ちであるわけでありまして、それをぜひとも回避したい。
 そういう経済情勢あるいは家計の状態あるいは雇用情勢、そういうことに思いをいたしますときに、ここで年金額の引き下げを法律の建前にのっとってやったとするならば、個人消費にも大変なマイナスを与えますし、また家計にも、苦しさをさらにエスカレートさせる、こういうことになるわけでありますので、平成十四年度につきましても、委員御指摘のように、過去二回やったそれと同じように、据え置きの道を選択させていただく、こういうことになったと思っております。
佐藤(公)委員 御丁寧な説明、ありがとうございます。
 そこで、聞きたいのは、さかのぼることになりますけれども、ちょっと僕はよくわからないんですけれども、なぜそういう経済状況の中で凍結をするんですか。
宮路副大臣 今お話ししましたように、そういう状況でございますから、ルールというか、本来のルールにのっとって、それを、三角の一・七ということになるわけでありますが、その一・七を引き下げるということになりますれば、今、先ほど申し上げたようなことで、大変な、消費者のマインドを一層冷やしてしまう、家計にもさらに苦しさをもたらしていく、こういうことでありますので、デフレスパイラルを避けるためにも、そうした事態をやむにやまれず今回も回避させていただいたということで、これはほかの年金も共通でありますが、引き下げをしない、こういうような判断を政府全体としてさせていただいた、こういうことであります。
佐藤(公)委員 こういう議論をしているときに、ふと私は疑問に思ったことが幾つかございます。
 まず、このスライドを凍結する、もしくはスライドにしていく、これは、永田町、霞が関の理論という、考え方という、偏ったものというのが、もしかしたら非常に多いんではないかと思う部分がある。
 では、副大臣でも結構です、お答えを願えればありがたいと思いますけれども、国民のどれぐらいの人たちが、もしくは受給者のどれぐらいの人たちが、この年金のスライドというものを知っているのか。また、凍結をしている、この二年間やっているというのを知っているのか。どれぐらいいるか、そういうデータ、ありますでしょうか。
辻政府参考人 私ども、凍結がされているということ自身は、一般的に凍結の都度、広報いたしておりますが、それを、どの程度ということは申せませんけれども、逆に、よく御存じであるということの意味といたしましては、例えば全国厚生年金受給者団体連合会というのがございますけれども、このような団体から引き続きスライドの特例措置をとってほしいというような要望が出てきておりまして、それは、とりもなおさず、そのようなことが行われているということを認識なさっているというふうに理解いたしております。
佐藤(公)委員 これは一つ本当に大臣、副大臣に提案なんですけれども、確かに今局長がおっしゃられたように、私もそれは知っております。しかし、それはやはり形の上であって、一般の方々がどれぐらい知っているか、またどういうつもりでいるのか。これは、やはり今後のことも考えて、いろいろ金額には差があります、差がありますから一概に言えませんが、私も年金受給者の方々に、スライドに関しては御存じですかと聞いたらば、本当に、一般の方々、知らないという方々が結構多いんです。多い。凍結しているんですよと言ったら、本当にと言う人たちも結構多い。私、聞いて回ったんですよ。そういう人たちも多いんです。
 だから、実際私が思うことは、じゃ、こういう部分でこうだといって説明をすると、まあ金額にも差がありますけれども、それだったら、子や孫のために、今、年金が大変というのであれば、それはちゃんと約束どおり下げてもらったっていいじゃないかという人たちも、声として上がっているのも僕は聞いております。
 そういうことから、まず考え方を、永田町や霞が関じゃなくて、国民や受給者の皆さん方の、一般の人たち、それは皆さん方にとってみれば嫌な話もある、やりにくい話もあるかもしれませんけれども、そこら辺のスライドに関しての意識調査とか考え方、こういったものをとってから、こういうことを議論したり話し合ったり決めたって、遅くはない。僕は、それぐらいのことはすべきだし、逆に、凍結していることを知らないままいる人たちがたくさんいたのであれば、せっかく政府がやっているというのに、大変失礼な言い方かもしれませんが、それに対してのありがたみというものを感じないまま過ごしてしまう人たちが多いとなると、何のためにやっているのかなと思う部分も、感じる部分もあり得るかもしれない、そんな思いがいたします。
 そういう意識調査や何かをされていく、こういう考えに関して、副大臣、大臣、いかがでしょうか、どちらでも構いませんので。
坂口国務大臣 この年金の問題につきましては、いろいろの御意見があるだろうというふうに思っておりますが、しかし、先ほどからお話がございますとおり、現在のこの経済状況の中で、介護の問題もあるいは医療保険の問題もございまして、高齢者の皆さん方にも応分の御負担をいただかなければならない時期に来ているわけでございます。それらのこと万般を考えましたときに、現在、高齢者の皆さん方の年金につきましては、法律に従って引き下げをするということはやはり避けなければならない、そんなふうに私も思った一人でございます。
 全体を見ましたときに、先ほども申しましたとおり、私は、しかし今回、この時期を迎えるに当たりまして、公務員の定期昇給が見送られるようなことがあるならば、これは高齢者の皆さん方に対しましても、ひとつ法律どおりにお願いを申し上げたいということを言わなければならないだろうな、そんなふうに実は思っていたわけでございます。しかし、公務員の定期昇給につきましては、これは、見送りがされるということになったわけでございまして、公務員の定期昇給が、見送りがされるという事態の中で、高齢者の皆さん方にだけ年金のスライドを、物価スライドで引き下げを行うということをお願いすることはこれはできない、私はそのときにそう判断をした次第でございます。
 わずかな年金で、そして今までに大変な御苦労をいただいてきた高齢者の皆さん方に対して、今この高齢者の皆さん方におこたえをすることというのはほかに何にもないわけでございますので、私はこの際に、このことはぜひ引き下げを行わずに現状のままいかせていただいて、しかし、もう二年後ぐらいには、これはまた新しい年金制度の見直しが来ているわけでございます。したがいまして、この見直しを、現在の制度のままでいくのか、それとも、現在の年金制度に何らかの修正を加えて、そしていくのか、それらのことも踏まえて、一、二年、とりわけことしはその議論を活発にしていただいて、国民の皆さん方にもできるだけ御参加をいただいて結論を得たいというふうに思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 今大臣は、大変重要なことをおっしゃられたと思います。やはり自分たちが血を流さずして人に血を流せと言うことができない、こういうふうに私はとらえさせていただきますが、まさに今、小泉総理、そして構造改革ということの中で話をしていること、そこの部分の、みずからの血を流すこと、そういうことをしながら、やはり国民の皆さん方にも痛みを強いていく、僕はそうあってもらいたいなと思います。その辺は十分考えていただけたらありがたいと思います。
 さて、そういう中で、先ほども二年後に見直しということを大臣はおっしゃられましたが、私は、当初の予定より、経済の状況、そして年金の状況が年々非常に悪くなっていっている、こういうことが、もう先が見えているのであれば、二年後とは言わず、すぐさまにでも手をつけて、考え方をまた改める、そして方針転換する。方向転換するということを二年待たずして早く手をつけるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 いずれにいたしましても、年金の論議というのはことしから始めなければいけないわけでありまして、もう既に始まっているわけでございます。昨日も、年金部会を開いていただきまして、そして活発な議論をしていただいたところでございますし、とりわけ、年齢層の若い皆さん方にも入っていただいておりまして、活発な御議論をいただいております。
 そうした中で、将来のあるべき年金の姿というもの、特に少子高齢社会の中で、この少子化の中で進めていかなければならないわけでありますから、少子化の中の年金のあるべき姿、そして女性の年金のあるべき姿、こうしたことを中心にいたしまして、活発な議論をことしはしていただいて、そして、ことしの末あるいは来年の今ごろには大体方向性が出てくるという形にしたいというふうに思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 そういう中で、一月の下旬にも新聞等に出ておりました、出生率の新推計値ということで、年金財政計画ということで、出生率の将来の推計がということでの数値が出ているわけでございます。結局、この記事の中でも書かれているのですけれども、今検討中だと思います、検討中だと思いますが、新たな人口推計というか、新たな将来の見通しのこの数値に関して、年金の財政再計算というか、計画の中にこの数値は盛り込んで計算をしていくことになるんでしょうか。
坂口国務大臣 当然のことながら、現在の人口動態というのを無視することはできないというふうに思います。
 しかし、現在予測をされております人口統計、そして二〇二五年、二〇五〇年にはこれこれの子供の数になります、あるいはまた人口の段階がどういう形になりますという現在の推計、これを受け入れて、これに沿って年金制度をつくり上げていくのか、それとも、もう少し積極的に、こういうふうになってはならないから、それを救うために、そういうふうにならないためにどうするかという立場から年金制度をつくり上げていくのか、それは私は議論の分かれるところであろうというふうに思っております。
 昨日の議論を見ておりましても、双方の議論が出ておりますから、そうした議論を積み重ねていただいて、もしも現在の出ております人口統計に挑戦をしていくような、そういう行き方でありますならば、それは年金自身もどういう形であればいいのかといったようなことがこれからの大きな議論になるだろうというふうに考えております。
佐藤(公)委員 大臣の非常に前向きな、ある意味で積極的なお答えだと思いますけれども、大臣、また二年後三年後に、見通しが甘かったというような御答弁はないように、ひとつお願いいたします。
 結局は、これは、統計を新たに、いろいろ新しいのを見ていくと、やはり制度自体が崩壊していると思うのですよ。そこら辺をもっとざっくりと、大臣のリーダーシップでこのやり方、考え方を変えていただかないと、私たちの若い、まあ私ももう四十三になっちゃいますけれども、若いとは言えるかどうかわかりませんが、若い人たちの将来のことを考えてやってもらいたい。
 予算委員会でも、大臣は本当に大事なことを言ってくれました。本当に信頼関係なんですよ。政府と国民との信頼関係、これが今一番求められている。ここに大臣がいらっしゃる間に、きちんとした信頼関係を築いてもらいたい。築いていただけない場合には、私はまた大臣にいろいろと今後ともかみついていきますので、よろしくお願いいたします。
 最後に、一つだけかみつかせてください。
 週刊誌、毎回毎回また私が取り上げると、皆さん、厚生労働省の人たちが嫌がるのですけれども、「年金のウソ」なんという第二弾が始まっちゃいました。始まっちゃったんですよ。
 これは、前、いろいろと聞かせていただいたとき、私は細かいことはもう触れるつもりは毛頭ございません、時間もございませんから。そうしたら、何と、週刊現代掲載記事にということで、国会質疑に対して、私の名前も、質疑者佐藤公治ということで何かマニュアルが作成されて、各箇所に配られたそうで、宣伝していただいたようで本当にありがとうございます。こういうものが、なぜ配ったのか。これが一点。
 そして、第二弾としてこうやって出てきましたけれども、ここはもう問題が絞り込まれていますね、大分絞り込まれている。流用したか、しないか。法律に違反するのか、しないのか。もうはっきりイエスかノーかで答えていただきたい。
 私は、こういうことがずるずる続いていることがまた、政府との信頼関係、もう与野党なく政治家、こういうところ、官僚、皆さん方との、国民との間での信頼関係がどんどん損なわれている、これを一番心配しています。こういう部分を、もうイエスかノーかはっきりさせる。一回ぽっきりだったらまだわかりますよ、これだけされているんですから、しかるべきところに出て、ちゃんとした法律的なそれなりの判断をもらって決着つけた方が早いんじゃないですか。こういうことも踏まえて、いかがでしょうか。
小島政府参考人 お答えを申し上げます。
 まず最初の、第一点目の御指摘でございますが、去年の五月ごろ、この週刊現代の記事がいろいろ出ましたときに、地方の社会保険事務局を初めとして、いろいろ動揺等いたしました。
 それで、私どもといたしましては、先生が質疑をしていただきました国会質疑関連の模様を各事務局に配りまして、本庁としてはこういう考え方だというのを各事務局に知ってもらうということで配ったわけでございまして、大変、ちょっと先生のお名前を直接出したのがよかったのかどうか、慎重にこれからやっていきたいというふうに思います。
 もう一つの、連載記事の関係でございますが、年金保険料が年金相談や社会保険オンラインシステムの経費にも使われていることを問題といたしまして、違法流用といった言葉を用いて週刊誌で批判が行われているところでございます。
 私どもといたしましては、昨年来のたび重なる取材の中で、これらの経費の考え方、すなわち、年金相談やオンライン経費等で、被保険者及び年金受給者に対するサービスの向上を図るための経費は、予算上、福祉施設事業として位置づけられていることを説明するとともに、予算の執行に際しては違法な流用を行うことなく適正に執行している旨を繰り返し説明しているところでございます。これに伴いまして、昨年八月には、一連の記事に対する反論として、年金局長が直接記者に対して、これは違法流用ではないという旨を説明いたしまして、その内容が記事に掲載されているところでございます。
 しかしながら、週刊誌サイドでは、依然として当方の説明内容に十分な理解が得られておりませんで、同趣旨の連載が継続していることは非常に残念であるというふうに考えております。
 いずれにせよ、事実関係を国民に正確に伝え、理解していただくことが大変重要だと認識しておりまして、今後の対応につきましては、記事の内容を分析して、どのような措置が適切、可能か、検討してまいりたいというふうに考えております。
佐藤(公)委員 では、ちゃんとこれに関しては白黒はっきりさせるということですね、よろしいですね。いつまでにされますか。
小島政府参考人 私どもは、違法流用ではないというのはもう既にはっきりしていると思っております。
 ただ、それをどういうふうにして国民の方々あるいはこういった週刊誌の記者に伝えるかということについては、いろいろ難しい点もありますし、ちょっと考えていかなきゃいかぬ点もあると思いますので、その点は検討させていただきたいというふうに思います。
佐藤(公)委員 以上で終わらせていただきます。
森委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 本日は、昨年に続き、まずシベリア抑留者に対する補償問題で質問をいたします。
 大臣は昨年、この問題は既に戦後処理問題として決着済みとの認識を示されました。しかし、私が調べてみましたところ、補償と言えるものは、一、軍人恩給の加算を抑留一年につき一年とする、二、この戦傷病者戦没者遺族等援護法による年金の対象にシベリア抑留中の傷病、死亡を加える、三、平和祈念事業として、シベリア抑留者に慰藉の意をあらわすため、恩給資格のない人に十万円、恩給受給者には銀杯、賞状を贈るなどの措置だけでありました。しかし、これでは、軍人としての経歴が短い下級兵士たちは、十万円以外何もありません。
 大臣、この程度のことでどうして決着済みなどと言えるんでしょうか。
坂口国務大臣 確かに、昨年のこの会議にも小沢委員からそういう御質問をいただきまして、私も、兄がシベリアに抑留をされて、大変苦しい思いをしながら昭和二十三年に帰ってきたお話を申し上げたと思います。兄も、生きております間は、一生懸命に、この会の地域の会長等をいたしまして、抑留時代のことを何らかの形で国が補償すべきであるということをやっていたのを思い出すわけでございまして、私も野党時代に小沢議員と同じように、こんなことではだめだといって一生懸命に総務省やその他のところに押しかけて陳情したこともあったことも事実でございます。
 そうしたことを踏まえながら、国挙げていろいろの立場からこの抑留者の皆さん方の問題というのを考えていただいたわけでございますが、しかし、この抑留者の問題というのは、結果としては、やはり戦争時代に戦場に行った人と同等に扱うことはでき得ないという、ここは一つのもう結論が出されたというふうに私は思います。
 私も、そのときには大変それは残念なことだというふうに思った一人でございましたけれども、しかし、それはそういう結論であったというふうに思います。これはやはり、いろいろの物の考え方が積み重なって、そして、抑留者の皆さん方にいろいろ御苦労をかけたことはもう本当にそのとおりだけれども、しかし、同等に扱うことはなかなか難しいという結論になったのであろうというふうに思います。
 したがいまして、そのことにつきましては、今、私も従わざるを得ないというふうに思っております一人でございます。
小沢(和)委員 野党時代にせっかくそういうふうな主張をされたんだったら、大臣になってなおさらそういうことを言ってほしかったと思うんです。
 我が国がシベリア抑留者に対しいかに冷たいかは、同じ敗戦国のドイツと比較してみればよくわかります。ドイツで、ソ連に抑留された兵士は二百三十九万人、日本の四倍もおりました。しかも、戦後、国が東西に分断されるという困難な状況の中で、抑留期間に応じた月単位の補償金や釈放手当などを支払い、その上、家族の生活費の支給、就職、住宅、社会保障などの援護措置を講じております。
 ドイツだけではありません。カナダは、日本軍の捕虜になった兵士には、基礎年金を、捕虜期間一年未満で二〇%、一年以上では五〇%も上積みをしております。それに加え、一九九九年に、日本円で百八十四万円の政府支給金を改めて補償として追加しております。二〇〇一年には、イギリス、オランダ、ニュージーランド、ノルウェーが、いずれも、日本軍の捕虜になった元兵士に次々に政府の支援金を支給しております。
 このように、各国とも、戦後五十年以上たった今でも、これまでの補償が不十分として追加の補償を行っている。これらの措置と比べてみても、日本政府の措置はシベリア抑留者に対して余りに冷たいと、大臣、お考えになりませんか。
狩野副大臣 私も、三年ほど前にシベリアの方に行ってまいりました。現在でも大変環境が厳しいシベリアの中でしたので、あの当時、本当にシベリアの中ですごい過酷な労働で御苦労なされたということ、私も身にしみて感じ、本当に涙なくしては滞在することができませんでした。ですから、よく御苦労に対しても敬意を表し、本当に心から感謝申し上げておるわけでございます。
 シベリアに抑留された方々を含め、戦争で被害をこうむられた方々に国としてどのような措置を講ずるかということは、その国の置かれた各般の状況によって異なるというふうに考えられます。
 シベリアに抑留された方々の補償問題については、総務省所管の認可法人である平和祈念事業特別基金において慰労金の支給等が行われるなど、各種の措置がとられていると承知しております。我が国としてもできる限りの対応が行われているものと考えております。
 また、ほかの地方から復員した兵士に対してはという、相違というお話もございましたけれども、南方地域の日本人の捕虜に対する労働賃金の支払いについては、占領下のGHQ覚書を受けて支払いが行われたものであるというふうに思っております。しかしながら、シベリアに抑留された方々にかかわる労働賃金の支払いについてはこうした事情がないということは、私も承知しております。
    〔委員長退席、野田(聖)委員長代理着席〕
小沢(和)委員 聞くと、大臣も副大臣も、もう大変な御苦労をされたと思うと。そう思うんだったら、それにこたえるようなことをやらなければ、御苦労だと思うというその言葉は本当に生きてこないと私は思うんですよ。
 実際、それぞれの国の状態で処遇が決まってくるようなことを言われましたけれども、日本は、今経済がうまくいっていないとはいったって、やはり世界第二の経済大国ですよ。日本よりずっと力のない国が日本よりうんと処遇をしておる、このことをぜひ考えていただかなきゃいけないと思う。
 ここで、私は、外務省にお伺いをしたい。
 今シベリア抑留者たちが求めているのは、一般的な補償ではありません。ソ連で働いたときの自分の賃金の支払いであります。
 まず、一般論として確認しておきたいんですが、捕虜として抑留された国で働いた賃金は、帰国のときに残高証明を持ち帰れば、その捕虜の所属国が支払うということが、一九四九年のジュネーブ条約第六十六条で合意され、日本もこれを批准している。その条文は、今委員の皆さんの手元に配付してあります資料の一に示しております。これに間違いありませんか。
角崎政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、一九四九年のジュネーブ第三条約六十六条に、捕虜に対する労働賃金の支払いに関しまして、抑留国が捕虜の貸方残高を示す証明書を交付し、捕虜が属する国が当該証明書に基づいて捕虜に対して決済する方法といったことを規定いたしております。
小沢(和)委員 私なりに調べてみたんですが、一九〇七年のハーグ陸戦条約から一九二九年のジュネーブ条約までは、捕虜を働かせたらその国が賃金を支払うことになっておりました。ところが、第二次大戦終了後、通貨事情の激変で、この義務の遵守が極めて困難になりました。それを解決するため、大多数の関係国が、捕虜を帰国させるとき残高証明を交付し、所属国でその賃金を払うことになりました。これが今の四九年のジュネーブ条約だと思うんです。
 日本を占領したアメリカ軍も、この新たな国際的取り決めに従い、南方からの帰国兵士が持ち帰った残高証明分の賃金を日本政府が全額支払うことを許可いたしました。一般の引揚者、軍人軍属が持ち帰り金を厳しく制限されていた中でこのような特別の措置を許されたのは、この慣行が既に国際慣習法として認められるようになっていたからではないんですか、外務省。
角崎政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のように捕虜が所属する国が当該捕虜に対して労働賃金の支払い等を行うことにつきましては、第二次世界大戦当時の国際慣習法ということは確認はできないと思います。
 先ほど御指摘のジュネーブ第三条約の第六十六条に規定されておりますのは、これは、そのとき捕虜に対する一層の保護を図るために新たに創設されたものであるというふうに考えられております。例えば、平成元年四月十八日の東京地裁判決におきましても、捕虜所属国による労賃の支払いがシベリア抑留当時に国際慣習法として成立したとは認められないという旨、判示されているところでございます。
小沢(和)委員 国際慣習法としてまでは認められていないというお話ですが、当時の日本政府は、昨年の質問で私が指摘したとおり、一九四七年三月十八日、通牒番号一八五七号という終戦連絡局の文書で、GHQに対し、労働証明書を持ち帰らせるようソ連政府に連絡してほしいと申し入れております。
 昨年は外務省はその文書が見つからないと言って出しませんでしたが、今回ようやく出してまいりました。それが資料の二であります。原文である英文と日本語訳をつけております。これを読めば、日本政府自身が、シベリア抑留者が受領証つまり労働証明書を持ち帰ったら支払う、そのために総司令部の御尽力をお願いすると言っておる。これは、新しい国際的取り決めを日本政府が認め、積極的に実行するという意思表示ではないんですか。
角崎政府参考人 お答え申し上げます。
 委員ただいま御指摘の文書には、確かに、旧日本軍人及び軍属が戦時捕虜として抑留の間にためた金銭及び私物が没収された場合に個々に正式の受領証を発行すべきであるということを申し入れております。ただ、これは、抑留者が労働証明書を持ち帰るようにしてほしいというふうに申し入れたものではないというふうに承知をいたしております。
 さらに、この文書がソ連側に伝えられたか否かを含めまして、GHQによりましてどのように取り扱われたかということは明らかになっておりません。
 いずれにいたしましても、抑留者の所属国たる我が国が当該抑留者に対し労働賃金の支払いを行う国際法上の義務はないものというふうに考えております。
小沢(和)委員 今、労働証明書を持って帰ってくれという話じゃないと言われるけれども、「抑留の間貯めた金銭」ということがここにあるでしょう。捕虜は抑留している間にどうやって金をためるんですか。働いて賃金をもらって、それが余ったらお金がたまるわけでしょうが。だから、これは労働証明という意味であることは間違いないじゃないですか。
 当時、労働証明書の発給を拒否していたソ連政府が、一九九〇年に崩壊して、状況が一変いたしました。一九九三年にロシアのエリツィン大統領がシベリア抑留について正式に謝罪し、これと一体の措置として、抑留された約三万八千人の求めに応じ、労働証明書を発給いたしました。資料三がその証明書であります。これもロシア語の原文と日本語訳をつけております。
 これは、私が昨年この問題を取り上げる発端となった、私の地元、北九州市八幡東区の下屋敷之義さんの分であります。タイシェトで一九四九年まで働き、賃金四千八百四十一ルーブルと書かれている。そして、「上述の賃銀残額は帰国の時支払うべきであったが、ソ連ルーブルの外国への輸出禁止のためにできなかったものである。」と、新しい国際的取り決めを念頭に置いたことが書かれております。
 五十年以上経過したとはいえ、日本政府が要請していた労働証明書がようやく届いたのですから、残りの人々の分を含めて当時の抑留者全員について、日本政府の責任で証明書を受け取り、賃金を支払うのが当然ではありませんか。
角崎政府参考人 お答え申し上げます。
 政府といたしましても、ロシア政府が個人の要請に基づきましてそのような労働証明書を発給したということは十分承知いたしております。
 いずれにいたしましても、このような証明書を発給するか否かは、第一義的には抑留国でありますロシアの問題でございまして、この証明書に基づいて抑留者の所属国たる我が国が当該抑留者に対しまして労働賃金の支払いを行う国際法上の義務というのは負っていないということでございます。
    〔野田(聖)委員長代理退席、委員長着席〕
小沢(和)委員 いや、重要なことは、日本政府が当時、GHQを介してにせよ、ソ連政府に対して労働証明書の発給を要請し、その証明書に対し日本政府として支払う旨を表明したという事実です。仮に、捕虜が帰国したときに自分の国の政府から支払いを受けるという国際慣習法がまだ成立していなかったとしても、日本政府の当時の意思表示は、対外的には今も有効なはずじゃないですか。支払う責任を免れないと思いますが、いかがですか。
角崎政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申しましたとおり、委員御指摘の文書につきましては、それがソ連側に伝えられたか否かを含めまして、GHQによってどのように取り扱われたか、今の段階で明らかではございません。
 いずれにいたしましても、我が国といたしまして、当該抑留者に対して労働賃金の支払いを行うという国際法上の義務はないというふうに考えております。
小沢(和)委員 いや、日本政府が、GHQを介してにせよ、ソ連に、この労働証明書を持って帰らせてくれといって頼んだんですよ。だからこれは、持って帰ったら日本政府は払うという意思表示をしているわけでしょうが。これは無効なんですか、今。
角崎政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどの答弁の繰り返しになるかもしれませんが、御指摘の文書につきましては、旧日本軍人及び軍属が戦時捕虜として抑留の間にためた金銭、私物が没収された場合に、個々に正式の受領証を発給すべきであるということを確かに申し上げたものでございますが、これは先ほども申しましたように、労働証明書というものを持ち帰るようにしてほしいということと少し違うということでございます。
 それから、この文書がソ連側に伝えられたか否かを含めまして、GHQによりいかに取り扱われたかは明らかでないということでございます。
小沢(和)委員 いや、日本政府がそういう意思表示をしている、だから、日本政府としては、労働証明書が出されるようになった以上、それは払う責任があるじゃないか、こう言っているんですよ。そんな前の繰り返しじゃなくて、私の質問に答えてください。
森委員長 坂口厚生労働大臣。
小沢(和)委員 坂口さんじゃないよ。外務省に聞いている。
坂口国務大臣 外務省とも含めまして、これは省庁をまたがっている話でございますから、一遍ちょっと検討させてください。
小沢(和)委員 では今の問題は、武士の情けで、大臣がそう言ってとりなしたから、私は後の経過を見守りましょう。
 それで、改めて大臣にお尋ねしたいんですが、シベリアで抑留された兵士たちは、一番若い人でも既に七十五歳、平均八十歳。残された時間は余りないわけです。
 昨年も、シベリア抑留者に対する賃金の支払いに関する請願が提出され、私たち共産党だけでなく、自民党など大部分の政党の議員が紹介議員になっております。残念ながら採択には至りませんでしたが、こういう中で議員立法の動きもあるようです。
 シベリア抑留者六十四万人は、天皇の命令で戦争に駆り出され、敗戦後は三年、四年の長期間、国際法を踏みにじる非人道的強制労働を押しつけられました。その中で、飢えと寒さ、疲労で、実に五万五千人もが犠牲になりました。この人々は帰国したときも捕虜当時の賃金支払いを受けられず、その後もソ連の手先とかアカなどと差別され、社会復帰でも大変な苦労をいたしました。
 なぜシベリア抑留者だけがこういう目に遭わされたのか。戦後処理は終わったなどとこのまま放置しておくことはもう絶対に許されないと思います。政府の責任で、せめて賃金の支払いくらいは早急に実現すべきだと思いますが、重ねて大臣の見解をお尋ねします。
坂口国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたとおり、我が厚生労働省だけではなくて、外務省にも、あるいはほかの省庁にもかかわる話でございますので、よくひとつそうした省庁とも議論をさせていただきまして、議論の整理をさせていただいてお答えをさせていただきたいと思います。
小沢(和)委員 きょうは傍聴の方もお見えになっております。今の、大臣が積極的に対応するという姿勢を示されたものとして見守っておきたいと思います。
 次に、今大きな問題になっております救急救命士による気管内挿管の問題についてお尋ねをいたします。
 実は私は、去る十五日、山形県酒田市に日帰りで調査に行き、関係者の話を聞いてまいりました。その多くの人々は、政府が気管内挿管は医師法違反などの見解を示して以来、訓告などの処分を受けております。人の命を救うためにやむにやまれずやってきた結果が処分、こんなことが許されるでしょうか。
 大臣は先ほどの答弁でも、気管内挿管については年内に認める方向で結論を出すと前向きの答弁を行われたと思いますが、それはこれまでの方向を百八十度変えるものだと思います。本当にこういう転換をするためには、これまでの指導の方向が誤っていたということをまずはっきり認める必要があるのではないでしょうか。
坂口国務大臣 救急救命士という新しい立場の職業ができまして、そしてこれがスタートしましてから約十年でしょうか。その間、この救急救命士という立場の皆さん方の働きというものも大分、その当初のころから比較をいたしますと、熟練されてきたと申しますか、かなり変わってきたというふうに思っております。やはり、最初この皆さん方にどういう立場を与えるべきかというのは議論の分かれたところであろうと思いますし、それはそれで私はやむを得なかった、そういうこともあったであろうというふうに思います。
 しかし、十年という歴史を経た今日、そして国民の生命というものを考えましたときに、その国民の生命を中心に考えて何がなされるべきかということを中心にしながら、議論をもう一度この際にさせていただくべきだというふうに思っております。
 しかし、先ほども申しましたように、その議論を余り長い間、これから三年も四年もかかってしようなどというようなつもりはさらさらございません。本年のうちにその結論を早く出させていただきたいと思っているところでございます。
小沢(和)委員 政府はこれまでこの問題を十年も検討してきたと言うんです。先日、どういう検討をしてきたかと担当者に伺いましたら、アメリカの文献には、過って食道に管を入れたものが約二割と非常に危険で、しかも救命率が顕著に上がっているわけではないなどと書いてある、だから引き続き検討中だということでありました。
 私はぜひ、山形、秋田、新潟、青森など、多くのところで既に数年間実施してきたという貴重な実績を至急検討していただきたいと思うんです。
 酒田は過疎化が進んでいる地域でありまして、救急病院まで患者を搬送するのにかなり時間がかかることから、一刻を争う心肺停止の患者に対し、必要な場合、挿管を実施することにしたというんです。吐いたりしている患者にラリンゲアル・マスク・エアウエーを装着すると嘔吐物を気管に入れたりする危険があるので、安全に呼吸を確保するために、気管にチューブを挿管する。だから、挿管するのは心肺停止の二割程度だといいます。
 もともと、心肺停止になれば多くの人は死亡します。そういう中で、挿管したから救命率が一挙にはね上がることはありませんが、これで一定の患者が助かっていることは間違いありません。過疎化している地域では、気管内挿管を認めることが切実な問題です。
 挿管は医師でも難しいと言いますが、これも一面的だと思います。多くの心肺停止への緊急処置を日常的に経験している救命士は、挿管技術を既に十分に身につけております。問題は教育です。酒田では、救命士の資格を取ると、現場に配属する前に、特に八週間、病院でエアウエーの装着や気管チューブの挿入の訓練をしております。だから、今まで挿管による事故は全くないと聞いております。
 文献でなく、こういう実態で挿管の可否を判断することが大切ではないでしょうか。
篠崎政府参考人 御指摘の国内で行われた気管内挿管の事例につきましては、医学的な記録が不十分なところもございますし、検討材料として有用なものとはなかなか言えるかどうか難しいというようなことも言われておりますけれども、いずれにいたしましても、現在、厚生科学研究班におきまして、専門家の目によりましてその有効性について検討していただいておるところでございます。
小沢(和)委員 だから、検討する場合に、現に日本の国内でやっているんですから、そのやっている経験を大事に総括して方針を出しなさいと言っているんですよ。
 厚生労働省は、メディカルコントロールの体制を確立してということにこだわっているようですが、これも実情に合わないと思うんです。酒田では、救急病院の医師は忙しく動き回っておって、電話しても受話器に出てくるまでに何分もかかるのが普通だという。そして、指示、助言を求めても、患者を直接診ていないため、なかなか的確な判断を得られない。これでは、一刻を争う心肺停止の患者に救命措置を講ずることをかえっておくらせてしまう。
 救命士たちの願いは、事前にしっかり教育をし、現場では救命措置は思い切って彼らに任せ、事後にその措置の適不適をチェックしてほしいということでありました。これが本当のあり方ではありませんか。
篠崎政府参考人 救急救命士の方々が行います特定三行為につきましては、これは心肺機能停止状態の患者さんに対して行われるものでございます。心肺機能停止状態と申しますのは、心臓がとまっておりますし呼吸がしておらないという、まさに生死ぎりぎりの大変重症な患者さんに対してのことでございまして、その処置が不適切な場合には直ちに生命に重大な影響を及ぼすというようなことにかんがみまして、安全性の確保ということも非常に大事なことだというふうに考えております。
 したがいまして、私どもは、医師からの指示を受ける体制の整備は不可欠であるというふうに考えておりまして、現在、医師の指示が迅速に受けられるような体制の整備をすることが大変大事なことではないかと思っております。
小沢(和)委員 だから、過疎地ではそういう体制がなかなかとれぬからこういう問題が起こっているんです。
 それで、時間が来ましたからこれで最後にしますけれども、気管内挿管は多くの国で救命士に認められております。日本より救命士制度が五年おくれてスタートした韓国でも、既に認められていると聞いております。多くの国でそれが当たり前になってきているときに、日本では、実施してきた地域でさえ挿管が禁止され、チューブも撤去され、やってきた人たちが処分されている。こんなばかなことはないと思うんです。
 同じような問題が除細動器にもある。停止した心臓に電気ショックを与え蘇生させるこの装置は、今では非常に進歩し、だれでも安全に使えるようになり、昨年末から航空機に持ち込み乗務員にも使用させるようになった。しかし、専門家である救命士は医師の指示を受けなければ使用できないことになっている。
 これらの問題点について、今国会中に、立法措置を含め、緊急の手を打つことが政治の責任だと思いますが、大臣に最後の所見をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 日本は法治国家でございますから、法に従ってすべてのことが動くというのは、これは当然のことでございます。しかし、法律をつくるのもまたこの国会の役割でございますから、今、患者の皆さん方を中心にして考えましたときに、そのどれだけの必要性があるかということを明確に把握して、そして、そのときに医師が行うことができないのであれば、それにかわってだれがどうするかといったことも含めて、これは結論を急ぐものというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 終わります。
森委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。皆さん遅いお時間まで大変御苦労さまです。
 冒頭、月曜日、三月二十五日に、ヤコブ病の和解調停、調印がございます。これまで、坂口厚生労働大臣にあっては、非常に誠意ある解決に向けての御努力をいただきまして、まず冒頭、心からお礼を申し上げさせていただきます。
 引き続いて同様の、やはり坂口厚生労働大臣の誠意ある御指導によって、いま一つというか、二つも三つもですが、解決していただきたい事例がございますので、質問に移らせていただきます。
 実は、議題というか、私のお願いしたい一点目は、千鳥ケ淵の墓苑のことでございます。
 大変恐縮ですが、坂口厚生労働大臣には、ぜひ、この銅板のような、お名前の入りました、陸軍軍医大尉酒井達夫さんという方のネームプレートをちょっとお手にとっていただきたく存じます。できれば狩野副大臣にもお願いしたいですが、おられませんでしたら、坂口厚生労働大臣にお願いいたします。
 私が今お手元にお渡しいたしましたのは、実は、現在、三月十二日から二十三日の間に、インドネシアのビアク島というところに遺骨収集団が行っておられますが、昨年、同じ島に行かれました遺骨収集団が発見されたものでございます。そうして見ていただきますと、非常に古いもののように、確かに五十数年前のものでございますが、そのような形で現在なお発見されるような状況に多くの遺骨が置かれておるということです。
 そして、あわせて、お手元に資料で配らせていただきました写真がございますので、委員の各皆さんはお目を通していただければと思いますが、実は、写真の一番上にいろいろ、小道具類と申しますか、いろいろな道具と一緒に注射器とかアンプルとか歯がございます。これが酒井陸軍軍医大尉のそのネームプレートが見つかった横で同時に発見されたものでございます。これが昨年、昨年現在でもこのようなものがまだまだ発見されるというのが実は遺骨収集の現状でございます。
 そこで、冒頭、お伺いがございます。海外での戦没者、二百四十万と言われておりますが、そのうち日本にお帰りになった遺骨、百二十四万でしょうか。まだ百十六万余が、恐らく、発見されることを待ちながら、故郷に帰っておられません。これまでの厚生労働、昔は厚生省でございましたでしょうか、援護局で行ってこられた遺骨収集の進展の現段階についてお教えくださいませ。
真野政府参考人 戦没者の遺骨収集でございますが、これまで、海外戦没者、先生おっしゃるとおり、私ども約二百四十万人と推定をいたしておりますが、昭和二十七年から南方地域におきまして収集を開始いたしました。また、平成七年度からは旧ソ連地域における抑留中死亡者の遺骨収集も実施をいたしまして、先生おっしゃられました約百二十四万柱を本邦に送還をいたしております。
阿部委員 私が伺いたかったのはそのようないいかげんな答えではなくて、さきの参議院のときの共産党の井上議員の御質問の中にもありましたが、例えばパプアニューギニア等々では、まだ、恐らくそこで亡くなられたであろう御遺体の数から比較して、現実に私どものもとに帰ってきた御遺骨は四〇%弱であるというふうな御答弁がございました。
 各方面別に、どのくらいの御遺骨が帰ってきておるか、そのことをきちんと方面を分けてお教えくださいませ。
真野政府参考人 方面別というのを先生のお話と調整をしておけばよかったのでございますが、私ども、かなり地域的には、例えば硫黄島でございますと、概数二万百人の戦没者と思っておりますが、そのうち遺骨が送還された方々は八千三百三十柱と、我々は決してその地域の状況をないがしろにしているわけではございませんで、我々としても、その地域の状況、戦没者の状況それから遺骨の送還の状況を把握いたしております。
 ただ、それぞれ戦没された地域の状況によりまして、なかなか遺骨の収集が難しい地域もございますので、そういう意味で進捗していない地域もある、それはそのとおりでございます。
阿部委員 では、それぞれの地域とおっしゃいましたが、そのようなまた漠然なお答えではなくて、地域ごとにおのおの困難を抱えている事態があると存じます。
 例えば、きょう写真をお回しいたしましたが、この頭蓋骨(とうがいこつ)、世で言う頭蓋骨(ずがいこつ)ですね、これも昨年ビアク島で発見されたものでございますが、例えばこの地域ですと、周辺住民の方々が、やはり日本の戦時下でのいろいろな出来事について、必ずしも今、遺骨収集ということについて了解できない、そういう国民感情をお持ちの地域もございます。
 援護局としてやはりなさるべきは、各地域地域の実態、何が障壁になっているのかをもっときちんと把握、御答弁いただかないと、まだわずか半分しか、五十七年経て半分ちょっとしか帰っていないわけです。もしも自分の親族であればこのような悠長なこと、先ほど、救急救命士問題、十年あたら命を失ってきたことが指摘されましたが、五十七年といえば、御遺族はしっかりとお年を召されます。その中にあっておやりになっているお仕事ですから、もう少し明確な、地域ごとの困難性についての御答弁をお願いいたします。
真野政府参考人 なかなか難しい地域、相手国のあることでございますので、詳細な説明もなかなか難しい点がございますが、一番収集がおくれているといいますか、進んでいない地域は、中国でございます。これはもう当初から、中国の国民感情からなかなか認められないという状況にございます。
 また、北朝鮮につきましては、これは外交関係が樹立されていないというふうなこともありまして、現状では非常に難しい状況にございます。
 また、ミャンマーでございますが、これは、相手国の治安上の理由、昭和三十一年とか四十九年前後には遺骨収集をいたしたわけですが、その後許可をされていないというような状況もございます。平成六年度以降は、遺骨の所在が明らかになった場合につきまして遺骨の収集の派遣団が認められておりますけれども、ミャンマーの一部地域については治安上の理由から立ち入りの許可がおりないというような状況もございます。
 このほか、先生御指摘のパプアニューギニアにつきましても、なかなか難しいという状況でございましたが、いろいろ折衝をした結果今年度から遺骨収集が実施できるようになったということで、いろいろな地域につきまして、私ども今後ともそういう努力を積み重ねていきたいというふうに思っております。
阿部委員 この問題について、坂口厚生労働大臣に一点お伺いいたします。
 参議院での御質疑の中でも、坂口厚生労働大臣のお兄様がインパール方面、インパール作戦のときにお亡くなりあそばしたという御答弁もございましたけれども、やはり皆遺族は高齢化してまいっております。今、私も援護局の方に何度も追い打ちをかけるように聞きましたが、やはり本当に早い対応をしていかないと、遺族すら亡くなられてしまう。
 きょうまた、この御遺族の方へのいろいろな恩給等々のお話をする場でございますが、その御遺族自身が毎年三千人から減っておられる、御高齢になるということでございますので、坂口厚生労働大臣の方から、時局の困難をいろいろきちんと分析されて、全体に遺骨収集のスピードをぜひとも速めていただく、そのためのありとあらゆる方策、またこの次の委員会でも結構でございますから、御検討いただけますや否や、御答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 遺骨収集につきまして、さらにひとつ努力をしたいと思います。
阿部委員 引き続いて、その収集された遺骨の取り扱いについてお伺いいたします。
 千鳥ケ淵墓苑ができまして、昭和三十四年から現在に至るまで、収集された遺骨の納骨にかかわります作業のあらかたの経緯を年代別にお教えくださいませ。
真野政府参考人 ちょっと質問を把握し損ないましたが、あらかたの経緯というのはどういう内容の部分でございましょうか。
阿部委員 これも一応質問予告はしたつもりですが、昭和三十四年から四十一年、四十二年から五十年、五十年代以降、平成二年以降、平成十一年以降、おのおの差異がございますが、その内容にわたっての御答弁をお願いします。
真野政府参考人 申しわけございません。
 少し先生の御質問と違うかもしれませんが、昭和三十四年当時、竣工当時は、各戦域の遺骨収集をいたしまして、そして収集いたしました遺骨を地域別に分けて納骨をいたしておりました。ただ、それは、収集した遺骨の一部をいわば象徴遺骨として納骨をいたしておりました。
 その後、四十一年以降、収集する遺骨の数がふえましたので、そういう分野別の納骨をしなくなってきております。
阿部委員 少なくとも援護局で御責任のある立場であれば、きちんとした御答弁をいただきたいです。
 今の御答弁には誤りがございます。なぜならば、四十二年以降は、遺骨の一部じゃなくて、数とおっしゃいましたが、数とは何と失礼な、全体を持って帰るようになったわけです。そして、五十年までは方面別に一応区分けされていたけれども、五十年代以降は六方面別の区分けが不可能になった。これは私どもで質問主意書も出しましたし、各部局きちんと、遺骨にも本当に失礼だと思います。
 御答弁は正確に、明確にお願いいたします。それに基づいて私が再質問いたしますので。今のようなあいまいな御答弁、非常に心外に思いますし、失礼に当たると思います。その失礼さが今日この御遺骨の取り扱いにあらわれていると私は思います。
 一回現地で遺骨を集め、焼きます。そこから、初めは一部をとってきた。今では、全部を持って帰ってきて、その後、我が国で約一年間保存した後、再焼骨、もう一回焼いていらっしゃいますが、それはいつからお始めになりましたか。
真野政府参考人 遺骨を持ち帰るということで、私ども、その後、厚生労働省の方に仮安置をいたしておりますが、そういう取り扱いをしたときからそういう形をとらせていただいております。
阿部委員 そういう取り扱いをしたときとはいつですか。
真野政府参考人 そういう意味では、当初、海外で遺骨を収集し、そして私どもが仮安置をするということですから、一番最初の、海外の遺骨の収集の最初のときからそういう取り扱いをしているということでございます。
阿部委員 本当にそれが援護局長の御答弁でしょうか。
 最初は一部を持って帰ってこられて、そのときは再焼骨はしていないのです。きちんとお調べください。偽証です、これこそ。死人に口なしです。言えないんです、遺骨は。いつから再焼骨をなさいましたか。
 また、私は再焼骨するときの温度も聞いてございます。理由は、骨が本当に、かさが十分の一から、もっと言えば五%になるほど今の焼却方式では少なくなります。それがいつから始まったのか、このことをちゃんと御答弁ください。質問は通知してあります。
真野政府参考人 焼骨の温度がどういうことかという御質問は確かに受けまして、私ども調べましたら、再焼骨いたしますけれども、それは通常の焼骨をする温度と同じでございます。
阿部委員 それも何度と明確にお願いいたします。通常とか、先ほどから極めてあいまいな答弁。そして、いつからと言ったら、いつです、答えは。それくらいの答弁ができなくて、毎日この大切な遺骨を扱っている部局の長が務まるはずがありません。本当に私は、遺骨が何も言えないから、これだけ私が声を大にして言っているのです。そして、現実に、本当にまだ半分、百十六万、残った遺骨が先ほど見せたこのような状態で待っているわけです、祖国に帰りたいと。このことについて、余りにもいいかげんな姿勢だとは思われませんか。
 きょう御答弁いただけなかった分は、私も時間がもったいないので質問主意書で出させていただきますので、文章できっちりお答えください。そのときには御自身も学ばれるでしょうから。
 そして、私がもう一つ聞いたのは、再焼骨によって一体容積はどのくらいに減るのかということでございました。
 なぜ私がこういうことを聞いたか。皆さんのもとにはカラーでなくて恐縮ですが、実はこれは、去年私が行きましたときの拝礼式、五月二十八日の拝礼式の場で撮影したものでございます。千四十二体を再焼骨いたしまして、このような七十二個の小箱に分けます。七十二個の小箱をさらにアルミ缶にがさがさっと一緒に入れて、このマンホール用の穴から、お骨を、裏の六角堂の後ろのいま一つの墓地におさめておられます。
 皆さん、もし自分の御遺族が、自分の親族が、まず、千四十二体が七十二箱にここで一緒にされる、そして、その後、このアルミ缶の中にぞろぞろと入れられる。皆さんは、御親族が亡くなられたとき、やはり骨つぼというのを、当たり前ですが、できれば一体分は一体で、これが当たり前の埋葬方法でございます。再焼骨してこれだけにした上で、また合わせて缶々に入れておろしている。
 このような形が本当に御遺骨あるいは亡くなられた方々に礼を失していないとお思いでしょうか。坂口厚生労働大臣、お願いします。
坂口国務大臣 私も、詳細について存じないところがございますので、このお亡くなりになりました皆さん方に対して失礼のないようにしたいと思います。
阿部委員 その段取りを、ぜひともことしの拝礼式の前にやっていただきとうございます。
 どのような形で遺骨が扱われているのか。このことは本当に、これは実は、御遺族というか、遺骨収集にボランティアで行っていられる方々が写真を持ってこられました。私も現場に連れていっていただきましたから、そのとき初めて、去年知りました。そして、去年ここで知ったがゆえに、坂口厚生労働大臣に、実は、千鳥ケ淵には六角堂以外に、裏にもう一つ新たな墓地が、墓地といいますかアルミ缶収容所が置かれていることを御存じですかということをお伺いいたしました。そして、そのとき坂口厚生労働大臣は、前向きにこの問題はぜひとも解決しなきゃいけないとおっしゃってくださいました。それであるがゆえに、私は、一年間、どう解決されるか見ておりました。
 しかしながら、厚生労働大臣もお忙しゅうございます。やはり担当の援護局がきちんと御遺族たちの声を聞いて政策に反映させる努力をなさらなければ、幾ら有能な坂口厚生労働大臣でも、実際に見て、見ないものはわからないのです。
 ことしの拝礼式前に、必ず現状を坂口厚生労働大臣に御報告ください。よろしいでしょうか、援護局長。
真野政府参考人 私ども、遺骨の納骨につきまして細心の注意を払っているというふうに思っておりますけれども、今大臣からの御指示もございましたので、その方法につきまして大臣に十分御相談をして、説明を申し上げたいと思います。
阿部委員 今、細心の注意とおっしゃいましたが、このような形で扱われることが自分の御親族だったらどうかというふうに、当たり前の人間に戻って考えてください。それがなければ、どんな美辞麗句もいい政策にはなりません。
 引き続いて、DNA鑑定のことでも一点お伺いさせていただきます。
 先ほどの質問で狩野副大臣の方からお答えがありましたが、現在四千体近くがDNA鑑定を待っておられます。この国を出ていくときは名前があったのに、この国に帰ってからは無名になってしまった御遺骨です。でも、このDNA鑑定によってお名前が判明するものもあるはずです。
 そして、先ほどの御答弁では、いろいろな倫理的、技術的側面に検討を加えているからということで、明確な御答弁ではなかったと思います。もしも御自分の御遺族であればと考えたときに、DNA鑑定はどのような形で推し進められるべきか。
 実は、九月十一日のアメリカのツインタワービルのテロの後にもDNA鑑定がなされ、そして、オーストリアでトンネル事故で百五十五人が亡くなった際にも、すべて、即座にDNA鑑定がなされ、御遺族に返されました。
 五十七年間、今、私たちは新たな技術を手に入れました。そのことについて、坂口厚生労働大臣、ぜひとも前向きに、より迅速に、このDNA鑑定を我が国の現状に生かすよう、特に、御遺族は、何度も申し上げますが高齢です。ぜひとも御決意のほど、お願いいたします。
坂口国務大臣 DNA鑑定につきましては、一つの有力な方法だというふうに私も思っておりますが、現在、戦没者遺骨のDNA鑑定に関する検討会を設置して、今議論を進めているところでございます。間もなく議論も集約されるということでございますので、早く、それに従いまして、このDNA鑑定も行いたいというふうに思っております。
阿部委員 沖縄で亡くなられた方の御遺族で現在DNA鑑定を待っておられるおじいちゃまは、九十四歳でございます。一刻も早く、一秒も早く、やはり御遺骨を返すべきところに返してあげていただきたいです。
 そしてもう一つ、実務サイドにはお願いがございます。
 御遺骨になられた方は、つめで御遺骨とDNAの合致がわかる場合がございます。そのような知識を御遺族はお持ちでない場合もあります。もしDNA鑑定を前向きに進めようとするのであれば、御遺族の皆様に、亡くなる前、亡くなって焼いてしまえば御遺族もつめもありませんから、そのような働きかけ、アナウンス、情報の伝達をぜひとも実務サイドでなさってください。御答弁は結構です。
 引き続いて、恐れ入りますが、坂口厚生労働大臣にもう一点お願いがございます。いわゆる在外被爆者、特に韓国の被爆者問題でございます。
 さきに坂口厚生労働大臣は、八月三十日に韓国を訪問されて、日本政府は居住国に関係なく被爆者たちが同等な待遇を受けるべきであるという原則を持っておる、日本に帰ったら最善を尽くすとお述べになりましたが、お気持ちにお変わりはないでしょうか。
坂口国務大臣 在外被爆者の問題につきましては、昨年後半、検討会もしていただきまして、一つの結論も得たところでございます。
 このことにつきましては、きちんと決着をつけなければならないというふうに考えております。
阿部委員 その八月三十日の坂口厚生労働大臣の訪韓を踏まえて、昨年十二月十八日に発表なさいました二枚の坂口厚生労働大臣のペーパーがございますが、おおむね三年以内にすべての在外被爆者が日本に来て被爆者手帳を取得できるように交付するとございますが、これは、例えば八十歳以上で日本に来るのが非常に難儀な方もおられます。そういう点については、日本に来ることすらできない方については、どのようにお考えの上での御発言でしょうか。
坂口国務大臣 多分そういう人もおみえになると思いますし、もっと年齢はお若くても、病気等でなかなかそうもいかない人もおみえだというふうに思いますが、その人たちに対しましては、現地調査でその代替にしたいというふうに思っております。
阿部委員 いわゆるその方針の前提には、被爆者手帳が日本国内のみで有効であるというところをどのようになさるかということもあると存じます。ただ、今大臣の御答弁は、必ずしも来日を迫るものではないというふうに受けとめさせていただいて、そのような方向によろしくお願いいたします。
 そして、あわせてですが、実は坂口厚生労働大臣の御見解を二月二十八日に長崎県並びに長崎市の担当者が韓国に持ってまいりました。そして、韓国保健福祉部、大韓赤十字社並びに韓国原爆被害者協会本部を訪れまして、そのペーパーの内容を伝えました。
 ただし、この伝えられた韓国原爆被害者協会の見解では、「この間、当協会が日本政府に対して要求してきたとおり、在韓被爆者がたとえ日本に居住していなくとも、在日被爆者と同等に日本の被爆者援護法の適用を受けることができ、また、二〇〇四年には枯渇することが予想される医療基金が、引き続き維持されるように、日本円で九十億円の追加支援が行われるという、日本政府の確約が得られるまで、日本政府の在外被爆者健康手帳発給事業に対する当協会の賛否の見解を示すことは、保留する。」という見解が届いております。
 もうすぐ厚生労働省にも正式に届くものと思いますが、このような相手国の見解について、坂口厚生労働大臣の御答弁を賜りたいと思います。
坂口国務大臣 今私のもとには来ておりませんし、どういう内容かはよく存じませんけれども、それはちょうだいをしましてから精査したいというふうに思いますが、これからどうするかということの最終決着をつけなければならない問題でございますので、トータルでそれは考えていきたいというふうに思っております。
阿部委員 私に寄せられました情報では、二〇〇二年の四月一日から今回予算措置した五億円の問題をとにかく手続しなければならないのでという形で日本側が急がせたことへの返事がこの見解でございますので、正式なものが届きましたら、また坂口厚生労働大臣に改めて御尽力をいただきたいと思います。
 ちょうど戦後五十七年たち、埋葬問題も本当に、実は埋葬者の中にも身元がわかっておられるのに千鳥ケ淵の無名のお墓に入れてある方もございます。実は、日本に墓苑と名のつくものは二つあっても、これは墓地埋葬法の扱いでは墓地ではございません。このような不正常な状態も、やはり国としてきちんとした墓地、墓地埋葬法に基づく墓地をおつくりいただくことによって、名のある人には名のある石碑を建てられる状態が来ると思いますが、最後に恐縮です、一点だけ、坂口厚生労働大臣に、このことへの御見解もお願いいたします。
坂口国務大臣 そうした問題も含めまして、今後ひとつ、お亡くなりになりました皆さん方に失礼でないようにしていきたいというふうに思っております。
阿部委員 どうか重ねて御尽力をお願いいたします。終わらせていただきます。
森委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
森委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、内閣提出、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、平成十四年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五十七分散会


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