衆議院

メインへスキップ



第7号 平成14年4月10日(水曜日)

会議録本文へ
平成十四年四月十日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 森  英介君
   理事 鴨下 一郎君 理事 鈴木 俊一君
   理事 長勢 甚遠君 理事 野田 聖子君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君
      岡下 信子君    上川 陽子君
      木村 義雄君    北村 誠吾君
      後藤田正純君    佐藤  勉君
      自見庄三郎君    田村 憲久君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      棚橋 泰文君    西川 京子君
      馳   浩君    林 省之介君
      菱田 嘉明君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      谷津 義男君    吉野 正芳君
      大島  敦君    奥田  建君
      加藤 公一君    鍵田 節哉君
      金田 誠一君    五島 正規君
      土肥 隆一君    三井 辨雄君
      水島 広子君    江田 康幸君
      桝屋 敬悟君    樋高  剛君
      小沢 和秋君    木島日出夫君
      藤木 洋子君    阿部 知子君
      金子 哲夫君    中川 智子君
      野田  毅君    川田 悦子君
    …………………………………
   議員           金田 誠一君
   議員           青山 二三君
   議員           武山百合子君
   議員           児玉 健次君
   議員           中川 智子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   厚生労働大臣政務官    田村 憲久君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   審査局長)        上杉 秋則君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局国立病
   院部長)         河村 博江君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            澤田陽太郎君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部長)    高原 亮治君
   参考人
   (天使大学教授)     保原喜志夫君
   参考人
   (大阪市職業リハビリテー
   ションセンター所長)   関  宏之君
   参考人
   (社会福祉法人ゆめグルー
   プ福祉会理事長)     田中 秀樹君
   参考人
   (社会福祉法人あげお福祉
   会理事長)        佐藤 順恒君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十日
 辞任         補欠選任
  竹本 直一君     馳   浩君
  松島みどり君     菱田 嘉明君
  家西  悟君     奥田  建君
  木島日出夫君     藤木 洋子君
  阿部 知子君     金子 哲夫君
同日
 辞任         補欠選任
  馳   浩君     竹本 直一君
  菱田 嘉明君     松島みどり君
  奥田  建君     家西  悟君
  藤木 洋子君     木島日出夫君
  金子 哲夫君     阿部 知子君
    ―――――――――――――
四月八日
 介護・医療・年金制度の拡充に関する請願(木島日出夫君紹介)(第一三六〇号)
 患者負担の再引き上げ中止、安心してかかりやすい医療に関する請願(木島日出夫君紹介)(第一三六一号)
 年金制度改善、安心して暮らせる老後の保障に関する請願(児玉健次君紹介)(第一三六二号)
 医療費負担引き上げ中止と介護保険の緊急改善に関する請願(大森猛君紹介)(第一三六三号)
 患者負担引き上げ中止に関する請願(大森猛君紹介)(第一三六四号)
 同(志位和夫君紹介)(第一三六五号)
 同(中林よし子君紹介)(第一三六六号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一三九六号)
 同(山田敏雅君紹介)(第一四一一号)
 同(川田悦子君紹介)(第一五〇六号)
 同(達増拓也君紹介)(第一五〇七号)
 社会保障を拡充し、将来への安心と生活の安定に関する請願(三井辨雄君紹介)(第一三六七号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一三九七号)
 同(三井辨雄君紹介)(第一三九八号)
 同(北川れん子君紹介)(第一四一二号)
 同(野田佳彦君紹介)(第一四一三号)
 同(三井辨雄君紹介)(第一四一四号)
 同(山花郁夫君紹介)(第一四一五号)
 同(中川智子君紹介)(第一五〇八号)
 同(三井辨雄君紹介)(第一五〇九号)
 乳幼児医療費無料制度の創設に関する請願(大森猛君紹介)(第一三六八号)
 介護保険制度の緊急改善に関する請願(志位和夫君紹介)(第一三六九号)
 社会保障拡充に関する請願(伊藤公介君紹介)(第一三七〇号)
 同(古屋圭司君紹介)(第一三九九号)
 医療費負担引き上げの中止に関する請願(大森猛君紹介)(第一三七一号)
 介護、医療、年金制度の拡充に関する請願(藤木洋子君紹介)(第一三七二号)
 医療改悪反対、国民健康保険・介護保険制度の拡充に関する請願(木島日出夫君紹介)(第一三七三号)
 医療保険制度の拡充に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一三七四号)
 国立病院・療養所の院内保育所の存続・拡充に関する請願(金田誠一君紹介)(第一三七五号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げ中止に関する請願(山口富男君紹介)(第一三七六号)
 同(山井和則君紹介)(第一四〇〇号)
 同(近藤昭一君紹介)(第一四一八号)
 同(水島広子君紹介)(第一五一八号)
 国民の医療と国立病院・療養所の充実・強化に関する請願(川内博史君紹介)(第一三七七号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一四〇一号)
 同(川内博史君紹介)(第一四〇二号)
 同(川内博史君紹介)(第一四二一号)
 同(重野安正君紹介)(第一四二二号)
 同(田中慶秋君紹介)(第一四二三号)
 同(山口わか子君紹介)(第一四二四号)
 同(川内博史君紹介)(第一五一九号)
 同(重野安正君紹介)(第一五二〇号)
 同(田中慶秋君紹介)(第一五二一号)
 健保本人三割負担等の患者負担引き上げ中止に関する請願(志位和夫君紹介)(第一三七八号)
 安全で行き届いた看護の実現に関する請願(山田敏雅君紹介)(第一四一六号)
 同(川田悦子君紹介)(第一五一六号)
 移行教育の早期実現と看護制度一本化に関する請願(山田敏雅君紹介)(第一四一七号)
 同(川田悦子君紹介)(第一五一七号)
 医療保険制度改正に関する請願(山口わか子君紹介)(第一四一九号)
 同(山花郁夫君紹介)(第一四二〇号)
 国民負担増なしに安心できる医療保険制度の拡充に関する請願(上田清司君紹介)(第一四二五号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げなどの中止に関する請願(島聡君紹介)(第一四四一号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(安住淳君紹介)(第一四四二号)
 同(赤城徳彦君紹介)(第一四四三号)
 同(伊藤公介君紹介)(第一四四四号)
 同(伊藤信太郎君紹介)(第一四四五号)
 同(石原健太郎君紹介)(第一四四六号)
 同(遠藤和良君紹介)(第一四四七号)
 同(鹿野道彦君紹介)(第一四四八号)
 同(金子恭之君紹介)(第一四四九号)
 同(金田誠一君紹介)(第一四五〇号)
 同(川田悦子君紹介)(第一四五一号)
 同(木村太郎君紹介)(第一四五二号)
 同(岸田文雄君紹介)(第一四五三号)
 同(倉田雅年君紹介)(第一四五四号)
 同(小坂憲次君紹介)(第一四五五号)
 同(小林守君紹介)(第一四五六号)
 同(高村正彦君紹介)(第一四五七号)
 同(今田保典君紹介)(第一四五八号)
 同(左藤章君紹介)(第一四五九号)
 同(佐田玄一郎君紹介)(第一四六〇号)
 同(佐藤静雄君紹介)(第一四六一号)
 同(斉藤斗志二君紹介)(第一四六二号)
 同(下村博文君紹介)(第一四六三号)
 同(鈴木俊一君紹介)(第一四六四号)
 同(鈴木康友君紹介)(第一四六五号)
 同(田野瀬良太郎君紹介)(第一四六六号)
 同(高市早苗君紹介)(第一四六七号)
 同(高橋一郎君紹介)(第一四六八号)
 同(高橋嘉信君紹介)(第一四六九号)
 同(達増拓也君紹介)(第一四七〇号)
 同(棚橋泰文君紹介)(第一四七一号)
 同(谷本龍哉君紹介)(第一四七二号)
 同(近岡理一郎君紹介)(第一四七三号)
 同(渡海紀三朗君紹介)(第一四七四号)
 同(虎島和夫君紹介)(第一四七五号)
 同(中井洽君紹介)(第一四七六号)
 同(中川秀直君紹介)(第一四七七号)
 同(中川正春君紹介)(第一四七八号)
 同(中村正三郎君紹介)(第一四七九号)
 同(仲村正治君紹介)(第一四八〇号)
 同(西田司君紹介)(第一四八一号)
 同(西村眞悟君紹介)(第一四八二号)
 同(根本匠君紹介)(第一四八三号)
 同(浜田靖一君紹介)(第一四八四号)
 同(林省之介君紹介)(第一四八五号)
 同(樋高剛君紹介)(第一四八六号)
 同(平井卓也君紹介)(第一四八七号)
 同(保利耕輔君紹介)(第一四八八号)
 同(細川律夫君紹介)(第一四八九号)
 同(細田博之君紹介)(第一四九〇号)
 同(牧野聖修君紹介)(第一四九一号)
 同(牧野隆守君紹介)(第一四九二号)
 同(松宮勲君紹介)(第一四九三号)
 同(松本剛明君紹介)(第一四九四号)
 同(松本龍君紹介)(第一四九五号)
 同(三ッ林隆志君紹介)(第一四九六号)
 同(三塚博君紹介)(第一四九七号)
 同(水島広子君紹介)(第一四九八号)
 同(村上誠一郎君紹介)(第一四九九号)
 同(村田吉隆君紹介)(第一五〇〇号)
 同(持永和見君紹介)(第一五〇一号)
 同(谷津義男君紹介)(第一五〇二号)
 同(山井和則君紹介)(第一五〇三号)
 同(山本公一君紹介)(第一五〇四号)
 同(吉野正芳君紹介)(第一五〇五号)
 児童扶養手当の抑制案撤回に関する請願(金田誠一君紹介)(第一五一〇号)
 同(川田悦子君紹介)(第一五一一号)
 同(水島広子君紹介)(第一五一二号)
 同(山井和則君紹介)(第一五一三号)
 児童扶養手当抑制案の撤回に関する請願(川田悦子君紹介)(第一五一四号)
 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(棚橋泰文君紹介)(第一五一五号)
は本委員会に付託された。
四月九日
 社会保障拡充に関する請願(第四四〇号)は「加藤紘一君紹介」を「中谷元君紹介」に訂正された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二〇号)
 身体障害者補助犬法案(山本幸三君外六名提出、第百五十三回国会衆法第二八号)
 身体障害者補助犬の育成及びこれを使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化のための障害者基本法等の一部を改正する法律案(山本幸三君外六名提出、第百五十三回国会衆法第二九号)
 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
森委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、天使大学教授保原喜志夫君、大阪市職業リハビリテーションセンター所長関宏之君、社会福祉法人ゆめグループ福祉会理事長田中秀樹君、社会福祉法人あげお福祉会理事長佐藤順恒君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと思います。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、参考人の皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、発言する際は委員長の許可を受けることとなっております。
 それでは、まず保原参考人にお願いいたします。
保原参考人 御紹介をいただきました保原です。
 私は、労働政策審議会障害者雇用分科会の会長として、また、その前段階の検討を行った厚生労働省の障害者雇用問題研究会の座長として、今回の法改正による障害者雇用施策の見直しについての議論に関与しておりますので、それらの会議の審議経過を交えながら、意見を述べさせていただきます。
 初めに、検討の経緯ですが、同研究会は、平成十二年十一月より、一年間で計十三回の検討を行ってきました。これを受けて、同審議会は、本年一月に今後の障害者雇用施策の充実強化について意見書を取りまとめ、さらに、同月、厚生労働大臣から障害者雇用促進法の改正についての諮問を受け、答申を行ったところです。
 同研究会及び同審議会は、事業主の代表、労働者の代表、障害者の代表、公益委員により構成されており、本改正案は各委員合意の結果によるものであります。
 一、検討に当たっての問題意識。
 第一に、言うまでもなく、現在の障害者の雇用は厳しい状況にありますが、障害者雇用を取り巻く状況は、企業組織の再編の活発化、技術革新等による職場環境の改善等、大きく変化していることも事実です。私どもは、こうした状況に対応して、どうしたら障害者の雇用の場を拡大することができるかという視点から出発しました。
 第二に、就職を希望する障害者の中でも、近年、知的障害者、精神障害者等の職業的自立の困難な障害者がふえてきているため、きめ細かな雇用支援策の充実強化が重要であり、これに加えて、厚生労働省の発足によるメリットを生かして、雇用施策と保健福祉施策の連携を強化して施策を推進することへの期待が高まっているという認識があります。
 第三に、近年、医療、福祉の進展等により、特に社会参加や就業への意欲と可能性を持つ精神障害者が増加してきているため、雇用促進施策の一層の充実が必要であり、また、精神障害者と雇用率制度のあり方についての検討も求められています。
 二、障害者の雇用の場の拡大。
 まずは、障害者の雇用の場の拡大を図るための雇用率算定方式の見直しです。
 我が国の障害者雇用施策においては、障害者雇用率制度は最も重要な柱の一つでありまして、これまでも障害者の雇用の場の確保に大きく貢献してきました。今後も雇用率制度に基づく施策をさらに推進し、雇用におけるノーマライゼーションの実現を図ることが重要であると考えています。
 このような認識のもと、今回の改正においては、まず第一に、障害者雇用率算定方式の見直しを行うべく、企業グループ全体で障害者雇用の促進を図るために特例子会社制度の改善を図るとともに、除外率制度について廃止を目指すこととしています。
 (一)企業グループによる雇用率の算定。
 特例子会社とは、障害者雇用率を親会社と通算する制度ですが、この制度は、障害者に配慮した職場環境の設定、障害特性に対応した業務の再編成等が行いやすくなることにより、特に知的障害者、重度障害者の職域が拡大するなど障害者雇用を進める有効な方法と評価できるものと思われます。一方、近年、分社化など企業組織の再編が活発化しております。このような中で、親会社の責任のもとで、企業グループ全体で特例子会社における障害者雇用に貢献する仕組みを構築し、特例子会社を活用して企業グループ全体で障害者雇用を促進することが重要であると考えます。
 (二)除外率制度の見直し。
 また、除外率制度は、障害者の就業が困難とされる職種の労働者が相当割合を占める業種について雇用義務を軽減する制度であり、昭和五十一年の制度発足以来、その縮小が期待されていたものであります。今日、除外率制度は、職場環境の整備等により障害者の就業可能性が高まっている実態と合わなくなっていること、また、この制度は障害者の雇用の機会を狭めるものであり、ノーマライゼーションの理念から問題がある等から不合理なものとなりつつあり、廃止を目指して見直しを行うことが必要であると考えます。
 しかしながら、廃止には準備期間が必要であり、段階的に縮小を進めることが必要です。そこで、当面、二年後の平成十六年度に各業種一律に一〇%引き下げることとし、次回以降の除外率の引き下げ幅は、障害者雇用の進捗状況、技術革新の進展状況等についての評価を行った上で定めるべきとの結論となりました。
 (三)国及び地方公共団体の除外職員の見直し。
 また、国及び地方公共団体の除外職員についても、企業との均衡を考慮して、民間企業の除外率と同様の方向で縮小を進め、廃止を目指していくべきであります。この場合、あらゆる職種で障害者雇用が進むことが望ましいのですが、警察官や自衛官のように、国民の生命の保護とともに公共の安全と社会の秩序の維持を職務としており、その遂行のためには職員個人による強制力の行使が必要な職員については、例外扱いすることが適当であると考えます。
 (四)多様な雇用就業形態への対応について。
 このほか審議会では、障害者の職業的自立の場を広げるために、多様な雇用就業形態への対応を進めることについても議論がなされました。IT技術の進展等により増加しつつある在宅勤務や在宅就業は通勤困難な重度障害者が能力を発揮する機会となり得るものであり、また、短時間勤務は直ちにフルタイムで働くことが困難な障害者にとって必要な選択肢であるため、適切な支援策を講じることが必要であると考えます。
 三、障害者に対する総合的支援の充実。
 これが今回の改正の第二の柱です。
 (一)障害者就業・生活支援センターによる支援事業の創設。
 障害者就業・生活支援センターは、障害者の身近な地域において、雇用、福祉、教育等の関係機関が連携して就業及び日常生活上の支援を一体的に行うことにより、就職困難度の高い障害者の職業的自立に大きく貢献するものと考えます。
 (二)ジョブコーチの事業。
 ジョブコーチ事業は、事業場外の専門家が障害者の職場に出向き、障害者と事業所との間に立って職場定着の支援を行うものであり、コミュニケーションの問題等から、就職ができない、または一たん就職しても不適応を起こして離職せざるを得ないような障害者について、雇用の促進、雇用の継続を図る効果の大きい支援策であります。
 四、精神障害者の雇用促進。
 今回の改正の第三の柱は、精神障害者について定義規定を設けることにより、本法律上の位置づけを明確にすることであります。
 精神障害者の雇用率適用については、厚生労働省に置かれた精神障害者の雇用の促進等に関する研究会で取りまとめた結果を参考にして、検討を行いました。その結果、現段階では直ちに実施することは困難であるものの、今後、精神障害者を雇用率制度の対象とする方向で取り組むことが適当であるとの合意に達しました。また、ジョブコーチ事業等精神障害者の特性を踏まえた事業を新設するとともに、精神障害者の定義規定が設けられたことは、精神障害者の雇用の支援を進めていく上で意義が大きいと考えます。
 今後、政府において、精神障害者の雇用について関係者の理解の促進を図るとともに、精神障害者に雇用率制度を適用する上での課題等の検討のため、関係者の参画する調査研究の場を早期に設けることを期待します。
 最後になりましたが、今回の障害者雇用促進法の改正により障害者の雇用が一層促進されることを期待いたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
森委員長 どうもありがとうございました。
 次に、関参考人にお願いいたします。
関参考人 ただいま御紹介いただきました大阪市職業リハビリテーションセンターの関でございます。
 日ごろから何かとお世話になっておりますが、このような機会を与えていただきましたことを大変感謝いたします。
 私は、かれこれ三十年近くこんな仕事をしておるわけでございますが、大阪では、経営者の方であるとか労働組合であるとか、そういった方々が入った大阪障害者雇用支援ネットワークというようなものもつくっておりまして、そこの代表理事も務めております。また、全日本手をつなぐ育成会という知的障害者の団体がございますが、そこの理事でもございまして、かれこれ、これも七年ぐらいになりましょうか、全国で知的障害のある方々の就労支援を進めるべく、いろいろ努力をしているところでございます。また、昨年から厚生労働省の社会保障審議会の障害者部会の委員も務めております。
 特に、今回、法改正の意味といいますか、厚生労働省が発足して以来初めての法改正でありまして、私どもにとりましては、障害があるからということではなくて、人が一定の年齢になったら働くんだというふうな当たり前のことにより一歩近づくものになってくれればという願いがございます。
 皆様のお手元に資料がございますので、その資料に沿って、お話を進めてまいりたいと思います。
 まず、資料の一のところでございますけれども、「障害者雇用施策を考える上で基礎となるデータ」というところでございますけれども、実は、いろいろな施策が行われているわけでございますけれども、身体障害がある方が三十九万六千人、知的障害のある方が六万九千人、精神障害のある方が五万一千人と、今、五十一万六千人の障害のある方が働いている。この五十一万六千人が多いか少ないかというところが一つのポイントになると思いますが、私は、決して多い数字ではない。これだけよってたかっていろいろやっておきながら、これだけの数字というのは、とてもよくないんじゃないかというところが一点であります。
 それから、いわゆる施設福祉というものが大変美化されていますけれども、施設から一般の就労に出ていく人たちがとても少ないという現実であります。
 それから三点目のところでありますが、養護学校から一般の就労に進んでいく人たちが年々減少傾向にあります。これも大きな問題だと言わざるを得ません。
 それから二のところでございますけれども、我々は、厚生労働省が誕生したということで、いわゆる福祉、医療、雇用等々が一体化されて運用されていくという期待感を持っているわけでございまして、今後、特に精神障害のある方々の問題等に関しましては、さらに連携を深めていかなければいけないというところが一点目でございます。
 それから二点目でございますが、企業たたきをしながら、障害のある人たちの就労が進むはずがございませんので、企業にとって負担感のない形での就労促進というものを考えなければいけないというのが二点目でございます。
 それから三点目でございますが、私も特定非営利活動法人を一つ持っているわけでございますが、従前の縦割りの組織ではなくて、そういう市民組織がもう少し障害のある方の就労支援ができるような、そういう規制緩和等々も考えられていいのではないかというのが三点目であります。
 次に四点目のところでございますが、これは地方分権一括法が施行されて、障害のある方の就労というものが国に一元化されたといういい面はございますけれども、もう一つ、地方自治体あるいは市町村レベルで、労働部局を担当するところがイニシアチブを持てないでいるという現実がございます。そこのところをもう少し指導するなり、あるいは一元化するようなシステムが必要であるというのが最後のところでございまして、住民に顔の見える就労支援策というのをどう展開するかというのが大きな課題になろうかというふうに思っております。
 次に、今回の法改正案に関連した意見でございます。
 障害者就業・生活支援センターというものが今回、大きく改正のポイントになってございますが、これは皆様の二ページ目の資料をちょっとごらんいただければと思います。
 二ページ目の資料にございますように、ざくっと見ますと、支援者総数と、そこから就職者数というのがございますけれども、精神障害のある方あるいは知的障害のある方の支援がとてもよくできたということでございます。これは二十一カ所の施設の総計でありますけれども、この中には、精神障害を専門とするところも二カ所含まれているわけでございます。
 こういったものが地域に展開される。今年度予算で四十七カ所ということが言われておりますけれども、四十七カ所ではとても足らないわけでありまして、もう少し、例えば地域の福祉圏域に一カ所、あるいは職業安定所に一カ所ぐらい、こういった就労支援センターを設置する必要があるだろう。顔の見える支援ということをつくっていかなければいけないだろう。
 しかし、ここに挙がっております数字でございますけれども、これは指定をされた就労支援センターが本当によく頑張って、しかも地域の核になる、あるいは地域を耕すというふうなことからつくり上げたものだということでございますので、ただ単に施設があればいいということではございませんので、その点も強調しておきたいと思っております。今後、こういったものが全国展開されることで、いい成果を出すことであろうというふうに期待しております。
 それから二つ目のことでございますが、二点目のところでジョブコーチについて書いておりますが、箱物がなければ障害のある人たちの就労支援はできないということではなくて、企業に一緒に出向いていって、そこでいろいろな問題を解決しながら就業に導いていくというふうな方策が本格化する。特にアメリカでは既に一般化されているものでございますので、これがこういった形ででき上がるというのは、とてもいいことだというふうに考えております。
 第三に、特例子会社の問題でございますが、特例子会社で、前回の法改正がありましたときに、特に、企業規模の大きいところで特例子会社がつくられ、そして知的障害のある諸君がかなり多く雇用されています。ただ、今、産業の空洞化であるとかそういった現実を受けまして、特例子会社は大変苦労をされているという現実もございます。
 ですから、今回の法改正におきまして、苦労されているということに少し意識を集中していただきながら、そういった方策を考えていただければというふうなことで考えております。
 それから、雇用率の適用除外の問題でありますが、大きくは二つあろうかと思いますが、一つは、従前、とてもじゃないが障害のある方々が働けないような職場がたくさんあったわけですが、産業構造が随分変わったし、環境整備も随分進んだわけでございまして、今そういう産業というのも少のうございますので、そういった形で障害のある方々の門戸を広げていくという意味では大賛成であります。特に、これに関しては、行政での障害のある方の雇用ということも同時に考えていけるようなこととして考えていただければと思っております。
 それから、第五点目でございますが、精神障害のある方々への雇用率の適用の問題でありますが、今回見送られたということは至極残念であります。ただ、将来に向けて、いろいろな研究会であるとか雇用率への適用だとかということが残された、展望が持てるということについては、大変評価をしているわけでございまして、特に厚生サイドで行われておりますような通院患者のリハビリテーションだとかの連携をもう少し進めながら、精神障害のある方々の雇用の問題を解決していかなければいけないというふうに思っております。
 それから、最後でございますが、レジュメの下の方に二つ書いてございます。
 第一点は、障害のある方も同じように雇用の流動化の波にさらされているわけでございまして、たくさんの人たちが離職をしております。厚生労働省の方では、雇用創出事業というものをつくられて、それが現に運用されているわけでありますが、その前に緊急雇用安定プロジェクトというすばらしい制度がございました。そこでは、多くの人たちが能動的に参加して、しかも四千二百人ぐらいの障害のある方が二年間で雇用されたという実績があります。前年度予算で二千人、今年度で二千二百人分の予算が計上されておりますけれども、緊急性にかんがみて、これの拡充とさらにはその柔軟な運用ということをお願いしたいというのが一点でございます。
 それから、最後のところですが、障害者プランがことしで終わります。しかし、障害者プランの中には、障害の方の就労というのはほんの少ししか書いてございません。もう少し障害のある方の就労という問題について包括的な記述がなされ、そして数値目標が示されるようにお願いをいたしまして、私の意見陳述といたします。ありがとうございました。(拍手)
森委員長 どうもありがとうございました。
 次に、田中参考人にお願いいたします。
田中参考人 私は、社会福祉法人ゆめグループ福祉会の理事長をやっています田中です。また、全国障害者共同作業所全国連絡会東京支部の副会長も兼任でやっています。
 ゆめグループ福祉会は、東京都の江東区にあります。昨年十月に精神障害者社会復帰施設と身体障害者小規模通所授産施設を立ち上げ、社会福祉法人となりました。ほかに無認可の作業所三カ所、合わせて、毎日通ってくる障害ある人が百二十名を超えています。
 またさらに、地域生活を支援する意味で、二十四時間介護つきグループホーム二カ所とか生活支援センターなどで介護支援や給食サービスなどを、地域で医療福祉企業とネットワークを組みながら家族の暮らしの支援を続けています。
 この間、福祉事業の基本的なあり方が、介護保険の導入から、社会福祉基礎構造改革に始まった福祉分野の基本的理念は、市場原理を導入した社会福祉法の成立をもって幕がおろされました。
 特に、精神障害者の分野では、精神保健福祉法、精神障害者基本法、社会福祉法など法的な整備がなされ、社会資源も拡充しつつありますが、残念ながら、他の障害施策と比べると質、量ともに不足しているし、医療中心、入院中心の隔離収容政策の構造は変わっておりません。しかも、現在の精神病床の九〇%は民間病院で、増床の傾向にあります。入院患者の四〇%は六十歳以上で、社会適応の困難を抱えています。これは、十五年前の当時と比べて入院患者数は減っていないというのが数字で出ています。
 また、医療的には退院できるのに入院している社会的入院の人たちが、全国の精神病院在院者三十四万のうち三分の一以上を占めているという現実があります。この背景には、地域での社会資源や福祉サービスの不足と、地域の人々の誤解や偏見があるということが挙げられます。
 私たちは、この誤解、偏見が、もう一つ、障害者自身、持つ人の中にも根強くあることがわかりました。私たちは、施設が地域ですべての人たちにとって必要のある社会資源として子供から高齢者まで活用されることと同時に、障害種別からくる固有のニーズへの対応を十分に配慮しつつ、障害の種別を超えて混合利用してきました。
 例えば、盲人の人たちだけとか、車いすの人たちだけのグループの活動だと、とても狭い環境や関係になってしまいます。例えば、盲人、全盲の人にテレビ電話を普及しようと頑張っている人たちがいますが、普通であれば、目が見えないのに何で必要なんだということが言われます。しかし、全盲の人が、朝起きて、きょうは天気がいいので、どんな服を着ていこうか、赤がいいか青がいいか、そんなときに、テレビ電話で友達や何かに聞いて、この赤い色がすてきねとか化粧はこういうふうにやろうかしらとか、そういうのにも活用できる。
 そういうことが、一見、目が見えないからこういうことができないだろうというようなとらえ方じゃなくして、なぜ、障害があるがゆえに生活面でどんなことが困っているのか、また参加したいのにできないということをどうクリアしたらいいのかという制度であってほしいと考えています。
 特に、精神障害を持つ人は、外見から判断することが難しいケースが多く、障害の内容もさまざまです。中でも精神分裂症の人は、心優しく、自己主張が苦手で、生まじめで、周りの人に必要以上に気を配ってしまう傾向があります。向精神薬を服用する場合が多く、薬を飲むと動作が鈍くなったり疲れやすくなったり頭がぼうっとするなど、人によっていろいろな副作用が出ます。せっかく就労しても、普通の人であれば熱が出たりおなかが痛いというときに薬を飲みますが、毎日飲まなければならないわけですから、おのずと隠れてトイレの中でこっそり飲んでみたり、常に周囲に気を使いながら働いているというのが現状であります。
 また、精神障害者は、程度の差こそありますが、退院してしまえばちょっとした配慮で普通の生活が可能です。世間のルールを忘れたために、奇妙な行動をとることもあります。とてもきれい好きで何でもふいてしまう癖があるとか、ぶつぶつとひとり言を言う人など、いろいろな人がいます。しかし、そのことで他人に迷惑をかけていなければ、温かく見守ってほしいと思います。長い病院生活で忘れてしまった社会的ルールを取り戻すリハビリを続ければ、必ず皆さんと一緒に町で暮らせると思います。
 また、家族が世間体を気にしたり、地域で精神障害者は一体何をするかわからないという偏見を持たれることで、うちに閉じこもりがちになってしまったり、地域との接点を失い、将来に対する不安の中で暮らさなければならない人たちが少なくありません。でも、それは地域の社会資源である保健所や共同作業所などで社会適応訓練などをすることで取り戻すことが可能ですし、精神障害者は皆優しい心の持ち主です。そして、この病気はだれでもなり得る可能性を持った病気なんだということを知っていただく必要があると思います。
 地域生活を支える施策として、働く場、生活する場、所得保障、人的支援の一つ一つが質と量をいかに豊かにしていくか、これから問われると思います。
 ここでは、精神障害者の所得保障としての雇用状況を見てみると、精神障害者については、平成五年の調査では雇用されている精神障害者一万人、てんかんを持つ人については一万三千人と発表されていますが、今回は、平成十年十一月に出された内容では、一括して五万一千人と発表されました。一年に精神障害者が五十万人ふえ続け、現在では二百十七万という精神障害者の数からいえば、この五万一千というのは微々たる数ですが、しかし、この不況下で、とにかく雇用が進んでいるということは喜ばしいことであり、さらに今後の伸びを期待したいと思います。
 一方、一般事業所に雇用されることの困難な人々は、障害者授産施設千七百六十九施設、福祉工場九十一カ所で約六万六千人が働いています。さらに、私たちのような無認可の共同作業所五千八百六十八カ所で八万人もの人が働いています。雇用されている人よりはるかに多い合計十四万六千人が極めて低い工賃で就労しているわけです。
 今回、基礎構造改革の目玉の一つである障害者通所授産施設の規模を二十名から十名に下げるなどの施策により、小規模作業所の問題の解決が図られるのではという期待がありました。しかし、社会福祉法人を取得しても、その運営は既存の無認可法外施設の条件と何ら変わらず、補助金も同じ公費水準のままで、既存の社会福祉法人と同等の責務、事務量を課せられているという新たな矛盾が生じてきました。
 ほんの少しの配慮や支えがあれば一般就労が可能な人たちが、こうした施設で安い工賃で働くことを余儀なくされています。小規模作業所は、正規の法人施設の数に比べれば、はるかにしのぎ、今や貴重な社会資源となっています。しかし、先ほど述べたように、行政の運営費補助は低い水準のままで、ぎりぎりの職員数では十分な処遇が行えません。そんな中で、精神障害を持つ人たちが、十分に一般就労できる状態にもかかわらず、作業所に通ってきているのが現状です。
 もし、運よく一般就労したとしても、精神障害を持ちながら働く人たちを支える体制もおくれているのが現状です。職業リハビリテーションサービスを適切に提供するにはサポートする人が不可欠であるにもかかわらず、雇用援助を行うスタッフの育成と研修などの対応がなされていません。
 一般社会における雇用の場の確保には、会社の社会的責任は大きく、そのための啓蒙活動を進めていく政府の責任はさらに重大です。例えば、さきの雇用促進法の改正においても、雇用の義務化や雇用率については適用外とされたままにおかれたことは象徴的で、官庁、一般企業に受け入れ体制をつくるなどの普通の働く場を確保する施策が打ち出されなければなりません。企業が積極的に雇用していくためには、条件整備など公的バックアップ体制の充実がなくては実現できません。就労、雇用の結果として得られる収入は、地域での生活内容の向上を図る上で大切な要素でもあります。
 以上の点で、今回、精神障害者の雇用率算定の対象に入れる法改正案が見送られたことはとても残念に思います。
 最後に、言わせていただければ、就労の形態についても、もっと柔軟な制度をつくってほしいと思います。一般企業での雇用における信頼関係と精神障害者の自信回復を目指した過渡的雇用、援助つき雇用制度が求められる中で、再度、障害者の雇用率を対象にした方向を求めます。特に、今後、地域の中で就労支援センターの設置とジョブコーチなどの人的活用が求められる一方、万一就労に失敗しても、従来の雇用制度や労働形態の特徴を踏まえた上で、一時的に施設が受け皿になり、再チャレンジできる仕組みづくりも必要です。
 これから精神障害者雇用施策が多様性と柔軟性を考慮した方向を持つことを切に願っておりますと同時に、除外率制度縮小や雇用率導入は、精神障害者にとって、就労、雇用として社会参加への大きな支援と励ましとなりますので、今後とも御審議、よろしくお願いいたします。(拍手)
森委員長 どうもありがとうございました。
 次に、佐藤参考人にお願いいたします。
佐藤参考人 社会福祉法人あげお福祉会の理事長の佐藤でございます。
 私は、三十年近くずっと一貫して精神科の患者さんの治療に当たってきた精神科医として、その傍らで、当然のことながら、患者さんたちの社会復帰にもかかわる、そういう立場からきょうは意見を述べさせていただきます。こういう機会を与えてくださったこと、感謝いたしております。
 私は、まず、精神障害者の置かれた現状と問題点を述べた上で、今後の就労の問題を少し語らせていただければと思います。
 まず、精神障害という概念規定なんですけれども、これ自体が今回の法案でも定義づけが問題になっておるようですけれども、非常に難しいんですね。医者によって、例えば精神分裂病の概念規定すら、百人精神科医がいれば百様あると言われるぐらい、非常に心のありようというのは複雑ですので、非常に難しいわけです。私自身は、精神の機能あるいは心のありように何らかの故障なり問題を生じて、その結果、生活に困難を来している方たちを、とりあえずきょうは精神障害者ということで述べさせていただきたいと思うんですけれども。
 そういうふうに考えますと、従来は、精神障害者というのはおおむね精神分裂病を長く患っている患者さんたちが主に対象となっていたんですけれども、現在、こういう複雑な時代の中で、その範囲は非常に拡大しているというふうに考えなくてはいけないというふうに考えております。
 精神障害者の数は、厚生労働省の推計として二百万人以上というふうに出されているわけですけれども、これはいわゆる治療を受けていらっしゃる患者さんの数をベースに出された数字だというふうに聞いております。私自身の感じからいいますと、例えば、非常にポピュラーになりましたうつ病という病気についても、いわゆる内科にかかっている患者さんたちの五%ぐらいはうつ病の患者さんであろうというふうに言われたり、あるいは一生涯に一度うつ病を経験する人の数というのは四割に達するのではないかというようなことも言われております。そのぐらいうつ病というのは、心の風邪と言われるぐらい、非常にだれでもなり得る病気です。それでも、やはり生活に困難を来すことはよくあります。
 それから、パニック障害という病名も新聞なんかで出ておりますけれども、これも百人に一人ぐらいと言われておりますし、こういう方たちは御自身が困りますから治療を受けるわけですけれども、治療を受けずに、相談にも行けない方たちもいます。一番典型なのが、マスコミにもよく言われておりますいわゆる引きこもりの青年です。
 学校にも行かない、あるいは二十を過ぎても仕事にもつけないで家に閉じこもりがちになっている青年が非常にふえて、社会問題化しているわけですけれども、こういう青年たちの中には、もちろん分裂病の患者さんも多数含まれておりますけれども、そうではない、従来の精神疾患の枠にはくくり切れない方たちがたくさん含まれているように思います。そういった引きこもりの青年たちの数も、これは推計でしかないんですけれども、数十万人から、もしかしたら百万人ぐらいいるかもしれないというふうに言われております。
 そのほかにも、いわゆる精神の故障ということではいろいろな形があるわけですけれども、若者に覚せい剤が蔓延してきているんではないかとか、大人の世界ではアルコール依存症というのが、その潜在的な人数は非常に膨大な数ではないかというふうに言われたりしておりまして、現代社会、何らかの形で精神的な、いわゆるメンタルなケアやサポートを必要としているそういった方たちは非常に多く、多様化しておって、すそ野も広く、人数は膨大なものになるんじゃないかというふうに考えております。
 ですから、厚生労働省の推計の二百万人、二百万人ちょっとという数は六十人に一人ですけれども、それでもまだまだ少ないんじゃないかというのが実感です。
 こうした人たちに対して、じゃ、対応はどうなっているかということについて述べますと、まず、心の問題は、一つには治療をして、その後のケアとしての福祉、いわゆる医療と福祉、それから予防としての保健、これが絡み合っておりまして、そこが知的障害、身体障害と若干違って、医療と福祉、両方が必要とされる分野というのがちょっと違うんではないかというふうに認識しております。
 まず、医療面でいいますと、最近なんですけれども、新しい抗精神病薬あるいは抗うつ剤の開発等々によりまして非常に治療技術が進歩しておりまして、そういう意味で、従来は治りにくいと言われていた心の病気も大体が治るというふうになってきております。それをベースとしまして、従来問題が指摘された民間の精神病院の治療環境あるいは医療内容も非常に改善しておりまして、精神科クリニックの急増、そして、国の方の入院中心主義から外来重視への政策の転換とかいう中で非常によくなってきているというふうには思います。
 そして、福祉面でも、障害者基本法の中で精神障害が位置づけられて、精神保健福祉法の改正の中でその社会復帰の促進がうたわれているという中で、随分改善は見られてきているというふうに思うんですけれども、ただ、医療面ではまだまだ問題がありまして、まず、救急医療がない、それから、小児の精神科に対する対応は全く不備です。入院施設もありませんし、小児の精神科医も数少ない。そして、先ほど申し上げましたような、従来の精神病ではない、神経症圏、軽症圏といった人格障害とか摂食障害、そういった、ある意味では手のかかる、手間暇のかかる、むしろ青年の病気に対する対応が非常に立ちおくれております。
 福祉面でも、実際には、医療機関でのデイケア、あるいは福祉面での作業所や授産施設等々の社会復帰の援助、あるいはリハビリテーションによって入院を抑制する、そういう意味では、入院を防止して、医療費の抑制の効果もあるようなことは実証されてきているんですけれども、それでもまだまだ社会福祉施設の整備は立ちおくれております。
 その原因としては、一つには、やはり精神障害者に対する差別とか誤解、偏見がまだまだ地域には強くて、施設をつくること自体が非常に難しいという状況。それからもう一つは、そういう施設に対する援助がまだ知的、身体と比べて半分以下であるという実情から運営自体が非常に難しい。そういったところから、なかなかその整備自体が進んでいないということが言えると思います。
 精神保健福祉事業が市町村におろされたということによりまして、市町村の格差が広がることが懸念されるわけですけれども、上尾市では、市の方で建物を用意して、私どもあげお福祉会の方でその運営を全く任されるという公設民営という形で、授産施設と地域生活支援センターがこの四月に始まったばかりです。この公設民営、行政が建物を用意して、運営を民間の方で頑張っていく、これは施設整備を促進するための一つの有力な方法ではないかというふうに考えております。
 ただ、そうはいっても、実際に建物ができてもやはりその運営は非常に厳しいわけでして、先ほど申し上げたように、知的障害、身体障害と比べて二分の一以下、下手すると三分の一の援助しか得られない、そういう実態をやはり改善していただかないと、なかなか障害者の方たちの社会復帰を援助する活動が効率よく行われないのではないかというふうに考えております。
 最後に、就労の問題ですけれども、通常の就労は困難であっても、何らかの形で、就労という形で社会参加をしたい、そういう精神障害者の方たちはたくさんいます。それに対して、やはり事業主側の方でなかなかこたえ切れていない実情があると思うんですけれども、それと一方、既に就労していてうつ病等々を発症して休職をし、大体よくなったんだけれども、今度、仕事に戻る、復職に至るのが非常に難しいという方たちもやはりおります。
 そういう雇用後の障害者といいますか、そういった方たちを支援するためにも、具体的にはいろいろありますけれども、まずは、通常より負担の少ない形での就労を考えていただくみたいな形で、柔軟な形での雇用を促進する施策は進めていただけたらというふうに思います。
 ただし、こういう就労へ向けた支援とともに、それと同時にといいますか、むしろそれより以前に、何回も申し上げますけれども、やはりさまざまなニーズにこたえ切れていない医療のあり方、そして差別や偏見がまだまだ根強い地域の意識とか、そういった現状を改善し、そして充実させていくことがまず求められているんだろうと思います。
 自分自身が、私は精神障害を持っていますということを言えない社会なわけです。そこからまず改めていくこと、これは国民に対する啓発活動を初めとして、さまざまな形でそういう差別や偏見をなくしていく活動がまず求められているというふうに考えます。
 これをもちまして、私の意見とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
森委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の御開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
森委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤田正純君。
後藤田委員 このたびは、皆様、お忙しいところ、参考人として貴重な御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。自由民主党の後藤田でございます。
 まず最初に、ひとつ皆様方全員から御意見をお伺いしたいんです。
 先ほどから拝聴させていただいておりますと、この法律案、改正案でございますが、一言で言うと、雇用環境の整備という視点での法案でございますが、全体としての障害者政策ということに対してはまだまだ不十分な点があるのではないかというのが四人の皆様方の共通した御意見ではないかなと思っております。
 先ほども関さんから、障害者プランという非常に大きな戦略的な部分がまだ欠けているという点。そしてまた田中さんから、もしくは佐藤さんからは、戦術的な部分、つまり、ハローワークだとか実際市町村だとか、そして相談所だとか、結局最終的に、御相談をする窓口、ここの方々がしっかりしてくれないと、幾らいい制度をつくっても、またいい法律改正をしても全く機能しないじゃないかというような御意見がございました。
 これは最近の国会の風潮でございまして、罰則、そしてまた法改正ということを小手先でやるものでございますから、全体の戦略、そして最終的な戦術、最終的には人の行いの部分ですね、この部分をもっと充実しなければ、これはもう今回の法案に限らずすべて、いわゆる魂がない法案になってしまいますので、その点につきまして、皆様方の大変貴重な御意見をいただきました。厚生労働省、政府におきましても、これを大変貴重な意見として参考にするものと考えております。
 まず第一点としまして、各委員さんから御質問があると思います、重複しないようにいきたいと思うんですけれども。一つ目には、アメリカの採用制度との比較の問題でございます。
 アメリカでは、アメリカンズ・ウィズ・ディスアビリティーズ・アクトという法律がございます。これは、障害者の方々が就職するときに差別をしてはいけないという法律でございまして、いわゆる障害者の就職機会の均等を保障する制度であります。これは、日本の社会制度と比べますと、まだまだ未熟な日本においては達成は大変難しいというような御議論があったようでございますが、今後の議論の行方といいますか方向性といいますか、その点につきまして、各四人の先生から御意見を聞かせていただきたいと思っております。よろしくお願いします。答えられる方で結構です、関心がある方で。
保原参考人 参考人の保原です。今、後藤田先生からの御質問がありましたので、私の見解を述べさせていただきます。
 日本は、障害者雇用率、特例子会社という制度で障害者の雇用を促進しているわけですけれども、後藤田先生御指摘のように、アメリカでは全然別の制度になっております。
 アメリカでは、御案内のとおり、採用のときに一切の差別をしてはいけないということになっておりまして、その中には性別等も含まれますけれども、障害を持っているか持っていないかということの差別も禁止されています。
 アメリカでは、結局、履歴書に写真を張ることさえ禁止されているわけですから、応募してくる人がどういう人かというのは、面接があれば面接のとき、そうでなければ採用のときまでほとんどわからないという状況であります。それから、採用前の健康診断も禁止されておりますから、これも障害者かどうかわからない。したがいまして、そういう前提で、用意された職務に適合するような職業上の資格あるいは要件を持っていさえすれば、原則として障害者でも雇われるということになります。
 ただ、障害者は必ずしも十分に社会的能力といいますか働く能力がありませんから、企業の側では合理的な便宜を図らなければいけない。この合理的な便宜の中にはいろいろな、人的な配置とか機械の改善とか仕事の中身の変更とか、いろいろなことがありますが、それは業種とか事業の規模とかその企業の財政的な力とか、そういうことによって総体的に判断されまして、合理的な便宜を図らなきゃいけない。それで、どうしても過大な困難を伴うような場合には障害者の雇用を断るということが可能になるということであります。
 一番大きな問題は、障害者であることを理由に差別をされたという場合にどういう救済の方法があるかということですが、アメリカではEEOCという委員会がありまして、これは障害者雇用機会均等委員会というものですが、これはいわば労使の間のあっせんをするだけでありまして、強制的な権限はありません。
 最後には、結局は民事訴訟によるということになりまして、差別された、あるいは差別されて採用されなかった、解雇されたという労働者は民事訴訟をして損害賠償を請求するということになりますが、日本では実際にこれはほとんど不可能であります。アメリカでは弁護士が約七十万人おりますが、日本では多くて一万八千人くらいでありまして、膨大な数の弁護士がこの訴訟を支えているわけであります。
 したがいまして、私の結論としては、採用の制度が全く違う、それから、司法制度といいますか、弁護士の制度が全く違うということで、これをそのまま日本に取り入れるということは当面できないのではないかと思います。ただ、アメリカの制度もかなり効果を上げているようですから、これからなお一層検討が必要であろうと思います。
 以上です。
後藤田委員 済みません。ちょっと時間がないものですから、では、お一人お一人、別の質問にしたいと思います。
 関さんにちょっとお尋ねしたいと思いますが、先ほど私もちょっとちらっと申し上げたんですが、今後、労働部局、ハローワーク、そしてまた民間の人材派遣も含めて、そういったところの窓口というか、最終的に、最後、人の行いですよね。そういう相談員の、窓口がもうとんでもない人だったら何の意味もなくて、何の知識もなかったり、そういうのをどうやって解決していったらいいと思いますか。
関参考人 関でございますが、就業・生活支援センターのことで少しお話をいたしましたけれども、今二十一カ所、各地にありますけれども、そこに働いている人たち、人数は少のうございますけれども、大変志が高くて、さっき御提示したような実績を上げております。捨てたものではないというふうに思っておりますので、四十七カ所を今度指定されるわけでありますけれども、少し皆さんの資質を高めたり、それからお互いの、さっきおっしゃるような、我々の心というものをもう少し共有できるような、そういった仕組みづくりをしてまいりたいというふうに思っております。
後藤田委員 次に、精神障害の件でございますが、先ほど、これは今後に雇用促進ということで、なかなか一歩進んだものにはならなかったというようなことでございましたけれども、これも我々がまた推進していかなきゃいけないと思っております。
 ちょっと違う企業の視点から立つと、私も企業人を六年経験しておりますけれども、企業に入ってから精神障害を来す方というのは結構いるんですね。いわゆる、精神障害があって会社に入るんじゃなくて、会社に入る前は健康だったんですけれども、精神的に障害を持ってしまうという方が非常に潜在的に、さっきも佐藤さんが潜在的な障害者というのはいっぱいいるというお話がありました。まさにそういう方、いっぱいいます。
 そういう方のカウントというか人数というか、法定雇用率の中にどういうふうに今後組み入れていったらいいんでしょうか。それについてちょっと佐藤さんに御意見を聞かせていただきたいと思います。
佐藤参考人 法定雇用率の算定の上で、新規採用を基本的に対象にするのか、あるいは既に雇用されている方が障害を持った場合の復帰もカウントするかというあたりの御議論があるんだというふうに認識しております。
 私自身、ちょっとそこまで考えていないんですけれども、少なくとも、いわゆる雇用率ということでは新規というふうにむしろ分けて、施策的には既に就職している方が復帰していくことをどうサポートしていくのか、それは別個で枠組みを設けた方が割合すっきりするんじゃないかというふうに私は感じております。
後藤田委員 もう一つ、雇用率の問題なんですが、一般民間の法定雇用率は一・八ということであります。そして国また地方公共団体は二・一、そして都道府県の教育委員会は二・〇ですね、現状が。国の機関、公的機関の二・一というのは、民間の一・八に比べて少ないじゃないかとか、いい数字だとか、それにつきまして、田中さん、ちょっと御意見をいただきたいと思います。
田中参考人 ただいまの雇用率に関して、いまだに行政の雇用率が達成されていないという現実もあるわけで、そういう意味では、企業に雇用率を迫るというよりも、まずみずからが雇用率を達成していくということが今後求められるのではないでしょうか。少ない多いというよりも、まずは今掲げられている雇用率が達成できるかできないかの一つの節目があると思います。
後藤田委員 今田中さんから貴重な意見をいただきましたけれども、保原さん、いろいろ政府の中の検討委員会の中で、いわゆる公的機関、国とか地方公共団体、この法定雇用率の義務化といいますか、それについてはどういうふうにお考えでしょうか。やはり国がまず模範を示さないと、民間に一・八というのはなかなか押しつけにくいと思うんですけれども、その二・一という数値と、もっと義務化というか、達成していく姿勢というのはどういうふうにあるべきか、お聞かせいただきたいと思います。
保原参考人 保原です。
 今後藤田先生御指摘のように、国や地方自治体がまず率先して障害者雇用に取り組むべきだというふうに思います。現在、民間は法定雇用率一・八で、実雇用率は一・四九でありまして、かなり法定雇用率を下回っているということですが、国や地方自治体は法定雇用率二・一ですが、今二・三ぐらいになっていまして、一応、一般的には、法定雇用率を上回っていると言うことができます。ところが教育委員会関係といいますか、学校の先生方を中心にしたところは大変低くて、法定雇用率は二・〇なんですが、実雇用率は一・二二ぐらいで非常に低いんですね。
 当面は、いわゆる地方自治体では、知事部局とか市長部局とか、つまり教育委員会以外のところとの通算をして教育委員会関係のところ、あるいは人事交流をして、できるだけ教育委員会関係のところも含めて障害者を雇うということを当面やるべきだと思いますが、基本的な問題は、障害者が教育関係、教員養成の大学にアプライしない、それから教員免許資格を取ろうとしないというところに大きな問題があるわけで、これをどういうふうに改善していくか、障害者でも学校の先生になれますよというようなことをどういうふうに啓蒙活動していくか、あるいはそれに対応する実質的な措置をどうやっていくかということがこれからの問題かと思います。
 以上です。
後藤田委員 もうそろそろ時間が来ましたので、大変貴重な意見ありがとうございます。
 やはり生まれたときから、また高齢者になるまでの障害者プラン、先ほど関さんおっしゃったような形で、今回は雇用環境の整備というテーマに絞った法案でございますが、全体の議論をしないと全くこれは意味がないわけでございまして、養護学校を卒業した方がなかなか行き場所がないという現状も、私は地元で十分わかっておりますし、共同作業所の助成金なんかも都道府県によって異なるとか、そういったいろいろな問題がございますので、その点につきましても、今後、皆様方の御意見を前面に出して、政府に対して働きかけをしていただきたいと思っております。
 本日は、ありがとうございました。
森委員長 次に、土肥隆一君。
土肥委員 四人の参考人の皆さん、おはようございます。ありがとうございます。私からもお礼を申し上げたいというふうに思います。
 障害者を労働行政的な視点で見るというのが今回の障害者の雇用の促進等に関する法律だというふうに思うのでありますが、私は、率直に読んでまいりますと、例えば、「職業リハビリテーションの推進」というふうになっておりまして、関参考人のところはまさに大阪市職業リハビリテーションセンター。
 職業リハビリテーションというのは一体何なのかということを、ちょっと関さんの方から教えていただけませんか。
関参考人 職業リハビリテーションと申しますと、働きたい人を支えて働いていただくということに尽きると思います。ですから、障害が重いとか軽いとかということではなくて、働きにくい、あるいは働き続けられない人たちをどうサポートするかということが職業リハの基本であるというふうに考えております。
土肥委員 もう少し違った角度でお聞きしたいんですが、要するに、福祉の現場でOT、PTなどがいますね。それは、例えば脳梗塞で機能が失われた部分をもう一遍復活させる、リハビリですね。しかし、障害者の職業リハビリというのは、初めからそれが何か悪いことで、それを変えて、つくり直して職場に派遣するというようなイメージに聞こえるんですが、それはどうなんでしょうか。
関参考人 私どもは、例えば施設におられるとか、それから在宅にあっておられるとか、もう一回社会へ復帰していただこう、社会の一員として働いていただこうということをもってリハビリテーション、悪いところを直すということではなくて、本人の権利を回復する、それから本人の地位を保全するということをもってリハビリテーションだというふうに考えております。
土肥委員 ちょっとしつこいようですが、権利を回復する、あるいは障害を持ついわばハンディキャップを回復する、こういう意味に考えますと、障害があるということがやはりよくない、障害は何とかしなきゃいけないというふうに聞こえるんですが、いかがでしょうか。
関参考人 とても厳しい御指摘でございますが、障害があるということについての考え方というのは、障害があるというのは、もうこれは世間の当たり前なんだという考え方をしなければいけません。しかし、具体的に社会生活を送る上で、障害があるということによってスポイルされているという現実がございますので、その現実を踏まえて、もう一回社会へ、社会との関係を持っていただくということが基本だと思います。
 リハビリテーションの語源というのは、中世のヨーロッパで、例えば神父さんであるとか、修道士であるとか、騎士であるとか、そういった立場の人が破門をされて、再びもとの集団に帰るということがリハビリテーションの語源でございまして、我々も、職業リハというのは、まさにそういう社会的な権利を剥奪されたかもしれないけれども、もう一回もとの場所へ戻っていって、権利を回復していただくということがリハビリテーションであるというふうに思っております。
土肥委員 ありがとうございました。
 当たり前のようにこの言葉を使ってまいります、職業リハビリというのを使ってまいりまして、そして、これが地域職業リハビリというふうにつながっていくわけでありますけれども、私は、やはりリハビリという言葉は使わない方がよかったんじゃないかなと思っておりまして、障害者をそのまま見て、そのまま受け入れて、そして、そのままでどういう社会参加、職業参加ができるかということを考えるべきであって、例えば職安の窓口に行って、それから、ああ、あなたはいろいろ問題があるから、地域障害者職業センターに行ってくださいと。いろいろ検査を受けたり、心理テストや何やら受けて、そして、ちょっと、あなた、まだ問題があるから、例えば障害者雇用支援センターに行って訓練を受けてみてくださいと。しかし、そこもいろいろ難しいようですから、今度はこの障害者就業・生活支援センターをつくりましたよと。
 先生も大変高く評価していらっしゃるんですけれども、そういうふうにして、リハビリということを言うからあっちこっちずうっと回って、そして、やっと何かいろいろな訓練を受けて、もう一度職安に行って、じゃ、あなたの職業はこうしましょうといって職安が職業を提供する、こういうつながりというのは、私は障害者にとっていいことなのかどうか。特に、知的障害、精神障害者の皆さんにとって、悪い言葉ですけれども、悪いかもしれませんけれども、引き回しをやっているというふうに思うわけでございます。
 ですから、こういう言葉を使うと、これがずっと普遍化して、もう既に普遍化しちゃっていると思うのでありますけれども、今後どうするかなということを考えております。
 ちょっと関さんに固着して済みませんけれども、障害者就業・生活センター、これはあっせん型障害者雇用支援センターというふうに言いますけれども、法文を読みましても、あるいは、もう二十一カ所あるということでございますけれども、これが本当に機能するのかどうか。いろいろな団体が手を挙げて引き受けますよね、この仕事を。そのときに、いろいろな個性がある、社会福祉施設もあるし、いろいろな民間のNPOもあるでしょうし、いろいろ考え方がある。そういう人たちがずっと地域の中に散っていって、障害者と出会っていく。これは一見いいようでございますけれども、どうなんでしょうか、これから四十七カ所つくるというんですが、やるならもっと徹底してたくさんつくる、交番に行くような感じで相談に行けるようにすべきだと思いますが、その辺について、もう一度関さんにお願いしたいと思います。
関参考人 ただいまの御指摘でございますが、今、二十一カ所につきましては、我々研究会をつくっておりますし、モデル事業でありましたので、厚生労働省の方の研究会もございまして、意見を一致しながら、しかも、我々がやるところの処遇について均一のものをしていこうと。
 それから、新しい事業でございますので、地域でいろいろな関係機関の方々とネットワークを組まなければいけませんので、そういったことについても一定のルールで我々のモラルといいますか、そういったものをつくりながら今までやってまいったものでございまして、今度四十七カ所になったとしても、その仕組みはつくり上げていきたいと思いますし、それが例えば三百カ所になったとしても、そういうものとして継続していきたいというふうに考えております。
土肥委員 次に、ジョブコーチを今度導入する。法案上は明確なジョブコーチなどという言葉はないのでありますけれども、私は、これは非常に重要な施策だというふうに思っております。
 アメリカでは、もう十年前からジョブコーチを養成しまして非常にいい働きをしているんですが、どうも今回の法案によりますと、限定された中での職場訪問だとか、六カ月、八カ月ほどのバックアップ体制を組んでいくんだというふうな役割しか与えていないようでありますが、むしろ、私は、ジョブコーチというのは、地域の、つまり障害者就業・生活支援センターなどにたくさん入れて、その人たちは障害者の就業と生活を見るわけでありますから非常に幅広く物が見えますし、そういう役割を、本当に法文上の項目を、柱立てを別にしてもいいくらいに考えているのでありますが、例えば精神障害者の皆さん、あるいは知的障害者の皆さん、置かれている状況がそれぞれ違うんです。
 そして、ジョブというふうに言ってしまうと非常に限定されますけれども、もっと幅広く生活を含めた支援者であるならば、これを全体の障害者就労・生活支援の中心に置くというふうに考えたらどうかと思うのでございますが、保原先生の方でどういうふうにお考えか。それから、佐藤先生、田中先生、一言ずつお願いします。
保原参考人 保原です。
 今の御指摘は、私どものこの問題を考えるのに大変参考になる御意見だと思いますが、現在は、御承知のとおり日障協が中心になっておりまして、ジョブコーチをそのもとで養成し、派遣してということであります。
 今までは、そのほかに試行的に、日障協以外の、いわば民間の社会福祉法人等においてもジョブコーチの人をお願いしましてやってきたわけですが、今回の改正で、あえて言えば二本立てにしまして、日障協というのはやはり政府関係の機関ですから、そうでない民間の社会福祉法人等のジョブコーチも育てていこうということで二本立てにしましたので、これから新しい展開が期待されるかと思います。
 以上です。
田中参考人 僕の施設のところでも、一度ジョブコーチの、支援はいただかなかったのだけれども、それと同じようなことをやってきました。それはヤマト福祉財団の東京・銀座にあるスワンというパン屋さんなのですけれども、それを立ち上げるときに、精神障害者二名、知的障害者四名、うちの職員が一カ月ずっと通いながら、障害の内容とか特徴を同じ働く人たちに説明しながら、じっくりとやってきた。それが本当に障害者の人たちが企業に定着する位置づけとしてとてもいい成果があったというところで、今後ともそういうものを企業の中で広げていけたら、障害者の人たちが偏見とか誤解というのを取り去る上でもとても貴重なことだと思うので、今後ともよろしくお願いいたします。
佐藤参考人 ジョブコーチ、非常に大事なことだと思います。
 現実には、作業所が精神障害者が圧倒的に多いのですけれども、作業所のスタッフが、就労へ向けた個人個人の特性に応じた指導とかをやっているのが現状だと思うのです。とりわけ精神障害者は多様なかかわり方が必要とされているのですけれども、その一つの側面として、労働という面から専門的にかかわるジョブコーチという制度が実態として施行されますと、非常に役に立つのではないかというふうに考えます。
土肥委員 もうちょっと時間がありますから、関さんにも一言、ジョブコーチ。
関参考人 ジョブコーチは、もう一つ大事なポイントは、企業の負担感もあわせて取り除くというようなこともあろうかと思いますので、私ども、ジョブコーチが一般化していく、しかも、専門職からもう少し非専門職のような格好で、ちょっと言葉は悪いかもしれませんが、町の方々が支えられるというか、そういったところにまで膨らんでくれるように願っております。
土肥委員 ありがとうございました。私の質問を終わります。
森委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。きょうは、お忙しい中、わざわざお越しいただきまして、ありがとうございます。また、日ごろ皆さん方の活動に際しましては、心から敬意を表させていただきます。
 私も幾つか質問させていただきますけれども、その中で、こちらから指名はさせていただきますけれども、どうしても私の質問に対して物が言いたいという場合には手を挙げてください、よろしいでしょうか。
 時間もないので、簡単にどんどん話をしていきます。
 佐藤理事長にちょっとお尋ねをしたいのですけれども、先ほどのお話の中でも、若い方々もしくは子供さんたちに対しての医療体制がきちんと整っていない。そういう中で、私もADHDやなんかの、注意欠陥多動性障害なんかの子供たちのサマーキャンプに行ったり、いろいろと活動の中に参加をしているのですけれども、やはりその体制が、医療機関の体制も整っていない、と同時に、教育現場、学校関係での体制もまだまだ不十分な状態だと思っております。
 今必要なことは、まさに全体の大きな話はまた後でするにしても、現場レベルでいえば、学校教育、医療機関、そして親御さんたちの連携というか、非常にかみ合わない状態、こういう中では、子供たち、親御さんたちが大変かわいそうな状況にあると思いますけれども、いかがでしょうか。
佐藤参考人 そのとおりだと思います。
 先生方は先生方で、例えばADHDと考えられるお子さんがいわゆる学級崩壊という事態を招くというような中で非常に困られておりますし、そのときに、例えば本当にその連携がうまくいきますと、何らかの、例えばその子供さんをクラスも受け入れ、そして御家族もその治療を受け入れて、医療の方もそれに対応できるというような、そういった理想的な連携ができた場合は、それこそ学級崩壊という事態そのものも改善していくような、そういった報告もあるわけです。
 しかしながら、それがなかなか学校の方も、ただ困るというふうな対応になってしまったり、御家族もなかなか子供さんのそういった問題を認めたくないというような場合もあったりしまして、何よりもそういった子供さんの問題は、例えば、私も少しは子供さんの治療に当たっているのですけれども、大人の治療であれば、診察をして、診断をして、治療方針を立てて、それでお帰りいただいて、様子を見て、治っていくわけですが、子供さんの場合には、まさに連携を、医者もその一部になり、あるいは、場合によりますと要になりまして、子供さんを診、それから御家族とお会いし、なおかつ学校等の先生ともお話し合いをし、そういったことを全部やっていかなくちゃいけないわけです。
 これはもうとても医師一人ではできないことでして、いわゆるカウンセラーの関与とか、それから学校のスクールカウンセラーの関与、これが総合的に連携していきませんと、一人の子供さんへの対応も十分にはできないわけで、これは医療の供給体制そのものがまず全く乏しいです。
 私は埼玉県ですが、ちなみに埼玉県内で、小児精神科医、赤ちゃんから、心を中心に体まで含めて診れる医者が何人いるか、多分三、四人しかいないんじゃないかと言われております。そんな状況ですので、まず医療の対応、これは医療経済的な保障がまずどうしても必要になると思います。一人の子供さんに対する治療費、一人分の治療費ではとても賄い切れないという状況がございます。
佐藤(公)委員 佐藤理事長の今のお話、経済的な問題、そういう部分を含めて、体制を政府の方でも強く推進、指導してもらいたいということとだと私は今受けとめさせていただきます。
 田中理事長にお尋ねをいたします。
 知的障害者、精神障害者の方々、確かにジョブコーチ等で自立をさせていく、これはいろいろと委員の中からもお話を先ほども聞いたのですけれども、自立をさせていく、大変結構なことですけれども、やはりその後、ある程度自立をできるようになった後、そういう方々というのは大変、言い方が失礼かもしれませんが、だまされやすいというか、日常の生活においていろいろな、この社会においてだまされやすいというか、非常に痛い目に遭ってしまうような環境、状況というのがいろいろと出てくる可能性があると思います。
 つまるところ、一番大事なことというのは、もしかしたら、自立をした後も、その後も、本来ならば地域の社会が、また環境が、そういう人たちを温かく見守りながら一緒になって暮らしていける社会、理想の社会ですけれども、なかなかそういかない。この後のフォローみたいなものに対してはどういうふうにお考えになるのか、お思いになるのか。一定期間の、ある程度自立ができるようになりつつある、それでジョブコーチなんかもそのまま継続性もあるかもしれませんけれども、その後のフォローの仕方、どういうふうな形で、どういうことが一番大事なのか、やっていけばいいのか。いかがでしょうか。
田中参考人 現在とても大切な、雇用して継続性が、どう続けるかということだと思いますけれども、ハローワークに、東京なんかも飯田橋に専門員がいて、本当にまだ少ないんですけれども、その人が、アフターケアを含めて、事業所をぐるぐる回って行っている。同時に、その専門員が、いろいろな地域の社会資源、作業所とか保健所の人たちを含めて、アフターケアを含めて今やっているということで、そういう人たちをもっともっとふやす形で広げていかないと、今後対応できないんじゃないかなと一つ思います。
 それから、あともう一つは、職場の中でキーパーソンをしっかりとつくっていく。職場の中で相談する人がいないと、やはり障害を抱えている人というのは長続きしないというのも現実にありますので、そういうところも今後考えていきたいと思います。
佐藤(公)委員 駆け足で申しわけございません。どなたも手を挙げられないので、また次の質問に移らせていただきますけれども、保原先生にお尋ねをいたします。
 今まで、いろいろと前の委員会でもこの障害者の雇用、障害者の方々に関しての議論もしてきたわけですけれども、私も、いろいろなものを見させていただいて、議事録も見させていただく中、常に議論は一緒のような気がするのです。大変失礼な言い方になってしまうかもしれませんが、総論賛成、各論反対ではなくて各論むにゃむにゃという形、何か各論がむにゃむにゃの状態の中で時間ばかりが過ぎている。ただ、一歩一歩前進はしていると思いますけれども、やはりそこには、前も厚生労働大臣がおっしゃいました、本当に抜本的な国民全体の意識改革が必要になってくると思います。
 私がお尋ねしたいことは、みんな、立派なことを言う、いつもいつも立派なことを言う、でも、なかなか大胆にでき切れない、総論賛成だけれども、各論になるとみんなむにゃむにゃとなっちゃう、こういうふうに私は思える部分があります。
 その一つとして言えることは、障害者を研究されている方々、学校の先生も含めて、どうも、これも失礼な言い方かもしれません、社会保障制度の関係でいいますと、年金とか介護とか医療とか、非常に日の当たるようなところとは違うようなところにある、悪く言えばなかなかお金にならないというか、メジャーになり切れない、常にマイナーなところに追いやられてしまう。みんな立派なことを言っても、そういう本当にやられる方々、研究する方々がどうも端っこの方に実際は、現実寄ってしまっている。そんな印象すら受ける部分がありますけれども、このあたり、なぜ、みんなこれだけ立派なことを言っているのに、なかなか大胆に前進できないのか、ちょっとずつは前進しています、確かに前進していると思いますが、できないのか。ここらあたり、いかがでしょうか。
保原参考人 大変難しい質問で、にわかにお答えができませんが、きょうは障害者と雇用の関係ですから、雇用の場に限って言いますと、やはり法定雇用率を達成させるように、まず役所がもう少し企業に対してねじを巻くということが必要かと思います。例えば、今まで、いろいろなことをしてもどうしても言うことを聞かないという意味で企業名を公表したのは一回だけなんですね。ですから、これから悪質なものについては企業名を公表するとか、そういうことも含めて障害者の雇用率を高めるという努力が必要かと思います。
 研究というのは、確かにおっしゃるとおりで、なかなかこういうところに目が届かないですが、日本の研究体制は基本的には各研究者が何をやりたいかというのは自由だということになっていますので、もしこういう障害者の問題、雇用も含めて取り組むとすれば、やはり研究を促すような、研究機関の設置とかあるいは研究費の増大とか、何かそういうような手を打つことも必要かなと思います。
 ただ、この問題、難しくてなかなか答えられません。恐縮です。
佐藤(公)委員 本当におっしゃられるとおりなんだと思います。
 実際問題、これはやはり、学者の方々、研究者の方々が障害者の方々に対してそういう研究をしていても、なかなかお金にならない、失礼な言い方、日の目を見られないみたいな、こういう現実があるということ自体が、僕は日本のこの社会自体問題だと思います。
 やはり、そういう方々にふんだんにある程度お金をつけたり、それなりの日の当たる場所ということの社会の見方、行政の見方というのはすごく必要なこと。それができないのに偉そうなことを言ったって、僕はできるわけないと思います。
 そこらあたりは、僕らもやはり委員会等でも政府でもやっていきますので、どうか御協力をお願いしたいと思います。
 同じ問題で、いかがでしょうか、関さんの方で、今の大きな問題ですけれども、どうお考えになるか、お願いいたします。
関参考人 研究者に光が当たらぬでもいいと思います。障害のある方々に光が当たるべきでありまして、やはり僕の思いとしては、もう少し現場でやっていることにみんながプライドを持てれば一番いいわけであります。
 それが一つと、例えば我々が今後提起しなければいけない、討議しなければいけない問題としては、雇用率制度を本当にいつまで持つんだとか、あるいは、例えば障害という言葉も世の中からなくすんだとか、あるいは、WHOが新たに提起しております機能、生活分類みたいなものを日本でも採用するんだとか、そういう議論に向かっていくのでなければ、このままの議論はこのままだろうというふうに思っております。
佐藤(公)委員 私が思うことは、障害者の方々に目を向ける、日が当たる、これは当然の話です。当然の話ですけれども、今回の一連のことをやっていて、実態調査というのが余りにもちょっと少ないかなと。そういう意味で、やはり研究される実態、現場がきちんと把握したデータがないことにはきちんとした前進がないのかなと。そういう意味で、非常にこの法案に、いろいろと見させていただく中、思った以上に現場の意識もしくは状況というのが、より深い分析や考え方、こういったものが少ないので、私は率直にそう思ったわけでございます。
 これからも、私どもも頑張ってやっていきます、自由党も頑張ってやっていきますので、どうかよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
森委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 きょうは、参考人の皆さんには大変御苦労さまでございます。貴重な御意見を伺って、さっきから大変勉強させていただいております。
 まず、田中参考人にお尋ねをしたいと思うのです。
 私、今度の障害者雇用促進法を勉強してみて、一方では障害者の人たちが働いて自立したいという意欲が非常に高まっているのに、この不況もあるけれども、全体として思ったように就労者数が伸びない。そのために、就職が非常に困難。私は、こういういわばしわ寄せが、共同作業所が全国的に毎年どんどんふえていっているというような形であらわれてきているのじゃないかと思って、共同作業所を経営しておられる皆さん方には、とりわけその御苦労に感謝しておるわけであります。
 お尋ねしたいと思いますのは、今、深刻な不況の中で、そういう共同作業所を立ち上げてこれを維持運営していくというのは本当に大変じゃないだろうか、どういうような影響があり、どういう御苦労をなさっておられるかというようなことも、この機会に伺っておきたいと思うのです。
田中参考人 全国の小規模作業所というのは、二〇〇一年度で五千八百六十八軒、これは法内施設が五千ないわけですから、そういう意味では法内を上回った数で、毎年三百の箇所数がふえている。このような実態は、やはり行政が手抜きを大分しているなということは考えるのです。
 それからもう一つ、その中で、この間福祉法が変わって小規模授産施設が制定されました。しかし、この中で、何といっても、法人という名前は変わったけれども、従来の補助金体制と、無認可と同じ補助金から出ていない、枠から出ていない。そういう中では、今後、こういう受け皿として全国にある中で、そういう小規模法人にしても、国の年間予算というのは一年に百二十カ所です。そうすると、約六千カ所ある無認可の作業所が、何年かかったらそういう国の制度にのっとった形でできるのかというのも、これは不安でしようがありません。
 それからもう一つは、そこで働く人たちにおいても、補助金ですから、年額決まっています。一つのパイの中で運営しなきゃいけません。そうすると、養護学校からも年々重い人たちが入ってきます。それから病院からも、本当に受け皿として病院が出す例があって、重い、社会に適応をまだまだできないような精神の人たちもいます。年々そういう重くなる中で、手がかかる人たちと言っては失礼かもしれませんけれども、そういう人たちがふえる中で、逆に補助金は上がらない、五年間もうちも上がっていないんですね。一職員、うちとしても手取り十四万五千円なんですよ、大学出てもね。年々これが下がっていくとすると、そこで勤めて本当に障害を抱えた人をしっかり支えていくというところではとても厳しい状態があります。
 これが日本の現実なのかな、日本の実態なのかな。そういう面でしたら、今民間の活用を含めて、福祉的にはさらに国の手厚い援助とそれを生かせるようなやはり内容で進めてもらいたいと思っています。
小沢(和)委員 引き続いて田中参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、国も支援策をとってはいますけれども、私どもが伺っているところでは、都道府県や市町村などに比べると国の施策というのは大変貧弱だというふうに聞くんですけれども、どういうような状況か。
田中参考人 現実に、障害の種別の中で、やはり補助金が違う。先ほども委員の方からあったように、知的、身障の場合は現在、措置費において、知的においては一人二十万という国の予算がおりるわけですけれども、精神の授産施設には、補助金なのでならしていくと大体一人十万ぐらいなんですよ、約二分の一。
 例えば、北海道なんかで合築でできている知的障害者の施設と精神障害者の施設が一緒になった施設があります。片方は、知的の方は給食の援助が出ます。また、片方は、精神の方は援助が出ないんですね。そうすると、同じ施設でありながら、片方は給食の弁当を出さなきゃいけない、片方は出さなくていい。今現場においてもそのような差別がまかり通っているというのが現実です。
 そのような実態の中では、本当に精神の人たちの条件、それから、もう一つ言えば、そこで働く職員の人たちも、うちらも今社会復帰施設とそれから身体障害者の小規模通所授産施設になったんですけれども、職員の処遇が違うんです。身体障害をとれば国の退職金共済の方が活用できるんですね。しかし、精神の方で授産施設をつくっちゃうとそこでは対象外になっちゃうんです。そこでもやはり処遇する職員の側の差別も、差別というよりも格差も広がってきている。やはり同じ土俵で、障害のある人たちを支援しているわけですから、同じような形でここも国の方で見ていただければと思っています。
小沢(和)委員 どうもありがとうございました。
 続いて、佐藤参考人にお尋ねしたいと思うんです。
 さっき参考人のお話で、精神疾患にかかるのはもうごく普通の人でもかかるんだと。さっきのお話では、うつ病などは人生に一度はかかる人が四割ぐらいいるというようなお話だったかと思うんです。私も大変それはびっくりしたんですけれども、そういうような、いわば精神疾患、精神障害というのがごく普通の病気なんだと。
 さっきも言われましたように、新しい薬も開発できている、そして、適当な環境さえ保障すれば大抵のそういう精神障害をお持ちの方というのもごく普通に働ける、先生のお話からすると、私そういうような印象を受けたんですけれども、そういうふうに認識していいでしょうか。
佐藤参考人 治療をすればそれなりにその方なりの社会参加は可能であるということでございまして、だれでも働けるというのとはちょっと違うと思います。
 やはり労働につくということについては、労働の内容もございますし、例えば、小規模作業所なんかではいわゆる簡単な内職程度の作業をやったり、あるいは農園でちょっと野菜をとるとか、そういう単純な作業をやったり、そういうことなら可能でも、やはりもうちょっと難しい、複雑な精神作業の何かになりますとちょっと無理だとか、あるいはそこら辺の働く力といいますのはその人の個性、特性もありまして種々だと思います。
 ですから、私なんかは、むしろ逆に、働けないということの権利といいますか、そういうことまで含めて障害の問題を考えていかなくちゃいけないというふうに考えております。
小沢(和)委員 引き続いて佐藤参考人にもう一言お尋ねしたいんですけれども、私は精神障害者に対しても雇用率を適用する対象にすべきだというふうに考えているんですけれども、そういう立場から見て、先生は今回の法改正についてどうお考えでしょうか。
佐藤参考人 先ほども意見でも申し述べましたように、まず、雇用率に精神障害者もきちんと入れるべきだという議論そのものは、私は正しいとは思うんですけれども、その前に、まず実態として、既に雇用されて後に精神障害を持たれて、なかなか復帰に至らず、もうちょっと条件が整備されればその人なりの就労が可能であるというようなケースが多々あるわけでございまして、そこら辺の実態の方からまず整えるべきだというのが私の意見でございます。
 将来の方向として、雇用率に精神障害も含めるということは当然だとは思うんですけれども、その実態をきちんとするための今現在の現状の改善なり充実ということがむしろ求められているというふうに認識しております。
小沢(和)委員 ありがとうございました。
 保原参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、今回の法改正で、いわゆる子会社を含めてグループで雇用率を算定するという改正が行われております。私は、これは考えようによっては、親企業の方は障害者を雇い入れずに、そういう労働条件が悪いようなところに障害者を雇わせて、全体としてはそれで勘定は合うけれども、しかし、親企業の方はそういう障害者を雇わないというような結果になりはせぬかというようなことを心配するんですけれども、その辺はどうでしょうか。
保原参考人 御指摘の問題は、実は法改正以前に現在でもそういう危惧はないとは言えないというふうに思います。しかし、私も幾つか特例子会社を見学しましたけれども、私が知っている限りでは、比較的、障害者の人たちがかなりのスキル、職業上の能力を持って働いていらっしゃるということで、同じ事業所の同じフロアの中に特例子会社とそうでない一般の職員が働いているところもありますし、それから、すぐ近くに別の建物で働いているというようなところもありますけれども、いずれにしても、ホワイトカラーのところだけ見ましても、必ずしも、労働条件が悪い、余り働かない人を隅っこに追いやってという発想ではないというふうに思います。
 今回の改正では、いわば特例子会社の計算の規模を拡大したわけで、支配力基準というのによることになったわけですけれども、今先生の御指摘は、そういう危惧は常にあるわけですから、政府としてもそういう危惧が現実にならないような啓発活動が必要であるというふうに思っております。
小沢(和)委員 保原先生にももう一つお尋ねしたいんですけれども、除外率の問題であります。
 除外率、これが決まってから今度初めての見直しだというふうに私聞いているんですけれども、この期間にITなどの技術が非常に発達もして、それぞれ除外されたような職種の状況というのももうさま変わりしているようなところが多いわけですね。そういう中で、私は、見直したら大幅に除外率というのは下がる、あるいは廃止できるような職種なども多いんじゃないかなというふうに思うんです。
 その点で見て、一律に一〇%下げるという手法は余りにも安易だったのじゃないかというふうに思うんですが、先生はいかがお考えでしょうか。
保原参考人 半ば御指摘は当たっているというふうに思いますが、問題は、では、どの業種についてどれだけ下げるのかというのをどういうふうに計算するかというのはなかなか短時間ではできないので、結局、差し当たり二年後に一律一〇%下げるということにしたわけですが、それ以降の措置につきましては、具体的な業種でこれをどの程度下げることができるかというのを経済状況や雇用情勢と見合わせながら考えていくということでありまして、一律一〇%というのはえらい乱暴じゃないかというのはほぼ御指摘のとおりでありますけれども、しかし、差し当たりそれでいって、その後にもっと進んだ調整をして、最終的には除外率をなくそうというふうに審議会では考えております。
 以上です。
小沢(和)委員 時間が参りました。どうも本当にありがとうございました。
森委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 本日は、もうお昼近くになりましたのに、四人の御参考人の方々、大変に御苦労さまでございます。私が最後でございますので、順次御質問をさせていただきます。
 まず、保原先生にお願いいたします。
 今回の法案の改正のもとになりますための審議会の仕事、大変に御苦労さまでございます。
 私は、ぜひともそうした審議会のあり方においてのお願いがございます。実は、障害者の雇用ということを考えるに当たって、きょうの冒頭の後藤田委員の御質問にもございましたが、我が国がとるべき基本的な姿勢と申しますか理念、そういうことを審議会でしっかりと御審議いただきたい。
 どういうことかと申しますと、アメリカ等々では先ほどのADA法、そしてドイツ、フランスは恐らく雇用率の達成というふうな形でのツーウエーアプローチがございます中で、日本はこの間ずっと、雇用率を少しでも上げていくような方向へという対応でやってまいりましたが、果たしてきょうほかの委員の御質問にもございましたが、障害者、リハビリという形に持っていきますと、障害を認定し、そこから、一回は社会から、認定し、隔離し、リハビリし、戻すという形になってまいりまして、反面、差別と申しますか、特に精神障害などはそうだと思うのですが、そういう側面もあるかと思うのです。
 それで、既に我が国はILOの条約の中でこの障害者関連で批准したものがございまして、障害を理由にさまざまな意味で就労上の差別をしないというILOの批准、平成四年度でしたか、ILO条約の百五十九号、平成四年六月に批准しておると思いますが、大枠の理念として、我が国の障害者雇用ということの考え方の確認点。
 そしてもう一つ、さはさりながら、先ほど佐藤参考人もおっしゃいましたが、あえて障害を持つゆえに、ある意味の働かない権利と申すと変ですけれども、障害があるゆえに保護されなければならない事態もございまして、他の、何も障害がない方と同じペースで市場原理にのっとって働いていくということがまたいい社会でもないと思います。
 極めてバランスの微妙なところですが、審議会における我が国の障害者雇用の基本的なお考え方について一言お教えくださいませ。
保原参考人 阿部先生御指摘のように、世界では障害者雇用について二つの大きな考え方があります。アメリカ・イギリス、フランス・ドイツという分け方をすれば、日本はそのフランス・ドイツ型に当たるということでございます。
 それで、ILO条約からどうかというのは、必ずしも日本の制度が悪いとかいいとかというのは言えませんけれども、障害者、例えばアメリカのようなことを考えますと、行政機関はほとんどタッチしなくなりますから、障害者雇用について大きなさま変わりをするということであります。
 おまけに、採用の制度が全く違いますから、アメリカのような制度をとれば別ですが、そうでない限りは、現在の日本の採用の制度を前提にしますと、うちにちょっと向きませんからということで採用がされないということで、おまけに日本の場合は、採用されないということについて、特定の人を採用しなさいという法的な措置はありませんから、例えば男女雇用機会均等法でもそうですが、採用以降については法的措置がありますが、採用以前につきましては努力義務にとどまっているわけでありまして、そういう問題がいろいろあります。
 それから最後に、アメリカでは結局、障害者自身が非常に権利意識を持って、弁護士を頼んで大企業とやり合う、そういうことになるわけで、日本で果たしてそういうようなことが一般の障害者に期待できるかという問題があります。
 アメリカやイギリスの制度、大変いいところがあるんですけれども、日本としては、結局、今の制度を改善して運用していくというのが障害者雇用の拡大につながるというふうに私どもは考えております。
 以上です。
阿部委員 引き続いて、関参考人にお伺いいたします。
 きょういただきましたレジュメの中で、特に二の(三)にございます特定非営利活動法人をもっともっとこの障害者の雇用の拡大に利用すべきだ、私も本当にそのように思いまして、先ほど来問題になっております小規模作業所の問題においても、六千カ所に及ぶ小規模作業所、ほとんどは非営利で皆さん頑張っておられるわけですが、例えば、政策上どのような援助が、援助というか改編がございますればこのような方向にもっと発展するかについて、お願いいたします。
関参考人 例えば社会的協同組合のようなものをおつくりになって、そこで障害のある方々を雇用され、しかも作業所のいわゆるパフォーマンスを上げていくというふうなことを各地で随分おやりになっております。
 ですから、私たちが、施設という形態の中で、お上からお金をいただいて運営していくものだというふうな意識を持ち過ぎてきたのかもしれない。しかし、社会的協同組合のようなものをつくり上げて、いわゆるコミュニティービジネスのようなところからもう一度障害のある方々を雇用していくというふうな、そういう仕組みづくりをしていくべきかもしれないというふうに思っております。
 それから、金銭的にはNPOはとても大変でございますので、その運営はこれからとても大変なことになるとは思いますけれども、例えば地方自治体でおやりになっておりますいろいろな制度の受け皿になるとか、あるいは、NPOですからややオンブズマン的な受け皿になるとか、そういったことをしていきながら市民の共感をいただいていくというふうなことも忘れてはいけないのではないかというふうに思っております。
阿部委員 この分野、理念は先行いたしますが、現実に本当に経営的、運営的になかなか難しい。
 そのことと絡めて、きょう田中参考人の方からも、特に精神の障害等々で、実際に共同作業所等々をやってみると、補助金のあり方も本当に他の障害の半分であるということで、困難さをきょうるる教えていただきましたが、いま一つ、例えば法制の枠上でも、身体障害者と知的障害者、精神障害者、そして雇用の促進に関する法律はおのおの別建てでして、身体と精神が施行五十年、知的障害と雇用が四十年たっておりますが、逆に、きょうの田中参考人の御発言ですと、地域に根差して地域を生活支援する、地域生活支援法のような形で、障害別に縦割りにしたり、あるいは極端に言えば、厚生省、労働省という縦割りをするのではない、地域に着目しての生活支援ないし就労支援というふうな法概念の立て直しも必要ではないかと思われましたが、そのあたりの御見解を一点お願いいたします。
田中参考人 障害者やそれを持つ家族の人たちの切実な願いというのは、本来、三障害者の法律が一本にまとまってほしい。もう一つは、手帳に関しても、精神障害者の手帳を交付していただいたとしても何のメリットもない、自分は精神障害者ですよという、持って歩くだけですから。そういうことでなくて、本当にその手帳を持って、胸を張って社会の中で生きていけるような、やはり今の身障とか知的みたいな形の移行を早急にやっていかないと、法的な整備も進まないんじゃないかなと思っています。
阿部委員 では、最後に佐藤参考人にお伺いいたします。
 実は、佐藤参考人と私は、三十数年前、同じ学びやに学びまして、佐藤参考人は精神科医になり、私は小児科医になりました。そして、私は、きょう、参考人にお願いするに当たって、少し前段、お話を伺いました中で、私自身も小児科医をやりながら、ちょうど小児科医の半ばごろ、今御指摘の引きこもりとか不登校とか摂食障害が余りに子供たちに多く出るようになりまして、小児の中でも小児精神科という方に自分の軸足をシフトいたしました。先ほどの佐藤参考人のお話の中でも、やはりこの政策を考えていく場合に、未来ということを考えますと、若者の問題、本当に問題が大きいと思うのです。
 そこでお伺いいたしますが、先生が実際にやっておられる中で、先生の、授産施設とあわせて生活支援センターのような形式で、治療から生活から就労、一貫して、引きこもりの子たちにも就労のチャンスを、どこかで人間のつながりを得ながら、持ってほしいと私は思うんですが、現在先生がやっておられる生活支援センター、私は今後すごく発展してほしいと思いますが、その抱えている現状の問題点等々、ちょっと教えていただけますか。
佐藤参考人 まず、地域生活支援センターなんですけれども、私どもは、三月に社会福祉法人格を取得しまして、この四月から市の建物を任せられて、通所授産施設と地域生活支援センターを始めたばかりであります。
 ですから、私どもはこれからつくっていく立場なんですけれども、実情を申し上げますと、私、長年、東京、埼玉あたりで精神科、いろいろな分野でやってきた、経験としては割合豊富な方だというふうに自認しているんですけれども、地域生活支援センターの名前がなかなか医者の方に届いてきません。それが実情です。ですから、いろいろ運営が大変だということも含めまして、なかなか十分な活動ができていないんじゃないかというようなことが推測されております。
 そういった事情を踏まえまして、私どもは、従来、こういった、地域での社会復帰なり生活支援というのは、大体がいわゆる慢性の精神分裂病の患者さんに対する対応ということでなされてきた部分が大きいわけですが、これまで上尾市というところではそういう施設が非常に少なかったのを私ども始めたわけですけれども、従来のそういった概念にとらわれずに、阿部先生のおっしゃられた引きこもりの青年、これは、引きこもりの青年の中では精神分裂病の患者さんはむしろ少な目だというふうに思います。神経症、あるいは家族間の調整をすればそこから抜け出せるというような軽い方も含めて、多様なわけですね。分裂病の患者さんのように毎日きちんと薬を飲んでその人の特性に応じた生活を援助していくということでなくて、家族の中にもかかわりを持ち、地域ともかかわりを持ちという中で、引きこもりという事態から少しでもその青年が抜け出せるような援助をどうしていったらいいのかというのは、単に医療だけではなかなか難しい側面がございます。
 そういう意味で、私どもの授産なり生活支援センターでは、そういった人たちへのかかわりも含めてやっていきたいというふうな、これはあくまで夢であり、希望であり、理想です。それには本当に経済的な裏づけが全くないわけですけれども、窓口として、やはりそういう引きこもりの青年を抱えた家族はどこに相談していいのかもわからないというような状況で、最近では家族の集まりができまして、厚生労働省へのお願いなんかもしている、活動なさっていることは伺っているんですけれども、そういう活動には、集まりには本当に物すごい数の御家族が集まっておられる実情があるようです。ですから、非常に関心は高く、ニーズも高いんですけれども、まだまだ家族の自助グループができ始めたぐらいのところで、行政なり医療からのかかわりは非常に乏しいです。
 ですから、私どもは、生活支援センターの中でそういった窓口機能もやれたらというふうに、ちょっと大きな夢なり希望を持ってこれからやっていきたい。そういった形で、幅広い精神障害の多様なニーズにこたえられる地域支援活動を展開していきたいというふうに考えております。
阿部委員 やはり人間の暮らす場、すなわち地域ですね、これからはそこに着目してさまざまな医療と生活と就労の支援というのがぜひとも一体的に行われるべきであって、今回佐藤参考人たちのお始めになった初めての公設民営というスタイルも私はもっともっと社会に定着してほしい。そのために、どんな仕組み、国の援助なりも含めて必要であるか、また御提言をいただければと思います。
 きょうは、四人の参考人に大変にいいお話を伺いまして、ありがとうございました。
森委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十七分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時三十分開議
森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 午前に引き続き、内閣提出、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局審査局長上杉秋則君、厚生労働省健康局国立病院部長河村博江君、職業安定局長澤田陽太郎君及び社会・援護局障害保健福祉部長高原亮治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土肥隆一君。
土肥委員 民主党の土肥隆一です。
 私も、障害者雇用促進に関する法律をいろいろと見てまいりまして、幾つか驚いたことがございます。私は、長年福祉の分野に関心を持って、そしてこの国会でもそういう分野で生活をさせていただきましたが、大変恥ずかしい話ですが、要するに、障害者就労の問題についてもう少し本格的に取り組むべきだったなということで反省をしております。
 そうした中で、そういう意味では、厚生省と労働省が一緒になったということで、課題が共有できるということではいいことでありますけれども、しかし、福祉あるいは旧厚生省的な視点で見ますと、相当違った雰囲気が見えてまいります。
 その一つは、後で徐々に質問してまいりますけれども、例えば障害者の定義でありますとか、これを、職業的に障害者を定義するんだなということが初めてわかりまして、例えば総則のところの「用語の意義」などがそうでございます。
 それを見ながら思うんでありますが、障害者を就労の切り口で分類できるということも、ある意味で大変驚いております。なるほどと。例えば、「障害者」というのは「長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」、こうなっておりまして、ああなるほど、障害者を就労というあるいは労働法制的な見方でやればこうなのかと、私は何かすごい発見をしたような思いでございました。
 それにしても、最近始まりました知的障害者の問題あるいは精神障害者の定義などは全部後回しになっておりまして、「厚生労働省令で定める」ということになっておりまして、労働法制的な意味での障害者の定義というのはもう一度やはり根本的に討議をしなきゃならないというふうに思っております。
 と申しますのは、労働政策として障害者問題を考えるときに、どうしても行政で取り上げられるのが、ある種の成果主義ですね。何人就職させたかとか、どういう訓練をして現場に送ったのか、それが何万人であるかとか、そういうある種の成果主義を根底にしないと役所の仕事は成り立たないのではないか。そこがやはり非常に問題でありまして、成果主義となればあらゆるところに無理が生じてまいります。
 職業安定所にいたしましても、あるいは地域障害者職業センターにいたしましても、あるいは後で出てまいりますいろいろな訓練施設にいたしましても、今度新しく出ます障害者就業・生活支援センターなども、行政的な流れに行くと、これはどうしても結果を出さなきゃいけない、成果を上げなきゃいけないということになりまして、一体、障害者の就労ということが成果主義的に見れるのだろうか。
 同時に、この財源が財源でございまして、財源を当てにして就労問題をやりますから、負担してもらう側の企業のことも考えなければうまくいかない。そうなりますと、あっちの方にも顔を立て、こっちの方にも顔を立てて、そして、一体、障害者自身がどういう扱いを受けるのか、どういう処遇をしたらいいのかという一番大事なところに問題が返ってこない、そういうふうに思うのであります。
 先ほども参考人の先生方からいろいろお話を聞きましたけれども、例えば小規模作業所でありますとか小規模な通所授産施設、そういう作業所に通っていらっしゃる方がはるかに就労者よりも多い。しかし、小規模作業所というのは一体何なのか。労働法制的に見て、労働政策的に見て何なのか。つまり、労働政策で見たときの障害者のカテゴリーに入らない人が小規模作業所に通っている、こういうふうにも見れないことはないのであります。
 今度、厚生労働省と、二つ一緒になったんですけれども、障害保健福祉部ではどういうふうな理解をしていらっしゃるのでしょうか。
高原政府参考人 小規模作業所及び小規模通所授産施設でございますが、小規模作業所は五名以上で構成されておりまして、関係団体の調査によりますれば、平成十三年八月一日で五千八百六十八カ所。それから、小規模通所授産施設でございますが、これはまだ新しい制度でございますが、小規模作業所から積極的に安定的な経営、安定的なサービスを供給するために移行していただいておりまして、十人から二十人で、法人で経営をするという形になっております。
 これらの作業所などは、障害者の自立や社会参加の促進を図る観点から、委員御指摘のように、就労がやや困難な障害者に対しても、自活に必要な訓練を行うとともに、身近な作業活動の場を提供する、こういうことを目的にしております。
 以上でございます。
土肥委員 例えば、この障害者の雇用促進に関する法律で言う「障害者」という切り口で言うと、なお小規模作業所の人たちも十分に雇用促進法の中での障害者として見ていいんですか。線は引かないんですか。この辺はどうでしょう。安定局長の方はどうですか。
澤田政府参考人 障害者雇用促進法の体系は、もうその名のとおり、障害者、障害のある方々に雇用についてもらうということを促進するための法律という枠組みになっております。
 これは、障害ある方々が働く、広い意味の働くという場合に、まず、企業に雇われるということが、いわば安定性があるとか、主要な設備を企業が提供して、そこで労働を提供するという形でいくので、自分で仕事をするとかいうよりは比較的条件が整えやすいとか、いろいろな意味で企業に雇用することが望ましいという趣旨でこの法律ができております。
 そういう前提でありますので、今委員おっしゃるように、雇用以外の形態について、この法体系でどこまで支援策等々カバーできているかという点でありますと、排除はしておりませんが、中心的な部分は雇用にかなりシフトしているという点は御指摘のとおりだと思います。
土肥委員 ですから、結局、この制度、政策は矛盾に満ちているわけでありまして、いわば企業に対して納付制度を義務的に課しておきながら、その一方で、企業に就職をさせようというと、企業の論理とか企業の形態とか企業の意思とかそういうものがやはりしんしゃくされなきゃいけない、こういうことになりますと、当然そこで、障害者の人たちを、企業に向く人と向かない人、就業にたえる人とたえない人、こう分けていくわけですね。
 私は、そうなると、例えば小規模作業所とかこういうものは根本的に考え直して、企業でなくて生きていける、集積した、まさに新しい会社を起こすとか、新しい流通経路に乗るとか、新たな職場を開発するとかいうふうに腹を決めないと、何か福祉的な視点で、居場所がないから、あるいは一日家にいるとよくないから小規模作業所に送りましょうといって、そして親たちも、何とか子供たちに自立への道を、こういう小規模作業所を通してでも道を開いていきたいということで、六千にも及ぶ団体、毎年三百もふえていくという。
 これは、親御さんたちの気持ちを考えるときに、一種、就職というようなことをもう断念したグループだ、人たちだというふうに考えるときに、厚生労働省としてこれはほっておけるのかどうか。福祉的な視点であくまでも小規模作業所を見てまいりますというと、今みたいな単なる、単なるというと語弊がありますね、自助努力があるんですけれども行き場所がない人たちの集まるところ、そして非常に初歩的な作業しかできない、それをこのままずっと続けていくおつもりですか。
高原政府参考人 小規模作業所でございますが、そういった福祉的な就労からスタートして、職業訓練をやっていただいて、それからジョブコーチみたいなもので一般の企業に就職していただく、それで最終的には、現在案件としてお願いしております法律の枠内で一般企業に就職していただく、こういうことが望ましい姿である。これは、別々のものであるというよりも、連結したものであるというふうに考えております。
土肥委員 そうはおっしゃるでしょうけれども、現実として、これから少し中へ入りますけれども、障害者が厳しい審査を受けて、だれが自分に何をしようとしているのかよくわからないような、適性検査やら訓練やらいろいろ受けて、そしてやっと職場にたどり着くというようなことを考えると、私は特に精神障害者や知的障害者の皆さんは気の毒に思えてならないので、ごくごく限られた、能力のある人が就職の道にたどり着いていくというふうに思うわけでございます。
 ですから、せっかく厚生労働省ということになりましたので、やはり、旧労働省と旧厚生省の間で障害者をどう見ていくかということです。
 私の持論を先に申し上げますと、やはり一人一人の障害者に目をとめて、一人一人の将来の行く道を一緒に考えてあげて、そして、余りいろいろな行政的な機能というのは表に出ないようにして、その人が一番安心できる、安心して頼れるような人を探して、そこから就労の道がつながっていくというふうな、要するにソフトな、成果主義でない、型にはめない、過度な負担を求めない、そういう訓練やあるいは指導をしなきゃならない、こう思っております。
 あるところで、知的障害者の施設ですが、掃除機のかけ方を教えているんですね。部屋におがくずをまいて、それを掃除機で吸い取っていくわけですけれども、それがわからないんです。それで、がんがんしかられているわけですよ。何度やってもきれいにならない。私は、もうやめてくださいと言いたいぐらい、横からちらっと見ていまして。何のためにそういう訓練をするんでしょうか。掃除機が使えるようになったらどこかに就労するとでも考えているんでしょうか。まあ、自分の部屋ぐらい掃除機できれいにしなさいというのかもしれませんけれども。そういう思いがいたしました。
 ですから、ぜひとも、行政的な手法というものが表に見えない形で、障害者が安定してそこに身を置けるような、そういう条件をいろいろな施設でやっていただきたいと思うんです。
 それにしましても私が驚いたのは、障害者雇用促進に関するいろいろな事業体の、十重二十重にあるということですね。私も何度も厚生労働省の担当者に来ていただいて、これは何をするんですか、ここはどうするんですかということを聞きながら、私の今までの行政理解にまだ入り切れていないという感じがいたしております。
 障害者職業総合センターがあると思ったら、広域障害者職業センターがあって、そして地域障害者就業センターがあって、そのほか職業準備訓練、障害者雇用支援センター、これは雇用と職業と自由に使われているんですけれども、いろいろございまして、少しわかってきたんです。
 その立場からいいますと、先ほどから何度も言っておりますように、まず障害者が、特に私は知的障害者または精神障害者を想定しておりますけれども、仕事をしたいと職業安定所に訪ねていく。職安でもいろいろなスタッフがいらっしゃるし、カウンセラーなどもいらっしゃると思うのでありますけれども、やはり職安の窓口というのはとても忙しいですから。
 私も時々職安に行って仕事探しをやってみるんです。コンピューターがありますからね。年齢と経験からいって、この前探し出したのは接客業と書いてあるんですね。何ですかと聞いたら皿洗いだというから、皿洗いなら僕に仕事があるんだなと思って、安心したやら情けないやら。情けないじゃなくて、びっくりしたやらでございますが。
 職安に行って、恐らく職安の措置は、重度、重度と言わなくても中軽度の人だったら、例えばその人の能力だとか適性だとかをざっと考えて、地域障害者職業センターに回すと思うんですね。そこで、残存した能力だとか、職業能力とか適性だとか、いろいろなことをやりまして、職業の準備訓練をしたり、あるいは事業所を見せたりして、職業リハビリテーションに入っていくというふうに理解されます。
 その横っちょには、職業準備訓練用の障害者雇用支援センターがある。この支援センターも、今度は、半分、あっせんの部分を外して、障害者就業・生活支援センターの方に回すということでございます。トライアル雇用もある。そして、そこでは職業訓練を見て評価したり、障害者の判定をしたりいたします。
 そうして、もう一度職安の窓口に行って、仕事はここでありますよというふうな流れになるんじゃないかと思いますが、今の流れで、安定局長、間違いありませんでしょうか。
澤田政府参考人 基本的には、委員御指摘の流れで、そのとおりであります。多少つけ加えさせていただきますと、その間に、御本人の能力、適性、環境等々を踏まえまして、どういう形の就業がいいかということも十分考慮して、雇用につきたいという方についてはそういう形で、最後は安定所の方へ戻ってきてお世話をするという形になります。
土肥委員 この間、この当該の一人の障害者は、ずっとその流れに乗っていくわけですか。
澤田政府参考人 その間の流れといいますか、段階が多々ございまして、委員御指摘のように、職業能力を評価する段階、それから職業準備訓練を受ける段階。それから、就業そのものになかなか準備ができていない方については、事前の日常的な生活習慣の相談とか指導とか、いろいろな段階がございます。そこは一体的にそごなく支援ができるように、コーディネートするところは一つにしたいと思いますが、実際、そこを支援する人、機関になりますと、それぞれの専門ノウハウを持ったところが担当するという形で、いわば一つの機関、一人の人がすべてを全部やるという形にはなっておりません。
土肥委員 まあ、それはまれなケースかもしれません。全部を診察して、診察というか、ちょうど私、今局長の話を聞いていて病院のイメージで、病気がよくわからないんだけれどもとにかくここだろうと行ってみて、ああ、採血してください、レントゲン撮ってください、そしてぐるぐる回って、また来てくださいというような、そういうイメージなので。
 私は、私が知る限りの中軽度の知的障害者が、こういうプロセスに耐えられない。精神障害者にしてもそうだ、物すごい緊張感を呼んで、自分が一体何をされているのか、何を目的にしているのかということすらわからないんじゃないかと思うんですが、そういう人はいないんですか、局長。
澤田政府参考人 私も実際の場面を十分見ておりませんので、そういう人はいないのかと問われると、可能性としてはおられるだろうと思います。
 そこで、今回、法改正と同時に政策としてお願いしております障害者就業・生活支援センター、これはまさに、総合病院であっち行けこっち行けとぐるぐる回されて何のためかわからないということのないように、全体のコーディネート役として就業・生活支援センターが、御本人とよく相談をして、全体像をお示しして、関連機関をコーディネートするという役割を持っておりますので、少なくともこれが動き出せば、御懸念のようなことが少しでも減るというふうに考えております。
土肥委員 今の、就業・生活支援センターの話をなさいましたので、それでいいのでありますが、これは昭和三十五年ですか、この基本的な法ができ上がったのが。その間、十分吟味して――障害者が安心して自分を、自分の心をゆだねる人が必要なんですね。基本的には親なんですけれども、親に寄り添うようにして、もう親しか自分を守ってくれる人はいないというような感じで生きている障害者がたくさんいるわけですね。それで、ずっと親御さんがついて回るというわけにもいかないでしょうし、だれか自分を受け入れてくれる、受けとめてくれる人がない限り、どんな指導もうまくいかないというふうに思うわけでございます。そういう意味で、今回、就業・生活支援センターをおつくりになる。これは後でまた詰めさせていただきます。
 私が今回の法改正で一番注目したのは、ジョブコーチでございました。ジョブコーチというのを導入するんだと。これは十年前くらいからアメリカで非常に発達した職種でございまして、ところが、日本の今回のでき上がりました法律を見ると、導入とそれから途中経過の指導、それからフォローアップ、六カ月間やります、六カ月間というのは大変結構なんですけれども、本当に職場の中の一部しか担わない職責というふうに思いました。
 説明によりますと、この就業・生活支援センターにもジョブコーチが入るということでございますが、明確にはうたわれていないというふうに考えておりますけれども、このジョブコーチを導入するに至った基本的な動機、考え方は何だったんでしょうか。
澤田政府参考人 お答えいたします。
 これまで委員の御質疑の中で明らかになっておりますように、障害者、とりわけ知的・精神障害者の方につきましては、なるべく少人数といいますか、固定した方がいろいろ相談にあずかり、御本人が安心した、あるいは非常に精神的に落ちついた状況でいろいろ活動できるということをどうやって担保していくかという問題が大きくありまして、そうした意味で今回ジョブコーチというものも、アメリカよりは若干おくれましたが、導入して、いわば、マンツーマンまではいかないにしても、継続的に支援をする体制の強化を図りたいという点で導入したものと理解しております。
土肥委員 ですから、やや安心するんですね。片方で、行政の成果主義がある、数を出せと。これだけ予算使っているのに何だというようなことが、我々国会議員も言うかもしれません。成果を考えないというのはあり得ないことですけれども、障害者問題で成果主義を、数字だけを追っかけるようなことをやると、要するに行政が空回りしているということになりかねないと思うのであります。
 それで、ジョブコーチと、それからもう一つ、この障害者就業・生活支援センターの関係について御説明ください。
澤田政府参考人 ジョブコーチは二つの組織に所属すると申しますか、関係しておりまして、一つは障害者職業センター、いわば職業能力の評価をし、職業準備訓練をする、この職業センターに所属するジョブコーチ。それからもう一つは、障害者就業・生活支援センターに都道府県知事が指定する公益法人、まあ社会福祉法人等々がなると思いますが、そこと委託契約を結びまして、そこに置いていただくジョブコーチ。二種類になります。
 障害者就業・生活支援センターにおられるジョブコーチ役の方は、障害者職業センターのジョブコーチとも十分連絡をとりますし、他の関係機関とも十分連絡をとる、こういう関係になります。
土肥委員 そうすると、ジョブコーチというのは、職種の名前ではなくて、機能を担うものというふうに理解していいんでしょうかね。行政の施策の中にジョブコーチという言葉は具体的には出てこないというふうに考えていいでしょうか。
澤田政府参考人 ジョブコーチという任務を与えられた人は、職場なり、障害者と接触するときにジョブコーチとしての仕事をするということで、私ども、通称ジョブコーチ、ジョブコーチと言っておりますけれども、いわば公的な肩書として、片仮名でジョブコーチと書くか、まあ役所のことですから、こういう名称で外には名乗りなさいということになるかもしれませんが、何か特定の名称はつきますので、そこは今後、一番いい名前がつくだろうと思います。
土肥委員 大分わかってきました。
 要するに、障害者就業・生活支援センターを民間の民法法人なり社会福祉法人なりに委託をするんでしょうかね。委託と考えたらいいのか。そこには相談員を置くようでございますが、国レベルで三人というふうに聞いております。しかも、就業担当が二名で、生活担当が一名だ。分けるのもいかがなものかとは思いますけれども。
 例えば、社会福祉法人が手を挙げまして、障害者就業・生活支援センターをうちの法人に持ってきたいというふうに言ったときに、既にそれぞれこの施設の、あるいは障害者の種目別に定員も決まっておりますし、最低の定員でやっているわけでございます。
 これは、介護保険上の訪問看護ステーションなどとも同じような考え方になってくるのですが、そこの職員をそのまま横滑りで使って、要するに、そういう事業者にこの三人分の人件費は渡すが、あとはうまくやってくれというふうなやり方に聞こえるんですが、その辺の実態を御説明いただきたいと思います。
澤田政府参考人 障害者就業・生活支援センターとしての機能を果たす社会福祉法人等々のケースでございますが、委託契約という形でジョブコーチ事業をその法人に委託をします。その事業を実施していただく人といいますか職員につきましては、他の国の補助金等々で助成を受けている人を使わないようにと。これはいわば補助金の二重使用になりますので、そういうことはノーという形になっておりまして、私どもが、委託契約に基づいて、ジョブコーチとして働いていただいた場合に一日幾らという形で謝金をお支払いいたしますので、そうした方たちは私どものお支払いする謝金で仕事をしてもらうというふうに整理はいたしております。
土肥委員 そうすると、そういう人材を探して、そして、謝金というんですか、お礼ですね、御苦労さまと。謝金というのはどういう意味なのかな。要するに、お金を出して、それで、やろうという人を探してくれということでございますね。
 私は、障害者の立場に立てば一歩前進だというふうに思っておりまして、さて、これでどれくらいの謝金が出るのか、それから、どういう人材、どういう訓練が新たに必要なのかなどなども後でまた詰めてみたいというふうに思っております。
 ですから、ジョブコーチと言わないまでも、やっと、障害者に付き添ってくれる人材がいて、そしてその人のところに、それは地域にあるわけですから、一緒に職安に行ってもらって、求職票に書き込んで、そして、この人はこういう人ですから一番簡素な余り緊張のない訓練をしてくださいとか、判定をしてくださいとか言って、その人がやがて訓練を受ける段階になりましても一緒におってやって、そして大体のことが仕上がって、もう一度職安に行って、こういう職種ではどうですかというときに、またその人がついていってあげて、職安の人と一緒に行ってその仕事場を見てくる。
 そして、契約ができて、トライアルであろうと何であろうと、ではとにかく来てくださいということになったときの契約。そして、賃金の決定。それから、その後のフォローアップ。
 これは大変な仕事だと思うのですね。時間給なんて言い始めたら相当オーバーするし、人数からいって、一事業者に三人ぐらいつけたところで焼け石に水というふうにも感じますが、将来の展望はどういうふうにお考えですか。
澤田政府参考人 十四年度の予算として、初年度、スタートという規模で約七百六十名を措置しておりますが、おっしゃるように、大変な仕事があると思います。ということで、実際の実施した状況を見て、私どもも、必要があれば増員等々は十分考えていかなければならない、こう思っております。
土肥委員 大変結構でございます。
 ボランティアの皆さんとか、親御さんで自分の障害を持っている子の手が離れたとかいう方もいらっしゃいますし、これは介護の方の障害者の居宅介護支援事業ともつながってくるんですけれども、就職、就労という視点で障害者を一方で見ていく、それからもう一方では、福祉という視点で見ていきながら、能力のある人には可能な限り就労に向かっていただくということだろうというふうに思います。これからやっと何か、心のこもったと言ったら語弊がありますけれども、就労事業が始まるんだなというふうに思っております。
 最後に大臣にお聞きしたいのでありますが、今、ジョブコーチが入りました。私は、これを聞いたときに非常に喜びました。やっとここまで来たか、そういう感じがいたしました。ですから、これはぜひよく検討されて、障害者の身近なところに、信頼の置ける、生活も就労も考えてくれるような人がおるということは非常に重要なことだと思うのですね、これをぜひ発展させていただきたい。
 それから、私は率直に申し上げますけれども、この障害者の就労政策というのは、非常に頭でっかちといいますか、いろいろなメニューがあり過ぎて、いろいろなところに障害者が行って訓練を受けられるようになっておりますけれども、そんなに就労のために訓練が要るのかなという気もいたします。
 ですから、もっと親たちや、作業所をやっている人たちや、作業所で働いている若い指導者なんというのは、すぐれた人たちがたくさんいますよ。そして、安い給料で一生懸命やっている。本当にすばらしい人材がいわば在野にいるということですね。その能力をどう吸い上げるか。これからの障害者の就労政策というのは、そういう在野の力をかりないでうまくいくはずがないというふうに思うのですが、大臣の御理解を得ながら、御答弁いただきたいと思います。
坂口国務大臣 今、委員のお話をずっと聞きながら、なるほど的確な御指摘だというふうに思って私は聞いていたわけでございます。
 いずれにいたしましても、今まで厚生省と労働省と別の省であって、そして、同じ障害者のことを言いましても、厚生省の方は、障害者の生活をどう支援していくかという、そこに重点があったと思うのですね。労働省の方は、もう御指摘のとおり、これは就業をどう支援するかということであって、定義も、定義と言っていいかどうかわかりませんけれども、若干やはり見る側面が違ったと思うのですね。
 ですから、これは一緒になりましたが、しかし、法律は今までのままの法律がずっと両方生きているわけだものですから、そこがなかなかうまく、整合性ができているかということになれば、若干やはりぎくしゃくしたところもあるんではないかという気が私はいたします。
 今回の、厚生労働省になりましてから初めての法律でございまして、この中で、やはり今御指摘いただきましたように、就業・生活支援センター、今までの厚生省だったら生活支援センターと言ったんでしょうし、労働省だったら就業支援センターと言ったんでしょうけれども、就業・生活支援センターと言ったところに、厚生労働省になった新しい差があるんだろうというふうに思っております。
 それに加えまして、ジョブコーチというものをつくろうということで、このジョブコーチの役割というのも、ただ単に就業だけをやるのではない。生活のバックアップもしていく、双方を見ながらやっていくという立場のものをつくろうというのは、これはやはり、一つになりました非常にいいところだろうというふうに私は思っております。
 ただ、このジョブコーチというものをつくります人数がまだ限られておりますから、これはなかなかまだ十分に皆さん方に喜んでいただけるところまで、率直に申しまして人数が足りませんから、一度にはいきませんけれども、まず第一歩をここに踏み出すことができましたので、特に知的障害者、それから、これから参入してくるであろう精神障害者の皆さん方に対して、大きな一つの支えになるのではないかというふうに思っている次第でございます。
 こうした皆さん方をひとつ全体で、今、在野からというお言葉をいただきましたけれども、みんなで支え合って、そして在野の中からもジョブコーチの人たちが出てくるといったことになれば、一番いいケースではないかというふうに思っております。御指摘いただきましたように、この面、さらに進めていくように努力したいと考えております。
土肥委員 大臣、もう一問ちょっと。
 先ほど成果主義というのを申し上げましたけれども、厚生労働省行政の仕事と民間が手を結ぶようになるんですね。そのときに一番問題になるのは成果主義なんです。それについて十分御指導いただきたいと思うんですが、ちょっと一言、記録に残しておきたいと思いますので。
坂口国務大臣 質と量の話があるだろうと思いますけれども、ややもいたしますと量の方に偏りまして、そして、何人どうしたかという話が、現実問題としてはそれが一番問われるものですからそうなりがちでございますけれども、そこには質の問題が大事である、やはり質を抜きにした量はあり得ないというふうに私も思っている次第でございます。
土肥委員 ありがとうございました。終わります。
森委員長 次に、山井和則君。
山井委員 民主党の山井和則です。
 三十五分間ですが、きょうはメーンの障害者雇用促進の問題の前に二点ほどお伺いしたいこともございます。坂口大臣にお伺いする点も多くて申しわけないんですが、どうかよろしくお願い申し上げます。
 早速ですが、まず第一点目は、公明党さんも大変熱心に取り組んでおられます救急救命士の業務範囲の拡大、気管内挿管のことについてでございます。
 この資料の一番後ろの朝日新聞の新聞記事を見ていただけますでしょうか。見ていただいたらわかりますように、「救急救命士が気管内挿管していたら… 三人救命の可能性高く」ということであります。実際、これ以外にももちろん可能性はあるわけですけれども、ここにも書いてございますように、救急医療専門医は、この三例について、気管内挿管以外での換気が困難な症例、三例とも患者が倒れてから現場処置までの時間が極めて短い、それで、現場で気管内挿管をして十分な酸素が送り込まれていたらより高い救命の可能性があったと考えられると分析しておられるわけですね。
 これは過去五カ月、三十万人人口の秋田市ですから、全国で一年間で考えると三千人ぐらいの方がこういう可能性が、もちろん可能性ですけれども、あるんではないかというような推計も成り立つわけなんですけれども、この記事について大臣はどのように感想を持たれるか。
 それとあわせて、資料のもう一枚手前、資料四を見ていただきたいんです。
 この問題、私も今までから国会で取り上げておりますが、今井澄参議院議員の質問に対しては、救急救命士が気管内挿管できることを、正式な文章を言うと「できるかできないかということではなくて、やるということを前提にしながら、」早急に検討するというふうに答弁されておりますし、私の質問に対しましても、年内にどういう方法でやるかの結論を出すという答弁をいただいているわけですけれども、この秋田魁新報によりますと、下の星印を見ていただいたら、坂口大臣は年内に気管内挿管など救命士の業務を拡する方針を示したことについて、「厚労省医政局指導課は会合で「厚労省の指示は「仮に認める場合、どんな条件整備が必要になるのか示してほしい」ということで、実施を決めたわけではない」と説明した。」と、国会での大臣答弁と明らかに異なったことを課の方がおっしゃっておられるわけです。
 そこで、先ほどの朝日新聞の記事に対する感想とともにお伺いしたいんですが、救命士に気管内挿管を実施させるという前提で検討しておられるということでよろしいですね。
 その二点、坂口大臣、よろしくお願いいたします。
坂口国務大臣 この朝日新聞の記事につきましては、どこからこのデータが出たかということを少し調べてもらったんですが、秋田市の消防署あたりから出たものではどうもないらしい、そうではないというお話でございまして、どこから出ましたデータなのかということはちょっとつかめなかったわけでございますが、とにかくこういう新聞記事があることだけは事実でございます。
 この新聞にありますことが一体こういうことなのかどうかということは、私もにわかに判じがたい点もあるというふうには思いますけれども、しかし、患者さんを中心に考えましたときに、やはり、早く手を打つことによって助かる人があり得るということは、論理的にもこれはもう考えられる話でございまして、私は、そういう意味では、この記事そのものがある一つの方向性を示しているというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、いろいろこれから、救急救命士の訓練でありますとか、あるいはまたどういう場合にするかとかいったようなことも含めて検討しなきゃならない点もかなり多いというふうに思っておりまして、これは、厚生労働省と総務省の方の共同でいろいろ検討をしなければならないというふうに思っております。できれば今月中に立ち上げたいというふうに思っておりまして、いい議論を進めさせていただきたいというふうに思っています。
 その方向性というのは、やはり、やるとすればどういう方向でやれるのかといったようなことをその中で議論がされるものというふうに私は思っている次第でございます。
山井委員 ちょっと重要なところなので、方向性ということですけれども、今井議員の質問に予算委員会で答弁されたように、気管内挿管を「やるということを前提」という、この答弁で正しいですね。もう一度お願いします。
坂口国務大臣 前提といいますか、行うことにするならばどういうことが大事なのかということを議論しなきゃならないというふうに思うんですね。
 これから、患者さんを中心に考えました場合に、それは必要なことがあるだろうと私も思うんです。その必要なときに、それじゃどういうときにお願いをするかということになるんだろうと思うんですね。
 秋田の例でしたか、三年間か何かで千三百例か何かあるとかなんとかというようなことが、これも新聞記事でちらっと私見たような記憶があるんですが、それはちょっと私は、必要な例がそんなにあるかなという気持ちは率直に言っていたしております。
 ですから、そこはひとつ、やるという前提に立つならばどういう条件が必要かということを議論するということでございます。
山井委員 拡大を、気管内挿管をさせないという結論になる可能性もあるんですか。そうなってくると、今までの答弁が全然変わってくるわけですけれども。
坂口国務大臣 これは、専門家の先生方に御議論をいただくわけでございますから、その先生方のおっしゃることを私が先に決定してしまうわけにはいかないというふうに思います。そこでよく議論をしていただくということだというふうに思います。
 前提としては、しかし、やっていただくためにはどうするかということの話だろう。結論として、もういかなる場合であってもそれはだめだという結論も、それは理屈の上ではあり得る範囲の一つだというふうには思いますけれども、私は、多分そうはならないというふうに思っております。
山井委員 ありがとうございます。
 私がなぜここまでこだわるかというと、御存じのように、十一年前に救急救命士法ができた時点で、早急に検討するとなって、十一年間ある意味で先延ばしになってきた問題ですので、今回こそはきっちりとやっていただきたいですし、先ほどの新聞の記事でも、亡くなられたこの三人の御遺族の方の気持ちを考えたら、これは大変なことですよね。もしかしたら、気管内挿管をやっていたら、うちの家族は助かったかもしれない。こんなことが一年間に千人も二千人も出てきたら、これは大変なことであります。
 それで、もう一点お聞きしたいんですが、年内に結論を出すというふうに前回の私の質問で御答弁いただいたんですが、問題は、いつからできるかなんですね。もうこの五カ月で、三十万人のところだけで三人出てきているわけなんですけれども、私の要望としましたら、既にかなり体制が整っている先進地域においては、年内に結論を出して研修をすれば、来年の春ぐらいから救急救命士さんが、もちろん研修を受けたりメディカルコントロールをきっちりやった上で、気管内挿管をできるという体制が組めるのではないかと思うんです。
 これは本当に、毎日こういう方が十人ずつぐらい発生している可能性があるわけですから、一刻を争う問題なんですけれども、そのあたり、既にこういうことが普及している先進地域で、もちろんさらに研修をしてなんですけれども、早ければ来年の春ぐらいからということでお願いできますでしょうか。
    〔委員長退席、野田(聖)委員長代理着席〕
坂口国務大臣 結論は年内に出したいと思っております。
 しかし、どういう結論になるか、それはわからないわけでございますが、仮にそこで、それではいろいろな条件はありますけれどもやりましょうということになりました場合に、ではどういうことがあと残されているかといえば、一つは、やはり全国的な規模での訓練等もあるわけでありますし、あるいは勉強もしていただかなければならない。あるいは、救急救命士の皆さん方の今後の養成のあり方みたいなものも少し決めていかなければならないというふうに思っております。
 部分的に、秋田でいろいろなことがあったから、秋田だけ先にやってもらって、ほかはぼつぼつやろうかというような調子にもなかなかいかない。それはやはり、やるということになれば、全国一斉にやれるような体制にしなければならないというふうに思いますしいたしますから、何月からとか、今そこまで言うわけにはいきませんけれども、おのずから御理解いただけるのではないかと思っております。
山井委員 私がこの問題にこだわりますのは、命がかかっている問題ですから、もし結論を出した後、それこそ二年もかかって実施して、やはり実施したら救命率が上がった、たくさんの人が救えたということになったら、その準備期間の二年間で亡くなった方の命はどうなるんだと。それこそ、ヤコブ病やハンセン病のような、結局これは行政が怠慢したからじゃないかということになりかねないわけですね。ですから、そこはしっかりと早急に取り組んでいただきたいと思います。
 それで、もう一点だけ。除細動に関しては、坂口大臣も、ほとんど合意がとれている、検討することもそれほどないということを、今までから公明党さんの質問に対しても答弁をされているわけですけれども、アメリカでは、四時間半程度の研修で、一般市民も自動式の除細動器を使って除細動をもうやっているそうなんです。これについては、それこそ気管内挿管ほど検討する必要はないと思うんですが、もうことしの夏ぐらいから、もう現場の方は、あしたからでもできるということをおっしゃっているんです。アメリカでは四時間半で一般の市民の方が、この自動式除細動器は器械が診断を読み込んでくれるわけですから。そのことに関して、坂口大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 除細動の問題につきましても、同様に検討していただきたいというふうに思っておりますし、他のものに比べましては比較的結論の出やすい問題ではないかというふうに私は思っている次第でございます。
 しかし先ほど、それまでの間に、二年なら二年の間に、いろいろな亡くなる人が出る可能性もあるというお話がございましたけれども、それはそういうことも考えられますが、しかし、一面におきまして、技術が未熟であるにもかかわらず行うことによって、かえって命を失うということもあり得るわけでありますから、そういうことが起こりましたら、それではだれの責任だということになってくる。その辺のところは、慎重にやはり対処していかなければならないというふうに思っている次第でございます。
山井委員 先ほど、全国一律にということでしたが、私は、やはりできる地域から進めてほしいと思っております。
 次に、国立病院の談合疑惑について質問をさせていただきたいと思います。
 先日の委員会で釘宮議員からも指摘がありましたが、十件の国立病院に関する談合の疑惑があって、それを仕切っているのが大物厚生労働族議員の秘書ではないかという質問に対して、談合疑惑については調査に入っている、公正取引委員会にもメモを渡したという答弁があったわけですが、実際その後、どのような調査の経過になっているのか、河村部長さんにお伺いします。
河村政府参考人 先般、本委員会及び参議院予算委員会で御指摘のあった国立病院の関係の工事に関しましては、現在、三月十二日及び十四日の入札分につきましては契約を保留いたしておりますし、三月十九日及び二十二日に予定していた入札につきましては延期をいたしております。
 これまで入手いたしております国立病院の整備工事発注にかかわりますところの談合情報につきましては、三月二十九日に、公正取引委員会に対しまして、独禁法四十五条に基づく正式な申告を行ったところでございます。
 また現在、入札参加業者に対するより詳しい再調査、それから、これは来週になると思いますが、国立病院関係のOBの調査を実施するということにしておるわけでございます。この調査の結果を踏まえまして、今後の対応について適切に決定していきたいというふうに思っております。
山井委員 公正取引委員会でも調査をされているということですが、現状はどうですか。
上杉政府参考人 お答えいたします。
 国立病院の建設工事に係る談合情報につきまして、厚生労働省から情報をいただいたところでございまして、今後とも、厚生労働省との連携を密にいたしまして、さらなる情報の収集分析に努めたいと考えております。
山井委員 この報告が出るということですが、報告が厚生労働省と公正取引委員会から出た時点で、この委員会で報告を求めたいと思いますが、委員長、お取り計らいをお願いできますでしょうか。
野田(聖)委員長代理 理事会で協議します。
山井委員 前回の答弁で、国立病院部から十三人もが建設会社に天下っている、再就職しているという答弁がありました。その名簿がここにあるわけですが、最終役職しか書いてありません。そして、まさに談合疑惑の会社名が、その再就職している会社と一致をしているわけですね。
 そこで、解明する気があるんだったら、天下りをした方々の具体名を出すべきだと思うんです。ここに書いてありますのは、本省室長補佐、私、本省室長補佐といってもだれのことかさっぱりわからないわけですね。名簿を出さないこと自体が疑惑解明に消極的だというふうに思うんですが、本気でやる気があるんだったら、具体的な名前の入った名簿を出して、やましいことはないということをしっかり弁明すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
河村政府参考人 OBの十三人につきましては、先般、釘宮先生から御依頼がございまして、もとの官職名と再就職先を明らかにしたリストをお渡ししたところでございます。個人個人の名前につきましては、個人のプライバシーの問題もありますし、本人の了解もなく公表するのはいかがなものかと思いまして、差し控えさせていただいたということでございます。
 私ども、来週でございますが、OB十三人すべてについて調査をいたします。真剣に取り組みたいと思っております。
山井委員 やはり、この疑惑というのは、厚労省のOBの方が建設会社に再就職して、現役の方と情報交換をして、またそこにコーディネーターとして族議員の秘書さんが入って、天下りのときのお土産みたいな形で受注が行われているんじゃないかという、これは本当に、まさに今、国会で問題になっている政官業の大きな癒着なんです。この悪循環を断ち切らないと、今回のこの国立病院だけでも六百億、その一%が議員に渡っているんではないか、そんな報道さえ週刊誌に出ているわけですね。
 やはりここは、そんなやましいことはしていませんと、しっかり具体名を出して、公務員なわけですから、やましいことがないんだったら堂々と具体名を出して、ここに再就職しています、でも、クリーンで、そういうやましいことはありませんと言うべきじゃないかと思います。
 まさにこういう問題が深刻になっている今国会、坂口大臣にお伺いしたいんですが、坂口大臣の決断、坂口大臣が出すべきだと言っていただいたらそれは可能なんです。坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 いずれにいたしましても、この問題は、国民の皆さん方から疑惑を抱かれるようなことがみじんもあってはならない、そう思っております。したがいまして、明白にしたいというふうに思っておりますし、今後、こういう省庁の工事というものにつきましては、やり方を考えていかなきゃならない。
 そういう意味で、電子入札制がベストかどうかは私も率直に言ってわかりにくい点もございますけれども、現在の制度よりも疑われるようなことが起こりにくいというふうに私は思っているわけでございまして、先日も国土交通省と打ち合わせをいたしまして、どういうふうにできるかということも聞いたところでございます。もう来月からでもでき得るということでございますので、新しい方式を取り入れまして、そして疑いのないようにしていきたい、そういうふうに思っております。
山井委員 その新しい方式ももちろん大事だと思いますが、同時に、地方医務局や国立病院部から建設会社に再就職する、そもそもそういう天下り自体を私は禁止すべきではないかと思います。そのことについて大臣の御決意をお聞かせください。
坂口国務大臣 そうしたことも気をつけていかなければならないというふうに思いますし、そうしたことが明確にちゃんとできていけば、例えばその入札なら入札について公正にできていけば、むしろ今後そうしたことをいろいろと言われることもないだろうと思います。
 したがいまして、職員が天下るということにつきましても我々もっと気をつけていかなければならないと思いますが、たとえ例えば一人なり二人なりあったとしても、そのことによって厚生労働省との間の関係が何かとりわけ緊密であるというようなことが言われないようにするということも、あわせて大事だというふうに私は思っています。
 しかし、今御指摘のように、多くの人間が、とりわけ特に関係をしておりました人間が天下るということについては、決して好ましいことでありませんので、注意していきたいと思います。
    〔野田(聖)委員長代理退席、委員長着席〕
山井委員 この問題は、坂口大臣、きっちりと取り組んでいただきたいと思いますし、私たち民主党も党を挙げて、やはりこれから医療保険の問題とか本当に切実に国民の負担に関係することを考えていく、命にかかわる問題を取り扱うのがこの厚生労働行政なわけですから、そこのところ、これからも引き続き調査と改革をよろしくお願いいたします。
 それでは次に、精神障害者の雇用促進についてですが、まず、先日の衆議院本会議で私これを質問させていただきまして、坂口大臣から御答弁をいただいたんですが、そのことに関する再質問としてお伺いしたいと思います。
 私の知り合いの横山ひろ子さん、喬さん御夫妻が京都市で精神障害者の作業所をやっておられまして、私も一昨日お伺いしました。そこでは、ボランティアの方々が御飯をつくって、その御飯を精神障害者の方々がお年寄りの家に運んで、そのお年寄りとの触れ合いや、ありがとうと言ってもらえる生きがい、やりがい、そういうものを通じて精神障害者の方々が自立していかれる、そういうのを目指している精神障害者の作業所なんです。
 そこでも、今までから症状が安定されて民間企業に就職された方もおられますが、ごく一部であります。やはり、すぐにフルタイムの仕事につけるかというと、その辺、就労形態については、午前中からの審議にもありましたけれども、いろいろ検討の余地はあるかと思うんですけれども、精神障害者二百万人中五万人という、二・五%しか雇用されていないこの現状を変えていくには、法定雇用率に組み入れることが不可欠だと思います。
 このことに関して、つい先日、水島議員の質問に対して、それは早期にやっていきたい、ただ、十年後までにはならないけれども、五年後にできるかどうかわからないという答弁があったわけですけれども、私申し上げたいのは、早期にやると言って、五年でできるかどうかわからないというのは早期ではないと思うんです。そういう意味では、遅くとも次の改正の五年後には精神障害者を法定雇用率に組み入れるという決断を坂口大臣にお願いしたいと思います。
 先ほどから、審議会に任せるとかいう答弁がありましたけれども、審議会に任せたところで、だれが最後決断するんですか。雇う側の方はもうちょっと待ってくれと言うに決まっているわけですし、そういう意味では、大臣がしっかりと期限を切る、そしてその期限までにどういうことをやっていったらいいかということを審議会のメンバーが考えるというのが本来の政治の姿であって、最も重要な期限までを、何の責任があるのかもわからないような審議会に丸投げするというのはよくないんではないかと私は思います。
 坂口大臣、この精神障害者の雇用率の組み入れに関して、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 精神障害者の雇用率につきましては、雇用率といいますか精神障害者の雇用につきましては、これはそんなに、五年もかかるものじゃないと私は思っています。もっと早くこれは結論が出るというふうに思っておりますから、その改正がいつ行われるのか、それまでに行われるのか五年後に行われるのかはわかりませんけれども、結論はもっと早く出るというふうに私は思いますし、そのための条件も整備をしなきゃいけないというふうに思っています。
山井委員 坂口大臣、前向きな答弁をありがとうございます。本当に、五年以前に何とかこれを組み入れていただきたいと思います。
 というのは、私も精神障害者の方々と十数年おつき合いをさせてもらっていますが、就職して、ある程度の生きがい、そして収入、そして自分の自信を取り戻すことができたら、本当に人生を夢を持って生きていかれる方が多いんですね。しかし、それがまた三年、五年とおくれてしまうと、一歩間違うと人生台なしになる危険性があるわけです。御存じのように、日本の精神医療は、残念ながら国際的に見ても非常におくれております。精神病院に隔離してと。そういう面をカバーする意味でも、ぜひともよろしくお願いします。
 そして、そのことと関係して、労働政策審議会の障害者雇用分科会の委員についてお伺いしたいんですが、この三に委員の名簿があります。ここで、障害者代表として、例えば身体障害者の場合は、兒玉明さんは肢体不自由な身体障害の当事者、笹川吉彦さんは視覚障害者という、当事者がお二人入っておられます。ところが、精神障害者に関しては、お一人、家族の方だけなんですね。
 まさにこれから精神障害者の問題にもっと真剣に取り組もうというときですから、この池末さんに加えて、やはりもう一人精神障害者の当事者をこの分科会のメンバーに入れるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 適当な人があれば、それは、私はそうしたことも必ず行われるというふうに思いますが、御本人なのか、それは家族の方を含めての問題なのか、その辺のところも私は今後検討してもいいのではないかというふうに思っています。
 しかし、精神障害者の皆さん方の内容もさまざまでございますし、例えば、うつ病なんかにおなりになって、そして完全に治られたという方はもうたくさんおみえになるわけでありますから、そうした方も精神障害者の中に入れるということであれば、そして、そうした皆さんの中に委員としてふさわしい人があるというのであれば、それは私は可能になるのではないかというふうに思います。
 これは、委員ですから、だれでもいいというわけにもいきませんしいたしますので、それなりのやはり見識をお持ちになった方であって、そして、その御家族なりあるいは病気をおやりになった方ということになるんだろうというふうに思いますから、そこは十分に理解をしながらやりたいというふうに思っております。
山井委員 まさにそこなんですね。もちろん症状が落ちついた当事者の方ですけれども、まさに精神障害者の雇用率をアップさせようということを議論するこういう分科会であるからこそ、一歩踏み込んで当事者の方を入れていただきたい。厚生労働省本体が一歩踏み込まなくて、企業の方々に踏み込んでくれというのも私は順序が逆ではないかと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 そして、月五万円の納付金について。これも衆議院本会議で坂口大臣にお伺いしたことですが、このとき坂口大臣は答弁で、納付金を払った方が安くつくというようなことはないようにしていきたいと言っておられます。
 私、雇用主の方から聞いたら、五万円どころか、一人雇うと三倍の十五万円ぐらいかかるという声も聞いたことがありますし、私が聞いた多くの雇用主の方は、やはり納付金五万円だったらそれを払った方が安いと答えられています。だからこそ、大企業の四分の三は、法定雇用率を満たさずに納付金を払っているわけですね。
 そこで、では五万円が高いのか安いのかということで、私、厚生労働省の担当の方に聞いたんです。そうしたら、平均必要額に一・五倍を掛けた額を納付金にしているということですが、それでは肝心の平均必要額三万四千七百円はどういうデータから出てきた数字ですかと言うと、それは出せないとおっしゃるんですね。本当はきょうの質問でその話をしたかったので、なぜ三万四千七百円が平均必要額なんですかというと、いや、それだけは勘弁願いたいということで、そうしたら、高いのか安いのか議論ができないわけなんです。
 だから、まさに大臣がおっしゃるように納付金の方が安いことがないようにするためには、算定のデータや基準、根拠をしっかり明らかにして、同時に私は引き上げるべきではないかと思うんですけれども、そのあたり、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 納付金を出していただいているからもう障害者を雇わなくてもいいというわけでは決してないわけで、それはそれとしながら、しかし、障害者の方は雇ってほしいということを我々も主張しているわけであります。
 それで、この算定の仕方でございますが、これは委員もお聞きいただいたというふうに思うんですけれども、身体障害者または知的障害者を雇用します場合に必要な施設や設備の設置、整備に通常要する費用、適正な雇用管理のために通常要する費用などを根拠として決める、こういうことになっているわけであります。
 障害者の皆さん方を雇用いたしましたときに、特別な設備が要りますとか、特別な経費が要りますとかというようなことがどれだけあるかというのは、障害者の程度にもよると思いますし、あるいはまた仕事の内容にもよると思いますから、そこは、平均してどれだけかというのはいろいろ考え方もあると思うんですね。ですから、これは前回は平成五年に決めているわけでございますので、そのときにはこういう結論になったということなんだろうというふうに思います。
 初めにも申しましたように、これを出していただいているからといって、障害者を雇っていただくのはもうそれで免除してもいいですよと申し上げているわけではございませんので、出していただくものは出していただくものとして、しかし、何とかひとつその達成率を達成してくださいということを申し上げているわけでございます。
山井委員 それで、まさにその点、この資料一、私のお配りした資料の表紙を見ていただきたいんですけれども、実雇用率は、過去六年間を見たら一・四七、一・四七、一・四八、過去三年は一・四九、一・四九で、ほとんど上がっていないんですね。おまけに、未達成企業の割合は、平成八年の四九・五から平成十三年の五六・三まで、年々アップしているわけですね。こういうことを見ても、やはり納付金は安過ぎるんじゃないかというのは、普通に考えたらそういう議論が出てくると思います。
 それと、二ページ目をお願いしたいんですが、二ページを見ていただいても、雇用未達成企業数というのは、例えば、平成四年の二万五千件から平成十二年の三万三千件まで、どんどんふえている。ふえているにもかかわらず、雇い入れ計画作成命令の発出は、見てもらったら、過去十年で四百二十八件から百十七件に減っている。また、公表を前提とした特別指導を実施した企業数も、百十三件から二件に減っているわけですね。未達成企業がふえているのに、雇い入れ計画作成命令や特別指導が減っているというのは、やはりこれはちょっと甘過ぎるんではないですか。
 そういう意味では、一つ提案したいんですが、十年間法定雇用率を達成していないような企業は、どう考えても悪質ですよね。十年間法定雇用率を達成していないような悪質な企業名は公表すべきだと思うのです。もし、いや、それでも公表できないといったら、そもそも精神障害者の雇用促進の意思なんかないんじゃないかというふうに思うんですけれども、そのあたりを含めて、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 私も、この数字はちょっと見ておりませんので、これは、なるほど、雇用率未達成企業数というのはだんだんふえてきている、ふえてきているけれども、命令を出している方は、ふえているどころじゃなくて、横ばいか、余りふえていない、あるいはちょっと減っているといっておるようなことではこれはいけませんので、これはちゃんとやらせます。企業がふえてきておったら、それ以上にこちらの方がふえて当たり前ですから、ここはちゃんとやるようにいたします。
 それで、名前を出すかどうかは別にいたしまして、何年たっても達成しない、やる気がないというところにつきましては、もう少し厳しく、やはり達成できるような方法を考えます。それで、達成してもらうようにしたいというふうに思います。
山井委員 ありがとうございます。
 公表の効果はあるかどうかということなんですけれども、一ページ目の資料にありますように、平成四年に公表したら、翌年に一・四一、翌々年に一・四四と、やはりちょっと上がっているんですね。その効果も私はあるんじゃないかと思います。
 そういう意味では、最後になりますけれども、ここに出ていますように、ここ数年横ばいですから、今回こういう法改正をやる以上は、来年もやはり変わらなかったということになったら何のための法改正かということになるわけですから、来年はやはり法改正したから上がったなとなるように、ぜひとも全力で御努力をよろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。
森委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 きょうの質問の順番をかえていただきました佐藤公治委員並びに関係の委員会の皆さんに、まずお礼申し上げます。
 では、質問に入らせていただきます。坂口厚生労働大臣にお願いいたします。
 きょうの午後の冒頭の土肥委員への御答弁の中でも、坂口厚生労働大臣は、今回厚生省と労働省が厚生労働省として合体したことによって、こうした障害者の雇用ということについて、今まで医療や福祉面をつかさどってきた厚生省サイドと、雇用、労働の面をつかさどってきた労働省サイドの仕事が一体化してできることによってよりよい就労が可能となるという意味で、非常に期待をかけているというお話でもございました。
 私も全く同じ観点に立ちますので、そうした中で、今回のさまざまな施策を見ておりまして、ぜひともその基本線に沿ってやっていただきたいと思うことがございますので、一問目の質問に入らせていただきます。
 これまで、いわゆる今回の法律で障害者就業・生活支援センターというのが平成十四年度から新たに開始される、これの前進はございますが、このほかにも、いわゆる就業とか生活とか双方を見渡してみますと、例えば精神障害者にあっては精神障害者地域生活支援センターというのがございますし、あと他に、身体障害あるいは知的障害について並びに精神障害については、地域障害者就業センターというのが既にございます。
 後者は旧労働省管轄で、認可法人であるところの日本障害者雇用促進協会が管理されており、会計的にも雇用特会の方から資金が委託金として回ってくる。前者の生活支援センターの方は、これは厚生省マターでございましたので、厚生省の福祉行政の中で補助金という形でおりてくるという違いはあるものの、既に二つの制度があるわけです。
 そこに今回、第三の、障害者就業・生活支援センターということを開始されるということですが、この障害者就業支援センターの予算規模。人員配置は先ほど七百六十人を予定というのが御答弁にあったように思いますが、人員配置、並びに既存の二つにかてて加えて別途にこれをおつくりになるところの意図でございますね。そのあたりについて、これは担当部署からで結構でございます。まず御答弁をお願いいたします。
高原政府参考人 精神障害者の地域生活支援センターにつきまして御説明申し上げます。
 これは、精神障害者に関する問題全般、特に福祉サービスの利用についての相談や助言、そういったものを原則といたしまして二十四時間対応する、ないしは関係機関との連絡調整を行うということでございまして、施設としては比較的新しゅうございまして、十二年四月より制度化しておるわけでございます。
 これは現在二百四十八施設というのが、十三年四月一日現在でございますが、実際、十四年の予算ベースで申しますと、三百十七ということでございます。障害者プランにおきましては、障害福祉圏域に二カ所を目標としております。ということは、六百五十カ所を目標としておりますので、まだ進捗率は余りよくない、そういうことでございます。
阿部委員 御丁寧な答弁で恐縮なのですが、質問と違いますので、よく質問を聞いていただきたかったと思います。御丁寧ですので、ありがとうございます。
 これほどにややこしいのでございます。精神障害者地域生活支援センターというのを今御答弁いただきまして、このほかに障害者就業支援センターというのがございまして、これが旧労働省マターです。それで、今回の障害者就業・生活支援センターというのができますが、これの予算規模についてお伺いいたしたいというのが今の質問でございます。
澤田政府参考人 障害者就業・生活支援センターの予算規模でございますが、これは旧労働系、旧厚生系からそれぞれ継続していた予算を持ち寄ったという格好になりますが、平成十四年度、合計いたしまして五億四千六百万円でございます。
阿部委員 私があえてこのようなことを聞きましたのも、既存の、先ほどお答えいただきました精神障害者地域生活支援センター、予算約三十二億でございますね。それから、労働省関係の障害者職業センター、こちらの方は雇用特会から来るせいか予算規模が多くて九十五億、そして今回新たに五億の別枠のシステムができる。せっかく厚生省と労働省一緒にやるのであるから、もう少し、ある意味で合体、統合できるような、逆に言えば今あるものをもっと活用できるような方向が、やはりこれが合理化というものではないかと思うのです。
 その一例として、私が比較的よく知っている精神障害のことで申しますと、先ほどるる述べていただきました地域生活支援センターでも就労のあっせんはしておりますが、後者の、今労働省がやっております地域障害者職業センターの方でも就労あっせんをやっており、ここでの就労あっせんをよく見てみますと、非常に医療機関からの紹介が多うございます。精神障害者の就労支援の四百何名のうち、医療機関を介してこの労働省管轄の地域障害者職業センターに紹介された例が約五〇%でございます。
 ということは、逆に、医療と生活と就労を一体化するということを考えれば、医療サイドに既に近くある精神障害者生活支援センターの中に、今回就労的な役割をさらに強化するような労働省のノウハウを接ぎ木していけば、数も一挙にふやすことができます。
 先ほどの御答弁で、目標六百カ所だと。私は、就労は生活に近いところがやはり一番です。例えば、都道府県に一カ所あるようなところに、恐縮ですが、障害のある人がいろいろな御不自由を抱えながらたどり着くというのはすごく大変なことでございます。せっかく御提案でございますから今回は端緒といたしまして、今度、星の数ほど数をふやしていかれますときには、既存の生活支援センター、あるいは労働省でお持ちであった障害者職業センターということと、よくよく機能を合体、統合されまして、なるべく数と身近ということを考えていただきたいのですが、この点に関して坂口厚生労働大臣の御見識を伺います。前段が長くて済みません。
坂口国務大臣 いろいろのセンターがたくさんあって、どれがどのような働きをしているのか、私もなかなか一度に頭に入らないような思いで勉強したわけでございますが、土肥先生にもお答えしましたように、双方、旧厚生省、旧労働省のそれぞれの立場からの法律があって、それが一つになったものですから、若干重なったりしているところもあるように思いますしいたしますから、その辺のところをもう少し今後整理もしながら、役割を明確にしていきたいというふうに思っております。
 そして、新しくここに就業・生活支援センターというものを委託するということになるわけでございますから、そういうふうになりましたときに、そのことが今までのセンターと一致するものも中にはあるでしょう。今までのセンターのところに委託をするという、委託という言葉がいいのかどうかわかりませんけれども、お願いすることもあるだろうというふうに思いますから、そうしたことで屋上屋を重ねるというのではなくて、やはり役割分担を明確にして、そしてスムーズに障害者のために役立っていくようにしていかなければならないというふうに私も思いながら、今回このいろいろの勉強をした次第でございます。
阿部委員 そのための視点として、ぜひ二つお持ちいただきたいのですが、午前中の参考人にもお聞きいたしましたが、身体障害、知的障害、精神障害、おのおのの障害に対しての個別立法はございますのですが、そして、おまけに障害者雇用促進という立法もあるのですが、一人の人間の生活、暮らし、医療、働くことを考えた場合に、非常に地域ということが重点化されます。そこで、地域での障害者支援法のような形で、法の概念も、障害別ではなくて暮らす主体に合わせて変えていっていただくような方法、そのこともあわせて御検討願いたいと思います。
 私も、この法案を勉強しまして、何でちょっとだけ名前が違うような施設があっちこっちにあって、予算も違うところからやってきて、仕組みも違うんだろうと考えてみますと、障害別ということと省庁別ということが非常にネックになって、一人の人間の側から考えられていないなという思いを強くいたしましたので、一点、お願いいたします。
 それから、もう一点ございます。
 実は、お手元に資料が行ったかどうかちょっとわかりませんが、ことしは特に障害のある方のリストラ、失業の勢いが、平成十年度を超して、平成十年も不況でございましたが、物すごい勢いです。
 ここで話しておるのは就業の方なのですが、実は就業支援しても、リストラ、職を失っている人が非常に多い。そして、その方たちの行く先、受け皿がどこになっているかというと、いわゆる小規模作業所に返ってこられるという方が非常に多うございます。あるいは、この就職難、経済状況が悪い中で、普通の就職ができない方も小規模作業所に戻ってこられている。こうした実態について、管轄、所管の担当部署は、御認識あるいは実態を御存じでしょうか。
澤田政府参考人 最近の厳しい全般的な雇用情勢の中で、障害者の方が解雇されるというケースが、十三年度の第三・四半期までのデータで見ますと、二千六百十六人ということで、対前年同期比で五七%増と非常にふえております。そうした方々が解雇された後どういうところで働いているかということにつきましては、今委員御指摘のようなケースがあるというふうに私ども承知しております。
 障害者の方々を解雇する場合には、法制上、事前に公共職業安定所長に届け出るということになっておりまして、その届け出を受けて、安定所長は雇用継続等々について、合理的な範囲内ではありますけれども、必要な指導をするということをやっております。ただ、残念ながら、全般的に企業として雇用を絞っていくという中では、なかなかその指導も現実的には効果が上がらないという面がございます。
 しかしながら、私ども、障害者専門の求人開拓とか、あるいは障害者向けの集団就職面接会とかいうことも一生懸命やっておりまして、こうした努力を重ねて、少しでも解雇の防止あるいは雇用促進に貢献していきたい、こう思っております。
阿部委員 せっかくここで雇用の方を話し合いましても、就職してもぼろぞうきんのように捨てられるという状態がどんどこ起こるのではいい国とは考えられませんので、担当部局においてもこれからさらなるお取り組みをお願いしたいと思います。
 ありがとう存じました。
森委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 今回、精神障害者をも雇用促進の支援を行う対象にしたのは一歩前進だと思います。前回の質問で触れた、私が見学させてもらった特例子会社のパン屋さんでも、既に精神障害者を試験的に採用しておりました。しかし、肝心の雇用率算定の対象とする法改正を見送ったことは大変残念であります。
 私は、何人か精神科の医師の意見も聞いてみたんですが、きちんと治療をし、ジョブコーチなどをつけ、働く環境を整えれば、大部分の精神障害者は十分に働けると断言しておられました。大臣も医師でありますが、同じ医師としてどういう判断をされるでしょうか。結局、今回は、精神障害者に対する社会的偏見と新たな負担を嫌う企業に厚生労働省が押し切られたということじゃないんでしょうか。
坂口国務大臣 一歩前進したことは委員もお認めをいただいたわけでございまして、この一歩前進しました今回を一つの契機として、これからさらに精神障害者の問題を煮詰めていきたいというふうに思っております。
 精神障害者の場合に、他の身体の障害者あるいは知的障害者のように病状が固定をしているということがなかなか難しい場合がございます。非常に不安定で、いいと思いますとまた悪くなる、悪いと思いますとすぐよくなるというようなことがございまして、不安定なことがございますので、ある程度安定をするということが一つの条件になるのではないかというふうに私は思います。
 そのためには、薬も正確に、正確にと申しますか、決められたとおりに飲んでいただくといったようなことも大事になると思いますから、そうしたことを家族なりあるいはまたジョブコーチの人たちがよく見てくれるというような体制ができ上がれば、私は、御指摘のこともそのように前進できるのではないかという気がいたします。
 その辺の周辺の条件整備の問題が一つはございますし、それから、ある程度の安定をしてきているという、病気の時期にもよるというふうに私は思いますし、また、病気の種類にもよるんだろうというふうに思っております。
 したがいまして、そうした点をよく検討していただいて、こういうことならば働く人も安心して働くことができるし、そして、そのことによってかえってまた病状もよくなっていくということもあるということならば、これはさらにいいことでございますから、そうしたことも十分にわきまえて検討をしていただきたいというふうに思っている次第でございます。
小沢(和)委員 先ほどの答弁で大臣は、精神障害者を雇用率算定の対象にする問題については五年を待たずに結論を得たいと言われました。それならば、その結論を得た時点で、その点についてだけでも次回、五年先を待たずに繰り上げて改正をするということが考えられるんじゃないでしょうか。ここでその点を明快に答えていただきたいと思うんです。
坂口国務大臣 余り先の先まで私が申し上げるのもいかがかと思いますし、結論が出ました後、それに対して今度はさまざまな準備も必要なんだろうというふうに思います。
 したがいまして、とにかくあらゆる角度から精神障害者の雇用につきましての議論をしていただいて、結論は早く出してもらいたいというふうに思います。その出ました結論に従って、どんなことを整備していけばいいのか、そうしたことも検討しなければならないんだろうというふうに思いますから、いつからということを私は申し上げるわけにはまいりませんけれども、次の改正までには何とか整備をしたいというふうに思っております。
小沢(和)委員 私も、今回の法改正について、障害者の団体の皆さんなどにいろいろ意見を聞いたんですが、精神障害者の雇用率算定を五年先に延ばすということになったというので、非常に落胆している人たちが多いんです。ぜひ、せっかく前向きの答弁をしていただいた、それをさらに一歩踏み出して、結論を得た時点で法改正に踏み切るということにしていただきたいと思います。
 次に、共同作業所の問題でお聞きをいたします。
 午前中の参考人質問でも、共同作業所が働いて自立したいという障害者の願いを実現するためにどれほど大きな役割を果たしているか、同時に、共同作業所の運営に対する国の援助がいかに立ちおくれているかが切々と訴えられました。
 私は、前回の質問で、国際障害者年からの二十一年間に、障害者の有効求職者数が二・四倍、約十三万二千人に達したのに、同じ期間に就職できた人は逆に四%減、二万八千人へと減っていることを指摘いたしました。この一般就職の困難の増大を救っているのが共同作業所だと思いますが、大臣はその果たしている社会的な役割をどう認識しておられますか。
坂口国務大臣 共同作業所もいろいろな形のものがございますが、小規模の作業所等は、数もたくさんございますし、そして非常につくりやすいということもございまして、全国各地域で年々歳々多くなってきているというふうに思っております。
 こうしたところで働いていただいて、いわゆる働くということに対する喜びを持っていただく。あるいはまた、十分働くことができ得るということを、御本人はもとより、家族あるいはまた企業の皆さん方もよく認識をしていただくということになれば、例えば小規模作業所よりも一層また進んで、一般の企業の中で働いていただくというようなこともできるようになっていくのではないかと思っております。
 そうした意味で、作業所の中で働くということも大きな意味がございますけれども、それを一つの足場にして、さらに一般社会の中に大きく一歩を踏み出していただくことにもなり得るというふうに思っておりまして、そういう意味で大変意味があると思っている次第でございます。
小沢(和)委員 今大臣が言われるように、ここを足場にして、さらに一般就職につなげたいと私も思うのですけれども、事態は逆なんですね。
 次の質問ですが、一般就職の困難を打開するために、この不況の中で、共同作業所は年ごとにふえております。ここ三年だけをとってみても、全国で五千二百二、五千五百八十七、五千八百六十八と、毎年三百ぐらいずつふえております。そこで働く人は、今や八万人に達しております。
 しかし、この不況の中で、何の資本も技術も持たない親やボランティアがこれを立ち上げ、運営する苦労は、想像に余りあります。こういう共同作業所の全国組織であるきょうされんの調査によれば、不況で仕事が減った四二・〇%、工賃単価が下がった一三・一%という状況で、経営を維持するため、職員の賃金カットまで行っております。さらに大変なのは、さっきも話が出ましたが、そういう困難の中で、一般企業を解雇された障害者を二〇・三%の作業所で新たに受け入れております。
 ところが、国の障害者雇用政策の貧困をカバーするためにこれだけ苦労している共同作業所に対する国の支援策は、都道府県や市町村に比べて余りにもおくれております。全国の自治体では、原則として、共同作業所全部、今でいえば五千八百六十八カ所を対象に、一カ所当たり少なくとも四、五百万円、多いところでは二千万円近く補助金を出しております。これに対し、国の援助は、作業所数の半分にも満たない二千七百八十五カ所、一カ所当たり百十万円。余りにも違い過ぎております。しかも、ここ三年、予算は据え置きです。
 国の施策の不十分さをカバーする大きな社会的役割を果たしている共同作業所に対し、おわびの気持ちを含めて、もっと思い切った助成をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 お気持ちは私も十分わかるつもりでおりますが、限られた財政の中で行うわけでございますから、なかなか思うようにいかないことも事実でございます。
 障害者の問題は、国だけではなくて都道府県や市町村も、そしてそういう公の機関だけではなくて民間も大いに手を差し伸べてもらって、みんなで支えていくということにしなければならない。したがいまして、国だけが多くの予算を出すというのではなくて、できる限り民間の皆さん方に支えていただくような体制をつくっていかないといけないのではないかというふうに思っております。
 決して国がその役割を放棄するというようなことではいけませんので、十分にそこは果たせるようにしていかなければなりませんけれども、あわせて、やはり民間の皆さん方に対しましてもお願いをしていくということでこれからもやっていきたいというふうに思います。
小沢(和)委員 最近、これらの共同作業所に比較的簡単に社会福祉法人の資格を与え、そこには年千百万円の補助をすることが制度化されました。これも一歩前進だと思いますが、年間予算では百二十カ所、実績で百八十九カ所と余りにも少ない。これもぜひふやしていただきたい。
 しかも、実情を聞くと、福祉法人化を機に監査をやるようにするとか、複式簿記を取り入れろと言うとか、およそ実態に合わないような指導監督の仕組みが持ち込まれ、それへの対応に追われているという新たな問題も持ち上がっております。もっと実情に見合った支援に改善すべきではないでしょうか。
高原政府参考人 委員御指摘の事業は小規模通所授産施設でございまして、小規模作業所から、安定的な経営のため、また安定的なサービス、良質なサービスを行うため、積極的な移行を図っております。平成十四年度予算においては、補助対象箇所数を、平成十三年度の二倍、百二十カ所から二百四十カ所と倍増したところでございます。
 これにつきましては、御指摘のとおり、国から五百五十万、地方公共団体から五百五十万、このうち地方公共団体は県、市町村二分の一ずつでございます。これは小規模作業所の地方負担も同様でございますが、交付税措置が行われているところでございます。
 それで、指導監査とか簿記とかという件でございますが、指導監査につきましては自治事務とされております。年間一千百万の補助金、それから、これは年間ではございませんが、施設整備費で二千五百万、設備費が八百万。それから、税法上も優遇措置が社会福祉法人の場合はあるわけでございます。それから、職員に対します退職手当も対象となるということでございまして、施設の指導監査は、適正な事業運営及び施設運営を図ることを目的として実施されておるものでございまして、公費による補助が行われております以上、一定の指導監査は必要であるというふうに考えておりますので、よろしく御理解ください。
 なお、帳簿につきましては、フルタイムで経理担当者がいなければできない、そういうふうなレベルじゃございませんで、個人商店並みと申しますか、簡単なパートタイムで経理の処理をやればできる程度だろうと考えております。
小沢(和)委員 もう時間が来ましたので、あと一点だけちょっとお尋ねしておきたいのですが、こういう共同作業所を支援するために、一九九九年に当時の厚生省が、「授産施設等の製品等の利用促進について」との要請を各方面に行っております。これは大変積極的な意義を持つ要請だったと思うのですが、実際にどの程度の効果を上げているか、今後さらにこのような支援を強めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。一言お答えください。
坂口国務大臣 各都道府県等から授産施設等に対しまして、事務封筒や名刺の印刷、各種大会の記念品等々、こうしたものにつきまして、広範な優先的な発注等の取り組みが行われたところでございます。
 聞くところによりますと、厚生労働省のあの茶色い袋もそうしたところでつくっていただいたものだというふうに聞いております。これからもそうしたことを心がけていきたいというふうに思います。
小沢(和)委員 終わります。
森委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 また自由党の佐藤公治でございます。
 事前通告とは違う質問もさせていただきます。ただし、大臣は部下のことを怒ることなく、局長は部下を怒ることなく、課長さんも部下を怒ることなく、これは本当に政治家同士の話し合いということでとっていただければありがたいと思いますので、お願いいたします。
 きょうの午前中の参考人の意見の中で、今現状もさることながら、やはり将来のことを考え、今の若い人たちのことを考えた、これは文部科学省の分野でもあると思いますけれども、特に精神障害に関することで、やはり医療体制もまだまだ整っていないという御意見がありました。と同時に、やはり学校側の、教育機関におけるそういう体制もまだまだとれていない。と同時に、やはり親御さんと医療機関と教育機関との連携もとれていない。こういうことで、今非常に、現場の方も大変困っているというか、混乱をしているという意見があり、また、これにはやはり多くの予算が必要だという声もございました。
 この教育現場を含めた若い人たちの現状を、大臣、どうお考えになられるのか、また今の状態がどうなのか。今の思いで結構です。わからないことは結構なんです、細かいことは結構ですので、大臣がどう思われているのか、そういう部分でお答え願えればありがたいと思います。
坂口国務大臣 委員のお尋ねの趣旨がどうなのかということを的確になかなかはかり切れないところがございますけれども、今日まで、それが病気なのかそれとも正常の範囲なのかわからない部分というのが多分にあったというふうに思っています。
 これは、普通、お子さん方にでも、性格として異常な性格なのだ、正常の範囲の中で考えておりましたものが、やはりそこにはそれなりの原因があって、精神的に治療をしなければならないものだというような範疇の人たちが出てきていることも事実でございます。また逆に、これは病的だというふうに思われておりましたものの中にも、これは正常の範囲の中で解決すべき問題だというようなこともあるように思われます。
 そうした、今までのように、古典的なと申しますか、いわゆる精神病というふうに言われてまいりましたものと、そして健康な人との間には、いわゆる中間的なグレーゾーンのところが存在をして、それほど単純明快ではないというのが現状ではないかというふうに思いますし、これからさまざまな社会的な変化というものが大きくなっていくにつれまして、そうした分野もまたふえてくることも考えられるというふうに考えております。
 したがいまして、とりわけ対人関係といったものを中心に考えましたときに、やはり、個人では解決できないけれども、そうしたことに対してアドバイスをしてくれる人たちが必要になってくる。学校におきましても、ただ教育を教えてもらうというだけではなくて、そうした精神面、健康面からの指導をしていただくような人たちがより多く必要になってくるといったこともございますので、そうしたことにこれから十分に注意を払いながら、お子さんでありましたら、そのお子さんがよりよく成長をしていただくように若いうちから手を打っていかなければならないというふうに思いますし、成人をされた皆さん方でありましたならば、その皆さん方がよりよく働いていただくような体制というものをよりきめ細かにやはり行っていく必要があるのだろうというふうに思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 大臣はよくおわかりになられていると思います。まさにそこら辺のあたり、グレーゾーンというのがあります。一つをとれば、ADHDという注意欠陥多動性障害、こういったことというのはきちんと医療的にもまだわからないことが多い。そういうものがある中、やはり他省との、学校教育機関との連携も必要です。
 そういう意味で、今大臣がおっしゃったように、働きかけというか、リーダーシップを持ってまたいろいろと力になっていただけたらありがたく、お願いを申し上げたいと思います。
 また、午前中の参考人の方の中で、またきょう委員の中での話を聞いた中で、特に精神障害と知的障害の方々、ジョブコーチ、支援センター等がありますが、やはり自立というものを考えて皆さんが努力してやっていくこと、でも、その後のアフターケアというか、フォローがまだまだ心配だ。
 具体的に言います。これは委員御本人から質問すれば本当によかったんですけれども、きょうは時間がなかったようで、私の方がかわりにさせていただきます。
 これも一つ、ほかからもありますけれども、きょう三井委員からも話を聞きまして、女性の、女の子の知的障害者もしくは精神障害者の人たちが、ジョブコーチを受けたり、働いている。働き場の中ではきちんとした、みんながお互いが気持ちを一つにして職場としてやっていけるけれども、私的な部分、個人の生活の中ではやはり非常に不安なことが多いというお話が幾つかございました。
 やはりそういう個人的な私生活に関しても、本来はどこで線引きをするというのは難しいことですけれども、知的障害者の方、精神障害者の方々に対して、そのアフターケア、フォローが、社会の中に出すのが心配だという、何とかそのフォローの体制が、今のままでいいかといったらまだまだ足りない、こんな意見でございます。これについて、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 十分に委員の御発言を僕は理解しているかどうかわからないんですが、ジョブコーチというのを今回つくりましたのは、これは就業、いわゆる職につけるというだけではなくて、その人たちの生活面ということに対してもアドバイスをしていくということが含まれております。生活面につきましても相談に乗り、そして職業につきましても相談に乗っていくことになるわけでございますので、そうした生き方をしていけば、これから多くの障害者の皆さん方に就職をしていただけることの大きなプラスになるんだろうというふうに思います。
 しかし、一人の方ばかりにずっとかかり切りというわけにもまいりませんから、限られたジョブコーチでございますので。そして、職場に適応をしていただく、あるいは社会の中に適応していただくということになるまで面倒を見る。しかし、手を放したらまたやはりおかしくなったというときには、また御相談に乗るといったような体制をつくり上げていくということが大事だというふうに考えておりますから、このジョブコーチ制度を、よりこれを充実させていくということに尽きるというふうに思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 くれぐれも、そのフォロー体制というか、そういうところにも気を配っていただいて、やはり今後の政策または予算というものをきちんととって、より安心できるような形での体制をもう少しとっていただきたい、そんな思いがいたします。
 それと、もう時間が余りないので、最後になりますけれども、大臣の、前回の委員会でも聞かせていただきました。やはり、みんないいことを言う。本当に自然に障害者の方々が受け入れられる、ノーマライゼーション、バリアフリー、みんなが地域で支える、そういうことを、どうもここ十年、二十年、同じ議論が続いているように思います。でも、なかなかこれが進まない。まさに厚生労働大臣がおっしゃった意識改革をしていかなければいけないということでございますが、今の法律のあり方。
 きょう先ほどもありました、土肥委員がおっしゃった、大変いい説明の仕方だと思います。厚生省の分野、そして労働省の分野。労働省の分野というと、やはり働いている部分からすれば年齢的軸で切っていく、そして厚生省の分野の障害者というと、やはり縦軸で切っていく。こういう部分のマトリックスが複雑化してきた。でも、ここを部分部分でやってきた今までの政策ではだんだん僕は限界が来ているのかなという気がします。
 公明党さんの中でも、まさに今の基本法を発展させていく考え方、また、ADA法みたいな大きな面で考えた社会のあり方、国のあり方というものを考えていくべきだという二つの議論があるということも先ほど聞きましたが、私は、やはり全体の国のあるべき姿、社会のあるべき姿ということをもう一回本当に根本的に考え直し、変えていく必要性があると思いますが、そこら辺に関して、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 土肥議員にもお答えをいたしましたとおり、今までの厚生省そして労働省としての立場での法律というものが存在していることも事実でございまして、しかし、今回は厚生労働省としてその両方を一体化して、そして、障害者というものを就業とかあるいは生活とかというような側面で見るのではなくて、トータルでこれを見ていくという立場から今回のこの法改正になっているというふうに私は思っております。
 まだ過去の問題を引きずっておりますから、完璧にそこがそうなり切っているかどうかということにつきましては議論の余地があるというふうに思いますけれども、しかし、新しい生き方で一歩を踏み出していると思っておりますので、今後そうした方向で、トータルとして障害者の問題を見ていくということにしていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 もう最後になりますけれども、一つ、タイタニックの沈没の笑い話があると言われております。国民性をあらわした笑い話で、御存じの方もいらっしゃると思います。
 タイタニックが沈没するとき、女性や子供たち、そしてまた障害者の方々を早く違う船に乗せなきゃいけない。そのときに、アメリカ人に対しては何と言うかといったら、あなた方はヒーローになれる、子供や女の人たちを早く先に出せばあなたはヒーローになれる、そうすればみんながすると言う。ドイツ人の人たちに対しては何と言うかといったら、これは規則だと言うとみんなが従う。日本人の場合は、みんながやっているからと言ったら、みんながそうする。
 これが合っているかどうかはわかりません。合っているかどうかはわかりませんけれども、こういう日本国民じゃ、社会じゃ僕はいけないと思います。せめて、英雄とまではいかなくても、やはり次の時代を考え、子や孫に、今の社会でいいのかどうか、これをよりよい形で、みんなが義務と責任を踏まえ、権利を大切にする、自立した個人であり、国民と国家になるべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。
 以上でございます。ありがとうございました。
森委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
森委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 この際、本案に対し、鴨下一郎君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。山井和則君。
山井委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、適正な就労が障害者の権利であることに鑑み、本法の施行に当たり、障害者の雇用の促進を図るため、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
 一 精神障害者に対する障害者雇用率制度の適用については、雇用支援策の展開を図り、関係者の理解を得るとともに、人権に配慮した対象者の把握・確認方法の確立等の課題を早期に解決し、実施されるよう努めること。
 二 企業名及びその雇用率の公表を前提とした指導を強化して雇用率制度の厳正な運用を図るとともに、そのための体制整備に努めること。
 三 国、地方公共団体等の公的機関においては、個々の機関の実雇用率など、障害者雇用の現況を自ら公表するとともに、率先して障害者の雇用を進めるよう努めること。
 四 企業グループによる雇用率の算定に当たっては、十分な現況の把握を行うとともに、障害者を特殊な職場に追いやることのないよう、適正な運用を指導すること。又、特例子会社制度の運用に当たっては、親会社への障害者雇用責任者の配置を原則とし、親会社の責任を明確にすること。
 五 除外率制度については、除外率縮小の日程などを早期に明確にし、廃止に向けた取り組みが着実に進められるよう努めること。
 六 障害者就業・生活支援センター並びに職場適応援助者事業については、事業への当事者の参画に努めるとともに、全国の地域において確実に事業が展開されるよう努めること。又、質を確保しつつ必要な数の職場適応援助者が確保できるよう、必要な経験を十分に有している通所授産施設等の職員を活用するなどにより、その早急な養成に努めること。
 七 障害者の職場定着を確実にするよう、職場における施設・設備の整備、介助者制度の充実を図ること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
森委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 ただいま御決議のありました本案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力してまいる所存でございます。
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
森委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
森委員長 次に、第百五十三回国会、山本幸三君外六名提出、身体障害者補助犬法案及び身体障害者補助犬の育成及びこれを使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化のための障害者基本法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 他に質疑の申し出がありませんので、これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
森委員長 この際、先刻の理事会において協議いたしましたとおり、身体障害者補助犬の育成及びこれを使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化のための障害者基本法等の一部を改正する法律案に対する修正案を委員長から提出いたします。
    ―――――――――――――
 身体障害者補助犬の育成及びこれを使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化のための障害者基本法等の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
森委員長 本修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 修正案はお手元に配付してあるとおりであります。
 修正の要旨は、本法律案中の身体障害者補助犬法及び身体障害者補助犬の育成及びこれを使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化のための障害者基本法等の一部を改正する法律の法律番号の年表示を、「平成十三年」から「平成十四年」に改めることであります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
    ―――――――――――――
森委員長 これより両法律案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、第百五十三回国会、山本幸三君外六名提出、身体障害者補助犬法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、第百五十三回国会、山本幸三君外六名提出、身体障害者補助犬の育成及びこれを使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化のための障害者基本法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、委員長提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。
 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 この際、ただいま議決いたしました身体障害者補助犬法案に対し、鴨下一郎君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。鴨下一郎君。
鴨下委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表しまして、本動議について御説明を申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    身体障害者補助犬法案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
  現在、身体障害者補助犬に多く使用されている犬種には、遺伝性疾患が少なくないことから、その選定には格段の配慮が求められる。このため、早急に厚生労働省内に専門委員会を設置し、補助犬の選定と健康管理に関する指針の策定並びに優良補助犬の確保の対策について検討を進めること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
森委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 ただいま御決議になりました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存であります。
    ―――――――――――――
森委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
森委員長 次に、内閣提出、中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
    ―――――――――――――
 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
坂口国務大臣 ただいま議題となりました中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 金利等が低い水準で推移する中で、中小企業退職金共済制度の財政状況は厳しいものとなっており、今後とも、独力では退職金制度を確立することが困難な中小企業者が本制度を活用できるよう、その長期的な安定を図ることが必要となっております。
 政府といたしましては、このような課題に適切に対処するため、本法律案を作成し、ここに提出した次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。
 第一に、基本退職金の額について、経済及び金融の情勢に的確に対応することができるよう、掛金月額及び掛金納付月数に応じ政令で定めることとしております。
 第二に、特定業種退職金共済制度における掛金日額の上限及び下限を引き上げることとしております。
 第三に、勤労者退職金共済機構の業務のうち、従業員福祉施設の設置等のための資金の貸し付けの業務等について、その実績を踏まえ、廃止することとしております。
 第四に、勤労者退職金共済機構における余裕金の運用について、責任の明確化、運用管理体制の整備等を図ることとしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第でございます。ありがとうございました。
森委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る十二日金曜日午前十一時二十分理事会、午前十一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時四十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.