衆議院

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第16号 平成14年5月31日(金曜日)

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平成十四年五月三十一日(金曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 森  英介君
   理事 鴨下 一郎君 理事 鈴木 俊一君
   理事 長勢 甚遠君 理事 野田 聖子君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君
      岡下 信子君    上川 陽子君
      木村 義雄君    北村 誠吾君
      後藤田正純君    佐藤  勉君
      自見庄三郎君    田村 憲久君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      棚橋 泰文君    西川 京子君
      林 省之介君    松島みどり君
      松宮  勲君    三ッ林隆志君
      宮澤 洋一君    谷津 義男君
      吉野 正芳君    家西  悟君
      上田 清司君    大島  敦君
      加藤 公一君    鍵田 節哉君
      金田 誠一君    五島 正規君
      土肥 隆一君    古川 元久君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    桝屋 敬悟君
      樋高  剛君    小沢 和秋君
      塩川 鉄也君    瀬古由起子君
      阿部 知子君    中川 智子君
      野田  毅君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   厚生労働大臣政務官    田村 憲久君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   審査局長)        上杉 秋則君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 山下  進君
   政府参考人
   (国税庁課税部長)    村上 喜堂君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           吉武 民樹君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長
   )            日比  徹君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君
   政府参考人
   (社会保険庁運営部長)  冨岡  悟君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月三十一日
 辞任         補欠選任
  岡下 信子君     松宮  勲君
  家西  悟君     上田 清司君
  加藤 公一君     古川 元久君
  瀬古由起子君     塩川 鉄也君
同日
 辞任         補欠選任
  松宮  勲君     岡下 信子君
  上田 清司君     家西  悟君
  古川 元久君     加藤 公一君
  塩川 鉄也君     瀬古由起子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)
 健康増進法案(内閣提出第四七号)
 医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案(山井和則君外三名提出、衆法第一一号)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(五島正規君外三名提出、衆法第一三号)


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     ――――◇―――――
森委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案、健康増進法案、山井和則君外三名提出、医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案及び五島正規君外三名提出、健康保険法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局審査局長上杉秋則君、法務省大臣官房審議官山下進君、国税庁課税部長村上喜堂君、厚生労働省大臣官房審議官吉武民樹君、医政局長篠崎英夫君、健康局長下田智久君、労働基準局長日比徹君、保険局長大塚義治君及び社会保険庁運営部長冨岡悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三ッ林隆志君。
三ッ林委員 皆さん、おはようございます。自民党の三ッ林隆志でございます。
 現在、健康保険法等の一部を改正する法律案について審議が続けられておりますが、まず初めに、私、医療の提供体制、特に小児の救急医療に関して質問させていただきます。
 四年ほど前ですが、埼玉県の幸手市といいまして、私の生まれ育った町なんですが、そこで、二カ月の女の子がミルクをのどに詰まらせて、救急車を呼びましたけれども、なかなか受け入れ先が見つからなくて、結局、病院には着きましたけれども、亡くなってしまったというふうなことがありました。私も、以前は、受け入れることができなかった病院に勤務していたこともありまして、大変衝撃を受けたことがあります。
 それがきっかけとなって、かなりマスコミにもこれは取り上げられて、小児の救急システムの成立にはある程度影響を与えたと考えておりますけれども、なかなかそのシステムが進んでいないと常々聞いております。
 また、私の選挙区の地元で、三郷市といいまして、都心から十五キロほどのところにあるところで、昨年の十一月に一歳の男の子が夕方の五時に急変しまして、やはり救急車を呼びましたけれども、受け入れ先がなかなか見つからなくて、数十分後に受け入れ先が見つかって、たどり着いたときにはやはり手おくれだったというふうな話がありまして、大変、これはもう早急にどうにかしなければならない大きな問題なのではないかとまた改めて思った次第であります。
 このような話は、いろいろな新聞の記事なんかを見ますと、全国の各地で多々起こっているというふうなことがありまして、これらの問題に対して、現在の政府の対応等についてお聞きしたいと思います。
 少子高齢化が現在進んでおりますけれども、少子化対策のさらなる充実が現在必要とされておりまして、その中で、小児の救急医療への対策はもう現在の喫緊の課題と考えております。そして、現在、少子化によって小児の数が減少しているわけですけれども、小児の救急を担当する医師数の伸びというのもなかなか伸び悩んでいるというふうな状況にあります。
 このため、各地において、小児救急医療の確保ということに大変な支障が生じておりまして、今回の医療制度改革においても、小児救急医療拠点病院の整備のほか、診療報酬において、地域における休日、夜間の小児救急医療について地域の小児科医が連携して体制を整える場合に、新たに診療報酬上の評価を設ける等の対策がなされております。
 しかしながら、これまでも、この小児救急の問題に対処するため、新エンゼルプランで昨年度までに全国の三百六十の二次医療圏に小児救急拠点を整備する予定だったというふうなことですけれども、なかなかそれが進まないで、昨年の一月に、目標を二百カ所までに減らして、なおかつ補助基準額も引き上げたというふうなことがありましたけれども、それがやはり余り進んでいないと聞いております。これまでの整備の状況は実際どの程度進んでいるのか、まず医政局長にお聞きいたします。
篠崎政府参考人 小児救急医療体制の充実は極めて重要な課題であると認識をいたしております。
 二次医療圏単位で小児救急への対応が可能な病院を輪番制によって確保する小児救急医療支援事業というのを、先生の今御指摘ありましたように、平成十一年度に創設をいたしまして、その全国的な整備に取り組んできたところであります。
 しかしながら、その進捗状況につきましては、御指摘のように、当初の計画に比べておくれております。数字を申し上げますと、平成十一年度二十一カ所、十二年度五十一カ所、十三年度七十四カ所でありまして、各年度において、少しずつではありますが、取り組みが進んできております。全国で今、二次医療圏三百六十三ございますので、約半分弱のところが整備をされてきておるということでございます。
 平成十三年度におきましては、この事業をより促進を図るために、補助単価について約三〇%の大幅な引き上げを行いました。また、二次医療圏ごとに小児科医、消防機関が調整を行っていただく事業の創設を図ったところでございます。
三ッ林委員 ただいまのお話のように、大変なかなか進みが悪いというふうなことでありますし、補助基準額を三〇%と大幅に引き上げたというふうな話ですが、休日とか夜間に医師を確保するというふうな費用といいますか、人件費から見ますと、その三〇%の大幅な引き上げが実際にどれだけ有効な引き上げなのかというふうなこともちょっと疑問に思うところがありますけれども、このように二次医療圏単位での小児の救急医療体制の確保が困難な地域において、今回、複数の二次医療圏を対象にして小児救急患者の受け入れを行う小児救急医療拠点病院を整備するというふうな、それを促進する事業が、五十カ所を目標に、これは地区でいえば百カ所地区相当分ということですが、始められております。
 しかし、これですと、地域によってはかなり広範囲な面積をカバーしなければならない。特に、都市部よりも、農村部でありますとかそういうところは、かなり広範囲な面積をカバーしなければならないんじゃないかと考えられます。その中で、拠点病院ができたのはいいけれども、その地区の一部からそこの病院までたどり着くのに、救急車を使ってもやはり二十分も三十分もかかるというふうなことが起きたりしてしまうのではないかとか、患者がそこに集中してしまうために、それに対応するための医者の数もかなり必要になるのではないか、また、それだけの小児科医が実際集められるのか、また、救急隊の担当の地区との問題などさまざまな問題を思わず心配してしまうわけです。
 要は、今後新たに小児救急医療拠点病院を地域の救急医療システムに組み込んで、救急患者が発生した場合、適切な対応が図れるかが最も重要であります。
 しかし、先ほどからの話にありますように、問題は拠点病院の整備の進展がなかなか見込まれないことでありまして、これらの問題の根底には小児科医の不足ということがあります。このままでは小児医療は崩壊してしまうという声も多く耳にしますし、何らかの対策を早くとってくれというふうに言われることも多いのですが、そこで、これからの充実に向けて、施設の設備や小児科医のマンパワーの確保などに対する支援策が急務であると考えております。そして、今後の計画等、具体的な方策についてお聞きいたします。
坂口国務大臣 今、小児救急医療について御発言いただきましたけれども、御案内のとおり、小児科医そのものがだんだんと減ってきているというようなこともございますしいたしまして、大変憂うべき事態だというふうに私も思っております。
 先ほど局長から答弁をしましたように、具体的な対策というのも幾つかいたしているわけでございますし、どうしてもこの二次圏で必要だけれども、そこにない場合には隣の二次圏と合併してと申しますか、幅を広げて、そして診ていただくようにとかというようなこともやっているわけでございます。しかし、これはもう一時的な問題でございまして、基本的に、小児科の先生方を確保していくという対策がやはり一方でなければならないというふうに思っています。
 少子化が進んでいることも事実なものでございますから、全体としてお子さんの数が減っていくということになれば、なかなか小児科を選ぶというのは難しいんじゃないかという御意見もあるわけでございますが、今までに比べまして、小児に対しましては、保険の面から、あるいはまた小児医療の質的あるいは量的な広まりといったようなこともございますので、少子化ではありますけれども、小児科の先生方が働いていただきます場所は決してそんなに減っていないというふうに思っております。
 やはり、先生方におこたえをしていくような体制をつくり上げていかなければならないというふうに思っておりますので、この救急医療圏の問題、その体制を今一生懸命やっておりますが、それとあわせて、やはり先生方の育成ということにもう少し努力をしていきたい、その具体化をこれから詰めていきたいというふうに思っているところでございます。
三ッ林委員 ありがとうございます。小児科医の確保また育成に対して具体的なお話が聞けるかとちょっと思ったのですが、まだそれを検討されているということです。
 今までいろいろ、小児の入院に対しての診療報酬を上げたりというふうなことで、小児科が閉鎖される、各地の病院から小児科医が減っていくというふうな状況をとどめるような方策というのをいろいろやっていただいていると私も感じてはおりますけれども、小児科医を実際にふやしていくというふうなことの具体的な対策というのはなかなかまだ見られていないような気がしておりますので、ぜひとも早急にその対策についての検討を進めていただきたいと思う次第であります。
 次に、前回の委員会でも取り上げられましたEBMについてお聞きしたいのです。
 現在、EBMに基づいた診療ガイドラインの作成というのが進められておりますけれども、本来、病気は、個々の患者さんによって、それまでの生活習慣や既往症、合併症の有無などの多様性というものがあります。そして、このEBMとは、個々の患者の問題点を把握し、それに合わせたエビデンスの収集、検討、そして、それらを経て治療プランを作成するということと理解しております。そこで、ガイドラインが今回つくられているのならば、それぞれの患者さんに合った、いろいろな病態に対応できるように、ある程度の幅を持たせた治療法がその中に選択されなければならないと思います。
 もちろん、国民が安心して質の高い医療を受けていくために、医療関係者による絶え間ない医療の知識や技術の向上は当然のことでありますし、EBMもその一つとして、医療従事者がそれに基づくガイドラインを共有して、全体としての一定以上の医療レベルが確保されるという効果と、患者さん自身が自分の抱える病態に適切に対応するための医療の内容を知り、そして納得して診療に協力していくという環境を整えるという役割が今回の目的ならばよいと私も思うのですけれども、ガイドライン等の標準的なモデルをつくると、診療報酬の支払いについても、アメリカのマネージドケアのように、定められた診療ガイドラインに治療プランが適合しているかどうかだけを決めて、給付の範囲をそれによって制約し、それを超えた診療については支払わないというような、極めて固定的で、また患者さんのニーズに配慮を欠くような運用がなされる危険性を大変危惧しているところであります。
 そこで、現在進められているこのEBMやそれに基づくガイドラインは、そもそもどのような目的で現在進められているのか、お尋ねいたします。
篠崎政府参考人 先生からEBMについての考え方、そしてまた進捗状況についてのお尋ねがございました。
 根拠に基づく医療、いわゆるEBMにつきましては、そしてまた、それに基づく標準的な診療ガイドラインをつくることにつきましては、どの地域の医師であっても、最新の科学的根拠に基づくさまざまな医学情報を容易に入手して、医療従事者が参照できる、そういう環境を整備する、そして医療の質の向上を図るということが第一の目的でございます。したがいまして、診療ガイドラインが、イコール、アメリカのマネージドケアのように参考に供するということではございませんで、結果として、むだな、あるいは過剰な医療が防げれば、それは一石二鳥であるというふうに考えております。
 その進捗状況でございますが、学会による最新の医学情報を収集整理した診療ガイドラインの作成を支援しておりまして、平成十三年度までに、優先順位の高い十の疾患について、これは既に完成したところでございます。また、データベースの話でございますが、最新の知見に基づいた有用な医学情報を、インターネットなどを活用して医療現場の医師ですとか広く国民に提供するデータベースの整備に着手をしたところでございまして、十四年度、十五年度、若干準備期間がかかるわけでございますが、十六年度中にはそういう情報提供を開始できるという予定でございます。
 今後とも、このEBMの推進などを通じまして医療の質の向上を図り、国民一人一人が納得できる、そのような医療の提供に努めてまいりたいと考えております。
三ッ林委員 くれぐれも、診療報酬といずれは組み合わせてアメリカのマネージドケアのような形にならないようにしていただきたいと思います。何しろ、無保険者が三千万人以上というふうな数に達するようなアメリカのマネージドケア、これは、現在の日本の皆保険、またフリーアクセスというふうなシステムとかなり違っていて、なかなか受け入れがたいといいますか、日本には合わないのではないかと考えております。
 さて、十四年度の診療報酬体系によりまして、特定機能病院についての支払い方式として、病院ごと、疾病ごとに、定額の支払い方式の導入についてこれから一年をかけて検討するとされております。現在、ほとんどの大学の附属病院は特定機能病院になっておりますので、これらに関して大学病院の関係者からは大変な不安の声が上がってきております。また、平成十六年からは臨床の研修が必修化されますけれども、これら大学病院は今度も研修施設の中心をなすと思われます。
 そこで、研修指導医などの教育スタッフを抱え、一般病院に比べて採算性が大変に厳しい状況にあるわけですので、画一的な定額支払い方式の大学病院への導入というものはなじまないと思うのですけれども、今後の検討に当たっては、教育、研修等の不採算な機能を有する大学病院ごとの経営の状況等が反映されたものとなるのか。また、それがどのように判定され、決定されるのか。今後の進め方や見通しについて、考えをお聞かせください。
大塚政府参考人 今年度、十四年度の診療報酬改定の際に、特定機能病院における入院医療につきましては機能分担をさらに進める、あるいはそうした医療機関においては自由度の高い診療が行えるようにする、そういう観点から、一年後を目途といたしまして疾病別、医療機関別のいわゆる包括払いの方式を導入するということで進めているわけでございますけれども、お話がございましたように、導入に当たりましては、それぞれの医療機関の特性、診療機能などの特性が生かされるような、そしてまた効率的な医療提供ができるような、そういう仕組みにしてまいらなければならないと考えております。
 この制度につきましては、昨年来、中央社会保険医療協議会におきまして御議論をいただき、検討を進めてきたわけでございますけれども、並行いたしまして例えば全国の医学部長病院長会議というような大学の関係者に対する御説明もしておりますし、随時意見交換の場を設けてまいりました。今後、一年後の導入に向けて作業をさらに詰めていくわけでございますけれども、制度の具体的な取り扱いにつきましては、大学の関係者の方々の御意見も十分に伺いながら進めてまいりたい、こういうつもりでおるところでございます。
三ッ林委員 くれぐれも、大学、病院ごとのそれぞれの経営の状況というふうなものが反映された形にしていただきたいと思います。余りそこが乖離をしておりますと、指導医等を減らすというふうなことが起これば、また今度は研修医の指導というのが不十分になって、本来の趣旨と違う方向に行ってしまうのではないかというふうな危惧もありますので、その点よろしく御考慮いただきたいと思います。
 続きまして、臨床研修の必修化についてであります。
 先般、臨床研修必修化に向けた研修のあり方について、医道審議会の医師臨床研修検討部会において検討されていると聞いております。現在の専門医志向、高度医療偏重の教育や、医局を通じた研修体制などさまざまな問題が指摘されて、これからの医師が目指すべき方向として、プライマリーケアの理解や修得を初めとする基本的な能力を身につけた医師養成のあり方などの議論がなされているということに対し関心を持って見ております。
 私も、長年にわたり大学病院で研修医やほかの科からのローテーターを指導してきております。その中で、小児医療にかかわる基本的な処置等を含む診療能力を身につけるというのにはなかなか三カ月では無理で、少なくとも六カ月以上は必要だろうと考えております。
 そこで、今回は二年というふうな限られた研修期間の中で、プライマリーケアを初め小児の医療を含む専門的な研修も行うとなると、この中で十分に対応が可能なのかどうか大変疑問に思っておりますけれども、この点について現在の考え方をお聞かせ願います。
篠崎政府参考人 先生御指摘の中間まとめの中に盛られておることでございますが、臨床研修の必修化、十六年の四月からでございますけれども、プライマリーケアの基本的な診療能力の取得を主眼とする、そして、そのためにはさまざまな診療科をローテートすることによって幅広い研修を行うことを想定しております。したがいまして、特定分野の専門的な研修というのは、今までとは違って、むしろ臨床研修修了後に行っていただくことが必修化の趣旨に沿うのではないかというふうに考えております。
 このようなプライマリーケアを主眼とした研修を十分なものとするように、現在、研修プログラムなどにつき検討を進めているところでありますけれども、その際、従来の大学病院における研修だけではなくて、地域医療を担う中小病院などにおける研修も重視する必要があると言われております。
 いずれにいたしましても、二年間、二十四カ月という限られた期間の中で、効果的な研修が行われるようにしてまいりたいと考えております。
三ッ林委員 ただいま、地域医療を担う中小の病院での研修というふうなお話もありましたけれども、中小の病院となりますと、研修医を指導するための余裕を持ったスタッフの配置というのが大変難しいところが多いというふうに感じておりますので、ぜひともその点、そのような病院に対しての指導医確保のための援助等もぜひ必要なのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
 次に、国民健康保険についてお尋ねいたします。
 少子高齢化社会を迎えて、医療保険制度の抜本的改革が必要とされております。今後の医療制度改革において重要なのは、高齢者医療制度の改革とともに、国民健康保険制度の安定化ということが言われております。最大の保険集団である国民健康保険は、最近のリストラ等の中で無職となりサラリーマンから移行している人も多く、職業別の世帯構成割合で見ると、以前に比べ無職の層が大幅に増加しておりまして、国保財政を圧迫し赤字の原因となっているという状況を市町村の担当の方からよく聞いております。
 また一方で、国保の被保険者は、従来は自営業中心でありましたけれども、今では無職の方や高齢者がその中心を占めており、構造的にも財政基盤が脆弱になってきているとも聞いております。さらに、長期的な景気低迷という経済基調が保険財政を深刻なものにしており、国保の財政対策は適時適切に講じられなければならない状況であります。
 そこで、市町村国保の運営は一般会計からの補てんなくして成り立たず、財政基盤が脆弱な体質を少しでも改善するために国や都道府県が支援していくことが重要と考えますが、今回の改革においてどのように対応しているのか、お聞かせください。
大塚政府参考人 御指摘ございましたように、最近の少子高齢化あるいは産業構造の変化あるいは経済の低迷といったような背景のもとで、市町村国保が、基本的にその体質が脆弱な要素を持っているのに加えまして、そうした環境変化の中で、これもお話にございましたけれども、一般会計からの繰り入れの増加といったような大変厳しい財政運営を強いられているということは、私どもも重々認識をしているところでございます。
 こうした国保の構造的な課題に対応いたしまして、今般の全般的な制度改正も財政改善に資するものではございますけれども、そうした内容に加えまして、今回の法案におきまして、例えば、低所得者を多く抱える保険者を支援する制度を創設いたしまして、国、都道府県がこれに対して財政支援をする。あるいは、事業としては既に実施をされておるものではございますけれども、高額医療費共同事業というのがございます。これをきちんと法律上も位置づけまして、さらにその拡充、制度化を図るといったような内容を盛り込んでいるところでございます。
 いずれも、ただいま申し上げました二つの事業あるいは制度改正は、実施は十五年度からということになりますけれども、今般の全体の制度改正にあわせましてこうした措置を講ずることにより、国民健康保険財政の支援に資するものというふうに考えているところでございます。
三ッ林委員 続きまして、国保の広域化や今後の国保のあり方についてお聞きします。
 国保の保険者数は、小規模な町村も含めますと約三千二百と、諸外国にも例がないほど分立してきております。分立そのものが問題であるということではないのですが、これらの保険者における事務処理経費等の負担を考えますと、介護保険のように広域で対応していくということも、財政基盤の強化や運営の効率化という意味でも一つの方向ではないかと考えております。
 そうした中で、保険者の再編統合というふうな議論がされておりますけれども、広域化の一形態としての一部事務組合や広域連合による国保の運営がなされている状況をどのように評価していますのか、また、今回の改革においては、事業の広域化という観点からどのような対策を考え、また今後どのように進めていく考えなのか、大臣にお尋ねいたします。
坂口国務大臣 御指摘のように、国民健康保険というのは非常に分立をいたしておりまして、しかもその中で、三千人以下というような非常に小さな保険者が三分の一ぐらいあったと思うんですが、非常に多い。そういう状況でありますと、これは、これからそうした場所ほどまた高齢化をしていくものですから、なかなか独立した保険者として存立が難しいということになってまいりますから、私はやはり、統合化をしていくことが望ましいというふうに思っているわけであります。
 統合化をしていくことは望ましいんですが、一度にそういうことはいかないからというので、今御指摘になりましたように、広域組合をつくりましたりとかそうしたことが今、地域によっては行われております。介護保険ができまして介護が広域化されてまいりましたこともございまして、あわせて、では国民健康保険もやろうかというお話も出てまいりましたことも事実でございます。それも一時的には一つの形態だというふうに思っておりますが、そこまで行きましたら統合化した方がいいんではないかというふうに私は思っております。そこへ至りますまでの一つの段階として、広域化というのはあってもいいんだろうというふうに私は思います。ぜひその辺のところは各市町村で検討をしていただきたいというふうに思っております。
 今回の改革におきましても、都道府県に広域化等支援基金というのを創設いたしまして、市町村国保の広域化の際に保険料の格差を平準化するための貸付事業等を行うといったようなこと、あるいは高額な医療費の負担を都道府県単位で調整するいわゆる高額医療費共同事業の拡充、制度化といったようなことも取り入れておりまして、保険者間において格差があってできにくいというのを、そこを調整する機構もつくっていかなければならない、よりできやすいようにしていかなければならないと考えている次第でございます。
三ッ林委員 ありがとうございます。ぜひとも、今後とも補助ということを十分にしていただきたいと思います。
 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。
森委員長 次に、江田康幸君。
江田委員 公明党の江田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日は、健保法の改正と健康増進法の関連について御質問をさせていただきたいと思っております。
 まず、健保法の改正でございます。
 もちろんのことなんですが、医療の抜本改革の目的というのは、この破綻寸前になっている保険財政の立て直しと、競争原理の導入による医療の効率化と質の向上にあるということはもちろんであると思っております。
 我が党は、医療制度改革に当たりまして、改革なき負担増は断じて許されない、そういう立場から、今回の患者負担増の大前提としまして、一つは診療報酬体系の見直し、また二点目は新たな高齢者医療制度の創設、そして三点目は各医療保険制度の統合再編、そして四点目は医療の効率化と質の向上といった抜本改革を強力に推進するように繰り返し主張してまいりました。これらにつきましては、本法案の附則に基本方針として盛り込まれて、厚生労働大臣を本部長とする医療制度改革推進本部において議論が開始されたところでございます。
 この委員会におきまして、本法案の審議でも、その抜本改革が本当になされるのかどうか、実効性あるものにできるのか、担保は何かといった議論がさまざま出ております。それは不安の声だとも思います。
 この抜本改革の実効性を担保して、これ以上の先延ばしをしないで、行政また政治不信、これを取り除いて国民の皆さんに安心できる安全な医療を提供していく、これを強くやはり推進する、約束していく。そのためにも大事なことは、大臣に、この医療制度改革推進本部において、この抜本改革の継続的な、大臣がたとえかわろうとも続くレールを敷いていただきたい、そのように思うわけでございます。このレールを敷いていただくことが皆さんのこの委員会での不安も払拭していくことになるかと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいわけでございます。
 本日は、特に医療の効率化と質の向上を実現する医療提供体制の改革について質問をいたします。
 この医療提供体制の改革につきましては、我が党としても、取り組む内容と目標、達成年次の明確化を要望してまいりましたが、今年度から、電子カルテや電子レセプト電算処理システムなど、医療のIT化を集中的に進める五カ年計画が策定されております。情報公開につきましても、医療広告の規制が四月から大幅に緩和されて、患者が求めていたにもかかわらず今まで知ることのできなかった学会の専門医の認定や手術件数を初めとする治療実績、これも広告できるようになったわけでございます。これによって、国民が医療機関を客観的に比較できる環境が整いつつある、また、患者側の選択を通して医療機関同士の競争原理が働いて医療の質が向上する、こういうことが大きく期待されるものと思います。
 最近、医療事故が続いております。東京女子医大での人工心肺装置の操作ミスで患者さんが亡くなっておられます。川崎協同病院の問題もございます。患者の取り間違え問題も起こりました。こういう医療ミスが連続して起こっている、これが国民の皆様の医療に対する不信を買っているわけでございます。
 そういう医療事故をなくしていくためにも、幾つかの医療提供体制の改革が求められているところでございますが、まず、医師の研修制度について一点お伺いしたいと思っております。
 先ほど三ッ林先生からも質問がございましたので、私、用意しておりました二つの質問を一つにしまして質問させていただきます。
 二〇〇四年度から義務化される大学卒業の医師の研修制度のあり方を検討しておられました厚生労働省の部会が、本年四月、中間報告案をまとめられました。新人医師は、医学知識はありますが、診療能力はないわけでございます。ないと言ったら怒られますので、低いわけでございます。それを一人前に育てるのが二年間の臨床研修にあるかと思います。
 医師養成は、日本の医療の質に直結する重要問題でございます。とりわけ見直しが求められるのは、新人医師の四人に三人が研修先に選ぶ大学病院での研修でございます。教育より研究が重視される、そういう大学医局というのは、新人医師の養成の場にふさわしいものではないと私は思うのでございます。むしろ、大学を離れて、地域の病院とかで内科、外科、救急、そういう幅広い分野の基本的な臨床能力を身につける方が望ましいと思います。
 そのためにも、今規制されております三百床以上とされる臨床研修指定病院の基準を緩和して、研修場所をふやす必要があるとも考えております。指導医の養成、質の向上、研修医の教育に対する評価、こういうことも求められているかと思います。先ほども三ッ林先生からありましたように、やはりこのような臨床研修の場所を拡大していくことでその研修の実効性を担保していくということが必要かと思っております。これは、質問する予定でございましたが、要望としておきます。
 坂口大臣に御質問をさせていただきたい質問でございますが、充実した研修のためには、研修医の待遇改善も欠かせない、そういう状況がございます。
 研修医の多くは、医局の安価な労働力として酷使され、給与が少ないのが現状です。国立大学病院では平均二十万円、私立大学病院で十万円以下、こういう薄給を補うために、研修医は民間病院でアルバイトをしているわけでございます。未熟な研修医が単独で医療の最前線を担っていくというのは非常に危険だと考えますが、研修に専念できる体制を早急に整備して、アルバイトも禁止していくべきだと思いますし、また、医療費の抑制が求められていますが、国民の命と健康にかかわる問題でございます。国は、研修費用の拡充に責任を持って、例えば司法修習生のように一般財源から支払われるというようなことが考えられてもいいのではないかと思います。
 これらの課題につきまして、今回の中間報告ではどのように対応することとしておられるか、また、政府の対応についてもお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 この医師の研修制度というのは非常に大事なことだというふうに思っております。二年間という研修期間を有効に使うということも大事でございますが、やはりスタートの段階のところでどういう研修を受けるか、それは技術的なものもあると思いますが、技術的なものだけではなくて、いわゆる医師としての心得、そうしたものにつきましても、しっかりとやはり身につけるときでなければならないというふうに思っております。
 そういう意味で、今まで大学病院等大きい病院に集中をしていたわけでございますが、大学病院においてこの研修を受ける人たちを大事に、親切に指導してきたかといえば、必ずしもそうでもなかったといったこともございまして、もう少し幅広く、やはり地方の病院であっても、小さな病院であっても、医療としては非常に価値の高い内容のところもあるわけでございますから、そうしたことも考えて、これからその研修先というものも選んでいかなければならないというふうに思っております。
 まず第一は、研修医がアルバイトをせずに研修に専念できる環境をつくってあげないといけないというふうに思います。そのためには、国が研修医の処遇の基準を示すということが大事だというふうに指摘もされておりますので、そういうふうにしたいと思います。
 それから、もう一つは、適切な処遇及び研修実施体制の整備に要する財源確保、これが大事でございまして、先日も大学の先生方と懇談をいたしましたときにも、この財源確保をどうしてもやってほしいということを何人かの医学部長さんや病院長さんから御提案がございました。助成の拡充を図りますとともに、この診療報酬における対応も含めて幅広く検討していきたいというふうに思っております。財政当局とも十分これは相談しなければなりませんけれども、そうした幅広い中でこの研修医の問題を考えていきたいと思っているところでございます。
江田委員 少なくともアルバイトはしないでいいように、また禁止も指摘されているわけでございますので、どうぞ、そういう環境を整えていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。
 もう一つ、重要な点でございますが、電子カルテの推進とカルテ開示の問題がございます。
 電子カルテ導入は、ビジネス面や効率のよさ、そういう面からだけでなくて、医療の質の向上、こういう観点から、大いに私は進めるべきだと考えております。ここは野党の皆さんと一緒でございます。
 私どもも以前から視察を続けておりますが、東京世田谷の診療所の例が参考になります。ここでは、患者を病院に紹介するときにインターネットで電子カルテを送って、診療所と病院で情報を共有しておられます。これによって、病院側もより適切な治療法を選んで、事故防止にもつながる。また、離島等の遠隔医療も可能になるわけでございます。また、登録した患者は、パスワードなどを確認した上で、インターネット上で自分のカルテを見ることができるわけでございます。
 電子カルテは、カルテ開示の推進力にもなることだと考えますが、このデータの蓄積が進むことによって、医療の標準化、これも一つの課題でございますが、これもまた容易になってくる。患者ごとに症状の違いもあるとはいえ、一定の標準化によってむだな医療費を削減することもできます。
 しかし、こういう効果が期待できる電子カルテの導入でございますが、その導入率は全国でまだ一〇%にも満たない。厚生労働省が二〇〇六年までに全国の診療所と四百床以上の病院のそれぞれ六割以上に導入する計画を立てられておりますが、この計画内容とその実効性についてお伺いしたいと思います。
 また、個人情報の保護についても万全を尽くす必要があるわけでありますが、どのようにこれを担保していかれるのか。また、今現在国会で審議中であります個人情報保護法案との関係について、それについてもお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
田村大臣政務官 先生おっしゃられましたとおり、電子カルテの重要性というのは我々も十二分に認識をいたしております。
 まず、三点でございますかね、御質問。電子カルテの具体的な内容と、それから、実効性といいますか、そのいかん。それから、個人情報の保護ということで、この電子カルテに対してどのような保護対策を組むかということで、この三点でよろしゅうございますか。(江田委員「計画と個人情報保護についてでよろしいです」と呼ぶ)そうでございますか。
 昨年十二月の、保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザインというようなものを策定する中で、アクションプランを公表いたしました。数値が入った、そういう意味では我が省は非常に画期的なアクションプランだと思っておるのですけれども、平成十五年に情報化の基盤整備をしっかりと行いまして、それから十六年には大体、二次医療圏の中核的医療施設において電子カルテの普及を進めていく。ただ、それでも全体では多分四%程度であろうと思いますので、順次それから進めてまいりまして、平成十八年度には四百床以上の病院の六割以上、先生先ほど若干おっしゃられましたけれども、普及を進めるという、一応、数値を入れたアクションプランで計画を立てさせていただいております。
 ただ、では本当に六割進むのかというようなお声もあるのですけれども、この点は、四百床以上の病院に関しては、オーダリングシステムを既に六割導入をしておられるという数字が出ております。オーダリングシステムもそれぞれ質の面においてはいろいろさまざまあるわけなんですけれども、そのオーダリングシステムが、だんだん内容を更新していくのに五、六年かけて一巡をするであろう。そのときに、そのオーダリングシステムは御承知のとおり電子カルテの一歩手前のような部分がございますので、そこに電子カルテをうまく導入を進めていけば約六割ぐらいは進められるんじゃないか。もしかしたら若干もう少し進むのかもわかりませんけれども、そんな計画を立てさせていただいております。
 ただ、費用の問題が非常にかかるものでありますから、これはスケールメリットで、導入する病院がふえてくれば当然単価の方も下がってくるのだとは思いますけれども、それにいたしましても決して安いものではございませんので、国といたしましても、補助を出したりとか非常に低利の融資というものを導入させていただいて後押しをしていきたい、このように思っておるような次第であります。
 それから、個人情報といいますか、情報保護の方なんですけれども、これは一点は、昨年先生も委員会で御審議いただいて成立をいただきました法律の中において、今まで看護師さんに守秘義務がかかっておりませんでしたけれども、守秘義務というものを中においてはかけさせていただいて情報保護をしよう。それからもう一つは、全体の技術的な基盤整備というものをPKI等々いろいろな部分で整備をしていきまして、個人情報というものをしっかりと守らなきゃならない。
 一方で、先生おっしゃられました、インターネットを使っていろいろな情報を開示していけば非常に使いやすいものになるじゃないかという話があるのですけれども、そういうしっかりとしたセキュリティーをかけていないような形で、例えば診療所等々が、インターネットとつなげてあるパソコンと、それから一方で患者さんの情報を管理しているデータとがリンクしている場合は、外からとられちゃう可能性があるものですから、そういうものは分離していただいた方がいいのであろう。セキュリティーがしっかりかかっておるものに関しては、つなげてあっても今のような形で非常に使いやすいという話があるのですけれども、そういうふうになっていないものに関しては分離をしていただくような指導もぜひともしていかなきゃならぬな、こんなふうにも思っておるような次第でございます。
 以上でございます。
江田委員 ぜひともこれは、医療の質の向上を図るためにも、この電子カルテの導入は、その方向で強く推進していただくようにお願いしたいわけでございます。
 時間が限られておりますので、次に、健康増進法に関する質疑に入らせていただきます。
 医療の抜本改革というのが、医療制度の改革と同時に、少子高齢化が進む中で、いかにして医療や介護のお世話にならないで元気でいられるか、これが、増大する医療費を抑制するもう一つのかぎになると考えます。
 日本は、WHOの健康寿命国際比較の中でも世界でトップクラスにありますが、しかし、国民の八〇%が健康について何らかの不安を抱えております。働く世代の運動量は低下して、肥満率が高まって、リストラも進む中でストレスもふえる。男性の喫煙率は五〇%を超えて世界トップクラス、さらに食生活の偏り、飲み過ぎも目立つ。それを反映して、がん、心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病がふえているからでございます。
 これまでは早期発見、早期治療ということに重点が置かれてきたと思いますが、そうなる前に生活習慣を変えることが何よりも重要となってきているわけでございます。治療中心の医学から予防医学へのシフト。予防医学に関しては、私も長年医療関係に携わってまいりましたので、いよいよと予防医学が重要視されてくるということに関しては、私も感慨深いものがございます。このような中で健康増進法案が法制化へ向けて審議されるに至ったことは、私は意義は大きいと考えております。
 そこで、まず、生活習慣病を予防するためには定期健康診断が重要でございます。労働者災害補償保険法、労災法が今回改正されまして、本年四月から、脳血管疾患及び心臓疾患に限って二次健診の費用を現物給付することになったと聞いております。これは業務上外含めて初めて予防給付を実施することになったわけですね。特筆すべき事柄であるかと思っております。
 一方、業務外の疾病につきましては、健康保険法で決められているとおり、予防給付は認められておりません。今回、労災保険で予防給付を実施した以上、私は、近い将来、やはり健康保険でも予防給付を認めるべきではないかと思うのですが、今回は時間がございませんのでこれに対する回答はよろしいと思います。このように強く要望しておきたいと思っております。
 さて、これは坂口大臣にお聞きいたしますが、法律で義務づけられた職場ごとの職場健診の対象者は五千万人以上、学校健診は二千万人以上、地域の住民健診は約一千万人が受診しておられるわけであります。健診の主な目的は、高血圧、糖尿病などの早期発見と生活習慣の改善にございます。健診データに異常が出るのは受診者の三割と言われております。しかし、肝心の生活習慣の改善がそこにつながっているのか、こういう疑問の声も多いわけでございます。健診の後にきちんと指導する機関が少なくて、検査のやりっ放しというようなことも多いのではないかなと考えます。
 私は九州の熊本県でございますが、甲佐町とか清和村が非常にいいことをやっておりまして、清和村では、住民健診の受診率は約八割に上る。健診後の指導体制が非常に整っておりまして、糖尿病、高脂血症、高血圧症で治療が必要な人には個別に半年間の生活習慣改善プログラムを実施している。村の保健婦が回ってくるわけです。そして、食事、ウオーキングなどの運動の目標を設定して、個々人にそれを実施させている。村民に健診で異常値の出る率が下がって、医療費も抑えられて、今度、村は、来年度においては国民健康保険の保険料を下げるというところもあるわけでございます。
 こういう受診後のフォローといいますか、生活習慣病の予防の指導、このようなことに対して、本法案ではどのような対応策が図られているのか、またその効果はどの程度期待されると考えられておるのか、お聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
大塚政府参考人 先ほど御要望というふうにおっしゃられましたが、予防給付の話が出ましたので……(江田委員「それは結構です、要望で結構です」と呼ぶ)
坂口国務大臣 健診の検査をどうするかということは大変大事なことでして、ここが一番大事なところなんですけれども、現実問題は、健診はかなり行われておりますけれども、その結果が十分に生かされていないというのが私は現状だというふうに思っています。
 私もかつて健診に参加したことがございますけれども、前の年に糖尿がかなりありまして、翌年、どういうふうにしていますかということを言いましても、会社からそんなことは、糖尿があるなんというようなことは聞かなかったとおっしゃる方もあって、一年間丸々そのままで捨ておかれたというような例もあったりいたしまして、健診をするということは義務づけられているものですから皆企業もやってくれるんですが、その後のことを、フォローをちゃんとするということが最も大事なわけでありまして、労務管理上も私は重要なことだというふうに思っております。
 そうしたことから、健診のフォローをどうするかということをこれから進めていかなきゃならないわけで、健康日本21におきましても、例えば糖尿病の検診の受診後の事後指導の推進を掲げておりまして、現在では男女とも七割程度、事後指導を受けておりますが、これを二〇一〇年までに一〇〇%にするというようなことを目標に掲げております。
 今回の健康増進法案におきましても、各種の健診に共通する指針の策定を制度化することといたしておりまして、健診の結果を時系列的に記録、把握するための手帳の様式等を示す。だから一応その結果は手帳にきちっと書いて、そして御本人にも渡して、そして悪いところがあればそれに対する指導もするし、御本人も気をつけていただけるという記録をちゃんと御本人にお渡しをするということをしておかないといけない。そうしたことを中心にしまして、具体的に健診が進められていきますように、これはもう少しまだ詰めなきゃならない問題が残っております、これからやらなければならない問題が残っておりますが、結果が必ず生かされる体制をつくり上げていきたいというふうに思っている次第でございます。
江田委員 ぜひともよろしくお願い申し上げます。
 最後に、もう一問やりたいと思っております。政管健保の生活習慣病予防健診を実施する指定機関の指定要件についてお聞きしたいと思っております。
 これらの要件を満たす病院は、公立、民間を問わずに、地域単位で指定が決められると考えておりますが、生活習慣病の予防を実効性のあるものにするためにも、受診率を高めるということが非常に重要なんですが、それにはやはり自分が生活している身近なところにその指定病院がある、受診できる指定機関があるというのが好ましいわけでございます。またそういうふうに国も方向的には進んでいるかと思うのですが、例えば民間病院への許可を一層促進していくという方向にあるかと思うわけでございます。
 ところが、九州におきまして、民間の医療法人が多く参画はしておりますが、唯一、熊本県におきましては、他県においては見られない、医療法人、すなわち民間の医療法人はほとんど医師会立の病院で占められているわけでございまして、本当にやりたい、設備も整っている、人材もきちんと整っているところの民間の活力がそこに入っていけない。医師会立も民間医療法人ではあるかと思うんですが、そういう問題があります。
 これはなぜなのか、今後はこういうふうに民間の指定病院が多くなることが、やはり質の向上、また生活習慣病予防においても実効性のあるものになるかと思うんですが、いかがでしょうか。
冨岡政府参考人 お答え申し上げます。
 政管の健診実施機関につきましては、先生御指摘のとおり、民間の医療機関におきます関心が高まってきておりまして、確実に増大してきております。この指定につきましては、各地方社会保険事務局におきまして、地域の実情に応じて選定しておりますが、その基準といたしましては、健診の実施に必要な人的、物的な体制、施設等を有すること、それから、検査の精度管理が十分に行われていること、健診記録の管理体制が整備されていること、受診者の健康管理や事後の保健指導を適切に行うことができること、こういった観点から指定を考えております。
 御指摘にありましたが、熊本県におきましては、現時点では医療法人立の病院の指定はございませんが、民間の病院につきまして異なる取り扱いをするということではございません。私どもといたしましては、今後、医療法人立病院等からのこういった要件を整えた上での要望がありますと、個別に伺いまして対応をするように地元の熊本県社会保険事務局につきまして指導してまいりたい、かように考えております。
江田委員 時間が参りました。
 公平にそのチャンスを与えていただきますように、また全体としてもこういう指定機関をふやしていただくということがやはり重要かなと思います。どうぞ、強く要望しておきますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。ありがとうございました。
森委員長 次に、釘宮磐君。
釘宮委員 きょうも傍聴席には多くの傍聴の方がこの健保法の審議に熱心に耳を傾けておられます。それに引きかえて、この委員席、大変空席が目立つわけでありまして、私は、正直申し上げて、これほど多くの国民に負担をお願いをする委員会にしては、これはいかにも我々は反省をしなきゃいけないんじゃないか。もっと真剣になって議論をし、将来に向けて国民が不安を感じなくて済むような、そんな立派な法律をつくっていかなきゃならぬ、私はそういうふうに思うんですね。
 ですから、そういう意味で、私は、大臣にきょうはぜひ国民に向けてわかりやすく、納得のいく、そういう答弁をお願いをしたいと思うんです。
 まず、健保法の質問に入る前に、ちょっとお聞きしておきたい点がありますので時間をいただきたいと思いますが、これは、先般私がこの委員会で質問をいたしました国立病院の改築にかかわる談合疑惑についてでございます。
 この談合問題は、この委員会で私が取り上げまして、大臣が、白紙撤回をする、事前にこうした事実があるということであればこれは白紙撤回をするということでの答弁をなされました。これについては二十七日の参議院の予算委員会、高嶋委員の質問で大臣がこのことを改めて答弁をなさっておられます。私は大臣の決断に大変敬意を表するわけであります。
 それにつけましても、この当委員会に調査結果を私は要求をしたんですが、確かに身内の調査ですから限界があるとは思うんです。しかし、本気になってこうした談合疑惑を何とか解明をして、やはりこれは税金がむだに使われることですから、少なくとも今こういう状況にある我が国を考えれば、こうした問題を、まず隗より始めよで、役所からそれをやっていくということが必要ではないかと思うんですね。
 そこで、私は今後の取り組みについてお伺いをしたいと思うんですが、再入札はいつごろ行われるのか、それと、再入札のメンバー、これはどういうふうになるのか。あわせて、私は、この再入札のメンバーについては、どうもお聞きしますと、これは排除することはできない、これは法的に難しいというようなことであると聞いております。であるとするならば、自主的に辞退してもらうとか、そういうふうな形をとってでも、今回のこの談合問題が一つの契機になって、こうした問題が二度と起こらないための対処を私はすべきだというふうに思いますが、大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 委員からこの委員会におきまして前回にも御指摘を受けたところでございまして、以後いろいろの調査をいたしましたけれども、先ほどお触れいただきましたとおり、結果としましては何ら出てまいりませんでした。七十数社という大変多くの企業に対しまして調査をしましたけれども、そうした事実というものが明らかになりませんでした。
 しかしながら、この一月に出回りました文書、その内容と、そして今日まで決定しました七件の結果というものが余りにも一致し過ぎている、そういうことから、事実は出てまいりませんでしたけれども、しかしここは白紙撤回をする以外にない、そこは決断をさせていただいたところでございます。
 それで、今後これをどうするかということにつきましては、今検討を重ねておりますけれども、それぞれの全体としての価額もこれはある程度変更をしなければならないというふうに思います。そういうこともございまして、時期は八月ごろというふうに思っております。
 入札方法につきましては、電子入札等を採用をして、そして全国からひとつそれに対して応募をしていただく、それぞれの業者間でどういう人たちがその中に入っているのかということがわからないようにするといったようなことをして、これからこうしたことが二度と起こらないようにしていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
 今まだ途上でございまして、これからまだ詰めなきゃならない点もございますけれども、そうした意味で、再びこういうことが起こらないようにしたいという決意のもとにやっているところでございます。
釘宮委員 今、大臣の決意はわかったんですが、いわゆる疑わしきを採用しなかったわけで、今回は自主的に辞退をしてもらったというふうに私は聞いておるわけです。そうしますと、次の入札で先般落札をした業者がまた入れるということになるんですか。そこをちょっと聞かせてください。
坂口国務大臣 先ほど申しましたとおり七十数社になるわけで……(釘宮委員「いや、そうじゃなくて」と呼ぶ)いや、主なところが七十数社になるわけでありまして、そこが全部だめだということになりますと、主なところは全部だめだということになってしまうということにもなるわけでございます。
 これからここは議論を詰めていきたいというふうに思っておりますが、一部の人たちだけで談合ができるようなシステムがいけないので、そこを変えるということにすれば私は許されるのではないかというふうに思っておりまして、そこをやはり一番中心にやらないといけないというふうに思っております。
釘宮委員 いや、私は全部を外せと言っているんじゃなくて、前回落札した業者がその工事にまた入札資格が得られるということになると、現実に私は、それでは言いますが、この七件の既に入札をした結果、その結果について私は資料を出せと言ったけれども、出さないんですよ。そして、何と言ったかというと、この資料は、次の入札のときに、これを出しちゃうと価格がある程度想定できちゃうというような話なんですね。それを全部覆い隠したまま、前落とした人がまた参画できれば、そこがまた一番有利になるのは当たり前じゃないですか。
 ですから、私が言っているのは、排除が法的に難しいのであれば、落札した業者はその物件に対しては今回は辞退をしてもらうというようなことをやって、やはり国民から不信感を得られないような状況をつくるべきだということであります。
 それから、私はなぜこの入札結果にこだわるかといいますと、大体こうした談合問題というのは、その価格を業者は探るわけですよ。これを漏らすということによって、そこに口ききとかいうような問題がかかってくるんです。だから、私が申し上げたように、実際に天下りをなぜ業者が受け入れるか。それは、天下った厚生労働省の出身者といわゆる現役とのパイプでそういうふうなものが聞き出せる、そういうふうな構図になっているわけですから、そこのところをきちっとしなきゃいけない。
 ですから、大臣がさきの参議院の予算委員会で、天下りについてはこれを絶対に排除しますということを答弁なさっておられる。私は、そのことは大変評価をしております。今、この国において口きき料なるものが最近検察の手によって暴かれていますけれども、公共事業というのが数百兆というような形で出ている、その一%であっても、それは数兆円になるわけですよ。そんなことがもし行われているとすれば、今国民に、医療が大変だ、高齢化社会で大変だ、出してくださいと。そんなものは出せないですよ。
 私は、それぐらいの思いを我々は国民の代表としてきちっと代弁して、そこをきちっとしていかなければいけない、このことをあえてお願いしておきたいと思います。
 それから、もうこればかりに時間をとるわけにいきませんが、一つ、検体に関する談合の摘発、これもやはり同じように出ているんですね。
 実は、国公立病院が外部委託をする血液などの検体検査業務の入札談合の疑いがあるとして、公正取引委員会は、三月の二十七日、独禁法違反の疑いでエスアールエル、塩野義製薬など大手七社を立入検査した。この検体検査は約七百項目あって、医療保険が適用される。大手七社はこのうち、高度な分析機器や試薬を使って病気の進行ぐあいなどの診断に役立てる専門的な特殊検査で強みを発揮。同検査部門を中心に七社で計一千億程度の売り上げがあるという。
 今こうして医療保険の議論をしていますけれども、これは医療保険が適用されているんです。ここでこうした問題が起こっている。私は、これはもう本当に、こんなことをきちっとやらないで国民に痛みをなんて言っていられないですよ。
 公取、きょう見えていますか。教えてください。
上杉政府参考人 お答えいたします。
 今御指摘の日時に、公正取引委員会といたしまして、国公立病院に限りませんけれども、国公立病院等が発注する臨床検査業務につきまして、入札談合、それから検査料金の維持または引き上げという疑いで調査を開始したところでございます。
 違反被疑法条は、独占禁止法三条後段でございます。
釘宮委員 これは、大臣、時間がありませんから特にもうこれ以上私はお聞きしませんが、これも実は天下りがちゃんと行っているはずですよ、各社に。これは調べてみてください。こうした問題をやはり一つ一つきちっとして、国民から後ろ指を指されるようなことのないように、我々が、国民を代表した政治家がそこをきちっとやっていかなきゃならぬ。
 よく、政官業もたれ合うという構図が戦後続いてきたわけですけれども、今本当にこのことにきちっと我々は決別をしなきゃならぬという意味で、これまで大臣がいろいろな意味で決断をしてきたことに私は一つの敬意を払っておりますが、この問題についてもぜひきちっと対応していただきたい、お願いをしておきたいと思います。
 それでは、健保法の改正の質疑をさせていただきたいと思います。
 この健保法の問題は、私は本会議でも質問をしましたけれども、五年前に大変苦々しい思いがあるわけです。特に、当時厚生大臣だった小泉さん、私の参議院での質疑の中で、これは絶対にやるんだ、どんなことがあったって抜本改革をやるんだ、国民に負担をお願いする以上はそれをやらなければ、そんなことはどうして許されますか、二〇〇〇年までにやりますよ、大変なけんまくで私に言いました。だから、私は、あの本会議でも申し上げましたけれども、それならこの人でやらせてみよう、かけてみようということで、財政破綻をしたんではこれは大変だということで、賛成したわけですよ。野党でですよ。そういう意味で私の大変な不信感というのはあるんですよ。
 私は大臣にまず聞きたいと思うんですが、先般山崎幹事長はこういうことを言っているんですよ。健保法改正を成立させなければ小泉構造改革の進展がないとのメッセージになる、こういうふうに言っているんです。構造改革というのは何なんですか。まずそこから聞かせてください。
坂口国務大臣 山崎幹事長がどういう御趣旨で御発言になったか私はわかりませんけれども、さまざまな構造改革が現在進行中だというふうに思っております。その中の一つとして、医療制度におきましても、やはり将来ともにこの皆保険制度が持続できていくような体制というものを確立していかなければなりませんし、先ほどから御指摘のように、そこに何一つむだがあってはならない、すべてのむだを排除していくということが一番私は大事なことだというふうに思っている次第でございます。そうしたことができる体制をどうつくるかというのが我々に課せられた任務だというふうに思っている次第でございます。
釘宮委員 私も大臣がどういう答弁をするかということが想定できませんから、ここに、むだを省いて制度をより円滑なものにする、そういう意味で私は税金を丁寧にやはり使わなきゃならぬということだろうと思うんですね。大臣と全く同じ認識です。そうすると、今回のこの法案の中に、そのためにでは何をやるかということが全く私は見えてきていないんですよ。
 これまでもずっと大臣の答弁を聞いていても、附則の部分のいわゆる努力目標についての、こういうふうにいつまでにやりますということの、そういう答弁はあるんですけれども、全くそこから先がないということは、これは九七年の議論と全く同じじゃないですか。小泉さんが言っていたのを今坂口大臣がおっしゃっている。特に大臣は、大変強い決意、不退転でやると。これは小泉さんも同じように言ったんですよ、五年前に。そしてできなかった。
 そういう意味では、やはりこれだけの負担、一兆数千億ですよ、これを国民にお願いするのなら、大臣、何か担保を出してください。担保を出して、国民がそれを納得したら私は賛成しますよ。お願いします。
坂口国務大臣 担保は何も出すものがございませんけれども、私の体を差し出す以外に何らないわけでございます。とにかく、私がやりますという決意を持った私を担保に差し出す以外にございません。
釘宮委員 ですから、その担保がなくて、私どもに賛成しろ、国民にそれをお願いしろと言ったって、それはできませんよ。
 では私、一つ、大臣、これを担保にどうですか。今回の改正で、十九年度まで健保財政の収支が保たれる、これまで答弁でこういうふうに言っていますね。ということは、五年間余裕があるんですよ。五年間も国民から余分に取っておいて、自分たちはゆっくりやりましょうじゃだめですよ。三割負担をやめましょうよ。三割負担を今回の法案の中から取っちゃって、それで、自分たちが、これはもう後ろがない、もう土俵際だという状況をつくって、やる。それだったら国民はもしかしたら納得するかもわかりません。いかがですか。
坂口国務大臣 私もいつかそういうことを言ったことがあるわけでございますけれども、しかし、今我々に求められております医療制度改革は急を要しております。来年の四月一日から三割皆さん方にお願いをするというふうに言っておりますが、これは何度かここでも申し上げておりますように、軽い病気に対しては三割だけれども、しかし、重い病気の皆さん方に対してはだんだんと割合が少なくなっていく、上限がつくられておりますから、全体としてトータルで見れば、自己負担というのは一八%ぐらいになるわけであります。ですから、そこは一つの制度として私は必要ではないかというふうに思っております。
 その辺のところを、これを実現しながら、しかし一方においては、先ほどから御指摘になりますように、やはり抜本改革というのをやらなければならない。ですから、来年の四月一日からお願いをする以上は、それまでにこの抜本改革の青写真を示す、方向性を示し、そして第一歩を来年の四月一日から踏み出せるようにする。これはやはり、私は、担保といえば最大の担保だと思う。そこを私はお約束する以外にないと思っております。
釘宮委員 私は、多分ここにおられる皆さん、また大臣も含めて、三割なんてなけりゃなというふうに思っていると思うんですよ。三割にこだわっているのは官邸だけですよ。やりましょうよ、これ。私は、ぜひやるべきだ。しかも、国民にこれだけの負担をお願いするわけです。私は、今回、武力攻撃事態法も個人情報保護法案も、これはやはり大変国民の関心の中で、小泉さんみずからが修正ということを言い始めている。何でこの三割にだけ固執するんですか。どうも、きょうも朝、この健保法だけは絶対通すと言っているらしい。私は絶対通させませんよ。
 私は、そういう意味で、やはり、国民が本当の意味で納得ができるような議論をまだまだぜひ深めたいと思いますし、大臣も本音でやはり物を言ってくださいよ。そうしないと、また大臣、国会は延長されるんでしょうが、終わったら組閣はあるんですか。もし大臣がそこでおやめになったら、幾ら私が担保ですなんて言ったって、それこそ担保にならない。そのことを強く申し上げておきたいと思います。
 それでは、中身について少し入っていきたいと思いますが、抜本改革が先ほどから何回も言葉に出てきております。抜本改革自体がこの医療制度改革の最大のテーマであります。今回の改正は、先ほども申し上げましたように、その本則の中に改革の姿が明記されていない。それで附則に、我々から言わせれば努力目標が掲げてある。一方で国民に負担の再引き上げをお願いしている、こういうことなんです。
 そこで私は、大臣、九七年当時野党でしたね。九七年当時野党だった大臣が、今、与党です。与党でしかもその責任者。当時、長勢筆頭もこの中におったわけですが、九七年当時、与党医療保険制度改革協議会というのがありました。二十一世紀の国民医療を基本に改革を行うというふうにされてきたんですね。これはなぜできなかったんですか。この総括をまずきちっとしましょうよ。ここからスタートしないと私はこの次に行けないと思うんです。いかがですか。
大塚政府参考人 経過だけ御報告をさせていただきます。
 平成九年に、当時の与党の協議会で四つの柱に集約をされまして、今後の医療保険制度あるいは医療提供体制も含めましての方向をお示しになりました。私ども、当時厚生省でございますが、その線に沿いまして幾つかの大きな改革を進めてきたつもりでございます。
 例えば、薬価の問題、診療報酬の問題、提供体制も機能分担のあり方の問題、それぞれ法律改正を含めまして一定の着実な改革を進めてきたと考えておりますが、ただ、高齢者医療制度につきましては、これも既に御議論に出ておりますけれども、大変さまざまな御意見、また強力な御意見がそれぞれにございまして、一つの意見を集約するに至らなかったわけでございます。
 特に、これからの将来を考えますと、確かに、高齢者医療のあり方というのがどうしても焦点になります。この点が新しい形で御提示をできなかったということで、抜本改革の進展が非常におくれたというふうに御指摘をいただいているのだろう、一つの大きな要素としてはそういうふうに考えております。
 この点につきましては、今回、一定のめどをつけるべく、かなり大胆な改革を御提案しておりますけれども、さらに、ピーク時に向かいまして検討を進めるということは大臣からも繰り返し御答弁申し上げているところでございます。
 経過を中心に御答弁申し上げました。
釘宮委員 いや、私は経過を聞いているんじゃないんです。今ので三分ぐらい損したんですけれども、そうじゃなくて、なぜできなかったかということなんですよ。これは大臣が一番わかっているじゃないですか。要するに、いろいろなしがらみがあって身動きとれないわけですよ。そこを断ち切らなきゃ、できないんですよ。私は、そのことをまず大臣に答えてほしかったんです。
 それでは、今回、附則が随分たくさん出ている。こんなたくさん附則がある法律というのは余り私もお目にかかったことがないんだが、冒頭に、将来にわたり三割負担を維持する旨の附則があります。これは本当に実効性が担保されるんですか、大臣。
坂口国務大臣 先ほども申しましたとおり、トータルで見ますと約一八%、現在は一六%でございますが、今度一八%になる。ですから、トータルで見ればそういう数字になるわけでございますが、この保険料三割をこれから担保していく。これは、もうやはり三割を超えるということになってまいりますと医療保険制度として私は余り意味がなさなくなってくるというふうに思っているわけでありまして、三割が一つの限界というふうに思っています。そういう意味で私は、三割を堅持するということをそこに書いてもらったわけでございますが、これは与党全体におきましても、そうだということになっているわけでございます。
 これから二〇二五年ぐらいを見ていきましたときに、二〇二五年ということになっていきますと、今から大体二十年ぐらいですよ。少なくとも、それぐらいの先は見て立てていかなければならない。そうしたことを考えましたときに、三割を維持しながら、そうしますと、個人が三割だということになってまいりますと、あと残りは保険料と国庫負担、こういうことになるわけですね。財源は国庫負担と保険料と自己負担しかないわけでありますから、個人が三割ということになれば、あとは国庫負担と保険料でお願いをする以外にないということにならざるを得ない。そこの割合をどうしていくか。
 私は、これから高齢化がだんだん進んでいくんですから、医療費は、むだを省かなきゃなりませんよ、むだを省くためにいろいろな手だてをやらなければならないというふうに思っておりますが、それでもなおかつこれはふえていかざるを得ない。そのふえていきます医療費を、どういう割合で、国庫負担と保険料と自己負担とで賄っていくかということになるわけでありまして、その割合として、三割の自己負担というのは、皆保険制度を堅持するためには、やはりどうしても堅持していかなければならないことだということを申し上げているわけでございます。
釘宮委員 大臣、時間がありませんので、私が聞いたことに答えてください。
 要するに、三割負担というものが今回その附則の中にあるわけですよ。しかし、これは実効性が担保されているのか。先ほどからきょうは担保の話ばかりでありますけれども、これは本当に実効性があるのかどうか。なぜ私がそのことを言うかというと、これも私が不信感を持っているからです。三割と言っているけれども、またいつか今度四割になるんじゃないか、五割になるんじゃないか、これは国民の不安の中にあるわけですよ。なぜそれなら本則に入れないんですか。附則なんかに入れないで、本則に何で入れない。
 九八年に、国保法の改正のときに、やはり附則に、抜本改革を二〇〇〇年度に実施する、こういうふうにちゃんと明記している。これは、簡単にほごにされているじゃないですか。ということは、今回、附則にあるからといって、これが担保されているとは到底思えないわけですよ。そこを、だから大臣答弁で、三割は必ず堅持しますということを言ってくださいよ。
坂口国務大臣 本則にも三割ということは書いてあるわけであります。それを堅持するということを書いたわけでありまして、これはもう堅持するということを私はお約束をしなければならないと思います。
釘宮委員 本当にできるかどうかは疑問でありますけれども、質問を続けます。
 それで、この中で、附則に努力目標を掲げております、期限を限って。特に、保険者の統合再編、また新しい高齢者医療制度の創設、それから診療報酬体系の見直しという大変大きなテーマ、基本方針を、二〇〇二年度中ですから今年度中に策定するということであります。この策定のスケジュールと手順、これを聞かせてください。
坂口国務大臣 まさしく、そこをいつまでにどういう方針でやるかということを今目指して議論を重ねているところでございまして、来年の四月一日に間に合わせようということになりますと、ことしじゅうにその方針というのは決めなければならないというふうに思います。ことしじゅうに、保険の一元化の問題にいたしましても、これはどういう手順で何年までにこういう目標を立ててやっていくということを決めなければなりません。
 私は、統合、一元化というふうに言っておりますけれども、一元化するということは、これはなかなか難しいだろうというふうに率直に言って思っております。しかし、統合化は進めなければならない。だから、何年までにどこまでやるかということは明確にしなければならないというふうに思っておるところであります。
 それからもう一つ、診療報酬の問題でございますが、診療報酬の問題は、現在、国民の皆さん方から見ましても、なぜこれはこんなに高いのか、低いのかという不満がある。また、医療従事者の側からも不満がある。それは、なぜそういうことが起こってくるのか。私は、今までから何度も考えてまいりましたが、これはやはり、こういう基準で決めるという基準、その物差しが明確になっていない。だから、そこを私は明らかにしなければならないと思っています。
 ここから先は私の個人的意見でございますけれども、あえて申し上げさせていただければ、一つは、やはりコスト、かかりますコスト、それがたくさんかかるものもあるし、かからないものもあるし、人件費のコストもございます。だから、そのコストを一つの基準にする。それからもう一つは、病気、疾病の重い軽いということを一つの基準にする。もう一つは、時間的な物差しだと思うんです。三十分かかる診療も、三分で済ますのも、同じ保険点数では私はいけないと思っている。やはり、長くかかるものについては、それなりにこれは評価をしなければならないというふうに思っております。そうすれば、もっと日本の国の中の医療は落ちついた形になっていく。
 今は、人の数をこなせばこなすほど保険点数が上がるという形では、これは大変な忙しい医療環境ができ上がるだけでございますから、そこは私は、明確にしていくべきではないか。だから、この三点を基準にするのが妥当ではないかと私個人は思っているわけでございます。これはしかし、これからいろいろな方の御審議をいただくわけでございますから、皆さん方の御意見も伺わなければなりませんし、また、この委員会におきまして、皆さん方からいろいろな御意見がありましたら、それもお聞かせをいただいて、私はそれを参考にさせていただかなければならないというふうに思っている次第でございます。
釘宮委員 新しい高齢者医療制度の部分について、大臣の考えを聞かせてください。
坂口国務大臣 この高齢者医療の問題をどういう制度にするかということは、いろいろ言われますし、それはまた一長一短、すべてあるわけですね。私は、高齢者の医療の問題は、制度をどうするかという前に、やはり国の負担、それから若い皆さん方の保険からの支援、そして自己負担、この三つの割合をどうするかということを決めることが先決だというふうに思っております。そこが決まれば、後はどういう制度にするかということはおのずから決まってくるし、多少今まで言われていたものとは違う形になったとしましても大したことではない。
 国が負担する額、そしてお若い皆さん方の保険から支援をしてもらう割合、そして個人の割合、ここを決めることが私は大事だというふうに思っているわけでございます。そこを早急に決めたい。
 それで、今回提案をしておりますこの法律の中では、一応七十五歳以上ということになっておりますが、七十五歳以上は五〇%まで国庫負担を引き上げるということを明確にしているわけでありますから、この線で行くならば、残りをどうするかということになってくる。また、五〇%というふうに今現在決めておりますけれども、将来非常に高齢者がふえてきましたときに、さてこの五〇%で済むかという問題はあるというふうに私は思っておりますが、当面は五〇%ということに今なっているわけでございます。
釘宮委員 少し高齢者医療制度について大臣に突っ込んでお聞きしたいのですが、大臣は以前、理想は一本化であるが、現実的には、高齢者の独立保険方式、被用者保険と地域保険の二本立ての上であるという国会答弁をしているわけです。独立保険方式を経た上で一本化に向かうという考えなんでしょうか、大臣の考えとすれば。
坂口国務大臣 そこは先ほど申しましたとおり、決めておりません。そういう手順を踏むということではございません。一本化の問題は、高齢者医療とはもう別にしまして、どうしてもやらなければならないことというふうに思っている次第でございます。
釘宮委員 特に私は、大臣の発言を聞いていると、独立保険方式ということに大変な思いがあるように受けとめております。したがって、独立保険方式について若干お聞きしたいのですが、この独立保険方式においても、現役世代から支援をする場合、現行の拠出金方式と構造的には変わらない、先ほどからそういう大臣の答弁があるわけですが、介護保険との関係がここでは大変複雑になるのではないかというようなことも指摘をされておりますが、その点はどうでしょうか。
坂口国務大臣 初めに断っておきますけれども、独立方式を私は採用するように心の中で思っているということでは決してございません。それはひとつ誤解のないようにしていただきたいというふうに思います。選択肢の一つとして、その方式があるということを申し上げたまででございまして、そういうふうにしようというふうに私が思っているわけでは決してございません。
 今御指摘になりましたように、介護保険との問題はあるわけでございます。これは、介護保険が誕生いたしますときからある問題でございまして、この介護保険のあり方と、そして医療保険のあり方は、もともとその成り立ちからしまして、保険としてかなり違った形になっております。こうしたことをこのままにして進めていくのか、それとも、医療保険と介護保険というものを、もう少し内容を一元化をしていくのかといった大きな問題があるというふうに私は思いますし、また、いわゆる療養型病床群というのがございますけれども、いわゆる病院の中で行われます保険制度、介護保険を使って病院で行うようなことをこのままにしておくのか、それとも、病院の中で行うことは、これはもう医療保険にゆだねるのかといったような大きな問題も私はあるというふうに思っているわけでございます。
 これらの点、これから決着をつけていかなければならない問題だと理解をいたしております。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
釘宮委員 私がなぜこの独立方式について大臣に強く迫っているかといいますと、これからわずか一年以内に、もう一年ないわけですね、二〇〇二年度中ということになれば。そういう意味では時間がないのですね。やはりここは厚生労働省として、また大臣として、どういう方向に行っているかぐらいは、この大事な健保法の改正の中で、まだそれは決まっていないでは、これはもう議論のしようがない。そういう状況の中で、また国民に負担ということが、これがまた不安になってくる。また先へ送られるのじゃないか、そういうふうに思うのです。
 それで、我が党は今回、民主党としての医療制度改革案をまとめました。私は、ぜひこれ、この問題を、大臣を本部長とする推進本部でこれを議論していくと言っていますけれども、与野党で協議の場をつくりませんか、それこそ大臣が提唱して。私は、この問題は政争の具にすべきではないと思うのですよ。
 これは、どうしたって国民に負担をお願いするわけですよ。そうすると、やはり容易に言えないのです。これまでも、年金もそうであり、すべて政治の責任ですよ、ここまでおかしくしちゃったのは。その時々で妥協しちゃうから、こんなふうになっちゃうわけです。それは、お互いにこれを政争の具にしちゃうものですから、言い出せない。国民にきついことは言えない、支援者にきついことは言えない、そういうふうになって、結局そのことが全部先送りになってきたわけでしょう。
 実は今回でも、これ、議論やろう、議論やろうといったって、与党はほとんど質問なさらない。これでは本当の意味で、国会の審議というのは形骸化していくのじゃないですか。私自身は、少なくとも、この国会が法案を出されたら、そのまま粛々と消化試合みたいに、おい、きょうでもう三十時間終わったよ、もうそろそろ参考人でいいじゃないか、こんな話じゃないでしょう。中身、何にもないんだもの。何にも見えてきてないんだもの。だから私は大臣に、ぜひこれ与野党で協議の場をつくってやったらどうですか。それを大臣がぜひ提案してみたらどうですか。これは、スウェーデンがやはり年金改革で一つきちっといい見本をつくっているんですよ。いかがですか。
坂口国務大臣 スウェーデンにおきまして、年金の問題で与野党で話し合いを進めているということは私も存じております。それは、政権交代がありましても基本からそれでひっくり返るようなことがあってはならない。どの政党が政権を持ったときであったとしても、大きくぶれないように、一番いい方法は何かということを合意していこうということだろうというふうに思います。年金につきましても医療につきましても、そのことは大事なことだし、この問題を政治的に利用するということはあってはならないと私も思っております一人でございます。
 そこをどうするかということ、国会の中で議論をどう進めていただくかということ、これは国会の中でひとつお決めいただくことですから、大臣として私がどうこうということは申し上げにくい話でございますけれども、例えば、年金の問題等につきましては、参議院の皆さん方からも一遍やろうじゃないかというようなお話をちょうだいしました。過去にも私、そういう問題をちょうだいしまして、いいじゃないですかということを申し上げたことがあるわけでございます。これは、皆さん方で合意をしていただくということであれば、それは大変結構なことだと私も思っている次第でございます。
釘宮委員 私は、これまでも坂口大臣にはいろいろな意味で厚生労働行政に新たな展開を導いてくださったというふうに思っています。何か、先ほども言いましたけれども、内閣改造もあるやに聞いていますけれども、そうなっちゃうと、幾らこれから大臣が声をからしても、なかなかこういう提案ができない。今だからこそ、大臣が肝いりで、そういう場をつくろうじゃないかと。これはやはり公明党だからできるんじゃないですか。ぜひやっていただきたいなというふうに思います。
 それから次に、もう時間がありませんので急ぎたいと思いますが、少子化対策についてお聞きをしたいと思います。
 先般、新人口推計が出されまして、そのことによる厚生年金、国民年金への財政影響についてが発表されました。要は、子供が生まれないのです。出生数が思った以上に伸びない、それが年金財政の計算が狂ってきたということである。
 そこで、私は、これまでエンゼルプラン、少子化対策、いろいろと厚生労働省、政府もやってきました。その一つ一つについて、これが必ずしも効果が上がっているとは思えない。上がっていないからこそ、子供はますます減っていっているわけですね。これは本当に、百年後には日本の人口四千四百万になるというような話も現実化してきた。百年後にはここにいる人はほとんどいないわけですから、ほとんどじゃなくて全員いないんだけれども、しかし、四千四百万、大変なことですよ。
 ということは、この人口問題、少子化対策というのは本当に私は重要な問題だと思うのですが、大臣として、今何をやれば、この前、何か早く帰ってというような話をした、けさもテレビで見たのですが、アメリカであのテロ事件があったころ、みんなが早く帰ったのでしょう、何か今、出産ブームで、三、四割多いというようなことが報道されていました。そのことも含めてでいいですが、大臣、お考えを聞かせてください。
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
坂口国務大臣 少子化対策は、高齢化対策と比較しまして非常に難しい問題だと思う。高齢化対策は、ある程度財源をつければ可能になりますけれども、少子化対策は、財源が少ないのも少ないですが、財源をつけただけではよくならないという難しさがある。私たちの生活の仕方そのものをやはり変えていかないといけないというふうに思っています。
 そうした意味で、隗より始めよで、厚生労働省、十二時までも一時までも電気をつけておるようなことではいけないから、ひとつ早く家庭に帰ろう、家庭の人になろうということを先日も言ったわけでありますけれども、早く家に帰れば子供が産まれるとは、決して私も単純には思っているわけではございません。しかし、子供を迎えに行くにしても、何時に帰るかということがわかっていれば、それは、あなた、ひとつ帰りに子供を連れてきてくださいねということになるじゃないですか。だけれども、何時に帰るかわからぬ人に頼むわけにはいかないといったようなこともあって、やはり私たち、もう少しゆとりを持った生活をお互いにしながら、そして先進国と言われるようにならなければ、仕事中毒という形になっていたのではいけないということを私は主張しているわけでございます。そうした国づくりを基本的にしていくということがまず大事でありますから、それは日本の行き方全体にかかわってくる問題だというふうに思っている次第でございます。
 しかし、それはそれとしまして、当面の、保育所の待機児童をなくしていくとか、あるいは学童保育のところをしっかりしていくとかというようなことも行っていかなければならないわけでございますから、そうしたことも十分に行っていきたい。
 それから、時間がありませんからもう簡略しますが、お若い皆さん方が、いろいろと専門家の皆さんが面接をしていただいておりますけれども、そうしますと、子供を産んでも得なことはない、こう答えておみえになる方がかなりあるわけでございます。
 私も、損得勘定からいえば、時間もかかるし、金もかかるし、自分のすることはできないしということで、それはプラスにならないかもしれないけれども、しかし、もう少し複眼で、生涯を見て、長い目で見れば、子供を産むということがどれだけ幸福をもたらすことであるか、我が家にとっていかにそれが大事なことかということが御理解いただけるのではないかというふうに思っておりまして、もう少し複眼で物を見ていただくということが私は大事じゃないか、そうした運動も進めていく必要があると思っている次第でございます。
釘宮委員 私は、今の大臣の答弁を決して否定するわけじゃありませんが、大臣、やはり子供は、さっきお金をかけてもなかなかできない、少子化対策は難しいというような話がありましたが、私は、先般、不妊治療に対する保険適用について質問をしました。
 今、子供が欲しくても恵まれない夫婦というのが約一割おるんですよ。その人たちが、体外受精治療という治療を、昨年一年間で六万九千十九回、約七万回治療を受けている。その結果、一万二千人の子供が誕生しているんですよ。しかも、これは一回の治療費が大体五十万かかっている。これはこの前も私、話をしました。
 これは、五十万円、実は終わった後聞いて私もびっくりしたのですが、この委員会の委員の中にも実際にそれに挑戦している人がいる。その人の口から、高いよな、なかなかできないよな、そういう話を聞きました。国会議員の給料で高いよなと言っているようなものを、二十代の夫婦に出せということは大変なことですよ。それでも子供が欲しい。しかし授からない。だから、何回か挑戦したけれどもあきらめたと。運よく一回でいけばいいですよ。しかし、なかなかそうはならない。そう考えたら、大臣、これは保険適用という問題もあわせて、何か私はここにヒントがあるんじゃないかな、こういうふうに思いますが。
 宮路副大臣、副大臣は非常にそのことに関心を強く持たれておりましたから、ぜひ答弁を。
宮路副大臣 子はかすがいという言葉がありますように、子供は家庭の宝であるということを意味しておると思うんですが、家庭の宝にとどまらず、今はやはり地域社会の宝、そして国家の宝、こういうようなことで私はこの少子化対策、取り組んでいかなきゃならない、常々そう思っておるところであります。
 そういった見地から、不妊治療について今はどうなっているかということでありますが、御指摘のように、ホルモンの異常や子宮、卵管の機能障害、あるいは男性の場合の精管機能障害、こういったことについては、これらの不妊治療については既に保険の給付対象といたしておるわけでありますが、いわゆる人工授精や体外受精については、委員御指摘のように、今のところ保険の対象にもなっていないということであります。
 前の委員会で、委員の方からその点大臣に対して御質問がありまして、大臣は、今の我が国の健康保険は、健康保険じゃなくて疾病保険になっている、したがって、そういう面からこれについては限界が今日まであったんだろう、しかしながら、これは全体の診療報酬体系を今後見直していく中で、大きなエリアの中で、基本的に問題としてここのところも議論して整理していくべきであるという御答弁をされておられるわけであります。
 そういった観点を含めて、やはり先ほど申し上げたような子供の価値に対する、大きな大きな、大局的な見地に立って、何らかのやはり方策を講じていくべきであるというふうに、そういうテーマであるなと、私はこのように思っておるところであります。
釘宮委員 大変丁寧な答弁ありがとうございました。
 私は今、医療保険の審議をしています。先ほどから高齢者医療の問題、制度をどうするのか。これもやはり現役世代が支えないとできないんですね、大臣。それから年金もそうです。日本の年金制度というのは、現役世代の負担がなければ年金は払えないわけですから。ということは、そこの世代をどういうふうにこれから構築していくかということは、これはもう最大の課題ですよ。ある意味では、この健保法の議論はそこにまず原点があると言ってもおかしくない、私はそういうふうに思うんですね。
 しかも、そういうことを個人の自助努力でやらせるということよりも、なぜ、国がそういう大局に立って百年の計をやはりやるために今私は決断すべきときではないのかなというふうに思います。
 最後に大臣の答弁をお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 そこは改革に努力いたします。必ずいたします。
釘宮委員 どうもありがとうございました。
森委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。上田清司君。
上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。
 坂口厚生労働大臣には、毎日御苦労さまでございます。副大臣にも敬意を表したいと思います。
 早速ですが、坂口大臣、年金資金の運用について、私、厳しく追及をさせていただいておりましたが、一応念のために、通告はしておりませんが、年金資金運用基金における年金運用については、その後順調にいっておりますかどうか、ちゃんと報告を受けておられるかどうか。
坂口国務大臣 三カ月単位ぐらいでは受けておりますが、最近の状況はちょっと受けておりませんけれども、必ずしも順調にというわけには正直言っていっておりません。いい時期があったかと思いますと、また昨年の九月以降、非常に厳しくなった。若干、最近また持ち直しておりますけれども、そういう状況が続いておりまして、前回先生から御指摘を受けましたことは十分に心得てやっていきたいと思っております。
上田(清)委員 報告が来るようになっただけでも進歩ですね、以前は報告もしていなかったという状況でしたから。
 ただ、先般申し上げましたように、国際証券のチーフエコノミストによります、水野先生の話によれば、一昨年の十二月をもって、三十年の移動平均でも、優良株を運用しても十分運用益が出ないということが明らかになっておりますので、いま一度、その辺の研究については命令を出されておるか、検討するようにちゃんと命じておられるかどうかだけ確認させてください。
坂口国務大臣 今後のあり方も含めまして、全体、ことしいっぱいで結論を出すことにいたしております。今後この運用をどうしていくかということも含めて、今検討しているところでございます。
上田(清)委員 株式の運用については、今も申し上げましたように、少なくとも、国際証券の研究スタッフのトップであります水野先生が資料を駆使して平均値を出された形ですので、かなり信憑性が高いと思われますので、これは一日も早く、場合によっては運用の切りかえをやらないと、国民により負担を増すという形になっていくということを、改めて大臣、もう一度頭に入れていただきたい。
 全般的な検討もそれは必要でしょうけれども、これは今すぐできますから、一週間もあればできますから、それだけの頭脳のスタッフが厚生省にはいらっしゃる、あるいは財務省の皆さんともちゃんとタッグマッチ組んでやっていただきたいと思いますけれども、もう一度確認させてください。必ずやってください。
坂口国務大臣 一度、その先生の御指摘も十分見せていただきまして、至急にやりたいと思います。
上田(清)委員 ありがとうございます。
 それでは本題に入りますが、私の問題意識として、財政の均衡ももちろん大事ですが、何よりも、日本経済の主力というのは消費にある、経済の主力エンジンは個人消費にある。こういう論点からすると、可処分所得がふえる話と減る話というところでは、景気に与える影響、大変大きい。
 たまたま、先日、日本経済の底入れ宣言という形を出されたわけですが、若干数字を追っかけてきました。九〇年を一〇〇とすると、鉱工業生産指数が十四年の三月で九二・八、過去十四年間で最も経済が悪かった九四年の一月と同水準であります。ちなみに最低は、昨年の十一月の九〇・四。九二・八ですから、それよりも二・四%程度しか上がっておりません。この十四年間で生産指数がむちゃくちゃ下がったのが、実はこの直近の十五カ月で一六・四%。後ほど資料を配らせていただきますが。九〇年代のバブルの崩壊後の不況が三十二カ月で一四・四%ですから、落ちるところまで落ちて、その上での回復じゃないかというふうに私は思っておりますので、薄明かりが見えながらもそのままずるずると後退するようなイメージがありますが、大臣は、経済認識として、景気回復あるいは、景気回復とは言えません、少なくとも底入れ宣言というのは正しい見方かどうかということについてだけお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 この十年ぐらいを振り返ってみますと、大体三年、三年で少しずつ、循環的にと申しますか、景気が上向き始めるときがございますけれども、それが再びまたさまざまな要因で落下をしてしまうということを最近繰り返していると思っております。
 ことしまた、やはり三年目でございますので、そういう周期もあるというふうには私は思っておりますが、最近の、我々の厚生労働省が所管いたしますところの雇用状況等を見ました場合に、本日も四月分が明らかになったわけでございますけれども、完全失業率は五・二%で横ばい、そして、有効求人倍率だけは〇・〇一よくなったわけでございますけれども、非自発的失業者というのは依然としてふえている、よくなってきていないという状況がございまして、雇用の問題は後追いになるというふうに言われはしますものの、しかし、現状の数字から見ますと、まだ厳しい状況が続いているという認識の方がいいんではないかと私は思っている次第でございます。
上田(清)委員 必ずしも、底入れ宣言ということに関して認識をしておられるかどうかということについては余りお言葉がありませんでしたが、少なくとも、三年周期で確かに在庫調整とかが終わり、上向きになっているんですが、今、お手元にお配りをする、引っかかっているところですが、一という資料で、鉱工業生産指数の推移という形で、資料は、これは野村総研の植草先生のつくられた資料でありますが、いずれも、谷間になったときに、例えば九四年の二月に十五兆円を超える景気対策、あるいは九八年の十一月には二十三兆円を超える景気対策、また、九九年の十一月には十八兆円の景気対策をやって底上げを図っている。今日こういう、過去の二回、三回の極めて致命的な落ち込みに対する底上げ的な景気対策がなされているんでしょうか。
坂口国務大臣 全体の非常に厳しいこの財政状況の中で、今数字にありますように、過去二回の谷間のときに比較をいたしますと、財政出動その他のことは非常に少ないというふうに思います。
上田(清)委員 そうすると、今までの景気の落ち込みで底が、谷が見えた後に、在庫調整が終わりながら新しい経済が回復するということについて、従来とは違った形で、景気対策はさほど行っておらない、むしろ先般の補正予算の四兆円ぐらいで、プラス・マイナス・ゼロぐらいにしたところで辛うじて下りがとまった、こんなふうな認識の方が正しいんじゃないかと思いますけれども。
 どちらにしても、要するに、所得がふえない状況についてどんな心理的な、経済的な要因を持つかということについて大変大事にしなくてはいけない。
 今回の医療費の負担増という、これは国民にとってどんな心理的影響を与えているかということも見ていただきたいんですが、資料の二と三、これは内閣府の政府広報室から出されている直近の五月号なんですね。
 この五月号で、去年と比べて生活の向上感、同じようなものだという人たちは下がってきている、低下している。それから、あるいは、向上している、こういう見方をしたときに、皆さんは全部、全部とは言いませんけれども、多くの方々が生活レベルが低下していると。向上しているという人たちがどんどん下がって、低下をしているという人たちが上がってきている。
 同じように、この三、現在の生活に対する満足度。非常に働き盛り、三十歳から六十歳ぐらいまでの働き盛りの人たちが大変不満に思っている。何が不満なのか。景気に対するいら立ち、あるいはそうしたいろいろな意味での負担増、子供を抱えて、なおかつ住宅ローンも払うという、一番働いている人たちが一番困る状態になっている。御承知のとおり、自殺者の一番多い年齢が五十五歳から六十歳という、大黒柱であり働き盛りだ。
 こういう状態の中で、事実上の医療費の値上げにつながる今回の改正で、何が本当に国民生活にとってプラスになるんでしょうか。改めて原点中の原点について厚生大臣の御見解を承ります。
坂口国務大臣 確かに、現在のこの経済状況からいたしまして、多くの皆さん方が不安をお持ちいただいていることは私は事実と思いますし、今拝見いたしましたこのグラフの中にもそのことがよくあらわれているというふうに思います。
 さて、これから先の高齢化社会を迎えていくに当たりまして、医療にいたしましても年金にいたしましても、非常に厳しい状況の中に置かれていくわけでございますが、とりわけこの医療の問題は、高齢化がだんだん進んでいけばいくほど医療費が上がってくる。その中には、いわゆる高齢化率以外の、高齢化の人口がふえていくということ以外の要素もございまして、それらの面は抑えていかなければならないというふうに思いますが、高齢者の数がふえていく、その高齢者がふえることによって医療費等が増加する部分もあるわけでございます。大体年々八%ぐらい最近上がっておりまして、その中の半分はこの高齢者がふえることによるもの、それ以外のものが大体四%というふうに思っておりますが、そのぐらいな割合であることが事実でございます。
 そうした中で、今この負担率を上げるということは、まことに厳しいことではございますけれども、将来にわたりまして安定した制度をつくり上げていくという意味からいたしますと、ある程度御理解をいただかなければならないことではないか。現在もさることながら、将来ともに安心できる制度を維持していくというために御理解をいただかねばならないことだというふうに理解をしている次第でございます。
上田(清)委員 一口で言うと、金が足りないからという認識でよろしいんですか。このままいくと金が足りなくなる、だから、将来にわたって安定的な仕組みをつくるためには負担増をしなくてはいけないと。要は、金が足りないから、こういう考え方でよろしいですか。
坂口国務大臣 お金が足りないことはもう当然でございますけれども、金が足りないというだけではなくて、やはり制度そのものの見直しもあわせてやっていかなければならない、むだな面は省いていかなければならない。当然のことだというふうに思います。
 しかし、財政的な問題が一方でありますこと、これは高齢化が進みますからやむを得ない面も率直に言って私はあると思いますけれども、しかし、その中のすべてが高齢化のためかといえば、そうではありませんから、その面は限りなくひとつ、制限すべきものは制限をする、むだを省くべきものは省いていかなければならないというふうに思っております。
上田(清)委員 大臣、むだはどんなむだを省いたんですか。
坂口国務大臣 これからむだを省かなければならないわけでありまして、そのために今さまざまなことを考えております。
 この法律を出しますときにあわせてそれを出すことができなくて申しわけなかったわけでございますけれども、今進めております一つは、この八月までに一つは出すことであり、もう一つはことしいっぱいかかるというふうに思いますが、一つは、現在の保険制度、五千以上に分かれております保険制度、その中には三千人以下というまことに小さな保険もたくさんあるわけでございまして、そうした保険は事務負担というものも非常に大きくなってきておりますので、ここは統合化をさせていただいて、そして医療以外のところでの負担はできるだけ少なくさせていただきたいというふうに思っているわけでございます。
 それからもう一つ、これは厚生労働省自身にかかわることでございますけれども、例えばレセプト審査等におきましても、今まで一枚一枚に対しますレセプト審査の効率が非常に悪い、ここを改めていかなければならない。これは現在行っておりまして、この八月までにどういうふうにするかという最終結論を出したいというふうに思っている次第でございます。そうしたことをあわせてやっていく。
 また、診療報酬体系につきましても見直しをやらなければなりません。一部今回行ったところでございますけれども、もう少し基本に立ち返って診療報酬体系につきましては考えていかなければなりません。
 本日、午前中にも議論をしたところでございますけれども、診療報酬体系のいわゆる物差しというものを明確にして、なぜこれが高いのか、なぜこれが安いのかということを、医療を行う人にも、また患者の皆さん方にも理解をしていただけるような姿勢にしなければならないというふうに思っておりまして、そうした問題に今取り組んでいるところでございます。
上田(清)委員 私は、医療の抜本的改革というのが必要だというふうに思う者の一人でありますが、しかし、今大臣も言われましたむだを省くという話も極めて具体的でありません。
 では、統合することでどのくらい本当に事務負担が減るのか、レセプトの審査を、カード化するなりいろいろな形でどのぐらい費用が安くなるんだ、あるいは診療報酬体系の見直しでどのぐらい国民負担が減るんだという、具体的な話なんかまだどこにもないじゃないですか。
 私は、この後具体的な話を幾つもさせていただきますよ、あしたにでもできる話を。そういうことをやりながら抜本的な改革をするんだったらともかく、極めて取りやすいところから、それは取りやすいでしょう、給与からぽんと天引きすればいいんですから、基本的には。あるいは納税者の中からぽんと取り出すんですから、こんなに簡単な話はない。こういうことばかりやっていて、肝心のむだを省く作業というのはやったことがないじゃないですか。
 先ほども申し上げましたように、可処分所得が減れば減るほど消費をしなくなるんですよ。不景気の一つの要因を厚生省がつくっているじゃないですか。橋本元総理がやったじゃないですか、医療費の負担、二兆円上げた、消費税を三パーから五パーに上げた、そして減税をとめた。合わせて九兆円の増税になった。あの低落じゃないですか。そのおかげで十六兆円ぐらい金を使ったんですよ。九兆円ふやして十六兆円減らしたんですよ。同じようなことをやる可能性がありますよ。
 私は、ちょっときょうは幾つか今すぐできるむだの削減について申し上げます。
 資料の四、大臣、見てください。
 大臣も大変おつき合いの多い方だと思いますが、我々は、仲間やあるいは大事な友人が入院していて、見舞いに行きます。よく食事が出ています。朝は早くから出て、夜は早く終わる。四時ぐらいに終わったりしますね、夕食が。これもいかがかなと思いますけれども。大体冷たいのしか来ない。
 そういう三食が、実は、標準時千九百二十円で、ここに特別管理加算と書いてありますが、これは何のことかというと、温か料です。温めると二百円余分に取られるんですね。普通、温かいのが来るんです、学校の給食も。刑務所だって温かいのが来るんですよ。コンビニエンスはただで温めてくれるんですよ。一回のたびに七十円ぐらいの温か料を取っちゃうんですね。
 大体、千九百二十円なんか食べていると思いますか。私は、座談会で、五十人、三十人、百人ぐらいの人たちを相手に、毎週土日は平均して三カ所ぐらいやっておりますが、ついでに聞いていますよ。あなたが入院したときにどのぐらいの食事を食っていると思いますかと言ったら、みんな大体一食三百円だと言いますね。三食で千円以内だろうと。ところが、これは千九百二十円と書いてありますね。
 資料の五を見てください。大臣も余り気づかなかったと思います。私も知りませんでした。初めて勉強したんですが、資料の五です。
 この千九百二十円の内訳がこんなふうになっているんですね。入院時の食事療養費、これですね。標準負担額、これは個人が負担する分です。所得によって若干違います。
 これは政府参考人にお伺いします。この標準負担額という積算根拠はどこから出てきたんでしょうか。
大塚政府参考人 御指摘の入院時食事療養費でございますけれども、入院中の食事を提供するための費用ということになるわけでございますが、基本的な考え方といたしましては、食材費、材料でございます、プラス、管理をする栄養士さんや、調理を病院内でするというのが基本でございますから、調理師、調理に携わる人たち、あるいは配ぜん、配食に従事する人方、そうした給食にかかわる職員の労務や技術、これらを総合的に評価をしたもの、こういうことになるわけでございます。
 それぞれの、食材費につきましては基本的には患者に御負担をいただくということですから、おおむね七百八十円、そのほかの部分が、いわばトータルとしての人件費その他のコスト、こういう考え方で整理されているわけでございます。
上田(清)委員 そうすると、患者には食材費の七百八十円を負担していただいて、そして、千九百二十円から引いた差し引きの一千百四十円の部分を、病院側の人件費だとか施設費だとか光熱費、こういう考え方に立っているわけですね。
 この積算根拠というのはきちっと出たんですか、千百四十円というのは。雑駁に言っているんですか。それとも、きちっとした数字を出しているんですか。
大塚政府参考人 この千九百二十円の積み上げが、食材費、人件費、例えば管理栄養士さんの人件費相当、そういう積み上げではございません。
 従来の、といいましても少し前のことでございますけれども、最近でこそ少し外注というのがふえてまいりましたが、従来、病院みずから調理をし提供するというのが基本で、むしろそれを守るというような時期がございましたが、そういうところの現状、状況、病院における実態などを勘案いたしまして、千九百二十円。少し、しばらく前に設定された金額でございますが、そういう細かい積み上げ、そういう意味ではございません。
上田(清)委員 細かい積み上げじゃない。大事な国民の税金を使うのに、細かい積算根拠もしないままに値段をつけるんですか。
 大臣、あなたの部下はそんなことをやっているそうですよ。まさか、今回の改正の試算だとかそういうのも、そういう細かい積算根拠がないままにやったりしていないでしょうね。大丈夫ですか、大臣。
大塚政府参考人 私の、細かい積み上げではないと申し上げた答弁の趣旨でございますけれども、それは、現実には診療報酬体系に確かに絡む問題でございます。
 現在の診療報酬体系、診療報酬の点数のつけ方でございますが、もちろん、物によりましては、特に最近におきますように技術と物の分離という流れの中で、物でカウントできるものにつきましては、当然そのコストに見合うようにという流れがございますが、もう一方の、一つの診療報酬の性格は、いわば診療報酬の、医療費の配分の係数でもあるわけでございます。一つの要素といたしまして、トータルといたしまして、医療機関がそれぞれの機能に応じて、基本的には、標準的な医療機関が運営できるようにという総額、総枠の経費を保障するといいましょうか、カウントするという要素がどうしても必要でございます。
 一方で、医療機関のあらゆる行為をすべて積み上げるということは現実にはできませんので、一種の配分係数としての要素を点数は持っております。
 したがいまして、細かい積み上げでないと申し上げましたのは、どちらかというと後者のことでございまして、これらを全部勘案いたしまして、最終的には医療機関の経営が、標準的な運営をしていただければ運営していけるかどうかというところが最終的な判断。そういう意味で、すべての費目について一つ一つのコストが積み上がっているかというと、そうではない。また、それがある意味では今後の診療報酬体系のあり方の議論の一つの論点であろうとは思っております。
上田(清)委員 一応、大臣、資料の六を見てください。
 これは、病院食の平均的なものと、刑務所の食事と、陸上自衛隊の食事と、公立中学校の給食。これは公立中学校は一食二百六十五円ですので、とりあえず三掛けしました、ちょっと水準を合わせるために。刑務所では、成人は五百三十一円、少年は六百十一円。陸上自衛隊は八百八十五円。私の議員会館の女性秘書は元婦人自衛官なもので、ちゃんと飯が出ていたかどうかと言ったら、十分飯は出ていたそうですけれども。
 法務省の方にお伺いしますが、これは随分お金が少ないので、栄養失調になったり病気になったりしていないでしょうね。どうでしょうか。
山下政府参考人 お答えいたします。
 委員のおっしゃいましたように、刑務所において受刑者に給与しております食事の食費は、おっしゃいましたように、成人受刑者の場合が五百三十一円、少年受刑者の場合が六百十一円でございますが、実は、この食費は食材の費用でございまして、その他必要な費用は、まだ調理に必要な費用はあるわけでございますが、それは含まれておりません。それをまずお断りさせていただきたいと思います。
 ただ、それにいたしましても少ない予算で調理を賄うわけでございますが、できるだけ安く物を仕入れる、刑務所は大量調達が可能でございますので、そういう形で安い形での食材を見つけるということに一つは工夫しておりますし、それから、献立の作成に当たりましても、あるいは調理の仕方にしましても、むだが出ないように、栄養素が逃げないように、そういった工夫をして、必要な栄養量が確保される食事を給与するように努力をいたしております。
 それで健康が維持されているかということでございますが、受刑者もかなりの者が医療を受けたりあるいは投薬を受けたりする者はおりますけれども、それが刑務所の中で発病したという者ももちろんおりますが、外から施設へ入ってくるときに病気を既に持っていたという人が相当数おるわけでございまして、少なくとも、私どもの方で準備している食事自体が直接の原因になって発病するというようなことはないと思います。
 健康管理については、いろいろな方法、手だてを講じて努力しているところでございます。
上田(清)委員 ありがとうございます。審議官、どうぞお帰りください。恐縮です。
 一般的には刑務所に行くと糖尿病も治るというぐらい健康になるということは聞いております、大半の方が健康になって帰ってくると。つまり、たくさん食い過ぎているというのが現況だ、こんなふうに私も情報を聞いておりますので、今度は河村たかしさんと一緒に刑務所の方にどんな飯を食っているか一度見学に……(発言する者あり)そのまま入っちゃうかもしれない、そんな余計なことを言っちゃいけないね。
 それはともかく、もとに戻りますが、これは参考人、篠崎さんですか、聞きたいんですけれども、なぜこれは、最初に、標準負担額、そして、この入院時における食事療養費の総枠で千九百二十円、冷たいものを出すことを前提にして、温かい料金二百円取るというのはどういう理屈からきたんでしょうか。普通は温かいのを出すのが世の中の仕組みなんですけれども、病院ではなぜ冷たいものを出すんですか。何かこれは健康にいいんですか、冷たければ。
大塚政府参考人 かつて、まさに病院の給食は大変、今のお話ではございませんが、時間が非常に通常の生活とずれている、それから冷たい、もちろんうまくないということも含めまして、非常に議論になったことがございました。
 私の感じでは随分改善されてきていると思いますけれども、今の御指摘の点の、加算の件でございますが、加算の条件は、基本的には管理栄養士さんを置いていただくというのが中心でございまして、ただ、それだけではだめでございまして、適時適温で出す、あわせて加算の対象にしておるということ。両方必要であるということで、どちらかといいますと、金目という意味では管理栄養士さんを配置することによる加算。ただ、加算する以上は当然適時適温で出してほしい、そういう趣旨に私は考えているところでございます。
上田(清)委員 何かわけのわからぬ答弁でした、はっきり言って。何のことかわかりませんでした。
 なぜ冷たいので出しているんだ、なぜそれが標準で、温かいのが加算かというふうに。だから、私が言うには冷たい方が健康にいいのかどうかということを聞いているんですね。普通温かいのを我々は食べます、食堂でもどこでも。学校の給食でも温かいのが出ます。多分、確認していませんけれども、刑務所でも温かいのが出ているはずです、陸上自衛隊でも温かいのが出ている、学校でも温かいのが出ている。
 食べ物というのは、原則温かいものを食べる。なぜわざわざ体が冷えるようなことを標準にするんですか、それを聞いているんですよ。
大塚政府参考人 冷たいものを出す、冷たい食事を出すのが標準だということではもちろんございません。極力といいますか、できるだけ普通の御家庭での状況に近い形で、時間にいたしましても、温度、温度といいましょうか温かさにいたしましても、それはその努力をしていただく。
 私が申し上げましたのは、管理栄養士さんを置けば加算になるわけですが、それだけではだめですよ、少なくとも。それで、なおかつ冷たいような食事を出しておるようでは加算しません。そういう意味での基準というふうになっているわけでございまして、冷たい食事を出すのが標準だということでは毛頭ございません。
上田(清)委員 資料の四にも書いてありますように、「管理栄養士による食事療養、適時・適温の食事療養等の要件を満たす場合に加算」「二百円」、そういうふうに言っていますけれども、要するに、温め料金ですよ、これは、理屈抜きに現場では。管理栄養士がむきになって、一人一人の患者が何度だ何度だとはかったりしていませんよ。
 インチキじゃないですか、全くインチキじゃないですか、こういうことは。一人一人温度をはかっていますか、出すときに。だったら二百円取ってもいいでしょう。インチキじゃないですか。温かいのを出すのが当たり前、でも冷めたのを出している。何とか温かいのが出ないんですかと言ったら、二百円出せば温かくしてあげますよと言う。現場ではそう言っているじゃないですか。現場、行ったことないんですか。うそばかりついちゃだめだよ。
大塚政府参考人 現場は、私も全く行ったことがないと言うつもりはございませんけれども、二百円出さないと温かいものを出さない、そういうようなことは私はないと思っております。
 随分、かつての大変そういう御批判が強い時期がございました。それぞれ御努力いただいて、もちろんすべてというわけにはまいりませんが、かなり改善してきていると私は承知をしておりますけれども。確かに、すべてまだ、行き渡っているかどうか、その問題はなお現在もあろうかとは思いますけれども、改善の方向にあるとは思っているところでございます。
上田(清)委員 要するに、この二百円の積算がないんですよ、実質的には。一人一人に適温だとか加熱だとか、適時適温だなんて言ってやっていませんよ、現場は。何の根拠もないんですよ、この二百円は。
 それは、温かい食事が最初から来るところもありますよ、そこそこ。最初から冷たい、冷えたのが来るところもあります。それはやはり病院内部の仕組みとかもありますから、非常に距離が長いところ、集中調理室というかセンターですね、センターから遠ければやはり冷めてきますし、あるいはいろいろな事情の中で冷めたりする場合もあるでしょう。
 しかし、間違いなく温かいのを食べたい、こういう話になって、わざわざ管理栄養士が一人一人はかって適温適時にやっているわけでも何でもないですよ。それだけはわかるでしょう。だったら、何でやめないんですか、こういうのは。
 こういうのを、大臣、早くやめさせなくちゃいけないんですよ、実態に合っていないのを。こういうのを猫ばばというんですよ、普通、わけのわからないお金を取っちゃうというのを。そう思いませんか、大臣。御答弁ください。こういうところからむだをやめなくちゃいけないんですよ。
坂口国務大臣 この診療報酬の中にはいろいろの問題がございまして、今御指摘のような点もございますし、ここにはさまざまな不満がある。それは私もいろいろなことを聞いているわけでございまして、それを、その中には、今御指摘になりましたように、やはりコストというものの意識が十分に入っていない、コストの積み上げというものがない。きょうも午前中に釘宮先生にもお答えを申し上げたんですが、私はこのコスト、事実、もちろん人件費もあるでしょう、材料費もあるでしょう、そうしたコストが一つのやはりメルクマールになる。それに加えて、病院ですから、それは重症の人もおりますから、同じものでも食べやすいように、特にのどへ通りやすいようにしなきゃならない、そういう重症度によりますところのものもあるでしょう。
 だから、重症度、コスト、そしてどれだけ時間がかかるかという時間、そうしたものを、その三つをもう一つ物差しにして、もう一度診療報酬体系というものを組み直すということが大事だと実は私思っておりまして、今それを進めさせていただいているところでございます。
 きょう御指摘になりましたこの問題も、コストの積み上げということをきちっとやっていないということがやはり一つの問題になっている。私も実際に病院経営したことはありませんから、おりましたけれども経営したことはないものですから、大体どれだけかかるかどうかを実際やってみたことはございませんけれども、しかし、今こうして幾つかの刑務所や中学校やあるいは自衛隊と比較をしてみますと、材料費なら材料費の積み上げというものがどれだけ行われていたかということは大変疑問に思います。人件費がほかは入っていないし、病院の場合には人件費も入っているのかもしれませんけれども、それにしても少し差があり過ぎるという印象を私も持ちました。
上田(清)委員 大臣の思われるとおりです。学校とか自衛隊とか刑務所、必ずしも、病院の費用よりもはるかに安くていいものを食べています、一般的に言えば。
 それで、なぜそういう実態になっているかが七の資料なんです。七百八十円使っていないという、それから、一千百四十円の積み上げは必ずしも積算根拠は明らかでないということを明らかにしたのがこの七の資料ですよ。大臣も見てください。ちゃんと学習してくださいよ。そして、指示してくださいよ。ぼうっとしていちゃだめですからね。
 いいですか、これはちゃんとそれなりの研究機関や、そういったところが統計を出しているんですよ。外部に委託して、幾ら委託料を払っているか、これははっきりしているんですよ。それぞれ、例えば平成八年の健康・福祉関連サービス統計調査に基づく推計値で、給食の差益が四百五十三円、日本工業新聞、大和総研の推計値で七百二十円、さくら総合研究所のヒアリングに基づく実数値で八百二十円、それから日経ヘルスケア掲載記事に基づく推計値で四百九十七円。いずれも五百円から八百円ぐらい余分に払っているという話になっちゃうんですよ。外部委託をしたらこれだけ余っているということなんですよ。これは、病院にそのままお金が入っているということですよ。この分はちゃんと請求していますから。いやこれだけ安くつきましたからお返ししますなんという病院は聞いたことがないからね。あるんだったら教えてください。
 ちなみに、坂口大臣、本人が三割負担になることによって全体の額はどのくらいふえるんですか。
大塚政府参考人 患者負担という御趣旨でございましょう。今回、さまざまな制度改正がございますけれども、三割負担のところだけ抜き出してあえて申し上げますと、一人当たりの患者負担は年間で約五千円ということになります。ただ、さまざまな改正の込みでございます。例えば、薬剤費の別途負担、これを廃止するというようなこと。これは軽減になりますので、例えばそれを差し引きいたしますと、四千円の年間増、こういう試算になるわけでございます。
上田(清)委員 大臣、お聞きのとおりです。総額で三千九百億、単年度でね。単年度で三千九百億、このくらいすぐ出てくるじゃないですか。そのすぐ出てくる話が資料八なんですよ。見てください。三千九百億、もう心配しなくていい。すぐ凍結しましょう、これは。やめましょう。法案を下げれば時間が大分少なくて済みますから、もうやめてあしたから審議しない、廃案、そうすればもう楽ですからね。三千九百億ぐらいすぐ私が出してあげますから。よろしいですか。
 先ほどのさくら総合研究所のヒアリングに基づく実数値と、それから厚生労働省発表の平成十三年二月の病院報告を使用しまして積算をしましたら、このようになります。患者数を平均値で出していくと、日数と、年間のいわば食費というんでしょうか、医療機関の食費が一兆一千三百六十億ぐらいになる、こういう数値であります。この分、委託をしておりまして、委託をしたと推計しますと、このような七千億ぐらいの数値が出てきて、そしてこの直接経費を引いていくと、大体三千億ぐらいの数字が出てまいります。直接的には、直接経費分を抜けば約四千億ぐらい出てまいりますし、この直接経費分もまた含めれば三千億ぐらいむだがある、こんなふうな判断をすることができます。
 そこで、大臣、このように全部の病院が委託しているわけではありません、もちろん。直営でやっているところもあります。しかし、仮定計算としてこういう形をとれば三千億ぐらいの費用はすぐ出てくる、こういう形になりますが、どうでしょうか、この給食の差益にメスを入れる決意はありませんか。
坂口国務大臣 今お出しをいただきました数字、今初めて拝見をいたしましたので、この中で人件費等が含まれているのかどうか、そうしたこともちょっと、十分に今見ておりませんが。いずれにいたしましても、食費等につきましては、先ほど申しましたように、そうした積み上げが十分にできているかどうかということは確かにあるというふうに思います。
 したがいまして、そうした病院食なるものが、それはそれ相応の素材もやはり選ばなきゃならないとは思いますけれども、しかし、それにしましても、それはどれだけがそこに大体平均して要るものかというのはわかるわけでありますから、それは計算をすれば当然出てくるわけでございますので、一度調査をしてみたいと思います。
上田(清)委員 いつまでにやりますか。
大塚政府参考人 大臣と御相談を申し上げまして、御指示を賜って実施をいたしますが、委託の状況が大分進んでまいってきておりますから、委託に関連する調査というのは、業者を対象にできますので、そう遠くない時期に工夫をしてみたいと考えており、よく大臣と御相談をし、その指示を受けて実施したいと思っております。
上田(清)委員 大臣、先ほどから申し上げていますように、極めて不信感を持っているんですよ、入院患者というのは。大したものは出なくて、冷たくて、おいしくなくて。一説によれば、病院食を食べずに捨てている分が三千億という話もありますし、三百億という話もあります。今出した試算では三百億を出しておりますけれども、一説によると三千億という話もあります。そうすると、相当なむだが、この一兆一千億、一兆二千億近い病院食に関連して、場合によっては六千億ぐらい有効に活用されていない費用だということになってしまいます。
 そういう意味でも、ぜひこれは、むだを省くという話ですけれども、一番国民にとってわかりやすい。わかりやすいことです。これは、調査します、大臣の指示を伺いながらということでありますが、大臣が指示をされれば早目にできるような話も事務方のニュアンスに伝わりましたけれども、大臣はどのような御見解でこういう問題を本当に処理されるのか。もう坂口大臣の腹次第じゃないですか、いろいろなこと。私は、どうも、坂口先生、大臣、日ごろから敬愛しておりましたけれども、歯切れが悪いんですよ。何か歯切れが悪いんですよ。いつ、何を、どうするということがはっきりしないじゃないですか。はっきりさせてください。
坂口国務大臣 捨てているのがどれだけあるとか、それは一つ別にいたしまして、大体材料費がどうなっているかというのはそんなに難しい話ではありませんから、どういうスケジュールで、どういう計画表をつくってやるかということさえ決めればそれはそんなに難しい話じゃございませんから、まあ四、五カ月あればでき上がる問題だというふうに、全国で、各地域でどういうふうな単位でとるかというようなことも決めてやれば、それは遅くとも四、五カ月の間にはできるというふうに思います。
上田(清)委員 四、五カ月ぐらいで一つの形を出していただけるという御答弁をいただきましたので、四、五カ月後にまた御質問させていただきます、できたかどうかの確認を。
 それで、くしくもWHO、国際保健機構による保健システム評価の結果というもので、九に資料を出させていただいております。日本に対するこの保健システムの評価というのは極めて高いものがあります。もちろん長寿世界国ですから、長く生きているという、このこと自体が大変すばらしいことですから。先ほどから高齢化、高齢化と言われておりますが、あたかもマイナスみたいなイメージですけれども、そうではありません。人生の幸せを確認できる、これが長く続くということはいいことだということですから。
 しかも、土方作業はどんどんなくなっていくんですから。頭で勝負する時代ですから、より高齢者が活躍する場というのはたくさんあるわけでありまして、それが何か負担が重くなるからどうのこうのという話がちょこちょこ見え隠れするようなイメージがこの健保法の改正問題に関しても出てきておりますけれども、そうじゃなくて、やはり高齢者の皆さんに明るい社会を展望させるような仕組みをどうつくるか、そのことが大事であって、何かお金がかかりますねというようなイメージがどんどん出ていますけれども、ぴんころりを重点に考えるような仕組みを、ぴんぴんしていてころっと死ぬ、そういう仕掛けをつくる、そういう仕組みを本当はもっと議論しなくちゃいけないんですが、すぐ負担の話にしてしまうんですよ、皆さんは。ぴんころというこのタームをしっかり意識して、どうすればいいんだということを考えればいいんですよ。長野県なんかは普通の医療費の十分の一で済んでいる、普通の県の平均よりも。何でぴんころなんだ、あの県は。そういうデータをきちっと把握されているのかどうか。
 それはちょっとともかく、WHOのこれを見てもわかりますように、到達度、これは日本は一位だ、しかし効率性は十位だ、大体こんなところじゃないかと。先ほど申し上げたところなんですね、大臣がいみじくも最初に言われたように、むだを省く、省かなければならない。しかし、気持ちは出ているけれども中身は出ていない。具体的にどのむだを省くのだとなったら、もじょもじょもじょといった形で、とりあえず財政を勘案して国民に負担を押しつけるというのがこの法案の骨子なんですよ、一口で言えば。どんな理屈をつけても、むだは省かない、根本的な改革しない、とりあえず財政の均衡を図るために国民の負担だけはふやしましょうと。これが基本の法案じゃないですか。どこがいいんですか。よく法案を出せますね、こういう話を。
 ともかく大臣、効率性についてはよくないと言っているんですよね。不安をあおる前にぴしっとしたらどうですか、大臣。
 それで、さらに、このむだの話であります。
 監査の状態を確認させていただきました。「平成十二年度における保険医療機関等の指導及び監査の実施状況について」という文書が今手元にあります。これで、昨年十二年度に監査を実施した保険医療機関の数が六十二件で保険医等が七十五人、これを監査したと。医科が三十四件で歯科が二十五件で薬局が三件で合計六十二件、保険医療機関の監査をした。そして、保険医等の監査を七十五人やったと。
 その結果、返還金額が二十七億一千百四十三万円、六十二件監査をしたら二十七億戻ってきた。これはミスもあるでしょう。うっかりもあるでしょう。あるいはまた、インチキもあるでしょう。ともあれ、事実として厚生労働省からいただいた数字にそういう監査した部分がありますが、これは総数からすると〇・〇三%、こういう割合でありまして、〇・〇三%監査したら二十七億返還金が来たと。もし一〇〇%したら幾らになるか。六兆円になるということになってきまして、まじめに一〇〇%監査したら六兆円は戻ってくるだろうと。案分比例でいきますと、案分比例ですよ、単純に仮定計算ですから事実と違います。(発言する者あり)むちゃくちゃじゃないでしょう。ある程度比例案分できるでしょう、物事というのは。統計だってそうでしょう。三百ぐらいの世論調査で通るか通らないか決めちゃうんだから。一千ぐらいでしょう。大臣、そうでしょう。二千ぐらいの新聞社のサンプルで支持率が何だ何だと決めちゃうんですよ。みんなそれを信じているじゃないですか、そこそこ。たった二千ですよ、一億二千万、三千万いて。そうでしょう。
 だから、あながち、この〇・〇三%で二十七億戻ってくるんだったら、案分比例で仮定計算すれば六兆円戻ってくるんだ、あと十倍監査体制をふやせば、二十七億じゃなくて、二百七十億戻ってくるかもしれない、あと百倍戻せば、今回の健保法の改正は要らない、こういう話にもなってくるでしょう。
 つまり、大した監査をやっていないということじゃないですか。たった六十二件ですからね。会計検査院だってもっとやっているじゃないですか。これは何でこんな六十二件と少ないんですか。
大塚政府参考人 現在の指導、監査の仕組みについて御説明を申し上げなければならないと思うわけでございますが。
 ただいま監査の件を取り上げられましたけれども、指導、監査、指導を含めまして全体のシステムを申し上げますと、簡単に申し上げますが、基本的には集団的個別指導というような形で、一定の対象にまず指導いたします。それとは別個に、さまざまな情報提供やらあるいは業務の過程で知り得たことから、一定のいわば調査、指導する必要性があるものを絞り込みまして、個別指導というのを実施いたします。
 さらに、その中からいわば非常に不正あるいは不当の疑いが濃いもの、平たい言葉で言えば濃いもの、これを絞り込みまして、これは権限を持って監査をして、不正があれば医療機関の取り消し処分、もちろん不正もしくは不当な請求があればこれを返還させる、そういう仕組みでございますから、ただいまお示しになりました最後の監査の部分を全般に広げれば、これは今の仕組みから考えましても、現状から考えましても、現実から考えましても、率直に申し上げましてあり得る話ではないと思います。こういった、ただいま私ども申し上げましたような手順と仕組みで監査、指導を実施しております。
 また、もちろん監査、指導の体制の強化というのも必要ではありますけれども、そうはいいましても現状の厳しい状況の中で、現状の職員でできる限りの効率的な監査を実施する、こういう観点で懸命に取り組んでいるというところでございます。
上田(清)委員 医療機関に皆さんや各県の厚生関係の人たちが事務局長になって天下っているから余りやらないんじゃないか、こんなふうに我々は思います、基本的に。それから、医師会から一千万、二千万もらっている人たちがごろごろいますけれども、だからきちっとこういうことについて政府に対して物が言えないんじゃないか、私はそんなふうに思いますよ。
 資料十、大臣、これはもう名前も出ていますから多分何らかの形で厚生省の方で処分されたと思いますけれども、これはフライデーが二〇〇一年の八月三十一日号ですっぱ抜いたものです。三軒茶屋病院というのは、医療用の酸素を、単価五百三十円で厚生省側に要求して、詐取しているんですよ。実際は、三百三十七円を引いた額なんですよ。引いた額の数字で、実際は百九十三円で仕入れて、三百三十七円を積み上げて、裏金を積み立てていたんですよ。この三百三十七円というのは、裏金を積み立てている額であって、本当に払っている額はたった百九十三円なんだ。こういうことをいっぱい許しているんですよ、厚生省の周辺で。こういうことを断ち切らない限り、だめなんですよ、本当に。
 大臣は本当に人格者で立派な方でありますけれども、天下りを許しているからこういうことになっちゃうんですよ。どうですか。もう時間が参りましたから、天下り禁止法に、どうでしょう大臣、賛成してもらえませんか。どうでしょう。
坂口国務大臣 天下りにつきましては、その担当しているところに対しまして、いわゆる現職で担当しておりましたところに天下ることは、これは慎むべき、禁止すべきだと私も思っております。したがいまして、先般さまざまな問題がございましたときにも、そのように職員に言っているところでございます。
上田(清)委員 はい、時間が参りました。国税庁の方にも来ていただきましたけれども、申しわけありません、若干時間が不足しました。
 とにかく、医療法人が、六千のうちに四千、関連のMSO法人、子会社というのでしょうか、ファミリー企業がくっついています。そこで、高いものをそこをトンネルにして、病院は赤字になる、しかし関連企業は黒字になっていく、こういう仕組みをあちこちでつくっておりますから、連結決算をぜひ研究していただきたい、こんなことを申し上げまして、質疑を終わります。
 いずれにしても、今回の健保法に関しては、余りにも患者に負担を押しつける、非常に、むだを省くこともなく、抜本的改革をすることもなく、将来の展望も一切見えない極めて安直な改革案だということを最後に申し上げて、終わります。ありがとうございました。
森委員長 次に、古川元久君。
古川委員 民主党の古川元久でございます。久しぶりに厚生労働委員会の方で質問させていただきます。
 同僚の上田委員からもお話ありましたけれども、今議論になっている健保法の改正案、これは、要は、医療に係る財源を、お金をどういう形で分担するのか、そういう話であるわけなのでありますけれども、そもそもその前提となっている医療のあり方そのものについて、やはり私は、今国民の間で非常に不信感が募っているんじゃないか、そんなふうに思います。今の上田議員の指摘もあったわけでありますけれども。
 また、国民からしますと、特に患者の立場に立ってみますと、多発しております医療事故とか医療過誤によって非常に今の医療に対しての国民の信頼というものが損なわれている。そのことは厚生労働省の方も認識をしておられることだと思いますけれども、そういうものを踏まえて、事故防止のためのシステムづくりが必要だ、そういう認識のもとに、医療安全対策検討会議において検討がなされて、ついこの前の四月十七日に医療安全推進総合対策というのが発表されております。
 その中でも、この医療安全対策というものを医療従事者個人の問題ではなく医療システム全体の問題としてとらえ、体系的に実施することが重要だ、そういうふうに述べられておるわけなんですけれども、では、この医療システム全体の問題としてどのようにとらえているのかなとこの報告書の中を見てみますと、医療事故などが起きた場合には、これは、院内での報告をせよと、その院内報告を求めるだけで、外にちゃんと報告しろという話じゃないわけですね。
 となると、この基本的考え方は、これは、各病院内で医療事故などがあった場合には、それも報告を、病院の中につくられた安全管理委員会でそのことが報告されて、その中で、その安全管理委員会の方で、どう対処するか、また、二度とこういうことが起こらないようにするにはどういう措置をとったらいいか、そういうことを検討して、それで対策を打つ、そういう基本的な考えになっているようなんですが、そう考えると、これはやはり、医療従事者個人、各病院内のその中に任されているというような感じがするわけなんですね。
 ですから、その点を少し最初にお伺いしたいと思うんですけれども、少し具体的な中身になりますけれども、そもそも、こういう院内で報告された事例というものは、病院内でだれがどういう形で分析をするというふうに認識しておられるんですか。
篠崎政府参考人 今回の報告書の中で、病院に安全管理委員会をつくっていただくことになっております。そこに、院内報告制度によりまして事例が報告されてくるわけでありますが、その各医療機関におきましては、専任というわけではないのかもしれませんが、そこに配置されておりますいわゆるリスクマネジャーなどが、その背景や原因について適切に分析を行っていくという考え方であります。
 それからもう一つは、厚生労働省といたしまして、各医療機関から収集をいたしました、直近では二百七十三の協力医療機関から、いわゆる冷やり、はっと事例、事故には至らなかったけれども、冷やりとした、あるいははっとしたというような事例を報告していただきまして、約三カ月ごとに報告をしていただいておりますが、その原因やその改善方策ということにつきまして、専門家を入れて分析をしていただきます。分析のコメントをつけまして、それを参考としていただけるように全国の医療機関に提供しているというような状況でございます。
古川委員 今御答弁ありましたけれども、専任ではないかもしれないがと。多分専任じゃないでしょうね、病院どこもそんなに人が余っているわけじゃありませんし。
 大変に、非常に忙しい中で、そういう中で、そのリスクマネジャーは本当に十分な、ちゃんと報告を分析して、そして二度とそういうことが起こらないような、そういうところの対策をとるところまでちゃんと責任を持ってやれる、そういう仕組みが本当にできるんですか。
篠崎政府参考人 今回の中では、特定機能病院と臨床研修病院につきましては、そのための管理部門、そして管理責任者を置いていただくようになっております。ほかの医療機関につきましては、そういう役割を持っていただく人を育成していくということでございます。
 現在、幾つかの団体でこのリスクマネジャー研修というようなものが行われておりまして、これも始まって間がないわけでございますが、ある団体が行っておりますところでは、第一期で五百十人程度が修了、第二期の講座では七百二十三人が受講中というようなことでございまして、このようなリスクマネジャーの養成についても今後充実をしていきたいと考えております。
古川委員 何か答弁を聞いておりますと、のんびりしているような感じがするんですが、実際に医療事故や医療過誤で被害を受けた患者とかその家族の人たちにしてみたら、体制が整っていませんでしたからごめんなさいと言えば済む話じゃないわけですよね。
 今のようなお話の、大病院、大きなところ、そういうところについてはちゃんと専任を置くようにしているとか言いますけれども、小さい病院だったら、そういう人が置かれていなかったら、リスクは高いということになってしまうんじゃないですか。それに、今のような、研修にも努めておりますと。その程度の悠長なことで、これだけ続発する医療事故や医療過誤に対して本当に危機感を持っているのか。
 アメリカなどでは、医療事故が起きている、これは医療事故で亡くなっている人が交通事故で亡くなっている人よりも多い、そういうような推計が出たりして、大統領が、これはもう国を挙げてやらなきゃいけないということで、医療事故で亡くなるそういう人の数を五年で半減しようとか、そういうような全国的な運動につなげているにもかかわらず、我が国において、これだけよくマスコミ等でも医療事故、医療過誤が報道されている中で、そんなのんびりしたことでいいんですか。大臣、どう思いますか。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
坂口国務大臣 おっしゃるように、医療事故というのは、完全な医療事故もございますし、それからいわゆる冷やり、はっとといったようなものもあるわけでございまして、先般も重立った病院のそうした一年間の集計の数字を見せていただいたんですが、非常に多い病院と非常に少ない病院がある。私はそれを拝見して、非常に多い病院というのは的確にやっているんだろうと思うんです。どんな小さな問題も逃さずにやはりチェックしようという体制ができている病院だと思う。むしろ少ない病院に私は問題があるだろうというふうに思って先日も見たわけでございますけれども、これは正直申しましてかなり格差がございまして、何とかして減らさなきゃならないという、必死になって取り組んでいる病院もふえてきていることは事実でございます。
 しかし、やっていないところもあるということでございますので、それはいけないので、それを押しなべてやはりやるようにしなきゃいけない。だから、一つの見本を示して、そしてどの病院もやはり取り組んでもらうようにしなければいけないということで、先日来、そのマニュアルをつくって、できるだけ多くの皆さんにそれに参加をしてもらっていることをスタートしているところでございます。徹底的にこのことはやりまして、やはり入院をされる患者の皆さん方が本当に安心をしていただけるようにしなければならないというふうに思っております。
 それは病院内の問題だけではございませんで、やはり薬の製造ですとか、あるいは医療機器の問題もあると思います。非常に間違いやすいような機器をつくっているというところもございますし、お薬でも名前が似ている、そしていわゆる薬の形や色合いまでもそっくりそのままというようなのがございまして、これらは非常に間違いやすい形になっておりますから、そうしたこともやはりなくしていかなければならない。
 そうした周辺の問題もございますけれども、いずれにいたしましても病院内の体制の問題でございますから、やはり理事長なり院長なりが責任を持ってこれはお願いをしなきゃならない、そういうふうに思っております。
古川委員 今大臣いみじくも御自分でお話しされましたけれども、病院によってすごく格差があるということを言われましたよね。
 この前厚生労働省から示されたといいますか、この検討会議から示された報告書に従ったものでは、マニュアルを当てにしてこれをやってくれといいますけれども、それが本当にやられているかどうか、そのことがちゃんと担保される保証は全然ないわけですよね。これで責任を持ってやってくれといっても、今までの例だって、では今までは無責任だったのかといったら、そうじゃないと思いますよね。しかし、やはり今までのような仕組みでは、ただ病院に任せて、そこの中でちゃんとチェックする体制をつくってくれ、こういうマニュアルも渡す、だからこういうことをチェックしてくれといっても、本当にそれがなされているのかどうか。
 実際に今、冷やり、はっとの事例がすごく多いところと少ないところがある、多いところはむしろちゃんと病院内の管理体制が整っているというか、チェック体制が整っているんじゃないかと言われましたが、では、そういう病院について毎年調べて、そういうものが減っていっているという、そういう統計とかをとっていますか。そういうものでもとっていなかったら、毎年毎年物すごく多くの冷やり、はっとが出ていたら、そしてその数が減っていかなかったら、チェックしていてもそういうものが減らないんだったら、これは全く何もやっていないに等しいんじゃないですか。やはりちゃんと院内で何か手だてがとられて、それによって冷やり、はっとが減ったなら減ったというものを、そういうものがやはり何らかの形でちゃんと行政の側も情報が把握できるような、そういう仕組みというものをしていかなければいけないんじゃないかと私は思うんですけれども。
 今、報告書で提案された仕組みでは、病院の側に最終的にはお任せする、しかしそれで、さっきも申し上げましたけれども、被害に遭った患者の立場に立ってみたらもうこれは取り返しがつかないんですから、やはりこれでは少し甘いんじゃないですか。いかがです。
坂口国務大臣 ここはそれぞれの病院が主体性に、やはりしっかりやってもらわなければならないわけです。外からこれをどう監視しようといったって、これはできる話ではありません。ですから、それぞれの病院が主体的にそれをおやりいただく。
 では、その結果というものは、今御指摘になりましたように、やはりチェックをしていかなきゃならないでしょう。前年に比べてどれだけこれが少なくなったと言えるような体制にやはりしていかなければならないというふうに思いますが、そのそれぞれは、それぞれの病院がとにかく主体的におやりをいただく以外にないわけでありますし、大学病院等におきましてもそれはかなり熱心にお取り組みをいただいております。当然のことといえば当然でありますけれども、やっております。
 失敗というのは、教授だから起こさない、新しい医者だから起こすというわけではありません。熟練をした人においてもこれは起こり得ることでありますので、全体として現在のようなチーム医療ができておりますから、そのチーム医療の中でどう過ちを犯さないようにちゃんとやっていけるかという体制を、これは病院のその仕組みもかなり違いますから、それぞれの中でおやりをいただく。それをどうチェックしていくかというところは、御指摘のとおり、私も少し考えていかなきゃならないというふうに思いますけれども、そういう体制をつくり上げていきたいというふうに思っております。
古川委員 そのチェックをするためには、やはり大臣、ちゃんとした情報を集めなきゃいけないですよね。
 先ほどの話で、別に冷やり、はっとをすべての病院からとっているわけじゃないんですよね。冷やり、はっとまで報告を求めたら、それは物すごい大変な量になるからなかなか大変なのかもしれませんが、少なくとも、実際に冷やり、はっとじゃなくて事故までなってしまった、被害者が出たというようなものについては、報告はやはり、都道府県知事でもあるいはほかの機関でもいいと思いますが、行政の側にさせる仕組みというものを組み込むべきじゃないですか。
 私たち民主党が出している法案の中では、そういう医療事故などがあった場合には都道府県知事などに対してちゃんとこれを報告するように義務づけをしておりますけれども、今言ったような、大臣が言われたようなことをチェックするためには、やはりそういうことをしないと、そのチェックができないんじゃないかと思うんですね。
 私、今、財務金融委員会にいますから、金融機関の不良債権問題等取り組んでいるわけでありますけれども、要は、不良債権の額がどれだけあるかわからなかったら金融庁だってちゃんとしたチェックができないわけです。医療事故だって同じことじゃないですか。やはりそういう意味では、医療事故などがあった場合に報告を病院内だけに限るんじゃなくて、それは都道府県知事など行政に対してちゃんと報告する、そういう形にすべきだと思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 アメリカなどにおきましても、いろいろな試みがやられておることを知っております。アメリカというのは、届け出をするかわり免責にするというのもあるんですね。届け出をしたのは免責をするというようなもの。それも私はどうかと思うわけでありまして、その行い方、どういうふうにこの把握をしていくかということを今研究いたしておりますので、いろいろの事故が起こってまいりますのを把握し、そしてそれを減らしていくためにどうしていくかといったようなことを明確にやっていかなきゃいけないというふうに思っています。
 去年スタートをさせまして、そして実験的にいろいろなことをやらせておりますが、そうした中でもいろいろなことを、これは代表的なところにお願いしてこのチェックをしてもらって、どういうものが多いかというようなことも今やっているわけですけれども、いろいろなことがその中でもわかってきました。
 やはり、一つ多いのは薬の間違い。もう一つ多いのは転落。私も何の転落かと思ったんですけれども、搬送をします車からの転落であります。ちょっと普通考えられないことでございますけれども、それによるミスというのが非常に多かったといったようなことがわかってまいりまして、そうしますと、そういう搬送をします車のあり方、車のつくり方というものにも影響してくるわけでありますから、そうしたことも考えていかなければならないというふうに思っておりまして、チェックの仕方、十分に考えていきたいと思っております。
古川委員 今大臣が免責の話とかアメリカのお話をされましたけれども、今我が国でやろうとしている医療制度改革というのは、患者の立場に立った患者本位のそういう改革をしようとしているんじゃないですか。それであれば、医療過誤や医療事故によって被害を受ける、被害を受けた患者の、そういう人を一人でも出さないようにする。そのためには、免責の話とかそういうものは、そういう人を出さないようにするが上で、その後で考えればいい話じゃないかと私は思うんですよね。今そうやってのんびりのんびり考えている、そういう中で、ひょっとしたら、きょうだってどこかでそういう医療事故や医療過誤に当たって不幸にもその被害を受けていらっしゃる患者の人だっているかもしれないんですよね。
 今、ちょっときょう皆さんに、大臣にも資料をお配りさせていただきましたけれども、私の地元の中部日本放送、CBCといいますけれども、そこの制作局の後藤さんという方がずっと医療事故について追っかけていらっしゃって、この方が、医療事故発生頻度及び事故防止対策の現況に関する調査研究というのをやったんですね。その資料、ちょっと一部をきょうお配りさせていただいております。
 そもそもこの後藤さんは、最初、県に情報公開の請求をした。こういう医療事故がどういう形で起きているのか、実態調査、それを情報公開してほしいと言ったら、県当局の回答は、医療事故については医療機関からの報告義務がなく、県としての実態調査も行っていない、したがって、そのような請求にこたえるべき公文書は存在しない、そういう返事だったものですから、やむを得ず、愛知、岐阜、三重の三県から病院を二百病院選んで、そこにアンケートを行って、その結果が上がってきたのがこの調査研究なんです。
 その中の結果の一部なんですが、医療事故による患者障害とか死亡事例、これが三十五件あるわけです。そのうち、行政に報告されているのはわずか四件なんですね。あとは全く報告されていないわけです。では、報告しないでいいと思っているか。病院に聞くと、表七というところにありますけれども、事故情報を行政に報告すべきだ、そう病院関係者が考えているのが、平均すると八割。圧倒的大多数の病院でさえも、行政にこれは報告すべきだというふうに考えているわけですよね。
 今、免責のことを言われましたけれども、今、免責をされていないこの時点でも、病院関係者でさえこういう数字が出てくるということは、やはり行政に対する報告義務というものはもう既に課してもいいはずです。そういうところまで機は熟しているんじゃないかと私は思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 いかにすれば減らすことができるかということが一番中心だというふうに思っております。もちろんデータをとるということも大事でありますし、行政が把握するということも大事でございますが、いかに少なくするかということが中心であり、そして、報告をしなきゃならないということがあるがゆえに隠ぺいをしてしまうというようなことがあってもいけないわけでありまして、その辺も十分考えながら、しかし、御指摘いただきますことも十分に我々もわかるわけでございますので、どういうふうに体制を確立していくか。病院にお願いをするだけではなくて、その中で、冷やり、はっとまで報告をしていただく必要は私はないと思うんですけれども、いわゆる事故と言われるものを、どういうもの以上を事故というふうに言うかということを明確にしながら、それはひとつ今後考えていきたいと思います。
古川委員 隠ぺいするかもしれないと言われましたけれども、そもそも、そんな隠ぺいするのは犯罪行為ですよ。そうするかもしれないから報告義務を課さないというのは、これは本末転倒の話で、しかも、報告をなかなかしにくい、そういう理由として挙げている中に、報告すべき医療事故の定義、程度の基準がなくて、報告する行政窓口も整備されていない、だから報告していないんだ、そういうような回答も、この報告しなかった人の中、それから病院の中からあったそうです。
 そういうことを考えると、免責されないから報告しないとかいうことじゃなくて、やはり行政の側にちゃんとこういう情報を集めるような窓口もなければ、どういうものを出してくれという体制も整備されていないからじゃないですか。そういうものであれば、私は、百歩譲って、法律で義務づけなくてもやはりそれぐらいのものはちゃんと整備して、病院側が自主的にでも報告しやすいように、そういう形にすべきじゃないですか。いかがですか。
坂口国務大臣 それは御指摘のとおりと私も思います。その辺、だから少し、どういうふうな形がいいか、ひとつ検討して近いうちに決定したいと思います。
古川委員 今の大臣の近いうちというのは、どれくらいの時期を言われるんでしょうか。
 私、大臣とは何回かここでもやらせていただいていますけれども、年金の物価スライドの凍結も、一年以内に検討すると言われて、一年たっても何も検討が進んでいない。そういう回答もありました。ですから、近いうちにと言われても、本当に、もうこれは、もし法律的な義務づけまでないということであればすぐにでもできるような話ですから、相当にこれは、数カ月の単位とかそういうもので、何らかの基準とかそういうものに対しての厚生労働省としての態度というものは見えてくると理解してよろしいですか。
坂口国務大臣 数カ月以内、それは十分できると思います。
古川委員 その言葉をもう一回信じたいと思います。
 では、もう少し次の話に行きたいと思うんですけれども、今この報告書で示されたものは、医療事故を未然に防止する、事前防止、その方策でいろいろなことが提言をされておるわけでありますよね。しかし、事故が起きた後のその処理については、現状は司法にゆだねられているというところじゃないかと思うんです。
 先ほど、事故の報告を義務づけすると病院側が隠ぺい、隠すんじゃないかというのは、結局、事故が起こってしまった後の処理というのは基本的に司法の中でやられるということだから、大臣が懸念されるようなそういう隠ぺいということも起き得るかもしれないという声がやはり出てくるんじゃないかと思うんですね。ですから、そういうことを考えますと、被害者救済のためにも、司法手続によらないような、司法手続に至らない段階で何らか救済される、そういうシステムの構築も私は必要じゃないかと思いますけれども、大臣はどのようにお考えになりますか。
坂口国務大臣 そのことにつきましてもいろいろ議論をいたしております。とにかく各地域にいわゆる相談窓口をつくる、第二次医療圏に一つぐらいの割合で医療事故に対する相談窓口をつくっていくということを今考えておりまして、そういう方向で今進めております。一つ一つの病院というわけにもまいりませんから、そのぐらいな大きさのところでどうだろうかというふうに思っている次第でございます。
古川委員 では具体的に、その相談窓口はどんなところまでそういう医療事故なんかの被害者の救済というものをしてくれるんですか。どういうイメージを持っていらっしゃるんですか。
篠崎政府参考人 今大臣の方から御答弁申し上げましたのは、相談窓口の設置、苦情処理体制でございまして、二次医療圏に一つ程度、それからさらにその上の都道府県にまた一つ程度の二層構造で、そういう医療のいろいろ被害に遭った人あるいは悩んでおられる方の苦情処理体制の整備を図りたいということでございます。
古川委員 私、それを聞いてもよくわからないんですが、苦情を聞いてどうするんですか。ただ聞いて、かわいそうだったね、それだけなんですか。どうするんですか。
篠崎政府参考人 現在でも幾つかの地方自治体でこういう苦情処理体制をとっておるところがありますが、医療機関でいろいろ悩んでいる患者さん等につきましては、その具体的な中身を相談を受けることによってかなりの部分が解決されるというふうに言われております。私どもも、そういうような意味で、まずは、医療事故の対策の一つとしてこの苦情処理体制の整備に努めたいと考えております。
古川委員 何が解決されるんですか、今のお話で、医療事故について相談を受けただけで。具体的に全くわからないですよね。大臣、お答えになりますか、どうぞ。
坂口国務大臣 それはそのケースによっていろいろ違うと思いますが、いわゆる患者さんの側が御主張になること、それに対しまして、医療の側がこういうことであったということを十分に説明いたしますとか、あるいはまた、病院の側が主張することを患者さん側に聞いていただくというようなこともあるでしょう。あるいは、いろいろの話し合いがそこで行われまして、こういうことで、もう手を結ぼうということになるものもあるというふうに思います。
 東京都がおやりをいただいておりまして、いろいろの問題をそこで処理していただいておりまして、非常に、それによっていわゆる訴訟までいかなくても解決できる問題がたくさんあるということがわかっておりますので、そうしたお話し合いをしていただく。ただし、どうしても、そこで話し合いをしましても、それはやはり納得できないといった問題は訴訟になるだろうというふうに私は思っております。
古川委員 もちろん、大臣がおっしゃるように、最後は司法手続によってあらゆる紛争は処理されるというのが日本のシステムですから、最後は司法というところは私も否定はしませんけれども、別の視点で少し、医療過誤訴訟というものがどういう形で行われているのか、そのことについてちょっと話題にしたいと思うんですけれども……(発言する者あり)
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
森委員長 古川君、続けてください。
古川委員 実は先日、「克彦の青春を返して」という本を書かれた稲垣克巳さんから本を送っていただいて、私も読みました。
 これは、御自分の息子さん、克彦さん、昭和三十七年生まれですから私と三つ違うだけなわけですけれども、大学生時代の一九八三年にリンパ管腫の手術を受けたんですけれども、術後の病院側の対応ミスによって低酸素性脳障害に陥って、脳機能をほとんど喪失して、現在では重度の寝たきりの状態に陥っている。そのお父さんが、息子さんがそういう状況になったときの経緯から、そして後、裁判をするときのその経過まで、ずっといろいろなことを書いていらっしゃるんです。
 その中に、訴訟をやることを決めるときの思いというので、こんな文章があるんですね。
 たとえ訴訟に勝っても克彦はもとどおりにはならない、大変むなしいことである。このことが頭から離れず、訴訟はなるべくやりたくなかった。また、民事訴訟は損害賠償額を請求して争うが、金にかえられるものではないという抵抗感もあった。この二つが訴訟を起こすことをかなりためらわせた。こう言っているんですね。
 でも、なぜそれでもあえて訴訟に踏み切ったのか。それはこう書いてあります。二度とこのような医療過誤が起こらないようにするためには、訴訟を起こして反省を求めるよりほか道はないと考えた。
 多分、今あちこちで起きている医療過誤訴訟で、その原告の人たちは、この稲垣さんと同じような気持ちで裁判をやっているんだと思うんですよね。勝ったからといって、勝って賠償をしてもらったからといって健康が返ってくるわけではない。障害が残ったり、障害が治るわけではない。私は、その立場に立ってみたら、そういう中で裁判をやるというのはいかにしんどいことか。しかも、この後の方でも書いてあるんですけれども、この稲垣さんの場合には幸いにも一審で終結したわけなんですけれども、一審の判決までに八年がかかっているんですね。
 一九九九年の医療過誤訴訟の平均審理時間は三十三・四カ月。一般案件の平均十四・九カ月に比べてかなり長い。かなりどころか、私はすごく長いと思います。先ほどの文章にあったように、ほかの裁判とは闘っている原告の気持ちが全然違う中で、普通の裁判以上の長い裁判を闘わなきゃいけない。こういう本当に大変な状況の中で医療過誤の訴訟をやっていらっしゃる方々の気持ちをしんしゃくすれば、司法の手続のところにいく前に何らかの形でこうした人たちの気持ちが救われるような仕組みというものを考えていくべきだというふうに思いませんか、大臣。
坂口国務大臣 司法の場に行くまでの間に何ができるか。それは、先ほど申しましたように、一つは、いろいろの御相談に応じて、そしてその皆さん方のお気持ちというものを十分に聞き、それを病院にもよく伝える。そうしたことで、誤解も中にはあるかもしれませんし、もうおっしゃるとおりであったこともあるかもしれない。そういう司法でない段階のことはできるというふうに思いますが、司法と同じレベルのことを現在一般にあります司法の制度以外につくることができるかといえば、そこは私はちょっと難しい話だなという気がいたします。
 司法全体の見直しの中でどういうふうになるかというような議論は多分あるというふうに思いますけれども、医療問題だけを専門とする司法制度というのは、果たしてそういうのができるかどうか。これは司法全体の中でちょっと検討をしてもらわなきゃならない問題だと私は思います。
古川委員 行政に対して医療事故があった場合にはちゃんと報告をする、実はそれも一つ、こういう人たちの思いにちゃんとこたえる、ある意味で最低限の必要なことじゃないかと思うんですね。
 そういうことが報告をされたら、それを踏まえて、どうしてこういう事故が起きたのか、それをちゃんと専門的に分析して、二度とこういう事故を起こさないように、起こらないように、指導するなり、あるいは何らかの手段を講ずるなり、そういうことを病院側にとらせる、医療機関にとらせる。そういうちゃんとした仕組みが行政も含めてできてくれば、こういう裁判を起こしていらっしゃる方の根本のところにある、こういう事故が起きて自分の家族と同じような思いを持つ人が二度と出てほしくない、やはりそういう気持ちにこたえられるんじゃないかと思うんですね。
 ですから、そういう意味でも、医療事故防止のために、行政も含めて、さっきの報告書でも言っておられるように、医療システム全体で医療事故を防ぐような、そして、不幸にも起こってしまったら、それが二度と起きないような、そういうシステムを早急に構築するということは必要じゃないかと私は思います。
 そういう中で、やはりこの被害者の人たちも、裁判に行かなくても何らかの形で救済はできる、そういう仕組みを、もう厚生労働省のところでは考えられないというふうにほうってしまうのじゃなくて、医療事故をなくしていく、その仕組みの中で、私は、何らかの検討というものをしていく必要があるのじゃないか。
 そういう一例で、なかなかそれは簡単にはいかないと思いますし、いろいろ財源の問題とか難しい問題はありますけれども、例えば、裁判以外の救済方法として、医療事故情報センターの理事長の加藤さんという弁護士の方が、医療被害防止・救済センターというような構想を提唱したりしてもおられます。これがそのまま私は実現するとは思いませんけれども、しかし、やはりそういうニーズというものはあるし、そういうことを行政のできる範囲で考えていくということが患者本位の医療制度をつくっていく。
 どこまでいったって、医療ミスが全くないということは私はあり得ないと思います。しかし、今のような状況の中では、お医者さんたちに、手術をしたり医療行為をすることに対して逆に非常に怖さまで、こういうことをやってミスをしたらどうしようというような、逆にそういう意味ではお医者さんに対しての萎縮効果も生んでしまっているような状況にあるのじゃないかと私は思います。
 そういう意味では、こうした医療事故が起きた場合に、ちゃんとそれに対して対応する仕組み、そしてまた被害者をちゃんと救済できるような、そうしなければ、何年も訴訟をやって、お互いこれは疲弊する話ですよ、病院や医者も、そして患者の側も。そういうことでなければ解決ができないような仕組みじゃなくて、そうじゃない形で、患者の側も、納得はできないけれども、しかし一定の理解はできる、そして医者の側も、そういう意味では自分のベストを尽くすようなことができる、そういう仕組みをぜひともつくっていただきたいということをお願いしたいと思いますけれども、大臣から一言ございますか。
坂口国務大臣 今先生のお話を聞いておりますと、先ほど私たちが申しました、名前はともかくとして、それぞれの方々から御相談を受ける、二次医療圏につくり、県の段階にもう一つつくるといったような、そういう組織の中でいろいろとそうした問題を処理していくということとかなり共通点があるなというふうに思って聞かせていただいたわけであります。
 問題は、その結果をどういうふうに行政の方が把握をするか、そして、今後の指導監督に結びつけていくかといった問題はもう一つあるというふうに思っております。確かに、裁判に至らない前の段階で、いろいろと話をする中で決着する問題はあるというふうに思っておりますし、東京都からもそういうお話を聞いておりますので、そうしたことが行政にどう結びついていくかということをもう少しそれに加えて考えていけば、先生が御指摘になったことにかなり近づくのじゃないかというふうに思って聞いた次第でございます。
古川委員 改めて申し上げますけれども、やはり、これは一刻も早く具体的な形にしていただきたい。とにかく、医療は、日々、二十四時間、三百六十五日、常に行われているわけです。そういう中で、医者の方も患者の側も、医療事故とか医療過誤が起きるかもしれない、そういうリスクの中で医療というものが行われているわけでありますから、一日も早く、医療システム全体の問題として、医療が安全だと言われるような、そういうシステムをつくっていただくことをお願い申し上げまして、医療安全対策についてはこれくらいにしたいと思います。
 次に、ちょっと話題を少し違う視点からかえたいと思いますけれども、生命科学産業の振興とか医薬品産業の育成についてお伺いをしたいと思います。
 私は、生命科学産業というものは、バイオテクノロジーとかゲノムの世界とか、いろいろとこれから成長可能性のある、非常に将来性のある産業分野だというふうに考えておりますけれども、厚生労働省もそう考えていらっしゃるからでしょう、医薬品産業ビジョンの案というものが四月九日に公表されております。私もこれを見させていただいたのですけれども、正直申し上げて、これを読ませていただいて感じたのは、これをもってとらぬタヌキの皮算用というんだなというふうに思ったのですね。
 というのは、どういうことかというと、今後五年間をイノベーション促進のための集中期間と位置づけて、国際的に魅力ある創薬環境の整備と医薬品産業の国際競争力の強化を達成し、十年後の姿としては、ゲノム創薬やテーラーメード医療の世界が広がっている国際競争力のある医薬品産業の構造があらわれる。そういう大変バラ色の世界を描いていらっしゃるわけです。
 しかし一方で、急速な少子高齢化の進展等に伴う医療費の増大にもかかわらず、ここ十年、医薬品市場規模は伸び悩み、今後も医療保険においては薬剤費に対して抑制圧力が働く。そういうことも指摘されておられるわけです。
 この薬剤費というのは、今の日本の医療制度の中では、事実上、医薬品産業の生産額にほぼ等しいようなものになってまいりますから、こういう抑制圧力が結局は産業規模の縮小をもたらすのではないか。そういうふうに指摘しておられるわけでありますね。
 そうしますと、一方で産業規模というものは縮小しつつ、もう一方でこの産業がスパイラル的発展をするというのは、どう見てもこれは両者というのは成り立たないのじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
宮路副大臣 先般、厚生労働省として、医薬品産業ビジョンというものを、案をつくったわけでありまして、現在、医薬品産業の方々とも、その中身をさらにグレードアップするために詰めていくためにいろいろと相談を申し上げ、知恵もおかりすべきところはおかりしなきゃならないということで、今協議もさせていただいているということであります。
 なぜそういうことになってきたかといいますと、委員も御案内のとおり、これは医薬品産業だけでないわけでありますが、我が国の産業すべてそうでありますけれども、中小企業が非常に産業界にあって多い、そして、いわゆるメジャーというものが余り育っていない、そういう中で、グローバルな競争が非常に激化しているということであります。また、最近では、創薬環境がすぐれていないために、これら医薬品産業の創薬のための治験も海外にますます多くを頼るようになってきたといったような、治験環境といいましょうか、そういうものが非常に立ちおくれが目立っている。
 そしてまた、産学官の連携というものも、これは他の分野もそうでありますが、医薬品産業の分野でも、これまた諸外国と比べて、例えば国立研究機関等からの企業への技術移転などがなかなか体質として進まない、体質といいますか、あるいはそういうシステムになっているといったようなことがあるわけでありますので、言ってみれば、それらの環境から脱却して、将来、国際競争力のある医薬品産業に育てていかなきゃならない。
 そういう観点から、この際、何としても、そういった問題を整理して、そして取り組むべき課題というのも重点的に絞って、そして医薬品産業を国際競争力あらしめよう、こういうことで、医薬品産業ビジョンをつくったわけであります。
 したがって、それが、バラ色の夢といいましょうか、絵にかいたもちにならないように、我々としてとにかく総力を結集して、関係方面ともよく連携しながら、その実現に向けて頑張っていきたい、こう思っておるところでありますので、また何なりと御指導、御鞭撻も賜れれば、このように思っているところであります。
古川委員 では、まずちょっと申し上げますけれども、ちょっと私が聞いた話と違う答弁をされているんですよね。それは私が次に聞こうと思った話で、よく質問を聞いて、ちゃんとその質問に答える答弁をしていただきたい。まずそこから始まらないと、議論なんかかみ合わないわけでありまして。
 私が今聞いたのは、産業規模が一方で縮小していて、もう一方でスパイラル的発展をするというのは、どうもこれは御自分で書いていて成り立たないんじゃないですかということを私は聞いたんです。
 今お答えになったのは、私が次に聞こうと思っていた、このままでは我が国医薬品産業の国際競争力が弱化する可能性がある、そういうことが指摘されているんですけれども、そういう状況を生み出してきたのは、そもそも、これまでの日本の厚生省の医薬品産業行政とか医療制度に問題があったんじゃないですかと。多分、それに対しての答弁で用意されたのをそのまま読まれたんだと思いますが、私が聞いているのは、まずその前提として、ここに書いてあることが、どうも前と後ろで、こんなものが両立するんですか、矛盾しているんじゃないですか、そういうことを聞いているんです。
宮路副大臣 ちょっと私が御質問の趣旨を取り違えているのかもしれませんが、御指摘の点は、今後、我が国の現在の医療保険制度のもとで、薬価の見直しなどによって、だんだんと医療費全体の中に占める薬価といいましょうか、医薬品産業の分野というものが縮小していく、そういう中でこういう産業の発展というのが図られるのであろうかと。つまり、そういったマーケットが狭くなっていくんじゃないか、にもかかわらずこういう産業の飛躍が期待できるのか、こういう御質問だったんでしょうか。(古川委員「そうです」と呼ぶ)
 そのことだとすれば、確かに、今日まで数次にわたって薬価の水準の引き下げということをやってきてはおるわけでありますけれども、さはさりながら、これからも高齢社会が進んで、そしてますます医療費の増嵩と申しましょうか、拡大が将来にわたって続いていくということはもう間違いないわけでありまして、したがって、そのことによってマーケットが小さくなっていくということは私はないのではないかなというふうに思います。
 また、グローバル化の時代を迎えて、我が国の医薬品産業も、単に国内のマーケットだけを相手にするのではなくて、やはり海外のマーケットも十分にらんで、これは企業として今後の発展を期して展開をしていかなきゃならない。そうでないと、まさに海外のメジャーによって我が国の医薬品産業界も席巻されることになるわけでありますから、そこは、これからグローバルな中で、どうやって競争力をつけてお互いにしのぎを削り合って、そして競争に打ちかっていくかということを考えなきゃいけないわけでありますから、そういう国際的な視野も当然入れて医薬品産業ビジョンというものを我々は構築していかなきゃならない、このように思っているわけであります。
古川委員 医療費がふえるから当然薬剤費もふえていくというふうに言われましたけれども、ここ十年見ていると、医療費のふえ方に対して、薬剤費というのはほとんどふえていないわけですよね。ずっとこれまでの医療制度改革の経緯を見たって、やはり薬剤費を抑制していこうという方向で動いてきているわけでありますから。ですから、今後も、いや高齢化社会で医療費が増大するからといって、それに比例して薬剤費がふえていくとはとても私は思えませんし、もしそういうことを目指そうとしておられるんだったら、そこは物すごい厚生労働省の政策の方向転換じゃないかと思いますが、そこのところは違いますよね、それは。
宮路副大臣 それは、将来のことをにわかに、これからどうなっていくということを具体的な数値をもって判断することはなかなか容易じゃないことはよくわかりますけれども、であるにもかかわらず、やはり新薬もつくっていってもらわなきゃならないし、それから、医薬品を、いかに安価でそしていいものを供給していくかということも、これは大きなこれからの課題であるわけであります。
 そういった意味で、マーケットの規模の問題のみならず、やはりその質の問題、医薬品の質の問題の向上も図っていってもらわなきゃならない、そして海外の企業に打ち負けないようにしていってもらわなきゃならないということを考えますときに、やはり今の医薬品産業ではそのことは期待しがたいといいましょうか、なかなか容易でないので、ここでやはり思い切って、先ほど申し上げましたような立ちおくれた環境を大いに整備して、そして頑張っていってもらう、そういう基盤をつくっていこうというようなことで提案をさせていただいているところでありますので、この点、御理解をいただきたいと思います。
古川委員 もちろん、安くて質がいいのであるにこしたことはないわけなんですけれども、今言われているゲノム創薬とかテーラーメード医療、ここで目指しているような医療は、少なくとも二〇一〇年にそんな安いものでできるはずがありませんよ。二〇一〇年の段階で、そんなに安価で質のいいようなところまで、そこまでできるとは到底私は思えません。
 私がなぜそう聞いているかといえば、一方で、こういうゲノム創薬、テーラーメード医療の世界が広がっている、そういうものをつくろうと言っていて、もう一方で、実際に薬剤費、これはもう、今の薬価制度のもと、医療保険制度のもと、そういう制度の中では抑制圧力が常に働いていく、そういう状況というのは成り立つのかと。余りにこれはバラ色のものだけ無責任に書いていて、実際には、今の状況の中では、とてもそういう状況は起きないんじゃないか。
 もし唯一起きるとすれば、先ほど言われたように、海外で頑張ってもらう。国内ではそんな高い薬とか何かでもうけるような場所はありませんから、海外でやってくださいと。そういうように私は感じますけれども、いかがですか、それ。それでいいですか、大臣。
宮路副大臣 一定の期間を設けて、そしてこのビジョン案というのを打ち出しましたのも、例えば、先ほど申し上げましたような治験にいたしましても、これはやはり集中的な取り組みをやって、そして先ほど申し上げました創薬環境の立ちおくれを脱却して、そして治験の期間の大幅な圧縮を図っていくというようなこと、あるいは先ほど申し上げた産学官の連携の問題、こういったものはやはり急いで短期間の間にやり遂げていくということでないと、将来における飛躍が期待できないわけであります。
 そういった現在ネックとなっているところ、そこのところについて、大いに、政府の方でも総合科学技術会議なども立ち上げて、そして科学技術立国を目指して、これまでのどちらかというと公共事業等による景気の浮揚といった側面から脱却して、もっとそういう科学技術的なところに力を入れてやっていこう、そういうような政府の経済政策と申しましょうか、そういうものにも合致するような方向で我々としても医薬品産業を立ち上げていきたい、こんな思いで取り組みたいと思っているところでありますので、そういう観点からひとつ御理解をいただければというふうに思う次第であります。
古川委員 先ほどから申し上げているように、要は、ここは産業ですから、産業としての市場のマーケットが大きくならない限りは、今の薬価制度、今の医療制度の中でそこが常に制約されている状況の中では、どんなに治験とかそういうものについていろいろな工夫をしても最終的なそこのところが広がらなかったら、そんなもうかりもしないものに企業は投資しませんよ。やはりそこのところを、これはもう、私は、ちょっと矛盾しているんじゃないか、そのことを指摘しておきたいと思います。
 時間がなくなってしまいましたので、最後にちょっと一つ、これは前からの継続事項でお伺いをしておきたいと思いますけれども、年金資金の運用についてです。
 これは今回の医療と関係ないと言われるかもしれませんけれども、高齢者医療の自己負担分を賄う財源として、年金は非常に大事な高齢者にとっての財源になるわけでありますけれども、その将来の年金の財源になってくる年金資金の運用について、前から大臣にも何度か聞いたりもしておりますけれども、相変わらず株式市場においては年金資金が株価下支えの手段として使われている、そういうふうにささやかれております。
 前の答弁いただいたときも、そういうことはありませんというふうに言われたんですが、今の政府が幾らそう言っても、マーケットはそれを信用していません。やはり、きょうは年金資金が入ったんじゃないか、そういううわさがあると株価が上がる、そういうことが繰り返されているようでありまして、もし本当に身の潔白、ぬれぎぬだと言うんであれば、やはりそういうものを、ちゃんと早くそのぬれぎぬであることを証明していただきたいと思うんですね。
 前にも財務金融委員会の方で私が質問したときに、一日も早くやはりこれは情報公開をしてほしい、そして、マーケットが、この年金資金がそういう株価操作のために使われていないということが確認できるような、やはりそういう情報が提示されたい、そういうことをお願いしたわけでありますけれども、その検討状況はどうなっていますか。
吉武政府参考人 二月二十七日の財務金融委員会で、委員からの御質問に対しまして年金局長の方から、資金の投入と回収の状況の事後公表については、公表の方向で検討を行うというふうにお答えを申し上げたところでございます。先生がおっしゃるとおり、年金資金は被保険者の方あるいは事業主の方の資金でございますので、その資産運用の透明性を高めるというのは最も重要なことだというふうに思っております。
 公表のあり方につきましては、財務金融委員会でも申し上げましたけれども、事前公表といたしますと、相場材料として扱われるというような形で市場の価格形成自体に悪影響を与える可能性がございますので、私どもは不適当というふうに考えておりまして、事後公表とする方向が考えられるだろうというふうに思っております。
 現に、社会保障審議会に年金資金運用分科会がございまして、この年金資金の運用の問題について、学識経験者やあるいは労使も入っていただいて検討していただいておりますが、三月十二日の会合におきまして、資金の投入と回収の状況の公表について、事後公表とする考えであり、その考えを国会においても御答弁申し上げているということを御報告申し上げているところでございます。
 それで、本年の七月ごろに、平成十三年度の新しい自主運用につきまして、年金資金運用基金の業務概況書、報告がございますので、その中に、今申し上げましたような、事後的な、市場への資金の投入と回収の状況につきまして盛り込む形で検討してまいりたいというふうに思っております。
 ということでございますので、早ければ今年の七月には公表できる状態になってくるんではというふうに考えております。
 以上でございます。
古川委員 とにかく、マーケットの不信はいまだにあるわけでありますから、身の潔白を証明するのは、これはやはり厚生労働省の責任だと思います。ぜひその点を踏まえた情報公開をしていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
森委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党、佐藤公治でございます。先日の委員会に続きまして、いろいろとまた聞かせていただければありがたいと思います。
 その前に、きょうの委員会も聞いておりまして、またいろいろなことが疑問に思い、また、大臣に確認を、教えていただければありがたく、提案もさせていただければありがたいかと思います。
 私は、この議会または委員会のあり方、運営の仕方というのを非常に疑問に持ち、いろいろなことを提案させていただいております。
 そういう中で、これは私が議員になってから幾つかの委員会でお話をしたこと、それから、もう余り言わなくなってしまったんですが、あえてまた言わせていただければ、非常に今、法律というのが成立するに際して、無責任な状態になっているような気がする。
 どういうことかといいますと、役所のOBの方々とお話をしたり、またいろいろなお話を漏れ聞くところによりますと、本当に今の厚生労働省の幹部は大変だよな、おれらのツケを全部背負ってくれているよと。そんな中でツケを今返していかなきゃいけない厚生労働省、局長、官房長、事務次官は大変ですねというような話が聞こえてくる。また、当時この法律や何かを成立させた方々というのがだれかというのも全くわからなくなってしまっている。
 さしずめ、この法律が、成立から改正、直近のところを考えて、提案者もしくは成立時いろいろな、大臣の方々、政務官の方、政務次官の方、また事務次官の方、保険局の方いらっしゃったかと思いますが、どこまでさかのぼってだれがやったのかということを思い出せるかといったらば、私はほとんど思い出せない。各担当者の方は思い出すことができるかもしれませんが、全く法律だけがそのままひとり歩きをしている。そこに個々における人の、また立場の責任というものをつける意味でも、やはり法律に名前をつけていくべきじゃないかと。
 例えば、平成四年、平成六年、平成九年、平成十二年、論議したその提案者、そして成立時、山下大臣だったり、大内大臣だったり、当時の事務次官は坂本さん、黒木さんだったり、保険局長は黒木さんだったり多田さんだったり、こういった名前を残していく法律というのが今後やはり必要なんではないかなと。
 外国においては人の名前、これは提案の仕方、やり方が多少違いますので一概に全部が全部とは言い切ることはできないと思いますけれども、法律に、やはりだれがつくったのか、まただれが立案していったのか、そういったものを、役所、役人の方々もきちんと名前を載せて、そして責任を持っていくということが僕は大事なんじゃないかなと。二年か三年かしたらばまたかわってしまう、もうその間何とか穏便に過ぎてもらえればいい、こういった空気とムードが何となく漂っているんではないかと私は感じるところがあります。
 法律に名前をつけるというか名前を残す、こういったことの考え方について、大臣、これは突然で申しわけございませんけれども、どうお思いになられますでしょうか。
 私は、こういった形での責任を、やはり役所の方々においても、その当時だれがつくったのかということをきちんと法律の一部に書き添えておく必要性があると思います。それによって責任というものをきちんと感じ、また残すということも大事だと思いますが、いかがでしょうか、大臣。
坂口国務大臣 議員立法でありましたら、その提案をされた方のお名前をつけておくのは私は意義があるというふうに思いますが、いわゆる政府が提出をいたしました法律は、これはもうあくまでも一貫して政府が提案しているものでありますから、そのときの大臣の名前ですとか事務次官とか局長の名前をつけるというのは、私はいかがなものかというふうに思っております。
 法律は、つくりまして、それからその時代時代に、やはり時代背景によって解釈の変わってくることもございます。やはり法理というのは、その時代その時代に生きていくものでありますから、私は、たとえ十年前にできました法律であったといたしましても、現在は現在としての解釈というものが生まれてきても当然だというふうに思いますしいたしますので、政府が出しますものにつきましては、私はそういう必要はないのではないかというふうに思っております。
佐藤(公)委員 これは、私、前の内閣のときの堺屋大臣にやるべきだと話をしましたら、堺屋大臣は、ぜひそれは私も推し進めたい、そういう責任を持った法律というものをつくっていくべきだという御答弁をいただいた記憶があります。いろいろと大臣もお考えがあると思いますけれども、ひとつどうかこれは御検討願えればありがたく、やはり役人の方々も、政府提出とはいうものの、一つ一つの法律に、同じような、役人として、役所としての責任を一緒に書き加えながら作業する、またそれは残していく。そして、いい法律ならやはりそれなりに評価をされるべきこと、そして、悪い法律、悪くなっていくような法律であるんであれば、それは批判をされるべきこと、そういった責任というものをきちんと残すべきだと思います。
 どうかこれは、大臣の今のお話を聞く上では余り前向きな御答弁じゃありませんが、ぜひ御検討願いたいと思いますけれども、副大臣、いかがでしょうか。
宮路副大臣 大変ユニークな御提案だというふうに思いますけれども、アメリカあたりではそういったように議員立法が専ら行われているというのが常でありますから、その議員の名前を冠した法律ということでありますけれども、政府が提案する法律につきましては、それは政府として提案をいたしておるわけでありまして、個人の名前を、後世の人たちが、あるいは一番その法律の制定の過程で貢献されたとおぼしき人の名前をとって、その方の名前を冠して、通称としてそういうようなことをされるのはあるいは結構なことかもしれませんけれども、オフィシャルなものとしてそういうことは、政府提案の場合にはなかなかできにくいのかなというふうに思います。
佐藤(公)委員 だから無責任になっちゃうんですよ。だから無責任になっちゃうんだと私は思います。これはもうこれでやめます。
 それで、これから一つ一つ、ちょっと五、六問、質問させていただきます。これは確認でございますので、イエス、ノー、大臣、副大臣、どちらが答えられても結構でございます。骨太の方針を含めたことでの話です。
 二〇〇二年度を越えて中長期的に健保財政の赤字をどうするかという問題点なんですけれども、これは小泉改革に関係なく対応していかねばならぬもので、こちらの方が深刻であるか、こういうこと。今ここだけです。これ、突然というか、事前通告はしておりません。これは、もう一度聞きます。きょうは多少時間がありますので。二〇〇二年度を越えて中長期的に健保財政の赤字をどうするかという問題があるんですが、これは小泉改革に関係なく対応していかねばならないものなのか、こちらの方が深刻なのかどうか。マルかバツかじゃなくてイエスかノーかでも結構でございます。大臣でも副大臣でもお答え願えればありがたいと思います。
坂口国務大臣 高齢化が進んでいきます以上、こちらの方は小泉内閣の改革とは別に、これはもう進めていかなければならないものというふうに思っています。
佐藤(公)委員 いろいろと議論がされているわけですけれども、結局、この医療関係においてツケをどう支払っていくかということで、あらゆる手を尽くしても対応していく必要があるかどうか。どんなことがあってもこれはやらなきゃいけないということ、どんな手を尽くしても対応していく必要性があるのかどうか。いかがですか。
坂口国務大臣 ちょっとどういう意味かよくわかりませんが、毎年、この医療費というものが必要なことは言うまでもありません。そして、その医療費が年々歳々高齢化とともにふえてくることも間違いがございません。したがいまして、これはどうしても対応していかなきゃならないものであることには相違ございません。
佐藤(公)委員 骨太の方針に関してなんですけれども、骨太の方針に関しての内容的には、持続可能な制度にしていかなければならないという認識ではみんないると思うんですけれども、項目によっては中長期的な問題も含まれているということで、厚生労働省さんと、この見方、観点が少し違うようにも思えるんですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。違いがあるかどうか、ないか。またはそのまま、違いがあるのかないのか。あったら、どういうところがあるのか。わかる範囲で結構です。
宮路副大臣 それは、同じ政府の中でありますので、基本的にはこれは同じであるというふうに理解を賜りたいと思います。
佐藤(公)委員 それで、骨太の方針の内容を一つ一つ見ていく中で、公的医療費は伸ばせないから私的な医療費を伸ばす、だから混合診療も認めるべきというのが骨太の方針の一つとして挙げられていると思いますが、そうでしょうか。
大塚政府参考人 公的保険と自己負担と申しましょうか、自己負担あるいはいわゆる保険外の負担、この組み合わせをどうしていくかという問題意識は共通でございまして、混合診療という言葉はそれ自体法律で決まっているというような性格のものではございませんから意味内容が論者によって多少幅のある概念ではございますが、私どもとしては、いわば全面的に混合診療を自由化するということについては極めて慎重に考えるべきだという立場でございますが、公的保険といわば自己負担あるいは民間保険などの適切な組み合わせというのは、今後の課題として重要な問題だというふうに考えております。
佐藤(公)委員 それで、これはだれが決めるかということ、また、納得いくかということになりますけれども、この負担増に対して納得できないのであれば、振り出しに戻って新たな制度を考えていくしかないとお思いになられるかどうか。いかがでしょうか。
宮路副大臣 混合診療の問題については、今大塚局長からお話があったとおりでありまして、私どもはやはり医療の根幹は保険によって当然対応していくべきである、そういうことを考えておるわけでありまして、こういった考え方は今後も堅持していくべきものであり、したがって、今回こうした健康保険法の改正をお願いしておりますのもまさにそういうゆえんのものであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
佐藤(公)委員 つまるところ、負担増に納得できなくてもこれはやらなくてはいけないということになるんでしょうか、副大臣。
宮路副大臣 私どもとしては、それは従来から大臣もこの席で御答弁いただいておりますように、この世界に冠たる医療保険制度、これがこのままでは立ち行かないような状況になっておるわけでありますので、これを長期的に持続的なものとしてやはり堅持していく、そのことによって国民の生命と命を守っていく。そのためにも、大変つらい思いを国民の皆さんにもしていただくということになるわけでありますが、長期的な、そういう大局的な見地からぜひ御理解をいただいて、そしてこの改正もひとつ何とか実現をさせていただきたいと思っておりますし、また、健康保険制度の堅持ということについても国民の皆さんの御理解をいただき、お支えをいただいてまいりたい、こういうふうに思っているところであります。
佐藤(公)委員 では、副大臣は、この負担増に関しては十分納得をされているということになるんでしょうか。
宮路副大臣 私は、当然、提案をさせていただいておるわけでありますので、これは、この時点において避けて通れないやはり問題であるな、そのように受けとめておるところであります。
佐藤(公)委員 骨太の方針でも、この制度自体が制度疲労を起こしているという文言も、言葉も出ております。制度疲労も起こしているというようなことも書いてあるようにも思いますけれども、制度疲労をもう既に起こしているような制度でまた負担増をしながら、それを納得されているんでしょうか。
大塚政府参考人 国民皆保険あるいは診療報酬体系、その基本は、四十年、五十年前に基本的な形が形づくられました。さまざまな改革を経て今日に至っておるわけでございますけれども、その間、社会経済の状況が大きく変化をいたしております。今日の社会経済状況、あるいはこれからの社会経済状況に合うかどうか、これをそういう新しい観点から見直すべきではないか、それを制度疲労という表現で、新しい時代に即応した制度に見直していくべき、こういう御趣旨だろうと私どもは受けとめております。
 もちろん、これまでのいわば遺産と申しましょうか、先人たちの努力を引き継ぎながらという前提にはなると思いますけれども、新しい時代に即応した制度、あるいは制度の見直しは、当然、私どもも進めていかなければならないと考えております。
佐藤(公)委員 骨太の方針では、「我が国の医療制度はいわば「制度疲労」を来たしており、」というのを明確に書いてあるんですよね。つまり、医療制度というのはもう限界に来ている。こういう中で副大臣が納得されているというのであれば、僕はちょっと本当なのかなという気がするんですよ、実際問題。何か非常に矛盾を感じている。こういう話を聞いているうちに、だんだんだんだんわからなくなっちゃうんですよ。
 大臣、ちょっとお尋ねしたいんですけれども、今やろうとしていることは、先ほど、小泉構造改革とは、それとは別であってもこれはやらなきゃいけないというようなこともおっしゃいました。実際問題、今やろうとしていることはこの医療改革、構造改革の一端というふうにとらえてやられているのとは違うんでしょうか。大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 広い意味で構造改革の一端であるということは、それは当然だというふうに思いますけれども、ほかの改革が一応終止符を打ったとしても、この医療改革というのはさらに続けてやっていかなければならないものだということを言ったわけであります。
 制度疲労を来しているというお話がございましたけれども、そうはいいますものの、しかし、現在の皆保険制度というのは、これは維持をしていかなければならないというふうに思っております。全部が制度疲労を起こしているわけではありません。疾病構造の変化等がありますから改革をしていかなければならない面がございますけれども、皆保険制度というものは堅持すべきである。そして、皆保険制度を堅持していく中で、これを崩さない範囲の中で改革すべきところは改革をしていくということでよろしいのではないか。
 混合診療の問題にいたしましても、そうしたことは、皆保険制度を崩さない、この原則の上に立って、できることがあるとするならば何かということを考えていくのでよろしいのではないかと思っております。
佐藤(公)委員 でも、今やろうとしていることはまさに本当に帳じり合わせということであって、保険料を引き上げるか、給付の水準を下げるか、患者さんから余計に取るか、お医者さんに払う分を下げるか、そして最後に、国費といいながら国民負担で税金を入れるか、この幾つかの中での帳じり合わせ、これはもう本当に改革という名に値しない。まさに、この前も言いました医療制度の改革についてなんというのじゃなくて、医療制度の帳じり合わせについてというパンフレット、医療制度の変更についてのパンフレットだと僕は思います。
 実際、本当に、何でこんな同じような質問ばっかし僕は毎回毎回するのか、わかってくださいよ。言っていることがおかしいということなんですよ。みんな納得していないですよ。
 僕は副大臣もわかっていると思う。おかしいんだよ、でも、おれ、与党で大臣になっちゃっているからやらなきゃいけねえんだよ、そんな感じがするんですよ。
 だから、この辺は、本当に本音で話し合いをしながら私はやりたい。本当に制度を変えていく、構造改革していくというのであれば、きちんと青写真を見せて、それを私たちと議論させてくれるのであれば、お願いされなくたって、いいと思ったら私たちは賛成します。
 でも、その前提がこんな状態の議論で、こんなやり方で、何を何に、どんな前提であろうが、どんな条件が整おうが、これはもう推し進めなきゃいけないということだったら、まさに形骸化じゃないですか。それはもう、私たちの将来をめちゃくちゃにされているような気がして、私は、本当、怒るよりもちょっと悲しい気がする、こんな思いがいたします。
 きょうも、釘宮委員も言っていましたけれども、やはりこの辺を政治家が、やはり行政も、もう一回襟を正し考え直さなきゃいけない部分というのがたくさんあるんではないかと思いますが、先ほど幾つか質問したことは、実際、御答弁、内容と食い違う部分があるんですけれども、これは厚生省の幹部の方がマスコミ等で話していること、それをちょっと聞いてみたんです。聞いてみて、合っている部分もある。でも、食い違っている部分もあるのも事実です。
 私は、骨太の方針というのは、小泉さんがあれほど自分の本当に、中心になって、それを基本に全部やっていく、そういう意味での骨太の方針。私たちは認めていません。あんなものが将来のビジョンであり、きちんと青写真になっているとは思わない。だけれども、彼はそれを中心にすべてを動かしていく、構造改革をしていく。その中で医療というものがある、出ているんです。これとの整合性というものが、私は理解し切れない部分がたくさんある。制度疲労を起こしているとここで書いてあるんだったら、制度を抜本的に見直して論議しましょうよ。そこからですよ、スタートは。
 それなのに、骨太の方針は骨太の方針で棚の上に上げて、これはこれでやっています、こっち側はこっち側。だから、僕は、もう何回も委員会で骨太の方針、骨太の方針と言っています。これをきちんとみんなが読んで理解して、わからないことがあったら内閣できちんと話し合いながら、やはり一つの方向性を示してやっていく、これが一致団結した内閣じゃないかな、政府じゃないかなと思いますが、当然、自民党の中もばらばらになって、今は、党なり国なり、政府の体をなしていないと言われるところがそういうところにあるのかもしれませんが、全部国民負担なんですよ。国民に押しつけちゃっている。ツケは国民。この混乱も全部、国益も全部、国民に押しつけている、そんな状態だと私は思います。
 済みません、事前通告の質問がこのままじゃできなくなっちゃいますので、事前通告の質問に入らせていただきたいと思います。
 この骨太の方針、医療や介護、保育ということも入っておりますけれども、こういう中で、「NPOやボランティア活動などを社会保障サービスの中に組み込み、地域住民の「共助」によるサービスの提供を支援していくことが可能になる。」
 このNPOやボランティア活動、地域住民の共助ということがこういうふうにあって骨太に出ているわけでございますけれども、私は、今までの議論、いろいろなことを見させていただく中、患者さんだ、医療負担だ、病院側だ、いろいろなことの中の一つの枠組みに固定したことでの話し合い、これを何とか新たな視点、考え方、見方でとらえるためには、やはりここに書かれている、まさにNPOやボランティア活動、こういった仕組みをどうするのか、また、地域住民の共助が大事だと言っておりますけれども、こういったことの切り口で今後の医療というものを考えた場合に、どんな具体的なボランティア、NPOのあり方、地域のあり方、住民のあり方というのがあるのか、ここら辺の話を具体的にお聞かせいただきたいと思うんです。
 今までの議論は、話が非常に大きくてわかりにくい部分がある。だから、ごまかされやすいところもたくさんあるのです。私のちょっとイメージしているものは、まさに小泉村百人、こういう発想で、坂口大臣百人村、坂口大臣百人だと、パーセンテージだとゼロになっちゃいますので、千人村のようなわかりやすい説明をしていただければ一番ありがたいと思いますけれども、ここが実は、将来の医療においてどういった像を描いているのか、まさに抜本改革を考えているのか、本当にわかりやすい部分でもあるんではないかと私は思います。
 どうか大臣、NPOやボランティア活動とか地域の住民との共助が大事だということも言っておりますけれども、医療というものが、どういったかかわりを持って、どういう姿になっていくべきなのか、ここら辺をわかりやすく具体的に御説明を願えればありがたいと思います。
篠崎政府参考人 保健医療分野におきますNPOやあるいはボランティアの活用などについてのお尋ねがございました。
 保健医療分野におけるNPOやあるいはボランティアの活動は、幾つかございますけれども、例えば病院ですと、病院の外来案内ですとかあるいは移動介助などの活動がされております。また、保健活動の方でございますが、地域におきましても、地域保健活動における教育研修などでの活動は、これはかなり長い歴史を持って活動が行われているというふうに承知をいたしております。
 私どもといたしましても、地域住民との連携を図って、地域の実情に即した保健医療サービスが提供されるということが大変重要であると考えております。
 こうしたNPOやあるいはボランティアの積極的な活動が行われるようにしたいというふうに思っておりますが、今までのいろいろな調査等におきまして、ボランティア導入の効果も言われておりますし、また、ボランティアを導入することについての問題点なども言われておるわけであります。
 例えば、医療機関に病院ボランティアを導入するに当たっての課題といたしましては、活動範囲を明確化しなければならないのではないか。それから、セーフティーネットの普及促進がございます。ボランティア活動を行う上で万が一事故などが発生した場合に備えて、ボランティア保険などの、そういうセーフティーネットの普及促進なども必要なのではないか。また、コーディネーターの整備などということも言われておりまして、ボランティア活動希望者とその受け入れ施設とのマッチングを実現するための、そういうコーディネーターの整備なども必要なのではないかと言われております。
 いろいろの問題点あるいはメリットも言われておるわけでございますが、この三月八日に厚生大臣を本部長といたします医療改革の検討チームが立ち上がっておりまして、こういう問題につきましては、その中で医療提供体制の改革チーム、そういう中で検討をして、なるべく早い時期に結論を得たいと考えております。
佐藤(公)委員 今局長からお話がございましたけれども、大臣、いかがでしょうか。
 このNPOとかボランティアとか地域の住民との共助ということも含めて、地域がどういう形になっていくのがいいのか、またそうすべきなのか、また、ボランティア活動や何かをどう取り入れて、どういう体制でやっていくのがいいであろうかという全体像を、具体的に大臣の口から聞かせていただければありがたいと思います。
坂口国務大臣 医療というのは非常に専門的な分野でありますから、医療そのものの中にボランティアが入り込んでいくというのはなかなか難しいと私は思います。
 医療の中心はやはり専門家が行いますけれども、その周辺でどう支えていただくかということが必要になってくるというふうに思います。そうした意味では、NPOの問題でありますとか、あるいはボランティアの皆さん方の御援助というのは大変大きなものがあるというふうに思っております。
 しかし、おのずからそこには限界がある。と申しますのは、例えば介護なら介護のお手伝いをボランティアの皆さん方がおやりいただけるというふうになりましても、それは、毎日どなたかがきちっとお見えいただけるのか、あるいは午前と午後と手分けをしてちゃんとお見えいただけるのか、それとも週一遍なのか、あいた日にお越しをいただけるのか。その対応の仕方によりまして、病院なりあるいはまた老人保健施設等は対応しなければならないわけでございます。
 そうした意味で、ボランティアの皆さん方がどういうグループでどういうふうな対応をしていただけるかということによりましても随分違うというふうに思いますけれども、やはり核になりますところは専門の者がやっていくというのが、これは私は当然ではないかというふうに思っております。
佐藤(公)委員 これから、社会保障制度に関しては、国でやっていくのがもう限界だというのがわかっている、やはりこのNPOやボランティア活動という、地域の人たちに力をかりなければ維持ができないというのはもう既にわかっていることだと思います。
 一応、国立ということでいろいろな病院に幾つか問い合わせをしてみましたところ、これは本当にちゃんと窓口を設置して、それなりにボランティア活動をしたいんですがという話をすると、ちゃんと申込用紙に記入して、または持参していただく、面接をする、またいろいろなオリエンテーションを受ける、そういうことを各国立関係の病院ではやられておりました。
 ただし、これに関してはまだまだ人数が少ない。確かに限界はありますけれども、まさにこういうところにも多くの力を注ぐ。やはり教育も含めて、学校との連携をとっている病院もございました、学校の授業としてボランティア活動をやっていくような病院もございました。これはこれで、僕は本当にこういうことはどんどん進めていただきたい。
 ただ、まだまだそれが行き渡っていない。まだ、こういうことに関しては、できたはいいけれども、やはり大臣もいつもおっしゃられているみんなの意識改革が行われなければ、これからの世の中はよくならない。そういう意味で、住民の方々にもよく知られていない、わかっていない部分もたくさんありますので、こういう部分は、より広報活動等しながら積極的に働きかけてやっていくことはとても大事だと思います。
 しかし、今お話を聞いている中では、将来のボランティア、NPOそして地域の共助という形における像が非常にわかりづらい部分があると思うのですが、今のお話を聞いて、副大臣、どう思われますか。
宮路副大臣 御指摘のように、私も、これから医療、福祉の世界でボランティアの皆さんの、あるいは地域の共助のシステム、そういうものを大いにやはり活用していくべき余地は結構あると思いますし、またそうでなければならないというふうに思います。
 先般この委員会での指摘を受けて、私も、あるユニットケア、特別養護老人ホームのユニットケアを見てまいりました。そこもすばらしい施設でしたが、ボラバイト、アルバイトとボランティアの折衷のようなボラバイトという言葉がはやっているわけでありますが、そのボラバイトの皆さんが非常に特別養護老人ホームを支えておられるという姿を見てまいりましたし、私の地元鹿児島の沖永良部の和泊というところは日本一出生率の高い町でありまして、これは本当に有名なのでありますけれども、そこも、どうやっているかというと、子供を産み育てる環境というのを、地域の皆さんがネットワークをつくって、マップをつくって、そしてどういう場合にどういう方々が子育てを支援するかというような仕組みをつくってやっているというのが一番特徴でありまして、ここが非常に大きな決め手になっているようであります。
 そういったことなんかを見ましても、御指摘のように、もっともっと我々はその点を心して取り組んでいく必要があるんじゃないかなというふうに思う次第であります。
佐藤(公)委員 これに関しては、もう少し具体的にきちんとした像を描かなければ、今のお話の中では断片的な話ばかりであって、もう少し真剣に、真剣に考えられていると思いますけれども、やはりもっと具体的にわかりやすく説明をしていただけるようなものを持っていただければありがたいというか、持たなきゃいけないと思います。
 多分、今の話を聞いて、私は、傍聴の方々もきょうたくさんいらっしゃっていますけれども、何かよくわからないんじゃないかなという気がいたします。わかっている方もいるかもしれませんけれども、私自身は全体の像としてはよくわからない部分があります。
 もう時間がないんですけれども、私が言いたいことは、本当に骨太の方針、あれだけ小泉総理がおっしゃっている骨太の方針、骨太の方針と言うのであれば、それは皆さんがきちんと読んで理解をし、それに合わせてやはり動いていくことはとても大事だと思います。まさに国でいえば、あれは憲法ですよ。憲法というものに沿った形でのやはり政策というものがあるんですが、非常に私にはばらばらに見えて、本当にそういう政府に、内閣に将来をこういう形で託していいのかといったら、もう今までの答弁内容、話を聞いている限りでは不安になるばかりでございます。
 そして、大臣が、むだを省く、むだを省くということを何回もおっしゃいました。具体的な話というものが余り出なかった部分がありますけれども、そのむだというのは、実は、話を聞いていると、医療のむだというよりも、一番最初にやらなきゃいけないのは行政と政治家のむだなんじゃないかな、そんな思いがします。行政と政治家のむだを、また、人間の、私たちのむだな、変なしがらみをすべて取り除いて、やはり前向きに議論していただくことをお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
森委員長 次に、塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。すっきりしたところでよろしくお願いいたします。私、きょうは、小児医療の問題について質問させていただきます。
 私も小学校と保育園に通う娘がおりますけれども、子育ての中の御苦労というのは、皆さんと同じように実感をしているところであります。そこで、大臣にお伺いしますが、今回の法改正では、三歳未満の乳幼児については給付率を七割から八割に改善をしたということですけれども、なぜ八割で三歳未満なのか。
 今、乳幼児医療費の無料化が国民的な要求にもなっております。厚生労働省の調べでも、六三・七%の市区町村が何らかの無料化を実施していると聞いております。多くの自治体からも要望も寄せられているところであります。我が党も、小学校就学前までのすべての乳幼児の医療費を所得制限なしに窓口無料とする法案を今国会に提出をいたしました、これでありますけれども。八割でなく無料化にこそ踏み出すときではないかと率直に思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 小児医療の問題というのは大変大事な問題でございますが、各都道府県を初めといたしまして地方自治体が熱心に努力をしていただいて、医療費の無料化でありますとか、あるいはまた二割あるいは一割というふうに御負担をいただいているわけでございます。
 国の方は、今まで全く小児医療に対しまして手を差し伸べてまいりませんでした。手を差し伸べてこなかったということはありませんけれども、いわゆる保険上は手を差し伸べてこなかったということでございます。
 今般、厳しい中身ではございますけれども、一割負担をすることにした。これは、今まで全くこの分野で手をつけてこなかった国が初めて手をつけたわけでございますから、私は、その分、各地方自治体が御努力をいただいておりました分をある程度は肩がわりができるだろうというふうに思っております。十分に全部ができるというわけではございませんが、一部は肩がわりができる、そういうふうに思っておりまして、その点では地方自治体からも御評価をいただいているところでございます。
塩川(鉄)委員 やはり子供さんを持っている親御さんにとってどう評価されるかというところが大事であるわけで、この説明をお聞きしたときに、少子化対策の観点から給付率を八割に改善というわけですけれども、ここがよくわからないわけですね。
 少子化対策の観点というのはどういうことなのか、その点を確認させていただきたいのですけれども。
宮路副大臣 委員御案内のように、少子化の進行はいろいろな分野に影響を及ぼしますから、したがって、さまざまな方策を総合的に、少子化対策、講じていかなきゃならないことは当然であるわけであります。
 そういった意味で、医療保険制度だけでどうこうという問題じゃないわけでありますが、しかし、今回の制度改革におきましては、そうしたもろもろの少子化対策を進める中でも、医療制度としてもその一翼を担おうということで、一般の医療制度につきましては、先ほど来御議論されておりますように、給付率をすべて七割に今度は統一をさせていただく、そういう方針を打ち出して改正案を提案させていただいているわけでありますが、そういった中にありまして、乳幼児医療の負担の軽減を図ると同時に、また、地方公共団体による乳幼児医療に対する助成の実施状況、これは、現在広く都道府県や市町村が行っておりますそうした乳幼児医療に対する助成の実施状況なども勘案いたしまして、先ほど大臣の方からも答弁がありましたように、三歳未満の乳幼児に対しては給付率を一律八割に引き上げる、従来の七割を八割に引き上げるということといたしたわけでありまして、この点がまさに少子化対策の一翼を担うものであるというふうに理解をいたしているところであります。
塩川(鉄)委員 いろいろおっしゃいましたけれども、乳幼児医療費負担の軽減、これが少子化対策の観点であるということではよろしいですね。今うなずいていただきましたので、確認をいたしました。
 医療費負担の軽減、経済負担の軽減ということですけれども、少子化対策は、お話のとおり、総合的なものであるのはそのとおりだと思います。働きやすい環境をつくることですとか、保育所や学童保育の充実など、多面的に行われるものでありますけれども、同時に、やはり経済負担の軽減というのが少子化対策において大きなウエートを占めるというのは、いろいろな子育て世帯の現状を見たときに言えることだと思うんですね。
 例えば、国立社会保障・人口問題研究所の調査でも、妻が理想の数の子供を持とうとしない理由、現実と理想とのギャップがなぜ生まれるのかということは、その一位というのが、一般的に子供を育てるのはお金がかかるからだ、二番目というのは子供の教育にお金がかかるからだという、経済的な負担の要因が大変大きいというのが実際だと思います。これは、やはり子育て世帯の皆さんの実感でもあると思うわけですね。
 その点で、経済負担を軽減ということですけれども、既に多くの自治体では助成制度によって保護者の負担が軽減をされているわけですね。今回の二割負担の措置で、現在、それぞれの自治体の中で乳幼児医療費の助成制度がないために現実に負担が軽減される乳幼児というのは、実際どのくらいいらっしゃるんでしょうか。
大塚政府参考人 今回の給付率の見直しで、国としての制度として、いわば負担軽減に資するということでございますが、今お話しのように、現実に都道府県なり市町村で助成制度を実施しておる、それとの関係で申しますと、現在実施されております各地方公共団体における助成措置は、御案内と存じますけれども、その対象年齢でありますとか所得制限のありなし、一部負担金の額も違いますし、入院、外来で取り扱いも異なっております。さらには支払い方式も違う。さまざまでございます。
 したがいまして、具体的にどのくらい軽減するか、現在の都道府県、市町村の対応との関係でこれを推計する、試算するのは極めて困難でございまして、直ちに数字でお示しすることはできません。御了解を賜りたいと存じます。
塩川(鉄)委員 少子化対策ということで、子育て世帯の負担の軽減ということで出されたというふうに聞いているわけですけれども、確かに、大臣も冒頭おっしゃったように、自治体の負担軽減という面はあるのかもしれない。しかし、では実際に乳幼児、三歳未満の子供たちを持つ親御さんにとって、現実に負担軽減が今回されるのかといったら、圧倒的多数の自治体では既に助成制度をやっているわけですよ。
 所得制限のある場合という話もしましたけれども、現実、所得制限のないような自治体というのは七五%もあるわけです。所得制限というのもある意味ではごく一部であるわけで、この三歳未満の子供たちの枠をとっても、現実に自治体は助成制度をやっているわけですから、本当に、実際に負担軽減になるというのはごくごく一部じゃないですか。
坂口国務大臣 それは御指摘のとおりと私も思うんですが、初めにも申しましたとおり、各地方自治体は、今までそれぞれ、程度は違いますけれども、少子化対策をやってくれているわけですね。今回、国の方が八割にしたということは、その分だけ地方自治体は楽になるわけであります。
 ですから、地方自治体によりましては、その楽になりました分を、また新しい少子化対策に回していただくこともできるでしょうし、各自治体がどうしていただくかということは、それは我々で判断できませんけれども、多分、今までそういうふうに御努力をいただいていたところでありますから、何かの形でまた御援助いただけるのではないかというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、今まですべてを地方自治体にゆだねてきた、それを、地方自治体だけではなくて、国の方もその一端を受け持つ、こういうことにしたということでございます。
塩川(鉄)委員 自治体が財源難の中でも助成制度をやってきたというのは、全国の運動の成果なんですよ。やはり子供を大切にしよう、お母さんやお父さんや、そういった子供たちを支えようという多くの人の運動の中で、こういう到達をかち取ってきたわけです。
 ですから、これを機会に、自治体でさらに助成制度を上乗せさせようという点で皆さん頑張っていただくというのは大いにあることだと思うのですけれども、現に今の制度において、子育て世帯の負担の軽減と言っておきながら、大臣もお認めになったように、そういう対象はほとんどないというのが実態だということが、まず言えるというわけです。
 その上で、子供の医療費も親御さんの医療費も家計は一緒であるわけです。今回の七割給付の実施で親御さんの医療費が確実にふえることになるわけです。三歳以上の子供の入院費は、三歳以上の子供でいえば、入院費が二割から三割になりますから、子供の医療費の負担軽減といっても、実際には三歳以上の子供さんを持っている、うちもそうですけれども、そういった世帯では負担増ということになるわけですね。三歳以上の子供というのは子育て支援の枠外なのか、こういうことで少子化対策と率直に言えるんでしょうか、大臣改めてお尋ねしたいと思います。
坂口国務大臣 三歳まで八割にしたということは大変私は大きい出来事であったというふうに思っておりますが、少子化対策というのは、先ほどからお話ございますように、これはさまざまなものを組み合わせていかないといけないわけですね。もちろん経済的な理由というものもございましょう。だけれども、経済的な理由だけで子供を産まないということでもないわけでありまして、総合的なやはり対策を立てていかなければならないというふうに思っております。
 その一環として今回行ったわけでございますから、私は、このように、これからもあらゆる分野に少子化対策というものを織り込んでいかなければならない、それは厚生労働省のさまざまな法律の中に、他の分野におきましても織り込んでいかなければならないというふうに思いますし、また厚生労働省以外の法律の中にもこの少子化対策というのはぜひ私は織り込んでいただきたいと思っているところでございます。
塩川(鉄)委員 私は、今回の乳幼児の八割給付というのが少子化対策の観点から行われるんだ、その少子化対策の観点は何かといえば、乳幼児医療費負担の軽減、経済負担の軽減だと言うからお聞きをしているわけです。でも、現実には乳幼児にとってみても、ほとんど現実に負担軽減になるところはない。
 さらには、今回の法改正で、全体として見れば親の負担増になるわけですから、子育て世帯への負担の軽減にはならないという状況じゃないですか。これでどうして少子化対策の観点から実施をしたと言えるのか、このことが率直に問われてくると思うわけです。
 私は、その点で、こういった乳幼児医療費の助成制度を考えたときに、地方自治体の皆さんが大変な努力をされている。そこでの住民の皆さんの大きな運動の中で、そういった成果が積み上げられてきた。これが大きな力になっているということは率直に思うわけです。
 そこで、大臣にぜひとも、こういった少子化対策としての積極的な自治体の乳幼児の医療費の助成制度、大臣はどのように評価をされておられるのか、率直な受けとめをお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 ほとんどすべての自治体がこの小児医療の問題にお取り組みをいただいているということは高く評価をいたしております。それでありますがゆえに、自治体にだけお願いをしていたらいけないというので、国の方も八割にしたということでございまして、したがいまして、そうした今まで御努力をいただいております地方自治体も、今回の国のこの八割ということに対しては評価をしていただいている、そういうふうに私は思っております。
塩川(鉄)委員 自治体の取り組みを高く評価をしているということをお聞きしました。
 そこでお聞きしたいんですが、ではその子育て世帯の要望にこたえて地方自治体が医療機関での窓口無料化を実施する、窓口無料化にする、こういった自治体に対して、現在、国はいわゆるペナルティー、国庫負担金を最大一五%も減額するようなことが行われているわけです。少子化対策に熱心に取り組んでいる、大臣自身も高く評価をしている、こういった自治体に対して、何でこんなペナルティーをかけるんですか、いかがでしょうか。
宮路副大臣 御指摘の問題は、地方単独事業によって、国民健康保険の一部負担を行って、その結果負担金を徴収せず現物給付を行っているという例が、先ほど御指摘のように現にあるわけでありまして、それに対応して国の方では国庫負担の減額調整をやっている、その趣旨はどういうことかというお尋ねだと思います。
 今申し上げたような、そういう地方単独事業による一部負担金を徴収しない、そういう状況のもとでは、一般的に申し上げて、そのことによって医療費の増大が見られる、そういう紛れもない事実があるわけでありまして、そうなりますと、市町村間の公平を欠くということが出てくるわけでありますので、その公平の観点から国庫負担の調整措置を現在行っておるわけでありまして、これは、委員御案内のとおり法律に基づいて、国民健康保険法の第七十条の規定に基づいてそれを実施している、こういうことでございます。
塩川(鉄)委員 全く理解できませんよ。
 国を挙げて少子化対策をやっているんでしょう。地方自治体が一生懸命経済負担を軽減しようと窓口無料化というのを取り組んでいる。こういった熱心に子育て支援、少子化対策に取り組んでいる自治体に減額調整という形でペナルティーをかける、とんでもない。
 私、じゃ、例えば、具体的に聞きますけれども、今回の乳幼児八割給付によって自治体の負担が軽減をされる、大臣はそのようにおっしゃいました。では、それについて保護者の方や住民の方の要望にこたえてさらに上乗せしよう、新たに窓口無料化を実施するような、こういった自治体に対してもペナルティーをかけるわけですか。
大塚政府参考人 私どもといたしましては、ただいま副大臣から御答弁申し上げましたとおり、ペナルティーとは考えておるわけでございませんで、当然のことながら、市町村間で一定の限られたといいますか、大枠としての国庫負担、国庫補助を支給するわけでございまして、市町村間でいわば平等に国庫を配分させていただくということでございます。
 したがいまして、私どもとしては、ペナルティーという位置づけではございませんで、あくまで国庫負担金、国庫補助金の公平な配分、そういう観点からでございますので、一定のルールに基づきまして調整をさせていただくのは当然だと考えておりますし、例えば、今回負担を軽減されました金額で、ある市町村ではさまざまな子育て支援のための一般会計を通じた助成措置をする、ある市町村では健康保険の関係の負担軽減に資する、それぞれの市町村の選択でございます。
 したがいまして、一方で、医療保険制度に充当した場合には、これは隣の市町村とのアンバランスが生じますから、私どもとしてはこれは調整をさせていただく、決してペナルティーのつもりはございません。
塩川(鉄)委員 納得できませんよ。
 国を挙げて少子化対策をやろうと言っているんじゃないんですか。であれば、その方向で是正すればいい話じゃないですか。一方で少子化対策という名目で今回乳幼児医療費の負担の軽減を打ち出しているのに、自治体がより積極的に助成制度をつくっているのに対してペナルティーをかける、どういうことなんだ。少子化対策というならこういう自治体のペナルティーこそ見直すべきじゃないか。政治的な判断としてやるべきだという立場を厚生労働大臣としてとるべきじゃありませんか。大臣、いかがでしょうか。大臣に聞いているんですから、大臣、政治姿勢の問題ですから。
宮路副大臣 今の点は、これはもう過去の国会におきまして御議論をいただいて、国民健康保険法の第七十条にその旨の規定がこれは設けられておるわけでありまして、これは何も小児の医療という分野だけではなくて、高齢者の医療についても窓口負担を軽減するような措置を市町村が単独事業で行っている、そういうケース等々を含めて調整をさせていただく。
 それはなぜならば、一般的に、窓口における負担が軽減された結果、医療費が当該市町村については増大するという現象が起こっておるわけでありまして、そのことを、医療費の増大という部分を調整させていただくという観点から行わせていただいているという措置であって、決してペナルティーといったようなものではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
塩川(鉄)委員 窓口負担を減らすという子育て世帯を応援する施策に対してペナルティーをかけるというのは大問題だということを、これを改めるべきじゃないかということを聞いているわけです。
 副大臣のお話、伺いました。内閣を構成する厚生労働大臣としての見解をお伺いします。坂口大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 今副大臣が御答弁申し上げたとおりでございます。
 一方におきましては少子化対策がある、一方におきましては国保なら国保という保険の財政調整の問題がある。それらを総合的に行っているわけでありまして、したがって、そうした面も出てくるわけでございますから、一方におきまして八割にしたということは、ひとつ御評価をいただきたい。一方は、それは、財政調整すべてを、全般、万般を見て決定をしているわけでありますから、それらのこともひとつ御理解をいただきたいと思うわけです。
塩川(鉄)委員 全く理解できません。少子化対策の方向でこそ調整すべきだ、こういう方向でこそ是正すべきだ、このことを強く求めるものであります。
 その上で、子育て支援というときに今問題となっていることに、小児慢性特定疾患治療研究事業、子供たちの慢性疾患についての支援事業がありますけれども、この見直し問題があります。
 この事業の目的というのは、「小児慢性特定疾患の治療研究事業を行い、もってその研究を推進し、その医療の確立と普及を図り、併せて患児」、患者の子供たちの「家族の医療費の負担軽減にも資する」ものと、患者負担の軽減、経済負担の軽減というのが大きな目的の一つになっているわけです。
 今、この小児慢性特定疾患治療研究事業の見直しについての検討会が行われ、つい先日、報告書案が出されたわけであります。その中では、この補助金が「毎年度削減の対象となる奨励的な補助金として位置づけられている。」として、「安定的な制度として確立していくために、」「受益するサービスに対する適正な認識を求めていかなければならない」、つまり、自己負担の導入が課題だとしております。
 これは、制度化、安定化という名前のもとに、患者負担の導入を検討するということでしょうか。
宮路副大臣 御指摘のこの事業につきましては、昭和四十九年に事業開始したわけでありまして、以来もう約四半世紀を経過した、こういうことでありまして、その間に医療技術の進歩によります治療状況の変化、あるいはまた患者や家族の皆さんのニーズの変化、そしてまた、一方では厳しさを増す財政事情ということもあるわけでございますので、そういったもろもろの情勢変化を踏まえて検討を、見直しをしようということで、省内に検討会を設置していろいろな角度から御意見をいただきながら検討している。
 先般、五月の二十七日の検討会でその報告書案が示されたわけでありまして、そこにおいて、委員御指摘のように、自己負担の導入ということも含めまして、具体的な見直し案について、検討会の最終的な報告も踏まえて今後検討してまいりたい。その際、当然、患者の家族の負担の重さや、あるいはまた他の制度とのバランス等々、そういった点も十分考慮しながらよく検討していきたい、こういうふうに今考えているところであります。
塩川(鉄)委員 自己負担の導入という検討は、とんでもないことだと思うんです。中国新聞にも、「小児慢性疾患治療の助成見直し」「広がる不安」「患者家族の負担ずしり」というのがあります。「医師から一生治らないと言われた時はショックでした。治療器具にかかる、お金の心配をしなくて済む安心感は大きい」という、小児糖尿病の女の子を持つお母さんの声が紹介されていますけれども、実際、母親は病気で付き添うために仕事をやめたり、父親も勤務に影響が出て収入がダウンする。こういう形での経済的な負担が求められるときがふえてくるのが、こういった難病患者の実態であります。
 こういうところから一部自己負担を取るというのでは、さらに少子化を進めるような、これをあおるような実態だ。我々は、こういう方向をとるべきではない。こういった、少子化対策に逆行するような今度の健保大改悪、こういうのはきっぱりとやめるべきだ。このことを求めて、質問を終わります。
森委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 これまでの二回の質問で、私は、今回の健保法等改悪で国民に一兆数千億円の負担増が押しつけられることを明らかにいたしました。しかし、負担増はこれにとどまりません。
 今、我が党の塩川議員が、子供の難病治療に自己負担を導入しようとしている問題を取り上げましたが、私は引き続いて、全国で約五十万人いる難病患者に対しても政府は次々に負担増を押しつけようとしている問題について質問をいたします。
 特定疾患治療研究事業、つまり難病への全額公費負担制度は、一九七二年、昭和四十七年から始まっております。現在までに難病として指定されているものは百十八あり、そのうち特に、治療が極めて困難であり、かつ医療費も高額である疾患四十六について、患者の医療費の負担軽減が図られております。これは本当にすばらしい制度だと思うんです。ところが、残念なことに、それが今次々に後退しております。
 まず、お尋ねしますが、九八年五月から、これまで全額公費負担になっていたものが一部自己負担になりました。どう変更されたか、また、それによって一部負担になった患者の数はどれぐらいいるのか。
    〔委員長退席、福島委員長代理着席〕
下田政府参考人 平成十年度に導入をされました難病患者への一部自己負担制度は、公衆衛生審議会の難病対策部会におきまして種々議論がございました。患者団体等の意見も踏まえまして、ほかの難治性疾患患者、これは例えば、がんとか脳卒中とか精神疾患とかいろいろあるわけでございますが、そうした他の難治性疾患患者との社会的公平を期するという観点から導入されたものでございます。
 その内容でございますけれども、重症の患者あるいはスモン、クロイツフェルト・ヤコブといった一部の患者につきましては全額公費負担をしてございますが、それ以外の方につきましては、入院医療の場合月額一万四千円を限度、入院外、つまり外来でございますが、外来の医療費につきましては一医療機関につき月額二千円を限度とする自己負担を設定したところでございます。
 また、お尋ねの、患者の割合でございますけれども、平成十二年度末で約四十七万人対象患者がおるわけでございますが、その約八割がこの自己負担の対象となっておるところでございます。(小沢(和)委員「八割が自己負担の対象」と呼ぶ)自己負担の対象となっている方が八割ということでございます。
小沢(和)委員 だから、大部分の人が自己負担をするようになったということですね。
 さらに、二〇〇一年、昨年四月から難病患者認定適正化事業が導入され、認定も厳しくなりました。既にそれから一年たっております。患者団体に実情を問い合わせてみましたところ、これまでパーキンソン病として認められていた人がパーキンソン症候群としてはねられる、潰瘍性大腸炎と認められていた人が過敏性大腸炎としてはねられる、重症と認められていた人が軽症として一部負担させられるようになったなどの例が各地に出ております。
 結局、認定適正化とは、無理に病名を変えたりして、患者を切り捨て、自己負担増を押しつけるということではありませんか。
下田政府参考人 委員御指摘の難病患者認定適正化事業は、目的といたしましては、もともと、難病患者の認定につきまして、都道府県での認定の率に格差が相当あったというのが背景でございます。そこで、臨床調査個人票というものを電算化いたしまして、様式も統一化すること等によりまして全国の認定のレベルを同じくする、あわせまして認定作業の省力化を図るということが目的でございます。そこで得られました各種のデータは、難病患者の実態を明らかにし、それぞれの症状に合わせた難病対策の向上に資するものというふうに考えております。
 また、難病として認定されるべき患者が認定対象から外されるということはあってはならないというふうに考えておりまして、そのために、認定の最終段階におきまして、都道府県に置いております特定疾患対策協議会がございますが、そこにおきまして、難病患者の認定審査は従来どおり行っておるところでございます。
小沢(和)委員 九八年に一部自己負担を導入してから、予算は翌年からほとんど頭打ちになっております。認定の適正化が始まってからは、昨年とことし、二年続けて一〇%マイナス。今年度予算は百八十六億円、ピーク時より四十二億円も減少しております。何と弁解しようと、先ほどから公平を期するとかレベルを合わせるとか言うけれども、結局、そういう言い方をしながら難病治療の予算を削っているということは、もうこれではっきりしているんじゃないでしょうか。
 さらに、厚生労働省は昨年から難病対策委員会をつくり、本事業の見直しを進めております。全国の多くの難病患者団体が、この見直しは一層の患者切り捨て、負担増につながると訴えております。
 この機会にお尋ねしますが、どういう見直しをするのか。設置目的の中に、事業の安定化を図るとありますが、それはどういうことか。委員がほとんど医師であり、これでは患者の声が反映しないという批判がありますが、どうやって患者の意見を酌み取るのか、明らかにしていただきたい。
下田政府参考人 特定疾患治療研究事業につきましては、事業発足以来三十年が経過をいたしておりまして、その間、医療技術の進歩に伴いまして、原因がある程度明らかになったもの、あるいは一定の治療方法が確立されてきたもの、そういったものも出てきているのは事実でございます。
 また、何度も申し上げて大変恐縮でございますけれども、他の難治性疾患、がんでございますとか脳卒中でありますとか精神疾患とか、そういった他の難治性疾患患者との公平性も含めまして、難病を取り巻く環境も大きく変化してきているというふうに考えております。
 こうした背景を受けまして、昨年の九月に難病対策委員会を設置し、今後のあり方を検討していただいているところでございます。この委員会には、オブザーバーといたしまして患者の代表の方々に毎回御参加をいただいておりますし、また、患者団体の御意見を聴取する場も設け、あるいはアンケートを実施するなど、多くの難病患者の方々の御意見は反映させながら、会議自体も公開でございまして、そういった透明性の中で議論を進めておるところでございます。
小沢(和)委員 他の病気との公平というのであれば、そっちの方を引き上げる形で公平を図るようにしていくのが筋だということを私は申し上げたい。
 次の質問ですが、難病として認定する四要件の一つ、おおむね五万人未満という患者数を超えた潰瘍性大腸炎、パーキンソン病、全身性エリテマトーデスなどの患者たちは、丸ごと切り捨てられるのではないかと深刻な不安を持っております。患者が五万人以上にふえたから難病と認めないなどという理屈は、だれが考えても成り立たないんじゃないでしょうか。
 今年四月、同じ問題を我が党小池晃議員が参議院厚生労働委員会で質問しておりますが、大臣の答弁はいま一つ明確でありませんでした。だから、ここでもう一問、希少性がなくなったから切り捨てるようなことはしないと明言していただきたいが、大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 この特定疾患といいますのは、我々一応、難病というふうに言っておりますが、我々が通称言います難病とはちょっと違うんですね。先ほど四要件をお挙げになりましたけれども、原因不明で、治療法が確立していなくて、患者数が少なくて、生活面で長期にわたる支障を来す、こういう人たちを特定疾患治療研究事業の中で対象者としている、こういうことなんですね、もう御承知のとおりでございますが。
 ですから、難病に対してどうするかということならば、ほかにももっとたくさんの難病があるわけです。ですから、私は、この際に、難病対策をどうするかというんだったら、もう少し基本的な点から考え直さなきゃいけないなというふうに思っておりますが、現在のこの制度が続いていくということを前提にして言えば、五万人というのが一つの限度になっておりますけれども、五万人を一人超えたからそれで切り捨てるというようなことをするつもりはございません。
小沢(和)委員 私は、今回、数十名の難病患者の訴えを読ませていただきました。ほとんどの人が仕事につけず、自分では生きていけない、親や配偶者に経済的にも日常生活でも全面的に支えられ、辛うじて闘病生活を続けております。親や配偶者も二十四時間つきっきりのため、経済的にも困窮し、介護で疲れ切っている。数日前の新聞では、パーキンソン病の息子への五年に及ぶ看病に疲れた七十五歳の母親が、思い余って息子を殺し、自分も死のうとしたという痛ましい事実が報道されております。こういう人たちにこれ以上経済的負担の追い打ちをかけてよいのか。いかに我が国の財政が困難でも、五十万近い難病患者とその家族が安心して闘病を続けられるように、あと数十億円程度の国費を追加することで国民的合意が得られないはずはないと私は確信します。この際、新しい法律をつくって、難病対策を確立し、これ以上の新しい負担を患者に押しつけるようなことをやめていただきたい。大臣はいかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 先ほども申しましたとおり、難病の方というのはたくさんございます。この四十九、五十の疾患だけではございません。もっともっと多数に上る患者さんがおみえでございます。患者さんの数の少ない人だけを特定疾患として今扱っている。しかし、今お挙げになりましたような、非常に御苦労なすっているような患者さんというのは、数多く存在する病気の中にも存在するわけでありまして、そうした皆さん方との整合性という問題もあるわけでございます。
 難病というものをもう一度見直して、そしてその中でこの問題をどうすべきかということを考える時期に来ているというふうに思っている次第でございまして、検討を開始させていただきたいと思っております。
小沢(和)委員 時間もぼつぼつ来ておりますから、最後にこの機会に、本事業の対象にもなっている難病の一つであります筋萎縮性側索硬化症、いわゆるALSの患者からの訴えを一言取り上げさせていただきたいと思うんです。
 訴えの主は、私の地元、北九州市八幡西区の人で、日本ALS協会福岡県支部長の古江和弘さんであります。彼は、病状の進行で今は寝たきり、のどを切開し、気管に呼吸のための管を挿入しております。そういう状況の中でも、わずかに動く指先でパソコンを使って会報を発行したりして頑張っております。問題は、のどにしばしばたんが絡むので、それを吸引しなければならない、これをするために奥さんがいつも近くにいなければならないということであります。ヘルパーを頼みたいが、ヘルパーには、たんの吸引装置の扱いは医療法上の医療行為として禁止されている。これでは、ヘルパーに来てもらっても奥さんは外出することも休むこともできない。
 私は、これを解決するためには、あの救急救命士の挿管問題と同じように、ヘルパーにきちんとした訓練をして、たんの吸引装置を扱う資格を認める以外にないと思うんです。奥さんももともとは素人でありました。その奥さんに医療法上の例外を認めるのであれば、二十四時間介護で疲れ切っている奥さんを救うために、ヘルパーにも認めるべきだと思う。これは何も古江さん個人の問題でなく、ALS患者の全国共通の願いだと聞いております。ぜひ検討していただきたいが、大臣の答弁をお願いいたします。いや、大臣、大臣。いや、私は特に大臣に答えてくれと言ってさっき通知してあるんだから。
篠崎政府参考人 私の方から先に御説明をさせていただきます。
 在宅で療養しているALSの患者さんの数は、全国で約千五百人から千八百人程度と推計されているところでございますが、これらALS患者さんの気管内チューブなどにたまったたんを吸引する行為につきましては、当該行為が患者の身体に及ぼす危険性にかんがみますと、原則として医師または看護師などが行うべきものと考えております。
 このため、現段階におきましては、ヘルパーが吸引を行うことを一般的に認めることについては、患者の生命、身体に対する安全の確保を最優先に考えねばなりませんので、医師などの有資格者以外の者が医行為を行うことを禁止している現行制度との関係、万が一事故やトラブルが生じた場合の責任などについて慎重な検討が必要であると考えております。
小沢(和)委員 現に奥さんにやらせておるじゃないか。奥さん、医者か。
福島委員長代理 質疑時間が過ぎております。
小沢(和)委員 いや、大臣、引き続き答弁するんだろう。
坂口国務大臣 現行制度の中におきましては、今局長が御答弁を申し上げたとおりでございます。
 しかし、小沢議員が御指摘になりますことも大変大事な問題でございますから、今後、救急救命士の問題等もございますしいたしますので、幅広く検討していきたいと思っております。
小沢(和)委員 終わります。
福島委員長代理 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 きょうは、大臣初め皆さん、長時間の審議でお疲れかと思いますが、いましばらくお願いいたします。
 そして、今回の健康保険、特に医療保険上の改正を初めとする諸問題、論ずれば論ずるほど問題が多岐にわたるということが浮かび上がってまいってきておるかと思います。さきに私どもの中川智子が質問いたしましたが、今回特にサラリーマンの自己負担三割ということは、いわゆるサラリーマン家庭での家計の中における支出として約一一・一%以上の窓口負担やお薬に対しての負担がかかりまして、非常に家計負担が重いということ。これは実は国民皆保険のないアメリカに次ぐ高さでございまして、ヨーロッパ諸国の家計負担の中と比べますと三倍から四倍高うございます。
 医療財政のみならず国の財政が逼迫しておる、そのゆえに我慢してくれよというのが小泉首相のお話ですが、やはり国民の基礎体力を落としてしまっては元も子もないという点で、四野党共闘いたしまして、この三割負担という問題も反対をいたしております。
 そして、あわせて、今回保険料の値上げと同時に御高齢な方々も一割負担ないし二割負担とどんどん窓口負担が上がってまいります。一方、では一九八〇年代と比べて、国は医療費に対していかほどの国庫負担をしてきたかと申しますと、一九八〇年代が三〇%内外といたしますと、今ではいわゆる国庫負担分は二四%と非常に減じております。
 この点をもちましても、やはり医療というものは国民の基本的な生存権にかかわる部分で、国の経済に連動して削減されていったのでは逆さのことが起こるだろうということを中間討論地点でまず御指摘申し上げて、本日は、いわゆる診療報酬のことについて少しお伺いをいたしたいかと思います。
 今回は、初の診療報酬のマイナス改定ということをもちまして、薬剤費が一・八%、そして診療報酬上の計を合わせますと二・七%削減ということになっておりますが、実はこのように試算されました以上のある意味での実害を各診療機関はこうむっているかと存じます。
 そこで第一問目でございますが、実はさきの五月二十二日に五島委員に対しましての大塚保険局長の御答弁の中で、今回のマイナス改定のことに関しまして、医療機関の経営に想定をした状況を超えるような事態が生じるとは正直言って現時点では考えておらないわけであります、フォローしていかなければわかりませんけれども、現時点においてはということで、予測を上回る弊害はないというふうな御答弁があったことを覚えておいでの委員もおいででしょうし、もちろん大塚保険局長は覚えておいでだと思いますが。
 私の手元に寄せられました六十七医療機関からのアンケート調査、一カ月を経たところでとりまして、対前月比三月との比較、それから対前年比といたしまして上がってきたデータがございます。全医療機関平均ですと約マイナス七・六%の対前月比減収、前年比ですとマイナス九・〇%、多く見積もれば全医療機関平均でも一〇%内外、特にこの中でも内科以外の医療機関、これは実は整形外科等々の減収が大きいわけですが、これが前月比でマイナス一五・九、前年比でマイナス一〇・〇となっております。
 さきの御答弁で大塚局長がおっしゃいました、どのようなフォローをしておられるのか、そして現状で、一カ月たったところで、どんなデータをお持ちなのか。診療報酬マイナス二・七になさったことの結果、影響をどのように入手しておられるのかについてお伺いいたします。
    〔福島委員長代理退席、委員長着席〕
大塚政府参考人 私どもは、医療費につきましては、俗称あるいはニックネームでございますが、メディアスというようなシステムで、各医療機関から審査支払い機関に請求されました額、これをベースにまずは一番早いデータをとるわけでございますけれども、御案内のように、診療月の翌月に請求をいただきます。そして、お支払いがいわば診療月の翌月末ということになりますので、私どもが診療月のデータを大体入手できますのはおおむね実は三カ月後になります。そういうことでございますので、四月分につきましては、全国的なデータというのはまだ入手できるに至っておりません。
 それから、これは今御議論というか、詳しいことを申し上げる必要はないのかもしれませんけれども、診療報酬改定、特に多岐にわたりますと、四月の時点というのは大変いろいろ不確定要素がございます。
 例えば、医療機関におきましても、これは私ども引き続き努力をしなければなりませんが、どうしても新しい診療報酬改定で項目が多い場合には、多少の事務的な処理が時間がかかるというようなこともありまして、四月のデータだけで議論するというのはなかなかこれはまた非常に危険な数字になる、危険な数字といいましょうか、見通しをややもすると結果においては誤るということもございます。もう少し期間をとった形での把握というのが必要だろうと思います。
 今現時点におきましては、そういう事情で具体的な数字は持ち合わせておりません。
阿部委員 そうであるならば、この五月二十二日の御答弁は、私は不適切だと思います。やはり状況を超えるような事態が生じるとは正直言って現時点で考えておらないというのは想像にしかすぎなくて、今おっしゃったような答弁をなさるべきです。三カ月か四カ月たたないと診療報酬改定上の余波の予測はつかないのであると。今おっしゃったことを端的に申しませば、一言で言えば私の申したようになると思うのです。
 私が特にこの診療報酬改定で案じておりますことは、実は、医療というのは、いつも申しますが、いわゆる労働集約型、かなりを人件費に割かなければならない分野でございます。診療報酬の改定が結果的に人員削減、リストラクチャーをしていかなければならないようなことに結びついた場合に、ただでも少ない現在の日本の医療の従事者は、あっぷあっぷでやっているわけでございます。そこに及ぼす悪影響を非常に案じております。
 ですから、ぜひとも担当部署におかれましては、実際の診療報酬減の影響、それからそれがどのような病院の診療従事者の数にはね返っていくかというようなこともあわせて指標としてお持ちいただければと思います。そして、そちら側のデータが出た時点でまた改めて私どものとりましたデータとあわせて検討させていただきますので、それまでは、例えば十月からかてて加えて御高齢者の二割負担とかいろいろなことを行われませんように、きちんとデータがそろってから次のステップ、特にこの場では、小泉首相はもう来年三月からサラリーマン本人は三割負担にするんだ、するんだと言われておりますが、今回の診療報酬改定の結果が出て、きちんと物事を見きわめて、医療全般の姿を見てからでもちっとも遅くはないのだと思います。初めてのマイナス改定でございます。このことは、実は診療機関だけが負担を負うのではなくて、患者さんたちにも必ずはね返る問題であろうと思います。その視点をよくよくお持ちの上でお願いしたいと思います。
 この点について、坂口厚生労働大臣の御意見、お考えを伺いたく思います。
坂口国務大臣 この診療報酬の問題は、先ほど局長からも答弁がありましたが、四月から六月ぐらい、三カ月間ぐらいの一応状況を見て、そうしますと大体九月にはそれは出てまいりますので、その実態を一遍踏まえたいというふうに思っております。二・七%というふうに言っておりますが、特定の科に特別な負担がかかり過ぎているというようなことになれば、私はある程度の軌道修正はやむを得ないのではないかというふうに思っている次第でございます。
 この医療におきます診療報酬の問題と、そして医療の質の問題というのは、今までややもいたしますとイタチごっこのような感じで、一方が何か変化をしますと、また他の方にも変化を与えていくということになっている。それが悪い方向にいきますと、だんだんとスパイラルを描いて悪くなっていくということもあり得るというふうに率直に私はそう思っております。
 したがいまして、この診療報酬のあり方というのは、そうそういつもいつも変えるというのではなくて、やはりそれ相応の評価というものがなされるようにここはしていないと、医療そのものが落ちつかないという気がいたしております。
 したがいまして、きょうは午前中にも御答弁を申し上げましたけれども、この診療報酬の評価の基準というものを明確にして、そしてここをさわることによって医療全体をいろいろと動かす、診療報酬をてこにして動かすということは余り好ましいことではないというふうに考えておりますので、そうしたことはできるだけやらないというふうにしていくためにも、この基準というものを明確にしていかないといけないというふうに思っている次第でございます。
阿部委員 大変に先見性のある御答弁と拝聴いたします。
 私は、今回の医療法改正、とにかくやみくもだと思います。一つは御高齢者の窓口負担増、そしてサラリーマンの三割負担増、それに先立つ診療報酬の改定、ここまでプログラムして、あたかも予定調和的にやることの国民への負担、このことをきちんと見きわめておらないと思うわけです。それがこの間の審議で私どもを初めとして野党側が強く反対しております理由でもあろうかと思いますから、拙速に帰すことのないようによろしくお願い申し上げたい。
 そして、先ほども申しましたが、医療機関の人件費比率、日本の場合は大体五割でございます。公的な病院では六割が人件費比率でございます。診療報酬をさわるということは必ずその分野に及ぼす影響がございますので、医療の質とも相まって、よい指標をお持ちになってフォローしていただきますよう大塚局長にはお願いいたします。
 それとあわせて、私はいわゆる労災保険のことでお伺いいたしたいと思います。
 今回の診療報酬改定に伴って、健康保険準拠という形で、実は労災保険においてもさまざまな診療報酬上の切り下げが行われております。私は、いわゆる労災保険というものの考え方は、勤労者がその働くことの中から病を得て、でもどうにかして職場復帰したい、あるいは生活を再建させていくために日本が取り入れた極めていい制度と思いますが、あたかも、健康保険の財政が逼迫しているゆえに労災保険も準拠してカットしていくというふうな手法がとられているようで、大変に案じられております。
 例を挙げさせていただきますと、いわゆる慢性疾患ということにおいて、例えば発病後三カ月を経た患者さんの再診料がその月の六回目以降は半額となる、あるいは、理学療法、特に集団リハビリにおいて九回目以降は算定しないというようなことがございます。
 例えば振動病、よく木をブルブルブルッと切る、あるいはトンネルを掘るときのガガガガッという、こういうことで神経障害を起こしました振動病の患者さんの場合、八回までの集団のリハビリで症状が取れればよろしゅうございますが、取れなくてもリハビリを受けながら、治療を継続しながら働いておられる方がおられるわけです。このような方に対しても、なぜか三カ月という時限を区切って、それ以降のリハビリは算定されませんというようなやり方は、労災保険の本来の趣旨に大きく反する方向だと私は思いますが、この点に関しまして関係部局の御意見を承りたいと思います。
日比政府参考人 労災保険の診療報酬の問題でございますが、労災保険、これも公的な医療保険の一つでございまして、この診療報酬につきましてどう考えるか。
 これにつきましては、やはり公的な保険の一つということで、基本的には健康保険の診療報酬体系をベースにする、その上で業務上の疾病なり負傷ということに特有の事情というものもあるわけでございますので、そういう場合であるとか、また、労災保険の場合、早期の職場復帰、これを図ることが一つの大きな目標、目的でございますので、そのような点を加味した上で、健康保険の診療報酬体系の中で特別に手当てをすべき点があればこれを特例として実施しているということでございます。
 今般、労災保険につきましても、診療報酬体系を見直しまして、今申し上げたような形で改定をいたしたところでございます。
 なお、委員御指摘の三カ月経過の問題でございますが、労災の場合には、やはり最初の三カ月の早い段階におきましては、これは現実にも集中的にいろいろな形で行われることが必要ということで、最初三カ月につきましてはいわゆる上限が云々というふうなことはないのが労災保険としては適当であろう。
 それから、三カ月経過後につきましても、先ほど御指摘ございましたけれども、例えばリハビリテーションの場合でも、個別と集団のやり方はございますけれども、やはり個別の方は大切なことであろうということで、それについては制限を設けていないというふうなことで、先ほど申し上げました事情にかんがみて特別に手当てをいたすということで改定させていただきました。
阿部委員 いわゆる健康保険に準拠するという考え方、何かに例を引かなければ確かに運営できませんから。ただしかし、何度も申し上げますが、やはり労災保険の本来の趣旨は、その勤労者が例えば傷病を抱えながらも職場復帰したり、生活を再建していけるようにという趣旨でございます。
 先ほどおっしゃいました三カ月以降、九回目からのリハビリは診療報酬上に何ら加算されない、保険がきかないというような状態は、データとして、例えば三カ月で患者さんたちがお治りになるならそれでよろしゅうございます。振動病、白ろう病と言われる疾病一つとっても、より長期の療養が現実には必要でございます。
 何ら根拠のないことを健康保険準拠としてなされば、必ずその轍は、例えば鍼灸治療、一九八二年でございましたか、はり、きゅうは、一年以上たったらその方は慢性的な頸腕であるとか腰痛であるから、はり、きゅうは効果がないとして通達一枚で中止された折がございます。しかしながら、その後十数年たちまして、やはり鍼灸というものが慢性的な疼痛や腰痛を抱えながら働く方々の就労支援に大きく寄与しているということをもって、また新たな通達が出た事例もございます。
 私は、今回の問題が、特にリハビリの回数制限、あるいはそこからも保険は払わないという形になっていることを非常に案じます。今、個別リハはやっているとおっしゃいましたが、これも十一回目以降は七割にカットというような状態でございます。やはり、患者さんたちの現状、そしてそういう患者さんたちを診ている医療機関の声をきちんとお聞きになり、政策に反映させるが本道だと思います。
 この集団リハ、特に労災保険におけるリハビリの制限について、坂口厚生労働大臣に御所見を伺いたいと存じます。
坂口国務大臣 この労災の問題は、私は、阿部議員にひょっとしたら褒めてもらうんじゃないかと実は思っていたわけでございます。と申しますのは、これを決めますときに随分整形の先生方とも御相談をさせていただきましたし、そして、健保で決めましたものに比べますと随分延長をしたつもりでおります。
 健保でございますと、月一回目は八十一点、それが二回目、三回目とだんだんと減っていくということでございますけれども、労災の場合には、三カ月間は千三百八十円というふうにして据え置いたわけでございますから、ここは労災をかなり重視しているというふうにおとりをいただいていいんじゃないかと私は思っています。
 その後、逓減措置はとってはおりますけれども、一般の場合には三回まではよくて四回から逓減措置をとっておるわけで、今度は六回までというふうにしたわけでございまして、少なくとも週に一回ぐらいお見えいただく患者さんにとりましてはずうっとそのままいけるということでございますから、これはそれほど御迷惑をかけないのではないかというふうに私は思っておりまして、ここは随分譲ったつもりでおりまして、これだけはお褒めをいただけるのではないかというふうに御期待を申し上げておりましたけれども、今聞きますとなかなかそうはいかないようでございまして、おしかりを受けたわけでございますが、しかし、かなり現場の先生方の御意見も聞かせていただいたつもりでおります。今後、推移を少し見させていただきたいと思っております。
阿部委員 私も、坂口大臣はリハビリという部門は特に御見識もおありと思いますから、なおなお各診療機関の声、患者さんの声をお聞きいただいて、私のところに寄せられます声の少なくなりますように改善の御措置を図っていただきたいと思います。
 あわせて、私は、労災保険ということでもう一点お伺いいたします。
 これも、さきの五島委員の御質問で、実は二年ほど前の御質問から引かせていただきますが、いわゆる政府管掌保険の中に紛れ込んだ労災保険、本来は職業上受けた災害が政府管掌保険の医療保険の中に紛れ込んでおるというのが、レセプト上、毎年六万件近くございます。そして、そのときに、五島委員が担当部署に聞かれましたと思いますが、政府管掌保険にだって六万件くらいあるんだから、国保とか健康保険組合でも、本来は労災保険という仕組みの中でお支払いがなされるべきものが紛れ込んでおるものがあるのではないかと。特に国保については、一人親方とか林業で働かれる方とかは、実は政府管掌保険ではなくて国保に入っておられてそこで労災を受けることもあるかと思います。この点について、国保担当の部署からレセプト上のチェックの現状、あるいは今後の見通し等、御答弁をお願いします。
大塚政府参考人 国民健康保険の中で国民健康保険組合というものがございまして、その中に全国土木、正式に申しますと全国土木建築国民健康保険組合という組合がございます。ここは、いわゆる建築会社と言われるような方々、その職員がその家族も含めて加入者となっている国保組合でございますが、いわゆる建築関係の人たちの集まりでございます。
 代表例といたしましてここを申し上げますと、例えば平成十二年度の実績でございますけれども、レセプト点検の結果、労災に該当するということで調整を行ったものが二千六百五十九件、金額に直しまして約六千百九十二万円という実績がございます。
 また、国民健康保険一般になりますと、国民健康保険の主たるといいましょうか大宗を占める加入者は、今日におきましては無職者あるいは高齢者ということでございますので、労災保険の対象にならない被保険者が多いということもございまして、私どもで承知をしている件数といたしましては、そうしたものも含まれているとは思いますけれども、そのほかのケース、例えば他の被用者保険の方に本来請求できたものをその時点におきましては国保で支給をしておったというような調整を含めまして、ほかのケースの調整を含めまして、十二年度の実績で国民健康保険全体で十三万六千件、金額にいたしまして二十四億八千万円というような数字を承知しております。
阿部委員 実は、今の御答弁で半分は了解いたしましたが、半分了解できない点がございます。というのは、昨今、国保の加入者、特に特別加入と申しまして、介護労働に従事するような方とか、あるいは一たん普通の会社を定年後再就職されて、保険形態は国保というような形をおとりになる方もふえておるわけです。
 そして、それでは、各都道府県あるいは市町村の保険者に、どのような通達ないし国保の中に労災が紛れ込む可能性があるからきちんとチェックしていただきたいという厚生省サイドからの指導がなされているかということをチェックいたしますと、実は、三年ほど前に確かに通達のような形で、それも労災という文字を使わずに、紙は一枚出ておりますが、例えば十二政令指定都市に伺ってみますと、これが全くそのようなチェックはしておらないというのがお答えでございました。
 私は、これからの就労形態の変化、そしてその中で、本来、労働災害であればそれがそれとしてこの労災保険という仕組みがさらに充実していくように、各保険者、市町村ですね、もっと厚生労働省の側から周知徹底して、さまざまな労災の起こり得る可能性、そして労災保険で拾わなくてはいけない事例のある可能性を周知させていただきたいと思います。
 少なくとも、毎日新聞の報道によりますと、十二政令指定都市、全くそのようなチェックがなされていない。なされていたのは世田谷区で事例がございましたが、まだまだ各市町村行き渡っておりません。この点については、恐縮ですが、坂口厚生労働大臣に御答弁をお願いいたします。
大塚政府参考人 国民健康保険も大事な制度の運営者ということでございますから、それぞれの保険者の立場で他に請求すべきものあるいは他の制度の給付を受けるべきものがありますれば、当然、保険者といたしましてこれをチェックいたしまして適正な執行をするというのは基本でございます。
 そうした基本的な考え方につきましては、これまでも各市町村に繰り返しお願いをしておりますけれども、確かに、労災というような形で取り上げて個別の制度あるいは範囲について具体的に強く指導した、御連絡をしたということは必ずしも頻繁ではございませんので、適切な機会をとらまえてそういう注意を喚起いたしたいと思っております。
 基本的には、各制度それぞれの目的、趣旨に沿って適切な運営が行われるように、今後とも指導あるいは御協力を仰いでまいりたいと思っております。
坂口国務大臣 私も、いろいろなことを少しずつはわかっているつもりでおりますが、この問題はきょう初めてお聞きをいたしました。こういう状況で、これほど多くの数字があるということも存じませんでした。一度ちょっと調査をさせていただきたいと思います。
阿部委員 いつも誠実な御答弁で大変ありがたいと思います。
 厚生省から出ております通達ですと、第三者行為求償事務ということで書かれておりまして、これでは各市町村は、第三者行為求償事務と言われても労災とぴんとこないのではないかと思います。
 そして、先ほども申しました、これから介護労働につかれる方とか、一たんリタイアされてから再就職される方、皆さん国保をお使いでございます。そうすると、そこで当然、例えば肝炎にうつる、腰痛を持つ、いろいろな労働災害があると思います。新たな就労状況に合わせて国保をきちんとチェックしていく。そして、特に国保、赤字、赤字と言われておりますから、肩身も狭うございますから、これは行政指導上きちんとなさって、本来、労災保険ということを活用されるような向きによろしく御検討をお願いいたします。
 では、次の質問に移らせていただきます。
 きょう、各般、皆さんの御質疑の中にもありましたが、いわゆる医療過誤の問題についてお伺いいたします。
 私は、きょうの各質問者、件数が何件であるかということを中心に、それをどうやって調べるかというお話も幾つかございましたけれども、ここで、四月十七日に厚生省から出されました検討委員会の御報告の中で、二次医療圏に一つ相談窓口を設ける、そして県単位でもさらに充実したものを設けるという趣旨を高く評価いたします。
 そして、二次医療圏ということで、公的な窓口として保健所ということをお考えになってはどうか。これは、自分の受けた医療が果たしてこれでよかったかどうか、どこかに相談に行きたいと思う患者さんはいっぱいおられます。そして、自分のかかった病院にはなかなか行けません。そこで、第三者的な、そして現実に二次医療圏にある公的な機関として、保健所というのはかなりの可能性のある相談窓口と思われますが、この点について担当部局から御答弁をお願いいたします。
篠崎政府参考人 二次医療圏ごとの相談窓口につきましては、今後、関係省庁やあるいは地方自治体と協議をしながら検討することとなりますけれども、ただいま委員御指摘の保健所は有力な選択肢の一つと私どもも考えております。
阿部委員 そして、今朝の質疑でもございましたが、患者さんというか、相談をしただけでは解決しない問題も多々あると思います。一つは、救済をどうするか、あるいは裁判に持っていくかどうか。
 そして、実は、欧米諸国におきましては、ヨーロッパにおきましても、アメリカはちょっと違ってございますが、北欧諸国やドイツにおきましても、既に一九七〇年代から、いわゆる医療過誤ということに対しまして、きちんとした、そのことを検査し、あるいはそこに実地に立入調査をいたしまして、患者さん側の言い分、そして現実に行われた医療行為の妥当性等々をチェックしたり審査したりする機関が、既に一九七〇年代、ヨーロッパでは整ってございます。
 我が国がここまで医療過誤に対する対応がおくれましたのも、一つには、何か事が起こった場合に裁判という形式をとるしかないか、あるいは、もう一方の医療監視と言われますようなものは、これは、川崎の協同病院でもわかりましたことですが、部屋の広さはどうかとか、看護婦さんの数はどうか、医薬品はきちんと管理されておるか、こういうことをチェックする機能しか持たないわけです。そこで行われた医療行為そのものが患者さんにとってどのような影響を及ぼしたか、あるいはミスであったか、過誤であったか、不測の事態であったか、こういうことをきちんと立入調査し、救済の仕組みにまで結びつけるために逐一裁判をしていたのでは、これはやはり社会のロスだと思います。裁判をする方も、すごく大変、悲しい。
 そこで、私は、先ほどの労働基準監督局に倣って、医療基準監督局、立入調査権を持ち、過誤を争うのではなくて救済をまず第一にするような国の仕組みを我が国もきちんとこれから検討していくべき時期に至っている。既に三十年おくれでございますが、このことは高度化した医療の中でぜひとも検討されてしかるべきと思いますが、大変突然で恐縮ですが、これは時間の関係で、ちょっと大臣に先に御答弁をお願いいたします。
坂口国務大臣 私、地方を回っていきますと、役所の中で一番怖いのは税務署よりも監督署だ、こう言われるわけでございます。私はそれを聞くごとにびくっとするわけでございますが、それほどやはり監督署というのは皆から恐れられているのか、こう思っておりまして、そうしたものをもう一つまたつくるのがいいのかなという気がして、今実は聞かせていただいたわけであります。
 私は、それよりも、先ほどの相談所、相談所という名前がいいか悪いかは考えなきゃいけませんし、行います内容ももう少しぴりっとしたものにした方がいいというふうには思いますけれども、それを余り徹底的に、縛り上げるぞというようなものでない方がこの性質上いいのでないかというふうに私は思います。
 もしもそういう今御指摘をいただきましたようなことをするのならば、都道府県のそれぞれの監督部署もあるわけでございますから、そうしたところに少し機能を持たせて、そこにやっていただくということはあってもいいというふうに思いますが、また改めてもう一つこれをつくるということは、せっかくの御提案でございますけれども、ちょっとどうかなというふうに私は思っております。
阿部委員 これはやはり、実際の調査能力を持ち、なおかつ患者さんには救済ということをもたらさないと、先ほど申しましたように、医療被害裁判が多発すれば、必ず社会には負担になります。
 実は、アメリカで医療保険に関する医賠責の保険会社がたくさん倒産いたしました。理由は、医者は保険金を掛けます、ただし、支払いが多過ぎると保険料が高騰し、医者も払えなくなる。これがアメリカの実態です。
 今、坂口厚生労働大臣にあっては、私がきょう突然申しましたから、今のような御答弁であることも了解いたしました上で、ぜひとも、例えば、一九七五年、スウェーデンでできました社会庁傘下の医療責任委員会とか、フィンランドで一九九四年からつくられております医と法に関する国家委員会とか、こういうのはみんな、患者さんの実際に起きた医療上の過誤を含めたさまざまな問題を、過失責任を問うだけではなくて、いわゆる裁判のように過失責任を問うのではなくて、事実の調査と救済に入るための機関でございます。イギリスでも地域公衆保健検査官もございますし、ドイツでも一九七〇年代から鑑定委員会あるいは調停所というのがございます。
 私は、医療被害は、今の高度化し専門化する医療機関の中で、ある意味で、大変に多発するはもう本当に必定のように思います。もちろん、人手不足が根本にございますから、その点の充足はお願いしたいのですが、とにかく、今のような医療監視のあり方か裁判かしかないあり方の中をとる道、そしてそれは、私は医療基準監督局と申しましたが、今の労働基準監督局あるいは監督署がよくやっておられますという評価の上に立つものですので、私が今お伝え申し上げましたような事例にのっとって、ぜひぜひぜひ、これは坂口厚生労働大臣のときがよろしゅうございますので、私としては前向きに再度しつこく伺いますので。
 そして、一点申し添えますれば、いわゆる医師会の中に設けられました医療事故の紛争処理委員会は、これも患者のためには、恐縮ですが、医師会というギルドでございますから、患者の立場にはなかなか立ち切れません。第三者機関で、調停能力を持ち、調査能力を持ち、救済能力を持つという機構をぜひともお考えくださいまして、それが、裁判が多発する社会よりも、より社会的なコストが必ず低くつくし、悲しみも少なく、納得も高まろうと思います。
 一人で勝手にべらべらしゃべって恐縮ですが、力を入れた点ですので、よろしく御検討のほどお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。
森委員長 次回は、来る六月五日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時七分散会


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