衆議院

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第21号 平成14年6月14日(金曜日)

会議録本文へ
平成十四年六月十四日(金曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 森  英介君
   理事 鴨下 一郎君 理事 鈴木 俊一君
   理事 長勢 甚遠君 理事 野田 聖子君
   理事 福島  豊君
      浅野 勝人君    岡下 信子君
      上川 陽子君    木村 義雄君
      北村 誠吾君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    自見庄三郎君
      田村 憲久君    竹下  亘君
      竹本 直一君    棚橋 泰文君
      西川 京子君    林 省之介君
      原田 義昭君    松島みどり君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      谷津 義男君    吉野 正芳君
      江田 康幸君    桝屋 敬悟君
      野田  毅君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   厚生労働大臣政務官    田村 憲久君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十三日
 辞任         補欠選任
  塩川 鉄也君     小沢 和秋君
同月十四日
 辞任         補欠選任
  後藤田正純君     浅野 勝人君
  自見庄三郎君     原田 義昭君
同日
 辞任         補欠選任
  浅野 勝人君     後藤田正純君
  原田 義昭君     自見庄三郎君
    ―――――――――――――
六月十三日
 患者負担引き上げ中止に関する請願(鍵田節哉君紹介)(第五九六一号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五九六二号)
 同(小沢和秋君紹介)(第六一三一号)
 同(加藤公一君紹介)(第六一三二号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六一三三号)
 同(工藤堅太郎君紹介)(第六一三四号)
 同(今田保典君紹介)(第六一三五号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第六一三六号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第六一三七号)
 同(高木義明君紹介)(第六一三八号)
 同(春名直章君紹介)(第六一三九号)
 同(藤木洋子君紹介)(第六一四〇号)
 同(松原仁君紹介)(第六一四一号)
 同(山口富男君紹介)(第六一四二号)
 同(吉井英勝君紹介)(第六一四三号)
 社会保障を拡充し、将来への安心と生活の安定に関する請願(海江田万里君紹介)(第五九六三号)
 同(原口一博君紹介)(第六一四四号)
 安全で行き届いた看護の実現に関する請願(鍵田節哉君紹介)(第五九六四号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第五九六五号)
 同(松原仁君紹介)(第六一五五号)
 同(水島広子君紹介)(第六一五六号)
 移行教育の早期実現と看護制度一本化に関する請願(佐藤謙一郎君紹介)(第五九六六号)
 同(松原仁君紹介)(第六一五七号)
 同(水島広子君紹介)(第六一五八号)
 同(吉井英勝君紹介)(第六一五九号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げ中止に関する請願(大島令子君紹介)(第五九六七号)
 同(保坂展人君紹介)(第五九六八号)
 同(吉田公一君紹介)(第五九六九号)
 同(阿久津幸彦君紹介)(第六一六三号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第六一六四号)
 同(大森猛君紹介)(第六一六五号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六一六六号)
 同(黄川田徹君紹介)(第六一六七号)
 同(小林憲司君紹介)(第六一六八号)
 同(児玉健次君紹介)(第六一六九号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第六一七〇号)
 同(長妻昭君紹介)(第六一七一号)
 同(春名直章君紹介)(第六一七二号)
 同(不破哲三君紹介)(第六一七三号)
 同(藤木洋子君紹介)(第六一七四号)
 同(松本善明君紹介)(第六一七五号)
 同(山口富男君紹介)(第六一七六号)
 同(吉井英勝君紹介)(第六一七七号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げなどの中止に関する請願(河村たかし君紹介)(第五九七〇号)
 同(松原仁君紹介)(第五九七一号)
 同(山井和則君紹介)(第五九七二号)
 同(伊藤英成君紹介)(第六一九七号)
 同(加藤公一君紹介)(第六一九八号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(金子一義君紹介)(第五九七三号)
 同(山本有二君紹介)(第五九七四号)
 国民医療及び建設国保組合の改善に関する請願(大島令子君紹介)(第五九七五号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第六一九九号)
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(大畠章宏君紹介)(第五九七六号)
 同(前原誠司君紹介)(第五九七七号)
 同(加藤公一君紹介)(第六二〇〇号)
 同(穀田恵二君紹介)(第六二〇一号)
 同(福島豊君紹介)(第六二〇二号)
 安心の医療制度への抜本改革、負担増反対に関する請願(枝野幸男君紹介)(第五九七八号)
 同(河村たかし君紹介)(第五九七九号)
 同(原口一博君紹介)(第五九八〇号)
 同(前原誠司君紹介)(第五九八一号)
 同(阿久津幸彦君紹介)(第六二〇六号)
 安全で行き届いた医療・看護実現のための国立病院・療養所の看護師増員に関する請願(大島令子君紹介)(第五九八二号)
 同(佐藤公治君紹介)(第五九八三号)
 同(保坂展人君紹介)(第五九八四号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第六二一〇号)
 同(家西悟君紹介)(第六二一一号)
 同(石井紘基君紹介)(第六二一二号)
 同(小沢和秋君紹介)(第六二一三号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第六二一四号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六二一五号)
 同(穀田恵二君紹介)(第六二一六号)
 同(近藤昭一君紹介)(第六二一七号)
 同(高木義明君紹介)(第六二一八号)
 同(中林よし子君紹介)(第六二一九号)
 同(藤木洋子君紹介)(第六二二〇号)
 同(水島広子君紹介)(第六二二一号)
 同(山口富男君紹介)(第六二二二号)
 同(吉井英勝君紹介)(第六二二三号)
 介護保険制度の改善に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九八五号)
 重度障害者のケアハウス設置に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九八六号)
 重度障害者の障害基礎年金増額に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九八七号)
 障害者雇用率引き上げ及び職域開発に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九八八号)
 障害者の医療制度改善に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九八九号)
 人工呼吸器を必要とする脊髄損傷者に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九九〇号)
 脊髄神経治療の研究開発促進に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九九一号)
 日常生活用具の意志伝達装置の支給対象者拡大に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九九二号)
 ベンチレーターを必要とする脊髄損傷者が社会参加するための環境整備に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九九三号)
 無年金障害者の解消に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九九四号)
 労災遺族年金支給制度及び要件の改善に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九九五号)
 労働者災害補償保険法の改善に関する請願(山口俊一君紹介)(第五九九六号)
 小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願(衛藤征士郎君紹介)(第五九九七号)
 同(大出彰君紹介)(第五九九八号)
 同(大島令子君紹介)(第五九九九号)
 同(太田誠一君紹介)(第六〇〇〇号)
 同(金子一義君紹介)(第六〇〇一号)
 同(小泉龍司君紹介)(第六〇〇二号)
 同(河野太郎君紹介)(第六〇〇三号)
 同(塩田晋君紹介)(第六〇〇四号)
 同(冬柴鐵三君紹介)(第六〇〇五号)
 同(保坂展人君紹介)(第六〇〇六号)
 同(松宮勲君紹介)(第六〇〇七号)
 同(御法川英文君紹介)(第六〇〇八号)
 同(村上誠一郎君紹介)(第六〇〇九号)
 同(山本有二君紹介)(第六〇一〇号)
 同(吉田公一君紹介)(第六〇一一号)
 同(阿久津幸彦君紹介)(第六二二八号)
 同(相沢英之君紹介)(第六二二九号)
 同(石井郁子君紹介)(第六二三〇号)
 同(石井紘基君紹介)(第六二三一号)
 同(小沢和秋君紹介)(第六二三二号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六二三三号)
 同(久保哲司君紹介)(第六二三四号)
 同(熊谷弘君紹介)(第六二三五号)
 同(塩崎恭久君紹介)(第六二三六号)
 同(仙谷由人君紹介)(第六二三七号)
 同(中塚一宏君紹介)(第六二三八号)
 同(中野寛成君紹介)(第六二三九号)
 同(西川京子君紹介)(第六二四〇号)
 同(福島豊君紹介)(第六二四一号)
 同(松野頼久君紹介)(第六二四二号)
 同(松本善明君紹介)(第六二四三号)
 ウイルス肝炎総合対策の充実に関する請願(西川京子君紹介)(第六〇一二号)
 同(加藤公一君紹介)(第六二四五号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六二四六号)
 医療費負担増法案の廃案に関する請願(松原仁君紹介)(第六〇一三号)
 同(伊藤英成君紹介)(第六二四七号)
 同(金田誠一君紹介)(第六二四八号)
 同(山井和則君紹介)(第六二四九号)
 同(吉井英勝君紹介)(第六二五〇号)
 総合的難病対策の早期確立に関する請願(自見庄三郎君紹介)(第六〇一四号)
 同(玉置一弥君紹介)(第六〇一五号)
 同(西川京子君紹介)(第六〇一六号)
 同(福島豊君紹介)(第六〇一七号)
 同(保坂展人君紹介)(第六〇一八号)
 同(前原誠司君紹介)(第六〇一九号)
 同(石井郁子君紹介)(第六二五一号)
 同(大幡基夫君紹介)(第六二五二号)
 同(金田誠一君紹介)(第六二五三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六二五四号)
 同(久保哲司君紹介)(第六二五五号)
 同(玄葉光一郎君紹介)(第六二五六号)
 同(塩崎恭久君紹介)(第六二五七号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第六二五八号)
 同(中野寛成君紹介)(第六二五九号)
 同(横路孝弘君紹介)(第六二六〇号)
 同(吉井英勝君紹介)(第六二六一号)
 骨髄バンク事業の充実に関する請願(野田聖子君紹介)(第六〇二〇号)
 同(家西悟君紹介)(第六二六二号)
 同(金田誠一君紹介)(第六二六三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六二六四号)
 高齢者のホームづくりに関する請願(山井和則君紹介)(第六〇二一号)
 同(石井郁子君紹介)(第六二六六号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第六二六七号)
 同(金田誠一君紹介)(第六二六八号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六二六九号)
 同(穀田恵二君紹介)(第六二七〇号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第六二七一号)
 同(藤木洋子君紹介)(第六二七二号)
 同(三井辨雄君紹介)(第六二七三号)
 同(水島広子君紹介)(第六二七四号)
 雇用対策と失業者支援の強化に関する請願(今川正美君紹介)(第六〇二二号)
 同(植田至紀君紹介)(第六〇二三号)
 同(大出彰君紹介)(第六〇二四号)
 同(金子哲夫君紹介)(第六〇二五号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第六〇二六号)
 同(東門美津子君紹介)(第六〇二七号)
 同(中西績介君紹介)(第六〇二八号)
 同(葉山峻君紹介)(第六〇二九号)
 同(原陽子君紹介)(第六〇三〇号)
 同(保坂展人君紹介)(第六〇三一号)
 同(山内惠子君紹介)(第六〇三二号)
 同(生方幸夫君紹介)(第六二七五号)
 同(大島令子君紹介)(第六二七六号)
 同(近藤昭一君紹介)(第六二七七号)
 同(横光克彦君紹介)(第六二七八号)
 不妊治療の保険適用に関する請願(鍵田節哉君紹介)(第六〇三三号)
 同(三井辨雄君紹介)(第六〇三四号)
 同(山井和則君紹介)(第六〇三五号)
 同(家西悟君紹介)(第六二七九号)
 同(加藤公一君紹介)(第六二八〇号)
 同(水島広子君紹介)(第六二八一号)
 医療負担増反対、安心の医療制度への抜本改革に関する請願(仙谷由人君紹介)(第六一二四号)
 医療保険制度の改正に関する請願(日森文尋君紹介)(第六一二五号)
 抗がん剤治療の問題点改善に関する請願(赤羽一嘉君紹介)(第六一二六号)
 同(福島豊君紹介)(第六一二七号)
 診療報酬の緊急再改定と医療大改悪法案の廃案に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第六一二八号)
 入院基本料引き下げ、長期入院保険外し等の撤回に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第六一二九号)
 年金及び医療改悪反対、社会保障の充実に関する請願(児玉健次君紹介)(第六一三〇号)
 乳幼児医療費無料制度の創設に関する請願(瀬古由起子君紹介)(第六一四五号)
 介護保険制度の緊急改善に関する請願(小沢和秋君紹介)(第六一四六号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六一四七号)
 医療費負担引き上げの中止に関する請願(小沢和秋君紹介)(第六一四八号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六一四九号)
 児童扶養手当の抑制案撤回に関する請願(水島広子君紹介)(第六一五〇号)
 児童扶養手当抑制案の撤回に関する請願(水島広子君紹介)(第六一五一号)
 介護、医療、年金制度の拡充に関する請願(児玉健次君紹介)(第六一五二号)
 健保・共済本人三割負担等の患者負担引き上げ中止に関する請願(小沢和秋君紹介)(第六一五三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六一五四号)
 安全で行き届いた看護実現に関する請願(吉井英勝君紹介)(第六一六〇号)
 国立病院・療養所の院内保育所の存続・拡充に関する請願(小沢和秋君紹介)(第六一六一号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六一六二号)
 医療保険制度改正に関する請願(石井紘基君紹介)(第六一七八号)
 児童扶養手当の減額、支給期間短縮などの改悪中止に関する請願(金田誠一君紹介)(第六一七九号)
 同(川田悦子君紹介)(第六一八〇号)
 国民の医療と国立病院・療養所の充実・強化に関する請願(石井紘基君紹介)(第六一八一号)
 同(小沢和秋君紹介)(第六一八二号)
 同(大森猛君紹介)(第六一八三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第六一八四号)
 同(児玉健次君紹介)(第六一八五号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第六一八六号)
 同(中林よし子君紹介)(第六一八七号)
 同(春名直章君紹介)(第六一八八号)
 同(藤木洋子君紹介)(第六一八九号)
 同(松本善明君紹介)(第六一九〇号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第六一九一号)
 同(山内功君紹介)(第六一九二号)
 同(山口富男君紹介)(第六一九三号)
 健保本人三割負担等の患者負担引き上げ中止に関する請願(阿久津幸彦君紹介)(第六一九四号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第六一九五号)
 国民負担増なしに安心できる医療保険制度の拡充に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第六一九六号)
 働くルールの確立に関する請願(吉井英勝君紹介)(第六二〇三号)
 高齢者窓口負担の引き上げ、健保本人三割負担などの中止に関する請願(長妻昭君紹介)(第六二〇四号)
 児童扶養手当の減額や打ち切りなど制度の改悪中止に関する請願(中林よし子君紹介)(第六二〇五号)
 医療費負担増計画の撤回に関する請願(児玉健次君紹介)(第六二〇七号)
 社会保障拡充、将来への安心と生活の安定に関する請願(高木陽介君紹介)(第六二〇八号)
 医療費値上げ反対、医療費制度の充実に関する請願(木島日出夫君紹介)(第六二〇九号)
 介護保険の緊急改善に関する請願(藤木洋子君紹介)(第六二二四号)
 医療制度改革案反対に関する請願(日森文尋君紹介)(第六二二五号)
 中国帰国者の老後生活保障に関する請願(赤羽一嘉君紹介)(第六二二六号)
 同(福島豊君紹介)(第六二二七号)
 てんかんを持つ人の医療と福祉の向上に関する請願(川田悦子君紹介)(第六二四四号)
 被爆者援護法の改正に関する請願(斉藤鉄夫君紹介)(第六二六五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)
 健康増進法案(内閣提出第四七号)
 医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案(山井和則君外三名提出、衆法第一一号)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(五島正規君外三名提出、衆法第一三号)
 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――
森委員長 これより会議を開きます。
 開会に先立ち、民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の各委員に出席を要請したいと思います。
 出席を要請しておりますけれども、いまだ御着席いただいておりません。
 再度理事をして出席を要請いたしますので、しばらくお待ちください。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
森委員長 速記を起こしてください。
 先ほど来、民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の各委員に出席を要請いたしましたが、いまだ出席されておりません。やむを得ず議事を進めます。
 このたび、内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案の審査のため、愛知県及び栃木県に委員を派遣いたしました。
 この際、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。
 まず、第一班の愛知県の派遣委員を代表いたしまして、便宜私からその概要の御報告を申し上げます。
 派遣委員は、団長として私、森英介と、理事鈴木俊一君、山井和則君、委員上川陽子君、松島みどり君、五島正規君、江田康幸君、樋高剛君、瀬古由起子君、阿部知子君の十名であります。
 なお、現地において大島令子議員が参加されました。
 会議は、昨十三日、名古屋市内のウェスティン名古屋キャッスルにおいて開催し、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介などを行った後、名古屋大学医学部名誉教授齋藤英彦君、日本特殊陶業株式会社取締役総務部長橋本玄次郎君、長久手町長加藤梅雄君、愛知大学教授・弁護士加藤良夫君、愛知県社会保障推進協議会事務局長加藤瑠美子さん、医療法人医真会理事長森功君の六名の方から意見を聴取いたしました。
 その意見内容につきまして、簡単に申し上げます。
 齋藤君からは、我が国のすぐれた国民皆保険制度を次の世代に継承していくためには、今回の三割負担は厳しい選択ではあるがやむを得ない。今後とも医療の質の向上、効率化、公平性を重視しつつ、医療供給、医療保険制度の両面にわたり思い切った改革を進めていくべき旨の意見が述べられました。
 橋本君からは、改正案を早期に成立させ、これを足がかりに一日も早く拠出金制度に依存しない新たな高齢者医療制度の創設など、将来にわたって安心して医療が受けられる医療制度全体の抜本的改革を実現されたい旨の意見が述べられました。
 加藤梅雄君からは、国民健康保険の財政状況は極めて厳しい状況にあり、保険者の統合再編のみならず、医療制度の一本化を早期に実現すべきであるが、改正案は当面の対策として必要であり、早期成立を望む旨の意見が述べられました。
 加藤良夫君からは、医療制度の改革においては、質の高い、安全な、患者の人権を尊重した医療の実現とともに、医療被害者救済システムづくりが不可欠であり、患者の権利法の制定及び医療被害防止・救済センターの創設が望まれる旨の意見が述べられました。
 加藤瑠美子さんからは、倒産やリストラの不安など生活が圧迫される中で、患者や国民は医療費負担も含めた安心と安全の医療や看護を望んでおり、医療費の負担増を求める改正案には反対である旨の意見が述べられました。
 森君からは、医療の質を高めるためには事故の原因を直視する必要があり、自己負担増や特定療養費制度の拡大などによる医療費抑制策は医療の実態を悪化させるもので、改正案には反対である旨の意見が述べられました。
 意見の陳述が行われた後、各委員から、若年層の健康づくり、疾病予防への取り組み状況、生活習慣病対策における疾病コントロールの重要性、診療報酬体系を見直す際の考え方、改正案に対する評価、特定療養費制度の拡大が及ぼす影響、老人医療費拠出金の負担限度、レセプト開示に対する考え方等について質疑が行われました。
 なお、会議の内容の詳細は、速記により記録した会議録によって御承知願いたいと存じます。
 以上をもって第一班の報告を終わりますが、今回の会議の開催につきましては、多数の関係者の御協力により極めて円滑に行うことができ、深く感謝の意を表する次第であります。
 以上、御報告申し上げます。
 次に、第二班の栃木県について、長勢甚遠君にお願いいたします。
長勢委員 第二班の派遣委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。
 派遣委員は、団長として私、長勢甚遠と、理事鴨下一郎君、釘宮磐君、福島豊君、佐藤公治君、委員佐藤勉君、林省之介君、水島広子君、塩川鉄也君、中川智子君の十名であります。
 会議は、昨十三日、宇都宮市内のホテル東日本宇都宮において開催し、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介等を行った後、足利赤十字病院名誉院長奈良昌治君、栃木県トラック協会会長関谷忠泉君、宇都宮市長福田富一君、耳鼻科医師金子達君、栃木保健医療生活協同組合専務理事柴野智明君、医療法人喜望会理事長・おやま城北クリニック院長太田秀樹君の六名の方から意見を聴取いたしました。
 その意見内容につきまして、簡単に申し上げます。
 奈良君からは、我が国の国民皆保険制度は、だれでも、いつどこでも医療を受けることができ、世界じゅうから羨望されている制度であり、これを将来にわたって安定したものにするには、給付の公平化等の改革が望まれるが、改正案はその第一歩として評価できる旨の意見が述べられました。
 関谷君からは、事業主の立場から、老人医療費拠出金の負担が重いことを指摘した上で、医療保険制度は公平であるべきで、若者の負担が過重にならないよう、改正案を早期に成立させ、抜本改革を進めるべきである旨の意見が述べられました。
 福田君からは、保険者の立場から、国民健康保険財政の現状は極めて厳しく、安定した制度を維持するためにも、すべての国民を通ずる医療保険の一本化を早急に実現する必要があり、また、当面の対策として、国民健康保険の財政基盤の強化等が必要である旨の意見が述べられました。
 金子君からは、保険者の統合や事務経費の節減等、保険者サイドにおいてもリストラを進めるべきであること、本年四月の診療報酬の引き下げは医療機関の経営に大きな影響を及ぼしていること、また、カルテ開示に当たってはIT化のための支援措置が必要である旨の意見が述べられました。
 柴野君からは、改正案は、労働者等に対しては三割負担を、また、医療費が多くかかる高齢者に対しては患者負担増と償還払いによる煩雑な手続を強いるものであり反対である旨の意見が述べられました。
 太田君からは、在宅医療を推進することでむだな入院医療費の抑制につながるが、改正による患者負担増により在宅医療の受診が困難になり、かえって施設入所者がふえることが懸念される旨の意見が述べられました。
 意見の陳述が行われた後、各委員から、改正案における国民健康保険の財政基盤強化策に対する評価、我が国の国民皆保険制度に対する評価、医療のむだを削減し良質な医療を行う医療機関を支援するための方策、患者負担と保険料負担のバランスのあり方、介護保険と医療保険の役割分担のあり方、これまで医療制度の抜本改革が進まなかった理由、患者三割負担の導入が受診抑制につながる懸念、患者の権利拡大のための方策等について質疑が行われました。
 なお、会議の内容の詳細は、速記により記録した会議録によって御承知願いたいと存じますので、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
 以上をもって第二班の報告を終わりますが、今回の会議の開催につきましては、多数の関係者の御協力により極めて円滑に行うことができ、深く感謝の意を表する次第であります。
 以上、御報告申し上げます。
森委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。
 お諮りいたします。
 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録ができ次第、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕
     ――――◇―――――
森委員長 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案、健康増進法案、山井和則君外三名提出、医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案及び五島正規君外三名提出、健康保険法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木俊一君。
鈴木(俊)委員 おはようございます。自由民主党の鈴木俊一でございます。
 健康保険法改正案の審議も、四月の委員会付託以来、足かけ三カ月、計十二日間の審議が行われ、実質六十時間を超える審議時間になったわけでございます。これは過去最も長い時間をかけました昭和五十九年の健保法の改正の実績を上回るものであります。この間、単に時間の問題だけではなしに、内容的にも、参考人質疑、地方公聴会も行われまして、充実した審議が行われて、論点も絞られてきたと思うわけであります。
 これだけの審議をした上は、委員会としても、この法案に賛否を明らかにするのがこれは責任でありまして、きょう野党の皆様方が出席をいただけないということはまことに遺憾であると思っております。
 私は、この審議の大詰めを迎えましたので、これまでの審議を振り返りまして、基本的な論点について、政府の姿勢、考えを確認する質問をいたしたいと思うところであります。
 医療制度の抜本改革というものが言われまして久しいものがあるわけでありますが、その後、政管健保を初めとする医療保険の財政悪化でありますとか、高齢化のさらなる進展もございまして、医療の抜本改革は今日待ったなしの状況にあると思っております。
 抜本改革という言葉の持つイメージでありますけれども、それぞれあると思います。医療保険制度といいますのは、日々国民の健康を守るために機能しているものでございますから、幾ら抜本改革といっても、ある日突然、現行制度を全く廃止して、次の日から全く別の制度に取ってかわるということはできないわけでありまして、漸進的に改革を進めなければならないと思います。
 私たちも今日まで、医療提供体制、薬価制度、診療報酬体系、高齢者医療制度の四つの柱を立てまして、制度改革を着実に進めてきたところであります。かつて国民医療費の約三〇%を占めて、国民医療費を押し上げる一番の要因と言われておりました薬剤費の問題も、薬価制度を改革することによって、今日では薬剤費の割合も欧米諸国のそれと同程度まで下がるなど効果も上げているわけであります。抜本改革のゴールに向けて我々も今まで着実に改革を進めてきたわけであります。
 しかし、率直に申しまして、医療保険制度の体系、高齢者医療制度、診療報酬体系の見直しなど、重要な課題が今日なお残されているというのも事実でございます。
 改正法案附則では、十四年度内にこうした残された課題に関し制度改革に向けた基本方針を定めておりますが、今回の法案では、サラリーマンの三割負担など国民に負担をお願いしなければならない。そして、残された課題に先んじて負担をお願いするわけでありますから、それだけに、附則にあります課題について制度改革を必ず実行して、抜本改革をなし遂げなければならないと思っております。
 これは与党にも責任があって、これができなければ我々与党も国民から大きな非難を受けるということを自覚しなければなりません。しかし、法律に書くわけでありますから、最終的な責任というものは政府にあるわけであります。厚生労働行政の最高責任者であります大臣に、改革実現に向けた決意と、どのような手順でこれを進められるのかを伺いたいと思います。
坂口国務大臣 まず、今日まで十回に及ぶ、そして地方公聴会やその他を含めますと十二回、六十時間に及びます御審議をいただいてまいりました。そのことに感謝を申し上げたいと存じます。
 そして今、鈴木委員からお尋ねがございましたとおり、抜本改革、この問題は一日も早く成立させなければならない問題でございまして、今、厚生労働省といたしましても、鋭意努力を重ねているところでございます。
 その中で大きな柱は、一つはこの健康保険法の統合、一元化の問題、そして診療報酬の基本的なあり方の問題、もう一つは高齢者医療の今後のあり方の問題、この三つの大きな柱にさらに加えまして、質の高い医療を実現していくためにどのような改革が必要か、これらのことも加えまして現在鋭意検討をしているところでございます。
 早いものはこの八月に我々考え方の結論を出しまして御提示を申し上げ、そしてさらなる御議論をいただきたいというふうに思っておりますし、初めに申しました健康保険法の統合、一元化の問題、それからまた診療報酬のあり方の問題、高齢者医療の問題等につきましては、それぞれ内部で担当も決めまして、そしてまた一部学者の先生方にもお入りをいただいて、現在進めているところでございます。これも、早ければ来月、遅くても八月には我々の検討いたしました内容をまとめさせていただきまして、与党の皆さん方やあるいはまた審議会等でも御議論をいただき、そして結論を得たい、今年中に結論を得たいと考えているところでございます。
鈴木(俊)委員 次に、今回の法改正による医療保険制度の改革が今なぜ必要なのかということについてお伺いをしたいと思っております。
 高齢化の進展それから経済の低迷によりまして、医療保険財政というものは大変逼迫をしておりまして、このまま放置するならば、国民皆保険という世界に冠たる我が国の医療保険制度も破綻の危機に瀕するということが心配をされるわけであります。今回の法改正では、国民に必要な御負担をお願いするわけでありますから、お願いをする以上はその納得をいただかなければならない、そのことが不可欠であると思います。
 そこで、まず原点に立ち返って、今回の法改正を実施しなければ国民生活にどのような影響が出るのか、今やらなければならないその理由についてお伺いをいたしたいと思います。
坂口国務大臣 今さら申し上げるまでもございませんが、高齢化の進行はまことに急なものがございます。また、それに伴いまして医療費の増加が著しいものがございますし、経済の低迷によります保険料収入の伸び悩みというものもあるわけでございます。医療保険の財政運営は極めて厳しい状況になっております。
 国民の三分の一が加入しております政府管掌健康保険におきましては、大幅な収支ギャップが生じておりまして、積立金の取り崩しにより何とか今やりくりをしているわけでございますが、今年度末にはいよいよその積立金もほぼ底をつく状況になってまいりました。
 現在におきますこの医療保険制度、公的医療保険制度を今後ともに堅持をいたしますためには、財政問題は避けて通れないところでございまして、皆さん方にもお願いを申し上げ、むだなところを最大限削り込んで、そしてこの制度が今後とも継続できるように、我々といたしましては努力をしたいと考えているところでございます。
鈴木(俊)委員 今回の改正案の中で、国民にお願いする負担があるわけでありますけれども、その中で、サラリーマンの窓口での三割負担というものがございます。この点につきましては、昨年末、我が党内でも相当激しい議論がございました。今ここで党内の議論を紹介はいたしませんけれども、さまざまな経過を経て、最終的に三割負担を法案に盛り込むことを党としても決定をした、そういう経緯がございます。
 この三割負担というのは、単に財政的な要請によるものだけではなしに、保険料の抑制でありますとか医療保険制度の将来のあり方を考える上からでも重要な意味を持つものであると思うのでありますけれども、改めて、三割負担提案について、そのねらい、意味をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 三割負担は、長年の懸案になっております医療保険の制度間の給付率の統一を図りまして、公正でわかりやすい給付体制の実現を図るものでございます。また、今日の厳しい医療保険財政のもとで、国民皆保険を守っていきますためには、患者の皆さんそしてまた加入者、医療機関といった関係者にひとしく痛みを分かち合っていただくことは避けられない状況にあります。保険料につきましても大幅な引き上げが必要となっております中で、その引き上げ幅を抑制しますためには、患者負担につきましても三割負担をお願いせざるを得ないと考えたところでございます。
 今回の三割負担の導入につきましては、医療を受ける人と受けない人との間のバランスを図りますとともに、医療を受ける人の間におきましても、高額な医療については高額療養費制度によりまして三割を下回る負担となるようにし、そして、比較的軽い病気につきましては三割の御負担をお願いする、そうした形でバランスをとったものでございます。
 さらに、三割負担につきましては、医療保険制度の将来像につきましての検討を進めるための素地を整備しますとともに、将来に向けて国民皆保険を維持していきますための基盤をさらに確実なものにするものでありまして、医療制度の構造改革を進める上で極めて重要なものであると考えているところでございます。
鈴木(俊)委員 三割負担の意味、そのねらいというものにつきまして、今政府のお考えを聞いたわけでありますけれども、国民は今後のこの窓口負担のあり方について大変心配をしていると思っております。自己負担というものが一割から二割にふえた、そして今回三割をお願いしたい、こういうことでございますから、これが今後、四割、五割に引き上げることになるのではないか、そういうような懸念も生じているわけであります。
 今回のこの改正案の附則では、将来にわたり七割給付を堅持するということが明記されておりますけれども、この方針は、公的医療保険、保険ということでございますから、三割が限度である、この三割ということをしっかり堅持していかなければならないという原則である、こういうふうに私は思うのでありますけれども、この点について、国民の皆さんに対して政府の考えを明確にここでお示しいただきたいと思います。
坂口国務大臣 国民に必要な医療を保障するという公的医療保険制度の役割から見ますと、三割負担、いわゆる七割給付が一つの限界であるというふうに考えております。今回、特にその旨を明記するために、改正法案の附則に明記をしたところでございます。将来にわたりまして三割負担が維持されることが法律に明記されましたことは、大変重みのあることであるというふうに認識をしている次第でございます。
 高齢化の進展等により、今後とも医療保険の運営は厳しいものと考えますけれども、この三割負担を堅持することを制度設計の基本の一つに据えまして、医療保険制度の体系のあり方等、今後すべてを考えていきたい、このことを中心にして進めていきたいと考えているところでございます。
鈴木(俊)委員 次に、高齢者の患者負担の見直しについて伺いたいと思います。
 今回の高齢者医療制度の改革では、定率一割負担の徹底が行われまして、患者は医療機関に参りまして窓口で定率の負担を支払い、一定の限度額を超えた場合には市町村から高額医療費の支給を受ける、こういう方式になります。しかし、高齢者の疾病の特性から、受診の形態というのは多様にわたっているわけでありまして、その受診の形態によっては、現行に比べて負担がかなりふえるのではないかということが懸念をされるわけであります。
 そこで、今回の高齢者の高額医療費の制度の実施に当たりましては、過重な負担とならないよう特段の配慮を払うべきである、そのように考えますが、見解をお伺いいたします。
坂口国務大臣 今般の改正では、御指摘のとおり、高齢者の負担につきましては定率一割負担の徹底を図ることといたしておりまして、高額医療費の支給は、一般医療保険でありますとか介護保険制度と同様、償還払いというふうになります。一般に比べて自己負担限度額も低く抑える等の配慮を行っているところであります。
 しかしながら、対象者が高齢者であることに配慮をいたしまして、高齢者の受療の実態等を勘案いたしまして、過重な負担を強いることがないような、さまざまな面で配慮することが必要と認識をいたしております。このため、市町村でありますとか関係機関等の協力を得まして、さらにきめ細かな配慮を図ってまいりたいというふうに思っております。
 入院をされます皆さん方につきましては、これは明確でございますので措置がしやすい、償還払いの制度を抑制することができるというふうに思いますけれども、外来にお見えになります方は、いろいろの医療機関におかかりになるということがございますので、そうした点につきましては、市町村と十分に相談をしながら、何かいい方法はないか、そうしたことも考えていきたいと思っているところでございます。
鈴木(俊)委員 次に、国民健康保険の基盤強化策についてお伺いをしたいと思います。
 国民健康保険制度、これは他の医療保険制度に属さない人々を引き受ける、いわば国民皆保険のバックグラウンドとなる大切なものであります。
 昨今、こういうような経済事情でございますから、倒産でありますとかリストラでありますとか、そういうことで職を失う方がおられる。いわば、お気の毒でありますけれども、経済的な力を失った方が国民健康保険の方に移ってくるということでありまして、国民保険の財政というものは今後一層厳しさを増していく、そういう状況にあると思います。しかし、先ほど申し上げましたとおり、皆保険制度を維持していくためには、この国民保険の安定的な運営を確保していくということ、これが不可欠であると思っております。
 今回の法案では、国民健康保険について幾つかの対策が盛り込まれておりますけれども、これは単なる当面の財政対策でなくて、将来に向けた国民健康保険の強化につながるものであること、これが求められていると思います。国民健康保険の運営基盤の強化の観点から、今回の改革をどのように位置づけておられるのかをお伺いいたします。
坂口国務大臣 国民皆保険の最後のとりでというふうに言われておりますこの国民健康保険におきましては、少子高齢化の進展でありますとかあるいはまた産業構造の変化といったものに加えまして、近年の厳しい経済状況も背景といたしまして、いわゆる無職者でありますとか低所得者が非常に増加をいたしております。過疎化の進展などによりまして小規模な保険者が増加するなど、非常に厳しい運営が迫られているところでございます。今後ますます高齢化等が進展する中で、将来にわたりまして国民皆保険制度を維持していきますためには、こうした国民健康保険の構造的な課題に適切に対応していく必要が不可欠であるというふうに思っております。
 このため、今回の制度改正におきましては、まず、低所得者を多く抱えるという国民健康保険の構造を踏まえまして、一つには、低所得者の人数に応じて財政支援する制度を創設することといたしております。二番目には、保険者の広域化等による運営の安定化を図りますために、市町村国保の広域化を支援する基金の創設を今回つくったところでございます。また、高額な医療費の負担を都道府県単位で調整します高額医療費共同事業の拡充、制度化といったものを財政基盤強化策として行うことといたしております。
 これらの施策によりまして、国民健康保険の安定的な運営に一定の目安がつくものと考えており、さらに、将来にわたりまして医療保険制度の安定的な運営を図りますために、保険者の統合再編を含みます医療保険制度の体系のあり方等につきまして今年度中に基本方針を策定することとしておりまして、その中で国民健康保険を含む医療保険制度の将来像を明らかにしていきたいと考えているところでございます。
鈴木(俊)委員 最後の質問になりますが、診療報酬改定についてお伺いをしたいと思います。
 今回、診療報酬改定がなされました。薬価においてマイナス一・四、技術料の部分、本体についてマイナス一・三、合わせてマイナスの二・七%改定ということでございます。
 従来も薬価の部分につきましてのマイナス改定はございましたが、実質的にそれは技術料の方にお戻しする、こういうことでありましたから、実質マイナスというのは大変厳しい改定であるということでありますが、それぞれに負担を分かち合うということでこのような診療報酬改定がなされたと承知をしております。しかし、今までなかったことでありますから、医療現場からは、マイナス二・七よりももっとそれ以上の影響があるような感じがすると、再改定を求める声もあるわけであります。
 もちろん、四月から始まったわけでございますから、その状況を見きわめなければならないわけでありますけれども、秋口ぐらいになれば今回の改定の影響、実情というものが明らかになってくると思います。そうしたものを踏まえて、仮に改定の影響が想定を大幅に上回った場合や、あるいは診療科目によって医療の確保に支障が生じるような事態が懸念される場合は見直しを行うべきではないか、こういう意見が当委員会におきましても野党の委員の皆様方からも何回かにわたって御指摘があったわけであります。
 この診療報酬改定の問題について、いかようにお考えかをお伺いいたします。
坂口国務大臣 御指摘いただきましたように、この委員会におきましても、多くの委員の皆さん方から同趣旨の御質問があったわけでございます。
 今回の改正は、従来にない厳しい保険財政の状況を踏まえまして、改革の痛みというものを公平に分かち合うという観点から行われたものでございまして、御理解をいただきたいというふうに思っております。
 ただ、これが実施されました今後の動向につきましては、もう少し、四月から六月、三カ月間ぐらいの間の動きを見てみないとわからないわけでございますので、四月から六月までの診療報酬の現実の姿というものをよく拝見させていただき、それが大体わかりますのが八月ぐらいかというふうに思いますが、その時点で中医協等で御審議をいただけるものと考えているところでございます。
鈴木(俊)委員 私、今回、六十時間にも及ぶこの長い審議を通じて明らかになった課題、絞られたこの法案に対する課題の基本的部分につきまして、確認答弁といいますか、確認の意味で政府の立場というものを明確にここで示していただいたところでございます。
 高齢化の予想以上の進展、経済の状況ということで、このままでいけば本当に我々の医療保険制度というものが破綻をしてしまう。破綻をさせるということは、我々政治家としてこれは許されないことでございます。そういう意味からも、この法案を早く成立させなければならないわけであります。
 それと同時に、抜本改革に向けて、我々も今まで漸進的に一つ一つ成果を上げてまいりました。しかし、残された改革の課題というものがこの附則に示されているわけでありますから、この附則に示された改革というものを今後着実に進めていって、そして抜本改革というものが完遂される、そのことをこれから政府に大いに取り組んでいただかなければならないわけであります。
 そうした今後の、政府の責任を持って改革に取り組んでいただきたいということを強く坂口大臣に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
森委員長 次に、福島豊君。
福島委員 公明党の福島豊でございます。
 今般の健康保険法改正案等につきましては、現在までに五十時間に及ぶ質疑を当委員会では行ってきたわけでございます。また、参考人質疑に加え、昨日は地方公聴会を行い、充実した審議がなされました。その質疑においては、与野党の厚生労働委員会のメンバー、また参考人、公述人の方々からさまざまな御意見をお聞きすることができたわけでございます。
 その意見は、本法案について必ずしも賛成ということではありません。また、私も、医療保険財政の状況が許すのであれば、国民により多くの負担を求めることは避けなければならないと思います。しかしながら、高齢化の進行と長引く経済の低迷により、医療保険財政が危機に瀕している現在、改革すべきは改革することが国民皆保険を維持するためには避けることができない、このように考えます。そして、与野党を問わず、国民共通の価値である皆保険制度の維持のために最終的な判断を下すべきであると考えております。
 同時にまた、委員会の質疑の中で指摘されたさまざまな事項について、見直すべきは見直すことも必要であろうと私どもは考えております。この点については、野党の皆さんから具体的な御提案をこの委員会でちょうだいできなかったことはまことに残念であると思っております。
 本日は、総括的な質疑ですので、こうした諸点についてお尋ねをしたいと思います。
 本委員会の質疑で繰り返し指摘されたことは、抜本改革なしに国民に負担のみを求めることはおかしいという指摘でございました。
 平成九年の医療制度改革において、医療制度の抜本改革として、診療報酬体系の改革、医療提供体制の改革、高齢者医療制度改革、薬価制度改革の四つの改革が示されました。その一つ一つの課題について、今まで何もされていないのではないかという指摘であったかと思います。しかしながら、この点については、議論の正確さを期すという点から、事実とは異なると言わざるを得ないと私は考えております。
 薬価制度改革では、薬価の算定方式を見直すことにより、いわゆる薬価差益というものは確実に解消されつつあります。また、医療提供体制の改革では、平成十二年に第四次医療法の改正が行われ、一般病床と療養病床の区分がなされるなど、改革が進んでいることは事実でございます。また、診療報酬体系の見直しでは、包括化の拡大を初めとする一定の改革がなされ、十四年の改正では、是非はありますけれども、いわゆるDRG・PPSに倣った方式の一部導入など、複合的な取り組みが進められてきたことが指摘をできるわけです。
 高齢者医療制度の改革については、本法案に盛り込まれた対象年齢を七十歳から七十五歳へと段階的に引き上げること、並びに一割定率負担を完全に実施することは、老人保健制度が創設されて以来の大きな改革であるということが指摘をできると思います。このような取り組みの個々の政策判断については是非もありますけれども、何もなされなかったという指摘は決して正しくないと私は思っております。
 また、当委員会において繰り返し抜本改革という言葉は発せられましたけれども、いかなる医療制度の改革、医療保険制度の改革を意味するのかを明示的に示しての発言は、残念ながら少なかったのではないかと私は思います。また、そうした改革が結果として医療保険制度にいかなる影響を及ぼすのかについて示されることも、また残念ながら少なかったと言わざるを得ないと思います。
 ただ、一方では、現在の医療制度が真に理想的かと問われれば、そうではない、まだまだ改革が必要であるということを言わざるを得ないことも事実であります。そしてまた、日本の医療保険制度は、少子高齢化という人口構造の急速な変化と長引く経済の低迷、そして国家財政の危機という、医療制度の外の三つの大きな要因によって挑戦を受けております。そのことが絶え間のない改革の圧力を生み出しており、こうした課題についても対応していかなければなりません。その意味で、本法案の附則に示された諸課題について着実に取り組みを進めていくことが要請されております。
 いずれも大きな課題でございますけれども、まず初めに、新たな高齢者医療制度の創設について申し上げたいと思います。
 現在の医療保険制度の財政が危機に瀕している最も大きな原因は、増大する高齢者の医療費を賄う老人保健拠出金の負担であると指摘ができます。本法案では、先ほど申し上げましたように、老人保健制度の対象年齢を七十五歳へ段階的に引き上げるとともに、公費負担割合を五〇%へと段階的に引き上げる改革が盛り込まれております。
 新たな高齢者医療制度を考えるときに大きな要素は、まず高齢者を一般の医療保険制度の中で若人と区別して位置づけるのか、またそのように位置づけるとすれば、だれがどのようにその医療費の財源を負担するのか、それは税なのか保険料なのか、また自己負担なのか。さらに、若年世代の支援をどの程度求めるのかという点、またさらに、どのような財源負担方式をとるにしても、増大する高齢者医療費の増加を適正な水準に保つことが避けられず、これをどのように行うかという点があります。
 老人保健制度自体は工夫された制度であると思いますけれども、高齢化率が三〇%を超えるような状況まで果たして維持できるのかわかりません。本年度中に示される基本方針は、こうした将来を見通すものであるべきと私は考えております。
 基本方針を定めるに当たって、どのような考え方のもとに作業を進められるのか、厚生労働大臣に答弁を求めます。
坂口国務大臣 高齢者医療制度につきましては、医療制度改革の中でも極めて重要な課題でありますし、これまでさまざまな提案が行われてまいりましたが、それぞれの立場によりまして議論が分かれていることも事実でございます。
 今後の高齢者医療制度の検討に当たりましては、当面の保険財政の安定でありますとか、関係者間の利害得失といった観点だけではなくて、高齢化のピークを迎えますときの医療保険制度の安定的な運営を確保する、そういう中長期的な視点から検討を進めていかなければならないというふうに思っております。
 その際、御指摘のように、医療保険制度全体の体系のあり方を見直します中で、高齢者医療制度をどう位置づけるのか、財源につきましては、保険料そして公費そして患者負担をどのような組み合わせで、どう確保していくのかといった点が一つ。もう一つは、医療の質を確保しながら老人医療費の伸びをどう適正化していくのかというのが、もう一つの点であろうかというふうに思っております。
 今までさまざまな御意見があり、そして今日までなかなかここが決定しにくかったのは、やはり、制度、システムというものを先に論じてまいりましたために、私は、結論がつきにくかったというふうに思っております。この委員会でも何度か御質問にお答えを申し上げましたとおり、保険料そして公費そして自己負担というその割合を、そしてまたその財源をどう確保するかということをまず先に決めて、それに従って、最も適切なシステムを選ぶことが大事ではないかというふうに私は思っている次第でございます。
 そうした意味で、今後、最も重要な問題として取り組まなければならないわけでございますが、この件につきましても、早く厚生労働省としての考え方を取りまとめたい、現在取りまとめを進めているところでございまして、早ければ七月、遅くなりましても八月の中ごろまでにはこの考え方をおまとめをして、そして全体で御議論をいただくようにしたいというふうに思っているところでございます。
福島委員 次に、保険者の統合、一元化の問題についてお聞きをしたいと思います。
 高齢者の医療制度を考えるに当たって、突き抜け方式というものが提唱されたこともありました。その場合に問題となるのは、地域保険である国民健康保険制度をどのように維持していくのかということが挙がってまいりました。国民健康保険制度自体、産業構造また人口構造の大きな変化の中で、保険制度としての存立の基盤が既に大きく揺らいでいる、このように言わざるを得ないだろうと思います。
 そうした現実を踏まえ、当面の課題として、財政支援の強化、そしてまた保険者機能の強化のための統合の促進ということが挙げられると思います。このような課題については、本法案においても対応しているところでありますけれども、より長期にわたっては、現在の保険者の区分そのものを見直し、例えば、都道府県ごとの地域保険への統合というような提案が出てこざるを得ないのだろうと私は考えております。ただ、その場合には、公平な所得の捕捉をどのようにするのかといった、医療保険制度にとどまらない課題が出てくるわけであります。
 現在、納税者番号制度を含めた税制のあり方というものも議論されておりますし、また、社会保障個人勘定というような制度をつくってはどうかというような提案もなされております。こうした総合的な改革が、保険者の統合、一元化ということを考える場合には避けて通れない課題であろうと思っております。
 保険者のあり方の見直しについての基本方針の策定に向けて、どのような考え方で臨まれるのか、厚生労働大臣に答弁を求めます。
坂口国務大臣 先ほど鈴木議員の御質問に対しましてもお答えをしたところでございますが、この医療保険制度の体系につきましては、今般の改正が実現をいたしましたら、長年の課題でありました被用者保険と国民健康保険の間の給付の一元化が図られることとなります。また、国民皆保険の基盤を強化するためには、さらに、制度間、保険者間における負担の公平化を図っていくことが重要であると考えております。
 負担の公平という観点から医療保険制度のあり方を考えました場合に、将来のあるべき姿の一つとして、被用者保険と国民健康保険に分立する現行制度の一元化を視野に入れた検討も必要になるというふうに思っております。
 その際、御指摘のように、所得の捕捉の問題など、税制のあり方につきましても解決をしなければならない、そうした課題もあるというふうに考えております。また、どのような制度体系を目指すといたしましても、五千以上に分立をいたしております現在の保険者につきまして、まずは、それぞれの制度内における統合再編を進めていくことが重要でございますので、この統合再編をまず進めていかなければならないと考えております。
 今後、高齢化のピーク時を見据えました医療保険制度のあるべき将来像と、それに至ります保険者の統合再編の具体的な目標、手順につきましてあわせて検討を行いまして、今年度中に基本方針を策定したいと考えているところでございます。
福島委員 平成九年の二十一世紀の医療保険の改革に示された内容に対して、最近の議論では、追加された事項が幾つかあります。
 一つは、保険者機能の強化ということで、アメリカに始まる、いわゆるマネージドケアの手法を導入しようという提案であります。
 二つ目は、公的保険の給付範囲の見直しを行い、さらには、医療保険を公的保険と民間保険の二階建てにしてはどうか、このような提案もなされております。
 三つ目は、本法案の中でも一部盛り込まれておりますけれども、医療費の総額管理制度を導入しようというものであります。
 いずれも、先進諸国の医療保険制度改革の中で提案されているものでありますが、さまざまな方がこのような主張をいたしております。
 私は、こうした提案については、それがもたらす結果、医療に対してもたらす結果について十分に吟味する必要がある、そのように考えております。
 マネージドケアについては、アメリカでの実態が徐々に日本でも知られるようになり、安易に賛同する人は少なくなってきたのではないかと思います。日本でも、かつては制限診療の時代がありました。昭和三十七年に撤廃が実現いたしましたけれども、それまでは、例えば結核の特効薬ができても、自由に使うことができないというような事態があったわけです。こうした財政制約を優先させる制限診療を復活させるのか、このことが国民にとって本当に望ましいことなのか、私は疑問なしとしない、そのように考えております。
 また、公的保険と民間保険の二階建て、公的保険の給付範囲の見直し、このことについても、同様な指摘ができると思っております。お金のある人とお金のない人と違った医療を受けても仕方がないという選択肢を日本はとるべきなのだろうか、これも疑問なしとはできません。
 総額管理制度につきましては、昨年の厚生労働省の御提案の中では、一定のペナルティーをその制度に盛り込むというものでございました。医療費の伸び率に関して一定の目標を考えるということは必要かもしれませんけれども、今後の医療制度改革の中で、それとリンクをしてペナルティーを科すようなあり方というものは決してとられるべきではない、そのように私は思っております。
 何よりも、そうした改革が医療に対してもたらす結果というものを我々は十分吟味した上で、医療制度改革の政策決定というものをしていかなければならない、そのように思っております。
 この点について、厚生労働大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 マネージドケアの導入につきましてまずお答えを申し上げたいと思いますが、いわゆるマネージドケアにつきましては、私も、御指摘のような批判につきまして聞き及んでいるところでございます。
 保険者が、被保険者のためにその機能を発揮して、医療サービスの質の向上でありますとか効率化を図ることは重要な課題であると思います。しかし、国民皆保険やフリーアクセスなど、我が国の医療保険制度のすぐれた特徴は、今後ともこれは基本として堅持をしなければならないわけであります。保険者機能の強化を図る上でも、こうした基本原則を踏まえて対応していかなければならないと考えております。
 それから、公的保険と民間保険のお話がございました。現在も、公的医療保険の自己負担等をカバーする各種の民間保険商品が存在しておりまして、民間保険と公的保険がそれぞれの機能に応じて役割を果たしているというふうに思います。しかしながら、自助を基本といたします民間保険に過度な役割を与えますことは、国民に必要な医療を保障していくという観点からは、望ましいとは言えません。国民皆保険のもとで、医療の本質的な部分につきましては、今後とも公的医療保険で給付していくべきであるというふうに思っております。
 医療費の総額管理制度につきましてのお話がございましたが、この高齢化の進展等に伴いまして、今後の医療費の増大は避けられないと思います。医療保険制度は、持続可能なものとしていくためには、医療費の伸びを適正なものとしていくことが必要でございます。昨年九月の厚生労働省の試案におきまして提案をいたしました老人医療費の伸び率管理制度につきましては、さまざまな御意見があることも存じているところでございまして、今回の法案におきましては、関係者がそれぞれの役割に応じた適切な措置を講じていただくための指針を定めることとしたところでございます。
 今後、このような取り組みを進めることによりまして、医療の質を確保しながら医療費の適正化に努めてまいりたいと考えております。
福島委員 次に、より具体的な課題についてお伺いしたいと思います。
 まず初めに、高額療養費制度についてお尋ねをしたいと思います。
 今回の改正の中で、サラリーマンの三割負担、そしてまた高齢者の完全定率一割負担という見直しが行われたわけでございます。こうした見直しに対応して、高額療養費が果たす役割というものは今まで以上に大きくなってきていると私は思います。家計に与える影響の実態等も考慮して、よりきめ細かな対応を検討すべきである、そのように申し上げたい。本法案の附則には、医療保険各法、老人保健法及び介護保険法の自己負担限度額が著しく高額になる場合にその軽減を図る仕組みの創設が規定をされております。早急に検討を進め、実現をしていただきたいと思っております。
 この点も含め、高額療養費制度のあり方について、厚生労働大臣の御見解をお聞きいたします。
坂口国務大臣 高額療養費の自己負担限度額の設定につきましては、低所得者に配慮をするなど、家計への負担が過重にならないよう、きめ細かな措置を講じているところであります。
 高額療養費につきましては、御指摘のように、改正法附則に規定をいたしております、医療保険各法、老人保健法及び介護保険法の自己負担が著しい高額になる場合にその軽減を図る仕組みの創設、これが書かれているわけでありまして、この仕組みにつきましても、これは抜本改革の中で、これも早期に決着をつけなければならないというふうに思っている次第でございます。
 いずれにいたしましても、今回の審議におきましてさまざまな御指摘をいただいているところでありますので、高額療養費制度の自己負担限度額のあり方について、今後の課題として検討をしてまいりたいと考えているところでございます。
福島委員 次に、保険料のことについてお聞きをしたいと思います。
 今回の改正に当たりまして、窓口の負担、そしてまた保険料の負担、このバランスをどうとるのかという議論があったわけでございます。
 本法案に定められている八二パーミルの保険料率についてでございますけれども、今般の改正により医療費の伸びが変化した場合、そして医療保険財政に余裕が生じた場合、そうした場合には、さらに家計への負担を軽減するという観点から、保険料率を下げるという選択肢も出てくるのではないか、そのように思います。
 この点について、厚生労働大臣の答弁を求めます。
坂口国務大臣 これは少し今後の推移を見なければならないところでございますが、我々が考えておりましたよりも財政的なゆとりができるということになりました場合には、それはやはりこの保険料率の引き下げということも選択肢の一つになるだろうというふうに思っておるところでございます。
 なお、今回の改正法案につきましては、政府管掌健康保険の保険料率につきましては、少なくとも二年ごとに、収支両面にわたりまして見直すことになっているところでございます。
福島委員 次に、当委員会の質疑におきまして、医療の安全性について繰り返し質疑がなされました。急務の課題であると私どもも思っております。
 厚生労働省におきましても、医療安全推進総合対策が四月十七日に取りまとめられ、各医療機関における取り組み、また相談窓口の整備等、さまざまな提案がこの中でなされております。こうした体制の進捗状況をモニタリングをし、また適切に管理をする意味からも、継続的に第三者的な機関において見守っていくべきである、このように私は考えておりますけれども、この点について厚生労働大臣の答弁を求めます。
坂口国務大臣 医療安全対策につきましては、医療政策の最重要課題の一つでありますし、本年の四月に取りまとめました医療安全推進総合対策に基づきまして、着実な取り組みを進めているところでございます。
 また、御指摘のように、対策の進捗状況を十分に把握した上で、その後の取り組みに反映させていくことが大事だというふうに思っております。
 医療関係者、法律家、それから安全問題の専門家、患者支援団体の代表などの幅広い分野の委員から成りますところの医療安全対策検討会議におきまして、今後十分に検討を重ねていきたいというふうに思いますし、これはもう早く結論を出さなければならないとも考えているところでございます。懸命な努力をしたいと思っております。
福島委員 私は、政治家になるまでは医者をしておりました。老年医学を専攻いたしましたけれども、日本においてはヨーロッパで確立されているような老年医学というものは本当に確立をされているのかと、常々疑問を持ってまいりました。この問題は、医療と介護の連携という問題にも関連をいたしております。
 本年の診療報酬改定で、長期入院患者の特定療養費制度の導入がなされました。介護保険の給付との整合性を図るという視点も、社会保障制度を総合的に考える点からは無視することはできないと思いますけれども、一方で、いわゆる患者の追い出しにつながるようなことは避けなければなりません。その意味で、対象患者の基準の決定についても慎重な検討を求めたいと思っております。社会的入院といったような事象を含め、高齢者の多剤投与の問題など、老人医療の質が問われることが必要であろうと思います。
 高齢化率がさらに上昇する中で、介護サービス等、適切な役割分担のもと、高齢者のQOLと予防を重視する老年医学の確立は急務の課題であると思います。単に総額管理制度で医療費を抑制すればいいという財政主義的な施策では、決して高齢者のQOLを確保することはできないと思います。
 この点について、厚生労働大臣の答弁を求めます。
坂口国務大臣 今回の診療報酬改定におきまして、入院医療につきましては、痴呆や日常生活における障害の程度など、患者の心身の特性を踏まえましたきめ細かな評価を行ったところでございます。また、特定療養費制度を活用いたしまして、医療保険と介護保険の役割分担の明確化を図ることとしているところでございます。
 いずれにいたしましても、この介護保険と医療保険制度の問題は、これは大事な問題でありますし、どのようにこれを今後整合性のあるものにしていくかということにつきましては、さらなる検討が必要な部分もあるというふうに思っている次第でございます。
 したがいまして、次の介護保険の改定のときの問題等におきましても、これらのことを十分に配慮した、やはり対策が必要になってくるというふうに考えているところでございます。
福島委員 医療は、水や食べ物と同じくらい、人間にとっては大切なものであると思っております。よい医療制度を持つことは国民にとって幸せなことであり、我々も、医療制度改革の議論の原点にいかにしてよい医療を持つことができるかという視点を欠いてはならないと思います。
 しかしながら、よい医療制度を持つためには、確固とした医療保険制度というものがその基盤になければなりません。医療保険財政の破綻が起こればよき医療というものを支えることはできない、このように私どもは思っております。
 そして、国会において、国民に対して責任を持つ立場から、客観的な事実に基づいて、この医療保険制度というものをいかにして支えていくのか、その真摯な議論こそがなされるべきではなかったかと私は思っております。(発言する者あり)
森委員長 御静粛に願います。
福島委員 しかしながら、この委員会における五十時間に及ぶ質疑、医療保険財政に対して具体的な提案が野党の方々から示されたと私は認識をいたしておりません。
 その意味で、五十時間に及ぶ質疑……(発言する者あり)
森委員長 御静粛に願います。
福島委員 これは今までになく充実をした質疑であると私は思っております。その意味で、最終的な判断をこの委員会において今下すときが来ている、私はそのように思っております。
 そしてまた、政府に対しては、今までさまざまな改革を重ねてまいりましたけれども、高齢化のさらなる進行と、そしてまた低迷する日本経済……(発言する者あり)
森委員長 御静粛に願います。
福島委員 そしてまた国家財政の危機、こうした三重の苦しみの中で、その改革というものが、それほどの時日を経ずして、改めて見直さなければならないということを要請されているわけでございます。
 国民の皆様にさまざまな御負担というものを求めるということは、国会議員としてもまことに私どもは心苦しい思いがいたします。しかしながら、こうした改革が必要であるということをぜひとも国民の皆様には御理解をいただきたいと思いますし、そしてまた……(発言する者あり)
森委員長 御静粛に願います。
福島委員 二十一世紀において、さらに高齢化率というものは進んでまいります。三〇%を超えるような高齢化率を迎えたときに、日本の医療制度というものをどのようにして安定して維持していくのか、このことについて国会の責任があります。そしてまた、政府も大きな責任を持つわけでございます。
 本法案の附則に記されたところの抜本改革の一つ一つの項目について、政府として真摯に取り組み、そして、本年度中に示すべきものはお示しをいただきたい。そのように最後に要請をし、質疑を終わります。
 以上。
森委員長 鴨下一郎君。
鴨下委員 ……(発言する者多く、聴取不能)採決されんことを望みます。
森委員長 鴨下一郎君の動議に賛成の方の起立を求めます。起立多数。よって……(聴取不能)討論の申し出がないので……(聴取不能)一部を改正する……(聴取不能)賛成する諸君の起立を求めます。起立多数。よって、原案のとおり可決されました。次に……(聴取不能)賛成の諸君の起立を求めます。起立多数。よって、原案のとおり可決することといたしました。……(聴取不能)は、委員長に御一任願いたい……(聴取不能)賛成の諸君の起立を求めます。起立多数。よって……(聴取不能)これにて散会いたします。
    午前十時十三分散会
     ――――◇―――――
  〔本号(その一)参照〕
    ―――――――――――――
   派遣委員の愛知県における意見聴取に関する記録
一、期日
   平成十四年六月十三日(木)
二、場所
   ウェスティン名古屋キャッスル
三、意見を聴取した問題
   健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
      座長 森  英介君
         上川 陽子君   鈴木 俊一君
         松島みどり君   五島 正規君
         山井 和則君   江田 康幸君
         樋高  剛君   瀬古由起子君
         阿部 知子君
 (2) 現地参加議員
         大島 令子君
 (3) 意見陳述者
      名古屋大学医学部名誉教
      授           齋藤 英彦君
      日本特殊陶業株式会社取
      締役総務部長      橋本玄次郎君
      長久手町長       加藤 梅雄君
      愛知大学教授
      弁護士         加藤 良夫君
      愛知県社会保障推進協議
      会事務局長       加藤瑠美子君
      医療法人医真会理事長  森   功君
 (4) その他の出席者
      厚生労働委員会専門員  宮武 太郎君
      厚生労働省保険局総務課
      長           渡辺 芳樹君
     ――――◇―――――
    午後一時開議
森座長 これより会議を開きます。
 私は、衆議院厚生労働委員長を務めております森英介でございます。
 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案の審査を進めているところでありますが、本日は、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当名古屋市におきましてこのような会議を催させていただきました。
 御意見をお述べいただく皆様方には、御多用中にもかかわりませず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。
 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持などは、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度、座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
 なお、御意見をお述べいただく皆様方は、委員に対しての質疑はできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をそれぞれ十分程度でお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、御発言は、着席のままで結構でございます。
 次に、派遣委員を御紹介申し上げます。
 自由民主党の鈴木俊一君、上川陽子君、松島みどり君、民主党・無所属クラブの山井和則君、五島正規君、公明党の江田康幸君、自由党の樋高剛君、日本共産党の瀬古由起子君、社会民主党・市民連合の阿部知子君、以上でございます。
 なお、現地参加議員として、社会民主党・市民連合の大島令子君が参加をされております。
 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
 名古屋大学医学部名誉教授齋藤英彦君、日本特殊陶業株式会社取締役総務部長橋本玄次郎君、長久手町長加藤梅雄君、愛知大学教授・弁護士加藤良夫君、愛知県社会保障推進協議会事務局長加藤瑠美子君、医療法人医真会理事長森功君、以上六名の方々でございます。
 それでは、まず齋藤英彦君に御意見をお述べいただきたいと存じます。どうぞよろしく。
齋藤英彦君 私は、医師として三十八年間、主として大学病院におきまして医療に従事してきた者の立場から意見を申し述べます。
 医療を考えるときには、クオリティー、アクセス、コストの三つの要素が重要であると一般に言われております。
 最も重要な医療の質、すなわちクオリティーは、近年の技術革新や医学の進歩により著しく向上し、昔は致命的であった多くの難病も救われるようになりました。例えば、私の専門である血液のがんと言われる白血病は、診断がついたら半年以内に死亡していた病気でしたが、現在では多くの患者さんが骨髄移植や臍帯血移植により治ります。
 一方、たび重なる医療事故や院内感染に対する不安、不信感、あるいは医療関係者からの説明不足に対する不満など、国民の医療に対する信頼が揺らいでいるのも事実であります。医療の高度化、複雑化によりその安全性が少しでも損なわれないように万全の注意を要することは言うまでもありません。
 国民にとって医療の質とともに重要なのは、医療へのアクセスとそのコストであります。我が国の国民皆保険制度は、国民だれもが必要なときに自由に公平に一定水準の医療を比較的安く受けられる点で、国際的にもすぐれたものであります。このことは米国などと比較すれば明らかであります。
 私は、たまたま若いころ米国で七年間内科の臨床医として働いた経験がありますが、日本の医療制度には多くの長所があると思います。医療保障が民間保険中心であるアメリカには、医療保険でカバーされない人々が四千万人もおり、貧しい人々は十分な医療へのアクセスを持ちません。
 一方、国営医療のイギリスでは、慢性疾患患者は長い間待たなければ専門医の診察を受けることや手術のための入院ができないことが大きな問題となっているようです。例えばイギリスの国民保健サービス、NHSの最近の統計によりますと、けがや整形外科の手術の入院待ち患者数は二十数万人に上るといいます。
 WHO、世界保健機構の二年前の報告でも、我が国の保健システムは、健康寿命、幼児死亡率の地域格差、医療満足度、アクセスの公平さ、費用負担の公平さの五項目における総合評価で世界一であると判定されております。日本人の平均寿命や健康寿命が世界一であることの一つの原因は、医療が行き渡っていることでもあると思います。したがって、国民皆保険制度を維持し、次の世代へ継承していくことについては、国民のコンセンサスがあるのではないでしょうか。
 さて、医療が高度化すればするほど、人口の高齢化が進めば進むほど、医療費が増大することは避けがたい事実であります。病気の早期発見には多くの検査を高額な医療機器を使って行うことが必要であり、また、高度先進治療はお金がかかります。さらに、非常に多数の人が高血圧や糖尿病の薬を長期間飲み続けるのは費用を要します。高齢者は複数の病気を持っており、若い人よりも医療費がかかるのは当然です。さらに、現在の医療水準を支える安全対策にもお金がかかります。他方、国の経済も、かつてのような高度成長は期待できません。
 そうした中で、医療保障の議論には、次の三点がこれまで以上に大切になってくると思われます。第一に、医療の質を低下させることなく、むしろどう向上させていくか、医療の質であります。二点目は、費用に見合った医療の効率化をどう図っていくか、医療の効率化であります。そして三点目に、公平な給付と負担をどう図るか、医療の公平性であります。
 第一の医療の質については、最近我が国でもエビデンスド・ベースド・メディシン、EBM、日本語では根拠に基づく医療と訳されていますが、それが徐々に認識されてきました。EBMとは、医師が目の前の患者さんの病気の診断、治療をするときに、最新の科学的、客観的データに基づいて判断するプロセスをいいます。従来は、個人の少ない経験や勘に頼って医療が行われた面もないではありませんでしたが、EBMに基づいたガイドラインを使うことにより、医療のばらつきを少なくすることができます。また、クリティカルパスなどの導入による医療の標準化も大切であります。さらに、何よりも医療の安全性を担保するために、医療提供者はあらゆる努力をする必要があると思います。
 第二に、医療の効率をよくするためには、医療の標準化及び医療提供体制の機能分担、例えば、病院と診療所の役割分担や、急性疾患と慢性疾患対策の区別などを積極的に推し進める必要があると思います。また、医療情報の開示により透明性を高めて、国民に正しい選択をしてもらうことが重要です。
 さらに、私は、今後の課題として、最も頻度の高い生活習慣病などになる前の予防に力を入れて、医療費を節約することが重要であることを強調したいと思います。つまり、我々は、自分の健康は自分で守るという精神を助長することが大切です。
 例えば、糖尿病があるのに、食事療法を厳密に守らずに、食べたいものを食べてインスリン治療を受けるのは、医療費のむだ遣いであると思います。さらに、毎日の生活に気をつけることにより糖尿病をあらかじめ予防できれば、多くの医療費の節約になるでしょう。同じことが、高血圧、肥満、心臓病、がんなどの、他の生活習慣病についても言えます。
 そして、第三の医療費の公平性の問題につきましては、結局、医療費の出どころとしては、患者の窓口負担、保険料、公費の三つしかありません。保険財政が危機に瀕していることや国民健康保険では三割負担であることを考えれば、厳しい選択ではありますが、サラリーマンの三割負担もやむを得ないのではないかと思います。
 いずれにしても、医療保険制度は、国民の安心の源であり、守る必要があると思います。そのためには、だれが費用を負担するかという議論のみならず、それとともに、我が国の医療制度全体についてどのような制度設計が最も適しているのかということを国がリーダーシップをとって決定することが不可欠であると思います。将来にわたって国民だれもが必要な医療をいつでも公平に受けられるよう、国民のコンセンサスを得ながら、医療の供給、そして医療保険制度にわたって思い切った改革を進めていかなければならないと考えます。
 以上でございます。
森座長 ありがとうございました。
 次に、橋本玄次郎君にお願いいたします。
橋本玄次郎君 私、日本特殊陶業の橋本でございます。
 このたび、地方公聴会で意見を述べさせていただくという機会を与えていただきまして、ありがとうございます。私の方は、民間の健康保険という立場で、特に事業者という立場から発言を申し上げたいというふうに思っております。
 御承知のように、政府の月例発表、底入れ宣言がされておりますけれども、本音のレベルで申し上げますと、個人消費なんというのはまだまだ回復をいたしておりませんし、とりわけ中小企業は極めて厳しい状況に置かれている。これはもう先生方、御承知のことだと思います。他方、経営者として、非常に経済のパイが小さくなっていっている中で、安易に労働者の首は切れない。それからまた、賃金を大幅にカットすることもできない。非常に苦しい経営を迫られているというのは、御承知のとおりだと思います。他方、少子高齢化に伴いまして医療費が増大するということで、かといって、健保が赤字になるからといって保険料の引き上げというのもそう簡単にできないというふうなことになっております。
 そういう中で、我々ちょっと申し上げたいのは、やはり今回の抜本改革の最大テーマという新たな高齢者の医療制度の創設ということでございます。今回の改正法案の附則に盛り込まれたものを拝見いたしますと、十四年度中の実施を先送りしたというふうな感じを受けます。一日も早く、拠出金制度に依存しない新たな高齢者医療制度、こういうものの創設をまず一点お願いしたい。
 拠出金に触れましたので申し上げますと、他の都道府県も一緒だと思いますが、愛知県下でも、企業の多くはリストラを行わざるを得ない非常に厳しい局面に追い込まれております。そういう中で、愛知県下の健康保険組合は、保険料率の平均が月収の八・六%と、政府管掌健保よりも高い料率になっております。保険料として支払っている額は、事業主負担分を含めると年間一人当たり三十八万三千円で、このうち約十七万円が高齢者への拠出金であります。率にして実に四四%のお金を拠出しているということになっております。果たしてこの負担率というものが社会保険としてあるべき姿と言えるのかどうか、この辺をちょっと我々としてはやはり疑問に感じております。
 それから、拠出金のことばかり申し上げて恐縮でございます。一点だけ、我々から思うと、そもそも拠出金の算出方法、これにちょっと疑問を感じております。
 つまり、二年前の数値、あるいは今年度の予想などを踏まえて算出されますけれども、いわゆる健康保険組合の事業主と加入者に理解してもらうには余りにもこれはちょっと難解過ぎる。何でこんなに負担しなくちゃいけないんだ、その辺が非常に不明確だというふうに我々は思っております。決して払わないと言っているわけじゃないわけですが、やはりもう少し透明性を高めていただきたい。つまり、健康保険は、事業主と加入者の保険料で運営されているわけでございますので、事業主と加入者がともに理解ができる算出方法、こういうものでなければ、今後ますます厳しくなる局面を、さらに信頼が失われていってしまうという点を危惧するものでございます。
 それから、実際に我々としては、拠出金が嫌だというわけではございません。とにかく老人医療費の負担というものをあえて回避しようとしているわけではございません、当然高齢化が進む中でだれかがこれは負担をしなければいけないと考えております。そういう意味では、今後どんどん増加するだろう拠出金、こういうものを、拠出金に依存しない、公平で、将来にも負担可能な制度の実現をお願いしたいというふうに思っております。
 それから、基本的には抜本改革になるかと思います。我々国民が安心できる医療制度にしていくためには、医療の将来像、こういうものを国内に示していただくことが非常に必要だろうというふうに思っております。
 我々として、民間企業の健保として一点だけ申し上げたいのは、私、人事の採用をやっておりますが、大体二百名ぐらい毎年会社へ入っております。健康診断をいたします。そうしますと、十八歳から二十四歳ですが、実に半分の人がもう既に有所見です。すぐお医者さんに見せなきゃいけない。この人たちが次世代の、今の我々、あるいは自分たちのいわゆる保険料を負担するわけでございます。むしろ、健康ではない、ある意味では不健康な人が保険料を負担しなくちゃいけないという時代が到来します。
 我々としては何ができるかということであれば、健康保険ではなくて、会社のお金を使って、三十代から検血をして、原因となるようなものを指摘していく。つまり、病気にならない、そういう自己防衛をやっていきたい。そういう意味でも、やはり将来にわたる明るい医療制度、こういうものの実現をぜひお願いしたいと思います。
 以上でございます。
森座長 ありがとうございました。
 次に、加藤梅雄君にお願いいたします。
加藤梅雄君 長久手町長の加藤でございます。
 私は、町村の立場で一言陳述をさせていただきます。
 初めに、衆議院厚生労働委員会の委員の皆様方におかれましては、日ごろから医療、介護、福祉などの分野におきまして御尽力をいただいておりますこと、心から感謝と敬意を表するものであります。また、このような市町村の立場からも意見を申し述べる機会を与えていただきまして、厚く御礼申し上げます。
 さて、今国会において御審議いただいております健康保険法等の改正案につきまして、医療保険財政の破綻を回避し、国民の生命を守る国民皆保険制度を崩壊させないためにも、賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
 医療保険制度に関しましては、市町村は国民皆保険体制の最後のとりでである国民健康保険制度を運営することとなっておりますが、まず、国民健康保険の現状について簡単に申し述べさせていただきます。
 御案内のとおり、国民健康保険制度は、他の医療保険に属さない人を受け入れる構造となっております。このため、近年の急速な少子高齢化の進展、就業構造の変化などにより、加入者のほぼ半数が無職者であり、平均年齢は五十一・七歳、一世帯当たりの年間所得は百六十八万円、所得のない世帯が二四・一%、ほぼ四分の一を占め、制度が発足した当初に比べ無職者、高齢者の所得の低い者が著しく増加しているのが現状であります。その結果、市町村国保は、被用者保険に比べまして所得水準が低い中で、被用者保険とほぼ同様、場合によってはそれ以上の保険料を納めなければなりません。
 長久手町におきましても、一世帯当たりの平均保険料は十七万円を超えております。政管保険や組合保険の十五万から十六万と比較すれば、保険料の負担は重いものになっております。厳しい経済情勢を背景に所得水準が低下する中で、保険料収入の確保がますます困難になるなど、極めて厳しい運営を余儀なくされている状況でございます。
 国保の運営は、本来、保険料と国庫負担金により運営されるのが原則であるにもかかわらず、多くの市町村においては、こうした事情からやむを得ず行っている一般会計からの多額の繰り入れなどにより、ようやく運営されておりますのが実態であります。しかしながら、地方財政は御承知のとおりますます厳しさが増しており、一般会計からの繰り入れももはや限界であります。
 国保の構造的問題は、市町村の規模の大小にかかわらず生ずるものであり、同じような問題や悩みを抱えているのが実情であります。このことは、単に国保保険者の統合などといった国保サイドのみの対策では解決できないものであります。全国町村会においては、全国市長会、国民健康保険中央会とともに、国民の間で給付と負担の公平を図り安定した国民皆保険制度を維持していくため、すべての国民を通ずる医療保険への一本化を直ちに実施することが困難であるとするならば、当面、医療保険財政の一本化を主張したいと思っております。
 さて、今回の健康保険法等の一部を改正する法律案でありますが、国保に関連する部分を中心に若干意見を述べさせていただきます。
 まず、保険給付の見直しについてでありますが、わかりやすく公平な給付を実現するため、各医療保険制度間の給付率を統一する改正であります。給付率につきましては、制度発足当初から国保と被用者保険との間で格差があります。国保被保険者も被用者保険の加入者も、我々市町村から見ますと同じ住民であることから、私どもは、従来から給付と負担の公平を主張しているところでございます。
 次に、老人医療に関してであります。
 第一に、受給対象者の年齢引き上げでありますが、老人保健制度は、高齢者の医療費を国民全体、各医療保険で公平に負担するという調整の仕組みであります。対象年齢を七十歳から七十五歳に引き上げるということは、各医療保険制度間の財政調整の対象を狭めるものであり、制度上高齢者を多く抱える国保は、現在以上に厳しい財政運営を強いられる可能性があります。高齢者医療制度の将来の姿が見えないまま対象年齢だけを引き上げることは疑問を感じるものであり、医療保険制度全体の抜本改革を行い、国保関係者の主張に沿った形で一刻も早くその実現が図られるよう望むものであります。
 第二に、老人医療費の伸びを適正化するための指針についてであります。老人医療費の伸びが国民医療費を増嵩させる大きな要因となっていることは周知の事実であります。ある一定の指針を出すことは評価できるものであります。将来にわたり医療保険の安定的な運営を図るためには、高齢者だけでなく全体を通じて、健康対策強化を含め医療費の伸びを抑え、適正化を図ることが不可欠であると考えております。
 第三に、老人医療費拠出金の算定方法の見直しについてであります。具体的には、老人加入率の上限の撤廃、あるいは退職者に係る拠出金を退職者医療制度で全額負担するといった内容についてですが、老人医療費を全国民で公平に負担するという老人保健制度の趣旨を踏まえれば、ぜひともこれを実現していただきたいと考えております。
 次に、国民健康保険の財政基盤の強化に関してであります。国保が一般会計からの繰り入れで辛うじて運営されており、その財政運営が危機的状況であることなどから、医療保険制度が抜本的に改正されるまでの臨時的な措置としてどうしても必要であり、早急に実施する必要があります。
 最後に、私ども市町村長が一番重要であると考えております、附則に盛り込まれた医療保険制度の改革等についてであります。
 法案には、将来にわたって医療保険制度の安定的運営を図るため、平成十四年度中に医療保険制度の体系のあり方等の基本方針を策定することが盛り込まれております。これは、医療保険制度の一元化を将来の方向の有力な考え方とした昨年末の医療制度改革大綱に基づいているものであり、この一元化の方向に沿った具体的な検討を早急に行い、平成十四年度中に基本方針を確実に策定することを期待するものであります。その場合には、私ども国保関係団体がかねてから主張しております、すべての国民を通ずる医療保険制度への一本化の考え方を尊重することを強く望むものであります。
 以上、いろいろ申し上げましたが、医療制度、医療保険制度のあり方は国民生活に直結する重大な問題であります。また、医療保険財政は各制度とも逼迫し、崩壊状況にあります。このような状況を踏まえ、今回の健康保険法等の一部を改正する法律案については、内容的には必ずしも十分なものとは言いがたい点もあります。しかし、当面の対策として、国民健康保険の財政基盤の強化は、直ちにこれらを実施することが必要であり、法案の速やかな成立を望むものであります。
 最後に、市町村住民の間の給付と負担の公平を図り、さらに国民皆保険制度を堅持するため、医療保険制度の一本化、一元化の早期実現をお願いいたしたいと思います。
 以上、御清聴ありがとうございました。
森座長 ありがとうございました。
 次に、加藤良夫君にお願いいたします。
加藤良夫君 私は、これまで二十八年間、患者側弁護士の立場から医療事故や薬害の被害者救済の問題に取り組んできました。医療には光と影があります。きょうは、医療の影を見詰めてきた立場から意見を述べたいと思います。
 お手元には二つの資料が届いているかと思います。一つは、患者の権利法をつくる会が作成した患者の権利法要綱案でございます。カルテ等の開示など、国民が求めている患者の権利を法案の形で提示しております。もう一つは、黄色い、こうしたパンフレットでございます。タイトルは「医療事故を防止し被害者を救済するシステムをつくりたい」、医療被害防止・救済センター構想について書いているものでございます。このパンフレットは、既に一万部近く活用されております。
 本日の私の意見の要点としましては、医療制度の改革に当たっては、質の高い医療、安全な医療、患者の人権を尊重した医療、そして医療被害者の救済システムづくりがまず不可欠であるということであります。
 医療事故を防止し、被害者を救済するシステムの必要性について申し述べます。
 御承知のとおり、患者を取り違えるだとか、消毒剤の点滴など、医療事故が社会問題化しております。大変不安を持っている患者さんも多いと思います。
 安全対策の第一歩は、医療事故のまず実態把握であります。何事も、対策を立てるときには実態把握から始まると思います。実情をきちっと把握し、情報を集め、そしてそれを丁寧に分析し、その中から教訓として生かせるものを抽出し、具体的に対策を立てていくというプロセスが不可欠だと思いますが、そうした、安全への対策、医療の質の向上へ向かった対策の初めの一歩である実態把握が、我が国では全く行われていないと言っても過言ではありません。
 医療事故の全貌は全く不明であります。裁判は一年間に八百五件、最新情報では提起されておりますけれども、こうしたものは、医療事故のごく氷山の一角にしかすぎません。アメリカでは、医療事故で年間四万四千人から九万八千人もの死者が出ていると言われております。日本に当てはめますと、日本の人口の倍アメリカの人口があるというようなことから考えまして、この数値の半分と見ましても、我が国でも交通事故の倍以上の死者が毎年医療事故で出ているということが想定されるところであります。
 私たちの日ごろの実感からしまして、そんなに死者がいるのだろうかと思うかもしれませんが、医療事故の問題というのはなかなか、専門性の壁や、密室性の壁や、あるいは封建制の壁に阻まれて、事故に遭ったこと自体知らないケースもございます。例えば、抗がん剤の副作用で亡くなったというケースについては、遺族の方はがんで亡くなったと思っています。このようなことから、医療事故の情報は、さまざまな要因が重なり沈殿しやすいという本質を持っています。これまで、医療界は臭い物にふたをしてきました。重大な事故については報告を義務づける必要もあると思います。
 被害者の救済システムが整備されていないということから、医療に携わる人たちは、報告するとどうなるのかという不安なども抱いています。そのために報告をすることにためらいも生じている、そういう関係性に立ちます。つまり、医療事故の防止に必要な医療事故に関する情報はなかなか一点に集まりにくいという背景には、被害者の救済のシステムが確立していないということに実は直接的に結びついているということを知る必要があると思います。
 つまり、医療事故の防止と被害者の救済ということは、これまで別のように思われてきましたけれども実は車の両輪であり、患者本位の医療という基本に立って考えてみても、被害者の救済というものを置き去りにするわけにはいかず、医療事故の防止という国民が願っている問題の解決のためにも一体的に解決が図られるべきであります。
 医療事故を防止し、被害者を救済するためには、それを専門的に取り扱う第三者機関が必要です。その政策の中には、当然、厚生労働省の政策を批判するという視点もありますので、第三者機関が必要であるというふうに強調しておきたいと思います。
 一つのアイデアとして、本日配付した医療被害防止・救済センター構想のパンフレットに記された一つの意見は、ぜひしっかりと検討いただきたいというふうに考えております。
 医療法第一条の二によりますと、「医療は、」「良質かつ適切なものでなければならない。」と記されております。申すまでもなく、生命の尊重、個人の尊厳は最優先の価値であります。
 インフォームド・コンセントをないがしろにした医療現場の不幸、医療事故、そういうものを見るにつけ、私は、インフォームド・コンセントを中心とした患者の人権の保障が医療制度改革の中心に位置づけられるべきであると考えるものです。医療への患者の主体的な参画を抜きにして医療の質が向上していくことはあり得ないと思いますし、医療制度の改革が進むとも思われません。医療及び医療機関に関する情報をできるだけ開示し、医療をより開かれた姿にするための諸方策とともに、患者の知る権利、自己決定権、インフォームド・コンセント原則等の普及を図っていく措置を講ずるべきであると思います。
 今回の健康保険法等の一部を改正する法律案の中には附則がございまして、その附則の第二条六項には、医療事故防止に関することが若干記されております。医療事故の防止のための方策を立案すること、また、医療被害者の救済のシステム及び患者の権利法についてもあわせて検討課題とすべきです。これらの課題は重要かつ緊急性のあるものでありますから、三年とか五年のめどを示して附則の中に書き込んでおく必要があると思います。
 最後に、この公聴会に参加をするに当たって一言意見を述べたいと思うんですけれども、今般、かなり急に日程の指定がございまして、やりくりをして多分きょうの意見陳述者はここの場に来ていると思います。この会場も、名古屋では大変品格のあるといいましょうか、使用するのに高い会場であります。私は、こうしたところで公聴会を開く必要があるとは全く思いません。もっと公的な施設を使って、国民の意見を率直に聞くという国会であってほしいと思います。
 そして、こうした公聴会を単なるセレモニーにしないで、私たちがそれなりの時間をやりくりして意見を述べているわけですから、十分に意見を聞いて、検討していただきたい。それが、こうした問題改革のボタンのかけ違えのない大事なポイントであるということを強調して、私の意見陳述としたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。
森座長 ありがとうございました。
 次に、加藤瑠美子君にお願いいたします。
加藤瑠美子君 私は、長らく看護師として、また、病院関係の現場の医療実態を改善するために運動し、現在は、社会保障、医療や介護の実態の改善のために取り組んでいる、その立場から意見を述べたいと思います。
 今、医療の現場では、御承知のように、患者さんは高齢化をしております。また、この間の医療の改悪で入院の日数も短縮化をし、二十日前後、それから病院によっては十数日というところもふえ、患者さんは重症化がふえ、高度な医療行為が現場では行われております。にもかかわらず、今、病院では経営効率が絶えず追求され、お医者さんや看護婦など人手はふえず、大変な忙しさです。
 ゆとりのない職場ということで一言で言っていますけれども、例えば、二〇〇〇年八月に医労連という労働組合が看護婦の労働実態を調査した中身を見ましても、この愛知県での調査で、夜勤の問題でいえば月に九日以上の夜勤の実態ですし、年休消化は年四日以下、平均取得でも八日以下という状況です。看護婦さんの健康の問題も、健康不安が六割、慢性疲労が八割、病気治療した人が六割強、こんな状況が出ております。
 こういうゆとりのない職場の中で、医療事故の問題については、対策マニュアルをつくってそれを守るようにということで、どこの病院も行っているわけですけれども、実態は実行できない体制というのが現場の率直な意見ということで聞こえてきます。
 今、患者さんも国民も医療人も、医療費の負担も含めて、安心と安全の医療や看護を一番望んでいるのではないかと考えます。ところが、今、国会に提出されております健康保険法の一部改正、私どもは大改悪というふうに言っていますけれども、経済的にも負担増を伴い、現場の声の安心と安全という点でも改善されない、こういうことで、今患者さんや国民、県民からも強い反対の声が寄せられております。
 私たちの運動へも多くの県民から賛同が寄せられ、国会に出す請願署名も現在県内で四十七万を突破しております。この医療の改悪に対する反対の署名は、私どもだけではなく、愛知県医師会や歯科医師会、連合愛知の労働組合でも取り組んでおります。これらも合計すれば、県内で百五十万筆を超える県民が患者負担増の医療の改悪案に反対する意思を署名に託して表明しているのではないかと考えられます。
 私たちは、返信郵便つきチラシを朝日、毎日、読売新聞に五十三万枚折り込みました。この返信郵便で千七百通、五千八百人を超える署名が寄せられ、千人を超える人から切実な声が寄せられました。皆さんのお手元に、新聞で特集という形で声を編集しております。ぜひこれをお読みいただきたいというふうに思います。
 この中で、一部御紹介します。
 現在、妻五十三歳を在宅介護中で、訪問看護・介護を受けていますが、それ以外は私一人で介護をしています。妻が平成十二年二月十八日脳内出血で発病して、十月二十四日に在宅介護になって、会社を退職し、年金生活者となりました。年金で生活をする者には、医療費負担は生活するのに限度があり、今回の医療費負担増計画は反対です。
 夫は若いときに医者にかかったことがない人だ。食事に気をつけて健康を守ってきたが、年には勝てない。今、更年期障害がひどく、通院をしている。昨年の医療費自己負担は二人で十四万円だった。夫はあと三年で定年退職だ。ボーナスにも保険料徴収され、老後は高齢者窓口負担引き上げは絶対許せない。ひとり暮らしの母七十七歳、義母八十歳はどうなるんだろう。私たちしか身寄りがなく、最期をみとる人もいないのだから。
 また、子供が小さくて、これからいろいろと病院にかかることが多くなるのに、患者負担がアップすることは大変つらい。主人は日給で、先日もけがをして、医療費はかかる、給料が減るで赤字です。医療とは常に必要不可欠であるのに、お金の問題で病院に行くのを我慢する状態にしてほしくない。
 夫が一年後に定年を控え、将来不安が増す中で、大幅な医療費負担は絶対反対です、毎月の保険料負担も大変なのに等々、病気療養中の人たち、そして死を意識した悲痛な叫び、受診抑制の声、年金生活者の声、生活困窮者の声など、切実な声がここに寄せられています。これを読むと、今国民は、先の見えない不安の中で、倒産やリストラの不安にさらされながら、生活が圧迫されていることが切々と訴えられています。
 こうした中で、今回の、医療保険の一部改定と言っていますけれども、こういう医療費の負担増はこれに追い打ちをかけるものです。絶対廃案にと私は訴えたいと思います。
 さて、小泉首相は国会審議の中で三割負担は適正な負担と答弁しておりました。
 現在、三割負担、名古屋市は二割負担ですが、国民健康保険では、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、長引く不況の中で、倒産やリストラで保険料が払えない世帯が急増しております。愛知も例外ではなく、県内でも保険料の徴収率が、平成七年九五・八%から平成十二年は九二・八%と落ち込んでおります。
 昨年十二月の調査では、一年以上の滞納者が五万五千世帯、短期保険証という三カ月ぐらいしか利用できない保険証発行が三万二千世帯、それに伴い資格証明書を発行する市町村もふえて、今県内では千八百九十四世帯になっております。資格証明書は、御承知のように、この資格証明書をもらっても医療機関の窓口ではかかった医療費の全額を払わなければなりません。保険料が払えないのに、かかった医療費の全額を窓口で払えるわけはありません。受診抑制によって重症化し、命取りにもなりかねません。
 この国民健康保険、日本の社会の土台を支えてきた人たちが長引く不況の中で保険料が払えない状況に追い込まれている、こういうふうに考えます。現在では、見た目は大きな門構えのうちでも保険料が払えない、こういう状態が生まれております。今回の改悪は、こんな国民健康保険の事態をサラリーマンや高齢者にも広げることにもなりかねません。
 私は、こういう点からいって、今回の医療費のサラリーマンの三割への負担、そして高齢者が一割負担で、窓口で絶えず一割負担を払わなければならない、こんな医療保険の改悪案には絶対反対で、廃案をしていただきたいと思います。
 最後に、附則にもありますように、高齢者医療の創設や保険給付の内容及び範囲のあり方を検討し具体化するなど、引き続き政府は改革をするということを掲げております。
 健康保険できく医療の範囲を小さくし、保険がきかない範囲を広げようとしています。今でも差額ベッド代など保険外負担は大変な状態になっております。そして、ことしの四月の診療報酬の改定で、差額ベッドの範囲は四月以前よりも拡大をし、民間の医療機関では七割までオーケーということになりました。そして、六カ月を超えた入院の患者さんは、入院基本料の一五%、月額にして五万円ほどの負担が必要になりました。お金が払えなければ退院をとなります。
 ところが、退院と言われても退院先の受け入れも、現在では特別養護老人ホームだけでも三年も待たなければ入れないと言われております。病院の療養病棟でもなかなか入院できません。受け入れ先がない中で、家族は経済的にも精神的にも大変な不安になってきます。
 保険証があってもお金がなければ医療にかかれない状況はますます進行していくことが考えられます。そして、国民皆保険制度、この制度が崩壊をする、そういう方向にもなりかねません。
 今倒産やリストラで五%を超える失業率の中、年金も介護も負担増の計画が発表され、県民の将来不安は大変な状況です。患者さんや県民が安心して暮らしていく、そのためにも、今回の法案、何としても廃案にと願い、発言を終わりたいと思います。よろしくお願いします。
森座長 ありがとうございました。
 次に、森功君にお願いいたします。
森功君 私は、第一線の医療機関でございます医療法人医真会の理事長並びに医療福祉グループを主宰しておるものでございますし、同時に、医療事故調査会というのを一九九五年に会員とともにつくりまして、その代表世話人を務めております。
 私どもが医療を展開しております八尾・中河内地域というのは、大阪府の中部、東南部にございます。ちょうど奈良県との間でございますが、まさに典型的な大都市近郊であります。この八尾市二十八万の人口プラスアルファ合わせまして約五十万の大都市近郊を対象にした医療福祉を展開しております。
 八尾市におきましては、十三病院ございます中で、三百床以上の総合病院が三つございます。市民病院が一つと、私どもと、あともう一つ民間の医療法人の病院であります。医療法人立病院はわずかに四%から五%の利益率でもって何とか維持しておりますが、市民病院はもう十億近い赤字を毎年出しております。にもかかわらず、この病院が今二百八十億の起債でもって、さらに大きな赤字を期待しながら改築中であります、これもまた一種のアイロニーではありますけれども。そういう中で医療を展開しておりまして、今回の医療保険制度改革に対して大変大きな危惧を抱いております。
 まず、私どもは、医療を提供する側といたしまして、いい医療、良質の医療を提供するということは、その裏にあります事故あるいはトラブルというものに対して直視し、その実態からさらに医療の質を高めることを学ぼうという姿勢でもって日常の医療を展開しております。
 私どもは今考えますに、病院そのものが、つまり他の医療職も含めた病院でいろいろと発生する事故、それから主として医師が行う医療事故・過誤というものの二種類に分けて検討しておりますが、いずれにしましても、現在の日本の医療というのは、事故の海の中で医療が行われておるということが数値的にはっきり出ておると思っております。
 御承知のとおり、ことしになって発表されました八十二の特定医療機関、これは大学の病院でございますが、プラス国立の医療センターから、未遂事故が十八万件、それから事故が一万五百件、あるいは深刻なる事故が三百八十件強という報告がされております。
 私ども医療法人医真会グループの五百五十床の病床と七百人の職員が行っております医療福祉作業の中で、二〇〇〇年におきましては千百八十件、二〇〇一年においては八百三十件の事故報告書が出ております。その中で、二〇〇〇年には約六十件、あるいは二〇〇一年には約三十件の深刻なる事故を起こしております。
 このような実態の中で、なおかつ医師が起こす医療事故に関しましては医療事故調査会において毎年シンポジウムを開いてその実態を明らかにしておりますが、今週末に行いますシンポジウムにおきまして五百三十九件の鑑定終了例に関して分析いたしましたところ、やはり従前から主張しておりますように、七五%においては医学的に過誤であるという判定がされております。しかも、その六二%は死亡例であります。なおかつ、この原因の最たるものが医師の能力不足であります。それに加えて、インフォームド・コンセントの欠如、あるいは看護職も含めたチーム医療の欠如、こういうものが過誤原因の主たるものを占めておるわけであります。
 こういう実態を目の前にいたしますと、医療事故というものがたまさか起こっておるものではなくて、我々の医療は実は事故の海の中で行われておるという認識に立つ方がより謙虚ではないか、こういうふうに思っております。
 一方、目を米国に向けてみますと、一九九五年から昨年の十二月までの約六年間に千五百三件というケースがJCAHO、医療施設合同評価委員会の方に報告されております。ここ数年、各州におきまして、センティネルイベントと呼んでおりますが、あるレベル以上の障害あるいは死亡例を伴った医療事故に関しましては報告がほとんど義務化されております。それによって、猛烈な勢いで、かなり激しい右肩上がりで報告がふえておりまして、現在は千五百三件に至っております。この中には患者の手術の部位の取り違えとか、あるいは子供の誘拐ですとか、もちろん転倒、転落とか自殺等の、いわゆるセンティネルイベントでございますからほとんど死亡に近い障害を残しておるわけでありますが、そういった事故が米国においても多発しておる。
 米国というのは、御承知のとおり、医療経済の面では四千万の無保険者を抱えるようないびつな国でありますけれども、提供側の品質保証としてはかなりのレベルを保っておる国であります。においても、なおかつこのような医療事故が起こっておるということは、我々は、少なくとも今本気で、この日本においても医療事故・過誤に対して徹底的にシステムとして取り組まなければ防げないという気でおります。
 翻って、今回の医療保険制度改革の中で、この事故対策というのは、実は私が、コスメティックコンプライアンス、やっているふりだけというふうに呼んでおる施策でしかありません。それは減算対象であります。格好だけつけておれば一応保険の点数は払いましょう、こういうレベルであります。こういった対応をされる限りにおいては、医療事故は、少なくともやっているふりだけしておればいいんだということで、航空業界で言う決してとってはならない態度ということになるわけでありますから、大変危険であります。
 総論といたしまして、今回の医療制度改革におきましては、少なくとも日本の医療費というのは、戦後五十年対GDP比は七%台という、現在でも英国と並んで文明国で最も低いレベルであります。これは明らかに公的負担が少ないということであります。
 二木さんらによりますと、国民負担率、すなわち、税金とそれから社会保障費、年金と保険でありますが、こういうものを足した負担率は、日本は三六・五%であります。米国は三六・二%か三%。米国よりも日本の方が多い。もちろんスウェーデン等の北欧と比べますと、それは半分ぐらいでございますが。しかし、それを国家として、例えば四〇%にするなり五〇%にするというコンセンサスを、少なくとも今までの政治の現場においてはそういうのをつくられたことはないわけであります。
 したがって、現在の三六・五%というのは国民負担率としてはもう十二分に負担しておるというふうに考えていいとすれば、少なくともあとは公的負担にゆだねる以外ないわけでありますから、それの財源等につきましてはやはり国家としてお考えいただきたいし、その一端を使う方法として、医療の品質保証とそれから事故管理というものについてどれだけのものが出せるかということであります。
 現実に行われることは受診抑制でございまして、受診抑制は一見、医療にかからないわけですから、医療事故に遭うチャンスも少なくなるんじゃないかと思われるかもしれませんが、私ども第一線でやっております限りにおいては、受診抑制はそれほど強くかかりません。すなわち、患者側にとりましては、葬儀と病気に関しては比較的支出を拒まないという認識が地方にもございます。病気になったときぐらい個室に入れてやれよとか、あるいは、病気になって手術するときには多少お金を払ってもいい先生に手術をしてもらえという認識は今でもあるわけであります。
 したがって、そういうふうな認識からいたしますと、少なくともこの低医療費を自己負担でもってふやすということはもう限界でありますから、何らかの手当てを基本的に考える必要があります。しかし、そういった検討は今までなされたことはないわけであります。この間、厚生労働省がやってこられたことは、一貫して医療費の自然増を抑える、そのことをもう大目的としてやっておられるわけでありますから、その延長には今回のような部分改正、部分改悪と呼んでもいいかもしれませんが、そういう改革案が出ておるわけであります。
 特定療養費の拡大ということがこれほどなし崩し的に、また何の了解も得ずに解釈を変えて、老人保健の五万円程度の一五%をとにかく払いなさいとかいった形で出されるというようなことは、これはとんでもないことでありますけれども、それに対する批判もそれほど強く起こってこない。
 特定療養費というのが選定医療と高度先進医療に対して使われ出したものでありますから、そういったものに限局しておいていただければいいんですが、実際はこのように国民がなし崩し的に負担し、特に老人に対して、三カ月以上の入院に対しては一五%以上を負担するといったことがもう行われているわけであります。これは実は、二百床以上の病院に関しては、外来診療の紹介状がなければ初診でも取ってまいりましたけれども、今回は再診に対しても取ってよろしいといった、ますますなし崩し的に拡大されておる。
 こういうことが自己負担の実は隠れた部分の増加として出てくるわけでありますから、来年の四月からの三割負担プラスアルファ、こういうのがふえると考えますと、国民の自己負担率というものはさらにふえるわけであります。
 一方において私どもの提供体制の方は、教育、研修、それから信任、これは免許更新等でありますが、こういったことに対しては一切やられていません。
 今回、義務研修を二年間やるというふうに決めておられますけれども、その内容たるや大変寂しいものであります。研修指定病院の資格はどんどん下げられておりますから、要するにどういった研修ができるかということになりますと、私どもインターン制度を経験した者といたしましては、実態としての研修は、本来の世界的に行われておる基礎的な研修内容と比べましても大変ずさんなものにならざるを得ないのじゃないかという危惧をいたしております。そういった提供側の教育ということが卒後研修ということにまで及んで、大変レベルが低い。
 現在、私ども医療事故調査会の方で鑑定いたしますケースの中に、カルテが書けない、診察ができない、心音が聴取できない、鑑別診断という一つの患者に対して幾つかの疾患をとりあえず思い浮かべるという作業すらできない、こういった医療が現在救急医療においても行われているわけですから、そういった医療者の、提供側の品質を即座に何か改善する方策を講じなければ、使う方の使い方を幾ら言っても、実際使う人たちがそのレベルであるならば、大変レベルの低いことになるわけであります。
 そういう点で、私は、教育、研修、信任というものは、実は保険制度改革の根幹になるわけでありまして、そこをさわることが抜本改革であると思っておりますから、そういう意味では、日本における抜本改革は今まで一度もなされたことがないし、検討もされておらぬのじゃないかという気がいたしております。でき得るならば、今後は、そういうところにまで思いをいたして、各政党でもって検討していただきたいというのが希望であります。
 最後に、加藤先生もおっしゃいましたけれども、私どもは、医療事故を防ぐためには、今の医療裁判というものがいかに悲惨なものであるかということと、また、それによって使われるお金というものが大変むだであります。
 私は、司法者でございませんけれども、現在欧米において二十五年を経過して、そのあげく学んだことというのは、裁判外処理法でもって処理しようということであります。
 この裁判外処理でもってどうするかということにつきましては、この週末の我々のシンポジウムでも提起いたしますけれども、少なくとも医療事故に関する鑑定、つまりその評価であります。それと、それに対してかかわった人間の審判。それから、被害者の患者の救済。
 この三つをセットにいたしましたことを今日本でもしも考えられるとすれば、欧米が三十年近くかかって到達した道を一挙に我々はそこへ到達することになるわけでありますから、ぜひそういったことも保険制度の中である程度の財源的なものを保障しながらやっていただければということを追加で要望いたしたいと思います。
 御清聴ありがとうございました。
森座長 ありがとうございました。
 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
森座長 これより委員からの質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上川陽子君。
上川委員 自由民主党の上川陽子でございます。
 本日は、この名古屋の公聴会におきまして、ただいま公述人の皆様から、それぞれのお立場で、現場の実態、あるいはこれから改革への一つの課題あるいは期待ということにおきまして、大変貴重な、また、真摯な御意見を賜りまして、本当に感謝申し上げます。ありがとうございました。
 日本の皆保険制度、保険証一枚でどこでもだれでも医療を受けられるということは、先ほどの齋藤先生のお話ではございませんが、本当に世界に冠たる、誇るべきものである。そういうものを維持し続けてきたということについては、それぞれのお立場の中の御努力があってここまでこられた、こんなふうに思います。
 しかし、今、皆様からの御指摘のとおり、さまざまな問題、例えば財政的な問題あるいは医療の事故の問題あるいは労働の現場の問題と、いろいろな御指摘がございました。そうした問題につきまして、ある意味では総合的に抜本改革をしていくという意味での国民皆さんの御期待というのが非常に大きいし、また、それに向かってこの国会の中でも議論をしているというところでございます。
 そのことも含めまして、ただいまからそれぞれお一人ずつ御意見をさらに拝聴いたしたく、よろしくお願いを申し上げます。
 先ほど齋藤先生からのお話でございますが、医療の現場に携われておられたということと、七年間ですか、アメリカにおいて内科の臨床ということにつきましても取り組まれた、そういう立場の中から、特に日本の医療の、あるいは皆保険制度も含めまして、特徴の中でも長所の面というのを御指摘いただきました。アメリカとの比較、あるいはイギリスとの比較もあわせてしていただきましたし、さらにこれからの課題としても三つほど指摘をされた中に、医療の質の向上というところについては一点目ということで挙げられておりました。
 最後までお伺いしますと、日本の医療の現場の中には、影の部分あるいは短所の部分というのにつきましても今かなり大きく出始めているなということでございまして、長所の部分とそして短所の部分も改めてしっかり見詰めていくということが非常に大事だ、こんなふうに考えると今聞かせていただきました。
 そういう意味で、先生がこれまで御苦労なさってきたそのお立場から、日本の改革において短所の部分及びそれを乗り越えてこれからいいものにしていくためにはどういう点に注意をしていくべきなのかということについて、お願いを申し上げます。
齋藤英彦君 先ほど申し上げましたように、医療の三つの要素のクオリティー、アクセス、コストのうち、日本の医療制度というのは、アクセスとコストということを主に解決するために組まれた。しかし、比較的安いお金でまあまあのクオリティーを保ってきている。そういうところは、先ほど申し上げましたように、WHOの百九十一カ国の総合評価で一位となっているわけですね。
 ちなみに、その順位によりますと、二位がスイス、三位がノルウェーといきまして、フランスが六位で、イギリスは九位なんですね。アメリカは十五位ということで。これは、一つの基準だとこうなるわけです。
 このアクセス、コスト、クオリティーというのは、特にコストとクオリティーというのはお互いに相反するところがありまして、お金を幾らでもかけていいなら非常に高度な医療もできますし、非常にもう安全な医療もできるわけですね。今問題となっている医療事故が多発しているということについても、もっと人手をふやせば防げる面もありますし、もっと設備を考えれば防げる面もある。しかし、お金にも限度があるとすれば、医療提供者の意識の変革とか努力とともに、やはりお金をかけるところにはかけてやらなきゃいけないと思うんですね。ですから、その辺の兼ね合いだと思います、これはあくまでも。現実的に考えないといけないわけでして。
 以上です。
上川委員 ありがとうございました。
 次に、橋本公述人にお尋ねいたします。
 橋本公述人は、事業者のお立場ということで、特に十四年度中の実施の先送り等の心配を御指摘なさいながら、拠出金制度に依存しない新しい高齢者医療ということについて強調されて御主張をなさいました。と同時に、私にとりましては非常にびっくりした部分は、若い世代の中に健康診断をしたときに大変厳しい結果が出ているということでございまして、それも踏まえますと、予防医療というところについても十分に制度的にも対応していくべきではないか、こんな御主張があったかと思います。
 一点は、拠出金制度に依存しない新しい高齢者医療というところの中の負担の限度というか、出さないとは言わないよというようなお話もございましたので、もしその辺の目安があれば、その辺の数字もちょっとお聞かせ願いたいというのが一点。
 それから、予防医療というところで、若い人の健康づくりという意味で、ふだんお接しになられていて、予防医療と言葉で言えば簡単なんですけれども、若い人の意識を高めていき、また、健康づくりに十分に若いころから気を配るということについては、どういう点が重要だというふうにお考えでしょうか。
橋本玄次郎君 拠出金の負担限度という点では、なかなか数字は申し上げられないと思います。つまり、拠出金の制度そのものが非常に不公平なところがあるんではないか。
 例えば、私ども、保険料は上げないように一生懸命努力しております。あるいは、医療費も出ないように努力している。そういう組合とそうじゃない組合と、片方には補助金が出る、まじめにやっているところに出ない、こんなことがどんどん拡大していくわけです。といいますのは、民間の各健保というのは、もう赤字なんですから、過去の資産を食いつぶしているわけですから、そういう努力を一生懸命やっているわけです。
 それでも、健保ではもう限界ができるということで、これは他社はわかりませんけれども、当社としては、早い時期に病人を出さないようにしましょう。つまり、企業が健康であるかどうか、これはまず従業員が健康であるかどうかということですね。特に、体の話、つまり臓器だとか体の不調というよりも、むしろ精神的に参っている、こういう人が非常に多いわけですね。
 先ほどの、若者が半分有所見者だ、これは、何らかの先生のアドバイスが必要だ、こういう人が半分いる、こういうことでございます。これは非常にゆゆしき問題だというふうに思っています。間違いなく、不健康な人、将来の病人になる人を雇い入れているわけですから、会社全体が不健康になる。こういう発想だろうというふうに我々は思っております。
 だから、そういう意味では、従来四十ぐらいの検血、そういうものを、例えばいわゆる死の四重奏と言われるような、既に若い人がそういうものを半分ぐらいの人がもう持っている、こういうものをどうやって早く見つけ出すか。一つ申し上げたのは、検血の年齢を引き下げて、三十ぐらいからの実施をする。それから、かなり強烈に、社会人として自分の体に責任を持つというのは当然である、こういう教育を我々は社内で展開したいというふうに思っております。
 当然その出費というのは出るわけでございますけれども、それは将来に向けて自分らの保険料のはね返りにはならないというふうに考えておりますので、できるだけ早期発見、こういうところに力を入れたいというふうに思っております。
上川委員 ありがとうございます。
 次に、加藤梅雄公述人にお伺いいたします。
 先ほどのお立場で、市町村国保の保険者というお立場の御意見がほとんどだったと思うんですけれども、もう一つ町長さんというお立場では、住民の健康、福祉を預かるというお立場がおありかと思います。
 今、予防医療のお話が二先生から御指摘もございましたけれども、そういう面で、町を預かる町長さんのお立場で、その予防医療ということについてのもし具体的な取り組みで力を入れていらっしゃるということがございましたら、一つ二つ御紹介いただければと思います。
加藤梅雄君 私ども国保財政を預かっている者として、いわゆる医療費の削減を図るということ、これは国保財政の健全化につながるものでありますので、ただいま先生の御指摘の、健康な町民をつくる、今橋本先生もおっしゃいましたが、そのことは非常に大切であるし、これから一層力を入れていかなきゃならない行政の中の重要な課題であるというふうに私は受けとめております。
 そういう意味におきまして、私の町で行っておりますことを参考までにお話しさせていただきますと、老人というのは、やはり孤独になりがちであります。そういった意味から、体を動かす、人と会話をする、そういう意味におきまして町内コミュニティーバスを走らせております。これは非常に、今まで家の中に閉じこもる、いわゆる閉じこもり症候群とかいうそうですが、そういう人たちは病気になりやすい。
 ですから、できるだけ外へ出る機会を与えてあげたいなということで、そういうことをしましたり、あるいは保健センターの中でいわゆる高齢者の、食改と言っておりますが、いろいろな料理教室を行いまして、高齢者とか、あるいはいろいろ病気にかかっていらっしゃる方、そういった方に対する食事を通しての改善、そういうものを保健婦等に指導させるとか、あるいは、今、私ども、名古屋の隣の町でありますけれども、温泉を掘りまして、いわゆる老人福祉施設の充実を図る。安心してデイサービスにもどんどん来ていただける、そこにはいろいろ自分の趣味を生かして活躍する場を与える、そして温泉にもつかる。
 そういったことで、少々お金はかかっても、本当の意味で高齢者が毎日の生活を楽しむ、そういう方向の中で元気になっていただこうという施策を今行いつつあります。何とか成果を上げたいなと思って頑張っているところであります。
上川委員 ありがとうございました。
 次に、加藤良夫公述人にお尋ねいたしますが、光と影という影の部分の中で、医療事故に二十六年間お携わりになられたということでございまして、附則の第二条の六項に入れ込む項目に幾つか不足があるんじゃないか、こんな御指摘がございました。
 先ほど、お隣の加藤瑠美子公述人の方から、医療の現場の中に、ゆとりのない現場の実態ということについての御指摘がございまして、弁護にお携わりになった経験から、事故の原因として、森公述人のお話にもございましたけれども、重要なことというか原因ということについて、職場の問題、あるいは医療の先生の質の問題、こんなこともございましたけれども、弁護を二十六年やった立場で、どこに根本的な問題が潜んでいるのかということについて御意見をお願いいたします。
加藤良夫君 医療事故の原因、背景、話し始めるといささか時間がかかるんですけれども、十項目ぐらい私は書いたり講演で話したりすることがあるんですが、それはちょっとおいておいて、例えば看護婦さんの数の問題。大変過酷な状況下で働いている、そういう実態、実情を改善していく必要があるということは、まず一つあると思います。
 それから、私が特に最近感じているのは、研修医の単独診療の問題であります。研修医も大変過酷な労働者として現場では働かされておりまして、過労死をした事例まで起きているわけです。特に賃金といいましょうか、非常に安い状況下で働かされているものですから、生活のために休日、夜間の当直を盛んにするということなんですが、そういうときに、例えば心筋梗塞の見落としだとかクモ膜下出血の見落としというようなことで働き盛りの人が亡くなる、あるいはその後遺症に悩まれるということになりますと、当然医療費の負担ということが全体的に大きくなるものでありますね。
 ですから、そうした研修医の単独診療を、一定のクオリティーを提供できるように、医師の研修を、これは生涯研修を含めてシステム化すること。
 あるいは、自分の専門の分野はそれぞれあるわけですが、そうでない人が当直などをやったときに、いろいろな専門家にきちっとコンサルテーションといいますか、アドバイスを受けるシステムですね。例えば、CTという画像診断があるんですが、そういうものをどこかできちっと読む専門家が待機していて、ネットワークでそれを画像で送って、それを読むというようなシステムをつくることによって、CT画像のクモ膜下出血を見落とすという事例から起きてくる不幸な症例は防げるわけですね。
 そういうシステム的な改革ということをしてこなかった。つまり、事故についてはタブー視して、システム的な改善に手をつけてこなかった、これが根本原因であっただろうというふうにお答えしておきたいと思います。
上川委員 あとお二人にもお伺いしたいところなんですけれども、ちょっと時間が大変短くて、大変残念でございますが、それぞれ現場の中の声もさらにまたいろいろなところでお聞かせいただきたく、貴重な御意見、きょうは本当にありがとうございました。
 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
森座長 次に、五島正規君。
五島委員 民主党の五島でございます。
 本日は、公述人の先生方、大変ありがとうございます。時間がございませんので、早速質問に入らせていただきたいと思います。
 齋藤公述人の方から先ほど、医療の質と効率と公平性というところでお話がございました。質、効率性の問題については、非常によくわかります。また、それとの関連の中からも多くの公述人の先生方から御指摘いただいたと思っています。この問題は、まさに医療制度の抜本改革との関連の中で議論されなければいけない内容であると思っております。
 現在厚生労働委員会にかかっております問題は、健康保険法の一部を改正する法律案ということで、実はそれに要する費用の公平性の問題ということが主要な議論になっているわけでございます。その中で、先ほど先生おっしゃいましたように、医療に要する費用というものの出どころといえば、いわゆる保険料とそれから税と個人負担、この三つしかない、それはそのとおりでございます。この三つの中においてこれからの医療のクオリティーも高めていかなければいけないということでございますが、今回それを、健康保険三割自己負担という内容で出てきております。
 先生は、この三割負担というのは許容の範囲だろうとおっしゃいましたが、基本的に、医療のコストを、税でいくのか、あるいは今後保険で負担する範囲は狭めていって、医療に要する費用の大きな部分を個人の負担にしていくのか、あるいは保険料というものにおいて賄っていくべきなのか、ここのところは非常に意見の対立のあるところでございます。先生の御意見では、保険からの給付の七割ということにおいてこれからの医療というものはいいというふうにお伺いしたわけですが、これからの医療の抜本改革その他において、当然、そうしていくとしますと、システムによって改善される部分はあるとしても、医療費というものはふえていかざるを得ないだろうと。
 その辺について、今後の見通し、一体医療費を何で負担するを原則にするというふうにお考えか、ちょっとお伺いしたいと思います。
齋藤英彦君 三つの出どころのうち、保険料も税金も、社会全体で負担するという立場ですよね。一方、窓口負担というのは、受益者負担という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、そういう考え方でして。
 私の考え方は、アメリカに長年いたせいか、日本人は、医療というのは無料だという、やや世界的に見ると例外的な考え方を持っていると思うんですね。しかし、医療というのは無料ではないわけでして、しかも現在の医療費がかかる部分は、先ほど申し上げましたように生活習慣病のような、なる人にもある程度の責任がある病気が圧倒的に多いわけでして、そういう時代になるのが一点ですね。
 それからもう一点は、だんだん人口が少なくなれば、保険料にしろ税金にしろ出す人が少なくなるわけですから、やはり三割ぐらいは患者さんが負担するようにしないと、もちろん低所得の方とかそういう方には別な社会保障制度をつくるとして、一般的にはそのぐらいにしないともたないのではないかというのが私の考えであります。
五島委員 続きまして、齋藤公述人と橋本公述人、そして加藤梅雄公述人、お三人にお伺いしたいわけですが、先ほどから予防という問題についてもお触れいただいています。
 実は我が国、世界一の長寿国になりました。そして、我が国の健康状態というものを考えた場合に、これは委員会でも私発言してきたわけですが、WHO憲章あるいはアルマアタの宣言という内容での健康ということによって長寿国になっているのでなくて、実は、生活習慣病等々が非常にふえてきている、ふえてきている中においてもその疾病コントロールが早期にきちっとできることによって、社会生活としては健康人として過ごせているというのが現在の長寿日本の実態だろう。特に、とりわけ労働年齢の中心層においてそうだろう。
 そうだとしますと、そこに受診抑制がかかった場合、前回の五年前の一割負担から二割負担に変わった中においても、例えば、糖尿病の継続的治療というのは非常に落ちてきている、そして要治療者の中において六割ぐらいしか継続治療ができていないというデータがございますし、そしてそういう状況に反比例するかのように、やはり糖尿からの腎透析、網膜障害あるいは下肢の切断、アンプタ、そういうふうなものを必要とする人の数がふえてきている。結果としては、そうしたものが医療費の自然増を押し上げていっている。
 だから、これまでのように疾病にかからないという予防対策だけで発想しても実はだめなので、いかに効率よく必要な疾病コントロールができるか、そしてそれを阻害しないような負担のありようというものを考えていかないと、願望は願望としても、現実問題としては非常な混乱が起こるんじゃないかと私自身は思っています。その点についてお三人の先生方どうお考えか、ちょっとお伺いしたいと思います。
齋藤英彦君 確かに今おっしゃることは正しい面もあるんですが、もともと、糖尿病を初めとする、高血圧でもそうなんですが、昔は成人病という呼ばれ方をしていましたね。そういう概念の背景にあるのは、早く見つけて早く治療すればいい、そういう概念で成人病と言っていたんですね。ところが、平成八年くらいから同じ病気を生活習慣病という呼び方に変えた背景には、やはり積極的に我々が一生を通じて気をつければかなり防げるんだ、そういうとらえ方があると思うんですね。
 したがって、それはどちら側の医療費の節減になるか、ちょっとわからないと思うんですが。
橋本玄次郎君 私も生活習慣病の一人でございまして、会社の先生からいつも大体呼びつけられて、こっぴどくしかられておりますが。
 これは齋藤先生がおっしゃられたように、私は、もうやはり民間企業の中では早く発見するしか方法はない、あるいは適切な先生のアドバイスをいただく。現在、当社では、本社で三名、小牧工場で三名、それから九州と伊勢と一人ずつ先生がついていただいております。かなり先生方に厳しいことを申し上げております。高い給料を払っているんだからしっかり診てくれ、従業員はうちの宝なんだ、それが先生の誤診で病気になるようであればこれは先生の責任ですと、かなり厳しいことを申し上げております。
 ですから、私は早期発見というのが一番だろうというふうに思っておりますので、むしろ経営者としては、やはり従業員に愛情を持つことだというふうに思っております。自分の子供と同じように真剣にやはり対応することだろうというふうに思っております。
加藤梅雄君 ただいまお話が出ましたが、やはり早期発見、早期治療というのは病気の予防では非常に大切なことだと思うんです。したがいまして、私ども行政にとりましても、積極的なそういった、昔は成人病検診と言っておりますが、四十歳から四十五歳、私ども四十歳からやっておりますが、住民健診をできるだけ多くの人に健診していただくような方向へといろいろPRして、私どもの町は健診率が周辺の市や町より割合高い方でございまして、したがって老人医療費もやや低いんです、老人一人当たり七十八万くらいですかね。
 そういったことでいいと思っておりますけれども、問題は、ただ健診を受けるだけではだめなんですね。そこで発見されたものを徹底的に追跡していく、そういう体制が必要なんです。
 私どもは、がんにしましても糖尿にしましても、発見されたならば、今あなたは何をやっておりますか、どういう治療法をしていますかという追跡調査をやるように保健センターの保健師さんですとかあるいはお医者さんにもお願いしておりまして、それがやはりその本人の病気を改善していく、予防していく、治療していくということに大いに役立っている。案外、受診しまして言われましても、そのまま放置している人が多いんです。それじゃ何のために健診したかわからないので、そういう点に力を入れておるところでございます。
五島委員 時間はないわけですが、今皆さん方、早期発見、早期治療とおっしゃっているわけですが、感染症が中心の時代においてはその理屈は成り立ったと思います。今の時代においては、早期発見、そして長期のコントロール。もちろん、コントロールの中には、それぞれの病気のステージによって、生活指導によってコントロールしていく段階もあれば、あるいは治療というものを併用しながら、進行しないようにコントロールする時期もある。ここのところをきちっとできる体制が崩れると、私は、結果的に、一時的に医療費抑制になったと思っても、非常に大きなものになってしまうんだというふうに考えております。
 そこで、そうした問題を含めまして、加藤良夫公述人と森公述人にお伺いしたいと思います。
 お二方の方から、医療事故の問題について、大変貴重な御指摘と非常に積極的な御提案をいただきました。また、事実、我々の医療は事故の海であると言われたことについて、私も率直に言ってそうなんだろうと思っています。
 こうした問題を解決していくに当たっても、先生方が取り扱っておられます医療事故の防止のための問題とあわせて、実は、本当に医学教育の中において、疾病のコントロールの問題、あるいは外来における患者さんに対して随時必要なパスをつくっていき、それを総合的に、一人の医師でなくてさまざまな立場から検証できる、そういうふうなシステムというものを医学のサイドにおいて埋め込んでいかないと、一人一人の医者の能力の差がそのまま事故の多い少ないにあらわれてくるということでは、システムとは言えないんだろうと思っています。
 そういう意味では、そういうふうな制度をやはり我が国でもこの抜本改革の中でつくっていきたいと民主党は考えているわけですが、そのためにはやはり一定費用というものが現状よりはたくさん要るのは当たり前だろうと思っています。その点について、それをどのようにお考えか、お二人の先生方についてお伺いするとともに、現在この委員会で審議中のこの法案についての御意見もございましたら、ぜひお願いしたいと思います。
加藤良夫君 安全な医療のためには、当然に人の問題等コストがかかってくるということは承知しているつもりです。その出どころの話がこうした問題には当然検討課題になるかと思いますが、私が今一番関心があるのは、我が国のむだな薬剤費が数兆円という報告がなされています。その計算の仕方その他で、何をもって、どういう根拠でそうなのかということが、私は詳しくはございませんが、薬剤の問題を真剣に検討している専門家の意見でございまして、そうしたむだな薬剤、捨てられている薬もたくさんあるし、出さなくてもいい薬が出されているとか、いろいろな問題点、あるいは薬価の問題その他含めて、医療費の中で占める薬剤費の割合のこと、その他負担の面における薬剤の部分、そうしたことについて相当大幅なスリム化が図られる必要があるだろうというふうに思っております。
 もう一つは、今ずっと議論されていた生活習慣病の問題など、きちっとそうしたことを対応したときにどのぐらいコストの面で抑制がきくのかというような試算を、どの程度国会の審議の中でデータ的になされているか私は知りませんが、そうしたものとの関連の中で負担というものは緻密に計算をしていただきたい、そんなふうに思います。
森功君 先生御指摘のとおり、疾患とか医療をやっていく限りにおいては、やはり系統的に、またシステマチックに、いろいろな人たちが関与して一人の人間の一生涯をずっと見ていかなきゃならぬのは当然であります。
 私ども今考えておりますのは、今の日本の外来診療と、診療所も含めてそうですが、それから病院診療というものが、必ずしも先生がおっしゃるような系統的な診療にはなっていない。それで私どもは、病院というものは入院診療と救急診療が中心であるというふうに考えまして、救急部門の強化と、他の診療、外来部門についてはメディカルセンターとして開業医と勤務医が共同で診療できるような、グループ化できるような、そういう施設をつくろうというふうに今計画しております。その中で、総合家庭医と専門医という分化をみずからの医療機関において行って、それの能力評価を行い、それによって収入の過不足を含めて保障しよう。
 そういうふうなお互いのコンサルテーションだとか、あるいはだれかがパスのような、一連の診療工程設計管理ということをしてあげる中で継続的に診療を続けていくということが、急性期から慢性期の診療の原則だろう、こう思っておりますから、今はそういう努力をするつもりですけれども、現実、マイナス四・四%で、その中に幾つかの名目的なプラスが一・七あって二・七と言われているダウンが、実は病院にとっては四%ぐらいのダウンになるわけですね。そうすると今の利益がほとんどなくなっちゃうわけで、ではそのようないささかの改善を示すそういう診療対策がとれるかと言われると、今のままでは厳しくなってきたなという気がいたします。
 それにもかかわらず、とにかく病院の診療というものが根底から変わらざるを得ないというのが現実に病院をやっておる人間の偽りなき気持ちでありまして、従来のように、外来を抱えたり、何となくわけのわからぬような診療をするような病院ではもう成り立たぬだろうということは承知しておりますので、診療費の改定とともに、そういう方向性は提示していきたいと思っています。
五島委員 ありがとうございました。
森座長 次に、江田康幸君。
江田委員 公明党の江田康幸でございます。
 本日は、各公述人の先生方、先ほども申されましたように、貴重な時間をつくっていただきまして、それぞれのお立場で貴重な御意見をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。私も、幾つか質問をさせていただいて、国会審議の参考にさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 今論じられておりますように、各医療保険制度は財政赤字に苦しんでいる真っただ中でございます。政管健保は本年度中に積立金が底をつく、これが現実でございます。このままでは日本が、先ほども齋藤先生でしたでしょうか、WHOの評価でも世界一の質を誇るこの国民皆保険制度が崩壊しかねない状況にあるという現実を、我々政治家は責任を持って、それをどうするのか真っ正面から取り組まなければならない、そのような意味で国会審議を続けてまいりました。
 このような状況の中で国民皆保険制度を守っていく、そのためには、具体的には、やはり患者さんの自己負担の見直し、それと保険料の引き上げというものに関しては避けて通れない課題であり問題であったと痛感いたしております。しかし、我々も、そういう中では、特に影響を受ける低所得者の方々に対して自己負担限度額の設定をきちんと置くというようなところで手厚い配慮をしてきたわけでございますが、この医療制度改革に当たりまして、やはりそういうふうな国民への一方的な負担は許せない、やはり国も、また医療機関もその改革を進めていくべきである、抜本改革が必要であるということを強くこれまで申し述べてきました。
 その結果として、本法案の附則に、先ほど、先生たち皆さん御存じのように、診療報酬体系の見直し、そして新たな高齢者医療制度の創設、そして各医療保険制度の統合再編、さらには医療の効率化と質の向上、こういう大事な四点を、単に申し合わせ事項ではなくて、法案に、法律として明記をさせたわけでございます。
 この抜本改革の中の一つとして、最初に齋藤先生にお聞きいたしますが、診療報酬体系の見直しについてでございます。
 我が国の診療報酬体系につきましては、昭和三十三年に現行の体系が確立されて以来、約四十年以上がもう経過しているわけでございます。近年の急速な医療技術の進歩、さらには医療提供体制の変化に十分対応できているとは思えない。また、何回かの改定を経まして極めて複雑な内容になって、専門家でさえなかなかわかりにくいというような問題点が指摘されております。
 こうした中で、今回の健康保険法等改正案の附則に、先ほど申し上げましたように、診療報酬体系についても見直すということで進めていくことになるわけでございますが、最近、大臣におかれましても、この診療報酬体系の改革については、治療コストとか疾病の軽重、それから治療時間、こういうものを基準にして、より透明でより簡素化された体系を目指していくというような一歩踏み込んだ答弁もしていただいております。
 そういう意味で、齋藤先生はその現場でやられている専門家でございます。どのような見直しをこの診療報酬体系についてお考えなのか、また御期待されているのか、お伺いいたしたいと思います。
齋藤英彦君 おっしゃるとおり大変複雑で、本当に専門家でもわからないほど複雑だと思います。
 それで、総論としては今言われたようなもっと単純で簡明なシステムがいいわけですが、少し各論的なことを申し上げますと、二つ申し上げたいと思います。
 一つは、医療の質の確保にも非常に重要ですし、また医療の効率化にも重要、あるいは安全面でも非常に重要なこととして、ぜひ電子カルテの導入ということが必要だと思うんですね。
 電子カルテを導入すれば、これはもちろん文章だけではなくて、先ほどちょっとお話がありましたけれども、例えばCTの写真を電送することができる、専門家に映像を送ることができる。そういうのも含めてぜひ導入をして、データベースをつくって、そういう病院のデータを集積することで、例えば、何歳ぐらいのこの疾患にはこの治療法がいい、コストは幾らかかるというデータが出ると思うんですね。
 その必要性はわかっているんですが、これ、導入するとなりますとやはり二億から三億ぐらいかかります。これは、現在の診療報酬体系では個々の病院が導入してもそのメリットはないんですね。ですから、ぜひ、導入を促進するには、一病院、個々の病院の持ち出しで導入しろというのではなくて、導入したら診療報酬を上げるとか、診療報酬の中でそれを面倒見るということをすれば促進させることができるし、先ほど言いましたように、これが質の確保、標準化あるいは安全性の確保に大変役に立つというふうに考えます。それが第一点でございます。
 それから第二点目は、現在、保険診療においてはいわゆる混合診療というのは禁止されております。混合診療というのは、例えば保険診療で認められていない薬を使ったり手術をしますと、その部分だけでなくて、すべての保険診療が自費になってしまうわけですね。私は、ぜひこの混合診療の禁止を撤廃していただきたいという立場に立つものであります。
 その理由は、恐らく混合診療の禁止の当初の考えは、混合診療を認めると、お金のある人とない人で受ける医療が変わってくるのが困るという考えだと思うんですが、しかし、これは実際にはむしろ逆でして、現在の混合診療の禁止された状態で例えば欧米で有効性、安全性が確定されている抗がん剤を輸入して使う場合に、その抗がん剤の値段だけじゃなくて、すべての入院料から自費になってしまうわけですね。ですから、ますます逆にお金のある人以外には受けられないということになると思います。
 また、それに医療の進歩ということから考えても、やはり新しいものを取り入れていくということが大事ですので、ぜひ混合診療の禁止の撤廃をしていただきたい。特定療養費の拡大みたいなあいまいなことでそれをなし崩しにしないで、これはたしか歯科では認められているんですね、混合診療は。ですから、ぜひ認めていただきたいというのが意見であります。
 以上でございます。
江田委員 混合診療の撤廃は私も大賛成でございます。論理的に組み立てていく必要があると思いますので、今後とも検討していきたいと思っております。ありがとうございました。
 橋本公述人に次はお聞きしたいと思います。三割負担の導入と保険料引き上げ幅の抑制についてお伺いをしたいと思っております。
 三割負担の導入というのがサラリーマンにとりましてはつらい選択である、このように、もうだれもが思うわけでございます。しかし一方、この三割負担を導入しなければ、さらに今度は広く薄く取るその保険料を引き上げるということが生ずることになる、この問題がございます。
 現下の厳しい経済状況を踏まえたならば、中小企業の事業主と労働者がともに広くあまねく負担する保険料につきましては、その引き上げ幅は極力圧縮して、必要最小限の負担増にとどめることが重要ではないかと思います。
 今回、政管健保におかれましては保険料率が実質的に約一割引き上げられていきますが、これ以上の保険料負担の増大は、恐らく事業主もまた国民の皆さんも納得できないのではないか。今後とも社会経済の活力を維持していくためには、これはやむを得ない選択なのではないかという問題意識のもとに今回の改正案が提案されているわけでございます。
 経営者のお立場から、こうした点につきましてどのように評価されておるのか、お伺いしたいと思います。
橋本玄次郎君 三割負担の導入というのは、社員の立場から見ますと確かに負担増ということで、大変だというふうに思っております。
 しかし、今先生がおっしゃられたとおり、私も同様の意見を持っております。御指摘のとおり、三割負担を導入いたしますれば、その分の財源というのは当然保険料に求められるわけでございまして、この負担というのは社員だけではなく事業主にもはね返ってくる、こういうことだろうというふうに思います。現下の厳しい状況を考えますと、いわゆる経営者としてはもうほぼ限界に達している、これ以上の負担というのはし切れないというのが本音のところだと思います。
 とりわけ中小企業のところは大変な負担、むしろ負担ができないのではないかというふうに考えております。ただ、このまま放置をしておいても、どちらにせよ保険料を引き上げなくちゃいけないという事態に追い込まれると思いますので、私個人といたしましては、三割負担、それは負担が少ない方がいいわけですけれども、やむを得ない、こういうふうに考えております。
江田委員 時間がわずかとなってきましたので、次に質問をさせていただきます。
 医療保険制度の抜本改革、特に医療保険制度の一元化について、最後に加藤梅雄公述人にお伺いしたいと思っています。
 今後ますます高齢化が進む中で、将来にわたって医療保険制度の安定的な運営を図るためには医療保険制度の抜本改革が不可欠である、これは共通の観点であるかと思います。こうした観点から、各改正法案の附則におきまして、医療保険制度の一元化などの体系のあり方について本年度中に基本方針を策定するということが盛り込まれておるわけでございまして、この医療保険制度の諸課題について改革を進めることになります。
 加藤公述人は県の町村会の会長であられると思いますが、全国町村会におきましては従来より、全国市長会、また国民健康保険中央会とともに、今、先ほどの論述でも述べていただきましたように、国民の間で給付と負担の公平を図るために、すべての国民を通ずる医療保険への一本化を主張されておられます。特にこの点についてもきょう述べていただきましたが、今後の医療保険制度の抜本改革につきまして、どのような期待を持って強くこのように主張しておられるか、その点について教えていただきたいと思います。
加藤梅雄君 私ども全国町村会としましても、いろいろ陳情させていただいておりますが、御案内のとおり非常に高齢化が急激に進んでおります。今、国民健康保険の中から老人保健の方への拠出金というのがあります。ここ一、二年本当に、これは全国的に言えると思いますけれども、これが増嵩の傾向なんですね。私どもの町にとりましても一割以上、もう年々ふえております。
 国保の加入者というのは、以前は田舎でいきますと農業従事者とか自己経営ですか、中小企業とか、そういう人たちが比較的多かったですが、この時代になってきますとそういう人は逆転して少なくなって、そして無職者、先ほども公述のときに申し上げましたけれども、所得のない人、あるいは今の経済情勢を反映してリストラに遭った人もどんどん入ってきます。そういったことから、国民健康保険の方への負担が非常に多くなってきている。被用者保険の方から、言ってみれば、その分を国民健康保険で持つような形になってくるわけです。
 ところが、国保税の方はそうはいかないのです。なかなか低所得者を対象にして税率アップということは今できないのです。私どもの地方におきましても、そういった、老人保健の拠出金がふえる、国保の医療はどんどん増嵩していくという中で、では何でカバーするかといえば、税率をアップか、国の方の国庫負担金をもっとふやすか、どちらかしてもらわなければ困るわけですが、しかし今、私どもの今の経済情勢からいくとそういうわけにいかないので、一般会計からの繰入金に頼らざるを得ない。これがすごくふえてきているのです。
 そうなってまいりますと、今抜本改正とおっしゃいますけれども、どうしても国保といわゆる被用者保険とを一体化して、いわゆる公平な負担をしていただきたい。そういうことを将来に向けて考える。なかなか一元化が難しかったら、少なくとも広域化ぐらいまでは持っていっていただきたいというのが、私、町村会として要望している趣旨なんです。
 要するに、財源不足を生じてきておる、その不足分をなぜ一番財源の乏しい国保が持たなきゃならない、そこらの矛盾を解決していただきたいということを思うのであります。
江田委員 時間でございます。本日は大変貴重な意見、ありがとうございました。国会の審議に十分に参考にさせていただこうと思っております。
 ありがとうございました。
森座長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうは、意見陳述の先生方、お忙しい時間を割いて御高説を賜りまして、心から感謝を申し上げます。また、日ごろの御活躍に対しまして心から敬意を申し上げさせていただきたいと思います。
 きょうは健康保険法等の一部を改正する法律案につきましての地方公聴会でありますので、もう少しちょっと率直な御意見を賜りたいというふうに思うわけなのであります。
 私は自由党という政党に所属をしておりますけれども、まず私どもの考え方、結論から申しますと、今回のはただ単なるつじつま合わせの財政論議にすぎないというふうに考えております。今回の改正案は、そもそも制度の仕組みを改めるという根本的な問題を先送りして、現行制度を維持するための単なる負担増と、保険財政のやりくりとごまかしをしているにすぎないというふうに思います。
 今から二年前でありますけれども、当時は厚生委員会でありました。当時厚生大臣が津島先生、今の予算委員長でありますけれども、私、当時大臣と議論をする中で、また二年後に、つまり本年に抜本改革を先送りするということに対しまして、私も食い下がったものですから、その当時津島厚生大臣は、男に二言はありませんと。つまり、二〇〇二年には必ず改革をやるんだ、抜本改革をイの一番に出しますよということを堂々とおっしゃったわけですけれども、それもきれいにすっ飛ばしてしまったということでありますけれども、加藤良夫先生、加藤瑠美子先生、そして森功先生に、この法律案につきましての御所見を伺いたいと思います。
 自由党としての考え方なのでありますけれども、まず、医療制度改革と言っておりますけれども、まず改革の名に値をしないと思っております。それと同時に、まずこの医療制度をそもそも議論するに当たっては、例えば介護の制度あるいは年金の制度、いわゆる社会保障制度全部ひっくるめた中で一つのパッケージとしてすべてリンクしている、関連をしているものでありますから、将来の二十一世紀の日本の超高齢社会を迎える中にあって、どういった社会保障制度を構築すべきか、また将来のビジョンはどうあるべきかという議論を除いて、ただ単なる医療制度、ただ単なる今回は財政的な措置にすぎませんけれども、本質の議論を結局また先送りにしてしまっている。
 先に、二十一世紀の社会はこういう国家像にしましょうということの議論があった中で、その中で日本人のライフスタイルはどうするんだ、医療制度はどうするんだという議論が行われてしかるべきであるというふうに思うわけなのでありますけれども、そこの部分がしっかりと抜け落ちてしまっているというところであります。
 また、違う視点から申し上げますと、医療というのは結局は信頼関係だと私は思うのです。お医者さんと患者さん、その間には、このお医者さん信頼できるからといって、そのお医者さんに診てもらって、本当に体がどこが悪いのか全面の信頼を置いた中で診ていただいて、例えば注射を打っていただいたり手術をしていただいたり、お薬を処方していただいて自分の体をよくしていくわけでありますけれども、そもそも原点であります信頼関係を現場で維持していくシステムそのものを構築するに当たって、信頼関係を崩し、ちょっと露骨に申し上げますれば、いよいよあすにも数の論理で与党だけで強行採決をしようという姿勢そのものが、私は信頼するに値しないと言わざるを得ないのであります。
 もちろん、きょうのそれぞれの先生方のお話を伺って、財政的に逼迫をしているということも重々わかっております。しかしながら、ここまでしてきてしまった、これまで国会がこの制度そのものを抜本改革しないで来てしまったということを考えたときに、いよいよこれはやはり抜本改革とセットでなくては絶対にもう許してはならないというふうに思うのでありますけれども、前置きが大変長くなりましたが、三人の参考人の先生方、ざっくばらんに忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと思います。
加藤良夫君 昨日、議会事務局の方からでしょうか、参考資料というのを二冊分厚いのが届けられました。十分にそれを見ている時間的余裕はもちろんなかったのですが、薄い方の衆議院調査局厚生労働調査室のまとめた参考資料の三ページにこんなくだりがあります。平成九年に健康保険法等の一部改正が行われた、このときには被用者本人の二割負担への引き上げ云々という改正がなされた、このときには財政対策に終始しているとの批判もありと。今樋高議員が御指摘のような声がこの改正のときにあったということがうかがわれます。
 ある意味では、こうした健保の財政的な破綻が来るということは、かなり前からわかっていたはずですね。国会議員の、政策を立案する責任という問題に私はかかってくる面があるように思います。
 要するに、国の政策決定に携わる議員の仕事というのは、国民の信託を受けて、大変重い仕事であります。ハンセンの事件のときには裁判所からその指摘がなされた面もあったわけでございますけれども。こうしたツケを患者負担の増額という形で乗り越えていくというだけのことであるならば、今回、三割にとどめる、つまり三割以上には負担を上げないということを附則でどんなに言っても、結局それはやりくりが苦しくなればさらに上げていく、そういう節操のないことになりかねないというふうに国民は感ずるに違いない。
 ですから、ある意味で、抜本改革というものを先送りするのではなくて、私はきょう意見の要点として申し述べましたけれども、医療制度の改革で国民が強く願っているのは、質の高い医療、安全な医療、患者の人権を尊重した医療というようなことでありますし、被害が発生したときには速やかに救済するシステムをつくってほしいという声がちまたにあふれているわけであります。
 そうしたことにきちっと向き合うことなく、きょうのこの分厚い方の資料を見ますと、私もその附則のところをちょっと確認したわけですが、この分厚い資料の二百四十六ページに少し医療事故のことが書いてあるんですが、期限が「おおむね五年」とか「おおむね三年」とか、書いてあるところが飛んでいるんですね。例えば「医療に係る事故に迅速かつ適切に対応するための」「処理体制の整備」、若干今飛ばしましたけれども、そういうような趣旨のことをきちっと検討を行って、「その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」ということはうたってあるものの、もう少し明確にその中身が書かれていないことと、もう一つは、期限を切っていない。五年をめどにとも書いていない。ということは、ただここには書いたものの、先送りしていくんだ、そういうことでありますので、この辺は緊急に修正をしていただきたいというふうに思います。
 先ほど江田議員でしょうか、きょうの話を持ち帰って国会でも十分審議するというふうにおっしゃっていますが、あしたには採決する中で、議事録も皆さん国会議員の人たちが読まないような状況で、私たちの陳述というのは今聞いておられる人限りのことになるというのはいささか寂しいものがございます。十分に審議の時間はとっていただきたいというふうに思っております。
加藤瑠美子君 私も今回の、改悪と言っていますけれども問題については、小泉首相も三方一両損と言っていましたけれども、結果的には患者さんと国民への負担ということになっているというふうに思います。そういう点で、これまでいろいろな問題点が指摘されていました。一言で言って私は、安全と安心、こういう医療が求められているというふうに思いますけれども、そういうものの解決策は何ら示されていないというのが実感です。
 特に医療事故の問題が今大きな問題になっていましたけれども、診療報酬の改定一つとってみても、それを解決していく施策というものが十分ここに反映されていない。特に今の診療報酬問題については、これが発足したときから比べれば、いろいろな医療人が、一人一人の専門職がかかわりながら一人の患者さんを診ていくという体制になっていると思うんですけれども、そういう人に対しての評価というのが本当にきちっとされていない。
 例えば、入院基本料の中でいえば、人の配置というのも、例えば看護婦でいえば、今まで別枠になっていたのが丸められてきているということでいえば、看護婦の配置をきちっとするという点についても不十分ですし。そういうこと一つ一つとってみても、抜本改革というふうに言っていますけれども、本当に今の問題点が何なのかという解決が出ていないということ。
 それと、今回の赤字問題は、そもそも政治的な問題が非常に大きいと思うんですね。非常に景気が悪くなっている中で、企業がきちっと人を雇って十分な賃金が保障されるような体制にない中で、健康保険の基盤がまず崩れていますよね。そういうようなことも含めて、それから国庫負担も、先ほどちょっと国保の問題で発言しましたけれども、当初の国庫負担の比率が八四年以降がっと下がってきていますし、政管健保についても国庫負担率が下がっている。こういうことを除いてただ単に国民への負担、患者さんへの負担で解決しようということでは、もうすぐ目に見えてまた次の負担増ということが考えられるんじゃないかなというふうに思います。
 そういう点で、今回のこの問題はぜひ廃案にというふうに思います。
森功君 津島さんが男でないとおっしゃったのは、高齢者だからでしょう。男ではないなと思いますが。小泉さんの改革にしたって、終わりの始まりがもう始まっていますから、この改革については抜本でないというのもよくわかるわけです。つまり、抜本改革というのは不可能なんですよね。
 もしも経済改革の面だけで見ても、抜本改革をするのならば、完全な自由主義的なものでやるのか、完全に公的にやるのか、任意保険とそれから公的を合併するドイツ方式でいくのか、大きく分ければ三つしかないわけですよ。日本は、選択したのはこのドイツ方式の変形ですから。
 要するに、何となく公的なものをやりながら、プラス、まあセコムさんも入ってきましたけれども、一部の病気についてどんどんそういう混合診療化のようなものが実践としてやられておる。それならもう、今回特定療養費という名前でもって混合診療が始まっているわけですし、これが民間保険によって一部分、疾病によっては民間そのものが入ってくるとすれば、ここも混合診療化していくわけです。
 したがって、抜本改革云々ということが経済改革の面についても不可能であるというのは、政治家の方々に期待してもそれは無理だろう。だから、それは厚生労働省の方が考えてこういう状況を出しておられるわけですから、今回のこれを踏まえた制度改革案というものの決定も、恐らくそういう形になるのだと思うんですね。
 だけれども、その内容を見れば、国民負担率とかこういう観点から国家として見た場合には、国民に対してさらなる負担をさせておりますし、しかも国民は、謝礼金といったような裏金でもって今後手術を買わなきゃならなくなってきた。つまり、ある有名な病院の中で、病院が手術するわけじゃありませんから、そこの中のある医師に手術をしてもらうためには、予約をとって特別金を払わなきゃならないということが裏で通ることになってくるんです。今でもやっているんですから。さらにそれを追加する。つまり、貧富の差だとかそういうものはもう出ているわけですから。だから、そういう実態を改善することにはならないんです、今回のこの法律案では。
 だから、その面では、単なる手直しというよりも、厚生労働省の方が考えられたみずからの方式の一歩であって、いわゆる医療費の自然増をできるだけ抑えたいという、来年一年間では五千四百億円もセーブするわけですから、二〇〇三年度は。だから、二〇〇三年度、そんなにいいセーブをするわけですから、それは厚生労働省としては一定の方針が通るということになるわけです。しかし、それに政治家の方々が何か関与したかというと、何も関与していないと思いますよ。
樋高委員 貴重な御意見を本当にありがとうございます。
 そもそも、三方一両損などという言葉を使って痛みを分かち合うなんと言っておりますけれども、全然そんなことはありませんで、最も確実に痛みをこうむるのはやはり、保険料を払って、医療にかかれば自己負担額がふえる国民自身なんでありまして。そして、実は一番得をするのは、制度の仕組みそのものを、先ほどおっしゃいましたけれども、政治が関与しないで、そのものを改めるわけではなくて、問題を先送りにしてしまっている今の政府・与党であります。ここで政治論議をしてもだめなのはよくわかっておりますので、そこまでにいたしますが。
 いずれにいたしましても、人間が、そして日本人がこうして将来にわたって安心して生活をしていくためには、医療というものは切っても切り離せない最も大切な、重要な部分でありますので、どうか参考人の先生方には、それぞれの分野におきまして地元の議員の先生方にどんどんプレッシャーをかけていただきたいと最後に要望申し上げまして、御礼とさせていただきます。ありがとうございます。
森座長 次に、瀬古由起子君。
瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。
 きょうは公述人の皆さん、大変御苦労さまでございます。先ほどからお聞きしましても、事前に資料を読む時間もないままおいでいただいたということ、本当に、今後のこうした地方公聴会のあり方そのものについてもよく改善しなきゃならないということをまず私も痛感させていただきました。
 そこで、御質問させていただきたいわけなんですけれども、先ほどから出ておりますように、小泉首相の言う、三方一両損とは言いますけれども、この二十年間で国民医療費における国庫負担は三〇・一%から二四・九%に減っております。そういう意味では、国は損どころか負担をどんどん軽減してきた。それは、先ほど御指摘ありましたように、国保についても、例えば政府管掌の健保についても、国の負担を減らしてきた。その分、国民の負担がどっと重くなってきているわけです。
 今回の改定によりまして、これは審議の中で明らかになってきたことなんですが、国民の負担増は一兆五千億円に及ぶ、こういう事態になってまいります。それで、ちょうど一九九七年に健康保険の本人負担一割から二割負担になった改定がございましたけれども、そのときには二兆円の負担で景気が一気にそれ以降冷え込んで、まだその深刻な事態が解決していない。そういう医療の改悪によって受診者が減り、そして国民の健康状態が大変悪くなっている。こういう指摘もされている中で、今回また大規模な国民負担というのは、私たちとしても大変問題だということを考えています。
 そこで、きょうは時間がございませんので、具体的な問題について、加藤良夫公述人、加藤瑠美子公述人、森功公述人にまずお聞きしたいと思うんですが、特定療養費制度の拡大の問題です。
 百八十日を超えて入院する患者さんにこの制度が適用されて、給付一五%カット、この穴埋めを実際には患者さんから特別料金を徴収していいと。お金のない方は退院せざるを得ない、こういう状態に追い込まれます。私、国会で質問したんですけれども、では、病院を出ざるを得ないお金のない人たちはどうしていくのか、在宅介護や施設の保証があるのかと聞いたら、国は全然調査していないと言うんですね。そんな無責任なことがあるかということが国会でも議論になったわけでございます。
 そこで、お聞きしたいわけですけれども、先ほど森公述人の方から、この特定療養費の拡大というのは、今までは選定医療だとか高度医療に限定されたものを、むしろ、うんとこれで広げていくことだ、とんでもない話だと。先ほど混合診療禁止をもう廃止してもいいんじゃないかという話がありましたが、実は、私はここに大変大きな問題があると思うんですね。事実上、国民負担をうんとふやしていく。三割だと言うけれども、実際には四割、五割負担になってしまうんじゃないか。
 そういう点では、まず森公述人からは、こういうことを許していけば、医療本体の内容にかかわって、医療制度そのものが崩壊していくということになるんじゃないかということを大変心配しております。その点いかがでしょうかという問題。
 それから、加藤瑠美子参考人には、愛知の実態で、もしお金の払えない人たちが病院から出されるということになったら一体どういう事態になるのか。愛知での在宅の医療や介護や施設の状況は一体どうなっているのか、その点でもぜひお伺いしたいと思います。
 それから、加藤良夫公述人には、私、先ほどいただいたパンフレットの中で、患者の権利法という問題で、この中に「医療機関を選択する権利と転医・入退院を強制されない権利」という問題が出ていまして、二十六ページなんですが、お金がなければもういやでも病院を出ざるを得ない。こういう権利が奪われるんじゃないかという点で大変心配していますけれども、その点いかがでしょうか。
 お三方からお願いします。
森功君 まず、社会的入院に対する特定療養費での一五%カバーということにつきましては、これは厚生労働省が社会的入院を認めることになったわけですね。本来六カ月でもう全部、九〇、一〇〇%近く払いなさいと言っていたのが、途端にこの三カ月で一五%だけ払っていいよと、五万円ぐらいで済まそうというふうに変わったわけですが、これは解釈を変えているわけです。
 私は、社会的入院そのものを、そういうことをするから医療費が発生するわけですから、別の形に変えた方がいいというのが持論なんです。別の施設でもって見なきゃならないというのは、高齢者の入院診療というのは必ずしも医療面ばかりじゃありませんから、そういう面ではQOLを含めてもっとケアの仕方があるだろうと思いますから、これはまた別個のものを考えるべきであって、単に一五%も出したらいいというものではないと思うのですね。これはどちらかというと、病院にもう丸投げされたわけでして、おまえら取りたきゃ取れと。取らなくてもいいよと。そういう言い方はやはりないわけでして、今回これは大変乱暴なやり方だなと思っております。
 それから、混合診療という面につきましては、私はドイツ方式の変形が日本の次のあるべき姿だと思っていますから、あるレベル以上の収入のある方は任意保険に切りかえるべきだと思っています。ドイツにおいても、これは任意保険に切りかえております。当然そこに、サービスに多少の差が出てくるんですね。例えば、予約診療というのは、いつでも任意保険の人はとりやすいし、公的保険の人は決められたときにとる。多少のそういうサービスはありますが、これは我々が生きておる資本主義の社会においてはある程度は認められるべきものだろう。しかし、サービスの内容において変わってはいけないということですから、日常の外来診療についてはそういうことをすべきであるし、入院診療については、これはまた別途、もう少し考え方を変えたらいいと思うのですが。
 いずれにしても、保険制度については、今のままだともう破綻するのは明らかですから、したがって、任意保険と公的保険というようなものを変形した形の日本におけるシステムというのを考えられるべきだろう。ただ、アメリカのような自由主義で何でもかんでも勝手にやらせるということで民間保険だけにやらせますと、保険を持たない人たちが多数発生しますから、これもやはり不可能ですし。したがって、混合診療というものの行く先には、そういう保険制度そのものの本当の意味での抜本改革があるものだというふうに期待しておるのですけれども。
加藤瑠美子君 私は、いつでもどこでも安心して医療にかかれるという問題を、医療や福祉の問題も含めてトータルに見ていかなきゃいけないんじゃないかなと思います。
 そこで、先ほど質問がありました、病院に六カ月以上入院した人の退院の受け皿の問題ですけれども、今でも三カ月たったら退院をという実態があって、家族がそれによって一体どこへ行ったらいいのかということで非常に悩んでいるというのが実態です。
 愛知の状況でいいますと、平成十三年の六月一日の調査で、今愛知県では特別養護老人ホームの入所待ちが一万百三十六件、その前の年で三千六百七十五という数字が出ています。多少重複等もありますけれども、いずれにしても、非常に待ちがふえているというのが実態です。名古屋市だけで見ても、その前に名古屋市が平成十三年には四千八百十八人というのが、つい先日の十四年の調査でいうと一万五千五百四十四ということで、もちろんこれは重複がありますから多少引いて考えなきゃいけませんけれども、いずれにしても入所待機が非常に多いということです。
 そのことを考えたときに、病院で急性期を過ぎたから退院、次のところといっても、なかなか受け皿がない、在宅で見るといっても在宅の受け皿も整っていないというのが今実態じゃないかというように思います。そういう点で、在宅できちっと見られるような体制、それから、安心して、施設に入りたければ施設に入れるような受け皿をきちっとつくるということを抜きにして今回のようなことがあれば、非常に社会問題が起こっていくんじゃないかなというふうに考えています。
加藤良夫君 実は、コストの問題というのは医療の姿に相当影響を与えます。
 例えば、小児科というのが病院の中で赤字部門とされております。そのために、幾つかの民間病院では小児科が閉鎖されているということが詳しく報道されておりました。
 次の時代を担う子供たちが病気になったときに、その適切な医療を受けられない、そういう現象が、要するに採算という問題を医療の中にそのままの形で出してきたときの弊害としてあわられるということです。小児科を持たない、今まであったのに閉鎖したために、はるか遠くのところに状態の悪い子供を運ばなきゃいけないというような問題が出てくるわけであります。ですから、国会のそうした政策立案の役割というのは極めて重いんだ、要するに人間の尊厳とか個人の尊厳とか、そういうことからいって大変重大な問題だと私は感じています。
 安全な医療というようなことを日ごろから問題にしているわけですが、その際に、診療報酬のあり方がどうなのかとか、いろいろなことが実は背景に存在しているという感じがしております。
 先ほどの御質問のところですが、きょうの資料で配らせていただいた患者の権利法をつくる会のパンフレットの二十六ページのところですけれども、「患者は、」「転医や入退院を強制されない。」というふうに四角の中に書いてございますが、解説のところに書いてございますように、本項は、医学的に正当な理由のある退院をも否定し、転医や退院をすべて患者の判断にゆだねるという趣旨ではもちろんございません。きちっと治療が受けられなきゃいけない人がコストの問題だけで行き先もなくほうり出されるという状況が、この権利法要綱案の「強制されない。」の趣旨に反するということは、そのまま指摘しておかなきゃいけないと思います。
 今、そういう意味では、ここの条項だけではなくて、いろいろな条項に多分かかわって、患者の権利がないがしろにされていく動きがあるのではないだろうか、そんな気がしております。
瀬古委員 加藤瑠美子公述人にお伺いしたいと思うんですが、加藤さんは現場でも看護師として働いていらっしゃったわけですけれども、今日の不況の中で、今、労働者の環境も大変厳しい状態になっていると。今回の負担増が、やはり労働者や家族の健康、将来の生活への不安、こういうものを一層かき立てるという事態になるんじゃないかということを心配しています。そして同時に、医療の現場に働く人たちの労働状況ももっと深刻になっていくんじゃないかと思いますが、その点、いかがでしょうか。
加藤瑠美子君 先ほどから経済不況の問題が言われていますけれども、御承知のように失業率が五%を超えるという状況の中で、今雇用されている労働者の働く条件も非常に大変な実態になっています。例えば、全労連がやって、愛労連という愛知の労働組合の総連合ですけれども、やった調査を見てみても、賃金の生活実感からいえば、かなり苦しい、やや苦しいというのが非常に今ふえているという実態ですし、その中で一番望んでいるのが、年金、医療、社会保険制度など社会保障の充実というところが全体でいえば四二%望んでいるというのが、アンケート調査の中では政策的な要求として出されてきています。
 そういう状況の中で、行政もやっていますけれども、今、労働組合として愛労連が労働相談を行っているわけですけれども、そこで寄せられてくる労働相談は、解雇が言い渡された、それから倒産でほうり出された、退職金もない、どうしたらいいんだということを含めてあるわけですけれども、具体的に言えば、そこの相談が非常にふえているというのが実態です。例えば、昨年の一月から四月の間に百五十五件の相談が寄せられていました。ことしは、同じ時期の一月から四月までは二百十六件という、倍近い相談がふえてきている。
 ここで相談に来ている人たちは、どちらかといえば中小零細で労働組合もない職場で働いている方が多いわけですけれども、そういう人たちが、ある日突然倒産だとか、ある日突然首を切られるだとかいうような形で、何とかしてほしいということで相談に来ている、こういう実態です。
 そういうことが基本的に起きている中で今回のこういう改悪案が出てきているということになれば、例えば首を切られたり倒産でほうり出された人たちが、本当に高い保険料を払うだとか、それから病気になったときにこの三割負担が本当に払えるだろうかということを考えたときに、病気があっても医療機関に行かなかったり、それから、企業からほうり出されれば国保に変わるわけですけれども、国民健康保険にも前年実績から含めて保険料が払えないから、これが今度は、未払いというか、保険料が払えないだとか、それから、保険に入らない人たち、未保険者が今ふえていると言われていますけれども、そういう事態も生まれてくるというふうに思います。
 当然、常勤雇用が減っているわけですから、フリーター、アルバイト等も、パートなんかも含めてですけれども、そういう人たちは保険に入っていない方も非常にいらっしゃいますし、そういうことを考えると、今の皆保険制度の根幹が崩れていくし、それから三割負担等を含めて考えると非常に肌寒いものを感じるというのが実態です。
瀬古委員 ありがとうございました。
 時間がございませんので、きょうは全員の公述人の皆さんに私が質問することができませんでしたことをお許しいただきたいと思います。
 しかし、皆さんがきょうお話しになりましたことをぜひ今後の審議に生かしていきたいと思いますし、ぜひまた中央の公聴会なども開いていただくなり、大いに審議を充実させていくという方向で私も努力していきたいと思っています。ゆめゆめ、もうこれで、あと少しで終わりなどということのないように、頑張ってまいります。
 きょうはどうもありがとうございました。
森座長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 きょうは、六人の公述人の皆様方には本当に唐突に、先週の後半にアレンジをお願いしてこの場に臨んでいただきました。無理無体な要求ということで本当に失礼と存じますが、にもかかわりませず、皆さんにあっては貴重な御提言もいただき、私も国会に身を置く者として、ぜひともきょうの皆さんの御発言を生かせるような方向に、今後の国会審議、全力をかけて臨んでいきたいと思っております。
 私は、実は今週火曜日には委員会での参考人質疑、そしてきょうが日本全国二カ所の公聴会ということですが、医療費の今回の改正問題、窓口三割負担、あるいは政府管掌保険の保険料率のアップ、そしてこの秋には御高齢者の窓口負担増大ということ、どれをとりましても、国民の統計に上っております六、七割、アンケート調査でも圧倒的に反対の声が強い。この事実を見ますと、この法案を推し進めようとする皆さんは、国民というのはいつも負担増が嫌なんだからということで今回も流そうとしておられますが、私は、今回この法案に対しての国民の意思表明というのはもっと奥深いものがあるように思います。
 なぜならば、今、国民はこの医療費の費用負担の問題以上に医療の質に納得しておらない。このことをやはりきちんと政治に携わる者が受けとめるか否か。ひたすらに負担増だけ強いて、これで納得、我慢しなさいなということがもういかようにも通用しない時代なんだと思います。その意味で、きょう森公述人が、抜本改革というよりも根底から変えなくちゃいけない、本当に根底なのだと思います。
 そうした観点からお伺いしたいと思いますが、既にこの法案に先立つこと、診療報酬改定という形で、先ほど瀬古委員からも質疑いたしましたように、六カ月を超す長期入院の方のある意味で社会的退院、お金が払えなければ医療機関から出ていきなさいというようなことも現実に進んでいます。では、この診療報酬改定を論議する中医協に国民の声は反映される仕組みになっておるかというと、全くございません。厚生省、そして一部の健康保険者の代表、そして医師の代表。では日本の医療政策の中に国民はどこにいるのか、全く見えない、そしてこのことが一番悲劇のもとであると思います。
 そこで、きょう齋藤英彦公述人が冒頭におっしゃってくださいましたことに関連してまず一点お伺い申し上げますが、日本は、国民は医療をただ受けるものと思っておるという御指摘でした。私は、一部当たっておると思いますが、仕組みがそうさせているところもあると思うのです。と申しますのは、いわゆる医療にかかりましたときの明細書あるいはレセプトと申します、自分の医療がどれくらい、お薬が何種類出て幾ら、手術料が幾ら、診察代が幾らというものを全く知らされない買い物を国民はするわけでございます。
 レセプト開示ということ、委員会でも参考人に来ていただいて公述していただきましたが、なお齋藤先生のお考えも一点お聞かせください。
齋藤英彦君 私も全く同じ意見でして、やはり情報をどんどん開示して透明性を高め、レセプトに限らず医療成績についても、それで最終的には患者さんあるいは国民が選択するという開かれた社会にしていくことはぜひ必要だと思います。ですから、それはどんどん、そういうものを進んで開示するべきだ、そういう立場です。
阿部委員 先ほど電子カルテのお話もございましたが、よりレセプト開示も容易になると思いますので、また随所で御提言のほど、よろしくお願い申し上げます。
 引き続いて、橋本参考人にお伺いいたします。
 きょうお話しくださいました中で、従業員を息子と思い、若いうちからいろいろな症状あるいは成人病の予備軍になるような方たちも抱えて企業としてはやっていきたいというお話で、大変に勇気づけられますが、一方、若者を子供と思うと同じように、御高齢者はある意味で親でございます。そのときの拠出金問題が確かに各企業にとって重いということも、私も理解しないではございません。ただし、社会的連帯という中で、ある程度のものは拠出していかれようというお心もあることもきょうのお話でわかってまいりましたが、今の比率はいかようにも高いというお話ではありました。
 では、橋本公述人にあっては現在どの程度のところで、私は、残る部分はやはり国庫負担をきっちりすべきであると考えておりますが、企業サイドから見たこの拠出金問題、もう一歩進めて、もしコメントがあればお願いいたします。
橋本玄次郎君 当然今の老人というのは我々の先輩でございますので、現従業員、それからもとの従業員、これは先輩でございますから、両方面倒を見ていくというのは企業の責任だろうというふうに思っております。
 ただし、どんどん拠出金がふえていく、そこにどこかやはり歯どめがないと、例えば愛知県でいきますと、拠出金がもう五〇を超えているというところの健康保険組合というのは、これに表がございますけれども、百七社のうち、経常収支の黒字なんというところは三社か四社しかないんですね。これは毎年赤字なんです。毎年拠出金が上がっていく。
 だから、どこかにやはり歯どめというのが必要なんじゃないですか。絶対負担しないというわけではないので、一定の負担はしたいと思いますけれども、やはりそのめどというのは、例えば三割ぐらいとか、そんなものじゃないだろうかというふうに思いますね。
阿部委員 拠出金の算定方法等も明確化すべきだというさっきの御意見でもありましたし、引き続き検討を私どもとしてもさせていただきたいと思います。
 引き続いて、加藤梅雄公述人にお願いいたします。
 先ほど高齢な皆さんへの町としてのいろいろなお取り組みのお話がございましたが、一方、私は、やはり今若年層にどうやって社会保障システムに参加していただくか、もう緊喫な課題と思います。もしも町として若者の国保参加なり健康増進参加について何らかのお考えがあればお願いしたいのと、と申しますのも、今、フリーターとか、必ずしも組合健保や政管健保に吸収されない若い層もふえてございます。もしこの点、御見解がおありになればお願いいたします。
加藤梅雄君 特に若い人に対する特別な健康対策というようなことは実は行っておりません。
 先ほど来申し上げておりますように、若い人たちもぜひ参入する、いわゆる生産性のある年齢の方が、ちょっと御質問にそれるかもわかりませんが、この医療負担という問題に参画してもらう。これは、いわゆる被用者保険と国民健康保険との、いわゆる所得の面、負担の問題、大きな差があるわけですから、この辺を十分考えていただきたい。それは一元化につながる。一元化につながるけれども、そういうことでないと、今の国民健康保険は最大なピンチに陥っているということは皆さん御案内のとおりですが、若い人たちもそういう意味で御理解をいただく方向でぜひ国会審議等もしていただきたいなということを思います。
 若者はもう自分らで、今はよき時代ですから、どんどん活躍しておりますので、さほどそういう面の心配はないような気が私はします。
阿部委員 私どもが見聞いたしますと、やはり若者に、三無主義といって、無年金、無保険、医療保険も入っておられないし失業保険も入っておられないという層が非常にふえてきて、国保にしても一回払えば払ったことになっておりますが、その後未納という方も比較的おられるようですので、むしろ四十歳以下の年齢が半数を占めております国民の現在、そのあたりでまた町としても御見識があれば、また提言等もいただければと思います。
 引き続いて、加藤良夫公述人にお願いいたします。
 私は、きょう加藤さんが配っていただきました資料の中のいわゆる被害者救済のための第三者機関、センター構想ですね、このことに強く強く関心を持ってございまして、厚生労働委員会でも私なりの案を述べさせていただいたことがございます。
 やはり現実に医療被害に遭った方たちを救済していくことが、先ほど加藤公述人は非常にいいことをおっしゃいましたが、医療事故の防止は救済システムと不可分だと。発生を集約するにも、救済システムがないときちんとした元数が上がらないと思いますので、特に第三者機関というところのセンター構想の財源、どこがどういうふうに財源負担するかということもあわせて御紹介いただけますか。
加藤良夫君 この黄色いパンフレットの十二ページを見ていただきたいと思います。
 現在、薬に関する薬害被害に関しては、いわゆる医薬品機構というものがございます。それには製薬会社の拠出金が含まれております。この医薬品機構の分割再編というようなことも視野に入れながらこのセンター構想を考えているわけですが、十二ページの2のところに、国からの補助金、それから健康保険の患者も、被害者を互助の精神で皆の力で救うという気持ちから一部負担をしていただく。それから、医療関係者、医療法人等も何がしかの拠出をする。そして、製薬会社や医療機器メーカー等も拠出金を支払う。そして、非常に問題のあったケースについては、センターがその加害した立場のところに対して、求償といって損害賠償の請求をするという道も残しておりますので、そこへの求償をしたときに得られた求償金も充てる、その他寄附金、こういうことで財源を考えております。
阿部委員 非常に先見的な御提言ですので、ぜひともまた私どもも詰めさせていただきたいと思います。
 最後に、森参考人にお願いいたします。
 この国会でも研修医の教育問題、何回か論じましたが、やはり財源の問題、国がきちんと手当てするかどうかということが医療の質を決め、結局国民の幸不幸を決めると思いますが、財源問題についての御提言があればお願いいたします。
森功君 国民に対していい医療を保障するというのは国家の責務でありますから、国が、まず何よりも研修医に対する、少なくとも研修を全うできるだけの報酬は保障すべきだと思っています。それ以外のところから出す以上はいろいろなバイアスがかかってしまいますので、これはぜひとも、国家が臨床研修指定ということでやられるのなら、やはり報酬においても出していただきたい。それは公的支援から考えると微々たるお金でございますから、国民の健康のためでございますから、ぜひお願いしたいと思います。
阿部委員 よくアメリカとの比較が各所で論ぜられますが、アメリカでは若手医師の教育にきちんと国が資金を出しておるということもございますので、私もきょうの森参考人のいろいろな御提言を受けて大変勉強になりましたし、いわゆる質の改善において、やはり若手医師を育てるということを課題にして論議していきたいと思います。
 きょうはどうもありがとうございました。
森座長 これにて委員からの質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 意見陳述者の皆様方には、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。ここに厚く御礼を申し上げます。
 また、この会議開催のため各段の御協力をいただきました関係各位に対しましては、深甚なる謝意を表する次第であります。
 これにて散会いたします。
    午後三時四十一分散会
    ―――――――――――――
   派遣委員の栃木県における意見聴取に関する記録
一、期日
   平成十四年六月十三日(木)
二、場所
   ホテル東日本宇都宮
三、意見を聴取した問題
   健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
      座長 長勢 甚遠君
         鴨下 一郎君   佐藤  勉君
         林 省之介君   釘宮  磐君
         水島 広子君   福島  豊君
         佐藤 公治君   塩川 鉄也君
         中川 智子君
 (2) 意見陳述者
      足利赤十字病院名誉院長 奈良 昌治君
      栃木県トラック協会会長 関谷 忠泉君
      宇都宮市長       福田 富一君
      耳鼻科医師       金子  達君
      栃木保健医療生活協同組
      合専務理事       柴野 智明君
      医療法人喜望会理事長
      おやま城北クリニック院
      長           太田 秀樹君
 (3) その他の出席者
      厚生労働省大臣官房参事
      官           間杉  純君
      厚生労働省保険局保険課
      長           島崎 謙治君
     ――――◇―――――
    午後一時開議
長勢座長 これより会議を開きます。
 私は、衆議院厚生労働委員会派遣委員団団長の長勢甚遠でございます。
 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様御承知のとおり、当委員会では、内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案の審査を進めているところでありますが、本日は、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当宇都宮市におきましてこのような会議を催しているところでございます。
 御意見をお述べいただく皆様方には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。
 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。
 なお、御意見をお述べいただく皆様方は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に、意見陳述者の皆様方から御意見をそれぞれ十分程度でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 次に、派遣委員を御紹介申し上げます。
 自由民主党の鴨下一郎君、佐藤勉君、林省之介君、民主党・無所属クラブの釘宮磐君、水島広子君、公明党の福島豊君、自由党の佐藤公治君、日本共産党の塩川鉄也君、社会民主党・市民連合の中川智子君、以上でございます。
 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
 足利赤十字病院名誉院長奈良昌治君、栃木県トラック協会会長関谷忠泉君、宇都宮市長福田富一君、耳鼻科医師金子達君、栃木保健医療生活協同組合専務理事柴野智明君、医療法人喜望会理事長・おやま城北クリニック院長太田秀樹君、以上六名の方々でございます。
 それでは、まず奈良昌治君に御意見をお述べいただきたいと存じます。
奈良昌治君 実は、きのう蒸し暑かったものですからクーラーをつけっ放しにして寝まして、のどを痛めまして、不覚にも声が割れておりますのでお聞き苦しいところがあると思いますが、どうぞお許しいただきます。
 まず、我が国は敗戦の焼け跡の中から立ち上がって、当時の日本人の忍耐と努力と勤勉と才能によって現在の日本の繁栄をもたらしたものであります。一時は経済でもGDP一、二位となり世界を席巻しましたが、今や、そこに陰りが見え、日本の将来のために改革が望まれていることも事実でございます。
 日本のこの繁栄に大きく貢献したものの一つに、世界一平等、公平な我が国の医療制度、いわゆる国民皆保険制度があると信じております。一時は結核亡国とまで言われた我が国が、結核の予防対策が当を得て結核死亡が激減したのは、我が国の医療と行政の輝かしい業績であることは世界の専門家の一致した認識であり、世界の医療行政の模範であり、他国の羨望の的となっております。その結果、我が国は世界一の平均寿命を十数年も維持し、さらに二〇〇〇年六月、WHOが発表した平均健康寿命は七十四・五歳と、百九十一カ国中断然一位となっております。
 高齢化が急速に進行している大きな理由の一つは、高齢者の死亡が他国と比べて激減しているためであります。
 医療先進国と言われている米国においては、平均健康寿命は世界の二十四位にとどまりまして、世界最先端の医療の陰に四千万人を超える無保険者があり、医療の提供が国民に平等であるとは言えず、病気がちな人や貧しい人々は十分な医療の恩恵にあずかれず、金持ち優先の医療との批判のあることも事実でございます。かつて、米国クリントン大統領夫人ヒラリー氏が、日本の制度を参考に米国にも国民皆保険制度を導入しようと試みましたが、ついに挫折したことも御存じであると思われます。また、英国においては慢性疾患を持った患者の入院待機問題が深刻な社会問題になっていることも御存じだと思います。
 我が国のいわゆる国民皆保険制度では、保険証があれば、あるいは保険証を持参していなくても、いつ、どこで、だれでも、貧富、社会的立場にかかわりなく、迅速に医療の提供が受けられます。このことは世界の国民の羨望の的である一方、日本人が外国で病気やけがをしたとき、医療施設受診への不安や、高額な医療費負担の事実を知ってきた日本国民も多くなってまいりました。
 先行き不透明な経済の中で、老後の医療費負担の不安から、ますます貯蓄傾向が進み、特に高齢者の消費が落ち込む傾向が見られます。こうした中で、国民の安心の源である医療保険制度を将来にわたり安定したものにするために医療改革はぜひ必要であり、改革を断行しなければ、国の経済をさらに悪化させる原因の一つになると思われます。国民の老後の医療保障と社会保障が充実することによって、熟年以後の消費を増し、経済を再び活性化することができるのではないかと思います。国民、特に熟年、高齢者の不安を取り除くことが我が国の政治に最も望まれるのではないかと思われます。
 我々医療提供者の立場から申しますと、日本の総医療費三十兆の五〇%強が、医師、看護師、薬剤師、検査技師、調理師など数多くの医療従事者の給与すなわち人件費であり、三〇%強が、薬品購入費、注射器、ガーゼから、精密化し高価になった心臓カテーテル、ペースメーカーなどの医療材料費、一〇%強が、光熱水道料などを含む維持費、委託費などの経費でございまして、診断や治療に要する機械類への投資は極めて厳しい状況であります。また、病院環境をよくするための補修、建築費用は、診療報酬制度にはほとんど組み込まれておりません。
 このたびの三方一両損と言われる診療報酬の値下げによって、多くの病院が大きな打撃を受けたことも事実であります。今、望まれる医療の質の向上、安全確保、医療従事者の過重労働の改善のためには、我が国に比べて何倍も多い欧米の病院の医療従事者数に近づける必要があり、また、深刻な少子化に歯どめをかける意味でも、小児科医療の充実をより積極的に行う病院機能の充実が望まれるときであり、今回の診療報酬の値下げは極めて厳しいものでございました。
 一方、我が国の国民皆保険制度について申し上げますと、保険の種類が余りにも多く、保険によって負担と給付に大きな差があることは一般の国民はほとんど知っておりません。我々医療の現場で、定年になって、あるいはリストラされたサラリーマンの多くが、若くて健康であったときに積み立てた保険料が、高年になり退職したときに縁が切れてしまって、給付を受けられず、国民保険に加入せざるを得なくなったとき、途端に負担が急増する仕組みは納得できないという不満を言っている患者が多くなってまいりました。
 我が国は、国民皆保険制度というものの、保険の種類は極めて多く、保険関係者の利害がふくそうし、すべての保険者のコンセンサスを得ることは困難でありましょうが、人はすべて生老病死を体験し、次の世代に引き継いでいくものと思われます。国民はすべて平等であり、特に患者に対する医療給付は最も公平であるべきで、本当の意味での国民皆保険制度を維持するために、あらゆる国民のライフサイクルに合った、一貫した保険制度の改革、創設が望まれます。
 私見といたしまして、将来は、地域保険と組合健康保険、共済保険などの職域保険を統合し、一本化すべきものと思っております。その観点から考えて、受診時の医療費自己負担も国民が平等であるべきであり、すべての保険での三割負担導入については、その一歩として理解できます。そのためにも、まず職域保険の改革があっての話であると思っておりますが、改革なくして前進はございません。
 現状では我が国の少子高齢化は避けられないと思いますが、これをマイナス思考でとらえるばかりでなく、定年制度、給与制度の思い切った改革で、六十歳からの元気な高齢者による安定した労働力を確保し、働く高年者からも適正な負担を求め、より安定した医療保険制度を維持すべきものと考えます。
 この医療保険制度を維持することが、熟年、高年の国民が安心して働き、老後の不安に備える貯蓄から現在を楽しむ消費に向けさせることができると思われます。国民医療費は熟年労働力の活用を生む効果的な国家投資と考え、高年者の労働延長による税、保険料の収入の維持をすることによって、世界に誇る国民皆保険制度の崩壊を防ぐべきものであると思われます。
 以上です。
長勢座長 ありがとうございました。
 次に、関谷忠泉君にお願いいたします。
関谷忠泉君 私は、三和運送有限会社の代表取締役をただいまいたしておるわけでございます。なお、社団法人栃木県トラック協会会長も仰せつかっておるわけでございます。
 トラック協会には八百五十社の会員の方がおられ、車にしては約二万両、従業員につきましては二万四千名がおられるわけでございます。
 そういう中で、今回のこの医療保険制度改革につきましては、私もかなりこれらには希望を持っておるというようなことでございます。
 それと申しますのも、栃木県トラック協会におきましては、健康保険組合を昭和六十三年だったですか開設されまして、順調に経営をなされてきたというようなことでございますが、最近になりまして、高齢者の医療費、これらについて非常に高額な負担をさせられるようになったというようなことから、これらにつきましても、社会保障制度がある限りは、お年寄りあるいは若者にしても、やはり皆公平でなきゃいかぬだろうということがまず一つあるわけですよね。
 そうしますと、今の若い方がお年寄りを一生懸命見て、それで、やがては見た若い方が見てもらえないというような状況に走っているんだということが非常に今懸念されているというようなことでございますので、これらにつきましてもそういったことのないように、ひとつ国会の先生方、今回改革されるということでございますから、やはりこれは公平な立場でやっていただければありがたいな、こう思っておるわけでございます。
 そういう中で、若干触れますと、今のこの制度で、健康保険組合に私はよくお尋ねをするわけでございますが、何としても一番かかるのは老人医療費なんだというようなことで、この老人医療費だけにかかって、では介護保険もできたんだろうと。これはもうかなり減額されるんではないのかなというふうに思っておったところが、そうでないんですよというようなことで、事務局もたじたじの答弁をされるというようなことなので、こういったことのひとつないように、この抜本改革につきましては、これから三割負担になるというようなお話も聞いています。また、医療費も若干下げられたというようなことも聞いておりますが、この程度の問題で、日本国民が本当に社会保障制度を立派に受けて、そして楽しく生活できるような環境でないということは、国会の先生方も恐らくお考えになっておられるんではなかろうかな、こう思っております。ただ今日の経済情勢が厳しいから、だからしようがないんだよではないんではなかろうかな、こう思っております。
 それともう一つは、小泉首相が三方一両損というようなことを申されておりますが、これにつきましても、これは保険者、我々企業、こういったものがみんな一体なんですよね。労働者も会社も一体ですよ。ですから、決して我々は、労働者を粗末にしては我々の経営は成り立たないということは、これははっきり申し上げておきます。
 そういうことなので、今回この席には自民党の先生方あるいは民主党の先生方、公明党、それに共産党の方ですかおられますが、ひとつ党派を超えまして、この件については何としてもこの改革法案を通していただいて、そして内容についてどうするかというようなことをはっきりやっていただきたいということを要望して、私の意見を終わらせていただきます。
 ひとつよろしくお願い申し上げます。
長勢座長 ありがとうございました。
 次に、福田富一君にお願いいたします。
福田富一君 宇都宮市長の福田でございます。
 宇都宮市におきまして公聴会を開催していただきまして、まず御礼を申し上げます。
 衆議院の厚生労働委員会の委員の皆様方におかれましては、日ごろから医療、介護、福祉などの分野におきまして御尽力をいただいておりますことを、この場をおかりいたし厚く御礼を申し上げます。また、このように市町村の立場から意見を申し述べる機会をいただきましたことも、あわせて御礼を申し上げる次第でございます。
 さて、今国会におきまして御審議をいただいております健康保険法の改正案につきまして、医療保険財政の破綻を回避し、国民の生命を守る国民皆保険制度を崩壊させないため、賛成の立場から意見を申し上げます。
 医療保険制度に関しましては、市町村は国民皆保険体制の最後のとりでである国民健康保険制度を運営することになっておりますけれども、まず、この国民健康保険の現状について簡単に申し上げます。
 御案内のとおり、国民健康保険制度は、他の医療保険に属さない人をすべて受け入れる構造となっております。このため、近年の急速な少子高齢化の進展、就業構造の変化などによりまして、加入者のほぼ半数が無職者でありまして、平均年齢は、本市におきましては五十一・七歳、一世帯当たりの年間所得は百六十八万円、所得のない世帯が二四・一%と、四分の一が所得のない世帯であります。制度が発足した当初に比べまして、無職者、高齢者等の所得の低い者が著しく増加をしている現状にあります。
 その結果、市町村国保は、被用者保険に比べて所得水準が低い中で、被用者保険とほぼ同様、場合によってはそれ以上の保険税を納めなければなりません。
 宇都宮市におきましても、一世帯当たりの平均保険税の賦課額は約二十万円となっており、政管健保や組合健保の十五万円から十六万円と比較すれば、保険税の負担感は非常に重いものになっております。厳しい経済情勢を背景に所得水準が低下する中で、保険税収入の確保がますます困難になるなど極めて厳しい運営を余儀なくされている状況にあります。
 国保の運営は、本来、保険税と国庫負担金により運営されるのが原則であるにもかかわらず、多くの市町村におきましては、こうした事情からやむを得ず行っている一般会計からの多額の繰り入れなどにより、ようやく運営されておりますのが実態であります。しかしながら、地方財政は御承知のとおりますます厳しさを増しており、一般会計からの繰り入れももはや限界であります。国保の構造的問題は、市町村の規模の大小にかかわらず生じているものであり、同じような問題や悩みを抱えているのが実情であります。
 このことは、単に国保保険者の統合などといった国保サイドのみの対策では解決できないものであります。全国市長会におきましては、全国町村会、国民健康保険中央会とともに、国民の間で給付と負担の公平を図り、安定した国民皆保険制度を維持していくため、すべての国民を通ずる医療保険への一本化、これを直ちに実施することが困難であれば、当面、医療保険財政の一本化を主張しております。
 さて、今回の健康保険法等の一部を改正する法律案でありますけれども、国保に関連する部分を中心に若干意見を述べさせていただきます。
 まず、保険給付の見直しについてでありますが、わかりやすく公平な給付を実現するため、各医療保険制度間の給付率を統一する改正であります。給付率につきましては、制度発足当初から、国保と被用者保険の間で格差があります。国保被保険者も被用者保険の加入者も、我々市町村から見ますと同じ住民でありますことから、私どもは従来から、給付と負担の公平を主張しているところであります。
 次に、老人医療に関してであります。
 第一に、受給対象者の年齢引き上げでありますが、老人保健制度は、高齢者の医療費を国民全体、各医療保険で公平に負担するという調整の仕組みであります。対象年齢を七十歳から七十五歳に引き上げるということは、各医療保険制度間の財政調整の対象を狭めるものであり、制度上、高齢者を多く抱える国保は、現在以上に厳しい財政運営を強いられる可能性があります。高齢者医療制度の将来の姿が見えないまま、対象年齢だけを引き上げることには疑問を感じるものであり、医療保険制度全体の抜本改革を行い、国保関係者の主張に沿った形で一刻も早くその実現が図られるよう望むものであります。
 第二に、老人医療費の伸びを適正化するための指針についてでありますが、老人医療費の伸びが国民医療費を増嵩させる大きな要因となっていることは周知の事実であり、ある一定の指針を出すことは評価できるものであります。将来にわたり医療保険の安定的な運営を図るためには、高齢者だけでなく、全体を通じて、健康対策強化も含め、医療費の伸びを抑え適正化を図ることが不可欠であると考えております。
 第三に、老人医療費拠出金の算定方法の見直しについてであります。具体的には、老人加入率の上限の撤廃、あるいは、退職者に係る拠出金を退職者医療制度で全額負担するといった内容についてですが、老人医療費を全国民で公平に負担するという老人保健制度の趣旨を踏まえれば、ぜひともこれを実現していただきたいと考えております。
 次に、国民健康保険の財政基盤の強化に関してであります。
 国保が一般会計から繰り入れて辛うじて運営されており、その財政運営が危機的状況であることなどから、医療保険制度が抜本的に改正されるまでの臨時的な措置としてはどうしても必要であり、早急に実施する必要があります。
 最後に、私ども市町村が一番重要であると考えております附則に盛り込まれました医療保険制度の改革等についてであります。
 法案には、将来にわたって医療保険制度の安定的運営を図るため、平成十四年度中に医療保険制度の体系のあり方等の基本方針を策定することが盛り込まれております。これは、医療保険制度の一元化を将来の方向の有力な考え方として、昨年末の医療制度改革大綱に基づいているものであり、この一元化の方向に沿った具体的な検討を早急に行い、平成十四年度中に基本方針を確実に策定することを期待するものであります。
 その場合には、私ども国保関係団体がかねてから主張しております、すべての国民を通ずる医療保険制度への一本化の考え方を尊重することを強く望むものであります。
 以上、申し上げてまいりましたが、医療制度、医療保険制度のあり方は、国民生活に直結する重大な課題であります。また、医療保険財政は、各制度とも逼迫し崩壊状況にあります。このような状況を踏まえ、今回の健康保険法等の一部を改正する法律案については、内容的には必ずしも十分なものとは言いがたい点もあります。しかし、当面の対策として、国民健康保険の財政基盤の強化は、直ちにこれらを実施することが必要であり、法案の速やかな成立を望むものであります。
 結びに、市町村住民の間の給付と負担の公平を図り、さらに国民皆保険体制を堅持するため、医療保険制度の一本化、一元化の早期実現をお願いいたしまして、宇都宮市を代表しての意見といたします。
長勢座長 ありがとうございました。
 次に、金子達君にお願いいたします。
金子達君 私は、宇都宮市で耳鼻科を開業している金子と申します。
 まだ開業四年で、大学や看護学校の講師、そして医師会の役員などもしています。臨床医として述べたいことは何時間でもあるんですが、その中のほんの一部を今回述べたいと思います。
 資料の中で一部訂正する場所がありますが、発表をもってかえさせていただきたいと思います。
 まず、医療制度改革研究会、これは構造じゃなくて制度改革研究会というのを宇都宮市の医師会の有志で、第一回、ことしの三月三十日に行っています。第二回を今回、今週の土曜日に予定しておりますが、企画と司会を私が一応担当していまして、今回の陳述もこの会の中で取り上げられたものを一部議題に含んでおります。
 先ほど来話しておられる保険者サイドの問題。医療側だけではなく保険者サイドの問題というのがなぜ問題となってくるかということなんですが、やはり事務の効率化を図るということは一つ重要ですし、財源を一本化するということも非常に効率的だと思います。ですので、一本化ないしはかなり数を減らすということは、今後絶対重要なことだと思っています。
 また、話の内容で、保険組合と病院との直接契約なんかの話もありますが、かかりたい病院に行けないという状態になるようなことではとても問題になります。もし無能な病院と保険組合が契約した場合には、このような契約は全く無効なこととなってしまいます。
 今回言いたいのは、保険者のリストラの方法。要するに、リストラといっても保険者を一本化、なるべく少ない形で財政基盤を徹底的にまとめていくという方法を、時期を策定して公約をしてほしいと思います。今回、四月の保険の改正で医療者がかなり損をしていて、後で述べたいと思います。
 また、下に、表一と表二のように示してありますが、「健康保険組合における厚生省・社会保険庁出身者の採用状況」、俗に言えば天下りに近いようなことが書いてあるんですけれども、毎年減少しています。ですが、まだ現在でもかなりの人数の方がそれぞれ保険組合に就職しているということです。また、保険組合が持っている保養所の推移です。これも年ごとにだんだん減ってはきていますが、現在、収支差、赤字が三百億を上回るほどの現状であるのも事実であります。
 こういった癒着と言っていいのか、天下り体質というか、そういったものとかむだを排除することでも何百億、何千億かの問題が解決されることではないかと思います。一本化という内容と、こういったむだを排除するということは、非常に重要なことじゃないかと思います。
 また、レセプト審査、これは一般の方にはなかなかわからないかと思いますけれども、保険請求すると必ず保険者側がレセプトをチェックします。ところが、今、レセプトをコンピューターデータで健保組合に送るというのはだんだん打ち出されてきているんですが、実際、健保組合側、保険に配付するときには、今度は紙で打ち出すという非常にむだなことをしています。
 また、審査委員は大体常識のある判断で行われる方がほとんどなんですが、一部非常識な方、あるいは事務の方が一方的に非常識な審査をすることがあります。今後、医者以外の医学的知識が少ない人がもしふえてきた場合は、そのような問題がふえるのではないかということで、臨床的にはそこを心配しています。
 あと、薬剤コストの問題があります。
 新発売の薬、新しい薬でも、消費税が全然出ない、マイナスのものからゼロのもの、また収益が三〇%以上出る、薬価差益が出るようなものもあります。また、後発品の中には半額で納入される品物もあります。一般的にこの薬価差益、薬価と納入価格の差は後発品の方が大きいというのを一つ基本的に覚えておいてください。
 また、薬価設定にはかなり構造的に問題があります。多分、データベースのとり方が問題だと思います。市場調査を行い、市場原理を導入してちゃんとそのときそのときの値段を調べていかないと、海外に比べて薬剤の値段が高いんじゃないかというふうなことになってしまうことがあると思います。
 また、私は院内処方ではないので現在関係ありませんが、院内処方の場合は、消費税と在庫負担額がないと当然やっていけません。ですから、差額がゼロでは絶対やっていくことは無理だということも一つお考えください。
 また、厚生労働省の最近の考え方なんですけれども、院外処方を勧めているなら勧めているで、はっきりと差を示してほしいんですね。僻地などで院外処方せんの使用が困難なところは当然難しいと思いますが、原則的に院外処方の方がよいことは諸外国の事実を見てもわかっているので、目先のコストだけを考えずに、長い目で院外処方を厚生労働省が明確に推すべきだろうと思います。例えば、保険点数等の差別化をもっと明瞭化してほしいと思います。
 あと、医療用器具、医療用材料は、先ほど来話が出ているようにかなり日本が高いというのもありますので、この辺もよく調べなくちゃいけない内容だと思います。
 また、私の専門の一つなんですが、漢方関係の話をちょっとここでします。
 漢方科の必要性。医師でも、漢方の勉強をしている人、熱心な人とそうじゃない人がいます。むしろ熱心じゃない人の方が多いんですが。そうしたときに、患者さんが漢方処方を受けたいときの指標として、漢方科という標榜科があると非常に患者さんとしてはメリットが大きいんですね。そこら辺をちょっと取り上げてほしいということと、東洋医学的に治療をしていく場合には、鍼灸や保険適用、例えばがんなどに効く新しい生薬なんかもありますから、そういったものも入れていく必要があると思います。
 また、高齢者と漢方や、医療費削減と漢方については、例えば釣籐散という薬があります。釣籐散という薬は、高血圧、頭痛、目まい、耳鳴りに効く薬で、これらが全部そろっているような疾患の方でも一つの薬剤で効くかもしれません。ところが、これを西洋医学的な治療でいきますと、降圧剤、鎮痛剤、抗目まい剤、耳鳴りを抑える薬、こんな四つにもなってしまうんですね。これを一つの薬でコントロールできるというのは非常に重要なことだと思います。
 また、もう一つ、例えば防風通聖散、これは便秘、肩凝り、むくみ、目まいなんかに効く薬ですけれども、このすべてを取りそろえているという患者さんもいます。でも、その場合はこの一つの薬で済むんです。ところが、それをまた同じように西洋薬にすると、便秘、肩凝り、むくみ、全部薬が違って、四つぐらいの薬が必要になってしまいます。ここら辺も問題なんで、できれば漢方薬をちゃんと取り入れていく医者がふえてくると、医療費の値段なんかもかなりいい方向に向かうんじゃないかと思っています。
 また、病名投与の問題点ですが、漢方における病名投与は、適用病名が少な過ぎるということと、西洋病名がなじまない場合があります。また、保険者側では、しゃくし定規に、投与法で食前食間しか認めない場合もあります。ところが、胃が悪い人が漢方薬を飲みます。食前食間に飲むと胃がおかしくなる人がいるんですよ、やはり。そういう場合は食後というのが専門医の間では常識なんですね。そういったことも考えていないような指導もあります。要するに、審査をする側はもうどんどん勉強していかないとだめだということですね。
 あと、今回は四月の改正で問題点が幾つも出ています。
 病院、診療所としては経営の危機に陥っているところがもう既に出始めているんじゃないかと思います。愛知県の例がここに載っていますが、愛知県の例の場合は、これは参議院の厚生労働委員会で取り上げられていますので今回は数字は出しません。しかし、まだはっきりした数字は、日医であと一、二週間すると第一報が出るという話になっていますが、今回、多分、四、五%ぐらいは少なくとも収益が悪化していると考えた方がよろしいと思います、最低でも。科によっては、もっと悪化している場合があります。少なくとも、全体の改定率二・七%とは全く違います。正確な統計を出すには、患者さんの受診回数の減少などに伴いまして、数カ月は要すると思いますが、かなり減収になることは目に見えています。
 特に、外科系や病院系では、一般的に問題が大きいと思います。また、手術件数、こういう地方の手術件数というのは、そんなに数、疾患はありません。ですから、七〇%減額されることは、かなり多い、問題があります。また、百八十日以上の特定療養費、これは先ほど、先月の厚生労働委員会に出たみたいですが、実際、患者さんは総合で約四〇%も負担しなくてはいけないことになってしまいます。
 あと、もう一つ問題点は、主傷病名と副傷病名というのがあります。これは、現在、医師会でも反対しています。内科などの場合には包括医療として有効ですが、耳鼻科などでは全く事務の煩雑さを増すだけで、全然必要がないことです。
 例えば、鼻水が出ますね。鼻炎で鼻汁が出てきて、診断名、急性鼻炎になりますね。のどが痛くて物が食べられない、急性咽喉頭炎になります。そのとき、強く鼻をかんだら、鼻からばい菌が飛んで中耳炎になります。では、どれが主病名になるんですか。どれが主傷病名になるんですか。みんなそうなんですね。のどが痛いんだから急性咽喉頭炎もありますし、中耳炎もありますし、鼻炎もあります。ですから、これは毎月毎回診察時に主傷病名が変わる可能性が大きいんです。ですから、こんなむだ、事務作業のむだをつくり出しているだけです。ですから、これは私は絶対反対する立場にあります。
 また、次に、カルテの開示。
 これはこれから必要なことだと思いますが、私なんかは、毎日百人ぐらい患者さんが来ます。その忙しい中で、私も余り字はうまくありませんので、うまく患者さんに見せられる字を書けるかどうかというのも問題ですし、電子カルテにするのにはより時間がかかります。そういったコストに対する優遇措置が必要だと思います。
 要するに、カルテ開示に必要な問題点は二つあると思うんですけれども、悪性で、がん等の告知問題。がんを患者さんの対応ができる前に告知した場合には、当然、自殺とかいろいろなトラブルが起こります。そういった問題点が一つと、カルテには、そのほかに患者さんの性格などが書いてあることがあります。この患者さんは短気だ、待てない、そういったことが書いてあるので、それは記載方法の変更で何とかなると思いますので、そこら辺をうまく改善する方法さえ考えれば、患者さんへのカルテ開示は可能だと思います。ただし、こういうカルテ開示のためには、レセプトや電子カルテの整備のためと同じように、IT化に資金的な優遇措置を加えてほしいと思います。
 また、医学教育のことですけれども、人生経験豊富な学士入学を今後増加させる。海外でも多いんですが、そういうことをやっていってほしいと思います。
 あと、生活できない研修医はなくしてほしい。
 あと、医局講座の問題。私も医局の方にも半分属していますけれども、出張先の問題、出先病院の問題、こんなことはかなりいろいろ問題が出てきますので、再検討を要します。
 あと、研究と臨床をもっと分けて、臨床医の教育に力を入れてください。論文はよく書けても、診療の下手な医師はたくさんいます。そこを見分ける力も必要だと思います。
 また、開業医の卒後教育、研修病院も必要となってきます。これは、地方の医師会主導で企画作成をすべきことです。しかし、資金的援助を厚生労働省で行う必要があると思います。
 ほかにも、もう現状少し行われていますが、ベッドの再配分や、かなりの研修内容を地元の、地方の医師会に委託することがこれからは求められると思いますし、その方がよいと思います。
 僻地の問題もありますが、これは小笠原に、私は、十三年間、時々行って診療所で非常勤をやっています。そのときに、自衛隊にはお世話になっているんですが、飛行艇などでも結核や精神科の患者さんは時々輸送されないようなことがあるように、今後、可能性が出てくる人いますので、そこら辺を再検討してほしいと思います。
 いずれにせよ、少子高齢化が日本の中で取り上げられてきています。できれば二割負担をもう少しふやして、国が子供を大事にしていることを示したいんなら、より資金的に子供をかかりやすくする必要があります。お金がないから医者にかかれないでは、とても済まないと思います。
 最後に、あした金曜日、与党は野党抜きで健保法改正案を強行採決するのではないかとよく新聞に、きのうもきょうも報道されていますが、もし事実とすれば、非常に残念です。私たちがこうやって政治に希望を持っているように、本日の意見を踏まえて、できれば十分な審議を経て、よりよい法律にしていただけるように強く要望したいと思います。
 御清聴ありがとうございました。
長勢座長 ありがとうございました。
 次に、柴野智明君にお願いいたします。
柴野智明君 私、栃木保健医療生活協同組合の柴野でございます。どうぞよろしくお願いします。
 今回の健康保険法等の一部を改正する法案について、幾つかの点にわたりまして意見を申し上げたいと思います。
 まず、今回の健康保険法改正案は、労働者と七十歳未満の年金生活者、その家族の自己負担を三割に引き上げ、高齢者には負担増と立てかえ払いを強いる改正案であるというふうに言わざるを得ません。
 患者さんの痛みとして、窓口負担増がさらに拡大すると思います。
 第一には、窓口負担増の計画であります。
 老人医療の対象年齢の変更、現在の老人医療の対象年齢七十歳以上を、一年に一歳ずつ、五年かけて七十五歳以上に引き上げ、老人医療の対象人口を計六百万人削減することを提案しています。このことにより、一年に約百二十万人の高齢者が老人医療の対象に移行せず、一方、毎年亡くなる方が約六十万人おられることから、今後、老人医療の対象人口を差し引き約六十万人ずつ削減されることになります。
 窓口負担率の変更では、加入している保険の種類に関係なく、年齢と所得で窓口負担率を、七十歳以上は一割負担、七十歳以上で一定の所得以上の方は二割の負担。この一定所得以上の方というのは、夫婦二人の年収で六百三十万、単身者で三百八十万程度が考えられています。三歳以上七十歳未満は三割負担、三歳未満は二割負担というものです。
 第二に、高額療養費の償還控除額の引き上げでございます。
 患者さんの窓口負担には、月単位で負担限度額が決められています。これまでは、医療機関単位で窓口上限が決められている月額上限、老人の外来と入院と、一たん一部負担金を全額払って、負担限度額を超えた場合、後から申請して払い戻しを受ける高額療養費制度というものがあります。
 今回の改正案では、この月額上限制度を廃止し、老人の方の患者負担に、外来、入院を区別した新たな償還払い制度を導入することを提案しています。
 この仕組みは、一つに、すべての高齢者がかかった医療費の一割ないし二割を一たん窓口で払う。二つ目に、高齢者ごとに月別に複数医療機関の支払い額を合算し、償還控除額を超えたかどうかを確認する。三つ目に、超えた場合には、領収書を持って役所の窓口で払い戻しの手続を行う。四つ目には、超えた額が二カ月後に指定口座に払い戻しされるというものでございます。
 第三に、七十歳以上の外来窓口負担への償還制導入でございます。
 この仕組みの問題は、従来のように、各医療機関の窓口において、個々の患者さんの月額上限の管理ができなくなる点でございます。今後は、高齢者自身がこの仕組みを知った上で、領収書を整理、支払いを合算しなければなりません。病気がちで交通手段に事欠くことが多い高齢者の方に、このような煩雑な仕組みを導入しようとしています。
 この仕組みが外来や在宅の支払いに導入されるのは初めてのことでございます。提案どおり償還払いが実施されれば、支払いされるかどうかなど高齢者の方自身が判断して、手続をしなければならないわけですから、制度がわかりづらいことなどで多数の手続漏れが出ることが心配されます。
 第四に、実際に窓口負担がどれくらいの負担増になるかということでございます。
 サラリーマン本人の場合、窓口負担が二割から三割に引き上げられますと、負担額は単純に一・五倍になりますが、入院の患者さんや重症の方など、医療費が多くかかる方の負担が大きくはね上がります。
 私どもの医療機関は入院ベッドを有する有床診療所でございますが、外来に来られている患者さんが、例えば、六十一歳の男性で糖尿病の治療で月二回の定期通院をされている方は、現行では五千七百六十円。さらに、プラス外来薬剤一部負担金八百四十円というものがございます。改正案では、一・五倍の八千六百四十円。この改正のときには、この一部負担金は廃止になります。また、五十八歳の男性で高血圧の治療で月一回の定期通院されている方は、現行では三千九百二十円。さらに、一部負担金の薬代が九百円。改正では、一・五倍の五千八百八十円。
 七十歳以上で一定以上の所得がある方の場合は、定額負担または一律一割から二割に引き上げられます。例えば、七十一歳の男性で高血圧の治療で月二回の定期通院されている方は、現行では千七百円。八百五十円が二回ですから、千七百円。改正案では、一・四倍の二千四百五十円になります。
 七十歳以上で一割の場合、一定以上の所得がある方と同様に、定額制廃止、月々の負担上限額の引き上げが大きく響いてきます。医療費が多くかかる方の負担が大きくはね上がります。例えば、九十一歳の男性で慢性呼吸不全で月二回の訪問往診、在宅酸素療法を実施している方は、受けている方は、現行千七百円でございます。改正案では二万四千九百二十円、十四・六倍で、月額二万三千二百二十円負担増になります。ただし、この方は、七十歳以上の一般に該当し、申請により償還払いを受けたとしても、結局、月額一万二千円の負担で、現在の千七百円に比べますと、約七倍にもなります。
 また、七十歳以上で低所得者の方で、七十九歳の男性は高血圧で月二回の定期通院をされています。この方は、現行では千七百円、改正では一・一倍の千九百九十円です。金額では二百九十円のアップとなりますが、この方は年金暮らしでございます。年金が月額三万円で生活されています。日々の生活は本当に質素なものです。毎日の食事にかける十円、二十円のお金を大事に使われています。このような方もいるということも御理解いただきたいと思います。
 ことし、国連の第二回高齢化に関する国際会議がマドリードで開かれました。そこでの基調は、高齢者は社会の重荷ではなく、資産ということが国際会議の基調であったというふうにお聞きしました。しかし、今回の改正案に見られますように、国民に負担増を押しつける一方、国の負担は減らし続けています。高齢化社会に向けて国庫負担をふやすべきところなのに、国はその責任を放棄していると言わざるを得ません。
 これ以上の患者負担は、患者さんを病院から遠ざけることになり、病院に行くのを我慢した結果、病状を悪化させることにもなり、さらに大きな出費が必要になります。高血圧や糖尿病などの慢性疾患で長期間の通院が必要な患者さんは、負担増の影響ははかり知れません。
 最後に、自覚症状のある方の一四%が受診を我慢しているということです。
 二十五歳から六十四歳の現役世代の有訴者、病気やけがなどで自覚症状のある方の割合が増加しています。一方、通院者の割合は、一九九五年から九八年にかけて減少しています。非通院率は、一九九八年に一四%まで増加し、一九九五年には一〇%、十人に一人が新たに通院しなくなっています。一九九七年に健保本人の窓口負担が一割から二割に引き上げられ、負担がふえると受診する人が大幅に減ると予想されていましたが、それを証明する結果となっています。
 今回の健康保険法、本人三割負担に引き上げる改正案を提案されていますが、さらに受診を我慢する人がふえることが心配されます。よって、私は、患者さんに負担増を強いる健康保険法等の一部を改正する法案に反対いたします。
 以上でございます。
長勢座長 ありがとうございました。
 次に、太田秀樹君にお願いいたします。
太田秀樹君 ただいま御指名いただきました太田でございます。お手元に私の陳述用資料がございますので、参考にごらんください。
 私は、十年ほど前から在宅医療を精力的に推進いたします診療所を運営いたしまして、現在約二百名の方々の在宅療養のお手伝いをさせていただいております。二十四時間、三百六十五日の支援を、四名の常勤医で当番制を用いて行っております。対象者の約七〇%が高齢者でございまして、あとは障害者あるいは神経筋難病の方、そして在宅で人生の最期をとお望みになっておられますがん末期の方などをお世話しております。
 限られた時間で在宅医療の姿をお伝えすることができませんので、新聞等で紹介をされました内容をお読みいただきたいと思いますが、患者の生活に最も近いところで医療を行っている者でございます。
 今回の医療改革でございますが、本当にむだが省かれ、合理的に、効率的に、かつ効果的な医療が提供できる環境整備につながると期待できるのかと申しますと、現場にいる者といたしましては、決して満足できるものではございません。疑問をいろいろ感じております。
 高騰し続ける医療費をどのように抑制するかという問題につきましては、これは我が国の問題だけではなく、先進諸外国が押しなべて頭を抱えている問題でございますが、例えば長期入院の是正という視点でも、在宅医療の推進は医療費削減に極めて効果的でございます。さらに、財政論を優先させるまでもなく、極めて人道的な医療でございます。
 インフォームド・コンセントあるいはリビングウイル、患者の権利の再認識、再確認、そしてカルテの開示など、医療を取り巻く環境が大きく変わってまいりまして、国民の医療に対する意識改革も進んでまいりましたが、患者中心の医療、これを具現化いたしました医療形態は、まさしく在宅医療ではないかと信じております。
 資料の二でございますが、一枚めくっていただいたところでございますが、この記事は共同通信社が全国に配信したものでございます。この症例、実は最近亡くなられたんですけれども、在宅でがんの末期を過ごされた方でございます。
 この方のレセプトを資料五でお見せいたします。
 資料五の左側がこの記事に登場しております前立腺がんの男性でございます。これがレセプトでございますが、左側のレセプトをごらんいただくとわかりますが、一部負担金三千四百円となっております。医師が七回訪問しております。そして、尿管の導尿のカテーテルの管理等を行い、訪問看護を受けながら在宅で療養されまして、三千四百円御負担になっているわけでございますが、かかりました医療が、一万一千五百六点でございまして、約十一万でございます。
 しかし、今後、一割あるいは二割負担ということになりますと、これは単純な計算式で負担額がはじき出されることになります。週に二回往診を受けて、医療費が約十一万でございます。
 ところが、この症例が、病院に入院いたしますと、これは特に積極的な医療を受けなくとも、少なくとも五十万、場合によっては、濃厚な医療が提供されますと青天井でございます。特に、死亡前三カ月ぐらいの間に相当医療費がかかっているということは既に報道されておりますが、在宅療養はその支出の三分の一から五分の一程度の出費で済んでおります。
 ところが、個人負担が一割、二割ということになりますと、経済的な理由で在宅療養が困難な症例が増加することが予想されます。
 資料五の右にございますのは、この症例は月に二回訪問した例でございます。月に二回訪問いたしまして、医療費は一千七百円です。ただ、御本人が御負担になっている額は、これにプラス介護保険料でございます。
 実際、要介護状態でみずからの意思で医療を選択できないような虚弱な高齢者に対しましては、例えばおむつ交換は一日二回にしてくれといった苦情が舞い込みます。わずか百円程度のおむつ代を節約しようという家族は、決して少なくございません。ぬれたおむつ交換をしないのは、これは老人虐待でございますが、虐待という意識は現在の日本の家族にはございません。幼児、子供をお育てになった方、御想像いただくとおわかりかと思いますが、お子さんのお世話をするときには、おむつがぬれたか、ぬれないかという状況で恐らくおかえになったことだと思いますが、親の介護となりますと、このようなことを平気で言ってくる家族が少なくございません。
 三年前の夏でございますが、私どもの施設から家族の強い希望で退所された方が、医療費の問題で訪問看護を拒否されまして、わずか二週間後には脱水と低栄養で死亡した例がございます。これが介護放棄だとすれば、これは場合によっては犯罪かもしれませんが、病態を悪化させてから救急車で救急病院に担送され、こってりとした医療が行われるということを考えますと、これは、かえってその医療費を増加させるという問題だけでなくて、人権という観点から非常に問題がある状況ではないかと思っております。
 高齢者の中には、痴呆や数々の身体的障害で家庭内の立場が弱くなりますと、個人の年金ですら自分で自由に使うことができず、家族に搾取されていることは決してまれではございません。
 弱い高齢者の医療負担増は、恐らく、ねらいどおり受診抑制へとつながり、最低限必要な医療支援すら十分に行われなくなると思います。病態を悪化させ、複雑化させた上での濃厚な施設医療に結局つながっていくのではないかと懸念されます。
 経験的に、高齢者の抱える健康問題、医学的問題は、脱水、低栄養、薬物の過剰投与、多剤投与でございます。高齢者の抱えるこういった問題の解決には、医療以外にさほどお金のかからない解決法が多々ございます。早期な適切な対応が介護予防となり、在宅療養の推進、在宅でのみとりへの国民的合意というのが、結局むだな医療費を少なくするというふうに感じております。
 少々時間をいただければ、薬物の問題にも少し触れたいのですが、資料六は、大変ポピュラーな高血圧症の治療薬の値段リストでございます。ちょっと字が小そうございまして見にくいかと思われますが、一錠二百九円のものもございます。安いものですと、いわゆるジェネリック品と言われる、後発品と言われるもので、十円以下のものもございます。この差二百円でございます。毎日お飲みになりますので、一カ月で六千円薬剤費が変わってまいります。一剤でございます。年間で七万二千円の差でございます。
 今後、自己負担増となれば、より安い薬を患者さんが希望することも十分考えられます。さらに、包括制が進みますと、包括制は私は基本的には反対ではございませんが、より安い薬が使われる傾向は否めません。
 投薬の内容というのは、EBMに代表されますように、医学的根拠に基づくものであり、良質の医療というものは経済的な誘導で行われるものではございません。科学としての本質、医療の本質を揺るがす危惧を捨て切れません。
 そして最後に、これはぜひ皆様に実態を御理解いただきたくお示しいたしますが、資料の七、これはメソトレキセートという薬剤でございますが、四十九円五十銭のお薬が、あるときリウマトレックスと名前を変えて登場いたしまして、四百十七円四十銭になっております。商品名を変え、力価を変え、そして薬効は同じ薬品でございますが、化学物質としての薬効は同じでございますが、薬剤費を見直すという中でこういったことが行われているというのが現状でございます。全く同じ薬がどうして、力価も下がって、二・五ミリが四十九円なのに、二ミリがなぜ四百十七円なのかということで、これは、派遣委員の先生方の中に医師の方もいらっしゃいますので、こんなことは言わずと知れたことだと既に御存じのことだと思いますが、この場をかりてこういう実態を示したいと思います。
 弱い高齢者に対する自己負担増は、現状をかんがみる上で必要な医療の機会を奪うものであります。在宅医療の推進という文言は、今回の医療改革から消えておりますが、在宅医療の推進こそ医療費の高騰を防ぎ、国民の医療への信頼回復を期待できる具体的な方法だと考えております。自己負担増は、とりわけ在宅療養の健全な発展に大きく水を差すものと考えています。
 在宅療養の現場では、おびただしい数の残薬を居宅に足を運ぶと発見することがございます。日本薬剤師会の調査では、一医療機関平均四・三剤の薬剤を高齢者に投与し、それぞれの高齢者は約三カ所の医療機関をはしごしているということでございまして、十数種類の薬をもらっております。これらをすべて服用しておりますと恐らく病気になるでしょうから、適当に飲んでいるわけでございますが、自宅にため込まれております。
 私が最初に家族から質問を受ける内容は、薬の処分法でございます。生ごみか、危険物か、燃えないごみか、自治体の焼却炉の温度によって分別が違うようでございます。ぜひリサイクルしたいと私は思っております。
 自己負担を増額させるような方法ではなく、適切に薬剤が投与されるような仕組み、ルールの整備が先に行われるべきではございませんでしょうか。正しい薬を正しい口に、これは昨年訪問いたしましたデンマークの保健省で伺った言葉でございます。
 少々時間を余分にちょうだいいたしましたが、以上、私の陳述でございます。
 御清聴ありがとうございました。
長勢座長 ありがとうございました。
 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
長勢座長 これより委員からの質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤勉君。
佐藤(勉)委員 自由民主党の佐藤勉でございます。
 本日は、意見をいただきました皆様方には、大変お忙しい中、この場に駆けつけていただきまして、まずもってお礼を申し上げたいと思います。
 いろいろ皆さんから御意見をいただきまして、皆さんが抱えている現況を本当につぶさにお伺いをすることができました。
 この健康保険法等々の改正に当たりまして、今までこの委員会としては五十時間を超えるような、まだ審議が少ないという御意見もあったようでありますが、私どもは真剣にそれなりに頑張ってきたということも踏まえて、御理解を賜りたいというふうに思います。
 もちろん、我が国の少子化そして高齢化というのは、もう世界に類を見ないスピードで増大をしているということだと思います。また、景気が低迷をして、失われた十年と言われるように、大変保険料等々が伸び悩んでいるというのも御承知のとおりだと思います。皆様方からお話があったように、保険財政は破綻の危機に瀕しているということも、皆さんもおわかりをいただいているところだと思います。
 私は、この国民皆保険というのは、世界に誇れるものだというふうに受けとめさせていただいておりますし、国民だれしもが保険証一枚で医療を受けることができるというのは本当にすばらしいことだというふうに思いますが、一方、安易にという気持ちになってしまうところもあるというのも、私自身が思っているところであります。
 医療改革について、関係者の利害が複雑に絡み合いまして、コンセンサスを得ることはなかなか容易ではないというのは今回の委員会を通じてつくづく感じておりまして、いろいろな先生方から、堂々めぐりの論議をいつまでしているんだというふうな話があることも十分に理解をしているところであります。
 ただ、私は、やはり保険財政を破綻させることなく国民皆保険というのは絶対に堅持するものだというふうに理解をしている一人でありまして、自由民主党として見ても、国民健康保険が既に三割負担であることや、保険料の引き上げ幅を圧縮するために厳しい選択であるというのは私ども本当に体で感じておりますけれども、あえて今般の健康保険法等の改正案においてサラリーマンの方々の三割負担の導入を行うこととしております。先ほど関谷参考人の話を十分に踏まえた上での話でございまして、その辺のところはぜひとも御理解をいただきたいと思います。
 同時に、平成十四年度中に医療保険制度体系のあり方、そして新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系のあり方について基本方針を明らかにするなど、抜本的に取り組むこととしております。
 こうした観点に立って、皆様方に御質問をさせていただきたいと思います。
 まず初めに、県議会時代、私は二期ほど福田市長と一緒に仕事をさせていただきました。その福田市長に、大変な御苦労をされているなというふうな意見の陳述をいただきましたので、その辺について若干御質問をさせていただきたいと思います。
 国民皆保険を支える国民健康保険制度を運営する市町村において、被保険者の高齢化に加えて、先ほどお話にございましたように、無職者や低所得者が増加しているというお話がございました。大変な御苦労をなされているということで、心からの敬意を表したいと思う次第でございます。
 厚生労働省が発表している平成十二年度の市町村国保の財政状況を見ても、市町村が運営する国民健康保険の赤字は、市町村一般会計からの赤字補てんを含めると三千億円以上の赤字となっております。国民皆保険を守る上でも、早急に市町村国保に対する対策を講じる必要があると私は考えております。
 今回の制度改革においても、こうした国保の現状を踏まえて、老健拠出金の算定方法の見直しに加えまして、低所得者を多く抱える保険者を支援する制度の創設といった財政基盤強化を講じることになっておりますが、これらの制度改革について、住民の健康や福祉を預かる市長のお立場として、また国保の運営に当たっておられる立場として、今回の改革をどのように評価されているのかお伺いをします。
 また、今後の医療保険制度の抜本改革についてどのような期待を持っておられるのか、あわせてお伺いをしたいと思います。
福田富一君 それではお答えいたします。
 まず、国民健康保険制度の改革についての評価でございますが、先ほど概略申し上げましたが、改めて申し上げますけれども、御指摘のとおり、市町村の国保は一般会計からの多額の繰り入れ等によって辛うじて運営されているのが現状でございます。宇都宮市におきましても、十三年度約十五億ほど繰り入れをしております。
 老健拠出金の算定方法の見直しにつきましては、全国の首長は、自治体の負担増が今後見込まれることから不満もあるわけですが、老人医療費を全国民で公平に負担するという老人保健制度の趣旨を踏まえ従来から主張してきたものでありますので、法改正につきましてはぜひとも実現をしていただきたいと思います。
 国保の財政基盤強化策につきましては、現下の国保財政の現状にかんがみて、医療保険制度の抜本改革までの間の当面の措置として確実に実行する必要があると考えております。
 これらの改正は直ちに実施する必要があり、評価に値するものでありますが、将来にわたって医療保険制度の安定的な運営を図るためには、一元化の方向に沿った具体的な検討を早急に行い、本年度中に基本方針を確実に策定することが重要であると考えております。
 以上です。
佐藤(勉)委員 大変いろいろな面で市長さん、御苦労なさっていると思いますが、先ほどいただいた御意見等々を確実に私ども反映をさせてまいりたいと思っておりますので、御支援方をよろしくお願い申し上げたいと思います。
 また、奈良先生にちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。
 先ほど、先生の御意見の中で、大変御評価をいただいているというお話等々伺いまして、意を強くしているところでありますし、お話にございましたように、WHOからも、我が国の医療制度に対しての評価、世界第一という評価もいただいているというお話もあります。こうした成果を今後とも守っていく必要があると考えますし、今回の制度改革においても、少子高齢化の進展に伴う医療費の増大や、経済が低迷している中で、いかに国民皆保険の維持を図るかという最大の眼目となっているところであることは御承知のとおりだと思います。
 現場での医療に直接携わっておられる立場から見て、我が国の医療保険制度、特に国民皆保険という特色についてどのような評価をされているのかお伺いをしたいと思います。
奈良昌治君 私は赤十字で勤務しておりましたのですが、赤十字というのは、諸外国に出ていって諸外国の医療とかそういうものを見るチャンスが非常に多いんです。そうすると、我が国の医療制度というのは世界一だなと思って誇りを持っております。
 外国で、アメリカで仕事をしていたこともありますけれども、アメリカの医療というのはかなり偏りがある。それから、カンボジアとかケニアとかスーダンとか、そういうところへ行ってまいりましたけれども、それは惨たんたるものです。
 そうすると、日本の医療というのは何でこんなにいいかといったら、やはりいろいろ先人が築き上げてきた国民皆保険制度でございますが、さて、ここでこの国民皆保険制度をいかに守るかという方法論になってくると思うんです。
 国民皆保険というものの、保険の中にはいろいろな種類がありまして、非常に豊かな保険組合と非常に貧しい保険団体がある。それから、市町村になると、収税率がもう既に九〇%を割っちゃったというところもございますし、宇都宮市より足利市の方がもっと状況は悪いんじゃないかと思っております。そういうことを考えますと、人の上に人をつくらずという話がありますけれども、病人に差別があってはいかぬ。
 そうなってくると、皆さんすぐおわかりだと思います。保険というのは、丈夫で元気なときに金を積んでおいて、病気をしたりけがをしたり年をとったときに面倒を見てもらうというのが保険の定義でございます。そうなってくると、元気で働いているときに積み立てたお金が使えないのはおかしいじゃないか。これはもう素朴な疑問でございまして、ここにいらっしゃる皆さん方もやがては年をとられて、今度は定年になられ、あるいは老人になるわけですから、そのときに今まで取られていたいろいろな保険が通用しないというのはちょっとおかしいなと。
 ですから、私は、福田市長さんのおっしゃるように、保険は将来統合すべきである。ただ、一度に統合というのは、これは無理な話でございますから、被用者保険と国民保険と二つに統合しておいたところで、何年かかけて一緒にするという考え方が穏当じゃないかなと思っております。
 それから、やはり日本の医療というのはすばらしいんですけれども、多少ゆがみ、それからむだのところもございますので、それをみんなで知恵を絞って、それから国会の方もみんな知恵を絞っていただいて、いかに世界に誇る日本の国民皆保険制度を維持するかということが大切だと思いますので、それはぜひ先生方にお願いしようと思っております。
 以上でございます。
佐藤(勉)委員 ありがとうございました。
 まだまだお話をお伺いしたいというところでありますが、ちょっと時間が参りましたので、関谷社長にもお伺いをしたかったんですが、大変恐縮でございます。
 ただ、皆様方からいただいた御意見は、先ほども申し上げましたように、私どもしっかりとお伝えをさせていただきまして、今度の改正にしっかりと反映をさせていただきたいと思っております。
 先ほど御懸念の御意見がございましたが、決してそんなことのないように、私ども真摯に与党と、自由民主党としても頑張ってまいりたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 ありがとうございました。
長勢座長 次に、水島広子君。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 改めまして、意見陳述者の皆様にお礼を申し上げたいと思います。
 本日は、お忙しいところ、お時間を割いて御意見をいただきまして、この地元の意見を国政に届ける機会に御協力をいただきまして本当にありがとうございます。限られた十五分という時間の中で、できるだけ皆様にお伺いしたいと思いますので、ぜひ簡潔なお答えをいただけますようにあらかじめお願いを申し上げたいと思います。
 さて、今までも十分な御議論もあったところでございますけれども、やはりこの日本の医療制度を考える上で、私は、今まで、財政の問題と医療提供体制、医療の中身の問題とが常に混同して語られてきたために、それぞれがそれぞれの足を引っ張るというような、そんな不幸な結論になってきているのではないかという感想を持っております。
 医療提供体制に関しましては、本日の御意見にもございましたけれども、日本はまだまだ充実させなければいけないところがある。医療費全体を見ましても、本当はOECD諸国の中で見ましても日本は決して医療費が高い国ではないわけですけれども、そうは言っても、今この財政の問題はある。この二つをある程度それぞれの問題として考えていかなければいけないと、本日の御意見を伺いましてまた改めて考えたところでございます。
 ただ、直近の医療を見ますと、財政の問題と医療提供体制の問題は別だといいましても、やはり普通の目で見たときに、これだけいろいろなところにむだがあるのに、財政が苦しいということで自己負担を上げられてしまうということには納得がいかないというのが極めて一般的な目ではないかと思っておりまして、私は、本日いただきました時間の中で、このむだということに関しまして皆様に質問をさせていただきたいと思います。
 まず、金子さんにお伺いいたしますけれども、実際に今開業していらっしゃるわけですが、開業されていて、医療そのもの以外にむだなお金がかかっていると思われる点、つまり医療費の医業外流出という問題でございますけれども、それはどういうところにあるとお感じになっていらっしゃいますでしょうか。
金子達君 むだというのはたくさんありますが、むだが必要なことも若干あると思うんですね。
 先ほど来話しているレセプトなんかでも、四月にかなり改正があって、そのたびにコンピューターのデータを変えなくちゃいけないとか、バージョンアップをしていかなくちゃいけないとか。また、これはむだというか何というんですかね、患者さんへの説明、インフォームド・コンセントのためには、いろいろビデオシステムを入れなくちゃいけない、顕微鏡を入れなくちゃいけない。総合的に、お金の評価には全然なりませんけれども、患者さんに対して満足していただけるようなことも、かなりむだといえばむだなんです。
 また、先ほど話したように、医療制度改革研究会というのを宇都宮の有志でやっていますが、その中では、例えば機械で、MRIの機械なんかが高い、あるいはメンテナンスが高い、諸外国に比べてメンテナンスが高くて、またメンテナンス自身も統一化されていないようなことをよく言われています。
 そういった、ただ買ったとしても、さっき奈良先生の方でも、実際設備投資するお金も余りもう残っていないような医療改革になっていると。そしてまた、それに対するメンテナンスに対してもかなり膨大なお金がかかってくる。こういったことも、うまく政府あるいは国会で監視して、そこら辺のむだを排除するということも非常に重要なことじゃないかなと思います。
水島委員 ありがとうございます。
 また、こういう医療費の中のむだの最たるものというのは、いわゆる悪徳医療機関なのかなと私は思うところもあるんですけれども、この医療の質の問題。例えば、一連の制度改正を見ていても、なかなか制度改正そのものが医療機関の質を峻別していくようなものになっていないために、総枠をかぶせてしまうような形にしてしまいますと、これは悪貨が良貨を駆逐していくというような構造になって、より悪徳のところの方が生き残りやすくなるという構造を生むのではないかと思っておりまして、この医療の質をどうやって見きわめて質のいいところだけを生き残らせていくかということは、かなり重大な課題でありながら、なかなか手がつけられないところではないかと思っております。
 悪質な医療機関を淘汰して良質な医療機関が残っていくためには、金子さんはどうしたらよいとお考えになりますでしょうか。
金子達君 非常に難しい質問だと思うんです。太田先生なんかの方がかえって向いているかもしれませんけれども。
 私が思うに、やはり今患者さんは踊らされている面がかなりあると思うんですね。
 医療機関は、それぞれいろいろな特性を持っています。医者もいろいろな人がいます。だから、その個々の医者のレベルに対して、今のところ、だんだん医療法も改正されてきてオープンになってきましたけれども、もっと開示していく、オープンにしていく。カルテ開示だけじゃなくて、病院自身のいろいろなことに対してもオープンにしていく。インターネットのホームページを使うのもよろしいですし、いろいろな意味でオープンにしていきます。
 それをまた患者さん側も、やはり自分がかかるんですから多少なりに勉強して、自分がいいところにかかりたいと思ったら、やはり勉強しないといけないと思うんですよね。それから来て、医者を選ぶのがいいと思います。
 だから、両方とも、医者側も開示する必要がある。いろいろな意味で開示して、変な意味じゃなくて広報活動をしていく必要があると思います。そんなことですかね。それと自然淘汰でいくしかないんじゃないかと思うんですけれども。医師会でそれを、この医療機関は悪いというのは言えないと思う。
 ただ、余りにも言語道断なことをやっていることは、よく医師会内部の会議でも出てきます。これは、余り表に出ない内容でも、医師会内部の会議でも出てきます。それについて、諸外国の医師会では、かなり医師会内部でセルフコントロールをするようなことをしています。だから、そういうのを積極的に医師会の方に任せるのも、地方の医師会に任せるのも一つの方法ではないかなとは思っています。
水島委員 ありがとうございました。
 私も医者の一人でございますけれども、確かに、あれもだめ、これもだめという形で枠をかけていくよりは、本当に一生懸命働こうとする医療者がよりやる気を持っていけるような仕組みが望ましいのかなと思いますけれども、今お話に出ました医師会内の自浄作用というものも、ぜひこれを機会に御検討いただければと思います。
 さて、次に奈良さんにお伺いいたします。
 本日のお話に直接関係ないんですけれども、医療の大先輩でございますので、それに甘えて伺わせていただきますけれども、この医療のむだということでよく話題に出てまいりますのが、いわゆる終末期の医療でございます。
 終末期の医療の迎え方にはもちろんいろいろな形があるわけですけれども、今日本はかなりの割合で一律に非常に高度な機器につながれるような形で、人生の最後の数日間にかかる医療費の多さというものが、データもあるわけでございますけれども、このような終末期医療のあり方について、これをちょっと医療のむだという観点から語るのも一面的であるわけですけれども、この終末期医療のあり方についてのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
奈良昌治君 これは非常に難しい問題で、よく私の外来に御高齢の方がお見えになって、私はいつ死んでもいいんだとおっしゃるんですね。では、何でお見えになりましたかと言うと、いや、今死にたくないんだと。本当に笑い話のようなことがいっぱいあります。
 それから、よく我々が経験しますことは、これは全くだめだろうと思っていた人が、何日かたって奇跡的に助かるということもあります。それは本当に、そういうことを言っちゃいけないのかもしれないが、神様じゃないとわからないケースがあるんですね。ですから、現場のお医者さんはどうしても全力投球をしてしまう。私は監督者でありますから、もう全力投球やめろということも言えない。だから、やはり医師の経験がそういうもので一番頼りになるんじゃないかと思います。
 それから、家族の御希望もありますけれども、これは日本ではまだ安楽死問題とかそういうものは出ておりません。これは非常に難しいので、一概にお答えはできませんけれども、やはりケース・バイ・ケースだろうという言い方でございます。
 それから、医療のむだで私が非常に気がつくのは、これは医療費問題の方になって、中医協問題になってくるんですけれども、今、大きな病院は何科受診しても診察料は一回しか取らないということになりました。そうすると、「わかさ」とか「健康」とか健康雑誌が非常に今ブームでございますが、ああいうところで、大きな病院に行きなさいよ、ついでにいろいろ診てもらいなさい、年をとるとあっちこっち壊れていますよと。中には、朝おいでになって、お年寄りの方というのは時間に余裕がありますから、一日ゆっくり時間をかけて、夕方までかかって何科も受診するということがあるわけですね。これは明らかに私はむだじゃないかと思っています。だから、そのあたり、やはり診察料の設定や何か、ちょっとボタンのかけ違いがあったかなと思っております。
 ただ、むだだということを言うことは非常に易しいんですけれども、本人の立場に立ってみると、おれはむだな人間かとはなかなか思えないので、だから、それはやはり、我々の世代になるとちょっとそういう気持ちもわかってくるんですけれども、今ばりばりの若い方々が、もうあれだけ年をとって、腰が曲がって、よくあの人生きているなというふうにお考えの方もあるかもしれませんけれども、本人にとっては、やはり人生を全力で生きている人もいるわけですから、これは非常に難しい。
 だから、やはり本人の意思。結局、本人が、おれに何かあったときには余分なことをしてくれるなと書いてあれば一番よろしい、そういうことでございます。ぜひ皆さん方も、そういうときにはこうだということをあらかじめ文書にしていただくのが、一番医療のむだを省く方法だと僕は思っております。
 以上です。
水島委員 ありがとうございました。御本人が選択できるだけの基盤をつくるというお話かと承りました。
 次に移らせていただきますけれども、今度は福田市長にお伺いいたします。
 本日のいらっしゃっている中で、唯一国保の運営に当たっているというお立場からお伺いしたいんですけれども、保険者というものは、単にお金を集めてお金を払うというお金を素通りさせるだけの機能ではなくて、当然、保険に加入している方たちの健康を守って、できるだけ医療費を増大させないようにしていくような、また、医療そのものをチェックしていくような、そういった機能も保険者は持っている、あるいは持つべきであると言われているわけでございますけれども、今現在、どのようにその機能が果たされているのか、今の法律の枠組みの中ではこういうことをしようとしてもできないんだというのがどのあたりにあるのか、御意見がございましたら、お伺いしたいと思います。
福田富一君 御質問に的確に答えられるかどうか、ちょっと不安なんですけれども、医療費を削減していくためには、どなたも健康であれば一番いいわけであります。
 そういう中にありまして、一つは、小児医療あるいは深夜帯の医療体制の整備、そしてまた、高齢者の福祉サービスの中では生きがい対策づくり、さらには、成人については、さまざまな健診体制があるわけですけれども、受診率のアップ、この三つが今考えられるかなと。
 深夜の小児医療あるいは深夜医療、これらにつきましては、医師会の協力をいただいて、ことしの四月一日から、二十四時間で小児科、内科については診療のシステムができ上がりまして、東京の大学病院からも大勢お医者さんに助けていただいての状況でありますけれども、これによって、小児の医療体制というのは何とか宇都宮では整ったかなと。我慢をさせなくてもすぐに病院に行って適切な治療が受けられる、こういう仕組みができた。
 それから、健診率のアップにつきましては、なかなか我々の世代は受けない。何とかこれを、事業所の協力などもいただいて健診率の向上に努めているんですけれども、これまた非常に難しい課題であります。しかし、これを限りなく一〇〇%に近づけていくことができれば、医療費の削減には当然結びついていくというふうに思っております。
 さらに、高齢者でありますけれども、今までは施設整備を中心に考えて、高齢者を施設に預かってもらう、こういうことを中心に考えてきましたけれども、最も理想とするのは、在宅で介護をしながら生きがいというものもお持ちになって生活ができる、この仕組みが一番いいというふうに思っています。
 今、宇都宮市では、中学校単位に在宅介護支援センターをつくりましたけれども、その中で、地域協議会という、地域の皆さんに大勢参加していただいて、ボランティアで家族の介護の負担を少なくする、こういう仕組みをつくりました。つくったばかりでございまして、まだまだ十分機能しているとは思っておりませんが、これを充実させていくことが最も重要だ。
 そんな中にありまして、中学校単位で整備は始まったんですが、理想はやはり小学校単位だ。この方が、地域がよりまとまって、地域内の高齢者の方々のサービスをしやすい。ですから、小学校単位、より細かくした単位で在宅介護支援センターをつくって、地域の皆さんの協力を得て、介護の負担を少なくしてやる。そして、お年寄りには生きがいを与えてやることができる。それは、さまざまな活動、高齢者を引っ張り出していろいろな催し物を持っていくということも一つなんですけれども、それらについてはやはり国の方の協力がないと、自治体だけではなかなか整備が難しい。こういうふうに思っておりまして、生きがい対策づくり、あるいはそのためのセンターの整備、こういうものについて国にはぜひ御支援をいただきたい、こういうふうに思っています。
長勢座長 水島広子君、手短に。
水島委員 まだまだ伺いたかったんですけれども、時間が来てしまいました。
 本日、いろいろ申し上げてきたような点に関しましては、太田さんが進めていらっしゃる在宅医療というものが一つの大きなキーワードになると思っておりまして、その御活動に大変敬意を表しておりますということを最後に申し添えまして、本日の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
長勢座長 次に、福島豊君。
福島委員 公明党の福島豊でございます。
 意見陳述者の皆様には、大変貴重なお時間を意見陳述のためにお越しいただきまして、本当にありがとうございます。心より敬意を表したいと思います。
 国会におきます健康保険法改正案の審議も、五十時間に達しようといたしております。そういう意味で、さまざまな論点、いろいろと議論されてきたわけでございますが、本日は、そうした点について、再度、現場の先生方、そしてまた行政に携わる皆様からお話をお聞きしたいと思います。
 まず初めに奈良先生にお聞きをしたいんですけれども、診療報酬の改定、大変大きな打撃であったと。私も、地元でその声は強く聞いております。
 まだまだ資源配分をしなければいけない医療の領域というのはある。しかしながら、医療費に対しての国民のまなざしが大変厳しいというのも事実でございます。医療にはもっともっとやはりむだを排してもらわなければならないという意見があります。
 先ほども水島議員の方から御質問がございましたけれども、一つは、高齢者の医療をどうするかということが問題だと思うんです。病院の中の各科を受診する、頻回受診ということになるんでしょうか、そしてまた多剤投与ということもあるでしょうし、そしてまたいわゆる社会的入院ということもあります。こうした高齢者の医療のあり方というものをどう変えていくのか、この点についてお聞きしたいと思うんです。
 そしてまた、病院は特に、先ほどの御指摘もありましたように、やはり入院機能に特化していく方向を目指すべきなのではないか、そして診療所のゲートキーパーとしての役割を強化すべきではないかという指摘もあるわけでございますが、先生のお考えをお聞きしたいと思います。
奈良昌治君 ごもっともな御意見でございまして、我々病院は、病院としての特性を生かしていかなくちゃいけない。
 私どもの病院は、急性期病院に特化しております。ところが、今度は受ける側の患者さんの方にしてみると、何でかんで病院で診てくれ、入れてくれという御希望も多いんですね。
 医師というのは、契約上、非常に変わった契約ができておりまして、普通の企業ですと、話し合った上で、納得の上で契約が成り立つ。ところが、医師というのは、患者さんが目の前に来ておなかが痛いとか頭が痛いと言ったら、もう既にそこで自動的に契約が成立してしまう。
 私も病院で外来などまだまだ頑張っておりますけれども、地元にいい先生がいっぱいいらっしゃるんだ、何でここへ来たんだよと言うと、私は頭が痛いから、それこそ脳膜炎の始まりじゃないかと思って心配してやってきたんだ、私は医者じゃないんだ、あなたは医者でしょうと。そういう、一般の国民のレベルと、レベルというか皆さんの御理解と、それからやはり我々プロの連中の感覚のずれがあることも事実です。それから、行政や政治家さんの立場からすると、やはり何でそういう人が病院に集まっちゃっているんだと。それから、むだがあるんじゃないかと言ったのは、本人にとっては、先ほども申し上げたんですけれども、真剣にむだじゃないと思ってやってきているわけですね。だから、そのずれ。
 それから、私はあるときにこういうことを言われてはっと思ったんですけれども、我々は患者さんの立場で物を考えなくちゃいけないというふうに常に言っているんですが、患者さんの立場と国民の立場というのはちょっと視点が違うんじゃないかということを言われて、どきっとしたことがあるんです。
 ですから、やはり経済ということを考えてみると、国の経済全体を考えるとむだだと思っているけれども、患者さん方にとってみると、みんな真剣にむだじゃないと思っているわけですね。だから、そのあたりをいかにこれからPRしていくか、皆さん方に啓蒙していただくかというのは、やはりここにいらっしゃる先生方のPRも必要じゃないかと思います。何しろ、むだというのはなかなかこれは、本人はむだだと思っていなくても、はたから見るとむだで、例えば私がある趣味をやっていた、あんなむだなことをやってしようがないと言うのと全く同じだと思います。
 ちょっとお答えになるかどうかわかりません。
福島委員 ありがとうございました。
 次に、関谷会長にお尋ねをしたいと思います。
 本法案をめぐりましては、三割負担なのか、それとも保険料をどの程度上げるのか、最終的にはそのバランスが非常に議論になったわけです。現在景気が非常に厳しい中で、中小企業にとりましては社会保険料の負担というものは極めて大きいというふうに思っています。
 そういう意味で、保険料の負担を余り大きくし過ぎない、ボーナスも含めて八・二パーミルということになったわけでございますが、現在の八・四パーミルの保険料に比べれば、それでも七パーミル近い引き上げになっているわけでございます。ですから、ここのところはやはり、窓口の負担と保険料の負担とバランスをとらざるを得ないんだろうという判断があったわけでございますが、この点について、会長のお考えをお聞きしたいと思います。
関谷忠泉君 引き上げ前に、幾ら上がるとか上がらないの問題でなくて、まず抜本改革をきちっとやっていただくよというようなことが先決だと思うんですね。何もしない、これでもいいんだ、これでも悪いんだと。
 先ほど申し上げましたように、我々業界は零細企業の集まりです。そういう中で、この日本の経済をこれだけにしたということもひとつ先生、お見逃しのないようにしていただいて、そういう中でも社会保障制度はしっかりしなきゃいかぬだろうというようなことで業界は、これは労働者でも事業主でもみんな同じですよ。車でいえば両輪というようなことから、これはやらなきゃいかぬだろう。
 また今、保険につきましても、一元化がいいだろうというようなお話もありますが、その収支の面につきましても、お話が先ほどございましたよね。我々業界はその収支の面ではそんなに悪くないわけですね。一番困っているのは何かなと申しますと、我々のトラック協会でやっている健康保険組合の事務局にお聞きしますと、やはり何が何と申しましても老人の医療費なんだと。これはやはり、本来は日本国民が平等に皆さんでもってお負担をするというようなことをやっていただいたらば一番よろしいんではなかろうかな、私はこう思っています。
 ですから、決して労働者に対しましても、保険料が上がるということについても若干それは異存はあろうかと思いますが、何はともあれ、とにもかくにも、これらについては今回この法律を約束どおり通していただいて、最初は平成八年だったでしょうか、間違いなく通しますよというのは国会議員の衆議院の選挙か何かでお約束されたように私は記憶にございますが、これもほごにされてしまったというようなことで、大変皆さん怒りを感じているというようなことなので、口先だけでなくて、これはひとつ実行の段階に入っていただきたいということを申し添えておきます。
福島委員 ただいま御指摘がありましたように、今回の改革というものを踏まえてさらに抜本的な改革というものを私どもは進めていきたい、そのように決意をいたしております。
 次に、時間も残り少ないので手短にまいりたいと思いますが、福田市長にお聞きをしたいわけでございます。
 先ほど保険事業のお話もございました。これからの課題として大切なことは、やはり高齢者の医療費の負担というのが大きい、ですから、そこのところの、介護と医療のすみ分けというものをどういうふうに進めていくのか。とりわけ、今介護にしましても、施設の待機者というものはたくさんいるわけでございます。そういった方がまた医療機関の方に入院するというような現象も起こっている、ここのところをどうするか。ただ、一方で、介護の方に余り来ていただくと介護保険料をどうするのかという話にもなるわけでございまして、そこのところで一番悩んでおられるのが市長さんの立場でないかと思うんですが、お考えをお聞きしたいと思います。
福田富一君 宇都宮市としては、老人保健福祉計画をつい最近見直しまして、十四年度見直しまして、十五年から十八年にかけて特別養護老人ホームをあと四百床、待機者が三百人以上今いらっしゃいますので、四百床つくることによって、施設整備は十八年度をもって一段落するんではないか、こういうふうに思っています。
 しかし、先ほど申し上げましたように、施設は最後の手段だというふうに思っております。ですから、本来特養ホームに入るべき人が病院に入っている、こういうことがないように施設整備は急いでいかなければならない。
 そしてまた、施設は用意はしますが、なるべくならばそこには入らないで、在宅で高齢者は生活するべきだ、これが人間としてのあり方だ、こういうふうに思っていますし、先ほど申し上げましたような、そのためには地域全体で高齢者をケアする仕組みをつくっていかなければならない。一部始まりましたけれども、一番まとまりやすいのは、小学校単位の在宅介護支援センターが中心になって、地域の方がそこに集まってケアをできる仕組みができれば、老人医療費というのは減額することが、少なくすることができるだろう、こういうふうに思っています。
 残念ながら、きのう、宇都宮市におきましては、四十七歳の長男が七十五歳のお年寄りを刃物で刺して殺してしまうという事件が起きてしまいました。これも介護疲れということであります。隣のうちは民生委員の方で、時々物をつくってはお届けをし、相談にも乗っていましたけれども防げなかった。大変残念に思っています。
 そんな中で、宇都宮市は、部長にこんなふうなことを検討してほしいというふうに命じました。それは、事業主、市役所もそうですけれども、そういうところは全く介護あるいは老人福祉には今関知していない。ですから、福利厚生を預かる部署に介護についても責任者のようなものを置いていただいて、自分の会社にはあるいは宇都宮市役所には、だれさんのうちには介護を必要とするお年寄りがいるのかいないのか、それを自己申告で提出してもらって、それを今度は職場全体でケアをする、こういう仕組みができないかと。職場全体で、お年寄りの介護をしなければ、両親の介護をしなければならない人を抱えている人については、社員については、職場の人がそれをケアするような仕組みができないかと。これができればこういった事件の再発は防げるんじゃないかということで、急遽指示をしましたけれども、なかなか相手が事業所ということで難しいというふうに思っていますが、これらも今後は進めていきたいというふうに考えています。
福島委員 どうもありがとうございます。
 在宅医療に取り組んでおられる太田先生にお聞きしたいんですが、先ほど、在宅での自己負担の方が重くなって入院している方が軽いのでそっちに流れるんでないかという御指摘だったと思うんです。
 単純に自己負担の多寡で入院を選ぶというわけではないだろうと思います。今市長からお話ございましたように、やはり在宅でのケアをすることの家族の負担ということも当然これはある。ですから、どういうふうに支えていくというのは、医療だけではなかなか決まらない部分もあるのかなというふうに私は思うんですが、今年度の診療報酬の改正で、長期入院患者の特定療養費制度というものが導入されたわけです。ある意味では、これは介護保険との給付の公平を図るというような観点もあるわけでございますが、この点について、在宅医療をしておられる太田先生のお立場から、どのように判断されるかをお聞かせいただきたいと思います。
太田秀樹君 お答えいたします。
 医療と介護は全く別のスキームで語るべきであるというのは基本原則だと思います。
 私どもの施設は、医療保険と介護保険と両方から収益を得ている施設でございます。それで、どこで線を引くのかというのは非常に難しい問題でございますが、既に介護保険の中にリハビリあるいは訪問看護が包括されましたものですから、本来、医師の指示のもとで医療として行われるべき性格のサービスが介護保険の中に入っております。したがいまして、医療保険、介護保険、両刀遣いで高齢者を支えるということが大変重要だと思っております。
 一点、誤解を招くような発言が私にあったかと今反省しておりますが、在宅療養での費用の負担が医療施設に流れるということを申したわけではなく、施設に流れる。つまり、施設には医療保険の施設と介護保険の施設がございまして、せっかく在宅で療養を続けておられる方が、住みなれた地域で家族に囲まれて暮らしておられる方が、やむなく施設を選択せざるを得ないような環境にあるということをちょっと憂えたという発言でございます。
 以上でございます。
福島委員 持ち時間が参りましたので、以上で私からの質問は終わらせていただきますが、本日は本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
長勢座長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党、佐藤公治でございます。
 きょうは本当に参考人の皆さん方には、お忙しい中、こういった時間をいただきましたことを心より感謝を申し上げたいと思います。
 私も、まだふなれなところもあり、また時間がない中、効率よく進めるために失礼がありましたら、多少お許し願えればありがたいと思います。
 私ども、国会でも今厚生労働委員会で審議をしておりますが、私自身、今議論している大きな論点の幾つかを言わせていただければ、まさに御存じのように、九七年のときの改革から抜本改革をするということで、二〇〇〇年、それがきちんと約束がされなかった。またこの次、負担だけを皆さん方にも私たちにも強いることをして、抜本改革はその後にしてくれ、こんなことをしている。筋道が違うんではないか、こういう議論があり、また、小泉さん、そして坂口厚生労働大臣を含めて、今政府においての日本のあるべき姿、そして医療制度、社会保障制度のビジョンというものが明確に見えない。つまり、改革をやっていっても、きちんとした目的、目標がきちんとしないのに改革をやっていったら、最終的にはとんでもない形になってしまう。そういう意味で、きちんとしたビジョンを示していないということ、そして、今回の負担等が経済的に影響を非常に及ぼすことになりかねない。
 御存じのように、九七年の改正から九八年においての経済的また景気におけるダメージというのが非常に多かった。また同じことをやってしまうのか。そして何よりも、小泉総理を含めて、国民に痛みを強いることばかりを言っておりますけれども、では、自分たちが何を痛みを差し出すのか。こういったものがきちんとないのに、いつもいつも国民に痛みを強いるということは、私は筋違いだと。こういうことをきちんとやってからやるべきだという議論が続いておりますけれども、今話したようなことを大体もうわかった上でこの場にいらっしゃっているというふうに私は思いたいんですけれども、念のため確認をさせてください。
 この流れを大体わかっていらっしゃるという方、手を一応挙げてくださいませ。今のこの話の、こういったことの流れがある程度わかっているという方、手を挙げてみてくださいませ。
長勢座長 強制ではございませんから……。
佐藤(公)委員 私の今の議論の話が、こういうものが国会であった。つまるところ、私も突然の質問だったのでわかりにくかったのかもしれませんけれども、九七年九月の大幅負担増は、二〇〇〇年度に医療・医療保険制度の抜本改革を行うことを前提に先行実施されたものでした。当時の政府は、抜本改革の実施は平成十二年度を目途とするが、可能なものからできる限り速やかに実施することを国民に公約しました。
 こういうことがあったことを御存じの方。
長勢座長 できれば、個々の先生方に質問していただきたいと思います。
佐藤(公)委員 はい、わかりました。
 実を言うと、こういった前提がきちんとやはり、お互いがどこがわかっているのか、わかっていないのかをきちんと明確にして質問していった方が短時間の間に深いものができるというふうに考えたのが事実でございます。これは失礼がありましたら、お許しを願いたいと思います。
 そこで、では、お尋ねさせていただければありがたいんですけれども、もう先ほどからもお話として出ている、皆さん大体御存じだと思うんです。
 ところで、奈良先生にちょっとお尋ねをしたいんですけれども、九七年から、さかのぼれば三十一年の社会保障制度審議会から同じような指摘がずっとされている。先送り先送りになってきちゃった、改革をしなきゃいけない。私たちも、財政の状況を含めてここの破綻状況をどうにかしなきゃいけないということはわかっているつもりです。ですが、やはり抜本改革はきちんとできない。なぜできなかったんでしょうか。
 総理は、政治的意思が弱かったとか、政権の枠組みとか、そしてしがらみがということをおっしゃっておりましたけれども、先生はどう考えられますでしょうか。
奈良昌治君 大変難しい問題で、私は議員さんでございませんからなかなかそういうところをどういうふうに答えていいかわからないんですけれども、これは、医療の改正というときにありとあらゆるところから反対が出てきたんだと思うんですね。おじいちゃま、おばあちゃま、それから実際にお金を積み立てている健康保険とか国民保険に入っている人たち、そういうところから、何しろ負担増は大変、とんでもないことであると。それから一方においては、医療はむだが多い、むだが多いということをマスコミの方なんかは厳しくおっしゃっている。
 でも、私は、先ほども申したんですけれども、日本の医療というのは世界一だと。アメリカの医療を見てごらんなさいよと。それからお隣の中国とかそういう国の医療と比べてみれば、うちの方がはるかにいいだろうと。だから私は、やはり医療の現場でそういうものを預かっている者とすると、日本の医療というのはすばらしいと。
 だから、それを壊さないようにうまく持っていくためにはどうしたらいいかということを先生方も知恵を絞っていただきたいということなんです。だから、右から左へとぱっと変えられるものじゃないと思っております。特に人の命というのは、何年か前にある総理大臣が、人の命は地球より重いとおっしゃったことがありますから、そういう重たいものを動かすというのは大変難しいんじゃないでしょうか。だから、先生方は張り切ってやっていらっしゃっても、なかなか結論が出ないというのが真相じゃないかと思います。
 それで、やはり、特に選挙で、選挙に行かれる方はみんな、お年寄りほどきちんと投票に行くようでございますね。そうなってくると、負担増とか何とか増ということになるとかなり厳しい。
 それから、医療において日本の医療はむだ遣いだ、それから病院の経営者なんかは欲張り村の村長さんみたいな者ばかりそろっているというようなことを言われるかもしれませんが、私に言わせればとんでもないんです。本当に過労死でやられるぐらいみんな頑張っている人がおります。私も七十になりますけれども、今でも外来を一日六十人ぐらい診なくちゃいけないんです。そういう厳しい状況で、先ほど申しましたけれども、医療というのは話し合いで成立する契約じゃありませんで、先生が私のところへ来て頭が痛いとおっしゃったら私は診なくちゃいけない、そういうことがあります。
 ですから、医療というのは、経済の問題と、それからいわゆる人の命の問題とのバランスを見ながらやっていくから、ここにいらっしゃる先生方もそう簡単に右から左へぱっと方針を転換するわけにいかないだろうと。だから、歴代の総理大臣さんもそういうことを考えながら、やはり土壇場になったらかなり慎重にならざるを得ないと思うんです。先生が総理大臣になっても同じことをおっしゃるんじゃないかと思うんです。
 ですから、そういう意味で、簡単明快に、何でこの医療改革がおくれたんだよと言われても、これは人の命ですから非常に難しいんじゃないかと思います。
 お答えになりましたかどうでしょうか。
佐藤(公)委員 ありがとうございました。
 ところで、今のお話にも関連することなんですけれども、関谷会長、先ほど関谷会長は、この法案に賛成というような方向でのお話を最終的にくくったかと思います。でも、関谷会長のお話を聞いていると、九七年のこともよく御存じで、またおまえら同じことをやるのかというような思いがあるように私は感じられました。
 関谷会長、私、きょう初めてお会いをしたんですけれども、関谷会長のお人柄からすれば、本来ならばちゃんとやることをやってから次をやれ、こういうのが関谷会長の何かお気持ちなのかなというふうに私思う部分があるんですけれども、実際、その辺を本当に関谷会長、私は何でこうやってここまで、いじめるつもりじゃないんです。やはりこういう場でもそうだ。日本の全体社会が、本音と建前の使い分けが、その距離がやはり全体のゆがみを生じさせている。これが日本を、社会をおかしくしているんじゃないかというのが私の、また私の政党の指摘でもございます。
 どうか関谷会長、本音のところをちょっともう一回聞かせてください。
関谷忠泉君 先生、さようごもっとも、そのようなこと、私たちが答えられるような状況にはございません。すべてのものは、これは国会で決まることであって、先生方がしっかりやっていただければ、党派を超えてやっていただくということが、まず国家国民のためということになるんではなかろうかな、私はこう思っています。
 ですから、そのようなことで、ひとつ党派を超えて今回のこの法案については通していただきたい、こう思います。
佐藤(公)委員 関谷会長、ありがとうございます。本音が大分伝わってきたように思います。ありがとうございます。
 ところで、福田市長、本当に福田市長には、先ほどから財政の問題ということが、非常に行き詰まっている問題を切実に語られていたかと思うんですけれども、やはり市長もおっしゃられましたように、これはもうこれだけの問題じゃなくて、地方自治体のあるべき姿、権限や財源というものの全体を見る上での考え方を持っていかなければこういうことは解決できないと思います。
 ちょっと外れる部分もあるかもしれませんけれども、市長、今の地方自治体のあり方、権限や財源がきちんとまだまだ行き渡っていない、総務省としても一生懸命権限の、財源の移譲ということをやっておりますというふうに言っておりますけれども、現状は、本音、いかがでしょうか。
福田富一君 地方分権の流れの中でさまざまな国の行政が市町村におりてきておりますが、残念ながら、財源のパイプは詰まっております。ぜひ、このパイプの詰まりを委員の皆さんに取り除いていただきますようにお願いいたします。
佐藤(公)委員 ありがとうございます。率直な御意見ありがとうございます。
 私もそう思っておりますので、それを変えるべく、私たちはまた議論、また国会での審議をしていきたいと思っております。
 そして、ちょっともう時間も余りなくなってきてしまったんですけれども、本来ならば事前に私が聞いておけばよかったんですけれども、本日はお医者さんも多くいらっしゃると思いますけれども、医師会に入られている方いらっしゃいますか。――皆さん入られているということです。
 そこで、私、前回、東京での参考人のときに、医師会の副会長の青柳副会長がいらっしゃって、参考人として意見を聞いたわけでございますけれども、医師会としては、今回に関しては賛成、ただし、絶対賛成というわけではなくて、いたし方なく賛成、そんな思いが感じられました。
 でも、私、実際本当に現場をずっと歩いていて、お医者さんの多くが今回のことに関してはやはり反対、もしくは推し進められない、納得いかないという意見の方が大多数に聞こえるんです。そこで、副会長にもお聞きしまして、そういう方々もいらっしゃる、ただし、会としては賛成ということで手を挙げさせていただいたというような御返事がございました。
 でも、これまた本音と建前の使い分けになるんですけれども、奈良先生、実際問題、現場の方々、私、多くの方々と、お医者さんたちとも話をしても、さっき一番最初に話をした問題点、それをきちんときちんとやってからじゃないかというのが多くの方々の意見としてあります。
 個々における細かい議論は、きょう先生方からも、皆さん方から聞いたこと、非常に参考になりました。これをやっていたら多分二、三時間すぐたっちゃいますので、その大もとのところで、なぜ、その現場と団体、医師会との間で意見の食い違いが見えるように思えるんですけれども、先生いかがお考えになられましょうか。
奈良昌治君 先ほど、私、意見陳述のときに申し上げたんですけれども、一歩前進という言葉を使いました。
 と申しますのは、今財政破綻に瀕しているということも私よく承知しております。それから、先ほど意見陳述の中で申しましたけれども、病院の医療というのは非常に厳しい打撃を受けている。でも、痛みを伴う構造改革とどなたかおっしゃっていましたね。だから、そういうことで、やはりある程度痛みを分かち合うことは国民のために必要かなと。不満がいっぱいあります、一つ一つは。でも、私は将来、何度も申し上げているように、国民が丈夫でお金のあるとき積み立てたお金をずっとライフサイクルを通じて適正に使えるように、いわゆる保険を一本化するということで賛成したわけです。
 だから、三割負担というのは、国民保険は三割負担ですね。それから、企業の保険にはいまだに給付率がべらぼうにいいのがあるんですよ。だから、そういうところもガラガラポンにして、全部同じプールにして、丈夫で働いているときに積んだお金が将来年をとったときにきちんと使えるようにしたらむだがなくなるんじゃないかと思っておりますから、そういう意味で私は一歩前進というふうに申し上げたんです。どんな法律でも、一〇〇%いいものというのはないと思います。
 以上です。
佐藤(公)委員 ただ、この一歩前進というのは、今は一歩前進でも、十年後十歩後退ということもあると思います。そこの部分は考えてやっていかなきゃいけないと思いますけれども。
 金子先生、いかがですか、現場の方で言いにくいこともあると思いますけれども。やはり医師会の決定と現場の先生方との乖離というか距離というものを感じるんですが、いかがでしょうか。
金子達君 個人的な意見ということになると思うんですけれども、やはり医師会の執行部に対しては、現場の、地方の方の医師会は必ずしも一枚板では全然ないと思うんですね。今回、こういうことを言っていいんですかどうか、医師会の会長選でかなりの対抗票が、わずかな時間も持たないで立候補した人が出ましたね。ということは、かなり反対の人が多いということがあります。現場は四月からかなりの混乱を来しています。それを考えると、もっとそれが拡大していると思います。
 ですから、今後それを医師会が実は収拾をしなくちゃいけない内容もかなり多いと思うんですけれども、それを現状していないということも医師会は問題だと思うんですね。何かそれなりのことを日本医師会が各医師会に全部いろいろふれて回らなくちゃいけないことはたくさんあると思うんですよ。だから、その辺も問題があると思います。
 基本的には、奈良先生の意見も半分はいいと思うんですね。保険者の負担がすごくある。でも、やはり先が見えないでオーケーしちゃうのは私は嫌だなと思うんです。
 というのは、保険者を、ではいつ統一するか。来年、ことしじゅうにやる、それだったら考えてもいいなと思います。でも、先が見えないじゃないですか。医者だけ、医療者側、そして国民、この二つだけが、三方じゃないですね、二方だけですね。保険者は全然ないですよね。そちらが何もないのに、そんなことはちょっと私は納得できないなというのが個人的な意見です。
 ちゃんと先を見て、シミュレーションをして、期限を切ってちゃんと言ってくれるなら、それはそれに乗る可能性はあると思いますけれども。一部はいいですけれども、そういうことです。
佐藤(公)委員 ありがとうございました。
 もう時間が来てしまいました。本当は、このまま議論で一時間ぐらい少しやりたいんですけれども。
 本来ならば、最後に賛成か反対かの手を挙げていただきたいということを思ったんですが、きょうはしません。気持ちは大体みんな一致しているのかなという気がいたします。
 あとは、関谷会長、政治家を出すのは国民の皆さんです。いい政治家を出すようにひとつよろしくお願いを申し上げます。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
長勢座長 次に、塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、皆さんの貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。
 私は、今回の法改正案の中で、国民の皆さん、患者の皆さん、医療機関のそれぞれの負担が大きくなるという問題について、やはり現場でのそれぞれの皆さんの御意見を伺えればと思っております。
 最初に、柴野さんに生活者の目線でということでお聞きしたいわけですけれども、今回、サラリーマンの方の本人の二割負担が三割負担になる、これ自身も大変大きい。景気への影響というのも大変心配をされる問題になってくると思うんです。こういう影響というのが実際今どういうところでうかがえるかといえば、現在三割負担となっている国保の皆さんの負担という形で見えてくるんではないかと思うんですね。
 商工業者の方でつくられている全国商工団体連合会の調査によりましても、受診してから二十四時間以内に亡くなるという方がこの四年間で三割ふえているという、これは景気の影響もあるでしょう。同時に、三割負担というのが、最後の最後まで医者にかかるのを遠慮せざるを得ないという、こういう形にあらわれているんだと思うんです。ですから、サラリーマンの方も三割になるということが、同じようなことが起こるんではないか、このことが危惧されるわけですね。
 実際、現場の中で柴野さんがいろいろな見聞きしてお感じになっている中で、国保の世帯の方でのこの三割負担というのがどんな形での受診抑制、いろいろな形での問題につながっているのか、率直な御意見を伺わせていただきたいと思います。
柴野智明君 そうですね、私どものところでかかわっている患者さんのところでは、非常に毎日の生活そのものが大変な状況になっているということがあります。
 例えば、コンビニの店主の方が、二十四時間働かなきゃいけないという中で体を壊されて、しかも心臓の病気だということで、奥さんが一人で、あと息子さんと二人で二十四時間やるような、そういう勤務サイクルでやらざるを得ないというようなことで、非常に私ども、医療活動のほかにも生活相談を含めて御相談を受けることが多いんですけれども、そんなことも大変、今の不況の中で生活そのものも大変な状況になっているというふうに思います。
 また、受付に来られた方で、会社が倒産して、今まで社会保険本人だったのが急に宇都宮市や他の市町村の国保にかわるということが、昨年からことしにかけて全体的に非常にふえてきております。
 そういう意味では、本当にサラリーマンにとっても、職場がなくなる、即生活が困窮するような事態、しかも病気になってしまったら、本人だけでなく、患者さん家族を含めて大変な問題になっているということも、実際私どものかかわっているケースとしてあります。
 そんなところでございますが、以上です。
塩川(鉄)委員 ありがとうございます。
 重ねて柴野さんに高齢者のことでお聞きしたいと思うんですが、やはり今回の法改正案の中では、窓口の一割負担の徹底の問題ですとか、高額の医療費についての立てかえ払いの問題もあるわけですね。そういう点では、実際に経済的な負担がふえると同時に、これからどれだけ医療費がかかるかわからないという心理的な負担という、二重の意味での負担感というのをお感じになるんじゃないかなと思うわけなんです。
 そういう点で、今現在のお年寄りの皆さんの経済的な実態を踏まえて、このような負担増がどういう実態を今後生み出すのかということ、現状を踏まえて予測される事態といいますか、そういう点でお話を伺えればと思います。
柴野智明君 先ほども申しましたけれども、私ども、非常に生活に困窮されている方にかかわるケースが多いんですけれども、本当に独居、ひとり暮らしの方、高齢者二人の世帯の方というのは、近時、非常に多くなってきております。
 しかも、先ほど申し上げましたように、年金そのものが大体三万から四万、お二人合わせても六、七万という状況の中で、例えば借家の場合は家賃を払って生活せざるを得ないということがございます。
 先ほど七十九歳の方のことを申し上げましたけれども、その方は、月二回、今現在千七百円で済んでいるわけですけれども、先ほども触れましたけれども、繰り返しになりますけれども、例えば、それが一・一や二倍ぐらいの千九百九十円。二百九十円、一日当たりにすると大体十円なんですね。でも、その方にとっては、一日の十円というのが大変な、私ども、在宅でかかわっている患者さんに請求しづらいというときもございます。月末にまとめて請求しなきゃいけない。
 しかも、その方が医療機関に行った場合に窓口で払って、しかも在宅でかかわっている場合は、医療機関の人間が行った場合にまたそこで徴収される。またお金のことかというふうなことも率直に言われる方もいらっしゃいます。
 そういう意味で、本当に全体的に保険料の負担と、さらに窓口の負担が同時にかかわるような状況ですと、今の不況をもろに受けるのがまさに高齢者、弱者ではないかなというふうに思います。
 以上です。
塩川(鉄)委員 ありがとうございます。
 続けて太田さんにお伺いします。
 お話の中での、弱いお年寄りの自己負担増は医療の必要な機会を奪うというお話を伺いました。
 在宅医療を進める立場から、今回の法改正案では六カ月を超える入院患者の方が負担がふえるという形で、実際、施設でもなかなか行き場所がないといったときに、在宅医療の問題というのが改めて問われてくるんだと思うんですよ。ですから、今回の法改正がこのような形で実施をされた場合に、どういう影響があらわれてくるだろうか。その問題点などについて、現場での太田さんの実感で結構ですから、お話しいただきたいと思います。
太田秀樹君 お答えいたします。
 二年ほど前に介護保険制度が導入されました折に、介護保険制度は在宅医療推進の武器になるというふうに大きな期待をいたしましたが、実際、ふたをあけましたところ、施設医療の人気がはるかに高まりました。
 私の場合、在宅医療を中心に進めながら老人保健施設を運営しておりますが、ショートステイでお預かりしたお年寄りが帰らないというようなことが起こっております。せっかく在宅で療養できた方が、施設のよさを家族がしめしめということで、在宅での介護を放棄するということでございます。
 ちょっと言葉が過激でございますが、介護保険制度というのは、利用者主体をうたっているにもかかわらず、家族の意向を酌むことを合法化しておりますので、ある意味では、今まで社会に浸透しておりました家族介護を放棄することを合法化してしまった制度でございまして、病院から出た患者はどこに行くか、これは介護保険制度が受け皿になるというふうに考えております。
 したがいまして、在宅療養が今後さらに発展するかどうかという問題につきましては、在宅療養を志す医療機関がふえるかどうかという部分にもかかっておりまして、病院から追い出せばみんな在宅が受けるというような単純な構図ではないと考えております。
塩川(鉄)委員 ありがとうございます。
 重ねて太田さんにお伺いしますが、ある新聞で、講演をされた中身で「私のデンマーク見聞録」、寝たきり老人のいない国の医療福祉ネットワークとその福祉マインドという話をされたというのを目にしたんですけれども、デンマークと比較をしての日本の医療、福祉の現状の問題点といいますか、その点でお感じになっていること、何点か伺えればというふうに思います。
太田秀樹君 大変恐縮でございます。たしか市民に向けて発信したメッセージかと思います。
 簡潔に申し上げますと、やはり国民性の問題というのが非常に大きいと思います。義理と人情と世間体の我が国に、義務と権利と合理性の国がつくりました制度を持ち込んできても、うまく機能しないというところが正直な気持ちでございます。
 デンマークでは、長寿である、平均寿命の高さがよい医療のバロメーターだというふうな認識は余りございません。本人の意思で医療が行われるということがすばらしいことでございまして、我が国では、家族の意思を酌んだり、あるいは医者が責任回避のために行ったりするような医療が横行しているというふうに私は感じております。本人の意思を酌んだ医療が行えないのは、やはり世間体というのがかなり不思議な力で我々に重くのしかかってきているという印象でございます。
 以上でございます。
塩川(鉄)委員 ありがとうございます。
 続けて小児医療にかかわってお話を伺いたいと思いまして、意見陳述の中で、奈良さんと金子さんの方からその点について少しお触れいただきました。
 今、乳幼児医療で、三歳未満は三割から二割負担ということが挙げられていますけれども、一方で、ほとんどの地方自治体では既に実現がされているものですから、現に今の局面で負担軽減になる方はごく一部ということもあります。一方で、地方自治体などの病院の窓口での自己負担の軽減策に対してのペナルティーの問題なども取り上げられているわけですね。実態としての小児科の数も減って、小児科を志す人の数も減っているという中での、そういった小児科医療全体の先行きの心配というものは大変大きいということを感じるわけです。
 そういう点で、奈良さんに、小児科医療の充実をということでお話を伺ったものですから、こういった現状を打開する上で、診療報酬の問題なども当然おありでしょうけれども、きちんとした支えという点で何が求められているのか、伺いたいと思います。
奈良昌治君 多少乱暴な発言になるかもしれません。
 何で小児科医が減ったかといいますと、医者になって専門を選択するときに、フリーアクセスじゃございませんけれども、自由に選択できるわけです。
 昔は、女医さんが非常に小児科を志す人が多かったんですね。非常に少なくなってきた。何で少なくなってきたかというと、小児科は非常に今過重労働になっているんですね。それから、開業していらっしゃる先生方からの苦情を聞きますと、小児科というのは、子供さんというのは非常に小さいですから、いろいろ処置その他も本当にわずかしかしない、そういうわけで上がりが非常に少ない。それから、小児科で何かありますと、すぐ訴訟問題になってくる。これは大変だということで、みんな小児科を避けてしまって、ほかの科を志す人が多くなった。
 私は、これは多分に暴言なんですけれども、もし診療報酬の改定のとき、十歳以下の子供は大人の二倍にしろ、三歳以下は三倍にして、ゼロ歳児を五倍にしないと、これは割合が、うまくバランスがとれないんじゃないか。何で十歳児以下の人を診療費を倍にするかといったら、母親がついてくるわけですよ。それで、お母さんとの話とか対応なんかも非常に気を使って大変ですね。そういうわけで、診療報酬の改定のときに、ぜひ小児科に重みをつけてくれと。今度の診療報酬の改定のときにも、小児科にやや重みがついています。ややじゃなくて、けちけちしないでもっとうんとつけてくれ、そういうことを申しております。
 それから、やはり小児科のお医者さんがふえるような教育というか、そういうものをしていかなくちゃいけないと思っておりますので、これはやはり医学界がそういう誘導をしていかなくちゃいけないと思っておりますが、何しろお医者さんが卒業して何を選択するかというのはその方の自由ですから、おまえは小児科やれとか、そういうことはなかなか難しい。私は六百ベッドの病院の院長をやっておりましたわけですけれども、一番難しいのが小児科の医者を探してくることなんです。御存じのように、かなり乱暴な院長ですから、大学に行って、よこせ、そういうふうに談判をして引っ張ってきますけれども、何しろ金のわらじを履いて探してもいないようなんですね。それが真実です。
 子供さんというのは、すぐ熱を出したり、いろいろなことがありますから、夜の夜中に引っ張り出されるのは小児科医なんです。私どもの病院でも、小児科なんかになりますと、本当に三百六十日ぐらいは病院に出てきているというのが真実でございまして、過労死問題も起こっていることも事実です。だから、これは、それこそ教育とか医療制度の抜本改革といったときに、診療報酬も抜本改革していただかないとぐあい悪いな、そう思っておりますが、お答えになりましたでしょうか。
塩川(鉄)委員 ありがとうございました。
 申しわけありません、時間になりましたので以上で終わらせていただきます。
長勢座長 次に、中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党の中川智子です。
 きょうは、お忙しい中、本当に貴重な御意見をありがとうございました。
 まず最初に、太田さんに伺いたいんですが、在宅医療ということに懸命にお取り組みになっていらして、今回の法改正によって、むしろ在宅医療が後退し、施設入所への誘導というのがかなり急ピッチでされていくのではないかということを本当に心配しております。私も、質問の番号が最後ですので、ちょっと重複するかもしれませんが、いま一つやはり在宅医療からの後退ということでの御懸念なり現場の御苦労に対してのお話をちょうだいしたいと思います。
太田秀樹君 お答えします。
 先ほど来、施設への誘導が進むということを申し上げておりますが、病院から追い出されて施設を待っている間に急変するケースというのを最近何例も経験しております。病院から退院したときに、地域の開業医にうまく連携させるシステムが機能していないということが一つ考えられます。
 さらに、在宅医療の本来の姿をまだ市民が正しく認識しておりませんで、困ったときに医者を呼ぶのが在宅医療だというような解釈も非常に多うございます。
 在宅医療というのは、急変したときに医者が往診する医療ではございません。病院で入院しているときに、医者が回診したり、看護婦が検温に巡回したりするように、地域にベッドがあって、病室があって、医療スタッフが定期的に訪問する制度でございまして、病院から退院されましても同じような質の医療を十分提供していけるだけ最近の医療水準は上がっているにもかかわらず、そういったサービスがあることを一つ知らないという問題もございます。
 さらに、費用の問題でございます。
 介護保険も含めまして、やはりある程度の出費がかさみます。したがいまして、経済的に困窮していたり、あるいは多少問題を抱えている御家庭では、この程度のことなら私たちが頑張ろうというようなことでサービスを使わない、いよいよ悪くなってから使うというようなことがございます。つまり、介護予防という視点がそこにございません。
 これも繰り返しますが、脱水だとか低栄養というのは、真っ当な食生活があれば十分に防げる問題でございますし、ちょっとした介護知識があれば予防できるわけです。そこは医療というよりむしろ介護の領域でございますが、その介護すら満足にない。したがって、介護を受けず自宅でほとんど放置されたような状況で、とことん悪くなって救急車を呼んでまた病院に戻る、こういった悪循環があるのは紛れもない事実でございます。
 お年寄りは、のどが渇くというような生理的な働きが低下してまいりまして、みずみずしいお年寄りは余りいらっしゃいません。かなりスーパードライでございまして、夜間頻尿を恐れて飲水量を自己調節するような生活習慣も悪いサイクルに取り込まれまして、ほとんど脱水傾向に傾いているということでございます。ちょっと風邪を引いて食事がとれないと、そのまま意識障害を起こしたり、さまざまございます。痴呆症状を出現させたりいたします。
 そういった現場にいるからこそ、今回の自己負担増に対して非常に残念だというふうに私は感じております。
中川(智)委員 ありがとうございます。
 続きまして、柴野さんに伺いたいんですが、先ほど償還払いのことをお話しされました。やはり手続漏れがかなり起きるんじゃないかということを心配いたしますが、これに対しての対策ということ、何か償還払いに対しての手続漏れを防ぐ手だてなりなんなりで御意見をいただけたらと思います。
柴野智明君 私ども医療機関としては独自に、こちらから患者さんの毎月の支払い状況なんかを把握して、それであらかじめ患者さんにお話ししてということで、こちらから言うケースが結構多いことで対応しております。ですから、医療機関も、なかなか日常的にも大変な状況がありますけれども、状況把握の中で、診療活動のほかに、そういう経済的なことも含めて窓口で対応できればということでやっております。
中川(智)委員 ありがとうございました。
 それでは、続きまして福田市長にお伺いしたいんですけれども、ここに参ります前に、私も宇都宮というのはゆっくり訪れたのは初めてで、いつも通過するばかりで、でも、かなり豊かな町だということで、栃木県か宇都宮は都道府県の自治体の中で県民所得八位とかというふうに伺いました。にもかかわらず、国保の加入者の方々の四分の一が無収入であり、年収が平均百六十八万ということで、ほかの自治体はどれほど大変かと思うのですね。
 数年前の参考人のときに、市町村会のその当時の会長さんが、もう国保なんか返上したい、早くとっとと持っていけという御意見をいただきまして、非常にさわやかでおもしろかったんですけれども、一元化の問題という道のりは遠いというような思いもあるんですが、その四分の一の無収入の方の、なぜ無収入なのか、いろいろな御事情があるでしょうが、最も多いのは何なのかということと、そして、やはり市長として、介護保険に対して現在的な状況、もうすぐ見直しなわけですけれども、一言コメントをいただきたいと思います。
福田富一君 宇都宮市の国保の加入状況の中で、所得がないという世帯が二万一千六百十八、率にして二八・八%、こういう状況であります。
 なぜ所得がないか、お仕事をなさっていないからでございます。無職者であるからであります。高齢者で無職者であるからであります。
 それから、介護保険制度の見直しについては、現在、県に意見を取りまとめて提出をすることで取り組んでおります。
 さまざまな問題を指摘されているわけですけれども、全国の自治体からいろいろな意見が上がっていって、それを厚生労働省の方で十分取り入れていただくことがかなえば、十五年四月からの新たなスタートは、今まで以上に利用しやすく、そしてまた高齢者の立場に立った、あるいは低所得者の立場に立ったサービスというものが提供できるようになるんではないかというふうに期待をしておりますので、ぜひ自治体の意見というものを国は最大限取り入れていただきますようにお願いを申し上げる次第です。
中川(智)委員 それでは、奈良さんに伺いたいんですが、私、この間やはり医療事故の問題というのが報道でかなり取り上げられておりますし、非常に深刻な事態になっていると考えます。
 先ほど御意見を述べられた際に、日本の医療というのはもう世界の最高水準だと。私も、本当に医療水準としては最高水準だとは思うんですが、患者側から見ますと、なぜ医療事故が頻発するのか。そして、情報公開というものに対してもなかなか日本は前に進まない。患者の権利に対して余り――私どもは、患者の権利よりも医療機関の方に軸足を置いた形のさまざまな施策というのがあったのが、だれのどういうせいだかわからないんですけれども、やはり奈良さんにお伺いしたいのは、医療事故に対して、医療機関のトップでずっといらして、どのように考えていらっしゃるかということと、情報公開ということに対して何点ぐらい現在ではおつけになるかどうか、そして、情報公開のより一層の患者側に対するさまざまなアクセスとして一生懸命急いでやらなければいけないのはどのようなものなのかということで、御意見をいただきたいと思います。
奈良昌治君 医療事故問題については非常にこれはまた難しい問題で、医療事故が本当にふえているのかふえていないのかというのは、わからないんです。
 それで、私の所属している日本病院会という団体も、医療事故を何とか減らそうという組織をつくりましていろいろ、例えば患者さんがおいでになったときに医療担当者が冷やっとしたり、はっとしたということを、冷やり、はっとと申しますが、そういうものをどんどん届け出てそれを分析しようということも今やっております。それから、医療事故を専門に勉強しようじゃないかというグループもできております。
 それから、厚生労働省の方も医療事故をできるだけ少なくするようにということでやっているんですが、ただ一つ不思議な問題がありまして、アメリカで、人間が多いと医療事故が少ないかというと、人間が多い方が、つまりいろいろコミュニケーションの問題もありまして、医療事故も多いというデータも出てきているんですね。それから、有名な湘南の方の某大学でとんでもない医療事故が起こりましたけれども、あそこは、看護師さんの配置基準は、患者さん一人に対して看護師さん一人という、そういう非常に濃密な配置をしていた。だから、やはりこれは理念というか本人の意識の問題もあるだろう。
 だから、まず第一に、医療人というのは責任感をきちんと持つようにというこれからの取り組みをしなければいけないと思う。
 それから、医療事故が多い多いと言うんですが、例えば私が外来をやっておりますと、タナカさんと呼ぶと耳の遠いおじいちゃまが、ナカダさんが入ってくるんですね。それから、下手をすると、そのタナカさんがナカダさんの薬を持って帰っちゃうこともあるんです。それも医療事故の中に入るわけです。
 ですから、本当に生命にかかわるような医療事故というのは確かにあちらこちらで出ております。ただ、よく分析してみると、むしろ巨大な、人数の多いところで深刻な事故が起こっていることも事実なんですね。
 ですから、我々は真剣になって、医療事故というのは何とか防がなくちゃいけないということで、厚生労働省も日本医師会も日本病院会も、あらゆる団体が必死になって取り組みをやっています。でも担当者の意識の問題、責任感だと思っておりますから、これはやはり日本全体を含めての責任感ということをこれからみんなで教育していかなければいけないんだというふうに思っております。
中川(智)委員 本当に大先生のお言葉という感じで承りました。ありがとうございました。
 太田さんにもう一度質問したいんですが、私今ちょっと情報公開のことをお話ししました。患者の権利法というのもなかなか前に進まないんですけれども、情報公開やさまざまな患者の権利に対して、これから国できっちり取り組まなければいけないということでの御意見をいただきたいと思います。
太田秀樹君 お答えをします。
 エンパワーメントという言葉がございますが、市民がもっともっと専門的な知識を、情報を多く得ないと、なかなか専門職と同じ土俵で議論ができないわけでございまして、我々がインフォームド・コンセントと称して患者さんにお話しする内容というのは、やはり専門職であるがゆえに、深い知識があるがゆえに幾らでも操作できるわけでございます。
 したがいまして、本当に市民が情報をいっぱい持って、正しくそれを判断する能力を身につけていただかないとなかなか、情報公開がされても意義が薄れるというふうに思います。
 インテリジェンスという言葉がございまして、昔は知性というふうによく訳していたように聞いておりますが、やはりインテリジェンスとは、今は情報ではないかなという気がいたします。
 といいますのは、あふれんばかりの情報が降り注いでまいります。私の携帯電話にも、毎日毎日わけのわからないところからさまざまな情報が送られておりますが、情報を選択するということが非常に重要でございまして、情報を選択するところにインテリジェンスが必要なんじゃないかと思います。
 医療情報に関しましても、正しいものから怪しいものまで、さまざま出回っております。非常に人気の高いテレビ番組でどんな情報が流されているか、次の日の外来に来る患者でわかります。指がしびれるんだけれども脳腫瘍でしょうかとかというのが来ますから。それもやはり情報が選択されていないというのが感じられるわけでございまして、やはり情報公開は、医者の意識改革も重要でございますが、同時に、市民がエンパワーメントするということではないかなと私は感じております。
 以上でございます。
中川(智)委員 ありがとうございました。
長勢座長 これにて委員からの質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 意見陳述者の皆様方には、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。ここに厚く御礼を申し上げます。
 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しましては、深甚なる謝意を表する次第であります。
 これにて散会いたします。
    午後三時二十九分散会


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